衆議院

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第3号 平成14年1月24日(木曜日)

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平成十四年一月二十四日(木曜日)
    午前九時一分開議
 出席委員
   委員長 津島 雄二君
   理事 伊藤 公介君 理事 木村 義雄君
   理事 北村 直人君 理事 小林 興起君
   理事 藤井 孝男君 理事 枝野 幸男君
   理事 城島 正光君 理事 原口 一博君
   理事 井上 義久君
      伊藤信太郎君    伊吹 文明君
      石川 要三君    衛藤征士郎君
      大原 一三君    奥野 誠亮君
      金子 恭之君    亀井 善之君
      栗原 博久君    小坂 憲次君
      小島 敏男君    七条  明君
      高鳥  修君    中山 正暉君
      丹羽 雄哉君    葉梨 信行君
      萩野 浩基君    細田 博之君
      三塚  博君    宮本 一三君
      持永 和見君    森岡 正宏君
      森田 健作君    八代 英太君
      赤松 広隆君    五十嵐文彦君
      井上 和雄君    池田 元久君
      岩國 哲人君    河村たかし君
      菅  直人君    筒井 信隆君
      中沢 健次君    野田 佳彦君
      牧野 聖修君    松野 頼久君
      松本 剛明君    青山 二三君
      赤松 正雄君    達増 拓也君
      中井  洽君    中塚 一宏君
      山田 正彦君    佐々木憲昭君
      矢島 恒夫君    植田 至紀君
      辻元 清美君    中川 智子君
      横光 克彦君    井上 喜一君
    …………………………………
   内閣総理大臣       小泉純一郎君
   総務大臣         片山虎之助君
   法務大臣         森山 眞弓君
   外務大臣         田中眞紀子君
   財務大臣         塩川正十郎君
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   厚生労働大臣       坂口  力君
   農林水産大臣       武部  勤君
   経済産業大臣       平沼 赳夫君
   国土交通大臣       扇  千景君
   環境大臣         川口 順子君
   国務大臣
   (内閣官房長官)
   (男女共同参画担当大臣) 福田 康夫君
   国務大臣
   (国家公安委員会委員長)
   (防災担当大臣)     村井  仁君
   国務大臣
   (防衛庁長官)      中谷  元君
   国務大臣
   (沖縄及び北方対策担当大
   臣)
   (科学技術政策担当大臣) 尾身 幸次君
   国務大臣
   (金融担当大臣)     柳澤 伯夫君
   国務大臣
   (経済財政政策担当大臣) 竹中 平蔵君
   国務大臣
   (規制改革担当大臣)   石原 伸晃君
   内閣官房副長官      安倍 晋三君
   内閣府副大臣       熊代 昭彦君
   内閣府副大臣       松下 忠洋君
   内閣府副大臣       村田 吉隆君
   総務副大臣        佐田玄一郎君
   総務副大臣        若松 謙維君
   外務副大臣        杉浦 正健君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   文部科学副大臣      青山  丘君
   文部科学副大臣      岸田 文雄君
   厚生労働副大臣      宮路 和明君
   厚生労働副大臣      狩野  安君
   農林水産副大臣      遠藤 武彦君
   経済産業副大臣      古屋 圭司君
   国土交通副大臣      佐藤 静雄君
   防衛庁長官政務官     木村 太郎君
   環境大臣政務官      奥谷  通君
   政府特別補佐人
   (内閣法制局長官)    津野  修君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    古田 佑紀君
   参考人
   (日本銀行総裁)     速水  優君
   予算委員会専門員     大西  勉君
    ―――――――――――――
委員の異動
一月二十四日
 辞任         補欠選任
  奥野 誠亮君     森岡 正宏君
  亀井 善之君     森田 健作君
  野田 聖子君     伊藤信太郎君
  五十嵐文彦君     牧野 聖修君
  池田 元久君     井上 和雄君
  松野 頼久君     菅  直人君
  中塚 一宏君     山田 正彦君
  山口 富男君     矢島 恒夫君
  辻元 清美君     植田 至紀君
  横光 克彦君     中川 智子君
同日
 辞任         補欠選任
  伊藤信太郎君     七条  明君
  森岡 正宏君     奥野 誠亮君
  森田 健作君     金子 恭之君
  井上 和雄君     池田 元久君
  菅  直人君     松野 頼久君
  牧野 聖修君     五十嵐文彦君
  山田 正彦君     中塚 一宏君
  矢島 恒夫君     山口 富男君
  植田 至紀君     辻元 清美君
  中川 智子君     横光 克彦君
同日
 辞任         補欠選任
  金子 恭之君     亀井 善之君
  七条  明君     野田 聖子君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 平成十三年度一般会計補正予算(第2号)
 平成十三年度特別会計補正予算(特第2号)


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     ――――◇―――――
津島委員長 これより会議を開きます。
 平成十三年度一般会計補正予算(第2号)、平成十三年度特別会計補正予算(特第2号)の両案を一括して議題とし、基本的質疑に入ります。
 この際、お諮りいたします。
 両案審査のため、本日、政府参考人として法務省刑事局長古田佑紀君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
津島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
津島委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤公介君。
伊藤(公)委員 自由民主党の伊藤公介でございます。
 二〇〇二年最初の予算委員会のトップバッターで質問をさせていただけることを大変光栄に思っております。なかなかイチロー選手ほどにはいきませんけれども、しっかり伺っていきたいと思います。
 小泉総理は、総理御就任以来、国内外ともにさまざまな問題がございました。しかし、今、総理、私たちが地元に帰って皆さんの声を黙って聞いていますと、このまま小泉内閣の改革が進むと、明治維新以来の改革になるのではないか、そして、小泉総理は歴史に残る総理になるのではないかという声がございます。これは、私が言っているのではないんです。町の声なんです。
 私は、なぜ国民の皆さんがこんなに小泉内閣に大きな期待を寄せているんだろう、いろいろ理由があると思います。非常に小泉内閣にはスピード感がある。問題が来ると、非常に適切に決断をされる。あるいはまた、総理自身が非常に明るいですよね。やはり、国のリーダーというのは陽気で明るくなくちゃだめですよ。私は、非常に元気がいい総理を見ていると、今なかなか大変なときにありますけれども、国民の皆さんも、必ずいい時代が来るであろう、そして政治は、今本当に言ったことを政治家はやってくれるのではないか、そういう信頼感があると思います。
 だから私は、この小泉内閣で二十一世紀の日本の大切な、例えば将来に対して多くの国民の皆さんはいろいろな心配があります。年金、大丈夫なんだろうか。私の家族が長期療養になったときに、日本の医療は大丈夫か。今、国民の医療費は既に三十一兆円を超えました。日本が二〇二五年、高齢化社会のピークを迎えたときの国民医療費は、何と八十一兆円です。ことしの平成十四年度の予算が八十一兆円ですから、どれだけこの負担が大きくなるかということは御推察をいただけると思います。
 私たちは、政治が今責任を持って国民の皆さんに、将来のこの国の社会保障の給付と負担をどのように世代間で分担していくかという、まさにグランドデザインをしっかりと示さなければならないときも来ていると思います。
 しかし、この平成十四年度の予算でも、小泉総理が、三十兆枠を何とか守ってもらいたい、もうこれ以上次の世代、三十代、二十代の皆さんにツケを回してほしくないと言って、皆さんの御努力で予算が組まれました。それでも、ことしの暮れには六百九十三兆円もの国と地方の長期債務になるわけであります。我々は、将来に責任を持った決断をしていかなければならないと思います。
 国の外では、十三億という大きな世界のマーケットが隣にあります。私は、昨年の九月、中国に行きました。中国は文字どおり、多くの皆さんが感じられているように、世界の工場になったという実感を受けて帰ってまいりました。私たちは、二十一世紀、再び科学技術創造立国、できればもう一つ、環境先進国日本、新たなチャレンジをしなければならないときを迎えていると思います。
 きょうは、多くのことを御質問したいんですけれども、もう限られた時間です。そして、きょうは補正予算の審議でもありますので、それにできるだけ関連をして私は数点伺ってまいりたいと思います。
 まず、現在の我が国の経済の現状について総理の御認識を伺いたいと思います。
 失業率は五・五%、そして倒産は非常に高い水準で今推移をしています。日本経済は決していい状況にはないと思います。この内閣で改革をする、改革の向こうに、私たちは安心できる社会が来る、また、活気のある日本の経済を取り戻してくれるであろう。そしてまた、それぞれの民間の皆さんも、今自分たちが、心の中にむしろ改革がある、そういうことを理解し始めていただいているのではないかというふうに思います。
 私は、昨年のちょうど九月の十一日、アメリカのテロ事件のときにシカゴに滞在していました。日本は貿易立国です。我が国の貿易の三〇%をアメリカに私たちは輸出しています。アメリカの経済は日本を直撃します。しかし幸いなことに、アメリカの最近の経済を見ますと、市場が想像したよりもアメリカ経済は早く回復するのではないかという声もございます。
 これらのことを含めて、今総理がどのような経済認識、現状認識を持っているかをまずお伺いしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 経済の情勢は依然として厳しい状況が続いていると思います。失業者数、失業率も高いですし、株価も下がっております。また、円安の動きも注視しなくてはならない。いずれにしても、経済の状況は今後とも当分厳しい状態が続いていくと見なきゃならない。
 そういう中にありましても、新たな産業に向かっていこうという動きも見られる。こういう新しい時代に向けて、今までの手法が通ずるとも思えないということで、できるだけ新しい時代に即応した体制をとるということから構造改革に着手しているわけでございますが、国民の貴重な税金が生産的な方向に向かうように、またむだ遣いを省くような方向に持っていく必要もあるし、民間企業も、市場に合うような、また国民のいろいろな要求に見合うような商品、サービスをどう提供していくかということに必死に取り組んでおります。
 そういうような状況、環境整備に政治の面でどのような役割を果たすことができるか、これに取り組んでおりまして、現在の停滞状況、いろいろ不良債権の問題もございます。また、今後のいろいろな情勢に合わせまして、危機に陥った場合にどういう対応をとるかということも準備しておかなきゃならない。いろいろ難しい、財政政策におきましても金融政策においても、とる政策は限られておりますけれども、そういう中でも少しでも国民に意欲を持って新しい時代に立ち向かっていけるような環境整備をしていくということが政治の大きな役割ではないかと思っております。
伊藤(公)委員 ありがとうございました。
 そこで、今回の第二次補正予算二兆五千億、これは、今日我が国がいわゆるデフレスパイラルの中にあって、これを防ぐために編成をされたというふうに私は理解をしているわけでありますが、その中で、都市機能の一層の高度化、国際化、あるいは環境に配慮した活力ある地域社会の実現、科学技術、教育、ITの推進による成長フロンティアの拡大、少子高齢化への対応、こういった四つの政策課題が掲げられております。
 私は、この方向は非常にいい選択をされたと思いますが、政府としてはこの課題に、どのように四つに絞られたのか、そして、この二兆五千億円の第二次補正が執行されたときにどのような経済の活性化の効果があるのかということを伺いたいと思います。
 特にその中で、都市機能の一層の高度化と国際化、これは小泉内閣の七つの大きなプロジェクトの中の一つに、都市機能、都市再生本部が設けられて総理自身が本部長になられました。
 私は、世界を旅行するときに、日本の都市はもっと美しい景観やあるいは町並みというものを大切にしていくことが大事ではないかということをいつも痛感します。空を見上げると夢があるという歌がありますけれども、日本は、東京で空を見上げるとクモの巣のような電柱です。決してこれはいい町並みではないと私は思います。
 東京は、今、車で歩きますと平均時速は十七キロです。私は、けさは町田市から電車で来ました。電車でも一時間二十分ぐらいかかります。車ですと、一時間半でも予算委員会は危ないんです。一時間半で往復すると三時間、飛行機に乗るとグアム島の先まで行きます。東京に住んでいます私たちは海外旅行を毎日しているようなものです。通勤電車は超満員。国土交通大臣は多分交通渋滞がちょっとあったのかもしれませんが。
 あるいは東京は、例えば塩川財務大臣の地元の大阪の千里ニュータウン、あるいは千葉ニュータウン、私たちの多摩ニュータウン、三十年、四十年前、国が勤労者の皆さんに住宅を提供しました。しかし、皆さん、三十年前、五十代、働き盛りだった人たちは、あの住宅に今七十、八十で住んでいるのです。そして、そのほとんどが五階建てでエレベーターがありません。車いすの方もいます。四階、五階で、自分の力でエレベーターがあったら行く。けれども、エレベーターがなかったら自力で町に出ることはできません。国会はバリアフリー法案を通しましたけれども、国が提供している公団です。
 あるいは、今東京だけではありませんが、大都市に九百九十九カ所、通勤どきに四十分間閉まっているあかずの踏切があります。そして東京では六十分間閉まっているあかずの踏切が数カ所あります。
 ことしはワールドサッカーがあって、五百万人を超える人たちが日本に来られると言われています。しかし、それでも今その国際空港、成田の国際空港は四千メートル級の滑走路一本。しかも、二十三時以降は一切離発着できません。今、ソウルも北京も上海も、そしてアメリカ、ヨーロッパのほとんどの国の国際空港は、二十四時間いつでも離発着できます。最近の数字をもうきょうは時間がありませんから申し上げられませんけれども、国際会議もソウルよりも東京は少なくなりました。あるいは観光客も、シンガポールや近隣のアジアよりも日本は観光客が少ないです。もちろん国際空港だけの問題ではない。やはり東京が魅力がある、日本の都市が魅力ある町にならなきゃならないというふうに思います。
 これらのことを含めて、今度の補正予算でもその方向に私はシフトされていると思いますが、この問題についてどう取り組んでいかれるか、伺いたいと思います。
扇国務大臣 きょう、今お話がございましたように、伊藤先生、ここまで一時間半かかったというお話でございますけれども、御存じのとおり、東京でございますから、先生、選挙区から、実感していらっしゃるんだと思いますけれども、東京の町に、道路に三十キロというスピードリミットの表示がしてございます。けれども、今おっしゃったように、十七・八キロしか出せません。三十キロなんてとても走れないんですね。
 そうしますと、一人が一年間に損失している、その渋滞時間に巻き込まれているというのは、一人で四十二時間なんです。東京が三十キロで走れるようになりますと、四兆九千億円の損失をしているという経済効果もあります。踏切の渋滞等々で四十二時間という、その四十二時間を一年間の国民のお金に換算しますと十二兆円になります。
 そういうことを何としても解消しようということで、小泉内閣で、総理が本部長で、今おっしゃったような都市再生本部をつくり、そして全国の三万八千カ所の踏切の渋滞を解消しよう。そして、国際化に資しようということで、今回も、夜間離発着は羽田から少なかったんですけれども、四月一日からこれを週二十便にしよう。そして、ワールドサッカーのときには昼間もチャーター便を羽田に着けよう。そういうことで、国際化に着々と進んでいこうという第一歩が今の小泉内閣のこの予算だというふうに感じております。
 まだまだたくさんございますけれども、委員もおっしゃった踏切の立体化、あるいは、ヒートアイランド現象を解消するという、建築するときにビルの上には緑をしなさいとか、そういう高さ制限、容積率の緩和等々、都市の再生のためにあらゆる手段を尽くしていきたいと国土交通省は考えております。
伊藤(公)委員 しっかりやっていただきたいと思います。
 そこで、財務大臣に一つ伺っておきたいことがございます。
 最近といっても、先日の十八日に内閣府から、内閣府の試算という資料が公表されました。これは、日本の国の歳出削減などをして、そして試算をしたものであります。
 これまで財務省が出されてきた財政の中期展望というのは、現状の中で将来を展望したらどうなるかということを示されたのが財政の中期展望でありまして、いわゆるプライマリーバランスを半減するにはどうするのか、歳出削減を前提に試算をされているものだと思いますが、私は、これからの本予算の中で、ぜひ財務省には、この財政の中期展望をこれまでどおり出していただきたい。
 と申しますのは、内閣府のこの試算は、先ほどから財政の問題がございます、そういうものを、これからいろいろ削減をしたらどういうことになるかという試算ですから、私は、これは両方とも非常に参考になると思うんですね。
 財務大臣としては、本予算の中でこれを出してくださるのか、そして、この両方をどのように位置づけをされて新しい政策に生かされていくのかを伺っておきたいと思います。
塩川国務大臣 先日、一月十八日でございますか、内閣府の方から展望を公表いたしました。これは、内閣府といたしましては、現在の制度並びに政策を前提として、これからの中期展望の見通しを計数化したものでございます。これはこれなりに、私たちは一つの方向を示したものと思っております。
 従来から、財務省、旧大蔵省でございますが、出しておりました予算時におきますところの中期展望というものは、これは、過去の実績、そして現に概算要求等で出てまいりました要求を一つ一つ積み上げまして予算の見通しを立てたというものでございまして、相似たものではございますけれども、視点、立っておるところがちょっと違うということがございます。けれども、見通しにつきましては、それぞれ同一の方向を見ておることは当然でございます。
 したがいまして、財務省の展望につきまして、国会の方からの予算審議上の必要があると御要望がございますならば、予算審議をしていただきますときに提出するという用意はいたしておりますので、御了承いただきたいと思います。
伊藤(公)委員 ぜひ提出をしていただいて、私たちもその両方をよく参考にさせていただきたいと思います。
 そこで、柳澤金融担当大臣にお伺いをさせていただきたいと思います。
 この我が国の経済を、いずれにしても本格的な回復軌道に乗せるというためには、何といっても私は金融だと思います。
 今後の不良債権の処理などについて、どのように対応していくのか。特にまた四月のペイオフですね。これは、かなり皆さんが、自分の個人の預金をどうするかということについては理解をされつつあると思いますが、しかし、それにしても、四月に向かっていろいろな不安がございます。
 やはり金融の不安というのは多くの問題を抱えていると思いますので、私は改めて、金融大臣がどのようにこれに対応するかを伺いたいと思いますが、同時に、昨年の九月、私たちは財務金融委員会で、ニューヨーク、ワシントン、オタワの金融調査に行ってまいりました。結論だけ申し上げます。アメリカの金融は非常に調査能力がある。だから、若い人たちがベンチャーで新しい事業を起こすというときには無担保でお金を貸せます。そして、事業は成功する場合、成功しない場合があります。もし失敗をしても、例えばアメリカの裁判では経営者の小さな家だけは残す。つまり、金融やアメリカの社会全体の中に、再挑戦ができるという、あるいはチャレンジしやすいという、金融や社会の底辺にそういうものがあるということを私は非常に感じました。
 しかし、今、私たちのこの国は、民間金融機関にお金を借りて新しい事業をやろうといっても、まず担保です、個人保証です。そして、個人保証で万一事業に失敗をしたら、もう本当に、夜逃げをするか首をくくるか、二度と立ち上がれない。私は、日本の金融が早く、お金を借りる人もお金を貸せる銀行も、ともにリスクを共有しながら、お互いに励まし合いながら、新しい事業が、産業がこの国の中で創出されるという状況をつくらなければならないと思います。
 そこで、政府金融機関、今、中小企業、商工中金、国民金融公庫など、九つの金融機関があります。私は、将来的にこれを統廃合していくということは賛成です。でも、政府系金融機関の本来の役割は、民間金融機関を補完するという仕事です。これから恐らく一、二年、あるいは二、三年かかるかもしれません。日本の金融が本当に立ち直る、その間は、私は、政府系金融機関が新しい産業に対して支援をしなければ日本の新産業の創出はなかなか難しい。けれども、だからといって、民間金融機関の改革がおくれてもなりません。
 これらのことを含めて、金融担当大臣としての現在のお考えを伺っておきたいと思います。
柳澤国務大臣 日本の経済の再生を考える場合に、金融の再生が極めて基礎的に重要なファクターだというお話は、私もそのとおりだと自覚をいたしております。
 金融、不良債権をどのように処理するかということにつきましては、昨年、小泉内閣が発足して以来、たびたびの文書やあるいは総理等の演説でもございますように、基本的に、この三年以内に不良債権問題を正常化するということを申し上げています。
 不良債権問題の解決といいますと、不良債権がこの世の中から、金融機関の中からなくなってしまうというような誤解も生じがちですが、不良債権というのは、これはもう金融機関が融資をしている限り、完全になくなるということはありません。要するに、不良債権を、貸出先債権に対する比率において正常なレベルに引き下げていくということでございまして、それをねらって措置をしていくということでございます。
 そのための方法は、オフバランス化、そしてその前段階として、不良債権の認識というか評価、これを厳格に適切に行う、こういうことでございまして、その方向に向けて私どもとしては不良債権の処理を進めてまいりたい、このように思います。
 四月からのペイオフは、私ども予定どおりこれを実施するということをたびたび申しておるわけでございますけれども、国民に、こうした制度のもとに立つというのは、事実上は、昔もそうだったのですが、自覚的にこういう新しい制度のもとに立つというのは、いわば初体験ということで何かと不安もあるという御指摘もそのとおりかと思います。私どもとしては、このペイオフというものがどういうものかという正確な知識を持っていただくことが大事だ、これが一番、不安をいたずらに心の中に沸き立たせない、防ぐのに一番のいい方法だと思いまして、熱心にPRをさせていただいております。
 ペイオフからうまく回避するという方法は幾つもあるわけでございまして、一つ、世論調査などをしますと一番多いのは、金融機関を分散するというようなことでございまして、どの金融機関に対する預金も保険の範囲内の一千万円以下にするというようなことをしていただくこともございますし、当面、この先一年間は流動性預金、普通の預金ですね、これについては全額保護が引き続いて保証されていますから、そちらの方に移して、とりあえずどうするかを考えていただく。こういうような正確な知識に基づくいろいろな動きというのは我々は健全な動きだと思っておりまして、その意味でも、正確な知識を得ていただくべくPRを一生懸命やっている。
 それから最後に、中小企業の問題が出ましたけれども、私ども、そのとおりだと思います。特に中小企業の場合には、やはりまだまだ間接金融に頼る部分があると思いますので、これを今言ったように敗者復活等が可能なように、本当に銀行の審査能力をもっと向上させて、いたずらにリスクを、担保によって確保していくというような金融でない方式を早く金融機関に身につけていただくように促してまいりたい、このように考えております。
伊藤(公)委員 税制改革についても総理にお伺いをしたいと思いましたけれども、時間が参りましたので、またいずれかの予算委員会で伺いたいと思います。
 いずれにしても、今は少しは我慢をしてもあしたがよくなれば、そういう思いで、小泉総理を初め内閣のそれぞれの閣僚の皆さん、しっかり頑張っていただきたいことをお願いして、私の質問を終わります。
津島委員長 この際、北村直人君から関連質疑の申し出があります。伊藤君の持ち時間の範囲内でこれを許します。北村直人君。
北村(直)委員 自由民主党の北村直人でございます。おはようございます。
 それでは、私は、まず政治倫理について総理にお考えをお聞かせいただきたい、こう思います。
 総理、本当に情けない話でありますけれども、最近も、政治家の元秘書による公共事業発注をめぐる口きき疑惑や、あるいは私設秘書の脱税疑惑が報道されました。現在、その捜査やあるいは調査中であるというふうに思っておりますが、当局の徹底した捜査、調査をいただいて、早期に事件の全貌を解明する必要がある、このように私は思っております。
 本当に、お金もうけのために政治あるいは政治家を利用する、あるいは利用されてしまう事件が過去にも幾つか起きてまいりました。そのたびに国民から非常に厳しい批判を受けて、政治不信を加速させてしまった。我々は、そうした国民の批判を本当に謙虚に受けとめて、襟を正しながら政治不信の防止に努めてきた。そういう努力をしてまいりましたけれども、一昨年、あっせん利得処罰法を我々は成立させた、これによって、政治家や国会議員の公設秘書が官庁へ口ききをして報酬を受けた場合、職務権限に関係なく処罰されるようになりましたけれども、しかし、その後もまだ政治あるいは政治家を利用した、あるいは利用された、そういった事件が起きているということは、本当に残念で情けない気持ちであります。
 今回も、元秘書等が、政治力あるいは政治家を背景に自治体などに工事発注を働きかけていた疑いが強まっておりまして、公共事業に絡む疑惑が依然として存在するという実態が明らかになった。こうした不祥事に対して、我が党、そして与党は、政治倫理の確立に関する協議会を設置して今、事件へ対応しておりますけれども、総理は、政治と金の問題、あるいは政治家と秘書の関係についてどう思われるか、さらに、こうした不祥事が二度と起こらないようにするにはどうしたらいいか、どうお思いでしょうか。
小泉内閣総理大臣 このような政治と金にまつわる疑惑が頻繁に出てきて政治不信を助長しているというのは、極めて残念なことだと思っております。
 その都度対策を講じてきたにもかかわらず出てくる。いわば政治改革というのは今まで何だったのか。今まで、選挙制に問題がある、あるいは政治資金規正法に問題があるんじゃないか、あるいはあっせんに問題があるんじゃないか、その都度、みんな法案、対策を打ってきたんですね。選挙制度を変えた、政治資金規正法をより厳しくした、あっせん利得罪を設けた、にもかかわらずまたこういう問題が起こっている。
 こういう状況に対して、やはり根本的には、議員個人個人の倫理観といいますか正義感といいますか、モラルの問題にも起因するところが多いと思います。と同時に、今言ったような抜け道を考える方がいますから、法に触れなければいいんだろうと。しかし、法に触れなくてもこれは適切ではないなという面も、常識で判断できる場合もあると思います。
 そういう中で、これからも、政治として、政党として、また政治家としてあるべき政治活動のための資金はどのように調達すべきかという点と、今言われているような、公共事業に絡むような口ききによるあっせんによっていわゆる金を得て不正事件を起こすという問題を、今後、与党も野党もいろいろ対策を練っているところだと思いますので、今までの対策では実効が上がらなかった、どうすれば実効が上がってくるかという問題について、改めて真摯に検討して、少しでも前進できるような対策を講ずる必要があると私は思っております。
北村(直)委員 私もそう思っております。国会議員一人一人が本当に倫理観を持ってこれに対処していかなければ、国民の皆さんの政治に対する不信感がますます加速してしまう、ぜひ与野党ともにこの問題に真剣に取り組んでいかなければならない、こう思っております。
 さて、この問題と同時に、私はやはり自治労の使途不明金の問題についても触れておかなければならない、こう思っております。
 昨年の十一月十二日の当予算委員会において、我が党の長勢委員からも質問をいたしております。自治労の使途不明金について、その後の状況についてお聞かせをいただきたい。報道にもあるこれらの自治労関係の事件に関する概要と、検察当局のこれまでの捜査状況についてお答えをいただきたい、このように思います。
古田政府参考人 お尋ねの自治労に関連する事件といたしましては、東京地方検察庁におきまして、これまでに、業務上横領、恐喝及び法人税法違反事件の捜査処理を行っております。
 幾つかに分かれておりますが、第一に、平成十三年十月十日、自治労関連会社である株式会社ユー・ビー・シーにおける合計約三千七百八十四万円の業務上横領の被疑事実により同社の代表取締役専務長谷川陽光ら三名を逮捕し、同月三十一日、同罪により東京地方裁判所に公判請求しております。
 第二に、同月十一日、自治労関連会社である株式会社ユー・ビー・シー従業員らに対する合計約四千八百六十三万円の恐喝の被疑事実により石河英夫を逮捕し、同月三十一日、同罪により東京地方裁判所に公判請求しております。
 第三に、同月二十二日及び三十一日、自治労関連会社であります株式会社ユー・ビー・シーにおける合計四千二百二十三万円の業務上横領の被疑事実により同社の代表取締役専務長谷川陽光ら六名を逮捕し、同年十一月、同罪により東京地方裁判所に公判請求しております。
 第四に、同年の十二月十二日、自治労及び後藤森重元自治労中央執行委員長兼事業本部長、開発哲夫元自治労事業本部事務局長を、平成九年三月期及び十年三月期の二事業年度におきます合計約二億二千四百万円の法人税の逋脱により東京地方裁判所に公判請求しております。
 以上でございます。
北村(直)委員 今の報告を聞いてもわかるように、自治労の元幹部の方々が組合員の組合費を使って不正を行っているという疑惑はぬぐい去れない、私はそう思っております。これは検察当局の厳正な対処をやはり期待していかなければならない、このように思っておりますので、法務大臣もしっかりとやっていただきたい。答弁は、時間がございませんのでいただけませんけれども、ぜひしっかりとした御指導をよろしくお願いいたします。
 さて、最後になりますが、やはり一応BSEのこと、牛海綿状脳症のことについても触れておかなければならない、このように思います。
 農林水産省、厚生労働省も本当に、現場の職員の方々、獣医師の方々を含めて、もう寝る暇もないぐらい、倒れてしまうんではないかなというぐらい一生懸命にやってくれております。一生懸命にやっていただいて、いろいろな対策は打っておりますが、その結果、消費者の信頼回復とそして消費動向がいまだ回復していない、こういう状況にありまして、そのところを、やはり農林水産大臣そして厚生労働大臣含めて、なぜ消費者の方々の消費が回復しないのか、そしてまた消費者の方々の行政に対する不信感がぬぐい去れないのか。せっかくこんなに一生懸命やっていただいて、税を、一千七百億になんなんとするお金を使いながらも、その効果が国民の方々に評価されないということになれば、本当に、現場で働いている、現場で一生懸命やっている方々が無になされてしまう、私はそう思うところでございます。
 今後はそういった方々の意を無にすることなく、やはり消費者の方々に目線を向けて、同じ高さで、そして、消費者の消費の回復にどう農水省が取り組んでいくか、あるいは厚生労働省がどう取り組んでいくか、これが私は最重点課題だ、このように思っておりますので、きょうまでも両大臣含めて役所の皆さん方はもう御努力いただいておりますが、今以上のまた御努力をいただいて、このBSE、牛海綿状脳症の解決に向けて努力をいただくことを重ねてお願いをして、御答弁は要りません、重ねてお願いを申し上げて、私の質問を終わらさせていただきます。
 ありがとうございました。
津島委員長 これにて伊藤君、北村君の質疑は終了いたしました。
 次に、井上義久君。
井上(義)委員 公明党の井上義久でございます。
 私ども公明党は、政治の安定と改革を目指して連立政権に参加をいたしましてから二年四カ月になるわけでございます。この間、国民の改革に対する期待、大変高いものがございます。それが私は小泉内閣の高い支持率を支えている要因だ、このように認識しているわけでございます。そういう意味で、私どもは、小泉内閣をしっかり支えて、連立内閣の一翼を担って、ことしこそはこの改革の実を上げる、改革の結果を出す年にしなければいけない、こういうふうに決意を新たにしているところでございます。この改革には痛みを伴う、小泉総理はそうよくおっしゃるわけでございますけれども、であればこそ、やはり政治に対する信頼というものがなければ、この改革は断行できない。
 ところが、最近、その政治の信頼を失うような政治と金をめぐる疑惑が相次いで発覚しているわけでございまして、総理御承知のように、自民党の加藤紘一元幹事長の私設秘書による脱税の疑惑、あるいは鹿野民主党副代表の元秘書による競売入札妨害事件、いわゆる公共事業を食い物にして貴重な血税が個人的に流用されたり、あるいはその一部が政治資金に回っているのではないか、国民はこういう疑惑を持っているわけでございまして、私は大変情けない、残念な思いでいっぱいでございます。
 今大変苦しい中で、国民は懸命になって汗を流して税金を納めている。その血税を食い物にするような行為というのは、断じてこれは許せないわけでございまして、本当に一体いつになったら政治の腐敗はなくなるのか、国民の怒りはこれまでにない厳しいものがある、私はこのように思うわけでございます。
 小泉総理、さきの自民党大会で、いかなるいい政策でも、政治、政党、政治家への信頼を失えば遂行できない、こういうふうにおっしゃっているわけでございまして、私は全く同感でございます。政治倫理の確立は、これはもう議会政治の根幹でございますから、今回の相次ぐ疑惑、私は、政治の責任として徹底的に事実解明をする、そして再発防止策を徹底してやる、こういうふうにしなければいけないと決意を新たにしているわけでございますが、改めて総理のこの件についての認識をお伺いしたい、こう思います。
小泉内閣総理大臣 この政治腐敗に対する国民の不信感といいますか憤りというのは大変大きいと受けとめております。これからいろいろな諸施策を進めていく上においても、あるいは改革に向けて邁進するためにも、まず政治に対する信頼をどう確立していくかということは、政治家にとっても政党にとっても大変大きな仕事だと思っております。
 いわゆる政治の構造改革、これはこの十数年の間に与野党懸命に取り組んできたと思います。中選挙区から小選挙区へ移行した、これは政治の大きな構造改革だということで、この十数年間いろいろと論議を重ねてきたわけでございますけれども、このような政治と金に絡む疑惑が後を絶たない。
 今までの改革の過程と、そしてその法に照らした趣旨に合致しない行動をとることによって、こういう不祥事なり法に触れるような、政党、政治関係者の周辺によって問題がたびたび出てきているということについても、この際真剣に受けとめまして、この政治に対する信頼感の危機というものを逆にチャンスと受けとめて、より一層厳しい政治腐敗防止法のようなものを各党真剣に考える必要があるのではないかと。抜け道を考えれば切りがないという議論もありますけれども、抜け道を考えればこれは結局失脚するなというような措置をとる必要があるのではないか。
 公共事業に絡む金絡みの疑惑、発注側、受注側、それぞれいろいろな点をよく点検しまして、また、政党、政治家あるいは秘書、そういう問題もくるめて、私は、今与党もこれから本格的にこの問題に取り組むと言っていますので、野党も恐らくこういう問題についてはそれなりの対策を提言してくると思います。お互いよく検討しまして、一歩でも二歩でも改革の実が上がるような実行策がとれるように努力していきたいと思います。
井上(義)委員 秘書がやったとか元秘書だったとかというようなことがあるわけですけれども、私はそれでは済まされない、こう思うわけでございます。
 脱税疑惑が持たれております加藤自民党元幹事長の事務所代表は、加藤氏が代表となっております資金管理団体、あるいはまた自民党支部の会計責任者でもあるわけでございます。事実、この代表が代表になってから集めた政治資金、これは資金管理団体の分だけでございますけれども、当初の二億円程度がここ数年は五億円前後に急増しているんですね。
 国民は、集めた政治資金、これは、この脱税疑惑が持たれていると同じ趣旨のお金、すなわち公共事業の口ききの見返りとして得た金、それと同趣旨のお金が政治資金にも流れ込んでいるんじゃないか、こういう疑惑を持っているわけでございますし、また、鹿野氏の元秘書も長年にわたって鹿野副代表の秘書を務めていたわけでございまして、やはり人脈が今回の事件の背景になっているんじゃないか、こういうふうに指摘もされているわけでございます。
 政治倫理綱領、私どもの政治倫理を定めた綱領でございますけれども、政治倫理綱領には「政治倫理に反する事実があるとの疑惑をもたれた場合にはみずから真摯な態度をもつて疑惑を解明し、その責任を明らかにするよう努めなければならない。」というふうにあるわけですね。まずみずから疑惑を明らかにして、責任を明らかにしなさい、こういうふうに政治倫理綱領にはうたっているわけでございまして、私は、国会議員として、この綱領に従ってみずからの疑惑解明に努めて責任を明らかにするということがまずやらなければいけないことじゃないか、こう思うわけでございます。
 特に、総理、自民党総裁でもございますから、加藤元幹事長に対してそういう助言をきちっとするべきじゃないか、こう思うわけでございますけれども、総理の見解はいかがでございましょうか。
小泉内閣総理大臣 だれであれ、疑惑を晴らす責任はあるというのは当たり前なんですね。そういう綱領をつくりながらどうして機能しなかったのか、私も不思議でならない。
 政治倫理審査会をもっと活用すればいいと思うんです。大臣、閣僚なんというのは、しょっちゅう証人喚問されているようなものですよ、疑惑があれば。閣僚にならなければ疑惑を晴らさなくてもいいという理由はないと思います。これをもっと活用すべきだったと思います。積極的に、議員が疑惑を持たれたら率先して出てくる、当たり前のことがやられていないということが問題だと思っています。
井上(義)委員 その次に、やはり再発防止ということについて、制度改善、先ほど、抜け道をつくる、切りがないんじゃないか、こういう話がございましたけれども、総理おっしゃるように、最後は、余り抜け道ばかり考えていると自分が失脚しちゃうよ、こういう制度をきちっとつくらなけきゃいけない、こう思うわけでございます。
 昨年、あっせん利得処罰法、私ども制定いたしましたけれども、今回の事件を通じて私設秘書というものの関与が明らかになったわけでございます。ある意味で抜け道だったわけでございますから、今回の事件を通して、やはりあっせん利得処罰法の適用範囲というものを秘書とか親族とか、そこにきちっと拡大する、そして、こういうあっせん利得というものができないようにする、こういう法改正が必要だ、こう思うわけでございますけれども、総理の御見解はいかがでございましょうか。
小泉内閣総理大臣 その点につきましても、いろいろな活動というものが政治家によって全部違うと思うんですね。ですから、私設秘書といっても、今、定義が明らかでない。それから、家族も、独立の事業、たとえ親族であっても夫婦であっても、今の時代は、独立の個人として、一族が政治家をやっていると政治家に付随している仕事をやっている人もいるだろうし、全く独立の人格を持って独立の事業をやっている方もいるわけです。そういう点をどうやって整理するか。
 議員個人によっても、与党、野党あるいは与党同士、野党同士でも、秘書の数、職員の数、全然違うと思いますよ。政党のよって立つ基盤、政治家の個性、政治家の支援者、それから後援会、秘書の肩書がなくたって秘書よりもはるかに力のある支援者もいるわけです。
 そういう点も含めて、この線引きについてもよく相談していただきたい。どういう点に法の網をかければこの政治腐敗の防止に寄与するのかという点を含めて、またよく検討する必要があると思います。
井上(義)委員 確かに秘書の定義、難しいということはよくわかりますけれども、公職選挙法では連座制の対象として秘書の定義を明確にしておりまして、「候補者等に使用される者で当該公職の候補者等の政治活動を補佐するもの」、こういうふうに公職選挙法では定義を明確にしているので、これは一つの参考になるのじゃないかということで、ぜひこれは実現をしなければいけない、こんなふうに思っております。
 それと、やはりこういう口ききが成り立つような背景、すなわち公共工事の発注の透明化というものをきちっとしていかないとこういうことはなくならない、こう思うわけでございまして、そういう意味では、昨年、公共工事契約適正化法が成立をいたしました。これを厳正に運用するということがまず一つは大事じゃないか、こう思うわけでございます。
 それと最近、国とか地方自治体の職員がいわゆる発注業者を事前に割り振るというような、いわゆる談合に手をかす官製談合ということが多発しておりまして、この五年間で公正取引委員会が摘発されたのは十件に上るわけでございます。談合した方は独禁法の適用を受けて厳しい制裁が加えられるのですけれども、それを示唆した方の公務員はそれの適用にならないという法的な問題がありまして、私は、そういう意味で、いわゆる官製談合防止法、これを早期に制定すべきじゃないか、こう思うわけでございます。
 この点については、与党三党のプロジェクトでもほぼ内容については合意をしておりまして、あとは自民党の党内手続を待つだけということでございますから、ぜひ総理、指導力を発揮して、この官製談合防止法をこの国会で成立させるべきだ、こう思いますが、総理、いかがでしょう。
小泉内閣総理大臣 今協議いただいておりますので、その官製談合の件につきましてもよく検討しなきゃならないと思っております。
井上(義)委員 ぜひよろしくお願いしたい、こう思います。
 次に、経済運営につきまして総理の御所見を承りたい、こう思います。
 日本経済、想定した以上に非常に厳しい状況に直面しております。特に、不良債権処理が進む中で、三月期決算に向かうこの二、三月が重要な局面になる、このように予想されているわけでございます。また、デフレの重圧も非常に深刻で、デフレの進行の中での不良債権処理は困難というアメリカ政府の指摘を待つまでもなく、極めて憂慮する事態に現在なっているわけでございます。
 当面、今審議中の十三年度の第二次補正予算、それからまた十四年度予算の速やかな成立を図って、切れ目ない財政運営が必要だと思いますし、加えて金融政策あるいは土地の流動化、有効利用対策、規制改革とかあるいは産業競争力の強化、新産業の育成、こういった総合的な経済対策を着実に実行することが私は重要だ、こう思っておるわけでございます。
 ただ、景気状況がさらに悪化してデフレスパイラルの危険性が高まる、こういう事態になったときは、私は、思い切った財政出動も含めた大胆な対策をとる必要があるのじゃないか、こう思うわけでございまして、当面の経済運営に関する総理の心づもりというものをまずお伺いしたい、こう思います。
小泉内閣総理大臣 一次補正を提出した段階においては、二次補正は考えておりませんと答弁いたしました。しかし、二次補正を組んで今御審議いただいている。経済の情勢に、変化によっては大胆かつ柔軟に対応しなきゃならないということを実践しているわけですから、非常に難しい事態に対しましてどう必要な対策を打つかというのは、これからもよく考えていかなきゃならないと思います。
 今回、改革を進めようというときに、デフレスパイラルに陥らないような対策も打つ必要がある、あるいは雇用対策も打つ必要がある、経済活性化に即効性のある事業も進めなきゃならないということから第二次補正を組んだわけでありますが、厳しい財政状況、経済状況のもとで、打つ手は限られていると思います。そういう限界を知りつつも、あるべき改革に向けては着実に進んでいかなきゃならない、この改革の手を緩めることはできない、既定方針どおり、今まで打ってきた方向というのは曲げることがあってはならないと思っております。
 そういう中にあって、景気が厳しくなれば失業者も出てくるでしょう。企業の倒産も起こってくるでしょう。同時に今、そういう中でも新しい産業に向かう人もふえてきております。事実、建設業の失業者が出る中で、サービス産業に従事する方がふえてきている兆候も見られます。こういう雇用の問題につきましても、各方面に目配りをして、ミスマッチ解消等、必要な手を打っていく必要があると思っております。
井上(義)委員 昨年の十二月六日に中堅のゼネコンが破綻をしました。そのときに小泉総理は、内閣記者会のインタビューに答えて、構造改革が順調に進んでいるあらわれではないかというふうにコメントされたと新聞報道されておりました。
 私もちょっと気になっていたんですけれども、十二月九日付の一般紙の「声」の欄にこういう声があったんですね。ちょっと一部読ませていただきますけれども、「確かに金融機関の不良債権処理が進むでしょう。しかし、下請けや建材納入者の売掛金の焦げ付き、七千人を超す従業員の失業や賃金カットの不安が私の頭に浮かびます。首相のいう痛みを伴う構造改革とは、こういうものかと改めて実感すると同時に、その言葉に非情さを感じました。」ちょっと中略しますけれども、「「最大多数の最大幸福」を追い求め、客観的で冷静であることも政治家に欠かせない要素ですが、人の痛みを我が身とし、優しい言葉をかけることが人のあり方でしょう。内閣挙げて、再雇用や転職などの労務対策、関連企業への財政支援に全力を尽くして下さい。」
 こういう声でございまして、私も同感でございますし、その後、この対策に懸命になって内閣として取り組んでいただいていることについては感謝していますけれども、私は、この「声」にもあるように、大局的な観点から国家を運営する、あるいは国民をリードする、これは政治家の使命であることに異論はございません。しかしながら、やはり国民の痛みを共有する、あるいは困難に直面している国民と同苦するということは、国民から負託を受けた政治家の基本的な資質でなければならない、私はこう思うわけでございまして、この点について総理の御感想をちょっと承りたいと思います。
小泉内閣総理大臣 企業においても、倒産しないにこしたことはないんですけれども、民間企業である限り、いかなる企業も、時代に合わなければ倒産する場合も出てくると思います。そういう中にあって、もし心ならずも失業せざるを得なかったということに対してどういう雇用対策を打つか、失業対策を打つかというのは、これまた政治の役割だと思っております。
 そういうことから、昨年、臨時国会で雇用対策といういろいろな施策を実施してきたわけでありますので、人の受けとめ方によって冷たいなとか温かいなというのはそれぞれあると思いますけれども、私は、いかなる企業も、倒産しないように努力することによってまた発展の可能性が出てくる。倒産しないためにはどうやって消費者に喜ばれる商品、サービスを提供するかということによって活性化が生まれる。逆に、絶対倒産しないんだ、何をやっても倒産しないんだったら、これは経済が活性化しません。やはり努力する者が報われる、そういう社会をつくるのも必要だ。
 だから私は、これからも、新しい時代に合うような産業に向けて意欲をそがないような体制と同時に、失業せざるを得ない、職を失わなきゃならないという方に対する対策と、新しい仕事を見つけるために意欲を持って立ち向かっていけるような対策もあわせて打っていく必要があるのではないか。そういうことによって新しい時代に対応できるような企業が生まれ、人々が頑張るような体制ができることによって経済が活性化していくのではないか。やはり一番大事なのは、状況を見きわめながら、企業家も個人も新しい時代に立ち向かっていこうという意欲を持ってもらうような、努力すれば必ず報われるんだという社会を実現していくことが大事ではないかと思っております。
井上(義)委員 私は、政治家のマインドということが大事だという意味でお話し申し上げたわけでございます。
 実は私、学生時代にセツルメントという活動をやっていました。企業が倒産して失業した、あるいは病気になった、そのために働けない、大変苦しい生活を余儀なくされている、そういう人にもう一回立ち上がってもらいたい、自立してもらいたい、それを手助けする、そういう活動をずっとやっていたわけですけれども、私はそういう家庭を見ていて一番かわいそうだなと思ったのは、子供なんですね。親が自立の意欲を失ったときの子供の悲惨さというものをずっと見てきて、やはり再挑戦できる、そういうセーフティーネットがしっかりした社会、懐の深い社会というものをつくらなければいけないというふうに私は考えて、この仕事をこれまでずっとさせてもらってきました。その意味で、私は特に雇用の問題は極めて重要だ、こう思っているわけでございます。
 十一月の速報値で完全失業率が五・五%、完全失業者が三百五十万、連続八カ月の増加で前年同月に比べると四十一万人増加している。極めて深刻な状況にあるわけでございます。
 昨年、総合雇用対策及び改革先行プログラムが策定されまして、十三年度の第一次補正予算、それから平成十四年度の予算を通じて、雇用創出とか再就職支援、職業訓練あるいは生活支援、一通り考えられるメニューは全部考えていただいて予算に組み込まれている、こう思うわけでございますけれども、問題は、やはり雇用というのは一人の人に焦点を当てて、その人が再就職するまで面倒を見るというワンストップの再就職支援というものが一番重要だ、ある意味で雇用政策というのはミクロ政策なんだということが非常に重要じゃないか、私はこう思っているわけでございます。
 したがって、そういうこれまでのメニューというものをどういうふうにうまく組み合わせて一人の就職をきちっと最後まで面倒見るか、こういう仕組みというものをやはりこの際しっかりつくっていかないといけないんじゃないか。職業訓練を受けたけれども仕事がない、あるいは資格は取ったけれども就職できない、こういう声が多いわけでございまして、このワンストップ型の再就職支援ということについて厚生労働大臣のお考えをぜひ伺いたい、こう思います。
坂口国務大臣 御趣旨は十分に私も尊重したいし、そのとおりだというふうに思っておりますが、実は昨年、大阪のハローワークにお邪魔をいたしまして、いろいろお話を伺いました。そのときに、嘱託として雇われている人でございますが、今まで会社の部長さん等をなすった方でございますが、この人たちが非常に大きな働きをいたしておりまして、そして、その人たちだけで約一万人分の雇用を掘り起こしてきたというようなことをお聞きいたしまして、やはりその辺のところは非常に大事だなというふうに思ったわけで、それで、帰りまして、いわゆるキャリアカウンセラーの制度を日本の中でも充実していこうということを提案したわけでございます。
 今まで二百人余のそうした働きをしている人たちがございましたが、今月中に一千名体制にしたい、前回の補正でもお願いを申し上げて通していただいたところでございます。そして、本年中に一万人体制に、十四年度予算で一万人体制にしていただきまして、五年間で五万人体制にしていただくということにしたいと思っております。
 そして、その人たちには、いわゆる国がやっておりますさまざまな制度というものも各個人に対してよく説明をしていただく。そしてまた、個人のお持ちになっている能力につきましても、あなたにはこういういいところがあるじゃないですか、現在に合っているこういうところを生かしてもらったらどうですかというアドバイスもする。あるいはまた、企業の側の要望というものも伝える。こういう三者の接点に立っての働きをしていただく人をつくることがやはり一番大事なことだというふうに思っておりまして、そういう体制を今組みつつございます。
 御指摘になりましたことの全部をお答えしているわけではないと思いますが、その一端として、そうしたキャリアカウンセラー制度というものの充実を図っていきたい。
 ちなみに、アメリカにおきましては十七万人のそうした人たちがいるわけでありますから、そういう勉強をしていただき、そういう資格をお持ちいただきましたら、独立をして、その人たちがそういう仕事をしていただけるようにもしていけば、新しい雇用の開拓にもなると考えているところでございます。
井上(義)委員 それから、この雇用の問題でもう一つ大きな問題は、新卒者の就職問題じゃないか、こう思っているわけでございます。
 極めて深刻で、高校の場合は、昨年十一月の調べですけれども、過去最悪の内定状況で、昨年同期で五%ダウンして、三六・六%の生徒が就職を希望しながらいまだ職が決まっていない、こういう現状でございます。また、大学生も三年連続して七五%前後の内定状況で、これからの経済状況を考えますと、極めて厳しいなというのが私の実感でございます。
 この日本を将来支える若者に職が用意されていないということは、日本の将来の国力ということについても非常に危機感がございますし、またもっと大きいのは、これが社会の不安定要因になるんじゃないかということを私は非常に心配しているわけでございます。厚生労働省でもインターンシップの拡大とか試行雇用の支援などの対策をとっていただいておりますけれども、期間の延長とか給付金の引き上げなど、さらに拡充が必要じゃないか、こう思うわけでございます。
 その点、厚生労働大臣のお考えを賜りたいのと、また、文部科学省においても、ぜひ大臣みずから経済団体等に赴いて、実態に即したきめ細かな支援を要請するなど、できるだけの対策をぜひ打っていただきたい、子供を持つ親御さんの不安にぜひこたえてもらいたい、こういうふうに思いますが、よろしくお願いしたいと思います。
坂口国務大臣 昨年の十二月、平成十三年の十二月一日現在でございますけれども、大学の内定率は七六・七%で、一昨年の七五・二%を少し上回っております。また、短大におきましても、五二・三%で、その前の年の四八・五%を若干上回っておりますが、しかし、低いことには変わりがございません。
 それから、高等学校が非常に問題でございまして、高等学校のところが前年に比べまして非常に少なくなっている。この辺のところをこれからどうしていくかということが大変大きな問題でございます。
 今朝も、経済団体の皆さん方にお集まりをいただきまして御懇談をさせていただいて、ぜひとも高等学校の皆さん方の就職に御協力をいただくようにお願いをしたところでございます。日経連の奥田会長以下皆さん方にもお集まりをいただいたところでございますが、そうした中でいろいろお話をいたしました。
 こちらの方のお願いをいたしましたが、また、企業側といたしましては、せっかく高校卒を採りましても約五〇%の人が数カ月の間に職を離れてしまってやめてしまうといったようなこともあり得る、もう少しやはり定着をしていただくような、そうしたこともお願いをしたい、こういう話もございました。
 また、企業のあり方としましても、特に中小企業の場合には、同族企業でありますとか、そうしたことから、せっかく就職をしても就職をした若者が大変落胆をする、失望するというような状況があってはならない、企業のあり方というものについても我々は改革をしなければならないというふうに思っているというようなお話もちょうだいをしたところでございます。
 インターンシップ等を取り入れて、いわゆるトライアル就職と申しますか、そうしたことも積極的に進めさせていただかなければなりませんし、文部科学省とも御相談をこれからさせていただきまして、学校を卒業してからといいますと、三月、卒業式が終わってからでありますからわずかな時間でありますので、もう少し、夏休み中でありますとか春休み中でありますとか、そうしたところを利用してのことができないか、そうしたこともこれから御相談を申し上げたいと思っているところでございます。
遠山国務大臣 委員御指摘のように、新卒者の就職状況が大変厳しい状況にあるということにつきましては、私どもとしましても深く憂慮をいたしております。
 殊に高校生につきまして、高校を卒業してこれから仕事をしたいと思っている子供たちがその職の機会を得ないということは、個人にとっても大変な問題でございますし、社会にとっても大きな悩みでございます。
 そのようなことから、いろいろな方策を考えておりますけれども、お話しのように、私もみずから、近々、経済団体との懇談会を開催してお願いしたいと思っておりますし、また、御指摘のように、高校生自身も仕事に対する意識をもう少し高めてもらうように、キャリアガイダンスについても力を入れてまいりたいと思っております。
 いずれにいたしましても、この問題は日本の社会の安定性ないし将来の問題に深くかかわるものでございますので、厚生労働大臣とも連携をしながら、十分に取り組みをしてまいりたいと思っております。
井上(義)委員 次に、中小企業対策についてお伺いしたいと思います。
 金融機関の不良債権処理と構造改革のしわ寄せが経営体力の弱い中小企業を直撃して、このままでは日本の産業の底辺を支え続けてきた中小企業を根絶やしにするような感があるわけでございます。特に、金融機関の不良債権処理とかペイオフ解禁などで金融的にも極めて厳しい状況で、中小企業に対する貸し渋りどころか貸しはがしさえも行われているというのが現状でございます。
 十三年度の補正予算、第一次ですけれども、緊急中小企業対策の総合的な対策がとられました。その中で、特に売り掛け債権を担保とした売掛金債権担保保証制度が創設されましたけれども、従来の不動産等の物的担保からの脱却を図るという意味で私は画期的な制度だ、こういうふうに評価しているわけでございます。
 ただ、十二月十七日に施行されましたけれども、現場からは、銀行はこの制度を聞いていないというような声も聞かれているわけでございまして、この制度の利用状況はどうなっているのか、お伺いしたいと思います。
平沼国務大臣 お答えをさせていただきます。
 土地でなくして売掛金に着目をして、そして、衆参の御賛同をいただいて、法律が昨年の十七日から施行されました。
 そして、本年の十八日で、一応実働では十九日間実施をしているわけでございまして、その間、具体的な数字を申し上げますと、五百三十三件申し込み、依頼がございました。そして、十二件に関しまして正式な申し込みという形で、現時点ではまだ実績としては四件であります。そして、融資ベースでは約四億四千万で、保証ベースでは約四千万。
 こういう形で、実働が十九日、お正月が入った、こういうことでまだまだ実績としては出てきておりませんし、新しい制度でございますので、まだ御指摘のようになじみがありません。十二月十七日施行から鋭意PRも努めてきておりまして、新聞、テレビあるいはチラシ、チラシは百五十万枚ほど出させていただいています。
 しかし、いずれにしても、これから、非常に中小企業の方々がそういう資金繰り等でお困りなわけでありますから、こういう制度があるということを、せっかく法案を上げていただきましたから、積極的に関係機関と連携をとりながらPRをさせていただきたい、このように思っております。
井上(義)委員 三月期決算を迎えてこれから一番資金需要が高まるときでございますので、ぜひPR、それからまた使い勝手がいいように、ぜひよろしくお願いしたいと御要望しておきます。
 それから、中小企業税制の問題でございますけれども、今回、留保金課税の軽減とか交際費支出の損金算入限度額の拡大等、一定の前進はありました。しかし、中小企業の皆さんからのニーズが一番高い事業承継税制の見直しと、それから二重課税になっている同族会社の留保金課税制度の撤廃、これについては抜本検討を先送りされたわけでございまして、私は、これは中小企業の事業承継あるいは体質の強化という観点からぜひ実現をすべきだ、こう思いますけれども、この点についていかがでしょうか。
塩川国務大臣 御承知いただいておると思うんですが、十四年度の税制改正は、税の増減を極力圧縮いたしまして、十四年度中に十五年度以降の抜本改正をしよう、こういう方針でございました。
 したがいまして、十四年度税制改正については増減を圧縮したのでございますけれども、しかし、与党内からの強い要望がございまして、特に中小企業に対する配慮をしろということでございましたので、額はわずかでございますけれども、事業継承のいわば非公開の株式の評価を一〇%軽減するということをいたしましたことと、留保金課税で、わずか五%でございますけれども、とりあえず引き下げるということの努力をいたしまして、中小企業減税に対する配慮をいたしたというところでございまして、今度、十五年度におきます抜本改正の中におきましても、この問題は必ず重要課題になってくると思っておりまして、鋭意勉強いたしたいと思っております。
井上(義)委員 ぜひ実現を図っていただきたいと思います。
 その他、農業問題等、お聞きしたいことは多々あるわけでございますけれども、時間が参りましたので、機会を改めましてまた総理の御見解を賜りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 ありがとうございました。
津島委員長 これにて井上君の質疑は終了いたしました。
 次に、井上喜一君。
井上(喜)委員 保守党の井上喜一でございます。
 平成十三年度の第二次の補正予算が提出されまして、それに関連する予算委員会ということでございますので、当面する二、三の問題につきまして御質問をさせていただきたいと思います。
 一つは、最近よく三月危機とかあるいは四月、五月危機というようなことが言われるのであります。
 それぞれのお考えで言っておられると思うのでありますけれども、私なりに整理をいたしますと、やはり基本は景気の状況が悪いということでありまして、一月の月例報告を見ましても、輸出の方については若干の明るさのようなものが見えるものの、個人消費であるとかあるいは設備投資、鉱工業生産、いずれも余りよくない。あるいは、企業の収益も大幅に低下をしておりますし、失業率も依然として高い、経営者の景況判断というものも余り芳しくない、こういうような状況のもとに、どうもこの三月期決算というのはよくないんじゃないかというような予想がされるわけですね。さらに、ペイオフの解禁を控えまして、地域経済ないしは地方の金融機関に何か混乱が見られる可能性もなきにしもあらずだ。
 そういうこと全体がこの株価に今影響をして、私は、この三月危機あるいは四、五月危機なんというようなことが言われると思うのであります。
 ただ、政府の方も、平成十三年度の第一次の補正予算を編成するとか、今国会に提出されております第二次補正予算案、これも提出されている。あるいは日本銀行の方も、大幅な金融緩和をしようとしているわけであります、当座預金の残高を大幅に引き上げたり、国債の買い入れを大きくしたり。あるいは、政府の方におかれましてはその他いろいろな対策も考えておられると思うのでありまして、この際、いわゆる三月危機、四、五月危機と言われることについて明確に、政府として事態をどう認識して、どう考えているのかというようなことをはっきりさせる必要があるんじゃないかと私は思います。また、準備をしている政策としても、こういうものがあるんだ、こういうことを国民の前に明らかにすることが大切じゃないかと思うのであります。
 そういうことで、経済全般につきましては竹中大臣、それから金融については柳澤大臣に御答弁をお願いいたします。
竹中国務大臣 委員御指摘のとおり、どの指標をとりましても経済は大変厳しい状況にある、これはもう繰り返すまでもないことだと存じます。
 しかし同時に、政府としては、経済の見通しの中で、新年度につきましてはゼロ%、今年度につきましてはマイナス一という数字でありますから、わずかですが、新年度の後半にかけては循環的な意味ではよい兆しが見える可能性はあるというふうに見込んでいるわけでございます。その意味で、今が本当の意味での正念場だと考えております。
 決して危機というようなことはもちろん想定はいたしませんが、同時に、そういった中で一種の下振れのリスクはある、このことは覚悟して慎重に運営しなければいけないと考えるわけでございます。その意味でも、今回の補正予算というのは大変重要な意味を持っているというふうに認識をしています。下振れのリスクに十分な配慮をしながら、そういった意味での経済の循環的な動向も踏まえながら構造改革に取り組んでいく、これが重要なことであるというふうに考えております。
柳澤国務大臣 金融に関する三月危機と言われるものがあるとすれば、やはり不良債権の処理が特別検査の実施等を反映して非常に増嵩するのではないか、これが金融機関のこれまでの備えをもってしてはなかなか処理し切れないほどのことになるのではないか、こういうようなところが恐らく金融危機、金融の三月危機と言われるものの考え方だろう、こう思うのでございますが、私ども、先般の九月決算のときに、これは大手行に限ってお話をさせていただきますが、大手行は、特別検査の結果なぞも勘案して、またその後の景況の悪化を起因とするそれぞれの貸出企業の業況悪化、こういうようなものをひっくるめて、相当不良債権処理に伴う損失あるいは負担というものがふえるであろうという見込みを発表いたしております。
 それを前提にして私ども考えておるわけでございますけれども、私どもとしては、この面から今、一つ金融の健全性の大きなメルクマールであるところの自己資本比率、これをBIS基準によって計算をしているわけでございますが、その国際基準によって計算をしているところによりますと、一〇%台、二けた台を維持するところが多いというふうに考えておりまして、この面から私どもは、言われるような危機が生ずるという事態だと認識をいたしておりません。
 ただ、この計算の前提になっているのは、株価の水準が、御案内のように株価については時価会計というようなものが導入されておりますし、また、その株価の変動幅いかんによっては損益勘定でも減損会計の処理をしなければいけないというようなことで影響があるわけでございますけれども、これは昨年の九月末の例えば日経平均、九千七百七十四円だったんですが、あれを前提にしての計算でございます。したがって、これがさらにそれを下回って云々というようなことになれば、それに見合う自己資本への負担というものが増すということになりますが、私どもは総体として、したがって市場の動向には注意はいたしておりますが、今現在段階において、三月において金融の危機が到来する、あるいは迫っているというような認識にはございません。
井上(喜)委員 小泉総理にお伺いしたいのでありますが、今両大臣の認識をお聞きいたしましたが、大体同じようなお考えだと思うのでありますけれども、したがいまして、小泉総理としては、いわゆるこの三月、四月危機説というようなものは、ないといいますか、そういう認識は持っていないし、それなりの万般の準備は整えている、もちろん細心の注意をもって事態をフォローしていかないといけないのでありますけれども、そういう用意はできている、こういうようなお考えでございますか。
小泉内閣総理大臣 昨年も、九月危機がある、十月危機がある、年末危機がある、正月危機があると言われて、そういう危機に準備する用意はしておりました。今も、二月危機、三月危機、四月危機。いつも危機と言われておりますが、万が一そういう危機があった場合には、金融危機対応会議等、いかなる手を打つかという準備は常に、心づもりで、各省庁連携をとってやっております。個々の企業に対しては申し上げられませんが、危機は起こさせないという体制をとっております。
井上(喜)委員 次に、財務大臣にお伺いしたいのでありますが、最近の為替相場ですね、かなり動きが早い。しかも、円安の方向に動いていると思うのであります。国際収支を見ましてもそんなに大きな変化があるとも思えないし、日本の経済の基調なるものにつきましても、そう大きな変化が最近起こっているとも見えないわけですね。にもかかわらず、為替相場の方はかなり早く、急テンポに円安に動いていると思うのでありますが、この原因、どのようにお考えですか。
塩川国務大臣 私は、最近の為替相場を見ておりまして、マスコミが余りにも扇動しておるような感じがしてならぬのです。といいますのは、御承知のように、最近、金融機関の非常に活発な不良資産の整理が進んでおりまして、それがために資金需要、流動性の資金需要というものが非常に高まってきておりまして、日銀の当座勘定等におきましても際立ってふえてきておることは事実でございまして、それを受けまして、市場が円相場を感じ取っておるのではないかと思っております。
 私たちは決して為替には介入してはいかぬという原則を持っております。しかし、急激な変動があったり、あるいは日本のファンダメンタルズを傷つけるような状態の場合には、やむを得ざる措置としてすることはございますけれども、絶対に為替には介入してはいかぬという原則は依然として変わっておりません。したがって、今回の状況につきましても、全く我々の関知しないところで相場が動いておるということでございまして、私は、その点についてぜひ御理解いただきたいと思います。
井上(喜)委員 為替相場については中立でいきたいということだと思うのでありますけれども、為替相場につきましてはいろいろなことを、水準につきまして言われる方があるんですが、財務大臣、水準としては今ぐらいの水準がいいというようなお考えなんですか。どんなふうにお感じになっているのかということですね。
 それともう一つ、やはり為替の水準自身は、いい意味、経済にいい影響のある場合もありますし、マイナスの影響のある場合もあるわけです。ある程度為替が円安になるということは、輸出にいいとか、あるいはデフレを抑止する効果があるとかと言われる方もありますが、片や、資金がずっと流出していくような、そういうことも見られるんじゃないかと言われる方もありますし、現に昨日の日本経済新聞を読みますと、大口送金をチェックするということが書いてあるわけです。これはテロの資金源を断つというようなことと関連があると言われますが、必ずしもそれだけじゃないんじゃないかという見方もあるわけなんですね。
 というようなことで、円が安くなるということは、日本の経済、金融にとってプラス、マイナス、両面があるのでありますが、今の水準をどのようにお考えですか。
塩川国務大臣 このことを言いますと、またすぐに高いね、安いねでありますから、私はこの答弁は勘弁していただきたいと思っております。ただし、とはいえ、重要な関心を持って見ておるということだけは申し上げておきたいと思っております。
井上(喜)委員 次に、いわゆる北朝鮮籍の船と言われる不審船の引き揚げにつきましてお伺いをいたします。
 日本の経済水域内で不審船が発見されて追跡をする、それで、漁業法の違反というような容疑で停船命令をする、威嚇射撃をするという事態になり、最終的には、先方の不審船の方から自動小銃とかあるいはロケット砲が撃ち込まれるというようなことで、反撃をしてその不審船が爆沈をするというようなことに相なったのでありますが、私は、捜査当局としてきっちりとそういう不審船の捜査をするというのは当たり前だと思うのでありまして、引き揚げをして調べるということ、これは極めて当然のことだと思うし、あるいは日本の安全保障というような点から見ても、これはすぐに引き揚げて、どのような状況になっているのか、その不審船がどんな状況になっていたのかというようなことを調べることは極めて大切なことじゃないかと私は思うんですよね。だから、できるだけ早くこれを引き揚げて取り調べるべきである。
 それで、中国の経済水域内云々の話がありますが、これは犯罪の追跡の結果、向こうの水域内に、向こうの水域かどうかよくわかりませんが、日本側の解釈ではそのようにしておりますが、入ったのでありまして、それは関係各国に連絡する必要があるにしましても、引き揚げ自身はそんなに法律的に問題があることだとは思わないんですよね。これは明確にどうするか、そういう問題だと私は思いますので、ぜひ、はっきりと物を言われる小泉総理の御答弁をお願いしたいのです。
福田国務大臣 危機管理に関連する問題でございますので、私から答弁をさせていただきます。
 今回の事件につきましては、関係当局において現在鋭意捜査をしている、犯罪捜査の部分もございますので、捜査を進めておりまして、引き続き今後とも事実関係の解明ということに全力を尽くす、こういう考え方をしておるところでございます。
 これまで船体の引き揚げ、船体調査は行っておりません。まず、この季節、荒天でございまして、相当な波浪があって、この冬場、とてもそういうような捜査はできないのではないかというような、そういう当局の考え方、見方もございますし、実際問題言って、ダイバーを入れるにしても、本当に安全かどうかといったようなこともございます。引き揚げの前には、まずカメラを入れたり、そしてその次に潜水ダイバーを入れるとか、いろいろな手順があるわけでございますので、安全等も確認しながら順次そういう手続をする、こういうことでございます。
 しかし、現場が、もう一つ申し上げれば、我が国が事実上中国の排他的経済水域だ、こういうふうにこれを今までずっと扱ってきている、そういう海域でございますので、そういう意味におきましては、中国とも連携をとりながら適切に対処をする、こういうことが必要であろうかと思っております。
扇国務大臣 このことに関しましては、私は終始一貫して調査すると言い続けておりますし、できれば今まで、この間も総理にお会いいただきましたけれども、「あまみ」、「いなさ」、「きりしま」、「みずき」のこの四船長が総理にお会いいただきまして、彼らは命を賭して我が国の水域の安全と安心のために戦ったということを総理に報告をしていただきました。
 そして、負傷者が三人出ましたけれども、船長の意思等々を考えまして、海上保安庁を所管します私どもといたしましては、必ずこれを調査するということで、御存じのとおり調査船というものが、海上保安庁、サイドスキャンソナーというものと、それから科学技術庁にも海洋センターにございます「しんかい六五〇〇」、そして自衛隊も持っております潜水調査船等々を使いまして、順次、どれが一番鮮明に調査できるかということと、今後、今官房長官がおっしゃいましたけれども、沈んでいるもの自体の監視、これをどのようにするか。
 監視体制を、今おっしゃったように、四月まで、波が静むまでとおっしゃいますけれども、できればそれまでに必ず監視体制を行っていくということも含めて、潜水調査と両方相まって対処していきたいと思って、国民の皆さんになるほどと思っていただける処置をしなければ、あの四船の勇敢なる皆さん方の対処が無に帰すという考えで行ってまいりたいと思っております。
井上(喜)委員 今の官房長官と国土交通大臣のお話を聞きますと、やりたいということなのか、やるということなのか、いま一つはっきりしないところがあると思うのであります。もう少し波が静かになればやれるというようなことにもとれるのでありますけれども、いま一つそれがはっきりしないのでありますが、必ず、これは波が静かになりまして引き揚げが可能な時期にはやるということと理解してよろしいんですか。私はもう当然やるべきだと思うのでありますが、この点につきましての小泉総理の明快なる御見解をお伺いいたしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 事実関係の解明に向けて調査を進めております。
井上(喜)委員 あと、中国からの輸入三品、「3」以降、ネギと生シイタケ、畳表について御質問する予定でありましたけれども、また後刻させていただきます。私の理解は、昨年暮れに、通産大臣、農林大臣御両名、大変御苦労をいただいたのでありますが、これは第一ラウンドの終わりでありまして、第二ラウンドはこれから始まったんだというぐあいに私は理解しておりまして、そのような視点からまた後ほど質問させていただきたいと思います。
 終わります。
津島委員長 これにて井上君の質疑は終了いたしました。
 次に、菅直人君。
菅(直)委員 総理との議論の本題に入る前に、田中眞紀子外務大臣、先日、アフガンの復興会議に一部の有力なNGOの関係者を会議から排除するということで、それを戻すようにという申し入れを大臣にさせていただきました。早速に大臣の指導力で、最終日ではありましたが、それが戻ることができた、このことについてまずお礼を申し上げておきたいと思います。
 そのことに関連して、自由民主党の有力議員、具体的に言えば、鈴木宗男現議運委員長がそうしたNGOの出席をさせないようにという、いわば横やりを入れたんではないか、指示をしたんではないかと言われておりますが、そういったことがあったのかなかったのか、田中大臣にお聞きしたいと思います。
田中国務大臣 復興支援の過程におきましてNGOが非常に重要な役割を果たしてきているということは、もう世間周知の事実でございまして、私が復興会議でのスピーチの中で、各国政府、国際機関及びNGOが今後有機的に連携をして復興に携わっていくべきであるということを述べましたのも、そうした趣旨でございます。
 そして、今のお尋ねでございますけれども、一部のNGOの参加の件についていろいろなことがあったということでございますが、これは私は事務方に聞きました。そういたしましたし、先生からまた二十一日の日に要望書もちょうだいいたしました。
 そうしましたら、諸般の事情から出席不許可の通知をしたということを後に聞き及びまして、そして、二十二日の閉会セッションには必ず出席してもらいなさいということを私は野上事務次官に強く指示をいたしました結果、実現しました。そして、今後、NGOとの意思疎通というものは非常に大事でございますから、さらに円滑に意思疎通を図るようにということを申しました。
 そしてけさも、この予算委員会が始まる前に政府委員室に事務次官を呼びまして、そして、こうした非常に善意の集大成といいますか、国内それから海外からもそうした意見を集めて会議が行われるときに、いろいろな政治家、あらゆる方たちからいろいろなアドバイスやら声があるかもしれないけれども、事務次官たる者は大局的な立場に立って判断をするようにということをきつく申しましたし、今後も厳しく指導もいたしてまいります。
菅(直)委員 諸般の事情があってというふうに事務次官が説明したということでありますが、つまり、このことは、今口ききの問題がいろいろ言われていますが、自分が気に入った人間に仕事をとるのも口ききだし、逆に言えば、自分が気に入らない人間を外すのも、逆の意味での口ききになるわけです。そういう事実があったとしたら、これは重大なことです。
 また、そういう事実が議運委員長という重要な責にある人によって行われたかどうかということは、これは大変に重要なことです。ですから、そうでないのかあるのか、その可能性があるのかどうか、もう一度はっきりお答えをいただきたい。
田中国務大臣 二十一日の要望書をいただいた段階でございましたけれども、私は、いろいろなセッション等もございました、バイ会談もございましたけれども、その段階で事務次官に電話で話をいたしましたらば、そうした名前があったということを私は確認をしております。
菅(直)委員 そうした名前があったというのは、もうちょっとはっきりさせていただきますが、鈴木宗男さんといった名前があったということを言われたわけですね。
田中国務大臣 その日も電話でもおっしゃっていましたし、また、けさの予算委員会の前のときも具体的に名前をおっしゃって認めておられました。事務次官が言っておりました。
菅(直)委員 これは大変重大なことですよ。これはちゃんと本人から話を聞かなきゃいけないんじゃないでしょうか。少なくともこの予算委員会で、そういう大変重大な国際会議、しかも、今田中大臣みずから言われたように、この問題でのNGOのかかわりというのは、ある意味では政府がかかわれない時期、かかわれないテーマ、そういう問題について大変頑張っておられるグループがたくさんあるわけでありまして、それを鈴木宗男氏が外そうとしたということがはっきり大臣の口から出た以上、ちゃんと本人に聞くべきだと思います。この委員会に参考人とかあるいは証人とかで呼んできちっと話を聞くべきだと思いますが、委員長、いかがですか。
津島委員長 理事会で協議をいたします。
菅(直)委員 それでは、理事会で協議をしていただいて、必ず国民の皆さんに、今大臣が言われたことが、具体的にどういう理由でそういう行動をとられたのか鈴木宗男議員から聞く、そういう処置をしていただくよう強く望んでおきます。
 口ききということが出ましたので、今、政治家あるいはその秘書をめぐる口ききの問題が幾つか出ております。
 公共事業という国民の税金を使う事業で、まず談合がほとんど当たり前のように長年行われている。談合というのは、簡単に言えば、十億円まで予算がついていれば、本当なら競争すれば、ある企業が九億円でやりましょう、八億円でやりましょうと、一番安いところで入札によって決まるというルールを、十億円という予算が決まっていればわざわざ安くすることはないじゃないか、九億九千九百万で落とせばいいじゃないかといってみんなが話し合って、そうしたぎりぎりのところでその事業をとるという、そのときにそれを仕切る人が必要だ。
 かつては、いろいろなゼネコンの関係者がその仕切り屋と言われたこともありました。それを政治家あるいは政治家に絡む人間がやっている。まさにこれは、税金を食い物にする政治家と業界と、そしてそういうところを、先ほども官製談合の問題が出ていましたが、つまりは天下りとかなんとかで、まあまあ、あんた方うまくやっておいてよ、うちの方はそんなに厳しいことは言わないから、そういう形の官僚のいわば積極、消極の黙認の中でやられている。政官業のまさに癒着の構造そのものであります。
 総理、総理はこういった問題も聖域なき構造改革の対象だ、そう言われております。まさにこういった問題というのは、単に口ききの問題だけじゃありません。すべての談合、これは公共事業だけじゃありません。場合によっては、税金を私立大学に補助する、その私立大学が不当な給付金を受けている、場合によったらそれにもいろいろな口ききがあったかもしれないといったような報道もある。あらゆる税金にかかわる問題について口ききをし、業界と政治家あるいは政治家に絡む人と、そして役所が、いわばそれを黙認ないしは積極的に認めることで政官業の構造をつくっている。この構造にメスを入れないで、総理が言われる質のいい歳出をするなんてことはとてもできるものじゃない。総理の見解を伺いたいと思います。
小泉内閣総理大臣 これは自民党体質だけじゃないんですね。地方を見ても、野党を見ても、いつもこういう問題、与野党共通。政治と金、中央、地方を問わずこういう問題が出てくるのは大変残念でありまして、私は、今菅議員が指摘されたような問題をなくすためにどう対策をとるかということを真剣に考えなきゃいけないし、これはやはり政治の構造改革にもつながると思いますので、積極的に防止策に取り組んでいきたいと思っております。
菅(直)委員 与野党共通と言われました。もちろん、野党においても一切こういうところがないとは申し上げません。しかし、基本的に、予算というものの権限を強く持っているのは政府そのものと、与党が国会の過半数を占めているわけですから、その与党がより大きな権限を持ち、影響力を持っているということは常識でありまして、単純に与野党共通だなんて言ってほしくない。まずは総理のところから、役所から、そしてまずは長年の与党、現在の与党である自民党からやりますというそのぐらいのことがなければ、与野党共通だからという話だけで済む話ではありません。
 私たちは、加藤紘一さんの問題、そのことも含めてきちっとしたそうした真実を説明する義務があるし、そういったことについてこの国会で、あるいはこの委員会できちっとした解明を進める必要がある、こう考えておりますが、総理、いかがですか。
小泉内閣総理大臣 今国会で実効ある対策をすべきであるし、その努力をしていきたいと思っております。
菅(直)委員 これに関連して、先ほど来、あっせん利得罪のことで与党の方の発言がありました。しかし、どういうわけか、今回問題になっている私設秘書をその対象にすべきだとこの法案ができるときに我が党を含む野党が主張したのに対して、それは必要がない、それは反対だと言われたその反省の弁が聞かれませんでした。たしか自民党も公明党も保守党も、野党の案に対して、それは必要がない、そう言われたじゃないですか。
 総理は自民党の総裁として、いや、それはしまった、あるいは間違っていた、今回はその反省に立って私設秘書を含む法案を、私たちも用意しておりますが、それを実現すべきだ、そのことをはっきり、反省の弁を含めて述べていただきたい。
小泉内閣総理大臣 そのときの経緯を伺いますと、私設秘書の定義が明確でないという問題があったと思います。
 今後、今与党もこの点に関しては何らかの措置が必要だと思っておりますので、そういう私設秘書という定義も含めまして、この対策を進めていきたいと思います。
菅(直)委員 残念ながら反省の弁がないですね。少なくとも与党の方がこの問題を取り上げられるときには、そうした定義の問題を含めて当時もやればやれたんですから。当時だってそういうことを議論していたんですから。その上で、やる必要がないと言われて今回のことが起きてきたわけですから、やはり反省の弁をきちんと述べられるのがフェアプレーじゃないでしょうかね。
 武部農水大臣、ここに、今発行されている「財界さっぽろ」という雑誌があります。この冒頭のグラビアによりますと、昨年の十二月八日の札幌における自民党道連政策セミナーで、大臣がこう話をしたと。「狂牛病は菅さんが厚生大臣のとき、水際で止めておけば、こうはならなかった。私と坂口さんが悪者にされているが、一番悪いのは菅さんだ!」こう述べられていますね。
 そして、この中の記事には、ごらんになったでしょう、見出しは「“大臣辞めろ”コールに憤然」。武部さんが「“狂牛病は菅直人が悪い”」こう見出しがありますが、まあ見出しは雑誌が勝手につけたんでしょう。だからそこまでは言いません。しかし、武部さんの発言を、一番ポイントのところを読ませていただきます。「問題は“過去の話”。菅直人氏が当時の厚生大臣だ。一九九六年四月、厚生省は(汚染の可能性のある肉骨粉の流通を止めずに)肉骨粉を牛の飼料に使わないように行政指導しただけだった。」こういうふうに言われていますね。
 ここに、飼料の安全性に関する法律があります。この法律の二条の二項には、「農林水産大臣は、」云々と書いて、肉骨粉の扱いについて、規格を定めることができる、禁止することができると書いてあります。
 国民の皆さんにぜひ理解していただきたいんですが、食べ物については食品衛生法で厚生省も所管をしております。ですから、肉については厚生省も所管をし、場合によっては農林省も畜産関係の法律でダブって所管をしている部分はあります。しかし、牛が食べる飼料、全く問題になっているその肉骨粉について、牛が食べる飼料を厚生省が規制する権限がどの法律に書いてあるんでしょうか。
 それを一般の人が、菅さん、あなたのときもじゃないのと言われるのはまだわかります。今の、現在の農水大臣が自分の所管もわからないで、他の役所の大臣が、当時が悪かったんだ、こういう認識だから、この肉骨粉なんというのは、そんな原因の究明なんというのはどうでもいいじゃないかみたいな発言につながっているんじゃないですか。
 私は、まず武部農水大臣に、この発言をしたのかどうか、したとすれば大間違いでありますから、この場でちゃんと私に謝っていただきたい。もししていないというのであれば、これは二カ所ありますからね。二カ所というのは、道連でのパーティーでの発言と、記事そのものの中でのインタビュー記事と、二カ所ありますから。もし違っているというんだったら、私は当時出た人の話も聞いておりますけれども、それならこの雑誌に訂正を求めるのか。その場合でも、きちんと私に対してこの場で謝罪をしていただきたい。いずれですか。
武部国務大臣 「財界さっぽろ」のインタビュー記事についてでありますが、九六年当時の対応としては、厚生省は英国からの牛肉加工品について輸入自粛等を行政指導していたこと、肉骨粉を飼料に使わないよう行政指導を行ったのは農林水産省であることと私は認識しておりまして、当該記事は私の発言を取り違えて記載したものと考えます。
 なお、この点については、出版社に対して抗議と記事の訂正を申し入れたところでございまして、出版社側は事実誤認と認めまして、次号において訂正記事を掲載するというふうに申しております。
 また、道連セミナーで私がお話ししたのは、坂口厚生労働大臣が、菅氏にやめろやめろと言われる筋合いはない、菅氏がきちんとやっていれば苦しまずに済んだと発言したと報道に触れたことについて私は述べたわけでございまして、そのことについて「財界さっぽろ」の記者から質問されましたので、私は、過去のことは科学的、客観的に検証する必要がある、しっかり検証、原因究明をすればだれの責任なのかという話まで出てくるであろう、客観的に説明しないで断片的情報で決めつけるわけにはいかないと、むしろたしなめたところでございまして、菅さんに責任を転嫁しようとしたものでありませんで、このことにつきましては御理解をいただきたい。
 そのことで菅さんに対しましても御迷惑をおかけしているということについては、まことに遺憾でありまして、このことはおわびを申し上げたいと思います。
菅(直)委員 きちんとおわびをいただきましたので、そのおわびのことについては了としたいと思います。
 記事については訂正するそうでありますが、パーティーでの発言は先ほど申し上げたとおりでありまして、だれの責任かはっきりしないと言っているんじゃなくて、菅直人の責任だということをパーティーで言われているわけですが、それはテープをとった人もあるはずですし、多くの記者が同席をしていたはずですし、それも含めて間違っていたと言われましたので、それはそれで了といたします。
 が、最初に申し上げたように、こういうことが出るような認識だから、あの発言、つまりは地元の酪農家の皆さんを前にして、そんなに原因究明が重要ですか、こんな発言が出るんですよ。
 先日、我が党の大会をやったときも、北海道の酪農をやっておられる方が来られました。百頭以上の酪農農家でありました。乳がだんだん少なく出が悪くなった牛を、従来ならある段階で肉牛として、いわゆる食肉用として出荷ができた。しかし、今出荷そのものができない。万一その中で狂牛病が発見されたら、すべての一緒にいた牛を殺さなきゃいけなくなる。あるいは、受け取る方も、生まれて五年、六年たった牛は受け取ってくれない。乳は出なくなる、そして受け取ってくれない、出しようがない。だから、捨て犬や捨て猫という話は聞いたことが私も昔からありますが、捨て牛なんということが起きているのはそういう現実じゃないですか。
 それだけの重大なことを起こしたのは、まさにここで言われているように、水際でとめる責任がだれにあったのですか。私と同じ時代の農水大臣は大原一三さんでありましたが、その時代からの農水省にまず第一に責任があったんじゃないですか。そして、現在の農水大臣にもその後の処理について大きな責任があるんじゃないですか。
 この問題は、後ほど筒井議員、同僚議員の方からしっかりと詰めていただいて、いかに武部農水大臣が農水大臣として不適格か、このことを明確にさせていただきたいと思っております。
 そこで、いよいよ本題に入ってまいります。
 総理、このグラフをごらんください。このグラフには、日経平均株価が小渕政権の末期から森政権、そして現在の小泉内閣と書いてあります。小渕さんの末期は大体二万円ぐらいでした。ずうっと森さんの時代に下がって、一万四千円前後までに下がりました。そして、小泉内閣ができてちょっと上がったんですが、現在はまた一万円前後まで下がっております。
 失業率、これはあえて逆に目盛りを振ってあります。下の方が高いんです。小渕政権の当時は四・八とか九とか七とか六とかでありました。森政権に入って四・六、七、八ぐらいでありました。そして、小泉政権に入った時点が多分これは四・七ぐらいでしょうか。現在は五・五、場合によっては五・六ではないかと言われております。
 こういうふうに株価は下がり失業率は上がっているのに、この共同通信の調査では、内閣支持率は、森内閣の終盤が一〇%前後、小泉政権になって八〇%前後の大変高い率が続いております。
 先日、総理とある席で御一緒しましたね、パーティーで。いや、株価も下がり失業率も上がっているのにこんなに支持率が高いのはなぜかね、不思議だねと。私が言ったんじゃないですよ、総理みずからおっしゃっていましたね。私は、そのことについて、きちんときょうは総理と議論をしたいと思います。
 それでは、なぜ総理の支持がこんなに高いのか。私は、一言で言えば、総理が言われている構造改革なくして景気回復なし、これを国民は、構造改革を進めれば多少苦しいことがあってもその後には景気回復が来るんだ、こういうふうに当然理解をして、この小泉総理の言葉を信じて、今はきつくても、森内閣のときより明らかに経済の情勢がより悪くなっていても、この痛みを越えればその先には景気回復が来るんだ。小泉総理を信用して支持率は高い、経済の指標はめちゃくちゃだ、こういう状態が続いていると思います。
 そこで、きょうの議論はここからです。
 私たちは構造改革が必要だと思っています。官から民に、中央から地方に、大きな改革をやらなきゃいけません。しかしですよ、総理、例えば地方分権が進む、いいことです、やらなきゃいけません。しかし、地方分権が進んだら景気回復につながるというのはどういう理屈でしょうか。
 あるいは、官から民にいろいろな事業が移ったら、例えば、これまでは官の仕事として百人でやっていた仕事が効率よく五十人でやれるようになった。税金も半分しか使わなくなった。いいことですよ。しかし、それによって仕事から外れた五十人が新たな別の仕事に、もっと効率のいい仕事に移っているんなら、まさにそのとおりでありましょう。しかし、単に官の仕事、非効率な仕事を民に移して効率よくしたから、それだけでなぜ景気がよくなるんでしょうか。
 このことを総理はこれまでの質疑で、私もいろいろやりましたが、国民の皆さんに説明していない。こうやります、ああやりますとは言っているけれども、官から民に変える構造改革をやったときに、中央から地方にいろいろな権限を移す構造改革をやったときに、なぜ景気がよくなるのか。私たちは二兎を追うということでそれに対する考え方を持っておりますが、きょうは、総理の支持率ですから、まず総理から国民に、いつもの歯切れのいい口調でわかりやすく、なぜ構造改革が進めば景気が回復するのか、わかりやすく説明してください。
小泉内閣総理大臣 まず、株価、失業者数ともに厳しい状況が続いている中に国民の多くが小泉内閣を支持していただくということに対しては、大変ありがたいと思っております。この支持と期待にこたえていきたいと思っております。
 私も、こういう厳しい状況で、しかも、私自身、これから先は甘くないですよ、すぐには景気回復しませんよ、痛みが伴いますよと言いながらも多くの支持をいただいていることを、こういう状況なら、国民がそういう気構えならば、必ず日本経済は立ち直ると自信を持ってこの改革を進めていかなきゃならないと思っております。
 そこで、なぜ改革が進めば景気がよくなるのかと。私は、すぐ景気がよくなると言ったことはございません。時間がかかります。このままいけば、改革が進められれば景気よくなるのかと思わないからこそ、多少苦しくても我慢しよう、小泉内閣の進める改革をもう少し見守ってみよう、そういう声が支持率の高さにも出ているのじゃないかと思っております。私は、改革を進めればどうして景気がよくなるのかと。じゃ今まで、改革を進めなきゃどうして景気がよくなるのか、それがだめだと思ったからこそ期待を寄せてくれているんだと思っています。
 それは、効率的な事業が特に官業の分野でおくれている。税金を使えば確かに仕事はふえます。税金を使って雇用対策、失業対策をすれば、いろいろ充実できた対策を打てるでしょう。しかし、現在の状況によって、財政もそれほど潤沢ではない、むしろ非常に厳しい状況であるということから、やはり官業の分野を大きく見直さなきゃならない、中央、地方の役割も見直していかなきゃならないという大きな改革の方針に、やはり国民は期待を寄せているのではないかと思っております。
 一例を挙げてみましても、同じ仕事をやるにしても、役所がやる仕事と民間のやる仕事、これについて見ましても、民間は設備投資するにも人を雇うにも税金を使いません。役所がやるのは、同じ仕事をやっても、税金を使うことはあっても負担することはない。そういうことから、民間でできることはどんどん民間に任せましょうという私の方針を多くの国民は支持してくれているんだと思います。
 そういう具体的な改革にしましても、今まで言ったように、具体的な論に踏み込んでいきますと与野党を通じて反対論が強い。いい例が郵便事業ですよ。民間参入させるということでは与野党ともに今反対が強い。それをやろうとしているわけです。そういう官業、民業、この分野につきましても、私は規制改革等を進めていこうと思っております。
 こういう、今まで民間が参入してはいけない、官業がやるべきだという点についても、規制をできるだけ緩和しまして、民間が参入していきたいものは参入させることによって、今以上のいい商品の提供、サービスの提供もできるんじゃないかということを国民は敏感に感じ取っているんではないかと私は思っております。
 そして、できるだけ多くの方々が新しい事業に展開する際に創意工夫を発揮できるような、役所が、官が邪魔しないような、そういう改革にこれからも取り組んでいきたいと思っております。
菅(直)委員 いつもの総理の答弁に比べると、いやに元気がないですね。
 私は、冒頭申し上げました。官から民に変えていくこと、中央から地方に変えていく構造改革は、我が党もやるべきだと言っています。ただ、そのことがなぜ景気回復につながると、総理が言っているんですよ、私が言っているんじゃないですよ。構造改革なくして景気回復なしというのは、最大のスローガンじゃないですか。それに対して、今何と答えられました。今のままでいいんですかと、これが総理のいつもの手です。
 作家の高村さんが、総理は質問に対して真っ正面から答えない、うまくすり抜けるということを論証されておりましたが、今もそうじゃないですか。やらなくていいんですか、手術しなくていいんですか、手術しなきゃだめでしょうと。しかし、手術をしたら本当に治るんですか。胃が悪いのに頭の手術をして、治らないかもしれない。つまり、このことをやったらなぜ景気がよくなるのかという、そのこと自体を聞いているんですよ。
 例えば、今幾つか言われました、官業の分野を民間に移す。ですから、なぜ官業の分野を民間に移したら景気がよくなるかと聞いているんですよ。効率がよくなるかもしれません。百人の人が五十人でやれるかもしれません。しかし、残った五十人の人が別の会社でどんどん働けるようになるのならば、あわせて景気がよくなるでしょう。しかし、失業率はどんどん下がって、百人の人を五十人にしたら、その五十人の人はIT産業が採ってくれるんですか。ITも大リストラ、ゼネコンも大リストラ、流通も大リストラ。どうするんですか。全然説明ないじゃないですか。
 そういった意味で、もう一回、いいですか、逃げないでくださいよ。これは総理の公約ですから。逃げないでくださいよ。真っ正面から答えてください。なぜ、そうした構造改革をやれば景気がよくなるのか。具体的でもいいですよ。今、例えば郵政省のことを言われました。まだ政府の見解になってはおりませんが、例えば郵政省のことでも結構、分権のことでも結構、それを進めたらなぜ景気がよくなるのか、それを国民にわかりやすく答えてください。
小泉内閣総理大臣 基本的な方向を行けば、まず、今言いましたように、民間が仕事に参入できれば、税金を使わないでできますね。設備投資するにしても、役所がやると税金を使います、税金は負担しません。
 いい例は、具体的に言えと言いました、郵便事業も言った。民間参入させると言った途端に、民間の郵便事業業者は、既に今設備投資の準備を始めています。配達の業者が足りない、高齢者を雇えという雇用対策も始めました。まだしていないのに、方針を出すだけで変わってきます。
 低公害車、公用車は全部低公害車に三年で切りかえると言いました。その途端に民間の自動車会社は、低公害車、高くても役所が買ってくれるのだったらば量産しようという、方針を示すだけで民間は新しい事業を開発します。
 私は、こういう点について、新しい産業は、今まで民間がやっちゃいけないところを民間がやっていいとなれば、ふえてきますよ。福祉でもそうです、保育園、特別養護老人ホーム、ケアハウス。民間、公設民営、民間でもやっていいというんだったらば、民間は、補助金くれなくてもいい、補助金なくて多少高くても、やらせてくれるというんだったらと今準備を進めています。
 PFI、公共事業、今まで公設の、役所の官舎なんかでも、役人しか住めない、公務員しか住めないという規定を外したらどうか。何人かは公務員が入ってもいい、しかしそのほかは民間が入ってもいい。ホテルだってそうだろう。この階まではVIPが泊まる、規制はできる。ほかの階はそうでない、自由に人が出入りできる。役所だって、公務員住宅を建てる場合は、公務員しか入っちゃいけないで、民間が採算とれるのだって、一定の量は公務員宿舎を与えます、そのほかは自由な、民間人も入っていいですよ、あるいは、民間人もサービス提供できるし、施設提供できますよというんだったらば、やるという意見が出てきた。
 そういう規制を改革していくことによって、新しい産業が出てきます。大体、社会主義と自由主義経済、役所が関与して何でも国がやる、役所にやらせないという立場。同じ政治体制をとっても、東ドイツ、西ドイツを見ても、北朝鮮を見ても、韓国を見ても、かつてのソ連を見ても、アメリカを見ても、自由主義体制で見ても、余り役所と税金、官がやらなきゃいけないという国は、これは自由主義経済よりはるかに国民生活を低下させるなということはみんなわかっているんですよ。
 だから、私は、民間でできることは民間にやらせることによって、新しい展望が開ける、そういう点を言っているのであって、具体的に挙げろと、既に今具体的に挙げていますけれども、新しい産業は出てきますよ。これから将来、私は、むしろ今まで官業というのは公共的な仕事をやるものだということでありましたけれども、民間人に、民間企業に公的な分野でも参加できるんだという環境を整えることが新しい産業を生むのではないかという方針を貫いていきたい。
菅(直)委員 今度は少し元気よく言われましたけれども、私の頭が悪いのか、それとも総理の説明がよくないのか。いろいろ言われましたよ。民間参入をさせて、税金が負担をしなくなるから、これで景気よくなるんですか。私は、なぜ景気がよくなるかと聞いているんですよ。
 さっきも言いました。官の社会で百人のところが五十人でできたとして、その五十人が新しい仕事につける環境があるのか。それは一部は、クロネコヤマトが設備投資をしているかもしれません。しかし、全体から見たらどうなっているんですか。クロネコヤマトが人を採用したかもしれないけれども、失業率はどんどんどんどん、こんなに上がっているじゃないですか。あるいは、いろいろな民間設備投資は、一般的に言うと必ずしもそうはいっていないし、まして個人の消費はどんどん減っているじゃないですか。(発言する者あり)
 また、よくやじが飛びますけれども、今総理が言われたことで一番大きな問題は、じゃ、戦後の四十年間日本の経済がうまくいったのは、よかった悪かったかは別として、日本は半分社会主義じゃなかったんですか。そして、高度成長をやったのは、官主導でやったんじゃないですか。それを誇っていたじゃないですか。(小泉内閣総理大臣「だから、そこを変えようとしている」と呼ぶ)まあ、総理がやじを飛ばさなくても、ちゃんと後でしゃべらせますから。ですから、ソ連や社会主義国がだめだと言う前に、日本の国が官主導でうまくいった時代があったということをまず認めた上で、それを変えなきゃいけない。しかし、変えるのは結構だと言っているじゃないですか。
 じゃ、私の方から少し具体的に、もうちょっと詰めてみます。
 例えば、ここに、総理が議長をされている経済財政諮問会議、議長に答えていただきますよ。この中で、財政健全化に向けた動きがはっきりしてくることによって消費が拡大すると役所の説明でありました。しかも、それはこの二年間ぐらいの、まずは集中調整期間の話であると説明がありました。
 いいですか。財政を健全化させるという動きで消費が拡大する、本当にそういうことが言えるんでしょうか。この中を読んでみると、十年後ぐらいにプライマリーバランスをとりたいと書いてあります。二〇一〇年初頭にそういう方向をとりたいと書いてあります。そういうメッセージが総理から発声されると、国民は、おっ、これで安心だ、じゃ、もっと消費をふやそうと言うんでしょうか。目の前の雇用情勢がこれからもっともっと悪くなるとみんな思っている、高校を子供が卒業しても就職がない、リストラになるかもしれない、そういう中で、十年後のプライマリーバランスがやっと戻るかどうかという話があったから消費が拡大するんですか。これ、骨格になっているんですよ、総理の、議長の。
 では、その点を説明してください。なぜ財政の再建の方向が出たら、いいですか、財政の再建の方向はこれに書いてあるのでも十年かかるんですよ。なぜ一、二年で消費が拡大するんですか。
小泉内閣総理大臣 これは、プライマリーバランスを回復するためには二、三年ではできません、十年ぐらいかかるでしょう。
 しかし、大事なことは、ああ、これで財政の規律を保ってくれるな、信頼感なんです。感じているからこそ支持が高いんです。野党よりも今小泉内閣を支持してくれるというのは、小泉なら何かやってくれるなという期待があるからだと私は受けとめています。それが政治じゃないか。
 そういう中にあって、これまで盛んに三十兆円枠を取っ払え取っ払えという声があるにもかかわらず、三十兆円を守ってくれたな、小泉内閣は。来年度予算におきましても、公共事業をふやせふやせという中で、やはりむだなところは見直さなきゃいかぬとやってきたのは、官業、何でも官でやらなきゃいかぬというところに対しても民間を参入させようとやっているなと、この方向に対して多くの国民は期待を寄せていると思うんです。その方針が大事なんですよ。
 私は、今の状況でも、それじゃ失業者が出たらどうするんですかと。建設業者、これから減るなとわかる。昨年十一月でも二十万人程度の建設業者が減ってきた。サービス産業五十万人ふえていますよ、この不景気下で。新しい産業が見えてくれば、国民が自分で、ああ、この産業は将来展望がないなと思っていくならば、新しい産業に振り向けていけるような雇用対策をとれるような対策を今打っていこう、そういう希望が出てきますし、あるいは大企業が、リストラしよう、これから首切るのは大変だから希望退職を募ろうといったら、心配していたところが逆に、時間制限して、もう希望退職しなくていいというまでになって、そういう形で、企業の中でも、中には自分から会社をやめて新しい職を見つける人も出てくる。暗い面ばかりじゃないんです。
 しかし、そういう中において、私は、失業対策、雇用対策はしっかり打っていって、新しい産業も出てきます、そういう方向に向けるような方向に今徐々に行っているなということを国民にもわかってもらいたい。小泉内閣はそういう改革を進めていきたい、その方針を示すことが非常に大事だと思っています。
 今の財政健全化も時間かかります、これだけの借金しているんですから。そういう時間のかかる改革でありますが、緒についたな、この方向を引き続き進んでもらいたいという国民の多くの声というものを受けとめて、この改革を進めていきたいと思っております。
菅(直)委員 今いろいろ言われた中で、一つだけ私もそのとおりと思うところがありました。それは、多くの国民が総理に期待感を持っているということです。期待感を持っているんですよ、期待感を。タイタニック号のように、新鋭小泉丸が進水した、船長がなかなか優秀そうだ、大丈夫です皆さん、この新鋭艦、絶対沈むことはありません、私に任せてついてきてください、今まだそんな状況じゃないですか、国民の皆さん。確かに数字は悪い、菅たちがいつもいろいろなことを言うけれども、まあしばらく小泉さんに任せてみようじゃないか、私のところにもそういうメールをたくさんいただきます。
 しかし、私は、この九カ月間の総理の行動や内閣の行動を見て、これは期待感を持たれたタイタニック号の船長と同じだ。期待感はあります。しかし、実際に進んでいる方向は氷山の真っただ中に進んでいる。大丈夫だ大丈夫だと言っているけれども、じゃ、どう大丈夫ですかと聞いた途端に、何と答えました、今。期待感があるからいいんだ、そのとおりです。期待感だけはあるんです。だから、それに対してちゃんと説明してください、進んでいる方向が氷山じゃなくて大西洋の真ん中の方にちゃんと戻っているんだということを説明してくださいと言ったら、何と言いました。ゼネコンで二十万減ったけれども、サービス業で五十万。私はどこの数字か知りませんけれども、少なくともこの数字にはそれが反映されていませんね。三十万人ふえたというんだったら、それが少し反映されそうですが、どんどん下がっているじゃないですか。そんな自分の都合のいい数字ばかり言わないでくださいよ。これは全体の数字ですよ。いいですか、小泉さん。
 財政再建についても、方向性を示すことが重要だと、プライマリーバランスのことを言い出したのは、どちらかといえば我が党の方が先かもしれません、総理よりも。まさに長期的な展望を出すことは重要なんです。そういう改革をすることは重要なんです。しかし、その改革を今のやり方で、小泉さん流のやり方でやったときに、大西洋に戻っているのか、氷山の真ん中に突っ込んでいるのかということを聞いているんですよ。長期的な方向を出すことは重要です。しかし、十年後のプライマリーバランスを回復するという方向性を出したから消費が拡大すると書いてあるんですよ。私はそこがわからない。十年後にはよくなるかもしれないけれども、目の前は危なくてしようがないと思ったら、国民の皆さんは、消費が拡大するんじゃなくて縮小するんじゃないですか。
 つまり、民間需要を拡大する方向を出しているといろいろここに書いてあります。民間需要を拡大する方向のものも入っているでしょう。しかし、一般的に言えば、マーケットによって淘汰すべきものは大いに淘汰すべきだというのが総理の基本的な姿勢じゃないですか。そうすれば雇用が難しくなって、そして失業した人の個人消費が落ちてくるのは当たり前のことじゃないですか。これでも総理は説明したと言われるんですか。(発言する者あり)だめです、総理です、これは議長ですから。いいですか。この公約は総理の公約ですからね。総理自身に答えていただかないと、一番大きな公約なんですから。
 なぜ、そうした構造改革の、今でいうと財政再建の方針を出しただけで、十年後に、そうなるかどうかも怪しいところですが、十年後になりますよと言っただけで消費が拡大すると言えるんですか。逆に消費は縮小しているじゃないですか。
小泉内閣総理大臣 方向を示しているんであって、そのような方向に向けて今努力しようとしているんですよ。数カ月間で出るわけないじゃないですか。
 しかし、さっき言った、現実にうそだと言っていますけれども、前年に比べてサービス産業は五十万、正確に言うと四十何万人だと思いますけれども、前年に比べて四十数万人ふえているんですよ。(菅(直)委員「じゃ、なぜ全体に少ないんですか」と呼ぶ)私が言ったでしょう。よく聞いておきなさいよ。建設業は減っています。サービス業はふえている。しかし、全体では減っているんですよ。だから、悪い状況でも伸びているところはあるんですよ。(菅(直)委員「全体では減っているじゃないですか」と呼ぶ)
 だから、私は言ったでしょう、建設業では減っているけれどもサービス業ではふえているということを。(菅(直)委員「ほかのも減っているんでしょう」と呼ぶ)全体では確かに減っていますよ。だから、悪いところでもふえているところもあるんです。これから改革を進めていけば、悪いところばかりじゃないと。(菅(直)委員「当たり前だ。全体がどうかと言っているんですよ」と呼ぶ)
 全体は、今言ったように、この改革を進めていくならば、必ず私は持続的な経済成長率を期待でき得るような方向に進んでいく、その方向を進めていくということを言っているんですから、そこら辺は御理解をいただきたいと思います。
津島委員長 答弁側と委員の諸兄にお願い申し上げます。
 議論が高まってくることは大変結構でありますが、冷静にそれぞれの御発言を受けとめていただきたい。
 菅直人君。
菅(直)委員 これは、国民の皆さんがよく聞いていただきたいと思います。
 相変わらず大丈夫だ大丈夫だと。それはもちろん、雇用が減るところもあればふえるところもあるでしょう。しかし、全体に、また得意の言葉が出ましたよね、数カ月で結論が出るわけないじゃないかと言われました。しかし、あなたが派閥の留守番を守っていた森内閣のときからずっと上がっているんですよ、失業率というのは。あなたがなってからもずっと上がっているんですよ。部分的にそれはふえた減ったはあるかもしれないけれども、全体のトレンドを見てください。もう九カ月たったんですよ。
 この先、これがどういうメカニズムで上がってくるのかということを説明してくださいと聞いているんじゃないですか。説明をするチャンスを上げているんじゃないですか。しかし、いや大丈夫です、必ず行きますと、観念論だけじゃないですか。ですから、私は、タイタニック号の船長なのか、本当に国民を安全なところに連れていっているのか、どっちの方向なんですかと聞いているんですよ。
 じゃ、例えば、もう一つ申し上げましょう。
 「歳出の質の改善」というのがこの中に入っております。そうでしょう。むだなこととか環境にだめなことはやめましょうということでしょう、多分。
 しかし、相変わらず、あの諫早湾の内側の堤防をつくる費用まで六十億の予算の中に入っています、来年度の予算。水門をあけて海の水を入れるべきだと同じ農水省が言っているにもかかわらず、その水が上がっていくもとの干潟を制限するようなところに、ちゃんと堤防の費用がついているんですよ。
 川辺川ダム。いよいよ強制収用。一体だれが公益性を判断するんだと聞いてみました。地元の旧建設事務所から大臣に対して申請が出て、大臣が公益性を判断するんだそうです。収用委員会は何をするんですかと言ったら、値段だけ決めるんだと。大臣が判断する。川辺川に一度も行ったことのない大臣が、当然公益だと言うでしょう。しかし、実際は官益ですよ、族益ですよ。何が、あそこに二千四百億円、附帯を含めれば四千億の金を使って川をだめにしておいて、それが公益ですか。旧建設省の河川局の官益であり、それにまとわっている、口ききをたくさんしている人の族益であり、その業界の業益じゃないですか。
 こんな質の悪い歳出を、私は、総理が最初のときから言っていますよ、まず具体的なことをやってみせてくださいと。十年後のプライマリーバランスを言うのは大いに結構。しかし、来年度の予算で諫早の内堤防なんかさせません、ちゃんと水門あけさせます、川辺川はやめさせますと一言言えば変わるでしょう。
 具体的にできることは何もやらないで、十年後になったらこうなりますよと、期待感だけあおるのが一番上手ですよ。総理、具体的に答えてください。歳出の質の改善になっているんですか、その二点で。どうぞ。
津島委員長 これまでの総理の御答弁に対して補足説明を竹中経済財政担当大臣からしていただいて……(発言する者あり)
 内閣総理大臣。
小泉内閣総理大臣 私、答えます。
 今の公共事業について、私は、地元と関係大臣でよく調整してくれと言っております。地元の要望もあると思います。私は、せっかく大臣がいるんですから、地元もあるんですから、地元の要望と、そして大臣がいろいろな各方面の意見を聞いて、環境面に、また安全面に、防災面に配慮した必要な公共事業をやるように指示しておりますので、関係大臣からよく答弁してもらいたいと思います。
菅(直)委員 少なくともこの問題で逃げていることだけははっきりしましたよね。
 つまり、総理は多くの場合みずから判断してやると言っているじゃないですか、いろいろな問題で。私は全然十分だとは思いませんけれども、あの道路公団の問題でも、新しい第三者機関は国会にかけないで自分で決めると言っているじゃないですか。それだけきちんと言う人が、この具体的な問題になった途端に、急に地元だ、大臣だと。
 それは、地元の自治体は昔からその事業をやろうとした、お父さんの時代からやろうとした知事がいますよ。もう公益という概念じゃなくて、自治体も補助金絡みで全部絡まっちゃっていることは、みんな承知じゃないですか。もし全額自由に使えるお金で県が決めてやるんだったら、それは県の、地元で結構ですよ。ほとんどの費用は、ほぼ大部分は国の費用でやるという中身でありながら、こういうときだけは逃げるじゃないですか。
 では、次のことに行きましょう。余り逃げないでください。
 例えば不良債権の処理について、不良債権の処理をすれば投資が拡大するという趣旨のことが書かれております。不良債権処理が進めば投資が拡大するということが書かれております。いいですか。私たちは四年前に、不良債権処理はきちんとやれと法律まで出したのに、それをいいかげんなものをやったのは今の与党ですから。
 私は不良債権処理はやるべきだと思っています。しかし、現実にどうなっているかというと、一般の国民の皆さんが預けたお金は、相当部分どこに行っているんですか。民間の銀行が集めたお金が民間の企業に貸し出されている部分もありますが、何と国債を買っているうちの四〇%以上は民間銀行が買っているんじゃないですか。
 この間、国債課長に来てもらいました。金利が上がらないね。いや、景気がよくなったら金利が上がって、つまり民間の資金需要が高まって、そうなると国債大変なんですよ。景気が悪いから国債が十分売れて金利が下がっているんですよ。上がらないんですよ。
 総理は国債をこれ以上出したら景気は悪くなると言っているけれども、景気が悪いから国債を出しているんですよ。卵と鶏が逆なんですよ。その事実についてはどう認識されていますか。
津島委員長 竹中……(菅(直)委員「だめですよ、総理ですよ、総理」と呼ぶ)
 柳澤金融担当大臣。(菅(直)委員「総理が立っているんだから」と呼び、その他発言する者あり)いや、私が指名しました。(発言する者あり)私が指名しましたから、菅委員、私のあれに従ってください。
柳澤国務大臣 全く技術的なことなんです。これはもう全く技術的なことですから、菅委員も、先ほどの話とは私ちょっと性質が違うと思います。したがって、私の方から答弁をさせていただきます。
 不良債権の処理が進めば、これは資金的にも、まず間接処理をした場合には、その処理が終わったということで、もう損失の危険性というのは非常に下がりますから、その資金を、金融仲介機能としての本来の機能ですけれども、ほかのところに融資ができます。
 それから、我々が今やっておる直接処理と申しますか最終処理、これをやりますと、これは、例えば売却をします、売却をしますと、引き当て以外の部分については回収が可能になりますから、そのお金もまたほかのいろいろな事業に回すことができます。
 それからまた、我々が今やっておる企業の再建型の不良債権の処理、この場合には、貸し出し企業のいい部分と悪い部分を分けて、悪い部分については処理をする、そしていい部分は伸ばしていく、こういうようなことをやるわけですから、いずれも、不良債権の処理を行うということは、明らかにこれは資金の有効活用ということになりまして、経済に対していい影響がある、経済の再生に資することができる、このように我々は考えているわけであります。
津島委員長 内閣総理大臣。(発言する者あり)総理が答弁します。指名しました。
 では、総理、答弁をお願いします。(発言する者あり)
小泉内閣総理大臣 委員長の言うことを聞きなさいよ。
 国債を発行したら景気が悪くなるというふうなことは言っていませんよ。(菅(直)委員「そんなこと言っていないよ」と呼ぶ)そう私が言ったからと言ったから。そうじゃなくて……(菅(直)委員「違う。その後、景気が悪いから国債の金利が上がっていないと言ったんですよ。何を聞いているんですか。全然聞いていない」と呼ぶ)それは一面の真理であります。
 私は、国債をどんどん発行すれば景気がよくなるとは思わないということで、厳しく発行枠を考えなきゃいかぬということを言ってきたんです。今までの議論に対して、景気を回復するためにはもう三十兆円枠を取っ払えという議論があったから、そうでもない、国債を増発すれば金利の面にも悪影響が出るし、必ずしも景気対策にならぬよということを私の方が言ってきたんですよ。
 今言ったように、確かに、財政政策、金融政策、限界に来ています。これ以上国債を発行しようがないほど、もう借金している。そして金融政策も、ゼロ金利ですから、これももう限界に来ている。そういう中での景気対策と雇用対策とこれからの構造改革をどう進めていこうかという極めて難しい道を探らなきゃならない点も私はわかっております。
 こういう難しい状況において、今、菅議員が指摘されたような国債の消化状況を見ても、単に国債の発行をふやせば景気回復するものじゃないということを極めてよく指摘していただいたんだと思いますよ。そういう点に配慮して、これから景気対策、雇用対策、それを、よく市場も見ながら手を打っていかなきゃならないなというふうに私は感じております。
菅(直)委員 冷静に聞いていると、今の総理の答弁というのはめちゃくちゃなんですよ。
 総理はどう言われているかというと、国債をたくさん出せば、もっと出せば、国債が暴落して金利が上がる、その危険性があると言われているんですよ。
 私は、国債課長の方の話も聞いて、今総理も半ば認められたように、景気が悪いから国債の金利が上がっていない、そういう側面もあると。全然別のことじゃないですか。私が言ったとおりだと。
 つまりは、いい悪いは別として、景気が悪い間は、幾ら国債を出したからといって、外国に金が出ていかない限りは、貯蓄率はどんどん上がっているんですから、銀行が国債を買う限りは金利は上がらないですよ。国債は暴落しないですよ。景気がよくなったときにその可能性がありますよ。しかし、景気をよくしようとしているんじゃないですか。では、景気をよくしたときに暴落するかもしれないじゃないですか。そういう行き詰まり状況に来ているということを申し上げているのに、いや、私に任せたら大丈夫と。何が任せて大丈夫ですか。
 目の前に氷山が来ていますよ。今や、景気がよくなったって、百四十兆の国債を消化しなきゃいけない。今はじゃぶじゃぶですよ。それは民間需要がないからですよ、資金需要が。景気が悪いからですよ。そんなところまで来ているんですよというのに、ほとんどのうてんきな答弁しかない。
 もう一度話を戻しますから、ちゃんと答えてください。何回も言いますよ。国民の皆さんによく私聞いてもらいたいんですよ。総理に期待感を持たれるのはそれは結構だけれども、その総理が本当に日本丸を、将来、多少時間がかかっても安全な方向に向けていっているのか。大丈夫大丈夫と言って、実は全然方向感覚のない船長で、氷山の真ん中の方に連れていっているんじゃないですかと、私はそう見切ったから、我が党としては小泉内閣を打倒するとはっきり大会で方針を決めたんです。小泉内閣は、幾ら期待感を持たれて支持率が高くても、実は船の向きが間違っている。
 先ほど言われたのは何ですか。この景気がよくなる話をどれだけされましたか。低公害車を導入する。それは役所の金で低公害車を導入することは大いに結構。それはエピソードですよ。日本経済の回復の話でいえば微々たる話ですよ。それから保育所。私は、保育所をやるんだったら、今度の補正予算の半分ぐらい使ってきちっとやりますよ。そうしたら雇用が十万も発生するけれども、せいぜいそんなことは言っていないし。あと何ですか、PFI、大いに結構。しかし、すべて結構だけれども、全然効果が上がらないじゃないですか。
 これから上がるから上がるからと言って、気がついたら氷山の衝突の一歩手前まで来ていると言っている人もたくさん与党にもいるじゃないですか。だから説明してくださいと言っているんです。まだ何も、総理の説明は私が聞く限り何一つありません。なぜ構造改革をやれば景気がよくなるんですか。
 では、もうちょっと具体的に、具体的というのは、ここに書いてあります。民間需要を拡大させなければ景気はよくならない、そう思われるでしょう。私もそう思いますよ。では、総理がやっている政策で、民間需要が拡大する政策というのは何があるんですか。部分的にはありますよ、トータルで民間需要が減るのとふえるのとあるわけですから。トータルでふえるのと減るので、ふえる政策は何があるんですか。
 雇用拡大に力点を置いた政策と書いてあります。これをやったら失業率が下がってくる、これをやったら内需が拡大してくる、それを説明してください、国民にわかりやすく。
小泉内閣総理大臣 さっきから説明しているんですけれどもね。(菅(直)委員「全然わからないですね」と呼ぶ)菅さんの指摘も、国債増発せよというのか、国債を減らせというのかもわからないでしょう。(菅(直)委員「どっちも失敗ですよ」と呼ぶ)だから、行き詰まりから、今行っているのを行き詰まるからこのままではだめだということで、国債を増発すれば景気回復するものじゃないといって構造改革しなきゃいかぬと言っているのが私の議論でしょう。それを進めている。
 今回も、保育所をたくさんつくりますよ。では財源どうするのかと。財源ない中で考えているんでしょう。さっき言ったように……(発言する者あり)言えというのなら言いますよ、時間もらって。
 今まで税金ばかり使っていた、高齢者ケアハウスも。保育所も税金を使っていた。そうじゃない、例えば高齢者ケア、これに対して、これからも民間参入を促していろいろ民間の活力を、老健施設等高齢者ケアにも生かしていく。あるいは子育て支援。あるいはまた、今まで住宅の中古の流通市場が完備されていないから整備していこう。
 時間があれば、言えといえば細かく言いますけれども、余り細かいことをこの予算委員会で総理大臣が答弁しない方がいいというから大きな方針を言っているのであって、これだけいっぱい大臣がいるんですよ、全部私一人でやるわけじゃない。地方の個別の事業まで一々総理大臣が答弁してどうなるんですか、これだけ有能な大臣がたくさんいるのに。そういうことについて、個別の具体的な各省庁の大臣がいたら、大臣に答弁させてもらった方がいいでしょう。それを総理に総理に言えと。具体的に細かいことを言うと、そんなことはいいと言う。
 だから私は、せっかく予算委員会でこれだけ多くの大臣が出ているんですから、個別の問題だったら各担当大臣に答弁してもらった方が、国民はもっとわかりやすく理解できるんじゃないかと思います。
 私は今回、民間の需要創出ということは、長い目で見れば、これから必ず新しい産業は出てきますから、そういう方面に人を振り向けていくような対策をとるべきだと。私は、雇用対策にしても失業対策にしても、一度や二度の失敗にくじけないように、新たなチャンスに振り向けることができるような対策を講じようということで、ハローワークに対しましてもいろいろきめ細かい対策を、手を打っています。
 細かいことを聞きたいんだったら担当大臣の方がいいのですけれども、私は、具体的に言えば五年間で五百三十万人の雇用計画を出していますけれども……(発言する者あり)ほら、具体的に答えようというと、もういいと言う。その辺を、どの程度まで総理大臣が答えて、どの程度は担当大臣が答えていいかというのは、せっかくこれだけ多くの大臣が出ているのですから、整理をしていただいて質問をしていただきたい。
菅(直)委員 やはりすりかえがうまいですよね、聞いていると。全部すりかえですよね。
 私は、最初から一つしか聞いていないのですよ。総理自身が言っている公約、構造改革なくして景気回復なし、構造改革が進めば景気回復につながるんだという、そのことを国民にわかりやすく説明してくださいと言って、その一点しか聞いていないのです、きょうは。しかし、全然説明になっていない。何か言うと、じゃ国債を出せと言うんですか、じゃ何とかをしようと言うんですか、じゃペイオフをやめろと言うんですかと。
 私は、例えばペイオフにしても、今ペイオフをやったら、多分準備がきちんとできていない。本来なら四年前から準備をするのに準備をしないから、みんな国民が不安がっているんじゃないですか。だから……(発言する者あり)そういうことでしょう。だからペイオフ反対かと、ちょうど小泉さんそっくりなやじが飛んでいる。
 つまり、じゃ、私が改革をやろうとしているのに改革をやめろと言うんですかというのしか答えていないのですよ。大いにやってください、私たちは構造改革をやることは反対しません。しかし、構造改革をやったからといって景気回復につながるのですか。そうしたら、構造改革の話ばかりしている。しかし、構造改革をやったら景気回復につながるのですかということを言っているのです。そのつながるという論理が全然ない。
 では、もう一つ別の表現をしましょう。いいですか、マクロでいいんですよ、マクロで。
 昨年、経営者の中で最も注目をされて評価をされたのは、日産のカルロス・ゴーン社長だったかもしれません。彼は、日産の大リストラをやって、コストカットをして、日産という企業を立て直しました。ああいう人が政府もやってもらえば日本も立て直るんじゃないかと言う人もあります。
 しかし、私は、原理が違う、原理が。日産は民間企業で、リストラで退職金を払ってやめてもらった人の後のことまでは責任を持ちません。ですから、少なくなった人間で、下請も切って、コストをカットして、そしてコストが下がるから、あれは売上台数は伸びていませんからね。全体の売上台数は伸びていないんですからね。コストが下がることによって企業収益がよくなった。いいですか、総理、よく聞いてください。
 では、同じことを国全部がやったらどうなるでしょうか、政府全部がやったらどうなるでしょうか。それは、民間企業は従業員を解雇することはできる、その後の責任は永久に持てとは言われない。しかし、国は国民を解雇することはできないのですよ。やめた後の人がどうなるかということがあって初めて日本の景気がよくなるかどうか。
 もともとは、むだな公共事業をやめて、そこから出てきた人をIT産業が吸収するという夢を語っておられましたけれども、IT不況になって、逆にIT関連産業からもどんどんリストラが出てきてしまいました。そういう現実を前にして、だから構造改革をやれば景気が回復するというのは、一概に言えないのじゃないか。
 一言だけ私の方から逆に言えば、すぐまたぱくられるかもしれませんけれども、財政に頼らない内需拡大策というものにもっと知恵を出せばいいのですよ。
 今、唯一国民が個人で不足しているものは、唯一と言えるかどうかわかりませんが、庭がついたもうちょっと広い家に住みたいという人はたくさんあります。それならそれに重点を当てて全部の政策をそこに集中させる。あるいは、テトラポッドで埋まったような海岸じゃなくて、もうちょっと砂浜の海岸に戻すというようなところに公共事業を集中させる。川辺川のダムの工事なんかやめてしまう。そういう国民が願っているものはあるのです。雇用だって介護だってあるんです。
 そういう財政に余り頼らないでいい需要の拡大をするということをもっとやるべきだ、私たちはそう思っているし、それが二兎を追うもう一兎だと思っているんですが、総理のこれまでの議論は相変わらず、構造改革をやるんだ、何か一言言ったら、構造改革に反するのは非国民とはさすがに言われませんけれども、構造改革に反対するのかとすぐ、隣の塩川さんまでが一緒になってやじを飛ばしている。大間違いじゃないですか。私たちが構造改革を言って、構造改革に反対する人は私の左手にたくさんいるわけですから。私たちと総理と自由民主党の抵抗勢力は、次元が違う三角形なんですよ。
 私たちは、構造改革は進めるけれども、財政に頼らない内需拡大策がもっとあるはずだ、そこをきっちり提案してやらない限りは、構造改革だけやっていれば、もっと早くやっていればよかったかもしれないけれども、コースだって、北北西に針路をとって大丈夫なときと、北北西に針路をとったらもう氷山が近過ぎてぶつかるときとあるんですよ。同じ北北西だからいいということじゃないんですよ。今の総理の置かれた状況、日本の置かれた状況は、構造改革はやらなければいけないけれども、構造改革をやれば景気がよくなるなんていう状況はもう既に残念ながら過ぎ去っている。
 だから、どういう政策をやって景気回復をしようとしているんですかと。構造改革なくして景気回復なしというのを国民が信用して、総理にまさに信頼感を寄せているわけですから。この総理にこの国を任せていたら、タイタニック号と同じ運命を日本はたどってしまう。反論があったら聞かせてください。
小泉内閣総理大臣 方向としては大して違わないじゃないですか、菅さんが言っていることと私の進めていることと。
 余り国債に頼らないで、国債増発に頼らないで、税金に頼らないで民間需要を創出する。やっているじゃないですか、小泉内閣は。(菅(直)委員「何にもやっていない」と呼ぶ)何にもやっていないと言うけれども、今まで民主党も提案しないことをやっているんですよ、官業の改革にしても。民主党が提案できないようなことまでやっているんですよ、民間にしても。今、PFIにしても、保育所にしても、高齢者のケアハウスにしても、民間参入を呼び込もうとしているじゃないですか。今言っていることを具体的にやろうとしている。方向としては大して違わないんです。
 私は、今のような状況で構造改革を進めていけば失業がふえると心配しているけれども、それを認めているんですよ。構造改革を進めて景気がよくなる、長期的にはよくなります。しかし、当面において構造改革を進めていけば、不良債権処理で失業者が出る、会社の倒産が出る、だから、その点はある程度覚悟して進めなきゃならないと言っているんです、短期的には。それすらだめだと言ったんなら、私は改革できませんから。
 それは、心配ばかり、不安をあおり立てる。しかし、私はあえて、この構造改革、不良債権処理を進めていかないと展望が開けないから、多少の失業者がふえても我慢してこの改革を進めていかなきゃならない、不良債権処理を進めていかなきゃならないということを言っているんですよ。方向としては大して違いはないんじゃないですか。
菅(直)委員 民間参入を認めれば景気がよくなるという論理があるんですか。私は、民間参入を認めることが悪いと言っているんじゃないですよ。先ほど来言っているでしょう。民間参入を認めて、百人の仕事が五十人でできることになること自体はいいんです、効率がよくなるから。残った五十人の仕事があるんですかということをあわせて考えないといけないんです。
 いいですか、ちょっと待ってください。ですから、全部、何が違わないんですか、全く違うじゃないですか。ここに書いてあるのは、十年先のことを書かれているんじゃないですよ。しかし、実際に失業するのは今ですよ。今、三百万人を超える人が失業し、三万人を超える人がみずからの命を絶っている危機的な状態の中で、もちろん、十年先のことをきちんと言うことも必要でしょう。しかし、小泉総理は、十年先までは景気が悪いとは言っていないじゃないですか。十年先まで景気が悪いんだと言うんだったら、それならそれで一つの見識でしょう。そう言っていないじゃないですか、これもこれも。(小泉内閣総理大臣「十年先はよくなると言っているんだよ」と呼ぶ)十年先じゃなくて、二年間の間に民需拡大のための集中調整をやって、そしてあと、二〇〇六年ごろまでにはよくなると書いてあるじゃないですか。そんな十年間のことなんか言っていませんよ。だから、どういう理屈でそんなによくなるんですかと。まあ、これを最終的に判断していただくのは聞いておられる国民の皆さんだと思います。閣僚の皆さんも頭の中では、あるいは腹の中では、まあそうかなと思われている方もたくさんいそうなんですが、私はあえてきょうは総理だけにお聞きしました。
 それはなぜかというと、この支持率の高さは、総理自身の言葉によるものです。総理自身の言葉は見事です、確かに。例えば本四架橋公団について、四公団を統合して一円も公費は入れないと言って、実際は入れるんですよね。まず千億の無利子補給をやり、あれを処理するときには県や国の金を入れて債務を処理しなきゃいけないけれども、よくやったと自分で自分を褒めるのは天才的ですから、そうすると、何か国民の皆さんも、自分で自分を褒めている小泉さんを見て、いや、そうなのかな、やはりよくやったのかな、こう思っちゃっている。期待感が続いている。しかし、中身はほとんどがごまかしです。
 三十兆円の国債も、出さない出さないと言って、実は借金返しにちゃんと予定していたお金を使っておいて、いや、国債はふやしていないんだからいいんだと。しかし、もう既に与党の、自民党以外の他党の党首は、いや、十四年予算の後には補正が必要だ、補正をするには予算が要ります。だからそこまでは三十兆で顔を立てよう、しかしその後は三十兆の枠は突破してもらいますよということを主張している。全部総理が救世主なんですよ。総理は救世主なんです、自由民主党にとって。しかし、国民にとって救世主になると皆さんが期待しているけれども、私が見るところ、私の目が節穴であるかないか、これはこの数年でわかりますが、私が見るところ、総理は日本の救世主ではなくて、日本丸のこの船長は、タイタニック号の船長と同じだ。みんなに期待感だけ与えて、全く間違った方向に船を進めている。
 そこで、残された時間が余りないので、一点だけ聞いておきます。
 総理は、ことしの八月十五日、総理大臣を続けていられたとして、靖国神社に参拝されますか、されませんか。イエスかノーか、はっきりお答えください。
小泉内閣総理大臣 状況を見て判断します。
菅(直)委員 やはり総理の歯切れは上っ面だけだということが、今のことでよくわかりますよね。あの総裁選挙のときに、どんな抵抗があろうとも八月十五日に断固行きますと言いました。そこで何が起きたでしょうか。
 今、不審船の問題があります。不審船の問題では最も関連が深いのは、言うまでもありません、その船を出した国以外でいえば、韓国と中国が大変この問題では重要です。私は、極東における安全保障を韓国や中国とちゃんと話し合う、そういう土俵づくりをもっと努力すべきだ、こう思っております。しかし、総理が昨年、靖国に行く行かないということをみずから言い出して、その後の訪中、訪韓は何ですか、あれは。もう村山内閣当時に一応クリアしたとされた戦争責任を一生懸命総理の口から持ち出して、謝って謝って謝って、八月十五日問題だけあいまいにして、そして今の答弁です。
 九月十一日のテロがあったために、ある意味では中国も韓国も、このテロ対策については協力しようということで我が国との関係を一応修復した形になっておりますけれども、しかし、先ほどの不審船の沈没した海域は中国の経済水域です。中国とちゃんと安全保障の問題で話ができているのか、韓国とちゃんと話ができているのか。その問題でわざわざみずから、かさぶたをわざわざ自分で引っぱがすような靖国の問題をみずから持ち出して、ことしについてどうですかと言ったら、状況によってと。こんな人に任せて本当に大丈夫なんでしょうか。
 私は、午後の質疑は同僚議員がやりますので最後に申し上げておきますけれども、これまで小泉総理に対して我が党が言ってきた構造改革を具体的に進めるのであれば、その具体的な中身について共通するものは当然、法案が出てくれば賛成しますよ、諫早湾の予算を削るんなら、なくするんなら、そういうことについては当然賛成しますよと申し上げてきましたが、この九カ月間の総理の姿勢を見ていると、具体的なことは、すぐ大臣や地元、あるいは状況を見て、そして、具体的でないことについては、自信を持って国民に対して大丈夫ですと言う。こんな総理大臣を持ったことは、私もかすかながら小泉総理誕生のときには期待をした一人であるだけに、その期待から国民の皆さんに一日も早く目を覚ましてもらいたい、このことを申し上げて、きょうの質疑を終わります。
津島委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    正午休憩
     ――――◇―――――
    午後一時開議
津島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 最初に、委員長として一言お願い申し上げます。
 正常な委員会運営に努めたいと思いますが、答弁者席からの御発言、不規則発言、それから政府関係の方の発言については、当然のことでございますが、ひとつ慎んでいただきたいと思います。
 質疑を続行いたします。
 この際、筒井信隆君から関連質疑の申し出があります。菅君の持ち時間の範囲内でこれを許します。筒井信隆君。
筒井委員 民主党の筒井信隆でございます。
 きょうは狂牛病、BSE問題に集中して質問する予定でございましたが、その前に、田中外務大臣に一言確認をさせていただきたいと思います。
 きょう午前中、鈴木宗男議員が関与したということを明確にここで証言されましたが、その後、鈴木議員が記者会見で、外務大臣、外相はうそを言っている、非常に不愉快だ、こう明言したそうでございます。
 田中外務大臣、うそを言っているのでしょうか。その点を確認します。
田中国務大臣 うそは申しておりませんし、私がとにかく先ほど答弁した趣旨は、事務方は、いろいろな意見やアドバイスがあらゆるところからあっても、とにかく大局的見地でもって行動をするようにアドバイスをしたということを申し上げたわけでございますし、うそは何ら申しておりません。
筒井委員 そうしますと、鈴木議員が逆に明確なうそを言っていることになります。これは、同じ自民党議員の中でそういう形が公に出されてきている。
 議運の委員長、これをこのまま外務大臣としてはほっておくつもりですか、それとも何らかの処置をとるつもりですか。
田中国務大臣 議運委員長がどうとか、私には関係ありませんし、私は、お尋ねに対して答弁をさせていただいたのみでございます。
筒井委員 BSEの問題の方に移ります。
 その本論に入る前に、まず、雪印の詐欺事件についてお聞きをいたします。
 去年の十月十八日、全頭検査が始まる以前に屠畜場で解体された牛肉、これは安全性に不安があるものですから、国が全量買い上げ、焼却処分することに決まりました。雪印はそれをまさに悪質に使って、オーストラリア産の輸入牛肉を国産の、しかも十月十八日以前に解体された牛肉だと偽って買い上げをさせた、こういう事実が発覚いたしました。
 まさに悪質な詐欺でございまして、農林省はこれをいつ、どうして知ったか、マスコミからの報道で初めて知ったのか、その点をお答えください。
武部国務大臣 まことに言語道断、許されざることが起こりまして、断腸の思いでこの事業を行い、血税を使わせていただく、そういう措置をとったにもかかわらず、雪印の国民を欺くこうした行為に対しましては、本当に許しがたいと同時に、国民の皆様にまずおわびを申し上げたいと思います。
 ただいまの御質問でございますが、農水省としては、二十三日の朝刊等による報道に接するまでは承知しておりません。報道内容が事実であるとの報告が雪印食品からあったのは、同社による記者発表、十一時三十分ごろでありますが、その直前でございます。その後、午後一時三十分ころ、同社社長が農水省を訪れ、食肉鶏卵課長に対して謝罪と状況説明を行ったところであります。
 今回の件は、ただいま申し上げましたように、BSE対策事業を悪用した極めて悪質なものでありまして、私からは、事実関係を正確かつ徹底的に調査すること、責任関係について明確かつ厳正に対処すること、再発防止に省を挙げて取り組むことの三点を強く指示したところであります。
筒井委員 当然の話ですが、今までも内金が既に払われているようでございまして、これを返却させることは当然だと思いますし、そもそも雪印に対して、この買い上げ対象、買い上げの制度から外すという制裁も当然すべきだと思います。こういう具体的な対処の方法としては何を考えておられるのか、これを説明してください。
武部国務大臣 まずは、正確かつ徹底した調査を行うことが大前提であると思いますが、これは断じて許されざることでありますので、ありとあらゆる対応を検討しなければならないと思います。
筒井委員 もう直ちの即断即決の行動が、今まさに狂牛病関係では農林省に要求されているんですよ。今、抽象的な、そんなありとあらゆることをやるなんてことを聞いているんじゃないんです。具体的に何をするのかということを聞いているんです。
 今も私が申し上げた、既に雪印に支払った分の返還、それから、買い上げ対象から雪印を外す、これを具体的に現在考えておられるかどうかということと、それ以外に具体的な措置としては何を考えておられるか、これを言ってください。
武部国務大臣 返還を要求するのは当然のことでございます。
 それから、これは全量ですね、二百八十トンあるということでございますが、このことについても今徹底調査をさせております。これらについても厳正な対応をしよう、かように思っておりますし、これは犯罪と言って過言でありません。したがいまして、告発も検討しなければならない。
 ただ、今申し上げましたように、この正確な、なおかつ徹底した調査、さらには責任問題については明確かつ厳正な対応をいたしますので、まだ詳しい事実関係というものを正確に把握しておりませんので、今申し上げられることはこういうことになろうと思いまして、早速指示いたしております。
 なお、きょう昼過ぎに、この事業を行っている六団体、ハム・ソーセージ工業協同組合等六団体に農林水産省に来ていただきまして、事業の厳正な実施のために点検、確認等を急いでいただくことも指示いたしました。徹底究明いたします。
筒井委員 今の答弁でも私の質問に答えていないんですが、私は、買い上げ対象から、この制度から雪印を外すという決定を、こんなのは農林省が決定すればいいんですから、これはすぐできるんですよ。それをまだ何だかんだ言っているから遅いんですよ、行動が。その点を一点質問。
 それからもう一点は、今、犯罪だから告発を検討していると言いました。犯罪であることは明らかですよね。人を欺いて財物を交付させたんですから、詐欺罪ですよ。これを、詐欺罪に該当する疑いがあるこの場合に、今検討していると言われましたが、公務員、特別職も公務員ですが、大臣もまさに告発、告訴する義務があるでしょう。告発、告訴しなければならない。今度の場合まさに被害者は国なんですから、告訴しなきゃいかぬ。これは、一般人は告訴、告発してもいいということになっていますが、農林大臣はしなければならない義務があるんですよ。それを検討するなんて言わないで、その法律の義務に従って直ちに告訴手続をとるべきじゃないですか。
 その二点、答えてください。
武部国務大臣 既に兵庫県警が捜査に入っております。
 それは、今、委員が指摘したとおり、私どもは、断じて厳正な対応をしてまいりますし、告訴、告発の問題も事務的に徹底するようにということも指示しております。
 やるべきことは徹底してやりますし、しかし、これは、今申し上げましたように、厳正な処分、対処のためにも正確かつ徹底した事実関係の究明、これは私ども今新聞でありますとかそういったものを見たり、あるいは農林水産省の立入調査等によっていろいろ事実関係を調査しておりますのでそう申し上げたわけでありますけれども、これは、我々としては、やるべきことは直ちに対処してまいります。
筒井委員 具体的な結論を聞いているんです。買い上げ対象から雪印を外すのか外さないのか、それから、告訴、告発をするのかしないのか、どちらかを言ってください。
武部国務大臣 それは、私はそうすべきだ、こう思っておりますが、しかし、捜査当局の捜査ということもあります。これは、告訴、告発は、先ほど申し上げましたように、そのつもりで事務当局に事務的な手続を検討するように指示しております。
 また、今の買い上げの問題についても、これはもうできかねる、私はこう思っております。
筒井委員 できかねるというのは、要するに買い上げ対象、買い上げすることはできかねるという意味ですね。
武部国務大臣 そのとおりです。おっしゃるとおりです。
筒井委員 それで、それほど悪質な行為を、これがなぜ起こったのか検討していった場合に、そこで農林省の責任が出てくるわけですよ。
 これは、屠畜場で解体されて、屠畜場はほとんど公的な機関ですから、そこで証明書をつくる。その証明書を添付する。何か農林省の方は、それがさらに部分肉に分かれたら一枚しか証明書を発行できないからできないと言っていますが、その次に部分肉に解体したときに、その解体した機関あるいは業者の証明書を添付して、屠畜場の証明書はコピーになるかもしれませんが、部分肉に解体するたびにその解体業者の、解体機関の証明書を添付しておけば、当然それができるわけでして、部分肉になったとしても。
 そういう措置をとっておけばこういう事件は起こらなかったわけですよ。屠畜場の証明書を要求しなかったのはなぜなのか。それは完全な間違いじゃないですか。
武部国務大臣 牛肉在庫緊急保管対策事業については、当初、十月十七日以前に屠畜解体処理された牛肉であることを確認するため、屠畜証明書のように、屠畜年月日が確認できる書類を添付させることを考えていたところであります。
 しかしながら、事業の具体的な実施方法を詰めていく中で、牛肉の流通実態を見ると、部分肉については同じ部位ごとに異なる牛のものを一つのボックスにまぜて収納しているケースが多かった、したがって、屠畜証明書の添付は困難であるということ。また、在庫証明により、市場隔離した牛肉の入庫月日、品目、数量が確認できる上、必要に応じ現品確認をすることとしたことでございます。
 当時の販売環境から見まして、検査済みで自由に流通できる十八日以降の牛肉を隔離するような事態は考えにくかったこともございまして、事業の申請に当たっての証拠書類として在庫証明の提出を求めることとしたところでございます。
 いずれにいたしましても、今回の事件の発生を受けまして、再発防止には省を挙げて取り組むこととしておりまして、適正な事業の遂行に万全を期してまいりたいということでございます。
筒井委員 今、このBSEの問題から牛肉の安全性について国民の不安が物すごく高まっているものですから、農林省は、牛の総背番号制、つまりトレーサビリティーを決めましたよね。今その準備をしている。これは、どういうえさをやってどういうふうに育てたか、それが消費者の段階まで来ても調べることができるような、そういうトレーサビリティーの体制をつくることでしょう。これは確かに物すごく大変なんですよ。
 だけれども、今度のは、屠畜場、解体されてからのことだけでいいのですよ。農林省がトレーサビリティーを、総背番号制をやるのと比べたら物すごく簡単にできることだ。これもやらないものだからこういうふうな問題が起こるのですよ。
 だから、農林省の対応がそういう点で完全ではなかった、十分ではなかったからこういう問題が起こったことは認められますね。
武部国務大臣 私どもは、このBSE対策事業をみんなが苦労しながらやっているわけでありますから、今回の場合も一つの信頼関係ということを基礎にしておりました。しかし、今委員指摘のように、やり得ることはほかになかったかということについても反省してみなければならない、かように考えております。
筒井委員 ぜひ、その反省をきちんとやっていただきたいと思います。
 それで、本論に戻ります。
 狂牛病、BSEがなぜ日本で発生したのか、なぜ被害がこれだけ拡大したのか。それは、まさに農林省の甘い見通しに基づく危機管理意識の希薄さ、それに基づく対応のまずさ、これが原因だったわけです。だから、日本で発生させた責任、被害を拡大させた責任、それがまさに農林省にある、きょうもこのことを明確にしていきたいと思います。
 そういうことを発生させた責任、狂牛病を発生させた責任、被害を拡大させた責任が農林省にある。なぜ農林省がそんなことをやったのか。それはまさに農林省が、甘い見通し、危機管理意識が欠如していたからでございました。その甘い見通し、危機管理意識の欠如の一つの典型が、EU委員会の評価を断ったことにあらわれております。
 当初、日本自身が、農林省自身が欧州委員会に、日本でBSEが発生する危険性の程度を評価してほしい、こういう依頼を日本からやったのです、農林省から。そして、EUの方が、日本ではBSEが発生している可能性が、確率が高い、日本では危険度がレベルスリーだ、こういう報告書、評価をしそうになったら、今度はそれを断って拒否した。それで、実際に断って拒否した後に日本でBSEの牛が三頭発生した。この欧州委員会の評価が正しいことが証明されたので、また再び欧州委員会に、もう一度評価をやってくれ、こういう要請をした。まさに日本の国際的な恥ですよ。それを農林省がやったわけです。
 そして、農林省がEUの危険性評価を断った、これはもちろん今の武部大臣が農林大臣に就任して以降のことなんですが、EUにこの評価を断ることについては、知っていたけれども中身は知らなかった、中身は知らなくて知っていた、こういうことでよろしいですね。
武部国務大臣 BSEの発生がなぜ防げなかったかということについては、今御指摘のように、危機管理意識の甘さということに尽きると思います。
 欧州委員会の、EUのステータス評価につきましても、私のところには、まず医療品や化粧品を輸出するのに必要だということと、それから、OIEの基準をEUも近く受けるということで、このEUのステータス評価を受けないことにするということを了承したわけでございます。
 しかし、BSEが発生してから、私は、これは受けた方がよかったのではないかということを事務方に申し上げました。ところが、EUとOIEの評価基準の相違等からやむを得ない判断であった旨の説明を受けたところでありますが、このような農林水産省全体としての危機管理意識の希薄さについて、幹部を初め関係職員に私は厳重注意をしたところでございます。
 そういう意味では、私自身、六月の時点できちっと把握をしていくべきだったということについては反省しているところでございます。
筒井委員 どうも一貫して大臣は、農林省の責任は認めるんだけれども、これは事務方、官僚の責任で、自分のものじゃない、自分の責任じゃない、官僚をしかりつけたということばかり強調しているので、大臣自身の責任だということを強調したいのですよ。
 この私の質問に答えてください。
 欧州委員会の評価について、書面で断ったのが六月十五日。この書面で断ることについて大臣は知っていたけれども、中身については知らなかった、これは事実ですねという質問です。
武部国務大臣 事実です。
筒井委員 その上で、大臣は、評価を断ることが適切である、こう事務方に指示しましたね。これも事実かどうか答えてください。
武部国務大臣 今、中身について知らなかったことは事実ということを申し上げましたのは、中身の全文について知らないということでございまして、レベルスリーといったEUのステータス評価の概要とともに、先ほど説明申し上げましたような事柄については説明を受けていたわけでございます。したがいまして、近くEUもOIEの新たな基準を受けるということでありますので、それなら、それは間違いないなということでそうした次第でございます。
 また、私自身の責任のことでありますが、これは私は、結果として受けた方がよかったのではないかと考えておりますけれども、EUの指摘をも踏まえ、我が国独自の判断として、発生時に備えた対応のあり方について危機意識を持って検討を行っておく必要があったのではないかと考えておりますし、私が農林水産省の最高責任者であるということにおいては、私自身も責任の大きさを免れるわけにはいかない、かように考えております。
筒井委員 質問に答えてくださいね。
 私が今聞いているのは、断ることについて、そうすることが適切であろう、こう大臣は言ったでしょうと。それを言わなかったなら言わなかったと言ってください、またさらに質問しますから。
武部国務大臣 適切であるというふうには言っておりません。
 これは、OIEの五月の総会で新たな基準ができたので、EUもそのOIEの新たな基準を受けることになっているということなので、我が国としても新しいOIEの基準を受ける、そしてまた、EUが受けたらその評価を受けるということを了とするということで、了承したわけでございます。
筒井委員 OIEの評価を受けるから、EU、欧州委員会の評価は断りますという事務方の意見に対して、農林大臣は、武部さんは、そうすることが適切であろう、こう今言わなかったというのですか、それとも言ったという、どっちですか。
武部国務大臣 そうすることを了承したわけです。
筒井委員 適切であろうと言ったかどうか。
武部国務大臣 適切であろうという言葉を使ったかどうかはわかりませんが、それを了承したわけですから、そういうEUの評価を受けないということについて説明があったことについて私は了承したわけですから、そのことで御理解いただきたいと思います。
筒井委員 先ほどから証言は、さっきは言わなかった、今は言ったかどうかわからない。私は、資料を見た上で確認しながらあなたに聞いているので、資料がなくてそんなのを確かめていないのです。
 あなたは、そうした方が適切であろう、こう申し上げた、そういうことで受けないこととした、これは委員会の議事録に載っている言葉なんですよ。初めからそんなことを、はっきりしていることを、言わないとか言ったかどうかわからないとか、そんなことは言わないでください。
 そのことを前提にちょっと聞きますが、そうしますと、武部大臣は、中身を詳しく知らないで、欧州委員会という外国からの正式な報告、こっちが依頼した報告、これを拒否することが、断ることが適切である、こう言ったわけですよ。中身を詳しく知らないで、あなたのきょうの言葉で言えば了承したんですよ。そういう大臣の態度自体が問題じゃないですか。
武部国務大臣 中身を詳しく知らなかったということは私は深く反省しなきゃならないことだ、このように思っております。
 しかし、当時の説明は、これはかなり専門的な問題でもありますので、私は、衛生課長からその説明を受けたときに、この後はどうなるんだという話をしましたら、彼は、OIEの基準がもう採択されたから、これを受けたい、EUも近くOIEの基準に照らした評価を受けることになっていると。それは間違いないなということで、OIEの基準ないしはEUの評価を受けるということで了承したわけでございます。
筒井委員 OIEの評価を受けるかどうかは問題じゃないんですよ。それを受けたっていいですよ。欧州委員会の評価を断ったことを問題にしているんですよ。それは今、先ほどからの答弁で、間違いであった、この欧州委員会の評価を頼んでおきながらその後断った、これは間違いであった、しかも、そのことについて大臣は詳しく中身を知らないでそれを了承した。間違いであったことは認めるんですね。明確に言ってください。
武部国務大臣 OIEの評価というのは、これは国際的な権威ある評価ですから、OIEの評価を受けるということが適切だと私は思ったわけでございます。
筒井委員 OIEの評価を受けるかどうかを私は聞いているんじゃないんです。そのことが間違いだとかなんとか言っているんじゃないんです。欧州委員会の評価を断ったこと、これは間違いである、現在は反省していることは間違いないですね。
武部国務大臣 間違いだとは思っておりません。私が中身を詳しく承知していなかったということについては反省をしているのでありまして、我が国がEUのステータス評価を受けなかったということが間違いだというふうには考えておりませんで、なぜ間違いでないかというのは、今言いましたように、OIEの評価を受けるということの事務方の説明でありますから、それはそれでいいのではないか、こう申し上げたということでございます。
筒井委員 何かおかしなことを言いますね。
 そうすると、評価を受けるべきだったというふうには今思っていないんですか。さっきはそういうふうなことを言ったでしょう。受けるべきだったというふうに現在思っているんですか、思っていないんですか。
武部国務大臣 全く変わっておりません。よく聞いてください。EUの評価を受けないことについて、それはOIEの評価を受けるということであるならば私は結構でしょうということで、受けないことを了承したわけです。
 しかし、九月にBSEが発生して、私は事務方にEUの評価を受けた方がよかったのではないのか、こうただしたところ、事務当局の説明は、これはOIEの国際基準とEUの当時の基準は大きな乖離がある等々の、そういう説明がありました。ですから、農林水産省が間違ったことをした、こういうふうには思っておりません。
 ただ、私はここではっきり言わなきゃならないのは、そういう評価がなされているということを国民に公にすべきでなかったのかな、そういう、受けないことの問題ではなく、そういった指摘があるということを広く知らしめるということをやっていなかったというのは、私は、農林水産省の危機管理意識の甘さ、であればこそ、検査体制が甘かった、今度の問題に発展しているというふうに申し上げているわけであります。
筒井委員 EUの評価を受けるべきだったというふうには現在思っていないという今の答弁ですか。単刀直入に答えてください、あなた長々と答えるけれども。
武部国務大臣 私は、九月、BSEが発生したときにEUの評価を受けるべきでなかったのかと。私は、EUの評価の問題よりも、EUがどういうことを指摘しているかということの方が大事なんですよ。私は、評価を受けなかったことが間違っていたとは思いません。(筒井委員「委員長」と呼ぶ)
 それは、今申し上げましたように、新しいOIEの評価を受けるということで了としたので、間違っているとは思っておりません。
筒井委員 もう委員長から私、指名されていますから。
 EUの評価を受けるべきだったとさっき証言したのでまた確認しているんですが、EUの評価を受けるべきだったというふうには現在思っているんですか、思っていないんですか。今の答弁だと、受けるべきだったとは思っていないということですか。
津島委員長 武部農水大臣、率直に、簡潔に御答弁ください。
武部国務大臣 EUの評価を受けなかったことが間違っているとは思いません。しかし私は、これは受けた方がよかったのではないか、そういうことを……(発言する者あり)これは大事なところですから聞いてください。今にして言えることですよ。当時の判断として、事務方が、先ほど説明したようなことでEUの評価を受けないこととしたいと言うから、それはEUも近くOIEの評価を受けるということを言っているんですから、それならそれは、もうEUは七月にOIEの評価を受けているんです。それなら、その時点で受けなくとも、OIEの評価を受けた方、それを了とすると言ったのでありまして、私は、EUの評価を受けなければならないとか、そういうことより、それはどういう内容かということを公に知らしめるということは大事だったと思っております。
筒井委員 欧州委員会で、日本の抗議に対応して、三次にわたって報告書を書き直しました。しかし、一貫しているのは、日本でBSEが既に発生している危険性が高い、ただ発見されていないだけの可能性が高い、こういう極めて正しい指摘をしていたわけです。しかし、その報告書に対して農林省は不満で、結局断ったわけなんですよ。この断ったこと自体が、まさに農林省の見通しの甘さ、危機管理意識のなさをあらわしているんですよ。
 だから今、今後のためにはちゃんと、やったことの反省をはっきりしなきゃいかぬでしょう。今の言っているのは何ですか。受けるべきだったとは思っていないと言ったり、あるいは受けるべきだと思うと言ったり、あるいは受けた方がよかったと言ったり、全然はっきりしていないじゃないですか。そういうEUの報告、評価、これを受けるべきだったというふうに現在思っているのかいないのか、単刀直入に、イエスかノーかで答えてください。
武部国務大臣 今にして思えば、私は、受けていた方がいいということをこれまででも答弁しているんですよ。筒井先生の前でも答弁しているでしょう。
 しかし、受けた方がいいということと、間違いであったということとは別なんです、これは。間違ったことをしたとは思っていないんです。しかし、受けた方がよかったということ、間違ったことをしていないから受けなくていいということじゃないんですよ。
筒井委員 間違ったことをしていない、まずそのことが物すごい大問題ですけれども、その前に、今、受けるべきであったということは、結局最後は認めたので、このために今何分か消費しました。あなたははっきり、受けるべきだったと今までも言っているんですよ。だったら、初めからそれを認めればいいんですよ、何だかんだ言わないで。
 そして今、さらに問題発言があった。農林省で、これは間違ったことをしていない、こういう発言を今されましたね。まさにEU委員会が、日本でBSEが発生している可能性が高い、まだ発見されていない可能性が高い、こういう適切な評価をした。その後、その評価が正しいことが、三頭日本で発見されて、まさに証明されたじゃないですか。その正しい評価を拒否して、日本では発生していない、発生しない、こういう甘い見通しに立っていたのが農林省で、その間違いが証明されたわけでしょう。まさに、農林省は間違ったことをやっていないんじゃなくて、間違ったことをやった最たるものじゃないですか。
 今の発言、もう一回言うなら言ってください。それとも、撤回するんなら撤回してください。
津島委員長 武部農水大臣、率直に御答弁を。
武部国務大臣 ですから、当時、EUの評価を受けない、そういうことは先ほど言ったような理由で私は了承したわけです。しかし、EUの評価を私は受けた方がよかったのではないかと後で事務方にも申し上げましたし、私も、このことがきちっと徹底していれば危機管理意識の甘さというものは免れたであろう、そういう意味では農林水産省全体として私は間違っていた、このように思います。
筒井委員 間違っていたと最初から言えばいいんですよ。それをさっき否定するから。
武部国務大臣 いやいや、委員はステータス評価と農林水産省の対応と一緒にされるから、そこのところは誤解のないようにということを申し上げたいと思います。
 組織全体として危機管理の意識の甘かった、希薄さということについては、一九九六年当時の肉骨粉を行政指導でしたことも含めまして、EUのステータス評価についても、これは私は一九九六年時は法的規制を、EUの評価についてはきちっとこれを受けるべきであった、今にしてそのように思います。
筒井委員 その危機管理意識の薄さ、甘い見通し、それを今でさえ事務方のこととして述べておられますが、大臣自体がそうでしたね。大臣自体がその中身を詳しく知らないで断ることを了承した、このこと自体に大臣の甘い見通し、危機管理意識のなさがあらわれていますね。大臣自身もそうだったんですね。
武部国務大臣 私は、責任者としてきちっと中身を把握しておくべきであったということについては先ほど反省の弁を述べましたけれども、したがって、私が一番大きな責任者であるというふうに承知しております。
筒井委員 だから、中身もよく見ないでそういう重要な問題を了承した、このBSEの問題について極めて重要な問題を了承した、ここに大臣自身のBSE問題についての見通しの甘さ、危機管理意識の希薄さがあらわれているだろうという質問なんですよ。大臣自身も今その点は、だから甘さがあった、この点は反省されていますか。
武部国務大臣 反省しているからこそ、徹底した農林水産省の構造改革をやろう、そして過去の問題についての客観的な検証と科学的な知見というものを得るために第三者による調査検討委員会を設けて、そしてこれは公開にしているんです。もう二千ページ以上の資料を提出しております。その反省の上に立って、今最大限の努力をしているということを御理解いただきたいと思います。
筒井委員 冒頭申し上げましたように、欧州委員会に評価を依頼して、中身が不満なんで拒否して、その後再度また要請した。これは日本の国際的な関係では私は恥だと思うんですが、外務大臣、こういう日本の行動についてはどういうふうに考えられますか。――では、いいです。(発言する者あり)
津島委員長 武部農水大臣。農水大臣、もう一遍簡潔に答弁してください。(発言する者あり)田中外務大臣、答弁しますか。――田中外務大臣。
田中国務大臣 せっかくの御指名でございますけれども、私の所管じゃございませんので、いろいろな思いを……(発言する者あり)いや、今、農林大臣のことで聞いておられますので、ぜひ農林大臣からお答えをまず聞いていただきたいと思います。
筒井委員 外交上の問題ですから、国際的な問題ですから、今の答弁は問題だと思います。その点を指摘して、次に行きます。
 先ほど申し上げましたように、農林省がBSEを発生させた責任があって、被害を拡大した責任がある、今その点を申し上げました。最初に被害拡大したという点はどういう点かというと、千葉県の白井市で一頭目が発生した際に、これはBSEの牛ですから、当然に、焼却処分されるべきが当たり前なんです。それを肉骨粉に加工してしまったこと自体が大きな間違いなんですが、その間違いを犯した上に、焼却処分に付しましたといううその発表を農林省はやった。これが消費量を大幅に減退して、国民の不安感をあおって、そして行政に対する国民の信頼感を全くなくしてしまったんです。これが被害を拡大した。
 このうその発表の際も農林大臣が既にもちろん就任していたわけですが、このうその発表自体をすることは前もって知っているんですか、それとも蚊帳の外だったんですか。
武部国務大臣 私は、畜産部長が焼却したという発表と翌日の新聞を見て、そのとおりなんだろう、こう思いました。しかし、その後明らかになりまして、なぜ焼却していなかったのかということも、これは非常に大きな問題だ、かように思いまして、その後徹底的に調べてまいりました際に、やはりこれは行政上の縦割りの問題もあると。BSEを疑っていれば、えさ用にも食用としても出ていかないのが、疑わなかった、つまり敗血症という診断ミスと言っても過言でない事態がこういうことを招いた、このように思います。
筒井委員 本当に今の答弁ですと、新聞記事で知ったということですから、まさに知らなかった、大臣に一切何の報告も相談もなくてこういう発表を畜産部長が行った、こういうことになりますね。その点、確認。
武部国務大臣 私が事務当局から聞いたのは、と畜場法による全部廃棄ということの説明を聞いた次第であります。全部廃棄というのは、焼却または化製工場等、衛生的に処理するということを後で知りました。
筒井委員 そうすると、後で知ったということですね。
武部国務大臣 そのとき、九月十日の時点で全部廃棄という報告を受けたということです。(筒井委員「いや、発表の前に聞いたのか、それとも発表後に聞いたのか」と呼ぶ)発表前ですよ、それは。全部廃棄ということはですね。
筒井委員 では、発表前に聞いた。先ほどの新聞記事で聞いたというのとまた趣旨が違うのですが、発表前に聞いたというふうに、では聞いておきましょう。
 発表前に、そういうふうに全部廃棄した。では、焼却処分したんだな、焼却処分の事実は確認したんだな、こういう指示は出しましたか、あるいは確認はしましたか、大臣は。
武部国務大臣 私は、全部廃棄というのは、焼却処分または埋却、土の中に埋めるものと、北海道では全部廃棄というのは、私も畜産、酪農を多少知っておりますから、そういうふうに理解しておりました。
 十四日にわかったというのは、その後、事実関係が明らかになって、焼却処分していなかったということがわかったのは十四日の夜だったと思います。
筒井委員 全部廃棄と聞いてそれを当然焼却処分だと思った、今そういう証言ですが、そうしたらまさにこの畜産部長と同じ感覚ですよね。畜産部長も、全部廃棄と聞いて当然焼却処分に付したというふうに思い込んだ、事実確認を一切しなかった。大臣もまさに今の答弁ですとそれと同じ感覚ですね。
武部国務大臣 全部廃棄という報告ですから、全部廃棄というのは焼却ないしは埋却、こういうふうに私は思ったのでありますけれども、それはきちっとやはり把握する必要があったかと思います。
筒井委員 今の売却は失言でしょう。売却するはずがないでしょう。(発言する者あり)埋却ですか。
武部国務大臣 口蹄疫等は埋めてしまうんですね。口蹄疫などは土に埋めたりする。ですから、全部廃棄というのはそういうものだなと思いましたから、私は、焼却処分をしたんだろう、こう思いましたから。それは今委員が指摘されるように、畜産部長も焼却と発表しているわけですから、全部廃棄というのは、我々の感覚では、焼却または土の中に埋めてしまうというふうな感覚を私どもは持っていますから、ですから、畜産部長が焼却処分したと発表したのを聞いて、私は、焼却したんだろう、このように思ったということです。
筒井委員 だから、先ほども確認しましたように、まさに、あなたは、大臣は官僚の甘い見通しと言っているけれども、大臣自身が官僚と同じ甘い見通しに立っていたことが今の答弁で証明されたじゃないですか。廃棄処分は当然焼却処分だと思った、そして事実確認も何もしなかった。まさに官僚と同じ意識に立っているわけで、官僚とあなたとは違う、あなたが官僚をしかるという次元ではないことをもう一度確認しておきます。
 そして、そういうふうなまさに危機管理意識のなさ、大臣と事務方が全部共通してそうだった、その結果、消費者の不安を高めて牛肉の消費量が大幅に下がった。まさにこのために被害が非常に拡大したわけですよ。この被害の大きな原因に農林省自身がある。つまり、自然災害みたいに自然が被害を拡大したとかいうのじゃなくて、農林省という行政自体が被害を拡大した、このことは自覚していますね。
武部国務大臣 厳しく自覚している所存であります。でありますから、我々は、その後、一時的に当初段階で行政上混乱がありました。総理からも、厚生労働大臣としっかり話し合って一体的に対策を立ててその実を上げるようにという強い指示もございました。自来、私どもは、諸般の対策に全力を挙げてきているわけでございます。
 当初段階のことについては、私のことも含めて、これは深く反省しなければなりません。農林水産省全体として、厳しい危機管理意識に立って新たな対応をしていかなきゃならないということで今日まで努力しているということを御理解いただければありがたいと思います。
筒井委員 厳しく自覚してほしいと思うのですね。まさに被害拡大の張本人なんですから。
 その結果、そういう行政の行為の結果、酪農家やあるいは流通業者にどれぐらいの金額の損害を与えたか、厳しく自覚しているなら、その損害額を算出、あるいは推定でも、そういう作業をやっていますか。
武部国務大臣 私自身は詳しく調べておりませんけれども、いろいろな数字がいろいろな調査で言われていることは承知しております。それはもうすそ野まで至りますと膨大な金額だ、このように存じます。
筒井委員 自分たちが国民に与えた損害なんですから、それがどのぐらいの金額になるのか、もし本当に厳しく自覚しているならば、算出作業に既に入っているはずでしょう。今の話だと、大臣自身はやっていない。では、事務方に、農林相としてその損害額の算定を指示しているんですか、それも指示していないんですか。
武部国務大臣 そういった損害額といいますか経済的なダメージを含めて、どういう対策を立てるべきかということについて、徹底的に分析してその対策を講ずるようにということを指示しております。それは、当初からその努力をしております。
筒井委員 損害に対する対策をきちんとやるためには損害の実態を調べなきゃだめでしょうが。損害がどのぐらいに上ったのか。酪農家あるいは流通業者、焼き肉店、倒産がいっぱい出ているわけですよ。
 その対策を一生懸命やると今言いましたけれども、では、その前提となる実態は、損害額の算定にまず限定して聞きますが、何でそれを調べていないんですか。そんなのはまさに厳しく自覚していないという証明じゃないですか。
武部国務大臣 個々の肥育農家、酪農家、畜産農家、あるいはその中でもいろいろあります、廃用がどれだけ暴落しているとか、ぬれ子がどうでありますとか。そして、どういう状態になっているかということはそれぞれ統計を逐次とっております。
 また、中小企業等、幅広い影響を受けているということについては、経済産業大臣にもその経営安定対策等について要請をしているところでございます。
 今私がここで個別の問題について、どれだけというようなことを申し上げることは困難でございます。
筒井委員 そうしますと、損害額を算定するように事務方に指示したんですね。そして、今その作業をやっているんですね。
 個々の、個別の項目の数字は言う必要ありませんから、全体としてどのぐらいの損害なのか、現時点で把握している金額を言ってください。
武部国務大臣 まことに申しわけないんですけれども、額は出ておりません。それは今試算をさせておりますが、日々動いておりまして、これはお許しをいただきたいと思います。
筒井委員 では、日々動いているのは確かなんですから、どんどん拡大しているんですから、いつの時点までで幾らという、この計算をするしかないでしょう。それを近々出すということはここで約束できますか。
武部国務大臣 それは、個別のことについてはでき得るかと思いますけれども、関連するすべてのものの数字をどこまで出せるかどうかということは、今この場でお答えすることは難しいと思います。
筒井委員 私の質問を聞いてください。今この場で答えるのではなくて、この場で答えられないと言ったから、では近々それを出すことを約束できますかと。
 個別といったって、一農家とかそんなことを言っているんじゃないです。全体として、流通業者でどのぐらい、あるいは酪農家全体でどのくらいこのBSEの騒ぎによって損害が発生したか、それの数字が出せますかという質問です。
武部国務大臣 御満足いただくようなデータを提供できるかどうかわかりませんが、今試算しているものについては、後で、試算結果が出た段階でお示しできると思います。
筒井委員 その損害についての対策の問題なんですが、今野党四党で、緊急対策措置法の議員立法を準備しておりまして、もうじき提出する予定でございます。
 その一つの柱が、酪農家、流通業者に対して経営安定資金を支給するという点でございます。今まで、特に流通業者、焼き肉店あるいは牛肉店に対しては、低利融資の制度はございますが、低利の融資というのは、貸し付けるんですから返してもらうんです。それだけしかないんです。
 しかし、今回はまさに、そういう被害を発生させた責任が行政にあるんですから、国にあるんですから、ただ貸し付けるだけじゃ足りないだろう、はっきり経営安定資金を支給しなきゃいかぬというのがその野党四党の議員立法の中に入っているわけでございまして、こういう経営安定資金の支給というのは、流通業者を含めて必要ではないですか。
武部国務大臣 流通業者、中小企業者、今いろいろ経済産業省で最大限の御配慮をいただいておりますが、農林水産省といたしましては、生産農家を中心にどういう対応をやるか、廃用牛の問題でありますとか、発生農家に対する支援でありますとか、ぬれ子の暴落の問題でありますとか、さまざま、今農業団体からもいろいろな意見が出されておりますので、そういったものを検討して、でき得る限り皆さん方の要請にこたえ得るようなそういう努力はしたい、こう思っております。
 野党も法案を出すということについては聞き及んでおりますが、私自身は、このBSE対策というのは、これは政党政派が思想信条で分かれて議論すべきそういう問題じゃない、みんなで力を合わせてこの困難をクリアしていくことが一番私はふさわしい、このように思いますので。ただ、法案等について、これが基本的には立法府でどういうようなことになるのか、まだ詳しくその野党の法案等も見ておりませんし、ここで明快なお答えをすることはできかねる、かように思います。
筒井委員 政党政派の問題は関係ないでしょう、今。関係ないことを言わないでください。
 こういう損害が、今、私たちは、恐らく流通業者と酪農家合計すると二、三千億円に上るだろうというふうに推定しておりますが、こういう損害を国民に与えておきながら、では、張本人である行政は一体どういう責任をとったのか。何にも責任をとっていないのですよ。
 その関係でお聞きしますが、当時の、つまりこの問題の三頭の牛が誕生した前後、畜産部長としてまさに問題の肉骨粉の規制を担当していた熊澤前次官、この人が最近退任されましたが、この退職金が約九千万円払われている。規定どおりという回答でした。規定どおりなのかもしれません。全く減額も何もない。国民に対してはこれだけの損害を与えておきながら、その担当責任者、やめるときは農林省の事務方の最高責任者だった熊澤さんが、全く何の減額もなく退職金が払われている。
 しかも、ここで確認したいのですが、これは熊澤さんに対して、通常の俸給月額ではなくて、八%増の特例俸給月額で計算しておりますね。通常よりかさ上げした額を払っていますね。
武部国務大臣 今般の一月八日付の人事は、WTO、セーフガード、予算などの懸案について一定の節目を迎えた時期において、人事の刷新を図り、新体制のもとで今後の農林水産行政の改革を推進したいと、先ほど来委員いろいろな厳しい御指摘がございました。私もその指摘は甘んじて受けなきゃなりませんし、私自身も、当初から、このままではいけない、構造的な問題があるということで、人事の刷新を図ることとしたわけでございます。
 前事務次官の退職につきましては、刑事事件でありますとか不祥事といった非違行為に該当するものではないということから、これまでの取り扱いと同様、国家公務員退職手当法第五条の規定に基づき、勧奨退職として取り扱い、退職金を支給したものであります。
筒井委員 それは後で聞く予定ですが、時間があれば。
 畜産部長時代にやった輸入肉骨粉の規制が不十分だったから、日本でBSEが発生したのですよ。そのまさに責任者なんですよ。そして、次官になってからは、先ほど言った、事務方の最高責任者としてEUの正当な評価を拒否したり、焼却処分したといううその発表をしたり、まさにこの責任者なんですよ。その人に対して九千万という退職金を、そのまま払うどころか通常よりも八%増し、勧奨割り増しを払っている。これは国民感情に全く反するのじゃないですか。構造改革の観点から、総理、どう考えられますか。
武部国務大臣 このたびの勧奨退職の場合の退職金は、国家公務員退職手当法第五条の規定に基づいて、自己の都合の場合に比べて一定割合の加算がなされる、法的に従えばそういうことでございますので、法律の規定に従って支払われたものであります。
 また、熊澤前次官の責任の問題でありますけれども、九六年四月のWHO専門家会合の勧告を受け、直ちに農林水産省は、反すう動物の組織を用いた飼料原料について、反すう動物に給与する飼料とすることのないような指導通達等を出しました。当時の判断としては、英国からの牛肉加工品や肉骨粉の輸入を禁止していること、牛用飼料への肉骨粉の使用はほとんどなかったこと、国内においてBSEの発生が見られなかったことから、行政指導で実効が確保される、こういったことを専門家等からもいろいろ聞いてなされた、このように承知しております。
 なお、九七年三月及び四月の家畜伝染病予防法改正時におきましても、衆議院、参議院の農林水産委員会においても、今後とも指導することとの附帯決議が全会一致でなされたことによるものと承知しております。
 今にして私は、しっかり法的規制をしておいた方がよかったのではないか、率直にそう思います。しかし、当時としては、こういった判断が特定の個人の責任としてできるのかどうかということを考えますと、私は、これは組織全体としてそういった危機意識というものを持って当たるべきでなかったのかな、こう思いまして、今、厚生労働大臣と農林水産大臣の私的諮問機関でありますBSE問題に関する調査検討委員会にありとあらゆる資料を出しています。先ほども言いましたように、もう二千ページ以上の、こんな分厚い資料になっております。そこで客観的な検証、科学的な知見に基づく検討によって、私どもは、行政上の問題解明、今後の畜産、食肉衛生行政のあり方というものについて責任ある対応をしていこう、こういうことで臨んでいることを御理解いただきたいと思います。
筒井委員 今、発生責任を事実上何か否定するようなことを証言されて、熊澤次官のプラスして退職金を払ったことを正当化されましたので、そっちの方を聞いてまた熊澤次官のことを確認しますが、まさに発生責任は農林省にあるのですよ。
 九六年三月から四月に三頭の牛は誕生したのです。九五年に熊澤さんは畜産部長になったのですよ。そのころにきちんと肉骨粉の牛への給与を禁止していれば、日本で三頭は発生しなかったことは明らかなんですよ。なのに、九六年の四月に、農林省はようやく行政指導で自粛指導しただけ。自粛の指導ですよ。法的に禁止したのは去年になってからですよ。
 当時としてはやむを得なかったなんというものじゃなくて、イギリスではその十何年前に、去年より十三年前にもう禁止しているんですよ。アメリカとかオーストラリアと比べたって何年もおくれているのですよ。外国できちんとそういうふうに対応できて、日本で対応できなかった理由はないのです。それは農林省がまさに怠慢だったと言わざるを得ないわけでございまして、だから、もっと早くこの肉骨粉の牛への給与を農林省が禁止していれば日本でBSEは発生しなかったかもしれませんね。その可能性は高かったですね。この点、どうですか。
武部国務大臣 BSEの侵入防止のために、今委員指摘のように、行政指導ではなくて法的規制をしいていれば感染リスクはより低いものであったということは間違いない、かように考えます。
筒井委員 今までも認められておりますが、まさに農林省がきちんと対応していれば日本でBSEは発生しなかったかもしれない、発生しなかった可能性が高い。それを発生させた責任は極めて重いわけで、その当時の畜産部長がまさに熊澤次官なんですよ。物すごい大きな責任でしょう。我々の推定によれば何千億円も日本国民に損害を与えて、国民の食に対する不安を非常に高めた。
 この責任者に対して、もう一度総理大臣に正式にお聞きしますが、こういう次官に対して八%も割り増しして九千万円の退職金を払った、これは国民感情に反する、総理大臣の言われている構造改革の趣旨にも反するんじゃないんですか。
小泉内閣総理大臣 今いろいろお話を伺っていますと、農林水産省に手抜かりがなかったのかどうか、反省すべき点があるのではないかという点も農林水産大臣も率直に認めておられます。
 これから原因の究明、そして二度とこういうような事件が起こらないような対策をとる必要性を痛感しておりますし、当時の関係者等、そういう点につきましても、省内できちんと責任体制を明らかにし、しかるべき措置をとるように既に大臣等には指示しておりますし、そういう観点から、今の退職金問題につきましても、法に照らして施行されたと考えております。
 今後は、今までの点を反省すべき点は反省し、二度とこういうことが起こらないような対策を大臣にしっかりとってもらいたいということを強く指示しております。
筒井委員 私の質問に答えてください、総理大臣。
 こういう責任のある次官に対して八%も割り増しして、しかも九千万円という高額の退職金を支払った、これを了とするんですか。これでいいんですね。その点を確認したいんです、総理に。
小泉内閣総理大臣 責任体制等、いかにとるかというのは農林大臣に指示しております。その判断に従います。(武部国務大臣「委員長」と呼ぶ)
筒井委員 では、まあ聞くから、どうぞ。
武部国務大臣 先ほども申し上げましたように、国民からすれば、八千九百万円というのはもう大変膨大な金額と受け取られる、こう思います。しかし、先ほども御説明申し上げましたように、前次官の退職については、刑事事件や不祥事といった非違行為に該当するものではないということから、法に照らしまして、国家公務員退職手当法第五条の規定に基づいて勧奨退職として取り扱い、退職手当を支給したものでございます。
筒井委員 内閣総理大臣は総指揮者ですから、それぞれの問題は各大臣に任せているとしても、しかし、おかしなことをやれば、それはおかしいんじゃないかということは言えるわけで、そういう判断をするわけですよ。見直しを指示したり、それもできるわけですよ。
 今回のこの割り増しの退職金九千万払ったことに対しては、見直しの指示もしないで了とする、こういう答弁でよろしいんですね。
小泉内閣総理大臣 今の退職金の問題等、いろいろ農林水産大臣が判断して決めたことだと思います。どういう経緯でそういう率になったのか、私も今後、農林水産大臣と一度詳しく相談してみたいと思います。
筒井委員 その農林大臣が先ほどから何回も、反省している、厳しく自覚している、このことは述べられまして、今、農林大臣がテレビに出て安全だ、安全だと言うほど、言えば言うほど消費量が下がるんですよ。大臣自身がそういう自覚をしていますよね。大臣自身がテレビに出てしゃべればしゃべるほど消費量が下がる、これは大臣自身がそういう自覚をしていますね。
武部国務大臣 私どもは、九月、BSE発生以来、危機管理意識の希薄さに驚いた。その反省の上に立って、まず人の健康に影響を与えない全頭検査体制をしこうと、世界に類例のない検査体制をしいた上で、結果、安全を証明された食肉以外は流通しない体制になったんです。
 今筒井委員が、私がテレビに出たからどうのこうのというような、そういうことは少し失礼じゃないですかね。我々は、私自身がそういうような気持ちがあったとしても、あなたからそういうことを言われる筋合いはない。一生懸命やっているんですから。これは、国民の皆さん方にもテレビで見ていただいておりますので、打つべき手は一生懸命、誠心誠意やらせていただいている。そのことによって国民の皆さん方に安心していただける、そういう努力をこれからも続けていこうということでございます。
 今の私は……
筒井委員 今指名されました。今指名されました、委員長から。いいです、今指名されたんだから。
 武部農林大臣、今、失礼だと私に言いましたから、それを覚えていてくださいね。
 武部農林大臣の農水委員会での証言、これを読み上げます。十月十七日の答弁です。「私がテレビに出れば出るほど、風評被害が広がるんじゃないかな、こんなふうに自分自身を責めなきゃならぬ」、こういう答弁を言ったことは覚えていますか。
武部国務大臣 それは、いろいろなところでそういうような言い方をしています。それは、私どもも、所管大臣として本当に深刻な思いなんですよ。こんなつらい思いはない。であればこそ、自分がテレビに出ることによって消費が減るのではないのかと、そういう、自分を責めなきゃならないほど深刻な事態であるということを私は申し上げたつもりでございまして、御理解をいただきたいと思います。
筒井委員 仕事を全力を挙げて遂行するというのは、当たり前の話なんですよ。ほかの大臣だってみんなそうですよ。そんなの威張らないで言ってくださいよ。全力を挙げて遂行するという、こんなのは当たり前のことなんだ。私が今言っているのは、そんなことを聞いているんじゃなくて、そういう問題を起こした責任の問題を追及しているんですよ。
 それで、あなた自身が今認めたように、私に失礼だと言ったことを撤回してくださいね。あなたが農水委員会というその場所で、私がテレビに出れば出るほど風評被害が広がると、自分自身で言っているんですよ、公の場所で。それを私は、だからそれを自覚していると事実を言ったわけでしょう。自分自身が自覚していると言ったわけでしょう。そういうことを自分でも自覚せざるを得ないような状況であると今も答弁されました。
 そういう大臣が居続けることは、牛肉の消費量を回復させるためにマイナスじゃないですか。大臣自身がやめることが、牛肉の消費量を回復して国民の被害を防ぐための大前提ではないですか。それが、もう大臣自身の自覚からもはっきりしている。だから、大臣は明確に、直ちに退任すべきである、こう要求しているわけでございまして、これも、武部大臣から聞いても、おれがやらなきゃだれがやると、まあいつもそんなことを言っているだけだから、総理大臣にお聞きしますが、そういうふうな状況の中で、武部大臣を解任させた方が国民の行政に対する信頼が戻る、こういうふうには考えられませんか。それで、そういうことをやって国民の信頼を回復させようというふうには思いませんか。
小泉内閣総理大臣 今武部大臣がやめて、牛肉の消費量が上がるとも思えませんね。
 私は、これから、このような狂牛病等、食品の安全に大きな悪影響をもたらすような事件を出さないように、今までの手抜かりはどういう点にあったのか、また反省すべき点はどうなのかという点を真剣に点検、調査し、二度とこういうような問題が起こらないような体制をとることも責任の一つのとり方ではないかなと思っております。
筒井委員 終わります。
津島委員長 この際、池田元久君から関連質疑の申し出があります。菅君の持ち時間の範囲内でこれを許します。池田元久君。
池田(元)委員 民主党の池田元久でございます。先ほどからの論議は、やはり行政の信頼性の問題があると思います。私は、金融行政、とりわけ金融行政の信頼性についてお尋ねをしたいと思います。
 さて、きのう、東証株価指数、TOPIXは、終わり値で、バブル崩壊後の最安値を割り込んで、安値を更新いたしました。これは、不良債権処理に対する先行き不透明感から銀行株が売られたことが大きく影響していると報道されております。株安は銀行の経営を直撃し、金融システムの不安を増幅させます。
 小泉総理大臣は、暮れの二十七日夜、二月、三月危機と言われるが、危機を起こさせない、そのための非常手段は必要に応じて講じると述べたと言われております。非常手段というせっぱ詰まった表現ですが、総理の言う非常手段とは何か、お答えをいただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 私が非常手段をとると言ったという覚えはございませんが、金融危機を起こさせないようにするためにあらゆる手だてを講ずるという発言はしたことはございます。
池田(元)委員 あらゆる手段とか、そういう意気込みを示した発言を繰り返しされておりますが、余り具体的な内容が聞こえてこない。
 金融機関の経営では、融資が焦げつくおそれはないか、いわゆる資産査定を厳格にやっているかどうか、また、焦げつくおそれのある融資に貸し倒れに備えて十分な引当金を計上しているかどうかが一番大事な問題です。私は、不良債権処理が進まない大きな理由は、厳格な資産査定と十分な引き当てが行われていないからだと思います。厳格さと十分さがありません。
 御承知のように、九月に倒産いたしましたマイカルの資産査定は、債務者として、破綻懸念先ではなく、今後の管理に注意を要する要注意先になっていました。また、先月破綻いたしました青木建設も、主取引銀行は破綻する一週間前まで要注意先としておりました。
 お手元に資料が行っていると思うんですが、この新聞の資料によれば、大手七行で、二〇〇〇年度上期に倒産した融資先のうち、一年前の査定で破綻懸念先とされたのは三〇%足らず、残りの七〇%以上は正常先または要注意先とされていたわけです。
 内閣府がことしから出した経済財政白書でも、図表で同様のことを示しております。「多くの倒産企業は直前まで不良債権と査定されず」と見出しをつけています。金融庁ならこういう図表は出さなかったと思うんですね。内閣府を褒めてあげたいんですが、当たり前のことだから、前進したと言うべきではないか、そんな感じがいたします。
 いずれにしても、厳格さからほど遠い資産査定をやっていると言わざるを得ません。小泉総理大臣に改めてその点をお尋ねしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 今御指摘のように、要注意先が破綻懸念先になったりあるいは実質破綻したりという点が現実に起こってきておりますので、マイカルのあの破産以降、より厳格な審査が必要ではないかと。風評によって要注意先が別の、破綻懸念先にもなり得る状況も見られます。あるいは、今までの検査等によってよく見られなかった点、株価の動向等あるいは諸般の情勢というものを加えながら、より厳格な資産査定が必要ではないかということで、そういう点も踏まえて、今日では、今まで、過去、一年前に比べますと相当厳格な資産査定体制ができ上がってきたと思います。
 今後、今御指摘の点も踏まえまして、金融危機を起こさないように、より厳格な資産査定、十分な引き当て、情報開示、こういう点を徹底させまして、金融不安、混乱を起こさないような手だてを講じたい。
 そういうことを言いますと、具体策がないじゃないかという御指摘でありますが、個別の企業について、総理が、この企業は危ないとか、この企業に対してはどういう手だてをとるということは言うべきものではないということを御理解いただきたいと思います。
池田(元)委員 総理は、十月の予算委員会でも、市場から、日本の金融機関と当局が、より正確に言えば疑念を持たれている、そうおっしゃったわけですが、今の発言はそれを受けてといいますか、これから厳格な資産査定、十分な引き当てをやるというふうにそこは受けとめます。しかし、それが果たして実行されるかどうかは、我々はしっかりと見ていきたいと思います。
 私は、金融行政の信頼性にかかわって、きょうは森金融庁長官の発言を取り上げざるを得ません。
 昨年九月十八日、総理大臣官邸で金融問題の勉強会が開かれました。出席者は、総理大臣、樋口内閣特別顧問、森金融庁長官、KPMGフィナンシャルの木村剛代表。開かれたこと自体、総理、これは間違いないですね。
小泉内閣総理大臣 いろいろ情報交換、さらに、今後注意すべき点、反省すべき点、意見交換をいたしました。いわゆる勉強会と言ってもいいでしょう。今後、今までのいろいろな専門家の御指摘を踏まえて、疑念を持たれることのないような対応をしていきましょうという場を設けたことは事実でございます。
池田(元)委員 専門家の一部では、その九月十八日ごろを境に金融行政をはっきり転換すべきであったという意見もあります。
 それとはちょっとかかわりなく、お手元に資料が行っていると思うんですが、出席したKPMGフィナンシャルの木村剛代表が書きおろした論文のコピーです。
 それによれば、この席で森長官は次のような発言をした。「問題企業はすべて破綻懸念先にたたき落とす」「マイカルのような問題企業は破綻懸念先に落とす。それが私の信念です」「首相、私はやります。金融庁は絶対やり遂げます」、森長官はこのように発言し、驚いた木村氏が執拗に森長官の意思を確認すると、森長官の主張はいささかも揺るがなかった。最後に、「金融庁がやると言ったらやります」と言い切ったと。
 以上が森長官の発言で、私は木村氏に直接会って、この発言を確認しております。お聞きになっていた総理からも発言を確かめたいと思います。
小泉内閣総理大臣 こういう問題については、信義の問題があります。この場のことは、外に話すか話さないかというのは個人的な信頼関係にも及ぼすものでありますし、私は、だれがこう言った、ああ言ったということについて責任を持てませんし、ともかく金融不安を起こさないような、国民の金融機関に対する信頼を損ねないような、そして不良債権処理が進むような、そういう対策をしっかりとろうということを確認し合ったのであって、どういう具体的な、個別な発言があったということは、私は参加者は言うべきではないと思っております。
池田(元)委員 別にこれは、私的な発言でも私的な会合でもございません。総理大臣官邸で行われた会合です、番日誌にも出ているようですが。しかも、金融行政の責任者の、耳を疑うような発言。これは事柄からいって違うんですよ。そんな私的なことを一々せんさくするようなことは私もいたしませんよ。木村さんがどうしてこれを書いたか、これは大変問題だから書いたんですよ。そこを総理は理解していただきたいと思います。総理も御存じのように、木村さんは金融問題の的確な分析で知られて、総理が勉強会に呼ばれたのもよく理解できる、そういう人物です。
 それから、森長官については、金融庁の特別検査を前にして、昨年十月二十四日、大手銀行の幹部との会合で行った発言、検査に手心を加えるものではないかと報道され、国会で取り上げられました。まあ、少なくとも検査の厳格さに疑問を抱かせる発言です。
 森長官は国会審議や記者会見でこう言っていますね。「検査は対象企業を破綻懸念先に落とすことが目的ではない。」全く官邸での会合と逆のことを言っている。それからもう一つ、「銀行がしっかり引き当てをするんだということを宣伝してください。」これはどっちの立場か。こういったことは認めております。検査する側が検査される側に言うべきことではない。
 要するに、この二つの発言、森長官は、一方で総理大臣には、「問題企業を破綻懸念先にたたき落とす」と言いながら、他方、銀行に対しては、「破綻懸念先に落とすことが目的ではない」と正反対のことを言っています。森長官の真意は何なのか、まさに総理大臣として、任命権者として、責任者として聞きたいと思われると思うのです。総理がだまされたのじゃないか、こういうことを言う人もおります。いかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 私は、森長官が何を言っているか存じておりません。
池田(元)委員 それは信じられませんね。九月十八日、いろいろな公刊された資料にも書いてあって、堂々と官邸でやったわけですから、ちゃんと記憶されていると思います。
 木村氏の言うように、この二つの発言は、総理、総理への公約はポーズだけで、問題企業の解釈論でお茶を濁して、わずかの企業を犠牲にして当座しのぎ、問題先送りをしようと考えていると、こういう見方が私は当たっているのではないかと思います。そして、この森金融庁長官の発言は、これは大変金融行政の信頼性を失わせるものだと私は思います。
 きょう、森昭治金融庁長官の出席を要求しておりましたが、出席しておりません。委員長にお伺いしますが、どうして出席させないのでしょうか。
津島委員長 理事会で協議した結果によるわけであります。
池田(元)委員 どういう理由で出席させないんですか。
津島委員長 従来からの慣例については、池田委員もよく御存じだろうと思います。
池田(元)委員 従来からの慣例、こういうものを改めていくのが国会の改革ではないんでしょうか。
 金融庁長官が本人でしかわからないこと、それを国会で我々は聞くし、また、説明する責任があるわけですよ。出席を拒否する理由なんか全くありませんよ。
 そして、では、もう一つ申し上げます。森長官の言動には、さらに重大な問題があるのではないかと思います。
 関係者によれば、森長官は、東京海上が朝日生命を吸収合併する問題について、東京海上の社長と副社長を呼びつけ、東京海上は朝日生命との合併から逃げられない、まあここまでは、そういうことを言うかもしれません。逃げるとすれば新しい保険商品を認可しないという発言をしたと言われております。これは、裁量行政を超えて強要ではありませんか。権限をかさに着た恫喝と言ってよいと思います。
 これだけではないですよ。いっぱい話が聞こえてきますよ。
 最近大きな問題となったダイエーの再建問題。森長官はダイエーの再建問題でも、協力を渋る銀行トップに対して、企業の倒産ということまで言及して同様の恫喝をしたと言われております。
 以上の森長官の言動からいえば、森長官は金融庁長官としての適格性を欠いているのではないかと思いますが、いかがでしょうか、総理。
小泉内閣総理大臣 私は、そういう発言がどこでなされたかも知りません。また、委員会の運営について、だれを呼び、だれを呼ぶなとも私は関知しません。
 よく議して決めていただき、本人に、そういう発言があったかどうかというのを、私は全くわかりませんから、今初めて聞きましたから、その点について何か論評をするという気はございません。しかし、どこでそういう発言がなされたかというのは御本人に聞いてみなきゃわからない点もありますし、私は、今この場で森さんの発言について、どうだこうだと言う立場にはないと思います。
池田(元)委員 今総理の言ったことは、半分はそうですが、半分は違いますね。
 要するに、わかると言ったのは、本人に聞かなきゃわからないとおっしゃいましたから、これは極めて常識的なことですね、本人に聞かなきゃわからないんですから。しかも、これは一民間人ではない、今一番大きな問題を抱えている金融行政の責任者なんですよ。それが、自身のこういう問題について説明する責任もあるし、我々は、今総理がおっしゃったようにわからないんですから、聞く必要がある。これはぜひお願いします、委員長。
津島委員長 理事会で協議をいたします。
池田(元)委員 いや、そんな悠長な話ではないですよ。ここで出席をする方向を出してくださいよ。
津島委員長 理事会で協議をさせていただきます。
池田(元)委員 もう一度聞きますが、総理大臣、国会で決めてくださいと他人任せでありますが、あなたも長い政治生活で百も承知ではないですか。総理大臣は、同時に自民党の総裁でしょう。党の最高責任者ですよ。今までいろいろ、党の総裁の判断で国会が動いたこともありますよ。あなたがわからないなら、自民党に、進んで応じるべきだと言えばいいのではないですか。
小泉内閣総理大臣 私は、理事会の様子も知りませんし、委員会というのは、予算委員会だけじゃなくてもいろいろな委員会があるわけです。どこで出て、どこで話すかというのは、私、一々そこまで目配りできませんから。立法府の場には余り行政府は口出しするなという、そういう意見もございます。よく理事会で協議して、国会の対策はいろいろあるわけですから、その方でよく検討して決めていただきたいと思います。
池田(元)委員 そんなことないですから。それはいつもこういう問題で、証人喚問とかなんとか、逃げるときに言うせりふでございまして、実際は党の総裁というのは偉いわけですから、幹事長、国対委員長に指示すればいいわけです。そんな、もう実態としておわかりなのにそういうことをおっしゃるというのは、私にはちょっと理解できない。
 いずれにしても、こういう問題がいろいろあるにもかかわらず、国会は森金融庁長官の出席を要求しても呼ばない、こんなことがあっていいのかと私は思います。何とか善処してくださいよ。
津島委員長 理事会でよく協議をさせていただきます。(池田(元)委員「ちょっと、理事、協議してくださいよ、審議できませんよ、こんなことでは」と呼ぶ)
 池田委員にも申し上げますが、今の御意見は理事会で私どもも再々伺っておりますので、よく協議をさせていただきます。
池田(元)委員 それは津島委員長もよくわかっていらっしゃるので、今の私の質問も聞いていらして、これは呼ばなきゃおかしいんですよ。ここで、理事の皆さんいらっしゃるわけですから、方向ぐらい決めてくださいよ。
津島委員長 理事会でよく協議をいたします。
 池田元久君、質問を続けてください。
池田(元)委員 私は、こういう金融行政の責任者と職制上そうなっていますよね、総理大臣。この金融行政の責任者のたび重なる発言、言動、これだけ問題が出ている。しかも、あらかじめ私が要求をしておりました、出席を要求しておりました。しかも、この前、理事選任のときに、津島委員長にも私は大きな声で言いましたよね。真剣にこれは対処して呼んでいただけるものと思っていましたら呼んでいただけない。しかし、時間もございますので、理事会の方で協議して、単なる協議ではなくて、次回必ず呼ぶ、そして森金融庁長官は説明責任を果たす、その上で進退を考えていただきたいと私は思います。
 それから、時間がありませんので……(発言する者あり)担当大臣についてはこれからまたいろいろ聞かせていただきます。
 一つペイオフの解禁についてお尋ねをしたいんですが、ペイオフを再び延期することはないか、総理にお尋ねしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 予定どおり、四月実施いたします。
池田(元)委員 一部に預金保険法百二条の特別資金援助の規定を適用して預金を全額保護するという案が浮上したと言われております。これは、制度としてのペイオフを解禁するが適用は見送るということでありますが、こうした考えはないと思いますが、改めてお尋ねしたいと思います。
柳澤国務大臣 ペイオフを解禁した後のセーフティーネットということで、危機対応のための措置が定められていることは御案内のとおりであります。
 その中の一つとして、預金を全額保護するという措置をとり得ることにもなっておりますが、これは、今申しましたように危機対応、危機とは何かといいますと、法律の条文ですとこれは信用秩序、それは国及び地域経済、両方ありますけれども、国及び地域の信用秩序に、そういうことをもしやらないとしたら極めて重大な支障が生ずる、こういうような場合に、今申した預金の全額保護を含めて幾つかの措置がとり得ることになっているというわけでありまして、これはあくまでセーフティーネットとしてしつらえられている制度であるということでございます。
池田(元)委員 セーフティーネットとしてあるんだという説明ですが、これは適用しないんですね。
柳澤国務大臣 今申したような法令の規定になっておりますので、法令に基づいて、その要件が満たされたときにはそういうことを検討するということになるわけです。
池田(元)委員 ペイオフは国民の皆さんの関心が極めて高い問題ですから、今みたいなふうに、単なる規定があるという話か、あるいは規定があるから考えるというのか、そこをはっきりしてくださいよ。
柳澤国務大臣 規定に照らして、その事態が規定に適合する事態かどうか、これを判断して、もしそれに適合するということであれば、そこに定められた危機対応会議の議を経ていろいろな措置が検討される、そして、それがなすべしという決定が行われればそれが発動される、こういうことに法律上なっているわけです。我々は法律を適正に運用するということに尽きます。
池田(元)委員 さすが官僚出身の大臣であります。
 これは大変関心の高いことで、しかも、目前に迫っております。ペイオフをやるのかやらないのか、極めてあいまいです。
 総理、総理や多くの人は、関係大臣といいますか、ペイオフは予定どおりと。竹中さんもそうだし、そうですよね。しかし、今の話だと、こういう規定があるから適正に運用するという。これは戸惑いますよ。総理、最高責任者としてどうなんですか。
小泉内閣総理大臣 予定どおり実施します。
池田(元)委員 わかりました。非常に明快だと思いますが、しかし、今総理の発言は明快ですが、柳澤さんの答弁は、適正に運用すると、余地を残しているわけであります。これは金融行政の最高責任者ですから、総理の言を私は了といたします。ただし、今出ているように、制度としてペイオフは解禁するが適用は見送るという、まさに骨抜きを行わないように申し上げておきたいと思います。
 それから、柳澤さんについてちょっとお尋ねをしたいのでありますが、柳澤さんは、銀行の健全度を示す自己資本の状況についてたびたびおっしゃっていますが、現在どうなっているのか。大手行について端的にお答えをいただきたいと思います。
柳澤国務大臣 十三年九月末に決算が行われ、決算の状況について発表がなされておりますが、大手行の集計ベースで申し上げるわけですけれども、十三年九月末の自己資本比率は、BIS規制の定めるところに従って計算をいたしますと一一・一%ということになっております。
池田(元)委員 次に、速水日銀総裁にお尋ねしますが、日本の大手行は、国際基準、米国と同様の基準で算出するとどうなりますか。
速水参考人 お答えします。
 私はかねてから、我が国の金融機関の資本基盤の強化の必要性について三年ぐらい前から申してきたことでございます。しかし、その趣旨は、目先の話ではなくて、金融機関の中長期的な課題について申してきたつもりでございます。
 中長期的に見ますと、我が国の金融機関は、内外市場からの信認を回復するために収益力をさらに向上し、それによる資本基盤といいますかコアキャピタルといいますか、そういうものをさらに強化を図っていく必要があるというふうに、それが基本的に重要なことだと考えております。
 数字につきましては、ここではもう言わせていただきません。
池田(元)委員 速水総裁、余り遠慮なさらなくていいんですよ。
 十一月二十一日に記者会見でおっしゃっています。これは一回だけではないですね。米国と同様の基準で、公的資金を除き、繰り延べ税金資産について限度を設けて一年分にするとかの米国式に試算すると、十三年三月末で一一%となっているものが七%となると、総裁ははっきり言っているわけです。
 これはもうお認めになりますね。
速水参考人 そのときの数字については、私どもの方で計算した上で御報告申したつもりでございます。
池田(元)委員 私も前に予算委員会で資料をまとめて、自分で試算して明らかにしたんですが、主要行は押しなべて公的資金や繰り延べ税金資産で資本がかさ上げされております。
 柳澤金融大臣は、一一・一%、九月期が一一・一%。柳澤さんは自己資本の問題とかいろいろな問題について発言されておりますが、一部、大本営発表だと言う人もおります。
 この一一・一%を算出した、日本の大手銀行の自己資本、健全度を示すものでありますが、内容は非常に脆弱ではないか。いかがでしょうか。
柳澤国務大臣 今手元に数字を持っているわけではありませんけれども、池田委員御存じのとおり、一一・一%の自己資本比率を出す場合の自己資本というものは、ティア1、基礎的部分とティア2、付加的部分とから成り立っているわけです。ティア1は、本当の株主資本を初めとする資本、その企業の資本、それに、我々が先般、金融機能早期健全化法に基づいて注入をいたしました公的資金による資本、加えまして、今先生御指摘の繰り延べ税金資産というものがこの内容を構成しているわけであります。
 しかし、そういうもの全部トータルして私が今言ったような数字になるわけでありますけれども、この数字もすべて公開しているものでございます。そして、この公開された数字がそこに積算されているルールは何かといいますと、これは、バーゼルの銀行監督委員会、通称BIS規制とされる国際基準でございまして、それに沿って積算、算出されているものだということを申し上げる次第です。
池田(元)委員 十一月二十日の経済財政諮問会議の集中審議で、柳澤金融担当大臣が、今おっしゃったように、大手行の自己資本比率は二けたということをおっしゃった。それに対して速水総裁は、自己資本はそういうふうに二けたというが、税金前払い分を勘案すると核の自己資本はその半分ぐらいではないか、このように言ったという。総裁は、その翌日の記者会見でも先ほども申し上げたようなことをおっしゃっているわけですから、これは、柳澤大臣、どっちが本当なんですか。
 私は、もう柳澤さんにもたびたび言っておりますが、コアキャピタルといいますか、本当に自力で調達した自己資本ですぐ使えるものといったら、そういうかさ上げされた部分を全部除かなくてもかなり除いて考えなければいけない、こういう考えですよ。ちょっと見方が甘いんじゃないですか。
柳澤国務大臣 国際的な活動をする銀行の健全性をいかに確保するかということで、バーゼルで開かれます銀行監督委員会がもろもろの検討をしておることは御案内のとおりです。現在もまだ、例えば自己資本比率の勘定の仕方なぞもどうすべきかということについては検討中のものもあることは、先生、専門家として既に御案内のとおりでございます。
 そういう中で、日銀総裁がおっしゃっているのは、今まさに池田委員が言われるように、本当の、自前の、いつでもそこがいろいろな負担を受けて立つ、いわばアンエクスペクテッドロス、予測しがたい損失に備えていつでも覚悟をした資金とするものがあるというのがいいではないか、こういう考え方をいたしておるわけでございまして、そういうものはどういうふうにして積み上がっていくかというと、もちろん、第三者割り当てその他、増資というようなこともあるんですが、基本的には、業務の営々たる営みを通じて上がってくる収益、それによって積み上げられるところの剰余金、そういうものこそが本当のコアキャピタルなんだ、これはもう言をまたないわけです。
 しかし、今言ったいろいろな国際的に活動する銀行のありようとして、それぞれの専門家が練りに練って、現在のところ使われているバーゼルの銀行監督委員会の自己資本比率規制というものは、今言ったその他のものも含めて八%を上回るということが必要ですねという合意が成り立っているということで、我々は、そのルールに従って今銀行監督を行っているということであります。
 なお、池田委員、ちょっと突っかかって申し上げるようですけれども、あなたも、そんな、全部とは言わぬまでもその一部はもうというようなことで、数字は言えないわけです。だから、専門家がバーゼルに集まって、こういうことにしようという合意ができ上がっているというわけで、まあ目分量でこのぐらいはコアキャピタルにプラスしてもいいわなんというようなことでは国際的な取り決めにはなり得ないわけでありまして、我々は国際的取り決めに、そういう意味で決められたものに従っていくということに尽きます。
池田(元)委員 答弁を簡略にお願いします。
 一言で言えば、やはり実体から、実質から物は見なければならないということを申し上げたいと思います。
 さて、改革先行プログラムで固まった特別検査というのが今盛んに言われておりますね。柳澤大臣がではなくて金融庁の中の検査局や内閣府の主導で決定されたと言われております。そこにはこう書いてあります。要注意先の上場企業について十分な引き当てを確保するため、主要行に対して要請する云々というくだりがある。これは、これまで引き当てが十分でなかったことを認めていると思います。
 要するに、金融再生委員会初代の委員長、それから去年の暮れからさらに委員長とずっとやっていらっしゃいますが、柳澤金融大臣と森金融庁長官の進めてきた金融行政をいわば否定したものと言っていいのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。端的にお答えいただきたいと思います。
柳澤国務大臣 簡潔にお答え申し上げます。
 要するに、私ども、金融の破綻というものがどういうふうに起こるかということを考えるときに、一つは債務超過ということで起こるわけです。もう一つは流動性の観点で、資金繰りに困窮して破綻が起こるという問題があります。
 我々が今まで随分論議してきたのは、自己資本のレベルでもって債務超過に陥らないで破綻が起こらないようにしなきゃいけない、こういうような話だったわけですが、最近になりまして、先ほど総理が言及されましたマイカルの事案、こういう事案を我々突きつけられまして、これは本当に流動性の問題から危機が起こり得る、これは貸出先の問題だったんですが、その反映として金融機関も同じような問題が起こり得る。これに一体、引き当て基準なりあるいは債務者区分なりの基準なりがどうこたえていったらいいか、こういう問題を突きつけられまして、そのいわば一応の答えとして特別検査、そういうスキームをしつらえさせていただいた、こういうことでございます。
池田(元)委員 わかりやすい答弁が特に金融行政には必要ではないかと思います。
 総理がいらっしゃいますが、日本の金融当局は市場から疑念を持たれていると総理が予算委員会でおっしゃった。あなたはこれまで再三再四、銀行の資本状況は十分だ、不足していない、予算委員会での答弁でも、厳正な資産査定をやっていると言ってこられました。もちろん、その前に九九年三月の公的資金注入のあの誤りはあるんですが、総理からも疑念を持たれている金融行政をやってきた。日銀総裁からも一番大事な銀行の健全度について反論されて、さらにまともに反論できない。諮問会議では、何でそんなことを言うんだ、何で資本の質まで言うのかと、中身で反論しないで、そういうことを年上の日銀総裁におっしゃったようでありますが、あなたは、これまでの金融行政を総括して、私は、反省すべきところが多い、責任を感じるべきだと思いますが、どうでしょうか。
津島委員長 柳澤金融担当大臣。簡潔にお願いします。
柳澤国務大臣 私は、責任を感じながら、その責任を全うせんがために日夜仕事をさせていただいておるわけです。
 なお申し上げますと、日銀総裁との応酬は、日銀総裁は、それまでは要注意先の引き当ての問題を言われたんですよ。そうして、御指摘の会合で初めて資本の質を申されたんで、その間のいきさつについて、私、ちょっと日銀総裁の真意をただした、こういうことです。
津島委員長 池田君。簡潔に。
池田(元)委員 はい。
 森金融庁長官の問題、そしてまた責任者ともいうべき柳澤金融担当大臣の金融行政について、引き続き厳しく責任を追及していくことを申し上げて、質問を終わらせていただきます。
津島委員長 これにて菅君、筒井君、池田君の質疑は終了いたしました。
 次に、達増拓也君。
達増委員 小泉総理は、去年の総裁選挙のころ、そして総裁・総理就任直後、派閥政治の打破ということを強く訴えておられたと思いますけれども、今回の副大臣と政務官の人事については、もう典型的な、伝統的な派閥順送りの人事がなされたと思いますが、それはなぜでしょうか。
小泉内閣総理大臣 そう決めつけられても困るんですけれどもね。私は、自民党という大きな世帯の政党、衆議院二百五十名、参議院百数十名、全部よく存じているという状況でもありません。私がやるべきところ、党の幹事長初め要所要所の方に任せるべきところ、よく心得てやっているつもりでございます。
 そういう点からすれば、適材適所、そういう人事をしてくださいということでありまして、別に派閥順送りとかそういうふうに私は受けとめているわけではございません。
達増委員 きのう、自民党橋本派の野中事務総長が副大臣や政務官に任命された同派の議員を集め、今回の人事は党や派閥が推した人が選ばれた、政策グループの代表として恥ずかしくないようしっかりやるようにと激励したということだったので伺いました。
 さて、派閥の問題からスタートしたのは、いわゆる業際研事件、加藤紘一元自民党幹事長事務所代表事件、それから橋本元総理秘書のやみ献金疑惑、こうしたいわゆる口ききに関連する政治と金の問題について、その本質を理解するために派閥というものが一つキーワードになると考えたからであります。
 まず、業際研事件でありますが、業際都市開発研究所、その口ききビジネス、逮捕者が出たわけでありますけれども、逮捕された尾崎取締役、鹿野道彦議員元秘書ということでありますけれども、その秘書時代の人脈をもとに口ききビジネスを展開していた。
 この業際研は一九九四年に設立されております。九四年、鹿野事務所をやめて、尾崎氏は業際研に入っていくわけですけれども、九四年は、鹿野議員は自民党を離党し、みらいから新進党へと移っていっていたわけであります。離党前には自民党三塚派に所属していました。つまり、秘書時代の人脈をもとに口ききビジネスを展開したということは、その自民党三塚派人脈をもとに口ききビジネスを展開したということであります。実際、業際研のほかの主要メンバー、元三塚派議員秘書、仙台で業際研と協力関係にあった会社社長も元三塚派議員秘書だった人であります。
 今回逮捕者が出たのは茨城県であります。なぜ茨城県なのか。これは石岡市発注、日立製作所受注の工事にまつわる口ききビジネスで逮捕者が出たわけでありますけれども、この尾崎氏、業際研として九六年ごろから茨城県県内で複数の首長と繰り返し面会を重ね、さまざまな建設工事で暗躍していたということなんですけれども、この九六年、茨城県選出の三塚派議員が通産大臣をやっているんですね。その大臣の住所は日立市。
 尾崎氏の業務日誌には、日立製作所あるいはそれ以外の機械メーカーの受注工作の記録も載っておりまして、これはやはり、そういう派閥の総合力を背景にしていなければそういうことはできなかったのではないかと思われるわけであります。
 議論の公平のためにもう一つ事実をつけ加えますと、尾崎氏自身、もう亡くなった茨城県選出の国会議員の秘書を務めていたこともあって、尾崎氏自身が茨城県につながりがないわけではない。しかし、大日立製作所などを向こうに回して、あれだけ大きいことができたかどうか、できるためには、それなりの背景がなければできないと考えられるわけであります。しかも、この業際研の活動というものは、東北、北関東だけではありません。中国、四国など西日本まで含め、全国展開されていたわけであります。
 これはまさに派閥の総合力を背景にそれだけのビジネスが展開されていたと考えられるわけでありまして、よく尾崎容疑者、鹿野議員元秘書尾崎容疑者と言われるわけでありますけれども、これは的外れな言い方でありまして、むしろ、三塚派が生んだ集金マシーン、業際研の取締役尾崎容疑者と呼ぶ方がより的を得ているかと思います。
 そこで、三塚派、そして森派とやってこられて、森派の代表も務めておられた小泉総理に伺いたいんですけれども、小泉総理であれば、この業際研の関係者に何人かお会いになったこともあるんじゃないかと思います。そして、こうした全国展開の事情についても御存じのところがあるんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 その尾崎氏という人物が鹿野さんの秘書であるということは存じておりましたけれども、私は、話したこと、まあ声をかけたことぐらいはあるかとも思いますけれども、知りませんでしたね、そういうことをやっているということ自体も。全然関係ありません。
達増委員 尾崎氏一人については否定されましたけれども、それ以外の人と会ったことについては否定されませんでした。
 私は、尾崎氏の刑事的な事件の追及をしているわけではなく、なぜこういう政治と金の問題が起こってくるのか、その背景にどういう問題があって、そこを立法府としてどう直していけば今後こういうことがなくなるのかという問題点から関心を持っておりますので、業際研というのはこの尾崎氏が一番すごい人じゃないですよ。もっとすごい、A氏と言っておきましょうか、そういう人もいるわけでありまして、その辺のことについては、これは三塚派の首脳だったM議員の元秘書A氏とでも申しましょうか。したがって、三塚派、森派の幹部だった皆さんにいろいろお話を伺わなければ、予算委員会としてもこの問題について全貌をとらえることができないんじゃないかと考えているわけであります。
 それから次に、加藤紘一元外務省というより、やはり加藤紘一元自民党幹事長と呼ぶ方がしっくりするわけでありますけれども、その事務所代表の佐藤三郎氏、山形県内で地元建設会社七社ほど取り巻きをつくりまして、さらにその周辺十社ほどのシンパを固めて、市町村の首長、県の幹部、そして国の役人、そうしたネットワーク、システムをつくり上げて、自由自在に談合介入をして、好きなように金集めができるシステムをつくり上げてきた。
 これについて、やはり加藤元幹事長にぜひ予算委員会に出てきていただいて、その実情を伺いたいと思います。参考人として来ていただくのが適当と思いますが、委員長、いかがでしょうか。
津島委員長 理事会で協議をいたします。
達増委員 先ほどの業際研というものが派閥政治、派閥構造の中から生まれてきたとすれば、この佐藤三郎氏の強引な金集めというのは、派閥をつくり、派閥を維持し、その派閥を運営していくためにそういう無理な金集めが行われたのではないかと思われるわけであります。
 佐藤三郎氏が加藤事務所に入ったのは九三年、翌年YKKを中心とした政策集団が旗上げされております。YKK、これは小泉総理もメンバーでありますが、当時、竹下派、経世会支配に対抗するんだと、そういう金権腐敗政治を打破するためにYKKは華々しく旗上げされたわけですが、逆説的なことでありますけれども、その筆頭格であった加藤元幹事長、自分の立場を維持していくために無理な金集めに頼らなければならなかったということであります。
 九二年まで加藤事務所は二億円程度の政治資金を集めていたんですけれども、佐藤三郎氏が事務所に入った九三年からは、九三年、三・三億円、そして九六年から二〇〇〇年までは五年連続で四億円以上。四億円以上のお金を集めて、それを政治家個人が使い切れるものかどうか。その間、宏池会は宮澤派から加藤派へと代がわりしておりまして、それを可能にしたのがこの佐藤三郎・加藤事務所代表の金集めだったと思うわけであります。
 総理を目指すには佐藤代表を切らなければだめだという声は自民党内にもあったと聞いておりますけれども、やはりこれも小泉総理に伺います。いわば政治改革の盟友、金権腐敗政治打破ということで一緒にやっていた加藤元幹事長、直接聞ければいいんですけれども、やはり派閥の長としての無理なお金集めということで苦労していたのかどうか、その辺の事情は御存じなかったでしょうか。
小泉内閣総理大臣 私は、加藤さんとはよく、親しい間柄でありますが、その佐藤三郎氏という方とは一度も話したことがありませんし、秘書をしていたということも知りませんでした。どういうことをしていたのか、会ってそんな話はしませんしね。
 しかし、政治家はだれでも資金集めには苦労していますよ、私も含めて。みんな、資金集めに苦労しているんですね。額の多少にかかわらず、人に資金を提供してくださいと言うのは、言いにくくて嫌ですよ。できたら、そんなことを言わないで潤沢な政治資金が集まればいいなとみんな思っているんじゃないですか。しかし、そういう苦労をして政治活動をしなきゃならないのは政治家の宿命。
 選挙も、本来だったら、選挙なくて議員になれればみんないいと思っているでしょう。しかし、選挙も、本当にきつくて、人に頭を下げて、気持ちいいと思ってやっている人はいないと思いますよ。やはり社会をよくしようということで、乗り越えなきゃならない壁を乗り越えて、政治家になって抱負を国政に反映させようということでやっているんだと思います。
 しかし、そういう中で不正なことはあってはならない。また、そういう金銭にまつわる疑惑を持たれないような活動、どうあるべきかというのは、これから、今回のいろいろな不正にまつわる問題を参考にしながら、あるべき姿を今国会でも議論していただきまして、一つのいい方向を出せればなと思っております。
 実際のところ、加藤さんがどういう活動をしていたのかというのは、ましてや資金活動等においては、私は全く存じておりません。
達増委員 派閥の割拠をなくすための中選挙区制から小選挙区制への選挙制度改革、同時に、政策本位そして政党を中心とした選挙をやっていくということでの政党助成金制度、進歩はしているんだと思います。しかし、そういう政党を中心とした政策本位の選挙、そういう政治をつくっていこうとする中に、いまだに派閥というインフォーマルな政治システムがあることで、使わなくていいお金、かけなくていいコストがかかってしまうんではないか、そこが問題だと思います。
 重ねて、加藤紘一元幹事長御本人に伺いたいところでありますが、中谷防衛庁長官に伺いましょう。
 中谷防衛庁長官、加藤派、加藤さんのそばにいていろいろ苦労しているところを見ていると思いますが、加藤さんがそういう金集めに、派閥の維持のために苦労していたとか、あるいは派閥の若い人を面倒見るためにその関係者に地元で仕事を優遇していたとか、何かそういうことは御存じありませんでしょうか。
中谷国務大臣 加藤先生とは政策の話でよく議論はいたしておりますけれども、加藤事務所がどういう状態なのかとか、また、地元の話とかは一切したことがありませんし、また、加藤先生自身も、そのようなことを、実際に地元のことに介入するというようなことは一度も私は目にしたことはございません。
達増委員 この口ききビジネスにまつわるいろいろな問題は、橋本元総理の秘書らが福岡県の建設会社、河本建設から裏金一千万円以上を受け取っていたということがこの河本建設社長の備忘録に書いてあった、そういう疑惑もございます。これもやはり、派閥の長として、派閥の維持のために無理にお金を集めなければならなかったという背景があることが疑われるわけであります。こうした背景を打破していくためにも、法律でもいろいろ、そういう派閥政治の打破、政党中心、政策本位の政治をやっていく、そういう努力が続いているわけであります。
 また、これはやはり公共事業の発注の仕方、そういうシステムを変えていかなければ容易に談合ができて、談合の介入ができてしまう。そこは国土交通省がきちっと見直さなければならないでしょうし、また、首長や県の幹部が容易にそういうシステムに参加する点は、総務大臣、総務省が見ていかなければならないでしょう。また、建設会社だけではありません、メーカーも関係いたします。経済産業省の所管であると思います。もちろん、予算を担当する財務省も大きな役割を果たすべきでありましょうし、内閣を挙げてこうした政官業癒着構造を打破していかなければならないはずであります。それができなければ、幾ら予算でいろいろなことをやっても、裏で手を回す、不正を働くような人のところにお金が流れて、まじめな、やる気のある人のところにそういうお金が行かないようでは、全然日本の構造改革はできないわけであります。
 この点、総理大臣に、内閣を挙げて取り組むべきではないかということ、考えを伺いたいと思います。
小泉内閣総理大臣 これは政界全体が取り組む問題であり、もちろん、公共事業に絡む、発注受注に絡む不正が行われないような対策というものも講じられるべきでしょう。こういう点につきましてもよく各党会派で議論する必要があるのではないかと思っております。
達増委員 次に、経済財政政策の破綻と経済危機管理の問題について伺いたいと思いますが、ESPという雑誌がございます。編集協力、経済企画庁、今内閣府。エコノミー・ソサエティー・ポリシーでESPという雑誌ですが、この一月号が「大恐慌から何を学ぶか」という特集なんですね。「大恐慌から何を学ぶか」、これはやはり私、手にとってびっくりいたしまして、週刊誌、経済専門の週刊誌、結構過激な言葉が表紙に躍っておりますが、それ以上に過激な題が表紙に出ていると思いました。
 これは、中を読んでみますと、大恐慌特集であります。「提言」と冒頭掲げられた学者さんの論文、最後の部分は、「現在、政府は徹底した「改革」を行ない、ムダを省き、不良債権を処理するのが先決だという方針で進んできている。しかしその実効が現われるまでには、時日を要する。その間に倒産と不良債権がさらに増加するのを避けるための措置の必要はないであろうか。「改革」に高橋財政やニューディールを組み合わせる可能性は残されていないだろうか。」高橋財政、ニューディールというのは、積極経済による景気下支え、そういう政策であります。政府が今やろうとしていることと百八十度違うことを提言のところで言っているように思えます。
 また、座談会がその後にありますけれども、この座談会の冒頭の文章、「日本経済は極めて厳しい状況にあります。現時点でデフレ・スパイラル、恐慌に陥っているわけではありませんが、予断を許さない状況が続いていることは事実です。それゆえ、大恐慌に類似したパターンに陥ることを未然に防ぎ、不況から脱出する方策について考えなくてはなりません。」あたかも、この内閣府編集協力の雑誌が大恐慌警報を発しているような。
 そこで、竹中大臣に伺いたいんでありますけれども、百年に一回か二回の物すごいことが起きるかもしれない、そういう危機的状況にあるという政府の認識なんでしょうか。
竹中国務大臣 ESPは、今ちょっと手にとったばかりなんでありますけれども、ESPという雑誌はかなりアカデミックな専門家にも御利用いただいている雑誌でありまして、その意味では、常にその時々の、奇をてらうことなく、経済の本質を議論する、大切な問題を議論するという姿勢だというふうに理解をしています。現実問題として、経済の今の理論というのは大恐慌から学んで多くのことが出てきているわけですし、その意味で、本質的なことをじっくり議論しようというのがその編集者の意図なのだったというふうに理解をしております。
 別に議論をあおる必要は全くありませんし、大恐慌と今とを単純に比べるのは明らかに間違っていると思いますし、しかし、学べることは歴史から学ぶ、このことは一方で必要なことだとは思います。
達増委員 どうも、政府部内、これは内閣、閣僚の皆様方のみならず官僚組織全体の、政府内部でかなり認識がばらばらになっているんじゃないかと思うわけであります。一方に非常な楽観論、まあ大体大丈夫だろうという。もう片っ方には、もうとんでもない危機だと。戦前に倣ったかなりの措置をとらなきゃ危ないかもしれない。大恐慌、経済恐慌云々の前に、政府の中が恐慌状態に陥っているんじゃないか、そこが既に政策が破綻しているんじゃないかという疑問なわけであります。
 また野中広務さんの発言を引用いたしますけれども、アナウンスなき政策転換をすべきだという発言をされています。これは橋本内閣の末期に、まさにアナウンスなき政策転換ということが野中さんから提起されまして、これはもう赤信号だと思っております。それは政府の中の赤信号。政府の中でもう政策に破綻を来していてどうしようもない。政策、このままではだめなんだけれども、はっきり転換することもできないという、にっちもさっちもいかない、橋本内閣の末期がまさにそうでしたが、それと同じ状態にあるのではないか。その破綻を繕うために一次、二次の補正予算で継ぎはぎのようにしているわけでありますけれども、どうもそれの継ぎはぎだけでは破綻は繕えそうもない。
 この点、総理に最後に伺いたいと思いますけれども、既に小泉経済政策というのは破綻をしているんじゃないですか。この一次、二次補正、特にこの二次補正というのはまさにその破綻を繕うためのびほう策としか考えられないんですが、いかがでしょう。
小泉内閣総理大臣 先ほど達増議員が引用されましたESPの最後、読まれましたね。改革を進めていくと痛みが出てくるかもしれない、その痛みを和らげるための措置を忘れないようにするべきだ。その措置が第一次補正、第二次補正でございます。破綻はしておりません。
達増委員 高橋財政にもニューディールにもなっていないんですけれども、この後は同僚議員にバトンタッチをいたします。
津島委員長 この際、山田正彦君から関連質疑の申し出があります。達増君の持ち時間の範囲内でこれを許します。山田正彦君。
山田(正)委員 自由党の山田正彦です。
 今雪印の問題であれこれ狂牛病の問題はさらに深刻になりつつあるようですが、私の方はこの狂牛病関連のことで質疑させていただきたいと思います。
 実は、EUからのリスク評価、今私の手元にございますが、EUからのリスク評価を、私、昨年の農水委員会で何度も農水省に、これがあるはずだから、国会議員ですし国政調査権ありますし、出してほしい、そういう話をしましたら、農水省の方では、事務方ですが、そういうものはないという回答でした。
 ところが、昨年末、実は毎日新聞がその存在をスクープした。それからやっと農水省としては私どもの手元にこの書類、いわゆるEUのリスク評価を出すことを、いただいたわけですが、この態度、本来ならばこれを明らかにして、そして国民にそれをオープンにしなきゃならなかった。ところが、それを隠しておったということ自体、ひとつ武部農水大臣に農政の責任者として、大臣はこの報告書は前回のときによく知って読んでおったという話もありますし、見ておったという話もありますし、明確にお答えいただきたいと思います。
武部国務大臣 EUのステータス評価については、先ほど来議論ありましたように、私も全文は知りませんでした。新聞を見て初めてわかったということでありまして、事務当局を呼んで、どうしてこういうことになっているんだと厳しく指導をしたのでございます。
 特に、先ほど来の議論にありましたように、EUのステータス評価を受けるか受けないかということよりも、その中身について、今委員御指摘のように、これは広く関係者の方々に知らしめるということによって、私は、リスクというものが最小限に食いとめられたんじゃないかというのは全く同感です。
 そういう意味で、私は、この間の委員会でもお答えしましたように、厳しく叱正いたしまして、そのあり方と、しかし今、事務当局の説明によりますと、最終結果はない、報告書はあると。これは役人の言うことでございまして、委員が求めているものはどういう中身なのか知らせろということなんですから、それは国政調査権もありますし、そういうことは、その中身については少しでも早く知らしめるということが大事だということで、私からも厳しく叱正した次第であります。
山田(正)委員 総理、今お聞きになっていたと思いますが、本当に、今国民にとって、生産者にとっても、流通業者にとっても大変なことです。一国の農政を預かる農水大臣が大変大事なEUのリスク評価、これを事務方から全く教えてもらってなかった、よく中身を知らなかった……(武部国務大臣「全文は知らなかった」と呼ぶ)全文は知らなかった、そういう農水大臣を任命しておって、そして、いわゆる大変大事な日本の畜産がこれからどうなるか、そういうものがやっていけるものかどうか大変疑問でありますが、きょうは私の持ち時間が本当に少ないので、次の質問をさせていただきます。
 ところで、農水大臣、イタリアからの肉骨粉の輸入、感染源としてこれが大変問題になっておりますが、これはどういう基準でなされたものでありましょうか。
武部国務大臣 感染源の究明について、私どもは、迷宮入りに絶対させないということで、イタリア、オランダ等にも職員を派遣して徹底究明している次第でございます。
 全部じゃなくてイタリアのお話でございますから、イタリアについて申し上げますと、イタリアからの輸入肉骨粉に関しましては、一九九八年六月以前に輸入された肉骨粉は、湿熱百三十六度C、三十分の加熱処理基準を満たしていなかった可能性があることが判明いたしましたので、イタリア政府に対して、一九九八年六月以前に適用されていた加熱処理条件、設置されていた加熱器の機種等について問い合わせてきたところでございますが、イタリア側は、我が国が要求している加熱温度、時間を満たしていたと回答、主張しているところでございます。
 しかし、加圧、加熱方法の詳細についてなお不明な部分もありまして、一九九八年六月以前に設置されていた加熱器の機種が判明したことから、この機種の加圧能力等について国内の専門家に確認しているところでございます。
 なお、イタリア産肉骨粉の国内流通経路については、これはよろしいですか。お話ししましょうか。(山田(正)委員「すべては結構です」と呼ぶ)結構ですか。
山田(正)委員 大臣、大臣は、このEU報告書が新聞のスクープで明らかになる前、本来なら農水省としては隠しおおせるものならおおそうと思ったのかと私は思うんですが、十三年の十月十七日の農林水産委員会で、武部大臣ははっきりと、イタリアにおいては湿熱百三十六度、三十分、三気圧で、いわゆる加熱処理条件を国際基準に照らして、それに合わせて輸入したから問題ない、そういう答弁をいたしております。(武部国務大臣「私の答弁ですか。生産局長じゃないんですか」と呼ぶ)いや、これは武部農水大臣の答弁です。これは大変、今の答弁とは全く違う。
 EUの報告は、昨年の四月に最終報告が出ている。その中に、EUの報告を読むと、イタリアからの輸入のうち八百トンにおいては、いわゆる五万トンぐらい、五万四千トン輸入していますね、例えば三菱商事が一万四千トン、丸紅商事が三万五千トン輸入しておりますが、その中で、本当に国際基準を満たしておったのはわずか八百トン。あとは問題であった。
 ところが、委員会では、ちゃんと国際基準、OIE基準を満たした輸入をしたんだから問題ない、農水省に責任ない、そう言ってきた。これは、農水省、農水大臣の責任はないものかどうか。
武部国務大臣 私も、正直申し上げまして、これは専門的、技術的なことについては事務方から説明のあったことを申し上げざるを得ない一面があります。しかし、その後私自身も、委員等の指摘があって、これは徹底究明する必要があるというようなことで、今、BSE、第三者による調査検討委員会にもすべての資料を出しておりますし、これは、先日の委員会でも同じような質問がありまして、そのことについては、私は申しわけなかったと申し上げているわけでございます。
 私ども、今いろいろなデータ、事務方から説明を受けていますけれども、正直申し上げまして、これは事務方が説明しているもの、資料、これに基づいて答弁せざるを得ない一面があります。しかし、それが間違っているときには率直にそれは間違いであったということを認めることも、これは必要でありますので、この間の委員会ではそのように申し上げたつもりでございます。
山田(正)委員 農水大臣に、私は、前回のときから、このEU報告書は大変大事な報告、だからこれは十分に読んでいただきたい、私が質問するんだからと前もって言っておったはずだし、かつ、きのうもそういう通告はいたしております。
 ところが、このEU報告はそんなに長いものじゃない、わずかなものだ。その報告の中に、例えば、今まで農水省が言ってきたOIE基準、百三十三度、二十分、三気圧で輸入したから大丈夫だ、そうその委員会では絶えず答弁してきておったわけですが、EU報告の最終報告、この中にはっきり、「現在の科学的な知見によれば、先の処理」、いわゆるOIE基準の処理ですね、これだけでは「BSE病原体を完全に不活性化させることは難しく、BSE病原体がそれらの輸入を通じて日本へ持ち込まれる可能性は依然として残っている。」と。
 大臣、一国の農政を預かる者がわずかこの行も読まなかったとしたら、おかしいんではないのか。すべて事務方、事務方、事務方。総理も聞いておられるかと思いますが、日本の農水大臣はこの程度の、こういう方しか任命できなかったものか。私は非常に残念でしようがない。
武部国務大臣 私も、神様でもなければスーパーマンでもございません。このEUのステータスの今のところのことは、それは今読んでいるから今のはわかりますよ。しかし、何もかも私が知り得るという立場にないことも御理解いただきたいと思います。
 なおまた、しかし、これは事務当局の答弁であろうが何であろうが、行政の責任者は私ですから、ですから、責任は私がとるのは当然でありまして、今のことについて説明いたしますと、百三十三度C、二十分、三気圧の加熱条件については、BSEの病原体を効果的に不活化する方法として、EUにおける化製処理の基準として一九九六年以降採用され、一九九七年以降、国際獣疫事務局、OIEの基準としても採用されております。
 しかしながら、今御指摘のとおり、スクレーピーのプリオンの幾つかの株を用いて行った実験において、最も抵抗性が強い株の場合、わずかに、千分の一ということでありますが、不活化されずに病原性が残ったという報告があります。EUの報告書においては、この報告をもとにそのような記載をしていると考えられるのであります。
 いずれにいたしましても、このOIEの基準により適切に加熱処理された肉骨粉によるBSEの侵入リスクは極めて低いものと考えられます。
 なお、EUでのBSEの発生拡大に伴い、昨年一月の船積み分からEU諸国等から、また十月四日以降はすべての国から、肉骨粉等の輸入を停止しているところでございまして、これは御理解を賜りたいと思います。
山田(正)委員 大臣、では、前回の答弁を撤回するのか、間違っておったと。農水省は、OIE基準に従わない、国際基準に従わない、そういう三気圧で加熱した、そういうものを入れてなかった、いわゆる農水省は過失責任があった、それを認めるのか認めないのか、それを取り消すのかどうか、それをはっきり。
武部国務大臣 今までそういう答弁はしてないと思いますが、百三十三度、二十分、三気圧の加熱条件については、BSEの病原体を効果的に不活化する方法として、EUにおける化製処理の基準として一九九六年以降採用され、一九九七年以降、OIEの基準としても採用されている。今委員は、ちょっと私、質問を取り違えているかどうかわかりませんが……
津島委員長 簡潔にお願いします。時間がありますから。
武部国務大臣 私は、間違った答弁をしているとは思いません。
津島委員長 山田正彦君、締めくくってください。
山田(正)委員 ともあれ、私の時間が短いので申しわけないんですが、この委員会の答弁事項にはっきりと書いてあります。後で理事会で問題にしていただければ、そう思っております。
 それで、実は総理大臣に最後にお聞きしたいんですが、家畜伝染病予防法四十四条、そして飼料の安全に関する法律、それによれば、農水省は、今回の肉骨粉、狂牛病に対する輸入に対して、本来ならば輸入してはならなかったものを輸入し……
津島委員長 山田君、時間がありますので。
山田(正)委員 そして、それを知った責任について、一言答弁いただければと思います。
津島委員長 後日また審議をしていただきますので。また、先ほどの件は理事会で協議をいたします。
 これにて達増君、山田君の質疑は終了いたしました。
 次に、佐々木憲昭君。
佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 初めに、加藤紘一議員秘書の口きき疑惑についてお聞きをしたいと思います。
 この事件は、国民の税金で行われる公共工事を食い物にし、所得を隠し、脱税をしていた、全くひどい事件であります。
 総理は、一昨日の本会議でこのように答弁をされました。世間から疑惑を持たれている場合は、まずは個々の政治家が国民にきちんと説明し、対応していくものと考えておりますと。では、加藤議員の説明はきちんと行われているのかどうか。加藤氏は、加藤事務所に無関係、こういう説明をされています。これがきちんと説明したことになっていると総理は思われますか。
小泉内閣総理大臣 それは、今後いろいろな疑惑に対してどう説明していくかというのは、個々人、議員の判断でございますので、私は、疑惑が降りかかったならば、疑惑を振りのける責任はまず個人が対応すべきではないかということを言ったまでであります。
    〔委員長退席、北村(直)委員長代理着席〕
佐々木(憲)委員 説明になっているかどうかとお聞きしたんですけれども、十分お答えにならないわけですが。
 私は、この無関係という説明は全然説明になっていない、うそだと言わざるを得ないと思うんです。なぜかといいますと、佐藤三郎氏は一般的な秘書じゃないわけであります。加藤氏のただ一つの政治資金管理団体、社会計画研究会の会計責任者、いわば金庫番であります。加藤議員の政治資金を一手に取り仕切っていた加藤事務所そのものであります。何が無関係か。ちゃんとした説明になっていない。私は、そういう点で総理の責任も問われていると思いますよ。
 秘書の佐藤氏は自民党員でございます。元幹事長加藤氏も当然自民党の議員であります。総理は党の責任者であります。したがって、疑惑解明のために当然証人喚問に応じるのは当たり前だと思うんですけれども、加藤氏自身、喚問について、自分のことは党に任せてある、党の判断に従うと言っているわけでありますから、これは小泉さんが判断することであります。いかがですか。
小泉内閣総理大臣 私は、疑惑を持たれたら、どうやって責任ある説明をするかというのはまず個々人の問題である、そういう中で、議院全体の関心が持ち上がって、どういう場でその説明責任を果たすかという点についてはよく議論してください、私は妨げるものではないと。
 まず疑惑を持たれたら、必要な説明は行った方がと言っているわけですから、そういう方向で、どういう場でやるかということはこれから議院の皆さんが相談すべきことではないのかと。私は妨害する気持ちは全くありません。
    〔北村(直)委員長代理退席、委員長着席〕
佐々木(憲)委員 妨害するつもりはないということでありますから、ぜひ喚問に応じていただきたいと思うのですね。こういうことも積極的に、前向きにやらなければ、総理が自民党を変えると言っても、一体何がその証明になるのかということになるわけです。
 そこで、委員長に申し上げたい。日本共産党は、公共事業にかかわる一連の疑惑の真相を解明するために、その第一弾として、まずは元自民党幹事長加藤紘一衆議院議員、同議員秘書、事務所代表の佐藤三郎氏を当委員会で証人として喚問することを要求したいと思います。
津島委員長 理事会で協議をさせていただきます。
佐々木(憲)委員 次に、政治献金の問題についてお聞きしたいと思いますが、日本共産党は、企業・団体献金をきっぱりと禁止することを主張し、実行しております。当面、少なくとも国民の税金で行われる公共事業を受注した企業からの献金や、公的資金を受けている銀行、こういうところからの献金は直ちに禁止するというのは、これは当然のことだと思うのですね。献金を受け取ることを認めたら、税金の政治家への横流しを認めるということになるわけであります。これを禁止するのは当然じゃないかと思いますが、総理の御見解を伺いたいと思います。
小泉内閣総理大臣 企業献金、団体献金というものに対してどういう規制を設けるべきか。それは、今までにも数々の規制が設けられてまいりました。また、各党によって資金調達の方法も違います。政党のよって立つ基盤も違います。民主主義の中で政党の政治活動をどのような資金によって賄うかという問題にもかかわってまいります。この点については、これからの国会におきましてよく議論をしていただきたい。
 そして、このような公共事業と金銭にかかわる不正な問題が起きないような対策はどうあるべきか、私は、真剣に取り組んでいくべき問題でありまして、共産党の立場は立場としてお伺いいたしますが、それは企業献金悪、団体献金悪という立場に私は立っておりません。やはり、政治活動に対して各界各層からの寄附を求めるということは、国民が政党を育てる、国民がどういう政治環境を好むかという問題にも深くかかわってまいりますので、よく議論をしていただきたいと思っております。
佐々木(憲)委員 今の答弁は、国民が、一人一人が選挙権を持っているわけでありますが、企業も団体も選挙権はないんです。違うんです、質が。国民主権というのは、国民自身が支持をするかしないか、その献金をするかどうか、一人一人が決めることであって、企業・団体献金を認めるということになりますと、それ以外の力で政治が動かされるということになるわけで、当然、企業・団体献金の禁止は当たり前だ。
 現在の法律も、私が指摘したのは、今全部直ちにということを、今すぐと言っているわけじゃなくて、少なくとも、国民の税金を使って公共事業をやる企業、公的資金注入の銀行、当然こういうところの政治資金については、まずは禁止したらどうか。
 大体、今の法律でも、公選法の百九十九条、国会議員は、選挙期間中、公共事業受注企業の選挙資金の寄附を禁止しております、候補者に禁止されております。国会議員というのは、いつ選挙になるかわからないわけでありますね。いつも選挙をやっているようなものです。だから、当然、公選法で禁止されていることは日常的に禁止するというのは当たり前なんです。それもできないようでは、腐敗にメスを入れる姿勢がないということを示すことになるわけで、このぐらいは前向きに検討するという姿勢を示していただきたい。いかがですか。
小泉内閣総理大臣 今言った点も含めて、よく議論していただきたいと思います。
佐々木(憲)委員 我々は、この問題でどうも総理が前向きになっていないと。自民党を変えるとか改革だとか言うなら、まずこういうことをやったらどうですか。全然その姿勢が見えない。
 次に、私は、経済問題についてお聞きをしたいと思います。
 日本経済は、まさにデフレスパイラルへの突入というような異常事態に陥っております。国民の痛みというのは大変なものでございます。
 きょうは時間がありませんので、中小企業、中小業者に対する融資の問題についてお聞きをしたいと思うんです。
 ここにありますのは、倒産したある中小企業の社長の、自殺をされた方の遺書でございます。御遺族の了解を得て紹介をさせていただきたいと思うわけですけれども、ここには、「○○さん、いろいろありがとうございました。自分も、できることはやったつもりですが、限界でした。あと三カ月時間があったらもう少し別な方法をとれたかもしれませんが、これしか会社、社員を救う道はなかったです。ひきょう者と思われるかもしれませんが、自分としては責任をとることも含めて最善だと思っています。まだまだやり残したことがあると思っていますが……。よろしく頼みます。」と。
 この社長は、死亡時の保険金で下請などへの返済に充ててほしいということで、みずから命を絶ったわけでございます。これは大手銀行の強引な資金回収の結果なんです。交渉記録によると、銀行側は、社長さんの生命保険に質権を設定させてもらう、こう言っていたそうであります。余りにもむごい回収の仕方だと私は思うんです。こういう事例は今たくさん生まれております。
 まず平沼経済産業大臣にお聞きしますけれども、銀行の貸し渋り、貸しはがしというのは大変ひどくなっております。最近は、身近な信金、信組、次々と破綻をし、この一年間でも五十近く、大変な規模で破綻をし、信金、信組の地元では大変な不安も広がっております。政府系金融機関に駆け込んでもまともに対応してくれない、一体どうすりゃいいんだ、こういう悲鳴が聞こえてきているわけでございます。平沼大臣は、中小企業のこの深刻な実態をどのように受けとめて、どう対応されようとしているのか、まず御見解を伺いたいと思います。
平沼国務大臣 お答えさせていただきます。
 確かに、今、非常に厳しい状況でございまして、特に金融機関の中小企業に対する貸し渋りあるいは貸しはがしというのはだんだん厳しい状況になってきています。
 平成十年の信用収縮のときがピークでございまして、それから一時回復をしてきました。あの十年当時は、中小企業庁が毎月実施しております金融機関の貸し出しの実態調査で、非常に資金調達が厳しくなってきたというのが、その調査では三五%でございました。それがおととしの九月では一九・四まで下がってきたわけでありますけれども、また最近は、先ほど来御論議が出ておりますBSEの問題や大型倒産、そして、さらには世界同時不況的なこういう不況の中で、直近のデータではこれが二四%、こういう形になってきています。
 したがいまして、また厳しいそういう金融機関の貸し出し状況になっているわけでありまして、経済産業省といたしましては、こういう実態を踏まえまして、平成十年のときには特別保証制度ということで手当てをさせていただきました。しかし、これは異例、特例の措置でございましたから、委員御承知のように昨年の三月三十一日で打ち切りましたが、さきの臨時国会で、全党の御同意、御賛成を得まして、特に売り掛け債権に着目をいたしまして、そしてそれの新たな保証制度を出させていただきまして、昨年の十二月十七日からそれが実施をする段階になっております。
 まだまだちょっとPRが不足でございまして、もっともっと周知徹底をしなければならないと思っていますけれども、そういったことを新たにさせていただいたのと同時に、平成十三年度の第一次補正予算の中では、特にこういう状況にかんがみまして、セーフティー貸付制度とセーフティー保証制度、こういうものを、一千四百億の原資をいただいて、そしてきめ細かくやる。
 非常に厳しい中ですけれども、でき得る限り我が国の経済の基盤を担っていただいている中小零細企業に対して一生懸命に努力をさせていただきたい、このように思っています。
佐々木(憲)委員 これは日銀の統計からつくった表なんですけれども、一九九七年三月を起点にいたしまして直近の二〇〇一年九月期まで、全国の銀行の大企業向けの貸し出し、それから中堅・中小企業向けの貸し出し、これがどのように推移したかを示したものでございます。
 大企業向けの方はこのようにどんどんふえております、傾向的に。この間、六・九兆円ふえました。比率では七・二%。その一方、中堅・中小企業向けはどんどん減らされているんです。一一・六%マイナスになり、金額では四十四兆六千億円。わずかこの間にこんなに貸し出しが減っているんです。
 これは非常に重大な問題でございまして、とりわけ私が指摘をしたいのは、融資をする主体の側でありますが、都銀、大手銀行の融資態度に問題があるんじゃないか。小泉内閣が誕生した後、昨年六月以後、連続して大手銀行の貸し出しはマイナスとなっております。その幅も大きくなっております。
 柳澤金融担当大臣にお聞きしたいと思うんですが、これらの大銀行の多くは、国民の税金、公的資金が投入されていると思うんですね。我々日本共産党は、税金投入には反対でありました。しかし、そのときの提案では、貸し渋り解消のための資金投入だ、あるいは、中小企業向けの融資の増加計画を政府に出させてそれを必ず達成させるから、こういう約束だったわけであります。九九年に金融再生委員長だった柳澤大臣も、国会でそういう答弁をされました。
 銀行は、国民の税金は懐に入れるけれども、中小企業に貸し出すこの計画はどうでもいいというものでは絶対にないと思うんですね。目標は必ず達成してもらわなけりゃならぬと思うんです。これは国民への公約です。この中小企業向け貸し出し計画というのはそういう性格を持ったものじゃないかと思うんですが、いかがですか。
柳澤国務大臣 健全化法による資本注入のときに、非常に大きな関心事は、今委員御指摘のように、中小企業の貸出先に対して資金の疎通を十分行うようにということで、健全化計画の内容として中小企業貸し出しに対する計画を聞くというような、そういう仕組みがあったわけでございます。そういう意味では、それは大いに督励をするという姿勢が全体として健全化法を国会で認めていただく大きなファクターだった、これはもう申すまでもございません。
 しかし、ここは佐々木委員に申さなきゃならないんですけれども、その健全化計画の中身としてそういうものを提出させてはいますけれども、それは、それじゃその計画を絶対遵守させるんだということは、方法としてはないわけでございます。
 つまり、これは相手のあることでございますので、そこでどういうことにしているかというと、やはり計画を出させて、それとの乖離の状況等について、いわば公衆の目に触れさせて、世論、今先生がそういうような議論をされること自身も一つのプレッシャーなんですけれども、そういうプレッシャーをかけることによって、それの実現を図っていこう、大体において、この自由主義経済でこうしたことをやる場合にはそういう手法をとることが多いんですが、そういうことをさせていただいているわけであります。
 もしそれが計画に至らないような状況が出てきたときには、私ども、もちろん注意して、もっとこれはしっかり実現するような方策を講じなさいと言って、体制は整備させることができます。体制を整備させることはして、そして、もっと中小企業への融資が促進されるような、そういう体制を部内に設定しなさい、設置しなさい、こういうようなことをやって努力をさせるということはやるわけですけれども、しかし、一番最後の実際に貸し出しが行われるかどうかというのは、あくまでもやはり今言ったようなパブリックプレッシャーのもとで実現を図っていく、こういうことです。
 もちろん、体制整備もやらないようなところについては、私どもも、ある銀行がそうだったわけですけれども、これは銀行法上の業務改善命令を措置いたしまして、体制は整備しろ、こういうようなことまではやるわけでございますけれども、最後のところはやはり自由な当事者同士の自由意思の合致するところで融資が行われる、このことは、やはり我々の国が自由主義経済あるいは自由企業体制のもとで行われることということで御理解を賜る以外にないと思います。
 ただ、もう一つちょっとつけ加えますと、このごろ不良債権の処理に物すごいマンパワーが要るということがあるわけです。
 私は、この前の、あれは工程表のときだったと思うんですけれども、どうもそういう声が聞こえる、不良債権処理に物すごいマンパワーを食われていて、しかもそのマンパワーが戦場のような状況の中で不良債権の処理に当たっているというようなこともありましたので、もうちょっとバランスをとって、貸し出しの方にも力を入れてくれということを、これはもう注意を喚起するという意味で改革工程表の中にもそうしたくだりを入れさせていただいて、それは私自身が銀行界に対して、改革工程表ができました直後に会合を開いて、そのことに対する注意を特に喚起させた、こういうようなことはいたしております。
 状況を包括的に説明させれば、以上のとおりでございます。
佐々木(憲)委員 どうも今の説明は、計画は出さすけれどもそれを達成させる方法がないんだといった答弁でありますが、私はおかしいと思うんですよね。それなら税金投入はやめるべきですよ。計画を達成するからといって税金投入を決めたわけでしょう。計画が達成されない、それは自由だから、こういうようないいかげんな答弁じゃだめですよ。
 実際、今どうなっているか。昨年の三月までの実績からことしの三月、二千三百五十億円ふやす計画になっている。ところが、昨年の九月末、ちょうど中間点ですね、昨年三月末の実績を下回って、これは大幅に下回っている。三兆三千六百五十億円マイナスになっているんです。だから、目標達成のためには三兆六千億円の中小企業向け貸し出し増を実現しなきゃならない。それを、自由にやってもらって銀行の自主的な努力でというような程度のことでは、何のための目標かということになるわけですよ。
 もう一つグラフを出しましょう。
 実際に銀行の姿勢に大きな問題がある。これは中小企業の側からの、経済産業省の方から、中小企業庁からいただいた、資金繰りやあるいは長期資金、短期資金の借り入れをしやすいのかあるいは難しい状況なのか、これをグラフにしたものですが、下がれば下がるほど深刻である、つまり、貸し渋りが、資金需要があるにもかかわらず銀行が貸さない、そういう状態がどんどん深刻化しているんですよ。目標は立てても、目標から大幅に下がっている。
 では、小泉総理、お聞きしますけれども、改革先行プログラム、この中に何て書いていますか。この中には、「公的資金による資本注入を受けた銀行については、経営健全化計画に沿って健全かつ責任ある経営と適切な貸出がなされるよう厳正なフォローアップを行う。」と書いているんですよ。当然厳正にこういうことをやるべきですよ。やはり、国民に約束した以上、それを達成するために、通達を出すとか、あるいは達成できないような状況のところには業務改善命令。先ほど言ったように、答弁されましたが、単に仕掛けができているかできていないかで判断するんじゃなくて、実際にふえているかどうかで判断しなければ、何のための計画かということになるわけです。
 総理にお聞きしますけれども、これは内閣を挙げてこういう方針を決めて、達成するという、厳正なフォローアップを行うと書いているわけですから、現実に大幅に下がっている状況をどう改善するのか、まず総理の決意をお聞かせいただきたい。
小泉内閣総理大臣 不良債権処理と、そして発展可能性ある企業にどう融資していくか、非常に難しい問題なんです。
 銀行の今までの護送船団方式、横並びというのでなくて、早く銀行経営を健全化することによって、銀行の経営者、経営体質を強化することによって、これからも中小初め新しい意欲のある企業に融資していく体制を早くつくりたい。そのためには不良債権処理を進めていかなきゃならない。これは実は難しい問題なんですが、この難しい道をこれからも探りながら、不良債権処理と、これから新しい産業育成に努力していく、中小企業育成に努力していく、この両方の道を今後とも探りながらやっていかなきゃならない。そういう中で起きている問題でありまして、非常に一朝一夕に解決する問題ではございませんが、そういう点についても十分、どの程度政府がそういう経営に対して関与していいかどうかという問題もありますが、努力をしていかなきゃならない問題だと思っております。
佐々木(憲)委員 努力をするというのであれば、当然、銀行の貸し出し姿勢を正さなければならない。貸し渋り、貸しはがしを正さないと、貸出計画自体も達成できない。これは、不良債権処理ばかり後押ししていては、貸しはがしが広がるだけで、実際に立てた目標が達成できないんですよ。だから、目標が達成できるようにするには銀行の姿勢を変えなきゃならぬ。そういう指導をきちっとやる。努力をすると言われましたから、具体的なその成果を上げていただきたい。三月までに達成できるかどうか、そこのところを我々は厳しく監視していくつもりであります。
 では次に、信金、信組問題、信用金庫、信用組合。これは今大変重大な危機的な事態になっておりまして、大銀行が中小企業の融資を縮小している、そういう中で、信金、信組というのは、中小企業に対して、少々赤字が続いたり返済がおくれても、これは長年の取引の実績、あるいは経営者の人柄や経営能力、商売の可能性、そういうものを総合的に判断して融資に応じ、不況のもとで必死に頑張っている中小企業を支援している。この信金、信組が、小泉内閣になってから破綻がもう急増しているのですよ。
 この九カ月で、破綻した信用金庫は十、破綻した信用組合は三十四、合わせて四十四に上っております。昨年の三月末にあった信用組合の一二%が消滅している、小泉内閣のもとで。これほど短期的にこれほど大量につぶれるというのは、まさに異常事態だと思います。
 これでは、地域の経済を支える、地域の中小企業を支えるための金融機能が麻痺するというのは当たり前であります。信金、信組の破綻の被害者というのは借り手の中小企業でありますけれども、何の罪もないこれらの中小業者を守るのは、これは当然だと思います。
 私たちは、地域金融対策委員会というものをつくって、各地の実態を調査してまいりました。その上に立って、このような要求をまとめました。これは政府にももちろん提出をしておりますけれども、この実態を調査して、私どもは大変驚いたわけでありますが、信金、信組を連続破綻に追い込んだ最大の要因というのは、金融庁が行う画一的な検査マニュアルの適用がある。
 信金、信組というのは、大手の銀行、都市銀行とは違うわけであります。違う性質を持ったものです。地域の協同組合的な、お互い助け合う、そういう融資機関です。それなのに、ここに国際的な活動を行う大銀行と全く同じ金融検査マニュアルを適用して検査を行う、これはもう本当に問題なんです。
 そういうふうにやりますと、貸出先が中小企業ですから、これはもう、担保がない、あるいは返済が多少おくれている、どんどんレッテルを張って、不良債権だ、そのためには引当金を積みなさい、こう言ってどんどん負担を重くして、それに耐えられない信金、信組はばたばたつぶれる、これが実態なんです。
 例えば、私どもが調査へ行きました岩手県の信用組合の関係者は、我々に金融庁のやり方に非常に怒りを持った言葉を言っておりました。こう言っているのです。
 信組は、他の金融機関では借りられない金を貸している、そういう駆け込み寺みたいな面があるのに、政府はアメリカの言いなりで、自己資本比率四%。あるいは検査マニュアルでの検査内容も、余りにも機械的、しゃくし定規。債務者区分の査定、これも信組の担当者が債務内容を幾ら説明しても、二十代か三十代の金融庁担当者は、これはマニュアルと違う、これは担保がない、こういうことで全く聞く耳も持たない。金融庁は検査をどんどん厳しくしていった。血の通った検査なら信組はまだ生きられたと考えている。検査マニュアルでも、つぶす立場でやるのか、生かす立場でやるのかでやり方は全然違う。今の検査はつぶすための検査と言われても仕方がない、こう言っているわけであります。
 参議院の財政金融委員会で、我が党の大門参議院議員の質問に対しまして柳澤大臣は、現在の検査マニュアルが中小企業への融資実態と合わないということを事実上お認めになって、検査マニュアルの改定についてこのように答弁をされました。
 適切な機会に改定するというようなことはこれからも想定されるわけでございます。また御意見を寄せていただく、我々が検討させていただくということはちっとも私ども、それ自体を拒否しようということはありませんと答弁されているわけですね。
 私は、この地域金融機関に対する現在の金融検査マニュアルの画一的な適用というのは、やはり直ちにやめて、信金、信組本来の役割が十分発揮できるようにしなきゃならぬと思うのです。例えば、地域への貢献度はどうなのか、あるいは中小業者の育成、地場産業の育成に役立っているのかどうか、こういう観点を含んだ地域金融機関にふさわしい独自の検査基準をつくる、こういうことが当然やられるべきだと思うんですね。
 この辺について、柳澤金融担当大臣の見解を伺いたい。
柳澤国務大臣 いろいろ盛りだくさんに発言なさいましたので、簡潔にちょっといろいろな項目に触れさせていただきたい、こう思いますけれども、先ほどの改革先行プログラムで先生がお引きになったところは、まさに我々が、先ほど総理も言ったように、不良債権の強化と金融の活性化をどうやってバランスをとってやらせるかということで、あえてこの段階から、我々、今の問題の所在にかなり関心を強く持ちまして、こういうくだりを入れてございます。
 したがって、私、ちょっと先ほどこのペーパー自体を持たずに御答弁申し上げましたのですけれども、ここにありますように、フォローアップをしっかりやって、督励はしていくということでございますが、ただ、先生に申させていただきますが、やはりこれは両者の、民間の消費貸借契約でございますから、両者の合意が前提でございます。それぞれの自由意思に基づく合意でございますので、その点は、先生が想定されている世界が、経済社会がどんなものか、私存じませんけれども、そういう原則はひとつ御理解を賜っておきたい、このように思います。
 それからもう一つは、検査マニュアルについてのお話でございますけれども、これは、検査マニュアル、ここに現物のコピーを持っていますけれども、この下線を引いたところが、もう御案内のとおりでございます。物すごく細かく、中小企業には特別の配慮をしなさい、こういうところを見なさいということが、検査マニュアル自体に記入されております。
 そして、私ども、これは行政内部のことでございますけれども、検査の中で、こういったところには財務局の職員が行くわけですけれども、若干ふなれというか、張り切り過ぎというようなことも懸念もされないわけじゃないので、そういうことはないように、この監督者というか、ベテランの人たちに、よく留意をするようにということは常に申しているところでございます。
 そういうようなことでございまして、なお、このところ信金、信組について破綻が重なっているということは御指摘のとおりでございますが、これはかねて申し上げておりますとおり、初めて信組などは国の所轄になりました。そして、昨年度いっぱいをかけてずっと検査が一巡したわけであります。そして、その後、新しい年度、平成十三年度になりまして、それで問題点をいろいろ指摘して、それについての考え方の御報告を求め、そして話し合いをしていて、そうしてその結論が出て、これはやむを得ませんねというのが昨年の年末あたりに固まったということでございます。
 それで、私も、そういうことが余り多くなってきつつあった段階で、要因別破綻原因についてよく考えてみるようにということを申したわけでありますけれども、やはり、バブルそのものとは言いませんけれども、不動産関連融資の不良化、それからリスクの高い有価証券、まあ余資が相当ありますから、余裕資金がありますから、それを非常にリスクの高い有価証券に利用した、それがデフォルトを起こすというようなことで実は起こっているというようなことを申し添えさせていただきます。
佐々木(憲)委員 今御答弁がありましたけれども、実際に、話し合いでと言いますが、かなり強権的に金融庁の方がもうばっさばっさと機械的にやっているというのが我々が聞いているほとんどですよ。そういうものを是正するということ。
 それから、検査マニュアルについても、こういう大銀行と信金、信組とただ一つの同じマニュアルで検査するなんておかしいですよ。やはりここは、それぞれの性格が全然違うんですから、それぞれの性格に応じた適正なマニュアルをつくる、基準をつくるというのが、これはもう当然の話でありまして、そういうことをきちっとやっていっていただきたい。
 私どもは、地域の中小企業業者を守るため、我々が提案しているこの「緊急要求」をぜひ実現したいということで、今後も頑張る決意を表明いたしまして、時間が参りましたので、終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
津島委員長 これにて佐々木君の質疑は終了いたしました。
 次に、植田至紀君。
植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀でございます。
 先日、本会議で我が党の辻元議員が小泉総理を指して、ええかっこしいやとおっしゃったのですけれども、先輩議員に盾突くのもよくないのですが、えらいまた総理のことを褒めはるんやなと私はびっくりしました。全然ええかっこしてはりませんもんね。格好悪いですからね。むしろ、ちゃらんぽらんと言った方が私は正しいと思います。
 また、そこのけそこのけ構造改革が通るというように、中身のない言葉が、美辞麗句が躍っている。この状況はやはり、一犬虚にほゆれば万犬実を伝う、こういった表現をするのが一番ふさわしいんやないやろかというふうに思っているわけです。今回の二次補正予算は、その意味で構造改革の虚を見事に芸術作品として表現してみせたという意味で評価をしたいと思うわけですが、そのことを与えられた時間の中で、既に明白になっているだろうとは思いますけれども、ささやかに皮を引っぺがしていきたいなと思っています。
 まず、ささやかな点ですけれども、総理に言葉の定義だけ確認したいと思います。
 骨太の方針の中では、まず構造改革については「経済資源が速やかに成長分野へ流れていくようにすることが経済の「構造改革」にほかならない。」と。恐らくこれが小泉総理が言うところの構造改革の定義だと考えていいのかという点。
 それと、当然ながら、今その政策をやらなければならない必然性というものは、このいわゆる失われた十年の中での日本の経済状況を見る中でそこに見出すべきだろうと思うわけですが、これも骨太の方針を敷衍するならば、書いていることそのままですけれども、構造改革が必要とされる構造というのは何かというと、骨太の方針には、市場に障害物や成長を抑制するものがあった、市場が失敗する場合に補完する仕組みがなかった、知恵を出した者が報われる社会でなかったから日本は不況から脱出できへんかった、だから構造改革だということで定義と必然性を理解していいのかということだけ確認したいと思います。
 答弁としては、委員御指摘のとおりの認識でございますという答弁だろうと思うわけですが、まず冒頭ですので、言葉の意味だけ確認させてください。
小泉内閣総理大臣 答弁まで加えていただきまして、ありがとうございます。
 大筋として、資源が、成長産業といいますか、生産的な分野に行き渡るような環境をつくるということが構造改革を成就するために大変重要だと思っております。
植田委員 そこで、かかる定義に従って二次補正を出されるわけですけれども、財務大臣にお伺いしますが、この小泉内閣が言うところの構造改革の柱、これは、まずは市場原理を徹底するための規制緩和が挙げられるわけですよね。例えば、労働規制の緩和であり、参入規制の緩和であり、市場の規制緩和。また、不良債権の処理を通して、いわば効率の低い産業や競争力の低い産業を淘汰していくということもあるでしょうし、また、成長が期待できるようなところは支援しましょうなどなど、そういうことが柱になるだろうと思いますけれども、恐らく、私が理解するところでは、こうした構造改革の施策の大半というものは、ありていに言えば、供給側の構造を強くするということに収れんされるんじゃないかというのであれば、構造改革というのは、いわば供給側の力を強くする改革なんですというふうに理解していいのかなと。
 根本的に誤りがあれば、間違っていますよとお答えいただければいいわけですけれども、その点はいかがですか。これは財務大臣に確認いたします。
塩川国務大臣 おっしゃられるように、現在の不況は、すべてが供給過剰ですね、供給過剰からきておる。ですから、需要をもっと喚起するということが大事だと思いますし、また、そのような政策を現在政府は鋭意努力してきているということです。
植田委員 いずれにしても、供給側の構造を強くするんだということは否定されないわけですよね。それは否定されないわけですよね。
 ですから、もしそうだとするのであれば、供給構造に問題があったから不況が続いた、不況から脱出できなかったということが少なくともこの失われた十年の中で実証されなければならないという点について、これは竹中大臣にお伺いするわけですけれども、旧の経済企画庁、今の内閣府になりますが、景気変動の基準日付を見ますと、パネルをつくるお金がないのでメモだけしてきたんですが、九一年の二月をピークに下降局面を迎える、そして九三年の十月に底を打って、そこから、十一月から少しずつ上昇して、九七年の四月にまた大体ピークを迎えて、そこからまたがたんと落ちていくということから、十年の間に二度下降局面があったというふうに指摘される方もいらっしゃるわけです。ですから、逆に言うと、景気回復した局面もあったというふうに考えられるわけですね。
 そうなると、九〇年代の日本経済の不振というものが、二つの不況が連続して生じたので、結果として長期不況になった、そういうふうに考えることができると思います。とすると、こうした回復局面があったという事実からすれば、構造改革が言うところの改革すべき構造に不況の原因があったんだというふうに言うのがやはり妥当なのかどうなのか、大いに疑問に感じるところなんです。それがまず一点。
 それと、そういう私自身の認識からいけば、やはり、景気を再び下降させた原因というものは別に求めるのが妥当ではないかということです。
 今示しましたこの基準日付によれば、少なくとも九二年で一・三%、九三年で一・五%、成長率をプラスする方向に公的需要が働いているわけです。また、こういう指摘もあるわけですね。失われた十年の中で、資産価格の下落で失われた富が、株と土地だけでも千三百兆あった。にもかかわらず、同時期百四十兆、真水で四十八兆の景気対策で十分日本経済をゼロ成長に維持したんではないか、こういう評価もあるわけです。私は、そういう見解は、はっきり申し上げて間違っていないと思います。
 とするならば、むしろ、この間不況が続いた、失われた十年というものをこしらえてしまったのは、見立てと時期を誤って、あるときは財政構造改革をやり、ああ、それやったら景気が悪くなるから今度は財政出動だと。まさにそういう意味で、腰の定まらぬ経済政策こそが景気回復をおくらせたんではないのかというふうに考えられるわけですが、この二点、時間がありませんので、ポイントだけかいつまんで簡単に御答弁いただけますか。
竹中国務大臣 まず第一の、景気の循環の話をされました。その議論を持ち出すという点において、若干、委員は、供給の話と需要の話をやはりミックスして議論しておられるように思います。
 どんな状況でも、供給側にどのような問題があろうとなかろうと、循環的な動きというのは必ず生じます。これは需要の、在庫の循環であるとか設備投資の循環とかあるわけですが、これは必ず生じるわけです。ですから、循環があったということと供給サイドの問題があるかなしかということとは、全く別問題だと思います。
 現実問題としては、循環はあった。特に、最近の循環に関しては、これは世界のIT不況が予想以上に大きかったというようなこととか、アメリカから来た外部的な要因もある。したがって、このことを除いて考えるならば、基本的には、日本の経済の停滞、具体的にはGDPの十年間の成長率が一・二%だったと思います、民需の成長率は年平均〇・五%であった。ほとんどここが伸びなかった、まさに供給力が伸びなかったというところにやはり基本的な問題がある。
 この点は、先般の経済財政白書の中で、現実のGDPの伸びと潜在成長力の伸び、成長率、つまり供給の伸びというのはほとんど軌が一であったということでも証明されているというふうに私は考えております。
 二番目の、過去の政策がどうであったかということに関しては、これは、その時々で利用可能な情報で政策判断を行わなければいけないわけですから、いろいろな評価がなされるし、これからそれはなされるのだと思います。
 ただ一点、供給サイドを強化するための仕組みが十分ではなかったという認識は、私自身は持っております。であるからこそ、構造改革を掲げて登場した小泉内閣の政策がやはり国民から今高い支持を得つつあるというふうに思うわけであります。
 その意味では、繰り返し申し述べますが、過去の政策の評価というのはもっと長いスパンでなされるべきだとは思いますが、供給サイドに最近非常に光を当てたところに、この小泉内閣の構造改革の大きな意義があるというふうに考えております。
植田委員 一点目のお話については、大体そういうお話なんだろうなと想定しておりましたが、ちょっと後でもう一回そこのところはお伺いすると思いますけれども、二点目については、これ以上言及しても、時間がありませんから、せんないのでやりとりはいたしませんが、恐らくそういう問題意識に立ったがゆえに、この緊急対応プログラムができて二次補正が出されたんでしょう、おさらいをしますと。
 さて、じゃ、この緊急対応プログラムの売りを聞いておりますと、財務大臣の話でいけば、一つは、従来型ではないとおっしゃっている。従来型ではないからいいんだと。そして、新しい発想があると。従来型でなく新しい発想でやっている、だからこの二次補正は正しいんだというふうにおっしゃっています。それが唯一の正当性の根拠です。
 とするならば、まず従来型についてどう定義するんですかということ。従来型というのはどういう型なんですか。そして、それと決定的に今回の二次補正がどう違うのか。やはりその点が明らかでないことにはまずいんじゃないでしょうか。その点、まず端的に御説明ください。
塩川国務大臣 従来型の公共事業というのは、御存じのように、道路、河川、港湾、空港あるいは住宅、土地造成とかいうように、はっきりは覚えておりませんけれども、大体十三か十四の公共事業と決まっておりますね。そのほかに公共的施設というものも決まっておりますね。その枠は従来からの、従来型の公共事業と言っておりますが、今回やりましたのは、その従来型をさらに拡大いたしまして、範囲を広げてやっております。これを答弁するとちょっと時間が長いが、もったいないからいいですか。どうです。いいですか。よかったら説明いたします。(植田委員「いや、いいです」と呼ぶ)いいですか。そんなら、そんなんでわかってもらったら……。
植田委員 だから、それも想定していたんです。要するに、公共事業そのものの定義をなさっていないんですわ。こういう箱物をこしらえてきた、こしらえるものを広げますというだけの話やないですか。それだったら、既にやっていたものを編成がえしたんじゃないですかということなんですよ。
 例えば、九八年の十一月、小渕内閣時の緊急経済対策で、規模がかつてない規模、二十四兆円規模で、社会資本整備で八・一兆。このときに重点的な投資の対象として七項目ありました。まず一つが、情報通信、科学技術。環境。そして三つ目が、福祉、医療、教育。四つ目、物流効率化、産業競争力強化。農山漁村等地域活性化、民間投資誘発等都市再生、防災と七項目あるわけですよ。今回の緊急対応プログラムだって、この七項目全部すっぽりおさまりますよ。
 要するに、別に新たな視点があるわけやないんですよ。サンマ定食が、ある日定食屋に行ったら焼き魚定食になっていた。でも、さあ食おうと思ったら、おかずはサンマのまんまやったというのが緊急対応プログラムの本質じゃないんでしょうか。ただ、金額がちょっと少ないさかいに、金額が少ないは違うということじゃないですよ。いずれにしても、従来型を少なくとも定義されなかった以上は違うとは言えないわけです。
 その意味で、それ以外の説明をされていない以上、先ほどの答弁は別にもう要りませんけれども、第二次補正予算の正当性の根拠は失われておるということで、これも小泉構造改革、またこの内閣のちゃらんぽらんさの一つのあらわれだろうというふうに総括しておきましょう。
 次に、まだ時間がありますからやりますが、ここでちょっと経済産業大臣にお伺いしたいんです。
 というのは、ずっと関心を持って、産業構造審議会新成長政策部会というのの中間取りまとめができて、やっと昨年「イノベーションと需要の好循環の形成に向けて」ということで報告書が出されました。できれば、本当は私は経済産業委員じゃないんですが、これを子細に検討した上で、またどこかで一般質疑でじっくりと質問したいなと思っておりますので、その部分はこれはもうちゃらんぽらんの対象から除外して、まずお伺いしたいわけですが、例えばこれの中ではっきり言っているのは、経済停滞の原因、本質的原因は需要不足だとはっきりおっしゃっているわけですよね。そして、こういう文言があります。「日本経済は、九〇年代以降ほぼ一貫して需要不足の状態にある。」中を省きますけれども、いろいろな問題が「供給構造の非効率性の問題としても捉えられるが、むしろ、新しい需要、投資機会が十分に生まれてこない需要構造の問題である」というふうにここでは記載されております。
 私も、これについては非常に健全な景気回復論だと、中身を全部見ないとそう評価できるかどうかわかりませんが、現段階ではそういうふうに思っているわけですが、この報告について、平沼大臣といたしましては、まず重く受けとめられ、こうした報告を受けて、これを政府の経済政策にしっかりと生かしたいという御決意があるかどうか、その点をお伺いします。
平沼国務大臣 お答えをさせていただきます。
 昨年の十二月末に産構審の新成長部会で取りまとめました提言というのは、需要創造ということが、そこに力点が置かれていることは事実ですが、しかし同時に、供給構造をやはりしっかりとしていかなきゃいけない。その供給構造の視点というのは、やはり一つは日本の高コスト構造、そしてさらには不良債権の問題、それからもう一つ、これは需要創造と非常に密接に結びつきますけれども、やはりイノベーションを起こして新たなそういう成長の分野を立ち上げなきゃいけない。
 そういう一つの視点の中で、やはりGDPの六〇%を占めております、そういう消費をいかに伸ばしていくか。それから、例えば七三年のオイルショックの後、日本では空洞化が起こりかかったんですけれども、イノベーションを起こして見事にこれを克服した、そういう体験を持っていますから、そういう中で、やはり新たなイノベーションを起こして、そして新しい需要を創造する、こういうことは必要だと。そういう形で、私どもは、この新成長部会の答申というのを重く受けとめて、既に経済産業省の政策にも反映させていただいております、既に前からもそういう問題意識を持っておりましたから。
 ですから、結論を言わせていただくと、それは力点を置いてやっていきたいと思いますし、同時に、供給構造と両々相まってやっていく、こういう視点であります。
植田委員 質問取りのときに、閣内不一致と言われたらそういうふうな答弁をさせてもらいますという話やったんで、大体想定されていたんですが、でも、本質というのは二つも三つもないわけですよね。少なくとも、日本語として、本質的な要因は需要だと言ってある。
 ここで竹中財政担当大臣にも、経済の話というよりは日本語の読解ということで教えてほしいわけですが、このエコノミストの経済財政白書の中で竹中大臣がインタビューに答えてはります。御記憶だろうと思いますけれども、いろいろおっしゃった上で、日本経済の本質は供給側、サプライサイドにあるのですとはっきりおっしゃっているわけですから、少なくとも竹中大臣としては、本質的な要因は供給不足にあるというふうにお考えだと私が読み取っていいわけですね。
竹中国務大臣 委員御指摘の経済産業省の抜粋、今手元に持っております。大変申しわけありませんが、やはり委員の読み方はほぼ一〇〇%間違っておられるというふうに思います。
 その中に、まず、まあお読みになったと思いますけれども、基本的には、不良債権の処理等々、生産性の向上を目指した供給改革の必要性が強く指摘されている、我が国の競争力を強化していくために不断にとるべき課題として、供給構造改革の必要性については論をまたない。つまり、これが出発点なんです。供給と需要は常に一致します。GDPの伸びというのが低かったから、GDPというのは需要の合計ですから、その伸びが低かったということは、それは需要が伸びなかったという、これは当たり前の話です。定義上当たり前です。
 問題は、なぜ需要が伸びなかったかです。なぜ需要が伸びなかったかということについては、将来の期待収益とか期待所得とか、そういった供給側の要因がその基本的な要因である。しかし、供給と需要が常に一致しますから、供給はみずからの需要をつくり出すけれども、その過程において需要側のイノベーションがなければならない。したがって、ここには、そのイノベーションと需要の好循環をどうつくるかということを書いているわけです。
 けさほど菅委員が、構造改革をすればどうして経済がよくなるのかと。これは、この骨太の方針で書いている供給強化の必要性と、需要にどのように結びつけていくかというこの経済産業省のレポートを一緒に読んでいただければ完全に御理解いただけるんだと思います。
 ちなみに、この報告をまとめた部会長は吉川洋議員でありまして、骨太の、一緒にかかわっていただいた民間の諮問会議の議員でございますので、彼の説明を聞いていただくのもよいかと思いますけれども、今申し上げたのが基本的な読み方だというふうに思います。
植田委員 時間がないので。
 いや、大体想定しているんです。例えば、国民総需要と国民総供給が一致するとか、そういう話はもうわかっています。ただ、私が言いたいのは、今回、お二人に聞いても、言ってみれば、需要政策も大事やけれども、供給構造改革も、どっちも大事ですという話になるわけですよ。そうなれば、今までは、どっちかをやってやめて、また財政出動をやってやめて、今度は財政構造改革と、そういうちゃらんぽらんなことを十年やっていた。今度はそれを一緒に小出しにやるから、両方の政策が互いに足を引っ張り合って、景気はますます悪うなるわ、財政支出の効果はなくなって借金はふえるわということになりませんかと。その意味で、こうした構造改革というのは、動物に例えれば、ぬえと違うのかと私は思うわけです。
 それで、最後、一点だけ総理に。
 私自身は、これまで公共事業を批判してきました。しかし、そういう批判の対象である公共事業だって、景気の下支えをしたということを不当に過小評価してはならぬと思っています。例えば、ケインズが死んだのどうなのというような話は、これは経済学者がどんどんやればいいと思います。もし、公共事業がかつてのように経済波及効果であるとか雇用創出効果が失われたのであれば、そういう話は学者の先生方でやればいい。政治の側が何をすべきなのか。要するに、公共事業の決定システムをしっかりと見直すということと違うのですか。
 というのは、そもそもの公共投資の属性に税金のむだ遣いがあるのではなくて、公共事業を中心にして、いわば政官財が癒着して税金をついばむ構造、財政支出のあしき構造、こうした問題をまず政治の側がきちんとけりをつけた上で、もしその上で痛みがあるというのであれば、国民にメッセージを発するのはその後と違うのか。その意味でも、私は、小泉構造改革というのは順番が逆と違うかと思うわけです。
 少なくともその点について、私はやはり欺瞞性は明白だと思うわけですが、最後、小泉総理、それだけお答えください。少なくとも今のところ、私、一犬虚にほゆれば万犬実を伝うと先ほど申し上げましたけれども、この間の答弁を聞いていると、万犬虚にほゆるというふうに言いかえた方がいいかもしれません。もう最後一言でいいです。
小泉内閣総理大臣 公共工事についても、必要な工事、あるいは税金投入して本当に価値がある工事なのかと、よく費用対効果の分析が必要だと思います。すべての公共工事がむだだと言っているわけではございません。今回の議論を聞いていましても、ケインズ効果におきましても、過ぎたるは及ばざるがごとしという言葉があるように、過剰な国債発行によって公共工事を積み増すことによって、果たして景気回復効果が出てくるのかという問題も厳しく見直さなきゃならないと思っております。
津島委員長 この際、中川智子君から関連質疑の申し出があります。植田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。中川智子君。
中川(智)委員 社会民主党の中川智子です。
 まず、きょうは、質問に入る前に、薬害ヤコブ病の問題について、総理、坂口厚生労働大臣、そして各閣僚の方々にお訴えを申し上げたいと思います。
 実は、一九九六年、イギリスでBSEの大パニックが起きましたときに、厚生労働省は緊急調査班を設けまして、日本国内にヤコブ病の患者がいないかということで調べました。そのときに二十八名まず最初にヤコブ病の患者が見つかったわけですけれども、これはいわゆるBSE関連のヤコブ病の患者ではなくて、いわゆる医療用具、医療器具、脳硬膜を移植された人々がヤコブ病に罹患して、そしてヤコブ病を発症したということでございました。やはりこのときも、行政、厚生労働省は、何度も海外からのいろいろな警告に対して、それを見逃したり、また無視をしたりということで、被害拡大を防ぐことができませんでした。
 本当に、現在、サーベイランスでは、七十六名のヤコブ病の患者がいらっしゃるわけですけれども、裁判闘争が五年を迎え、やっと和解のテーブルに着くことが決まりました。
 私は、ヤコブ病の患者の方のところにお見舞いに行きまして、本当にどんなにひどい、悲惨な病気であるかということを、この目でつぶさに見てまいりました。発症するとほんの三カ月ばかりで無言、無動になり、植物状態になって、数年で確実に死に至ります。治療法も全くありません。
 こんな中で、坂口厚生労働大臣が和解のテーブルにしっかり着いて、そして、できるならばきっちりと全被害者に対して救済を図りたい、そのような意思を示されました。一月十五日、初めて原告の方、弁護団の方に会っていただき、さまざまなお話を聞いてもいただきました。裁判所の和解勧告のその所見の中にはこのように書かれています。「患者本人とその家族・遺族に対しかけるべき言葉を見いだし得ない。」痛切な思いで和解の所見は書かれております。私は、一日も早く和解を成立させて、被害者全体の救済を図っていただきたい、この場をおかりいたしまして、改めてお訴え、お願いを申し上げます。
 続きまして、BSE関連の質問に入らせていただきます。
 まず、武部大臣にお伺いいたします。
 BSEが発生いたしまして、もう何カ月もたちました。全頭検査でもう安心だとおっしゃいますし、また、肉骨粉は禁止したから大丈夫とおっしゃいますが、昨年、平均して約半分でございます。被害が、もうこれ以上待てない、もうこれだと、流通、加工、そして小売、さまざまな外食、飲食店などもどんどんつぶれていくという状況になりますし、私も主婦でございますので、一生懸命、スーパーに買い物に行っても、牛肉を買うときには本当に手が出たり引っ込んだり、まだまだ迷います。
 こんなに安全宣言もおっしゃり、全頭検査もやって、どうして消費がもとどおりにならないか、そこに関して、武部大臣、率直なところをお聞かせください。なぜなんでしょう。
武部国務大臣 私も、委員御指摘のように、全頭検査体制になって、屠畜場から出回る牛肉は世界一安全と言っても過言でない状態になったのに、なぜ消費が伸びないかということについては、本当に深刻に受けとめております。いわば安全と安心という間にやはり距離があるということを私どもしっかり認識しながら、消費者の皆さん方に理解を求めていくということが非常に大事だ、このように認識しているわけでございます。
 そのためには、このBSE問題、やはり感染源の究明ということが非常に、その特定はイギリスやEUの例を見ましても大変でありますけれども、このことに全力を挙げて、決して迷宮入りさせないという決意で徹底することが一つだと思います。
 それから、今、先生が手を出したり引っ込めたりと、先生ですらそういうお気持ちになるということを考えますときに、国民の皆さん方や消費者の皆さん方にどのようにPRを徹底するか、正しい認識を持っていただくかということについてはさらなる努力が必要だ、このように考えております。
 それから、やはり私は、消費者と生産者の間に顔の見える関係というものをしっかり構築することだなと。今度、いわゆるトレーサビリティー、牛の耳に耳標を全部つけまして、牛がどこでどのようなえさを食べて、どんなような環境で飼育されているかということを目に見える形ではっきりさせていく、そういうようなことを一つ一つ積み上げていくことだ、このように思いまして、全力を尽くしたい、このように思います。
中川(智)委員 今の大臣のような話を何度しても、消費が回復しないわけですね。もうこれは政府への不信感なわけです。どのようにされていても、最初の、やはり九六年の問題、そして発生したときの対応、それがすべて政府に対する不信となって、私たちは、何とおっしゃろうと、それに対して信頼がもとどおりにならないということが問題なんです。
 原因究明に対しても、じゃ、いつはっきりできるのかということも明確にならない。そして、法律をしっかりつくってさえいない。見ていますと、その場しのぎ、小手先。きっちりと緊急措置法のようなものをつくってやらないと信頼回復はできないんです。それに対して、しっかりと大臣がやるということは一度もおっしゃっていない。やっています、やっています、原因究明やっています、二千ページもの資料もできました、そういうことを聞いているんじゃないんです。政府に対する不信感を根本から払拭するためにはどうすればいいのか。今のようなことを何度も何度も聞いても消費が回復しないからどうなんだということをお伺いしたんですが、非常に残念な答弁でございました。
 次は簡潔にお答えいただきたいんですが、雪印の問題、大変おぞましい事件だと思います。
 あの流通センターは、私の自宅から自転車で本当に五、六分のところにございます。そのようなおぞましいことがされていたのかと思うと本当に愕然といたしましたが、政府は今の時点で具体的にどのようなことをやるか、的確にお答えください。
武部国務大臣 先ほどもお答えいたしましたが、こんな言語道断な、悪質な、許されざることに対しましては、明確、厳正な責任、処分、そういったことをきちっとやらなくちゃいけない、こう思います。その前提は、やはり正確で徹底した調査を行うということだ、かように思います。
 省を挙げてこの対応に全力を挙げたい、このように決意を新たにしております。
中川(智)委員 調査の後が大事ですから、迅速に調査をして、そしてきっちりした対処を求めます。
 小泉総理にお伺いいたしますけれども、このBSEの問題というのは、国を挙げてEU各国も取り組みました。総理のリーダーシップがとても大切だと私は思うのですね。
 総理は痛み、痛みということをおっしゃいますけれども、小売業者、流通、加工、そして飲食店の現状を声で聞きますと、もう一刻の猶予もならないという状況が続いております。本当に、焼き肉店などは倒産、つぶれていく。この現実に対して、その弱い部分に対して痛みが今痛烈な形であります。
 総理、先ほどの武部大臣、実態調査もしていない、午後の質問でございましたけれども、今の現状、経営がどうなっているか、損失はどれぐらいに及んでいるのか、その実態調査も農水省としてはしていませんし、数も出せません。小泉総理、リーダーとしてこのBSE問題にどのように取り組んでいくのか。全部大臣に任せている。でも大臣は、一生懸命やったって現実は全く消費が回復しない。リーダーが、小泉総理がどのようにこの問題に取り組んでいくかということ。そして、その流通業者に対する損失補償というのを現段階でどのように考えていらっしゃるか。第二次補正というのはそれがトップに来るべきです。いかがでしょう、総理。
小泉内閣総理大臣 食品の安全性、今回の狂牛病に対しましても、今武部農林水産大臣の指導のもとに調査をしております。
 そして、この問題については、二度とこういうことが起こらないような原因究明、そして責任体制、これをしっかりとやることが大事ではないかと思っております。
 しかも、流通におきましてもかなりの被害が出ておりますし、そういう点におきましても、どういう対策、対応ができるかという問題も含めてきちんと対応するようにということでありますので、この問題については、農林水産省のみならず厚生労働省ともよく連絡をとりながら、きちんとした対応をとる必要がある。
 そして、国民の皆さんも、いろいろな風評によって、やはり安全志向が強いな、いかに食品の安全について各官庁も配慮しなきゃならないかということを改めて感じております。
 時間がかかると思いますが、そういう一度失った信頼を取り戻すのは大変だということを教えている事件でありますので、こういうことが起こらないような、不断の対策というのですか、日々怠りない行政の運営が必要ではないかということを痛感しております。
中川(智)委員 では、総理としては、やれ、やれと担当大臣に言っているだけで、総理として具体的にしっかりと今やるべき対策、それはお持ちじゃないのですね。
 それで、今の答弁の中で風評被害、どうしてみんながまだ食べてくれないのだろう、安全に対しては慎重なんだな、そういう姿勢というのは侮辱していますよ。不信を生み出したのは政府ですよ。風評被害を拡大させたのは政府ですよ。それに対して、しっかりとした対策がとれていない、目に見えた形で安心を私たち国民に与えてくれない。その現実があるから、いまだに、このようにずるずると被害の拡大、消費がもとどおりにならないという状況があります。
 例えば、ダイオキシンの問題。九八年に発覚したときに、私はダイオキシン議員連盟というのを、みんなで一緒に頑張ってつくりました。小泉さんもすぐそれに入ってくれました。あの議員連盟で、やはり各党協力してダイオキシンの緊急措置法という法律をつくり、そして法律とともに原因究明というのをはっきりさせたからこそ、ダイオキシン問題というのは大きな一歩を踏み出して、今、ダイオキシンに関しては、みんな前に進んでいるんだなという認識があるじゃないですか。
 これに関しては、何か今の話を聞いていると、ああ静かに、静かに、黙ってみんなが忘れるのを待ちましょう、そういう姿勢が丸見えです。
 総理、ダイオキシン緊急措置法のようにきっちり法律をつくるべき。そして、野党四党でつくったこれに対して与党も乗るべき。そして補償に対しては、組み替えをしてもこれに対してきっちりと被害救済をすべき。この二点について、きっちりとお答えください。
小泉内閣総理大臣 ダイオキシン対策も時間がかかっているのです。そして、このBSEの問題についても、できるだけ早くということで、今流通している牛肉は全く心配ないような体制をとっているのです。それでも、なかなか信頼してくれないところがこの怖さなんですよ。
 だから、行政というのはしっかりしなきゃならないという反省も込めて、こういうことが起こらないような体制をしっかりとっていきましょうということを何回も何回も言っているのですけれども、理解しようとしないということはまことに残念でございますが、これからもしっかりとやりますから、安心して国民の皆さん牛肉を食べてくださいと言いたいと思います。
中川(智)委員 そのようにおっしゃるたびに食べたくなくなるんですよ。本当にそういう無責任な、食べるように食べるように、きっちりと法律整備もしていない、責任もとっていない、原因究明も待て待てと言っていつになったら原因究明ができるかわからない、それで安心して食べられるわけないじゃないですか。命と健康を守る、それが私たちの役目です。やはりこれは、武部大臣、小泉総理、責任問題。
 森総理が八%ぐらいの支持率でした。そして、もう小泉さんが、自民党の信頼回復をするには僕がやらなきゃ、そのときにはこういう政策を持ってと言って十倍近くにはね上がったじゃないですか。やはり責任をしっかりとる、そして口で言ったことは早急にやる、そして法律をつくる、それをやらないとだめです。武部大臣に対して、総理は任命権者として、このままずっと農水大臣を続けさせるのですか、答えてください。
津島委員長 これにて植田君、中川君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして各会派一巡の基本的質疑は終了いたしました。
 次回は、明二十五日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時一分散会


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