衆議院

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第10号 平成13年5月18日(金曜日)

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平成十三年五月十八日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 五島 正規君

   理事 伊藤 達也君 理事 稲葉 大和君

   理事 柳本 卓治君 理事 山本 公一君

   理事 小林  守君 理事 近藤 昭一君

   理事 青山 二三君 理事 樋高  剛君

      小渕 優子君    岡下 信子君

      熊谷 市雄君    小泉 龍司君

      河野 太郎君    下村 博文君

      谷本 龍哉君    西野あきら君

      鳩山 邦夫君    原田昇左右君

      平井 卓也君    細田 博之君

      増原 義剛君    奥田  建君

      鎌田さゆり君    佐藤謙一郎君

      鮫島 宗明君    長浜 博行君

      松野 頼久君    田端 正広君

      藤木 洋子君    金子 哲夫君

      原  陽子君

    …………………………………

   環境大臣         川口 順子君

   外務大臣政務官      丸谷 佳織君

   環境大臣政務官      西野あきら君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・

   ガス事業部長)      大井  篤君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力

   安全・保安院長)     佐々木宜彦君

   政府参考人

   (環境省大臣官房廃棄物・

   リサイクル対策部長)   岡澤 和好君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局長

   )            中川 雅治君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  浜中 裕徳君

   政府参考人

   (環境省環境管理局水環境

   部長)          石原 一郎君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  西尾 哲茂君

   環境委員会専門員     澤崎 義紀君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十八日

 辞任         補欠選任

  熊谷 市雄君     谷本 龍哉君

  奥田  建君     松野 頼久君

同日

 辞任         補欠選任

  谷本 龍哉君     熊谷 市雄君

  松野 頼久君     奥田  建君

    ―――――――――――――

五月十八日

 温泉法の一部を改正する法律案(内閣提出第六六号)

 浄化槽法の一部を改正する法律案(内閣提出第八一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 環境保全の基本施策に関する件




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     ――――◇―――――

五島委員長 これより会議を開きます。

 環境保全の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として資源エネルギー庁電力・ガス事業部長大井篤君、資源エネルギー庁原子力安全・保安院長佐々木宜彦君、環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長岡澤和好君、環境省総合環境政策局長中川雅治君、環境省地球環境局長浜中裕徳君、環境省環境管理局水環境部長石原一郎君及び環境省自然環境局長西尾哲茂君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

五島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。

    ―――――――――――――

五島委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河野太郎君。

河野(太)委員 自由民主党の河野太郎でございます。

 まず、生物多様性条約のカルタヘナ議定書について、外務省にお伺いをしたいと思います。

 この議定書の署名期限が六月四日だというふうに承知をしておりますが、日本政府は、現在まだ署名を済ませておりません。遺伝子組み換え食品の規制に不熱心であると言わざるを得ないカナダでさえも署名を済ませておりまして、主要国の中でこの議定書に署名が済んでいないのは日本とアメリカだけでございます。

 これは仄聞でございますが、まだ国内法が整備されていないので署名をすることができないというような話が政府内にあるように伺っておりますが、この遺伝子組み換えという問題については、安全審査をどうしようか、あるいは国際的な表示のルールをどうしていこうか、そういうことがまだまだ決まっていない段階でございますから、当然に国内法の整備などというのはできない状況でございまして、それは、署名ではなくて、批准までに政府がやらなければいけない問題だろうと思います。

 この議定書に署名をするということは、この問題に関して日本政府が、前向きにイニシアチブをとって取り組んでいくということを意思表示するものであるはずだと思いますが、いまだに署名がされていないというのは、この問題に取り組んでまいりました私としては大変に遺憾でございます。

 この署名を六月四日までにするのかしないのかということにつきまして、外務省の意思決定をされる政治家はきちんとした説明をこれまで受けているのか、そして、大臣、副大臣、政務官、どなたの御判断で署名をしていないのか、お伝えをいただきたいと思います。

丸谷大臣政務官 お答えを申し上げます。

 河野議員、日ごろから環境問題に熱心に取り組んでいただき、また、この条約について本日御質問をいただいたことで、外務省としても非常に、六月四日という署名の期限が迫りましたが、大きな問題意識を持って、締結に向けての牽引力となるような質問をいただいたというふうに思っております。

 事実関係を申し上げますと、議員御指摘のとおりに、署名はまだなされておりません。

 また、大臣あるいは事務方の判断のいずれによって署名をしていないかという御質問につきましては、まだ大臣にはこの議定書についての署名の件は上がっていないというのがきょうの段階であります。

 それはなぜ上がっていないのかといえば、これにつきましては、国内法の整備あるいは関係省庁との調整が事務方でまだ終わっていない、そして、それが終わった時点で最終的に大臣に上げて御判断を仰ぐという現状にあるという説明を受けております。

河野(太)委員 経産省、農水省はこの議定書の署名に前向きでございます、と私は認識をしております。

 六月四日が署名期限のものについて、五月の十八日という段階でまだ政治家に判断をする材料を上げていないというのは、外務省事務方の怠慢ではないんですか。

丸谷大臣政務官 大変厳しい御質問を政務官にいただきましたけれども、実際に私も、この質問をいただくということで、この議定書につきましては説明を受けました。

 このことについて、六月四日という期限を前に政務官あるいは担当副大臣、大臣にまで説明が行っていないということについては、スピードが遅いというふうに私も思います。

河野(太)委員 それでは、六月四日の署名期限までに大臣あるいは担当される副大臣または政務官にきっちりとした説明を事務方から上げていただいて、なぜこの六月四日までに署名をしないのかということを環境委員会に書面で報告をいただきたいと思いますが、政務官、できますでしょうか。

丸谷大臣政務官 今議員に御要望をいただきました点につきまして、誠実に取り組ませていただきたいというふうに思います。

河野(太)委員 ありがとうございます。

 丸谷政務官、きょうは日程的にお忙しいと伺っておりますので、結構でございます。ありがとうございました。

 それでは、環境省の質問に入りたいと思います。

 循環社会法の中で「廃棄物等」という問題がありますが、「廃棄物等のうち有用なもの」が「循環資源」というふうに循環社会法では書かれていると思います。

 また、リサイクル法の中で「再生資源」という言葉があるわけでございますが、このリサイクル法で定義している「再生資源」と、循環社会法で言います「廃棄物等」の廃棄物以外のものは等しい関係にあり、それと「循環資源」というのはまた同じことであるという認識でよろしいのか、定義をお聞かせいただきたいと思います。

川口国務大臣 かつて、私が尊敬を申し上げている野口悠紀雄東大教授がおっしゃったことで、法律の定義というのは数式であらわすのが一番わかりやすいというふうに言われたことがありますけれども、御質問の、その「廃棄物等」とか「循環資源」とか「再生資源」とか、そういったことの定義の関係はまさにそういうことではないかというふうに思います。

 まず、廃棄物等と循環資源の関係でございますけれども、これは、経済性、すなわちコストが高いから使えないとかそういうことを無視して、技術的にだけ、それから技術開発が十分にあるということを考えれば、実態的にというか、論理的に廃棄物等と循環資源は等しいというふうに申し上げていいと思います。

 廃棄物等というのは、そもそもが、廃掃法の定義による廃棄物と、それに加えて、使用済み物品や副産物というものが加わったものが廃棄物等というふうに呼ばれていますけれども、それらは、コストの問題がなければ、あるいはそれを活用する技術が十分にできているということから考えれば、十分に有用なものとして使えるものであるということですから、廃棄物等と循環資源の関係は、現実は別として、論理的には等しくなり得るものであるというふうに関係がつくわけでございます。

 では、そもそも循環資源というのは何かというと、廃棄物等のうち有用なものであるということでございます。

 それで、有用なものというのが何かということがあるわけですけれども、有用なものというのは、再使用ができる、あるいは再生利用が可能である、あるいは熱回収が可能である、そういうようなものが有用であるということです。

 次に、では再生資源というのは何かということですけれども、これは、資源有効利用促進法、リサイクル法の定義でございまして、使用済みの物品等や副産物のうちで有用で原材料として利用ができるものというふうにお考えいただくということだと思います。

 例えば、再生資源ということですけれども、長い間野積みにされていた廃タイヤというようなものは、これは廃棄物に該当する場合もあるわけでして、ですから、廃棄物等のうち再生資源というふうに考えられないもの、本来的に言えば、廃タイヤというのは、有用なものとして使えるということですから再生資源なんですけれども、実際にそれが野積みされて、長く積まれてしまった場合には廃棄物であるということなので、廃棄物等のうち、廃棄物以外のものが全部再生資源に等しいというふうには言えない。

 ですから、こういう廃棄物という――この中が廃棄物としますね、これは有価でないということですけれども。そうすると、それに加えて、使用済みのものあるいは副産物として出てくるもの、これがこういうふうにあるわけでして、この二つの輪のこちら側にある部分、これが等にかかるところなんですね。要するに、副産物、廃棄物でなくて。

 廃棄物というのがありまして、廃棄物等というのは、廃棄物にプラスアルファが加わる、それで等になるわけですが。その等というのは、この部分が等になるわけですね。この等というのは何かといいますと、使用されたものあるいはその副産物。副産物として出てくるもの、副次的に得られる物品というのがあって、こちら全部が廃棄物等。これは何の定義かというと、循環型社会形成推進基本法の定義であるわけですね。

 こっちの廃棄物というのは、循環型社会形成推進基本法の定義なんですが、廃掃法の定義を持ってきているということですから、これは廃掃法の廃棄物の定義で、こっちが循環型社会形成推進基本法の使用済み物品ですとか副産物、これを全部合わせて廃棄物等と言われているわけですね。

 では、再生資源はこの中でどこに描かれるのかというと、主としてこちらの副産物、使用済み物品のうちなんですけれども、一部この廃棄物の方にかかるものもあるでしょう。それが何かというと、例えば、廃棄物として野積みされて使われないことになるタイヤなどがここの部分にひっかかります。だから、ここにこういうふうに丸い絵をかいていただいて、これが再生資源である、一部はこっちにかかるし、一部はこっちである、大部分はこっちだ、そういう定義になります。

河野(太)委員 よくわかりませんでした。どこか黒板のある教室で川口教授に習いたいような、そういうことでございますが、これはもう一度、時間をとってお伺いをしたいというふうに思います。

 平成十二年七月二十四日付の文書が厚生省生活衛生局から出ておりまして、「野積みされた使用済みタイヤの適正処理について」という文書が出ております。この通達によりまして、昭和四十六年十月二十五日付の「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の運用に伴う留意事項について」という厚生省環境整備課長通達の「第一 廃棄物の範囲等に関すること」の1は上書きされている。

 要するに、この昭和四十六年の通達は今や意味がないものであって、平成十二年七月二十四日付の通達の「廃棄物とは、」という定義が現在効力があると考えてよろしゅうございますでしょうか。

川口国務大臣 竹中大臣ほど教授としての経験はありませんので、申し上げ方が非常にうまくなくて申しわけないと思っております。

 委員の御質問を伺いますと、中身がもうかなりおわかりになっていらっしゃると思いますので、私のお答えの方があるいは混乱をすることになるかもしれませんけれども、まず、おっしゃった昭和四十六年十月二十五日付の旧厚生省の環境整備課長の通知というのは、廃棄物についてある定義をしています。その定義は何かといいますと、それは占有者の意思によって廃棄物となったり、または有用物となるものではない。

 ですから、私が新しいブラウスを買って、それが嫌いだから捨ててしまうということがあったとして、その捨ててしまったブラウスというのは新しくて手が通っていないものですから、この当時の、昭和四十六年の通知によりますと、捨ててしまってもこれは有用物であるという定義であったわけです、当時。

 それは今変わっていまして、昭和五十二年にそれを変えまして今のような定義になったわけでして、それが何かといいますと、私が、ブラウスが嫌いだから捨てたということであれば、それは廃棄物である、新品であって使えるものであっても廃棄物であるということになるわけでして、そういう定義になりました。

 それで、おっしゃった平成十二年の通知というのは、使用済みのタイヤというのが、実際廃棄物であってそれを捨てているわけですけれども、それが有価物であるというふうに言って野積みをして、それが問題化をしたということが多いわけでございますので、その昭和五十二年の定義というものをより、野積みのタイヤについて、そういう有価物であるということをもし言うのであれば、それを証明する客観的なエビデンス、例えば、契約でこれは後ほどここに引き取ってもらうとか、そういうことがあればそれは有価物だけれども、そうでなければ廃棄物であるということをより明確にしたもの、したがって、五十二年に変わった定義を、野積みタイヤについてより詳しく現実的にしたものであるという御理解をいただければいいと思います。

 それで、若干複雑になりますのが、昭和四十六年十月二十五日の通知と昭和五十二年の通知との関係ですけれども、全く新しくしたということではなくて、昭和四十六年の通知を改正したという形で五十二年の通知は形式的にはつくっています。

 ただ、定義としては、先ほど申しましたように、通知がどういう名前で呼ばれようと、四十六年にした定義と五十二年に変えた定義とは違うものであって、それで平成十二年の野積みタイヤについての、これは同じく環境整備課長の通知でございますけれども、それは、昭和五十二年に新しくなった定義を、野積みタイヤについて具体的に、より明確に、当時起こっていた社会問題に対応するべくしたもの、中身を申し上げるとそういうことでございます。

河野(太)委員 今、大臣最後に、当時野積みタイヤが社会的な問題になっていたとおっしゃいましたが、野積みされているのは使用済みタイヤだけでなくて、古くなったパチンコ台その他いろいろなものがあるわけでございます。

 この平成十二年七月二十四日付の通達は、あくまでも「野積みされた使用済みタイヤの適正処理について」という表題でございますが、例えば、パチンコ台その他についてもこの通達が準用されるのでしょうか、それとも、これはタイヤに限って厳格に適用されるべきものなんでしょうか。

川口国務大臣 タイヤに限りません。したがってパチンコ台にも、そういうような状況であれば適用をされるということでございます。

河野(太)委員 ありがとうございます。

 ただ私、非常に疑問に思いますのは、この廃掃法、循環社会法、リサイクル法その他いろいろありまして、これからさらに重要になってまいりますいろいろな法律について、廃棄物の定義がお役所の一課長の通達で決められてしまう、あるいは変わってしまうというのは大きな問題ではないかと思います。

 廃棄物あるいは廃棄物等、循環資源、再生資源、こうしたものの定義というのは法律で明らかにすべき性質のものではないかと思うわけでございますが、大臣、いかがお考えでございましょうか。

川口国務大臣 私の申し上げ方が悪かったかもしれませんが、定義というのは法律で決まっております。

 先ほど、紙二枚を使いまして廃棄物等と廃棄物ということを申しましたけれども、これは、循環型社会形成推進基本法の二条の二項に決まっておりまして、二条二項の一号にあるのが廃棄物であり、二条二項の二号にあるのが廃棄物等で、先ほどの小さい方の紙に出たところでございまして、定義は、基本的に法律で決まっております。

河野(太)委員 その定義を埋める実態的なものが通達で変わってしまうことについてはいかがでございますか。

川口国務大臣 基本的に、その法律のもとにある政令、あるいは政令の下にある省令といったことで原則何が定義であるかということは極力明確になるようになっているわけでございまして、実態的にそうなっていると思いますけれども、やはり法律はある時点で決めるものですから、その後の現実社会の動きというのがさまざまに動いてきて、先ほどの野積みタイヤのように、昔はタイヤを野積みにするということは、物がない時代は余り考えられなかったわけでございましょうけれども、経済社会の動きによって実態的に物事が変わってくるということはどうしてもあるわけでございます。

 そういったような、実際の運用をめぐっての具体的な理解が直ちにはわからないような事柄について、通達等でそれは説明をしてわかりやすくする、そういうことでございます。これは、法律を毎年毎年改正をしていくということは難しいわけでございますので、具体的にはそういうことにならざるを得ない部分がどうしてもあると思います。

河野(太)委員 かつて公害問題というのが盛んなころに、公害を防止しなければいかぬということで、ある組織がつくられました。それが名前を変え、形を変え、やっていることを変え、今や環境事業団という組織となって残っているわけでございますが、いろいろな方からこの環境事業団というものの説明を聞いておりますと、なぜこの環境事業団という組織が存在しなければいけないのかという理由が私には全くわかりません。とうとう言い逃れも苦しくなって、PCBの処理を環境事業団に押しつけて、何となくそれをやるためにこれが残っている、そんな状況でございます。

 環境事業団が今やっている事業の中に、かつて環境事業団がやった貸し付けの回収事業というものがございます。貸し付けをやめ、そうした事業をほかの組織に譲り渡している事業団が、なぜこの債権回収というところにだけこだわっているのか、なぜこの債権回収を専門の金融機関に移管しないのか、私は非常に疑問に思っております。

 現在、環境事業団が行っている債権回収に関する費用、あるいはどれだけの債権が回収されているのかという効果を、金融機関に移管した場合と比べ、どの程度環境事業団というのはうまくやっているのか、大臣、把握されていらっしゃいますでしょうか。

川口国務大臣 まず、総論的に申し上げますと、環境事業団は、今小泉内閣で行っています特殊法人の見直しの一環として、これは環境事業団のみならず、全部の特殊法人が、本当に民でできるものは民でやるべきであって、それ以外の、要するに環境事業団の事業部の見直しというのは、一環として行うべきであるというふうに私どもは考えておりますし、それは現在やっているところでございまして、環境事業団の業務というのは不断に見直していかなければいけないというのは、基本的に私どももそう考えております。

 それから、回収でございますけれども、環境事業団は、融資事業につきましては、平成十一年の十月から政策投資銀行に移管をいたしておりまして、その際に、既存の債権については、貸付者責任というのが金融の原則でございますから、それに基づいて環境事業団で行うということになっております。したがって、環境事業団は、責任を持って回収を行うことが適切であるということになるわけです。

 その際に、委員の御質問は、回収を環境事業団がやるということになっていたとしても、それを専門にやる人、機関、組織に委託をすればいいではないかという御疑問がおありかと思いますけれども、それについてはおっしゃるとおりでして、債権を回収することを委託するということは可能でございます。その方が効率的でかつ適当だという場合には、そのような方法もとり得るということでございます。

 ただ、環境事業団の行った貸し付けに係る債権の回収につきましては、環境事業団としては、要するに不良債権というのは、これは今ほかの場でも議論されていますけれども、債権には正常債権から不良債権までさまざまな色合いがあるわけでございまして、常にその債権の管理をやるということが不良債権にしないということのためにも大事で、そのために日常的に経営指導を行っていくということが必要でございます。そういう部分も含めて考えますと、債権回収業者の行う場合と比較して費用対効果がどうかということを単純に比較することは非常に難しいということだと思います。

 ちなみに、数字でございますが、十一年度の元利回収額を環境事業団と整理回収機構とで比較してみますと、この整理回収機構というのは回収を専門にやるということでございますけれども、職員一人当たりの回収額で見ますと、これは環境事業団の方が高くなっているということでございますので、環境事業団がやる回収事業が効率的でないというふうにも一概には言えないと思います。比較するというのは非常に難しいというふうに考えております。

河野(太)委員 整理回収機構と比べるのはやや場違いだと私は思いますが、この環境事業団には大変大勢の天下りが行っております。

 過去十年に環境事業団を退職した天下りの方の退職金は幾らぐらいなのか、また、現在の理事の給与、賞与及び特権はどうなっているのでしょうか。

川口国務大臣 過去十年間というお尋ねでございますけれども、過去十年間に環境事業団を退職した役員の退職金につきましては、延べ八人で、総額約一億七千万円でございます。

 以上です。

河野(太)委員 現在の理事の給与、賞与及び特権はどうでしょうか。

川口国務大臣 平成十年に閣議決定がございまして、それは「特殊法人の役員の給与について」という閣議決定でございましたが、そこで、一般職の給与に関する法律の指定職俸給表十一号俸相当額というふうに、これはすなわち事務次官クラスということのようでございますけれども、それの範囲内で適切に調整をするということが政府の方針でございまして、それに基づいて適切に実施をいたしております。

 環境事業団理事の本俸の月額が百二万七千円、賞与の支給割合が三・六カ月ということになっております。理事については、現在個室ではなくて大部屋でございまして、それから、理事用の自動車も廃止をするということで経費の節減を図っております。

河野(太)委員 時間が参りましたので、まだ質問が残っておりますが、残念ながら、次に回させていただきたいと思います。

 済みません、最初の質問だけちょっとわかりにくかったものですから、後で役所の方ともう一度、何らかの形できちっと記録に残るようなやり方で詰めさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

五島委員長 佐藤謙一郎君。

佐藤(謙)委員 民主党の佐藤謙一郎でございます。

 きょうは、環境問題全般にわたって川口大臣に何点か質問させていただきます。

 大変私はうれしいことがございました。それは、小泉総理大臣の所信表明演説に環境問題を大変大きくクローズアップしていただいた。そういう時代がやっと来たのだな、こう思いながら、きょうは、その小泉総理の国会での質疑の中でおいしい水の話がありましたので、そこから切り出していきたいと思います。

 と申しますのも、私は、環境問題と公共事業、環境問題における公共事業というのは非常に大きな意味があるだろうということで、この後、二、三点、公共事業について御質問を申し上げるので、冒頭、そのおいしい水の話をさせていただきます。

 これは、自由党の中井洽議員からの御質問でありましたとき、おいしい水をどうやって手に入れたらいいか、そうした御質問に対して小泉さんが、活性炭処理という言葉を使われたのです。それは正解の一つであるかもしれないけれども、周りから、何だ、活性炭かという話が聞こえてきました。

 つまり、対症療法でしか物を考えていない。森林の水源涵養能力ですとか、私ども民主党では、緑のダム論ということを標榜して、森林整備こそが、二十一世紀、日本が生き残っていく大変大きなものなんだ、そうした主張から緑のダム論を展開しておりますけれども、そうした本質的なところから議論ができていない。

 私は、去年私が経験した例を一つお話しいたしますと、去年、長良川の河口堰が運用五年目を迎えました。そのシンポジウムに出たときに、三重県亀山市の主婦の方が私のところに泣きそうな顔をして集まってこられて、佐藤さん、おいしい水が飲めなくなってしまったんだ、それどころか、水道料金が五倍になった、トン当たり三百八十円で飲んでいた水が一挙に二千六十円になってしまう、許せないことだ、今まで長良川の河口堰は何とも思っていなかったけれども、これから佐藤さんの言うとおり、公共事業というものを鋭く、厳しくチェックしていくと言って、激しい口調で一気に私にまくし立てられたのであります。

 それは、御承知のように、四日市のコンビナート、バブルの前は経済発展でどんどん工業用水が要る、企業もどんどんどんどん進出をしてくる、そのためには、いろいろな理屈をつけて長良川の河口堰を千八百四十億円でつくったわけでありますけれども、バブルがはじけて水が要らなくなった。さあ、企業はもう要らないということになりますから、帳じりを合わせるために、そのうちの九百億円を何とか三十年で返さなければいけない。役所の考えでありますけれども、取りやすいところから取っていこう。地下水でおいしい水を飲んでいた、これは一例でありますけれども、三重県の亀山市民に二千六十円の水を押しつけていく。そうしたことを考えると、本当に公共事業というのは、生活者がやはり選択できる、そうした仕組みがなければいけないというふうに私は考えるわけであります。

 ついこの間、田中長野県知事が言われた脱ダム宣言でも、あの下諏訪ダムに行ったときも、おいしい水に下諏訪ダムからブレンドした水が来てまずい水を飲まされるという嘆きも聞かされました。

 あるいは、群馬県の中之条というところ、ここに今四千億円ぐらい使って八ツ場ダムがつくられようとしています。恐ろしいことに、草津の酸性度の非常に高い、pH二から三の水に毎日六十トンぐらいの石灰をぶち込んで中和をして、そして川に魚が住めるようになったといってにこにこしている担当者を見て私は唖然としたわけですけれども、利根川水系を伝わって、群馬、埼玉、東京にそうした水がやってくるわけです。それぞれ、東京都に一千百億円、あるいは埼玉県に九百億円の財政的な負担が強いられる。まずい水がまたやってくる。そうしたことを都市生活者は全く知らされないままに甘受していかなければいけない。

 そんなところから、おいしい水というものを確保するためには、私は、公共事業というものに鋭いメスを入れなければいけないものであろうと思いますが、大臣の考えをお示しいただきたいと思います。

川口国務大臣 本会議における小泉総理と中井先生との水のお話というのは、双方それぞれコップのお水をお飲みになりまして、大変に印象的でよく記憶をいたしております。

 水につきましては、例えばアメリカにレスター・ブラウンという環境NGOがいますけれども、これからの大きな環境の課題は水であるということを言っておりまして、レスター・ブラウンのみならず多くの人が、次の大きな環境の課題は水であるというふうに考えていると思います。

 そのためのさまざまな催しもございまして、例えば、平成十五年には琵琶湖で世界水フォーラムというのも開かれるということになっておりまして、また各都道府県、地方公共団体も、水についての取り組みはさまざまに進めていると思います。

 おっしゃるように、いい水が利用可能であるということについては、抜本的なといいますか、根本的に大きな水循環で考える必要があると思っております。民主党は緑のダムというふうにおっしゃっていらっしゃいますし、例えば宮城県の取り組みとしては、漁業に従事をしていらっしゃる地元の方が、山は、森は海の恋人であるということをおっしゃって、森の植林を一生懸命やっているということでもありますし、そういう取り組みがここだけではなくてたくさんあると思います。おっしゃるように、水との関係で、全般的に考え、かつ山のあり方を考えるということは大事であると思います。

 それ以外にも、もちろん、水質をどうやって維持するとか基準をきちんとつくるとか、合併浄化槽をつくるとか、そういったさまざまな取り組みが総合的に必要になると思います。

 公共事業をどういうふうにするかということにつきまして、私は、環境の観点から公共事業を考えるということが非常に大事なことだと思っております。公共事業を行うときに、環境の観点を今まで以上により広く取り入れるということも大事でございますし、破壊された環境を、自然を戻すために公共事業で行うということもあり得ると思っております。

 幾つかの法律では、例えば河川法などはそうですけれども、環境保全ということを目的の一つに入れて考えているということでして、私はこの間、多摩川でどういう取り組みが行われているかということを見せていただきましたけれども、そういったことも新しい河川法に基づいての取り組みであるかというふうに思います。

 ということでございますので、環境省といたしましては、ほかの、河川法やあるいは農業関係の法律を所管している関係省庁、府省と連携をいたしまして、さまざまな公共事業に環境の保全がもっと広く取り入れられるように努力をしていきたいと思いますし、森総理のもとで始めていただいた「環(わ)の国」日本づくり、これを小泉総理も引き続いてやってくださるとおっしゃっていらっしゃいますので、そこでもそういう話が既に出てきておりますし、今後とも深めたいと思っております。

 それから、公共事業の観点では、環境省といたしましては、環境影響評価法に基づくアセスをきちんとやっていきたいというふうに考えております。

佐藤(謙)委員 心強いいろいろな御答弁をいただいてありがとうございます。

 小泉内閣の最大の目玉が財政構造改革ということでありますが、私どもも、プライマリーバランス等の議論をしながら一生懸命、小泉政権とある意味で同じ方向で財政構造改革の実現を考えながら、例えば公共事業を五年で三割削減するとかいろいろな、血を見るような思いをしながらも、それでもなおこの財政構造改革というのはなかなかよい結論に達せられないので、大変つらい思いをしながら今歯を食いしばって頑張っているわけでありますけれども。

 大臣、小泉政権の財政構造改革を実効あるものにするために、今申し上げました公共事業というのはやはり大変大切だと思います。各省にいろいろなプライオリティーがあると思うんですけれども、その中で環境大臣が、環境省の判断をどう積極的に伝えていくかというのはやはり大変重要なことだと思うんですね。

 今度の新環境基本計画にも、御承知のように、あらゆる場面における環境配慮の織り込みとか、あらゆる投資にわたって環境配慮を織り込めというような十一の戦略的プログラム等々があるわけですけれども、今の議論は、むだはないかということで必死に公共事業の見直しを言っているわけです。環境という面からどういう形で切り込んでいけるのか、先ほど答弁の御一端はいただいたわけですけれども、また御見解をお示しいただければと思います。

川口国務大臣 先ほど申しましたことに加えまして、さらにさまざまな知恵を環境省として出していきたいと思っておりますけれども、環境基本計画の中で、各府省でもこの計画を踏まえて環境配慮を織り込んだ施策が行われることになるというふうに考えております。

 環境省は中央環境審議会において毎年点検を行うということですが、こういう場を通じましても、環境省として、各府省が環境保全ということを観点にさまざまな施策を行っていく、これは公共事業だけではないと思いますけれども、このことを推進していきたいと考えております。

佐藤(謙)委員 この辺になると少しトーンダウンをしてきてしまったのかなと。

 私は、前回、川口大臣が御就任をされたときの質問で、公共事業と環境アセスについてもっと積極的に環境省、当時は環境庁でしたけれども、物を言って前に進めるべきだ、そういうお話をしましたら、後で否定はされましたけれども、教育ママという言葉を使われて、教育ママという言葉は好きじゃなかったと後で言われましたが、私は教育ママみたいなことはやりたくないんだ、地球全体の人たちが環境問題に意識を持ってそれぞれが行動していくということが大事なんだと。それは、僕は真理の一つだと思いますけれども。

 日本でいえば環境省が、もっといえば川口大臣が、やはり積極的に環境という切り口で公共事業や財政構造改革にメスを入れていくべきだろうと私は考えています。教育ママという言葉が必ずしも適当でないとするならば、私は、もっとほかの役所が、そこまで言うなと言うほどに、やはり小泉総理大臣があそこまでいろいろと環境に前向きな姿勢を示されたわけであります。残念ながら、小泉さんは御自身の得意な分野は立て板に水ですけれども、それ以外のところは原稿丸読み、棒読みというところが多々見られて、環境問題も棒読みに近かったかな、そんな感じがするわけです。

 その背景に、環境を重視したこの所信表明演説はどうも経済産業省の役人の方が書かれたんじゃないかといううわさが出るぐらい、決して僕は、それはセクショナリズムとか悪いとかいうことじゃないけれども、もっと環境省が積極的にコミットをしていただければと思います。

 そこでもう一つ、道路特定財源の見直しが小泉流財政構造改革のまず第一段階にあるんだなということは、財務大臣の日々の御発言からよくわかるわけであります。御承知のように、一時八兆九千億円ぐらいありましたこの道路特定財源も、今六兆弱という、それでも大変、歳入の一割を優に超す、それぐらいの大きなものが、全く手つかずに全部道路のために使われていくというそうした仕組みに、聖域はないんだと言って切り込んでいくわけであります。

 五年間で七十八兆円という、ある人々はそれを利権の巣だ、こういうふうに言われるわけでありますけれども、これは、治水の二十四兆円やあるいは土地改良の四十一兆円に比べるとはるかに大きな数字であります。一部で、そうしたものを一般財源化しよう、そういう動きに私は賛成なんですけれども、どうもちょっと見え隠れする道路族のいろいろな思いは、その六兆円のほんの一部を環境に回そうというようなことでお茶を濁すような、そんな結論になりはしないかなということを心配しているわけです。

 この道路特定財源について大臣はどういうふうにお考えか。それが環境にどういう形で使われていくべきかということをお示しいただければと思います。

川口国務大臣 道路特定財源につきまして数字を調べましたら、平成十三年度の予算額で約六百五十億円ぐらいの金額が環境保全の経費というふうになっているということでして、これの中身は騒音対策、振動対策といった道路沿いの、沿道の環境対策ということのようでございます。

 環境省といたしましては、先ほど申しましたように、環境保全という観点からの施策がもっともっと行われるようになることが望ましいというふうに考えておりますので、そうなりますように委員のますますの御支持、御支援をお願い申し上げたいというふうに思っております。

 当然、ほかの省庁もそういう観点で今検討を始めていると思いますので、極力その部分を各省に大きく意識してもらうように努めたいと思います。

佐藤(謙)委員 道路特定財源そのものについてもう少し深く切り込んだ御答弁をいただければと思いました。

 さらに、これから環境税ですとか炭素税ですとか、私ども環境に携わる者にとって、そうした目的税的な議論がいろいろと進んでいきますので、この辺で、例えば財政の硬直化ということにつながるのではないかなという御批判もあるこうした特定財源の問題、あるいは、それが本当に生活者とは離れたとんでもないところで使われている。これは空港整備特会もそうです。

 やはり一番問題なのは、電促税なんかでは、この間ラピカ事件で大変問題になった新潟県の刈羽村、今プルサーマルでいろいろともめておりますけれども、たった五千人の村に体育館が五つもできてしまっている。体育館が五千人の村に五つできて、さらに十七ヘクタール使って運動公園ができて、その上、生涯学習センターがつくられる。全部で七十二億円さらにそこに投入されるというようなことが一方で行われていることを考えると、我々はこうした問題にメスを入れていくべきではないのかなというふうに考えております。ただ、公共事業の問題、余り深入りするつもりでありませんので。

 この公共事業関係で一つだけ、ちょっと異質なことで唐突でありますけれども、お聞きしたいことがあります。

 それは、五月八日の大臣の記者会見でも、いろいろと環境修復の公共事業ということに強い意欲を示しておられるわけで、私は、公共事業そのものがすべて悪いというのではなくて、森林整備ですとか、あるいは環境省が、お金はなくても、こういう公共事業というのは二十一世紀の国民に支持されるだろうというようなことを積極的に打ち出していかれるのは大変いいことだと思います。

 残念ながらこれは国土交通省の所管に入りますけれども、断熱材の話で、私、一つ非常にショッキングな話を聞かされました。それは、省エネルギーにも関することなんですけれども。日本の住宅は九五%、それ以上かもしれません、内断熱。これは、オイルショック以降、やはり省エネルギーというのは大事だということで、ヨーロッパも日本もともに断熱を研究しました。日本の場合は、建築工学という点から、よし、それっということで内断熱に走ったわけですね。

 西欧、特に北ヨーロッパは水蒸気というものに目をつけて、建築物理工学という分野があったために、内断熱と外断熱のどっちが人間の生活にいいか、そうした厳しい判断の中で外断熱を選んだ。九五%、建物は外断熱。日本とヨーロッパ、アメリカ、これだけ国が近くなっていながら、一つの住文化、文化の中でこれほど右と左に大きく違う答えが出た問題はないわけです。

 建設省も、今の国土交通省もかつてそれを認めておられるわけですけれども、内断熱は明らかに結露を生じる。結露を生じてダニやカビというものを招来し、それがひいてはいろいろな、我々、シックハウスを初めとした問題、高温多湿な日本の気候風土と相まって問題を起こしている、そういう指摘に対して、外断熱をこれから普及していこうじゃないか、そうした声があります。

 これは、断熱効果だけではなくて、省エネルギーという問題あるいはシックハウス対策、そういう問題から、こういうことは国土交通省のことかもしれませんけれども、十分勉強していただいて、何もこの外断熱のことだけではありません、環境省が積極的に進んで提案をしていくような、そういう教育ママ、括弧でやってほしいと思いますが、いかがでしょうか。

西野大臣政務官 ただいま委員の御指摘になりました、外断熱を推進していくべきではないかということでございます。

 我が国では、御案内のとおり、その構造上、九〇%以上ではないかと思うんですけれども、従来までほとんど内断熱で施工されておったわけであります。北欧、スウェーデン等々においては外断熱で施工されておるということも承っておるところでございまして、その効果、特に内断熱の場合にはどのような影響を与えるのか、今委員からも一部御指摘があったところでもございます。

 我が国と北欧との環境の違い、自然の違いというものもあろうかと思いますが、確かに、外断熱という問題にこういう機会にいち早く視点を向けながら、これは大いに研究をしていくべきだというふうに思っております。

 ただ、私の知る範囲では、外断熱というのは内断熱よりも、経費的といいますか、費用的に多少高くつくのではないかなというような印象を受けておるところでございますが、それらも踏まえながら、お示しの方法等も含めて、環境という点からも大いに検討を加えていく視点ではないかというふうに思っております。

佐藤(謙)委員 政務官の前向きな御答弁、ありがとうございました。

 それでは、これからちょっと、私が環境問題に日ごろ感じていることを御質問させていただきたいと思うのです。

 環境問題というのは、やればやるほど葛藤なんだなと。一つの正解がここにあるんだという、そこにたどり着くために、いろいろな悩み、苦しみながら、幾つもの答えの中から一つの道を選んでいく。

 例えば、かつてマラリアがはやった時代、これからは地球温暖化でマラリアという問題が大変深刻な課題としてまた俎上に上ってくるようでありますけれども、例えばスリランカのケースでは、マラリアで大変多くの死者が出た。戦後、昭和三十年前後には百万、二百万という単位の罹病者が出て、その一%が亡くなるというのがマラリアですから、大変大きな被害があった。そこにDDTが出てきて、DDTを散布することによって最高二百万から二百五十万人の患者が、スリランカ一国ですけれども、十七人に減ったということが記録されているんですね。

 ところがそのDDTは、御承知のように、人間や生態系に害を及ぼすということで使えなくなる。さあ、そうしたら途端にまた、マラリアの患者が二百五十万に膨れ上がった。本当にこれは、深刻な選択を我々人間に神様が突きつけておられるのかなと私は感じるわけでありますが。

 そうした葛藤の中から、環境大臣は、先ほど私が申し上げましたように、地球に住むすべての人たちが意識を持って行動すること、それを待つのではなくて、やはり今のお立場で積極的に考えていかなければいけない。その問題の一つに、今度は水俣病の処理の問題があろうかと思うのです。

 ちょっと長くなって恐縮ですけれども、おととし、チッソ支援策の問題がいろいろと出たときに、私は、PPP原則の原理主義者だと私みずから任じていて、とんでもない、国から金を出すなんというのはとんでもない話だという、そんな思いで私は実は水俣に行きました。

 水俣、車に乗ってチッソの工場に行こうとすると、スラム街のような一帯があるんですね。廃墟というか暗い家がずっと続いていて、ああ、これだけきれいな町並みなのに、どうしてこういうところは町づくりでもうちょっとしっかりとしないんだろうかと思って、案内をしてくれた方に尋ねたら、それはチッソの社宅だというのです。

 毎年、経常利益が三十億だとか四十億、今はそうしたところでしょうけれども、御承知のように、患者に対する補償ということでチッソ自身は大変苦しくなっている。私は、当然チッソがその責任を負い続けていかなければいけないと思いながら、その社宅を見たときに、今液晶工場で必死に働いている二十代、三十代の社員の人たちが、こんな、人が住む家でもないようなところに住まわされている現実を見たときに、私はもう本当に悩み抜きました。一体、環境問題とは何なんだろうと。それだからこそ、この後に、予防措置原則、予防原則が必要なんだということを私は主張したいわけでありますけれども。

 その文脈の中で、今度、川口大臣は水俣病訴訟に関して上告をされることになりました。大変つらい選択だったと私は思いますけれども、いや、それほどつらいものでもなかったよと言われるかもしれません。今ここで彼らを本当の意味で苦しみから解放するということはできないにしても、少しでもそれを和らげることができるとするならば、それは環境大臣お一人であったはずですけれども、上告をとられたそうした御決断について、一言その辺の御見解をお述べいただければと思います。

    〔委員長退席、小林(守)委員長代理着席〕

川口国務大臣 私は、五月の連休のさなかに、慰霊式がございましたときに水俣に伺いまして、その折に、患者の方、今語り部として仕事をしていらっしゃる方ともお会いをいたしましたし、資料館でさまざまな写真も、この写真は以前から拝見はいたしておりましたけれども、見せていただきました。関係者の方からもお話を伺わせていただきました。

 それから、五月八日には水俣病関西訴訟の方の原告の方々とお会いをいたしました。原告の方々にお会いをいたしましてお話をさせていただきましたけれども、非常に御高齢でおありになって、それから健康も害していらっしゃる方でございますので、大変にその点についてはお見舞いを申し上げるということを、その際、率直に申し上げさせていただきました。

 ということでございますが、水俣病の問題については、国は、今までいろいろな経緯の中で、その都度その都度にできる限りの努力をしてきたということでして、平成七年には当時の与党三党での政治解決というのがございまして、それが閣議で受けとめられたということでもございます。

 そういったような歴史を含めまして、それなりに、今ある形で解決が図られてきたわけでございますけれども、この間の大阪高裁判決は、国の責任あるいはメチル水銀中毒の認定につきまして、その政治解決の枠組みとは異なった考え方を持っているということでございます。

 したがいまして、原告の方についてはもう大変にお気の毒には存じておりますけれども、この問題、今までの水俣病についての政治解決の枠組みと一緒に並べて考えますと、水俣病対策にかえって混乱が生じ、この問題の解決をおくらせる可能性もあるというふうに思いまして、おっしゃるように、私としてはなかなか難しい判断でございましたけれども、上告をし、判断を仰ぐということにさせていただいたわけです。この問題の審理ができるだけ早く進むように私としては祈っております。

佐藤(謙)委員 この件では、チッソは上告を見送って、そして熊本県は、大変じくじたる思いでという言い方をして上告をされた。その表明の中に、何か、本当に悩み抜いた、あるいはだれかの圧力でなのかもしれませんけれども、そうしたものが表出されたわけです。

 一方で、同じようなというか、性質は全然違いますけれども、今ハンセン病の訴訟の問題が起きておりますけれども、この件については、坂口大臣は、やはり御自身の考え方というのをいろいろの形で、悩みながらそれを表に出しておられる。

 川口大臣からは一言もそうしたお気持ちというのが伝わってこない。それどころか、国の責任は納得できないという。訴訟判決がおりたときに川口大臣の談話として、確かに原告の方々は高齢化し、健康上の問題もある、審理が早く進むように祈っているという数行のこの文言が何ともそらぞらしくて、審理が早く進むように祈っていても、一体どうなってしまうんだろう。

 今御答弁の中に、かえって混乱を生じという、そういうお言葉がありましたけれども、かえって混乱を生じというのは、一体どういう意味なのか。

 平成七年の政治的解決の中で和解をしたあの患者連合の人たちも、歩調を合わせなかったということでこの関西訴訟の原告に対してはいろいろなわだかまりがあったと思うんです。その彼らまでが、そういうわだかまりを乗り越えて、どうか上告しないでくれといって環境大臣のところに来られているんだろうと僕は思うんですね。

 この、かえって混乱を生じというのは、どういうふうに混乱が生じることになるんですか。

川口国務大臣 上告をする決定に至った過程では、さまざまな要素、要因、理由がございますけれども、かえって混乱を生ずるというふうに申し上げたということで言いますと、例えば病像論の議論というのがございます。

 これは、認定をするときに、今度の高裁の判決では、舌の先の二点識別の感覚に異常があればということでございますけれども、例えば、これは今までの考え方と違うというようなことでございますね。

 それからもう一つ問題が、むしろ今後広く影響があり得る、これは水俣病との関係を超えてあり得るということにつきましては、国の賠償責任がどこまであるかという議論でございます。

 この国の賠償責任につきましては、昭和三十四年の末には、国と県は、当時の水質二法等に基づいてチッソの排水規制をすべき義務があった、国、県が排水規制を行わなかったのは違法であって、チッソと共同の不法行為をしたのと同じであるということであるわけですけれども、水俣病の歴史を見ますと、例えば、水俣病の患者が初めて発見されたというのは昭和三十一年でございまして、チッソの排水が停止されたのは十二年後の昭和四十三年ということでございまして、水質二法で規制をすべきであるということでございますけれども、その時点で規制をしなかったということは、規制をするということが実際できたであろうかというようなこともございます。

 それから、平成七年の政治解決とのバランスの問題というのもございます。

 そういうことをさまざま含めまして、難しい判断ではありましたけれども、先ほど申しましたように、まさに混乱を生じさせるということになってもいけないという観点で上告をさせていただきました。

佐藤(謙)委員 本当にもう言いわけを聞いているとしか思えない。本当に規制ができたのだろうかなんということを言われると、水俣病患者の方々の無念さがさらにますます増してくるのではないかな。

 これは、御承知のように、テレビが日本に普及し始めた昭和三十年代。特に、今の天皇陛下の御成婚から東京オリンピックにかけて飛躍的に日本が高度経済成長を進めたときに、テレビの普及が爆発的に進んだ。そのプラスチックの可塑剤としてのアセトアルデヒドを日本はどうしてもつくらなければいけないという、そうした産業界からの要請というものがあって、当時は残念ながらまだ石油化学工業というのが発展をしていない、電気化学工業によらなければいけない、そういう状態の中で、このチッソという会社がほぼ独占的にそうした製品をつくっていた。もし、ここでチッソがアセトアルデヒドを製造しなくなると大変な日本的な損失を与えてしまうということで、日本の産業をリードする役所を中心に見て見ぬふりをしていたのは、これはもう明らかなことなんですね。

 昭和三十一年に水俣病の公式な発見があって、昭和四十三年に結果として政府が統一見解を出すまでの十二年間、私は、本当に環境行政に携わる者が決断をしさえすればやれることは幾らでもあった、そういうふうに考えます。規制がとてもできなかったで済まされる問題ではなくて、産業優先のそうした時代にいろいろな方策があった。

 例えば、アメリカからサリドマイド禍を救ったフランシス・ケルシーのように、どんなにサリドマイドを認可しろと言われても断固としてそれをはねつける勇気さえあれば、法律は後からついてくるということがあったわけであります。

 そうした勇気というもの、それは、何も大臣だけを僕はお責めしているわけではなくて、国会そのものが、ハンセン病と同じように怠慢であったということを考えれば、私にもその責任の一端はあるというふうに考えておりますけれども、こういうときだからこそ、やはりこの問題には、いろいろな混乱を生ずることをあえて承知の上でも、上告を断念されるべきであったと私は考えます。

 私は、そこから環境問題の主要なテーマとして、去年の八月にも申し上げましたけれども、予防原則というもの、だからこそそうしたことを我々が主張していかなければいけない。護憲か改憲かとか、あるいは集団的自衛権がどうのこうの、憲法解釈がどうという議論が本当に今盛んに行われていますけれども、私は、この予防措置原則というものがいかにこれから二十一世紀の政治の対立軸になるかということを予感するんですね。

 それは、新幹線のATS装置じゃないけれども、何か人影が見えて、それが確実に人であることが確認されるまでスピードを緩めない、そういう社会を選ぶのか、何かあるなと思ったときに一度とめて、そして確認をしてから前に進んでいくという道を選ぶのか。公共事業でいえば仮差しとめのような、そういうもう一つの価値を環境省が率先して主張していかない限り、私は、ほかにだれが主張するのかと言いたいのです。

 そこで、先月の四月十日に、朝日新聞ですけれども、名古屋大学教授の池内さんという方が、「求められる予防措置原則」、私は、これはもう得たりや応で読ませていただきました。去年の八月には、先ほど河野さんが質問されたカルタヘナ議定書をめぐっての議論、つまり、食の安全ということについて私は予防原則が必要だということを言ったし、また、現に、WTOのこれからの議論の中に予防原則をEUは持ち込もうとしています。

 幸いなことに、新環境基本計画の中にも予防の原則というものが入っているようでありますし、もとはといえば、地球サミットで合意されたリオ宣言の中に予防原則というのは書き込まれていて、きのう、おとといですか、パリで行われたOECDの環境大臣会合で採択されたOECDの環境戦略にもこの予防原則がきっちりと非常に大きなスペースで載っているわけです。

 そういうことを考えると、環境大臣が、この予防原則について前向きな姿勢で、水俣病の問題だけではなくて、いろいろとこれから考えられる化学物質の問題あるいは食の安全の問題等々を含めて、環境省内にそうしたことを研究しようというような機運を持ち込んでいただけないものだろうか。本当にホームページ一つで結構です。みんなからいろいろな意見が来る、恐らくこの予防原則については大変国民は関心が強い。

 それを裏返すかのように、今この予防原則の研究を一生懸命やっているのは産業界だというのですね。それは、予防原則というものがこれから市民権を得てしまったら大変なことになるということで、抵抗の材料を研究するために今一生懸命勉強しているということですけれども、環境省はこの辺について、何か前向きに、よしやろうというようなそうしたお気持ちをここで御披瀝いただけませんでしょうか。

川口国務大臣 予防原則についてお答えをする前に、先ほど私が関西訴訟についてなぜ上告をしたかという説明で、十分でなかった点があると思いますのでちょっと補足だけさせていただきたいと思います。

 高裁の判決では、昭和三十四年末には、国、県が当時の水質二法等に基づきチッソの排水規制をすべき義務があった、しなかったのは違法であってということでありました。

 それで、水俣病の患者が初めて発見されたのが昭和三十一年でして、この原因がチッソの排水中のメチル水銀であるというふうにはっきりいたしましたのが昭和四十三年であったわけですね。この判決が問題にしているのは昭和三十四年の話でございまして、実は、水質二法というのは同じ昭和三十四年にできたばかりの法律でございます。

 これは予防原則とも関係いたしますけれども、昭和三十四年の時点で、当時の知見に基づいて規制をしなかったということが、権限の不行使といって国家賠償法の賠償の対象になるということについて問題があるだろうというのが一つの理由でございまして、それの意味は、どのような知見があったらそういう規制権限を行使し得るのかということの関係で、ほかの行政の分野においても、法律による要請というのが行政の前提でございますから、それとの関係で広く影響を持ち得るであろうということが上告の理由の一つでございまして、そこを余りはっきり御説明しませんでしたので、ということでございます。

 それで、予防原則というのは、委員がおっしゃられますように、非常に大事なことだと思っております。委員おっしゃられましたように、リオ宣言の第十五原則に予防原則ということが書かれておりますし、それから環境基本法の第四条ですとか、環境基本計画で環境政策の指針となる四つの考え方の一つとしてきちんと位置づけているところでございます。

 国際的な条約でも、気候変動枠組み条約というのは予防原則に基づいてつくられているわけですし、オゾン層破壊のウィーン条約というのもこの考え方が入っているということでございまして、既に活用されている考え方だというふうに思います。

 予防原則を実際に進めていくときに重要なことは、科学的な知見の確立であるというふうに思います。どの段階で、どこまで知見が確立したときにそういう予防原則に基づいて行動をとるべきかということは非常に難しい課題でございまして、この分野ではどんどん勉強を進めていく必要があると思っておりますし、独立行政法人になりましたけれども、国立環境研究所と関連が非常に深い環境省といたしましては、国環研についても、その知見を深めるという作業をもっと進めてほしいというふうに考えております。

 それからもう一つ、パートナーシップという考え方で環境省は政策を進めさせていただいておりますけれども、予防原則を実際に進めていくときに、やはり日本のあるいは世界のそれぞれのところにいらっしゃる方による問題発見、それから問題の提起、それを科学的知見で確認をして、ある段階でその予防原則に基づいて政策をとるという一連の流れというのが非常に大事だと思いまして、そういう意味で、パートナーシップも大事ですし、科学的知見の確立も非常に大事だと思っております。

佐藤(謙)委員 パートナーシップの部分は、大変示唆に富んだお話をいただいてありがたく思います。

 ただ、科学的な知見が追いつかないからその部分を予防原則で補うことによって人間や生態系の安全や健康というようなものを守っていこう、そういう趣旨から考えると、所沢なんかのああいうダイオキシンの問題もそうでしたけれども、社会的な蓋然性、子宮内膜症がここで率として大変高い、あるいは新生児の死亡率がこの地域だけ特に高いというようなそういう社会的蓋然性が、ある意味で科学的な知見を補うような形でこの予防原則というものが前に進んでいかなければいけないのではないかなというふうに私は思います。

 時間がありませんので、ちょっといろいろと申し上げたいことがまだまだあったのですが、最後に、気候変動枠組み条約の、例の米国の京都議定書不支持等をめぐる最近の一連の動きの中で、後ほど同僚議員の長浜議員がこの件については御質問をしていただくことになっておりますけれども、一つだけ確認をさせていただきたいのは、四月の十九日から二十二日でしたか、ニューヨーク、ワシントンに大臣は行かれた。そのときに、ワシントンでアメリカの政府高官と会談をし、三項目の評価を私どもいただいているんですが、この三項目の評価が非常に私どもは甘いんじゃないかなと。

 特に、ここで大臣は、米国の京都議定書不支持表明に対する我が国の立場について、改めて米国政府の理解を得たというのが一点、もう一つは、米国は真剣かつ緊急に気候変動政策見直しを行っているように見受けられた。楽観はできないけれども、見直しにおいて友好国の意見にも耳を傾ける姿勢が看取された、こう書いてございますし、それだからこそ、引き続き米国への働きかけに全力を尽くすということでありますけれども、こうした評価が日本をミスリードしてしまうんじゃないか、そうした声が市民の間から出てきているわけですけれども、この辺について、大臣のお考えをお示しいただきたい。

    〔小林(守)委員長代理退席、委員長着席〕

川口国務大臣 アメリカにおきましては、政府の高官を初めとしまして、アメリカのNGOの方々や、それからシンクタンクの方ともお会いをいたしていろいろ話を聞きました。

 それで、この三項目の点ですけれども、私は、国会の決議を含めまして日本の立場は、アメリカの京都議定書不支持については非常に強い懸念を持っているということをお伝えいたしました。それから、京都でございますので、日本の国民が京都議定書に非常に愛着を持っているということもお伝えをいたしました。

 すべてにつきまして、私がお会いをした方々、政府の方々は非常に真剣に聞いていただいて、日本のその懸念というようなことについては理解をするというお言葉もありましたし、それから、これは大統領に伝えるという話もございました。そういう意味で、アメリカ政府の我が国の懸念についての理解は得たということでございます。

 それから、真剣かつ緊急に政策見直しを行っているということは、これは閣僚レベルで見直しをやっているわけでございまして、同じく閣僚レベルで見直しをやっていたのがエネルギーの政策であるわけですけれども、これについてはつい昨日発表されたばかりでございます。

 それで、アメリカの今までの政府のやり方として、閣僚レベルでこれだけ真剣に議論をしたということは初めてのことであるということでしたし、私がお会いしたシンクタンク系の方々も、実は、ホワイトハウスから資料を出せと求められているとか、あるいは、この人が呼ばれて話をしに行ったということも間接的に聞こえてきまして、そういう意味で、アメリカ政府の中における検討が非常に真剣なものであるということについては感じ取ることができたわけで、それをそういうふうに申し上げたわけです。

 日本といたしましては、アメリカの参加というのが非常に大事でございますので、環境十全性という立場からいいますと、アメリカは二五%の排出国でございますから、そこが参加をしないで物事が決まる、その暁に、二五%の排出量というのは永遠に多分、そこが参加をするということが恐らくなくて進んでしまうということを危惧いたしますし、それから、アメリカが参加をしない場合には、中国やインド等の途上国で大きな排出をしている国々がこれに将来的に加わるということも恐らく難しいだろうというふうに思いますので、そういう意味でアメリカの参加が非常に重要であるというふうに考えています。

 それは、ニューヨークにおける会議の場でもほかの国の方もそういうふうにおっしゃっていらっしゃいましたし、その観点から、アメリカに対しては引き続き働きかけをすることが大事だというふうに考えております。日本だけではなくてほかの国々とも連携をしてこの働きかけは続けていきたいと思っております。

佐藤(謙)委員 ブッシュ政権の周りに、気候変動枠組み条約のこの京都議定書の問題について積極的な人間が実は一人も配置されていないというようなことを私は聞いたのですが、いずれにしても、今の大臣のお話を伺うと、かなりそれなりの感触を得た、そういうことでしょう。

 二十二日から二十四日までワシントンを訪問されて、リンゼー、アーミテージ、ホイットマン、そういう人たちと会われたということですが、ちょうどその二十二日から二十四日、そういう方々と会う一日、二日前に、プレスリリースで、天然資源防衛委員会、NRDCがこういう情報を入手したというものをプレスリリースしているんですね。

 各国の米国大使館と公使向けの国務省の電信によると、ブッシュ政権は京都議定書を、いかなる環境のもとでも拒否すること、そしてブッシュ政権は、この決定に際して議定書の分析も行わなかった上、具体的な代替案も持っていないことが明らかにされた。この電信は、地球温暖化と京都議定書についての米国の政策に関する問い合わせへの回答を示すため、国務省が四月一日にアメリカ大使館などに送っていたものである、こういうようなことです。

 そこで、ブッシュ政権の政策には、イデオロギーと詭弁以外の裏付けがないことがかくもくっきりと書かれているのはショッキングなことだということで、NRDCの上級科学者ダン・ラショフ氏は語って、議定書を拒否することでブッシュ政権は米国をならず者国家にしてしまった、ここはちょっと過激な言い方に過ぎるとは思いますが、こうした電信が各国にいるアメリカ大使館に送られているようなそういう現実があって、なおそれでもわずかな期待をお持ちだということなんだと思いますが。

 最後に、そうはいっても、アメリカの代替案、これは五月の終わりぐらい、プロセス内というようなことを言われていますから、というふうに私ども感じていたわけですけれども、このドラフトがいつでき上がるとお聞きになっておられるか。当然、相談をされるということを確約して戻ってこられたわけですから、その辺についてはお聞きになっていることだと思いますが、いつごろ出てくるかということについてお示しいただきたいと思います。

川口国務大臣 私は、アメリカ政府の高官に対しまして、このアメリカ政府の検討が早期に終わって、七月のボンの会議の十分前に友好国と相談をできるタイミングで出てくることが非常に大事であるというふうにお話をいたしました。それから、ニューヨークにおける会議でも、日本のみならずほかの国々もそういうことをアメリカにリクエストいたしております。

 ということでございまして、アメリカ政府も、できるだけ早く検討が終わるように閣僚レベルの議論を急いでいるというふうに言っております。具体的に、何月何日に出すということについての回答は私は得ておりません。

 ただ、アメリカ政府を説得する働きかけというのは非常に困難であるという自覚は持っておりますけれども、環境十全性という立場から、ありとあらゆる機会をとらえて、他の国々と連携をして働きかけをやっていかなければいけないというふうに考えております。

佐藤(謙)委員 来月に入りますと、附属書1国の閣僚会議や、あるいは途上国の会合、それから六月の末には非公式な会合がまたあって、それが七月十六日から二十七日ですかのCOP6再開会合につながっていくわけですが、大臣のお考えとして、COP6の再開会合にあるスタンスを各国がつくっていくのに十分間に合うような、そういうタイムリミットというのはいつごろだというふうにお考えですか。

 まず、アメリカは示してくれなかったということでありますけれども、友好国にそうしたことを示すというのは、これは約束事であるわけですが、いつごろまでに、例えばボン会合の一週間前というわけには到底いかないわけでありますから、いつごろにそうしたものの相談があるというふうに現時点でお考えですか。

川口国務大臣 これはもう早ければ早いほどいいというふうに思っていますし、明確であれば明確であるほどいいと思っております。

 ただ、この日よりも一日後に出てきたら検討が全くできないかというと、そういうことでもないと思っております。

佐藤(謙)委員 もう時間が参りましたので、このCOP6再開会合等についての質問は、次の長浜同僚議員にお任せしたいと思います。どうもありがとうございました。

五島委員長 長浜博行君。

長浜委員 長浜でございます。

 西野さん、お忙しいところ、恐縮です。ぜひ、永住外国人だけでなく、環境問題も一生懸命西野さんにも頑張っていただきたいというふうに心から思うわけであります。

 先日の環境大臣のごあいさつをいただいたやつを久しぶりに熟読しました。今、佐藤さんがいろいろお話しになった、そのまま延長線上で京都議定書のことをやろうかなというふうにも思ったのですけれども、まずは全体的な問題等を含めて、また、私自身、大分前になりますが、初当選のころに、環境庁を環境省にしていくべきだ、私はそういう考え方を持っていて、そうでなければ環境庁長官は総理大臣が兼務をすべきだと言って、当時の環境庁の長官は岩垂さんだったと思いますが、大分怒られた記憶もありますけれども、そのぐらいいろいろな分野において環境行政というのが大変重要な地位をクロスオーバーで占めてくるという認識では多分一致ができるところではないかなというふうに思います。

 そんなことで、最初はその辺を伺いますが、最初に余談というのもなんですけれども、今、大変敬愛する佐藤謙一郎さんの奥の深い、特に水俣病関係のお話を伺っておりまして、ぜひ大臣におかれましては、血の通った行政と、ある意味で、二度とこういう悲劇を起こさないためにも、過去の前例とかトータルのシステムのバランスにおいて、ハンセン病の方の問題もそうでありますけれども、これをやると後が困るとかいう観点ではなくて、思い切って人道的に踏み出した行政のあり方というのも新しい時代を迎える中においては考えなければいけないのではないかなというふうに思います。

 ちょうど二年ぐらい前、私も水俣に行って、市長さんと一杯やったときに、私は東京生まれの東京育ちですから、すしは江戸前がいいななんという話をしていたら、長浜君、江戸前のすし大丈夫と。一番安心な魚はどこだか知っている、水俣の魚だと。水銀の問題を含めて、ある時期は一品検査のように一匹一匹検査をして、そして問題部分をコンクリートで固めて、現在は全く問題がなくなる状態にまでなったと、笑いながらおっしゃっていましたけれども、その間の現地、現場の苦しみは、もちろん住んでおられる方、行政担当者の方々を含めてあったというふうにも思いますし、町づくりを積極的にされておりますので、ぜひこういう公害問題、今は公害を克服して環境保全の方に重点が置かれている環境政策でありますけれども、過去の問題に関しても、現在の大臣におかれましても温かい視点で行政に当たっていただきたいと、まずは御要望を申し上げたいというふうに思っております。

 そして、環境省になる過程、平成九年ぐらいの議論ですが、個人的には、大変恐縮ですが、不幸なことにこのときには私は現場におりませんでしたので、この議論は、きょうの質問に当たりましても、いろいろ当時の行政改革会議、行革会議の動向、大臣もそのときはもちろん大臣ではなかったわけでありますが、そういった議論の過程を随分拝見させていただきました。

 その中で、後ほどの質問にも関係してまいりますが、特に廃棄物行政に関して言えば、当時の厚生省の問題等々さまざまな分野で、共管であったものが今回は特に環境省にこの問題が一元管理をされて、大分行政上は運用上のメリットが生じるのではないかという指摘がありますけれども、逆に言えば、大変な責任と重い行政判断における負担がかかってくるのではないかなというふうにも思うわけであります。

 この議論の過程において一番注目をしたのは、もう一点は、環境安全省ですか、そういう名称が出て、これまた後の質問にも関係をしてまいりますが、ある意味で、原子力はどうだとか、あるいは公共事業というか、今で言う国土交通省に大分絡む部門でありますけれども、そこに住む日本の国民の安全等々を考えたときに、むしろ環境省こそさまざまな権限をあわせ持つ巨大な官庁とすべきではないかという議論も、議論の過程において随分散見をされました。当然のことながら、最後は現在ある環境省という形になっていったわけでありますが。

 今回、御留任とはいえ、二代目の大臣に再任をされて、今あらあら申し上げてまいりましたが、環境庁から環境省になって、そして今回、またさらに新たに再度大臣に就任をされたということで、今私が申し上げた点について何か感想があればお願いをします。

川口国務大臣 委員おっしゃられましたように、環境庁が環境省になりまして、廃棄物行政等のように新しい責任がふえたわけでございまして、きちんと行政をやっていくことの責任を非常に重く感じております。

 私は、環境庁の長官に昨年の七月にしていただきましたときに、生活者の視点で考えたいということを申し上げまして、それをずっと十カ月、どういうことでやれるかしらということで考えてきまして、一月に環境省になったときから、タウンミーティングということを始めました。

 これのもとにありますのがパートナーシップが大事であるという考え方でございまして、環境行政、環境というのを守っていくためには、国あるいは環境省だけではなくて、ほかの府省、地方公共団体、それから企業の方、個人個人の消費者の方、生活者の方、すべてが取り組まなければいけない問題であるということですので、その方々との対話というのも大事だと思っていまして、NGOの方々との話し合いあるいは産業界の方との話し合い、それからタウンミーティング、それからMOEメールといいまして環境省のホームページでいろいろな方にメールをいただくということも含め、対話ということを非常に重視してやってきております。

 これは大変重要なことだと思いますので引き続き続けたいと思っておりますし、小泉内閣でタウンミーティングをやるということが打ち出されまして、そういう意味で、環境省の取り組みがよかったのだということを裏書きしていただいたのかなというふうにも思っております。

 引き続き、これから起こるであろういろいろな問題につきまして、今までと同じように対話を重視しつつ、それから、森前総理には、嫌なことは嫌だとはっきり言いなさいというふうにも御指導をいただいておりますので、その姿勢も保ちつつ仕事をしてまいりたいと思っております。

長浜委員 小泉政権になって大分様相が変わっているのか、あるいは、大臣を初めとして留任をされている方がいらっしゃるわけですから、一体何が変わったのか、小泉さん流に言うと、まだ時間がたっていないのでそんな焦るなよということになるのかもしれませんが。

 大臣は就任のときに、これまでの規制調整官庁から行動する官庁への脱皮を強調されていました。ある意味において環境庁時代は、これも誤解があったら恐縮でございますが、やはり産業界、あるいは当時の通産省等々に抵抗をされたら環境行政が後退をするという面がなきにしもあらず、こういうふうに指摘をされたところもあったわけであります。

 どこかの大臣のように、もといた官庁がどこだこうだと言いながら質問に答えないというような不粋なことは、一切そういうことはないわけでありますけれども、ぜひ今後の環境省の行政の中においても、産業の発展と協調を図る面がある一方、私は、現実の段階においては、何かを犠牲にしながら一つをとっていくという方法の選択も大変重要になってくる。

 後ほど御質問をいたしますCO2の削減の問題などに関しては、もろに今回のアメリカの態度というのは、突然変異でも何でもなくて、アメリカの外交方針といいますか、国益優先のアメリカの政治姿勢の中において、ある意味においては、九七年どころか九二年、九三年、もちろん、政権交代が如実にあらわれて、今回ブッシュになったから変わったんだという言い方もありますけれども、アメリカの共和党政策の中に延々と流れている一つのストリームの中に答えが見えていた部分もあるのではないかというふうに思っております。

 今申し上げた部分、特に調整官庁、しかしそのメーンの部分においては、先ほど佐藤さんも指摘をされたように、公共事業のあらゆる事業を行う部分においての環境影響調査等々の問題を含めて、環境省の持つ責任と意味が大きくならなければいけないというふうに私は思っておりますが、大臣でも結構ですし政務官でも結構ですが、何かお考えがあればどうぞお願いします。

川口国務大臣 委員がおっしゃられたことは全くそういうことでございまして、私ども環境省は、その方向で仕事をするべく一生懸命に取り組んでいるところでございます。

 それから、もう一つつけ加えさせていただきたいのは、環境省の役割というのはさまざまありまして、一つは、おっしゃったような意味で、日本の経済社会をリードしていくという役割があるわけです。

 これは小泉総理もしばしばおっしゃっていらっしゃいますけれども、みんなで、関係者全員で考えて議論をして何がいいかということにたどり着いていくというプロセスもまた非常に重要なことでございまして、環境省は、環境保全の立場からできるだけリーダーシップを発揮しようという考えでおりますけれども、その問題について日本の国民の皆様がどういうふうにお考えになるかということがやはり最終的には非常に重要であるというふうに思っておりまして、その意味で、環境省の仕事の一つ、タウンミーティングなどをいたしておりますのも、そういった機会を通じて環境省の考え方を皆様に理解していただいて、日本全体がそういう方向になるように議論を深めていくということも大事なことだと思っております。

 以上です。

西野大臣政務官 環境省の政務官を仰せつかりまして改めてつくづく思うのですが、世の中が非常に便利になる、また利便性を問う社会でもあります。片や、都市整備を初めとする都市基盤整備あるいは公共事業というものも、これからの高度な社会生活を行う上で非常に大事なことでもあります。

 そうしますと、それだけに視点を置いてまいりますから、私が就任のときに一言だけ触れました、前世紀の負の遺産を間違いなく引き継いでおるということを申し上げたわけでございまして、これからは、人間が、人類が、あるいは生物が、自然が、ともに共生する社会ということにしっかり視点を置いていくということになりますと、今先生の御質問のございました考え方ということでありますけれども、当然ながら何か一つをとめなければならない。二者を追いかけて、必ず環境もそれから町づくりもともに進むんだということはなかなか結果としてはあり得ないというふうに思います。

 しかし、これからの世紀は、申し上げたとおり、やはり環境というものにウエートを置いて、その上に立って可能な限りの整備あるいは利便性を追求していく、そういうものでなかったらいかぬ、まず環境にウエートを置いていくべきだ、このような考え方で臨んでいきたいと思います。

長浜委員 ですから、今お二人がおっしゃられたように、あるいはタウンミーティングに出られても、小泉さんもタウンミーティングをやられるようでありますが、基本的な方向性としては、多分、これだけの不景気、そして景気を何とかしてほしい、これも共通をしておりますけれども、それじゃ、環境を犠牲にしても、あるいは文化的で最低限度の生活かどうかわかりませんが、そういったものも犠牲にしながらもとにかく経済主義かと言われれば、ちょっと質問が極端ですが、そういうことを望む人はいないという状況においては、方向性というのは出てくるというふうには私は思うんですね。

 それで、環境省になって、また来年度予算等と、こういう問題が続く中において行政を行うには当然お金はかかります。

 それから、先ほど来質問はずっと聞いておりましたのでなるべくダブらないようにやりたいんですが、しかし、明確なお答えをいただけていないと同じような質問にならざるを得ないのですけれども、ちょうど税制の問題を考えるとき、さっき道路特定財源の見直しが出されました、直接聞いておりませんので記事だけがいろいろ躍っているかもしれませんが。

 私は、財務大臣が指摘をされた部分においては、今私が申し上げてまいりました、道路整備をひたすらやって、社会的資本整備としての日本国の道路を全国完璧にしていこうというよりは、もうこの状況においては環境的配慮、環境問題にお金を使った方がいいのではないかなというふうに、財務大臣みずからがその方向性を示されるというようなことをしているわけでありますので、環境大臣はもちろんでありますけれども、政務官、あるいは風間さんは御出張でいらっしゃらないようですが、よく存じておりますが、こういった政治家の方々がこの道路特定財源の見直しに関しても、現在おられるそのポジション、つまり環境省の行政の中でお仕事をしているという一面も政治家として同時に持つわけでありますので、積極的な発言等、ある意味では環境予算を、環境に使える予算を確保していくべきだというふうには思うんですが、いかが思われますか。

川口国務大臣 先ほど申しましたように、道路特定財源につきましては、既にそのうちの一定割合が環境の保全に使われているわけでございまして、環境省といたしましては、これがもっと拡大をしていくということを強く希望いたしているわけでございます。

 それで、この見直しという作業自体については、小泉総理や財務大臣が御発言をなさっていらっしゃるわけですけれども、まず、これについては、財務省や国土交通省が、これを担当する、これにかかわっている省庁であるという立場から、現在総合的に見直しを、見直しかどうかわかりませんが、少なくとも検討をしていらっしゃるということでございまして、環境省としては、この財源を使う対象である環境関連のプロジェクトができるだけ広がるようにということで知恵は出していきたいというふうに考えております。

長浜委員 大変上品な表現をいつも伺うわけでありますが、強く念じているだけでは物事はなかなか達成できませんので、京都議定書の問題も同じでありますが、具体的なアクションプログラムを立てていって、その理想とする目的に到達しようとして五掛け状態になることが大体実態でありますから、具体的な行動としての落とし込みを図っていかないと決して物事は進んでいかないのではないかなということを強く危惧をしますので、ぜひ環境大臣のなお一層の奮闘をお願いしたいというふうに思います。

 果たして小泉内閣というのは環境に優しい内閣なのか、環境に優しくないのかという、私は、きのうきょう話題になっているところの、首相を機動的に補佐する特命チームなるものが内閣の性格に合わせて構成をされて、それを内閣参事官と称するというようなことがまたできるやに聞いております。あるいはできたのかもしれませんが。

 御承知のように、首相秘書官としては、外務、あるいは今でいう財務、経済産業、警察の四省庁から首相の秘書官が出ております。多分それは同じだと思いますが、さらに、この四省庁だけではだめだということで、首相を機動的に補佐するという特命チームが、総務と、文部科学ですか、厚生労働、国土交通、防衛から入ってくるようでありますが、環境の文字がございませんでした。

 こういった点を見ても、私は、先ほど来のこの質疑の中においても、環境の重要性が、あらゆる官庁にクロスオーバーをして大変大事だ、こういう認識を持っておられるのであるとすれば、なぜ環境省から特命チームに入らないのか。あるいは、入っていないとしたら、それに対して大臣はどういう考えをお持ちか、お聞かせをください。

川口国務大臣 内閣の組織というのは、今さまざまに変わりつつあり、また、そのときの総理あるいは内閣の官房長官の御意向でいろいろ柔軟に変わるものであるというふうに認識をいたしております。

 小泉総理が環境に非常に御熱心であるということについては所信表明を見ていただいてもおわかりであるというふうに思いますけれども、実際に選ばれたその五人の方の仕事との関係で、環境省が今まで官邸との意思疎通に困るような状況があったかといえば、決してそういうことは全くございませんで、従来もさまざまな状況で官邸と意思の疎通は図ってまいりましたし、今後もそれはやっていくつもりでございますので、そこの中に環境省出身者が入らなかったといって総理の環境への姿勢が問題である、あるいは、ほかのテーマと比較をしてより小さいということにもならないと思っておりますし、私どもが困った立場になるというふうにも思っておりません。

長浜委員 その視点はいかがなものかというふうに私は思うんです。

 今までに意思の疎通で不便がなかった、つまり、消極的な意味において、意思の疎通は図れているからオーケーだということと、何のために十五分もかけて今この問題を議論したかといえば、あらゆる行政の中における環境の役割、そして先ほど議論をした、環境省をつくるに当たって、どちらかといえば巨大環境安全省となるものを核としながら、現状においては環境行政をある意味で規定をして、しかし、そういった部分において欠けていたものも含めて総理が念頭に置くんだとしたら、当然、ポジティブな意味において、環境を主題としながら一つの政策を組み立てていく、私は少なくともそう感じているわけでありますが、今まで意思の疎通で問題がなかったからこんなものは必要としないという見解は、私は納得いかないのですが、いかがでしょうか。

川口国務大臣 私は、総理にお話を申し上げようと思いましたら、いつでもすることができます。それから、環境省の事務当局も、お時間をいただいていつでもお話をすることができるわけですし、これは官房長官に対しても全く同じでございますし、今名前が変わりましたのでちょっと今の名前が出てきませんが、昔の内政室とか外政室とか、官房副長官補ですか、という方々とのコミュニケーションにも全く苦労をいたしておりませんし、今後、積極的にお話を申し上げる必要が生じたときには、幾らでもできるというふうに思っております。

 もともと内閣と各省の関係というのは、現在強い内閣へと変わりつつあるということで、その過渡期にあると思っておりますけれども、委員のおっしゃられた、ネガティブな意味ということだけではなくてポジティブな意味ということでございましても、環境省が特に内閣のお力をいただいてあることをやる必要があるときには、今後とも全く苦労をしないと思っております。

 例えば、「環(わ)の国」日本づくりということにつきましては、環境省がそういう案を考えまして、内閣に御相談をして、前総理の主宰のもとでやっていただくということになったわけですし、小泉総理もそれは続けていただくということになっているわけで、一例を挙げればそういうことですけれども、いかなることであれ、それをやることについては、今後必要が生じたときにはできる体制にあると考えております。

長浜委員 アーミテージの名前が大変このごろ躍っておりますが、例えば、今同じ時間で、環境がメーンですから今裏番組で外務委員会もやっていると思いますが、仮に連絡等、あるいは京都議定書の問題等々を含めて重要な国際問題であるというふうに総理が認識をしているのなら、あるいは環境サイドから、ぜひアーミテージには何を押しても京都議定書の問題を頼んでくださいね、外務大臣からもと。わざわざ環境大臣はアメリカまで行かれて会われているわけでありますから、それが来ている状況の中で、京都議定書の問題も、重要な外交案件にもかかわる問題だという認識も私はしております。

 それから、七月からはわざわざ地球環境問題担当の審議官が、次官級クラスということで、これはこの委員会で組織変更等々の問題も以前やりましたけれども、そういう状況において、外交における環境の重要さ等々を考えたときに、私はうまくいっているようには思わないんですが、もう一度お願いします。

川口国務大臣 アーミテージ国務省副長官の仕事というのは、二国間の関係にかかわることをやっている人でございまして、ですから、彼の仕事のうちの重要な部分というのは、まさに日本とアメリカの政治問題なり安全保障問題であり、外交問題、狭い意味での外交問題、あるいは経済問題も含みますけれども、そういったことを二国間の立場で見る人であるわけです。

 私がこの間ワシントンに行って話をいたしましたときに、今だれがアメリカ政府の中で、閣僚レベルで環境問題に一番発言権があるかということで考えますと、これはアーミテージではございません。これは、ホワイトハウスの補佐官であったり、あるいは環境保護庁の長官であったりということでございますが、アーミテージ副長官のやっている仕事というのは、そういうことであるわけです。

 しかしながら、アーミテージが環境問題について全く発言権を持っていないかといいますと、日米の関係をいかによくしていくかという観点からアーミテージの発言権というのはあるわけです。その観点からは非常に重要であるというふうに思います。

 アーミテージにお会いになった日本政府の高官の方からは、アーミテージ副長官に対しては環境問題ももちろん話をしていただきましたし、それから私自身、アーミテージ副長官とお電話で話をしようと思えばいつでもできる関係にはございますので、この点について、日本政府の意向が国務省に伝わることがない、あるいは伝わり方が少ないということは全くないというふうに認識をいたしております。

長浜委員 ごあいさつの四ページの八行目ぐらいに書いてありますが、「あらゆる機会を活用して米国への働きかけを行ってまいります。」というふうに、後ほど御質問申し上げますが、あらゆる機会をつくってやらないと、二国間の担当者で多国間の交渉とは関係ないという認識をまず述べられてから、いや、そうでもないというふうにお答えになりましたが、そういう認識では、決して今の状況においてもアメリカが動くというふうには私は思っておりませんけれども、そのような認識で交渉に当たられているのならばなおできそうにないという予感を、残念ながら私は強くしたわけであります。

 もうちょっと待ってください。今回の問題に関しても、それでは、今お手を挙げていただきましたので、総理からももちろんそういうお話は出たのでしょうか。

川口国務大臣 先ほどの私の申し上げ方が、恐らく十分に伝わるような申し上げ方でなかったのかなと御発言を聞いて思いましたけれども、私が申し上げたのは、アメリカで環境問題、この京都議定書問題を中心にやっている人はアーミテージではないということを申し上げたわけでございます。

 アーミテージが関係するのは、二国間の立場から間接に関係があるということでして、例えば国務省の中でいいますと、新しく任命をされ、議会で承認をされましたドブリアンスキーという人がいますけれども、この人がグローバルな問題は扱っているということで、アーミテージの環境問題へのかかわり合いというのは、二国間の関係をよくするという観点から、二国間の間で起こっている問題には関係がすべてある。

 そのメーンは、主として、これはまさに国務省が専ら所管をしている防衛、ペンタゴンも関係ありますけれども、安全保障問題とか、狭い意味の政治的な問題がメーンである、それがアーミテージが日本に来たときの話の中心であるというふうに理解をしているということでございます。

長浜委員 これ以上の論戦は避けますけれども、二国間において大変重要な意味を持つ政治課題は京都議定書へのアメリカの対応だということもお忘れなきように、よろしくお願いをしたいわけであります。

 京都議定書の問題で、五月一日付の朝日新聞で、先ほど、だれがブッシュ政権あるいはブッシュ大統領に環境的な影響力を持つ人物かというようなお話が出ましたけれども、アメリカン・エンタープライズの所長であるクリストファー・ドゥムース氏のインタビュー記事が載っておりました。

 私の認識では、アメリカン・エンタープライズというのは伝統的に共和党にかなりの影響力を持っているシンクタンクだと思っておりますし、また、この記述が正しいかどうかは別にして、ブッシュ氏の環境政策チームのトップを務めたというようなことが書かれておりますが、この人物については御存じでしょうか。

川口国務大臣 直接にはお会いをしておりませんが、おっしゃっていらっしゃることについては承知をしております。

長浜委員 京都議定書はとうに死んだようなものだ、昨年十一月のハーグ会合で既に交渉は崩壊をしている、このことを改めて大統領が明言したにすぎないということが出ているわけであります。途上国の削減義務を免除するのではデメリットの方が大きいと。今さら何を言っているかと。九七年の議定書の経緯に至るまでにおいても、この途上国の削減義務の問題というのはあのときにも話題になって、かつ合意をされたというふうにも思います。

 さらに、余計なことで、途上国にとっても当面は貧困撲滅や健康維持の方が重要だから、そんなCO2の問題にかかわり合うべきではないというようなことで、各国がより豊かになり、力をつけてから対処すればいいと。全く時計の針が逆さどころか、どこへ行っちゃっているのというような状況の中での議論をこの中で展開しているわけであります。

 考えてみれば、この京都議定書の問題は、名前が京都議定書と、京都とくっついてしまっているがゆえに、逆な意味で親しみを覚え、かつその実体がよくわかってこないわけでありますが、九二年の気候変動枠組み条約、そして九四年にそれが発効して、百八十数カ国の地域や国が参加をされて、大臣はよく御承知のように、この問題というのは時間をかけて国際的に煮詰めてきたはずであります。その九七年の位置づけの中で、京都で開かれたから京都議定書ということになっておりますし、大臣のごあいさつの中でも、字数は全部数えておりませんが、所信の半分から三分の一はこの問題に費やされてあるわけであります。

 佐藤さんのお話にもありましたように、このごあいさつの文章の中でも、「多くの解決すべき課題」というふうに書いておられますが、この「多くの解決すべき課題」というのを、具体的に、二〇〇二年というタイムリミットといいますか期限を考えた場合に、どのようにお考えになって、かつ、どのように日本がリーダーシップをとられて解決されようとしているのか、この点についてまず伺います。

川口国務大臣 委員おっしゃられましたように、アメリカが今そういった態度をとっているということは、もう再三再四申し上げていますように、私どもとしては大変に残念なことで、できるだけ早くアメリカが、今、温暖化問題について検討していることを検討し終えて、我々と一緒に議論をしてくれる立場になるということを強く望んでいるということでございます。

 その「多くの検討すべき課題」というのはさまざまございまして、例えば、京都議定書の運用ルールというのを今まさに決めている最中ですので、その運用ルールということについていえば、ハーグで中断した以降、具体的には何も決まっていないということでございまして、そこでどういう項目が議論されていたかということが、引き続き解決をしなければいけない問題として残っているわけです。

 吸収源の問題もそうですし、排出量取引のルールもそうですし、それから、共同実施あるいはクリーン開発メカニズムもそうですし、遵守の問題もそうですし、それから、途上国にどういう支援をするかということもそうですし、そういう細かいことについての運用ルールをこれから決めるということが多くの課題ということの一例でございます。

長浜委員 これから決める状態で、入り口段階でトラブっていて果たしてできるのかどうかわかりませんが、当初の京都議定書を考え、かつ、アメリカとの交渉の中において、当時は政権が違いましたけれども、温室効果ガスを規定するときに、単にCO2だけではなくて、御専門の方で結構ですが、メタンと亜酸化窒素に加えて、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、それからSF6、こういったものがアメリカの要求でたしか追加をされたはずであります。そして、これら六つの種類のガスを個別にアプローチ、つまりカウントをするのではなくて、CO2に換算をするバスケットアプローチへの変更もアメリカの要請であったというふうに記憶をしております。

 また、代替フロン等々のカウントに関しては、一九九五年が、アメリカにとっては、排出量がその当時に、九〇年なんかに比べると量が多かったということでもありましょうが、これもアメリカの要求によって、下の三つでありますけれども、カウントは九五年を基準年としたというのもアメリカの要求であったと思いますので、大変細かい作業の中において非常に、大臣が何回もおっしゃられるとおり、四分の一の排出量を誇るアメリカ合衆国に対して最大限の配慮をし続けながらこの交渉は進んできたように認識をしておったのですが、その点に関してはいかがでしょうか。

浜中政府参考人 一九九七年の十二月の京都会議に向けまして、いわゆるベルリン・マンデートに基づく交渉の過程で、ただいま御指摘のとおり、米国はすべての発生源及びすべての吸収源を対象にすべきだという主張を一貫してしておられたわけでございます。

 京都会議のしばらく前までの段階で、各国の議論がおおよそ一定程度収れんしたところでは、例えば二酸化炭素だけではなくて、メタンや亜酸化窒素、一酸化二窒素も含めて、三つのガス程度はその対象にしていくべきであろうというような大体の方向づけはできていたというふうに考えておりますけれども、ただいま御指摘のハイドロフルオロカーボン等のいわゆる代替フロン類三ガスにつきましては、最終的に京都会議の段階で、アメリカの御主張もございましたけれども、私ども十分に議論をさせていただく中で、その六つのガスを対象にすることが適当であろうという結論に至ったわけでございます。

 その背景には、IPCCなど、世界の専門家が集まりまして、さまざまな技術的、専門的な観点から検討をされておられましたけれども、そういう中で、それらのガスの排出源それから温室効果、そういったことを総合的に考えましたところ、やはり対象とするに最もふさわしいのはその六つのガスであろうというような科学的知見もあるというふうに判断をいたしまして、六つのガスが対象になったというふうに記憶をしているところでございます。

 この基準年につきましても、一九九〇年を基準とするということが原則でございますけれども、これについても、いわゆる代替フロン類につきましては、いわゆるオゾン層を破壊する物質の規制に関するモントリオール議定書の対象となっております物質の代替物質として使用がこれからふえてくる、こういうような現状にかんがみまして、一九九五年を基準とすることもできるというふうにしたところでございます。そのように記憶をしているところでございます。

長浜委員 七月にCOP6の再開会合がボンで予定をされておられるようでありますが、ちょうど七月に地球環境担当の次官級の審議官もできるわけでありますので、こういった過去の積み上げの経緯の過程を、細かい交渉過程を大切にしながら、アメリカとは誠意を持ってといいますか、基本的な方向性を決めて、あらゆる手段をとっていっていただきたいというふうに思うわけであります。

 それでは、今度は内政面に目を転じまして、ここまで主張している日本国の現状はどうなのかという問題に関しても触れざるを得ないわけであります。

 そこまで言うのなら、日本はあしたにでも締結をすればいいじゃないか。この間、衆議院でも参議院でも、アメリカの京都議定書に対する態度に関して、大変速やかなる態度で、会合に復帰をするようにという国会決議までわざわざやったわけでありますから、党派を問わず、この問題に関しては全く反対論が出るわけでないという客観情勢まであるわけでありますが、しかし、その状況においても、大臣は、締結に必要な国内制度の構築が必要だと、なかなか意味合いの深い、味わい深い言葉で表現をされておられますが、この問題をどうお考えになっておられるのか、お願いいたします。

川口国務大臣 御質問の意味がはっきりとれているかどうかわかりませんけれども、なぜ日本が締結を今の時点でしないのかという御質問でございましたら、締結をするために必要な国内措置がまだでき上がっていないということでございますし、じゃ、なぜそれができないかという御質問でございましたら、それは、現在構築すべく一生懸命にやっているということでございます。

長浜委員 大変恐縮ですが、現在一生懸命やっているということを御説明願いたいというのが質問の趣旨でございます。

川口国務大臣 そういう御趣旨の御質問でございましたら、お答えを申し上げたいと思いますことは二つございまして、一つは、環境省は、中央環境審議会の地球環境部会のもとで二つ小委員会をつくりまして検討をやっているところでございます。一つは、技術的にどういうことが可能かということでございますし、もう一つは、そういった可能性を踏まえて、制度的に何が可能かということでございます。

 それから、環境省のみならず、経済産業省においても、総合資源エネルギー調査会でございますか、ちょっと名前をはっきり認識していないかもしれませんが、間違っているかもしれませんが、その調査会でも同じような検討を現在進めているというふうに私は理解をしておりまして、そういった検討が現在行われていて、その検討の結果を踏まえる必要があるということでございます。それが一つでございます。

 もう一つは、最終的に、京都議定書を国内的に担保するような措置ができるかどうかということは、同時に京都議定書の細かい運用ルールにつきまして国際的な合意ができて、こういうルールで京都議定書は進めていくのだ、したがって、こういうルールで日本が六%削減をしたかどうかということを見るのだというようなことについての決定が前提として必要だということでございます。

長浜委員 何をもって国民的な危機感を地球温暖化に対して持つかというのは、審議会の答申を待ってということでは国民には見えてきません。ですから、私は政治家でないと言われてしまえばそれまでになってしまいますが、政治家として、国民にこの温暖化の問題を訴えかけていくためには、どの程度その危機感が国民の意識として共有できるかどうかというところのレベルに達しないと、この種のものは、何もしなくても目に見えるものではありませんので、やらなきゃやらないで済むではないかということになってしまうような危惧を覚えるわけであります。

 三・七%を森林吸収によるところで認めてほしいということを言うのであれば、現状では〇・五%ぐらいしか認められていない状況の中において、九〇年以降のあるいは植林がどういう状態になっているのか。もう一つは、後で御質問しようと思いましたが、サマータイムによって、現実にCO2の削減がどのぐらい数量的に減少が図られるのか。

 しかし、それよりも何よりも、一番多分ポーションの大きい部分は、環境担当大臣として、経済産業省を主体とするところの産業界に対する明確なメッセージを発信していかないと、この問題の本質が国民一人一人にはわかっていかないように私は思うわけであります。

 環境大臣として、エネルギー問題として、原子力発電についてどうお考えになっているのか。ちょうど、ブッシュ大統領は、改めて原子力発電の重要性といいますか、多分凍結をされていたと思うんですが、新規も含めて考え直すという発言をされているようでもありますし、化石燃料によるところの石油火力がCO2の問題で限界があるとすれば、あるいはアラスカなど、カナダ国境等々を含めての天然ガスの採掘に比重を移して、こういったものも若干京都議定書への負い目かどうかわかりませんが、CO2を出さないような形でのエネルギー危機に備えるというようなことをやっているわけでありますけれども、日本のエネルギー行政に関して、環境大臣として、どういう指針を持っておられるのか、原子力発電所はCO2を発しませんのでどんどんつくっていくべきだというふうにお考えになっているのか、お考えをお聞かせください。

川口国務大臣 さまざまな御質問を一つの御質問に含められたと思いますので、順番にお答えを申し上げたいと思います。

 まず、国民のレベルで危機感を十分に認識してもらうような働きかけがあるかどうかということについてでございますけれども、これは、委員の目には十分でないと映っているかもしれませんけれども、環境省といたしましては、最大限のことをやっているつもりでございます。人員と予算の制約の範囲内で最大限やっているというつもりでおります。

 IPCCの報告書あるいはこれについてのシンポジウム等、それから、日本のほかにある温暖化の対応をするためのセンター、そこにおけるNGOの皆様方の御活躍、いろいろな場を通じまして、私どもとしては、地球環境問題、なかんずく気候温暖化問題の重要性については働きかけをいたしているつもりでございますし、当然これは環境省だけでやっている話ではございませんで、政府一体として、それからほかのNGOの方々や地方公共団体や、皆さんが今これをやっているというふうに私としては思っております。

 もちろんそれが、政治家としてとは申しませんけれども、環境省の大臣として引き続きそれを進めていくことが私の役割であるということも十分に認識をしておりますし、そのためには、マスコミ等でお誘いがあるたびに、雑誌ですとかテレビですとか、これは一切拒否をしないで出るということに私はいたしております。

 それから、産業界と十分に話をしているのかということでございましたけれども、これも、私が長官になってから、あるいは大臣になって以降、極力機会を持ってこの方々とお話をするということにいたしております。

 それから、原子力についてのことでございますけれども、我が国の温暖化対策において原子力はきちんと位置づけをされておりまして、それは、平成十一年の四月に閣議決定をされた「地球温暖化対策に関する基本方針」ということで、文章を引用させていただきますと、「原子力の開発利用については、原子力基本法等に基づき、放射性廃棄物の処理処分対策等を充実させつつ、安全性の確保を前提として、国民的議論を行い、国民の理解を得つつ進める。」というふうにされているところでございまして、この基本方針にのっとって温暖化対策は進めたいというふうに思っております。

 それから、エネルギーについて私がどう考えるかということでございますけれども、私はエネルギーを担当している大臣ではございませんので、個人的な意見として申し上げさせていただければ、エネルギーというのは、最近のアメリカの状況を見ましても、国民の生活、経済、社会に対しては非常に重要なものであるというふうに思っております。エネルギーの政策ということから考えました場合に日本にとって非常に重要なのは、国産のエネルギー源が他の国々と比べて非常に小さいということでして、海外依存度が大変に高い。ここからくるエネルギーの安全保障をどう考えるかというのが一つの大きな問題であろうかというふうに私は思っております。

 これに対応するための政策というのはいろいろあるだろうと思いますが、エネルギー源の多角化ということも重要なことでございますし、省エネルギーというのも非常に重要なことだと思います。この省エネルギーというのは、同時に地球温暖化という観点からも非常に重要なことだというふうに思っております。

 それから、エネルギーという観点からいきますと、技術開発というのも大変に重要な要因であると思いまして、こういった政策は経済産業省において適切に行われているものと私は理解をいたしております。

長浜委員 より踏み込んだ具体的なお話をいつも伺いたいというふうに思っているわけでありますが、この原発の問題も、現在住民投票が行われている地域もございます。

 確かに、エネルギー問題は御担当ではないと言われてしまえばそれまででありますが、一番最初の、十一時五分ぐらいの議論でありますけれども、申し上げましたように、環境省がこういう形になる前には、エネルギー問題等々を含めて、もちろん安全でなければいけないということで今回は入りませんでしたけれども、環境行政の中でも大変重要な位置を占めてくるという議論もあったわけであります。

 原子力発電所をどう考えるのかという問題に関しても、あるいはきょうは時間の関係でできなくなりましたけれども、風力発電、バイオマス発電あるいはソーラー、個人的に家に今補助をしながらやっている、この補助も間もなく切れるのではないかなと、たしか時限立法であったような記憶もありますが、こういった自然エネルギーに対して環境省としてどういうポジションを持っておられるのかというのは、私は、環境省になったからには、むしろ積極的に産業界をリードしていく。

 省エネではなくて、エネルギーの循環型社会をつくるためには、環境省推薦の産業ではありませんけれども、経済産業省ではなくて環境省こそが経済界に指導的地位を発揮していくべきだというふうに最初に申し上げたとおりでありますので、ぜひ一歩踏み込んで、そこまではちょっと大臣、言い過ぎじゃないですかと私が言うぐらいの答弁を、またNOxのところで多分私はやらせていただけるとは思いますけれども、そういったときには議論させていただきたいと思います。

 サマータイムのことについてちょっとお願いいたします。

川口国務大臣 サマータイムは、私はぜひ進めたいというふうに思っております。

 これは、地球温暖化の大綱でもサマータイムということが言われておりまして、温暖化ガスの六%削減を達成するためには、産業界の省エネの努力だけではなくて、国民の生活スタイルを変えていくということが非常に重要だというふうに思っております。これを促進するためといいますか、これと並行してと申し上げた方がいいと思いますけれども、サマータイムというのは一つの考えであるというふうに考えています。

 ただ、これにつきまして私が理解をしているところでは、今までいろいろな御議論がおありになって、賛成の方もいらっしゃれば反対の方もいらっしゃる。緯度が十分に高いところは意味があるけれども、そうでないところはそうでないというような御意見もある。いろいろ伺っておりますので、大事なこととしては、この点についての国民ベースでの議論を深めていくということが必要であると思っております。

 それから、議員の中でサマータイムを進めようという動きをなさっていらっしゃる方がいらっしゃいまして、私どもといたしましては、この動きに対しては全面的にかかわらせていただきたい、協力をさせていただきたいというふうに思っております。

長浜委員 何度も申し上げますが、ぜひ、待ちの姿勢ではなくて攻めの姿勢で環境問題に対しては積極的な対応をしていただきたいというふうに思うわけであります。

 大変時間がなくなって、廃棄物は河野さんがやられましたので、この問題も私は後ろで聞かせていただきましたので、私の質問から省かせていただきます。

 総理のお話でもありましたように、公用車を低公害車にかえていかれるということを言われた中において、一般公用車、伺いますと環境省は、既に大臣、あるいは西野さんも車があるんですかね、政務官等々が、もう既にかわっているよというお話もございましたが、積極的に他省庁へ働きかけていかれるのか、国会の中にも黒い大きな車が随分とまっておりますけれども、各議員に対してそういう方向性を出していかれるのか、伺いたいと思います。

中川政府参考人 五月七日の総理の所信表明演説におきまして、政府は原則としてすべての公用車を低公害車に切りかえる旨の表明がございました。

 それで、五月八日の閣議におきまして、総理より各大臣に対して、原則として、すべての一般公用車について、平成十四年度以降三年を目途にこれを低公害車に切りかえること、それから、平成十三年度においても、交換車両はすべて低公害車とする努力をすることという御指示をいただきました。

 この御指示を受けまして、八日に川口大臣と平沼大臣が、日本自動車工業会の会長に対しまして、必要な自動車の供給が円滑になされるよう協力を要請したわけでございます。

 そして、八日に環境省の担当部局の方から、私が担当部局でございますけれども、各府省等の会計責任者を集めまして総理の指示の内容を伝達いたしまして、低公害車の導入促進を徹底いたしました。

 現在、各府省におきまして低公害車の調達予定台数の見直しをやりまして、また、十四年度以降の調達の方針を作成しているところでございますが、環境省といたしましては、各府省における低公害車への切りかえが円滑に行われるように今後とも徹底してまいりたいと考えております。

 それから、グリーン購入法という法律が昨年成立いたしまして、このグリーン購入法の中でも、低公害車、そして、用途によっては低排出ガスの自動車を極力使うようにということになっております。

 今回の総理の御指示は、それを一歩さらに踏み込んで、一般公用車はすべて低公害車と、こういう御指示でございますが、国会等に対しましても、このグリーン購入法の趣旨に沿った購入をするようにお願いをいたしたところでございます。

長浜委員 グリーン購入法も、実効をもう少し上げていかないと、今の状況では甚だ不十分だというふうに私は思っておりますので、そういった観点からもぜひ、前向きにというのはやらないということになりますから、もうちょっと数値的目標をきっちりされてグリーン購入法を推進していただきたいというのが一つ。

 最後に、きのう質問を考えていましたら、テレビから臭素化ダイオキシンのニュースが突然流れて、途端に、そういうことに御関心の高い方が多いので、うちの焼却場は大丈夫だろうかというようなことが言われるような状況にもなります。

 きょうは時間がありませんので質問はしませんが、ああいった問題に関して、情報公開をきっちりするということと、説明責任をしっかり自覚しなければいけないので、無用な社会的混乱を、正しい報道だと思いますが、いきなり出ると状況が一般の国民にはよくわかりませんので、臭素化ダイオキシンと塩素化ダイオキシンの区別もわからない、ダイオキシンということだけで大変人に害がある、そういう意識だけは皆さんお持ちでございますので、報道関係に関しても機敏な対応をとられることをお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

五島委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時十四分開議

五島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。青山二三さん。

青山(二)委員 公明党の青山二三でございます。早速質問に入らせていただきたいと思っております。

 改革断行を掲げまして国民の熱い支援を受けました小泉新内閣が誕生いたしまして三週間となりました。この小泉政権のスタートに当たりまして、国際交渉の主役として対等に各国と渡り合い、冷静な駆け引きができる外交手腕を持つと定評のある川口大臣が再び環境大臣に就任されまして、その力を発揮されますことは大変うれしいことでございます。今後、国際舞台での難しい交渉が多くなるかと思いますけれども、大胆な行動力で御活躍されますことを心から期待をいたしております。

 さて、小泉総理大臣は所信の中で、「二十一世紀に生きる子孫へ恵み豊かな環境を確実に引き継ぎ、自然との共生が可能となる社会を実現したい」との力強い御決意を述べておられます。政府は原則としてすべての公用車を低公害車に切りかえる、廃棄物を大幅に低減するためごみゼロ作戦を提唱するなど、環境を重視した所信を述べておられます。これらは公明党がかねてから主張しておりました政策がそのまま盛り込まれておりまして、小泉総理が所信表明の中で明言されましたことを大変に意義深いことと感じております。

 さらに、規制措置に頼ることが多い環境保全問題は、これまで経済成長の阻害要因と見られておりましたが、小泉総理は逆に、自然と共生するための努力を新たな成長要因に転換すると述べられまして、環境と経済との両立を目指す姿勢をはっきり打ち出しておりまして、今後の環境政策への大いなる飛躍となるものと思われます。

 まず初めに、川口大臣に、この環境重視の姿勢を大きく押し出されました小泉総理の所信についての御所見を伺いたいと思っております。

川口国務大臣 小泉総理は、先ほど委員がおっしゃられましたように、所信表明で、さまざまな箇所で環境のことについて触れていらっしゃいます。

 委員がおっしゃられた、公用車を低公害車に切りかえる、ごみゼロ、それから二〇〇二年までの京都議定書の発効に向けての努力、自然との共生が可能となる社会ということで、さまざまにおっしゃっていらっしゃいますし、一番最初に私にお電話をくださったときも、循環型社会の形成、それから自然との共生が大事だということをおっしゃっていらっしゃいました。

 そういう意味で、私どもとしては、小泉総理が所信表明の中で環境を、今までにもましてページを割きましておっしゃっていただいたことについては大変にありがたいと思っておりますし、環境を所管とする環境省の大臣といたしまして、大変に重い責任を持っているというふうに痛感をいたしております。

青山(二)委員 それでは、具体的な対応についてお伺いしたいと思います。

 ただいまお話しいたしましたように、また、大臣からも御答弁がございましたように、身近なところから環境問題への取り組みを始めるということで、すべての公用車を低公害車に切りかえていく、こういう御発言をされているわけでございます。

 先ほども民主党の長浜委員の方から御質問もあったようでございますけれども、この低公害車の導入につきましては、各省庁が、グリーン購入法に基づいて、今年度から七年かけて導入を進めることになっているわけでございます。この演説に合わせまして小泉総理がおっしゃったことは、三年でやるんだと。環境省に、三年でやるんだという大幅な前倒しを指示したと伺っております。

 このような小泉総理の所信に対しまして、川口大臣は、率先して取り組む、ただいまも決意がございましたように、大変な決意をお述べになっておられるわけでございますが、この三年でやるのだということについて、どのような具体策また構想をお考えになっているのかお伺いしたいと思います。

中川政府参考人 今お話しございましたように、総理の所信表明演説におきまして、政府は原則としてすべての公用車を低公害車に切りかえる旨の表明がございました。

 五月八日の閣議におきまして、総理より、原則としてすべての一般公用車について、平成十四年度以降三年を目途にこれを低公害車に切りかえること、それから、平成十三年度においても、交換車両はすべて低公害車とする努力をすることという御指示がございました。

 この御指示を受けまして、同日、環境大臣と平沼経済産業大臣が日本自動車工業会の会長に対しまして、必要な自動車の供給が円滑になされるよう協力の要請をいたしました。

 さらに、同日、環境省の担当部局から各府省の会計責任者、会計課長に対しまして総理の御指示を伝達いたしまして、低公害車の導入促進を徹底したところでございます。

 現在、各府省におきまして、十三年度の低公害車の調達予定台数の見直しを行うとともに、十四年度以降三年間で調達をするということでございますので、その方針を作成しているところでございます。六月中を目途に、環境省において各府省の低公害車調達の方針を取りまとめる予定でございます。

 環境省といたしましては、各府省における低公害車への切りかえが円滑に行われるよう今後とも徹底してまいりたいと考えております。

青山(二)委員 さらに小泉総理は、循環型社会の構築に向けまして、廃棄物の発生抑制と再生利用の促進、不法投棄の防止等に取り組む、このようにおっしゃっていられるわけでございます。

 確かに、ごみゼロに向けて、またリサイクル活動などを、今や企業もそれから団体も、また御家庭の主婦の皆さんも、それぞれに活発に活動をいたしております。

 私の知人が過日、生ごみで液体肥料をつくって、その液体肥料を土壌にまいてすばらしい土壌をつくるというような家庭用の機械を製造したわけでございまして、これが財団法人の中小企業異業種交流財団というところから優秀賞を受けたわけでございます。

 私は足利でございますけれども、地元の商工会議所では、ボランティアに協力をしていただきまして、市民から生ごみをいただきまして、それを集めて肥料にする、こういう試みをいたしております。それから、早くからでございますけれども、一度来た封筒、商工会議所には郵便物がたくさん参りますので、その封筒をまた二度、三度使う、こういうことをやっておりまして、大変これもすばらしいことだなと思っております。

 ですから、私もそういうことに刺激されまして、封筒はやはり二度、三度使う。それから、今はこういうペーパーがすごく出てまいりますので、過日からこの裏をもう一度使ってみようということで使っております。

 何とかごみを少なくしたい、これは本当に知恵の発揮のしどころだと思うのでございますけれども、通告しておりませんので申しわけございませんが、大臣は、こういうリサイクルだとかごみを少なくするための日ごろの取り組みを何かなさっているのかどうかということをちょっとお聞きしておきたいと思います。

 それから、こうした運動ですね、やはりもう国を挙げて取り組んでいくのだ、全国をそういう空気にするために、リサイクルにいろいろと取り組んでいる人たちに向けて、また、これからリサイクルを心がけていこうという国民に向かって、何か国を挙げたリサイクルコンクールをしてはどうか、そして環境大臣賞などを差し上げてはどうかな、こんなことも思っているわけでございますけれども、こういうことにつきまして、大臣、どのようにお考えでしょうか。

川口国務大臣 まず、私が個人的にどういう取り組みをしているかということでございますけれども、私は広告の裏に計算をして育った世代でございますので、非常に個々については一生懸命にやっているつもりでございます。

 例えば現在ですと、大臣室のごみ箱といいますか、ありますけれども、紙については、リサイクルするものとそうでないものと分けて入れているというようなこともやっておりますし、さまざまな取り組みをほかにもやっております。

 それからリサイクルの表彰ですけれども、個人個人の方で、あるいはグループとして、あるいは事業所としてリサイクルに取り組まれている運動というのは大いに推奨すべきであって、それを表彰するということは大変にいいことであると私は思っております。

 現在あるものとしましては、リサイクル推進功労者の表彰がございまして、これは十二年度の実績でいいますと、内閣総理大臣賞から始まりまして、関係省庁の大臣賞、それからリサイクル推進協議会会長賞ということで行われていますけれども、ほかにリサイクルをなさっていらっしゃる方々の動きをどんどん推進していく表彰制度があるかどうかについては、引き続き、もっといい方法があるか検討はしたいと思っております。

 それから地球環境基金、環境事業団の中にあります地球環境基金では、NGOの方で、環境の保全活動、リサイクルを含みますけれども、そういったことの活動をしていらっしゃる方には助成の制度を持っております。

 いずれにしても非常にいいことだと思いますので、取り組みは推進をしていきたいと思います。

青山(二)委員 大臣の大変前向きな御発言で心強い思いをいたしております。一緒になって、このごみ、リサイクルに関しましては取り組んでまいりたいと思います。

 公明党は二月の予算委員会で、大都市圏エコタウン構想十カ年戦略の実現を提唱いたしました。それが政府の緊急経済対策に盛り込まれまして、小泉総理を本部長といたしまして設置された都市再生本部において本格的に議論が行われようといたしております。

 そうした中で、公明党は先日、「都市の循環型社会をめざして」と題した大都市圏エコタウン構想十カ年戦略というのを発表いたしまして、小泉総理へ申し入れを行いました。中身は、ごみ問題が深刻な大都市、まずは東京の臨海地域に広域廃棄物処理・リサイクルセンター、自然エネルギー施設、産官学の環境分野の研究施設等を集中的に立地して、自然との共生という観点から、ニューヨークのセントラルパークやロンドンのハイドパークのような三百ヘクタール規模の森をつくることを目指しております。

 小泉総理も、東京改造計画の柱になるのが循環型社会だ、この計画をしっかりと検討すると非常に意欲的でございました。

 こうしたごみゼロと自然との共生をあわせたスーパーエコタウンを首都圏に整備いたしまして、順次関西圏そして中部圏でも整備を進めていくことが、二十一世紀の日本を循環型社会にしていく上で非常に大切なことだと考えております。

 スーパーエコタウンは、ごみ問題の改善や環境保全のみならず、静脈産業の育成と新たな雇用の創出という都市経済の活性化にもつながっていくと考えております。

 そうした意味から、循環型社会形成へ公共投資を大幅にシフトいたしまして、国としても、廃棄物処理施設やリサイクル施設の整備などへの強力な財政措置をしていただきたい、このように考えておりますけれども、川口大臣のお考えを伺いたいと思います。

川口国務大臣 公明党が御提言なさいましたエコタウン構想十カ年戦略は、廃棄物の処理から緑に至るまで、大変に幅の広い問題をあるいはプロジェクトを対象として含んだ構想だというふうに拝見をいたしております。

 循環型社会をつくっていくということは申し上げるまでもなく非常に重要なことでございまして、大都市については新しくごみゼロ型の都市の再構築ということが重要であるわけですけれども、廃棄物のリサイクル施設やリサイクルが困難な廃棄物の処理施設を大都市についてもつくっていくことは大事だと考えております。

 けさほど、第一回の都市再生本部の会合が開催をされました。これから具体的なプロジェクトの選定に入っていくわけでございますけれども、環境省としても、このプロジェクトの選定の過程で知恵を出していきたいというふうに思います。また、この検討を踏まえまして、廃棄物処理センターなどを活用しまして、大都市圏に廃棄物処理施設、リサイクル施設などの広域的な施設の整備を推進していきたいと考えております。

 それから、循環型社会ということでいいますと、大気、水、土壌といった環境の保全ですとか都市における自然環境の保全、整備ということも非常に重要だという認識を持っておりまして、取り組んでいきたいと思っております。

青山(二)委員 大変ありがとうございます。

 それでは次に、京都議定書問題についてお伺いしたいと思います。先ほども質問が出て御答弁もいただいておりますけれども、私の方からも質問をさせていただきたいと思います。

 アメリカのブッシュ政権が京都議定書に対しまして不支持の態度を明確にいたしまして、事実上の離脱を表明いたしましてからもう二カ月がたったわけでございます。この間、政府また与党の代表団が派遣されましたり、また国会決議の採択など、我が国としてもさまざまな努力を行っているわけでございます。

 しかしながら、ブッシュ政権の京都議定書への反対姿勢はかたく、多くの国は失望の色を濃くいたしております。EU環境相理事会はいち早く、米国抜きでも議定書の発効を目指すと声明を発表いたしておりますけれども、COP3の議長国の日本のその外交が今試されているのではないか、こんなふうに思うわけでございます。

 そこで、思い出しますのが、温暖化問題を世界的に認知させました一九九二年のブラジル地球サミットでございます。当時の大統領は、現大統領の父親のブッシュ元大統領でございましたが、やはりこのとき議論されました気候変動枠組み条約に消極的な態度でございまして、温暖化抑制目標の設定に抵抗いたしたという事実がございます。このとき日本政府はEUとともにアメリカを説得いたしまして、ついに署名にこぎつけたということは大変印象深い出来事でございました。

 京都議定書が危機にさらされている今こそ、七月にボンで開かれますCOP6再開会議に向けまして、こうした経験を生かすべきであると考えております。

 今後、大臣として、国際世論をリードしてアメリカ政府にどのように働きかけていくのか、そのお考えをもう一度お伺いしておきたいと思います。

川口国務大臣 京都議定書をアメリカが支持しないということをブッシュ大統領が言いましたことにつきましては、大変に遺憾だと思っておりますし、私どもとしては大変に大きな懸念を持っております。このことは、四月の下旬にアメリカに私が参りましたときに、アメリカ政府には、いただいた国会決議も含めましてきちんとお話をいたしてまいりました。

 アメリカの参加が非常に重要であるということは、日本としてはそういうふうに考えておりまして、これは日本だけではなくてほかの国も同様に考えていると思います。

 また、繰り返しになりますけれども、まさにアメリカが大排出国であるということから、その排出国が入らないような議定書の実効性、環境保全という観点からの実効性について疑義が持たれるわけで、ぜひとも、ありとあらゆる機会をとらえてアメリカに働きかけを続けていきたいというふうに考えております。

 ありとあらゆる機会というのがどういう機会かということでございましょうけれども、これは、ただいま、例えばOECDで環境大臣会合が行われて終わったばかりでございますけれども、そういう機会でも、ほとんど各国の環境大臣がそこには出席をいたしましてアメリカに対しても話はいたしておりますし、これからあるさまざまな二国間あるいは多国間における国際的な会議の場、あるいは電話、ファクス、ありとあらゆる方法がございますので、機会をつくってそういった働きかけを続けていきたいと思っております。

 なお、この間ニューヨークで行われました会議につきましては、先ほど委員が、EUがアメリカ抜きでも発効すべきだということを言ったということでございまして、確かにその前の段階ではそういうことが報道をされたということは私も知っておりますけれども、そのニューヨークの会議の場でEUからそういった発言は全くございませんでしたので、それを申し添えさせていただきます。

青山(二)委員 いずれにいたしましても、再開COP6まであと二カ月余りということでございます。京都議定書の早期発効のために、ボンの再開会合での日本政府のリーダーシップの発揮が期待されているわけでございます。

 国際的なリーダーシップ発揮のためには、何と申しましても国内対策のより一層の推進が重要であろうかと思います。しかしながら、現実には、国内において、京都議定書の目標であります温室効果ガス排出の六%削減という目標の達成も危ぶまれているようでございます。これを可能にするためには、国民的な運動を起こしまして、日本の温暖化対策を強力に推進する自然エネルギーの普及促進や、またフロン回収・破壊の法整備などあらゆる手段を考えまして、京都議定書の速やかな批准に向けて最大限の努力をすべきであると思っております。

 今後、京都議定書の締結に必要な国内制度の構築をするためにどのように取り組んでいくのか、また、COP6までのスケジュールについて、わかる範囲でお伺いしたいと思っております。

川口国務大臣 対策のための国内制度の構築というのは、大変に重要なことであると私は思っております。

 ハーグで交渉いたしましたときも、日本の発言に対しての信頼というのは、まさに、今まで日本が省エネルギー等の面で、あるいは温暖化対策推進法を真っ先につくったという実績から生じていることでございまして、今後とも日本が国際社会で地球温暖化問題についてリーダーシップを持って進めていくときの一つの重要な要素が、国内措置がきちんと整備されている、あるいは整備されつつあるということであるというふうに存じます。

 日本は今、議定書の目標を達成すべく、国内制度のあり方につきまして議論をまさにしているところでございまして、それは、今までの制度に加えてさらにどういうことが必要かという観点でございますけれども、環境省におきましては、中央環境審議会におきまして、二つの小委員会の場、これは地球環境部会のもとに二つの小委員会をつくりまして、一つは、技術的な観点からの検討をいたしております。

 これの検討の結果によりますと、これまでに決定をした対策を実施いたしました場合には、二〇一〇年における排出量は、基準年である一九九〇年に比べまして約五から八%の排出量の増加になるということでございます。

 それで、さらに追加的な対策をとりますと、これは、どのような対策がとり得るかというのは、その対策をとるときのコストにもよっていくわけでございますけれども、ちなみに、コストなどが問題がない、すべての技術がコストのいかんを問わず使われるという仮の前提をつくって計算いたしますと、ポテンシャルとしては、マイナスの二からマイナスの一〇%程度まで基準年に比べて削減することが可能であるという結果でございます。

 これは専門家を交えての議論の結果でございますけれども、それを踏まえまして、今もう一つの方の委員会で、技術的な削減ポテンシャルを実現するために、対策ごとのコスト評価などを検討いたしているところでございまして、追加的な施策をどうやって推進していったらいいかということも検討をしているところでございます。

 それから、フロンというのが大きな温暖化効果を持ったガスでございまして、現在、諸先生方の御苦労をいただきまして議員立法でフロン回収・破壊法案というものの協議が進められているということでございます。これは、京都議定書の削減目標を達成するためには非常に重要な取り組みだと私ども考えております。

 それから、超党派の議員連盟で、自然エネルギー発電促進法の制定に向けた取り組みが今行われていますけれども、これに対しまして、情報提供も含めまして自然エネルギー促進のための取り組みを、地球温暖化防止の観点から、私どもとしても積極的に推進をしていきたいというふうに考えております。

青山(二)委員 それでは、COP6の成功を私も心から祈っております。

 それでは、時間も迫ってまいりまして最後の質問になろうかと思いますけれども、公明党は、先月、「「アレルギーフリー社会」の構築をめざして」という政策提言を発表いたしました。これは、単にアレルギー性疾患の治療法や新薬の開発普及を提言しているだけではなくて、アレルギー症状を悪化させる要因であり、化学物質過敏症を引き起こす大気汚染や室内空気汚染に焦点を当てまして、医療と人間を取り巻く環境の両面から抜本的な対策を打ち出していることが特徴でございます。

 こうした総合的な対策によって、アレルギーフリー社会の構築を目指し、健康的な空気を吸う権利、また健康的な環境で生活する権利が憲法二十五条で保障されている人間の生存権に不可欠であるとの認識に立ちまして、環境汚染による健康被害に悩まされない健康環境日本の構築を目指しているのでございます。

 大臣も、自動車排出ガスに起因する大都市地域の大気汚染問題も早期に解決を必要とする課題である、このように明言されておりましたが、健康的な大気環境の実現のためには、アレルギー性疾患の原因と言われておりますディーゼル車の排ガスに含まれております微小粒子状物質の環境基準の策定や、関連法規の改正、また規制の強化を図るなど、積極的に協力をしていただくことになろうかと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 さらに、大臣がおっしゃられました、健康被害を予防するための施策の着実な推進を図る、こういうためには、環境に起因する疾患の予防、そして治療法を総合的に研究する、これは仮称でございますけれども、臨床環境医療センターの創設などが重要であると考えておりまして、その提言もさせていただいたわけでございます。

 そして……

五島委員長 青山さん、時間です。まとめてください。

青山(二)委員 はい。

 一刻も早く内閣にアレルギー疾患対策本部を設置いたしまして、アレルギー制圧十カ年戦略を策定すべきである、このように考えております。

 時間も過ぎたようでございますので、簡単で結構でございますので、こうした提言に対する御所見をお伺いいたしまして、質問を終わらせていただきます。

川口国務大臣 非常に簡単で恐縮でございますが、お答えさせていただきます。

 大気汚染の防止、改善というのは非常に重要でございますので、全力で取り組ませていただきたいと思っております。

 それから、アレルギーフリー社会、アレルギーについての調査研究というのが非常に重要でございますので、関係省庁と連携の上、取り組ませていただきます。

青山(二)委員 大変ありがとうございました。

五島委員長 樋高剛君。

    〔委員長退席、小林(守)委員長代理着席〕

樋高委員 自由党の樋高剛でございます。本日も発言の機会を賜りまして、委員の皆様方に感謝を申し上げます。

 きょうは副大臣はおいでになりませんけれども、川口環境大臣そして西野環境大臣政務官、御就任まことにおめでとうございます。

 川口大臣におかれましては再任ということでありまして、私も、再び大臣に対しまして御質問をさせていただくという機会を得ましたことを心からうれしく思っております。自由党では最年少の議員でございます。どうぞお手やわらかに今後ともよろしくお願いをいたします。

 さて、本日は初めに、先日五月七日の総理の所信表明演説に関連してお尋ねをさせていただきたいと思っております。

 自然との共生が可能となる社会づくりに関してでありますけれども、総理は、所信表明演説の中におきまして、「二十一世紀に生きる子孫へ恵み豊かな環境を確実に引き継ぎ、自然との共生が可能となる社会を実現したい」と述べておいででございます。

 この実現すべき我が国の社会のあり方につきましては、大臣が取り組んでおいでであられます二十一世紀「環(わ)の国」づくり会議でも議論されていることと思います。この会議は引き続き行われるのだろうとは思っておりますけれども、私は、「環(わ)の国」を考えるときに、一つの考え方の視点といたしまして、エントロピーの原理というものを意識することも非常に重要ではないかというふうに思うわけであります。

 若干学問的な話になりますけれども、いわゆる熱物理学的な発想によります考え方なんでありますけれども、エントロピーとは、つまり学問的には物質の系、系というのは銀河系、宇宙系の系でございます、物質の系の熱力学的状態をあらわす量で、その系の乱雑さの度合いのことだそうでありまして、これを簡単に申し上げますと、物と熱の汚れの度合いというふうに言えるのではないかと私は思っているわけであります。

 そして、このエントロピーの原理というのは、物質やエネルギーは、使用することによりまして、使用する価値の高いものから使用する価値の低いものに物質を一たん変化させてしまったらば、その後は何の作用も加わらずにもとの形に戻ることは決してない、使い物にならないものがどんどんふえていくことだと言われているわけであります。

 この場合のいわゆる使用する価値の高いものというのは例えば資源でありますし、価値の低いものというのはいわゆる廃棄物や廃熱という部分でありまして、一たん物を使用価値の高いものから使用価値の低いものに、つまり資源を廃棄物や廃熱に一度させてしまったらば、そういうものがどんどんふえていってしまう。このエントロピーの考え方が世の中に蓄積された状態が、まさに環境汚染が生じている状態だということになるのではないかと思うわけであります。

 このエントロピーを減らす方法の一つとして、別の使用価値の高いものを使うことが考えられますけれども、これを廃棄物の問題に当てはめてみますと、別の資源を使って廃棄物をリサイクルしようとすると、あるエントロピーを減らそうとするばかりに、実は別のエントロピーをふやしてしまうということになるわけでありまして、結局、環境問題の解決にならないどころか、別の環境問題を引き起こしてしまう場合も考えられるということであります。長々と済みませんけれども。

 もちろん、全体で見て環境に影響が少ないのであれば、廃棄物はできるだけリサイクルすべきでありますけれども、最も望ましいのは、廃棄物を適切に処理した上で、大気とか水などのいわゆる自然界の循環にゆだねる必要があるのではないか。そもそも、自然に返せないようなものはつくるべきではないという考え方もあるぐらいだそうであります。

 こうして考えますと、日本が二十一世紀に目指すべき社会としては、ただ単に不要になった廃棄物をリサイクルするといったことだけに着目した資源の循環型社会ではなくて、人間の社会活動全般における物質の循環、つまり物の循環と、あと大気や水などの自然界の循環がきちんとリンクして、つながった中で、どちらか一方だけではなくて、両方が相まって一つの環(わ)を形づくっている社会こそ本当の意味での資源循環型社会ではないかというふうに考えるわけであります。これこそが真の「環(わ)の国」ではないかと思うのでありますけれども、大臣、お考えはいかがでございましょうか。

川口国務大臣 まず初めに、私も、引き続き樋高委員とこれから御議論をさせていただく機会がありますことを大変にうれしく思っております。

 エントロピーの難しい話は私はちょっと苦手でございますが、循環の意味の考え方につきましては、私も委員と全く同じ意見を持っております。

 「環(わ)の国」日本を、百年先を見通して、構造改革をしながらつくっていくということでございますけれども、この「環(わ)の国」の概念といいますのは、これはさまざまなものを含んでいると私どもは考えておりまして、人と人の環(わ)というのもございますし、それから物事の循環ということもありますし、それから人と自然との環(わ)ということもございます。それに、今おっしゃったようなことがかなり含まれていると思いますけれども、国と国の環(わ)ということも含めて考えております。

 そういうさまざまな次元の環(わ)ということを達成すべく構築をしていくというのが、「環(わ)の国」日本づくりの考え方であると私どもは考えておりまして、このためにさまざまな取り組みをやっていくことが必要であるということで、ただいま閣僚の方と有識者の方とに集まっていただいて御意見をいただいているところでして、小泉内閣においても引き続きこれを続ける意向を総理はお持ちいただいているというふうに考えております。

樋高委員 次に、大臣が先日、十六日のごあいさつにおいて述べられました自然との共生を実現するための施策について伺いたいと思います。

 去年十二月に閣議決定されました新しい環境基本計画におきましては、生態系のもたらす恵みを将来にわたって継承するため、国土全体から地域までのさまざまなレベルにおいて、それぞれ多様な生態系及び動植物が保全され、持続可能な利用が図られることが目標とされているわけであります。私は、生態系を保全するためには、やはり点よりも線、そして線よりも面の形で自然を保全していくということが重要ではないかという考えであります。

 例えば、具体的な事例で申しますと、ドイツのアウトバーン、いわゆる高速道路でありますけれども、高速道路のすぐわきのある一定の帯の部分、高速道路から一定の距離はいわゆる開発が禁止されております。こういった面として、帯としてのいわゆる生態系保全をしているというふうに伺っているわけであります。

 今回、大臣のごあいさつの中でもおっしゃっておいででありましたけれども、公共事業についてでありますけれども、見直しが進む中で、日本全国の失われた生態系を修復して将来にわたって保全していくためには、環境省と公共事業を実施する他省庁とが手を携えて自然と共生する新しい公共事業を実現していくべきではないかと考えるのでありますけれども、大臣、いかがお考えでしょうか。

川口国務大臣 点よりは線、線よりは面ということも、私は全く同じふうに思っております。それから、面と面を続けていく、つなげていくということも大事でございまして、例えば、野生生物が一つの地域からほかの地域に動けるような回廊づくりというプロジェクトも行っているわけでございます。

 自然との共生で、公共事業の関係ですけれども、ただいま、河川法を初めとして、さまざまな公共事業に取り組まれる官庁において、環境保全を公共事業の一環としてとらえていくという動き、その法制化が進められていると私どもは考えておりまして、非常に歓迎する方向だと思っております。この面でもっと、今そうでない法律もそういう考え方を明示的に取り入れて進むように私としては希望をいたしていますし、働きかけていきたいと思っています。

 それから、自然環境の再生・修復ということにつきましては、それを直接の目的とした事業も、関係府省と協力をして進めたいと考えております。

 最近、環境省でも、生物の生息空間であるビオトープづくりなどを手がけておりますけれども、一層本格的に自然を再生し、あるいは改善をしていくという事業につきまして、現在鋭意検討中でございますということを申し添えさせていただきます。

樋高委員 さらに、この環境基本計画の中では、平成七年に策定された生物多様性の国家戦略につきまして、その進捗状況の点検の結果を踏まえて見直しを進めることが方針として示されているわけであります。

 二十一世紀において健全な生態系を維持回復して、自然と人間との共生を確保するためには、その指針と言えます生物多様性国家戦略の見直しが重要だと私は考えるわけでありますけれども、そのための調査検討の状況が今どのようになっていらっしゃるのか、また見直しのスケジュールはどのようになっているのか、具体的にお伺いをさせていただきたいと思います。

    〔小林(守)委員長代理退席、委員長着席〕

川口国務大臣 平成七年の十月に地球環境保全に関する関係閣僚会議におきまして、現行の生物多様性国家戦略が決定をされたわけでございまして、毎年実施状況については見直すこと、それから五年後程度を目途として見直しを行うということがそれに盛り込まれています。

 環境省は、現在学識経験者の方々にお願いをいたしまして、生物多様性についてのデータ分析や施策について分析をするといった基礎的な勉強を行っているところでございます。今後は、これを踏まえまして、それから国民の皆様の意見を伺いながら、関係省庁とも協力をして見直し作業を進めまして、今年度中を目途に関係の閣僚会議で新しい国家戦略を決定するという予定にいたしております。

樋高委員 日本は、環境先進国として、自然との共生の分野においてもリーダーシップをとって取り組んでいくことが必要だと思うわけであります。

 こうした中にありまして、例えば、水鳥などの生息地である湿地を保護するいわゆるラムサール条約に関しましては、日本は、一昨年の締約国会議におきまして、アジア各国からの支持を受けまして、条約の常設委員会のアジア地域の代表に選ばれたというふうに伺っております。これは、東アジア地域でのガンカモ類の生息地のネットワークの発足ですとか、我が国における湿地の登録などの取り組みが評価されたことのようでありますけれども、その後、日本として、アジア地域の湿地の保護に関しましてどのような取り組みを進めてきていらっしゃるのか、お尋ねをさせていただきたいと思います。

川口国務大臣 樋高委員がおっしゃられましたように、第七回のラムサール条約締約国会議で、日本は、インドと一緒に地域の代表として常設委員会のメンバーに選ばれたわけでございます。

 あわせまして、その会議では、アジア・太平洋地域における渡り性水鳥及びその生息地の保全を目的とした国際協力の枠組みを拡大する勧告がなされたわけでございます。

 この勧告を受けまして、昨年の十月に沖縄で、日本とオーストラリアの共催によります国際ワークショップを開催いたしました。そこで第2期のアジア・太平洋地域渡り性水鳥保全戦略を採択いたしました。これは、二〇〇一年から二〇〇五年が対象期間になっています。

 その戦略に基づきまして、湿地保全のためには、環境教育や普及啓発が重要でございますし、関係国との情報交換が大事でございますので、それを推進していくということをやっております。

 それから、生息地のネットワークの構築のためには、これを推進していく国際NGOの活動を支援することが大事でございますので、そのNGO等を支援し、共同で湿地の登録をすることを関係国に呼びかけるということ、それから、日本みずからも湿地と水鳥の問題のモニタリングを行いまして、その知見をインターネットあるいはワークショップを通じて提供し、情報交換をしているということでございます。

樋高委員 さらに、多様な生き物の生息地として貴重な千葉県の三番瀬の埋め立ての問題につきましては、できるだけ現場に足を運ぶということが信条であります川口大臣も現地の視察に行かれたようでございますけれども、環境省としてどのような姿勢で臨むおつもりでしょうか、御説明をいただきたいと思います。

川口国務大臣 ことしの一月に三番瀬に伺いまして現地を見せていただき、そのときに、東京湾といった大都会に非常に近いところで自然が残されているということは非常によかった、よく残ったものだというふうにも思いましたし、それから、今の計画につきまして、もっと陸域でできる部分があるのではないか、本当に必要最小限かということについても疑問を持ちまして、それを申し上げました。

 そういうことでございますので、環境省は、三番瀬における埋立計画は慎重に検討されなければいけないと考えております。

 千葉県におかれましては、堂本知事のもとで改めてこの問題について検討をされていらっしゃるというふうに私は伺っておりまして、環境省といたしましても、地元の方々や千葉県とよく意見の交換もいたして、私どもも直接地元の方のお話や県の方のお話もよく伺って、県に対して、あるいは地元に対して、三番瀬の保全と再生に向けてできる協力を積極的にしていきたいと考えております。

樋高委員 次に、公用車の低公害車への切りかえにつきましての質問に移りたいと思います。

 所信表明演説の中で総理は、政府は原則としてすべての公用車を低公害車に切りかえると方針を示されたわけであります。また、その直後の閣議におきましても、総理から各省庁の大臣に対して指示があったと伺っております。

 今回の総理の方針は大変結構なことなんでありますけれども、その一方で、本来こういった話は、総理の前に環境大臣こそが声を大にしてリーダーシップを発揮すべきだったような気もいたすわけであります。今の段階となりましては、総理の方針を後押しするような立場になってしまいましたけれども、今後、ぜひとも環境省がリーダーシップをとって進めていただきたいと思うわけであります。

 その取り組みにつきましては、きょう午前中、先生方から質問もあり、お答えをいただきました。その件につきましてなんでありますけれども、低公害車をより幅広く普及していくためには、政府だけではなくて、いわゆる特殊法人や地方自治体、都道府県もしくは市町村に至るまで、所有している自動車の低公害車への切りかえを進めていく、現実に難しいとしても、進めようとすることが重要ではないかと思うわけであります。

 特に、特殊法人や地方自治体における低公害車の保有状況と、これらの主体による低公害車への切りかえを推進するための環境省の取り組みの方針につきましてお聞かせをいただきたいと思います。

川口国務大臣 低公害車の普及を政府で行う、政府の一般公用車について低公害車を使っていくということにつきましては、実は、ここ数年来、率先実行計画というのがございまして、一〇%を目標に進めておりました。

 ことしのことだったか昨年のことだったか、少し記憶が薄れましたけれども、私からも閣議の場で、各省について、どこが成績のいい官庁か、どこが成績がよくないかということを名前を挙げてお話をさせていただきまして、それがそのとき新聞で報道された記憶もございます。

 それから、今年度に入りまして、グリーン購入法に基づきまして低公害車の購入を進めるということでいたしているところでございます。

 総理の三年間でというお話は、やはり総理ならでこそ三年でとおっしゃっていただけて、私どもとして大変に心強く思っているわけでございます。

 これは国の機関の話でございますけれども、お話の特殊法人、自治体ということでございますけれども、グリーン購入法の対象としては特殊法人五十八が含まれておりまして、グリーン購入法に基づいて調達方針を作成して低公害車の調達を推進するということになっております。

 昨日、会計担当者にもお集まりいただきまして、担当部局が、低公害車導入促進についての総理の御指示の内容と、それに基づく政府の取り組みの内容を御説明いたしました。その趣旨を踏まえて、熱心に積極的に導入をしていただくように要請をしたところでございます。

 それから、地方公共団体に対しましても、文書で総理の指示をお伝えいたしまして、低公害車導入の促進をお願いいたしました。

 今のところどれぐらいの特殊法人が低公害車を保有しているかという状況は、詳細は今承知しておりませんので、至急実態把握に努めたいというふうに考えております。

 それから、地方公共団体では、十一年度末で約三千台という数字がございまして、直近の状況についても至急把握をしようと考えております。

 いずれにいたしましても、需要がふえるということが価格の低下につながり、さらなる需要の増加につながるという意味で非常に重要な取り組みでございますので、総理の御趣旨を踏まえて、促進に取り組んでいきたいと考えております。

樋高委員 以前も予算委員会の分科会で大臣に、質問通告をしないで、大臣、低公害車に乗っていらっしゃいますよねということをお尋ねしましたときに、LPG車に乗っていらっしゃるということでお答えいただいたのも記憶しておりますし、私自身も低公害車に乗っているわけであります。

 こういう、国とか地方もしくは特殊法人等々のいわゆる公の公用車を低公害車に切りかえることも重要でありますけれども、一方で、政治家に限らずでありますけれども、環境について関心がある我々こそ、こういった環境問題に取り組んでおります代議士、議員も全員含めまして、私は、みんなで低公害車に切りかえていこうという運動を進めていくこともむしろ必要なんじゃないかなと。現実的にできるできないは別にしても、まず自分たちの身近なところから、総理も身近なところから環境問題に取り組むのだというふうにおっしゃっておいででありましたけれども、大臣、いかがお考えでしょうか。

 できますれば、大臣は今、日本の環境の行政を引っ張る第一人者でありますし、それはお互いの立場を超えた中で、今回の取り組みもすばらしいと思うのですけれども、ただそれだけではなくて、草の根というか市民レベルにおいて、口コミというか、お互いに言い合って低公害車を広めていく、環境のことも考えていくのだということもやっていくべきではないかと私は思うのでありますが、いかがでしょうか。

川口国務大臣 おっしゃるとおりだと思います。国の機関ということを超えて、志を同じくする人間が低公害車に乗るという取り組みをしていくことが非常に大事だと思います。国会議員の方々も、事務所であるいは個人でお乗りの車で、ぜひそういうふうにしていただければ、私としてはこの上もない幸いでございます。

 それから、この間、平沼大臣と御一緒に自工会の会長にこの件についてお目にかかりましたときに、私からも、産業界の方々もできるだけ低公害車に乗っていただきたいというお願いをいたしまして、例えば、低公害車に乗る人の友の会のようなものもつくっていただくことができるのではないでしょうかというお話もさせていただきました。

 私自身も、乗っている自動車に天然ガス自動車というステッカーを張りつけまして、宣伝をしながら乗らせていただいております。

樋高委員 お互いに、この環境問題を考えているみんなで、立場を超えて真剣に考えて、それを、考えるだけじゃなくて、口で言うだけじゃなくて、みずから行動する、行動しようとするということこそ私は重要ではないかと思うわけであります。

 そういった意味からしますと、環境省さんには、ぜひとも、そういうふうに、口先だけではなくて、日本国民全員で取り組んでいけるような運動も今後ぜひ展開をしていただきたいと強く要望させていただきたいと思っております。

 次に、エコビジネスについてであります。エコビジネスの育成に関する取り組みについて伺いたいと思います。

 残念ながら、先日の大臣のごあいさつでは、エコビジネスという文字は、もしくはその意味は一字も触れられておりませんでしたけれども、エコビジネスの育成が大事であるということにつきましては、私もそして大臣も、意見の違いはないのではないかと思うわけであります。

 そこで、ちょっと具体的な話に入りますけれども、環境省が去年の五月にまとめました我が国のエコビジネスの市場規模の推計結果によりますれば、日本のエコビジネスの市場は、一九九七年、四年前でありますけれども、その時点で約二十五兆円規模とされておりました。一方で、これから将来の話ですけれども、今から九年後、二〇一〇年時点の将来予測としては約四十兆円にまで成長すると推計されているわけであります。中でも、廃棄物処理、リサイクル関連ビジネスが約五〇%、半分を占めるということになっているようであります。

 現在、失業率の上昇が日本経済の大きな課題の一つとなっている中にありまして、二十一世紀の産業としてエコビジネスを拡大していくことは非常に重要なことであると考えるわけであります。

 今後のエコビジネスの発展による雇用の拡大を目指すべく育成をしていかなくてはいけないと思うのでありますけれども、大臣、いかがお考えでしょうか。いわゆるエコビジネスにつきまして、これはほかの省庁でも管轄しているところもあるのでしょうけれども、これこそ環境省がリーダーシップをとってぜひ施策を進めていただきたいわけでありますけれども、いかがでしょうか。

西野大臣政務官 今世紀、環境問題が重要な政策課題だということはかねがね申し上げておるとおりでございまして、かつての大量生産、大量消費、廃棄、こういうものをクリアしなきゃならぬわけであります。そういう中で、今樋高委員がお示しのエコビジネス産業は、むしろ二十一世紀の新しいといいますか、大宗を占める産業になってもらうべきだというふうにも思っています。また、そう期待できると思っています。

 実は、私の町は五十二万の人口なんですが、中小企業ばかりがあるのでございますが、実は、もう既にこのエコビジネスに着手をいたしておりまして、きょうはこの場に持ってくればよかったのでございますが、先般も、そういうリサイクルを初めとするデポジットのどんぶり、トレーなんかを用意したり、それを樋高さんの母校の生協で取り上げてやってくれているということを聞きました。そういう意味で、これからの産業としては非常に大きく期待をしていくべきだというふうに思っております。

 調べますと、今お示しのあった、いわゆる市場規模の金額が出ておりましたけれども、五年前からしますと、約七十万近い雇用というものがある。このまま推移しますと、それが恐らく八十万を超えるのではないか、九十万近くなるのではないかというふうに言われておりますだけに、このエコビジネスというものに対しまして、環境省としても、いろいろな意味で、多角的にひとつ可能な限りの支援をしていきたい、このようにも思っております。

樋高委員 こういったエコビジネスにつきましては、雇用の点からだけではなくて、もちろん環境保全に配慮した社会づくりを進めていく上でも、その重要な担い手の一つとして育成を図っていくべきものであると考えるわけでありますけれども、一方で、規制がその発展を阻んでいる例も見られるところであります。

 例えば、プラスチックのリサイクルについてでありますけれども、廃プラスチックを焼却や埋め立てをするのではなくて、いわゆる重油相当の油に還元するという装置があるやに伺いました。

 あくまで例えばですけれども、例えばこの装置は大部分の廃プラスチックを油化する、いわゆる油にするんだそうでありまして、しかし、油化されないオフガスが若干、少量残る。このオフガスを焼却させることになるわけなんですけれども、そうすることによりましていわゆる廃棄物処理法上の焼却施設に当たるということで、なかなか設置許可が得られないため、こうした装置の普及の妨げになっている状況があると伺っているわけであります。

 ガスを焼却する際には有害物質が大気中に排出されないように対策をとるべきなのは当然のことでありますけれども、廃棄物処理施設としての規制が適用されることによりましてこのような装置の普及が進まないのであれば、廃棄物処理法において別の新たな位置づけをすることが必要なのではないか、いわゆる循環型社会を目指すのであれば、新たな法整備も避けられないのではないかと思うわけであります。

 例えばでありますけれども、いわゆる循環のサイクルというのがありますけれども、これは環境庁さんだったときにいただいた循環の話でありますけれども、この最後の三番目のリサイクル、いわゆる処理してからまた資源投入するまでの部分の法整備がまだまだ実態としてでき上がっていない。今までさまざまなリサイクル法によりまして一部でき上がった感もありますけれども、まだまだ法整備が足りないのではないかと思うのでありますけれども、いかがお考えでしょうか。

川口国務大臣 循環型社会をつくっていくためのリサイクルの輪を完結するということは非常に大事なことであるということは、先生の御指摘のとおりでございますし、グリーン購入法もその目的のためにつくられたわけでございます。

 それで、廃棄物処理施設と、廃棄物の処理という観点とプラスチックの油化という観点とどういう関係になっているのかということでございますけれども、まず、一般廃棄物と産業廃棄物で取り扱いが違っております。

 一般廃棄物の処理施設ということでありますと、一日当たりの処理能力が五トン以上あるものでありますと、廃棄物処理法上の施設の設置許可が必要であるということでございますので、そのような要件を満たす廃プラスチックの油化施設、すなわち五トン以上であってというものについては設置許可が必要です。

 それについては必要でございますけれども、産業廃棄物については違っておりまして、産業廃棄物は種類がたくさんあって処理方法がさまざまであるということでございますので、処理施設については、生活環境保全上の支障を生ずるおそれがある、あるいは設置実績の多寡を勘案しまして設置許可の対象となるものは限定をしております。その観点からいうと、産業廃棄物である廃プラスチックの油化施設は設置許可対象ではありません。

 したがって、委員のおっしゃられた油化施設については、それが油化を主たる目的とする限り、一般廃棄物であれば五トン以上の施設については許可の対象になっているけれども、産業廃棄物については許可は不要であるということでございます。

 ただ、油化が主目的の廃棄物処理施設――ちょっともとに戻りまして、ただ、油化と称しまして廃プラスチックの大部分をガスにして燃焼しているような場合では、油化が主目的ではなくて焼却が主たる目的でございますので、廃棄物処理法上、焼却施設に該当するということで許可が必要だということになります。

 いずれにしても、環境省といたしましては、油化技術の改善、あるいは油化された燃料の用途を拡大するといったことを通じまして、廃プラスチックのリサイクルを促進していきたいと考えております。

樋高委員 いわゆる主目的がきちっとリサイクルのためであるということであるならば、ぜひ、私が伺った具体的な話のときには、オフガスが五%ぐらいで、九五%は本当にきちっと再生するんだよという説明でありました。

 いろいろな、中には悪用して、プラスチックを処理するために大部分をガスにしちゃったりして、技術的にはわかりませんけれども、それを燃焼させたりする方も中にはいらっしゃるのかもしれませんけれども、本来の、本当のリサイクルを目指して、例えばそういった油化還元装置のような形がありまするときには、細かい部分でさまざまな障壁、壁にぶつかるんだそうでありますけれども、どうかそういう部分では、環境省さんがそういった民間の研究開発の後押しをしていただきまするように強く要望させていただきます。

 そして、同様の質問なんでありますけれども、ガソリンにかわる低公害の自動車用燃料といたしまして、最近、低公害のアルコール燃料が開発されてきていると伺っております。これは自動車の排気ガスに含まれる有害物質の量を削減するということをねらって民間で研究されたものでありますけれども、税制面において既存の燃料と同等の扱いを受けているため普及が進んでいないということのようであります。

 イクシオンとかガイアックスというような名前で低公害のアルコール燃料について今市場に出回りつつあるんだそうでありますけれども、このような低公害の燃料につきまして、環境省としていかがお考えなのか。もちろん民間で今一生懸命努力なさって、その商品、いいところも悪いところももちろんあるんでしょうけれども、そういう取り組みを後押しするというか、もちろん、きちっと検査したり、人体に有害でないかはチェックはしていかなくちゃいけないと思いますけれども、そういう動きについていかがお考えでしょうか。

西野大臣政務官 新たな燃料ということでガイアックスとかイクシオン、私はテレビで見て知ったのでございますが、その後、環境省にこの連休明けから御縁をいただいて、どのような扱いをしているのかなというふうに思いましたら、ちょうど就任いたします前のことしの三月に、環境省の方で、一般の既存のガソリン車にこのガイアックス等を使って調査したそうでございます。その結果、排出ガスのうち炭化水素とか一酸化炭素というのは何かやや減る傾向にあるそうでございます。ところが、変わらないものがあるそうでございまして、二酸化炭素はその調査の結果では余り変わらない。増加するものがある、それが窒素酸化物である、こういう結果が出て、その業界の方にもお示しをいたしたようなことでございます。

 そういうことからしますと、このガイアックス等をお使いの方々が、非常に低公害だ、こうおっしゃっているのでございますが、環境省の調査の結果では必ずしもそうでない、こういうこともございまして、税制上の優遇措置は残念ながら考えておらない、こういう状況にあるというふうに思っております。

 しかし、今後さらに研究、そのガイアックス等が代替の燃料として排ガス等を含めて環境上非常によい、こういうことになれば、当然ながら税制上を含めて優遇措置を考えていくべきだ、これは一般論としてそのように考えている次第であります。

樋高委員 最後の質問を大臣にさせていただきたいと思います。

 総理の所信表明演説の中で、いわゆるごみゼロ作戦、ごみをなくしましょうという話が出ておりました。

 このごみゼロ作戦を進めていくためには、一つの手段として、いわゆるリユース、再利用の推進が考えられるわけであります。

 これからはいよいよ暑くなってまいりまして、ビールがおいしい季節となるわけでありますけれども、例えば、缶ビールを毎晩のように飲みますと、空き缶がごみとしてたまってくるわけであります。ところが、瓶ビールを飲みますれば、まさに身近なごみゼロ作戦なわけでありまして、おいしいビールがますますおいしく感じられると思うわけであります。

 大臣はこの道のプロフェッショナルであると思いますけれども、ふだんは瓶ビールをお飲みになられているんでしょうか。ビール容器のリユースの推進のためにどのように取り組んでいくか、お聞かせをいただきたいと思います。

川口国務大臣 私は、ビールは大好きでございます。どちらを飲んでいるかということでお尋ねでございますので、私は缶ビールを買っております。

 なぜかといいますと、私は、今はそういう自由はなくなってしまいましたけれども、以前、地下鉄の駅をおりますと近くにお酒のディスカウントストアがございまして、そこで買って帰るということをしばしばやっておりまして、歩いて十分かかるところを瓶ビールを抱えて帰るのは実際のところなかなか大変でございます。缶ビールの場合のアルミもリサイクルされておりますので、その観点からいって私は缶ビールで問題がないと思って、個人としては、さまざまな制約要件がございますので、そういう観点から行動をいたしております。

 リターナブルであるということは非常にいいことでございますけれども、消費者全部がリターナブルで行動していただけるかというと、車で動いているという方でしたら別でございますけれども、私の例を見てもおわかりのように、なかなかそういうことにならない部分もございまして、それぞれの状況で御判断をいただいて買っていただくということだと思いますが、一般論としては、リターナブルというのは、資源の有効活用それから循環型社会をつくっていくという上では非常にいいことだと思っております。

樋高委員 毎晩ビールを飲みながら、環境のことも考えつつ、これからもお互いに取り組んでいけたらと思っております。どうもありがとうございました。

五島委員長 藤木洋子さん。

藤木委員 日本共産党の藤木洋子でございます。引き続きよろしくお願いいたします。

 早速ですが、温暖化防止問題で質問をさせていただきたいと思います。

 せんだっての非公式閣僚会合では、米国が京都議定書に反対を表明したのに対して、米国以外のすべての参加国が、京都議定書を支持して、議定書反対の姿勢を撤回するように要請いたしました。また、米国代表は、ボン会議に出席をし、気候変動問題とエネルギー問題についての米政府の政策見直しを提示すると述べました。

 しかし、会合に参加したEU現議長国スウェーデンのラーション環境相らEU代表は、気候変動は今日の国際政治の中心問題として、京都議定書は気候変動と闘う唯一の国際的仕組みで、その代案はないとの声明を発表しています。このEUの声明に対して、日本やオーストラリアを含む非EU先進国グループからは、ボン会議でコンセンサスが成立することへの疑問を表明されました。

 そこで伺いますけれども、ボン会議で米国が新たな政策提示をすると二〇〇二年発効ができなくなるおそれがあるのではないかと思うのですが、大臣、いかがでしょうか。

川口国務大臣 アメリカが京都議定書を支持しないということを言ったことについては、私どもも大変に大きな懸念を持っておりますし、他国もこれを共有いたしておりますし、アメリカが早期にこの京都議定書の議論に戻ることが非常に重要であるということも伝えてございます。アメリカは、今閣僚レベルで、温暖化問題に対してはどういうような対応ができるかということを考えているので、できるだけ早くその検討を終了して、友好国には相談をするというふうに言っております。

 ということでございますので、私どもとしては、引き続きアメリカに働きかけまして、早期にアメリカが自分の考えていることをまとめて他国に提示してくれるということを期待し、働きかけを続けているわけでございます。

藤木委員 しかし、プロンクCOP6議長も、仮に京都議定書からほど遠い内容だった場合、反対だ、このように断言をしております。それは、さきの会合を前にして、京都議定書にはどんな状況でも反対するとした米国務省の内部文書が明らかになっているからではなかろうかというふうに思います。

 この文書は、ブッシュ政権が温暖化防止京都議定書の不支持を表明した直後の四月一日に、パウエル国務長官が全在外公館あてに送ったメモです。

 このメモでは、米国はどんな状況でも京都議定書に反対するのかという問いに、イエス、同議定書は多くの国を免除し、米国経済に深刻な損害を与えるので反対する。そして七月のボン会議について、難問が多数あり、七月の二週間の交渉でこれらすべてが解決する見通しはほとんどない。まさに他国の努力をあざ笑うかのような態度だと言わなければならないと思います。さらに、EUと途上国・中国は、米国から柔軟性を奪おうと共同歩調をとってきたとして、京都議定書に基づかない新対応作成に最大限の柔軟性を示し、批判から議論をそらせるとまで述べています。

 ですから、私は、米国自身が要求して削減目標も実質的には後退をさせた京都議定書、それすらどんな状況でも反対するということを基本にしながら、さらに自国に有利な新たな提案で批判をかわそう、こういう態度というのは国際政治の信義だとかあるいは責任を問われる、そういった問題ではなかろうかと思いますけれども、大臣の御認識はいかがでしょうか。

川口国務大臣 京都議定書は、関係国が集まりまして九二年に気候変動枠組み条約ができまして以降ずうっと議論をしてきた枠組みでございまして、非常に重要な枠組みだというふうに私ども考えております。それがアメリカの発言によりまして、難しい状況に、最大の危機を迎える状況にあるということについては、私も非常に残念に思っております。

 京都議定書というのは何なんだろうかということでございますけれども、京都議定書は、言葉として議定書という形で現在存在をしておりますけれども、その運用ルールにつきましては、現在まさに国際社会で議論をしているわけでございます。

 この議論をしていくことを、私はこの間ニューヨークで、京都議定書を京都の家というふうに例えまして、その中のインテリア、壁紙ですとか家具ですとか、そういったものをどういうふうに配置するのがすべての国にとって住み心地のいい家になるのか、ということを国際社会でまさに今議論している最中であるというふうに申しました。

 まさにその運用ルールにつきましてハーグで議論をいたしましたところであり、その運用ルールというのは、例えば排出量取引についてですとか遵守のメカニズムですとかさまざまございますけれども、その議論がさらに煮詰まって、ボンでうまくそれが合意を見まして、二〇〇二年までの発効ができますよう私としても全力を尽くすつもりでおります。

藤木委員 しかし、アメリカが言っているのは、途上国に削減義務がかかっていないということなどを理由にして拒否する、これはもう驚くべきことだと思うのですね。温暖化の責任の割合からいっても、まず先進国が温室効果ガスを削減するということは、これは私たちが勝手に決めたことじゃなくて、アメリカも含めて合意をしたものです。ですから、EU加盟国からは、条約作成の議論をリードしておいて、あとはほうり出すというのは米国の常套手段だとの批判も起こっているところです。

 こうした態度の背景には、ブッシュ大統領やチェイニー副大統領の石油産業との深い関係があると言われています。それを裏づけるかのように、石油最大手のエクソン・モービルは、アメリカの主要紙に、ブッシュ政権の立場を支持する半ページの大型広告を載せております。この意見広告では、京都を超えて行こう、より調和のとれた温暖化政策を強調しています。

 さらに、チェイニー副大統領を中心とするエネルギー政策見直しチームが、現在、石油採掘推進や原発の活用など、米国のエネルギー供給源を多様化する方針を検討していると言われておりましたが、きのうの新聞を拝見いたしますと、ここではもう既にそこに踏み込むといったことまで発表されておりました。

 こうした背景とともに、京都議定書に反対し、新たな提案をしようとしているわけですから、温暖化防止の取り組みが重大な岐路に立たされているというふうに思います。

 ですから、ボン会議でのコンセンサスが困難などという姿勢に立つのではなくて、二〇〇二年に京都議定書を発効させるためには、米国抜きでも批准、発効させる立場を明確にして交渉に臨むべきだというふうに考えております。

 さらに、エネルギー産業とブッシュ政権はつながりが深く、連邦選挙委員会の資料によりますと、エネルギー業界からの政治資金のうち、大統領選挙のあった昨年は七六%が共和党につぎ込まれた、また、ブッシュ大統領自身が八〇年代に石油掘削会社を経営しておった、チェイニー副大統領は、石油関連施設の建設・維持会社の前会長を務めていたなど、エネルギー関係企業の役職についていた人が政権の要職を占めているという問題です。ですから、議定書からの離脱宣言は、エネルギー危機をあおって環境保護派を一気に黙らせ、石油・ガス開発を推し進めようということだ、こういった批判も出ております。

 そこで、米国抜きでも発効させるという毅然とした態度で議定書の批准を求めることが重要だと思いますけれども、それにしても、日本がどんな姿勢をとるのか、日本政府自身が早期に議定書を批准するということが当然ではなかろうかというふうに思うのですけれども、大臣、どうでしょうか。

川口国務大臣 アメリカは、世界の温暖化ガスの排出量の四分の一を占める排出大国でございまして、そういう意味で、米国が参加をしないと実効ある京都議定書の実施は困難だというふうに考えております。

 それから、将来の途上国の参加も、これは将来的には中国、インドといった国は非常に大きな排出国でございまして、中国は一国としては既に日本を超える排出国でございますので、アメリカが参加をしないと途上国の将来の参加も難しいことになるのではないかというふうに懸念をいたしております。そういう意味でアメリカの参加というのは、環境十全性という観点から非常に重要だと考えております。

 他方でアメリカは、京都議定書は支持しないとは言いましたけれども、温暖化については大変な懸念を持っていて、温暖化対策はどういうことができるかということについて、閣僚レベルで真剣に、かつ緊急にレビューをしているというふうな状況にあります。

 私は、四月の終わりにアメリカに行きましてアメリカ政府の方々とお会いをいたしましたけれども、そのレビューの状況を直接に伺いまして、非常に真剣に取り組んでいるという印象を持ち、また、その取り組みができるだけ早く終わって、アメリカの考えることを私どもに伝えてほしいということも要望をいたしてまいりました。

 政府といたしましては、二〇〇二年までの発効を目指して全力で取り組んでいく、国際合意を目指して全力で取り組んでいくという立場に全くの変更はございませんで、これは小泉総理が所信表明でおっしゃったとおりでございます。

 それから、日本自身が、締結に必要な国内制度をきちんと構築するということも非常に重要でございますので、環境省におきましては、中央環境審議会の場でただいま議論を真剣にいたしておりますし、経済産業省等のほかの官庁でもそういうことを進めていただいているというふうに承知をいたしております。

藤木委員 アメリカを引き込むためには、今のアメリカの態度を変えさせる以外にないと私は思うのですね。政府は熱心にそれでも取り組んでいるようだと言われましたけれども、大統領選挙でブッシュ氏の環境政策チームのトップを務めた、先ほども話に出てきていましたけれども、クリストファー・ドゥムース氏、AEIの所長を務めていらっしゃる方の言い分ですけれども、温暖化対策は緊急の課題とは言えない、途上国にとっても当面は貧困撲滅や健康維持の方が重要で、今は経済発展に力を入れるべきだ、環境問題は将来の問題であり、各国がより豊かになり、力をつけてから対処すればよい、京都議定書不支持は変わらない、こう強調しているわけです。

 ですから今、日本政府に何よりも求められているのは、日本政府自身が早期に議定書を批准して、COP3の議長国としてのリーダーシップをぜひ発揮していただきたい、私はこのことを指摘しておきたいと思います。

 そこで、ボン会議に向けた今後の交渉で懸念されるのは、京都議定書を守るという大義名分で、温室効果ガス排出削減目標という内容を切り売りする妥協が進む可能性が高いということです。

 さきの会合では、EU代表が、議定書実行により先進国の国内での削減がもたらされるべきだとしつつも、パッケージ全体の中で補完性について他の当事国と討議する用意があると述べているからです。

 大臣御自身も、森林吸収やメカニズムを使うのは我々の権利だ、このように表明をしておられますけれども、どうも日本などのこういった圧力が、議定書で確認された補完的措置という原則をゆがめる可能性があるのではないか、そういう懸念を私は持っておりますが、大臣、いかがでしょうか。

川口国務大臣 シンクあるいは京都メカニズムといった柔軟性メカニズムというのは、京都議定書に既に含まれているメカニズムでございまして、九七年に京都において先進国が平均して五・二%の削減ということに合意をいたしましたときには、そのシンクなり京都メカニズムが前提となって合意をされたということでございます。

 京都メカニズムというのは、おっしゃるようにあくまで補完的なメカニズムでございまして、主たる部分を国内措置でやるということに全く変わりはなく、日本といたしましても、その方向で今国内措置の構築に最大限の努力をしているところでございます。

 したがいまして、それらのメカニズムというのは、使われることは全く問題ということではなくて、使われるべくして京都議定書の中にあるわけでございまして、大事なことは、主たる削減努力が国内措置によって行われるということでございます。そのための議論は、ハーグでも行いましたし、今後とも行われるというふうに考えております。

藤木委員 しかし、産業界のシンクタンクと言われる三菱化学の生命科学研究室長、この方は、むしろこれで温暖化防止問題の真の姿がはっきりしてきた、今となってはこの交渉が欧州中心で進んできたことを認めるべきである、その上で日本の事情をも反映させた京都議定書のルールづくりをEUとともに進めていくべき、このように述べていますけれども、大臣が所信表明の中で言われました、創造的、革新的な発想で交渉に当たることが必要という表明は、これらの意見と共通するものがあるというように私には聞こえるわけですね。

 プロンクCOP6議長の新提案では、WWFの試算によりますと、森林吸収などを除きますと、米国は削減目標七%のうち二・八%の削減で済みますけれども、日本は約〇・六%分しか認められておりません。そこで大臣は、非常に厳しい、これでは受け入れられない、こう強く不満を表明されました。

 これに対してプロンク議長は、会合を前に、森林吸収源の仕組みで特殊な状況に対応するためには例外もあり得るとした一節のところで、注意深く読んでもらえばわかるが、これは日本のことだ、国土が狭く、新たな植林の余地が少ないという事情は各国とも認識していると、日本への譲歩を示唆した報道がされております。これは、米国抜きでも発効を目指すということになった場合、CO2総排出量の五五%以上を占める国々が批准するというハードルを越えなければなりませんので、そこへ日本を引き込もうとするプロンク議長の妥協案ではないかというふうに受けとめられます。

 しかし、プロンク議長の妥協案はともかくとして、日本は京都議定書を採択したCOP3の議長国として、米国に追随するのではなくて、リーダーシップを発揮して京都議定書の批准、発効に責任を負うべきだと思うのですが、大臣、いかがでしょうか。

川口国務大臣 国際交渉において合意に達するために参加各国は大変に努力をいたすわけでございまして、私が所信の中で申し上げましたことは、そういった努力が必要であるということを申し上げておりまして、これはハーグでの最終段階においても、関係の国々が知恵を出し合って、こういうパッケージで合意できないだろうかということで議論をいたしたわけでございます。

 この最終的なパッケージは、残念ながら、最終段階でEUがこれを受け入れるところとなりませんで日の目を見なかったわけでございますけれども、一例を挙げれば、そういった国際的な努力あるいは独創的な発想が合意をもたらすためには大きなかぎとなるというふうに私は考えております。

 我が国は、京都という名前がついております議定書につきまして非常な愛着を持っているということであると思います。したがいまして、私どもとしては、二〇〇二年までの発効を目指して、来るCOP6の再開会合において合意に達するように全力を尽くす所存でおります。

 それから、京都議定書の国際的な議論を踏まえて、日本がこれを実際に批准をして締結をしていくためには国内措置が構築をされているということが大事でございますので、そのために全力を尽くして取り組みたいと思います。

 先ほど申しましたように、アメリカの参加というのが、環境十全性、京都議定書の実効性の確保ということから大変に重要でございますので、引き続きアメリカに対して、他の国々とも連携をして働きかけたいと考えております。

藤木委員 しかし、温暖化はもう本当にせっぱ詰まっていると思うのですね。IPCCの第三次報告では、二十一世紀末の気温は一九九〇年に比べて一・四度から五・八度上昇するとしています。第二次報告が一・〇度から三・五度でしたから、温暖化はさらに加速するわけです。しかも、九五年以降の高暖傾向が顕著であります。氷河期から一万五千年かかって一度の上昇ですから、日本では過去百年の間に一万五千年分の上昇が起こっているということになります。まさに待ったなしの緊急事態だというふうに思うわけですね。

 京都議定書はスタートにすぎないというふうに思うわけです。たとえその議定書を達成したとしても、さらに高度な削減目標を設定する必要が出てまいりますし、九二年の地球サミットの宣言では、科学的な不確実さを環境対策をおくらせる理由にしてはならないと明言しております。ですから、この十年間の国際的な温暖化防止の取り組みからアメリカが離脱することは許されないというふうに思います。

 もちろん日本が、米国の離脱を国内対策をおくらせる理由にしてはなりません。六%の削減目標の三・七%分を吸収源で獲得するということにあくまでもしがみつく、そういった立場に立つのではなくて、先ほど来大臣が述べておられますけれども、国内対策を強化していくということでこそ進めていくべきだと思うのですね。そのためには、私は地球温暖化防止対策推進大綱を早急に見直す必要があると思いますし、見直した上でCOP6に臨むということが必要ではなかろうかと思いますが、いかがでしょうか。

川口国務大臣 委員のおっしゃる地球温暖化の進み方、それが非常に重大であるということについては、私も全く同じ認識を持っております。

 京都議定書の削減目標を確実に達成していくために必要な対策ですとか制度のあり方につきましては、現在中央環境審議会で、大綱に盛り込まれている個々の対策の進捗状況の評価も含めまして御審議をいただいているところでございます。COP6の再開会合の前には中間的な取りまとめが行われることが予定されております。

 日本といたしましては、COP6再開会合で国際的な合意がつくられると、それを踏まえまして京都議定書の締結が日本としてできますように、削減目標を達成するための国内措置の構築に全力で取り組んでいきたいと考えております。

藤木委員 今のお話を伺っていますと、検討はしていらっしゃる、しかしCOP6の前にすべて結論を出すのではなくて、国際ルールができた上できちんとした枠組みをつくっていくということのように受け取れるわけですけれども、私は、やはり待ちの姿勢ではだめだというふうに思うわけですね。

 大綱に基づく現在の地球温暖化対策を進めるというだけでは、二〇一〇年にはエネルギー起源の二酸化炭素の排出は一九九〇年レベルよりも約八%増大するという予測は、審議会そのものが予測しているところであります。まして、一九九八年で六%増大していたわけですから、これは一刻もゆるがせにすることはできない。私は、やはりCOP6に臨むに当たって、大綱をしっかりと見直すというところまで進めて臨んでいただきたいということを重ねてお願いしておきたいと思います。

 次に、大臣が所信で、従来型の公共事業から、自然を生かし、よりよい環境の創造につながるような公共事業を目指すというふうに表明されている問題で伺いたいと思います。

 文芸春秋でも掲載をされました「「環境破壊」真犯人は誰だ?」の特集で、「国立公園を蝕むコンクリート遊歩道」の問題が指摘されております。私も、あの中で指摘されております十和田湖の受難を見てまいりました。九五年から始められた緑のダイヤモンド計画事業は、現在まで七つの国立公園の九つの地域で行われております。

 この中に、九六年から始まった十和田湖・奥入瀬地域総合整備事業というのがございます。当初計画の総事業費は約五十三億円を見込んでおりましたが、環境庁自然保護局が作成した十和田八幡平国立公園十和田湖奥入瀬地域総合整備基本計画では、植生の自然回復を前提に、それを補助するための各種方策、自然環境を保全しながら野生動物の観察などの体験ができるフィールドの整備などを基本方針として、奥入瀬林床植生自然環境保全修復事業、十和田湖北岸自然体験フィールド整備事業、蔦温泉自然体験フィールド整備事業などを行っております。

 そこで、これらの事業のうち、環境省の補助事業で十和田湖奥入瀬地域の銚子大滝の歩道、玉簾の滝の歩道、石ヶ戸休憩所通路、十和田湖北岸歩道が、地元自然保護団体からの指摘だとか事業検討委員会の検討で、整備の取りやめだとかあるいは規模の縮小を行っていると伺ってまいりましたけれども、この点について環境省の御説明をお願いいたします。

西尾政府参考人 先生御指摘のとおり、平成八年度から、十和田湖奥入瀬地区におきまして、緑のダイヤモンド計画の事業を実施しておりますが、その一環といたしまして、環境省の補助事業により整備中でございました銚子大滝のデッキにつきましては、自然保護の関係者からの指摘を受けまして、青森県知事により計画が全面撤回されたわけでございます。

 さらに青森県では、これを契機といたしまして、十和田・奥入瀬地区整備事業検討委員会を設置いたしまして、検討を行いました結果、玉簾の滝、石ヶ戸の歩道デッキ、十和田湖北岸の歩道につきましても、デッキを撤去する、ないしは規模を縮小するといった形で事業内容の変更がなされております。

藤木委員 この整備の取りやめは、地元自然保護団体から、ステージはその下の植生を死滅させることでしかない、植生保護の理由は通用しない、また、湖岸の木の伐採や枝の剪定で、氷がつく木が減少するだけではなくて、基礎工事で波打ち際の地形が変わってしまい波しぶきが巻き上げられなくなってしまう、観光客の動線確保にすぎない、規模が過大で工事を中止すべきなどの指摘がされたためだと思います。

 そこで、環境省の当初の基本計画がお粗末だったのでしょうか、それとも、青森県の設計といいますか施行がずさんだったのか、一体、どちらに責任があったのか、お答えをいただきたいと思います。

西尾政府参考人 環境省の十和田八幡平国立公園十和田湖奥入瀬地域総合整備基本計画におきまして位置づけておるわけでございますけれども、張り出しデッキにつきましては、奥入瀬地区の貴重な植生を保護したいという目的ではあったわけでございますが、そういうデッキを位置づけました。それにつきましては、位置、規模、構造等については基本計画の中では特に定めていません。それから、十和田湖の北岸におきましても、御指摘の自然観察路等を設置するということを盛り込んだわけでございます。

 この計画に基づきまして、青森県において、銚子大滝の展望デッキ等を盛り込んだ実施計画を策定して、工事に着手しようというところで、地域の自然保護団体より批判をちょうだいしたわけでございます。

 したがいまして、環境省の基本計画の策定、青森県の実施計画の策定、その両者の間で、環境省と県と連携していかなければいけません。三つのそれぞれの段階でもっと行き届いた配慮をすべきだったということで、反省すべき事項があったというふうに考えております。

藤木委員 伺っていると、環境省と青森県の調整が不十分だったということのようですけれども、環境省が、基本計画に基づいて、県の事業計画を承認して施行されるものでありますから、環境省の責任は免れないと思います。

 自然環境の保全、それから植生の復元を基本方針にうたいながら、それに反する整備事業が進められていたということになります。自然保護団体に問題を指摘されて初めて取りやめざるを得なかったということは、専門家や自然保護関係者から十分意見を聞いて、現場を十分調査して計画、施行が進められたものではなかったということになります。十和田・奥入瀬地区整備事業検討委員会も、銚子大滝デッキをめぐる一連の反省から生まれたものであって、やっと民間サイドの意見が取り入れられるようになったわけです。

 そこで、基本計画の段階から自然保護団体などの意見を取り入れているならば、こういった計画を回避できたであろうと思いますけれども、いかがでしょうか。

西尾政府参考人 この十和田八幡平国立公園の奥入瀬地域の緑のダイヤモンド計画をつくる段階におきまして、確かに関係自治体との調整は行いましたけれども、地元住民の方や自然保護団体の方々から直接意見聴取を行うということを行わなかったわけでございます。

 そのために、具体的な設計、工法において、現場に即した情報が不足しているのではないか、一部に自然と適合しない計画になっているのではないかという御指摘があったわけでございます。

 これを踏まえまして、平成十年度以降は、先ほど申し上げました、青森県におきまして検討会を設置し、そこで地元住民の方、自然保護団体の方に計画の説明もいたし、御意見も伺いながら整備を実施したということでございますので、この経験には学ぶべきものがあるというふうに思っております。

藤木委員 それでは、環境省の直轄事業として、十和田湖町の蔦沼に建設をした木造デッキがございますね。あの木造デッキは、基礎工事を施して延長百二十メートル、幅二メートル、約五千万円をかけてつくられました。

 ところが、このデッキのそばで樹齢八十年のブナと五十年のミズナラが倒れておりました。私も現場を見てきたわけですけれども、根がむき出しになって倒れたという状況でして、基礎工事で地盤を掘削したときに二本とも木の根が断ち切られ、支えを失って倒れたという状況だったようです。

 このデッキの整備は、コンクリート製の基礎を必要としないもっと小規模な木道だったはずでして、こんなに大規模な施設になるはずはなかったと地元の自然保護団体の方から伺いました。

 そこで、この倒木の原因は、単なる、委託された青森県の施行中の配慮、注意が足りなかったということではなくて、コンクリートの基礎工事をしなければならなかった大規模なデッキ建設そのものにあることは間違いないというふうに私は思いましたけれども、環境省、いかがですか。

西尾政府参考人 御指摘の蔦沼の木道でございますが、これは蔦沼のブナ林を訪れる方々が現場の植生に踏み込むということがないよう、そういうことで自然を荒らさないで自然探勝が行えるようにという目的で設置するものでございまして、環境省が実際の工事の施行を青森県に委任して整備をいたしたところでございます。

 木が倒れた直接の原因を特定することはできなかったということでございますが、いずれにしても、近接しているブナ等の倒木を来したということは大変残念なことでございます。したがいまして、この設計の協議を受けたときに、その審査の内容に至らなかった点があるというふうに認識します。

 なお、その倒れた木は、その後、活着のための作業を行いまして、その結果、今春芽吹きが見られたというふうに聞いておりますので、これが復元されることを心から願っているところでございます。

藤木委員 お粗末な計画であったということは、事業の予算規模を見てもわかるわけですね。

 当初の基本計画では、九五年から五カ年間の事業総額が約五十三億円となっておりました。しかし、先に挙げたような事業などの大幅な見直しで約三十七億円に圧縮されました。青森県の補助事業も九八年度以降の当初計画予算が約五億円だったのに対して、計画を見直したことで約三億円にとどまり、補助率二分の一の約一億円を不用額として国に返還されております。この事態は、自然公園内での整備のあり方、とりわけ環境省の公共事業のあり方が問われるものだと思います。

 そこで、年々増額されている環境省の公共事業予算を消化するために、公園施設整備がずさんで過剰な事業になったと言われても仕方がないのではないかと思うのですが、いかがですか。

西尾政府参考人 自然公園におきます自然との触れ合いをいたしましたり、あるいは植生を復元したりいたします自然公園等の事業でございますが、これは、緑や生き物を重視した新しいタイプの公共事業として平成六年から公共事業として位置づけられました。以来、計画的、総合的に整備を実施してきたところでございまして、中には、国立公園におきます公衆トイレの整備のように、格段に快適なものとなったものもあるというふうには思っています。

 しかしながら、それまでが、質、量ともに乏しい中で、必要な事業につきましても絶対量が不足していたということがございましたものですので、公共事業になりました後、量的な面での対応に重点が置かれてしまった、その結果、質的な面が追いつかなかったというふうに反省をしておるところでございます。

 特に、奥入瀬等におきます緑のダイヤモンド事業の歩道整備につきましては、以前から過剰整備ではないかというような御指摘もございまして、平成十年、平成十一年に関係県、それから私どもの自然保護事務所に、事業の実施に当たっては、専門家や地元関係者の意見聴取を行うことを含めて、自然環境保全上遺漏なきよう配慮の指示もしたところでございます。

 したがいまして、今後、自然公園にふさわしい質の高い事業となるように、関係自治体とも協力をいたしまして、現地の自然環境や利用者にきめ細かく配慮をした、神経の行き届いた整備を行うよう努力してまいりたいと存じております。

藤木委員 こうしたことは、実は十和田湖奥入瀬地域だけのことではございません。文芸春秋では、中部山岳国立公園の立山での遊歩道の問題が指摘されておりますけれども、そのほかにも、白山・一ノ瀬地域では、オートキャンプ場構想であるとか自然林内の歩道計画が着工前に白紙に戻されておりますし、奥日光・三本松地域では、専門家の人選などの見通しの甘さから、植生復元バックヤード施設の実現が危ぶまれております。最近では、支笏洞爺地域で、基本計画案から美笛・巨木の森散策路整備が除外をされ、支笏湖温泉地区の木道での湖岸親水設備も削除したということになって、三十億円ないしは百億円とされていた事業費が二十五億円から二十六億円に縮小されております。

 そこで、大臣に伺いたいと思うんですけれども、一昨年六月環境省が、事務所長あてに専門家らの意見聴取や施行段階での配慮を文書で指示されましたが、そんなことをされても、施設づくりを優先するという態度を持っていたのでは問題は改善しないだろうというふうに私は思うんですね。ですから、今年度からは日本百名山の登山歩道の整備事業も行われることになっているわけですから、この緑のダイヤモンド計画などの轍を踏まないように、自然破壊を招くような公共事業のあり方を見直すべきだというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

川口国務大臣 文芸春秋の記事は私も読ませていただきました。自然公園等の事業は、自然環境の再生や自然との触れ合いを最も重視して推進すべきものであると思います。一部の事業について、文芸春秋に指摘を受けたような、必ずしも自然環境と十分に適合しない点があったことについては反省をするところが多いと思います。

 百名山のお話をなさいましたけれども、特に登山道は自然との触れ合いには欠かせない基幹的な施設でございます。その整備に当たっては細心の配慮が必要であると思います。この百名山の登山道整備につきましては、計画の段階から住民の方々とお話し合いをし、それから山岳会、自然保護団体等の御意見を十分に伺って慎重に進めるように事業者を指導する所存でおります。

 それから、登山道だけではなくて、自然公園施設全般につきましても、設計あるいは工法が自然生態系と適合したものになるように進化させる必要性というのを強く感じております。NGOの方々の御意見あるいは地域の専門家の方の御意見を計画に取り入れ、設計手法を高度化していったり、あるいはその施行に当たって、人手をかけた工法、技術の研究、研さん、導入といったことを通じまして、質の高い自然公園事業を実施していきたいと考えます。

藤木委員 ぜひそのように、失敗をしない事業にしていただきたいということをお願いして、質問を終わります。

五島委員長 金子哲夫君。

金子(哲)委員 社会民主党・市民連合の金子です。

 京都議定書の問題についても質問をしたいと思っておりましたけれども、午前中からいろいろと意見が出ておりますので、瀬戸内海の環境保全の問題について先に質問させていただきたいと思います。

 私にとっては非常に残念なことですけれども、五月の十六日に総合資源エネルギー調査会第一回電源開発分科会が開催をされまして、一昨年の東海村の原子力事故以来初めてと言われる原子力発電所の新規増設計画が基本計画の中に新規組み入れをされるというようなことが決定されたようであります。最終的な決定はこの分科会の答申を受けてということになりますけれども。

 そこで、環境問題にかかわって二、三お聞きをしたいと思いますが、まず最初に資源エネルギー庁の皆さんにお聞きをしたいのですが、今回のこの上関の原発問題にかかわって、開発基本計画に対する環境大臣の意見というのが五月十一日の電源開発関係府省協議会において協議をされたと聞いておりますけれども、その協議の内容と、また、五月十六日の第一回の電源開発分科会において、この環境大臣からの意見はどのように論議をされたか。この部分に限ってぜひ、特に、意見と同時に補足資料が提出をされておりますけれども、その辺も含めて、どのように協議されたかお答えをいただきたいと思います。

大井政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の電源開発関係府省協議会でございますけれども、五月十一日に開催されました。その際、環境省より、上関原子力発電所計画を組み入れた平成十三年度電源開発基本計画案について異存はない旨発言があるとともに、同時に附帯意見の表明もございました。これに対しまして経済産業省より、趣旨に沿うよう事業者を指導していくという回答を行っているところでございます。

 また、五月十六日に、総合資源エネルギー調査会電源開発分科会におきまして、事務局より平成十三年度の電源開発基本計画案の説明の際に、環境省よりいただいております附帯意見、それからこれに対します当省の回答についても御紹介をいたしました。

 分科会委員から直接環境省の附帯意見に言及するような意見等は出されておりませんでしたが、こうした環境省の附帯意見等も踏まえた上で、平成十三年度の電源開発基本計画案について、原案どおり決定することに異存はないということが同分科会において議決された、こういうことでございます。

金子(哲)委員 その際、先ほども申し上げましたけれども、二つの項目についての御意見と同時に、あわせて、平成十二年二月に当時の環境庁の長官が提出をされた環境影響調査書に対する意見というものが参考資料として提出をされておりますけれども、その中で「工事中において、新たに希少な動植物が確認された場合は、専門家の意見を聴取し、現地調査を実施した上で、これらの種の生息、生育環境に対する影響が最小限となるよう、適切な保全対策を講じること。また、その旨を評価書に記載すること。」と掲載をされておりますけれども、このことも当然含んで今後対処されるということになると思いますが、いいですね。

佐々木政府参考人 お答えいたします。

 今先生の御指摘のとおりでございまして、今後、事業者でございます中国電力は、環境影響評価法及び電気事業法に基づきまして環境影響評価書を届け出することになります。

 当省といたしましては、環境庁の種々の御意見につきまして、中国電力が環境影響評価書に適切に反映するように指導するとともに、工事中及び運転開始後に確実な環境保全措置及び適切なモニタリングを実施するように中国電力を指導してまいる所存でございます。

金子(哲)委員 そのことは、中国電力が事業者として新しいものを見つけたということだけでなくて、当然のこととして、自治体を含めて、住民もしくは学界の皆さん、そういう人たちが発見をされた場合についても、当然同等の措置がとられる、そういう指導をされるということですね。

佐々木政府参考人 今後、工事に際して、先生の御指摘のような貴重な動植物等が見つかった場合には、そのように指導してまいりたいと考えております。

金子(哲)委員 ありがとうございました。

 それでは、この調査中間報告書以外にも新種が発見をされていることがもう既に明らかになっておりますので、その点は、また改めてそれらの資料を提出して、調査方をしっかりとやっていただくように要望したいと思います。

 それでは、これから環境省にお伺いをしたいと思います。

 今報告をいただきましたけれども、経済産業大臣に提出をされた環境大臣の意見についてでありますけれども、改めて、環境省、環境大臣にもお聞きをしたいのであります。

 二つの項目が提起をされた。しかし残念ながら、その最初にある結論は、異存はないということで、非常に重要な事項を含みながら異存はないということが第一に上がってくるという不思議な大臣の意見のようであります。しかも、膨大な参考資料、先ほど申し上げましたような平成十二年二月の環境大臣の意見まで付してつけるということであれば、かなりこの問題は重要だと私は認識しておりますけれども、その点について、どの程度の認識をお持ちなのかお聞かせをいただきたいと思います。

中川政府参考人 上関原発の事業の環境影響調査書でございますが、これは環境影響評価法に規定する準備書に相当するものでございまして、環境影響評価法の施行前に公示されたものではございますけれども、環境影響評価法の附則に基づきまして、環境影響評価法に基づき実施されているということでございます。

 環境省といたしましては、各種のこういった事業におきまして環境影響評価を行っていくということが極めて重要であるという認識を従来から持っておりまして、環境省におきましては、この調査書を審査いたしまして、平成十二年の二月に大臣の意見を申し上げたわけでございます。そして事業者は、この意見を踏まえまして調査を実施した上、平成十二年の十月に中間報告を提出いたしました。

 今回の環境大臣の意見は、これは電源開発促進法に基づく経済産業大臣からの協議に対する意見ということで、五月の十一日に申し上げたわけでございます。この意見を申し上げるに際しましては、特に生態学会の意見などいろいろ参考にしながら適切な意見を述べて、いろいろなお願いを申し上げたところでございます。

金子(哲)委員 今、答弁の中でも日本生態学会という言葉が出ましたけれども、今回の見解に対して、生態学会の皆さんの意見が必ずしも十分に反映されているとは到底思えないわけですね。

 といいますのは、日本生態学会は、この間、この問題について二度にわたって大会決議をされた。私どもが聞くところによると、生態学会が同じ問題について二度にわたって決議をされるということは異例なことだというふうにお聞きをしております。それから、日本ベントス学会も昨年の十二月にこの問題にかかわって学会としての見解をまとめられたようですけれども、その中に大きく二つの問題があると思うんです。

 一つは、調査方法のずさんさについて、これは、日本生態学会の皆さんからは五項目にわたって指摘がされております。同時に、その文書には書かれておりませんけれども、附属の資料等で書かれておりますけれども、あの海域に対する評価の問題ですね。

 このことは、実は今回の環境省の、環境大臣の意見の中では、これはアセス法の限界かもわかりませんけれども、いわば調査報告書に対して意見を述べるだけという感じになっておりますから、実際にその調査によって強調されているあの地域の豊かな自然といいますか、その自然環境にかかわる問題について、残念ながら環境省は、今回の上関原発のこの諮問に対して何ら見解を持つことができなかったというふうに思うわけですね、アセス法の調査中間報告に対しては一定の見解を持たれたけれども。そこに日本生態学会の皆さんの決議の中の意味というのがあるんですけれども、その辺についてはどのようにお考えでしょうか。

中川政府参考人 日本生態学会の田川会長には、私、四月十九日にお目にかかりました。アセスの担当室長を初め担当者みんなで、会長以下お越しになった方のお話を、写真なども見ていろいろな角度からのお話を伺って大変参考になったところでございます。

 それで、この生態学会の方から御指摘のございましたハヤブサ、スナメリ、カクメイ科の貝等につきましては、影響の予測に不確実性が伴うので、今回の意見の中で、専門家の意見を聴取しながら、事後調査や環境監視調査を実施すること、特に環境に配慮する必要が生じた場合には適切な措置を講じること、さらに、環境影響の程度が著しいことが明らかになった場合の対応方針や結果の公表方法等を明らかにして評価書に記載することなどを求めたわけでございます。

 また、ハヤブサにつきましては、工事中の発破の影響等が具体的に考えられますことから、大きな音を発生する工事の実施に当たっての注意点を特に指摘いたしました。

 こうした意見を出すに当たりまして、生態学会の方からいろいろ御意見をいただきました瀬戸内海の自然環境の保全ということも十分に念頭に置きながらこうした意見を申し上げたところでございます。

金子(哲)委員 わかりました。

 ということは、この意見書の中の二項は、学会から、スナメリ等を含めて非常に重要な地域だということも指摘を受けた上で、そのことも含めて書かれているというふうに今の答弁はお聞きをしましたが、それでいいわけですね。短く。

中川政府参考人 もちろん、中国電力からのいろいろな資料もいただいておりますし、それから、生態学会の会長さん初め生態学会の先生方の御意見も十分に参考にさせていただいて申し上げたところでございます。

金子(哲)委員 それでは、二、三の種について、短くで結構ですけれども、一応確認したいと思います。

 スナメリクジラについてですけれども、現在の瀬戸内海の生育状況はどういう状況になっていますか。

中川政府参考人 スナメリにつきましては、生態学会の方からは、スナメリのえさの一部に対する温排水の影響があるという御指摘をいただいております。

 これが今度の意見にどういうふうになったかということかと思いますが、スナメリ及びそのえとなるアジとかコノシロといった魚の生息に適する水温の範囲は大きいことが知られております。水産庁の資料にそういったことが書かれているわけでございますが。したがいまして、温排水がスナメリに与える影響は小さいというふうに現在のところ考えたわけでございます。

 いずれにしても、こういった問題につきましては、影響の予測に不確実性が伴いますので、事後調査などを適切に実施して、必要があれば適切な対応をとっていただくようにお願いをしているところでございます。

金子(哲)委員 私が聞いたのは、違うことを聞いたのですが、まあいいです、それも大事なことですから。

 今、瀬戸内海のスナメリの状況というのは、二十年前と比べて一五%ぐらいの生育状況になっているわけですね。減っているわけです。このことは前に一度この委員会でもお話をしたことがあると思いますけれども。

 その上に、このスナメリクジラを長年研究していらっしゃる粕谷元三重大学教授の話によれば、現在、瀬戸内海で繁殖が確認されているのはこの建設予定地周辺の海域のみということが言われているわけですね。

 私が一番言いたかったのは、温排水の影響もそうですけれども、この地域というのはスナメリクジラにとっていわば瀬戸内海の最後の生息地域と言っていい状況にまでなっているということです。これは広島県の海域にも回遊していましたが、今やゼロです。そういう海域だという位置づけをきっちりと押さえてほしいということですよ、温排水の影響もですけれども。そういう認識があるかないかということを聞いているんです。

中川政府参考人 環境省では、平成九年、十年度に、地域住民の環境保全意識の高揚を目的に、スナメリを瀬戸内海における環境保全のシンボルとして位置づけまして、住民参加のもと、スナメリ発見情報の収集などの取り組みを実施いたしました。この結果、平成九年、十年度の二年間におきまして、瀬戸内海全体で二百十五件、上関周辺海域におきまして五件の発見情報が寄せられたところでございます。

 また、瀬戸内海を含む全国の海域で、ウミガメとかアザラシ類等の生息状況について実地調査をしておりますが、その一環として得られたスナメリに関するデータも現在取りまとめをしているという状況でございます。

金子(哲)委員 この問題で余り時間をとりたくないんですけれども、そういう報告の仕方というのは私は欺瞞だと思いますよ。二百十五件報告があった、そして五件だ、そうすると二百十五分の五だと。そういうことでなくて、個体数としてどれぐらい生息しているかということが非常に重要な意味を持つわけで、そういう調査の仕方なんか何の役にも立たないですよ。一頭しか泳がないところと百頭泳ぐところと、発見件数は一件ずつでしょう。だから、ちゃんとした調査をやってほしいと思うんですよ、それは後でお願いしますけれども。

 それから、ナメクジウオについてはどうですか。ナメクジウオの状況は、例えば私が住んでおります広島県は、三原市沖に国の天然記念物に指定されている生息地がありますけれども、一九九一年の三原市の教育委員会の調査でも、もう絶滅寸前ですね。あれからもう十年ですから、今もうほぼ絶滅の状態です。

 これに対して、日本の浅い海をずっと調べておられる先生から見て、海洋汚染が非常に進んでナメクジウオは絶滅状態にあるけれども、こんなにたくさん、その方の表現をかりれば、ざくざくとナメクジウオがいる海は初めてだ、瀬戸内海で唯一のナメクジウオの健全な産地だと。こういうのは日本では極めてまれな状況という指摘がされておりますけれども、そのことについてはどのようにお考えですか。

中川政府参考人 ナメクジウオにつきましては、事業者の中間報告書では、調査の結果、周辺海域の砂の海底に広く分布することが報告されております。

 今回の環境大臣の意見で実施を求めております環境監視調査には、ナメクジウオも含めてお願いをしているところでございます。

金子(哲)委員 それから、昨年の二月のこの意見書の中には、カクメイ科のことが貝類の中で記載をされておりますけれども、非常に貴重なものかどうかという判断のときに、例えば環境省のレッドデータブックというのがありますけれども、実は、基本的には今までのものはほとんど陸上の生物を中心にしてそういう対象がやられているわけですね。いわば海底とか水生の無脊椎の動物などはほとんどその評価の対象に挙がっていないものですから、例えば絶滅種かどうかという評価になると非常に少ないわけです。しかし、その海域を調査された専門家の人たちから見ると、あの埋立予定地、建設予定地には非常に貴重な種がたくさん存在している、そういう評価が相次いで出されているわけです。

 つまり、今までの絶滅種、例えば、これは保存しなければならない大事な種だというような場合はレッドデータブックなんかが参考にされると思いますけれども、今回の場合は、いわば海底生物、貝類とかゴカイ類とかそういうものが主なわけですから、そのことだけに照らしてみると実は当てはまらない。しかし、今の海洋全体の生育状況から見ると、この海底にこういうものが今なおこれだけの状態で生息しているというのは非常に貴重なところだというのが専門家の皆さんの意見なんですね。

 そのことについては、カクメイ科というものの調査をしなさいよという二月に出された中に、それも学会からの御意見があって書かれたというふうに私は聞いておりますけれども、そういうことであれば、非常に重要だという認識が起きたと思います。そういうことであれば、日本生態学会などの専門家の人たちの意見をこれからの調査活動の中にもっと積極的に受け入れる必要があると思うんですけれども、その点についてはどうでしょうか。

    〔委員長退席、小林(守)委員長代理着席〕

中川政府参考人 今先生から御指摘のありましたカクメイ科の貝の新種があるというお話は、田川会長から直接私も伺いまして、写真も見せていただきまして大変興味深くお話を伺ったところでございます。

 この点につきましても、そういった状況を十分に勘案しまして、事後調査の対象としてカクメイ科の貝の生息状況などについてもお願いをして、それで今後、状況の変化が生じて必要な措置をとらなければならない場合には適切な措置を講じることをお願いいたしております。

 ただ、環境影響評価の調査といたしましては、現在は先生御指摘のレッドデータブックを一つの目安にしておりまして、カクメイ科の貝の種レベルの同定というのは世界でも数名の専門家のみが可能なものだと伺っておりまして、環境影響評価の調査としてそこまでの実施を求めることはなかなか難しいと思いますが、私どもとしては、環境大臣の意見を述べるに当たりまして、生態学会の御意見も十分に参考にさせていただいて、先ほど申し上げたような内容としたところでございます。

金子(哲)委員 これからはぜひ大臣にお答えをいただきたいと思いますけれども、確かに今のアセス法の中で、そういう新種が、ある特定の専門家の先生方でないとなかなかわからないために、事業者が行う調査では十分その中に盛り込めない問題が確かにあると思います。

 しかし、今回のこの上関の原発にかかわっては、例えば、日本生態学会の皆さんは、私も一度一緒に同行したのですけれども、昨年二度、そしてことしも五月の連休に調査をされたようであります。その調査のたびに新しい種が発見をされる、貴重な種が発見をされるという状況が出ております。ですから、そのたびにそれを調査する、事業者に対して調査ということも難しいと思いますけれども。

 大事なことは、国は瀬戸内海の環境保全特別措置法という立派な法律をつくって、その中で特に、瀬戸内海のこの恵沢を国民がひとしく享受して、後代の国民に継承すべきものであることにかんがみて、瀬戸内海の環境保全上有効な施策の実施を推進するため、瀬戸内海の水質の保全、自然景観の保全等に関して基本計画をつくらなければならないということをうたっているわけですね。つまり、瀬戸内海というのはそういう豊かなところだったと。しかし、残念ながら今の状況は、その当時から比べますとはるかに後退をしております。

 例えば、自然海岸の状況を見ても、自然海岸の保全度は瀬戸内海海域全域でもう二一%ぐらいしか残っていない。ところがこの海岸、海域は、自然状態のままで七五%が保全されている状況があるわけですね。

 そういう海域の中に、先ほど言いましたようにスナメリも非常に回遊している。これは前に一度大臣にも、地元の新聞社の写真をぜひ見ていただきたいということをお話ししましたけれども、親子のスナメリが回遊をする。そして、貴重種が次々と出てくる。いわば破壊されていった瀬戸内海の中で唯一残された、瀬戸内海のかつての自然の状態を残している地域が、これから原発が建設されようとしているあの地域だということになるわけでして、そういう意味では、原発のことはとりあえずおいても、いわば瀬戸内海の自然環境を保全するという立場からも、ある専門家からいえば全人類的な、国際的価値を持つぐらいの海岸、海底の状態だということを指摘されているわけですから、その点に着目をして調査するということがあってもいいのではないかと思うんですが、どうでしょうか。

川口国務大臣 瀬戸内海の美しさというのは、この前、本を読んでおりましたら、小西さんという方が、昔、その美しさに着目をして、戦前から国立公園化ということを考え、国立公園として指定をされたというふうに書いてございまして、大変にその美しさは昔から日本人が着目をしているところ、注目をしているところだと思います。

 瀬戸内海環境保全特別措置法におきましても、ただいま委員がおっしゃられましたように、景勝地である、それから貴重な漁業資源の宝庫である、国民がその恵沢をひとしく享受すべきものであるというふうに三条に規定をされているわけです。

 瀬戸内海の環境保全の重要性にかんがみまして、昨年の十二月に瀬戸内海環境保全基本計画を変更いたしまして、規制を中心とする保全型の施策の充実に加えまして、失われた良好な環境を回復させる施策の展開、あるいは地方公共団体、住民、事業者等の幅広い連携と参加の推進を定めたということでございます。

 そのように美しい瀬戸内海でございまして、重要性は認識をいたしております。自然環境保全基礎調査というのを環境省はやっておりまして、その中で、瀬戸内海の海岸の改変状況や陸域の植生などについては調査を行ってきております。

 環境省といたしましては、今後とも、この調査の充実等によりまして、瀬戸内海の自然環境の保全に努めていきたいと思っておりますけれども、アセス法の観点におきましては、事業者がみずからの事業の環境への影響という観点から調査をするということになりまして、環境省といたしましては、その調査に対しまして適切な意見を言っていくということで対処をいたしておりますし、今後ともそういうことでございます。

    〔小林(守)委員長代理退席、委員長着席〕

金子(哲)委員 時間がもう来ておりますが、原委員の時間もちょっといただいて続けて質問しますけれども、私がお聞きをしたのは、一般的な話をしているのではなくて、環境アセス法によることでなくて、あそこの、あの地域の海域の自然がいかに豊かで大切なものかという調査を環境省はやるべきではないかということを申し上げているわけです。小泉総理も、自然の姿をきちっと子孫に残したい、恵み豊かな環境を確実に引き継ぎ、自然と共生可能な社会をつくる、こうおっしゃっているわけですから。

 言われたように、一度壊してしまえば、この環境を復元するというのは、何か自然環境の再生・修復のための事業を推進と言われておりますが、それより大事なことは、今残された貴重な自然環境状況、自然海岸というものを残すことに努力をすることこそ大切なことで、そういうスタンスに環境省が変わってほしい。

 ですから、私が最初言いましたように、上関の原発立地ととりあえず置いて、たまたまあそこにそのことが起きたためにいろいろな人が注目をして調査をし始めた。そうしたら、非常に豊かな、楽園とも言われる瀬戸内海最後の自然環境が残された地域だということがわかったのだから、そうであれば、瀬戸内海の重要な自然環境を残すという立場から、環境省は独自にそういう政策や調査をやられることが必要ではないかということを申し上げているわけです。その点についてはどうですか。そんなありきたりの答弁を今求めているわけではないのです、三十分間も質問をして。

川口国務大臣 先ほど申しましたように、環境省は今まで、自然環境保全基礎調査の一環として、瀬戸内海の海岸の改変状況ですとか陸域の植生などの調査を行ってきているところでございます。

 今後とも、この調査の充実等によりまして、瀬戸内海の自然環境の保全には努めていきたいというふうに考えているということは、先ほど申し上げたとおりでございます。

金子(哲)委員 いずれにしても、上関の原発計画もこれから準備段階に入るようでありますから、もう時間的にありませんから、一般的な調査でなくて、緊急にあの地域を早く調査を、あそこからでも始めていただくことを要望して、私の質問を終わります。

五島委員長 原陽子さん。

原委員 社民党の原陽子です。

 時間が余り残されておりませんので短目に、大臣に簡単に一つだけ質問をさせていただきたいというふうに思います。

 今回は、大気中のダイオキシン濃度の測定方法について質問をさせていただきたいと思います。

 今、環境省では、こうしたダイオキシン類に係る大気環境調査マニュアルというものを作成して、このマニュアルに基づいて各自治体に、大気中のダイオキシン濃度を測定してくださいと指導しているということだそうです。そして、このマニュアルによりますと、大気中のダイオキシン濃度をはかる際には、そこにある空気を集めてその中のダイオキシン濃度をはかるという方法をとっているというふうに書かれています。

 きのう環境省の方にお聞きをしましたら、最低でも年に二回、夏と冬、あとは春夏秋冬の年四回にどこか一日、二十四時間そこの機械から空気をずっと吸い込んで、そしてそれを分析して、その四回の平均が年平均というふうになっている、そうした測定方法をとっているということをお聞きしました。

 しかし、この方法は、非常にお金も手間もかかるということなので、多くの自治体では、やはり夏と冬の年二回の方法、また、あと関心が高い自治体では年四回という方法をとっているそうなのですが、東京都ではそれでは不十分と考えて、月一回こうしたサンプリングというかダイオキシンの調査を始めたと聞いております。

 つまり、そこの空気を調査するというのは、その日の風向きとか風力とか、あと天気とか気候とかいろいろな条件に非常に左右されるものだというふうに私は感じています。

 そして、そのサンプリングの方法の中に、先日大臣にお渡しした資料があると思いますが、サンプリングのときに、松葉を使ってサンプリングをするという方法がある。これは住民とか消費者の方々が自主的に行った研究なんですが、こうした立派な冊子で研究報告というものができております。例えばこの部屋の中の空気のダイオキシン濃度をはかろうというときに、この辺の空気をつかむよりかは、そこにずっと生えている木の葉っぱから、その葉っぱはずっとそこの空気を吸って生きているわけだから、そこの葉っぱからそのダイオキシン濃度をはかるというやり方の方が私は正確ではないかなというふうに思っております。

 もちろん、これは大気環境なので、大気のことは大気ではかれというような考えなのかもしれませんが、例えば水のことを調べるときに、そこの貝とかイカとかを調べたりする方法もある中で、大気の中のダイオキシン濃度をはかるというそのサンプリングの方法に、空気だけではなくて、そこに生えている植物を参考にしたサンプリング方法というものをぜひ環境省にも検討していただきたいというふうに私は思うのですが、いかがでしょうか。大臣、お願いします。

川口国務大臣 委員おっしゃいますように、松葉というのは身近なところにありまして、松葉を利用したダイオキシン汚染の調査というのはだれもが参加できてわかりやすいということで、国民の皆様のダイオキシン問題についての関心を深めるという意味では、いただいた資料は大変に興味深いというふうに思っております。

 ただ、そこの結果が、数値として科学的に大気中のダイオキシンの濃度をはかるということから代替可能なものであるかどうかということについては、科学的な側面からの今後の研究課題が幾つかあるというふうに感じております。例えば松葉が、大気中からだけではない、例えば根から吸収をしたダイオキシンを含んでいる可能性があるかどうかといったようなことであると思います。

 ある調査によりますと、ダイオキシンにさまざまな異性体のパターンというのがあるそうでございまして、塩素の数といいますか量といいますか、数でしょうね、どれぐらい違うかということによってさまざまな異性体があるわけでございますけれども、その異性体のパターンを、大気から採取したものと松葉で調べたものと比較をしますと差があるということも出ておりますので、そういった観点も含めまして、関係者の方々が、この松葉の調査についてまだ解明されなければいけない科学的な課題を解明していかれるということを期待させていただいております。

原委員 先ほど大臣がおっしゃったことに、住民参加でできるというところが私も非常に住民の理解も得やすいというふうに思っていますので、この松葉調査、このサンプリングのマニュアルに入ったらいいなというふうに私は希望しますので、ぜひそうした大気を調べた場合と松葉を使った場合の相対関係等々を研究、お調べになっていっていただきたいなというふうに思います。

 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

五島委員長 次回は、来る二十五日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五十六分散会




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