衆議院

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第10号 平成14年2月14日(木曜日)

会議録本文へ
平成十四年二月十四日(木曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 津島 雄二君
   理事 伊藤 公介君 理事 木村 義雄君
   理事 北村 直人君 理事 小林 興起君
   理事 藤井 孝男君 理事 枝野 幸男君
   理事 城島 正光君 理事 原口 一博君
   理事 井上 義久君
      伊藤信太郎君    伊吹 文明君
      衛藤征士郎君    大原 一三君
      岡下 信子君    奥野 誠亮君
      亀井 善之君    倉田 雅年君
      栗原 博久君    小坂 憲次君
      小島 敏男君    近藤 基彦君
      佐藤  勉君    高木  毅君
      高鳥  修君    谷田 武彦君
      中山 正暉君    丹羽 雄哉君
      西川 京子君    野田 聖子君
      萩野 浩基君    林  幹雄君
      細田 博之君    松宮  勲君
      三塚  博君    宮本 一三君
      持永 和見君    森岡 正宏君
      八代 英太君    赤松 広隆君
      五十嵐文彦君    池田 元久君
      岩國 哲人君    河村たかし君
      桑原  豊君    小泉 俊明君
      筒井 信隆君    中沢 健次君
      永田 寿康君    野田 佳彦君
      牧野 聖修君    松野 頼久君
      松本 剛明君    山井 和則君
      青山 二三君    赤松 正雄君
      達増 拓也君    中井  洽君
      中塚 一宏君    小沢 和秋君
      佐々木憲昭君    春名 直章君
      阿部 知子君    辻元 清美君
      横光 克彦君    井上 喜一君
    …………………………………
   総務大臣         片山虎之助君
   外務大臣         川口 順子君
   財務大臣         塩川正十郎君
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   厚生労働大臣       坂口  力君
   農林水産大臣       武部  勤君
   経済産業大臣       平沼 赳夫君
   国土交通大臣       扇  千景君
   国務大臣
   (内閣官房長官)     福田 康夫君
   国務大臣
   (防衛庁長官)      中谷  元君
   国務大臣
   (金融担当大臣)     柳澤 伯夫君
   国務大臣
   (経済財政政策担当大臣) 竹中 平蔵君
   国務大臣
   (規制改革担当大臣)   石原 伸晃君
   内閣府副大臣       熊代 昭彦君
   内閣府副大臣       松下 忠洋君
   内閣府副大臣       村田 吉隆君
   防衛庁副長官       萩山 教嚴君
   総務副大臣        若松 謙維君
   外務副大臣        杉浦 正健君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   文部科学副大臣      岸田 文雄君
   厚生労働副大臣      宮路 和明君
   厚生労働副大臣      狩野  安君
   農林水産副大臣      遠藤 武彦君
   経済産業副大臣      古屋 圭司君
   国土交通副大臣      佐藤 静雄君
   政府参考人
   (外務省大臣官房長)   小町 恭士君
   政府参考人
   (厚生労働省職業安定局長
   )            澤田陽太郎君
   政府参考人
   (厚生労働省職業能力開発
   局長)          酒井 英幸君
   政府参考人
   (厚生労働省保険局長)  大塚 義治君
   政府参考人
   (厚生労働省政策統括官) 坂本 哲也君
   政府参考人
   (農林水産省生産局長)  須賀田菊仁君
   政府参考人
   (国土交通省大臣官房長) 風岡 典之君
   政府参考人
   (国土交通省住宅局長)  三沢  真君
   政府参考人
   (海上保安庁長官)    縄野 克彦君
   参考人
   (日本銀行総裁)     速水  優君
   参考人
   (預金保険機構理事長)  松田  昇君
   予算委員会専門員     大西  勉君
    ―――――――――――――
委員の異動
二月十四日
 辞任         補欠選任
  石川 要三君     高木  毅君
  奥野 誠亮君     森岡 正宏君
  亀井 善之君     林  幹雄君
  栗原 博久君     岡下 信子君
  小坂 憲次君     倉田 雅年君
  葉梨 信行君     伊藤信太郎君
  八代 英太君     谷田 武彦君
  赤松 広隆君     牧野 聖修君
  岩國 哲人君     山井 和則君
  中沢 健次君     桑原  豊君
  野田 佳彦君     永田 寿康君
  山口 富男君     小沢 和秋君
  辻元 清美君     阿部 知子君
同日
 辞任         補欠選任
  伊藤信太郎君     葉梨 信行君
  岡下 信子君     西川 京子君
  倉田 雅年君     佐藤  勉君
  高木  毅君     石川 要三君
  谷田 武彦君     八代 英太君
  林  幹雄君     亀井 善之君
  森岡 正宏君     奥野 誠亮君
  桑原  豊君     中沢 健次君
  永田 寿康君     野田 佳彦君
  牧野 聖修君     赤松 広隆君
  山井 和則君     小泉 俊明君
  小沢 和秋君     春名 直章君
  阿部 知子君     辻元 清美君
同日
 辞任         補欠選任
  佐藤  勉君     小坂 憲次君
  西川 京子君     近藤 基彦君
  小泉 俊明君     岩國 哲人君
  春名 直章君     山口 富男君
同日
 辞任         補欠選任
  近藤 基彦君     松宮  勲君
同日
 辞任         補欠選任
  松宮  勲君     栗原 博久君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 平成十四年度一般会計予算
 平成十四年度特別会計予算
 平成十四年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――
津島委員長 これより会議を開きます。
 平成十四年度一般会計予算、平成十四年度特別会計予算、平成十四年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 三案審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長小町恭士君、厚生労働省職業安定局長澤田陽太郎君、厚生労働省職業能力開発局長酒井英幸君、厚生労働省保険局長大塚義治君、厚生労働省政策統括官坂本哲也君、農林水産省生産局長須賀田菊仁君、国土交通省大臣官房長風岡典之君、国土交通省住宅局長三沢真君、海上保安庁長官縄野克彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
津島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
津島委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤松正雄君。
赤松(正)委員 おはようございます。公明党の赤松正雄でございます。大変に御苦労さまでございます。
 私は、公明党を代表し、かつ個人的な見解も交えて、安全保障それから外交また教育の問題につきまして御質問をさせていただきたいと思います。
 昨日までのいわゆる二日間の質疑は、テレビが入って大変に緊張した場面が続きましたけれども、きょうは全国ネットのテレビは入らない、しかも与党第二党の質問であるということで緊張感を欠かないように、皆さん退屈をされないようにやりたい、ただし、言っている方がちょっと眠いもので余りあれでございますけれども、やりたいと思います。
 まず冒頭は、今大変な経済の状態、デフレ、そういう状況の中で、いわゆる防衛出動法制、いわゆる有事法制、こういったものを導入する、法整備をするということについて、こういうことを今やる状況ではないんじゃないのか、そういうふうな声があり、長い日本の歴史の中で、戦後の歴史の中で、このいわゆる有事法制に対する誤解やあるいはまたさまざまな考え方から、これを否定的にとらえる向きがある、そういうふうなことがありますので、まず冒頭、官房長官の方から、政府のこの問題に対する基本的な考え方を国民に対してわかりやすくお伝え願いたい、そう思います。
福田国務大臣 諸事多難なときでございますけれども、国のまた政府の本当に究極的な仕事、やはり国の安全を守る、国民の安全を守るということについて、これは瞬時も忘れることはできないことであります。
 しかしながら、この分野のことにつきまして検討がかなりおくれているのではないかという御指摘は、もうこれはいろいろなところから指摘をされているところでございます。国の独立と主権、国民の安全を確保するために、平素から備えあれば憂いなし、こういう考え方があるわけでございまして、これは当然のことながら、日本国の憲法というものがございまして、そういう憲法のもとに、我が国に対する武力攻撃に対処する体制を整えておくということは、これは国としての本当に大事な責任であるということは、今申し上げているとおりでございます。
 また、我が国がみずからの安全確保のために主体的に努力するということは、我が国防衛の重要な柱である日米安保体制の信頼性を向上させるということになります。そして、我が国の安全を一層確かなものにするということとともに、国際協調のもとで我が国の安全を確保していく上でも大変大事な観点ではないかというように考えております。
 このような認識を持って、国民の安全を確保し、有事に強い国づくりを構築するということのために、与党とも協議会等の場を通じまして緊密に連絡をとりながら、この武力攻撃の事態への対応に関する法制について取りまとめを急いで、この国会に法律を提出したい、このように考えておるところでございます。
赤松(正)委員 要するに、国としての基本的な構えとして、今申されたようなそういう法整備が必要である、それが今まで整備されなかった、おくれていた、だから今この時点で備える必要がある、こういうことだろうと思うんですが、ただ、私というか、今日本の中で起きてきている議論はこういうものがあります。
 例えば、今のブッシュ大統領の一般教書の話が昨日の最終の議論の中で出てまいりましたけれども、あの先代というか、シニア・ブッシュの今から十一年前の一般教書、その中でブッシュ大統領は、現在危機に瀕しているのは一つの小さな国家だけではない、それは大きな理想、新世界秩序である、こういう言葉を十一年前の一般教書で述べたわけですけれども、ここで言うところの大きな理想、新世界秩序というのは、結局、あの湾岸戦争を経て後、いわばやみの中に消えたわけであります。
 それはなぜかというと、まさにアメリカが湾岸戦争以降、これは専門家に言わせると、LIC、ロー・インテンシティー・コンフリクトと言うそうですけれども、いわゆる低い強度の紛争、違う言い方をすれば非対称紛争というような言い方がされておりますけれども、いわば国家対国家の争いではなくて、国家とそういう小さな、民族とか宗教とか人種とかそういうことがきっかけになって、その後のいわば新世界秩序づくりに世界は失敗したというふうなことが指摘をされています。
 つまり、先ほど官房長官おっしゃったような、そういういわゆる防衛出動が必要になるような状態というものに対する備えをするということはもちろん必要だと私は思いますけれども、同時に今急がれるべきは、先ほど申し上げたような、人種とか民族とかあるいはまた宗教とかそういうふうな、いわば従来のイデオロギー対決時代、冷戦下になかったような紛争に対してどう対応するのか。昨年の九月十一日に起こったテロ、ああいうふうなものに対する準備というものは必要じゃないのか。
 つまり、いわゆる有事法制というものが長い間準備されてきた、そこへ冷戦後、今申し上げたような新しい、LICあるいは非対称紛争と言われるような状況が起こってきて、それに対する対応と、いわば二つの準備がごちゃまぜになっているという印象を受けるんですけれども、その辺についてどういう整理をして考えておられるのかということが一点。
 それからもう一つは、総理が包括的ないわゆる有事法制に対する体制をつくるべきだということをおっしゃったり、防衛庁長官が、防衛庁としてかつて準備してきているいわゆる防衛庁にまつわるものとしての第一分類、それから防衛庁以外の省庁についての第二分類、こういう既に準備が進められてきている分について先行的に進めるべきだというふうなお話とか、あるいは、先日新聞を読んでおりましたら、米軍支援法、これはそういう名前で新聞に書いてあったんですが、そういうふうなものを政府が準備している、こういうふうなことがあったり、さまざまな見解というか見方がいろいろ乱れ飛んでいる。
 こういったことを踏まえて、今政府は、先ほど申し上げた新しい冷戦後の状況を踏まえ、かつ伝統的な国家としての基本的な姿勢というものを踏まえて、どういうふうな対応を考えておられるのか、お聞かせ願いたいと思います。
福田国務大臣 確かに、委員の御指摘のとおり、最近起こりましたテロのような、ああいうような大規模な問題についてどのように考えるかという問題がございます。それと有事法制が何かごちゃごちゃになっているというような感じを受けるのでありますけれども。
 こういうテロですね、これは、国と国民の安全を確保するために、有事、もちろんこれは大事なんですけれども、このような大規模テロ、武装不審船等のこういう事態にも対応できるように万全を尽くすということは必要なんであります。ですから、このテロとか不審船とかいったような新しい事態に対しましては、有事法制の整備と並行しつつ、このような緊急事態についても、それぞれ様相が違います、ですから、事態の特性に合わせながら、特性を考えながら、相互の共通点とか関連性に留意しながら、政府が一体となって取り組むべき課題である、こんなふうな考え方をしております。
 そのようなことでございますので、今回法制化する有事法制とは切り離して考える。しかし、事態は、切り離せない部分があるわけですね。大規模テロがそのまま有事問題になるということもあり得るわけでありますから、そういう点も配慮しながら、それぞれ、ただ法制的には分けて考えていくということであります。
 いわゆる有事法制の整備は、我が国に対する武力攻撃の事態に備えてどのような法制を整えておくべきかを考えるものであるということでございます。先ほども申し上げましたように、憲法のもとでこれは考えていくということになるわけであります。そして、包括的に検討する必要があるということであります。
 そういう意味で、我が国防衛のための自衛隊の行動及び米軍の行動の円滑化のために必要な措置、住民の避難誘導というような、国民の安全確保の観点から必要となる措置や、国際人道法を尊重するとの観点から必要となる措置について幅広く検討をしていく必要があるというように考えております。
 そういう法制の整備に当たりまして、武力攻撃の事態への対応についての理念、全体像を適切な形で国民に示していくとともに、自衛隊の行動の円滑化に係る措置などにつきまして、これまでの検討結果を踏まえて必要な作業を急ぐべきであるというふうに考えておるところでございます。
赤松(正)委員 今の官房長官のお話では、要するに、先ほど申し上げた新しい紛争というものとは一応大きく区別をして、いわゆる防衛出動法制、いわゆる有事法制についてと同時並行的に進めて検討していくんだ、こういうお話だったと理解いたします。
 先般、私どもの党の神崎代表が代表質問の中で、総理に対しまして、いわば有事法制を進めていく上における歯どめとして、あくまで憲法の枠内、あるいは集団的自衛権の行使には踏み込まないなど、従来の憲法解釈の変更は認めないのだというふうなことを初めとする五つの歯どめを強調いたしました。
 それに対して、総理は、そういうことを踏まえて、国民の十分な理解を進めていくことが極めて重要であると認識している、こんなふうなお話がありました。今鋭意検討を進めておられるということでございますので、ぜひとも、先ほど申し上げたようなそういう方針に基づいて準備をしていただきたい、そんなふうに思います。
 ここで、防衛庁長官に確認をさせていただきたいことがございます。
 実は、先ほど申し上げましたように、湾岸戦争が約十年前にあって、それ以降日本は、あの湾岸戦争のときに、国連平和維持活動、いわゆるPKO法を大変な大議論の末につくった。そしてその後、あの日米ガイドライン見直しに基づく周辺事態安全確保法をつくった。そして今回、去年のあの事態を踏まえて、テロ特別措置法、いわゆるテロ特措法というものをつくった。
 こういう流れの中で、要するに私は、この十年の試みというのは、一国平和主義から脱却をして、世界の中で日本はいかに生きるかということに日本が本当に懸命に取り組んできた十年だったと思います。ところが、こういう主張に対して、先般、私テレビの番組に出たときに、その司会者の方から、そういった一連の流れがすべてアメリカにいわば引きずられた格好である、特に今回のいわゆる有事法制も背後にアメリカの要請がある、こういうふうな見方で強く言った向きがあります。
 このこととあわせて、私は、この十年の歴史を見るときに、先ほど言った三つの代表的な、日本がこの十年に取り組んだ法律というのに一貫して流れている一つの思想がある。それは、思想というのはオーバーかもしれませんが、業務中断の思想だというふうに私は思っております。つまり、PKO法でいわば平和五原則を導入して、ビルトインされていますけれども、あの物の考え方の中に、紛争状態に巻き込まれたらその時点で中断をする、撤収するという考え方が入っている。あるいは、周辺事態安全確保法の中にも、そういう紛争に巻き込まれるという状況の中で業務を中断するという考え方が入っております。また、テロ特措法においてもしかりであります。
 これは、戦争放棄をした憲法第九条と、それから国際社会の中でいわゆる名誉ある地位を得たいという国際貢献をうたった前文との、この二つのものをどう結びつけていくか、二つに矛盾なきようどう日本が持っていくかというところから出た知恵だ、私はこんなふうに思っているわけですけれども、そういったことを理解しないで、先般テレビの番組に出て私が指摘されたことをこの場で言うというのも何となく、いわゆる戦争で失ったものは交渉の場では取り返せないという言葉があるので、場所が違うかもしれませんけれども、そういう私の今言ったような考え方に対して、例えば周辺事態安全確保法で中断をするというふうに法律に書いてあるといっても、それは要するに建前であり、うそだ、こういうふうに言う知識人というかメディアに出てくる人がおります。私は、それはおかしい、そんなふうに思うんですけれども、今申し上げたような、そういうこの十年の日本の試みがアメリカに引きずられたものであるという指摘に対する、私は違うと思うんですけれども、その点と、それから、いわば業務中断の思想、ちょっと耳なれない言葉ですけれども、そのことに対する防衛庁長官のとらえ方、考え方を聞かせていただきたいと思います。
中谷国務大臣 先般、米国で起こりました同時多発テロにいたしましても、また昨年末の不審船の事案にいたしましても、これは、日本の国民に対して、その生活に不安を感じるような出来事でございまして、我が国自身の問題でもある、我が国自身の安全にもかかわる問題であるという認識を持っていただいて、やはり自分たちの国は自分たちで守ることが当然のことながら必要であるという認識を持たなければならないというふうに思っております。
 そういう観点で、国際的な問題につきましても、我が国としてのなすべきこととして、日本国憲法の枠内におきまして、武力行使をしない、また集団的自衛権は行使しないということによって、法案が議論をされ、その中で、赤松委員のおっしゃるような業務の中断という規定ができたわけでございます。
 法律によりまして、例えばガイドラインにおきましては後方地域において、また、テロ対策支援におきましては戦闘行為が行われていない地域においてそれぞれ業務を実施するわけでありますが、この活動中に近傍で戦闘行為が行われるなどの不測の事態が発生したといたしましても、この活動が後方地域または戦闘行為が行われていない地域で行われることを担保するために、実施区域の変更、また活動の中断等を行うということがされておりまして、これによって、自衛隊の活動と米軍等の武力行使との一体化の問題が生じることがないように、この法律で規定をされております。
 このように、この内容におきましては、憲法で言っている武力行使はしない、集団的自衛権は行使しないという精神に基づいて規定をされているわけでございまして、業務の中断におきましては、その状況におきましてしかるべき判断がなされるものであるというふうに認識をいたしております。
赤松(正)委員 引き続き防衛庁長官にお聞きしたいんですが、今、集団的自衛権の行使については認めないというお話がありましたけれども、先般総理が、集団的自衛権を認めるのならば憲法を改正した方がよいという言葉に引き続いて、前文と九条の間にはすき間がある、あいまいなところがあるというふうな意味合いのことをおっしゃいました。
 ここから先は私の個人的見解なわけですけれども、今、防衛庁長官御自身が武力行使の一体化という言葉を先ほどのお話で使われましたけれども、私は、今日まで、日本の憲法第九条をめぐる集団的自衛権の問題の議論の中で、かなりきつく自制心をきかせ過ぎて、いわば、武力行使との一体化ということについてかなり拘泥し過ぎた、こだわり過ぎた傾向が、私に言わせれば縮小解釈し過ぎる傾向があったんではないか、そんなふうに思います。であるがゆえに、この数年の与党の動きをとらえて、言ってみれば、長い間の日本国国会における安全保障の議論の積み重ねをかなり飛び越えて云々という議論が、指摘が出てくる。私は、そういったことをやはりどこかの時点できちっと整理する必要がある、そんなふうに考えております。
 憲法について、自衛権の行使すら今の憲法第九条が認めていないんだと言う人がいたり、あるいはまた、全くそれと正反対のことを言う人がいたり、かなりさまざまな乖離を生み出す状況の中で、やはり今の時点で憲法第九条をめぐる問題も含めて整理をする必要があると思います。きょう、ただいまこの時間、憲法調査会は本日より議員相互の議論に入るということで、分科会の議論がきょうから始まっておりますけれども、そういったところででも、先ほど来申し上げておりますような、総理が、集団的自衛権の問題については研究をする余地がある、こうおっしゃったことについて、大いに、タブーを設けないでしっかり議論していく必要がある、そんなふうに思います。
 総理が、研究の余地がある、研究する必要があると言ったことについて、今どのあたりまで研究が進んでいるのか、防衛庁長官にお伺いしたいと思います。
中谷国務大臣 この憲法問題につきましては、憲法調査会等で議論をされておりますし、国会の外でもそれぞれの政党の方々が意見を述べられておりますが、国会での議論という観点におきましては、政府といたしましては、我が国は国際法上集団的自衛権を有しているということは主権国である以上当然のことであるが、憲法第九条のもとにおいて許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するために必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており、集団的自衛権を行使することはその範囲を超えるものであって、憲法上許されないと考えてきておりまして、憲法というのは我が国の法秩序の根幹であって、特に憲法九条におきましては、過去五十年余りにわたる国会での議論の積み重ねがあるので、その解釈の変更については十分慎重でなければならないというのは従来からの考えでございます。
 ただ、時代が変化をいたしている中で幅広い議論が行われており、これによって国民の皆様方の考え方、また理解のされ方等も十分聴取をしつつ、この集団的自衛権問題についてはさまざまな角度で議論をされ、検討をされている最中でございまして、この状況を政府といたしましては注視してまいりたいというふうに思っております。
赤松(正)委員 私は、もちろん、憲法第九条が言っているところの戦争放棄、この理念というものは非常に大事な理念だと思います。当然のことながら、海外におけるいわゆる武力行使、これは断じてあってはならない、そういうふうにも思っております。ただ、それはそうであって、もし仮にそんなことを変えるというのなら、まさに憲法改正のマターであろうと思います。私は、それに至る前の段階で、さまざまな、言ってみればコアの部分じゃない、遠い部分で余りにも今まで慎重であり過ぎた部分があるのではないか、その部分については整理する必要がある、こういうことを申し上げたわけでございます。
 次に、先ほど挙げましたいわゆる新しい時代におけるLIC、非対称紛争といいますか、そういうものに対する、政府のいわゆる国際テロに対する準備、対応、これをもう少し細かくお聞きしたいと思うんです。必要な検討を進める、こうおっしゃっていますが、官房長官、今まだそんなに進んでいないのかどうかわかりませんが、現状をお聞かせ願いたいと思います。
福田国務大臣 御質問の低強度紛争等を含むそういう事案に対する取り組み、これはいろいろな角度からやっております。そしてまた、いわゆる危機管理という観点から、今現在考えられるような事案に対する対応というものは、これは、いかなるときにもという、そういうことで対応を十分にしておるつもりでございますけれども、なお、予測しがたいようなこともあるような時代において何をなすべきかということについて、今検討を鋭意進めておるところでございます。
赤松(正)委員 この国際テロにどう対応していくかというのは、さまざまな人がさまざまな議論を展開しておりますけれども、旧来的な国家と国家の紛争の間における個別的自衛権とかあるいは集団的自衛権、そういう伝統的な自衛権の概念を超えているところがある。言ってみれば、こんな言葉は私の造語ですけれども、文明擁護権というもの、文明対反文明の闘いと言われている国際テロ紛争の中にあって、要するに文明国家が全部大同団結して手をつないでそういう反文明のテロリズムにどう対抗していくかというふうなことを、しっかりネットワークをつくっていかなくちゃいけないのじゃないか、そんなふうに考えます。
 外務大臣にお聞きしたいんですけれども、冷戦下における核抑止体制というものがあって、今、冷戦後は、今申し上げましたような経緯の中で、核抑止ではなくて、言ってみれば新しい紛争抑止体制というものが、先ほど言いましたようないわゆる現在の文明国家群で、具体的に言えばG7ならG7、あるいはG8、そういう国家群によって早急につくり上げられなくてはいけない。もちろん、その主体は国連という場になるんだろうと思いますけれども、そういう国連の場で日本が積極的にいろいろな発言をしていく必要がある。
 私は、今まで長い間理想として語られながら遠い理想として現実のものではなかったいわゆる国連警察軍という構想、そういったものを、ある意味では今こそ、これから二十一世紀において、そういった国家の主権を超えたところで地球上における警察行動をする、そういう意思を裏づける実力を持った警察主体というか、そういうものを国連がつくっていく段階が遠からず来なきゃいけない、そんなふうに思うんですが、外務大臣、国連の場においてそういったことを、それだけじゃなくてもいいんですけれども、こういう国際テロ紛争というものの流れの中で日本が主体的に発信していくものは何かということについて、お考えをお聞かせ願いたいと思います。
川口国務大臣 委員おっしゃられましたように、紛争の抑止というのは引き続き非常に大事なことでございまして、これにはそもそも、経済社会一般の安定、成長といった面から、非常に幅広い問題が中に含まれているというふうに思います。
 それで、G8の場では、まず国際テロへの対応につきましては相当に昔から対応してきて取り組んできております。最近では、九州・沖縄のサミットも含めましてあらゆる形態のテロを非難する旨の表明を行ってきているほか、国際的なテロに対応していくための取り組みを主導してきているわけでございます。
 おっしゃられました国連警察隊でございますけれども、どのような内容のものであるかということが一つの問題になってくると思います。いろいろなさまざまな状況が考えられると思いますけれども、そういった行動あるいは攻撃に対する具体的な対応のあり方については、攻撃の程度でありますとか、その態様でありますとか、そういった問題が何かということですけれども、我が国といたしましては、このようなテロに対してどういう対応をしていくべきかということにつきましては、国際社会で既に今さまざまな協力も行っていることに対して積極的に参加をしていくということとともに、今後行われる議論に対しても積極的に参加をしていきたいというふうに思っております。
 具体的に現在行われていることといたしましては、G8首脳が、昨年のアメリカにおける同時多発テロに対しましては、テロを強く非難するという声明を、テロ対策協力強化を指示する声明を出しました。これを受けまして、G8の専門家による会合などの場におきまして緊密に協議をいたしまして、テロを防止、根絶するためにどのような国際的な法的な枠組みを強化することが必要か、あるいはテロの資金源の対策等につきまして、各方面での協力を進めてきているところでございます。
赤松(正)委員 日本は、この戦後五十有余年の間、世界の中でほとんど唯一と言ってもいいぐらい戦争をしない、していない。そしてまた、いわゆる世界、地上にあまたあるような、民族問題というふうな形で抑圧をした、そういうことの経験を持たない。そういう国であるがゆえに、積極的に国連の場で日本が、先ほど来申し上げておりますそういう新しい、新冷戦というか、この時代の中で積極的な提言をどんどんしていっていただきたい、そんなふうに思います。
 次に、不審船事件の問題でございます。
 実は、一月十日に衆議院国土交通委員会で、この不審船事件について集中審議をやりました。私、当時国土交通委員長をしておりまして、委員長席で与野党の皆さんの質疑を聞いていて、大変に実りある議論だったと思うんですが、残念ながら、ほとんどメディアでは報道されなかった。私、ホームページでその辺の、一部始終とまではいきませんけれども、その国土交通委員会集中審議の模様を紹介いたしましたら、幾つかの意見というか、いろいろな要望というか、そういうのが返ってまいりました。
 その一つは、後でお聞きするんですが、いわゆる沈没した不審船引き揚げの話ですけれども、きょうはこの場で若干その後の経緯を国土交通省、海上保安庁にお聞きをしたり、あるいは防衛庁長官に、あの場面での防衛庁の見解が一部新聞に伝えられたのが、間違って伝えられている向きがあると思いますので、その辺の確認、そして、引き揚げ問題について国土交通大臣のお考え等を聞かせていただきたいと思います。
 まず最初に、海上保安庁長官に、この一カ月の検証の結果の報告を手短にお願いしたいと思います。
縄野政府参考人 お答え申し上げます。
 私どもとしましては、事件が起こった後、関係省庁とともに、内閣を中心といたしまして、このような事案に対する関係省庁の連携の問題、それから法制度の問題、それから職員の安全を確保しながらこれに対応するための体制あるいは装備の問題、こういうものについて、現在、事務的に各省庁間で議論をし、できるだけ早くこれをまとめようとしているところでございます。
赤松(正)委員 できるだけ早くとおっしゃいました。もう事件が発生してから二カ月ほどがたっておりますので、早急な検証を出してほしいと思います。
 防衛庁長官。あのときに、海上警備行動の準備命令を設ける必要があるんじゃないかという与党委員の質問に対しまして、運用局長が答えた。少し、どちらともとれるような発言をされた。それに対して、海上警備行動の準備命令を用意する、こういうふうな報道が流れましたけれども、防衛庁のこの問題に対する基本的な考え方を確認いたしておきたいと思います。
中谷国務大臣 海上警備行動の準備命令といった制度について、法改正等が必要ではないかという御質問に対してのお答えでございますけれども、海上警備行動準備のための命令、私はそういう法制度は必要でないというふうに思っております。
 例えば、海上警備行動のための準備行為といたしまして、艦艇の出港の準備、また現場の海域までの進出といった行為につきましては、一般的に言えば、法律の規定がなければできないものではないというふうに考えておりまして、現在、政府部内でもいろいろと検証を行っているわけでございますが、防衛庁設置法第五条第十八号、これは「所掌事務の遂行に必要な調査及び研究」でございますけれども、これに基づく警戒監視活動として、今回の不審船の事案における海上自衛隊艦艇の派遣の法的根拠を問われれば、こういう警戒監視行動の活動として行ったものであるというふうに認識をいたしておりまして、必ずしもこの海上警備行動準備命令というものは必要ではないというふうに思っております。
赤松(正)委員 あのときの議論としては、やはり艦船が現場に駆けつけるのが少し遅かった。あれは、第一義的には海上保安庁の業務であるということで、今回の事案の場合は、防衛庁の対応が、そういう判断のもとにやられたということがあったんでしょうけれども、一方で、海上警備行動を起こさなくてもその準備段階での行動があっていいんじゃないか、そういう議論から出てきたんだろうと思いますが、今の防衛庁長官の判断で了としたいと思います。
 沈んだ船の引き揚げの問題について、扇大臣があのときに非常に明快なことをおっしゃった。そういうことについて反応も多かったわけですけれども、改めて、今の時点で、扇国土交通大臣のこの問題に対する基本的な考え方を聞かせていただきたいと思います。
扇国務大臣 赤松先生にきょうは貴重なお時間にこの質問をしていただいて、私は大変ありがたいと思っております。
 と申しますのは、二カ月近くになりまして、何となく国民の意識の中から忘れ去られようとしているという、私、それは大変危険なことだと思っておりますし、また、こういう機会に改めて、昨年の十二月の二十二日でございましたけれども、私どもは初めて、海上保安庁の「いなさ」「あまみ」「きりしま」等、そういう四隻の船を出しまして、本当に私たち、日本の漁船があんなに操業しているそばで、イカ釣り漁船の集魚灯、魚を集める電気ですね、それをつけて漁船に偽装したといいますか、そして、船の名前も「長漁三七〇五」と明記してあったわけですね。そして、初めて海上保安庁がそれを追跡しまして、初めての銃撃戦になりました。それも私どもは初めて被弾をしたわけでございまして、私は、そのときに、本当によく頑張ってくれたなと思います。
 あの荒波の中で波にもまれながら、後で四隻の船長さんに聞きましたら、もう船酔いでみんな生きるか死ぬかというぐらい対応能力、体力の限界を感じながら対処したということは、海で操業する皆さん方、また日本国民の皆さんにとって、ロケット砲まで持っている不審船がその辺にいるということ自体が私は大変なことだと思っておりますので、この件に関しましては、不審船の、少なくともどこの、何の目的で来たのかということを明快にしませんと、国民に私たちは海上保安庁、海の警察官としての任務が遂行できない。
 そういう意味では、私は、最後までこれを解明していくという努力をしていかなければ、海上保安庁の職員の士気にもかかわりますので、ぜひこれは最後まで徹底して究明していきたいというふうに思っている気持ちにはいささかの迷いもございませんし、今でもその気持ちに変わりはありません。ただ、沈んだ場所が中国のEEZの中であるということでございますので、なるべくならば了解を得ながら、みんなで、しかも、途中で中国の旗を出して中国船にまで偽装した経緯があるものですから、ぜひ近隣の諸国の御協力を得ながら明快にしていきたいと思っております。
赤松(正)委員 今の後段の部分で大臣がおっしゃったように、沈んだ場所が中国の排他的経済水域のところであるということが事をややこしくさせているわけですけれども、この問題、先般この場所で保守党の委員が質問されておりましたけれども、あるいはまた本会議でも質問がありましたけれども、政府の答弁は少しあいまいなところが多過ぎるというふうに思います。
 外務大臣にお聞きしたいのですが、先般の国土交通委員会における集中審議でも、外務省の審議官が、ちょっとその辺があいまいな言い方をなさったのですが、いわゆる日中間で緊密な連絡をとったというのですが、どのように、どういうレベルでどういう連携をとったのかということをひとつはっきりさせてほしいということがあります。
 それから、もう一つは、時間が迫ってきましたので一緒に質問いたしますけれども、保守党の野田党首が先般中国へ行かれた。国会開会中にいらっしゃったということは大変重要な役割を持っていらっしゃったのだと思うのですけれども、そのときの報告というか、会談の模様が新聞に出ております。公的な形では私たちは聞いていないのですけれども、新聞の報道によると、海上関連部門で協議した方がいいとセンキシン中国副首相が言われたとか等々の情報が報道機関を通じて私たちのところに入ってくるのですが、野田さんの方からそういう報告を受けられたのでしょうか。そのことも含めて、中国とのこの問題に関する連携という問題についてお聞かせ願いたいと思います。
川口国務大臣 まず最初の方の御質問の、どのレベルで中国とコンタクトをしたかということでございますけれども、細かい話でございますので、私はちょっとまだそこまで話は聞いておりませんが、恐らく大使館でやったのではないかというふうに、これは私は想像をいたします。
 それから、二番目の保守党の野田党首のお話でございますけれども、この件について私は野田党首とは直接にはお話をしておりませんが、この会談の内容につきまして事務当局でお話は聞いています。それによりますと、保守党の代表団が訪中をした際に会談をした中国側要人に対しまして、不審船の引き揚げについて中国側の理解及び力添えを願いたいということをおっしゃっていただいて、先方よりは、今委員がおっしゃられましたように、両国の関係部門の間で協議をすべきである、それから当該海域、この海域には中国は権益と関心を持っていることを理解してほしいというような御反応があったというふうに私は聞いております。
赤松(正)委員 そうすると、最初の段階の話は、いわゆる外務省として、きちっとした機関として接触はしていない、そういうふうに理解をいたします。違うのですか。(川口国務大臣「私は聞いてないのです」と呼ぶ)聞いていない。
 それから後段の部分は、要するに、中国との調整を、野田さんと関係なしに、それまでの段階として外務省として公的なルートでやったわけじゃないということですね。そうですね。
川口国務大臣 外務省と中国側とやっていますけれども、私はちょっと就任後まだ日が浅いものですから、どのレベルでやっているかという事実関係、だれがということを知らないということを申し上げただけでございます。
赤松(正)委員 官房長官、野田さんからの報告は官房長官の方にはありましたか。
福田国務大臣 野田毅保守党党首から先週北京から電話をちょうだいしました、こういう会談をしたと。その結果、今外務大臣からもお話ございましたような内容でございまして、当該海域は中国が権益と関心を有している地域であるということを理解してほしい、こういうふうなことでございました。
 そういうことでありますが、これまでこの事件につきましては関係当局において鋭意捜査を継続しておるわけでございまして、引き続き事実関係の解明ということに全力を挙げてまいる所存でございます。
 これまで船体の引き揚げとか潜水調査というのは行っておりません。これは、ひとえに海域の気象条件によるものでございまして、冬の間は相当波が高いということで、そういう作業はできないということであります。ですから、波が落ちつけば、まあ落ちつきぐあいによりますけれども、まずカメラを入れるとか、そして、カメラでどういう状況になっているかという概要を調査するということはできるわけで、これはいずれそれほど遠くないうちにやるのではなかろうかというふうに思っております。
 そういうことでありまして、そういうような調査を積み重ねた上で、手順としては引き揚げということになるんでありましょうけれども、そういう手順の結果判明する状況を見ながら次の段階を判断していくということになろうかと思います。
 先ほど申しましたように、事実上の中国のEEZとして扱っている海域でございますから、これは中国とも十分調整を図りながら適切な対処をするべきであるというふうに考えております。
赤松(正)委員 今お話がありましたように、中国とあくまでしっかりと連携をとりつつ日本の引き揚げたいという意思を明確に示していくということは大事だろう、こんなふうに思います。
 次に、文部大臣にお伺いをいたしたいと思います。
 今、大変な経済危機の中で、いわば学生たちが大変な経済危機の影響を受けている。公立高校の高校生たちが、言ってみれば学費が払えないという格好になっている人とか、あるいは経済的な事情で学校をやめなきゃいけないという人がいたり等々の事態もじわり進行している、そういうふうな状況がございます。
 そういう中で、やはり大事なのは奨学金の事業だろうと思うのですけれども、平成十四年度予算におきまして、有利子奨学金の対応人員が、有利子の部分は六万一千人ほどふえておりますけれども、無利子の奨学金の対応人員については逆に一万六千人ほど減っている。合計、育英奨学金事業全体で見れば四万五千人ほどふえて、約八十万人になっているわけですけれども、昨今の厳しい状況の中で、大変に就学困難な学生生徒がふえている、こういう状況から見れば極めて不十分である。
 私ども公明党は、かつて無利子が中心の時代であったときに、有利子の、いわゆる、きぼう21プランということをぜひ実現してほしい、奨学金を希望する学生にはすべて、勉学が続けられるように、経済状況が厳しくても続けられるようにということで、有利子の奨学金制度を導入することに強く力を注ぎましたけれども、そういう中で、非常に充実はしてきておりますが、今申し上げたように、有利子がふえているけれども、一方で無利子が減る。あれもこれもというわけにはいかないかもしれませんが、その辺の現状について大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。
遠山国務大臣 現在の厳しい状況の中で、学びたいという子供たちに就学の機会をきちんと確保するというために、奨学金事業の充実というのは大変重要だと考えております。
 平成十四年度予算案におきましては、特殊法人につきまして歳出削減という政府全体の方針があります。そのこともありまして、無利子奨学金については減にせざるを得なかったという面もございますが、より多くの学生を採用できるようにという観点から、無利子奨学金を減としつつも奨学金全体の事業の充実を図ることといたしまして、今御指摘のように、四百三十四億円増の五千百六十六億円の事業費で、四万五千人アップでございます。これは六%増でございますが、七十九万八千人、約八十万人の奨学生に奨学金を貸与することとしております。
 なお、有利子奨学金といいましても、貸与利率は現在年〇・七%でございますし、上限は高くなっても年三%でございます。かつ、在学中は無利子でありますし、そのようなことを考えますと、無利子奨学金とほとんど差がございませんし、病気、失職等、真にやむを得ない事情によって返還が困難な場合には返還を猶予される、猶予などの配慮もしているところでございます。さらに、御存じのように、保護者の失職等の家計の急変者に対しましては、年間を通じて随時無利子で貸与を行う緊急採用奨学金制度を実施しております。
 これはぜひとも、高校生も大学生もこの制度を活用してもらいたいと思っておりますが、いずれにいたしましても、無利子奨学金の確保を含めまして、今後とも育英奨学事業の充実に努めてまいりたいと考えております。
赤松(正)委員 今財政事情、お話があったわけですけれども、やはり事態が非常に急を要する事態であるということをかんがみていただいて、ぜひとも、無利子と有利子の差は余りないというお話がありましたけれども、今後さらに、言ってみれば無利子貸与の部分をさらに大きく拡充するという方向を模索していただきたいと思います。
 同時に、有利子の貸し付けについても、大学によって希望する人が多い大学と非常に少ない大学とあって、少なくて余っている部分を足らないところに転用するというシステムが、実は昨年、余りうまくいかなかった。つまり、運用のちょっとしたミスによって、いろいろな意味で、貸与してもらえる条件が整っていながら、実際は貸与するのに大変時間がかかった、あるいはできなかった、受けられなかったというケースが出ております。そういった意味で、有利子の貸与の運用の仕方についてもしっかりと考えていただきたいということが一つです。
 それからもう一つは、今後の課題でありますけれども、学校法人や民間団体が行ういろいろな奨学事業があるわけですけれども、そういった奨学事業への給付を促進するために、税制上の優遇措置だとか、あるいはまた給与制奨学金の導入とか、いろいろな工夫を凝らして、そういう勉学をしていこうという子供たちの意欲をそがないように奨学金の仕組みというものを充実させていただきたいということについて、簡単で結構ですので、その姿勢を述べていただきたいと思います。
遠山国務大臣 奨学金の配分につきましては、日本育英会で実施いたしておりますけれども、奨学金希望者のニーズに適切に対応するように配分をしていくことが非常に大事だと考えております。
 予算の範囲内で公平な配分を行うというために、いろいろな工夫を行ってきておりますが、各学校の入学定員の規模あるいは採用実績等をもとにして、それぞれの学校ごとの推薦枠方式を採用しておりますけれども、今御指摘のような点も十分留意して、公平性と、かつニーズにきっちり対応できるような配分方法について今後とも工夫してまいりたいと思っております。
 税制の改正によって、さらに民間のいろいろな資金も活用しながら奨学金の制度を充実していく、あるいは給付制もというようないろいろなお話もございました。これらにつきましても、なかなか直ちにというわけにいかない面もございますけれども、私も委員と同様に、この面の充実というのは日本の将来にとって大変重要なことと考えておりまして、できるだけの姿勢で取り組んでまいりたいと考えます。
赤松(正)委員 遠山大臣には、あと、大学改革といわゆる遠山プラン等につきましてお聞きしたいことが多くあるのですけれども、残念ながら時間が迫ってまいりましたので、次の機会にいたしたいと思います。
 最後に、官房長官にお聞きをいたしたいのですけれども、先ほど来、中国との話が出たり、あるいは、詳しくは聞けませんでしたけれども、北朝鮮との問題、あるいは韓国との問題、やはりこういう北東アジアの問題の根っこにあるのは、直接的には関係ないにしても根っこにある問題は、日本と韓国あるいは中国とのいわば戦争に対する認識、歴史認識、そういった歴史事実をどう認識していくかという、この問題だろうと思います。
 人が違う歴史観を持つのは当然で、歴史観の一致なんというのは到底無理なわけですけれども、我々が生きてきているこの歴史の中で、歴史的な事実をあたう限り認識を一致させるというのは非常に大事な営みだろうと思うわけです。
 そこで、日韓の歴史対応をめぐっては、過去に、一九九六年に日韓首脳会談で歴史研究を行うことで合意した経緯があって、九七年に民間有識者による日韓歴史研究促進に関する共同委員会が発足して、二〇〇〇年五月に両国政府に対して、歴史のデータベース化事業や歴史研究のための会議の設置が一たん合意していますね。その上にさらに、去年、小泉さんが初めて韓国に行かれたときに、金大中さんとの間で、学者等によるいわば民間の歴史認識に対する共同研究機関をつくろうということで合意された。
 このことについて、官房長官は、先般、最終的な調整段階に入っているということを記者会見で述べられたようですけれども、先ほど述べた過去の問題と今回との関係、そして、今度つくろうとしているものについて、最終的調整段階だというものの現状についてお聞かせ願いたいと思います。
福田国務大臣 歴史認識というのは、委員の御指摘のとおり、それぞれの国や国民がそれぞれの歴史観というものを持つのは当然だろうというふうに思います。それを容認し合うということも大事なことだろうと思います。
 しかし、今御指摘の共同研究につきましては、過去の経緯もございますけれども、そういう経緯を踏まえまして、昨年、小泉総理が金大中大統領とお話をしたときに、改めて、その考え方のもとに共同して歴史研究を行う、こういうことを決めたわけでございまして、この話し合いは今進行しております。さしたる問題がないので、この歴史研究、共同研究を行う、そういうことについての最終合意が近々得られるものというように思っておるところでございます。
赤松(正)委員 近々得られるものだという御発言でございます。
 韓国との、日韓の歴史認識におけるそういう共同研究、これは非常に大事なことでありますが、同時に、中国との間でも、日本と中国との教科書をめぐる大きな格差というものはいろいろな報道機関でも伝えられておりますけれども、大きなものがあると私は思います。将来的において、まずは韓国でしょうけれども、中国との間におけるそういった歴史認識における共同研究の場というものも設けるべきであるということを提案させていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。
津島委員長 これにて赤松君の質疑は終了いたしました。
 次に、城島正光君。
城島委員 民主党の城島でございます。
 きょう、私の方は、中心的には、現下のデフレ対策同様、極めて重要な雇用対策について、それを中心に質問をさせていただきたいと思いますが、もう既に今の雇用情勢の厳しさというのは、私が言うまでもなく、とにかく月単位を追って深刻な状況が進行していると言った方がいいと思うんですね。史上最悪という数字が毎月毎月、月単位でそういう記録を更新している。大変ゆゆしき事態になってきているというふうに思います。
 既に今の雇用情勢というのは、社会問題化してきているんではないかというほどではないかというふうに私は思っております。失業期間の長期化、あるいは非自発的失業者が既に百二十五万人に達するとか、あるいは世帯主の失業者が百万人を超すとか、挙げたら切りがないほど、さまざまな雇用の、社会的なひずみも含めて出てきているというふうに思っております。
 昨年秋の臨時国会を前にして、小泉総理も、この臨時国会は雇用対策国会だ、こうおっしゃっていた。しかし、予想だにしなかった同時多発テロという事態を受けて、それに対する対応にかなり我々も時間をとられてきた。今回も、そういう面でいうと、デフレ対策あるいは今回の外務省の問題を含めて、そういうところにも大きな、我々としても解明していかないかぬ部分がいっぱいあるわけでありますが、同時に、今申し上げましたような、雇用情勢というのは一向によくならないというところについては、やはり政治としても鋭くメスを入れていかないかぬのかなというふうに思っております。
 数字を挙げれば切りがないほど、今申し上げましたようにこの雇用関係の数字は悪化している。ということは、現実、その数字から見ると、やはり小泉内閣としての雇用政策というのが一体本当に効果を上げているのかどうかということを、まず根本的に問い直さないかぬのじゃないかというふうに思うわけですね。
 まず最初に、財務大臣にお伺いしたいのでありますが、政府の雇用政策のための予算というのは、一体今回の予算案の中では総額どれぐらいを占めているんでしょうか。
塩川国務大臣 お尋ねの雇用関係でございますけれども、これは特別会計で扱っております額と、それから政策として扱っております一般歳出関係の額とございます。
 その中で問題となりますのは、政策関係の雇用対策費でございますが、結論的なことを申して恐縮でございますけれども、十三年度は、第一次、第二次補正を入れまして当初予算の額を上回る分を上積みしておるということは御承知いただいております。これは具体的に申しますと、第一次補正予算で出しましたのが五千五百一億円でございました。これは国費の純支出でございます。したがって、事業費としては一兆円ぐらいになるんですけれども、国費で五千五百一億円、当初予算は四千八百八十一億円でございますので、当初予算を上回る額を出しておるということであります。
 それからなお、労働保険特別会計の雇用関係でございますけれども、これも対前年度比で二百五十三億円増、これは特別会計の勘定でございますので、政府の政策的な配慮というよりもむしろ保険の自動的な連鎖の問題だと思っております。
 このうち、特に特別会計の方で求職者に対する給付というのがふえておりまして、これが一兆七千二百十九億円、対前年度で約九%の増ということになっております。
 なお、政府としても、十四年度予算におきましても、直接的な雇用対策、政策の資金というよりも雇用の機会をふやす方向で予算の編成に十分配慮したつもりでございますので、御承知いただきたいと思っております。
城島委員 その中身に入る前に、今資料としてお渡しさせていただきましたけれども、雇用対策という面において、今おっしゃったような数字、ちょうど日本は大体今の数字が合っていると思いますが、GDP割合、棒グラフ、ごらんいただきたいんですけれども、〇・五ないし〇・六%ぐらい。もう格段の差があるんですね、ドイツ、フランス、イギリスに比べて。アメリカより若干比率的には高いわけでありますが、雇用政策としてのこの投入している費用、これだけ大きな差があるというまず現実。
 それと同時に、今までの雇用政策ということでいうと、今塩川大臣もおっしゃいましたけれども、確かに財政面での雇用機会をつくっていくということも極めて重要でありますし、そういう点の効果がなかったとは言いませんが、いろいろ言われておりますけれども、公共事業の割合というのは、これまた一言で言うと比率的には断トツに高い、日本の場合。それに比べて、今言いましたように、実はこの雇用政策の比率というのは極めて低い。
 その中で、特に雇用政策をこれからちょっと後で論議をしたいわけでありますが、いわゆる積極的な雇用政策というものの比率がさらに低いというところは、マクロで見たときの我が国の雇用政策のやはり一つの大きな課題ではないかというふうに思っております。
 小泉内閣は、今回の医療問題についてもそうですけれども、痛みを伴う構造改革とか三方一両損とか、ある面では国民に対して痛みを求めるという姿勢を続けられているわけでありますが、既に、この雇用という面から見ても、国民の痛みというのは受け続けているんですね、かなりの部分で。そういう部分においてはそういう点でいってもかなり深刻な状況の上にあるにもかかわらず、全体的な政策でいうと、どうも小泉内閣の政策というのはサプライサイド視点が強いんじゃないか。やはり生活者視点というんでしょうか、じゃどういった生活を、あるいは暮らしができるような社会にしていくかというところが政策からどうもにじみ出てこないという点が、私はマクロ的には大きな問題じゃないかというふうに思っているわけです。
 そうしたことからしても、この雇用政策というのは、生活という、あるいは暮らしのあり方、生活者視点という点からの小泉内閣のメッセージというものをもう少しはっきりと、しかも大きく打ち出してもらわないと困るなという感じがしております。
 そういう全体のマクロ観に立って何点か質問をしていきたいんですが、竹中大臣にお伺いしますが、今年度の失業率の見通し、これは五・六%というふうになっておりますが、これの根拠と、まさしくその見通し、どういうふうに考えられているのか、お尋ねいたします。
竹中国務大臣 政府経済見通しを作成するに当たりましては、これは年度の見通しということになります。特に雇用に関連しましては、マクロ経済の動向、その間に生じるであろう価格、具体的には賃金等々の変化等々も織り込みまして、足元の経済的な指標をできるだけ取り込むような形で予測を行っているということになります。
 その結果の失業の予測というのは、その中でも当然のことながら大変難しくなります。労働の需要と労働供給の差額が失業である。差額を予想するということでありますので、需要と供給の予測がちょっとずれるとなかなか難しいという性格がございますけれども、二〇〇一年度が五・二に対して二〇〇二年度が五・六というような、年度としての計数を導いているというところでございます。
城島委員 見通しはいかがでしょうか。
竹中国務大臣 これは、繰り返し申し上げますが、年度の推計でございますから、年度で二〇〇二年度五・六というふうな数字、そういったところで高どまっていくというような予測をしております。
 しかし、足元の数字が今既に五・六に、御承知のように達しているわけでありまして、先ほど申し上げましたように、マクロ経済の動向とそれが雇用にどのように結びついていくかということの関係が今非常に不安定になっておりまして、見通しが大変難しくなっているという状況であります。
城島委員 ということは、政府は、ある程度この五・六%、平成十四年度、それを前提として、前提というか、この政策をやっていけば失業率五・六だと、何とか高いところでそれでも横ばいになるということについては、極めて見通し暗いということですか。
竹中国務大臣 二点申し上げたいと思います。
 経済全体は、二〇〇二年度の後半から循環的な意味で少し明るい局面に入っていくというふうに考えておりまして、それでマクロ的な予測を出しているわけですが、雇用の指標というのはそれよりかなりおくれる、いわゆる遅行性の高い指標でありますので、雇用の状況に関しては大変厳しいというふうに考えております。
 ただ、一点、別の面でいいますと、今五・六、足元少し高くなっているのは、GDP、経済マクロの計数に比べて雇用の方が従来よりはより敏感に動くという形で、マクロの数字と雇用の数字の関係が微妙に変わっているわけですね。その点からしますと、今度は第二次補正予算の効果等々が雇用に及ぼす影響というのはむしろ従来に比べて強くあらわれる面も出てくる。その辺の両面があろうかというふうに思います。
城島委員 その状況はわかるんですが、一応政府として五・六というのは、ある面でいうと一つの公約ですよね、国民に対して、五・六ぐらいを目指していきたいんだと。それに対して、今、状況はわかるんですけれども、見通しということは、この予算と政策をもってすれば、今はもう既に、昨年の十二月に五・六になっているわけですから、これを何とか維持できるということかどうかということを聞いているわけですよ。見通しをお持ちなのかどうか。
 それとも、一般的によく言われるように、少なくとも今の状況でいくと、もう既に昨年末で五・六ですから、そうすると、この予算委員会でも論議になっているような不良債権処理、小泉総理が青木建設のときにおっしゃいました、そういうことになっていけばいわゆる構造改革が進捗していることだというふうにいみじくもおっしゃいましたけれども、だれが見ても、これからそれをさらに進めていくとすれば、ますます、雇用情勢ということで見てみると、よほどの手だてをやらないと、失業率が高どまる、横ばいなり、ましてや改善していくということについては難しいんじゃないか、一般的にはそう言われているし、私もそう思うんですよ。
 この政策とこの予算の中で、竹中大臣は、もう一度お聞きしますが、一応政府として見通しを立てて、政府ですから、政府は行政、予測屋じゃないんですから、自分でやれるわけですから、今度の政策、平成十四年度の政策を実現していくとすれば、五・六程度でいいですけれども、おさまるというどれぐらいの自信があるのかどうかをお尋ねしているんですよ。
竹中国務大臣 政府の経済見通しというのは、御承知のように、公約というものよりは、想定される経済の姿ということで、毎年毎年御理解をいただいているんだと思います。
 しかし、委員お尋ねのように、足元の失業率が高まっている中で、想定されている姿がどのように今度変化するだろうかということに関しては、これはかなり慎重に見守っていかなければいけないというふうに思っております。
 ただ、具体的に、先ほど申し上げましたように、年の後半に関しては循環的に少し明るい面も予測できるということも含めまして、これは大変難しい問題でありますけれども、非常に慎重に注意深く見守っていきたいというふうに考えているところであります。
城島委員 いや、それは大臣、困りますよ。政府ですからね。我々だったら、それは見守っていくとか、いわゆる手だてがないわけですから、政策を実行していく上において、特に野党の場合。
 しかし、政府は、やはり政策を実行していけるわけですから、単なる予測じゃなくて、こうやっていきたいと。成長率だって、何とかゼロ%という目標を掲げて、それに沿った政策を実行しているわけでしょう。単なる、いろいろな研究機関は、あれは予測ですよね。そこはやはり私は、政府の見通しというものと一般的な予測というのは大幅に違いがある。実行できる主体者ですから。ですから、その五・六なら五・六を目指したあらゆる雇用政策をやっていくということができるのは政府ですから。
 それじゃ、ちょっと坂口大臣にお伺いしますが、坂口大臣は、これはどうごらんになっているんですか。
坂口国務大臣 率直に言えば、予断を許さないということだと思います。
 五・六%というこの数字は、現在もう既に五・六でありますから、いましばらくこれを前後するような数字が続くだろうというふうに予測をいたしておりまして、先ほど竹中大臣からありましたように、後半にどうなるかということはございますけれども、いましばらくはこの数字が続くだろう。
 五・六という数字を掲げました以上、この五・六%を切らないような、どういう政策を打ち続けるかということになるだろうというふうに思っております。
城島委員 そういう点で、例えば坂口大臣は、先ほど塩川財務大臣がおっしゃいましたけれども、少なくとも予算案と政策でこの五・六見通し、どれぐらいの確信がおありになりますか。
坂口国務大臣 額にいたしまして、約三・八兆円でございます、これは特会も全部含めてでございますが。
 今までやってまいりました、旧来からやってまいりましたいわゆる雇用政策、それは延長しなきゃなりませんし、充実をしなければならない。しかし、それだけではやはり足りないから、新しい切り口をここに加えていかなければならない。
 先日も御答弁をいたしましたとおり、一つは、やはり地域別に見合った雇用対策というものが必要である。それをどう確立していくかということが大事だ。都道府県や市町村にも御努力をいただいて、そこをどうつくり上げていくか、もう少し真剣にやらなきゃいけないというふうに思っています。去年の八月から既にスタートしておりますけれども、もう少しこれを積極的に掘り起こしていかなきゃいけないというふうに思っております。
 それからもう一つは、キャリアカウンセラー。これを補正で約一千百人にいたしましたけれども、ことしじゅうに一万人にする。そして、もう少しきめ細かく皆さん方に御相談をさせていただいて、ミスマッチを減らしていくということは細かなどれだけの相談ができるかということにかかってきておりますから、足らなければ、ここをどうふやしていくかということを、前倒しをするかということも考えていかなければならないというふうに思っています。この人たちがこれからどういうふうにして生計を立てていけるかということもありますから、その職種というものをどういうふうにつくり上げていくかということもやらなければいけないと思います。
 加えまして、ワークシェアリングの問題をどのようにここにうまく加えていくか。これは後半の御議論にもあるようでございますから、そこに譲りたいというふうに思いますが、そうしたものを加えていく。
 そして、先ほどおっしゃいましたように、活力のある、いわゆる今までの雇用政策だけではなくて、雇用政策そのものが経済に活力を与えるというふうにしていくためにはどうしたらいいか、いろいろ今知恵を絞っているところでございます。
城島委員 今の大臣答弁でありますけれども、その趣旨はわかるんですが、現実問題として、先ほどの繰り返しになりますが、雇用情勢は刻々と悪化していっているという現実があるわけですね。しかも、先ほど竹中大臣も、なかなかはっきりはおっしゃらなかったけれども、見通しは相当厳しいということだと思うんですね。そうすると、今大臣がおっしゃったようなことを相当拍車をかけていかないと、あるいは今までの政策がむだだったところはどこにあるのか、さらには足りないところはどこにあるのか、あるいは効果的な政策はないのかといったことを見直しをしながら、拍車をかけていかないかぬということだと思うんです。
 先ほどの資料にもあるように、やはりどう見ても、GDP比率だけ見ても、アメリカを除くと、欧州の半分なんですね。公共投資は、比率的には依然として横ばい、非常に高い。既に雇用問題で苦労したところは、そういうふうに雇用政策をシフトさせているわけです、一言で言うと。財政主導から個々の、ここで言ういわゆる積極的な雇用政策の方へずっと投資を変えてきている。しかも、そこに対してはかなり莫大なお金をある程度投じないと効果的ではないということを示しているわけでありますから、これは塩川大臣もぜひ、今の雇用政策の、少なくとも予算の金額でははっきり言って極めて不十分ということは、まず金額面から言えるということをぜひ御認識いただきたいというふうに思います。
 昨今、こうしたいわゆるデフレあるいは経済のグローバル化という中で、毎日のように各企業のリストラ報道が、相変わらず進んでいる。今や経営者の意識も、どちらかというとリストラを積極的にやっていくということが、何となく今の時代をきちっと理解して、しかもサプライサイドの競争力強化につながるんだというような、その一辺倒と言った方がいいかもしれませんが、そういうような意識というのが非常に強くなってきているんじゃないかということを実は私は危惧しているんです。
 やはり雇用というものを大事にしていくという今までの日本の伝統的なものというのは、それは時代に合った雇用というのに変えていかないかぬですよ、ただ、その雇用というものを非常に大事にしていこうということについて失われつつあるのではないかということについては、私は大変危惧をしているわけであります。
 なぜかというと、例えば今の段階で、今の日本の状況の中で一番ある面で欠けているのは、やはりこれだけ労働力がある面で移動せざるを得ないというのは現実だと思うんです、その場合、いわゆる外部労働市場はそれではきちっと整備されているかどうかというと、これは極めて不十分なわけですね。
 例えば、例えがいいかどうかわかりませんが、あらしの中の難破船に例えると、難破船から飛びおりるときに、救命ボートも救命胴衣もない中で飛び込まざるを得ない。力ある一部の人は、一握りの人は、それで例えば岸に届くかもしれないし、あるいは別な船に救助できるかもしれませんが、多くの人がそこで、救助できなくて命を絶っていくというのに状況は今似ているわけですね。
 ですから、早急にこの外部労働市場に対してのそういうものを確立しない中で一方的に流動化が図られるということに、今、日本の、ある面でいうともう一つ雇用情勢の深刻さの問題があるということだと思います。
 この前調べておりましたら、全く同じような意見をキヤノンの御手洗さんが言っておりますよね。こういう表現をされていました。
 「日本でも流動性を高めるべきか。」「そういう議論が盛んだが、サラリーマンは一体どこへ行けというのか。(就職機会、情報、制度といった)インフラがない状況では机上の空論に過ぎない。アメリカ並みに環境が整い、競争社会となれば自然に移動していく。まずインフラを整えることを検討すべきだ。
こういうことを言っているわけですね。
 ですから、税制も、あるいはベンチャービジネスを育てるような仕組みだとか、あるいは年金、退職金の問題とかということも含めた環境整備を早急にやらないと、これは、ますます社会問題化していく今の雇用情勢にあるということを私は特に強調させていただきたいと思います。
 それで、またちょっと竹中大臣にお伺いしますが、経済財政諮問会議で、雇用拡大、特にサービス部門において雇用拡大があるんだ、五年後に五百万人の雇用創出が期待できるんだということが報告されておりますが、今言ったような観点からして、この五百万人の新たな雇用というのはどういう勤労者の姿を描けばいいんでしょうか。例えば、今で言う、正規従業員と、パート、アルバイトを含めた短時間労働者というような分け方でいくと、大体どんな比率でこれは想定されるんでしょうか。
竹中国務大臣 お尋ねの専門調査会の報告、五百三十万人、島田晴雄教授が中心になっておまとめになったものだと思います。
 これは実は、どの部門にどのぐらいの潜在的な労働需要があるだろうかということを積み上げたものでありまして、その中での労働形態がどのようになっていくかということに関しては、その調査そのものに関しては実は特に何も言及はしておりません。想定もしておりません。労働需要の、潜在的な需要を積み上げたものであるというふうに御理解いただきたいと思います。
城島委員 一般的に想定すると、この五百万人の、どういう分野で雇用が生まれるかというのは私なりに見てみたんですが、今の日本の労働市場からすると、かなりの比率で短時間労働者、例えばパート、アルバイトも含めてですけれども、そういう人たちがこの五百万のうちのかなりを占めるのではないかというふうに想定できるわけですね。そうすると、今でも全勤労者に占める短時間労働者というのは、労働省の調査でもちょうど二〇%、五人に一人だと。これは、過去のトレンドから見てもぐんぐん伸びているということであります。
 こうした中で今進んでいるのは、そういう点でいうと、不安定雇用の状況にある人たちの比率が非常に高まってきている。賃金はもとよりでありますけれども、特に問題となるのは雇用保険の問題だと思うんですね。
 この人たちは、かなりの部分が雇用保険にも入っていない人たちが多いということもあるわけでありますが、後で少し論議したいんですけれども、大臣はワークシェアリングの論議もされましたけれども、先ほど申した外部労働市場をきちんと整備する上においてもいろいろなポイントが、先ほどちょっと羅列的に申し上げましたけれども、その一つのポイントとしてはこの雇用保険の問題もあると思うんですね。
 そういう観点からすると、まずパートやあるいは短時間労働者をどうするかという前に、実は今の雇用保険財政もかなり厳しい。昨年秋、我々民主党はこの問題に対して特例の法律案を出させていただきました。トータルして二兆円規模の雇用保険財政に対する基金的なものが必要じゃないかということを出させていただきましたけれども、来年度、十四年度の失業率の見通しも含めてでありますが、現段階の雇用保険財政、一体もちますか、十四年度。いかがでしょうか。
    〔委員長退席、北村(直)委員長代理着席〕
坂口国務大臣 前回のときにも城島議員からその御質問をちょうだいいたしました。
 これは雇用状況によっても違うわけでございますが、現状五・六という数字を中心にいたしますならば、十四年度は、積立金等の取り崩しも入れてでございますけれども、これはぎりぎりもつんだろうというふうに試算をいたしております。ただし、そういうことが、これは続いてはならないことでございますけれども、平成十五年の方に続いていくということになりましたらこれは大変でございまして、新しい財源の確保の問題をどうするかということをやらなければならない。
 いずれにいたしましても、それをいつごろから検討しなければならないかということでございますが、来年からということになりますと、もう早い時期からこれはやっておかなければならないわけでございますので、ことし四月か五月、この辺のところからは、その後のことをどうするかということの具体的な検討をしなければならない時期になるだろう、全体の状況を見て、そういうふうに思っております。
城島委員 例えば、十四年度は何とかもつかもしれないとおっしゃいましたけれども、どうでしょうか、失業率とある程度リンクしてくるわけなので、今の五・六%が約一ポイントぐらい失業率が上がることというのは残念ながら想定の範囲内だと思いますが、それでももちますか。
坂口国務大臣 上がりますとその分だけ余分に要ることだけは事実でございますので、一%、私もきちっと計算をしたわけでございませんが、五・六が五・七になったらどうかというふうに言われますと、私も責任持ってここでちょっと答えを言いにくいのですが、まあぎりぎりのところだと思います。
城島委員 財務省の判断では、これは報道なんですけれども、六%ぐらいになると今年度中にも積立金がなくなるという見通しを立てているわけですよ。そうしますと、何度も繰り返しますけれども、極めて可能性が高いということだと思うのですね。
 この積立金もなくなってくれば、臨時的にいわゆる弾力条項の適用とかいうようなことにならざるを得ないというふうに思うのですが、そうした事態も含めて、いずれにしてもかなり危険水域に入っているということは間違いないと思うのですね。ですから、この雇用保険の抜本改正あるいは見直しということについては、早急に検討されるということでしょうか。
坂口国務大臣 制度そのものは昨年御審議をいただいて新しくしていただいたところでございますから、制度そのものを改めるか、それともこの財源の確保について新しい道を開くか、その辺のところはこれから検討させていただきたいというふうに思っておりますし、また城島議員のいろいろの御意見もお聞かせをいただきたいと思っております。
城島委員 そういう今の現状の中でも財政がかなり厳しいという上に、例えばワークシェアリングを積極的にやっていくとすれば、これは短時間労働者についても何らかの形で均等待遇というのは踏み込んでいかざるを得ない。そのときの象徴的なのはこの雇用保険だ。となりますと、一般的に言えば、これは財政という面から見ると一段と厳しいということになるわけですね。そういう課題をしょっているということだと思います。
 したがって、この問題は、そうした抜本的な制度改正と同時に、この財政をどうしていくかということは喫緊の課題であると同時に、大きな、まさしく医療制度の問題に、場合によってはそれ以上の課題になるかもしれないということを提起させていただかなければいかぬなというふうに思いますし、そういうことに対しても、この雇用政策の予算ということについては、雇用政策費用という面においては、ぜひ格段の検討を財務大臣にもお願いをしたいなというふうに思います。
 それで、ちょっとワークシェアリングについてお尋ねをしたいわけでありますが、先日の委員会で大臣は、三月中ぐらいに一つの政労使の合意を得たい、こういうふうにおっしゃったと思うのですけれども、そのワークシェアリングについては、今検討されているのはいわゆる雇用維持型、緊急避難型、こういうことの中での政労使の一つの合意を三月中にということで理解してよろしいでしょうか。
    〔北村(直)委員長代理退席、委員長着席〕
坂口国務大臣 そのとおりでございまして、中長期的な問題もあわせてこれはやらなければならないというふうに思っておりますので、引き続いてお願いをしたいというふうに思っておりますが、まず三月中に決定をしなければならないのは、当面の緊急避難型のところをまず先に決着をつけていただく、そして引き続きまして中長期的な問題につきましての御議論もいただきたいというふうに思っているところでございます。
 また、労使の皆さん方には、その中長期的な問題につきましてもお願いしたいということ、正式にはまだ言ってないわけでございますけれども、お願いを申し上げたいというふうに思っている次第でございます。
城島委員 その場合に、政府の役割というのはどういうところにあるというふうにお考えになっているんでしょうか。
坂口国務大臣 そこを御議論いただいて結論を出していただかなければならないわけでございますが、今のところ、その中で政府がどういう役割をするかということの結論はまだ出ていないわけでございます。しかし、我々も、そこで何を政府としてやるべきかということをやはり真剣に考えなければいけないというふうに思っております。
 先ほども少しお触れになりましたけれども、例えばパート労働等の位置づけ、そしてパート労働の現在の置かれている立場等を見直して、これを正規労働との間でどう整合性を保っていくか、そうしたことにつきましても我々は考えていかなければなりませんし、むしろそうしたことを整理することがこのワークシェアリングの前提条件になるかもしれない、そんなふうにも思っているわけでございます。
城島委員 以前、塩川大臣は、もしワークシェアリングで雇用がきちっと維持されたりすれば、財政的にもそれなりの支援をせないかぬかなというような見解を述べられたように思いますが、そのお気持ちには変わりありませんか。
塩川国務大臣 私は、それは昨年の夏に申し上げまして、それ以来、連合の方並びに日経連の方からいろいろ問い合わせがございますし、またその相談にも乗っております。
 私の考え方は、明確に申してあります。要するに、労使双方とも相譲り合ってくれなければこのワークシェアリングというものは成立しない。ところで、いわゆる使用者の方もある程度の犠牲を覚悟されるであろうけれども、これは新しい生産性を活用するためにと思うて辛抱してもらいたい。しかし、既定の一般の雇用の方々が、ワークシェアリングで譲るべきもので、ある程度の犠牲が出るということになれば、その補いは何らかの形でやらざるを得ないだろう。これは経営者の責任とばかりは言うことができないから、これはある程度政府が考えてみてもいい問題ではないか。
 一方、労働者の方にいたしましては、得べかりし期待しておるところの賃金は相当のものが出てこない、だからして、いわば労働提供にして割と効果は薄い、けれども雇用の機会が得られるのならばその雇用をキャッチしたい、こういう気持ちはある。そうすると、いわば労働者側にしても、得べかりし期待との差額というものについて、やはり当然政府が何ぼか見てもらったらいかがか、こういう希望が起こってくるのは当然だろうと。
 要するに、既定の組合の方々、正常社員の方々、そしてワークシェアリングにおいて雇用される臨時の方々、双方とも犠牲を払われる分、この分に対して政府は穴埋めをしていく、そういうことを基本にして考えていただきたいということは、私は日経連並びに連合の方々に申し上げておるところであります。
城島委員 先ほど坂口大臣おっしゃいましたけれども、中長期的に雇用を拡大していくという観点でのワークシェアリングへ踏み込んでいくとすれば、これは一言で言うと、働き方はもとより、社会の仕組みそのものが、あるいは家庭生活のあり方が抜本的に変わっていくという、大変大きなインパクトを与えることになるわけですね。それはもうよく言われるように、オランダを見てもそのとおりであります。
 ただ、そこに行くには、先ほどの外部労働市場の整備と全く同じでありますけれども、税制や社会保険の問題や企業の諸手当あるいは人事体系、そういったことの改革をしていかなければならない。特に中心的には均等待遇というのをどう実現していくかというような大変大きな課題があることも事実でありますが、やはり安心できる雇用社会を実現するには、どちらにしてもそういう方向を目指していくべきではないかなというふうに私は思っております。
 この中長期的な観点でのワークシェアリングということについては、坂口大臣、どうでしょうか、そういう方向を積極的に求められていく姿勢がおありでしょうか。
坂口国務大臣 今御指摘になりました点は、私も全く同意見でありまして、そうした社会をやはりつくっていかなければならない。
 ワークシェアリングというのは、ただ単に雇用の分野を分かち合うというだけではなくて、我々の生活全体の中でどう改革をしていくかという問題に直結してくる問題だというふうに理解をいたしております。したがいまして、税制の問題も社会保障の問題も、やはりそうしたことを中心にしていま一度考え直さなければならない。年金にいたしましても、女性の側から見た年金の問題等もあわせて考え直さなければならない。これはそうした大変大きな仕事になる。先ほど御指摘のありましたように、医療制度というのは医療の中の話でございますが、この雇用の問題は我々の生活全体に影響する、社会全体に影響する、もう一つ大きな話であるという認識を私も持っているところでございます。
城島委員 全くそのとおりでありまして、社会の大改革につながるような問題というか、そういうテーマであるということであります。
 私も三年前オランダに行ってじっくり視察をさせていただいたのですけれども、なるほどと思いましたけれども、同時に、そのとき担当大臣が何度も言っていたのは、仕組みだけ取り入れてもだめですよ、これをやるにはとにかく本当に政労使の信頼がなければできないということを何度も言っていまして、政労使合わせてやらないと、この社会の改革まではとてもじゃないけれどもできないなという感じが私もしました。
 次にちょっと進めさせていただきますが、積極的な雇用政策という方向へシフトしていくべきだという中での一番大事なポイントは、職業紹介と職業訓練と雇用創出、この三本柱だというふうに私は思っております。そういう点で、ここに対して、予算もあるいは政策も実はこういうところに大きくシフトしていくべきだ。しかし、少しずつシフトはしていますが、私は、まだ極めて不十分だ、こういうふうに思っております。
 我々は、せんだっての国会でも、先ほど申し上げました雇用保険財政の安定化とともに、能力開発支援資金ということでこの職業訓練についても提案をいたしましたが、特に、この中でこれから少し重点を置いてやるべきじゃないかと言ったのが、大学における技能教育。失業されている人、それから勤労者、現実に働いている人たちというところを中心にしながらでありますが、当座は失業者に対する技能教育ということであります。今回、大学における公共職業訓練講座ということが開講されるということでありますが、やっとそこまで来たかなという感じであります。
 聞くところによりますと、私立大学の四校が名乗りを上げているということであるようでありますが、大学への職業訓練の委託、この今の状況はどういう状況なのか、文部科学大臣でしょうか、お尋ねしたいと思います。
酒井政府参考人 大学あるいは大学院といった場で委託訓練を行うという我々の発想は、今の厳しい雇用情勢の中で、あらゆる民間の教育訓練資源を活用しながらやるべきだ、これは先生もふだんおっしゃっていることではございますが。
 そこで、大学、大学院にこの話を持ちかけて、今先生がおっしゃった四大学でそういうコースを開講しようというわけでございますが、私どもといたしましては、昨年の九月の政府の雇用対策本部の中でも、大学、大学院といったものを活用すべし、より高度な人材を養成するために活用すべしということで、それのラインに沿って取り組んでおるところでございまして、第一次補正で前倒しでやっておりますが、十四年度におきましては、約五十億円弱の予算をいただきまして、一万人ぐらい大学、大学院に対してやろうということを目指しておるところでございます。補正で既に取り組んでおりますのは、早稲田大学、法政大学、明治大学、国際医療福祉大学、こういうところで、経理、経営管理の上級コースであるとか医療福祉のマネジメントコースであるとかといったことを勉強していただいて、レベルの高い職場あるいはレベルの高い職務というところについていただこうというわけでございますが、これからさらに幅広く、私立大学のみならず、幅広く協力を要請させていただいて、訓練コースを設定していきたいというふうに思っているところでございます。
城島委員 そういうことで、私立大学が手を挙げているということでありますが、やはり今の雇用情勢を見ると、しかも、最初坂口大臣もおっしゃったように、ある面で地域に応じた雇用対策というのがもう一つ極めて重要だということを考えますと、ぜひ遠山大臣にお願いをしたいわけでありますが、各都道府県、地方の公立の大学においてこの問題を真剣に考えてほしいなと。地域に応じた、ある面でいうと、能力開発プログラムを含めて、きちっと各地方の公立の大学がそういう講座を持つ、少なくとも、この数年以内にできるだけ多くのというか、できれば全都道府県の国公立大学でそういうカリキュラムを持つような方向にぜひ持っていってほしいと思いますが、いかがですか。
遠山国務大臣 城島委員お話しのように、大学が社会のいろいろな課題に貢献していくということは大変大事だと思っておりますが、特にキャリアアップのために協力していくということも目に見えた貢献になると考えております。
 国立大学におきましても、平成十二年度から、専門大学院の開設でありますとか、いろいろな形の貢献をいたしておりますけれども、公開講座あるいはブラッシュアップ教育対応講座など、さまざまな取り組みを今行っておりますけれども、さらに今厚生労働省と一緒に進めようとしております大学等への委託訓練につきましては、予算もとれたことでもございますので、ぜひこれは活用して、実施していかなくてはならないと思っております。
 今年度は、年度途中の補正予算であったこともありまして、短期間のコース設定とならざるを得ないために、年間を通じたコース設定を計画しております国立大学では平成十四年度から実施すべく準備しているものと承知いたしておりますが、今お話しのように、各地域における国公立大学でのこの取り組みについて、私どももできるだけその方向に行くように促してまいりたいと考えております。
城島委員 これも、最初申し上げましたように、まずは失業された方、さらには勤労者ということを含めた職業教育というふうに申し上げましたけれども、リカレント休暇なども含めて、大学のあり方そのものも、そういうこともきちっと受け入れるような体制にやはり変えていく必要が、先ほどのワークシェアリングではありませんが、そうした社会をつくるにはこれも必須のことだというふうに私は思いますので、ぜひ、ここの部分も積極的に御検討いただきたいと思います。
 それから次に、実は、児童扶養手当についてちょっと確認をさせていただきたいというふうに思っております。
 この八月を目途に児童扶養手当制度の見直しを行うというような報道がされておりますが、この内容について、どういう見直しをされようとしているのか、まずお尋ねします。
坂口国務大臣 児童扶養手当制度の見直しにつきましては、新しい時代の要請に的確に対応するために、母子家庭対策を総合的に見直す一環として行いたいというふうに思っております。
 具体的には、母子家庭の自立の促進のため、相談機能の強化を図りますとともに、子育て支援策、就労支援策、養育費の確保それから経済的支援策などにつきましての見直し、それから母子家庭への総合的な施策の展開を図るための法改正を検討しておるところでございます。
 児童扶養手当制度につきましては、児童の福祉や自立が困難な者につきましてきめ細かな配慮をしながら、母子家庭の自立が一層促進されまして、また制度そのものが、厳しい財政状況の中でも維持可能なものとなるようにしたいというふうに考えているところでございます。
 ややもいたしますと、この母子家庭の皆さん方が、今出ております就労の問題等でも大変お困りになっている、厳しい家庭環境であるがゆえになかなか就職の道が開けないといったようなこともございますので、この皆さん方に対しまして、きめ細かく、そしてこの皆さん方に働く場がより多く与えられるような対策をどうするかといったようなことを今検討しているところでございます。
城島委員 今、特に母子家庭の世帯数は約九十五万世帯、こう言われているわけでありまして、ここにある、しんぐるまざぁず・ふぉーらむのアンケート調査を見ますと、本当に雇用情勢の厳しい中で、この皆さん方、ひとり親生活をされている人たちの就業状況というのは危機的な状況になってきているということが浮き彫りになっております。特に、子供を育てながら働くシングルマザーの皆さんの生活状況というのはすさまじい状況、厳しいなと。
 このアンケート結果を見ると、平均の年収は何と百五十八万円、一番多いのは百五十万円。前回の九九年の調査と比べても、非常に収入の悪化が目立っているということだし、パート、派遣とか不安定雇用を強いられているシングルマザーの人たちが急増している等々、この皆さん方の生活状況というのは、今の経済状況、雇用情勢をはるかに上回る深刻な状況になっているということであります。
 ある報道によると、この児童扶養手当の見直しの中で、今大臣は、そういう自立できる方向にトータルとして改善していくということでありましたけれども、例えば支給期間を五年間にしようとかいうような案もあるというような報道がされたようでありますけれども、これに対しては、今申し上げましたような状況から、非常に強い不安感と、それから憤りに満ちたような声がいっぱい出されております。
 アンケートの中では、例えば、自分たちの世帯がどんな生活レベルなのか熟知した上での見直しなのか、予想される生活困難からの母子家庭の自殺者急増に対して国は責任をとれるのかといったようなこととか、もしそういう方向に、いわゆる支給期間が五年間なんかに規定されるとすればということですけれども、小泉政権に期待を持っていたけれども失望する、母子家庭のつらい現状を何も知らない冷酷な人たちの意見ではないか、一番の弱者をねらうなんて最低だとか、どうやって生きていけというのでしょうか、痛み分けとか言って、結局、しわ寄せは弱いところにばかり来ます、この国はどうなっていくのでしょうか等々、本当に切々たる声が寄せられているということを申し上げて、ぜひ、こうした現実の皆さん方の実態を直視した中での、いい方向での改善ということをお願いしたいと思うのです。
 最初申し上げたように、雇用問題についても、キヤノンの御手洗社長の言ではありませんが、どうも小泉内閣の雇用政策を見ていると、前の委員会でも申し上げましたけれども、本来的な、現実の実態というものを本当にわかった上で例えば雇用部門の改革等も提言されているのかどうかということについては非常に疑わしい。実態としては、痛みを感じる必要がないような人たちが中心になってまとめているのじゃないかというふうにさえ思わざるを得ないような政策しかなかなか出てこないというふうに私も思うし、そういう意見が非常に強いということであります。
 ぜひ、痛みを直接感ずる人たちの意見というものをしっかりと反映すると同時に、真剣にこの問題を、もっと本当に、政府挙げて、雇用対策こそデフレ対策の最大のテーマだというぐらいの意気込みで、そういう姿が見えるような取り組みをやっていただきたいと思います。
 最後に、平沼大臣にお尋ねをしたいわけであります。
 実は、私は雇用問題に非常に大きな関連をすると思うので、前も一度、特許の問題でお尋ねをしたわけでありますが、現下のグローバル経済下の中でも、この高コストと言われる日本の中で生き抜いていくには、一つ重要なポイントは、やはり知的所有権の問題がある。私は地元を回っていて、特に中小企業が、しかも技術を持った中小企業がなかなかうまくいっていない。これは、もう少しうまく技術を持ったものを活用できる方法があるのじゃないかというようなことも含めて、特に、この特許、知的所有権を、戦略的にもう少し国を挙げて考えていく必要があるのじゃないか。
 ちょっと調べてみますと、アメリカでは私立大学を中心とした地域ごとの、この知的所有権をうまく活用する、戦略的に活用するようなコンソーシアムがいっぱいあるというふうに聞いたことがあるのですね。これからますます、産業空洞化を防ぐ意味においても、やはりこの辺を戦略的に持っていく必要があるのじゃないかというふうに思うのですけれども、その辺についての取り組みあるいは見解をお尋ねしたいというふうに思います。
平沼国務大臣 お答えをさせていただきます。
 今御指摘の点は非常に重要でございまして、我が国といたしましても、この知的所有権というものをやはりしっかりと守っていかなければならない、こういう観点に立ちまして、実は、平成十四年度の予算におきましても、産官学連携予算として四百七十七億計上させていただいて、そして、そういう企業の持っているいわゆる知的所有権というものを有機的に活用できるような、そういう形で予算を計上したところでありますし、また、地域の中小企業の持っているそういう知的な所有権に対して、これは平成九年でございますけれども、地域新生コンソーシアム研究開発制度、こういうのをつくっておりまして、これは、産学官連携で、そして中小企業が持っております技能とか技術、それに大学が持っているシーズと結びつけて、ここで競争力をつけ、企業を起こして、そして新しい産業を創設していこう、こういう形で動き出しておりまして、今のところ二百件、そういう形で花が開いて結実した、こういう実例を持っております。
 こういう意味では、知的所有権の保護、強化等含めて、我々総合的にこれからも力強くやってまいりたい、このように思っております。
城島委員 ぜひ雇用政策を、痛みを今一番受けている勤労者を含めて、できるだけ痛みを和らげるというところに目の行った雇用政策を真剣に検討していただきたいということをお願い申し上げまして、松本委員に交代いたします。
津島委員長 これにて城島君の質疑は終了いたしました。
 次に、松本剛明君。
松本(剛)委員 おはようございます。
 連日の審議で大変御苦労さまでございます。とりわけ塩川大臣、八十におなりになられたのですかね。海外も行かれて、また帰ってきて連日の審議ということで、私も、先輩を尊敬する精神は持っておるつもりでございますが、国民を代表してここへ出てきておりますので、お伺いをせないかぬことはお伺いをせないかぬということで、お許しをいただきたいと思います。
 まず塩川大臣に、G7とその前後の御発言等について、二、三お伺いをいたしたいと思います。
 G7へ行かれましたときに、これは記者さんに漏らされたのでしょうか、国際会議では、改革を進めて成長を期するとか言うてもだれも聞いとらぬわな、具体的に何をするかが問題だとおっしゃったということでございますが、国際会議だけでなくて、この予算委員会でも、またあらゆる場面でも、ぜひそういう形でお願いをしたいと思います。
 それに関連して、具体的に言わなあかんということでおっしゃったのかもしれませんが、この前も我が党の石井議員からも御質問させていただきましたが、一%成長ということをおっしゃったというふうに伝えられております。大臣も肯定をされておられるようでありますが、会見で、閣議で特に決めたわけでもないということもおっしゃっておられるようですけれども、G7でおっしゃった以上は、やはり対外的な公約ということになるのではなかろうかというふうに思いますけれども、閣議で決めておられないことをおっしゃったというあたり、真意。
 それから、一%成長の可能性について聞かれたら、これも大変率直であろうと思いますが、厳しいわなとおっしゃったというふうに伝わっておりますが、厳しいことを具体的なことをちゃんと言わなあかん国際会議でおっしゃったということになると、後でなかなか大変なことになるのではなかろうか。私は、先輩議員のように、一年後におるかおらぬかわからぬとまではよう申しませんけれども、ぜひ大臣のお立場から、この一%成長に対する発言の真意と、また政府としての責任ということについて御所見を伺いたいと思います。
塩川国務大臣 私は、その一%発言に対しては、これは自信を持って申し上げたことです。
 大体、日本の会計の年度とアメリカ、ヨーロッパ、それぞれ違うのでございますけれども、私はだから年度ということを申しておきましたのですが、それがうまく通じているかどうかわかりません。しかし、申し上げました中で、実は、IMFの日本の経済予想をしておりますのは、二〇〇三年度ですが、それが一・一%上昇なんですね。日本の方の内閣が決めましたのは、十五年度が〇・六プラス、こうなっていますね。私は、その〇・六を言おうかと思うておったのですけれども、しかし、IMFがやはり一・一見ておるのに、あえてそれを下回って今日本がそれを言うというのはどうかなという感じを私は率直にその場で持ったのです。
 それと同時に、そのG7の雰囲気は、日本に対する非常に大きい期待というよりも、日本は何やっているんだということの方が強い雰囲気であったことは、これは事実なんですね。そこで私は、いや、日本だってしっかりとやっている、構造改革をやっていくのだということで、コーヒーブレークのときなんかそういうことを申しておりました。そういうこと等あって、私は、一%成長ということをあえて自分の口で出したということでございます。
 これは、国際公約とか、そういうかたい話のものではなかった。これはもう事実です。それはあなた方がお出ましになったかて、それはそうですよ。みんなそれぞれ意見は言っております。例えば海外援助の問題等についても、みんな希望を言ったりしています。アフガンに対しても言っておりますしね。
 ですから、それはもう、閣議で決めてきたのだ、政府の合意もとってきたのだというのじゃなしに、日本の成長率がどんな成長だということを、内閣の統計というようなことは知っておりますから、やはりそこは政治家としての発言であるということは、これは各国、出席している者、皆知っております。
 ですから、終わりました後、すぐその後でコーヒーブレークが一時間半ほどございますが、その中でも、英国のジョージさんというイングランド銀行の総裁ですね、やはりそのぐらいの元気出してやってくれ、こう言っておるんですよ。ですから、私は、今政府が、大事な問題は、低迷しておる空気、ここにやはり自信を持って牽引していく力というものが必要だろうと思っておるんです。
 最近におきまして、小泉総理がみずから、また私なりあるいは経済関係の竹中大臣とか、それぞれが株価対策について発言をしております。これは事実実施していきます。そうすることによって、株の値段、株価というものは非常に敏感に反応しておるということはあります。これはやはり、今大事なことは、政府が経済の責任を持っておるという以上、何かを、しっかりした方針を示していくことだと思っております。
 したがって、私は、一%というのはどこでも言われました。帰ってきてから、あちこちから、局長なんか、大丈夫ですかと言っていますけれども、私は、そういう自信を持て、わしは目標を言ったのだということで、はっきりと言っておりまして、私は、あえて一%ということを申したことに対して、私自身は十分な責任を感じて、これからの努力をしていくということであります。
松本(剛)委員 最初に申し上げた、改革を進めて成長を期するとか言ってもだれも聞いておらぬ、具体的に何をするかが問題だというので、一%という数字は具体的であろうかと思いますが、本当に中身をどうしていくのかということがこれから問われるんだろうと思います。とりあえず痛みは我慢しろ、とりあえず元気を出せ、かけ声だけでなくて、本当に一%が実現できれば国民にとっては幸せなことでありますから、お願いをさせていただくということで、政府が責任を持ってやっていただくというのはこれは当然でありまして、しっかりとやっていただく。また、ここでも一%ということに、大臣、責任を持ってお取り組みをいただくという言明をいただいたということだけ伺いまして、話を少し先へ進めさせていただきたいと思います。
 今、株価対策というお話がありましたが、大臣、株価対策ということで、大きく分ければ株価の対策は、長期的に制度をどうするかということによってマーケットを育てるという部分と、需給関係に何らかの形で手を入れるかということの二種類があろうかというふうに思いますが、株式取得機構についてのお話があったように思います。
 これは、率直に申し上げて、需給バランスに直接影響する話であろうかというふうに思うんですが、この株式取得機構について、大臣のこれは二月八日の記者会見ですかね、柳澤さんに強く言って、柳澤さんはそのつもりでやっています、今、やっていますので、これは二月八日の金曜日ですから、来週中でも機能を発揮するということで言われているわけですが、財務省としても、この機構に限度いっぱい二兆円の金をぶち込んでいく、こういうお話でしたが、これは大臣、記者会見でこうおっしゃったという理解でよろしゅうございますか。
塩川国務大臣 私は記者会見で申しました。それは、記者の質問等もあり、また自分の方から積極的に言ったこともございます。
 ついでにちょっと申し上げさせていただきたいと思いますが、私は、株式取得機構というのが銀行の、金融機関の、これは本来の自分の考え方でいいましたら余り賛成なものじゃないんです。自由主義経済の立場からいいますと、こういうことについては私は多少は抵抗心も持っておるんです。けれども、現在の日本の経済の状況からいきますと、これはやむを得ない措置だと私は思っておるんです。
 それはなぜかといいましたら、銀行と企業との関係というものが、余りにも金融機関が株を持ち過ぎておるんです。これがやはり銀行の決算状況を悪くさせておるということ。そうであるとするならば、不良債権全体の、金融の健全化を図ろうとするならば、こういう機構を暫定的にも設けて、やはり株式の整理というもの、というよりも金融機関の体質の改善を図る必要があると思って、私は、これをだから積極的に進めるべきだと思っております。だから、本心はこれはいいことではないとは思っているけれども、しかし政策としてはやらざるを得ないんじゃないか、こういう考えではっきりと私は意思を持っておるんです。
 ですから、現在この機構が発足しました。発足した以上は、速やかにこの業務を開始すべきじゃないか、それがおくれておるのは何だと。業務方法書の作成だとかいろいろ言っています。だったら、皆さん方が、銀行が、金融機関がそれぞれ持ち合ってつくった機構だから早く決めてくれ、こういうことを言っております。そして同時に、本年度、保証の枠を二兆円政府は予算化しておりますので、その金をすぐにでも出動させて業務を積極的にやってまいりたい、こういうことを思っておるんです。
 ですから、そう言ったことは間違いございません。
松本(剛)委員 本当はやりたくないと言われると、反対をした我々も何と答えていいのかあれですが。
 御所管は柳澤大臣でございますね。今塩川大臣から、柳澤さんに強く言ってと、こう言われておられますが、現実に、現在までのところ、機構ができ上がってから買い取りはまだされていない、これからされるという状況なんだろうというふうに理解をしております。
 今の状況、また、漏れ聞くところによると、柳澤大臣も市場を大事にするという意味ではこういうものに余り賛成でないというお考えがおありやというようにもお聞きをいたしましたが、塩川大臣は率直に、よくないものだ、こうおっしゃいましたけれども、今回、塩川大臣の御発言にもありましたように、政府としてこれを活用していこうということで、どういう形でスタートをされるのか、伺いたいと思います。
柳澤国務大臣 いろいろないきさつがありましてこの買い取り機構ができ上がったわけでございます。原則論はほぼ塩川大臣と同じ気持ちでございますが、ただ、今日の銀行の株式保有の状況、それから、我々がそのリスクというものを考えて保有制限をした、こういうことを考えますと、やはりこうした機構をつくるということはやむを得ない選択、政策ということで、御賛同もいただきたいと思っております。
 具体的にはどういうことであったかと今日までのいきさつを申しますと、運営委員会というものをつくらなきゃいけない、その人選というものをやっておったんですが、ちょっとしたいろいろ人の出入りというか、予想しなかった出入りもありまして、そういうところで若干時間がかかりました。しかし、運営委員会は十三日の日に認可をいたしまして、十四日に、きょう開催をする、そして明日からはいよいよ特別株式買い取りの業務を行う体制ができ上がるということですので、正式には明日からもう買い取りが可能になる、こういうことでございます。
松本(剛)委員 買い取りの希望というのは、既に内々にはかなり寄せられているのでございましょうか。
柳澤国務大臣 一般論として申しますと、銀行はいろいろ積極的な意向を表明しているということでございますけれども、具体的なことになってまいりますと、そういう意向がすぐ具体の姿をとるかということについては、なかなか銀行側も、それは大事な資産を売るわけですから作戦もあろうか、こんなふうに考えております。
松本(剛)委員 この取得機構というのは、そもそも、理事長が富士銀行の山本頭取ですか、民間の金融機関が出資をして設立された機構ということになろうかというふうに思います。となれば、認可法人ということになろうかと思いますが、個々の意思決定というのは機構独自におやりになる、それとも金融庁がある程度指導をされる、この辺の形はどうなっているのでしょうか。
柳澤国務大臣 これは、まず出捐、拠出をしたのが民間の銀行であるということで、自主的に運用されるべきだという考え方から、理事というかそういうものについてはやはり銀行界の方がいいだろうということは、私、これは立法の過程から御答弁申し上げてきたことでございますが、そういうことで山本全銀協会長が就任をしたわけでございます。
 しかし一方、業務の公正性ということが非常に大事でございますので、運営委員会というものを設けておりまして、そこには第三者、つまり銀行界でない金融の専門家等が参加をしていく、こういうことでございます。先ほど塩川大臣が言及された業務規程というものが基本的に策定されて、それに基づいて具体の買い取りが行われていく、こういうことでございます。
 そこにはもちろん利益相反等の問題がありますので、この運営委員会の人たちの守秘義務というものもかかりますし、また本当に具体的にその利益相反の可能性がある場合には、代表権をその取得について持たないというようなことで注意をさせていただいているところでございます。
松本(剛)委員 基本的に、そういった枠組みについて金融庁の方が指導されるという理解でよろしいわけですね。
 厚生労働大臣と総務大臣にもおいでいただいているんですが、制度としては、そもそもこれは、銀行のいわゆる持ち合い株式の、持ち合いの解消という中でのセーフティーネットということでつくられたのが趣旨であろうというふうに思うんですね。それを、ちょうどこういう、きょうはちょっとまた株式市場は少し好転をしているようですけれども、ちょうどいいものがある、株式も下がっておる、とりあえずこういう形で打ち出すと株式市場にもプラスの影響があるのではないかということで、二兆円とりあえずぶち込む。確かに、敏感に反応すると大臣言われたように、反応した側面もないとは言えないというふうに思うんですが、趣旨が違う形でこれをお使いになっている部分があるのではないかということが一つ。
 それから、今おっしゃったように、本来、政府は枠組みだけを、公正にセーフティーネットを決めると。しかし実質的に、これは塩川大臣の記者会見、私、念のため確認をいたしましたが、記者会見ですから、ほとんどマーケットの関係者から当然買い取り機構の皆さんも御存じの話だろうというふうに思いますが、小泉内閣の重鎮の塩川大臣が、機能を発揮するように、二兆円枠をつくるから買い取れと言うのは、これ、あうんの呼吸と言えば聞こえはいいですけれども、この前から出ている圧力ということにもなりかねぬ部分があって、こういう形でマーケットを運営するということそのものが、いつまでたっても日本のマーケットというものがなかなか外国に信頼をされないということに大きく影響しているのではないか。そういうことがおありになるから、柳澤大臣も塩川大臣も、こういうものはそもそもよくないと。
 ですから、よくないとおっしゃったんだったら、我々が最初にやめた方がいいと言ったように、最初からやめておいていただいた方が本当はよかったのではないかというふうに思うわけです。
 この辺、塩川大臣、一応、政府としては枠組みをどうするかということだけが多分取得機構に対してお話をできる範囲だと思いますし、本来、銀行の持ち合い株式が一挙に市場に出ないようにということのセーフティーネットという意味での機構の設立だろうというふうに思うんですが、率直に申し上げて、株価対策の意味も込めて、あるんやから使わなあかんというようにおっしゃったのではないかと思いますが、その辺、御見解を伺いたいと思います。
塩川国務大臣 株価は結果として市場が決めまして反応しておりますから、これに対して我々は積極的に介入しようと思ってはおりません。そんなことは考えておりません。
 しかし、これは現実の問題として、国民ひとしく考えておるのは、やはり銀行の体質を変えなきゃならぬ。しかも銀行が、企業との融資関係等があって、プロジェクト融資でなくして何で企業融資になっておるのかといったら、そこに株の持ち合いがある。そして、しかも会計基準は国際化されてきている。そうすると、日本の習慣としてやってきた企業と銀行との持ち合い依存制度というものは、国際基準からいいましても合ってこないというんですね。そうなると、そこらは改正しなきゃならないんではないか、そういうことで、私はやむを得ない措置だと思ってやっておるんです。
松本(剛)委員 話がかみ合っていないようですが、もうこれ以上申し上げません。
 G7の、日本の経済をどうするかということに関連をして、せっかくこの制度があるんであれば、柳澤さんに、何遍も言うのもなんですね、強く言って、急いでやれとおっしゃったと。これはもう、本来、持ち合い解消のセーフティーネットであれば、設立をされた金融機関側が必要であれば順次申し込んでいって使えばいい話であって、そういうふうに使うものではなかったはずだと思うんですが、これをそういう、いわばあうんの呼吸でお使いになるという形をそろそろおやめになった方がいいのではないかなということを申し上げて、次へ進ませていただきたいと思います。
 あると言われながら公式にはないということにずっとなっていますが、郵貯や簡保、年金の勘定特別会計で株式を運用しているのが市場対策になっている。また、市場の方でもまことしやかに、今週幾らか公的資金が入るらしいということがよくささやかれるようなことがあるわけでありますけれども、まず、この郵貯、簡保の特別勘定での、国内の株式での投資というんでしょうか、運用について、どういう形で運用されているのかということを総務大臣にお伺いさせていただきたいと思います。
片山国務大臣 今御指摘のように、郵貯、簡保の資金運用を我々やっているわけでありますが、基本的には、法律にも書いてありますように、確実で有利、預金者、加入者に損害を与えない、事業を健全にやる、こういうことが基本ですね。そうですけれども、やはり多様な運用というのが必要でありますので、その資金の一部を簡保事業団を通じて信託銀行に信託しまして、そこで、株式等は直接やれませんので運用してもらう、こういうことは一部やっております。
 そういう意味で、信託銀行には、ポートフォリオで、大体こういうふうな、基本的なことだけ言いまして後はお任せする、もうかればよろしゅうございますし、損しても、それはそれで信託でございますからそのまま引き受ける、こういうことをやっております。
松本(剛)委員 坂口大臣にも、年金の両勘定ですか、厚生年金と国民年金勘定だと思いますが、この運用のルールとか運用の実態についてお伺いをしたいと思います。
坂口国務大臣 御承知のように、年金資金の運用基金の運用につきましては、一つの運用方針を立てて、それに沿ってやっているわけでございます。法令上は、専ら年金加入者の利益のために行わなければならないということになっておりまして、そしてこれをそれ以外のことに一つの目的を持って余りやってはいけない、特に特定のそうした考え方でやってはいけないということを定めているわけでございます。
 しかし、厚生労働省が直接やっているわけではなくて、信託でありますとか生命保険でありますとかあるいは投資顧問等でこれは運用してもらっているわけでありますから、そこはしっかり目を見張らせていかなければならないというふうに思っておりますし、投資行動につきましては、期限を切りまして、半年、一年というふうにして見ながら、その状況を我々の方も見ているわけでございます。もし仮に、株価維持操作というようなことにこれが使われるというようなことになっていたとしたら、それはもう厳重に我々も言わなければなりませんし、またそういうところにはこの運用を任せてはならない、そういうふうに思っている次第でございます。
松本(剛)委員 私もあらかじめお伺いをさせていただくと、幾つかルールをお決めになっているようでありますし、当然、これはいずれも、郵貯、簡保、年金ともに国民の大事なお金であるということでありますが、現実には、昨年度ですが、郵貯では九千億近くですか、含み損というんでしょうか、出ているはずですし、簡保の方では三兆円、それから年金の勘定では、運用で一兆七千億ほど利差損が出ているということでございます。
 先ほども申し上げましたように、マーケットでこれだけいろいろ、常にそういう公的資金が入っているといううわさが立つ、全く火のないところに煙は立たないと言い切ることができるのかどうかということでありまして、先ほども塩川大臣、また柳澤大臣にお伺いをさせていただいていた部分で、株式取得機構はまさに認可法人ということで、政府から見ればかなり遠いところにあるんです。
 枠組みだけ政府が決めるという形になっているはずのものですらあうんの呼吸で、買えと言われて動き出すというような部分がこの国には実態としてある。となれば、政府が、これ、今も簡保事業団とか特殊法人のお名前がありましたけれども、何らの形で、ましてや人的つながりが非常に強いということは、これは別の形でまたいろいろ申し上げておりますけれども、そういうところで意思を伝えようと思えば伝わりかねないわけでありまして、もしそういうことが背景にあって国民の金に損が与えられているとしたら、大変なことになってくるわけであります。
 一応運用のルールは伺いましたけれども、どうしてもマーケットを相手にしているせいもあって、当然ある程度幅を持たせざるを得ないということがあって、幅がおありのようであります。それだけに、何らかのファイアウオールというんでしょうか、きちっとこれはつくっていただかないといけないということを申し上げておきたいと思います。
 もう少し突っ込んでお伺いをしたいと思っていたんですが、時間が限られていますので、この話は、これについて申し上げたことをぜひ改めて、これ、残念ですけれども、通常国会の予算委員会では、一部かもしれませんけれども、大臣と役所と話が通じていないということがまことにたくさんありまして、ぜひそういうことのないように、恐らく両大臣ともそういうことがあってはならぬと思っておいでだと思いますので、よく指導していただきますようにお願いをしたいと思います。
 両大臣にはこれでお引き取りをいただいて結構でございます。坂口大臣は特に医療制度改革という難題を抱えておいででございますが、いろいろと大変なようでございますが、ぜひこれまでの信念を曲げずに行動していただいたらいいのではないか、このように思っておりますが、御活躍をお願いします。
 それでは、お待たせをいたしました。デフレ対策ということで、ここのところ緊急に動き出しているように私どもには見えるわけでございますけれども、中心になってお取りまとめをいただいているのは竹中大臣という理解でよろしゅうございますでしょうか。デフレ対策、この一日、二日。ということであれば竹中大臣に、おおむねペーパーは大体拝見させていただきましたが、二つ、三つ、短目に、柱の点だけ御説明をいただきたいと思います。
竹中国務大臣 まず委員、取りまとめをしているのかということでございますけれども、通常のいわゆる経済対策の取りまとめというものではございませんで、できることからすぐやっていくという性格のものでありますので、ここがちょっと従来のいわゆる経済対策とは違うということを御理解いただいた上で、中心的に、昨日総理から正式に、デフレ対策を急いで検討するようにという御指示がありました。
 その中心は、一つはまず不良債権問題の一層の加速、さらには金融システム不安を取り除くための諸策、三番目としては資産市場の活性化、四番目としましては、セーフティーネットの中に入りますが、中小企業に対する金融が滞らないように、第五番目としては金融政策のさらなる活用、そういった五つの点が中心になろうかというふうに思います。
松本(剛)委員 今の資産市場の活性化等というのがひょっとすると市場対策ということにつながる部分があるのではないかな、このように思いますが、竹中大臣、よろしいですか、論点整理を拝見させていただくと、デフレの原因として「需給ギャップの拡大」というのが書いてありますが、これに対する対策というのはその中には入っていないということなんでしょうか。
竹中国務大臣 論点整理という名のスタディーグループで取りまとめたものかというふうに思いますが、需給ギャップの問題に関しては、基本的には、第二次補正予算で四・一兆円の事業費を確保してGDPを〇・九%拡大させるような措置を講じた、それが中心になっております。
 しかし、さらに需要を活性化させるような規制緩和等々も考えられると思いますので、それはそれで引き続き構造改革の一環として議論を強力に進めているところであります。
松本(剛)委員 第二次補正予算でとりあえず需給ギャップの方はある程度カバーをした、こういう御判断だという理解でよろしいのでしょうかね。
 もう一つ、これは竹中大臣にお聞きするのがいいのかどうかわかりませんが、タイミングの問題というのがあると思います。
 来週、ブッシュ大統領がおいでになられる。十八日、首脳会談がある。十九日は、参議院の本会議でブッシュ大統領は演説もされるというふうに伺っております。昨日、官房長官は、会見では、たまたまだ、偶然だ、こういうふうにおっしゃったそうでありますが、行き当たりばったりでも困るわけでありまして、ブッシュ大統領が来られる、アメリカが日本の経済に非常に強い関心を持っておられる。これは塩川大臣もさっき、G7でも言われました。世界じゅうが持っておる話だろうというふうに思いますので、偶然というのもまたこれ極端な話だろうというふうに思います。
 それで、ブッシュ大統領が十八日来られた日のお昼は竹中大臣も同席されるやにお聞きをしておりますが、ブッシュ大統領に対してどういう説明をされるおつもりで準備をされておられるのか、お伺いをしたいと思います。
竹中国務大臣 きのうの総理の御指示は、二月中、月内を目途に進めるということであります。
 ブッシュ大統領の訪日というのはもちろん大変重要なイベントでございますけれども、それに合わせてこの対策をどうこうするということでは、これはやはり違うというふうに私も理解をしております。
 もちろん、しかし通常の経済パッケージと違いまして、できることはすぐやっていくという性格のものでありますから、こういうことができそうである、こういうことはもう少し強化できそうであるということは、総理には逐次、頻繁にお話を入れたいというふうに思っておりますので、そうした中で、その現状については総理からそれなりのお話があるのかもしれません。
 十八日のランチのことにつきましては、特に説明の機会が私あるとも思っておりませんし、その場でどうこうということではないと思います。
松本(剛)委員 できることから逐次ということで総理の方にもおっしゃっておられる、こういうお話でありましたが、そうしますと、一番最初の話に戻りますけれども、このデフレ対策の中で、具体的に何かできることということで既に総理におっしゃっておられることがおありなんでしょうか。既に進めようかということでおやりになっていること。
竹中国務大臣 諮問会議の場等々でいろいろ議論はしておりますけれども、まさにこれを受けて正式にその五つの方向で早急に検討に入れという指示を昨夜いただいたところでございますので、まさにこれから逐次ということであります。
松本(剛)委員 ブッシュ大統領が来られる。今こちらでは土日に考えるんだと与党の方はおっしゃっておいででございましたが、大統領が来られるまでに何かやはりおっしゃらなきゃいけないということになるのではなかろうか、こういうふうに思いますけれども、その辺は何か急いでお取り組みになるというお考えは今のところありませんか。
竹中国務大臣 日米間では、経済の情報交換というのはまさにもう日常的にやっております。かなり頻繁に私は大統領のスタッフと電話で議論をしておりますし、したがって、訪日のために急いでどうこうと、これはやはりそうではない。日米間の関係というのはもっと頻繁、緊密になっておりまして、もちろん、これは大変重要な節目でありますから、重要なポイントは総理はいろいろお話しになるかと存じますけれども、それに合わせて何かを取りまとめる、そういうことではありません。
松本(剛)委員 最初に申し上げたように、塩川大臣がおっしゃっていたように、ここでも具体的な話がないと困るんですが、ましてや国際会議では具体的に何をするかが問題でというお話があったわけであります。
 当然、重要なイベントの節目に具体的にどうするんだというお話、そうでなければ、まさに塩川大臣がおっしゃったように、日本は何をしているんだ、こういう話になってしまいかねないわけでありまして、急ぐことについては私どもも、この現下の日本の厳しい情勢を考えたときには、いろいろ急いでいかなきゃいけないというのはそのとおりだろう、このように考えております。
 平沼大臣にもおいでをいただいております。このデフレ対策ということで大臣もメンバーに加わっておいでだと思いますが、経済産業大臣のお立場から、デフレ対策のポイントについてお聞かせをいただきたいと思います。
平沼国務大臣 お答えさせていただきます。
 今の経済の現況というのは、委員もよく御承知のように、大変、デフレスパイラルの入り口にあるような厳しい状況になっています。そういう中で、経済産業省といたしましては、やはり中小企業、ここに力点を置いていかにセーフティーネットを張るか、こういうことで、今、これまでも努力をしてきておりますけれども、幾つか考えさせていただいております。
 一つは、やはりこのデフレが進んでくる中で、いわゆる貸し渋り、貸しはがしというような中で、中小企業の金融というのは非常に厳しくなってきておりますので、これに対しましては、昨年の秋に売掛金債権に着目した新しい制度をつくらせていただきました。
 また、第一次補正予算では一千四百億を計上させていただきまして、そしてそういう連鎖の、大型の金融倒産でありますとかあるいは大型の企業の倒産によってその連鎖に巻き込まれるような、そういった中小企業に対して新たなセーフティーネット保証の枠を拡大する、こういう形でやらせていただいています。
 いずれにいたしましても、このデフレの状況というのはやはり企業の収益性を悪化させる。そうしますと、それに続いて設備投資も鈍化をしてくる、そして雇用もリストラ等で失われる、さらには賃金が下がってくる。これを断つためには、やはり金融面の不良債権の処理でありますとか、それからまた雇用をいかに回復するか、先ほど来御議論が出ています、こういうことにも手を打っていかなきゃいけません。
 ただ、日本は個人の金融資産等含めて余力があるわけでございまして、そういう面では、いかに先行きの不安を払拭して、そして金融市場に円滑に資金が流れるような仕組みをつくって、そしてそれが、例えば金融部門のそういう一つの不良債権ですとか、あるいはまた実体的な企業が持っている債務というものがデフレによってさらに上昇するというようなことが悪循環の一因になりますから、そういったことを取り除いて、そして金融とそれから実体資産を流動化していくということも、やはりこれからデフレ対策の中できめ細かく対応していかなきゃいけない。
 そういう中で、私どもとしては、中小企業対策も含めて、各省庁と連携をしながら、立体的にこのデフレ対策はやっていかなきゃいけない、今の日本の企業というのは大変厳しい局面に立たされているので、でき得る限り中小企業を中心に応援体制を組んでいきたい、このように思っています。
松本(剛)委員 平沼大臣においでいただいたのも、御認識は私どもと一緒であろうというふうに思っております。
 先ほどの株式というか市場対策でも、需給の話とそれから制度の話をさせていただきましたが、この中小企業の金融も、これだけ大変な状況であると、今おっしゃったような直接資金を手当てするといったような方法ももちろん必要だろうというふうに思いますが、同時に、中小企業の金融というものの制度そのもの、金融機関と中小企業の関係というのをやはりきちっとしていくことが必要ではないか。
 私どもは、実は金融の円滑化に関する法律ということで、御所管の柳澤大臣はよく御存じだろうというふうに思いますが、この国会にも提出をさせていただきました。
 各地域の中小企業の皆さんには大変御賛同をいただいて、たくさんの署名もいただいておるわけであります。一部では、確認をしておりませんけれども、よく提出者をごらんにならずに、自民党の地方議員の方が、これはええことだから署名を集めろと言って集めておられるという話も出ておるぐらいでありまして、総理も、野党の言うことでもいいことは聞く、こうおっしゃっておいでであります。大臣にも、ぜひ中小企業の立場から御検討いただいて、内閣の一員として、野党案であっても、いいものはぜひこれが実現をするようにということで、御協力をお願いしたいと思っておいでをいただきました。
 では、金融の話に移らせていただきたいと思いますので、大臣、どうぞ。塩川大臣はいたわらなきゃいけないと与党の方がおっしゃいましたけれども、予算の審議なので、塩川大臣にどうぞというわけにはいかぬと思いますので、おつき合いをいただきたいと思います。
 それでは、金融の話に入りたいと思いますが、その前に一つ、デフレの関係で、これは塩川大臣の御所管にもなるんでしょうか、円安とデフレという話がいろいろ出てきていますが、デフレ対策の中で円安についての議論は出ていないんでしょうか。塩川大臣と竹中大臣にそれぞれお聞きをしたいと思います。
竹中国務大臣 どういう議論が出ているかということに関しては、経済財政諮問会議でこの議論をしておりましたので、諮問会議でどういう議論が出たかということでありますが、為替レートはマーケットで結果として決まるものですから、これを政策的にどうこうという議論は全く出ておりません。
 ただ、金融の一層の緩和というのは当然のことながら出ているわけでありますから、金融の緩和によって、実質為替レートではなくて名目為替レートが、期待インフレが変わればそれによって変わる、そういうことは暗黙の前提としてはあるのかと思います。
塩川国務大臣 デフレの関係と直接結びつけて為替の問題を考えるということを私たちはいたしておりません。
 為替レートはいろいろな政策の結果として出てくる問題であって、私は、それは全く市場が判断するものだと思っておりまして、専らデフレ対策、その一番眼目は何か、消費者物価の価格を引き上げていくということ、これを政策の中心に私は置いて考えております。
松本(剛)委員 為替はマーケットが決めるものだ、これはある意味ではそうだろうと思いますが、私は、プラザ合意のときも金融の現場におりまして、マーケットだけではなくて、やはり国際的な関係が為替の市場には強く働いていることは間違いないところであろうというふうに思うわけであります。
 先ほどもあうんの呼吸という言葉を使いましたけれども、こういう意思決定の仕方であるとか物の動かし方というのを変えていくことそのものが本来の構造改革ということではなかろうかというふうに思うわけでありまして、ぜひこれからはこの為替の問題についても、当然日本だけで決まる話ではありませんから、発言の内容によっては外国との関係に影響が出てくるということは承知をしておりますが、それを踏まえた上で、日本としてどうするのかというのを、これはマーケットに任せるというだけでは済まない話になってくるということを申し上げて、金融の話に入らせていただきたいと思います。
 柳澤大臣にまたおつき合いをお願いいたします。
 昨日、金融を論じ過ぎているというふうにおっしゃっておられましたが、御記憶ありませんか、金融の話をせざるを得ない状況が続いているということが、これは私どもにとっても大臣にとっても残念なことではなかろうかというふうに思うわけでありますが、現実の問題としてやはりそういうことが続いている。
 きのう、竹中大臣ですか、ニュースステーションに出演をされたときも、市場と当局の認識のギャップというのを埋めていかなきゃいけないと、このことは柳澤大臣もよく理解をされているとおっしゃりながらおっしゃっておられましたけれども、これはまさにそのとおりであって、残念ながら、マーケットが説明され切れているとは思っていないがゆえにこういうものがいろいろ起こってきたというのが現実だろうというふうに思いますので、私どもは、むしろお聞きをする中で説明をする機会を持っていただいているのではないか、こう思って聞かせていただいていますので、よろしくお願いをしたいと思います。
 まず一点は、通告をさせていただいていますが、新生銀行。私も日本興業銀行というところに勤務をしておりましたので、長期信用銀行には大変親近感はあるんですが、ここのところの公的管理が終了してからの新生銀行というのは、率直に申し上げて、個別の銀行のことについてお話しするのはあれですが、いかがなものかなと思えるのが実態だろうというふうに思います。
 皆さんもよく御存じだろうと思いますが、一昨年、二〇〇〇年の三月に公的管理が終了いたしました。そのときの貸し出しの残高が七兆七千億円ほどであります。九月の中間決算で貸し出しは五兆三千億、半期で八千億から一兆のペース、通算、年間では一兆六千億から二兆ぐらいのペースで貸し出しが減り続けているわけであります。
 これは、半期ごとにずっととってみましたが、着実に減ってきているわけでありまして、このまま減っていくと、あと二年半か三年ぐらいで貸し出しはなくなる。でも、実際に、新生銀行のおやりになっている行動は、金融機関として仲介機能を果たそうとしているようには見えない部分が大変多いわけですね。
 一方で、株主資本は二〇〇〇年三月の段階から二〇〇一年の九月の中間末では四千七百から六千億近くまで上がってきているわけでありまして、年にして一八・三%ほど株主資本がふえているということは、投資としてはこれは極めて優秀な投資ということになるんだろうと思いますが、金融機関であるということで日本の中にあっていただくということであると相当問題があるのではないかと思いますが、柳澤大臣の御認識を伺いたいと思います。
柳澤国務大臣 長銀を譲渡するに当たって、譲渡先として、ニュー・LTCBとか言っておりましたが、実態はリップルウッドという投資ファンドを主力とする投資家にこれを譲渡いたしました。
 そのときの私どもの考え方というのがどういうものであったかと申しますと、これは、新しいビジネスのスタイルあるいはモデルを日本に持ち込んで、それがまた日本の銀行に大いなる刺激となるということを考えておりますよ、その点を非常に期待しておりますよということを申し上げたこともございます。それがすべてではないわけですけれども、そういうことも申し上げた。
 そういうことで、今日、今先生の御指摘のような状況が起こっていること、我々も承知をいたしておりますけれども、二・三兆ほど減ったものの中で、弁済というのが一・四兆あるということなんです。これは、新生銀行の側から取引を絶つ、関係を絶つということもあろうかと思うんですが、実はお客さんの方からその取引関係を絶つということもあるのではないか。エピソード的にはそういうことも耳にしておりますので、そういうことを聞いております。
 いずれにせよ、そういうことについては、顧客基盤が縮小していくということであれば、これは余り芳しいことではない。しかし、バンキング、これはもう委員つとに御承知のとおりですが、銀行がやることというのは、必ずしも自分がアセットを持って貸し出しをすることだけではありません。
 そういうようなことで、このあたりのことについては、私としては、基本的に、もちろん個別の企業の問題ですから彼らの経営判断というものを尊重しつつも、その行く末というものについては十分強い関心を持ってこれを注視して、そして、しかるべきときにはしかるべき措置をとっていきたい、こう思っています。
 例えば、先般も、十月の四日でございますけれども、健全化計画で出してきた中小企業向け貸し出しというものについて、大幅な未達成が見られるというようなこともありまして、しかもその未達成というのが、実は、努力をしての未達成ということは、これは双方の合意ですからあり得るわけですけれども、中小企業に対して貸し出しをする体制というものについても、他の健全化計画下にある銀行に比べてどうもその整備の仕方が不十分ということで業務改善命令を発した。こういうようなことで今後とも対処していきたい、このように考えております。
松本(剛)委員 業務改善の命令を発せられたということも承知をしておりますが、これは相当いろいろな方面から、悲鳴もいろいろ新生銀行の取引先というところからは聞こえてくるのが現実でありまして、銀行法は、もう私が申し上げるまでもないと思いますけれども、きちっと免許の取り消しの規定も置いているわけでありまして、場合によっては債権回収の免許を与えるということでおやりになった方がよっぽどいいのではないか、わかりやすいのではないかと思えるぐらいなところがあります。
 もう一つ、こういう形のビヘービア、行動が許される一つのインセンティブになっているのは、やはり瑕疵担保条項ということにならざるを得ないのではないかというふうに思います。金融再生委員会の議事録も今順次公開をされておられるようでありますが、このときの議論の中でも、当初出た中では、各委員の方々からは、法律でやはりきちっと一条書くべきではないかという議論もロスシェアについてはかなり出ていたようであります。
 残念ながら時間になっていますのでこの中身については触れていきませんが、瑕疵担保条項について、今までどれだけこれに基づいて買い取ったかというのは、新生銀行が、昨年の十二月末現在で百三十一件、債権額で六千五十四億、支払い額で三千五百八十億という数字をいただきましたが、現在新生銀行から申請をされているものは幾らぐらいあるんでしょうか。
柳澤国務大臣 我々、金融再生法に基づきまして、これらの問題につきましてはFRC報告というのをさせていただいているわけでございますけれども、そこの資料ではなくてもう少しアップデーテッドした昨年十二月末の時点では、買い取った債権額は、今先生御指摘のように、債権額で六千五十四億円、支払い額で三千五百八十億円ということになっておるわけです。
 しからば、買い取り申請、買い取り請求をしているものは幾らかということでございますけれども、これにつきましては、預保が契約に基づきやりとりをしている途上でございますので、開示をすることは適切でないと考えておりまして、従来、申請については開示をいたしておりません。
 なお、瑕疵担保条項というのは、瑕疵担保ということの意味合いですけれども、もし当初から我々の見立てが正確で、これが不良債権である、だから継承させない、譲渡の資産の中に入れないということであれば、これだけの損失がもうそのときに発生するということでございまして、そういう意味で、何か追加の負担がこれで生じているかというような一種の錯覚が生まれるんですけれども、それはそうしたものではない。これは法律家の皆さんたくさんいらっしゃるから御案内ですけれども、結局、見立てのそういうこと。(発言する者あり)
 それから、査定が間違っているということですが、基本的に、あのときにはできるだけ承継させろというのが法律の考え方、精神であるということでございますので、そういう処理をしているということであります。これは委員はもうよく御存じですから、ちょうちょう私申しませんが、よくお考えになっていただくと御理解賜れるところだと思います。
松本(剛)委員 きょうは質問の最初からずっと申し上げているんですけれども、いわゆる日本流のやり方ということをやはりここで一度変えていかないといけない。今のこの瑕疵担保についても、きちっとロスシェアということで法律で書いたら、これは私も、委員会が膨大な量になるのでまだ全部の精査は終わっていませんけれども、概略読ませていただく限りでは、先ほどリップルウッドに対しても期待のような趣旨をおっしゃったのと同様に、こんなことは委員会の中では想定はされていないんですね。法律論として、瑕疵担保を、運用するよりはちゃんと一条書いた方がいいんじゃないかというような議論はされていますが、こういう形で利用されるということは余り想定をされていないのではないかと思いますが、そのときそのときでやるからそういう形になるということだと思います。
 現実に、先ほどの瑕疵担保条項がやはりそういう行動のマイナスのインセンティブになってしまうんではないかという話で、大臣もよく御案内だろうと思いますが、ファーストクレジットということの問題についてやはり申し上げざるを得ないというふうに思っております。
 状況は、大臣は経緯はよく御存じだろうというふうに思いますが、旧の長銀の系列のノンバンクということでありますが、たくさんの金融機関との取引がある中で、それぞれの金融機関との横並びのいわば担保の協定の書きかえが、昨年の十二月の二十八日が期限になっておった。それに、書きかえるに当たって、ファーストクレジット側がいわゆる再建計画を策定したわけでありますが、私どもが把握している限りでは、取引銀行三十七行のうち少なくとも三十一行は、この計画でいい、融資を継続するということを言っておられた。しかし、メーンバンクの新生銀行が二十七日の日に、更生計画、更生申請をされたというのが事実関係だろうというふうに思います。
 事実関係を確認している時間が既にありませんが、こういった形、このファーストクレジットの債権に関しては買い取りの請求というのが来ているかどうか、承知をされておられますか。
柳澤国務大臣 これはもう先生御案内のとおりでございまして、現在、会社更生手続の開始を、ファーストクレジットがこれに対して必ずしも同意できないということを申したことがきっかけになりまして、東京地裁では、監督員によって、監督命令を出しておりまして、一体この新生銀行側の申し立てが妥当性を持つものかどうかということについて決定を下すための準備作業に入っている、こういうことでございます。
 申請の有無については、先ほどの原則で御答弁を差し控えさせていただきます。
松本(剛)委員 この性格上答えられないという御回答をいただいたということでよろしゅうございますか。
 もう何度も繰り返しになりますが、時間が参りましたが、本当に金融をどうするか、また、これについては公的な資金もかかわっている話でありまして、委員会の議事録をどんどん開示されているということは私どももきちっと評価をさせていただかなきゃいけない部分だろうというふうに思っておりますが、この新生銀行についても、一民間機関ということでは、特別公的管理を経て国がいわば売却をした先である、しかも経営健全化の対象でもあるということでありますし、明らかに、この十二月の二十七日とかこの前後の、我々は当局じゃありませんので状況の証拠をつなぎ合わせていくしかないわけでありますが、状況の証拠をつなぎ合わせれば、どう考えても、つぶして、むしろ買い取ってもらった方が得だという投資判断をしたというふうにしか考えられないわけですね。
 三十七行中三十一行、これは多数決で決める問題ではありませんけれども、それだけの金融機関が再建計画を了としたわけでありまして、普通は逆ですね。メーンバンクが大体お願いをして再建計画を理解してもらうというわけでありますが、周辺の金融機関がオーケーを出しているのにメーンバンクがつぶす方に走るということの背景に一般と違う事情があるとすれば、新生銀行が持っている、ほかの銀行と違う事情とすれば、一番大きく考えられるのはそれだ。また、日にちとしてもそうなるということにならざるを得ないのではないかということを御指摘申し上げて、私の時間は終わりましたので、午後から先輩の議員に引き継ぎたいと思います。
津島委員長 これにて松本君の質疑は終了いたしました。
 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    正午休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三分開議
津島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 この際、川口外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。川口外務大臣。
川口国務大臣 二月十二日の衆議院予算委員会において石井一議員より提出が求められていた資料、これは平成八年の橋本内閣成立から現在に至るまでの鈴木宗男議員の外国等訪問の一覧でございますが、この作成に当たりまして、鈴木議員の外国出張に当省職員、これは佐藤優分析第一課主任分析官でございますが、が同行した回数の事実関係の詳細を確認するために、当省職員が鈴木議員に面会したことは事実でございます。
 当省として確認し得る鈴木議員の外国等への出張、これは北方四島への国内出張も含みますが、それの記録と、鈴木議員に同行した当該職員の出張記録だけでは、正確な事実関係を確認することが困難な事例がございました。例えば、鈴木議員は一回の出張で複数の国、都市を訪問されることがございましたが、これらの訪問先のすべてに当該職員が同行したか確認する必要があったこと、また、日本出発後に日程や訪問先が変更となることもしばしばあることから、正確な事実関係を把握する必要があったこと等がありました。このような理由から、鈴木議員及び当省当該職員に直接事実関係を確認する必要がございました。
 ただし、鈴木議員とは、同議員の外国等への訪問日程の詳細や当省職員が同行した事実関係を確認したのみでございまして、答弁内容のすり合わせを行った事実はございません。
 いずれにいたしましても、このような時期にこういうことが起こる、あるいはこういうことを行うということにつきましては、私自身、大変に遺憾なことだと思っておりまして、外務省として十分に反省すべきことであると思っておりますし、私も非常にこれについては遺憾であるということを言いました。
 以上でございます。
    ―――――――――――――
津島委員長 質疑を続行いたします。五十嵐文彦君。
五十嵐委員 今お話を伺いましたけれども、大変、私の方こそ、国民の方こそ遺憾であります。
 当該職員、佐藤さんは公務で出張させたと言っているわけですから、これは公務である以上、細かい変更等は当然報告があるべきであり、記録が残っているべきでありまして、相手に聞かなければわからないということはあり得ないはずなんです。それはまさに、秘書としてつけた、だから使う人の勝手だという話になっているのをみずから白状しているようなものではないですか。
 こんなことは許されないと私は思いますが、どう思いますか。
川口国務大臣 私も実はそのように思いました。
 それで、出張記録、これは、まさに国民の税金を使って出張に行くわけでございますから、その出張のディテールは全部わかっているはずであると思いまして、質問をいたしました。
 それで、確かにそういうこともあると思いましたのは、先ほど申しましたように、出発後、日程や訪問先がしばしば変更になる、それから、全行程、全部について、それぞれの日程の変更等があって、一緒であったかどうかはわからないというような細かいことについて事実を確認する必要があったということで、それはそういうことであるというふうに思います。
 以上です。
五十嵐委員 石井議員が要求したのは、むしろ鈴木宗男さん自身よりも佐藤さんの方の日程が問題だったんですから、それはおかしい話なんですよ、もともと。それは、ディテールまで当然報告をしていなければいけないし、変更があったら変更も届けていなければいけないはずであります。これはおかしい話だと私は思います。
 それで、当該職員というか、官房総務課の担当が答弁書を見せに鈴木さんのところに行ったようですけれども、それはどなたなんですか。お名前を教えてください。
小町政府参考人 お答え申し上げます。
 官房総務課の沼田企画官でございます。
五十嵐委員 その沼田企画官に、どういうことを鈴木さんに教えたのか、鈴木さんとどういうことを話したのか、やはり聞かなきゃいけませんね、これは。そうですよね。これは参考人でお呼びしなきゃいけないと思いますが、委員長、どうですか。
津島委員長 理事会で協議をさせていただきます。
五十嵐委員 理事会で相談ということですけれども、政府参考人として正式に、本当にこういうことは許されないです。だって、舌の根が乾かないところじゃないですか、外務省改革をやるんだ、変な議員の変な言うことを聞き過ぎたからいけないんだと。それを反省しているんだと言うそばからこれをやっていたんじゃ何にもならないじゃない。そうでしょう。そう思いませんか。
 官房長官、どうですか。
福田国務大臣 ちょっと内情を私も今聞いているところで、初めて知ったわけでございますが、詳しいことはわからない上でのことでございますけれども、やはり、李下に冠を正さず、この精神というのは、我々もそうですけれども、またお役人の方も、同じような心構えというのは大事なんではなかろうかと思っております。
五十嵐委員 もう一度、恐縮なんですが、外務大臣、こういうことをしていたということをいつ承知されましたか。
川口国務大臣 私がこの話を聞きましたのは、昨日でございましたでしょうか、石井議員の御質問があるという朝、昨日の朝だったと思いますが、聞きました。
 いずれにしても、出張の記録あるいはその出張の成果、結果の報告等について外務省の今までのやり方はきちんと改めるべきであると私は考えておりますし、そのようにするつもりでおります。
五十嵐委員 要するに、出張の記録もちゃんと残していなかったということをおっしゃっているわけですね。
 それから、今わかったことは、これは、いまだに川口外務大臣のほかにやみの外務大臣がいるということ、そういうことですね。私はそういうことだと思います。これは重大な問題だと思います。
 もう一回、じゃ、そこの一点だけ確認しますけれども、出張の記録というのは細かになかったんですか。
川口国務大臣 当然にございます。これは、役所のお金を使って出張に行く話でございますから、決裁も当然にありますし、いつからいつまで行ったということは残っているということですが、確認をしたかったのは、それが途中で変更になっている、あるいはそのうちどれぐらい鈴木議員と御一緒だったかということでして、先ほど私が申し上げましたのは、そういった事後の変更等についてもやはりきちんと報告をすべきであろう、そういう点について改めたいということです。
津島委員長 委員長として申し上げます。
 外務大臣の御答弁、そして事実関係に徴しまして、国会と行政機関の間のルールは厳守しなければならない、そのような意味で、今回のように、国民の目から見て疑惑を招くような行政機関の姿勢は繰り返すことは許されないと思いますので、外務省におかれて、また外務大臣におかれても、これから十分この点に留意をしていただきたい。委員長として申し上げて、五十嵐君の質問に入りたいと思います。
五十嵐委員 大変重要な問題で、これからもその当該の沼田企画官をお呼びして話を聞かなきゃいけない機会があると思いますけれども、後に譲ります。
 昨年の本委員会で、私は外務省の在外公館の渡切費をお尋ねいたしました。そのときに、マニュアルをお示しいたしまして、現物を持っていたわけですけれども、今でも持っているわけですが、それが本省でつくられて配られたと。要するに、使い切りなさい、そして余ったときは、観葉植物を買ったりカーペットのクリーニングをしたりということで、なるべく無理にでも使っちゃいなさいという内容のマニュアルでございました。大変ひどい内容です。その後の調べでも、その中にはODA予算の一部も流用されていたというか配られていたということで、極めて放漫ででたらめなやり方だというふうに思うわけですが、本年度予算ではその点をどのように改めたのか、マニュアルは廃棄したのか、改訂したのか、お尋ねをしたいと思います。
小町政府参考人 お答え申し上げます。
 渡切費使用についてのマニュアルに関するお尋ねでございますけれども、委員が昨年十一月十二日の本委員会で言及された心得につきましては、渡切費が平成十四年度予算に計上されないこととなったことに伴いまして、そのマニュアルといいますか、その文書を残す必要がないということでございます。
五十嵐委員 渡切費は形を変えてまだ残っているんじゃないですか。それ自体はどうなっているんですか。
小町政府参考人 お答え申し上げます。
 平成十四年度予算案におきましては、従来、渡切費において予算計上されておりました各案件の必要性を精査の上、引き続き必要なものにつきましては、内容に即しまして、庁費、在外職員旅費、啓発宣伝費等の適正科目に振りかえてお願いをしているところでございます。(五十嵐委員「額、額」と呼ぶ)
 額は、庁費が六十一・八億円、在外職員旅費が十・八億円、いずれも約でございます。それから、啓発宣伝費が一・八億円、その他四・四億円の、合計七十八・八億円でございます。
 ちなみに、十三年度予算の渡切費は七十八・九億円でございました。
五十嵐委員 七十八・九億円が七十八・八億円に、〇・一億円、一千万削っただけということがはっきりしました。大変なむだ遣いが指摘されていたにもかかわらず、こういう状態。大幅にカットするようなお話を私は田中前外務大臣から伺ったように記憶しているんですが、これはおかしいじゃないですか。
小町政府参考人 お答え申し上げます。
 今のは円ベースでの予算額でございますけれども、従来の渡切費及び今お願いしております庁費等におきます同様の経費は、在外公館で使用するものでございますので、為替レートを考えますと、実質一〇%減ということになっております。
五十嵐委員 それは本当に既得権を、まさに官僚が自分たちの都合だけで、お手盛りで守っているとしか思いようがないですね。これは我々の常識と違いますよ。
 それで、川口外務大臣が就任直後のインタビューで、どうも外務官僚と常識が異なっている面があるというような趣旨の御発言があったように思うんですが、それは、私、今のお話を聞くとわかるような気がするんですが、具体的にどういう点を指しておられるのか、伺いたいと思います。
川口国務大臣 それを申し上げましたのは、非常に漠然とした印象も含めてでございまして、例えば私は大臣室の大きさについて実はそう思ったので、そういうことを申し上げたということでございまして、何が当たり前かと思うところの意識の違いがあるかなと思います。
 それから、私、ちょっと先ほど勘違いして申し上げた部分がございますので、念のため訂正をさせていただきたいと思いますけれども、先ほどの話に戻らせていただきますが、石井議員から御請求のございましたのは鈴木宗男議員の御出張の回数ということでございましたので、そういう意味で確認をさせていただく必要があったということでございます。
五十嵐委員 いや、鈴木議員の出張は当然伴うんですが、それと同時に、特定の職員がどれぐらい一緒に行ったのかという話を聞いているわけですから、それはおかしい話ですね。
 それから、今のお話の続きなんですが、私も実は外務省霞クラブの記者を二、三年しておりまして、実は、かなり外務省には親しい方ばかりなんです。
 自分で感じたことがあるんですけれども、外国に行きますと、日の丸より菊の御紋が非常に目立ちます。外務省はもともと天皇陛下の代理人という意識がやはり強いんじゃないか。それで、我々一般の国民の税金を使わせていただいているんだという意識が薄い。そこに大きな問題が、こういう問題が起きてくるんじゃないか。為替のレートが変わったんだから上がるのは当たり前だと。こういう問題を指摘されて、少しでも節約しよう、国民の大切な税金なんだという気持ちが薄いんじゃないかというふうに思っているわけであります。
 ですから、川口大臣が感じられた、一般の感覚、一般の国民、一般の庶民の感覚との違いというのは、そういうところから起因をしているんではないかなと思うんですね。
 例えばポストについても、まるで事務次官の決まりのコースとして、事務次官は何代か置きに駐米大使におさまる。それから、フランス語で採用された職員は、当然のこととして、一番トップは駐仏大使になる、ドイツ語はドイツ大使だというふうに、かなり、いわゆる職業外交官のポストの場という形で大使が考えられているんじゃないか。そういうことを指摘しているやめた外交官もおられるわけですね。私は、これはおかしいと思うんです。
 アメリカは、御承知のとおり、大物の政治家を敬意を表して日本の大使に連れてこられる例がいっぱいあります。日本も、官房長官、苦労されていると思いますけれども、やめられた総理大臣、いつまでも国内のことで、細かいことにまで小じゅうとのように口を出されるんではなくて、むしろそのキャリアを生かして、また、知名度があるわけです、元総理大臣ですから、もう国会議員はおやめいただいて大使としてお働きいただく、活用するというような考え方があっていいと思うんですね。大使をキャリア外交官のポストの場として考える、決まったように固定して考えるというのはおかしいと思うんですが、そういうようなお気持ちがあるかどうか、伺いたいと思います。
福田国務大臣 総理大臣経験者に大使になっていただくということはともかくといたしまして、適材適所、有能な人材を大使館の幹部とか大使に任用するということ、これは大変意味のあることだと思います。
 外務省は、まさに外交というのは、外務省だけでない、やはり国民全部が支えるものだというような気持ちは大事なんだろうと思いますし、そういう意味で、これからも積極的に検討していかなければいけない。
 そういう意味で、二、三日前に川口外務大臣が、「開かれた外務省のための十の改革」の中で、大使を初め本省、在外幹部ポストに民間を含む各界のすぐれた人材を積極的に起用するという考えを言っておられますので、積極的にやっていただきたい。
 今も十人ぐらい民間大使がおられますけれども、それを倍増するとかそれ以上するとか、そういう積極的な対応をする。そういう中に、国会議員であって外交に関心を持つような方が国会議員をやめて就任するとかいうようなことも大変いいことじゃないかと思っております。
五十嵐委員 要するに、外務省の意識改革というのが必要だということを私は申し上げているんだろうと思いますね。本当に注意をしてやっていただかなきゃいけない。典型的な自民党の実力者である鈴木宗男さん一人が陰の外務大臣になるんではなくて、外交を彼だけに任せるんじゃなくて、本当に政治が一体となって外交を担っていくということが、本当の意味で、政策的な意味で必要だと思うわけであります。
 次に移ります。
 竹中大臣に伺いたいと思うんですが、きのう、私、時間がなかったので口早にちょっと御説明をしてしまいましたけれども、需要の単純な追加というのは効果が極めて限定されるということを申し上げました。同時に弊害もあるんだということも申し上げました。わかりやすく簡単に、このことをお認めになるかどうか、私がきのうお話ししたことについて、御所感があったら伺いたいと思います。
竹中国務大臣 昨日の五十嵐委員の、供給サイドの強化こそが必要だという点に関しては、全く同感であるという思いで聞かせていただきました。
 需要が一時的に低下したときに一時的に政府が追加するといういわゆるファインチューニングは諸外国はやっていないわけで、それについても慎むべきであるという点も同様でありました。
 ただし、需要側にショックがあるときに関しては、これは政府に重要な役割があるというふうにも思います。
五十嵐委員 それは多少の効果があるということは私も認めていますよ。だけれども、これだけの財政状況になってくると非ケインズ効果も生まれるのではないかということも申し上げたわけであります。
 それから、苦言を一つ呈しておきますが、先日の予算委員会で、竹中大臣は、需要と供給の関係で、最終的には需要と供給は一致するんだというようなことをおっしゃったですね。これは、あなたが売った値段と私が買った値段は同じですよと言っているにすぎないのであって、国会をばかにしているような発言だと私は思いますので、ぜひそういうようなくだらない、くだらないといいますか明々白々の話をここでして何になるんだという話ですから、それは御注意を申し上げておきます。
 それから、赤字財政の改善が中長期的な経済成長率の上昇に寄与するという諸先進国の常識を今お認めになったわけですけれども、よその国ではこういうことをやっていないということをはっきり認識しているというお話でいいわけですね。今お認めになったのでいいと思いますが。
 私のところに一つレポートがございます。ネバダ・レポートというものです。これは、アメリカのIMFに近い筋の専門家がまとめているものなんですけれども、この中にどういうことが書いてあるか。
 ネバダ・レポートの中でも、昨年の九月七日に配信されたものなんですけれども、IMF審査の受け入れの前に、小泉総理の、日本の税収は五十兆円ほどしかない、今の八十五兆円を超える予算は異常なんですという発言があります。これを大変重視して、当然だと言っているんです。
 同時に、九月上旬、ワシントンで、私、柳澤大臣と行き会いましたけれども、そのときに、柳澤大臣が記者会見をワシントンでされていまして、IMFプログラムを受け入れるという発言をされていますね。これは御確認をさせていただきたいんですが、そのとおりですか。
柳澤国務大臣 IMFのFSAP、これは受け入れます。これはもともとがG7の国で発案をしたものでして、それをいつやるかということを我々も考えておりましたが、我々の方はペイオフという大事業があるので、生まれたばかりの役所でマンパワーがとかく不足であるというようなこともありまして、少しそのタイミングを見計らったということが背景で、今回、そういうことを正式に表明したということでございます。
五十嵐委員 極めて狭い意味、いわゆる金融のIMFによる検査という意味で柳澤大臣は使われているんですが、IMFの方では、金融面のプログラム、それは検査だけではないと思いますが、いわゆるIMFのプログラムの中には、金融面とそうでない部分があるんですね。主に我々も金融面をとらえているし、その検査も含めて、柳澤大臣も金融面のことを頭に置かれているというふうに思うんですが、このネバダ・レポートの中ではこの二つの発言を評価しておりまして、これが当たり前なんだということを言っております。つまり、バランスバジェット、収支均衡というのが極めてIMFでは重視されるんだということを言っておりまして、もしIMF管理下に日本が入ったとすれば、八項目のプログラムが実行されるだろうということを述べているのであります。
 手元にありますが、その八項目というのは大変ショッキングであります。公務員の総数、給料は三〇%以上カット、及びボーナスは例外なくすべてカット。二、公務員の退職金は一切認めない、一〇〇%カット。年金は一律三〇%カット。国債の利払いは五年から十年間停止。消費税を二〇%に引き上げる。課税最低限を引き下げ、年収百万円以上から徴税を行う。資産税を導入し、不動産に対しては公示価格の五%を課税。債券、社債については五から一五%の課税。それから、預金については一律ペイオフを実施し、第二段階として、預金を三〇%から四〇%カットする。大変厳しい見方がなされている。
 これはどういうことか。そのぐらい収支均衡というのは大事なんだ、経済を立て直すためには極めて大事なんだということを、世界の常識となっているということを示しているわけであります。
 こういう認識をお持ちになっているかどうか、財務大臣、竹中大臣、伺いたいと思います。
塩川国務大臣 数字の面でいろいろ議論ございますけれども、私は、今おっしゃったような厳しい認識は持っております。
竹中国務大臣 短期的に常に均衡させることが重要かどうかということについては、当然のことながら議論が御承知のとおりありますけれども、長期的にやはり持続可能であるためには、それはまさにプライマリーバランスを均衡させなければいけないと強く思っております。
五十嵐委員 その厳しさが違うということを私は申し上げたい。ここまでしなきゃいけないんだというほど世界の常識はこの面に厳しいということであります。
 済みません。川口大臣、大変失礼いたしました。どうぞお引き取りください。
 そして、日本の常識が、しかし多少ずれている。いわゆる族議員の利益と官僚の利益が一致して、予算の分捕りこそが、多々ますます弁ずで、これは省にとってもいいことだというようなことになっている。古い、オールドケインジアンの理論が日本の経済モデルに影響をしている、支配的になっているということが大変問題なんだろうと思います。
 私が申し上げたいのは、一つは、短期日本経済マクロ計量モデル、こういうものを毎年、これはGDPの算定の際に使っているわけであります。今回、別の中期モデルというのも一からつくられたということですけれども、ここではいわゆる政府支出、公共投資を初めとする政府支出が大変強くこのGDPの計算に反映するようになっているんですね。
 二〇〇一年の暫定版のこのモデルによりますと、名目の公共投資乗数、これは八五年の第一・四半期から二〇〇一年の第二・四半期までをもとにしているわけですけれども、その名目公共投資乗数は、一年目一・五〇、二年目一・九三、三年目一・七七。これに対して、世界の経済モデル第五次版、これは八三年から九二年なんですけれども、一年目は一・三二、二年目は一・七五、三年目は二・一三なんですね。すなわち、一年目、二年目は日本の計量モデルが物すごく乗数効果を高く見ているということなんですね。だから、即効性があって、すぐGDPがはね上がるようになっている。これが世界の常識とは離れている。世界の方は逆に、三年目になると波及効果が出てきて、乗数効果が出てくるんですよ。ところが日本では、三年目になると逆に乗数効果が下がってしまうということなんですね。
 これは、やはり日本の計量モデルに欠陥があるんじゃないかというふうに思うんですが、そのためかどうか、日本のGDP推計というのは余り当たったためしがないとも言われているんですが、この欠陥についてどう思われますか、竹中さん。(発言する者あり)
竹中国務大臣 私も若いころモデル分析を随分やりましたので若干申し上げさせていただきたいのですが、モデルというのは、今御指摘が一部あったようでありますが、やはり目的に合わせて使うようになっているものですね。
 これに関して言うならば、まさに一年次、二年次ないし二年次、三年次ぐらいにその効果がピークを迎えて、それ以降は低下していくというのが世界の普通のモデルだと思います。ただし、最近はどの国も価格調整が非常に早まっていますので、それが前倒しになっているというのも一つの傾向だというふうに承知しております。特に、今委員は名目の数字を御指摘ですから、これは価格が従来より非常に早く反応するようになりますので、それで直近のデータを使うとこのようになる。
 これは、モデルが決して欠陥があるということではなくて、モデルはそもそも目的に合わせて使うものだということと、若干の最近の構造の変化があらわれているというふうに御理解いただきたいと思います。
五十嵐委員 そこなんですよ。要するに、目的があって使っている。すなわち、その公共事業を出したい方の都合のいいように使われているということなんです。
 今委員席の方からありましたように、まさに私も言いたいことは、モデルは参考にすぎない、余り信をおいちゃいけない。だけれども、これがひとり歩きしがちなのが日本だということなのであります。そこが問題になっている。諸外国は余り気にしていないですよ、はっきり言って。そういうことだと思います。
 それで、内閣府の算出する乗数は、所得増による消費の増加の連鎖という狭い意味の乗数に加えて、公共投資によるストック増がもたらす新規産業の創出効果なども含んでいるというふうに私は解釈しておりますけれども、その基準はどこかにあるんでしょうか。いわゆる波及効果をどこまで算定するか、どのように算定するかという基準は明確にあるんですか。
竹中国務大臣 モデルは使い方だというふうな御指摘がありましたけれども、まさに、さっき委員が御指摘された非ケインズ効果というのが三年後、四年後と出てくるということをそれは示しているわけですね。つまり、乗数効果は下がってくるわけですから、これはまさに非ケインズ効果が出てくる。だから、そういうふうな見方をすればよいわけで、これは決して、ひとり歩きさせるかどうかはまさに使い手の問題なのだと思います。
 それで、効果の算定ですけれども、これはモデル体系は大変複雑ですから、要するに、これは何百本の連立方程式になっているわけですから、それすべてが変わりますから、それがすべて波及効果としてあらわれて、最終的にそういう結果になる。その中には資産を通した効果もあるし、価格を通した効果もあるということです。
五十嵐委員 そのとおりなんだと思います。
 それで、構造改革に資する事業というのが盛んにここのところ使われている。第二次補正予算でも、来年度予算でも流行語のように使われているわけですが、その判断は、構造改革に資する事業の判断は、一体だれがどのようにしているんですか。
竹中国務大臣 これは、予算項目の査定に当たって、それぞれどういう効果があるかということを各省が申し出て、財務省の方でそれに基づいて、その政策プロジェクトの優劣を判断しているというふうに承知をしております。したがって、詳細は財務省にお伺いしていただく方がいいかもしれませんが、そのような形でミクロの積み上げを精査しているということです。
五十嵐委員 ということは、各省が結局判断をしているということなんですね。そのお答えはそういうことなんです。
 そうすると、これは当然ながら、例えば国土交通省が一番公共事業が多いわけですけれども、どのような基準で費用対効果、波及効果等を予測し、比較しているのか、そういう基準はきちんと持っているのかということをお尋ねしたいと思うんですが、官房長、どうぞ、簡単に御説明ください。
風岡政府参考人 お答えいたします。
 私ども、予算要求に当たりましてはいろいろな事業評価をしておりまして、個別事業につきましては、費用とコストとの比較というのを個別にやっております。これにつきましては、事業ごとに客観的な基準を設けまして、それに基づいた評価を行って、有益性のあるものについて要求をする、こういう取り組みをしているところであります。
五十嵐委員 要するに、各省がそれぞれ判断をしているということは、結局、各省の都合に流されるということですね。縦割りなんですね。局あって省なしという言葉がよくありましたけれども、河川局は河川局、道路局は道路局の利益に従ってやるということになりますから、結局のところお手盛りになる。だから、公共事業が従来型のシェアを変えられない。
 構造改革に資する事業というけれども、結局は看板のかけかえに終わってしまうということになりがちなわけでありまして、ここが、単に、今度は今までと違うんです、構造改革に十分に役立つものを選んだんですと言ってはみたものの、余り実際には変わらないということを証明してしまうことになるんです。現に、第二次補正予算では施設物ばかり多くなったというようなことです。あるいは、継続的な事業が主流であったということになってくるわけでございます。
 それから――いや、今証明をしているわけですから、大臣席からやじらないでいただきたい。私も貴重な時間でございますのでお許しをいただきますが。
 それからまた、国土交通省に引き続き、大臣の便宜を考えまして同様の問題をお伺いしたいと思うんですが、住宅金融公庫でございます。
 住宅金融公庫ですけれども、五年後の廃止というのが決まりました。独立行政法人になるということでありますけれども、私は、小泉改革の一つの問題点として、この組織の変更というのに功を焦る余り目が行き過ぎちゃって、実質的な問題、本質的な問題というのがどうも置き去りにされがちだという問題があると思うんですね。組織論の先行というのが一つの問題だと思うのです。民間でやることは民間でというのは、これは一つの考え方でいいんですけれども、本当にそれで効率的な社会になるのかということの方がもっと大事なんだろうと思います。
 変動リスクがない間は、これはアメリカ型の保証、リファイナンス、証券化による公的部門の間接的な介入というやり方はいいと思うんですが、金利変動リスクが起きた場合は、これは逆に、民間では支え切れないよということで、公的部門に助けてくれということで、結局しりぬぐいが公的部門に来るということがあると私は思っております。どこからどこまで国が、公が面倒を見るべきか、住宅政策がどうあるべきかという本来の姿、長期、固定、低利の住宅融資はどこまで必要なんだということを詰めてから実はこうした変更をすべきなんではないかというふうに思うわけであります。
 もし金利変動リスクが来た場合には、かえって民間に任せた方が、私は民間に任せるのはいけないと言っているんじゃないですよ、それはやり方だと言っているんですけれども、問題がある、かえって公的な負担が最終的には多くなるということもあり得るということだと思うんですが、その辺をどう詰めておられるのか。
 それから、証券化市場を整備して証券化支援業務を独立行政法人にやらせるというわけですが、今の公庫より、本当にこの事業をやるとすれば人数が倍に要るんじゃないかという専門家があるんですが、これでは焼け太りになってしまうわけですね。これはどういうふうにお考えになるのか、行革担当大臣と、先に国交省の住宅局長、三沢さんにお話を伺いたいと思います。
三沢政府参考人 まず第一点目の証券化支援業務と金利変動リスクの話でございますが、現在公庫におきましては長期、固定の住宅ローンをやっておりますけれども、これを民間においてやる場合には、先生御指摘のように、金利変動リスクがございます。これを、例えばアメリカの場合ですと、市場に転嫁するということによって、つまり証券化によりまして、民間が長期、固定ローンを出し得る体制になっている。今回の行革は、市場に転嫁するに当たって、公的なバックアップがアメリカでも必要になっている、その部分について公庫が一定の役割を果たしていくということが方針として決められたというふうに理解しております。
 それから、組織、体制の話につきましては、したがって、具体的な証券化の支援の業務のあり方については今後検討していくことになりますが、当然のことながら、やはり特殊法人改革の趣旨に反しないように、当然、今いる公庫の要員の活用ということも含めまして、できる限り効率的な体制でいくということを検討してまいりたいというふうに思っております。
石原国務大臣 五十嵐委員にお答え申し上げますが、組織論が最初にあってというのは誤りだと思います。と申しますのは、今回の特殊法人改革は事務事業の見直しからスタートをさせていただいております。
 そしてまた、住宅金融公庫、もう委員も御承知のことだと思いますが、融資残高が七十五兆円と、民間すべての、日本全国の総融資残高、与信が八百兆円弱の中で一割、この住宅金融公庫が占めているという割合はかなりいびつであります。
 もちろん、住宅金融公庫が、民間金融機関が住宅ローンを手がけないときから、国民の皆さん方が住宅を取得する上で大変役に立ってきたことは事実だと思います。そして、新しい時代になって、環境の時代であります。今、御存じのように、住宅を三十年で建てかえて、建設廃材が産業廃棄物の中でかなりのボリュームになっている。これからも三十年で壊れる家を建てるためにどんどんどんどん利子補給をしていくということがいいのかといったような政策論。もちろん税制で、最大瞬間風速で一兆円にならんとする住宅ローン減税をさせていただいているわけであります。
 そういうものを兼ね合わせまして、この住宅金融公庫の廃止ということを検討させていただいたわけでございますし、また、ジニーメイ、ファニーメイ、もう委員御承知のことだと思いますが、アメリカではかなりのボリュームになっている。そんな中で、委員御指摘の焼け太りにならないというようなところは、十分に、可能な限り組織のスリム化に努めるべきであるとはっきりと明示させていただいておりますので、委員の御批判にならないように努めさせていただきたいと考えております。
津島委員長 五十嵐委員、先ほどから扇大臣が公共事業の効果について答弁の意欲を持っておられるようですが、よろしいですか。
五十嵐委員 いいです、時間がありませんので。
 それで、今おっしゃいましたけれども、私も、公庫を民営化するな、民間に移すなと言っているわけじゃないんですよ。ただ、それだったら証券化支援業務というのはどこまでやるのか、青写真があるのかということなんですよ。
 実は、事前に当然尋ねているんですね、国交省に。そうしたら、まだ決まっていません、だから人員規模がどのぐらいになるかも実はわかりません、こういう話だったんです。
 結局、青写真があって、こういう形に変えるんだからこういう独立行政法人が必要なんです、民営化するんですという話になればいいんだけれども、そうではない。将来の住宅金融のあり方というものについて青写真がないで走っているじゃないかという指摘なんですね。ですから、これはきちんと、やっちゃいけないというのではなくて、しっかりとした将来の姿を描いてから動くべきだということを申し上げているわけであります。
 それでは、扇大臣、大変失礼いたしました、もう結構でございますので。――いえいえ、扇大臣にお答えをいただきたいと言ったら、扇大臣より事務方に答えさせてくださいというお話があったものですから申し上げたので、大変失礼いたしました。私は大臣に答弁を要求したんですが、事務方が答えさせてくださいということですから。どうぞお引き取りください。
津島委員長 五十嵐委員、どうぞ質問を続けてください。
五十嵐委員 それでは、石原大臣もお忙しいようですから続けてお尋ねをして、石原大臣にもお引き取りをいただきたいと思います。
 石原大臣にお尋ねをすることは、当然財務大臣にもお尋ねいたしますが、石原大臣にお尋ねをしたいことは、最近与党内からも、どうも小泉さんの改革では天下りの規制緩和、天下りの自由化が行われているんじゃないかというお話があるんです。独立行政法人にすると、いわば国の縛りから例えば給料、限度をどうするかというようなことが外れてくるわけで、そのかわりに透明化を大事にするんだということをおっしゃっているんですね。
 その透明化の確保を一体どうするのか。第三者機関で評価するんだというわけですが、この第三者機関ということが出てくると、いつも人選が問題になるんですよ。そこで、常套手段は、民間人だと称して官僚OBが出てくるんですよ。そうすると、結局はちゃんとした監視にならないというのが今までの常套手段なんです。ですから、そこをきちんとできるのかどうか。
 それから、続けて御質問しますけれども、民間法人でも官と関係の深いところは、やはり天下りについて歯どめが必要だ。純粋な民間に請われて行くのと、認可法人とか、比較的官の世界と関係が深いところに天下りをさせる、あるいは許す場合には、おのずから縛りがあるべきだと思うんですが、さらにきつい、私どもは天下り禁止法という法律を用意し、提出をしているところですけれども、もっと厳しい天下りに対する見方がなければいけないと思うんですが、その二点について、石原大臣から御説明いただきたいと思います。
石原国務大臣 五十嵐委員を初め民主党の方が用意されております天下り禁止法というのは見せていただいたわけでございますけれども、公務員の方、六十で定年した後、その後どうするんだというところがやはり一つこの天下りの問題の大きな問題でございまして、恩給がございましたときはそれなりに天下りというものはなかったと承知しております。
 天下りの規制緩和だというような御指摘でございますけれども、これは逆に、私どもとしては大変厳しくさせていただいているという認識を持っております。
 と申しますのは、これまでも人事院の承認のもとにこの天下りというものがなされていたわけですけれども、今回は、政府の方で内閣が承認基準を政令で定めます。そして、大臣は承認した案件について詳細を公表する。ディスクロージャーする。さらには人事院、これまで承認していたところですけれども、人事院が、この内閣がつくる承認基準についても、甘いよ、もっときつくしろと意見を具申することもできますし、承認事務の実施状況について、ちょっとこれはやり過ぎだ、委員が御指摘のようなこんなのは許せないというようなのがあった場合は、改善勧告を行うことができます。さらに罰則、これは時間がかかったんですけれども、法務省の方とも、再就職後の行為規制に対する違反行為に対して刑事罰をつける。これまでよりも二重、三重に実はなっているということを御理解いただきたいと思います。
 それと、フォローアップの問題でございますけれども、フォローアップ機関は特殊法人改革推進本部のもとに設置をさせていただきます。そういうフォローをしていく中で、先ほど出てまいりました道路の問題あるいは住宅金融公庫の問題等も十分に委員の御批判にこたえられるようにフォローアップ機関が監視、監督して、委員の御批判にこたえていきたいと思っております。
 あと、独法の話も若干あったと思うんですけれども、これは昨日お答えしましたので簡単に申しますが、エージェンシー、政府がやはり何か関与しているパブリックカンパニーというものが必要だろう。全部民営化、廃止できないだろう。それにかわる受け皿としてこの独法というものが出てきたわけで、独法は、しつこいようですから一つだけ言わせていただきますと、定期的な組織の事業の見直しということがありますので、特殊法人のように、一度できて廃止法を出すまでそのままであるというようなことはないということを御理解いただきたいと思っております。
五十嵐委員 石原大臣はそのようにおっしゃるんですが、実際に省庁の中まで入って聞いてみますと、いや、これで天下りがしやすくなったといって喜んでいるという声が聞こえてくるんですよ。要するに、石原大臣よりも官僚たちの方は一枚上手でずるいということなんですね。だから、そこは十分に気をつけていただかないと、これは念には念を入れて縛りをかけていただかないといけないということなんだろうと思います。
 次に移ります。
 九〇年代初めに、米国やドイツは、経済のグローバル化が産業立地競争を激化させる、先進国の競争力向上が至上命題だということにいち早く気づいたんです。例えば、ドイツでは、一九九三年に「ドイツの産業立地の将来確保」という文書を、これはドイツ経済省がまとめております。それからアメリカでは、いち早く競争力政策諮問委員会というのを立ち上げまして、同じく一九九五年に同様の文書であります「繁栄確保の戦略」というものをまとめております。
 競争力政策の立案というものは非常に重要だということをこれらの国、いわば勝ち組はいち早く着手し、構築をしてきたわけですが、そういう御認識、これが必要だという御認識、きのう私説明をいたしましたけれども、竹中大臣はどう思われますか。
竹中国務大臣 現実に日本の経済のサプライサイドが弱体化して生産性の伸び率が低下している。いわゆる空洞化と言われるような現象も招くに至って、委員御指摘の点はまさにそのとおりだろうかと思います。
 経済財政諮問会議では、ことしの大きな議論の項目として、したがって、税制の抜本的な改革とともに経済産業活性化の戦略対応というのを掲げて、そういった問題に積極的に取り組もうというふうに思っています。
五十嵐委員 その場合に、私きのう説明いたしました、中小企業というのは極めて重要な役割を担っているということだと思います。特に日本におきましては、諸外国と違いまして直接金融市場がまだ発達していないということで、間接金融の役割がどうしても重要になります。
 問題は、一つは金融機関の能力不足です。そして金融機関のモラル、これが大変重要な役割を果たしているわけであります。
 私、実は先日、町おこし、企業おこしの専門家であります姫路工業大学の中沢孝夫教授とお話をさせていただきましたけれども、富山や久留米の例を挙げられまして、チャレンジショップというのは御存じかどうか、一坪とか二坪のところに素人の皆さん、意欲のある、これから企業を起こそうという人たちに場所を提供して、そこでチャレンジをしていただいて、そして成功すればもっと大きな普通のお店を借りて移って大々的にやる。そういうようなチャレンジショップというのが富山と久留米で顕著に成功しているんですね。この半年から一年で大きな店舗展開、一店舗じゃなくて何店舗にも広げるような方まで出てきているというふうに伺っているが、この成功例は、例外なくプロがきちんと指導しているんです。保証人がなくても安心して貸せますよということを金融機関に対してちゃんとこれらが、保証じゃないんですけれども、説明をしてくれるというところが成功しているんです。NPOとかNPO的な存在の方々がいわゆる金融機関の審査能力の補完をしているというところが成功をしている例なんですよ。
 あれほど問題を起こしている商工ローンやサラ金が今でも六%から一〇%の貸し出しを伸ばしているということは、みんながおっしゃるように需要がないんではないんですね。金融機関の側が萎縮して、同時に審査能力がなくて貸せないんです。需要があるのに貸せないというところがあるわけで、私どもは、だからそこを、ハイリスク・ハイリターンの商工ローンやサラ金、それと一方ではローリスク・ローリターンだけれども貸してくれない普通の金融機関というのがあって、間がないから、ミドルリスク・ミドルリターンの銀行を官がモデル的につくったらどうかという御提案をしているわけであります。
 この地域金融機関の能力不足を補うというのは、今申し上げましたように、モデルは私どもは今考えているわけですが、NPOのプロデューサー機能といいますかコーディネート機能、金融や法律やデザインや会計の専門家をそろえて、これは行政にやらせてはだめなんです。そういう民間の力を引き出してやることが成功例だというふうに思っているわけですが、このようなアイデア、平沼大臣は研究されているとは思うんですが、どうでしょうか。
平沼国務大臣 NPOというのは、今いろいろな統計がありますけれども、全国で九万ぐらいありまして、それぞれ非常にいろいろな面で活動をしているわけです。
 それで、NPOというのは、やはりこれから、今御指摘のように、新しいそういう企業を創出したり新しい雇用を創出する、そういうことで非常に私ども意味があると思っています。
 そういう中で、私どもとしては、NPOに対しては既に、中小企業のいわゆる創業支援の一つのモデルの中にもNPOの皆さん方に実際に参画していただく、こういう窓口も開かせていただいておりますし、また、特に地域というものが大切なものですから、地域には、研究開発から創業までの間、いわゆる産学を含めて支援をしていく地域プラットホームというのがございます。そこにもNPOに入っていただく、こういう仕掛けをつくっております。
 いずれにいたしましても、御指摘のとおり、NPOというのは非常にこれから重要な、特に今の経済情勢あるいは少子高齢化、こういったことを考えると、大変重要な役割を担っていただかなければなりませんので、産構審の中にもNPO部会というのをつくらせていただいて、そして、今おっしゃった人材ですとか資金ですとか活動基盤、こういったことが大切ですから、総合的に、なるべく早い時期、三月までに我々はしっかりとした方向を出していこう、こういうことで今一生懸命やらせていただいています。
五十嵐委員 大変的確な指摘だと思うんですが、それにしては政府全体の取り組みになっていないじゃないですか。税制はどうなっているんですかというお話になるんですよ。NPO税制を適用されているのはわずか二、三団体じゃないですか。これではとてもじゃないけれども、今おっしゃった話は絵にかいたもちになる。
 それから、各省の補助金も縦割りで、一年間で使い切らないといけない。アメリカはどうなっているか御存じだと思いますけれども、基金にしてためておいて、いざというときに集中的に出せるという包括的な補助金であり、そうした使い勝手のいい制度になっているんじゃないですか、アメリカの町づくりは。日本では、そういう省庁間の枠を超えたような全体的な取り組みになっていないというところに問題があるわけであります。
 杉並区では、国の欠陥を補うために基金方式を採用して、区が、これは地方税になるわけですけれども、そこにある基金がNPOと連携をして、いいNPOだと思ったところには基金を通して出す。基金を通して出したお金については減税措置があるというような仕組み。ワンクッション置くことによって、これも一種のNPOですね、ちゃんとした減税措置がいくようになっているわけですが、日本は、直接お上が、いいNPO、悪いNPOを決めてやるというやり方になっているから、これができないんですよ。
 これは、自民党さんの大反対で、要するに悪いNPOに悪用されるんじゃないかという気持ちでこうなっているわけですけれども、そうじゃなくて、いろいろな工夫ができるはずです。NPOの団体の中に共通の基金的なものをつくって、そこが認定すればちゃんと出せる、ちゃんと減税できるというような仕組みに私は変えるべきだと思うんですが、いかがでしょうか、財務大臣。
塩川国務大臣 ちょっと急な質問でございますし、私もNPOには非常な関心を持っておりまして、将来の可能性を秘めたものだと思っておりますから、勉強させていただいて、また後刻お返事いたします。
五十嵐委員 アメリカでは、NPOにもたらされる経済効果というのは、もう十数%とかそういうレベルに達しているんですね。これからは、製造業の比重は日本でもうんと小さくなっていく、一〇%から一五%みたいな比重になってきつつあるわけですから、そうすると、サービス産業やほかのところに移さなきゃいけない。そこで、やはり重要な役割を果たすのはNPOなんですよ。コンシェルジェ、ベビーシッターだとかいわゆる何でも屋さんみたいなものですね、こういうような分野に人や財あるいは物が行くような、そういう新規産業をつくらなきゃいけないんだと思います。
 そこでもう一つ、私どもは地域金融円滑化法案というのを、金融アセスメント法案、お手元に資料で配付している中にございます。資料の四ページのところですけれども、こういった工夫をする必要があるということを申し上げているわけです。
 石川銀行や拓銀あるいは朝鮮銀行の例を引くまでもなく、地域で集めて東京で何か大損をしてしまう、使って大損をしてしまうとか、日本で集めて、最近は外国資本が出てきていますから、外国にばかり投資してしまうというようなことが起こり得るということで、地域の中小企業にどんどん貸してもらえるように、これを強制するんではなくて、情報公開でそれをやってもらうことを促すというのがこの法案の趣旨であります。同時に、過剰な個人保証や連帯保証、いわゆる借り手と貸し手の支配、被支配の関係が生じがちでありますが、それに伴う異常な取引をディスクロージャーによって防いでいこうという考え方であります。
 これも柳澤金融担当大臣に御注意を申し上げなきゃいけないんですが、前に質問したところ、突然の質問なんでと。事前通告していたにもかかわらず、突然の質問なんで答えられないというお話だったんですが、ちゃんとまじめに耳を傾けていただいて、実は与党の中にも、自民党さんの中にも、こういうのが必要だねという声があるんです。
 私どもは柔軟ですから、これはどうしても必要だと思っていますので、修正にも応じますし、場合によっては一たん取り下げても結構です。とにかくこの法案を、あるいはこれに似た法案を成立させて、ぜひ金融機関のモラルと、そして健全な借り手の保護というものを進めていかなければならないと思っているんですが、柳澤金融担当大臣に簡単に御所見を伺いたいと思います。
柳澤国務大臣 現在、中小企業金融というものがやや円滑を欠く状況に立っていることを踏まえて、民主党の皆さんが、こういうアセスメント法案というような形でそれへの関心を一つの形で示されたということには敬意を表するわけですけれども、今現実の金融機関は、みずからの利益を上げるためにも中小企業金融というようなものに注力をしていかなきゃいけない、こういうようなことで努力をしている。そういうことも片方存じておりますので、私どもとしては、金融機関の経営において、そのそれぞれの経営判断というものを重視してまいりたい、このように考えております。
五十嵐委員 今、すげない御発言だったわけですけれども、本当に与党の中にも、こういうのが必要だという方々がふえてきているんですよ。ぜひ真剣に御検討をいただきたいと思います。
 それから……(発言する者あり)
津島委員長 質問を続けてください。
五十嵐委員 ちょっと、とめてくださいね。当然だけれども、とめるのは。だって、定数が達していないんだから、とめなきゃおかしい。
津島委員長 それでは、速記をとめてください。
    〔速記中止〕
津島委員長 それでは、速記を起こしてください。
 五十嵐君。
五十嵐委員 大変残念です。私は大変まじめな話を、重要な話をしているものですから、これはちゃんと聞いていただかないとまずいと思います。
 私の手元に表題のない一枚の内部文書がありまして、もとは一枚ではなかったんですが、出どころがわかるといけないので一枚にまとめ直してあるんですが、これは破綻金融機関の破綻処理マニュアルなんです。
 八時半、破綻金融機関の理事会招集、預保法七十四条の申し出の承認、九時半、財務局への七十四条申し出及び当局の確認作業、九時四十五分、銀行法二十六条、業務停止命令等による命令と受理の確認作業、十時、銀行法二十四条による財務諸表、決算書等の修正報告命令、十五時、破綻金融機関における役職員への説明、十五時半、預保法七十四条命令の交付、破綻宣告。これはなぜ十五時半になっているかというと、市場が閉まっているということですね。そして、十六時、譲り受け側金融機関の受け皿意向表明、破綻金融機関の記者会見、事態が確定と書いてあります。そして、土曜日、破綻側全役職員自主出勤、日曜日、譲り受け側全役職員自主出勤ということが書いてある。なぜ土曜日と書いてあるかというと、金曜日の市場がおりた後、金融機関を破綻させて、破綻を確定させて、そしてしばらく冷却期間を置く。
 これは、明らかに、文章から見て金融庁の内部資料だと思います。内部資料なんですが、お認めになりますか。
柳澤国務大臣 ちょっと出所不明でありますが、私は、そういうことはあり得るというふうに思います。
五十嵐委員 出所不明じゃなくて、出所は金融庁なんです。だって、これは、譲り受け側とそれから破綻側と両方書いてありまして、これは、明らかに金融庁でなければこういうことは必要ないですね。
 これは何を意味しているかというと、金融庁が全部シナリオを書いていますね。何時に発表したっていいじゃないですか、破綻金融機関、記者会見したって。こうしなきゃいけないということでしょう、これは。
 これは、全部金融機関について、今まで大蔵省の中でやっていたものは、プレーヤーも監督もコーチもみんな一人でやっていたからいかぬということで、私は、当時柳澤さんとも対立をいたしましたけれども、自社さの与党の中で、財政と金融の分離ということを一生懸命やってきたわけですよ、それがいかぬのかと。コーチもプレーヤーも監督もアンパイアもみんな一人でやっているじゃないかということを申し上げて、その当時の、私どもさきがけだったわけですが、渡海紀三朗さんと鳩山由紀夫さんが一生懸命与党の幹部を説得して財金分離という路線を敷いたわけです。
 それが、これじゃもとのもくあみ、全部金融庁が絵をかいて何から何までやるんだということなんですね。(発言する者あり)いや、やり方はある意味ではよかったんですよ。分離そのものは本来やるべきことだったんだけれども、やり方が悪い、そしてもとに戻ってしまったということなんですよ、これは。金融庁が再び、すべておれが決めるんだ、その象徴が森昭治金融庁長官、いろいろなところへ出てきます。朝日生命の合併問題でも東京海上火災を恫喝したと報道されたり、あるいはいろいろなところへ勝手な放言をしているというのも、私こそ金融のすべてを支配しているんだ、こういう意識があるからじゃないですか。私は、こういう状態はおかしいと思うんですよ。
 それからもう一つ、最近、報道管制がひどい。例えば、地方で日銀の支店長が、あそこの銀行はもうだめですということを言い、それをかぎつけた記者が書く。そうすると、金融庁の方で、こんなことを書いたのはけしからぬといって、直ちに二週間の取材禁止、要するに、記者会見は受けさせるけれども、部屋に入れない、金融庁の職員といいますか役職員の部屋に入れない、取材には応じない、二週間の取材禁止。そして、追随して書いたところも一週間の禁止だそうです。これは大変な報道統制だと私は思いますよ。こんなことが許されるんですかね。
柳澤国務大臣 まず、破綻事務処理のスケジュールの問題ですが、これは、ある程度想定をして、スケジュールというか予定表をつくって事務に疎漏がないようにするというのは当たり前の準備の行動だというふうに私は思います。それが何か事態をすべて支配している証左ではないか、これは全くの誤解でして、そのように必ずしも動かないことが十分にあり得るわけでございます。これは、我々が事務手続に疎漏のないように、あらかじめの頭の整理、それから担当部署がそれに備えるということでやっているものでございます。
 それから、森長官の話でございますけれども、これは、報道破綻ということがあっていいものであろうか。これはちょっとお考えになっていただければわかることでありまして、金融機関のどういう状況かということに対して、これはもう預金者を初めみんな関係者は注意を凝らしている。そのときに、一生懸命経営者がこの状況の立て直しのために努力をしているときに、そういう報道をして本当にそういう努力を無にしてしまう、こういうことはあってはならないことであります。これは厳格に、やはり報道の人たちもこの経営者の努力というものに敬意を払って、やはり金融機関の破綻の報道というのには慎重に構えていただきたい、このように私は考えているものであります。
五十嵐委員 それは報道機関に要請すべきものであって、強制的に報道管制して許されるというものじゃないですよ。私は問題だと思いますよ。それ以外のことでも、とにかく何回も私、指摘しましたけれども、金融庁長官の傲慢といいますか横暴は目に余る。これは、この委員会に来てきちんとした釈明をすべきだ、私はこう思いますが、いかがですか、委員長。
津島委員長 今、理事会で協議をしております。
五十嵐委員 このほかにもいっぱいあるんですよ。私、前にも何度も指摘をしておりますけれども、金融庁が民主的に運営されていないということは大変重要な問題なんですよ、それはすぐ経済に反映する問題ですから。そしてまた、金融機関のモラル等にもそれが直ちに反映してまいりますので、十分に気をつけていただきたい。これは引き続き追及をいたしますので、次に移ります。
 大蔵大臣、それから日銀総裁、預保の松田理事長、昨日は大変申しわけございませんでした。ほかのことで時間を食ってしまいまして、お呼び立てしながら失礼いたしました。
 聞いていただきたいんですが、花見酒という落語を御存じですか。
 向島の花見の名所に、奥の方には茶屋が少ないというので、目をつけた、八つぁん、熊さんではないんですが、江戸の長屋の住人二人が、お金を借りてお酒を二両分買って、こもだるに棒をつけて、先棒、後棒で担いでいった。おつりがないといけないというので、一貫のお金をまた借りて持っていった。途中で、おなかはすいたし、もともとお酒は好きだし、お金を持っている方が、おい、相棒、酒がせっかくあるし、おれ金持っているんだから売ってくれないかということで、一貫で一貫分のお酒を買っちゃうんですね。そして、気持ちよくなった。我慢していた先棒の方も、兄貴、おれも飲みたくなってきた、おっ、お金があるということで、これまた一貫分のお金を、兄貴分の後棒の方にお金を渡して飲んじゃう。やったり取ったり、やったり取ったりして、結局空っぽになってしまうという、これが花見酒経済という言葉のもとなんですよ。
 これは本来、バブルのとき、はやった言葉なんですが、自分たちのお金で相場を引き上げて、いわゆる仮需をつくってしまった、こういう花見酒経済という言葉になっているんですが、私は、むしろ向いているのは今の状況だと思うんですね。総裁、日銀と民間の銀行との間で国債をやったり取ったり、やったり取ったりしている、外には全然出ていっていないんですよ。お酒はお客さんに売られなかったのと同じように、マネーは、幾ら日銀から出ても、お客さんである一般の社会には行かないで、民間の銀行と日銀の間で、日銀は買いオペをする、それで出した国債を買っていただくという形で、やったり取ったり、やったり取ったりの花見酒経済というのは、これのことを言うんですよ。
 それで、損をするのは何なのかというと、お酒はなくなっちゃいましたね、国民の税金ですよ、国の富。国の富はそのたびごとに、だって利子がかかるわけですから、最後に破綻したときは全部国民のあれですから。いわゆる典型的な花見酒経済、これが今の国債の状況なんですね。これは大変なことなんですよ。
 そして、きのう、きょうの報道にありますように、もう世界中にこれが、この状況が知られてしまった。スタンダード・アンド・プアーズ、それからムーディーズが、二月の月内にももう一段階ないし二段階国債の格付を下げる、これは円建ての国債ですけれども、外貨建てではないんですが、円建ての国債を下げる。もう一段階、二段階下げたらどうなりますか。ムーディーズが下げた場合に、ボツワナよりは、国民の三分の一がエイズにかかっていると言われている国ですけれども、そういう途上国よりも日本の方が下になるんですよ。こんな状況で、国債の暴落が起きないと言い切れるんですか。これ以上、デフレ対策だからといって、金使え、どんどん国債出して、土地も買え、公共事業もつけろ、熊しか通らないところにも新幹線通せ、こういうことでいいんですか。
 私は、これは国債の状況はとんでもないことに今差しかかっている、こう思うんですが、改めて認識を伺いたいと思います。日銀総裁、お願いします。
速水参考人 最近の国債市場、非常に神経質になっておりますことは御指摘のとおりでございます。市場では、円安を一応契機とした外人の投資家の債券売却とか、決算期を控えて国内投資家が買い控えているといったようなことが材料だというふうに見ております。もっとも、極めて緩和的な金融環境が続いておりますことから、市場参加者の景況感がまだ弱いということなどから見て、今のところ、長期金利が急激に上昇していくような地合いにはないというふうに思っております。
 ただ、我が国の国債残高は先進国の中で最高水準を示しております。財政のサステーナビリティーに対して市場が厳しい目を向けているということは事実でございます。仮に、国債価格が下落して、長期金利が急激に上昇するようなことになれば、金融機関経営や実体経済に大きな影響を与える可能性は十分あると思っております。
 こうした点も含めまして、国債市場の動向については、またその影響については、今後とも注意深く見ていきたいと思います。
 ムーディーズの件につきましては、まだどういう結論が出るのかわかりませんけれども、我が国の国債残高は自由主義国の中で最高水準に達しておりますし、財政のサステーナビリティーに対して市場が厳しい目を向けていることは事実ですし、国債相場の安定のためには、中長期的な財政構造改革に対する市場の信認を確保することが不可欠であると思います。
 ただ、日本が戦後半世紀に積み上げてきました対外債権超過一つとってみても、一兆二千億ドル、百五十兆円近いものがあるわけで、四千億ドルの外貨準備も含めて、そういったこととか、経常収支がずっと黒字であるとか、通貨が長期的に強いとか、あるいは家計の預貯金、金融資産が千四百兆円もあるとか、そういったようなポテンシャリティーといいますか、潜在的な力を彼らが考えてくれれば、そんな簡単に格を落とすといったようなことは私はおかしいことだなというふうに考えております。
 国債市場の動向につきましては、今後とも注意深く見守ってまいりたいと思っております。
五十嵐委員 しかし、新発債の金利はもうじりじりと上がってきているのは事実じゃないですか。それから、年間に政府短期証券や民間借り入れを含めますと三百兆円も資金調達しているんですよ、日本は。未達が起き始めているじゃないですか。昨年の九月、交付税特会の民間借り入れは札割れになったんじゃないですか。もはや綱渡り状況をしているというのは、もう本当に財務大臣も日銀総裁も十分におわかりになっているはず。これは大変な状況なんですよ。
 これは、実は、柳澤大臣はお立場上だというんですけれども、お認めにならないけれども、この危機的状況はもう既に金融危機の状態にあるというのは、与党も認めているんじゃないですか。
 いいですか、私の手元に一つの資料があります。数日前に、自民党の有志が保岡興治先生を通じて総理のところに持っていった資料です。なぜか私のところにあります。官房長官、これはお認めになりますか。「大手銀行の健全性について」と表題がある。同席されましたか。それをちょっと。
福田国務大臣 私はその席にはおりませんので、どういう資料が提示されたか存じておりません。
五十嵐委員 一部の新聞に報道されていまして、総理はこれを見て真っ青になったという資料ですよ。
 これは、最初に二〇〇二年三月末の予想値というのが書いてあります。各主要行がことしの三月末にどのような自己資本比率になるかというのを予測しているんです。そして、公的資金と繰り延べ税金資産を除いた場合にどうなるか。そうすると、主要行のうち、グループも含むんですが、四つが債務超過。一つとして八%を超えていない。大変な数字ですよ、これは。大きなメガバンクグループまで含めて債務超過に陥っているということを示しているんですよ。これは真っ青になった。それで、最後には「危機の連鎖」というのが書いてありまして、この中に具体的に、「取り付け発生」、大銀行幾らぐらいの取りつけ騒ぎになるか、あるいは、生保は解約殺到するであろうと、具体的な生命保険会社の名前まで書いてありますよ、これは。
 これは、野党の皆さんは金融を論じ過ぎて危機をあおるとさんざん批判をされているけれども、与党自体が認めているんじゃないですか。どうなんですか。
柳澤国務大臣 正直に申して、私はそれを経済新聞のコラムの冒頭でちょっとかいま見ましたので、お願いをして資料を取り寄せましたけれども、いろいろな仮定を置いて、公的資金も除きます、それから税効果も除きますといえば、それは算術でそういう数字も出るでしょう、こういうふうに思っております。
五十嵐委員 この議論は何回もしていますけれども、税効果会計は日銀総裁も認めているように、日本とアメリカでは大違いなんですよ。アメリカ並みにしか税効果を認めなければ、日本の金融機関は大手までみんな八%割れじゃないですか。七%台になると日銀総裁は言われているはずですよ。もう一度、じゃ日銀総裁、どうですか、アメリカ並みに繰り延べ税金資産を計算したら、日本の邦銀はどのぐらいの自己資本比率になりますか。もう一度、日銀総裁お願いします。
速水参考人 試算の数字を私も記憶しておりませんけれども、今の税金の前払いの分、それから公的資本の投入の分、この二つを入れなければ、それはかなり、五、六%になるであろうかと推測いたします。公的資本と、それから税金の前払いの分を除けば五、六%になるだろうと推測いたします。
五十嵐委員 そうなんですよ。推測も何も、数字を出されているんですね。計算は簡単にできるのですから、私どもでも。
 これは海外の市場が、あるいは国内の市場でも、市場は、マーケットはこれを基準に判断をしているということも事実なんですよ。金融危機は本当にもう目前に来ている、あるいはもう金融危機状態にあると私どもは指摘をしております。
 それからもう一つ、同様に、取りつけといいますか資金移動。ペイオフを控えて資金移動は起きていないというふうに柳澤さんは強弁しておりますけれども、そうじゃないでしょう。それはまだ普通預金は、確かにペイオフ、一年先だから動いていないですよ。だけれども、定期預金は動いているじゃないですか。でたらめ言ってもらっちゃ困りますよ。どうですか。
柳澤国務大臣 私ども、動いていないと言っていることはありません。私は、ここでも申したかと思うのですけれども、まず預金者の方に正確な知識を持っていただく、そして、その知識に基づいて預金を動かしたいと思う方が動かすことは健全である、こういうことを申し上げているわけでございます。
 私どもは、現在、ペイオフの時期を踏まえてどのような預金の動きになるかということについては、かなり細かくウオッチをしておりまして、今私ども何か懸念をするような状況にあるというふうな認識は持っていないということであります。
五十嵐委員 世の中の常識とは大幅に違っているということなんですよ。与党の議員も含め、民間のエコノミストも含め、市場関係者も含め、金融危機はもう来ておる、あるいは目前に迫っているという認識ですよ。定期性預金、都合の悪い数字は言わないんですね、それで。定期性預金でいいますと、これは一千万円以上の預金は国内銀行全体で一三・六%減っている、前年同月比で。十三年九月末ですよ。今ではもっと大幅に動いているはずです。
 それから、地銀、第二地銀、やはりここにしわ寄せがかなり来ています。かなりの状況になっているというふうに思いますが、この危機的な状況、もしこれを認識するならば、今のような悠長なことは言っていられないはずなんですよ。万が一起きた場合、預保法百二条で何でもできるんだ、だから大丈夫なんだというのですけれども、預金保険法の中でわざわざ危機対応勘定、今十五兆円残っていますけれども、わざわざ勘定を分けているというのは、それなりに意味があるわけでしょう。十五兆で足りるのですか、もし事態が起きたときに。ほかのものをかき集めるから大丈夫だというのは、私は無責任だと思います。
 松田理事長、いかがでしょうか。
松田参考人 お答えいたします。
 先生御指摘のとおり、確かに十五兆円の枠で金融危機対応勘定、今管理しておりますけれども、将来それが十分なのかどうかという点については、私からは何とも申し上げられません。
五十嵐委員 いや、そうじゃないんですよ。これは、もし本当に危機があったとき――だって、今まで何十兆入れてどうなってきたのか。三年前に入れた公的資金は使い果たしちゃったんでしょう。三年間しかもたなかったんじゃないですか。十五兆とか十兆とかという中途半端な額で用意したって間に合わない。私はもう明白だと思いますよ。もしこれを、使わなければ使わないで結構じゃないですか、積み増さなければ、私は国民は安心しないと思います。安心料としてむしろ私は用意すべきだ。それを、預保を預かる立場としてはむしろ要求すべきだと思います。
 それには、予算総則も動かさなきゃいけないでしょう、もし積み増すとすれば。その準備を直ちに始めるべきだ。私どもは、この予算審議を途中で中断してでも、私どもの金融再生法等をやって準備を進める、これが必要だと思うのです。安心料ですよ、むしろ。私はそういうことが必要だと思いますが、私の今の見解について、預保の理事長から、まず私の言った事実関係が正しいかどうか確かめてから、柳澤大臣に伺います。
松田参考人 先生御指摘の現在の資本注入の関係でございますが、全体として二回に分けて入れた分が十兆強ございます。現在管理しております。それは決して欠損ではございませんで、それぞれ優先株式として我々は引き取って持っているわけでございますので、それは現在それで、そういうことで運用をいたしております。
 今後どのような状態になるかということは、これはなかなか、現場を任される私の立場からは言いづろうございますので、ひとつそこは御理解いただきたいと思います。
柳澤国務大臣 用意したお金は六十兆とか七十兆のお金であったと思います。それが、全部使っちゃったんでしょうというのは、ちょっと五十嵐委員の事実誤認でございます。
 それから、今十五兆円の危機対応勘定を持っておりますけれども、私どもとしては、この日本の金融について御心配の余りでしょうけれども、余りこれを声高に言われますと、善良な、また善意の国民の皆様に無用な不安を与えるというのは私ども慎まなければならない、このように思いますので、言葉を慎みながら申し上げるわけでございますけれども、当面の危機対応に対しては十分な備えを我々は持っている、このように考えております。
五十嵐委員 確かにまだ債券は持っているんですよね。預保が債券は持っているけれども、今の銀行の状態を見たら、使っちゃったも同然じゃないですか、それは。また入れなきゃいけないんでしょう。自己資本比率は、今言いましたけれども、皆さんのお友達といいますか同僚議員の計算によってもマイナスになっているんですよ。公的資金と繰り延べ税金資産を除くと債務超過になっているということは、もう使い果たしちゃったということと同じじゃないですか。違うんですか。いいかげんなこと言わないでくださいよ。(発言する者あり)いやいや、繰り延べ税金資産と公的資金を除けば債務超過だということは、その数字自体認めているのですから、認めているのですから、これはそういうことじゃないですか。使い果たしたと同じことじゃないですか。
柳澤国務大臣 今も委員がおっしゃられたように、いろいろな仮定、我々が資本と考えているもの、それから、それが国際的にも認められているもの、これを差し引けばこうなると。それは、控除すれば元は小さくなる、これはもう小学校一年のときから我々常識として教えられているところでございます。
五十嵐委員 そういうのは答えになっていない、人を食ったようなことを言って何になるんですか。これはちゃんとした答弁をしてもらわなければ困りますよ。
 大体、危機がないとおっしゃるけれども、生命保険会社の状況はどうなっているんですか。それから、生命保険会社が傷んだ場合には銀行とのダブルギアリングがあるでしょう。きのうも指摘しましたけれども、株あるいは劣後債、劣後ローン、基金等でかなり持ち合っていますよね。当然ながら、銀行の経営に大きな影響がある。
 朝日生命の統合問題で、金融庁長官が、東京海上火災の方に、ミレアグループの方に圧力をかけたと報道されている。大変焦っている。それは、かなり危ない状況にあるということを認識している証拠じゃないですか。
 生命保険会社は、今のままでいけば、あなたは死差だとか費差があるから大丈夫だと言うけれども、決定的な逆ざやがある限り、この実質ゼロ金利状態が続けば傷むに決まっているじゃないですか。どこまで耐えられるかという問題でしょう。
 日銀総裁にもお尋ねしなきゃいけないのですが、私はかねて申し上げていますように、資本主義の社会で金利がつかないというのは大変異常なことなんです。CPIがゼロになるまで続けるんだと言うけれども、イギリスでは、前世紀に九十年間デフレが続いたんですよ。こんなに長い間デフレが続いて、ここに資料にありますけれども、生命保険会社それから厚生年金基金、もちますか。もたないんですね。どんどんつぶれているじゃないですか。一年間に二十五、厚生年金基金がつぶれているんでしょう。この不安感の方が国民に大きいですよ。生命保険がどうなるのか、厚生年金がどうなるのか、この不安感の方が国民には非常に大きいのです。いつまでもいつまでもはもたないんですよ。
 どこまでこの低金利政策が続くかという、期限、時期的なめどが私は当然必要だし、それは、単に定性的な目標ではなくて、定量的な目標を持って、そこへ向けて政策を集中するということがなければならないはずです。努力目標をきちんと数字でもって、いついつまでにやるのだということを明確にすべきだと思うのですが、いかがですか。
速水参考人 金利機能がうまく働いて、金融市場が正常化していくというのは、私自身もかねてからの望むところでございますけれども、就任以来、金融情勢というのはそういう方向に向かっていないわけでございます。何よりも早く経済活動が活発になるように、それに応じて金利収入や賃金が増加するような状態を実現することが必要だと思います。私どもの金融緩和ということも、そうした経済活動の活発化を目指して粘り強く実施していくことを御理解いただきたいと思います。
 日本銀行は、現在の緩和の枠組みを、CPIの前年比上昇率が安定的にゼロになるまでということにコミットをいたしております。これは、物価が継続的に下落することを防止して、安定的かつ持続的な経済成長のための基盤を整備するという、持続的な経済成長のための断固たる意思を示すものでございまして、人々の期待に働きかけて、これによって強い緩和効果をもたらしてまいりたいというふうに思っております。
 何よりも大事なことは、やはり構造改革の推進を通じて、民間の前向きな経済活動を引き出していくということではないかと思っております。
五十嵐委員 理屈が逆転しているんですよ。物価上昇率がゼロになればいいというのは結果の話であって、今経済が弱い、生産性が低い、これが問題なのであって、生産性が上がって、自然にこれはインフレ傾向になりますよ。それで経済が強くなって物価が上がるならいいけれども、ただ物価を上げればいいというのは、むしろ給料が下がって、国際的な基盤の中で、グローバル化の経済の中で、物価が下がっているからまだ庶民は何とか暮らせていると思っているんですよ。物価だけ上げることが目標だというのは、庶民に苦労しなさいと言っているのと同じことですよ、これは。経済の力を強くした結果としてデフレが直るというのはいいんですよ。そうじゃなくて、先に物価を上げることが先だという話じゃ、全く逆転しているのじゃないですか。
 先ほど財務大臣も、消費者物価をゼロ以上に上げることが目標であります、一番肝心ですみたいな発言をしていますけれども、そうじゃないでしょう。経済の力を強くして、産業を活発にしてお金の流通速度を増して、それによって、結果としてデフレがおさまるという姿を目指すべきなのに、先に物価が上がればいいという話じゃないでしょう。
 円安を第一の目標、口では、外に向けては、海外に向けては円安ということは言えないかもしれないけれども、実は円安に頼り過ぎているという面もあると思います。だけれども、円安も同じことなんですよ。円安になったからといって、よくなるとは限らない。確かに、円安になれば輸出企業はもうかります。もうかるけれども、むしろ海外にもうかったお金を持っていっちゃうのじゃないですか。海外逃避、キャピタルフライトが起きるのじゃないですか。日本の円の信頼性も落ちて、日本国内に投資するより、金持ちはみんなこぞって外国に投資する、そういうことが起きかねないのじゃないですか。円安に期待し過ぎるということも問題だし、円安による物価高だけを求めるというのは非常に危険だということを、あなた自身が御存じなんじゃないですか。私はそう思いますよ。
 経済の体質を強くすることが先で、円安や物価の上昇をいたずらに求めるというのは、私は国民に対する裏切りだと思いますけれども、いかがでしょう。
塩川国務大臣 その点につきまして、一言、私からもコメントさせてもらいたい。
 私は、先ほど申しましたように、名目物価、いわゆるCPI、消費者物価を上げたいということを言いました。これは、五十嵐さんも御存じのように、実質の物価ですね、実勢はそんなに下がってはおらないのです。名目が実質との間に差がある。ここがやはり経済にいびつをもたらしておることの一つの原因なんです。
 したがいまして、私は、名目の物価水準を上げたい、こういうことを言っておるのでございまして、私は、物価目標だけが経済政策の主体だということは申していない。もちろん、おっしゃるように、経済の実力そのものを上げるということは当然でございますけれども、当面の差し迫った政策の一つとして名目の物価を上げる、こういうことを言っておるわけです。
五十嵐委員 何だか、よくわかったようなわからないような御説明ですけれども、本当によく考えていただきたいし、庶民の生活がまずあるんだということを常に私どもは忘れちゃいけない、そう思うわけですね。
 それから、金融政策、大変微妙なところへ来ている。本当に機動的に、モラルハザードを起こさないように、むだなお金を使わないように一生懸命やっていただきたいということを要望しまして、かなり残してしまいました。石川銀行の問題だとか大和管財、通告していたのですけれども、また次の機会に譲ることにして、終わります。
 ありがとうございました。
津島委員長 これにて五十嵐君の質疑は終了いたしました。
 次に、達増拓也君。
達増委員 ことしの一月、実は、イタリアの外務大臣も更迭されているそうであります。ルジェロ・イタリア外務大臣でありますが、ルジェロ外務大臣は、EUに積極的に参加しようという考え方だったわけでありますが、マルティーノ国防大臣やトレモンティ経済財務大臣が、ユーロとかEUとか、そんなに積極的に参加するのはよくないと閣内で意見が対立しまして、ベルルスコーニ総理大臣は、結局ルジェロ外相を更迭ということで決着を見たということであります。
 外務大臣は当分の間、ベルルスコーニ首相が兼務するという、形の上ではどこかの国と同じようなパターンだったわけでありますけれども、やはり外務大臣の更迭というのは、国際的な事件であります。そして、それにはほかの国々も、なぜ外務大臣が辞職することになったのか注目するわけでありまして、いろいろ分析して、なるほど、こういう政策の対立でそうなったのか。
 我が国の場合も、戦後、例えば鈴木善幸総理大臣のときに、伊東正義外務大臣が更迭されることになりました。日米関係について、同盟だとはっきり言った伊東外務大臣、同盟ではないよと鈴木総理大臣、対立いたしまして、結局外務大臣がやめる羽目になった。これは、デタントから新冷戦へと国際社会の環境が大きく変わる中で起きた国際政治上の一事件として記憶にとどめられているわけであります。
 翻って、今回の田中眞紀子外務大臣の更迭というのは、一体なぜやめることになったのか、やめなければならなかったのか、いまだになぞと言っていいでありましょう。政策の対立によるようではありません。国会の混乱を収拾するためという理由でありますけれども、それでは国際的に、対外的に理解は得られないのだと思います。
 実際、国民的にも理解が得られておりませんで、世論調査等でも、不満は高い。いまだに、一体なぜ田中大臣はやめることになったのか、これはもうまさに国民的な疑問でありまして、そういう意味で、この予算委員会がその更迭のきっかけをつくったということもありますので、予算委員会としても、これはなぞを究明しなければならない課題であります。
 田中眞紀子外務大臣更迭のきっかけになったのは、一月二十四日の衆議院予算委員会での答弁であります。これは有名な答弁ですけれども、菅直人委員の質問に対して、鈴木宗男議員の関与、鈴木宗男さんといった名前があったということをはっきり言われたわけですねという菅直人委員の質問に対して、「その日も電話でもおっしゃっていましたし、また、けさの予算委員会の前のときも具体的に名前をおっしゃって認めておられました。事務次官が言っておりました。」局長や次官が田中大臣に鈴木宗男という具体的な名前をはっきり言って伝えたと、田中大臣がはっきり答弁したわけであります。
 この田中大臣の答弁に対し、重家局長、野上次官は、そんなことはない、言っていないというふうに答弁をして、大臣の答弁と事務方の答弁に食い違いがある、それがこの予算委員会の混乱の本質でありました。
 では、外務大臣は虚偽の答弁をしたのかということでありますけれども、外務大臣はその後も、同じく民主党の筒井委員の質問に対して、「うそを言っているのでしょうか。その点、確認します。」と筒井委員が質問したのに対して、「うそは申しておりません」「うそは何ら申しておりません。」というふうに田中大臣ははっきり答弁をしたわけであります。
 やはり同じく民主党の原口委員の質問に対しても、「私が先日の予算委員会で申し上げていることに、何ら間違いはございません。」と田中大臣ははっきり答え、原口委員が念押しで、「鈴木宗男さんという名前を事務次官が言っていたということで認識してよろしいですか。」と質問したのに対して、田中大臣が「結構でございます。」と答弁している。
 田中大臣は、委員会答弁はもちろんですけれども、委員会の外でも、記者に対して、あるいは周りの人に対して、私はうそを言っていない、私は間違っていないと、繰り返し発言しているわけであります。
 ところが、事務方はそうではないという答弁をするものですから、これじゃ委員会にならない、政府側から答弁が、まさに二枚舌、二種類の違った答弁が出てくるのであれば質問をするわけにはいきませんから、委員会がとまってしまったわけでありますが、それを解決しようとして、福田官房長官が「政府として統一見解が出せるように努力をしてみたいと思っております。」ということで、統一見解を出すということで、ではそれを見て委員会をその先やるかどうか決めましょうと理事会で合意がなされていったというのが経緯であります。
 その政府見解によれば、「アフガン支援国会議へのNGO参加決定にあたり、特定の議員の主張に従ったことはない。」という、そもそも田中大臣が言わんとしていることを真っ向から否定する見解があり、さらに、いわゆる言った言わない問題でありますが、大臣の答弁が虚偽であったのかどうか、非常に重要な問題であります、それについては「引き続き関係者の申述等を聴取し、事実関係の確認に努める。」ということで、これでは全然疑問の解明になっていない、委員会がとまった理由が解決されていない、政府見解になっていないということで、これでは困ると野党が言っている間に、予算委員会の方はいつの間にか採決がなされてしまったわけであります。
 さすがに、そのまま本会議も採決するわけにはいかないと思ったのでしょうか、政府の方はさらに、「申述聴取結果」という紙をつくって出してきました。それは、「アフガン復興会議へのNGOの参加に対する鈴木議員の介入の有無について野上次官から言及があったかどうか」、「外務大臣と野上次官との会話で鈴木議員への言及があったかどうか」、そして「大臣と野上次官とのやりとり以外に、二十四日朝の勉強会でNGOないしは鈴木議員への言及はあったかどうか」、この委員会がとまった理由の、大臣と事務方の答弁にそごのある三つのポイントについての「申述聴取結果」というのが出たわけでありますけれども、その結果は、はっきり書いていないところがみそなんですが、大臣が言ったことが誤りであった、大臣の答弁が虚偽であったというような趣旨のことが書いてあったわけです。
 私は、田中眞紀子外務大臣の虚言癖というものをいち早く指摘した国会議員でありますけれども、さすがの私も、今回、田中眞紀子大臣がうそをついたとはやはりにわかに信じがたいわけです。あれほど予算委員会の場で大見えを切って、繰り返し繰り返し答え、うそじゃない、本当だ、間違いではないと繰り返し答弁し、最後の方では、そのときのメモもありますという紙をちらつかせて答弁をしていた。
 予算委員会、国会というものは、一億三千万の日本国民に対して責任があるのはもちろんですけれども、今やこういう時代ですから、世界に対しても責任があるし、そして人類の未来に対しても責任があると言っていいでしょう。そういう場であんなあからさまに大それたうそをつくというのは、やはりにわかに信じがたいわけであります。これはもう天をも恐れぬ所業といいますか、国会開設以来百何年かの歴史の中で一度もなかったことだと思いますよ。そういう意味では、御先祖様に申しわけないというか、必死でこういう議会制民主主義というものをつくり守ってきた先人の方々にも申しわけないような、百年に一度の珍事がこの予算委員会で起きたのかなという疑問を持っているんですけれども、官房長官に伺います。結局、田中大臣は虚偽の答弁をされたんでしょうか。
福田国務大臣 これは御指摘のとおり二十四日の予算委員会の質疑の問題であったのでありますけれども、そこのことで、どっちが本当か、こういうふうな話でございました。事実関係を私どもとしても把握しようということで、いろいろ調査をしました。
 最終的には八日発表いたしました、官邸として改めて調査を行ったのでありますけれども、鈴木議員から大西氏の属するNGOの会議への参加を認めるべきでないとの意見が出されたということは確認をしております、その報告書でもって。また、先月二十八日の政府見解でも、これは今御指摘の政府見解でございますけれども、ここでも、「NGOの参加決定にあたり、特定の議員の主張に従ったことはない。」これも田中大臣が見ていらっしゃる文書でございます。それからまた、八日の調査結果、これも田中前大臣も含め関係者が一致している政府見解を確認する内容となっているというようなことでございますので、どうしてこういうことになっちゃったのかという思いを私はいたしております。
達増委員 どうも結論部分がはっきりしないんですけれども、政府見解というのは、政府としての認識、政府としての統一された意思を表明するものだと思うんですけれども、その政府としての認識として、田中外務大臣が予算委員会で虚偽の答弁をした、そういう認識なんでしょうか。
福田国務大臣 政府の方としては、今申し上げたような事実確認をしたということでございます。
 田中大臣がどうおっしゃっているか、外でもおっしゃっていることであります。これはこの委員会の中でおっしゃっていない部分がございますので、その辺について、どうしてこういう食い違いが生じたのかなということは、私も今けげんに思っているところでございます。
達増委員 政府として、結局、田中大臣の言っているとおりなのか、それともそうじゃないのかということが答弁としてもらえないから、国会がとまってしまったわけであります。
 だから、政府として、あの人はこう言っている、この人はこう言っているという報告を出すだけでは政府統一見解にはならないのでありまして、そういったいろいろ調べた結果、また、総理大臣かあるいは官房長官か、責任者としての心証も加味して、政府としてはこういう結論だと出さないと、国会に対して答弁したことにはならないわけですね。
 もし、この政府見解というのがそういう政府としての意思を明らかにしていない、あの人はこう言った、この人はこう言ったというだけの調査にとどまっているとしたら、それは野党が求めていた、理事会が合意していた政府見解にはなっていないということであって、実は、そういう政府見解を出すと約束していたのに出さなかった官邸の責任で国会が混乱したということでありまして、にもかかわらず外務大臣だけを更迭して、総理大臣と官房長官が辞任しないというのは、官邸の不始末を外務大臣一人に押しつけて問題が終わったことにしているということになりませんか。
福田国務大臣 政府見解としてお出ししましたのは、これは確かに、その事実関係の食い違いというものを解明していないということでございまして、それは政府見解の中で、引き続き関係者の申述等を聴取する、そして確認に努める、こういうことを政府見解の中で申し上げているということでございまして、その申述等も聴取いたしました。
 しかし、その前に、これは総理から直接この委員会でも申し上げているとおりでございますけれども、本来外務省の問題であったものが国会全体の問題となり、国会の混乱という事態に至ったということでもって、その事態を打開するために、その責任を総理としてとられて、そして苦渋の選択をとられた、こういうことでございます。
達増委員 本来外務省の中の問題という認識は、これは全く間違っていまして、といいますのも、小泉・眞紀子内閣が発足して、その途中から外務省の事務方に対する指導は官邸がかなりの部分行っていて、外務大臣は事務方に関する監督を実質的にしていない状態になっていたわけですね。野上次官を次官と決めたのも基本的に官邸が決めた話ですし、野上次官は実際官邸に相談していろいろ事務をとっていた。そういう意味では、官邸の不行き届きということが大きいはずであります。
 さらに言えば、内閣としてきちんとした答弁を調整する機会は、実は土日、週末にあったわけであります。一月二十四日の菅直人委員の質問に対する答弁での食い違い、その後、一月二十八日、週が明けてから予算委員会が開かれたわけでありまして、その週末を利用して、内閣として、政府として国会に対する責任を果たすために答弁をきちっとつくる義務があったはずであります。そのとき小泉総理は、X―JAPANのフィルムコンサートを見に行ったりしていたわけでありますけれども、事態の重さを認識せずに事ここに至ったというのは、それは本来外務省だけの問題と言うのは全くの誤りであって、官邸の責任というのは免れないと思いますが、この点どうですか。
福田国務大臣 土日ございました。時間的なことはあったのでありまして、その間、いろいろな方がこの調整をするべく善意の努力をしてくだすったと思います。その事実も、私も幾つか存じております。そして、私自身も直接お話をしました。
 そういう努力をしたにもかかわらず、その調整が結果的にうまくいかなかった、こういうことでございまして、そういうような経過を経まして、官邸の責任とおっしゃるけれども、これは総理が全責任をとられて、そして更迭という決断をされたわけでございますので、それでよしというように思っているわけではございませんけれども、私は、総理としてもなすべきことをなされたというように思います。
 それから、今おっしゃいました、次官の交代のときに、例えば野上次官は官邸人事だと。これは官邸に、どこの省庁もそうでありますけれども、局長、審議官以上の人事については人事会議というのがございます。したがいまして、そこを経なければいけないわけでございます、閣議に上がらないわけでございますので、そういう手続はとりましたけれども、私どもから野上次官というように注文した、そういう覚えはございません。これはあくまでも外務省から出てきた人事でございます。そのことをつけ加えさせていただきます。
達増委員 総理大臣が外務大臣を更迭し、それでよしとは思っていないというのは、それは全くそのとおりだと思います。
 日本国憲法六十六条三項は、「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」これがまさに内閣と国会の関係を最も的確にあらわす文章なわけですが、「連帯して責任を負ふ。」というこの辞書的な、国語的な意味でありますけれども、「複数の者が、それぞれ他の者の落ち度によって自分も同じ責任を負い、追及を受けること。」ということですから、仮に、万々々が一、官邸に一切の落ち度がなかったとしても、外務大臣の落ち度によって同じ責任を負うというのが憲法の原理でありますし、まして、そもそも田中外務大臣を起用した去年の四月二十六日の時点から、外務大臣がきちんと仕事をできるような体制、外務大臣を取り巻く体制、あるいは官邸と外務省との関係、総理、官房長官と外務大臣との関係、そういったものを九カ月間うまくつくってこれなかった責任が、事ここに至ったその本質。
 したがって、私は、内閣総辞職こそ今回の責任問題について最も適当な解決方法だと思うわけでありますけれども、この続きは二月二十日、またやっていくことになると思います。
 さて、川口外務大臣、おととい二月十二日、「開かれた外務省のための十の改革」というペーパーをつくられました。
 そこの第一番目には、「不当な圧力の排除」という項目が掲げられています。「国会議員より職員に対して伝えられる問題については、書面で、大臣を含む政治指導層に報告し、省としての対応を決定します。」「上記書面を、情報公開の対象にすることを検討します。」国会議員から役所に対するさまざまな働きかけがあった場合、きちんとそれを紙にして、情報公開の対象にもすると。
 この「不当な圧力の排除」という項目のところには、このようにも書いてあります。「この問題は、外務省以外の官庁にも関係する、広く国会議員と官僚の関係の問題です。合わせてより広い枠組みで検討する必要があると考えます。」つまり、外務省だけの問題じゃないんだと。これはもう全省ぐるみ、内閣全体で取り組む課題だというふうに読めるのでありますけれども、これは川口大臣の名前で出ておりますけれども、先ほど憲法の条項を読み上げましたが、内閣は連帯して国会に対して責任を負っているわけでありまして、内閣の総意と違う外務大臣単独の行政はできないはずでありますから、官房長官に伺うんですけれども、これは内閣全体としても同様の認識ということでよろしいんでしょうか。
    〔委員長退席、北村(直)委員長代理着席〕
福田国務大臣 先般川口大臣が発表された「開かれた外務省のための十の改革」、これは骨太の方針、こういうふうに外務大臣も言っておられますけれども、骨太でありまして、これからその具体策を打ち出すんだ、こういうことで、骨格をあらわしたということであります。
 私もそれを拝見いたしました。拝見いたしまして、おおむねこれはいい提案ではないかというふうに思っているところです。
達増委員 外務省だけの問題ではないというのは全くそのとおりで、きのうのこの委員会でも、五十嵐委員が、青木参議院議員の国土交通省や道路公団に対する影響力、働きかけの問題を取り上げて、非常に大きい問題があるということが明らかになりました。
 また、鈴木宗男議員の役所に対する関与でありますけれども、外務省のみならず農水省にもそのような関与があり、これはきょう発売になる雑誌に載っているんですけれども、鈴木宗男議員が農水省の官僚に圧力をかけ、恫喝を与え、そしてその官僚が自殺をしてしまった。鈴木宗男議員の恫喝によって農水省の官僚が自殺に追い込まれた。これはもうけさの全国紙、主要紙すべてに雑誌の広告も載っておりますので、ごらんになった方も多いと思いますけれども、個々の国会議員による役所に対する働きかけというのは、これはやはり民主主義をむしばむものでありまして、制度的にできないようにしていかなければならないと思います。
 イギリスでは、個々の議員が個別に役所、官僚と接触することは禁じられているわけでありまして、個々の議員は、与党となって大臣、副大臣、政務官、そういう内閣に入った国会議員を通じてでなければ役所に対して働きかけることができない。そういう仕組みをつくらなければならないと思いまして、自由党でも、今そういう法案を準備しているところであります。そういう形がきちんとできれば、もうこういう恫喝だとか関与だとか、一々紙にする必要もなくなるわけでありまして、より抜本的な解決になる。
 しかも、最近の、サラリーマンの医療負担三割への増加をめぐる混乱のような、ああいう党と政府の間のすったもんだも起きないわけでありまして、政府・与党のその与党の中でまず政治家同士がきちんと議論をして理念、政策を定め、その党の政策に基づいて、党の代表として政府に入った大臣、副大臣、政務官が行政を執行していく、そういう形がきちんとできさえすれば、恫喝によって自殺に追い込まれるといったひどいこともなくなるわけだと思います。
 恫喝に屈する官僚もだらしないと言われます。官僚の道からすればそれは全くそのとおりで、全国民に対する公正さ、全国民の利益を考えて行動しなければならないのが、これはもう官僚、役人の生きる道でありましょう。
 しかし、小泉総理も、個々の議員が個別に役所や官僚に意見を言うのはいいと言い切っているんですね。これは間違いだと思います。いわば犬をけしかけて、かまれないようにしろ、なめられる分には構わないけれどもかまれないようにしろと言っているようなもので、そんな、かんでくるのかなめてくるのか、それを役人の側が自分の要領でうまく切り抜けろというのは、これはむちゃな話であります。もうこれは、奴隷に犬をけしかけて見物して喜んだローマ皇帝のネロとかカリギュラとか、そういう感覚で言っているんじゃないかと思うくらい、そういうちょっと残酷なところを感じております。
 したがって、官僚というのは、これは国民全体の財産であり武器であります。したがって使いようなんでありまして、その使いようというのはそのときの国会の多数党、与党にゆだねられる。ですから、野党が官僚を攻撃するのはわかりますけれども、最近、与党の国会議員が官僚バッシングに血道を上げて、本来野党議員が官僚を攻撃する、それを、その前に与党の大臣なりが立ちふさがって野党とやりとりするんでしょうが、与党の議員や大臣が官僚の方を向いてバッシングをして、我々に背を向けるような局面がこの小泉内閣では多々見られるので、これは本当に国を誤る亡国の現象、亡国の事象だというふうに思います。
 さて……
北村(直)委員長代理 答弁を求めてください。
達増委員 機密費の問題であります。
 外務省の報償費、ことしの予算の中で、本省の報償費と在外の報償費がそれぞれ二九・四%の減となっております。在外については、去年のこの予算委員会で河野大臣に私が質問をして指摘した政府開発援助報償費、ODA報償費というへんてこりんな項目はことしはゼロになっておりまして、その点は評価できるんですけれども、その分ODAがつかない在外の報償費がちょっとふえて、差し引きで二九・四%の減となっております。その分、他の費目の方に振られてそっちがふえているようなんでありますが、まず外務大臣に伺いますけれども、これは、今回のこの予算の趣旨として、今まで外務省報償費は約三割ほかの用途に用いられていたので今回その分を削減したという、そういう趣旨でしょうか。
川口国務大臣 十四年度の外務省の報償費のことでございますけれども、約三十三・四億円を計上いたしております。十三年度の当初予算が約五十五・七億円であったということでございますので、これを比較しますと、四〇%減額ということになっております。ただ、十三年度の補正予算において、外務省の報償費につきまして、節約と効率化の観点から一五%減額修正があったということでございまして、補正後の本年度の予算額は四十七・三億円ということでございます。したがいまして、数字が三つありますけれども、当初予算が五十五・七。一五%の補正の際の減額修正の後、四十七・三億円。それで、十四年度の要求額が、予算額、今予算として計上されています額が三十三・四億円ということでございます。
 それで、外務省といたしまして、このような減額をして計上をしたということとともに、従来、報償費の定義がございますけれども、その定義、目的に沿って使用してきたものであって、近年ある程度定型化あるいは定例化しているものにつきまして、可能な場合には報償費以外の科目で、必要に応じ他の関連経費とあわせて新たに積算の上、計上したものがございます。そういうものは、例えば要人外国訪問関連経費ですとか、レセプション関連の経費ということでございます。
 こうした措置というのは、予算執行の整理の観点から改善を図ったということでございまして、外務省報償費が、今まで定義あるいは目的以外に使われていたということでは全くございません。
達増委員 驚きであります。今まで一年間、一体何の議論をしていたのか。機密費が本来の目的に使われないでいることが常態化している、これはけしからぬ、実態を解明しよう、よりよい予算の使い方をしようと今まで時間をかけて議論していたのに、その結論が、外務報償費は報償費としての目的以外に使われていたことはございませんという答えであります。
 これは、去年の補正予算の審議のときに、その何%か減額になっていたのを、その理由を田中大臣に尋ねたら、それは効率化のための減額で、財務当局の要請で各省一律にやっている作業だということで、形式的に報償費というのがじわじわ減額されているのですけれども、この予算委員会での議論を踏まえて、むだに使われている、本来の目的以外に使われている、だから減らすということには全然なっていないのですね。だから、当然、他の費目に振り分けられて、他の項目に振り分けられて、結局、全体としては全然減っていないという結論になるんだと思います。
 この一点をとっても、この平成十四年度政府予算案というのは、このまま国会で議決するわけにはいかない。この一点をとっても、この予算は認められないと思います。
 川口大臣は、アメリカ大使館で公使を務められたこともあるわけですけれども、その実感として、かなりむだ遣いがある、在外公館で報償費の使われ方、いろいろな接待とか国会議員への便宜供与とか身内の飲み食いとか、そういう実感は感じられたことはなかったですか。
川口国務大臣 私は、今から十年以上前になりますけれども、アメリカの大使館で公使をいたしておりました。
 実は私は、その時点では報償費という言葉は全く知らなかったと申し上げていいと思います。それぞれ、いろいろ情報をとったり、いろいろな方とお話をしたり、あるいは講演に行ったり、かなり活動をさせていただきましたけれども、それとの関連で費用が潤沢にあったという印象は、私は持っておりません。
達増委員 官房長官にも伺いますが、内閣官房報償費に至っては全く減額されておらず、前年度イコールの予算要求になっているんですけれども、これも、報償費以外の目的に不正に使われたり、むだに使われたりはしていないという認識に基づいているんですか。
福田国務大臣 内閣官房の報償費は、これはもう何度も申し上げていることでございますけれども、内政、外交を円滑かつ効果的に遂行するための経費として国政の運営上不可欠のものである、そういうことでございますが、この使用に当たりましては、すべて私の責任において一つ一つ吟味を行って、そして厳正かつ効率的な執行の徹底を図っております。
 会計検査院の御指摘も踏まえまして、総理の外国訪問に伴う宿泊費差額については、平成十三年度からは、そういうような問題が生じないように、庁費による施設借り上げ費として措置をするとか、また、現地で必要となる自動車の借料等の庁費の支払いについては支出委任を行う。従来やっていなかったのですよ。そこが一つ大きな問題であったのでありますけれども、そういうことで会計責任の明確化を図るというような改善措置も行っております。
 また、平成十四年度は、総理の外国訪問に必要な経費のうち、内閣官房の職員の宿泊費等に要する経費以外は外務省において予算措置を講ずることとしており、内閣官房と外務省との間において事務分担及び経費の分担の一層の明確化を図る、こういうことをしております。
 そしてまた、金額が変わっていないということでございますが、これは十三年度に比べまして一割減、こういうことにして経費の節減に徹しておるところでございます。
達増委員 外務省の在外公館で使う渡切費がゼロになっているんですけれども、それは、その分庁費等の増額になっていて実質的に減っていないというのは、先ほど同僚委員の指摘のとおりであります。
 これは財務大臣にも伺いたいのですけれども、国会が予算を議決しますと、これはもう国民の意思としてこういう予算でいく、国民の意思としてそう決めたことになってしまうわけであります。
 国民の意思が今どうなのかと考えますと、それはやはり、この報償費というのは、今までかなり乱れた使われ方をしていた。それを担保するための制度改革もまだ始まったばかりなので、やはり改革が進むまでは、みずからの痛み、一たん大幅に減額して、私は半分ぐらいに減らすのが適当と思っているのですけれども、そして改革が進んで、それがきちんと使われる体制が担保されるに従って、運用の健全化が担保されるに従って徐々にふやしていくという形がちょうどいいと思うのです。
 これは、去年の本予算がこの予算委員会で議決される際に野呂田予算委員長が、特に報償費の透明性、健全な使われ方について言及したこともありまして、それにこたえる案をやはり政府としても提出すべきだったと思うのですが、いかがでしょう。
    〔北村(直)委員長代理退席、委員長着席〕
塩川国務大臣 報償費の使い方につきましては、私ども、その内閣の自主的な判断で政治責任と良心を持って使っておることでございますから、個々に申し上げられませんけれども、お尋ねのように、既定のものを定めて支出するということではなくして、今回、十三年度に比べまして十四年度は一〇%減ということにいたしましたのは、従来の査定いたしました中で定期的に出ておるようなものの削減を図っていくという趣旨があったのではないかと思っております。
達増委員 もう一つ、この平成十四年度予算で、この一点がある限りこれに賛成するわけにはいかないというところがございます。それは、一般行政経費についてであります。
 平成十四年度予算編成の基本方針、十二月四日、去年閣議決定された中に「行政改革」という段落、項目がありまして、そこには、行政組織の減量・効率化等を推進すると。現状維持ではありません、減量です。減量・効率化等を推進するとはっきり書いてあります。そうすると、当然各省の一般行政経費というのは軒並み削減になるのだろうと思って調べてみますと、これがさっぱりというか、全く削減になっていない。軒並みふえているわけであります。
 特に問題だなと思うのは、去年、中央省庁改編で複数省庁が合わさってできた、総務省でありますとか文部科学、厚生労働、そして国土交通といったところなんですけれども、まさにその効率化のために合体しているはずなのに、一般行政経費は全然減っていないのですね。これは予算編成の基本方針と矛盾すると思うのですが、財務大臣、いかがでしょうか。
塩川国務大臣 それは、まさにめり張りをつけたということの一つでございまして、先ほど来説明いたしておりますように、五兆円削減して二兆円は重点的に新機軸のところにつけた。
 総務省がふえておるということは、やはりIT関係の事業等が非常にたくさん盛り込まれておりますので、そういうことで出てきた。それは一般行政経費の中から出ておりますから。
達増委員 やはり、官から民へとか、むだを排すとか、小泉内閣、スローガンは立派なんですけれども、これもノーアクション、トークオンリー、しゃべるだけしゃべっているけれども、実体、行動が伴わないという例かなと思います。
 その背景として、特に複数省庁の合体というものが、かえって行政の効率化を損ねているのではないか。これは、去年スタートしたときにも、局長会議をやっても会議室に入り切らないとか、今まで全局長に配付とかといったものを倍も配付しなければならないとか、かえってコストがかかるようになってしまっているのではないかと指摘されていたのですけれども、この点、総務大臣に伺いたいと思います。
片山国務大臣 お話のように、去年の一月六日に中央省庁の再編が行われまして、幾つかの省庁が統合、合体しまして大きな省庁ができたことは事実でございまして、基本的な考え方は、やはり縦割り行政の弊害をなくする、そういう大ぐくりの編成をやって簡素効率化にしよう、こういうことでございまして、その結果、局が、百二十七あったのが九十六になったんですね。課が、千百六十六あったのが九百九十五になったんです。例えば、地方建設局と港湾建設局が統合されまして地方整備局になった。そういう意味で、私はかなり簡素効率化になった、こう思います。
 それから、私のところは三つ一緒になったものですから、大きなことは大きいんですが、相当皆さんに融和、結束ということをお願いして、いろいろな工夫をやりまして、私はその実はだんだん上がってきている、こういうふうに思っております。
 それから、今委員言われました、私どもの方で行政経費がふえているのは、通信総合研究所で、御承知かと思いますが、沖縄の電波観測所の解体、撤去をやったんです。その経費だけはふえておりますので、ぜひ御理解賜りたいと思います。
達増委員 幾ら組織をいじり回しても、やはりそれが納税者にとって税負担の軽減とか、国民にとって、納税者にとってどう改革になるのかというところが変わらなければ、改革の意味をなさないんだと思います。
 そういう意味で、今、機構いじりに関連しまして、独立行政法人というのが注目されています。これは、特殊法人を独立行政法人にしようとしているのは石原行革担当大臣なんですが、できた独立行政法人の監督は片山総務大臣だということで、片山総務大臣に質問しますけれども、去年四月から独立行政法人の制度がスタートして、五十七の独立行政法人ができているんですけれども、そこの役員数について我が党で調べました。
 政府機関であったときの理事長、理事、監事といった役員、大体これは指定職、審議官クラスの指定職がついているんですけれども、その指定職がついていた数と、その後そこに役員としてふえた数を調べてみたところ、何と、理事長、理事という役職は、政府機関であったころは五十七の機関に八つしかなかったものが百五十二、百四十四もふえています。監事という役職については、政府機関のときに八十七だったポストが独立行政法人になって百十二にふえている。二十五ふえている。合わせますと、百六十九もそういう役員ポストがふえていまして、理事長の給料というのは、もうこれは事務次官本俸に匹敵する給料でありまして、次官以上の給与をもらっている例も三つありました。これは、独立行政法人化することが、かえってこういうことになって、これはいいんでしょうか、総務大臣。
片山国務大臣 これもお話のように、特殊法人を独立行政法人にする、本来は民営化なんだけれども、民営化にふさわしくないものは独立行政法人という制度をつくろう、こういうことでつくりまして、多くの独立行政法人ができたんですが、その場合の役員の数は、それぞれの独立行政法人の単独法で定数を決めているんです、御審議いただいたと思いますけれども。
 そこで、今までは研究所で、例えば通信総合研究所では所長が一人でよかったんですね。これが独立行政法人になりますと、どうしても理事長は一人置く、場合によっては理事を二人置く、こういうことになったんですよ。だから、仕事がふえているわけじゃないんですよ。名前が変わっているんですね。だから、独立行政法人という単独の世帯を持ったものですから、ぜひその点の御理解は賜りたい、こう思います。
 それから、給与はどう決めるかというのも、これも法律で御審議いただいたんですけれども、それぞれの法人が基準をつくりまして、国家公務員なり民間なり、あるいは仕事の性質で基準をつくって、それぞれの法人が決める。なるほど委員言われたように、事務次官より報酬が高い人がたった一人おるんですよ。産業技術総合研究所の吉川先生で、前に東大学長をやられた方ですね。この方が次官よりは高いんですが、あとは全部次官より低いですから。一番多いのは、局長クラス、審議官クラスの給与でございまして、これも一遍そう決まるんですけれども、後は、独立行政法人の評価委員会ができまして、業績とチェックしていって、場合によっては下げろという勧告をやりますので、その辺は私は今までよりはしっかりしたことになると思います。
達増委員 やはり機構改革という、機構いじりとしては改革の体裁になっていても、実質的にコスト削減とかそういう本質的な改革になっているかどうかというのが、必ずしも一致していないというふうに思います。
 さて、北朝鮮問題について伺っておきましょう。
 いわゆる不審船問題でありますけれども、もう北朝鮮工作船問題とか武装船問題とかと言い切っていいんだと思います。いまだにあれはだれが相手だかわからない怪事件として扱われているわけでありまして、国民の認識ではそうではないかと思うんですけれども、政府としては、あれは北朝鮮の工作船とまだ正式に認めず、正体不明のまさに不審船。ですから、あれは国家機関同士の武力行使でもなければ国家機関同士のそういう紛争でもないという解釈で、一種の警察事件、なぞの怪事件というような認識で政府はおられると思うんですけれども、一日も早くやはり北朝鮮に抗議すべきだと思いますけれども、川口大臣、いかがでしょうか。
川口国務大臣 ただいまおっしゃったお話ですけれども、おっしゃられましたように、今関係の当局で鋭意捜査を進めているところでございまして、引き続き事実関係の解明に全力を今尽くしていただいているというふうに承知しています。
達増委員 では伺いますけれども、日本政府として、北朝鮮はテロ支援国家であるという認識でしょうか。外務大臣。
川口国務大臣 政府といたしまして、これまで個別に、ある国家がテロを支援している国家であるとか、あるいはテロを行っている国家であるというように指定をするといったことは行ってきておりません。
達増委員 海洋秩序を守るというのは、これは国際社会に対する責務でもありまして、一日本の国益を超えて、これはもうちょっときちんと対応しないとだめだと思います。特に小泉総理は、テロには屈しない、テロに対する国際的な闘いをアメリカと一緒にやると明言しているわけで、足元の日本周辺でそういうテロ対策というのがきちんと行われないというのでは、これもノーアクション、トークオンリー、しゃべるばかりで行動が伴わないということになると思います。そのような体制が一日も長く続くこと、これは日本の国益を害するとともに、国際社会にとっても非常に迷惑な話だということを指摘して、私の質問を終わります。ありがとうございました。
津島委員長 これにて達増君の質疑は終了いたしました。
 次に、春名直章君。
春名委員 日本共産党の春名直章です。私は、経済産業大臣と厚生労働大臣に伺っていきたいと思います。
 まず、大企業のリストラ、人減らしの問題について伺いたいと思います。
 もうるる述べられていますが、完全失業率が五・六%、小泉内閣になってからの数カ月間で〇・八ポイント上がって、発表のたびに過去最悪を更新する。読売新聞の一月二十二日付の調査では、仕事に不安と答えた国民が八三%で過去最悪、こういう状況です。
 総務省が労働力調査をやっているんですが、平成十三年結果というのが出ていまして、それを見ますと、平成十三年平均の従業員の前年度比、これを規模別に見ると、一人から二十九人の零細企業の規模は、従業員は三万人ふえているんですね。しかし、三十人から四百九十九人の規模は三十六万人ふえている。五百人以上の大きな規模の企業が二十六万人減少している。ですから、大規模企業の雇用情勢が厳しかったことがうかがえる、こういう総括をしているんですね。
 この評価どおり、大企業のリストラが、失業の悪化、雇用情勢の悪化に大変大きな影響を与えていると私は思います。それから、大企業のこのリストラが、景気の悪化、地域経済への否定的な影響も与えているということは、紛れもない事実だと思うんです。
 そこで、お手元に今資料を配らせていただきました。お二人の大臣にもぜひ目を通していただきたいと思うんですが、この資料は、私どもが昨年の八月以降からことし一月末までに新聞や雑誌などで報道された企業の人減らし計画を一覧表にしたものであります。
 これはほとんどが上場企業でありまして、あるいはグループの計画でありまして、つまり大企業であります。ここには上場していない地方の企業などはほとんど入っておりません。最小限の数と考えていただければいいんじゃないかと思うんです。委員の皆さんもごらんいただきたいんですが、この人減らしの中身は、改めて念のために言っておきますが、整理解雇はもちろんあるんですが、出向、転籍、希望退職、自然減、あるいは工場閉鎖によって退職とか、そういうのが全部、当然入っている数字なんですが、こういう数。
 この数、百九十七社。国内の削減数が何と約五十五万人であります。驚くのは、ことしの三月までのリストラ計画が二十四万六千人なのに対して、ことしの四月以降に新たにリストラをする、人減らしをするというのがそれを上回る二十九万九千人、約三十万人。大変な規模ですよね。
 経済産業大臣、この大企業のリストラを放置したままで経済がよくなるんでしょうか、景気が回復するんでしょうか。私は率直に疑問です。この点、どういう御感想をお持ちでしょうか。
平沼国務大臣 お答えさせていただきます。
 今、表をもってお示しをいただきましたけれども、大変、大企業が今の景況の悪化の中で早期退職勧奨制度等で人員削減をしていることは事実であります。そういう中で、やはり収入が減る、そういうような中で消費が伸び悩む、そういう形でデフレの要因には一つはなっている、私はこのような認識であります。
 しかし、政府といたしましては、こういうデフレを克服するためにやはりきめ細かい手を打っていかなければならない、こういうような観点で、昨日、小泉総理からもデフレ対策に対する強い指示がございましたので、私どもとしては、デフレ克服のためにこれから一生懸命やらなければならない、こういうふうに思っています。
春名委員 デフレを克服するということの前提に、こんな事態を放置しておいてデフレ克服できるんですかということを私は問うているんですね。
 もう一点、厚生労働大臣にお聞きしておきますが、この表を見ておわかりのように、今まで電機あるいは輸送機器、自動車それから鉄鋼、こういうところの製造業のリストラが主力でした。ところが、この表を見て一目瞭然なんですが、新たに新しい職種にまでどんどん広がっているというのが特徴なんですね。運輸、流通、通信、金融、電力、ガス等々であります。政府が期待をかけているIT分野とかサービス分野でも大変大きなリストラがこれから待ち受けている。これは一目瞭然であります。
 このリストラを放置したままで本当に雇用環境がよくなるんでしょうか。その根拠を、私はこれをまとめてみて、本当にこれをそのままやっていっていいのか。雇用という角度から見て、厚生労働大臣、どうでしょうか。
坂口国務大臣 一目瞭然かどうかわかりませんけれども、五百人以上の規模の企業におきまして雇用者数が大幅に減っていることは事実でございます。昨年の後半を見てみましても、対前年比で、六月には五百人以上のところは十一万人減っておりましたが、十二月には四十六万人減っているということで、ここが大きい。が、その割に三十人から四百九十九人のところは比較的健闘をしている、こういう数字が出ております。
春名委員 全くそれは事実でございまして、ですから、その大規模なリストラを、大企業が行っているリストラが重大な影響を雇用に与えているということを今お話しいただいたんで、それをそのまま放置したままで本当にいいんでしょうか、これで雇用環境を改善するという根拠がどこにあるんでしょうかということをお聞きしているんです。
坂口国務大臣 それぞれ企業には企業としての理由と申しますか、その状況もあるんだというふうに思いますから、すべて政府の方でコントロールするわけにはまいりませんが、全体として、我々雇用問題を考えていく立場にある者といたしましては、やはり大きい企業には、それぞれそれだけの社会的責任もあるわけでありますから、十分に配慮をしていただきながらこの雇用の問題は考えてもらわなければならない、そんなふうに思っております。
春名委員 社会的責任があるというのはまさにそのとおりで、ただ言葉で社会的責任があるんだ、配慮してもらわなきゃいけないと言っていてもしようがないんですよ、実際こうなっているんですから。この事実を目の当たりにして、政府としてはどうするのかということが問われるわけでしょう。私、そのことを言っているわけです。セーフティーネットを張るからということもよく言われるんですけれども、しかし、セーフティーネットの網の目を突き破るような衝撃じゃないですか、これは。こういう問題を私、放置することはできないと思うんですよ。
 重大なことは、わざわざこれは八月からというふうにしたのは意味がありまして、小泉内閣になってから加速しているんですよ、去年の八月から。何で加速していると思いますか。だって、リストラが構造改革だ、そういう趣旨で政府が進めているから、安心してリストラ計画を出しているんですよ。
 私、拾ってみましたよ。十一月の中堅ゼネコン青木建設が倒産したとき、構造改革が順調に進んでいるあらわれではないか、信じられない言葉を発言される。そして、そのときの予算委員会でも総理大臣が、これはもう企業にとてもリストラをやめよと言えるような状況じゃないよと、こういうふうに発言される。一方、失業率がどんどん上がっているときに何と言うかというと、三百五十七万人という完全失業者が過去最高になったとき、余り悲観的、自虐的にならずに前に進もうと、まるで人ごとのようなことを言われる。十二月に最悪を更新して五・六%になったとき、改革を進めていく上では痛みを伴うから仕方がない、こういう趣旨の発言をされる。
 つまり、リストラ、失業の増大なんというのはどこ吹く風という姿勢を政府が示しているから、こんな問題が起こっているんじゃないですかと言っているんですよ。
 今、経済産業大臣が、失業の増大、そのことが所得の落ち込み、生産の減退、こういう連鎖をつくり出している、今日ではデフレの悪循環に入りかかっているという御認識を言われました。私、そのとおりだと思うんです。
 ですから、もうそろそろ、この大企業のリストラを放置していいのかどうか、真剣な吟味が今大事なときに来ているんじゃないか。企業に本当に言葉だけではなくて社会的な責任も一緒に果たしてくれないか、そういう政府を挙げた取り組みが今問われるときに来ているんではないか。このことを私は思っているんです。経済産業大臣、どうでしょう。
平沼国務大臣 大きな企業というのは、やはり今の自由主義経済の中で、その中での判断でそういう早期退職勧奨制度等をやっているわけで、それが今の雇用情勢あるいは景気、これに微妙な影を落としているということは事実です。したがいまして、やはり独立した企業の判断の中でやっておりますので、先ほど厚生労働大臣が言われましたように、私どもとしてそこを余り恣意的にやることは、私はできないとは思っております。しかし、その中でやはり大企業が負っている社会的責任というのを自覚して、そういう退職者に対しても再就職先を考えるとか、あるいはそういういろいろな方途を考えるということは、私はできるんではないか。
 そういうことは私はやっていくべきだと思っておりますし、さらに大きく言えば、この早期退職勧奨制度がどうして今こうやってどんどん行われているかということは、やはり日本の全体の景気が悪くなって、その結果でありますから、やはり国として一番それでやることは、この景気をいかによくして、そして日本の経済を活性化する、そのために努力をしていけば、私は、大きな意味でそういうものは吸収されていく、そのために全力を尽くしていかなければならない、このように思っています。
春名委員 一般論では間違ったことは言われてないと思うのですね。しかし、現実はこう進んでいるわけなんですね。
 それで、先ほど再就職をもっと進めてくれということも大事じゃないかというふうにおっしゃったんだが、雇用に対する責任を果たしてもらいたいというふうに経済産業大臣はおっしゃるんだけれども、現実に進んでいる事態は、全然そんな事態じゃないですね。
 例えば、岩手県の人口二万六千人の矢巾町という町があるんですが、アイワの生産子会社のアイワ岩手工場が一方的に三月末で閉鎖される。五百四十人が解雇されるという事態になった。当初はパート六十四名の解雇の話だった。ところが、一カ月後の四月十七日、突如、工場全体を閉鎖しますという検討を突然発表するんですね。もう町長びっくりして、近隣の七自治体で対策委員会もつくって、町長など町を挙げて、雇用の場を守ってくれ、責任果たしてくれ、こういう大運動になっているんです。
 そして、アイワも再就職に全力を尽くすと言葉では言った。ところが、やってきたことは何かといえば、たったバス一台仕立てて、解雇した労働者を盛岡の職安に連れていっただけなんですよ。何もやってないんですよ。社長は社員を前に、自分たちで早く職を見つけてくださいねとあいさつしている。びっくりして、みんな、何だこれはと。これが雇用の責任を果たすということか、こういう怒りが広がっているんですね。
 私が住んでいる高知県、四国で、四県で七つの工場を持っている会社で松下寿電子というのがあるんですね。三つの工場を閉鎖するということがこの三月に強行されようとしているんです。既に千人ぐらい下請発注中止で解雇されて、希望退職で数百人の人減らしがやられてきた。その上に三つの工場を突然閉鎖するいうて、去年の十二月に発表しちゃった。びっくりしまして、みんな、再雇用どうしてくれるんだ、今まで協力してきたじゃないか、こういう話になるわけですよね、当然。
 で、再雇用のために努力します、しかし、これはリストラじゃありません、統合するんですから、統合する工場で働ける場を設けますと言うんですよ。ところが、統合した場所が百三十キロも二百キロも離れているんですよ。だれも通えません。女性がほとんど。例えば須崎というところの工場では、三時間通勤時間がかかってしまう。結局、百五十七人そこで働いていたのが、配転して単身赴任で行けるようになったのはたった十九名だけ。百三十八名の方は泣く泣く退職なんですね。だから、これでは雇用の責任を果たしていると言えないんじゃないでしょうか。
 こういう問題が目の当たりで起こっているから、地域の経済が冷え込んで、そして不況が深刻になりデフレへと、そういう悪循環を進んでいるということを私はもう正確に見てもらいたい。社会的責任がある、頑張ってもらいたいというのは結構です。しかし、現実にはこうなっているんだから、これに対して有効な手を打たないとどうにもならぬでしょう。そのことを言っている。
 そこで、提案をさせていただきたいと思います、どうするんだという声もありますので。
 ヨーロッパの欧州委員会が、企業の社会的責任についての欧州の枠組みを促進するためのグリーンペーパーを去年の七月十八日に発表しております。これはもう経済産業大臣も厚生労働大臣も御存じだと思います。
 この発表文書を読みますと、企業はただ株主の利益を上げればよいというものではなくて、雇用、環境、取引業者、地域社会などに対する社会的責任があるし、そのことが企業の競争力にも貢献するという立場を明確に打ち出しているものです。社会的責任をしっかり果たす企業が競争力もつけていくことに必ずなるんだ、そういう位置づけをしているんですね。
 御存じと思いますけれども、イギリスでは企業の社会的責任担当大臣というのが任命されていますよ。まあ、平沼大臣がなられたらいいんじゃないかと私は思いますけれども。デンマークの社会省は、企業の社会的責任の遵守度を〇から一〇〇の数字で示すソシアルインデックスというのを開発していますしね。だから、政府レベルの社会的責任を問うということを具体的な形でやはり示してやっているわけですよ。
 私、こういうことに右へ倣えせいと単純には言いませんけれども、しかし、学ぶべきところは学んで、社会的責任と言うのであれば、具体的にこういうふうにしましょう、具体的にこういうふうに責任とってもらいましょう、もうけのためなら何をやってもいいということは許しませんよ、そういう姿勢を私は政府が示すことが今大事なんじゃないかと思うのですね。この点を平沼大臣、改めてお聞きしたいと思います。
平沼国務大臣 今、欧州あるいはその中の英国の例を引かれまして、その実情を御説明いただきました。
 やはり、企業というのは社会的な責任を負っておりますので、先ほども申し上げましたように、解雇を余儀なくされる場合でも、極力解雇をしないような努力をまずすること、そして、どうしてもそういう状況になったときには、やはり責任を持って再就職先を確保する、こういうことをまず企業は果たすべきだと思いますし、今の日本の場合にはそういった明確なルールがないわけですけれども、そういった形で厚生労働省の方でも、そういうことも視野に入れてこれから労使関係の中でも検討するというような動きもあるやに聞いておりますし、私どもとしても、そういう方向をこれからしっかりと模索をしていかなければならない、こんなふうに思っています。
春名委員 厚生労働大臣、今、平沼大臣から言われましたが、解雇をしやすくするルールはつくるつもりはないというふうに大臣はおっしゃっていますよね。整理解雇四要件という判例がありますから、これをきちっと法律にする、これしかないですよ。
 それから、工場閉鎖などを一方的に強行するようなことをちゃんと事前に自治体とか労働組合で協議するような、そういう立法措置をとるとか、具体的な姿を見せないと、私、全然、こんな事態見せられたときに、一体どうするんだろうとなるじゃないですか。もう答弁は求めませんが――したいですか。厚生労働大臣、そうしたら、解雇を規制するルールをきちっとつくるという点をぜひ答弁いただきたい。
坂口国務大臣 だから我々は、解雇ルールを明確にしなければならないということを言っているわけであります。ところが、解雇ルールを明確にすると言うと、皆さん方の方から、そんなことはやるべきではないという大変な反撃があるし、また経営者の皆さん方からも、とんでもないという話なんです。それは、経営者とそして働く人たちと、双方いろいろ意見を聞いて決めないことにはいけない。一方的なことではそれはできないですよ。
 だから、そこは皆さん方の御意見を聞いて、そして、働いていただく皆さん方が安心をして働いていただけるようなルールは何かということを考えていかなきゃならない、そう思っております。
春名委員 ですから、解雇のルールというのであれば、既に整理解雇四要件という判例がちゃんとできて、それをきちっと法令にするという以外にないじゃないかと言っているのに、そのことにはお触れにならないから、いや、これは緩くするんじゃないかといって要らぬ心配するんですから、規制をきちっとやるというルールをつくると言えばいいんですよ。そう言わないからいろいろなことが憶測が飛ぶので、そのことを申し上げておきます。
 私は、こういうリストラを続けていけば、本当に人間が粗末にされるという荒涼とした社会になってしまうということを感ぜざるを得ません。こういうやり方に対して政府が、厚生労働省や経済産業省を先頭に、やはり人間を真ん中に据えたそういう経済ルールをつくっていくということがどうしても今問われていると思うのですね。そのことを申し上げておきたい。
 さて、この無慈悲なリストラが、私は、現行の法令に違反したり、事実上の脱法行為などによって強行されていくと、これはもう絶対許されないことだと思いますが、私は、その色が非常に濃い問題として、NTTグループの十一万人のリストラ問題について、厚生労働大臣中心にお話を聞きたいと思います。
 NTTグループは、固定電話部門を担当するNTT東日本、西日本のほとんどすべての業務、故障、修理、一一六、販売等々を全部アウトソーシング、外注化しちゃうわけですね。本体と切り離してしまう。切り離した部門に勤務していた五十歳以下の労働者は在籍出向、五十歳以上の人は、全員を無理やり退職させて外注の子会社、このアウトソーシング会社に再雇用するという、まあ何という仕組みだろうと思うんですが、そういう仕組みを今強行しようとしております。
 その際に、問題は、賃金を一律に一気に三割カットしちゃうんですよ。こういう仕組みなんですね。厚生労働大臣にちょっと、その仕組みはもう御存じかと思いますけれども、一人一人の労働者にどんなことをやっているかということで、この一枚の通知書だけ。(資料を示す)
津島委員長 春名委員、これは理事の承認をとってからやってください。各理事の了解を得てからやってください。
春名委員 ごめんなさい。いいですか。――それで、時間が進みますので、ちょっと見てもらって。
 これは、東日本と西日本で、労働者一人一人に雇用形態の選択を迫る「雇用形態選択通知書」というものでございます。一月の三十一日でこれが全部締め切られたわけです。
 この「雇用形態選択通知書」ですが、「繰延型」「一時金型」という二種類あります。これが、退職をし、外注子会社への再雇用を選択する、その際に賃金三割カットをのむという仕組みになっているんですね。そして三番目に「六十歳満了型」というのがありますね、一番下。これはNTT本体に残るという選択なんですが、マーカーを引いておりますように、その選択をした場合には、全国の事業所において勤務事業所を変更されます、全国のグループ会社へ出向させられることがありますと。つまり、全国配転をしていただきます、こういう仕組みになっているんです。
 退職、再雇用して三割の賃金カットをのむのか、「六十歳満了型」というものを選んで全国配転に応じなければならないという選択肢、この二つしか用意されていないんですね。しかも、この満了型を選ぶと、本体に残るというのは全国配転に応じるだけじゃないんですね。要するに、外注化して仕事が全部なくなっちゃって、子会社に行っているわけですから、今までやっていた仕事がないんですよ、そこに。だから、これは選択の形態をとっていますが、みんな泣く泣く、退職、再雇用、三割賃金カットという方向に進んでいかざるを得ないような仕組みがここに導入されているということになっているんですね。
 五十代といったら、NTTを一生懸命支えて、設備も築いてきた、地域にも根差してきた人たちです。家族もありますし、子供もいます、お金もかかります。そういう方々に、今までどおりの仕事をNTTでやりたいと思ったら、外注化されて仕事がない、全国配転に応じなきゃいけない、こんなことが押しつけられる。一方で、同じ仕事をしようと思ったら何と三割の賃金カットをのまなきゃいけない。こんな、労働者に不毛の選択を、十一万人という規模ですよ、こういうことをさせる。私、これ、このまま見て見ぬふりしていいのかということを率直に思うんですね。厚生労働大臣、この点、いかがお考えでしょうか。
坂口国務大臣 一般論として、それぞれの企業にはそれぞれの経営方針というものがあって、いろいろなことをおやりになるわけでありますから、そのことを国が責任をどうとれと言われても、それはとれないわけなんですね。
 それで、NTTの場合におきましても、このリストラを行うということは、これはNTTにも立派な労働組合があるわけでありますから、労働組合ともよく御相談をされて、そしてやっておみえになることだというふうに思うんですね。だから、その合意なしに私はNTTもやっていないと思うんですよ。だから、そうした労働組合との合意のもとにやられていることでありますから、我々がそれをとやかく言う立場にはない、そういうふうに思っています。
春名委員 国が責任をと言われても困ると言うけれども、四六%の最大の株主ですからね。そして、一人一人の選択の問題を私は聞いているんであって、労働組合と契約がどうこうという話じゃないんですよ。あなたは労働者の生活と権利を守る先頭に立つ人でしょう、厚生労働大臣は。そういう目から見たときに、こんな不毛の選択をさせるような、そんな仕組みを導入して、唯々諾々と、五十歳という年齢になったらどんどん三割賃金カットさせられていくというような仕組みを、しかも、あなたは今、組合で一緒にやっているからいいんだというようなことを言われるけれども、絶対これは見過ごしてはいかぬ問題がありますよ。
 退職の際だって、転籍の際だって、本人の同意が絶対ないとだめでしょう。これはもう判例で確立していることなんで、改めてちょっと、これだけは確認しておきます。
坂口国務大臣 それは御指摘のとおりだというふうに思います。
春名委員 今度のこの仕組みは、退職、再雇用、私たちは転籍だと思いますが、退職、再雇用という道を選ばせるときにどんな仕打ちを労働者に迫って、事実上同意をさせているか。私はNTTの労働者、たくさんの労働者の人からもう生の話をたくさん聞いて、もう涙が出るような話を聞いてきました。
 例えば、大臣、聞いてくださいね、満了型を選んで本社で頑張りたい、賃金三割カットされたらとても生活できぬ、たくさんおりますやん。満了型を選びたいといってこの通知書を出すじゃないですか。そうするとどんな事態が待っているか。
 例えば、これは愛媛の話。本社に残る選択をしようとした労働者に、あなたは満了型を選べるほどの技術は持っていないだろう、訂正しろ。無理やり外注子会社に行かされる。
 東京の話。三割賃金カットでは家族を養えない、外注子会社へは転籍できない、そう言っていた労働者。遠くへ行くことになるぞ、いいのか。東京支店では一年、その後は遠隔地だ。家族に負担がかかるぞとおどされて、渋々外注子会社。
 福岡。外注子会社に行ったら生活ができないからと本体に残る決意をした労働者に対して、課長から二回、あなた、仕事なくなるよ。三回目には部長と課長も来て、それでいいのかねと外注子会社への再雇用を強要。
 満了型を選んだ労働者に対して、課長が職場の同僚の前で、おまえは何を考えてんねんとどなりつけられた例。いっぱいありますよ、そんな話。
 結局、選択できるように、満了型といって、政府から追及されないようにそういう選択肢をつくっているように見えるけれども、実際は全員を退職、再雇用させて三割賃金カットをのませる、そういうことをやっているんですよ。こういう事実を見て見ぬふりしていいんですか。同意ということを言っているけれども、脅迫の同意じゃないですか。私、事実を言っていますから。大臣、これは幾ら何でも、厚生労働省としては、そんなやり方はおかしいんじゃないかと、見識ある答弁を聞きたいと思いますね。
坂口国務大臣 先ほど申しましたように、NTTはNTTとしての経営戦略があっておやりになっていることであり、そのNTTの中には労働組合も、ちゃんとそれはお話しになっているだろう。そうしたお話し合いの中で進んでいる話ではないかというふうに思います。労働組合の了解なしにこうしたことが進んでいるとは私は思いません。
 ですから、そうした中で処理をされている。そのことが全体として法律に違反しているというところがあれば、それは当然のことながら、我々はそこは厳しく指導していきたいと考えております。
春名委員 先ほどから言っているように、労働組合と経営陣の契約がどうこうという話をしているんじゃないんです。労働者一人一人の権利として守るかどうかということが問われているんです、これは。そのときに無理やり同意を押しつけられて三割賃金カットをのまされるというような仕組みが、今私は一つの事実を言いましたけれども、いっぱいあるんですよ、こんな話は。
 これはもうびっくりしますよ。「社員対応マニュアル」というのが、子会社でME中東京というところがありまして、ここには、満了型を選んだ人にはこういう対応をしてくださいというマニュアルまでできているんですよ。退職、再雇用の方へ誠意を持って勧奨してほしい、必死で説得せいと言っているんですよ。こんなものまでつくってやっているんです。
 もう厚生労働大臣はよく御存じだと思うけれども、下関商業高校の、あの退職勧奨事件の、最高裁でもう決定したのがありますやん。度を超えた退職勧奨はだめだと判決が出ています。被勧奨者に精神的苦痛を与えるなど、自由な意思決定を妨げるような言動がある場合、被勧奨者がはっきりと退職しない意思を表明しているのに、新たな退職条件を提示するなどの特段の事情がないのに執拗に勧奨を続ける場合、労働者の権利として、そんなことをやっちゃだめだとなっているんですよ。
 ですから、厚生労働大臣、労働者の暮らしと命を守る先頭に立つ厚生労働大臣ですから、私は今、事実をいろいろな角度で申し上げているが、このことをきちっと調べて、こんなことをやっていいのかということを、見識ある調査もするし、意見をいただきたいと私は思うんですね。どうでしょう。
坂口国務大臣 具体的な問題を私はここでつまびらかに知っているわけではありませんから、具体的な問題についてお答えすることはでき得ませんが、先ほど申しましたとおり、お話し合いのもとにそのことは進んでいるというふうに思います。
 したがいまして、その一方の労働組合の方が、我々が約束をしたこととは違う、そういうお話があるのであるならば、我々はそれに対して対応しなければならない、そういうふうに思います。
春名委員 お話し合いで済まないから私は言っているんですよ。
 そして、私が今言っているのは、国として、法令、判例、これを守らす責任があるという角度から言っているんです。労働組合の契約がどうこうという話じゃないんですよ。国として法律を守らせる責任があるでしょうと言っているんですよ。退職の強要はできないんでしょう。それが大規模に、十一万人という規模でやられているんじゃないかと、今回は五万五千人ですけれども。
 そのことについて、本当にそんな事態があるのかどうか、私は私の目で調べてきょう提案しているわけで、そのことにきちっと対応するということを、もう一回きちっと答弁していただきたい。
坂口国務大臣 NTTの全体の問題であれば全体の問題として、我々の方もそれは話も聞かなければなりませんし、地域の話ならば地域のお話として聞かなければなりませんし、その労働組合とどういうふうな契約をしておみえになるかということを私もつまびらかに知らないわけで、そのことが守られていないというのであるならば、それは我々も法に従って指導をしなければならないというふうに思います。
春名委員 地域の話ではなくて全体の話です。そのことは言っておきますね。それで、守られていないとすればそれは問題だとおっしゃったので、私はその言葉をしっかり胸にとめておきますので、ぜひそういう対応をしていただくことをお願いしておきます。
 この五十歳になったら退職、再雇用という制度そのものは、私は、はっきり言って定年法違反だと思いますよ。六十歳定年でしょう、これ。日本の法律は六十歳以下に定年を定めてはいけないとなっているんですよ、そうでしょう。五十歳になったら全員を一たん無理やり退職させる、こんな制度を入れていいんですか、日本の法令の中で。これはどうですか。
坂口国務大臣 高齢者の雇用安定法におきましては、事業主が定年の定めをする場合には、六十歳を下回ることができないことといたしております。この場合の定年とは、労働者が所定の年齢に達したことを理由として、自動的にまたは解雇の意思表示によってその地位を失わせる制度を指している、これはもうそのとおりである。
 御指摘の事例につきまして、現在の会社では六十歳まで働くことを選択するか、あるいはそれ以前に子会社に転籍をして六十歳以降も継続雇用されることを選択するかについて、労働者の希望が尊重されるものというふうに私たちは承知をしておりますが、ここが尊重されていないというのであれば、それは私は問題だというふうに思うわけです。だから、ここが尊重されているということであるならば、高年齢者の雇用安定法には違反はしていない、そう思います。
春名委員 先ほどから私は何を言ってきたのか。要するに、労働者の希望を尊重しない仕組みをつくり上げているということを言ってきたんですよ。
 退職、再雇用、確かに六十歳まで満了型を選べるという選択肢はある。しかし、それを選択した人たちには会社ぐるみで、そんなところには仕事がないぞ、全国配転だぞ、高度な技術が要るぞ、三重のおどしをかけて、いいですか、三重のおどしをかけて退職、再雇用の方向に全部行かされるんですよ。そのことを前段で今ずっと議論してきたんですよ。それで、問題があれば調べますと今おっしゃった。だから、その上に立って私は、これは事実上の五十歳で全員を退職させる定年制じゃないですかということを申し上げているわけです。
 それで、これは今回のリストラだけでは済まないんですね。実は、ここに「構造改革に向けた業務運営体制の見直し」というNTT東日本東京支店の冊子があるんですが、これを見たら、十四年度の雇用契約で今申し上げた五十歳で退職、再雇用とやるんだが、平成十五年以降もずうっとやりますとなっているんですよ。一貫してやるんですよ、来年以降も。五十歳になったら全員退職、再雇用させる。五十歳になったら、来年再雇用させる。それやったら就業規則に書けばいいと思いませんか。しかし、就業規則に書かないんです。就業規則に書いたら五十歳定年制になっちゃいますよ、これ。だから書かないんですよ。
 どういうやり方をしているか。社長達というのを出すんですよ。社長達というのを出して、ことし、退職、再雇用、五十歳でいきます。それで、五月の一日からアウトソーシング会社ができますので、四月の三十日でこの社長達は廃止されるんです。そしてことし、九月になったらまた社長達が出て、来年も同じようにやりますと出すんですよ。
 就業規則は、そこに書き込んだら定年制でひっかかるかもしれない、これはやばい、だから社長達という名前で毎年毎年そのことをやっていくというんですね。こういうのを脱法というんですよ。私は本当にびっくりしますよね、こんなことやられて。
 私、一言言っておきますね、厚生労働大臣。一九九九年の七月九日衆議院労働委員会、渡邊信さんという職業安定局長、こう答弁していますね。一般的に言いまして、一定年齢になったときに退職を事実上強要するというふうな行為があれば、事実上強要するですよ、よく聞いてくださいね。事実上強要するというような行為があれば、それは高齢法、つまり定年法、高齢法の脱法行為になることは十分あり得るかと思います。なかなか大事な答弁しているんですね、これ。
 だから、一般論でそういうものがなると、事実上退職を強要するという仕組みになったらまずい、脱法だと。まさにこの職業安定局長が言われているような仕組みを、NTTという八兆八千億円も内部留保をため込んでいる物すごい企業がこんな仕組みを投入して、三割の賃金カットをどんどんやっていく。
 塩川大臣、寝ておられるけれども、塩川大臣はいいことを言っているんですよ。去年の十一月の予算委員会で、もうお忘れになっているかもしれないけれども、NTTのリストラは十万人だ、これはえらいこっちゃと私も見てみた、そしたら、これは何のことはない、人を動かして賃金下げるだけじゃないかと言っているんですよ。私は言い得て妙だなと思ったんですよ。
 そのとおりなんです。人を動かすことによって、退職、再雇用というとんでもない制度を導入して法の網をくぐって、六十歳定年制も踏みにじって、そして三割賃金カットを強行する。こんな仕組みを、八兆八千億円も内部留保を持っている日本の最大の企業が導入して、十一万人リストラやっている。見て見ぬふりをしていいのか。六十歳定年法にも違反する。そういう問題として、シビアにシビアに、厳しく厚生労働省はこれに当たる必要がある。いかがですか。
坂口国務大臣 先ほど申しましたように、法令に違反をしていることがありましたら、厳しく私の方は指導いたします。
春名委員 私、最後に申し上げますが、このような中高年の労働者に対する人権侵害とか差別を厳しく禁止せよと勧告したのが国連の社会権規約委員会の勧告ですよ。厚生労働大臣、昨年八月の日本への勧告で、「委員会は、労働者は四十五歳以降、十分な補償なしに、給与を削減され、あるいは解雇される恐れがあることに懸念を表明する。」そして、委員会は締約国日本に対し「四十五歳をこえる労働者が元の給与水準及び雇用の安定を維持することを確保するための措置をとることを勧告する。」こういう非常に厳しい勧告がされた。人権侵害は許さないということを言われたんですね。
 さて、政府はこの勧告を受けて、ことしの一月の八日、厚生労働省自身が、その内容の当否等を十分に検討の上、適切に対処していきますということを答えておられます。
 私は、国連勧告に適切に対処するというその試金石がこのNTTの問題だと思いますよ。五十歳でいわれのない差別を受けて、五十歳で労働基準法三条が言っている不平等な取り扱いをやられて、そして、一番大事な年齢じゃないですか、事実上の定年をしかれて三割賃金カットをのまされる。こんな仕組みを日本の企業がまねしてつくったらどうなりますか。まさに、国連が言っていることと正反対の方向に進んでいるじゃないですか。もうこういうことはやめましょうよ。人間を大事にしましょう。人間を大事にする経済運営をやりましょうよ。雇用を守る。
 大臣、最後に見識ある答弁を聞いておきたいと思います。きょう私は、詳しく、私自身が知っていることを包み隠さず事実を申し上げたつもりです。そして、違法性があるならば問題として考えていかなきゃいけないと言われました。私は、そういうことを具体的に言いましたので、この質問の中で言ったことをしっかりと厚生労働省として調査もし、違法、脱法は正していく、そういう見識ある答弁をいただきたいと思います。
坂口国務大臣 先ほど申しましたように、組合との間のお話し合いというのは、当然のことながら行われているものというふうに私は理解をいたしております。しかし、組合もいろいろでしょうから、それはその中でいろいろの違いがあるのかもしれません。しかし、一番中心の組合との間で立派ないろいろのお話し合いがされていることというふうに思っております。
 しかし、そうはいいますものの、全体として、もし法に反するところがあれば、それは私たちは厳しく指導していきたいと思います。
春名委員 強く申し上げまして、質問を終わります。
津島委員長 これにて春名君の質疑は終了いたしました。
 次に、阿部知子君。
阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
 皆さんにお知らせしてある質問の順番を、恐縮ですが、金融大臣のお時間の関係で、最初にデフレ対策のことから触れさせていただきます。
 まず、竹中経済財政担当大臣にお願いいたします。
 昨日、小泉首相の方からの御指示で、デフレ対策ということで、先ほど五十嵐委員の御質問にもございましたが、不良債権処理の促進、日銀による一層の金融緩和、株式市場の活性化、中小企業対策の四点をお述べになりましたが、一応この四点でよろしゅうございますでしょうか。竹中大臣にお願いいたします。
竹中国務大臣 先ほど委員御指摘の問題に加えて、金融政策の話をさせていただいたと思いますが、金融を入れて五点ということになると思います。
阿部委員 そういたしますと、金融システムの安定化ということを先ほど確かに五点目におっしゃいましたが、その一つの解決策として、公的資金の注入というチョイスもあるかと存じます。
 そして、もしも公的資金の注入、先ほど五十嵐委員の御質問では、今はその判断の時期であるという御質問もございましたし、私もそう考えておりますが、もしもこのことを竹中大臣が実施なさるとした場合に、このことが銀行救済だけに終わらないための諸策、これは先ほどの御質問にもございましたが、かつて公的資金の注入もございましたが、それがほとんど、現在また同じような危機がめぐってきているという中で、今度新たに公的資金の注入をやるとすれば、そのことが有効に運営されるための諸策について、まず竹中大臣の御所見を伺いたいと思います。
竹中国務大臣 これは委員よく御存じだと思いますが、銀行監督の行政は、御担当は柳澤大臣でいらっしゃいます。私の方は経済政策全体の取りまとめということになるわけでありまして、そういったことも含めて議論はしなければいけないというふうに思っておりますが、これは基本的には、政策の中でも非常に特殊な、当局がある問題であります。この銀行監督の当局が現実に応じて適正に御判断されるという問題だと思います。
阿部委員 私の御質問はもう少し意味がございまして、今、日本の経済状況を考えますと、空洞化を含めて経済そのものの実体が陥没しておるということで、そのことについてやはり経済担当の竹中大臣にあってもお考えがなければ、このことはまた同じような公的資金の注入だけに終わるのではないかという懸念を述べさせていただきました。ただし、今御答弁でそれ以上の内容が得られませんと思いますので、大変恐縮ですが、また引き続きにさせていただきます。
 同じ御質問を柳澤金融担当大臣にお願いいたします。
柳澤国務大臣 金融システムの安定ということを今度のデフレ対策でよく検討するようにということを総理から指示をされたわけですけれども、もちろんその中に、阿部委員の御指摘になられるような点というものがここに含まれていないんだというようなことを言い張るつもりはないんですけれども、しかし、ペイオフを控えて、その前にきっちり金融の検査をやり、それで監督もして、そうして四月以降の金融機関についてはみんな健全なものにしていく。つまり、金融検査監督をしっかりやって、そういう体制をつくろう、つくれ、こういうこともまたそこに含意されているというふうに、これも排除する必要はない。つまり、金融システムの安定というものを広く総理はおとりになっているんだろう、こう思います。
 したがって、阿部委員の御質問に答えますと、今まで言っているのと違って、柳澤も何か頭のどの辺かにそういうものが念頭にあるかのようにとられるということにもなりかねません。
 我々は、本当にしっかりと金融機関を見ているんです。今、竹中大臣がいみじくも広い範囲で言ってくださったんですが、まさに当局なんですね。金融監督当局なんです。まさに当たっている部署なんですね。そういうことを責任を持ってやらせていただいているということなものですから、そういうことは今私どもの認識の中には入っていないということをかねて申し上げているわけでございます。
 なお、資本が入った場合にそれがどういうところに使われるかということは、これは、お金に色目がついておりませんので、資産の側ではいろいろなことに使われるというか、そういうことでございます。資本ということですから、それが、入れた分だけが、変な、すぐ破綻をするようなところに融資されちゃって、それですぐ不良債権になっちゃうというのではこれはもう話にならないわけでございますが、そうでない以上、資本として、危機というかリスクに備える基盤になるということが一般論として言えるかと思うのでございます。
阿部委員 この金融システムの不安定ということについては、柳澤金融大臣にも私が財務金融の委員会でも何度も御質問申し上げて、お考えとして、現段階で公的資金の注入は選択肢の遠い一つにはあろうかと思うが、金融監督庁から金融庁になり、諸般の業務を行う中で、今は銀行の健全性は自己資本比率を初めとして保たれておるんだという御発言は何度も伺いました。
 ただしかしでございます、そうした御認識と実態がずれているということもあるのではないかということがずっと指摘されており、そして、このデフレという認識も今の政府内でも一致した中にあって、私は、あえて言えば、そのときにとり得る一つのチョイスとしてそれを選択して、なおかつその先をどうなさるかというふうに非常に好意的に聞いたつもりでございますが、現段階で考えていないというお答えですので、また引き続き委員会で詰めさせていただきます。
 では、竹中経済財政担当大臣と柳澤大臣にはどうもありがとうございました。
 続いて、塩川大臣にお願いいたします。
 このデフレという事態、かなり国民は深刻に受けとめておりますし、塩川大臣にあってもそのようだと思いますが、再度、失礼ですが伺わせていただきます。
 現在の経済状況認識について、このことはもちろん直接の担当ではございませんが、不良債権処理も含めて、不安定性があるのであれば公的資金の注入ということもあり得るという判断をなさるのかどうかということも含めて、もちろん直接の担当部署でないのは存じておりますが、塩川大臣の御判断というのは現政府の中でも重要と思っておりますので、現状認識についてお伺い申し上げます。
塩川国務大臣 私は、必要あれば公的資金を注入することもやむを得ない、むしろ、注入することによって、解決を促進し、経済の活力をつけていく上において有効な手段になってくると思っております。
 ただ、その場合、先ほど来御質問ございますように、三年前、金融再生法に基づきまして金融機関の体質改善のためにやった公的資金の注入と、今回やらなければならないとするならば、その意味合い、位置づけといいましょうか、効果というもの、ねらっていくところはおのずから違ってくるということも言えると思います。その点を十分に勘案し、御心配しておられるように、また食い逃げされるんじゃなかろうか、そんなことのないようなことをきちっとした上での注入ということはもうもちろんのことだと思っております。
阿部委員 閣内不一致を言う声もございまして、私も、今の御答弁だと、柳澤大臣と塩川大臣、不一致があると認識いたしますが、ただしかし、今の塩川大臣の御発言は、政治家としてはきっちりとした見識をお持ちと思いますので、きょうの段階では、そうした前回の公的資金の注入の二の舞を踏むことのないような、新たな展望を持っての政策を考えているというふうにお答えを受けとめさせていただきます。どうもありがとうございました。
 引き続き、坂口厚生労働大臣にお伺いいたします。
 今塩川財務大臣にお伺いいたしましたような現在の経済情勢認識、デフレということが、デフレスパイラルに陥るかもしれないというふうな厳しい経済情勢下にあって、私は、今回小泉首相が頑迷に固執された、サラリーマンの自己負担三割を先に決めて、痛みを先に決めて、その後改革を考えていこうというやり方は、政治家として大きな誤りがあると認識をしております。
 このデフレ下に、あるいはデフレスパイラルに陥らんとするときに、あえて自己負担、もっと痛みを、この痛みを前面に立てて政策を遂行なさる、このことが果たして正しい政治的判断や否や、坂口厚生労働大臣のお考えを伺います。
坂口国務大臣 経過はいずれであれ、私もそれに合意したことには間違いがございません。そして、これから先の医療制度を考えていきますときに、やはり、人生九十年時代を迎えますこの世界の中で、医療制度をどういうふうに持っていくかということを今は真剣に考えなければならないときを迎えているというふうに思っております。
 そうした意味で、平成十五年四月一日からということでございますが、その三割自己負担の前に我々のやらなければならないことがある。それは、国民の皆さん方から御理解のいただけるような改革、抜本改革をなし遂げて、そしてその暁において三割自己負担を皆さん方にお願いするという手順を間違ってはならないというふうに自覚をしている次第でございます。それを来年の春までに責任を持ってやり遂げたいというふうに思っておりまして、私自身、そのことに対して責任を持ってやり遂げたいと自覚しているところでございます。
阿部委員 そういう決意と認識がおありなことがわかった上で、でもなおかつ、今サラリーマンに負担を強いることを前面に押し立てて、それが譲れないまず第一歩であるというふうに政策として打ち出されることの是非を私は伺いました。
 なぜならば、一九八四年にサラリーマンの負担が一割負担になりましたときに、やはりそのときも同じような受診抑制が起こりまして、これは、当時日雇い健保というのがございましたが、日雇い健保の方々の受診抑制が一番きつうございました、一八・四%程度低下。一般的には受診抑制は四・七%でございましたが、やはり明らかに、自己負担増は、同じ職種の中でもより所得の低い、階層的にきつい部分に大きな抑制を来します。
 そして、今回、二割負担になりましてから、平成九年だったと思いますが、まだわずか数えて四年でございます。今回三割負担を打ち出されるのであれば、二割負担になさった後のサラリーマンの受診抑制の現状、そして、本当に悲しいことに、この層は今一番自殺が多く、そして私の身の回りでも四十代、五十代で病に倒れる友人が後を絶ちません。この国を一番支える働き手の皆さんでもあります。やはり私は、物事と施策を間違えば大きくこの国を滅亡させるというほどに今回の改革は改悪である、時局を考えましても、それから及ぼす影響の深さを考えましても非常に重大なことと思っております。
 坂口厚生労働大臣にあっては、一割負担のときからもう既に政治の世界におられたやもしれませんが、一割負担、二割負担、三割負担と上ってきたサラリーマンの自己負担の中で、果たして勤労者はどのような受診状況、疾病状況、そして本当に今、自殺者が三万七千人に及ぶか、こうした時局で、このことがなお打ち出すべき当初の政策であるとお考えでしょうか。もう一度お願いいたします。
坂口国務大臣 前回の、一割から二割になりましたときに、その翌年の受診抑制がありましたこともよく存じております。
 そうした過去の問題につきまして、我々はよくそこを見なければならないというふうに思いますが、過去を見ると同時に、やはり前方を見て将来のことも考えなければならないわけでございます。それらを両方にらみながら、どうしたらいいか。この急激に進みます少子高齢社会の中で、現在の皆さん方が医療制度を享受できるのと同様に、これから先の皆さん方も同じように医療制度を受けることができるようにするためにはどうすればいいか、現在と将来とを両方見ながら決めていかなければならないというふうに思います。
 したがいまして、そうした今御指摘の点も十分に踏まえながら、できる限り低所得の皆さん方には御負担が多くならないように、低所得の皆さん方に対する配慮も行いながら進めていきたいというふうに思っているところでございます。低所得のところも、今までは〇・七%ぐらいのところでございましたが、それを一五%までその枠を広げるといったようなこともその中に含めているところでございます。
阿部委員 ただいまの御答弁ではございますが、実は、二割負担に引き上げましてから引き続いて三年間受診抑制があり、いまだに当初の受診率には回復しておりません。このことは、私が何度も申しますように、この国を支える一番働き手の方々が早期に受診し、健康管理をし、よりよい家庭生活、職場生活、そして、あえて言えば老後の生活までを本当に人間らしく生きるための諸権利を奪っていることであると思います。
 加えて、先ほど春名委員の御質問にもございましたが、今この層を直撃するリストラのあらしは本当にひどいものでございます。しかるに、予算の中で、どなたかの質問にもございました、雇用に対して充てられた対GDP比はわずか〇・五%と、本当に、働くことの保障もなく、病、体、健康についての保障もなく、果たしてこの国が立ち上がれるのか否か、よくよく坂口厚生労働大臣から首相に御進言いただきたいと思います。私は愚かしいにもほどがあると思います。
 そして、果たして今このことを決めておかなければ将来の御老人あるいは弱者に対して配慮を欠くことになるか否かという点に言及されましたので、そのことについても私は御質問がございます。
 実は、今回の医療制度改革の中で、サラリーマンの三割負担もさることながら、それ以前に、ことしの秋から、御高齢者の一部、六百三十万以上の年収の方について、患者本人二割負担にしていこうという案がございます。もちろん、この件はまだ確定までに数カ月を要するものかもしれませんが、これは御高齢者が、それほど論じられておりませんが、まず直撃されております。もちろん、先ほど申しましたサラリーマン層にもきつい改革でございます。
 そして、この御高齢者で、ある収入以上の方は窓口負担を一割じゃなくて二割にしようという考え方は、収入によって窓口負担が変わるという、これまでの保険制度ではなかった考え方でございます。これは、保険料を払うところで既に収入に応じた保険料を払っておるわけです。かてて加えて、窓口でも、あなたは収入があるからお払いなさいという考え方をとることは、私どもの依拠している保険制度の考え方からは大きく逸脱してくるもとをつくると思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
坂口国務大臣 今御指摘をいただきましたことはそのとおりでございまして、そのとおりでございましてというのは、事実関係はそういうことでございますが、やはり高齢者といえども、所得のある皆さん方に対しましてはそれ相応の御負担をいただかなければならないという考え方に立っております。お若い皆さん方の平均賃金を見ましても、御夫婦での六百三十万という額に達していない皆さん方にそれ応分の大変な御負担をいただいているわけでございますから、高齢者といえども、所得のある皆さんにはどうかひとつ御負担をいただきたい、そしてみんなで支え合う社会をつくっていきたいというのが基礎的な考え方でございます。
 したがいまして、その皆さん方にも、それは一割にしろという御意見もあることも十分に存じておりますが、全体としての財政を考えましたときに、高額の所得の皆さん、まあ高額と言えるかどうかわかりませんけれども、やはり、お若い皆さん方と比較をしてそれなりの所得をお持ちの皆さん方に対しましてはお願いをしたい、そういう考え方でまとめた次第でございます。
阿部委員 そのことは、一見平等に見えて、しかしながら、続いて、高額なサラリーマンには窓口負担も多くしましょうという考え方にも相通じてまいります。
 何度も申しますが、保険制度は、自分が払う保険料のところで収入に応じた拠出、お金を掛けているということでございますから、その窓口負担を収入に応じて変えていくという考え方自体が私は問題であろうというふうに申しました。
 そして、それが、今おっしゃったことはすべて、サラリーマンの本人負担も、ある程度の収入のある御高齢者負担も、みんなみんな国民、患者負担でございます。しかしながら、例えば御高齢者の医療にあっても、日本はある意味では破格に少ない国庫負担でこの医療保険財政を賄っておると私は思っております。ちなみに、アメリカではメディケア、メディケードという形で、御高齢者のメディケアは全額税で負担されております。その中間をとった我が国が、保険と税のミクスチャーという形で始まったわけですけれども、それでも、今回の三方一両損には国庫負担増はございません。こうした中で、今、私が何度も申しますのは、この経済状況下で本当に国民にこれ以上負担を強いるようなことから始めるべきかどうかという、政策、政治、高度な判断でございます。
 そして、あわせて、私は、坂口厚生労働大臣でなくてはできないことを実はしていただきたいと思っております。こうした不毛な政策よりも、むしろ、今一体この社会の需要はどこにあるかということでございます。あるデパートの店長が上から下まで自分のデパートを見て歩いたが、買いたいものはなかったということが出ておりますように、今の消費デフレ、このことの中にあっても、実は、健康ということに対してだけはいや応なくある程度の支出をしていかなくてはならない。非常に、その意味では、より良質なものを提供することによって、ある意味でそこに新たな消費も喚起できる分野です。
 坂口厚生労働大臣にお伺いいたしますが、日本の医療費の対GDP比、アメリカでは一三%、日本が七・六%と思いますが、この数値についていかにお考えでしょうか。
坂口国務大臣 単純に比較をいたしますと日本の方が低いことは、今御指摘のとおりでございますが、しかし、全体の保険制度のあり方やあるいは社会全体の仕組み等も踏まえまして、全体でやはり比較できることと比較できにくいこととがあるわけでありまして、単純にその数字だけを比較することは私はできないというふうに思っております。
 全体で見ました場合に、日本の医療は確かに少ない財源で大きな効果を上げていることは事実でございます。このことは、一方で私は評価をすべきことであるというふうに思っておりますが、しかし、さりとて、何でもかんでも出さなくてもいいかといえば、それは、必要な部分にはやはりお願いをしなければならない。それは塩川財務大臣にもそういうふうにお願いをしているところでございます。
阿部委員 私も坂口大臣も医療分野におりましたから、日本の医療が、例えば世界一低い乳幼児死亡率とか御高齢者の長寿とかを達成してきたこと、そして、それも比較的コストを安く、比較的でございます、達成したこと、それから国民皆保険制度をしいてアクセスをよくしたことの二つを評価しながら、しかしなお欠けているものは何かと考えたときに、いわゆる医療の質の問題であろうと。
 多発する医療ミスということはもちろん、三分診療、さまざまな問題が質の面ではあろうかと思いますが、私は、今あえてこの質問をいたしましたのは、坂口大臣もずっと医療をやってこられた中で、何が一番我が国の医療の質をよくしていくことか。とりわけ、圧倒的に少ない医療労働者、特に看護婦さんの比率で見れば、同じベッド数に対してアメリカの五分の一、イギリスの三分の一という形で行われている医療の実態の中で、逆に言えば、これからますます少子高齢社会で必要となってくるものは、多くの介護や看護や医療の担い手である。この人的な要素、これは言葉をかえますれば雇用の創出ということにもつながってまいりますが、日本では総労働人口のわずか五・六五%が医療従事者でございます。これが、先ほど竹中大臣のお答えにもありましたが、これから雇用創出をしようといった場合に、本当に高齢社会に見合うような雇用創出と経済効果、そして国民の納得できる医療を提供することができるという一つのかぎ、高齢社会のキーになるマターと私は思っております。
 そこで、坂口厚生労働大臣、あえて言えば、やみくもに医療費を抑制しよう、抑制しよう、私は、必要な抑制はすべきと思います。ただし、今の質をこのままにしておいて抑制し、弱者に負担をかけて医療から遠ざけるような方法をとるよりも、今の我が国の高齢社会に本当に見合う医療の姿、それは、働く人々の数の問題も含めてどのように考え、それが医療経済あるいは日本の経済にどのような貢献を加え得るべきかということも含めて、坂口厚生労働大臣であれば御提言できる立場と思い、強く期待するわけです。
 先ほど申しましたが、我が国が今後高齢社会ということを控えて、今非常に少ない人数で、ある意味ではGDP比も低くやっておる医療ということについて、もう一度、坂口厚生労働大臣の御見識を伺います。
坂口国務大臣 医療財政全体は一兆円ずつ毎年ふえてきているわけでありますから、ここに対してどう抑制していくかということを考えなければならない一方において、人の配置におきましては、今、阿部委員が御指摘になりましたとおり、ここはやはり積極的に配置をしていくべきだというふうに私も思っております。しかし、これを達成いたしますためには、どうしても他の分野でむだがあるところは積極的にこれを排除していかなければならないというふうに思います。その中には、厚生労働省自身がやはり痛みを感じてやらなければならないことも多いと思っております。
 それから、現在の診療報酬体系におきましても、もっと節減すべきところはある。現在の診療報酬体系の中で何が一番大事なのか、その報酬の一番の基礎になるところ、一番の基準になるところは一体何なのか、不明な点がございます。これらの点も明確にしながら節減すべきところは節減をして、そして、そこから出てきました財源は人の配置の方に回していくべきだと私も考えております。
阿部委員 今、日本の国の中で一番不足が言われております小児医療は、薬剤の投薬量が少なく、検査もほとんどなく、ただし人手がかかるということで、非常に医療経済的にも片隅に押しやられ、結果的に小児が入院できる病床数は圧倒的に少なく、また、小児科医のなり手も少ないという中で、逆に少子高齢化の喫緊の課題となっております。
 そう考えましたときに、私は、物事は抑制すべき順番というのを間違えれば大きな禍根を残す、診療報酬上はもっと人手に厚く、これがまた新たな雇用の創出にもなる、国民の納得にもなるということで、坂口厚生労働大臣に、より本当に国民の医療という観点に立った見識を示していただきたい。
 あわせて一言お願いがございますが、いわゆる研修医問題においても、アメリカにあっては研修医一人につき十万ドルの予算がつき、その中で四万ドルが給与に払われ、残り六万ドルで教育のさまざまなスタッフが整えられております。
 我が国においても、平成十六年度から研修医の義務化の中でございますが、予算措置は一切明らかになっておりません。国民の医療、それから医療従事者の質の向上、この双方の観点から、研修医問題についても、また次回、私が御質問を重ねさせていただきます。
 時間の問題がございまして恐縮ですが、農水関係の質問に移らせていただきます。
 まず、武部農水大臣にお伺いいたします。
 先回の予算委員会でも私がお伺いしたことですが、いわゆる狂牛病の発生、伝染、伝染と申しましょうか、伝播問題についてでございます。
 昨日の夕刻の報道にもございましたが、イタリア政府の肉骨粉が加圧不十分でプリオンの混入等があるやもしれないという報道も載ってございますが、この件について、現下の農水省の対応をまずお教えくださいませ。
遠藤副大臣 阿部委員からは大臣への御指名でございますが、私、イタリアへ行ってまいりまして帰ったばかりでございますので、その件に深くかかわりを持っていますので、お答えさせていただきたいと思います。
 今回の訪欧に当たりまして、日程を組むに当たりましては、イタリア政府との日程を組むのに非常に手間取りました。そこで、出発するに当たりまして、文書で私の訪問の目的を告げたところであります。それはどうしてかというと、再々この席やあるいは農水委員会でも御指摘があり、かつまた御答弁申し上げたように、イタリア製の肉骨粉には疑わしきものというか、完全にシロとは言えない部分があった。それを確認に行ってまいったところでございます。
 シルキア保健大臣とお会いいたしました。実に誠実な方でありました。一緒におられた獣医局長さんから聞きましたところ、二月五日に我が国から出した文書に対して、異例の早さですが、二月八日付で返信がありました。その中身は、加圧していなかった、いわゆるOIE基準によって、百三十六度、三十分、三気圧というその三気圧の部分、湿熱による加圧がなかったという回答であったわけであります。
 そこで、これまで加圧しておったという公式文書をよこしたものとの整合性はどうなんだということをお聞きしました。しかし、先方も大臣でございますから、私は、イタリア政府を詰問したり責任を問うたりしておるのではない、真実を知りたい、実際はどうだったんだと。そうでなければ、ルート解明や感染源の追及にも至らないのではないか、お互いの国のためにも真実を話してくれということをお願いしてまいったところ、そのような回答でした。
 ただ、しかし、ルートをこれで確定したとか、これが感染源だということを特定できたというものではないのでありまして、これから検証しなきゃならぬと思っています。
阿部委員 新聞報道等の域を出ませんので、私は、それがもしもイタリアからの肉骨粉にそのような可能性があった場合、次に農水省としてどのようなアクションをなさるかということをお伺いしたかったのですが、また次回、御答弁を求めたいと思います。
 そして、同じくオランダルートの問題も再度お伺いいたします。
 この件につきましても、さきの予算委員会で私が質問しまして、今オランダからの報告を待っておるということでしたが、この件については、武部大臣、いかがでしょうか。
武部国務大臣 一例目から三例目までの農家において、同一の銘柄ではございませんが、共通の成分が含まれている代用乳が使用されているということが判明したわけでございますが、その原料として、BSE発生国であるオランダから輸入された動物性油脂が使用されていたということでございました。このため、担当官をオランダに派遣いたしまして調査を行ったところでありますが、現地調査においては、当該動物性油脂は大部分が牛脂とカゼインとを混合した粉末油脂であったことが確認されまして、牛脂については、BSEの感染性のない牛の脂身であるとの回答を得たところでございます。
 現在、持ち帰った調査書類によりまして、BSE原因究明チームにおきまして、このことが確認できるかどうか等についてさらに詳細な分析を行っているところでございますが、日本への輸出には複数の粉末油脂の製造工場四社がかかわっていること、さらに、その粉末油脂の製造工場は複数の動物油脂の製造工場から原料を調達していること、また、当時原料を供給した工場で既に閉鎖されているものもあることなどから、調査書類に基づく製造、流通過程の分析に時間を要していたところでございます。
 現在までのところ、我が国の感染牛の生年月日から推測いたしまして、関連の可能性の考えられる九六年五月以前に輸入された粉末油脂の数量、輸入時期、粉末油脂の製造工場、原料油脂の製造工場等が判明したところでありますが、さらに、原料油脂への不純物の混入可能性の有無等について分析を進めているところでございます。
 阿部先生からは質問主意書でもこのことの御指摘がございまして、大変おくれていることを申しわけなく思いますが、なお、二月中には分析を終了できるよう事務方に作業を急がせている次第でございます。
阿部委員 いずれにしましても、この感染源の問題は早急に解決していただかないと、いつまでたっても不安が消えていかないという悪循環を生むものと思います。早急な御返答を私の方からもお願いいたします。
 引き続いて、雪印問題に移らせていただきますが、これもさきの予算委員会で私が農水省の須賀田政府参考人にお尋ねしたところで、ちょっと事実と反する御答弁がございましたので、まず訂正をお願いしたいと思います。
 私が、畜産事業団で検品にかかわる人数が何人ですかという問いをいたしまして、須賀田参考人の方から百八十人ですという御答弁でしたが、これは私が申しました十人ということでよろしゅうございますでしょうか。
須賀田政府参考人 前回、先生の御質問で、検品体制はどうかということで、検品に従来当たっておりましたのが農畜産業振興事業団でございましたので、その職員数百八十人とお答え申し上げました。前の体制で当たっておりましたのは、実際には百八十人のうちの十三名でございまして、まことに申しわけございませんでした。陳謝して是正させていただきます。
阿部委員 私が問題にいたしましたのは、わずか十人とか十三人の体制で本当に国民の税金を使った買い取り作業が正しくできるのかどうかという点でございました。
 あに図らんや、きょうの新聞にも出ておりますが、肉の買い取り申請業者の名すら把握しないまま、畜産事業団では検品をやっておったと。ここに書いてございますが、食肉業者名の記入欄がないもので検品をなさっておったということでございますが、この点も確かにそうでございましょうか。
須賀田政府参考人 この事業は、たしか十月二十六日に実施要領を定めまして、十月十七日以前の肉を急いで市場隔離するという事業でございましたので、助成の主体が全国団体といたしまして、会員から適正に買うであろうということを一定の前提として仕組んだものでございます。
 したがって、買い上げる全国団体が所管している在庫証明、これでチェックしていくという体制をとっておったわけでございますけれども、今般ああいう事件が生じましたので、大臣からの強い指示もあり、検品体制を強化せよということで、団体に対しては自主点検を求めましたし、我々もそれまでの検品体制を格段に強化いたしまして、全倉庫、全ロットを見る。さらに、そのロットの中で少しでも問題のあるものがありましたら全箱をあけて見るという体制にいたしまして、この人員も、一チーム五人から七人のチームを十から十五チーム一日当たり平均で編成をいたしました。今後、検品状況によりさらに増加する可能性はあるんですけれども、延べ七千人を動員いたしまして、順次全国の倉庫の検品に赴くという体制をとったところでございます。
阿部委員 それでも、食肉業者名の記入がなければ、その検品しているもの自身がどこから来たかわからないと思いますが、この食肉業者名の記入がないということについてはどのように改善されたのですか。もう倉庫に預かってあってそれに記入がないのですから、その段階はどういうふうに指導されているのですか。
須賀田政府参考人 先ほど申し上げましたように、この事業を仕組んだ当初は、短期間で市場隔離を行うということで、その事業実施団体が末端会員等から買い上げるに当たりましては、両者間に一定の信頼関係が存在するということを前提として仕組まざるを得なかったということで、事業の実施上、特に会員等の名称まで求めることはしなかったわけでございます。
 ただ、今回こういう事件が発生をいたしましたので、現在、この事業実施六団体を通じまして、その牛肉の買い上げ先となっている各会員等の名称と数量につきまして把握して報告するようにということをしております。相手方のあることでございますので、各会員の同意が得られましたら公表というようなことにしたいと考えておるところでございます。
阿部委員 ただいまの御答弁にもやはり少し勘違いがあるのではないでしょうか。
 農水省は、当初は食肉業者に牛の解体日時を示す食肉処理証明書の添付も求めたが、一週間後に農水省側が業界団体に示したひな形では、そのもともとの業者の解体年月日の証書が要らなくなっていた。当初は求めていたものを、農水省が途中でひな形に入れずに示したために起きていることですね。
 それから、私の時間の関係で続けて言わせていただきますが、やはり、国民の税金二百九十三億を用いて行っている事業を管轄する農水省といたしまして、余りにもずさんの一言に尽きると思います。私は、雪印も問題がございますでしょうが、やはり国の行政そのものがきちんとしたチェック体制にない、後手後手に回るということが不安を増大させ、社会不安まで来しているということについて、しかるべく農水省そして担当大臣がきちんと御認識いただきたい。
 御答弁を最後にお願いいたします。
武部国務大臣 断腸の思いで国民の血税を使わせていただいたこの事業でございます。かような悪質きわまる事件が発生してしまったということにつきましては、国民の皆様に私は心からおわびを申し上げなければならない、かように存じている次第でございます。
 この事業は、ただいま局長から御説明申し上げましたように、もう短時間に一気にやらなければならないという、そういう必然性がありました。したがって、団体等、各会員の皆さん方にも善意を前提で御協力をいただくということでやったことでございます。
 しかし、かようなことが起こったということで、今後、検品についても、全倉庫、全ロット体制をしいて、今お話のありましたように、七千人、まだこれはふえるかもしれません、厳正を期して努力をしていきたい、かように考えておりますので、御理解のほどお願いいたしたいと存じます。
阿部委員 須賀田参考人の御答弁の、例えば検品体制にかかわる人数の誤解、御存じないということ一つとっても、農水行政というのは極めて、本当に安易にずさんに行われていると私は思います。そのことが国民の不信と不安と混迷を深めているということを再度指摘して、農水大臣にも深い御認識の上に立った行動をお願いするものです。
 ありがとうございます。
津島委員長 これにて阿部君の質疑は終了いたしました。
 次回は、明十五日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時十分散会


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