衆議院

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第7号 平成20年4月22日(火曜日)

会議録本文へ
平成二十年四月二十二日(火曜日)

    午前九時二十四分開議

 出席委員

   委員長 小島 敏男君

   理事 小野 晋也君 理事 大前 繁雄君

   理事 木村 隆秀君 理事 北川 知克君

   理事 西野あきら君 理事 岩國 哲人君

   理事 伴野  豊君 理事 江田 康幸君

      あかま二郎君    上野賢一郎君

      亀岡 偉民君    小杉  隆君

      木挽  司君    坂井  学君

      鈴木 俊一君    土屋 品子君

    とかしきなおみ君    中川 泰宏君

      並木 正芳君    藤野真紀子君

      松本 洋平君   山本ともひろ君

      川内 博史君    末松 義規君

      田島 一成君    田名部匡代君

      村井 宗明君    吉田  泉君

      高木美智代君    江田 憲司君

    …………………………………

   環境大臣         鴨下 一郎君

   環境副大臣        桜井 郁三君

   環境大臣政務官      並木 正芳君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            上田 隆之君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局長)            西尾 哲茂君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  南川 秀樹君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  櫻井 康好君

   参考人

   (福岡大学法学部教授)  浅野 直人君

   参考人

   (京都市地球環境政策監) 大島  仁君

   参考人

   (環境エネルギー政策研究所所長)         飯田 哲也君

   環境委員会専門員     齊藤  正君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十二日

 辞任         補欠選任

  近藤三津枝君     亀岡 偉民君

とかしきなおみ君     松本 洋平君

  末松 義規君     川内 博史君

同日

 辞任         補欠選任

  亀岡 偉民君     近藤三津枝君

  松本 洋平君   とかしきなおみ君

  川内 博史君     末松 義規君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七二号)


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     ――――◇―――――

小島委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、福岡大学法学部教授浅野直人君、環境エネルギー政策研究所所長飯田哲也君、京都市地球環境政策監大島仁君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 なお、飯田参考人におかれましては、所用により到着が少々おくれますので、その点御了解いただきたいと思います。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと思います。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からそれぞれ二十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず浅野参考人にお願いいたします。

浅野参考人 福岡大学法学部の浅野直人でございます。

 本日は、意見を述べる機会をお与えいただきましたことを、委員長初め委員会の皆様方に心から感謝申し上げたいと存じます。

 まず初めにおわびでございますが、実はレジュメをファイルで送ったつもりだったんですが、ちょっと誤りがございまして、本来送るべきファイルでないものが送られてしまいました。一番最初にあります「循環型社会形成推進と関連法」というのは関係ございませんで、参考までにお読みいただければよろしいんですが、その次にあります全国知事会で出されたものの原稿は、きょう参考資料ということでお配りしたものでございます。このほか、本来はお話し申し上げることについての簡単なレジュメを用意したんですが、それが届いておりませんので、今、急遽印刷をお願いしております。終わるころにはお届けできるのではないかと思います。お許しをいただきたいと思います。

 さて、そういうわけで、少し数字などがばらばら出てきてわかりにくいかもしれませんが、お許しください。

 本年から京都議定書の第一約束期間が始まったわけでございますが、我が国の温室効果ガス排出量は、二〇〇六年度の速報値でも、なお基準年に比べまして六・四%増の十三億四千百万トンCO2となっておりまして、基準年の十二億六千百万トンCO2から六%削減の十一億八千六百万トンCO2以下にするためには、一二・四%、つまり一億五千五百万トンCO2の削減の実現が必要でございます。

 こういう数字につきましては、御院の調査局がおつくりになりました法律案参考資料の六十二ページから六十三ページに掲載されております中央環境審議会地球環境部会と産業構造審議会環境部会地球環境小委員会合同会議の最終報告の図一、表一というところで載せておりますので、ごらんいただければと思います。

 さて、七月の洞爺湖サミットでは地球温暖化対策が主要議題の一つとなるわけでございますが、先進国や途上国の複雑な利害が絡むこの温暖化問題について我が国が議長国として各国の意見取りまとめの責任を果たすためには、その大前提として、我が国が京都議定書第一約束期間の約束を果たし得ることの見通しをはっきりと各国に示すことが必要であると考えております。

 ところで、本年二月八日に取りまとめました、先ほど申しました合同会議の最終報告では、先ほどの参考資料六十四ページにも記されておりますように、これまでの対策だけでは温室効果ガスの排出量が二〇一〇年には二千二百ないし三千六百万トンCO2程度目標を超えてしまう排出量になる、こういう予想をしておりましたが、さらに追加対策を強力に推し進めることによりまして、同じく八十一ページの表二に取りまとめられておりますように、三千七百万トンCO2以上の排出削減を見込むことができるであろう、これらと森林吸収源対策及び京都メカニズムの活用とをあわせることによって我が国は京都議定書の約束を達成できるであろうという結論を出した次第でございます。これを受ける形で、三月二十八日に地球温暖化対策の推進に関する法律、温対法八条に基づく京都議定書目標達成計画変更の閣議決定が行われまして、その公表がなされているところでございます。

 この変更後の計画が達成できるかどうかということをめぐっては、森林吸収源対策や京都メカニズムの活用によって、実は、計算上は七千万トンCO2強以上の削減を確実に確保しなきゃいけないということになっておりますので、この点についても大変大きな課題ではないかと私は考えておりますが、それに加えまして、さらに、CO2の排出量を、業務その他部門では基準年に比べまして三・四ないし三・六%増の二億八百ないし一千万トンCO2以内に抑える。家庭部門では、〇・九ないし一・一%増の一億三千八百ないし四千百万トンCO2内に抑える。つまり、おおよそ六千五百万トンCO2の温室効果ガス排出量を業務その他部門、家庭部門で確実に抑制することができるかどうか、これがさらにもう一つ大きな課題であると考えているわけでございます。

 このことは、先ほどの参考資料の六十三ページの表一とか八十一ページの表二にも示されておりますけれども、業務その他部門や家庭部門という二つの部門での排出量の基準年からの伸びは、それぞれ四五%、三六%ということでございまして、こんなような伸びを示しているということからも、この二つの部門の対策が重要であるということが明らかだと考えております。

 二〇〇五年のさきの温対法改正では温室効果ガスの排出量の算定・報告・公表制度が導入され、二〇〇六年四月一日から、温室効果ガスを一定量以上排出する事業者には算定及び報告を義務づけ、その結果が公表されることになりました。これによりまして、自社の事業所の温室効果ガスの排出量を他の事業者と比較することができるということになりました。また、温室効果ガスの大宗を占めますのは二酸化炭素でございますので、この排出抑制のための省エネルギー対策を努力するということは、結局はエネルギー経費の節減ということにもつながるわけでございますから、事業者は、温室効果ガス排出抑制に向けて一層自主的削減努力をなさる、そういうインセンティブを与えることができるようになったと考えております。

 本年三月二十八日には、二〇〇五年の温対法改正に基づく二〇〇六年度の報告についての最初の集計結果が公表されたわけでございます。参考資料にもこの報告の概要が百一ページ以下に載っておりますが、七千五百五の特定事業者、一万四千二百二十四の事業所及び千四百三十九の特定輸送排出者から報告が提出されておりました。この報告によります数字の合計は、我が国の温室効果ガスの約五割弱をカバーしているということが明らかにされたわけでございます。

 ただ、特定事業者のうち、卸売、小売業からの報告は九百七十五事業所、サービス業からの報告は七百六十二事業所でございまして、これらの業種に関する限りは、報告のカバー率は必ずしも高くないというふうに言うことができると思います。

 今回の温対法改正では、事業所単位から企業単位で報告をするということに改められますとともに、フランチャイズチェーンの事業への加盟者についても、その設置する事業所については、事業活動をフランチャイズ一個の事業者による事業活動とみなして法の適用を行うこととしているわけでございます。これは既に実施されております食品リサイクル法に先例があるわけでございますが、こういうやり方によりまして、従来は法の定める規模以下ということで法の適用、報告を免れておりました業務その他部門の事業者からの報告が得られることになるだろうと思います。この改正によりまして、この部門の報告のカバー率が改善されることを期待いたしますとともに、そのことによってまた事業者による自主的な温室効果ガス削減の努力を加速させることが期待できると考えております。

 また、改正案は、二十条の五を新設いたしまして、事業者に事業活動に伴う温室効果ガス排出抑制の努力義務を課しております。その上で、改正後の二十一条では、これらを有効に実施することができるように主務大臣が排出抑制等の指針を定めて公表することにいたしております。ここでの主務大臣の指針は、用途ごとの活動量に対応した温室効果ガス排出量のベンチマーク、目標値を設定することとか、あるいは店舗、学校、オフィスなどの用途ごとに求められる対策を提示するというようなことが考えられているとお聞きしております。

 加えて、改正案は、二十条の六を新設することによりまして、家庭部門はもちろんのこと、業務その他部門での事業活動も含めまして、国民の日常生活からの温室効果ガス排出削減に資するために、国民の日常生活で利用する製品やサービスの提供に際して事業者が温室効果ガス排出の少ないものを販売、提供し、あるいは関連する情報を提供すべき努力義務を課しておりました。事業者のこれらの情報提供に当たっては、NPOなどとの協力、連携をしなければならないという努力義務を課しております。また、この点について、改正後の二十一条で、主務大臣が指針を策定、公表するということも定めているわけでございます。

 温室効果ガス排出削減、とりわけ業務その他部門や家庭部門に直接規制方法を導入するということは、そのための技術面やコスト面での制約が大きいわけでございまして、なかなか容易ではないということはよく知られているわけでございます。こういう事情もございまして、これまで業務その他部門、家庭部門についても、さまざま温暖化対策の政策や施策のメニューは大綱、計画で用意されておりましたけれども、その実施、実現に当たっての手法という点になりますと、ほとんど見るべきものが用意されていなかったと言ってもよい状態でございました。その点、今回、事業者に努力義務を課す、指針を設定してこれを支援、誘導するという手法ということでございまして、見方によっては生ぬるいということが言えなくもないわけですが、しかし、いずれにせよ、包括的な政策実現手法がここに導入されたということは、言ってみれば空白地帯であった部分に新たな道を開くものと言うことができるわけでございまして、国や地方公共団体が今回新たに導入される制度を積極的に活用して施策を進めていくということも期待できるのではないかと考えているわけでございます。

 さて、改正案は、さらにこれに加えまして、地球温暖化防止活動推進員及び地球温暖化防止活動推進センターに関する規定を改正いたしまして、指定都市等、すなわち指定都市、特例市、中核市の長も推進員を委嘱できること、また、指定都市等も推進センターを指定できることとしております。

 この二つの制度は一九九八年の法律制定段階から定められたものでございまして、これまでは都道府県単位で推進員の委嘱やセンターの指定が行われてまいりました。センターは、これまでは東京都が未指定でございましたけれども、ことしになってようやく指定が行われたと聞き及んでおりまして、これで鳥取と徳島以外の都道府県には推進センターができたという状況でございます。今回、これをさらに大規模な市にも拡大することによりまして、特に家庭部門や中小事業者に係る業務その他部門での温室効果ガス排出削減の取り組みをきめ細かく推進できるようになることが期待されると存じます。

 これらの部門での温室効果ガス削減の取り組みは、地域の気候条件とか産業条件あるいは居住の条件など、それぞれの地域の特性を考慮して進めることが必要でございます。霞が関で決めたマニュアルで全国一斉に事を進めるというやり方でうまく効果が上がるとは思えません。地域の推進センターがうまく機能することが極めて大事なことだと考えるわけでございます。

 ただ、これまで、地球温暖化防止活動推進員及び地球温暖化防止活動推進センターの活動につきましては、どういう基準で委嘱や指定をするのかとか、あるいはどういう活動を期待するのかといった基本的な点について、国の方針が必ずしも現場に明らかに示されているわけではございませんし、また、活動に対する財政面での支援の点でも方針が一定してこなかったという課題があったように存じます。

 例えば、推進員の委嘱状態につきまして言いますと、全国で現在六千三百人強の推進員の方が委嘱を受けておられますけれども、先ほど御指摘しました院がおつくりになりました参考資料の百三十四ページに資料が載っておりますけれども、地域によって人数に随分ばらつきがございます。これは、自治体がサボっているということでばらつきが生じたというよりも、推進員の役割への理解がばらついている、そのことが反映されているというふうに私は考えております。地域の行政機関と連携しながらしっかりリーダーとして活躍いただける方を厳選して選ぶという運用の自治体がある反面、手を挙げていただく方は名誉職的に余りこだわらないで委嘱をしていただくという運用をしている例もあるようでございます。

 推進員の活動への財政的な支援も自治体によってまちまちでございます。同様のことは推進センターの指定やその活動についても指摘できるところでございまして、公共性の高い公益法人を指定して行政との緊密な連携のもとで推進センターを設置する、そして法人自身の自己財源と行政の分担、補助金、こういったようなものでかなりの潤沢な資金で活動を進めているセンターもございますし、NPOを指定して創意工夫のもとで自由に活動を進めていただくということはいいのですけれども、場合によっては仲間的なつながりの中で推進センター活動が行われ、市町村との連携という点では評価が難しいというタイプのセンターもどうやら生まれてきているように思われるわけでございます。

 今回の法改正を機会に、国は、地球温暖化防止活動推進員及び地球温暖化防止活動推進センターの活動について、これまでのそれぞれが果たしてきた創意工夫に満ちた活動を生かしながら、しかし、どのような活動を期待するかという点についての考え方を整理することが必要であろうと考えます。特に、都道府県が委嘱、指定する推進員や推進センターと、指定都市等が委嘱、指定する推進員や推進センターとの関係について混乱が生じないようにしなければいけないと思います。私は、どういう単位で設定されるものであろうと、推進員や推進センターというのは、できる限り基礎自治体すなわち市町村を基盤として、そこで家庭部門や中小企業者による業務その他部門での取り組みをきめ細かく支援、推進することを中心に活動すべきものと考えておりますけれども、こういったような整理をしておくことも法改正に伴う混乱の防止に資するのではないかと考えております。

 今回の改正案は、現二十一条を二十条の三に改め、ここで、これまでの都道府県及び市町村の実行計画に加え、新たに、都道府県及び指定都市等は、実行計画の中に、区域の自然的社会的条件に応じて温室効果ガス排出抑制のための施策に関する事項を定めなければならないこととしております。定めるべき事項は、三項一号から四号までに列挙されているほかに、四項では都市計画、農業振興地域整備計画などとの施策の連携を図ること、他の自治体の実行計画との整合性を確保すること、計画策定に際して住民その他利害関係者の意見を反映させること、計画の達成のため必要な場合には関係行政機関の長や自治体の長への資料送付などの協力依頼、意見提出ができることなどが定められております。また、このために必要な場合には、関係する自治体による連絡調整のための協議会を組織できるものとしております。

 これまでも、都道府県や政令市などでは、温暖化対策の地域計画を任意に定めて、熱心にこれを推進してこられました。しかし、特例市にまで広げまして、法定の実行計画の中に地域の温暖化対策計画の要素を加えることを定め、あわせて関連する他の計画、施策との連携、他の行政機関や自治体との調整などについても明文の手続規定が置かれるようになるということは、計画にはっきりした法的根拠を与えるものでございまして、地域での確実で連携のとれた温暖化対策の取り組みを推進する上で意義が大きいものと考えます。

 ただ、既に地域で計画を定め、着実に実施しておられるような自治体もあるわけでございますので、こういうところに重ねて計画策定をさせるというような無駄は求めるべきではございませんで、法の求める必要な要素を含む既存の計画がございますならばそれを準用するというような形で、運用に関しての配慮が必要だろうと思います。

 また、温室効果ガスというのは、かつての公害時代の環境汚染物質のように直ちにその地域の住民の生命財産に影響を及ぼすものではございませんで、地球全体への温暖化影響を考えて、日本全体として削減の義務を負っているものでございます。ですから、全国に工場や事業所を展開しているような産業部門の事業者などの場合には、地域単位で均等に削減をしなくても、効率的に削減できる事業所を選びまして、そこに集中的な投資を行うことによって企業全体で削減目標を達成するということも許されるのではないか、そんなことを考えることもできそうでございます。

 ですから、仮に、三項二号の事項として例えば排出削減の目標を定めるというようなことを自治体がやる場合でも、自治体は家庭部門や地域内で活動する事業者に情報を提供することを中心にその温室効果ガス削減の努力を支援する、こういったような役割を期待することが中心になるべきでございまして、国や産業界の自主的な取り組みとの適正な役割分担ということも図っていかないといけないのではないかと考えているわけでございます。

 このほか、改正法では、京メカの活用について、植林CDMによる排出枠の取得についての管理口座の取り扱いについての技術的な改正や、民間事業者が取得した排出枠の国の管理口座への移転の促進、あるいは、企業が中小事業者の温室効果ガス排出抑制のためにする支援について国が配慮しなければならない、こういったような法改正や条項を追加しておりまして、これらは改正される目標達成計画の実施を支援するものとしてその意義が大いにあるということを申し上げておきたいと思います。

 このように、今回の改正法案で定められていることは、いずれも、より確実に六%削減目標を達成させる政策や施策の推進に大いに資するものと考えられます。ぜひとも改正法案が成立することを私も願っております。

 その上でなお、閣議決定されました目標達成計画で速やかに総合的な検討を行うべき課題として、国内排出量取引制度や環境税、深夜化するライフスタイル、ワークスタイルの見直し、こういったようなことが挙がっております。これらにつきましても、今後、抽象的な議論ではなく、具体案をもとにした着実な議論が早急に始められる必要があるのではないかと考えているわけでございます。

 以上で私の意見の発表を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

小島委員長 ありがとうございました。

 次の意見陳述は、先ほどお話しいたしましたが、飯田参考人でございますが、到着がおくれておりますので、先に大島参考人、よろしくお願いいたします。

大島参考人 おはようございます。京都市地球環境政策監の大島でございます。

 本日は、本委員会で陳述の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。京都市におきます温暖化対策につきまして御説明、いや、PRさせていただきますとともに、法律案に対する意見を申し述べたいと思っております。

 本市の取り組みにつきましてはお手元の資料をベースに御説明したいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 京都市は、御案内のように、千二百年余りの歴史と伝統、美しく豊かな自然環境がずっと維持されておりまして、そういった意味では、日本、いや世界の人々を魅了する都市として発展してきたと考えております。こうしたかけがえのない京都を良好な状態で将来の世代に引き継ぐことが今を生きる私たちの責務と考え、京都市基本計画におきまして、あらゆる分野で環境を基軸とした政策を展開することを掲げ、環境負荷の少ない持続可能な町、環境共生型都市京都の実現を目指してまいりました。

 さて、主な取り組みでございます。何と申しましても、平成九年十二月のいわゆるCOP3の開催が、本市の地球温暖化対策を本格的に進めるきっかけとなりました。

 COP3開催を控えました平成九年五月、京都市みずからの温室効果ガス排出量の削減に向けた実行計画として、京都市役所エコオフィスプランをまず策定いたしました。この実行計画は、現在までに二回の改定、強化を行い、現在は京都市役所CO2削減アクションプランとして取り組みを進めてきております。続く七月には、京都市地球温暖化対策地域推進計画を策定、さらに十月には、京都市域のローカルアジェンダ21であります京(みやこ)のアジェンダ21を、市民、事業者の皆様との協働作業により策定いたしました。

 以上のような計画に基づき、全国に先駆けてさまざまな取り組みを進めてきたところでございます。

 京都市におけるこうした政策の特徴は、市民、事業者の皆様との協働による事業の展開という点にございます。平成十年十一月に設立いたしました京(みやこ)のアジェンダ21フォーラムは、京(みやこ)のアジェンダ21を具体化するため、京都商工会議所や京都工業会を初めとする経済団体、地域女性会やごみ減量推進会議などの地域に根差した市民団体、気候ネットワークなどの環境NGO、そして学識経験者が一緒になって組織したものでございまして、平成二十年一月末現在で、二百七十三名、二百九十団体に御参加いただいております。

 このフォーラムでの活動の代表的なものとして、平成十三年五月から運用開始いたしましたKES・環境マネジメントシステム・スタンダードの創設がございます。環境マネジメントシステムの国際的な規格としてはISO14001がございますが、中小企業では、文書作成の手間や高額な取得費用などが障害となりまして、取り組みが進んでおりませんでした。そこで、フォーラムでは、安くて質の高い独自の環境マネジメントシステムの規格を創案したというわけでございます。

 このKESは全国的にも高い評価をいただき、企業や行政機関が製品を購入する際、環境負荷の低減に努める事業者を優先して選ぶグリーン購入あるいはグリーン調達ということがございますけれども、その基準にこのKESを取得していることを条件として付加する、そういった制度を採用しているところが確実にふえてきております。

 また、KESと同じ規格による審査、登録を行う組織が全国で十一組織誕生しておりまして、平成二十年三月末現在で、京都市内では五百二十一事業所が認証登録を受け、全国では二千六十九件にまで拡大してきております。

 また、家電製品の省エネラベル表示の取り組みも、京都市ではこのフォーラムが中心になって行ってまいりました。

 平成十五年三月に、フォーラムが中心となって、エアコンと冷蔵庫を対象に独自の省エネラベルを作成し、省エネ製品の販売促進を図る、そうしたキャンペーンを家電販売店の協力をいただき実施したところですが、極めて好評でございまして、平成十七年十月には、多くの自治体が参加する全国省エネラベル協議会が結成され、全国的に普及いたしました。結果として、平成十八年十月の省エネ法の改正により、統一省エネラベルとして制度化された、そういったものでございます。

 また、平成九年十一月から始めておりますバイオディーゼル燃料化事業は、家庭やレストランから使用済みてんぷら油を回収し、ごみ収集車の燃料として使用する事業でございます。八カ所のモデル地域でスタートした回収拠点は、平成二十年三月末現在で、学校や個人のお宅など千二百二カ所にまで広がってきております。

 さらに、国の補助金をいただき平成十六年六月に稼働を始めました廃食用油燃料化施設におきまして、年間約百五十万リットルのバイオディーゼル燃料を製造、京都市の全ごみ収集車二百二十台及び市バスの一部九十七台に使用してきているところでございます。

 また、本市では、地域における環境保全活動を進めるためには人づくりが大切であることから、平成十四年四月に、環境学習と環境保全活動の拠点として、京都市環境保全活動センター、京(みやこ)エコロジーセンターを設置いたしております。この施設は、建物自体が展示物であることをコンセプトに、太陽光発電、雨水利用、地熱利用、高断熱外壁を初め、省エネルギー、省資源の設備を導入しております。したがって、来てもらえばすべてがわかるという建物でございます。

 また、市民、事業者、環境保全活動団体、学識経験者で構成された委員会で、事業の企画立案そのもの、あるいはその評価すらこの委員会が行っているというところにも特色がございます。

 以上申し上げましたさまざまな取り組みの集大成として、京都市は初が好きですけれども、地球温暖化対策に特化した全国初の条例、京都市地球温暖化対策条例が平成十六年十二月に市会において全会一致で可決され、翌平成十七年四月から施行しているところでございます。

 資料の二ページでございます。

 この条例の主な特徴として、第一に、当面の目標として、平成二十二年までに京都市域の温室効果ガス排出量を平成二年の九〇%に削減することを明記しております。条文にそう書いてあります。

 第二に、本市、事業者、市民、環境保全活動団体の責務を定めるほか、年間四千八百万人を超えます観光客などのいわゆる滞在者の方にも、パーク・アンド・ライドの利用など、本市の対策に協力する責務を定めております。

 第三に、一定量以上の温室効果ガスを出す事業者などに対する削減計画を求める等の義務規定を明記しております。

 第四に、市民や事業者の参加のもとで、この条例に基づく施策の評価そしてその見直しを行うことを明記しております。

 最後に、地球温暖化対策に係る技術水準の向上や将来的な社会経済情勢の変化を踏まえましておおむね三年ごとに確実に条例の見直しを行うことも明記し、常に時代に適合したものとする進化する条例といったものにしているところでございます。硬直的な運用はしないということであります。そして、まさにその見直しが今年度参っているということでございます。

 特定事業者排出量削減計画書について少し御説明したいと思います。

 計画書等の届け出が必要な要件として、原油に換算して年間一千五百キロリットル以上の燃料を使用する事業者などを定めているところであります。

 これらの事業者に対して、温室効果ガスの排出量に係る三年間の削減計画書と、毎年度、毎年毎年です、削減報告書の提出を義務づけておりまして、しかも、この書類はすべて公表するということで、事業者にプレッシャーをかけているというところでございます。

 これらの事業者からの計画書及び報告書によりますと、百四十一事業者の合計排出量は二百十九・一万トンであり、これは市内総排出量の約二七%を占める割合となっております。

 平成十六年度の排出量から平成十九年度までに平均五%削減する計画となっておりまして、平成十八年度は、基準年と比較して約一・八%、四万トンの減少ということで、削減努力が出ているというふうに考えております。

 三ページでございます。

 本市の温室効果ガスの排出状況について御説明いたします。

 平成十六年の温室効果ガスの総排出量は八百十万トンであります。基準年であります一九九〇年の八百二十三万トンに比べまして、一・六%、十三万トン減少しておりますが、先ほど申し上げました条例に掲げる削減目標一〇%にはまだまだ及んでおりません。一層の努力が必要と自覚しているところでございます。

 部門別の排出状況を見ますと、産業部門と運輸部門では確かに減少傾向は見られますけれども、家庭部門では核家族化の進行による世帯数の増加、業務部門ではIT化や営業時間の延長等経済のサービス化といった、社会現象に起因する影響により増加傾向にあります。これらは全国的な傾向だろうと思いますけれども、一層の努力が要るということも明らかであります。

 四ページは、排出量の推移をグラフでお示ししたものでございます。

 さて一方、地球温暖化問題は、国際的な連携なしには解決できない課題でございます。世界各地の自治体が、国の垣根を越え、地域に根差した地球温暖化対策の取り組みをともに進めていくことが重要であると考えております。

 京都市では、平成八年九月に、ICLEI、持続可能性をめざす自治体協議会に加盟するとともに、平成十七年十二月には、ICLEIの協力のもと、京都市長が設立発起人となりまして、地球温暖化対策に関する世界の自治体リーダーのネットワーク組織である気候変動に関する世界市長・首長協議会が設立されました。昨年の二月十六日から十八日までの三日間、アメリカや中国、インドの自治体の代表を含む世界の二十六の国と地域から百九の都市、団体の代表者の参加を得て、京都会議を開催したところでございます。

 これは五ページに黄色く着色しておりますけれども、この会議の結果として、「あらゆる国に対して、」「温室効果ガス排出量を、二〇二〇年までに一九九〇年レベルから三〇%削減し、二〇五〇年までに八〇%削減する目標を設定するよう強く呼びかける。」ことなどを盛り込んだ京都気候変動防止宣言を全世界に向けて発信いたしました。この宣言を踏まえまして、京都市では、来るべき低炭素時代を見据えて、京都市における中長期的なビジョンを今検討しているところでございます。

 また、ICLEIを通じて、昨年京都会議に来られましたインドネシア・ボゴール市長の要請を受けまして、廃食用油のバイオディーゼル燃料化プロジェクトに技術的な支援を行うなど、国際的な自治体間協力にも取り組んできております。

 以上申し上げました京都市における取り組みを踏まえ、改正案のうち、特に自治体での取り組みと関連の深い三点について意見を述べさせていただきます。

 まず一点目は、地方公共団体実行計画の拡充についてであります。

 自治体みずからの温室効果ガス削減の取り組みだけではなくて、その地域での温室効果ガスの抑制対策を含めた取り組みを一体的に進めることを義務づけられた今回の改正は、京都議定書の目標達成を目指す国の取り組みを補完する上でも大変重要であり、改正案には基本的に賛同いたします。

 ただ、京都市では、既に現行法二十一条に基づく計画として京都市役所CO2削減アクションプランがございますし、現行法の二十条の第二項に規定されております、地域において総合的かつ計画的な施策を推進する責務を踏まえ、これも既に京都市地球温暖化対策計画を策定済みでございます。

 したがいまして、先ほど浅野参考人もおっしゃったように、この法の適用に当たりましては、準用などの運用上の配慮が必要となると思っておりまして、既に一定の整備を終えたところとこれから整備しようとするところの微妙な運用上の妙が必要かというふうに考えております。

 二点目でございますが、地球温暖化防止活動推進センターの指定や地球温暖化防止活動推進員の委嘱についてでございます。

 これは一定の市にも拡大されるに至ったわけでございますけれども、全国的にも民生、家庭部門の排出量は増加しておりまして、日常生活における温室効果ガスの排出抑制について相談に応じ、必要な助言等を行うセンターや推進員の役割は大変大きなものがあると考えております。現行法ではセンターの設置が都道府県に一カ所と限定されておりましたが、市レベルでのセンターの設置が可能となり、より地域に密着した、地域に応じた活動が実施しやすくなると考えられることから、改正案にこれも賛同するものでございます。

 ただ、制度の運用に当たりましては、自治体職員はもとより、実際に活動していただく推進員の方々のスキルアップ、人づくり、人材確保が極めて重要でございます。京都市では、京(みやこ)エコロジーセンターで館内案内やテーマごとの自主活動を行っていただくエコメイトを養成し、この間に身につけていただいた知識、技術を地域において実践していただくエコサポーターといったものの養成と、段階を踏んだ取り組みをしております。現在、八十九名の方がエコサポーターとして活動されておりまして、センターでは、こういった方のアフターフォローとして、情報交換のための交流会を開催するなどの活動支援も行っているところでございます。

 それぞれの市ではさまざまな取り組み経過があったと思いますけれども、一般的には、推進員として活躍していただけるような人材を養成するのは時間と経費が実はかかります。せっかくの制度が円滑に推進されますよう、多くの方が参加しやい身近な場所での研修会の開催、あるいは自治体が実施するこれらの事業に対する国の御支援をいただくことが必要不可欠ではないかなというふうに考えております。

 最後に、三点目でございますが、排出量の報告制度の対象となる事業者の拡大についてであります。

 本市の条例でも、温室効果ガス排出量の削減計画書及び実施報告書を求める制度を既に定めておりまして、対象となる事業者を事業所単位ではなく事業者単位としているところでございます。温室効果ガスの排出場所が一カ所であれ二カ所以上に分散している場合であれ、温暖化を防止する観点からいえばこれは同じでございます。事業者単位で一定規模以上あれば対象とすることはこれまた当然とも言え、今回の改正に賛同するものでございます。

 今回の法改正によりまして全国の自治体の取り組みが一層前進するものと考えておりますけれども、温室効果ガスの一層の削減を図るためには、建物の断熱化、自動車に過度に依存しない交通体系の整備、太陽光発電などの再生可能エネルギーの普及など、自治体の取り組みに対する国の絶大な御支援がやはり不可欠であると考えるところでございます。

 京都市では、実は昨年九月から、京都のすぐれた景観を守り育て、五十年後、百年後の未来へと引き継ぐため、建物高さの思い切った制限、デザイン基準の強化、屋上屋外広告物の全面禁止といった思い切った新景観政策をスタートさせました。このことによって、魅力ある都市景観を維持するとともに建物そのもののボリュームも制限することになり、温室効果ガスの排出も結果として抑制されるものと考えております。

 今後とも、私どもといたしましては、京都議定書誕生の地であることを誇りとし、その責任を自覚し、市民、事業者、行政が一体となって、環境共生型都市京都の実現を目指して、他都市のモデルとなるよう頑張ってまいりたいというふうに考えております。

 衆議院環境委員会の先生方の一層のお力添えをお願い申し上げまして、御説明を終わらせていただきます。

 本日はまことにありがとうございました。(拍手)

小島委員長 ありがとうございました。

 ただいま飯田参考人が出席されましたので、御紹介をいたします。環境エネルギー政策研究所所長飯田哲也君でございます。

 それでは、飯田参考人、お願いいたします。

飯田参考人 ただいま御紹介にあずかりました環境エネルギー政策研究所所長の飯田哲也と申します。

 本日、参考人として意見陳述の機会をいただきましたので、これより意見陳述させていただきます。お手元に資料が行っておるかと思いますので、それに沿って意見陳述いたします。

 まず、下の図のところにありますように、今回の法案の中身そのものだけを逐条的に見ていっても、今、我が国政府あるいは日本全体が置かれている状況というものに対処する法案になっていないのではないかというふうに思っておりまして、まず、大枠として、この法案そのものがとらえていない基本的な問題点を最初に述べまして、なおかつ、この法案が射程に入れている京都議定書の達成の上での問題点がある、その上で、この法案の改正の中身というふうに三段階で報告いたします。

 一枚目の裏に行きまして、ことし七月にG8サミットを日本は主催するわけですが、これは、来年十二月にコペンハーゲンで開かれるCOP15でいわゆる京都議定書の次の目標値を議論する重要なマイルストーンであるということで、まさにそのG8を主催するという時期に改正される法案がいかにも近視眼的に京都議定書だけをターゲットにしているというのは、非常に視野が狭いのではないか。ここに述べておりますように、もう主要国は中長期削減目標を既に提示している。福田総理もことしのダボス会議で削減目標は提示されるというふうに断言されておられるわけですので、ここで数字を掲げないまでも、中長期の目標、これは論点六に挙がっておりますが、これを掲げるということを法案の枠組みにやはり入れるべきではないか。

 具体的な数字の提案としては、こちらに気候ネットワークのシナリオの図を入れておりますが、国際水準を眺めるならば、二〇二〇年までに三〇%、二〇五〇年で八〇%といった水準のそういった数値が必要かと思います。これを出すのはG8もしくはコペンハーゲンでいいのかもしれませんが、この法案の枠組みの中に入れておくということがまず必要ではないかというふうに思っております。

 その下に行きまして、第二点目ですが、この法案の中には、自然エネルギー、いわゆる再生可能エネルギーに関する目標値も一切触れられていない。

 そもそも昨年の二月にEU、ヨーロッパの閣僚理事会で、最終的には三月に決定された気候変動の政策、ことしアクションプランが出て、再生可能エネルギーと気候変動の各国割り当てまで出ておりますが、これはまず、EUは、再生可能エネルギーに関して二〇二〇年までに一次エネルギーで二〇%導入をした上、それを踏まえて、二〇二〇年で、今度は二酸化炭素、温室効果ガスで二〇%削減。再生可能エネルギーと気候変動政策は両輪と申しますか、あるいは、たい焼きに例えると、再生可能エネルギーがたい焼きのあんこであって、気候変動の総量削減がたい焼きの皮である。その再生可能エネルギーの目標値を持たないままに総量削減をこれから出していく。この総量削減も法律の中にはないんですが、ここが非常に大きな第二のポイントではないか。

 若干小さな図になりますが、下側の左側の図、これは、ことし一月二十三日に欧州委員会が各国に提示をしている再生可能エネルギーの一次エネルギーに対する二〇二〇年までの導入の義務づけです。下の濃いところが今、現状二〇〇五年の数字で、上の薄いところに掲げてある数字が二〇二〇年の目標値ですね。おおむね一〇ポイント以上の増大になっております。

 しかるに日本は、三月十九日に出た長期エネルギー需給見通し、これも気候変動政策といわば無関係に近い形で出ているわけですが、これは五・九%から八・二%ということで、再生可能エネルギーに関して非常に消極的な政府の数字になっている。しかも、これは気候変動政策とは直接関係のない形で出ているということが問題かと思います。このあたりも気候変動政策の中に織り込んでいくということが必要かと思います。

 次の四ページ目に参りまして、再生可能エネルギー、自然エネルギーに代表されるわけですが、エネルギー政策全般が地球温暖化政策と非常にばらばらになって提示をされている。

 しかも、ことし、先ほど申し上げたG8洞爺湖サミットを目前に控えて、三月十九日に長期エネルギー需給見通し、今ちょうどパブリックコメントもかかっておりますが、この中に、福田総理も、あるいは昨年のハイリゲンダム・サミットでも日本が提示をした低炭素社会であるとかクールアースとか、そういうものではなく、新・国家エネルギー戦略という若干古いものの達成が目標となっている。しかも、目標値の水準が非常に低い。二〇二〇年で非常に頑張ってマイナス一三%である、なおかつ、その中に五十二兆円のお金がかかるんだ、しかもこれ以上は強権的な措置が必要だという、これに関しては鴨下環境大臣も異議を唱えられたというふうに聞いておりますけれども、こういった数字がばらばらの省庁から出てくるということは、政府の一体性、統合性から見ていかがなものかというふうに考えております。

 やはりこういった長期エネルギー需給見通しは、低炭素中長期戦略の中に織り込んできちんと統合していくということが必要ではないかと思います。

 それの幾つか具体的な問題点がさらにありますが、まず、下のページですね。これは、今回の法改正のベースとなる環境省と経産省の合同部会、私も委員として三十回出席をしてきましたが、この中で、ひたすら上流側、つまり発電あるいは産業側を後ろ手に隠して、下流、いわゆる民生、業務が伸びているのでこれが問題だ、ひたすらこういう論点に押し込められてきたのが合同部会の実態ですね。

 ところが、これは私は現代の竹やり戦争というふうに言っていまして、実際に、日本の産業界が効率的だというのはフィクションです。これは日経新聞も指摘しておりますが、この下の図を見ていただいたらわかりますが、二つのマジックがありまして、一つは、よく政府が出す数字は、直接為替換算で比較をしている、しかも内訳がない、この二つのマジックですね。これを購買力平価で、なおかつ産業界の内訳で見ると、一番下の濃いところ、右側の図の一番濃いところですが、日本は決してヨーロッパと比べて効率的とは言えず、下手をするとアメリカとそれほど変わらない程度になってしまう。

 なぜこういうことになっているか。これは昨年の十一月に世界銀行がいみじくも指摘していますが、一九九〇年以降、日本はバブルの崩壊もあってほとんど経済成長していないにもかかわらず、石炭火力で一・三億トンも二酸化炭素をふやしている。世界銀行のランキングでは、気候変動対策の評価は先進国の中では最低です。世界七十カ国の中で六十一位というランキングがついているわけですね。これは結局、上流側の、まさしく石炭火力及び産業界の問題です。これにきちんと焦点を当てた問題が必要です。

 それを次のページ、六ページで見ていただきますと、まず第一に石炭火力の問題です。真ん中の図のところで、我々マイナス六%を目標としながら、二〇〇六年速報値で六・四%、恐らく二〇〇七年数値が出れば柏崎刈羽がとまっている影響で著しくふえていると思いますが、この内訳を分析すると、電事連の未達成分が圧倒的に多いんです。これは先ほどの石炭火力が一・三億トンふえたことによります。その他、鉄鋼連盟の未達成分、あとは残りということで、ここに手を入れずして、もちろん民生、家庭も頑張りますが、民生、家庭だけ頑張っても、いわば上流で毒を垂れ流しながら下流でその水を飲むなと言っても、この国の経済は成り立たないわけですね。

 さらに、表を見ていただきますと、これもつい先日、三十一日に経済産業省が取りまとめた各電力会社の石炭火力の増設計画です。今後、既にその計画にあるだけで三百五十万キロワットの石炭火力が計画に乗っかっている。京都議定書の義務履行期間だけでも、関西電力と電源開発で合わせて百五十万キロワットがもう既に計画に入っている。東京電力の二〇一三年度もほとんどそれに入ってきます。一方でこれだけふやしながら、しかも石炭火力が問題だと言いながらふやしていく政策というのは、右手と左手が全くばらばらに動いているのではないかと。

 その下側、七ページ目ですね。

 では、この京都議定書というのは、本当にこの法案改正で達成できるのか。これは合同部会を通じてもう毎回のように私自身も指摘をしてきましたが、全く達成する担保がない法律である、ざる法です。というのは、もともと法案提出の理由に「京都議定書における温室効果ガスの排出量を削減する約束を確実に履行するため、」と書いてあるんですが、確実に履行するという担保措置が一切ない。例えば、この後で見ますが、いわゆるキャップ・アンド・トレードのような総量削減、これがまずない。自主行動計画も、きちんと中身を精査するという協定、ここもない。炭素税も、いまだに日本は導入をしていない。再生可能エネルギーも、極めて数値目標の小さいRPSがあるのみ。そういったものが一切ない中で、気分というか国民運動だけで減らすということは、およそ当てにならない。

 より深刻なことは、これがこのままいくと、そもそも一・六%、五年間で一億トン、これはそもそも織り込んでいた不足分ですが、さらに数億トン規模が、一つは税金によって、もしくは電力会社が調達をするCDMが電気料金を通じて、下手をすると最終的には国民負担として数兆円という規模がはね返ってくることになります。しかも、そこで終わりであればいいんですが、二〇二〇年、さらには二〇五〇年という形でポスト京都の義務がさらに続いていくと、根本的な削減体制をつくらないままにひたすら国民的負担がふえていく、そういう構造にこのままゴーサインをかけるということになるんだと思います。

 八ページ、ここもちょっと小さいのでごらんいただけないと思いますが、経団連自主行動計画、こちらは昨年合同部会で精査をして、国の方は三割上積みしたということになっていますが、実際にはすべてほとんど達成している数字をもう一回上書きしただけで、ほとんど自主行動計画の上積みはないというのが私どもの評価になっています。

 さらに、最大の問題点、九ページのところですが、やはり先ほどの電力の問題です。

 昨年、柏崎刈羽原発を地震が襲ったわけですが、これによって年間三千万トン以上の二酸化炭素がふえるというふうに言われております。これに対しては、実は合同部会は一切タッチをしておりません。もう既にとまって二酸化炭素がふえていることが厳然として明らかでありながらそれに対処をしていない法案というものは、非常に大きな抜け穴があいている。これはもちろん、電力会社に、では電気料金に上乗せする形でCDMですべて調達してこいといっても、年間数千万トンというのは、膨大な調達リスクもあり、なおかつ電気料金を通じて国民経済にまたしわ寄せをするということで、ここを織り込んだ形で改めて計画のつくり直しということが必要かと思います。

 時間がありませんので急ぎます。次のページ、十ページ目です。

 ことしに入って、環境省、官邸、そして経産省ともキャップ・アンド・トレードの導入を織り込みながら検討が始まっておりますが、かなり日本はおくれておる。マイケル・ポーターというハーバード大学の教授がおりますが、彼はイノベーションオフセットという理論を言っておりまして、世界百六十カ国以上、より厳しい環境政策をより早く導入した国はより競争力を持って、その競争力で、当初の規制によるコストをまさにイノベーションによって回避できる。これはまさに日本の自動車業界がかつて排ガス規制を達成したことで如実に体験したことですが、この排出量取引規制に関しては、日本は著しくおくれている。

 その下の十一ページ目、これは石炭火力の抑制の強力な手段として、安いから使うということが今現状としてありまして、やはりここに強力な石炭課税、石油石炭税は二〇〇三年から二年置きに昨年三度目の増税が行われておりますが、まだまだコスト差を埋めるには至っておりません。やはり石油石炭税をあのまま暫定で三回の増税のままで放置するのではなく、ここで強化するということが必要かと思います。

 そして、次のページ、十二ページ目ですが、再生可能エネルギー。これは法律が成案したのは二〇〇二年当時で、私もその当時ここで参考人で意見陳述した記憶がありますが、RPS法、その当時から、十分に機能しない、目標値が小さく、なおかつメカニズムとして不十分であると。しかも、導入した結果、電力会社にとっても自然エネルギー事業者にとっても、はたまた経済産業省にとってもユーザーにとっても、だれにとっても実は望ましくない法律に今なっています。

 これは、思い切って法律を改廃して、ドイツで大成功している固定価格制にかじを切り直すべきときではないか。これは、欧州委員会で、固定価格制の方が、普及効果で効果があるだけでなく、コストを削減する効果においてもRPSにまさっているということがもう既にEUの十五カ国の経験で実証されておりますので、このRPS法が成立したときの成立理由が既に失われているというふうに判断すべきかと思います。

 最後の逐条のところは、最後のページ、取り急ぎいきます。

 特に今回のポイントは、算定・報告・公表制度が一つかと思いますが、算定、報告の中でやはり電力と鉄鋼が非常に大きいということが十八年度の報告結果で明らかになりました。しかも、その中で柏崎刈羽原発の影響というのが今後大きく見込まれる。

 そういった中で、個別事業所の開示規定というのが今後大きな障害になるのではないか。多分、大きな排出の鉄鋼会社がトップから消えてしまうという非常に不思議な現象が起きます。PRTR法でも国がみずから開示をするということが成立していますので、この京都議定書、二酸化炭素に関しても同様に対処すべきではないかというふうに思います。

 あと、ちょっと細かい点ですが、排出量の認証制度、これを今は事業者が自主報告をしているので、若干不確かというか、ずれがあります。東京電力、新日鉄、三井化学という三つの事例を挙げましたが、算定、報告で出ている数字と環境報告書で出ている数字に相当な乖離があります。

 このあたりは、やはり第三者認証という形できちんと検証が入る仕組みをつくらないと、これは最終的に国の原簿になっていくわけですから、海外から買ってくるCDMとまじってしまうとだんだん不確かになってしまいますので、こういったところも正確性が必要かと思います。

 そして一番最後の下の段ですが、算定、報告の続きで、排出係数。ここは二つ課題があって、今現在は二〇〇六年度数値ですので若干よい排出係数で、東京電力さんも非常にいいんですが、二〇〇七年度数値を使う来年になって今度は一気に悪化することになります。そこら辺、今、日本は配分後の形で使う形になっていますので、ユーザーサイドが混乱をするという状況がありますので、このあたりはもう少し即応性を持てないかというところであります。

 それから、今のルールですと、〇・五五五キログラム・パー・キロワットアワーということで上限値になっていますが、一部の電力会社はこれをはるかに超えておりますので、やはり実態に合わせた排出係数が使える形に改正すべきではないか。

 それから、今はCDMに関しては今回の法制度で優先的に制度手当てができるんですが、これは京都議定書にも書いてありますが、海外のクレジットを買うよりも国内の施策の方を優先すべきですので、国内のいわゆる排出削減事業、あるいはまさに再生可能エネルギー、省エネ事業、これに国内で取り組んだところからクレジットが発生してきちんと取引できるという仕組みを最優先して整備すべきではないかというふうに思います。これは中小企業の活性化にも非常に役立つと思います。

 それから、省エネ法の遵守、これも、実際に遵守をしていけば二〇五〇年までに四〇%ぐらい削減できるんですが、実際にはこれがほとんど遵守をされていません。これも温暖化とあわせてきちんと遵守をしていくということが必要かと思います。

 今回民主党から提案されている、一般消費者にエネルギー供給事業者の情報を提供する、これは、実はアメリカ、ヨーロッパで既に実現をしておりまして、ヨーロッパはすべての国で、ギャランティー・オブ・オリジン、発電源証明というのが電気の取引に伴って必ずやりとりをされて、最終的にはユーザーが、この電気はどれだけの二酸化炭素を持っている、あるいはどれだけの自然エネルギーを使っているということが非常に見える化されています。こういった仕組みが今回民主党から提案されていますが、こういった制度はぜひ早急に整備すべきではないかというふうに考えております。

 以上です。どうもありがとうございました。(拍手)

小島委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

小島委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木挽司君。

木挽委員 自民党の木挽司でございます。

 参考人のお三方、ありがとうございました。私も勉強になる意見をいろいろと述べていただいたと思います。

 私事でございますが、二十年以上前、私は兵庫県は尼崎の商工会議所に勤務しておりました。当時、市と企業における独自のNOx、SOxに関する公害防止条例、公害防止協定といいますか、それを取りまとめる事務局の仕事をさせていただいておりました。また、公害問題等に関しまして、専門相談員の方を伴って現場に赴くこともしばしばございましたし、ちょうど汚染賦課金の徴収業務などもさせていただいておりました。

 公害問題というものが全国各地で発生した時代を経て、当時、何かと制約の多いかつての工業都市尼崎からどんどんと企業が郊外に流出していく、移転していく時期でもありました。そんな中で取り組んだ公害防止協定は、まさに企業側からすれば自主的な行動計画であったのではないかと私は思っております。環境とか今で言う共生とか、そういった言葉は今ほど頻繁に聞かれる時代ではありませんでしたし、経済活動をする上で、公害対策室とかいう名称でそういった対応をする方々は属しておられましたが、まだまだマイナスのイメージを大手の企業にあっても強く経営者が抱いている時代であったと私は思います。非常に意識の高い方々がそうした中にあって集まって協議し、公害防止協定をつくった記憶があります。

 それから思えば、ここ数年は、当時とは比べ物にならないほど、言いかえれば恐ろしいほどの勢いで環境に関する議題が、政策作成者ばかりでなくて、一般の人々の興味も随分引くようになってきて、議論されるようになってきたと私は思っております。

 ただ、そうした取り組みの中で、今般、事業者単位あるいは民生についても積極的に見直していこうじゃないかと言われているわけではございますが、私、こうした取り組みの中にしっかりと経済的インセンティブを課した視点が必要ではないかと思っております。

 先ほどちらっと話も出ましたが、ヨーロッパ、特にドイツなんかにおきましては、特に電気エネルギーに注目してみますと、太陽光発電機や風力発電、そうしたCO2の削減に寄与するものについて、これらの方法でドイツはたしか一年当たり二千六百万トンのCO2を炭素換算にして削減していると思いますが、諸事情が日本とは違うとは言われておりますが、それでもなおなぜ日本はそうした面でドイツにおくれをとっているのか、私、そういうことをいつも見ながら感じております。

 かつてといいますか、ついこの間まで、日本は言われておりますように太陽光発電の量と技術は世界のトップを誇っていたと思います。では、なぜ今ドイツに大きく水をあけられるような結果になっているのか。それは、ドイツにはCO2削減のための強力なインセンティブがあるからだと私は思っております。日本には、全くないとは言いませんが、あったとしても、実効性を考えるとクエスチョンマークがつきます。

 ドイツでは、例えば、市民が出資して太陽光や風力で発電すると、余剰の電力は電力会社が買い取ります。買い取り価格は出資額が十年から二十年できっちりと償還できるように高く設定されておりますし、この一つのインセンティブを設定していること自体、太陽光発電や風力発電が大きくしかも急速に進むことに寄与している、そして大きくCO2を削減することを推進していることにつながっていると私は思っております。しかも、その太陽光や風力発電が、関連において、二十万人ほどですか、たしか雇用を生み出すシステムにもなっていると思います。こうした余剰電力の買い取りのための原資は、電気料金に上乗せすることによって補われている、しかも電力会社の負担にもならないということが言われています。

 先ほどから、こうした京都議定書目標達成の中において、私は社会の中にこうしてインセンティブを与えることが極力必要だと考えておりますが、その点、お三方に一つずつ御意見を賜りたいと思います。よろしくお願いいたします。

浅野参考人 私、ただいま先生が御指摘になった点はまことに大事なことだというふうに考えておりますし、そのために余り固定的に、ある一つのアイデアがあったら、その一つのアイデアだけを一生懸命主張するというようなことが多過ぎて、あるときは税、あるときは排出枠取引ばかりを議論してしまう。そういう議論の仕方ではなくて、さまざまな手法の適切な組み合わせということをかねてから中央環境審議会地球環境部会では言ってきたわけであります。

 補助金と負担とをうまく組み合わせるというようなことを含め、あるいは排出枠取引と税の組み合わせ、あるいは今先生がおっしゃったような問題についても、それを例えば税なら税という言葉で呼んでしまわなくて、もっとそこの背景にある手法そのものをいかに上手に精読するのか、そういった知恵に満ちた議論の仕方が非常に我が国にはおくれていると思います。

 これは先生の御指摘どおりでありますから、さらに、私ども審議会に属する者としては、余り固定的な観念にとらわれる議論をしないで、実質、中身が実現できる手法なら何でもいいんだというような柔軟な考え方で議論を進めるべきだと考えております。

飯田参考人 今先生がおっしゃったとおり、特に私は再生可能エネルギーに絞って申し上げると、まさに率直にここで日本はドイツの成功と日本のRPS法の失敗というか行き詰まりを認めて、見直すべきときだと思います。

 ドイツは先ほど先生がおっしゃったとおりですが、本当に、今六重の配当というふうに言われています。二十世紀に自動車産業がドイツの経済、産業社会に果たした役割を、二十一世紀は自然エネルギーが果たすとまで言われておりまして、先ほど先生がおっしゃった雇用は、これは昨年の数字では既に二十五万人にふえておりまして、経済効果が四兆円、昨年の世界全体の自然エネルギーの経済効果が一昨年から五〇%ふえて十三兆円になっています。毎年三〇%以上の成長をしております。その中でドイツはトップを切っている。

 先ほどの料金のところも、それぞれの再生可能エネルギーが、七、八年ぐらいでほぼ元が取れるという形で二十年間価格が保証されている。そして、それによる国民の負担が、これは二〇〇五年の数字ですが、一カ月一世帯当たり一・七ユーロ、三人家族として二百円ちょっと、購買力平価ですね、一人当たり七十円程度です。もちろん負担がないわけではないですが、こういった国民合意をとりながら、それに見返りがあるような社会的な恩恵がある。

 そして、地域経済。ドイツの場合は、九〇%以上は地域の資本がその事業のオーナーシップをとるので、経済効果が地域に戻ってくる。そして、そのマネー。グリーンなマネーを一般市民が年金基金のかわりに出し得る。それは、五%複利で二十年間、元本保証で二十年後に二・五倍になって戻ってくるという、フライブルクのソーラーファンドのような事例もありました。そういう、まさに環境と経済の好循環で、これは二酸化炭素、地球温暖化問題にとどまらず、エネルギーセキュリティー、そして雇用、地域の活性化、さまざまなものを折り合って、なおかつ、ドイツと同じく日本は産業を基盤とした経済大国として、むしろこれからドイツを逆転するぐらいの勢いの新しい政策を、もう一回ここで、これはもう政治的な決断次第だというふうに考えております。

 以上です。

大島参考人 経済的インセンティブを与えることが必要ではないかというふうなことでございますけれども、地方でいわば啓発、意識の定着を図っている我々の仕事からいうと、経済的インセンティブはなかなか難しいものがございます。単に制度に対する助成事業を始めるということでは長く続きませんので、市町村レベルではインセンティブを与えるといった行動はなかなか難しいと思います。

 例えば先ほど御紹介申し上げたKESという環境スタンダード、つまり、ISOではレベルが高いよね、でも、中小の方ならもう少しハードルを下げて中身はそれと同じことをするんだというような、仕組みを少し変えて提供してみるといった工夫が必要かなと思いますし、お金でないものを得る喜びは事実あるわけでございまして、例えば環境教育なんかで、子供たち、小学校五年生がエコロジーセンターへ来ますけれども、来て遊んで帰るわけですね。遊ぶんだけれどもそこで得たものが、帰ってお父さんやお母さんと話をして、あっ、こんな勉強したんだねという、知る喜び、学ぶ喜びというのも次の行動につなげる一つのインセンティブになると思っておりまして、地方としては幅広くいろいろな施策を組み合わせながらやっていきたいというふうに考えております。

木挽委員 ありがとうございます。

 私は、やはり規制で縛る温暖化対策というのは長続きしないというふうに考えております。とりわけ、日本のようになりふり構わぬといったら語弊があるかもしれませんが、経済競争が前面に出ている我が国において、そうしたインセンティブは必ずしも必要な政策体系ではないかと私は思っています。やはり経済的に見合わない取り組みは定着しないのではないかな。現実的に見れば、よりそのことが私の眼前に、私、特に今企業を経営しておる人間からしましても、その経験からしてもそのように感じております。

 ちょっとそれるのでありますが、先ほど浅野先生の発表の中で随分論議されておりましたが、特に都道府県、指定都市等の実行計画への言及がございました。これは浅野先生が言われたことに対して私の方からあえて大島さんの方に質問ということになるんですが、この目標設定等に際しては国の施策や産業界の自主的取り組みとの適正な役割分担の確保が課題ということが言われていました。この役割分担のところにおいて、特に地方において懸念されるような点がございましたら、お示しいただけたらと思うんですが。

大島参考人 先ほどちょっと威張って説明しましたけれども、京都市では既にいろいろな計画をつくっているということでございましたけれども、基本的な考え方は国のお考えと違っているというのはございませんで、むしろ国からいろいろな御助言をいただいて取り組んだという経緯がまず背景としてはございます。

 ただ、京都の特殊性として、先ほどの陳述の中で申し上げましたように、よそでやっていないことをまず始めることに意味があるんだろうというふうなことで、国の方針を、いわばしっかりとその裏も読みながら、行間も読みながら、しかし、京都としてのいわば独自性を出すためにどういう工夫をするかということにずっと腐心してきたという経緯がございます。

 御質問の趣旨は、多分、国と方針が違えばどうするんだということかもしれませんけれども、これまでそういった決定的に対決したシーンはございませんでしたし、これからも多分、今の国のスタンスで考えますと、地方の状況をよく情報収集しながらやっていこうということがはっきり見えておりますので、そういった食い違いが生ずるという心配はしておりません。

 ただ、スピード感は、国の方にもう少し持っていただいた方がいいのではないかなというふうに、あえて申し上げれば言えるかなというふうに思っております。

木挽委員 ありがとうございます。

 国と地方で明確な差異はない、そのベクトルがともにできれば、温暖化対策についてもともに進んでいけるというような回答と受けとめました。

 さて、全然話は変わるんですが、四月一日にガソリンが値下げされました。私の海外の友人から電話がかかってきました。四月一日、エープリルフールだろう、これは秀逸なブラックジョークだろうというふうな電話がかかってきました。なるほど、京都議定書の取りまとめ国であり、しかも今度の環境サミットのホスト国である日本が、この世界の流れの中にあってガソリンが下がるというのは、確かに海外から見れば奇異に映っているのではないかな。(発言する者あり)それは客観的な感想と思って私も受けとめた次第でございますが。

 さて、世界の人々が持続的社会の構築に向けた明確な意見を共有し、これが経済的インセンティブによって後押しされたわけですが、温暖化対策、ひいては持続的社会の構築は、おのずからそうしたインセンティブをつけることによって動き出すと思います。ともに手を携えて頑張っていきたいと思います。

 ありがとうございました。

小島委員長 次に、伴野豊君。

伴野委員 民主党の伴野豊でございます。

 本日は、浅野参考人、飯田参考人、大島参考人、大変お忙しい中、当委員会の参考人質疑の時間にお出ましいただきましたこと、まずもって御礼を申し上げたいと思います。本日は本当にありがとうございます。

 お時間も限られておりますので、順次質問させていただきたいと思いますが、普通の質疑と違いまして質問取りとかそういうものがないものですから、先生方にはその場でお答えいただかなきゃいけないものですから、少し時間的な余裕があるように取りまとめてお三方の先生にお聞かせいただくことを先に申し上げさせていただきたいと思います。

 きょうもお三方それぞれのお立場から本当に貴重なお話を賜りました。私も、浅学非才な状況ではございますが、ここ二、三日、先生方の過去出された論文やさまざまなところで御発言されたことを少しひもとかせていただいた中で、ポイントを絞って質問をさせていただければと思っております。参考人の座席表の順番に従いまして質問させていただきたいと思います。

 まず、浅野参考人におかれましては、過去、環境問題、それから環境法のさまざまな分野でオピニオンリーダー的なリーダーシップを発揮してきていただいたわけでございます。

 そうした中で、これはたしかジュリストだったですか、二〇〇五年の論文の中で、とりわけ先生は、きょうもそういうお立場でお話しいただいたのではないかと思うんですが、いわゆる人類の自主性といいますか、比較的性善説的なお立場に立って、私もそれは非常に正しい御判断だと思いますし、そうあるべきだと思います。また、規制、規制で縛っていく社会というのは望ましい社会ではないと私は思いますし、先生の論文にもありますように、かえってそれはコストが高まることにもなるというお話もございました。

 そうした中で、二〇〇五年の六月号だったと思いますが、ジュリストの中で、「法制度そのものは、あくまでも人々の価値観や意識を後追いするものであるわけで、制度で先に価値を決定することは、なかなかやりづらいと思います。」という御指摘、私もそのとおりだと思うんですね。

 ただ、一方で自主性、性善説でやっていく中でも、先ほど先生はさきの質問にお答えになって、知恵に満ちた手法という御表現をお使いになった。これは科学的検証とか科学的評価というふうに解するとそのとおりだと思うんですが、このあたりの心はいかがなものかというのがまず浅野先生にお聞きしたいことでございます。

 続きまして、飯田先生にお聞きしたいことは二点ございます。

 先ほど本法案に対してなかなか厳しい御指摘を幾つかいただいておりまして、とりわけ、私がお話を伺っていた中で、具体的な取り組みとして石炭火力の問題を御指摘いただいております。確かに、御指摘のとおりの部分がございます。

 そうした中で、今後供給がこのようにいくとするならばという仮定であるならば、やはりこれ以上の石炭火力の発電というものは抑えるべきであると。一つの方法として課税というようなことをお考えになって、その得られた財源を、例えば自然エネルギーとか持続可能な脱化石エネルギーに代替していくための研究費とかそういうものに使っていくのか、あるいはインセンティブを与えるものに使っていくのか。そんな短絡的なものだけではないよとおっしゃるかもしれませんが、今申し上げたような考え方でいいのかどうかというのが一点。

 もう一つは、これは先生のお書きになった「新エネルギー最前線」という論文の中にあったかと思うんですが、最終的にこの辺は浅野先生がおっしゃられた考え方にも共通する部分が比較的あるのかなと思ったんですが、どうも日本の場合は技術的イメージによって未来予測をしがちである、そうではない、社会システム像が先に来た方がさまざまな考え方ができるんだという御指摘をされています。そうした中で、スウェーデンがそういう考えのもとに持続可能なエネルギー社会というのを現実的に創造し具現化しているんだ、日本も日本らしいそういう、ここでは開かれた地域社会というお言葉をお使いになっていらっしゃいますが、ここでもう少し何か具体的なイメージとして、日本版開かれた地域社会、こういうものを実現することによって持続可能な地球環境社会を日本がリードしていくんだというお考えがあれば、お聞かせいただければと思います。

 次に、大島先生でいらっしゃいますが、三点お聞きしたいと思います。

 京都は本当にすばらしいことをおやりになっているなと、お聞きしていて感服した次第でございます。

 そうした中で、あえて先進県としてお聞きしたいんですけれども、第七条に「観光旅行者その他の滞在者の責務」、これも、そこに住んでいらっしゃる住民の方だけでもなかなか理解いただけないのが現状だと思いますが、踏み込んで観光にいらっしゃった方々までというこの心意気というのは非常にすばらしいと思うんですが、具体的にどんなことをおやりになっているのか。

 それから二点目、これは我が筆頭理事の岩國先生からもぜひ聞けと言われておりまして、それを言ったらすぐわかっていただけると思いますが、いわゆる自動販売機への対応、コントロールということ、これも景観の面からあるいは消費エネルギーの観点から京都として何か対策を打っていらっしゃるかどうか。

 それから三点目、これは京都の報告書の中にもあったんですが、この視点というのはそのとおりだと私は思いますが、いろいろ物事を解決していくときに個別的なものだけではなかなか難しいという御指摘の中で、市民、事業者、行政の主体間の連携ということをすごく指摘されています。市民、事業者、行政の主体間の連携を促進させるために京都で何か具体的なことをやっていらっしゃるのかどうか。

 先にいろいろ質問ばかりさせていただきましたが、それぞれの先生方にそれぞれの質問をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

浅野参考人 先生、大変配慮をいただいた御質問、ありがとうございます。また、私の書いたものを読んでいただいて大変光栄に存じます。

 私は、先生がおっしゃいましたことに一つだけちょっと反論させていただきますと、性善説をとっているわけではございません。

 きょう、後で追加で配っていただきました私の意見概要という紙の二枚目に「社会・経済システムを低炭素社会型に変えていくための政策手法」という絵を入れさせていただいたわけでございますが、実はここに考え方全部を図にかいたつもりでございます。

 自主的取り組みということが言われておりますけれども、我が国で行われている自主的取り組みの中の、特に先ほど飯田参考人が口をきわめて問題だとおっしゃった自主行動計画でございますけれども、これは飯田先生はよくおわかりの上での御発言で、いつも審議会で仲よくやっていますからここでけんかする気はないんですが。実は、あれは自主的取り組みという名のもとの一種の社会システムになっていて、産業構造審議会のある方に言わせると、ほとんど規制法に近いということまで言われる。これも私は極端な言い方だと思いますが。

 つまり、ただ単に勝手にやりたいことをやっているというのではなくて、監視の目が行き届いていて、それなりのチェックが働いて、先ほどの飯田先生のように数字まで挙げて、この数字はおかしいんじゃないかというチェック機能が働くということのゆえに意味を持つ、こういうふうに考えているわけでございます。ですから、自主的な取り組みというのは、勝手にやりたいようにやれと言っているわけでは決してないわけです。

 しかし、一つのやり方だけですべてを片づけるということは、もともと無理でございます。これはたびたび学生に言うわけなんですが、あるいは極端な場合、警察学校で教えるときに、この中で無事故無違反の人、手を挙げなさいと言うと、手を挙げるのがいるんですけれども、うそつき、警察官のくせにうそをつくな、無違反ではなかろう、無摘発だろう、こういうふうに言うぐらいで、捕まらないということと無違反ということとが全然ずれてしまっているような直接規制というのもあるわけでありますから、それだけではうまくいかないだろう。

 そこで、ここに書きましたようなさまざまな手法を、この問題についてはこの組み合わせがいいだろう、この問題についてはこの組み合わせがいいだろうというような組み合わせを考えながら上手に社会を動かしていくことが必要だ、このことをずっと主張してきたわけでございます。

 温暖化対策のように、産業界に関しては省エネ法というのははっきり言って規制法に近いものがありますから、言うことを聞かなければ罰則も働くというようなことなんですけれども、一般家庭まで、白熱球をつけた人は罰するぞ、蛍光灯にかえなきゃいけませんなんということはまず無理でしょう。やろうと思えばできないこともないかもしれません、戦争中には灯火管制なんてやったわけですから。だけれども、それはやはりコストを考えてもとても無理だろう。

 では、そこはもっとほかの知恵はないだろうか。そうすると、例えば蛍光灯にかえれば電気代がうんと安くなるとか、かえなくていいとかというようなメリットが十分理解され、もうちょっとコストが安くなればもっとうまくいくだろうといったようなことがその場面では働くだろう。こういう組み合わせが大事だということを私は申し上げたわけでございます。

飯田参考人 二点御質問をいただきまして、どうもありがとうございます。

 一点目は、石炭火力にいわゆる石油石炭税を課税して、これを何に使うかと。

 今現在は、事実上、特別会計でほとんどが新エネの方に経産省、環境省の共管で使われているというふうに認識しております。今はかなり課税率が低いものですから、これを例えば天然ガスと石炭が同コストになる程度まで課税すると、数兆円規模になります。そうすると電気料金が相当高くなりますので、課税の精神からいえば一般財源が筋なんですが、もう一回、電気料金の世界の中で閉じて、これを例えば天然ガスシフトに、電気事業者に対してまた戻していくとか、あるいは先ほど先生がおっしゃった再生可能エネルギー、いわゆる固定価格制の原資に持っていくとか、電気料金の世界で閉じるということはもう一つの理論としてはあり得るかと。

 そして、社会システム。これは実際に日本でも今我々自身が参画をしてやっておりますが、やはり地域社会を軸とした、エネルギーとお金と市民参加をできるだけ地域に閉じていく社会システムをつくっていくというのが今後目指すべきところではないか。そういったもので、例えば送電線の利用とか国の規制の中で幾つか壁になっているところを、国のレベルでは法案として徐々に開かれた形に持っていくのがいいのではないかというふうに考えております。

 どうもありがとうございました。

大島参考人 質問をたくさんちょうだいいたしまして、ありがとうございます。

 まず一点目でございますけれども、観光客の方、滞在者の方に何を望むかということでございますが、端的に申し上げれば、京都だから仕方ないねというふうに思ってもらえるまで徹底したいと思っている部分がございます。

 一点目がパーク・アンド・ライドでございます。もう一つは、春と秋の観光シーズンに、土日に大きな工場を借りたりしていますけれども、ここにとめることによって市内まで車で入ることがないというふうなことを、今、東京、名古屋あたりからずっと高速道路の入り口でビラを配っていまして、幅広くその趣旨を徹底したいというふうに思っております。

 ただ、確かに、観光客の方はお客様でございますので徹底がなかなか難しいわけですけれども、そこで、シャトルバスの運賃を無料にするとかといったちょっとしたお土産、それから、公共交通機関、電車で来たら、二カ所でお買い物をすれば一回分の初乗り運賃が返ってくるようなシステム、KICSと言っていますけれども、そういうシステムとか、ある意味では頭をなでたりちょっと強いことを言ってみたりということで、四千八百万人お越しになりますからなかなか大変なわけですけれども、京都なら仕方がないねと言われるようなものをさらに考えてみようと。駐車場で課税するよという強硬策もありますけれども、これまた、あなたは本当に他府県かというのはなかなか難しいということでございますので、確かに苦労しているところであります。

 かつて、マイカー観光拒否宣言というのをやりまして、これはうまくいかなかったですけれども、そういった意味では、全体の意識向上と京都の思いがどこですり寄るのかというのが工夫のしどころだと思っておりまして、決定打はまだないという状況でございます。

 二点目の自販機ですけれども、我々は、これは二つの観点から規制を始めております。

 一つは、やはり景観の問題がございました。昨年九月に始めましたけれども、例えば鴨川の左岸から先斗町を見ますと床があるんですけれども、床にずっと室外機が並ぶというのがございます。それと同じようにいわば観光地のメーン道路に自販機が並ぶというのがございまして、ここに色彩等のデザイン工夫と木で枠をつくって景観上の配慮をしてもらうという協議をしています。実は、枠をつくると、熱が下がりまして自販機の効率もよくなるというふうなことがあるといった点で、景観上も環境の負荷の面でも、いい取り組みが今できていると思っております。

 もう一つは、メーカーの名前を出せばコカ・コーラさんですけれども、コカ・コーラはじかに置くというシステムをとっておられます。ほかのところはその店に頼もうというシステムなので把握しにくいんですけれども、コカ・コーラ社としては物として今設置されていますので、物を把握するという観点から、そこから全部報告をいただいているというようなことで、結果としては捕捉できているというような状況になっています。

 それから三点目の、主体者間、いわば行政、事業者、市民の連携ですけれども、これは先ほど陳述しました京(みやこ)のアジェンダというところで定例的な会議を催すことができています。商工会議所、工業会、あるいは中小企業の中央会みたいなところも含めて、ここで結構激しい論議、バトルを繰り返しています。最近の動きでいいますと、NPO、NGOの動きを利用しない手はないので、確かに過激な御意見もございますけれども、非常に正鵠を射た意見が出てきますので、議論の場をきちっと確保するというのが我々にできる一番いい手かなというふうに思っております。特効薬はないと私は思っておりまして、このアジェンダをきちっと維持していきたいというふうに考えております。

伴野委員 時間が参りましたので終わらせていただきたいと思いますが、貴重な意見ばかり、ありがとうございました。

 失礼いたします。

小島委員長 次に、村井宗明君。

村井委員 民主党の村井宗明です。

 私の方は、参考人の皆さんに、今回の温対法の争点になっている部分についてお聞きしたいと思います。

 それは、原案については与野党そんなに意見の相違はないんですが、修正案の協議を理事会などでも今随分やっているんですが、その争点になっているのが二カ所あります。

 まず飯田参考人に聞いて、残りのお二人にお聞きしたいと思うんですが、先ほどちょっと参考人から一般消費者に対するエネルギー供給事業者による情報の提供、欧州各国ではできているという話がありました。そういった発電源証明などについて、ちょっとお話しいただいていいでしょうか。

飯田参考人 発電源証明というものについて御説明いたします。

 実は、これはもともとアメリカのカリフォルニア州と一部の州で始められたもので、実際には、電力がいろいろ取引をされて財になっていく中で、実際に最終ユーザーがどういう電気を使っているのかということがだんだん溶け込んでわかりにくくなるということがまず一つ。

 その中で、当時はまだ、二酸化炭素に加えて、特に再生可能エネルギーのより多い電気を選ぼうという消費者のニーズを満たすというところで、まずアメリカでシステムが発効されて、そしてヨーロッパでは、二〇〇一年の再生可能エネルギー指令というものの中で、各国の中で法制化をすることが定められているんですね。それは、電力取引をする際に、必ずその電気のコンテンツ、中身を、とりわけ再生可能エネルギーと二酸化炭素にフォーカスをしてその情報をやりとりしなさい、最終ユーザーにそれを表示するという、ディスクロージャー規制といいますか、そういったものが、もうすべての国で法制化、新しく加わった十二カ国はちょっとわかっておりませんが、履行状況としては、過去の再生可能エネルギー指令が適用された最初の十五カ国はすべて施行しているという段階かというふうに思っております。

 以上です。

村井委員 今、私たちの方は、そうやって家庭でのCO2の排出量を把握できるような情報提供制度をつくるべきではないかという修正案を提案しています。

 そこで、残りのお二人にお聞きしたいんです。

 今、政府の方は、一人一日一キログラムCO2削減運動が家庭でできているなどという意見もあるんですが、まず、お二人は自分の家庭のCO2の排出量を把握しておられるか、何キログラムかというのをわかれば教えていただきたい。もしわからなければ、ではCO2の排出量を各家庭が把握していると考えているか否か。そしてさらに、把握できるようにするために、今、例えば電気、ガス、その他エネルギーの検針票や請求書、明細書などにCO2排出量を記載するようにしてはどうかという法案の修正案についての御意見をいただければと思います。

浅野参考人 大変申しわけございません。CO2何トンかという形では実は把握できておりません。ただ、エネルギーの使用量がどのぐらいであるかということについてはかなり関心を持っておりますので、それはきちっと把握しておりますけれども、残念ながら、表はもらったんですけれども、換算係数をはじいて毎月毎月丁寧に計算するほど暇でもございませんので、それは実はやっておりません。

 表示については、現在でも、多くのエネルギー供給業者は、前年比とか前月比というような形で数字は出しているんですけれども、確かに先生おっしゃるように、原単位的にどれだけであるかということについて、言えば表はくれるんですけれども、自分で手計算をしなきゃいけないということになっていますから、大変不便であることは事実です。

 ですから、制度化するかどうかというより、むしろこれは積極的にやっていただくということで、今回の法案でいいますと、指針などが示されるというふうになっていますから、その中に書くことによってうまい方法を考えるということもできるのではないか。

 ですから、制度という場合に、先生のおっしゃっている意味を私取り違えているかもしれませんけれども、法制度という場合と、それから現実に社会でそれがちゃんと行われているという社会制度と、二通りございますから、社会制度という意味ではやるようにした方がいい、それが制度化されるのがいいと思いますが、法に書くかどうかということになりますと、これは必ずしも一律に論ずることはできないのではないか。

 私の今の参考人の立場としては、そのように申し上げる以外ございません。

大島参考人 私も、このポストに着任後、環境家計簿をつけるようにしておりますけれども、実際に自分がCO2にどれだけかかわっているかということについて数値を持っているわけではございません。

 ただ、多くの小学生あるいは家庭の御婦人に接する限りでは、実際に自分がした努力がどれだけのものなのかということを数値としてお持ちになることは、今後の環境意識を高める面では意味があることだというふうには考えておりますが、どういうシステムが好ましいのかは、今ちょっと手元にそういった考えは持ち合わせておりません。

村井委員 今のは、一点目のCO2の各家庭での排出量を把握できるようにするという修正案ですが、もう一つの論点があります。それは、各企業のCO2の排出量の公表の問題についてです。

 今、環境報告書などできちんと開示できているという意見があるんですが、まず飯田参考人に聞いて残りのお二人にも同じように聞きたいんですが、今私たちは、環境報告書というものにおいては自主的な公表制度になっていて、先ほどちょっと認証制度の話もありましたが、事実上ばらばらになっているんじゃないか、統一的な基準がきちんとできていないから今の環境報告書では足りないんじゃないかというふうに考えています。

 まず飯田参考人に、その辺についての御意見をお願いします。

飯田参考人 お答えします。

 先ほど私の資料の中で東京電力と新日鉄と三井化学の例をお示ししましたが、実際に国に出された算定報告の数値と環境報告書の提示数値が、わずかな違いではなくて三割ぐらい大幅に違っております。

 ここまで違うとなると、明らかに、環境報告書は国に対してここを報告するという仕切りですね、バウンダリーとか定義、単なる誤差ではなくて、そのあたりがかなり違っているのではないかというふうに思っておりまして、そのあたりは、一般社会に出している数字と国に出している数字がこれだけ食い違うとなると、やはり統一的な数字がきちんと国に対しても国民に対してもだれに対してもわかりやすく見える、しかもそれがきちんと第三者のチェックを経て、しかもほかの企業と横並びで、いわゆるイコールフッティングと申しますか、そういうデータベースをちゃんと持つような形にもう一度踏み込む必要があるのではないかということが、これまで一回だけ公表された数字からうかがえるというふうに考えております。

村井委員 残りのお二人にも同じように聞きたいんですが、今、環境報告書などでは、自主的な公表、そもそも出すか出さないかも自主的であるし、どこまで出すかというのも自主的な内容の中で、きちんとした統一的な基準で公表できていないのではないかと考えるんですが、残りのお二人はどう考えられますでしょうか。

浅野参考人 環境報告書につきましては、法律をつくるときに、民間事業に対しての義務づけについては、いろいろな御議論の上、結局は義務づけということではなくなりまして、結局、残ったのは公的セクターということであったわけです。

 しかし、現実には、公的セクターでの環境報告書のシステムというものはある種のガイドライン的な意味を持っていて、ある程度そこの統一性というのがあるとか、あるいは環境報告書のネットワークというような民間組織があって、その中での統一を図るという努力が自主的には行われてきているというふうに私は理解しております。ですが、もっとガイドラインを明確にして統一的にするということは必要かもしれません。

 先ほど飯田参考人が御指摘になった点については私も初めてお聞きしたんですが、どの部分を環境報告書に載せるのかということと、それから温対法での報告のバウンダリーがどこであるのかということが完全に一致していないだろうということは言えるようでありますから、その辺のところは、もう少し事情をよく調べなければ、ただ数字が違うということだけで議論することができるかどうかは若干疑問に思います。

 公表に関しては、既に化学物質でこういうことを議論したときにも思ったんですが、私は、もともとちゃんと自分で把握して、それをきちっと行政主体がデータを把握するということがまず一義的に重要であろうと。その後公表するということまで全部ワンセットであるかどうかということについては、企業秘密の問題などという結構ややこしい議論があるものですから、ワンセットにするということにこだわることによってすべてのシステムが崩れてしまうということよりも、差し当たり必要なところがしっかりデータを握ることをまず優先させるべきだと考えたことがございますけれども、温暖化対策についても基本的にはその考え方は変わっておりません。

大島参考人 各種の報告書について、その様式あるいは考え方について統一される方が比較する上でも好ましいというのはおっしゃるとおりだというふうに私も考えておりますけれども、今、京都市が実際にやっておりますのは先ほど申し上げた特定排出事業者ですけれども、この分野に関して言えば、今、京都市では既に様式を統一し、公表も含めた制度を持っております。いわばこの分野を少し広げていくという方向であれば同じことなのかもしれませんけれども、トータルとしておっしゃるような趣旨で幅広く整理できるのかどうか、ちょっと私のレベルでは想像がつかないなという気もちょっといたしております。

村井委員 そこで、民主党の提案している修正案に入るんですが、今の排出量の公表制度においては、事実上二つの問題がある。一つは、国の方で取りまとめて公表するという制度だけでは取りまとめてから約一年おくれでの開示になってしまったという点、そして環境報告書での開示という点においては、基準がばらばら、そして範囲もばらばら、そもそも出すか出さないかもばらばらであったという点です。

 そこで、私たち民主党は、例えば有価証券報告書などにCO2の排出量だけ明確な基準で公表する制度にするべきではないかと提言して、今、修正案を協議させていただいているんですが、その点についてお三方はどのように考えられるか、順番にお答えいただきたいと思います。

浅野参考人 有価証券報告書のような形で統一的に報告をするという御提案でございます。

 この件に関しては、私、実は余り考えておりませんでしたので、直ちにどうこうということを申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。

 多分、やはり強制的に報告をさせるという仕組みになじむかどうかということがございまして、例えば原単位の問題その他、やはり業種によっていろいろな事情がありそうな気がいたします。ですから、それをどう客観的、合理的に報告書にまとめて不公平がないような数字が出せるかということについての技術的な詰めを少しやらないと、なかなかこの点については答えが出しにくいのではないかと今のところ考えております。

飯田参考人 お答えします。

 基本的には、先生おっしゃるように、統一的な方向、しかもできるだけリアルタイムな形で、しかもイコールフッティングでデータが出てくるという方向で制度整備がなされる方が望ましいであろうというふうに考えています。

 大きな流れでいうと世界は炭素経済に向かっている、つまり炭素がお金の価値を持つ方向に向いているということであれば、これまでそのあたりの、いわば一番最初の通信簿といいますか、マネーの根本となる炭素のデータをきちんと担保する、それも一年おくれではなくてできるだけリアルタイムで捕捉をしていくという形で順次制度整備をしていくということは、方向としては正しい方向ではないかというふうに考えております。

大島参考人 報告をもらう以上、その後の分析あるいは評価するに値する中身、様式であることは必要だと思います。そういった意味では、一つの御見識ではないかなというふうに私も考えております。

村井委員 ちょっと時間が余ったので、今回の民主党の修正案と違う点を一つだけお聞きしたいと思います。

 日本の予算の特徴です。世界は、環境税などを取った場合、大体環境予算に使うんですが、日本のガソリン税は、これまで環境には使わずに道路建設などに使ってきました。日本の予算の特徴は、環境予算と道路予算のバランスの悪さだとよく言われています。

 そこで、参考人三人にお聞きしたいんですが、もし一般会計と特別会計を一緒にして計算するとするならば、日本の最大の特徴は、環境予算が道路予算の三十六分の一にすぎないことだなどと環境NGOなどから言われています。お三方は、環境予算が道路予算の三十六分の一にすぎないということ、極端に少ないということについてどうお考えなのか、簡単にお答えください。

小島委員長 時間が来ていますので、簡潔にお願いします。

浅野参考人 おっしゃるとおり、極端に少ないと思います。もっとふやすべきだということは全く賛成でございます。ただ、財源をどこからとるかということはまた別問題かもしれません。

飯田参考人 御指摘のとおりで、私、さらに二つ問題があると思います。まず、少ない、バランスの悪さと、もう一つは、その少ない環境予算も必ずしも効率的に使われていない、そこもかなりばらまきに近いという、この二つの問題が二重にあると思います。

 以上です。

大島参考人 各地域によってニーズが違いますから、そういったことに工夫をされる予算をぜひお願いしたい。総額はもとよりですけれども、そういっためり張りが必要かなというふうに私は考えております。

村井委員 どうもありがとうございました。

小島委員長 次に、高木美智代君。

高木(美)委員 公明党の高木美智代でございます。我が党はかねてより、循環型社会形成推進基本法、また自動車リサイクル法等々、環境の党公明党という自負を持ちまして、環境立国日本を目指すべきである、この姿勢で一貫して取り組ませていただきました。

 きょうは、浅野先生、飯田先生、そしてまた大島先生、お三方には朝早くからお越しいただきまして、心より感謝を申し上げます。本日は、国のさらなる取り組み、そしてまた、都道府県また地域の取り組みのあり方につきまして、広範にわたりまして教えていただいたと思っております。

 今、私どもも、国のあり方につきましてもう一度大きなパラダイムシフトをしなければいけない。それを、福田総理は低炭素革命という表現で、先週、たしかこれは各国の経済界の代表が集まられた会合におきましてお話をされたと承知しております。先ほど来お話ありました自主行動計画につきましても、確かに、二〇一三年を見据えているためにまだまだ緩い内容になっている。二〇二〇年へ向けて、また二〇五〇年に向けて日本がどうするのか、今、この大きな起点に立っているという自覚でおります。

 そういう意味では、今般、洞爺湖サミットが開かれるということは、我が国にとりまして大きなチャンスでありますし、また、このときに国民の皆様の意識も大きく変えていただく、ライフスタイルも、また、ひいては企業のあり方につきましても、産業部門につきましても大きく変えていただくという大事なポイントになってくるのではないかと思っております。

 そこで、まずお伺いしたいのですが、産業部門、先ほど飯田先生からは、例えば電事連の省エネの取り組みについてもまだまだ進んでいないのではないか、諸外国に比べれば決して日本の省エネの取り組みが進んでいるとは評価できないという、そうした旨のお話がございました。この産業部門、日本の景気につきましても、今を見ますとまだまだ厳しい景気の状況ではございますが、ただ、先ほど御指摘ありましたとおり、世界の炭素が産業の原資になる、糧になるということを考えますと、そこに乗りおくれてはいけないとも思います。産業部門の転換といいますのは、今、大きな日本の課題であると思っております。

 この産業部門の転換につきましてどのような後押しをしていけばいいのか、当然そこは国内法の整備であるとかさまざまなシステムが必要であると思いますが、この産業部門の後押しにつきまして、お三方から重ねて御意見をいただければと思います。

浅野参考人 産業部門の転換というふうにおっしゃったその意味を取り違えているかもしれませんが、例えば産業構造そのものを変えるといったようなことも一つの考え方かもしれません。

 ただ、私は、この国が物つくりという部門をしっかり大事にしていくということはなお必要であって、何かそういうところから完全に撤退してしまうということを先生がおっしゃっているとは思いませんけれども、そういうような議論が時々ありますけれども、それは間違っておるのではないかというふうに思います。やはり、技術を大事にし、物つくり部門を大事にし、そこで世界のお役に立つという日本でなきゃいけないというふうに思っております。

 産業部門の取り組みが十分であるかどうかということについて、少し御質問を外れるかもしれませんが、考えを少し述べさせていただきますと、確かに、飯田参考人が先ほどの御意見の中でおっしゃいましたように、産業構造審議会、中央環境審議会の合同会議では、産業部門はやっているからもうこれ以上何もしなくていい、家庭部門と業務その他部門だけやればいいという議論をなさる委員もいらっしゃいました。しかし、中央環境審議会側の委員は必ずしもそうは思っておりませんで、産業部門がなおやらなければいけないことはたくさんあるということは十分に認識をしているわけでございます。

 何より問題なのは、産業部門で、しっかり取り組んでおられる企業、業種と、まじめにと言うと言葉が過ぎますが、十分に取り組みをおやりになっていない業種というのがある、そのばらつきというものは非常に目につくなと。あるいは、将来の生産増を見越して今からその将来分を要領よく取り込んでおこうというようなことをまずお考えになる業種と、割合正直に、やはりここまでやったんだからさらに頑張ろうという業種と、そういうばらつきがある。

 私も自主行動計画は社会システムということで評価してはおりますけれども、現実に我が国の産業界のやっておられる自主行動計画というのは、実質はただで排出枠取引をやっているわけですね。何もしない企業のために頑張っている企業が自腹を切って下げてあげて、それで全体は下がっていますということになっているわけですから、こんな、ただで排出枠取引ができるなら、それをお金にかえる排出枠取引の方がよっぽどフェアではありませんかということを私は考えております。

 ちょっと余計なことまで申し上げました。

飯田参考人 一部は先ほどの繰り返しになりますが、二つ申し上げます。

 私も、日本は製造業をベースにした非常にすぐれた経済大国だというふうに考えております。その特性を生かす必要がある。その特性を生かす上で、やはりかつての、自動車の排ガス規制で日本の自動車業界が世界を席巻した、今日に至るその歴史を改めて振り返る必要がある。

 つまり、現状は、今、浅野参考人がおっしゃったとおり、非常に不透明なルールのまま、本当にイノベーティブな企業が新しいことに取り組めるような形にはなっていない。それを、キャップ・アンド・トレードにしても、まず、クリアな経済の舞台、ルール、その上でまさに日本企業のイノベーションが花開くような透明なルールをつくるというのが総論です。

 二つ目に、もう一点は、これも先ほどの繰り返しになりますが、再生可能エネルギーです。これは、日本だけが、今、再生可能エネルギーはどちらかというとまだまだ非常に端っこの小さなおもちゃのようなものだというような認識が根強いかと思いますが、先ほど申し上げたとおり、ドイツでは、二十世紀に自動車産業が担った役割を二十一世紀は自然エネルギーが果たすと。これは実はあながち誇張ではなく、実際の経済規模と成長力において、まさにそういう領域になってきています。これは、地球温暖化対策のかなめであると同時に、新しい産業の芽であって、しかもエネルギーセキュリティーの柱になる。

 太陽光、さらには他の再生可能エネルギーを日本のとらの子としてどれだけ大きく成長させるか。これは、既存の、とりわけエネルギー業界とのいろいろなあつれきがあることは当然ですが、そのあつれきをうまい形で、きちんとしたルールと移行期間を設けながら、大きな再生可能エネルギー市場をまさにグローバルな産業に育てていくような、そういう政治的な判断と新しいルールづくりというのが必要だというふうに考えております。

大島参考人 京都市の地球環境政策監としての最大の関心事は、申しわけございません、民生家庭あるいは民生業務にあるわけでございますけれども、そこでやっておりますと、非常に細かな積み上げを一生懸命やるわけですね。ところが、産業部門がちょっと何かするだけで、ほぼ同じだけ、あるいはそれの何倍もする成果を上げるという、いわば上流部分の不透明さを時々感じないわけではございません。

 ですから、産業部門がどう動くかについては、これはまさに国レベルできちっと御協議をいただいて、我々はきちっと下から積み上げていくという、そういった役割分担で進めていくべきではないかなというふうに私は考えております。

高木(美)委員 これは浅野先生にお伺いしたいのですが、浅野先生はジュリストの中で、こういう産業部門について、省エネ法、いわゆるRPS法にしても、規制法的に事業者の費用負担で供給を義務づけている、こうした内容がずっと続いておりまして、確かに、規制に容易に従う事業者の方たちが位置づけられているというのが今の現状かという認識でございます。

 そこで、法律全体のシステム化という観点が必要であるという先生の御提言でございますが、ここにつきまして、もう少しその内容につきましてお示しいただければと思います。

浅野参考人 先生がおっしゃいましたように、法律を丹念に読んでいきますと、我が国の特に産業政策に関する法律というものは、自主的な取り組みを尊重すると言いながら、どこかで意外と規制法的な要素があるということが見てとれます。特にRPS法に関しては、決して悪い法律だと言う気はございませんけれども、しかしながら、電力会社が独占的に電気を供給するというシステムの中で考えられた法律がいまだに残っていて、一方では電力自由化がどんどん進んでいるという問題がございます。そのために、結局、買い取りをさせられる者が自己の費用で買い取りをしなきゃいけないということがあり、他方では自由競争にさらされる、こういう矛盾を現実に抱えているのではないだろうかという気がしてしようがないわけですね。

 ですから、例えば電力自由化のような政策をとるときに、では環境面ではどうしたらいいのかというようなことは何にも考えないで、一方は一方、安く電気を供給しろということだけを言う。そのために、私も飯田参考人の御意見にある程度賛成なんですけれども、石炭火力も伸びてしまう、しかも大手の電力じゃないところが参入してきて石炭でどんどん稼いでいくというふうなことが行われることの矛盾を感じているわけでございます。

 ですから、法体系のというよりも、もう少し言うならば、政策そのものが一貫した政策体系を持っていなきゃいけないのではないか。そのために、私は環境省の応援団だと自称しておりますけれども、もう少し環境省が力を持つべきですし、先ほど環境予算が少ないのはどうかと言われたことに対して、大いにそうだというふうに申し上げたような次第でございます。

高木(美)委員 ありがとうございます。

 それでは、これは浅野先生と大島先生にお伺いしたいのですが、地球温暖化防止活動推進員それから地球温暖化防止活動推進センター、この役割につきまして先ほどお話しをいただきました。特に、この大きな役割といいますのは、京都はまさに京都議定書の本拠地らしいすばらしい先駆的な取り組みをしておられて、それがこうした法に、また省エネ法に反映されているものと思っておりますが、国民意識をどのように向上させていくか、ここが大変大きなポイントであると思っております。

 そこに対しまして、この推進員そしてまた推進センターの運用に当たりまして、また今後の位置づけ、方向性につきまして、国にどのようなものを御要望されますか。その点につきまして最後にお伺いをさせていただきたいと思います。

浅野参考人 私、意見陳述の中で申し上げましたように、国としてはちゃんと方針をきっちりつくってください。

 それから、やはり財政的な面での支援というのはぜひとも必要であります。推進員にしてみても、身銭を切って活躍をしておられる方が多いわけですが、残念ながら、先ほどのお話とも関連がございますけれども、予算は限られ、推進員がふえればふえるほど一人当たりの費用が減るという大変悲しい状態にございます。やはり、少し口の悪い言い方で申し上げますならば、温暖化対策の啓発普及のために多くの予算が投じられ、テレビコマーシャルなどが流されておりますけれども、そういうものにお金を流す余裕があるなら、もっと推進員の方にきめ細かくお金を流すということだってあっていいのではないか。あるいは、ミュージカルも別に悪いとは言いませんけれども、そんなものをやるよりも、もっと家庭に入り込めるようなところにしっかりお金をつける。これは、今の分権のシステムの中で補助金がいいかどうかという問題はあるわけですが、幸いにもセンターという組織があって、そこは自治体ではありませんから、そこを通じてしっかりとお金を流すという方法はあるんだろうと思うんですね。

 それから、もう一つ申し上げますならば、最後の最後は市町村とセンターや推進員の連携が何より大事なことでありまして、センター、推進員と市町村がばらばらでは困るわけです。例えば市町村が自前でおやりになる啓発普及と推進員の活動をうまく組み合わせられるような、そういう運営ができるように、これはぜひ国の方もしっかりと方針を示し、また、いろいろないい事例を紹介することによって、今何をしていいかわからないと思っているようなセンターや推進員の方々に情報が提供される、このことが必要だと思います。

 どうもありがとうございました。

大島参考人 今の御質問は私にとっては非常にありがたい御質問でございまして、地方でいわゆる啓発あるいは環境教育をしていますと、やはり指導者が必要です。我々自治体職員がやるにも数に限りがございますし、学校の先生も本務がございますからなかなか手伝ってもらえないわけですけれども、いわば環境に関して知識といろいろな経験が要るんですね。頭の中の勉強だけじゃなくて、実際に現場で何かをしてきたという経験が非常に大事なので、そういった経験を積んでもらうためには手間も暇もかかるし、育てるためのお金もかかるということでございます。

 善意でやってくれたらそれでいいというボランティアでは実は務まらないというふうに私は思っておりまして、今、嘱託は二百二十一名ですが、京都市域では四十四名にすぎません。しかも、その四十四名は、一部は京都の京(みやこ)エコロジーセンターで経験を積んだ方ですけれども、申しわけないけれども私どもが知らない方も実はいたりします。ですから、今後、府と市の連携も必要ですし、市がまた別途つくるとしたら、そのあたりの人材交流とか人材に対する共通理解がないとうまく機能しないんじゃないかなというふうに思っております。

 したがって、育成に係る経費への御支援と、それから実際に活動するときの事業への御支援、この両面的なお支えはぜひ要るかなというふうに思います。地方も頑張りますけれども、やはりそういった御支援がなければちょっとつらいなというのが実態でございます。

高木(美)委員 大変貴重な御意見をありがとうございました。

 今、大事な局面でございますので、今後ともますます声を大にして御発言をしていただきまして、また、私どもがしっかりとその御意見、御要望を受けとめて政策に反映させていただきたいと決意を申し上げさせていただきまして、御礼の言葉にかえさせていただきます。

 大変にありがとうございました。

小島委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 この際、暫時休憩いたします。

    午前十一時二十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時十五分開議

小島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長上田隆之君、環境省総合環境政策局長西尾哲茂君、環境省地球環境局長南川秀樹君及び環境省自然環境局長櫻井康好君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小島委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川内博史君。

川内委員 委員長並びに与野党の理事の先生方にお許しをいただきまして、発言の機会をいただきました。本当にありがとうございます。

 それでは、地球温暖化対策の推進に関する法律改正案について質問をさせていただきます。

 まず、鴨下環境大臣にお伺いをさせていただきます。

 先週の木曜日、四月十七日に、国連大学でスウェーデン・日本ジョイントシンポジウム「持続可能な都市の発展」が開催をされ、スウェーデンのラインフェルト首相が開会の辞を述べられ、鴨下大臣はスウェーデンのカールグレン環境大臣とともに基調講演をされたということであります。

 それで、大臣に、このシンポジウムの意義と大臣がなされた基調講演の内容の概要について御教示をいただきたいというふうに思います。

鴨下国務大臣 四月の十七日に、スウェーデンと日本、国連大学の共催ということでシンポジウムが開かれました。スウェーデンからはラインフェルト首相とカールグレン大臣が来日した機会をとらえまして御参加をいただいたということで、テーマは、持続可能な都市の発展ということであります。日本、スウェーデン両国から有識者がパネリストとして参加をいたしました。

 私は、スウェーデンのカールグレン環境大臣とともに開会式で基調講演を行いました。その中で内容としましては、我が国はG8北海道洞爺湖サミットにおいて主要排出国がすべて参加する実効性のある枠組みづくりに貢献していくというような趣旨のこと、あるいは、大幅な排出削減のためには低炭素社会の実現が不可欠であり、そのための検討を進めているというようなこと、そして、都市と交通のあり方を見直して環境負荷の少ない都市構造へと転換を図ることが必要であるというようなことを取り上げまして、温暖化防止に向けた世界各国の協力の重要性について訴えさせていただきました。

川内委員 実効性のある枠組みづくりに努めていく、低炭素社会を実現する、環境負荷の少ない都市構造を実現していくというようなことを基調講演の中で述べられたということでございます。

 具体的には、大臣の基調講演の中で、あるいはこのシンポジウム全般の議論の中で、現在日本の政府が御主張されていらっしゃいます今後十年間で五十九兆円をかけて道路整備をしていく方針、この十年、五十九兆円の道路整備によってCO2の排出量は削減されるのだというようなことを具体の方法論としてお述べになられたかということについてお聞かせをいただきたいと思います。

鴨下国務大臣 シンポジウムにおきましては、コンパクトなまちづくりについて話はいたしました。その中で、都市の社会資本は数十年にわたり温室効果ガスの排出構造を固定してしまうわけでありますから、今後のまちづくりにおいては、低炭素型のまちづくりというようなことを長期的な排出削減のために戦略的に考えることが必要だということと、加えまして、先駆的な取り組みを行う都市をことし七月を目途に環境モデル都市として選定する予定であるというような趣旨のことを話しました。

 また、アジア地区においてこれから発展段階にあるそれぞれの国々に対しても、我々は、低炭素型のまちづくりというようなことをしっかりと日本から発信していく、こういうようなことによって長期的な排出削減につながるんだ、こういうようなことについてはお話をさせていただきました。

 今委員御指摘の道路整備の予算について、具体的に、特定財源どうあるべしとか道路整備についてどうあるべしというような話はそのときにはしませんでした。ただ、モータリゼーション全体のこれからの考え方というような意味においては、今御指摘がありましたように、コンパクトなまちづくりというのは、例えばモーダルシフトを含めたモータリゼーションのあり方というようなことについての言及はいたしました。

川内委員 それは、幾らなんでも十年、五十九兆円で道路をつくり続ければCO2が削減されますよなんて多分恥ずかしくてとても言えないだろうというふうに思いますが、大臣、実際問題として、最近では、十年間、五十九兆円で、特に高規格幹線道路や地域高規格道路、高速自動車国道あるいは自動車専用道路を整備することがCO2削減、温暖化対策になるんだというようなことを国土交通大臣は堂々とおっしゃったりしていらっしゃるようでございます。

 そこで、ちょっとお尋ねをさせていただくのでございますけれども、今般の法改正に関して、ことしの二月八日に取りまとめられております京都議定書目標達成計画の評価・見直しに関する最終報告という文書がございます。さらに、この京都議定書目標達成計画の評価・見直しに関する最終報告に続けて、三月二十八日には京都議定書目標達成計画全部改定が閣議決定をされております。

 まず事実関係を確認させていただきますが、この京都議定書目標達成計画は、中央環境審議会地球環境部会と産業構造審議会環境部会地球環境小委員会の合同の最終報告書を踏まえて取りまとめられたものであるという理解でよろしいかということを教えていただきたいと思います。

南川政府参考人 委員御指摘のとおり、二月八日に出されました両審議会の合同報告書というものを踏まえまして目達計画はできております。

 ただ、当然ながら、その過程で一カ月間パブリックコメントなどを行っておりますので、そういった若干の意見で修正はしておりますけれども、基本的なラインは二月八日の報告書に沿っておるということでございます。

川内委員 そうすると、京都議定書目標達成計画の評価・見直しに関する最終報告、二月八日に出ているこの文書の中を読ませていただくと、この審議会は去年の十二月七日に国土交通省から関連対策の検討状況ヒアリングというものを受けていらっしゃるようでございます。

 昨年十二月七日に国土交通省からこのヒアリングを受けたとき、国土交通省の意見として、高速道路を整備すればCO2の排出量が削減されるのだという趣旨の意見表明があったかということを教えてください。

南川政府参考人 これにつきましては、まず国土交通省の方からいろいろ御説明がございました。特に、交通の円滑化ということで渋滞解消について具体的な例を示しながら、渋滞解消が燃費効率を非常に上げるということで、改善につながるんだという話はございました。

 ただ、一般論としまして、自動車からのCO2につきまして、渋滞を解消し、走行速度の向上というのは意味があるということでございますが、それ以上突っ込んでさらに幹線等についての具体的な提示があったわけではございません。

川内委員 それはそうですね。この十二月七日の時点で、そんなことを国土交通省も恐らく恥ずかしくて言えなかっただろうというふうに思います。

 その証拠として、この十二月七日に審議会に提出資料として国土交通省が提出をした「国土交通省における地球温暖化対策について」とする資料にも、高速道路を整備すればCO2の排出量が削減をされるというようなことはどこにも書かれていない。したがって、最終報告の中にも、高速道路を整備すればCO2の排出量は削減されるとする文言はどこにも出ていない。

 しかし、京都議定書目標達成計画になると、四十三ページにいきなり出てくるんですね。「環状道路等幹線道路ネットワークの整備、」という言葉がいきなり目標達成計画の中に入っている。審議会の中で国土交通省も恥ずかしくて言えなかったであろうこと、審議会の報告書にも出ていない文言、それが京都議定書目標達成計画が閣議決定をされる段階で言葉として盛り込まれた。

 これは、だれが盛り込んだのか、いつ盛り込んだのか、なぜ盛り込んだのかということを教えていただきたいと思います。

南川政府参考人 これは、三月二十八日の前に一カ月ほどパブリックコメントを行いました。そのパブリックコメントの原稿の段階で政府の判断で入れたものでございます。具体的には、三年前の目達計画策定時にも入っておりまして、これにつきましては定性的には変わらないということで、環状道路等幹線ネットワークの整備ということについて同じように引用して掲載をして、パブリックコメントにかけたものでございます。

川内委員 政府の判断とおっしゃられたが、政府とは内閣であって、行政権は内閣に存すると日本国憲法に書いてございます。

 したがって、三月二十八日に閣議決定をされたこの文書に、閣議として、内閣の意思としてはそのときに決定しているわけですから盛り込んだというのはわかりますけれども、政府の判断で盛り込んだ、その政府というのはだれなんですか、原案をつくったのはだれなんですかということをわかりやすく言えば聞いているんですけれどもね。

南川政府参考人 環境省と経産省の事務方で案をつくりまして、関係各省に意見を聞いて、その段階で原案を作成したということでございます。

川内委員 環境省と経済産業省の事務方でこの文言を盛り込んだと。

 国土交通省から、盛り込んでね、頼むからこれを入れてよという話はなかったですか。

南川政府参考人 担当レベルのやりとりについては私承知しておりませんけれども、私自身も相談を受けましたが、端的に申しますと、前回も入っておりまして、特に変えるまでもないだろうということで両省の原案段階から入っておったように記憶しております。

川内委員 環境省はもうちょっと勉強した方がいいですね。

 財務省が行っている予算執行状況調査などを検討すると、国土交通省が渋滞対策と称して各所で工事をする、その工事に時間もかかるし、かえって渋滞を増幅させている、だから予算の執行のあり方として問題があるんではないかというような指摘をされているわけです。

 今回、この京都議定書目標達成計画は、第一約束期間において目標を達成するための計画として立てられているもので、国土交通省が、いや、渋滞対策をするとCO2が減るんですよ、削減になるんですよと。定性的な言葉としてはそれはそうかもしれないが、しかし、定量的にそれをはかった場合に果たして本当に削減につながっているのか否かということについて十分な検討あるいは検証というものがなされているとは、今の御答弁ではとても言いがたいと私は思います。

 実際に「「京都議定書目標達成計画」に対する意見募集の結果について」というパブコメも見せていただきましたが、この部分について、「環状道路等幹線道路ネットワークの整備については、潜在交通量の顕在化によって交通量が増大することが考えられ、CO2削減効果がないため、記述を削除すべき。」というような意見がついている。

 実際そうですよ。だって、国土交通省が今発表している中期計画は、二〇三〇年まで需要交通量はふえ続けるのだ、今よりも需要交通量はふえるのだということを前提につくられている計画ですからね。それでCO2の排出量が減るとはとても思えないわけですが、それに対する回答は、「交通流の円滑化による走行速度の向上により実効燃費が改善されることから、自動車からのCO2排出量の削減に寄与するものと考えております。」というふうに政府としてのお考えをここに述べていらっしゃるわけでございます。

 では、日本の政府として、今現在、国土交通省が立案をしている道路の中期計画に基づいて道路整備をした場合、CO2の排出量が総量として、定量化される数字として削減されるのだとするような検証の結果あるいは検討の結果などがありますか。

南川政府参考人 そういったものはないというふうに承知をしております。

川内委員 それはそうですよね。そんなこと、恥ずかしくてとてもそんな強引な論文は幾ら何でも書けないだろうというふうに私は思います。

 さらにもう一点聞かせてください。京都議定書締約国の中で、道路ネットワークを整備することがCO2排出量の削減に貢献するなどとその削減計画の中で述べている国が日本以外にありますか。

南川政府参考人 各国の対策を全部チェックしたわけではございませんけれども、私が知る限りではございません。

川内委員 大臣、どうですか。この閣議決定の「幹線道路ネットワークの整備」というところは、福田総理も一般財源化を来年度からされるということをおっしゃっていらっしゃる、さらに、道路の中期計画についてもさまざまな問題が国会で指摘をされて国民的な関心にもなっていること等を踏まえて、このようなちょっと恥ずかしい記述については削除をして、本当に国としてCO2排出量の削減に取り組むんだと本気を見せないと、道路をつくるんですかみたいなことが京都議定書目標達成計画の中に入っているというのは、環境大臣、どうですか、やはりここは閣議決定を変更して削除された方がいいと思いますよ。

鴨下国務大臣 これは政府全体の目達計画の改定でございますので、環境省だけ、私だけがコメントするのが果たしてふさわしいかどうかはわかりません。ただ、環状道路のネットワークというのは、これは交通流対策という前提の中での話ですから、例えば、本当に渋滞があれば、そういうようなところで交通が円滑に行われるということがある意味でCO2削減にもつながるというような考え方もあると思います。

 ただ、トータルでモータリゼーションを促進していくかどうかというようなことについては、環境省としては、公共交通も含めて車に頼る社会ではない、あるいは歩いて暮らせるようなまちづくりを推進していくというのが我々の長期的な展望でありますので、そういう意味では、これからちょうど、モータリゼーションから環境配慮型のまちづくりというようなことにシフトしているいわば潮目の時期なんだろうなというふうには思っております。

 そういう中で、先生の御指摘も一つでありますし、渋滞対策という意味では、局地対策、立体交差等を整備するというのは、短期的にはそれなりの意味はあるというふうに私は思います。

 加えて、道路整備だけではなく、そこの上を走る車の単体の燃費というようなものの向上、あるいは電気自動車等を使うというようなことによって、それぞれいろいろな要素が入ってまいりますので複合的に考えるべきだろうというふうには思いますが、全体は環境省だけでつくっているものじゃございませんので、その程度にさせていただきたいと思います。

川内委員 この情報は多分大臣御存じないと思うので覚えておいていただきたいんですけれども、モーダルシフトということがこの達成計画の中で書かれています。私も大賛成なんですが、例えば整備新幹線を整備するときには、一キロメートル当たり大体五十億円から六十億円で整備できる。新幹線というのは真っすぐに走らなければなりませんから、トンネルあるいは橋梁、構造物だらけの整備計画になるわけですけれども、それでも五十億から六十億ですね。ところが、高速道路の整備は、佐世保で一キロ二百億の道路があるとか、どこそこで一キロ百億の道路があるというような形で、めちゃめちゃコストが高くなるわけですね。だから、モーダルシフトということを考えたときに、やはり一般財源化して何にどういうふうに使っていくかということがCO2の排出量を削減していくことにも私はすごく重要な論点になってくると思うので、ぜひ、きょうの議論をどこか頭の隅に入れておいていただいて、この京都議定書の目標達成計画の中で生かしていただきたいなというふうに思います。

 それでは、次の質問に移らせていただきます。

 太陽光発電、ソーラーパネルはこの排出量削減に多大な貢献をするのではないかというふうに私は考えていたところ、経済産業省さんにお伺いしたらば、最近はちょっと制度を縮小してしまったんですというようなことを教えていただきました。私は、制度を縮小するどころか、もっとその制度を拡充し強化をしていくべきではないかというふうに思いますが、現状と今後の御方針について教えていただければというふうに思います。

上田政府参考人 太陽光発電に関するお尋ねでございます。

 制度を縮小したとおっしゃるのは、恐らく太陽光発電補助金というのをやめたということではないかと思いますけれども、この補助金は、平成六年から平成十七年までの十二年間継続してまいったわけでございます。予算総額で約一千三百億円程度を投入いたしてまいりました。

 その結果、実は、この助成を開始する前の平成五年におきましては、太陽光発電、一軒当たり大体三・五キロワットぐらいの太陽光パネルを屋根に乗っけるわけなんですが、当時、約一千三百万円ぐらいしておりました。これが、補助金あるいはそれに伴う需要の拡大等々で、現状では大体その五分の一の約二百三十万円ぐらいになっているということかと思います。導入量で見ましても助成開始前の六十倍に増加をしたということで、それなりに進んだんじゃないかということでこの補助制度を終了した次第でございます。

 しかしながら、それ以外の仕組みにつきましては、太陽光発電、さまざまな助成制度を持っておりまして、例えばRPSという電気事業者が電気を買い取る制度がございますが、その中で、これは昨年の制度改正の中で、その発電量を太陽光だけ二倍にカウントする仕組みといったもの、あるいは公共用、産業用に対する助成制度の充実、あるいは革新的な太陽光の研究開発の推進等々を行ってきているところでございます。

 さはされども、今先生が御指摘の太陽光につきましては、私ども、将来、日本の産業という観点からも大きなかぎを握る一つの技術であると思っております。現在、新エネルギー部会といったところで新エネルギー政策全体につきまして御審議をいただいているところでございまして、太陽光をどういうふうに進めていったらいいか、御指摘の点も踏まえてさらに検討を深めてまいりたいと考えております。

川内委員 十二年間で一千三百億円補助をしました、導入量もかなり進みました、今現在は一台が二百三十万円ぐらいですということでございますが、今、全国的に何台ぐらい普及しているものでしょうか、数字がもしあれば。

上田政府参考人 現在我が国で何台とはちょっと申し上げにくいんですけれども、二〇〇六年末時点で、日本の太陽光導入量は世界の約三割でございまして、百七十一万キロワットぐらいの量が入っておるところでございます。

川内委員 補助金はもうやめちゃったということなんですが、実は、いろいろな電気設備なんかをやる中小企業の、パネルの工事なんかをする会社の社長さんなんかに話を聞くと、いまだに、こういうパネルをつける人は、お金持ちで相当CO2の削減などにも意識が高い人じゃなければ、初期投資が何百万というものについては普通の人はやはり二の足を踏む、なかなかそれは手が出ないねということをおっしゃるんですけれども、より普及を進めるためにも、今しばらくこの補助の制度というのは続けた方がよいのではないかと。委員長もうんうんとおっしゃっていただいておりますが、どうですか。

上田政府参考人 正直申し上げまして、そういうふうにおっしゃる声を多々拝聴させていただいております。

 太陽光発電というのは、住宅用もあれば大規模なものもあるわけでございます。それから、日本の生産量も非常に将来大きくなることを予定しておりまして、太陽光発電社会の建設というのはやはり日本にとって重要なことだと思っております。御指摘の点も踏まえまして、しっかりと勉強をしてまいりたいと考えております。

川内委員 御指摘の点を踏まえて復活させると言ってくれるとありがたいんですけれども、御指摘の点を踏まえてしっかり勉強すると。勉強だけされてもしようがないんですけれどもね。まあ、また続けて議論をいろいろさせていただければというふうに思います。

 では、最後にもう一点だけ聞かせていただきますが、環境税について伺わせていただきます。

 環境省がモデルとして考えている環境税は炭素税で、一トン当たり二千四百円というのが教えていただいた数字でございます。その場合、ガソリンに対する課税分は一リットル当たり幾らになるんでしょうか。

西尾政府参考人 環境省が提案してきております環境税、これはまだ案でございまして、これからいろいろ検討していくということでございますが、直近の案でございますと、CO2を排出するエネルギーに着目いたしまして、炭素トン当たり二千四百円ということでございます。これをガソリンに単純に当てはめますと、一リットル当たり約一・五円程度というスケールになろうかというふうに思っております。

川内委員 ガソリン税について、暫定税率分を環境税にすればよいというような議論もあるわけでございますけれども、それは、今御答弁をいただいたリッター当たり一・五円ということでございますから、ガソリンの暫定税率二十五・一円の六%でございます。暫定税率は、今期限が切れて失効しております。この暫定税率を廃止した上で、今後の税制改革時に環境税を導入してリッター当たり一・五円をガソリンにかけるというのが私は一つの案ではないかというふうに思います。

 高速道路を十年、五十九兆円で整備し続けてCO2を削減するとか、環境税と名前を変えて暫定税率を維持するとか、最近はもう何か本当に乱暴な議論が横行していて、一体どうしちゃったんだろう、もうちょっと精密な議論をしていくべきではないかと。何か、環境という言葉を利用して道路の整備財源を守ろうというような魂胆が見え隠れをしている議論だなということは明らかだというふうに思います。

 そこで、今現在議論されているような、暫定税率分を環境税に変えるのだというような議論は、今まで環境省さんが御主張なされてきた環境税案とは全く違うものだ、別物だということをちょっと確認させていただきたいんでございますけれども。

西尾政府参考人 今まで環境省が地球温暖化対策上の税ということで考えておりました議論は、このように整理させていただきたいと思うんです。

 一つは、ガソリン等の燃料課税は地球温暖化対策上も一定の役割を担っているということでございまして、この暫定税率の税率水準を下げることは望ましくないというのが一つの考えでございます。

 その上でさらに、地球温暖化対策を加速するということで環境税の提案もさせていただいておるわけでございまして、この環境税の方は、石炭や重油などを含め広く化石燃料に対して課税をしていこうということでございます。ただ、税額でありますとかつくり方につきましては、まずは導入ということでございましたので、さまざまな特例や比較的低い税率ということで提案させていただいております。

 いずれにいたしましても、これら環境税の問題につきましては、地球温暖化対策上効果のあるよう、今後総合的に検討していくべきものだというふうに思っております。

川内委員 ところで、西尾局長の顔を見ていたらちょっと思い出したことがあるので聞かせていただきますが、西尾局長は、現行の土壌汚染対策法の制定のとき、担当局長であられたということでございます。この土壌汚染対策法の附則三条、適用除外について、東京都と環境省が連絡をとり合って協議をされたということは今までの本委員会の議論や他の委員会での議論でお聞かせをいただいているんですけれども、西尾さんも東京都のしかるべき方などと土壌汚染対策法のことについて連絡をとり合われたことはありますか。

西尾政府参考人 土壌汚染対策法の制定に当たりましては、大変いろいろな議論があって難航いたしましたので、恐らく、いろいろな例外措置でありますとか附則でありますとかというところを最後の方でいろいろ調節したと思いますが、ちょっと今の段階で、具体的にどなたとどのような調節をしたかについては詳細には覚えておりません。

川内委員 終わります。ありがとうございました。

小島委員長 次に、田名部匡代君。

田名部委員 民主党の田名部匡代でございます。

 大臣も長時間お疲れさまでございます。今は川内委員から質問があったわけでありますが、鋭い質問の後で大変私もやりにくいわけでありますけれども、私も委員長からうなずいていただけるような部分が出てくるような質問をさせていただきたいというふうに思います。

 今の川内委員とのやりとりを聞いていても、もう少し環境省さんに気概を持ってリーダーシップをとっていただきたいなというような感想を持ちました。環境に優しい道路だとか環境にいい建物だとか、環境という二文字がつくと何かやわらかくなってしまうことがたくさんあって、でも、本当にそうなのかということは本来やはりしっかりとチェックをしていかなければならないし、それを隠れみのにして本当は環境によくないものを進めていってはいけない。当たり前のことですけれども、そんなふうに思うわけであります。

 また、温暖化対策に対しては、私の地元は青森県、北国でありますけれども、ふだんは冬でも雪はそんなに多くないんですが、私が子供のころはもっと雪が降って、大きな雪だるまをつくったり、かまくらをつくったり、滑り台をつくったりできた。それが最近、本当に雪が減ったなというふうに感じます。お正月なんかに地域を回っていても、雪が降らなくていいねという会話の裏側で、でもこれはやはり温暖化の影響なのではないだろうかという不安を感じたりもするわけなんです。

 いろいろな研究者の方々から、温暖化に対しての影響、現象というものが報告をされていると思います。ただ、温暖化というのは少しずつ長時間をかけて進んでいくものでもありますし、なかなか目に見えて実感として持てるものではありませんので、そういう意味では取り組みも厄介なところがあるのかなというふうに思うんです。

 まず最初に、温暖化の影響と思われる現象が我が国においても何か報告されているのかどうか、重立ったものがあれば教えていただけますでしょうか。

南川政府参考人 温暖化の影響でございますが、IPCCにおきましても、水資源から始まりまして、自然生態系、農業、健康とさまざまな指摘があるわけでございます。

 我が国におきましての現象でございますけれども、どれが温暖化の影響か、なかなか特定は難しゅうございます。ただ、いろいろ御指摘ございますのが、例えば自然生態系の関係ですと、冷水魚、サケとかスケトウダラですけれども、そういった魚の分布域が縮小している。また、北海道を中心に高山帯の植物が減少しているという報告がございます。

 それから、農業への影響としましては、高温障害によりまして米粒が乳白色化して等級が下がっているとか、それからリンゴなどの果樹の着色が悪くなっている。また、冷涼な気候を好む野菜の生産性が低下している。それから、米や野菜に病害虫の被害が増大している。

 そういった報告があるところでございます。

田名部委員 今御説明があったように、本当にこれが温暖化の影響かどうか見きわめるのは非常に難しいことだと思うんですけれども、今おっしゃったような内容で、やはり我が国にとって非常に重要な農産物であるとか、環境委員会でも生態系、野生生物等の問題に取り組んでおりますが、そういったものの生態系が崩れていく、また生息地が壊れていく、非常に重要なことにかかわっているわけなんですけれども、これからどんどん温暖化が進んでいったときに、さらにこの問題が悪化していく可能性は十分にあるわけなんですね。

 地元の話ばかりして申しわけないんですが、私の地元はやはり農業が盛んでありますし、リンゴ農家も非常に多いところでございますので、こういうものが一度だめになってしまったら、取り返すのには相当時間がかかる、もしくは、一度壊れてしまったらだめになってしまうかもしれない。人々の生活もかかっているわけなんです。

 こういったことにしっかりと予算をつけて調査研究をして取り組んでいただきたいと思いますし、細やかな情報提供をしっかりとしていただきたいと思うんですが、その取り組みは今後どのように行っていくんでしょうか。

南川政府参考人 まず、我が国におきます影響につきましては、昨年三月でございますけれども、地球温暖化の影響につきまして資料集として取りまとめました。これにつきましては、ホームページに掲載をいたしまして、具体的に、農作物影響、それから生態系影響についてもその中で全部報告をしておるところでございます。

 また、将来的にもこの深刻化が懸念されておるところでございまして、日本に対する地球温暖化、気候変化の長期的な影響、二〇二〇年から三〇年ごろまでを見据えまして、その影響につきまして、国民生活にとって何が起きて何が重要かということの整理を徹底して行いたいということで、私ども、専門家の知見も得ながらその収集と分析に努めているところでございます。もちろん、これにつきましては、速やかに公表ということも行ってまいりたいと考えております。

田名部委員 冒頭も申し上げましたけれども、環境省さんが担っている今の役割というのは非常に大きくて、温暖化ということだけではなくて、日本の農業であるとか食料問題であるとかすべての分野にかかわっているわけですので、ぜひともしっかりとした調査と情報の公開をお願いしたいというふうに思います。

 そういったことを考えたときに、やはり一人一人が意識を持って地球温暖化、環境問題ということに取り組んでいかなければならないというふうに思うんですけれども、環境省さんも、パンフレットを配布したり、いろいろな教育、また啓発活動も行っていると思うんですけれども、それが国民の自主的な取り組みとして本当に十分な形になっているのかなと検証したときに、必ずしもそれは十分であるとは言えないというふうに思うんです。

 そういった教育だとか啓発を行ってきて一体どのぐらいの効果が出ているのか、そういったことは検証されていますでしょうか。

南川政府参考人 さまざまな普及活動をやっています。これにつきましては、例えばクールビズのようなことですと、具体的に事業所に調べを出しましてどの程度やっていただいているか調べておりますけれども、それ以外の、例えば今御指摘の温暖化による影響とかあるいはその対策について、多くの方々に普及啓発はしておりますけれども、それがどの程度行き渡っているかについての調査は特段いたしておりません。

田名部委員 非常に大事なことでありまして、投げっぱなしではなく、せっかく活動されているわけで、取り組みをされているわけですから、そういったことに国民がどのぐらい意識を持って取り組んでいるのか、その実態はどうなっているのか、やはり多少調査をして、さらに強化をしていくべきなのか、今までの取り組みではだめであれば、では一体どうやって国民の意識を高めていくのか、新たな検証もしていかなければならないと思うんですね。

 ですから、ぜひそこはしっかりと調査をしていただきたいというふうに思いますし、先ほども情報公開のことを言いましたが、一人一人の取り組みがどういう効果をもたらしているのかということが、我々民主党で言っている二酸化炭素の見える化ということにもかかわってくると思うんですが、非常に大事だと思うんです。変な例えですけれども、ダイエットも同じでありまして、まあ、私は成功しておりませんけれども、やはり努力の成果が数字として見える、こういう努力をすればこういう効果が必ず出てくるということがまたやる気にもつながるわけであります。

 ぜひともそういうことも国民の皆さんにしっかりとお伝えをしていただきたいと思いますが、調査とその情報公開、いかがでしょうか。

南川政府参考人 私ども、できるだけきちんとした調査をしてその成果を上げていきたいと思います。

 例えば、今回法案の中で提案しておりますが、推進員制度を、従来県だけが指定しておりましたけれども、今度は特例市まで、人口二十万人以上の都市まで推進員を指名して日常生活におけるさまざまな普及啓発活動をしていくというふうにさせていただきたいと思っております。

 そういう中で、そういう推進員に任命された方が、単に自発的じゃなくて、具体的に自治体なりあるいは学校を回るというようなプログラムもつくりまして、具体的に何人の方にお話ししたかとか、何人の子供に話をしたか、どういう話をしたか、どういう反応があったかということも含めて、ぜひきちんとわかるようにしていきたいというふうに思うところでございます。

田名部委員 ぜひ、自主的な取り組みに期待をするだけではなくて、今おっしゃったような取り組みをしっかりしていただきたいというふうに思います。意識を高めること、そして新エネルギーを促進していくこと、さらには環境税の問題に私もちょっと触れていきたいと思うんですけれども、そういったことを含めて、やはり環境省さんのこれからの取り組みに私は大いに期待をしているところであります。

 この環境税の話、きょうは私、大臣に環境税についてどのようにお考えですかという質問をする予定だったんですが、もう何度もこのことは大臣は御答弁をされているということでありましたので、私も、過去の御答弁を拝見いたしまして、環境省さんの環境税についてのお考えは十分理解をしたつもりでありますが、きょうの午前中も、参考人質疑の中で与党議員の中から、ガソリン税の暫定税率廃止、四月一日、エープリルフールだからそんなおかしなことを言っているのかという御意見が海外からあったということでありました。まあ、本気でおっしゃったのか、どこかにお気を使われておっしゃったのかはわかりませんけれども、このことは、私は全く後づけの話だというふうに思っております。

 さっきも川内先生がいろいろおっしゃっておられましたけれども、環境省さんとしては、最初にこの環境税のことを提案したのは平成十六年でしょうか、ただ、それ以前からも税制調査会の中でも環境税についての意見というものは出ていたはずであります。そして、何度も何度も検討すると言って年数を重ねてきて、ことしサミットが開かれるというときになっても、昨年、自民党、公明党さんの与党の調査会の中においてすら、いまだにまだ検討するという話なんです。

 これは、ガソリン税の暫定税率を廃止することが信じられないというよりも、何年も検討してきても結果が一向に出てこないことの方が私は大きな問題だというふうに思っておりますし、いまだに検討し続けているというのであれば、一体どこに問題が残っていて、どういう点が検討されているのか、教えてください。

西尾政府参考人 今先生御指摘のように、自民党の税制調査会でも環境税の検討ということは随分前からうたわれております。それから、具体的に環境税の創設ということで環境省からも要望をさせていただきまして、四年たっております。

 その間、環境税につきまして、これをみんなで支持していただくというところまで説得できていないということにつきましては、まことに御指摘のとおりで、力不足につきまして恐縮に存ずる次第でございますけれども、環境省といたしましては、地球温暖化対策上、広くCO2の排出に対して税を課することによりまして、いろいろな主体、事業者から家庭のような幅広い主体に対しまして排出抑制のインセンティブを与えるということは、大変大切なことであるというふうに思っております。

 これにつきましては、問題点ということで、やはり地球温暖化対策全体の中での具体的な位置づけとしてその効果が十分なのか、国民経済や産業の国際競争力に与える影響はどうなのか、あるいは諸外国における取り組みの現状などを踏まえてそれでいいのかといったような点につきまして、さまざまな議論がありました。私どもとしては、これを進めていくということが適切ではないかということで主張しておるわけでございますけれども、そこにはさまざまな議論がありまして、さらに一層総合的な検討を進めていかなきゃならないという現状にございます。

田名部委員 それではだめですよ。それではだめなんです。

 さまざまな議論が出て、何年もかかっているんです。それで結論を出せずに、今、ガソリン税の暫定税率の話になったら、途端に、何かいいところ、ここに乗っかっちゃえみたいな状況で、環境対策に暫定税率だみたいな話に環境省さんが一緒に乗っちゃだめなんですよ。

 さっき御答弁で、暫定税率も一定の役割を果たしている。例えば、二酸化炭素の排出抑制に関して一定の役割を果たしているかもしれません。しかし、先ほどの御答弁では、それとは別に環境税も導入しなければならないというふうにおっしゃいました。つまり、暫定税率も環境対策に充てて、さらに環境税も導入するというようなお考えなんでしょうか。

西尾政府参考人 環境省としての考え方は、今御指摘いただきましたように、一つは、暫定税率につきましては、広い意味の地球温暖化対策に関係する環境関係の税でもあるということでございますので、その税率を引き下げるということは、地球温暖化対策上望ましくないと思っております。

 もう一点は、それを前提といたしました上でも、なお地球温暖化対策を加速していくという見地からは環境税の導入が必要である、それが環境省の考え方でございますけれども、その考え方につきまして、これを実現しようというところまでいろいろな各方面の説得ということができていないというのが今の現状でございます。

田名部委員 例えば、地球温暖化対策推進大綱などでは、「環境問題に対する税制面での対応については、国民に広く負担を求めることになる問題だけに、国民の理解と協力を得て、今後、積極的に検討」、ここも検討でありますけれども、「検討を進めていくことが望ましい。」これは、税負担の公平性ですとか、今徴収をしている税の中にも環境にかかわる税負担を課しているところもありますし、例えば車に乗っている、ガソリンを使っている自動車ユーザーからだけ今の暫定税率を取ってそれを環境対策に充てるみたいな話ですけれども、それも必要だ、これも必要だ。そうしたら、新たに環境税をきちんとつくったときにはこの暫定税率が必要ないのか、それとも暫定税率を維持したまま環境税もつくるのか、そういったことがきっちりしているのか。

 それに加えて言えば、暫定税率、今までは、道路をつくるために必要なんだ、十年間、五十九兆円で道路が必要なんだということを主張されてきたわけですよね。さっきの環境省さんで出しているもの、環境税をつくった場合、ガソリンの負担としてリッター約一・五円ということが書かれているんですが、であれば、今、暫定税率の中からどのぐらい環境に予算としてしっかり使うのか、そういうことが明確になっているんでしょうか。それこそ国民の理解が得られているんでしょうか。今まで言ってきたことの理屈、その整合性がとれているんでしょうか。これは大臣にお答えいただきたいと思います。

鴨下国務大臣 今局長から答弁しましたけれども、環境省としては、これはもうかねてから申し上げているように、環境税をしっかりとした形で要求しているところでございますし、政府内でも議論をしてまいりましたけれども、いわば環境と経済というバランスの上でまだ国民的合意ができ上がらないというようなことであります。ただ、私も、昨年の与党の税調の中でいろいろな御議論をいただいたときも、我々としては、炭素に価格をつけるというようなことについては旗を降ろさずにしっかりと議論をそのまま継続しよう、こういうような話を申し上げてきました。

 今先生御指摘のような道路特定財源に係る環境の配慮というようなことについては、環境省が積極的に環境税にどうしろというようなことは今までも申し上げてきておりませんし、現在のところでも、この問題について、即これが我々が申し上げてきた環境税に代替するものだというような考えはございません。

 ただ、先ほどからの話で、化石燃料に対しての課税というようなことにおいては、これは、あらゆる部分の化石燃料に対する課税は地球温暖化対策に資するものだ、こういうふうに考えてはおります。ただ、これの使途について、環境省が、やれ道路をつくれ、やれ自然エネルギーに配分しろ、こういうようなことは今の段階で私たちから申し上げるわけにはいきませんけれども、ぜひそういうような議論が前に進むように我々は傍らから見守っている、こういうようなことでございます。

田名部委員 大臣、傍らからではなくて、ぜひ一番前に立ってリーダーシップをとっていただきたいというふうに思います。

 やはり環境教育をしていくのも環境省さんの役目であるし、地球環境を守っていくのも環境省さんの役目であるし、これはある意味日本国民の生命を背負っているのが環境省さんだと思うので、ぜひともそういう思いを持って、この環境税の導入、今までたくさんの議論があってまとまらないものをしっかりと大臣の力でまとめ上げていただきたいというふうに思うんですが、大臣、いつまでにまとめていただけますでしょうか。

鴨下国務大臣 環境税につきましては、環境省としましても、それから大臣という私の立場におきましても、国会の御議論の中で環境税というようなものが実現して、究極の目的の一つであります地球温暖化が防止できるような形で炭素に価格がつく、こういうことがぜひ前に進みますように、我々も最善の努力をしたいというふうに思います。

田名部委員 ありがとうございます。ぜひ御期待を申し上げたいと思います。

 暫定税率の話ばかりやっていると時間がなくなりますのでちょっと先に進みたいと思いますが、自然エネルギーについての御質問をさせていただきます。

 きょう、午前中の参考人の中にもさまざまな御意見がありましたけれども、他国と比較をしても、自然エネルギーの導入が我が国で進んでいるとは言えない、また、その目標値の設定も非常に低いんじゃないかという御意見がありました。その点に関してどう思われるのか。これは何で導入が進まないのか、制度の問題なのか、予算の問題なのか。諸外国の取り組みが一体どうなっているのかということも調査をしていろいろと比較をされていると思いますので、伸びない理由、今後それに対してどういう取り組みをしていくのか、また、新たな目標値を設定するのか等についてお答えをいただけますでしょうか。

南川政府参考人 まず、現状でポイントだけ申し上げますけれども、例えば我が国では、自然エネルギーで申しますと、太陽光発電が二〇〇六年段階で百七十万キロワット、風力発電が百四十万キロワットでございます。外国で申しますと、太陽光発電、ドイツには一昨年から抜かれておりまして、ドイツは既に二百八十六万キロワット、それから風力につきましては、ちょっと一年データが古いんですけれども、千八百万キロワットということで、これはけた違いでございます。それからアメリカでございますけれども、アメリカは、太陽光発電につきましては六十二万キロワット、そして風力につきましては約一千万キロワットということでございます。

 目標でございますけれども、まず我が国は、二〇一〇年度までに、太陽光発電で四百八十二万キロワット、風力発電で三百万キロワットということでございます。アメリカは、二〇二〇年ということでございますけれども、風力発電につきまして約一億キロワットにしたい、太陽光発電については当面三百万キロワットを超えるようにしたいという目標を持っております。また、欧州でございますけれども、欧州全体といたしまして、二〇一〇年までに、太陽光発電について三百万キロワット、風力発電について七千五百万キロワットということで、日本を相当上回る数字の目標を掲げております。

 これにつきましては、特に日本の場合、最近、余り自然エネルギー関係の導入が進んでおりません。幾つか理由があると思いますけれども、私どもとしましては、技術開発、設備整備に対します支援、それから税制改正、そういったことでかなり力を入れないとなかなか伸びていかないというふうに考えているところでございます。

 具体的には、別にエネ庁任せじゃございませんで、環境省としてもやるべきことはやっていきたいと考えております。その一環としまして、例えば車につきましては、バイオエタノールの普及のための実証事業を行っておりますし、また風力発電につきましても、ことしは国立環境研究所が洋上の発電のフィージビリティースタディーを行うといったことで、環境の観点から必要なことについてみずから実証事業等を行って、エネルギー庁に対しても物を言っていく、必要な働きかけをしていくということで対応したいと思っております。

田名部委員 今の御説明のとおり、諸外国と比べても日本の導入は進んでおりませんし、先ほども申し上げましたが、我が国の目標値の設定そのものがこれで十分なのか、低過ぎるんじゃないかということ。それと、この自然エネルギーに関しては、電力会社さんなんかも、ペイできるかできないかぐらいの非常に大変な状況だというお話も伺いました。幾ら低い目標とはいえ、目標を掲げているだけでは、本当にこの京都議定書の目標を達成できるかどうかということにもかかわってくると思うんですね。それをきちんと履行する、担保してしっかりと確実に実行していくことが大事だというふうに思うんです。

 自然エネルギー、我が青森県には風力発電も随分建っているんですけれども、この風力発電だけではなくて、環境面でいえば、私は原子力政策もその一つだというふうに思っております。エネルギー政策の観点からだけではなくて温暖化対策という点からも、原子力政策にしっかりと取り組んでいかなければならないと思うんです。

 このことを環境省さんに聞くのはちょっとまた違うかもしれませんけれども、例えば最終処分場も決まっていないような現状が一つあるわけなんですね。私は、このエネルギーの問題、また安全保障の観点からも、国策としてしっかりと省庁が連携をして取り組んでいくべきことだというふうに思っております。

 それで、きょう、これは環境省ではないというふうにきのう担当の方から言われておりましたけれども、私は、この原子力政策の今後の取り組みについて環境という観点から大臣がどんなふうにお考えでいらっしゃるのかをお伺いしたいというふうに思いまして、これはもちろん他の省庁もかかわっていることでありますけれども、ぜひ環境大臣としてもしっかりとその中に入ってこのことを進めていただきたい、もちろん安全はしっかりと確保した上でのことでありますが。

 そのことの御意見をいただきたいんですが、よろしいでしょうか。

鴨下国務大臣 ことしは京都議定書の第一約束期間に入ります。そして、多分日本は、二〇一三年からの中期目標、あるいは二〇五〇年に世界全体で半減ということでいうと、ある意味で画期的なCO2削減をしないとなかなかこれは達成できない、こういうようなことでございます。

 そういう中で、今、足元の技術として、CO2を排出しないエネルギーという意味においては、原子力はまことに有力なエネルギー源だろうというふうに思っております。ですから、そういう意味で、今先生おっしゃったように万全の安全を確保した上での話でありますが、私は、原子力政策というのはより促進していくことが必要なんだろうと思います。

 加えまして、今、日本の技術は、安全対策という意味においては世界の中でもトップランクであるというようなことがありまして、原子力発電の技術について、日本の技術を必要とするような世界のニーズが今出てきているところでございますので、私は、そういう意味も含めて、これから原子力エネルギー、原子力発電というようなものは、地球温暖化という観点、そして日本の今後の一つの産業としての位置づけというようなことも含めて、しっかりと取り組むことが必要だろうというふうに思います。

田名部委員 ありがとうございました。

 安全性をしっかりと確保して取り組んでいくということでありまして、もちろん、原子力を維持しながら、一方では先ほど申し上げた自然エネルギーもしっかりと促進をしていかなければいけない。食料の面でいっても、我が国の自給率はもう四割を切ってしまった。エネルギーの面で見ても、エネルギーを持たない少資源国でもありまして、ない中でも、できるだけ自然を生かしながら持続可能なエネルギーをつくり出して、また環境もしっかりと守っていくという、その両面から環境大臣としても取り組んでいただきたいなというふうに思います。

 ちょっと風力のことに戻るんですけれども、風力発電を設置する場合に、我々先日も申し上げましたが、私も、田島一成委員を先頭に生物多様性の問題に取り組んできた、仲間に入れていただいた一人でありまして、この風力発電を設置するときに、希少野生生物なんかの実態もしっかりと調査をして、どういうところに設置をしていくべきなのかということも大事な観点だというふうに思うんです。

 今、鳥類の、渡り鳥のことに関しては、環境省さんの方で昨年から調査をしていらっしゃるという御報告を受けました。これも非常にいいことだというふうに思うんですが、渡り鳥だけではなくて、例えば、設置をするときに周辺の整備をしたり、もしかしたら道路も通さなければならないとか、資材を運ぶときに環境を少し壊してしまう可能性もあると思うんです。そういったときに、希少野生生物、動物といったものの生息、その環境というものもあわせて調査をして設置場所を選定しているのか、その権限はどこが持っていらっしゃるのか、また、何らかのガイドラインみたいなものがあれば教えていただきたいんですが。

櫻井政府参考人 地球温暖化対策の観点からの再生可能エネルギーの導入促進ということと、一方、すぐれた自然景観あるいは希少野生動植物の保全ということは、その両立を図っていくことが重要であろうというふうに考えております。

 従来、環境省では、このような観点から、風力発電などの施設の設置につきまして、国立公園など国レベルで保護を図る必要があります地域では、保護のために設けました審査基準に基づいて、個別にその適否の判断をしているということでございます。

 また、御指摘のありました風力発電施設の設置に伴ういわゆるバードストライク問題、渡り鳥などが風力発電施設に衝突するというような事故も出ておりますが、こういった問題については、昨年度から、風力発電施設に係る適正整備推進事業ということで、渡り鳥の渡り経路の把握ですとかバードストライク防止等の実証を行うこととしておりまして、こういったことによって風力発電の整備推進に寄与できるものと考えているところでございます。

 なお、全体的に、身近な生物の保全ですとか景観の保全というようなことをどういった形で風力施設の設置に当たって議論していくかということになりますと、やはり地域の十分な環境調査などの結果に基づいて判断をしていくということが妥当であろうかと思っておるところでございまして、そういった意味では、地域での合意形成の一つの手法として、例えば都道府県条例に基づきますアセスメントを行っている場合ですとか、あるいは都道府県においてそういった保全すべき地域というのを明らかにするというような取り組みがなされておるところでございます。

田名部委員 地域が独自で取り組んでいくことも非常に大事だと思うんですけれども、ぜひとも地域が取り組みやすいように何らかの一定のガイドラインをつくって、地域住民から反対運動が起きると進めたいと思ってもなかなか進んでいかないのかもしれないというふうに懸念いたしますので、何かそういう一定のライン、基準があれば地域もより取り組みやすいんじゃないかなというふうに思います。ぜひ御検討をいただきたいと思います。

 質疑の時間が終了をいたしてしまいました。ぜひまた次の機会に御質問させていただきます。

 ありがとうございました。

小島委員長 次回は、来る二十五日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時二十七分散会


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