衆議院

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第4号 平成13年11月12日(月曜日)

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平成十三年十一月十二日(月曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 野呂田芳成君

   理事 北村 直人君 理事 久間 章生君

   理事 小林 興起君 理事 坂井 隆憲君

   理事 自見庄三郎君 理事 城島 正光君

   理事 仙谷 由人君 理事 原口 一博君

   理事 谷口 隆義君

      伊吹 文明君    池田 行彦君

      石川 要三君    大原 一三君

      奥野 誠亮君    亀井 善之君

      栗原 博久君    佐藤 剛男君

      下村 博文君    高鳥  修君

      竹本 直一君    谷川 和穗君

      津島 雄二君    中山 正暉君

      長勢 甚遠君    丹羽 雄哉君

      葉梨 信行君    萩野 浩基君

      蓮実  進君    三塚  博君

      宮本 一三君    森岡 正宏君

      八代 英太君    五十嵐文彦君

      岩國 哲人君    岡田 克也君

      北橋 健治君    五島 正規君

      首藤 信彦君    手塚 仁雄君

      野田 佳彦君    古川 元久君

      松本 剛明君    山口  壯君

      横路 孝弘君    白保 台一君

      若松 謙維君    達増 拓也君

      中井  洽君    中塚 一宏君

      赤嶺 政賢君    佐々木憲昭君

      矢島 恒夫君    山口 富男君

      吉井 英勝君    辻元 清美君

      保坂 展人君    横光 克彦君

      井上 喜一君    宇田川芳雄君

    …………………………………

   内閣総理大臣       小泉純一郎君

   総務大臣         

   農林水産大臣臨時代理   片山虎之助君

   法務大臣         森山 眞弓君

   外務大臣         田中眞紀子君

   財務大臣         塩川正十郎君

   文部科学大臣       遠山 敦子君

   厚生労働大臣       坂口  力君

   国土交通大臣       扇  千景君

   環境大臣         川口 順子君

   国務大臣

   (内閣官房長官)

   (男女共同参画担当大臣) 福田 康夫君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当大臣)     村井  仁君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      中谷  元君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当大

   臣)

   (科学技術政策担当大臣)

   経済産業大臣臨時代理   尾身 幸次君

   国務大臣

   (金融担当大臣)     柳澤 伯夫君

   国務大臣

   (経済財政政策担当大臣) 竹中 平蔵君

   国務大臣

   (規制改革担当大臣)   石原 伸晃君

   内閣官房副長官      安倍 晋三君

   内閣府副大臣       仲村 正治君

   内閣府副大臣       松下 忠洋君

   内閣府副大臣       村田 吉隆君

   防衛庁副長官       萩山 教嚴君

   総務副大臣        遠藤 和良君

   法務副大臣        横内 正明君

   外務副大臣        杉浦 正健君

   財務副大臣        村上誠一郎君

   文部科学副大臣      岸田 文雄君

   厚生労働副大臣      桝屋 敬悟君

   厚生労働副大臣      南野知惠子君

   農林水産副大臣      遠藤 武彦君

   経済産業副大臣      古屋 圭司君

   国土交通副大臣      泉  信也君

   内閣府大臣政務官     阪上 善秀君

   内閣府大臣政務官     渡辺 博道君

   農林水産大臣政務官    岩永 峯一君

   国土交通大臣政務官    田中 和徳君

   環境大臣政務官      西野あきら君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    津野  修君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   小町 恭士君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長

   )            木下 寛之君

   政府参考人

   (国土交通省航空局長)  深谷 憲一君

   参考人

   (預金保険機構理事長)  松田  昇君

   参考人

   (日本銀行総裁)     速水  優君

   予算委員会専門員     大西  勉君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十二日

 辞任         補欠選任

  奥野 誠亮君     森岡 正宏君

  栗原 博久君     竹本 直一君

  中山 成彬君     長勢 甚遠君

  宮本 一三君     佐藤 剛男君

  岩國 哲人君     手塚 仁雄君

  古川 元久君     岡田 克也君

  佐々木憲昭君     赤嶺 政賢君

  山口 富男君     矢島 恒夫君

  辻元 清美君     保坂 展人君

同日

 辞任         補欠選任

  佐藤 剛男君     下村 博文君

  竹本 直一君     栗原 博久君

  長勢 甚遠君     中山 成彬君

  森岡 正宏君     奥野 誠亮君

  岡田 克也君     古川 元久君

  手塚 仁雄君     岩國 哲人君

  赤嶺 政賢君     佐々木憲昭君

  矢島 恒夫君     吉井 英勝君

  保坂 展人君     辻元 清美君

同日

 辞任         補欠選任

  下村 博文君     宮本 一三君

  吉井 英勝君     山口 富男君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成十三年度一般会計補正予算(第1号)

 平成十三年度特別会計補正予算(特第1号)

 平成十三年度政府関係機関補正予算(機第1号)




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     ――――◇―――――

野呂田委員長 これより会議を開きます。

 平成十三年度一般会計補正予算(第1号)、平成十三年度特別会計補正予算(特第1号)、平成十三年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑に入ります。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長小町恭士君、農林水産省農村振興局長木下寛之君、国土交通省航空局長深谷憲一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

野呂田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

野呂田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小林興起君。

小林(興)委員 おはようございます。自由民主党の小林興起でございます。

 本日は、こうしてテレビを通じて国民の皆様の前で、私が日ごろ尊敬してやまない、国家国民のために獅子奮迅の働きをしておられます小泉総理初め閣僚の皆様方と、現下の経済情勢について、また補正予算案についてお話しできますことを大変光栄に存ずるものでございます。

 私は、今、日本経済は破綻寸前と言っていいほど最悪の状況にあるのではないかと思っております。国民総生産、経済成長率も下がってまいりました。そしてまた、失業率は増大する一方。また、日本は国際収支は大丈夫だ、こう言ってきましたけれども、今、国際収支の黒字幅はどんどん減少し、とうとう、予測では、ことしの貿易・サービス収支は二十年ぶりに赤字に転落するのではないか、こんなことが言われております。農業も、どんどん中国から製品が入ってくる。そして工業も、日本の工場が中国に移転してしまって、いわゆる産業の空洞化、これが大変進んでいる。

 こういう状況で、構造改革と言っておりますけれども、では、どんな産業が今どんどん芽を吹いてきているかといいますと、これもなかなか見当たらない。こういう状況にある中に、デフレがどんどん進んでいる。

 こういう中で出てまいりました今回の補正予算案、我が国経済を再浮上させるきっかけにしなければなりませんし、また、その特効薬としていかなければならないわけでございますが、補正予算案を取りまとめられました総理に、一言御感想をいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 現下の経済情勢は厳しいものがありますけれども、もう破綻に向かっているとか、そう余り悲観的になる必要はないんじゃないかと私は思っております。

 各国、状況を見ますと、それぞれ難しい問題を抱えておりまして、そういう状況を見ますと、日本というのはまだまだ成長の潜在力は強い。幾度か危機を克服してきましたし、今回も、いろいろな難問を抱えながらも、いわば新しく大きな転換期に向かって成長するための、一つの産みの苦しみを味わっているというふうにとらえた方がいいのではないか。

 まず、成長するために、伸びるためには縮むことも必要だ、そういう言葉もあります。改革しないで成長するにこしたことはないと思いますが、やはり今までの行き方に行き詰まりがあったのではないかということからいろいろ改革に取り組んでいるわけでありまして、その改革に向けてのマイナス面をいかに和らげていくか、そして希望を持って新しい世界に対応できるような、新しい経済体制に対応できるような体制をとることが必要ではないか。

 いろいろ日本も今まで、先進国に向かって、追いつこう、追い抜こうということで一生懸命やってきました。その目標は成功したんです。今や、むしろ追われる立場に立つ方が多い。かつての先進国の悩みを日本も今味わっている。後進国が、ある面においては日本を目指して、発展途上国の中には日本みたいになりたい、日本を見習えといったこともあるんですから、そういう面においては余り悲観的にならずに、一つの成長の過程であると。成長の過程にはある程度の改革をしなきゃなりませんし、その改革に伴う痛みをいかに和らげるかということが、今雇用対策等を初め一つの大きな目標に向かって準備をしていこうという期間と受けとめて、私はむしろ前向きの体制をとっていく、余り悲観的、自虐的にならずに進む必要があるのではないかと思っております。

小林(興)委員 総理の言われます大変革、これに対処していくために、大構造改革あるいは聖域なき見直し、こういうことをあらゆる分野でやっていかなければならないというお考えについては、全く同感であります。

 さはさりながら、今日、アメリカにおけるあの同時多発テロを引き金として、世界も不況の方向に来ている。そういう、状況が刻一刻変わってくるわけでありますから、やはり何かなそうとするときに、財政を活用するということは非常に大きな意味があると思っております。

 そういう意味では、総理が総裁選のとき唱えられましたあの国債三十兆円の枠ということは、やたらに公債を発行してはいかぬというその精神としては納得できるわけでありますが、今日、この不況下を脱出するためには、その精神を重んずればいいのであって、余り数字にこだわるべきではないと私は思うわけでありますけれども、今回補正予算を取りまとめられました塩川財務大臣、三十兆円の枠、いかがでございましょうか。

塩川国務大臣 三十兆円の枠いかがという御質問でございまして、私は思いますのに、現在の日本のいわゆる公的債務というものが六百六十六兆円ということになっております。そのうち国債が約四百兆円近くございます。そういう状況から見まして、第一に、日本のいわば国勢全体等を見た場合に、一千四百兆円の貯蓄があるから六百兆円はいいではないか、そういう議論も一方ではあると思いますけれども、しかし、その認識は非常に危険だと私は思っております。

 第一、我々のこの予算を見ましても、平成十三年度、予算規模で八十兆円でございますが、そのうち、税金で賄うのが五十兆円で、国債で賄うのが約三十兆円、こうなってまいります。どこの家庭で考え、あるいはどこの企業で考えましても、収入の六割近くを借金で賄って世帯をやっていくということは、これは考えられないことだと思っております。これがやはり公的資金であるということで、国債を発行してやっていけるということであるからやってまいりましたけれども、ここらで財政の節度をするということ。

 そして今、三十兆円いかがというお話がございましたけれども、この枠を設定いたしまして、厳しく各省と予算の打ち合わせをいたしました。そして今、中央省庁の中では、費用と効果というものを真剣に考える機運が出てまいりました。私は、この国債にこだわったということは、そういう面においても一つの効果が出てきている、これが構造改革の一つのきっかけになってくると思っておりまして、苦しいところでございますけれども、やはりちょっと踏ん張ってやっていくべきだろう、こう思っております。

小林(興)委員 費用対効果を見直す、財政のむだを排す、まことに結構だと思うわけであります。しかも、それがだんだん進みつつある、結構だと思うわけでありますが、ただ、この大不況というよりデフレを脱却するためには、どうしてもやはり財政をある程度出動させなければならないということも事実だと思うのであります。

 実は、経済成長率と財政支出の推移をまとめてみたんですけれども、やはりどうしても連関があるんですね。そして、財政を出しますと、落ち込んでいた経済が少し上がる。しかし、上がって、また財政の赤字幅が増大するからといってちょっと出し惜しみしますと、やはりまた経済成長率が下がってきて、そしてとうとう最後の方は相当下がるような格好になる。やはり、今もうここまで来ているわけですから、このまま財政を下げますと、どうしても経済がもっともっと下がる傾向から抜け出せないんじゃないかなという気がするわけであります。

 今日の不況は、御承知のとおり、デフレということでございまして、そして、このデフレを脱却するというのはなかなか、戦後余り例がなかったということであります。よく、愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶということがあります。我が国の歴史上、大デフレを克服した人といえば、言うまでもなく高橋是清という大蔵大臣を思い出すわけでありますが、一九二九年、世界大恐慌のときに、当時の井上大蔵大臣は、やはり節約ということだったんでしょう、一度財政を縮小するということで、節約によって経済を浮上させようとした。しかし、もっと結果は悪くなった。そこで登場したのが高橋是清大蔵大臣であります。

 この井上財政から高橋財政に切りかわる、このときに、何と財政の伸び率がここまで、対前年度比三九・六%、すさまじい膨張、拡張財政をすることによって、経済を一気に浮上させていくわけであります。そして、ずっと浮上しましたから、ここから伸びを抑えても経済はとうとう安定化に入る。

 いずれにいたしましても、財政の大拡張というのが非常に大きな意味があったということでありまして、思い切ってやっていくことも必要であり、私は、塩川大臣に平成の高橋是清公になっていただきたいという気もするわけであります。

 ただ、言うまでもなく、公共事業で穴掘りだけやっていればそれでいいということを私は申し上げるわけではありません。高橋財政にも、経済を拡張、経済波及効果のある中身が実はあったわけでありまして、同じように今日も、やはり、むだなお金と国民から見られるようなことではなくて、なるほどこれなら新しい産業が起こるということに思い切った財政の出動が必要だということを私は申し上げたいと思うのであります。

 もちろん、たらたら金を使えばいいということではありませんから、余りお金が要らないことについても一つ二つ私も申し上げてみたいと思うんですけれども、今、扇大臣になられて大いに進められております羽田空港の国際化、私は、大臣のおかげで今非常にいい結果が出てきていると思う。

 ただ、これをもっと思い切って、どんと羽田空港の国際化、今まで羽田は一切国際化に使わない、そういうことは、小泉総理の言う聖域なき見直しですから、新しい時代に国際化が非常に必要だということであれば、羽田も国際空港に使っていい。そして、これはもっと、今、週に二、三便やっと国際便を飛ばすようになりましたけれども、一日に思い切って五十便近く、ある試算によりますと、四十八便羽田から国際化で飛ばせば、そうすれば経済効果が三兆円、雇用創出十八万人という、そういう結果もあるぐらいでございまして、これは非常に大きな結果が出る。こんなものは規制だけの問題だと思うんですね。

 そして、今、このデフレというのは、御承知のとおり、インフレは経済問題だと言っておりますけれども、デフレは社会問題だと言われるほど、非常に人生に失望したりして、失業者がどんどんふえるというのがデフレの恐ろしさ。これで今、年間三万人を超しているんですから。年間三万という数字は、この間のあの貿易センタービルでどんと亡くなった方だって五、六千人と言われている。阪神・淡路大震災だって六千人ですから、三万という失業者の数がいかに大きいかということが……(発言する者あり)死者の数が。死者の数が三万人というのはいかに大きいかということがおわかりいただけると思うわけであります。

 そういう中にあって、そういう知恵を使う、規制緩和も必要でしょう。もう一つ、私は、国民のライフスタイルを変えたり、あるいは引き出すために、今ちょうど道路公団の問題がたくさん出ておりますけれども、道路公団の民営化がどうか、中長期的にはそういうことについてしっかりと方針を定めるのも結構でしょう。しかし、今すぐぜひ扇大臣にやっていただきたいのは、高速道路料金を引き下げる。日本はやはり、世界を旅行すればわかりますけれども、料金が高過ぎますね、何千円も取られるわけでありますから。

 そういう中で、これを思い切って、例えば東京から私が伊香保に行くときも三千円取られる、これを二千円にする。では、どうして千円も下げられるかといいますと、御承知だと思うんですけれども、今、五十年で償還しようとしているんでしょう。五十年後にほぼただになろうとしている。これを五十年たってもただにしないで、やはり千円か何か取るということにしますと、今、逆に三分の一ぐらい下げられると思うんですけれども、大臣、こういう道路料金の見直し、こんなことについてはいかがお考えですか。

扇国務大臣 今、小林先生がおっしゃいますように、思い出しますと、私も初めて高速道路というものに乗ったのが東京オリンピックのときでございました。首都高速が、初めて高速ができて、そのとき百円でございまして、乗るときには、やがてただになると言われて私も初めて乗りました。ところが、今、それが七百円でございます。

 そのように、高速道路料金が下がらない、また、いつまでたっても取られるという感覚は、外国と比べて私は大いに不満があろうと思います。けれども、つくったものを年度を決めて償還していこうという今のシステムである限りは、私は仕方がないと。けれども、そこに、もっとコストダウンして、建設費を安くしたり、あるいは人件費を絞ったりということで安くなるのではないか。

 そういうことで、十一月の三十日からETCを全国で導入いたします。そして、一千カ所の料金所を来年は九百まで全部ETCにいたしますと、人件費もコストダウンができるし、とりあえず皆さん方に使っていただこうということで、スーパーサービスということで、ある区間ETCで乗っていただくと一公団一万円、そういうことで三万円の割引ができるというようなこともとりあえずはさせていただこうということですけれども、基本的には、建設コストの削減と、そして、今の道路公団のあり方もより国民の皆さんに透明にできるようにしていって、コストダウンと利用する皆さん方の利便性を図っていく、そういうことは将来として、そのために、今、産みの苦しみをしているというのが現実でございます。

小林(興)委員 将来、多少は道路料金、高速料金を取る、ただなんて言わずに少しは取る、しかし、今思い切って来年からとにかく三分の一にする、小泉総理、そんなことをぜひ考えていただきたいとお願いをしておきたいと思うわけであります。

 それから、多少財政を動かすことによって非常に大きな将来の産業の芽を育てるということになりますと、国民の皆さんが見ていて、IT化、これにお金を投じるならいいじゃないかとお許しをいただけると私は思うのですね。今、日本に光ファイバー網がほとんど引かれている。しかし、いわゆるラストワンマイル問題、これについて聞きますと、総務省が応援して、電気事業者に安いお金を出して、低利のお金を出したり無利子でもってやったりして、戸口までは引いてやる。しかし、事業者への応援はありますけれども、最後の受け手、最終事業者、国民が引こうとするときの応援がない。

 したがって、私は、ここについては、ぜひIT担当大臣にお伺いしたいのですけれども、どうですか、中小、古いビル、こんなところには光ファイバーが入っていない、そこに穴をあけるのに百万か二百万金がかかる、これを無利子で融資する、あるいは半額を補助する。このことぐらいやりますと、百万円掛ける百万は一兆円ですけれども、一兆円ぐらいの光ファイバー普及促進基金とかいうのを設けて、お金を無利子で貸してもいい、あるいは半額補助金で上げてもいい、そんな大構想を打ち上げますと、日本国じゅうに、ほとんどの事業所に、古いビルでもすべて光ファイバー網が引かれて新しい情報化社会を実現する、そのくらいのお金、一兆円出されたらどうですか。

竹中国務大臣 ラストワンマイルに関する御質問であります。

 構造改革の中でも、不良債権処理といった受け身の構造改革に対して、このITを軸としたいわゆる攻めの、前向きの構造改革の重要性というのは我々も十分に認識しております。その中の一つが、いわゆるラストワンマイルの問題であるということも十分に認識をしているつもりであります。

 これに対しては、私は、三つの観点から現実に政策が進みつつあるというふうに認識しています。

 一つは、まさに競争政策であります。競争政策を促進することによって料金の低廉化が図られる。実は、世界じゅうかなりそういう形でIT化を進めてきた。第二番目は、具体的に言いますと、集合住宅に対する光ファイバーの引き込みに対する法制度の整備、これは今担当省庁で検討しているところであります。第三番目としては、現実に、住宅金融公庫におけるリフォームの融資等々、そういった政策も動きつつあります。

 そういった政策を組み合わせることによって、競争政策の中で、政府が過度に介入することを避けながらIT化を進める、ラストワンマイルの促進をするというのが、やはり現実的に望ましい方向なのではないかというふうに認識をしております。

小林(興)委員 エネルギーで太陽光発電というのがありまして、そのためには実は補助金を出している、二分の一補助しているんですね。それによって太陽光発電、屋根を見ますとああいうのがどんどん進んでいる。ですから、私は、太陽光発電も大事でありますけれども、IT化の推進のために古いビルに、オーナーが今お金がないわけですから、無利子ぐらいで貸して、後で返ってくるのですから、あるいは補助金半分、太陽光発電並みのIT推進のための予算をつけてやってもいい時代が来ているのじゃないかな、そう思いますので、これもぜひ総理にお願いをしておきたいと思うわけであります。

 それから、何に財政のお金を使えばさらによくなるか。やはりこれからは技術開発だと思うんですね。研究開発投資に相当の予算をつぎ込んでもいい。だって、アメリカだって二兆円を超す金が国から産業界に流れている。日本なんかわずか四千億円ですから、アメリカに比べても足りない。減税だって、アメリカの研究開発投資は、今や三十億ドル、三千六百億円というのが技術開発の減税に充てられているんですね。日本はまだ四百億円ぐらいですから、これだって日米の間に大きな差がある。

 これからは公共投資を、道路を穴掘るというだけじゃなくて、そういう観念ではなくて、研究開発のようなものにどんと大きなお金を使えば、やがてこれは必ず返ってくるということをぜひ申し上げておきたいと思いますので、清水の舞台から飛びおりるような気持ちで、もう一度財政の出動についてぜひ塩川大臣にもお考えをいただきたいと思うわけであります。

 それから、もう時間がないのであれなのですが、金融問題も非常に大事であります。

 金融問題について、お答えをいただく時間がないので、ぜひお願いだけしておきたいのですけれども、やはり中小企業から見ますと、金融については貸し手の責任。借りた方がもちろん悪いのですけれども、全部借りているんですから。悪いというか、返さなければいかぬのですけれども、やはり貸し手責任ということも、あのころみんな銀行が貸し手競争、貸し手競争で、貸し出し競争があって、そして借りたくないというのに、例えばゴルフの会員権を買いなさいとか、お金を融資します、値上がりしますよなんて言って、全然本業と関係しないところでお金をどんどん貸しちゃった。これも皆不良債権になっているんですから、そういうことに対しては、どんなふうに銀行間と話し合わせていけるか。多少やはり貸し手の方の責任も追及しないと、中小企業にとっては金融問題は解決しないと思います。

 それから大事なことは、金融だけ、柳澤大臣がいつも責められていますけれども、私もお気の毒だと思っている。これはやはり産業界側の産業の再編。そうでしょう、大臣。マイカルが倒れてからどこか引き受け手を探すのじゃなくて、例えば流通業界がもう供給過剰だったら、今のうちに、つぶれる前に再編をするとか、いろいろな業界の再編問題を本当に取り上げなければならない。そういう意味では、産業再編委員会みたいなものをぜひ経済財政諮問会議のもとに置くお考えはございませんか。竹中大臣、どうですか。

竹中国務大臣 御指摘のように、不良債権の問題というのは、銀行からお金を借りて返せない企業の問題でありますから、まさに経済全体のバランスシート調整の問題であるというふうに思います。したがって、不良債権の問題、その処理とともに、向こう側にある企業をどのように再生していくのかという点が当然のことながら政策の視野に入ってこなければいけないというふうに思っています。

 ただ同時に、産業の問題というのはやはり民間の自主的な判断に基づくものであって、これは国家が介入して、こことここが一緒になれというようなことはとてもできない話でありますから、政府としては、そういった環境が整うような、そういった環境づくりということにやはり精を出すべきだと思います。

 経済財政諮問会議では、今月、雇用空洞化等の問題について集中審議をするということにもなっておりますし、中期経済財政のビジョンを示すことになっておりますけれども、その審議の中で、成長のエンジンとなる産業等々について議論を深めたいというふうに思っておりますので、そうした中でぜひ実効のある方向というのを議論していきたいというふうに思っております。

小林(興)委員 経済は財政、金融、税制、こう考えていかなければいかぬわけでありますが、税制については、幸い日本の現在の政界においても税制通ナンバーワンの塩川大臣が財務大臣になっていらっしゃる。このおかげで、この間とうとう証券税制に風穴をあけていただいて、塩川構想で今証券税制が大きく進もうとしている。私は大変評価をしておりますし、ありがたいことだと思っております。

 ついでに塩川大臣に、土地税制についてどんと、過去の遺物のような土地税制、バブルが膨らんでいくとき抑えようとした税制を、あんなものもうなくなっちゃったんですから、もう一度今税制を見直していただく、そういう土地税制についての展望。それから、今産業の再編をお話ししましたけれども、これは連結納税制度、大税制が待っておられる。塩川大臣の税制にかける決意を最後にお聞きしたい。

塩川国務大臣 小林先生の元気のいい言葉で励まされまして、一生懸命勉強してまいります。

小林(興)委員 ちょうど持ち時間が参りましたので、小泉総理初め諸大臣の一層の御活躍、御健闘をお祈り申し上げまして、本日の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

野呂田委員長 この際、長勢甚遠君から関連質疑の申し出があります。小林君の持ち時間の範囲内でこれを許します。長勢甚遠君。

長勢委員 大変御苦労さまです。

 小林先生から景気対策についての質問がございましたが、景気の悪化に伴う雇用対策についてお伺いさせていただきたいと思います。

 御案内のとおり、九月の完全失業率が五・三%になる、大変な深刻な状況でございます。この後もさらに悪化が懸念をされる、こういう非常な緊急事態でございます。言うまでもなく、雇用は国民生活の基盤でございますから、これの不安を緩和する、なくする、これが政治の緊急の課題である、このように思っておるわけでありまして、与党といたしましても、先般九月十九日に緊急雇用対策を策定いたしまして、政府に提示をさせていただきました。

 これを踏まえて、今般補正予算におきましても、雇用に最重点を置いて編成をいただいた、このことは高く評価をいたしたいと思いますが、しかし、これを確実に、的確に実施していくことがこれからの最大の課題であると思います。特に肝心なことは、リストラやあるいは再就職ができない、こういう不安におののいておられる国民の方々に、これで政府は何をしてくれるのかということが具体的に目に見えるようにしていただかなければなりません。このことを明らかにしていくことが最も肝心なことだと思いますので、厚生労働大臣、今般の補正予算の内容、また、ますます厳しくなると言われておりますが、この中でどのように対応されていくのか、総括的にお答えをいただきたいと思います。

坂口国務大臣 御指摘をいただきましたとおり、九月の完全失業率が五・三%というふうに非常に危機的状況になってまいりました。また、今後さらにこれが厳しくなる可能性もあるわけでございますので、我々、今回のこの補正予算をお組みをいただいたこの中におきまして、積極果敢にこれを活用していかなければならないと思っているところでございます。

 特に、先般、与党三党において取りまとめをいただきました緊急雇用対策を十分に踏まえまして、政府といたしましても、その対策を講じていきたいというふうに思いますが、その主なものは、まず一つは、これはいわゆる地域交付金の活用でございまして、三千五百億円という大変大きな額をお組みをいただきました。これは、各都道府県あるいは市町村におきましてその地域に合った雇用をおやりいただくということで、非常に即効性のある問題でございます。活用をさせていただきたいというふうに思います。

 それから、民間活力を活用しました雇用のいわゆるミスマッチの解消ということにも積極的にさらに取り組んでいきたいというふうに思っているところでございます。

 もう一つは、訓練の延長給付制度でございまして、いわゆる雇用保険をもらっておみえになる皆さん方が、新しい知識、新しい技能を身につけたいという皆さん方に対して延長をさせていただいて、長くそれで御自身の技能をおつけをいただくということをぜひやっていきたいというふうに思って、これらの大きな柱を中心にしましてひとつ頑張りたいというふうに思っておりますが、そのほか、雇用対策の臨時特例法案も提出をさせていただいておりますので、御審議をいただいて、速やかにひとつこの雇用対策に取り組んでいきたいと考えているところでございます。

長勢委員 今幾つかの事項について御説明をいただきましたが、私からは二、三点具体的に御質問をさせていただきたいと思います。

 一つは、重点を置いておられる地域交付金でございますけれども、その趣旨、目的はおっしゃるとおりで、ぜひ効果的に、効果が上がるように実施をしていただきたいと念願をいたしております。

 ただ、新聞等を見ますと、この事業がどういうふうに行われるのかというと、その中心が、例えば学校の教員補助員を五万人ふやすだとか、あるいは警察支援要員とかに使うんだとかということが新聞等では大きく取り上げられておりまして、何かあたかもこういう特別な人のためだけに使われている、そういう人たちだけが利用できる、こういうふうな印象を与えているように私は不安を感じます。

 もちろん、こういうことは結構なことなんですけれども、今大臣からもお話がありましたように、この制度の目的はそういうことではないわけでございまして、本当に困っておる人が働けるようにするということに意義があるわけでございます。

 どうか大臣からひとつ、この事業によってどういうことが具体的な仕事としてふえていくのか、そして困っている人が、それはどうやったらわかるのか、また、その仕事につきたいと思ったときにどこへ行けばいいのか、どうしたら仕事につけるのか、こういうことを具体的に御説明をいただきたいな、このように思います。

坂口国務大臣 御指摘をいただきましたとおり、それぞれの地域におきまして、やはり、失業しておみえになります皆さん方がどういうお仕事についていただくかというその内容はいろいろ違うというふうに思っています。例示といたしましていろいろのことを例示いたしておりますけれども、それはあくまでも例示でございまして、それぞれの市町村においてこれはお取り組みをいただく。やはり、それぞれの地域におきまして、こういうものをやりたいというところをぜひお願いを申し上げたいというふうに思っておるところでございます。

 そして、その手順でございますけれども、まずハローワークに求人をお出しいただく。お出しをいただきまして、地域において実施される事業を広く見ながら、その中で自分がこういうことをやりたいというようなことをひとつお申し出をいただく。それに対しまして、今度は、窓口でありますハローワークの方が、いろいろの求人を受けておりますその中を見まして、こうしたことをどうですかということの御提示を申し上げて、そして、できるだけその皆さん方にマッチしたものをその地域でできるように奨励をするといったことをする。また、市町村におきましては、こうしたことをぜひおやりをいただきたいということの御提示もいただきまして、その話し合いの中で進めさせていただきたいと考えているところでございます。

長勢委員 ぜひ知恵を出して工夫をしていただきたいと思います。

 重ねてお伺いしますが、そういう仕事につきたいという人は、ハローワークに行くんですか、それとも市町村や県の窓口へ行くんですか。どういうことになるんでしょうか。

坂口国務大臣 一つは、ハローワークでこれはやらせていただきたいというふうに思っておりますが、しかし、市町村の側からこういうふうなことをやりたいという御提示がある場合がございます。そうしますと、それにつきまして、ハローワークの方にお申し込みをいただいた皆さん方との間でお話し合いをいただくということになろうかというふうに思います。

 一部新聞にも出たりいたしましたが、いわゆる失業しておみえになります人を中心にやらなければいけませんので、そのことにつきましても十分配慮をしていきたいというふうに思っております。

長勢委員 次に、今回の補正予算でオーダーメード型の訓練というのが提起をされております。私は大変いいことだと思っております。

 ミスマッチということがよく言われておりますが、これは主として賃金その他労働条件にかかわることがミスマッチの大きな原因だと思いますけれども、能力によるミスマッチもあるわけで、職業訓練の弾力化、委託訓練の拡大等に大変御努力をいただいてきております。しかし、なかなか再就職に結びついていないのではないかという指摘もあるところであります。公共職業訓練を受けた方々の再就職率は六割でありますから、大変、私はそれなりに評価はいたしておりますが、しかし、まだまだ工夫の余地がある。

 現在の訓練は、訓練メニューがあって、そこを求職者が受けられて、受け終わった方に再就職を紹介する、こういう仕組みであります。しかし逆に、そっちが前ではなくて、企業側のニーズに合わせて訓練メニューそのものをつくる。そして、その企業のしてほしいという訓練メニュー、訓練メニューをそのようにつくりかえて、それで訓練を受けていただくということにすれば、求人の方々も自分に合った人を確実に雇える、求職者もそれを受けた方々は確実に就職できる。そういう仕組みがいいんじゃないかと私は思っておりましたので、今回のオーダーメード型訓練の採用というのは、私は大変喜んでおります。

 ただ、これはなかなか手間がかかる。求人者と求職者の間、そして訓練実施機関との調整ということに大変手間がかかるわけであります。ぜひ円滑にやっていただきたいと思いますが、どのようにお進めになるのか、お伺いをいたします。

坂口国務大臣 議員には、この予算ができます前から、このオーダーメード型のことにつきましていろいろと御提示をいただいておったところでございまして、感謝を申し上げたいと存じます。

 今お話をいただきましたとおり、個別の求人、求職者のすり合わせを行うということが大変大事でございます。求人事業主が求める具体的な人材ニーズ、これに合致をしますような個々具体的な訓練プランを設定することが効果的というふうに考えておりまして、今回の雇用対策におきましては、このオーダーメード型の訓練コースというものを新しくつくらせていただいたところでございますが、求人事業主とのきめ細かな相談に応じるということが大事でございまして、求人事業主が期待をします職業能力を具体的に把握するということを、まずハローワークの中で行わなければならないというふうに思います。そして、適切な民間の教育訓練機関とそれから求人事業主との間の十分な打ち合わせを行いまして、求職者に対しましてその能力を習得していただくようにしたいというふうに思っております。

 最終的に、面接者によりまして選ばれました求人要件に合致をした求職者にこの訓練コースを受講していただくということにするものでございますが、これによりまして、訓練終了後、当該求職者がいわゆる求人事業主へ円滑に就職することが期待できるものと考えているところでございます。

長勢委員 もう一つ注目しておりますのは、関心を持っておりますのは、若年者に対するトライアル雇用制度を設けられたことでございます。

 厚生労働省のイメージと若干違うかもしれませんが、私は、若年者は就職意欲も余りないとか、あるいは職場のことがよくわからないとか言われておるわけでありますし、それだけに、企業の方も採用はなかなかちゅうちょするという部分もあるように聞いております。

 例えば、五人の求人者があった場合に、十人ぐらいの方を紹介してトライアル雇用に入っていただいて、企業の中で一定期間仕事をしてもらう、あるいは訓練をしてもらう。そして、一定期間たったところで五人以上企業で採用してもらうということになれば、企業の方も必要な人材を確実に確保できますし、働く方々も安心して意欲を持って就職できる、こういう形になりますので、私はこれもぜひこれから一つのパターンとして進めていただきたいなと思っております。

 具体的にどういうふうにこの仕組みを動かしていかれるのか、お伺いをしたいと思います。

坂口国務大臣 試し運転と申しますか、トライアルをぜひ取り入れるという御意見もございまして、これも取り上げさせていただいたところでございます。

 それで、事業の具体的な流れといたしましては、ハローワークにおきまして、若年求職者とのきめ細かな職業相談の中で求職者の適性、能力を把握いたしました上で、若年求職者に実践的な能力を付与する上で適切な求人企業にトライアル雇用の実施を働きかけまして、求職者を受けていただくことにいたしております。

 したがいまして、まず最初に職業相談があって、そして求人企業をどうするかということを選ぶということが次に来るわけでございまして、そしてトライアル雇用に今度は入るわけでございますが、トライアル雇用中は受け入れ企業に対しまして奨励金を支給するというものでございます。企業と若年者双方に必要な助言等を行いまして、双方が納得をして本雇用への移行が円滑に行えるようにする、そこがまず大事だろうというふうに思っておりまして、そこの話し合いに十分に入らせていただきたいというふうに思っているところでございます。

 そして、一人でも多くの方がスムーズに雇用についていただくことができればというふうに考えているところでございます。

長勢委員 これからどうなるかということについて、国民の皆さん方は大変心配をされております。雇用状況もますます悪化するんじゃないか、若い方々の、学卒の方々の就職も大変だ、大変な時代になったなとみんな思っておるわけでございます。

 そこで、総理、働く方々は必ず守る、どんなことがあっても雇用は守るという決意を、一言で結構でございますから、御表明をいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 今回も雇用対策を主眼に置きまして補正予算を提出しているわけでありまして、これから、求人数は多いけれどもなかなか求職者との間に合致しない面がある、そういう面についてどういう対応をしていくかという面において、今厚生労働大臣がお話しされましたように、いろいろ今までの、長勢議員、建設的な御提案をしていただいておりますので、そのミスマッチ解消、あるいは新しい職業につけるような訓練、そしてこれから雇用保険受給者になれない方に対してどのような援助をできるかという各般にわたりまして、対応を強化していきたいと思っております。

長勢委員 次に、新聞等で大々的に報道されております、また逮捕者も出ておる自治労における一連の不祥事件についてお伺いをいたしたいと思います。

 新聞報道また自治労自身も公表されておられますが、自治労本部がたくさんの裏口座をつくって裏金づくりをする、また右翼団体ともつき合う、いろいろな不明朗なことが行われておる。これは、健全な労働組合を期待してきた長勢甚遠といたしまして、まことに怒りにたえません。許しがたいことでございます。常日ごろ、不正を正すということを声高におっしゃっている方々がこの実態にあったということについては、本当に怒りを覚えるものでございます。

 これは、労働組合を担当されておられます厚生労働大臣、こういう事態に対してどのように御感想をお持ちか、またどのように対応されていくのか、ひとつお伺いをいたしたいと思います。

坂口国務大臣 こういう事態が起こりましたことをまことに遺憾なことだというふうに思っている次第でございます。

 厚生労働省におきましては、労働組合等の実態を明らかにすること、そしてまた労使関係を総合的に把握すること等を目的にして、毎年、労働組合基礎調査等を実施してきたところでございます。

 いずれにいたしましても、今回のようなこういう不祥事というふうに言われることが起こりましたことに対しまして、我々も、しかし、これから労働組合に対しましてもう少しよく検討をしていかなければならないというふうに思っているところでございます。

 現在、自治労におきましては、地方の代表者や弁護士の協力のもとに真相究明委員会を設けまして、みずからの手によって真相究明の努力をされているというふうにお聞きをいたしております。適正な究明がされることを期待しているところでございます。

長勢委員 この自治労は百万人と言われておる大組織でございます。ここにどれだけの金が集まっておるのか、いわゆる各地本から上納金が入っておるわけですが、どれぐらい入っていると御承知か、厚生労働大臣、いかがですか。一人当たりの、組合員が幾ら上納金を納めておるのかわかりますか。

坂口国務大臣 それは、四百八十五円というふうにお聞きをいたしているところでございます。若干そのほかにも関係のものはあるというふうにお聞きをしているところでございますが、それ以外の額につきましては、私たちにもなかなか承知のできないところ、十分に把握のできないところでございます。

長勢委員 今の額は、一般会計の組合費じゃないですか。我々がインターネットなどで各県本部の資料等を見ましたところ、とてもそういう額じゃありません。我々の計算だと、大体平均すると、一人当たり月額八百円は上納されておる。そうすると、一年間で百億円以上の上納金が自治労に入っておる、こういう仕組みになっているように思うのです。厚生労働省で調べができないのかできるのかわかりませんが、そこらはしっかりしてもらいたいと思います。

 もう一つ、一つの大きな疑惑として、中央労金市谷支店、この間で三十五億円の当座貸し越し契約が結ばれて、三十三億九千万円の貸し越し残があります。その経緯、使途が全く不明である、これが疑惑の大きな一つであります。

 しかも、当座貸し越し契約は、最初が十億であったのに、九三年に十五億になり、さらに九四年には直ちに倍以上の三十五億円になる。しかも、この契約に基づく借り入れについても、中央執行委員会の正式の意思表示を経ていない、こういう疑惑であります。

 これは、組合の方がもちろん問題でありますが、金融機関である中央労金のあり方として、こういう不自然な契約を結ぶ、あるいは貸し出しをするということが適当なのかどうか。これは厚生労働省、検査をする権限があると思いますが、承知をされておるのかどうか、検査をされたのか、またこれから検査をされるのか、このことをお伺いいたします。

坂口国務大臣 現在のところ検査をいたしておりませんが、今後十分に検討したいと存じます。

長勢委員 この点は、また改めて別の場で御指摘を申し上げたいと思います。

 時間がなくなりましたが、私は、こういう大変不安な時代、我々自民党の調査でも、国民の皆さんが一番不安を感じていることは何かというと、治安であります。これは最もおろそかにできない政治の責任であると思います。こういう国民の方々が不安を感じておられることについて、総理はどのようにお考えになっておるか、ぜひお伺いをしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 日本は、一番治安の面において整備されている国だといういわゆる安全神話が今まであったわけでありますが、それがだんだん崩れつつある、極めて憂慮すべき事態になっておりますので、今後、小泉内閣といたしましても、安全神話の復活に向けて、その治安体制の強化に向けて、いろいろ鋭意対応策をとっているところであります。

 今後、いろいろなテロ活動に対する危機管理、あるいは不法入国者に対するいろいろな対応、いろいろ御指摘されておりますので、その点を踏まえまして、かつての、日本は世界一安全な国だと言われていた評価を今後も再び回復できるような措置を、全力を尽くしてとっていきたいと思っております。

長勢委員 国民が治安に不安を感ずるというのは、大変ゆゆしき事態であると思います。大変な犯罪もふえておる、いろいろな事態が起きておりますが、しかし、これをどうかしようといっても、人が足りないのです。もう警察官も入管職員も検事さんもあるいは刑務所の職員も足りない。ここをどうかせぬことには何ともならないというのが私は実態だと思います。

 これについて、担当をされておられます国家公安委員長、法務大臣、どのように対処されていくおつもりかお伺いすると同時に、人の問題になりますと、これは定員を管理されている総務大臣のあれでございますから、その決意をぜひお伺いしたいと思います。

野呂田委員長 時間がありませんので、村井大臣、代表して答弁願います。

村井国務大臣 今委員御指摘のように、治安につきまして、体感治安というのが大変悪くなっている、国民の間に不安があることは事実であります。警察といたしましては、当然のことでございますけれども、いろいろの面で対策を講じているところでございますが、特に先般も、凶悪犯罪に対しまして、けん銃の使用要件を定める改革等もいたしました。

 増員につきましてでございますけれども、現在、警察官につきまして五千人の増員をお願いしているところでございまして、これは全国規模の話でございます。また、今お話もございましたような入管職員でございますとか検察関係でございますとか、いろいろ対応をお願いしなければならないということは、これは法務大臣におかれても同様であろうかと存じます。

長勢委員 どうもありがとうございました。

野呂田委員長 これにて小林君、長勢君の質疑は終了いたしました。

 次に、谷口隆義君。

谷口委員 おはようございます。公明党の谷口隆義でございます。

 本日は、まず初めに、補正予算関連の質問をさせていただきたいと思っております。

 今回の補正予算の規模は二兆九千九百五十五億、三兆弱でございます。大もとのところは、改革先行プログラム関連ということで一兆円、今失業率も五・三%ということでございますので、この雇用対策ということで五千五百億、また中小企業対策ということで二千五百億余り、こういう状況になっておるわけでございます。その結果、今回新たな国債の発行、総理が就任当時からおっしゃっていらっしゃった三十兆円枠、こういうようなお話で一兆六千八百二十億ということでございまして、ちょうど三十兆円というような形になったわけでございます。

 私は、従来から申し上げておりましたように、今の景気の状況を考えてやる必要がある。まずやらなければならないのは構造改革、財政構造改革であり、また景気の活性化なんだろうというように思うわけでございまして、そこに至るプロセスが、総理のおっしゃっておるこの三十兆円の枠ということではないかと思っておるわけでございます。一里塚と申しますか、プロセスと申しますか、このあたりを硬直的にやってしまうと取り返しのつかないような事態にもなりかねない。ですから、今まさに構造改革、これは大変重要な問題でございます。総理のおっしゃることはよくわかるわけでございます。一方で景気の回復、これは私は二者択一ではないのではないか、両方を見ながらやっていかなければならない、こういうように思っておるわけでございます。

 今、例えば国債の発行が行われるといったような場合に、塩川財務大臣もおっしゃっておられましたが、国、地方を合わせましての大変な借金がありますので、危惧すべきは、長期金利が上昇する。今、御存じのとおり一・三%程度で落ちついておるわけでございますが、これが一・六であるとか一・七であるとかこういうような状況になりますと、一つのアラームがつくのじゃないか。また、ジャパン・プレミアム、このようなことにも注意を払っていく必要があるのではないかというように思いますが、このプロセスにおいては機動的また弾力的な対応が必要なのではないか、このように考えるところでございます。

 今、石原大臣のところでは特殊法人の抜本的見直し、これはぜひ頑張っていただきたいというように思うわけでございますが、そのような特殊法人の抜本的な見直しをやりながらも、かつ、現下の経済状態、景気の動向にも重大な関心を持つという、このことが必要なんだろうというように思うわけでございますが、今回三十兆円ということになったことについての御見解を、まず初めに総理にお伺いいたしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 私は、かねがね、税収が五十兆円程度しかないのに三十兆円の国債増発を認めている、これは決して緊縮財政路線ではないと言っております。今回も、財政節度、いわゆる財政規律ということを考えるのは当然でありまして、そういう点と、この景気回復のためにはもっと国債を増発せよという声が、経済界初め多くの議員の方からも言われていることは承知しております。

 しかし、今の財政状況あるいは経済情勢、金融状況を考えますと、日本のとる道というのは、選択の幅というのは極めて狭いんです。これほど多く財政出動をしている国は世界でもありません、大胆に。同時に、金融政策をとってみても、これほど低金利政策をとっているところはないんですよ。そういう過去の経緯で、これが何で効果がなかったかということを私は考えるべきだと思います。

 本来だったら、とっくに景気回復していなきゃいけないんですよ。しかし、そこに、今までの財政金融政策が思ったとおり効果を発揮できなかったところに、今の日本経済状況の構造に問題があるということで、構造改革なくして成長なしということで鋭意努力している最中でございます。

 今回も、私は、来年度予算におきましては国債発行を三十兆円以下に抑えようという目標を立てております。今年度においては二十八兆円程度でありますから、まだ枠があるじゃないか、十三年度じゃないんだから、総理の目標は十四年度なんだから十三年度はもっと大胆に出せという声があるのは承知しておりますが、それにしても、むしろ、国債を安易に増発すればもう景気回復する状況じゃないということを我々はまず考えるべきじゃないか。

 今までの財政配分において問題があったのじゃないか、そこを、まず徹底的に歳出の見直しをしよう、そして今までの構造の問題についても大きくメスを入れようということでいろいろ見直し作業を進めているわけでありまして、今回、そういう中で、景気情勢においては今までにない深刻な状況であるという点も考えながら、ある程度の、構造改革に資するような財政出動もやむを得ないではないかということを考えまして、三十兆円枠にとどめる中でできるだけ効率的な対策を練っていこう、特に雇用対策に重点を置いていこうということで、三十兆円の枠に抑えまして、何とか改革と景気面での対応を両立できるような方法はないかということで、苦心の作の補正予算であるということを御理解いただきたいと思います。

谷口委員 総理のおっしゃることは非常によく理解はできるわけでございますけれども、私は、先ほども申し上げたことは、目指すべきものとそのプロセスとを履き違うと大きな失敗になりかねないということも申し上げたわけでございまして、不要の歳出を削減しつつ、これは非常に重要なことでございますし、また一方で、その三十兆円の縛りに固執をしてしまうということになりますと、どうしても硬直的な対応にならざるを得ないということを申し上げておるわけでございます。

 我々公明党も、そういう党内での議論もあるわけでございまして、また今、現下の状況を見ますと、今月の九日に、今年度政府経済見通しの、内閣府見通しの試算において、実質GDP、当初見通し一・七%からマイナスの〇・九%に修正をした、三年ぶりの年度内の修正だということのようでございます。

 また、アメリカの状況も、FRBがことし十回目の利下げを行いました。今、誘導金利、FOMCのフェデラルファンドレートは二%になった。どうも、景気低迷が長期化しそうな様相のようでございます。また、十一月八日には欧州の中央銀行また英国中央銀行も利下げをいたしまして、景気後退の局面に入りかねないような状況だ。また、アジア太平洋地域におきましても、アジア開銀の報告、十一月九日の報告でございますが、二〇〇〇年度が七%の成長、これが二〇〇一年には三・四%の成長と、かなりの減速になってまいったというような状況でございます。

 我が国経済が世界に与える影響は極めて大きいものがあるわけでございます。そういうことを勘案して、我が国から世界同時不況のきっかけをつくらないというような重大な決意もまた持っていかなければならない、このように思うわけでございますが、このようなことに関しまして、総理はどのようにお考えでございましょうか。

小泉内閣総理大臣 アメリカと日本、いわゆる世界第一位と二位の経済力を持っております。そういう国々が、世界から、景気回復の先導役といいますか、主導をとってもらいたいという期待はわかります。

 しかし、今の厳しい世界情勢の中で、また各国の状況を見ますと、日本もかつて石油危機後のときは、日本とドイツが財政が健全だったからこそドイツと日本が機関車的役割を果たせということで、思い切った国債増発を図り、公共事業を拡大して、そのような世界の期待にこたえて先導役を果たそうという意欲を示しました。

 しかし、その後、思うような経済成長も達成することはできず、今のような財政赤字が膨らんで経済成長が思うように伸びないというような状況になってきた段階で、今、私は、日本が世界の景気回復の主導権をとってくれという期待はわかりますが、それだけに、日本が経済成長をするための、持続的な成長力を果たすためにはどういう改革が必要かということを考えなきゃいけない時期だと思っております。

 今、慌てて、当面の景気回復を図るためにもっと国債を増発せよという意見もありますが、果たして思い切った国債増発に踏み切ることによって思うような経済成長ができるかというと、副作用が出てくるんですね。

 そういう点も十分考えなきゃなりませんが、もしもデフレスパイラルとか大きな世界的な経済危機が起こるというふうなときには、それは日本としても、世界第二位の経済力を持っているということを考えますと、大胆な、また今までの一つの規範に対してこだわるということなく、柔軟な体制をとる必要もあろうかと思いますが、私は、いまだにまだそのような世界同時デフレスパイラル、恐慌というような状況にはない、そしてそういう状況になったらば大胆な対策はとれるような体制を今とっておりますので、そういう時期が来ないように、今、細心の対策を今回の補正予算でもとっていきたいというふうに考えております。

谷口委員 今、経済財政諮問会議のメンバーの方から、経済閣僚も含めまして、追加的な財政出動というような声も、この含みも持っていらっしゃるようでございますし、また民間議員の皆さんからもそういうような声が上がっておる。

 私は、仮に新たな追加的な財政出動ということになった場合には、都市再生が非常に経済効率的にも好ましいんじゃないか。これは、都市再生というのは、都市の効率化を進めるということによって都市の中における経済価値を高めるといったことは、不良債権の処理の地価の下落を食いとめるということになるわけでもございますし、不良債権処理の対応という観点からも望ましい、このように考えておるところでございます。これは私の意見ということで終わらせていただきたいというように思います。

 次に申し上げたいことは、今回、二千五百億円を超える中小企業対策、セーフティーネット対策ということでございますが、金融機関が仮に破綻したような場合であるとか、大手の企業が破綻をして中小零細企業の皆さんが大変な影響をこうむるといった場合の対応で一千四百億円強、今回出しておるわけでございます。

 その中で、我々の政策が執行される現場、特に私、国民生活金融公庫について申し上げたいわけでございますが、特殊法人の抜本的な見直しの中に挙げられておる。私は、個人的には、民間の金融機関で借りられないような方々がそこに行って借りるといったようなことで、十分存在意義があるというように思っておるわけでございます。

 一方で、非常に重要なのは、私のところにも先日相談があったんですが、国民生活金融公庫というのは政府系金融機関の中でも極めて国民と接触の高いところでございます。ここで国民の皆さんは融資の申し込みをする。例えば、失業されて子供さんの教育の資金がないからローンを借りたいとか、また、小規模事業者が借りたいといった場合に、最後のよりどころ、ラストリゾートといいますか、そういうところで来られるわけですね。民間の金融機関で借りられないからそこに来るといったような人を、この窓口に来た場合に、貸す方と借りる方との力関係と申しますか、どうしても貸す方は一般的に横柄になりがちでございます。そのときに、我々が期待しておるようなことが現場の窓口のところで実施されておらないというようなことになれば、もう融資を申し込まれた方が大変な精神的負担と申しますか、がっかり、焦燥感に駆られるわけでございますね。

 そういうようなこともございますので、先日、私自身も国民生活金融公庫の皆さんに、こういう時節ですから、窓口の対応はしっかりやってもらいたい、こういうふうに申し上げたんですが、このことについて、所管大臣の塩川大臣、どのようにお考えなのか、お聞きいたしたいと思います。

塩川国務大臣 国民生活公庫は私ども財務省の所管でございますが、谷口先生からそういうお指示があった、ちょっと私も先走って、公庫の方に注意いたしました。

 そういたしますと、最近、傾向として、納税相談とあわせて来られる案件が多い、こういうことがございまして、その場合には、それは納税の関係ですから税理士と相談しなさいとかという指導をすると、そこに険立った意見になってしまうようなことがある、こういうことを言っていましたので、私はとりあえず、そうではなくして、国民公庫に来られるのは零細な方が来られるんだから、そこらのことは全部相談としてのみ込んで、指導を兼ねた融資体制をとっていくということが必要ではないかということを申しておきましたが、改めましてもう一度はっきりと、国民公庫の責任者の方に、呼びまして、今の御質問の趣旨は伝えておきまして、改善さすようにいたします。

谷口委員 最後に一つだけ御質問させていただきたいんですが、私ごとでございますが、先日、私、本を出版いたしまして、テーマは、現下の金融システムの改革はどうも対症療法になっているんじゃないか、本来、金融システムのあるべき姿を考えて、そこから国として、国益を念頭に入れた、例えば総合戦略を構築していく必要があるんじゃないか、こういうようなことであったわけでございます。

 総理にお伺いいたしたいんですが、我が国の金融システムのあるべき姿についてどのようにお考えなのか、御所見をお伺いいたしたいというように思います。

柳澤国務大臣 確かに足元、不良債権問題という大変、いわば日本金融システムの宿痾と申すべき問題がありまして、これに悪戦苦闘して取り組んでいるということがございます。しかし、これとても、今先生御指摘のように、将来の日本の金融システムのビジョンがあるのとないのとではやはり処理の方法が少しなりとも違ってくるということで、そういう意味で、私は将来ビジョンはとても大事だと思います。

 したがって、先生今御指摘の、先生御自身もそのビジョンを出されるというようなことですから、そういうことも参考にさせていただきますが、私のもとに、最近ですけれども、将来の金融ビジョンを語る懇談会をつくっておりまして、既にもう二回ほど会議をしておりますけれども、不良債権という当面の足元の問題に取り組むと同時に、そういうことについても努力をして、早く一つのビジョンを持ちたい、このように考えております。

谷口委員 どうもありがとうございました。

野呂田委員長 この際、白保台一君から関連質疑の申し出があります。谷口君の持ち時間の範囲内でこれを許します。白保台一君。

白保委員 私は、雇用問題を中心にお話を伺いたいと思っておりましたが、まず先に環境問題について二点ばかりお聞きしたいと思います。

 川口環境大臣、昨日、総理公邸の方にマラケシュでのCOP7の報告に行かれたということをニュース等で聞いております。川口大臣には大変に御苦労さまでございました。京都議定書の合意が実現したことに対して、大いに評価をしたいと思っております。我が党は一貫して日本の早期批准を訴えてきましたが、今後は京都議定書の承認や批准、そして国内法の整備などが必要になってくると思います。

 そこで、総理の御決意をまず伺っておきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 後ほど川口環境大臣からもお話を伺いたいと思いますが、昨日、川口環境大臣がマラケシュから成田におりまして、直接私の公邸の方においでいただきまして、報告を聞きました。

 まさに徹夜の折衝の結果、合意を見ることができまして、二〇〇二年発効に向けて、日本としても、今後国内整備等、全力を尽くさなきゃならない。温暖化防止、CO2削減、こういう問題につきましては、産業界のみならず、経済界のみならず、我々生活している一般の国民、市民にまで大きく影響する問題であり、多くの国民の理解を得ながら、省エネ対策等を進めていかなきゃならない。

 米国を初め世界が一つのルールのもとに行動することが望ましいわけでありますが、今回、米国や途上国の合意を得ることができませんでしたけれども、まずは、京都議定書の精神を生かされ、それの実現に向けて一歩大きく踏み出すことができた。そういう意味において、今後日本の役割も大変大きいものと思いますので、この温暖化防止策、省エネ対策、国民一丸となって、かつての石油危機後には一つの大きな国民運動に盛り上がりましたけれども、最近また、どちらかといえば、生活水準を向上させようという意味において、あるいは景気回復に省エネ対策はマイナスになるんじゃないかという危惧の念も出ておりますけれども、むしろ環境の制約状況から、いろいろな努力によって逆にこれを何とか経済活性化の面に生かすことができないか、そういう点も含めまして、私は、国内整備に向かってこれから本格的な対策をしなきゃならないと思っております。

 詳しいことは、せっかく、明け方六時過ぎまで徹夜で苦労されまして各国との合意に取りつけた川口環境大臣からお話を伺いたいと思います。

川口国務大臣 COP7において、各国の熱心な交渉の結果、合意ができまして、これによりまして京都議定書の発効に向けた国際的な条件が整ったというふうに考えております。

 この成果を踏まえまして、政府としまして、きょうの夕方、地球温暖化対策推進本部を開きまして、ここにおきまして京都議定書締結に関する今後の進め方について検討をいたすことといたしております。

 それから、総理がおっしゃられましたように、一つのルールのもとで行動することが重要でございまして、アメリカの建設的な対応を求めることにつきまして、引き続き最大限の努力をいたしていきたいと思っております。

白保委員 大変御苦労さまでした。

 そこで、総理は就任の際の所信表明演説の中で、自然と共生する社会、この実現を強調されたわけであります。そのためには、貴重な自然を守ることが重要であり、それと同時に、失われた自然を積極的に再生することも必要であります。

 今、一つの絵を見ていましたら、北海道のサロベツだとか、それから釧路の湿原だとか、あるいは私どものサンゴ、あるいは赤土流出、こういった自然を破壊しているようなそういう状況を再生させていく、自然再生をしていかなきゃいけないだろうということで、自然再生型の公共事業を必要とするんではないか、こういうことを我々は考えます。

 そこで、大事なことは、こういったことに対する法整備も必要ですが、各省ばらばらでやっていてはなかなかうまいぐあいにいかないだろう、環境省が主導して、そして全体的な計画を立てて、その中で自然を再生させていく事業というものが必要である、このように思いますが、総理と環境大臣の御所見を伺いたいと思います。

小泉内閣総理大臣 公共事業等を進める上において、環境面に十分な配慮をしなきゃならないということで、今、国土交通省とも環境省とも、あるいは農林水産省等各省庁連携をとるように、それぞれ協力体制をとっております。

 公共事業を進める上においては、今扇大臣からもお話しいただけると思いますけれども、環境省とも十分連絡をとりながら、自然との共生を図る事業を進めていくということを既に進めております。

川口国務大臣 自然の再生につきましては、二十一世紀「環(わ)の国」づくり会議でも指摘をされたところでございまして、生態系を総合的な観点から考えるという意味で、各省の連携が非常に重要であると考えております。

 環境省といたしましては、国土交通省、農林水産省などの関係省庁と連携いたしまして、地方公共団体やNGOの方々の参加も得ながら、自然再生事業の推進に努めていきたいと考えております。

白保委員 環境省が中心になって、生態系を中心に法整備等をきちっとしてやっていくことが大事であろう、こういうことを私は申し上げたかったわけでございます。

 さて、雇用の問題ですが、ことし我が党は、四月に緊急の雇用対策等をまとめて提案をいたしました。そしてまた、七月、八月と緊急の経済対策、そういったこともまとめて、九月には与党間で調整をして、そういったことがこの今回の補正予算にも実現化しているんであろう、こういったことと理解しておりますが、その上で何点かお聞きしていきたいと思います。

 一つは、まず総理にお伺いしたいんですが、アメリカの同時多発テロでアメリカ経済が大変厳しい状況になっている、この影響というのは日本はどのように考えますか。

小泉内閣総理大臣 アメリカの景気は、日本のみならず世界に大きな影響を与えると思います。

 そういう意味において、アメリカが、失業率、最近たしか五・四%になったのですか、日本よりも多いということで、これは日本のみならず世界にも大きな影響を与えていくと思います。特に、テロ発生後、各産業に深刻な打撃を与えておりますので、この影響も十分考慮に入れながら、どういう対策を打つか、よく状況を見て、適切な対応をとっていきたいと思います。

白保委員 私はほかにもいろいろとお聞きしたいと思っておりましたが、時間も余りありませんので、厚生労働省にお聞きしたいと思います。

 全国の完全失業率が五・三%という大変高い状況になりました。そういう中で、全国の完全失業率を都道府県別に数値をとらえることができますか。

坂口国務大臣 今のところ、厚生労働省としましては、都道府県別のはとっていないんですね。地域別と申しますか、それは出すことができるんですが、都道府県別には出しておりません。今後、検討課題の一つだと思います。

白保委員 私がそれを申し上げますのは、九九年の一月に、ここで我が党の冬柴幹事長が議論をした際に、当時、緊急雇用創出特別基金というものを創設して六百億積んだ。ところが、これはブロック別の数値で見ていきますと、ある一定の数字をブロック全体が超えないと発動することができない。そうしますと、このブロックの中で一部高い数値が出ているにもかかわらず発動することができない。これではちょっと、せっかく積んだ基金が発動できなくて、活用できない、少し考えるべきじゃないかというような提案がありました。その際に、当時の小渕総理から、その数値の高いところを見て、特に、ブロック別とはいいますけれども、北海道が一つのブロックになっている。また沖縄は前から、琉球政府時代からの数値があります。したがって、その数値を見て、小渕総理からの特例ということで、沖縄で当時八・三%を恒常的に超えておりましたから、それを特例として発動するという状況になったわけです。

 ですから、そういう面では、やはり地域別、都道府県別に見ていくことができないと、せっかく積んだ基金というのがなかなか発動要件を満たし得ないということになりますので、この辺の検討はぜひ必要であろう、こういうふうに思いますし、同時に、当時の特別基金、これは十三年度までですから、これを今どのように活用されているのか、そしてまた、今後どうしていくのか。といいますのは、これは四十五歳以上の中高年のいわゆる再就職が難しい、そういう人たちのための基金でございますから、その辺の状況はどのようになっておるのか、お伺いしたいと思います。

坂口国務大臣 ちょっとお断りを先に申し上げますが、先ほど完全失業率のことを私申しましたけれども、これは総務省の所管でございまして、私が余分なことを申し上げる立場にありません。少し訂正をさせていただきたいと思います。

 ただ、今御指摘になりましたこの特別奨励金のお話でございますが、これは五%を超えますと採用することになっていたわけでございます。しかし、今までは、先ほど御指摘のように地域別と申しますか、近畿とかあるいは北海道とかというようなことでしていたわけでございまして、現在までのところは、北海道と近畿とそれから沖縄というのが今まであったわけです。しかし、五%を超えましてから、これが全国に広がったわけでございまして、八月二十九日から全国発動をしたということになっておるところでございます。

白保委員 時間がありませんので申し上げますが、実は、若年層の失業率、御存じのように全国が五・三%。ところが、十五歳から二十四歳、これが一一%です。二十九歳までが八・六%。非常に若年層の失業率が高いものになっています。特に私どもの沖縄では二二・六%という、五人に一人強が就職していない、こういう状況にあります。

 この若年層対策というのが極めて重要だと思いますが、時間がありませんので、ひとつ短くお願いします。

坂口国務大臣 若年層の対策というのは非常に大事でございますので、ひとつ力を入れてやらせていただきたいというふうに思っております。

 一つだけ申し上げますと、学生等が早い段階から就職意識を形成するためのいわゆる試し雇用というのをぜひ導入して、そして、もう学生のときからその企業の中を十分にわかっていただく、企業にもわかっていただく、そうしたことをぜひやっていくということで、今回のこの補正予算の中にも入れていただいた次第でございます。

白保委員 最後の質問になるかと思いますが、尾身大臣、昨日、一昨日沖縄へ行かれまして、大変御苦労さまでございました。

 テロが発生をいたしまして、その後の沖縄経済というのは極めて厳しいものがあります。テロ特措法を審議したこの場でも扇大臣にも申し上げましたが、直ちに安全宣言をしていただいたり、遠山文部科学大臣も首里城で高校生と対話をしていただいたり、いろいろ安全のためのことをやっていただいてはおりますが、現実には観光客のキャンセルが相次いでおります。

 九月の末の時点でございますけれども、一〇%入り込み観光客が減少したならば、六千七百人からの失業者が新たに出るだろう、そしてそれは一・二%の失業率につながる、その時点で九・二%ですから、一〇・四%まで完全失業率が上がっていく、そういうことが予想されております。

 したがって、緊急な新たな対応策を打っていかなければいけない、こういうふうに思っておるわけでございまして、タウンミーティング等を含めて、また担当大臣としていろいろと意見も聞いてこられたと思いますが、新たな対応策、大臣の方からの御答弁をお願いします。

尾身国務大臣 今白保委員のお話のとおり、特に全体の景気が悪い中で、テロ問題が起こって以降、修学旅行のキャンセル等、大変観光に大きな打撃が来ているというのが実情でございます。

 そういう中で、先ほどのお話のとおり、沖縄の失業率は、全国平均の五・三に対しまして九・四%、若年層、十五歳から二十九歳まででとりますと、全国平均が八・六に対しまして一七・八%と、約六人に一人の若者が失業をしているというのが実情でございまして、極めて深刻な状況だと考えております。

 それに対して、私ども、私も昨日まで沖縄におりましたし、また、私の後援会にも沖縄を訪問していただきましたが、実感として大変安全であり、今ならばサービスもいいし料金も安いから、ぜひお越しをいただきたいと。行った方は皆さん、大変喜んでいただいたわけでございますが、国の調整費四億円を使いまして沖縄の安全性についてのPR等をしているところでございます。

 それからまた、緊急に、旅館等に対します緊急融資についても万全を期しておりますし、特に修学旅行につきましては、いろいろ関係方面の御配慮をいただきまして、飛行機賃二千円を特別に補助するという制度も今つくりつつあるところでございます。

 それからまた、雇用全体を確保するために、既にIT関係を中心としてここ数年で四千人ほどの雇用増で頑張ってきておりますが、なお先ほどのような状況でございます。

 そこで、今度の補正予算で緊急地域雇用創出特別交付金三千五百億円というのを今予算で出しているところでございますが、この沖縄は特別高い失業率でございますから、やはり失業率の特に高いところには傾斜配分をしていただくということで、大いに頑張って、今少なくとも二千人以上の雇用増を図るようにしていきたいというふうに考えております。

 それから、中長期的な課題なんでございますが、中小企業の研究開発、技術開発、それから産学官の共同研究の推進というような問題を通じて、今度の補正予算では四億円のそういう補助をするということを計画しております。

 それからまた、全国の経済産業省とかあるいは文部科学省を通じての予算要求もございまして、研究開発だけで約十億円ぐらいの予算を使う予定にしております。

 これによりまして数百人の雇用増を図り得ると思いますし、特に、そのうちのかなりの部分が、緊急対策ではなくて新しい産業の創出、新しいベンチャーの創出等を通じて、中長期的に経済の発展に寄与すると思っております。

 こういうことを通じて、全力を挙げて雇用確保を図り、沖縄の経済の振興を図ってまいりたいと思う次第でございまして、ぜひとも御支援のほどをよろしくお願い申し上げます。

白保委員 終わります。

野呂田委員長 これにて谷口君、白保君の質疑は終了いたしました。

 次に、井上喜一君。

井上(喜)委員 保守党の井上喜一でございます。

 補正予算案が提出されましたけれども、このたびの補正予算案につきましては、予算の規模といいますか、国債の発行規模が随分議論されたと思うのです。景気が悪い、あるいは失業率が高いというようなことで、もっと国債を発行すべきである、こういう意見も随分強かったと思うのでありますが、現に四百兆円近い国債の残高もありますし、また単年度の発行額といたしましても、三十兆あるいはそれを超えるような状況になってきておりまして、財政の節度を保ちながら予算編成をしていくということは、私はある意味では当然のことじゃないか、こんなふうに考えるものでございます。

 財源の制約の中で、これからの産業構造の転換なりあるいは社会構造を変えていく、そんなことを念頭に置きながら、主として雇用対策なりあるいは中小企業対策というようなことを重点に置かれて政府は予算を編成されたのじゃないか、こんなふうに推測をいたすものでございます。

 こういう予算の執行を通じまして日本の経済は運行されていくわけでありますけれども、不良債権の処理あるいは構造改革が進められてまいりますと、どうしても国民に対する痛みが出るわけであります。これは、小泉総理を初め政府もそういうことをおっしゃっているわけでございまして、私は、そういうことはある程度国民に理解をされているわけでありますから、これからどの程度の痛みがどの程度続くのか、あるいは将来どうなっていくのか、そういうことを国民に説明をしていくべきであるし、また、そのことによって政府の施策の理解が得られるのじゃないか、こんなふうに考えるわけであります。

 この間テレビを見ておりますと、塩川大臣が、もう少し我慢すれば春風が吹いてくるというようなことを言っておられたのでありますが、余りにも漠としておりまして、あの程度のことではなかなか国民は理解しないのじゃないかと思うのです。したがいまして、私は、成長率とかあるいは失業率とか賃金とか、あるいは企業収益が当分の間どうなっていくのか、もう少し具体的に、そして将来どうなるのかということを政府として言わなくてはいけないのじゃないか、こんなふうに思います。

 そこで、竹中大臣に、これらの点についてできるだけ具体的に、余り漠としたことをお答えでありますと答えにならないと思うのでありまして、できるだけ具体的にお答えをいただきたいと思います。

竹中国務大臣 六月に取りまとめましたいわゆる基本方針、骨太の方針と言われるものの中で、年内を目途にいわゆる中期の経済財政計画、名前はともかくとしまして、そういうものを出すということをお約束しております。井上委員御指摘なのは、まさにそういうものの中でどの程度具体的に将来の姿を描いていくつもりがあるのかというお尋ねだと思います。

 これは、まさに改革は進めなければいけない、しかし、その改革の先にどういう日本の姿が見えるのだろうかということを示すことが諮問会議としての大変重要な役割だというふうに思っておりますので、その枠組みをどのようにつけるかという議論を諮問会議でまだ始めた段階でありますけれども、可能な限り具体的に、数値を挙げながら議論ができるようにしたいというふうに思っております。経済成長率等々をお示しするのは、これはやはり必要なことだというふうに思っております。

 さらに、その中での、国民生活の姿がわかるような幾つかの関連指標につきましても、これは幾つかの技術論が伴いますもので、これとこれとこれの経済指標をお出しするというふうに今はちょっと申し上げられない面もございますけれども、可能な範囲で、マクロ経済の姿と国民の生活の実感がわかるような、数字を伴った将来のビジョンというのを出していきたいというふうに思っております。

井上(喜)委員 どうも政府はきちっと決めてからじゃないと数字ないしは中身は言わないということでありまして、今の竹中大臣の御答弁を聞いておりましても、そんな感じがいたします。民間の出身ですから、大体大まかなことは言われてもそう大きな責任を追及するとかということにはならないのでありまして、きょうはこれぐらいにしておきますけれども、これからぜひもう少し検討の成果を発表していただくようにお願いをいたしておきます。

 最近、やはり失業問題、雇用問題というのは大変大きな問題だと思うんですね。これから失業率がどのぐらいになっていくのか。いろいろな資料を読んでみましても、やはり失業率は上がっていくというのは大勢の意見だと私は思うのでありますが、厚生労働省として、将来、失業率がどういうぐあいになっていくのか、どんなふうにお考えですか。

坂口国務大臣 これはまさに、先ほど竹中大臣からもお話ございましたが、経済動向によりまして雇用の問題もまた変わっていくわけでございますので、今後、この経済動向を見なければ失業率どうこうということはなかなか言いにくいわけでございます。

 しかし、現在、五・三%になりまして、そして、いわゆる九月のテロでありますとか、あるいは牛海綿状脳症の話がございましたりとか、こうしたことの影響はまだ続くと申しますか、今後これはさらに大きくなる嫌いもございますので、現状はしばらくこれは続くのではないだろうかという考え方を持っているわけでございます。

 しかし、それから先どうなるかは、これは経済の動向によって変化をいたしますので、そこまで私の範囲の中でお答えすることはなかなか難しいという状況でございます。

井上(喜)委員 一般の見方は、不良債権の処理が進んでくるとか、あるいはリストラ、そういったことが進むということで、どうも失業率は高くなっていくんじゃないかということが一般の考えだと思うのでありますが、そういう議論と関連いたしまして、最近、ワークシェアリングということが言われてきております。これは、原則的に労使が協議をして決めていくべき問題だと思うのでありますけれども、厚生労働省といたしましては、これに対してどういうお考えなんですか。第三者的にじっと静観しておくということなのか、ある程度これを進めていくというようなお考えなんですか、その辺のお考えをお伺いしたいと思います。

坂口国務大臣 今までの雇用対策だけではこれからなかなか進みにくくなる、もう少し大枠の新しい雇用対策というものが必要になってくるというふうに思っております。

 このワークシェアリングというのが雇用対策かどうかということにはいろいろ異論のあるところでございますけれども、しかし、ワークシェアリングというのは大変大事な問題であるということを私もそう思っている一人でございまして、そして、今までは労使の間でいろいろとお話し合いをしていただいておりましたが、その間の格差というのはかなり大きかったわけでございますけれども、最近のお話し合いの中で、その内容がかなり縮まってきておることも事実でございます。

 厚生労働省といたしましては、その推移をどちらかといえば見守る立場をとってまいりましたけれども、これからは、もう少し積極的にこのお話し合いに乗させていただきまして、そして、この問題を進めていきたいと思っているところでございます。

井上(喜)委員 そういうお考えであれば、政府としてとるべき対策といいますか、検討すべき項目としてはどんなものがあるとお考えですか。

坂口国務大臣 一口にワークシェアリングと申しましても、その内容はさまざまでございます。いろいろのタイプのワークシェアリングがございます。では、どのタイプのワークシェアリングを選んでいただくかということがまず大事だというふうに思っておりまして、それを決定いたしました暁において、それに対する政府の対応というのも違ってくるというふうに思います。

 まずは、どういうタイプにするかということ、そこを議論していただかなければならないと思っているところでございます。

井上(喜)委員 まずは労使の話し合いを見ながら、その上で、政府として検討すべきことがあれば検討していく、このようなお考えであるというぐあいに理解をいたしました。

 次に、産業といいますか製造業の空洞化の問題であります。

 これは財政演説を見ましても、失業率の高さというのは製造業の空洞化とも関連しているということが書いてありまして、雇用関係とも大変大きな関係を持つと思いますし、雇用関係にとどまらず、日本の国全体の経済あるいは貿易、あるいは地域経済、そういったことにこれは大きな関連を持つテーマだと私は思うんです。

 小林議員の質問の中にもありましたけれども、貿易収支、サービス収支がことしは赤字になるんじゃないかというようなことが言われております。日本の輸出の大宗になってきたのはやはり製造業でありまして、これが空洞化をしていくということですから、これは非常に大きな問題として考えないといけないと私は思うんですね。

 雇用政策大綱ですか、九月二十日に政府が決定いたしましたそれを見ましても、例えばベンチャーを起こすだとか、あるいは大学にあります技術を活用できるようにするとか、あるいは先端技術についての研究開発投資をするというようなことが書いてありますが、なかなか今の進行しておりますこの産業の空洞化に対応できるような政策になっていないんじゃないか、それとしては大変不十分じゃないかと私は思うんですよね。

 恐らくこの製造業、これは中小企業が主として支えていると思うんでありますけれども、こういうのが外へ出ていくわけでありますから、日本の製造業が誇っておりました技術自身も維持できない、あるいはレベルを上げていくことができないような状況にもなってきているわけでありまして、これは私、国として大きな問題として取り上げるべきじゃないかと思うんでありまして、きょうは平沼大臣にお聞きしようと思ったんですが、出張中でありますので、それでは尾身大臣、よろしくお願いします。

尾身国務大臣 今私は経済産業大臣の臨時代理でございまして、今おっしゃいましたお話、私自身も極めて痛切な思いで感じているところでございます。例えば、中国との人件費の格差が三十倍もあるというような状況の中で、この産業全体の空洞化問題というのは、我が国がどうしても解決しなければならない極めて深刻な問題であるというふうに考えております。

 そういう中で、どうしてこの産業の競争力をつけていくか、日本経済全体の競争力をつけていくかということが極めて大事でございまして、今おっしゃいました技術開発あるいは新しいベンチャーの創出等を含めて、日本の経済社会全体をもっと近代化していかなきゃならない。

 そのためには、先ほどお話にありましたような研究開発のための税制のさらに一層の改善とか、あるいは産官学の連携とか地域の科学技術の発展とか、そういうことも含めて、総力を挙げて日本の競争力をつけるということに重点を置いて、そしてそういう中で、雇用の増大につきましても、いわゆるセーフティーネットを確立することと同時に、雇用をふやす、産業を発展させる、ベンチャーを育成していくという方向にもっと力を入れていかなければならないと考えておりまして、今度の補正予算等につきましてもそういう点を意識して、地域科学技術の発展とかあるいは産学官の連携とか、そういうことを進めてきているところでございまして、今おっしゃいました方向で全力で頑張ってまいりたいと考えております。

井上(喜)委員 この点についての総理の現状の認識とこれからの対応につきまして、お伺いをしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 かつてアメリカも言われたのですよね。日本の企業も、政府に言われるまでもなく、企業の中では、積極的に海外に進出して発展している企業もあるわけです。

 確かに、産業空洞化、この問題については細心の注意を払って、日本の産業強化にいろいろな対策をしていくのは当然でありますが、中には、いろいろ海外の発展に寄与する面もあります。発展途上国に対するいろいろな協力も考えながら、日本の経済進出を歓迎する国もあります。

 また、日本の国内企業においては、逆に海外から日本にたくさんの商品が流入することによって打撃を受ける産業もたくさんあります。しかし、農業の分野におきましても、今、ネギ等の中国からの輸入で農家は大変苦しんでおりますが、一部の地域、例えば群馬県なんかを考えてみますと、全然打撃を受けていない。むしろ高くても、日本国民は安い輸入品よりも日本産に信頼を置いて、高いネギを買ってくれるという地域もあるわけであります。(発言する者あり)下仁田ネギという話がありましたけれども、そういう面において各企業が努力している面もあるのですね。恐れるばかりでなくて、安い商品が入ってくるのだったらば、高くても品質がいいんだよという前向きの努力も必要ではないか。

 私は、先進国はどうしても産業空洞化の面において恐れる空気が強いのですけれども、過去の先進国の例に倣いながら、これも前向きに対処していく努力が必要ではないかと思っております。

井上(喜)委員 産業空洞化問題、大問題でありますので、政府を挙げてお取り組みをお願いいたしたいと思います。

 もう時間も余りなくなったのでありますが、京都議定書が、その運用ルールが合意されまして、いよいよ発効ということでありますが、私は、これはよくよく考えてこれから進まないといけないと思うのです。

 川口大臣、本当に御苦労されております。自分で決めたことでないのを、後をどうするかということで、本当に大変だと思うのでありますけれども、しかし、所管の問題でありますので、この後の問題もうまく取りまとめていただきたいと思うのです。

 といいますのは、環境省の方は、ともかく環境、環境といえば地球温暖化防止、これはもう絶対に必要なことでありまして、やらないといけないのでありますけれども、それに応じた社会的な、あるいは経済的な対応ができるのかということ、あるいは、大体期間も十年ぐらいありますから、できるということならいいけれども、技術的にも経済的にもできないんだというようなことになってきますと、非常に大きな問題が起こると思うし、今の空洞化の問題もありましたが、企業というのは、やはり採算が合わなくなったら外へ出ていくのですよ。

 そういうものでありますから、ただ、例えばEUが八%だからというけれども、EUなんか、エネルギー転換をしていけばまあまあいけるというわけですよ。日本は六%だからいいという話じゃないのですよ。また、一九九〇年が基準で、その基準から六%削減だというんだけれども、今は七%ぐらいオーバーしているから一三%ぐらい削減しないといけないようですね。だから、なかなか大変だと。

 それで、達成できない部分は外国から買ってくればいいじゃないか、こんなことを言う環境省の幹部もいるわけですよ。これは何だというのです。買ってくることの意味は何があるのかということですよ。やはり削減部分は日本で削減するような見通しを立てないといけないと思うのですよね。ですから、地球環境の温暖化防止は大変大切です。と同時に、それを可能にするような対策も、それと同じように大切だということをぜひお考えいただいてお取り組みをいただきたいと思うのですが、所感をいただきたいと思います。

川口国務大臣 現下の経済情勢ということから、温暖化への取り組みについていろいろな御懸念がおありになるということであろうかと思いますけれども、今回の交渉におきまして、日本の政府団として一番心を砕きましたことは、京都メカニズム、守るためのフレキシブルなメカニズムについて、不必要な制約が課せられないように、それが企業の創意と工夫に基づいて使えるようになるということを確保するということが最大の実は目標でございまして、そこについては、おおむねそのような形になったのではないかというふうに思っております。

 それから、対策を行っていくのに費用がかかるということは、全くそのとおりでございますけれども、これは、費用がかかるということと同時にエネルギーコストの削減というメリットもございまして、そういった観点から中央環境審議会で百種類の技術を精査いたしましたところ、そういう種類の技術もかなりあるということでございまして、いずれにいたしましても、温暖化の対策につきましては、社会経済の動向、あるいは技術開発の動向を勘案しながら、事業者あるいは国民の方々の自主性を尊重しまして、費用対効果が十分に高い仕組みを考えていくべきであろうと考えております。

野呂田委員長 これにて井上君の質疑は終了いたしました。

 次に、岡田克也君。

岡田委員 民主党の岡田克也です。きょうは七十分間のお時間をいただいて、総理に質問したいと思っています。

 きょう、補正予算の審議でありますので、補正予算を中心とする経済、雇用の問題、そして小泉改革の象徴としての高速道路、あるいは医療制度の改革の問題を中心に総理にお聞きしていきたいと思いますが、総理、お見受けすると、最近ちょっと元気がないという話があるんですよね。ですから、きょうは、ぜひ元気よくお答えをいただきたい、端的にお答えをいただきたい、そういうふうにお願いをしておきたいと思います。

 さて、ちょっと通告の順序と変えますが、まず、外交、安全保障の問題を三点だけ、端的にお聞きをしておきたいと思います。

 第一点は、先ほど井上委員がお話しになっていた京都議定書の問題であります。

 私は総理にお聞きしたいと思っておりますが、先ほどの質問の中でも、ちょっと歯切れが悪いなという感じがしたんですね。きょうの夕方改めて会議を開いて方針をお決めになるんだろうと思いますが、総理として、この京都議定書、国会の承認、これは通常国会での国会の承認に向けて、総理としてどういうお考えなのか。きちんと通常国会に批准案をお出しになる、そういうことをこの場で明確にお述べいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 前国会から私は一貫しているんですよ。何ら変わっていない。二〇〇二年発効を目指して努力すると。今回のCOP7、ボン会議に続いて、できるだけ合意に向けて努力しようと。京都メカニズム、日本の立場を尊重しながら各国との合意に向けて極力努力してくれと。ある場面においては決裂するかもしれないという際どい交渉を川口大臣が見事にやってのけてくれまして、今回ようやく合意にこぎつけた。私は、川口大臣の努力、苦労を高く評価しております。

 来年、日本は、残念ながらアメリカは不参加でしたけれども、今後とも粘り強く、アメリカも建設的な提案を出していただきまして、この京都メカニズム発効のために協力できるような働きかけを日本としても鋭意続けていきたい。この姿勢は、前国会から全く変わっておりません。

岡田委員 いろいろ議論はありますが、今、我が国が批准をするということに対して総理が積極的な姿勢をお示しになったというその一点で、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 アメリカの核政策について一言お聞きをしたいと思っています。

 日本が提出をした核廃絶決議案に対して、米国政府が反対をいたしました。あるいは、今開会中の核実験停止条約について、CTBTについて、国連の会議にアメリカはボイコットいたしました。そういうことを見ておりますと、米国政府のこの核の問題に対する取り組みが大分変わってきたんだろう、ブッシュ政権になって変わってきたんだろうというふうに思わざるを得ないわけであります。

 しかし、核の問題は、唯一の被爆国である我が国にとって、核の廃絶に向けて努力を続けていくということは、これは非常に重要なテーマだというふうに思います。

 今回の米国で起きたテロ事件を見ておりましても、私は、核の問題というのが実は潜在的な大きなテーマになっていると思うのです。

 米国政府は、米国内にビンラディンの一派が核を持ち込むんじゃないかということを懸念しております。高層ビルに飛行機がぶつかったのも悪夢でありますが、米国の大都市で小型核爆弾が爆発をするというのはそれを上回る悲劇だというふうに思います。あるいは、パキスタンという国が今問題になっておりますが、パキスタンは核保有国であります。もし、パキスタンの国にクーデターが起きて、そしてより不安定な政権になれば、これまた世界の平和と安全にとって非常に重要な事態であります。

 そういうこともありますから、核の問題にアメリカがしっかり取り組んでいくということは私は非常に大事なことだと思いますが、私自身のアメリカ政府と話したその感触でも、果たしてこの核実験停止条約についてアメリカがいつまでも守り続けるのか、あるいはどこかでこれを破ってしまうんじゃないかという懸念がぬぐい切れないわけであります。そして、もしアメリカが核実験停止条約をボイコットするといいますか、このモラトリアムをやめるということになりますと、これは当然、中国初めほかの核保有国に波及をし、あるいはインドもパキスタンもということになって、今の核体制がばらばらになってしまう危険をはらんでおります。

 そういう意味で、ぜひ総理には、ブッシュ大統領とこの問題について真剣なテーマとして取り上げて議論していただきたい、そういうふうに思っておりますが、総理の御見解をお聞きしておきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 包括的核実験禁止条約、いわゆるCTBTですけれども、これについて、日本の提案に対してアメリカの賛成を得ることはできませんでしたが、今後とも、日本の非核政策、核のない世界をつくろうということに対しましてアメリカの理解を得れるように、粘り強く努力を続けていきたいと思っております。

岡田委員 これは、単に日米の問題ではなくて世界の平和と安全の問題だ、しっかり取り組んでいただきたいと御要望申し上げておきます。

 三番目に、例のテロ特措法の話でありますが、私は、国会の事前承認ができなかった、法律上改正ができなかったということは非常に残念なことだと今でも思っておりますが、いずれにしろ、事後承認であれ、国会承認という手続がとられるわけであります。

 ただ、これは今とても微妙な段階にあって、二十日以内ということでありますが、場合によっては、この国会に承認手続がとられないという可能性もございます。そういうことになりますと、法律上は次の通常国会。そのときにはもう恐らく自衛隊の活動はもちろん始まっておりますし、場合によっては終わっているかもしれない、そういう状況であります。

 そこで、ぜひ、この国会に承認手続をかけていただきたい。そのことをお約束いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 これは、基本計画を策定し、自衛隊をある地域に派遣するような状況になりましたならば、当然国会に事後承認を求めるわけであります。しかし、その時期によって、まだいつ派遣するか決めていないわけです。今国会、十二月七日に閉会でありますが、この期間中にそういう状況になるのかならないのかというのは、現時点ではまだ判断するのは早いと思われまして、これはその時点で判断するしかないと。当然、国会開会中であれば事後承認を求めますし、閉会していたならば、次期国会に速やかに承認を受けなきゃならないという法律の規定どおり対応していきたいと思います。

岡田委員 今のは役人答弁だと思うんですが、基本計画の決定は、これはもう近々あるということも言われております。それに基づいて自衛隊が出ていくというのも、恐らく、この国会開会中にはそういうことになるんだろうと思うんですね。それから二十日以内ということですから、国会開会中に自衛隊が出ていくことになれば、速やかに承認手続をとっていただきたい。

 二十日あるからといって延ばしている間に国会は終わってしまう。次の通常国会になるということになりますと、これは自衛隊の皆さんにとっても、自分たちが国会の承認をきちんと得て活動するのか、あるいは得ないで活動するのかというのは、これは相当違うと思いますから、極力そういう方向で努力をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 今私が考えることは、国会の事後承認を得れるような基本計画、派遣は考えていないということであります。国会の事後承認を得れることができないような計画は考えていないということで御理解いただきたいと思います。

岡田委員 それは、与党が多数ですから、政府がつくれば事後承認は得られるんだと思います。しかし、我々もそれはできるだけ、これは中身を見ないとわかりませんが、できるだけ承認をしたい、そういう気持ちはあります。そして、自衛隊の皆さんも恐らく、多数の、圧倒的多数の承認を得て活動するということを望んでおられると思いますから、極力そういう方向で御努力をいただきたい、そのことを申し上げておきたいと思います。

 さて、経済あるいは雇用の問題、補正予算の問題について質問したいと思います。

 まず、今回の補正予算でありますけれども、ある意味で小泉総理の思いがかなり凝縮をした、そういう予算だろうというふうに思っております。つまり、第一に、三十兆円の枠を守った。そして、従来型の公共事業の追加による景気浮揚策というものをほとんど入れなかった。この点は私は、非常にわかりやすい予算だ、そういうふうに思うわけであります。しかし、他方で、経済の状況は非常に悪い。町を歩けば、あちこちから悲鳴が聞こえる。そういう状況にあることもこれまた事実であります。

 そういう意味で、今回のこの予算というものは、私は、二次補正は総理は考えておられないと思いますので、この予算で本当に今の経済の状況に対して対応できるんだろうか、そういう疑問の声が当然あるわけでありますが、そこのところの総理のお考えというものを、あるいは経済の現状に対する認識というものをお聞かせいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 確かに景気状況は厳しいものがありまして、できれば、国債を増発して景気が回復するんだったら私もやりたいですよ。しかし、今の日本の財政状況、景気状況、そして過去の、今までの景気刺激策を考えると、ここで五兆円でも十兆円でも国債を増発しろという声がありますけれども、果たしてそういうことをして持続的な経済成長を確保できるだろうか。その確信を持てたら私もやりますよ。確信を持てないところに苦しいところがあるんですよ。

 そこで、私としては、ある程度、二、三年は低成長を甘受しなきゃならないな。将来の持続的成長を考えるならば、当面の景気を考えて国債増発をすれば、ある程度プラス成長には寄与する面もあると思いますが、同時に副作用のマイナス効果も出てくる。両面を考えなきゃいかぬということで、私が総理に就任したらすぐ景気回復するんじゃないかという見方もありますが、そうじゃないんです。

 私ほどきつい、甘い公約をしなかった総理はいないと言われているぐらい、甘いことを言っていませんよ。私が総理をやめたら景気回復するだろうと言っているぐらいなんですから。二、三年は低成長を我慢してくれ、その覚悟が必要だということで、改革なくして成長なしということで取り組んでいるんですから。私は、今の、改革をしないで景気回復する、国債を増発して景気回復するんだったら、とっくにやっていますよ。そういう状況にならないという認識の上に、低成長を覚悟しながらも、改革を進めていって、持続的な経済成長に持っていきたいということでやっているわけであります。

 今回も、そういう中で、私は、できるだけ構造改革に資するような補正予算を組みたい。同時に、その中で、雇用が厳しい状況でありますから、公共事業によって失業者を救済するということでなくて、むしろ新しい産業に向けるような、そして雇用対策が生きてくるような方面に重点的に予算を使いたいということでやっているわけでありまして、私はむしろ、民主党が、厳しく三十兆円以下に抑えなきゃいかぬということを野党でありながら言っていることに対して、共感を覚え、評価をしているぐらいなんですよ。

 そういうことを考えて、私は、現下の厳しい状況、国債増発が果たして本当に景気浮揚に役立つのかということをむしろ厳しく点検しながらも、選択の幅の狭い政策運営に細心の注意を払わなきゃいけないと思っております。

岡田委員 今年度の補正後の国債の発行額九十九兆八千億、もちろん新発債は三十兆でありますが、借りかえも含めますともうほぼ百兆という規模に達している。そういう中で、国債マーケットは大変緊張感のある運営を強いられる。ちょっとしたことがあれば長期金利が急上昇する。そういう危険を秘めた中での財政運営でありますから、そのことも考えながら全体を組み立てていかなきゃいけない、そういうふうに私も思います。

 ただ、いろいろお聞きしていると、閣内でいろいろな雑音といいますか、多様な意見が聞こえてくるわけであります。

 二次補正の声は、私が聞いているだけでも何人かの閣僚が、明確には言っていないかもしれませんが、かなりそれを類推させるような言い方で言われているわけであります。もし二次補正で、そしてその中で国債、もちろん二次補正を組むということは三十兆の枠を超えてしまうわけですが、十五カ月予算を二次補正で組むということになりますと、これは、今年度の三十兆ばかりか来年度の三十兆も事実上崩すということになるわけであります。

 そういう意味で、総理がそこまでおっしゃいながら、もし二次補正予算を組むということになると、私は、総理が今言われたことは全部うそになってしまう、こういうふうに思いますが、そこはいかがなんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 それは、積極財政論者から言わせれば、小泉は来年度予算三十兆円を目標にしているのだから、今年度は十兆円だろうが二十兆円だろうが出せばいいじゃないかという声がありますが、私は、その辺は財政規律というものも考えなきゃいかぬということで、厳しく今の歳出構造を見直そうということに重点を置いているわけであります。

 そういう中で、今後、テロ発生後の状況は、アメリカの経済においても大分見通しが違ってまいりました。今、補正予算を審議している段階でありますので、この補正予算を通すことに対して全力を投球していきたい。今後、非常な経済状況に変化があった、経済は生き物といいますから、そういう状況については私は大胆な政策をとるのはやぶさかではありませんが、現在は、今までの状況について、今の補正予算について、まずはこの予算を成立させることに全力投球するというのが私の責任であると思っております。

    〔委員長退席、北村(直)委員長代理着席〕

岡田委員 今の総理の御答弁を聞くと、一つ前の御答弁と随分落差があるようにも思われるわけで、経済状況の変化があればということですが、もう既に今、テロが起きて時間もたって、経済の全体の見通しということはわかりつつあるわけで、その時期に、今、補正を出して三十兆の枠を守った、そして、従来型の需要不足を追加するようなそういうものはやらないのだと胸を張っておられながら、今の答弁を聞くと、果たしてどちらに真意があるのだろうか、こんな感じがしてならないわけであります。

 私は、もし必要があるのであれば、三十兆の枠を守ってでも今やるべきことはたくさんある、そんなふうに思っております。

 これは、総理御就任のときの予算委員会でも申し上げたことでありますが、今年度予算を聖域化せずに、その組み替えをすることで財源はまだ出せる、まだ公共事業予算も二兆円ぐらい残っている、もちろんかなり進んでいるものもありますが、その中から一部を捻出することで、私は、例えば雇用対策はもっともっと充実できる、そんなふうに思っております。

 そこで、雇用対策の問題について一言お聞きをしたいと思っておりますが、失業率五・三%、恐らくこれは、ここでとどまるものではなくて、さらに失業率は高まっていくということは明らかだと思いますが、そういう中でどうしても雇用対策がおくれている。参議院選挙の前から、我々は、雇用対策を中心にしっかりとした予算を組むべきだということを申し上げてきたわけでありますが、それが十分にできないまま今日まで至っております。

 今回の五千五百億円の雇用対策ということでありますが、我々、それは質、量ともに不十分である、そういうふうに考えております。例えば、これは後ほど同僚の議員から詳しくいろいろな議論があると思いますが、緊急地域雇用特別交付金三千五百億円というのがありますけれども、果たして今まで、同様の交付金の中で雇用は十分にふえてきたのか、こういう問題があります。あるいは、我々が以前から主張しておりますように、雇用保険が切れた方に対する対策、あるいは、そもそも雇用保険の適用がない自営業者で廃業した方に対する対策、そういうものが今回十分手当てされているかというと、私は、それは非常に不十分である、そういうふうに指摘せざるを得ないわけであります。

 我が党はこの国会に、雇用関係、従来からの我が党の主張に基づいて二つの法案を準備しております。そして同時に、先ほどの、予算の組み替えによって約八千億円の雇用対策を提案しているわけでございます。

 総理、今の雇用情勢を見て、今回のこの五千五百億だけで十分だ、そういうふうにお考えなんでしょうか。御意見を聞かせていただきたいと思います。

坂口国務大臣 私からまず具体的なことだけ少し申し上げたいというふうに思いますが、実質的に一兆円、その中で五千五百億ということでございますから、これはまあかなり大きな額でありまして、今までなかなかこれだけの割合を振り向けたことはなかったというふうに思っています。したがいまして、この五千五百億の内容をより効果的に我々は運用しなければならないというふうに思っています。

 先ほど御提示のございました三千五百億円の特別交付金の問題にいたしましても、確かに、今までなかなか十分にその効果を発揮しなかった面もあることを、率直に私たちは認めなければならないというふうに思っています。この点につきましては、今までから、地域においてどういう雇用を創出するかということで、地域に考えていただくということをしてきたわけでございますが、やはりその辺のところをもう少し御相談させていただきながら、より効果的にしていかなければならない。

 また、失業者というものを中心にしてやはりしていかなければ、失業をしていない人がそこに入り込んでくるというようなことになってはいけないわけでございますので、完全失業者の中からその人たちを十分にしていくといったようなこともしていく。

 それからもう一つは、自営業者の皆さん方で廃業なさる方も非常にふえてきていることを私たちも非常に気にしているわけでございまして、この皆さん方に対しましても、今回、融資を受けていただきやすいような体制をつくった、そういうことでございます。

岡田委員 雇用の問題は今回の補正予算の中心テーマでありますから、私は総理にもぜひ御答弁をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 今回は、テロが発生する以前の状況におきましては、雇用対策国会という見方が大方の見るところでございましたけれども、テロ発生後、いろいろな問題が出ておりまして、そういう中でも、今回、雇用対策においては最重点施策として、それぞれの予算を今厚生労働大臣から述べたとおりに打っているわけであります。

 それは、多ければ多いほどいいという状況ではございますが、今までの雇用対策資金というものが有効に使われているのだろうか、あるいは、多くの求人がありながら求職者がその求人企業に行かないという点、情報公開においてもっと行き届いた配慮が必要ではないか、あるいは、雇用保険を受給できない方々に対してどういう対策があるかということをきめ細かに打っておりますので、私は、この効果を今後十分に注視していかなきゃならないと思っております。

    〔北村(直)委員長代理退席、委員長着席〕

岡田委員 職を失うということは、人生において最もつらい経験の一つだろうというふうに思います。

 そういう意味で、今回のこの補正、私は雇用対策は十分ではないと思いますが、今後、来年度予算の編成に当たっても、この雇用の問題に引き続き重点を置いてしっかりとした雇用対策を組んでいただきたい、そういうふうに思いますが、総理のお考え、決意を聞かせていただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 職を持たないという苦しさ、これは大変なものだと思います。

 そういう点におきまして、この改革が成功するかどうかというものは、雇用対策、失業対策をどう有効に機能させるか。また、多くの国民が新しい産業に対してどのように希望を持って立ち向かうことができるかということを考えましても、雇用対策というのは、改革を成功させるかどうかの大きなかぎであるということを認識しております。

岡田委員 今回のこの補正のもとになった改革先行プログラム、この中に、ある意味では政府の基本的な財政に対する考え方が述べられていると私は思います。

 この中に具体的に書いてある、先ほどの総理の答弁にも共通するものがあるわけですが、現在不況であるということを述べた上で、「しかし、この状況に、単なる公共投資等による従来型の需要追加策によって対応し、日本経済にとって必要とされる構造問題の解決を先送りにしてはならない。」こういうふうに述べております。

 今後、来年度予算の編成に当たっても、基本的にこの考えを踏襲し、景気対策の名のもとに野方図な公共事業あるいは需要追加策を行っていかない、そのことについて、もう一度総理の決意をお述べいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 私は最近疑問に思っているのは、私の経済財政政策あるいは構造改革路線に対して厳しい批判を加えている積極財政論者の議論を聞きますと、今私が進めている構造改革を全然言っていないんですよ。国債をふやせば景気が回復する、規制緩和をしろ、規制改革をしろ、細かく見ますと全部やっているのです。積極財政論者が言わなかった構造改革に初めて手をつけているんですよ。

 私は、経済成長がプラスになろうが、あるいは低成長、マイナスになろうが、今私が進めている構造改革路線というのはどうしても進めていかなきゃならない、そういう覚悟でやっていることを御理解いただきたいと思います。

岡田委員 それでは、その小泉構造改革について、具体論について幾つかお聞きしたいと思います。

 新聞報道等では、どうも具体策になった途端に、いろいろ与党の中でも、あるいは場合によっては政府の中でも異論が噴出をして、具体的な構造改革が進んでいないのではないか、こういう報道が非常に目立つようになってまいりました。私は、まさしくこの十一月、そして十二月、この二カ月間が正念場、ここで本当に小泉構造改革なるものをきちんと進めていくということになるのか、それとも、結局は従来のように、口では叫べど実態は進まないということになってしまうのか、非常に大事な二カ月だというふうに思っております。

 そういう問題意識の中で、まず高速道路の整備の問題についてお聞きをしたいというふうに思っております。

 きのうもテレビ番組等でやっておりましたが、この問題を考えるスタートは、私は、やはり本四公団、本四架橋の失敗という事実だというふうに思っております。

 平成十二年度のこの本四公団の収支をホームページで見ますと、とにかく料金収入は八百七十億円、そして金利と管理費合わせて千六百三十億円。つまり、本来であれば、料金収入で少なくとも金利と管理費は賄い、そして一部返済に回す、五十年で全部返済を終わるという前提で組み立てられていたものが、今や料金収入の倍ぐらいのコストになっている。八百七十億円の料金収入に対して、金利と管理費だけで千六百三十億円になっている。民間企業であれば、一億円の売り上げの企業が二億円の赤字を出している、それに近いような状況だと私は思うわけであります。そんなことは民間では全く成り立たない。

 なぜこういう失敗が起きたか、総理、どういうふうにお考えでしょうか。

小泉内閣総理大臣 これは費用対効果を厳しく見直す点に怠りがあったと思いますね。

 そして、道路をつくってくれという声はどこでも多いんですよ。政治家、政党は、選挙になれば、あるいは選挙を経験している方はよくわかると思いますが、道路をつくった方がいいかつくらない方がいいかといえば、みんなつくってほしいんですよ、どこの地域でも。その要求にこたえるのが政治家じゃないかと。候補者になれば、ある地域に行って、ここの道路をつくってくれと。そんな必要ないと言ったら、もう総反発を受けることは目に見えていますよね。できないなんて言うと、できないことをできるのが政治家じゃないかという文句は、必ず有権者は、与野党問わず声が出てきます。それで、やりますやりますと。

 もう、自分たち、税金を負担していないところでも、だれかが負担するんだろうと。税金を投入するということは自分たちの負担と思っていませんから、多くの地域においては。おもしろいことですよ。実際、自分の負担になるんだけれども、国費で負担しろ、税金を投入するということは、地元じゃ負担しないと思っている地域の住民がいっぱいあるわけです。そういう方々を相手にしていかに当選しなきゃならないかというのが、政治家は苦労するわけですよ。希望を持たせなきゃいかぬ。できないできないということじゃなくて、できるんだ、おれがやるんだと言ってみんな当選してきているわけでしょう。それで、みんな、やりますよやりますよと。そして、負担は後へ回しましょう。

 先ほど扇国土大臣がいいこと言ったじゃないですか。オリンピックのとき百円だ、いずれただになります、今、七百円になったと。一つ期間が終わると、もっと必要だとまたやる。そういうところに今行き詰まりが来ているんじゃないかということで、私は見直しが必要だと。そこが構造改革なんですよ。

 今は大転換期だとみんな言いますよ。明治維新、第二次世界大戦後に匹敵する大転換期だ、転換しなきゃならないと言いながら、高速道路計画を見てみなさい、今、私の構造改革に反対している人たちは、今までの計画を継続しなきゃいかぬ、現状維持を守らなきゃいけないと言っています。何のためにそれじゃ転換しようとしたんですか。だから私は、そうじゃない、転換する必要がある、見直しということを言っているんです。

 今、この十一月末には大体の方向が見えてきます。私は、小泉改革ができっこないできっこない、道路公団の民営化なんかできっこないと言った、できっこないところを最初にやるんですよ。時期が、もうじき迫っています。今、まだ言う段階じゃありません。できないという見方に対して、どうなるか、見ていただきたいと思います。

岡田委員 今、道路公団のお話をされましたが、確かに私は道路公団の現状というのはかなり危機的状況にある、こういうふうに思います。

 先ほど本四公団で、これも本四公団の責任というより私は政治の責任だと思いますが、しかし、その本四公団で、料金収入の中でとても利息も管理費も払えないという状況を申し上げましたが、道路公団の路線の中でも十八路線は、料金収入の中で管理費と利息を払って、若干返済もできている。その中には、もう既に償還の終わった東名や名神もある。しかし、残りの十八路線は、同じように料金収入の中で管理費と利息が払えない状況にある。もちろん、その中にはまだ完成途上にある路線も含まれていることも事実でありますが、しかし、このまま放置しておくと道路公団も大変な重荷になる可能性がある。

 これはいろいろな見方がありますけれども、例えばこの構想日本のレポートによると、最大限で四十四兆円の未償還金が発生するおそれがある。四十四兆円の未償還金という意味は、我々の税金を四十四兆円投入しなければならなくなる、こういうことであります。そういう状況にある中で、私は、道路計画の見直しというのは急務だと思うのです。

 今、まず総理がおっしゃった道路公団の民営化という話であります。しかし、私は、民営化の前にやはり議論すべきは、今の整備計画をどうするか、こういう話だと思います。そこのところを議論せずして、つくることはもう政治で決めたからこれは全部つくれ、こういうふうに言って、そして民営化だ、自分の足で歩いていけ、こういう議論は成り立たないだろう。民営化するということは、みずから設備投資について意思決定ができる、少なくとも押しつけられないということがなければ、民営化の意味はないわけであります。そういう意味で、私は、民営化も大事だが、それ以上に、それ以前に整備計画をどうするんだ、やはりこういう問題が重要だというふうに思っています。

 総理はこの整備計画の残る約二千四百キロについて、私は、一たん凍結をして、そんな時間をかける必要はありませんから、凍結した上でしっかり採算を見直す、そして採算の合わないものについては基本的にやらない、こういう考え方で挑むべきだと思いますが、総理のお考えを聞かせていただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 今、いろいろな案が出てきております。最近ようやく、民営化なんかできっこない、あり得ないんだと言っていた人たちも、民営化はやむを得ないという議論に変わってきているのも御存じだと思います。だんだん世の中が変わってきているんですよ。しかし、民営化はさせるけれども今までの計画は全部実施するんだ、形だけ民営化して実体は変わらないという意見も出てきております。私は、いろいろな案を今聞いているところであります。そして、今月末には結論を出しますから、その点について御批判をいただきたいと思います。

 今私が考えているのは、私は、道路整備計画あるいは高速道路運営、道路公団の運営に対して専門家ではありません。独断専行を排するように努力はしますけれども、大筋の方向としていかに税金のむだ遣いをなくすか、こういう観点から、民営化する限りはむだな、あるいは将来多くの国民に負担を課すような道路建設を避けるような形で、必要な道路は一体どこの地域なんだろうか、どういう道路なんだろうか、建設費をできるだけ下げるためにはどういう努力が必要になるんだろうかという観点から、しっかりとした、民営化なら民営化として効率的な道路建設に何がふさわしいかという案を今検討しているところであります。

 そういう面においてもう少し時間がかかりますけれども、そう長くはかかりません。今月末には、私の考えている方向がどういうものになるか、しばらく、御期待と言ってはちょっと失礼でありますけれども、時間をかしていただきたいと思いますが、しっかりとした方針を明示していきたいと思います。

岡田委員 具体的にはよくわからないわけでありますが、今の総理のお考えを私なりに解釈すると、今の整備計画をそのままにした上での民営化というのは、それはないんだ、整備計画の見直しはする、こういうふうにはお聞きをしました。ただ、見直しの中身もいろいろある。それは、コストを下げるとかいろいろなことがあるんだろうと思いますが、私は、今のこの状況は、単に例えばコストを一割二割下げたからといってそれで済む話じゃないというふうに思うわけですね。

 そういう意味で、やはり一たん凍結をして、そしてきちんと、申しわけないが国土交通省じゃなくて、その外のところで専門家が集まって、これは半年か一年あれば採算の見直しなんかできますから、そういう場をつくってしっかり見直しをする、採算性の見直しをする、こういうことが必要だと思いますが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 今は大きな転換期である。転換期であるならば、今までの計画を維持する、継続するということはあり得ないんです。見直すんです。

岡田委員 整備計画の見直しという意味は、それは今の九千三百四十二キロ、これについて見直しをして、そしてつくらないものも出てくる、こういうことですね。

小泉内閣総理大臣 見直します。

岡田委員 一時凍結をするとか、あるいはこの九千三百四十二キロを見直しをした結果中止するものが出てくる、こういう明快な総理の答弁を期待しておったんですが、非常にわかりにくい答弁で残念です。

 私は、総理みずからもおっしゃるように、バブルの時期につくった計画を、民間では、そのときにあった設備投資の結果として今非常に苦しんでいる、バブルの後遺症に悩んでいる企業は多いわけです。しかし、この話はバブルのときにつくった計画をこれからやろうという話ですから、これはとんでもないことだというふうに思うんですね。

 そして、責任はだれがとるかといえば、結局だれもとらない。税金でやっているなら、毎年毎年のことですから、ある意味じゃそのときの納税者が結果的に責任をとるということでありますが、これは借金でやっていくわけですから、先ほど言ったように、二十兆、三十兆あるいは四十兆も税金で後で穴埋めしなければいけないということになったときに、それは我々ではなくて次の世代に対して責任をかぶせていくということになります。

 もう既に現在のこの国の国債の発行状況、国、地方合わせて六百六十兆を超える借金があって、そして今でもその借金をふやし続けている中で、そして高齢化社会を迎える中で、この国にそんな余裕はないと思うのです。だからこそ、これはしっかり総理にやっていただきたい。私は、小泉改革の一番大事なところだと思いますが、もう一度、できるだけ具体的に総理の決意をお述べいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 ようやく、小泉内閣が発足してから半年が経過いたしました。そして、すぐ変えろ、すぐ変えろと。大きな方針は出して、それを具体化する時期に入ってきたわけです。まず、今月末には大きな具体化への一歩が出てくると思います。そして、今言った道路計画につきましても見直しの方向が出てまいりますが、同時に、反対、抵抗、反発も強くなってくると思います。

 私が今まで言ってきたことはほとんど少数意見だったこと、むしろ、変人扱いされて見向きもされなかったことを大きな目標に掲げているわけです。いずれもそうでしょう。具体的に言えば、今言った道路公団の民営化もそうです。住宅金融公庫の廃止もそうです。石油公団の廃止もそうです。あるいは、特殊法人に対する補助金削減を一兆円目標にするということ。すべてできっこないと二、三カ月前には言っていたじゃないですか。ほとんど実現しますよ。

 しかし、半年では実現できません。これから、その目標に向けて今着々と、実施に向けての準備は進んでいる、しかし、今はっきりと言う段階ではないということを御理解いただきたいと思います。

岡田委員 まず、今の小泉総理の御答弁の中で一つ修正をさせていただきたいと思います。だれも民営化を言っていなかったとおっしゃいましたが、民主党は民営化を小泉総理が登場前から言っておりましたので、そのことをまず明確に申し上げておきたいと思います。

 きのう、たまたま、テレビに自民党の古賀道路調査会長が出られていろいろ御発言になっておりました。その中で、整備計画は国民との約束であるということを言われて、だからこれは変えられないんだ、こうおっしゃっておりました。しかし、私はそれはそうじゃないと思うんですね。国民との約束といっても、例えば法律の中に改正の手続だってちゃんとあるわけです。つまり、一たん決めたから、それがすべて約束だからできないということになれば改正の手続なんかあるはずがないわけで、やはりそのときの状況、状況変化がありますから、それを踏まえて変えていくというのは当然のことだと思っております。

 今、総理がかなり力強くおっしゃいましたので、月末を期待して待ちたいと思いますが、その期待が期待外れに終わらないようにしっかり頑張っていただきたいと思いますし、我々ももちろん、政党は違いますし、野党という立場でありますが、ですから、すべて小泉総理の言うことに賛成をするわけではありませんが、しかし、いいものを総理が言われるときには私どもは率先して賛成をしていきたい、そういうふうに思っておりますので、しっかりとした改革案をつくっていただきたい、そのことをお願いしておきたいと思います。

 それでは、次の具体的な項目について移りたいと思いますが、医療制度の改革であります。

 この問題は、私、この前の五月の予算委員会でも申し上げましたが、橋本内閣の時代、小泉厚生大臣の時代に、厚生委員会、予算委員会で随分議論をさせていただきました。私は、この医療の問題というのは、大きくいって二つの視点から考える必要があるというふうに思います。

 一つは、もちろん医療というのは人間の命を預かる、そういう問題でありますから、そこをきちんと踏まえて議論しなければいけないということだと思います。しかし同時に、二番目ですけれども、この医療費の大きさというものをやはり常に頭に置いて考えなきゃいけない。

 今、三十兆円の医療費、国家予算は八十兆ですけれども、国の税収は五十兆ですが、医療費全体で三十兆ある。その三十兆の中で、いろいろな中身がありますけれども、例えば保険料が十七兆、患者負担が五兆、そして税が八兆、こういう内訳になっているわけであります。しかし、名前は違うけれども、実際はそれはすべて国民負担という意味では非常に大きな塊であります。ここをいかに効率的にやっていくかということは、国家財政八十兆をどうやって効率的に運営していくかに並ぶ極めて大事な問題だ、そういう意識でこの問題を考えていかなければいけない、そういうふうに私は思っております。

 さて、今回の改革に当たって、前回の改革のときの総理の言葉を思い出します。つまり、私が言ったのは、負担増を先行させるべきじゃない、負担増と構造改革をセットでやるべきだ、こういうふうに申し上げたところ、総理は、それはわかるけれども、しかし、この程度の負担、この程度の負担というのはサラリーマンの負担が一割から二割に上がったことを主として指されたと思いますが、この程度の負担はどんな改革をやっても避けられないんだからこれを認めてほしい、しかし二〇〇〇年までにはしっかりとした構造改革をやるからということをおっしゃったわけであります。それは、結局できなかった。

 前回の五月の予算委員会で私が、なぜできなかったか、こう聞いたら、総理は、努力が足らなかったと反省している、せっかく総理大臣になったんだからその実現に向かって努力したい、協力もお願いしたい、こういうふうに言われました。我々も、いいものであれば協力する用意は十分あります。問題は、いいものかどうか、そして改革ができるかどうかということでございます。

 これも年末までには決めなければいけないことでありますけれども、まず、この医療制度の構造改革について総理の決意をお伺いしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 これは四年前ですか、私が厚生大臣のときに岡田さんと議論したとき以来の懸案でございます。

 今回の医療制度改革、いわゆる世界的水準を考えてもすぐれたものである医療保険制度というものを維持発展させていかなきゃならない、効率的に運営していかなきゃならないという視点から、どのような改革がふさわしいかということで今まで議論を重ねてきたわけであります。

 そういう中にあって、私は、ある面においては特殊法人改革以上に難しい、しかし国民生活にも大きく影響ある問題でもあると認識しております。しかし、高齢少子社会、しかも年々年々財政状況が悪化する中で、限られた費用の中でどのようないい医療、診療を受けられるかということを考えますと、もう避けては通れない、先送りは許されない状況だということは十分理解しているつもりであります。

 そういう中で、よく私が言っているのは、三方一両損、診療側にも支払い側にも患者側にもある程度、今までの状況では済まされないんだから、痛みを伴うようなことは覚悟してほしいということは、これは国民にとって全体にプラスになる医療保険制度を維持していきたいがためなんです。このまま放置していきますと、医療保険制度が崩壊してしまう。病気にならないで保険料を負担している人が、こんなに保険料を負担するんだったら病気になった方が得だと思われるんだったら、医療保険制度は破綻しちゃいますから。

 そういう面においては、三方一両損ということは、国民にとっては、長い目で見ればプラスになる改革をしたいということで言っているわけでありますので、私は、患者側の負担だけでなく、いわゆる診療側にも支払い側にも、そして今の制度を維持させていこうという方々の理解を得て、しっかりした医療制度改革の案を示すことができるように、今鋭意、厚生労働大臣初め各閣僚と協議をしていることでございますので、この結論も近い将来出さなきゃなりません。懸命に努力をしていきたいと思います。

岡田委員 総理はよく三方一両損という言葉を使われるわけですけれども、私は、前回の改革から今日に至るまで、それがそうじゃないから問題があるんだというふうに思うんですね。具体的には、医療提供者側、もう少しわかりやすく言うと日本医師会の負担というものが一体どれだけあったんだろうかということであります。

 前回の改革以来、いろいろな政府サイドでつくった改革案というものが次々にもとに戻ったり先送りをされてきた、そういう歴史があることは総理も御存じのとおりであります。

 例えば薬価制度の改革案について、これは総理が厚生大臣のときにも随分議論いたしましたが、結局これは白紙還元されました。あるいは老人の薬剤費の別途負担、これもそのときに決めた話でありますが、結局廃止をされてしまいました。広告規制の緩和も最低限しか認められなかった。あるいはカルテの開示の法制化も、厚生省の中で提言をされましたけれども、これも法制化は見送られました。そういう歴史を見ているだけに、本当に三方一両損なのかという疑問が残るわけであります。

 日本医師会というのは、私は、個々のお医者さんには随分患者の健康を考えて立派にやっておられる、そういう医師も多いんだと思いますけれども、日本医師会という一つの固まりになったときに、どうしても、政治力が強くて、主としてこれは自民党に対していろいろな圧力をかけてそういう改革案を葬り去ってきた、こういう歴史があると思うのです。この点について、総理は基本的にどういうふうに認識しておられるのか、お聞きしたいと思います。

坂口国務大臣 今岡田議員がいろいろお出しをいただきました内容につきまして、一つ一つ今検討を重ねているところでございます。

 先ほど総理からもお話がございましたとおり、十一月末あるいは十二月の頭になるかもしれませんが、とにかく十一月末には結論を出さなければならないというふうに思っているわけでございまして、清水の舞台から飛びおりるつもりでやらなければならないというふうに思っているわけでございます。

 その中の個々の内容、今幾つかお挙げになりましたようなことにつきましても、一つ一つこれは決着をしていかなければならない問題でございますので、今それをやらせていただいているところでございます。

 御承知のとおり、この医療改革につきましてはいろいろの御意見があるということも事実でございまして、多くの皆さん方の御意見を伺いながら、今最終結論に向かわせていただいているところでございますので、いましばらくの御猶予をちょうだいしたいと存じます。

岡田委員 私が聞いたのは、個々の具体的中身を聞いたのではなくて、過去のそういった、次々に改革が先送りをされてきた、そういう中でやはり医師会の存在は大きかったんじゃないか、そこのところをどう考えているのかということをお聞きしたわけですが、総理、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 医師会としては、それぞれのあるべき医療の姿を提言しております。主張も展開しております。そういう面を聞きながらも、全体からかんがみて、そういう主張が果たして国民から支持を得れるものだろうか、合理的なものだろうかということをよく吟味する必要がある。

 過去、今岡田議員が言われたような批判されるべき点もあったと思います。また、医師会初め多くのお医者さんの方は非常に努力をされていますし、ある面においては採算を考えずに、患者さんを治すために献身的な努力をされているお医者さんもたくさんおられるわけであります。あるいは、時間も考えずにいろいろ、自分の生活を犠牲にしながら医療活動に従事しているお医者さんもたくさんおられるわけであります。

 そういう点を考えながらも、医療全体を見て、果たして医師会の主張が妥当なものであるかということについて、今までの一方からの批判も十分受けとめて、できるだけ多くの国民が理解を得れるような案を今後提示するように、今までの御批判を踏まえて検討していきたいと思います。

岡田委員 今、総理は客観的におっしゃられたのですが、実際は、日本医師会と自民党の間でそういう改革つぶしをやってきたというのが歴史であるということは、はっきり申し上げておかなければいけないと思います。

 私は、医師会の話が出ましたから、もう一つ医師会について申し上げたいと思いますが、日本医師会というのは、国から補助金を得ている団体であります。国から補助金を得ている団体は、もちろん政治献金はできません。だからということでしょう、政治連盟をおつくりになっているということであります。しかし、その政治連盟が医師会と表裏一体の関係にあったとすれば、それは単なる脱法行為だということであります。

 そういう意味で、厚生省の方もいろいろ通知を出されたりして改善には努力されているようでありますけれども、しかし、今まだ、実態を見ると、政治連盟と医師会の事務所が共通であるとか、あるいは人事が完全にダブっているとか、そういう問題はあちこちに、日本医師会だけじゃなくて地方も含めてあるわけであります。

 私は、そういうことを早くきちんと是正するということは、これはいわば法律違反の状態が起こっているに等しいことでありますから、絶対必要なことだと思いますし、そして何より大事なことは、今回、国立大学の先生方が政治連盟に入って、税金で政治献金を事実上していたということが随分問題になりましたが、そういうことが起こるのも、医師会の会費と政治連盟のお金が一緒くたになっていて、そして知らないうちに徴収されているという事実もあるんじゃないかと思うんですね。だからそこは、医師会に加盟することと政治連盟に入ることは別のことですから、ここはきちんと手続を分けて、それぞれ意思確認をしてやっていくということは最低限必要なことだと思いますが、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 公益法人であります日本医師会と日本医師連盟というものが一体であると誤解を与えるような行為は、決して好ましくないというふうに考えております。

 両者の会員は明確に区別をされること、事務所についても適正な賃貸料が支払われること、そして、医師会に対する医師連盟への加入の強制や加入しないことへの不利益な取り扱いがないこと、これらのことが大事なことだというふうに思っている次第でございます。そうした点を中心にしまして、今やっているところでございます。

 よろしくお願いします。

岡田委員 これは、やっているのも結構なんですが、しっかり指導していただきたい、そういうふうに申し上げておきたいと思います。

 それじゃ、医療の、今、少しいろいろ先送りになった話をいたしましたが、医療の効率化ということが非常に大事だと。全体の三十兆の医療費をいかに質は落とさずに効率化して圧縮していくかということがなければ、結局は、それはいろいろな議論はありますが、何らかの形での国民負担になることは間違いない。それが税なのか、保険料なのか、あるいは個人負担なのか。だから、名前は違いますが、結局は、財布は一つですから、全部国民負担になるわけであります。それを負担をふやさないというためには、やはり全体の額をいかに合理化、圧縮していくか、こういうことであると思います。

 そういう意味で考えると、例えば一つは診療報酬明細書、レセプトの問題があります。

 今は、特殊法人である支払基金に必ず経由するということになっておりまして、御存じのように、一枚当たり百十八円の手数料を取っているということであります。しかし、今民間業者が、その支払基金は前提にしてでありますが、再チェックをしている。その費用というのは大体十円から三十五円ぐらいだと。ここはやはり基金が独占していることによって、一枚百十八円という、そういうことが起きているんだと思います。たかが百十八円と言われるかもしれませんが、トータルの枚数は十億枚であります。ですから、それだけで一千億以上の税金あるいは保険料がかかっている、こういうことであります。

 この基金の独占を崩して、そして民間の業者にもそのチェックができるようにする、大きくはそういう方向にあると思いますが、私は、ここ一年ぐらいの間に完全に自由化すべきだ、順次やるんじゃなくて、厚生労働省は順次やるとおっしゃっているが、しかし、これは一挙に自由化して、後はもうまさしく健保組合の判断に任せるべきだ、そういうふうに思いますが、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 レセプト審査の自由化の問題だというふうに思いますが、保険者の自主的な事業運営や規制緩和を推進していくことは、医療保険制度の運営の効率化を高めていく上で非常に大事なことだというふうに私も思っております。

 改革先行プログラムにおきましては、保険者みずからが審査支払いを行うことを可能とすることにより、今年度中にレセプト審査への民間参入を拡大することが盛り込まれたわけでございます。厚生労働省といたしましても、医療制度改革試案の中におきまして、本年度中にこの保険者みずからによる直接審査及びその民間委託を可能にするということを盛り込んだところでございます。

 これを一年というのは、なかなかこれはいろいろの問題が生ずることでございますから、鋭意その方針を貫いていきたいと思っております。

岡田委員 全部強制的に自由化しろと言っているんじゃないんですね。自由化することで、後は自由な選択に任せるべきだというふうに言っているわけです。これは順次自由化なんと言っているとまた十年仕事になるんじゃないか、そういうふうに思いますので、これはぜひ総理もお考えいただきたいと思います。

 もう一つは、このレセプトを今紙でやっている、一部フロッピーディスクが認められるようになったというちょっと信じがたい状況にありますが、これはオンラインであれば随分効率化するわけですね。そういうことに対して、私は診療報酬上のメリットを与えるべきだと。そうすれば、これは一挙に進みます。オンラインで集めれば、統計的な処理も可能になりますから、いろいろな問題病院なども、これは統計的な分析をする中で出てくる、チェックができる。一枚一枚の紙じゃ、そんなこととてもできません。そういう意味で、これは思い切ってそういうことも進めていただきたい、そういうふうに思います。

 いずれにしても、この効率化のためのいろいろな具体策が言われていますが、期限がはっきりしていないんですね。結局、ゆっくりゆっくりやっている間にあるいは内閣もかわっちゃうかもしれない、こういうことでありますので、これはそれぞれの問題について、やや具体的な細かい話になりますが、ぜひ総理、おしりを切って、そしてしっかりやる、そういう姿勢で挑んでいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 どの業界も、やはり競争というのは自分のところに対しては嫌がるんですね。新規参入も嫌がるんです。医師会も例外じゃない。しかし、競争を通じて合理化していこうという努力は、どの産業にも結果的に出ているんです。

 そういうことから、何としても現状維持したい、既得権を守りたいというところにメスを入れるのが構造改革ですから、今言われたような御指摘もどんどんしていただきまして、いいものはできるだけ早く改善していくということが必要ではないかと思います。

岡田委員 ある意味じゃ、医療の世界というのは、すべて診療報酬という形で点数がつけられていますから、社会主義みたいなものなんですね。全部政府が値段を決める。そういう中にかなり大きな合理化の余地というのは私はあると思いますので、その点しっかり、全体の額を減らすことが国民の負担減につながるんだという視点でやっていただきたいと思います。

 もう一つ大事なことをお聞きしたいと思いますが、その三方一両損の中で、来年度の診療報酬の改定の問題ですが、これをどういうふうにお考えか。一両損というからには、まあマイナスにはされるんだろう、こういうふうに思います。

 私は、この診療報酬、これも政治的にいろいろ動きがあって、通常であればやはり賃金や物価の上昇に応じて考えられるべきところですが、前回の平成十年度の改定についてはかなりおかしな動きがあった、政治的な加算があったというふうに言わざるを得ないわけです。賃金も物価も下がっておる中で、なぜ、例えば医科の診療報酬が二ポイント、二%も上がったのかというのは、これは誰にも説明できない。

 そういうことを考えると、そういうことも織り込んでかなりのマイナス幅にするということが私は三方一両損だと思いますが、ここは総理の御見解をお聞きしておきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 これは、毎年毎年この診療報酬の問題でもめにもめるんですよ。いかに難しいか。一万点以上にわたる細々とした技術的な問題、これを何とか合理的なものにできないか、もっと簡素化できないか、あるいは技術料を正当に評価できないかという問題も含めまして、今の状況から診療報酬を上げるような状況ではないと。

 この問題については、私も、今の議員の指摘を十分勘案しながら、今までのような状況にないということも医師会に十分御理解をいただきたいと思っております。

岡田委員 この点も小泉構造改革の重要なポイントだと思いますから、ぜひしっかりやっていただきたいと思います。

 最後に一言、政治改革の問題についてお聞きしたいと思いますが、選挙制度を変えるという与党の間の話し合いについては先般一とんざしたということでありますが、その中で、与党三党、小泉総裁も入って、選挙制度改革等に対する合意というのがあります。その中に、今後一年以内にいろいろな改革について、与党のおっしゃる改革でありますが、一年以内に成案を得て一体処理するということが書かれています。しかし、十二月末には、現在の選挙区画定審議会の答申といいますか、勧告が出るわけであります。

 そうすると、その勧告というのは、総理は一年間塩漬けにされる、こういうことなんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 私は、勧告が出れば、そういう具体的な勧告をどう判断するかというものも含めて協議していきたい。そして、この選挙制度改革というのは、各党の議席の消長に大きく影響してくるものでありますので、できるだけ多くの政党の御理解を得る努力をしなきゃいかぬ。特に野党第一党、これは常に政権を交代する、あるいは政権を担当する準備を進めている政党ですから、そういう政党の意見というものも十分聞かなきゃならないし、そして理解も得れるような努力をしなきゃならないという点から、私は、いろいろな意見を十分考えながら、議論を十分していただいて、いい結論を出すようにしたいと思います。

岡田委員 この問題を議論するのは、本来、国会であります。前回の政治改革の議論は、平成五年、第百二十八国会で百二十一時間議論をいたしまして、最終的には当時の細川総理と河野自民党総裁の間で合意をし、そして次の国会で圧倒的多数を得て、つまり、五百十一名中、共産党の十五名以外の賛成を得て成立したという経緯があります。やはり選挙制度というのはそれだけの重みがあるものだ、したがって、これは与党だけで議論する話ではないということを申し上げておきたいと思います。

 そして最後に、この勧告が出たときに、これは国会に報告をする義務が総理に発生いたしますので、その報告はぜひ速やかにやっていただきたい、法律で定められた手続でありますので、お願い申し上げておきたいと思います。

 終わります。

野呂田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

野呂田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。

 この際、原口一博君から関連質疑の申し出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。原口一博君。

原口委員 民主党の原口一博でございます。

 きょうは雇用問題を中心に、経済、そして総理の構造改革について基本的な姿勢をただしてまいりたいというふうに思います。

 その前に、たった今入ったニュースで、扇国土交通相にお聞きしたいと思うんですが、航空業界の再編のニュースが流れています。やはりこのテロをめぐって、大変大きなニュースだと思いますので、一言、どういうふうな状況になっているのか、お答えいただきたいと思います。

扇国務大臣 けさでございますけれども、全く私どもも存じ上げませんでしたけれども、日本航空とJASが合併するという話でございまして、先ほどお昼休みに、きょう午後三時ごろ両社の社長が私のところへ来るとおっしゃいましたけれども、委員会出席中でございますので、要領だけを聞きましたら、来年の秋をめどに両社が合併するという話でございます。

 これは、午前中からも総理がおっしゃっていますように、九月十一日のアメリカの同時多発テロ以来、航空業界のみならず、あらゆる業界で苦戦が続いていることは事実でございまして、その意味では、この両社の合併というものがどのような行く末をしていくのか見守っていきたいとは思っておりますけれども、両社が合併しますと、大まかに言いまして、国内では航空の数量の五〇%、国際線では約八〇%弱、平均しますと七〇%弱の国内航空、いわゆる日本の航空業界の約七〇%を占める巨大企業ができ上がるわけでございますから、この両社の合併とともに、今もなお日本の航空業界で苦しい中にも頑張っているところがございますので、果たして国民の皆さんに料金制度等々で、巨大なものができてこの競争原理が働くかどうか、私は大きな観点だと思いますので、これを見守っていきたいと思っていますので、今、午後、両社が御説明に来られるという事態になっているのを御報告申し上げます。

原口委員 ありがとうございます。大変大きな改革の波の中で、しっかりと国民の足、そして空の安全が守られるように格段の御配慮を要請して、質問に入りたいと思います。

 総理、きょうの質問をするときに、いろいろな人たちからいろいろなことを言われました。ちょっと読んでみます。二つ立場があります。

 小泉内閣に対する民主党の立場についてということで、小泉内閣ではできないということをあげつらっても何にも生まれないじゃないか、国民の窮状を救うために今なすべきことをなせるように協力すべきだ。小泉総理は率直な言葉で国民に語りかけた、それにこたえ国民は顔を上げている、改革のチャンスだ、これを逃したら深刻な政治不信に陥る。官僚シンジケートを解体するという改革の方向性は間違っていない。参議院選挙で小泉総理は大勝したが、内閣を支える声は党の中から上がらない、表立っての反対もないが積極的な賛成もない、このままでは改革は立ち消えるだけだ、自民党にかわって民主党が小泉総理を支えるべきだ。小泉さんには国民とともに歩むダイナミズムがある、このダイナミズムをなぜ民主党は利用しないのか、党利党略を離れて積極的に応援すべきだ。できるかできないかを問うよりも、その意図する方向を問うてほしい、タブーに挑戦して方向性を指し示すリーダーがあらわれたのだから、それを実地に移すことを国民のために実践するために民主党の特に若手議員が協力してほしい。しがらみにとらわれない姿勢をもっと評価すべきだ、民主党と方向が一致しているし、総理も秋波を送ってくれているではないか。国民の支持率を大切にしてほしい。

 これが大体総理の、支持すべきだという方の意見です。

 これだけじゃないんです、これだけで終わればいいけれども。今度は、逆の意見も相当寄せられています。片っ方だけ紹介すると不公平なんで、こっちも紹介しておきます。

 小泉内閣の矛盾をえぐり出し、倒閣を強く民主党に求める。痛みを国民にだけ押しつける小泉内閣の化けの皮をはがしてほしい。口先だけで実行が伴わない。ほら吹き男爵だ。言っていることとやっていることが真反対だ、アフガニスタン難民支援といいながら、日本国内に助けを求めに来た人たちには人権無視、難民条約違反の扱いをしているじゃないか。言っていることは信用できない、特殊法人改革といいながら、閣僚たちの関係する地元などはちゃっかり聖域を設けているじゃないか。先送りの体質は変わらない。情報公開への姿勢が信用できない、外務省改革を言っているが不祥事の報告を一枚も上げてこない。痛みを伴うといいながら、全くその実態がわかっていない。何も成果を上げていない。総理は派閥を批判して自民党総裁選挙に当選したが、その最中にしっかりと自分の派閥のパーティーを開いている。

 本当ですか。

 特殊法人は来年度予算に満額要求していると言われている、言っていることと真反対だ。相変わらず業界選挙、補助金の垂れ流し体質は変わっていない。小泉内閣はまるで花火のようだ、夜空に見ている分はきれいだが、打ち上げるだけで中身がない、自分だけは輝いているだろうが、周りは真っ暗だ、もうそろそろ見飽きた、現実を国民は直視して業績評価で内閣を判断してほしい。小泉総理のポスターも見飽きた、本人はスマートだが、あのポスターのとおり周りは真っ黒だし、国民は真っ暗だ。安心あって改革なし、米国追随の競争至上主義で日本は沈没する。

 いろいろな意見があるわけです。

 私は、こういう総論で言っていても何も事は進まない、先ほど総理がお話しになったように、つらいこと、悲しいこと、日本が暗いこと、こういうことを言うよりも、むしろ前向きに何を進めるかということで、協力できることがあれば協力したい、このように思います。しかし、そうであるんだったら、総理、ぜひ総理も協力をしていただきたいと思うんです。

 きょう、私は自分のホームページに、きょう質問する内容を全部挙げています。そして、その中に、小泉内閣の採点表というのを国民にわかりやすくわかっていただくように、ハラグチ・ドット・コムという中で出させていただいているんです。

 総理にまず御決意を伺いたいんですが、人に協力を頼むからには、私たちにも協力をしていただけるんじゃないか、そのように思うんですが、基本的な御認識を伺いたいと思います。

小泉内閣総理大臣 総理になりますと、いろいろな批判を受けるのは当然だと思います。一〇〇%賛成、反対というのは、民主主義の体制のもとではありませんから、賛成があれば反対もあるということは、どの政党、政治家にとっても言えると思います。

 そういう内閣にあって、私が実績を評価をいただくのは選挙だと思いますから、いずれ、何年か後に選挙で審判を受けたいと思っております。

原口委員 選挙で審判を受けるというのは、それはそのとおりです。僕らも選挙で審判を受けます。

 私がお伺いしたのは、総理が私たちにも協力をしてほしいと。私は、具体的に三つのことを協力してほしいと思っているんです。

 一つは、今でも、多額の予算を使わずにも、運用体制、執行体制を変えるだけでやれることはいっぱいあるんです。しかし、いろいろなもととなる情報をお願いしても、出てこないじゃないですか。後で具体的に言います。しっかり判断できる情報を内閣として出してください。

 私は、国民の皆さん、今、塗炭の苦しみを味わっていらっしゃる、そういう中で、次の年が越せるか、そういう思いでごらんになっている方もいらっしゃると思います。これほどの財政出動をし、これほど勤勉な国がなぜよくならないのか。私は、三つ理由があると思っています。

 一つは、総理が掲げていらっしゃるような特殊法人の改革に象徴されるような官僚シンジケートがある、利権社会主義がある。ここを埋めないことには、幾ら何かやろうと思っても、全部そこにエネルギーが吸収されてしまうんじゃないか。私たち民主党も、ここは解体させたいと思っています。

 GDPが五百兆の国で三百十兆も政府歳出がある国というのは、一体どういう国でしょうか。その中にいる人たちはいいかもわからないけれども、外にいる人たちは自由がなくて困っている、このことをまず御協力いただきたい。

 二つ目は、不良債権の最終処理です。柳澤大臣とも何回もお話をしましたけれども、先延ばしをするということは、罪を問うべき人が罪を問われずに、責任をとらないでいい国民がその責任を負うということであります。

 三番目は、規制改革であります。自由の部分を広げるためには、安心のセーフティーネットをつくりながらも、積極的な規制改革をしなければいけない。

 この三つのことをぜひ総理に御協力をいただきたい、そして積極的に情報開示をお願いしたい、このように思うのですが、御決意を再度伺います。

小泉内閣総理大臣 今指摘された基本的な方向というものは、いいものはどんどん小泉内閣としても取り入れていきたいと思います。また、与党だからといって、政府だからといって、出してきた案に対しましては、野党である民主党にも御協力をいただけるものは御協力いただきたいと思っております。

原口委員 そういう前提の中で、幾つか具体的なことについてお尋ねをします。

 まず、COP7についてでございます。

 先ほど批准の決意なるものをお示しになったと思うのですが、私は、小泉内閣、ぜひ世界に先駆けて率先批准の手続をとるべきだ、このように思うのですが、再度お尋ねを申し上げます。

小泉内閣総理大臣 批准に向けての準備を進めていくつもりでございます。

原口委員 EUは、六月までに所定の手続をして、そして次のサミットに批准ができるように、期限を決めてもう言っているんです。

 私たちはこの議長国、このCOP7の合意に至るまでの経過を見ていると、まさに不死鳥のような、一たんは本当に合意ができないかと思った、それがよみがえってくる感動のプロセスでありました。しかし、その中で日本がやってきたことというのは、一体どういうことでしょうか。

 私たちが現地から刻々と入る情報を見るだけで、日本は何にこだわっていたんですか。日本は議長国でございました、京都議定書のそのときに。しかし、その後に、今回のCOP7で日本が重箱の隅をつつくようなことを言って、そしてそれを壊しかけた。このことに大きな批判が集まったのではないでしょうか。一体何をそこでこだわっていたんでしょうか。環境大臣にお伺いする前に、総理、私たちは何をここで留意しなければいけなかったんですか、お尋ねをいたしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 後ほど環境大臣からお答えいただきますが、それは一方的な見方じゃないでしょうか。どのような意見が出ても、一〇〇%賛成する人はいません。一部の反対を見て、何をやっているのかという批判をするのは自由ですけれども、多くの国は日本の態度を評価しております。川口環境大臣初め日本の立場と、温暖化の防止策にどういう策が有効か、必死に努力したということは、大方の方が高く評価していると思います。一部に批判があるのは承知しています。一部だけを見て、全体を見ないというのはおかしいと思います。

川口国務大臣 今回の交渉におきまして日本の代表団が大事だと考えておりましたことは、環境十全性、この京都議定書の実効性が確保されるということでございました。この京都議定書の実効性が確保されるということは、京都議定書に定められているさまざまな仕組みが、産業界あるいは国民の方々の創意工夫が生かされる形で使われることが可能になるような、制約のない形であるということでございまして、これがおおむね確保できたのではないかというふうに考えております。

原口委員 何にこだわったのかと伺っているんです。

 外務大臣は普通の言葉でお話ができる方だから、今のような答弁にはならないと思うんです。

 京都議定書の目標が達成できなかった場合にペナルティーがあるのは当然です。政府の言う法的拘束力のない遵守規定とは、京都議定書の目標を達成しなくてもペナルティーが科せられない、そういうことですか。そうでないんだったら、一体、こういうことにこだわったわけは何なのか。これは、条約や議定書を所管する外務省が特に強く主張したことだというふうに言われています。環境大臣は主張していないと思うんです。外務大臣、外務省は何をこだわったんですか。

田中国務大臣 内閣の方針は一つでございまして、午前中総理がおっしゃいましたように、二〇〇二年の発効に向けて産業界も国民も努力をして、省エネの努力もしていくということは基本でございますし、批准に向けて努力をするということを今総理がはっきりおっしゃいましたので、それが基本でございます。過去の会話は、外務省が、あるいは環境庁が、その他がどのような経緯であったかということよりも、今現在総理がおっしゃったことの方の重みが大きいと思います。

 ただし、一言だけ申し上げますと、今回、閣僚になる前に、原口先生も入っていらしたかどうかわかりませんが、自民党の有志と民主党の先生方と一緒に、この京都議定書を一日も早く批准してほしいというアピールをワシントン・ポストに出しましたので、あの段階での私の気持ちはあそこにあらわれておりますが、今は、小泉総理が責任のある立場でおっしゃっておられますので、閣内は一緒で行動いたしております。

原口委員 国民の皆さんはもうこの十五分だけの質問とやりとりでおわかりだったと思うんですよ。会話が成立しないんですよ。

 外務大臣がワシントン・ポストに出された、私たちと一緒に。それを、まさにそういうものを踏みにじるような行動も伝えられているから聞いているんであって、私はそれはそうじゃないという答えがあればそれでいいんですよ。何も一部を見て全体を批判しているわけじゃない。今回の合意に向けて大変な御努力をいただいた。環境大臣、私は大変評価しています。しかし、その過程の中で伝わることについては、ただしておかなければいけないことがあるから聞いているわけです。ちゃんとお答えください。

川口国務大臣 一例を挙げまして、先ほど委員が遵守と参加資格のことをおっしゃられましたので、それについて御説明をさせていただきたいと思いますけれども、遵守というのは、例えば日本の場合は六%の削減目標を守れなかった場合にどういうことをするかということでございまして、その場合には、既に、例えば日本が今後守るときにどうやっていったらいいかというアクションプランを出すというようなことが決まっておりますし、それから、次の約束、第二の約束年次、約束期間におきまして一・三倍の削減量を科されるということが法的拘束性のない形で現在決まっているわけでございまして、不遵守に対してはそういう決まりがあるということでございます。

 私どもがこだわりましたのは、その不遵守との関係で京都メカニズムを使うことができなくなるということはおかしいのではないだろうか。不遵守について、その結果として起こることは、先ほど申しましたような、今後どういうことで守るようにします、あるいはその一・三倍削減しますということで十分に、遵守、不遵守に対しての結果といいますか、何をしなきゃいけないということは決まっているわけでございまして、京都メカニズムへの参加をそこでとめるというのは全く別な話でございまして、ダブルにペナルティーを科される意味はないであろうと。

 京都メカニズムというのは、京都議定書によりまして参加国が削減目標を達成することが可能となるように決まっている制度でございまして、これを活用するということは非常に重要なことでございますし、企業の創意を生かした形で、例えばクリーン開発メカニズムで発展途上国に行って削減をするといったような意味で、環境のためにいい制度でございますので、それは使われるべきであろうというのが私どもの立場でございました。

原口委員 COP6で合意したことをリオープンするという、そういうチャレンジがあったり、いろいろなことがあったように聞いています。しかし、これ以上ここで追及することはとどめておきます。あとは環境委員会かそういったところで今の点、詰めていきたい、そのように思います。

 二点目にお尋ねをしたいのは、予算に対する基本的な総理の姿勢であります。

 委員長、お許しをいただいて資料を配らせていただいておりますが、パネルを使わせていただいてよろしいですか。

野呂田委員長 はい、どうぞ。

原口委員 午前中の質疑の中で、新たな財政出動を柔軟に対応すべきだというお話がございました。私は、岡田政調会長が申しましたように、三十兆の枠を今回お守りになったということは、民主党としても約束を守ってもらったと率直に評価をしたいというふうに思っています。

 お手元の資料は、「財政赤字と個人消費」。

 私たちは、何といってもこの厳しい雇用環境を改善するためには個人消費が伸びてこなければいけない、個人消費を伸ばすためにはどうすればいいか、これをこの国会で一生懸命議論しているわけです。

 お手元の、縦軸が個人消費、そして横軸がプライマリー赤字であります。これを見ると、各国がどういう財政のスタンスをとってきたか、そして、それに伴って個人消費はどのようになったかということが如実に示されています。

 なるほど、プライマリー赤字を一時的に拡大して、そして財政を出動すれば個人消費は上がります。しかし、問題はそこから先です。この線がおりているのと同じように、財政赤字が余りにも、プライマリー赤字が拡大すると、逆に個人消費は落ちている。

 プライマリー赤字を削減すると、ある一定限度までは非常に厳しい個人消費に対してのインパクトがあるが、デンマークやあるいはギリシャといったところでございますように、個人消費がそれと同じような反比例の数字を出していない。このことをやはり私たちは押さえなければいけないというふうに思っています。

 もう一つ資料を差し上げます。

 これは「財政収支改善による債務残高対GDP比の推移」、皆さんのお手元の資料の三枚目でございます。このまま三十兆の枠を守って、そして財政再建をやっていくとしても、さまざまな経済成長率、その中でどのような債務残高になるだろうかということを試算したものでございます。

 これだけ見てもびっくりいたします。GDPの成長率がこの赤の線、〇・五のときには、実に二〇一七年でGDPの一八七%もの財政赤字が予定をされてしまう。

 これは、国債の市場についても深刻な影響を与えます。毎年借換債を出していますが、借換債一つとってみても、平成二十年で百三十三兆もの借換債を市場が引き受けることになります。百三十三兆もの借換債を、ではだれが買うんですか。

 私たちは、これまで、九〇年代、景気が悪くなるといえば財政を出して、そして少しよくなれば財政を締めるというストップ・アンド・ゴーをやってきました。しかし、もう限界まで来ているんです。限界まで来ているから、私たちが国民の生活を守るためにやるべきことを、何かということをしっかりと国民の皆さんの目の前で言っていかなければいけない。

 また同じようなことを、九〇年代と同じようなことをやるのか。それとも、今二つの資料をお見せしたように、もうこれ以上やれないから、先ほど総理の御発言では、今は三十兆を守るが、年が明けたら、いや、もう経済がまた変わったからやるしかないんですよということをこの予算委員会でまた、一カ月、二カ月後にはおっしゃる、そんなことはないんだろうか、あり得ないのか、そのことをただしておかなければいけない。

 もし二カ月後に例えば第二次補正予算をなさるとするんだったら、これだったら、前の内閣、その前の内閣でやられた十五カ月予算を組んで、そして国民の皆さんに、財政は目いっぱいやりますから安心してくださいと言っておいた方がはるかにいいんですよ。

 どちらのスタンスをとられるのか、総理にお尋ねを申し上げたいと思います。

小泉内閣総理大臣 それは、危機的な事態にどう対処するかということに対しては、私は、大胆に柔軟に考えますよと就任以来、原則は原則として、財政規律を保たなきゃいかぬ、安易な国債増発に頼ってはいかぬ、この方針は堅持する、しかし、経済は生き物だ、危機的な状況に対しては、国民の不安をなくすためには大胆かつ柔軟に考えるということの方針には、一貫して就任以来変わっていないわけであります。

原口委員 具体的なことを言わない方が支持率は上がるそうなんですよ、先ほどここにいらした久間先生から御指導いただいて。具体的な政策を言うと、それこそAという人にもBという人にも相反することを言わなければいけない。だから、今おっしゃるように漠としたことを言っていた方がいいわけですけれども、それじゃ議論にならない。一体どうなさるのか。

 では、お尋ねの仕方を変えますが、今でも危機的な状況だと言う人もいるわけです。まさに九月十一日以来、大変な勢いでアメリカの経済そして世界経済が一つの方向へ向かっています。これをもってもう危機的な状況とするのか、いや、そうじゃない、今はまだ大丈夫だとおっしゃるのか、どっちですか。

小泉内閣総理大臣 今は、厳しい状況ではありますが、デフレスパイラルとか世界恐慌とか、日本から世界恐慌を発するような危機的な状況ではないと認識しております。

原口委員 という認識であれば、また新たなさまざまなことが起こらない限り、財政出動はする必要はないというふうに考えてよろしいわけですか。

小泉内閣総理大臣 今後、来年度予算編成も、国債発行を三十兆円以内におさめるという目標を堅持しながら今予算編成を準備しているわけでありますから、そういう状況でいろいろ徹底的な歳出の見直しを図っていく、また、構造改革に資するような雇用対策等財政面の手当てというものに対しても十分配慮していく。そういう中で、三十兆円の枠を維持しながら今回の補正予算も提出しているわけでございます。

原口委員 私の理解力がよくないのか、いま一つわかりません。

 資料二をごらんいただきたいと思います。

 この国会では、やはり雇用を、そしてさまざまな産業に従事する方々がどのような状況にあるかということをしっかり押さえた上で議論をしなきゃいかぬというふうに思っています。

 これは、縦軸がデフレーター変化率、そして横軸が労働生産性の成長率でございます。左の上にあるのは、いわゆる建設、サービス、不動産業といったところでございまして、今まで一生懸命この分野で頑張っていらっしゃる人たち、たくさんいらっしゃいます。私も父が建設、設計技士でございますし、建設関係の仕事に従事している者もたくさんおります。

 しかし、そういう人たちが嘆いているのは、一生懸命頑張って、そして競争条件を整えても、それにまさるぐらいの財政出動が来て、そして、まさに公的資金を投入された銀行、そこに債務を消してもらった企業が出てきて、全く競争にならない。この左の上の部分は、頑張っても頑張っても、高コスト体質の中で経営の先行きが見えない、そういう嘆きをお持ちであります。

 そして、右の下の部分、電気機械、ここは、デフレーター変化率、つまり労働生産性成長率が物すごく高くて、ここはどうなっているかというと、頑張れば頑張るほど過当競争になって、価格のたたき合いになっているというところであります。

 先ほど、冒頭申し上げましたように、国民の皆さんは、もう何が原因か薄々おわかりだと思います。今までのゆがんだ財政出動、このことが、片っ方で、この左の上の人たちについては、頑張っても頑張っても、どこか違うところから注射をして元気になった人たちがやってくる、そしてまじめにやっている人たちが横に、あるいは失業に、倒産にという状況になっている。一方、日本を代表するこの生産性の高い部分については、幾ら頑張っても税やさまざまなもので見返りが来ない。医療費や年金も減らされる。まさに金さえ配れば何でもいいというような構造をここで変えなきゃいかぬ、このように思うのですが、総理、いかがでございましょうか。

小泉内閣総理大臣 大体似通っているじゃないですか。小泉内閣の方針と似ているじゃないですか。そういう厳しい見直しをして改革を進めていかなくてはならない。大した違いはないと思いますが。

原口委員 何と答えていいのか、大して違いがないと言われたときに、にっこり笑うようじゃ野党じゃないんですね。

 そうであるんだったら、さらに進めて、今でもすぐできることはあるんですよ。何も、改革の絵を半年も一年もかけて大向こうをうならせるようなことをかいて、そしてああだこうだやって、そして結局やらない、こうじゃなくて、今でもすぐできることがある。すぐできることについて少しお話をしたいというふうに思っています。

 一つは、RCCの問題でございます。私は、このRCCに、後ろにおります我が党の五十嵐議員が質問主意書を出して、今まで銀行であるにもかかわらず検査が入っていないなんということは一体どういうことなのか、不思議でたまりませんでした。なぜRCCには今まで金融検査が入らなかったんですか、教えてください。

柳澤国務大臣 RCCは、銀行免許を持っております。それで、いろいろ協定銀行としての立場でそういう仕事を、もうここでるる申しませんけれども、しているわけですが、預金は、住専から移行されたものが若干あるかとも思いますけれども、基本的に新規の預け入れを受け付けておりません。片や、銀行検査というのは、先生も御案内のように、基本的には、預金者その他の債権者を守るために、やはり中心の観念は健全性の確保でございます。

 そういうようなことからいたしまして、このRCCにつきましては、銀行でございますから、これはいつの日にか検査をしなければならないかとも思いますが、現在の金融庁のマンパワーからして、これを効率的に、後でまたいろいろな方からいろいろな御質問があろうかと思うのですが、それに備えて検査をするということでもう手いっぱいでございまして、現在、RCCのような新規の預金の預け入れを受け付けていないところについて検査をするというような状況になかったということでございます。

原口委員 手いっぱいで人がいないんだったら、ふやせばいいじゃないですか。

 そういうことをおっしゃるんだったら、資料の八をごらんになってください。これはちょうど一年前に、今毎日のように新聞をにぎわしている朝銀、つまり北朝鮮系の信用組合、そして商銀、そういったところに対する「集中検査の対象としていない信用組合」、これは一年前ですよ。そのときも金融担当大臣は同じことをおっしゃった。しっかり検査をしていなければ、金融整理管財人を選任をもしていない、そして都道府県の検査だけで済ましている。この後、大変な国民の国税投入が起こりますよということを、去年の十一月二十日に、私は、その当時はそこに座っていらっしゃったのは森総理でございましたし、金融担当大臣も違いました。しかし、同じようなことをおっしゃいました。手いっぱいで、ここには入る、都道府県がやっているからいいのだと。その後、どうなりましたか。私は、しっかりと執行機関がやるべきことをやる、このことがとても大事だということを主張しておきます。

 そして、いずれ入ることもあるだろう具体的な事件を私は関西の方で耳にし、RCCというのは検察機構、さまざまな国の大きな権力を持った、株式会社でありますが、預金保険機構が一〇〇%の株主である国策会社であります。その国策会社もチェックが入らないとどういうことをするのだろうかということを、今から具体的な事案をもって御答弁をいただきたい。預金保険機構の理事長もお見えでございます。

 問題となった土地は、資料四、大阪府の堺市の土地でございます。不適切回収問題とされて国会でも取り上げてきた問題でございます。

 簡単に経緯を申しますと、この坂の部分、ちょうどわかりやすいようにこうして持ってまいりましたけれども、この赤い部分、これを旧住専の朝日住建から住管機構が第一根抵当権を持って所有をしていた土地でございます。四百五十坪、根抵当の最高額が十二億円。それに対して隣の広い土地、四千七百二十五坪、これが明治、横浜銀行が第一根抵当権を持っていた、そういう土地でございます。朝日住建からの債権を取り立てるために、当時の住管機構、今のRCCはこれの一括売買を企図するわけであります。

 これだけごらんになってもおわかりになると思いますが、こっちは坂ですよ。坂が四百五十坪で売買の計画は十七億円、片っ方の広い土地は二十六億円。えらい違うなと思われませんか。でも、売買ですから、それは相手が合意すればいいことであって、しかしここで不思議なことが起こる。私は半年間、預金保険機構、RCCに、御自身でこのことをただす時間を差し上げたつもりでありました。しかし、いまだもってこのことについては是正がされているというふうには聞いていません。

 まず第一点、具体的にお伺いしますが、この売買というのは、1と2の土地を一体としてお売りになろうとしたんじゃありませんか。

松田参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、一括して債務者である朝日住建がゼネコンに売ってそのお金を抵当権者に弁済金として支払う、そういうスキームでございました。

原口委員 全体で幾らでございましたか。

松田参考人 これには複雑な経緯がございますが、ごくかいつまんで申し上げますと、債務者である朝日住建は……(原口委員「いや、聞いたことだけで結構です」と呼ぶ)はい。

 それは、最初の構想では、買い主と売り主の間では一体として四十三億円で取引しようという話がございました。それが、話を進めているうちに、九年の十二月でございますけれども、朝日住建が同じ抵当権者である横浜銀行と明治生命に説明に行った際に、あなた方の持っている1の土地、大きな土地は二十六億円になりますという話をして、そのときに、残りの土地は計算上十七億円になるのですけれども、それは言わずに、七億円と推認できるようなことを言ってしまったのを、そこで同席していた当時住管の弁護士や職員が訂正しなかったということで、明治生命と横浜銀行はこの一体の土地は二十六億と七億で売買されると思い込んで最後までいってしまったということでございます。しかし、結局三十三億で売買になった、こういう経過でございます。

原口委員 結局三十三億で売買になったというのは結果であって、皆さんというか、RCCは、まさにここに書いていますように、七億円で本来あるはずのものを十七億円、これで売買しようとしているじゃないですか。しかも、四十三億円で売買するということを言っておきながら、担保権の抹消同意書を出させているじゃないですか。これは犯罪なんですよ。

 私は、預金保険機構の理事長に、時系列を見て、具体的なこういう土地売買届け出書にも全部当たって、そしてこれがどういう事案だったかということを御確認になって、きょう答弁にお見えくださいということを申し上げていました。一体として売る土地の片方の債権者にそういうことを言わないで売れるんですか。まさにRCCが、さまざまな債権逃れをしようとしている人たち、こういう事案を見たら全部告発していますよ。自分が告発している相手と同じようなことを自分がやってどうするんですか。お答えください。

松田参考人 この件については、先生から二度ほど前からお尋ねがございまして、私どもも内容は精査をいたしております。

 しかし、それが告発ということになりますと、詐欺罪ということになりますけれども、さて、これが民事法上まことに遺憾なことで、RCCとしてはあってはならない回収であったということは間違いございませんが、これはもともと抵当権をやっているプロ同士の、金融機関同士の回収のせめぎ合いの中で起きたことがまず背景にございます。そのことを前提にしながら考えてまいりますと、言ったことは、四十三億の構想があるということを述べなかったということ、それから、七億と相手が誤信しているのを、十七億で売りたいのに七億と誤信しているのをとがめなかった、あるいは訂正をして説明をしなかったという点でございますが、それは主として朝日住建がやったことでございまして、どっちかといえば、RCCの方は、当時の住管はその意味ではちょっと補充的と申しますか、そういう立場にあったということもございます。

 積極的に両者が二十六と七億で具体的にだまかそうということで言ったという事前謀議ということまでの事実も今までの調査では明らかになっていないというようなことがそれぞれございまして、この一連の長い経過を全部子細に見ますと、刑事法的に見ると、まことに、先生おっしゃるとおり非常にまずい、非常に怪しげな案件ではございますけれども、告発をするかと言われれば、ちょっと私の立場からすればちゅうちょを感じるということでございます。

原口委員 これは朝日住建がはかったことであって、RCCは関係ない、そうはおっしゃらないでしょう。実際に朝日住建の皆さんとRCCが共謀している、そういう証拠のテープもあります。

 委員長にお願い申し上げます。

 私は、今、日本の経済を再生させる、その中でRCCが果たす役割は大変大きゅうございます。ぜひ本委員会で、この問題だけではございません、RCCにかかわるさまざまな問題について、あるいはこれを機能強化して再生させる、そういったことも必要かもわかりません、政策論もぜひ議論をさせていただきたい、そのことを委員長にお願い申し上げます。

野呂田委員長 理事会で協議いたします。

原口委員 ありがとうございます。

 今のようにおっしゃるので、最後に一つだけ申し上げておきます。

 この鉄骨、これ七億円しますか。総理、これ七億円すると思いますか。今の土地で、さっきの、この鉄骨はどこに建っていたかというと、松田理事長、この広い土地の方ですよ。広い土地の方に、つまり明治、横浜が第一抵当権を持っている土地に建っていたものを、これを勝手に売ることができますか、その人たちに何も入れずに。例えば、私の土地の中に建っているものを小泉総理が勝手に売られたら怒りますよ。総理はそんなことしないですね。当たり前のことじゃないですか。しかも、これを七億円で売ろうとしているじゃないですか。証拠を出せと言われたら、この委員会に出しますよ。配りましょうか。

 プロ同士のことだった。プロ同士だったら、もっと慎重にやるべきじゃないですか。いかがですか。

松田参考人 先生御指摘の案件は、まさに土地の上に建っている構築物の問題でございますけれども、これは先生も御案内だと思いますが、四十三億の大構想がまずあって、当時の住管としては一銭でも多く回収して国民負担を軽くしたいという気持ちが根にありまして、担当者が必死になって、ところが、いろいろの経過をたどって、土地の売買は三十三億という、初めに横浜銀行なり明治生命が納得した線に落ちついてしまったわけですね。

 そのときに、売り手である、債務者である朝日住建が、構築物を買ったらどうですかと、最初は十億というような話を持ちかけているんですよ。それがそのうち、やっているうちに五億ぐらいになってきて、ところが、住管の方としては、そもそもゼロと評価したものが急に十億と言われても通らないだろうと。それに、売買の期限は十年の三月末だと。資産評価をして間に合わないということで断念をして、土地売買だけが三十三億でなってしまった。

 そして、先生御指摘のとおり、もし仮にこの構築物を売却するとなると、間違いなくこれは三つの抵当権者、特に横浜と明治の納得が必要ですから、それがその後、十年の六月以降になりまして、住管の方から申し入れをして、実はこういうことで話があるということで話をして、三者で協議をして、三億円で買い取るということになって話が決まって、その年に三億円をいただいたんですけれども、細分をめぐってそこにいろいろごたごたがありまして、結局、それは横浜銀行に今預託してある、こういう関係でございます。

原口委員 いや、聞いたことに答えていただきたいんです。よその土地にあるのをその人に無断で売れますかと、簡単なことを聞いているんですよ。

 私は、RCCで頑張っていらっしゃる方々が、こういう事案ばかりやっているというふうには思わない。むしろ大変な御努力をなさっています。しかし、私が得た資料によると、朝日住建の社長と、そしてRCCのその担当者がしっかり話し合っているんですよ。善意の第三者を、そして関係者を。

 こういうことが起こると、大変大きな権力を持った組織であるがゆえに国民全体の信頼も失ってしまいますねということを申し上げたくて、柳澤担当大臣、私は、何でもかんでも検査すればいいということを言っているんじゃありません。限られた人員の中で頑張っている、さっきもおっしゃったとおりです。

 そして、金融検査についても、今、地域金融が随分苦しくなっています。その中で、いわゆる上場している大手企業に対する会計基準と、地方で頑張っている、閉ざされた中で、ある一定の限度の中で頑張っている企業とは当然スタンダードが違っていい。私たちは、そういうことをしっかりと議論し、仕組みをつくることによって経済が再生すると思っています。

 幾ら大きな権力を与えても、こういうようなべらぼうなことをやっていたんでは、きょう松田理事長、もう三回の私の質問に対して、違法の認識はなかったと最後までおっしゃるわけですね。単なる不適切回収だとおっしゃるわけですね。いかがですか。

松田参考人 民事的に見て、まことに不適切きわまりない回収であることは間違いありません。大いに我々も反省をして、再発防止に努めております。

 ただ、刑事法的に詐欺か、告発するかと言われるとちょっとちゅうちょを感じる、こういうことでございます。

原口委員 松田理事長も、もとそういう世界、検察の世界にいらっしゃいました。私は、法と正義が、だれであろうがしっかりと守られる、このことが日本再生のかぎだということを指摘して、次の問題に移りたいと思います。

 雇用対策についてでございますが、岡田政調会長が御指摘をいたしました緊急地域雇用特別交付金、これはこれまで、やはり総括がしっかり行われるべきだというふうに思います。各地のさまざまな取りまとめを私も調査してみました。随分いいものもあるんですね。教育やNPOや福祉、そういったものを育てていこうというものも、随分いいものもある。しかし反面、いや、本当にこれは失業者の雇用につながったんだろうかというようなもの、たくさんです。

 例えば、緊急ため池パトロール事業、事業費二千万円、新規雇用三人。パットゴルフ場コース内の清掃、落ち葉拾い、事業費十万円、新規雇用二名。笑いますよね。公園樹木折れ枝処理事業、事業費七百万円、新規雇用二名。しかも、こういうところを多く追っていくと、ほとんどが半年で切れている。しかも、失業者に必ずしも行っていない。いいところはどういうところかというと、公労使でしっかりテーブルをつくって、働く人たちも経営者の人たちも、そして自治体も知恵を出し合っている、こういうところはいい。

 しかし、私は、こんな厚いファイルを見ながら、総理、ぐあいが悪くなりました。これほど大切な補助金を、あるいは交付金を何というところに使っているんだろうと思いました。ただただお金を使えばいいというんじゃないんです。

 ぜひ総理、これから雇用の問題、私は、ワークシェアリング、積極的な意味でのワークシェアリングについてももうみんなが知恵を絞らなきゃいけない、そういう事態に来ていると思います。

 総理にまず御決意を伺いたいのは、政労使で、例えばドイツは雇用と競争のための同盟というのをつくりました。政府、そして働く人たちの代表、経営者の代表、そして高失業を突破するためにみんなが知恵を出し合いました。よくオランダのワッセナー合意が言われますが、それも同じであります。苦しいからこそよく話し合って、苦しいからこそよく知恵を出し合って、それが必要だと思いますが、総理の基本的な御認識を伺いたいと思います。

小泉内閣総理大臣 今のお話を伺っていますと、いかに有効に出された費用が使われるかという御指摘だと思います。

 確かに、最初に額ありきで、これだけ額をつけたからいいんじゃないだろうという具体的な事例を挙げられたわけでありますが、そういう反省も踏まえて、雇用対策に生きるような金を使っていかなきゃならないと思います。

原口委員 ぜひ、きょう冒頭差し上げた質問のポイントにも書いておりましたけれども、そういう同盟あるいは政労使の枠組みを積極的に総理から呼びかけてください。働く人たちが自分たちを守るために、そして国民が生活を守るために、これは必須のことだというふうに思います。

 二番目にお尋ねをしますが、今五・三%の失業率ということが言われますが、ほとんどはミスマッチですね。ミスマッチによらないものは一・一%です。どのようにミスマッチを改善しようとされているのか。

 今回、キャリアカウンセリング事業などいろいろな予算を入れていただいた、それは率直に言って評価します。しかし、私たち野党四党で、この当初予算で、雇用のセーフティーネットについては思いっ切りとした組み替え予算を出しているんです。私たちの予算がもし通っていれば、今ごろ国民にはもう行っているんです。不良債権の最終処理も行われるだろう、そしてペイオフもあるだろう、そういうことを見越して大きなセーフティーネットをつくるべきだという話をここでもしました。

 ミスマッチの解消をどのようになさろうとしているのか。

 ハローワーク、長らくこの分野は規制改革がなくて、公の部分がこれを握っていました。ですから、ハローワークの実態は一体どうなっているのか。ある人によると、十分でさまざまな職業紹介を受けて、そしてそれで終わり。これではなかなかミスマッチは解消できない。一万六千人の限られたハローワークの職員さんたちが一生懸命頑張っていらっしゃる、このことは私も評価します。しかし、今までと同じではだめじゃないか、こういう問題意識を持っているんですが、坂口大臣、どのようにミスマッチを解消するというおつもりでございましょうか。

坂口国務大臣 御指摘をいただきましたとおり、これからの雇用問題というのは新しい角度から考えていかなければならないというふうに思っております。

 今までの状況を、私も地方をずっと回りましていろいろと視察をいたしましたけれども、やはり限られたハローワークの人数の中で、そして失業者はどんどんとふえてくるわけでありますから、そのお一人お一人に対する時間が短くなってきていることも事実であるというふうに思っている次第でございます。

 これは、このままにしておいては、医療じゃありませんけれども、三時間待って三分診療なんというようなことになってはいけない。やはりそこに、一時的であれ、その皆さん方に十分お話に乗っていただく人が必要であるという考え方から、キャリアカウンセラーを、これは本格的な制度にしていかなければなりませんから少し時間がかかります。しかし、今やその時間を待っているいとまもないということでございますから、この補正予算の中にも、キャリアカウンセラーという名前ではございませんけれども、アドバイザーとしてそのつなぎをやっていただく。

 それは、企業の中であるいはまた労働組合の中でそうした今までから雇用の問題を手がけておみえになりましたような皆さん方にひとつぜひやっていただくということで、臨機応変でございますけれども、その皆さん方にそこに来ていただきまして、そしてやっていただく。また、今の失業者の中にもそれに匹敵するような人がございましたら、そういうところにひとつ従事をしていただこう、こういうふうに思っている次第でございます。

原口委員 長期失業者が九十二万人という数字が出ています。お尋ねをしたいのは、この九十二万人のうち、一体、世帯主と申しますか、家計の主たる働き手はどれぐらいいらっしゃるんだろうか。大臣、どれぐらいいらっしゃるんですか。

坂口国務大臣 私、そこまでの具体的なものを見たなにがありませんけれども、しかし、大体そこに、九十二万人というふうに今御指摘になりましたが、そのほとんどの方は御家庭の主たる柱であるというふうに認識をいたしております。

原口委員 総理、今のお答えにこの労働行政の、端的に言うと、サービスは、だれに対してどのようなサービスをもらっていただいて、そしてどのような効果があったかということをはからなければいけない、最も深刻な人たちは一体だれかということがわからなければいけない。そういう状況の中で、九十二万人のうち一体どれぐらいが主たる家計の担い手なのか、そういう統計ももしないとすれば、これこそが問題なんです。特別会計も、三兆円の中で一兆円は失業者以外に使われている。

 私は、総理にお尋ねをします。

 抜本的に、この就業対策、失業対策を見直すときに来ている。今までは、高失業率をまさに前提としないそういう対策でした。ですから、ハローワークについても、どれだけの人たちが就業をしていったか後をしっかりと追う、こういうことがこれから必要となっている。

 キャリアカウンセリングについても、一カ月ぐらい研修を受けたから、キャリアカウンセリングなんかできやしません。失業をした人たちはさまざまな問題を一緒に背負い込まされる結果になります。心の問題もそうです。ですから、キャリアカウンセリングをしている人たちはあくまでカウンセラーなんです。カウンセラーであって、しかもキャリアについてのアドバイスもできるというのがキャリアカウンセラーの定義じゃないか、このように思いますが、大臣、もう一度答弁をください。

坂口国務大臣 そこは御指摘のとおりというふうに思っておりまして、このキャリアカウンセラーは、別途、正式の資格を持った人たちを養成していきたいというふうに思っています。

 先ほど申しましたのは、しかし、それには少しタイムラグがございますから、その間をどう埋め合わせるかということを申し上げたわけでございます。そして、ハローワークの、我々の公的な部分だけではなくて、やはり民間のそういう会社につきましても御努力をいただいて、連係プレーを密接にしていくようにしたいというふうに思っている次第でございます。

原口委員 短期でやるべきことと中長期でやるべきこと、今のようなお考えであれば、キャリアカウンセリングの養成のために多くの資金あるいは資源を投入する必要がある。これは厚生労働省だけではできない、文部科学省やさまざまな省庁が挙げてやらなきゃいけない問題だ、このことを指摘しておきます。

 私たち民主党は、住宅ローン対策やあるいは教育費支援、こういったものも盛り込んだセーフティーネットをつくっています、提示をさせていただいています。雇用全体の安心をどのように確保するか、また別の場で御議論をさせていただきたい。

 あと十分になりましたので、あと二つ、基本的な議論をさせていただきたいと思います。

 さっき、雇用の分野に関する予算の執行についてお尋ねをしましたが、農業分野についても同じようなことが言えるんじゃないかというふうに思います。

 これは、先日、長崎県の長崎大学の教授からいただいた、ちょうど一年前の有明海の宇宙衛星の写真像です。大変なノリ不作が起こった、有明海が大変な状態になった。ごらんになってください、ここが諫早湾です。諫早湾から赤潮が発生している。二〇〇〇年十二月二日、諫早湾、ここのところが真っ赤になっている。そして、十二月三日、十二月七日には、この間が切れているのは、雲があって、衛星ですからその間が見られなかったのですが、有明海全体に広がっています。

 私は、財務大臣、六月の国会で、実はこの有明漁場調査については八年間国費が投じられて、そして一回も、中間報告はおろかデータさえもない、この状況を御指摘させていただきました。そして、予算委員会の理事会で何回もそのデータを出すようにという要請をいたしました。こんな予算の使い方があっていいのか、財務大臣、お答えをください。

塩川国務大臣 確かにその質問は、六月だったか、ございました。そのとき私は、こんなことは全く怠慢であるということを申し上げたと思っております。それから、関係省の方に、何とか早くその結末というか中間報告を出してもらいたいと言っておったのでございますが、何か専門委員会とかいうのがあって、その専門委員会の学術的な研究ですか、その結論が出ないので出せないんだということを私は中間報告として受けましたけれども、しかし、おっしゃるように、長年多額の国費をつぎ込みながら報告書一つ出ないということは、私は非常に残念だったと思っております。

原口委員 もう残念を通り越して、そこに生きている人たちのことを無視したまさに暴挙だというふうに思います。

 実は、予算委員長を初め皆さんの御尽力、御協力のおかげで、私の手元にはこういう調査結果案というのが出てきました。これだって、先週委員会を開いて、そして私に提出するという約束だった。だから、金曜日、九州に帰る飛行機の最終便をとって待っていた。そうしたら、来ない。何で来ないのかと言ったら、委員の皆さんの御都合がつかずにきょうは委員会が開かれません、よって、資料は出せません、こんなことがありますか。有明の多くの漁民の人たちが今どんな思いでいるか、そのことを考えれば、およそこんなことはできない。

 その一方で、もう実際に事業を進めるということを地元に報告しているんです。この有明海のノリ不作対策案の中では、水門をあけて数年調査をする必要があるということを中間報告の中でしっかりうたっているんです。にもかかわらず、農水省は、全く関係のない漁連そして県にだけ説明して、地元の漁民には説明もしていないんです。こんなことが許されますか。

 総理、私たちは常識でやはり議論をしなければいかぬと思う。実際にこのことを許してしまえば、約百ヘクタール分の干潟の調査はできるかもわからない、しかし、一千ヘクタールの干潟はなくなってしまうんです。

 この漁場調査、これを見てみました。これは案だから、最終案じゃないと多分言うんですよ。しかし、しっかり影響が出ていると書いてあるじゃないですか。どれほどの影響があったか書いてあるじゃないですか。にもかかわらず、こういうことをやろうとしている。

 冒頭申しました、総理。予算の執行、運用体制、これをオープンにして公正にすることで、私たちの国はよみがえるんです。ぜひ農水省に強い検討を、そしてこんなべらぼうなことをしないように強く要請したいと思うんですが、総理の御見解を伺いたいと思います。

遠藤(武)副大臣 まず、調査の報告については、委員会の御了承をいただかなければ公表はできません。私どもが勝手に検討の結果を公表するというわけにはまいらぬ質のものであります。

 と同時に、有明海の赤潮によるノリ不作等の被害と干拓との関係については、だれもがその因果関係について、学者であれ研究者であれ専門家であれ、干拓によるものであるという結論は出しておりません。そこをひとつおわかりいただきたいと思います。

 また、いろいろ途中において、御存じのとおり、それ相応の、干拓の側と漁場の側との紛争みたいなものがございましたから、報告についてもより慎重を期したというふうに聞いております。

原口委員 全く答弁になっていないと思います。これは今まで、財務大臣が早く出せとおっしゃっていただいたから出てきたんでしょう。何回も何回も言って、出てこないんですよ。私は、こういう国民の信頼を裏切るような運用をやっている限り、なかなか協力はできない。

 最後に、もう時間がなくなりましたので、中部国際空港の問題について一言だけ申し上げます。

 驚いた。先ほどどなたかの指摘にもあったとおり、特殊法人、総理は絶対に改革するんだとおっしゃったけれども、満額を要求していますよ。(発言する者あり)ほら、早くつくらなきゃと隣で言っている。中部国際空港については、これは二〇〇五年の開港なんです。二〇〇五年の開港で、もう子会社をつくっているんですよ。

 こういう特殊法人の問題は、特殊法人は大赤字で子会社が黒字、そして損失は国民、もうけは私。私がお客さんじゃないんです。どうしてこんなことをやるのか。先週、ある財界の憂えた人が、こんなことを許すのか、こんなことを許していいのかと。

 どうぞ総理、これをごらんになってください。

 実際にこのことで何が行われたのか。私は、総理がおっしゃっている改革の方向と、そして実際にさまざまな人たちがやっていることが真反対をやっている、今でも改革できることはいっぱいあるんだということを御指摘したい。

 総理、その文書をごらんになって、どのように思われますか。

小泉内閣総理大臣 今いただいたばかりで、判断する状況にはないと思っております。

野呂田委員長 この際、五十嵐文彦君から関連質疑の申し出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。五十嵐文彦君。

五十嵐委員 民主党の五十嵐文彦でございます。

 半年前に小泉総理に、小泉改革はかば焼きのにおいだけという話をさせていただきましたが、その状況は今でも変わっておりません。むしろ、ウツボが案の定大変ふえてより活発になった。抵抗勢力のことをウツボに例えたわけですけれども、そのように思います。

 改革先行プログラムというのが出てまいりました。これを見ると、大変私は情けない思いをいたします。措置済みという項目がその中にあるんですが、その中には、検討の開始という項目が随分たくさん出てくるんですね。検討を開始するというのが何で措置済みなんだと思うわけですし、全体に、検討、見直しという言葉が、ざっと数えただけで約三十九あります。それから、推進、促進というのは約三十三あります。

 検討とか見直しというのは、官庁言葉では、やらないということですね。少しやる気があるものは前向きに検討と言うわけですから。また、この中にも正直に、急ぐというようなことは、迅速に検討するというようなことが中に入っているんです。何も入っていないものは、ほとんどやらないということに等しいんです。見直しも、見直した結果何をするのかというのが大事であって、検討や見直しばかりオンパレードで並んでいるのは、やったことにならない、やることにもならない。

 それから、推進、促進というのは、これは、今までやってきたことの予算をより多くつけます、こういう意味ですから、新しい話でも何でもない。私は、形だけ整えるというやり方では改革は進まないと思います。

 特に、最近、特殊法人改革がクローズアップされている。これは大変大切なんですけれども、基本は、官僚の、官庁の権限を小さくする、民間にできるだけ自由に仕事をさせるということだろうと思う。その規制改革の部分は非常におくれているというふうに思いますが、竹中大臣に見解を伺います。

竹中国務大臣 改革工程表とか先行プログラムに書かれていることが非常に抽象的であるという御指摘だと思います。

 同様な指摘、実は前回、仙谷議員からも御指摘いただきまして、決してそうではないんだ、こういうものはたくさんありますよということをぜひ申し上げたいということを記憶しておりますが、これはしかし、ぜひ詳細に見ていただきたいと思います。

 けさほどから、例えば特殊法人の話が出ておりますけれども、特殊法人の主要なものについては今年中に閣議決定するということを明確に書いておりまして、それに基づいて、総理がけさほどから答弁なさっているわけであります。

 実際に、その中で、進捗状況におきましても、例えばレセプトの電子化の解禁等、これは既に措置済みでありますから、実施済みでありますから、これは決して検討するというようなことばかりではないわけです。証券税制については、まさに今、国会で審議をしていただいている。RCCの機能強化についても同じでありますし、金融の特別検査については既に十月から始まっているわけでありますから、その政策の熟度によって若干のばらつきはあるかもしれませんが、極めて具体的にこの改革は動き出しているというふうに私は認識をしております。

 雇用対策についても同じでありますし、そもそも、改革先行プログラムの中で予算措置が必要なものを補正予算としてまとめていて、皆さんにまさにここで審議していただいておるわけですから、これはまさしく、そのプログラムに書かれたとおり改革が粛々と進行しているということのまさに証明がこの補正予算ではないかというふうに思っております。

五十嵐委員 わずかの、幾らかやった部分についてだけ述べて、私が言ったことには全く答えていないですね。検討という項目ばかり並んでいて、これでは改革を加速するということにならぬじゃないかというお話をしているわけであります。

 それから、自民党の議員から伺っているんですが、行革を担当する主要な大臣が、これは特殊法人に関してですけれども、一つか二つやればいいんだというようなことを早い時期から漏らしていたということで、こんなことでは私は改革はできないと思います。

 規制改革がおくれているという話をしましたけれども、この特殊法人改革についてもかなり急がなければならない、私はこう思うわけであります。かつては、十のうち一つ二つやれば、それで一歩前進だねと褒められたかもしれません。今この時期に来ては、我が国はもう破綻寸前にあるわけでありますから、これは大改革を一気に進めなければならない。十言ったうち八つ九つ、ほとんどやらなければ、私は、小泉改革は失敗だということになってしまうと思うんですね。基本的な認識を総理大臣に伺いたいと思います。

小泉内閣総理大臣 だれが一つか二つやればいいって言ったの。今初めて聞きましたけれども。現に、来年三月までに整理計画を立てようというのを年末までにやろうと。しかも、十一月末までには、一つや二つどころじゃありませんよ。道路関係四公団、住宅金融公庫、都市基盤整備公団、石油公団、これだけでも七つじゃないですか。一つ二つどころじゃありませんよ。

 最も大物の部分を前倒ししてやろうという方針はいち早く出しております。改革は着々と進行しているんです。出ていない部分だけ言って何にもやってないと言うのは、ちょっとひどいんじゃありませんか。

五十嵐委員 そんなことは言ってないですよ。しかし、実際に改革は大変激しい抵抗に遭って立ち往生している部分があるじゃないですか。それはやはり……(発言する者あり)私らは、しりをたたいている、一生懸命やってくださいということを言っているんですからね。

野呂田委員長 静粛に聞いてください。

五十嵐委員 それから、経済についてお話をさせていただきますけれども、経済閣僚の中でかなり、これはそれこそ不一致が見られるということであります。竹中さんは、最近は盛んに、インフレターゲティングにむしろくみするという発言をされております。私は、これは大変危ういことだと思っております。閣内では、塩川大臣のようにインフレターゲティングには比較的慎重姿勢、あるいは総理も慎重姿勢だと思いますけれども、そのような状況もある。それから一方で、財政支出の問題、盛んに出ておりますけれども、平沼大臣が、これは後で否定をされたようですけれども、追加の政府支出が必要だ、二次補正が必要だというような発言を新聞記者団にしているというお話もありました。私は、やはりこの問題は非常に重要だと思います。

 まず、基本的な認識をお尋ねしなければならないと思うんですが、私は、GDPというのは数字だけを追いかけても意味がない、GDPの中身が重要だという立場に立っております。政府支出がふえれば、その分数字がふえるのは当たり前です。しかし、それが恒常的な生産性の向上、そして経済の拡大というものにつながればいいわけですけれども、それなしに、ただ政府から出た公共事業費が大手のつぶれそうなゼネコンに行って、それから銀行にすぐそのまま戻っていくというようなやり方では、これは経済の拡大につながらない、消費の拡大にもつながらない、こういったことでは意味がない。むしろ、それは害が大きい。それはどういう害かというと、国債の増嵩という害につながってくるということであります。

 ですから、ただマイナス成長を防ぐというためだけの財政支出の追加というのは私は問題が多い、こう思うわけですが、塩川財務大臣は大分揺れておられます。マイナス成長にはしないということを半ば国際公約的にサミット等でおっしゃったこともあるし、しかし一方では、これはそうではないんだ、たとえ経済の停滞を招いてでも構造改革を進めなきゃいけないんだという発言もされている。一体どちらが本当なのか、閣内で一体どういう話し合いが行われているのか、統一的な見解はどうなのかということを、私は総理から伺いたいと思います。

小泉内閣総理大臣 好きこのんでマイナス成長にやるなんて一度も言っていないんです。低成長を覚悟してでも改革はなし遂げる、プラス成長だろうがマイナス成長だろうが構造改革の手綱を緩めることはないと言っていることに対しては、塩川財務大臣とも一致しております。

五十嵐委員 いや、マイナス成長だろうがと言うけれども、マイナス成長にはしないという方針を閣内では決めているんじゃないですか。

小泉内閣総理大臣 マイナス成長にしない努力は大事だと。しかし、これは世界経済の状況もありますし、幾ら努力してもできない場合もあるでしょう。

五十嵐委員 私も、先ほど言ったように、実質的に経済が伸びる形での、それはマイナス成長にしないということは賛成なんですよ。ただ、数字合わせだけで政府支出をふやすというのは、これは害が大きくて、それは本当の意味でのプラスにならないじゃありませんかという、むしろ総理と同じ意見なんだろうと思います。そのときに、もう二次補正の問題で、どんどんやれと今は一次補正の補正予算審議中だから言えないけれども、後でやらせるんだ、これは常識だというお話に実は与党内ではなっている。

 そこで、三十兆円枠とどういう整合性をとるかということで、国有資産を売却して、そしてそれを原資として、その分に充当する分として新たな別途の国債を出したらいいじゃないか、いわゆる小泉ボンドと巷間言われている構想があるやに聞いているわけですが、これは本当ですか。

塩川国務大臣 小泉ボンドとか、何か新聞にちょっと出ていましたですね。何かえらいひとり歩きして、親切な忠告している人もあると思っておりますが。しかし、五十嵐さん、一回よう考えていただきたいと思うんですが、日本経済が破局的だ、大変な危機感だとおっしゃっている。私も非常に悪いということは思っておりますけれども、しかし、どうも最近の評論家は自虐的な経済観を持っているんじゃないか、実は私はそう思うておるんです。

 大体、ファンダメンタルズを見ましたら、そんなに悪くもなっていない。悪いことは悪いです。しかし、例えば一連のこんなことがございました。一昨々日でございましたでしょうか、ヨーロッパが一斉に、公定歩合が皆引き下げをいたしました。そうしたら、日本の方に大変な影響があるということは、わっと日本の国内では騒いでおりましたけれども、しかし、為替は依然としてそんなに変動はいたしておりませんし、株価も変動しておりませんし。ヨーロッパ等が見ておりますのは、日本は低成長、非常に厳しいだろうけれども、それなりに安定しておるという見方をしておる。これはあらゆる計数を見ましてそうでございます。

 ところが、日本の国内ではだめだ、だめだと言っておるんでございまして、私は、先ほども総理が答弁しておりました中でいみじくも言ったと思うんでございますが、何かここで、本当に危機的で、これをやったら救済されるというふうなことがあるという、そういう緊急なものがあるというんならば、第二次であれ第三次であれ、何でも考えたらいいだろう。しかし、そういう決定的な、本当に有効なというものは何だろう。ただスローガン掲げて中小企業対策をやれ、農業対策をやれ、あるいは経済振興策をやれということを、スローガンだけで経済がよくなるんだったら、それはいいと思います。実際に、ここへ来て、実需に、こういうところへこれだけの金を入れたらどうだろうというような具体的な提案があるというならば、それはそれなりに考えなきゃならぬと思っております。

 しかし、今大事なところへ来ておりますのは、この構造改革を訴えて六カ月になりました。そして、予算の方の制限も非常に厳しくやってまいりました。三十兆円といったら痛みが非常にきついことは私は知っております。でございますから、各省ともこれに対しては非常に不平不満はございました。しかしながら、六月に骨太の方針を決めまして、これでやらなけりゃだめだという政府の意向がここで一致いたしました。それを持って各省と交渉いたしましたら、各省ともずっといろいろな今までのいきさつのあった予算の各行政項目等を見直しまして、ここで確実に費用と効果というものを考え直そうという空気が出てきたことは事実でございますから、これは、私は、目に見えない大きい改革であった、改革の成果であったと思っております。これをどのようにして具体的に結びつけていくか、今後これをどうして定着させていくかということは大事なところでございます。

 したがいまして、私は、財政運営をする責任者の一人といたしまして、要するに、国債の発行とかそういうことはもうこれはやはり既定方針どおり政府の方針をやっていかなきゃいかぬ、そこに一つの基準というものと倫理観をつくっていかなきゃいかぬと思います。

 しかし、経済対策をしろとおっしゃるならば、いろいろなことはあるだろうと思うんですが、それならば何も政府だけに一任の責任ではなくして、民間の方々も、ましてや国会自身が、こういうことをやったらどうだという具体的な御提案があってしかるべきだと私は思います。

 そういうことで、今経済の不況を乗り切るというのは、全部国民が総一致結束して当たるべき問題であって、ただ単に財務省だけの問題ではない、私はそう思っておりまして、その意味において、どうぞひとつ、いいお知恵がございましたら聞かせていただきたいと思っております。

五十嵐委員 私どもは、後で申し上げますけれども、やはり不良債権問題をまず解決することが大事だということと、それから、私自身は、個人的な提案、そしてまた一部我が党の提案にも入っていますけれども、ローン控除制度、クレジットないしローンで物を買ったら所得税から控除されるというやり方で個人生活を豊かにし、消費税をふやすことによって財政の痛みを小さくするという提案をさせていただいているところであります。これはまた負債デフレ対策にもなるということで私は提案をさせていただいておりますけれども。

 それは別途言わせていただくにしても、今問題なのは、本当に我が国の経済、確かに低空飛行で、安定しているといえば安定しているんですが、それはたまたまのラッキーで安定している部分があるわけですね。アメリカが国債を出さなくなった、だから日本の国債が海外にも買われている。あるいは、日本の金融機関が国債を買う以外に有効な投資先を見つけられないということで、日本の国債をどんどん、じゃぶじゃぶ買っているというところで、危うい均衡、バランスがとれているからであります。

 私が言っているのは、何も財政至上主義で三十兆円枠を守れと言っているんじゃないのですよ。例えば、必要なことであれば雇用の問題である程度踏み出してもいい。あるいは、おっしゃったように、絶対的にこの道筋をつければ、財政赤字が多少拡大するかもしれないけれども、必ず経済がよくなるんだというだれもが納得するような道筋をつけられれば、それはオーバーしてもいいんだろうと思いますよ。しかし、実際には今までの政策は、どんなに積み上げてきても、ケインズ政策で出てきた財政出動は効果がなかったじゃないかということでありますから、そういう、ただ量的な拡大だけを目的の財政支出はしないでくださいねと。

 それよりも、危ないのは金利の話です。国債金利は、皆さんが守られたから、一・三%の国債金利がむしろ発表によって一・二八%に下がったのです。しかし一方では、外国の日本の国債の格付機関はネガティブの方向で今検討しているということで、これはこの十二月に、年内にも一段階下げられるであろうということが言われているわけですね。それはもう市場は織り込み済みなんですが、もし二次補正でさらに大きな国債の発行増が予定されるということになると、これは二段階引き下げとか、あるいは一段階引き下げになっても、引き下げた時点でさらにネガティブということがあり得るんですね。その場合には大変なことになるんです。

 もしムーディーズがシングルA格まで二段階下げたとすると、リスクウエートを二〇%にしなければならない。これは実際には、新BIS規制ですから二〇〇五年適用でありますけれども、BIS規制をほかの銀行に守れと言っているのですから、中央銀行は守らなければいかぬわけでありますね。そうすると、例えば日銀が持っている国債が十三年度の今、総裁、突然であれですけれども、七十兆円近くになるかと思うんですが、これがリスクウエート二〇%で計算されるということになると、やはりかなり大きな資本の低下ということになるかと思うのですね。

 日銀はリスクヘッジを民間の銀行のようにされておりません。すなわち、先物を買ってヘッジするということもできていない。BIS規制も、中央銀行は八%の規制は外れることになっていますけれども、適用外ですけれども、実際にはどこの中央銀行も守っているわけですから、そういうことになると、日本の通貨や日本の日銀に対する、あるいは日本の国債に対する信認そのものが大きく私は阻害をされるということになると思うんですね。

 私は、日銀が国債を保有し過ぎることにも実は問題があると思っていますから、これから先、民間には消化できないでしょうから、どんどん出せということになると、結局日銀にしわ寄せが行く。日銀、もっと買いオペをふやしてくれ、あるいは直接引き受けしてくれ、そういう要求は強まってくると思うんです。それは非常に危険だということを申し上げているんですが、私の認識は間違いですか。日銀総裁に伺います。

速水参考人 お答えいたします。

 私どもの保有国債、国債が値下がりしたときに、日本銀行の資産が下落して、通貨の信認を失うことになりはしないかという御心配かと思います。

 私どもは、日本銀行としては、長期国債の買い入れをおおむね銀行券の伸びに対応させるように、ずっとその方針でやってきております。これは、長期国債という資産を銀行券という負債に対応させるという考え方によるものでございます。

 先ほど、長期国債七十兆円とおっしゃいましたけれども、今現状では、銀行券の発行額は約六十兆円で、長期国債は四十八兆円ぐらいです。あとは短期国債を持っております。それで、おっしゃる七十兆ぐらいになるわけでございます。

 現在、日本銀行は、円滑な資金供給を図る上で必要な国債買い入れを増額するということはやっております。その際に、銀行券発行残高を長期国債保有額の上限とするということ、天井を設けておるわけです。これも、御心配のように、長期国債が余り大きくなり過ぎないようにということでございます。

 また、日本銀行が発行いたします日銀券に見合っております日銀の資産というものは、やはり中央銀行が持っている資産の健全性を確保していかなきゃいけないと思いますので、金利の上昇に伴う国債の価格変動に対応できますように十分な引当金を積んでおります。現在でも約二兆六千億ぐらい、国債保有額の四、五%のものは引き当てで積んでおります。

 日本銀行としましては、今後とも、中央銀行として適切なバランスシートの管理を保っていくということに努力してまいりたいというふうに思っております。

五十嵐委員 債券引当金や外為引当金が五兆円程度あるというのを私どもも調べて知っているんですけれども、ただ、日銀といえども、債務超過も、あるいは過少資本もあり得るという話なんですよ。そこまで、日本の金融は非常に危ないところまで来ている。

 地方債のリスクについても、かつてから我が党の中でも議論があります。国は地方債を保証しているわけではないわけですね。デフォルトはあり得るわけです。大阪などでは今大変危ない状況になっているわけです。

 地方債の多くは無格付の縁故債でありますから、リスクウエート、本来は一〇〇%のはずであります。九二年度までは実は一〇%だったわけですね。それが、裁量権でローカルルールを適用してゼロ%にしてくれという形になって、今BISの方で審議中なわけでありますけれども、大体そういう方向だというわけですが、これは国内行だけの過保護に当たるのじゃないかという非難を受けているはずです。

 それで、国債格付がもしシングルAということになれば、地方債は二〇%ないし五〇%のリスクウエートにしなければならなくなるというわけでありますから、そのときは地方銀行の自己資本比率がやはり大きく毀損するというふうに私は思います。逆に、国が実質保証するんだからいいじゃないかということになると、これは今度は国債に響いてくるということなんですね。地方債がひどい状況なのに国債と連動するということであれば、国債の評価も落ちるということだと思うんです。王手飛車とりみたいな関係になると思うんですが。ですから、今は地方債、国債を見ても非常に危ない状況にあると思うんですが、金融大臣、どうでしょう。

柳澤国務大臣 おっしゃったとおり、地方債の現在のリスクウエートはゼロということになっております。

 これは私は、格付しろ、ほかのことで格付ができないかと言ったことがあるんですが、できないと言うんですね。それは、何でできないかというと、交付税が交付されているような団体、あるいは補助金が来るような団体については、客観的にデフォルトの確率を計算することができない、国家意思でどうにでもなってしまうというようなテクニカルな理由もあって、できないということになっておりまして、そういったことを総合的に勘案して、現在ではそういう位置づけになっているということでございます。

 それは、もちろんそのほかに、いわゆる財政再建団体のように、先手を打ってその市町村の財政が管理されてしまうというようなことも予防的にあるわけでございますので、デフォルトの確率というのはなかなかこれは現在の制度のもとでは、ちょっと計算というようなことには結びついていかない。そういう総合的な判断のもとで今のリスクウエートになっているのではなかろうか、私はそのように考えているわけでございます。

五十嵐委員 地方債も、決して国よりも財政基盤はしっかりしておりませんから、決してそれは安全だということにはならないので、私は、十分に注意が必要だ。リスクウエートをある程度見るということも必要だし、あるいは外国からの評価という点でもこれは検討すべきだというふうに思います。

 それから、なぜ不良債権問題がいつまで尾を引くのかという問題なんですけれども、私は、順序の問題というのは非常に大切だ、こう思うわけですね。

 あの金融危機があったときに、私どもは、一斉の強制的な検査をしてバッドバンクとグッドバンクをきちんと分けて、そして資産査定をきちんとして、経営責任をきちんととらせるんだということを主張したわけですね。ところが、そんなこと言っていると間に合わないから、後から責任をとらせるから、一応健全行という建前で、健全なところに注入するんだ、手を挙げさせるんだということをその当時の金融再生委員長柳澤さんはされたわけであります。

 私どもは、それが大きな間違いだった、こう思っているわけですね。結局、経営責任は今になるまでも追及をされていないということでありますし、厳格な査定も行われなかった。これが、やはり非常に中途半端で甘い不良債権対策になってしまったし、銀行の経営者を緩めてしまった。その後ペイオフの延期もありましたから、余計緩んでしまった。いわゆる時間をかけてソフトランディングすればいいやということになってしまったわけで、銀行の経営者たちはいまだに大変大きな報酬を手に入れていますし、これから退任をされるであろう某都銀の頭取は十億円の役員退職金を手にする予定だ、こう言われているわけですね。これでは、経営責任というのはどこにあるんだということになると思うんです。

 九九年一月二十五日、公的資本注入を九九年三月にしたわけですが、そのときに「資本増強に当たっての償却・引当についての考え方」というものが金融再生委員会で議決をされました。これは私は、一種の基準、主務省令に当たるんじゃないか。すなわち、早期健全化法第三条二項及び金融再生法第六条第二項による資産査定、そして引き当ての基準という、ゆだねられた主務省令の一部に実質的に該当する、わざわざ金融再生委員会で議決をしたわけですから。そして、一月の二十六日から二月五日まで検査部が検査をして、ヒアリングをして、そして資本増強をしたわけですね。

 ところが、わざわざ一月の二十五日に、資本増強に当たって、こういう基準を決めておきながら、注入行に対しては、九八年九月期、その期中じゃなくて一期前の決算をもとにやり、かつ、この議決をした基準を当てはめなかった。なぜ当てはめなかったか、当てはめたとすればどうなったのか。それから、一月の二十五日の基準を、では、九八年九月期でもいいですから、当てはめたらどうなるのか。いわゆる時期の問題と、それから基準を一月の二十五日の基準にするかその前の基準にするかということでどれぐらいの違いがあるかというのを、実務的にちょっと教えていただきたいと思います。

柳澤国務大臣 数字の点は、ちょっと突然の提示の要求ですから、私、今手元にあるかないか精査しはぐっているんですけれども、基本的に、一九九九年の三月三十一日までに行われた資本注入というのは、早い話、そのときに大幅な不良債権の処理もさせるので、したがって、その決算期に間に合うように資本の注入をしましょう、こういうスキームのもとで健全化法というのはでき上がったというふうに私は思っているわけです。

 そういたしますと、その前提になる対象行の審査というのは、これは確定決算によらざるを得ませんから、したがって、直近の決算期ということになると、それは九八年九月の決算期になるということでございまして、九八年九月の決算期においては、我々が対象とした各行は、これは八%以上の自己資本比率を持った健全行である、こういうことを確認した上で、今申したような手続でもって資本の注入をいたした、こういうことでございます。

五十嵐委員 しかし、わざわざこの時期に新しい基準をつくったんですから、これでやるべきだし、九八年九月期よりも、見込みがもうこの時点では出ているはずですから、見込みでやるべきです。むしろ、すべて主要行を健全行とするために、これは逆算をしてそちらを使った、都合のいい方を使ったんじゃないですか。実際にはそうだと思います。この新しい基準でやるべきだったという意見が金融再生委員会の内部でもあったのではないかなと思うわけですが、この逆算主義というのは横行しているんですよ。

 要するに、業務純益があろうがなかろうが、本当ならば厳格な査定を一気にして、そして損失は確定をさせる、それが本来なんだろうと私は思うんですね。すべて日本の銀行の決算等に疑問符がつけられるのは、逆算して業務純益の範囲内で出す、だからずるずる不良債権が後からふえてくるんじゃないか。ここまでは不良債権として表に出していいよというのを決めているからそうなっちゃうんでしょう。それが日本の銀行が信用されない、事実上はみんな粉飾だ、こう外国から思われているもとなんじゃないですか。この逆算主義というのはやめさせなきゃいけない。

 そういう意味では、強制的に全行の調査を、今度の特別検査というのは一部分だけ、大きな、市場の評価が下がった部分だけやるとおっしゃっているようですけれども、そうじゃなくて、当初私どもが主張したように、強制的にきちんとした審査をして、そして私は、場合によっては強制注入をして、そして日本の不良債権はもう問題ないんだ、問題ないというか、完全にないということはないでしょうけれども、そこまで世界を納得させないと、なかなか進まないと思うんですよ。

 結局、銀行の貸し出しが落ちているのはそこなんですよ。怖くて貸せないんでしょう。怖くて貸せないんですよ、過少資本に陥るのが怖いから。そこを安心させなきゃどうにもならない。そして、一時は、むしろ自分の自己資本比率を高めるために、健全な貸付先から回収して、そしてむしろ悪いところを残すということが起きたんですよ。だから、景気が悪くなった。景気が悪くなっている大きなもとは、総理、そうなんですよ。むしろ大丈夫そうなところでも、お金に余裕があるところはいただいちゃって自己資本を充実する、そしてむしろ危ないところを残すというようなことをやったから、後からずるずるずるずる、牛のよだれという言葉がありますけれども、そのように不良債権が出てくるということがあるんです。

 その辺について、やはりもう一度、民主党が最初に提案した再生法に戻るというようなことを私はすべきだと思いますが、どうお考えになりますか。

 それから、みずからの責任を語っていただきたいと思います。

柳澤国務大臣 逆算ということは、私、一つの日本の金融行政あるいは金融機関の姿勢についてのキーワードだと思っております。例えば、自己資本比率を維持できる範囲で不良債権を認識していく、あるいは、私が主としてそういうことについて批判を受けるんですけれども、つまり、公的資本の注入が必要でないように不良債権の額を調整しているのではないか、こういうようなことなんです。

 それで、この問題というのは結局どういうふうに解決すべきかといえば、私は、金融検査をどれだけ信用するかという問題だと思うんです。それはもう何というか、自己資本を、あるいは公的資本を注入するというようなことをやれば、多分、自己資本の低下というものを恐れないで伸び伸びと不良債権の処理をするだろうというような、そういうフレームワークも論理的には成り立ちますね。

 しかし、私は基本的に、今ちょっと五十嵐委員、強制注入まで考えたらどうかということを、まあ御信念ではない、そこをちょっとサジェストされた程度ですけれども、そういうことをおっしゃったんですが、そこが私と基本的にちょっと道が分かれるところだと考えます。

 私は、やはり今の程度の資本注入であっても、国家の管理、国家が一々銀行の経営に介入したり干渉したりするというのは基本的によくない、そう思っているのです。それは、先ほど来ずっと民主党の皆さんが、構造改革をしよう、民のものは民で、市場経済にできるだけ任せていこうということと、私の考え方の方が軌を一にしているように思うんですよね。

 ですから、私は、公的資本を注入したら伸び伸びと不良債権を正直に出してくるだろうというような、そういう論理ではなくて、厳格な検査をやる、その結果もし自己資本が低下して困るようなことがあったらとりあえず自分自身で考えなさいと、そういうことを私は今進めているわけです。

 それだけ追い込まないと、リストラがどれだけ真剣に行われたか、先ほども役員の報酬のことを言われました、そういうようなことだって本当に自分からの問題として取り組まないんじゃないか、私はそのように思っておりまして、できるだけ追い込んでいきたい、こういうように思っているわけであります。どうぞ御理解を賜りたいと思います。

五十嵐委員 しかし、金融庁自体が信頼をされていないんですね。

 新生銀行が、この間財務金融委員会で会長兼社長八城さんが来られましたけれども、そのときに、国営長銀、これは金融再生委員会が関与しての国営長銀の自己査定が非常に甘かった、だから自分たちは受け取ったときよりもその後五五%も債務者区分を引き下げざるを得なかった、はっきり甘かったと言っているんですね。

 この五五%の中には、もう破綻しちゃったところはないんですね。破綻しちゃったところは除外して五五%。物すごい高率なんですよ、要するに債務者区分を下げたところが。これはやはり明らかに、丸ごと正常だということにして、フィクションにして押しつけた、その負い目があるものだから瑕疵担保条項をつけたということになっているわけですね。この瑕疵担保条項をつけたこと自体が、厳格な査定をしてその信頼性があるはずだと言うんですけれども、実はそうではないということの証拠になってしまっているんだと思いますね。

 私は、強制注入問題がありましたけれども、何も一つ一つを助けるために注入しろと言っているわけじゃないんですよ。もうシステミックリスクが来ているんだ、そう思っているわけですよ。

 私どもが、これは何度も議論になっておりますけれども、自分で計算をしてみますと、自己資本比率、かなり正味は低いんです。前に財務金融委員会で私の方から資料を提出させていただきましたけれども、八%を超えている主要行は一つもないんですね。

 私どもが言う正味の自己資本比率、いわゆる繰り延べ税金資産、税効果会計と公的資金注入分を除くと非常に低い。中には、私どもの計算でいうと一・六%なんというほとんど破綻状態の銀行まであるわけですから、私は、これはもっと深刻に、真剣に受けとめ、もともと健全行への注入というものがフィクションであった、それは間違いであったということをお認めになる必要があると思います。

 また、九九年七月にも、地方銀行、余計大変なんですけれども、注入をされた足利銀行、北陸両銀行が、最近になって優先株の配当が不能になるというような発表がありました。このこと自体が、いわゆる健全な銀行をより健全にするために注入をしたんだということがフィクションであったということの証拠だと私は考えます。

 より厳格な一斉の検査というものを、おっしゃるとおりやったらいいじゃないですか。やったらいいと思います。もう一度、みずからの責任論も含めて見解を伺います。

柳澤国務大臣 いろいろ例を挙げられまして、日本の銀行の資本には問題があるんではないかという御指摘をいただいたわけですけれども、まず、自己資本比率というものが国際的に合意されて、こういうものは自己資本比率を計算する上で自己資本として計算していいということがあって、それが前提になって行政が行われているわけであります。

 その中から、これは自分は気に入らない、あれは気に入らないといって差し引いた後の裸っぽにして、低いじゃないかというような御議論というのは、我々もそこにいわゆるティア1の基本的な部分の、しかもハードコアの部分をふやしていかなきゃいけないということは同意いたしますけれども、ただ、議論の過程で、自分が好きなところだけ残して、国際的に認められているところでも、これは気に入らない、あれは気に入らないと差し引けば小さくなるのは決まっているわけでございまして、そういう御議論というのは、私としては議論の次元がちょっと違うように思うわけです。

 それからもう一つ、せっかく御指摘になられましたので申し上げますと、新生銀行の件は、実際上、一九九九年九月末、これが譲渡の前提になった検査後の姿でございますが、それから二〇〇一年三月末と申しますとほぼ一年半が経過しているという、この期間の問題をまず指摘させていただきたいと思います。

 それから、五五%と言われましたけれども、そのうちの四四ポイントは、これは要管理になっているものでありまして、要管理については、要注意から要管理に認識がえをすべきだということについては、いわばガイドラインの修正からしてありまして、いわば基準の変更があったということをかなりの程度反映しているんではないかと私は考えているわけでございます。

 それから、北陸銀行、足利銀行のことについても御指摘があって、これは本当に私、遺憾とせざるを得ないのですが、ただ、この点についても、実は自己資本比率については別に今すぐ問題があるというわけではないということが一点と、それからもう一つは、やはり今回の九月末決算というようなものに非常に響くのですけれども、いずれにしても、株価の低下というのは、今の株式保有の状況を反映してかなりダメージになっているということをちょっと申し添えさせていただきたいと思います。

五十嵐委員 私が好きなように数字を動かしているように言っていますけれども、そうじゃないです。市場がそういう見方をしている。

 というのは、繰り延べ税金資産というのは、予定どおり利益が上がらなければ、それは減っちゃうんですよ。そうですよね。ベテランがうなずいておられますけれども。ですから、これは確実に計算できるものではないんですね。公的資本もやがて返さなきゃいけないものですから、市場そのものが正味の自己資本比率というものに着目をしているので、日本の銀行は危ういじゃないかと見ているということが大事だということを申し添えなければいけないと思います。

 それから、新生銀行については、先ほども言いましたけれども、新生銀行の会長自身、社長自身が、当初の査定が甘かったとはっきり断言しているんですから、いや、その後の事情があったからと、それは事情もあったでしょうけれども、それ以上にやはり異常な数字であるということを私は指摘させていただきたいと思います。

 時間が少なくなってまいりましたので、次に移らせていただきます。狂牛病です。

 平成八年四月十一日の食品衛生調査会乳肉水産食品部会で、狂牛病、BSEのサーベイランスを実施するよう農水省に要請すべしだというようなことがこの部会である意味で結論づけられています。ところが、実際に厚生大臣に上げられた報告書にはこのことが含まれておりません。そして、結果として、ではサーベイランスはどうなったのかというと、何とことしになって、ことしの五月からやっとサーベイランスが農水省において行われ始めた。

 この間の間は何なんだということなんですね。認識が極めて甘い。この平成八年四月に、ちゃんと、非常に詳しい専門家が、危ないんだぞということをかなり強く警告されています。このときの認識は全く生かされていないんですね。これはどういうことかということを伺わなければならないと思います。

坂口国務大臣 五十嵐委員から今御指摘をいただきましたとおり、平成八年の四月十一日に開催されました食品衛生調査会では、同じ月の二日、三日にジュネーブで開催をされましたWHOの人及び動物の伝染性海綿状脳症に関する公衆衛生専門家会議がございまして、そこにおきまして、すべての国がBSEのサーベイランス体制を確立すべきであるという勧告が出されたものでございます。それに基づきまして、この十一日に開催されました食品衛生調査会におきましては、BSEに関します食品衛生上の対応について審議をしておりまして、英国産の牛肉等の取り扱いに関しまして厚生大臣に意見具申があったものでございます。これを受けて、厚生省では、速やかに、同じ月の二十七日にと畜場法施行規則を改正いたしまして、BSEを含む伝染性海綿状脳症を屠畜検査の対象疾病として、BSEのサーベイランスを行うことといたしました。

 また、あわせまして、農林水産省に対しますサーベイランスの実施要請が求められましたことから、農林水産省に対しまして、適切な対応と今後の連携を今要請したところでございます。

 そういう経過がございます。

五十嵐委員 要するに、要請したけれども、ちゃんと機能しなかったということなんですね。

 それから、全国の食肉衛生検査所でことしの五月から異常プリオンの検査キットが配付されて検査が始まったんですが、これは、実は個人の、農水省のお二人の技官、この方が個人輸入をして、全国の食肉衛生検査所にその検査キットを試薬を含めて配ったということなんです。いまだにそうなんです、実は。なぜかというと、これは新しい試薬なものですから、輸入の承認が受けられない、今申請中だそうです。これがどうしていまだにこんなことをやっているのか、不思議でたまらないわけですよ。

 私は、きちんとこのことができなかったために数が間に合わなくて、いわゆる家畜衛生保健所というところで検査をされるようになったのはこれからなんですね。これからこの補正予算に予算がつけられて、やっとその分が配られるんじゃないですか。本当に歩みがのろいと言わざるを得ないわけであります。牛だからのろいのかもしれないけれども。

 平成十二年に北海道だけで起立不能の牛が二十六頭、神経麻痺の牛が四頭、これが家畜保健衛生所に搬入されているわけですね。このうち、では本当にこの異常プリオンがあったのかどうかというのはわからないのです。もう焼却されちゃっている。死んで焼却されちゃっている。ですから、これは検査しようがなかったわけです。すなわち、食肉になる分だけ検査をして、その他の病気の牛については試薬が間に合わないから検査しなかった。こういうことですね、副大臣。ですから、これは非常に対応が遅いと言わざるを得ないわけです。

 厚生省にも農水省にも責任があると思いますが、この点について簡単に言ってください、時間がないですから。

遠藤(武)副大臣 委員は、厚生省から要請を受けておりながら何もしなかったとおっしゃいますが、私どもは、厚生省から要請をいただくに先立ち、四月八日にもう既に獣医学の権威によるBSE検討委員会を行っております。そして……(五十嵐委員「いつの四月八日、ことし」と呼ぶ)いや、八年ですよ。四月十二日には厚生省ですから、その四日前です。そして、その月のうちに、二十七日には政令を改正いたしまして、全国都道府県知事あてに通達をいたしております。

 さらに、翌年には国会の御承認をいただいて家畜伝染病予防法の改正を出しておりまして、いわば適切にその時点においては対応したと思っていますし、各家保に対しましてその指導が徹底するように通達もいたしております。

五十嵐委員 しかし、イギリスであれだけ話題になった肉骨粉については全く目が行っていなかったのですよ、実は。病気の牛はそのまま化製場というところへ運ばれて処分をされる。その中には肉骨粉業者に行っている部分があるのです。それから伝染病の牛もそうなんですよ。結局、伝染病というか、病気で死んだ牛も、これは肉骨粉になっている可能性が非常に高いわけですね。その間、何の検査もされていないのですよ。私は、それはおかしい。生体検査はありますよ、普通の生体での検査はあると思いますけれども、このことは、私はやはり農水省に問題があったと思います。

 それから、今度の補正予算について、杉並区が単独事業で、精肉、小売店の冷蔵庫に保管されている牛肉を杉並区の予算で焼却処分する、そういうことを決められたようであります。こういうことが消費者に安心感をもたらすんだと思います。

 今まで屠畜場にある部分は全部安全ですよ、今までの肉骨粉は全部焼却処分しますよということを言っているんだけれども、それが始まる前に既にお店屋さんが仕入れて、そして冷蔵庫に眠っているものがあるから心配じゃないかというのが消費者でしょう。ですから、その分をどうするかという非常に大事なことが抜けているんじゃないですか。

遠藤(武)副大臣 店頭にある食肉についてだと思いますが、厚生省では九月十九日に三十カ月齢以上の屠畜については検査をする、それから十月九日になりましてからは全頭検査に入る、こういうふうになりました。そこで、全頭ということになってから十八日以前の食肉をどうするかということが出てきたわけであります。

 我々としましては、委員御指摘のような焼却等のことも視野に入れて、政府において責任を持って管理をしていく、こういうつもりでおります。

五十嵐委員 ぜひ予算措置をきちんととって、焼却処分、責任持ってやっていただきたいと思います。

 それから、外務省にお尋ねをいたしますが、郵政省と並んで在外公館には渡切費が認められております。一館当たり一体どのぐらいになるのでしょうか、それから全体ではどのぐらいになるか、数字を教えていただきたいと思います。

小町政府参考人 お答えいたします。

 平成十三年度の外務省予算におきまして、約七十八・九億円の渡切費を計上しております。各公館に対しましては、前年度までの執行実績を見ながら、必要額を各在外公館に送金しております。

 公館ごとの渡切費送金額につきましては、十二年度の場合、定員五十名以上の大規模公館で約一億、平均で一億四千三百万円程度でございますし、定員二十名前後の公館の場合には四千万程度でございます。

五十嵐委員 これはすごい額なのですね。いわゆる機密費と言われるのが問題になりましたけれども、あれがこの三分の一以下ですか、その三倍ぐらいの額が、七十八・九億円渡し切りで渡されている。

 そして私どもは、外務省大臣官房会計課が作成した「在外公館経理と公館長、出納官吏の心得」というのを入手しているわけですけれども、これは、多額の繰越金を生じている場合は、例えばソファーやいすの張りかえをしろとか、カーペットのクリーニングをしろとか、規格外の食器を買えとか、事務所や公邸の庭の大型清掃をしろとか、果ては観葉植物をレンタルしろとか、こういうことで、無理にでも使えという指示を出しているのですよ。

 これはとんでもない話ですよね。大型の備品類は庁費で買えるのですから、これはちゃんと庁費にすればいい。あるいは一々送金するのが大変だということであれば、年に何回かごとにこれはお金を渡して、後で精算をするというやり方でもいいので、渡し切って使い切れというようなのが七十八・九億円もあるというのはとんでもない話だと私は思うのですが、これはどう処理されますか。外務大臣、お願いします。

田中国務大臣 外務省の予算は、大体、年平均七千六百三十四億円ございまして、機密費と言われているものが五十五億円、これは十三年度でございまして、それのほかに、在外公館のみでございますが、今委員が御指摘なさった渡し切り金というものが七十八・九億円ございまして、これは在外公館の運営経費として使っているというふうに承知をいたしております。さらに、まだ諸謝金というものがこれは本省とそれから在外公館にもございまして、これが百三十四億円もございます。

 これが適正に使われているかどうかにつきましては、私は着任以来六カ月間たって、鋭意調べていただいておりますけれども、まだ細部についてはなかなか正確にわかっておりません。したがいまして、本当に国民の皆様の血税、そしてたくさん失業者が出て、先ほど来、午前中の議論の中にもございますけれども、倒産もありリストラもあり、そうした経済状況が厳しくなっている中で、果たして本当に適正にこれが使われているかどうかについては、ここでもって外務省が生まれ変わるために、そしてやはり信頼を外務省が得るためにも、このことについて改めて見直しをするということを私はさせていただきたく存じます。

 そして、平成十四年度の予算に計上を行わない方向であると事務的には検討いたしておりますが、計上しないで、ほかの費目にまたごっそりのっければそれまででございますから、私の責任におきまして、この渡し切り金及び諸謝金等につきましてはしっかりとチェックをし、そして結果を国会にも御報告ができて、納税者の皆様からも、なるほどね、外務省はここで改革したんだと思っていただけるように、責任を持って仕事をさせていただきます。

五十嵐委員 しかし、外務省は今、とてもそんなどころではないのじゃないかなと思うんですね。とにかく人事をめぐっても、私は、外務省は何か、トップの外務大臣に恥をかかせたり足を引っ張ることを第一目標にしているのじゃないか、こう思うわけですね。

 人事は、これはトップの人間に従わなければいけないと思います。それによって問題が起きたら、これは外務大臣が責任をとらなければいけない、総理大臣が外務大臣の首を切ればいいだけの話でありまして、基本的には、組織というものはすべからく、それは組織の上の者がきちんと責任をとらなければいけない。外務大臣も、下の者が従わないというのをぐちぐち外へ言うわけですけれども、それも含めて外務大臣の責任なのですから、私は、きちんと外務省を把握するということをやってほしいし、できないならやめてもらわなければいかぬと思うわけです。

 事務方をとかく官邸がかばっているなんということも言われるのですが、この外務省の人事のあり方について、私は、総理大臣がもっとしっかりしてほしいと思うのですが、それを伺って、私の質問を終わります。

野呂田委員長 時間が参っておりますので、簡潔にお願いします。

小泉内閣総理大臣 省内の人事は、大臣が事務次官初め部下とよく相談して、外に漏らすものじゃないんです、人事というのは一生を左右するものですから。そういうことをよく考えて、省内協調体制をとるのが大臣の責任でありますから、頑張ってもらいたいと思います。

野呂田委員長 これにて岡田君、原口君、五十嵐君の質疑は終了いたしました。

 次に、中井洽君。

中井委員 自由党の中井洽です。

 補正予算の審議に自由党として基本的なことをお尋ねいたします。経済問題の詳しいことは明日中塚議員が、また狂牛病やあるいは郵政省の特定局の渡し切り経費、また今話題となりました外務省の問題等は、明日締めくくりで我が党の達増さんがやることにいたしておりますので、五つ、六つ、基本的なことで総理にお尋ねを申し上げます。

 最初に、今回出されました補正予算、内容を見ますと、どうもよく、どういうことか考えたんですが、なかなか賛成しにくい予算かな、こう思っております。

 一つには、やはり景気が落ち込んで、計算をいたしますと税収がかなり落ち込む、この落ち込んだ分を赤字国債で埋める、こういう予算であろうか。そして、少しこの三十兆との間の余裕のある分だけ雇用対策、中小企業対策をくっつけた。あと公共事業予備費三千億とか予備費の減額一千億とか、四千億ほど減額をしてあるようなことを書いてありますが、これはこのまま予算でお使いになって、緊急テロ対策費や狂牛病対策費や災害対策費にお使いになれば、それだけのことでわざわざ補正に出されることでもないだろう。こんなふうに思い、現行日本経済の現状から見ると支えにもならないような補正予算、こう言わざるを得ないと思いますが、総理大臣はいかがお考えですか。

小泉内閣総理大臣 限られた財源の中でいかに効率的に使うかということで、苦心して作成した予算でございます。

中井委員 先ほど、午前中の与党の方々の議論を聞いていますと、今回、三十兆の範囲で国債発行をとどめたことは公約どおりだ、しかし、この後はもうこれを破ってでも日本景気のためにやれ、こういう御議論が圧倒的でございました。ある方は、小泉さんを尊敬すると言いながら全然違う政策をとうとうとぶっていらしたわけでございますが、私は、総理が三十兆円守り通されるというのなら、これは公約でありますから、政治家としてお守りになるというのは一つの姿勢だ、立派な姿勢だと評価をいたします。

 一つ御確認を申し上げたいことは、これは来年の予算も、三十兆円、こういうことで頑張る、先ほど、危機的要因がなければ三十兆枠でいくんだ、こういうお話があったやに思いますが、念のために御確認をさせてください。

小泉内閣総理大臣 今いろいろ言われているのは、小泉の目標は来年度じゃないか、三十兆円というのは、十三年度はどうでもいいんだという議論が横行しているわけですよ。

 しかし、来年度三十兆円以下に目標を掲げているんだから、ことしも私は守りたいということで、守りながら今回の補正予算を提出しているわけでございます。

中井委員 今回の税の減収の予測、私はこれは甘いと思います。ちょうどこれは三十兆円になるような計算をされておる、財務省はなかなかくせ者でございますから、やっておられる。一月、二月になって、税が足りない、こういったときはどうされるんですか、三十兆もう使い切っちゃった、これが一つ。

 それからもう一つは、アフガンの復興国際会議というのに日本は熱心であると聞いております。また、緒方さんをアメリカとの共同議長に推して日本は頑張ろうとされておると聞いておりますが、これはこれで結構でございますが、ここで議長国をやるということは、かなりの負担を迫られるということではないのか。

 そうすると、来年三月までに、年度内にこの二つのことが起こったとき、総理はどうされるわけですか。

小泉内閣総理大臣 私が四月に総理に就任して以来、来年度予算、いかに効率的に財政規律を保ちながら編成するかということで腐心してきたわけでございますが、現在でも、税収が五十兆円程度の状況において、三十兆円以下に国債の発行をおさめようという努力をしております。

 そこで、税収が大分落ち込むのじゃないかという見方が今多数を制しておりますが、これは最後まで、十二月へ向かって努力するわけでありまして、どういう削減策を講ずるか、また、税収が落ち込むんだったらばどういう増収策をとるか、両面から考えているわけであります。その点につきまして、テロ発生以来、状況に激変があれば、あるいはまた経済状況が厳しければ、どういう対応をすればというのはこれからのことでありますが、私は、来年度の予算につきまして、国債発行三十兆円以内で今編成すべく最大限の努力をしている最中でございます。

中井委員 今回の補正予算で、十三年度の予算規模は八十三兆七千百三十三億円、去年の、十二年度の予算が八十九兆七千七百億円でありますから、約六兆円財政の出動が少ないわけであります。来年はもっと景気が悪くなる。そうしますと、税収がかなり落ち込む。そこへ三十兆の赤字国債発行しかやらない、こうやりますと、財政規模がさらに小さくなる。

 それで、日本経済下支え、総理は、財政出動して景気回復するんなら直ちにやる、こうおっしゃっていますが、景気回復どころか、今日まで辛うじての下支えをやってきたんじゃないか、この下支えを今の時期お取りになるのか、これは大丈夫か、心配をいたしているところでございます。

 そこで、この間からずっと考えておったのでありますが、総理の今おやりになっていらっしゃるあり方、そして国の経済状況のあり方、橋本内閣のときとよく似ている。

 橋本内閣も、やっちゃいかぬときに財政構造だ、こう言われて、キャップ制をとられて、縮小型の予算編成をなさった。それだけならよかったけれども、行政改革だ、社会構造だ、経済構造だ、金融システム改革だと六つの改革を言われて、消費税を上げられる、社会保障の負担はふやされる、こういうやり方をおやりになったわけでございます。このときと本当に似ている。

 あのときはちょうどまた、アジア経済の危機というのがございました。今回はまたテロで世界不況、こういうのを言われているわけでございます。失業率は、当時三%台だったのが、橋本さんの縮小財政でにわかに四%になった。今五・三%。まだ橋本内閣のときには、株価は一万五千円を割らなかった。しかし、今は一万円かつかつのところである。

 こういう状況下で財政構造改革、聖域なき構造改革、こういったことを一遍におやりになる、このことは果たしていいのだろうか。私は、改革、賛成であります。やっていただきたいし、私どもがお手伝いできることは幾らでもお手伝い申し上げる。しかし、私は、この改革に優先順位をつけるべきだ。全部一遍というのは、到底今の景気の状況から見て無理じゃないか。三十兆円をお守りになる、そして財政構造改革をやるんだというのなら、例えば金融面を少し考えたらどうだ。

 総理は御就任以来、不良債権を完全処理すると言われてきた。しかし、夏以降は、正常化だ、こういう言い方に変えてこられた。正常化というのは、僕らから言わせれば、今不良だということでしょう。だけれども、柳澤さんがずっと言っていることは、今銀行はみんな健全だとおっしゃっている。不良債権処理できるとおっしゃっている。それなのに、二、三年で正常化だ、不良債権正常化だとおっしゃっている。全然違うじゃないか。

 だから、ここのところ、いろいろなニュアンスや、微妙な、デリケートなことがあることは承知していますから、三十兆円を守って頑張る、マイナス成長でもいくというのなら、この不良債権処理と言われるものだけでも少しおくらす、そのかわり特殊法人の改革等を早める。こういう強弱があってしかるべきである、こう思うのでありますが、橋本内閣と一緒で全部おやりになる、しかも孤軍奮闘されておる。

 そうすると、橋本さんのときも十一月のちょうどこのころですよ。僕は特別委員会の理事をしていましたから覚えていますよ。財政構造改革推進特別法というのをつくりました。そこで、つくった途端に自民党の方はわあっと騒がれて、年末二兆円特別減税。一月か二月には、予算をやっている最中に、何兆円という補正予算をぼんと組んでキャップを外してしまった。それとよく似ている。

 私は、今回、小泉さんがまたこんなことで改革の志、矛を折られるということは、まことに痛恨のきわみだ。小泉さんは頑張るとおっしゃっている。しかし、その頑張り方はもう少しお考えになったらどうですかと思いますが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 まず、橋本内閣の構造改革と似ていると言っていますが、大きな違いがあるのです。それは、あのときは消費税を三%から五%に引き上げましたね。そして、行政改革をしなければいかぬ、財政構造改革をしなければいかぬ、各省庁の予算を一律切り下げました。

 しかも、民間でできるようなことはすべて民間に任せようということに対して実に消極的でした。私の、郵便事業民間参入さえも反対しました。行政改革の、簡保の民営化、郵貯の民営化の検討もひっくり返しました。道路公団の民営化なんか全然考えなかった。政府系金融機関、各省庁別に何で国営の金融機関がある必要あるのか、見向きもしなかった。

 今回、特殊法人改革、民間でできることは民間に任せよう。道路公団を初め、既に住宅金融公庫を初め、民営化、廃止、着々と進んでおります。いわば税金のむだ遣い構造をなくそうという点においては大きな違いがある。一律削減をとっていません。五兆円削減して二兆円ふやす。各省庁は、むだなところは削って、必要なところはふやす。方針を明示しています。なおかつ、消費税引き上げということは全く考えていません。

 同時に、あのとき何で行政改革が必要だったか。国債発行が二百兆円を超えたんです。このままほっておくと三百兆円を超えるから、もうこれ以上国債を増発できないということで、財政構造改革、行政改革が始まったんです。わずか四年たって、どうですか。二百兆円を超えて三百兆円になんなんとするどころじゃない、三百兆円を超えて四百兆円を超えようとしているじゃないですか。

 こういう状況で国債を増発して、本当に景気が回復するんだろうか。私は、このような状況で国債を増発して景気が回復するんだったらとっくにやっていますよ。国債を増発して公共事業をふやして景気回復する、そういう状況じゃないから今苦労しているんです。そこをよく理解していただきたい。橋本内閣の構造改革とは全く違うということを御理解いただきたい。

中井委員 総理、興奮しておっしゃいますが、あのときは、国債発行二十二兆円になったといって大騒ぎをして、そして、キャップ制以下、財政構造特別措置法という法律までつくって、皆さん方がおやりになった。ところが、たちまち三・四%であった経済成長が〇・二%に落ち込む。こういう中で国債を大増発した。これはしたんですよ。それは、橋本さんのときに減らしちゃったから、あのときにもう一度拡大政策をとっておれば、日本経済は成長過程に乗っておったかもしらないのを、政府・自民党が早とちりをされて、財務省の財政構造だという声に押されて無理やりおやりになって、日本経済の成長の芽を摘まれた。その結果、百十数兆円出さなきゃならないほど経済が落ち込んだんです。

 そのときはまだそれぐらいで支えられた。ここ数年間支えられたのは、アメリカの経済がよかったからじゃないですか。だから、輸出は堅調だ。また、減税に支えられて、私どもが主張した減税に支えられて、失業者はふえつつあったけれども、消費もそう減らなかった。この二つがあって、日本経済は今日まで持ちこたえてきたんではないでしょうか。ここへ来てアメリカは全く読めない、輸出がどんどんと厳しい環境になってくる、失業者が五・三%という数値、さすがに国民の消費も陰りが出てきた。こういう中で同じことをおやりになったら、底抜けしてしまわないか。

 私は、増発せいと言っているわけじゃありません。三十兆をお守りになるのなら、ほかのことを少し我慢して構造改革をお進めになるという、優劣、強弱、こういったものが必要じゃないか。マイナス成長でも構わないとおっしゃるけれども、お互いマイナス成長の中で育っていないじゃないですか。国民もそういったことになれていない。本当にこの上にまだ国民に我慢をしろ、こう言われるのか。私は、そこのところ、やり方、工夫があるだろう、このように思いますが、再度御答弁をください。

小泉内閣総理大臣 構造改革を進めないでこのまま景気対策で国債を増発すれば、それは今後改革が進むのかというと、私はそう思えないのです。改革なくして成長なしというのはそこを言っているのであって、たとえ低成長でも、今のやらなくてもいいことを役所を初め特殊法人等がやっているもの、これを一度壊して、効率的なものにしていかなきゃならない。それは、プラス成長だろうが低成長だろうがマイナス成長だろうが、どうしてもやらなきゃならないことを今やろうとしているのです。

 そして、三十兆円程度はもう仕方ない。もう四百兆円を超えようとしているけれども、これに対して今三十兆円発行しても、二十兆円程度はもう新規の政策需要に使えない状況。将来のことを考えると、景気がよくなったって、二%、三%成長してもこれは返せっこないじゃないかという状況をよく考える必要がある。一時的に国債を増発して公共事業をふやしたとしても、これは予定どおりのプラス成長が出るかどうかわからぬという観点から、私は、できるだけ効率的な財政配分をしなきゃならないと思う。

 そういう中で、どの程度世界情勢が、また世界経済情勢が変化するか、もうちょっと見きわめなきゃならない。新たにテロという新しい要因が加わってまいりました。世界同時不況にならないように、世界第二の経済力としての責任は果たさなきゃなりませんが、それだけに、将来の持続的な経済再生を果たすためにも、何としてでもこの構造改革をなし遂げないと、これは立ち直らないじゃないかと。

 今、不良債権処理というのは日本の多くの方々も言っておりますが、特に、これは分かれております。早く不良債権処理しようという議論と、そんなに早く処理したらもっと失業者が出て不況になるから大変だという、まさに賛否両論なんです。どっちをやっても批判するのはわかっていますよ。

 しかしこれは、不良債権を処理しないと今の経済再生の足かせになるだろうということで、小泉内閣としては二、三年のうちに処理しようということを決断しているわけですから、これは断固としてなし遂げて、金融制度の確立を急がなきゃならない。金融状況においても、あるいは金融システムの危機が起こらないように、そして有効な投資、融資が行われて、将来発展する産業に有効に資金が行くような金融体制をつくらなきゃいかぬ。そのためには、あえて、この二、三年大変だけれども、低成長を覚悟しながらも、あすの持続的な発展を目指して、今多少我慢してくれということを言っているわけでございます。

中井委員 思いはよくわかるのでありますが、本当に今、この経済状況であれだけのマイナス成長が心配されている中で、二、三年でおっしゃる処理ができるのか、ここのところを心配いたしております。

 同時に、総理のおっしゃっている構造改革が着々と進んでいるというのなら、私どももそれはそれでと思わせていただきますが、なかなかそこのところも、与党には与党の御事情はあるんでしょう、進んでいない。

 総理は、これを言ったのは初めてだ、これを検討させたのは初めてだ、こうおっしゃるけれども、もう六カ月以上たってまだ具体的な成果というのが出てこない。例えば、株式市場の活性化ということで法案が出てくる。それを見ていると、それは一時的な株価対策ということではあるけれども、日本の資金の流れ、預金に偏っている資金の流れが株式市場に行くような税制かというと、決してそうではない。

 先ほど、財政、金融がきかない、こうおっしゃったけれども、それは、これだけ国債増発して国債の金利が下がりっ放しなんて信じられないことではないでしょうか。ところが、現実には下がっているから、この補正予算だって八千八百億円も金利負担が、国債の利払いが少なくて組めているわけであります。本当だったら、これだけ国債発行したら国債の金利というのはもっと上がるわけであります。ところが下がる。これだけ不況で、これだけ失業者がいながら、やはり預金というのが減っていない。ここら辺が総理の構造改革をお考えになるポイントだと僕は思うんですね。

 そうすると、僕は、郵政民営化、反対でありますが、それでも、郵貯ということに関して考えるべきときが来た、国民の投資というものがやはりもっと証券業界等へ拡散をしていかないとだめだ、こう思うのです。ところが、郵政三事業の小泉さんの御議論、長いことおつき合いいたしました。もう十数年おつき合いしてまいりました。今ここへ来たら、全然違うことになっているじゃありませんか。郵貯はどこかへ行っちゃって、郵便の民間参入になっているんじゃないでしょうか、私ども聞いているところでは。それで預金は一千万円、こういうことでしょう。それじゃ、預金が政策的に構造的に変わって証券の方へ少し回っていくというようなお金の回り方をするのかといったら、何にもしていない。

 そういう意味で、構造改革というのは、総理は一生懸命お思いになって、お言いになっていらっしゃるが、実は進んでいないんじゃないか。そういうときに、マイナス成長はする、無理やり銀行の不良債権というものを処理し切る。これはもたないんじゃないか。このことを心配しておると私どもはあえて申し上げざるを得ません。

 ここのところ、橋本内閣と違うとおっしゃるけれども、橋本内閣も、ちょうどそういう時期に省庁の再編、こう言われて、自民党内を巻き込んでわあわあになって、今大臣それぞれお仕事、お務めの役所の名前になったわけでございます。

 これは、今特殊法人の民営化、廃止、こうおっしゃっておられますが、私どもから見ますとさっぱり進んでいない。結局焼け太りになるのか。RCCに関して、日本政策銀行、どうして五百億円政府は投資するんですか。これも焼け太りじゃないですか。これは民営化するんじゃないんですか。今回またそういう仕組みになってきた。だから結局、マスコミでわあわあ言われるけれども、最後には省庁の統廃合と一緒で、合併して名前が変わるぐらいが関の山じゃないか、私はそのように思っています。

 そういう意味で、私どもの党は明日、特殊法人の廃止並びに民営化、これの一括法を提案いたします。ちなみに提出者は中井洽でございます。ひとつぜひ、これは三年間で決着しよう、例外なし。乱暴なやり方かもしれませんが、一つ一つ役所に相談をしておったら、いかに国民の支持の高い小泉さんといえども進まない。ここのところをお考えいただき、ぜひ私どものこの法案にも御理解をいただく、このことをあえてお尋ねをいたします。

小泉内閣総理大臣 いや、それは、特殊法人の改革法案を出していただくことは歓迎したいと思います。協力できること、また取り入れたいものは取り入れていきたいと思いますが、今、特殊法人等の改革が全然進んでいないというお話ですが、随分進んでいるんですよ。すぐ、半年や一年でできるわけないじゃないですか、法案を出さなきゃいけないんですよ。独断専行で一月や半年で変えるなんてできるわけないんですよ、これは。

 ちゃんと準備をして、法案を出して、そして変えるべきものは変える、そういうことでありまして、既に前倒しして、これから十一月下旬には、今までできなかったであろう改革案を出していきますから。そして、先ほど言った郵政民営化は進んでいないじゃないかと言っていますけれども、これは十五年に公社化というのは決まっているんです。この公社化する際に、民間の郵便事業参入さえも阻止していたじゃありませんか、今まで。それを今度は、確かに与党には反対論がありますよ。しかし、そんなことはさせませんよ、私は。全面民間にさせますよ。たとえ自民党が反対したとしても、これは断固としてやり抜きますよ。そうしてから、公社化してから民営化のことを考える。

 少なくとも、今までの継続した内閣を私は引き継いでいるんですから、この十三年度予算も私がつくった予算じゃないんですよ。小泉内閣がつくった予算じゃないんですよ。私が内閣を引き継いだときは既に決まった予算編成のもとで継続してやっているんですから、継続すべきもの、変えるべきもの、これから徐々にやっていかなきゃならない。それを半年や一年でやれと言う方が無理ですよ。二、三年はかかる、改革のために。私の衆議院の任期というのはまだ三年後ですから、実績を見た上で最終的には国民に判断できるような姿を見せなきゃならないと私は思っております。

中井委員 私どもの出しております、あした提出いたします法律も、三年間で民営、そして廃止、これだけでございます。あしたすぐできるとは思っておりません。しかし、いつまでもいつまでも、半年や一年、来年になったら一年や二年、こう言われたのではたまらぬわけでございまして、国民の我慢の限度もそろそろわいてきた、こういったこともお考えをいただきたいと思います。

 もう一つついでに、私が提案をしております法案についてお尋ねをいたします。

 去年、国会終盤間際に、自由党は、私が提出者で、選挙法の、定数是正の法律を出してございます。審議はされておりませんが、今、委員会に継続審議ということになっております。これは、現行制度を守って一票の格差二倍以内、これがまず一つであります。それから定数削減十五名、こういうことをいたしてございます。これは、自自公の政策合意で五十名定数削減をお約束いただいて、そして二十名、おととしの暮れから正月にかけて御苦労いただいて削減をいたしました。私どもは、まだこれを実行するために頑張る、こういう思いで、今回、十五名定数削減、こういうことで提案をいたしました。

 与党内では、何かわけのわからぬ選挙区の制度改正も含めて議論がされて、あるいはそれがあっちへ行ったりこっちへ行ったりという話が漏れ聞こえておりますが、選挙制度の改正というのは、やはりルールにのっとり、各党が国民の前で堂々とやれる、こういうことでなければならない、こう思っております。

 それからもう一つは、やはり一票の格差というのを二倍以内にきちっとおさめる、これは、大体二倍とかどうだということではなしに、選挙区画定審議会が国勢調査が出るたびに二倍以内にすぱっとおさめていく、このことが必要だ。それと同時に、昨今の経済状況にかんがみて、定数削減というのをきちっとやっていく、このことが必要だと考えておりますが、自民党総裁としての御意見を承ります。

小泉内閣総理大臣 この選挙制度改革というのは、各党から今いろいろな議論が出ております。そして、今回、国勢調査を踏まえまして、一票の格差を是正する勧告案が年内に出ます。そういうのを踏まえて、この選挙制度改革は、各党の意見を十分聞きながら、議論をよく見守って最終結論を出さなきゃならないと思いますが、大事なのは、やはり一票の格差を二倍未満に抑える、これは最大限努力しなきゃいけないと思っております。

 そういう中で、今の小選挙区比例代表制がいいという人と、あるいは中選挙区制がいいという人と、あるいは定数削減をもっとやるべきだという議論がいろいろ出ていますから、その議論を踏まえて、私は、できるだけ各党の理解が得れるものを出したいなというふうに考えております。

中井委員 過般の参議院選挙で、与党側はにわかに、党利党略、党名を書いてもいい、個人名を書いてもいいという選挙法に改正を図られました。しかし、国民の大半は、圧倒的多数というか大半の方は党名でお書きになった。それは、著名人も出られ、選挙違反までしてかなりの運動をなさっても、そう大して票をおとりになれなかった。

 このことを考えると、まあ、扇先生は見事に御当選で、立派な票をおとりになったんでしょうが、やはり政党中心の選挙制度でいくということについて国民の御理解はきちっと進んでいるんだ、そのことを前提に政党交付金を僕らはちょうだいし、そして小選挙区もやっているんだ、ここのところを忘れずに議論をしていかなきゃならない、あえて申し上げておきます。一刻も早く、私どもはいつでも議論ができると考えておりますから、自民党内もきちっと対応をしていただくよう要請をいたしておきます。

 次に、テロ関連に関して一つだけ確かめておきたいことがございます。

 もうじき基本の政策がつくられる、こう聞いておりますが、その中でイージス艦の派遣ということが議論されているやに漏れ聞こえてまいります。テロが始まり、アメリカが戦争を行ったときから、このイージス艦の派遣ということについては論議があったところでございます。

 今国会、小泉総理の戦力という認識、これについてもいろいろな議論がございました。この中で、私は、イージス艦というのはアメリカと日本しか持っていない大変性能の高い艦である、こう考えておりますが、日本の防衛ということに使うだけなら防衛力であろうけれども、インド洋まではるばる行くと、これはもう立派な戦力行使だと言わざるを得ない、こう思っています。

 また、外務省に、この間の質問の続きで、米軍はどのぐらい今日本から出動してアフガンとのテロの戦いに行っているのだ、こう聞きましたら、資料はない、これだけの返事でありましたけれども、これはかなりの部隊が出ていることは事実でありましょう。

 日本の防衛ということに関してやはり心配もしていかなければなりません。日本の近辺には、アメリカがテロ国家だと言っておる国もあるわけでございます。そのときに、日本防衛の一番の中心でありますイージス艦をやすやすと出していく。何のために出すのだといったら、情報収集だ、こうおっしゃる。しかし、テロ関連法には情報収集という項目はなかった。イージス艦をまさか輸送に使うわけではないでしょう、補給に使うわけではないでしょう。そんなことを考えると、僕は、イージス艦四隻は日本の防衛を安心なようにしておく、このことが大事だ、こう思いますが、総理はいかがでございましょうか。

中谷国務大臣 現在、基本計画の策定について協議、検討をいたしておりますけれども、まだ具体的に内容が固まっているわけではございません。

 イージス艦については、広範囲なレーダーや捜索能力、また指揮通信能力を有するといった特徴を有しておりますけれども、これらテロ対策特別措置法に基づく協力支援活動等を行う場合にこれを派遣するか否かということにつきましては、今後検討を行っていくものでありまして、現在、お答えできる段階ではございません。

 なお、情報収集の必要性は、中井議員もよく御承知だと思いますが、情報がなければ、どんな立派な部隊があっても動けません。阪神大震災の災害派遣等にしましても、やはり、どこへ行って何をするかというのを立案するには情報収集が必要でございまして、我々としては、この情報収集の面においては、今後とも十分情報収集をして、立派な活動を行うことが必要だというふうに思っております。

中井委員 お答えをいただきまして恐縮ですが、例えば、アメリカ軍がアフガンへ空爆を開始した、このときでも、お隣のパキスタンの大使館に外交官といいますか、自衛隊、防衛庁から派遣されている職員は一人であったわけでしょう。このときに職員をふやして情報収集なんてしていないじゃないですか。していないですよ。

 ああいう事態が起こって、直ちにパキスタンの大使館へ防衛庁の職員を派遣して情報収集した、こう言うなら情報収集にふだんから努めていると言うけれども、何もわからぬと言うと失礼ですが、何か与党の幹事長三人が行って、あの港は安全やとか言うたって、そんなことで何が情報収集ですか。もう少し、本当に軍を使う、これは戦争に行くということでしょう。僕らは反対している。もっときちっとした対応、きちっとした答えをやっていただきたい、このことをあえて申し上げて、質問を終わります。

野呂田委員長 これにて中井君の質疑は終了いたしました。

 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。私は、きょうは雇用対策について質問したいと思います。

 今、リストラにより働き盛りのお父さんが失業して、子供が学校の授業料を払うのも大変、進学を断念するなど、家族を含めた痛みというものが広がっています。完全失業率五・三%、内閣府の試算による、長期に就職活動をやったが、できないのであきらめた四百二十万人を含めて計算すると、約八百万人、失業率は一〇%を超えて、十人に一人以上が失業という本当に大変な事態になっております。

 そこで、最初に総務省の資料からつくったパネルで少し見ていきたいと思いますが、ことしの二月、三月、完全失業率は、これは四・七%、そこからぐんと上がってくるわけですね、五・三%へと。五月から、対前年比で雇用がどうなっているかということを見たときに、五百人以上の大企業の雇用がどんと落ちてきているわけですね。大企業の雇用が減るのに伴って失業率はぐんと上がってきている。実は、一年前にも大企業の雇用が減ったときに失業率が上がっているのですが、このころは、まだ大企業の転籍、出向等を中小企業が受け入れるという、いわばショックアブゾーバーの役割を中小企業はしていたのですが、この九月は、とうとうその中小企業も減ってしまう、こういうふうになってきております。前年同月より九月の常勤雇用者は五十三万人減って、その中で大企業による雇用の減が四十五万人ですから、大企業による雇用の減すなわちリストラが失業率を引き上げているということは、これは政府の数字の上でもはっきりしていると思うわけです。総理はこの事実は認識しておられるかと思うのですが、どうですか。

小泉内閣総理大臣 雇用の厳しさも、また大企業が今リストラ等生き残りに必死である、特に中小企業は非常に困難な状況に直面しているという認識は持っております。

吉井委員 この大失業の状態の中で、自動車、電機大手の二十社とNTTと合わせますと、約三十万人の新しいリストラ計画というのが出されてきております。この三十万人の大リストラ計画を進めていくのに伴って、実は関連する中小企業の倒産や失業というものが新たに加わってまいりますから、失業率はますます大変なことになってくる、このことは明らかであります。

 さて、ITの関連の大企業は、実は昨年まで大きな経常利益を上げて、IT革命だといって設備投資と増産に走りました。それが、今度は急に構造改革だといってリストラを進めているというのが今日の状況です。電機大手六社、東芝、日立、松下、NEC、富士通、ソニー、これで見ますと、ことし三月期決算では、実は六社で一兆一千六百五億円の経常利益を上げているのです。対前年比で見ても、五千四百二十七億円も利益を伸ばしているのです。来年三月決算は下方修正で赤字になるからといってリストラをやって、再来年の二〇〇三年は、例えば国内だけでも九千七百人のリストラを進める富士通一社だけでも、四千億円の営業利益を上げて、株主利益率は一〇%にするとしています。

 ほかのIT大手電機各社も全部黒字決算になる見通しを出しているわけですが、何千人もの労働者を首切らないと、この整理解雇四要件の一つに挙げられている、企業の維持や存続ができないほど差し迫った必要性のある企業というのは、実は一つもありません。さらにもうけるためのリストラをやろうとしている。

 そこで、総理に伺いたいのですが、雇用対策というのだったら、やはり新しい失業者を出さない対策こそが必要だと思うのですね。そのためにも、リストラ競争と言うべきこうした大企業の大量解雇、リストラをストップする、このことが、総理、必要なのではありませんか。

小泉内閣総理大臣 今、大企業合わせて、リストラ三十万人というお話がございました。しかし、一般、新聞とか、五千人とか一万人とか二万人とかリストラという記事が躍りますと、その数が首切られると誤解される向きもあるのですが、よく実情を聞いてみますと、自然退職者あるいは関連企業にうまく再配置、そういう点から考えますと、実際の失業しなきゃならない人はかなり減ると。

 現に、日産も一時、一万四千人のリストラという発表をしましたけれども、現実にはほとんど失業者は出なかった。退職者なり、あるいはほかの中小企業に移ったり、うまく配置が進んで再建をなした企業もあるわけでありますから、大企業としても、私は、リストラというと全部首切れというのは早計だ。

 それぞれ、大企業としても生き残りのために必死ですし、そして従業員のこともよく考えて、それぞれの経営の刷新に、いかに利益を上げて生き残りを図るかということを苦労されているわけでありますので、労使が協調しながら、これからの新しい時代に対応できるような生き残り戦略をとるべきではないかと思っております。

吉井委員 今おっしゃったので、一つだけ御紹介しておきますと、私が例えば富士通で言った九千七百名というのは、これは人員削減の数なんです。異動などを含めた対象人員というのは二万一千百名だ。これは、総理もインターネットで見られたらすぐわかる話なんです。

 ですから、今大事なことは、失業者がどんどん出てくればますます大変なんですから、雇用対策といえば、一番大事なことは失業をこれ以上ふやさないということ、そのために政治が全力を挙げて取り組むというのが今の最大の課題ではありませんか。

 ことしの五月に、NECの新潟で、工場を丸ごと閉鎖して富士ゼロックスに売却して、全員解雇というリストラが始まりました。このとき、二十年間も働いてきて涙金で首切りに遭い、家族の暮らし、人間としての誇りを踏みにじられた四十代の男性労働者はこう言っています。これが、一生懸命働いてきた従業員にすることなんですか、これまでの人生を否定された気持ちになりました、許されるなら裁判に訴えたいと絞り出すような声で語っています。

 私は、NECについても、富士通あるいは松下その他もずっと回ってきましたけれども、総理が言っておられるように、何か玉突きで、中小企業に行ったから失業しないで済んでいるんだというのは、それは余りにも現実とかけ離れていますよ。これは、総務省の先ほどのこの表を見たって、大企業が減っているだけではなしに、ショックアブゾーバーだった中小企業が九月から減っているのです。これがいよいよ本格的に進もうというのが、今出されている計画の実態なんです。

 さて、そうした中で、私は、すべての労働者と家族の人生にかかわる問題であるとともに、これは地域経済にとっても地方財政にとっても大変な問題だと思っているのですが、この認識は私だけの認識ではなしに、実は、このNEC新潟の問題については、柏崎の市長さんと商工会議所の会頭さんは、企業には経済論理があるだろうが、当地にも多くの市民生活と福祉を維持していく使命があると、NEC本社へ社長に抗議に行きましたよ。市議会議長は、企業として社会的責任を果たす必要があると求めておられます。

 総理は、この柏崎市の市長らの立場に立って、やはり一般論を言うんじゃなくて、具体的に大企業のリストラにストップをかける、こういう立場で臨んでいくことが今求められているときじゃありませんか。

小泉内閣総理大臣 政府が個別の企業の経営に直接関与できないというのは御承知だと思います。しかし、企業としての社会的責任というのも十分自覚しながら企業も雇用対策には取り組んでもらいたいということでは、私は当然だと思っております。

吉井委員 その個別の企業だけでできる話かどうかということが、今問題になっておるのです。

 NECや東芝や富士通など多くのIT企業を擁している静岡県ですが、十月県議会で、雇用を守ることは企業と経営者の社会的責任であるが、雇用問題の解決を個々の企業での対応に任せるだけでは不十分だと、国の責任で雇用を守る社会的ルールを確立されたいとする総理大臣あての意見書を、自民党の皆さんを含めた全会一致で採択しています。地方自治体は、解雇を制限するルールを求めているのです。

 企業でも、リストラがよいことと思っている人ばかりじゃないのですよ。私も、数年前になりますが、長野県、セイコーエプソンに調査に行ったとき、経営者の方から、海外への工場移転をやったら国内の技術開発力を失うことになってしまってよくない、しかし、市場競争をやっているので、我が社一社だけ海外へ行くのをやめることはできないんだということを言っておられました。企業がリストラをやめようと思っても、市場競争の中で一社だけでできない、そういう面があるわけです。

 だから、企業のリストラ競争にストップをかけるのは、政治が乗り出して大企業のリストラにストップをかける、解雇、リストラ規制の、制限するルールを国がつくっていく。総理、やはりこのことに取り組まなければならないんじゃありませんか。

小泉内閣総理大臣 企業がリストラをやめたら生き残れないという面もあると思いますね。リストラ、リストラクチャリング、構造改革なんですよ。企業は構造改革をやらないと生き残れない時代なんです。そういう点については、役所よりもはるかに企業は進んでいますよ。

 そういう面において、政府としては、そういう場合に、新しい雇用をいかに創出するか、同時に、やむを得なく失業した人たちに対してどうやって手当て、あるいは次の職を探すような対策ができるか、そのための雇用対策国会で補正予算を組んでいるのですから、政府のやるべきこと、企業のやるべきこと、似ている面もあるし違う面もある。しかし、企業にリストラをやめろなんということは、日本の企業が生き残れなかったら、日本の経済は活性しません。

 私は、そういう意味において、政府が企業にリストラをやめなさいなんということはとても言える状況じゃないと思います。そして、雇用対策としては、政府としてやるべきことをやっていく。五百三十万人創出計画を今政府は計画しているのですから、できるだけ新しい雇用をつくるように努力する、同時に、失業した人に対しては雇用対策をしっかりやっていこうというのが政府の責任ではないかと思っております。

吉井委員 先ほど御紹介しましたように、富士通の場合で見ても、あるいは電機大手各社、ことしの三月に大きな経常利益を上げて、内部留保も六社で八兆余り蓄えて、十分もうけて利益を上げて、来年少し下方修正だといっても、リストラをやって、再来年は一社だけでも四千億の利益を上げていこう、そういう計画なんですから、つぶれるような企業じゃないんです。

 私は、大変なところもあるでしょう、全部それを規制してということを言っているんじゃないんですよ。この大手の企業の大規模なリストラ計画、これについてはきちんとリストラを制限する、こういうことをやっていくことが必要だということを言っているのです。

 何か特別なことを言っているみたいに総理おっしゃるが、実は、ヨーロッパではそれは普通のことなんですよ。例えば、フランスでことし、小売大手のマークス・アンド・スペンサー社のリストラ計画というのがありましたが、フランス政府は、これまでの解雇規制の法律に加えて、解雇手当を二倍にする、再就職までの六カ月から九カ月間、労働契約を解約できないようにする、再就職活動の費用は企業負担、地域経済に影響を与える場合には地域活性化支援基金の拠出を企業に義務づける法案というのを提出しました。

 EU指令では、大量解雇を規制する指令など、幾つもの法律の仕組みを設けて、企業が社会的責任をきちんと果たすように、そして、それを超えて自分の身勝手な都合だけで一方的に大量解雇をするということはできない。これはルールとしてちゃんとつくられているのです。

 国連は、ことし八月の経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会で、四十五歳を超える労働者がもとの給与及び雇用の安定を維持することを確保するための措置をとることを勧告すると、日本政府に対する文書を採択しましたね。日本政府に対しては、国連からもこういう勧告が出されているんですよ。

 リストラ、解雇を規制する、制限するというのは一自治体の力ではできないのです。それから、企業の皆さんも、国内企業の競争で海外へどんどん出ていく、そのためにリストラをやる、こんなことをやったら日本の将来の二十一世紀の産業も経済も大変になると個人的にはわかっているんだけれども、市場競争にさらされていますから、企業一社だけではできないという面があるんですよ。だからこそ、これができるのは国の役割なのです。

 国連加盟国として、この国連の勧告を実施するように政府としての責任ある対応をしていく必要があると私は思うんですが、総理、どうですか。

坂口国務大臣 先ほど総理からも御答弁ございましたが、リストラでありますとかあるいは解雇でありますとか、そうした問題は、それは企業の問題でございます。企業は、そういうふうにすることによって、そして多くの雇用を維持しているわけでございます。

 一部をリストラする、解雇するということはあったとしても、その残りの人たちを雇用していくためには、そうしたこともやはり必要なときもあるのではないかというふうに思っている次第であります。

吉井委員 国連の勧告も無視すれば、大体、先ほど来紹介していますように、今大規模なリストラをやろうとしている企業は、ことし三月にはうんと大きな利益を上げて、来年三月には少し下方修正するからといって大規模なリストラをやって、二〇〇三年にはまた巨大な利益を上げる。もうけのために大量のリストラをやっていく。そして、そのリストラをやればやるほど、今の五・三%の失業率はますますどんどん上がっていくんですよ。中小企業、下請企業が倒産に追い込まれる、失業者はそこでもふえる。

 最大の雇用対策といったら、失業者をつくらないということなんですよ。そのことをやるのか、それとも、もう策はありませんということで野放しでやっていくのか。国連は、それに対してきちんと言っているんですね。四十五歳を超える労働者がもとの給与及び雇用の安定を維持することを確保するための措置をとることを勧告すると。今の大臣の答弁だったら、こんな勧告は無視だということになってしまいますよ。

 そして、先ほど総理は、補正予算で措置したと言っているけれども、しかし、それは、失業者を出さない、リストラを制限するというふうな予算措置なり法律措置は何にもないのです。そして、約五十万人の人たちについての六カ月未満の新公共サービスなど、こういう予算というのを言っているんですが、これらは、新たな失業者がリストラで生まれたら、この補正予算で言っている措置というのは一遍に吹き飛んでしまうんですよ。

 一番大事なことは、今大企業のこういうリストラに対してきちんとした制限を加えていく、法律、制度の仕組みを含めて政府はその立場で臨むということが一番大事なんであって、そのことをやらないんだったら、小泉内閣には国民の雇用や暮らしを守る力はない、このことをはっきり言わなきゃならないと思います。

 時間が参りましたので、これで私の質問は終わります。

野呂田委員長 この際、赤嶺政賢君から関連質疑の申し出があります。吉井君の持ち時間の範囲内でこれを許します。赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 私は、十月二十九日から八日間、日本共産党の調査団の一員としてパキスタンの現状を調査してまいりました。アフガニスタンとの国境に面しているクエッタの町を訪問しましたが、国境が閉鎖されているにもかかわらず、多くの難民が親戚を頼り、隣の国パキスタンに流れ込んできておりました。

 私たちは、難民キャンプで難民の人たちに会って話を聞くこともできました。また、クエッタの難民病院には、空爆で負傷した民間人の母と子が運び込まれておりましたが、母親のグルさんは、顔じゅうに突き刺さっていた砲弾の傷が生々しく、とても直視することはできませんでした。生死の境をさまよっている状態でした。息子のウラ君は、わずか一歳にもかかわらず、脳に砲弾の破片が突き刺さって、それを取り出した手術をした直後でした。その包帯姿も本当に痛々しいものでした。病院に運ばれた負傷者はまだいい方で、大多数の民間人の負傷者は、治療も受けられないままアフガニスタンに閉じ込められた状態だと病院の関係者は証言しておりました。

 非人道的殺傷兵器であるクラスター爆弾の使用など、アメリカの軍事攻撃が一般市民への無差別攻撃へと拡大しています。その結果、アフガニスタンやパキスタンで深刻な事態が起こり、テロ根絶のために力を合わせることができない状態が生まれています。こういう実態を目の当たりにしてまいりました。

 憎むべきテロ勢力は、国際犯罪として世界じゅうどこでも告発され、逃げ場がない状態をつくらなければなりません。そのためには国際社会の団結が何よりも大切です。この方向に今の事態は逆行しております。

 民間人への被害の拡大を、総理はどのように考えていますか。

小泉内閣総理大臣 テロとの闘いというのは、国際社会が協力して今立ち向かっているわけであります。そういう中で、民間人の犠牲をできるだけ少なくするような配慮はなされるべきというのは必要だと思っております。

赤嶺委員 国際社会が協力できない現実を私はパキスタンで見てきたんです。

 そして、もう一つ申し上げますと、私たちは、国連難民高等弁務官事務所、あるいはユニセフ、あるいは各国NGO、パキスタン政府の外務省を訪ねて話を聞いてまいりました。一般市民が無差別攻撃にさらされていることとあわせて、さらに重大なことは、空爆によって、二十年にわたって積み上げてきた国連の人道支援が困難に直面していることです。

 国連児童基金、ユニセフのナイジェル・フィッシャーさん、この方はアフガン子供のための代表を務めておられますが、私たちにこのように語っておりました。冬の到来を前に、この数週間に援助を集中しなければならない、そうしないと、子供たちに何万、何十万と多くの犠牲者が出るのを座視することになる、何としてもそういう状況を回避しなければならない、事態は極めて悲観的だと。さらに、このように話しておられました。この冬を目前にして、できるだけ多くの子供たちを救えというのが国際社会への強いメッセージだ、そのためにも物資輸送の空路は戦争地帯から除外してほしい、このように厳しい表情で訴えておりました。

 総理、あなたは、アメリカなどの空爆によって生まれている深刻な事態、これを直視して、直ちに空爆の中止をアメリカに申し入れるべきではありませんか。

    〔委員長退席、北村(直)委員長代理着席〕

小泉内閣総理大臣 空爆をやめてテロリストがテロをやめない保証は何もないんですよ。タリバン政権、これが、アメリカの空爆が始まる前からアフガニスタンの国民に大変な苦渋を強いているからこそ、多くのアフガンの国民が難民として外へ出ているわけでしょう。空爆後よりも空爆前の方が難民が多いという事実を考えてみると、我々は、いかにこのテロの問題が深刻なものか、そしてテロリストを養成しているその拠点のアフガニスタンの国民が苦しめられているか。そういうことを考えますと、このテロのもたらす問題というのは非常に大きなものがある。

 しかし、こういう中で空爆をしておりますけれども、その際には民間人に犠牲をできるだけ出さないような配慮は必要だと思っております。

赤嶺委員 実際にパキスタンに行ってみますと、これが民間人に配慮した空爆かと言われる現実がたくさんあるんですよ。本当に無辜の民が、しかも、タリバンを攻撃しているはずなのに犠牲になっているのは私たちだという、こういう難民の方が大勢いらっしゃるんですよ。総理もパキスタンに行って、ごらんになってきたらいいですよ。とても民間人に犠牲が広がらないように注意していますという状態ではないんです。

 そして、私たちは、テロ根絶のためにも、空爆を中止して、そしてテロ勢力を国際犯罪として追い詰めるような国際社会の団結をつくるべきだ、このように考えているんです。

 現在の事態の深刻さについてやはり申し上げたいんですけれども、例えばアナン国連事務総長は、爆撃はできる限り早く終了し、人道的な業務が再開できるようになってほしいと発言しています。アフガニスタンの非常に深刻な事態に対して、アメリカはアフガン攻撃を中止すべきだという声はパキスタンの政府の中でも起こっております。サウジアラビアの内相やベルギーなどの各国首脳の間でもどんどん広がっています。私が言っているだけではないんです。国際社会のこうした声を、首相は本当に受けとめるべきだと思います。

 この日本の国会だけで、民間人の犠牲をできるだけ少なくする、そのためにアメリカは努力していると言うのは、パキスタンの現状にも合わないし、アフガニスタンで起こっている不幸な事実からも目を背けるものだと私は思います。

 それで、もう一つ、今回の調査で深刻な問題にぶつかったことを申し上げます。

 私は、砂漠の中を車で七時間かけて、米軍が出撃基地として使っているジャコババードの町に行ってみました。各地を歩いて、反米感情が高まっていることに非常に驚きました。アフガニスタンの一般市民がアメリカの軍事攻撃でたくさん被害を受けている、このことが、パキスタンの国民の間で、テロ反対の気持ちを持ちながらも、反米感情を逆に増大させている。アメリカの戦争は、テロ反対の一点での団結を破壊する結果になっています。

 さらに驚いたことがありました。空爆に対するデモに参加して警官の発砲で犠牲になった人の遺族がジャコババードにいるということで、お見舞いと弔問に行きました。この家族は、空爆反対はもちろん、それにとどまらないで、ビンラディンを支持するまでになっておりました。息子の死は悲しくない、シャヒードだ、このように言って、アメリカへの憎しみの気持ちをむき出しにしているんです。この地帯一帯でそういう感情がみなぎっておりました。

 米軍の戦争が新たなテロの芽を育てているということに私は本当にショックを受け、深い危機感を持ちました。まさに報復は報復を生むということであります。総理、あなたは、この事実をどのように受けとめますか。

小泉内閣総理大臣 民間人が犠牲になっていると言いますが、空爆する前からいかに多くの民間人がテロリストの犠牲になっているかということを考えないんですか。何千人の方たちがテロリストの攻撃に遭って被害を受け、犠牲になり、命を落としている。これに対して共産党はどう思っているのか。

 しかも、国際法廷にタリバン初めテロリストを引き出しなさい、全然耳をかさないのがテロリストじゃないですか。国連を尊重してと言うけれども、国連を非難しているのはタリバンじゃないですか。ウサマ・ビンラーディン、何ですか、国連に協力するなと言っているじゃないですか。

 テロリストに対していかに多くの、何百人、何千人の人が犠牲者になって命を落とした、これに対して今世界が立ち向かおうとしているのですよ。そういうことをもっと真剣に考えていただきたい。

    〔北村(直)委員長代理退席、委員長着席〕

赤嶺委員 総理、パキスタンや、そして総理が御出席になったAPECの会議などでも、テロをなくしようという国際社会の決意は今非常にかたいんです。団結は広がっているんです。でも、アメリカの空爆が一般市民を犠牲にしている。とても、一般市民を対象にしないで軍事施設だけを対象にしているというような状態の戦争ではない。

 私は、病院に行って、そしてある兄と妹の被害者に会いました。農耕作業をしていると、黄色い軸で白い羽根のようなものをしたものがひらひら畑に落ちてきたので、何だろうと思って近寄っていったら、それがクラスター爆弾だった、それが爆発してけがした。何で、幼い兄や妹が農耕作業をしているところにクラスター爆弾が落ちてくるんですか。そこは軍事施設ですか。現場に行くと、とても、民間人は対象にしてない、犠牲は少なくしようとしているということは言えないような事実があるんです。

 それからもう一つは、やはり国連の諸機関やNGOが、これまでも大量の難民が出ている、この戦争によってもっと多くの難民が出るかもしれない、国際支援を早く強めなければいけない、人道上も戦争をやめてほしい、このように言っているんです。そして、アメリカの報復戦争が、さらに仕返しをしているという、テロの芽を生むようになっている。これでは、このアメリカの軍事攻撃は、テロ根絶どころか、テロを増長し、国際社会を混乱させるだけだと思います。

 私は、改めて、そういう軍事攻撃はやめて、そしてテロ根絶のために国際社会が力を合わせる、この道を進むべきだということを訴えまして、質問を終わります。

野呂田委員長 これにて吉井君、赤嶺君の質疑は終了いたしました。

 次に、横光克彦君。

横光委員 社民党の横光克彦でございます。

 補正予算案にテロ対策費も計上されております。まず最初に、私もテロ問題についてお尋ねをいたしたいと思います。

 二十世紀は戦争の世紀とも言われました。そして、二十一世紀こそ戦争のない世紀でありたい、全世界の人々の願いとともに二十一世紀がスタートしたわけでございますが、残念ながら、二十一世紀も、一年にも満たないうちに戦争の世紀としてスタートしつつあるわけでございます。

 アメリカで起きたあの憎みても余りある同時多発テロからちょうど二カ月が経過いたしました。そして、それに対する報復攻撃であります空爆が開始されてから一カ月が経過したわけでございます。この間、私たちは、朝、昼、晩と毎日テレビのニュースで空爆の映像を見せつけられてきました。そしてまた、新聞や写真報道、そういった活字の面でも全く同じでございます。

 当初は、この空爆の悲惨さや残忍さや、あるいは誤爆の被害、さらには、先ほどお話がございました難民の発生、親に手を引かれて素足で歩く子供たちの映像なんかを見ますと、やはりほとんどの人は胸を痛めたのではなかろうかと思いますが、とりわけ私たちの国の同世代の子供たちが、ああいった映像を毎日見てどんなにかショックを受けたのではないか、このように思っております。

 ただ、私が今心配をしておりますのは、一カ月間こういった映像を見てきますと、やはり、当初のあの空爆の痛みとか、そういった感覚がだんだん麻痺してきて、ああ、きょうも空爆かというふうに、そのことがまるで当たり前のようになってしまうことが非常に私は心配である。事細かに私たちは映像すべてを見ることはできませんが、やはり爆撃した後の噴煙の向こう側には、命を落とし、傷つき、そして恐怖におののいている、そういう人たちがたくさんいるということを忘れてはならない、そんな気がいたしておるわけでございます。

 もちろん、同時多発テロのことは忘れてはなりませんし、それで受けた被害、それはアメリカの人たちの想像を絶する被害でございます。ですから、アメリカの気持ちもわかり過ぎるほどよくわかります。ですから、報復攻撃についてもいろいろな意見があり、それが正しいのかどうかはまだわかりません。しかし、これだけは言えると思うんです。空爆が続く限り、先ほど申しましたが、アメリカに次いで今度はアフガンで新たな被害が発生する、これだけは事実なんですね。このことを考えると、先ほども出ましたが、アナン国連事務総長の言うように、空爆の一時停止というのが今求められているのではなかろうかという気がするわけでございます。

 日本の子供たちは戦争を知りません。しかし一方、アフガンの子供たちは平和を知りません。私たちの国は、戦後五十六年間、どこの国ともただの一度も戦争することなく、平和な国でやってこれました。これはやはり国民の努力の総結集である、非常に重い重い五十六年であったと私は思います。今、あったと申しましたが、この五十六年間の重みが今徐々に徐々に崩れ去ろうとしているのではないか、そんな心配をいたしております。

 三日前、二〇〇一年十一月九日、海上自衛艦三隻がインド洋に向けて出港いたしました。国連に基づく国際貢献でもなく、いわゆる調査研究という法的根拠のもとで、自衛隊が戦後初めて戦闘地域に向けて出発したわけでございます。その瞬間を見ておりまして、私、あの三隻の自衛艦が港を離れていく映像を見まして、我が国と我が国の国民は引き返すことのできない危険な道の入り口に立たされたんだな、そういう思いがしたわけでございます。戦争を知らない子供たちに決して戦争を知ることのないように、そのとき祈らざるを得ませんでした。

 アフガニスタンでは空爆が続いております。そして、もうすぐ厳しい冬がやってまいります。しかも、四日後、十六日からはラマダン、断食の月が始まります。イスラム教徒の断食が始まる前、十月末でしたか、私たちの国でも、作家の瀬戸内寂聴さんが米軍によるアフガニスタン攻撃の停止を願い、三日間の反戦の断食を行いました。瀬戸内さん、大変な御高齢であったにもかかわらず、多くの賛同者とともに三日間の断食を行ったんです。そのときに、瀬戸内さんはこうおっしゃっております。受けた恨みに報復しても、恨みの連鎖は断ち切れません、よい戦争などありません、戦争反対の意見は少数かもしれませんが、少数意見がない世界になってはいけません、このように瀬戸内さんはおっしゃいました。私たちも、このような思いの人たちと、たとえ少数意見であろうと、はっきりと主張してまいりたいと思っております。

 私の思いを述べさせていただきましたが、それではちょっと質問に入らせていただきます。

 アメリカは、ラマダン中、いわゆる断食の期間でさえも攻撃を続けると表明しております。しかし、隣国のパキスタンのムシャラフ大統領は、ラマダン中の攻撃、空爆だけはやめてほしいと米英に強く申し入れたんですが、拒否されております。アメリカのタリバン攻撃を容認して支持さえしているパキスタンの大統領が、なぜラマダンの間は空爆をやめてほしいと訴えたのか。私は、このムシャラフ大統領の思いを世界各国は真剣に受けとめなきゃいけないと思うんです。

 ラマダンとは、世界のイスラム教国、イスラム教徒が一つになって、神を畏敬し、そして感謝をささげることを目的に断食と祈りをささげる一カ月なんです。ですから、こういったときに空爆をされますと世界のイスラム教徒がどのような行動を起こすか、そのことを一番よく知っているのはムシャラフ大統領であり、そしてまた、そのことを一番恐れているのがムシャラフ大統領だと思うんですね。つまり、隣国のパキスタンで、クーデターやあるいは内戦など、最悪の事態を招きかねない。パキスタンは御案内のように核の保有国でございます。私は、このことを大変ムシャラフ大統領は危惧して、空爆の停止を求めているんだと思います。

 私たちの国は、あっという間に数の力でテロ特措法を成立させてしまいました。そこまでしてアメリカに協力姿勢を示すのであれば、アメリカにももっと日本の思いを、日本の主張をはっきりと、私はこの際イエス、ノーを言うべきだと思うんです。あれだけの協力法をつくってしまったんですから、それなりのことは言わなきゃならない。ですから、ただただアメリカに追従するのではなく、やはり、あのムシャラフ大統領の声、いかに危険であるかということをしっかりと受けとめて、ラマダンという無抵抗あるいは無防備状態のときの空爆は中止すべきである、このように私はアメリカに訴えるべきだと思います。

 総理にお聞きする前に、私は外交のトップリーダーでございます田中外務大臣にお聞きしたい。田中外務大臣は、個人的にはそういったラマダンの間に空爆をすることは、恐らく私は心配されておるだろうし、賛成するお考えはないと思います。日本のトップリーダーとして、このラマダンの途中の空爆だけは中止するようにアメリカに訴えていただきたい。いかがでしょうか。

田中国務大臣 ラマダンでございますけれども、今委員がおっしゃったような意味もございますし、私は、イランの外務大臣にお目にかかりましたときに、これはみそぎの時期でもあるというようなことも伺いました。

 しかし、よくお考えになってください。先ほどの共産党さんの質問と同じなんですけれども、本当にすべての人たちが、イスラムの人たちが、アルカイーダも、全員が静かになってみそぎをしているわけではなくて、むしろそのときにこそ戦闘行動を継続する可能性が高いということをアメリカが分析していまして、そして私たちは、世界が一緒になってこのテロリズムをいっときも早く根絶すると。それは何かといったら、これはもう、我々が今闘っていることは、アルカイーダの組織を根絶し、そしてその組織の安全な隠れ家を一掃するための行為を私たちは一緒になってやっているんです。

 ですから、本当に、アメリカだって完全に無差別な爆撃なんかしちゃいません。ちゃんと標的を絞って、そして空爆をしているけれども、誤爆もあることははっきり認めているじゃないですか。

 しかし、そうではあっても、向こうの人をたくさん犠牲にするのではなくて、テロを根絶する、そのためにやっているわけでございますから、残念ながら、これはテロを根絶するために、私は、ラマダン中であっても相手が必ずやめるという見通しは何もありませんから、やはり根本的な軍事ミッションの達成、このためにはやむを得ないというふうに思います。

横光委員 こちらが攻撃をやめると向こうが攻撃してくるとおっしゃいましたが、そういった今の報道の中では、それだけのいわゆる大きな攻撃力に差があるわけで、そういった状況より、むしろ空爆することの方の被害の方が私は大きいと思うんです。

 ですから、ムシャラフ大統領は心配している。隣の国の大統領が心配するということがどういうことかということを私は考えていただきたい。あそこは核を持っているんですね。ですから、ラマダンの一番厳粛なときに攻撃されたらイスラム教徒がどういう行動を起こすか、それを大変心配しているわけです。これはその時期になってみなきゃ結果はわからないと思いますが、私は強く、日本が特措法を成立させた以上、攻撃は停止を求めていくべきだと思っております。

 それからもう一つ。これも先ほど出ましたが、大変、人道的支援、人道的支援と言っておりますが、そういった支援しなきゃならない形を、非人道的な特殊な爆弾を使ってそういうことを起こしているということも事実でございます。本当に、クラスター爆弾にしても、デージーカッターと言われる大変戦術核兵器並みの破壊力を持つ兵器も使われている、こういったことはやはり慎重にしてもらわなければならない。

 きのう、CTBTで、アメリカはこの席をボイコットしました。結局、これは大国のエゴとしか言いようがない。なぜですか。これから二十一世紀、一番考えなきゃいけないのは環境と核の問題、この両方にも消極的なんですよ。こういったことを許してしまっては、本当に一番大国であるアメリカが率先して取り組まなきゃ進まないんですよ。そこのところをすべて大国のエゴによって拒否している。そのことにも日本ははっきりと物を申すべきだと私は思っております。(田中国務大臣「委員長」と呼ぶ)ちょっと待ってください、もう時間がないので。こういうことを訴えておきます。

 次に、大きく変わりまして、特殊法人改革についてちょっとお聞きします。

 特殊法人改革、総理も着々と進めているというお話でございましたが、私も特殊法人、やはりそれなりの役目の終わった法人もあれば、あるいは、言えば官僚の天下りの温存として残されているような法人もあるとさえ言われております。また、放漫な経営あるいは甘い見通し等で膨大なる借金を抱えてしまった法人もある。こういったものはしっかりと私も見直していくべきだと思います。

 ただ、国民の生活に直結した、本当に暮らしに影響を与えるような法人もある。非常に役に立ってきた法人もある。このようなことに対してはやはり慎重であるべきだと私は思うわけです。

 その中の一つ、日本育英会について行政改革事務局はどのように考えておるのかということをお聞きしたいんですが、日本育英会、いわゆる育成事業というもの、育英奨学事業というものは、いわゆる教育の機会均等、こういうことなどが憲法やあるいは教育基本法で法制化されている、そういった中での要請のもとに国の責務としてこれまでやってきたわけですよね。

 そしてまた、これは奨学生が本当に負担を軽減するようにという制度でございますので、決して利潤を求めるわけでもありませんし、独立採算がとれるわけではない。そういった意味で国がこれまでバックアップしてきた。私は、教育を学ぶあるいは意欲のある人たちにとっては非常にいい制度だと思っているわけですが、この制度に対して、行革事務局、石原担当大臣はどのようなお考えをお持ちなんでしょうか。

石原国務大臣 横光委員がもう既に御指摘されましたように、むだを省いて効率のいい社会をつくっていこうということでは、大筋でお考えは一緒だと思うんですし、総理の指示を受けまして、民間に任せられることは民間に、地方にゆだねられることは地方にという原則にのっとって、ゼロベースから事業を見直させていただいております。

 ですから、この日本育英会の事業につきましても、大きく言って二つの事業がございます。有利子の貸し付け、無利子の貸し付け。無利子の方につきましては、法律をもう横光委員も読まれていると思いますが、「特に優れた学生」であって「経済的理由により著しく修学に困難がある」者にというふうに書いてあるんですが、どうもこの法律の趣旨から若干広がり過ぎている。ですから、ここの部分は法律の趣旨にのっとって見直していただきたいと申しておりますし、有利子の方につきましては、もう委員も既に御承知だと思いますけれども、回収ができないような債権がもう既に一千四百億程度ございますし、これが平成十五年には倍増するというような見通しもある。ですから、回収業務や管理業務を民間に委託して徹底的に、税金で運営されているわけですから、回収を図っていただきたい。

 いずれにいたしましても、十二月の整理合理化計画に、育英事業の重要性というものは十分認識しておりますが、これに見合ったスリム化した組織と事業に改めていただきたい、そういうふうな方向で検討させていただいております。

横光委員 確かに、今言われた回収業務等は改善に取り組まなきゃいけないと思います。ただ、今スリム化というお話もございましたが、現下の経済状況、非常にこういった厳しい事態になってしまった。そして、自己破産が十年前から比べて十一倍にもなったという状況。そして先ほど、午前中もお話ございましたが、三万人を超える自殺者が出る。あるいはリストラ、失業、そういったことで、学費も納められない高校生がふえ始めている、あるいは大学をやめなければいけない生徒もふえ始めている。つまり、経済の不況が教育にまで影響を与える事態になっているわけでございます。

 ですから、そういった意味だけに、国民からすると今こそ育英事業にいかに頼らなければならないかという状況であるにもかかわらず、この分野にまでやはり行革のメスを入れよう、先ほどの改善というものは私もよく理解できるんですよ。ただ、こういった状況で、より国の力というものに頼らなければならない国民の今の経済状況にあるだけに、統合によるとか廃止を含めて検討するとか、そういったことはむしろ逆行するのではなかろうか。

 私たちの国は、御案内のように資源というものがございません。しかし、唯一の資源は人材の育成ですよ。二十一世紀を支えてくれる人材を育成すること、これが私たちの国の唯一の資源になるわけです、財産になるわけですね。

 そういった意味からも、日本の将来を支える人を育成する日本育英会事業こそ、国が責任を持って行うべき事業であると思いますし、政府が十八歳自立社会の実現というものを目指すとするのであれば、日本育英会の事業をむしろ拡充して、希望する生徒が安心して学べる環境づくりこそ国の仕事だということを訴えて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

野呂田委員長 この際、保坂展人君から関連質疑の申し出があります。横光君の持ち時間の範囲内でこれを許します。保坂展人君。

保坂委員 社民党の保坂展人です。

 小泉総理に伺います。

 去る十月十五日に、総理は韓国ソウルを一日訪問されました。その際、こちらにパンフレットを持ってまいりましたが、西大門刑務所の跡、こちらの方に訪問されたと聞いております。

 この刑務所は、金大中大統領もそこに収監をされていた時代もある、つい最近まで刑務所として使われていた場所ですけれども、日本の植民地時代に、独立運動の先頭に立った方々がとらわれ、拷問などを受けて、そして獄死した方も数多い。そこに私も実は昨日行ってまいりました。一角に、これら犠牲になった方々を追悼する碑がございました。小泉総理はここで献花をされたというふうに伺っていますが、どのような思いでこの場に立たれたのでしょうか、お聞かせください。

小泉内閣総理大臣 過去のいろいろな、お互いにとって不幸な戦争というものを二度と起こしてはならない、また、植民地支配によって韓国の人々に与えた苦痛というもの、そういうものを反省しながら、未来志向でお互い友好関係を増進していこうという気持ちで見学をいたしました。

保坂委員 私は、そうした御努力は大切なことだと思います。

 この一年間、日韓関係、他もそうですけれども、特に日韓の関係を見ますと、教科書問題あり、あるいは靖国問題あり。そして、両国間、来年ワールドカップですから、大変大切な時期に来ております。

 そこで、小泉総理は記者団に、これはインタビューに答える形だったと思いますけれども、御発言をされ、この中に今おっしゃったようなこともございます。そして、お互い反省をしつつ二度と苦難の歴史を歩まないように協力をしていきたい、このようにおっしゃったと伝えられています。

 これは、韓国の野党あるいはマスコミの一部でも、どういう真意だったのだろうか、こういう報道もございますが、これは事実だったのでしょうか。どのような意図で言われたのでしょうか。

小泉内閣総理大臣 事実でございます。お互い協力していこうということでございます。

保坂委員 お互い協力していくべきだと思います。

 問題は、今小泉総理も言われました、私もきのうその場に行って、直視することが大変難しいような、拷問の様子を再現したようなかつての牢獄がそのまま展示場に使われておりますね。ごらんになったと思います、総理も。そういうところを見て、過去の歴史がそこで展示をされている、そのことについて、やはり総理も大変、言葉にならないほど痛みを感じるということを言われた。その後、お互いにというのは、これは日本も韓国もということになりますね。お互いに反省すると。そうすると、韓国の方はどういう反省をするべきなのかという声が上がっているのですね。

 これは、お互いにというのはどういう趣旨で言われたのですか。

小泉内閣総理大臣 日本語をよく理解していただきたいと思いますね。お互い協力しようというのです。何がいけないのでしょうか。

保坂委員 お互いに協力しようというのはいいことなんです。しかし、総理が言われたのは、お互いに協力しようではなくて、お互い反省しつつ、お互いに反省しつつなんですよ。ですから、私、事実ですかと聞いているのです。

 お互いに協力するということだけだったのですか。お互いに反省するということを言われたから、お互いに協力するというのではなくて反省するというのは、お互い反省することですからね。ここのところは真意はどうだったのですかと聞いているのです。

小泉内閣総理大臣 それは、日本語の読解力の問題じゃないでしょうか。

保坂委員 そうすると、総理は、外交というのは、信頼関係をつくるのには時間がかかるということは御存じでしょう。そして、壊すのは簡単なんですね。ですから、お互いに反省をするというのは、そういう意味ではなかった、お互いに協力するという意味だった、こういうふうにおっしゃりたいわけですか。それが読解力なんですか。

小泉内閣総理大臣 日本語をよく読んでいただきたいと思います。お互い協力していこうということであります。

保坂委員 これはすりかえなんですよ。

 新聞記事、幾つも出ているのです、記者団に発表していますからね。お互いに反省しつつ二度と苦難の歴史を歩まないように協力していきたい、こう言っているわけです。だから、お互いに反省しつつというのは、お互いに何をどのように反省するのですかと聞いているので、日本語の読解力と総理大臣が言われますから、中学生、高校生もこの国会中継を見ていますから、これは読解力としては、お互いに反省しつつということを言われるのであれば、何を指して言われたのですか、あるいは言い間違えだったのですかと聞いているのです。

小泉内閣総理大臣 日韓友好をもっとお互いに考えるべきじゃないでしょうか。

 そういう言葉じりをとらえて亀裂をかき立てるような御質問はいかがなものか。お互い協力して友好関係を増進していこうということに、どうしてとっていただけないのでしょうか。

保坂委員 ですから、これは事実ですかと最初から聞いているのです。ですから、お互いに反省というようなことを、それは本意ではなかったというのであれば、しっかりそれは訂正をされた方がいいと思います。

 そして、その際に、金大中大統領とのいわゆる会談で、そして、その後上海で行われた首脳会談でも、今回の靖国問題などにも触れて、お互いに、それこそ内外の人がわだかまりなく平和の祈りをささげられるような、そんな場所をつくることを語られた、こういうふうに聞いておりますが、具体的にどのような内容だったのでしょうか。

小泉内閣総理大臣 私が、十五日に韓国を訪問し、そのような談話を記者の前で述べ、以後、金大中大統領とお会いし、わだかまりなくこれからの日韓友好を考えようと、実にいい雰囲気のもとに首脳会談が、今回、わずかな期間でありますが、三回行われまして、私自身も金大統領の波乱万丈の生涯、一度は死刑を宣告されながら大統領にまでなられた苦難の歴史、まさに尊敬すべき人物であり、お互い胸襟を開いて、これからの日韓友好のためにいろいろなことを頑張ろう、していこう。そして、来年はワールドカップも開催されますし、そういう点におきましても前向きに、交流が盛んになるように努力していこう。

 私の十五日の訪問以降、金大統領初め韓国の方々との友好関係を一層促進していこうという機運が醸成されたと私は理解しております。

保坂委員 私は、小泉総理の靖国神社参拝以後あるいは以前から、これは熟慮しながら決めるというふうにおっしゃっていましたから、大変心配をいたしましたし、そして、その後も努力をして、韓国でも与野党の議員と率直に議論をいたしましたし、また、これはもう国内の問題ですから、日本の戦争犠牲者、あらゆる人たちが、心から、もう二度と戦争を起こさない、そういう意味で、だれもがそこに訪れ、そして不戦の誓いを新たにするような、そういう場所をつくっていくべきではないか、こういうふうに私自身も思っています。

 総理は、この点、どのようにお考えですか。

小泉内閣総理大臣 日韓首脳会談におきましても、そういう場を今日本で検討したいということを述べまして、その準備を進めているところでございます。

保坂委員 公共事業見直しの問題に触れたいと思います。

 公共事業の抜本的な見直しということを与党三党で、これは総選挙の後ですが、抜本的に見直すというふうに語られました。

 総理に伺いますが、この抜本的な見直しというのはどういう意味ですか。どの程度まで公共事業を抜本的に見直そうというふうにお考えですか。

小泉内閣総理大臣 できるだけむだなものは省き、必要なものを進めていくということでございます。

保坂委員 それはもっともなことですね。

 特殊法人改革の中で、これまで焼け太りという、特殊法人を改革しようとすると、むしろ役人の権限が広がり、改革どころか改悪になっちゃうということが語られました。

 この公共事業の与党の見直しの中でも、一たんその俎上に上がりながら、新潟県の清津川ダムというもの、これは結局は継続ということに決まる。そして、現地を訪れてみると、水没地の住民の中には、もう三十五年もこの問題に取り組んでいるんだからそろそろ結論を出してくれという声もあります。しかし、清津峡という名勝地、下流の方の中里村というところでは、村長さんや村会議長、全員がこれはもう反対だと。自民党の議員の方の中からも、田中康夫知事の脱ダム宣言というのがありましたね、これは信濃川水系で同一ですから、こういう動きもあるので、このダムを見直したらどうかと。

 つまり、与党が見直すと、逆に眠れる公共事業が呼び起こされてしまう。こういうようなことが起きてはならないというふうに思うんですが、小泉総理、いかがですか。

扇国務大臣 担当でございますから答えさせていただきたいと思います。

 今おっしゃいましたように、清津川ダムに関係しましては、昨年の公共事業の見直しの中で、事業評価監視委員会から、信濃川水系の治水と利水、そして御存じのとおり、環境等の観点から、ダム計画の代替案を含めた総合的な検討を専門委員会を設けて行うことと答申をいただいておりますので、私たちはその答申の検討を見守っているところでございます。

保坂委員 それでは、今の答弁を踏まえて、もう一回総理に伺いたいんです。

 これは三十五年間、五十二億円という予算が、何もできてないんですよ、費やされてきたんですよ、調査費ということで。長いことかかっていたんですね。そして、ことしは、去年四億だったのが八億円予算がついているんですね。まさに呼び起こされたという気がするんです。

 ですから、こういう公共事業の現場、これはほかのダム現場にも行ってきていますけれども、本当にむだなものにきちっと手を入れるんであれば、徹底した見直しが必要だ。そういう意味では、田中康夫知事の脱ダム宣言というのは、極めて的確な問題提起をしていると私は思いますが、小泉総理はどう受けとめていますか。

小泉内閣総理大臣 私は、長野県の実情はよく存じておりません。田中知事の脱ダム宣言は、知事自身の考えで宣言をされているんですから、それはお任せしたいと思います。

 また、国土交通省の問題、公共事業削減でありますから、できるだけむだな事業を削減していこうということで今鋭意検討を進めておりますので、その趣旨に沿って、国土交通省、むだなものはつくらないようにという指示を出しております。

保坂委員 それでは、最後に、総理に一点だけ。

 雇用の問題。厳しいということを委員会でも指摘されていますけれども、今回、中小企業の経営危機を救済しようということで、いわゆる売掛金を担保に充当することができるという新しい制度の提案がございます。

 ございますが、このことによって、中小企業を支援しなきゃいけないというのはそのとおりなんですけれども、もともと経営状態が苦しい中小企業が、売掛金を担保にして、そしてまさに労働債権、いわば働いている人の賃金まで、不幸にして倒産をしたときに払えなくなる、こういうことになったら大変だ。こういうことがないような措置、問題意識をお持ちいただきたい。こういう点について総理に伺います。

小泉内閣総理大臣 今、せっかく担当の副大臣が出ておられます。副大臣にできるだけ答弁の機会を与えるというために副大臣制度ができているわけですから、その趣旨を生かして、古屋副大臣にお願いします。

野呂田委員長 時間ですから簡単にお願いします。

古屋副大臣 保坂委員にお答えを申し上げます。

 そもそもこの売り掛け債権を担保に融資をするという制度は、いわば中小企業に対するセーフティーネットの一環としてお願いをしていることなんであります。今、大変中小企業は担保能力も厳しいし、また、資金繰りができないということのみをもって最悪の場合倒産ということになりかねない、これを未然に防ごうという制度でありまして、中小企業者も大変これは評価をいたしております。

 委員が御指摘の、万が一破綻をした場合どうなるかということですけれども、一般論からすると担保権というのはほかの債権よりも優先するということは事実でありますけれども、特にこの売り掛け債権がほかの担保よりも優先するということはなくて、例えば不動産の担保も同じように扱われておりまして、委員が指摘するような労働者にとって厳しいということは全くないと思っております。むしろ、中小企業者にとってこれを有効活用していただくことによって、未然に倒産を防ぐこともできるし、また、そこに勤めている従業員の雇用も確保することにつながる、このように考えております。

野呂田委員長 これにて横光君、保坂君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして各会派一巡の基本的質疑は終了いたしました。

 次回は、明十三日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時散会




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