衆議院

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第6号 平成13年12月3日(月曜日)

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平成十三年十二月三日(月曜日)

    午前十一時開議

 出席委員

   委員長 野呂田芳成君

   理事 北村 直人君 理事 久間 章生君

   理事 小林 興起君 理事 坂井 隆憲君

   理事 自見庄三郎君 理事 城島 正光君

   理事 仙谷 由人君 理事 原口 一博君

   理事 谷口 隆義君

      伊藤信太郎君    伊吹 文明君

      池田 行彦君    大原 一三君

      亀井 善之君    栗原 博久君

      七条  明君    高鳥  修君

      竹本 直一君    谷川 和穗君

      津島 雄二君    中山 成彬君

      中山 正暉君    丹羽 雄哉君

      葉梨 信行君    蓮実  進君

      三塚  博君    宮本 一三君

      八代 英太君    五十嵐文彦君

      岩國 哲人君    生方 幸夫君

      江崎洋一郎君    大石 尚子君

      北橋 健治君    首藤 信彦君

      武正 公一君    手塚 仁雄君

      野田 佳彦君    藤村  修君

      松野 頼久君    山口  壯君

      若松 謙維君    達増 拓也君

      中井  洽君    中塚 一宏君

      佐々木憲昭君    山口 富男君

      原  陽子君    山内 惠子君

      横光 克彦君    井上 喜一君

      小池百合子君    宇田川芳雄君

    …………………………………

   内閣府副大臣       村田 吉隆君

   参考人

   (金融庁長官)      森  昭治君

   参考人

   (株式会社整理回収機構代

   表取締役社長)      鬼追 明夫君

   参考人

   (預金保険機構理事長)  松田  昇君

   予算委員会専門員     大西  勉君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月三日

 辞任         補欠選任

  奥野 誠亮君     七条  明君

  萩野 浩基君     伊藤信太郎君

  宮本 一三君     竹本 直一君

  五島 正規君     生方 幸夫君

  古川 元久君     藤村  修君

  松本 剛明君     武正 公一君

  横路 孝弘君     松野 頼久君

  辻元 清美君     山内 惠子君

  井上 喜一君     小池百合子君

同日

 辞任         補欠選任

  伊藤信太郎君     萩野 浩基君

  七条  明君     奥野 誠亮君

  竹本 直一君     宮本 一三君

  生方 幸夫君     五島 正規君

  武正 公一君     手塚 仁雄君

  藤村  修君     古川 元久君

  松野 頼久君     大石 尚子君

  山内 惠子君     原  陽子君

  小池百合子君     井上 喜一君

同日

 辞任         補欠選任

  大石 尚子君     江崎洋一郎君

  手塚 仁雄君     松本 剛明君

  原  陽子君     辻元 清美君

同日

 辞任         補欠選任

  江崎洋一郎君     横路 孝弘君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 予算の実施状況に関する件(金融問題)




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     ――――◇―――――

野呂田委員長 これより会議を開きます。

 予算の実施状況に関する件、特に金融問題について調査を進めます。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として株式会社整理回収機構代表取締役社長鬼追明夫君、預金保険機構理事長松田昇君、金融庁長官森昭治君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

野呂田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 本日は、理事会での合意により、今後の調査の参考に資するため、異例でありますが、我が国の金融について、有識者の方々に御出席をいただいております。

 各参考人には、委員の質疑にお答えしていただきますが、御発言は着席のままで結構でございます。また、委員の質疑時間は限られておりますので、お答えは簡潔にお願いいたします。

    ―――――――――――――

野呂田委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。七条明君。

七条委員 トップバッターを受けさせていただきますけれども、きょうは、森長官あるいは松田理事長、それから鬼追社長におかれましては、本当にありがとうございます。

 ちょうど今、皇太子殿下御夫妻に内親王がお生まれになられましたから、御同慶にたえないところでございます。不良債権の処理の問題を中心にお聞きしますが、非常に今暗いニュースばかりのところに、どうやら明るいニュースが飛び込んできた、何とか明るい方向に向けたいと思う気持ちで質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 それでは、不良債権の問題について私の方からお聞かせいただきたいわけであります。

 我が国経済の再生に向けて、この問題、非常に重要な問題の一つであろうと思いますが、どうもこの不良債権の処理が今進んでおりません。不良債権の残高がなかなか減少してこないという気持ちがいたしておるのであります。

 まず、森長官にお聞かせいただきたいのは、不良債権の処理が進んでいない理由は何なのだろう。いわゆる主要行以外の銀行、あるいは地銀、第二地銀等といろいろあるでしょうけれども、こういう銀行についてはどうやるのだろうか。あるいは、もう一つお聞かせをいただきたいのは、先般発表されました大手主要行の中間決算等々の処理の状況についても、どうも進んでおらないような部分と、幾分進んだかなという部分があるわけでありますが、その辺について森長官にお聞かせをいただけますでしょうか。

森参考人 お答え申し上げます。

 ただいま七条先生のおっしゃるとおり、金融機関の不良債権残高と申しますのは、足下の景況を反映している面もございまして新規の不良債権も出ておりまして、不良債権比率、すなわち貸出金分の不良債権額、これはリスク管理債権ではかっても、金融再生法開示債権ではかってもほぼ同じ数字でございますけれども、七%近い水準にあるわけでございます。

 金融庁といたしましては、改革先行プログラムで述べていますとおり、各金融機関に対しまして、要管理を含んだ要注意先以上につきましてはその健全化の努力をしてほしい、また、破綻懸念以下に落ちたものについては最終処理を早急に取り組んでほしいということを強く要請しているわけでございまして、今後、その方向に従って各銀行が取り組んでいくものと期待しております。

 御質問の、中間決算期の現状でございますけれども、十三年九月期における不良債権処理損は約二兆円でございました。業務純益が二・二兆円でございますので、中間期だけを見た場合には、不良債権処分は一応もうけの中で処分したということになるわけでございますけれども、五月時点の予想から比べますと〇・九兆円増加しておりまして、ほぼ倍増になっているということでございます。

 さらに、今度の中間決算期におきまして各主要行は、十四年三月期、すなわち通期の予想を発表しておりますけれども、その実質的な不良債権処理は通期で約六・四兆円、すなわち、中間期で二兆円を処理しましたので、下期だけで見ますと、四・四兆円という多額の処分損を見込んでおります。

 これは、改革先行プログラム等で特別検査もあるということ。そしてまた、各行自体が市場の評価と乖離のある企業についての自己査定を厳しくしている。さらに、破綻懸念までいかなくても、要注意であっても、その要注意の引き当て率を大幅に上げている。上げ方としては、特定業種に対する最近の貸し倒れの趨勢等も勘案して、よりグルーピングを細分化するような形で上げている。そういうことで、各銀行とも極めて保守的な見方のもとに不良債権の見通しを立てているというふうに認識しております。

七条委員 今いろいろ御説明をいただいたのでありますけれども、主要行は中間決算において積極的に不良債権の処理をやってきたのだと。ただ、私の感じますところでは、本当の意味でまだ、きちっとできている部分の銀行と、まだできていない部分があるのじゃないだろうかなと思えてしようがないのですね。特にこれから主要行十六行ですか、そういう銀行等々のことをきちっとやるのですが、これは、二年で今までの部分をやってしまう、新たにできたものは三年でやるというような内容であったと思うのですが、二年とか三年でやれるのだ、特に二年で今やってしまえるのだというような形でいっているのですか、どうなんですか。

森参考人 お答え申し上げます。

 主要十五行の破綻懸念以下の不良債権額でございますけれども、十三年三月期、十一・七兆円でございました。すなわち、十二年九月期に比して、オフバラを四・四兆したのでございますけれども、新規発生が三・四兆ありましたもので、一兆減って、十二・七兆が十一・七になったというのがことしの三月期の姿だったと思います。ことしの中間決算期で見ますと、オフバランス化が二・五兆円ございました。一方において新規発生が三兆円ございまして、残高としては五千億ふえまして、十一・七兆が十二・二兆円になっております。

 ただ、このオフバラ化の規模を見てみますと、季節的な要因が若干ありまして、上期よりか下期の方がオフバランス化が進むという傾向がございます。そういう季節的な要因をも考慮いたしますと、二年、三年というルールに従った主要行の破綻懸念先以下の不良債権のオフバラ化の処理、最終処理は、おおむね予定どおり進んでいるのではないかと認識しております。

七条委員 おおむねできているということであります。

 私、もう一度森長官にお聞かせをいただきたいのでありますが、今特別検査を金融庁で各金融機関にやっておられるのでありますが、では、この特別検査のことについてお伺いします。

 ある雑誌をここで見ておりますと、こんなことが書いてありました。

 格付けの大幅引き下げや株価急落など「市場の評価が著しく変化した」大手企業を洗い直すこの検査は十月下旬に始まった。金融庁はすでに大手行に百億円以上の融資先リストを提出させ、対象企業を選定している。

  この検査によって「要注意先」に分類されていた問題企業がどんどん洗い出されるのならいい。が、森長官ら金融庁の事務方はそんな厄介なことを考えていない。

これは、私が言っているんじゃないですよ、雑誌に書いてあるわけであります。さらに、

 官僚流の保身から、銀行の貸倒引当金を多少積み増すことはあっても、検査が大手企業破綻の引き金を引く事態を招きたくない。それが証拠に、小泉内閣がまとめた「改革先行プログラム」最終案でも、「不良債権処理を実施しても公的資金の追加注入は不要」と記している。

  特別検査の狙いは、不良債権の抜本処理とは全く別のところにある。新規の問題債権が大量に発生しないことを市場に示し、従来の資産査定や検査が正当だとアピールしたいのだ。

こういうような内容の雑誌が出ていたんですね。

 これは私はすべて正しいとは思っていませんけれども、こういうふうに書かれてしまいますと、本当に今、市場が反応をして、あるいは国民の皆さん方が、特別検査をきちっとやっているのかどうかと疑心暗鬼になる部分がたくさん出てくるんじゃないかと思うんですね。

 私自身も、この間マイカルが破綻をした、そのときの銀行の引当金の不足というのが露呈してしまったんじゃないか、こういうふうに思っていますから、銀行がいまだ十分に不良債権処理を行っていないのではないだろうか。やっと今、決算期で先ほどの中間決算で出てきたなんということを言っておられましたけれども、これは自分の体力の範囲内でしか不良債権の処理をしていないのではないかというふうに感じてしまうのであります。その意味で、私は疑念が出てまいりますが、これについて森長官がどういうふうに考えておられるんだろうか。特に、金融庁の特別検査のやり方がまだ手ぬるいのではないか、こういう気持ちがございますから、これをまず、特別検査について森長官にお聞かせをいただけますでしょうか。

森参考人 お答え申し上げます。

 ただいま七条先生がお読みになりました雑誌の記事は、少なくとも我々の意図からいうと全く間違っております。また、正直申しまして、そういう根拠のない憶測を流すこと自体が非常に世の中に害を振りまいているんではないか、私自身はそう感じております。

 特別検査の目的につきましては、今さら申し上げることもないと思うんですけれども、直前の決算期の銀行の自己査定が正しいかどうかというものを見るための検査が通常の検査でございます。そうなりますと、先生の御指摘のマイカルのように、直前の決算期では銀行の自己査定が公認会計士協会の実務指針から見てもあるいは金融検査マニュアルから見ても正しくても、その後の急激な市場での信用の低下というものであのように破綻をしてしまった、そういうものについて、銀行に対する検査というものがもっとリアルタイムでしっかりと反映したものにできないかということで柳澤大臣を中心に考えた結果が、通常検査の補完的な方法としての特別検査であったわけでございます。

 したがいまして、特別検査は、銀行が決算を策定するまさにその策定時期に検査チームが入りまして、銀行そのものと銀行の監査法人そして金融庁とが三者協議という形で徹底的に議論をいたしまして、市場のシグナル、レーティングやら株価やら、そういうものとこれまでの銀行の自己査定が乖離しているならば、果たしてそれでいいのかということを徹底的に議論いたしまして、その結果、破綻懸念に落ちるなら破綻懸念に落ちる、三者合意の上破綻懸念に落ちる、あるいは検証した結果、いや、これはやはり実務指針からいっても金融検査マニュアルからいっても要管理だということであれば要管理にする。そういうことでございまして、予断を持たずに三者協議にかけまして、その結果をそのときの決算に反映させるということを目的としたものでございます。

 金融機関の方が、自己の体力の中でおさめてくれるだろうというような期待を我々に持っているとは思いません。もっともっと厳しいものだというふうに銀行は感じていると思いますし、そのあらわれが、先ほど申しましたように、今度の中間決算発表時に、通期の予想として、これはあくまで予想でございます、来年三月の自己査定をしてみなければ本当の不良債権処分損は出てこないわけでございますので、これはあくまで銀行がそれこそディフェンシブに、コンサーバティブに積んだ一つのプロビジョンでございますけれども、それによりますと、下期四・四兆、つまり上期が二・二兆円、しかも予想からすると、ことしの五月ぐらいの予想の通期から見ますと三倍以上のものを積むことになるわけですけれども、そういう防衛的なことを銀行がしていますのも、私から見れば、この特別検査というものが相当厳しいものになるということを銀行自体が認識しているのではないかと思います。

七条委員 今そういうことであれば、それは一つの信頼をきちっと維持するということを目指して頑張っていただきたいな、こう思っております。

 実は、私たち自由民主党あるいは与党が一緒になりまして、RCCの機能を充実させる法案をこの間衆議院で通過をさせました。この件に関して、鬼追社長の方にお聞かせをいただきたいのでありますが、新しく法案をつくった、これは買い取り価格の弾力化を目指してやっていくべきだ、こういうことでやったわけであります。今参議院に送られておりますけれども、この法案が成立したとしたら、これからは不良債権処理がさらにスピードアップするのかどうか、どういうお考えを持っているか、これも聞いておきたいんですが、いかがでしょうか。

鬼追参考人 RCCの社長の鬼追でございます。お答えを申し上げます。

 これまでの制度に比べますと、私どもの方が健全行の不良債権の処理について買い取りに積極的に参加できる、そういうような仕組みにしていただいたわけでございますので、そういう意味では、これまでと比較すれば買い取りの機会はふえていく、このように考えております。

七条委員 もう一つ鬼追社長にお聞かせいただきたいのは、今までいわゆるRCCがやってきたのは、どちらかといえば債権の取り立てをやってくるということをやりますね。しかしながら、これからは企業再生というようなこともやっていただかなきゃいけない。特に、買い取った資産をどういう形でこれから流動化させていくのかとか、あるいは今RCCの中に企業再生本部が設置をされた、これはかなりアサヒビールの樋口広太郎内閣特別顧問が積極的に言っておられたのを覚えておりますけれども、そういう意味で、いわゆる企業の再建の専門家というのが今のRCCの中にきちっと充実をし、あるいは土地の流動化ということも含めて、これをうまくRCCが機能化させていくことができるような状態になっているのかどうか、これもお聞かせいただけますか。

鬼追参考人 企業再生にこれまで携わっておりました人材と申しますのは、何と申しましてもやはり事業家、それに銀行が取引先の企業再生ということに携わっておられたと思います。さらに、私的整理あるいは法的整理という段階に入りますと、御承知のように、法的整理の場合には、裁判所が主宰されるところに従って、弁護士等々の関係する者が担当をしてまいりました。私的整理の場合でも、弁護士その他の者が私的整理における企業再生ということを担当してきたと思います。そういう意味では、RCCには、銀行出身の職員、役職員、さらに顧問弁護士その他協力弁護士等々がおります。その陣容だけで必ずしも十分とは思っておりませんけれども、今まで以上にもっと企業再生に関する知識、経験を積まなければいけない、いろいろなことを学習しなきゃいけない、そのように思っておりますが、そういった人材でもって充てたい、このように考えております。

七条委員 では、松田理事長にお聞かせをいただきたいんですけれども、今野党の方々から、別の委員会で、RCCが取得をした土地がどうも適正な価格でなくて取得をされてしまったなどということを指摘されておりました。しかしながら、これは、私が考えてみますときに、そんなことがあってはいけないと思うんでありますが、現実に、松田理事長のところでRCCをきちっと監督をするときに、どういう監督マニュアルでやっておるか、これもお聞かせいただけますか。

松田参考人 まず第一に、私どもとRCCの関係でございますけれども、私どもが一〇〇%の株主であるということはまずございますが、そのほかに、業務の遂行については、整理回収協定という今まで結んだ協定の中の、指導助言をするという立場にございます。したがいまして、終始、RCCがこれからどういう計画を立てるか、どういう資金計画でいくかという実施計画とか資金計画、そういうものについて私どもが承認をいたしておりまして、そのほか、随時いろいろな場面で指導助言の適正な運用を図っている、そういうことでございます。

 現実にも、必ず毎月一回は幹部の連絡会をいたしておりますし、また、重要な案件については随時連絡、協議をいたしておりまして、指導助言が実あるものになるように努めております。唯一の株主でもございますので、商法の規定に基づきまして、株主総会の決議では、重要な人事案件、決算報告、定款変更などにつきましては、当機構の判断で、その業務が適正に運用されるようにその把握と指導に努めている、そういうところでございます。

七条委員 時間が参りましたから終わらせていただきますけれども、三方におかれましては、年末年始、これから中小企業等々で非常に厳しい内容になってきます。中小企業のことについてもお聞かせをいただこうと思いましたけれども、信用を失墜しないような形のRCCであってほしい、預金保険機構、預保であってほしい。あるいは金融庁も、信頼をきちっと市場に示す、国民に示すということをきちっとやっていただきたいということを要請して、私の時間が参りましたから、終わらせていただきます。

野呂田委員長 これにて七条君の質疑は終了いたしました。

 次に、宮本一三君。

宮本委員 きょうは、本当にお忙しい中、参考人、ありがとうございます。

 私も金融問題、本当に関心を持っております。特に九〇年代、バブルの崩壊に始まりまして、九七年の北拓の破綻あるいは山一、そして日本長期信用銀行の破綻、こういった経緯、経過を見ておりまして、本当に我が国の金融機関、金融組織そのものが大きな危機に面していたわけであります。

 その中で、いわゆる九八年の金融国会で、金融再生法、早期健全化法という枠組みを整備していただきました。きょう御列席の皆様方、関係者、皆さん方の御努力のおかげで、いわば日本の金融機関が場合によってはメルトダウンするんじゃないか、そんな危機まで感じられた時期を何とか乗り越えてきまして、ジャパン・プレミアムを劇的に低下するというような形で安定化が取り戻されましたことを本当にうれしく思うわけでございます。

 ところで、そういった感謝を最初にしながら、最近の問題について、最初に森長官に一つ質問をしたいわけでございますけれども、最近、公的資金の再注入という問題がよく議論になってきております。

 これは、不良債権に対する引き当てが不十分ではないかとか、あるいは株価がいつまでたっても下がるということもあります。銀行がやはり資本不足に陥っているということではないかというような見方になるわけでございますが、余計な雑論も時々入ってまいりまして、たまたま柳澤大臣そして森長官、九九年の三月の資本注入をした当事者なものですから、何か再注入ということになると、責任問題がどうのこうのとかいったようなことで再注入に消極的になっているんじゃないかなどというばかげた論説をするのもよく見かけるわけで、そんなばかげたことはないわけなんだけれども、しかし、そういうことを言う人が世の中に多いわけですから、この際、森長官に、公的資金の再注入問題についてどういう考え方を持っているのか、はっきり述べていただきたいと思います。よろしく。

森参考人 お答え申し上げます。

 主要十五行の自己資本比率で見ますと、先ほど申し上げました九月期の、ある程度厳しい不良債権処理をした後の、かつまた、ことしから時価会計が導入されておりますので株価との連動が大きな問題なわけでございますけれども、株価については九月末の九千七百七十四円というものを前提として自己資本比率をはじいたわけでございますけれども、十五行平均で一一・一%でございます。八%を優に超えた水準でございます。

 そして、先ほど申しましたように、下期において不良債権処理を加速して四・四兆円追加してすると、それを前提とすると来年三月期の自己資本比率はどの程度になるのかということも、我々シミュレーションしております。その場合に、株価が、もちろん前提が必要でございます。我々は、株価についてだけは予断を持って考えられませんので、とりあえず九月末の九千七百七十四円というものを前提としてシミュレーションしているわけでございますけれども、下期に四・四兆円の不良債権処分をしたとしても、おおむね一〇%台は確保できる見通しになっております。

 そういう見通しのもとで、現時点において、金融庁としては資本再注入の必要がない、むしろ資本再注入ということになると、銀行の士気の低下やモラルハザードといった問題、さらには銀行株、その銀行自身の株のダイリューションの問題、それが市場に与える影響、その銀行への信認、株主からの、投資家からの信認の低下、そんなことをもろもろ考えていくと、現在、必要のないときに国の資本注入というのは論じる必要がない、そういうふうに金融庁は考えております。

 とはいえ、先ほど申しましたように、株価については予断を持って考えられないわけでございますので、各主要行に対しましては、できる限り自力調達で、市場の信認を得るために自力調達で増資を、自力調達をやってほしいということも要請しておりまして、それにこたえているところ、またそれを検討しているところもございます。

 そういうような状況にあるわけでございますけれども、しかし一方において、新しい預金保険法の第百二条に、国または地域の金融秩序の維持に重大な支障が生じる場合には、資本注入を初めいろいろ例外措置をとることができるということにもなっておるわけでございまして、そういう事態になりましたら、金融庁といたしましても、預保法第百二条に基づいて果断に資本再注入していくことにやぶさかではないというか、すべきだというふうに一方においては考えておりまして、柳澤大臣もおっしゃっておりますけれども、そういう際に、過去の資本注入の責任といったことは何の関係もございません。やるべきことはやる、それが行政だと思っております。

宮本委員 今の答弁で、非常に明快に理解ができました。

 もう一つ、森長官に引き続いて質問をしたいんでございますが、現在、銀行の貸し出しがどうもずっと毎年毎年引き下がりというか、下がってきております。これは、金融機関には金があるのになかなか貸し出さない、渋っているんじゃないかという言い方もありますが、同時に、企業側で資金需要がどうしても出てこないということに大きな原因があるんだろうと思います。

 したがって、私、不良債権問題に対する考え方についてなんですけれども、何か不良債権こそが諸悪の根源だ、世の中が非常に困ったことになっているのはこんな不良債権がいつまでもあるからだ、当初の段階で政府がもっと勇敢に処理をしておけば今ごろはけりがついているのにというような、政府に対する、決断のまずさというか、そんなことを言う節もよくありまして、一九八〇年代のアメリカのSアンドLの処理が、思い切ってやったからあれがすばらしいことであって、日本はあれを見習わなきゃいかぬのじゃないかというような言い方をし、そして最近は、ブッシュ大統領までが小泉さんに不良債権処理を急いでくれというような注文が来ておるわけでございますが、もちろん不良債権を早く処理するにこしたことはないのだけれども、一方で、何か不良債権さえけりをつければ世の中はバラ色になるような考え方があるような気がします。

 不良債権処理を少々の出血覚悟ででも強引にやろうという考え方について、私は非常に疑問を持っておりまして、ただ傷を大きくするだけじゃないかという心配も一方ではいたしております。これについて、長官は今どういうふうな感じを持っておられるのか。

 要するに、強引に不良債権処理を、少々の出血でも、中小企業が少々つぶれてもいいや、やれというように強く推進しているのか。それとも、それはそれなりに不良債権処理がいいことはもちろんだけれども、だれだって早くしたいと思うけれども、一方では、やはり大けがをするほどの不良債権処理の仕方ということがどうかなと私は思うんですが、そこについて森長官、どんな率直な意見を持っておられるか、ひとつ聞かせていただきたい。

森参考人 お答え申し上げます。

 ただいま宮本先生がおっしゃっておりますように、金融機関の貸し出しは、月中平均で見て、前年比、十月がマイナス四・一%の減となっておりまして、これに貸し出し債権の流動化や償却等による変動分を調整いたしまして、それを繰り戻して見ましてもマイナス一・九%という、確かにおっしゃられたとおりの状況になっております。その原因を見る限り、これも宮本先生御指摘になられたとおり、国内の厳しい経済情勢のもとでの借入金圧縮傾向とか、あるいは設備投資の抑制といったことがもとでございまして、いわゆる貸し渋りというところで見ますと、日本銀行の九月の短観で見ましても、平成十年のときのようなDIの数字は出ていないと思っております。

 次の宮本先生のお話ですけれども、確かに、銀行の貸し出し増加には実体経済の活性化が必要であると思います。また、去る六月に政府が出しました骨太の方針の中にも、不良債権処理といった構造改革が、短期的には構造改革のプラスよりデフレ効果のマイナスの方が大きいだろうということも触れられておると思います。

 ただ、不良債権問題の解決というのは、金融機関の中の不稼働資産を落とす、すなわち金融機関の収益力の増強を図るということで、大変なプラスでございますし、さらに産業サイドで見ますと、非効率な企業あるいは企業の中の非効率部門、こういったものの効率化にやはり不良債権の処理は資するという面が大きくあると思います。

 そういうことで、一言で申しますと、日本経済をこれから活性化していくにはどうしても乗り越えなければいけない問題、片づけなければいけない問題だというふうに認識しておりまして、したがいまして、不良債権の処理というものが、今後の潜在的な日本経済の成長率を上げるためには不可欠なことであるというふうに認識しております。

宮本委員 よくわかったと言いたいところなんだけれども、もう一つ、私としては、問題、疑問は少し残ったままでございます。

 次の問題に移ります。

 松田理事長にひとつお願いしたいのでございますけれども、預金保険機構の問題。

 確かに、預金者の保護の観点から、金融機関の破綻に際しまして多額の税金が使われているわけでございまして、国民の立場からしますと、破綻に至った責任について、徹底的に刑事、民事の追及をしてもらわなければ納得ができないと思うわけでございますが、最近の報道を見ておりますと、破綻した朝銀信組の問題に関連して逮捕者が出たりしております。これまでの破綻金融機関の責任の追及の状況、特に朝銀系の信用組合を中心としたその処理の問題について御説明をお願いしたいと思います。

松田参考人 お答えいたします。

 まず、仕組みでございますが、預金保険機構とRCCは、預金保険機構はみずから金融整理管財人となって直接、また、RCCが破綻処理が終わった後に引き受けた回収業務の中で旧経営者の責任追及を行う場合に、預金保険機構もそれに連係して一緒にそういう責任追及をやる、こういう仕組みになっております。

 そこで、お尋ねの朝銀信用組合の関係でございますが、まず、預金保険機構としては、朝銀東京信用組合には直接金融整理管財人として入っておりまして、職員を派遣してその責任追及に当たっております。また、その他の破綻しました朝銀信用組合の金融整理管財人に対しましては、アドバイザーという役割で間接的に旧経営陣に対する責任追及に努めてきたということでございます。

 その破綻をいたしました朝銀信用組合の旧経営陣に対する責任追及の概況でございますが、これまでに朝銀宮城、新潟、長野、福井、愛知、近畿、島根、山口、福岡の九つの信用組合におきまして、それぞれ金融整理管財人の御努力によります民事提訴が行われておりますし、また、破綻処理を済ませた後の朝銀大阪信用組合の旧経営陣に対しましては、RCCによる努力によって民事提訴が行われておりまして、その請求総額は合計で約九十億円、こういう状況でございます。

 一方、刑事責任追及の分野でございますが、朝銀東京信用組合につきましては、これは預保自体が金融整理管財人として入っているわけでございますけれども、本年の十一月の八日と二十八日に検査忌避及び業務上横領ということで、また朝銀近畿信用組合につきましては、本年の九月の二十六日と十一月の十四日に検査忌避等及び背任によりまして、いずれも預保を含む金融整理管財人が捜査機関に対して告訴、告発を行っており、現在捜査が遂行されている、こういう認識でございます。

宮本委員 ありがとうございました。

 時間もなくなりましたので、最後に、もう一度森長官になりますが、ペイオフの問題についてお伺いをしたいと思います。

 端的に言って、今なぜペイオフ解禁が必要なのか。確かに、政府が約束したことを途中で変えるのはおかしいということはわかるんですが、地域金融機関からの預金流出の動き、そういう心配はないのかどうか。また、破綻の心配はもう大体なくなったのかどうか、小さな金融機関の問題でございます。そういった問題、もう時間になりましたけれども、一言、長官の方から御見解を伺いたいと思います。

森参考人 お答え申し上げます。

 先生御承知のとおり、ペイオフ凍結は、平成八年の信用不安、金融不安の中でとられた臨時異例の措置でございまして、五年間の時限的措置でございました。その後、一昨年末に信用組合に焦点が当たりまして、昨年の四月から都道府県から国に移管する、それと同時にペイオフを解禁したのでは、信用組合というものの監督検査が国に移ってからまだ一度も検査もしていない、そういう状況でいかがなものかということで、一年延長になったわけでございます。その後、昨事務年度、すなわち昨年七月からことしの七月にかけまして、全部の信用組合に検査が入りまして、その結果、残念ながら破綻に至ったものも多うございます。

 また、現時点において、全くすべてが健全だと言える状況にもないことも事実でございますけれども、何とかことし中には、そういうやや過少資本の信用組合については自力調達を果たすよう現在促しておるわけでございまして、来年三月までには、一言で言えば、市場から退出すべき金融機関は退出させるということで、来年の四月からは予定どおりペイオフを解禁すべきだというふうに考えております。これを解禁しなければ、先ほど申しましたように、金融機関のモラルハザードや、あるいは金融機関や借り手企業の構造改革の先延ばしにつながるわけでございまして、極めて不適当なことになるのではないかと考えております。

 なお、来年の四月以降につきましては、仮に何か起こった場合には、預保法百二条の金融危機対応ということで対応していくのが筋ではないかというふうに考えております。

野呂田委員長 これにて宮本君の質疑は終了いたしました。

 次に、谷口隆義君。

谷口委員 本日は、当委員会に参考人の皆さん御多用の中出席を賜りまして、ありがとうございます。

 私の方は、まず初めに、今宮本委員が御質問されたわけでございますが、ペイオフの関連について森金融庁長官にお伺いをいたしたい、このように思います。

 来年の四月から実施されるわけでございます。私自身も、一昨年の年末でございましたか、与党協議の党代表として、この一年延期という議論に参加をいたしたわけでございますけれども、当時私は、予定どおり実施すべきだという論陣を張らせていただいたわけでございます。今回、景気の状況等々ございまして、与野党の中から、またペイオフを再延長したらどうかというような意見があるわけでございますが、私はそれは反対であります。

 今のペイオフの関連につきましては、今、不良債権処理を各金融機関は精力的に進めておるわけでございますが、この不良債権の処理というのはあくまでも構造改革の手段であって、本来、構造改革が目指すべきものは金融機関の体質改善であるべきである。この金融機関の護送船団行政、戦後五十数年過ぎて、金融機関が我が国の護送船団行政の中で、国際的な競争力がない、ビッグバンをして外国の金融機関と競争するといったことになりますと、全くその競争力がないというような状況の中で、不良債権もたまり、また競争力もとても十分なものじゃない、こういう状況の中で、銀行みずからが、金融機関みずからが体質改善を図っていただかなきゃならない。いつまでたっても穴のあいたバケツに水を注ぎ込むわけにいかない、国民の皆さん方の税金をそういうところにずっと使い続けるわけにいかない、こういうことで申し上げたわけでございます。

 具体的に来年の四月一日からペイオフが凍結解除になるわけでございます。それで、森長官にまずお伺いいたしたいことは、来年の四月から解除になりますのは定期預金が対象になっておりますので、普通預金はその一年後ということになるわけでございますね。それで、どうもそのあたりの状況を政府広報等で今一生懸命やっていらっしゃるようでございますが、昨日の報道を見ますと、金融中央委員会、日銀が事務局をやっているところのアンケートを見ますと、三割の方がまだペイオフについて御存じないというような状況のようでございます。このペイオフを予定どおり実施するための、先ほど長官自身が決意をお述べになりましたが、この準備段階としてどういうことを行っていらっしゃるのか、このような観点で今状況を御報告いただきたいというように思います。

森参考人 お答え申し上げます。

 金融機関側の準備と、そして預ける預金者側の準備と、まさに谷口先生がおっしゃいましたように二つの側面があろうかと思います。

 金融機関側の準備といたしましては、今回の新預保法で名寄せのためのデータ整備というものを各金融機関に義務づけておりまして、そういうデータ整備が着々と進んでおりまして、来年の三月末までには名寄せのためのデータ整備は完成するものと思っております。

 問題は、まさに谷口先生のおっしゃるとおり、預金者側の準備と申しますか、心構えと申しますか、そういうものがどの程度進むのかということでございまして、これにつきまして、金融庁としては大きな問題意識のもとに、この夏から広報活動のプランを練りまして、最近におきましては、新聞、テレビといったマスメディアを使った政府広報を積極的に行っております。

 一方において、今谷口先生が御指摘のとおり、日銀の調査によりますと、三〇%がペイオフは知らないという大変まだ問題のある状況でございますので、今後いろいろな機会をとらえて、特に財務局に今ハッパをかけているわけでございますけれども、いろいろな機会に、ペイオフとは何かということについて積極的に広報活動をしていきたいというふうに思っています。

 ただ一方において、我々、その預金者の準備状況を見る一つのメルクマールとして、定期預金と普通預金がどういうふうに移動しているか、預金全体がどういうふうに移動しているかというのもチェックしております。一番最近の九月の結果を見ますと、定期預金は業態を問わずどの業態でも減っております。また、普通預金はふえております。そしてまた、全体の預金について見ますと、各業態とも預金量は、マイナスになったところはございません、前年比でプラスに、若干でもプラスになっております。

 そういう状況でございまして、確かに三割の人は知らないというあのアンケートは出たのでございますけれども、やはりかなりの程度、預金者側の準備、すなわち小口化、分散化というものは進んでいるのではないかというふうにも考えております。

谷口委員 周到な準備をして預金者の皆さん、また、金融機関の取引をしている相手方企業の皆さんに迷惑がかからないような、一方で、この国全体の大きな改革でございますから、そういう意味で柳澤金融担当大臣も大変な御決意を述べていらっしゃるわけでございます。ぜひ粛々と進めていっていただきたいというように申し上げたいわけでございます。

 それと、金融機関のシステム全体が、私は先ほども申し上げました、戦後五十数年過ぎて大きく変わってきたんじゃないか。銀行の業界もそうでございますし、証券業界、また生保、損保、またノンバンク、いろいろなところがございますが、典型的な例が業態でございますね。

 例えば、金融業界でいきますと、都銀、長信銀、信託、また地銀、第二地銀、また協同組織金融機関として信金、信組、また、このような形でいわば序列化されておった、硬直した金融秩序というようなものがあったわけでございますけれども、最近の状況を見ますと、一兆円程度の預金量を持った信用組合が経営破綻をするといったようなことであるとか、本来、当初、地域金融機関であったものがかなり大きな規模を持つようなことになったとか、こういうような状況の中で今不良債権の処理をやっておるわけでございます。

 不良債権の処理は大変重要な問題でございますから、これはやっていかなければなりません。しかし、一方で、この国の金融機関、金融システムがどうあるべきなのかといったことを念頭に入れた対応ぶりが必要なんだろう。

 今、柳澤金融担当大臣のところでは懇話会を設けられて、学識経験者、また実務者の意見をお聞きになっておるというようなことは聞いておるわけでございますが、森金融庁長官の御見解がございましたらおっしゃっていただきたいと思います。

森参考人 お答え申し上げます。

 まさに問題意識としては谷口先生のおっしゃることを共有しておりまして、二十一世紀に向けて、今はおっしゃるとおり不良債権処理、いわばいろいろなびほう的なことをやっておるわけですけれども、二十一世紀を眺めると、環境変化に即応した金融システムの姿というのはどうあるべきかということも今から議論していかなきゃいけない、それが必要なことも事実でございます。そういう意識のもとに、谷口先生も触れられましたように、大臣の懇話会、二十一世紀ビジョン懇と通称しておりますけれども、それを開いて有識者に議論していただいているところでございます。

 私自身といたしましては、二十一世紀の金融システムのあるべき姿として、やはり日本がいろいろな意味で間接金融の国である。戦後の高度成長における銀行の果たした役割というのは、それはそれなりに評価すべきだと思うんでございますけれども、その後、いろいろな金融技術の革新的な進展があって、欧米の金融機関は、それに乗ってますます投資銀行的に動いているところとリテール銀行的に動いているところ、その二つが分化している姿で、投資銀行とリテール銀行というものがはっきり分かれて金融機関の果たす役割が非常に明確になっている。

 それに対して、日本は間接金融がまだまだ残っている。例えば、民間の非金融法人企業の資金調達で見ますと、財務省の法人企業統計年報で見ますと、大企業の場合、まだ六四%が間接金融に頼っている。中小企業が八七%間接金融に頼っているのはわかるとしても、大企業が、すなわち大企業の場合は、銀行にとっても、資金調達コストと受取利息の関係でいえば、ほとんど利益が出ない大企業向け融資というものを持っている。

 こういう姿については、今後、大企業については直接金融市場へのシフトというものを、CPのペーパーレス化を初めとしていろいろ行政側もやらなきゃいかぬ環境整備はあると思いますけれども、そういうことを環境整備しつつそういうふうに持っていかなきゃいかぬと思いますし、個人金融資産千四百兆といっても、現金、預金に五三%今たまっております。株式、出資金、投資信託、三つ合わせましても一一%でございます。アメリカとちょうど逆の姿になっております。

 やはりそういうところも直接金融、もっと具体的に言えば証券市場の構造改革をもっと進めまして、かつまた証券市場の信頼性を向上させる、端的に言えば証券会社の信認をもっと高める、そういう業界の努力と、こちらのそのための施策を図りまして、いずれにしても証券市場の信頼性の向上を図っていくことが重要だと思いますし、その上で、金融機関は、やはり中小企業を含む健全な貸出先に対する資金供給の一層の円滑化というところにもっと傾斜していくべきだ、そちらの方が、場合によってはミドルリスク・ミドルリターンをとるような金融機関になっていくということが、また一方において重要なことだというふうに考えております。

谷口委員 それで、一つお聞きしたいんですが、今、アメリカのエネルギー会社エンロンが経営危機に立ち至っているというようなことのようでございます。その結果、我が国のMMF、資料を取り寄せますと四社のMMFがあるようでございますが、これの元本割れといったような事態になっておるようでございます。

 今、長官がおっしゃったように、我が国の金融システム全体の大きな流れは、間接金融から直接金融にというような大きな流れを促進させていくという観点があるわけでございますが、証券業界におけるMMFというのはローリスク商品で、預金のかわりにやろうというような人たちが預ける商品でございますね。今回のようなこれが元本割れといったような事態になりますと、解約も今起こっておるようでございますが、なかなか思ったような流れができないということになるわけでございますが、投資家の立場に立って、今回のこの元本割れという事態についてどのようにお考えなのか、御見解をお願いいたしたいと思います。

森参考人 お答え申し上げます。

 谷口先生のおっしゃるとおり、今後、個人投資家を直接金融市場に引き入れていくためには、まずリスクが平準化している投信というものがその第一歩でございますし、その投信の中で最もローリスク、そのかわりローリターンというものがMMFだという認識でございます。

 そのMMFが元本割れをするということは、投資家を引き込まなきゃいけない証券会社、またそれと一緒になっているアセットマネジメント会社に対しては極めて遺憾なことでございまして、ただ、今回、MMFが四社、本数で五本、エンロン債を組み入れていたのが、エンロン債が予期せぬことからトリプルBからシングルBまで落ちてしまった、それによって価格が急落した、それによってファンドの基準価値が一〇〇を割ったということであると報告を受けております。

 もちろん、法令上何か問題がなかったかは事情を聞いておりますけれども、法令上問題なかったとしても、やはりアセットマネジメント会社のリスク管理というもので今後何か教訓を得ることがないのか、そういうことについて今後よく調査をしてまいりたいというふうに思っております。

谷口委員 いわば今金融の過渡期ということでございますので、そのあたりの状況も踏まえて、大きな立場で金融全般を見ていただきたいというように考える次第でございます。

 次に、RCCの鬼追社長にお伺いをいたしたいと思いますが、私も、今回のRCCの機能を拡充する法案でございますね、金融再生法の改正案につきまして、提案者になっておるわけでございます。

 先週、衆議院を通過したわけでございますけれども、今回の法案は三つポイントがある。今まで、この買い取り価格をめぐって時価にしようということと、あとは、買い取る方法も、相対取引であったものを入札も可能にしよう、バルクセールもできる、入札もできる、このようなやり方にしよう、もう一点は、企業再生をRCCが行っていこう、こういう三点が一つのポイントなんだろうというように思うわけでございますが、この企業再生ということについてお伺いをいたしたいというように思います。

 企業再生を行うのに、RCCが金融機関から不良債権を買い取る、買い取った不良債権をデット・エクイティー・スワップ、株式と債権を交換するといったようなことをして、これを企業再生ファンドに現物出資する、あと、企業再生ファンドのところは、民間の投資家、また政策投資銀行等が出資してその再生業務を行う、このようになるわけでございますが、実態的に、そのときに、再生を行う、このイニシアチブを一体どの方がとられるのかというようなことが一般の方の疑問としてあるわけでございますけれども、そういう観点で、再生の業務の全体のありようと、あと、イニシアチブはどういう形でとっていくんだということを、ちょっと御答弁をお願い申し上げたいと思います。

鬼追参考人 お答え申します。

 私どもは公的サービサーでございますので、要は、健全行の不良債権をどの程度買い取ることができるかということにかかわっているかと思います。買い取りの結果、当社が、仮にメーン銀行に相当するような債権を取得するというような状況にもし至るならば、これはイニシアチブをとることはできるだろうなと。もちろん、その当該企業の再生の可能性の有無ということはございますけれども、これがあるという場合には当社がそういうイニシアチブをとることは可能であろうかというふうに思いますが、問題は、そこまで買い取れるかどうかということになろうかと思います。

 買い取りました結果、当社の買い取り額が、他の金融機関その他の額に比べまして、つまり債務に比べましてごくわずかであるという場合には、これはやはり数の原理が働こうかと思いますので、私どもは、そういった企業再生にかかわる国会の御意思というものをできるだけ実現すべく努力はいたしたいと思いますけれども、やはりそういうところにかかってきているのかな、このように思っております。

谷口委員 それで、RCCがイニシアチブをとるといったような場合も考えられると今社長がおっしゃったわけでございますけれども、その際に、もう今も既に企業再生本部をつくられたというようなことでございますし、私が考えるのは、金融機関から不良債権を買い取りますね。このときに金融機関の担当者がおりますね。この金融機関の担当者は、当該企業に対して知悉しているといいますか、いろいろなことを知っているわけです、従来からずっとやってきたわけでございますから。この担当者は、再生本部といいますか再生のグループの中に入れていかないと、なかなか実際に再生業務ができないのではないかというように思うわけでございますが、今考えておられることの中にそんなようなことは入っておるのかどうか、御答弁をお願い申し上げます。

鬼追参考人 委員御指摘のとおりでございまして、当該企業の企業情報は、その持ち込まれた金融機関の職員の方が大変よく熟知をしている、また、それにかかわる資料等もたくさんお持ちであろう、このように思います。ただ、我が社といたしましては、一方において利益相反的な問題が起こってはいけないというようなことも考えるわけでございますが、その辺の公正性というものをきちんと担保する手だてをつけた上で、そういった持ち込み銀行さんの当該債務者に対する企業情報等を活用したい、このように考えております。

谷口委員 だから、活用するというより、むしろ担当者をある一定期間一緒にチームの中に入れるというようなことをやらないと、新たにその当該対象企業のところの再生というのはなかなか難しいんじゃないかというように思うわけで、ぜひそういうことの御検討をお願いいたしたいと思います。

 それと、先ほども申し上げましたように、企業再生ということになったわけでございますね。従来からこのRCCは、もう中坊さんのときからそうですが、大変取り立ての厳しい機関だというような、市中に定着しているところがあるわけでございます。ですから、RCCに行きますと、RCC送りとか島送りとかいったような言葉で言われるんですが、なかなか、あのところはもういよいよだめになったなと、ほかの金融機関からはもう融資もなかなか受けられないといったような状況があったということを聞いておるわけでございます。今回は、企業再生というような機能もやられるわけでございますので、そういう観点からも、イメージを変えていく必要があるんじゃないか。

 また、取り立てのところも、私は、今回の法改正のときに、与党協議の場で、「経済情勢、債務者の状況等を考慮し、」という文言を入れさせていただいたわけでございますけれども、これは、一つは、大変厳しい現下の経済情勢の中で債務者の状況をよく見ていただく必要があるということと、もう一つは、経済情勢を勘案して買った債権をタイミングよく売っていただきたい、二次ロスが発生しないように売っていただきたい、こういうことで申し上げたわけでございます。

 そういう状況の中で、先ほどの話に戻るわけでございますが、RCCとして何らかのイメージを変えるというようなことの具体的な方法を考えていらっしゃるんでしょうか、お伺いいたしたいと思います。

鬼追参考人 委員御承知のとおり、RCCは、債権回収の極大化を図るということ、もって国民負担の最小化に努めるということを重大な使命としているというふうに心得ておりますが、このために、RCCが、債務者にとっては、契約の拘束性を厳しく追求する組織と見られている面のあることは御指摘のとおりだと思っております。

 しかしながら、誠実に返済を継続しておられる多くの債務者がおられるということも事実でありますので、そういうことを考えますと、もう島送りというような表現は、当社ではこれは厳禁にいたしております。あるいはRCC送りということも、当社においてはそういうことは厳禁にいたしておりまして、マスコミの方が時に使われるときにも、それは私の方から御注意申し上げているという現状でございます。

 今後、RCCとしましては、債権回収は、契約の拘束性の追求ばかりではございませんで、人間の尊厳の確保ということにも努めなければならないと存じますし、今回、改正案が成立いたしますと、我々はこれまでよりも非常に強い企業再生マインドというものを持って債権回収に当たらなければならないのではないだろうか、このように思っております。そういった努力を積み重ねることによりまして、これまで一面的にとらえられておりました我が社に対するイメージが正しいものに変わっていくのではないか、また、私どもはそのための努力をしていかなければならないのではないか、このように考えております。

谷口委員 それで、次に、具体的な事例を挙げてちょっとお伺いをいたしたいわけでございます。

 RCCが金融機関から買い取った債権をどの程度回収されるのかというような漠然としたお伺いなんでございますが、例えば、対顧客に対する債権元本が十億あった、金融機関から十億を貸しておった。この十億の債権元本をRCCが二億で買い取られた。その二億で買い取った元本、債権を、三億回収されたといったことになりますと、一億の利益、RCCでは利益が上がるわけでございます。

 こういう場合に、相手は、当然、企業の場合であれば、個人保証までやっていらっしゃるんだろうと思いますが、個人保証で、個人財産も処分し回収をした、これ以上支払えないといったような場合に、この後、未回収残高が、請求権として七億残っておりますから、この七億について、例えばRCCが債権放棄をするというようなことは、現状どういうような形になっておって、これからどういうようにされようとしておるか、御見解をお伺いいたしたいと思います。

鬼追参考人 御案内のように、債権回収業務と申しますのは、個々の事案ごとに大変事情が異なるものでございますので、画一的に言えるものではございません。

 しかしながら、今委員が御質問のような事例の場合に、私どもとしては、買い取り価格までの回収はできた、あるいはそれ以上の回収ができておる、最低限度の言うならば責務といいましょうか、責任といいましょうか、それは一応果たした。そういたしますと、対顧残との範囲の中でどのように考えるかにつきましては、当該債務者の弁済に関する誠実度の問題でありますとか、再生に関する意欲の強弱でありますとか、あるいはまた、資産、収入に関する情報を完全に開示なさっているかどうかということとか、さまざまな条件を勘案いたしまして、社会的にも御納得のいただけるような形での処理、すなわち、債権放棄をするとするならばどの程度の範囲で債権放棄をするのかということを慎重に検討して、これまでもしてきたつもりでございますし、これからも、なお一層、先ほども申し上げましたように、再生マインドということを強く持ちながら、その点については慎重に検討してまいりたい、このように考えております。

谷口委員 改革先行プログラムのところでも、早期に不良債権の回収をというように今なっておるわけでございます。ですから、現下のRCCの機能を拡充するという法案が今回参議院で成立しますと成立するわけでございますが、そのような趣旨をよく御理解いただきまして、迅速に不良債権の処理をしていただくというような観点をぜひ忘れないようにしていただきたいと思うわけでございます。

 従来、確かに、回収でなかなか進まないといったものについては、長時間かかっていたというような事態があるようでございますけれども、そのあたりの判断を早めていただいて、市場の活性化のためには、そういうことも必要なんだろうというように思うわけでございます。ぜひ、そういうように迅速に処理をしていただきたい。

 また、さっきの事例で申し上げますと、個人保証というのがついておるわけでございますね。例えば、十億の債権で、三億回収して七億ある、それはもう債権放棄するのだけれども、個人保証が入っておるといった場合も、今おっしゃったのは、個人保証についてももうこれは履行を求めないといったようにされるのかどうか、御答弁をお願いいたしたいと思います。

鬼追参考人 その場合、大変難しい御質問をちょうだいしておるわけでありますが、その保証人の資産あるいは収入といったものをやはりよく検討しなければいけないことだろうと思います。主たる債務者に万一のことがあった場合に備えての保証人でございますので。したがいまして、保証人の責任をどの程度のところまで追及していくのかということは、保証人の資産あるいは収入にかかわる問題であろうかと思います。それが、全くその両方とも見込めないという場合には、さらにそれを窮地に追い込むというようなことはあってはならない、このように思っております。

谷口委員 ありがとうございました。

野呂田委員長 これにて谷口君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

野呂田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。小池百合子君。

小池委員 保守党の小池百合子でございます。

 まず、金融庁長官の方にお伺いをしたいと思います。

 本日も大々的に報道されておりますが、アメリカのエネルギーベンチャーというのでしょうか、エンロンが事実上の破綻をするということで、今後の世界金融全体への影響なども心配されているところでございます。

 せんだってのマイカルにいたしましても、今回のエンロンにいたしましても、社債ということで、かなり多くの方々がこれにつぎ込んでおられるという実態がある。そしてまた、このエンロン債というのも組み込んでいるMMFも元本割れがさらに激しくなってきているという状況でございまして、この問題は、今後のさらに大きなことに発展するのではないかと心配をいたしております。

 ということで、公社債、MMFという大変重要な金融商品、今お金がどこに行けば安全なのかとあちこちを探しあぐねている状況にあって、このMMFに対する信頼を確保していかなければならないということは重要なポイントになるかと思います。このエンロンということもきっかけといたしまして、MMFの信頼確保をすべきと考えますけれども、いかがお考えになるか。

 そしてもう一問、この対エンロン融資を抱えている日本の銀行が多々ございますけれども、この影響をどういうふうに見込んでおられるのか、お答えいただきたいと思います。

森参考人 お答え申し上げます。

 小池先生のおっしゃるとおり、MMFは個人を直接金融市場に引き込む際のまさに基本的なインフラの部分でございまして、そのMMFが、マイカルであれ、エンロン債であれ、それを契機に元本割れをしたことは極めて遺憾なことでございます。

 今後、アセットマネジメント会社等に対しまして、もう少しリスク管理をきちっとできないかどうか、そういうことを調査していくつもりでございますけれども、エンロン債につきましては、御指摘のとおり、四社、四つのアセットマネジメント会社が五本のMMF、そのMMFにエンロン債が組み込まれておりまして、当方としては、それぞれのアセットマネジメントをしている、MMFそのものの販売はそこの証券会社がやっているわけでございますけれども、証券会社に対して、解約にすべて応じられるような体制を今とらせているところでございます。

 本日のところ、日興アセットマネジメントが新聞広告を出しておりますように、既にデューデリを終えた基準価額九千八百二十七円、したがって、ロスとしては一・一八%ぐらいのロスになるのでしょうか、それですべて買い取る旨を日興アセットマネジメントは表明しておるわけでございますけれども、一応各アセットマネジメント社もそのMMFの裏側にありますファンドをデューデリしておりまして、基準価額を既に表明しているところでございます。

 今後につきましては、先ほど申しましたように、MMFについては特にリスク管理を強化することを念頭に置きまして、投資信託協会に対しまして、MMFの安定性の向上に向けた具体策を検討するよう要請していきたいというふうに思っております。

 エンロンの、このような形になったことに伴う日本の金融機関についての影響のお尋ねでございますけれども、我々の方は、早急に主要行に対しまして、エンロンに対してどれくらいの与信を持っているかを調査したわけでございますけれども、十五行で、もちろんゼロのところもありました、ゼロでないところも、円に換算いたしましておおむね数十億円から百億円台ぐらいでございまして、トータルいたしましても千億円には満たないと認識しております。これは、エンロン単体だけではなくて、エンロングループ全体に対する与信でございます。

 もちろんそれにも、それに対しては保全も相当つけているところもあると思いますので、そういう意味におきまして、エンロンという存在を見ますと、欧米の銀行に対しては、新聞等によりますと、相当な影響が出ることも言われておりますけれども、邦銀に対しての影響という面では極めて限定的なものと認識しております。

小池委員 このエンロンも、一時は大変なエネルギー業界の寵児として期待も高かったということがこれまでの急速なエンロンの発展ということになっていたのでございましょうが、予期せぬこういうふうな状況が起こってしまった。予期せぬといっても、いろいろと調査を検証すると、いろいろなディスクロージャーも十分ではなかったように見えるところでございます。

 その意味でいえば、今回の九月十一日のテロ以降、さまざまな思わぬ状況が起こっている。その一つが損保業界でありまして、そのうち、例えば大成でございますけれども、再保険の部分、きょうも新聞に出ておりますが、丸投げのような形にしているということで、非常に安易な形で行われてきた。この辺も、検査、そしてこれは事後チェック型に変わってきているということで、監督というのもなかなか難しいところでございましょうけれども、これについての問題点、そして今後、こういった状況を、危機管理を含めてでございますけれども、どのように考えておられるのか、金融庁としてどのような対策、方策をとられるのか、この点についてよろしくお願いします。

森参考人 お答え申し上げます。

 おっしゃいますとおり、九月十一日に起こった事件を含めまして、航空機事故に対する再保険引き受けによる将来起こり得べき請求総額が七百四十四億円に達することが判明いたしまして、大成火災はその規模からいってそれにたえられないということで、破綻に至ったわけでございます。もちろん、今回、九月十一日のことというのは、いわば予想外中の予想外のことでございますけれども、損保会社というものはそういうものにもたえられるだけのリスク管理をしていなければいけないことも、そのとおりであろうと思います。

 そういうことで、今回起こったことにつきまして、当方としても、どういう点をこれからもっと重点的にしなければいけないかという反省に立ちまして調査したわけでございますけれども、こういう再保険会社にいろいろな保険会社が出資しているわけですけれども、その場合に、再保険を受けることのリスクが根っこからいって一体どれくらいあり得るのかということのチェックをもっとしなければいけないというのが反省点でございます。

 すなわち、通常、保険会社を検査した場合に、再保険部分につきましては一年間の収支、すなわち受け取る保険料と再々保険に出再した場合にその保険料との差額が益として出るわけですけれども、その益が順調に出ているかどうかを見るのが主体でございます。

 しかし、例外中の例外のようなことが起こった場合には、その根っこからの最大リスクというのがどれくらいになるんだ、それが大成火災のように小さい資産規模のところでたえられるのか、そういう点についてもっと、会社自身もリスク管理を強化しなきゃいけないと思いますし、検査監督の方もそういう面でのあれをもっとしっかり見なきゃいかぬというふうに考えておりまして、再保険契約の引き受けの基準とか、同一のリスクにかかわる複数の再保険契約を引き受ける場合の集積リスクの管理だとか、再々保険のリスク管理の実態等について早急に調査にかかっているところでございます。

小池委員 ありがとうございました。

 先ほどからの質問二点、MMFについて、そして損保について、ともにこれらは思いがけないことから起こっている事態ではございますけれども、やはり日ごろのリスク管理、そして徹底した検査、これがいかに必要かということを改めて知る機会ではないかと思っておりますし、また、今個人の資産がどこへ向かうかというのが非常に、その当てを探すのに大変苦労しておられるという国民の立場に立っても、行き場がないということを、どんどんとその範囲を狭めてきているのではないかということを大変懸念いたしております。

 その点、今なさっておられます大手銀等の不良債権の特別検査、これは、突然というよりも、ずっと長年引きずっていることでございまして、この特別検査を実施されているその結果がどのように出てくるのか。一般的に考えましても、この特別検査でよりよい状況になるとも思えない。一方で、公的資金はこれまで注入をしないというふうに断言してこられたわけでございますけれども、特別検査を実施するということは、より状況がつまびらかになってくると、結局のところ公的資金を入れなくちゃいけなくなるのじゃないかというようなことで、どうもこの二つのポイントが相反するように思われるのでございますけれども、その点いかがでございましょうか。

森参考人 お答え申し上げます。

 確かに、不良債権処理につきましては、当方としては、まず金融機関に対して不良債権処理が先にありきという姿勢で強い監督を行っておりますし、各金融機関ともそれにこたえておるものと思っております。その結果として、主要行の中間決算期を見ますと、五月の見積もりでは一・一兆程度の不良債権処理だったのが、九月の中間決算期にはほぼその倍の二兆になった、あるいは通期で見ました場合には今後さらに四・四兆円の不良債権処理を行うという、極めて保守的に、金融機関も不良債権の処理に向かって積極的になっていると認識しております。

 そんな中での銀行の健全性の問題でございますけれども、この中間決算期、十五行の全体で見ますと平均で一一・一%ほどの自己資本比率がございます。さらに、年間六・四兆円の不良債権処分をいたしましたと仮定しまして、来年三月期の自己資本比率を見ますとおおむね一〇%台を確保している、そういう現状に立ちまして、金融庁といたしましては、当面資本再注入の必要がないというふうに考え、また大臣もそのようにおっしゃっている次第でございます。

 ただし、これは前提がございまして、時価会計導入がされておりますものですから、九月末の株価、九千七百七十四円というものが前提でございまして、株価については予断を許さないわけでございますけれども、そういう中にあって、我々は大手行に対しまして、今から万一に備えて自力調達できるところは自力調達してほしいということを強く申しておりまして、それにこたえていただいている銀行も出てきている次第でございます。

 ただ、今後、もちろんどういうことが起こるかということは予断を許さないわけでございますが、仮にも国あるいは地域において金融秩序の維持に重大な支障が生じるようなことがあった場合には、預金保険法百二条で対応するのがしかるべき措置だというふうに考えております。

小池委員 どこの分水嶺でそう判断するのか、その基準についても伺いたいところでございますが、あと一点、私どうしてもやはり、ずっとかかわってというか、こだわってまいりました朝銀の問題について伺わせていただきたいと思います。

 せんだっても、朝銀東京の方に関連いたしまして、朝鮮総連の中央本部に家宅捜索が入るということになりました。これはまさに金融問題ということでの捜査でございますけれども、私はやはり、金融再生法にのっとって破綻した金融機関が受け皿をつくる、そうなりますとその受け皿に資金が注入されるわけでございますけれども、どうも、二度つぶれた朝銀近畿の例を見ましても、その受け皿の適格性というのが甘いのではないかと思うわけでございますが、いかがでしょうか。

森参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、朝銀大阪の朝銀近畿への事業譲渡につきましては、平成九年十二月に、当時朝銀大阪を監督していた大阪府を通じまして適格性の認定が出てきたわけでございまして、さらに同月には、大阪府から大蔵大臣に対して、適格認定が行われるよう要請もございました。当時の大蔵省におきまして、かかる要請や当時の監督権限を有していた府県の検査結果も踏まえまして、法令に従って審査を行った結果、平成十年四月に適格性の認定を行ったわけでございます。そして、小池先生御指摘のとおり、その後平成十二年十二月に朝銀近畿が破綻した、いわば二次破綻をしたということはそのとおりでございまして、まことに遺憾に考えるところでございます。

 ただ、当時としては、預保法六十一条の要件に従って適格性の認定をした、審査を行ったということで、当時としては最善を尽くしたものだと思っております。

 ただ、今から振り返りまして、では何がおかしかったのかと申しますと、朝銀近畿に国から金融整理管財人、これは昨年の十二月に金融整理管財人を送ったわけですけれども、その金融整理管財人の再生法十三条報告、破綻に至った経緯というものを報告させたところ、朝銀近畿が破綻したもとは、そのほとんどは旧朝銀京都を引き継いだ京都の支店における不良債権にあったというふうな報告が来ております。

 すなわち、朝銀大阪を引き取った、それはもちろん金融整理管財人が振り分けをして、RCCに持っていくものと適資産として朝銀近畿に持っていくものに分けたわけですけれども、それが甘かったということではなくて、もともと五つの朝銀が合併いたしまして朝銀近畿というのができたわけですけれども、その合併したときに、朝銀京都の不良債権を十分見抜けなかった、あるいは朝銀京都が隠ぺいしていたと言ってもいいと思うんですけれども、その合併にいわば問題があったというのが今から見ればの反省点でございます。

小池委員 いずれにいたしましても、雇用対策で補正の予算が五千五百億、そしてこの朝銀に対して、この後の結果次第ですけれども、合計すると一兆円がつぎ込まれるということ、やはり納税者として、国民として、この点はもう一度よく考えるべきではないか。これは、朝銀のみならず、これからのさまざま行われる施策でもって、その目安を、どうも我々は感覚が麻痺してしまって、何がどうなっているのか、そのあたりもう少し明確に考えるべきではないかと思っております。

 最後に、検査をしろ、監督をしろといろいろと言っておりますけれども、実際にその検査をなさいます預金保険機構、RCC、そして証券関係の監視委員会、これは人材、そして体制ともに十分なのかどうか、現場の声として伺いたいと思います。金融庁長官、理事長、そしてRCC社長、手短にお願いいたします。

森参考人 お答え申し上げます。

 証券取引等監視委員会の人員整備につきましては、骨太の方針、改革先行プログラム等によりまして証券市場の信頼性の向上のための検査体制の強化をうたっておりますし、さらに、金庫株の解禁や、相場操縦、インサイダーについての審査体制の強化ということもありまして、来年度、証券取引等監視委員会の定員を、現在百二十二名のところ、ほぼ倍増の百十二名増ということで要求させていただいております。御理解が得られることを願っております。

松田参考人 当機構では、現在、三百八十名の職員が勤務をいたしておりますが、現在抱えております問題は、ペイオフに対してどのように適正に対応していくか、ペイオフ解禁までの間に今抱えている破綻処理をいかに適正に迅速に進めていくかと同時に、金融再生を含む今回の法改正について、どのようにRCCと連携して対応していくかという問題でございます。

 ただ、私どもといたしましては、今フル稼働でやっておりますけれども、例えばシステムであればシステムの専門家を随時雇うなどして、質的な向上に心がけながら何とかこの難局を切り抜けていきたい、このように思っております。

鬼追参考人 RCCは、現在、約二千四百名の陣容でございますが、とりあえずは現有勢力を最大限に活用していくということでございます。そのほかに、外部の専門家、専門機関あるいは金融界等の御協力もいただきたいと思っております。

 以上でございます。

小池委員 ありがとうございました。

野呂田委員長 これにて小池君の質疑は終了いたしました。

 次に、仙谷由人君。

仙谷委員 まず、鬼追参考人にお伺いをいたしたいのでございますが、今度の金融再生法の改正で、何か突如、RCCが大きな役割を果たせるかのような、私は幻想だと思いますが、そういう議論がなされているんですね。つまり、特に不良債権の処理、企業の再生について、突如ここからはRCCが相当の力を持って行える、そんな雰囲気があるんでございますけれども、そもそも一般銀行から不良債権の買い取りができるという五十三条の一項のイロハニのニ号を、自民党さんの御要望によって金融再生法をつくるとき追加した、五十六条にも買い取り基準が書いてございますけれども。そしてまた、整理回収機構、RCCにも金融機関としての機能も付与したという歴史的な経過があるんですね。だから、ある意味では銀行として、あるいは不良債権の買い取りもできる金融機関としてRCCができる立場にあった。

 ところが、従来まで、私は十二分に企業の再生を前提にした融資や指導や、そういうこともなさっているものだと思っていたんですが、どうもそうじゃないと自民党の先生方はおっしゃる。それで、金融再生法まで改正しなければ何にもできないかのようなことをおっしゃっておるわけですが、なぜ今までRCCは企業再生とかあるいは一般銀行からの買い取りができなかったのか、あるいは入札に参加したというふうなことはないのか、あるいは柔軟に債権の放棄や和解というようなことをやらなかったのか、この点についてはいかがでございますか。

鬼追参考人 これまでRCCになりましてから企業再生そのものをテーマにしたということはございませんが、債権回収の極大化を図るという意味で債権放棄ということもあり得るというわけでございますが、そういうことを通じまして企業再生に取り組んだということはございます。現実に数十件の件数を数えております。

 しかしながら、それはあくまでも、いろいろな慎重な検討の結果、債権回収の極大化を図るために債権放棄をするというようなことを通じましての話でございまして、企業再生そのものをテーマにして取り組んだということは、これまではございません。

 また、今の委員のお尋ねでございますが、五十三条では、スキーム上、要するに健全行からの申し込みを待って買い取る、こういう仕組みになってございますので、私どもの方からビッドに参加する、入札に参加する、こういうのは仕組みとして設けられておりませんでした。

 したがいまして、これまでは年二回、つまり上半期、下半期にそれぞれお申し込みを募りまして、それでお申し込みのあった分についてデューデリジェンスを行いまして、ネゴを行いまして買い取る、こういう手順でございました。そういう意味では、言うならば受け身の姿勢で健全行からの不良債権を買い取っておりました。

 さらに、もう一点申し上げますと、私どもは法務大臣から民間サービサーとしての許可もちょうだいいたしております。しかしながら、民間サービサーとしての活動を行います場合には、相当額の規模のものを買い受けて回収をするということになりますと、当然、民間企業としての活動でございますので、そこには利益も出るだろうし、しかしながら、反面、損失を招くというようなことも論理的には考えられるわけでございます。そういう意味合いがありまして、勢い慎重にならざるを得ないというところがございます。

 また、その所要資金をどうするかという問題もございます。いろいろ預金保険機構さんの御指導も得てきておるところでございますけれども、公的サービサーとしての活動の上で必要な範囲において民間サービサー業務にも取り組んでおりましたけれども、量的には大変それは微々たるものになってございます。

 これにつきましては、将来の問題として、いろいろ検討しなければならないと考えておりますけれども、これまではそういうような推移をたどっております。

仙谷委員 もう一点、鬼追参考人にお伺いするのでありますが、参考人が、今回のRCCにかかわる権限、金融再生法の改正に絡んで、RCCが簿価で買い取れるようにしたらどうか、二次ロスはロスシェアするんだというふうにおっしゃったとか、時価で買い取ることはいかがなものかというふうなことをおっしゃったという報道がなされておりますけれども、従来はデューデリジェンスをなさって、ある種、RCCとしては損が出ないように、もうかるように価格設定をしてきた、こういうことだと思うんですね。

 これは民間のサービサーであろうとも、企業再生ファンドを担当する者であろうと、当然のことながら、もうけるという立場じゃないと、わざわざ損をするために債権を買い取りするというようなことはあってはならないというか、これは資本主義の原則からしてもあってはならないし、公的資金が入っている場合、なおさらあってはならないと思うのであります。

 そういう観点からいいますと、今回の改正でRCCが何か大きくリスクをとって、もうかるか、もうけないかわからないけれども、とりあえず金融機関の経営のためにその方がいいんだみたいな雰囲気で業務をなさるというふうなことになってしまっては目も当てられないと私は思っているんですが、いかがですか。

鬼追参考人 この五十三条の改正が成立いたしましたとしましても、私どもは時価というのはやはり回収可能額というものをベースにして決められるものだろう、また、決めていかなきゃならないものだろう、このように考えております。

 したがいまして、私どもは万一にも二次ロスを出さないように、現場を預かる者といたしましては、どんなことがあっても二次ロスを出さないというようなことを一方の使命としてやはり考えていくべきだろうというふうに思っておりますし、また国会の御論議でも、そういうような御論議もございます。

 私どもは、その趣旨を体して進めてまいりたい、このように思っております。

仙谷委員 次に、森参考人に対してお伺いするわけですが、今お手元に、民主党の方で作成させていただいております「一九九九年三月期公的資本増強前の自己資本比率」という紙と「二〇〇一年九月期公的資本増強行の税効果相当額・公的資金控除後の正味自己資本比率」というペーパーがそこに配られていると思います。

 結局、一九九九年の三月に、私は森参考人にかねてから、これは要するに資産査定が甘い、金融再生法、金融健全化法違反の資本注入であるということを、これは当時の大蔵委員会だったと思いますが、指摘をしたり、あるいは資産査定の甘さの一つが長期信用銀行の瑕疵担保特約にあらわれているという指摘をしてきたと思うんですね。

 今、この「一九九九年三月期公的資本増強前の自己資本比率」のところの公的資本増強前の自己資本比率、特にこれは、現時点でも問題があるのではないかと疑われている銀行が八%以下であったということもございます。

 そして、二〇〇一年九月期公的資本増強行の税効果会計の相当額と注入された公的資金を取り払って正味自己資本比率を計算してみますと、こういう惨たんたる状況になっているんですね。絶対額で見ても、この上からの金額を、みずほ、三井、UFJ、あさひ、大和、住友信託、中央三井信託、これのティア1をごらんいただいても、一九九九年三月期のティア1と比べましても、絶対額としても減っているんですね、これは。非常に銀行の体力が劣化している、財務体質の健全化をいわば最大の課題として行われた資本増強、公的資本の注入が、ふたをあけてみると、三年たってみると体力が劣化しておる、こういう事態になっておるわけですね。これはどこに原因があったと思いますか。

森参考人 お答え申し上げます。

 十一年三月、資本注入をいたしまして、十一年三月期は、私ちょっと今、全国銀行ベースの数字しか記憶にないのでございますけれども、十三兆の不良債権の処分損を行いました。恐らく主要行は十兆近くをできたんじゃないかと思います。そしてさらに、十二年三月期にはたしか主要行で四・三兆行い、十三年三月も同じぐらいをしておる。つまり、もしこの資本注入なかりせば、恐らく主要行はそれだけの体力はなかったと思います。

 そういう意味におきまして、十一年三月期の資本注入というのは何だったのかとお尋ねを受ければ、私は、それによって主要行をやはり健全なものにしたと思いますし、その後のジャパン・プレミアムの解消にもつながったと思いますし、その後の足元の景況が思うとおりにはよくなっていかなかったわけですけれども、その中で主要行が不良債権処理を思い切ってやれていけたのは、やはりこの公的資金注入があったからではないかというふうに思っております。

 その結果、今日いろいろな剰余金を失っているわけでございますけれども、その中身だけで、公的資金注入がもし仮になかったとすればという議論、それからさらに、税効果というものが仮になかったとすればという議論をすれば、これは仙谷先生のお示しになった数字のとおりだと思いますけれども、しかし、銀行の健全性は何といっても自己資本比率であらわれるわけでございまして、資本勘定としては、金に色目はないわけでございまして、現実の問題として、現時点において一一%程度の健全性を保持できた。それはやはり十一年三月の国の資本注入があったからではないかというふうに認識しております。

仙谷委員 さらに重ねて森参考人にお伺いします。

 今のは、銀行の健全化、そして銀行が本来の金融仲介機能や信用創造機能を回復するためには何の役にも立たなかった、単に先延ばしをしただけだということを自白しているように私には聞こえるんですね。

 それで、公表自己資本比率、確かに一〇%強、一一%ある銀行もいっぱいありますよ。だけれども、正味自己資本比率でマイナスになっている銀行があったり四%に届かない銀行が大手行の中でほとんどだ。こういう状況のもとでは、いかにも中途半端な先送りでしかなかったということを、やはり森さんはお認めになるべきだと私は思うんですよ。

 つまり、当時の資産査定が甘く、経営者に責任を問わないという、健全行に資本注入をするというこのコンセプトが決定的に間違っていたということを、僕は、森さんはわかっていらっしゃるんだからお認めになるべきだと思うんですけれども、いかがですか。

森参考人 お答え申し上げます。

 仙谷先生からは、たしか十一年三月の資本注入直後の大蔵委員会で同じ質問をいただきました。当時、たしか私の記憶では、早期健全化法三条二項というのは再生法六条二項を踏まえていることを、おまえは何もわからずにやっているんじゃないかという厳しいお言葉も受けたと思います。

 その後、何度も私は考え直してみましたけれども、やはり早期健全化法というのは、あのときの、平成十年の秋の金融国会でつくっていただきまして、平成十年の暮れの状況からすれば、一刻も早く主要行に対して資本注入を入れて世の中を安定させるというのが早期健全化法の趣旨だったと思います。

 そういうことにおきましては、再生法六条二項に基づく資産査定というのは十一年三月期から始まるわけでございますけれども、その十一年三月期の主要行の査定を待つとすれば、十一年六月でないと資本増強ができなかったわけです。そんな中で、一刻も早く主要行に資本注入しようといたしますと、十一年初めということになります。実際、十一年二月に資本注入の内定をいたしました。

 そのときに、健全行であるかどうかの判断というのは、やはり直近の決算期、すなわち平成十年九月の決算、これは資本注入行に対して一斉検査をした結果の決算でございまして、公認会計士協会の実務指針に基づいた決算であるわけですけれども、それに基づいて健全行かあるいは過少資本行かを判断しなければならなかったわけでございます。その場合には、行政といたしましては、時系列的に考えまして、それは平成十年の九月の決算によりますと、仙谷先生御指摘の銀行も八%以上でございまして、それは過少資本行とするわけにはいかなかった、そして健全行としての資本注入をした。

 ただし、どれだけ資本注入すれば今後大丈夫なのかといういわゆる資本注入の際の引き当ての目安といたしましては、アメリカンスタンダードに倣いまして一五%、七〇%、一〇〇%というそういう目安は示させていただきましたけれども、それは会計ルールとは離れた、あくまで資本増強の審査の際の目安として使ったわけでございます。

 そして最後に、仙谷先生、単なる先送りだというのを認めろというお話でございますけれども、私は、会計のルールにおいても税効果は認められているものでございますし、公的資金、確かにそれは将来は返してもらわなきゃいけないものでございますけれども、現在、立派な自己資本だというふうに認識しておりますし、そういう意味におきましては、やはり平成十一年三月の資本注入があったので、今日、相当厚い引き当てをしてもなお主要行は一一%程度の自己資本を保っているわけだと認識しております。

仙谷委員 先般、財務金融委員会で問題になったようでありますが、あなたが、本年の十月二十四日に銀行会館で都市銀行の幹部の人たちを集めて意見交換会をなさって、その中で私の認識とよく似たことを言っているじゃないですか。今度資本再注入をすれば、銀行というセクターは全部国家管理になってしまう、こんな経済環境ですから、どんな経営をしたって配当財源は枯渇する、ましてや時価会計の導入等、株価の先行きから見ればどうにもならないこともあるんじゃないか、正直言って、皆さんにとって最大の危機だ、そして同じ立場に立っている我々にとっても最大の危機である、こう言っているじゃないですか。

 つまり、最大の危機というのは何ですか。現在の最大の危機というのは何ですか。

森参考人 お答え申し上げます。

 そのとき申した危機と申しますのは、世の中の評価でございます。すなわち、金融庁あるいは銀行の自己査定で実際に自分の健全度がどれくらいかということについては認識は一致していると私は思うんでございますけれども、一方、マクロエコノミストを初め市場関係者が、不良債権はもっとあるんではないか、銀行の自己査定が甘いんじゃないか、あるいはそれを検査する金融庁が甘いんじゃないか、そういう銀行及び金融庁への信認というものが低下している、これが私は危機だと言ったわけでございます。

 それを克服するためには、特別検査も銀行は耐えてもらいたいと思いますし、特別検査を実施いたしましたし、さらに、銀行は市場での信認をかち得るために自力調達というものを懸命に考えてほしいということを要請したわけでございます。銀行の健全性とか、資本再注入が今必要だとか、そんなような意味で危機と言ったわけではございません。

仙谷委員 もう一点だけお伺いしますが、あなた自身は、金融庁や銀行当局は、財務内容として、あるいは体力の問題として危機だと思っていないけれども、エコノミストや世間がそう言うんだ、それが危機だと、こうおっしゃるんだけれども、しかし、この十年を見ましても、三年を見ましても、あなたがでたらめを言っている。つまり、もっと言えば、「エコノミスト」、「選択」等に対して法的手段はとれないのか、どんどん訴えるべきだというのを十月二十四日の意見交換会で言っていらっしゃる。

 きょうのダイヤモンド「銀行壊滅」、エコノミスト十二月十一日号「力尽きた大手銀行」、日経ビジネス十二月三日号「暴走する不良債権」。こんなものはでたらめだ、告訴するんだとおっしゃるけれども、この三年、五年の経過は、この種雑誌が先行して報道してきたことがタイムラグを置いて大体実現しているじゃないですか。悪い方へ実現しているじゃないですか。だから我々は、保守的にというか、厳しくこの問題だけには対処しないと、今までだって、佐々波委員会から何回失敗しているんだということを申し上げているわけですよ。

 私は、公的資金を注入してまずいなんてことは一言も言っていないですよ、今まで。注入の仕方なんですよ。査定の仕方なんですよ。そこをやらない限り、いいですか、正味自己資本比率がこんなになっている銀行、あなたがおっしゃるように、国家管理、国有化せざるを得ないような状況にまでなっているじゃないですか。そこのところをちゃんと認識して物事に処さないと、何回やっても国民の税金がどぶに捨てられるようなだけだ、このことを申し上げているんですよ。

 どんどん告訴すべきだと十月の二十四日におっしゃったようですけれども、金融庁が告訴したらどうですか、きょうの三誌は。

森参考人 お答え申し上げます。

 十月二十四日のことにつきましては、財務金融委員会で問題になりましたので、私自身、出席者とともに記憶を呼び覚まし、何を話したかということの記憶を呼び覚ましたわけでございますけれども、当時三十社問題ということがよく言われまして、マスコミが問題企業の名前を取り上げて平気で風説を流していることは深刻な事態であると、そういう発言は私からじゃございません、出席した銀行側から出たのでございます。

 それに対して、それは私も大変懸念していると私は言っただけでございまして、意見交換の場で、個別の週刊誌とか雑誌の名前、ましてや個別の企業名を挙げて、どんどん訴えるべきだとか、三十社も黙っているのはおかしいとか、そんなことを私言った覚えは全くございませんので、その点だけ申し上げておきます。

仙谷委員 言ったか言わないかはまた別途決着つけますが、ここで質問をかわります。

野呂田委員長 これにて仙谷君の質疑は終了いたしました。

 次に、原口一博君。

原口委員 三人の参考人の皆さん、本当にきょうはありがとうございます。民主党の原口一博です。

 金融問題について、通告に従って御質問申し上げます。

 まず森長官にお伺いしますが、RCCにこれまで金融庁として金融検査にお入りになったことはございますか。

森参考人 お答えを申し上げます。

 RCCに対し、銀行法二十五条に基づいて検査を行ったことはございません。

原口委員 次に、鬼追参考人にお伺いします。

 RCCの回収方針として、やみの勢力とは手を結ばない、血も涙もない回収はしない、責任者責任追及、関与者責任追及、けじめをつける、そして透明性、つまりディスクローズは義務ではなくて武器である、こういうことを方針としてお持ちだと思いますが、これは間違いありませんか。

鬼追参考人 間違いございません。

原口委員 さきの予算委員会で、不適切回収事案ということで御指摘をさせていただきました。預保の松田理事長、そして整理回収機構の鬼追社長に一言お礼を申し上げたいと思います。

 金曜日、村常務がお見えになりまして、そして二時間半にわたってこの事案について検討をいたしました。事実の認定について、私とRCCとの間では違うところがあります。しかし、それにしても誠実な対応をいただいたということで、きょうはこのことについては触れませんが、ぜひ私は、今、鬼追参考人から御答弁いただいたように、ディスクローズは武器なんだ、しっかりとしたディスクローズをするということが国策会社であるRCCの行動、活動について国民の理解を得る最大の観点だということで、以下質問をしていきたいというふうに思います。

 そこで、先般出されました「平成十二年度決算検査報告の概要 会計検査院」、そして、私どもが求めて、国会の方が求めておりました「検査要請事項及び特定検査対象に関する検査状況」ということで、「金融システムの安定化のための緊急対策の実施状況について」ということで、会計検査院が預保並びにRCCの回収の実態について指摘をしていると思います。どういうことを指摘しておりますか、松田理事長にお伺いいたします。

松田参考人 ちょっと突然のお尋ねで、それを精査してまいりませんでした。済みません。間違ったことを申し上げると失礼ですので、後で申し上げます。

原口委員 私は、RCCの検査あるいは預保の実態ということで質問をするということで御通告を申し上げておったわけでございますが。

 それでは、私の方から。

 「担保による回収可能額」ということで、「十一年度においては、担保による回収可能額の評価に用いられた路線価等の評価基準日から営業譲渡日まで」、まあ相当の期間がございますから、「その期間における地価の下落状況を評価額に反映させるため、当初評価した担保による回収可能額を対前年比の変動率を基に時点修正しているものが見受けられた。この場合、路線価等の対前年比の変動率の採用については、担保による回収可能額の評価の際に使用した不動産担保の所在地ごとの路線価や公示地価の変動率を採用していたものが大半であったが、中には金融機関が所在する県の県庁所在地における商業地の公示地価の変動率を一律に採用していたものも見受けられた。」こういう指摘をされているわけです。

 何かコメントはございますか、理事長。

松田参考人 今お話がございまして、まことにそのとおりの御指摘で、某県の県庁所在地のところの路線価の変動率をちょっと間違えまして認定をしてしまったということはございました。それは事実でございます。

原口委員 何でこういうことを申し上げるかというと、やはり人がやっている組織ですから間違いもある、そのことを細かく言う気はありません。しかし、森長官、金融庁が一回も検査に入る前に、私たちは、今二次ロスの話が議論にありましたけれども、一次ロスがどれぐらい出るんだろう、公的資金がどのように投入されているんだろう、そういったことを考えると、金融庁が一回も指摘をする前に会計検査院からこのような指摘があったことは実に残念であるというふうに思いますが、森長官、今後、このRCCに対する検査あるいは指導監督をどのようになさるのか、お尋ねを申し上げます。

森参考人 お答え申し上げます。

 RCCに対します検査は、先ほど申しましたように、これまでは検査は確かに行っておりませんけれども、RCCには銀行免許を付与しているわけでございますので、当然検査できます。ただ、これまでは、RCCがいわゆるRCB勘定の業務、すなわち、破綻金融機関から引き取った不良債権の回収を主とした業務、さらに住専法上の住専処理業務というものが中心であったということ、そして新規の預金受け入れはしていないということ、そういう点を見まして、当方のマンパワーに比して相対的に検査する必要性が低いと考えてきたので、検査を実施するには至らなかったわけでございます。

 先般、大臣も国会で答弁されましたように、今後につきましては、業務の状況や当方の限られた検査人員等を総合的に勘案させていただきますけれども、必要性の度合いにより、機会をとらえて検査してまいりたいというふうに考えております。

原口委員 不良債権問題に対する懸念が那辺にあるかというと、やはり要注意先の問題企業と市場の評価とが乖離している。そして金融検査、これまでの検査の基準が、柳澤大臣によると二度にわたって改革をされてきた、そのことについては私は評価をするものであります。しかし、その間で、この企業には検査に入ったり、あるいは、九七年当時の近畿財務局の問題についても私は当委員会で指摘をいたしましたけれども、検査に手心を加えてみたり、あるいは一部の裁量が入るといったこと、あるいはそういうことがあるんじゃないかと国民あるいは市場が疑うことが何よりも金融システムの不安定を招いているんだ、このように考えます。

 私は、鬼追社長さんの時代になって、RCCは大変前向きにさらなるコーポレートガバナンスを追求されている、このように認識をいたしていますが、しかし、そうであるのであれば、今のようなホームページでの情報開示、これは甚だ不十分だと言わざるを得ません。御努力を求めます。

 そして、委員長、お許しをいただいて、先ほど当理事会でRCCの方から出していただいた資料を皆さんにお配りさせていただきたいと思います。

野呂田委員長 配ってください。

原口委員 お手元の資料、先ほどいただいたものでございます。RCCの回収実績ということで、旧住宅金融債権管理機構から譲り受けたもの、この中には、六千八百五十億、いわゆる旧住専の公的資金が入っています。そして一方で、旧整理回収銀行、この下の方の段でございますが、ここには、長銀その他の破綻した金融機関に対する公的資金が書かれていると思います。

 そこでお尋ねでございますが、「名目債権累計額(元本)」と書かれているうち、一体一次ロスは幾らぐらい入っているのか、鬼追社長にお尋ねをしたいと思います。

鬼追参考人 私もつまびらかではございませんが、名目債権累計額と譲受債権累計額、これの差額がその大宗をなすんだろう、このように理解はいたしておりますが、細かな計算をちょっと立てておりませんので、以上のお答えになります。

原口委員 私は、鬼追社長、預保の理事長、ぜひこういったことはしっかり提示をされておくべき話なんですよ。公的資金というのは国民の税金であって、しかも、今の十九兆六千億から四兆一千億を引いたものがすべて公的資金じゃないはずです。この中には銀行が引き受けている一次ロスもある。一体国民は一次ロスを幾ら払うんだということはきっちり御提示をしていただきたいと思うのですが、いかがですか。

松田参考人 私ども、運営委員会をやる都度、ホームページに、現在の破綻の状況、それから今まで使ってきた税金とか資金援助の額とか、きちっと必ず載せております。

 それをごらんになってもらえばおわかりになりますけれども、先生が今おっしゃったように、この差額の中には銀行の引当金を積み崩した部分もありますし、この中にはまた五十三条で買い取った分があります。それは全く銀行の負担ですから、そういうものを引かなければいけないわけです。

 一方、私どもの資金援助の金銭贈与の中にも、それ以外の承継銀行に渡したときの売却損もありますし、それから経営全体の決算損失もございます。これをきちっとそこに出すということはなかなか手間が非常に多いのですけれども、大宗からいうと資金援助で賄っているということになろうかと思います。

原口委員 そこをはっきりさせることが、今議論されている二次ロスというのは、一次の公的資金投入に比べればまだ副次的な、だから二次ロスなわけです。二次ロスの部分というのは、この譲受債権累計額、それから回収額、これはRCC、もともと平成十四年度に勘定を閉じるということになれば、今は延長していますけれども、この分回収できなかった額をまた公的資金で補わなければいけない。そんなことになってしまうと、私は、この委員会では三つのことを金融庁長官並びにお二人の参考人に御指摘をしておきたいと思います。

 私たちが求められているのは、私たちが守ろうとしているのは一体何なのか。それは、金融システムそのものの信頼性だということでございます。そして、自由主義市場そのものであります。ですから、公の部分が出張ってくることを、金融庁長官が、先ほど仙谷議員が指摘をした講演の中でも随分懸念をされている、私もそのとおりだと思います。資本主義市場というのをきっちり守るためには、自主的に銀行が自分たちのビヘービアに責任を持つ、これが根本なわけでございます。

 二番目は、やはりナショナルフラッグと申しますか、ここに私は、森・ブッシュ会談のコミュニケを手元に持っています。ここには二つのことが書かれています。日米の首脳は、不良債権の最終処理と、そして外国資本の直接投資の促進を合意したということでございます。私は、海外のプレーヤーが自由にそして公正に日本の中でプレーをし、そして、その活動に応じた利益を得る、これはとても大事なことだというふうに思います。しかし一方で、私たちの国の資本、私たちの国の企業、こういったものをどう守っていくかということも、産業の育成ということでとても大事なことだというふうに思います。

 三番目の視点は、情報化時代において、やはりビジネスモデルが変わっている。今のように情報公開しない企業は置いていかれる。あるいは、瞬時に無限大に情報が世界を駆け抜けるときに、責任の高い位置にある人が誤解を受けるような発言をしてしまうと、それは取り返しのつかないことになる。情報化時代においてビジネスモデルそのものが変わっているんだ、そのことをまず念頭に置かなければならないというふうに思います。

 森金融庁長官に伺いますが、私は、前の金融担当大臣のときも手心発言があって、そして、こういうことを議会の中で追及しなければいけないのはとても残念だ、信頼が回復されるためにはこういうことはやりたくないというもとでお話をいたしました。しかし、また同じようなことが、特別検査を今やっている最中に、この特別検査に手心を加えるような発言をされたというふうに報じられ、そして財務金融委員会でも指摘をされているのは一体どういうことなんだろうか、一体トップは何を考えているんだろうか、このことに強く懸念をあらわさざるを得ません。

 長官、こういう御発言をされたことがあるのか、お尋ねをしたいと思います。

森参考人 お答え申し上げます。

 甚だ誤解でございまして、私としては大変遺憾でございます。

 特別検査は、御承知のとおり、一定の客観的基準に従いまして市場における評価が著しく低下している企業を選びまして、その企業の主としてメーン行に入って検査するわけでございます。そういう面では、そこでメーン行、当該行におきましては三者協議、すなわち、銀行そのものと監査法人そして検査局、すなわち金融庁、この三者が、その問題企業についてどこに債務者区分するのが一番金融検査マニュアル、実務指針に従って合理的であるか、正しいのかという検証を行うための検査でございます。

 そういう意味におきまして、私は、そこにある一定の客観基準で選ばれたあるグループの企業が、全部破綻懸念に落とすことを目的とした検査じゃありませんと言ったことは事実でございます。検証するわけでございますので、予断を持って臨まずに、一つ一つの企業、その主としてメーン行について三者が協議いたして、これは破懸に落とすべきか、いや要管理なのか、いや要注意なのかということを検証するのが目的で、そういう意味において言った言葉でございまして、それ以外の何物でもございません。

 ただ、市場のシグナルをも見た上でどこに債務者区分をするのが一番適正であるか、それを検査する、検証する、それが検査の目的であると言っただけでございまして、何か手心を加えるというような意味は全然ございませんし、そのとき出席者であった銀行側が仮にもそのように受け取るリスクはなかったと思っております。

原口委員 市場のシグナルをやはりタイムリーに反映した適正な債務者区分及び償却、引き当てについてはしっかりと組み立てていく必要がある、私はこのように思います。その中で、検査の信頼性、それからさまざまな行政機関やあるいはほかの手がその中に伸びていくこと、私は、瞬時に無限大の情報の現在の環境では、まさに私たちが一番重要視しなければいけないのは情報の公開性であり信頼性だ、このように思います。

 そこでさらにお尋ねをしますが、オフバランス化、柳澤大臣は、何としてでもこのオフバランス化を進めるんだというお話でございました。二つ、当委員会に資料を出していただきたい。オフバランス化の状況については今までるる議論がございましたが、一体進んでいるのか、進んでいないとすれば一体どこにどういう問題があるのか、その分析を早急に当委員会に出していただきたい。

 そして、柳澤大臣は私にこのようにお答えになりました。第百五十一国会の財務金融委員会でございましたが、新規不良債権の発生額は減っている、私たちの実感とは真反対のことでございました。その根拠となったものは一体何なのか、長官、ここでお示しいただけるのでありましたらお答えください。その資料がなければ、後で提出ください。

森参考人 お答え申し上げます。

 柳澤大臣と原口先生の間でそういう議論があったことは承知しております。その際に、柳澤大臣の頭にございましたのは、実は、新規発生額を見る場合、要管理以下、これがリスク管理債権でございますから、リスク管理債権のオフバラ化がどれくらい進んだのか、新規発生がどれくらい進んだのか、当時、そのときの御議論はそういうことであったわけでございます。

 それで、そのときに、実は正確な過去の資料というものは、ヒアリング結果はございませんものでしたから、そのとき事務方が大臣に手渡しておりましたのは推計額、つまりオフバラ化額の方を推計したわけでございます。その推計というのは、ポイントは何かと申しますと、担保が簿価のどれぐらいあるか、これを大胆に、五〇%保全されている、つまりアンカバーが五〇%だ、こういう前提でオフバラ化したときの不良債権処分損というのは初めてはかれるわけですけれども、そういう前提を置いて、逆に、そのオフバラ化をはかった上で新規発生額を推計したわけです。

 それによりますと、十二年三月が七兆ぐらいだったのが、十二年九月が新規発生額は半年で二兆、十三年三月五・二兆。この辺が実は、ことしの三月まで一年間、新規発生額が七兆から約五兆に減っているというのが頭にあって大臣がそうおっしゃったわけです。ところが、その後の推計を見ますと、ことしの九月にそれが約六兆余り、若干ふえております、やはり足元の景況によりまして。したがって、推計は推計でございますけれども、そういうことでございます。

 確実なのは、実は破綻懸念以下は政府の方針としてオフバラ化させていますからこれははっきりしておりまして、これにつきましては、その新規発生額は、ことしの三月三・四兆円、ことしの九月三兆円、半期で三兆円ふえています。

 以上でございます。

原口委員 ありがとうございました。終わります。

野呂田委員長 これにて原口君の質疑は終了いたしました。

 次に、中塚一宏君。

中塚委員 自由党の中塚でございます。

 この国会では、今週から参議院の方で審議が始まるんでしょうが、金融再生法の一部改正というののほかにも、株式の買い取り機構というのも法案が審議をされまして、バブルがはじけてもう十年以上たつんでしょうか、そしてまた東京二信組が破綻し、住専と、そういったことから始まったこの不良債権の問題というのも全くもって片がつかないままに、要は、株を買ったり不良債権を買ったりという形で新たに金融機関に資金の贈与というか公的資金の贈与というのが行われようとしておるわけですね。そういった現実について、きょう参考人のお三方にお伺いをしていきたいというふうに思います。

 まず、RCCの鬼追社長にお伺いをいたしますが、まずは住専のことからです。

 先ほど原口委員から回収実績の資料の提示がありましたが、この住専勘定の方ですが、本年の回収目標、この間の発表では今大体五二%、本年は回収達成しているということですが、本年の回収目標達成というのは可能ですか。

鬼追参考人 本年の回収目標については達成が可能であろう、このように考えております。

中塚委員 次に、住専の債権を住管機構として譲り受けたときにこの買い取り債権の価格というのは何によって引き受けられましたか。

鬼追参考人 当時私は、当時の住管機構には関与いたしておりませんが、その後の話で、当時の大蔵省の精査によりましてその価格が決められて平成八年に買い受けた、このように承っております。

中塚委員 その大蔵省が決めた価格というのは何によっていますか。

鬼追参考人 担保でカバーされております債権につきましては平成七年路線価をベースにして精査をなさった、このように伺っております。

中塚委員 今参考人がおっしゃったように、担保のあるものについては路線価ということで評価されているわけですね。そして、その路線価というのが経済情勢等もあって今大変に下がってきているわけですね。商業地なんかだともう四割程度になっているところもあるし、大きく下がっているわけですけれども、当時の買い取り資産の価格は路線価によったということですが、今大体、路線価で評価した場合にどれぐらいの債権の価値になっていますか。

鬼追参考人 全体につきましてはなかなか一概に言えない、物件ごとによって相違をいたしておりますので、私どもの方でその見きわめ作業を現在やっておりますけれども、今のところ幾らというふうにはちょっと申し上げかねます。

中塚委員 と申しますのは、平成九年の住専勘定の回収額が六千四百五億円ということですが、もうそれ以降はどんどんと回収実績は下がる一方なわけですね。回収実績がどんどん下がっていて、住専から引き受けた債権というのはいろいろなものがあったんだろうと思います。それこそがけ地の話もあるし、あと、満潮になれば水没するような土地もあったというふうに聞いているわけですけれども、そういった中で、そろそろちゃんと回収できるようなところはなくなってきているんじゃないか。いわゆる岩盤というか、そういったところに突き当たり出しているんじゃないかというふうに思うわけですが、現実はいかがですか。

鬼追参考人 住専債権のうち事業性の延滞債権の大部分については、そういう現象が見受けられると思います。

中塚委員 事業性の債権ということですが、回収されるのは、要は譲り受けたもの全部についてですよね。その他についてはいかがですか。

鬼追参考人 御承知のように、住専債権の中には正常債権というのがございますが、正常債権の大部分といいましょうか、多くは個人向けの住宅性の債権でございます。これにつきましては、まだ、大変誠実、真摯な債務者が圧倒的に多いわけでございまして、回収は当初の見込みどおりにできるであろう、私どもはこのように考えておりますが、先ほど申し上げました事業性部分の延滞債権については、委員御指摘のように、岩盤に突き当たっているという状況でございます。

中塚委員 平成十一年度と平成十二年度の御社の損益計算書というのを拝見しました。そうしますと、住専勘定については、経常利益は二年連続赤字になっていますね。これについて、本年度の見通しというのはいかがですか。

鬼追参考人 平成十一年度、十二年度は、委員御指摘のとおりでございます。これは留保性の強い引き当てをいたしておりますものですから、それによって経常利益が赤になっております。平成十三年度もその傾向であることは間違いがございません。

中塚委員 済みません、もう一度。

鬼追参考人 平成十三年度も、平成十一年度、十二年度の傾向のままで来ております。

中塚委員 ということになりますと、本年から、RCB勘定の方ですが、経常利益というのを国庫納付されるということになったようですね。

 では、まず、国庫納付をすることになった経緯というのを御説明いただけますか。

鬼追参考人 これは、昨年の預金保険法の改正に基づきましてそういうような仕組みになったわけでございます。

中塚委員 松田理事長、その預金保険法の改正なんですが、なぜ、このような形でRCBの経常利益というのを、毎年、預金保険機構にまず納め、それから国庫にということになるんでしょうけれども、そういうふうな改正が行われるようになったんでしょうか。

松田参考人 それまでは、我々がお預かりしている交付国債、税金で金銭贈与をした部分に、それを超えるような利益があれば返せるという条文のつくりであったわけですけれども、それよりも、RCC社は、RCC社への損益について、もう少しきちっと収支をとりあえず勘定ごとにつけていこうという考え方であったのではないか思います。

中塚委員 そういう意味で、十一年度、十二年度の損益計算書を見ますと、要は、住専勘定というのは経常利益は赤なわけですよね。RCB勘定でやっと黒が出ている。それをネットアウトして、トータルでは経常利益が出ているというふうな財務内容になっていますよね。

 ことしからRCBの利益というものを国庫に納めるということになっていきますと、住専勘定自身の赤字というのがこの損益計算書にもろにはね返るようになっていくんじゃないですか。鬼追社長、いかがでしょうか。

鬼追参考人 おっしゃるとおりでございます。

中塚委員 さて、それで、岩盤に突き当たっていて、これからどんどんと回収については難しくなっていく、そういった中で住専勘定の赤字ばかりが膨らんでいくということになったら、最終的にはこれはどのように処理をされるんでしょうか。

鬼追参考人 委員御案内のように、住専勘定につきましては、十五年の期間で処理をするということになってございます。

 私どもの方は、今後のいわゆる二次ロスに関して申し上げますと、資金の運用益でどの程度補われるか、あるいはまた簿価超債権、つまり簿価超回収益でございますが、回収益をどれだけ立てていけるか。そういったいろいろな努力によりまして、言うならば、その辺の損失をてん補していって、最終的には二次負担をかけないという方向に何とか持ち込んでいきたい、こういう思いで日常の業務に取り組んでいる、こういう状況でございます。

中塚委員 今年度あるいは来年度ということになりますが、どんどんと引き当て自体も進んでされるようになっていますよね。引当金というのをどんどんとお積みになることになっている。それは、時価が落ちている部分もあるでしょうし、あるいは、取り立てというのができなくなっていくということもあって引当金をお積みになるということもありますが、そうなってきますと、資本を取り崩して赤字を埋めなきゃいけないということにもなりかねませんよね。

 先ほど森長官が、RCCへの検査というお話をされたわけですが、この引き当て自体は適正に行われているんでしょうか。

鬼追参考人 当社だけの判断ではございませんで、外部監査、つまり監査法人の御承認も得て引き当てを行っておりますし、その結果につきましては、預金保険機構にももちろん御報告申し上げているところでございます。

中塚委員 外部監査とおっしゃいますが、今まで監査というのが適正に行われていれば、いろいろな不良債権の問題というのは起こっていないというようなこともありますので、そこは本来、金融庁なりが厳しく監査をするべきなんだろうというふうに私も思います。先ほど長官は、時に応じてみたいなお話でしたけれども、ぜひとも、応じてじゃなくて、こういったことはほかの銀行並みにちゃんと検査をお受けになるべきだろうというふうに思うんですね。

 そして、資本を取り崩して引き当てをする、あるいは住専勘定の赤字を埋めるということになりますと、今年度、来年度あたりにRCC自体が債務超過になる可能性というのはどのようにお考えになりますか、鬼追社長。

鬼追参考人 住管勘定として、可能性としてはそれは否定できないと思っておりますが、何とかそういう事態を回避すべく、現場としましては努力あるのみ、このように考えております。

中塚委員 努力あるのみというのは、それはもちろん社長の立場としてそういうことだと思うんですが、こういうことに立ち至った経緯というのは、そもそも住専処理のスキーム自体が間違っていたというふうにはお考えになりませんか。

鬼追参考人 私は、回収現場の責任者として、そういうことを申し上げる立場にはないと思います。

中塚委員 では、同様の質問を、森長官、松田理事長、いかがでしょうか。

松田参考人 私も、現場に非常に近い立場でございますので、与えられたスキームを精いっぱい処理している、それが原則でございます。

森参考人 今の私の立場では、ちょっとコメントを申し上げようがございません。

中塚委員 ここで、今回の金融再生法の改正ということで、資産の買い取り価格の弾力化ということを伺いたいんですが、今回、時価で買うということなんですけれども、住専債権の場合は、路線価で買ったものであっても、大体五年たった今、これほどまでに資産価値というのは劣化をしているわけですね。

 さて、そうなった場合に、今回の法改正で時価によって買い取るということで、買い取り価格が弾力化されたということによって、また新たなリスクをRCCというのはしょい込むことになるんだろうというふうに思うんですけれども、鬼追社長、そこはいかがでしょうか。

鬼追参考人 時価と申しますと、先ほどもお答えいたしましたが、処分可能価格というものをベースにして決めるということになるだろう、このように思います。

 他のサービサー、つまり、言うならば私どもと競争関係に立つであろうと思われる他のサービサーあるいは都市銀行等も、いわゆる時価を算定して入札その他に参加をなさるだろう、このように思います。その中にありまして、やはり全体的に見て二次ロスを招かないような、そういう意味での回収可能価格というものを、私どもは、預金保険機構さんの御指導のもとに、そういった時価の算定方式を用いて事に臨みたい、このように思っております。

中塚委員 次に、金融再生委員会告示で、今、健全金融機関からの資産買い取りというのは、「破綻懸念先、実質破綻先又は破綻先に区分される債務者に対する貸出金」ということで決まっておりますけれども、このことを今回の法改正を受けて変更されるお考えはありますか。金融再生委員会告示で決まっていることなんですが、これはどなたがお答えいただけるのか。

森参考人 議員立法でございますので、私が答えるのは適当ではないと思いますけれども、私が理解する限りにおいては、原則として破綻懸念以下というところについての改正はないというふうに認識しております。

中塚委員 住専処理というのが始まりまして五年、本当は十五年という当初の予定だったんですが、中坊前社長は七年半でというお話をされていましたですよね。五年たって、私自身はもうかなり債務超過の危機があるんじゃないかなというふうに思っているんです、RCCが。

 こういう事態に立ち至るということ、さっき一次ロス、二次ロスという話もありましたが、最終的に勘定を締める部分で穴があいたら税金で、住専については半分、それ以外については全額ということになるんだと思うんですが、このように五年たって、もはやRCC自体が債務超過に陥るんじゃないのかというふうな議論をしなければならないぐらい、やはりこの住専処理も含めて今までの不良債権の処理のやり方というのはかなり間違っているし、そして今回の資産の買い入れ価格の弾力化ということについてもかなり問題があるというふうに指摘をしたいと思います。

 鬼追社長、この買い取り価格の弾力化という法改正が行われるときに、買い取り価格のことについて鬼追案というのがあったというふうな報道を拝見しております。その鬼追案は、実質簿価で買い取って、回収額が買い取り額に及ばなければ、差額の損失はRCCと銀行が負担を分け合うという案をお持ちであったというふうに報道なんかがされているわけですが、それは事実ですか。

鬼追参考人 事実でございます。

中塚委員 いわゆるロスシェアリングということですよね、民間とRCCとということで。私は、ロスシェアリングということでは、今の議員提案の考え方よりもまだこっちの方が筋がいいのかなという気がするんですけれども、この案ではなく政府案になったことについての御感想はいかがでしょう。

鬼追参考人 私のあの案はまさに私の案であり、あるいは試みの案でございまして、シェアといいましても、どういうようにシェアするのかということをまだ十分詰めた案ではございません。そういうようなことを申し上げた時期がございますが、しかし、国会でもって現在の改正案で御審議をいただいておる。この改正案が成立いたしましたら、私の方は与えられたものとしてそれを誠実にかつ懸命にやっていく、それ以外にはないと思っております。

中塚委員 それでは、金融再生法関係の質問はこの程度にして、次に、先ほどもお話がありましたが、朝銀の破綻の件についてお伺いをしたいと思います。

 先ほども質問がありましたとおり、朝銀近畿なんですけれども、平成十年五月に朝銀大阪の受け皿銀行として朝銀近畿ができまして、それで公的資金というのが贈与されて、ところが十二年十二月にまた再びこれが破綻をしているわけですね。再度破綻をした原因ということについて、森長官にお伺いします。

森参考人 お答え申し上げます。

 朝銀近畿が破綻いたしまして、金融整理管財人を選任いたしまして、金融再生法十三条に基づく報告、すなわち破綻に至った経緯につきまして報告させましたところ、朝銀近畿が破綻に至った主因は、旧朝銀京都を引き継いだ京都の支店における不良債権であり、旧朝銀大阪から譲り受けた資産には特に問題があったわけではないという報告を受けておりまして、当方としては、旧朝銀大阪を受ける前の、五朝銀の合併で朝銀近畿ができたわけですが、その中の合併の際、旧朝銀京都の不良債権の認識に甘いところがあったんではないか、そういうふうに認識しております。

中塚委員 具体的に、その朝銀京都の資産が譲渡されるときに甘いところがあったというのはどういうことなんでしょう。

森参考人 今から振り返って当時のことをいろいろチェックしたわけでございますけれども、金融整理管財人の報告では、当時京都府が検査をしたわけでございますけれども、朝銀京都にはいろいろな、京都府による旧朝銀京都に対する検査において、旧朝銀京都に隠匿行為等がありまして、真実がなかなか把握できなかったのではないかというふうに聞いております。

中塚委員 ということは、今東京に対していろいろな事案があって、連日新聞紙上をにぎわしているわけですが、朝銀の東京と同じようなことがその朝銀京都、朝銀近畿ということにもあったということでしょうか。

森参考人 お答え申し上げます。

 結果的に申しますれば、旧朝銀京都の隠匿行為については検査忌避としての告発にまで至っておりません。エビデンスとしてそこまでなかったということかと思います。

 それに対しまして、朝銀東京、朝銀近畿につきましては、検査忌避で、金融整理管財人、財務局一緒になって告発を行っております。

中塚委員 信用組合はかつて都道府県が監督を行っていたわけですね。都道府県が監督をしておったときに検査忌避に遭ったという事例は把握されていますか。

森参考人 お答え申し上げます。

 都道府県の監督中における検査忌避の告発があったという話はございません。

 ただ、国に監督が移行した後に、さかのぼって、都道府県が検査したものの中に検査忌避があったとして、国に監督が移行してから告発したものがございます。

中塚委員 ということは、検査忌避に該当するものがあったということですか、都道府県段階の監督中において。

森参考人 お答え申し上げます。

 そのとおりでございまして、たしか朝銀東京につきましては、東京都の検査について、その後、検査中のことにつきまして忌避の問題があるということで告発した事例がございます。(発言する者あり)朝銀京都につきましては、隠匿行為があったことは今日つかんでおりますけれども、検査忌避としての告発はしておりません。

中塚委員 それでは、その隠匿行為が他の都道府県の監督中に行われていたかどうかということは把握されていますか。

森参考人 先ほど申しましたとおり、まず、信用組合が破綻した場合におきまして、その破綻信用組合の中に責任解明委員会を設けさせます。そして、責任解明委員会でそのようなこともすべてやるわけでございますけれども、その責任解明委員会の追及の資料を我々が見て、責任解明委員会の追及では限界があるといったときに金融整理管財人を送りました。それが昨年十二月の朝銀のいろいろな例でございます。

 そして、金融整理管財人が改めて責任解明委員会時代の資料等にも基づきましていろいろ検査いたしまして、その後、背任やら横領やらあるいは検査忌避ということで打っているわけでございますけれども、その中で一件だけ、検査忌避の対象が国の検査じゃなくて都道府県の検査について、やはり検査忌避として立件できる材料があるとして告発した例が朝銀東京の例でございます。そういうことを申し上げたわけでございます。

中塚委員 だから、検査忌避として告発できるのは東京なんですが、忌避にまで至らなくても、検査逃れをしようとしたような事例というのを、今、都道府県の監督時代にそういうことがあったかどうかというのを把握しているかどうかというお尋ねなんですが。

森参考人 お答え申し上げます。

 ただいま、破綻している信用組合の金融整理管財人からの報告は逐一受けておりますし、責任追及につきましても、全国の金融整理管財人に定期的に集まっていただきまして、いろいろ責任追及の現状についても聞いております。

 その中で、立件できるものは立件するし、民事訴追するものは民事訴追をしているわけでございます。隠匿、検査忌避の疑いは常に持ちながら金融整理管財人はいろいろ追及しているわけでございますけれども、現在のところ、まだ、実際に立件したのは四件でございまして、刑事告発四件以外にそこまで至るものがあるという報告は聞いておりません。

中塚委員 聞いておりますか。(森参考人「四件以外は聞いておりません」と呼ぶ)はい。

 ということは、今まで検査というのは適正に行われていたということですか、都道府県の検査も含めて。

森参考人 お答え申し上げます。

 都道府県の検査につきまして、その時々において各都道府県の能力に応じて最大限の、最善を尽くしたことが行われたというふうに考えておりますけれども、先ほどの朝銀京都の例のように、後になってみれば隠匿行為で結局見つけられなかったものもあったということもあるわけでございまして、今から考えまして、都道府県の検査というものが完全であったかといえば、必ずしもそうでない面もいろいろあった。その反省に立って、今日いろいろ国が検査をしているという面もあるというふうに言わざるを得ないと思います。

中塚委員 では、最後に一つ伺いますが、今、朝銀に金融整理管財人が入っているわけですね。東京もそうですね。たしか金融整理管財人が入っていて、しかもそれは預金保険機構が金融整理管財人になっていらっしゃる。ということで、今後この朝銀というのを、金融整理管財人が入ってどのようにしていくかということなんですね。

 朝銀を利用する北朝鮮系の在日朝鮮人の数というのは、十万人ぐらいだというふうに聞いているわけですけれども、ここで、朝銀というものをそのまま存続させるのか、あるいは金融整理管財人によってPアンドA方式でばらばらにして売っ払って朝銀自体は解体をするのか、そこのところについて、いかがでしょうか。

森参考人 お答え申し上げます。

 金融整理管財人の役目は、大きく言って三つございます。一つはもちろん責任追及、もう一つは資産の振り分け、すなわち適資産、不適資産に分けて、どの資産はRCC行きにするか、どの資産を受け皿に持っていくかを見ることです。三番目の大きな役目は、やはり受け皿探しでございます。

 そういう意味におきまして、現在、破綻中の信組に入っております金融整理管財人は、その金融整理管財人の権限と責任におきまして受け皿探しをしているという認識をしております。

 大変申しわけありませんけれども、先ほどの答弁で修正させていただきます。

 私は、金融庁が金融整理管財人を定期的に集めていろいろ報告を聞いていると申しましたのは、これは誤りでございまして、随時必要に応じて金融整理管財人から報告を受けているということが事実でございまして、大変失礼いたしました。

中塚委員 一般論をお伺いしたわけじゃなくて、個別の話なんですけれども、これで質問を終わります。

野呂田委員長 それでは、時間ですから。

 これにて中塚君の質疑は終了いたしました。

 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 森金融庁長官に不良債権問題についてお聞きをしたいと思います。

 不良債権の中には、バブル時代につくられたものと、それ以後発生したものというのがあると思うんですね。現時点の判断ですけれども、バブル時代につくられた、いわば投機的な行為で発生した不良債権というのは、基本的に処理をし終えたと考えてよろしいかどうか、まずこの点からお聞きしたいと思います。

森参考人 お答え申し上げます。

 現在の不良債権で残っております残高、全預金取扱機関ベースで四十四兆円ほどでございますけれども、その発生要因別の計数というものをまだしかと把握しているわけではございませんので、断定的に申し上げることは困難でございますけれども、最近、製造業等いわゆるバブルの影響が比較的小さいとされた分野における不良債権の発生の伸びが大きいことは否めません。他方、バブル期の過剰投資等を背景とする不良債権もまだ見られる。

 一言で言えば、確かに佐々木先生のおっしゃるように、平成十年三月、平成十一年三月、十三兆、十三兆と猛烈な不良債権処理をいたしました。これは基本的にやはりバブルのものだったと思っております。そして、今日に至った不良債権は、そういう面では、その当時に比べますとバブルの要素というのは相当小さくなって、むしろその後の足元の景況を反映したものが多いというような認識を私は持っております。

佐々木(憲)委員 昨年の九月の時点で、主要行で不良債権額が十二・七兆円というふうに言われておりまして、これが、ことしの九月の時点で、処理した不良債権額、それからその間に新たに発生した不良債権額、それぞれ数字がわかりましたら教えていただきたいと思います。

森参考人 お答え申し上げます。

 十二年九月期における破綻懸念先以下の不良債権十二・七兆、それが十三年三月には十一・七兆、一兆減少いたしました。そして、その後のことでございますけれども、オフバラ化が二・五兆ありまして、それに対して三兆新規が加わりまして結局〇・五兆ふえておりますので、十二・二という数字になっております。

佐々木(憲)委員 それで、もうちょっと内容をお聞きしたいんですが、新たに発生した不良債権の額の推移ですけれども、昨年度の前期、後期、今年度の前期それから今年度の後期の見通し、どのような数字になっているか、お答え願いたいと思います。

    〔委員長退席、久間委員長代理着席〕

森参考人 お答え申し上げます。

 緊急経済対策、骨太の方針におきまして、二年、三年ルールをつくりまして、十二年九月期のものは二年ということ、十三年三月以降は三年というルールを設けましたので、そういう意味で分解して物を言えというのが佐々木先生のお話かと思いますので、分解して物を言いますと、十二年九月期、十二・七兆ございました。それが十三年三月期、八・三兆、すなわち四・四兆減っております。そして、その八・三兆が十三年九月期にさらに一・七減りまして六・六兆になっております。ところが、十三年三月期に新規が三・四兆発生いたしました。したがいまして、八・三と三・四を足しまして十一・七になるわけです。この三・四兆が十三年九月期には〇・八兆減りまして二・六兆になります。一方、十三年九月期に初めて新規として出てきたのが三・〇兆でございます。したがって、六・六と二・六と三・〇を足しますと十二・二となるわけでございます。

 以上が分析した結果でございまして、それを、通期でどうなるかということにつきましては、先ほど私、通期見通しとして六・四兆という数字を挙げました。そして、二兆円はもう中間期で処分損を出しておりますので、残りは四・四兆でございます。この四・四兆というのは、ある意味で、特別検査もある、足元の景況も悪い、そういうことで各金融機関が極めて保守的に積んだ数字でございまして、その中で、個々具体的な債務者に当たっての話では、基本的にそういうものではございませんし、破綻懸念でどれくらいということについて必ずしも明確に見通しているわけではない。したがって、そこの数字はなかなか申し上げられないというふうに認識しております。

佐々木(憲)委員 今のお話ですと、不良債権の新規発生というのが時を追うごとに次第にふえている、傾向的に。そういう感じがするわけですが、この新規発生がなぜ生まれているのか。先ほども長官おっしゃったように、不況の中で業況が悪化しているというのが一つの要因だと私も思うんです。

 そこで、不良債権の中で中小企業の部分がかなりふえているのではないか、その辺の認識はどのようにお持ちでしょうか。

森参考人 お答え申し上げます。

 新規発生要因の増については、私は二つの要因と認識しております。

 一つは、まさに佐々木先生おっしゃいましたとおり、足元の景況という要因かと思いますけれども、もう一つはやはり、特にこれは主要行において見られるわけでございますけれども、要管理についての資産査定の厳格化、特に貸し出し条件緩和を、どういう場合に貸し出し条件緩和と見るかというときに、今まで、期限が来てそのままの金利で短期でロールオーバーしていたものについて、貸し出し条件緩和としていなかったところを、いや、これは景況が悪いので、この程度の企業にこの金利で貸すのなら貸し出し条件緩和だというふうに銀行自身が認識し始めた。そういう面で、一つは、要管理についての資産査定を厳格化したことが大きく、特に主要行の不良債権の額が大きくなったのは、要管理部分が大きくなっているというふうに認識しております。

 それで、大手行といえども、五割近くは中小企業に貸しているわけでございますので、そういう要管理に区分された中小企業ももちろんあるかと思います。

佐々木(憲)委員 今のお話ですと、全体として景況が悪くなっているということと、それから銀行の側の資産査定がかなり厳格化していると、二つの要因をおっしゃいました。つまり、厳しく査定をして、しかもそれをどんどん処理をする。そうすると、結果として倒産が生まれる、失業が生まれる。そうなると、また不良債権がふえる、新規発生は減らない。こういうことになりますと、これは悪循環に陥るんじゃないかという感じが私はするわけです。

 今おっしゃったように、大手にとっても、融資金額の五割が中小企業で、件数では九九%以上が中小企業ですよね。この中小企業向け融資が本来ふえるということが、銀行にとってはいわばもうけの源泉をふやすということになるわけであって、この中小企業向けの部分がどんどん処理される、こうなっていきますと、源泉が先細りになっていくんじゃないかという感じもするわけですが、森長官はこの辺はどのようにお考えでしょうか。

森参考人 お答え申し上げます。

 佐々木先生おっしゃるとおり、中小企業向け融資というのは、金融機関、銀行にとりましては、大手であれ地域金融機関であれ、大きな稼ぎの源泉である、そのとおりだと思います。

 そんな中で、我々が言っておりますのは、少なくても要管理までは、要管理も要注意の中の一区分でございますけれども、要管理までは何とか健全化に持っていくよう、銀行にその旨のマネジメントというものを強化するよう要請しておりまして、最近いろいろな頭取に聞くのでございますけれども、主要行、地域金融機関含めまして、そういう健全化の努力、それは逆を言いますと、どうやって健全化するかというと、銀行の方が積極的に健全化計画、再建計画というものを企業と一緒になってつくっていく、そしてその範囲内で、その枠内で融資というものを考えて、そして正常化に持っていく、そういう努力を非常に強くし始めているというふうに認識しております。

 そして、今度、佐々木先生がおっしゃったのは、むしろ、要管理にとどまらず破綻懸念まで落ちた場合はどうなのかということでございますけれども、これについては、中小企業の特性等を考慮しながらやるということが骨太の方針にも書いてございますけれども、基本的には、当該借り手の中小企業とよく話し合った上でどうするかということ。仮に、できますれば、我々が願っていますのは、なかなか中小企業にミシン目を入れるのは難しいとは思いますけれども、やはり残せるものは残して、グッドカンパニー部分はグッドカンパニーとして再生できないかというような努力を金融機関には強く要請しております。

佐々木(憲)委員 ミシン目が入る中小企業があればいいけれども、中小企業がミシン目が入るほど大きなものではないわけで、不良債権というレッテルを張られると、もうほとんど展望が生まれてこないというのが現状なんですよね。

 それで、十一月五日の記者会見で、森長官はこうおっしゃっているんですね。

 一体何が起こったら不良債権処理が進んだと言うのですか。それが私には良く分からないですね。一つの答えは企業がどんどん潰れて行けば、そういうものが進んだと仰るのかなあとも思いますけれども、我々からすれば企業を潰すことが目的ではございません。

こういうふうにおっしゃっていまして、私も部分的には共感を覚えるわけでありますが、不良債権処理を急ぐということになりますと、結果的に、大手企業はともかくとして、中小企業の方はどんどんつぶされるということになるわけでありまして、不良債権処理を進めるということは、中小企業の分野がもうけの源泉であると先ほどおっしゃいましたが、それを縮小するというふうになるのではないか、これにはかなり大きな矛盾があると思うんですが、長官、どのようにお考えでしょうか。

森参考人 お答え申し上げます。

 中小企業がもうけの源泉というのは、私、基本的には正常な状態での物の言い方でございまして、基本的には健全な中小企業がもうけの源泉であるということでございます。

 したがって、破綻懸念まで落ちて、なかなか正常な利息の返還さえ滞っている中小企業、あるいはキャッシュフローがほとんどなくなっている中小企業、こういうものに対して金融機関がどう対処するか、これはまた少し別の問題もあろうかと思うんです。

 そういう中にあっても、我々は、その中小企業の特性、地域の特性等も考えながら、中小企業に対してよく相談しながら物を進めるよう銀行を監督している次第でございまして、確かに、いわゆる破綻懸念まで落ちた中小企業をどういうふうにしていくのかというのは、極めて難しい問題を持っていると思います。

    〔久間委員長代理退席、委員長着席〕

佐々木(憲)委員 破綻懸念まで落ちてもまだ生きているわけでありまして、やはりその企業が生きていけるような銀行側の対応というのが、今後の再生の方向に向けての支援というのが銀行がとるべき方向だというふうに私は思っておりますので、そういうふうな指導をぜひやっていただきたいと思っております。

 さて次に、預保の松田理事長にお聞きをしたいと思います。

 最近は、自殺者が非常に多発しておりまして、年間で三万人を超えるという驚くべき数字であります。交通事故で亡くなる方の三倍も自殺をするなんというのは、これは異常な事態でして、きょうの日経によりますと、破産の申し立てが最悪であります。このペースですと、年間約十六万七千件に達するだろう、前年を二万件も上回る、七年連続前年増という状態であります。特に、五十代の自殺者がこの数年間で倍増しております。

 殺伐たる社会だと思うんですが、預保としては、あるいはRCCに対する指導方針としては、銀行から引き受けた企業に対して、いきなり回収、破綻に追い込む、そういう対応をするのではなくて、やはり相手を尊重して、できるだけ支援の方向というのが私は大事だと思うんですね。財金でもこの点について私お聞きしましたけれども、できるだけ支援というふうにお答えになりました。

 ただ、問題は、そういう基本姿勢を現場にどれだけ徹底できるか、ここがやはり大事だと思うんですが、この徹底の仕方についてお聞きをしたいと思います。

松田参考人 実際に回収に当たりますのはRCCの職員でございますので、その現場への徹底は一には鬼追社長の責務ではないかと思いますが、預金保険機構としても、例えば、年に二回なら二回、回収責任者会議という、一線で働く弁護士さんとか役職員を集めて会議をやっております。そういう席などを利用しまして、このように企業再生にも積極的に取り組んでいくんだという姿勢をよくよく説明を改めてする、従来もやっていないわけじゃないんですけれども、特に改めて説明もする。

 それから、債務者といえども期限の利益のある債権をお持ちの方については、もちろんそれは尊重しなければいけませんから、いきなりそれを破って、いきなり任売にかけるとかそういうことは一切しない、そういうコンプライアンスはきちっと高める、そういう指導は従来からやっておりますし、鬼追社長の方も十分留意をしてこれからもやっていくだろう、このように思います。

佐々木(憲)委員 鬼追社長にお聞きをしたいと思います。

 債権回収の考え方でありますが、銀行から引き継ぐ場合、実務的には、債務者と銀行との間の契約がありますけれども、その場合、例えば約定金利ですとかあるいは返済の期限ですとか、そういう支払い条件、これは基本的にはそのまま引き継ぐという形になるのか、それとも、直ちにそれを破棄して新しい契約に書き直すということになるのか、その辺はどのようにされるんでしょうか。

鬼追参考人 御承知のように、私どもの譲り受けます譲り受け方というのは、指名債権譲渡という形で譲り受けますので、もとの契約、原契約の中で交わされております約定でありますとか、あるいは抗弁が仮についている場合にはそのままそれが適用されるということになろうかと思います。

 したがいまして、銀行さんと同じ立場で債権者として私どもは振る舞う、こういう状況になります。

佐々木(憲)委員 これまで話し合いによって解決した事例が少なくないというふうに言われておりますけれども、今度新しくRCCに役割が付与されたわけですけれども、そうすると、かなり多くの不良債権が移動してくるということになるわけです。したがって、話し合いによって解決する案件というのがこれまでより一層ふえるという予想をされておられるか。それとも、いついつまで、三年というような区分で期限を切りますので、ともかく回収の比率を高めなきゃいかぬ、処理を早くしなきゃいかぬ、こういうおそれもあるのではないかという感じもしますが、その点は基本姿勢としてどういう立場でやっていかれるか、お聞きしたいと思います。

鬼追参考人 今回の改正ができたといたしますと、私どももその回収の多様性ということも求められるようになると思います。再生もそのうちの多様化の一つでありますし、また債権の処分、つまり流動化あるいは証券化というふうにも言っておりますが、そういった形での回収もしていかなければならない、かように思います。

 従来から、整理回収機構は、債務者との納得ずくの回収ということをまず第一義といたしておりまして、したがいまして、任意弁済でありますとか、担保物件の任意売却でありますとか、あるいは約定弁済でありますとか、そういった債務者の納得をいただいた上での弁済というのは、これはもう半分以上、五〇%以上を占めておるわけでございます。

 したがいまして、私どもは、そういった基本方針につきましては今後とも変わりなく、さらにまた、いわゆる企業再生の可能性を追求するという意味での、いわゆる再生マインドとでもいいましょうか、債権者として再生マインドを持った回収も進めていかなければならないというふうに考えているところでございます。

佐々木(憲)委員 それで、具体的に紹介していただきたいんですけれども、例えば不動産を競売にかけるというような場合、その競売を取り下げた事例があれば紹介をしていただきたい。それから、強制執行を取り下げた事例。時間がありませんので、この二つだけでも紹介していただけますか。

鬼追参考人 相当件数あろうかと思いますが、まず競売を取り下げた事例はどういう事例かといいますと、調べてまいりましたのは、債務者は中国地方でパチンコ、カラオケ店を経営する法人でありまして、当社がその当該パチンコ店の土地建物の競売の申し立てをいたしました。競売期日前に競売事件の評価額が出されましたけれども、当社の不動産部の評価額を下回る評価であったわけであります。そういうことでございますので、債務者にも任意売却を強く促しまして、債務者サイドでも任意売却に努めました結果、中国地方に進出をもくろんでおりました同業者から、RCCの評価額あるいは競売事件での評価額を上回る購入希望者が出てきた、こういうことでございまして、そのために競売手続を取り下げまして任意売却に切りかえまして、比較的当社の債権回収にとってもプラスになるような結果が出たということでございます。

 なお、その際、私どもは、購入者が債務者と特別濃密な関係にあるかどうかということも一つの判断材料にいたしておりますけれども、この場合は、債務者とは利害関係を持たない、いわゆる公正な第三者といいましょうか、そういう第三者が購入希望者として手を挙げられた、こういう事例がございました。その他、競売申し立て案件は、今のような状況の場合には幾らでもあろうかというふうに申し上げたいと思います。

 二番目は、差し押さえを取り下げた事例とおっしゃいましたか、強制執行とおっしゃいましたか。(佐々木(憲)委員「強制執行の取り下げです」と呼ぶ)差し押さえも強制執行の中の一つでありますが、強制執行を申し立てた後に取り下げをした事例はこういうケースがございます。

 債務者は、首都圏郊外の主要ターミナルの駅前にあるビジネスホテルを経営しておりました。債務者の隠匿資産を預金保険機構さんの資産調査によって発見いたしました。まず、仮差し押さえをかけて保全する一方、話し合いと並行して貸し金請求訴訟を提訴して、勝訴したわけでございます。債務名義を得まして、所有不動産を仮差し押さえから差し押さえに切りかえました。つまり、強制執行に切りかえたわけでありますが、強制競売の手続を進めていたところ、債務者側から和解の申し出がありまして、そうした和解に応じて、徹底した法的対応を貫徹する場合の弁済見込み額を相当程度上回るというような弁済提示がございました。したがいまして、当社といたしましては、その弁済提示を受けて強制執行を取り下げをした、それによって債権回収を図っていった、こういう事例がございます。

佐々木(憲)委員 今、幾つかの事例を紹介していただきましたけれども、森長官にお伺いします。

 RCCとしては、ここにも「RCCの概況」というパンフがありますが、この中に、「契約の拘束性の追求」と「人間の尊厳の確保」という二つの両立ということを非常に強調していまして、特に「人間の尊厳の確保」ということが大変重要であるという意識を持ち、債権回収に当たっても相手側の要望に耳を傾け、競売あるいは強制執行を行う場合でも話し合いに応じる、そして、できるだけ話し合いで解決していく姿勢をとっているということがわかりました。

 そうしますと、当然、銀行の側もそういう姿勢をとるのが当たり前だと私は思うんですが、どうも、話を聞いていますと、銀行の方はかなり無慈悲に、いわば身ぐるみはいで追い出すようなやり方をしている事例を随分私は聞くわけです。競売に一度かけたら絶対取り下げない、話し合いに応ずると口では言うけれども、応じても自分たちの主張は一切曲げない。それで、ともかく法的処理、回収、競売ということで、路頭に迷う人が随分あるわけです。

 私は、そういう銀行の姿勢を正すことが大変重要だと思うんですけれども、森長官、RCCのこういう基本理念を踏まえて、銀行に対しても当然そういう対応をすべきだという指導をされるべきだと思いますが、森長官はどういうお考えでしょうか。

森参考人 お答え申し上げます。

 銀行の公共的性格、そういう面から、銀行は免許業種になっているわけでございまして、また、銀行自身、他の銀行と競争しているわけでございますので、今おっしゃられたような面で、当然、銀行はレピュテーショナルリスクを自覚して、一定のモラルを持った対応というものが期待されるわけでございますし、そのような対応をしていただいているものと考えております。仮に、銀行が、不祥事件だとか、あるいは、そこまでいかなくても社会的批判等を受けるようなことをやっているということが監督当局の耳に入れば、それは必ず事情を聴取しておるわけでございまして、それに基づいて適正な対応、非常に極端な場合は二十四条報告をかけるとか、そういうことも監督当局はやっております。

 ただ、一般的には、佐々木先生のおっしゃるように、RCCという国の公的サービサーがやっていることは、競争の激しい、民間の、レピュテーショナルリスクを抱えている銀行は、当然、その程度まではやってしかるべきではないかというふうな認識を持っております。

佐々木(憲)委員 今、対応していただいているものと思うというふうにお答えになりましたが、実態は、かなりいろいろな、無慈悲なやり方をしておりますので、また、それに対する訴えも随分来ております。

 これはやはり、今おっしゃったように、具体的に、行き過ぎたものについては是正をしていただきたいというふうに思うんです。バブル時代には、大型フリーローンなどを組んで、必ずしも借りる必要のない個人に対して提案型融資を行って、バブルが崩壊した、さあ、裁判にかけてともかく回収なんだということでどんどんやってきて、今、ホームレスになったり、あるいは自殺に追い込むような大変ひどい事例というのも聞いておりますので、その点は是正されるように最後に要望して、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

野呂田委員長 これにて佐々木君の質疑は終了いたしました。

 次に、横光克彦君。

横光委員 社民党の横光克彦でございます。

 きょうは、三人の参考人の方、大変御苦労さまでございます。

 先日発表されました十月の完全失業率、これが五・四%と、過去最悪の水準に達してしまったんですね。中でも、企業の倒産、解雇などによるいわゆる非自発的失業者、四十五歳から五十四歳の男性を中心にこれが非常に増加しているわけです。このように、世帯主の完全失業者は、金融危機に直面した一九九八年の年平均と同程度の増加幅となって、雇用環境は非常に厳しさを増しているわけでございますが、この背景には、経済の血液であります金融部門において遅々として進まない不良債権問題が大きく横たわっている、これは大方の認識の一致するところだと思うんですね。

 そこで、金融庁長官にお聞きしたいんですが、バブル経済の負の遺産とも言えるこの不良債権の問題が、日本の経済の最大の問題、課題、そしてまた大変な経済の重荷になってから約十年になろうとしているんですね。しかも、事態が改善するどころか、非常に深刻化しているような状況であるにもかかわらず、不良債権の処理は遅々として進まない。さらに、六月の骨太の方針でも、不良債権の処理が最大の課題であると位置づけられているにもかかわらず、これまた今日までなかなか処理が進まなかった。ところが、今回、九月の大手行の決算を機に大きく動き始めようとしているわけですが、なぜここまで処理が進まなかったのかということをまず長官にお尋ねしたいと思います。

森参考人 お答え申し上げます。

 我々は、今、横光先生は遅々として進んでいなかったとおっしゃられましたけれども、平成十年三月、十一年三月、そして今日、十二年九月期までの各期における不良債権処分損の推移等を見ていますと、各金融機関とも、それはそれなりに懸命に不良債権の処理をしていた。ただ、不良債権の処理といっても、必ずしも意識した直接処理、すなわちオフバラ化というものがなかったものですから、ことしの一月、柳澤大臣が金融担当大臣になられて、そこにスポットを当てた要請というものをし始めた。そして、それについてオフバラ化も進んできたということで、必ずしも金融庁からすれば、遅々ということでございますけれども、その認識からすれば、懸命に古い不良債権の処理はしてきた、しかし、足元の景況もあり、やはり新規に上から不良債権が降ってくるという中でのもがきの連続であったというふうに認識しております。

 ただ、前と違うのは、資産査定及び引き当てということに対して、まずやはり銀行の信認を高めるにはそこがきちっとしなきゃいけないという意識が、少し前、すなわち金融検査マニュアルが施行される十一年七月よりか前に比べますと、今日はそこは相当銀行の意識が高まっている。そこがやはり大きな違いだろうと思いますし、そこに銀行に対する信頼が高まってしかるべき点もあろうというふうに認識しております。

横光委員 今いみじくも、以前は銀行の査定がちょっと甘かったというような認識も示されましたね、今は違うと言いましたが。

 そうでしょうか。やはり銀行経営者にしてもあるいは金融当局にしても早期に処理することをためらってきた傾向があるのじゃないですか、先送りしてきたというあれがあるのじゃないですか。そこには、いわゆる銀行の査定あるいは金融庁の検査、ここが甘かったという指摘が非常に強いのですよ、声が。そういった認識はおありでしょうか。

森参考人 お答え申し上げます。

 一つ言えますのは、制度の目まぐるしい変更がございました。すなわち、平成十年四月から、平成十年三月期からと言った方が正確かと思いますけれども、銀行の監督体制が早期是正措置を中心とした監督という、ある一定よりも健全度が落ちた場合には早期是正措置を打つという体制を導入したのが平成十年四月からでございます。かつ、検査が単に資産査定、すなわち債務者区分だけ見るのじゃなくて、いわゆる分類債権だけ見るのじゃなくて引き当てまで見るようになったのが平成十年四月以降の検査でございます。

 その前の大蔵省の検査というのは、分類債権だけ分類して、あとの引き当ては監査法人なり公認会計士に任せた世界だったわけです。それが、平成十年四月以降から引き当てまで見るという世界になる。さらに、その一年三カ月後の平成十一年七月には厳しい金融検査マニュアルというのができた。それに基づいてさらに検査が始まった。

 この三年の間に極めて制度が目まぐるしく変化しておりまして、横光先生、今まで手心を加えていたのじゃないか、今はこう言っているけれども、結局今も同じなんじゃないかとおっしゃいますけれども、制度のそういう変遷の中で、行政というのは制度の変更に伴って忠実にそれを行っておりますので、今は手心を加えようにも加えようがない制度になっているという意味において、きっちりとやっているということが言えると思います。

横光委員 制度の変更ということもあるでしょうが、それではなぜ特別検査を始めたかということですよ。今までの検査体制あるいは査定が十分であるならば、あのような制度は必要ないわけでしょう、特別検査なんて。

 それは、マイカルという、いわゆる要注意先であったにもかかわらず、破綻懸念先でないにもかかわらずあのような状況になった事態を見て、金融庁はそこで厳しい査定、精査というものが必要だということで特別検査に入ったと私は思うのですよ。そして、その効果がこの九月決算期を契機に銀行をも動かして、今大きく不良債権処理に動き始めたという認識を持っておるのですね。

 そういうことからすれば、やはり特別検査の意味は非常に大きかった。ということは、それまでの検査がやや緩かったのじゃないかということを私は指摘しているわけでございます。どうですか。

森参考人 お答え申し上げます。

 特別検査というのは通常検査の補完的なものとして導入したわけでございますけれども、あくまで検査は、これからも通常検査は主要行で年一回やっていきます。

 その検査というのは何かというと、直前の決算期、それは四カ月前かもしれませんし五カ月前、あるいは八カ月前かもしれません。まあ中間決算を基準にいたしますから八カ月ということはありませんけれども、最大六カ月前の銀行の自己査定が正しいかどうかというものの検査でございます。

 そして、あえて言えば、きょう使われたのがマイカルの例でございまして、マイカルについては、ことしの三月期におけるメーン行の自己査定というのは、当然、マイカルの決算は二月にございますから、二月時点でのトリプルBのレーティングを受けているマイカルの検査を銀行がしていたわけで、それが正しいかどうかをそれから半年以上たって、つまりマイカルが破綻したころになって検査しても、そういう通常検査という手法ではあくまで銀行の検査は正しかったということで、けちのつけようがないわけでございます。

 それに対して柳澤大臣が、もっとリアルタイムなことができないのかということをおっしゃられて、そして特別検査、すなわち補完的に、むしろ銀行が決算をつくるときに一緒に入って三者協議で、市場の評価が低下しているようなある企業について、果たしてどの債務者区分が正しいのかという検証を三者で行う、そしてすぐに決算に反映させる、そういう方法を考えて、それをいわば通常検査の補完をするものとして特別検査と位置づけて、ことしの十月二十九日から着手したわけでございまして、結果的には来年の三月の決算にそれが反映されるというふうに考えております。

横光委員 いずれにしても、やはり特別検査、金融庁の検査体制が非常に厳しくなれば、抱えている銀行サイドもそれなりに対応せざるを得ないという状況が今生まれてきていると思うのですね。

 そこで、次に鬼追社長にお伺いしたいのですが、今回、今参議院でも審議中ですが、金融再生法の改正案、これが衆議院の財務金融委員会で審議されました。あの状況をごらんになったと思いますが、あのようないいかげんな委員会審査でいいのかという思いを非常に持っておるのですね。出席者も少ない、提案者も欠席することもあった。本当に真剣さがあるのか、この法案が本当に必要なのかというのが見えなかったのですね、あの審議の過程を見ると。

 結果的には、あの法案ができれば、現場でその責任を負わされるのはRCCなんですね。そういった意味で、RCCの社長としては、あのような審議状況で不安感とか不信感を持ったと思うのですが、いかがですか。

鬼追参考人 大変難しい御質問でございますが、しかし、あの委員会でいろいろ御議論がございました。無論野党の方からもいろいろ御議論がございまして、私どもは、非常に鋭い御議論とかいうのをお聞きしておりまして、今後のRCCの運営でありますとか、あるいは業務への取り組みでありますとか、そういうことにこれは十分参考にさせていただかなきゃいかぬというふうに思ったところでございます。

横光委員 その法案ですが、いわゆるRCCの機能拡充策についてですが、これは森長官にお伺いしたいと思います。

 この拡充策、いろいろ見方があると思います。不良債権問題解決の切り札になるという意見もあるでしょうし、あるいは一方では、これからの運用の仕方によっては、不良債権を銀行からRCCへただ水平移動させるだけであって、いわば国家的な飛ばし機関になるおそれもあるんじゃないかという声もあります。いろいろな見方があるわけです。

 今回の拡充策は、柳澤金融担当大臣がかねてから公的資金注入に断固反対の姿勢を貫いているために、いわゆるその代替的手段として考え出されたものじゃないかという声もあるわけです。この法案、実質的には公的資金注入の代替手段という、私はそういう感じが非常に強いわけですが、そういうことはないでしょうね。

森参考人 お答え申し上げます。

 そのような声は、全く誤解だと思います。

 そもそも、破綻懸念以下に落ちた場合は二年、三年のうちに最終処理をしていただきたいということを、緊急経済対策そして骨太の方針でうたいました。

 その最終処理とは何かといえば、それは、一つは債権放棄を含む私的整理。それもいいかげんなものでは困るので、私的整理ガイドラインというものをつくって、厳しいルールにのっとった私的整理というものが一つあるわけでございます。

 もう一つは、法的整理。法的整理といいましても、再生型の法的整理、すなわち民事再生法なり会社更生法なりの再生。

 そして、三番目の最終処理の姿として、債権の売却があるわけでございます。その債権の売却先ということで、改革先行プログラムでRCCの機能拡充をうたって、通常の民間のサービサーへの売却以外にRCCでの売却というのも、RCCの買い取り価格の弾力化も通じてその機能を拡充しましょうと。そういう経緯のもとでRCCの機能拡充というのが、この一月から考えますと、出てきたわけでございます。

 そのときに、何度も国会で議論になりましたように、我々、時価ということによって、何か銀行に何がしかのプラスを出す、逆に言うと国がロスを出すということは、これっぽっちもそんなことは考えてはおりません。

 そうではなくて、むしろ、これからの整理というのは、やはり再生型の整理というものを中心にやる。それは、私的整理なりあるいは法的整理の再生型であれ、そういうことでやってもらうのはそれでも結構なんです。しかし、RCCも、今までも再生の実績もございますし、これからは企業再生本部をつくりましてやるということで、RCCに債権を持っていった上で、そしてRCCが絶対的な債権者になった上で、債務者をグッドカンパニー、バッドカンパニーに切り分けて再建していく。こういうやり方も、今の時宜に合った、すなわち、大変失業がふえる中で、そういう借り手企業を単につぶすのじゃなくて、まさにミシン目をつけて、いい部門は残していくという再生、そういうものにRCCを一役かませましょうというのが趣旨だということでございます。

横光委員 今の企業の再建の件ですが、今度の法案の内容に、処分方法の多様化というのがございますね。

 さきの補正予算で、産業投資特別会計から日本政策投資銀行に五百億円の出資金が支出されております。その他の資金を加えてファンドをつくり、そして不良債権処理に活用することになったわけですが、現実に、ここでもう公的資金は注入されているわけですよ。不良債権処理に活用するために、もう五百億円という公的資金は注入されている。さらに、この活用の仕方によっては、今もお話がございました、二次ロスの状況によってはさらなる公的資金が必要になる可能性があるわけですね。そういったところが非常に危惧されているわけでございます。

 今、時価会計のことを言われましたが、この時価会計が導入されることになったのですが、この定義が極めてあいまいでもあるし、どのようにして算出されるのか非常にわかりにくいわけですね。この買い取った後の経済情勢次第では、いわゆる資産価値が下回ることも考えられるし、もちろん上回ればもう言うことはないのですが、また、対象資産の企業が倒産することだって考えられる。そうすると、もう紙くず同然ですよ。

 そのような資産価値の減価が生じた場合、その損失はいわゆる二次ロスとなるわけですが、どのようにして処理されるおつもりなんですか。

森参考人 お答え申し上げます。

 今、横光先生、企業再生ファンドのことに言及されましたけれども、これはあくまで、RCCと一緒に考えましたときに、RCCが、例えば百の簿価のものを二十で買い取ったという場合に、そのすき間は八十あるわけですね。その八十を使って、いわゆるデット・エクイティー・スワップを、相手方の借り手、これもミシン目でグッドカンパニーとバッドカンパニーを分けて、むしろグッドカンパニーの部分についてデット・エクイティー・スワップをかけて株を持つ。そういう株はほかの銀行も持っておる。その株を全部集めれば、これは株主権が行使できて、そして、それによって当該企業のグッドカンパニー部分を再生できるという考え方のもとに、それでは民間主導の企業再建ファンドをつくったらどうだ、そういうものについては。そういう債務者企業一つについて一つの企業再建ファンドをつくる、こういう形。そこに、銀行が持っているそのデット・エクイティー・スワップで持った株を入れる。それで、RCCも持ったものを現物出資する。さらに、それに加えて、もっとほかに株があるならば、その株を収集しなきゃいかぬ。そこに日本政策投資銀行が出資をするということでございまして、日本政策投資銀行を無理やり何か入れるとかそういうことじゃなくて、日本政策投資銀行自身は、自己の投融資ガイドラインに基づいて今まで、既にベンチャーキャピタルに対して平成八年度以降多くの出資実例がございます。

 それと同じ次元に立って日本政策投資銀行は出資するのであって、何かちょっと横光先生誤解があると思うのですけれども、RCCが不良債権を買い取る、その買い取り価格と、企業再建ファンドに日本政策投資銀行が出資する話とは全く別の話、このように認識しておりまして、いわゆる日本政策投資銀行の出す出資というものと二次ロスというものは基本的に関係ないというふうに認識しております。

横光委員 不良債権の買い取りと企業再建、再生は、もちろん私も同時にセットでやることは重要だと思いますし、そういった意味でのファンドというものを活用していくことは否定しているわけじゃないのですよ。

 ただ、それと別に、時価会計のときに出たロスをどのように処理していくのか。そしてまた、売り手責任、買い手責任ということもあります。このロスが生じた場合、生じないという、努力するというお話をされておりましたが、これは努力されても市場が決めるのですよ、市場の動向によっては二次ロスが出る可能性があるわけですよ。そうした場合どうするかということを聞いている。

 ですから、銀行にも、RCCが買い取った銀行が、もし二次ロスが出た場合、そこにも自行株を売ってでも弁済するような責任制度なんかをとれないのか。でなければ一方的に国民の負担だけになる可能性があるので聞いているので、そういった手法は、どうなんですか、お考えなんでしょうか。

森参考人 失礼いたしました。

 銀行から買い取った一本一本の債権について、絶対にロスが出ないということはなかなか言えないと思うのです。そういう意味において、今後、RCCが五十三条買い取りが例えばふえた、ふえた中で損するものも出てくるかもしれませんけれども、当然その買い取りの手法というのは民間が考える手法と同じで、基本的には、キャッシュフローのあるものはキャッシュフローの何年分、それに割引率をどう掛けて現在価値に直すか、そんなような手法は民間とRCCは同じでございますし、そういうことについて価格審査会を強化して、鬼追社長も厳正な価格を出すと言っておられますし、正直申しまして、一本一本の債権ということでなくて、五十三条買い取り業務全体として一年一年を見ていけば、我々は、そんなロスというものは基本的には想定しておりません。

 しかし、理論的には、横光先生のおっしゃるように、ではロスが本当に出たらどうするんだ、それに対する備えはないのかと言われれば、それは、平成十二年四月に、当時国会で大蔵省の政務次官が御答弁でおっしゃられましたとおり、そのような欠損が金融再生勘定に生じて、つまり、金融再生業務が終了した場合には金融再生勘定を閉じるわけでございますけれども、同勘定に欠損が生じた場合には適切な予算措置を講じられるものと当時大蔵省から答弁されておりますし、我々もそういうような制度であるというふうに認識しております。

横光委員 金融再生勘定、たしか十五兆の枠があると思うんです。適切な処理をするというお話ですが、そういったところを活用することになるんじゃなかろうかという気がしておりますが、そういったことが起きないようにするために、私は不良債権が市場で適切な価格で売買される仕組みが不可欠だと思うわけですね。時価会計で果たしてそれが可能なのかどうかという心配をしているわけです。

 例えば、RCCの構成メンバーが、銀行からの出向者がかなり入っていますよね。同じA銀行から来た人がA銀行と交渉する、こういうことはあり得ないでしょうけれども、それにしても、銀行員同士が売買の交渉をすることだってあり得ると思うんですね。そうした場合、お互いの状況がわかっているだけに、不透明な調整とかいう危惧も起こり得る。ですから、このRCCのメンバーの中に、銀行出向者だけでなく専門家、例えば不動産鑑定士とかいろいろな専門家を、いわゆる銀行員と別の視点で物件の価値を判断できるような、そういった適正な判断ができる仕組みが必要ではなかろうかと思っております。

 RCCの人材構成ですが、これはRCCの社長にお聞きしたいんですが、人材構成を、本当に適正な判断ができるような仕組みができているのかどうか、お聞きしたいんですが。

鬼追参考人 RCCの役職員の人材構成は非常に多様でございまして、横光委員がおっしゃいますように、銀行出身者、これは出向者であれ、元銀行出身者であれ、相当数いることは間違いがございませんが、同じ銀行出身の方といいましても、例えば中央銀行、すなわち日本銀行出身の方もいるわけでありまして、現在五十三条業務は日銀出身者によって指導されているわけでございますが、あるいは弁護士も相当数おります。大蔵省出身の方もおられます。あるいはまた、不動産関係でございましたらば、私ども不動産部という部を設けております。これは東京と大阪に数名ずつ不動産鑑定士の資格を持った職員もいるわけでございますが、そういうことで非常に多様な出身者がいるわけでございます。

 したがいまして、私どもは、あくまでも債権回収という業務は非常にコンプライアンスを遵守していきませんと、非常に利害関係が鋭く対立する業務でございますので、このコンプライアンスの遵守ということにつきましては格別の配慮を払っているところでございます。倫理規定あるいは行動規範というものも、私ども社内の、RCC独自のものをつくりまして、日常的に徹底しておるところでございますので、私自身が、そういう事態が発生することのないようにということで、役員会でもそのことを議論いたしまして、対策を講じているところでございますので、万全の注意を払って今後業務に取り組んでまいりたい、このように存じます。

横光委員 どうか、透明性に力を入れていただきたいと思います。

 大手十三行だけでも六兆円を超える処理損を抱えることになったわけですね。当然これは、先ほどからお話が出ておりますが、資本不足になるんではないかという懸念があるわけです。主要行の中間決算を見ると、公的資金を注入された銀行の中には優先株の配当ができなくなる銀行も出てくるんじゃないかと言われておるんですよ。

 森長官、先ほどから、過少資本になる心配はない、一〇%は維持できるということをおっしゃっておりますが、そういいながらも、既にこれら大手銀行では増資の計画もあると私は聞いておるんですね。不安でしようがないと、株を買ってもらったり、資本金をふやす計画を立てているという銀行もあると私も漏れ聞いておるんですね。この六兆円の処理損で本当に大手行の自己資本比率は下がることはないのか。いわゆる取りつけ騒ぎ等が絶対起きることがないのか、私はそういうことを心配しておるんですが、再度お尋ねいたします。いかがでしょうか、森長官。

森参考人 お答えを申し上げます。

 通期予想で実質六兆四千億という数字が出ているわけでございますけれども、株価を九千七百七十四円と前提にした場合の三月の主要行の健全度をあらわす自己資本比率はおおむね一〇%程度、これはもうそのとおりでございます。

 しかし、だからといって、銀行は何もしなくていいということじゃございませんで、やはり厳しいときには銀行に対しては猛烈なリストラ、さらに業務純益の向上策をやってほしいと我々は要請していますし、銀行ももちろんそのつもりで、大変厳しいリストラ策、乾いたタオルをさらにちぎれんばかりのことをやり始めていると思います。それによって業務純益を上げるということをやっておると思いますし、さらには、自力調達ができるところは懸命に自力調達を計画しているというふうに認識しております。

 そうした中で、我々は、来年の三月どうなるかを日々きっちりと監督していきたいというふうに考えております。

横光委員 終わります。

野呂田委員長 これにて横光君の質疑は終了いたしました。

 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三十七分散会




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