衆議院

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第5号 平成13年2月14日(水曜日)

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平成十三年二月十四日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 野呂田芳成君

   理事 北村 直人君 理事 久間 章生君

   理事 小林 興起君 理事 自見庄三郎君

   理事 細田 博之君 理事 池田 元久君

   理事 佐藤 観樹君 理事 原口 一博君

   理事 谷口 隆義君

      池田 行彦君    石川 要三君

      岩永 峯一君    大原 一三君

      岡下 信子君    奥野 誠亮君

      亀井 善之君    栗原 博久君

      後藤田正純君    左藤  章君

      佐藤 静雄君    塩川正十郎君

      七条  明君    田中眞紀子君

      高鳥  修君    津島 雄二君

      中山 正暉君    丹羽 雄哉君

      葉梨 信行君    萩野 浩基君

      牧野 隆守君    八代 英太君

      吉野 正芳君    五十嵐文彦君

      井上 和雄君    岩國 哲人君

      生方 幸夫君    海江田万里君

      金子善次郎君    小泉 俊明君

      城島 正光君    中田  宏君

      平岡 秀夫君    松野 頼久君

      斉藤 鉄夫君    白保 台一君

      若松 謙維君    佐藤 公治君

      鈴木 淑夫君    達増 拓也君

      中井  洽君    赤嶺 政賢君

      佐々木憲昭君    山口 富男君

      阿部 知子君    辻元 清美君

      横光 克彦君    井上 喜一君

      松浪健四郎君    森田 健作君

    …………………………………

   総務大臣         片山虎之助君

   法務大臣         高村 正彦君

   外務大臣         河野 洋平君

   財務大臣         宮澤 喜一君

   文部科学大臣       町村 信孝君

   厚生労働大臣       坂口  力君

   農林水産大臣       谷津 義男君

   経済産業大臣       平沼 赳夫君

   国土交通大臣       扇  千景君

   環境大臣         川口 順子君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     福田 康夫君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      斉藤斗志二君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当大

   臣)           橋本龍太郎君

   国務大臣

   (金融担当大臣)     柳澤 伯夫君

   国務大臣

   (経済財政政策担当大臣) 麻生 太郎君

   国務大臣

   (科学技術政策担当大臣) 笹川  堯君

   国務大臣

   (防災担当大臣)     伊吹 文明君

   内閣府副大臣       坂井 隆憲君

   内閣府副大臣       仲村 正治君

   内閣府副大臣       村井  仁君

   防衛庁副長官       石破  茂君

   総務副大臣        遠藤 和良君

   法務副大臣        長勢 甚遠君

   外務副大臣        衛藤征士郎君

   財務副大臣        村上誠一郎君

   文部科学副大臣      大野 功統君

   文部科学副大臣      河村 建夫君

   厚生労働副大臣      増田 敏男君

   厚生労働副大臣      桝屋 敬悟君

   農林水産副大臣      松岡 利勝君

   経済産業副大臣      松田 岩夫君

   国土交通副大臣      高橋 一郎君

   国土交通副大臣      泉  信也君

   環境大臣政務官      熊谷 市雄君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  柴田 雅人君

   政府参考人

   (防衛施設庁長官)    伊藤 康成君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  中尾  巧君

   政府参考人

   (外務大臣官房長事務代理

   )            飯村  豊君

   政府参考人

   (外務大臣官房文化交流部

   長)           横田  淳君

   政府参考人

   (外務大臣官房領事移住部

   長)           小野 正昭君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    藤崎 一郎君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    原口 恒和君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学

   術政策局長)       大熊 健司君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  伊藤 雅治君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬局長)  宮島  彰君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    中村 利雄君

   政府参考人

   (国土交通省航空局長)  深谷 憲一君

   参考人

   (日本銀行総裁)     速水  優君

   予算委員会専門員     大西  勉君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月十四日

 辞任         補欠選任

  亀井 善之君     吉野 正芳君

  塩川正十郎君     岡下 信子君

  七条  明君     後藤田正純君

  三塚  博君     佐藤 静雄君

  宮本 一三君     左藤  章君

  城島 正光君     井上 和雄君

  平岡 秀夫君     小泉 俊明君

  若松 謙維君     斉藤 鉄夫君

  鈴木 淑夫君     佐藤 公治君

  山口 富男君     赤嶺 政賢君

  辻元 清美君     阿部 知子君

  井上 喜一君     松浪健四郎君

同日

 辞任         補欠選任

  岡下 信子君     塩川正十郎君

  後藤田正純君     谷川 和穗君

  左藤  章君     岩永 峯一君

  佐藤 静雄君     三塚  博君

  吉野 正芳君     亀井 善之君

  井上 和雄君     城島 正光君

  小泉 俊明君     平岡 秀夫君

  斉藤 鉄夫君     若松 謙維君

  佐藤 公治君     鈴木 淑夫君

  赤嶺 政賢君     山口 富男君

  阿部 知子君     辻元 清美君

  松浪健四郎君     井上 喜一君

同日

 辞任         補欠選任

  岩永 峯一君     宮本 一三君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成十三年度一般会計予算

 平成十三年度特別会計予算

 平成十三年度政府関係機関予算




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     ――――◇―――――

野呂田委員長 これより会議を開きます。

 平成十三年度一般会計予算、平成十三年度特別会計予算、平成十三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官柴田雅人君、防衛施設庁長官伊藤康成君、法務省入国管理局長中尾巧君、外務大臣官房長事務代理飯村豊君、外務大臣官房文化交流部長横田淳君、外務大臣官房領事移住部長小野正昭君、外務省北米局長藤崎一郎君、財務省理財局長原口恒和君、文部科学省科学技術・学術政策局長大熊健司君、厚生労働省医政局長伊藤雅治君、厚生労働省医薬局長宮島彰君、中小企業庁長官中村利雄君、国土交通省航空局長深谷憲一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

野呂田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

野呂田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小林興起君。

小林(興)委員 自民党の小林興起でございます。予算委員会でこうして質問をする機会をいただきまして、光栄に存じます。

 まず最初に実習船えひめ丸の問題から行きたいと思いますが、最初に、事故に遭われた方々に心からお見舞い申し上げ、そして今なお行方不明の方々に無事でいていただくことを心からお祈り申し上げます。

 さて、この問題、いろいろと報道をされておりますが、最も大事な人命救助、こういう観点におきまして、私は日本政府としてはできるだけのことをやってきているというような感じがするわけでございますが、危機管理ということの総括として、きょうは伊吹大臣もお見えでございます、総理はこの会に今いらっしゃらないわけでございますが、総理の分を含めて大臣から、これまでできるだけのことをしてきた、また今しているということを、ぜひもう一度総括していただきたいと思います。

伊吹国務大臣 昨日来本委員会でお答え申し上げているような経緯でございまして、十時四十分に内閣情報集約センターからこの事故の連絡が私のところにございました。

 それで、危機管理の対象とすべきことか事故かというようなお話もあるようでございますけれども、ともかく、国民の命が危険にさらされているときには、それに対する対処をまず第一に考えるということが、理屈を述べるよりも大切なことだと私は思いまして、その時点で、私の独断でございましたけれども、米国の原子力潜水艦が関与している事件でございましたので、防衛庁にもお願いをするということをつけ加えて、外交ルートで生命の安全を第一に図るように至急申し入れるということを外務省及び防衛庁に頼むようにという指示を担当者にいたしました。

 総理からそれに引き続いて折り返し御指示がございまして、情報を引き続き自分のところに入れるように、そして生命の安全を第一に関係方面に連絡をとるようにという御指示がございましたので、そのようなことをさらに念を押したということでございます。

 その後、内閣に情報連絡室を設置して、各種情報をとりながら、愛媛県の知事さんのお話等も伺い、そしてまた、今なお行方不明になっておられる御家族の方々のお気持ち等を伺いながら、船の引き揚げ、現在位置の確認等を精力的に行っているというのが経緯と現状でございます。

小林(興)委員 この問題は危機管理から外交問題、外務省が陣頭指揮をとるべき問題に移ってきたと私は思うわけでございますが、そういう中にありまして、外務省はいち早く桜田政務官を現地に派遣し、外務省としては一生懸命やっているという姿が映るわけでございますが、いろいろな問題もございます。この辺で名誉挽回ということで、外務省としてこんなに頑張っているということを一言言ってみてください。

小野政府参考人 海外におきます邦人の保護及びその方々の支援につきましては、外務省にとって極めて重要であると認識しております。

 事故発生以来、現地及び本省におきまして二十四時間体制で行方不明者の捜索、情報収集並びに救出された方々の手当て、それからまたさらには、現地に行かれる御家族の支援のため、全力で取り組んできております。

 例えば、本省に事務次官を長とします対策本部を設置するとともに、在ホノルル総領事館にも総領事を長とする対策本部を設置いたしました。

 また、先生御指摘のとおり、事故発生の当日、桜田大臣政務官を初め、領事移住部審議官、北米第一課長等を現地に派遣いたしまして、同政務官は現場で現在に至るまで陣頭指揮をとってきておる次第でございます。

 さらに、在米各公館から応援のため領事等八名を現地に派遣いたしまして、御家族一行の支援に当たらせているわけでございます。この間、官邸連絡室を初めといたしまして、文部科学省、防衛庁、海上保安庁、愛媛県関係者等との緊密な情報交換をとってきております。

 また、ホノルルに向かう家族、関係者を支援するため、本省から医務官並びに課長補佐を同行せしめまして、さらに松本大阪担当大使による御家族の見送りを行わせしめました。

 また、救助された生徒九名の帰国に際しましては、外務省より望月大臣政務官、文部科学省より池坊大臣政務官、さらに松本大使が関西空港で出迎えております。

 外務省といたしましては、引き続き、現地に残っておられる御家族に対し、支援の遺漏なきを期すとともに、米側に対し、捜索救助活動への努力をさらに継続、強化してほしい旨、伝達していきたいと考えております。

 かかる外務省の努力に対してさらに国民の理解を得られるよう、一層の努力を行っていきたいと考えております。

小林(興)委員 最後まで、特に行方不明の方がいらっしゃるわけですから、その捜索に向けてアメリカのメンツにかけてしっかり頑張れということを米政府に伝えてもらいたいと思いますし、また、経済大国アメリカであります、どんなことをしても、五百メートルか六百メートルか知りませんけれども、海底にある船を必ず引き揚げるということをアメリカの総力を結集してやってくれとしっかりと外交ルートで申し入れをしてもらいたいと思います。

 ブッシュ大統領から森総理に申しわけなかったという謝罪の電話も既にあったと聞いておりまして、一応政府としてはきちっとした対応をしてきたと私は思っております。ただ、お話がありましたとおり、今は、しっかりとした対応をしろという指示をすると同時に、国民に向けて、今こんなことをしていますというPRをしなければいけない時代でございますから、一生懸命指示の方に集中する余り、森総理がややそちらの方について注意がいかなかったという嫌いはなかったとは言えない。

 こう思う中に、官房長官、これからもひとつ国民に向けてのPR活動を一層強化してもらいたいと思いますし、また、いろいろと機密費の問題も言われておりますけれども、大国日本ですから、すぐ総理が動けるようなきちっとした、飛行機の方は専用機をつくったようですけれども、国内はもうヘリコプターの時代だと思います。いいヘリコプターを一台すぐ買うか、ずっと一年間チャーターするかして、すぐに総理を官邸に戻すような、そういう工夫をぜひ官房長官はしてもらいたいと思います。

福田国務大臣 今回の事故発生後、伊吹危機管理担当大臣及び河野外務大臣それぞれの立場から米国に対して申し入れを指示されまして、米国においては現在に至るまで大規模な捜索活動を継続しておる、こういうことでございます。また、外務大臣は、桜田外務政務官をすぐさま現地に派遣するというようなこともいたしておりまして、私は、今回、内閣全体としてしっかり取り組んでいる、こういうふうに思っております。

 また、委員御指摘のとおり、昨晩はブッシュ大統領から森総理に対しまして電話がございました。その中で、今回ハワイ沖で起きた悲劇事件について謝罪を申し上げたい、こういうことを申しておられましたけれども、それにつけ加えまして、我々は引き続き行方不明者の方々の捜索のために全力を尽くす考えである、米軍の最高レベルから捜索の続行の指示を出していることをお伝えしたい、このようなことでございました。アメリカの大統領がそのような指示をなされているということであれば、おっしゃるようなことに向けて努力をしてくださるということは、これは間違いないことだというふうに私は確信をいたしておるところでございます。

 引き続き、政府といたしましても頑張ってまいりたいと思います。

小林(興)委員 引き続き行方不明者の救助に向けて全力を尽くしていただくこと、そしてまた、こういう問題で日米両国の友好親善に問題が発生しないように、外交、防衛、いろいろなことでしっかりと対応していっていただきたいと思います。

 さて、外務省の機密費問題ですけれども、今回の事件、事務当局に大きな責任があると思うのですが、その最高責任者として、官房長ですか、どういうことが問題であったというふうに認識しておりますか。

飯村政府参考人 まず、外務大臣よりたびたび申し上げておりますけれども、今回のような不祥事が発生いたしまして、国民の皆様に大変に申しわけないことをしたということで、外務省として大変深く反省しております。

 特に、今回さまざまの問題点があると思いますけれども、やはり基本的には、こういった多額の公金を扱うに当たってのチェック体制の不備、ここに大きな問題があったというふうに考えております。

小林(興)委員 お金を扱うポストに同じ人を六年間も置いておくということは、行政の人事上異例なことでありまして、こういうことを含めてチェック体制が甘かったということを十分反省しなければなりませんが、それと同時に、国民に向けて外務省としてはしっかりと、外務省で働く人たちは大事な国益を背負って働いているわけですから、その人材の育成、研修、そういうことにもっと重きを置いて、事務当局として頑張ってもらいたいと私は思っております。そして、これから外務省が名誉を少し挽回するために、もっと一生懸命頑張っているという姿をきちっと見せてもらいたいと思います。

 いずれにいたしましても、首脳外交、こういう中で頻繁に首脳が行き来するということでは、政策も大事でありますけれども、実はその裏方、今度の松尾元室長のように、実は裏方が非常に大事になってくる。そういう総合的な外交のバランスを持った人材の育成について、もっとしっかりとやるという決意をひとつ申し述べてください。

飯村政府参考人 確かに、委員御指摘のように、外務省のロジ体制といいますか、ロジ体制を支える要員につきましては手薄であったということを深く反省しております。したがいまして、今後、そういったロジ要員も含めて、外交業務を支える要員を育成していくために、研修を含めまして、しっかりと取り組んでいきたい。

 その際には、今般外務省の機能改善のために民間の有識者の方々にお願いして改善委員会をつくったところでございますけれども、この場での自由な議論、御提言を踏まえて、しっかりとした体制づくりに励んでいきたいというふうに考えております。

小林(興)委員 何といっても人材の育成だと私は思っておりますし、それはまた、教育だとかそういう研修体制が重要だと思っております。先般、NHKだったと思いますけれども、リトアニア領事であった杉原千畝さんですか、このすばらしい感動的な話も出てきたわけですけれども、そういうことができるような勇気を持った外交官を、あるいは国際的な見識を持った外交官をしっかりとつくっていくためにどうしたらいいかということを、外務省の猛省、猛反省の中からぜひ頑張っていただきたいと思います。

 次に、羽田空港の国際化問題について少し取り上げていきたいと思っております。

 ちょうど大臣が見えましたけれども、久方ぶりの政治主導のヒットだと私は思うんですね、扇大臣。日本はこのところ、あるときから非常に豊かになって、国内論理ですべてを解決する。例えば、成田は国際空港、羽田は国内空港だ、こういうふうに決めて成田を動かしたんだから、これはもう変えようがないんだ。これは千葉県民とかそういう日本の国内では通用するかもしれませんけれども、その後大きく情勢は変わって、いかに日本が国際空港の面で世界で見たらおくれているか。ニューヨークだとかパリだとかロンドンだとか、国際空港の整備はもう十分に外国ではできておりまして、飛行機の発着回数も日本の何倍にもなっている。そしてまたアジアだって、御承知のとおり韓国の仁川だとか、あるいはシンガポールでも、あるいはタイでも、中国の上海でも、どんどん国際空港ができている中で、日本が物すごくおくれている。これはもう常識なんですね。

 そういう中にあって、とにかく羽田でも、使えるものは使っていこうという決断をされた扇大臣は政治家として立派な仕事をしておられると私は思うわけですけれども、今度やっと、週二便ですか、とにかく羽田を国際空港として使うということを決断されたと思うのですけれども、そのことについて一言どうぞ。

扇国務大臣 今小林先生お話しのように、私ども日本としては、世界じゅうに伍していくためにどうしなければならないか、しかも、二十一世紀が幕をあけまして、果たして世界的に日本がどのように認知されるか、しかも、日本から外国へ行ってお金を使うのが世界で三位ですけれども、日本へ来るお客様は二十四位だという、このギャップをいかにして日本は克服していくのかというのが大きな課題だと思います。

 その中では、国際空港のあり方、あるいは国際空港から主要道路あるいは交通網に十分以内に乗れる、そういう整備もしなければならない。そういう意味では、県益あるいは都益、それぞれの地域の益だけを考えないで、日本全体の益を考えるべきだというのは今委員がおっしゃったとおりでございますし、今先生から仁川というお話も出ましたけれども、今度三月の二十九日には仁川が四千メートル級の滑走路を二本持ってオープンいたします。それから考えれば、今からしても日本は世界的におくれるというような危機感の中で、やっと羽田が、夜間ではございますけれども、週二便飛ばすことができました。

 そして今度、二月の十六日、もうすぐでございます、あすでございますけれども、募集しましたら、五つの便の申し込みがございました。私、夜間に五便も申し込みがあって、お客様があるのかなと心配しましたら、この五便ともあっという間にお客様が来てくださいました。それで、あす二十三時、十分置きに、これは初日でございますのでお申し込みのあった五便とも全部あしたは飛ばしていただくということで、私もあしたは最初の一便が出ますときに羽田へ行こうと思いますけれども、それほど国民のニーズがあるということを我々政治家は心して、そして日本のあり方を考えていくべきが今の二十一世紀の幕あけの大事なことだと思って認識しております。

小林(興)委員 大臣の決断を多といたします。これが実現するまで随分と時間がかかったわけでございまして、世の中はどんどん進んでいて、今大臣がいみじくも申されましたとおり、非常に利用客がもう想像を絶するほどふえている、こういう時代の変化でございます。

 そういう中にあって、これは事務当局の仕事でありますけれども、週二便しか出ない、これは少ないんですね。一つの会社がちゃんとペイするためには、一つの航空会社ですら週三便飛ばさなければ、機材が動くわけですから話にならない。それが何社かあるわけですから、週何便も出なければ本当は利用しているというふうにならないわけであります。

 これがまだ週二便しか出ないというのは、事務当局としては、どうしてこうなのかということをちょっと説明してもらいたいのです。

深谷政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、羽田空港の有効活用につきましては、昨年の十二月に、二十三時から六時までの国際旅客チャーター便の運航を認めたいということで基本方針を発表させていただきました。

 本年二月の運航開始、十六日を予定しておりますが、運航開始をめどに、これまでCIQ関係省庁とその実施体制につきまして調整を行ってまいりました。CIQの関係省庁からは、現行の体制の中で深夜、早朝便に対応することがなかなか難しい中、ぎりぎりの対応をしていただけるということになったところでございまして、国土交通省といたしましても、当面の対応としては、御指摘のとおり、週二往復の範囲内での国際チャーター便でスタートをしたいというふうに考えたところでございます。

小林(興)委員 大臣にお願いだけしておきますけれども、役所に任せておきますと、あそこに人間が足りない、ここに人間が足りない、そういう話になるわけであります。そこで、各省のそれぞれの大臣に、大臣の方から、ぜひ増員をしっかりやるように、予算を幾らでもつけるという形でこの体制が完備できるように上からばんばんとやって、人員がないからなんという情けないことを言っていることを、大臣の力で解決してもらいたいと思います。

 もう一つ、ぜひ大臣の頭にここで入れておいていただきたいのは、実は既に、羽田空港で使える時間帯、今六時から十一時のそれ以外を深夜使うと言っておりましたけれども、実際に羽田が動いている六時から十一時の間でも、朝は別にどこも、国内で使っていますから、到着する便なんかないんです。あいているんですよ。ですから、朝の六時から八時半について、ここの中でも外国からの到着便を認める、そうしますとがらあきの空港が埋まるんですね。

 それから、逆に、今国内で夜出発したって夜中に着きますから、出ていないんです。ですから、例えば、夜の八時半過ぎから夜中の閉める十一時まで、このときに外国に向けて飛行機を飛ばす。現在の十一時までの間でも、国内で来ますけれども、飛ばす方はがらあきなんですから、この時間を使って、朝の到着、夜の出発、これをしますと六時から十一時でもまだ飛行機は外国との往復ができる、そういうあいた時間帯をぜひ活用していただきたい、このことを申し上げたいと思います。

扇国務大臣 ただ、今お話ございましたけれども、私、この間閣僚懇で申し上げたんですけれども、今参考人から言いましたように、いわゆるCIQ、要するに税関と入管と検疫、これが厚生省と法務省と財務省、この三つに分かれておりまして、少なくともその人員が足りない、人員削減の中でこれを増員できないということでございましたので、私は、今おっしゃいましたように、各省から一人ずつ削減してでもこれは補給するようにしようではないかということで、法務省、農林水産省、財務省、この三つの役所が協力をしてやっていく。

 それともう一つ、私も気にしておりますことは、チャーター便で送った後は空で帰ってこなければいけない、これがやはり割高になるのですね。ですから、乗せていって、チャーターして四日間というようなときに、向こうでとまっていられないから空で帰ってくるというのでは、お客様に対して割高になる。これも私はぜひ今後考えなきゃいけない問題であるということを認識しておりますので、省庁を挙げてみんなで人員の確保というものに頑張っていきたいと思います。

小林(興)委員 行政改革というのは、むだなところを削るということはあっても、必要であるところにつけないということは本当の行政改革にならないわけでございまして、必要なところの人員についてはどんどんつけていく。新しい雇用の場ができる、そして景気対策にもなる。これからの産業構造を変えていくという中にあって、公務員の職場の構造も変えていくことが大事だというふうに私は思っております。そういう基本的な認識で共通しております扇大臣の一層の活躍を、心から御期待申し上げます。

 さて、時間もあれでございますので、どんどん話題をかえていかなきゃいかぬわけですけれども、次に外国人の研修、技能問題。

 これは実はKSDとも絡むのですけれども、小山前参議院議員は、仕事としてはいいことも随分きちっとしてこられたのですね。その中の一つに、外国の方を迎えて研修をして、そして国際交流も深める、あるいはその方がまた日本においても結果として役立つということを拡大してこられたのですね。今日、少子化が進み、そしてある特定の業種では日本人がなかなか働きにくくなっている。そこに大事な技術があって、働く方が高齢化して、その技術が、伝統的なものが失われようとしている。その中で、アジアの方々を中心に、日本に行って勉強したい、技術を学びたい、そして結果として日本でもう少し働いてみたいというようなことで、私は非常に今大事な時期だと思っております。

 そういう意味では、この基本的な外国人研修制度について、担当大臣の厚生労働大臣、いかがお考えでしょうか。

坂口国務大臣 今小林先生から御指摘をいただきましたように、外国人の研修制を二年から三年に延ばしたということが今話題になっておりますが、この研修制を日本の中できちっとしていくということがやはり非常に大事なことだというふうに私も思っております。このことにつきまして政策的に誤りはなかったというふうに考えております一人でございます。そして、やはり数をどんどんふやしていくよりも、二年から三年に延ばして充実した研修制をつくり上げていくということが大変その当時としては大事ではなかったのかというふうに思っておりますし、そのことについて何ら誤りはなかったというふうに思っております。

 今後もこの分野につきましては、よりこれを大事にして、そして外国の人たちに日本の中でもっと研修をしてもらって祖国に帰っていただくようにしなければならないと思っているところでございます。

小林(興)委員 今の大臣の基本的認識を伺って安心をいたしましたけれども、業種によってはまだ研修の中身が固まっていないから迎え入れることができない、そういうところもあります。そういうところは、しっかりと研修の中身を固めて早く受け入れ態勢をつくっていく。あるいは、別に三年で帰るんじゃなくて、四年、五年、もう少ししっかりと勉強したいという人には残っていただいてもいいと思います。業種によっては、難しくてマスターするのにもっと時間がかかるというのもあるでしょう。そういう意味で、私は柔軟にこの制度を運用していくこともぜひ大臣に考えていただきたいと思っております。

 また、日本に来るとき、技術を学びたくて来るのですけれども、最初に、技術を教えるためには日本語で教えなければなりませんので、どうしても日本語を教える時間、そこに貴重な時間が割かれてしまう。

 こういうものは、今日のこの時代、特にアジアを回ってまいりますと、日本語学校が結構できていて、そして日本から帰った留学生なんかがそこへ戻って一生懸命日本語学校をつくってやっていらっしゃる。そういうところは、しかし、なかなかお金もないので、希望者に対して十分な教材も提供することができない。私は、その日本語を学びたいという世界、特にアジアの皆さんに、大いに日本語を安いコストで学んでいただくために、例えば日本では教科書なんか無償で子供たちに配付している。終わった後、大事にしている人もいるでしょうけれども、あるいはもう要らないというお子さんもいるかもしれない。

 そこで、文部省、そういう無償で配付した教科書なんかを好意でもって子供たちから集めて、それを外国に送ってあげたり、そんなことを含めて、世界じゅうで日本語を学びたい人に、大国日本が、もう少しこの日本語というものを勉強するような機会を与えることを考えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

町村国務大臣 大変貴重な御示唆をいただいたと思って感謝をしております。

 私も、前回文部大臣を務めた後、外務省の政務次官を務めまして、どうも何となく外務省と文部省が歩調が合っていない面があったものですから、そこを、両者の協議会、協議の場をつくらせまして、今体系的にやっております。

 海外に対しては、基本的には外務省の国際交流基金が中心になって、現地に日本語センターを置いたり、専門家を派遣したり、教材をつくったり、こういうようなことはやっておりますが、いずれにしても、これからも、やはり日本語の普及というのはまさに日本の文化の普及そのものである、そういう観点で今後大いに積極的に進めていきたい、こう考えております。

 なお、教材としての、無償配付した日本の教科書を回収してと、大変小林さんらしい卓越したアイデアだなと思って、よく受けとめさせていただきたいと思います。

 ただ、日本の例えば小学校一年生が学ぶ教科書がそのまま外人に向いているかどうかですね。というのは、生活習慣も違ったり何したりしますから、必ずしもそれがぴったりと彼らに合うかどうかというあたりも、ちょっと違う点もあるかもしれませんし、私もたまたま、こちらへ来る前に、けさ、外人向けの初級の教科書というのを見てきましたが、やはりちょっと、我々が小学校一年で使っている教科書とは趣が少し違うところもありますので、その辺どう対応できるか、よく考えさせていただきたいと思います。

小林(興)委員 世界の皆さんに、特にアジアの皆さんに日本語を学んでいただく、これは非常に私は大事だと思っております。

 きょうは外務省の事務当局も呼んであるのですけれども、もう時間がございませんので、ここで要望だけしておきます。

 ODA、随分のお金を世界に出していますけれども、何か物をつくる、橋をつくる、道路をつくるというお金だけではなくて、必ずODAのあるパーセントは、日本語を学びたいと思う、そういう日本語の教育施設を完備していくことにもぜひこういうお金を使っていただいて、日本の文化を勉強したい、あるいは日本語そのものを勉強したい、あるいは日本に来たいという方々にチャンスを与えるように、この経済協力費を使っていただきたいと思います。

 それから、法務省の入国管理局長もおいでだと思いますけれども、どんどん日本に来る中に、入国管理官のマンパワーが破裂している、もう足りないと思うのですね。こういうところは、行政改革、さっきからここで話がありますけれども、足りないところの人数については、もう絶対足りないのだ、そういうことを局長としてはがんがん上げてもらって、ただ人数を減らすだけが行政改革ではないのですから、必要な人数についてはどんどんふやす。ふやさなければ仕事ができないということは、やはり体を張ってどんどん大臣等に上げて、そして政治家の耳に入れて、必要な人数をふやさなければいけない。私は、入管の人数はとても今のままでは足りないと思っておりますので、ぜひそういう認識で頑張っていただきたいと思います。

 さて、残りの限られた時間で、一番大事な問題、みんな大事でございますけれども、これも大変大事だ。やはり森政権が今命をかけて随分頑張ってこられる中で、やらなければいけないのは何といっても景気対策ですね。

 とにかく景気がもうずっと悪いということは、私は、やはりまだまだ政府に責任があるというふうに受けとめなければ、民間が頑張らないからだめだと言ったのでは政府としては何もできなくなってしまいますから、民間に頑張っていただくための環境の整備等を含めて、政府として頑張るという中に、財政がある、税制がある。しかし、やはり金融というのが非常に大きな分野を占めている。

 そういう中で、一応金融は日銀が独立してやっている、こういう建前になっておりますけれども、それはもう独立も大事でしょう。しかし、日本は一体でありますから、そういう意味では一緒に、交流することは自由でありますから、常時金融大臣とか財務大臣と日銀の総裁が密接に懇談をして、金融がどうかという情勢の交換をしながら、量的緩和が必要であればどんどんやる。

 アメリカのグリーンスパンなんか、もうアメリカの景気を心配して、これからさらに公定歩合を下げることを検討するなんという声明を出していますけれども、今のこの日本の金融情勢について、日銀総裁、この間公定歩合をちょっぴり下げたようですけれども、いかがお考えですか。

速水参考人 お答えいたします。

 現在の経済情勢につきまして、日本銀行の判断を申し上げますと、確かに景気の回復テンポは鈍化しております。景気に対する下振れの方向のリスクが高いということは確かであると思っております。民間需要主導で緩やかな景気回復を私どもが支援していくということが今やるべきことだというふうに考えております。

 こういった情勢を踏まえまして、現在は、昨年の八月からオーバーナイト金利を〇・二五%という金融緩和政策を維持し続けておるわけで、金融面からは景気回復を支援する力を強化することが適切であるというふうに判断しております。

 今般新しく、今までのコールレートの〇・二五%を目標に調整していくということに加えまして、期末を控えて金融が逼迫したり、あるいは特定の金融機関が資金が不足してコールレートがなかなかうまく調達できないといったようなことに備えて、ロンバート方式といいますか、必要なときに日本銀行へ飛び込んでくれば、証券担保さえあれば公定歩合で資金を供給しますということを決めますと同時に、公定歩合自体を〇・五%から〇・三五%に引き下げたわけでございます。

 こうした考え方は、これから何が起こるかわからないということに備えたものでございまして、日本銀行としましては、今後とも金融市場の円滑な機能の維持と安定性の確保に万全を期してまいりたいと思っております。金融面から景気回復を強力に支援していくつもりでおります。

小林(興)委員 ロンバート方式という一つのやり方も考えて一生懸命努力しているということは多としたいと思うのですけれども、ここで重ねてお願い申し上げたいのは、この間ゼロ金利を解除してまたゼロ金利かといいますとメンツの問題ということもあるかもしれませんけれども、そんなことはどうということはないので、世の中はしょっちゅうくるくる動くのですから、またアメリカとのいろいろな関係もある、アメリカの経済が悪くなっていけばその影響は思った以上に大きくなる、こういうこともあるわけですから。何回ゼロ金利にしたっていいのですから、結果がよければすべていいのですから、そういうことを含めて、量的緩和が必要だと思ったらどんと、ああ、またやったのかとびっくりするぐらいまたゼロ金利に戻すというような大胆な発想を持って、しっかり日銀総裁として私は頑張ってもらいたいと思います。

 金融庁、金融担当大臣、ここはもう非常に大事でございますね。もう大臣の双肩にすべて日本の国家の命運がかかっていると思うぐらい私は期待をしているわけです。

 日本の銀行を見ますと、私はこう思うのですけれども、それは、今日のこの不況の中で貸出先が倒れてもいい、おかしくなってもいいように引当金を積む、これは一つの考え方だと思うのですけれども、積んでばかりいないで、たまには積極的に銀行が、バランスシートが悪いわけですから、一緒に引当金を倒産する前に落として、引き当てて、そしてこっちの債権を処理してしまうということを本来銀行がもっとやるべきだと思うのです。これはなかなか、民間なので、金融庁がやれと言ってやる問題でもないのでしょうけれども、どうして我が国は引き当てばかりして、銀行がもうちょっと景気がよくならないかなと口をあけて見ているというような状況が多いのか、ちょっと御説明いただきたいと思います。

柳澤国務大臣 今先生が御指摘になりましたように、日本の不良債権処理というのには、引当金での間接的な処理と償却等の直接的な処理、最終処理という二通りがあるわけでございます。

 今、日本の銀行は確かに不良債権のオフバランス化というのが進んでいない、結果としてそういう形になっております。しかし、オフバランス化もそれなりに努力をしておるということでございまして、計数を挙げるといたしますと、資本注入後銀行の力が高まって一番オフバランス化を進めたときは合計で約十六兆円、それから次の十二年三月期でございますけれども、このときには九兆円というようなことで、オフバランス化にも努力をしているわけでございます。

 しかし、正直言って、こういう努力をもってしても、その後景況がなかなか改善しないというようなこともありまして、他方で不良債権が発生するということもあって、現在、不良債権の残高、例えばリスク管理債権というようなことで見ますと三十兆円くらいで、なかなかこれが目立った減少を示していないということになっているわけでございます。

 そこで、この不良債権の残高がなかなか減らないということはどういう意味を持つのかということでございますが、これは私は、一番問題なのは、金融機関の収益性に問題がある。つまり、リスク管理債権というのは、先生御案内のように、貸し出しの条件を変更したりあるいは現実に金利収入が滞っているというようなことをメルクマールにしてリスク管理債権というものをはかっているわけでございますが、そこのはかり方のメルクマールにあらわれておるように、要するにこれはパフォーマンスの悪い債権ということで、利息が余り入らない債権ということでございますから、当然これは銀行の収益には問題が生ずる、こういうことになるわけでございます。しかし、これは銀行のパフォーマンスに余りいい影響がないということの裏腹の問題ですけれども、では、貸出先の実体経済、この方についてもやはり収益が上がらないというようなことであるわけでございまして、ここに今先生がおっしゃったような問題があるというふうに私ども認識をいたしております。

 これはどういうことかというと、実体経済の側も、サイクリカルな、循環的な不況業種の場合には、またいずれの日か景況が明るくなってきたときは丸ごとこれが回復するわけですけれども、構造的な不況に陥っているものについては、これは循環的な少々の景気の上昇では解決しない問題がある。こういうものについてはもっと、もうこの段階でどんどん整理を進める。しかも、それは清算で整理を進めるのではなくて、再建型で、一つの企業の中で、ここは非常に今後もやれる部門だ、ここはもう構造的に問題がある部門だということの切り分けをしまして、そして整理を進めるということがぜひ行われなきゃならない。そして、それに対して金融機関の側も一定の協力、これは場合によっては債権放棄ということもあろうかと思うんですが、そういうことをしていくということが大事じゃないか、このように考えまして、私、今回、この関係の業界を所管している役所と情報交換をして、こうしたことを大いに進めたいと思って連絡会を設けた次第でございます。

 今後、この連絡会だけでうまくいくとも思いませんけれども、我々の資本注入行に対するフォローアップの作業等、これらを合わせわざで使いましてこの面の進捗を図っていきたい、このように考えているわけでございます。

小林(興)委員 大臣の基本的なお考えを承りまして、同感でございます。しかし、そのことは、なかなか実際の現場で実行されていないんですね。

 例えば、銀行が十億のお金を担保で貸した。しかし、その土地がもう今二億円ぐらいに下がっちゃっている。市場価値が二億なんですから、二億でしか、その土地を売ろうと思っても売買できない。今、こういう御時世の中に、それを買いたいという人が出てくる。しかし、銀行は何と言うかというと、二億はそのうち三億か四億に戻るだろう。戻るまで待っていて、せっかく二億で値がついても売ろうとしないんですね。そういうことの中に、新しい、今言われました前向きの解決、前向きに物が動く、そういうことは実は行われていないんですね。

 ですから、買いたいという人がいたら市場価格でどんどん売るというぐらいに積極的に銀行も、その分、八億棒引きするか何かしなきゃいかぬですけれども、それは犠牲を払ってもやっていくというぐらいな、そういう覚悟がないと、私はなかなかこういう問題は解決していかないと思っておりますので、ひとつ銀行とよくお話をされて、さらに一層の指導を強めていただきたいと思っております。

 そういう中にありまして、日本にもう一つ大きなお金がある、それは財政投融資だと私は思っております。財投の改革とかいろいろと言われておりますけれども、しかし、特に中小企業について今お金が流れてこない中に、政府系の金融機関の果たす役割は大きいと思うんですけれども、これについて宮澤財務相のお考えをお伺いしたいと思います。

宮澤国務大臣 御指摘はまさに正しいと考えておりまして、財投も御承知のように改革をいたしまして、一方で、自分で金を調達しろというようなことで合理化をいわば強いる形に入っておりますけれども、他方で、しかし、おっしゃいますように、日本経済全体のために財投としてもっと活躍をしてよろしい、あるいはすべき分野がございます。

 おっしゃいます分野は、ある意味で資金需要がないというようなことになっているのですが、それは必ずしもそうばかりとは言えないので、いろいろやりようによって苦労すべき、そして財投としての役割を果たすべき部分がある。同感でございます。

小林(興)委員 時間が参りましたのでこれで終わらせていただきますが、最後に、繰り返し、とにかく景気対策は、予算、税制そして金融、この三本の柱をしっかりと駆使していっていただくことによって、まだ今の日本の持っております潜在能力をもってすれば十分に景気は回復する、そのことをさせることができる、こう思っておりますので、政府当局の一層の御努力を心から御期待申し上げまして、ここで終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

野呂田委員長 これにて小林君の質疑は終了いたしました。

 次に、佐藤静雄君。

佐藤(静)委員 私は、きょうは、公共投資のあり方とものつくり大学についてお伺いしたいと思いますけれども、その前に、危機管理の問題と、それから北海道の教育について一言ずつ大臣にお話をお聞きしてから入りたいと思います。

 けさの新聞を見ましたら、私は驚いたんですけれども、総理のコメントで、私が行かなかったことで何かおくれたんですかというコメントがありました。ちょうど五年前、私の選挙区のトンネル事故、豊浜トンネルのトンネル事故というのがございました。ちょうど五年前です。二十名の犠牲を出しました。そのときに、責任者である開発局の局長がなかなか駆けつけなかった。そして、知事が駆けつけない。知事のコメントは、これは災害でない、事故だから駆けつけなかったと言ったんです。そのことが、それからの対応にどれだけ大きな影響を与えたか。多くの道民感情、家族の方、遺族の方々にどれだけ大きな影響を与えたか。私は、今それを思い出したんです。危機に面したときに、トップの言葉、トップの行動、そのときの指示は非常に大きな影響を与えていきます。それはともかくとして、自分がそう感じたということを申し上げておきたいと思います。

 ところで、国家的な危機には、阪神大震災のような総理みずから陣頭指揮をするものと、それから内閣主導で各省庁が指揮をするもの、さらに各省庁の担当者が対応すべきもの、三つに分かれるわけでありますけれども、今度の事故はこのどれに相当するものなんでしょうか。

伊吹国務大臣 大変難しい御質問だと思いますが、ちょっとお時間をいただきますと、先生今御指摘のように、平成七年にはいろいろな事件、事故が起こりました。阪神・淡路大震災、地下鉄のサリン事件、全日空の乗っ取り事件等いろいろな事件が起こった反省から、内閣に、情報を一元的に管理するというか集中させる管理センターというものが実はできているわけです。そこにいろいろな情報が入ってまいります。

 国の主権が侵される、あるいは国の秩序が揺らぐ、国民の生命や財産が大規模に危険に侵される、これがあえて言えば官邸が正面に出て対応する。具体的に言うと、阪神・淡路大震災とか、あるいは地下鉄のサリン事件とか、全日空機が乗っ取られたとか、日本の主権の象徴である在外の大使館が占拠されたとか、あるいはまた、あってはならないことですが、原子力発電所に大事故が起こったとか、こういうことだろうと思います。

 今回のものがどこに当たったかというのは、これはいろいろな見方があると思いますが、グレーゾーン的なところがあります。したがって、情報が官邸に集中していて、その情報が私に伝えられた限りは、これはどちらに仕分けをするんだというようなことを言っている暇が実はないというのが現実問題なんですね。国民の生命財産をできるだけ安全に守っていくというのが政府の役割であるとすれば、情報が来た途端にその仕分けをする暇が私はなく、実は、外務省と防衛庁にこういうことをやってくれと言ったわけです。

 落ちついて考えると、これは外交、安全保障に大きな影響を与えるかもわからない事故であったと私は思いますが、そのそもそも論をやっている暇が実はないというのがあらゆる情報が来たときの対応の現実だろう、私はそう思っております。

佐藤(静)委員 具体的に、対応するときのマニュアルといいますか、やはりそれが必要だと私は思うのですね。何か起きたときにだれがどういう指揮をするか、これはどの種の事故なのか、どういう危機なのか、そのことをしっかり仕分けして、そして指揮者を決めていく、そのことが非常に大切だと思います。

 ですから、そういうことを総理自身がやるのか、だれかほかの大臣がやるか、そういうことを国民みんなにやはり知らしめておくことが私は大切だと思います。ましてや、マスコミの方々なんかにはしっかりと知っていただくということが大切だろうと思います。

 ですから、ぜひともそのことを、これを契機にしっかりとつくっていただきたいと私は思いますけれども、大臣、いかがですか。

伊吹国務大臣 内閣部内ではかなりのマニュアルは整備されております。しかし、率直に申し上げまして、日本の主権外で起こった今回の船舶の事故というものに対するマニュアルがあったかというと、先生御指摘のとおりだろうと思います。

 そこで、そういうことも踏まえて、今の御提言を私どもは真摯に受けとめさせていただいて対策を講じていきたいと思いますが、同時に、幾らマニュアルをつくりましても現実はマニュアルどおりには動かない、あらゆる事態が起こってくるということでございますから、その点は、私たちが責任を持って対応せざるを得ない部分があるということも私たちはしっかりと受けとめて、これからも行動していきたいと思っております。

佐藤(静)委員 伊吹大臣、わかりました。結構です。

 町村大臣にお聞きしたいのですけれども、町村大臣も私も北海道の人間でありますけれども、北海道というのは、教育問題が今非常に大きな問題となっております。これは長い間なかなかうまく直せなかったということがあります。それは何が原因かというと、道の教育委員会と教員組合の間に協定を結んで、そして、国の方針とは反するようなことで堂々と教育が行われてきたということです。

 森総理大臣はこの国会を教育国会と名づけて、特に総理は教育に対して非常に熱心に取り組んでおられますけれども、大臣、その実態、どういう実態になっているのか、そしてそれに対してどういう取り組みをなさろうとしているのか、お聞きしたいと思います。

町村国務大臣 ただいま佐藤委員から大変重要な御指摘をいただいたと思っております。

 文部科学省はこれまでも、北海道教育委員会の関係者を呼んだりいたしまして実態把握をやっておりましたが、なかなかわからないところもあるので、学習指導要領にのっとった国旗・国歌の適切な取り扱いが行われているかどうかとか、あるいは学校の管理運営の適正化等についてどういう実態にあるかということについて、昨年の十二月に、教育委員会に詳細な調査を行うように求めたところであります。三月いっぱいまでには調査報告を得て、そして、調査が明らかになった段階で不適切な事象がございますれば、早急に是正をするようにということでございます。

 ただ、その前提として、今委員言われたような四六協定、昭和四十六年の時点で北海道教育委員会の教育長と北海道教職員組合中央執行委員長との間で結ばれたいわゆる四六協定があります。これの中身を見ますと、明らかに、管理運営事項を交渉の対象とするなどの法令違反があります。それから、学校長の権限を著しく制約するような内容も含まれております。

 私は、こういう協定が存在すること自体が大変問題だ、こう思っておりまして、これまでもこの四六協定の破棄について指導してまいりましたが、改めて、きょう委員から御指摘ございましたので、文部科学省としては、この四六協定が早急に全面的に破棄をされることが必要だ、こういうことで、今後とも北海道教育委員会に対する指導を徹底してまいりたいと考えております。

佐藤(静)委員 組合と妥協する道教委のあいまいな姿勢がこういう問題を長々と長引かせてきたんだと思います。どうぞひとつ、文部科学大臣、これは毅然たる態度で道教委を指導していただきたいのです。今大臣からお話あったとおり、今までの協定というのは全部破棄をさせて、そして正常の姿に戻していただくことをお願いいたしておきたいと思います。

 大臣、結構でございます。

 私、資料をお願いしておるので、資料をちょっと配っていただけませんか。

 公共事業のあり方についてお伺いいたしたいと思いますけれども、よく議論の中で、公共事業を財政健全化の面から三割減らしたらどうか、そういう議論もあるわけでありますけれども、もしも公共投資を三割減らしたら、経済にどういう影響を与えるのか、また雇用にどういう影響を与えるのか、お話をお聞かせいただきたいと思います。

麻生国務大臣 御存じのように、公共事業を削減するというのは、当然のこととして公共の需要が減少しますし、それに伴いまして雇用も減りますし、いろいろな意味で民間設備投資、民間消費等々について多大な影響が出ることはもうはっきりいたしております。

 また、公共事業は雇用の面においても非常に大きな雇用効果がありますので、今、雇用者五千三百五十六万人と言われておりますが、そのうち、いわゆる建設関係等々を含めて構成比でいきますと、五百三十九万人ですから約一〇%ぐらいの方々が公共事業に関係いたすところに、いわゆる建設業というものに従事しておられるということになっておりますので、その意味では、所得の低減とか失業率の上昇とかいうようなことが当然出てくるのです。

 平成十三年度の予算案でいきますと九兆四千億円、それに三〇%減ということになりますと二兆八千億円が削減されることになりますので、六兆六千億円になる。そういうことになりますと、経済企画庁の短期日本経済マクロ計量モデルというのを使ったものでいきますと、これをそのまま乗っけて大胆な計算を申し上げさせていただければ、マイナス面といえば、約〇・七%のGDP比の減、失業率は〇・〇四%上昇するという数字が出てきております。

 これは前提条件がいろいろありますので、いわゆる国民経済計算体系、通称SNAと言うんですが、そのSNAを使った比率ですので、その前提条件がまた違ったらとかいろいろな意見を言っていくと幾つか数字が違ってくるとは思いますけれども、大前提として大胆なことを申し上げさせていただければそういうことになる、そのような数字になると試算ができます。

佐藤(静)委員 公共投資が経済を押し上げていく上で非常に大きな役割を果たしているんだと思います。今大臣のお話にあったとおり、相当な押し下げ効果につながってしまう。ですから、公共事業投資というものをどれだけ有効にやっていくかということが大切なんだろうと思います。

 そのことは後でまた国土交通大臣にお聞きしたいと思いますけれども、確かに、見直すべきところは見直さなくちゃなりませんけれども、単純に公共事業を抑制することで本当に財政健全化が図れるのかどうなのか、そこを財務大臣にお聞きしたいと思います。

宮澤国務大臣 今麻生大臣が九兆四千億という数字を言われました。これは総体の数字ですが、何か、マンネリズムになっているのをやめて新しいものをやれ、それはそうなんですが、実は、この九兆四千億というものの非常に大きな部分は、何年間にわたって継続しているあちこちの事業の総体でございますので、それをやめていいわけではない。

 それは、皆さんお気づきにならないような、いわば地味な底の部分でございますから、これをやめてしまうというわけにはもちろんまいりませんし、また、確かに何か新しいものに移れないかと一生懸命努力をしておりますが、今度やってみまして、総体で千三百億円ぐらいな移り変わりをいたしております。これでも随分苦労をしておりますぐらい、つまり、意外に多くの部分が我々の日常の生活といいますか国の経済活動の基盤になっている継続的な部分である。

 だから、公共事業を減らしたらいいというと、金額的にはそうかもしれませんが、経済全体というものはそれで非常に狂ってしまうというふうに考えた方がよろしいと思います。

佐藤(静)委員 公共事業をだらだらやっているということが、効果をあらわさない一つの大きな原因であろうと私は思っているんです。政府は、この公共事業の抑制に対する反論として、欧米に比べて我が国のインフラ整備率が低いということを理由に挙げております。低いということは、とりもなおさず、だらだらやっているということです。

 テレビを見ておりましたら、扇大臣は、公共投資というのは時間を決めてやるべきなんだと。非常に私は共感をしたのでありますけれども、大臣、もう一回皆さんに大臣のお考えをひとつお聞かせいただきたいと思います。

扇国務大臣 私は、公共工事というものが二十世紀日本の成長に大きな役割を果たしてきた、その重要性というものがあって今日の二十一世紀の扉が開けたと思っています。けれども、それはハードの部分であって、これからは、二十一世紀は公共事業でもソフトを加味していかなければならない。

 しかも、今佐藤委員がおっしゃいましたように、財政上の問題から、本来であれば日本じゅうに張りめぐらしているという一万四千キロメートルのこの目標というものをいつ達成するのか。そういうことの達成の度合いによっては大きな変化が、日本の中にも経済的効果が出てくるというのは明々白々であるし、今先生が私の手元に寄せていただきましたこの資料を拝見いたしましても、私は、公共工事による経済効果というものは大きなものがあろうと思っています。

 けれども、それが果たしてどの程度経済効果が上がって迅速にやらなければならないかということに関しますと、きょうテレビをごらんになっている皆さん方も、実例を挙げれば一番早いと思うんですけれども、例えば先生も御存じのとおり、私たち、東京都内、道を歩いておりますと、三十キロというスピード制限が出ております。けれども、都内の平均時速は十六・八キロしか走れないんですね、渋滞で。そうしますと、これは、三十キロで走りますと一年間で四兆九千億の経済効果があるというのも実際にもうわかっているわけでございます。

 ですから、そういう意味では、私は、一部の皆さん方の、この延長線、一万四千キロを地図では示してあるけれども、ちびちびしていると、その建設費は赤字であっても、地域の経済効果というものがどれほど上がってくるかということに関しては大きなメリットがあろうと思いますので、日本の二十一世紀のグランドデザインというものは、そういう意味でも私は早く示していきたい、そして皆さんの御協力をいただきたい。

 先生は北海道でいらっしゃいますけれども、例えば十四年度は北海道を集中的にやるんだとか、そして北海道の経済効果がどれほど上がるかということも、経済効果と投資効果とのバランスというものをぜひ示して、国民の皆さんの選択を仰ぎたいと思っております。

佐藤(静)委員 この資料をちょっと見ていただきたいんですけれども、日本は高速道路を一九六三年から始めたんですね。中国は一九八八年から始めた。そして、一九九九年の延長というのは、中国は、十一年しかたっていないのに一万一千キロつくった。日本は、三十六年かかったにもかかわらず六千六百キロしかつくっていない。そして、右の上に書いてありますけれども、二〇〇〇年末には中国は一万六千キロを超えたと新聞報道がなされている。やはり、公共投資というものを急いで集中的にやる、集中的にやることによって効果を出していくということが、私は非常に大切だろうと思っているんです。

 例えば、我が国の国レベルの重立った幹線道路、これを十年ぐらいで全部整備してしまう。そのときのその費用と経済効果はどういうふうに見積もれるのか。大臣にお伺いしたいと思います。

扇国務大臣 今、中国のこの資料をいただきまして拝見しておりますけれども、少なくとも私ども、今何が一万四千だという中井先生のお話も聞こえておりますけれども、高規格幹線道路の一万四千キロという、今道路のお話が中国のこの表で示されましたので、そのお話にお答えしているわけでございますけれども、現段階で、高速自動車道が一万一千五百二十キロメートル、そして整備の計画策定済みの区間というのが九千三百四十二キロ、こういう現状の中で、今私どもが整備計画が策定済みの未供用区間というのが二千四百八十一キロあるわけですね。

 そして、今供用区間のうちに路線の拡幅等の改善を行うものが約二十二兆円必要でございます。二十二兆円必要ですけれども、これすべて創出しましても、GDPのペースでいきますと、需要の創出効果が三十七兆円という計算がされているんですね。そうしますと、少なくとも、二十二兆円必要だけれども三十七兆円の効果があるのではないか。

 また、時間を短縮しますと、総費用節約等というのは年間で約十一兆円に及ぶというふうな、まあ試算の上では出ておりますので、本来であれば、なるべく早くその経済効果が発揮できるような公共工事がすべからく私はできるにこしたことはないと思っておりますけれども、財務大臣がいらっしゃいますので、財政上はなかなかそういうふうにいかないんですけれども、お願いしているところでございます。

佐藤(静)委員 整備新幹線も全く私は同じだと思っているんですね。整備新幹線も、これもだらだらやってきたんですね。

 私、今、表を配らせていただいておりますけれども、私の事務所で試算をしたものでありますけれども、整備新幹線を五線全部やった場合にどういう効果があるかということを試算したわけです。

 そうしますと、全部これを建設国債でやったとしても、四十年以内で国としては投資したものを全部回収できるということがわかるわけです。新幹線は公共投資でやって、それの使用料、それから利益の出た分の法人税三〇%を取ったとしての試算であります。

 そのほか、真ん中辺に書いてございますけれども、他路線増益というのがございます。

 要するに、わかりやすく申しますと、例えば北海道の新幹線に例をとりますと、札幌から新青森は北海道新幹線であります。それはJR北海道が経営をします。新青森から東京まではJR東が経営します。ですから、北海道の新幹線ができたとしたら、札幌から新青森がJR北海道の利益になってくる。しかし、新青森から東京まではJR東のものになってしまう。そのJR東の利益になるもの、そうした他路線増益というのは非常に大きいわけです。全体で一年間に二千二百億も出る。これから幾らかその償還に充てていくということを考えたら、意外に早く投下したものが国としてはとれるのだと私は思うのです。

 ですから、集中的にやはりこれをやってしまうということがどれだけ大切かということ。そして、集中的にやればやるほど効果を生み出していく。企業だってみんな資金を借りてきて短期間に工場をつくって生産をしていきます。だらだらかかったのじゃとてもキャッシュフローを生み出すことはできません。どうでしょう、大臣、新幹線についても御意見をお聞かせいただきたいと思います。

扇国務大臣 今、佐藤先生がシミュレーションを出していただいたのを拝見しておりますけれども、少なくとも私ども、この新幹線に関しましても、従来の着工二十年としていた、先行きですね、それを今回は十二年に圧縮してこれを実行しようということで、これは大幅な工事の短縮。これは、私は与党三党の申し合わせを今ここに持っておりますけれども、少なくとも与党三党でそういう御意見もあり、私どもは、十三年度予算に関しましては通常分であれば三百二十六億円ですけれども、特に、総理がおっしゃいました日本新生枠の四番目といたしましても、これは公共工事として二十億円の増加、そして生活関連公共事業費も四百四億円でございます。

 そういう意味では、前年度二・一倍になっておりますけれども、特に新幹線枠に関しましては二千二百九十三億円ということで、私は与党三党のお申し合わせどおりにはできていると思いますけれども、今佐藤先生がおっしゃいましたように、一体、日本の新幹線をどこからどこまでという、目算はもう発表してございますけれども、それをいつまでにどのように仕上げるのか、また、これは必ず全線必要であるのかということをよく野党の先生方にも私聞かれるのですけれども、これは必要であるから概略の予定表を出してあるのであって、できれば地域の皆さんに、ことしはおたくはちょっと待ってほしい、けれどもこれは、北海道なら北海道に集中する年があって、ここを仕上げさせてくださいというのも、私は、地域の皆さんの選択というのも大きな要素に入ってくると思いますので、できれば集中的にやって、二十一世紀、すべからく経済効果が上がるというふうにできるにこしたことはないと私も思っております。

佐藤(静)委員 私は、先ほど表で説明しましたとおり、全体をやらないと、新幹線というのは他路線の利益を生み出していくんですね。そういう計算をしないで、多くの方々がもうここまででいいじゃないかといろいろなことを言っているのです。計算をしてみると、全体をすることによって収益というのは大きなものになっていくのです。そのことをもっとしっかりと、大臣、多くの方々に説明していただいて、そして、国家的なプロジェクトというのは、高速道路であっても、飛行場であっても、この新幹線であっても、短期間に仕上げる。

 私は、意外にこれは、今までの各省庁のシーリング枠で決められた、これが大きな災いをしていたと思いますから、国家的プロジェクトというのは、別枠をつくって、そして十年なら十年で仕上げていく、そういうような方法をとることがこれから非常に大きな政策課題であると私は思うのですけれども、財務大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

扇国務大臣 今おっしゃるとおりでございまして、我々は、二十一世紀、希望を持ちたい。そして、日本の経済効果がどうあるべきで、また、先ほどもお話ございましたけれども、二十一世紀の日本が世界の中でどういう位置を示していくか。また、今のままでは果たして沈没するであろうということもマスコミで言われておりますけれども、例えば空港一つとってみても、国際空港たり得る条件は何か。あるいは、今の新幹線というお話おっしゃいましたけれども、新幹線というものも、基本的には日本の物流がどうあるべきか、物流のコストというものが世界に伍していけるかということにも大きく関連してくるわけでございます。

 そういう意味では、今、御存じのとおり、どこの地域でも産地直送というのが大変主婦に喜ばれておりまして、産地直送と言われておりますものも、高速道路が全部網羅され、あるいは新幹線等々によって大きな物流コストの低下、そして物流コストが下がることによって経済効果が上がるという日本の二十一世紀の相乗効果というものを、我々は今、現役の国会議員がすべからく二十一世紀の日本の姿というものを基本的に考えるべきときに来ているということを自覚しております。よろしく御協力をお願いいたします。

宮澤国務大臣 考え方としては、やはり重点的に傾斜をするということが特にこの際大事だと思っていまして、その点も同感でございます。

 十三年度の予算編成では、IT革命、環境問題、高齢化対応、都市基盤、この四つの重点項目を選びましたが、これを結局別枠で処理をいたしまして、それだけでほとんど四兆円、三兆九千億円でございますから、先ほどの九兆円から申しますと四〇%余りでございます。そういう重点的なやり方をやはりやって、他方で、二百七十幾つか中止すべき計画も中止をしたというようなことでやってまいることは大事だと思います。

佐藤(静)委員 本当に費用対効果というものを考えてやらないと、多くの国民に支持されない状態になってきているんだと私は思います。やはり国家的なプロジェクトは、何と何を国家的プロジェクトにするかということを決めて、それは別枠で、そして短期間に仕上げていく、そうすることによって、民間投資を誘発して、そして大きく効果が上がっていくんだと私は思いますから、ぜひとも次の年にはそういうことをよくお考えになって、ひとつ予算編成をお願いいたしたいと思っております。

 それから、ものつくり大学についてお伺いいたしますけれども、ものつくり大学の推進というものが、KSD事件と絡んで大学そのものの是非論まで行っているんだと私は思います。これは、そもそも平成二年にサイト・スペシャルズ・フォーラム、SSFという組織が生まれて、これは学者や企業の方々が非常に熱心に、日本の物づくりというものと取り組まなければならない、そのことを訴えたことが始まりだと思うのでありますけれども、その当時の活動というのはどんなものであったのか。このサイト・スペシャルズ・フォーラムというものの活動がどんなものであったのか、坂口厚生労働大臣にお聞きしたいと思います。

坂口国務大臣 今御指摘いただきましたように、一九九〇年、平成二年にSSFが誕生したというふうにお聞きをいたしております。当時、建設関係、あるいはその現場の皆さん方も含めてでございますが、大学の先生方、そしてまた大学の先生方だけではなくて経済界の皆さん方も入りまして、SSF、サイト・スペシャリスト・フォーラムというものを立ち上げられたわけでございます。

 これは、建設現場技術者の地位向上、待遇改善等を目的とする民間の任意団体でありまして、職人さんにステータスをという呼びかけのもとに、建築とか土木関係の学会関係者や建設業関係者の有志によって、平成二年の十一月二十七日に設立されたというふうに聞いております。そして、設立後、SSFはシンポジウムだとかフォーラムを開催されまして、そして情報誌の発行など地道な活動を続けられたところでございます。

 職人の地位向上のためには人材育成が重要との認識のもとに、平成四年の十一月に都内で開催いたしましたイベントにおいて、社会的に評価される職人を育成することを内容とする職人大学構想を発表になったわけでございます。当時のその概要は、建築技能者の育成を中心とすること、二番目といたしまして、基礎技能教育、先端技術教育、総合人間教育を行うこと、そして三番目に、入学時期を年二回として、現場実習を単位認定する等を内容としたものであったとお聞きをいたしております。これがもとになりまして、そして現在のものつくり大学へと発展をしてきたわけでございます。

 こういう経過をたどってまいりまして、そして一九九四年でございますから、そのときにいわゆるKSDにこのSSFの方からの協力要請がありまして、そしてこのKGSが誕生してくるという経過をたどって今日を迎えたというふうにお聞きをいたしております。

佐藤(静)委員 そういう平成二年からの長い経過の中において、物づくりの必要性が強調され、そしてものつくり大学というものが、職人大学と最初言ったのだと思いますけれども、だんだんだんだんつくられることになってきた。今、大臣から経過の説明がありましたけれども。

 そうこうしているうちに、平成八年の六月に自民党に国際技能工芸大学設立推進議員連盟が設立される。そしてその九月には、ドイツのマイスター制度について研修のために視察団が送られる。

 そして、その当時、民主党など野党の方々も、ものづくり基本法というものをつくろうということで、非常に大きく声が上がってきたわけであります。当時の参議院の、当時新進党であった今泉昭先生を中心にして、現在民主党です、ものづくり基本法をつくろうと非常に大きな声になってきました。そして十一年の三月に、参議院先議で法案審議が行われて、両院とも全会一致でものづくり基本法が成立したわけであります。

 その当時のいきさつについて、大臣、もう一回ちょっとお答えいただきたいと思います。

坂口国務大臣 ものづくり基盤技術振興基本法というのが今先生が御指摘になりました法律でございますが、この法律は、就業構造の変化でありますとか海外の地域における工業化の進展等を背景にしまして、物づくり基盤技術の継承が困難になりつつあるという認識のもとに、物づくり基盤技術の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進することによって物づくり基盤技術の水準の維持及び向上を図りたい、そして国民経済の発展に資することを目的としてこの法律をつくろうということになったわけでございます。そして全会一致で成立しましたことは、今先生が御指摘のとおりでございます。

 当時、平成六年、七年、円高が非常に進んでおりまして、国内産業が非常に空洞化をいたしておりました。そして、国内における産業がどんどんと外国に出ていくというような状況がございまして、非常に危機感の持たれたときでございます。平成七年の十月にいわゆるプロジェクトを発足させまして、物づくり基盤の再構築に向けた議論を深める中で、平成八年にゼンキン連合の関係議員の皆さん方により基本立法を目指すことで合意をされております。立法を目指す具体化の動きがそこで始まったものというふうに聞いております。

 今申しましたのは、どちらかといえば野党の側の動きでございますが、一方、自由民主党におきましても、我が国産業の基盤である物づくりを担う人材の確保でありますとか育成等の重要性にかんがみまして、委員御指摘のように、議員連盟の取り組みがあったものというふうにお聞きをいたしております。

 平成九年の十月、当時新進党でございますが、新進党の明日の内閣におきまして、先ほど申しました法案、これは法案でございますが、正式に了承をされるというような経緯がございました。

 こうした与野党の共通の問題意識のもとに、平成十年五月でございますが、参議院に超党派のものづくり基盤強化検討会ができました。尾辻先生が座長で、事務局長に今泉先生がおなりになっております。同検討会における検討を経て、ものづくり基盤技術振興基本法が百四十五回国会に提出をされまして、平成十一年の三月十二日に全会一致で成立をいたしているわけでございます。

佐藤(静)委員 そういう流れの中で今度は、国会のものづくり基本法も超党派ででき上がる、そして長い間の経過がある、そういうものを受けて、十一年の十二月に小渕総理の私的諮問機関であるものづくり懇談会が発足をするわけでありますけれども、もう時間がないので官房長官にお伺いしますけれども、どういう主なメンバーで、どういう議論がされたのか。そしてまた、そのことが後の総理の施政方針演説の中にも盛り込まれてくるわけでありますけれども、どういう経過でそれが盛り込まれてきたのか。

 同時に、議論の中で、総理の施政方針というのは各省庁が持ち寄ったものを組み立ててつくるものだというようなことを言われていますけれども、私はそうじゃないと思います。総理が基本的なものをつくり上げて、それに各省庁はいろいろな希望を出す、その希望を入れるか入れないかは、総理、官邸側の考えだと私は思います。官房長官、ちょっとお伺いしたいと思います。

福田国務大臣 ものづくり懇談会は、今委員も御指摘されたようなことなんでありますけれども、メンバーは、これは小渕総理みずからお選びになったのでありますけれども、唐津一東海大学教授を座長といたしまして、そして、有識者という方々でございます。関一橋大学教授とか西澤潤一岩手県立大学長とか、そういうような学界の、著名でありなおかつ権威者である、そういうふうな方々によってつくられたわけでございます。

 その中でもってどういう議論をされたかということでありますけれども、四つほど提言がございました。「ものづくりを担う人材の育成・確保」「情報技術の最大限の活用」とか、四つテーマがございますけれども、今申しました「ものづくりを担う人材の育成・確保」というような一つの重要課題の中に、「「ものつくり大学」の着実な開学準備を図るとともに、ものづくりに係る専門的人材の育成を図る。」というようなことが報告書に取りまとめられておるということであります。

 なお、施政方針にどういうふうな形でもってものつくり大学が取り込まれたのか、こういうふうな御質問でございましたけれども、施政方針演説というのは、もう御案内のとおりでございましょうけれども、各省庁から重要施策として演説に盛り込むべき事項を提出してもらい、そしてそれを整理した上で、総理を中心に鋭意検討を重ねて最終的にでき上がるものであるということでございまして、総理の考えを基本として記述されるということになっております。

 平成十二年一月の施政方針演説において、ものつくり大学の記述についても実は書いてあるわけでございますけれども、これはまさに、このものづくり懇談会の会議が一月二十四日に開催されました。そして、これに小渕総理も出席をされたのでありますけれども、そのまさに翌日の第三回の施政方針演説検討会においてこの言葉が入ってきた、こういう経過でございます。

佐藤(静)委員 ものつくり大学ができるまでの経過をずっとお聞きしておりましたけれども、物づくりの大切さということが十年も前からずっと訴えられて、国会においてもものづくり基本法ができ、そしてさらに総理の諮問機関ができ、ものつくり大学ができ上がった、こうなってきた。

 このものつくり大学というのは、私立大学であるけれども、そういう多くの方々の、日本の物づくりの人材を育成しよう、そのための象徴的なものとしてものつくり大学をつくろう、このことで実現できてきた。これに対してやはり政府としていろいろな支援をしてやるのは当然だと私は思っております。

 このものつくり大学そのものがどうも何か否定されるような議論もありますけれども、どうぞひとつ大いにバックアップしていただいて、日本の物づくりの大切さというものをもっと多くの国民の方に知っていただいて、そして、ものつくり大学を通じて多くの人材を生み出していただけますように心よりお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

野呂田委員長 これにて佐藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、白保台一君。

白保委員 公明党の白保台一でございます。

 初めに扇大臣に質問いたしますが、去る一月三十一日に、羽田発沖縄行きのJAL九〇七便、これがニアミスを起こしました。そして、四十数名でしたか、負傷者が出まして羽田へ引き返すという、大変あってはならない空の事故でありました。

 私どもも、この便は十五時二十五分発ですから、夜の会合によく間に合いますので、非常に使い勝手のいい飛行機ですが、これでまさに衝突でもしますと大変な大惨事になりかねないという、大変大きな問題です。それで、私どもも、党の方としても調査委員会をつくる、そして、私はまた那覇管制部長にお会いしまして、空の安全の問題等について申し入れを行ってまいりました。

 扇大臣は、去る九日ですか、この事故の調査結果、この報告を受けられて、空の安全に対する訓示をなされたというふうに伺っておりますが、これについて大臣の方から、どのような報告であったか、伺いたいと思います。

扇国務大臣 今おっしゃいましたように、一月の三十一日の十五時五十五分ごろということでございましたけれども、私も最初は一瞬まさかと申しました。本当にまさかだったのですけれども、あの一瞬によって大惨事を引き起こしたかもしれない。まして、負傷者が出たということに対しては、心から私はお見舞い申し上げ、早く御回復を願うという立場でございましたけれども、何よりも、私としましては原因の究明を、今この時点でも空を飛び、乗っていらっしゃる方の安全、精神的な面も含めて、私は原因究明をしなきゃいけない、原因究明に全力を挙げよということで、させていただきました。

 また、三時五十五分に発生いたしましたけれども、航空事故調査委員会、これは七名をすぐ現地にといいますか羽田に派遣いたしまして、事故の調査に、これは第三者でございますので、学識経験者等々にすぐに行っていただきました。

 そして、私は、管制業務というもののあり方が果たして今のままでいいのか、どこかに欠陥があったのかということで、少なくとも二月の三日にこれを指示いたしまして、管制業務の実施状況を緊急に把握するようにという指示を出しまして、今先生がおっしゃいましたように、二月の九日、全国の航空管制官の長を東京に招集いたしまして、それぞれの指示した状況を報告していただきました。そして、是正する点がありやなしやということをいたしましたら、大体の要点が出てまいりまして、時間がございませんでしょうから大ざっぱに申し上げさせていただきますけれども、緊急の点検結果というものが出てまいりました。

 その中で大きなことは、管制区間の設定ですね。これは、確実に今度実施していこうということでございます。それが第一点。確実な管制区間の設定。

 そして、二番目には、適正な管制用語の使用。用語がお互いに反復できなかったということも私は大きな問題点であろうと思いますし、管制官の方から、ベテランあるいは長期間異動を行っていない者が自分なりの用語を使っていることが間々あるということで、これも原点に返らなければならないというのが第二点。

 第三点は、交信内容の正確な把握及び確認。これはもう当然のことでございますから、多くを申しません。

 それから、訓練生に対する適切な監督ができているかできていないか。指導官というものの資格は、今後、資格審査というものをつくるべきではないか。これも大きな反省点の四番目でございます。

 五番目は、管制機関、管制席の相互間の確実な連絡をするべきである。あるいは、見習いがいたとか訓練生がいたとか、そういうところの席の移動というものも、これも後ろから指導員が管制官に指示するだけでいいのかどうかということも、五つ目の大きな要点でございました。

 あと一つは、交通状況に応じた要員の配置、これが足りているかどうかということも大きな問題点であろうと私は思いますけれども、これらの六つの点の指示が全国の管制官の長の会合で反省点として出てまいりました。

 もう一点申し上げさせていただければ、私は、これは国が言うことではございませんけれども、民間の航空会社に、国際線と国内線の便名の間違いが起こるような九〇七便と九五八便、こういう同じ九百番台というのではあれなので、国際線と国内線の番号の差をつけるべきではないかと。国内線は百番台、国際線は九百番台というふうに、これも私は今後、民間の業者でございますので、聴取していきたいと思っております。

 以上でございます。

白保委員 それでは、四十数名、負傷者が出ています。これに対する補償、こういった問題が起こってくるのかなと思いますが、この辺はいかがでしょうか。

扇国務大臣 これは、大変な負傷を負われた皆さん方に対する補償でございますので、万全を期したいというのは当然のことでございますけれども、とにかく、これは日本航空の現状でございまして、日本航空から負傷された皆さん方に対しましても当座の対応として入院費等々、お見舞金の支払いを行っておりますけれども、まだ原因の調査が判明いたしておりませんので、原因調査が判明した時点におきまして、それなりの、航空会社の規定というものがございますので、それに沿って皆さん方に対処していきたい。でき得る限りの対処を私どもも指導していきたいと思っております。

白保委員 我が国の航空管制の中で、大臣もよく御存じだと思いますが、一番複雑な航空管制が沖縄の空、こういうふうに言われています。これは、河野大臣が昨年コーエンさんとお会いしたときにも嘉手納RAPCONの返還の問題が出てまいりました。

 当時、復帰時点で、本来ならば、主権国家ですから領空は全部みずからが管制をしていくというのは当然ですけれども、まだまだ日本の管制技術がそこまでいっていないということで、日本の管制技術がよくなれば嘉手納RAPCONは返還いたしますよ、こういうことでもう既に三十年近くまでなっています。嘉手納が主体的に管制をやって、そしてまた周辺には訓練空域が設定をされておる。同時にまた、那覇空港は自衛隊との共用である。加えて、島嶼県ですから、県民は全部飛行機で移動する。飛行機は、空路は県民の生活路線です。那覇空港を中心にして、こういう非常に複雑な航空管制が行われています。

 そういう意味では、航空管制そのものの見直し、先ほど区間の設定というようなこともありましたが、日本全体がきちっと日本の空は管制できる、こういう形に早くしていかなければいけないだろうと思います。

 そこで、当時のコーエン国防長官と河野大臣の間で、条件が整えば嘉手納RAPCONは返還をいたしますというお話がございました。そして、交通省としては、二人の管制官を沖縄に派遣して嘉手納RAPCONをいろいろ調査されたようでございますが、それに対する報告があったというふうに聞いております。この件についてお伺いしたいと思います。

泉副大臣 嘉手納RAPCONの問題については、委員御指摘のとおりに、昨年三月のコーエン国防長官の発言を受けまして、日米間で協議をしてまいりました。お話のとおりに、その協議に基づきまして、昨年の十月十六日から十一月十五日まで、嘉手納RAPCONにおける航空管制業務の実態の理解を深めるために二名の管制官を派遣し、今日まで議論をし、実態を見てまいりました。現在のところ、この状況を私ども報告を受けておる段階でございます。

 これから、国土交通省といたしましても、早期に返還ができますように努力をしていく予定でございます。

白保委員 今、副大臣から答弁ございましたが、これは、管制全体の見直し、区間の設定とかそういったお話は先ほどございましたけれども、その中で嘉手納RAPCONを加えてやることができますか。

泉副大臣 この問題は、航空管制全体の問題とは一応切り離して嘉手納RAPCONの問題には対処してまいりたいと思っておりまして、先ほど申しましたように、できるだけ早く、返還を急ぎますと同時に、当該空域における航空管制業務につきましては、国土交通省が一元的に実施することができますように努力をいたしたいと思っております。

白保委員 早期の、嘉手納RAPCON、そしてまた複雑な沖縄の空、安全、要するに県民の生活路線ですから、その辺の整理を早急に行っていただきたいということを申し上げまして、次に移りたいと思います。

 外務大臣、昨日外務省からも報告を受けましたが、きょう、沖縄の新聞を送ってもらいました。「海兵隊員が連続放火」、そして県警が逮捕状をとった、米軍が身柄引き渡しを拒否した。また、その新聞の中に、基地を維持していくことは危険水域に入った、「基地の維持は「危険水域」」、ここまで新聞で大きく報道されています。

 そこで、大臣もきょうはこのことを受けて、朝日新聞にも、大変遺憾である、こういうような談話が載っておりますが、実は、沖縄県で常々、県もそうですが、県議会もそうですが、一致して言われているいわゆる地位協定の見直しの問題です。

 十七条五項の(c)ですか。事件を起こした際に引き渡しを要求する。ところが、合同委員会で日本側から提案をして、そこで決まらなければ引き渡しはできない。起訴後に引き渡しをするけれども、直ちに引き渡しをしてもらいたい。そうしなければしっかりとした調べをすることはできない、こういうことで何度も言われています。

 運用面でと、こういうふうに外務省はずっと言ってまいりました。外務大臣、遺憾である、こういうふうにおっしゃるんですけれども、日本ではもう放火というのは凶悪犯です。こういう凶悪犯を直ちに捕まえて、そこで県警が調べることができない。毎日連れてきてはまた返す、こういうような状況が続いている間は、非常に海兵隊員に緊張感がない。

 この辺のことも含めて、この問題について大臣の見解を承りたいと思います。

河野国務大臣 昨日報告を受けましたが、正直またかという感じで、憤りを禁じ得ません。

 こうした沖縄の米軍の所業に対してどうすることが一番いいかということを高いレベルでも話をしなければならないというふうに考えております。私としては、今回のこの事件をいいかげんなことにするつもりは全くありませんし、この問題の処理については強い態度で臨みたいというふうに思っております。

 今議員がお話しになりました地位協定及びその運用の改善、いわゆる特別の場合というくだりでございますけれども、これについても我々ははっきりと決着をつけなければならぬということまで考えたいというふうに思っております。

白保委員 強い決意で臨んでいただきたい、こう思います。

 それで、先般、ヘイルストン四軍調整官はきのうで二回目の謝罪に知事のもとへ訪れていますが、その前に来られたときは、一回目の陳謝は何かというと、沖縄県議会が、海兵隊の削減も含めた、その前の少女わいせつ事件に対する抗議決議をやったことに対して、この抗議決議を、県議会の抗議決議ですよ、これを阻止できない知事やその他の市町村長はばかで弱虫だというメールを部下三十人に送って、大変大きな反響を呼びました。

 そういう中で、ことしに入ってもう既に幾つもの事件が起きているわけでありまして、このヘイルストン中将、四軍調整官に、日本の国の中にある自治体が抗議決議をした、それに対する知事の対応に対して、ばかだとか弱虫だとかそういうことを言われて、外務大臣、どういうふうに対応されましたか。

河野国務大臣 よき隣人関係をつくろうということでアメリカからこうした提案があって、我々としてもできるだけいい隣人としての関係を積み重ねていきたいというふうに考えておりますけれども、その沖縄のトップにある人のこうした問題については、実は正直唖然として口がふさがらないという感じでございます。かくも品位に欠けたやりとりが行われているか。これはもちろん電子メールで私的なものではございますけれども、私的なものの中であっても、こういうことが行われるということについては、我々として、本当によき友人関係というものがこれで築けるだろうかという気持ちすら持ちました。

 しかし、翌々日、ヘイルストン氏は、稲嶺知事を訪問されて、非常に謙虚にわびられた、自分の気持ちというものを率直に伝えられたということで、私は幾らか気持ちはおさまりつつはございますけれども、しかし、本当に真意が、本当に心の中できちっと整理をされたのかということについては、私どもにとって多少のわだかまりが残っているということは申し上げなければならないというふうに思っております。

白保委員 かつて、復帰前に、高等弁務官というのがいました。キャラウェイというすさまじい高等弁務官がいました。その方は、金門クラブという米留学帰りの人たちの集まりで、自治は神話なりと、自治というのはないんだということを当時の高等弁務官は言いましたが、沖縄県民は今度のメールで、軍人の体質というのは復帰しても復帰しなくても同じなんだなと、やはりそういう高圧的な形でもって物事に臨んでくるのかと、こういう非常に不快感と不信感を持っています。みずからよき隣人政策を進めながらみずから否定したような形になってしまったなと、非常に残念に思いますし、これは強い姿勢で臨んでいただきたいと思います。

 同時に、事件、事故が起きた後、必ず綱紀粛正、そしてまた再発防止、同時に隊員の再教育、こういったことが繰り返し言われてきました。そこで、今一番大事なことは、隊員教育をどうするのかということが、先ほど大臣からも高いレベルでの話し合いが必要だと。こういう協議が地元でも外務省沖縄事務所を通じてなされてきたと思いますが、本当にその再発防止、こういったことを、そういったガイドラインといいますか方向性というものをきちっと示すことができますか。

河野国務大臣 崩れかけているよき隣人政策というものをしっかりと立て直すためには、相当困難な仕事であってもやらなければならないと思います。私は、そのことを米当局にしっかりと伝えて、困難な仕事であってもこれをやらなければならぬということを申し上げたいと思っております。

 もちろん、我々日本政府もこれについてやらなければならないこともあると思いますし、また地元におかれても御協力をいただく必要もあるかと思いますが、いずれにせよ、このよき隣人関係はみんなでつくり上げるべきものでございます。その中で、とりわけアメリカには努力をしてもらわなければならぬというふうに思います。

白保委員 こういう中で、沖縄県議会の決議、また自治体の決議にもありますように、兵力削減というのが初めて県議会でも全会一致で項目に上がってきました。したがって、これを受けてヘイルストンは相当びっくりしたようでありまして、それがメールにつながっていくようですけれども、そういう中で、兵力削減の問題については、大臣、訪米される前に政府・与党との打ち合わせの中で私どもの代表からもそういった話があったかと思いますが、それはまた後にします。

 正直言って、ナイさんやアーミテージさん、この人たちが昨年の十月に出した報告書なども、沖縄の基地というのは、アクセスとして軍事的には必要だけれども、政治的には県民の負担を軽減しなければならないときに来ているんじゃないかというような提言もあります。あるいはまた、キャンベルさんも、海兵隊の訓練分散やあるいは県民の負担削減を必要とする時期が来ているということも言われています。

 同時に、何よりも在沖米軍が一番悩みとしているのは、彼らが満足する訓練の規模ではない、そういう中での訓練というのは非常に彼らには悩みの種であると言われています。これがまた皮肉にも、沖縄県民が何でこんな狭いところで訓練をするんだ、こう思っているのと一致するわけであります。

 そういう意味では、これは既にアメリカの中からも、米軍の中からもこういったことを示唆しているような形でありますから、削減についてこの辺の検討をしていかなきゃならないだろうと思いますし、その際に、最初の使用目的、五十年前と今では周辺が大分違ってまいります。その使用目的と現状というものを総点検していく必要があるんじゃないのか。SACOでやったと言われていますが、これは時代とともに総点検をしていかなきゃならない、そういう時期が来ただろう、こう思っております。

 その辺のことを、防衛庁長官でしょうか、外務大臣でしょうか、この総点検についてどのようにお考えか。

    〔委員長退席、自見委員長代理着席〕

河野国務大臣 最も大事なことは、周辺の国際情勢であろうと思います。中国を初めとする近隣諸国との関係が円滑に、しかも平和裏に推移するという状況であるかどうか、あるいは特別に問題を抱えた地域はないか、あるいは日本に対する強い敵意を持つ地域があるかどうか、そういったようなことが常時議論をされ、常時研究をされる必要はあるのだろうと思います。

 しかし、こうした国際情勢は流動的でもございますから、その流動的な状況のどこをとらえ、あるいは将来の展望でどこを見るかということなどについては、日米間で十分な検討をする必要があるだろうと思います。

白保委員 そういった軍事的なバランスの問題等もあろうかと思いますが、現実に提供施設として施設を提供して、現実に米軍ですら訓練の制約がある、こういうふうに言われているような状況というものは見直す必要があると私は思います。この問題で議論していますと時間がなくなりますから、改めてこの問題については議論をさせていただきたいと思います。

 そこで、返還跡地利用の問題があります。これも時間がありませんので、さっとお答えをいただきたいと思いますが、地位協定三条三項で、施設内の作業は安全に行わなきゃならない、こういうふうに規定されています。ところが、返還される際に、四条では、そのまま手を加えずに返還されてくる。そうすると、ついせんだってまで問題になっていました恩納通信所で、返ってきてみたらPCBの汚泥がいっぱいある。しかも、沖縄の基地の特徴は民有地がほとんどですから、返還された後これをどうするんだ、米軍はもう返しなさいというからそのまま返しました、これはたらい回しにされる。そういうことで、自衛隊が今預かっているわけですが、今後大きな返還の問題が出てまいります。

 そういった際に、こういった環境問題が大きく取り上げられることになってくると思います。返還跡地利用の問題と環境問題は今からしっかりと協議をしていかなかったならば、返還された後に民間が大変困ることになりますし、環境省がまたその取り扱いに苦慮しなきゃならない、こういうことになろうかと思います。したがって、その辺の返還跡地利用がスムーズにいくようにこの検討をすべきだと思いますが、いかがでしょうか。

斉藤国務大臣 先生には、環境問題についてただいま御質問をいただきました。

 米軍基地につきましては、米軍が、これら基地における環境の保全については、JEGSと言われる日本環境管理基準を作成いたしまして、これに基づいて厳格な環境管理行動をとっているものと承知いたしております。

 また、政府といたしましては、これまで米軍の活動に当たりまして、我が国の公共の安全や国民生活に妥当な考慮が払われるよう働きかけているところでございます。仮に、米軍から返還された民公有地につきましても、米軍の使用に起因する汚染が判明した場合には、当庁としては、賃貸借契約等に基づき、原状回復措置の一環として必要な調査をまず行いまして、適切に除去した上で土地所有者に引き渡すことといたしているところでございます。

 それから、返還の問題についてお触れいただきました。

 さらに普天間飛行場移設、返還を円滑に進めるためには、普天間飛行場跡地に関して、現在、駐留軍用地跡地利用の促進及び円滑化に関する方針、これが閣議決定をされておりまして、この方針に基づいて、跡地利用の促進及び円滑化等のための確実な実施を図るために設けられた跡地対策準備協議会というのがございまして、その場におきまして汚染物質除去を含む原状回復措置に関する検討がなされているところでありまして、その結果を踏まえ、必要に応じ、外務省と連携しつつ、日米合同委員会等の枠組みを利用して米側と話し合いを進めてまいりたいと思っております。

川口国務大臣 委員御指摘になられましたように、返還跡地の環境保全の問題というのは大変に重要な問題だと認識をいたしております。

 この環境保全の問題が行われ、跡地の利用が円滑に進むように、先ほど防衛庁長官から御答弁のございました跡地対策準備協議会というのがつくられておりまして、環境省はそのもとにございます連絡会議のメンバーの一員でございまして、環境の汚染の除去及びその回復がスムーズに進みますように全力を尽くして対処してまいります。

白保委員 最後になりましたが、橋本大臣、大変長い間お待たせして申しわけございません。

 御存じのように、アメラジアンの問題、大臣、大変詳しいかと思いますが、この問題について、教育権の問題やあるいはその後のアメリカへ帰った米兵からの補償の問題や、非常に多くの問題がございますが、現在、ついせんだってまでは内閣内政審議室の方で担当をして、沖縄担当でやっておられました。現状について大臣の方から御答弁をいただきたいと思います。

橋本国務大臣 長い御答弁は避けたいと思いますけれども、実は、この問題は今までに何回か違った年代層で問題を起こしてまいりました。

 当初、この二重国籍のお子さんたちに、我々が不用意に児童手当法、特別児童手当法に国籍要件を母親及び子供の双方に課しておりましたために、これが受給できないという失敗を犯したことが最初であります。その後、成人に達するにつれて、ベトナム戦争当時には徴兵の問題が再燃をいたしました。その当時とは、今問題の質は大きく変わっております。

 そして、昨年の五月の十四日、森総理が沖縄を訪問されましたとき、政府の取り組みは御説明を申し上げたとおりでありました。そして、その中で触れましたアメラジアン・スクール・イン・オキナワ、その早期の環境改善を図るべく、この学校の所在しております宜野湾市の行う事業に、補助事業として、沖縄懇談会事業の平成十三年度予算にこの対応を盛り込んでおります。また、その御家庭の問題の解決に資すべく、沖縄県女性総合センターの相談業務について、宜野湾市及び北谷町に相談窓口を開設して実施をいたしております。在沖米軍による相談窓口につきましても、現在、早期に開設するよう鋭意取り組んでおります。

 ただ、私自身、そのアメラジアンという言い方は好きではありません。この言葉はなるべくなくしていきたい言葉だと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

白保委員 以上で終わります。

自見委員長代理 これにて白保君の質疑は終了いたしました。

 次に、斉藤鉄夫君。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。

 まず最初に、福祉定期貯金もしくは福祉定期預金についてお伺いをいたします。

 障害者や遺族の方々を対象といたしまして、一般の定期預金より、また定期貯金より金利を優遇した福祉定期預貯金制度というのがございます。このパンフレットは福祉定期郵便貯金のパンフレットでございますけれども、年利四・一五%、一人三百万円までということでございます。障害者や、また遺族の方々、生活を利子収入に大きく依存されている方々にとっては大変、こういう低金利が続く中、生活をしのぐ光明の一つとなっております。

 この福祉定期預貯金、一般的に、所得能力の低い社会的、経済的な弱者に対する配慮として設けられたものでございますが、現在の景気の状況や金利の状況を考えれば、この福祉定期貯金の重要性はいささかも変わっていないと考えます。しかし、この制度は金融機関の負担で実施しているということで、金利負担が大きいとして、多くの銀行が取り扱いを中止してきております。

 そこで、まず、福祉定期郵便貯金につきまして総務大臣にお伺いいたしますが、この福祉定期郵便貯金の取り扱いが二月末で終了をいたします。ここにも、取扱期間、平成十三年二月二十八日水曜日までということで、あと二週間ほどで終わるわけでございますが、ぜひこの制度は存続をさせるべきだ、このように私は考えますが、どのようなお取り扱いをされるでしょうか。

    〔自見委員長代理退席、委員長着席〕

片山国務大臣 今斉藤委員御指摘のように、この福祉定期、私の方は郵便貯金、平成四年に始まったものでございまして、八回延長して今日まで来ている、大変関係の方には喜ばれている制度だと思いますが、今お話しのように、この二月末で一応期限が来るわけであります。

 私としては、ぜひ延長したい。今の状況で、斉藤委員御指摘のように、恵まれない方々にとっては大変な福音なので要望も強うございますから、ぜひ延長したいと思っておりますが、これは官民共通の商品でございまして、民間の金融機関もやることを前提に郵便貯金もやっている、こういうわけでございますから、民間の金融機関の動向を十分踏まえながら、ぜひ同じような条件で、四・一五%で引き続いてやりたいものだ、こう思っておりまして、その辺を十分勘案しながら検討して結論を得たい、こう思っております。

斉藤(鉄)委員 民間金融機関の動向を見ながらということですけれども、ぜひ郵便貯金としては続けていただきたいと思います。

 柳澤大臣、今そういう総務大臣のお答えだったんですが、調べてみますと、都市銀行は続けておりますけれども、ほとんどの地銀、第二地銀は昨年またおととし、これを中止しております。私は、これを再び復活して、また今の制度も二月二十八日で終わるわけですけれども、ぜひこれも続けていただきたい、そのように金融担当大臣として金融機関に対してお願いをしてほしい、このように思いますが、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 我々の方は預金でございますので、先生の御指摘は福祉定期預金ということになるわけでございますが、これは現在は、私どもの方は、民間金融機関のそれぞれの判断による、ただし、その判断によってこれを行うという金融機関について、他の預金等との間でいたずらな混乱が起こるということのないように、そういう意味で事務取扱要領というものを定めておる、現在こういう仕組みになっているわけでございます。

 ただいま先生から、二月の末でこれが期限が到来するけれどもその後どうするんだというお話があったわけでございますが、事務取扱要領としては、まあこれを継続するということがあってもいいのかなというような感じで、その中身はともかくとして、その枠組みとしては、もしやる金融機関があればこれが混乱するというのはよくありませんから、そういう意味で、検討をいたしたい、こういうように思っております。

 ただし、これを民間の金融機関にやるようにと呼びかけろ、こういうことについては、やや、私どもが立っている立場からいって、せっかくの先生の御提案でございますけれども、その御要望にはちょっと沿いかねるかな、このように考えます。

 いずれにしても、今先生御指摘のように、民間の金融機関の各自の判断で、これを取りやめているところもございますけれども、そういうところは、総じて言いますと、代替の商品、これはスーパー定期等に一%上乗せというような優遇の金利を付したものを同じく提供させていただいておりますので、そのような意味では先生の御趣旨には沿った行動がとられているということも申し添えておきたい、このように存じます。

斉藤(鉄)委員 片山大臣、柳澤大臣のお答えは以上のようなお答えだったんですが、しかし、郵便貯金の方はぜひ続けていただきたい、このようにもう一度お願いをいたします。

 御答弁をいただきたいのと、それに加えて、対象者が五百三十九万人いらっしゃる。しかし、実際に使っている方は百十八万人ということで、大変利用率が低うございます。障害者等大変お困りになっている方でございますから、預け入れるお金がないということなのかと思いますけれども、それにしてももう少し、四・一五%という金利でございますので、もし続けられるのであればもっとPRをしていただきたい、このように思いますが、この二点についてお伺いします。

片山国務大臣 今柳澤大臣から御答弁ありましたが、郵便貯金の性格上、先行するというのは、先に行くというのはなかなかこれはつらい立場に御承知のようにあるものですから、いずれにせよ、柳澤大臣なり金融庁なりと十分協議の上、できるだけいい条件で引き続き行われるように私どもの方は努力いたしたい、こう思います。

 それから、PRは言われるとおりなんですね。五百三十九万人対象がありまして、郵便貯金の方を見ますと六十六万人なんだそうですよ。そこで、何でそんなになるのかなと私も思うんですが、引き続いて延長ということになりますれば、テレビ、ラジオ、新聞、それから郵便局にポスターを張るとか、チラシを配るとか、全力を挙げたい、こういうふうに思います。特にマスコミの皆さんがもう少しPRしていただくということが私は必要かな、こう思っておりますから、そっちの方も十分努力してまいりたい、こういうふうに思います。

斉藤(鉄)委員 どうかよろしく御努力をお願いいたします。

 片山大臣、柳澤大臣、質問は終わりましたので、お忙しいようでしたら、どうぞ。

 次に、語学就学生への援助問題について質問させていただきます。

 JR新大久保駅での事故、イ・スヒョンさんの勇気ある行動が私たちに大変大きな示唆を与えていただいたわけでございますが、このイ・スヒョンさん、マスコミの報道では留学生、このように報道されておりますが、在留資格上の地位は就学生、語学就学生でございます。

 ほとんどの、特にアジアから来る留学生がほとんどこの就学生という過程を経ます。日本語を学んで、そして留学生になるわけです。このイ・スヒョンさんも、高麗大学の学生さんでしたけれども、将来日本への留学を目指して、日本語学校で就学生として日本語を学んでいたわけでございます。

 ところが、この就学生に対しては、留学生に適用されるいろいろな支援、例えば授業料の消費税が免除されますとか、通学のための定期券に学割が適用されますとか、奨学金があるとか、そういう支援が一切ないというのが現状でございます。

 しかし、今就学生は全国で二万一千人いらっしゃるそうですが、その中のわずか百人に就学生学習奨励費というのが、昨年から、わずかですけれども援助されることになりました。その「就学生学習奨励費ありがとうございました」という文集が届けられまして、私、それを読ませてもらいましたけれども、まさしく涙が出るような状況でございます。

 ちょっと一部読ませていただきますと、「向こうにいた時から留学生活で一番辛くて難しい時期は日本語学校で勉強する就学期間だと先輩から聞いていました。」定期券、奨学金などいろいろな面で援助がないと。それで、学習奨励費がもらえた。「それは、私が夢を叶えるための大きな援助です。それで自分がやりたいことが少しずつできるようになりました。その中でも一番うれしかったのは昔からほしかったけれど買えなかった中日、日中辞典を手に入れたことです。あの日うれしさのあまりその二冊の辞書を胸にしっかり抱きながらベッドに入りました。」「就学生学習奨励費に対する感謝の気持と共に、これからも援助を広げていってくださるようお願い致します。」こういうものも届いております。

 それほど就学生に対して援助が全くない。しかし、この方々はいずれ留学生になり、お国に帰ってからその国のリーダーになられる方でございます。留学生援助とともに、こういう就学生への援助もしなければ、私は少しへんぱなのではないかな、このように思うわけでございます。

 その中で特に要望が強いのが、通学に使っている通学定期、通勤定期の学割適用でございます。非常に経済的に苦しい中で頑張っているので、皆さんかなり郊外に、家賃の安いところに住んでいらっしゃる、そして電車賃を払って都心にある学校に来ているわけですけれども、これに学割がきかない、ぜひこの学割を適用してほしいということで、昨年もこの問題を取り上げました。参議院で取り上げて、ぜひ就学生に対する学割適用をやるべきではないか、このように参議院の交通・情報通信委員会でもあったのですけれども、これに対して当時の二階運輸大臣が、在留資格ということで臼井法務大臣からも同様の要請を受けている、事務的な検討を指示しているが、なお一層の努力をするというふうに答弁が昨年なされているわけですが、その後の検討状況がどのようになっているのか、国土交通省にお伺いします。

泉副大臣 就学生の皆さん方に大変つらい思いをしながら努力をしていただいておることは、今、先生の文集の御紹介でもよく承知をしておるところでございます。

 昨年の参議院の委員会で、二階運輸大臣から、なお努力をしようというお答えをさせていただきました。そのお答えに従いまして、当時の運輸省といたしましては、JR等関係機関に対して検討してほしいということを申し入れたところでございます。しかし、正直申し上げまして、なかなか状況は厳しいというのが実態でございます。

 申し上げるまでもなく、学生通学定期の割引というのはそれぞれの交通機関の自主的な判断でなされるということでございまして、この割引をするということになれば、その交通機関の自主的な経営努力、そしてまた一般の方々にも御負担をお願いしなければならないということが今日の状況でございます。

 通学定期の割引率を小さくしたいとすら思っておるような関係機関の経営の状況からしまして、これを実現するということはなかなか難しい点がございますが、国土交通省といたしましては、なお一層努力をしてみたいと思います。

斉藤(鉄)委員 交通事業者の自主的判断だということはよくわかります。であるならば、国としても、留学生支援と同様な形でこの就学生支援ができないのか。

 扇大臣と町村大臣にお伺いいたしますけれども、必要な予算が、はっきり申し上げてそんな大したことないのです。二万一千人、それから一人当たりの通学費の平均が月五千五百円だそうです。割引率を三〇%といたしまして、夏休み、冬休み等を除いて十カ月、これで二億八千万円というお金でございます。

 この就学生一人一人は、先ほど申し上げましたけれども、将来、その国のリーダーになる方々でございまして、日本に学んでよかったというためにも、何らかの政策的な支援はできないのかな、このように思います。

 また、文部省が、平成九年一月の文部大臣の要請を受け発足した留学生政策懇談会、その最終報告の中でも、「日本語学校の学生の多くは、我が国の高等教育機関への進学を目的としている。しかし、これらの学生に対する奨学金などの支援措置は、公的レベルにおいても民間レベルにおいてもほとんど設けられていない。このため、日本語学校の学生にも配慮した一貫した施策を展開する必要がある。」このように留学生政策懇談会が文部大臣に答申を出しているところでもございます。

 このような中で、ぜひ国土交通大臣、文部科学大臣の御決断をいただきたいと思いますが、お二人の御答弁をお願いします。

扇国務大臣 日本に学んでくれるという学生さんは将来の宝だろうと思っておりますし、今、斉藤議員がおっしゃるように、皆さん自主的に日本に来てくださる。ほとんどの人が、今アジアもアメリカへ行ってしまうというようなことも多い中で、日本を理解してくださるという方は、私は二十一世紀、大事な人材であろうと思っております。

 今、副大臣から申し上げましたように、輸送力の強化ということ、あるいはバリアフリー化等々、まだ日本の交通状況の中で施策をしなきゃいけないものが多々ございまして、そこまで私どもも、各事業者間での話でございますので、国からそれをどうこうしろと言う資格はございませんけれども、今斉藤議員がおっしゃいましたように、わずかな金額で済むではないかというお話がございまして、金額の有無ではなくて、少なくとも、国土交通省としましても、交通事業者に対しまして引き続き検討するようにと言うことまでは私は最大限の努力ができると思っておりますので、そうしてまいりたいと思っております。

町村国務大臣 就学生への国の支援ということでございます。なかなか、JRが絡んできますと、政府の方からあれこれと言うことも難しい点もあろうかと思います。

 先ほど委員お触れをいただきましたけれども、就学生への学習奨励費が平成十二年から始まりまして、十三年は、これもささやかでございますが百人を百五十人ということで、五十人ふやすというようなことで努力はしていきたいな、こう思っております。ただ、全体の人数から比べるといかにも微々たる数字であるというおしかりを受ければ、それまでかなと思います。

 いずれにいたしましても、できるだけ就学生の皆さん方が安んじて日本で学べるような環境整備は、いろいろ努力をしていきたいと考えております。

斉藤(鉄)委員 引き続きの努力をよろしくお願いいたします。扇大臣、これで終わります。

 最後に、総合科学技術会議について、笹川担当大臣と町村文部科学大臣にお伺いします。

 以前は、省庁再編前は総理府に科学技術会議というものがございました。そして、その下に科学技術庁長官があって、科学技術庁長官がある意味では調整官庁として科学技術政策を見るということで、ある意味ではわかりやすかったわけでございますが、今回は、内閣府の中に総合科学技術会議ができた。笹川大臣が担当大臣になられた。そしてまた町村文部科学大臣もいらっしゃる。よくわからなくなったという声を聞くのですが、この新しい総合科学技術会議の役目について、また担当大臣の役目について、わかりやすくお願いいたします。

笹川国務大臣 斉藤委員にお答えいたします。

 御案内のように、総合科学技術会議は今度内閣府に置かれました。経済財政政策と並びまして国家運営のかなめであります科学技術政策について、自然科学、そして人文・社会科学を総合した科学技術を対象としております。

 科学技術の総合的かつ計画的な振興を図るための基本的な政策、いわゆる総合戦略と申しておりますが、これをいたします。科学技術に関する予算、人材等の必要な資源の配分、人、物、金ですね、資源の配分の方針を立てます。それから、国家的に重要なプロジェクトに関する評価をいたします。

 それら戦略的な事項につきましての調査審議を行うことも今回はやらせていただきます。そして、総理大臣等の諮問に応じて調査審議をすることもいたします。また、諮問を待たずに、総理大臣に直接、総合科学技術会議の方から意見を申し上げることができる、こういうふうにもなっております。

 そういうことを考えますと、科学技術会議に比べまして、機能は格段と充実されたというふうに考えております。

 なお、人員等につきましても充実されておりますし、政策統括官という新しい職場の人も私の下に参っております。また、閣僚等につきましても、総理大臣が指名をし、総理大臣のリーダーシップができるようにということも考えられております。

 従来の科学技術庁の長官は、科学技術に関する事務の総合調整の役割、そして原子力、宇宙などの国家的に重要な研究開発の推進や、多数部門の協力を要する総合的研究等の推進を図る実施官庁ということが役割でございます。

 私どもの方は、今度の担当大臣といたしましては、内閣総理大臣を助けまして、政府全体の見地から、各省庁の上に立ちまして、科学技術政策を企画立案、そして総合調整を行うことにいたしておりますので、そういう意味では、今までの縦割りから横の整合性を図り、また国民の税金が正しく使えるようにこれを調整していくということの役目を持っております。特に、総理大臣のリーダーシップのもとに施策の実施をしたい、この辺が相違点でございます。

斉藤(鉄)委員 総合科学技術会議、総合という文字がつきました。人文も含めて、科学技術庁は、科学技術庁長官はこれまでいわゆる実施官庁だったけれども、それより上位のものとしてこの総合科学技術会議が置かれ、その担当大臣としての科学技術政策担当大臣がある、こういうことだと思います。頭ではわかるんですが、これはなかなか、実際に一つ一つの政策を考えたときにまたいろいろごちゃごちゃしてくるかと思うんですが。

 同じ質問を笹川大臣と町村文部科学大臣にさせていただきますが、総合科学技術会議と文部科学省の関係、それから科学技術行政における笹川大臣と町村文部科学大臣の役割分担、役割の違いについて、それぞれどのように御認識されているか、お伺いします。

笹川国務大臣 委員が、頭の中ではよくわかるんだけれども、非常に国民にわかりにくいから詳しく説明をしろ、こういうことでございますが、今もちょっと触れさせていただきましたが、内閣府という新しい名前ができました。そこで総理大臣の指示のもとに私が総理大臣を補佐して行っております。

 実は内閣府では、行政各部の施策の統一を図るために、政府全体の科学技術の総合的かつ計画的な振興を図るための基本的な政策、先ほども総合戦略と申しましたけれども、総合戦略の企画立案及び総合調整を行うのが内閣府の大きな役目でございます。

 そこで、今委員も触れられましたように、総合科学技術会議は何をするんだと。御案内のように、内閣府に置かれる重要政策に関する会議の一つとして、科学技術の総合戦略、科学技術に関する予算それから人材等の資源配分の方針についての調査審議を行い、総理大臣及び関係大臣にこれを示します。そのことによって、科学技術政策が国全体として統一した方針が示せる。今まで縦割りで各省庁が科学技術庁と話をしてやっておりましたけれども、今度私どもの方で各省庁の、文部科学省だけじゃなくして、各省庁の科学技術に関することの統一を図っていきたい。

 一方、文部科学省は、総合科学技術会議が示す総合戦略に沿って、私らは総合戦略を立てます。これから二十一世紀に向かってどういう科学技術の進歩をしていくことがいいのかということの総合の枠を示しますので、文部科学省はその実施部隊として、その戦略に沿って、科学技術に関する基本的な政策の企画立案及び推進、研究開発に関する計画の作成及び推進、科学技術に関する関係行政機関の事務の調整等を行います。

 こういうふうになっておりますので、軍隊の話をするとちょっとおかしいんですけれども、参謀本部的なところは私の方で、文部科学省の方は、それの大きな枠が決まった中で細部について詰めていきながらそれを実施する実施部隊だ、こういうふうに御理解をいただけるとありがたいと思います。

町村国務大臣 かつて科学技術庁の政務次官として、大変厳しい状況のジェー・シー・オーの事故等の折に、斉藤委員には大変な力を発揮していただいたこと、今でも科学技術庁にしっかりと語り伝えられておりまして、今後ともまた御指導いただきたいと思っております。

 今、大きなフレームワークは笹川大臣が御説明をしたとおりでございまして、総合戦略を総合科学技術会議でつくっていただく、それを受けて文部科学省は、その戦略に沿った形で、個別分野に関する具体的な研究開発計画をつくったり、あるいは各省が科学技術予算の概算要求を行う際の見積もり方針、そういったものを調整してつくったり、あるいは研究開発の実施を行う、一言で言うと、今、笹川大臣が軍隊に例えて言われたような、そういう役割分担になるのかな、こう思っておりまして、いずれにしましても、私としては、笹川大臣とよく連携協力をしながら、また、より高い立場で総合戦略をおつくりになる笹川大臣の御意見もよく承りながら、文部科学省としてはしっかりと仕事をしていく、こう思っているところであります。

斉藤(鉄)委員 二十一世紀の日本にとって、科学技術は本当に我が国の生命線だと思います。よろしくお願いいたします。

 終わります。

野呂田委員長 これにて斉藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、松浪健四郎君。

松浪委員 保守党の松浪健四郎でございます。

 質問をさせていただきます前に、一言おわびの言葉を申し述べさせていただきたいと思います。

 昨年の臨時国会におきまして、私のとった行動は、院の品位を汚し、そして国会を混乱させたということで、懲罰委員会にかけられまして、登院停止二十五日間という処分を甘受させていただきました。国民の皆さんと議員各位に対し、心からおわびを申し上げたいと思います。心を新たに、政治家としてこれからも一生懸命努力をさせていただきたい、このようにお誓いを申し上げたいと思います。そして、早速、きょう、こうして予算委員会で質問の機会を賜りましたことをも御礼申し上げたい、こういうふうに思うものであります。

 それでは、質問に入らせていただきたいと思います。

 ブッシュ・アメリカ大統領は、ジョージア州の米軍基地で行った演説の冒頭で、悲劇的事故で行方不明になっている人々のために祈ってほしい、行方不明者とその家族、我々の友人である日本国民のために祈りをささげよう、このように呼びかけられました。この思いを真摯に受けとめさせていただきたい、こういうふうに思います。

 事実は小説よりも奇なり、このように申しますけれども、過日のハワイ・オアフ島沖での宇和島水産高校の実習船の事故はまさにそのような事故ではなかったか、こういうふうに思うわけであります。

 負傷された皆さんの一日も早い御回復を御祈念申し上げ、そして皆様方にお見舞いを申し上げたい、このように思いますと同時に、いまだ行方不明になられております九名の皆様方が本当に無事であられますように、私は心から願いますし、恐らく国民の願いであろう、こういうふうに思うわけであります。アメリカ政府はもちろんのこと、我が国政府も可能な限りの手を尽くして、この人たちを救っていただけますよう、心からお願いを申し上げます。

 そこで、全国に水産高校は幾つあるのかと申しますと、四十七校ございます。そして、都道府県単位で実習船として四十隻ございますし、三百トンを超える船は三十隻でございます。

 水産科にはおおむね、漁業あるいは機関という二つのコースがありまして、ここの卒業生はもちろん海の男として活躍をしてくださるわけでありますけれども、どうしても、日付変更線を越える実習を得る、そして海技士の資格を得なければなかなか就職することができない、こういう現実がございます。

 日付変更線を越えるということは、これはやはり高校生からすれば大変な航海であることは多言をまつまでもございませんけれども、これが毎年どの水産高校でも行われ、そして、大体ハワイの近海が使われております。まず第一に、日付変更線を越えるということと、もう一つは、ハワイの近海が比較的安全な地域であり、もしものことがあれば、アメリカの沿岸警備隊に連絡をすれば、すぐにヘリコプターが飛んできて救助してくれる、そういうような一面もあってあの海域が使われる、こういうふうに言われております。

 そこで、出発される生徒たちはどのような手続をして行っているんだろうかということを、私は今回の事故から思うようになったわけでありますけれども、高等学校まで通学している生徒児童というのは、大体日本体育・学校健康センターの保険に入っております。これは、全日制の生徒であるとかあるいは定時制の高校、これらは掛金が異なってまいりますけれども、死亡時には二千五百万円もらえるというふうになっております。

 しかし、この二千五百万円だけでは、事故が起こったときにいろいろなトラブルが生じる、保護者の皆さんもこれでは納得しない、そういうような関係から、各都道府県はおおむね自分たちで一つの組織をつくって、保険のかわりにされております。例えば神奈川県であるならば、安全振興会というようなものをつくられて、生徒の掛金が千二百円で、死亡時一千七百五十万支払うというような形になっております。

 したがいまして、もし学校で、あるいは通学時、いろいろなトラブルがあったり、事故があったり、また疾病の関係等で死亡されたということになりますと、おおむね四千二百五十万円前後のお金が保護者に支払われるという形になっておりますけれども、この水産高校の場合、遠洋航海に出るわけですから、若干の危険が伴うというようなことで、民間の保険会社におおむね三カ月間ぐらいの保険を掛ける。大体掛金が六千六百六十円、そして死亡時には五百万円もらえるという形になるわけですから、水産高校の実習生がもし万が一死亡した場合には、約五千万弱のお金が保護者に支払われるというような形になっておるわけであります。

 そこで、この額が十分であるのかないのかという議論は横に置きましても、私たちは、人権という問題、そして人の命という問題をそう軽々に扱うことはできません。これらのことを十分に心しなければならない、こう思うわけであります。

 昨年の末、教育改革国民会議の最終報告が出ました。教育を変える十七の提案、これがなされたわけであります。そして、それに基づいて文部科学省はこの国会で学校教育法の一部を改正する、非常にありがたいことだ、こういうふうに私は思っておりますけれども、その中で、小中高校生に奉仕活動をさせる際の根拠として、社会奉仕体験活動、自然体験活動などの充実に努めるものとするとの条文を学校教育法に新たにつけ加える、こういうふうに言われております。

 それは、小学校で二週間、高校で一カ月とされる奉仕活動でございまして、教育の目標を定めている学校教育法第十八条に新たな条文を追加して実現を図る、こういうことでございますけれども、奉仕活動をする、つまり、学校から出ていっていろいろな活動をされるわけであります。ということは、やはりリスクについて文部科学省は心しなければならないのではないのか。その大きなリスクを背負う、そして保護者が安心して奉仕活動に子供たちを参加させる、そういうふうに考えなければならない。私は、今回のあの実習船の事故で、そのように思っておるわけであります。

 大臣に、それらのことについてどのようにお考えでいらっしゃるのか、まずお尋ねしたいと思います。

町村国務大臣 学校における教育活動を実施するに当たりまして、児童生徒の安全に十分に配慮をする、その重要性は今委員御指摘のとおりであると思っております。

 しかし、いろいろなケースで確かに不幸にして事故が起きる場合、今回のケースなどもそうでありますが、その場合に、保護者の負担を軽減する、また、学校教育の円滑な実施に資するために、今まで日本体育・学校健康センターにおいて治療費の一部を負担する等の災害共済の給付を行ってきた、これも先ほど先生御指摘のとおりでございます。

 したがいまして、今回の事故についてどうかといえば、当然この給付の対象になってくるであろう、こう思っております。給付の額は、これは実際にその生徒の治療に係る負担の状況等を勘案して決まってくるということであろうと思いますが、いずれにしても、学校の設置者であります愛媛県からの申請を待って的確に対処していきたいな、こう思っているところであります。

 いずれにしても、先ほどお話しのとおり、これから水産のみならずいろいろな形で奉仕体験等々をしていくということになりますと、確かに学校の中にいるよりはリスクがふえてくるかもしれません。そうした面にも十分対応できるように、今後、この日本体育・学校健康センターの事業を充実していく必要があるだろう、こう思っております。

松浪委員 体育・学校健康センターだけの保険で十分なのか。私は、ある程度リスキーなことを恐れることなく、奉仕活動をより有効的なものにしていくためには、これは文部科学省もある程度の財政的負担を考えておかなければ、十分にできる、こういうふうに思わないものであります。

 そこで、教育改革国民会議の報告の第四章に、「新しい時代に新しい学校づくりを」というところの「教師の意欲や努力が報われ評価される体制をつくる」、このように書かれてありまして、その中に、「専門知識を獲得する研修や企業などでの長期社会体験研修の機会を充実させる。」つまり、先生を外に出して社会体験をさせる。非常にありがたいことだ、また、必要なことだというふうに認識するわけですけれども、これもそこに、外に出すわけですから、私は、リスクを背負う、こういうふうに思います。そのためには、それらのことも文部科学省は心しておく必要がある、こういうふうに考えるものであります。

 時間がございませんので答弁はいただきませんが、とにかく、外へ出して体験を積ませる、経験を積ませる、奉仕をしてもらう、それらのことは貴重なことであるがゆえに、それなりの対応、これを文部科学省は心すべきだということをお願いしたいわけでございます。

 次に、外務省は機密費の流用疑惑で大変苦しんでおられるわけでございます。そして、これらの問題は、外交工作や情報収集が本当の使途であり、その性格上公開すべきものではない、こういうふうに私は思っておりますし、今回の一件は、我が国の外交基盤を弱めただけにとどまらず、国益を損なったのではないのか、こういうふうに思っておるわけであります。

 そこで、お尋ねしたいのは、実は外務大臣は、我が国が国交のない、承認をしていないアフガニスタンの和平の問題に非常に熱心に取り組んでくれております。このことにまず敬意を表したいと思いますし、しょっちゅうアフガニスタンの、タリバーンと呼ばれる政府側の人間、また反政府側の人間、また亡命をされている人たちをこの国にお招きをし、和平の方法についていろいろと工夫され、研究をされております。

 恐らくこれらのお金はいわゆる外務省の機密費で賄われているのだろう、こういうふうに思っておりますけれども、そんなことをお尋ねしたいのではございませんで、このアフガニスタンとアメリカは険悪な状況にあります。それは、数年前にアメリカが、スーダンとそしてアフガニスタンのジャララバードというところにミサイルをぶっ飛ばしました。その理由は、アフガニスタンが国際的なテロの親玉と言われるオサマ・ビン・ラディンをかくまっておるからけしからぬということであります。

 ところが、そのアメリカが、寒波でアフガニスタンのヘラートという地域一帯の難民が凍死をされた、餓死をされたということについていち早く物資の援助をされました。私は、大統領がかわった、そしてスタッフがかわったことによってアメリカが外交上方向転換をしているのか、こういう思いもありますけれども、もちろん人道上の問題もあるのでしょうけれども。我が国は、インドのあの地震には援助を素早くいたしました。ところが、いまだこのアフガニスタンについて、和平を熱心に進められておられる外務大臣の方からアフガンの支援をやるというような声を聞かないのであります。

 国連は大島次長を調査に派遣する、そして、その結果をもってまた国連はどのような形で支援していくかを決めるというふうに言われております。この支援の策についてお尋ねをしたいと思いますし、同時に、昨日、モンゴルのエンフバヤル首相御夫妻が我が国を御訪問されました。モンゴルも大変な寒波で、たくさんの家畜が死んで、牧畜民たちが困っておることは御案内のとおりでありますけれども、これらについても、我が国はどういう姿勢で支援をされているのか。この二つをまとめてお尋ねしたいと思います。

河野国務大臣 いつもながらアフガンの問題について大変関心をお持ちいただいて、政府に対して御注意をいただく、あるいは督励をいただいておりますことをお礼申し上げたいと思います。

 今、松浪議員からお話がございましたアフガニスタンの寒波による被害というものには、私どもも大変憂慮しておりまして、強い関心を持っております。

 今お話しのように、政府としてどういう対応ぶりをするかということについて検討をいたしておりますが、少し遅いではないかというおしかりをあるいはいただくかもわかりませんが、今お話の中にございました、日本から国連に出しております大島賢三国連人道問題担当事務次長がちょうど十四日からアフガニスタンを訪問するということになっておりまして、この大島担当事務次長の報告を我々としては一番強い関心を持って見ているところでございます。

 他方、議員がおっしゃいましたように、アメリカによりますアフガンの支援は、アメリカのUSAIDは、アフガニスタンにおける人道状況の悪化及び右に伴う避難民のパキスタンへの流入に対して、計七百五十のテント、一万五千枚の毛布、さらにプラスチックのシートあるいは飲料水、こういったものを緊急援助いたしております。一説にはヘリで投入をしたという報告も聞いておるところでございます。

 こういうことで、我が国といたしましても、今申し上げました国連人道問題調整事務所が、本年二月五日の情勢報告で、紛争の長期化と干ばつに加えて今度は寒波だということで非常に状況は悪い、深刻だというふうに伝えてきておりまして、同国の人道状況というものに強い関心を持ち、今申し上げましたように、大島担当次長を筆頭といたします国連の調査の報告について、その状況を十分聴取したい、注目したいと思っております。

 また、モンゴルの問題についてもお話がございました。これは昨年に続いてと言っていいのでしょうか、モンゴルでは約六十万頭の家畜が死亡するなど深刻な雪害に見舞われております。我が国は、こうした状況に対応するために、食糧、医薬品、発電機、燃料など、雪害の被災者の生活必需品及び家畜用の医薬品、飼料などを供与するため、これは昨年の十月でございますが、モンゴル政府に対しまして約十億円の緊急無償援助を実施いたしております。しかし、さらに雪害の深刻化が予想される地域に対しましては、我が国NGOによって供与される医療、食糧などの輸送費を草の根無償資金などによって支援をしたい、こう考えております。

 今お話がございましたように、ちょうどエンフバヤル・モンゴル首相が昨日から訪日をしておられまして、首相との間で首脳会談、あるいは私どももお目にかかって、どういう支援策が最も効果的であるか、先方の御希望等もよく伺って対応をしたい、こう考えております。

松浪委員 できるだけ可能な限りの御支援をお願いしたい、こういうふうに思います。

 ついでに、外務大臣にもう一つお尋ねしたいのですけれども、これは、亡くなられました小渕総理が外務大臣のときよりずっと熱心にアフガンの和平のために御尽力をしていただいて、今日に至っております。そして大臣は、イスラム研究会を立ち上げられまして、中近東及びイスラム諸国の問題について熱心に勉強されております。

 私も、イスラムの国々に対して興味を持つ者の一人として関心を抱かせていただいておりますけれども、このアフガンの和平は、なかなか一筋縄ではまいりません。これからも根強い努力、これを必要とすると私は考えておりますけれども、このアフガンの和平について、これから大臣はどのように努力されようというお考えでいらっしゃるのか、お尋ねしたいと思います。

河野国務大臣 テロ組織との関係等がございまして、なかなか難しい状況でございます。また、アフガニスタンの国内におきます勢力争いといいますか、非常に厳しい対立が続いておりまして、タリバンがおおむねその力を全土に発揮しているというふうにも聞いておりますけれども、我々としては、何らかのチャネルを通じて、先方の状況というものをできるだけ正確にキャッチする必要があるだろうというふうに思っております。

 カブールの大使館も閉めたままでございまして、これらのチャネルをいつあけることができるかということについても真剣に考えておりますが、私としても、カブールへ外務省の人間を出す以上は、安全の保障といいますか、安全の見通しというものをやはりしっかり立てなければならぬというふうに思っておりまして、そのためにも、情報をできるだけ集める、あるいはまた先方の責任ある立場あるいは実行力を持つ人の話というものをしっかりと聞かなければならぬ、そのために努力をしてまいりたいと思っております。

松浪委員 ありがとうございます。

 次に、平沼大臣にお尋ねをさせていただきたいと思いますが、洪水的な中国からの繊維類の輸入によって、我が国の繊維産業は青息吐息の状況にあります。しかし、いい品物が安く我が国の消費者に提供される、いいことではないのかという考え方も当然ございますけれども、しかしながら、さきの国会でも総理がおっしゃいましたように、繊維産業は我が国の基幹産業の一つであります。だとしたならば、これらの産業が国際競争力をつけるまでに何とかしなきゃいけない、そのためにはセーフガードを発動さすべきではないのか、こういう議論があちらこちらからございます。

 それらのことについて、大臣は、もし申請があれば十分に検討をし、そして、手続がなかなか複雑なようになっておりますけれども、発動する、そういう意気込みがあるのかないのか、お尋ねしたいと思います。

平沼国務大臣 お答え申し上げます。

 繊維のセーフガードにつきましては、WTOの繊維協定の中で認められております。そこで、経済産業省といたしましても、国内の規定の整備をいたしているところでございます。

 具体的に申し上げますと、今御指摘の輸入の急増、そしてそれが国内産業に甚大な被害を及ぼす、そしてまた消費者、ユーザーのそういった観点からも総合的に判断をして、発動の是非、これを検討する、こういうことになっています。

 そして、国内規定についてちょっと申し上げますと、今御指摘のやりやすくするということで、去る一月には、構造改善の見通しを策定しろ、こういう難しい規定がございましたけれども、これをなくしました。そういうことで、やりやすくさせていただきました。

 今繊維のセーフガードについては、具体的に申し上げますと、タオル業界で大変な甚大な被害が出ているということで、今このセーフガード発動要請、これの検討が始まっているということを聞いております。

 そういうことでございますので、経済産業省といたしましても、総合的に勘案をして、そしてそれが必要と認められれば、これはWTOの中でも協定上認められていることでございますので、それは迅速に対応していきたい、このように思っております。

松浪委員 ありがとうございます。

 私は、この国の繊維産業を保護しなければならない。同時に、国際競争力をつけなければならない。その猶予期間としてセーフガードは三年間でございますし、輸入の数量を制限するものでもございませんので、前向きに対応していただきたいということを心からお願いしておきたいと思います。

 最後に、法務大臣にお尋ねをしたいと思います。

 さきの国会から、私は、公明党の冬柴幹事長とともに、永住外国人の地方参政権付与法案の提出者になっております。この法律は、私は平成の黒船である、こう思っております。我が国は、民主的に我々の心を開くのか、それともそのままに閉じておくのか、こういうのを迫る法律である、こういうふうに認識をしております。

 この法律が議論されている中で、それならば、永住外国人の国籍が容易に取れるようにすればいいではないかという議論がいろいろなところから高まってまいりました。非常にありがたいことだというふうに思うわけでありますけれども、とにかく、現在国籍を申請するというのはなかなか手続が面倒である。あるいは、申請する人のプライドに傷がつく、いろいろな面がございます。

 そこで、与党は国籍法について勉強しようということで、プロジェクトチームを立ち上げました。私もそのメンバーの一人でありますけれども、これは、もしかしたならば、戦後処理の問題として扱うべき問題ではないのか。これは、議員立法として国籍法の一部を改正して、容易に日本国籍を取れるようにすべきものなのか。私は、むしろ閣法として、我が国が堂々とやるべきではないのか、こういうふうな思いを持つ者でありますけれども、これらについて法務大臣はどのようにお考えでいらっしゃるのか、お尋ねさせていただきたいと思います。

高村国務大臣 特別永住者の方たちが日本に住むようになったのはそれなりの歴史的経緯等々があるわけでありますから、今取り扱いとして、法定条件さえ備えれば速やかに帰化を許可するという取り扱いをしているわけであります。

 一般には、法定条件が整った上で法務大臣が裁量で帰化を認めるか認めないか決めるわけでありますが、特別永住者の方は法定条件さえ整えば認めるという方針をとっているわけであります。

 さらに、その法定条件をもっと緩和したらどうかとか、あるいは届け出制にしたらどうだとか、こういう議論があるわけでありますが、こういったことを決めるのは、やはり国民の世論、動向を見きわめた上で決めていかなければいけない、こう思っているわけであります。

 そして、まさに国民の代表者であるところの与党三党の方たちがプロジェクトチームをつくってこのことを検討していただいているのは、大変ありがたいことであります。この意見の動向、そういったことを注意深く見ながら法務省としても適切に対処していきたい、こう思っておりますが、議員立法だからといって、国家が堂々と決めたことにならないということではないのだろう、私はそう思っております。

松浪委員 時間が参りましたので、これで終わります。どうもありがとうございました。

野呂田委員長 これにて松浪君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    正午休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二分開議

野呂田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。五十嵐文彦君。

五十嵐委員 民主党の五十嵐文彦でございます。

 私は、本日、経済、財政、行政改革の諸問題について、政府のお考えをただすという立場でやってまいりたいと思います。

 質問通告をいたしておりますけれども、大変重要な問題ですので、質問通告以外の質問もあるかと思いますが、細かい質問はいたしません、政治家として、国を引っ張るリーダーとしてのお考えをちょうだいするという立場でございますので、よろしくお願いをいたしたいと思います。

 まず最初に、宮澤財務金融大臣にお尋ねをいたしますけれども、ザ・ワールド・コンペティティブネス・イヤーブック二〇〇〇というのがございます。世界の競争力年次報告書とでも訳すのでしょうか、割といろいろなところで引用されていますので、御存じかと思います。

 この年次報告書によりますと、日本の潜在競争力は、二〇〇〇年で十七位でございました。九〇年は三位でございました。九〇年から二〇〇〇年まで、この間に、三位から十七位に一貫して落ちてきているわけでございます。

 この報告書の中で、日本についてコメントがあります。自動車、銀行など、伝統的、基幹的な産業分野でのニューエコノミー対応がおくれているというのがその主なコメントの内容でございますが、この潜在競争力の低下について、宮澤大臣はどのような感想を持ち、その原因は何とお考えになるのか、簡潔にお答えをいただきたいと思います。

宮澤国務大臣 簡潔にともし言われますならば、新しい、いわゆるニューエコノミーと言われる二十一世紀の経済の流れに、かつて繁栄を来した我が国の経済体制そのものが、アジャストするのに非常な苦労をしている。私は結果には楽観的でございますけれども、アジャストするのに今非常な苦労をしているということだと思います。

五十嵐委員 それは一つの大きな一面だと思います。

 アジャストするのに苦労しているというより、国全体があるいは経済全体が、このIT化、高度情報化あるいは金融の国際化、これに関連していますけれども、それに対する認識が誤っていたという面があるのだろうと思いますが、後でお話をさせていただきます。

 日本のこの失われた十年と言われる期間、経済の一貫しての低迷ということに対しては、私は、一番大きな問題点があるのは不良債権の問題だろう。これが大きく足を引っ張っている。景気対策に追われて、こうした国際化あるいはIT化への、ニューエコノミーへの対応がおくれた、構造改革がおくれたというのがやはり大きな原因ではないかと考えるわけであります。

 それでは、これだけ時間をかけた不良債権処理がどうなっているのかということなんですが、かなり進んできたという認識もあると思うのですが、現時点で全金融機関の不良債権は一体どれぐらい残っていると柳澤大臣はお考えになるのか、伺いたいと思います。

柳澤国務大臣 不良債権につきましては、かねてここで申し上げておりますように、三つのメルクマールというか、物差しでもって公表させていただいているわけでございます。一つはリスク管理債権、もう一つは再生法開示債権、それからもう一つは自己申告の分類債権、この三つでございます。

 まず、前者二つはほぼ同じでございまして、三十兆円というところでございます。

 それに対して、分類債権と申しますのは、リスク管理債権に見られるような、外形的な、客観的な指標に基づかないで、ある程度、貸出先の業況判断、こういうようなものを、金融機関が独自に主観的に判断をして、これを分類債権、二分類等に加えますので、大体六十四兆円ぐらいになっている。(五十嵐委員「合わせて」と呼ぶ)合わせて六十四兆円でございます。

五十嵐委員 六十四兆円がすべて危ないという説もあれば、それほどでもないだろうという説もあるわけでありますが、これまでは、業務純益、それから株の含み益を出すことによって、これを償却してきた。多いときは十数兆円、また九兆円というレベルのときもありました。しかし、今、株価がこれだけ下がってきておりまして、また、業務純益についても、先行きは楽観できないという状況があると思います。業務純益だけでは、処理にはかなり時間がかかってしまうだろう。

 この時間がかかるということが大変問題なんだろうと思います。不良債権問題の当初からいくと、もうとっくに実は償却をされていなければならなかったはずが、思った以上に深刻で、残っている。

 また、不良債権は信用収縮を招き、銀行だけでなく一般事業会社でも、取引の慎重化あるいは固定化、新しい取引先とは取引したくないという疑念を引き起こします。したがって、生産性の低下を実は不良債権がもたらすということがあると思うのですね。

 そのことは、すなわち、単位当たりの生産性を低めますから、逆に言うと、資産価値の下落になる。今までは、不良債権の原因は資産デフレだったというふうに言われていたわけですが、逆に、不良債権自体が資産デフレを起こす要素もあるという考えが最近出てきているようであります。

 この不良債権と資産デフレを最初に心配されたのは、実は宮澤さんだったのだろうと私は思っておりまして、九二年八月の宮澤総理大臣の御時代の自民党のセミナーで、これは大変深刻な問題になるかもしれない、政府の関与も場合によっては辞さないぞという発言を宮澤さんはされて、公的資金の投入をある意味で示唆したというふうに受けとめられているわけですが、そのような認識を、当時の宮澤総理はお持ちになられたのでしょうか。

宮澤国務大臣 八月に入りまして株が急激に低落を始めまして、そのことを実は心配しておりました。それはそれである処理ができたわけでございますが、その裏側にあるものが今おっしゃいますような問題であるということをかなり明白に考えましたので、その時点で公的な関与をしてでもこの事態を解決した方がいいと考えまして、当時、自民党の軽井沢のセミナールがありましたときにそのことを申しました。

 ただ、これは、私が自分の考えと申しますか、いろいろ考えたことをそのまま申しましたために、実態がどういうことになっているからこうだというようなことは、実際また申すことも難しかったわけでございますが、十分申し切れませんでしたうらみはございますが、そういう呼びかけをいたしたことはそうでございます。

五十嵐委員 その当時の宮澤さんの達見なんだろうと思いますね。

 ところが、そのとおりにされなかった。十・七兆円の総合経済対策、そして株のPKOという形で、従来型の対策を選ばれた。これが実は、この以降の資産デフレ対策、株価の低落あるいは資産、土地の価格の低落、下落という問題を契機にする景気の低迷に対する路線の一種のレールになってしまったと思うわけであります。

 また、不良債権処理でいいますと、少しずつ時間を稼ぎながら、カンフル剤、公共事業で下支えをしながら少しずつ償却をするという、いわばソフトランディング、私どもは、ランディングしていない、いまだランディングせずと思っていますが、そのソフトランディング路線のもとになった。ここに実は大きなかけ違いといいますか、間違いのもとがあったと考えるわけであります。

 このソフトランディングというか、少しずつ不良債権を処理していこうという路線は、長期インフレの時代にはふさわしい政策なんだろうと思います。十年たてば地価が上がって、あるいは物価が上がって債務が帳消しになるというようなことがありました。そこで景気がよくなって返せる、何でもよくなる。いまだにそのことを思っている経済人が多いし、あるいは自民党の一部の首脳もいまだにその考え方をお持ちのようですけれども、今のような長期のデフレ、この状況下では、時間をかけますと逆に資産が劣化します。これはもう常識でございます。あるいは、債権者にとっては資産が劣化する、債務者にとっては債務の実質的な負担が重くなってくるという面がありますので、事態がより悪化してくるという側面があるのだろうと思います。

 ですから、少しずつ不良債権を処理するというのではなくて、最初に思い切って、一度は決断をされた宮澤さんの思いどおりに公的資金を投入し、公的な関与を強めて、一挙に、比較的一挙に処理をするということが、実は、本当はよかったのではないかということが思われるわけですが、その点について宮澤大臣はどう思われますか。

宮澤国務大臣 私が提言をいたしましたときに、まず産業界は、銀行を助けるということに本能的に反感を持ちますので、しかも自分の問題と考えないという気持ちがありまして、反対でございました。

 金融機関は、中には自分の銀行はそんなに悪くないと考えられた人と、しかし、いい、悪いが世間に見えるということはいずれにしてもよろしくないという考えの人と、政府がもし口を入れるようになると銀行というものが将来大変な災いのもととなるという方とで、消極的でございました。

 役所は、ちょうどこれが今五十嵐委員の言われますように、そのうちに市況が回復するだろうということから従来いろいろなことをやってまいりましたものですから、その路線を変更することに抵抗があったように思います。

 したがいまして、今おっしゃったことは私は本当であると思いますけれども、関係者のだれもが、そういうドラスチックな外科手術を必要としないでも事態は改善するだろうと受け取ったというのが事実ではないかと思います。

五十嵐委員 それはそのときの総理大臣が宮澤さんなんでありますから、リーダーシップを発揮されて、体を張ってその反対をする方々を説得するというのが本来のリーダーシップのあり方だろうと私は思うわけです。

 もう少しこの失われた十年についてお時間をちょうだいして細かく見ていきたいと思うんですが、ポイントを幾つかに絞って考えたいと思います。

 一つは、私は、余りにも日本の政府がモラルハザードの問題を軽視したのではないかということが言えると思います。

 九五年の七月に実は内部ではわかったという大和銀行のニューヨーク支店事件であります。これは、現地採用職員が勝手にディーリングをして、十一億ドルという巨額の損失、穴をあけてしまった。しかも、それを内部でわかった後も外部に発表せず、その月の間に実はある社債を発行しているんですね。

 これが大変ルール違反だということで問題になりまして、とうとうアメリカから大和銀行が追放されるという事態になったわけですが、政府はそこまで深刻に考えていなかった。まさか追放まではなるまいと思っていたし、政府自身の関与がこれは問題になっておりまして、そのときの大蔵省の局長は報告を受けながら、もう少し発表を抑えるようにということを言ったということがありまして、金融当局も発表に、ディスクローズに待ったをかけた。

 私は、これが実はその後の日本に対するジャパン・プレミアム、九五年の十月からジャパン・プレミアムが発生したわけですけれども、その発生の原因になったし、このいわゆるモラルハザードという問題が、我が国にとっては余り問題にされていなかったけれども、よその国では国際的にはこれが物すごい問題なんだということがわかったんだろうと思います。このモラルハザードに対する日本の政界、経済界の鈍感さというのは今でも継続をしているのではないか、それがかなり大きな悪影響を今の経済にもたらしている、私はこう思うわけであります。

 もう一つ続けて言わせていただきたいと思いますが、九七年の十一月にコール市場のデフォルトが起きました。これは、三洋証券の会社更生法の適用申請、倒産に端を発しまして、コール市場で、銀行間のインターの取引で支払いが不能になってしまった。これは、日本の金融当局の能力に疑問符がつけられたということなんだろうと思うのです。これは大変なことなわけであります。

 また、かつ、その直後の九八年になってからですけれども、年が明けてからですが、大蔵省の接待スキャンダル、過剰接待問題が表に出て、ここで一挙にシステミックリスクが拡大をしたというふうに思いますが、この認識について柳澤大臣はどう思われますか。

柳澤国務大臣 先生の立論を聞いておりましていろいろなことが頭に浮かんだわけですが、ひとつ、前の御質問というか御見解について私の話をちょっとお聞きいただきたいと思うのでございますけれども、不良債権の処理という言葉が、かねて言いますように非常に難しい言葉なんですね。

 我が国においては、本当にバランスシートからその債権を除却してしまうようなのと引当金の方式があるわけです。除却する場合は一体どういう場合かというと、相手がはっきりと整理をしようというときの話が主で、一方的にこっちで除却をしておいて、相手には伝えていないという除却の仕方もありますが、基本的には、相手が整理に入るということが前提でございます。そうでない限り、金融機関の側としては引き当てによってその不良債権を処理する、こういうことにならざるを得ないわけです。

 ですから、先生がおっしゃられた前のお話で、この不良債権をいつまでも抱えていることが我が国の経済全体の生産性に障害になっているんじゃないかというのは、まさにそのとおりで、これは銀行の側にも、先ほども申したように、ノンパフォーミングのアセットになりますから非常によくないのですけれども、それ以上に、相手方のことを考えますと、不良債権を持っていますから銀行から円滑な融資が受けられない、したがって投資ができない、ですから、新しい収益が上がるようなところに経済行動が制約されてしまうという大きな問題があるわけなんですね。そのことが日本経済全体に沈滞をもたらしているのではないか、こういう御指摘であるとすると、私はもう全く先生と同意見でございます。しかし、それは銀行の側からだけできるかというと、できません。これは実体経済の側とうまくシンクロナイズドしてやらない限り、そういうことはできないということでございます。

 それだけちょっと申させていただきますが、先ほど言ったコール市場の崩壊というのは、まさにそのとおりで、私ども昔習っているところでは、金融機関ということであれば電話一本でもって何十億の金が信用されて融通されるという世界だというふうに思っていましたけれども、コール市場で、あなた様はどこの銀行でございますかというようなことを聞くようになったということは、まさに金融のシステムとしての大変な損傷ということをあらわしているんだ、このように考えております。

五十嵐委員 不良債権の処理を急ぐと実体経済に悪影響を、甚大な影響を及ぼして、実は大変な不況といいますか、あるいは倒産の連鎖、解雇が起きるんじゃないかという心配とのバランスの問題だというのは、私もそのとおりだと思いますが、ただ、過大にそのことを心配し過ぎると、あるいは過大に銀行を大事に思い過ぎると、逆になかなかうまくいかないのではないか。

 不良債権処理の問題を後でまたもう一度言おうと思っていたのですが、ここでついでに、それでは、ほかの方法もあるのではないかというのが一つですね。

 例えば、ある人が言っているのは、長銀がおかしくなったときに、これを奇貨として、長銀を問題債権の受け皿銀行にして、そこへ全部集めて、そこで処理をする、整理回収銀行まではいかない以前の段階のリスク債権をそこへ集めて処理をする、そういう専門の銀行にしたらどうかとか、あるいは、ローンを証券化して、そこで二次的な市場をつくったらどうか。

 そうすると、ある人は銀行は危ないと思っても、ほかの人は、いや、ここはなかなか持ち直すかもしれないぞ、実はいい債権に変わってくる、生き返る可能性があるぞと思う人はそれを引き受ける。そして、全部危ないところだけを集めたわけですから、玉をそろえれば、アセットにすれば、そこで新しい処理の仕方というのもあるかもしれぬ。そういうような工夫を政府としてもしてみるべきではなかったのかということもあると思うんですね。ただ一概に実体経済の破壊だけを心配するというのでは問題は解決しないと思うのですが、いかがでしょう。

柳澤国務大臣 やや個人的な意見にわたるわけですけれども、少し御答弁させていただきたいのでございますけれども、いずれにせよ、証券化といい債権の譲渡といい、結局、日本の債権債務関係というか融資の関係がコーポレートファイナンスであるということが、非常に今言ったような円滑な処理の障害になっているということであります。アメリカのように、仮にコーポレートファイナンスといえどもいわば貸し出しにミシン目が入っているということだと、この債権だけを証券化しよう、あるいはこの債権だけをどこかに譲渡しようということが非常に円滑にいくわけでございます。

 ところが、日本の場合は、先ほど言った切り離しというか切り分けというものをしない限り、丸ごと、その企業全体に対する債権という形になっているわけでございまして、例えば、融資先の立場からいうと、あそこの悪いところだけを切り離してどこかへ持っていってくれたら、いいところはこの企業にもあるから、そことは将来ともに自分はつき合っていきたいというようなことになるわけでございます。

 ですから、私は、率直に言って、アメリカのように事前的にミシン目が入っていない貸出債権の場合には、事後的にでもそこでミシン目を入れてもらわないとこの処理がなかなかはかどらないというところに、私自身の考え方においてですけれども、悩みもあるということをぜひ御理解いただきたいと思います。

五十嵐委員 確かに日本ではプロジェクト融資が行われていない、要するに丸ごとの融資ということであるわけですが、これは自然とこれからは直っていくことではないか、また、そういうような能力を日本の金融機関がつけなきゃいけない、そこは日本の金融機関の能力に問題があるというところの根本だと思いますね。

 それから、その過程の中で、九八年金融国会が行われまして、金融再生法、早期健全化法が成立をしたわけですが、先日の我が党の上田議員の代表質問の中で、犯意なき過ちという文章の中で、宮澤さんは、与野党ともに若手の議員が妥協、成立をさせたわけですけれども、この金融処理のあり方について、かなり私どもからすれば誤った批判の仕方をしているというふうに思われたわけです。そのときに撤回をされたわけなんですが、その撤回というのはどういう意味で撤回をされたのか伺いたい。要するに、真意が伝わっていないというのか、あるいはうそを書かれたというのか、どういう意味で撤回をされたのかを宮澤さんに伺いたいと思います。

宮澤国務大臣 御指摘のように、本会議におきまして撤回をお願いいたしました。その理由は、これは私の真意を伝えていないし、また御無礼な表現もある、こういうことで撤回をお願いいたしたわけでございます。

 詳しいことを申し上げる必要はないかと存じますけれども、私は、その本が出たことを実は知りませんで、上田議員の御指摘で読みました。その何カ月か前に、実はある新聞が、過ぎ去った出来事についての検証をするために関係者にいろいろ話を聞きたいということで、私も関係者として話をいたしました。それは、その新聞がバックグラウンドを書くためのいわば材料として私の話を聞かれたわけでございますので、いろいろ申しましたが、それと全く別の理由でその雑誌社がそのインタビュー等々を使われたというような経緯、詳しくは申し上げません。

 つまり、私自身は、その雑誌に載ったインタビューを自分でチェックすることができなかったわけでございます。普通でございますと、新聞は急がれる場合がございますので、普通それでもインタビューはチェックをさせていただきますが、この雑誌は何カ月も後でございますから、もし載せられるんですと当然私にチェックを求めてこられなければならないわけでございますが、そういうことがございませんでしたので、そういう理由をもちまして撤回をさせていただいたということでございます。

五十嵐委員 しかし、普通は雑誌社が、しかも、これは日本経済社ですか、経済については専門の会社なんだろうと思いますけれども、全く言わないことをつくるということは考えられないわけでありまして、この口調からしますと、これは、ふだん大変丁寧な言葉を使われる宮澤さんですけれども、どうも砕け過ぎた表現で、一杯やりながらお話しになったのかな、それで責任が持てないということなのかなというふうに思ったりするのですけれども、これは撤回されるだけではなくて、まじめに、真剣に、宮澤大臣から言われると考えが浅いかもしれないけれども、日本の将来のことを思って真剣に考えて仕事をされた若い政治家たちのその仕事を全くばかにするという言葉だと思いますので、撤回されるだけではなくて、私はきちんとした謝罪があってしかるべきだと思いますが、どうですか。

宮澤国務大臣 問題は、ちょうど平成十年、それもこの場所で、長いこと御議論があって結果になっていった推移でございますから、私として国会の御議論をそんなに、十年とか時間がたちましたらともかく、二、三年でいろいろ批判的に申すべきでないということが私の基本的な考え方なものでございますので、新聞が検証のために、どういうことがあったのか、クオートしないということでいろいろ知りたいという、そういう努力には私も貢献してもいいと思いましたけれども、実際にどういう議論が行われた、どうだったというようなことは、これは十年でもしましたら、きっといろいろな意味で私も申したいこともあるし、お互いにあるのだろうと思いますが、二年やそこらでそれを申し上げるのは私としても不謹慎であるし、また、それを私に言わずにそのままお使いになるということについては、何も申しませんからこれは全部撤回させていただこう、こういうふうにお願いしたわけでございます。

五十嵐委員 そのことだけを追及しようと思ってこの問題を出したわけではなくて、実は、日本はシステミックリスクを食いとめたのだろうと思います。かなり危ない金融崩壊の瀬戸際に立っていたのを、やはりあの法案の成立が契機になってとまったんだという認識を私は持っているのですが、それは否定されますか。

宮澤国務大臣 そこも非常に私の申しようが難しいのでございまして、この間撤回を申し上げましたときに、私としては、当時小渕首相とともに、長期信用銀行を住友信託と合併させるという話がございましたので、これを成功させる方が国民的な負担が少ないと判断をいたしまして努力をいたしました。これは世の中で御存じの事実でございますが、私どもはそういう努力をいたしましたということだけを知っておいていただきたい、これだけのことしか私は申し上げませんでしたし、今でもそれ以上申し上げるべきでないことだと考えています。

五十嵐委員 それでは、次のポイントに移らせていただきたいのですが、橋本元総理がおられますけれども、九七年の消費税の増税、これは私ども、私どもというより私がかなりかかわった問題でありますけれども、これが腰折れの元凶だった、あるいは橋本総理の財政再建路線、これが腰折れの原因だった、こう言われるわけですが、私は実はそうではないと思うわけであります。

 この九七年も、確かに四―六は一時的にマイナス成長になりましたけれども、実は七―九は年率四%のペースに戻っているのでありまして、これは、橋本行革が現実以上に悪役にされたのだというふうに思います。これが、その後の二兎を追えないという自民党の理屈、与党の理屈の理屈づけにずっとされてきたと思うのですが、これが私は、あの無責任な刺激策を放らつにしてしまうという問題のもとになった。実態は逆で、どういうことかというと、財政出動の効果が一時的であったということなんだろうと思います。

 九五年、九六年に一時的に四、五%の成長率が達成されました。これはかなりな、先ほど言った十・七兆の宮澤内閣の総合経済対策を初め強力な財政出動をされましたから、その効果が一時的に数字としてあらわれた。一時的だったから後は消えてしまったということが一つだと思いますし、また、金融不安と、医療費の引き上げ、これはその年の九月に行われたと思います。それから同時に、年金の改革試案が厚生省から発表されました。年金の支給率のカットと、それから年金保険料の引き上げもセットで、五種類の選択肢で示されたと思うのですが、これが一緒になって重なって、一般国民の将来不安に一気に火をつけた。

 金融の不安、そして一般の国民の将来への不安を、別の面で実は火をつけたことが原因ではないかと思うのであって、逆に、財政出動をやめたからだとか財政再建路線に変わったからだというのは私は間違いだと思うのです。あらかじめ通告はしておりませんけれども、この認識について橋本大臣の方から伺いたいと思います。

橋本国務大臣 私、こういう角度から御質問をいただいたのは初めてでありまして、お礼を申し上げます。

 そして、もしこれにつけ加えることを許していただけるなら、七―九の年率一・八%を挙げていただきましたが、十―十二月期にも〇・七%増、年率に換算すれば二・八%増と続いておりました。しかし、当時この数字が見ていただけなかったのは大変残念です。

 そして私は、今議員が提起をされました、当時、年金制度を改革するという中で、将来の方向を幾つかの選択肢においてお示しをした。これが相当国民の心理に影響を与えたということは、私は認めたいと思います。同時に、当時、御承知のようにアジアの経済危機が既に起きておりました。そして、予期しない金融機関の倒産というものもございましたためにさまざまな影響があったということは考えられることだと思います。

 ただ、だからといって財政出動が全く効果がなかったと言うかといえば、私は、その後の結果は、その財政出動は少なくとも底支えの効果はもたらした。問題は、そこから先をどうしていくかというところではなかろうか、今御意見を拝聴していて、そのような印象を持ちました。

五十嵐委員 要するに、乗数効果が減っていて一時的な効果しかないということなのであります。ただし、橋本大臣に申し上げておきますけれども、行革姿勢はよかったと思うのですよ。だけれども、その行った結果の行革の評価については、後でまた質問させていただきますけれども、私は必ずしも評価をすることができないという立場に立っておりますので、あらかじめ申し上げておきます。

 もう一つは、先ほど申し上げましたけれども、IT革命、そしてIT革命が惹起する金融の国際化といったものの影響を見誤っていたのではないかという問題について少し触れさせていただきたいと思うのです。

 この高度情報化というのは、金融の国際化をもたらして、価格の一元化というものをもたらしていくものではないかと私は考えます。商社機能を現実に奪っておりますし、もう一つは、金融決済機能の独占も奪おうとしていますけれども、例えば、日本独自のシステムであったはずの土地に対する信用創造能力、機能。土地が日本では信用を創造し、バブルまで引き起こしたわけですけれども、土地は日本だけのものだ、よそへ持っていけないから、こういうことだったわけですが、実際には、こうした機能が高まって外国の金融機関が日本に投資をする、そういう相互の世界が縮まることによって、土地すらも日本独自のものではなくなった。

 本来の価値、これは利用価値と言っていいかもしれませんけれども、本来の価値に戻るまで下落するという傾向がある、生まれるということなんだろうと思います。賃金も、同じように周辺の中進国と中和する水準にまで日本は、これは国際競争というものが激しくなるわけですから起きてくる。

 バブルが終わって、バブル前の水準まで戻ったからいいじゃないか、もう落ちつくはずだとみんな思ったわけですが、バブル以前の段階でも、国際的な考え方、基準等を見るとまだ高過ぎる。だから落ち続けているんだと私は見るべきなんだろうと思います。このことを間違えたから処理が長引いた一つの原因になったのではないかな、こう思うわけであります。

 すなわち、デフレの時代というのは、日本はいや応なくしばらくは続いてしまうのであろうということを私は考えるわけですが、これについてはどう思われますでしょうか。(発言する者あり)後でどうすればいいかはお話を申し上げます。まず、失われた九〇年代の認識についてお話をしているわけですから、もう少しお待ちください。では、柳澤大臣。

柳澤国務大臣 この問題については、もっとお答えすべきまさにライトパーソンがほかにいらっしゃるのではないか、こう思うわけでございますけれども、何となく先生と目が合ってしまったのが運の尽きみたいなところがあって、私の見解というか考え方を申し上げます。

 私は、土地の価格についてはやはりバブル的な取引がもたらしたものがあった、こういうように思います。バブル的な取引とは何ぞやといえば、これは、本来その土地の利用価値に着目することなく、全くのキャピタルゲインねらい、次の取引に当たってどのくらい値上がり益を獲得することができるかというようなことだけに関心を払った結果そういうことになったんだろう、このように思います。

 私は、なぜそういうことを申し上げるかというと、これは我が閣内にいらっしゃる今同僚の閣僚とも大激論をしたことがあるのですが、固定資産税の評価額がいかにあるべきかというときに、自民党の中で、私は収益還元価格にあくまでもこだわって課税標準を設定すべきだということを申したのですけれども、自治省はついに、取引実例価格というか、公示価格の七割方に接近するんだとかというようなことになってしまいまして、それらも挙げてバブルにシステム全体として適合し過ぎてしまったというふうに考えます。

 ですから、私は、現在の地価も、もちろん日本の成長期待というものも勘案しなければなりませんし、また、では割り戻すときの金利は一体幾らであるべきか、今のような低水準であったら、収益はそこそこであっても割り戻すときの利率が物すごく低ければすごい地価になるわけでございますので、そのあたりは非常に難しゅうございますけれども、いずれにしても、利用価値を中心にして、収益を中心にして考えて、適正な価格の実現を図るという方向に行かなくてはならない、私はそのように考えています。

五十嵐委員 私も同様だと思います。最初から、バブル発生以前から日本においては収益還元価値以上に資産としての価値が重視され、その分が上乗せされていた、こう見るわけであります。

 さて、随分時間を食ってしまいましたので、足元の経済問題に移りたいと思うのですが、今私は、景気の足元は大変厳しいというふうに思っておりますけれども、どうも森首相のダボス演説などを聞いていると、根拠のない楽観論を振りまかれている。この根拠のない楽観論は日本の改革姿勢を疑わせ、政府の発言の信用性を低下させるという意味で大変重要だと私は思っておりますけれども、むしろ日本は今大変危険な状況にある、だからこそ、日銀総裁おられますけれども、日銀総裁はその来るべきときに備えて公定歩合を下げてみたのではないか、あるいはロンバート方式を入れようということを決意されたのではないかと思うんですが、そのねらいをお伺いしたいと思います。

速水参考人 公定歩合は、先ほど御指摘のように、一九九〇年から引き下げになりまして、九五年から〇・五%をずっと続けて今日に至って、初めて今度〇・三五と下がったわけですけれども、先週金曜日の決定で公定歩合を引き下げましたのは、これと同時に、資金を供給する、公定歩合によって受動的に実行しようという貸出制度、いわゆるロンバート型貸し出しと言っておりますけれども、これによって流動性を供給していく改善策をあわせて決定したわけでございます。

 今、市場の金利は、オーバーナイトの無担保コールが〇・二五ということで調整しております。これも市場にはうまく調整されてきておるわけですけれども、今後、期末にかけてまた何が起こるか、その後も何が起こるかわからないという状況の中で、金融機関が資金の不足を起こして市場で調達できないということで、〇・二五%が、がっと上がってくることがあり得る、そういうことを考えて、証券担保さえあれば〇・三五%の公定歩合でいつでもお貸ししますよ、取引先であればいつでもお貸ししますよという制度をつくったわけです。

 それで、今回、公定歩合の引き下げという形で、それと同時にロンバート貸付制度という新しい供給制度、これは、こっちからどこの銀行に幾ら貸すということはかつてやってきましたけれども、幾ら貸してくれということを担保を持ってやってきたらいつでも貸しますと。ただし、期限は一応オーバーナイトを原則として、数日は転がせるというようなことで資金の供給をしようということを決めたわけでございます。そういった契機があって〇・三五に下げたということを御理解いただきたいと思います。

五十嵐委員 今速水総裁が言われたとおり、何が起きるかわからないからというのが一つ、それは非常事態を想定している、これは決して悪いことではありません。もう一つはG7へのお土産ということもあるのかもしれませんが、これはやはりかなり深刻な危機を内包しているという認識があるということだろうと思うのです。

 特に今、金融不安の再燃というものが心配をされております。生保の逆ざやが続いておりまして、またそれだけではなくて生保がつぶれておりますので、契約が減少している。過去の逆ざやを埋めるべく新規の契約を獲得してリスクを下げるというのが当たり前なんですが、それが下げられない現状にあります。

 また、最近の株価の低迷によりまして含み損が生じているということでありますけれども、私どもは大変心配をしているんですが、ソルベンシーマージン比率、これをアメリカ並みに厳格に計算すると、実は安全ラインと言われる二〇〇を割っているところも出てきているのではないか、こう言われています。質問をいたしますと、二〇〇〇年九月期の各社の発表しか数字が出てこないと思うんですが、そういう心配があるのではないか。

 あるいは、現在の契約者保護機構では、この後こうした不幸な事態が起きたときに対応できるのか、また、生保だけではなくて、生保と深い関係のある金融機関、銀行もあるわけでありまして、そうした都市銀行への影響がどうなのかということを市場は心配しているわけであります。

 その点について、柳澤大臣から伺います。

柳澤国務大臣 株価の金融機関等への影響ということでございますが、これにつきましては、銀行等、預貯金を預かる金融機関につきましての話としては、これは時価会計に移行するのが平成十三年度からであるということで、この三月期に云々するような問題ではないということでございますが、仮に、それでもフットノートというような形で、含み損があれば含み損を明記するというようなことで、一体これとの絡みでどう考えるかということがあり得るわけでございます。

 この点については、従来私がここで申し上げておりますように、平成十二年九月末の中間決算をしたときの日経平均一万五千七百四十七円、これから二割仮に落ちる、ということはちょうど大体一万二千六百円ぐらいになりますけれども、その際でも銀行の自己資本比率に対する影響というのは、単体では〇・八、それから連結では〇・六という程度でありまして、これは一一%台に落ちてもそれを優に確保できるということからいって、この面での問題はないというふうに申させていただいているわけでございます。むしろ、そういう自己資本比率をメルクマールとする健全性の問題ではなくて、損益勘定、収益性の問題だということをかねて申させていただいているわけでございます。

 これについては、先ほど冒頭のころに先生の御質問にあったんですが、不良債権の処理というものが業務純益をかなりオーバーして今まで処理されてきたので、今回は問題がありはしないかというような御指摘があったんでございますが、ここに来まして、先生御案内のとおり、例えば平成十二年九月末におきましては業務純益の中で不良債権処理が行われているというようなこともあって、我々は、ここで、総じて言って大きな深刻な問題が生ずるというふうには考えておりません。

 それから、他方、保険会社についてでございますけれども、保険会社については、現行のソルベンシーマージン比率の算定におきましても、保有株式の、投資株式でございますが、それの含み損というものは丸ごと実は分子のマイナス要因になるわけでございまして、そういう意味では、この含み損の問題というのはソルベンシーマージンを低める役目を演ずるということは、これは否定できないわけでございます。

 しかし、他方、収益面におきましては、よく、利差と申しますか、運用利回りと約束した予定利回りとの関係が逆ざやになっているんではないかというようなことから、非常に深刻な問題として御指摘を受ける向きもございますけれども、私どもとしては、保険会社の損益を最終的に決めるのは別に利差だけではございません、死差あるいは費差というようなものがございますので、それらを総じて申しますと、いまだに保険会社、破綻をしたもの以外におきましては十分黒字の基調にあるということでございまして、このことはぜひ御理解を賜っておきたい、このように存じます。

五十嵐委員 ただ、ソルベンシーマージン比率は期末ごとに落ちてきているというのも事実でありますし、あるいはまた銀行のことについても、確かにそのとおりだと思いますけれども、問題は配当ができなくなるおそれがあるということなんだろうと思います。時価会計も迫っているということで、また合併の問題が控えていますから、合併のときに赤字のまま合併するのかという話になりますと、大変、不良債権の処理を先送りするという要素になるということが最大の問題なんだろうと思います。景気の足元の状況は楽観をできないと私は思いますので、やたらな楽観論は問題だろうと思います。

 それから、景気の長期低迷で問題なのは、やはり何といってもGDPの計算の六割を占める個人消費の低迷であります。

 個人消費がなぜ伸びないのかということなんですが、私は四つの状況を考えております。

 企業収益の伸びが家計収入の伸びにどうもつながっていない。これは、企業が苦しい、不良債権の問題でありますけれども、苦しいからであります。

 それから、将来不安が貯蓄性向を助長している。金利が低いと、アメリカは使っちゃおうといって消費に回るのですが、日本では、金利が低いと、もっとためようということになるわけでありまして、これが消費性向を縛っているということですね。

 それから、低金利が打ち続いておりますので、もう資産を獲得し終わって一番余裕のあるはずの世代であるシルバー世代が収入減になって消費に向かっていないというのが大きな問題であると思います。

 もう一つは、これは負債デフレであります。先ほども申し上げましたけれども、個人の身になってみると、デフレは決して、一般的なデフレですね、一般デフレは必ずしも個人にとって悪いものではない。よいデフレ、悪いデフレ論があると聞いていますけれども、デフレの一般デフレは必ずしも悪い要素ではない。物価が安くなる、貨幣価値が高くなるわけですけれども。

 しかし、問題は、多くの庶民がローンを抱えている、住宅ローンですね。住宅ローンを抱えていると、そのローンの負担が次第にデフレによって重くなってくる。それは、賃金も、年収も下がってまいりますから、相対的に重くなるわけです。総務省が二〇〇〇年の家計調査で発表いたしましたところでは、可処分所得中の住宅ローンの返済額は一八・七%、過去最高であります。実態的にも、住宅ローンの重荷が非常にふえてきているということが証明をされているわけであります。

 私は、この問題を解決しないとなかなか個人消費というのは上方に向かっていかない、そう思うのです。

 私は首都圏の郊外が選挙区でありますけれども、郊外の住宅団地に参りますと空き家がすごく多いのです。月々の返済と同時にボーナス時の返済というのをみんなやるわけですが、そのときの割り増し返済ができない、ボーナスがほとんどなくなっているという人がかなりいます。それから、残業が減っているということで、月々も苦しい。これがやはり個人消費低迷の大きなもとになっている。

 そこで、時間がないですから、私、先に勝手な提案を、こういう考え方はどうかということをさせていただきますけれども、私が与党でありましたときに、過去の国民金融公庫等中小三機関の高金利、七%以上の高金利については、これは国の政策で低金利にしているわけですし、いろいろな問題があるので、五%以下に金利を、これを引き下げるような手段を講じたらどうかということを提案させていただいて、これは実現をいたしました。これと同じように、ローンで困っている方に手を差し伸べる必要があるのではないか。

 過去債務の救済というのは、これは個人の資産形成に国が手助けをするということになるというので反対論もあるかと思いますけれども、私は、この際に、減税でばらまくよりはむしろ効率的に消費の回復ができるのではないかと思っておりますし、これは税制上のやり方もあると思うのですが、過去の高いローン金利の分について国が一定の手を差し伸べるということが必要ではないか。こういうような手段を講じないと個人消費はなかなか回復をしてこないのではないかなと思うのですが、宮澤財務金融大臣はいかがお考えでしょうか。

    〔委員長退席、北村(直)委員長代理着席〕

宮澤国務大臣 まさに問題意識を同じくしておりますので、ただいまのお話は注意深く伺いました。

 四つ理由をお挙げになりましたが、実は、私自身はひそかに、平成十年からこの仕事を始めましたときに、二年ぐらいで民需がある程度回復するのではないかと何となく思っておりました。したがって、昨年の秋ごろにはということを考えておりましたが、設備投資はもうそれより早く回復し始めまして、いろいろちょっとここへ来てございますが、今でもまずまず満足な役割を果たしておりますが、それが全く家計につながらないということについて、その後、私、見ておりますと、やはりリストラというものの規模が大きい、しかもそれは二十一世紀のITの時代を企業側は考えてやっておられる。

 アメリカは、ここはもう御存じのようにレイオフで処理してしまったわけですが、グリーンスパンがかつてからそういうことを言うわけでございます。自分たちはレイオフでできちゃった、しかし、日本やヨーロッパはそれはできないねと。その部分に多分当たってきていて、したがって、普通の不況回復でしたら企業設備はすぐに家計につながるのですが、それがつながらないことの一つは、やはり雇用の慣習が変わってきているのではないか。終身雇用であるとか年功序列であるとかいうことがかなり変わりつつある。常雇いではなくてパートで置いておきたい、いろいろなことがあります。

 したがいまして、簡単に言って、家計の収入というのは目立ってはふえておりませんし、また、これはさっきおっしゃったことと同じことですが、限界消費性向がとにかくよくなっていない、むしろ貯蓄性向の方がよくなっているぐらいなものでございます。

 それだけのことを今までずっと私、見てきておりまして、しかし、これもいつまでもそういうことが続くはずはないわけでございますから、ある段階から、それは企業といえども、これだけ収益がございますと、それをある程度労働に還元するということにならざるを得ないかと思っております。

 ですから、我が国の経済にとって、言ってみれば、消費が動いてこないということがいわば唯一の問題と申し上げてもいいぐらい問題なのではないかと思いますので、それを動かすためにいろいろなことをやはり考えなければならない。

 恐らく、日銀総裁が先ほど言われたこともそれに関係があると思うのでございますけれども、今幾つかお話しになりましたようなその種類のことをやはりいろいろ考えていく、基本的にはジョブクリエーションでございますし教育でございますけれども、そういう問題意識そのものは、私はまさに同じゅうする気持ちはございます。

五十嵐委員 それから、低金利の問題なんですが、今シルバー世代が低金利で――三十兆円庶民から金融機関に所得が移転した、こう言われるわけですけれども、この低金利もなるべく早く、これは緊急、異例の措置なんだろうと思いますね。今、ゼロ金利を解除したといっても、実質ゼロ金利に近いわけであります。これを早く本格的に解除できて適正金利に戻すということができないと、本格的には個人消費も回復してこないのではないかなというふうに私は思うわけです。

 その低金利の副作用が非常に強く、先ほどの生保の逆ざやというものもありますけれども、一方で、例えば厚生年金基金の解散がふえていると思うんですが、こうしたところに深刻な状況を及ぼしている、こう思います。

 坂口厚生労働大臣に、厚生年金基金の現下の状況を簡潔に御説明いただきたいと思います。

坂口国務大臣 ただいま御質問がございました厚生年金基金でございますが、昭和四十一年から平成五年までの間には解散いたしました基金数は十七でございましたが、以後、平成九年から、あるいは平成八年から増加傾向にございまして、平成八年度は、解散しました基金数が七でございます。平成九年が十四、平成十年が十八、平成十一年が十六、それから平成十二年が、昨年の十二月まででございますけれども、これが十八になっておりまして、まだ少しございますから、一年間ということになりますと若干ふえる傾向があるかと思います。

五十嵐委員 これは大変なことだろうと思いますね。やはり将来不安につながってくるわけであります。また、雇用のセーフティーネットが日本では不十分だ、だから思い切ったいわばハードランディングができない、その一つの障害要因になっていると私は思うのです。

 失業保険の期間を、ドイツも三年にしたりしていますけれども、二、三年に延ばす、あるいは労働者の再教育を徹底的にやるといったかなり思い切った雇用面でのセーフティーネットを張る必要があるのではないかと思うわけですが、あるいは年齢差別を撤廃するというようなこともあると思うんですが、そのような点についてはどのようなお考えがおありでしょうか。

    〔北村(直)委員長代理退席、委員長着席〕

坂口国務大臣 年齢の差別につきましては、これは完全に撤廃というわけにはまいりませんけれども、やはりそういう、できるだけ責任を持って企業が雇用をしてほしいといったようなことを盛り込みました法案をことし出させていただく用意をいたしているところでございます。

 また、全体の雇用の問題につきましても、そうした中で、企業の中でできる限り多くの皆さん方が、今までは失業しましたときに初めて次の手を打つということでございましたが、そうではなくて、雇用が続いておりますその中において、次の、もう一つ自分に新しい何かをつくっておこうという意思のあるような方はひとつそれをおやりいただけるように、企業に対しましてバックアップをしていくといったようなこともこれから手がけていきたいと考えております。

五十嵐委員 ありがとうございます。大臣、どうぞ、結構でございますので。

 それで、公共事業政策、フィスカルポリシーについてちょっとお伺いをしたいんですけれども、私は全くその効果を否定するというものではありませんけれども、乗数効果が落ちていて一時的なものにすぎない、一時的な下支えにすぎない、むしろ呼び水効果がなければ副作用が大きいということを指摘しなければならないと思います。

 借金がふえるというのは最大の副作用でありますけれども、構造改革をおくらせる、オールドエコノミーを助長して延命させて構造改革をおくらせるという面もあるし、あるいは行革をおくらせるという面もあるのではないかというふうに考えます。

 また、役所がやる仕事ですから、お役人というのは、何度も申し上げますけれども、自分の持っている予算をふやし、組織を拡大し、新しいポストをつくるというのが出世のもとになるわけですから、自己増殖をしようとする機能があるわけです。公共事業の自己目的化が起きる可能性があると思っておりまして、谷津大臣、お呼び立てして申しわけございませんけれども、その一つの例が実は諫早湾の干拓事業ではないかなということでお伺いをしたいと思うのです。

 まず、農林土木事業自体が、かつてと需要が変化して当然だと私は思うんですね。だって、専業農家の数がかなりの勢いで減っているわけですから、それと同じように、国が農業土木事業をずっとやり続けるというのはおかしいわけでありまして、今お許しをいただいて資料をお配りいたしましたけれども、一つは、農業土木の職員の数を出してくださいと言ったら出してくれませんで、採用者数だけなんですが……(発言する者あり)調べられないということのようですが、私は不満なんです。これを見ますと、いや最近は少し減っているでしょうというふうにお話しになるんですが、いや、なかなか、昭和五十三年、五十四年あたりでも七十人、六十五人ですから、十一年度七十三人、見ても減っていない。

 これは、ガット・ウルグアイ・ラウンド対策等々、農業に対していろいろな予算がつけられて、あるいは公共事業の積み増しだというときにも応分に農林土木も出てまいります。そのときに職員をふやす、そしてその必要がなくなっても減らせない。こういう意味では下方硬直性があるわけでありまして、それがだんだん組織が肥大化してくる。肥大化してくると、むしろ組織のために予算をとってくる、仕事を見つけるということが起きるのではないか、こう思うわけであります。

 そして、諫早湾も、最初は農地をつくる、干拓事業をして農地をつくるというのが目的であったのが、いつの間にか防災事業に変わってしまった。防災だったら建設省の役割じゃないですか、こういうことになるわけでありますが、引き続きやるというのは、もう目的転換しても何であろうと仕事を確保しなきゃいかぬという、要するに職員の自己目的化が起きているのではないか。

 一つのそうした疑いを持ったものですから、また、ちょっとしたそうした情報もあったので、九州農政局からゼネコン、本来ならばゼネコンとは無縁だったはずでありますけれども、ゼネコンに天下りしている職員がどのくらいいますかという質問をいたしましたところ、一枚紙が出てきて、いや、これも調べられないと言うんですよ。以前のはもう保管期間を過ぎているから調べられないと。

 しかし、よその役所は、例えばかつての大蔵省なんかは、過去にさかのぼって天下り職員の数をかなり厳密に出してきています。かなりの数があっても調べてきていますが、農林省はどういうわけか調べられないと言うんですね、このわずかな数でも。そして、八年に二人、九年に二人。しかも、課長級以上です。課長補佐級以下はもっといるのではないかなと思われますが、課長級以上で出てまいりました。

 このうちの東洋建設株式会社というのは、諫早湾干拓事業の潮受け堤防の受注企業です。これはやはり私は問題があると思いますけれども、農水大臣はどのようにお考えでしょうか。

谷津国務大臣 先生御案内のとおり、農業農村整備事業というのは、農業の基本である農地と水を整備するとともに、農村の生活環境整備あるいは農地の防災、こういうのをやるために、これは地元の、要するに農家の申請と同時に同意を得てやるものでありますね。

 特に、今諫早湾の干拓事業についてのお話がございましたが、諫早干拓事業は、最初から、農地とそれから防災というのが目的の中にもう既に書かれておるわけでありまして、高潮、洪水あるいは排水不良等に対する防災機能の強化と、平たんな農地の非常に少ない長崎県の強い要望に従いましてやっているところであります。

 今お話がありましたが、そういう事業に、農水省の天下りと言っては何ですが、東洋建設が携わったというお話でありますけれども、これはしっかりとした入札に基づいてやるわけでありますから、たまたまそういうところに天下りをしていたということであって、私はそんな大きな問題はないと思っております。

五十嵐委員 たまたまと言いますけれども、確かに有能な人は呼ばれるかもしれないけれども、今まではなかったはずなんですよ。それが、ここへ来てゼネコンに天下りが出始めたというところにやはり大きな問題がある。それで、言われなければ調べられないというのもおかしいはずですし、これは後ほどまた問題にしたいと思いますけれども、大変大きな問題になると思いますよ。ここはやはり、最初から、干拓事業を目的変更した原因ではないかと思われても仕方がない。

 海岸事業はかつての運輸省も建設省もやっているわけですけれども、何も農林省がやらなきゃいけない理由はないじゃないですか。

 それから、公共事業が大変問題になってくるというのは、わざわざ利息をつけてやる仕事になるということなんですね。効率が悪い。

 公共事業について、私は大変問題があると思っていまして、時間がないですから、扇大臣、大変お待たせして申しわけないんですけれども、一つの例だけ。

 本四架橋三本、三大ばか査定などと大蔵省の中で言われているんですけれども、三本もかけてしまった。あげくの果てにどうなっているか。八百億円以上の赤字が出て利息も払えない。大蔵省に泣きついて、これから十年間にわたり八百億円ずつ無利子の援助をしてもらうということになったわけですね、十年間で八千億円。では、十年たったらこれが解消する見通しはあるんですか。

扇国務大臣 今、五十嵐委員から、ばか三橋というような言い方をされましたけれども……(五十嵐委員「いえいえ、三ばか査定」と呼ぶ)ばか査定ね。けれども、少なくとも、この本四架橋をかけますときには、私どもも今考えれば三本要らなかったんじゃないかというのは軽々に言えますけれども、その当時は全党一致でこの法案を通していただいて、私たちは、やはり公共工事というものの必要性というものも、その当時はみんなで賛成してできた橋でございます。

 現実的には、今おっしゃいますとおりに、どんな効果があったかというようなお話をおっしゃいましたので、少なくとも、今収入としては十一年度も八百七十一億円、これは収入がございます。管理費が二百三十九億円でございます。そして、これを経営的にも随分リストラしよう、そして縮小しようということで、平成七年七百二十二人の職員を平成十三年には四百八十二人、私、こんなに切っていいのかなと思うぐらい、これも人員削減をし、経営努力をし、少なくとも今後も債務償還の確実性を図っていこうということに努力をしております。

 正直申し上げて、今私が申しましたように、金額的に、収支決算、収入で管理費というのは、これはちゃんと賄えるということが出ておりますけれども、今おっしゃいましたように、現在の利払いが、少なくとも千四百八十六億円であり、この巨大な債務があるために苦しくなっていることは事実でございます。

 けれども、それだけではなくて、公共工事の必要性というものを、私は、これだけ橋ができたためにどんな効果があったかということもぜひ五十嵐先生にも御理解いただき、また、私はここに数字があるから、遅くなりますから失礼いたしますけれども、大学の入学の人数の増とか、地域の活性化、あるいは四国の工場立地要件、橋がかかった前と後のこの立地要件とか、四国の大型、小型、そういうものを含めれば、地域の経済効果というものも私は一様に言えないということで、ぜひ私は頑張っていきたいと思っております。

五十嵐委員 必要なことだけ答えていただければいいのですが、経済効果があると言うんですけれども、それは予定した台数が通らないから大赤字を出しているんでしょう。それは経済効果は少ないんですよ。むしろ、借金をしてやるぐらいだったら、一本でも、無借金でやって、ただで通した方がよっぽど経済効果あるじゃないですか。たくさん通るんですから。そういうことを言っているんだ。効率が悪過ぎるんですよ。大借金をして、利息も返せないような状態で物事をつくる方が大変な……(発言する者あり)そういうことなんですね。

 だから、公共工事をただやれば効果がある、それは数字は幾らでも言えますけれども、それは決して、国民の税金を大事に使っている効率的な使い方とは言えないということなのであります。

 私は、先ほどの話に急いで戻らなきゃいけないのですが、十年たったら解消できないのですよ、言わなかったけれども。解消できないからほかのことをお言いになったということなんですね。

 ですから、公債政策というのはかなり毒が多いということでありまして、これまでの総理大臣は非常に慎重だったわけです。借金を大幅に一挙にふやすということは慎重だった。小渕さんの時代に百兆円もふえたわけですが、小渕さんも、私は後から知ったんです、最近知ったのですが、月刊自由民主二月号に、今出ている新しいやつですが、森総理大臣のインタビューが出ていまして、小渕さんは、こんなに思い切った対策をやって大丈夫だろうかと森さんに言ったと。これに対して森さん、当時幹事長でしたけれども、今は国難であり、思い切ってやるべきだ、こう言ったというふうに、自慢げにお話しになっているわけですけれども、小渕さんのようなためらいがあるのが本当なんです。大借金をするということは、後世代に大変な負担を残す。

 借金は、何か麻生大臣によると、債権と相殺できるんだからそんな心配ないんだというようなことをこの間答弁されていましたけれども、国の債権というのは必ずしも、民間と違って、急に回収したり、あるいはいろいろなことができないわけですよ。国は資産を売り飛ばすこともなかなかできない。だから、債権を持っていても、なかなか相殺することができない債権なわけですから、債務の累増というのは非常に重大な問題が起きる。

 また、亀井静香政調会長は、これは夫婦内の貸し借りみたいなものなんだから大丈夫だ、外国に借りているわけじゃないんだ、こう言うわけですけれども、それはそうじゃないのです。これは、例えば国と国民との間の貸借関係でも、おじいさんと、曾祖父とひ孫との関係の貸借関係のようなものなわけですから、ひ孫が税金で返さなきゃいけないものを先食いしてしまうというのは、これは大変なことなわけでありまして、無責任な公債の累増をするべきではない。だからこそ、実は、赤字国債を禁止するというような線を今まで出していたわけです。これを簡単に突破してしまうというのは問題でありまして、ここに政界の、政治の世界でのモラルハザードが起きている、そう思わざるを得ないわけであります。

 そのモラルハザードの最たるものが森総理大臣ではないか、こう思うわけですが、その同じ体質が今回の、ちょっと話がずれますけれども、メモが入りましたので言わせていただきますが、原潜の衝突事件にあらわれているんだ。

 きょう午前中の記者会見で福田康夫官房長官は、十日の首相の行動は承知していない、個人としては、そもそもゴルフに行くべきではなかったということをお述べになったそうであります。総理の補佐役である官房長官が首相の行動を公式の場で批判するのは極めて異例であります。私は、その直属の官房長官にまでこのようなことを言われるような総理大臣のそもそもの姿勢、そもそもの国民に対するモラルというものがやはり問題だと思いますが、官房長官から御答弁をいただきます。

福田国務大臣 きょうは午前の定例記者会見がございまして、いろいろ質問がございましたけれども、その中で、私に、政治家としての個人的な見解、こういうふうに聞かれましたものですから、まあ、この一連のことの中で何が問題か、私は、当日、そもそもゴルフに行くべきでなかった、こういうことを言ったのは確かでございます。

 これは個人的な立場で、特に森総理は森総理で、森総理のそういうようないろいろな事情がおありだろうと思います。しかし、私は、もし私がそうであれば行かなかっただろうというような意味でもって申し上げたので、しかし、その結果、総理の指示、判断が狂ったとかいうことではないんであって、その辺はきちんとやっているということでございます。

 なお、もう一つ申し上げれば、公債発行のモラルハザードと今回のものと全く関係がないということでございまして、一緒に議論をされないようにひとつよろしくお願いいたします。

五十嵐委員 いや、総理の国民に対する姿勢が問われる、将来世代に対する姿勢が問われるのと同じように、今の世代に対する姿勢も問われているんだということなんだろうと思います。

 それから、お待たせして、時間が足りなくなってしまったので大変申しわけないのですが、行政改革について、先ほど少し触れさせていただきましたけれども、省庁を減らすというのは、確かに、各省庁の総務的な機能を合併することによって減らすことはできるかもしれません。

 しかし、本来の省庁再編は、数を減らすよりも権限や事務事業を減らすということに主眼が置かれるべきであったし、私はむしろ、省庁再編で意味があるとすれば、金融や税制や予算や国土計画、環境、危機管理、競争政策といった横割りで省庁を横断的に見ていく機能というのを強化して、強過ぎる縦割りの弊害というのは言われてきたわけですから、その面を是正する、そういう機能を強くするのが本来だったと思います。

 これが、国土計画に関して言えば国土庁が国土交通省に吸収をされる、あるいはなぜか公取が総務省の中に入るといったことで、むしろこの横割り機能の強化というのは、逆に縦割りの中に吸収されるという形でマイナスに働いているんではないか。あるいは、環境庁も、環境省になって一見よくなったかに見えるけれども、これははっきりと並び大名に位置づけられるということで、むしろ総理大臣直属で調整機能、横割り機能を強化するという方向に向かうべきでなかったか、こう思うわけですが、その辺の評価を橋本大臣にお伺いしたいと思います。

橋本国務大臣 いつも申し上げておりますように、私は、ようやく、この中央省庁の再編というものは行革の始まりの終わりだと申し上げております。これで完了したものではないということはまず申し上げなければなりません。その上で今の議員の御意見には私は異論がございます。

 環境庁が環境省になった、結果として機能が低下したという感じの御発言であります。しかし、環境省は、中央省庁等改革基本法におきまして、環境省に一元化されることとなった事務、当然今までの環境庁の業務であります、これに加えまして、従来他の省庁が所管してきた広範な事務につきまして、環境省が環境保全の立場から共同で取り組むことができるようになっております。また、環境保全に関する基本的政策の企画立案や推進、予算の見積もり方針など調整の事務を環境庁から引き継いでおります。

 国土交通省にしても同様なことが言えるわけでありますし、その上で内閣府というものが議員の言われる横割り機能と言われるものを各省の一段高い立場から果たしていく。その中には、もう一々申し上げませんけれども、さまざまな機能を持っておるわけでありまして、議員の御指摘はこの点については当たらないのではないかと私は思います。

五十嵐委員 なお見解の相違がありまして、私、反論したいんですけれども、時間がありませんので、引き続いて効率化に努めていただきたいという御要望だけ申し上げておきたいと思います。

 とにかく今、先ほど最初に申しましたように、日本は大変未曾有の危ない時期に差しかかっている。六百六十六兆円の長期債務、国と地方合わせて持っている。これがクリーピングインフレーション、忍び寄るインフレというところになってきて、いつかこれが爆発をしてハイパーインフレあるいは円の下落といったものを引き起こしかねないと私は思っております。

 むしろ一挙に、今残された期間は三月末までしか、不良債権の問題でいうとないわけでありまして、私は、まだ七十兆円のうち五十数兆円残っていると思いますが、むしろ、場合によっては、これからの展開の次第によっては、これを一気に処理をするということも考えていいんではないか。一気に処理をした後で、金利を、やはりゼロ金利から一定程度まで戻して金融の機動性を回復する、それによって今後の事態に備えるということをやっていかないと、金利はゼロに張りついたままだ、財政出動もできない、何もできないまま、私は、日本の経済の混乱が、この膨大な公債の残高を契機に起きる可能性がある、あるいは不良債権の処理の先延ばしを契機に起きる可能性があるということを考えております。

 そこで、今の時点でこうした危機意識を持つのは当たらないのかどうかということを、もう一度最後に一言だけ宮澤大臣にお伺いして、私の質問を終わります。

柳澤国務大臣 金融危機がこの二、三月に到来するのではないかというようなことが、昨年の年末近くから言われ始めてまいったわけであります。私は、そのことは、いたずらに国民に不安を与えるというようなことで気をつけて見てもおりますし、その私の認識というものをできるだけ広い範囲に、皆さんに知っていただきたいということでこれまでも努めてまいったつもりでございますけれども、先ほど来申し上げますように、この二、三月は株価につきましても時価会計の導入というものが行われるわけではなく、また行われたとしても自己資本比率にシリアスな影響を与えるものではないということを重ねてここで申し上げて、そうした面からの金融危機というのは、全く、我々の視野の中に全然その姿を浮かび上がらせているものではないということをここで明言させていただく次第です。

五十嵐委員 終わります。

野呂田委員長 これにて五十嵐君の質疑は終了いたしました。

 午後四時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後二時三十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後四時一分開議

野呂田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。鈴木淑夫君。

鈴木(淑)委員 自由党の鈴木淑夫でございます。

 先週金曜日の基本的質疑に引き続きまして、経済の問題について御質問をさせていただきます。

 先週金曜日にも申し上げたことでありますが、日本経済、足元、先行き、ともに赤信号が点滅し始めた。去年の七―九は第二次速報でマイナス成長に修正されましたし、十―十二月期は、鉱工業生産が前期比でたったの〇・三%しかふえない。月例報告でも生産の増勢が鈍化してきていることをお認めになった。そして今一―三、去年の十二月の日銀短観では、ずっと二年間改善を続けてきた大企業、製造業の業況判断、DIが悪化する、一―三に悪化する、こう出ているわけですね。

 問題は、こういう赤信号が点滅し始めた日本経済に対して、今ここへ出ている平成十三年度予算というのは立て直すだけの効果を持った予算であろうかということであります。

 改めて宮澤大臣にお伺いいたしますが、私は、この予算を見て不思議でならないのは、まず第一に、何よりも消費を立て直さなきゃいけない、これはもう皆様認識しておられるわけですね。設備投資と輸出で一生懸命引っ張ってきた。なかなか消費に火がつかないうちに、輸出が純輸出で見ればマイナスになっちゃった。グロスで見たって十―十二はマイナスでしょう。そして、設備投資も何かちょっと勢いが悪くなってきた。特に、先行きを示す機械受注、民需を除く船舶、電力で見ますと、ぐっと伸びが落ちてき始めました。さあ大変だ、二つのエンジンのうち一つが逆噴射して、もう一つが出力が下がった、三つ目にはまだ火がつかぬ。とすれば、当然この三つ目に火をつける手段が入っていなければいけないのに、この予算を見ると、国民所得に対する国民負担の比率、負担率が〇・四%ポイント、金額にして二・四兆円ぐらい上がっている。これはもう二・四兆円の所得増税と同じ打撃をポテンシャルな個人消費に与えますぞということ。

 それからもう一つ、金曜日には言わなかったのですけれども、宮澤大臣、例のパソコン減税ですね。

 情報関係機器、これを百万円以下のものは即時償却を認めていた。しかし、これを打ち切ってしまいますね。そして、パソコンは四年、その他のコンピューターは五年、それ以前の六年に比べればちょっと償却期間を縮めたと言っていますが、とにかく直前まで、ことしの三月まで即時償却できるものを四月からできないというのですから、私は、中小企業を中心に、恐らくパソコン需要、百万円以下の情報機器に対する駆け込み需要が三月に出て、四月にはそれで反動減が起きるだろうなと思います。

 IT、ITと口では言っていながら、何でこんな、申しわけないが、ばかげたことをするんだ、支離滅裂じゃないかというふうに私思います。中小企業の経営者はこのことを知らない人が結構いて、私が話してやると、ええっと言いますね、びっくりしています。

 そういうわけで、個人消費を直接刺激する手段がないどころか、逆に足を引っ張るじゃないか。この中身は、雇用保険料と介護保険料の引き上げが全体の四分の三を占めていますが。そして、パソコン減税を打ち切っちゃう。何を考えているんですかということなんです。

 いかがですか、宮澤財務大臣、この予算で一体、今の赤信号の点滅した日本経済は、どういう理屈で立ち直れるんですか。

宮澤国務大臣 今、国民負担率が三六・五から三六・九になって、その主たる理由は、社会保障負担が一四・三に一三・九からなるということでございます。

 そこで、これで介護保険の第一号保険料全額徴収の開始と、あと雇用保険料の引き上げでありますが、この医療及び介護について、〇・九兆円の社会保険料の増が見込まれますけれども、他方で、医療一兆三千億円、介護四千億円の保険給付増がございますから、実際は、差し引きとしては、保険料負担の増よりは給付の増が多いわけであります。給付の増は、GDP的にいえば、それは政府消費の増でございますから、GDPを押し上げることになるのでございましょう。しかし、いずれにしても、給付の増の方が多い。

 それから、年金については〇・六兆円の保険料の増がございますけれども、国民年金、厚生年金で一兆三千億円の給付の増がございますから、これは所得移転になるということで、一人一人の人について見ますと、それは負担よりは給付の方がプラスがあるということだと私はそれについては思います。

 それは、マクロの数字として〇・四%国民負担率が上昇する、その部分だけはそうでございますけれども、逆に個人にとっては給付の方がふえるという結果になるのだと思います。

 それから、コンピューターのことは、それはそういうことでございますね。確かに一年限りに臨時的にいたしました。やや異例なことをしてみまして、悪いことではありませんでしたけれども、しかし、原則からいえば、やはり償却を見るべきものなんだろう。六年の償却ではきついだろうから四年にしたということでございますけれども、これは異例な措置であった一年限りの償却というものを改めましたことは、おっしゃるとおりでございます。

鈴木(淑)委員 今の宮澤大臣の理屈は、増税と同じ効果を持つような保険料引き上げで国民の所得から、懐から取り上げているが、それは給付で出しているからいいじゃないか。実は、先週の金曜日も坂口大臣が似たようなことをおっしゃったわけですね。

 しかし、これは年金なんかですとじかに所得移転で所得に戻りますね。だけれども、この負担率上昇の一番大きな原因は介護です。介護はもちろん給付ではあるが、これはある意味で介護サービス事業をやっている人に対する支出になっていくわけですよね。ですから、一番わかりやすく言っちゃえば、所得増税で国民の懐から取って公共投資をやったら、ちゃんとプラスマイナスでとんとんだから大丈夫だ。

 しかし、それに対して、いやいやそうじゃないよ、今、消費が何とか立ち直らないかと言っているときに消費に打撃を与えておいて、そして乗数効果が非常に下がっちゃった公共投資の方へばらまいたって、こっちで企業がもうかっても、それが所得に回っていかないというところに今の特色があるのだから、こっちへ金をつけたってだめなんだよ、こういう理屈があることを忘れてはいけないと思うのですね。

 御承知のように、何とか緩やかな回復で企業収益はよくなってきている。普通なら、これによって設備投資をふやす。若干は今もキャッシュフローから設備投資へ行っています。だけれども、あとは、本来なら雇用をふやす、賃金を上げるという形で家計に回るんだけれども、そこのところが、バブルの後遺症、借金の返済とか不良資産の損切り売りとか不良債権の償却といった後ろ向きの敗戦処理に使われているために、なかなか個人消費に火がつかないというのが今最大の問題点なわけですね。

 だから、そういう意味で、経済全体にばらまいていくような出し方をしていてもだめなんですよ。個人所得そのものをふやしてやる、可処分所得そのものをふやしてやるような手を打たないと、所得増税と同じ額、取り上げたのと同じ額を出したといったって、それでは今の一番大事なところへ切り込んでいっていることにはならないわけであります。どうぞ、そこのポイントをお考えいただきたいのですね。

 何となく支出をふやす、介護サービスの人にお金を出してあげる、そうやって経済全体がよくなれば消費がよくなるんだよという理屈が通るなら、今こんな四苦八苦していません。そこのところが切れているから四苦八苦しているわけでしょう。企業がもうかっても家計に回るような使い方をしないから。そこに最大の問題があるということをどうか忘れないでいただきたいと思います。

 日銀総裁、お忙しいところお越しいただきまして、ありがとうございました。

 財政がこういう状態ですし、これは御異論もあるかもしれないですが、私が見るところ、マーケットは、あるいは企業経営者は、この十三年度予算によって景気が立ち直ると思ってないですよ、私が聞いている限りでは。ないよりはある方がましですよ。だけれども、これで問題解決だとは思っていない。

 この前も申し上げましたけれども、予算の内容が次々と明らかになってきたのは十二月の中ごろですね。どんどん新聞が発表していった。その真っ最中ですよ、中旬、六営業日連続して株価が下がったのは。もちろん、刺激は米国の株価下落とかいうのはあったけれども、それだけの刺激で下がって、日本経済が大丈夫だったら戻るはずなのに、戻らない。一万三千円まで下がったのが戻らない。それどころか、現在は一万三千円の前半の方まで下がっていますね。私は、マーケットはこの十三年度予算では危ないなと思っている証拠だと思うのですね。だから、きょうはお呼びしていませんが、柳澤大臣に、えらいことにこれからなるかもしれないからどうぞ頑張ってくださいと申し上げた。

 そこで、どうしても、皆さんは、もう財政はこれはだめだな、少なくともこの予算が成立するまでの間は追加的財政政策はあり得ないな、そうするとこの二月、三月に間に合うのは金融政策しかない、こういう感じになっているのですね。それにある意味ではおこたえになったのが、先週金曜日の日銀の政策委員会の政策決定会合であったと思うのですが、速水総裁、私が承知している限りでは内容が三つあります。

 一つは、公定歩合を〇・五から〇・三五に下げて、その金利で日銀は受動的に貸し出すというロンバート方式の貸し出しをセットしたこと。それから二番目は、短期国債の買いオペを積極化する。三番目は、CPオペ、これを各支店を含めて早く実施できるように急ぎます、こういう話ですね。

 そのそれぞれについてお伺いしたいのですが、まず第一のロンバート貸し出しですね。こういう疑問に対してどうお答えになりますか。今コールレートは〇・二五%、つまり市場では〇・二五%の金利でお金を調達できるのですね、物すごく金融緩和してじゃぶじゃぶしているのだから。そのときに、〇・二五より高い〇・三五でお貸ししますよというロンバート方式をつくって何の救いになるのかということですね。市場で〇・二五で調達できないような悪いやつだけが、貸してもらえないようなひどい金融機関が駆け込み寺的に日銀に来る、そういう制度ですかという質問です。

 それから二番目については、日銀はかねてから十分流動性を供給していますと言っていましたが、その上、短期国債をたくさん買ってもっと流動性を供給したら、コールレートは〇・二五よりもっと下へ下がってしまいませんか。これはどういう効果があるのですか。

 三番目は、やはりその効果は、今の短期国債の買いオペ増加と同じ話ですが、今まで十分量を供給していたとおっしゃっていたのに、さらに短期国債やCPをたくさん買うというのは、どういうことになるんですか、コールレートが下がっちゃうじゃありませんか。だけれども、目標レートは〇・二五のままだとおっしゃっておる。どういうことですか。

 以上の質問でございます。

速水参考人 鈴木議員の御質問にお答えしたいと思います。

 私どもの景気の判断は、御承知のとおり、我が国の景気は緩やかな回復を続けているけれども、そのテンポは輸出の減速等によって鈍化しつつあるということと、予期しない、あるいはリスク評価といいますか、十月の見通しの中で申しました二つのリスク、一つは海外、特にアメリカ経済がここへ来て急速に軟化を始めて、非常に世界全体の証券市場に影響を与えてきている、あるいは私ども日本の証券も含めてですね。それと同時に、世界の対米輸出を初めとして輸出が減ってきている。これは、先週、私ちょうど各国中央銀行総裁方が香港に集まりまして、お話を聞いていたんですが、皆さんそういうことは感じておられる。

 ただ、これがいつまで続くのか、急速にアメリカが戻すのかどうかということ。これはまだはっきりわかりませんが、アメリカは比較的、きょうのグリーンスパンの国会答弁を見ていても、そうは長く続くものではない、今年中には立ち上がるというふうに言っておりますから、わかりませんけれども。

 もう一つは、やはり、日本の証券市場、これは収益は悪くないんですけれども、IT産業その他、アメリカの証券に引きずられて下がっていく可能性がある。こういうリスク要因が年度末を控えて出てくる可能性があるということから、先ほど御指摘いただいた三つの決定をしたわけでございます。

 それで、コールレート〇・二五、無担保の翌日物が十分出回っているときに〇・三五に下げる意味はどういう意味かという議員の御質問だと思いますが、今回の措置は、内外の経済情勢や金融市場の動向を踏まえまして、金融市場調節の柔軟性を高めていきたい、幅広く安定的に資金供給を行っていきたい、金融面からこれによって景気回復を支援する力を強化していきたいということで実施したものでございます。

 ロンバート型の貸し出しというのは、日本銀行にとっても初めての試みなんですけれども、公定歩合で受動的に流動性を供給するという枠組みでございまして、日本銀行はオーバーナイト金利が〇・二五%前後で推移するように金融市場調節を行ってまいりますけれども、何か先ほど申し上げたようなことで思わぬことがショックになって金利が飛び上がる可能性が十分あり得る。そういうときに、問題になっている金融機関が証券を担保に日本銀行に飛び込んでくれば、担保の範囲内で借り入れができる、それが〇・三五%である。ということは、どんなに幾つかの特定の金融機関が破綻なり思わぬ障害にぶつかって資金調達が必要になったときにも、安心して、日本銀行に頼めばオーバーナイトで貸してもらえるんだ、それも必要であれば数日間のロールオーバーは可能であるということが決まりますれば、コール市場金利は〇・三五から上がることはないということになります。それが非常に大きな安定化要因になるのじゃないかというふうに思っております。

 それから、もう一つの流動性の供給方法として、二つ、今までやることができたことを、もう少しはっきりした形で実行しようということを決めたわけですが、一つは、一年以内の短期国債の買い切りオペを積極的にやるということです。これはどこがねらいかといえば、買い切りオペでございますから、期末日などをまたいで、短期の資金を返済圧力なしに期日まで供給できるということですね。これは、市場へのかなり安定した、安心感を与えることになるのじゃないかというふうに考えております。御承知のように、短期国債は十分市場にも出回っておりますし、私どももかなり持っておりますから、その操作は比較的簡単にできるんだというふうに思っております。

 もう一つの、全国の支店で手形のオペを早期に具体化していくということ。これは全国の店でそれをやるというのは初めての経験でございますので、ちょっと準備を置きまして七月ごろから実施できると思っておりますけれども、地方所在の金融機関を含めて幅広く安定的な資金供給を、手形の買い入れという形でできていくのじゃないか。

 こういう措置を進めることによりまして、金融市場の円滑な機能の維持と安定性の確保に万全を期して、引き続いて金融面から景気回復を支援していきたいというねらいでございます。

鈴木(淑)委員 ありがとうございました。

 まず第一点については、日本銀行が予測できないような事態が万一生じて、資金不足でばあんとコールレートが飛び上がりそうになったときでも、受動的にロンバートのところから出るから、上限は〇・三五でそれ以上は上がらないよと。ふだんなら予測してちゃんとうまくやっていくから〇・二五でとまっているわけですな。そういう、いわば思わざる危機が発生したときでも金利は上がらないぞ、こういう体制だという御説明でございました。それから、短期国債は買い切りオペで、今までのような三カ月以内というよりももっと長期のお金を返済圧力がかからない形で供給することに意味があると。確かに、年度末を控えておりますし、そういうこともあろうかと思います。

 ありがとうございました。お忙しゅうございましょうから、どうぞお引き取りください。

 麻生大臣、最後に。

 大臣御就任前に決まったことを質問せざるを得ないので申しわけないのですが、私は、日本経済、今、さっきも言いましたように、設備投資と輸出という二つのエンジンで引っ張っていたら輸出の方が逆噴射し始めた、もう一つのエンジンも出力が下がってきた、三つ目に期待しているエンジンにまだ点火しないという状況。それをまた認めているから、前年度の一・四%成長という実績から本年度は一・二という実績予想みたいなものをお出しになっておるわけですよ、政府は。それが平成十三年度になると一・七に高まる、こういうわけですね。

 どういう理屈で高まるのですかね。表を見ますと、専ら個人消費が立ち直ってくる、設備投資も再び伸びを高める。民需主導で高まるのですよね。それで、外需の方は寄与度がマイナス〇・一です。だから、一・七といっても、内需だけで一・八ぐらい成長するのですよ。私はあの理屈はわかりませんね。何か隠し玉の政策でもあって、それを予算が成立した後に出してくるならともかく、今の予算じゃ個人消費はますますへこみますよ。さっき言いましたように、二・四兆円の国民負担増ですよ。しかも、本年度から始めていますから、本年度、来年度と通計すると四兆円以上の国民負担増になっていくんです。これは大きいですよ。

 そういう中で、どういう理屈で個人消費が立ち直るとお考えですか。それで、どういう理屈で一・七%の成長率になるんですか。御自分でお決めになったことじゃないのに申しわけありませんが、お立場ですから、御説明ください。

麻生国務大臣 今、確かに御指摘のとおり、平成十二年度の実績見込みが約一・二%、その前の十一年度は一・四%だったので、この数字は、年初に一・四%と申し上げて、ほぼ一・四%の数字が出て、そして平成十二年度の予算も、ほぼ一・二の数字が三月末には達成できると読んでおります。

 少なくとも、過去二年間くらいは大体当初予測と余り違わなかった数字が出てきたんだという点をまず押さえていただいて、この平成十三年度は、確かに御指摘のとおり、公需、公共事業の貢献度というのは〇・二しか見ておりませんし、今年度並みしか見ていないというところは事実で、それに比べて民需の寄与度が〇・九から一・五まで上がっているから、トータルとして一・七と一・二の差になったという点だと思いますし、外需は〇・〇、全くなし、横で、外需の寄与度はゼロで……(鈴木(淑)委員「〇・一のマイナスじゃないですか」と呼ぶ)それは今年度です。今年度が〇・一で、来年度は〇・〇という数字になっております。

 そういった状況なので、いろいろ御指摘のとおり、御心配をいただいております点は決してないわけじゃございませんし、悪いことを挙げれば、何となくアメリカの方もいまいち、ハードランディングかソフトランディングかは別にして、少なくとも何となく景気が後退してきているという数字は、過去三回の四半期を見れば御指摘のとおりだと思っております。

 ただ、私どもとしては、決して悪いばかりの数字ではないのであって、失業率は四・七とか八とかいうところで張りついてはおりますけれども、いわゆる雇用者数というのは間違いなくふえてきておりますし、それから求人倍率というのもこのところずっとふえてきておりますので、一時期、二年前に比べても全然、求人倍率が〇・四から〇・六くらいまで上がってきていますので、そういった意味からいきますと、少なくとも動きが出つつあることは確かなんだと思っております。

 そういった意味で、やはり雇用がある程度出てこないと、何となく金はちょっといまいちということになるんだと思いますので、そういった意味では、これだから絶対だとかいうようなものが、今確としたものがあるかと言われれば、それはもう悪いことをいっぱい挙げていけばいっぱい出てきますし、逆にこっちからいえばいろいろなものが出てくるんだと思いますので、なかなかこれだから、この数字があるから絶対ですというものがあるというほどのものではないとは思います。

 しかし、少なくとも今年度に比べて、いわゆる企業の設備投資というものが先物としては結構見える数字でもあると思いますので、かつてほどの元気はなかったとはいえ、そのできたものが効果を発揮してくるということも期待できますので、丸々期待できないというわけではないというように申し上げさせていただきたいと存じます。

鈴木(淑)委員 おっしゃいますように、求人数がふえてきている。その前は時間外がふえていましたけれども、とうとう求人数もふえてきたなということで、早く雇用が本格的にふえればという気持ちでいるのはわかるんですが、二つ問題がありまして、一つは、そうやって引っ張っていた二つのエンジンが、一つが逆噴射で一つが出力が下がってきたから、今まで少しよくなりかかっているからといって、この延長線上で物事を考えていいのかねというのが一つですね。

 それからもう一つは、少し雇用がよくなった、賃金も少し今、十二月は、冬夏型のボーナスは少しよかったと思うんですね。しかし、だからといって、少し所得がふえたら少し消費がふえるかというと、宮澤大臣が先週言っておられましたけれども、限界消費性向のところがうまく動いてくれない、むしろ下がっちゃう。それはやはりコンフィデンスの問題ですから、そこで私は最初の問題に戻るんですよ。

 今、六十五歳以上の人は毎月二千七百円くらい介護保険料を納めているでしょう。十月から倍になるんですよ。それはやはりお年寄りにとってはつらいでしょうね。こういう社会保険のところでどんどん国民負担をふやしていったら、これはお年寄りは介護保険でやられますが、雇用保険は一般にかかっている、これでは消費のコンフィデンスはなかなか回復しないだろうと思います。

 そこで、麻生大臣にお願いしたい。それは、大臣は経済財政会議を御担当ですね。そこに坂口大臣はメンバーでお入りになっていないのかもしれませんが、坂口大臣のところの御所管のさまざまの社会保険料というのは所得増税と同じ、直接税と同じなんですね。ですから、何となく厚生労働省が自分で決めちゃって、マクロ経済への影響をお構いなしに自分で決められると、これはまずいんだと思うんですよ。ですから、どうぞ、税制に注意を払うだけじゃなくて、社会保険の制度のところにも十分な御注意を払ってマクロ経済の予測をしていただきたいと思います。

 坂口大臣、きょうお越しいただいておりまして、もう時間になってしまいましたが、最後に一言。

 そういう意味で、マクロ経済全体を内閣として考えているときに、御所管の社会保険制度というのは、何か独立した関東軍みたいな感じでやられちゃ困るわけで、一緒に、一体的に考えていただきたいと思います。ぜひそういう方向でお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 御指摘のとおり、将来の、これからの健康全体、そして年金、医療、介護、こうしたことを見ていきます場合には、そうした全体の、トータルのこと、経済にどういう影響を与えるか、また、年金や医療や介護、そこで働く人たちのこの問題がどういうプラスの面を与えるか、そうした面も全体考えながら将来の問題を考えていきたい。

 当面の課題の問題と、そしてこれから先の問題と両方あるというふうに思いますので、今後の問題につきましてはそうした大きな立場から検討していきたいと考えております。

鈴木(淑)委員 よろしくお願いします。

 時間でございますので、これで質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

野呂田委員長 これにて鈴木君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 きょう、私は在沖米軍のヘイルストン四軍調整官の暴言について、政府の対応をただしたいと思います。

 その前に、ことし初めの沖縄県北谷町での飲食店連続放火事件が米海兵隊員によるものであることが昨晩明らかになりました。この放火は悪質、凶悪犯罪です。少女暴行事件が起きた後、九五年十月二十五日、刑事裁判手続に関する日米合意で、殺人及び強姦について、日本政府の要求によって被疑者の身柄を日本側に引き渡すことはできることになりました。今回の事件は、殺人、強盗、強姦、放火、これに並ぶ、匹敵する凶悪犯罪でありますから、したがって、日本政府は被疑者の身柄の引き渡しをアメリカ側に直ちに要求すべきだと思いますが、いかがですか。

河野国務大臣 地位協定によりますと、殺人、強姦ということが明示的に書いてございます。地位協定には明示的にそれしか書いていないわけでございますけれども、運用の改善という話し合いを米側といたしておりまして、この運用の改善の中には、明示した特定の事件だけではなくて、その他の事件ということが書いてございます。

 問題は、その他の事件というものの中に、実は明示的な例示がないわけでございます。私どもとしては、そこには、できるだけ早く明示的に幾つかの事件についてはっきりさせた方がいいと考えておりましたけれども、なかなか日米間の話し合いがついておりません。

 しかしながら、今議員がお話しのように、放火犯というものに対する日本の法律の厳しさというものを考えれば、これは、我々が考えるのは、殺人、強姦、放火と議員は言われましたけれども、当然その並びで考えてもいいという感情を我々は持っているわけでございまして、それはただ単に感情だけではない、日本の法律の体系の中にも、刑法の体系の中にもそういうものはあるわけでございますから、私どもとしては、こうした問題についてはきちんとアメリカ側に申し入れをして、身柄を一刻も早くこちらに引き渡すように話し合う必要があると考えて、目下努力中でございます。

赤嶺委員 身柄の引き渡しを要求するということを日本政府の態度として持っている、このように確認していいわけですね。

 それで、あなたは、河野外務大臣は、午前中の論議で、この問題について高い政治レベルで話をして決着をつけなくてはならないと答弁しておられます。九五年の合意というのは、実際は沖縄県民は大変な不満を持っておりまして、九五年のときに要求したのは地位協定の改定要求です。これを改定しないで、起訴前の身柄引き渡しは日本の要請によって行われるという、運用改善などの措置でごまかしているわけです。これに対する県民の批判は、今日でもこの事件をきっかけにまた改めて強まっております。

 この際、犯人の身柄引き渡しとともに、米軍犯罪の身柄引き渡しに関する日米地位協定そのものも改定すべきだ、そのように要求すべきだと思いますが、いかがですか。

河野国務大臣 御答弁を申し上げる前に、私の思い違いでございました。「殺人又は強姦」ということを明示的に書いてございますのは、地位協定ではございませんで、その地位協定の後つくりました合同委員会において合意をいたしました運用の改善の中に、はっきりと「殺人又は強姦」ということを明示的に書いてございまして、その文章の後半に、「その他の特定の場合について」ということが書いてあるということでございますので、訂正をさせていただきます。申しわけありません。

 今議員のお尋ねになりました、あるいは議員の御主張になりましたことにつきましては、私、きょうの午前中にも御答弁を申し上げたと思いますけれども、この問題は、我々として高いレベルでアメリカ側と話をしなければならぬと私は考えておりまして、できるだけ速やかに米側と高いレベルで話し合いたいというふうに考えております。

赤嶺委員 今度の事件に対して稲嶺知事は、放火は、県民の人命、公共の安全を脅かす凶悪な犯罪であり、絶対に許せない、被疑者の身柄を強く求めたい、県民の強い関心だ、このように述べておられます。こういう立場で身柄の引き渡しも要求するんだ、このように理解してよろしいわけですね。

河野国務大臣 現在、既にこの事案につきましては送検がされているわけでございまして、検察当局におきまして慎重な詰めが行われていると承知をいたしております。

 その検察におきます調査の結果によりましてこれが起訴をされるということになれば、その段階では当然身柄は引き渡されるということになるわけでございますが、私どもとしては、できるだけ早く、身柄の引き渡しを求めて努力中でございます。

赤嶺委員 稲嶺知事が要求しているのも、起訴後の身柄の引き渡しじゃないんですよ。起訴前の身柄の引き渡しを強く要求しているんだ。それに日本政府がこたえ切れなかった場合には県民の怒りにさらに大きな火がつくということを申し上げまして、次に、ヘイルストン四軍調整官の暴言について伺いたいと思います。

 この問題のそもそもの発端は、去る一月九日に起きた米海兵隊員による女子高校生への許しがたい事件であります。あの九五年の少女暴行事件が起きた際、二度と米兵の犯罪を繰り返さないでほしいとの願いを込めて、九万人の県民が参加して総決起大会を開催しました。ところが、米軍の犯罪は決起大会直後から発生し続け、昨年の沖縄サミット前にも破廉恥な事件が繰り返されました。

 米軍と政府は、事件が起きるたびに、綱紀粛正だとか米兵への教育だとかを強調してきました。ところが、米軍による犯罪は繰り返され続けています。先ほどの放火事件もそうです。綱紀粛正や教育の徹底程度では、もはや米軍による犯罪はなくすことができない。アメリカ政府や日本政府もこれについて全く方策がない状態に陥っている。そうではありませんか。

河野国務大臣 方策がないといって放置するというわけにはまいりません。私どもとしては、アメリカ当局とも話をし、地元の関係者の皆さんの御協力もいただいて、こうした問題を根絶するために努力をしなければならぬ、こう考えているわけでございます。

 今議員がお話しになりましたサミット前後に起きました事案につきましても、私ども、米側とも話し合っておりまして、議員も十分御承知だと思いますが、ワーキングチームその他をつくりまして、地元の皆さんの御協力もいただいて、こうした問題がないようにやってきたわけでございます。

 こうした地元、日本政府、そしてアメリカ、それぞれの協力体制をどういうふうにつくり上げて、しかもそれを、恒常的にと申しますか、固定的にと申しますか、やっていくことが適当かどうかというようなことまで含めて作業をしていかなきゃならぬというふうに思います。

赤嶺委員 努力はするけれども方策がないというのが現状なんですよ。米軍も、ボランティアも一生懸命やっています、英語教育にも奉仕をしています、綱紀粛正も努力するし、米兵の教育もやってまいりました。それで、こういう事件が相次いで起きているわけですよ。何の方策もない、このことは非常にはっきりしているんです。何の方策もないというところまで来て、この前の沖縄県議会が、全会一致で初めて意見書の中に海兵隊の削減要求を入れたんです。こうした経過があったから入れたんです。これは沖縄県民の総意であります。

 ところが、ヘイルストン調整官は、海兵隊削減の県議会決議をとめ切れなかった県知事や県議はばかで弱腰と、最悪の侮辱を行っているわけですね。このヘイルストン調整官の発言は、沖縄県民の意思に対する重大な挑戦であり、民主主義を否定するものです。沖縄をまるでアメリカの植民地のように扱う暴君の態度であります。釈明したからといって簡単に済まされる問題ではありません。

 政府は、ヘイルストン調整官の発言にしっかり抗議をして、そして調整官の罷免を求めるべきだと思いますが、いかがですか。

河野国務大臣 いかに私信とはいえ、極めて品位を欠く言い方だというふうに、私も怒りさえ覚えるものでございます。

 ヘイルストン氏は、新聞にこれが公表された翌々日には、稲嶺知事を訪ねて謝罪をしておられます。そして、真意について説明をしておられます。こうした釈明を沖縄県民の皆さんがどういうふうにお受けとめになるかということもあろうかと思いますが、ヘイルストン氏のこうした率直な謝罪というものについても我々は注目をしたところでございます。

赤嶺委員 ヘイルストンの発言が品位を欠く表現で、それは真意でなかったから、謝罪をしたので、そこに着目をしていると言いますけれども、これが日本政府と沖縄県民の本当の意味でのギャップだと思うんですよね。あなた方が支援をしている稲嶺知事でさえ、ヘイルストンが謝罪に来たときにこう言っているのです。ヘイルストン氏の発言は最も重要な問題に対する配慮が欠けていた、それは沖縄の五十六年間の歴史である、このように指摘しているのです。

 抗議も罷免も要求できない日本政府あるいは河野大臣というのは、沖縄の戦後五十六年間の苦難の歴史というものをどのように認識しておられるか、非常に疑わしく思います。

 今回のヘイルストン調整官の発言が明るみに出たとき、沖縄県民の多くが、一九六三年当時のキャラウェイ高等弁務官の発言を思い起こしました。アメリカの占領下にあった当時、いろいろな事件や事故が頻発をいたしましたが、私が忘れられない事件が、青信号のときに横断歩道を渡っていた中学生が米軍の車両に轢殺された事故であります。これは、青信号がよく見えなかったということで、軍事法廷で犯人の米兵は無罪になりました。

 こういう事件がたびたび起こっているそのときに、県民は無権利状態に置かれていた、これに呼応して、基本的人権をかち取るために、権利と自治の拡大を要求して闘っていたちょうどそのときです。キャラウェイ高等弁務官は、当時アメリカの代弁者として琉球政府で活動していた人々を、そのときに、無責任、無能力、このように批判をいたしました。琉球の人々が政治的、経済的、社会的な権利を獲得することを主張しても、それは簡単に与えられるものではない、このようにキャラウェイ高等弁務官は述べました。すなわち、琉球における自治権は神話であり、存在しない、このように述べたのです。

 沖縄県議会が海兵隊の削減を決議したことについて、ヘイルストン調整官は、何もせずに見ていた彼らは頭の悪い弱虫だと言った。これは、知事や行政の首長に対する最悪の侮辱ではありませんか。単なる釈明で済まされる問題ではないのです。この態度こそ、まさにキャラウェイ高等弁務官の姿勢、態度と同じであります。

 こうした姿勢をとっているのが在沖米軍の責任者といって、米軍の犯罪をなくすために綱紀粛正を主張し、米軍への教育を強調しても、県民はそれを信用しないし、信頼できません。ですから、真意をあなた方が理解したということにとどまらず、稲嶺知事が五十六年間の沖縄県の歴史としてこの問題を見てほしいと言っている、その立場に立って、改めてヘイルストン四軍調整官に対して抗議し、そしてその罷免を求めるべきではありませんか。

河野国務大臣 議員に、もう少し正確に私の発言を受けとめていただきたいと思います。

 私が申し上げたのは、ヘイルストン氏は謝罪に来て、あれは自分の真意ではなかったと言っている、このヘイルストンの言葉に我々は着目をしている。つまり、本当にそれが真意でないのなら、彼がこれからどういうことをするかということに我々は着目していると言ったのであって、私があれは真意ではないと言ったのではないのですから、そこは議員、正確に受けとめていただきたいと思うのです。

 これからヘイルストン氏が、ああした発言が自分の真意でないと言うのであるならば、彼はみずからの真意を何らかの形でこれから先も発言をするなり行動をするなりしていかれるに違いない、そう思っているわけです。

赤嶺委員 ヘイルストンが知事に謝罪をして、そしてそれは今後の行動にあらわれるだろうということは、沖縄の人はだれも思っていないのですよ、外務大臣。全然思っていないのです。これまでの五十六年間の歴史がありますからね。また繰り返されると。こういう植民地だと考えているような司令官は、やめさせるということなしには県民の信頼は取り返せないのです。

 例えば、一月の少女に対する不幸な事件が起きたときに、金武町の吉田町長はこう言っています。

 「戦後五十五年間、本町では、米軍人による殺人や暴行事件があいついで発生しています。そのたびに米軍や日本政府に強く抗議し、綱紀粛正をもとめてきましたが、米軍犯罪がいっこうになくなりませんでした。三年間に一度は殺人事件をおこすなど、町民の人権を踏みにじってきました。」こう言っているのですよ。

 今後ヘイルストンがどのように行動するか、これを見きわめていきたいなんて、外務大臣は、一九九五年の少女暴行事件のときにも自民党の政治家から、あなたはどこの国の外務大臣だ、このように言われました。沖縄でもそれは評判になりました。今後も、抗議もしないし罷免も要求しなければ、どこの国の外務大臣だ、そのように言われることになりはしませんか。

河野国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、日米安保条約の規定のもとで米軍の基地が日本に置かれて、その七五%が沖縄に集中をしている。このことからくる沖縄の皆様方に対する御負担がどのくらい重いかということには、いつも私は思いをはせているつもりでございます。そういう気持ちを持って、私は沖縄の問題にはとりわけ努力をしてきたつもりでございまして、そういう御発言は、私にとっては極めて残念な御発言でございます。

 先ほど来お話がございますような事件を根絶するために、今後とも、政府そしてアメリカ当局、地元の皆様方の御協力も得て努力をしてまいりたいと思います。

赤嶺委員 私は、外務大臣に、沖縄県民と日本政府の外交との間にこれだけのギャップがあるんだということを深く深く考えていただきたいと思います。そして、改めてアメリカ政府への厳重な抗議とヘイルストン調整官の罷免を強く求めて、最後の質問に入ります。

 実は、一月二十日に北谷町で放火事件が起きているのですが、一月十九日に金武町の吉田町長は、キャンプ・ハンセンに行きまして、海兵隊に対して沖縄県民の心をわかっていただきたいということで、犯罪防止の一助になればということで講話を行っているのですね。その翌日、放火事件が起きているのですよ。それで、それについて金武町の町長はこう言っているのです。

 「ここまでくると米軍の組織の問題だ。海兵隊をどうするのか、存在意義を含めて原点に戻って考え直さなくてはいけない。日米安保を認める政府はきちんと考えてほしい。受け入れる県民が大変なんだ」このように言っているのです。

 実は、これが県議会の決議なんです。こういう思いが県議会で、安保に賛成する人も反対の人もみんな一致をして海兵隊の削減決議を行ったんです。

 政府は、この決議が県民の総意だということを認識しているのかどうか、そして、この海兵隊の削減決議について対米交渉を行う用意があるかどうか。この点について、河野外務大臣と橋本沖縄担当大臣に伺いたいと思います。

河野国務大臣 議会の総意というものは、これを重く受けとめるということは当然だと思います。ただしかし、日本の国の安全をどうやって守るかという一国の安全保障政策というものは、これはまた極めて重要なテーマとして、国全体の議論をしなければならない問題だと考えております。

 安保条約のもとで、先ほども申し上げましたように、日本にございます基地の七五%が集まっている沖縄、その沖縄に住む方々の御負担、御迷惑というものが大変重いということは、我々はもう十分に承知を、理解をしているつもりでございまして、そのことについては、沖縄県民の皆様に十分な我々として思いを、また具体的な政策をしていくということが重要だと考えながらも、一国の安全保障という問題については、ぜひ沖縄県民の皆様も一緒になって考えていただきたいというふうに思うわけでございます。

橋本国務大臣 今、河野外務大臣から御答弁を申し上げたことに尽きておると思いますが、外務大臣がつけ加えられなかったこと、一点だけ私は補足をさせていただきたいと思います。私自身、沖縄県の抱えておられる、また県民の抱えておられる御苦労というものに、少なくとも関心は持ち続けてきた人間だと思いますから。

 先般、日米外相会談が行われました際、沖縄県民の負担を最小限にするよう努力するというパウエル国務長官の発言を、河野外務大臣は引き出されました。今後とも、SACOの最終報告というものを踏まえながら、日米間が緊密に協議をしながら、少しでも県民の御負担を減らすように努力をしてまいりたい。議員のお話を伺いながら、そのような感じを持った次第であります。

赤嶺委員 沖縄県民も一国の安全保障の立場から日本の安全あるいは安保条約について考えてもいただきたいという答弁もありましたけれども、沖縄県民を半世紀以上にわたってその一国の安全保障の犠牲にするやり方、これは独立国として本当に恥ずかしいことではありませんか。自国の国民が米兵に襲われたり、放火をされたり、あるいは基地からのオイルで川が汚されたり、環境が汚染されたりしている。そういう問題について、あなた方は打つ手や知恵さえ何も持っていない。日本の外交の行き詰まりじゃないですか。それでもって、沖縄県民に一国の安全保障を考えてくれと言ったって、これは受け付けられるはずはないんです。

 橋本沖縄担当大臣は沖縄県民の負担を軽減すると言いましたが、その後に出てくるのはSACOの合意です。SACOの合意というのは、あの美しい山原の森を破壊してヘリパッドの基地をつくることであり、ジュゴンのすむ海に基地をつくることであり、そういう基地の拡大強化ではありませんか、那覇軍港の浦添移設も含めて。

 本当にまともに沖縄県民の負担を軽減しようというのであれば、沖縄県議会が超党派で決議をした海兵隊の削減、これに真剣に取り組むべきであるし、これに真剣に取り組めない政府は一国の政府としての資格が問われているんだということを最後に申し上げまして、私の質問を終わります。

野呂田委員長 これにて赤嶺君の質疑は終了いたしました。

 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党の阿部と申します。

 先ほどの党首討論を踏まえまして、本会議場には森首相はおられませんが、森内閣を支えておられる皆さんにまず冒頭一言申し上げたいと思います。

 私は、長きにわたり子供の医者をしてまいりました。そして、先ほどの党首の、森首相のさまざまな御発言、態度を拝見いたしまして、果たして今の森内閣にこれから子供たちに道義や倫理を教えていく資格があるのか、非常に疑問に思いました。端的に申しますれば、森首相のおっしゃったことは、態度はふまじめだったかもしれないけれども結果がいいからそれでいいじゃない、平易に言えばこういうことでございます。

 しかしながら、人間、道義とか倫理、その根本にあるものは、本当に誠心誠意全力を尽くして、みずから身を挺して事をなす、その姿勢でございます。今、青少年の問題が非常に危うい時期にあるときに、子供たちが、例えば森首相のゴルフのパターの笑顔と、そして一方で海の藻くずになるかもしれない同じ年齢の十七歳の命のことをどのように受けとめたか、私は極めて遺憾の意を表したいと思います。

 あわせて、今の赤嶺委員のいろいろな御質問、まさに日本国による国民の棄民政策が沖縄に集約されております。国民の命に責任をとらず、棄民をなし、あわせて、この間の政治倫理、官僚の皆さんの倫理の本当の崩壊、このことをまず深く自覚した上で本日の討議に臨んでいただきたいと思います。

 私は、本日がもう一般質問の時間であることを存じ上げながら、ただしかし、これまでの集中審議の中でも、うやむやにされ、一向に明らかにされない外務省の機密費並びに官房機密費について、まずわかりやすく、子供でもわかるように図にしてまいりましたので、お示しいたしますので、端的に正確にお答え願いたいと思います。

 野党席の先生方にはごめんなさい、ちらっとしか見せられません。しかし、答えていただきたいのは与党席の先生方並びに官僚の諸氏でございますので、申しわけありませんが、ちょっとこっち向きにさせていただきます。

 まず、松尾前外国支援室長の起こした横領と言われる事件でございますが、十二月中旬、警視庁の事情聴取が入ったということが報道されております。

 では、これは順次お願いいたします。

 外務省の官房総務課長、官房長、当時でございます、事務次官、そして河野外務大臣は、この松尾室長が取り調べ中であるということをいつお知りになりましたか。一言で、何月何日、何月何日、何月何日、何月何日と明確にしっかりと、はっきりとお答えくださいませ。

 まず、官房総務課長からお願いいたします。御入院中ですので、当時のことが記録にございますでしょうから、松尾室長の取り調べについて、当時の官房総務課長、これは部下が事情聴取を受けているわけですから、存じませぬというわけでは、これは外務省としての管理能力が問われる事態でございます。はたまた、官房総務課長はいつ松尾室長が取り調べを受けているという事実を確認なさったか、お答えいただきます。一言で明確な期日をお願いいたします。

飯村政府参考人 お答え申し上げます。

 松尾元室長本人より、警察から事情聴取を受けたとの報告が昨年十二月中旬にございましたけれども、その何月何日ということについては、手元に資料がございませんので、また追って御報告させていただきたいと思います。

阿部委員 では、明確な期日をお願いいたします。

 これはあいまいにしていいことと、世の中には、管理能力が問われる、森首相への御報告も、何時何分、一刻一刻が問われる事態でございますので、このようなことに対してファジーに答えられては困ります。

 次に、官房長、いかがですか。当時は阿部さんだったと思いますが、記録上、ございますでしょうか。官房長にはいつ、松尾室長の取り調べ、お願いいたします。ファジーなお答えは御遠慮願います。

飯村政府参考人 その点についても、追って御報告させていただきます。

阿部委員 では、これは次回必ず、委員長の御採択で、明確な期日をお願いいたします。

 このような管理体制は、国を預かる外務省として許されるものではございません。いつ、何日、何時まで、お願いいたします。

 続いて、事務次官、同じでしょうか。ここまで来るとますます大変です。お願いします。

飯村政府参考人 同様でございます。

野呂田委員長 質問者にお答え申し上げますが、委員長から外務省に言って、できる限りの資料を出させます。

阿部委員 ただ、河野外務大臣には、御自身の、みずからの口でお願いいたします。以下三人は、入院中、いろいろ事情がございますでしょう。ですから河野大臣は、同じ方でございますから、いつお知りになったか、明確な記憶で、しっかりと、はっきりとお答えくださいませ。

河野国務大臣 十二月の中旬であったと思います。

阿部委員 では、皆さん記憶健忘、喪失のようでございますが、十二月中旬にこのことをお知りになってから一月四日に外務省のこの件に関する調査委員会が立ち上がるまでの間、河野外務大臣、何をなさいましたか。お答えください。

河野国務大臣 こうしたことが事実かどうかを十分確認するようにという指示をしたと思います。

野呂田委員長 許可を得てから発言してください。

阿部委員 はい、済みません。

 本来は、報告を受けた時点ですぐに委員会の立ち上げ等々が検討されるべきことと思います。これが、今回、森首相でも問題になりました、政治をつかさどる者の感覚の麻痺、同じような事態が起きていると思います。

 続けて、次の質問に移らせていただきます。きょうお返事の出なかったことは、必ず次回、明確な数値をもってお答えくださいませ。

 次に、首相外遊時の宿泊費の内訳で、今までわかったことを整理いたしましたのがこの図でございます。

 今までの御答弁をまとめますと、実は、松尾室長に渡った総額九億六千五百万円のうち、内閣官房職員の宿泊費、これが二千八百万円でございました。それから、内閣官房職員の宿泊費の差額を埋める分が四億二千万円でございました。

 はたまた、外務省にお答え願います。これは飯村さんにお願いいたします。

 外務省などの職員分Bについて、きのう、お答えがいただけるように答弁なさっておりますが、幾らだったでしょうか。

飯村政府参考人 昨日申し上げましたように、可及的速やかに御提出申し上げたいと思っていますが、非常に複雑な出入りがございますので、もう少しお時間をいただけたらと思います。

阿部委員 可及的速やかとは、不眠不休でやっていただくような事態かと思います。

 今、不景気の問題にしろ国の先行きにしろ、国民が血税をこんな形で使われたのではたまらない、いいかげんにしてくれという意思表明の一つでもあります。官僚という職分にある方たちは、みずからの職務を深く意識して、この計算くらい、既に内閣官房の分は出たわけですから、AでやれてBがわからないということはないと思いますから、きちんと領収書を添えて出してくださいませ。

 そして、続いて行かせていただきますが、これは外務大臣にお伺いいたします。

 御答弁の都度、多少の内容の変更がございますが、松尾元室長が官邸から預かった官房機密費のうちで、お使いになったのは宿泊等の差額だけであるのか、飲食費等あるいは交通費等を含むものであるのか、イエスかノーか一言でお願いいたします。これは、差額分は宿泊の差額分だけであるというのが当初の御答弁でしたので、そこを伺いたいと思います。

河野国務大臣 官邸から松尾元室長に渡ったものは、宿泊費の差額及び官邸分の旅費法によります宿泊料の規定額というふうに承知をしております。

阿部委員 今、河野外務大臣のおっしゃったのは……

河野国務大臣 済みません、ちょっと追加を。

 今のは官邸分でございまして、外務省分については、一括払いをしていた場合について、外務省分の旅費法による宿泊料の規定額が渡されていたと。

阿部委員 では、あくまでも今の河野大臣のお答えは、宿泊料の差額である、このことに二言はないというふうにここでお約束いただけますか。

河野国務大臣 宿泊費の差額プラス官邸分の宿泊規定額、外務省の旅費法による宿泊規定額が渡されていたと。

飯村政府参考人 お答え申し上げます。

 松尾元室長が官邸から受領いたしておりましたのは、繰り返しになりますけれども、基本的には、総理大臣の外国訪問同行者のうち、内閣官房職員については宿泊費規定額と宿泊費差額、また外務省同行者及び各省庁の公式随員については宿泊費差額でございます。

阿部委員 ただいまの御答弁の中で、何度も申しますが、Aの部分二千八百万円については既に明らかになっております。Bも追って明らかになります。

 そして、もう一つ実は大きな問題がございますが、宿泊費の差額だけで片や四億二千万に膨れ上がり、片や二千八百万、この差がすべて宿泊費の差額ととってよろしゅうございますか。規定分は二千八百万、差額で四億二千万、すなわち二十倍に差額が膨れ上がるというふうな御見解でございますか。河野大臣、お願いいたします。

河野国務大臣 差額が大変多いという御質問だろうと思いますが、前にも何度も御説明を申し上げましたけれども、規定分の宿泊費というものは、総理の同行ということになりますと大変に違ってくるということは御理解いただけると思います。

 サミットに参加をする、あるいは国連総会に参加をするということになりますと、限られたホテルをとらなければならぬ、あるいは限られたスペースを同行者が使いたいということになりますと、どうしても部屋代のレートは高くなりますし、そうしたことから差額分が大変多くなるということに御理解をいただきたいと思います。

阿部委員 その御答弁は、先日も伺いましたので了解しております。

 きょうは、確認をとりたかったのと、そうであるならば……(発言する者あり)御答弁として了解いたしました、河野さんの御意見として。その二千八百万円が延べ何人分の宿泊費であるかについて、次回で結構でございます、そうすると一回当たりの差額が明確になりますから。規定宿泊費が二万円で、例えば一回当たり一人二十万差額が出たとしたら、それはやはり異常なことと言わなくてはなりません。単に差額が宿泊費だけでそれだけ上がるものなのかどうか、私どもも調べさせていただきますので、何人分の、延べ何日分の宿泊費かを、二千八百万円についても。

 それから、重ねて外務省の皆さんにもお願いいたします。総体の額と、それが何人分、何泊分であるか。この余りの落差、だれしも国民が納得いたしません。二千八百万円が規定分、それが差額になると四億になる。はたまた飲み食いに使っていたのではないか、交通費も入っていたのではないか。そもそも、松尾室長がカードで一括してホテルのフロントで精算いたしますときに、そこから飲食代を省くことができるのか。そのこと自体、具体的に、現実的に考えても無理がございます。そして、無理のある御答弁はやがてほころびが出ますので、きちんとこの内訳についてお示しくださいませ。

飯村政府参考人 ただいまの内閣官房の職員分につきましては内閣で御検討をされるお話でございますけれども、外務省の職員分については検討をさせていただきます。

阿部委員 検討ではなくて、総額を計算するためには個々が要るわけですから、これは必ず出てまいりますので、そんなことを検討せずに、情報公開をきちんと、これは国民の税金が使われたということを、そして規定どおりの額ですから、ファジーな、ごまかすことが一切ない額のはずでございますから、そういうことまで検討しないで、何人分、何泊分をきちんと出してくださいませ。

 これは全体の流れでございますが、確認だけで結構でございます。官邸分といたしまして九億六千五百万が、官房長官、首席参事官、首相秘書官付事務官、これを経由して松尾元室長に渡ったということは、官房長官、よろしゅうございましょうか。

福田国務大臣 よろしいと思います。

阿部委員 現在わかったところとわからないところを整理しているのは明確に答えていただくためですから、松尾室長が預かった九億六千五百万円のうち五億六千万円については、第一勧銀を中心とする口座に入っているということが外務省のお調べでわかったわけですね。

飯村政府参考人 昨日から御説明申し上げているとおり、そのとおりでございます。

阿部委員 といたしますと、残りの四億円以上については、今後どのように捜査を外務省としては進められますでしょうか。これは、前回までの御答弁ですと、外務省は捜査能力がないからということで終わっておりましたが、今でもそのような御見解でいらっしゃいましょうか。

飯村政府参考人 これも昨日から御説明申し上げている点でございますけれども、私どもの今回の調査というのは、松尾元室長が公金を流用していたということを調査するために、かつ一刻も早く告発ということを念頭に置いて作業をしてきたわけでございます。

 したがいまして、五千四百万円流用したということが事実としてわかりましたが、それ以上、残りの部分につきましては、強制的な捜査権のない状況の中では、私どもの調査には限度がある。そういうことで、捜査当局のお調べをお願いしているわけでございます。

阿部委員 ただいまのようなお答えですと、実は国民の疑惑の目は外務省職員全体に向けられているという事態に全く無自覚であると思います。

 先ほど来申し上げましたように、ただ単なる差額の宿泊費だけではなくて、カード決済においては飲食代も含まれていたのではないか、あるいは、きょうの読売新聞の報道におきましては、外務省の各上級職員に支給されておりますいろいろな機密費の差額分もこの官房機密費で賄われていたのではないかという疑惑が報道されておりますので、そうした自覚の上で、よろしくこれを、この次もっと解明されるようにお願いいたします。

 私に与えられた時間が大変少のうございますので、本来は、この予算委員会の場で、ぜひとも厚生労働大臣にお尋ねしたいことがございます。

 今般の予算編成を見ましても、私は、特に今国民の大きな不安のもとである社会保障分野、このことについて、二十一世紀の具体的な進むべきモデル、未来像がないということが大きく国民に不安を呼び起こしていると思います。わけても、この間、先ほどの鈴木委員の御質問にもございましたが、介護保険料の自己負担額の増額あるいは医療保険法の改悪による患者さんの窓口一割負担増等々、弱者は切り捨てられる傾向が顕著でございます。

 このことについて、坂口厚生労働大臣の社会保障の未来像についてのお考えを一言お教えくださいませ。

坂口国務大臣 大変大きな問題を御質問いただいて恐縮です。

 医療問題だけではなくて、年金問題、介護問題等、社会保障全体につきましての見直し作業というのは私はぜひ必要だという立場をとっております。しかも、その中で、年金ならば年金、医療ならば医療、介護ならば介護という、別々にやるのではなくて、トータルで一体どうしていくかという考え方がやはり必要だというふうに思っております。

 そうした立場からの見直しというものを行って、その中で将来の高齢化社会に対する、少子高齢化社会に対するこの医療のあり方をどうしていくかということを決めていくのが順序であるというふうに考えておりまして、そうした立場で今後の問題に取り組んでいきたいと思っているところでございます。

阿部委員 トータルで考えるという坂口厚生労働大臣のお答え。私として、一点御要望がございます。

 今般の予算編成を見ましても、先ほど指摘いたしましたように、非常に自助努力というものが強調されておりますが、だれも好んで病になるわけでなく、だれも好んで寝たきりになるわけではない中での自助とか言われましてもどうしようもない。こうした事態を切り捨てて日本の社会が進むのであれば、社会保障の根幹が揺るぐものと思いますので、この点については御回答いただきませんが、私どもからの指摘とさせていただきます。

 最後に、北陵クリニック問題についてお伺いいたします。

 今般のKSD疑惑並びに外務省の外交機密費の問題、官房機密費の問題をしのいで、もしかして国民の中ではこの北陵クリニック問題というのが、あす自分がかかる病院で点滴を受けたらあるいは呼吸がとまってしまうかもしれない問題として、身近な不安を呼び起こしております。と同時に、私ども医療者にとりましては、絶えず逆に言えば何かするんじゃないかというような目で見られて、本当に私どもとしても悲しい出来事でした。そして、この出来事を考えますに、一つこれまでの報道の中で見落とされている大きな問題がございます。

 実は、北陵クリニックとは、科学技術庁の研究費の助成を受けておりまして、そもそも一九九一年に、先端医療を実験的に行う施設として設立されたものでございます。ここに平成十年度から科学技術庁の研究費が宮城県の申請を通じて支給されておりますが、平成十年、十一年、十二年度の、おのおのの北陵クリニックに対して支払われた補助額についてお教えくださいませ。これは、担当の現場の方で結構でございます。

大熊政府参考人 御説明をいたします。

 文部科学省所管の科学技術振興事業団、そこで地域結集型共同研究推進事業というのをしておりまして、これは県の提案を受けて事業を推進しておりますが、宮城県の提案を受けまして、平成十年度から生体機能再建・生活支援技術、こういう課題を実施しているところでございまして、この研究テーマの一部に、機能的電気刺激等を用いた最先端のリハビリテーション技術の開発を目的とした研究というのがございまして、これを宮城県の中核機関を通じて北陵クリニックに委託し、実施しているという状況でございます。

 具体的にどういうふうな額かという点についてのお尋ねでございますので御説明をさせていただきますが、北陵クリニックに対しましては、この研究事業の中核機関であるところの宮城県の財団法人みやぎ産業振興機構より研究が委託ということで、これまでに把握しているところでは、事業が開始された平成十年度から十二年度末までに七千四百万円の支出、さらに、この間財団から研究遂行に必要な機器の持ち込みとか、大きな機器についてはリースというのもございますので、リースなどに、平成十年度から十二年度までに約二億三千万円支出を予定ということでございます。

 以上でございます。

阿部委員 実は、ここの病院で行われておりました電気刺激による、例えば筋肉の麻痺を改善させる、尿失禁を改善させる等々のための電極の埋め込みには、大体お一方当たり二百万円が使われます。ただいまおっしゃいました助成費は、そのおのおのの埋め込み代二百万円にも支出されていたとみなしてよろしゅうございますか。

大熊政府参考人 そういうことであろうかと思っております。

阿部委員 私がこのことを問題にいたしますのは、実は、先端医療のある意味での実験的な現場で、極めて起きてはならない実際の患者さんたちの被害が起きたということでございます。

 そして、かかる補助金を交付しておりました科学技術庁といたしまして、例えば、この間七人の御高齢者がこの二年間の中でリハビリ中に亡くなっておられます。もしかしてその中には電極の埋め込みを受けた方もおありかもしれません。そして、この電極の埋め込みの際には、筋弛緩剤の使用を併用しなければならない場合が多うございます。といたしますと、今、守容疑者一人の異常性格に帰されているようなこの事件は、もしかして先端医療現場で患者さんの人権と安全が侵害されかねない事態が起きていたこととも連動してまいります。

 ここで、科学技術庁並びに厚生労働担当の所管、つかさつかさにお願いがございますが、実は、医療監視等々におきましても、急変をされた患者さんの中に、果たしてこの科学技術庁の補助金を用いた電極の埋め込み等々の患者さんの例があったかどうか、明らかになっておりません。これは、もしこの場の質問で明らかになりません場合は、追って質問主意書並びに他の部会で質問をいたしますが、詳細のほどお調べをいただきたいと思います。

 そして最後に、時間がございませんので一点だけ。実は、このような先端医療の実験の場と化していたところが、厚生省のいわゆる医療監視等々の実際の監視を受けずに、この間ずっと運営されておりました。

 しかしながら、この病院は十九ベッドを持つ病院ですが、療養型病床群といって、長い期間入院され、リハビリ等々を受ける患者さんのための病院です。厚生省の健康政策局の指導によりますれば、療養型病床群においては、きちんとした保健所からの監査、査察が入るべきであるという指導が行われております。

 なぜに、この北陵クリニックには、本年の一月十七日に至るまで一度も保健所からの現状の査察、監視がなかったのか。そのことがずさんな筋弛緩剤の管理、あるいはここでの薬局には薬剤師が不在であるというような実態を放置したことにつながっておりますので、この点について、担当部局からのお返事を伺いたいと思います。

宮島政府参考人 今御指摘の北陵クリニックにつきましては、平成三年九月の診療所の開設のときと、平成十二年四月の、今御指摘の療養型病床群の設置に伴う変更の際に必要な審査を行っているというふうに仙台市から報告を受けております。

 筋弛緩剤につきましては、いわゆる薬事法上の毒薬に当たりますけれども、通常の医療機関でも使用されているものでございますので、その管理が適正か否かというものにつきましては確認することは必要であったと思いますけれども、その筋弛緩剤がどのような形で使用されたかということにつきましては、そのことのみをもちまして立入検査を行うという形は現在のところとっておらないところでございます。

野呂田委員長 阿部君に申し上げますが、質疑時間が終わっております。

阿部委員 では、残る部分は厚生労働委員会でやらせていただきます。ありがとう存じました。

野呂田委員長 これにて阿部君の質疑は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十三分散会




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