衆議院

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第17号 平成14年2月25日(月曜日)

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平成十四年二月二十五日(月曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 津島 雄二君
   理事 伊藤 公介君 理事 木村 義雄君
   理事 北村 直人君 理事 小林 興起君
   理事 藤井 孝男君 理事 枝野 幸男君
   理事 城島 正光君 理事 原口 一博君
   理事 松本 剛明君 理事 井上 義久君
      伊吹 文明君    衛藤征士郎君
      大原 一三君    奥野 誠亮君
      亀井 善之君    栗原 博久君
      小島 敏男君    小西  理君
      近藤 基彦君    高鳥  修君
      丹羽 雄哉君    野田 聖子君
      葉梨 信行君    萩野 浩基君
      林 省之介君    細田 博之君
      三塚  博君    宮本 一三君
      持永 和見君    森岡 正宏君
      八代 英太君    山口 泰明君
      赤松 広隆君    五十嵐文彦君
      池田 元久君    岩國 哲人君
      河村たかし君    筒井 信隆君
      中沢 健次君    野田 佳彦君
      松野 頼久君    山谷えり子君
      青山 二三君    赤松 正雄君
      佐藤 公治君    高橋 嘉信君
      達増 拓也君    中井  洽君
      中塚 一宏君    木島日出夫君
      佐々木憲昭君    中林よし子君
      阿部 知子君    菅野 哲雄君
      横光 克彦君    井上 喜一君
    …………………………………
   内閣総理大臣       小泉純一郎君
   外務大臣         川口 順子君
   財務大臣         塩川正十郎君
   厚生労働大臣       坂口  力君
   農林水産大臣       武部  勤君
   国務大臣
   (内閣官房長官)     福田 康夫君
   国務大臣
   (経済財政政策担当大臣) 竹中 平蔵君
   内閣府副大臣       松下 忠洋君
   外務副大臣        植竹 繁雄君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   厚生労働副大臣      宮路 和明君
   農林水産副大臣      遠藤 武彦君
   政府特別補佐人
   (公正取引委員会委員長) 根來 泰周君
   政府参考人
   (内閣府大臣官房審議官) 薦田 隆成君
   政府参考人
   (外務省欧州局長)    齋藤 泰雄君
   政府参考人
   (財務省関税局長)    田村 義雄君
   政府参考人
   (厚生労働省老健局長)  堤  修三君
   政府参考人
   (厚生労働省保険局長)  大塚 義治君
   政府参考人
   (社会保険庁次長)    小島比登志君
   政府参考人
   (農林水産省大臣官房長) 田原 文夫君
   政府参考人
   (農林水産省総合食料局長
   )            西藤 久三君
   政府参考人
   (農林水産省生産局長)  須賀田菊仁君
   政府参考人
   (水産庁長官)      木下 寛之君
   予算委員会専門員     大西  勉君
    ―――――――――――――
委員の異動
二月二十五日
 辞任         補欠選任
  大原 一三君     小西  理君
  小坂 憲次君     山口 泰明君
  中山 正暉君     林 省之介君
  八代 英太君     近藤 基彦君
  河村たかし君     山谷えり子君
  達増 拓也君     高橋 嘉信君
  中塚 一宏君     佐藤 公治君
  山口 富男君     中林よし子君
  辻元 清美君     菅野 哲雄君
同日
 辞任         補欠選任
  小西  理君     大原 一三君
  近藤 基彦君     八代 英太君
  林 省之介君     森岡 正宏君
  山谷えり子君     河村たかし君
  佐藤 公治君     中塚 一宏君
  高橋 嘉信君     達増 拓也君
  中林よし子君     木島日出夫君
  菅野 哲雄君     阿部 知子君
同日
 辞任         補欠選任
  森岡 正宏君     中山 正暉君
  木島日出夫君     山口 富男君
  阿部 知子君     辻元 清美君
同日
 理事松本剛明君同日理事辞任につき、その補欠として枝野幸男君が理事に当選した。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 理事の辞任及び補欠選任
 政府参考人出頭要求に関する件
 平成十四年度一般会計予算
 平成十四年度特別会計予算
 平成十四年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――
津島委員長 これより会議を開きます。
 この際、理事辞任の件についてお諮りいたします。
 理事松本剛明君から、理事を辞任したいとの申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
津島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 引き続き、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。
 ただいまの理事辞任に伴う補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
津島委員長 御異議なしと認めます。
 それでは、理事に枝野幸男君を指名いたします。
     ――――◇―――――
津島委員長 平成十四年度一般会計予算、平成十四年度特別会計予算、平成十四年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 三案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官薦田隆成君、外務省欧州局長齋藤泰雄君、厚生労働省保険局長大塚義治君、社会保険庁次長小島比登志君、農林水産省大臣官房長田原文夫君、農林水産省総合食料局長西藤久三君、農林水産省生産局長須賀田菊仁君、水産庁長官木下寛之君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
津島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
津島委員長 本日の午前は、特にBSE問題について質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松野頼久君。
松野(頼)委員 民主党の松野頼久でございます。
 きょうのこのBSEの審議を通じまして、まず行政の対応が国民の信頼に足り得るべきものとなり、そして国民の牛肉に対する信頼が回復して、消費がもとに戻り、そして、今この被害に苦しんでいらっしゃる畜産の農家の方、また食肉関係の方、この経営が安定することを望んで、質問に入らせていただきます。
 大臣、先週、雪印が解散を決めました。今回のこの雪印事件に絡む買い上げ事業についてお伺いをいたします。
 食肉買い上げ事業、この目的は、十月十八日に行われました全頭検査以前の牛肉が市場に流れないことを目的とした事業であるわけでありますね。このことについて確認をしたいと思います。
武部国務大臣 十月十七日以前に屠畜された牛肉も、OIE等によりまして牛肉そのものは安全であるとされているわけでありますが、一方で、十八日の全頭検査開始に伴いまして、BSE検査を受けていないということを理由に消費者の皆さん方の間から厳しく峻別されるのではないかという懸念がございました。このため、消費者の不安を念には念を入れて払拭するという必要がございました。
 また、滞留在庫の解消ということによりまして、十八日以後の全頭検査による牛肉流通の円滑化ということの目的ということもございまして、牛肉在庫緊急保管対策事業ということを実施したものでございます。この事業においては、市場隔離を対象とする国産牛肉の数量一万三千トンについて農畜産事業団が営業倉庫中心に抜き取り調査を行いまして、十月十六日現在で集計した数字でございますが、なお、当時、小売段階のものについても、いろいろ国会におきましても要請が数多くございました。そういうことで、小売段階等の在庫についても、箱詰めされたもの、そしてまた再び流通段階に戻せるものについて事業の対象にしたわけでございます。そういう目的で実施したわけでございます。
松野(頼)委員 ということは、一番私が聞きたいのは、十八日以前の牛肉が流通していないかということであります。
武部国務大臣 ただいま申し上げましたように、OIE等からして、十七日以前の牛肉も安全とされているわけでございます。しかし、消費者の不安を払拭するということと、それからもう一つは、今申し上げましたように、十八日以後の牛肉の円滑な流通、そういう二つの目的を持って、でき得る限り十七日以前の牛肉については市場隔離しようということで始めたわけでございまして、絶対流通してはだめだという前提でやっておりません。
 したがいまして、でき得る限り、今申し上げましたような、消費者の不安を払拭する、牛肉の円滑な流通を確保するということで実施しているわけでございまして、絶対十七日以前のものが流通していないということではございません。
松野(頼)委員 前回、私が質問に立たせていただいたときはまだ一月でありましたので、この質問はより一層風評被害を拡大するのではないかということで、質問を実は控えたわけでありますが、もうあれから四カ月たっていますから、そろそろ質問しても食に対する不安がないのではないかという思いで、きょうまで実は質問をしなかったんですが、この一万三千トンを買い上げる、これ以内にしか買い上げないというふうに通知されている。また、それ以前の牛肉が流通していないとは言い切れなかったわけでありますね。
 なぜここで屠畜場で牛肉をとめるような政策をとらなかったんですか。十月十九日に農水が出している通達では、屠畜証明、書類等により、屠畜解体された年月日、数量等が容易に確認できるように準備方お願いいたしますといって、十九日、次の日には、こういう指示を出されているわけですよ。しかし、実際には、十月二十九日の実施要綱では、その屠畜解体の年月日が確認できるという文言が落ちて、営業倉庫の発行する在庫証明でよくなったわけです。
 当初のこの十月の十九日どおりにやっていれば屠畜場できちっととめられたというふうに私は思うんですけれども、その点いかがでしょうか。
武部国務大臣 お答えいたします。
 十月十九日に、事業の実施に向けて、関係団体に対して、書類等により、屠畜解体された年月日、数量等が確認できるよう準備を依頼したわけでございます。
 お話ありましたように、二十五日の事前説明会では、在庫証明書に加えて屠畜証明書等を証拠書類にする考えを示したのでありますが、各団体の意見によりまして、流通している部分肉は屠畜証明書は通常添付されていないということがわかったわけでございます。
 これらを踏まえまして、二十六日に公表した牛肉在庫緊急保管対策事業の実施要領には、BSE検査を受けていない国産牛肉を短期間にできるだけ多く確実に市場から隔離するという目的がございましたので、通常の商取引を前提に、流通実態に即した書類のチェック体制とすることにしたわけでございます。
 それから、一たんとめてということについても、そういう問題意識をお持ちでございますが、それは後でお答えしますか、今話した方がよろしいですか。(松野(頼)委員「では、先で」と呼ぶ)先ですか。
 事務方が先生に対応したときに、きちっとやるためには一たんとめて徹底した方がよかったのではないかというようなお話もあったということでございますが、全頭検査前に処理された牛肉も、先ほど申し上げましたように、そもそも安全であるということでございまして、これを強制的に特定隔離するということは適切ではない、かように考えまして、流通販売業者等からの申し出に応じて集荷し隔離するという現実的手法をとったということでございます。
 例えば、先生御指摘のように一時的に屠畜を休止するということになりますと、BSE全頭検査開始前の肉を特定隔離した後、全頭検査を開始するとすれば、その間、国産牛肉の生産が行われないことになります。市場から一時的に国産牛肉が消えてしまうということになります。国産牛肉の生産者、流通、加工、販売業者のみならず、消費者にも大きな影響があったものと考えられまして、今回の牛肉隔離事業は、全頭検査前の国産牛肉を短期間にできるだけ多く市場から隔離するための最大限の努力ということで行ったものでありますことを御理解いただきたいと思います。
松野(頼)委員 この対応が、十月十八日というまず全頭検査の日にちを先に決めて、そして政策を実行するから、その後、追跡ができなくなるのでありまして、ある程度先のことを見込んで、全頭検査の日にちもそれに合わせてやる、そしてそこで屠畜場で一回とめるということでなければ、市場から完全に隔離することはできないわけじゃありませんか。
 今回、市場から隔離する通達を出されたのにしましても、食肉協議会には多くのその他の業界が名前を連ねているにもかかわらず、六団体にしか通達を送っていない。六団体に加盟していない食肉関係の皆さんからは、実際には買い上げられていないんだという声があるわけです。
 ですから、本当に完全に市場隔離をするということであれば、全頭検査の日にちをある程度ずらしてでも、きっちりとそこから市場隔離する、その間は業界の方に補償するなら補償するというやり方で、根本的に食の安全性、信頼性、肉の安全性というものを回復するような施策をとるべきだったのではないかというふうに私は思うわけでありますが、その辺、大臣、いかがですか。
武部国務大臣 当時のことを思い起こしますと、十月十八日の全頭検査体制の実施ということは、随分、厚生労働大臣ともやりとりいたしました。十八日に実施するというのはなかなか容易でない、そういうお話もございましたが、当時としては、一日も早く屠畜場からは安全を証明したもののみ流通するという体制にしなくちゃいけないということが、消費者の間にも一番強い要請でなかったのか、かように思います。
 同時に、ただいま申し上げましたように、十七日以前の肉について、これも安全であるという前提があるわけです。
 ただ、先生御指摘のように、振り返って反省すべきところはどこかといえば、当時いろいろ御議論ございましたけれども、小売段階の牛肉、これも、より綿密に徹底して、もっと買い上げるということを早くから徹底すればよかったのではないかということについては、私はそれはそのとおりだ、このように思います。
 したがいまして、六団体に徹底いたしまして、下部段階においても、県の方を通じてそういう要請があるものは買い上げるようにということで、具体的な数字は挙がっておりませんけれども、かなり小売段階のものも、段ボール箱に入れられる部分肉については買い上げるということを実施したのでございまして、当時としては、やはり全頭検査体制を一日も早くということと、できるだけ早く隔離するということが、我々としては国民、消費者の皆さん方の非常に強い要請と受けとめて、そういう方策をとったわけでございます。
 委員御指摘のように、もっときめ細かく準備したらよかったんじゃないかということについては、私ども、やはり反省しなきゃならない点だ、このように思っております。
松野(頼)委員 確かに、結果的に雪印の問題をこうして引き起こし、二百億円という税金を使ったこの事業に対して、前の予算委員会でも明らかになりましたけれども、畜産事業団が、その検査体制が十三人しかいない。結果的に雪印の事件を引き起こしたことによって、保護しようとしていた食肉関係の皆さんが余計打撃を受けているわけですよ。ですから、例えば肉骨粉の輸入を食いとめられなかった、日本でBSEを発生させたときの対応と全く同じでありまして、今回のこの対応というのは、当初、これで十八日前の肉を隔離することが優先なんだ、結果的に、後になってみれば、雪印事件を引き起こしてまた一層牛肉に対する信頼をおとしめた、この事実は明らかだと私は思うわけであります。
 ですから、反省していますということであるのですけれども、反省しているというこの行政の対応によって風評被害が広がって、苦労されているのは食肉関係の皆さん、畜産関係の皆さん、保護しようとしている業界の皆さんが一番被害を受けているわけですよ。このことについて、大臣はもう一度、当時を振り返ってと言われますけれども、この対応の甘さというものは反省されるわけでありますね。
武部国務大臣 農畜産事業団の抜き取り検査の関係で御質問いただいている、かように思いますが、ただいまも申し上げましたように、この事業は、短期間により多くの十七日以前の牛肉を隔離するという必要性がございました。事業の仕組みといたしましては、通常の商取引が実施されているという信頼関係を前提として行っているわけでございます。
 しかし、現実問題、雪印食品のような、この事業を悪用して悪質きわまる犯罪に及んだわけでございます。そのことを、我々本当に、断腸の思いで血税を使わせていただいてこういうことが起こったということは残念なことでありまして、私としては、その後全箱検品の体制をとれないか、こういうことを事務方に指示したのでありますが、これをやるには五十チームで五百日かかるということでございまして、全ロット、二万二千の全ロットをチェックするということにしたわけでございます。そして、そのロットの中でおかしいものがあれば、そのロットのものは全箱検査する、そういう体制にいたしました。
 その体制についても、検品対象の拡大とともに、牛肉の識別をする者を三十六人に増員いたしまして、一チーム二人程度だったところも、地方農政局や食糧事務所等、あるいは統計事務所からも動員いたしまして五人程度で構成する、そういう体制でやっているわけでございます。ぜひ、可能な限りのことで今やっているということを御理解いただきたいと思います。
松野(頼)委員 大臣、隔離隔離とおっしゃいますけれども、隔離できていないじゃないですか。完全に市場から十八日以前の肉も隔離できていないじゃないですか。
武部国務大臣 これは、先ほども申し上げておりますように、全量隔離しなければならないということではありませんで、消費者の不安を払拭するために、安全な牛肉でもこれは市場隔離することによって少しでも不安を払拭したいということと、それから円滑な流通、そういうことを目的にしておりますので、一〇〇%隔離しなきゃならぬということで始めている事業じゃありませんで、可能な限り隔離して、少しでも消費者の不安を払拭できればということで始めているわけでございます。
 これを全量隔離するというのは、これは極めて困難なことでありますし、御理解いただきたいのは、当時としては、消費者の間には、確かに委員きょうまで質問をおくらせたという御配慮はありがたく私受けとめているんですが、牛肉は安全なんだ、そういうことが消費者の皆さん方に徹底していればこういう事業をしなくてもよかったわけでございます。しかし、そういう御理解はいただけないということで、これはもう各党から、できる限りの肉を、十七日以前の肉を隔離せよというようなことで、できる限りのこととして実施したということを御理解いただきたいと思います。
松野(頼)委員 そういう行政の対応が結果的に消費者の不安を招いて、牛肉の消費が戻らないわけですよ。私も食肉関係の方とよくお話をしますと、今苦しくてもしっかりと全部とめるならとめてもらいたい、その間の補償をしっかりしてもらえれば一気にやってもらった方がいいんだ、その後に牛肉の消費が戻ってくれれば私たちはその方がありがたいんだという声を聞くわけです。なぜこれで完全に隔離しなかったんですか。全頭検査、屠畜場でとめて、その間国産の牛肉が全く流通しなかった方が国民の信頼、安心というものは戻ったんですよ。
 大体、年間の国内の生産量というのが三十六万四千トンであります。十二で割って、月に三万何千トンが流通していると言われているわけであります。今回のこの買い上げ事業であれば、一万三千トンしか買い上げていないわけでありますから、そのあとの部分というのは大体流通している、または違う形で消費されているわけであります。ですから、この半端な手の打ち方というのが非常に私たち国民の安心というものを損ねるわけであります。なぜこういうふうにしなかったんでしょうか。
武部国務大臣 先ほども御説明させていただきましたように、この事業は六団体だけではなくて、事業実施団体に対して、会員外から買い取るものも事業の対象とすることを説明いたしまして、会員外に対しても対応するよう要請したところでございます。
 要請を受けて、小売業の全国団体であります食肉連は、十一月五日、会員に対し、会員外に対しても積極的に対応するよう文書を発出するなどして対応しているわけでございまして、委員、屠畜場をとめて、そして十七日以前のものを一つも残らず隔離すべきでなかったのか、そういう御質問だと思うのでありますけれども、先ほどもお話しいたしましたように、OIEの考え方からしても、牛肉はそもそも安全なものだ、こういう一つの大前提があります。それともう一つは、とにかく短期間でやらなくちゃいけない、そういうことがございます。
 委員御指摘のように、屠畜場をとめてしまいますと、生産、流通、加工、消費者に私は多大な迷惑をかけることになったのではないか、このように思いまして、私どもはそういうやり方がベター、ベストといいますか、可能な限り消費者の不安を払拭すると同時に、牛肉の円滑な流通、そういう目的に照らして、こういうやり方が可能な限りの当時としての努力だ、このように思っているわけでございまして、御理解をいただきたいと思います。
松野(頼)委員 大臣、イギリスは十八万頭BSEが発生しているんですね。日本はまだ三頭なんですよ。にもかかわらず、これだけ牛肉の消費が落ち込んでいるというのは風評被害なんですよ、大臣。国民のイメージで被害が起こっているだけでしかないわけです。その風評被害をとめるためには、とにかく行政が信頼を回復すること、国が言っているんだから安全だということを国民にわかってもらう必要があるんです。ですから、隔離しましたよと言いながら、実際には牛肉の安定した流通をなんということを言っていたら、逆に信用しないじゃないですか。
 例えば、食卓から国産牛が全く消えたということであれば、ああ、逆に安心だなというふうに思うわけです。あくまで風評被害なんです。日本はまだたったの三頭なんです。ですから、そこのところの行政の対応というのを逆に気をつけていただきたい。そして、こうして雪印問題を引き起こしたこの管理体制の甘さによって、より一層牛肉の消費は落ち込んでいるんです。そのことをよくおわかりをいただきたいと思います。
 きょう、厚生労働大臣に来ていただいているんですが、厚生労働大臣、BSE関係で農業団体、また今の畜産、食肉以外の業界での被害というもの、たくさんあるでしょうから、自主回収したものについてお伺いをいたします。
坂口国務大臣 厚生労働省といたしましては、国内でBSEが発生しましたことを踏まえまして、化粧品でありますとか食品によりますところの一層の安全確保の観点から、この回収の措置を講じてきたところでございます。
 こちらの対象になりますのは、化粧品や医薬品につきましては、薬事・食品衛生審議会の審議を踏まえまして、昨年の十月二日に、対象となります製品すべてにつきまして、予防的な措置としまして、製造業者等に対しまして自主的な回収を指導してきたところでございます。その結果、一月の二十八日現在でございますが、医薬品で九十四品目、それから医療用具で四十三品目、そして医薬部外品としまして五百二十九品目、それから化粧品としまして六百六品目の回収が行われたところでございます。
 食品につきましては、昨年の十月五日に製造加工業に対しまして回収を行うよう指導したところでございますが、ビーフエキスでありますとか小腸を含みます二十二の食品につきましては回収が徹底的に行われたということでございます。
 一昨年の十二月でございますが、私、大臣に就任させていただいた直後でございましたけれども、いわゆる製造業、危険部位を使いました化粧品も含めまして、製造それから輸入の禁止をそのときに通達として出しております。
 したがいまして、それ以後のことでございますので、そんなに大きな問題はなかったというふうに思っておりますけれども、しかし、それを使っております製品があります以上は、それは回収をさせていただく、そういうことでございます。
松野(頼)委員 この被害総額は大体算定されていますか。
坂口国務大臣 そこまで少し計算をいたしておりません。申しわけありませんが、そこまでの計算はございません。
 とりわけ化粧品等につきましては、これは化粧品からうつるということはいまだ証明されていない話でございますので、これは本来、正直申しましてかなり抵抗もございました。しかし、うつるともうつらないともわからない状況でございますので、私の方といたしましては禁止をさせていただいている。
 それらも含めてどれだけになりますか、その辺のところのまだ詳細の被害額というもの、被害と申しますか、回収したものにつきまして、業者がどれだけの影響をこうむったかということについての計算はできておりません。
松野(頼)委員 そして、その業界に対しての補償はいかがですか。
坂口国務大臣 全体として、そういう計算ができていないぐらいでございますから、補償というところまで今のところ考えておりません。
 化粧品等の場合に、多くの中の一品目ずつぐらい各業界にわたっておりまして、全体としてそんなに大きな額ではございませんし、業界の皆さん方からも、そのことに対して補償してほしいというお話が今のところ来ているわけでもございません。
松野(頼)委員 やはり行政はある程度公平でなければ私はいけないと思います。
 そして、業界から余り声も出ていないということでありますが、やはり補助なりきちっとした形で回収したものに対して調査をしてあげる。一部では、厚生省は冷たいんだという声も聞かれていますから、そこのところをしっかりと調査をして、ある程度業界の皆さんに、BSEの関係で出た被害というものを、補償というと何か難しいかもしれませんけれども、補助という形なりなんなりかの形でぜひやっていただきたいというふうに思います。
 そして、武部大臣、ちょっともう時間も押し迫ってまいりましたので、今までの行政の対応というもの、本当に感想で結構です。
 例えば、WHOから肉骨粉の危険性を指摘されながら、法的規制をせずに行政指導でとどめたことに対して、大臣は、やはり危機管理の希薄さだ、縦割り行政の弊害だというふうに、一月二十五日、私の質問に対してお答えになっています。また、二〇〇一年、EUのステータス評価レベルスリーを受け入れなかったことに対しても、やはり認識が甘かった、対応も甘かったというふうにおっしゃっています。
 また、東京都で一頭目の疑似患畜が発見されたときに、検査結果が出る前に内臓が飲食店まで行っていたんですよ。そのことについてはどう思われますでしょうか。
武部国務大臣 食の安全、消費者の皆さん方に安心をしていただくという間には、私は、非常にまだまだ距離があるな、このように思っているわけでありまして、全頭検査になったからといってなかなか消費が伸びないということについては、委員御指摘のように、消費者の理解、協力がなかなか得られないというそのことについては、私どもまことに遺憾に思いまして、まだまだ努力が足らないな、このように思っております。
 今、感想でもというお話でしたから、振り返って感ずるのは、BSEの侵入のリスクを極力ゼロに近いものにするということが必要だったと思います。そのためには、国会でも附帯決議で、行政指導を続けるようにというような全会一致の決議等もありますけれども、やはりきちっと法的規制にしておければもっとリスクは低下したんだろうと思います。
 もう一つは、EUステータス評価のことに至るまで、万が一発生したときにどうするかということについての危機対応マニュアルというものを、厚生労働省でありますとか都道府県でありますとか、そういったところでしっかり協議してつくっておくべきであった、このように思います。
 それから、もう一つ大事なことは、消費者、生産者、あるいはマスコミ、学者、いろいろな方々によって、火山予知や地震予知の連絡会議のように、いわゆるリスクコミュニケーションというものを事前にきちっとつくっておくということが一番必要だったのではないか、このように思いまして、そういう意味で、行政上の対応にさまざまな問題があった。このことについては客観的に検証する必要もありますので、厚生労働大臣と私との私的諮問機関でありますBSE問題に関する調査検討委員会でいろいろ御議論いただいております。その上で御提案が出されるでありましょうし、私としては、食品衛生行政あるいは畜産行政、食品の安全の問題に対しての一元的な行政対応システムというものが必要だ、こう思っておりますので、その上でしっかりした対応に取り組んでいく必要があるのではないか、このように、このことについては強く感じている次第でございます。
 先ほど、円滑な流通というのは、ちょっと誤解があるかもしれませんが、十八日以後の牛肉は全頭検査になって、食卓に出るものは皆安全なものばかりですというものを知ってもらうための円滑な流通ということでございますので、御理解いただきたいと思います。
 それから、内臓等についてもいろいろ御心配があります。今、委員、風評というようなことのお話もございました。これらについては、もっと正確に、科学的に、安全なものは安全ということをわかっていただけるような情報の徹底ということが非常に大事だ、このように思っております。
松野(頼)委員 ですから、ちょっと繰り返しになるかもしれませんけれども、ここまでの農林省の対応というもの、失態がたくさんあるわけですね。
 まず、WHOから肉骨粉の危険性を指摘されていながら肉骨粉を流通させてしまった。そして、これを法的規制しなかった。そしてまた、EUのステータスのレベルスリーを受け入れなかったこと。そしてまた、一頭目の患畜が発生したとき、ここはもう大臣、就任されていますから、一頭目のBSEの患畜が発見されたときに、対応が遅くてその肉骨粉が拡散してしまった。また、今申し上げた東京都で発見された疑似患畜の内臓が、まだ検査結果が出る前に飲食店まで出回っていた。牛肉の買い上げ事業の管理体制が甘くて、そして雪印事件を引き起こしたこと。この辺が今までの行政の対応によって大きく、たった三頭しかBSEの患畜は出ていないわけですから、この三頭のためにどれだけ多くの被害が出ているか、業界団体の方がどれだけ今苦しまれているかということを、責任をぜひ感じていただきたいと思います。
 官房長官、来ていただいていますので、小泉内閣として、今の武部大臣、このまま農林大臣を続けていただくのか、これをお伺いいたします。
福田国務大臣 閣僚の任命権者の総理大臣ではございませんので、その御質問にはお答えできませんけれども。
 今委員からいろいろ御指摘ありましたそういうような一連の経緯を踏まえまして、政府といたしましては、生産現場とか消費者の意見もしっかり踏まえて、BSE対策に遺漏のないように全力を尽くしてまいりたい、そのように思っているところでございます。
松野(頼)委員 最後に、私たち野党四党は、緊急措置法を国会に提出いたしました。
 感染牛の確認前の平均的な市場価格による感染牛、特定牛、肉骨粉、特飼牛の買い入れ。また、牛肉の生産や流通にかかわる皆さん、食肉関係の皆さん、また飲食店等の皆さんに対する助成措置。もう融資してもらっても、来年消費が回復するかどうかわからないから、余計借金が雪だるま式に膨らむんじゃないかということを現場では非常に危惧しているわけですよ。ですから、まず行政がしっかりと対応していただくこと、信頼を回復していただくこと、そして国民の皆さんが牛肉に対する安心感というものを持っていただくこと、そして、それと同時に、今この緊急の時期に対してしっかりと助成をしていただきたい。そういうことを私たちは声を吸い上げて、野党四党で今提出をしているところであります。
 どうかこの法案が成立をして、そして与党の皆さんも賛成をしていただくこと、このことをできる限りお願いを申し上げまして、私の先輩議員であります筒井議員とかわりたいと思います。どうもありがとうございました。
津島委員長 これにて松野君の質疑は終了いたしました。
 次に、筒井信隆君。
筒井委員 民主党の筒井信隆でございます。
 BSE問題に入る前に、一点、別の問題をお聞きいたします。
 北方四島周辺でロシア漁船による大量の密輸が行われておって、その魚が大量に日本に輸出をされている、こういう状況について水産庁と外務省にお聞きをいたします。
 こういう状況を防ぐために、五七年に外国人漁業規制に関する法律というのが制定をされました。その法律によって、ロシア政府の積み出し証明書、これがない限り日本では輸入できない、こういう規制になりました。これが守られている限りは問題ないのですが、その積み出し証明書がどうも偽造されている。その偽造されていることを水産庁も外務省も知りながら黙認をしている。そういう状況が今この十年間も続いているようでございます。
 そのことをはっきりさせるために、一点目、まず質問いたしますが、例えば一九九九年でもいいのです。この水産物の日本の輸入統計が金額、数量がどのぐらいで、ロシア政府の日本への輸出統計が金額、数量がどのぐらいか、これを質問いたします。
木下政府参考人 一九九九年におきますロシアから我が国への水産物の輸入でございますけれども、日本の財務省貿易統計によりますと、十一億八千七百万ドル、二十一万七千トンでございます。一方で、ロシア連邦国家統計委員会資料によりますと、七千百万ドル、数量で三万トンでございます。
筒井委員 そうしますと、数量に関していうと、二十二万トン近くの日本の輸入統計に対して、ロシア政府の輸出統計は三万トンですか。七倍の違いがある。金額でいいますと、日本の輸入統計は十二億ドルに近い金額。これがロシア政府の数量によりますと、今、七千万ドルですか、物すごい違いですね。この違いはどうして出てきたんですか。
木下政府参考人 輸出国側あるいは輸入国側で統計数字について差があるというのは間々あることでございますけれども、本件の場合は、日本とロシア両国間の数字につきまして大きな差異がございます。これにつきましては、ロシア側が、不正の輸出によるところが大きい旨、日ロ間の協議でも先方から示唆がございますし、我が方もその可能性があるというふうに考えております。
筒井委員 密輸であるということがほぼ明らかであるのに、そういう状況は十年以上続いておりましたね。そして、積み出し証明書について、ロシア政府に対して、これは偽造ではないか、こういう照会をしたのはいつですか、まず一番最初にしたのは。
木下政府参考人 九七年六月に、日本からロシア政府に対しまして、ポートクリアランスの発行の有無、発行機関、手続等につきまして照会を行ったところでございます。これにつきましては、一九九七年九月にロシア中央政府から回答がございます。
筒井委員 九七年の九月に回答ですか。そのときの回答はどういう回答ですか。
木下政府参考人 九七年九月にロシア中央政府から回答がありました。その回答の中身でございますけれども、ポートクリアランスは発行していないということでございますけれども、一方で、私ども、地方政府がポートクリアランスを発行しているという情報がありましたけれども、そのことにつきましては明確な回答がないという状況でございます。
筒井委員 今、九七年の九月、間違いないんですね。二〇〇一年の八月の回答ではないんですね。事務方からの説明では、二〇〇一年の八月に回答が初めてあったというふうに聞いているんで、今の回答は違うんで、もう一度確認します。
木下政府参考人 九七年九月に、ロシア中央政府からポートクリアランスを発行していないという回答を得ましたけれども、一方で、地方政府が発行しているという情報がございました。
 この後、日ロの治安当局会合におきましてもこの問題を取り上げてございます。九八年あるいは二〇〇〇年にわたり協議をいたしておりますけれども、その内容についてはつまびらかではございません。
 このような経緯もございまして、昨年四月、ポートクリアランスの関連法令、地方政府への権限委任の有無、ポートクリアランス発給の詳細につきまして改めて照会したところでございます。
筒井委員 何かわけがわからない状況ですが、大体今まで、ポートクリアランスというのは要するに積み出し証明書のことですが、この照会状を出す以前に積み出し証明書の発行元というのはどことどこがあったんですか。これは外務省ですかね、答えるのは。
 そして同時に、もう時間の関係がありますから、その照会状に対する回答で、ロシア政府は一通も今まで積み出し証明書を出したことがない、こういう回答を出してきた。その以降においてもまだ輸出は続けられている。その以降の積み出し証明書の発行元はどこなのか。
 この二つをお答えください。
齋藤政府参考人 お答えいたします。
 ロシア漁船による水産物の密漁、密輸問題につきましては、これまでもロシア側に対しまして事実関係の照会を行ってきたところでございます。
 先ほど答弁がございましたように、昨年八月、ロシア側より、ロシア漁船の有するポートクリアランスは、そのようなものは存在しないという通報を口上書によって受け取りました。
 他方、その後、ロシアの一部の地方当局におきましてポートクリアランスが発行されているという矛盾する情報もございましたため、改めて、地方当局等も含めたポートクリアランスの発行の有無等につきましてロシア側に対して照会するとともに、我が方関係省庁間で協議を進めてきているところでございます。
 先ほどお尋ねの発行元でございますが、私どもが承知している限り、口上書の交換前、後を問わず一貫してロシア側の税関の、サハリン等の地方税関の支部が発行しているというふうに承知しております。
筒井委員 今の答えは、そうすると、さっきの水産庁の答えと一致するんですか。二〇〇一年の八月に回答があったと。先ほど水産庁は九七年に回答があったと言われましたが、その点、ちょっと後で具体的に答えてください。
 それから、今の回答に対してですが、結局、発行元はサハリン政府の税関、州政府の税関だったという今答弁ですが、もし、それが発行元であったとすれば、なぜ発行元に照会しないんですか、それを本当に発行したのかどうかという。
齋藤政府参考人 お答えいたします。
 口上書のやりとりの前も後も、私どもが承知しておりますのは、このポートクリアランスの発行機関はロシア中央政府のもとにございます地方税関支部だというふうに理解しております。サハリン税関ではございませんで、ロシア中央政府のもとにございます地方税関支部だというふうに私どもは理解いたしております。
筒井委員 そうしますと、州政府の機関ではなくて中央政府の機関である。その中央政府が今まで一回も発行したことがないというふうに答えているんでしょう。これは完全に偽造であることははっきりしているじゃないですか。その点はどうですか。
齋藤政府参考人 御指摘のとおり、私どもとしてもよくそのあたりが理解できないものですから、ロシア側といろいろと協議を重ねて確認に努めてきているところでございます。
筒井委員 いや、州政府の機関であるかもしれないから、それは今調べていると言いながら、全然州政府の方には照会状を出していないんですよ。だけれども、今の回答では、中央政府の機関が発行した文書でしょう。その中央政府の方で、今まで一通も発行していないと正式に文書で答えているんですから、偽造であることははっきりしているじゃないですか。
 これがわけがわからないというのはどういう意味ですか、一体。偽造であることははっきりしていて、ずっと輸入を認めているということじゃないですか。
齋藤政府参考人 私どもといたしましては、地方税関にそういう権限があるのかどうか、中央政府のもとにございます地方税関支部に加えまして、地方税関そのものにそういう権限があるのかどうかというところの確認に努めてきているところでございます。
筒井委員 大体、もう十年間もそれをそのままの形でほうっていて、調べている、調べている。しかも、今確認しているのは、州政府の機関でないということを確認したんでしょう。中央政府の機関であると先ほど答えられたでしょう。その中央政府が一通も発行していないと言っているんですから、それを何であと調べるんですか、一体。偽造であることは断定できるじゃないですか。
 武部大臣、どうですか。
武部国務大臣 ロシア政府からは、ポートクリアランスはロシア中央政府が発行したものでないと、今委員指摘のように、そのように聞いております。
 しかしながら、法務省等の関係省庁とも協議したところ、ポートクリアランスが偽造か否か判断するためには、ロシア政府以外の地方行政機関がこれを発行していないかどうかについての確認が不可欠でございまして、この確認が済んでいないということは、まことに遺憾であります。
 結局、外形上、ロシアの公的機関が発行しているポートクリアランスを違法なものとして取り扱うことができないということで、これを所持するロシア漁船の寄港を認めているところでございます。
筒井委員 外国人漁業規制に関する法律は、完全に日本の水産庁と外務省によって無視されているんですよ。法律違反なんですよ。
 それで、私が事務方から聞いたときには、地方行政機関が、州の機関が発行している可能性もあると、それ自体が趣旨がわからないんですが。州の機関が発行しているとすれば、では州の方に何で照会しないんだ、それを追及していたんですが、今の答えはそうじゃなくて、もう中央政府の機関である、これを明確に答弁されているんですから、それで中央政府はそんなの一通も発行したことないと言っているんですから、これは違法と断定すべきじゃないですかという質問なんですよ。まだわからないまま、あいまいなままで、ずうっと輸入を認めているというのはおかしいんじゃないですかという質問なんです。
武部国務大臣 本件は、プーチン大統領からも協力を求められている問題であると聞いております。
 私としては、重要な問題と受けとめているわけでありまして、早急にロシア政府に対し地方行政機関によるポートクリアランスの発行の有無につき回答を求めるとともに、関係省庁にも働きかけつつ、日ロ協議を行うなど、問題解決に向けて努力してまいりたい、かように考えております。
筒井委員 そんな答えを聞いているんじゃなくて、では、今プーチン大統領からも協力を求められていると言われましたが、プーチン大統領は、これは違法操業で密輸だから取り締まってくれ、こういう協力を求められているわけですね。
齋藤政府参考人 ロシア国民によります密漁でございますから、密漁の取り締まりは非常に重要な問題であって、これに対する対策について日本側の協力を要請したいということは、プーチン大統領以下、いろいろな機会にロシア側から協力を求められてきておるところでございます。
筒井委員 今密漁に限って言われましたが、その密漁された魚が日本に輸出されているわけですよ。それも規制してくれという要請をプーチン大統領からも受けているわけでしょう。それをもう一回答えてください。
齋藤政府参考人 密漁、密輸問題についての問題を解決するために協力を求めてきている、こういうふうに理解しております。
筒井委員 だから、その両方ででしょう。はっきりロシアの大統領は、これは密漁であり、密輸であるというふうに断定しているわけでしょう。これは先ほどの答弁からも断定することは当たり前でしょう。何で断定しないんですか。
 千五百億円という物すごい大量の日本での密輸の金額ですよ。これによって、業界がそれによる利益に群がって、政治家も群がっている、こういう話もあるわけですよ。何でそれを、こんなにはっきり断定できるものを断定して規制しないんですか。水産庁と外務省、これはまさに違法状況を黙認しているんですよ。
武部国務大臣 プーチン大統領からの協力は、委員今御指摘のように、密輸、密漁に対する対処方についての要請を受けているということでございまして、私としても、これは重要な問題と受けとめているわけでございます。
 したがって、早急にロシア政府に対して、地方行政機関によるポートクリアランスの発行の有無についても回答を求めるということも、これは不可欠でありますし、関係省庁に働きかけつつ日ロ協議を行うなど問題解決に向けた努力をしていきたい、そういう決意で臨んでまいりたいと思っているわけでございますので、御理解ください。
筒井委員 ロシア政府に照会云々の問題じゃないんですよ。
 もうはっきりロシア政府自体が、これは違法な密漁であり、密輸であるから規制してくれと言っている。日本政府のさっきの外務省の認識からいったって、もうはっきりこれは一遍も、こちらに一通も出していないと言っている。違法と断定して直ちに取り締まるべきじゃないですかという質問なんです。
 今、これから照会するとかなんとかというようなことを私聞いているんじゃないんです。違法と断定して直ちに取り締まれ、こう言っているんですよ。
木下政府参考人 お答えいたします。
 昨年の八月にロシア政府からは、日本の港において提出されているポートクリアランスはロシアの税関等により交付されていないという回答がありましたけれども、法令の有無、権限委任について触れられておりません。私どもも法務省等とも協議したわけでございますけれども、これが偽造か否か判断する、そのためにはロシア中央政府以外の機関が発行していないかどうかについて確認をする必要があるということでございます。
筒井委員 これは大体、法律によれば、ロシア政府の政府機関が発行した書類が必要である、これが積み出し証明書になっているわけですよ。今まで確かに、さっきの答弁だとロシア政府の一機関である税関が発行した積み出し証明書でずっと輸出していたわけですよ。だから、その中央政府に対して照会したところが、それが偽造であることがわかったわけでしょう。そうしたらあと、地方政府に照会する云々の問題じゃないじゃないですか。地方政府に聞くかどうかの問題じゃないでしょう。
 それで、先ほどから大臣は、ロシア政府にこれからさらにまた照会すると言っているけれども、事務方は、外務省の方は、何か地方の方にもまた聞くと言っている。この間がまた矛盾がある。それを全部はっきりさせてくれない限りはちょっと質問できませんよ。
武部国務大臣 私は、早急にロシア政府に対して、地方行政機関によるポートクリアランスの発行の有無について正式な回答を求めるということが必要だ、こういう認識でありますし、関係省庁とも働きかけつつ、私どももこの問題認識は、そういう日ロ協議を行う、できるだけ早く日ロ協議を行って問題解決に向けて努力するということでございます。(発言する者あり)
津島委員長 筒井信隆君、どうぞ質問してください。
筒井委員 私がさっきから聞いているのは、もうロシア政府もこれは違法であると断定しているわけでしょう。それで、さっきの外務省のあれからも、ロシア政府が発行した書類だと言っているわけでしょう。それが違法であることがはっきりしているんだから、断定できない理由はないでしょうが。それを変な形で逃げているから、もうこのまま逃げているなら私は質問できない、こう言っているんです。(発言する者あり)
津島委員長 答弁してください。きちっと答弁してください。齋藤欧州局長。
齋藤政府参考人 お答え申し上げます。
 私どもがロシア側から口上書によりまして受けている正式な連絡によりますと、ロシア側がポートクリアランスなるものを発行しているということはないということであったわけでございますが、他方で地方税関がそういうものを出しているという、私どもから見ますと必ずしもよく理解できない、相矛盾し得る内容の情報がございましたので……(発言する者あり)報道等を通じてございましたので、ロシア側に対して、その辺を明確にしていただきたいということを申し入れて、国内省庁でも連絡を密にしつつ、ロシア側との協議を重ねてきているところでございます。
 ただいま明確でないというふうに申し上げましたが、サハリン等にございます税関、そのポートクリアランスを発行している税関の主体が中央政府のもとにあるのか、あるいは州政府のものであるのか、その関係はどうなのかということを含めまして、私は先ほど私なりの理解を申し上げましたけれども、そこら辺のところがまだ必ずしも十分クリアではございません。
 したがいまして、ロシア側とその辺についての協議を行ってきているところでございまして、先般も一月下旬にロシア側との協議を行ったところでございます。我々としては、引き続きロシア側との協議、国内関係省庁との連絡を密にして対処してまいりたい、こういうふうに考えております。
筒井委員 また答弁が変わった。さっき私は、はっきり確認したのは、中央政府の機関であるというふうに答えられたわけですよ、二回も確認して。今度は何、地方政府の機関であるかもしれないと。一体何を言っているんですか、わけのわからない答弁を。そんな、もう明確にしてもらわない限り、こんな答弁聞いたって余り意味ないじゃないですか。
 ちょっと質問できませんから、考え方をちゃんと確認した上で答弁してください。それまでちょっと速記とめてください。(発言する者あり)
津島委員長 農林水産大臣武部勤君。
武部国務大臣 何度も同じ答弁になるかもしれませんが、私どもも、私も、問題あり、こういう認識を持っているわけです。したがって、この問題解決に向けて、今外務省からも答弁ありましたけれども、こういったことについての確認をした上で、できるだけ早く日ロ協議を行って、適切な解決に努力したい、こう申し上げているわけでございます。
筒井委員 同じことばかりじゃないですか。しかも、全然めちゃくちゃな答えだ。(発言する者あり)
津島委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
津島委員長 それでは速記を起こして。
 外務省齋藤欧州局長。
齋藤政府参考人 お答えいたします。
 税関がどういう位置にあるかということにつきまして、我々としては、サハリン等にございますポートクリアランスを発行している事務所は中央政府のもとにあるというふうに先ほど申し上げましたが、機関としては中央政府のもとにあるというのが私どもの理解でございまして、ただ、権限が中央政府に属するものなのか、州政府に属するものなのか、その辺を含めまして発行機関の権限がどこにあるのかということ等につきまして必ずしも明確ではないものでございますので、ロシア側とその辺を中心に、できるだけ私どもとして理解できるように協議を重ねてきている。一月下旬にもそのような協議を催した、こういうことでございます。
筒井委員 わけわからないんだけれども、権限がどこにあるのかを調べているということですか。では、積み出し証明書を発行した機関が中央政府の機関であることは間違いないんですね。もう一回確認します。なおかつ、さっきから答弁が何かおかしくなっているから、もう一回確認しますが、その積み出し証明書を発行した機関は、中央政府の機関であることは間違いないんですね。
齋藤政府参考人 機構としては中央政府のもとにあるというように理解しております。ただし、その権限がどうなのかということにつきまして十分明確ではございませんので、ロシア側とその辺のところをはっきりさせてほしいということをやってきているところでございます。
筒井委員 また意味不明の答弁で、政府の機関であることは確かだけれども、権限がどこへ属しているかわからないというのはどういう意味ですか、一体。ロシア政府の機関であれば、その指揮監督は中央政府が握っていることは間違いないでしょう。それが、ほかに権限があるというのは、一体どういうことですか。意味不明ですよ、そんなの。そんなの、確認する必要ないですよ。中央政府の機関であって、中央政府がはっきり、それは違法であると言っている限り、もうはっきり断定できるじゃないですか。
齋藤政府参考人 地方の機関が中央から権限を移譲されて事務を行っているということもあり得ますので、その辺のところがどのようになっているのかということを我々としては事実関係を究明したいというふうに考えているわけでございます。
筒井委員 今の答弁は事務方が私に説明した答弁なんですよ。地方機関が中央政府から権限を委任されて積み出し証明書を発行しているかもしれないと。それだったら、発行している中央政府に何で照会していないのか。あるいは、それも中央政府から権限を委任されているとしたら、中央政府はそんなことしていないと言えばそれで終わりじゃないかということを確かめようと思ったんですが、しかし今の答えも、中央政府の機関であるということが前提でしょう。ということは、中央政府が地方機関に権限を委任しているかどうかなんて、全然問題外じゃないですか。中央政府の機関である限り、中央政府が出していないと言えば、それは偽造じゃないですか。それが断定できるんでしょう。それを断定して、輸入規制を直ちにするべきだという主張をしているんですよ。
津島委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
津島委員長 それじゃ、速記を起こして。
 外務省齋藤欧州局長、答弁してください。
齋藤政府参考人 中央政府と地方政府との関係が必ずしも明確でないということもこれまでの照会を通じてございますので、一月の下旬にロシア側と協議を持ったところではございますが、その場でも明確な回答がございませんでしたので、我々としては、その権限関係がどうなっているのかということを含めまして、早急にロシア側の回答を求めてまいりたい、こういうふうに考えております。
筒井委員 またさっきの大臣の答弁と違うんですが、明確な回答がない。さっき大臣は、プーチン大統領から、密輸であり密漁である、これを取り締まってくれと明確に、かえって逆に言われたわけでしょう。今の回答と全然違うじゃないですか。
武部国務大臣 先ほど、プーチン大統領が協力を求めているということについては、日本側が、漁業分野での協力や、密漁、密輸の防止に向けて共同で効果的な対策をとることを期待している、こういうことがプーチン大統領が協力を求めているという内容でございます。
 したがいまして、今委員御提起の問題は大変重要な問題だ、私はこのように認識をしているわけでございまして、関係省庁と協議の上、できるだけ早く日ロ協議を開催して、問題点を詰めて、適切に対処してまいりたい、このように申し上げているわけでございます。
筒井委員 大臣の答弁もまたニュアンスが違ってきた。さっきは、密輸、密漁があるからそれを取り締まってくれ、こういう協力要請があったという趣旨でしょう。今の答弁もそれと同じ趣旨ですか。それとも、何か今の言い方は、あるかないかわからないけれども、一般論として言っているみたいな形で、ニュアンスが変わった。
武部国務大臣 これは、密漁、密輸の防止に向けて日本政府に協力をしてほしい、そういうことでございますので、私どもとしても重要な問題意識を持っているわけでございますので、外務省や法務省や、これは税関の関係もございましょう、関係省庁と協議の上、できる限り早く日ロ協議を持って、事実関係をしっかり把握した上で適切な対処をしてまいりたい、このように申し上げているわけでございます。
津島委員長 筒井委員に申し上げます。
 筒井委員に申し上げますが、先ほどからの答弁、十分に納得しておられない、私はそういうふうに見ております。先ほどの答弁で、可及的速やかに事実関係を詰めて御回答をするということでございますから、そういうことで、私からも、早急に事実を詰めて答えるようにということで、次……(筒井委員「それ、いつまでですか」と呼ぶ)できるだけ早くということでお願いします。
筒井委員 それでもよろしいですが、ただ、もうこれは長年のことで、しかもロシアと日本の間の外交関係で議論されてきたことですから、調べるのに、整理するのにそんなに時間はかからないと思いますので、いつまでにそれをはっきりさせるか、それだけちょっとはっきりさせてください。
齋藤政府参考人 お答えいたします。
 私どもとして、ロシア側にこれまでも照会してきている点、いまだに明確な説明を受けていない点について、これからも照会していかなければいけない点を、以下の四点に整理してございます。
 第一点は、ロシア連邦政府または地方行政府のポートクリアランスに関連いたします法令の有無でございます。
 第二点は、そのポートクリアランスに関連いたします法令が、連邦政府のみにもし存在する場合は、地方政府への権限を委任する根拠法令があるのかないのかという点でございます。
 第三点は、連邦政府から地方政府への立法権及び行政権の委任規定があるかどうかということでございます。
 また、第四点といたしましては、昨年八月のロシア側口上書で、いわゆるポートクリアランスなるものは、ロシアの税関当局は交付していないということでございましたが、地方税関当局もこの中に含まれるということでいいのかどうか。
 以上、四点につきまして、我々としては、いまだ明確な回答を得ていないわけでございまして、これにつきまして、できるだけ早く回答を得るべく努力してまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。
筒井委員 いつまでに答えるかという、それを聞いているのに、関係ないことを長々と答えられても意味がないのです。
 私の方として確認したいのですが、この積み出し証明書が偽造ではないかという疑いをいつの時点で水産庁と外務省が一番初めに持ったか、その時期について聞きたいと思います。その積み出し証明書は、誤字もあるし、書式が不統一だし、さっき一つの政府機関が発行したというふうに言われましたが、それにしてはもう一見してわかるような中身なわけですよ。誤字がある、書式が不統一。それを一番最初に偽造ではないかという疑惑を持った時期について、水産庁とそれから外務省にお聞きをします。
木下政府参考人 お答えいたします。
 一部報道におきまして、ポートクリアランスが既に廃止されている旨報道があったのは、九七年六月でございます。私どもも、そういうことを受けまして、ロシア当局に対して、ポートクリアランスにつきましての照会を行ったところでございます。
筒井委員 今だと一部報道と言われましたが、自分たちで積み出し証明書を見て疑惑は持たなかったんですか。
木下政府参考人 ポートクリアランスにつきましては、寄港する都度、日本の税関において提示をしているという状況でございます。私どもは、そういう意味で、九七年六月が、そのものについても問題があるというふうに認識した時期でございます。
筒井委員 だから、それは、報道で認識したと今言われましたが、私の質問は、積み出し証明書を見てその疑惑は持たなかったのかということです。
木下政府参考人 積み出し証明書でございますけれども、所要の記載事項が記載されているかどうかにつきまして、外国の政府機関により正規に作成されたものかどうかにつきまして確認を行っているところでございます。
 ポートクリアランスに記載されている内容につきまして、明らかに事実と異なる疑いがある場合には、当然のことながら、ロシア漁船に対しまして退去を求めているところでございます。
筒井委員 私の質問に答えていないんですが。
 その積み出し証明書の発行元の名前、厳密に言ってください。どういう名前ですか、発行元の名前。
木下政府参考人 お答えいたします。
 ポートクリアランスにつきましては、先ほど御説明申し上げましたように、日本の港において、外国漁船から提示を求め、確認をした後、返還をしているわけでございますけれども、私ども承知しているところによりますと、ロシアの極東地方の港、例えばコルサコフの税関であるというふうに承知をいたしております。
筒井委員 いや、発行元の名前を、例えばじゃなくて、積み出し証明書の発行元の名前が今まで幾つもあったのか、それとも一つなのか、一つとすればその名前は何か、これを聞いているんですよ。(発言する者あり)そう、どこが証明したものか。
津島委員長 水産庁長官、質問に端的に答えてください。
木下政府参考人 ポートクリアランスの提示については、税関で提示を受けるだけでございます。どの港から来たものが多いか等の記録をとる仕組みにはなっておりません。
筒井委員 そうすると、発行元の名前は厳密にわからないということですか。今言えないということですか。わからないの。証明書でしょうが。それがなければ輸入できないという日本の法律になっているんでしょうが。それが全然わからないんですか。
木下政府参考人 先ほど来御説明いたしておりますように、税関において提示を求めているという段階でございます。私ども、コルサコフ以外に幾つかがあるというふうに承知をいたしておりますけれども、提示を受けているという段階で、記録をとっておりませんので、その詳細については承知いたしておりません。
筒井委員 そのコルサコフのやつだけでもいいですが、正式名称はどういうところですか、言ってください。
木下政府参考人 コルサコフ税関でございます。
筒井委員 コルサコフ税関、これが中央政府の機関だというさっきのやつですね。
 それ以外にはないんですか、発行元は。それ以外、幾つかあるやつで、全然もう覚えてもいないの。調べてもわからないのですか、それとも調べればわかるんですか。
木下政府参考人 例えばナホトカの税関、あとまた調べてみます。
筒井委員 私は、これは質問するというふうに前もって通告してあるんですよ。照会を出す前の発行元の名前、それから回答が来てからの発行元の名前を聞きますよというふうに前もって事前通告してあるんですよ。
 それで、今ナホトカとかの名前を挙げていますが、ナホトカ税関というのが正式名称ですか。その前にロシア政府何とかとかの名前がつくんでしょう。その正式名称を私は聞いているんですよ。
木下政府参考人 先ほどお答えしましたナホトカの場合でございますけれども、ポートクリアランスには、ポート・オブ・ナホトカ・ロシアと書いていまして、カスタムズ・ハウス・オフィサーというふうな署名がございます。
 そのほかにユジノサハリンスクの港もございます。(筒井委員「いや、正式名称、中央政府の機関かどうか、それをはっきりさせて」と呼ぶ)これにつきましては、ちょっと調べてまた御報告いたします。
筒井委員 今の名前だと何かあいまいで……。
木下政府参考人 ユジノサハリンスクの場合には、コレクター・オブ・カスタムズというふうな署名がございます。
筒井委員 その今の、何とかカスタムというのは固有名詞ですか。
 私が聞いているのは、固有名詞ももちろん言っていいのですが、その機関の正式名称を聞いているんです。何で正式名称を聞いているかというと、それでもって中央政府の機関なのか地方政府の機関なのかわかるでしょう。これ、だから重要なんですよ。正式名称を聞いているんです。
木下政府参考人 ポートクリアランス上は、先ほど来申し上げていますように、具体的な税関名については書いてございません。ただ、所在地が書いてございますけれども、そのほかに、先ほども申し上げましたように、コレクター・オブ・カスタムズというのが実情でございます。
筒井委員 全然今のでは趣旨が理解できないわな。正式名称が全然わからないじゃないですか、今の答弁では。正式名称の答弁を拒否するのか、それとも拒否しないで話すのか、それをはっきりしてください。それで、調べるとすればこれもいつまでに……(発言する者あり)今出せるはずだ、前もって通告出しているんだから。
木下政府参考人 ポートクリアランスには、例えばポート・オブ・USSR・コルサコフという以外には記述はございません。
筒井委員 そうすると、今の回答は、その名前は、コルサコフというのは、これは固有名詞ですか、私わからないのだけれども。そうすると、機関の名前は書いてないということですか。機関の名前は書いてないのかどうか、それをちょっと答弁してください。
津島委員長 答弁しますか。
 木下水産庁長官。
木下政府参考人 そのほかにロシア語で書いてございますので、後ほど調べて回答申し上げたいと思います。
津島委員長 筒井君に申し上げます。
 答弁が質問の趣旨に十分答えていないと委員長としても感じておりますので、先ほど申し上げましたように、事実関係をきちっと究明した上で、できるだけ早く回答させるのがいいと思っております。
筒井委員 委員長、さっきの点はそれでいいんですが、今のはもう文書があるんですから、後日なんて必要性ないと思いますよ。すぐできるはずですよ。
木下政府参考人 お答えいたします。
 ユジノサハリンスク税関積み出し証明書というふうに記載されております。
筒井委員 ユジノサハリンスク税関という名前ですね。その名前の上にロシア政府という名前がついているのか、そういうのは一切ついていないのか。
 それから、さっき、それ以外にコルサコフとナホトカ税関、二つの税関も挙げましたが、これについてもお答えください。
木下政府参考人 それ以外の、例えばロシア政府とかというような記載はございません。
筒井委員 地方名が書いてあって、税関と書いてある、これが中央政府の機関である、こういう先ほどの答弁でしたね。中央政府の一つの機関が発行している。これまではきょう、もう確認ですね。後から答弁変えないでくださいよ。
 それで、それについて中央政府が今まで一通も出していないということを明確に書面で回答しているわけですね。こんな、財務大臣、ちょっときょう質問通告していませんが、税関というのは、日本の税関がこれ受けていますから、やはり財務省の問題でもあるんですが、どう思いますか。
塩川国務大臣 突然の質問でございますので、私も一回帰りまして、税関がどんな関係になっておるのか、よく検討いたしまして返事いたします。
筒井委員 はい。
 それらの機関以外にはまだあるんですか。全部で幾つぐらいの積み出し証明書の発行元になっているんですか。この三つだけですか。この点、確認します。
木下政府参考人 私ども、先ほど御紹介した三つ以外に具体的な名前については承知をいたしておりません。
筒井委員 承知していないという意味はどういう意味ですか。その三つ以外はないという意味ですか。それとも、あるかもしれないけれどもわからないという意味ですか。どっちですか。
木下政府参考人 先ほど来申し上げておりますように、ポートクリアランスにつきましては、税関で提示をした後、申請者に返還いたしております。私ども、それ以外にあるというふうに考えております。
筒井委員 そうすると、今の三つの機関というのは記憶であって、その積み出し証明書のコピーもとっていない、それで、あと、あると思うけれどもわからない、こういう趣旨ですね。その点だけちょっと確認します。
木下政府参考人 先ほど来お答え申し上げたのは、私どもの手元にあるコピーに基づいて御説明を申し上げたところでございます。そのほかにもあるというふうに考えております。
筒井委員 そうすると、一部はコピーでとっている。この三つに関してはコピーをとってある、それ以外はコピーでとっていなくてそのまま返した、こういう趣旨ですか。
木下政府参考人 私どもは、提示を求めた後、返還をしておるというふうに申し上げておりますけれども、私どもはそれ以外のコピーは持ち合わせておりません。
筒井委員 だから、厳密に私聞いているんですよ。
 持ち合わせていないのは、コピーをとったけれどもなくしたのか、それとも、この三つの機関以外の積み出し証明書はコピーもとらないで返したのか、どっちかということですよ。
木下政府参考人 お答えいたしたいと思います。
 水産庁としては、先ほど申し上げたコピー以外は持ち合わせておりません。
筒井委員 そうすると、税関の方にはあるんですかね、外務省。あるいは、財務大臣はちょっと無理かな。外務省、税関の方には全部あるんですか、コピーが。
津島委員長 筒井委員にお願いをいたしますが、先ほど申し上げましたように、これは財務省所管の税関もかかわっておりますし、税関、水産庁、そして外務省、それぞれきちっと調べて対応しないと、この場で責任ある答弁ができないと私は見ておりますので、できるだけ速やかに回答をさせるということで次へ進んでいただきたいと思います。
 参考人に申し上げますけれども、質問に対しては誠実に答えていただきたい。
 それじゃ、筒井委員。
筒井委員 では、あと十分で中途半端だから、保留します。
津島委員長 筒井委員に申し上げます。
 質問を続けていただいて、そして今の問題についてはできるだけ早く責任ある答弁をさせますから。
筒井委員 だって、今の問題についてもう質問、今できないでしょう。
津島委員長 ですから、そのことについては回答を待って質問していただくことにして……(発言する者あり)いや、質問を続けてください。きょうはBSEについての質疑でありますから。(発言する者あり)
 速記をとめて。
    〔速記中止〕
津島委員長 それじゃ、速記を起こして。
 それでは、筒井君の残余の質疑時間は保留することといたします。
筒井委員 どうもありがとうございました。
津島委員長 次に、高橋嘉信君。
高橋(嘉)委員 自由党の高橋嘉信でございます。私、BSE問題につきまして、武部農林大臣にお伺いをいたします。
 質問内容が多いものですから早速入らせていただきますが、この問題をここまで大きくした、これをどう大臣がとらえていられるのか。農水委員会においてもでございますが、絶えずお話しになることは、事務方を厳しく叱責した。全頭検査をやっているんだから。それで、厳しくその責任問題を追及されると、調査検討委員会の結果を待ってから、今それをやっている最中だ。そのような話に終始されております。いずれこれは検証しながら質問を申し上げてみたいと思っております。
    〔委員長退席、北村(直)委員長代理着席〕
 輸入肉骨粉に潜む危険性は、御案内のように、WHO、FAO、OIE、各国が警告していたわけであります。農水省はEUに調査を依頼した、九八年であります。昨年一月、四月に報告書が出ている。ステータス評価はレベルスリー。聞くところによると、牛を素材とした化粧品とか医薬品の欧州への輸出条件が必要だったためにEUに調査を依頼したと。そのレベルスリーという非常に危険なリスク度合いがあるにもかかわらず、去年の六月十五日にそのEUの評価を断った。このあたりから問題が発生しているわけであります。
 このレベルスリーのステータス評価に関して、大臣は、事務方から聞いてはいたが詳しく知らないと、これは一月十日の農水委員会で我が党の山田委員に答えております。つまり判断を事務方にゆだねた、これだけ重要な問題の判断を事務方にゆだねたということになるわけであります。
 そして、ついに八月六日、BSEの疑似患畜が発見される。当初は陰性、脳に空胞があったためにまた動衛研に再送付した。
 僕がここで申し上げたいのは、八月六日にこれだけの問題があって疑似患畜が発生したのに、それから後、えさの検査も一カ月後、つまり、はっきりと九月十日に、免疫検査の結果、組織学的な検査の結果、陽性と出てからやったわけであります。ここもまた非常に問題でありまして、一カ月以上経過してからえさの検査を実施している。対策本部の立ち上げもこの九月十日であります。全部出てからやろうとしている、全部事後的に、何か起きてから対策をとろうとしている、ここに一番の問題があるわけであります。
 そしてまた、世界的にBSEの原因は肉骨粉であると、ほぼこれはもう断定的に言われているにもかかわらず、その当該の牛は肉骨粉を与えていなかったと即座に発表している。これでは疑心暗鬼になるし、みんな困惑するわけであります。何が原因だったんだ、こういうことになるわけですね。
 しかしながら、そんなことを言っておきながら、九月十四日には焼却処分、またその焼却処分を、BSEの発生した牛を焼却処分していたというのは実は流通段階にあったとまた言っているんです。話がまた変わってきている。これはもう既に皆さん御案内のとおりであります。そして、そんなこんなずっとしていながら、今度は反すう動物から反すう動物へと、十月四日にそれを禁止するに至っているわけですね。
 ここで一つだけ大臣に質問しますが、例えば、九月の十日対策本部を立ち上げた。そして九月の十四日、その訂正した後に、十八日までの間、この十日間ぐらいに、十六万頭と言われるへい死牛、大体計算すると一月一万三千頭ぐらいです、十日間ぐらいの間に四千五百頭ぐらいがありますが、レンダリング業者から、肉骨粉になって、そして牛に給与されていたという可能性は否定できないと思うのですが、いかがですか。この点、まずお伺いします。
    〔北村(直)委員長代理退席、委員長着席〕
武部国務大臣 ただいま委員御指摘のように、九月十八日までの間の肉骨粉が給餌されていたかどうかということについては、全戸調査で、九月十二日から三十日までにおいて、百六十五戸、五千百二十九頭の牛に肉骨粉等を含む飼料を給与していたということが判明したところでありますから、九月十八日以前にそのような肉骨粉が牛に給与をされていた可能性は否定できないと思います。
 五千百二十九頭といえば飼養頭数の〇・一一%ではありますけれども、可能性は否定できないというふうに、かように存じます。
高橋(嘉)委員 つまり、対策本部を立ち上げながらもリスクを拡大させたということは認めるわけですね。リスクを拡大させてしまっているわけですね、わずか十日間ほどといっても。
武部国務大臣 少し、この御質問にお答えするには、先ほど委員がいろいろ、一九九六年のWHOの勧告以来の我が国政府の対応がどうであったかということにさかのぼって申し上げなきゃならない、このように思うのです。
 行政指導で肉骨粉を禁止しておりましたけれども、しかしその後、全戸の調査によりまして、今申し上げましたような五千百二十九頭が、肉骨粉を含む飼料を給与していたということが判明したわけでございます。これは、その後リスクを拡大させた、そういう御質問に対しては、これは九月十日、患畜が出て以来、徹底していろいろ、肉骨粉を使ってはならないこと等も含めて対応しているわけでありまして、さらに拡大させたということには当たらないのではないか、かように思います。
高橋(嘉)委員 これは前にも農水委員会で副大臣にも質問いたしまして、不安は払拭できませんというお話をいただいている内容でありまして、これは対策本部を立ち上げて即座に手を打てばそういうことはなかったわけでありまして、少しでもリスクを減らすことはできた。通達行政に不安を持っていたから、それから十八日に、これは反すうから反すうはあれだよと言っておいて、また九月二十四日にですか、再度、農家にチラシを全戸配付すると都道府県に通達しているのですね。これは通達行政に対する不安を持ったからやっているわけですね。そうでしょう。その辺ははっきりとお認めになっていただいて結構なのです。これから後の話の方が大きい話でありまして、通達行政に対する不安があった、だから二十四日にまたそういうことを徹底しようとやったわけですね。
 周知期間には何日ぐらいかかるのですか、末端農家まで行くのに。
武部国務大臣 拡大させたということにこだわるようですけれども、九月十二日から三十日までの間、全頭、全戸調査をやっているわけでございます。そして、これはサーベイランスのみならず、肉骨粉等の使用状況があるかないか、またBSEに対して、各農家に対しても、家畜防疫員を五千八百人動員しておりますけれども、各農家を回っていろいろ問題について、あるいは対応について周知徹底しているわけでございまして、拡大させたということには当たらないということは御理解いただきたいと思います。
 いずれにしましても、今、全農家にどのぐらいの時間がかかったのかということについては、私は具体的には、私自身の把握はいついつまでにという断定的なことは申し上げませんが、農家段階の周知徹底については、今申し上げましたように、九月十二日から全戸、全頭調査において指導しております。
 それから、九月十八日の法的禁止については、私は、九月二十五日から最長で約二週間程度で周知指導ができたのではないか、このように事務方から聞いておりますし、飼料の製造段階の周知徹底については、九月十八日の法的禁止について関係団体に通知を発出しております。十月四日からは、御案内のとおり、すべての肉骨粉の製造、出荷、輸入も含めて全面停止しているということでございます。
高橋(嘉)委員 いずれ、十月四日に全面禁止に至りますね。それまでの間は消極的発言を続けられてもいます。そして十月四日には、肉骨粉の輸入、製造禁止、そして給与も全部禁止だという話になった。それでもなおかつ、十月十七日の毎日新聞にも出ていますように、禁止通達後も骨炭販売の飼料業者が発覚していますね。
 これほどさように、通達行政というのはいいかげんに通っていくわけですよ。徹底されていないのですよ。違いますか。
武部国務大臣 このBSE問題については、まずBSEを侵入させないということが一番大事だと思います。そして、リスクを低下させるというためには、私は、通達じゃなくて法的規制にすべきだ、このように思います。
 何度も申し上げておりますが、当時としては、審議会等あるいは専門家の意見も聞き、国会においても全党一致で、行政指導を続けるようにという附帯決議もございます。しかし、私は、もっとリスクを低下させるためには法的規制であるべきだった、かように思います。
 それから、その後のことについては、やはり万が一侵入したときにどう対応するかという危機管理対応ですね、危機管理マニュアルというものができていたのかどうかということは、もう当初から申し上げておりますように、縦割り行政の弊害があったなという反省を強いられるわけでございます。
 焼却していないで、屠畜場で敗血症という、一種の診断ミスだと言って過言でないと思います、そしてレンダリングに回っていた。そこで、私どもは、人の命と健康に影響を与えない体制をまず優先するということで、厚生省にも強く要請しまして全頭検査体制にしたわけでございまして、通達行政のことについては今後やはり厳しく、こういった食の安全、安心という問題にかかわる、人の健康や命にかかわる問題についてはより厳しく対応すべきであった、かように存じます。
高橋(嘉)委員 申しわけありません、手短にお答えを願います。
 今そのように、法的規制が必要だったとおっしゃられましたけれども、では、その在庫肉を、私も再三御提言申し上げたんですが、調整保管だ、市場隔離だ、そのときに法的規制の必要性を考えませんでしたか。
武部国務大臣 在庫肉、市場隔離した肉のことですね。このことについては、先ほど松野委員の御質問にもお答えいたしましたが、これは短期間に市場隔離する、その必要性に迫られておりました。十七日までの肉と十八日以降の肉を消費者の皆さん方はどのように峻別したらいいかということについて疑問を、懸念を持っているわけでありますから、一日も早く十七日以前のものを隔離しなきゃならないということになりますと、これは法的規制、法律をつくってこれをやるということについては時間的な余裕も難しかったのではないか、困難ではなかったのか、こう思わざるを得ません。
 同時に、これを法でどのように規制するかということについてもさまざま問題がある、かように思いまして、私どもとしては、通常の商取引ということを前提に、とにかく早くやらなくちゃいけないということを優先した次第でございます。
高橋(嘉)委員 法的規制が必要だったと思うと言いながら、それは時間的にこうだったと。
 そして、さんざん言われたあげくに、十二月十四日に在庫肉の政府買い上げ、焼却処分を決めるわけですね。費用は二百億円であります。
 ここで申し上げたいんですが、先ほど松野委員のお話のときに、安全な肉だ、安全な肉だと盛んに強調されていますけれども、流通していたことを認められましたよね。私の農水委員会での質問にこう答えているんですよ、その一万三千頭余りの肉について。「完全な市場隔離ということで、国民の理解のないまま市場に出回ることは断じてさせません。その対応については、国の責任において万全を期してまいりたい、かように考えておりますので御理解いただきたいと思います。」言っていることとやっていることが違うじゃないですか。
武部国務大臣 それは、隔離した牛肉についていろいろ、これを途中で流通させるんじゃないか、大臣はそのように考えているんじゃないのか、そういうような御質問がございました。そのことに対して私どもは、市場隔離ということは、これを新たに流通させることは断じてしませんということを申し上げたのであります。
 それは、消費者の皆さん方はもとより、流通業者の皆さん方も、牛肉の滞留という問題などに対して、これがまた市場に出回ってくるということに対する不安、懸念、そして、これがさらに流通することによって、牛肉の円滑な流通、十八日以降の牛肉の流通が円滑にいかなくなるんじゃないか、そういう批判に対して、私は一度市場隔離したものは二度と流通はさせません、こういうことを明言したということでございますので、御理解いただきたいと思います。
高橋(嘉)委員 いや、それは、流通してしまってからどのような視点でどうのというお話をされても、これは理解できる話じゃないんです。殊さらさように、言葉だけを最初に述べられて、そして事後的に何か出る。必ず、とにかく再発防止策を一生懸命やるんだ、一生懸命やるんだばかりなんだ。やると言えば責任はとらなくていいのか。
 大体、この前の予算委員会の我が党の平野委員の質問の中にも、調査検討委員会の結果によってきちっとけじめをつける必要があると。では、きちっとけじめというのはどういうことですか。
武部国務大臣 BSE問題に関する第三者委員会に私どもが要請しているのは、私は何度も申し上げて、また同じことの答えか、こうおしかりを受けるかもしれませんが、九月十日に患畜が発生したときに、危機管理の希薄さに驚いたわけです。これは役人任せにはできないということで、執念を持って政治主導で取り組んでいかなきゃならない、これが私の務めだ、こう思って取り組んできている所存でございます。
 しかし、先ほども申し上げましたように、行政上の問題、構造的な問題がある、私はこう直感しましたし、同時に縦割り行政の弊害ということも感じましたし、こういったことについて、食品衛生、食品の安全問題についてやはり行政的にも一元的な対応のシステムが必要だなと思いましたが、これは、過去のことを客観的に検証し、科学的な知見を得てやってもらう必要があるということで、この私的諮問機関を設置させていただいたわけでございますから、そこでどういう報告があるかということを待って、その報告に従って私どもは適切な対応をしてまいりたい、このように考えているところでございます。
高橋(嘉)委員 今後の対応をけじめとは言わないと思うんであります。今までの行動の責任の所在を明確にすることがけじめじゃないんですか。言葉は僕は全然違うと思いますよ。けじめというのはそういうことをいうんですよ。区別ですよ、仕切り。(発言する者あり)では、けじめなんて言わなくていいじゃないですか。けじめとはっきり言っているんですから、けじめを考えなきゃいけないんですよ。
 答弁が長いのでもう少し話を僕の方からしますけれども、全頭検査、全頭検査と盛んに声高に言いますけれども、EUでも同じようなことなんですよ。子牛が、では二十四カ月齢以下は、日本ではどれだけ屠畜場に行っていますか。あっちもみんなぴしっとやっているんですよ。全頭検査を大前提みたいにして言われちゃ困ります。同じなんです、これは。
 それで、農場段階でのサーベイランス体制なんかは、もう遠く英国やEUに及ばないんですね。そうでしょう。実態は把握されているでしょう。EUは、一年間、二十四カ月齢以上のすべての死亡牛についてサーベイランス体制をしいています。英国は、二十四カ月齢以上のすべての死亡牛と障害牛すべてにです。何頭やっているんですか、うちの方は。生きている家畜だけでしょう、対象は。もしくは、変な死に方をした牛。そのために今度法改正しようとしているじゃないですか。後手後手でしょう、このこと一つとってみても。
 けじめというのは、これからの再発防止策を声高に絶叫する話じゃないんですよ。今までの責任の所在を明確にすることなんですよ。そのことを、本当にもう何を考えているのかなと。食品安全庁をつくればいいという話じゃないんですよ、言わせてもらうと。大体、その辺のサーベイランス体制の不備、いっぱいあるわけであります。
 では大臣、お考えを聞きたいんですが、それだけ今後の対応と言うんだったらBSEの規制と対策についてお聞きしたいんですが、EU、英国の生産者あるいは流通加工業者、小売店等に対して法的な対策措置はとられていますか。そういう情報はありますか。簡潔にお答えください。
武部国務大臣 委員は厳しい御質問でございますが、責任のとり方というのはいろいろございまして、何度もお答えしますけれども、私は今、農林水産省の改革とともに、畜産・食品衛生行政の一元的な改革に全力を尽くすというのが私の責任だ、こう思って最善の努力をしていこうというのが私の責任でございますので、御理解をいただきたいと思います。
 それから、今の質問につきましては、諸外国におけるBSE対策について詳細は承知しておりませんけれども、EU諸国においては対策は必ずしも法律によらず、予算措置等で対応している、このように承知しております。ただ、牛の個体管理、いわゆるトレーサビリティーについては、EU等では法的規制を行っているところでありまして、我が国においても法的規制を視野に入れて検討を指示している次第でございます。
高橋(嘉)委員 いずれにいたしましても、詳細についてはわからない、そういう話だと思います。
 殊さらさようにとまたもう一回申し上げますけれども、イタリアからの肉骨粉が疑惑を持たれていた、この問題についてもなんですよ。どこへ行ったか、わけがわからない。三菱商事の百五トン分はどうなったのですか。いつ立ち入りしたのですか。私が聞いた話によると、三日、四日前でしょう、三カ月も前から騒がれているのに。
 それでは、これから後に、我が国のBSEの発生予想を言ってくださいよ。BSEの患畜牛はどれぐらい発生しそうか。大体、どれぐらい発生するかもわからないで対策を打つというのもおかしい。
武部国務大臣 BSEの発生見込みについて確かなことを申し上げることはできかねる、かように思います。
 屠畜場における検査、農場におけるサーベイランス等の実施を通じまして、国内におけるBSE感染の状況がだんだん明らかになってくるものと思いますが、これまでは、厚生労働省の全頭検査の成績は、十月十八日から二月十六日までの間、三十六万八千二百七十一頭、うち生後三十カ月齢以上の牛十四万九千九百三十三頭を検査しまして、御案内のとおり、二頭の感染牛を確認しているわけです。
 また、農林水産省の生産段階におけるサーベイランスでは、昨年十月十八日から二月二十五日までの間、肉骨粉等給与牛で死亡牛等五百九頭を検査し、すべて陰性となっているわけでございます。
 なお、東京大学の吉川教授によれば、今後の我が国の発生頭数は、明らかになっている過去の肉骨粉等の輸入量をもとにして試算したということでございますが、七頭から十頭と推定されております。
高橋(嘉)委員 三菱商事の百五トンの分は帳簿もないのですよね。ないという報告でした、農林省から聞くと。大体、どこに行ったか、わけがわからないわけです。そのような状態の中で、そういう七頭から十頭なんというのもいいかげんな話だと思うのですね、学者の先生がどういう視点で言ったのかわかりませんが。魚粉とか肉骨粉、代用乳、そういった視点で、今三方向でやっていると思うのですけれども、米の収量を予想して減反したり青刈りさせることはできても、半年たっても、大体これぐらい発生しそうだ、こういう手を打たなきゃならないということもまだ考えていない。感染源も特定できていない。そして、先ほどから御指摘申し上げているように、後手後手の対応なわけであります。
 どうもこれに関連しているのではないかと思って、違和感を非常に感じる問題が最近ありましたので、この点についてもお話をお伺いしたいのですが、熊澤次官は何でやめたのですか。
 大臣が、何かこのように言っていますよね、とんでもないことだと。非常勤嘱託を一月に内定していたという話についてでありますが、とんでもない、感覚を疑うと。どういう考え方で言ったのですか。手短にお願いします、時間がないので。
武部国務大臣 今、二つの御質問がございましたが、どういうことで退職させたかということについては、WTOセーフガード、予算などの懸案が一定の節目を迎えた時期をとらえまして、私が取り組もうとしておりました農林水産省改革の端緒にすべく、人事の刷新、新体制を構築しようと。特にBSE対策などにも新たな体制で取り組んでいこうということでございます。
 二つ目の御質問は、いわゆる食肉協議会の嘱託として再就職することについての御質問だ、このように思いますが、食の安全に対する消費者の不安が高まっている中で、多くの関係者が深刻な影響を受けているということは御案内のとおりでございまして、国民の農林水産行政を見る目というのは極めて厳しいというものを私は肌で感じているわけでございますが、要請を行った当該公益法人の無神経さ、これはBSEや食肉関係の仕事をしている団体ですね、そのことに対して驚きを禁じ得ないということと、事務方のトップを務めた者が要請を安易に受けたということは、これは非常識きわまりないということで申し上げました。
 また、担当課長から報告がなされなかったことに対しましても厳重に注意をしたと同時に、現事務次官に対して、今後こういうことが起きないように、当該団体のあり方も含めて厳正に指示した次第でございます。
高橋(嘉)委員 担当課長から報告が遅かったことを怒ったという。どうして大臣に報告の義務があるんですか。その辺もおかしいと思います。
 BSE問題から生まれた農政不信に対して人事の刷新を図ろうとした、これが一因だったことはそのとおりだと思うんですよ。そうでしょう。それの中で、非常勤の嘱託ですよ。報告がなかったからといって怒った、非常識だ、感覚を疑うと。何で大臣、そういう権限があるんですか。これはつまり引責でしょう。時間がないからお話ししますけれども、引責だったんでしょう。
武部国務大臣 先ほど申し上げましたように、農林水産省改革の端緒にしようと思って人事の刷新を行ったわけでございます。そして時期は、WTOの問題、セーフガードの問題、予算の問題等々、一定の節目を迎えたこの時期にということで、私は人事の刷新を行ったわけでございます。
 それから、今委員がよもやというような御発言がありましたけれども、私の理解が間違いであればいいんですけれども、担当課長が私に報告しなかったことは間違いでない、当たり前ではないかということについては、全くそう思いませんね。国民の間にBSEの問題がどれだけ大きな問題として影響を与えているか。これは、当該団体は食肉にかかわる団体でございます。要請した方も要請した方であるが、これまでトップの事務方として責任を持って仕事をしている前事務次官がこれを受けたということは、私は非常識きわまりない、このように思います。
高橋(嘉)委員 非常識きわまりないと、そう語気を強めるところを見れば、やはり引責だったんでしょう。要は、更迭だったわけですよ。何で更迭とはっきり言わないか。時間ですから、もう答えは結構ですが、だれが見ても更迭なんですよ。更迭と明言すると、自分にまではね返ってくるかと思うから。人事の刷新というのは事務方だけの問題じゃないんですよ。行政のトップの責任の所在を明確にすることなんであります。
 英国でも、十四年以上たっても消費は九〇%ちょっとしか回復していない。食生活の違いもある。我が国の畜産が本当に危機に瀕している。この困窮して苦悩している生産者、加工業者、流通業者、消費者もそのとおりであります。これに対して完全に前向きに、真正面に向かった施策を展開しているとは言いがたいと考えております。
 大臣には、事務方だけに責任をとらせれば、そしてこのまま推移して、食品安全について機関を設けて、声高に今後の畜産行政を語れば事済む、事足りるとお考えであるとしたら、間違いであることをはっきりと申し上げて、質問を終わります。
津島委員長 これにて高橋君の質疑は終了いたしました。
 中林よし子君。
中林委員 まず、私は初めに、廃用牛の買い上げ問題で質問をいたします。
 政府は、二百億円の規模で、二月一日から廃用牛流通緊急推進事業というものを始めました。私どもは、非常にこれは強く望んでいた事業なんです。農家の方々も大変強く望んでおりました。しかし、この事業が始まってからきょうで二十五日たつわけですけれども、依然として進んではおりません。相変わらず廃用牛は畜産農家や酪農家の牛舎にとどまったままだ、こういう事態になっております。
 その原因、私は極めて明確だというふうに思うんですね。この廃用牛の仕組みというものがありますけれども、この実施母体、それが農協だとか家畜商組合、そういう民間団体等にゆだねられているということですから、ここが拒否すれば動かないということになります。だから、この場合は、国が責任を持ってこの実施母体になるべきではありませんか。それがなければやはり動かない。それを検討すべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
武部国務大臣 委員御指摘のように、国が直接廃用牛の買い上げを行うことについては、国の財産になることでありますので、法律による特別会計の設置でありますとか、買い入れ予定価格の決定、数百から数千の業者を対象とした多数の手続により、事務処理の膨大な時間と経費、また、研修事務等を行う職員の確保などの困難な問題がある、かように思います。したがって、農協等を通じて実施することにより、より迅速な対応が可能であると考えて、農協等による事業の推進を図っているところでございます。
 今、前段御指摘の、農家段階まで周知徹底をしていないじゃないか、迅速な対応になっていないじゃないかということについては、私ども、これができるだけ速やかに徹底するように、都道府県及び関係団体と連携をしてまいりたい、かように考えているところでございます。
中林委員 本当に私は、大臣の認識というのは現場を見ていないなというふうに思うんですよ。こういう農協だとか屠畜商組合などにゆだねているということになると、当然その先の屠畜場の問題などが出てくるわけですね。そこが受け取らなければ、農協だって屠畜商だって動かないということにつながってまいります。
 今、実は、全国で屠畜場あるいは食肉センターが閉鎖をするところが次々に生まれております。農家の人たちの御意見として、こういう閉鎖される食肉センターや屠畜場、そこを廃用牛の専用のものにしていただけないか、そうすれば動き始めるんだがということを言っているわけですよ。だから、国が責任を持って動かさなきゃいけないという思いでこの事業を始めたわけですから、本当に進むようにするためには、そういうことも検討する必要があるんじゃないですか。
武部国務大臣 これはおっしゃるとおりでありまして、私どもは、国の責任においてBSE問題の解決に全力を尽くそうということで、今、屠畜場の受け入れの問題についても、特定の日を設けようとか、今委員の提案にありましたようなことも含めて検討して、円滑にいくように最善努力するということについては今検討中でございますので、御理解をいただきたいと思います。
中林委員 検討するということは約束されたわけですけれども、これは昨年の九月に発生して以来数カ月を経て、もう本当にぎりぎりのところで、先般も農水省の前に、やむを得ぬ気持ちで農家の皆さんが牛を六頭連れて農水省に抗議をする、あるいは要請をするという行動をされました。私は、その姿を見て本当に涙が出ました。だって、こんなビルの谷間に何で牛が来なければならないのか。そういうところまでの思いがあるわけですよ。
 ですから、私は、この廃用牛の流通推進事業が本当に動いていくためには、国が責任を持って実施母体にもなるべきだということを言わざるを得ないんですよ。三十一都道府県中、七七%の都道府県が、受け入れは非常に難しい、こういうことも言っているわけですから、実際は動いていない。
 そこで、私は、この仕組みについてぜひ前向きの検討をお願いすると同時に、もう一つ、この実施母体が農協だったり家畜商組合だったりすることのいわば弊害というか、つけ入るすき、いわばあの雪印食品問題、そういうものを思い起こすようなことが起きる可能性があるということを思わざるを得ないんですね。それは、二百億円の規模ですよね。そして、乳用種は四万円、それから肉用種は五万円、民間を通じて農家にわたる、こういう金の流れの仕組みがあります。そうなると、やはり国がちゃんと実施母体になっておかないと、そこに、農家に直接渡らない、そういう問題も起こり得る。そういうものがここにはつけ入るすきがあるんじゃないかというふうに思わざるを得ません。
 だから、今、私ども野党四党では、これを特飼牛という名前にしているわけですけれども、これは国が責任を持って、実施母体も含めてですけれども、やることになっているわけですから、野党四党案、この特飼牛の問題も含めて、真剣に実施の方向で検討すべきではありませんか。
武部国務大臣 廃用牛の問題には、私も、猿払や宮城村に行って、本当にこれは深刻だと。特に、なぜ深刻かというのは、四頭目の牛が自分のところから出たらこれはもう大変だということ、またその地域も大変だということで、廃用牛の買い上げだけじゃなくて、互助制度というものをつくりました。これは国の責任で強力に支援をする。一頭、今のところまだ詰めておりませんが、五十万、経営継続については十万、五十頭であれば三千万円というようなことの対策も今決めたわけでございまして、そういったことによって生産者の方々にも腹を固めてもらえるように、こう願っているわけでございます。
 また、今、法案についてのお話がございましたが、野党四党がBSE問題の解決に向けての緊急措置法案をお出しなるということについては、私は、真剣な御検討の結果と受けとめておりまして、御努力を多としたい、かように思います。
 しかし、当該法案については、当方としても措置すべきと考えているものもある一方、法的に措置済みのものもございます。また、あえて法律で国による買い入れ等を規定するなど、具体的手法について困難な問題もあるのではないか。これは今後の立法府の御検討を見守りたい、かように考えております。
中林委員 実は大臣、私が質問したのは、今回の金の流れの仕組みですよね。ここで雪印食品のような不正問題、それが起こらないという保証があるのか。そういう民間団体に実施母体をゆだねていることによってそういうことが起こり得るんじゃないか。起こらないという保証はありますか。
武部国務大臣 これは、買い上げについて、生産者にお金が回らないとか、そういうようなことは全く想定しておりません。
 それから、これが円滑にいくように、農協等が集荷し、出荷するまでの間えさを与え、出荷する場合に車で共同出荷する等、さらには、屠畜場で、これは厚生労働大臣にも特にお願いしたいと思いますが、円滑に屠畜ができるような、そういう体制を進めるために諸般の対策を講じようとしているわけでございまして、私どもは、そういった不正といいますか、あってはならないことが今度の廃用牛の問題についてもう断じて起こらないように、しっかり対応していかなきゃならぬ、このように思っております。
中林委員 私は、せっかくBSEに対する対策としてやられる税金が不正に流用されてはいけないというふうに思うんですよ。
 それで、例えば、これは二月の二十一日の朝日新聞ですけれども、大阪で、給食向けの肉に対して、BSE検査済み、こういうものがちゃんと張ってあるんですけれども、中身は輸入肉だった、こういう偽装が明らかになっているわけですね。だから、幾らいろいろな証明をつけてみたところで、やはりこういう不正が起こり得るということが証明されているわけですよ。
 そうであるならば、やはり実施母体のところは少なくとも国が責任を持つ、こういうやり方をしないと、こういう二百億円という本当に大きな規模でございますので、税金だましというか、そういうことを信じたくはないけれども、しかし、そういうことも起こり得たわけですから、そういうことをしっかりと考えなければこういう税金投入の仕組みというのは許されることではないんじゃないかというふうに思います。
 これは、これ以上の答弁がどうも出ないようでございますので、本当に厳格にやっていただかなければならないし、もしそういうことがあれば、国がちゃんと実施母体になるんだという方向を強めていただきたいというふうに思います。
 そこで、雪印食品の問題についてお伺いするわけですけれども、一月二十三日に雪印食品の底知れない偽装工作が発覚して、今、兵庫県警の詐欺容疑の捜査も開始されております。
 雪印食品は、BSE、いわゆる狂牛病対策で実施した全頭検査以前の肉を国が買い上げるという牛肉在庫緊急保管対策事業、これを悪用して、輸入牛肉を国産牛肉というふうに偽って国に買い上げさせる、まさに税金をだまし取る、そういうことであったわけです。
 この調査が進むにつれて、これだけではなかった、北海道産の牛肉を熊本産だとか鹿児島産と表示して販売するとか、あるいは豚肉の方も、輸入豚ロース肉を国産豚ロースだと表示して販売するなど、もう数々のJAS法違反、要するに品質表示の基準違反、これが明らかになる。しかも、この偽装表示というのは数年前から常態化していた、こういう驚くべきこともあらわれました。これは、多くの関係者が、氷山の一角だ、こういう指摘もしているわけです。
 もちろん、雪印という大企業の企業モラルが厳しく問われなければならないことは言うまでもありません。しかし、なぜこんなに安易に食肉に対する虚偽表示が出てしまったのか、これが私は問題だと思うのです。日本のいわば表示規制制度、ここに内在する問題がありはしなかったのか、この点について大臣の認識を聞きたいと思います。
武部国務大臣 この雪印食品の問題については、BSE対策として血税を使おうとして、断腸の思いで使ってやった事業をああいうことで信頼を損ねることになりまして、まことにもう許しがたいことだ、かように思っておりますので、検品体制は最も厳しい体制で今実施していることを御理解いただきたいと思います。
 今、JAS法の見直しにかかわるお話だろう、こう思いますが、まさに雪印食品による牛肉の虚偽表示の事件によりまして、食品の表示に対する消費者の信頼が大きく揺らいだということは、まことに遺憾にたえないところでございますが、二月八日に、私ども、野間副大臣を本部長にいたしまして、食品表示制度対策本部を設置いたしまして検討をやっているところでございます。この内容は、現在の表示制度について違反を監視するための体制の強化、制度の実効性確保措置の充実など、表示制度の改善強化が必要との認識のもとに具体的方策を早急に検討してまいりたい、このように思っております。
 なお、二月十五日から食品表示一一〇番を設置したほか、早急に食肉の表示の実態調査も行うこととした次第でございます。関係の方々の意見をしっかり受けとめて、食品の表示に対する信頼性回復に全力を尽くしてまいりたいと思います。
中林委員 今、検討会で見直し作業をやっているんだということだったのですけれども、それはそれで当然のことです。
 このJAS法、これは、表示基準として名称と原産地を表示することとして、この表示を守らない業者があった場合、農水省は、守るようまず指示を出します。その指示に従わなかったときだけ名前の公表が行われます。しかし、その指示に従えば業者は何のペナルティーも受けないということになるわけですね。
 さらに、従わなかったら公表されるわけですけれども、名前の公表を受けてそれを守れば、また何のおとがめも受けない。公表して守らなかった場合、改善命令というのが出されます。この改善命令に従えば、それで終わり。ところが、これで従わなかったとき、初めて罰則がかけられて、五十万円以下の罰金、こういうことになるわけですから、違反して見つからなければやり得だという状況になっているわけですね。
 これでは、私は、やはりこのJAS法の中に、今回のような不正を働く温床がどうしても出てくるというふうに思わざるを得ないのですけれども、大臣、その点はお認めになりますね。
武部国務大臣 私も、消費者保護を第一に考えて、JAS法に違反した事業者名を公表するという考え方は理解できるところでございます。そうすべきではないか、そういう考えが強いということをあえて申し上げます。
 しかし、業者名の公表は、当該企業の倒産をもたらすなど、極めて強い社会的制裁措置ということに相なりまして、万が一、違反しない者を誤って公表したような場合は、これまた取り返しのつかない事態を招くことになるわけでありまして、公表の条件と手続などの具体的な方法について、専門家の意見なども聞いた上で、このことについては慎重に検討していく必要があるのではないか。
 しかし、消費者保護ということが第一だというのは、このJAS制度、表示制度見直しの基本に考えてまいりたいと思います。
中林委員 一定程度お認めになったようですけれども、このJAS法の中で、有機農産物については、守らなかったら即罰則があるわけですよ。だから、そこは厳しくやりながら、食肉についてこれだけの順番を踏まなければ罰則がないというのは、やはり業者に対してはつけ入るすきをどうしても与える。これは、国民の食の安全にかかわる重要な問題ですから、この点は、中小零細企業というのは当然あるわけですけれども、ここも今お認めになりましたように、厳しい、厳格な措置を強く求めたいというふうに思います。
 そこで、実は、表示規制の問題はJAS法だけではありません。不当景品類及び不当表示防止法、俗に言う景表法の四条で不当表示禁止規定があって、告示で商品の原産国に関する不当な表示を定めているわけです。これは、公正取引委員会がそういうことがあったら排除命令をするということになっており、この命令に従わなかったときには独禁法で罰則がかけられるということになっているのですけれども、しかし、今までの状況というのは、実は排除命令をやっていないんですよ。実際は、行政指導ベースで警告で済ませるという、この警告も実は八件、虚偽原産国表示を摘発している。警告では業者名も公表されておりません。
 公取に聞きますけれども、今後、どのように厳格にやられますか。法律でちゃんとあるのですから、厳格にやっていただきたい。
根來政府特別補佐人 ただいま御質問の、俗に言う景表法の問題でございますけれども、景表法には、排除命令という法的措置をとる方法があるわけでございます。排除命令を行いますと、これは当然公表をしているわけであります。
 しかし、その排除命令をする以前に、警告という措置をとる場合があるわけでございます。これは、言うなれば行政指導の範疇に属するものでございますけれども、警告というのは、案件が相当小さいものでございますので公表ということを差し控えているわけでございますが、今回の事案にかんがみまして、法的措置をとるかあるいは警告をするかということについて、深刻な判断を求められているわけでございます。
 したがいまして、警告の案件についても、将来、業者の公表ということもあり得ることだと考えております。
中林委員 本当に食品の表示問題、これは法律がちゃんとあるわけですから、厳格に対処を求めたいと思います。
 さらにもう一つ、厚生労働大臣に来ていただいているわけですが、食品衛生法第十一条二項で、「基準に合う表示がなければ、これを販売し、販売の用に供するために陳列し、又は営業上使用してはならない。」こういうことがあって、それに違反した場合は、営業禁止処分というのが二十三条でやられることになっているわけです。
 ただ、この食品衛生法の表示の規制というのは、公衆衛生ということで、食中毒などが起こらなければなかなかそれがかからないということがありますが、今回はこれをやったわけですね。その理由として、単なる表示違反というには余りにも悪質であり、常態化していることを重視した、こういうふうに厚生労働省は言っているわけですけれども、逆に言えば、単なる表示違反では違反に問わないということに読めるわけです。
 そこで、私は、単なることではなくて、本当に食品表示というものに違反している場合は食品衛生法でも厳しい対応が必要だし、今回の場合は、内部告発だとか、あるいはよそのところからの発覚によって初めてそれを適用するという、いわば厚生労働省としては後追いをしたということで、みずから国民の食品の衛生に関するそういう対処が必要だというふうに思うのですけれども、大臣、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 御案内のとおり、この法律はいわゆる法定受託事務になっておりまして、都道府県及び政令都市で中心にやっていただいているわけでございます。ふだんからもずっと、やはり年末あるいはまた夏季、そうしたところに集中して、各都道府県でおやりをいただいているということは事実でございます。
 かなりな案件もございまして、そこで法令違反というものもかなり上がってきていることも事実でございます。大体一千件から一千五百件ぐらい毎年出てきているわけでありまして、そうしたものに対して厳しく対処しておりますが、今回のことを受けまして、もっとより厳密に、より広範囲にわたって検査をするように、今、各都道府県にお願いをしているところでございます。
中林委員 質問時間が参りましたので、最後に大臣、一点だけ。
 これだけ表示規制に対して非常に甘い。そこで、やはり人員体制が問題だというふうに思うんですね。ちゃんとできるような人員体制、これをふやすという言明をしていただきたいと思います。
武部国務大臣 おっしゃるとおりだ、このように思っておりまして、農林水産消費技術センターの職員の問題だけじゃなくて、農林水産省の行政そのものを生産者サイドから消費者サイドに軸足を大きく移すという意味でも、この表示制度の問題も含めて、消費者行政といいますか、そういったところへの人員の重点配分ということも考えてしっかりした対応が必要だ、このように認識しております。
中林委員 終わります。
津島委員長 これにて中林君の質疑は終了いたしました。
 次に、菅野哲雄君。
菅野委員 BSEの集中審議の最後になりますけれども、これまでこの問題について農林水産委員会で多くの議論を行ってまいりました。今日的なまだ解決し得ない問題点が山積しているという立場から質問をさせていただきたいというふうに思います。
 一月十日の農林水産委員会の質問で、私は、一月八日の武部農水大臣、BSE問題については一区切りついた、この発言について真意をただしてまいりました。農家も含めて、消費者も含めて、BSE問題に対して非常に大きな関心を寄せているときに、一区切りついたというのが一月八日の発言でございました。
 この集中審議に当たって、行われるというふうに言われているときに、渡辺事務次官が、BSE対策ほぼ出そろうと二月の二十日に発言して、二十一日の新聞にこのことが出ておりました。農水大臣として、この渡辺事務次官の、BSE対策ほぼ出そろうという、こんな認識をどう思っているんですか。お聞きしておきたいと思います。
武部国務大臣 一月八日の私の発言については、一区切りついたということは、これで終わったということではございませんで、人の命や健康に影響を与えない全頭検査体制というものが整い、影響を受けている、関係の皆さん方に対する徹底した支援策というものを当時構築しておりました。残るは、やはり廃用牛の問題、それから発生農家の問題、こういったことを中心にしっかりした対応を立てると同時に、喫緊の課題はやはり消費の回復なんですね。消費の回復のためには、消費者の皆さん方に安心していただけるような、そういう行政システムということも考えなければならない。
 私が申し上げたのは、今までやってきたことはかくかくしかじか、これからやらなきゃならないのはかくかくしかじかという、大体そういう項目については整理ができたのではないかという意味で申し上げました。
 次官の話でありますけれども、これも今までやってきたことを私はお話しさせてもらおうと思ったんですが、今申し上げましたように、肉骨粉の輸入及び使用の禁止でありますとか全頭検査でありますとか、厚生労働省と連携を図りながら必要な措置を講じてきたということに加えて、十月には一千五百五十四億円の関連対策を取りまとめ、必要な措置も講じてきた。さらに、今申し上げましたような廃用牛の問題、それから、万が一発生した場合の農家の経営再開、継続の問題、そして、牛肉は安全だということについての徹底PR、それから、やはり川下はまだ弱いと思っております。これは、焼き肉屋さんを初め、資金融通の円滑化に対して、農林水産省が独自に今新たな対策を検討、指示しておりまして、大体まとまりました。
 こういった多岐にわたるBSE関連対策を着実に講じてきたということと、これからは、感染経路の究明や牛肉の消費回復、さらには食の安全と安心を確保するためのシステムづくりなど、今後とも全力を挙げて取り組まなきゃならない喫緊の課題は何かというようなことについて、後手後手、こう言われながらもそこまで来ていると。多岐にわたる対策を講じてきた一方で、今後取り組むべき重要な課題はかくかくしかじかですよ、したがって、引き続きBSE対策にしっかり取り組んでいく必要があるとの認識を述べたもの、このように聞いているわけでございまして、私も、BSE対策の実を上げるために全力を尽くしてまいりたい、かように考えております。
菅野委員 国民の目には、今大臣が答弁したことは届いていないんですよね。渡辺事務次官の、BSE対策ほぼ出そろうというこの言葉しか国民のところにはメッセージとして発信していっていないんです。
 そうしたときに、今、畜産農家も含めて、非常に苦しんでいる人たちは、農水省は何をしているんだ、これが怒りの声としてますます上がってくるんじゃないでしょうか。このことを考えておかなければならないというふうに思うのです。今言ったこと、生産者や消費者にどれだけ徹底、伝わっているんですか。伝わっていません。このことをしっかりととらえておいていただきたいというふうに思います。
 そして、今非常に大きな問題として持ち上がっているのは、先ほど中林委員も申しましたけれども、特飼牛、いわゆる廃用牛の問題なんですね。これが回っているときには問題が発生しなかったところまで、今問題が発生しています。
 大臣に聞きます。一月十日の委員会のときには四万四千頭という答えが返ってきていますけれども、約二カ月経過しました。現在の特飼牛の実態と、そして二月一日に対策を発表いたしました、この対策を決めてから特飼牛が流通している、出回っている状況をどのようにとらえているのか、答弁願いたいと思います。
武部国務大臣 四万四千頭の滞留していた牛は、大体一万二千頭が出荷されているという報告でございます。しかし、その後、次から次と廃用牛が出てくることは言うまでもありませんが、ようやく少しずつ動いてきているというわけでございます。
 しかし、これは、廃用牛の緊急な流通円滑化対策事業も始めましたし、廃用牛の買い上げについても、これも実施することになりましたし、先ほども申し上げましたけれども、互助制度をつくりました。これは、一月以内に、疑似患畜等が出た場合でも、牛舎に、互助制度で牛が戻ってくる、代替牛代として一頭五十万円、それから経営の再開、継続のための一頭十万円、一頭六十万円。今までの手当のほかにそういったこともやるようになりまして、ここでこれだけのことをやるのであれば、農家の皆さん方も腹を固めて出荷しようと。
 それで、さらにはその上に屠畜場の問題があります。屠畜場の受け入れ体制の問題がございます。これは厚生労働省にもお願いいたしまして、また都道府県にもお願いいたしまして、先ほど中林委員の御質問にもございましたが、特定の日にちを決めるなり、あるいは特定の屠畜場を考えるなり、今積極的にその対策を検討中でございますので、こういったことを速やかに実施することによって少しずつ問題解決に向かっていくのではないか、このように考えているところでございます。
菅野委員 大臣、私は、四万四千頭のうち一万二千頭が出回って屠畜されたというふうな答弁と受けとめているんですが、本当なんですか。
武部国務大臣 今、一万二千頭が既に屠畜されたということじゃなくて、いわゆる廃用牛を集める、そこに一万二千頭集荷できるということでございまして、おわびして訂正いたします。
菅野委員 そういう大臣の認識ですから、私は特飼牛対策が進んでいかないというふうにとらえています。
 というのは、一月段階で、四カ月で、ほぼストップになりましたから、月に一万一千頭くらい出荷している、出てくるということですね。そして、四カ月で四万四千頭です。一月、二月経過しましたから、六万頭以上が今牛舎や畜舎に滞留しているという実態をどうとらえているんですかということです。このことを進めない限り、私の地元では子牛とりの農家が多いんですが、生まれた子牛さえも引き取り手がないという状況になっていっているんですね。
 大臣、今、屠畜場に出ていっていませんから、どうして屠畜場に出ていかないのかというふうな理由をどうとらえているんですか。
武部国務大臣 先ほど来御説明しておりますように、BSEが万が一発生したときには経営が継続できないことになるのではないか、酪農家の間にはそういう恐怖感があるわけです。私も猿払や宮城村に行ってそのことを痛切に感じました。したがって、この対策は、一つは、万が一発生した場合にでも経営ができるだけ早く再開し継続できるという体制をつくることだ、私はこのように思います。そのことによって廃用牛が動いていくということでございます。
 この廃用牛対策というのは、売れる売れないの問題よりも、もっと大事なのは、搾乳牛の更新ができないということになりますと、長期的に考えますと酪農経営全体が大変なことになるわけでありますから、私どもは、今委員が、牛舎にそのまま滞っているというお話がありましたけれども、それをとにかく出して、農協等がやる牧場にまず集約する、そういうえさ代なども国が面倒を見る、そして、一頭、二頭連れてくるんじゃありませんで共同でまとめて出荷させる、そしてそのための屠畜場を用意するというような対策を今講じようとしているわけでございまして、私は、そういった問題解決の手だては一つ一つ打たせていただいている、これが周知徹底されれば変わってくる、このように考えているわけでございます。
 なお、その後、総務大臣も、地方公共団体によるBSE対策に係る経費について特別交付税による特段の対応もお願いいたしまして、そういう手当ても宮城村あるいは猿払村に対してもなされているわけでございまして、諸般の対策を通じて、廃用牛の出荷、流通の円滑化を促進してまいりたい、かように考えているわけでございます。
菅野委員 今大臣から説明を受けました。これは、私は一月の十日にもこの問題を委員会で議論しているんですね。その議論している根本のところについては一つも解決していないということを指摘しなければなりません。
 というのは、大臣も今、猿払村あるいは群馬県の宮城村のことを申されました。BSEがその地区から発生したならば地域全体の問題として地域に大きな深刻な打撃を与えるというのが、この二つの村で経験していますし、そのことが全国に発信していきますから、とても恐ろしくて屠畜場に出すということはできない状態になっているのです。このことを根本的に解決しない限り、この廃用牛の問題、特飼牛の問題は解決に結びついていかないという強いことを私は再三申し上げてきました。
 経営が安定するための方策をつくったと言っていますけれども、経営が、患畜牛が発生した農家の経営の安定ではないんです。その地域全体の問題なんです。酪農家だけの問題ではなくて、飼育農家も含めてこの大きな問題がそこにはあるんですね。
 私が言っているのは、一月の十日のときも言っていました。家畜伝染病予防法からBSEを除外して、そして新たなOIE基準に対応した緊急対策、そういう法律をつくるべきだと。そして、地域全体の問題として政府がどう行うのかということを地域に情報として発信していかない限り、この問題の解決は進んでいかないということを、これまでも何回も強く主張してきていることです。これに対して、政府は一向に検討しようとしないというところに今日の問題があるのではないでしょうか。
 十万頭、二十万頭という廃用牛が膨らんでいって、そういうところになっていったときにどうしようとしているのか。この点に対して、大臣は一月の十日にこう言っていました。事務方に私は指示していますと。この廃用牛対策を、事務方に対策をとるよう指示していますという形で答弁していますけれども、事務方に指示するということじゃなくて、大臣が猿払村や宮城村に行ってきたときに感じたそのことを、事務方にこういう方向でできないのかという方針を持って指示すべきだというふうに私は思うんですけれども、大臣の考え方をお聞きしておきたい。
武部国務大臣 事務方に指示するというのは、具体的な指示をしているわけでございます。したがいまして、廃用牛が円滑に動くためにはどうしたらいいかということで、買い上げるということも決めました。
 また、万が一患畜が出た場合の農家、これはもうパニックに陥ります。そういうことをみんなが、全国の酪農家が心配しているわけでありますから、先ほど言いましたように、一頭五十万円、それから経営継続、再開のために一頭十万円、一頭六十万円というようなことも今決めたわけでございます。
 さらに、委員が言わんとするのは、疑似患畜というのを、全頭検査になっているんだからこれは何も、家伝法を改正して、処分して検査しなくてもいいじゃないか、こういうことだと思うんですね。しかし、これはOIEの国際家畜衛生規約においては、いかなる疾病を家畜伝染病とするか、あるいは殺処分を要する同居牛等の条件等が定められているわけでありまして、我が国のBSEについては、OIEの基準を踏まえて、御案内のとおり、患畜、疑似患畜の病性鑑定、焼却処分等々の措置を講じてきているわけでございます。
 これを、疑似患畜を処分しないで、検査しないで、そのまま牛舎にいて搾乳を続けさせるというようなことの要求はたくさんありますが、これは家畜防疫の観点から、現時点では、私は、BSEを家畜伝染予防法の対象から外すことは適当ではない、このように考えているわけでございます。
 今、二百頭ぐらいでしょうか、同居牛等の検査の結果は全部陰性ではあります。しかし、これだけの数字をもってして家伝法を改正するという科学的データたり得るということにはならない、やはり消費者の皆さん方が安全とか安心とかということについて強い関心を持っているときには、OIEの基準に照らしてしっかりしたことを我が国がやっていくということがやはり必要ではないか、このように考えるわけでございまして、御理解をいただきたいと思います。
菅野委員 要するに、廃用牛問題に、私は農水省が危機意識を持っていないんじゃないのかと指摘せざるを得ないんです。(発言する者あり)
 というのは、それじゃ、今現実に廃用牛が減っているんだったら、私は今外野から言っていることに対してわかるんですが、たまっていっている、畜舎にどんどんふえ続けている実態があるからここであえて質問しているんであって、その深刻さというものをどう解決していくのか、この視点が一つも見えていないですから、このことを早急に、畜産農家に方向性をつけてやらなければいけないというふうに思うのです。
 先ほど言ったように、北海道の畜産農家の人たちは二月十二日、決議を上げて、国に対して要望をやっています。BSEを家畜伝染病から外して新たな法体系をつくってくれ、そして、同居牛の殺処分をやめて経過観察に変えることというのが現場の実態です。そして、十二月の四日か五日に猿払村の酪農家の方々が、農水省に要望として、このことをいち早く要望として上げている実態があると思います。これに対して政府の答弁は、OIE基準があるからこれはできないんだ、そういって片づけてきているんですね。
 そしてもう一つ。大臣は今、現時点ではできないと、消費者の動向等も含めて。では、現時点でできない、いつの時点になったらできるというふうに、そして、具体的に廃用牛が畜舎に、牛舎にとどまらない対策はどうしたらできるというふうに思っているんですか。この二月一日に一つの方向性をつけて、今二十五日経過いたしました。この二十五日間で、それじゃ何頭出ていったと思っているんですか。この状況を報告してください。通告していないですが、大臣が答弁できないとあれば、畜産局長でもいいです。
武部国務大臣 具体的な数字については生産局長から答弁させますが、先ほども言いましたように、四万四千頭のうち一万二千頭が牛舎から出荷できるわけでございます。しかし、その後さらにふえておりますので、今現在、五万四千頭ぐらい滞留しているというのは事実でございます。
 では、対策は何もないのかということについては、生産者団体の皆さん方からいろいろ要望をいただいて、乳牛について四万円、肥育牛について五万円というような買い上げも決めました。そして、先ほど言いましたように、互助制度というものをつくりましたので、これは猿払の皆さん方も含めて酪農家の若い方々からいただいた提案でございます。
 私は、互助制度をつくるべきだ、牛舎が空っぽになっても、もう遅くとも一月以内に搾乳できる牛が戻ってくる、そしてそれを購入する代金はきちっと国が責任を持つと。そして、経営の再開、継続についても、時間がかかりますから、これはもう、生産者が一番恐れている一つは、一遍に今の体制つくったんじゃないですよ、時間かけてここまで改良したんですよ、ですから牛がそろっただけじゃだめなんですよというようなことですから、そういう意味で、経営の再開、継続に一頭十万円というようなことも考えて互助制度をつくっているわけであります。
 委員御指摘のように、このことはまだ徹底していないんだろうと思います。したがいまして、これを徹底させることによって極力円滑に廃用牛が動き出すということに今重点的に私ども努力したい、このように考えているわけでございまして、御理解をいただきたいと思います。
 それから、家伝法の改正については、現時点ではというのは、やはりOIEの基準に照らしてしっかりした科学的なデータが要るんじゃないかということでございます。まだ二百頭が陰性だったからこれでもう殺さなくていいんだ、検査しなくていいんだということにはならない。私ども、早くそういうデータを積み上げたい。したがって、廃用牛も買い上げるというのもそういう意味があるわけでございますので、御理解をいただきたいと思います。
須賀田政府参考人 廃牛の滞留の状況でございます。
 先生言われましたように、昨年末で四万四千頭でございまして、これが一月末で五万四千頭になっておるということ、約一万頭ふえておるということでございます。年間に乳廃牛が大体三十万頭でございますので、月に直しますと約二万五千頭ぐらいあるわけでございます。この一月で滞留が一万頭ふえているという状況でございます。
菅野委員 この問題は本当にまだまだ議論し尽くさないといけない問題だと思いますし、野党四党は、この廃用牛の問題に対しては、国が責任を持って対応しない限りこの対策というものはしっかりしていかないんだという立場に立って、法案を提出させていただいています。先ほど中林委員も申されておりましたけれども、このことをしっかりと肝に銘じてこれから取り組んでいただきたいと思います。
 最後に、武部農水大臣、BSEの問題、責任の所在は農林水産省にあるということはこれまで常に認めてきて、今日まで経過してきております。国民はBSE問題に対して、農林水産省の責任は重大だという声を大きくしております。このことに、いついかなるとき、どのような形で対応するのか、明確な大臣としての答弁を求めておきたいというふうに思います。
武部国務大臣 農林水産省だけではないと思います、行政の縦割りの問題もございますが、とにかく、今私は、農林水産省改革はもとより、このBSE問題について真剣にその対策に取り組んでいる真っ最中でございます。言ってみれば手術の最中と言って過言でない、このように思います。したがいまして、きちっとした対策を講ずるということが私のとるべき責務である、こう思って頑張ってまいりたいと思いますので、御理解をお願いしたいと思います。
津島委員長 これにて菅野君の質疑は終了いたしました。
 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時五分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時一分開議
津島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。
 本日の午後は、特に医療改革問題について質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤松広隆君。
赤松(広)委員 民主党の赤松広隆であります。
 実は、私は、九年ぶりの予算委員会の質問でございまして、国対、議運畑をずっとやってきたので、本当は政策の赤松なんですが、きょうは、一時間という限られた時間ですけれども、総理及び坂口厚生労働大臣に、医療問題を中心にしながら御質問をさせていただきたい。
 医療改革がきょうの集中のメーンテーマですが、その冒頭に、先週の金曜日、二十二日の日に、ヤコブ病の訴訟について和解の協議が行われて、東京、大津の両地裁から和解案が提示をされておりますので、まず冒頭、そんなに時間をかけませんけれども、それについての政府の考え方、そして、とりわけ担当大臣であります坂口大臣の所見をただしてみたいというふうに思っております。
 中身を正確に御承知じゃない方もおられますので、簡単に御説明いたします。
 ヤコブ病訴訟の和解協議につきましては、東京地裁、大津地裁で行われ、両地裁は、国が原告患者全員、ここがポイントでありますが、原告患者全員に一律三百五十万円を支払うのを含めて、総額で、国に対し、一億六千二百十万円、企業側、B・ブラウン社が十億十万円を支払うという和解案を提示いたしました。率でいえば、国が負担割合一五%、企業側が八五%という割合だと思います。国はまた、米国でヤコブ病の初の症例が報告された八七年六月以降に手術した患者には、責任があるという意味で和解金の約三分の一を負担する、一人当たりの和解金は、逸失利益を加え四千三百万円から八千二百万円という内容であります。
 坂口厚生労働大臣はこの和解案をどのように受けとめられたか、そしてまた、私自身の意見も少し申し上げれば、長年にわたっていわば不治の病と言われたこの病気と闘って御苦労されてきた患者本人及びそれを支えてきた家族の気持ちを考えれば、当然のこととして国の責任で早期の解決を図るべきと思いますが、いかがでございますか。
坂口国務大臣 二十二日でございましたか、先ほど御指摘いただきましたように、東京地裁、大津地裁の方から、ヤコブ病に対する和解の条件が示されたところでございます。
 今お話がございましたように、長い間御苦労をされておみえになりました患者の皆さん方に、心からおわびを申し上げたいと存じます。
 そして、この内容でございますけれども、できる限り裁判所の所見というものを尊重させていただきたいというふうに思っておりますが、ただ一つ、先ほどお話がございました一律三百五十万円という支払いの金額が提示をされているわけでございますが、その中身の位置づけと申しますか、そのお金の位置づけというものを明確にしなければならないというふうに思います。国民の皆さん方の税の中からお支払いをさせていただくわけでございますので、その位置づけを明確にさせていただいて、そしてこの和解案というものを最大限尊重したいと考えているところでございます。
赤松(広)委員 今大臣から、おわびを申し上げ、裁判所の意向を最大限尊重したいという御答弁があったわけでありますけれども、担当大臣のこうした意見を踏まえて、内閣の責任の立場にあります小泉総理、総理としてもそういう意向、方向ということで私は認識してよろしいでしょうか。
小泉内閣総理大臣 ただいま坂口大臣からの答弁がありましたように、和解案をよく検討していただきまして、関係省庁で協議し、適切な対応をしていかなきゃいけないと思っております。
赤松(広)委員 両地裁の和解案を早期に受け入れることを強く要望してまいります。
 では、次の問題に行きます。
 さて、本論でありますけれども、私自身は、医療については、社会保障制度のやはり一番中心、根幹をなすものだと考えております。そして、理想的に言えば、いつでも、どこでも、だれでも、その場で考えられる最良の医療、治療を受けることができる、これが私は一番いい社会だというふうに思っております、理想的には。
 多分、この点までは小泉総理と私の認識はそう違わないと思っておりますけれども、そういう中で、ここからはちょっと、多少違うかもしれませんが、私自身は、やはり医療だとかあるいは健康だとか人の命だとかそういうものについては、安いからとか高いからとか、あるいは競争でもってどうだとかこうだとか、そういう市場原理といいますか、競争原理といいますか、それでもってはかっていく、それをすべて否定しはしませんけれども、それでもって、安いからいいんだ、あるいはこれは効率がいい、これはとにかく簡単に済むからいいんだということでもって健康なり命というのははかられるべきではない、このように実は思っております。
 なぜそんなことを言うかといえば、ある国の例ですけれども、例えば救急自動車が来ると、アメックスのカード持っていますか、持っていませんか、あるいは保険に入っていますか、入っていませんか、年は幾つですか、八十五、九十、ああ、よう長生きしましたね、まあそこそこみたいな、やはりそういう日本の医療制度にすべきではない、そういうふうに私は思っています。
 そこで、まず最初に、医療保険制度全体に対して基本的な考え方を、総理とそれから坂口厚生大臣それぞれからお伺いをしたいと思います。トータルの大きな話になっちゃうとどんどんすそ野が広がっていきますので、特に給付と負担のその視点に限って、医療保険制度はこうあるべきだというのを、まず総理から、そしてその後坂口大臣からお聞かせをいただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 給付と負担に限ってというお話ですが、社会保障制度の中核をなす医療保険制度、国民皆保険制度をこれからも維持、効率的に発展、運営していかなきゃならないという観点から考えますと、給付と負担という問題は避けて通れない問題だと思っております。
 特に、これから高齢者がどんどんふえていく中で、若い世代が減ってまいります。医療保険制度を支える負担というのは、税金と保険料、患者さん、この三つの組み合わせしか基本的にはないんですね。当然、病気にならない人も保険料で負担していただかなきゃならない。では、患者、病気になった場合にどの程度の負担をしなきゃならないか。それは安ければいいに決まっています。財政が豊かだったら、低ければ低いほどいいということはだれでも賛成だと思います。
 そういう中で、今の財政状況を考えますと、毎年毎年医療費が高騰していく、経済成長が高かろうが低かろうが、高度成長のときにも低い成長のときにも、病気になる人が出る出ないの問題じゃない、必ず病気になる方はおられますから。そういう場合、現行制度で医療保険制度はもつんだろうか。このままどんどん保険料の負担が増していく、さらには、患者になった場合の負担も、このままでいくと税金をどんどん投入していかなきゃならないということから考えますと、私は、この税金と保険料負担と患者さんの負担はどうあるべきかというのが、これからの医療保険制度改革におきましても大事な問題だと思っております。
 この問題は、では何割税金を投入すればいいのか、それと、負担もどの程度までが適正なのか、負担と給付は裏腹ですから。こういう問題を、それぞれの立場、利害関係者が医療保険制度には多いですから、そういういろいろな意見も聞きながら、あるべき給付と負担の見直しに進んでいかなきゃならないのではないか。特に、医療保険制度ができた時点に比べまして、圧倒的に高齢者が多く、若い世代が少なくなってきます。そういう点も考慮しなきゃ、これからの、人生五十年時代と人生八十年時代の給付と負担のあり方も当然違ってくると思っております。
坂口国務大臣 総理からほとんどお答えがあったというふうに思いますが、医療とそして年金は社会保障の中核であることは、もう御指摘のとおりでございます。そして、予想をはるかに超えて少子高齢化が進んでまいりました。大変な勢いでありまして、いつも人口推計をしますごとに、その状況が予想よりも悪化してきているという現状がございます。
 そうした中で、今お話がございましたように、いわゆる負担と給付の問題をどう考えていくかということを考えましたときに、特に負担の問題につきましては、今までの医療保険、それから年金だけではなくて、それにまた介護も入ってまいりまして、三つの負担を中心にしていかなければならない。それも、高齢化が進んでまいりまして、だんだんと受ける人の数が多くなって、支える側の方が少なくなってくるという状況の中で、これから議論になると思いますが、保険料につきましても、余り高くなり過ぎないようにどう配慮をしていくかといったことがこれからさらに重要になってくるのではないかと考えている次第でございます。
赤松(広)委員 まさに今お二人が言われた負担の問題、特に保険料で支払う負担、そして、いざ病気になったときに窓口で払う負担、これは今回の場合、二割、三割という話があるわけですけれども、それが今回の一番のポイントのところだろうというふうに思っております。
 たまたま二月十七日、フジテレビ、坂口厚生大臣のテレビ、「報道二〇〇一」を私は見させていただきました。非常にやはり長年、族とは言いませんが、社労、厚生の分野でいろいろやってこられた方は、非常にいい、わかりやすい言い方をするなというふうに感心をいたしました。今、お二人の御答弁をいただいたわけです。聞いているとほとんど変わらないように思いますが、坂口さんは、実際にはテレビではそう言っていないわけですね。
 小泉総理は、むしろ、考え方としては、まず自己責任があってプラス社会保障なんだ、自己負担プラス保険料なんだという考え方なんです。私は厚生の場に長くいたので、どうしても保険料中心の考え方になる。だから、社会保障プラス自己責任、保険料プラス自己負担、こういうように考えるんです。
 これを、もう少し坂口さんの発言を私流に解釈すると、坂口さんは、自分は医療費は皆で支え合う保険制度で支払うのが中心で、自己負担はその一部を補うものであればいいというふうに、基本的に多分厚生大臣は考えておられるんだろう。そして、小泉総理に対する今の言い方をもう一ひねりすると、小泉総理は、医療費については自己負担が原則、保険制度はそれを補うものであればいいという考えだということを示唆しておられたのではないかというふうに思います。
 坂口さん、そのとおりでいいですか。
坂口国務大臣 そこまで明確に言っているわけではございませんが、単純にわかりやすく図式的に申し上げたわけでございますけれども、私の考え方といたしましては、そういう考え方に今までから立ってきたということを申し上げた。しかし、いろいろお話を聞いて、しかしそうも言っておれないというふうに最近は思っているということを言ったわけであります。
赤松(広)委員 そうじゃないでしょう。だって、あなたはその後、小泉総理と考えは違うが、これは社長の命令ですから係長がとやかく言う段階ではなくなったと。大臣が係長なのかどうなのか、ボードですから、私はやはり、取締役か常務か専務か知らないけれども、とにかく少なくとも取締役だと思いますけれども、そういう段階ではなくなったんだと。だから、この中で、この中でというのは社長命令、すなわち小泉命令で私の考えていることをどう実現するかなんだということを言っておられるわけですが、これは私の言っていることは間違っていますか。そういってあなたは発言しているでしょう、フジテレビで。どうですか。
坂口国務大臣 そのとおり私は申したわけでございますが、その最後のところ、私が申し上げましたのは、そういうふうに私の自説を持ってまいりましたけれども、しかし、そうとばかりは言っておれない状況に全体としてなっているということを、総理のお言葉の中から私も考え出しているということを申し上げたわけでございます。
赤松(広)委員 担当の厚生大臣とそして総理との考え方が基本的に違うということを、まず確認だけこの場でしておきます。
 二つ目に、小泉総理は、もう二度にわたって厚生大臣をおやりになって、郵政なんかよりもよっぽど医療問題、こうしたことは御専門の分野だと思います。
 第二回目の厚生大臣をやられたときに、特にいろいろな発言をされておりますね。我が党の城島正光議員に対する答弁でも、これは平成十年、一九九八年三月三十一日、当時もこの医療保険改革が政治の重要な課題であった、そんな時期ですけれども、これに関して、これは本会議の場で、「平成十二年度実施を目途としております。」ということを明確に言われ、今度は厚生委員会で、同じく九八年四月三日、長勢甚遠議員に対する答弁では、「この抜本改革の方は、十二年度実施という目途というのを我々は崩すつもりは全くないというふうにお考えいただきたいと思います。」というようなことで、まだこれはいっぱいありますけれども、再三にわたって抜本改革を二〇〇〇年にやるんだと。審議会がちょっと審議がおくれているとかいろいろなことがあるけれども、しかしそんなことで予定を崩すつもりはないんだ、これでやるんだということを明確に言われてきたわけであります。
 これはもちろん厚生大臣としての発言でありますけれども、当時としての政府の公約でもあったはずでありますし、ある意味でいえば、政治家小泉純一郎としても、あるいは厚生大臣の小泉さんとしての公約であったと言っても、私は間違いではないと思います。ですから、公約どおりじゃないじゃないか、だめだ、けしからぬということを私は言っているんじゃなくて、現実にできなかったという現実があるわけですよ。
 だから、問題は、今回の医療改革をやるときに、前回の轍は踏まないぞ、今回は必ず医療改革やり遂げるぞと。そのためには、やはり前回の反省がなければ今回の成功はあり得ないと思います。その意味で、じゃ、なぜこの抜本改革は、二〇〇〇年という期限を切った、そして明確にそれを言い続けてきた、それができなかったのか、その理由は何ですか。それを答えていただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 理由はいろいろあると思いますね。
 まず、政権の枠組みが変わったということ。自民党、社民党、さきがけの枠組みも変わったし、総理もかわりましたね。これが一番多かったと思いますね。
 それと、あと、方向は大体皆さん、総論として大方こういう方向だろうと一致していたんですが、いざ具体論になりますと、利害関係者が多いです。この調整がなかなかつきにくかった。いざ具体論になると、賛成、反対がまた噴き出してくる。今回の三割負担でも、賛成、反対たくさんあるでしょう。ぴしんと指導力でやろうという勢いがなかったですね。必ず医療改革というのは賛否両論、全部が賛成することはありません。これからもそうですよ。その中で大方の、大体の多数意見はどの程度なのか、そういう勢いがなかったですね。その点は反省するべきだと思います。
 しかも、総理もかわりましたけれども、与野党もかわりました。たしか、さきがけは当時与党でしたよね。公明党は当時野党だったんじゃないでしょうかね。そして、たしか新進党があったんじゃないでしょうか。今、新進党なくなりましたね。いろいろ政権の構造も変わってまいりました。賛否両論入り乱れて、賛成勢力、反対勢力も入れかわりました。そういう点も一つの理由ではないかと思っております。
赤松(広)委員 政権がかわることは今回でもあり得るわけで、政権が仮にかわっても、私は、政策の継続性あるいは行政の継続性、当然それは尊重されるべきであって、問題は後の方、後段で総理が言われた、党内あるいは与党内と言っていいかもしれませんが、総論賛成、各論反対、よく言われる言葉ですけれども、そういう中でまとめ切れなかった、まとまり切らなかった。
 元厚生大臣というような、津島さんのことを言っているんじゃないですよ。そういう人たちが、例えばいろいろ言っただとか抵抗があっただとかいうようなことでもってうまくいかなかった、勢いがなかったということですが、では、今度は聞きますが、今回の改革については、ではその勢いがあり、党内のあるいは党外の団体ももしかしたらあるかもしれませんね、いろいろな利害が絡むところもありますから。そういうところも含めて、ではやれるんですか。それをぜひ聞きたいですね。
小泉内閣総理大臣 これは、十四年度中に抜本的な改革の方向を出して改革に進む。小泉政権が続く限りできます。
赤松(広)委員 大変な自信をお持ちのようでありますけれども、ちょうど私が九年前に、今の党とは違いますが、まだこの党新しいですからなかったときですが、当時、宮澤総理に対していろいろと私は質問をさせていただきました、新米の書記長でしたが。そのときに、宮澤さんもいろいろありましたけれども、私は今振り返って、宮澤当時の総理が政治家として一つだけ立派なところがあった、なるほどと思ったことがあります。それは何か。
 彼は、当時はちょうど政治改革の問題が一番やっているときですから、政治改革ができなければ、これは私はもう責任とるんです、私はやるんですと、今小泉さんが言われたと同じことを言っていた。そして、しかし現実にはできなかった。その私が質問した、六月、七月、選挙で負けたということもありますけれども、退陣をしていくわけでありますけれども、それをできるできないはともかくとして、政治家としてそういうことを決意をして、そして、それができなかったときはきちっとそれを形に示したという意味で、非常に立派な方だと私は個人的には思っております。
 では、お伺いをしますけれども、総理が、今言ったように、五年かかってできなかったことをこれから一年でやろう、できると言われるわけですから、じゃ、もしできなかったときのそういう政治責任というのも、そこまで考えてこれに取り組んでおられるかどうか。その決意を聞きたいと思います。
小泉内閣総理大臣 まず十四年度中に方向性を出します。そうすると、具体案つくるのには、一年でできるもの、二年でできるもの、三年でできるもの、四年でできるもの、いろいろあるでしょうね。ですから、そういう具体的な改革の方向を逐次実現に移していきたい。できないことは考えていません。小泉政権が続く限り、その改革の方向に沿って実施したい、そう思っております。
赤松(広)委員 だから、決意はわかるんですけれども、政治責任をかけてやるんですかと。それぐらいの決意、宮澤さんみたいにあなたはやるんですかということを僕は聞いているんですよ。やれる、やれない、もちろんこれはいろいろな項目がありますから、五年をかけてやるもの、三年をかけてやるもの、直ちにやるもの、いろいろあると思いますよ。それはもうわかっているんです。だから、僕はその決意を聞きたいんです。
小泉内閣総理大臣 総理である限り、いつも決意を秘めて着々とやっていくということであります。
赤松(広)委員 では、ちょっと視点を変えて聞きますが、二十三日の朝刊各紙に、いわゆる自民党、これは与党と言っていいのか自民党と言っていいのかちょっとわかりませんが、政府の合意ができたと。丹羽雄哉党医療基本問題調査会長、麻生太郎政調会長、そして坂口厚生労働大臣、福田康夫官房長官、この四氏が国会内で会談をして、そして合意に至ったということが書いてあります。
 そして、事前に厚生労働省の人たちが質問とりに来るものですから、そういうことをただしても、いや、私たちは一切タッチしていないからわからないんです、それは四者でやられたことで、一体話の中身がどうなのか、そしてどこが合意されてどこが合意されていないのか、それも含めて我々は何もわかりませんということなんですね。
 そうすると、なぜ私がこれを、ちょうど十二項目めに、質問の要項で最後につけ足したんですが、実は、これを先に聞いておかないと、実際にはこれに従って法案が出てくるということになれば、一体、こんなものはただ話しただけですよというような話なのか、いやいや、そうではなくて、合意してきちっとやった以上、この線に沿って関連法案についてもきちっと明記するんですよと。あるいは、附則にこのところまで書き込むということまである新聞には書いてありますけれども、そういうこともあるものですから、この政府・自民党合意について、時間がちょっと、一時間しかないものですから、もう半分近く過ぎていますので、できるだけ簡単に、中身よりもむしろ、こういう性格のものなんだ、これについては必ず今度の法案に織り込んで出すんだというようなことに絞ってお答えいただければ大変ありがたいと思います。
坂口国務大臣 今お話がございましたように、四者の間で大筋の合意ができたことは間違いがございません。
 ただ、今、これは与党それぞれの党におきまして、それぞれの党の合意を取りつけていただいているところでございますので、もう少し今後の推移を見たいというふうに思っておりますが、これが正式に決まったということになりましたならば、それは当然のことながら、そのことをすぐ法律の中に書き込むべきものは書き込んでいくということになるだろうというふうに思っております。
赤松(広)委員 例えば、これは読売新聞ですが、ある公明党幹部は、相談は受けていないし、我々がのめない内容も入っているということを語っていますし、あるいは、主に大きく報道されているのは、大き過ぎて保険者機能を果たしていないと言われる政管健保を五年以内に民営化する方針というようなところが大きく出ておりますね。
 しかし、そのほかにも重要なことがいっぱい実は書いてあるんです。
 医療費が試算より縮減したら保険料率を下げる。将来にわたって七割給付を堅持するということを法的に担保する。ということは、法律に書き込むということ。それから、新しい高齢者医療制度を三年めどに創設する。自己負担限度額を三年以内に介護などもあわせ世帯合算、年間通算でやるとか、医療過誤のための常設の審判機構の整備をするだとか。
 我々もぜひこれはやった方がいいと思っていることもありますし、これはどうなのかなと正直言って思っていることもあります。
 特に、今冒頭申し上げた肥大化し過ぎた政管健保については、そこに実際に拠出している人たちの声もなかなか反映できていない、そういう仕組みになっている。これは、今回いろいろな負担増をやっても、後でまた申し上げますけれども、四年、五年すれば、もう単年度赤字、あるいは積み立てゼロになって累積赤字というふうになっていくというような、やはり構造的なそういう仕組みを持っているわけですよね。
 ですから、それについて、やはり民営化するのか、あるいは民営化的手法で運営していくのか、いろいろな考え方があると思いますけれども、そういうことについて大いに議論することは私は結構ですけれども、賛成ですけれども、しかし、今回、法案の中にこれは書き込むと言っているわけですから、坂口厚生大臣の出身の公明党の人は、幹部は、いや何にも知らない、こんなことこれからゆっくり協議だなんということで、果たして、今回の関連法案に書き込むなんて言われますけれども、間に合うのかどうか。あるいは、これは、そういう意味でいえば、書いただけで四年、五年ゆっくり議論している間に雲散霧消しちゃうという程度の話なのか。そこなんですよ、ポイントは。
 だから、それをはっきりしてくれないと、我々はこの後、具体的にいろいろなことを質問していきますけれども、それは質問できなくなっちゃうわけですね。どうですか。
坂口国務大臣 一番大きい問題は、いわゆる保険者が五千以上に分散をしている、これをどうしていくか。
 国保は非常に、三千以上の数になっているわけでありますし、余りにも分散し過ぎている。一方、政管健保の方は、全国一律にまとまっている。それで、これまた大きくなり過ぎている。適正な規模とは何なのかといったことを勘案しながら、保険のあり方を、統合一元化をどう進めていくかということが一つの大きな柱であるというふうに思っています。
 そしてもう一つは、診療報酬のあり方、その基本をどうするか。
 現在、何を基準にして決めているのかということが一般の人にはなかなかわからないし、特に、専門家の中でも、その一部の人にだけしかわからないというようなこともあって、もう少しこの基本を明確にしていくといったようなことを中心にしながら、それらを見直していく。
 そして、今総理から御発言のありましたように、一年間で、来年の四月までにその方向性を明確にする。そして、それから何年かけてやっていくかということは、それはあるでしょう。しかし、方向性は明確にするということをやらないといけない。
 時間をかけてやっておりまして、できることもありますし、できないこともある。したがって、それは早く決着をつけるということでやっていかないと、来年四月から三割の御負担をいただくということも国民の皆さん方にお願いするということになれば、なおさらその抜本改革の方向性は明確にしなければならないと考えております。
赤松(広)委員 こればかりやっていると、いろいろなことが書いてあるものですから、時間がなくなってしまいますので、少し視点を変えて別の立場から聞きますが、今、専門家じゃなければわからないようなと言われたけれども、専門家だってわからないようなことが今回いっぱいあるわけですよ。
 例えば、総理は三割負担を明記しないと抜本改革の方向性は示せないと言っていますけれども、じゃ、なぜ三割なのか。これが二割でなくて、あるいは二割五分じゃなくて、四割じゃなくて、三割の負担を明記しないと抜本改革の方向は示せない。抜本改革の方向を示すということと三割負担の話というのは全く別の話で、なぜそういうようなことになるのか、その論理の根拠が一体どこにあるのか、これは私は非常に疑問を持ちます。
 結果的には、例えば老人医療の対象年齢が七十歳から七十五歳になる。それから、七十歳以上の負担は定率一割になる。政管健保の保険料を七・五から八・二に引き上げて、そしてサラリーマン本人の窓口負担が三割になっただけ。この三つの負担増だけやって、そして、結局抜本改革の方向性は、断固やるぞやるぞ、今度こそと言いながら結局改革の方向は示さなかったというのが、あるいは示せなかったというのが五年前であって、またその轍を結果的に踏むのではないか、そんなことを私は思っているんですね。
 それからもう一つは、私は、三割負担がいいとか悪いとかの前に、その三割の問題と抜本改革の問題とは、こっちをだめだと言っているわけじゃないですよ、この何割がいいということを議論するということと抜本改革をやるということは基本的に別の話だ、こう思うわけです。
 特に、例えば七十歳以上の負担を定率一割にした場合は、例えば政管健保がそうですけれども、今保険料収入、約六・一兆円ですか、厚生大臣、そうですね、大体六・一兆円、そのうちの二兆円は老健に行っているわけですよ。そうすると、今度定率一割にしたときに、悲しいことですけれども、年金生活のお年寄りの皆さん方が、一割負担じゃ、とてもそんなに病院に何回も行くわけにいかない、お医者さんへ行くのをもう少し減らそうかということで、どんどんそれが落ちていったときに、急激に老健の負担の中身、内容は変わってくるわけですね。
 そうすると、そこに拠出をしている、政管だけじゃありませんけれども、政管健保その他の二兆円というのもまた変わってくるということも当然あり得るわけで、私は抜本改革をやらなくていいと言っているんじゃないんですよ、だから、そういう中身のことと抜本改革をやるということは、これを絡めてやるなんということが、三割がなきゃこれができないんだなんということは私は絶対ないと思うんですけれども、総理はどうですか、その辺。あなたはそう言っているでしょう。
小泉内閣総理大臣 私は、必ずしもそう思いません。
 負担と給付の問題は避けられないんですよ。負担は後回し、こういう状況じゃないと思うんです。だから、負担と抜本改革はセットだ、大事な問題だ、決して別の問題じゃないと思っています。
赤松(広)委員 僕は言っていますけれども、三割が云々と言っているわけじゃないんですよ。だから、三割は三割で議論すればいいんですよ。
 ただ、総理が言っているのは、三割負担をまず明記して、来年からそれをとる、負担増するんだ、保険料率も上げるんだということをやらなければ、抜本改革の議論ができないという。そこにどういう論理の展開があるんですか。もしこれが決まっていなければ抜本改革の話というのはできないんですか。そうじゃないでしょう。それがなくたって抜本改革の話はできるでしょう。そして、それは半年で結論が出るかもしれない、あるいは一年で結論が出るかもしれない。どうですか、それは。
小泉内閣総理大臣 それが今までできなかったから、三割を明示すればできるだろうと。そこは見方が違います。抜本改革を先送りすれば三割負担はしないでいいのか、これでは抜本改革の方向がつきません。国保は三割、健保が二割、そういういろいろな経緯があります中にあって将来の保険財政を見ると、将来、やはり三割負担は避けられないだろう、抜本改革も避けられないということから、私は、三割負担の時期を明示した方が抜本改革の議論は進むと思っております。
赤松(広)委員 それでは、改めてお伺いしますが、五年前をあなたは思い出してくださいよ。一九九七年、一九九八年、あなたが厚生大臣のときに一割から二割にふやしたんじゃないですか。それをふやして、じゃ、ふやしたから抜本改革はできたんですか。できなかったんでしょう。結局残ったのは負担増だけが残ったんじゃないですか。
 だから、私が最初に、抜本改革はなぜあのときにできなかったんですかと問いただしたのは、それをだからけしからぬということももちろんありますけれども、そういうことじゃなくて、そこの、一割から二割になったのと抜本改革とは全くつながっていないじゃないですか。では、何で今度だけ、二割が三割にならないと抜本改革ができないということになるんですか。そういう矛盾をあなた自身が感じませんかということを私は言っているんです。
 私は、誤解のないように言っておきますが、給付と負担の問題については、我が党民主党だって、とにかく一切負担はしない、それで給付だけどんどんくださいなんということを言っているわけじゃないんですよ。本当にむだを除いて、必要な医療はやる。むだな医療はもうやらない。そして、その人にとって一番適切な医療をきちっとやっていく。そのためには、例えば最低限これだけの負担がかかる、それは認めていこうということを我々は言っているわけですよ。
 だから、ある場合によっては、これは三割も認めるということに場合によってはなるかもしれない、今は違いますよ。今はこんな中身で三割だけなんてとんでもないということを言っていますが。
 だから、そういうところでもって論理展開をしながら、結局、一年後見てみたら、小泉さんはもう総理かわっていた、残ったのは、七十歳から七十五歳に対象年齢が上がった、定率一割だけが残った、二割は三割になった、そして保険料率は上がった、それだけが残って何にも仕組みは変わっていないということになることを恐れているから、私は、それに絡めて言わない方がいいんじゃないですか、抜本改革は抜本改革で小泉内閣の命かけてやればいいんですよ、そのことと負担増の問題は明確に分けてやはり考えるべきではないかということを言っているわけですが、こればかり言っていても、総理は総理のまたあれがあるでしょうから、もう答弁は求めません。
 一つだけこれに関して、これは坂口厚生大臣に聞きます。
 今、健保本人自己負担三割ということで、盛んに三割という言葉だけが躍っていますね。その三割というのは一体財政的な根拠はあるんでしょうか。
 さっき私が言いましたように、三割にする、政管健保を七・五から八・二に保険料率を上げる。これは厚生省が出している資料ですよ、厚生省が出している資料で、政管健保、現在で三千百六十三億の赤字、組合健保、千九百九十二億の赤字、国保、千二百五億の赤字、こういう中で、最も赤字の多い政管健保は、今もしこの保険料率アップと三割の負担を導入した場合、これは民主党がつくったあれじゃないですよ、厚生労働省がつくった資料ですよ、十八年度でもう赤字になるんですよ。十九年度でこれは二千八百億の赤字になるんです。どうするんですか、これは。また上げるんですか、そのときになったら。では、四割にしますか。
坂口国務大臣 今御指摘になりましたのは、確かにそういう数字になっているわけです。十八年度には若干の赤字になるという数字になっているわけですが、これは抜本改革をやらなかったらこうなる、こういうことなんですね。
 ですから、一方におきまして、現在の制度のままで、そして十五年の四月から三割負担、そして八二パーミルですか、これだけをやったらこうなりますという計算であって、プラスここには抜本改革が必要だということなんです。
 別だというふうにおっしゃいますけれども、それは両方一緒にやって初めてできることであり、財政にも影響を与えてくることですから、私は、これをマイナスに、赤字にしないようにするためには、あわせて抜本改革が必要である、それはもうやり切るというふうに我々言っているわけですから、今回はひとつお任せをいただきたいと思います。
赤松(広)委員 坂口さん、あなたの言っていることはもう矛盾に満ちている。
 いいですか。十八年に八百億の赤字、十九年に二千八百億の赤字、しかしこれは抜本改革をやればなくなると今言われたけれども、抜本改革の中身さえわかっていないのに、どうしてこれが消えると言えるんですか。そうでしょう。抜本改革、こういうことをやるんです、例えばこれについてはこういう見直しをし、これについては一元化をし、これについてはこうやってやるんです、だから二千八百億なんという赤字は出てこないんです、だから大丈夫ですというのならわかりますよ。ところが、抜本改革は何にも出ていません。何にも出ていないけれども、改革ということをやれば十八年、十九年の赤字はなくなるなんという論理が通じるわけがないじゃないですか。
 だから、私は、抜本改革を先にやりなさいということを、あるいはやらなくても示しなさいと。例えば、こういうことをやればこれだけむだがなくなります、これだけ赤字がなくなります、だから国保も政管も組合健保も大丈夫なんです、そういうことでもって言ってもらうならいいんです。あるいは、こういう抜本改革をやっても、これだけどうしても赤字にならざるを得ないので、だから二割負担が三割負担なんです、あるいは政管健保は料率をこれだけ上げさせてくださいというならわかるというんです。反対じゃないですか、あなたが言っているのは。
坂口国務大臣 ですから、これからやるわけで、それを、具体的なことをこの一年間でやらせてください。ただ、その中で、やる方向性としては、先ほど申しましたように、一つは、これは保険の統合一元化の方向です。統合していく。今、国保なら国保はもう三千からに分立をしているわけでありますから、その中で事務費にも非常にたくさんかかっている。そうした問題を、ここに節減をしていくということが一つある。
 一方において、診療報酬の中においても我々のわかり知れないところもある。そうした点についてはもう少し、先ほど申しました基本的な考え方を明確にし、そしてさらに、そこで言いますならば、診療報酬の中におきます基礎的な問題、基礎的なところにはもう少し配分をし、そして高額の医療費が、高額の機械器具が林立しているようなところで、多くの負担をそこに任せるという今の現状は打開をしていく。そうした中で、もう少しここは抑えさせていただくようにいたしますということを我々は言っているわけでありまして、そうした中から、私たちは、財源をそこに確保をしていきたいと思っているわけでございます。
赤松(広)委員 一年間議論させてくださいというんですから、どうぞ議論させてあげます。やってください。いいですか。
 ただ、そういう前提には、じゃ、議論を一年間しっかりする中で、例えばあなた自身が、自民党、政府・与党ということで合意をした中身にもありますけれども、例えば、政管健保の財政内容が好転をした、赤字が縮減したというようなことが出てきたときには、当然保険料率を下げる、あるいは場合によっては二割、三割も見直すというようなことも含めて、これはもうあり得るということでいいですね。いいか悪いかだけ言ってください。どうぞ。
坂口国務大臣 保険料を下げ得ることもあり得ると思っています。
赤松(広)委員 二割、三割はどうですか。
坂口国務大臣 ここはなかなか難しいところでありまして、それだけのゆとりがそんなに多く出るというふうに思いませんから、まずそこは、保険料の引き下げということに合意もいたしておりますし、それを先行したい。
赤松(広)委員 次に行きます。
 あと十五分しかありませんからちょっと手短に言いますが、今回の予定をされておる改正では、改悪と言った方がいいかもしれませんが、本人、家族の入院医療費についても三割に上げるんでしょうか。
坂口国務大臣 そういうことになると思います。
赤松(広)委員 これは当然だれが考えてもわかることで、例えば入院で一万円、二万円なんということはないわけで、通常何十万という単位になる。わかりやすく、例えば入院医療費が五十万かかった、今まで二割負担だった、そうすると、十万円が本人負担ということになるわけです。今度はそれが三割負担になる。そうすると、五十万掛ける三で十五万になる。しかし、実際にはこれは、十万だろうが十五万だろうが、限度額があるものですから、実際にはそれは全く変わらないわけですね、本人負担については。
 今度は、たまたま限度額が六万三千六百円プラス一%から七万二千三百円プラス一%に、この額はもちろん変わりますけれども、この差はありますけれども、私が今言わんとしているのは、二割にしても三割にしても、基本的に入院の医療費については、これはもうどっちでもいいとは言いませんが、全く影響ない、変わらない。それをあえて三割にする意図は一体何なのかということを尋ねたいわけですね。
 そこには、私は、今回の限度額、六万三千六百円が七万二千三百円に上がるわけですけれども、本当のねらいは、この限度額、将来にわたって九万だ、十万だ、十一万だ、十二万だともしこれが上がっていけば、限度額、負担が十万のときと十五万のときとは当然違ってくるわけですから、そういうことを考えているんじゃないですか。考えていないなら考えていない、いや、もうこれ以上上げませんよという話ならそれで結構ですし。厚生大臣。
坂口国務大臣 将来のことまでここで限定することはできませんが、今考えておりますのは、それではここをどんどん上げていったらいいという考え方には立っておりません。これはおのずから限界のある話でございますので、そう思っております。
赤松(広)委員 次の質問をいたします。
 ここに、厚生省が発表している国民医療費の将来推計があります。平成十二年度、二〇〇〇年で二十九・一兆円、そして、二〇二五年には八十一兆円に膨れ上がるだろうというのが出ています。ただ、問題は、これはどういう基準で出したかというのをいろいろ見てみますと、毎年の医療費の伸び、これは三%ぐらいで伸びていくだろうだとか、あるいは人口の伸びあるいは減少等々、非常にそういう要素を加味しながら出された。
 結論的には、私は、医療費の伸びといっても、実際には医療費の約半分を占めているのは人件費ですから、人件費は今むしろ下がっているんですから、こういう勢いでは伸びていかないだろう。しかし、今の三十兆円が減っていくなんということも、これもあり得ないだろう。だとすれば、国民医療費全体を見直していく。これは、単に全体を一割カットみたいな形で何でも減らせばいいという意味じゃないですよ、誤解しないでください。総額規制をするにしても、不必要なものをきちっと見直すという意味で、総額についても全体的にもう一度見直していく必要があるのではないかと思いますが、いかがですか。
坂口国務大臣 将来推計というのは、当然のことながら、その前提条件として入れますその条件によりましてうんと変わってくるというふうに思っています。ですから、今出しておりますのは、どちらかといえば、右肩上がりの時代にそういうふうにつくったものだというふうに思っておりますから、これからの経済の動向によりましては、その数字も当然のことながら変わってくるというふうに思います。
赤松(広)委員 ぜひ、これからの問題として、医療費が大きい小さい、高い安い、そういうところを見るときに、何を基準で見るのかということも私は非常に重要だと思うんです。いろいろな数も出ています、指標も出ていますし、いろいろなことを識者の方たちも言っておみえになります。
 一つの考え方として、これは厚生省もそういう数字を出していますけれども、対GNP比で見てみると、日本は、十年までしか、一九九八年までしか出ていませんが、五・九%。これは世界でいえば二十一番目なんですね。決して飛び抜けて医療費が高いということでもないわけです。問題は中身なんですね。二十一番目だって、十分な医療が与えられているのかどうなのか。あるいは、それほどお金を使ってなくたって、もうこれ以上ないというような医療をやっていればいいわけですから、やはり私は中身が問題だと思いますし、ぜひ、そういうことも頭に置きながら全体の見直しを進めていただきたいと思います。
 あと、きょうは特に医療の抜本改革の問題ですので、我が党の考え方だけ、あと具体的なことは同僚の松本議員の方でやりますので、私は総論的なことだけ、あれは小泉さんや坂口さんだけいろいろ攻撃していて、自分たちの党の考え方はどうなんだということを言われてもいけませんので。
 私は、抜本改革のためには、まず一つは、やはり今までの対症療法型の医療から予防・健康管理型の医療へ転換をしていくべきだ、総論で言えば。
 これは、ここに資料もありますけれども、岩手県の遠野市、よく例に出るあれですけれども、ここなんかはやはり、日ごろから運動をやるように健康管理する、そして集団の健診もよくやる、成人病対策のための食事のいろいろな指導もする。そういう中で、現実の数字は、療養の給付金については減っているんですね。だけれども、これは、では病院に行く人が減ったのかというと、そうじゃなくて、見せに行く人たちは事前によく行くわけですから、件数はふえていても実際の保険の給付費は減っている。理想的な形だと思うんですが、これは一つの小さい村だから、町だから、市だからできるという意見もありますけれども、やはり一つの方向としてそういうものをこれから考えていくべきではないのか。
 それから、先ほどの総額抑制をしていくためにも、診療報酬についてはやはり原則包括払いということも考えていくべきだし、医療の標準化と根拠に基づく医療、EBMといいますけれども、その導入をやるべきだ。
 それから、やはり高齢化社会に向かって、先ほど総理の話じゃありませんけれども、どうしてもお年寄りが多くなる、長期医療の問題も出てくる、長期療養の関係も出てくるということになったときに、やはり介護制度等、いかにうまく乗っけながらやっていくかということも重要な視点だと思っております。
 それからまた、病院、診療所の役割分担。それからまた、レセプト等の情報開示を徹底する。これはもう百五十三回国会で、参議院ですけれども、私ども民主党は患者の権利法案ということで出していますが、こういうことがきちっと抜本改革の中でやってこられれば、私は、かなりむだも減るのではないかと思っております。
 それからもう一つは、高額医療の問題がありますね。いろいろ言っても時間がないので一例だけ言いますけれども、例えば、今、糖尿病になった、何とかになった、そうすると、すぐ人工透析をやりましょうと。人工透析をやると本当にすぐよくなるんです。そのかわりその人は、五十から透析を始めても六十から始めても、ずっと、お亡くなりになるまで週に二回、三回の透析を続けなきゃいけない。
 私は、それをやめろと言っているんじゃないですよ。本当に透析が必要な人はそれをやればいい。ただ、医療現場からいくと、必ずしもそうじゃない人も中にはいる。では、それをどうチェックするのか。それはもうお医者さん自身が今言っているんですけれども、そういう専門家医が複数でチェックすればいいじゃないか。一人が必要だと言っても、いや、この人はもっとこういう治療をした方が本人のためにいいですよ、透析じゃなくてこれでいきましょうというようなことをするような仕組みもぜひ考えていただければ、私は、大分この高額医療の問題についても変わってくるんじゃないだろうかと思っています。
 最後に、診療報酬の改定が行われて、この四月一日から進みます。中を、私もこんなものをずっと見させてもらいました。自分の興味のあるところもありましたし。中を見ると、必ずしもだめだ、だめだばかりじゃなくて、例えばポジトロンCTみたいな、今まで四ミリ、五ミリのがんが見つからないのが、今度それを使えばみんなわかるんですね。そうすると、予防医学的にも、人間ドックの中でも、早く小さな形で簡単に取れる段階でがんが見つかるという意味でこれが保険対象になるとか、神経内視鏡手術がこれの対象になるとか、いいところも実はいっぱいあるのです。
 ところが、悪いところもいっぱいあるんですね、これが。悪いところ、例えば、高齢化社会に向かって長期療養入院者がふえる。そのために長期入院に係る保険給付の範囲を見直そうということで、これを一定程度以上は、六カ月超え以上はみんな社会的入院としちゃう。特定療養費制度の対象として、保険給付の範囲を、今までそれでやっていたのを見直して、負担増をさせちゃう。あるいは、これは年寄りに限りませんけれども、入院していたのを、今までは入院基本料は二十五日だったのを二十一日にしようとか、二十八を二十六にしようとか、二十を十七にしようとか、こういうのがありますね。
 こういう特に入院日数に対する基本料の見直しの視点というのは、どういうところから、どういう考えを根拠にして出てきているのですか。
坂口国務大臣 前段の民主党からお示しになりましたその案は、我々とそんなに違わないと思って聞かせていただいたところでございます。
 そして、後段のお話の療養費の問題でございますが、日本の医療がどこが諸外国と比べて出が多いかということを見ますと、それは、入院費、入院期日が長いということでございます。それで、二十一日とかそういうふうな数字を示して少し短くしておりますが、これは各病院の調査をいたしまして、その値をもとにして決めているわけでございます。
 それから、六カ月以上今度は自己負担をしていただくということにいたしましたけれども、これも、病院の方が、この方は入院をまだ必要ですと言われるところは、それはそのまま六カ月過ぎようと八カ月過ぎようと構わないわけでございますが、病院の方が、この方は医療としてはもうこれで結構でございますとおっしゃる方につきましては、これは新しい施設等に行っていただくといったようなことにして、そこは一つの区切りをつけさせていただくということでございます。
赤松(広)委員 あと、高度医療の進展の中で、医者、看護婦等の質の向上の問題等も少し議論してみようかと思ったんですが、時間が来ましたので、これはまた別の機会に譲りたいというふうに思っております。
 とにもかくにも、総理、この医療の抜本改革、私ども民主党もきちっと対案を示しながら、より国民医療前進のためにしっかりと頑張ってやっていきたいと思っておりますから、大いにこれからも議論をしながら、ぜひ私どもの主張、なるほどと思うところが多いと思いますから、取り入れていただいて、生かしていただきたい。
 以上、要望申し上げて質問を終わります。ありがとうございました。
津島委員長 これにて赤松君の質疑は終了いたしました。
 次に、松本剛明君。
松本(剛)委員 民主党の松本剛明でございます。先輩の赤松委員に引き続いて医療制度改革についてお伺いをいたしたいと思います。
 先ほども話がありましたように、私は決していわゆる社労の専門家ではありませんが、保険料を払っている一人の国民として、また、時によっては患者になるかもしれない立場から率直にお伺いをさせていただきたいと思っております。
 今の議論の中でも、さんざん三割と抜本改革という話が出てまいりましたが、昨年の十一月の二十九日に、医療制度改革大綱ということで発表をいただいております。
 医療保険制度の一元化であるとか高齢者医療制度の見直し、診療報酬体系、また公的医療保険の守備範囲や給付と負担の問題、もうさまざま、大変幅広い内容のものが御提示をいただいておるわけでございますけれども、坂口大臣、この医療制度改革大綱をきちっと実施したら抜本改革になるという御認識でいらっしゃるのか、それでよろしいのかどうか確認をさせていただきたいと思います。
坂口国務大臣 大枠ではそういうことでございます。もう少し具体的なことを言わないといけないというふうに思いますが、大枠のところはその大綱の中に書いてあるというふうに思っております。
松本(剛)委員 総理も同じような御認識でよろしゅうございますか。
小泉内閣総理大臣 大体そのとおりだと思います。
松本(剛)委員 坂口大臣は、九月十四日の記者会見で四項目ほど大臣の思いを述べておいででございます。この辺の項目はほとんどこの大綱に盛り込むことができた、こんな認識でよろしゅうございますでしょうか。
坂口国務大臣 入っているというふうに思っております。
松本(剛)委員 この辺の大臣の思いというのを反映したこの医療制度改革大綱を設定されたわけでございます。
 この中身についてもお伺いをしていきたいと思うんですが、今申しましたように、大変広い範囲の医療制度改革大綱を定められまして、その中で、今回の予算、診療報酬等の見直しの予算と、それからこの国会に法改正が提出をされる予定ですね、今の段階では。これから予定をされるということでございますが、今御準備をいただいている法改正、十四年度予算というのは、この医療制度改革大綱の中でどのような位置づけになるという認識でよろしいんでしょうか。坂口大臣にお伺いをしたいと思います。
坂口国務大臣 ちょっと御趣旨、十分に理解できておりませんが、その大綱の中に示しましたことにつきましては、当然、その中で、十四年度の予算の中に明確に書くことのできる問題と方向性だけしか書くことのできない問題とあるというふうに思いますが、すべてはその範疇に入れてあるというふうにお考えいただいてよろしいかと思います。
松本(剛)委員 総理にお伺いをしたいと思います。
 これは第一段階だ、総合的な改革につなげていく第一段階がこの今回の法改正なり予算の内容だ、こういう理解でよろしゅうございますか。
小泉内閣総理大臣 総合的な改革につなげていく一つの大きな作業が始まったと御理解いただきたいと思います。
松本(剛)委員 診療報酬の見直しという点、我が党の岡田議員も予算委員会でその点は多少なりとも評価をしなきゃいけないというふうに申し上げたかと思うんですが、この手元にいただきました健康保険法等の一部を改正する法律案の概要というのを拝見させていただきますと、高齢者医療制度の改革は、患者負担や拠出金の部分、また、医療保険制度は、保険給付、保険料、国民健康保険制度に財政基盤の支援をする、こういった内容になっているわけであります。
 総理は三方一両損ということをたびたびおっしゃっておられるようでございますが、今回のこの法改正に限って取り上げてみれば、国民の方への負担が先行しているというような認識を私は持つんですが、この点については、これは確かに国民負担が先行している、こういう理解でよろしいんでしょうか。まず、厚生大臣にお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 平成十五年の四月一日から三割負担ということになっているわけでございますが、それまでにやはり抜本改革を示さなければならないということにつきましては、総理の御意見、そして私の意見もそれに一致をしているわけでございます。
 したがいまして、平成十五年の四月一日に三割負担をお願いする前に抜本改革の大筋、基本はお示しをし、そして、それまでに実現のできるものは実現をするということが前提条件としてあるというふうに思っています。
 したがいまして、中身はことしの八月までに結論を出したいというふうに思っているものもございまして、それらにつきましては来年度予算に反映ができるようにしたいというふうに思っております。
松本(剛)委員 大変大臣は率直な御答弁だったと思うんですが、抜本改革をする、また反映できるものはできるだけやらなきゃいけないとおっしゃったわけでありますが、とりあえず今ここで、この国会で決まりそうなことは、国民負担が先行するという話が先に出ている、だからこそ逆に、抜本改革を何とかやりたいとおっしゃっておられるんではないか、このように思うわけであります。
 総理、今回決まることはとりあえず国民負担先行だ、当然しかし、その裏側のことをやらなきゃいけないという話をおっしゃっていることは承知をしておりますが、この中身は確かに国民負担先行だ、こういうことでよろしゅうございますか。
小泉内閣総理大臣 国民負担という言葉も私はなかなか釈然としないのですがね。患者の負担が上がれば国民負担で、下がれば国民負担じゃないのか、違いますね。税金を投入しなきゃならない、保険料を上げなきゃならない。どれであっても国民負担なんですよ。それしか給付を受けられない。そこを誤解しないでいただきたい。
 そして、私は、医療の質の問題もあります。あるいは保険者間のいろいろな制度の問題もあります。高齢少子社会という人口の趨勢もあります。要は、国民にプラスになるためにこの皆保険制度をどうやって維持していこうかということが大事であって、三方一両損ということばかり取り上げられていますが、実際は、すべての国民が適正な負担でいい給付を受けたい、こういう方向の中で考えた案でありまして、どれが国民負担でどれが国民にプラスというんじゃなくて、よりよい、永続的、持続的に可能な皆保険制度をどうやって維持していくかという観点から考えていくべきではないかと思っております。
松本(剛)委員 三方というのは二つほど考え方があるようでございまして、患者と、保険料を負担している国民と、医療提供機関というのもありますし、先ほども赤松議員も言っておりましたが、患者も、保険料を負担するのもいわゆる多くの国民全体であって、あと医療提供機関と国の三方であるべきだ、こういう意見もあるようで、総理はどこかで四方それぞれ負担をしてもらわなきゃいけないとおっしゃったようにもお聞きをしておりますが。
 私が申し上げたのは、この部分は、国民全体が負担をするという部分の話ばかりがここの法改正にはとりあえず出てきておる、医療提供機関であるとか国の話はここには出てきていない。これを急いでやるんだというのが坂口大臣のお話だろうというふうに思いますが、先ほど赤松議員も言っておられましたように、負担と改革はセットだと総理がおっしゃったように、やはり一度にぜひ出していただかないと、一つ一つ、これだけが先に行くということになったときに、何が起こるかわからないということになるのではなかろうかということを申し上げたい、このように思っております。
 繰り返しになってまいりますけれども、赤松議員との議論の中で、九七年の、平成九年の改革の話が出ておりました。あのときにいろいろおっしゃったのになぜできなかったのかという話がございました。これは二月七日の報道ですけれども、総理は、抜本改革してから三割負担にすると、抜本改革をしない口実に使われる、今まで何回もそうだったとおっしゃっておいでですが、私が見る限り、むしろ九七年のときは逆ではないかというふうに思うわけであります。二割負担が先に出て、あのときに総理は抜本改革をやる、案を提示して実現するとおっしゃったけれども、実現をしなかった。むしろ、この論理は逆ではないかと思いますが、今まで何回もそうだった、この辺の部分はどこを指して言っておいでになられるのか、総理にお伺いをしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 もう先送りできなくなった状況ですね。
 四年前に、抜本改革しなきゃならないという合意は与野党共通してあったと思うんです。しかし、もう一時しのぎの保険料引き上げ、患者負担で保険財政を保たせていこうという状況は済まなくなった。四年前のあの方向をこれから真剣に再検討して、早く具体的な方向を示そうという機運が盛り上がってくるのには、私は期限を切った方がいいと思うのであります。
 四年かかってできなかったのが一年でできるのかという議論もありますけれども、一年だけじゃない、四年間の蓄積がありますから、あとは政治的な意思、決断だと思います。
松本(剛)委員 政治的な意思、決断というお話でございましたけれども、先ほど、九七年のときに、あれだけ議論になってなぜできなかったのかということについて、私も坂口大臣の名誉のために申し上げるわけではないのですが、政権の枠組みが変わった、政権がかわったということを理由に挙げられました。
 九七年の段階から九八年に入って、参議院の選挙の後なんでしょうか、公明党さんが政権入りをされたということを指して、政権の枠組みが変わったということをおっしゃっておいでなんではなかろうか。新進党がなくなりましたのが九七年の末だったというふうに私覚えておりますが、ということではなかろうかというふうに思いますが、当時の議論を拝見いたしますと、厚生労働委員会、この前も議論になっておりましたが、坂口大臣、また予算委員でおられる青山さん、そして自民党からは津島先生、皆さん委員でおられて、当時、小泉厚生大臣ですね、お答えになっておられるのですが、坂口大臣はたびたび、抜本改革をしっかりやれということを言っておいででございます。
 このときも、大臣のお人柄が出るような質問が幾つか出ておるわけですけれども、抜本改革をきちっとやらないと、先に示していただかないといけない、抜本改革の方向がわからない、西に行くのか東に行くのか、それもわからずに新幹線に乗ってくれという話には乗れないと、坂口大臣言っておいででございます。
 小泉厚生大臣に対して、ここは坂口大臣のお人柄だと思うのですが、小泉大臣はわかっておいでなんでしょうけれども、ごまかしているというと言葉が悪いけれども、言い逃れているのだろう、私もあえて折れた話をいたしまして、一遍この法案を出されたのですから、メンツにかけて法案を引っ込めることはできないでしょうけれども、やはり抜本改革をしっかり、なおかつ示していただかないといけない。
 こうおっしゃっておいでなわけでありまして、この方々が政権に入ったから抜本改革ができなくなったというようなことを、もし政権の枠組みとおっしゃっているんだとしたら、これは大変失礼な話ではないかと思うのですが、この九七年にお約束をしてなぜできなかったのかというのは、これは実は重要な問題ではなかろうかというふうに思うわけであります。
 もう一度、総理。なぜ九七年、もう一つ一つは申しません。総理、たびたび二〇〇〇年をめどに抜本改革を実現したいとおっしゃっておいででございますので、その点、なぜできなかったのか、どうお考えかお聞きをしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 やはり政治的意思が足りなかったと思いますね。今回、当事者の坂口さんは今度は厚生労働大臣で担当者ですから、その当時の意欲を今度は政府側からやっていただけるんですから、さらに機運が盛り上がっていくと思います。
松本(剛)委員 余り申し上げたくないんですが、政治的意思というのは総理がお示しになる、厚生大臣がお示しになる。総理は当時橋本総理でいらっしゃったかというふうに思います。後、続きましたのは、小渕総理、森総理、そして小泉総理でいらっしゃいます。厚生大臣は、小泉総理の後は、宮下先生、丹羽先生はきょうここに、いらっしゃらないですね、留守になってしまいましたが丹羽先生、そしてその後は津島委員長で今の坂口大臣。このどなたもこれまでの議論からすれば意思をお示しになっていると思うんですけれども、いかがですか。意思をお示しになっているのにできていないのには、ほかに理由があるんではありませんか。
坂口国務大臣 私も当時の自社さ政権のときの抜本改革の内容を拝見させていただきました。大変その中にはすばらしいことが書かれているというふうに思っておりますが、中には、医薬品の問題等につきましては実現をしているところもあるわけですね。実現をしていないのは、ただ一つ、高齢者医療制度について、これがそのときもうたわれておりましたけれども、現在なおできていないということでございます。だから、そこをどうするかということを明確にしないといけないというふうに思っております。
 そして、総理がおっしゃることを私が言うのは大変失礼でございますけれども、総理が十五年の四月一日からということをおっしゃっているのには、それまでにそこを明確にしておかないとなかなか抜本改革が進まないというお考えなんです。私も初めはここがわかりにくかったわけでありますけれども、最近はよくわかっておりまして、ここはよくわかってまいりました。
 というのは、今まで……(発言する者あり)いや、そういう意味ではない。今までは、この抜本改革というのをやるやると言っていて、どうしてもそこができなかったのは、その質もさることながら、実現ができなかった。だから、今度は、最後を決めて、平成十五年の四月一日という最後のところを、おしりの期日を決めて、それまでにやるんだという総理のお考えなんですね。これも一つの明確なお考えだと私も思っています。
 だから、おしりのときを決めて、それまでに坂口、おまえやるんだぞ、こう今言われているわけでございまして、総理はずっとおやりになっているでしょうけれども、私はいつまでやるかわかりませんが、しかし、やっております限りにおいては、私は一生懸命にそこはやりたい、やり遂げたい、そういうふうに思っているわけでございます。
松本(剛)委員 坂口大臣、よくおわかりになっていて御答弁をされていると思います。あのときに、大臣、よくわかっておられて言い逃れているんではないでしょうかと大臣に対しておっしゃった言葉をそのままお贈りさせていただきたくはないんですけれども。
 あのときも、実は、平成九年の通常国会で一割負担の引き上げの議論がなされていまして、八月末、九月までに方向性を出すとおっしゃっておられて、実際に厚生省案はお出しになりました。今回も、医療制度改革大綱、もう少し具体化が必要だというお話が先ほどありました。物によっては八月までに、または今年度じゅうに方向性を出すとお話を言っておられるわけであります。方向性を出すことのお約束は、実は前回も果たされているわけでありまして、出した方向性が実現に移らなかったということが一番大きな問題ではなかろうかというふうに思っております。
 先ほど、平成九年の厚生省案、改革案はかなり実現されたと大臣おっしゃいましたけれども、心ならずもではなかろうかと思うんですが、たくさんある項目の中でなされているのは、さっきおっしゃった薬価の部分なんかは多少変わったのは事実ですが、保険制度の地域保険の一本化であるとかかなり根本的なことがやはりそこには書いてあるわけでありまして、実は、今回ほとんど積み残しになっていると言った方が私は正しい評価ではなかろうかというふうに思っております。
 その中で、まさに負担の話が法改正で出てくる、方向性は近々示すと言っている。これがいつ実現されるのか。こういう問題は、全く五年前、四年前と同じ構図だということになってしまうのが大変残念なところであると思います。
 先ほど総理は、これはさまざまな賛否や利害が絡む問題だというふうにおっしゃいました。前回の、平成九年、五年前のときも、これは申しわけない、また公明党の先生ですかね、桝屋敬悟先生が、中医協とか利害調整でつぶれるということはないのでしょうかというお話が、実現に向けて出ております。総理、何とお答えになったか覚えておられますか。やってみなきゃわからない。最近もよくこういうお声を聞くような気がするんですが。
 それぞれの医療にかかわる人たちにとっては大変大きな問題であるというふうに思うわけでありまして、今回考えられている改革というのは、平成九年のときと基本的に変わらない、積み残しの宿題がたくさんある。当時の方々にとって大きな問題であったと同じように、今回もまた、さまざまな医療に携わる方々にとっても大変大きな問題だろうというふうに思います。その辺の利害の関係、総理、先ほども、そういう関係あるだろうとおっしゃいましたが、どういうふうに乗り越えていかれるおつもりなのか、決意をお聞きしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 平成九年に出た方向の中で、進んでいるのもかなりあるんですよ。先ほど厚生大臣言われましたように、薬価の差益、これは問題になりましたね、これはかなり進んでおります。同時に、介護保険制度導入に絡んで、医療の提供体制の形もかなり、より進歩しております、以前よりも。それと同時に、診療報酬等も、出来高払い制度と定額払い制度、これも今見直しが進んでおります。
 今後、こういう見直しをさらに進めていく必要がありますし、今回の案におきましても、いろいろ利害が絡んで賛否両論ありました。いい例が診療報酬引き下げですね、医療機関の。これも反対。しかしこれは、こういう状況だから診療報酬引き下げ、やむを得ないなという形で決まった。それで、患者負担三割、これも反対、つい最近まで大反対でしょう。これも政治的な強い意思が働いたおかげで、十五年四月、合意ができた。
 そして、抜本改革の案を皆さんが、反対していた皆さんも含めて、抜本改革の方向を出してきてくれたんですよ。これはぜひともやってもらわなきゃなりませんね。だんだん進んできているじゃないですか。いかに政治的意思が大事かといういい例だと思っております。
松本(剛)委員 政治的意思というお話でございました。これまでの厚生大臣や総理についてどう申し上げたらいいのかは、余りここでは触れないことにさせていただきたいというふうに思いますが。
 一部にありますが、一応、これは二十二日の金曜日なんでしょうか、先ほども赤松委員がお聞きをさせていただきましたけれども、坂口大臣、福田官房長官、それから丹羽医療基本問題調査会長と麻生政調会長とが会談をされたということで、幾つかのことが決まっておるようであります。
 この中身、先ほどお話をさせていただいた医療制度改革大綱などに書いてあるものがかなり多いわけでありますが、基本的に、決まった項目というのは、私どもが報道で拝見をしているような内容でよろしいという理解でよろしゅうございますでしょうか。何か報道等で言われていることとこれは違う、訂正をいただかないかぬことがあるのであれば、坂口大臣にお伺いをしておきたいと思います。
坂口国務大臣 報道の中身を全部、私チェックをしているわけではございませんが、全体としては大体、項目等はそのとおりだというふうに思っております。
松本(剛)委員 政管健保の民営化の話もちょっとお伺いをしたいんですが、その前に、ほかの項目、例えば新しい高齢者医療制度の創設であるとか診療報酬体系の見直しであるとか、それから保険料の徴収事務の一元化、また社会保険病院の三年以内見直し、そういったものはほとんど、これは三年以内と合意をされたというふうに書いてありますが、大体そのぐらいでよろしゅうございますでしょうか。
坂口国務大臣 その辺は、もう少しできれば早くやりたいというふうに思っています。
 この年金、医療、介護、雇用の保険料の徴収につきましては、結論をことしの八月までに出したいというふうに思っております。
 また、社会保険病院の件につきましては、今回さらに詳しく三割ぐらい削減という数字が入ったわけでございますが、そこまでいかない問題につきましてはことしの夏までにというふうに思っておりましたが、三割というふうに具体的に入ってまいりましたので、やはり一年ぐらいの検討を経て決定をしたいというふうに思っているところでございます。
松本(剛)委員 五年以内に政管健保の民営化という話が出てまいりましたけれども、これについては具体的にどういう民営化のイメージを描いておいでなのか、坂口大臣にお伺いをしたいと思います。
 例えば、どういう形の受け皿をお考えになっているのか、赤字をどういうふうにされるのか、地域ごとの分割という形であればどの単位でお考えになっているのか。また、例えば民営化的な経営手法であるとか会計を行うということであればわかりますが、民営化ということになると、皆保険で保険料も強制徴収ということになってくるわけであります。一部の報道ではJRのようなイメージという話もありましたが、値段が安ければ旅行に行こう、列車に乗って旅行に行ってみようと思うのと、値段が安ければ保険料を払おうというわけにいかないことを考えると、少し市場原理と違う世界のような感じがするわけであります。
 この大変大きな政管健保の民営化というのが、ある意味では突如として出てきたわけでありますが、おおむねの方向なりを示していただかないと、先ほどの話ではありませんが、西へ行くか東へ行くかわからない新幹線に乗れないということになるかと思いますので、お示しをいただきたいと思います。
坂口国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、医療保険の問題につきましては、全体の統合一元化を図っていきたい。
 国保の方は、もう三千以上に分立をしているわけでありますから、これは統合をしていかなければならない。
 一方、政管健保の方につきましては、これは全国一律でありますから、例えば長野県のように非常に医療費が少ない県も、あるいは一方で、福岡でございましたか、医療費が大変高くつくようなところでも、保険料は、これはもう一本化されているわけであります。そうしたこともございまして、政管健保につきましては少し考えてはどうかという意見が今までからあったことも事実でございます。
 これらの問題を総体的にどうしていくかということを、最も効率的なやり方でどう分割していくか、あるいは統合するかといったようなことをやらないといけないというふうに思っているわけでございまして、現在どういうふうな方向が一番いいかというところまで、私も個人の意見を申し上げる段階ではないというふうに考えております。
 私個人の意見を言えというふうに言われましたら、私は県単位ぐらいな大きさのところが一番よろしいのではないかというふうに思いますけれども、それは多くの専門家の皆さん方の御意見を聞きながら決定をしなければならない問題かと思っております。
松本(剛)委員 ちょっと確認をさせていただきたいんですが、将来の一元化なり地域保険への統合に向けて分割や統合が必要だ、ここはわかったんですが、運営形態が民営化するという部分はどういう形になるということなんでしょうか。当然、保険制度の見直しということであれば、さまざまな分割、統合が出てくると思うんですが、ここに民営化が入ってくる、民営化と今報道で書かれていたけれども、これは必ずしもそうでないということなんでしょうか。
坂口国務大臣 健保でございますとか国保は、国がやっているわけではございませんで、一般が、これは一般的に行われているわけでございますから、こうした国保や、そして現在の健保と政管健保も統合していく、あるいはまた分割していくということになりますと、それは当然のことながら、今までのように国がこれを行うということを見直さなければならない話にもなってくるだろう。その辺のところは、どういう形がいいかということにつきましては、民営化といいましても漠として広い範囲がございますが、そこは、どういう形が一番いいかということにつきましては、今決定されているわけではございませんで、いろいろの全体としてのあり方の中で決定されていくべきものだというふうに思っている次第でございます。
松本(剛)委員 民営化という言葉がひとり歩きすることはこれまでもよくあったような感じがするわけでありますが、今の話を伺う限りは、まだこれから内容は決めるんだと。必ずしも、決めたものがこれが民営化だと言葉をかぶせればそのとおりになるかもしれませんが、民営化という言葉、我々がイメージするのは、あちらこちらが参入して競争原理が導入されるとか、株式会社形態になるとか、そういう形を普通に民営化という言葉を使うと想像するわけでありますが、そういうことも含めてこれからだという理解でよろしゅうございますか。余りこの問題ばかりやっているわけにもいかないんですが、これから検討される、こういうことでよろしゅうございますね。――はい。
 もう一つ、この改革の中で、先ほども三方なのか四方なのかわかりませんけれども、どこにかかわる話かは難しい問題がありますが、医療費の総額抑制という問題がございます。
 去年の六月の骨太の方針で、「医療費総額の伸びの抑制」という項目が立っておったかというふうに思います。「「価値」ある医療制度を実現し、医療費総額の伸びの抑制を行う。」また、「老人医療費については、経済の動向と大きく乖離しないよう、目標となる医療費の伸び率を設定し、その伸びを抑制するための新たな枠組みを構築する。」こう定めておりますが、この基本方針は変わってないという理解で、総理、よろしゅうございますか。
坂口国務大臣 そこは変わっておりません。
松本(剛)委員 この医療費の総額の伸びの抑制について、医療制度改革大綱でもほぼこれに近い文章で出てきておるかと思いますが、医療費の総額の抑制という言葉が適正という言葉にたしか変わっていたような気がいたします。
 一つお伺いをさせていただきたいと思いますが、この十四年度の予算編成の基本方針を策定するに当たって、当初の案では、「指針を定め、その指針を遵守できるよう有効な方策を実施する旨の法的措置を講ずる。」こういう原案であったということは、これは総理でしょうか、坂口大臣でしょうか、御存じでしょうか。
坂口国務大臣 医療制度改革大綱でありますとか予算編成の基本方針におきましては、伸び率抑制のための指針を定め、その指針を遵守できるような有効な方策を検討し、実施するものとするというのが盛り込まれているわけでございまして、今お読みになりました、今度の法律にどう書くかということでございますが、この書き方とそう大きく違わない範囲で書きたいというふうに思っておりますけれども、現在、そこのところは最終段階でまだ結論を出してないところでございます。
松本(剛)委員 与党と調整をされる前の予算編成基本方針案には、「有効な方策を実施する旨の法的措置を講ずる。」と載っていたはずなんでございますが、その点は坂口大臣、承知をされておいでですか。
坂口国務大臣 そこまで書いてあったかどうか、ちょっと今記憶にございません。
松本(剛)委員 私のところに案がありまして、書いてあるんです。これは、原案は、十一月の二十七日の経済財政諮問会議の段階では、医療制度については、予算編成の基本方針は白紙であります。その後、今の「法的措置を講ずる。」という、これはなかなか強い文言だと思いますが、これが入ってきまして、与党の、これは手続も本当は確認をさせていただこうかと思っていたのですけれども、時間がありません、私の方から申し上げたいと思いますが、与党各党の御了解を得られて、恐らく与党三党の政策責任者の了解を得られるんであろうというふうに思いますが、その中で、自民党の総務会で承諾が得られずに、この「法的措置を講ずる。」という文言は落ちたというふうに理解をしているんですが、その経緯について、総理か坂口大臣か、御承知になっておられますか。
薦田政府参考人 お答え申し上げます。
 十一月二十七日の諮問会議の資料では、おっしゃられたように、その欄が空欄になっています。
 それから、二十九日の夜だったと思います、医療制度改革大綱がまとまって、その後、その大綱、あるいはそれまでの協議会での議論、あるいは諮問会議での議論を踏まえたあの案をまとめました。その案につきまして、与党の御意見も伺いつつ、大綱の記述を踏まえてより適切な表現に修正し、最終的な記述内容を取りまとめて、十二月四日に内閣決定をいただいたという経緯でございます。
松本(剛)委員 ありがとうございます。
 申し上げたいことは、先ほどもお話がありましたように、骨太の方針で、老人医療費制度については、経済の動向に沿って、医療費を調整する枠組みを構築する、ここまではっきり書いておられるわけであります。この基本方針は変わっていないという中で、医療費の総額抑制について、何度か、私から見たら、いわば政府はチャレンジをされているという感じがするわけであります。
 予算編成の基本方針の原案に書いたけれども、自民党の調整が得られずに、若干文言が、私の評価をさせていただければ、後退をした。
 そしてまた、今回の健康保険法等の一部を改正する法律案は、まだ中を今お詰めいただいているところだろうというふうに思いますが、一月に私どもが見せていただいた概要では、医療費総額の適正化について指針を定め、その指針を遵守できるよう有効な方策を検討し、実施すると書いてあるのが、また大臣は、伸び率を適正化するための指針を策定と、実施がどこかでなくなった。これは細かい文言のようでありますが、この文言の中でこれだけさまざまな議論が行われるということは、こういう一つ一つのやはり積み重ねが、実現をする大事な方法であろうと思うんです。
 先ほど総理は、政治的な意思だとおっしゃいました。このお話をさせていただいているのも、ここの横にたくさんおられる中で申し上げにくいんですが、自民党さんとの調整で常に御苦労をされて、今回もさんざん御苦労されているわけであります。三割負担の件については合意をしたという話でありますが、この医療費の総額の抑制、私自身は、本当に総額の抑制を一律にやるのがいいとはちょっと思っておりませんが、悪貨が良貨を駆逐するといったような意味でも、総額の抑制の仕方は非常に難しいというふうに思っておりますが、総理の御方針としては、一応、老人医療費については経済の動向と関連した枠組みをつくるというのが意思であるとすれば、この意思に到達しようとするときに、たびたび与党との調整で手間取っておられるというのが今の実情ではなかろうかと思うんです。
 この場で、逆にはっきりと、与党との調整には苦労するけれども、それでも乗り越えてやっていくんだ、場合によっては壊してでもやっていくんだと、当初のスタンスにお戻りをいただく決意をお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 政権を担当して以来、いつも苦労していますよ、与党との調整には。しかし最終的には、まとまっていくでしょう。今回もそうです。三割負担についても大反対だった、しかし最終的には、反対した人も賛成してくれるんです。そして、抜本改革の方向まで示してくれるんです。
 私は、今回の医療費の伸びの適正化、これについてもいろいろ、結論までには賛否両論、苦労いたしますが、最終的には良識を発揮してまとめていけるような結論が出せるように努力をしていきたいと思っております。
松本(剛)委員 総理、率直に申し上げまして、最初にお聞きをさせていただいたように、今回、今動いている部分、はっきり決まろうとしている部分というのは、三割負担であるとか、国民の負担とは何なのかという議論がありましたけれども、国民全体の負担の部分であります。私から見ましても、そういった部分はどんどんある意味では総理は意思を通されたわけでありますけれども、医療費の総額の適正化であるとかそのほかの抜本改革という部分については、これから調整という形で残っているわけであります。これから調整というのは、当然押したり引いたりがさまざまある中で、いろいろな形でそれは落着をされていくんだろうというふうに思いますけれども、我々国民から見たら、三割負担だけ先に決まって、それであとの部分が調整でまたがたがたになっていくという形であったとすれば、これは一番かわいそうなのはやはり国民であります。
 総理御自身が、負担と改革はセットだと先ほど赤松議員の答弁でもお答えになられました。その意味からすると、こういう先行型というのがなぜこういう形になるのかというのは、坂口大臣はだんだんわかってきたと言っておられるのですが、私は一生懸命勉強してもよくわかりませんし、坂口大臣も、先ほどもお話がありましたように、また、この九七年の議論の中での熱い議論を聞いておりましたら、お気持ちは変わっておられないのではなかろうか、このように思うわけでありまして、ぜひ坂口大臣にも、きちっと良心に従って御活躍をいただくことをお願いし、また総理には、本当に、負担の部分だけが、この三割だけが先行して残るということがないように、きちっと抜本改革をお願いしたい。
 九七年と全く構図は、先ほど申し上げたように、今変わってない。私どもは、こういう形での三割負担というのには決して賛成ができないということを申し上げて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
津島委員長 これにて松本君の質疑は終了いたしました。
 次に、佐藤公治君。
佐藤(公)委員 自由党、佐藤公治でございます。
 きょうは、総理を前にいろいろなことが聞けると思い、こういう機会はめったにございません。
 私がまず最初に聞きたいことは、去年の代表質疑、これは雇用対策関係の代表質疑です。このときに総理に尋ねさせていただいた、そこの一文を読ませていただきたい。
 総理はいつも国民に痛みを強いることばかりをおっしゃっておられますが、小泉総理、小泉内閣は今日までどれだけの改革を目に見える形で国民にお示しになり、それを実行された結果、どのような痛みが発生しましたか。総理が今お感じになられている一番の痛みとは何かを具体的にお答えください。
  もしも、その痛みとは、反対勢力との闘いや給与一部カット程度に思っておられるなら、それは間違いです。
こんなことを言わせていただきました。
 これに対して総理は、
  これまでの改革と痛みについてのお尋ねであります。
  私は、改革しない場合、痛みがないのかというと、そうでもないと思います。このままがいい、今までのままが、現状がいい、今までの制度を全部維持したいといったら、別の痛みが出てくる。そうではないでしょう。新しい時代にはやはり、改革すべきもの、既得権を壊さなきゃならないもの、どちらにも痛みは伴う。どうせ痛みが伴うのだったら、あすへの展望を持って、
こういうお答えをされました。
 言っている意味はわかるんですが、私が聞きたかったことは、まず、今まで、国民に痛みを強いることをおっしゃる。当然、改革は痛みが伴う、わかります。でも、やはり筋道として、政治家小泉総理、小泉内閣、そして政府が、国民に何を痛みを最初に出すのか、提示をするのか、それの上で国民に痛みを強いるのが筋だと私は思います。
 しかし、今出ている痛みというのは、私も、新人で国会議員をやらせていただいている中、痛みという言葉だけであって、実際本当に、国民と同じような、またそれ以上の痛みを出しているかといったら、そうは思えません。
 この部分で、この代表質疑のときに聞いたことにプラス、総理が今思われている、国民に痛みを強いる前に、自分として何を痛みを差し出すのか、そこを具体的にお答え願えればありがたいと思います。
小泉内閣総理大臣 今まで生きていたやり方といいますか現状というものが続くなら、それがいいなと思っている国民はかなりいると思うんです。今までの制度が続いていくなら、これがいいな、今までの組織、ずっと中に入って今までどおり生活が維持できるならいいな、今まで勤めていた会社もずっと存続してくれればいいなと。
 そういう中で、新しい時代が到来してまいりまして、行政組織あるいは財政構造、税収が五十兆円そこそこしかないのに、借金を三十兆円してもまだ足りない。結局、後の世代がこれを負担しなきゃならない。そういう状況がずっと続いていくなら、自分は負担しないから後は若い世代、子供たちにこのツケを任せてしまおうと。現在生きている人だったらそれでいいのですけれども、やはり世の中というのは、現在だけじゃない、将来も考えていかなきゃならない。というと、現状を変えないといけない。
 変える場合には、今まであった組織を全部存続するということは無理でしょう。あるいは、今までの医療一つとっても、医療制度改革一つとってみても、今までの負担とそして給付を維持してくれと。負担は軽く給付は厚く、税金もこのままということになると、高齢者がふえていくから、当然、患者さんもふえてまいります。となると、この財政をどうやって賄うのか、やはり変えざるを得ないだろう。国民皆保険制度を維持していかなきゃならない。となると、これも変えていかなきゃならない。
 というと、やはり現状がいいというのは、いい面はたくさんありますよ、それは。本来だったらば、八十兆円の仕事をしているのに八十兆円の税収があってしかるべきなんです。それを三十兆円は軽減してもらっている、借金とか、あるいはいろいろな借り入れでですね。そういうことを、このままでは済まないから、今までではうまくいきませんよと。当然、それぞれ現状を変えるためには痛みが出てきますね。変えようということに対しては反対が出てきます。その反対を覚悟して、政府というのは、政治家というのは、将来を見越していろいろな改革に取り組まなきゃならないのじゃないか。それがやはり痛みでありますけれども、将来のことを考えると、これは甘受せざるを得ないのではないか。
 このままいったらもっと痛みが大きくなって、にっちもさっちもいかなくなる、その方の痛みが多いのじゃないかということを理解していただく、協力を求める。これも、今までどおり維持できればいいのですけれども、そうではいかないところに政治家の苦しさ、国民の理解、協力を得るための努力、苦労が必要ではないかなと思っております。
佐藤(公)委員 今お話を丁寧にしていただきましたが、私の質問に対しての答えになっているとは私は思えないのです。私は、国民に痛みを強いるんだったら、政治家がみずから痛みを何を差し出すのか。僕は医療というふうに限っているわけじゃない。広い範囲でというふうに考えております。だから、今この話をさせていただいております。
 政治家にとって、国民に差し出す痛みは何ですか。今の話を聞かせていただいても、皆さん納得できますか。国民も、今のお話を聞いて、一体全体何だったのだろう。私がこれを聞いているのは、実は、政治家、永田町だけの意見じゃないのです。本当に大衆、サラリーマン、私たちの仲間がわからない。わかりやすく説明してみてください。政治家がこれを出す、これを出して血を流すからみんなも一緒に協力してくれ、それを先に出すよというものが何なのか、お願いいたします。
小泉内閣総理大臣 政治家の痛みというと、御趣旨ははっきりしませんが、それはまず、政治家のいわゆるいろいろ特権的なものがあれば時代に合わせて見直していけばいいのじゃないか。あるいは給与の面におきましても、国民一般と考えてどのようなものか、そういう点についてもこういう時期だから削減してもいいではないかという点も、これは一つの考え方だと思いますが、同時に、政治家を育てるのも国民であります。政党を育てるのも国民であります。その政党活動、政治活動を活発に展開してもらうためには、どのような形で政治家を遇するべきかという点もあると思います。
 しかし、今までのよかった制度、特権的なものはやはり廃止すべきではないかという考えから、それぞれ今政治家も見直しを進めている、今国会においてもそのような措置が講じられているのではないかと思っております。
佐藤(公)委員 私が国会議員をやらせていただいて、幾つか痛みがあると思います。そのうちの一つが、やはり私ども衆議院議員の定数の削減であり、やはり既得権益、規制というものがあると思います。こういうものを差し出す、出す、こういうことがやはり痛みの一つであるのではないかと思いますが、まだまだ本当に、総理のおっしゃられていることでは私どもを含めて国民も、僕は納得しないと思いますが、やはり同じ国会議員として、また内閣として、坂口大臣、いかがお考えになられますでしょうか。
坂口国務大臣 現在のこの医療制度改革に関して言えば、国民の皆さん方にもお願いをしなければならない、しかし、官の方も、やはりそれなりに今までの制度を見直しをして、むだのあるところはむだを省かなければならない。そこを徹底して行うようにできるかどうかということがやはり政治に課せられているというふうに私は思っております。したがいまして、その辺のところが、政治家が痛みを出すかどうかという問題に大いに関係してくるというふうに思っています。
 今いろいろとお話を伺いましたが、国民が今何を求めているか。確かに、現在医療において支払いをしている額が少ないにこしたことはありません。しかし、そのことよりも、国民の皆さん方は、将来ともに安定した制度ができるかどうかということを心配しておみえになると思います。現在のこともさることながら、将来この医療制度が安定して続けられるかどうかというところに論点を置いて我々は議論をすべきだというふうに思っております。
佐藤(公)委員 坂口大臣がおっしゃられたのは、まさに政府と国民との間での信頼関係、本当に信用、そういったものがあると思います。その話はちょっとまた後にさせていただければありがたいんですけれども。
 そこで、大衆が少し疑問を持っていること、また多く疑問を持っていることの一つを簡単簡潔にちょっと御説明願えればありがたいんです。
 総理は、まさにこの医療制度改革に関して三方一両損というお言葉をお使いになられました。この話はもう総理はよく御存じな上でお使いになられていたと思います。赤松委員、松本委員のお話にもございましたけれども、それが三方なのか四方なのか、一体全体何を示しているのか、総理の口から御説明もあったかにも思いますけれども、なぜこの三方一両損という言葉を使われたのか。その気持ちと意思、また考え方、何かここに食い違いが非常に起こっている。もしかしたら、国民を惑わす、また詐欺に遭わすようにとれるような表現であり言葉であるように思いますが、総理、いかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 この三方一両損というのは、結局、国民全体が、総合的に考えると一番得になることなんです。そこをまず御理解いただきたい。
 というのは、国民皆保険制度、これは世界の中でもこういう制度を持っている国はそんなに多くありません。では、今の皆保険制度がなかったらどうなるのか。お医者さんにかかった場合、全部自分で負担しなければならないのか。とても負担し切れませんよね。昔は、病院もない、お医者さんもない、病気になった、お医者さんにかかる、法外な値段を取られる、お金持ちしか病院に行けない。それじゃいけないということで国民皆保険制度というのが今できている。これは、多くの国民がこの皆保険制度はやはり維持していこうというのは、大体合意ができていると思うんです。
 その場合には、給付を厚く、負担を軽くというのはだれもが考えることであります。そういう中で、どの程度の給付とどの程度の負担が適正なんだろうかというのが今議論の課題でありまして、そういう中にあっては、現状の制度を維持すると保険財政が破綻してしまうということから、この医療、診療する側、保険料を負担する側、病気になった場合患者として負担する側、それも今までどおりいかないでしょう。結局、今までどおりいかないということは、ある程度今までの既得権というものを削らなきゃならない、負担がふえるかもしれない、これは損だ、三方一両損だ。
 しかし、絶対に、適正な負担でいい医療が得られる制度、この皆保険制度を維持していこうということについてはプラスじゃないか、三方一両損は、考えてみれば国民全体のプラスであるということから私はこの言葉を用いたわけでありまして、その点を理解していただくのにはもっと努力が要るな、議論も必要だなということは感じております。
佐藤(公)委員 今の御説明からすれば三方一両損というのはちょっと違うんではないかなという気がいたします。
 では、総理の言う三方一両損のこの話の中からしたら、お上、大岡越前はだれになるんでしょうか。
小泉内閣総理大臣 私は、大岡越前守を想像して言った話ではありません。今言ったお話のとおり、国民全体が得になる制度を考える、その間には、今までの利害関係者、ある程度みずからの身を切るようなことも必要ではないかということを言っているわけであります。
佐藤(公)委員 そこが本当に、私ども仲間がみんな言っていることですけれども、みんなそうは思っていない人たちが多いように思います。やはりそれは総理が、政府がそれなりに痛みをというか血を出す、またこういったものをやっていくんではないかという考え方を、また見方をしている人たちが私は多いように受け取りました。まさに、そこの表現の仕方というのは、これはひどい言い方かもしれませんが、だましに近いようなものも感じられますので、それは総理、十分気をつけていただければありがたいかと思います。
 この医療制度の改革におきまして、まさに松本委員もいろいろとお話をされておりました。坂口大臣、その平成九年の四月十六日の委員会のことは覚えていらっしゃいますでしょうか。当時、総理が厚生大臣でございました。坂口委員が質問をいろいろとされております。この質問を坂口大臣にそのまま投げかけたいと思いますが、これに対してどうお答えをされるのか。全くこれは、本当に僕は、今の大臣そしてこのときの委員、絶対に譲っちゃいけないところを妥協してしまっているんではないか。私にはその坂口大臣のやっていることと考えていることがよくわからなくなってきております。
 少しだけ読ませていただきます。「厚生省も、ややもいたしますと、どうも年金は年金、医療は医療として別々に」やっていますから、「そういう別々ではなくて総合的にひとつやってくださいよ、やっていますかということを私はお尋ねしたかったわけでございます。」とか、「順序が逆になった。将来像をどうするかということに対するアウトライン、」「現在のこの第一歩が、将来目指す抜本改正のための第一歩になっているのか、あるいは逆方向の一歩になっているのか、それではわからぬではないかという議論が今出ているわけであります。」「医療保険なら医療保険の今後のあり方について、どういう方向のものを示していくかということぐらいは示さなきゃならぬだろう。それも示さなくて、今回の改正案を通してくださいよというのは、いささか虫がよ過ぎる」ではありませんか、こういうことも大臣、おっしゃられている。こういったことの中で、「この法案を審議するに当たり、そしてこの法案を通過させるに当たり、やはりここをきちっとけじめをつけないといけない。」こういうふうにもおっしゃられております。
 果たして大臣が、今新たな法改正でいろいろと議論をしていく中、この当時の、このようにおっしゃっていた、まさに、いささか虫がよ過ぎるというよりも大分虫がよ過ぎるのではないか、そして、こういったことに一つのけじめをつけられたのか。坂口大臣、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 私も未熟なところがあったと思って今聞いていたわけでございますが、この医療改革をいたしますのには、抜本改革が大事なことだけはもう言わずもがなでございます。そして、その中身につきまして、私は私の考え方を持っております。しかし、ここは私が先行してその中身を先に言ってしまうということもいかがなものかという気がいたします。ここは専門家の多くの皆さん方に予見を与えずに御議論をいただいて、そしてその結論を出していただかなければならないんだろうというふうに思います。また席を改めて、おまえの考え方だけでもいいから話をせよとおっしゃれば、それは私も私個人の話をさせていただくこともあろうかと思いますが、今ここで私が申し上げることを差し控えさせていただきたいと思います。
 しかし、ここを責任を持ってやらなければならない、来年の春までに、来年の四月までに。来年の四月までにといいましても、中には来年の予算に組み入れをしなきゃならないものもあるわけでありますから、言ってみれば、ことしの暮れまでに結論を出さなければならないものも多いというふうに思っております。できる限りそうして、できるだけ多く、早くそれを決定ができるように努力をしたいと思っている次第でございます。
佐藤(公)委員 先ほど厚生労働大臣、坂口大臣は、国民との信頼関係が大事だということをおっしゃったじゃないですか。このときお話しされていた、もうちょっと読みましょうか。
 しかし、二、三カ月これがおくれたからといって、そう大きな傷になるわけではない。たとえこの法案を通すのが二、三カ月おくれたとしても、その間に示すべきものは示すということが私は先決ではないかというふうに思います。もう一度、その辺についての御答弁をいただきたい。
  しかし、負担の多い少ないよりも、その前に、その内容を納得してもらえるかどうかということが先だと私は思うわけです。こういうことになるから、こういう計画だから我々はこの案を出さざるを得ない、そして皆さん方に納得をしてもらう、それなら納得できるということになるのではないかというふうに私は思うのです。それを、全体像を示さずに負担のところだけを先に示すものですから、多い少ないよりも、納得できない、そういうことに今はなっている。だから、ここを、患者の皆さん方はもちろんのこと、国民全体に納得のできるようにしてくれ、これでは納得がいかぬではないかというのが多くの皆さんの意見でありますから、これはやはり納得のいく説明をする義務がある、そこを私は申し上げているわけであります。
 厚生労働大臣、皆さんが納得いくような話を、もう時間が少ないですけれども、少しの間でもちょっとしてみていただけますか。
坂口国務大臣 これから法案の審議をしていただくわけでありますから、その期間の間に、あるものにつきましては御理解をいただくような結論に到達のできるものもあろうかというふうに思っております。
 先ほど申しましたように、年金、医療、介護そして雇用等の徴収の一元化等につきましては、既にもう案が固まっておりますし、大体これをやったらどのぐらいの人を削減できるかの計算もできているところでございまして、そうしたものは、来年の予算にそれが反映させられるようにしていきたいというふうに思っています。
 そうした問題だけではなくて、一番大きいのは、やはり保険の統合一元化の問題と、そしてもう一方は診療報酬の中身の問題だと思います。これはかなり大きな問題でございますので、いろいろの御意見をお聞きして決めていきたいというふうに思っております。
 先ほども申しましたとおり、診療報酬のことにつきましては、それは基本的な考え方を明確にする、そしてもう一つは、基礎的なことに対してより多くの点数をつける。それは、先ほど赤松議員でございましたか、お話がございましたとおり、例えば腎臓を悪くする皆さん方におきましても、それはその前に食品に対する指導というものがもう少し行われれば、現在腎臓を悪くしてそして透析を受けているような人も半分ぐらいにできるのではないかという人も中にはあるわけです。しかし、現在、食品、食べ物の指導等につきましては、余りにも点数が少な過ぎる。だから、大学病院あたりでも、それをやっておりますと、そうすると成り行かないというようなことがございまして、大学の先生あたりからも、そんなにたくさんここに点数をつけてくれとは言わないけれども、せめて成り立つようにだけしてほしいというお話があるぐらいでございまして、そうした点に十分配慮をしたことをやっていかなければならない。
 そしてもう一つは、時間的な軸というものをやはりもう一つ確立をしなければならない。三分間で診ても、あるいは三十分かかってやりましても、それは結果は同じ。あるいはまた、人をたくさんこなせばこなすほど点数が高くなるというようなことではなくて、たとえ三十分かけましても、本当に真剣に取り組まれた場合にはそれに対しましても配慮をするといったことが私は必要ではないかというふうに思っています。そうしたことを基本にしながら、これから進めていきたいと思います。
佐藤(公)委員 大臣、大変いいお話もあるのですけれども、やはりこの当時と大臣が何か変わってしまった、そんな気がいたします。
 実際問題、この話がずっと進む中で、大臣、もう時間がないのですけれども、本当に大臣の思いとして、このまま医療制度の抜本改革、負担だけが先に進むようなこのやり方、先にまず自分たちが何をすべきなのか、その抜本改革を提示しなくて進むことは、僕は、この当時の厚生労働大臣がおっしゃられたこと、これは正しいことです、正しいことをなぜ曲げているのかなと。
 先に医療のそちらの負担をもう少しずらしても、これを先にきちんと提示してからだって僕は遅くないと思います。数カ月の間の差かもしれません。それをなぜ、やはり、考えていること、やることが変わってしまったのか。まるで何か手を汚すようなことをまた大臣がされるような気がいたします。
 これに関して、大臣、これが進むことによって、自分が大臣をやめる、やめないということをお考えになるようなことはありますでしょうか。
坂口国務大臣 何も変わっておりませんで、来年の四月、この三割負担でありますとか、あるいは保険料の引き上げ等をやらせていただかなければならないわけでございますから、それまでの間に、この抜本改革の方向性そしてそれからの段取り、そうしたものを明確にお示しをさせていただきますということを申し上げているわけでございます。
佐藤(公)委員 もう時間もございません。あとはまた厚生労働委員会の方でやりとりをさせていただきます。
 総理、聞きたいことはたくさんあるのですけれども、最後に、九七年のときにできなかった、先ほどもお話が幾つかございました、政権の枠組みが変わったとか総理がかわった、利害調整ができなかったとか政治的意思が足りなかった、こういうことが理由として述べられましたけれども、一般の方々は、ここのときにできなかったその責任というものをどう総理が考えているのか知りたがっております。その責任に関してどう思われますでしょうか。
小泉内閣総理大臣 当時できなかったことを反省しながら、今度はやらなきゃいけないということが責任の一つのとり方ではないかと思っております。(発言する者あり)
佐藤(公)委員 だったら本当に、おっしゃられるように抜本改革を先にして、前とは違う形をとるのが責任じゃないんですか、やり方として考えられることです。そういうことを、何となく今までと同じようにやっていく。
 もう時間がありませんから、最後に言わせていただければ、総理は、ライオン総理、ライオン宰相、こういうふうにおっしゃられる。シシローですか、こんなこともおっしゃられる、また皆さんから言われている。
 僕の目にはオオカミ総理に見えるような気がします。オオカミ宰相、これには二つの意味があります。一つはオオカミ少年のオオカミの意味、そしてもう一つは、赤ずきんちゃん、私たち弱い者を食べてしまうオオカミ、この二つの意味を感じる部分がありますが、こういうふうにならないようによろしくお願いいたします。
 以上でございます。ありがとうございました。
津島委員長 これにて佐藤君の質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
津島委員長 この際、お諮りいたします。
 三案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省老健局長堤修三君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
津島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
津島委員長 次に、木島日出夫君。
木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。
 今回の医療の改革がどう影響するか。厚生労働省は、平成十四年度医療制度改革の財政効果として、国庫負担は診療報酬改定によって千八百億円削減される、制度改正で一千億円削減される、合計二千八百億円の国庫財政削減効果をはじき出しております。
 そして一方では、国民はどうか。健保、サラリーマンの三割負担、高齢者一割負担の徹底、一部二割負担、そして窓口での一応の全額払い、そして診療報酬の引き下げによって医療機関の負担増。まさにその意味するところは、国民にとっては負担増、給付減ばかりではないでしょうか。なぜこういうことになるのか。
 小泉総理は、口を開けば、財政問題があるんだ、給付増、負担減というわけにはいかない、こうおっしゃっております。ですから、医療の問題を考える、そして、今回政府から出されてくるであろう医療の改革、予算あるいは制度改正、財政問題を抜きに論ずることはできません。
 私どもは、こうした、政府が出そうとしてくる提案には断固反対であります。根本問題にメスを入れる、再三我々は言い続けてきましたが、日本の国、国家予算、地方財政予算、大きくひっくるめますと、公共投資に年間約五十兆円、社会保障に二十兆円。欧米と比較いたしますと、まさに逆立ちしているではないか。しかも、公共事業にはむだな浪費事業が余りにも多過ぎる。これを削って社会保障や医療に回すことがやれれば、このような犠牲を医療機関や患者や国民にかぶせることはなくて済むのだという立場で論陣を張ってきたわけであります。
 財政問題が根本問題であります。むだを省くこと、根本問題であります。ましてや今、目の前で外務省をめぐるさまざまな疑惑が噴き出している。国の財政が食い物にされているのじゃないかと私ども指摘をしてきました。だから、この前提問題について、最初、若干時間をいただきまして質問をさせていただきます。そのために外務省をお呼びしております。
 北方四島支援事業、友好の家建設をめぐる疑惑について新しい事実が出てきていると思いますので、お聞きします。
 鈴木宗男当時の官房副長官の入札介入で、国後島友好の家の建設請負を落札した渡辺・犬飼JVは、みずからは実際には工事施工能力はなくて、日揮という会社に一括下請に出したのじゃないでしょうか。事実ですか。
齋藤政府参考人 お答えいたします。
 渡辺建設・犬飼工務店ジョイントベンチャーと日揮の契約は受注企業と下請企業との契約でございまして、詳細につきましては支援委員会事務局も承知してないということでございまして、外務省としても情報を有しておらないところでございます。
木島委員 到底その答弁には納得できません。すべて外務省は知り尽くしているはずでありますが、きょうはここで論戦はやりません。
 入札期日は九九年七月七日、札幌であります。参加は渡辺・犬飼JVだけ。既に明らかであります。予定価格は幾らだったですか。
齋藤政府参考人 予定価格は、消費税抜きで三億九千七百万円でございました。
木島委員 その日、渡辺・犬飼JVが入れた入札価格はすべて、何度か行われたようですが、予定価格を上回ってしまい不調になったというのは事実ですか。何度か入れた入札価格は幾らだったですか。
齋藤政府参考人 平成十一年七月七日に行われました入札におきまして、渡辺建設・犬飼工務店ジョイントベンチャーの応札価格は、第一回、第二回、第三回のいずれとも予定価格を上回りましたために、入札は不調に終わったと承知しております。
 応札価格につきましては、第一回目が四億三千万円、第二回が四億二千三百万円、第三回が四億二千万円であったと承知しております。
木島委員 そこで、七月七日は入札が成功せず、七月九日、支援委員会は、東京都内の支援委員会事務局におきまして、渡辺・犬飼JVと随意契約を締結したというのは事実でしょうか。そして、随意契約で締結された発注価格は幾らだったんでしょうか。
齋藤政府参考人 平成十一年七月七日の入札が不調に終わりましたために、支援委員会事務局は、内部規則にのっとりまして、渡辺建設・犬飼工務店ジョイントベンチャーと随意契約交渉を実施いたしまして、その過程で、同ジョイントベンチャーより、さらに数度にわたり予定価格を超える価格が提示されましたが、最終的には、七月十四日、契約金額四億一千六百八十五万円、これは消費税込みでございます、四億一千六百八十五万円で契約を締結したというふうに承知しているところでございます。
木島委員 そうすると、予定価格が消費税抜きで三億九千七百万円、随意契約で消費税込みで四億一千六百八十五万円、これは合いますか。予定価格そのものプラス消費税イコール四億一千六百八十五万円ということですか。
齋藤政府参考人 予定価格の三億九千七百万円に消費税を掛けますと、御指摘のとおり、契約金額四億一千六百八十五万円になるものと承知しております。
木島委員 驚くべき一般競争入札の結果ですね。一社しか入っていない。何度も入札はやったけれども、予定価格より高い札を入れる、その日は入札不能、その後も何度も何度もやったけれども高い札を上げる、やむなく最後は随契、そして随契の結果が、予定価格どんぴしゃり、同じ金額で発注をした。すさまじい問題だ。
 支援委員会、今内部規則によってと言いましたが、支援委員会の内部規則では、入札が不調に終わった場合は、新規まき直しで、再公告をすることになっていたんじゃないですか。そうじゃないでしょうか。
齋藤政府参考人 支援委員会事務局の内部規則によりますと、競争に付しても入札者がないとき、または再度の入札をしても落札者がないときは、当該競争に参加した者を相手方として随意契約を締結することができるというふうに規定されているところでございます。
木島委員 まことにおかしなやり方だったんですね。みずから渡辺・犬飼JVしか入札参加資格がないように枠組みをつくっておいて、そして案の定、予定価格より高い価格を応札したから、それで内部規則を、今の答弁された文言を使って随契した。こんな理屈、通らないですね。
 渡辺・犬飼JVは、支援委員会から受注をいたしました。しかし、実際に建設工事はやっていない。我が党は現地北海道で調査をした結果、明らかであります。この会社は、資材や人員を運ぶ国外航路用の台船を持っていなかった、こういうことも指摘されております。これは事実じゃないですか。
齋藤政府参考人 受注者につきましては、コンサルタントでございます日本工営が詳細を承知しておりますけれども、私どもとしては必ずしも詳細を承知してございません。
木島委員 到底納得できません。
 実際に仕事をやったのは日揮であります。一番肝心の、受注を表向きした渡辺・犬飼JVから実際に仕事をやった日揮に一体幾らで一括下請が行われたのか。その金額と、最初渡辺・犬飼JVが落札した金額との差額が、結局このJVの懐に入るわけであります。現地調査によっても、ほとんどJVは人を出しておりません、仕事はやっておりません。まさに国費の食い物じゃないか、それが今の答弁でも明らかになったと思います。
 これは質問ではありませんが、外務省が私の要求によって資料を提出していただいたので、これはここで御披露したいと思います。
 この建物が完成して完成式典へ出席した日本人出席者の全員の名簿を私にいただきたいと要求をいたしました。出てきました。国会関係者は二人、鈴木宗男議員とその秘書であります。外務省関係者は八人。東郷欧亜局長、倉井欧亜局ロシア支援室長、伊藤欧亜局ロシア課課長補佐、そして例の佐藤優国際情報局分析一課主任分析官、さらに前島欧亜局ロシア支援室課長補佐、毛利欧亜局ロシア課課長補佐、中野欧亜局ロシア支援室事務官、山田欧亜局ロシア課事務官、以上であります。
 明らかであります。欧亜局長と欧亜局ロシア支援関係の担当者。一人だけ異質なのが、佐藤優氏であります。そして、この記念祝典に支援委員会事務局からたった一人参加しているようであります。酒井という女性の事務局職員であります。先日の私の質問で、実質上は支援委員会の発注だというようなことを言っておりましたが、この一番大事な祝賀会の参加の顔ぶれを見ても、外務省欧亜局ロシア課がすべて握っていたということは、顔ぶれからでも明らかではないでしょうか。
 そして、工事関係者の名簿も出てきました。日本工営の常務取締役川又氏、渡辺建設工業の渡辺社長、犬飼工務店の犬飼社長。当初、ここまでしか私には外務省は出してきませんでした。これだけじゃないはずだと。実際に仕事をした、犬飼・渡辺JVから丸投げを受けた日揮その他の企業が必ず参加しているはずだと。
 渋っておりましたが、この質問直前にようやく出してきたので御披露をしておきますと、日本工営から二人、このほかに渡辺建設から一人、そして実際に仕事をやった日揮から一人、湯本氏、参加しております。それから、私どもの調査によっても実際には仕事をやっていたというコマツハウスの近藤さんという方も参加しております。その他、民間会社の皆さんが大勢、現実に仕事をしたと思われる業者の皆さん、参加しているんです。もちろんマスコミ関係者の皆さんもたくさん参加している。
 私は、この名簿、簡単に出てくると思いました。しかし、なかなか肝心の日揮、コマツハウスの皆さんの参加状況は私に報告しませんでした。私は、外務省は隠ぺいを図ろうとしたんじゃないかと思わざるを得ません。そんなことがあっては断じてなりません。
 そこで、小泉総理にお願いをいたします。総理は、この一連の全容解明のために、外務省に対して指示を出したようであります。十日以内ということのようであります。調査が出たら、その報告書を当予算委員会に洗いざらい提出していただけますね、総理。
小泉内閣総理大臣 調査をしている最中であります。調査結果が出ましたら、皆さんに明らかにしたいと思います。
木島委員 時間が十分しかなくなってしまいましたが、医療改革について質問をいたします。
 先ほどお話ししましたように、今回の医療改革の財政効果、国費が二千八百億円削減される。そして、その中でも大事な一つが診療報酬の改定であります。全体で二・七%の引き下げであります。その内訳は、狭い意味での診療報酬改定、一・三%の引き下げ、薬価等の改定で一・四%の引き下げであります。
 診療報酬の改定は多岐に及びますが、最も影響の大きいものが、長期入院患者に係る保険給付の見直し、削減の問題であります。入院期間が百八十日、六カ月、これを超える者に対する医療給付については特定療養費制度の対象とし、給付される額は入院基本料等の八五%に削減をする、引き下げるという中身であります。そして、大変な問題は、その入院期間を、当該患者がほかの保険医療機関に入院していた期間を通算すると。大変ひどい中身にもなっております。こんな改定を行おうとしております。
 これによって入院患者にどれほどの影響が出てくるのか、厚生労働省にまず答弁願います。
大塚政府参考人 ただいまお尋ねの、長期入院されておられる方々に対します診療報酬の見直し、具体的には特定療養費の制度の導入、活用ということでございますが、現在具体的な検討を進めておる部分もございまして、正確にはお示しすることはなかなか困難でございますけれども、六カ月を超えて長期に入院されている方々の約四割が、福祉施設あるいは在宅で療養が可能というような調査結果がございます。こうしたことを考え合わせますと、大ざっぱに五万人程度が対象になるのかというふうに考えております。
木島委員 今、五万人とおっしゃられましたが、全国で医療活動に従事しておられます保険医の皆さんがつくられております全国保険医団体連合会の調査などでは、十万人の皆さんに影響するだろうと出ているわけであります。
 提案の内容をつぶさに検討してみますと、一般病棟、療養病棟、老人病棟、有床診療所療養病床、すべて対象になっているんです。そして、先ほど言ったように、転院した場合は前の病院に入院した期間まで通算されてしまうから大変なわけであります。
 本当に医療が必要な長期入院の患者まで病院から事実上追い出すことになってしまうのではないか。ちゃんと病院が医療をやろうとしたら、診療報酬が一五%削減されてしまって病院経営が成り立たない。いずれにしろ、診療機関、病院か患者に犠牲がもろにかかるやり方であります。まことに冷酷な仕打ちではないでしょうか。何でこんなことをやるのですか。
大塚政府参考人 お尋ねの、今回考えております措置につきましては、かねて、いわゆる社会的入院と呼ばれるような、いわば医療の必要性が低いにもかかわらず医療機関で療養され、また給付を受けるという方々の問題がございました。さまざまな手当てを講じてきておりますけれども、基本的には医療機関と介護施設、医療と介護の機能分担をきちんとしていくという観点から、それぞれ患者の、お年寄りの症状、身体状況に応じた適切なサービスが受けられる、そういう体制を整備すると同時に、こうした給付面からの見直しというのもすることになっているわけでございます。
 お話ございましたように、医療が必要だということでございますれば、当然これは入院が継続されるわけでございまして、例えば結核病棟あるいは精神病棟に入院されている患者さん、あるいは難病患者のような方々、さらには人工呼吸器をつけておられるような方、こういう医療の必要な患者さんにつきましては、当然そのまま継続して入院され、医療を受けられるということになるわけでございます。
木島委員 今、答弁の中に社会的入院は解消しなければならないとありました。私は、この社会的入院という言葉が乱用されている、この言葉によって、本当は医療が必要な患者がほうり出されるということを最も危惧する一人であります。万が一、現に医療が必要でない患者が医療機関に入院していたとすれば、それは家に帰れないからじゃないか。
 あるいは、医療と介護の連携と言いました。まさに、国が社会的入院をなくすというのであれば、介護基盤を徹底的に整備をして、安心して療養ができる場所を提供しなきゃならぬと思うんです。ところが、介護保険制度はどうなっているでしょうか。要介護認定がされました、権利として特養に入る権利がある、しかし特養が足りません。
 今、調べますと全国で二十九万八千九百十二床しか特養はない。そこで、入れない、いわゆる待機状態の寝たきりのお年寄りがいます。私、北陸信越ブロック選出なので調べてみました。新潟県の待機者四千百人、長野県二千百九十五人、富山県千八百人、石川県千人、福井県千七百五十人であります。ちなみに、この五つの県、実際特養は定員幾つあるか調べてみました。新潟県九千四床、長野県七千八百二十七床、富山県三千六百八十一床、石川県三千六百八床、福井県三千百四十二床、いずれも満杯であります。
 ですから、現時点で待機している皆さんが特養に入っていただくにはどんな状況か。現にこの地域にある特養の、新潟県では四六%つくらなきゃならない。長野県でも二八%つくらなきゃいかぬ。富山県は四九%、約半分、現にある特養の一・五倍つくらなければならない。石川県二八%、福井県五六%、こういう状況でありますが、厚生労働省の平成十六年までの特養増床の見込みは三十六万床であります。ますます高齢化していきますね。ますます待機者がふえていきますね。ですから、とても追いつかない。
 まさに、あなた方が社会的入院を解消しなきゃいかぬと言いながら、現実には介護の基盤整備に力がまだ入っていない。ですから、行くところがない。行くところがないような状況を政治の責任でつくって、残念ながら解消できないままこんな診療報酬の仕組みをつくって、六カ月以上の長期入院者が病院にいれば、病院がだめになるか患者に差額を負担してもらうか。いずれにしても、そんな冷たい仕打ちをかけるというのはまことにおかしいんじゃないですか。
 総理、どうでしょうか。みずからの介護基盤をつくるということを、責任を放棄して、こんな冷たい診療報酬改定を今回やろうとしています。これはおかしいんじゃないですか。
坂口国務大臣 現在も三カ月を過ぎますと、これは暫定的に、暫定的といいますか、逓減措置と申しますか、いわゆる診療報酬の点数が減るものですから、現在におきましても、三カ月を超えますと出ていただかなければならないケースが多かった。今回は、三カ月はなくして六カ月にした。そして、六カ月はおっていただいて、そして、それでもなおかつ医療が必要な人は、これは医師が認める場合には、それはおっていただいていい。しかし、ここはもう医療というよりも福祉の方であなたはひとつ見てもらわなければならないということを言われた場合には、それはそういうふうにする以外にない、そういうふうに今言っているわけであります。
 今御指摘のように、そのためには特養等を、特養だけではなくてケアハウス等も含めてでございますけれども、そうした人たちをやはりふやさなきゃいけないでしょう。それらのことができるのを待ってやりたい、こういうふうに思っております。
木島委員 そんなしゃくし定規にいかないという声が自民党席から飛んでおりますが、まことにそのとおりだと私は思います。どういう患者が対象外かは、厚生労働省は今検討しているようです。私、ここに案を持ってきております。難病患者、重症者、重度の肢体不自由児・者、脊髄損傷等の重度障害者、筋ジストロフィー患者、悪性新生物に対する治療を実施している状態にある者等々。
 当たり前じゃないですか。こういう皆さんは除外するなんということで、だから大丈夫なんだなんというわけに断じていかないということを私はここで述べまして、こんな制度が行われれば、実施されれば、差額費用を支払えない貧しい人々が本当に必要な医療を受けられないことになる、病院から追い出された後の受け皿もない、これは、明らかに社会保険制度の変質、解体ではないか、憲法二十五条の生存権の保障に反するんではないか、こんな冷酷非情な診療報酬の改悪はやめるべきであると厳しく指摘をいたしまして、質問を終わります。
津島委員長 これにて木島君の質疑は終了いたしました。
 次に、阿部知子君。
阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
 冒頭、坂口厚生労働大臣に、本日の午後の質問の最初にお立ちになった赤松委員からも御指摘のございましたヤコブ病問題、和解勧告が出ておりまして、あとは国の判断でございます。八七年以前の患者さんについても広く救済の手が差し伸べられますように私からもお願い申し上げて、本日の質問に入らせていただきます。
 私は、議員になって一年半が過ぎましたが、きょうが小泉首相に質問させていただく初めての日ですので、よろしくお願いします。骨太路線でまいりますので、よろしくお願いします。
 まず、冒頭、女性に甘いと言われながら、せっかく行政改革に頑張っていた田中眞紀子前外相、志半ばにして、この外務省問題もいまだ解決せずということで、もともと小泉首相の第一の旗であった行政改革、なかなか実は進んでおらぬ。そして、二番目の財政改革に至っては、デフレスパイラルに陥るか、はたまた金融システム不安かと、右を向いても左を見てもいいことが全くないというのは、もうきょうのこの審議の中でも皆さんに御指摘されたことですので、私は、三番目の医療制度改革に集中して質問させていただきます。
 そして、先ほど何人かの委員への小泉首相の御答弁を聞きながら、国民は、痛くても、今がよくても、次を考えたら何とかこの痛みに耐えてもらわなくちゃならないからだ、三割負担は仕方がない、最初に決めても改革を頑張るぞとおっしゃいましたが、私の認識からいたしますれば、国民は、現在の医療の状態においても非常に痛みを感じておる。その痛みとは、もちろん経済的な負担問題もさりながら、最も大きな痛みは、毎日のように新聞報道されます、そして私もいつものように取り上げざるを得ない医療ミスの問題でございます。
 東大病院で、本来は胃に入れる管が肺に入っておったり、あごの手術をした十八歳の少年が横浜市の港湾病院でその後亡くなる。たかだかあごの手術をして、なぜ十八のあたら若い命が失われていくか。日本の医療ミス、多発する医療ミスは、国民に痛み以上の、涙、そして本当につらい思いを多々させております。であるならば、医療の改革とは、まずこうした真に国民が痛いと感じていることに政治がどのような手を差し伸べられるかにあると思っております。
 そこで、冒頭、小泉首相にお願いいたします。
 小泉首相は、国を支えるものとは何であるとお考えでしょう、ずばり一言でお願いいたします。国を支えるものとは何か。
小泉内閣総理大臣 国民だと思います。
阿部委員 さすが小泉首相でいらっしゃいます。
 その国民、そして、国を長年支えてくれて、今御高齢期を迎える方、いわゆる御高齢者、間違いなく戦後の復興あるいは苦しい戦争を切り抜けて今日本で老いを迎えている御高齢者に対して、もしも小泉首相に、ある六十歳代後半から七十歳代の御夫婦が質問したといたします。私たちは一体老後のために幾ら持っておればこの国で安心して死んでいくことができるでしょうか、首相、と尋ねられたとき、これも一言でお願いいたします。
小泉内閣総理大臣 人によって違うでしょう。
阿部委員 それではなかなか答えになりません。人によって違っても、国としてこうした体制を整えておるから、国民よ、大体これくらいあなたたちが持っていれば幸せに暮らせるよということを明示するのが政治でございます。ピンからキリまであるから、人によって違うからという形で言うことが、そして果てしない患者負担を強いていくことが、今日、国民の消費デフレ、本当にこの国で老いを迎えて大丈夫だろうかという気持ちを来しておると思います。
 この点については、人により違いますというお答えは、絶対私は、たとえ社会主義を信奉する首相でなくても、誤っておると思います。というのは、人間、見通しを持って生きていくものです。この人間が見通しが立たない社会をつくったことが、いかに多くの少年たちに不安と閉塞感をもたらしているか。これは、ぜひとも政治家小泉首相のお考えの中に聞き入れていただきたい点でございます。
 そして、次の質問に移らせていただきます。
 私のもとに、今一通の手紙がございます。先ほど、幾らかかるかは人によるというところの一ケース、相談させていただきます。このケースはいかがでしょうか。
 先ほど私が例示した六十歳代から七十歳代、奥様が六十歳代後半、お連れ合いが七十歳代のケースで、お連れ合いが脳梗塞で倒れられて、その後要介護度五度の患者さんでございます。
 十五カ所くらい夫の入院先を探しましたが、特別室以外はなく、最終的には、あるO病院に二月八日にお願いすることになりました。初めは差額ベッド代八千五百円の個室でしたが、十三日から二人部屋で五千円くらいの部屋になり、寝巻き、バスタオル、おむつ代等が一日千四百円、あとは食費、医療費で、月二十六万円でございます。自己負担二十六万円でございます。
 私が医療現場におりまして、一体、大体皆さん自己負担どれくらいお払いか、調べたこともございます。十五万から四十万ほどの幅でございます。そして、これがいつまで続くかわからないということにおいて、本当に御高齢期の皆さんは、この国で老いて大丈夫だろうかと涙で日々をお暮らしです。
 あと何年もつか、二年くらいか、このペースでもつかと思いましたが、心配なので、私の選挙区です、藤沢市に聞きに行きました。いわゆるリバースモーゲージ、五千万円で、住宅を担保にお金をお借りする、その際に、医療費が十万円、生活費十万円、そして利息が〇・六から〇・七五という貸し出しですよ、こう言われても、この方は、今住んでいらっしゃるおうちを担保に入れて、はたまた何年今の療養が続けられるか先が見えない。御夫婦でまじめに働き、この国を支え、この国で老いて、先が見えないというのが現状でございます。
 そうした現実を、やはり私は、小泉首相こそ、タウンミーティングのお好きな小泉首相こそ、人それぞれに違うんだとおっしゃる小泉首相こそ、日本全国津々浦々、ぜひとも公聴会をお開きになるべきだと思いますが、お考えはいかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 それぞれタウンミーティングを計画しておりますし、厚生労働大臣も去年のタウンミーティングにも参加していただきました。ことしも、テーマ別に各地区でいろいろなタウンミーティングを開催していきたいと思っております。
坂口国務大臣 厚生労働省としましても、昨年の五月から六回にわたりまして、全国各地域で、この医療問題を中心にいたしましてのフォーラムを実施してまいりました。これからまた、必要であればやらせていただきたいと思いますし、多くの国民の皆さん方の御意見も聞かせていただきたいと思っております。
阿部委員 そうしたさまざまの意見が現実に政治の場に届く前に負担額が決められていく。そして首相は、ケース・バイ・ケースだから先行きはわからぬ、個々の負担額、個人の負担額はわからぬというふうにしてこの改革を進めようとするから、やはり日本は、本当に今経済的にも苦しい状況にある中で、消費デフレが私はますます拍車がかかっていくものと思います。
 そして、特に御高齢者、確かに経済状況は一様ではなくなりました。豊かな御高齢者もおられます。しかしながら、先ほど申し上げましたように、今あるお住まいの家を抵当に入れてでも、担保にしてでもお金を借りて、あとどれぐらいかという方もおられます。そうした中で、先ほど大塚局長からの御答弁でございましたが、簡単に言わせていただいて恐縮ですが、御高齢者で特に長期入院の方は保険医療から外していこうという形で、診療報酬という形の制度の中で、本来は入院体制として解決されるべき長期入院の問題が論じられております。
 これを北風政策と言わずして、要は、長い入院になったから、診療報酬制度を外して、医療保険を外してほかに行きなさい、あるいは家に帰りなさいという形で言われておりますが、これは、小泉首相は、実は一九九七年当時も厚生大臣でいらしたので御見識がたくさんおありと思いますので伺わせていただきますが、日本の中で長期入院ということを語る場合に、どのような特徴がございますでしょうか。首相はどう御理解なさっているでしょうか。お願いします。
小泉内閣総理大臣 それはいろいろ理由があると思います。介護保険制度がなかった場合に、在宅の介護あるいは医療の制度なり実情が整備されていなかった点もあると思います。また、病院に入院していた方がいろいろな治療もしてくれる。世話もしてくれる。家族も、うちにいるよりも安心だという点もあったと思います。また、福祉施設に入るよりも費用の点でも負担が軽くて済むという点もあったと思います。いろいろな理由があったと思います。
阿部委員 さすが、前厚生労働大臣でいらっしゃいますから、三つの点は御指摘のごとくでございますが、あと二つ、私に言わせていただければ重要な点が抜けておると思います。
 日本で今、六カ月を超す長期入院患者さん、全体で三十万人でございますが、このうち七十歳以上という御高齢ということを、七十に線を引きますと二十万人。あと十万人は、決して御高齢者ではございません。それから逆に、御高齢者で集計をとりました場合に、六割が女性で、そしてお連れ合いを亡くされ、あるいは女性の方が幸か不幸か長い人生を生きますから、自分の孤独な人生の終末が長期入院という形になっている方が非常に多うございます。
 そして、これは先ほど申しました、日本が御高齢者をどう遇していくかというとき、男性のみならず女性も頑張りましたが、戦後の復興を一生懸命頑張られた男性方、そして、本当の意味で長い人生を女性が生きるようになって、その終末が、こうしたいわゆる行き場がそこしかない形で老いを迎える御高齢な女性たち。小泉首相にもお母様があり、お父様があり、ついせんだってのことも存じておりますが、やはり、親であればどのように自分が子として接していきたいか、その思いをもってしか、医療制度の改革は私はなしていけないことと思っております。
 そして、あわせてもう一つ、実は長期入院といえば、間違いなく精神科の患者さんたちでございます。三十三万人、日本でなぜこれだけの長期入院患者がいるのか。これをこそ社会的入院と言うのだと思います。地域医療の充実は遠く、本当に何十年と帰れない患者さん。精神病院にも十万人の御高齢者がおられます。
 今回の長期入院の問題で一切手がつけられることなく、そのまま痴呆と精神障害を抱えて閉塞した空間の中で亡くなっていかれる方たちにこそ、まず光が冒頭与えられるべきと思いますが、小泉首相のお考えをお聞かせください。
小泉内閣総理大臣 今お話しのような方々に対して、適切な介護なり治療、どうあるべきかという点は、大変重要な点だと私も思います。
阿部委員 坂口厚生労働大臣にも重ねてお伺いいたします。
 いわゆる触法精神障害者の問題で、法的整備の方は先に進んでおりますが、長期の精神障害の患者さんたちの長期入院の問題、精神科の療養問題は、一向はかばかしくなっておりません。私は、何度も申し上げますが、長期入院がまず社会的入院として解決されるべきであるならば、二十万、そして御高齢者全体を含めれば三十三万の精神障害の方たちの施策、入院を解放し地域へ帰すことを第一に改革のプログラムの中に入れ込んでいただきたい。
 質問の予告もせずに恐縮ですが、総理から前向きな御答弁をいただきましたので、あわせて坂口厚生労働大臣にもお願いいたします。
坂口国務大臣 精神病患者の場合には、非常に経過が長いわけでございますから、当然のことながら、半年以上に及ぶ方も多いというふうに思います。精神病患者の皆さん方のときに、その主治医の皆さんがこれはやはりもう少し入院をさせるべきだという判断をされます場合には、それは当然のことながら病院に六カ月が過ぎようと七カ月が過ぎようとおみえになって、そして、自己負担ということにならないで済むのだというふうに私は思います。
 主治医の先生が、もうこの方は医療の場でよりも福祉の場で見ていただいた方がいいという判断が出ましたときには、それはやはり福祉の方でそうした場所を探すということ、そしてまた、できれば御家庭に帰っていただくということも念頭に置かなければならないというふうに思います。
 なかなか、家庭の皆さん方というのもお受けいただけない。私も経験がございますが、それは六人も七人もお子さんがあってもだれもお受けにならないというのがあるわけでありまして、そのところは御家族の方も、やはり御両親あるいは家族の場合には何とか受けて、病院ではなくて、そして家庭の中でできるだけ見てあげようという気持ちになっていただかなければならないことも事実でございます。
阿部委員 もちろん、人間の生き死にですから、その人の暮らす最小単位の家庭ということもございますでしょう。ただし、我が国に、何度も申しますが、三十三万人精神障害の患者さんがいまだに入院状況にあるということは、我が国の精神医療制度の問題でもございますので、政治とはそうした仕組み、制度について、人間がよりよく生きられる方向に導くことであるかと存じますので、重ねてお願い申し上げます。
 そして、そうした全体の文脈の中で私は、今、小泉構造改革が進められる中で、特にこの医療費の問題が、まず先に削減ありき、これは国民負担に返す分も含めてですが、そのような形で行われることが、国民の体力、特に勤労者の体力を大きく損なっていくのではないかという点について、極めて不安を持っております。
 逆に言えば、小泉氏の唱えるさまざまな今後の日本の経済の改革プログラム、例えばバイオ産業にしても、情報産業にしても、IT産業にしても、医療という分野はその骨格にもなり得る、コンテンツにもなり得る極めて重要な、そしてある意味では、我が国が健康立国という形で世界にもう一度我が国のあり方を示せる大切な分野です。
 しかしながら、残念なことに、小泉構造改革ではまず削減ありき。これは三十兆枠の問題と同じですが、経済というものを考えるときに、絞ってその中で改革していけることと、逆に言えば、発展を見越しながら緩やかにいろいろな可能性を育てていく場面があると思います。
 財政諮問会議の中で、塩川大臣がおられますので、本当は竹中大臣への御質問ですが――竹中大臣にお願いいたします。ごめんなさい、先に塩川大臣のお顔がぱっと見えたので、失礼しました。
 財政諮問会議の中には、例えば坂口厚生大臣でもよろしゅうございますが、いわゆる医療分野の方々がお入りでない中で、総枠規制というお話もございました。医療の経済面的な削減のことが話されていることは、私は、日本にとって不幸な会議のあり方だと思われますが、竹中大臣の御所見をお願いいたします。
竹中国務大臣 委員御指摘のように、医療の分野が経済政策の中でも極めて重要な位置づけを占めているということは、十分に認識をしております。
 しかし、経済財政諮問会議は非常に幅広い議論をします。総理プラス十一人の委員ですべての分野をカバーするということは現実問題としてはできませんので、一つのシステムを経済財政諮問会議は持っております。それは臨時議員という制度でありまして、現実問題として、医療の問題等々を話し合うときは必ずと言っていいほど坂口厚生労働大臣に実は臨時議員として参加をしていただいておりまして、十分な議論ができるような体制をとっております。
 また、民間議員のお一人でいらっしゃる大阪大学の本間正明先生、御自身は財政の専門家であると同時に社会保障の専門家でもいらっしゃいまして、委員のお考えのような御懸念のないように十分な体制をとって議論をしているつもりであります。
阿部委員 医療という分野は、人間の生命、そして、それは必ずしも市場原理からいえば効率よくもなく、一番効率よいことはすぐ亡くなることですから、そうではない形で支えられなければいけない医療。しかしながらこのことも、医療分野は大きな雇用創出効果、そして投資効果のある分野でもあるという、非常に極めて微妙なところにある分野です。それであるからこそ、医療関係者は臨時ではなくて常時そこにメンバーとして入れていただき、なおかつ、本間先生のお考えについては折があれば他で批判させていただきますので、もう少し長く医療分野で命を守ることに専念してきた方の、私は坂口厚生労働大臣を御推挙しますが、御意見を深く組み入れて、日本の将来を過つことのないような財政改革をしていただきたいと思います。
 最後に、小泉首相に一つだけ。今回の痛みはどれくらい痛いのでしょうか。お願いします。
小泉内閣総理大臣 これは量的に表現できないのであって、抽象的に言っているんですから。その点は、どの程度かと聞かれても難しい質問で、答えに窮しますね。
阿部委員 しかしながら、やはり痛みは、これくらいか、これくらいか、これくらいか、量的にできるのでございます。
 これを厚生省に量で試算していただきました。患者さんたち、サラリーマン本人三割負担になることによって四千三百億の重荷、どかん、自己負担増。そして逆に、四千億の受診抑制。
 勤労者が会社を休んで病院に行くときは、本当にぎりぎりのときでございます。私は、四千億の受診抑制があるような三割負担をまずしくということは、国民を大事にするとおっしゃった、人から大事にするこの国の姿勢とは相反すると思いますし、小泉首相に、深くお考えの上、痛みを十分に軽量化していただきまして、思いとどまり、先に必要な改革をなさるようお願い申し上げて、質問を終わらせていただきます。
津島委員長 これにて阿部君の質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
津島委員長 この際、お諮りいたします。
 三案審査のため、本日、政府参考人として財務省関税局長田村義雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
津島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
津島委員長 この際、午前の筒井君の残余の質疑を許します。筒井信隆君。
筒井委員 午前中に特に問題にしたのは、国が密輸を認めている、もっと言えば、密輸の共犯である、国家密輸である、こういう問題点を指摘したわけでございまして、そして、ロシアの政府の機関が発行した積み出し証明書に基づいて輸入を許可しているという建前ですが、そのロシア中央政府が今まで一通も発行していないというふうに正式に回答を寄せているわけですから、これは偽造であることはもうはっきりしているわけなんです。
 それでもまだ日本への密輸を認めている。これはもう本当に国家密輸じゃないか、国が、国の機関が密輸の共犯じゃないかという点でございまして、だから、それに対して、何か午前中の答弁で一つおかしかったのは、中央政府の機関だけれども、しかし、その中央政府の機関に地方の行政機関が、地方の政府があるいは委任しているかもしれないとかなんとか、わけのわからないことを言っていたわけでして、その点が一点確認をしてほしい。
 それからもう一点は、その積み出し証明書、何か一部がコピーがあるようで、あとはコピーをとらないで黙認しているのかどうか。コピーがあるとすればそれを全部出してくれ、こういう点からまず入りたいと思います。
齋藤政府参考人 お答えいたします。
 大変わかりにくいのは恐縮でございますが、私どもも一生懸命整理をしようとしておりまして、理解しているところを御説明いたします。
 ロシア側の説明によりますと、地方税関は法律上は中央の国家関税委員会のもとにある組織でございます。他方で、この地方税関が、地方に与えられた権限内でポートクリアランスを発行している可能性も全くは排除されない、あるいは、地方税関当局の権限であると認識した上で発行している可能性も排除されない、こういうことでございまして、また、このポートクリアランスなるものが、外見上は地方税関がそのような権限を有し、有効なものとして発行されたという形式をとっているものでございますので、我々としては、その辺の地方税関の権限関係を中心にロシア側に照会してきているところでございますが、いまだその点に関しての明確な回答はないということでございます。今後とも督促してまいりたいと思います。
 コピーの件につきましては、水産庁の方からお答えを申し上げます。
田村政府参考人 お答えを申し上げます。
 若干繰り返しになりますけれども、ロシア漁船が日本の港に入港した場合には、これは農林水産省からの協力要請、法律上の権限や義務ではございませんが、協力要請に基づきまして、税関を含む関係省庁、税関と海上保安庁でございますけれども、違反の疑いのある船舶を発見したときには水産庁及び海上保安庁に通報している、こういうシステムでございます。
 そして、今御指摘のポートクリアランスにつきましては、具体的には、明らかにこのポートクリアランスは偽造であると思われるようなものについては、これまでも水産庁、海上保安庁に通報してまいりました。
 ただ、ポートクリアランス自体、今申し上げましたように、法律上の義務でもなければ、関税法上の義務でも提出書類でもございません。協力要請でございますが、きちっと見ておりますけれども、そして、明らかにおかしいものについては通報もしておりますけれども、それぞれについては、そのときに見ておるだけ、特にそれについてそれぞれコピーをするというようなことは行っておりません。
 以上でございます。
筒井委員 そうすると、コピーが今二通提出されましたが、これだけたまたまコピーしたということですか。それ以外はコピーも何もしないでそのまま通しているということですか。
田村政府参考人 お答えを申し上げます。
 コピーにつきましては、今申し上げましたように、基本的にそれを見て返しているだけでございます。コピーは一切しておりません。
 ただし、職員が事務の参考として二、三コピーをとっている例がございますので、その例をお示ししている、こういうことでございます。
筒井委員 今までの言いわけは全部うそで、大体ロシア政府ははっきり、取り締まってくれ、こういうふうに強く要請しているじゃないですか。
 例えば、二〇〇〇年の八月三十一日にユーリー・シネリニク・ロシア国家漁業委員会議長はこういうふうに発言しています。毎年、日本へのやみ輸出によりロシアは七億ドル、約九百億円ですか、以上損失している、これは金額が膨大であるばかりか、我が国水産資源に取り返しのきかぬ略奪である。これは日本にとっても同じことなんですよね。日本の本来の固有の領土である北方領土近海でもってまさに密漁されて、それが日本に密輸されている。同じ状況ですよ。
 そして、密輸は両国の密漁者にとって日本市場の販売条件がよいので大きく繁栄している。これも同じなんですよ。これによってロシアのいろいろな部分がもうけているし、日本のいろいろな部分もまたもうけているわけですよ。そして……(発言する者あり)それも後で言います。
 さらに国家漁業委員会議長は発言しています。密輸のロシア水産物を日本の港に陸揚げ許可しないという我々の提案は、日本のパートナーが支持していない。陸揚げ許可しないという提案を日本のパートナーが支持していない。この問題解決に対する日本側の建設的対応や、密輸市場での販売阻止する対応策を期待している。密輸、密漁を早く取り締まってくれ、こういう要求を国家漁業委員会議長が公然と要求しているわけですよ。
 それを、さっきからどうも日本の行政は、中央政府は出していないんだけれども中央政府の機関に地方の機関が委任したかもしれないとかなんとか、わけのわからない理由でもって、まだ調べている調べていると。十年間も調べているじゃないですか。
 さらに、アレクサンダー・ロディン・ロシア連邦農業大臣第一代理はこういうふうに言っています。これは、言っているのは九八年の一月二十五日ですが、六万六千トンのカムチャツカ・ガニのうちわずか七千トンのみが税関に申告されている、我が漁業省はこのような勝手な振る舞いを防ぐため議案を提案した、しかし国会での同議案の検討はずっとおくれている、まるで密漁者の味方が国会内にいるかのようである。これもまさに日本と同じなわけですよ。日本と違うところは、国会内に密漁者の味方がいるんじゃないかという点だけじゃなくて、日本は国家自体がその味方をしているんですよ。
 密漁であることがもうはっきり断定できるじゃないですか。密輸であることがはっきり断定できるじゃないですか。中央政府がこういうふうに、ロシア政府が取り締まってくれというふうに明確に言って、偽造であるということも明確にわかっているわけじゃないですか。それを行政自体が取り締まっていないんだから。ロシア政府は、それでもこういうふうに、プーチン大統領を初め、何とか取り締まろうとしている。日本政府の場合、政府自体が取り締まり自体を避けているわけですよ。
 もう一回、行政の方で答えてください。
木下政府参考人 先ほど外務省の担当局長から御説明申し上げましたように、ロシア政府からは、法令の有無や権限委任の有無には触れず、単に、日本の港に提出されているポートクリアランスはロシアの関税当局は発行していないということでございます。
 これにつきまして法務省等の関係省庁とも協議をいたしましたけれども、偽造か否かを判断するには、ロシア中央政府以外の地方行政機関が発行していないということの確認をする必要があるというふうにされているところでございます。
筒井委員 この密輸、密漁について、ロシア側も毎年約九百億円の損失をこうむっている。日本もほぼ同額なんですよ。同時に、それでもうけている人がいるわけですよ。
 こういう積み出し証明書が偽造であるとすれば、午前中に指摘しました外国人漁業規制法違反で、ほかでもまだ刑法違反にも該当すると思うんですが、この外国人漁業規制法だけでも三年以下の懲役、四百万円以下の罰金。これは、偽造の疑いがあるというふうに行政の方も、外務省も水産庁も、先ほど午前中に認められた。だから照会しているんですから。
 疑いがあれば、これは告発する義務がありますね。告発していますか。水産庁でも、外務省でも、あるいは税関でもいいですが。
木下政府参考人 お答えいたします。
 先ほど申し上げた点から、私どもは告発をいたしておりません。
筒井委員 まさに告発すべきものですが、十分で終わりましたが、最後の質問です。
 このことによって、まさに利益は、特に北海道の水産業界、輸入業界に入っているわけでございまして、その輸入業者、いろいろな水産会社等々があるわけですが、そこから鈴木宗男さんに献金が毎年行われてきた。この水産会社、合計で三十社ぐらいから献金が行われておりまして、水産庁の方に最後に確認しますが、この輸入業者の名前、それからその輸入業者が鈴木宗男さんに献金しているかどうか、この事実、答えてくれますか。
木下政府参考人 ロシアから輸入されている多くのものはAA物資でございますので、私ども水産庁は、どの輸入業者が輸入をしているかという点につきましては把握をいたしておりません。
筒井委員 では、税関の方もお呼びしていますが、これは輸入の許可を求めなきゃいかぬから、税関の方では把握しているでしょう。答えてください。
田村政府参考人 お答え申し上げます。
 私どもとしては、先ほど申し上げましたように、行政上の協力要請に基づきまして、そのポートクリアランスが明らかに偽造であると思われる場合、例えばそれは明らかにインボイス等と見て日付が違っているとか、そういうものについては通報しておりますが、それ以上の点については私どもは承知しておりません。
筒井委員 いや、今の質問はそうじゃないでしょう。私の質問を聞いていない。今の質問は、ロシアの水産物について輸入している水産業者、この名前を挙げてくださいということです。税関はわかるでしょう、それは。直前ですが、さっき質問通告しましたが。
田村政府参考人 お答え申し上げます。
 一般的に、本件もそうだと思いますけれども、輸入申告書がそれぞれ出ているわけでございますから、それを調べればもちろん輸入業者名はわかりますけれども、それは、それぞれについてのやはり守秘義務等ございますから、それをどう考えるかは別といたしまして、輸入業者それぞれについて今と言っておられても、私どもはそういうものを持っておりませんけれども、本来申告書はあるんですから、それはわかるとは思います。
筒井委員 では、それは後で予算委員会の方へ出せますね。
津島委員長 筒井君に申し上げます。
 この取り扱いについては理事会で協議をいたします。
筒井委員 時間が来ましたので、終わります。
津島委員長 これにて筒井君の質疑は終了いたしました。
 次回は、明二十六日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時十三分散会


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