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第3号 平成15年1月23日(木曜日)

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平成十五年一月二十三日(木曜日)
    午前九時一分開議
 出席委員
   委員長 藤井 孝男君
   理事 斉藤斗志二君 理事 自見庄三郎君
   理事 杉浦 正健君 理事 萩山 教嚴君
   理事 宮本 一三君 理事 末松 義規君
   理事 原口 一博君 理事 細川 律夫君
   理事 石井 啓一君
      伊吹 文明君    池田 行彦君
      石川 要三君    衛藤征士郎君
      尾身 幸次君    大原 一三君
      奥野 誠亮君    亀井 善之君
      栗原 博久君    高鳥  修君
      竹本 直一君    津島 雄二君
      中山 正暉君    丹羽 雄哉君
      額賀福志郎君    葉梨 信行君
      萩野 浩基君    林 省之介君
      原田昇左右君    松岡 利勝君
      三塚  博君    持永 和見君
      山口 泰明君    山本 明彦君
      石井  一君    上田 清司君
      海江田万里君    鍵田 節哉君
      河村たかし君    菅  直人君
      今田 保典君    仙谷 由人君
      田中 慶秋君    中村 哲治君
      長妻  昭君    細野 豪志君
      吉田 公一君    米澤  隆君
      赤羽 一嘉君    斉藤 鉄夫君
      白保 台一君    達増 拓也君
      中塚 一宏君    樋高  剛君
      佐々木憲昭君    矢島 恒夫君
      山口 富男君    中西 績介君
      横光 克彦君    井上 喜一君
    …………………………………
   内閣総理大臣       小泉純一郎君
   総務大臣         片山虎之助君
   法務大臣         森山 眞弓君
   外務大臣         川口 順子君
   財務大臣         塩川正十郎君
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   厚生労働大臣       坂口  力君
   農林水産大臣       大島 理森君
   経済産業大臣       平沼 赳夫君
   国土交通大臣       扇  千景君
   環境大臣         鈴木 俊一君
   国務大臣
   (内閣官房長官)
   (男女共同参画担当大臣) 福田 康夫君
   国務大臣
   (国家公安委員会委員長)
   (産業再生機構(仮称)担
   当大臣)         谷垣 禎一君
   国務大臣
   (防衛庁長官)      石破  茂君
   国務大臣
   (沖縄及び北方対策担当大
   臣)
   (科学技術政策担当大臣) 細田 博之君
   国務大臣
   (金融担当大臣)
   (経済財政政策担当大臣) 竹中 平蔵君
   国務大臣
   (規制改革担当大臣)   石原 伸晃君
   国務大臣
   (防災担当大臣)     鴻池 祥肇君
   内閣官房副長官      安倍 晋三君
   内閣府副大臣       伊藤 達也君
   内閣府副大臣       根本  匠君
   総務副大臣        若松 謙維君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   文部科学副大臣      渡海紀三朗君
   厚生労働副大臣      鴨下 一郎君
   厚生労働副大臣      木村 義雄君
   経済産業副大臣      高市 早苗君
   経済産業副大臣      西川太一郎君
   国土交通副大臣      中馬 弘毅君
   環境副大臣        弘友 和夫君
   内閣府大臣政務官     木村 隆秀君
   法務大臣政務官      中野  清君
   財務大臣政務官      田中 和徳君
   文部科学大臣政務官    大野 松茂君
   農林水産大臣政務官    熊谷 市雄君
   環境大臣政務官      望月 義夫君
   政府特別補佐人
   (内閣法制局長官)    秋山  收君
   政府特別補佐人
   (人事院総裁)      中島 忠能君
   政府参考人
   (人事院事務総局勤務条件
   局長)          大村 厚至君
   参考人
   (日本銀行総裁)     速水  優君
   予算委員会専門員     中谷 俊明君
    ―――――――――――――
委員の異動
一月二十三日
 辞任         補欠選任
  栗原 博久君     竹本 直一君
  松岡 利勝君     林 省之介君
  山口 泰明君     額賀福志郎君
  中村 哲治君     仙谷 由人君
  細野 豪志君     菅  直人君
  米澤  隆君     今田 保典君
  赤羽 一嘉君     白保 台一君
  山口 富男君     矢島 恒夫君
同日
 辞任         補欠選任
  竹本 直一君     栗原 博久君
  額賀福志郎君     山本 明彦君
  林 省之介君     松岡 利勝君
  菅  直人君     細野 豪志君
  今田 保典君     鍵田 節哉君
  仙谷 由人君     中村 哲治君
  白保 台一君     赤羽 一嘉君
  矢島 恒夫君     山口 富男君
同日
 辞任         補欠選任
  山本 明彦君     山口 泰明君
  鍵田 節哉君     米澤  隆君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 平成十四年度一般会計補正予算(第1号)
 平成十四年度特別会計補正予算(特第1号)
 平成十四年度政府関係機関補正予算(機第1号)


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     ――――◇―――――
藤井委員長 これより会議を開きます。
 平成十四年度一般会計補正予算(第1号)、平成十四年度特別会計補正予算(特第1号)、平成十四年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑に入ります。
 この際、お諮りいたします。
 三案審査のため、本日、政府参考人として人事院事務総局勤務条件局長大村厚至君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
藤井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
藤井委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。額賀福志郎君。
額賀委員 きょうは、ただいま委員長からお話がありましたように、平成十四年度の補正予算等についての質疑が行われるわけでございます。今度の補正予算は、十五年度予算編成とあわせて、いわゆる十五カ月予算と言われておりますので、国政全般にわたって質問をさせていただきたいと思っておるところであります。
 きょうから予算委員会の論戦がいよいよ火ぶたを切って落とされるわけでありますけれども、ことしはちょうど、十二年前にバブル経済が崩壊をして、再びひつじ年がめぐってまいったということでございます。未来という字はひつじが来るということでございますから、中長期的な展望に立って、今日の問題について、私は、小泉総理並びに関係大臣に御質問をさせていただきたいと思っておるところでございます。
 まず、最近、国際社会の中で、日本経済が余りにも長期的に停滞をしておりまして、存在感が薄れつつあると言われております。一方で、中国が高度成長を続けて大きくクローズアップされているわけでございます。私は、ことしこそまさに日本に元気を取り戻し、そして、将来にわたって展望と方向性を示して、国民の夢と希望とそして勇気を与えるということが政治家の務めであり、あるいはまた政治の役割であるというふうに考えるのでございます。
 それで、私は、小泉総理が今日まで二年有余にわたって政権を担当してまいったのでありますけれども、どういう国家観、どういう国の姿を描きながら今日の政治を行っているのか、そういうことについて質問をまずさせていただきたいと思っております。
 私は、戦後、いわゆる吉田ドクトリンに基づいて軽武装・経済国家を目指したということは、正しい選択だったと思います。折しも、まさに日本人の勤勉性、あるいはまた教育水準の高さ、あるいは集団的な言ってみれば頑張り、そういうことが大量生産あるいは大量消費の経済の流れと合致いたしまして、高度成長をなし遂げて経済大国をつくり上げたと思っております。これだけの物量的な豊かさを獲得したのでありますから、私は、この経済大国路線、軽武装・経済国家というものは、一定の成果を上げたと思っております。
 しかしながら、十二年前、ようやくそういう経済至上主義路線というものが峠に差しかかったころにバブル経済の崩壊というものが起こりまして、我々はみずからのおごりの反省というものを迫られる事態になったと思っておるのでございます。しかし、我々の経済大国の夢というものは、最も十分な形で完成されないうちに崩壊したわけでございますから、本当の国民生活の豊かさだとか本当の経済の強さだとかというものは、今後の課題に残されたものだというふうに思っているのでございます。
 しからば、これからスタートするに当たって、どういう形、どういう点から我々が国家建設を目指していかなければならないのかということを考えたときに、私は、再び経済の分野から入ることが国民の理解と協力を得ることができるのではないか、それがまた賢明な選択ではないのかというふうに考えておるのであります。今までのいわゆるGNP、GDP神話に基づいて経済の規模の拡大に成功はいたしましたけれども、それにかわって、本当に経済力が強くて、しかも真の国民の生活の豊かさをなし遂げるという新たな計数値、そういうものをつくり上げて一定の目標を考えていくことがこれから二十一世紀の経済を考えるときに要求されてくるのではないのか、そういうことを私は考えるのでございます。
 したがって、そういう経済の力を政治力に結びつけて、さらに私どもは文化大国、文化文明国家というものをつくり上げていく、そういうのが一定の我々の目指さなければならないことではないかというふうに思っているのでございます。
 その際に、我々が誇れるものはやはり人であると思っております。日本の財産は人である。これから世界最高の高齢化社会を迎えるわけでございますけれども、私は、老いも若きも本当に充実した、生き生きした人生を送れるという日本の社会の姿を見せて、世界にメッセージを発するのが我々の役目ではないのかというふうに考えるのでございます。そういうことをなし遂げることによって、我々がこれからどういう社会的なインフラをつくっていくのか、あるいはどういうサービスとかニーズが生まれてくるのかということがおのずと見えてくるわけでございます。したがって、人材先進国というか、人材大国というか、そういうものをぜひイメージしていかなければならないというふうに思っております。
 一方で、私は、二十世紀というものは、企業とか組織とか団体が中心となって国民の幸せを引き上げてきたと思っております。それは、日本人の国民性にマッチしたからでございます。しかし、これからという時代は、やはり我々の個人が輝くことによって、個人の能力を開発して個人が活躍することによって企業とか集団とかそういうものを引き上げていく時代になっていくのではないのか。いわゆる二十一世紀は個人の輝く時代になるだろうというふうに思っているのでございます。
 したがって、その際に大事なことは、私は、経済至上主義の陰で忘れてきた心の問題であると考えるのでございます。我々は、生態系の中で、自然の美しさに感動をして、そして、自然の優しさと恐ろしさというものをみずからの生活の中に組み入れて吸収することのできる文化というものを体で感じているし、我々は身につけているわけであります。そういうものが、自然との共生という形で、日本の文化、文明を発信するメッセージになっていくのではないか。
 つまり、私は、経済強国、そして人材先進国、そして自然との共生、そういう国家イメージでこれからの政治を運営していくことが、世界の中の尊敬される日本、世界に誇れる日本を形づくっていくのではないのかというふうに思っておりますけれども、小泉総理においては、どういう国に対するイメージを持っておられるのか、お考えであるならば、示していただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 戦後、敗戦後から今日まで、平和で繁栄を築いてきた後を振り返って、今、額賀議員も述べられましたが、私は、この敗戦後から今日、日本は、日米同盟というものを基本にしながら国際協調体制をとってきた、わけても経済発展に専念してきたわけでありますが、今日までの日本という国を築き上げてきた今までの努力というものを大きく評価しながらも、やはり新しい時代に対応するような変化も必要じゃないか。
 特に、今、額賀議員が言われたように、これからはやはり国の発展の原動力は人である、人間である。日本はかなり高い水準を持った多くの国民を持っている。そして経済的にも、今、だめだだめだと言われながらも、個人資産等あるいは各種の経済基盤を見れば、なおかつ、発展途上国、世界に比べて遜色ない、あるいはすぐれているものもたくさんある。こういういわば大きな潜在力を今後いかに生かしていくかということが、これからの経済再生に必要ではないかと思っております。
 わけても、この経済成長の中で、日本は、公害という負の遺産に悩んできた面もあります。自然と共生ということを額賀議員は言われましたけれども、これからは、経済成長も大事ですが、同時に、地球全体、環境全体、自然といかに共生していくか。いろいろな経済活動につきましても、環境に配慮していく。さらに、科学技術というものを、これからは、私は、環境保護と経済発展を両立させるかぎだととらえて、新たな発展を期さなきゃならない。
 そういう意味において、いろいろ改革すべき点はたくさんあるんですが、今後、いかなる発展を考えるにおいても、自然と共生していくか、これは大変大事な視点ではないかと思っております。
額賀委員 やはり国家の進むべき道を示すことによって、おのずと政策とか方向が出て、それに向かって国民のエネルギーが結集されていくというふうに考えております。
 最近、永田町では、いわゆるワンフレーズポリティックスというような言葉が流行しております。私は、何だか最初わからなかったのでありますが、チョコレートか何かの商品でも出たのかなと思っていたくらいなんでありますけれども、つまり、短い言葉をキャッチコピーのように使って政治を端的に表現をしているわけでございますけれども、議会制民主主義というのは、もともと政党政治が原点であります。私は、短い言葉で、キャッチコピーのようにして、国民の理解を得られたように振る舞う政治というのは、やはり本当の政治の活力、生きた政治というものを壊していく危険性があるのではないかというふうに思っております。私はやはり、国民から選ばれた議員から構成する政党の議論を通して、きっちりと国民の声を反映した上で政治運営がなされなければならないというふうに思っております。
 小泉総理の言ってみればうたい文句である改革なくして成長なし、このキャッチコピーのいいところというものは、言ってみれば、まず景気回復を我慢して改革をしようじゃないか、それが必ず景気回復につながっていくんだということを示しているわけでございますけれども、では、改革の政治目標についてはどういうことが具体的に提示されて、そしてどういうことが議論をされているのかということについては、どうも国民の皆さん方がまだ十分な納得をされていないのではないのかというふうに感じております。
 今後、やはり私は、自民党の政治でも、あるいは各党が政権をとった場合でも、政党政治の活力をきちっとしていくためには、諮問委員会だとか審議会だとか専門家の皆さん方の意見を尊重するということを否定はしませんけれども、もうちょっと政党の、あるいは政党人の声を聞いてもいいのではないかという印象を持っておりますが、小泉総理はいかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 ワンフレーズポリティックスというのは、私がつけた名前ではありません。報道機関が勝手に言っている言葉でありまして、私が簡潔に表現すると、あるときは短いからそういうことを言うんでしょう。しかし、簡潔に話すことも大事だと思っております。ここで長々と話しますと、もういいかげんにやめろという声も起こってきますし、できるだけ簡潔に話さなきゃいかぬと思っております。
 これから党と相談しろ、よく意見を聞き、全くそうなんです。これも丸投げなんという批判ありますけれども、私は、総理大臣というのは基本的な方針を示して、後は、具体的な内容とか手続については専門家、識者のよく意見を聞く、そして各担当大臣に任せて実施していく、その間いろいろな方々の、もちろん与党であります皆さん方との意見調整は十分する、そういうことによってやってきたんです。
 ですから、一見私の方針に対して反対一色に一時は自由民主党の中で見えるかもしれないが、時間をかけていけば協力してくれて法案が成立しているわけでしょう。そういうことを見ますと、その手順は私はちゃんと踏んでいる。一方的に独断専行ということは避けておりますので、よく意見を聞きながら、民主政治ですから一人でできるものではありません、多くの方々の意見を聞いて、そして、折り合えるところ、調整できるところ、お互いの主張を取り入れながら一つの方向を出していくのが好ましいのではないかというふうに思っております。
 決して、一人で、独裁的な形で私は今回小泉内閣の仕事をしていると思っていません。多くの方々の協力がある。特に自民党、公明党、保守党、保守新党、今度新しく加わっていただきますけれども、そして、なおかつ野党の意見も聞いたらどうかと。有事なんという法案、有事法制の問題でも、できるだけ野党、民主党、第一党の意見も尊重して有事法制というのをしていくべきではないかというようなことを言っているのも、単に与党だけの声じゃない、野党の声も聞きながらあるべき国の姿をつくっていくべきではないかというのは、その趣旨でもあります。
額賀委員 先日、一月十六日に自民党の党大会が行われました。その際に、小泉総裁は、我々はだめだだめだといって言ってみれば意気消沈をしておったのでは、先輩たちが幾多の困難を乗り越えてきたことに対しても申しわけがない、お互いに新しい年を迎えて夢と希望を持って頑張ろうではないかという話をなさいました。
 私は、実行委員長としてその言葉を聞いているときに、三年前に小渕総理が施政方針演説の中で、コップの中の半分の水を例えまして、やはり今我々は悲観主義をとってはいけない、建設的な楽観主義をとらなければならない、コップの中の半分の水を見て、まだ半分残っているじゃないかという楽観主義、もう半分になってしまったのかという悲観主義、どちらかをとるならば、楽観主義をとってチャレンジしていかなければならないということを思い返しておりました。三年、四年たっても一国のリーダーが同じようなことを言わなければならないというところに今日の難しさがあると思っております。
 確かに、先日の月例経済報告の中でも、日本の経済はなかなか容易ならざるものがあります。世界経済の先行きによっては、より以上に厳しく受けとめなければならないということであります。もともと小泉総理は、不良債権処理を促進する、公債発行三十兆円枠を堅持する、そして補正予算は組みたくない、そういうもとで経済財政運営を行ってきたわけでございますけれども、今度の補正予算は三十五兆円の公債発行をいたしたわけであります。財政削減だけで財政健全化を目指すということはなかなか容易ではない、むしろ実体経済を壊してしまう危険性さえある。経済活性化に伴って財政健全化を図っていかなければならないというのが筋論だろうと思います。
 そういう中で今度の補正予算が行われたわけでございますけれども、これは来年度予算とかみ合わせて、連携させて日本の経済の活性化を目指そうとするものでありますけれども、これは政策転換につながっていくんでしょうか、そういう思いでこの補正予算と来年度予算をつくったのでしょうか。小泉総理のお考えを聞かせていただきたいと思います。簡単にお答えをいただきたい。
小泉内閣総理大臣 はっきり言っておきますが、政策転換など全然していません。
 まず、私は当初から、公的部門、行財政改革を徹底的にやると。いわば今の日本のこの十年間、財政出動してきた、減税してきた、金融政策、ゼロ金利、なぜきかなかったのか、構造に問題があるんだということで、郵政から財投から特殊法人につながるこの公的部門、これに改革のメスを入れる、そういうことによってできるだけ税金のむだ遣い構造をなくしていこう、この方針には一貫して変わっておりません。
 その中で、三十兆円枠。当時は、税収が五十兆円ぐらいあるという見込みで、そのときの国債発行額は約二十八兆円。そういう見通しの中で行われたから、まだ国債発行枠三十兆円、五十兆円の枠の中、税収の中で、三十兆円枠というのは決して緊縮じゃない。そういう中で歳出の見直しもやっていきましょう、規制の改革もやっていきましょう、金融の改革もやっていきましょう、税制の改革もやっていきましょうということでやっているわけであって、私は、どこが政策転換なのかと。この構造改革を推進するために、柔軟に大胆に経済情勢を見ながら対応すると言っているんです。
 しかしながら、税収も落ち込んできました。そして、国債の発行枠を、三十兆円を守ると、増税するか、さらに歳出を切り込むかということになる。そういうことから私は、経済というのは生き物だから当然変化がある、税収が落ち込むときもある、見通しが違うときもある、そういうときには大胆かつ柔軟に見直そうということで、基本的な行財政改革、官から民へ、中央から地方へのこの方向を変える気持ちは全くありません。
額賀委員 このほか、総理は党大会において、今後はデフレ抑制策に全力投球するという話をなさいました。デフレ抑制策を展開するということ、補正予算でいわゆる三十兆円枠を突破するということ。私は、デフレ政策に政策を総動員するということは、今までは総動員をしていなかったのかというふうに問われかねない危険性があると思います。
 私は、そういうことではないと思っております。やはり、金融政策も財政政策も税制も、そして産業政策も、あらゆるものが総動員されて初めてこの危機的な状況を乗り切っていくことができるんだと思っております。
 私は、むしろ、政策の問題ではなくて、政策を整理するところに問題がある。やはり、財務省あるいは経済財政担当省、あるいは経済産業省、あるいは金融庁、それぞれが自分の庭先をきれいにしておりますけれども、それでは日本経済全体としての政策はどうなんだということになると、てんでんばらばらで、総合的な政策の総動員という形にはなっていないんではないのか、そこが問題になっていると思うのであります。
 やはり大事なことは、組み合わせが大事であります。日本の技術とか日本人の能力とかというものは、アメリカに負けるはずがないんであります。ただ、組み合わせがいま一つ新しい経済の活力に結びついていないんだと思っております。
 それは、国の政策をつくる上においてもそうだと思います。この主導権を握れるのは、小泉総理、あなたしかいないんであります。官邸においてきっちりと、経済政策と金融政策と税制と、あらゆる政策をミックスして、どれをプライオリティーに置くのか、そして、どういう形で国家の政策として推進をしていくのか、ぜひ考えていただきたいと思います。これがこの難局を乗り切れるかどうかのポイントであろうというふうに私は思っております。時間がありませんから答弁はよろしいです。希望をしておきます。
 それからもう一つ、もう一つ私がお願いをしておきたいことは予算編成についてのことでございますけれども、今までは各省とも、予算を獲得すること、そして、予算をできるだけ多く獲得することがあるいは目的でありました。予算というものは手段であります。何のために予算を獲得するのか、そして、その予算を使ってどういう目的をつくっていくのか、それが大事であります。
 今後は、その予算の使い方によってどういう成果を上げたかということが、我々は、予算を編成する場合、予算を考える場合に重要なテーマであると思っております。そうでなければ、財政が一方的な拡大傾向に走って、今日の財政の言ってみれば、まあ均衡を失した形になっているのではないかというふうに考えるのであります。
 したがって、これも先ほどの総合的な政策をつくり上げるということの一環として、予算編成のあり方というものもぜひ考えてほしいと思っております。
 時間がないものですから、最後に、外交、安全保障の問題について、質問を変えたいと思います。
 北朝鮮は、核開発の放棄を求める国際社会の要請に対しまして、これに同調せずに、昨年十二月には言ってみれば核開発関連の凍結解除、そしてまた、ことしに至ってはNPTの脱退宣言をいたしました。隣国である私どもにとりましては、極めて重大な問題でございます。この問題を解決していくためには、我が国と韓国、アメリカがきっちりと連携をしていかなければならないというふうに思っております。
 先般、私は、韓国の盧武鉉大統領候補者と、日韓議連の森会長及び扇国務大臣とともに行って、会談をしてまいりましたけれども、この三カ国連携のもとに朝鮮半島の安定を考えていこうということでは、お互いに意見の一致を見たところでございます。
 総理におかれましてはこの問題について今後どう立ち向かっていくのか、お考えを聞かせていただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 北朝鮮との関係につきましては、日朝平壌宣言、昨年の九月十七日に私と金正日北朝鮮総書記の間で署名を交わしたわけでありますが、この日朝平壌宣言を誠実に実施していく、これが大前提であります。
 そういう中で、拉致問題、核問題、いろいろ難問が重なっておりますが、こういう問題につきまして、日本と北朝鮮だけではなく、アメリカや韓国、あるいはロシア、中国、IAEA等国際機関、いわば国際社会の中で協力して北朝鮮に対し働きかけていくということが基本的な姿勢でございます。
額賀委員 北朝鮮との間には、これは小泉総理もみずから政治生命をかけて日朝首脳会談を行い、拉致問題に一定の解決の道筋をつけていただいたと思っておりますけれども、拉致問題については、五人の被害者は帰されたものの、まだ家族の者は帰国することができておりません。しかし、その後さまざまな変化がありまして、どうもこの問題についても手詰まり感を来しているような気がいたしております。
 政府としては、この問題を打開するためにどういう手だてを講じようとしているのか、どういう形でこの問題を解決するために努力をなさっているのか、それをお答えしていただきたいと思います。
川口国務大臣 拉致の五人の方々が日本に帰っていただくことができた一方で、その家族の方が北朝鮮に引き続き残っているという状態になっていることは、私どもにとっても心の痛むことでございます。
 この点につきましては、北朝鮮に対して、現在、北朝鮮に残っている家族の人たちを早期に帰国させるということ、及び拉致に関連するさまざまな情報を提供するということを引き続き今求めているところでございます。いろいろな場で、あるいは日本だけではなくて関連の国もこの点については支援をしてくれる態勢にございまして、働きかけを行っております。
 引き続きこれを続けていくというふうに考えております。
額賀委員 私は今、政府側の答弁を聞いておりまして、北朝鮮とは今のままでは国交正常化をすることはできないと思います。
 やはり、まず北朝鮮が核開発計画を放棄して、我が国を初め周辺に対しての脅威を除去して、その上で、拉致問題の解決も示し、さらに、我々に対して正常化の交渉についての、言ってみれば国際的な枠組みの中でテーブルに着けるような形をつくらない限り、正常化交渉はできないのではないかと思っております。
 特に私は、拉致問題につきましては、さきの小泉首相の日朝会談において、拉致問題を認め、そして二度とこういうことを起こさないようにという約束をしたということであります。五人の被害者を帰してくれたということでこの拉致問題を終わりにさせるわけにはいかないということだろうと思っております。二度と繰り返さないということを約束した以上は、やはり残りの家族の皆さん方も帰国させていただいて、その上で、日朝間の問題についていろいろと考えていくことができるのではないかと思っております。そういう約束を果たしてくれることによって、私は、北朝鮮と日本との信頼関係が初めて生まれてくるのではないか、その信頼関係に乗っかってさまざまの問題解決をしていくことが筋論だというふうに思っているのであります。
 そのほかに、私は、安否の問題についても誠意を持ってこたえてくれなければならないということも当然のことであると思っております。
 日朝関係というのは、私は、有史以来、やはりお互いに長い歴史の中でほとんど友好関係を築いてきたのが大半であろうと思っております。残念ながら、つらかったことや苦しかったこと、不幸なこともあったわけでございますけれども、全体的に見れば、私は、友好関係、長い、お互いの国民の繁栄のためにつながりを維持してきた、あるいは文化をつくり上げてきたというのが歴史であっただろうと思っております。
 ブレア首相が、イギリスの長い歴史の中で、過去の歴史から外交の広がりを発見していくという、歴史の知恵というものを発言なさっておりますけれども、残念ながら、我が国は、朝鮮半島の歴史というものは、どちらかというと弱みになっております。今後この二十一世紀においては、この弱みを転換して、歴史の知恵に基づいて強さに転換をさせていくことによって、日朝関係を正常化し、朝鮮半島の安定に結びつけていくことが我々の国益に沿うことであり、アジアの発展のためにつながっていくことになると思っております。そのために、私は、一人の国民として、一人の政治家として政治生命をかけてもよいくらいの気迫を持って、この朝鮮半島問題に真正面から向き合っていかなければならないのではないかと思っております。
 小泉総理の今後の日朝問題あるいは北朝鮮に対する思いというものを聞かせていただければありがたいです。
小泉内閣総理大臣 我が国の隣国であります北朝鮮と日本が、戦後五十年、六十年、この長きにわたって不正常な関係にあるというのは大変残念であります。長い悠久の歴史に比べれば、五十年、六十年なんというのはほんのわずかな期間だ、ごもっともであります。むしろ、何百年あるいは千年単位で友好の歴史の方が長かった、そういうことに思いをいたしながら、これからの北朝鮮と日本のことも考えていくべきだという点については共通の認識を持っていると思います。そういうことから、私は、今の北朝鮮と日本との敵対関係を、はるか昔からの友好の歴史を思いながら、近い将来、友好、協調関係にしたいという思いで、昨年九月十七日、ピョンヤンに向けて日本を出発したわけであります。
 この敵対関係から協調関係にするというのは、大変困難な問題が前に横たわっておりますが、そのことが北朝鮮にとっても利益になるんだということを、日本が働きかけているだけじゃない、韓国もアメリカもロシアも中国も今働きかけている。そういう国際社会の中で、北朝鮮も国際社会から孤立せずに、国際社会の責任ある一員になるということがプラスなんだ、利益なんだということを私はこれからの交渉の中で粘り強く働きかけていく必要があると。これは気の長い話でありますが、一朝一夕に解決する問題ではありません。また、日本一国でできる問題でもございません。そういう中で、私は、今後とも、正常化交渉に向けて、日朝平壌宣言を誠実にお互いが履行していこうというあの約束の精神を常に思い出しながら、北朝鮮に働きかけていきたいと思っております。
額賀委員 時間が参ったようでありますが、このほか、イラクの問題とかテロ特措法の問題等についてお聞きしたいと思ったのでありますが、萩山議員に譲りたいと思っておりますが、結びに当たりまして、国民の皆さん方が、今、小泉政権がどういう政策を展開していくのか注目をいたしておると思っております。どうぞ、国民の英知を結集する、つまり、議会政治を大事にし、政党を大事にする形で政策を形成し、国民の負託にこたえていく、しかも、なおかつ、経済政策に曙光を見出し、この地域の安定のために全力を尽くしていただくことを心から念願をしまして、質問を終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
藤井委員長 この際、萩山教嚴君から関連質疑の申し出があります。額賀君の持ち時間の範囲内でこれを許します。萩山教嚴君。
萩山委員 限られた十四分でございますけれども、御協力のほどをよろしくお願いいたします。
 最近、国際情勢に関して特に心配されるのが、中東情勢と並んで朝鮮半島の情勢であります。
 これについては、九三年、九四年に深刻な危機が生じ、北朝鮮はソウルを火の海にするなどと述べ、我々日本人も大いに肝を冷やしたことがございます。また、この危機の最中に、九三年春、北朝鮮が日本海に向けてノドンらしきミサイルを発射するということもありました。九八年には、我が国の領空を飛び越えるような形でテポドンミサイル発射実験が行われております。北朝鮮のミサイルは既に我が国の大部分を射程圏にとらえているということであります。
 また、今問題になっているような、仮に北朝鮮が大量の破壊兵器の開発、製造に手を染めているとすれば、これは我が国の安全保障にとってまさにゆゆしき問題でございます。安全保障にかかわる問題は国民の生命や財産に直接影響が生じるおそれがあることから、我が国としてはきちんとした対応を迫られているわけでございます。
 そこで、防衛庁長官にお伺いいたしますが、北朝鮮のミサイルの配備や開発の状況についてどうとらえているのか。また、北朝鮮からのミサイル攻撃に対して自衛隊はどの程度の抑止力を持っておるのか。御説明をいただきたいと存じます。
石破国務大臣 お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、北朝鮮が持っておると言われるミサイルは、射程三百キロのスカッドから始まりまして、スカッドB、スカッドC、そしてノドン、テポドンとくるわけでございます。我が国にとって最も懸念されますのは、射程が千三百キロと言われますノドンミサイルでございます。これは日本全域をほとんど射程に入れておる。
 では、どれぐらい持っておるかと言われると、これはいろいろな議論がございますが、ミリタリーバランスによれば十基程度と言われております。あるいは百基という指摘もございます。いずれにせよ、日本全体を射程に入れておるミサイルを配備しておるというふうに考えておる次第でございます。
 では、どのような対応ができるかということでございますが、現在、私ども自衛隊が有しております装備におきまして、完全にそれを撃ち落とせるというものはございません。今ありますのは、イージス艦あるいはPAC2と言われるシステムでございますが、これは、先ほど申し上げましたスカッドCクラスのものに対しまして、限定的であるけれども力は持っておる、しかし、すべてのものが落とせるというようなことではございません。
 したがいまして、ミサイル防衛をどうするかというお話になるわけでございまして、安全保障会議の議を経まして、私ども共同研究をいたしておるところでございます。これは、安全保障会議あるいは国会におきまして、それがどのような法的構成によるべきなのか、あるいは費用対効果がどうなのか、防衛力整備のあり方の中でどのような位置づけを占めるものなのか、そのような議論が必要であろうと思っております。
 いずれにしても、どのように対処するかということは、我が国の独立、平和、安全、喫緊の課題であるというふうな認識をいたしておる次第でございます。
萩山委員 あすにもノドンが飛んでくるなどと言って国民に不安をあおるのもいかがなものかと存じますが、事国民の安全保障や国民の生命財産に関する問題については、余りのんきにしているということはよくないと思います。半島情勢の緊迫のみならず、このアジア太平洋地域には、多くの国々が弾道ミサイルを保有しているということを言われております。また、最近の国際情勢にかんがみれば、テロリストなどがミサイルを取得する可能性も排除できないと思われます。ミサイルの脅威は我が国にとって現実のものと言えるわけでございます。我が国の独立と平和の責任を有する防衛庁は、ぜひとも緊張感を持って、しっかりと国民の負託にこたえるように、今後とも一層の努力を重ねていただきたいと思います。
 次に、イラク情勢や北朝鮮情勢が緊迫している状況を踏まえ、我が国の有事の対応も早期に整備する必要があると考えます。私は、自衛隊が有事に対応できるよう法整備をするとともに、国民の生命財産を守るためにはぜひとも必要であると考えております。昨年四月、国会に提出された有事関連三法案が現在、継続審議中であるが、早急に成立させることにより、国民の生命財産を国として守ることが大切でございます。
 ここで、有事関連三法案の成立に向けて、総理の御決意をお伺いしたいと存じます。
小泉内閣総理大臣 昨年も有事関連三法案につきまして長時間御審議をいただきました。やはり一朝事があった場合にどのような対応をしなければならないか、また法的整備等問題点はないか、いろいろ御議論をいただいたわけでありますが、一国にとって、常に一朝事があった場合にしっかりとした法的整備を整えておくことは、その重要性というのは今も変わりないと思っております。
 今国会におきまして、昨年の審議も踏まえて、ぜひとも成立を期したい、できるだけ多くの方々の御理解と協力を得られるような形で成立を期したいと思っております。
萩山委員 ありがとうございます。
 さて、私は昨年十月まで約一年半にわたって防衛庁副長官を務めてまいりました。自分は全国津々浦々、部隊を訪ね、国防の第一線を担う隊員の姿を目の当たりにしてきました。彼らは日々黙々と任務遂行に明け暮れている。特に、海外に派遣されている隊員については、正月やクリスマスなど、家族とともに団らんを過ごすということはなかったと思います。そうした隊員や家族の気持ちに思いをはせるときに、自分は防衛庁副長官の職を通して、あった者として、みずから胸が熱くなる思いを現地でいたしてまいりました。
 また、PKOなどについている大きな部隊以外、急患輸送といったいわば地味な分野においても、自衛隊の若者たちは日ごろから与えられた任務の完遂に向けて日々一生懸命に活躍してくれております。命令一下、どんなところにでも我先に駆けつけていくのであります。彼らは給料や手当がもらえるからというだけで厳しい仕事をしておるのではありません。青年層のモラル低下の中、教育の荒廃の中で、取りざたされているきょうこの御時世に、彼ら若い隊員を支えているのは、自衛官としてのプロ意識と、国民みずからの負託にこたえるというプライドであります。
 隊員たちはこうした真摯な気持ちを持って、しっかりとこたえ、彼らの努力をむだにしないためにも、我々国政を担う者は、我が国の防衛について真剣に取り組み、国民の生命財産の保護に万全を期すための体制を構築していかなければなりません。
 最後に、我が国の安全保障、危機管理体制の確立に向けた御覚悟のほどを総理にお伺いしておきたいと存じます。
小泉内閣総理大臣 防衛のみならず、災害等緊急事態に対応する、これはやはり政治の大きな責任でありますので、こういう緊急事態なり有事なりに対しましての法整備というのは、ふだんからきちんとしたものをつくっておかなきゃならないという観点から、私どもは昨年からこの有事関連法案を提出しているわけでありますので、今の御趣旨も踏まえて、今国会におきましても、成立を期すように政府として努力をしていきたいと思います。
萩山委員 この質問の最後になるかもしれませんが、防衛省昇格の問題でありますが、今、有事関連法案と並んで継続審議になっていると思います。我々国会議員の責務であると考えられるような、この防衛庁の省への移行について、有事法制成立後の最優先課題として取り組むことが合意されておるわけであります。
 ここで、防衛庁長官の、省への移行についての、これからの議会を運営していく中で、心構えを聞かせていただきたいと思います。
石破国務大臣 お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、防衛省設置法案というのは、ただいま継続審議になっているところでございます。
 他方、昨年の十二月十三日であったかと思いますけれども、与党三党の幹事長、政調会長の連名によりまして、「国家安全保障体制の一層の強化のため、防衛庁の「省」昇格を最優先課題として取り組むこととする。」このような申し入れを政府に対して賜りました。大変にありがたいことだと思っております。
 要は、これはよく議論になることでございますが、何でこのような重要なことを閣法でやらないんだというふうな御指摘をいただきます。
 しかしながら、これは、行革審の最終報告におきまして、この問題は政治の場で議論をするというような整理がなされました。まさしく国会の場において、政治の場において、防衛庁が内閣府の外局であるということをどのように考えるか、防衛庁長官が主任の大臣でないということをどのように考えるか。あるいは、別に英語に訳したときにどうだということが本質的な問題ではないのかもしれませんけれども、ジャパン・ディフェンス・エージェンシーというふうな言葉に訳します。それをどのように考えるか。エージェンシーというものを英語で引きますと、代理店とか公社とか公団とかいって出てくるわけでございます。これがミニストリー・オブ・ディフェンスでないということはどういうことなのか。そういうことをよく御議論いただきたいと思っております。
 私どもは、与党三党の幹事長、政調会長がそのような申し入れをしていただいたということ、あるいは法案を提出していただいておること、大変にありがたいことだと思っております。どうか、防衛庁の省移行につきまして御議論を賜りまして、一日も早く省移行ができますように、心からお願いを申し上げる次第でございます。
萩山委員 終わりますけれども、総理、各閣僚におかれましては、今ほど重大な時期はございません。我々政治家も一生懸命になって国会運営を乗り切っていきたいと思いますので、どうぞひとつ、体に十分御配慮の上、頑張っていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。
藤井委員長 これにて額賀君、萩山君の質疑は終了いたしました。
 次に、石井啓一君。
石井(啓)委員 おはようございます。公明党の石井啓一でございます。
 私は、本日は、デフレ対策、中小企業対策、雇用対策について質問をさせていただきます。
 まず、デフレ克服策でございますけれども、総理も御発言されましたように、構造改革の推進とともに、デフレ克服というのが最重要課題になっております。デフレというのは一般物価が継続して下落することでございますけれども、我が国では九九年から消費者物価指数が下がり続けて、もう三年以上経過をしております。
 個別の商品とかサービスの価格が下がるということは、これは消費者にとってメリットのあることでございますけれども、物価全体が下落するということは、これは経済に大変な悪影響を及ぼします。同じだけ商品が売れても、売り上げが下がるということでありますから、企業は利益が出ない。したがって、これは従業員のリストラとか、あるいは経営不振が著しい場合は倒産に至る、そうするとさらに消費が冷え込んで物価が下がっていく、こういうことになりまして、ひどい場合には、この物価下落と景気の不振が、低迷が悪循環に、デフレスパイラルという大変な恐慌状態にもなりかねない非常に深刻な事態であるというふうに思っております。
 そこで、デフレを需要と供給の関係から見ますと、供給能力に対して需要が少ない、供給過剰、需要不足というのがデフレの状態でございます。したがって、これを解決する取り組み、アプローチとしましては、供給能力を削減するというアプローチと、需要をふやす、こういうアプローチと両方あるわけでございますけれども、構造改革といいますのは、不良債権処理の加速化に見られますように、効率の悪い企業や事業の部門を整理、淘汰するということで、供給を減らすデフレ克服策に見られがちでございます。
 確かに、過剰供給構造の整理は必要でございますけれども、こればかり強調されますと、倒産や失業の増加が将来不安を増幅させて、投資や消費を冷え込ませる。したがって、この非効率な部門から、本来効率的な部門に受け入れるはずの労働力や資金、これを受け入れるはずの新しい産業や新しい事業も生まれない、こういうことになります。
 一方で、政府は、税制改革とか規制改革とかあるいは社会保障改革とか、需要を、特に民間需要をふやすデフレ克服策にも取り組んでいるわけでございますね。実際、来年度の税制改革では、企業の研究開発や設備投資を促したり、あるいは株の取引や土地の取引を活性化させたり、あるいは生前贈与をやりやすくするということで消費を喚起したり、そういう内容になっておりますし、規制改革、特に構造改革特区では、これまでできなかった事業やサービスをやれるようにするということで、企業に新分野への進出を促す、雇用を拡大する、こういうことを目指しておりますし、また、国民は、老後の不安、将来への不安があることによって消費を手控えて貯蓄に回しているということもございますから、将来とも安全な社会保障制度に改革していくということは、これはひいては安心をもたらして消費を喚起する、こういうことにもなろうかと思います。
 したがって、私は、国民に将来の明るさと希望を提供するためにも、需要をふやす構造改革に積極的に取り組むんだということをぜひアピールをしていただきたい、こういうふうに思っております。
 総理には、デフレ克服についての御決意、また需要を喚起する構造改革への取り組みについて、竹中大臣とあわせてお伺いをいたしたいと存じます。
竹中国務大臣 石井委員御指摘のように、物価の一般的な下落傾向というのは、消費者物価については九九年から続いております。しかし、同時に、いわゆる一般的な国内の指標でありますGDPのデフレーターは、振り返りますと、もう九〇年代の半ばから続いているということで、我々はやはり非常に構造的な、かつ新しいタイプのデフレに今直面しているという深刻な認識が必要であるというふうに思っております。
 その新しいタイプというのは、まさに複合デフレと言うべきか、さまざまな要因が重なっているということであろうかと思います。その点、供給側の要因、需要側の要因、石井委員まさに御指摘をくださいました。
 その意味では、構造改革を通じて経済全般を活性化させる、経済活性化こそがデフレ対策のやはり重要なベースになるというふうに考えております。その意味では、規制緩和、民間でできることは民間に任す、それによって創意工夫した新しい需要が掘り起こされていくということが大変重要でありますし、規制改革を進める意味でも、構造改革特区などは、その意味で大変期待をかけているところでございます。
 同時に、今、需要はあることはあるんだけれどもまだ十分に発掘されていない需要というのが日本には随分たくさんある、この点が実は大変重要であろうかと思っております。その一つとして、文化観光産業などの重要性も、最近、諮問会議では随分議論されておりまして、そのために、それを喚起するための国家戦略を念頭に置いた懇談会の立ち上げ等々も今始まろうとしているところでございます。そういう合わせわざで経済を活性化させる。
 同時に、後ほど委員からも言及があるかもしれませんが、複合的なという意味は、やはり金融的な側面も非常に大きいというふうに考えておかなければいけない。また、海外の要因もあるということも考えていかなければいけない。まさに合わせわざで、総合的な改革を重ねることが必要だというふうに思っております。
石井(啓)委員 ことしから総理はラジオ番組を始められたと、私は失礼して最初の番組は聞いておりませんでしたけれども、そういった機会もぜひ活用していただきながら、国民の皆様にぜひアピールをしていただきたい、わかりやすく御説明をいただきたい、こういうふうに思っております。
 続いて、今竹中大臣から指摘がございました金融政策面でのデフレ克服策でありますけれども、今、日銀は銀行に対して大量の貨幣を供給しております。ゼロ金利政策、量的緩和ということで、いわゆるベースマネー、現金と日銀当座預金を合わせたベースマネーというのは非常に高い伸びでございまして、最近では、前年度対比二〇%程度の伸びということで、日銀は銀行に対してたくさんの貨幣を供給しているわけでありますけれども、銀行からその先に出ていかない。銀行からの企業への貸し出しやあるいは投資というのが広まらないということで、これはマネタリーベースという指標で評価しますけれども、このマネタリーベースの伸びは、対前年比二、三%程度にとどまっている。
 日銀から銀行の間は、ある意味でお金がじゃぶじゃぶの状況だけれども、その先がなかなか出ていかない。やはり世の中にお金が回らないものですから、なかなか景気もよくなっていかない。今、こういう金融の状況かと存じます。
 そこで、銀行がなかなか貸し出しをしない原因の一つとして、不良債権がある。不良債権を大量に抱えているため、銀行は、今、自己資本に余裕がない。したがって、自己資本を必要とするような貸し出しができない。こういうことから、昨年は不良債権処理を加速化してこの問題を早期に解決しよう、それで金融仲介機能を回復しよう、こういうことであったというふうに私は理解をしております。
 したがって、この不良債権処理を速やかにやるということはぜひ必要でありますけれども、ただそれだけで、では不良債権処理をすれば景気活性化をするような資金需要が生まれてくるのかということは、また別の問題でございまして、やはりデフレを克服して資金需要を生むような対策もやらなければいけないということから、不良債権処理とデフレ克服というのを金融面からもやらなければならないということで、今、いわゆるインフレ目標というのが議論をされ始めたわけであります。
 これは、例えば消費者物価の年間の上昇率を一%から三%程度に上げるということを、具体的な物価上昇の目標を設定しまして、一定期間の間に中央銀行がこれを達成するように金融政策を行う、こういうものでございますけれども、インフレといいますと、かつての狂乱物価だとかあるいはバブルを想起するといいますか、誤解をされる向きもありますので、ただ、目指していますのは、デフレでもないインフレでもない、緩やかな物価上昇ということでありますから、私は、インフレ目標と言うんではなくて、むしろ物価安定目標というふうに、こういうふうに言いかえた方がいいと思っておりますけれども、この物価安定目標については、これまで我が国ではとられたことのない政策でございます。したがって、これに対していろいろな疑問あるいは懸念というのが提起をされております。
 代表的なことでいいますと、この物価安定目標を設定することで、物価が下落するんだという予想が変わって物価上昇期待に転換するのかどうか、目標を設定するだけでその物価上昇期待が広まるのかどうか、こういう疑問も提起されております。また、物価が上昇し始めて急激な物価上昇に万が一なったりすると、それを抑制できるのかという心配も言われております。
 また、この目標を達成する手段として、日銀の金融緩和手段でありますけれども、現在では、国債を買い入れすることによって日銀は資金を提供しているわけでありますが、それに加えて、極端な例では、日銀が株とか土地を買ったらどうか、こういう主張もございます。そこまでやって日銀がリスクのある資産をたくさん抱えるようなことになると、これは、日銀の財務の健全性に傷がついて、ひいては、過剰な円安ですとかあるいは急激な金利の上昇、国債の暴落という副作用を招くんではないか、こんな心配も言われております。
 確かにいろいろな疑問や懸念もございますけれども、私は、先ほど申し上げましたように、これ以上デフレを放置して万が一デフレスパイラルに陥るような事態があったら、これはもう大変なことでありますから、これはもう絶対避けなければいけない。そういったことを考えますと、デフレ克服に効果のあると考えられるものはやはり挑戦してみてはどうか、この際、この物価安定目標の導入に向け真剣に検討してはどうか、こういうふうに思っております。
 そこで、前向きにこれを評価した上で二つのことを申し上げたいと思っているんですが、一つは、この物価安定目標政策、とかく政府はデフレ克服の努力を放棄して日銀にやらせるためにこれを導入しようとしているんじゃないかという批判がございます。政府は決してそういうことを考えていらっしゃらないと思うんですね。ですから、私は、政府と日銀がこの物価安定目標を共有してお互いに努力しているんだ、政府もこれまで以上にデフレ克服策に努力するんだ、こういう姿勢をやはりきちんと示すことが重要であるというふうに思っております。
 二つ目には、先ほども若干申し上げましたけれども、具体的な金融緩和手法については、これは日銀の裁量にゆだねるべきであろう。この二点について申し上げたいと思います。
 この物価安定目標の導入について総理のお考えを伺いたいと思いますし、また、私の二つの注文につきまして竹中大臣にお答えをいただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 政府は、日銀の独立性というものを尊重しながらも、協力連携をしていかなきゃならないと思っておりますし、今のデフレ抑制に向けてどういう方法があるか。現に日銀は、ゼロ以上に持っていこうということでいろいろな金融対応策を考えております、また実施しております。
 よくインフレターゲットという言葉が出ますが、私はインフレターゲットという言葉を使ったことはありません。私がこの三十年間というのは、いかにインフレを克服するかということで多くの期間悩んできた一政治家でありますから。日本人にとりましては戦後初めてデフレの経験であります。そういう中で、インフレ時代に設けられた一つのインフレターゲットというのは、現在のインフレ状況をいかに低く抑えるかのインフレターゲットだった。それでもなかなかうまくいかなかった。しかし、気がついてみたら、うまくいき過ぎて今度はデフレになっちゃったわけですけれども。
 そういう中で、今度はデフレで、過ぎたるは及ばざるがごとしということで、今度は、デフレをインフレに上げるというとまた新たな問題が出てきますので、私は、ゼロ以上ということはプラスですから、ゼロ以上にいかに早期にこの物価状況を変えていくかということについては、政府が日銀と一体になって考える必要があると思っております。
竹中国務大臣 石井委員から、今の金融の問題の考え方、非常に的確に御指摘をいただいたというふうに思っております。感謝を申し上げます。
 基本的には、物価の下落というのはすぐれて貨幣的な現象であるということをやはり忘れてはならない。その意味では、どのような形であれ、結果としてやはりマネーサプライがもう少し伸びるような状況をつくる必要があるということだと思います。
 九〇年代を通して日本のマネーサプライの増加率は二%台でありました。マネーサプライのトータルのコントロールを行うのがまさに中央銀行の責任でございますから、この点、政府と一体になって事態を改善していくということは、私はやはりどうしても必要であると思います。
 まず第一に、石井委員御指摘の二つの点、政策目標を共有するということは、私はやはりこれはどうしても必要なことであろうというふうに思います。その意味では、政府には政府の役割がある。例えば、まさに需給ギャップが存在するのであるならば、それをうまくコントロールする、これは政府の役割であると思います。現実にそのような目的も含めて今回の補正予算についてもお願いをしているわけでございます。
 さらに、もう一方で、その政策手段の選択については、これはプロフェッショナル集団としての日本銀行の独立性を尊重しなければいけない。その政策目標の独立性なのか政策手段の独立性なのかという点を明確にしながら、政府と日本銀行の関係についてやはり議論していくことは大変重要であるというふうに思っております。
石井(啓)委員 手をこまねいてデフレを放置する状況にはございませんので、やはり英知を集めて政府と日銀とで真剣にこれは御議論、検討をいただきたいと思っております。
 続きまして、中小企業対策についてお伺いいたしたいと思います。
 十四年度の補正予算では、中小企業対策費として五千億円盛り込まれておりまして、セーフティーネット貸し付けや保証の拡充あるいは売り掛け債権担保保証制度の充実が措置されておりまして、私どもも高く評価をしております。
 特に信用保証制度については十兆円の規模を新たに確保したということで、これは大きな政策ではないかというふうに思っておりますが、この中小企業、特に中小企業への金融対策について、具体的に二つの政策についてお尋ねを申し上げます。
 一つは、新たに資金繰り支援保証制度というのが創設をされます。
 これは現在、保証協会の保証つきの借り入れについて、返済条件の変更ということはできるわけですけれども、今回新たに借りかえまでこれを認めてやろうということでございます。そういたしますと、これは返済期限が延長されて毎月の返済額が下がりますから、これは今返済に苦しんでいる企業にとっては大変な朗報でございますので、ぜひこの場でこの制度の内容を御紹介いただくとともに、これが広く利用されるように柔軟な運用を要望いたしたいと思います。
 二つ目は、中小企業地域再生協議会の創設でございます。
 これは補正と十五年度予算と一体的に執行されて、各都道府県に少なくとも一カ所設置をする、企業再生の専門家を常駐させて、事業再建計画の作成あるいは金融機関のあっせん等も行うということで、今政府は産業再生機構というのをつくろうとしていますけれども、いわば地方版の産業再生機構とも言えるものでありますから、これはぜひ成功させていただきたいと思いますけれども、私は、これはポイントは、特に地方にあって企業再生の腕ききの専門家を確保できるのか、人材確保がいかにできるのかということがこれを成功させるポイントだというふうに思いますので、その点についての取り組みがどうなのか。
 以上、この二点について平沼大臣にお伺いいたしたいと思います。
平沼国務大臣 お答えをさせていただきます。
 まず、資金繰り支援保証制度についてでございますけれども、デフレが現在進行しておりまして、その結果、売上高の減少に伴って、多くの中小企業にとっては既往の借入金、この返済が非常に大きな負担となっていることは御指摘のとおりでございます。このため、保証つき借入金の借りかえでございますとか複数の保証つきの借入金の債務の一本化、これを促進することによりまして、中小企業の皆様方の月々の返済負担を軽減できるように、今お願いをしておりますこの補正予算で借りかえのための保証制度を創設することにいたしました。
 少し詳しく申し上げますと、本制度は、特別保証による既往の借り入れのある事業者については、特別保証による債務をまとめまして、セーフティーネット保証あるいは一般保証の枠内で借りかえや一本化を行うものでございます。また、セーフティーネット保証でございますとか一般保証の既往の借り入れの分がございますこの事業者については、それらの枠内で借りかえ、既往保証つきの借り入れの一本化と、そしてさらに増額保証、これは新規与信、こういいますけれども、これに対応していきたい、こういうふうに思っております。
 今回の補正予算では、本制度の創設でありますとか中小企業のセーフティーネットの拡大策、こういう形で約四千五百億円計上させていただいておりまして、委員御指摘のように、柔軟に速やかにきめ細かく対応できるように私ども努力をしなきゃいかぬと思っております。
 それから、中小企業再生支援協議会の創設についてでございますけれども、我が国経済を再生していくに当たっては中小企業の再生は極めて重要であります。しかし、大企業と違いまして、中小企業は非常に地域性があるし多種多様であります。そういったところから、この産業活力再生法の改正におきまして、各都道府県に、御指摘のように一カ所ずつ中小企業再生支援協議会を設置することにいたしました。そして、地域の金融機関、当然入っていただかなきゃいけませんけれども、また政策金融機関、それから中小企業支援機関などでそういうメンバーを構成しまして、関係者の協力を得て中小企業の再生を支援していかなければならないと思っています。
 したがいまして、御指摘のように、やはり知識がありそして経験があり、そして即戦力のあるそういう人材を確保しなければならないと思っておりまして、私どもとしては、専門家をそれぞれまず二名程度配置いたしまして、一生懸命やっていきたいと思います。
 その場合、各地域の公認会計士の方々、あるいは税理士の方々、あるいは弁護士、それから中小企業診断士、こういった方々に積極的に参画をさせていただいて、そして我が省の経済産業局あるいはそれぞれの地方の自治体、そういったところと総合的に力を合わせてやっていきたい、このように思っております。
石井(啓)委員 せっかくのすばらしい制度でございますので、よく周知して利用されるようによろしくお願いを申し上げたいと思います。
 続いて、公的資金注入行の中小企業向け貸し出しについて質問いたします。
 公的資金注入行は、経営健全化計画において中小企業向けの貸し出しを毎年度増加させるということで目標が設定されているわけでありますが、昨年の十二月に公表されました昨年九月期、十四年度の上半期の実績では、これが大幅に減少しております。目標自体は年度計画ですから、まだ中間段階でありますけれども、例えば、みずほでは五兆五百六十九億円も減っているんですね。三井住友では一兆九千四百八億円と、もう巨額の減少になっております。
 実は、昨年十一月、衆議院の財務金融委員会で四大銀行の社長、頭取をお呼びして参考人質疑をやりました。その折に、不良債権処理の加速化にあわせて中小企業への貸し渋り、貸しはがしが起こるようなことはありませんねというふうに確認をしたところ、それぞれ社長さん、頭取さんは、いや、もう中小企業に対しては積極的に貸し出しをします、全力で取り組みます、こういうふうにおっしゃっていたんです。その足元でそういう貸し出しの減少を行われるということは、これは私は大変残念でなりません。
 金融庁にあっては、経営健全化計画がきちんと履行されるように、これは厳しく監督していただきたいと思います。
 竹中大臣、御答弁をお願いいたします。
竹中国務大臣 委員御指摘のように、十四年の九月期で経営健全化計画で見込んだ中小企業に対する貸付額が、我々がちょっと想像できないような規模で減少したところがございます。これは我々としては、この点はやはり大変重視を、注視をしなければいけない。ともあれ、これは健全化計画で約束したことでありますから、約束したことはやはりきちっと履行していただくというのが筋であろうかと思います。
 もちろん、まだ年度の途中でありますから、そういうことは勘案するにいたしましても、事態を重視いたしまして、銀行法二十四条に基づく報告徴求を我々としても行いました。その答えが実は一月十六日に寄せられております。その回答を今一生懸命精査しております。精査の上で厳正に対応したいというふうに思っております。
石井(啓)委員 では、これはよろしくお願いを申し上げます。
 続いて、中小企業がやむを得ず倒産に至るケースもあるわけでありますけれども、現在は倒産するとなかなか再起できない、こういう状況がございます。私は、再起しやすい仕組み、再挑戦システムというふうに申し上げていますけれども、これをやはりつくることが大切だというふうに思っております。
 現在、中小企業が銀行から融資を受けるときには経営者が個人保証を求められますので、会社が倒産すると経営者の方も自己資産を失ってしまうというケースがほとんどでございます。したがって、なかなか再起するのが難しいというのが現状でございます。再挑戦しやすい環境をつくるために、具体的に二つのことを提案を申し上げたいと思います。
 一つは、破産法における自由財産、差し押さえ禁止財産、これの範囲を大幅に拡充するということでございますが、現行法では、これは一カ月分の生活費二十一万円にとどまっております。例えばアメリカでは、これは一定額以下という制限はあるものの、居住用の住居とその敷地、あるいは自動車、家具、家庭用品というのが自由財産になっておりまして、生活基盤はやはり残すという仕組みになっているんですね。
 私は、こういったことも参考にしながら、ぜひこれは大幅に拡充をしていただきたいと思っています。
 二つ目に、そもそも、金融機関が中小企業の経営者に個人保証を求めるというような融資のあり方を、これはやはり改めるべきではないか。これは、ぜひそういう方策を模索していただきたいというふうに思っておるんですけれども、そもそも、我が国の金融機関は担保主義でありますから、事業やあるいはその経営者の資質を見て、その将来性だとかあるいは確実性だとか、そういうことを審査して融資をするというノウハウを失ってしまっています。そういう融資のあり方を改めるためにも、行く行くは民間金融機関に広げていただきたいと思いますけれども、まずは政府系金融機関から、この個人保証を求めない制度を拡充していただきたいというふうに思っております。
 それぞれ、森山法務大臣、平沼大臣の御答弁をいただきたいと思います。
森山国務大臣 今、中小企業の経営者が倒産した等の場合の問題等に関しまして御質問がございました。
 現在、法務省におきましては、破産法におけるいわゆる自由財産の範囲の問題も含めまして、破産法の全面的な見直しのための検討を行っております。破産法の全面的な見直しに関しましては、昨年秋、破産法等の見直しに関する中間試案というのが取りまとめられまして、公表され、一般及び関係各界に対する意見照会が実施されたところでございます。この中間試案の中でも、自由財産の範囲につきましては、これを拡大する方向で試案が掲げられていると承知しております。
 この自由財産の範囲の問題につきましては、債務者の経済生活の再建を容易にするという観点から、範囲を広げるべきであるという御指摘がございますが、他方で、この範囲を広げ過ぎることによりまして、破産の場合での債権者に対する配当額が減少する等の問題もあるわけでございます。
 法務省といたしましては、この問題につきまして、平成十五年中の法案提出を目途といたしまして進められている破産法等の見直し作業の中で、関係各方面の意見照会の結果等を踏まえながら、引き続き検討していきたいと考えております。
平沼国務大臣 石井委員にお答えをさせていただきます。
 御指摘の点、非常に私は重要なポイントだと思っておりまして、現在は、政府系金融機関の一つである国民生活金融公庫で、小規模事業者に対しまして無担保、無保証、それから本人保証なし、これで融資を行う経営改善貸付制度、これはマル経と言っておりますけれども、大体毎年九万件ぐらいの御利用をいただいておりまして、担保や保証人を準備しにくい事業者、創業者に対して、ビジネスプランを審査して個人保証を徴求することなく融資を行うという新創業融資制度、これを実施しております。これは新創業融資という形で昨年の一月に創設をいたしまして、従来の大体八倍のスピードで利用していただいておりまして、これは非常に私どもさらに拡充をしなきゃいかぬと思っております。
 中小企業は、企業資産とそれから経営者の個人の財産が一体化していることが非常に多いわけでございまして、中小企業向け融資では一般的に個人保証を徴求しているわけですけれども、個人保証を求めない融資制度を拡充していく、この必要性を感じておりますけれども、融資先企業のリスクに見合った保全措置をどのように確保するかということを念頭に置いた上で検討する必要があると思っておりますけれども。
 いずれにいたしましても、日本の場合には、倒産が二度と再び立ち上がれない、こういう状況はやはり克服をして、そして再チャレンジできるようなそういうシステムが私は必要だと思っています。現に、失敗は成功の母という言葉がありますけれども、実は一度倒産をした人の方が事業を継続するそういう力があるというデータも出ておりますので、そういったことも踏まえて積極的にやらなきゃいかぬ、こう思っております。
石井(啓)委員 よろしくお願いいたしたいと思います。
 続いて、いわゆるやみ金融の問題について質問いたします。
 出資法の上限金利、年率二九・二%でありますが、これをはるかに超える高い金利、場合によっては何十倍、何百倍という違法な金利を取っている、あるいは貸金業規制法の登録を受けずに無登録で営業している、こういうやみ金融による被害が多発し、社会問題化しております。
 財務局や都道府県に寄せられた貸金業に関する苦情件数を見てみますと、平成十年度に三万四千三百十三件だったものが、十三年度には四万八千七百七件、十四年度は上半期だけで三万五千六百六十一件ということで、急増しております。やみ金融は、これは違法行為でありますから、まず警察に、このやみ金融に関する取り締まりを厳しく実施していただきたいと思います。
 それから、もう一つは金利の問題。これは、実は三年前に商工ローンの問題で出資法の上限金利を改正いたしました。三年後の見直し規定を設けまして、ことしの六月が期限ですから、その折にまた検討しなければいけないと思っていますけれども、ここでは貸金業への規制強化について申し上げたいと思います。
 具体的に言いますと、貸金業の登録制でございますけれども、今、都道府県への登録料はわずか四万三千円でできるんです。複数の都道府県で営業する場合は財務局へ登録するわけですが、これも八万六千円で済むんですね。ですから、非常に安い額、低い額のため、簡単に登録できる。この登録をしたということで信用させて違法な高金利を取ることがありますし、摘発されてもまたすぐに新しい登録ができるという状況でもございます。したがって、この際、営業保証金制度といったような登録制の規制強化をしてはどうか。
 あるいは、現行法では、登録業者への立ち入り権限はあるんですけれども、無登録業者への立ち入り権限はないんですね。こういった監督強化もやってはどうか。さらに、広告の規制あるいは取り立て行為の規制、こういったことも考えられますし、また、罰則の強化等も検討しなければならないのではないかというふうに思っています。
 取り締まりの強化について谷垣国家公安委員長にお尋ねをしまして、規制強化について竹中大臣にお尋ねをいたします。
谷垣国務大臣 今石井委員がおっしゃいましたように、このやみ金融の取り締まりというのは大変大事な問題だと思っております。
 そこで、実態を申し上げますと、平成十三年中には二百十件、五百十七名、これはいずれも五年前の平成八年の約二倍という検挙数になっております。しかし、その被害実態を見ますと、検挙したものだけでも、貸付人員が約八万人、それから貸付総額は約百八十七億円に及ぶというふうに深刻化がうかがえるところでございまして、いろいろこの業態等に伴いまして検挙の難しさがあるんですが、さらに摘発を強化するよう警察を督励してまいりたいと思います。
竹中国務大臣 このやみ金融の問題、まさに深刻な社会問題化しているというふうな厳しい認識を持っております。
 我々が担当しておりますのは貸金業規制法の範囲でございますけれども、幾つか、その強化についてこういう方向性があるのではないかという御示唆をいただきました。我々も考えておりますのですが、なかなか難しい面もございます。
 営業保証金制度、この営業保証金を上げると。一種のこれは参入の障壁を高くして、それによって安易な参入を拒んではどうかという御指摘であろうかと思います。これはこれで一つの考え方であろうかと思います。しかし同時に、他の例もそうですけれども、参入の障壁を高くすると、ますますそれはやみでやるというようなことをふやしてしまうというような懸念もある。この点はやはり慎重に両面を考えていかなければいけないというふうに思っております。
 無登録業者への立ち入りを可能とする。これは登録制度でございますので、それ以外のところというと、これは捜査当局の話になってくる。重要な点は、これは捜査当局と金融当局での連携を密にして、連係プレーをしていくことである、この点は十分に努力をしたいと思います。
 広告規制でございますが、これは、今の法律の枠組みの中で既に規制がございます。したがって、これは運用の問題であるというふうに思っておりますので、この点は運用をぜひしっかりとやっていきたいというふうに思います。
石井(啓)委員 これは今後、与党内でも検討していきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 もう時間がなくなってきましたので、最後、雇用対策について、若干私の方から触れさせていただきたいと思います。
 今回の補正予算では、雇用対策の強化として五千億円盛り込まれておりますけれども、その中で、雇用保険料の据え置きが措置をされております。
 雇用保険料のうち、労使折半をいたします失業等給付に係る保険料率は、平成十三年の四月に〇・八%から一・二%に引き上げられました。さらに、昨年十月に一・四%に引き上げられています。これは、失業者の増加により失業給付がふえたわけでございますけれども、来年度からこれをさらに一・六%に引き上げる案が、当初政府内で検討されていらっしゃいました。
 私ども、わずか二年の間で保険料率が〇・八から一・六に二倍に上がるのは、これは急激過ぎるのではないか、また、今回は、不良債権処理の加速化という、いわば国策に伴う失業者の増大でありますから、それを事業者や労働者の方に全部ツケを回すのはいかがなものかということで、政府・与党内で粘り強く交渉いたしまして、結果として、今回の補正予算で、早期再就職者支援基金二千五百億円を創設しまして、雇用保険からの給付を軽減させて、保険料率は十五年度、十六年度の二カ年度は一・四%に据え置くということにしたところでございまして、こういったすばらしい内容も含んだ補正予算でございますから、早期に成立を期待いたしまして、質問といたします。
 ありがとうございました。
藤井委員長 これにて石井君の質疑は終了いたしました。
 次に、井上喜一君。
井上(喜)委員 保守新党の井上喜一でございます。
 平成十四年度の補正予算は、中小企業とかあるいは雇用とかあるいは治安、それらに対します言ってみればセーフティーネットというのですか、それに関連した予算が多額に計上されている予算で、そういう特徴があると思いますし、また、大変厳しい財源事情の中でこういったところに資源を配分していったということ、これはそれなりに評価ができるものだというふうに考える次第であります。
 そこで、補正予算に関連いたしまして質問をしたいと思うんです。
 まず、中小企業対策です。
 中小企業対策といいますのは、大体、金融面を中心に対策が進められてきた、こんなふうに思います。確かに、中小企業対策というのは、金融、資金繰りというのは大変大事な問題でありますから、それは当然のことだと思うんですね。したがいまして、この補正予算などを見ましても、セーフティーネット保証を拡充、充実していくとか、あるいは中小企業の信用保険制度、これを充実するとか、あるいは資金繰りの支援保証制度を新しくつくるとか、それなりに対策がとられている、こんなふうに思うんですね。
 私は、金融対策というのは大変重要でありまして、それは充実をしていくというのは当然のことだと思うんでありますが、中小企業の場合、もう一つ大きな問題は、親企業と下請企業の関係、これだというふうに考えております。
 今、大変経営の厳しいときでありますから、親企業の方も下請企業に対していろいろと厳しい条件を出していく、こういうことはあると思うんですね。私は、だから、親企業が大変苦しいから下請の方にも応分の負担といいますか、協力をお願いするということは、これはあることだと思うんでありますけれども、私が最近耳にいたしますのは、大変経営内容がいい、非常な利益を出しているような企業が不当な下請単価を出していくような、そういう例を間々聞くわけでございます。
 問題は、そういった厳しい状況に立たされた場合に、その親企業に対する依存度が余り大きくないところは、それはそれなりに辛抱といいますか、我慢していけるかと思うんでありますが、依存度が非常に高い、例えば六割とか七割とか、場合によっては八〇%以上も特定の企業に依存をしているというような場合は、そういう厳しい単価を出されることによって倒産の憂き目に遭うような、そういう状況に立ち至っていると思うんですね。そういう例も聞くわけであります。
 経済産業省に聞きますと、そういう問題はおれのところの所管じゃないなんというようなことを言うんですよ。私は、平沼大臣にお聞きしたいのは、中小企業の所管大臣として、今私が申し上げましたような事態をどういうぐあいに認識されているのか、また同時に、どういうことをやるべきなのか、そのお考えをお聞きしたいんです。
    〔委員長退席、斉藤(斗)委員長代理着席〕
平沼国務大臣 井上先生にお答えさせていただきます。
 長期の不況が続く中で、中規模、大規模の企業による下請企業いじめが残念ながら生じていることは、御指摘のとおり事実でございます。御承知のように、中小企業というのは我が国経済の大宗を占めておりまして、いわば屋台骨を背負ってくださっているわけですから、そこをそういう形でいじめるということは、私はゆゆしき問題だと思っております。
 これまで経済産業省といたしましては、下請事業者の利益を適切に保護する、こういう観点から、下請代金支払遅延防止法に基づきまして、不適切な親事業者に対して改善指導を行うなど、下請取引の適正化に鋭意努めてきているところでございます。
 具体的に数字を申し上げますと、平成十四年度上期においては、約三万六千の書面審査を実施いたしました。違反の疑いのあった親事業者に対しては、八百件を上回る立入検査をさせていただいて、所要の改善指導を行ったところでございます。
 中小企業者等に対する優越的地位の乱用等に対しましては、これは公正取引委員会が独占禁止法等を迅速かつ適正に運用するように期待をしているところでございますが、御指摘のように、私どもは、中小企業者を所管する立場から、公正取引委員会と連携を密にしながら、そういったことが防げるように努力をしていかなければならない、このように思っております。
井上(喜)委員 私は、よく実態を把握されまして、役所間でキャッチボールをするんじゃなしに、やはり経済産業省としてこれに取り組んでいただきたいんです。我々だったらこう考える、だからこうすべきだというようなことをぜひ出していただきたいと要望しておきたいと思います。
 その次に、雇用対策でありまして、このたびの補正予算におきましても、雇用の方、かなりの予算が計上されております。
 確かに雇用情勢は厳しいですね。失業者が三百三十八万人もある、五・三%の失業率だとか、若年の人たちの失業が多いとか、趨勢的には大変深刻化してきている、そういうことで集約されると思うんですね。
 ということで、この対策、予算の中身を見ましても、非常に広範囲にわたっておりますね。継続的な雇用の促進とかあるいはトライアルな雇用を出していくとか、いろいろなことをやっておられますけれども、中身につきましても、訓練だけではなしに、マッチングの問題とか等々、本当にきめ細かな内容が盛られているわけですね。
 そんな状況だと私は思うのでありまして、私は前々からそれを主張しておりまして、これからも恐らく雇用問題というのは大変深刻になる、だから企画とか立案とか予算のことは中央で、つまり厚生労働省で担当して、あと実施、雇用をあっせんするとか何かは県に移管をする、県が中心になって市町村を活用しながらやる方が私は実態に合うし、これからの雇用問題にもそれの方が対応が易しいんじゃないかと思うんです。
 ともかく、今度ホームレスまで雇用の対策をやろうというわけでしょう。それほどきめ細かくなってきているわけでありますから、ぜひとも、体制、実施は都道府県へという、そこをぜひお考えいただきたいと思うんですが、厚生労働大臣のお考えを伺います。
坂口国務大臣 確かに、雇用情勢が厳しくなってまいりますと、限られたハローワークの職員の中でそれをやるわけでありますから、一人当たりなかなか懇切丁寧にお話を申し上げるということもできなくなってきていることも事実でございます。また、雇用状況、失業状態等を見てみますと、それぞれの地域による特色というものがあることもまた事実でございます。これらのことを考えましたときに、国一本での雇用対策というものも大事でございますが、それだけでは十分に失業者に対応できていかないという現実があることも事実でございます。
 そこで、この国会に法律を出させていただいておりますが、地方自治体におきましてもそうしたハローワーク的なお仕事をしていただけるようにしよう、こういうことで今出させていただいておるところでございます。また、民間におきましてもできるだけそれはお願いをして、そして、地方も民間も、そして国も、一体的にこれを進めていくという形にしなければいけない、そんなふうに思っておるところでございます。御指摘のこと、十分に踏まえてやっていきたいと思います。
    〔斉藤(斗)委員長代理退席、委員長着席〕
井上(喜)委員 総理、この問題は、単に地方分権を進めるということではなしに、雇用問題を実態に即しまして有効に進めていくという、これは私は絶対に必要なことだと思うんですが、総理、どのようにお考えになりますか。
小泉内閣総理大臣 雇用の面におきましては、地域の実情、それぞれ違うと思います。地域にとっても、いかに雇用を図るか、あるいは雇用を確保するか、あるいは失業に対してどのような手を差し伸べるか、それぞれ努力されていると思いますが、そういう点については、地域の実情をどうやって生かすかということに腐心するように、厚生労働省としてもそれぞれ各地域と連携をとりながら、私はやるべきだと思っております。
井上(喜)委員 私はどうも、この雇用の現実の対応はやはり現地に任せていくという方がスムーズに進むし、有効だ、そんなことを考えておりまして、ぜひとも検討をこれからもしていただきたい、こんなふうに思います。
 次に、治安関係ですね。
 最近、治安が非常に悪くなってきたということが言われております。どうも、犯罪件数が非常に多くなるとか、あるいは中国人などの外国人の犯罪が多くなるとか、凶悪化を傾向としているとか、いろいろなことが言われるわけでありますけれども、私はこれは二つの側面から考えることにしまして、まず第一の側面は施設ですね。留置場とか拘置所とか刑務所、これが足りないために、そのことで、例えば留置場がいっぱいだから十分な逮捕もできないんだということが仮にあるとすれば、私はゆゆしい問題だと思うんですね。
 ですから、まず、今私が申し上げました施設ですね。本当に十分なのか。今度の補正予算でも、あるいは次の本予算でもかなりの金額が計上されておりますが、これでもう施設の方は大丈夫なのか。その点を国家公安委員長と法務大臣にお伺いいたしたいと思います。
谷垣国務大臣 治安の問題をお尋ねいただきまして、簡潔にお答えしたいと思うんですが、昭和期、大体百四十万件プラスマイナス二十万件ということで犯罪は推移してまいりました。これは交通事故等の業過を除きます。ところが、昨年は二百八十五万件を超しまして、やや増加率は鈍化しましたけれども、依然として戦後最高を書きかえている状況でございます。
 そこで、いろいろな申し上げたいことはあるんですが、逮捕したときに入れる場所がないじゃないかというお話でございます。
 この件に関しましては、平成十三年中の全国の留置延べ人員が約四百四十四万人日でございます。これは、平成四年と比較すると約二・一倍、全国平均ですと収容率の約八〇%。しかしながら、都市部を中心に収容率が高くて、厳しい状況にあることは事実でございます。
 そこで、逮捕した警察署以外のあきのある留置場に、留置調整と言っておりますが、委託留置をするというようなことをいろいろ工夫しまして、収容力を確保しておりまして、今逮捕しないじゃないかというようなニュアンスも御質問の中にあったと思うんですが、逮捕者も年々増加しているという実情でございます。
 そこで、警察としては、過去十年間で約千三百五十人分の収容力を強化してきたわけですが、今後とも、警察署の新築や増改築時において留置場の施設を図る、あるいは被留置者を収容する専用の施設を建設するといったことで情勢に対応した施設をつくっていく努力をしたい、このように考えております。
森山国務大臣 警察の後で最終的に拘置所とか刑務所とかいうことになるわけでございますが、拘置所や刑務所の施設の中にはまだ大変老朽化しているものもございますので、かねてから改善の措置をいろいろと努力していたところでございますが、近年では、おっしゃるように、犯罪情勢の悪化が背景となりまして被収容者の増加がございまして、多くの施設において収容定員が超えるという状況でございます。定員は全体として六万五千人なんでございますが、現在、収容せざるを得ない人々が六万九千人、七万人近くになっておりますものですから、一〇六%ということで、定員オーバーということでございます。
 そこで、法務省におきましても、このような事態を深刻に受けとめまして、行刑施設の整備について重点的な予算措置を要求いたしまして、これらの過剰収容に対応しているわけでございます。
 平成十四年度の補正予算及び平成十五年度の当初予算案に計上されている刑務所新設や収容棟の増築に係る経費を認めていただくことができますれば、平成十五年度末には相当数の収容定員増が確保できる見通しでございますが、しかしながら、全部でき上がった話でございまして、それまでに何カ月あるいは何年かかかると思いますので、その間にまたふえていくという見込みでございますものですから、今後も努力したいと考えております。
井上(喜)委員 もう一つは、捜査の方法等々、つまり、今のこの体制で、やり方で、こういう犯罪の抑止ができるのかということでありまして、やはり根本的に現行制度を見直していく、例えばおとり捜査なんというようなことをよく言われたりしますが、そういうことについてのお考え、これはもう国家公安委員長だけで結構でございます、時間の関係で、お答えいただきたいと思います。
谷垣国務大臣 今お尋ねのは、組織犯罪とかあるいはテロというのもいろいろ心配が高まってきておりまして、個人中心の、要するに今までの個人の故意過失、場合によっては動機まで明らかにするというような手法でやってまいりましたけれども、それだけでいけるのかどうかというような議論が当然あろうかと思います。ここらについてはまだ結論は出しておりませんが、我々としてはいろいろ研究していかなければならない、こう思っております。
井上(喜)委員 これは総理にお伺いしたいのでありますけれども、犯罪が起こると、ともかく一生懸命やって何とか犯罪を抑えるようにする、これは当然だと思うのでありますけれども、どうも制度として限界があるようなものもあると思うんですよね。確かにおとり捜査の難しいところもあろうと思うのでありますけれども、これは犯罪先進国の例なんかをよく研究して、日本としてもそのやり方について根本的に検討をしていかなくてはいけないと思うんですが、総理はどういうぐあいにお考えですか。
小泉内閣総理大臣 近時、世界一安全な日本という神話が崩れつつあるという、これはいかぬなと。今再び世界一安全な国復活に向けて、各省連携して、捜査体制あるいは法体制を整備していこうということで連携しながら努力しているわけであります。
 そういう中で、今、いろいろな今までにない犯罪形態あるいは不法外国人の滞在等、いろいろな問題も出てきています。そういう面もよく考えながら、安全神話復活に向けて一段の努力をしていきたいと思います。
井上(喜)委員 ちょっとこれは予算と関係ないんですが、昨日、産経新聞に、ソ連の抑留者で病気になった者が、途中、帰されて日本にたどり着くまでにかなりの人が亡くなったという記事が出ておりますけれども、こういう話を聞くんですね。
 シベリア等から帰った人が遺骨を持って帰っている。自分の知り合いといいますか、あるいは亡くなった人の遺骨を持ち帰ってきまして、そのまま放置をされている。あるいは、それをあるところに安置をしまして、無縁のお寺を建てたり慰霊塔を建てたりして法要なんかも行っているところがあると言われているわけですね。例えば和歌山県の有田市なんかはその代表的な例だと言われているのでありますが、そういうところが全国に何カ所かあると思うんですよね。
 ただ、そういう関係者が今高齢化しまして、なかなか法要とか慰霊のそれも行われにくくなってきているというんですが、これをこのまま放置していいのか。私は、どういうことをしたらいいかというのはよくわかりませんが、国として何か対応が考えられるのかどうか、検討していただけるのかどうか、そういうことだけ簡単にお答えいただきたいと思います。
坂口国務大臣 戦没者の慰霊、追悼というのは大変大事なことでございますから、もし今御指摘にありましたようなことがあるとするならば、それはよく検討させていただきまして対応しなければならないというふうに思っております。
 個別な案件もあろうかというふうに思いますが、よく検討させていただくことをお約束したいと思います。
井上(喜)委員 ありがとうございました。終わります。
藤井委員長 これにて井上君の質疑は終了いたしました。
 次に、菅直人君。
菅(直)委員 小泉総理、私が民主党代表に就任して初めての議論をさせていただきます。どうか小泉総理に、はぐらかさないで真正面からお答えをいただきたい。私の方も、経済政策を中心にきちっと対案を用意して、総理に読んでいただけているかどうかわかりませんが、お示しをして議論をしておりますので、そのことをまず冒頭にお願いを申し上げておきます。
 実は、当初は経済政策一本でいく予定でしたが、ちょっと予定を変えて、イラク、北朝鮮の問題について一言ずつ申し上げておきたいと思います。
 私どもは、今のイラク情勢、大変憂慮をしておりますが、特に、国連を中心にした査察が行われている中で、この査察がきちっとした結果が出ない前に、あるいは国連の新たな決議もないままに、米国が一方的にイラクに対する軍事攻撃を行うことは、これは断固反対である、このように考えております。この点についての総理の見解を明確にお述べいただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 まず、イラクにつきましては、イラクが査察を無条件、無制限に受け入れること、積極的に協力すること、これが大事だと思います。国連安保理決議に沿ったこの問題につきまして、今査察を継続中でありますので、これをイラクが誠実に守ること。と同時に、日本としては、国際社会全体の問題として受けとめ、国際社会がこのイラク問題解決に向けて、イラクに対して働きかけていく、これが私は重要であると思っております。
菅(直)委員 最初の最初からはぐらかされましたね。
 私はちゃんと二つの条件を言ったわけです。つまりは、査察の結果を待たないでということを言ったのは、もちろん、査察が途中で中断をイラクの責任でやられた場合は、それも一つの結果です。また、国際社会というのは、国連の新たな決議ということを申し上げました。結局、いずれについても私の質問にははっきり答えられないで、すりかえをされました。
 そこで、次の問題に移ります。(小泉内閣総理大臣「はっきり答えてるんだ、はっきり」と呼ぶ)じゃ、はっきり答えてください。つまり、私が言った二つの条件を満たさないで米国が攻撃することは反対だと私は申し上げました。総理はどうですかと聞いているんです。二つの条件をちゃんと言っているんですからね。
小泉内閣総理大臣 極めてはっきり言っているじゃないですか。今査察の最中だ、仮定の問題について今答えることはない、これは私、はっきりした答弁なんですよ。査察の結果……(菅(直)委員「仮定で答えるんですよ」と呼ぶ)仮定の問題を今答える必要はないというのが私のはっきりした答えなんです。外交なんです。状況を見て、国際社会全体でこの問題に対して対処していく、これがはっきりした答えですよ。(発言する者あり)
藤井委員長 御静粛に願います。
菅(直)委員 査察の結果が出るまでは攻撃には反対だと理解していいんですか。はっきり答えてください、イエスかノーで。
小泉内閣総理大臣 どういう状況になるかは予断を許しませんが、まずイラクがこの査察に積極的に協力して、この安保理決議を無条件、無制限に受け入れること、これを見てから判断しても遅くない、これがはっきりした答えです。
菅(直)委員 はっきりというふうに理解されるかどうかは国民の判断にまちますが、私からすると、相変わらず声だけ大きいだけで、中身ははぐらかしているとしか思えません。
 北朝鮮について申し上げます。
 私たちは、小泉総理が訪朝をされて、そしてその結果、五人の拉致被害者が帰国をすることができたことは率直に評価をいたしております。しかし同時に、総理がピョンヤンで金正日総書記と交わされた平壌宣言というものがある。この中には、北朝鮮が核開発をやらない、こういう約束が事実上盛り込まれていたにもかかわらず、核開発の禁止を盛り込んだNPT条約から離脱をする、脱退をする、そういうことを実際に行動をとったわけであります。ということは、小泉総理と金正日総書記のこの約束はほごにされた、このように受けとめるのが自然かと思いますが、総理はどう受けとめておられますか。
小泉内閣総理大臣 北朝鮮にしては、今、瀬戸際外交とかいろいろな駆け引きもあるでしょう。しかし、日朝平壌宣言が誠実に履行されない限り日朝国交正常化はあり得ないという前提で交渉しております。しかも、今北朝鮮は、いろいろなパイプを通じて、日本のみならず、アメリカともロシアとも、あるいは中国とも韓国とも交渉しているようであります。
 そういう中で、私は、この日朝平壌宣言が誠実に履行されるようにあくまでも努力していくのが日本の立場であります。その中で、一見違反に思えるような発言、言辞を弄する場合もありますが、最終的には、私は、この日朝平壌宣言を守るように、日本としても韓国、アメリカあるいは各国と連携しながら努力していく必要がある。今ほごにされているじゃないかという状況でありますが、そんなに焦らなくていい。気長に、外交というのは慎重に努力する必要がある。
菅(直)委員 私が焦っているんじゃありません、全く。現実に日朝会談は、日朝交渉は中断をされているわけですから、私が何にも焦っているわけではありません。私は、総理自身が北朝鮮に訪問されて、金正日総書記との間でちゃんとサインをされた。サインをされた、ある意味では、国と国との約束が守られていると見るのか守られていないと見るのかという見解を聞いたんです。焦っているか焦っていないかを聞いたんじゃありません。
 その文章の中には、きちんと国際的なルールに沿って、核開発はやらないということが書いてあるはずで、まさに国際的ルールである、最も基本的なルールであるNPT条約から脱退をするというのが、この平壌宣言と全く矛盾どころか反することはだれの目からも明らかじゃないですか。その明らかなものに対して、ほごにされたというふうに見ないんですかと聞いたら、焦る必要はない、判断をしないということですか。はっきり答えてください。
小泉内閣総理大臣 はっきり答えておりますが、この日朝平壌宣言が誠実に履行された暁に国交正常化が成るんですよ。そういう中で、今NPT脱退宣言するとか核開発を計画するとは言っていますが、まだそこまでいっていないんです。そこの点をよく考えなきゃいかぬ。瀬戸際外交とかいろいろな発言、挑発的な発言をします。そういう本音と建前というのをよく見きわめながら、各国との交渉を見きわめながら、いかにあの日朝平壌宣言を履行させるか、この努力が必要なんですよ。
菅(直)委員 私は、今総理が言われたこと自体は別に反対しません。別に、ほごにされたからといって、では一切もうこれから日朝のことは何もしないでいいと私は申し上げているんじゃありません。私が申し上げたのは、総理自身がサインされた文章がほごにされたんじゃないですかということを申し上げているので、相変わらずはぐらかして、いや、交渉をやめるつもりはない。交渉をやめろなんて一言も言っていません。
 ですから、私は、そういう意味では……(発言する者あり)本当、ああ言えばこう言うの上祐のようなことを総理が言われないようにしてください。いいですか。
 この問題も、率直に申し上げて、今度の新しい盧武鉉大統領が誕生して、金大中大統領と同様な、いわゆる太陽政策の継続ということを言っておられます。そして、アメリカに対しても、ある意味では、北風ばかりではなくて、太陽政策をともにとろうということで働きかけをしているというふうに言われ、またそのことが米朝間の対話に場合によってはつながるかもしれないという状況が生まれている。私は、一つの見識として、その盧武鉉次期大統領あるいは現金大中大統領の考え方、行動も、一つの選択として重要な選択だと見ております。
 しかし、総理の対応は全くわかりません。国際社会がどうだとかアメリカがどうだとか言っているだけで、我が国は何をするか。あの協定が、あの宣言が守られなければ国交回復がない、それは当然でしょう。そんなことはわかっています。それに向かってどういう努力をするのか、その前提となる宣言が無視されたんではないか、このことを申し上げているんですが、その前提そのものについて答えをされない。できるんであればしてください。できないんだったらこれ以上聞きません。
小泉内閣総理大臣 はっきり言っているじゃありませんか。対話のルートは閉ざされていないんですよ。日朝平壌宣言を誠実に履行するというのは、これから努力なんですよ、お互い。しかも、韓国、アメリカ、これはお互いが、アメリカも韓国も日本と連携協力していきましょう、そして、日本も韓国、アメリカと協力していきましょうと、一貫しているんです。そして、私は金大中大統領の太陽政策も支持しておりますし、そして、アメリカも韓国も日本と協力していこうと、日本の姿勢も支持しておりますし、お互い協力が必要だ、一貫してこれは変わりません。
菅(直)委員 これ以上この問題に時間を費やすことは避けますが、少なくとも、総理は、平壌宣言が誠実に履行されることの努力をする、それは当然でしょう。現時点で、少なくとも総理が出かけた時点では、北朝鮮はNPT条約に加盟していたんですよ。いいですか。変化がないんだったらわかりますよ。加盟していたのが、離脱するという行動をとって、逆方向を向いているんですよ、その宣言をしていますよ。そういう中で、こんな答弁で、物事が、総理として国民に対する説明責任を果たしているとは、私は、見ている人、聞いている人はだれ一人思わないと思います。
 それでは、次に問題を移します。
 いいですか。総理は、首相になる前後の中で、国民の皆さんに対して三つの公約をされております。首相に就任したら、八月十五日に、いかなる批判があろうとも必ず参拝する。二つ目には、財政健全化の第一歩として、国債発行を三十兆円以下に抑える。三つ目には、ペイオフについて、予定どおりペイオフ解禁を実施します。この三つの約束を国民にされました。
 総理、この三つの約束の中で、一つでも守れた約束がありますか。
小泉内閣総理大臣 誤解していただきたくないんですが、私は、確かにこれは約束はいたしました。しかし、私の最大の国民に対する約束は行財政改革ですから、そういう改革の中でこういうことを言ったのも事実であります。
 靖国神社に対しては、八月十五日に行けなかったのは残念でありますが、それぞれ中国、韓国の立場も考えて、十三日に参拝いたしました。これは、昨年もことしも参拝しましたけれども、菅さんは、靖国神社参拝すらいかぬというんでしょう。そこら辺は、菅さんと私とは全く違います。私は、靖国神社は、総理大臣である小泉純一郎が参拝して悪いと思っていません。しかし、菅さんは、靖国神社、いつでも参拝しちゃいかぬと思うのは菅さんでしょう。そこが私はわかりません。
 また、国債発行枠三十兆円以内。これはなんですか、菅さんが幹事長のとき、民主党は三十兆円枠を法律で縛れと言ったんですよ。私は、これは、経済は生き物だ、状況を見て、大胆かつ柔軟に対応する必要があるから、法律で縛る必要はないと言ったんですよ。それで、状況を見て、大胆かつ柔軟に考えて、発行枠三十兆円以下に抑えるというのをやったんだ。だから、これは、菅さんが、それじゃ、三十兆円以下に守らなきゃいかぬという法律を出した、そのとおりやったらどうなったかという議論をしなきゃいけないんだ。
 これはペイオフの、もう一つ何だっけ……(菅(直)委員「ペイオフ」と呼ぶ)ペイオフね。これは、金融改革をいかに円滑に実施するか。ペイオフ延期と実際の金融改革とどっちが大事か。金融改革を円滑に実施する方が大事だという観点から、これは延期するのが妥当であると、むしろ促進するためにやった措置であります。
菅(直)委員 いいですか、相変わらずはぐらかしていますね。私の意見は幾らでも言いますけれども、私のような意見だけじゃない人もたくさんあるんです。総理にこのことをそのままやってくれと望んでいる人もあるんです。靖国神社にこのとおり参拝してほしいと望んだ人もいるんです。多分、そういう人は、こういう約束をされたから自民党総裁選で総理のことを応援したんじゃないですか。私は応援していませんけれどもね、当たり前ですが。自民党員じゃありませんから。
 国債発行額についても、また、民主党がどう言ったこう言った、いや、それはちゃんと答えましょう。しかし、最初に言い出したのは総理自身じゃないですか。総理は国民に対して約束したんじゃないですか。民主党に対して約束したんじゃないですよ。ペイオフもそうです。この三つとも約束が守られていないという意味ですね、今の答弁は。
小泉内閣総理大臣 今の言うとおりならば、確かに、そのとおりにはやっていないということになれば約束は守られていない。
 しかし、もっと大きなことを考えなきゃいけない、総理大臣として。その大きな問題を処理するためには、この程度の約束を守れなかったというのは大したことではない。(発言する者あり)
藤井委員長 御静粛に願います。
 ちょっと待ってください。活発な議論は結構でございますが、御静粛にお聞きいただきたいと思います。
 菅君。
菅(直)委員 よく国民の皆さんにはわかっていただけたと思いますね、今の答弁で。
 この程度という話ですよ。つまり、総理大臣になる、あるいは自民党総裁になる、そのときの選挙で言うことは、この程度の約束は後になったら幾らでもほごにしてもいいんですよということをみずから認められた。国会での答弁も、この程度の答弁で後で縛られることはない。これから何を聞いても、総理が言うことはこの程度だというふうに皆さん聞くでしょうね。私もそうしましょう。
 これから、一つ一つは申し上げませんが、私は靖国神社に自分自身もお参りしたことはあります。しかし、総理大臣として、国の機関として参拝することは、私はすべきではない。それは、A級戦犯の問題あるいは政教分離の問題で、そういう認識を持っております。
 三十兆については、私は後ほどこの問題はしっかりやりますから、後でゆっくり聞いてください。
 ペイオフについては、結果的には、この一年九カ月の自民党小泉政権あるいはその前の政権がやるべき準備をやらなかったから、ペイオフは実施ができなくなった。私たちが九八年の国会で出した二つの法案をしっかりやっていれば、当然予定どおりペイオフは解禁できました。そういうのが結論です。
 そこで、次のこの問題に移っていきます。
 そこで、今の日本の状況について、一九三〇年代の世界や日本に共通しているんじゃないかという議論があります。ここに「経済論戦は甦る」という、最近よく話題になっている竹森さんの本がありますが、総理はこの本は読まれましたか。竹森さんですよ。
小泉内閣総理大臣 読んでおりません。
菅(直)委員 後で、新しい本を買いましたので……
藤井委員長 ちょっとお待ちください。委員長の指名に基づいて発言を願いたいと思います。
 菅君。
菅(直)委員 後で、もしよろしかったら置いていきますけれども、新しい本をわざわざ買ってまいりましたので。
 この本の中だけではないんですが、この本の中で、小泉総理は不況のときにデフレ政策を強行した当時の井上準之助大蔵大臣あるいはその当時のアメリカのフーバー大統領とよく似ているという指摘があります。私もそう思いますね。総理はそういう指摘に対して、どう思われますか。
小泉内閣総理大臣 私は、民主党が三十兆円枠に法律で縛れというほどかたくなじゃなかったですね。むしろこの状況を、やはり経済情勢を見なきゃいかぬということで、あえて、民主党の主張の国債発行枠三十兆円を守るという法律を出せとまで言ったのを断って、それは経済は生き物だから柔軟に対応する必要があるから、法律で縛る必要はないと言ったところを見れば、むしろ民主党以上に経済をよく見ているというあらわれじゃないでしょうか。
 しかも、当時の恐慌と違います。当時の恐慌状態は、物価が三〇%下がっているんですよ。今何%ですか。三〇%物価が下がっているんですよ、フーバーのときには。しかも、そのとき社会保障制度とかそういう点は、今に比べればはるかに劣っていました。GDPだって三割近く落ちたんでしょう。そういうことからいえば、今の状況と全く違います。
菅(直)委員 この認識、こんな程度の認識を持っている総理のもとで政権運営がされたら、本当に大恐慌になりますね。そういうおそれがあるということで議論していると思ったら、全く状況が違うと。何が全く違うんですか。
 これを見てください。これは、総理になってから、二〇〇一年四月から今日まで、株価はかつての四万円近いところからずっと下がってきて一万三千円台だった、森内閣が退陣するときに。それが何と八千六百円台。百五十兆円の時価総額がこの間で失われました。銀行の貸し出しは、やれやれと言っているけれども、二十五兆円減りました。企業倒産は同じ高い水準、バブル後の最悪の水準が続いています。完全失業率は四・七から五・三に上がっています、来年度は五・六の見通しだそうです。物価上昇率は、上昇じゃなくて、デフレがとまっていません。名目成長率も下がっています。
 まさにデフレが加速しているんですよ。このままいったら一九三〇年代の日本やドイツやアメリカのようになるんじゃないですかという心配を多くの人がしているんですよ。全く違うんですか、今の状況と当時は。
小泉内閣総理大臣 全く違います。
 数字でも、さっきも言いましたように、一九三〇年代、それはもう国際社会の協力体制も今みたいになっていませんし、そして、今でこそ確かに物価は一・五%下がっています。当時は一・五%どころじゃない、一けた違いますから。GDPも、今大体横ばいですけれども、GDPも当時は三割下がったんですよ。なおかつ、敵同士だったアメリカと日本と、あるいはドイツ、フランス、EU、国際社会の協調体制が今できています。そういう状況と現に今の状況と全く同じだという認識の方が私はあきれています。
菅(直)委員 まあ、本当にあきれますね。
 一九三〇年代だって、初めからアメリカのGDPが一挙に十分の一になったわけではなくて、いろいろな段階があってだんだん深刻になっていくわけですよ。日本だってそう、ドイツだってそうです。そして生まれてきたのは、ドイツでは、まさにデフレ克服をうたった内需拡大型のヒトラーが出てきたんですよ。そしてアメリカでは、フーバー大統領にかわって、ニューディール政策のルーズベルトが出てきたわけですよ。
 そういう意味で、日本も気をつけなければ、当時一九三〇年代のデフレ対策に失敗した日本は、膨張主義、拡大主義をとる軍部が台頭してきたわけですよ。そういう方向性に対して危機感を持っているのは、これは私だけじゃない。それなのに総理は、いや全く違いますと。のうてんきとはこのことをいうんじゃないでしょうかね。
 そこで、平成十四年の補正予算について、本題ですから、申し上げたいと思います。
 私は、この補正予算の中で最も重視すべき問題は何か。五兆円の国債の増額ではありません、二・五兆円の税収の減です。
 このグラフを見てください。
 小泉さんが総理になった平成十三年の当初予算、これは森内閣でつくられました。ここに数字は入っていませんが、当時の税収は五十兆七千億、当初予算の国債発行は二十八兆三千億、国債が大体税収の半分強でした。それが、総理がつくられた補正予算、確かに三十兆に格好だけはとどめました、実際はNTTの償還を延ばしたんですが。そして税収は四十九兆六千億と下がりました。そして平成十四年度の当初予算、もちろん小泉政権です。税収は四十六兆八千億に下がり、国債は当初では三十兆にとどめました。そして今回、税収が二兆五千億下がったんです、四十四兆三千億。そして国債が、五兆発行しましたから、三十五兆円。来年度の予算。税収が四十一兆八千億、そして国債が三十六・四兆、すき間は五兆円しかありません。
 ということは、ことしと同じように、もし来年の今ごろに、また税収が、四十一兆八千億あると思ったけれども二兆五千億足りません、二兆五千億は穴埋めのために国債を発行しますといったら、どうなるんでしょうか。税収から二兆五千億引いて、国債発行高から二兆五千億足してみてください、ちょうどともに三十九兆円になるじゃないですか。いよいよことしじゅうには税収と国債発行額が場合によっては一致してしまう、来年以降クロスしてしまう。この傾向を見てください、このグラフの傾向を。
 この二兆五千億の減額、この十数兆落ちた中で、制度的な減税はたしか一兆五千億程度で、他はいわゆる税収減です。つまりは、企業が黒字から赤字に転化し、個人の所得が下がってきた、まさに自民党失政、そしてこの期間でいえば小泉経済無策、小泉失政の結果が二兆五千億の歳入欠陥を招いたんじゃないですか、総理いかがですか。
小泉内閣総理大臣 これは、税収の見通しが確かに違ってくるときはあります。今の指摘の点につきましては、私は重要だと思っていますし、だからこそ、この不景気に借金してもっと公共事業やれということに対して、私はそうでもないと言っているんです。
 今、多くの方は、早くデフレを阻止しろ、もっと景気をよくしろ、改革より景気だ、もっと国債発行してどんどん事業をやれ、需要が足りないと言っている。しかし、財政規律というものを考えなさいということを私はやっているんですから、この表についての危機感というのはある面においては共有していると思っております。
菅(直)委員 いいですか、相変わらずごまかしていますね。税収見通しが誤ることはしょっちゅうある、私はそんなことは聞いていません。税収見通しが誤ったその原因が、つまりは、四十六兆八千億入るはずが四十四兆三千億しか入らないという税収見積もりが誤った原因が、小泉政権における経済政策の失敗、無策にあるんではないですかと。
 一般の評論家みたいなことを言わないでください、あなたが総理大臣なんですから。この二兆五千億減った原因はどこにあるのかと言っているんです。天気とは違います。天気なら、それは天気予報が間違ったということを言うかもしれない。総理大臣なんですからね。はっきり答えてください。
竹中国務大臣 税収の見積もりその他の詳細については財務省の方からも答えがあるかもしれませんが、マクロ的な点をぜひ確認させていただきたいと思います。
 私どもは、今年度の成長率、当初見込み、実質でゼロ%というふうな見込みを立てておりました。その中で、実質が、現実にはまだ年度は終わっておりませんけれども、〇・九%程度の実績見込みということでありますから、実質成長率そのものはむしろ予想より高まっているということになります。
 ただ、御指摘のとおり、名目成長率については、物価下落が予想より大きかったということは事実でございます。物価下落、当初、マイナスの一%程度を見込んでおりましたのですが、実際はマイナスの一・五%ぐらいになる、その分デフレが予想より深刻であったというのは見込みどおりでございます。
 ただし、重要な点は、それでも名目成長率の見込みは、実は当初の予想よりも実績見込みの方が高いということであります。これは、マイナス〇・九%の見込みであったのがマイナス〇・六ぐらいでありますから、したがって、こういうことです、名目の成長率を見ても決して読み方を誤っているわけではないということです。(発言する者あり)解説を求められているので解説をさせていただいているわけでございますけれども、重要な点は、名目成長率と税収の間に今まで安定的な関係があったんだけれども、どうもそれが失われたようだということなのだと思います。
 ここは、まさに企業の収益構造が大幅に変わっている、まさにそこは構造転換が起きているということがこういう形で出現しているのだと思いますが、これは、ぜひ分けていただきたいのは、マクロの経済政策運営そのものは実は予想ないしは予想を少し上回っている、しかし、それを超えるような収益構造の転換が起こっている中で、特に法人税を中心に予想より大きな低下があった、これが現状であろうかと思っております。
菅(直)委員 竹中さんにこういう言い方をするのはちょっときついかもしれませんが、やはり大学に戻られたらどうですか。つまりは、財政運営をやっている、経済運営をやっている責任大臣の言葉とは思えない。つまりは、全部解説じゃないですか、実勢がどうで、名目がどうで。
 私が言っているのは、そうなったことを含めて総理大臣の責任じゃないですかと言っているんですよ。経済の構造が転換し始めたのは、別にきのうきょうの話じゃないでしょう。名目の成長率が落ちたのも予想が間違ったからでしょう。だから、なぜ間違ったのかと言っているんですよ。つまりは、デフレに対して的確な対応ができなかったから、まさにデフレが進行し、そしていろいろな収益が下がって、そして税収が下がった。
 いいですか。総理は、しきりに財政規律で、財政規律のために国債を抑えた抑えたと言われます。確かに当初予算は三十兆ですよ。しかし、もし税収がそのままの予定であったら、少なくとも二兆五千億の積み増しは要らなかったんですよ。つまり、三十兆で抑えたと言うけれども、抑えていないんですよ。二兆五千億減ったんですから、収入が。
 極端に言えば、財政運営がよくて三十兆よりちょっぴり、もしかしたら三十一兆出したとしても、税収が二兆五千億減らないで、逆に一兆円ぐらい税収がふえていたら、一兆ふやしたけれども、それだけ償還にすぐ充てて三十兆に戻しますよとできたかもしれない。
 つまりは、あなたは、主観的には財政規律のために緊縮的な予算を組んで三十兆に抑えたつもりだけれども、客観的には大膨張の三十五兆円にして、来年は三十六兆円にして、来年の終わりには下手をしたら三十九兆円で税収と一緒になるんじゃないですか。そういう意味で、小泉政権の経済政策は無策であり、失敗ではないですかということを申し上げているんです。
 この税収の変化を見てください。これですよ、平成十三年の当初から十兆円下がっているんですよ。十兆円、来年の当初予算までで。この十兆円の下がり方について責任を感じないんですか。
小泉内閣総理大臣 いいことを言っていただいた。
 だから、私は、緊縮財政といって私を批判している人はどうかしていると言っているんです。目いっぱいの財政対策は打っている。だから、私は、民主党や菅さんに緊縮財政なんて批判されるいわれはないと思っているんです。むしろ、これから経済の情勢を見ながら、こういう状況に、どうやってデフレを抑制していくかということで、財政政策としてもう目いっぱい、三十兆円以上国債を発行しているじゃないですか。
 そういう中でいかに改革をやっていくかということでありますので、私は、この改革の面におきましては、もろもろの改革があります。それは、金融改革とか、あるいは規制改革とか税制改革、さらに歳出の改革、いろいろあります、行財政改革。それはすぐ成果が出るものじゃありません。だからこそ、就任以来、多少痛みに耐えてあすをよくしようということで今頑張っているんですから。こういう状況の苦しさは、ある程度乗り越えなければならない苦しさだと思っております。
 そして、将来の展望を開くために今いろいろな改革を進めているということを御理解いただきたいと思います。
菅(直)委員 今の答弁をよく後で見てください。私は三十兆以上も国債出したんですよと自慢されたですね、今。
 こんな議論ができるんですか。先ほどは三十兆で守ろうとしたけれどもと言った、それが今度は三十兆を超したことを自慢にする総理。こんなことを言っていて、一体、経済議論ができるんですか。(小泉内閣総理大臣「そっちの方が立場がはっきりしないだろう、枠を取っ払えと……」と呼ぶ)
藤井委員長 御静粛に、御静粛に。
菅(直)委員 それでは、ちゃんと言いますから、ちょっと黙って聞いていてください、総理。
 まず、私の方から、そこで、民主党の考え方をきちんと今から出しますから、もしあれでしたら文書も全部できていますが。今月の十八日の民主党大会で、私、代表としてのあいさつをいたしました。そのうちの、時間でいえば三分の二は、私の考える経済再生プランというものを文書で、文書というか、言葉でしゃべったものを今文書でお届けしております。
 その中で、まず私は、全体のあいさつの中でも申し上げたんですが、昨年暮れ、大阪城公園に出かけてまいりました。大坂の方はよく御存じですが、ホームレスの方が一番集まっておられるところであります。そして同時に、近くの釜ケ崎にも出かけました。ここはドヤ街ということで有名なところですが、これだけ景気が悪いからドヤ街は大変人が多いんじゃないかと思いましたら、意外と少ないんですね。泊まっている人が、キャパシティーに対して半分ぐらいしか泊まっていない。なぜなんですかと聞いたら、いや菅さん、一泊千二百円の宿泊料が払えるような日雇いの仕事がないから路上や公園でテントを張って寝ているんです、そういう話でした。
 まじめなという言い方も変ですが、まじめなホームレスの人は毎日アルミ缶を集めて、三百五十ccが一個一円ぐらいだそうです、多い人は千個ぐらい集めて、いろいろNPOの人たちが炊き出しをしている、そういう炊き出しで食事をとり、若干の現金収入でテントで暮らしておられます。(発言する者あり)何ですか。これが雇用が失われたときの実態ですよ。
 つまり、私も、三百五十万人の失業とか、そういう数は知っていました。しかし、本当に雇用が失われるということは、ぎりぎり命が失われかねない、そして人間としての尊厳が失われかねない、そういう事態なんです。
 私は、小泉総理の言う経済というのは、経済の言葉の意味を知らないんじゃないかと。もともと経国済民で、国民の生活をいかに安定させるかが経済であって、数字をどうするかが経済の目的じゃありません。そういう意味では、数字が目的ではなくて、そういうホームレスで生活せざるを得ないような人をいかにしたら安定した生活に戻せるかということが問題である。
 その提案の中の具体的な七項目の中にも、私は、雇用誘発効果の高い事業への予算の重点配分をすべきだということを申し上げているんです。
 例えば、保育園やグループホームや、場合によっては、治安の悪化の中では、治安を確保するための警察官、こういったものの増員など、私は、雇用誘発効果が高くて、本当に国民が必要としているところに重点的に配分をすべきだ。
 同じ公共事業でも、コンクリートの塊のダムをつくるよりも山を……(発言する者あり)国土交通大臣、やじを飛ばすんだったら、もうちょっと大きな声で飛ばしてください。川辺川に一度も足を運ばない人にそんなやじを飛ばす権利はありませんからね。いいですか。(発言する者あり)
藤井委員長 ちょっとお待ちください。
 閣僚の皆さん方に申し上げます。
 不規則発言は慎んでいただきたいと思います。この委員会の運営の責任者は私でございますから、議事整理権も。よく冷静に、お互いに活発な議論は結構ですが、そういった不規則発言はそれぞれ御注意していただきたいと思います。
 菅君。
菅(直)委員 公共事業でそういったコンクリートの塊でつくるよりも、私も五木村に行ってまいりました。あの村には二万五千ヘクタールの山があるそうです。その山の保全のためにはたくさんの人が、もしお金があれば、仕事でやることができます。こういうことに重点を置くべきではないか、こういうことを私の提案の中に盛り込んであります。
 そこで、現在のこの日本経済の行き詰まりの最大の原因、私は三点を挙げております。
 第一点は、税金の使い方が大きく間違っている。第二点は、物からサービスといいましょうか、価値観の変化に対応できていない。第三点は、少子高齢化社会に対応できていない。この三点を挙げておりますが、まず第一点のことから申し上げていきたいと思います。
 この間、小泉総理、私も与党を経験しました。長い間どういう議論をしてきたか。いや、景気が悪いから景気刺激のために積極予算を組みましょう、いやいや、財政規律のためには緊縮予算を組みましょう。常に、予算規模とか国債発行の規模の議論は活発にやってきました。しかし、その中身については、いろいろ表は言うけれども、実際は下からの積み上げで、結局はお役人任せ、族議員任せで、中身はほとんど変わっていない。
 例えば、一つのわかりやすい例でいいますと、私が高校時代に東京―大阪の新幹線ができました。ちょっとそれは数字が間違っていますが、三千五百億円ぐらいかかりました。これは、私は、国民生活にとっても大変役に立ったし、日本の経済にとっても大変プラスの事業だったと思います。つまりは、税収増につながったんだと思うんですね。それに対して、長崎県にある諫早湾の干拓事業二千五百億円。これができたからといって日本の農業にプラスになるとは思えない。
 そういった意味で、全く投資効果もなければ国民生活にもプラスにならないものに、この二千五百億円だけじゃありません、それこそ川辺川ダムや、あるいは裏口入学で何十億というお金を取っている私立大学に補助金を出してみたり、外国から輸入した肉に国内産だといって補助金を出してみたり、いろいろなものを考えると、私は、毎年十兆円、いや、特別会計などを含めれば二十兆円近いお金が、本来国民のために使われる目的とは違って、政治家のピンはね用あるいはお役人の天下り用、それを優先して使われてきた、税金の使い方が誤ってきた、こう思います。
 そこで、昨年の一月二十四日の予算委員会で、私が総理にこのことについて、歳出の質の改善ということを問いただしましたら、こう答えられましたね、総理。覚えていますか。公共事業については私は地元と関係大臣でよく調整してくれと言っておられますね。この考えは変わっていませんか。
小泉内閣総理大臣 全体の枠としては政府で決めますが、具体的な個別事業については、地元と関係大臣、よく相談する必要がある、そのとおりであります。
菅(直)委員 それでは、諫早湾については自民党長崎県連と相談されたわけですね。金子知事と相談されたわけですね。
小泉内閣総理大臣 私は直接諫早湾の問題については口出ししておりませんが、地元とよく調整すべきだと。
 現に、菅さんは諫早湾干拓事業に反対でありますが、民主党は推進事業に賛成しているじゃないですか。そこまで言うんだったら、去年、金子知事が選挙で、地元の民主党議員は金子さんを推薦しましたよ、応援しましたよ。どっちが本当なんですか、民主党。民主党は、地元では干拓事業は必要だと言って、その必要論者の金子さんを応援して、国会ではまた逆のことを言う。全くわからない。理解に苦しみますよ。
菅(直)委員 総理も本当に野党の党首にしたいですね。野党の党首としては最高の質問ですよね。
 私は、少なくとも政権を担当している総理大臣に、皆さんが予算案を出しているその総理に質問しているんですよ。
 総理に対して、いいですか、話をもとに戻しますよ。長崎県連と相談するのは当然でしょうと言われました。よく相談されたんでしょう。いいですか。長崎県連の自民党幹事長が何で逮捕されたか知っていますか。金子知事の選挙に関連して、選挙法百九十九条の特定寄附を強引に集めた、受け取った、そういう容疑で逮捕されたんですよ。総理は総裁でしょう。これに対して、山崎幹事長は、党の中でよく調査をするというような趣旨のことをテレビで述べておられます。
 総裁である総理に聞きます。自由民主党としてこの問題をきちんと調査されましたか。されたとしたら、どういう結果でしたか。まさに今、公共事業の問題で地元と相談すると。その相談で献金がふえてくる。ああ、やはりそれでよかったという相談だったんですか。いかがですか。
小泉内閣総理大臣 今、長崎県連のことについては捜査が入っておりますので、捜査当局の状況を見守りたいと思っております。
菅(直)委員 長崎県連の当時の責任者、会長はだれですか、総裁。
 では、知っておられないのだったら、私が調べた限りでは、虎島さんですね、その前が久間さんですね。
 ぜひ聞こうじゃありませんか、この人たちに。県連の責任者でしょう。まさに皆さんが地元とよく相談される一番の対象は、県連の責任者であったり、県から来ている代議士が一番多いんじゃないですか。そして、この百九十九条に基づく特定寄附のあり方についても、逮捕されたのが幹事長ということは、その上に県連会長がいたはずです。どうですか。この人たちを国会に参考人でお招きをして、きちっと、どういう形でお金を集めたのか。
 これから県知事選があちらこちらで行われます。全国で同じようなことがやられているんじゃないかと多くの人は疑っています。自民党のやり方が長崎県だけとはとても思えない、どういうことをやっているんですか。それを明らかにすることで、こういった、つまりは公共事業の中身がいいか悪いかを地元と相談する、一見当たり前なんですけれども、その地元がゼネコンから金を取って、官僚は天下りをしている、そこに、この予算の支出がねじ曲がって、間違っている原因があるわけですから。これは単に二千五百億円のこの事業だけではありません、ありとあらゆるところにあるんですから。
 総理、どうですか、そういう人たちを参考人として呼ぶことについてどうお考えですか。
小泉内閣総理大臣 これは、今捜査が入っている段階で、私は何とも言えませんが、どんな事業にせよ、公共事業は、地元と相談するというのは当然じゃないですか。私は、どんな地元、全部知っているとか、ここは知っている、あれも知っているとは言いませんよ。公共事業の個別の事業について一々総理大臣が口を出して、どうなんですか。地元と相談する、地元の県なり公共団体、もし国の関係のある事業だったら担当大臣、それを相談するのは当然だ。相談して、これが妥当なものであるか、適正なものであるかという問題が出てきて、これは国政全体の問題である、それで、国会で議論が始まれば、それは意見を申しますが、一般的に言って、地元と相談するのは当然だ。
 今の事案につきましては、捜査当局が捜査中でありますので差し控えますが、国会にだれを呼ぶかれを呼ぶというのは、委員会で相談していただきたいと思います。
菅(直)委員 地元と相談すること全部を私は否定しておりません。そうではなくて、その地元が、特定寄附を集めている幹事長であったり、それで応援してもらった知事であったりするという、その問題についてどう考えているかと聞いているんですが、総理はどうも自分の都合の悪い質問はけろっと忘れられるようですね。
 そこで、委員長に、この問題について……(発言する者あり)捜査中であるとかといったって、現実に、それに責任者である、これは党がやったんですからね、自民党が。自民党は余りでかいことを言う資格はないんですよ。自分たちの党の機関がやったんですよ、党の機関が。県連の幹事長がやったことについて県連の会長がここで釈明するのは当たり前じゃないですか。予算委員会で取り上げてください、委員長。
藤井委員長 理事会において協議いたします。
菅(直)委員 そこで、もう一点、この根本的な解決方法を、私のこの提案の中の具体策の五番目と七番目に申し上げてあります。
 簡単に言えば、個別事業に対して自治体に補助金を出す、直轄事業でお金を出すというやり方をやめたらどうか。先日も長野の田中知事と話をしましたけれども、たしか六百億円程度いろいろな補助金を返却しているけれども、今の仕組みだと、それは返却だけで、県が自由に使えるお金には残念ながらならない。私どもは、そういう個別事業の個別的な補助金を全廃して、そしてそれを包括補助金、将来は財源そのものを権限とともに県や市に移していく、このことを提案し、本予算についてはそういう考え方に沿った対案を出そうと今準備をしていただいています。
 同時に、この七番目に、官僚主導の予算編成から閣僚主導の予算編成へということを書いておきました。私も厚生大臣をやったからよく知っています、大体何%引き上げるか引き下げるかしか書いていません、今の説明書には。基本的には、各部局から、各省から上がってきたものを、それを大蔵省、今の財務省の主計が調整して、そして原案をつくって、最後の場面では、お役人に拍手をされて、皆さんも出たことありませんか、復活折衝とかいうものに。私が役所の、税金を一つでもたくさん、むだでもいいから使わせるようにしてみせますといって拍手で送られて復活折衝をやる。お役人の仕立てた猿芝居に乗っているだけじゃないですか。
 少なくとも、イギリスの予算の編成は、閣内に予算の小委員会をつくって、閣僚が中心になって、来年度の予算総額をまず決めます。各役所の配分は、まだ最初は決めません。そして、その次に各役所の配分を決め、そして具体的なものにおろしていく、当たり前のことです。
 この二つの改革についての総理の見解を聞きます。
小泉内閣総理大臣 一般的に言って、地方に税源なり財源を移していく、最初の、前半の部分で菅さんが指摘された点、これについては私も賛成であります。そういう方向で、補助金と交付税と税源、財源、これを一体的に考えようということで、その方向で、三位一体で改革の芽を出していこうということで、今、実現を目指して検討を進めているところであります。
 と同時に、イギリスとは違いますが、現在、日本におきましては、経済財政諮問会議というのがありまして、これは小泉内閣になってからできるだけ活用しているようにしておりますが、大枠はやはりこの経済財政諮問会議で決めて、そして、あとは自民党なり与党と相談していく、各役所と相談していくという方法をとっております。
 これは、余りやるとまた独断専行と言われますし、党に相談すると丸投げと言われますから、どっちをやっても批判されますけれども、日本は日本的な方法がありますが、いずれにしても、財政状況厳しい中、あれもやってあげます、これをやってあげますという状況ではありませんので、大方針というのはやはり政治の主導で決めて、あと、個別の問題につきましては、いろいろな専門家なり識者なり党なりと相談していく方法がいいのではないかと思っております。
菅(直)委員 経済財政諮問会議がそういう意図でつくられたということは、私もそうだろうと思っています。しかし現実は、結局、第二の主計局になるのかならないのか、あるいはお役人がそこにまた、じゃ、あっちでだめならこっちで言うのか。
 今、政治主導と言われましたが、これは間違いです、言葉が。官僚主導から閣僚主導に変えられるかどうか。今だって政治主導かもしれません。族議員と官僚が中心という意味の政治主導ですよ。自民党にはそういう人たちがたくさんいるじゃないですか。まさに政治主導ですよ。族議員ばかりじゃないですか。
 ですから、そういう政治主導ではだめだ、官僚主導、族議員主導ではだめだ、そういう意味で、内閣が、閣僚がきちっと責任を持つべきではないかということを申し上げているので、どうしてもできないんだったら、我が民主党が政権をとったときにやってみせますから、そのときは応援をしてください。
 そこで、そろそろ時間も少なくなりましたので、私は、経済の今の行き詰まりのあとの二つの原因について少し触れておきたいと思います。
 二つ目は、やはり日本の社会が、大量生産、大量消費、そして、物を持つことに喜びを感じる時代から、それの充足がかなりのレベルまで達しましたから、これからは、もっと充実した人生というか時間を過ごす、そのためのサービスを中心とした、そういうところに私はニーズがあるんではないか。
 それは、もちろん、ユニクロで中国と競争することもあるかもしれないけれども、どちらかといえば、介護とか、あるいはいろいろな安心につながるものは国際競争とは若干違う分野でありまして、その分野のニーズをきちっと引き出すには、残念ながら、デパートやスーパーに行ったら、老後の安心福袋というのは売っていません、きちんと介護保険制度とかそういう制度をつくらなきゃいけない。制度をつくることによって、ニーズがちゃんと顕在化し、それに対してNPOなどがサービスを供給するシステムができるわけです。
 また、一つだけ住宅というものについて申し上げなければいけない。
 日本の住宅というのは、耐久消費財扱いですね、二十年から三十年で。少なくとも社会的インフラという認識がほとんどない。私がかつてシンガポールに行ったときに、七割の人がHDBと言われる公的住宅に九十九年リースで住んでおられました。つまり、住宅というのは社会的インフラなんです。
 そういう意味で、公共事業に金を使うよりは、公的賃貸住宅あるいは私的賃貸住宅で、例えばバリアフリーとか、ある一定以上の広さを持たせること、扇さんも御存じでしょう、特定優良賃貸住宅とかいろいろあります。そういうものにもっと、それこそ五兆とかそういうお金を注ぐことによって、百年間はもつような優良な賃貸住宅をつくっていく、そうすることが実は豊かな時間を過ごすことになる。
 さらには、坂口さん、在宅介護とか在宅看護。人生の終わりを、私たちの仲間の今井さんが亡くなられるときに、最後は自宅で亡くなられましたけれども、今、なかなか自宅で亡くなることはできません。そういう条件整備は私は住宅で、これは物とはちょっと違う。そういう意味で、充実した時間というものが一つのキーワードになる。
 三番目には、高齢化社会です。私も団塊の世代の入り口ですから、そろそろ同世代が現役からリタイアしている人もいます。
 人生五十年から人生八十年に変わったんですが、今の社会は人生五十年のときのままの仕組みで、あとの三十年に対しての準備がない。だから、多少の貯蓄があれば、何とかそれは使わないで大事に節約していこう、余り外へ出るとお金がかかるから余り外へ出ないでおこう、私は、このことが日本の経済の沈滞を招いている相当の原因になっている。
 今、NPOの中でも、いろいろな経験を持った人がそういう活動に出ている。NPO税制、私どもの方の河村たかしさんがよく言われますが、このことは単に税制上の問題だけではない。そういう高齢者が活発に活動できる分野をつくることにもなりますし、また、私は、今の空き教室のたくさんある中で、学校をそういう高齢者の学びの場に活用することも十分あるのではないか。このことも私の提案の中に入れておきました。
 どうか、私が民主党の代表として経済再生に対する基本的な考え方と具体的な七項目の提案を提示いたしましたが、総理の感想をお聞きいたしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 今、菅さんが言われました良質な賃貸住宅、あるいは新しい緑の雇用とか、さらにはNPOの税制、こういう問題について、十四年度補正予算また十五年度予算におきましても小泉内閣として手当てしておりますので、やはり民主党、菅さんとも共通した面は随分あるなと思いながら聞いておりまして、いい提案はこれからも小泉内閣としてどんどん受け入れていきたいと思っております。
菅(直)委員 時間ですので終わりますが、我が党は、この補正予算に対しても、野党四党で政府に対する組み替え要求を既に提案をしております。また、本予算に対しても組み替えの、これは動議の形になると思いますが、出したいと思っております。
 どうかこれは国民の皆さんにも、民主党、野党がきちっとした政策を持って小泉政権の経済無策に対抗しているということを御理解いただきたいということを申し上げて、私の質問を終わります。
 どうもありがとうございました。
藤井委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十一時五十四分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時開議
藤井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。
 この際、仙谷由人君から関連質疑の申し出があります。菅君の持ち時間の範囲内でこれを許します。仙谷由人君。
仙谷委員 民主党の仙谷でございます。
 先ほど来の我が菅代表と小泉首相の応答を拝聴いたしておりまして、やはり総理、あの種の御発言、態度ではまずいんじゃないかという気がしてならないわけであります。
 若造の私がこんな生意気なことを申し上げるのもなんなんですが、先般地元でテレビに出たときに、おふろ屋さんには失礼だけれども、小泉さんはおふろ屋さんの息子さんのようだ、ただユウだけだ、こういう発言をしましたら、大衆的には大変受けました。
 つまり、今、普通の中小企業者を中心とする方々は、いろいろな意味で塗炭の苦しみを味わっているような感じがしているのですね。仕事といいましょうか職が保障されている方々は、それはそれなりの、他の諸外国に比べればまだ豊かな生活を続けていらっしゃるのだろうと思いますが、大変な不安感を持って生活をしておるわけでございます。
 その中で、つまり、結果がといいましょうか実態がこの悲惨な状況であるだけに特に、首相も地元にこの間お帰りになったということでありますが、東京以外のところで、ちょっとお歩きになっていただいて、どこに例えば建設のつち音が聞こえるのか、どこに人の行列する商店があるのか、こういう観点からでも物を見ていただければ、さっきのような自信にあふれた、堂々と居直った態度はおとりになれないのではないか。国民の現在の悲哀感というか、閉塞感というか、うっくつ感といいましょうか、それと先ほどの態度は相当落差があるな、ギャップがあるなというふうに感じたわけでございます。
 つまり、これだけのことをやるんだ、手を上げて髪を振り乱しておっしゃったことが現在どうなっているのかということについての真摯な認識は、私は必要だと思うのです。なぜ現在こうなっているのかということを国民の前にちゃんと説明して、謝るべきところは謝る、この率直な態度が、言動が首相の持ち味であったはずでございます。
 それを、物事をひっくり返して、民主党はけしからぬみたいな話ばかり幾らやっても、政権与党、この国の運営の責任者の立場と、たかだか野党第一党の代表ですから、それは対等にもいかないし、責任も違います。重さが違います。重さが違う。そのことをちゃんとわきまえて御答弁をいただきたい。
 そこで、資料としてお配りしてあるかどうか、お配りしていなかったら配ってください。この「小泉内閣のデフレ対策」というのを持ってきました。
 私がちょっと国会を離れていたこともございまして、こんなに昨年来デフレ対策をやられているということは余り頭の中に入っていなかったんですね。質問のために改めてトレースしますと、点検し直しますと、三回にもわたるデフレ対策をお考えになっている。結果はどうですか。総理でもどなたでも結構ですが、今このデフレ傾向というものはどういうふうになっているんでしょうか。
竹中国務大臣 デフレについては、先ほどからも少し議論が出ておりますが、物価の下落という側面からいきますと、年度を通しては予想を上回るような物価の下落になったということは事実でございます。しかしこれも、短期的に見れば、これは、為替レートの変動、国際的な商品市況の影響も受けますが、短期的に見ると少し違った動きも見られる。
 デフレという言葉が、そこで書いておりますのは、物価の下落ということでは必ずしもなくて、いわゆる経済活性化策をデフレ対策というふうに呼ぶ傾向もあるようでございますが、その中にはそれも含まれておりますが、そういう観点からいうならば、まさに先ほど申し上げましたように、実物経済そのものはむしろ予想を上回る成果になっている。もちろん、絶対的な水準そのものは大変厳しいわけでありますけれども、経済全体の状況からいいますと、予想を少しだけではあるけれども実物経済は上回るような状況になった、しかし、金融面の状況を反映して物価下落は予想より少し厳しい状況になっている、これが今年度の経済であるというふうに思っています。
仙谷委員 そのとおりだと思いますね。
 消費者物価が、特に生鮮食料品を除く物価の下落率を見ますと、〇・九とか〇・八ということになっておるわけであります。どのぐらい厳しいかは別にしまして、名目が全く上がってこないという意味では、特に中小企業、営業をなさっている人には事ほどさようにこたえてくるということなんだろうと思います。
 そこで、ここにごらんいただいております、今のこの第三次にわたるデフレ対策、何かうまくいかなかったことがあるんですか。全部大体うまくいっているけれども、しかし何かほかの要因で、つまり、政府の責めに帰し得ないような天災とかそういうことが起こってこういうことになっておるんでしょうか。こんな程度のことは、現在のグローバライズした経済をお読みになって、日本が直面している産業構造の転換というのはもう十年も前からわかっている話ですから、賢明な竹中大臣であれば、この程度のことは読んで経済見通しをつくるということをできたと思うんですけれども、何でこんなことになったんですか。
竹中国務大臣 経済を活性化するための構造改革でありますから、構造改革にはそれなりにやはり時間がかかるということであります。そこにお示しになっている政策そのものは、まさにその政策がうまくいったかいかなかったかということではなくて、今着実に実行中のものであります。例えば、活性化のための税制改革、活性化を進めるための規制改革の切り札としての特区、これは着実に実行しているわけで、それは間もなくまた成果としてあらわれるだろうというふうに思っております。
 ただ、一点、予想を上回った外的要因というのがあったと思っております。それは、資産デフレを加速する世界的な株安であります。小泉内閣ができてから株価が三〇%以上下がっているというような御指摘がけさもありましたが、アメリカのナスダックは同じ間に五〇%下がりました。ドイツの株価は六〇%下がりました。世界的な株価安の中に我々は置かれている、この点は大変厳しく受けとめて対応していきたいというふうに思っています。
仙谷委員 竹中大臣にお伺いしますが、これ、十年間、日経平均の動きと例えばナスダックと、十年ずらしてぽんと重ねたら、ナスダックのバブル崩壊というのは、もうほとんど同じなんですね。その前に、DAXの、いわゆる株価のグラフですね、あれはちょうど日本のバブルが崩壊した後六年ぐらい、七年ぐらいがてっぺんになりましたか。つまり、日本のバブルが崩壊した後、ドイツのDAX市場に移って、その後、ナスダックに行って、ナスダックが二〇〇〇年の五月に崩壊した。これは事情を読む人は大体わかっていたんじゃないですか、ああ、大体こうなるだろうと。つまり、今の経済が、毎日毎日四兆ドルにも上るようなお金が実体経済とは関係なしに世界じゅうを動き回る、こんな話は十年も前から聞かされているじゃないですか。それがどこへ行くのか。
 だから、今の日銀の金融緩和にしても、後から聞きますけれども、実体経済の方にお金がおりないで、国債にばかり流れているじゃないですか。けさの新聞見ましたら、百四十二円六十銭ですよ、先物が。これを国債のバブルと言わずして何と言うんだというのが常識のある評論家の立場ですね。
 だから、金余り現象の中でバブルがどんどんどんどん移っていっているだけだ。バブルというのはしょせんバブルですから、どこかで泡と消えるという話は当たり前じゃないですか。そんなことはわかっていらっしゃったんじゃないですか。どうですか。
竹中国務大臣 多額のお金がよりよい資産を求めて非常に不安定な形で動き回っているという仙谷委員の指摘は、そのとおりだと思います。
 ただ、やはり日本の経済を考える場合に少し注意しなければいけないのは、八〇年代に起きた日本のバブルというのは、例えば土地等々に対する期待上昇率が非常に高かったということ、ナスダックの最近の株価の低下というのは、むしろITの技術評価に対する非常な過大な期待があったということ、今の国債、国債がバブルであるかどうかというのは必ずしもいろいろな専門家の意見が一致しているわけではありませんが、現実問題として、国債に非常に大きなお金が流れている。これはむしろ、銀行等々で多分にリスクをとれなくなっていることによって、超安全な資産に向かっている。それぞれやはり違う形で、違う要因で、マネーの移動が起こっているということではないかと思います。
 国債に対して、特に銀行等々がたくさん持っているということ等々の問題、これはこれとして議論をすべきであろうかというふうに思いますが、単純に、同じ要因でバブルがこう三段階で動きを変えて続いているということでは決してないというふうに思います。
仙谷委員 いやいや、あなたが資産デフレとおっしゃるから、資産デフレと言うんだったら、世界的な資産デフレはそういうふうにお金の動きとともに移っているという、その説明をしてあげただけですよ。だからそれほど、事ほどさように、そのことによって日本のデフレ傾向や経済見通しが食い違ったから、私に責任ないんだみたいな議論をしてもナンセンスだということを申し上げているだけの話です。
 時間があったらもう少し竹中さんに質問したいところでありますが、ちょっと時間の関係がありますから、小泉首相にお伺いします。
 昨年の党首討論なんかで、だれが危機と言っているんだ、三月危機、五月危機と言ったけれども、何もないじゃないかと、堂々と言っていらっしゃった。いやいや、そうじゃないんですよと申し上げていた。
 それで、この間、一月六日の記者会見で、デフレ退治に積極的な方が望ましい、あらゆる政策手段を動員して、デフレ抑制に向けて、日銀と一体となって金融政策などに取り組んでいかなければならないということをおっしゃっています。
 小泉内閣のデフレ対策を先ほどから三回にわたって見せましたし、今回また、加速プログラムということですか、おつくりになって、それを今度の予算とともに実行なさるということをおっしゃっていますけれども、現在は、特にこの三回、デフレ対策の中にすべて書いた「金融システムの安定」とか「金融システムの確立」とか「不良債権処理の加速策」、こういう項目、つまり、私がおととしの予算委員会で指摘して、当時、柳澤大臣でありましたけれども。アメリカにこんなにばかにされていいのかと言ったら、いやいや、ばかにされる理由があるんですと総理、言ったじゃないですか。当局が信頼されていないんですと。
 依然として金融問題が根っこになって、日本のデフレの危機なのか、金融の危機なのか、経済の危機なのか、財政の危機なのか知らぬけれども、僕は、非常に深刻な危機が我々の前にあるというふうに感じているんですね。総理が、この間、デフレ退治とかデフレ抑制とか日銀と一体となってとかいう話をされるところまでいよいよ来たかと思っているわけですよ。
 何かその辺、その危機感について、総理の基本的な認識というのはお変わりになったのですか。いかがですか。
小泉内閣総理大臣 いや、私は、総理就任以来、認識は変わっておりません。改革が必要だ、改革なくして成長なしということで、改革をしないとこのデフレ抑制もできない、多少の痛みが出てきているというのも認識しております。
 そういう中で、いかに改革を積み重ねていくかということでありますし、財政的にも、これは危機的な状況であります。そして、その都度、就任以来、危機、危機、危機だと今にも恐慌が起こるような言い方をされましたから、金融危機は起こさせないということで現実にいろいろな手を打ってきたわけであります。
 確かに、金融の不良債権、この処理を進める過程で、企業におきましても、危機的状況に陥って倒産した企業も出てきたでしょう。失業者もそれに連なって出てくる。これはまさに企業にとっても失業者にとっても危機であります。日本経済全体、これが立ち上がるためには不良債権処理を進めていかなければならないというのも、私は仙谷さんとはある面においては共有しているのではないかと思っております。
 そういう中で、デフレ抑制につきましても、まず金融改革、不良債権処理を進めていく、そして税制改革もする、規制改革もしていく、歳出改革もしていく、そういう積み重ねが必要だ。危機的状況には変わりないけれども、余り悲観論に陥るのは好ましくない。危機だから、今にも恐慌が起こる、だめだ、だめだと。日本人がそんな気でどうなるのか、もっと自信を持つべきだということで、勇を鼓して改革に突き進んでいるんでありまして、余り悲観論ばかり取り上げるのは好ましくないと思っております。
仙谷委員 私も危機意識は人後に落ちないほど深いと思っていますし、私は基本的に楽観論でございます。
 だけれども、危機の深さや広さを糊塗するといいましょうか、あいまいにして先送りするということであっては、いつまでたっても、何というんですか、総低落化みたいな話になっていく。それが実は、小泉さんが総理になって二年間、国民が大いに期待した改革がそれほど進まない。時々マーケットに手を入れてとんちんかんなことをなさる。
 これは小泉さんの責任なのかどうかわかりませんけれども、昨年の二月二十七日に、市場対策、空売り規制強化というのをやられました。三月は、株式の空売りを規制したことによって確かにクリアできました。ところが、その後、株式市場は空売りを規制することによって出来高がどんどんどんどん減ってくる。非常に東京証券取引所の株の売買が弱くなってくるというふうな事態になっているんです。
 あるいは、日銀の金融緩和だってそうです。緩和をすればするほどコールマーケットが死につつある。だれも、百億円貸して、一晩貸したことで二百三十八円の金利をもうけても、手数料で全部損するから、コールで取引しようとしない。そういうことが出てきているんですよ。
 さらに、かてて加えて、二〇〇二年二月二十七日の早急に取り組むべきデフレ対策の中で、「貸し渋り対策等(中小企業融資向け金融検査マニュアル)」がございますが、この貸し渋りというのは、これはどうなっているんですか、ここから対策を打たれて。
 これは、二枚目をごらんください。二枚目の一番右端の欄、「都市銀行貸出残高計」というのがございます。二〇〇一年の九月、もう小泉さんは総理になられておりましたが、ここから二〇〇二年の九月までとっても、中小企業への貸しはがしが七兆五千億あるんですよ、この期間だけで。大企業へは一兆六千億貸し増ししているんですよ。追い貸ししているんですよ。貸し渋り対策をとっても、この表をごらんいただきましたら、メガバンクの中小企業向け貸しはがしはどんどん進んでいるということがわかります。
 次のページを見ていただきますと、これは、私どもは賛成しませんでしたけれども、金融健全化法によって公的資金の注入を受けたメガバンクが経営健全計画を出して、その中で、中小企業にはこれだけの貸し出しを二〇〇三年の三月期には達成すると言ったわけですよ、貸し出し増額を。実績はどうですか。特に、五兆円も貸しはがした銀行があるじゃないですか。次の銀行は二兆円貸しはがしていますよ、中小企業から。
 金融庁、何かこういうことについては、改善命令か何かお出しになるとかなんとかという報道がありますが、一体全体、中小企業に対するメガバンクの貸しはがし、これについては今までどんな手をお打ちになったんですか。
竹中国務大臣 中小企業に対する金融の重要性というのは、私自身も就任当初からそのことに非常に重きを置いて、であるからこそ、リレーションシップバンキングという新しい概念でこれを打ち立てようというふうに考えているところでございます。ただ、やはりマクロ的な、非常に大きな状況変化があるということも考慮に入れなければいけないと思います。
 銀行の貸し出し、全額、バブルの時代に異常に膨らみました。その膨らんだ中身、実は主に中小企業に対する貸し付けであったということになります。それが今、九〇年代以降、特に九〇年代の後半から収縮して調整しているわけですけれども、その調整が中小企業に、ふえたのが中小企業であった分、減るのも中小企業であるという形になっているものであるというふうに認識しております。
 重要な点は、収益力が高くてきちっとした中小企業に対してお金が回らないような状況になっているとすれば、それは困るわけであります。この点については、大企業の生産性の低い、収益率の低下しているところに銀行は確かに貸し込んだという事実がありまして、それを是正するためにも、不良債権の処理、資産査定の厳格化、ガバナンスの強化が必要であるということで、金融再生プログラムの中にもさまざまな措置を織り込んでおります。
 今仙谷委員が御指摘になった昨年九月期の時点での経営健全化の計画、当初お約束したことに対する未達分につきましては、午前中も答弁しましたように、報告徴求を今行っております。報告が来たところでありますので、それに対しては厳正に対処をしたいと思っております。
 いずれにしても、世界的な競争をするグローバルな銀行と、地域、中小企業に根差した金融とは、これは違う側面がたくさんあると思っておりますので、それに関して今、金融審の中にワーキンググループを設けて、新たなルールづくり等々を検討しているところであります。
仙谷委員 この問題も、メガバンクに関して言えば、彼らが八%の自己資本比率にこだわる限り、あなたがおっしゃったオーバーバンキング的な要素もあったかもわからない、だけれども、大企業に対して、特にマーケットから退出を求められているような大企業に対しては、彼らがマーケットの原理によって行動することについて、私はとやかく言わない。つまり、上場企業であればほかに資金調達の手段があり得るという前提になるわけですね、これは、間接金融を借りなくても。そのために上場したわけだ。
 ところが、中小企業は、まさに借金が資本金のようになっているわけじゃないですか、日本の場合には。それを、担保価値が下がったとおっしゃって、今までであれば金利プラスアルファの元金をきちっと払う会社であればむちゃなことは言わなかった、ところが、担保価値が下がったから、さあ耳をそろえて持ってこいみたいな話が、特にメガバンクの支店、地方の支店、徳島においても全く同じです。三十代の若い支店長が、本店の方しか顔を向けないで、何十年も顧客としてつき合ってきた地方のしにせとか企業に対して、耳そろえて持ってこい。倒産に追い込まれるか自殺に追い込まれるかするしかないじゃないですか。そんなことばっかりが地元へ帰ったら聞こえてくるでしょう、自民党の先生方も。こういう点について、私は、これは昨年の二月、つまり一年前にそのことがわかっておるとすれば、何か打つ手はあったはずだと思えてならないんですよ。
 さらに、かてて加えて、この質問の準備のために日本銀行の高松支店に、このごろ貸出DI、そういうのをとっているらしいけれどもどうだ、ファクスで送ってくれと言ったら、送ってきましたよ。何と、九月期がゼロだったんですね、「緩い」から「厳しい」をマイナスすると。これは、金融機関の貸し出し態度。ところが、十二月にはマイナス九になっているんですよ。あるいは、資金繰り判断でいいましても、マイナス三がマイナス三のまま。香川県はマイナス九がマイナス一四。香川県の金融機関の貸し出し態度判断DI、これはプラス二がマイナス七。四国は、マイナス一がマイナス六。次の予測、三月の予測になってくると、我が徳島県はマイナスの一五なんですよ。どんどん悪くなるだろう、こういうふうに日銀だって調べて報告してくれたんです。
 メガバンクの貸しはがしがかなりのところまでいっている、厳しい状況になっていますけれども、かてて加えて、この間、地銀、第二地銀レベルが相当厳しい貸しはがしに入らざるを得ない、こういう局面になっているんですね。この点については、金融庁はどういうふうにお考えですか。
竹中国務大臣 繰り返し申し上げますが、昨年九月三十日に金融担当になって以来、中小企業に対する金融の円滑化ということで現実的にとれる方法は何かということで、関係閣僚とも相談しながらさまざまな手をとらせていただいているつもりであります。
 我々にできることとしましては、例の検査マニュアルについて中小企業編を作成した、それを今周知徹底しているということであります。その徹底のプロセスが大変重要であると思っております。
 さらには、今回の措置もそうでありますけれども、セーフティーネットの保証を中小企業等々に対して手当てをするということを措置しております。さらに、私自身が一番期待するのは、一刻も早くもっと多様な新規参入、銀行分野に対する新規参入を期待しているわけでございます。これは幾つか現実の話も進んでおりまして、私はそれに期待をしているところであります。
 金融再生プログラムの中には、中小企業に対するデット・エクイティー・スワップも措置できるようにしよう、そういうような措置も盛り込んでおります。
 何よりも、当面、政府系機関の活用が大変重要であるということで、昨年十二月の経済財政諮問会議での政府系金融機関の改革においても、当面、政府系機関は中小を中心に活用する。
 今申し上げたような現実的なさまざまな手段を通じて、銀行部門が傷んでいる中で、可能な限りで中小企業に対する金融を確保するように努力をしているところであります。
仙谷委員 政府系金融を駆使するんだというお話ですよね。私も基本的には、政府系金融、中小企業金融公庫、商工中金、国民金融公庫、住宅金融公庫、これを、小泉さんがやろうとしたように、民営化なり民業の圧迫をさせないような業態に変えるとかということは必要だと思ってきたんですよ。だけれども、ここまで民間の銀行がお行儀が悪く、何か、貸しはがしするのが楽しみであったり、それが出世競争につながるようなことをやられたんではいかんともしがたい。当面、二、三年間は、政府系金融機関をフルに動員して中小企業の金融を行う、こういう方針をとらざるを得ないと思い出しました。
 つまり、非上場企業に対する銀行の貸し付けが約三百二十兆円ありますよね。これは全体の貸し付けに対して六八%ぐらいあります。そういう中小企業、非上場企業に働く人々は二千七百万、二千八百万人ぐらいおりました。七五%ぐらいの人は中小企業で働く人であります。ところが、やはり彼らの営業の利益率、有利子負債に対する営業の利益率というのは三・九%、上場企業の一二・三に比べると三分の一あるかないか、こういう状況です。そしてまたこのデフレですから、極めて厳しい状況です。先ほど申し上げましたように、政府系金融を動員するしかないな、こう思っております。
 余り前回の、いわゆる信用保証制度の枠を、特別保証、無担保特別保証をやって、どこかの都議会議員が走り回ってこれを金もうけの種に使ったなんて、こんなばかなことが起こらないようにしなきゃいけませんけれども、政府系金融機関の中で審査をしながら不動産担保ではなくて事業に貸していく、このことを政府系金融にやっていただく。いかがですか、平沼大臣。
平沼国務大臣 仙谷委員御指摘のように、大変中小企業に対する金融というのは厳しいわけでございます。先ほど、日銀からのDI、この数字をお出しになられましたけれども、大変そこも厳しくなっているわけであります。
 政府系金融機関についてのお話がございました。これに関しては、私は、最終的には日本の経済が回復すれば民に任せることは民、こういう形は正しい方向だと思いますが、現状の状況ではとてもそういう状況じゃない。そういうことで、私は実は経済財政諮問会議等でもそういう意見を出させていただきました。
 そこで、特別保証制度のお話になりましたけれども、ここは、三年やりまして、そして百七十二万社に利用していただいて、そして保証額も二十八兆九千億だったわけで、これはこれで非常に効果が上がりました。そういう意味で、三年、異例特例の措置、こういうことで打ち切りましたけれども、しかし、昨年の臨時国会の中で新たに中小企業信用保険法、これを改正させていただいて、非常に大幅なセーフティーネットの拡充をさせていただきましたし、また、今こういう厳しい中で、このいわゆるお願いしている補正予算の中で借りかえを容易にして支払いを楽にする、そういう形で、私どもとしては、現状厳しい中小企業への金融に対してはでき得る限りいろいろな政策手段で対応していきたい、こういうふうに思っております。
 いわゆる本人保証、事業計画に着目するということは、新しいこれからの創業に対してそういう法律もつくらせていただいて、これはスタートしました。そういった形をまた利用してはどうか、こういうことでございますけれども、現状、私どもは、今の政策手段でできる限りやっていきたい、こういうふうに思っているところであります。
仙谷委員 時間があれば産業再生機構のところでも私の方から意見を申し上げたいと思っておったんですが、つまり、今保証の話が出ました。中小企業の方々は個人保証をとられておりまして、何か事あると本当に骨の髄までやられるという恐怖感がある。だから、死んで、生命保険でも掛けておいて、これで何とか払おうかみたいな気になってくるという、悲惨な状況にあります。
 それに比べますと、メガバンクも銀行の経営者も大企業も、会社がつぶれようと何しようと自分の身には及んでこないみたいなのんきなところにおるというのが、日本の非常に、何とも言えない、二重構造というか格差だ、このことを我々は認識の基本に置かなければいけないんじゃないかと改めて思っておるところでございます。
 そこで、現実的な補正予算の話に一点だけ入りますが、中小企業への金融について、何か金融庁さんが、中小企業金融等に関するモニタリング体制の整備、八億七千九百万という予算が補正予算についたんですか。何をするんですか、これは。あるいは、今まで何か、やっていなかったからこんなものをこれから頑張ってやろうということなんですか。いかがでしょう。
竹中国務大臣 委員御指摘のとおり、今回の補正予算案で、中小企業等に対する安定した資金供給を図る上で、その供給源となる金融機関の健全性の確保が前提にあるということですので、金融機関の収益性、流動性等の状況をタイムリーに把握するためのモニタリングを整備する、これはモニタリングシステムの機能拡充ですけれども、予算をお願いしております。
 これは何かということですけれども、まさに金融機関の市場リスク、信用リスク、経営リスク、そういうのをしっかりと把握していこうということに尽きます。
 こういうのは前からやっていたのかいなかったのか。これは、平成十一年度から、こういった状況について報告を求めるなど、これは現場ではなくて、いわゆるオフサイトのモニタリングというふうにいいますけれども、そういうのはやっておりました。今回、状況をさらにつぶさに把握して強化するために継続的かつ定量的な把握をしたい、そのためのシステムをつくりたいということで予算をお願いしている次第でございます。
 繰り返しますが、金融機関の市場リスク、信用リスク、それと流動性リスク、そういうのをしっかりと把握していくことが、中小企業に対する金融を、これは中長期的な観点からでありますけれども、円滑化し奉仕をする大変重要なポイントであるというふうに考えているわけであります。
仙谷委員 何か英語も横文字も出てくるのでよくわからないんですが、金融機関に対するモニタリング体制を強化すると金融庁のペーパーに書いてあります。
 だれが金融機関のお行儀をモニター、監視するのかということを聞いておるんです。どういう体制が金融機関を監視するんですか。何を監視するんですか。そして、例えば、私がさっきから申し上げておりますように、中小企業の方々が、ある意味で常識的に見れば不当な貸しはがしやあるいは取り立て、追い込みみたいなものに遭ったときには、何か訴え出ることがそのモニタリングの体制の中にできるんですかどうなんですか、それを聞いているんですよ。
竹中国務大臣 今回お願いしていますのは、モニタリングのためのデータベース、そのシステムをつくるためのお金ということになります。
 金融庁としては、監督行政そのものの中に既にこういうシステムを、こういう制度を持っているわけです。もちろん、何かありましたら早期是正のための措置をとる。それ以前の段階として、我々ここ数年ずっと研究しておりますのは、いわゆる早期警戒というか、流動性とか信用性とか、いろいろなシグナルを常に得ていて、何かあった場合に、何か改善命令とかそういうことをする前に、早期の警戒をするような、そういう制度をつくろうというふうにずっと考えているわけです。
 そのためのシステムの部分を今回予算にお願いしているわけで、それはまさしく監督行政全般の中に位置づけられているもので、それを、早期警戒の部分を強化するための予算のお願いであるというふうにお考えいただきたいと思います。
仙谷委員 民主党は、中小企業の経営者、特にまじめに働いている経営者の団体の方々から、参議院議員の櫻井さんが中心になって協議をして、地域金融の円滑化に関する法律案をつくっております。国会にも前通常国会で提出をしております。
 どういうものかといいますと、こういう、地域における金融機関のお行儀といいますかビヘービアをちゃんと評価する機関を国でつくろうではないかということを、評価委員会をつくるということを基本にしているわけでございます。そして、国会にも報告をさせるとか、あるいはそういう検査を委員会が直接銀行等に対して行うことができるというふうな法案を出しております。
 私は、今おっしゃられたような、何かコンピューターの上でマクロ的な数字を、信用性か流通性か何かわかりませんけれども、そういうものを見るんだとおっしゃるんだけれども、現実に生身の経済の中で、つまり銀行取引をされている事業者の方々が欲しいのは、やはりこういうむちゃくちゃなことを言われたりむちゃくちゃなことをされて、どこへ言っていけばいいんだ、こういうことだと思うんですね。
 今ほど、銀行業に携わる方々が、襟を正していただくというよりも、もっと前向きに、リスクをとって、事業に貸す、事業を評価するんだという基本的な方針のもとに金融業に取り組んでいただかなければならないことはないと思っておるわけでありますが、どうもそうなっていない。何か怨嗟の的になっている。いつ地元へ帰っても、とにかく、金融機関のああだこうだということを私のところへ訴え出てくる方が多いんですよ。それはそれで私もよく聞きますけれども、お伺いしなきゃいかぬと思っているけれども、しかし、これはどうなっているんだ、この銀行業界はという気持ちが絶えないわけであります。
 自民党の方々にもお願いしたいんですが、我々金融アセスメント法案と呼んでいますけれども、こういう地域金融の円滑化に資するための法律を今からつくる、独立の行政委員会で、つくる、第三者的に金融機関のビヘービアをちゃんとモニターする、評価するという機関をつくって、そしてそこから適宜勧告なりなんなりを出していくというふうな制度をつくったらどうかと思うんですが、総理か竹中大臣か、いかがですか。
竹中国務大臣 これは、かなり以前、実は仙谷委員と御議論させていただいたことがあるんでありますが、私自身も、金融機関の評価の基準というのは多様でなければいけないと思います。金融庁として一義的にまずやらなければいけないのは、信用リスクとか流動性のリスク、そういうことをまずきちっとチェックして市場全体に混乱が起きないようにする、これは金融当局としてはまずやらなければいけない議論なわけでございますけれども、今問題になりつつあるのは、そういった問題を超えた、むしろ社会的な評価というような問題だと思います。
 この金融アセスメント法案等々については、その手法等々について、私なりにこれは少し難しいのではないかと思うところがあるんでありますが、例えばアメリカにあるような、地域に対して、地域で、地元で集めたお金は再投資できるような、そういった社会的な枠組みが必要なのではないか。そういう多様な評価の側面は、今私は日本においても必要になっていると思っております。であるから、片仮名だと怒られるかもしれませんが、いわゆる大手の世界的な銀行ではなくて、地域に根差したリレーションシップバンキングの問題を別途考えようということにしているわけでありまして、その中で今、問題意識としては、その意味では、委員がおっしゃった社会的な評価のようなものをどのように生かしていくかということは、このワーキンググループの中でもゼロベースでぜひ議論をしてもらいたいというふうに思っているところであります。
仙谷委員 先送りみたいな話になりますから、ひとつ自民党の皆さん方にこの金融アセスメント法案に賛成していただいて、竹中大臣がおっしゃられるような立派なものができるのかどうかわかりませんけれども、いずれにしても、早急に、金融機関を本格的にモニターし、評価する制度をつくっていきたい、こういうふうに考えております。
 時間の関係で、今度は塩川大臣に、円安問題についてお伺いします。
 財務大臣、七月の二十二日に私が、要するに、日本は経常黒字がたまり過ぎている、それも、貯蓄として公的部門にいっぱい入り過ぎている、動かない、そのことが分不相応な円高の原因である、こういうお話をさせていただきました。そのときに、財務大臣としてはどうお考えですかと申し上げましたら、各国の財務担当者間におきましては激しく情報の交換をしておりますし、介入の問題につきましても、みずからの一存でやるということをやりました場合に、世界のそういう自由な秩序を崩してしまうこともございますので、その間は十分な両方の情報の交換をやっての上でしておるということは御了解いただきたいと思います、国際機関を通じまして、話し合いによって徐々にいい方向に誘導していきたいと思っておりますので、努力はひとつ続けてまいります、こういう、わかったようなわからないような答弁をされたわけであります。
 ところが、十二月になるや塩川さんが、円安容認の発言を記者会見でもするわ、日本経済新聞に寄稿をして、購買力平価のところまで円レートを持っていくべきである、そういう円高を是正すべきであるという発言を堂々とされたので、私は、ついにその気になっていただいたかと思っておるわけでありますが、お考えを変えられた、あるいは、日本の通貨政策として購買力平価のところにまで為替レートを近づける、そういう政策をとって、いわゆる金融、経済面における外交交渉も行う、こういうことなんでしょうか。
塩川国務大臣 私が昨年の夏申しておりましたことは、ずっと一貫して、為替相場には政府が積極的にその時々の場面に応じて介入して、これを自分の思っておる相場に誘導していくということはやるべきではないということを何遍も申しております。できるだけ市場で、マーケットで決めるのが正しいと思っておりますが、しかし、急激に変動しました場合にはいろいろ経済に悪影響を及ぼしますので、急激な変化に対しては適当に介入したり、あるいはその動向を監視したりするということをやるということをやっておりました。
 ところで、最近の状況を見まして、日本の輸出入の状況を見ました場合、やはり円高の傾向になってきておるということは、日本の産業界にとって私は余りいいことではないと思っております。そうであるならば、これは購買力平価にできるだけ近づけてくれる方が本当は真正の評価に、レートになるのではないかということを考えておるのでございまして、アジア諸国を見ました場合に、為替のレートが全く変動制でやっておる国もございますし、そうではなくしてある程度固定化しておる国もございますし、いろいろございますが、それらの国もできるだけ購買力平価に合わせた実勢にするような、そういう市場が構成されることが望ましい、そういう希望を述べたということでございます。
仙谷委員 いやいや、割と決意を持ってこういう投稿をされたんじゃなかったんですか。私は、よほど決意を持ってされて、例えばこの二月の、当初一日だというふうに言われておったようでありますが、いわゆるG7、ここで塩川財務大臣あるいは速水総裁がこの問題を提起して、我が党から新保守党というのをつくられた熊谷さんが言っておるんですか、逆プラザ合意、つまり、プラザ合意のときの反対の、為替レートについて、政府がちゃんと国際会議の場で円高是正をすることについての諸外国の同意を取りつけるという、つまり、購買力平価のところまでだったらいいんだよという同意を取りつける、こういうお気持ちになられたのかなと思って聞いておるんですが、そうではないんですか。いかがですか。
塩川国務大臣 基本的にはそうなるべきであるということは、私は今でも思っておりますし、ずっと以前からそう思っておりますが、それをもって、その事実で、現在のレートとの相違があるからといって直ちに介入をする、そういう姿勢で言っておるものではないということであります。
仙谷委員 いやいや、手段は介入だけではないと思いますよ、それは。それは、国際的にこの議論をして、今原口君が言いましたけれども、合意を取りつける方向で努力をするのかということですよ。
 つまり、すぐそんなことにオーケーが出るとかなんとかという甘い考えを持つべきじゃないということは私もわかりますよ、それは。アメリカがむにゃむにゃ言うかもわからない、特に今の経済の状況で。あるいはドイツが、さあどういう態度に出るのかということもわからない。それは我々が外国情報で入ってくる情報から見ましても、そうそう簡単ではないと思います。思いますけれども、この問題は、先般も申し上げましたように、そしてこのお渡ししました資料の三枚目、「国債保有高と銀行貸出」という表を見ていただければわかりますけれども、日本の国債と金融の関係というのが余りにも官的、つまり官のところへお金が集まって、硬直し過ぎているんですよ。まだ外国債券でも買われる方がましだ。
 つまり、どのぐらいこれは硬直しているかといいますと、ことしの予算案を組まれたこの資料で見ますと、平成十四年度末、つまりことしの三月までに発行される普通国債が四百二十八兆円ですよね。そのうち、日本銀行、国内銀行国債保有額、郵便貯金、簡易保険、生命保険、それから公的年金、ここまででどのぐらいあると思いますか、これ。三百十三兆円ありますよ、大体。三百二、三十兆はいつも雲の上で国債が泳いでいるということです。その分お金がどんどん事業化の世界に入ってくればいいけれども、入っていない。
 ちなみに、日銀にお伺いしますけれども、これからインフレターゲットの話を聞くわけですが、その前に私は、先般の、日本銀行が銀行から二兆円の株式を買い取るという決定をしたというのは、日銀法三十三条から見てもいかがなものかと思っております。今、お伺いしますと、二千五百億円ぐらいの株式を買い取られているんですか。それで、日本銀行としては、日本銀行から払ったお金、メガバンクなり地銀が受け取ったお金は一体どこへ行っているんでしょうかということについて、わかりますか。
速水参考人 お答えいたします。
 九月の十八日に発表いたしまして、約一月余り前から実施いたしておりますが、日本銀行の銀行保有株式を買い入れるやり方につきましては、これは金融システムの安定確保と不良債権問題の克服に向けた環境整備を図るために行ったものでございまして、株価を下支えするといったようなことをねらったものではございません。一切ございません。
 一月二十日現在で、今おっしゃいましたように、累計で二千八百億円余りの株式を買い入れておりますが、これは私どもが直接買うんじゃなくて、信託銀行を通じてやってもらうことにしております。これらの資金は、まず株式を売却した金融機関の日銀当座預金に入ります。その後、その資金がどのように用いられていくか、これは各金融機関の資金の運用調達方針などに依存して、一概には何とも申せません。ただ、確かに申し上げられますことは、日本銀行の株式買い入れによって、金融機関の保有株式に係るリスクはその分軽減されたということは言えると思います。
 このことによって、銀行の自己資本の圧縮がとまっていくということは、不良貸し出しの整理などにも必ずいい効果が出てくると私どもは願っております。各金融機関は、不良債権問題の克服とか貸し出しの増加に向けて、先ほどからおっしゃっておられます、一段と取り組みやすくなるものと考えております。
仙谷委員 今のお話だったら、銀行を助けたという以外のことは何にもおっしゃっていないような気がするんですけれども。
 つまり、このお金がちゃんと貸し出しの方に回るんであればまだ救いもあるということを言いたいわけですよ。ところが、これが回らないで、国債を買ったり、どこかに、準備預金か何かに積み上げられてそのまま、豚積みというらしいですけれども、ほっておかれたりするんであれば全く意味がない。それは、株式の価格が低落することによって自己資本が毀損されることについては、そのリスクは少なくなるかもわかりませんけれども、それだけだったら銀行を救ったということにしかならないじゃないですか。そんなことは、それは日銀の責務かもわからぬけれども、非常手段をとってやるような話では私はないと思うんですね。
 そこで、その非常手段の非常手段のインフレターゲットの話をお伺いします。
 先ほどからお伺いしていますと、きのう、山崎幹事長と神崎党首ですか、代表ですか、公明党の、皆さん、インフレターゲットをやるべきだ、三%ぐらいのターゲットをやるべきだと。インフレターゲットと言うと生々しいから、物価何とかとおっしゃっていましたな、さっき。物価安定化目標とおっしゃったんですか、物価安定目標政策を導入したらどうかとおっしゃいました。
 これは速水総裁、テレビをごらんの日本のかなりの方々は、インフレターゲットというのは何かわからぬと思うんですよ。何かええことするのかなと思っていると思うんです。いやいや、本当ですよ、これは。何か私も新聞だけ見ていたら、今からいいことが始まって、日本が緩やかなインフレになっていって、気持ちのいい成長路線に返れるのかなと思ったりします。そういう新聞もあります。それに加勢する学者も評論家もいっぱいいらっしゃいます。ワッショイワッショイの大合唱みたいに聞こえてくる。果たして日本銀行に何をせいと言っておるんですか、このインフレターゲット論者というのは。
 つまり、今どのぐらいの金融緩和がされているんですかということをまず聞きたい。つまり、バブルのときの緩和された金融、過剰流動性でバブルが起こったと言われたときのこれに比べてどのぐらいの金融が緩和されているのか、オイルショックのときと比べてどうなのか、アメリカと比べてどうなのか、どのぐらいじゃぶじゃぶの金が、日本銀行がお札を刷って、少なくとも銀行まではまき散らかしているのか、そのことを教えてください。
速水参考人 日本銀行の量的緩和がどれぐらいになっているかということでございますが、ちょっと数字を日本銀行のバランスシートでごらんいただけば一目わかるんです。
 総資産、総負債、今百二十五兆円。九月末は百四十兆ぐらいまでいっておりましたけれども、百二十五兆円ということは、これはGDPの二六、七%ですね。ヨーロッパの中央銀行にしても兆に換算して百兆まではいっておりませんし、アメリカのFRBももっと少ないんです、八、九十兆。日本は、一九九八年度末に八十兆ぐらいでしたのが、今は百二十五兆円になっているんです。これはGDPの二七、八%。世界全体でこれだけ大きな国はございません。
 この資産は、我々が買った資産、国債を買ったり手形を買ったりしたものを流動性として市場に出して、負債の方は、それで銀行券や銀行の当座預金がふえていくという形でバランスがとれているわけですけれども、それだけの金が市場に流動性として出ているということは、今の日銀の総資産、総負債を見ていただくだけで一目瞭然、おわかりいただけることかと思います。
 それから、先ほどおっしゃったインフレターゲットについて民間はどう思っているかということは、私もこれはよくわかりません。国民の皆さんがどう思っているかということは、私は、決してみんながそう思ってはいないんじゃないかというふうに思っております。
仙谷委員 総理、時間の関係で簡単にいたしますが、まず、一月九日に竹中さんに、麻生政調会長と相沢税調会長が出向いて、日銀による株価指数連動型上場投資信託、ETFの購入や、それからインフレ目標を導入せよということを告げた。竹中さんは、一月十五日に、それを受けてオーストラリアへ行って、オーストラリアというのはインフレだったからインフレターゲットを導入したんですよね、ところが、一つの可能性のある選択だ、デフレの日本にその経験を生かしたい、こうおっしゃって、何かあたかも秋波を送った。一月十五日には、溝口さんという今度財務官になられた方が、インフレ目標を含めて実効ある金融緩和の方策を追求していくことが非常に大事だ、こう言っておる。
 それで、まあ日銀と一体になって、デフレに対する強力な政策が必要だ、こうおっしゃっておって、総理もインフレターゲティング政策にくみして、速水さんの後の総裁については、デフレ退治、デフレと戦う人がいいんだ、こうおっしゃっていますから、そういうお考えに少々心が動いていらっしゃるんですか。このインフレターゲットをやったときの弊害というのも何か頭に入っていらっしゃいますか。いかがですか。
小泉内閣総理大臣 私は、インフレターゲットという言葉を使ったことはありません。現に、かなり前からインフレターゲットを導入すべしという議論が我が党内から出ていることも承知しております。また、私に対しても、このインフレターゲットを導入しないために私を厳しく批判している方もたくさんおられることも承知しております。
 しかし、速水総裁自身、デフレファイターなんですよ。そういう中で、インフレターゲットに対しては速水さんも申し上げておりませんが、このデフレを退治しなきゃならないということについてはそのような認識を持っておられると思います。だからこそゼロ%以上を目標にしていると。インフレターゲットという言葉を使っていません。
 今でこそ、小泉内閣がインフレターゲットを採用しないから、採用しろ採用しろという評論家なりエコノミストなり議員が出ています。いざ、本格的に小泉内閣がインフレターゲットを導入したら、もうマイナス、批判の合唱だということは私よくわかっています。だから、インフレターゲット論は私は一言も使っていないんです。
 しかし、このまま物価上昇がマイナスというのはよくない。そういう意味において、やはりデフレ退治に積極的にならなきゃならないということを話しているわけでございます。
仙谷委員 それならば、総理、私がこの間から言っているように、公的資金、郵貯、簡保の資金、これが国債をこれだけ買っているんですよ、さっき示したように。今、それで、外債、外国債券のポートフォリオ五%なんですよね。上下幅五%ありますから、あと五%ぐらい買い増しするように総務大臣とよく話して、外国債券を買うと。円安いきますよ、少々は。御期待のデフレ傾向が少々是正されるかもわかりませんよ。そういうふうに私の方からも提案しておきます。
 時間がなくなりましたけれども、これだけは聞いておかなければなりません。菅代表からもお伺いしたわけでありますが、長崎県連事件、えらいことでございます、これは。
 新聞報道によりますと、こんな当たり前のことをしていて何で悪いんだという声が自民党内ではあるというふうに聞きます。あるいは新聞報道を見ますと、長崎県連方式、長崎方式として十年も定着しているという説もあるし、いいですか、二十年、三十年前からこれを行っているという説もある。さらに、県レベルでは、長崎県の土木技監という公職があっせんをしているという説もある。つまり、奉加帳を持って回りなさいということを技監がやっているという説もある。どうも私の調査でもその辺までいっておるようであります。ゼネコン行脚の献金要求。
 そこで、先ほど問題になりましたのは、時間がないから結論からいきますが、公職選挙法百九十九条の特定寄附の禁止。これは、選挙のときに、知事さんや県会議員さんは県の工事を受けている人から寄附をもらってはならない、国会議員は国の工事の受注を受けている企業から選挙運動費用として寄附をもらってはならない、これが中心になります。この違反。実質的に知事選挙についてゼネコン行脚をしてお金をもらった。地元の業者と、いわゆる東京や大阪に本店のあるゼネコンの支店を回って、ちゃんとだれかが割りつけをしてくれた、受注額に応じて多分何%ということでしょうね、やった、寄附をもらったというのが一つ。
 もう一つは、何と、事もあろうに、政治資金規正法の二十二条の四、三事業年度にわたり継続して政令で定める欠損を生じている会社は、当該欠損が埋められるまでの間、政治活動に関する寄附をしてはならない。毎年やるものですから、ゼネコンさんでも、このごろ株価が十一円になったり十円を切ろうとしたりする会社もありますし、この間、債務免除、債権放棄を受けてきたゼネコンさんというのは相当多いわけであります。このゼネコンさんのところへも回るものだから、ゼネコンさんは表で献金できない、裏金で献金した。名前出してもいいんですが、こういう二つの事件が絡まっているというのがこの長崎県連事件でございます。
 一つは、委員長、これね、ひとつ、九州の福岡支店だと思いますが、ゼネコンの名前わかっておりますから、各支店長を参考人としてお呼びいただいて、この種のゼネコン行脚で、長崎方式で何年もお金集めを受注業者からしてしまった、表あり裏あり、こんなやり方をそろそろやめましょうよ。
 ひとつ、いかがですか。参考人としてお呼びする。七社です。私がつかんでいるのは七社の支店長。いかがですか。
藤井委員長 理事会で協議いたします。
仙谷委員 ぜひ呼んでいただきますように。
 というのは、総理、総理が去年の三月におっしゃったじゃないですか。公共事業受注企業から政党への献金に対しては規制強化をせいと。こんなことはやめようということをおっしゃったじゃないですか。このことをやめるためにも事実調査をして――まだこんなことを平気で、慣行か何か、得意そうにやっている、当たり前だという感覚でやっている。公共事業がこれだけ問題になって、財政がこれだけ逼迫する、そして債権放棄まで受けた企業が、大ゼネコンが赤字になりながら裏金を出す。もうやめましょう、こういうことは。だから、やめるために、総理もちゃんと指示したとおり法律をつくってやめる、調査も尽くす、このことについての御決意をおっしゃっていただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 長崎県連の問題につきましては、これは大変我々も深刻に受けとめなきゃならないと思っております。あっせん利得処罰法あるいは官製談合防止法、成立、改正強化いたしましたけれども、さらに、今仙谷委員が言われたような政治改革に向けた一つ一つの改革、どういうものがいいか検討していかなきゃならない問題だと思っております。
仙谷委員 終わります。
藤井委員長 この際、上田清司君から関連質疑の申し出があります。菅君の持ち時間の範囲内でこれを許します。上田清司君。
上田(清)委員 総理以下閣僚の皆さんも御苦労さまです。
 ちょっと順序を変えて、年金の運用問題から入らせていただきます。
 厚生労働大臣、平成十四年度の四月から九月期のいわば半期分の年金市場での運用の損失額は二兆百十二億、約でございますが、よろしいでしょうか。イエスかノーで。
坂口国務大臣 大体その額だと思います。
上田(清)委員 平成十三年度の運用損失は六千六百億ですね。これは間違いありませんか。間違いないとうなずいておられます。
 なぜ巨額の損失を出しているんですか。昨年もそうですが、ことしもそうです。厚生労働大臣、答弁してください。
 見てください。本当だったら、目標利回りは別にしても、四千億、昨年度、利益を出さなくちゃいけなかったんですよ。ところが、マイナスですから、実質的にはこれは一兆円の損失と同じなんですよ。そして、平成十四年度は半期でもうマイナスの二兆円になっているんですよ。本来ならば、最低限四千億をもうけなくちゃいけないんですよ。ところが、実質的に二兆四千億も年金資金運用基金、小泉総理が大好きな特殊法人ですね。――大嫌い。失礼しました。大嫌いな特殊法人ですが、もともと、年金福祉事業団の時代から、十三年間で、累積でマイナスの二兆八千億出しているんですよ。
 とりあえず十三年度、十四年度、何でこんなに巨額損失を出すんですか、厚生労働大臣。
坂口国務大臣 今御指摘になりましたようなマイナスが出ておりますのは、やはりこの運用につきまして株式運用をしているということでございます。その株式が低下をいたしましたためにそれによる損失が大きくなった、そして今御指摘のような数字になったということでございます。
上田(清)委員 大臣、どうして株式が下がったんですか。
坂口国務大臣 株式が下がったことに対する理由はいろいろあるだろうというふうに思いますが、経済動向が大きく影響しているというふうに思っております。
上田(清)委員 総理、私には今の厚生労働大臣のお言葉は、竹中大臣や塩川大臣や総理が悪いと聞こえちゃったんですよ。総理は、株価には一々一喜一憂しないと。年金運用の巨額損失の原因は経済の動向、こういうことを厚生労働大臣、言っておられますけれども、原因は何でしょうか、総理、これだけ巨額の損失を出すというのは。
坂口国務大臣 先ほど申しましたとおり、諸般の総合的な結果としまして株価が下がったわけでございます。それは日本の国内だけではなくて、世界全般にわたります影響もあるというふうに思っておる次第でございます。
上田(清)委員 総理にもお答えしてほしかったんですが。
 先ほどちょっと申し上げましたけれども、年金福祉事業団が衣がえして年金資金運用基金という、年金運用基金ですね、年金資金運用基金に名称が変わっただけなんですが、私に言わせると。このときも、実は十三年間で四勝九敗、単年度ごとに見ていくと、運用益を出せない。九回も運用益を出せなかったんです、景気のまだいいときですよ。それから、とにかく黒字を出して厚生年金特会に百三十三億を繰り入れしたのはたった一回こっきり。
 つまり、巨額の年金の掛金を預かって運用していた年金福祉事業団というこの特殊法人は、一回、百三十三億国庫に入れたことはあるけれども、ほとんど全敗に近く、結局、累積で二兆八千億、これは運用の部分ですよ。御承知のとおり、悪名高きグリーンピアで約六千億焦げつき、そして住宅の貸し付けで八百億損失を出している、非常に悪徳の特殊法人ですよ。
 それで、実はこのときも、予定利回りをそれなりに、四%とか四・五%、していたんですから、本来ならば八兆円ないし十兆円稼いでおかなくちゃいけなかったんですよ、この十三年間で。稼ぐどころか、へこませている。もう大体、この年金関係の問題で、私は、もともと株式には不似合いじゃないかということを強調しておりまして、財務大臣にも、まさに正鵠を得ておるということを答弁でいただいたことあるんですよ、2―2。株式の運用は危険だからと、とにかく国民からの預かり物ですから、私は、この株式の運用はなくす、むしろ、国内の債券を中心にした、郵貯とか簡保と同じような仕組みの方が大事なんだというようなことを強調しておりました。
 そして、実は最近、これはエコノミストの水野和夫先生の説でもありますけれども、三十年間、日経平均でずっと投資していても、実は国債の利回りも悪いんだということを、二〇〇〇年の十二月に明らかになっているんですよ。そのことも御指摘しまして、森理事長に勉強せいと言いました。坂口厚生労働大臣も御存じです。
 そのとき、塩川大臣はこんなふうに言っておられますよ。
 上田さんのおっしゃることを私もずっと聞いていまして、まさに十分研究しておられることで、それは正鵠を得ておると思っております、そういう状態でありますから、小泉内閣で今度徹底的に調べてもらったのです、大体、行政専門でやっている人に大きな金を預けてうまくできるものかといったら、これは私、専門違いのところに渡しているようなことになる、そう思うのですよ、ですから、これは一回徹底的に調べる必要があるだろうと思っておりまして、その一環としてお答えしたいと思いますと。
 非常に財務大臣は的確に物事を判断される、非常にシャープな頭を持っておられる。しかし、ちょっと気になるのは、忘れっぽいもので、このときのことを覚えておられるかどうか。調べていただきましたか。
塩川国務大臣 それは、年金運営資金の問題は、審議会がございまして、そこで、何%分はどういうふうに使うとかいう、そういう安全弁を講じるためのルールをつくっておる、そのルールに従ってやっておるというふうなことでございました。
 私は、大体思いますのは、そういう基金がデフレ時代に、そういうリスクの多いところに運用するということは、私は、これはどう考えても、素人が考えても危ないことだと思います。
 デフレ時代とそれからインフレ時代とは違うんですから、インフレといいますか、高度経済成長時代、つまり、今問題は、そういう特殊法人等の資金の運用は、やはり依然として高度成長時代の考え方の上に立ってのしきたりが適用されておる。この際に、やはりデフレ下におけるところの資金の運用ということを根本的に考えてもらわなきゃいけないんじゃないか、そういうふうに私は思っております。
上田(清)委員 まさに財務大臣の答弁は正鵠を得ていると思います。
 そうすると、坂口厚生労働大臣、これは十三年度、十四年度、国内の株式に市場関係の運用額約二十八兆円を二五%、外国株式に一四%、合わせて四〇%もかけているんですよ。運用しているんですよ。その結果がこうなっているんですけれども、私はこれをやめろと言ったんですよ。森理事長も勉強すると言ったんですけれども、どういう勉強の報告をしたか、お聞きしたいですね。
坂口国務大臣 まさしく御指摘になりましたところを見直すというので、昨年の十月から検討会を立ち上げまして今やっております。それで、この二月の末には結論を出したいというふうに思っております。それまでの間に、私自身もいろいろ勉強をいたしておるところでございますが、その中でいろいろの御議論をいただいているところでございます。
 私個人の気持ちからいえば、上田議員と同じで、これから堅実なやり方をしていく方が安全だというふうに思っておりますけれども、しかし、ここは年金の問題でございますから、やはり長期の立場に立ってこれからよく見ていかなきゃならないというふうに思っている次第でございまして、二月までにきちっとした結論が出せるように、私も一層の勉強をしたいと思っております。
上田(清)委員 大臣、言ったでしょう。長期もだめだと言っているんですよ。今、長期だったら何とかなると言っているんですか。お答えしてください。
坂口国務大臣 年金の問題でございますから、年金というのは非常に長期にわたっての問題でございますから、長期にわたっての物の見方をしていかなければならないということを申し上げたわけでありまして、だからといって今の状況を続けていくというのは、やはりこれは考えていかなきゃいけないということを私は言っているわけでございます。
上田(清)委員 念のため申し上げますが、三十年間移動平均だけじゃなくて、もう五十年なんですよ、データ的には。
 それから大臣、私に言わせると、年金資金運用基金は犯罪的ですよ。厚生年金保険法の第七十九条に、この運用の目的はきちっと書いてあるんですよ。これは資料の2―3に書いてあります。「積立金が厚生年金保険の被保険者から徴収された保険料の一部であり、かつ、将来の保険給付の貴重な財源となるものであることに特に留意し、専ら厚生年金保険の被保険者の利益のために、長期的な観点から、安全かつ効率的に行うことにより、将来にわたつて、厚生年金保険事業の運営の安定に資することを目的として」いると。安全かつ効率、全然安全じゃないじゃないですか、こんなに損失を出して。冗談じゃないというんですよ、実質的にもう十兆円ぐらい損しているような話なんですよ。
 それから、わざわざ後ろの五行目ぐらいのところにちょっと書き加えておりますけれども、「運用職員の責務」ということで、職員の責務まで明らかに法律で書いてある。こういうのは例がないですよ。それほど慎重かつ丁寧に国民の預かり金をきちっと運用してふやして返せという話なんですよ。
 最近の話は何ですか。年金受給者の、もうぎりぎりで、いよいよ年金をあしたからもらうというときになったら、済みません、ちょっと待ってください、三年先にしてください、五年先にしてくださいという話。そして、保険料は上がる、受給額は減る。
 こういう話ばかり出ているときに、実際、厚生労働省が所管している特殊法人の年金運用基金がぼこぼこ穴をあけているというのは、一体どういうことだということになってしまうわけですよ。
 それで、総務大臣、貴重な、また、厚生年金と国民年金以上に巨額の郵便貯金、簡易保険、これを運用されておられるわけでありまして、この運用の基本姿勢はどんなふうになっているんですか。どうも年金の方が心配だから、念のために。
片山国務大臣 御承知のように、郵政事業は四月一日から日本郵政公社に、百三十二年ぶりの大改革になります。
 そこで、今度は公社で運用するということになりますけれども、今までも基本的には、国民の皆様からのお預かりした金ですから、安全確実というのがもう常に大原則でございまして、そういうことで今、公社移行のための設立委員会議で御検討いただいておりまして、おおよその運用の中期経営計画を合意されたようですから、それが私のところに認可申請で来て、認可すれば決まる、こういうことになるわけでございまして、細部は見ておりませんが、基本的にはそういう考え方を踏襲していただいていると思っておりますし、またそういう点で我々もチェックしてまいりたい、こういうふうに考えております。
上田(清)委員 総理もお聞きいただきたいんですけれども、実は、郵貯、国内債券が、十四年度の九月末ベース、半期ベースで、九三%が国内債券。中期的にも、国内株式だとか外国債券だとか外国株式は四%以下にしたいという、ちゃんと事業計画が、運用計画が出ているんですね。同じように、簡保も、もちろん商品が違うので、こちらは生命保険ですから、幾らか緩いですけれども、あの年金運用基金みたいに四〇%も株式なんかに使っていないですよ。八〇%ですよ、八四%、国内債券が。当たり前でしょう、こんなデフレ時代に。先ほど財務大臣も言われましたけれども。これは方向転換しないとだめなんですよ。
 なぜできないか、わかりますか、大臣。大臣が一生懸命、研究しなくちゃいけないとか言っておられても、部下はやっていないんですよ。癒着なんですよ。利権になっているんですよ。2―4、厚生労働省の天下りの実態。関係団体で二千人も天下りしている。こういう人たちがいる。それから、信託銀行や投資会社に毎年三百億から四百億手数料を払う。ここは天下りを受け入れている。ずぶずぶの関係もできている。
 おまけに、これは国民の皆さんが聞いたらもう腹が立ってきますよ。これは、厚生年金保険制度の回顧録という、厚生省絡みの財団である厚生団が発行した本なんですよ。この年金制度ができたころの立て役者の花澤さんという人を囲んで、対談ですけれども、対談者の相手は大体年金局長だとかやった人たちばかりです、四人ほど。その花澤さんがどんなことを書いているかを、資料の2―5と6に書いてあります。
 これ、いいですか、「この膨大な資金の運用ですね。これをどうするか。」「いちばん考えましたね。この資金があれば一流の銀行だってかなわない。今でもそうでしょう。何十兆円もあるから、一流の銀行だってかなわない。これを厚生年金保険基金とか財団とかいうものを作って、その理事長というのは、日銀の総裁ぐらいの力がある。そうすると、厚生省の連中がOBになった時の勤め口に困らない。何千人だって大丈夫だと。金融業界を牛耳るくらいの力がある」と。
 「そして年金保険の掛金を直接持ってきて運営すれば、年金を払うのは先のことだから、今のうち、どんどん使ってしまっても構わない。使ってしまったら先行困るのではないかという声もあったけれども、そんなことは問題ではない。貨幣価値が変わるから、昔三銭で買えたものが今五〇円だというのと同じようなことで、早いうちに使ってしまったほうが得する。」と。
 そして、「何しろ集まる金が雪ダルマみたいにどんどん大きくなって、将来みんなに支払う時に金が払えなくなったら賦課式にしてしまえばいいのだから、それまでの間にせっせと使ってしまえ。」と。そのとおりやっているんですよ。
 だから、先ほど申し上げました年金運用基金というのは、この年金福祉事業団の遺伝子が入っておるんですよ、悪の遺伝子が。だから荒っぽくお金を使う、どう残すかという議論は一つもできない。どんなに審議会が物を言っても、その審議会どおりしないんですよ。これは総理が得意の、ぶっつぶすしかないんですよ。三月までに、どうですか、総理、ぶっつぶしませんか。
小泉内閣総理大臣 いや、上田議員の御指摘、実に大事なところを突いておりまして、だからこそ私は、年金福祉事業団、これは廃止しなきゃいかぬと言って、厚生大臣のときに廃止を決定したわけですよ。なぜかというと、年福も簡保も、ホテルとか保養地をつくって利益が上がるわけないんですよ。それを、今までよくこんなことを続けてきたなということから、私は、この問題を整合的にやらなきゃいかぬということで、郵政の民営化から財投から特殊法人の改革、やったんです。
 今、年金の問題、非常に重要な点です。これは、デフレ下の運用で、安全、確実、有利、この商品というのは実に難しいですよ。よく考えてみると国債ぐらいしかないんじゃないかと。(発言する者あり)国債もこういう状況で、だから、そういう点、難しい点もありますけれども、今の視点を踏まえて、これは現状のままではよろしくないものですから、何とかこの特殊法人改革の一環として、今のものを壊してどういう新しいものをつくったらいいかということを真剣に考えなきゃならない問題だと受けとめます。
上田(清)委員 予定ではまだまだ実はぶっ壊す話になっていないんですよ。
 特殊法人改革に、総理、大変、先ほども菅代表のときの質疑の中で、いろいろな公約もあるけれども、私の大公約は行財政改革だと言われました。私は、勢いとお気持ちはよくわかるけれども、本当に実践できているのかという検証をするために、実は、認可法人の八十六をくっつけて百六十三にして、今回特殊法人改革やりましたから、非常に、百六十三もなってきたら、わけがわからなくなってきました。
 それで、特殊法人のもともとの七十七だけをどうなったかということを整理したのが1―1表です。ちょっと総理も恐縮ですけれども見てください。どうなったか。案外追っかけていないんじゃないですか、総理、本音のところで言えば。指示はしたけれども、丁寧に見ていただかないと、本当にできているかどうかわからないですよ。
 お聞きしますけれども、具体的に特殊法人は廃止か民営化だと言っておられました。しかし、さはさりとて、いろいろまだあるんで、とりあえず独立行政法人でもやむを得ぬか、そういうお考えのもとに整理をされたと私は多少は同情しております。具体的に、総理、民営化できたのは何ができたんですか。いいですよ、行革大臣でも構いませんよ。
石原国務大臣 個々に……(上田(清)委員「いや、二つ三つ、何も見ないで言えるものだけ言ってください」と呼ぶ)道路公団四公団を民営化いたします。したものは、個別の法人を言いましょうか。(上田(清)委員「見ないで、私も見ないで言えますよ」と呼ぶ)個別法では、石油公団、金属鉱業事業団、特殊会社でありますJR東日本が昨年度完全民営化等々でございます。
上田(清)委員 石原行革大臣、石油公団はことしじゅうに廃止ということでありまして、しかも金属鉱業事業団に吸収するという仕組みになっていまして、明確な意味での廃止じゃないんですよ。しかも、これは独法になるんです。見てください、個別法八のところで、皆さんも見てください、実は余りできていないんですよ。JR三社はもともと民営化されていたんです、中曽根内閣のときに。ただし、もちろん完全民営化でも、それはそれでうんと進んでいるんですけれどもね、むきになって誇るほどのことはない。たばこ産業だってそうですよ。
 では、何が民営化できたんですかという話になってくると、ないんですよ。道路公団はこれからの話。こういうことですよ、総理。総理、意外に意外じゃないですか、どうですか、感想。
小泉内閣総理大臣 これは時間がかかりますよ。それは、道路公団民営化にとっても手続踏んでやらなきゃなりません、民主主義ですから。郵政公社も民営化の第一歩と私は言っていますけれども、公社からいずれ将来民営化を目指してやっているんですから、これは急にはできません。しかし、本格的にやるために、私は、道路公団も石油公団も住宅金融公庫も、郵政の公社化をしていずれ民営化に持っていくというのは、本格的にやり始めているんですから、そんな一年や二年でできっこないです。
上田(清)委員 もっと早くできるものだと国民は期待しているわけですし、三十二と八と一で、合わせて四十に手をかけて、現状維持が一つと、残ったのが三十六。手をかけたのが四十で現状維持が一でこれからやりますというのが三十六で、特殊法人七十七の行方というのは、余り行方がない。
 それから、総理、独立行政法人のいいとこ取りというのは御存じですか。私は、幾つかの委員会で明らかにしておるんですけれども、1―2、見てください。
 まあ本当に独立行政法人というのは、橋本内閣のときに目玉になったいわゆるエージェンシー、イギリスのエージェンシーをまねしたというんですけれども、似て非なるものができてしまいました。五十七のうち五十六が、身分は国家公務員ですよ。人員は、旧組織から九百五十六人ふえました。マイナスになったのは一法人だけ。役員報酬は閣議の決定に拘束されないということで、特殊法人の役員とか事務次官より高い人がいる。そして、二千万円以上の報酬をもらう役員が十一法人もある。
 退職金だけは悪名高き特殊法人方式。総理、よく御承知ですよね。月額で退職金をもらっていくという世にも不思議な物語です。だからぼんぼんふえちゃう。毎月退職金がつくんですよ。いいですね。百万円の報酬をもらっている人は、百分の三十六掛けるの勤続月数ですから、これが退職金ですから。それで、独立行政法人は特殊法人から変わったはずなんですけれども、ちゃんとこの部分だけは引き継ぐ。いいとこ取りですね。
 それで、石原行革大臣、あなたは三割カットしたなんて喜んでいるけれども、冗談じゃない。三割カットしたって、百分の二十八、もし四年任期務めたら、たった四年で一千三百四十四万ももらえるじゃないですか。一生かかってもらう金額じゃないですか、普通のサラリーマンだったら。これで三割カットしていいと思うんですか。総理、思うんですか。こんなものでいいんですか。総理にほしいですね。
石原国務大臣 一生懸命働いている人の退職金をゼロにするのがいいのか、どれだけの仕事をした人にどれだけの金額を与えるのか。常識的な線からいって、一遍に退職金をゼロにするとか半分にするとかということはできないと思います。
 不断の見直しは行っていかなければならないと思います。
上田(清)委員 自前で運営している独立行政法人であれば構いません。一切の国からの補給金をもらわない特殊法人であれば問題ありません。この1―2にも書いております。この独立行政法人にも、ただでつくっているんじゃないんですよ、ちゃんと一般会計及び特別会計から運営費交付金、施設整備費補助金等の補助金が支出されているんですよ。平成十三年度は三千七百六十億。決して低くないですよ。そして、十四年度はまた百億ぐらいふえています、三千八百億。
 総理、歳出カットを行革でということで、この特殊法人改革で一体幾ら削減できたんですか。率直に、腰だめの数字で結構です。
石原国務大臣 一昨年度一兆一千億程度、今年度で三千億程度でございます。
上田(清)委員 それが違うんですよ。表面上の数字ですよ、それは。表面上の数字でしょう。
 いいですか、確かに、一兆一千二百五十三億、平成十四年度の予算額では減額している。しかし、十五年度に設立予定している独立行政法人に対する政府支出、財政支出等は八千八百五十七億円ですから、足し算、引き算すれば二千三百億。一兆一千億なんという削減はできていないんですよ。(石原国務大臣「十四年度が一兆です。今年度がプラスなんです」と呼ぶ)いいですから、それは委員長の了解をとってからしゃべってください。だから、注意をしなくちゃいけないのは、常にそういうふうにしてごまかすんですよ。ごまかしのテクニックなんですよ。
 だから、これを、石原行革担当大臣というよりは、かわいそうですよ、総理、丸投げばかりしちゃ。きちっと総理も応援しないと。私はそう思いますよ、本当に。
 おとといだって本会議で石井副代表の質問に答えて、私は、歳出カットだ、行革で歳出カットだ、行財政改革で歳出カットだということを強調されておられましたし、きょうも言われておりました。だから、どこで本当に切られるつもりでおられるのか、どこをどうすれば歳出カットになるのかよくわかりません。
 今、石原行革担当大臣が言われましたけれども、現実的な数字はまた別な話です。数字で出てきた一兆一千億の話と実際使っているお話とまた別ですから、足し算、引き算しているうちに、わけがわからなくなります。
 本当によく御承知だと思います。国の財布は一般会計だけじゃありません。八十数兆の、特別会計で三百三十兆を使っています。ダブルカウント、トリプルカウント、全部抜いたら本当の数字は二百六十兆でしょう。この二百六十兆を十分明らかにしていないでしょう。
 だから、来年度の予算で国民負担をふやす話が幾つもあります。細かい話になっていけば、たばこだ、発泡酒だ、年金だ、医療費だ、二兆円を超える金額が出ております、いろいろな研究所の発表でも。我が党でも二兆二千五百億という数字をはじき出しております。しかし、さっき言ったように、年金の運用だけで半期で二兆円すっていれば、財布は一緒ですよ、ここに一般会計がある、ここに特別会計がある、日本国の財布は一緒ですから、知らないうちにこっちの方で穴があいているわけですから、何にもならないんですよ、この二兆円の増税なんというのは。
 総理、本当に時間がかかると先ほど言われました。かかる部分もあります。しかし、特別チームをつくって、さっきの年金資金運用基金なんか三月末に廃止するぐらい、やれないですか。少なくとも一年以内にやるとか。どうでしょうか。私は危機を持っていますよ、この年金に関しては。きょうテレビを見た人があしたから納付するの嫌だと言っても、私の責任じゃないですからね。本当に総理、きちっとした答弁をしないと大変なことになりますよ。
小泉内閣総理大臣 私は、行財政改革が先だというのは、消費税を上げろという議論が出てきたから、私の在任中は消費税は上げない、行財政改革が先だ、むだな歳出を削るのが先だということをやって、今回の特殊法人改革も、これは総合的な改革で、一年や二年で今やれと言ったけれども、今、一年でやめると言ったら年金を掛けている人はどうなるんですか。できるわけないでしょう。だから、段階を踏んで、順序を踏んでやると。しかも、一特殊法人じゃないですよ。全特殊法人にかかわるから、私は郵政の民営化から、道路公団民営化からやっているんです。これを一年や二年でできるといったって、絶対無理ですよ。では、郵政民営化を一年でやれと言われてできるんですか。道路公団、一年で民営化するというのはできるんですか。そうじゃないでしょう。
 だから、この独立行政法人、今ちゃんと統廃合あるいは民営化、できないなら独立行政法人。全部独立行政が必要ないというんじゃないんです。必要なのもあるんです。それは御存じでしょう。
 そういうのを手順を踏んで、独立行政法人になったらそれでいいと思っていません。ちゃんと見直している。三年後にまた見直す。時間がかかりますよ、それは。一気にできない。今までみんな言わなかったことをやって、一気にできるわけないじゃないですか。民主党自身だって、全部賛成とか言わないでしょう。そういう点を今やっているんですから、段階を踏んで、手順を踏んで、私の段階においては消費税は上げない、むだな支出、行財政改革を徹底的にやるんだということで言っているんですから、上田さんとは協力できる面がたくさんあると思いますよ。
上田(清)委員 総理、例えば、現実に昨年の方針の中できちっと出ているじゃないですか、年金資金運用基金は十六年度までに検討、決定と。こんなにゆっくりしているじゃないですか。来年になって検討して、その後どうするかを決めるという話ですから、随分ゆっくりした話じゃないですか。
 第一、大蔵省の理財局で、国債百兆円は二人で動かしているんですよ、実質的に二人で。ところが、この百五十兆の年金は年金資金運用基金、百七十人がかかっておりまして、おまけに何十社というところに委託をしておりまして、手数料を毎年三百億払っていまして、これは、債券を買う話だったら来年だってできるじゃないですか、四月から。厚生省でできるじゃないですか。だって、郵政事業庁でやっているんだから。すぐできるじゃないですか、その気になれば。そう思いませんか。
坂口国務大臣 先ほども述べましたとおり、この年金運用部資金の問題は、その廃止も含めて検討するということにいたしておりまして、それらの問題も含めて、これはことしじゅうに決着をする。そして、その前に、実際の資金運用につきましては、もう二月末ないし三月の頭には結論を出すわけでございまして、そこで責任を持って解決したいと思っております。
上田(清)委員 今、大臣は、ことしじゅうに廃止も含めて決定する。本年度ですか、それともことしじゅうですか。
坂口国務大臣 これは、ことしじゅうということに石原大臣との間で合意をしているところでございます。
上田(清)委員 十二月までということですね。
 では、内閣府で出している広報誌の「時の動き」には十六年度中と書いてありますよ。ことしじゅうということは十五年度中ということじゃないですか。どっちですか、本当は。
坂口国務大臣 来年の、平成十六年の国会におきましては年金の改革案も出させていただかなければならないわけでありますから、それまでにすべてのことの決着をつけなければならないというふうに思っております。
 したがいまして、年金の問題につきましても、ことしの末までには結論を得なければならないというふうに思いますし、それらに合わせてすべてを決着したいと思っております。
上田(清)委員 わかりました。内容が決まるのがことしじゅう、そして、制度改革に向けての動きが来年から、こういう理解でよろしいですね。間違いありませんね。間違いないということだけ確認させてください。うなずいておられるだけですから、危ない。
坂口国務大臣 先ほど申し上げたとおりでございまして、そのとおりでございます。
上田(清)委員 ありがとうございます。
 それで、最後になりますが、実は、こういう、大変すてきなというんでしょうか、あちこち転勤される方に非常に配慮をした制度の仕組みがあります。
 実はこれは、東京二十三区の方々は、公務員の基本給に一二%の調整手当がつく。まあこれは、都市の民間との賃金格差の解消だとか、さまざまな物価調整だとかありますから、この左上の部分は何の問題もない、こんなふうに私も考えるところであります。ただ、四十二年以来動かしていないもので、やはり物価もいろいろ下がってきていることだし、このことも少し研究をする必要があると思います。
 それよりも問題なのは、この右下の、あちこちから見たら左になるかもしれませんが、昭和三十六年に異動保障という概念に基づく給与法の一部改正をやりまして、何をやったかというと、東京から青森に転勤して、半年間だけは激変緩和措置で東京と同じ一二%を取ってもいい、そういう仕組みなんですね。ところが、知らず知らずの間に、この東京の調整手当を、青森に行こうと鳥取に行こうと三年間は異動保障をする、こういう制度があるんですよ。
 どうもおかしいと私は思っておりまして、中にはこういう世界にいると私も性格が悪くなりまして、ペーパーだけで異動するやつがいるんじゃないかと思ったもので、いろいろ調査しましたらやはりありました。例えば、鳥取から本当は松山に行かなくてはいけないんだけれども、一日でも一週間でも東京経由で松山に行くと、この一二%の調整手当がついてくるんですよ、三年間ずっと。こんなすごい話があるのかと総理もびっくりされたでしょう。この異動保障そのものもびっくりされたでしょう。私もびっくりしたんです。だから、もともとはこの昭和三十六年の六カ月、これは激変緩和措置、これは国家公務員です。
 それで、六カ月の激変緩和は何か少しわかるような気がする。急に寒いところに行ったから洋服を買ったかもしれないとか、少しは何かわかるような気がいたします。しかし、それが一年になり二年になり三年。私は、農水省だけ一つ調べてみました。そうしたら、九五%また東京に戻ってきます、東京から出ていった人は。九五%戻ってきます。それは明らかにしております、決算かどこかの委員会で。
 しかし、人事院の総裁、来ておられると思いますけれども、人事院の総裁は各省庁の人事管理上の必要な制度だからということで言っておられるから、私はそうは思わぬねと言って、福田長官にもお尋ねしたら、ややちょっと疑問があるなというようなニュアンスのことを答弁でしていただきまして、ああ幾らかましだなと思ったんですけれども。
 総裁、おいでですね。やはり各省庁の基本的な見解として、この異動保障制度というのは人事管理上必要だと、今でも言っていますか。
中島政府特別補佐人 異動に伴う経済的な影響というものを緩和するためにこの措置をとっているわけでございますけれども、人事異動というものを円滑に行うためには、この制度は必要だというふうに各省の官房は言っております。
上田(清)委員 実は、ここに、資料集の中に、余りたくさんあってしつこいんですけれども、3―2から、実は委員会でこれはやりとりをしておりまして、きょう決着をつけたいと思っていますので、あえてやっております。
 人事院の総裁は、とにかく今申されたように人事管理上必要だと。しかし、最初の法律は、総裁、そんなことを言っていないんですよ。激変緩和と言ったんですよ。改正のとき、今度は人事管理上と言っているんですよ。何でこんなに食い違うんですか、同じ法律なのに。
 それで、実は、本当に海上保安庁などは一生懸命やっておられるので、私は敬意を表しています。沖縄管区に行かれるとき、大変だろうという御配慮で、実はこの数年、必ず神戸か横浜を通して、毎年大体約五十人スルーしていまして、それはそれで別の手当を考えていただきたいと思います。しかし、そういう制度を利用する、悪用することが大変問題だと私は思っておりまして、早速副大臣には、今後一切しないという答弁はいただいておりますが、私は個別に、本当に今人事院の総裁が言っているように、官房はこの異動保障は必要だと言っていると。私は、百人が百人、千人が千人、私の後援者にこの話をしたら、全員だめだと言いました。
 扇大臣、どうぞ。
扇国務大臣 今上田議員がおっしゃいましたように、これは決算行政委員会で御指摘がございまして、昨年の十一月の十四日でございましたけれども、御指摘を受けて、そのときに初めて私もこの仕組みがわかったわけで、それまで私も存じませんでした。
 けれども、海上保安庁としては、特に今おっしゃったように、後は改正したんですけれども、十一管区というのがございまして、御存じの沖縄等でございますけれども、名護、それから那覇、そして中城、平良、石垣、この地方に行く人たちが大変、希望がないというと変ですけれども、なるべくなら行きたくないという御希望も多くて、その人たちを、一たん横浜へ行ったりなんかして、そういう制度を利用して保障していったということが、私は、それがいけないということをよく本人たちも、あるいは海上保安庁も、これを皆さん方が海上保安庁の職員としてあるまじき行為であるということで、心から私もおわびを申し上げながら、これは改正していくべきであるというふうに海上保安庁に言っております。ただ、そういう僻地に行く人たちに対しての何らかの、精神的なものとか何かは必要であるとは思っておりますけれども、それが長くならないように、三カ月ということは長過ぎるのではないか、また、帰ってきてからも三カ月続いているというのは……(上田(清)委員「三年」と呼ぶ)三年というのは長過ぎるということは事実でございますので、これは改正させていただいて、謝っておきたいと思います。
上田(清)委員 扇国土交通大臣は、三年は長いんじゃないか、改正させていただきますということですけれども、給与法ですので、多分所管のエリアではないと思います。
 塩川大臣、塩川大臣も、これを予算で認めるかというようなときに、これはおかしなことだという、まさに正鵠を得た答弁をされましたね。改めて、この異動保障は、財務省でも官房から、やれ、やれと言っているんですか。
塩川国務大臣 私は、昨年の十一月、上田さんが質問された決算委員会でしたか、それで私は初めて知りました。あら、ぼろいことあるんやなと思って聞いておったんですが、しかし、これは確かに、激変緩和は多少は考えてやらにゃいけないが、三年とか何年というのはちょっと行き過ぎだ。ですから、やはり本人も異動するということは精神的にも大変なことですから、ある程度の期間は見てやるということ。しかし、この制度を悪用して人事を動かすということはよくないと私は思います。
 もしそういう勤務地があるならば、その勤務地に対しての手当は見てやるということにしてもいいとしても、この制度を利用して人事を動かす、こういうことはよくないと思います。
上田(清)委員 人事院総裁の言っていることと、どうも大臣たちは違う意見を言っておられますので、一、二まだ聞きたいと思います。
 法の執行をつかさどる法務大臣、官房の方はどう言っていらっしゃるんでしょうか。大臣はどんなふうに考えられるんでしょうか。
森山国務大臣 この異動保障制度というのは、人事院の総裁がおっしゃいましたように、異動に伴う経済的あるいは精神的な影響を少しでも和らげるため、異動が円滑に行われるようにという趣旨で始まったものだと思います。
 その趣旨は確かに重要なことだと思いますが、その具体的なやり方について改めるべき点があるかというふうに私も思いますので、今既にお話しなさいましたほかの大臣方の御意見もよく伺いまして、改善するべきものはしていかなければならないと思います。
上田(清)委員 ちょっとお待ちください。
 本会議で、僕らのところでいつも平沼大臣が非常に誠実に、余り原稿を見ないでお答えしているのに、尊敬で、我々も立派な大臣だなと言っております。立派な答弁が聞かれるんじゃないかなと思っておりますので、この問題についてひとつよろしくお願いいたします。
平沼国務大臣 私は、異動保障というのは、やはり、人事の円滑化等で、僻地に行くですとか、また家族と離れて行く、そういうことでは異動保障の考え方自体は必要だと思っています。
 ただ、私どもの役所で調査いたしましたところ、昨年の七月一日では七百九件ございました。そして、先ほどちょっと上田先生御指摘の短期の異動というのが実は八件ありました。これは、任地から研修という形で東京を経由して、そしてさらに任地に行く、こういうことでございまして、これは明らかにおかしいということで、昨年の八月以降はそれは適用しないことにしております。
 しかし、各大臣から御答弁ありましたように、三年というのはやはり今の現実から考えますと大変長いような気がいたしますし、これは最終的には私決定権を持っておりませんけれども、内閣としてもこれはしっかりと検討すべき課題だ、このように私は思っています。
上田(清)委員 総務大臣が先ほどからうずうずされておられますので。
片山国務大臣 これは給与法で決まっているんですよ。給与法というのは内閣の中で私のところが所管なんですよ。ところが、給与というのは、これは基本的な職員の勤務条件ですよね。それは、労働基本権制約の代償機関である人事院の勧告を受けて私のところで制度化するんですよ。
 だから、人事院の勧告権の範囲でございますが、今いろいろな大臣からいろいろなお話ございましたが、今の情勢から見て、やはり国民の納得が得られる制度でなきゃいかぬと私は思いますので、人事院はもう一度各省庁の官房の意見をよく聞いて何らかの勧告を出していただければ、それに応じて私の方が対応いたします。
上田(清)委員 青森が書いてありましたので、青森県がやっているわけじゃありませんので、一応農水大臣にも最後。
大島国務大臣 人事異動の円滑化という視点からはこの制度は必要だと思いますが、まさに、悪用をしては絶対ならないことであるし、さまざまな問題点について人事院でしっかり勉強しながら、そういうものを踏まえて、改正しなければならないところは改正すべきだと思っております。
上田(清)委員 中島人事院総裁、今お聞きされた大臣の答弁、官房と乖離がありますね、意見が。国民とはもっと乖離があると思いますよ。あなたは国民が見えていないんですよ、この間から全然。あなたに実はこのことが、各省庁の言うことを聞くんじゃなくて、各省庁に言うことを聞かせるのがあなたの仕事なんですよ。だから独立委員会じゃないですか。
 大体、私がこの問題を指摘して、人事院はその後どんな動きをしたんですか。たった一カ月、余り人事異動しない七月と八月だけを調べて、三省にまたがって十四件あります、七日で異動した人が五人、十五日で異動した人が一人、二十五日で異動した人が八人。たった一カ月の調査で、しかも人事異動のない時期に。なぜさかのぼって四月と十月やらなかったんだというんですよ、一般的に異動する時期に。全然やる気ないじゃないですか。
 そして、私は大変、この労働権、そういう貴重なというか大事な問題点もありますから、簡単に言えない部分もあるかもしれませんが、どう見ても、国民的感覚から見ると考えられない。都市だから、物価が高いから、賃金が民間と比べて国家公務員の方が低いから、調整手当をくっつけています、では地方に行ったら激変緩和でくっつけて、そのまま三年間また保障します、人事管理上必要だと。だれが聞いてもだれが見てもわからない話を、人事院は平気で、そうですか、ごもっともですというような話を言っているんじゃ、もう解散してもらった方が早いね。
 それで、実は、もう先走って廃止法案も用意しておりまして、ぜひ総理、超党派でひとつこれを出しますので賛同していただきたいというふうに私は思っております。
 その前に、ちょっと人事院総裁……(発言する者あり)異動保障のですね。いいですか、人事院総裁、一つ約束してもらいたいんですが、実は、この一カ月の調査だけの後に海上保安庁も出てきましたし、私のところではまだ精査が終わっていませんが、もう一件出てきております、この異動保障の悪用について。まだ精査が終わっていません、この時点では。それで確信を持てませんけれども、まだほかにもある可能性だってあると思いますので、もう一回この一カ月以内の異動を各省庁に確認していただきたいと思います。この七月、八月という異動の少ない時期じゃなくて、異動の多い時期をきちっと把握してもらいたいんですが、お約束できるでしょうか。
中島政府特別補佐人 昨年の七月に調査しましたのは、別段人事異動が少ない時期ということでやったわけじゃございません。通常、通常国会が終わった後というのは人事異動の時期でございますので、その時期を選んでやったわけでございますので、その点は誤解のないようにお願いしたいと思います。
 質問にお答えいたしますと、ことしの四月なら四月という時期が人事異動の時期として一つあるかというふうに思いますが、そこらをめどに調査をしてみたいというふうに思います。
上田(清)委員 来年度の四月じゃなくて、十四年度の四月を調査していただきたい。そうすると早いんですから。二、三週間ぐらいで結論が出るでしょう。答弁してください。
中島政府特別補佐人 やりたいと思います。
上田(清)委員 余りやりたそうな顔をしてないよ。全然してないよ。腹が立ってきますよ。
 総理、時間も参りました。この異動保障制度、これ、給与法の一部改正という形になりまして、事実上の廃止法案を私は提案させていただきたいと思っております。人事管理上問題だと言ったのは、東京から行く人にとって問題かもしれませんが、地方局で、地方の支局で受け入れる人たちにとっても大変問題なんです。同じキャリアで、地方建設局なら地方建設局、今はもうそう言わないと思いますが、農政局なら農政局で採用された人たちもいます。そこに同じような立場の人が東京から来て、同じ仕事をしてなぜ一二%調整手当がついているんだという現地での不公平感、そういうのがあるんだということを、人事院の総裁、そっちの方も見てくださいよ、中央ばかり目を向けないで。そのことを申し上げて、終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
藤井委員長 これにて菅君、仙谷君、上田君の質疑は終了いたしました。
 次に、中塚一宏君。
中塚委員 自由党の中塚です。
 補正予算案の審議ですけれども、けさから聞いていまして、小泉総理は、政策転換をしたわけではないと、したのではないかと聞かれて否定をされているわけなんですが、私は、政策転換じゃなくて政策破綻だと思うんですね。
 補正予算を提出しなければいけなくなった理由というのは、それは景気が悪くなって税収が落ち込んだということが一番大きな原因にほかなりません。税収が落ち込まなければ、補正予算を提出されることはなかったはずです、国債を発行しないというのが総理の方針なわけですから。
 デフレといいますけれども、供給過剰と需要不足と二つですね。そういう需要不足ということについて言えば、三十兆円の国債発行枠を設定する、政府の歳出を抑えるということですから、これは需要が落ち込んでデフレが加速するのは当然なんですね。だから、私たちは、このやり方では財政も健全化しないし景気回復もないということをずっと主張をしてきたわけです。守れとか守るなとかいう話じゃなくて、三十兆円国債発行枠なんか守れませんよということをずっと主張をしてまいりましたし、事実、今そういうふうになってしまっているわけです。
 貴重な年月を使ってそのことを証明したということにすぎないわけですけれども、政策転換ではなく政策破綻だというふうに思いますが、総理、いかがですか。
小泉内閣総理大臣 それは、私は必ずしもそうは思いません。経済の状況を見ながらいかに必要な手を打っていくかという中で、予算も組まなきゃならないわけでありまして、私は、必要な手を打ってデフレを克服しながら改革を進めていくのが適切だと思ったからこそ、十四年度補正予算を組み、十五年度予算と切れ目なく執行しようということを考えているわけであります。
中塚委員 その言い方が、言い方は新しいのかもしれないんだけれども、やり方というのは今までの政治と何にも変わっていないわけですね。財政構造改革という名のもとに歳出をカットして、国民負担を行って、財政再建ということだけを一生懸命おやりになる。その結果、景気が落ち込んで、落ち込んだ景気を立て直すために補正予算案を編成する、そして財政を悪化させるということの繰り返しなわけです。
 去年も、通常国会、本予算の前に補正予算案が提出をされました。ことしも同様ですけれども、去年とことしと違うのは、この今年度の予算というのは、総理自身が編成をされた予算ですね。昨年度は、森内閣が編成をした予算を引き継いでやられた。今回は、総理は、もうだれの意見も聞かないで、御自身の思うとおりに存分におやりになったはずなんです。
 総理はいつも野党の意見も聞いてとか、そういうことはおっしゃることはおっしゃるけれども、野党の意見を聞くというふうに言う総理の政策課題というのは、与党の中で意見が割れていることがほとんどなんですね。有事法制でも何でもそうですけれども、与党の中で意見が割れている。だから、野党の意見も聞くということをおっしゃるが、この予算に関して言えば、十四年度予算というのは、総理はやりたいようにおやりになって、そして今こういうふうな結果になってしまっているわけなんです。
 そういう意味で、財政規律ということも先ほど来、午前中からずっとおっしゃっているけれども、当初予算を三十兆円の国債発行枠で縛って、二カ月近くかけて審議をして、また補正を出して、補正は何でもありというふうなことでは、これは本当に今までの政治の繰り返しでしかないし、財政規律と言われたって、それはちょっとそうですねと言うわけにはいかないと思いますが、今までの政治の繰り返しじゃないかということについてはどうお考えですか。
小泉内閣総理大臣 どういう点から批判されているのかわかりませんが、議員は、すると、三十兆円は、国債発行は多過ぎる、もっと抑えろというのか、あるいは三十兆、もっとふやせというのか。私は、歳出をやはりカットする努力はしなきゃいかぬ、景気にも配慮しなきゃいかぬ、そういう中で改革を進めていこうというんですが、歳出をカットしつつ、この税収の状況を見て、三十兆じゃ足りないというのか、もっとふやせというのか、その視点が私はわからないもので、どういう点から批判されているのか聞かせていただきたい。
中塚委員 そういうことを言っているわけじゃありません。三十兆円の国債発行枠を設定して、結果、景気もよくならなかったし、財政だって悪化しているじゃないですかということを申し上げているんです。
 それともう一つは、本予算で公共投資を削減されましたね。前年度マイナスになりましたね、今、補正予算でまた公共投資を追加しているじゃないですか、こういうことが今までの政治の繰り返しじゃないですか、何にも変わってないじゃないかということを指摘しているんです。
小泉内閣総理大臣 歳出の中身が違っています。必要な分野にはふやす、そして切るべきは切る。いたずらに国債を発行して公共事業をふやすという今までのやり方とは完全に違っています。そういう歳出の見直しも進めている。
 私は、議員が言われるように、それでは三十兆円の枠とそれから歳出カットと、その穴埋めをどうやってしようかということに苦心をしたわけでありまして、そういう中でのぎりぎりの財政出動もしなきゃならない、財政規律も考えなければいかぬ、なおかつ、雇用対策あるいは中小企業対策もしなきゃいかぬ。そういう中でいかに改革を加速していくかという、多方面に目配りをした中での予算でありまして、それぞれ見方によってはいろいろ違うと思いますが、限られた中での最大の努力をしているということであります。
中塚委員 要は、経済財政運営の原理原則がないということを申し上げているんですよ。結局、財政再建もできない、財政赤字はふえちゃったわけですね。景気もよくなってないわけです。
 そういう、公共投資の中身を変えているというふうにおっしゃるし、何か都市型公共事業とかいうことも言われているようですけれども、都市再生ですか、でも、中身は稚内から石垣までみんな入っているじゃないですか。今までのことと何にも変わってないじゃないですか。地方の負担をふやさないということからなのかもしれないけれども、何か政府の施設の改修とか、そんなことばかりになっておるじゃないですか、中身は。全然今までの政治と変わっていないということ、そのことを指摘をしているわけです。いかがですか。
塩川国務大臣 公共事業の内容が変わってないじゃないかとおっしゃいますけれども、今度の補正予算を見ていただいたらよくわかりますが、随分と変わっております。要するに、従来の公共事業ではなくして、公共的事業あるいは公共的施設というものに重点を置いてもらっておりまして、例えてこれは言えば随分長い時間でございますから、質問時間を削ったらいけませんから余り言いませんけれども、例えば都市構造などというのも、改革、変えるというのは、要するに道路の、一般生活道路を変えるということでございますし、また、バリアフリーを積極的に導入をする、あるいは連続立体高架によって都市の中の整備をするとか、それからもう一つ、環境問題に随分と、かなり資金を入れております。そういうことで、従来の公共事業とは違うということだけははっきりしております。
中塚委員 公共的事業だから公共施設をお直しになっているのかもしれませんが、ただ、この補正予算が終わりましたら、次に本予算の審議をするわけですね。で、当初予算でマイナスにしてしまうわけですね、公共事業にしても。そしてまた補正予算で追加をするというふうなことをするのなら、別に当初予算で削る必要はないんじゃないですか。総理の三十兆円の国債発行枠というものへのこだわりが株価を下げ、倒産しなくてもいい企業がこの一年間倒産をし、失業をしなくてもいい人が失業をしているわけですよ。
 後から景気が悪化をして補正予算でそういうふうな経済対策というのをやるのであるなら、当初予算は削らなくていい。年中で余れば、要らないというふうに思えば、年中で減額補正すればいいじゃないですか。単年度予算ですから、まあいろいろ問題はあると思いますけれども、でも、年度末になったら全部それを消化をしなければいけないということで、道路を掘り返したり、いろいろなむだなこといっぱいありますよ。だから、当初予算では削らない、そのかわりに年度中で公共投資減額補正するというやり方だってあるじゃないですか。いかがですか。
    〔委員長退席、斉藤(斗)委員長代理着席〕
小泉内閣総理大臣 そんなことしたら、むだなところなんかカットできるわけないじゃないですか。当初予算を多めに切っておいて、どんどんどんどん予算要求を出しなさい、そうしたら、各役所は、あれもしたいこれもしたい、勝手な要求をどんどん出してきますよ。
 多目にやる、多目に予算を提出する、これだったら、どこが必要か、もう地方に行けばどこでも要求するんですから。どこも足りない、あそこもやってくれ、ここもやってくれ、道路もつくってくれ、下水道もつくってくれ、住宅もつくってくれ、公園もつくってくれ。それを、たくさんつくってやったら、もう、必要なところと不必要なところが混同されちゃって、本当に必要な、むだなところをカットしようという、そういう予算なんかできっこないですよ。
中塚委員 各省のそういう要求を抑えていくのが財政構造改革なんじゃないんですか。そんな、わいわいというふうに言われて、出さなきゃいけませんから削りますなんて、知恵も何にもないじゃないですか。それに、この補正予算はそういうことではないんですか。では、どうして公共投資が入るんですか。当初予算で削ったんだったら補正予算で入れる必要ないじゃないですか。もともと国債を発行するというのを抑制をしたいということをずっとおっしゃっているわけでしょう。小泉内閣の経済財政運営の方針というのは一体どこにあるんですか。
小泉内閣総理大臣 限られた財政の中で必要な事業はやる、むだなところはできるだけカットしていく、これが必要であります。
中塚委員 本当に政府の予算というのは、結局資金繰りだけの話で、なけりゃ国債を発行して借りてくるということをずっと繰り返していらっしゃるわけで、財政を健全化するというふうな目標からしても、景気をよくするという目標からしても、やはりこの政策というのは、転換じゃなくて、そもそも無理筋で破綻をしてしまっているということ、そのことを申し上げておきたいというふうに思います。
 また、公債発行できないということ、それはそのとおりだろうと思いますし、だから従来型の景気対策をできない、やれないというのも、それはもう理解はできます。でも、では従来型のものをやらないということをもって何か新しいことをやっているかというと、実はその新しいことというのがほとんどないわけですね。金がなくたって、別に新しい需要というのを起こしていくことはできるはずなんですよ。もう総理になられて間もなく二年になるわけですね。それは、予算とは関係ない部分でもできることはいっぱいあるはずなわけです。お金がないから従来型はできない、でも新しいものは知恵がないからできないというふうなことだから景気はどんどん悪化をしてしまうということになるわけですね。
 観光産業というようなことを午前中もおっしゃっていまして、それは観光産業、新しい希望になっていってほしいというふうに思いますけれども、では、何で空港の着陸料を引き上げたりして、みんなが旅行に行くというのを、負担増をするようなことをされるのか。全然それは政策として整合性がとれてないんじゃないかということですね。
 また、道路公団の民営化論議にしても、民営化するということを決めてしまえば、それはもう、新しい道路をつくるかどうかというのはその新しい会社が決めればいいことであって、民営化するというふうに総理はいつも自慢たらしくおっしゃるけれども、結局、何だかんだと議論がもめているだけで、世の中何にも変わっていかないじゃないですか。
 新しい需要の追加という意味では、例えば携帯電話とかは、昔はNTTが独占していたものを民間に開放をして、新しいビジネスになっているわけですよ。電気通信事業というのも、大変大きな設備投資するようになりましたし、電話機だってもう今はただで配っておるようになっている。道路公団だって、今ETCですか、自動料金収受システムというのがありますけれども、これだってその機械が何万円もして全然普及をしていかないわけですね。だから、そういうものをどんどんと民間に開放をしていく、政府の事業の民間開放というものが新しい需要をつくっていくことになるはずなんですけれども、お金がなくてもできる景気対策、経済対策、何でこの二年間できなかったのか、それはいかがですか。
小泉内閣総理大臣 規制改革等、あるいは今言った観光の振興等、お金を使わないでやる方法というものはこれからも考えていかなきゃならないし、民間がまさにそういう点は非常に今活発にやっておられる。欲しいものがないといいながら、今結構売れている商品もかなりあります。
 我々としては、財政支出ばかりが景気回復じゃないという点も重々わかっておりますし、そういう面において、今回、規制改革の一環として、特区構想などは一つの手段ではないかと考えております。
中塚委員 結局、そうやって特区構想等でお茶を濁していらっしゃるわけですから、だから財政の出動による景気対策、景気刺激以外にもできることはいっぱいあるはずなんです。二年間あれば、その間にできたこともいっぱいあったはずです。それをやらなかったということが景気の悪化につながった。
 需要面の話をずっとしてきましたけれども、次に、供給過剰ということですが、供給過剰の解消にしても、これは別に、単に不採算部門をつぶせばいいという話ではありませんね。そんな不採算部門がなくなれば景気がV字回復するなんというのは、それはある会社の例としてはあるかもわからないけれども、一国として、国として考えた場合、そんなことはあるわけがありません。失業をした人がちゃんと購買をする、物を買ってくれるというふうにならないわけですから。だから、不採算部門の切り捨てだけでは、ゼネコンが倒産をして構造改革が進んでいるというふうなことを言っておるようでは、それは、なかなか供給過剰の解消というものもおぼつかないということだと思います。
 要は、我が国産業というものが時代の変化にどういうふうに対応していけるかどうかということですね。IT化とか少子高齢化とかグローバル化というものにどういうふうに対応をできていけるのか、それをどういうふうに国としてアシストしていけるのか。人という資源をちゃんと有効に活用する、働きたい人にちゃんと職場が与えられるというのが、それが国の、政治の最大の責務だし、経済政策の重点もそこに置いていかなければいけないはずです。
 そういう意味で、その供給過剰の解消なんですが、やはりグローバル化の視点というのが大事だと思いますし、きのう総理も参議院の本会議でそういうふうに答弁をされておりますけれども、国際分業体制、しっかりととっていかなきゃいかぬのだろうというふうに思います。
 やはり、アジアと同じことを真っ向から競争していて、それで本当に勝てるか。アジアの安い製品が日本に入ってくる中で、やはり我が国は我が国にしかできないことをちゃんとやっていかなきゃいけない。そういう国際分業が必要だというふうに思いますけれども、そういう意味で、我が国の高コスト構造ですね、デフレ、デフレといいますけれども、デフレの世の中でも、公共料金や税金というのは本当に下がっていないですわ。そういうふうな高コスト構造の是正、あるいは総理は歳出削減ということを言うし、税金のむだをなくすという言い方もされていましたけれども、それも全然国民に還元されていないんですが、そこはいかがですか。
    〔斉藤(斗)委員長代理退席、委員長着席〕
小泉内閣総理大臣 歳出削減をしないと、増税をするか、あるいはまた国債発行して借金をするか、予算を考えた場合ですね。これ、どっちにしても、何をやっても、国民の協力なくしてできないということは事実なんです。歳出削減も、あるいは補助金を削られれば痛みですね。じゃ、それをしないで増税すれば、これもまた痛み。じゃ、増税も歳出削減も嫌だと言って、借金をして国債発行をする、これまた痛み、後への先送り。
 しかし、今の状況で、もうこれ以上増税もできない、国債も発行できないというんで、厳しい歳出見直しをしようという……(中塚委員「むだをなくせと言っているんだ」と呼ぶ)当然、歳出見直しの中でむだを省くということがなければ歳出はカットできません。多くの人は全部必要だと言って、各省庁予算、むだは何もないといって言ってくるんですから。
 だれが考えたってそうでしょう。政党によっても、ある政党はこれはむだだと言っても、別の政党はこれは必要だと。役所によっても、ある役所はこれは要らないと言っても、その役所は必要だと。そういう意味において、歳出の見直しは必要であります。
 そういう点を、ぎりぎり今詰めていく必要がある。できるだけ歳出を見直しすることによって将来の負担をふやさないような視点が、特に予算編成の場合には必要ではないかなと思っております。
中塚委員 今、増税と歳出削減の話しかされなかった。むだをなくすということについて伺いたかったんですが、余りそのむだをなくすということについて御答弁いただけなかった。本当に残念だというふうに思います。
 むだをなくすという意味では、やはり、医療制度改革なんか、制度改革は先送りして負担増を先行させるとか、あるいは天下りの問題だって全然なくなっておりませんし、まだまだできるところなんていっぱいあるはずですね。午前中、菅代表が言っておられた補助金の廃止と地方の独自財源化、私どもも同じ法案を国会提出しておりますけれども、それでもたくさんむだを省いていけるはずなわけです。
 国際分業体制というものをとっていくときに、やはり日本の高コスト構造というのは改めていかなきゃいけませんし、総理自身がむだをなくすというふうに、税金のむだ遣いをなくすというふうにおっしゃっていたからお伺いをしたんだけれども、ちゃんと答えていただけなかったのは本当に残念です。
 やはりこれからの国際分業体制の中で、要はほかの国にはできないことですね、日本のリーディングインダストリーというのをどういうふうにつくっていけるかということが一番重要なことで、不良債権の処理とか財政赤字の解消というのは、それは確かに重要ですけれども、そのことのためにそれをしたって絶対に解決はしないですね。
 だから、財政赤字ということになれば、負担増とか、歳出削減と今おっしゃいましたし、不良債権でも銀行に公的資金を注入しろというふうな話が出るようですけれども、本来は、日本の新しいリーディングインダストリーというのができて、そこがばりばり稼いで税金を納めてくれれば赤字だってなくなるわけだし、そこがちゃんと利息を返してくれれば不良債権問題だってなくなっていくはずなわけですね。
 だから、そういう意味で、高コスト構造を解消する、そして負担を減らす。そういう税や公共料金というものがやはり民間の新しい芽をつぶしている、ふさいでいるというようなところがいっぱいある。規制の撤廃、緩和というのも同じことだと思います。
 ただ、けれども、こういう政策は早くやらないと、急いでやらないと、やはり歳出がない、財政出動を伴わない、今ずうっと言われる、そのような真水というものがないわけですから、その分スピードが必要になってくるわけなんですけれども、全然進んでいないということ、それが新しい経済対策、景気対策がちゃんと動いていかない理由ということだと思うんですが、そこはいかがですか。
小泉内閣総理大臣 それは、規制改革にしても法律が必要であります。あるいは、高コスト構造を直す場合には民間企業の努力も必要だと思います。
 例を挙げれば自動車。低公害車にすると方針を出せば、予想以上に低公害車の開発が進んでいく。そういう中において企業は、今まで高かった低公害車、増産することによって費用もある面においては下がるでしょう。そして、この厳しい状況の中でも、自動車なりカメラなりというのは、低コスト構造を維持しながら生き生きとやっている企業もたくさんあるわけであります。
 また、環境保護と経済発展を両立させなきゃいかぬということで、バイオの事業、ナノテクノロジーの事業、今目覚ましく各企業なり国なりが精力的に力を入れてやっておりますが、こういう点につきましても、稲わらから自動車の燃料をつくるとか、あるいは今生ごみを、卑近な例でありますけれども、処理して肥料に生かすとか、これは国を挙げてやっていますが、最近は家庭でも静かなブームだというじゃないですか。こういう、国がやらなくても民間が環境を大事にしよう、あるいは自分たちの生活をよくしていこうという点、目に見えない努力は非常にしているんです。こういう点をやはり後押ししていかなきゃならない、ごみゼロ社会を目指す。
 私は、リサイクル循環型にしましても、最初、環境省なり農水省だけが生ごみを全部処理してやっていたのが、今は全省庁に広げようとしています。そういう点において、お金を使わなくても、方針を出すだけで企業が積極的に動いてくれる面も随分あるんです。そういう点をやはり、余り暗い面ばかりじゃなくて明るい面も見て、やる気のある企業はどんどん頑張ってもらうという見方も必要じゃないでしょうか。
中塚委員 そういう面をお話しされるときに、もうちょっと元気よく絶叫調でやっていただきたいんですけれども、何か詰まり詰まりお話しされるのを聞いているとだんだん不安になってきましたが、申し上げているのは、民間が頑張っているのはそのとおりですよ。民間が一生懸命やっているのはそのとおりです。経済というのは民間のものなんですから。だから、政府としてそれをどういうふうにアシストしていけるのか、高コスト構造をどうやって是正できるのか、税や公共料金の負担をどうやって減らせるのかということをお伺いをしているわけなんです。
 むだをなくすというふうにおっしゃるけれども、それなら、どうして、この後審議になる来年度の税制改正は多年度中立ということになっているんですか。むだを減らすんだったら、減税だけでいいじゃないですか。歳出削減で財源を確保すればいいことですよ。
 そもそも構造改革というのは、国の統治のあり方を変えるということで、国が民間から金を吸い上げて、使い道を決める、そういう方式をやめるということですね。だから、税制というのは、まさに国と民間との資金の配分にかかわる問題になってくるわけですから。もちろん、減税をするんだったら、それは歳出削減をやっていかなきゃいかぬということになるわけですよ。ぜひともそこは、むだをなくしていくということをもう午前中ずっとおっしゃっているわけなんだから、そっちの方へ向けて取り組んでいただきたいというふうに思います。
 次に、公務員制度改革についてお伺いをいたします。
 公務員制度改革ですが、政府が公務員制度改革大綱というものを決めた。それについて、連合及び連合官公部門連絡会というものがILOに提訴をいたしまして、昨年十一月七日から結社の自由委員会というところで審議をされまして、また、二十一日にはILOの理事会で正式に勧告というものが採択をされております。
 今回、その公務員制度改革ですけれども、もともと、働く人にはみんな労働基本権というものがあるわけですね。ところが、公務員の場合は労働基本権を制約しているということで、人事院というものがあります。政府の改革案というのは、その人事院の担ってきた権限というのを内閣に移すということだし、閣僚が新たに人事管理者になるというふうなことが柱になっている。一方で、能力別の給与体系とかそういったこともおっしゃっているわけなんだけれども、この公務員制度改革ということについて、ILOが条約違反ではないかというふうな報告書をまとめ、勧告をまとめているわけなんです。この条約違反ということについて、どういうふうにお考えになっているのか。
 まず、そもそも総理は、ILOというのを、もちろんよく御存じだと思うんですけれども、国際労働機関ですね、ILOのことを本当によくわかっていらっしゃるのかどうか。昨年末の臨時国会でもこのILOの件で答弁をされておられましたけれども、ILOというのは、別に労働者側の団体というわけじゃなくて、政労使で構成をされている、そういうふうな国際機関なわけですね。そして、その政労使というものが、この結社の自由委員会では全会一致で、日本の公務員制度というものは国際労働基準に合っていないという勧告を出しているわけなんです。小泉総理の内閣の閣僚には、そんなことはどうでもいいというふうな発言をされて議事録を削除になられた方もいらっしゃるようですけれども、大変に重いことだと私は思います。
 そして、日本から理事も送っている、政労使、理事を送っているわけですね。そして、分担金だって、アメリカに次いで多く負担をしているわけなんです。だから、グローバルスタンダードといっても、まさに日本は、ILO発足以来主要産業国として深い関係を持ってきているわけですね。そういったところから、今般のこの公務員制度改革が条約違反であるというふうに指摘をされたということについて、どういうふうにお考えですか。
小泉内閣総理大臣 日本の状況というものを誤解されないようにILOにも説明していく必要もあると思います。もちろんILOの存在の重要性を認識しなきゃなりませんが、各国それぞれ事情があると思います。これから、日本としても、誤解を持たれないように、国際社会で通用している、国際社会の中で、いかに政労使が協力して、このILOを尊重しながらやっているかという点についても、より努力が必要ではないかなと思っております。
中塚委員 というわけで、実は昨年末、民主、社民そして私ども自由党三党でジュネーブの方に参りまして、ILOに行ってまいりました。そして、労働基準局長さんにもお目にかかりましたし、結社の自由委員会の方にもお目にかかって、そういった、ILOが今回勧告を出した意図等について伺ってまいりました。
 総理、今、よく話をしていきたい、また聞いていきたいというふうにおっしゃっておられたけれども、では具体的に、この勧告について、政府として調査団を派遣されたり、あるいはILOを日本に招いたりされたことというのはあるんですか。いかがですか。
坂口国務大臣 中間報告につきましてはよく聞いておりますし、そしてまた、最終結論が間もなく出るということでございますから、それは十分に私たちもしんしゃくしていきたいというふうに思っております。
 現在のところ、まだ最終決定が出ておりませんし、その後の行動というのをとってはいないところでございます。
中塚委員 今坂口大臣がおっしゃった中間報告という意味なんですけれども、実は、その点もILOへ行って聞いてまいりました。
 中間報告というのは、それは日本でまだ公務員制度改革が進んでいる、法案もまだ出ていないということだから中間だということなんですね。だから中間報告というふうな名称になっているけれども、しかしながら、その結論部分、勧告の結論部分については、それはもう変わりようがないというふうに言っているわけです。結社の自由の原則というのは、世界じゅうあまねくところで適用されなきゃいかぬし、まして日本はILO加盟国なんですね。そういう意味で、中間報告とはいいましても、事態が進んでいるから中間報告ということであって、結論部分は変わりようがないということなんです。
 条約違反であるというふうな指摘を受けたということと、あと、ちゃんと労働基本権を付与する方向で改革を進めろというふうな部分については、これは変わるところはないということを私はILOに行って調べてまいりました。いかがですか。
坂口国務大臣 しかし、最終報告が出るということでございますから、それを拝見いたしまして、今までの政府の方針というものとの整合性、どこがどう違うのかといったようなこと、詳細につきまして一遍検討したいと思います。
中塚委員 いや、それは、私は日本人として本当に、私の政党の内閣じゃないけれども、やはり重大な誤りを犯すことになりかねないというふうに思いますよ。
 公務員制度改革の趣旨もやはり官僚主導をやめようということですね。行政改革の趣旨も官僚主導をやめようということだと思うんですけれども、坂口大臣は自分の役所からどういうふうにお話を聞いておられるのかわからないけれども、最終報告が出たとしても結論の部分は変わらないわけなんです。ですから、もう我が国はILOの勧告に従って公務員制度を仕組んでいくよりないんですよ。いかがですか。
坂口国務大臣 ですから、それを見て検討するということを言っているわけでありまして、我々は最終報告を見て検討したいと思います。
中塚委員 では、その検討のあり方なんですけれども、ILOでは三月に理事会、六月に総会というものが開かれます。ILOは、その三月、六月までに日本政府から、法案ができたら法案を報告してもらえるものだと思っているし、六月までにちゃんとそれができれば聞かせてもらえるものだというふうに思っているわけなんですけれども、そのことは、ちゃんとILOと協議をするということはお約束をいただけるんですか。
石原国務大臣 ILOの方に、法案が詰まってきた段階で十分に情報提供を行わせていただきたいと考えております。
中塚委員 それでは、もう結論というのはほとんど見えているわけなんですけれども、今般、ILOから出されました勧告の方向に沿って公務員制度改革をされるということでよろしいんですね。
石原国務大臣 この点につきましては、ILOの側にも私は誤解があると考えております。
 と申しますのも、これまでILOの側が、先ほど委員が御指摘になりましたような労働基本権の問題について、日本が人事院という第三者機関を置いて行っているということに対して、条約違反であるというような御提言をいただいたことがないわけであります。
 私どもといたしましては、昨年取りまとめました公務員制度改革大綱に沿って案を今検討している最中でございまして、骨子がまとまり次第十分な情報提供というものをILOの側に図っていきたいと考えております。
中塚委員 ILOは、要は、今般の公務員制度改革というものが行われるということをきっかけに今度の勧告というものを提出しているわけですね。要は、今般の公務員制度改革も国際労働基準に合っていなければ、今までの日本の公務員制度だって労働基準に合っているとは言えないということを言っておるわけですよ。各国のおのおのの事情には配慮をしてきたつもりだ、でも、今回変えるのなら、何でILOが言うとおりに変えられないのかということを言っているわけなんです。
 今、石原大臣が改革大綱の方向に沿ってというふうにおっしゃったということは、勧告はもう関係ないということでいいんですか。
片山国務大臣 少しややこしいんですが、公務員制度改革の方は石原大臣が特命でやっておりますが、公務員制度全体は私どもの方で担当しておりますので。
 今回のILOの中間報告は、それはそれで私は重いものだと思っております。中間報告だから軽いものだなんて考えていない。しかし、今までのILOの見解と相当変わっているところがある。あるいは認識が大分何か低くなっているんですね。そういう意味で、我々はそういうことをはっきりILOに言わにゃいかぬと思うんです。例えば、消防職員や監獄職員の団結権の問題でも、地方団体における地方公務員の登録制度の問題でも、あるいは代償機関、今の人事院の代償機関や基本権制約の問題でも、前と変わってきているんですよ。
 だから、そのためにはコミュニケーションを十分して、向こうが誤解があるところや認識が変わったところはちゃんとこちらの立場を説明した上で私は合意を得るべきだ、こういうことを言っているので、中間報告が一つも変わらないから何にもやらないでいい、そんなことは思っていません。これから大いにコミュニケーションをやってまいりたい、こう思っております。
中塚委員 そういうふうにおっしゃるんですが、じゃ、ちゃんと説明に行かれているんですか。そういうふうにはILOの方から聞いていないんですけれども、ちゃんと御説明されているのか、日本の公務員制度の現状等について。もうそんな時間ありませんよ、三月が理事会なんですから。公務員制度改革だって、予算が終わればお出しになる、そういう準備の方向で進められているんでしょう。
片山国務大臣 ジュネーブの代表部には厚生労働省からそういうアタッシェもおりますし、私どもの方もおりますし、そういう皆さんを通じての接触は常時やっておりますし、それから、文書その他でのいろいろな意見交換もやっておりますので、代表団を直ちに派遣するかどうかということじゃありませんが、その辺をよく考えたいと思いますし、職員団体の方も大変な関心があるわけなんで、組合の皆さんの方も、その辺とも十分相談いたしたいと思っております。
中塚委員 今、組合とも十分相談をするというふうなお話がありましたけれども、ILOの勧告の中では、リッスンド、ノット・ハードというふうに言われているわけですね。要は、聞きおかれたけれども聞き入れてはもらえなかったというふうなことを、もう勧告の方でも言われているわけなんです。
 皆さんが組合ともちゃんと話し合っていくということならば、そういう場というものをきちんと設定をされるのかどうか、そこはいかがですか。
片山国務大臣 その点は、関係各省庁集まりまして、十分相談をして対応いたしたいと思います。
中塚委員 これだけの質問をしても、三人の大臣が立ったり座ったりするぐらいで、本当に公務員制度といえば我が国の根幹にかかわることであります。
 私は、やはり能力別の給与体系なんかを導入されるということならば、もう公務員にも労働基本権をちゃんと付与して、そして社会的対話というものをしていくべきだというふうに思いますよ。だから、今のこの制度を設計していくという中で、もう社会的対話というのは始まるわけなんですよ。
 だから、あいつらはみんな悪いことするみたいな、そういう決めつけじゃなくて、ちゃんと私たちが選挙で選んで多数派をとった人が今与党として政府の運営をされているわけなんだから、そういう意味で、だれがAでだれがBなんという話じゃありませんから、国民の政府なんですから、そういう公務員制度というものはちゃんとオープンに議論をしていただきたいというふうに思います。
 総理、最後に一つだけ伺いますけれども、この条約違反だというふうに指摘をされたこととの関連なんですが、我が国憲法は、日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを遵守することを必要とすると書いてあるんですが、いかがですか。
小泉内閣総理大臣 遵守します。そして、いろいろ誤解を解くための努力もし、今後、ILOに関しましても、よく意見を踏まえて、公務員制度改革にも生かしていかなきゃならないと思っております。
中塚委員 気に入らないから脱退するなどというと北朝鮮と同じですからね、よろしくお願いします。
藤井委員長 これにて中塚君の質疑は終了いたしました。
 次に、山口富男君。
山口(富)委員 日本共産党の山口富男です。
 私は、まず、長時間労働の問題と雇用にかかわって質問したいと思います。
 愛知県の豊田市にあります豊田労働基準監督署が二〇〇一年の九月に、今総理のお手元にも資料が届いたと思うんですが、労働時間実態調査結果、これをまとめております。この豊田市とその周辺の地域には、日本を代表する世界的な企業であるトヨタ自動車とその関連会社が集中しているわけですけれども、今回の豊田労働基準監督署の調査も、もともとはトヨタ自動車がサービス残業の是正勧告を受けまして、それを契機にして労働基準監督署が行ったものなんです。
 調査は、労働時間自主点検表というこの用紙に会社や事業場がみずからの責任で記入するという形がとられておりまして、その際に、労基署の方から、この調査結果に対して勧告や指導はしない、はっきり言えば、ペナルティーを科さないからどうぞ正直に答えてくださいということで、ここに会社側が応じたものだという結果なんです。ですから、会社自身の調査そのものだというふうに言っていいと思うんです。
 私、きょう、その結果の一部をパネルにしてまいりました。この労働時間の実態調査には五十四の事業場が答えておりますが、そこにはトヨタとその関係会社が多数を占めておりまして、そこで働いている労働者数は七万七千九百三十九人に上っております。この年間の実労働時間数の、普通に勤めていらっしゃる方で最大のところが三千六百五十時間になっているという問題なんです。
 一年三千六百五十時間といいますと、とにかく、年間三百六十五日ですから、土曜なし、休日なし、正月なし、夏休みなしと。これで、今総理がおっしゃったように、一日十時間ぶっ通しで働き続けるという事態の方がいらっしゃる。
 率直にお聞きしたいんですが、これについて、私は驚くべき結果だと思いますが、どういう感想をお持ちですか。
小泉内閣総理大臣 いや、今初めて伺ったんですけれども、一日十時間休みなく、よく体がもつなと。これは本当にそうなんですか。(山口(富)委員「そのとおりです」と呼ぶ)これはちょっと異常だと思いますね。
山口(富)委員 本当に体がもつかという話がありましたが、本当にそういう心配をしなきゃいけない事態だと思うんです。
 私、ここでもう一つ、これはどうなっているのかと思いましたのは、この平均の年間の労働時間数なんです。これが二千四百三十四時間。これは一体どういう時間数になるでしょうか。
 政府が発表しております資料を見ましても、一九六〇年、もう今から四十年以上前ですが、そのころの年間の労働時間数というのは、二千四百三十二時間。ですから、ほぼ四十年前の水準の時間数になっているということなんですね。しかも、一番新しい全国の年間の労働時間を見ますと、パートを除いて、事業所規模三十人以上で千九百九十二時間です。これと比較しましても、その差が四百四十二時間。十八日分以上多いということになっています。
 私はこれは、普通に働いている平均的な方で二千四百三十四時間というのは、やはりほとほと異例に長い時間じゃないかというふうに思うんですが、この点もどうでしょうか。
小泉内閣総理大臣 今、年間総実労働時間千八百時間定着に向けて努力しているので、その二千四百時間ですか、これも実に多いですね。率直にそう感じますが。
山口(富)委員 率直にそう感じるということなんですが、普通、全国の労基署に、今いろいろな相談が寄せられます。大概のところは、一つは賃金がなかなか払われていない、それから解雇にかかわる相談、これが通例多いんです。
 ところが、豊田の労基署だけは全く違うんですね。何が一番の相談のトップかといいますと、やはり長時間労働なんです。これが大変多くて、私は豊田の労基署のいろいろな資料を拝見いたしましたけれども、この傾向は五年間ずっと続いています。
 それを示すように、実は家族の方からも大変悲痛な訴えがこの労基署に寄せられているんです。これは豊田の労基署が出しているものなんですが、二つ紹介いたしますと、こう言っております。息子の帰りが毎日遅い。深夜二時、三時になることもある。息子の体が心配で、私も眠れない。これは御両親の方だと思うんです。それから、もう一人の方はこう言っていらっしゃいます。夫の帰りは、平成十二年ごろからいつも真夜中。残業時間は年間で千五百時間ぐらいになる。いつ倒れてもおかしくない状態が続いている。何とか助けてほしい。これが相次いで寄せられている声なんです。
 それで、このパネルをごらんいただきたいんですが、実は厚生労働省が昨年の二月に、過重労働による健康障害防止のための総合対策、これは一般に過労死防止通達とか通知とか言われているようですけれども、これを初めて出しました。それは、長時間労働をやりますと、やはり健康に障害が起こるというのは、医学的にも社会的にもはっきりしてきたことですから、そういう通達を出したわけですね。
 それで、これが厚生労働省が出しているその通達の中身を説明したパンフレットなんですけれども、これは、今全国の労働基準監督署に行きますと、もう玄関の一番目立つところに置かれております。ですから、実際に手にとって見られた方も多いと思うんです。きょうは、この一ページ目を私は借りまして、このパネルをつくってみたんです。
 どういう通達の内容になっているかといいますと、月に残業が四十五時間を超え始めると、四十五時間を超えますとだんだんと健康障害の危険があるということで、黄色い信号が点滅を始めるんです。そして、長くなるほど徐々にその危険が高まっていく。そして、月八十時間を超え始めると、真っ赤に変わっていって、大変危険だということなんです。
 それで、厚労省の通達というのは、だから、いろいろ事情はあるにしても、四十五時間以下に抑えなさいという通達を出しているんですね。今、これに基づいて、労働行政の第一線の労働基準監督署はいろいろな仕事をやっております。
 この通達から見ますと、先ほど私が紹介したこれなんですが、二つ並べて恐縮なんですが、普通勤務の方の月間の残業というのは平均六十六時間なんです、この豊田の労基署の調査によりますと。ということは、この厚労省の通達からいきますと、四十五の八十ですから、大体、ここの四十五よりもずっと危ない八十の方に近い、いわば黄色い信号がずっと点滅の状態だと。これが今度の豊田の労基署が調べた調査結果の姿なんです。
 私、この問題で総理にお聞きしたいんですが、やはりこれはもう、とてもじゃないけれども、命にかかわりますから、そのままの状態にしておくべきものじゃないというふうに思うんですが、この点、いかがですか。
小泉内閣総理大臣 これは健康にも大きく影響していきますし、このままの状況でいいとは思いません。できるだけ労働時間というもの、この短縮に向けて取り組まなきゃいけない問題だと思います。
坂口国務大臣 厚生労働委員会でも以前御指摘をいただいたかと思いますが、かなり長時間労働というものが全体に広がってきていることは事実でありまして、我々の方も、役所の方に対しまして、十分にチェックするように今言っているところでございます。
山口(富)委員 私、この調査の特徴を冒頭に申し上げましたが、今度の調査というのは、これに答えた会社の多くがトヨタとその関連会社なんですね。それで、トヨタといえば世界的な大企業です。そして、そこの会長は、日本経団連の会長も務めている奥田さんです。いわば財界のトップのおひざ元で、家族が悲鳴を上げるような事態が起きている、健康や家庭の団らんを壊すようなそういう悲鳴が上がっている。これは、私、やはり政治の問題として考えなきゃいけないと思うんです。
 豊田の労基署を訪ねましたら、この件につきまして、やみの中から長時間労働が表にあらわれた、そういう話を私聞きました。こうした事態を生んでいるトヨタの社会的責任というのはやはり大変大きいと私思うんですけれども、総理、この問題ではこうした事態が現に起きているわけですから、それを正すような方向で改めていく、それが今政治の責任になっているんじゃないでしょうか。
坂口国務大臣 御承知のとおり、労働基準法の第三十六条に基づきまして時間外労働の限度基準を定めておりますし、時間外労働協定の内容がその基準に適合するものとなるように指導も行っているところでございます。
 したがいまして、今お挙げになりましたような企業でありますと、三六協定、恐らく結ばれているというふうに思います。そうしたことが守られるように私たちも指導していきたいというふうに思っております。
山口(富)委員 私、今坂口大臣の答弁を聞きまして、二つ問題を感じました。
 一つは、協定の話が出ましたが、大臣告示で三百六十時間というものが決まっているわけですが、特別の事情がある場合は別途結ぶことができるという、いわば長時間の労働に行くような道筋が一つあること、これはやはりふさぐ必要があると思っているんです。それからもう一つは、この問題はやはり労使の自治論にゆだねるべき問題じゃないと思うんですよね。
 それで、私、一つ紹介したいんですけれども、NECの社長がことしの年頭の訓示でどういうことを述べているかということなんです。
 こういうふうに言っているんですね。「トヨタ自動車は乾いた雑巾をさらに絞るような努力を続けています。」と。これは笑い事じゃないと思うんです。「それに比べると、当社はまだまだ雑巾に水がたっぷりと染み込んでいる状態であり、利益を搾り出す余地は十分にあります。」と。これは本当にけしからぬ話だと思うんです。
 私は、これを読みまして、NECまでがトヨタのようなやり方を広げるという訓示じゃないか、これは。だからこそ、こんなことを放置していたら、ひどくなるのは目に見えているというふうに思うんです。
 それで、一つ紹介したいんですけれども、昨日、豊田市の隣の刈谷市というところで、労働基準監督署が中心になりましてこういう大会を開いたんですね、過重労働による健康障害防止のための緊急大会、「ストップ・ザ・過重労働」。これはなぜ開いたかといいますと、刈谷市というのは、トヨタ系の大きな会社が本社を六つ置いているんです。この管内で、月に八十時間を超える、これは先ほど言いました赤信号になっちゃうというところですね、月に八十時間を超える過重労働が認められる、これは緊急事態だというので、きのう大会までやっているんです。
 これをきょう新聞報道でも読みまして、やはり労基署というのは、本当に労働基準行政の第一線の機関ですから、その人たちが何とかしなきゃいけないということで立ち上がっているわけですから、やはり私は、政府が企業や労働組合にも呼びかけて、大いにこの問題で仕事をやるべきだというふうに思うんですが、この点、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 そうした大会が開かれましたことも聞いているところでございます。
 三六協定を結びましても特別なときにはという話でございましたけれども、それはあくまでも特別なときでありまして、常に特別というのはないわけでありますから、そこは私たちもきちっとしていかなければならないというふうに思っております。
山口(富)委員 坂口大臣、常に特別じゃないと言いますけれども、実際には、その臨時的な条項が今一般化しちゃっているんです。それが大問題になっているから、先ほどから一つ国際社会からの批判の問題が出ておりましたけれども、国連の社会権の委員会、国連の経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会、ここが二〇〇一年八月に、日本政府が過大な労働時間を容認しているということに対して重大な懸念を表明して、それに続けて、労働時間を短縮するために必要な立法上及び行政上の措置をとることを勧告すると。そういう国際的な目で見ても、やはりこれは異常なことなんです。
 ですから、臨時だ臨時だと言うんだったら、それを閉じてしまうということを今の時期はそろそろ考えるというか、本格的に考えるべき時期だというふうに思うんです。
 それで、引き続き総理にお尋ねしたいんですけれども、先ほど総理は、年間の労働時間を一千八百時間にすることを目指したいというお話がありました。確かに、この十年間を振り返ってみますと、政府は閣議決定で三回にわたってこの問題を目標として掲げているんです。
 一九九二年の六月、ここでは、「政府の積極的な取組が労働時間短縮の社会的気運を醸成するうえでも極めて重要である。」そして、「年間総労働時間千八百時間を達成することを目標とする。」というふうに閣議決定いたしました。続いて九五年の十二月、ここではこう言っています。我が国の労働時間の短縮の流れを一層確実なものとし、年間総労働時間千八百時間の達成、と掲げたんです。そして、最近では九九年の七月、「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」という文書ですけれども、この中で、「所定外労働の削減等による年間総実労働時間千八百時間の達成・定着」、こう言っているんです。
 それで、小泉政権に、小泉内閣になりまして、まだこの問題では閣議決定がありませんけれども、引き続きこの目標を堅持するということは変わりないんですね。
小泉内閣総理大臣 この方針を堅持することに変わりありません。
山口(富)委員 今、千八百時間を目標にするというお話がありました。
 それで、先ほど、豊田の調査によって、普通に働いている方が年間二千四百三十四時間だというお話をしました。政府の目標は千八百時間です。そうしますと、六百三十四時間長いんですね。相当なものです、六百三十四時間といいますと。三五%長いんです。それで、この長い労働時間の分を千八百時間まで落としていくと、その労働時間を削った分、新たに雇用の、仕事の場がふえていく、そういうことに当然なるわけですね。
 では、一体どのぐらいふえるのかという計算をいたしました。それがこのパネルなんですけれども、三五%労働時間を削りますから、新たに、先ほど紹介いたしました豊田労基署の結果によると、約七万人を超える方々が回答をしておりますから、三五%ということで二万七千三百人ふえるという、これは比較的簡単に出る数字なんです、大変大きな数字がここに出てまいります。
 それで、私、この二万七千三百人というのは豊田の管内ではどういう意味を持つのかということをちょっと調べてみたんです。先日、豊田の労基署を訪ねたときに、お隣にハローワークがありますから、そのハローワークで後から資料をいただいたんですけれども、今、このハローワークの管内で、有効求職者数、就職先を求めている方が六千二百三十二人いるんですね。これは昨年の十一月が一番新しいものだそうで、六千二百三十二人。そうすると、労働時間の短縮というのは、それをすべて解決する力を持つようなものになっていく。
 それからもう一つ、私ちょっと調べてみたんですけれども、トヨタ自動車が、この五年間に、一九九七年から二〇〇二年を調べたんですけれども、三千七百四人の人減らしを行っているんですね。これも、労働時間の短縮に行き着きますと、人減らしは不要になってくる、そういうことを考えていいというふうに思うんです。
 ですから、私は、政府の言う千八百時間の方針でやろうとすると、リストラどころか、人を減らすどころか、ふやさなきゃならないという結論になると思うんです。
 それで、今度の豊田労基署が行った調査というのは、会社自身が正直に述べますということで出した調査ですから、会社側の資料を使っても、政府の言う千八百時間を本当にやろうとすると人減らしどころか雇用の場を広げることになる、そういう大きな力になるということが証明されると思うんですけれども、この点、どういうふうにお考えでしょうか。
坂口国務大臣 豊田の例をもって、全国的にそれを広げて見るということはできません。特別な例でございますから、それは特別なケースとして、それをどう見ていくかということが大事だと思います。
 全国で平均してみますと、これはパートも入れてでございますけれども、千八百四十三時間というのが平均の労働時間でございまして、いわゆる所定内労働時間は千七百十時間、所定外が百三十三時間というふうになっております。これはパートも含めての話でございますから。
 だから、全体で見るとそういうことでございまして、先ほど挙げておみえになりますのは特殊な一部分、一企業と申しますか、一方面の企業の話でございますから、特別なケースとして私たちもそこは見ていかないといけないというふうに思います。
山口(富)委員 坂口大臣、今いみじくもおっしゃったように、年間労働時間でパート労働者を含むというお話がありました。今の政府の統計の出し方というのは、実労働時間の場合で、パート労働者がふえますとその分分母がふえるということで、労働時間が減る仕組みになっているんです。ですから私たちは、きょう私はその分注意して、パート労働者を除いて常勤の方で今どのぐらいかという数字を最初に出したんです。
 それからもう一つ、特別な例じゃないかというふうにおっしゃいましたけれども、舞台は世界のトヨタですよ。この問題の深刻性、やはりあなたは雇用の責任者なんだから、この資料も取り寄せて、きちんと見て、どう手を打つかを考えるべき、そういう責任があるんじゃないですか、坂口大臣。
坂口国務大臣 監督署も、それぞれの地域におきまして一生懸命やっておりますし、そして実情の調査もやっております。実情の調査はよく聞きたいというふうに思いますが、しかし、先ほど申しましたように、組合との間の協定というものもあるわけでありますから、組合の方もしっかりとこれは見ていただかなければならない、そういうことだと思います。
山口(富)委員 労基署の調査の中身や、今現場でどういう問題が起きているのかを大臣自身がじきじきにお聞きになるように、改めて強く求めたいと思います。
 それで、今改めて協定の問題が出ましたので、この問題お聞きしておきたいんですけれども、国は、大臣告示で、時間外労働、いわゆる残業ですね、この限度基準を最大で年間三百六十時間というふうにしております。しかし、大臣告示では、「特別の事情が生じたときに限り、」特別の残業協定によって、限度基準を超えて労働時間を延ばすことができるという建前ですね。一体、ここで言う「特別の事情が生じたとき」、これは何なんですか。
坂口国務大臣 企業がそれぞれ仕事をしておりますときに、一時期特別に多くの仕事をこなさなきゃならないといったようなことは、それは当然起こるわけでありまして、そうしたことを一時的に行うという、特別な事情というふうに理解をいたしております。
 したがいまして、先ほど申しましたように、常時、一年じゅう特別な事情というのはないわけでありまして、特定の企業の状況等によって、そうしたときには一時的にそれは認めていきましょう、こういうことだと思っております。
山口(富)委員 この「特別の事情が生じたとき」というのは、あくまで臨時的な、継続的に続くものじゃないというお話でしたけれども、実際にはその臨時的、限定的だという規定が、私ははっきり申し上げて、乱用されていると。そのために、年間千時間を超える程度の残業さえ認められる事態が起きているんですね。
 例えば、トヨタ関連で言いますと、デンソーが千八十時間、アイシン精機が九百時間、トヨタ本体自身も七百二十時間ですよ。一体、それだけの残業というものを一方で認めさせておきながら、これはどうなるんですか、坂口大臣。月に直して四十五時間以内、八十時間という通達を出しているわけでしょう、過重労働を減らそうという。ところが一方で、協定があれば特別の事情に限って認めるということで、この通達に反するような事態が広がるという仕組みがある。これを閉める必要が今あるんじゃないですか。もう一回答弁をお願いいたします。
坂口国務大臣 特別な事情といいますものは、臨時的なものに限るわけでありますから、まさしく特別な事情でございます。
 したがいまして、今御指摘になっているように、それがもう年間、常時そういうふうになっているということは、それは異常な事態でありますから、特別な事情には入らないというふうに思います。
山口(富)委員 常時行われるようだったら異常な事態だから是正すべきだという重要なお話がありましたから、これはぜひ、豊田労基署の実情を聞いてその問題に対応していただきたいと思うんです。
 それから、もう一つつけ加えますと、私は、阪神大震災が起こったときなどのように、確かに臨時的に、電話の通信線復帰、通信線を回復しなきゃいけないとか、そういう場合は当然起こるというふうに思うんです。それは大臣告示で示した特別の事情ということになるわけですが、そのためにも、この特別の事情があるものを、もっと厳格な要件を定めていく、そういう方向での改善を望みたいというふうに思うんです。
 今、日本では、やはり雇用の問題でも本当に大変な状態です。職をなくしている方が政府の資料でも三百五十万、それから、この春に高校や大学を卒業される高校生、大学生たちが就職先がなくて困っている。やはり今、政府が音頭をとって、きょう、私、トヨタの問題で話しましたけれども、労働時間を削る方向での仕事を始めたら、これは今出しているサービス残業根絶の通達も、過労死防止の通達も、その中で本当に力を発揮すると思うんです。こういう仕事をやはり今やるべきじゃないんでしょうか。
 総理、一言お願いいたします。
小泉内閣総理大臣 今の労働時間につきましても、できれば時間を削って人をふやしてくれた方がいいと思うんですが、いわゆるワークシェアリング、これは給料との兼ね合いがあると思うんですよね。労働時間減るのはいいけれども給料が減るのは嫌だという点、これをどう解決していくかという難しい点もありますが、私は、政労使合意という点も大事でありますので、千八百時間に向かって各企業も積極的に努力していただけるよう指導していかなきゃならぬなと思っております。
山口(富)委員 賃金の話が出ましたけれども、実際には、サービス残業があるために長時間労働が生まれるという関係が日本では起きているんですね。
 厚労省はサービス残業の防止、根絶の努力の中で、昨年度も八十一億円分、サービス残業については働いている方にお支払いしたという報告を十二月に出しております。しかし、これは本当に氷山の一角なんです。これがあるから、長時間労働、現実にはやはりサービス残業がかなり含まれているわけですね。
 ですから、よくこの点も見ながら、労働時間の短縮の問題、雇用の確保の問題、これを国を挙げて取り組むということを改めて強く求めたいというふうに思うんです。
 私、残された時間を中小業者の問題にちょっと充てたいというふうに思うんです。
 今、中小業者は銀行から猛烈な貸し渋り、貸しはがしを全国で受けておりますけれども、私がきょう持ってきましたのは、みずほ銀行が昨年の五月十六日に全営業店長あてに出した通達文書なんです。「十四年度上期 貸出金利運営について」というものなんですけれども、中身はどういう中身かといいますと、ミニマムライン、これは幾つかの例があるんですが、一例は金利が三・六二五%です。今のこれだけの超低金利の時代に驚くべき金利をつけるわけですけれども、このラインを設定して、これより下がってしまったら貸し出しは原則行わない。これが今の中小業者がおびえている貸し渋りの根源にある問題の一つなんですね。
 みずほだけじゃなくてUFJ銀行、「引き上げに応じなければ取引解消も辞さない」、三井住友、東京三菱、四大金融グループがそろいもそろって、中小業者に対して金利の引き上げや貸し渋り、引き上げることによって貸し渋りが始まるわけですね、これが起きている。
 一体、なぜこういうことが起きるんですか、総理。
竹中国務大臣 御紹介いただきましたのは社内の文書のようでありますので、詳細に承知をしておりませんけれども、基本的に銀行は、当然のことながら、リスクとリターンの関係、リスクに見合ったリターンを求めて、その中でしっかりとした収益を確保していかないと、そもそも銀行業が成り立たなくなるわけでありますから、その点について一生懸命収益率を高める、収益力を高めるための努力をそれなりにしているのであるというふうに思っております。
 今のは金利の話でありますけれども、貸し渋り、貸しはがし、これはもうけさからもいろいろ議論になっておりますが、これについては、基本的には、不良債権の処理を進めることによってむしろ収益力が高まって、健全な貸し出しが進むというプラスの面があります。一方で、不良債権を処理する過程で資本が毀損される場合にはその逆の面も起こり得る。そのマイナスの面が起こらないように、これは行政がしっかりと見ていかなきゃいけないと思います。
山口(富)委員 私、今、竹中大臣の発言を聞きましてよくわかりました。この三井住友の言っていることと全く同じ。「リスクに見合ったリターンの確保を徹底する標準金利の適用」。つまり、三井住友の通達というのは竹中大臣がおっしゃったその中身なんですよ。ここに私は大銀行だけの、もちろん大銀行、問題だけれども、その責任だけに帰せない政府の今の金融政策、不良債権処理政策、ここに行き着くというふうに思うんです。
 小泉政権では、不良債権を減らすと言ってきましたけれども、現実にはこれがふえる。それから、金利を下げると言っていますが、業者向けには貸出金利は上がる。そして、金融緩和と言いながら、業者さんにとっては超金融引き締めが起こる。全部逆に起きているんですね。もう完全な破綻です。
 では、その結果、今業者はどうなっているのかという問題なんです。東京の大田区は中小業者の町と言われておりますけれども、今、取引銀行から貸出金利の引き上げを求められて、それからまた再建計画を出せと言われますから、その提出や実行を迫られて、泣く泣く工場や宅地、不動産、この売却を迫られている、こういう姿が起きております。
 しかも、小泉政権下の一年で、工業統計調査、これは昨年九月のものなんですが、これを見ますと、大田では、従業員四人以上の事業所が三百二十三、一割以上つぶれている。三百二十三ということは、月曜から土曜日まで、年間を通して一日に一つつぶれた計算なんです。これだけの問題が起きている。
 今、この東京の大田というのは、有数の産業の技術基盤がそろった、集積した地帯です。ロケットから人工の心臓まで、いろいろな技術力を持っています。ですから、中国へ行きましても、東南アジアを訪ねましても、やはりあそこにも業者さんがおりますから、この日本の大田区のような産業の基盤が欲しいと必ず言うんです。なぜ言うかというと、やはり経済の発展や産業の発展のためには、そういう基盤がないと前進しないからなんです。
 私は、今の小泉さんの、そして小泉政権のやり方というのは、中小業者から見れば、やはり業者を打ち壊すことになっている、これは日本の物づくりの土台、これを打ち壊すものだと。そのことを厳しく指摘しまして、この日本の物づくりの土台を守るための仕事をしたい、このことを申し上げて質問を終わります。
藤井委員長 これにて山口君の質疑は終了いたしました。
 次に、横光克彦君。
横光委員 社民党の横光克彦でございます。
 質問をさせていただきます。主に総理にお尋ねをいたしたいと思います。
 小泉内閣がスタートして一年九カ月、そろそろ二年になろうとしております。この間、総理は、改革なくして成長なしと叫び続けてこられたわけでございますが、この約二年になろうとしている今日、現実はどうか、どうなっているかといいますと、私から言いますと、改革もなければ成長のかけらも見られない、こう申し上げざるを得ない現実であろうと思うんですね。これは私だけの思いではなく、多くの国民の生活実感として、そう感じておられる方が多いんじゃなかろうか、このように思っております。
 総理は、国民に多くの公約をいたしました。しかし、その公約のほとんどは、まるでドミノ倒しのように、ことごとく崩れ去っておる。そして、ただ一つ、改革には痛みが伴う、国民に痛みを押しつけるという公約だけは皮肉にもしっかりと果たされている。これが現実であろうと思います。当初あなたに期待をした多くの国民も、今では、構造改革よりも景気回復という声の方が圧倒的にふえつつあるんです。
 ここに、一月十一日、十二日、直近ですね、JNN世論調査がございます。約十日前のですね。この中で、「失業の不安は?」という問いに、「不安を感じる」三九%、「どちらかと言えば不安を感じる」三七%。合わせますと七六%の人たちが失業に対して不安を感じている、いわゆる生活に対して不安を感じているわけですね。そして、「構造改革の痛みを受け入れられる?」という問いには、「受け入れられる」が三三%、「受け入れられない」が六四%。ですから、今非常に、国民の思いは小泉内閣がスタートした当初と大分変わってきているのが現実なんですね。
 いわゆる小泉さんがやってきたことに対することと国民のこの思いの違いのギャップ、このことをどう認識しておられるか。そしてまた、そのことにどういう責任を感じておられるか。お聞かせいただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 現在の経済情勢厳しい中で、日本としていかに早く経済再生を期すかということから、私は、改革が必要だということで、もろもろの改革に手をつけてきたわけであります。わけても、行財政改革を基本にして、金融改革、あるいは税制改革、規制改革、歳出改革、やるべきことは山積しておりますが、内外情勢厳しい中で、やはり改革にも成果が見えるには時間がかかると思っております。
 いわば、この十年間、まあインフレが常態化していた状況で、デフレの状況に初めて戦後陥ってきた。世界の情勢もさま変わりであります。
 また、こういう中で、今までの常識では考えられないような今経済の停滞状況に陥っていますが、これは、考えてみますと、財政出動せよという声は今でも聞いているんですけれども、日本は今まで目いっぱいしてきているんですよ、国債の発行状況を見ても。これほど財政出動している国はない。なおかつ、それでは金利はどうか、金融政策。これももう低金利、ゼロでしょう。
 こういう状況の中で、なかなか景気も回復しないということから、なかなか改革が表面に出ないので、痛みばかりが出ているということに、今多くの国民が何とか早く景気回復してくれという声だと思うのであります。
 しかし、こういう状況も、私が就任以来、二、三年は我慢してください、持続的な成長軌道に乗るまである程度期間が必要ですということで今やってきているわけで、できるだけ早く改革の成果ができるように精いっぱい努力をしていきたいと思っております。
横光委員 私は、今、総理の答弁の中で、本当に現状認識が、この深刻な状況が本当にわかっておられるんだろうかという気がしてならないんですね。
 確かに構造改革には時間がかかると言われておりました。しかし、まだ半年しかたっていないじゃないか、まだ一年しかたっていないじゃないかとずっと言っていた。今、きょうは、三年後。三年後、ではどうなるのかというビジョンが見えないから、三年後、ではどうなるかということがあらかじめ国民にかなりはっきりと説明できるような自信があれば、国民もやはり違ってくると思うんですね。
 ですから、やはり私は、本当の国民の痛みをまだまだ感じておられない、国民に痛みを与えることに対して総理が痛みを感じておるのかと思ったら、それさえも今感じられない、そういう気がしてなりません。
 いいですか、総理、小泉内閣が発足してから経済指標はどうなりましたか。先ほど菅議員が細かい数値を示して国民にわかりやすく説明しました。もう聞きたくないと思うでしょうけれども、私は先ほど、成長のかけらも見られないと言いました。そのとおりに、経済指標はすべて悪化の一途をたどっておるんですよ。これはもう名目も、実質も、GDP、それから設備投資額、株、企業倒産、すべて悪い方向に行っているわけですね。
 その結果、失業者は増大する。小泉内閣がスタートしたときの四・七%から、現在五・三%。三百六十万人以上の人たちが結局ちまたにあふれるような状況になっている。さらに、経済苦や生活苦を理由にした、みずから命をなくす人が出てきているというような悲惨な現状なんです。ですから、こういったことをもうちょっと総理も認識していただきたいと私は思うんですよ。
 国民は今本当に痛みに耐えている。しかし、先ほどの世論調査の結果にありましたように、もうこれ以上耐えられないという声が六〇%から七〇%にふえているんですよ。それで、改革路線からいわゆる景気回復と経済再生に大きくかじを切ってほしい、そういった国民の声だと先ほどの世論調査の結果を見て私は思ったんですね。
 総理は、構造改革をやるに当たっては本当に国民の理解がまず必要だとずっと言ってこられました。しかし、国民の理解はないじゃないですか。国民の声に耳を傾けることなくさらに改革を推し進めようとしている。ということは、何ですか、総理。いいですか、ということは、あなたから見れば、まだまだ国民の痛みは足りないとでもおっしゃるんですか。いかがですか。
小泉内閣総理大臣 私は痛みが足りないなどということを一言も言っていませんし、それでは、改革なくして、今、予算をふやして事業をふやしていけば景気が回復するのかというと、そうじゃないんです。即効薬とか、この一手ですぐ景気が回復するというような手は何もありません。だからこそ改革を積み重ねていかなきゃいかぬ。
 現に、マイナスばかり言いますけれども、ことしは、実質成長率ゼロ%の見込みが、このままいきますと大体〇・九%、伸びていますね。悪い企業もいます。倒産する企業もあります。しかし同時に、伸びている企業、設備投資を始めている企業、そういう企業もかなりあるわけであります。
 悪い面ばかり見ると切りがありませんけれども、私は、日本の潜在力というものもまだまだ十分ある、この潜在力を発揮させるためにも、金融改革のみならず規制改革、税制改革等をしていかなきゃならぬなと。その積み重ねが持続的な成長路線になっていくんじゃないでしょうか。
 今はすぐ目には見えませんが、ある程度国民が痛みを感じている、おつらいことと思いますけれども、この痛みを乗り越えて、できるだけ早く改革の成果をあらわすような努力をしていかなきゃならぬということは、ぜひとも御理解いただきたいと思っております。
横光委員 悪い面ばかり言わないでくれと言いますが、悪い面ばかりが出てきているから言っているんですよ。それは、この二年間の経済の結果がそうなっているわけでしょう、前より悪くなってしまった。そのことを言っているので、別にそれをあげつらって言っているだけでなくて、現実を言っているだけなんですよ。
 ですから、総理が構造改革に固執する余り、とりわけ財政再建のための緊縮路線をしいた結果、どうなりましたか。これは先ほどから随分出ています。景気はさらに悪化して、この二年間税収不足が生じたわけですね。最初の年はNTTの株で埋め合わせましたが、今回は二兆五千億という膨大な税収不足が生じた。いわゆる財政を再生するためにとった施策が、逆に財政再建を遠いものにしてしまったわけでしょう。これはある意味では、目的と違った結果を生じてしまったわけですから、完全な失政ですよね。これを経済失政と言わずして何と言うか。目的と違った結果が生じた以上、これはもう間違った政策だったということになる。
 そしてもう一個、逆に、この十四年度予算、これは国債発行額を三十兆円に抑えるために税収を高く見積もっていたという指摘さえあるんですよ。もしこれが事実だとすれば、この十四年度予算は粉飾予算ということになります。そんなことはないというのであるならば、経済失政になる。どちらかです。私はその両方だと思います。
 そこで、結局、この緊縮財政路線というのはこの二年間で明らかに破綻したということが既に証明されたわけですから、総理は年頭、やはりこれからデフレ抑制が内閣の最優先課題ということを表明しました。これはある意味では、私はもう大変な政策の転換であろうと思う。しかし、総理はあくまでも政策の転換ではないと言い張る。それは自由です。ただ、国民はそう思っているわけですね。
 国債三十兆円枠は結局守れなかったことも、いわゆる経済は生き物であるから柔軟に対応したんだと言われております。それもおかしい。経済が生き物であるということがわかっているなら、そもそもあらかじめ国債発行額の枠を決めることさえ、そのことがおかしいんですよ、生き物で、変わるんですから。そういうことを後になって言うでしょう。それでもあなたは国債発行額を約束した。そしてそれを守れなかったら、経済は生き物だからと言う。こういうふうに、国民からすると非常に理解できないような形でいく。
 ここは正直に、やはり現実としてそういった結果が生じた以上、政策の転換であるということを言った方が、経済においてむしろいろいろなことで私はプラスになると思います。消費動向、それから経済活動、いろいろなことが私はプラスになっていくような気がいたしております。
 そうした中、大変なデフレ不況のもとで不良債権処理が加速されようとしているわけでございますが、一日も早い不良債権の処理を多くの人が望んでいることはもう申すまでもありません。しかし、この不良債権処理の加速、これは一歩誤ると、本当にこの対応を誤れば、さらなるデフレ促進につながりかねません。これは、下手をすると、本当に金融恐慌の引き金を引きかねないところまでいく可能性がある。
 ですから、不良債権処理を米国流の厳しい基準のもとで強行するというのならば、本当に強力なデフレ脱却対策、これが大前提になければならないと思いますよ。これがなかったら、本当に、非常に、私は、さらなるデフレスパイラルに陥ってしまうんじゃないか、そんな気がいたしております。
 不良債権処理の加速によって、当然のごとく貸し渋り、貸しはがし、そしてまた金利の引き上げ等々が起きるでしょうし、そうしますと、また企業倒産が増大する、おのずと失業者はふえていく、これは政府も当然予測されていることと思います。今度の不良債権処理を加速することによって、厚労省、厚労大臣はどれぐらいの失業者がふえるという予測を、試算をされておりますか。お聞かせください。
坂口国務大臣 これは不良債権の処理の額とスピードによって違いますから、それは一概になかなか言うことは難しいというふうに考えております。今後の経済動向、進行状況によって、それは変わってくるというふうに思います。
横光委員 今、厚労大臣は数字をお示しになりませんでしたが、前に談話がございます。今お話しのように、不良債権処理の額によって違うということです。
 例えば、厚労大臣のお考えでは、十五兆円の不良債権を処理するという前提で計算すると、六十数万人の新たな失業者が出るであろうと厚労大臣は発表されております。しかし、これは政府のお考え。民間の研究機関はこんなものじゃないんですね。
 民間の研究機関は、今度の不良債権処理を加速すれば相当の、今の六十万人どころではない失業者が出るであろうと試算しているんですよ。UFJ総合研究所、ここで約百六十五万人ふえるだろうと。それから、日本総合研究所、ここが百五十万人。ニッセイ基礎研究所、百三十万人。第一生命経済研究所、百十一万人。こういうふうに、民間の研究機関は一番経済状態をわかっていますよ。ここが、ことごとく百万人以上の新たな失業者が出るであろうという予測をしている。
 これはあくまでも予測ですよ。予測ですけれども、これは慎重に、この民間の研究機関の予測もしっかりと政府はやはり頭に入れておかなければならない。
 そうなりますと、やはり一番大事なことは、雇用対策ということが最重要課題になってまいりますよね。そうしますと、これだけの試算、予測がもし仮に現実になった場合ということも考えなきゃならない。そうしたときの雇用対策、これはもう、一つの施策として取り上げるんではなくて、国全体の最重要課題である、国策として雇用対策に対応して、今から対応しておかなければならない、私はそんな気がするわけでございます。
 つまり、一時的に国庫負担を引き上げる、そして雇用状態が落ちつけばまた引き下げる、そういったふうに、一般財源から積極的に財政を出動して、国策として雇用対策に当たる体制を今から整えておく必要があろうかと思いますが、総理はいかがお考えですか。
竹中国務大臣 ちょっと数字について、余りに大きな数字の言及がありましたので、答弁をさせていただきます。
 幾つかの民間のというふうな御紹介がありましたが、基本的には銀行の子会社の試算でありますので、かなり政治的なメッセージを持っている、不良債権を処理したくないと私は理解をしております。
 内閣府においては、これは、東京大学の西村先生を中心に、できるだけ客観的な数字というのを一年以上前に実は試算をしております。繰り返し言いますが、どのような形でオフバランス化が進むかによってケースが非常に違ってきますので、一概には言えませんが、内閣府の試算では、一兆円のオフバランス化で生じる失業者、懸念される失業者は一・四万人。恐らく、今委員がおっしゃった数字は、どこかの離職者の数字であろうかと思います。離職者と失業者は異なります。失業者に関しては、一兆円で一・四万人ということになります。
 これは労働市場の動きをきちっと統計的に把握したものでありますので、各民間のいろいろな学者の、専門家の試算の中でもちょうど政府の試算は中間値ぐらいになりますので、この点はぜひ、余りにその過大な数字に振り回されないように、御理解を賜りたいと思います。
横光委員 私は、それはそれぞれの見方ですから、違うと思うんですよ。違うと思う。しかし、やはりそれを安易に考えてはいけないということを言っているんです。例えば、政府が六十万、民間が百万とすれば、その間だって考えられるわけでしょう。ですから、そういったことを深刻に受けとめて、国策として雇用制度は立ち向かうべきじゃないかということを聞いたんです。全然違う。今私、雇用問題を国策として今からやるべきではないか、こういうことが起きたときには遅いので、それをお聞きしておるんですよ。
坂口国務大臣 それはやらなきゃいけないというふうに思っております。それで、いろいろの対策を立てているわけでございますが、今までどちらかといえば厚労省が中心になりまして、国の方が中心にして対策を立ててきた。しかし、各地域を見ますと、この失業率にしましてもかなりのばらつきがあって、そしてまた、その内容につきましても随分の違いがあるといったこともあって、これは国一本の対策ではいけないので、都道府県単位、少なくとも都道府県単位のそれぞれの考え方も入れて、そして国と地方と民間と三者一体になってこの雇用対策というのを進めていかなきゃならないというふうに思っております。そうした意味で、法律改正もするということをしたいというふうに考えている次第でございます。
横光委員 不良債権処理をやるというのは国の金融政策でございます。その結果、もし、先ほど言いました、起きないのが一番いいんですが、もしそれだけの民間研究機関が試算していることが起きたときのことを考えると、国の施策でやる以上、そういった失業者が出た場合は、国としてやはり財政の出動。こういった財政の出動に対しては、私は国民は不平不満を言う人はいないと思いますよ。こういったところでの財政出動は私は必要であろうということを今申し上げているわけでございます。
 この雇用問題としてもう一つ重要なのは、中小企業対策なんですね。これもまた、不良債権処理を加速すれば、先ほどからずっとお話がありますように、随分多くの企業が倒産する可能性が高い。ここのときに中小企業の資金環境は一層悪化してしまいますね。
 平成十年のとき、大変な金融不安の中で時限立法をつくりました、特別信用保証の。十三年の三月であれは終わりましたけれども、あれが非常に中小企業の皆様方は助かったんですね。そして、物すごい利用者があったんですね。あの特別信用保証を私は復活することも念頭に入れておくべきであろう、このように思っております。このことはどうお考えでしょうか。
平沼国務大臣 お答えさせていただきます。
 先ほどの御審議の中でも私申し上げさせていただきましたけれども、御指摘のように、平成十年に大変な貸し渋りが起こったときに特別保証制度を創設して、最初は二年、二十兆でございましたけれども、一年延長して、またさらに十兆ふやしまして三十兆の保証をさせていただきました。これは、御指摘のように、大変多くの方々に御利用をいただきました。そして、今そういった方々は一生懸命返済に努力をされておりますので、そこでその条件緩和というのもさせていただき、今度新たに借りかえの制度も創設をして、万全を期していきたいと思います。
 ただ、特別保証制度はやはり三年の異例特例の措置、こういうことでございますので、新たな保証制度というものをつくりまして、でき得る限り幅広くそういう中小企業の方々に対処をしていかなければいけない、このように思っています。
横光委員 どうぞよろしくお願いをいたします。
 二十一世紀は環境の世紀と言われております。これからの森林・林業の環境に果たす役割はますます大きくなるわけで、特に二酸化炭素吸収源、いわゆる地球温暖化対策に果たす役割は非常に大きくなってくるわけですね。
 京都議定書における日本の世界への公約はマイナス六%、このうち、政府は森林対策でマイナス三・九を達成していく方針となっております。
 この方針を達成するためには、現在の一・三倍の事業量が必要になってくる。今回の補正でも措置されておりますが、果たしてこれで十分か。とりわけ、国土と環境を守り、地球温暖化対策になり、雇用にもつながるという、非常に大きな問題でございます。
 これから将来、十六年度、再来年度の予算からどのような森林対策の予算措置を講じるおつもりか、ちょっと、端的でいいんですが、お聞かせいただきたいと思います。
大島国務大臣 横光委員の御質問にお答えを申し上げます。
 大変大事なポイントでございますので、御承知のように、京都議定書の温室効果ガス削減目標六%、これはもう国が約束したことでございます。したがって、その中において、森林による二酸化炭素吸収量三・九%を確保することが本当に大事な不可欠なことでございます。私ども、そういう観点から、今次の補正予算、来年度の十五年度予算につきましても、全力を挙げて推進することが大事だ、こう思っておりまして、まず、十四年度でどのような対応をしたかということを少し国民の皆様方に御説明したいと思います。
 まず、やはり緊急雇用対策として緑の雇用、これは菅代表からも質問がありました。それから、早急に手入れが必要な森林の整備、あるいはまた荒廃地の復旧やダム上流域等の奥地水源林の整備等、さらに、総理からもお話がありましたが、山を整備しても、それを使う手だてがなきゃなりません。木材利用、バイオマスということでございますけれども、いわゆる十カ年対策を着実に進行していく、これが大変大事なことだと思います。
 そういう観点から、十五年度の予算もしっかりと私どもは盛り込んでいるつもりですが、しかし、これは各党、皆様方の御協力をいただかないと、この十カ年計画は非常に厳しい道のりを歩むことも予測されますので、今後とも御協力をいただきたい、このように私は思います。
横光委員 世界に対する公約で、これから世界的規模の問題ですので、やはりみんなで協力してこれはやっていかなきゃならない問題であろうと思っております。
 また、先ほど、公務員制度改革で中塚委員が随分細かく、実際ジュネーブへ行かれて体験されたことでお尋ねいたしました。
 先ほどの各大臣の御答弁を聞いておりますと、ILOの最終報告があったときに対応するという御答弁が多かったわけでございますが、ILOが最終報告をした場合はそれに従うと私は受け取ったわけですが、それでよろしいわけですね。
石原国務大臣 先ほども御答弁させていただきましたように、これまでの見解と違う見解を表明されている部分もありますし、十分にこちらの意図というものが通じていないところもございます。ですので、公務員制度改革大綱にのっとった骨子等々でき上がる段階で十分に説明をして、御理解を得ていくというのが現在の政府の立場でございます。
横光委員 ILOに代表される国際的な常識や、あるいは天下りの禁止を求める国民世論、こういったものに背く政府の姿勢が見られるわけですので、そういったことはこれから委員会でやはり徹底的に論議していかなければならないと思っております。
 それからまた、政治と金の問題、どうしてもこれに触れざるを得ません。
 ゼネコン汚職で実刑判決が下されました元建設大臣中村喜四郎被告のケースを初め、ここ十年間、建設業界を中心とした政治家や秘書の犯罪が後を絶たないわけです。つい去年、鈴木宗男氏、加藤紘一氏、井上裕氏、そういった秘書の人たち、これは公共事業絡みで汚職事件が発生したばかりですよ。その舌の根も乾かないうちに、今度の自民党長崎県連挙げての公選法違反で幹事長と事務局長が逮捕されるという、国民からすれば、もうあいた口がふさがらないといいますか、何でここまでばかにされなきゃならないんだという思いでいっぱいじゃないですか、国民の皆様方は。まだ本当にこれは氷山の一角でしかないというような気がいたしますよね。
 ですから、とりわけ、総理は構造改革、構造改革と言いますが、構造改革の基本は政治への信頼でしょう。その政治への信頼が今はほとんどないですよ。そうすると、構造改革をやる前にやらなきゃならないのは政治改革じゃないですか。構造改革の基本は政治改革ですよ。それをおろそかにしたままでは私は構造改革だって成就しない、そういう気がしてなりません。
 特に、今回のこの問題は公共事業絡みですね、前回もそうでしたが。この公共事業受注企業からの献金を制限しようと指示をしたのは総理なんです。自民党をぶっ壊すとまで豪語して改革姿勢を強調してきた総理御自身が、せめて公共事業受注企業からの献金は制限しようじゃないかと提案した。非常にすばらしかった。
 しかし、結果的にそれは自民党に丸投げした。丸投げですね。その後は、検討している、検討しているだけ。そして、肝心の受けた自民党は、そのことに研究をしていると言うだけで、我々が出している政治資金規正改正法に、全然審議に頑として応じようとしないんです。ほかの政党の議員がそういう不始末をしでかしたならわかりますよ。しかし総理、あなたが提案をした、そしてあなたは総裁で、あなたの党の人たちがそういう不祥事を起こして国民から不信を買う。となると、あなたの一言でこれは随分進むんですよ。そうでしょう。先ほども聞いたら、何か検討をしている、党内で検討している、これじゃ、国民はいつまでたっても政治への信頼を回復してくれませんよ。どうですか、総理。
 この公共事業受注企業からの献金は、公共事業の口ききを通じて、公共事業の口ききをして税金をピンはねするに等しい行為なんですよ。国民は許しませんよ、こんなことは。公共事業を受注する企業からの政治献金を禁じることこそが、税金にたかって恥じない政界のあしきこの体質、これをあなたの言うようにぶっ壊すことができるんですよ。そこで初めて政治への信頼が少しずつ取り戻せる。どうですか、総理。
 ここはせめて、せめてですよ、国民の血税が入っている公共事業受注企業からの献金は禁止すると、国民の前で、ここで決断してください。いかがですか。
小泉内閣総理大臣 これまでも、今まで政治と金にまつわる問題で議員が逮捕されたり有罪判決を受けたり、大変残念なことでありまして、私はこれまで、口ききして金をもらっちゃいかぬというあっせん利得収賄罪、これも改正、強化された。なおかつ今回、官製談合防止法、これも法改正された。政治資金規正法も強化された。今、議員個人には企業献金できませんよね。
 問題は、法律を幾つつくっても、法律に違反しているんですから、これはもうどうしようもないでしょう。法律を強化しても、法律の目をくぐって、これ以上……(横光委員「何を言っているんですか。くぐり抜けするのが問題じゃないですか」と呼ぶ)いや、これをやったら、これはだめです。
 それで、公共事業についても今検討しているのは、どの程度の制約が好ましいかということなんです。
 それぞれ政党には基盤があります。私はすべて企業献金が悪とは思っていません。全部税金で政治活動を賄う、これもまた私いいと思っていません。組合とか団体の献金もあります。政党によってそれぞれあるでしょう、基盤が。そういう点もよく政党で調整して、よりいい政治資金規正法なり、このような政治と金にまつわる疑惑がないような対応を考えようということは必要だと。
 私は今後とも、今回の長崎の事件につきましても、これは特定の長崎の事情があると思いますが、こういう問題についても、よりよい規制はどうあるべきかというのは、各党それぞれ考えなきゃならない問題だし、政党によってもこれは対応を考えなきゃならぬ問題。それは、よく広範に、一部だけをとらないで……
藤井委員長 総理、時間です。
小泉内閣総理大臣 政治活動の基盤というのはどうあるべきかと……
藤井委員長 総理、時間です。
小泉内閣総理大臣 政治資金というのはどう調達すべきかという観点から私は検討する必要があるということを言っているんです。
横光委員 委員長。
藤井委員長 横光君、時間ですから。
横光委員 全く今度の事件、去年の事件、責任を感じていませんね、総理は。法律をつくってもしり抜けする、しり抜けするような法律をつくるからですよ。国民の血税が入っている企業からの献金だけでも禁止しろと言っているのは、ほとんどの政党の声であり国民の声なんですよ。それさえもあなたは前進できていない。
 第一、何ですか、この長崎県連の事件が発生したとき、あなたの発言。疑念を持たれることのないように……
藤井委員長 横光君、時間が来ております。
横光委員 そういうことをあなたは言っておるんですよ。ところが、あなた自身、疑念を持たれるような疑惑を発生したじゃないですか。(小泉内閣総理大臣「それはいいかげんだ。どういう疑念が持たれているのか」と呼ぶ)いや、疑惑が……(小泉内閣総理大臣「ないよ、疑惑なんか。それはいいかげんだ」と呼ぶ)だから、それを……
藤井委員長 横光君、横光君、時間です。
横光委員 だから、報道でそういうことが出たということは、真実か真実でないかと言っているんじゃない。
藤井委員長 横光君、時間です、時間です。
横光委員 疑惑が生じたということを言っておるんです。報道されたということは、疑惑が生じたんですよ。(小泉内閣総理大臣「それは、にせの報道だ」と呼ぶ)ですから、そういった疑惑がないように努めるといいながら……
藤井委員長 横光君、発言を終えてください。
 これにて横光君の質疑は終了いたしました。
 これをもちまして各会派一巡の基本的質疑は終了いたしました。
 次回は、明二十四日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時一分散会


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