衆議院

メインへスキップ



第13号 平成15年6月6日(金曜日)

会議録本文へ
平成十五年六月六日(金曜日)
    午前九時三十分開議
 出席委員
   委員長 松本  龍君
   理事 稲葉 大和君 理事 田村 憲久君
   理事 西野あきら君 理事 柳本 卓治君
   理事 近藤 昭一君 理事 牧  義夫君
   理事 田端 正広君 理事 高橋 嘉信君
      荒巻 隆三君    岩屋  毅君
      小渕 優子君    金子 恭之君
      木村 太郎君    阪上 善秀君
      鈴木 恒夫君    鳩山 邦夫君
      菱田 嘉明君    星野 行男君
      三ッ林隆志君    水野 賢一君
      望月 義夫君    山本 公一君
      小林  守君    小宮山洋子君
      鮫島 宗明君    長浜 博行君
      青山 二三君    中井  洽君
      藤木 洋子君    中川 智子君
    …………………………………
   環境大臣         鈴木 俊一君
   環境副大臣        弘友 和夫君
   環境大臣政務官      望月 義夫君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局国
   際社会協力部長)     石川  薫君
   政府参考人
   (厚生労働省健康局長)  高原 亮治君
   政府参考人
   (厚生労働省医薬局食品保
   健部長)         遠藤  明君
   政府参考人
   (農林水産省大臣官房審議
   官)           坂野 雅敏君
   政府参考人
   (農林水産省生産局畜産部
   長)           松原 謙一君
   政府参考人
   (農林水産技術会議事務局
   長)           石原 一郎君
   政府参考人
   (環境省総合環境政策局環
   境保健部長)       南川 秀樹君
   政府参考人
   (環境省地球環境局長)  岡澤 和好君
   政府参考人
   (環境省自然環境局長)  岩尾總一郎君
   環境委員会専門員     藤井 忠義君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月六日
 辞任         補欠選任
  鈴木 恒夫君     岩屋  毅君
  野田  毅君     金子 恭之君
  松浪 健太君     荒巻 隆三君
同日
 辞任         補欠選任
  荒巻 隆三君     松浪 健太君
  岩屋  毅君     鈴木 恒夫君
  金子 恭之君     野田  毅君
    ―――――――――――――
六月六日
 自動車排出ガスによる大気汚染公害被害者に対する救済制度の創設に関する請願(金田誠一君紹介)(第二九二三号)
 同(小林守君紹介)(第二九二四号)
 同(佐藤謙一郎君紹介)(第二九二五号)
 同(中川智子君紹介)(第三〇〇三号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律案(内閣提出第一一四号)(参議院送付)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――
松本委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、参議院送付、遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として外務省総合外交政策局国際社会協力部長石川薫君、厚生労働省健康局長高原亮治君、厚生労働省医薬局食品保健部長遠藤明君、農林水産省大臣官房審議官坂野雅敏君、農林水産省生産局畜産部長松原謙一君、農林水産技術会議事務局長石原一郎君、環境省総合環境政策局環境保健部長南川秀樹君、環境省地球環境局長岡澤和好君及び環境省自然環境局長岩尾總一郎君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
松本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決まりました。
    ―――――――――――――
松本委員長 これより政府に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉大和君。
稲葉委員 おはようございます。自由民主党の稲葉大和であります。
 この法案について、まず、この法案に対する背景あるいは経緯、そしてまた意義等について、若干お尋ねしたいと思っております。
 生物多様性条約カルタヘナ議定書が二〇〇〇年に採択され、そして、我が国におきましても、この議定書に対しましての整備を整えるため、この遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律案として今議事を進めているところでありますが、先般、参考人四人の先生方の御意見を承りましたが、承れば承るほど逆に、私自身が頭が悪いせいか混乱してきている、これが偽らざる心境であります。
 したがって、ぜひ岩尾局長さんから、先ほど申し上げました、この法案に対しましての背景あるいは経緯、そして、この法案を成立させる意義、目的、こういうところについて御説明いただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
岩尾政府参考人 新しい技術によって遺伝子組み換え生物が出てまいりますと、その組み換えの内容によっては生物の多様性というものに影響を及ぼすというおそれが指摘されました。その規制に関しては国際的な枠組みが必要であるということで二〇〇〇年にカルタヘナ議定書が採択されたところでございます。
 我が国としても、遺伝子組み換え生物の規制に向けた国際的な取り組みが重要であるということで、昨年、小泉総理が地球環境サミットに向けて小泉構想を発表いたしましたが、この中でも議定書の早期締結に努力するということを発表しております。議定書の発効、年内にも見込まれております。我が国としても速やかにその実施体制を確保する必要がありますので、本法案を提出させていただきました。この法律による遺伝子組み換え生物の適正な規制を通じて、生物多様性の確保を図ってまいりたいと考えておるところでございます。
稲葉委員 この法案を検討しますと、またいろいろ輸出国あるいは輸入国に対しましての縛りがかけられている、そういうふうに読み取れるわけであります。しかし、その反面、参考人の方々の御意見の中にありましたが、確かに、これからの新しい科学技術の研究、そしてその進歩に伴いまして、まだまだ未知の世界でもあるということも否定できないところだと考えています。したがって、これから先、輸出国がしていかなければならないこと、また輸入国が、特にそのリスク評価、こういう面においてもきちんとしていきませんと、生態系に混乱を来すことは必定だと思っております。
 この点について、リスクの評価あるいはモニタリング調査、並びにさまざまな得られた情報を公開しなければならないんじゃないか、こういう御意見も拝聴したわけであって、こういった点について、確実な保証といいますか、大丈夫だといった安心感を我々にぜひ与えていただきたいものだ、そう思っております。お願いします。
岩尾政府参考人 リスク評価につきましては、遺伝子組み換え生物等を輸入して国内の環境中で使用する事業者に対し、この法律第四条で、申請書の中にリスク評価書を主務大臣に提出していただくこととしております。主務大臣は、この評価書に基づき、学識経験者の意見を聞いた上で、最新の科学的知見に基づいて承認するか否かを検討することにしております。
 また、承認を行う際には、内容に応じて情報を公開しパブリックコメントを求めることとしています。さまざまな方々の知見を生かしていきたいと考えております。
 さらに、承認時には予想できなかった環境の変化などに対応するため、この法律第六条二項におきましては、承認取得者に対してデータの提出を求めることができるように措置しております。
 このような規定、遺伝子組み換え生物による影響を受ける可能性のある地点や種に関する環境モニタリングなどを通じまして、モニタリングに努めてまいりたいと考えております。
 以上です。
稲葉委員 伺うところによりますと、今、議定書、四十八カ国が締約しておられるそうなんですが、締約国が五十に達しますと、それから九十日を経て、カルタヘナ議定書が発効する、こういうふうに聞いています。我が国もこれに向けてことしじゅうに、そういう姿勢を持っておられるようであります。
 先般、鮫島先生でしたでしょうか、参考人の方々にも質問された、肝心なアメリカが前向きでない、こういった現実に対して、我々、日本国政府としてやはり、特に環境、京都議定書の作成国でもある我が国にしてみれば、我が国がこれに参加することはもちろんのこと、参加していない大国に対してもその参加を呼びかけるような、そういう働きをしていただきたいと思いますが、局長あるいは、指定しませんでしたが、もし大臣から御発言があったら、よろしくお願い申し上げます。
鈴木国務大臣 この問題を実効ならしめるためにも、今先生が御指摘のように、アメリカのこの締結、加盟ということが大切であると思っております。カルタヘナ議定書の中にも、締約国は非締約国に対して加盟を促すという趣旨の条項もございますので、今後、いろいろな機会をとらまえて、この批准に向けてアメリカに対する働きかけを進めてまいりたいと思っております。
稲葉委員 ぜひよろしくお願いします。
 きょうの議題と若干外れることは大変申しわけないんですが、実は、今大変問題になっております、茨城県の神栖町というところで旧日本軍が使用していたと思われる砒素が地下水に混入したんじゃないか、そしてその地下水を飲用した住民の方々に大きな健康被害が出ている。この案件について若干の時間をいただいて質問させていただこうと思いますが、よろしくお願いします。
 この事件について、健康被害を受けられた方々が、おおよそ重症で十八名、まだこの後の健康診断によって被害に遭われた方があるいはふえてくるやもしれない、こういった現状におきまして、環境省がおととい四日、官房長官に対しまして、あるいは大臣自身が記者会見されて、健康被害に遭われた方々に対する救済措置を講じられるという、大変フットワークのいい、珍しいと言っては与党ではいけないのかもしれませんが、こういったことについて、中身について、できれば具体的に、しかも、しかしまた簡潔に、大臣からお話を聞きたいと思いますが、よろしくお願いします。
鈴木国務大臣 神栖町におけます汚染井戸水による健康被害の問題でありますが、これはまだ原因が明らかになっていないわけであります。しかしながら、当地の地歴でありますとか、また出てまいりましたジフェニルアルシン酸というものが自然界には存在しない物質であるということを考えますと、旧軍の毒ガスとの関係が深く考えられるわけであります。
 今、この原因究明、これに全力を挙げているところでありますが、この原因究明を待つことなしに、これと並行して、現に健康被害を受けている方がおられるということでございますので、そうした方々に対して、ジフェニルアルシン酸の暴露による症候及び病態の解明を行って、これら暴露された方々の健康不安の解消等に資することを目的として今回の措置を決定したわけであります。
 この間、稲葉先生には、自由民主党の環境部会長として現地にもおいでをいただきまして、実際に被害に遭われた方とも懇談をしていただき、またその後部会として取りまとめもいただき、政府にも申し出をいただいたところであります。
 私どもといたしましては、その前に弘友副大臣のところに被害者の方々がおいでになって要望書も手渡されているわけでありますので、こういう被害者の要望、また与党でまとめられた申し入れ、さらには地元の要望、そういうものも踏まえて今回こうした内容を取りまとめたわけであります。
 具体的には、原因物質と考えられております有機砒素化合物による健康被害の知見が特に乏しいことを踏まえまして、その暴露が確認された方々に対しまして、定期的な健康診査の実施、医療費の自己負担分の公費負担、それから通院で月額一万五千円、入院で月額二万五千円の療養手当の支給をすることといたしております。
 さらにまた、特に有機砒素化合物に著しく暴露したと認められるいわゆるA井戸の水を飲用していた方につきましては、集中的な健康管理調査に協力していただく中で、健康管理調査費用として月額二万円を三年間支給するとともに、病歴や治療歴等に関する調査への協力金として、入院歴のある方については七十万円、そうでない方には三十万円を初年度に支給することといたしております。
稲葉委員 御承知のように、まだ原因結果の因果関係が定まっていないのが現在なんですが、こういった現在にあって、しかし、環境省ないし国が被害を受けられた方々に対しての支援をする、こういったことが大変難しいとされていました。
 しかし、これに対して今案が出されたわけであって、特に鈴木大臣がイニシアチブをとられたところ、あるいは環境省の方々が知恵を絞られたところ、こういう点がございましたらぜひPRしてください。
鈴木国務大臣 まず、先ほど申し上げましたとおり、原因究明はまだ明確でないわけでありますけれども、しかし、それを待たずに、それと並行して、現にある健康被害の方に支援を差し伸べるということで、まずこれは早急に、急いでやるということが重要であるという思いでそのような指示をしたところであります。内閣官房からも二週間以内に、そういう指示もございましたので、先ほど申し上げたような成案を得たわけであります。時間がかからないようにということが大切だと思いましたので、四日の午後、早速担当者を現地に派遣いたしまして、緊急対策につきまして直接住民の皆様方に説明を行ったところであります。
 この緊急対応策の取りまとめに当たりましては、特に、住民の皆様の立場に立ちまして、効果的な対策の早急な実施により健康不安の解消ができるような中身とするようにという指示を私、いたしたところでありますが、これは、いまだ解明されていないジフェニルアルシン酸の健康影響の解明に早急に取り組むこと、また、特に汚染の著しい井戸水の飲用に対する治療歴、入院歴を含む集中的な調査事業を実施すること等において、そうした指示や環境省の努力があらわれていると考えているところであります。
 時間を置かずにということでございまして、本日午後四時から今回の緊急支援策に基づく専門家による検討会を設置いたしまして、早速今後の具体的な措置を早急に実施してまいりたいと思っております。
稲葉委員 大分時間が迫ってきましたのでちょっと質問をはしょりますが、原因結果がはっきりしていない状況ではありますが、かなりの可能性をもって旧日本軍の毒ガスによるものではないかと想像されています。
 これからも各地でこういった健康被害の案件が出現しないとも限らない、あるいは出現するのではないか、こう思われますが、今後こういった問題が発生した場合には、同じようにこういった救済措置を講ずるのか。あるいは、私たちは、疑わしきはまず被害に遭われた方々の救済をという観点で環境省にお願いしたわけでありますが、未然防止の観点から法的措置を講じられるような、そういうお気持ちがあるのかどうか。
 また、今回立入検査にかなり時間を要したとも承っています。所有者が承諾されなければなかなか立入検査もできない、こういったジレンマもおありなさったと思いますが、この点について、簡単に心構えを、そして立入検査について新たな措置、こういう点についても少し触れていただきたいと思います。
鈴木国務大臣 今後の未然防止をどう進めるかということでございますが、その対応のやはり基本となりますのは、昭和四十八年に行いました旧軍毒ガス弾等の全国調査、これのフォローアップをしっかりとやっていくということであろうか、そういうふうに思っております。
 これにつきましても、環境省が中心となって行うことになっているわけでありますが、現段階の情報について、可能な限り収集、整理を行う予定であります。
 具体的には、関係省庁それから都道府県等と連携をとって、当時の情報を多く有していると言われておりますアメリカでの調査、これも今月中に職員を派遣することにしておりますが、こうしたことを通じまして取りまとめを行い、秋ごろに公表したいと思っております。
 そして、今後の未然防止ということでありますが、こうして得られました最新の情報をまず集める、整理をするということが基本であると思います。その情報の上に立って、未然防止のためにはどういうことをしたらいいのか、どういうことができるのか、そういう未然防止の観点からの方策を幅広く検討してまいりたいと思っております。
 また、先生から今回、立入調査がなかなか進まなかったということでございますけれども、この立入調査の調整がスムーズに行われなかったということが調査に時間を要したということでございまして、大変残念なことである、そのように思っております。
 先ほど申し上げました未然防止の観点から、今後、迅速な原因究明のために立ち入りを含めた調査を行う必要性が出てくると思いますが、その手法につきまして、御指摘の点も含めて検討を急ぎたいと思っております。
稲葉委員 おおむね、今回の措置につきましては被害に遭われた方々も納得してくださっていると伺いますが、しかし、やはり七歳あるいは一歳ちょっとの幼児の方もおられるわけで、この幼児に対しましては、三年という年限を切らずに、またこれから先の健康回復状態もにらみ合わせながら、幅広い、柔軟な対応をぜひとっていただきたいと思っております。
 次に、ちょっと時間が迫ってきましたが、厚生労働省、お願いします。
 井戸水について、この井戸水の検査は、飲用される方の自主的な申告によって検査される、こう聞いています。その検査の内容についても段階があって、また金額も、砒素まで調べるとなると結構かさばる、こういうふうに聞いています。
 通常の個人使用の井戸水であるならばともかく、今回のように、賃貸し人が賃借り人に対して、井戸を掘って、それを飲用に供していたというような事例については、やはり何らかの法的な縛りをかけて、少なくとも個人使用でない、第三者に使用させる目的の井戸については、多少の検査の義務化を考えてみられたらいかがなものかと思いますが、このあたりは、高原局長、いかがでしょうか。
高原政府参考人 委員御指摘のとおり、百人以上のものは水道法、それから、多くの場合、それ以下のものは条例によってやっております。そういうふうな小規模の、アパート等で用いられているようなものにつきましては、法的なものではなくて、画一的にやっておりません。
 それで、飲用井戸の衛生対策の徹底についてということで、要綱ベースで指導がなされているということでございます。
 しかしながら、一つは、根本的な問題は、神栖町の水道普及率は六三・五%という状況もあるわけでございまして、厚生労働省といたしましても、上水道事業の第二次拡張等に対しまして国庫補助を行っているところでございますが、地元の要望も踏まえながら、必要な整備が図られるよう、必要な補助金の確保に努力してまいりたいと考えております。
 また、飲用水の水質検査の徹底につきましては、なお一層努力してまいりたいと考えております。
稲葉委員 時間が来ましたから終わりますが、要するに、被害に遭われた方々は、自分の存知しないところ、関知しないところ、まさか自分が飲んでいる井戸水にああいった有機砒素が混入しているということはつゆ知らず、安心して飲んでいて健康被害に遭われたわけでありますので、こういった方々に対しての国の手当てというものをきちんとこれからもやっていっていただくようにお願いしまして、質問を終わります。
 ありがとうございました。
松本委員長 鮫島宗明君。
鮫島委員 参考人はみんなそろっているのかな。厚生労働省からは、どなたもいないんでしたか。厚労省はいないんだな。環境省の岩尾自然環境局長さんはおられるんだな。
 質問に入る前に、日本では決してSARSははやらないから心配するなという説があるんです。なぜかというと、日本の水道水の残留塩素濃度が割合高くて、コロナウイルスは物すごく塩素に弱いから、日本の水道水で手を洗ってうがいをしていれば、絶対SARSははやらないという話がありますが、聞いていますか、局長さん。
岩尾政府参考人 私が個人的に承知しているところでは、日本人の清潔といいますか消毒というものに対する観念が非常に高いということで、常日ごろそのような行動をとっているということが、日本においての爆発的な流行がないのではないかというような話を聞いたことはございます。
鮫島委員 ふだんから私たちは、日本の水はまずい、もうちょっと都会の水をおいしくしてくれと言っているんですが、今回の場合だけは、残留塩素濃度が高くて水のまずさが幸いしたと言われていますので、当分まずい水を供給しておいていただきたいと思います。
 本題に入りますけれども、カルタヘナ議定書があって、それを日本が批准する、その実効性を担保するために、今回、この遺伝子組み換え生物の扱いの取り決めを法律で決めますということがきょうの審議の趣旨だと思いますが、日本に対して遺伝子組み換え作物の輸出を行っている主な国、先ほど稲葉委員からの質問とも一部ダブりますが、トップスリーといいますか、遺伝子組み換え輸出三大国、三つ挙げるとしたら、どことどこでしょうか。
石原政府参考人 世界で遺伝子組み換え作物がかなり栽培されております。そのうち、いずれの国から我が国への輸入がというお尋ねです。
 我が国が輸入しておるもので世界で遺伝子組み換え作物として栽培されているものとしましては、大豆、トウモロコシ、菜種、綿があろうかと思います。その四作物のうち、我が国への輸出国、我が国にとっては輸入先ということになりますが、トウモロコシ、大豆につきましては米国、菜種につきましてはカナダ、綿につきましては豪州でございます。
 いずれの国におきましても、相当の遺伝子組み換え作物の栽培が行われておりますので、米国、カナダ、豪州からは、我が国に遺伝子組み換え作物としてそれなりのものが入ってきているというふうに考えております。
鮫島委員 ちょっと局長にお伺いしますけれども、日本は、遺伝子組み換え作物に由来する品物の輸入量が世界でも一番多い国と言っていいんでしょうか。
石原政府参考人 そのような形で比較をしたことはございませんが、主な作物が大豆、トウモロコシということでございます。我が国は、飼料作物を初め、搾油用の大豆ですとか、そういう形でかなりの量を輸入しております。一番かどうかは別にしまして、多いのではないかというふうに考えます。
鮫島委員 日本が世界の中でも遺伝子組み換え作物を大量に使用している国、みずからの国内でつくっているのではなくて、今言ったように、アメリカ、カナダ、オーストラリアが供給先ですということですが、こういう組み換え体の輸出三大国、アメリカ、オーストラリア、カナダは当然カルタヘナ議定書の締約国になっていると思いますが、実態はどうでしょうか。
石川政府参考人 お答え申し上げます。
 今のアメリカ、カナダ、オーストラリアは、カルタヘナ議定書についてはまだ議定書を締結しておりません。
 やや踏み込んでお答えさせていただきますと、そのカルタヘナ議定書の親条約である生物多様性条約というのがございまして、米国についてはそちらも入っておりません。オーストラリアは、親条約は入っております。カルタヘナ議定書の締結については、現時点では見通しが立っていないと承知しております。他方、カナダは、生物多様性条約を締結しており、現在カルタヘナ議定書の締結についての検討を進めている、このように承知しております。
鮫島委員 カナダはやや良で、豪州はまだわからない、アメリカがバツということだと思いますが、圧倒的にアメリカから日本に組み換え体が入っているんだと思います。
 ちょっと別の角度から聞きますが、一般の日本の農家が、アメリカの、モンサントでもいいんですが、モンサントが開発したトウモロコシの組み換え体の実用品種、これは種屋で農家は買うことができるでしょうか、石原局長。
石原政府参考人 輸入されておりますものは、コモディティー利用、二種類ございまして、加工用ということで入っておるものが……(鮫島委員「農家で栽培するのに、種屋で買えますか」と呼ぶ)売っていないと思います。詳しくは知りませんが、売っていないと思います。
鮫島委員 多分、日本の種屋へ行っても買えないと思いますが、アメリカの種屋さんへ行けば売っていますよね。
 アメリカの種屋で買ってきて日本で栽培することはできますか。
石原政府参考人 アメリカの種屋で買ってきて植えられるかというお尋ねでございます。
 遺伝子組み換え作物の作付につきましては、現在でも加工用及び開放系の利用ということで、安全性の確認は農林水産省の方で行っておりますが、確認しているものがございます。買ってきたものがそういうものであれば、確認としてはとれているということになると思います。
 ただ、実際の栽培に当たりましては、つくったものの流通、あるいは隣の農家との関係というのがございまして、これは、農林水産省の方から、そういう制度的にはできるものであっても、つくるに当たっては、周りの農家、あるいはつくることについて関係地方公共団体に情報を提供するなどという形でやってくださいという形にしております。したがいまして、現実にやっているものはございません。
鮫島委員 アメリカの種屋さんで売っている遺伝子組み換えのトウモロコシの品種、これを買ってきて栽培できるかどうかということですが、アメリカの種屋さんで実用品種として売っているもので、日本で許可されていないものはあるんでしょうか。
石原政府参考人 アメリカの種屋さんで売っている種をすべて調べたわけではございませんが、商業用につくっておるアメリカのトウモロコシ、大豆につきましては、日本国においての安全性なりもとれているということでございます。
 ただ、アメリカで試験段階でやっておるようなものが仮にあるとすれば、こちらでとれていないものもあると思います。
鮫島委員 いや、実用品種として種屋で売られているものという前提で聞いたわけだから、まだ試験中のものなんか種屋で売っているはずないので、アメリカの種屋さんで売っているものは、日本でも承認を受けているから、それを買ってきて日本の農家が植えても結構、法律的な制約は今一切ないはずなんですが、それでいいですね。法律的な制約はありません、この新しい法律が成立したとしても。
石原政府参考人 新しい法律が成立すればそこは違ってくるんではないかと思いますけれども、ガイドラインの現状のもとで、そういう形のもので入ってくることについて、法律としての制約というものはございません。
鮫島委員 今はガイドラインで規制しているわけですから、ガイドラインは法律じゃないから、別にガイドライン上も、アメリカの種屋さんで売っている遺伝子組み換えのトウモロコシを日本の農家が旅行に行ったついでに買ってきて、それを植えても、別に何ら罰則規定はないし、自由ですということだと思います。
 今度、新たに有機農産物の指定が厳密になって、遺伝子組み換え、人工的な遺伝子が混入している場合は、これは有機と認められないということになると思いますが、隣の農家がアメリカでモンサントの遺伝子組み換えのトウモロコシを買ってきてつくっています、自分のところでは有機でスイートコーンをつくっている。ところが、花粉が飛んできて、トウモロコシは水平距離で二百メートル花粉が飛ぶことも知られているから、花粉が飛んでくる。それで、雌しべの先端に花粉がついて、有機でせっかくつくっていた自分のスイートコーンに隣の畑の遺伝子組み換えの人工遺伝子が入っちゃいましたと。そうすると、これは有機認証取り消しになるんですが、こういうことについても何の指導、注意もしないということでしょうか。
坂野政府参考人 お答え申し上げます。
 現在、商業栽培されている遺伝子組み換え作物もありませんけれども、その栽培に当たって、例えば今先生御指摘の近傍で有機農産物を栽培している農家に不安を与える等も考えられますから、周辺の非組み換え品種をつくっている栽培農家の理解を得るということは必要なことであります。
 このため、仮に栽培しようとすることがある場合には、その栽培者が周辺農家の理解を得るとともに関係地方公共団体に情報提供を行うとか、そういうことをしまして遺伝子組み換え作物栽培による混乱を防ぐようにしてまいりたい。また、科学的データに基づきまして、遺伝子組み換え品種と有機栽培をしている作物との交雑を避けるための有効な措置についてもさらに検討してまいりたいと考えております。
鮫島委員 それでは、今後、この法律が成立してから検討するということなんでしょうか。
 つまり、今は別に何の制約もないはずですよね。今審議官がおっしゃったようなことは文面としてどこに配付されたこともないと思います。
 つまり、現状だったら、アメリカへ行ってそういう種を買ってきてつくっちゃったら、別にそれはそれでしようがない。それが有機農家のトウモロコシに遺伝子が飛んでも、現状ではそうやって、注意して栽培しなさいとか、あるいはおたくの圃場に遺伝子組み換え作物を栽培中という看板を掲げなさいというようなことも、現在では全く何の注意喚起も行政的に行っていないですよね。
坂野政府参考人 お答え申し上げます。
 今、風で飛ぶトウモロコシの話もありましたけれども、例えば具体的に既に行っているものですと、大豆がございます……(鮫島委員「おもしろくない。トウモロコシでなきゃ花粉が飛ばない」と呼ぶ)
 では、トウモロコシについて言いますと、今試験研究で、どのくらい飛散するか、いろいろな考え方があるようですが、そういう試験をし、今もやっているし、さらにこれからもやっていって、その対策を検討していくということです。
鮫島委員 環境省にお伺いしますが、この法律の中で、遺伝子組み換え植物の第一種使用、つまり開放系での使用についての規定がいろいろありますが、私は植物のことしかわからないので植物の分野だけ聞きますが、生きている遺伝子組み換え植物の開放系利用というのは、具体的にどんな場面を想定しているんでしょうか。
 普通に考えると、圃場での使用、公園で遺伝子組み換えの芝なんかを使います、あるいは牧草地で使う、それからのり面の緑化とか屋上緑化、あるいは河川敷など土木緑化での使用というようなことが考えられますが、環境省としてはこの第一種使用でどのような場面を想定しているんでしょうか。
岩尾政府参考人 先生おっしゃったような栽培用の作物のほかに、私どもとして考えられるものとしては、バイオレメディエーションということ、すなわち、土壌の中の有害な物質を組み換え細菌によってきれいにしていくというような浄化システムに今後用いられるのではないか、そのようなものが開放系で使われるというふうに承知しております。
鮫島委員 バイオレメディエーション、さっき砒素の話が出ていましたが、日本の田んぼは大変カドミウムの濃度が高くて、これから国際的な問題になっていくと思いますが、逆の聞き方をすると、河川敷とか高速道路ののり面とかという土木分野で使われる緑化事業も想定しているんでしょうか。
岩尾政府参考人 そのようなものが開放系で利用されることは、想定はされるというふうに思います。
鮫島委員 この法律の中にもありますが、今の現状からいうと、僕は、この法律は全く空文化していて意味がないと思いますよ。
 つまり、輸出三大国はアメリカ、カナダ、オーストラリア。この三カ国が議定書締約国じゃないんだから。日本は、何か一方通行みたいな世界で、勝手に法律だけ決めますというけれども、この法律は有効に機能しないというか、相手は締約国じゃなくてこっちだけ締約国で、これからは遺伝子組み換え作物を輸出するときは事前通告しなければいけませんとか細かい規定がたくさんあるけれども、三大輸出国はいずれも加盟していないんだから、こんな法律は機能しないんですね、実は。だから、変なやりとりをしているわけです。
 一応許可して、開放系利用の事前の試験もして、これは使っていいですよと。ところが、その後、例えば河川敷のバイオレメディエーションでもいいですが、河川敷にどうもカドミウム濃度が高いから、カドミウムを積極的に吸収するようなケナフでもでは栽培しましょうといって栽培していたら、これが遺伝子組み換えのケナフで、普通のケナフよりも成長がよろしい。ところが、その種を鳥が食べていると、いつの間にか非常に産卵率が落ちてきたというようなことが後でわかった場合に、そういう、一回開放系で使用しちゃった作物を、この法律では第十条というのがあって、まずいよということが後でわかったら回収しなければいけませんというふうな規定がありますが、その回収というのは、開放系で使って自然界の中に広がっちゃった場合に、具体的にどうやって回収するんですか。
岩尾政府参考人 先生御指摘のような事態が生じた場合には、法第十条に基づく措置命令がございます。使用の中止、原状回復の周知徹底、それから、おっしゃる回収がございます。
 私ども、回収の方法についても、そのようなものを開発した方が知見をお持ちだろうと思いますので、そのような知見を有する開発者、つまり承認取得者でございますが、そのような方に回収の協力を要請するということを措置として規定しております。
鮫島委員 では具体的に聞きますが、そういう事故、事件というのは有史以来、実は一回だけしか起こっていない。
 三年前にアメリカでスターリンクというトウモロコシの品種をつくって、これはえさ用として許可されていたのが、遺伝子が飛んで食用の方にも入っちゃいました。これが一部の人間にアレルギー反応を引き起こすということで回収しようという話になったんですが、トウモロコシですから花粉が次々に飛んで、ついにメキシコのトウモロコシの野生種、私どもがトロピカルメイズと呼んでいる野生種ですが、それにまで入っちゃいました。Cry9Cに似たCryの1Aという遺伝子がメキシコの野生種から発見されましたというニュースが、最近の「ネイチャー」に出ていました。
 例えば、今アメリカ大陸で広がっちゃった人工遺伝子、これは、虫の鱗翅目、チョウやガの幼虫を殺すBtトキシンというたんぱく質を産生する遺伝子ですが、チョウを愛する人にとっては大変許せないたんぱく質だと思いますが、これがトウモロコシの世界に有史以来初めて起こったジーンポリューション、遺伝子公害という事件だと僕は思います。
 このアメリカ大陸で広がってしまった殺虫性たんぱくの遺伝子を生態系から回収することは技術的に可能でしょうか。どなたか詳しい方、お答えいただきたいと思います。
岩尾政府参考人 そのような新しい遺伝子生物、これから何が出てくるかわかりませんが、私どもの行政の現場で今似たような事例としては、移入種の問題があるかと思います。外来種、移入種をどのようにするかということを現在審議会でやっておりますけれども、その中でも、実際に一度入ってからどのようにそれを駆除していくかということについての御議論をいただいております。
 私ども、そのような議論の中から、もし万が一このような新しい生物が日本に広がるようなことがあったときの何か参考にならないかとは思っておりますが、現実には、先生御指摘のように、大変難しい問題かなというふうに思っております。
鮫島委員 私は非常に具体的に聞いたので、今アメリカ大陸に蔓延してしまった、アメリカ大陸のトウモロコシの世界に非意図的に蔓延してしまった人工遺伝子を回収する技術的な手法はありますかという具体的な質問なので、あるかないかで答えてください。
岩尾政府参考人 アメリカでの事情は承知しておりません。
 ただ、私どもの今回の法律では、知見を有する開発者に対して回収の協力を要請するという規定を置いておるということでございます。
鮫島委員 天下の環境省が、しかもこれからカルタヘナ条約に基づいて生物多様性のために遺伝子組み換え作物に対して非常に厳密な管理を行いますという責任の官庁が、アメリカでのトウモロコシの遺伝子公害の事情を承知していないというのだったら、問題じゃないかな。職責を全うできるのか。毎月多額の給料をもらっているんじゃないかと思いますが、そんな答弁でいいんですか。本当に、アメリカでのトウモロコシの世界で人工遺伝子が野生種にまで入っちゃったという事情は承知していないんですか。「ネイチャー」の記事は読んでいないということですか。
岩尾政府参考人 失礼いたしました。訂正させていただきます。
 二〇〇一年に「ネイチャー」の雑誌に出たということは承知しております。そのようなものを踏まえまして、我が国でもどのような対策がとれるか考えていきたいと思っております。
鮫島委員 多分農林省の人の方が詳しいんでしょうが、今のアメリカではやっちゃったBtトキシンの遺伝子は回収できますか。専門家の方、どうでしょう。
石原政府参考人 専門家というか、確かに、おっしゃられるように、一たん広がったものは難しいところがあろうかと思います。作物でしたら、当然のことながら植えないということ、あるいは先ほど環境省さんの方からお話がありましたように、広がってきたものは駆除するというような形での回収ということになろうかと思います。
 そういう意味では、まず最初の確認の際に慎重に審査するということで、現在でも、影響がないかというような審査に当たりましては、まず隔離圃場で一回確かめるというような形で確かめた後、それから、さらに開放系で大丈夫かというような確かめ方をしております。そういう意味で、万が一にもそのようなことのないよう慎重を期するということが一番大事だと思っております。本当に万々が一ということであれば、先ほどの法律に基づきます回収とかというような措置で対処することになろうかと思います。
 ただ、一たん広がりますれば、植えないことは当然として、あと、それ以外にも広がった部分を駆除するというなかなか困難な作業を伴うことは事実でございますが、そういう形で対応していくということでやることになろうかと思います。
鮫島委員 現実に、もうアメリカ大陸でのトウモロコシの遺伝子汚染は私は絶対回収できないと思いますし、恐らく農水省の方もそれはおわかりだと思います。
 そういうことがあるから、私は、先ほど環境省にどういう開放系利用の場面を考えているかと言ったら、バイオレメディエーションと言いましたけれども、それは、だから河川敷とか開放空間で、割合野放し利用。だけれども、本当はそういう万一のことを考えたら、やはり圃場で十分人間が管理できる世界の中で扱うというふうに、日本としては、これは法律に書いてなくてもいいですが、政省令で少し縛りをかけるべきだ。
 特に、他殖性の作物、トウモロコシや菜種のように勝手に飛んでいっちゃうようなものについては、二重に厳密な扱いをした方がよろしいのではないか。大豆はほとんど花粉が飛ばないし、稲もかかりませんから結構ですが、そういう他殖性のものについては、法律には規定がなくても、私は万一の事故のことを考えて、安易に許可すべきではないというふうに思います。これは、これから法律ができてからの政省令の世界ですのでいいのですが、ぜひそういうことを配慮してもらいたいと思います。
 先ほど、アメリカ、カナダ、オーストラリア、三大遺伝子組み換え輸出国がカルタヘナ議定書の締約国じゃないということですが、この法律では、遺伝子組み換え体を輸出する場合は事前通告して、そうすると、日本が輸入国の場合はそれについて書類審査等々で十分評価して、輸出して結構ですというふうにしなさいというのが今度の法律です。ところが、アメリカ、カナダ、オーストラリアは締約国じゃない。でも、締約国じゃなくても、輸入国としての日本は、それらの国々に対して、今後、日本は締約国になったのだから、輸出するときは事前通告をしてくださいと言うのが当たり前だと思いますが、外務省は、そういうことを、アメリカ、カナダ、オーストラリアに要請するおつもりはあるでしょうか。
石川政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、議定書の世界と国内法の世界であります。我が国への国内利用というものについては、当然国内法に従って処理されることになるわけでございます。
 なお、これまで、事務的には、例えばアメリカに対しては私どもの考え方を説明しておりまして、現段階でアメリカ側とは、何といったらよろしいでしょうか、いわゆる、それは困るといったような話は聞こえてきておりません。
鮫島委員 ちょっと最後がわからなかったけれども、それは困るという話が聞こえてきているのか聞こえていないのか。
 きのう、我が国の農林水産大臣が、珍しくアメリカに対して思い切ったことを言ったなと思います、四時ごろにプレスリリースがありましたが。実は、アメリカはもうBSEの汚染国なんですね。カナダとアメリカは一体で、年間に百七十万頭もカナダから生きた牛がアメリカに移動されているので、実は、畜産の世界、カナダとアメリカは一体で、カナダでBSEが発生したということは、本当はアメリカも汚染国になりましたということと同じなんです。余り国民に動揺を与えてはいけないというので、そういうことは報道されていないようですが、日本の亀井農林大臣は割合思い切ったことを言って、もうアメリカがBSE汚染国になるのは時間の問題でしょうと。
 ところが、アメリカでBSEが発生したら、世界の牛肉ビジネスがパニックに陥る。大混乱に陥って、ああ、これで輸出圧力が弱まってよかったなどと言っていられるのんきな話ではない。牛肉を食べるということ自身が問い直されるような事態に陥ったら大変だ。したがって、アメリカも、日本と同じような全頭検査を一刻も早くしてください、アメリカで全頭検査体制が整っていれば、日本は同盟国だから、BSE汚染国になっても全頭検査後の肉は日本は輸入してあげますよという、日本の農林大臣としては珍しく、独立国の大臣的な発言をしたんです。
 外務省も、日本は締約国になるわけだから、当たり前だと思いますよ。アメリカ、カナダ、オーストラリアに対して、これから遺伝子組み換え体を日本に輸出するときは、これは栽培利用じゃなくて食品素材でもいいんですが、一応発芽の能力を持っている大豆、トウモロコシの種は莫大にアメリカから入っているわけだから、そういう場合は事前に通告してくださいと言うのが当たり前だと思いますが、もう一度御答弁をお願いします。
石川政府参考人 委員おっしゃるとおりだと思っております。
鮫島委員 この法律ができると、締約国で日本に輸出しようとする場合は、例えば大豆の袋、トウモロコシの袋に、遺伝子組み換え体を含みますという表示が義務づけられる。ところが、未締約国、アメリカ、カナダ、オーストラリアはそういう表示の義務がなくて、分別不能、無分別ということで日本に輸出できる。これは大変不公平ではないか。
 締約国はまじめに、遺伝子組み換え体を含みますよという表示をしなければいけないけれども、締約国じゃないアメリカ、カナダ、オーストラリアはそんな表示はしなくて結構です、こういうのは明らかな不公平なので、外務省は、こういう点もアメリカに対してしっかり主張していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
石川政府参考人 私どもといたしましては、現在御審議いただいている法案によりまして、遺伝子組み換え生物が輸入される場合には、議定書の締約国からかあるいは非締約国からかを問わず、その生物多様性への影響を評価した上で国内利用の承認等を行う制度を設ける、こういうことになっておるわけでございます。この法案によりまして、遺伝子組み換え生物が締約国から輸入されるか非締約国から輸入されるかを問わず、御指摘のように、アメリカならアメリカからの情報を事前に入手できるということになると思います。
 それにつきましては、日本の法律については、当然のことながら米国等にも説明をきちっとしてまいります。
鮫島委員 もう時間なのでそろそろやめますが、筑波にあります農業環境技術研究所が、開放系利用の安全性審査を今やっていると思いますけれども、多くの企業から、自分の会社の中にはそういう、花粉が飛んではいけませんというような精密な温室を持っていないから、筑波の環境技術研究所は大変多くの注文を受けていると思います。
 一般の企業からも審査してくださいというのを大変受けていると思いますが、私の知っている限り大半が、モンサント、デュポン等の外資系の企業からそういう、日本で使いたいから審査してくださいという要請がたくさん来て、わかりましたと言って農業環境技術研究所でやっていると思いますが、一銭もお金を取っていない、全部サービス、無料でやっていますが、なぜ無料でやっているんでしょうか。
石原政府参考人 筑波の独立行政法人の隔離圃場で、模擬的な環境試験を行っております。無料ではございません。共同研究ということで実施をしておりますが、実質の費用はいただいています。
 一例ですけれども、四百万近くかかっている場合に、八割近くは負担していただいているという状況です。あと、共同研究という形をとっておりますので、圃場の維持管理費部分は独立行政法人の方で負担しておりますが、実質上、費用の大部分は消耗費ですとか資材費が占めるわけですが、その部分、八割近くは、一つの例ですが、相手方の企業の方が負担しているという実態でございます。
鮫島委員 いや、独立行政法人の担当者たちはこの試験を管理していて、その人たちの給料は国が払っているわけです。何でそんなにモンサントにサービスするのかよくわからないんですが、これからは、独立行政法人になったんだから、営業も自由ですから、その辺はもうちょっと厳密にやっていただきたいと思います。
 最後に環境大臣に、今るる、いろいろおかしなことを私は指摘しましたが、そういうことを考えると、三大遺伝子組み換え輸出国、アメリカ、カナダ、オーストラリアに対して、さっき正確な答弁がありませんでしたが、日本は恐らく世界最大の遺伝子組み換え体の輸入国だと思いますよ。だから、バイヤーの権利として、アメリカ、カナダ、オーストラリアに対して、締約国にならないと輸入に影響があるかもしれませんよというぐらいのことは、環境大臣としていろいろな場面で、国際会議等々でこの遺伝子組み換え輸出三大国の関係者とお会いになるんでしょうから、そういうときには少し、農林水産大臣に負けないように、独立国の大臣として強い御主張をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
鈴木国務大臣 鮫島先生からの、アメリカにおけますトウモロコシの例があったわけでありますが、一たび開放系でそうしたことが起こりますと、なかなか原状回復が大変だということも十分承知をしたところであります。
 カルタヘナ議定書の中にも、締約国は未締約国に加盟を働きかけるという趣旨のものがございますので、その線に沿って、そうしたあらゆる機会をとらえて、特にその三大輸出国についてしっかりと働きかけをしてまいりたいと思います。
鮫島委員 どうもありがとうございました。頑張ってください。
松本委員長 小林守君。
小林(守)委員 引き続いて質問をさせていただきたいと思います。
 今、我が党の鮫島委員の方から、私もそのような質問をしていきたいなと思いましたけれども、本当に専門的な、またわかりやすいお話がございましたので、省略をさせていただきたいなと思いますけれども、一点だけ。
 このようなカルタヘナ議定書が進められている中にあって、世界的なスタンダードというか世界的な科学的知見は、少なくとも、生物多様性条約を受けてカルタヘナ議定書を取り交わさなければならないというようなところに至っているんだろうと思うんです。カナダやオーストラリアはカルタヘナ議定書への批准を検討中というような状況ではありますが、アメリカはどういうような科学的知見に基づいているのか。基づいていないというか、政治的判断でやっているのか。産業界の要請が最優先という形で、その科学的知見については全く無視するような形であるのかどうか。アメリカの科学者というか、そういう人たちの認識というものがどういう状態になっているのか、その辺をお聞きしたいというふうに思います。順序が少し逆になりますけれども。
鈴木国務大臣 アメリカがカルタヘナ議定書を批准していないということの中で、先生から、アメリカでは何らかの別の科学的知見があって、それに沿ってそういう判断が下されているのかどうかということでございます。
 先ほども御説明ございましたが、アメリカは、そのもとになっております生物多様性条約も締結をしていないわけでありますが、これは、長期間にわたる交渉の議論を踏まえた上でアメリカ議会の結論がそうしたものになったと理解をしているわけでありまして、特段、何らかの特別な科学的知見があって、それに基づいて加盟をしないということではないのではないか、そのように思っております。
小林(守)委員 もう一つ、この問題についてEUなどはどういう考え方に立って、いわゆるアメリカやカナダやオーストラリアとの関係を、特に輸出入関係、考えておられるか、その辺の情報をちょっといただきたいと思います。
鈴木国務大臣 EU各国におきましても、EU指令それから規則によりまして、遺伝子組み換え生物等の輸入国が議定書締約国か否かにかかわらずひとしく対象として規制が行われておりまして、また、当該規制をEUが強化しようとしているということについてアメリカがいろいろ問題視をしているという状況にあろうかと思います。
 基本的には、日本と同様の立場をEUもとっておる、むしろそれをさらに強化しようという動きがあるということを承知しております。
小林(守)委員 それでは、用意いたしました私の方の質問に入っていきたいと思うんです。
 まず、この法案からは外れますけれども、一般的な質問になりますけれども、CO2削減・百万人の環(わ)というキャンペーンを環境省も主催をされながら始まっているわけであります。
 去る五月の二十四日に、大臣も出席されまして、熊本市において第四回の環(わ)の国くらし会議が開催されたわけであります。その中で、CO2削減・百万人の環(わ)というキャンペーンを実施しようということになったわけでありますが、その内容というのですか、それからどのような効果、意義、そういうものをこのキャンペーンではお考えになっているのか、その概要をまず示していただきたいということとともに、実行委員会みたいなスタイルだとは思いますが、NGOの皆さん方や結構著名人が参加されて、百万人のキャンドルナイトというような同じ趣旨のキャンペーンも同時に行われているんですね。
 二つのキャンペーンではなくて一つなんですけれども、表現の仕方が違うんですが、この辺の関係等についてもお聞きをいたしたいと思います。
鈴木国務大臣 御指摘のCO2削減・百万人の環(わ)のキャンペーンでありますけれども、これは、夏至の日、六月二十二日の夜の八時から十時までの二時間、この間消灯をしようということで全国の国民に呼びかけるものであります。
 これは、今先生からもお話ございましたが、先月二十四日、熊本で第四回目の環(わ)の国くらし会議が開かれたわけでありますが、この環(わ)の国くらし会議のメンバーであります辻信一さんから、辻さんが提唱しております、これまた御指摘のございました百万人のキャンドルナイトという同趣旨のキャンペーンへの協力依頼があったことを受けまして、環(わ)の国くらし会議としても、温暖化防止に向けた国民の皆さんの意識を高めるためCO2削減・百万人の環(わ)キャンペーンとして呼びかけをしたものでありまして、これはリンクをしているものである、そういうふうに承知をしております。
 その効果ということでありますけれども、このキャンペーンを受けて百万人の方が二時間消灯する、百万人の方といいますのは三十七万世帯に相当するそうでありますけれども、この百万人の方が二時間消灯して、それに加えまして、テレビでありますとかエアコンのスイッチを切った場合、約百万キロワットアワーの節電効果と約三百七十トンのCO2の削減効果が見込まれるという計算になっております。
小林(守)委員 たった二時間というか、これだけで全国の民生用というか家庭用の消費電力が節電できるというような形で、CO2換算では今のお話だと三百七十トンの削減効果が推計されるというようなことでありまして、私は、これは百万人、三十七万世帯どころではなくて、もっと大きくキャンペーンは効果をあらわすのではないかなと期待をしているところでありますけれども、既に全国の都道府県や関係機関・団体の方へも環境省、大臣が主体になって呼びかけているというようなお話も聞いておりますが、大いにこれが運動として広がるように期待をしたいなというふうに思うんです。
 この運動の発端というかきっかけとなってきたのは、やはりこの夏の首都圏における、東京電力関係になろうかとは思いますが、電力不足の懸念、心配というような中で、では、そういうことに対してこの運動がむしろいい機会じゃないかというような考え方というのですか、そういうものが運動の発端にあるのではないかというふうに私は思えてなりませんし、また、そうすることによっていわゆる電力供給のスタイルというのが、最高の使用時、ピーク時に合わせて電力を供給しようという今日までの我が国の電力供給システムというか考え方、それに対して転換を求めていくような内容を含んだ、意味を含んだ運動ではないか、このように高く評価をしていきたいなと思うんです。
 その辺について、環境省の立場から、あるいはCO2削減、地球温暖化対策の最も重要な役割を担わなければならない環境省としてどうこの運動を意義づけられるのかどうか、その辺についてお聞きしておきたいというふうに思います。
鈴木国務大臣 小林先生から今お話がありましたとおり、今回のCO2削減・百万人キャンペーンが、ただ夏至の日の二時間の単なる消灯だけに終わるのではなしに、これがまたライフスタイルの変更、省エネに向けての生活態様のあり方の変更の一つのきっかけになって、これがそういうものにつながっていけたらこれは大変すばらしいことである、そういうふうに思っているところであります。
 今先生から特に夏場のピークのことについても言及がございましたが、特に今回のこのキャンペーンは、電力需要がピークになる夏場を前に、CO2削減の観点から広く国民の皆様に呼びかけるものでありまして、夏場の電力ピーク時も含めて、またそれ以外のときにつきましても省エネ対策を推進するものである、そういうふうに思っております。
 環境省として、民生部門の温暖化対策、これはおくれているわけでありますけれども、国民一人一人の御理解が必要ということでありまして、それだけに困難な面があるわけでありますけれども、こうしたキャンペーンを通じまして各界各層の御理解、御協力をいただきながら、また今後ともさまざまな取り組みもする中で、こうした民生部門の温暖化対策というものを進めていきたいと考えております。
小林(守)委員 この運動に際しまして、既に、個人的な各世帯の参加ばかりでなく、全国各地の主要な夜景スポットとか、あるいはライトアップしているようなスポットの公共施設あるいは民間施設もあろうかとは思いますが、そういうところでも消灯の協力がかなり出てきているというようなお話も聞いております。その辺の状況についてちょっとお話をいただければと思います。
鈴木国務大臣 現在のところ、東京タワーそれから北海道庁の赤れんが庁舎、横浜マリンタワー、明石海峡大橋、さらに、熊本城を初めといたしまして彦根城、松江城、沖縄県の首里城など、全国六十三の施設がこのライトアップの消灯に御協力をいただけることとなっております。
 今いろいろ呼びかけをしているところでありますが、まだ各県それぞればらつきがございますので、これは当日まで呼びかけを続けるということでありますので、今後、こうした協力していただく施設が当日までにふえるようにさらに努力をしてまいりたいと思います。
小林(守)委員 キャンペーンの意味からしても、そういう象徴的なところが参加されるということになると影響も大きいと思いますので、ぜひキャンペーンの方でもしっかりと働きかけをしていただきたい、このように思います。
 また、三百七十トンCO2削減ということなんですが、こういう公共施設とかそういうスポットをやっているところの電力というのは相当なものだと思うんですね。ということになると、私は、三百七十トンCO2削減効果にさらに加算できて、一千トンぐらいまでいくのではないかなというふうに思えてならないんですが、ちょっと推計で、勘の話ですけれども、相当の効果ができる。しかも、百万人、三十七万世帯どころじゃないというふうにさっきも言いましたけれども、私は、掛ける五ぐらいのところまでは最低いくのではないかな、こんなふうに思えてならないんですが、御期待を申し上げたいと思います。
 それでは、本法案のことについて幾つかお聞きをしておきたいというふうに思っております。
 今日の現代バイオテクノロジーによって改変された生物の環境放出による生物多様性影響は、中長期的と言っていいでしょうが、これについては、科学者も、科学的知見も不確実なものだということを明確に言っているわけであります。そういう点で、生物多様性への影響を未然に防止するために、この法律案においては、環境と開発に関するリオ宣言の第十五原則に規定されている予防的な取り組み方法というものが基本的な原則になってこの法律が組み立てられているというふうに思いますけれども、それが条文のどういうところにどういう形で反映されているのか、まず総括的にお聞きしたいと思います。
鈴木国務大臣 先生から御指摘のございました予防的な取り組みでございますけれども、生物多様性条約カルタヘナ議定書におきましては、その目的におきまして、リオ宣言の原則十五に規定する予防的な取り組み方法、予防的アプローチでありますが、これに従うことが明記をされているところであります。したがいまして、この議定書に基づきます国内法の本法も、その考え方を踏まえたものであります。
 具体的にということでありますが、例えば、本法における承認の過程について、生物多様性影響が生じるおそれのある環境中での使用を目的とする遺伝子組み換え生物等について、その使用に先立って生物多様性への影響評価を行い承認を受けることを義務づけていること、生物多様性への影響評価に必要とされる科学的知見が必ずしも十分に得られていない場合には、試験的な使用をまず行って情報を収集した上で使用を拡大するということになっているわけでありまして、こういう考えに予防的な取り組み方法の考え方が反映されておりまして、これらの措置を通じまして生物多様性への影響の未然防止を図ることとしているところであります。
小林(守)委員 国民に、遺伝子組み換え生物を利用した食品などについての安全性というものについて大変な懸念あるいは心配が大きく広がっているのも現実であります。先ほどスターリンクのトウモロコシのお話がございましたけれども、やはり国民の理解と信頼が得られていくためのシステム、仕組みでなければならないと思いますし、そのためにも、やはりリスクコミュニケーションというか、きちっとした情報公開がまた求められているというふうに思います。
 ただ、この法律の中にも、想定外の環境の変化や新たな科学的知見の発見というか充実によって、既にその時点での科学的知見によって承認された第一種使用規程の改変生物による生物多様性影響、これが新たな状況の変化の中で出てくるおそれがあるということも、明確にこれは確認されていることであります。
 そういうことになりますると、恐る恐る使用をしていく、順応的管理というんでしょうか、予防的方法という考え方でありますが、そういう形で、科学的知見の充実に伴って取り返しがきくような方法を持ちながら対応していくんだというようなことであろうと思います。
 ということは、常に監視、モニタリングをしっかりとしていかなければならないというようなことだと思うんですね。世界的に、各国における情報収集、科学的知見の発展充実、これをどんどん情報交換しながら我が国も取り入れていくということと同時に、我が国自身がそのような科学的知見を広めていくというようなこと、それから、さまざまな変化を先見的に把握していくというようなことが求められるわけでありますから、仕組みの中で大事なことは、継続的な監視ということが大変大切ではないかなというふうに思えてなりません。
 国民の理解と協力、理解と信頼、こういうものが得られるためにも、これは最大限徹底した監視システムが求められていると思いますし、長期的にわたってこれを確保していくという展望が示されていなければならないのではないかな、このように思いますが、どのような取り組みになっているのか、お聞きしたいと思います。
岩尾政府参考人 生物多様性に対する影響評価は、その時点における最新の科学的知見に基づいて行われますが、評価時には想定できなかった環境変化、その後の科学的知見の充実により、承認を行った遺伝子組み換え生物についても生物多様性への影響が生ずるおそれがあると認めるに至る場合があり得ます。したがいまして、先生おっしゃるように、承認後にもモニタリング等々、必要に応じてその影響に関するデータの収集を行うことが重要と思っております。
 法律の第六条二項におきましては、必要に応じて、承認を取得した者に対して情報の提供を求めることができるという措置をしております。この規定を活用して、承認を取得した者に対して、みずからの開発した遺伝子組み換え生物等の使用状況についてのデータなど、必要な情報の収集及びその提供を求めてまいりたいと考えております。
 また、法律の中の基本的な事項におきましても、遺伝子組み換え生物の使用者が配慮する事項として、組み換え遺伝子生物についての情報収集を位置づける方針であります。
 なお、法律三十四条に、国の責務、科学的知見の充実というところがございますが、このようなものを踏まえて、環境省としても、今後、さまざまな方法によりましてモニタリングの充実に取り組んでまいりたいと考えております。
    〔委員長退席、近藤(昭)委員長代理着席〕
小林(守)委員 それともう一つは、改変生物の利用については、法案で第一種及び第二種の使用というものが規定されているわけでありますが、状況の変化、科学的知見の変化あるいは事故、こういう問題に対して、安全性の確保あるいは原状回復というようなことに、緊急措置として取り組まなければならないということになっているわけであります。
 先ほどの鮫島委員の質問にもありましたけれども、非意図的な使用というか、非意図的な結果で飛散してしまっている、遺伝子の環境汚染というものが進んでいるというようなことも生じているわけでありますが、もう一つは、違法なり、意図的ではなくても過失によって拡散が生じてしまった、汚染が生じてしまうおそれが出てきたというようなこともあるわけであります。
 この法律の仕組みは、科学的な不確実性があるから、予防的な方法、順応的な管理が必要だという形で、監視システム、モニタリングも極めて重要だということになるわけなんですけれども、これは、実際にそれを使用している人たちがきちっと対応するというか、法的な趣旨やマニュアル、そういうものをしっかりと受けとめてきちっとやるという上に立っても予防的な方法が必要だということなんですね。
 しかし、例えば東海村の核燃料加工施設のジェー・シー・オーの事故がありましたけれども、そのことを考えてみるならば、人間は間違うんだ、間違えることを前提に、先端の科学技術、そういうものについては安全性の視点からシステムが組み込まれていなければならないというようなことが指摘されたわけであります。
 人間は間違えるというような前提に立って今度の遺伝子組み換え生物の使用について考えていくならば、私はこの法律については、先ほどもお話があったように回収不能の状態が生じてしまうというようなことも指摘されるわけでありますし、また、あえて言うならば、反社会的犯罪行為としてもこの問題を考えておく必要があるのではないかな、このように思います。
 人間が間違う動物だという認識、それからもう一つは、反社会的な、犯罪的な行為もあり得るという前提に立って考えるならば、極めて無防備なシステムではないか、このように言わざるを得ないと思います。
 例えばの話ですけれども、実際にあり得るかどうかは余談ですが、先ほどコロナウイルスのお話がございました。これは、ハクビシンのコロナウイルスが何らかの変異があって人間に感染する、そして人間の体に入ったコロナウイルスとそんなに違わないんだというようなお話だと思うんですけれども、例えばの例で、これは科学的にはっきりはしておりませんけれども、これを悪意を持って、反社会的犯罪行為として、技術的には恐らく、ハクビシンから取り出したコロナウイルスを、遺伝子組み換えか何かの操作によって、人間に強力な感染性を持ったウイルスに転換してしまうことができるのではないかなと。このように、自然がやったことですから人間ができないはずがないというふうに私は思えるんですが、そういうことも考えると、本当に無防備なシステムではないか。
 例えば、原子力みたいな巨大な技術、人間の手には負えないようなエネルギーの取り扱いと同時に、これは巨大でなくて極小と言っていいかどうか、微生物、ウイルスのレベルの技術について、これもまたナノテクノロジーというような、あるいはバイオテクノロジーという部分もあります。そういう私たちの日常の感覚ではとてもとらえ切れないような技術に対しては、相当の過ちを犯すことがある、あるいは反社会的犯罪行為も想定しなきゃならないというような意味での、安全体制というんでしょうか、多重な防護のシステムが原子力発電などでは導入されているわけでありますけれども、遺伝子組み換え生物の使用等の規制については、まことにもって無防備なシステムではないか、私はこのように思えてならないんですが、その辺についてどうお考えになっているか、お聞きしたいと思います。
岩尾政府参考人 この法律における不測の事態が起きたときの安全性確保のための仕組みという先生の御質問だろうと思っております。
 さまざまな仕組みを法律の条文の中では用意してございます。具体的には、第十条などで、違法な使用等に関し罰則を設け、その者に対し回収命令をできるとしております。万一回収が困難な場合であっても、使用の中止その他影響を最小化するために必要な措置を命ずることができます。それから第十一条等で、事故によって生物多様性への影響が生じるおそれがある場合、使用者に対し、応急措置を講じるとともに、直ちに届け出の義務を課しております。それから三十条等では、遺伝子組み換え生物等であることが明らかな場合だけでなくて、疑いのあるものの使用も対象として、報告徴収、立入検査などの措置を講ずることができるとしております。
 このようなことによって不測の事態の発生を防止し、万一生じた場合にあっても、被害を最小限に抑えることができると考えております。
小林(守)委員 にわかには信じがたいお話なんですが、いずれにしても、そういう方向で徹底した体制をとっていっていただきたい、このように思うわけであります。
 最後に、いずれにしても、回復不能のような状態になってしまうというおそれもあるわけでありますが、少なくとも、この種子はどこにどういう形で出回っているというような流れがわかるような、廃棄物で言えば、不法投棄が生じてしまった場合、その取り扱っていた会社が倒産してしまった場合、そういうことも出てくるわけですけれども、廃棄物の不法投棄には、排出事業者責任を問うマニフェストというシステムが曲がりなりにもあるわけです。このような仕組みを、少なくとも、許可をした、承認をしたものについては、第一種、第二種使用、両方にこのマニフェストみたいなものを導入すべきではないか。
 あるいは、農水のBSEの問題にも絡みますけれども、トレーサビリティーという考え方あるいはそういう仕組みというものを、今度の緊急措置あるいは非常時対策というか、そういうときのためにもこの仕組みを導入しておくことが、回収措置も含めて、いわゆる緊急措置の対応としてより有効ではないか、このように思えるんですが、そのことをお聞きして、終わりにしたいと思います。
岩尾政府参考人 遺伝子組み換え作物の生産、流通過程を的確に把握するということが必要であろうということです。今回の法律の中の六条二項で、必要に応じて、承認を取得した者に対して情報の提供を求めることができるようにしております。このような条文を活用して、先生御指摘のような生産、流通の状況に関する情報の提供を求めていきたいと考えております。
小林(守)委員 終わります。
近藤(昭)委員長代理 高橋嘉信君。
    〔近藤(昭)委員長代理退席、委員長着席〕
高橋(嘉)委員 自由党の高橋嘉信でございます。
 ラムサールやワシントン条約では特定の地域や特定の種を対象としており、これだけでは生物多様性の保全は図れないとの認識から、国際的な取り組みとして生物多様性条約が生まれたことは御案内のとおりであります。そして一九九三年、我が国は締結をし、さらに昨年、地下から空中、地下水、海洋まで、そして土壌微生物から空を飛ぶ鳥までを国としてとらえるというグランドデザインが示され、現状分析はもとより、種及び生態系の保全、絶滅の防止と回復を図ることを目指した新生物国家戦略が誕生したわけであります。そして今、遺伝子組み換え生物の国境を越える移動の問題が指摘され、バイオセーフティーに関する条約となったわけであります。
 そこで、まずは伺いたいのでございますが、我が国の水際対策は常に問題が指摘されております。そこのところからあえてお聞きしますが、カルタヘナ議定書の中では、「「生物」とは、遺伝素材を移転し又は複製する能力を有するあらゆる生物学上の存在」とあります。生物の定義と、加工品であるとの水際での判断基準を示していただきたい。
 また、LMOに対してはカルタヘナ議定書、GMOに対しては食品衛生法あるいはJAS法の表示基準が対応すると伺っておりますが、細かくカットした場合とか粉砕しても、遺伝子が残っていたり複製可能なものもあると考えます。また、飼料などのように、LMOやGMOがまじり合っている、混合しているものもあると思います。水際ではどのように判断していくのか、この点のところをお伺いいたします。
岩尾政府参考人 議定書において、生物の定義は、「遺伝素材を移転し又は複製する能力を有するあらゆる生物学上の存在をいう。」とされております。したがいまして、具体的には、個体に成長することができるというものが本法の生物に当たるというように考えております。
高橋(嘉)委員 いや、余りこのことで話をする気はないんですが、要は、水際でこれが生物であるか生物でないかの判断は、例えば見た目だけでするのですか。
岩尾政府参考人 見た目と言われても、今言いましたように、遺伝素材すなわちDNAを有して複製するものということですから、生物分類学上は藍藻類から高等動物まで、あるいは植物まで含めていろいろありますので、なかなか通常見た目で、バクテリアあるいはウイルスのように、わからないものもありますので、見た目で判断するかと言われると、なかなか難しいかなというように思っております。
高橋(嘉)委員 ですから、そのように難しいですから、しっかりとその判断基準をしておいた方がいいと思いますよ。
 それでは次に移っていきますが、では、現在我が国がアメリカから輸入している千五百二十万トンにも及ぶトウモロコシ、三百八十万トン以上の大豆、百六十万トンの菜種はカナダからですか、これらについてはカルタヘナ議定書における生物の状態であるかどうか、お伺いします。
石原政府参考人 大豆、トウモロコシの輸入形態からしまして種子の状態で輸入しておりますので、発芽能力があると思っております。そういう意味では生物に該当いたします。
高橋(嘉)委員 では、我が国が現在輸入しているもの、生物だということでありますが、議定書の発効後、生物多様性への影響評価をしなければならない対象品目としては、今輸入しているものがほとんどすべて該当すると考えてよろしいでしょうか。イエスかノーかでいいです。
石原政府参考人 現在輸入しております大豆、トウモロコシにつきまして、遺伝子組み換えのものについては、新法のもとでは承認を要する、現行法のもとではガイドラインのもとでの確認を要するというものでございます。
高橋(嘉)委員 いやいや、ほとんどすべてのものが生物としての理解の中で対象になるかどうかということです。
石原政府参考人 遺伝子組み換えのものが対象ですので、組み換えでないものは対象ではないという意味でございます、アメリカの作物が全部遺伝子組み換えというわけではございませんので。そういうことでございます。
高橋(嘉)委員 その点については後で触れていきますから。
 それでは、今ガイドラインと言いましたけれども、我が国に組み換え作物が入ってきたのは一九九六年当時からですが、生態学的知見に基づいての安全性を確保されていたのですか、環境に与える影響について。
石原政府参考人 遺伝子組み換え作物につきましては、いろいろな安全性の審査がございます。一つは環境への影響、それともう一つは、当然食品として使う場合は食品衛生法の関係の食品としての安全性ということで、そういう意味で、組み換え作物については、ガイドラインに基づきまして、環境への影響につきましては、農林水産分野における組み換え体の利用のための指針ということで、影響がないかどうかについて、農林水産大臣の方で影響がないということで確認しておるものでございます。したがいまして、組み換え作物についてはそういう確認を行ったもののみが輸入されているという状況です。
高橋(嘉)委員 一九九六年当時であれば、生態学的な知見、今なおかなり不足しているという状態の中で、いずれ、それはそういう知見を得ていると。ただ、先ほども鮫島委員からもお話がありましたように、組み換え遺伝子がメキシコ山中の在来種から見つかる、解析の結果そういう状態が発表されているわけでありますから、必ずしも十分な知見に基づいて遺伝子組み換え作物が環境に対して安全だったと言い切れるとは私は思いません。
 そういった中で、例えば、我が国がカルタヘナ議定書の締結をする、批准するということになれば四十九カ国目でありますよね、あと一カ国。そして九十日すれば発効する。そして、遺伝子組み換え作物に関しては、事前通告を求めてリスク評価を展開する。これは、今の科学的知見、生態学的知見等々含めて、そしてどんどん申請を受けるもの、あるいは事前通告したものに対してリスク評価を加えていくわけですが、これは可能ですか。
石原政府参考人 新法の施行に当たりましては、まず一つは、施行前においても、現行のものについて改めて申請して承認を受けていただくということで、附則で手当てしているものがございます。
 それともう一つは、施行日から六カ月以内という形での審査を受けていただいて承認を受けていただくということでの手続を手当てしておりまして、その手続によりまして現行のものについて再審査することは可能であるというふうに考えております。
高橋(嘉)委員 いずれ、そのときに、もしこれはしっかりとした知見が得られないということになれば、輸出を拒否することも可能ですよね。確認の意味で。
石原政府参考人 再審査の結果、そういうことであれば、承認がとれないということになりますので、そういうことになります。
高橋(嘉)委員 では、トウモロコシで見た場合、遺伝子組み換え作物の話ですけれども、全輸入量に占めるアメリカのシェアは九二・四%、ほとんどアメリカからと言ってもいい。トウモロコシの輸入ですよ。その中で、アメリカの遺伝子組み換えの栽培面積は三四%、非遺伝子組み換えが六六%になっています。まして、品質がよくて収穫量を多くしたい、そのためにいろいろな耐性、抵抗性等々を考えて遺伝子組み換え栽培していくわけですから、そういった中でも多収を生んでいく。それを考えれば、遺伝子組み換え三四%といっても、収穫量はそれ以上のものが遺伝子組み換え作物となっているわけですね。
 さらに、アメリカの場合は大豆は七五%以上が遺伝子組み換え栽培となっています。我が国の輸入量は三百八十万トン、そのシェアは七五・八%。おまけに、先ほどからカナダもカルタヘナ議定書にちょっとは前向きみたいな話を聞いておりますけれども、カナダからの菜種は、輸入は百五十八万トン、シェアは七五・七%。各国別の遺伝子組み換え作物の栽培面積、もうどんどんふえています。世界的な潮流と言っても差し支えないと思います。
 我が国がアメリカから輸入しているトウモロコシの半分以上、あるいは大豆においては七、八割以上、既に遺伝子組み換え作物がこれぐらいの割合で入っていると私は考えるんですが、先ほどから、どれぐらい遺伝子組み換え作物が入っているのかという認識がどうも共有されていないように思うのでお伺いしますが、大体どれぐらい我が国に遺伝子組み換え作物が入ってきているか。
石原政府参考人 我が国が世界から輸入しておりますトウモロコシが千六百万トン、大豆が五百万トンでございます。そのうち遺伝子組み換え作物が幾らかということで、主な輸入先国ではかなりの割合での組み換え作物が植えられているという状況でございます。ただ、どういう形で、これが組み換え作物だというような統計のとり方をしておりません。そういう意味では、なかなか統計的な制約がございます。ただ、食品の世界で非組み換えか不分別かというような部分があったり、飼料等についてはそういう区分がございません。そういう意味では全体が不分別ということになります。そういう制約がございます。
 統計上の制約もあるわけですが、かなり大胆な仮定ということで申し上げれば、トウモロコシ千六百万トンのうちの四百万トン、それから大豆につきましては、例えば食品については割と分別流通なんかが普及しておりまして、そういうことも含めまして、大豆については百万トン程度であろうかというふうに推定しておるところでございます。
高橋(嘉)委員 いやいや、例えばEUなどは、アメリカは分別しているのは一、二%だと指摘していますよね。それは余りに数字としては甘いんじゃないですか。
石原政府参考人 分別流通のパーセンテージと申しますか、大豆については搾油用と食品用がございまして、そういう意味では食品用の割合がそれなりに多くて、その食品の部分については、日本国では組み換え体でありますと組み換え表示しないといかぬのですが、消費者等との関係から表示が求められる加工食品の原料大豆については、大豆業者、ほとんどが分別流通で対応しています。
 したがいまして、逆にアメリカにおける大豆価格が、非組み換え物が値段が上がってくるというような状況もございます。
高橋(嘉)委員 分別しているとか分離しているというか、この間も新聞で大騒ぎになっているでしょう。あれ、その過程で中にまじったのかなとか。いずれにせよ、そういう把握をしっかりしていない、相手の通告を真に受けていると言うしか言いようがないような僕は数字の把握であろうと思っております。しっかり把握していただきたい。
 では、中国も近年飛躍的に栽培面積をふやしているようですが、中国からは、我が国には組み換え作物の輸入は一切ありませんか。
石原政府参考人 中国で組み換え作物としてありますのは綿でございます。中国から我が国も、綿、綿実の輸入を行っておりまして、これが三百四十三トンです。中国におきます作付面積中、綿については半分近く組み換えと言われておりますので、三百四十トンの半分程度、百七十トン程度は入っている可能性があるというふうに考えております。
高橋(嘉)委員 私は、遺伝子組み換え技術が人類にとって重要なものである、そういう認識に立ちながらも、科学的知見、そしてこれに基づくリスク評価・管理、そして国民との情報の共有、言うなればリスクコミュニケーションがはっきりしなければ、せっかくの技術も育たないと思うから申し上げているわけであります。そういったしっかりとした数字を把握して情報を提供していくという姿勢は必要だということを申し上げておきたいと思います。
 では、時間もありませんので、次に、今回の法案のリスク評価、リスク管理の部分についてお伺いします。
 リスク評価について、本法案の第四条第四項に、承認の申請に際しては生物多様性影響に関し専門の学識経験者の意見を聞かなければならないとあります。ここは入り口でありますから、最も重要な部分であると考えます。
 そこで、学識経験者の選定基準、分野ごとのどのような形になるのか、どのような審議会あるいは研究会の場を設けるのか、意見の違いに対しての判断基準はどうするのか、あるいは、懸念する内容というもの、そういったものを情報公開されるのか。科学的知見云々の情報公開の話はありますけれども、知的財産権の絡みとの問題がありますけれども、反対者数は情報公開されるのか等々を含めて、御見解を大臣からお伺いしたいんです。
鈴木国務大臣 開放の中で使う第一種使用規程を承認する際には学識経験者の意見をお聞きするということでございますけれども、具体的には、生態学それから生物工学、動植物学、農学などの分野から選定することを考えております。
高橋(嘉)委員 大臣、それは六省がこの共管をするわけですから、基本的事項として、例えば生態学者はきちっと何名このように入れてくれと、環境省の立場はそういう立場だと思うんですが、そういうのを基本的事項の中に盛り込む、主張するという考えとお伺いしてよろしいですか。
岩尾政府参考人 法律制定後、速やかに基本的事項を定める予定にしておりますので、その中で十分そのような意を体していきたいというふうに考えております。
高橋(嘉)委員 申請者が生物多様性への影響評価書を作成するとしても、いかにこの評価が確かなものか、ここが問題であろうと思います。
 そのためには継続的なモニタリングが不可欠であると考えますが、この法案には、六条の二項で、承認済みの使用規程の変更または廃止を検討しようとする際に、必要があるときは情報を承認取得者に求めるという条文しか見当たらないのですが、実際、七条で、予想し得なかった環境変化あるいは承認日以降の新たな科学的知見による使用規程の変更及び廃止を定めています。
 予想し得なかった環境の変化は、主務大臣や承認取得者よりも、実際、栽培、管理に当たる現地情報を不断に得ることによりキャッチできるのではありませんか。
 JAS法の食品表示制度のように、今回、食糧庁から何と新たに四千人以上の職員が加わりますが、それで一生懸命表示をチェックするわけですけれども、不可逆的な要素の強いこの問題はしっかりとウオッチしなければならないと思います。
 実効性の乏しい回収命令措置を盾にする前に、リアルタイムで情報の共有をする、そういう心がけが必要であると考えますが、大臣の御見解はいかがですか。
鈴木国務大臣 今先生から御指摘のとおり、法律の第六条の二項におきまして、開発者などの承認取得者に対して必要な情報の提供を求めることができる措置というものを措置しているところであります。
 この規定を活用いたしまして、承認取得者に対して、みずから開発した遺伝子組み換え生物等の使用状況についてのデータなど、必要な情報の収集及びその提供を求める所存でございます。その結果、実際に影響が生ずるおそれが認められた場合には、使用規程の変更または廃止をしたいと思っています。
 こうした法律上の措置にあわせまして、みずからも生物多様性に関する情報を収集することが肝要である、そういうふうに思うわけでありまして、モニタリングサイト一〇〇〇を活用した生態系の状態の把握というものに努めたいと思いますし、また、遺伝子組み換え生物等による影響を受ける可能性のある地点あるいは種を選定いたしまして、生物多様性への影響についても調査をしてまいりたいと思っております。
 こういうような法律の規定、それからみずからのモニタリング、こういうものをあわせまして、リスク管理措置に実効性を持たせてまいりたいと思っております。
高橋(嘉)委員 いや、環境大臣、申しわけないんですけれども、モニタリングサイト一〇〇〇の話はまだまだ具体化されていない、機構の中とかいろいろな話の中だけで、二百カ所ずつこれから五年間でやっていくような話であります。
 それはそれで視点としてはいいと思いますが、僕が今申し上げたのは、要は、リアルタイムで情報を共有した方がいいのではないか。起きてしまってからではどうしようもないんですから、ほとんど回収命令なんというのは、実効性の乏しい話であります。
 ですから、現場、承認取得者、例えば企業の社長じゃだめなんでありまして、実際栽培している人たち、現場の人たちの声を、現場の人たちの情報提供をしっかりと受ける、あるいは、このように書き込んでもらう、そしてそれの保存義務を課すとか、いろいろな意味でのことが必要ではないか、そのことを申し上げたんですが、もう一度お願いします。
鈴木国務大臣 第一種使用規程の承認につきましては、生物多様性への影響が出ないようにということで慎重に評価をすることとしておりまして、これによって生物多様性影響を防止することができると思っております。したがって、基本的には、個々の使用者すべてに状況の報告を義務づけるまでの必要はないのではないかと思います。
 しかし、先生がおっしゃるとおり、その使用、いろいろな使用があります。圃場でも使用されたりする方もある、そういう方とリアルタイムの情報の提供ということも重要なことだ、そういうふうに思うわけでありますので、使用者から幅広く情報を収集していくことは重要でありますので、基本的事項を定めます。その基本的事項の中で、遺伝子組み換え生物等の使用をする者が配慮すべき事項というものを定めます。念のため、その中で、使用者による状況の把握と連絡、これを求めて、こうしたものができますように考えてまいりたいと思います。
高橋(嘉)委員 ありがとうございます。そうしていただくと、僕は非常にモニタリングが生きてくる、ぜひ基本的事項の中で定めていただきたい。よろしくお願いを申し上げます。
 では次に、情報開示についての御質問を申し上げます。
 参議院では、知的財産権とのかかわりから、承認の過程そのものをすべて公開することは困難との政府見解を示す一方、知的所有権を侵害しない範囲で必要な情報は公開すると岩尾局長が明言されておりますけれども、具体的に情報公開をするという内容、どうもあやふやでわからない。
 これとこれとこれとこれは情報公開する、氏名、住所、企業名。申請内容はできないと言うかもしれませんが、影響評価書の一部はする、学識経験者の審議内容、審議時間、メンバー名、反対者数、懸念要因、回収状況、廃止理由とか罰則とか、いっぱいありますけれども、どこまでやるのか。そこのところを教えていただけませんか。
岩尾政府参考人 今先生がおっしゃった、何が保護すべき情報、何が公開すべき情報というのは、個別の具体的な事例でさまざまでございます。一概にはなかなか申し上げられないんですが、例えば遺伝子組み換え生物の種類とか、第一種使用の内容とか方法、それから生物多様性影響評価書の概要などは公開情報ということになるだろうというふうに思っております。
高橋(嘉)委員 できる限り公開するという姿勢であるかどうかを含めて、例えば第二種使用による評価あるいは公開のあり方もちょっと問題があるのではないかな、問題を残していると私は考えております。
 いずれ、国民の理解がもとになければ技術の進歩はありません。正しい理解も広がりません。できる限りの公開をしていくという姿勢をもって臨むというお考えなのか。それと第二種使用についての見解も含めて、もう一度、局長、お願いしたいんですが。
岩尾政府参考人 先生御指摘のように、国民各層の広い理解を得るということが重要であると思っております。
 情報開示を行うことで、幅広い環境情報、意見を聴取できると思っております。他方で、このような遺伝子組み換え生物が企業の創意工夫の結果生み出されるということで、知的所有権の問題等もあります。そういう両方の均衡を図りながら、先ほど申し上げましたようなことについては、私ども、積極的な公開情報としたいというふうに考えております。
高橋(嘉)委員 では最後に、六省の主務大臣の中で、生物多様性の確保という役割を担うのは、言わずもがな、環境相であります。法案の理念上、最も重要な責務を負っていると言っても過言ではないと私は思います。
 我が国においては、遺伝子組み換え生物の研究者に対し、生物多様性に関する研究者は非常に不足していると言われております。生物多様性の保全、生態系の管理という立場をしっかり貫いてこそ、将来に向けた議論が尽くされることと思いますが、大臣、これから先、その横断的な観点、生物多様性という横断的な観点の中で環境省が入っているわけですから、どのような考え方で臨むか、しっかりと実効あるものにしていくためにはこのようにしていきたいと決意をお聞きして、私の質問を終わります。
鈴木国務大臣 このカルタヘナ議定書の目的、それを担保する国内法の目的は、遺伝子組み換え生物によって生物多様性に影響が出ないようにするということがその目的でございますから、まさに生物多様性を確保する上で、環境省また環境大臣の責務は重要であると思っておりまして、そうした責任を持ちながら、そして各関係大臣、各省との連携につきましてもリーダーシップを持ってやってまいりたい、そのように思っているところであります。
 六つの主務大臣、関連省庁があるわけでありますけれども、環境省、環境大臣は、横断的にいずれのものについてもかかわりを持ってまいります。例えば、遺伝子組み換え生物の中で医薬品に使用するものにつきましては、その分野に知見のあります環境大臣と厚生労働大臣、そして農作物にかかわるものにつきましては環境大臣と農林水産大臣ということになるわけであります。
 いずれにしても、横断的な立場でこの法律、それからそのもとになりますこの条約の目的、そういうものをしっかりと踏まえて、この法律の趣旨が徹底できるように全力で努力をしたいと思います。
高橋(嘉)委員 頑張ってやっていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
松本委員長 藤木洋子さん。
藤木委員 日本共産党の藤木洋子でございます。
 これまで、生物を輸入する際の影響については、人の健康への影響、農作物、家畜への影響という観点での規制が行われていましたけれども、カルタヘナ議定書で求められている生物多様性への影響という観点で評価する仕組みはございませんでした。そこで、今回その仕組みが必要となったわけで、これまでの指針に基づく影響の評価の仕組みでは十分な実施が担保されないということから、法律に根拠を置いた措置が必要ということになりました。
 そこで、まず、今世界でどれだけの遺伝子組み換え作物が生産されていて、日本に輸入されているかという問題です。
 遺伝子組み換え作物は、二〇〇一年度の世界の作付面積は五千二百六十万ヘクタールであったものが、現在では五千八百七十万ヘクタールと拡大されておりまして、そのうち、アメリカとアルゼンチンで全体の八九%、カナダが六%、中国が四%となっております。
 アメリカでの二〇〇二年度の遺伝子組み換え大豆の作付は六八%と言われている中で、日本が輸入している五百万トンのうち、三百六十五万トンがアメリカから輸入されております。この輸入されている大豆の六五%以上が、モンサント社が開発したラウンドアップ耐性大豆と考えられております。また、アメリカ産のトウモロコシも、輸入量一千四百二十二万トンのうち、遺伝子組み換え品の輸入量は四百七十七万トン、アメリカ産のジャガイモ輸入量が二十七万トンのうち、遺伝子組み換えの輸入量一万トンなどと、これは作付割合と輸入量から推計している数字になっております。
 そこで、現在、遺伝子組み換え作物が、どこの国からどの程度の量が入ってきているのかということを統計データで正確に把握するということが極めて大事であろうというふうに私は思うのですが、表示義務がないということでございますから、輸入統計データが果たして把握されているのかどうか、環境大臣にお伺いいたします。
鈴木国務大臣 現在、遺伝子組み換え作物の輸入データが正確に把握されているかどうかという御質問でございますが、残念ながら、正確には把握をされていないというのが現状でございます。
 遺伝子組み換え農作物は、輸出国において、遺伝子組み換え作物かそうではないか、それが分別せずに取り扱われる場合がほとんどでございまして、輸入される農作物のうち、遺伝子組み換え農作物がどの程度含まれているかを正確に捕捉することは困難でございます。
 したがいまして、遺伝子組み換え作物の輸入量についての正確な数値、これは先生がお示しになりましたとおり、推計というものはあるわけでありますけれども、正確な数値は把握をしていないというのが現状でございます。
藤木委員 そこが危険なところだと思うんですね。
 さきに挙げたラウンドアップ耐性大豆は、モンサント社が生産、販売している除草剤ラウンドアップに対して耐性を持たせた大豆です。ラウンドアップは、ほとんどあらゆる草を枯らしてしまいますから、もちろん、従来の大豆も枯れてしまうわけです。このラウンドアップ除草剤の効果をなくすたんぱく質をつくり出す遺伝子を組み込んだラウンドアップレディー大豆だということですから、この大豆を栽培してラウンドアップ除草剤を使ったら、大豆だけ残して、すべての雑草を取り除くことが可能だということになります。ですから、開発メーカーの側からいうと、種も除草剤もセットで売るということができます。
 しかし近年、ラウンドアップが、動物への急性毒性は少ないけれども、慢性毒性や次世代毒性、土壌生物への影響による生態系の変化などの影響が指摘されてまいりました。また、ラウンドアップレディー大豆の収穫低下の原因が、ラウンドアップレディー大豆採用によってラウンドアップの散布量がどんどんふえてまいりまして、土壌中の根粒菌の発達が悪くなり、また、外来遺伝子の挿入自体が、大豆本来の遺伝子の働きを阻害しているなどの研究も発表されているところです。
 ですから、今や、消費者と環境の安全よりは生産における利便性を目指したものにすぎなかったと言われていますけれども、環境省として、このラウンドアップレディー大豆の採用による生態系への影響についてどのように評価をしていらっしゃるのか、お伺いします。
岩尾政府参考人 これまで、我が国において遺伝子組み換え農作物が使用される場合、農林水産省のガイドラインに基づいて、環境への安全性を事前に確認しております。
 その中で、ラウンドアップレディー大豆についても、除草剤の影響を受けないという特性以外は通常の大豆との差異が認められないとして、環境への安全性は確認されていると認識しております。
 既にこの農水省のガイドラインによる確認が行われているものが数多くありますが、今後、この法律ができますと、改めて承認を受けるということが必要となります。その際、私どもは最新の知見に基づいて生物多様性への影響の評価を行うということになります。
藤木委員 今のお話では、最新の知見ではなさそうな感じを受けますね。
 次に、カルタヘナ議定書第八条では、輸出入の手続に関して、環境放出を目的としたLMOの輸出に際し、輸出先に対して事前の通告が必要となっています。輸入国は、輸入に先立ちリスク評価を実施し、輸入の可否を決定することが必要です。本法では、第四条の「遺伝子組換え生物等の第一種使用等に係る第一種使用規程の承認」と、第三章の「輸出に関する措置」などで規定されております。
 そこで、先ほど来話が出ておりますけれども、EUは、九九年五月に、害虫駆除に用いられる微生物、バチルスチューリンギエンスの遺伝子を組み込んだBtコーンの新たな認可を凍結しました。さらに、九九年六月に環境相理事会がEU法を修正しまして、遺伝子組み換えの規制強化で合意をし、当面は新たな遺伝子組み換え食品の生産、流通を禁止しています。また、既に九八年九月からすべての遺伝子組み換え食品の表示義務を課しておりまして、さらに、欧州議会は、二〇〇〇年七月、遺伝子組み換え食品・飼料の表示強化案を採択していますけれども、表示義務レベルを現行の一%から〇・五%に強化すること、食用油、砂糖、添加物など検出不可能なものも原料が遺伝子組み換えなら表示をする、未認可遺伝子組み換え食品や家畜飼料は禁止をするなどとなっております。
 イギリスでは、九九年二月、自治体協議会が、学校、庁舎、養老院での給食に遺伝子組み換え食品を禁止しております。また、九九年三月、すべての遺伝子組み換え食品の表示義務を法制化しましたけれども、これはレストラン、カフェのメニューも表示対象にしております。
 フランスでは、九七年二月、遺伝子組み換え食品の表示を義務化し、九八年九月にBtコーンの種子販売、栽培を一時凍結いたしました。同じ年の十月には、遺伝子組み換え菜種、てん菜は栽培を禁止にしております。
 このように、現在EU諸国では、自国の食料、農業を守るということとあわせて、予防原則に立った消費者保護の姿勢を明確に示し、遺伝子組み換え食品の規制を大きく広げていますけれども、日本も予防原則に立って、遺伝子組み換え食品の規制が必要ではないかというふうに私は思うのですが、厚生労働省、いかがですか。
遠藤政府参考人 予防原則の用語自体につきましては国際的にも確定的な定義がないところでございまして、今般成立をいたしました食品衛生法等の改正では、残留農薬基準制度へのいわゆるポジティブリスト制の導入など、食品の安全性を確保し国民の健康を保護するため、予防的観点に立った、より積極的な対応を図るための新たな規制手法の導入を行ったところでございます。
 遺伝子組み換え食品につきましても、従来より、予防的観点に立って事前に安全性審査を行い、安全性が確認されたものでなければ輸入、販売等できないこととし、さらに輸入時に検査を実施してきているところでございまして、今後とも、国民の健康の保護を図る観点から、適切な措置を講じてまいりたいと考えております。
藤木委員 検査を厳しくして予防を図ると言いますけれども、しかし、例えば、二〇〇一年四月から日本でも遺伝子組み換え食品の表示義務制度が始まっておりますが、スーパーなどで遺伝子組み換え原料使用の表示を目にすることはほとんどございません。私は少なくとも見たことはないわけです。
 それは、第一に、使用が五%以内であれば表示の義務はありませんし、二つ目には、食用油だとかしょうゆなどは検出が難しいという理由で、これも規制の対象外になっています。またこれも表示の義務はありませんが、三つ目には、大豆やトウモロコシを最も多く使っている家畜の飼料は全く規制の対象外です。
 現在表示義務があるのは、大豆、豆腐、納豆など十五製品、トウモロコシ、菓子など九製品、ジャガイモ、チップなど六製品、ほんの一部の表示にすぎないわけですね。一方、表示義務がないものは、大豆油、菜種油、綿実油、しょうゆなどで、全体の九割にも達しております。
 ですから、見かけは厳しいようでも実質を伴っていないというような日本の表示の義務制度というのは、消費者の安全が守れないのではないかと思いますが、厚生労働省、いかがですか。
遠藤政府参考人 遺伝子組み換え食品につきまして、市場流通する前の安全性審査を義務づけており、安全性が確認されたものについてのみ流通を認めているということで、遺伝子組み換え食品を含む食品の安全性については特段問題がないと考えております。
 表示につきましては、事業者が意図しない安全性審査済みの遺伝子組み換え食品の混入について、すべてを表示義務違反として罰則をもって臨むのは適当ではないということから、制度導入に当たって実態調査を行い、その結果をもとに、分別生産流通管理を行った上での五%未満の意図しない混入については表示義務を課さないこととしたところでございます。
 分別生産流通管理技術の向上に伴い混入率が低下していくことが期待をされますことから、今後も必要に応じ実態を調査し、それに基づき、表示義務の基準についても見直しを図ってまいりたいと考えているところでございます。
藤木委員 しかし、だから安全だというような御答弁ですけれども、二〇〇二年の農水省と農林水産消費技術センターの調査によりますと、有機JAS認可を受けていて遺伝子組み換え大豆は使用できないというはずの豆腐や納豆に、遺伝子組み換え大豆が混入していたことが明らかになっているではありませんか。ですから、安全性にとって表示義務制度は大切です。
 さらに、二〇〇二年七月に総務庁が食品表示に関するアンケート調査結果を発表していますが、表示義務のある食品で遺伝子組み換えでないという表示と、表示なしが同じ意味を持つことに対して、わかりにくく表記を統一すべきだという回答をしたのが八一%を占めています。また、たとえ原材料が少量でも表示すべきだとした人も八四%に上っています。さらに、食用油やしょうゆなど表示義務がない食品に対しても表示すべきだと答えているのが七六%を占めております。このように、現在の表示はわかりにくく、変えるべきだとした人が約八〇%に達しています。
 ですから、カルタヘナ議定書の第十八条第二項の(a)項では、表示に関する詳細な要件を決定するということになっています。本法は、第二十八条の「輸出の際の表示」に規定があるのだから、そして国内は既に表示制度があるのだからということで規定をされていないわけです。でも、アンケート結果もございますから、現行表示義務制度そのものを見直すべきではないかというふうに思うんですね。何か、見直されるようなことも先ほどちょっとお答えになりましたけれども、具体的にどのような見直しをされるかお考えでしょうか。
遠藤政府参考人 遺伝子組み換え食品の表示義務違反につきましては罰則の対象となりますことから、当該食品の遺伝子組み換え食品の含有につき、科学的に検証できるということが前提であると考えております。
 このため、大豆油、しょうゆ等のように製造、加工の過程で組み換えDNA及びたんぱく質が除去、分解をされ、これらを検知できないものについては、原材料として遺伝子組み換え農産物を使用しているか否か科学的な検証が困難であるため、表示義務の対象としていないところでございます。
 表示義務の対象につきまして、検知技術の向上、国際的議論の推移等を見守りつつ、関係者の意見を聞きながら適宜追加をしてまいりたいと考えているところでございます。
藤木委員 知見がないから仕方がないというようなことで、軽々に食料に使っていただきたくありません。
 次に、カルタヘナ議定書第十二条の「決定の再検討」で規定されておりまして、新たな知見が得られた場合の再評価の仕組みとして、評価に関する委員会等に対し、得られた情報を提供し、委員会の意見を踏まえて、当該生物の利用方法の変更、利用の終了等を指示できることが必要であるとしております。本法では、第七条で、承認した第一種使用規程の変更等で規定されております。
 日本の厚生労働省衛生調査会バイオテクノロジー部会は、アメリカのモンサント社などが売り込んでいた遺伝子組み換え作物を安全指針に適合しているとして輸入、販売、流通を承認しました。特別部会が承認したのは、除草剤耐性トウモロコシが五件、除草剤耐性菜種十五件、除草剤耐性てん菜一件、除草剤耐性綿四件など、六作物四十七種類が日本の安全評価指針に適合しているとして承認されています。
 しかし、先ほども述べましたけれども、EUは一九九九年、遺伝子組み換え作物Btコーンの花粉が昆虫に悪影響を与えることがわかったということで、遺伝子組み換え作物の新規の承認、販売、流通の承認停止を決めています。
 ですから、本法の第四条第一項の規定や第九条第一項については、施行日以前に承認が受けられ、施行日前に既に使用等をしている者は承認がなされたものとみなされることになっていますけれども、これまで承認した遺伝子組み換え生物も決定の再検討をすべきだと思いますが、環境省、いかがですか。
岩尾政府参考人 これまでに関係省のガイドラインによって安全性の確認を受け、遺伝子組み換え等の第一種使用をしている場合であっても、法施行後、一定の猶予期間の経過、今回の法律の附則第二条第三項でございますが、この法律に基づく承認を受けずに第一種使用等をすれば、この法律に違反するということになっています。
 したがいまして、そのような遺伝子組み換え生物等の第一種使用については、この法律に基づいて、改めて最新の知見によって生物多様性への影響評価を行って承認を受けていただくということになります。
藤木委員 では、次に、カルタヘナ議定書の第十五条で、附属書3の規定に従い、危険性の評価を明記していますけれども、本法では、第四条第二項で、「承認を受けようとする者は、遺伝子組換え生物等の種類ごとにその第一種使用等による生物多様性影響について主務大臣が定めるところにより評価を行い、」このように規定しております。
 ですから、特に、遺伝子組み換え生物の環境放出による危惧されている影響の評価項目といたしまして、農地等の限定環境下からの逸出の可能性、生態系への侵入、定着の可能性、人への非意図的暴露の可能性、野生生物種の捕食、競合、駆逐の可能性、近縁の野生生物種との交配の可能性などが挙げられております。
 そこで、名古屋大学理学部助手の河田さんは、アメリカでは今、抗生物質耐性菌が蔓延し、抗生物質が効かずに死亡する患者の多い国である、一般には病院での抗生物質の多用と家畜飼料への抗生物質添加だとか考えられているが、加えて遺伝子組み換えの作物の登場も無縁ではない、アメリカで遺伝子組み換え作物が本格的に登場した一九九六年には抗生物質耐性菌による食肉汚染は二〇%に急増している、遺伝子組み換え大豆やトウモロコシの大半は家畜飼料として使用されており、動物体内における遺伝子の水平伝達で腸内細菌が抗生物質耐性化しても不思議ではないと指摘しています。そして、アメリカ産の大豆やトウモロコシを無分別で使っている日本の家畜にも同じ危険が忍び寄っている、遺伝子組み換え作物の危険性は、私たちが直接食べなくとも家畜を介してやってくるのであり、食の安全性は食農文化全体の安全性確保なしには保障されないのではないかと述べています。
 そこで、農水省に伺いますが、河田氏が言うように、動物体内における遺伝子の水平伝達の腸内細菌の抗生物質耐性化が懸念されるわけですけれども、食料の安全性の確保は保障されているのかどうか、お答えいただきたいと思います。
松原政府参考人 畜産物の安全性でございますが、これを確保するためには、まず飼料の安全性を確保するということが重要であるというふうに考えております。
 こうした観点から、遺伝子組み換え作物の飼料利用につきましては、従来から、飼料に使う利用に先立ちまして、まずその組み換え作物に含まれる栄養成分が既存の作物と比較して同等であるか、そしてまた組み換え作物が有害物質を産生しないか、そういったこと等につきまして評価を行いまして、飼料として安全であるということを確認しているわけでございますが、また、この安全性の確認につきましては、より確実なものとするために、本年四月からこれを法的に義務づけておりまして、この確認を受けていない遺伝子組み換え作物につきましては飼料として用いてはならないということにしているところでございます。
 今後とも、こういった措置の適切な運用によりまして、飼料の安全性の確保にさらに万全を期してまいりたいと思っております。
 なお、この遺伝子組み換え飼料につきましては、食品安全基本法に基づきまして設置される食品安全委員会に所要のリスク評価を受けることとされておりまして、その評価結果に基づきまして適切なリスク管理を行ってまいりたいというふうに思っております。
藤木委員 しかし、イギリスの食品基準局が遺伝子組み換え食品の安全性評価の一環として委託をした研究がございますけれども、ニューキャッスル大学の研究チームは、大腸を切除して人工肛門を持つ被験者七人に、除草剤耐性大豆ラウンドアップ耐性大豆を用いた大豆食品のバーガーを与えて大便を検査しました。当然、大腸を経ない便を検査したことになります。被験者全員の便中の細菌から組み換えDNAが検出され、最も多い人の場合は食べた食事の三・七%に当たる組み換えDNAが回収されました。
 このことは、食品中の遺伝子が分解されずに腸内細菌に移行することが確認されたということであります。幸いにも、この除草剤耐性大豆には抗生物質耐性遺伝子は除去されておりましたけれども、腸内細菌にもし抗生物質耐性が移行して体内で増殖するということになりますと、病気の治療などに障害をもたらすということになりますね。
 このため、WHOなどでもたびたび遺伝子組み換えでの抗生物質耐性遺伝子の利用を早くやめるようにと勧告をしておりますが、厚生労働省、日本はやめているのでしょうか、どうなんでしょうか。
遠藤政府参考人 二〇〇〇年五月に開催をされましたバイオテクノロジー応用食品に関するFAO・WHO合同専門家会議におきまして、食品中に抗生物質耐性遺伝子が含まれることのない利用可能でかつ安全性が確認されている既存の組み換え技術の使用や、さらなる技術の開発が奨励されていることは承知をいたしております。
 また、同会議で、食品として摂取される遺伝子組み換え作物から腸内細菌等に遺伝子が水平伝達することは完全には否定できないものの、遺伝子組み換え食品に使用された抗生物質耐性マーカーの安全性は従来から評価されており、人や家畜の健康影響が実際には問題とはなっていないと結論をされているところでございます。
 現在までに厚生労働省におきまして安全性を確認した遺伝子組み換え食品の中にも、カナマイシン等の抗生物質耐性マーカーが用いられているものがございますが、当該遺伝子の機能や耐性発現の機序等が明らかであり、また当該遺伝子産物の摂取量がわずかであること、調理過程や消化管内で分解されること、耐性の対象となる抗生物質の臨床使用の状況等から経口投与された抗生物質の不活化が生じる可能性がないなど、安全性の問題はないと判断をしているところでございます。
藤木委員 次に、議定書第二十三条で、公衆の啓発及び参加が規定され、意思決定の過程において公衆の意見を求め、意思決定の結果を公衆が知ることができるようにするとしております。本法では、第三十五条の「国民の意見の聴取」で規定されていますけれども、一般的に、「情報を公表し、広く国民の意見を求めるものとする。」としているだけであります。
 そこで、農水省は二〇〇〇年三月、モンサント社が日本やアジアへ売り込みをねらって開発を進めている遺伝子組み換えによる除草剤耐性稲を、食用、加工用及び飼料用として輸入したり、日本で栽培することを認める確認をしております。国民の主食である、日本農業の中心作物である稲にまで遺伝子組み換えが及ぶということになります。
 また、このモンサント社は、遺伝子組み換え技術の開発に加えて、発芽ターミネーターを開発しております。文字どおり根絶やし技術で、発芽を妨げる毒素をつくる遺伝子を使用することによって、二代目の種子は自力では繁殖できないということになります。農家は収穫の一部を翌年の栽培用として使用することが不可能になり、毎年種子会社から購入を迫られることになります。
 しかし、昨年十二月、モンサント社と愛知県が共同で開発をした遺伝子組み換え稲、祭り晴というんですか、これが、同県の農業総合試験場内で六年間かけて系統をつくり出し、場内の一般圃場での栽培に移っていたために、消費者団体を中心に反対運動が起こりました。愛知県はついに、商品化に必要な安全性審査の申請を厚生労働省に行わないということにいたしました。
 ですから、中環審の野生生物部会の遺伝子組み換え生物の環境放出に際しての影響評価、利用決定のフローでも、申請者の受理、再決定による変更の際には市民の意見を聞くことが明記されておりますけれども、議定書の規定にあるように、意思決定の過程で市民の意見が求められるようにすべきだというふうに思いますが、大臣、いかがでしょうか。
鈴木国務大臣 遺伝子組み換え生物等につきましては、その環境への安全性等につきまして、国民の関心というものは大変高いものがあると思っております。したがいまして、本法の実施に当たりましては、国民各層の意見を取り入れて、また御理解がいただけるように努めてまいりたい、そのように思っております。
 具体的には、第三条で規定されている本法律の実施指針となります基本的事項の策定に当たって、パブリックコメントを求めたいと思います。また、個別の承認に当たりましても、内容に応じてパブリックコメントを求めることといたしまして、さまざまな方々の知見というものを生かしてまいりたい、そのように思います。
藤木委員 次に、議定書では、遺伝子組み換え生物が環境中で利用される場合、近縁種への影響などが懸念される、そういう場合には申請者によるモニタリングが行われますけれども、申請者によるモニタリングでカバーされない影響については、適切な指標種等を用いたサンプリング調査を検討する必要がございます。本法では、第三十四条の「科学的知見の充実のための措置」で規定されていますけれども、一般的に、「情報の収集、整理及び分析並びに研究の推進その他必要な措置を講ずる」となっているだけです。
 遺伝子組み換えで最も深刻な問題は、遺伝子汚染と言われております。さきに挙げました河田氏は、フランス政府は二〇〇一年七月、在来種子の中の組み換え遺伝子混入の検査結果を発表した、それによると、菜種、コーン、大豆など百十二検体のうち十九検体に何らかの組み換え遺伝子が検出された、特にコーン種子では三十九検体のうち十六検体、四一%の高頻度で汚染が見つかった、フランスは組み換え体の商業栽培は認めていないので汚染原因は不明だけれども、汚染が広範囲に拡散していることをこの事実は示している、このように述べております。
 ですから、こうした遺伝子汚染を防止するためには、申請者によるモニタリング任せにはしないで、国みずから適切な指標種等を用いたサンプリング調査をすべきだと思いますが、環境省、いかがですか。
岩尾政府参考人 本法が成立して的確に施行されるよう、私どもとしても行政によるモニタリングはしていかなければならないと思っています。
 具体的には、遺伝子組み換え生物等による影響を受ける可能性のある地点、リスクの高い地点や種を選定いたしまして、生物多様性影響について調査するということを考えております。それから、先ほどもちょっと出ましたが、新たにモニタリングサイト一〇〇〇という事業もことしから開始いたしておりますので、そのようなものも活用して、生態系の状態の把握に努めたいというふうに考えております。
藤木委員 時間が来たから終わりますけれども、一昨年の五月に、スナック菓子の回収騒ぎが日本でも起こっております。これは、八種類の生物やウイルスの遺伝子から成る遺伝子カセットが組み込まれていたということで、しかもそのカセットはジャガイモの遺伝子の中に二ないしは三カセットも入っていたということで、新しい遺伝子組み換え作物ほど、こうした組み換え遺伝子の組成が効率優先となっておりまして、乱雑で不自然なものが多くなる傾向があるとしております。これまでの品種改良では自然に起こる突然変異や近縁種同士の交配に依拠してきましたけれども、すべての遺伝子組み換え生物は、こうした人工的な遺伝子組み合わせになっております。ですから、欧米では遺伝子組み換え作物をフランケンシュタイン作物と呼んでいるのだそうです。
 私は、食料の自給率を高めるなど、我が国の食料、農業を守って、予防原則に立った消費者保護の姿勢を明確に示し、遺伝子組み換え生物等の規制の強化を強く求めて、発言を終わらせていただきます。
松本委員長 中川智子さん。
中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。
 まず、質問に先立ちまして、ぜひとも大臣にお願いしたいことがございます。
 せんだって環境委員会で、現地視察ということで霞ケ浦に行ってまいりました。私はつくづく百聞は一見にしかずだと思ったんですが、これはさきの国会での自然再生推進法のモデル事業として、アサザ基金がNPOとして参加して、行政とともに自然再生を試みるすばらしい事業で、やはり行ってみて、こんなふうに自然というのを人間の英知で守っていく、そのためにさまざまな人がそれに参加している、すばらしい事業だと思ったんです。
 先日の質問のときにも何人かの委員からも質問が出ましたが、このモデルケースとなっております霞ケ浦の再生が危機に陥っているという事態でございまして、ぜひとも大臣、環境委員会というのは現場主義で、やはり見てきていただきたいと思うんです。きょう、理事会でもそのことを野党として、また与党の皆様も同じ思いで、大臣にぜひとも行っていただきたいということを伝えていこうということになったんですが、それはやはり委員会で直接大臣にという話もその中にございました。
 今度お近くの方に何か大臣御臨席の催し物があるということも伺いましたので、ぜひとも霞ケ浦の自然再生の状況というのを見てきていただきたいと思いますが、冒頭、大臣にお願いして、お返事をいただきたいと思います。
鈴木国務大臣 アサザプロジェクトにつきまして、この委員会でもいろいろ御質問を受けているところでありますし、私自身、一つのモデルケースとして頑張っておられるというような認識を持っております。七月の下旬に霞ケ浦で自然公園大会がございますので、その折に時間が許せば当地を伺いたい、そのように思います。
中川(智)委員 ぜひともよろしくお願いいたします。たくさんのものを見て、そしてたくさんの方とお話をしてきていただくことをお願いいたします。
 それでは質問に入りますが、先日の参考人質疑のときに、四人の方からいろいろなお話を伺いました。とても勉強になったんですが、やはりその中で、私自身、きっちりとここを、参考人の皆さんのお話を生かしていくためには大事だと特に思いましたことが二点ございます。
 一つには、やはり生物多様性条約にも参加しておらず、今回のカルタヘナ議定書にも参加する意思がない、しかし最大の輸出国であり、日本が作物を輸入しておりますアメリカの参加というのは、これは前提だと思うというお話で、でも外務省や環境省が、それに対して、国の仕事としてそこはしっかりやっていくべきではないかと、当たり前のような注文が一つございました。
 いま一つは、一九七三年から始まりましたこの遺伝子組み換えのさまざまな研究なりが、三十年たったといいましても、特に日本では研究者の層が薄いということ、そして、それがいろいろな形ですぐに成果が出るという研究ではないので、その研究者も非常に育ちにくいということもありました。
 私は、やはり表示問題、遺伝子組み換え食品の表示のときに痛感したんですけれども、国民はこれに対してとても関心を持っている。それは、直接口に入れる食品の表示ということから、今回は大きく、一般の圃場でこれが栽培されるということになりましたら、具体的に姿形が違うものではありませんので、私たちは、影響を受ける側に本当に丸腰で立たなければいけないという状況になります。
 これは、ぜひともアメリカに対して、きっちり参加すべきということを、大臣がさまざまなそのような国際会議のところでおっしゃっていただくことは大事ですが、これはぜひとも、六省にまたがることですので、環境大臣が、総括的な環境省の担うべき役割として、小泉総理にぜひともアメリカに対して提言しろということを言っていただきたいと思いますが、冒頭これの答弁をお願いします。
鈴木国務大臣 カルタヘナ議定書の中にも、締約国は未締約国に締約するよう働きかけるという趣旨の規定がございますので、我が国はこれからもアメリカに対して働きかけをしっかりやってまいりたいと思っております。
 今御審議をいただいておりますこの国内法ができますと、これは、アメリカを初めとする未締約国に対しましても、締約国と同様の対応をそこでしていただくことになるというわけでありますけれども、やはりそのもとの議定書に加入をしていただくという努力、それはこれからも継続してやってまいりたいと思います。
中川(智)委員 今私が大臣にお願いいたしましたのは、小泉総理に、この法案、きょう全会一致で成立するわけですけれども、これを受けて、直接日本の総理からアメリカに対して言っていただきたいというお願いの御答弁をちょうだいしたいと思ったんですが、その部分はお答えいただけなかったので、もう一度お願いします。
鈴木国務大臣 環境大臣が申し上げるのでは甚だ立場が弱いということかもしれませんけれども、まず、私の立場で、機会をとらまえて、きちっと申し上げるようにしたいと思っております。
中川(智)委員 そのような努力があって、そして、本当に単なる受け手で、結局さまざまな遺伝子での汚染が広がったのでは、本当に目も当てられないと思うわけですね。ですから、今冒頭に大臣にお答えいただきましたが、やはりアメリカ、カナダ、オーストラリア、最大の日本への輸出国のカルタヘナ議定書の締結ということをなせるまで、私は輸入をストップすべきだと思いますが、いかがでしょうか。
鈴木国務大臣 とにかく、今回、この遺伝子組み換え生物によります環境中の使用において、これが生物多様性に影響を与えないような措置を、今度はガイドラインと違って、しっかりと法整備でするということでございます。
 そして、先ほど申し上げたように、これは締約国であろうが未締約国であろうが、今回の国内措置は全くそこは関係なしにしっかりかかっていくということでありますので、この法律を通じて、そうした生物多様性に対する影響が出ないようにしっかりやっていくということ、これが大切なことである、そういうふうに思っております。
中川(智)委員 やはり輸出国が締約していない、参加していない、それは、ある意味では非常に不公平な取引、関係だと思いますし、信頼関係というのはそのような基盤が確立してからやはり始まるものだと思っておりますので、前より積極的な参加呼びかけというのを、ありとあらゆる機会を通じてお願いしたいと思います。
 今の質問と関連いたしますけれども、現在的な状況を岩尾局長にお伺いしたいんです。
 現在でも試験的に圃場で遺伝子組み換え作物の栽培がされておりますが、それは全国で何カ所なのかということをお答えいただきたいと思いますが、おわかりでしょうか。
岩尾政府参考人 環境省としては、残念ながらデータを持ち合わせておりません。
中川(智)委員 では、どこが持ち合わせていらっしゃいますか。
岩尾政府参考人 先ほど農水省の答弁にもあったかと思いますが、試験栽培を例えば筑波の研究所でやっているとか、それから幾つかの農業関係の研究センターでやっているというふうに思っておりますので、情報については農水省の方が詳しいのではないかと考えております。
中川(智)委員 私は、モニタリングとか、これから一般の圃場で栽培するときに、今現在、何カ所でやっていて、そして、それは国でやっているのと県でやっているのとあると思うんですが、そのような情報、データというのをやはり環境省もしっかりつかんでおくべきだと思うし、また、その試験栽培の周辺農家などに対してきっちりと公開をして、それに対して皆さんの意見を聞くということが、今回、さまざま議論している中身だと思います。
 そのようなことに関しまして、局長、もう一度、環境省としては把握していない、農水さんの方がということですが、そのように縦割りの中で今まではやってこられた、これからはそうじゃなくなると思うんですが、環境省の情報を。
岩尾政府参考人 大変情報不足で申しわけございませんが、先ほどの鮫島先生の御質問の中で、例えば、そういう民間企業と独立行政法人の研究所が共同してやっているというような話もしたわけでございますが、現在、まさに試験栽培という段階ですから、基本的には限られたところで限定的に行われているものと思っております。
 先ほどの質問の中でもそう感じたんですが、要するに外に漏れては困るわけですから、限定的なところでやらなきゃならないとなると、大変限られた、それだけの設備の整っているところということで外国企業も日本の研究所にお願いしているということだとすると、それほど広く栽培が、試験栽培であっても行われているというふうには思っておりません。
 私としては、済みません、現在それだけの情報でございます。
中川(智)委員 具体的な数のことに関しましては、さきに通告をしておりませんでしたので申しわけなかったと思うんですけれども、やはりこれは基本的なところだと私は思いましたので、質問をさせていただきました。
 では、一番最後の質問通告のところを前倒しで質問いたしますが、これは、全体的な情報というのは環境省がしっかりと得て、環境省のホームページはかなり充実したものがございますので、ホームページにこのカルタヘナ議定書関連のことをまとめて市民に公開するということをしていただきたいと思います。他省庁と非常に関係するわけなんですけれども、それは環境省が他省庁の情報もとって、そのリンク先を明示して、情報公開を徹底する姿勢というのをまず最初にお願いしたいと思いますが、それに対しての御答弁を、済みません、これは大臣にお願いします。
鈴木国務大臣 今回、主務省が六省にまたがるわけでありますけれども、それぞれの省が持っている情報、それを自分たちの省だけで持っていてほかに出さないということでは困りますので、この問題について、それをまず共有するようにしてまいりたい、そういうふうに思っております。そして、その得られた情報も有効に活用したいと思います。
 このために、環境省におきまして、遺伝子組み換え生物が生物多様性に及ぼす影響に関しまして各省に蓄積をされております情報、それから環境省がみずから収集する情報、これを集約いたしまして提供できるような情報基盤を整えてまいりたいと思います。それによって適切に情報の収集、提供を行って、この法律の円滑かつ的確な実施にも努めてまいりたい、そういうふうに思っております。
中川(智)委員 どうぞよろしくお願いいたします。
 続きまして、企業と組んで商品開発をしていきます承認取得者は、みずからが生物多様性影響評価書を作成することになっていますが、私はそれだけでは十分ではないと思うんですね。
 と申しますのは、やはり遺伝子組み換え食品の表示問題のときに、それを承認するかどうかというのは主に企業のデータによること、それが一〇〇%に近かったわけです。それに対して、いわゆる消費者の安全という立場から、それはこういうところが足りないとかと言うことがなかなかできなかったということで、ではせめて選ばせるようにしてほしいということで、表示が強い要望として国民の中から沸き上がったわけなんですね。ですから、今回もその承認取得者だけに任せてはいけないと思います。
 ここでやはり継続的にモニタリングすることが必要であるにもかかわらず、環境省が承認取得者に対して監視するシステムがきっちりとないというふうに思います。これは非常に危険なことだと思いますし、それがどうしてできないのかということを伺いたいと思います。
 そしてまた、予想しなかった事態が発生したときに慌てて承認を見直すということでは、これは環境中への拡散というのはもう既に取り返しのつかない事態になるということで、極めて慎重にすべきだと私は思っています。その影響というのが原状回復できない、そのような状況になってしまって、非常事態が起こってから承認取得者に情報の報告を求めるというのは、非常に甘くてずさんな制度だということを思っております。
 監視体制をしっかりとできないのであれば、圃場での栽培というのは前提として行うべきじゃないと思うんですが、これに関してのお答えを。
 例えば、圃場で栽培しているときに、うちの土地でも、田んぼでもちょっとやってみたいという人が、夜中のうし三つ時ぐらいにやってきてそれを盗んでいって、そしてどこかで栽培するというのをどうやってこの監視体制の中ではできるのか。
 そして、先ほどの質問にもありましたが、マニフェストのように、どこの業者がどこのどういう農家に売って、そしてその量はどれぐらいで、周辺に対する影響がないかどうかということを定期的にチェックして、それが最終的に、環境省がいつ聞かれてもわかるという体制になっているのかどうか、これに対してお答えをお願いします。
岩尾政府参考人 先生の御質問の趣旨は、申請者といいますか、事業者が出すときの判断ですとか、それから、事業者に継続的にモニタリングさせるだけじゃなくて、何か行政で担保すべきじゃないかというような御質問だというふうに思います。
 私ども、その申請者が生物多様性の影響評価の申請書を出したとき、それについては、その時点の最新の科学的知見でもちろん評価するわけです。ですが、その後のモニタリングということになれば、そのときに予想できなかった後々の環境変化ですとか、その後新しい科学的知見があったというようなことがあるわけですので、既に過去に承認を行った遺伝子組み換え生物についても、かかる影響が生ずるのだという知見があらわれれば、承認後においても必要に応じてそのデータの収集をしていかなければならないというふうに思っております。
 また、実際には、そういうことが認められた場合には、使用規程の変更をするとか、使用規程を廃止するということも考えております。
 具体的には、法律の六条の二項に、承認を取得した者に対して、自分で開発した遺伝子組み換え生物の使用状況についてのデータなど必要な情報の収集及び提供を私ども求めることができるようになっておりますので、そういう中で継続的な情報収集を図っていきたいというふうに考えておるところでございます。
中川(智)委員 先ほどの局長の答弁の中で、事業者に対して報告を求めることができる、必要に応じてという表現をなさいました。その必要に応じてというところがみそだなと思ったんですが、必要に応じてというのはどのような範囲のことで、必要がないとするのはどのような対象でしょうか。
岩尾政府参考人 先ほど申しましたが、評価時には予想できなかった環境の変化が認められたということですね。それから、その後、そのような組み換え遺伝子生物について、新しい従来とは異なった科学的な知見が見つかったという点においてということを想定しております。
中川(智)委員 それが見つかったときには遅いということを言っているわけです。
 また、事業者は自分でモニタリングをやるという、事業者がやることになっているわけですから、都合の悪いことは報告しないでしょうし、いつもチェックして報告を義務化する、義務化にしないとだめではないかということをお願いしたいんですが、いかがでしょうか。
岩尾政府参考人 実際に制度を運用しないとわからないところもあるのかもしれませんが、専門家の方々に御議論いただく中で、やはりある程度のリスクというものが先生方の中にもわかるといいますか、申請の際にそういうものを考える先生もおられると思います。
 実際に許可するに際しても、例えば何らかのリスクがありそうだけれどもということであれば、その予防的な措置に基づいて、私ども、まずは限定的に栽培といいますか、使用してみたらどうかというような形で許可を出すかと思いますので、そのようなプロセスの中で、何か環境に悪影響を及ぼすようなものがあれば状態は把握できるのではないかというように考えております。
中川(智)委員 今、プロセスとおっしゃいましたが、やはりプロセスは大事だと思うんです。
 専門家なんですが、第一種使用者の場合は、書類審査の際に生物多様性に関する専門の学識経験者の意見を聞かなければならないということになっていますが、この学識経験者の選定基準というのはどのようなものでしょうか。
弘友副大臣 専門的な学識経験を有する者を主務大臣が選定して、これらの者の会合においてその意見を聴取する、こういうふうになっております。
 具体的には、審査の対象となる遺伝子組み換えの生物がいろいろと違うわけですね、だから、その必要とされる知見が異なるわけでございますので、例えば、生物の種類に応じまして生態学、生物工学、動植物学、農学その他の分野から適切な専門家を選任いたしまして、生物多様性影響評価が的確になされるように運用していく、こういうことです。だから、そのときそのときどういう審議会になるのか、いろいろ形態はまだ煮詰まっていないと思いますけれども、その採用というか、そういう承認の際の生物によって、それぞれの分野の専門家を選定するということでございます。
中川(智)委員 大抵、専門家とかというのは、余り行政にとってうるさくない人を選びたがるもので、今回の遺伝子組み換えの問題などでは、私はむしろうるさい人を、うるさいと言ったら語弊がありますが、やはり在野での研究者。また、スターリンク事件のときなどは、実際見つけたのはNGOでした。いつもいつも後追いで行政の方が教えてもらうというのは、この間、厚生労働省でも農水省でも聞いていただいたらわかると思うんですが、本当に在野の研究者やNGOの方々がとてもよく勉強していらっしゃいます。
 私は、むしろ、そのように慎重派の人もきっちりとその審査の委員に入れること、そのような姿勢が本当に、いずれは国民の命にかかわる、そのようなところを環境省として守っていく、そしてまた次世代にしっかり環境を残していくために、そこをやっていくのが環境省として一番できることだと思いますが、そのような方々を入れていただきたいということと、基本的にその承認の検討会の公開というのをきっちりなされていくのかということを伺いたいと思います。
鈴木国務大臣 後半は局長に答えていただきますが、まず、検討委員会のメンバーでありますけれども、極めて重要な検討委員会でありますので、それぞれの専門分野からふさわしい人をきちっと選んで、それで、この検討委員会が持つ本来の目的、そういうのが十分果たされるよう、人選には十分気をつけてまいりたい、そういうふうに思います。
岩尾政府参考人 承認申請の審査の過程などの情報公開の点でございます。
 遺伝子組み換え生物は、企業等の創意工夫の結果生み出されるということで、個別具体的な審査情報の中には知的財産権に深くかかわるものも想定されます。承認の過程そのものすべてを公開するということは困難であると考えておりますが、個別申請者ごとに作成される一種使用等の具体的な方法を定めた規程については、審査後、法に基づき公表いたします。それから、第一種使用規程の承認に際し、その内容に応じて情報を公開し、パブリックコメントを行うという措置を講じます。
 このような機会を通じまして、知的財産権を侵害しないように配慮しながら、国民に対する情報の提供に努めてまいりたいと考えております。
中川(智)委員 やはり行政がどちらの立場に立つか、企業の利益の側に立つのか、それとも国民の健康を守るという立場に立つのか、ここはとても大事です。
 遺伝子組み換え食品の輸入、表示の問題のときに、私とても理不尽だなと思ったのは、企業秘密と言えば何でも許される。そして、企業秘密が本当に大きな隠れみのになってしまって正しい情報が国民に公表されないということを、今度は突破していただきたいと思います。従来の手法はやめていただきたいと思いますし、教授、教授、教授が二十何人のうち十何人入っている、そのような審査の中身はやめていただきたい。そして、パブリックコメントで意見を聞いたからいいじゃないかというガス抜き手法は、これからはやめていただきたい。
 特に環境省は、本当に国民の皆さんの意見を大事に、そして、それを省のこれからの政策、またいろいろな行動に生かしていくという基本的なスタンスを確立していっていただきたいということを最後にお願いいたしまして、質問を終わります。
松本委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
松本委員長 この際、本案に対し、藤木洋子さんから、日本共産党提案による修正案が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。藤木洋子さん。
    ―――――――――――――
 遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律案に対する修正案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
藤木委員 私は、日本共産党を代表して、議題となっています遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律案に対する修正案の趣旨を説明いたします。
 修正案は、既にお手元に配付されておりますので、詳細な説明は省かせていただきます。
 修正案の第一は、主務大臣は、第一種使用規程の承認申請書が提出された場合、その旨を公告し、当該申請書、生物多様性影響評価書及び評価に使用した資料等を三十日間公衆の縦覧に供さなければならないものとします。また、国民は、承認申請された第一種使用規程について、生物多様性影響を防止する観点から縦覧期間内に主務大臣に意見書を提出することができるものとするとともに、主務大臣が学識経験者の意見を聞く場合には、当該意見書の写しを示すものとします。さらに、主務大臣は、生物多様性影響に関する学識経験者から聴取した意見の内容及び基本的事項に照らし、第一種使用等をする場合に、生物多様性影響が生ずるおそれがないと認めるときでなければ承認をしてはならないものとします。
 第二に、主務大臣は、第二種使用等に係る拡散防止措置の確認の申請があったとき、または確認をしたとき、その申請書及び拡散防止措置の内容等を公表しなければならないものとします。
 第三に、遺伝子組み換え生物の使用等をしている者は、毎年、その実施状況に関し、主務大臣に報告しなければならないものとするとともに、主務大臣は、当該報告を公表するものとします。
 以上、委員の皆様の御賛同をお願いして、趣旨の説明を終わります。
松本委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
松本委員長 これより原案及びこれに対する修正案を一括して討論に付するのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 内閣提出、参議院送付、遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律案及びこれに対する藤木洋子さん提出の修正案について採決いたします。
 まず、藤木洋子さん提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
松本委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。
 次に、原案について採決いたします。
 原案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
松本委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決まりました。
    ―――――――――――――
松本委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、田村憲久君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の六会派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。田村憲久君。
田村委員 私は、ただいま議決されました遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律案に対する附帯決議案につき、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。
    遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずべきである。
 一 遺伝子組換え生物等による生物多様性影響については未解明な部分が多いことから、科学的知見の充実を急ぐとともに、「リオ宣言」第十五原則に規定する予防的な取組方法に従って、本法に基づく施策の実施に当たること。
 二 遺伝子組換え生物等による生物多様性影響の防止に万全を期するため、環境省のリーダーシップの下、関係省庁間の十分な連携を図るとともに、本法実施に係る人員・予算の確保等必要な体制の整備に努めること。
 三 遺伝子組換え生物等に対する国民の懸念が増大していることにかんがみ、「基本的事項」を定めるに当たっては、広く国民の意見を求める機会を確保し、その結果を十分に反映させるとともに、国民に分かりやすい内容のものとすること。また、「基本的事項」の策定後においても、十分な情報公開の下、国民とのリスクコミュニケーションを積極的に推進すること。
 四 「生物多様性影響評価書」の信頼性を確保するため、評価手法・基準等を定めるに当たっては、国民のコンセンサスを十分に得るため、広く意見を求め、適宜その結果を反映させること。また、評価後における継続的なモニタリングの実施とその結果の情報開示が図られるようにすること。
 五 遺伝子組換え生物等の第一種使用等の承認に当たっては、関係する国際機関における検討や諸外国の研究成果等を踏まえつつ、多様な分野にわたる学識経験者の意見を尊重し、客観的な評価の下に、慎重に行うこと。また、承認後における科学的知見の充実等により、生物多様性影響が生ずるおそれがあると認められた場合においては、速やかに使用の凍結等適切な措置を講じること。
 六 遺伝子組換え食品の安全性に対する消費者の不安が大きいことから、その安全性評価を行うに当たっては、科学的知見を踏まえ慎重を期するとともに、表示義務の対象、表示のあり方、方法についても検討を行うこと。
 七 遺伝子組換え生物とともに移入種による生物多様性影響が懸念されていることから、移入種対策に係る法制度を早急に整備すること。
 八 国際的な生物多様性の確保を図るため、生物多様性条約、カルタヘナ議定書を締結していない米国等に対し、あらゆる機会を利用して同条約、同議定書に参加するよう積極的に働きかけること。また、当該国の遺伝子組換え生物等に係る情報収集に努め、輸入業者等への注意を喚起すること。
以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。(拍手)
松本委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
松本委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決まりました。
 この際、ただいま議決いたしました附帯決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。鈴木環境大臣。
鈴木国務大臣 ただいま御決議のございました附帯決議につきましては、その趣旨を十分に尊重いたしまして、努力する所存でございます。
    ―――――――――――――
松本委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
松本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決まりました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
松本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時三十三分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.