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第8号 平成15年2月7日(金曜日)

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平成十五年二月七日(金曜日)
    午前九時一分開議
 出席委員
   委員長 藤井 孝男君
   理事 斉藤斗志二君 理事 自見庄三郎君
   理事 杉浦 正健君 理事 萩山 教嚴君
   理事 宮本 一三君 理事 末松 義規君
   理事 原口 一博君 理事 細川 律夫君
   理事 石井 啓一君
      荒巻 隆三君    伊吹 文明君
      池田 行彦君    石川 要三君
      岩崎 忠夫君    衛藤征士郎君
      尾身 幸次君    大原 一三君
      奥野 誠亮君    上川 陽子君
      亀井 善之君    栗原 博久君
      小西  理君    佐藤  勉君
      高鳥  修君    竹本 直一君
      津島 雄二君    中山 正暉君
      丹羽 雄哉君    西川 京子君
      葉梨 信行君    萩野 浩基君
      林 省之介君    原田昇左右君
      松島みどり君    松宮  勲君
      三塚  博君    持永 和見君
      山口 泰明君    石井  一君
      上田 清司君    枝野 幸男君
      海江田万里君    河村たかし君
      田中 慶秋君    武正 公一君
      中村 哲治君    永田 寿康君
      長妻  昭君    平岡 秀夫君
      前原 誠司君    牧  義夫君
      吉田 公一君    米澤  隆君
      赤羽 一嘉君    斉藤 鉄夫君
      丸谷 佳織君    達増 拓也君
      中塚 一宏君    樋高  剛君
      山岡 賢次君    大森  猛君
      木島日出夫君    佐々木憲昭君
      志位 和夫君    矢島 恒夫君
      吉井 英勝君    重野 安正君
      中西 績介君    横光 克彦君
      井上 喜一君
    …………………………………
   内閣総理大臣       小泉純一郎君
   総務大臣         片山虎之助君
   法務大臣         森山 眞弓君
   外務大臣         川口 順子君
   財務大臣         塩川正十郎君
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   厚生労働大臣       坂口  力君
   農林水産大臣       大島 理森君
   経済産業大臣       平沼 赳夫君
   国土交通大臣       扇  千景君
   環境大臣         鈴木 俊一君
   国務大臣
   (内閣官房長官)
   (男女共同参画担当大臣) 福田 康夫君
   国務大臣
   (国家公安委員会委員長)
   (産業再生機構(仮称)担
   当大臣)         谷垣 禎一君
   国務大臣
   (防衛庁長官)      石破  茂君
   国務大臣
   (沖縄及び北方対策担当大
   臣)
   (科学技術政策担当大臣) 細田 博之君
   国務大臣
   (金融担当大臣)
   (経済財政政策担当大臣) 竹中 平蔵君
   国務大臣
   (規制改革担当大臣)   石原 伸晃君
   国務大臣
   (防災担当大臣)     鴻池 祥肇君
   内閣官房副長官      安倍 晋三君
   内閣官房副長官      上野 公成君
   内閣府副大臣       伊藤 達也君
   内閣府副大臣       根本  匠君
   防衛庁副長官       赤城 徳彦君
   法務副大臣        増田 敏男君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   文部科学副大臣      河村 建夫君
   厚生労働副大臣      木村 義雄君
   農林水産副大臣      北村 直人君
   経済産業副大臣      高市 早苗君
   経済産業副大臣      西川太一郎君
   環境副大臣        弘友 和夫君
   法務大臣政務官      中野  清君
   外務大臣政務官      新藤 義孝君
   財務大臣政務官      田中 和徳君
   文部科学大臣政務官    大野 松茂君
   経済産業大臣政務官    桜田 義孝君
   国土交通大臣政務官    岩城 光英君
   政府特別補佐人
   (内閣法制局長官)    秋山  收君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君
   政府参考人
   (厚生労働省医薬局長)  小島比登志君
   政府参考人
   (社会保険庁運営部長)  磯部 文雄君
   参考人
   (日本道路公団総裁)   藤井 治芳君
   参考人
   (日本銀行総裁)     速水  優君
   予算委員会専門員     中谷 俊明君
    ―――――――――――――
委員の異動
二月七日
 辞任         補欠選任
  衛藤征士郎君     小西  理君
  栗原 博久君     竹本 直一君
  丹羽 雄哉君     荒巻 隆三君
  葉梨 信行君     松島みどり君
  原田昇左右君     上川 陽子君
  松岡 利勝君     西川 京子君
  上田 清司君     牧  義夫君
  中村 哲治君     前原 誠司君
  長妻  昭君     枝野 幸男君
  細野 豪志君     武正 公一君
  吉田 公一君     永田 寿康君
  赤羽 一嘉君     丸谷 佳織君
  中塚 一宏君     山岡 賢次君
  矢島 恒夫君     大森  猛君
  中西 績介君     重野 安正君
同日
 辞任         補欠選任
  荒巻 隆三君     丹羽 雄哉君
  上川 陽子君     佐藤  勉君
  小西  理君     衛藤征士郎君
  竹本 直一君     栗原 博久君
  西川 京子君     松宮  勲君
  松島みどり君     葉梨 信行君
  枝野 幸男君     長妻  昭君
  武正 公一君     平岡 秀夫君
  永田 寿康君     吉田 公一君
  前原 誠司君     中村 哲治君
  牧  義夫君     上田 清司君
  丸谷 佳織君     赤羽 一嘉君
  山岡 賢次君     中塚 一宏君
  大森  猛君     吉井 英勝君
  重野 安正君     中西 績介君
同日
 辞任         補欠選任
  佐藤  勉君     岩崎 忠夫君
  松宮  勲君     林 省之介君
  平岡 秀夫君     細野 豪志君
  吉井 英勝君     木島日出夫君
同日
 辞任         補欠選任
  岩崎 忠夫君     原田昇左右君
  林 省之介君     松岡 利勝君
  木島日出夫君     志位 和夫君
同日
 辞任         補欠選任
  志位 和夫君     矢島 恒夫君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 平成十五年度一般会計予算
 平成十五年度特別会計予算
 平成十五年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――
藤井委員長 これより会議を開きます。
 平成十五年度一般会計予算、平成十五年度特別会計予算、平成十五年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑を行います。
 この際、お諮りいたします。
 三案審査のため、本日、政府参考人として法務省刑事局長樋渡利秋君、厚生労働省医薬局長小島比登志君、社会保険庁運営部長磯部文雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
藤井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
藤井委員長 この際、昨日の菅君の質疑に関連し、昨日に引き続き、前原誠司君から質疑の申し出があります。菅君の持ち時間の範囲内でこれを許します。前原誠司君。
前原委員 おはようございます。民主党の前原でございます。きのうに引き続きまして質問いたします。
 きのうの続きを少しさせていただきたいと思いますが、きのう私が申し上げましたのは、国連加盟国が他国を攻撃できる条件というのは、自衛権の行使と、国連決議、国連憲章の第二十五条に基づくもの、この二つしかない。今、イラクの問題が言われておりますけれども、イラクに関して、今、国連決議の一四四一が安保理全会一致で決められておりますけれども、それに対しては、武力行使を容認するものではない。
 きのう、川口外務大臣との話の中で、ロジックの問題、論理的な話として、六七八、六八七を遡及して、仮に一四四一の国連決議というものの後に新たな決議がなくても、それは論理的には成り立ち得るんだ、こういう話でありました。きのう帰ってからもう一度、国連決議の六七八、六八七を読んでみましたけれども、私は、それが遡及できるというところの論理的な意味、理由がいまいちよくわかりません。
 そこで、きょうも三十分という限られた時間ですので、水かけ議論をしても時間のむだでありますので、委員長にお願いをしたいと思いますが、新たな国連決議がなかった場合に、昔の国連決議を持ち出して論理的には他国を攻撃し得る、この場合はイラクでありますけれども、攻撃し得るということの、その六七八、六八七の解釈を政府の統一見解として出していただきたいということを要望させていただきたいと思います。
藤井委員長 理事会で協議をいたします。
前原委員 では、お願いいたします。
 昨日、総理大臣は、新たな国連決議がある方が望ましいとおっしゃいました。私どもは、新たな決議がなければやるべきでない、そういう思いを持っています。
 幾つか論点を申し上げたいと思うのでありますけれども、まず一つは、これはアメリカの国内でも相当この問題について、新たな国連決議がなければ武力攻撃を認めるべきではないという論調がございます。アメリカの中でも相当強いそういう論調がございます。
 また、きのう少しお話をいたしましたけれども、アメリカの中にはもうイラク攻撃にかかわる戦費、つまりは幾らぐらい一体かかるのかというような試算が出されております。
 少し御紹介をしたいと思うのでありますが、アメリカの議会の予算局では、短期間で終わっても四百四十億ドルぐらいかかるだろう、こういうことなんですね。ということは、五兆円ぐらい短期間でもかかる。アメリカの予算委員会の民主党のスタッフの試算では、これも短期間で終わった場合には四百八十億ドルから六百億ドルぐらいかかる、こういうことなんです。同じように、五兆円から七兆円ぐらいかかると。しかし、長期化した場合には、ある専門家によりますと千四百億ドルぐらいかかる、こういう話であります。ということは、十四、五兆程度かかるというような話なんですね。
 しかし、これは後の復興の話は入っていないわけです。つまりは戦費にかかわる話でありまして、アメリカについては、これをどう奉加帳を回すかというふうな議論ももうされているということはお耳に入っているかもしれません。つまりは、簡単に賛成する、アメリカが攻撃をした場合に賛成するという話はいいけれども、では、このお金の負担を求められたときに日本はどうするんですかということもしっかり念頭に置いておかなきゃいけない。
 また、私は、きのうも申し上げましたけれども、イラクを守るために言っているのではない。イラクはクロでしょう、もう限りなくクロに近いグレーだと私は思います。しかし、国際社会が成熟をしていないまま攻撃が行われた場合に、イラクに対する同情とか、あるいはそれを支援するような組織、あるいは関連するようなテロというものが起きた場合、そのテロに対して本当は怒りの矛先を向けなきゃいけないにもかかわらず、何かテロが正当化される、やはり悪かったのはイラクを攻撃したアメリカじゃないかというような国際社会、世論が盛り上がるということを非常に私は心配しています。
 だからこそ、きのう総理がおっしゃったように国連決議が望ましいのではなくて、一歩踏み出して、やはり新たな国連決議が必要である、そして、国際社会のコンセンサスをやはり高めていくようなそういう努力をしていかなくてはいけないと私は思います。
 総理にお伺いしますが、望ましいとおっしゃいましたけれども、では、その望ましいというものをどういうふうに国際社会の中で努力をされていくのか、アメリカに対しても、新たな国連決議をすべきだというふうにおっしゃるべきだと思いますけれども、その点について総理の御答弁をお願いします。
小泉内閣総理大臣 これは表現の問題と絡んでくると思いますね。前原議員は、すべきだと言う。私は、望ましいと。
 そして、アメリカに対しても、今、国際協調体制をとろうと必死に努力されている、この努力を継続すべし、継続することが大事だということを繰り返しブッシュ大統領にも話しているわけであります。また、ブレア首相ともそのような話をしたわけであります。同時に、まずイラクが国連決議遵守、一四四一を実行に移せば全く問題解決しちゃうんですから、何も問題ない、平和的解決になるわけです。イラクに対しても、一四四一を履行しなさいと。両方の働きかけが必要だと思っております。
 そういう中で、これから査察団のブリクス委員長が、八日ですか、イラクを訪問すると伺っております。その協議の終わった後、十四日ごろにはまた安保理事会で報告をされる、それでまた協議がされる。そういう状況を見ながら、日本としてはできるだけ国際協調体制をとるように働きかけていきたい、そう思っております。
前原委員 国際協調を働きかけているということと、イラクに対して査察を全面的に受け入れろということについては、異存はありません。
 もう少し具体的に、私が質問しているのは、新たな国連決議が望ましい、そういう場合に、どういう働きかけをアメリカも含めてされるんですかという話をしているわけです。私は、その答弁をいただきたいんですが、国際社会の協調あるいは国連中心主義というものを今こそ高めるいいチャンスだと思うんですね。
 少しさかのぼりますと、冷戦時代というのは、アメリカとソ連がいがみ合って、常任理事国の二国が拒否権を発動し合って国連がうまく機能しなかった。しかし、冷戦が崩壊をして、特に九月十一日以降、テロへの対応、国際協調ということで、私は、むしろ国連の果たすべき役割が高まってきた、またそれを機能させるいいチャンスだというふうに思っています。
 そういう意味で、新たな国連決議が望ましいんではなくて、私はその一四四一の後には新たな国連決議があるべきというふうに思いますが、もう一度具体的にお伺いします。その国連決議を望ましいとおっしゃった総理、どう実現をするために、そのポイントを絞って御答弁をいただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 後ほど外務大臣に答弁させますが、これはパウエル国務長官の報告のみならず、これからブリクス査察団の報告もなされると思います。そういう中で、決議におきましても、どういう決議が出されるかもまだわからないんです。対応も、今各国表明されておりますが、その表明もどういう表明になるかまだわからない。今までの表明を変える国もあるかもしれない。
 そういう状況を見ながら、日本としては、今までどおり、イラクに対しては、これは誠実に一四四一決議を実行しなさいと、アメリカに対しても、ここまで国際協調体制をとるように努力しているんだから、今後も国際協調体制を構築するように努力を続けることが大事であると、今の時点では日本ははっきりと表明している。これがやはり日本としての外交努力として必要じゃないかなと思っております。
前原委員 十四日の報告を受けての話になりますが、新たな国連決議が必要であるとアメリカに言われますか。その点だけ簡単にお答えください。
小泉内閣総理大臣 何回も答弁していますが、国際協調体制を構築する努力は極めて重要だということを今後もアメリカに対しても働きかけていくつもりでございます。
前原委員 ダイレクトにはお答えをいただいていないと思いますが、日本は国連にどれぐらいお金を出しているかというと、世界の第二位ですね。百九十一の加盟国がありますけれども、日本は五分の一のお金を出しています。二百四十億円。しかも、情けないことに、これはちょっと別個に答弁いただきたいんですが、まだ敵国条項というのが残っているんですね。つまり、第二次世界大戦の敵国条項、これは残ったままなんです、まだ。世界第二位のお金を出して、常任理事国にもなっていない、そして敵国条項が残っている。こういうような中で、国際協調を目指すとかそういうお題目ではなくて、どう能動的に行動するか、働きかけるかということが問われているわけです。
 私は、見守るという言葉が総理は多いなと思いますけれども、どうそういう国際社会を日本が考えるように持っていくのかということの中で国連決議の話をしているわけであります。その話については、また水かけ論になるかもしれません。
 敵国条項の問題について、日本としては、これは国連外交を進める上でどう考えるのか。総理、ちょっとその点についてお答えください。
小泉内閣総理大臣 後で外務大臣、答弁いたしますが、私は九月でしたか、国連で演説をしたんです。そういう中で敵国条項にも触れて、国連改革についてはっきりと日本の立場を表明しております。今ちょっと手元に、その確実な、どういうような発言をしたかというのが、資料がありませんが、その点についてははっきりと表明しております。
 あとは外務大臣がお答えいたします。
前原委員 表明しても、それが変わっていないと、私は、物事が進んでいなければ意味がない――結構です。済みません。また、必要であればお願いいたしますので。
 つまり、言っても変わっていないという、すべて、改革の話でも同じかもしれませんが、進まないことに対するいら立ちというのは物すごく、私もあります。したがって、言いっ放し、それで変わっていない。そしてまた、先ほどの国連決議についても、見守っていくということではなくて、私は、能動的に日本外交というものを追求していく、そういう姿勢が欲しいということは注文をさせていただきたいと思います。
 イラク問題についてもう一つ質問をしたいと思います。
 テロ特措法がございますね。テロ特措法で、今インド洋に、海上自衛隊の艦船が三隻、補給船が一隻、イージス艦一隻、ミサイル護衛艦一隻、活動していますけれども、防衛庁長官、これ、イラクへの攻撃が起きた場合、この活動に危険性が高まると思うんですが、どういうふうに想定されていますか。危機管理の問題ですので、お答えください。
石破国務大臣 イラク攻撃が行われるかどうかはまだわかりません。どういう状況であるかも想像ができないところであります。しかし、一般的にテロ特措法というのは、委員御案内のとおり、そういう地区では行わない、そういう危険が伴うところでは行わないということになっております。
 したがいまして、前提はともかくといたしまして、そういう危険のある地域、そういうところでテロ特措法に基づいて活動することはできないと考えております。
前原委員 いろいろな話が言われています、つまりは、イージス艦を派遣したことについても、イラク攻撃を前提とした間接支援ではないかと。もちろん、政府の立場としては否定をされるんでしょうけれども、そう見られても仕方のない部分がある。
 イージス艦については、カバーできる範囲が、今までのミサイル護衛艦の、半径でいうと大体五倍ぐらい、ということは、体積でいいますと五の三乗ですね、五の三乗ぐらい広い範囲をカバーできる話になります。そういうところと、あとは、米軍とデータリンクしていますよね、補給艦以外は。つまりは、いろいろな情報がデータリンクされている、リアルタイムに情報が送られるようになっている。
 危険なところでは行動されないという話はされていますけれども、もちろんイラクの、まさにイラクの近辺では活動はされないとは思いますけれども、それだけ広い範囲のいわゆる情報収集能力がある。しかも、米軍とのデータリンクがなされている。そして、起きた場合に、テロ特措法以外のことをやりませんといっても、その情報の仕分けができるんですか。油の補給の話については、それは確認をする、イラク攻撃がもし行われたときに、そのイラク攻撃に対して行くような艦船に対しては補給をしない、こういう答弁がなされたと思いますけれども、データリンクされているということについては、日本の得た情報がアメリカに伝わるわけですね。そんな仕分けができますか。
 いかに地域が違うといったって、広い範囲で情報収集ができている、しかも、間接支援と世間で一般的に見られている以上は、離れていた地域であっても、日本に対してのテロ攻撃、間接支援しているじゃないかといって、イラクに同情的な、例えば原理主義過激派なんかが攻撃をしかけるかもしれない。そうすると、テロ特措法というものは、イラク攻撃と混同する可能性というのはあるじゃないですか。
石破国務大臣 これは、今まで政府が、一般的な情報収集というものは一体化しないというふうにお答えをしておる。つまり、何時何分の方向に向かって撃てということは、それは特定の情報提供に当たるかもしれない、しかし、一般的な情報を日本と米軍が共有をすること自体は武力行使と一体化しないというのは、従来から御答弁を申し上げておるとおりであります。
 それで、委員御指摘のように、それじゃ、きれいに切り分けられるのかといえば、これはこれ、あれはこれといってきれいに切り分けるかどうか、それは私は難しいことなんだろうと思っています。しかしながら、委員よく御案内のとおりのことでございますが、情報を共有するということ自体、それが武力の行使と一体化するとは私ども、考えておりません。
 かてて加えて、それでは、米軍が仮に、遠く離れたイラクでと仮定をいたしましょう。これは完全に仮定のお話です。そこで武力攻撃をした。そこへたまたま、情報の共有がリンク11あるいはリンク16であったとします。それのみに基づいてアメリカは攻撃をするだろうか。それは絶対にあり得ないことだと思っております。これは軍事の常識です。これは委員一番よく御案内のとおりであって、そうしますと、米軍にしてみれば、いろいろな情報を仕入れる、その中の一つを日本と共有することはあるかもしれない。しかし、それが武力の行使と一体化することは絶対にあり得ないし、そしてまた米軍も、その情報のみに基づいて攻撃をするというようなことは、軍事の常識としてあり得ないことだ。ですから、私は、二重の意味で、そういう御懸念は当たらないというふうに考えておる次第でございます。
前原委員 防衛庁長官はちょっと混同されていますね、私の質問を。私は、集団的自衛権の解釈を聞いているんじゃないんです。テロ特措法という法律の範囲の話を聞いているんです。
 武力行使の一体化の話は今おっしゃったとおり。僕はその話を聞いていないんです。テロ特措法の範囲というのは、まさにイラク攻撃とかそういうものではだめですよね、別の法律をつくらないとできませんよねと。
 自衛隊のできることというのは、何ができるかということでしか動くことができないですから、法的根拠がなければできないでしょう。でも、今まさにおっしゃったじゃないですか、切り分けられないと、情報をデータリンクしているんだから。それだったら、イラク攻撃が起こったらテロ特措法に基づく支援活動というのは中止しないと、今のだったら論理的に成り立たないですよ。だって明確におっしゃったんだから、切り分けられないと。
 だから、集団的自衛権の憲法解釈を聞いているんじゃないんです。テロ特措法の範囲について聞いていて、今おっしゃった、切り分けられないとおっしゃったら、イラク攻撃があったらとめなきゃいけないという論理になりますよ。
石破国務大臣 それは、ぎりぎり論理的に詰めれば、委員のおっしゃるようなことは、それは絶対に起こらないとは言えない。しかし、そうだとするならば、情報の共有それ自体というものが、それはもう全く武力行使とは関係のないお話になります。
 そしてまた、テロ特措法に定められておるものは、後方支援を行う、そして、我が方の例えばイージス艦がいろいろな情報を収集するということは、それは専ら我が国の国益のために、国際社会の責任ある一員として行動する我々の船に、我々が行動しておるそういうような後方支援活動に、そういうような危険が生じないようにという目的で行っておるものであります。
 そういう目的にかなうために、安全にいかにその任務を行うかということで情報収集を行っておるわけでありまして、そのことをもってテロ特措法の範囲を超えるではないかという御議論は当たらないものと考えております。
前原委員 いや、石破長官とあろうものがおかしいですよ、今の話は。わかっていて、しまったと思っておっしゃっているのかもしれないけれども。
 つまりは、もう一遍整理しますよ、武力行使の一体化、僕は憲法解釈を聞いているんじゃないんです。集団的自衛権の話を聞いているわけじゃなくて、テロ特措法というのは、まさに、九月十一日に起きたアメリカの同時多発テロ、それに対してアメリカが自衛権でアフガニスタンを攻撃する、アルカイダ掃討作戦をやっている、それに対して後方支援をするということですよね。だけれども、さっきまさに、イラク攻撃が起こった場合には情報は切り分けられない、そういうことができないと明確におっしゃったじゃないですか。ということは、テロ特措法に基づいた範囲を超えることが、データリンクをしている以上は起きるということの裏返しじゃないですか。
 今おっしゃったものの後半は、自衛隊の任務遂行のために、危険にさらされないために情報収集しているというのは、それは当たり前ですよ、情報収集。別にアメリカにデータを送るために情報収集を一義的にやっているわけじゃなくて、まず、みずからの任務遂行をやるために情報収集をしている。
 しかし、それと同時に、データリンクをしていて、さっき、まさに切り分けられないとおっしゃったじゃないですか。ということは、テロ特措法に基づいて行っている行為が、イラク攻撃が行われたときに、データリンクがされている以上は、一たんその活動をとめなければ、あるいは新規立法をもって協力するということでなければ、中断しなければ論理的に合わないじゃないですか。
石破国務大臣 それは、冒頭に申し上げましたように、どういう形でイラク攻撃が行われるかということを予断を持って私は議論することはしてはいけないことなんだと思っております。
 先ほど来総理が答弁されておられますとおり、どうしてそれが起こらないか、国際社会がどうやって一致してそこで戦争が起こらないようにするか、イラクが無条件、無制限に査察を受け入れさえすればそういうことにならないわけですから。そういうことを前提として、何が起こるか、どこが作戦地域になり、そして、どこが我々がやっておる後方地域であるか。
 データリンクの何たるかは、それは前原委員がよく御存じのことであります。どのようにしてその情報が伝わるかというシステムも、それは御案内のことであります。それはかなり軍事の機微に属することでありまして、ここでデータリンクがいかなるものかということを議員と詰めて詰めて議論することが、私は必ずしも望ましいことだとは思っておりません。それは当然のことだと思います。
 第一に、前提として、では、どこでどのような形で行われるのかということにつきまして、私どもは知り得る立場にはございません。そういうことがないようにどうやって努力をするかということが、今喫緊の課題であろうと考えております。
前原委員 いや、答弁になっていませんし、仮定の話にすりかえて逃げておられるだけですよ、それは。私が聞いているのは、先ほど切り分けられないとおっしゃったんです。明確にそれはおっしゃったんです。もうそれは答弁として覆らない。切り分けられないとおっしゃったのであれば、テロ特措法の範囲を、イラク攻撃が起こった場合は超えるのはだれが見ても明らかじゃないですか。ということは、イラク攻撃が起きたときには、テロ特措法を中断しなければ、データリンクをとめない以上はできないということになるじゃないですか、論理的には。それを聞いているんですよ。
石破国務大臣 それは、逃げているわけでも何でもございません。それは、いいですか、それこそ前原委員らしくないというかな、お尋ねの仕方かもしれませんが。つまり、情報というものがデータリンクの中で、データリンクのシステムを委員はとにかく御存じのはずです、その中において、これはどういう情報で、あれはどういう情報でというふうに明確に切り分けるということは、それはできないでしょう。実際にできるということは、どういうようなコンピューターのシステムを使って、これは違う、これはそうだというふうに切り分けるということに意味があるとも思いませんし、それができるとも思っておりません。
 そうしますと、では、おっしゃるようにデータリンクをとめるのか、それとも中断をしてそういうようなことをやめるのか、それとも新法をつくるのか、そういう御議論になるのかもしれません。しかしながら私は、先ほど、別に逃げておるわけでもございませんで、その情報は専ら日本の船がいかに安全にオペレーションを行うかということのためにやっておるわけでございます。そしてまた、データリンクの伝わり方というものは、それはどういう状況で行われるかによって全く異なることであります。したがいまして、法律というものはきちんと考えていかねばなりませんが、前提として、どのような状況でそれが起こるかということはわかりません。したがいまして、わからないことに基づいてああだのこうだの言うことは、私は、国会の場の御議論としては、これはなじまないものと考えておる次第でございます。
前原委員 同じ質問になってしまいますので、この点は留保させていただきたいと思います。
 明確に切り分けられないとおっしゃった。そして、テロ特措法に基づいて、今護衛艦は二隻、一隻はイージス艦を派遣している。そして、情報収集能力、処理能力は格段に向上した。それはイラクの間接支援ともとられても仕方がないというところはもう定説になっていますよね。その中で、今防衛庁長官ははっきりと、データリンクがなされていて、アメリカがどういう情報を処理するのかということは切り分けられないとおっしゃった以上は、私は、テロ特措法の範囲の外に出てしまうもの、可能性があるということを指摘し、この点については問題ありということで、予算委員会も始まったところですので今後の議論にゆだねていきたいというふうに思います。私もその点についてはしっかりとやらせていただきたいと思います。
 最後に総理にちょっとお願いをしたいことがあります。私が、昨年予算委員会で二回総理と議論をさせていただきました。その二回ともに共通するテーマは朝銀の話でありました。北朝鮮の朝銀ですね。合計で一兆四千億円の公的資金投入が行われたんですね。しかも、この問題というのは、私が指摘したように、単に金融機関のバブル崩壊後の破綻の話じゃなくて、架空融資とかあるいは仮名口座、そういうものに細工をして朝鮮総連にお金を流した、そして朝鮮総連から北朝鮮にも、私は、実際にお金を持っていった、万景峰号に乗せて持っていったという方の話も聞きました。これは総理にもお伝えをしたとおりであります。
 その全容解明を、去年の二月と去年の十二月、二回の予算委員会にわたって私は総理にお願いをしました。全容解明、それから責任。一兆四千億の税金がむだに使われるわけですよ、それに対する責任追及、責任の所在もしっかりとしてもらいたいということも言いました。それについては、全体像をしっかりと調査した上対処するということを二回ともおっしゃいました。何も進んでいない、それについて。
 私は、この税金の使い道を決める予算委員会の場で、そういったものがあやふやで、そして全く明らかにされないまま予算というものが審議され、そして国会で成立をするというのは、やはり看過できない話だと思うんですね。私はやはり、予算が議論される前提として、この朝銀の一兆四千億円の問題については、明確な政府としての調査報告書を出してもらいたい。それについて、総理、御答弁をいただきたいと思います。
竹中国務大臣 朝銀信組をめぐりまして、そのさまざまな問題が指摘されておりますけれども、これにつきましては、金融整理管財人の派遣によりまして、責任追及の取り組みが着々となされているところであります。御承知のように、民事提訴が二十件、刑事告訴、告発五件の実績が上がってきております。これを端緒に捜査当局による捜査が今入っておりまして、司法による事実解明が今進められているというところでございます。
 さらに、事業譲渡に当たっては、RCCにこの不良債権が引き継がれるわけでありますけれども、RCCの権限をもちましてその回収作業を行うことを通じて全体像を明らかにして、今実態解明を進めているところでございますので、その結果をやはり待つ必要があるというふうに思っております。
前原委員 時間が来ましたのでこれで終わりますけれども、今の竹中さんが答弁されたのは立件された分だけなんですよ。つまりは、一兆四千億円の莫大なお金の一部にすぎないんです、立件した話は。そうじゃなくて、さっき申し上げたように、架空融資とか仮名口座とかでいっぱい細工を、工夫をして、朝鮮総連にお金が流れて、それが北朝鮮に流れていたわけです。言ってみれば、日本の税金で北朝鮮の体制崩壊を防いでいたみたいな話なんですよ、これは。これは金融担当大臣だけに任せたってしようがない、あるいは国家公安委員長だけに任せてもしようがない。政府が全体を挙げて、政府が、総理が、政府全体の責任として、一兆四千億円の公的資金を投入した朝銀の問題の全体像の解明をするという姿勢がなければだめな話なんですよ。
 報告書を出してもらいたい。まず委員長にお願いをします。それと、総理の答弁をお願いします。
小泉内閣総理大臣 北朝鮮に資金が不正送金されているのではないかという疑惑、これはいろいろな方々からも言われておりますし、また、報道でもされているということは承知しております。そういう事実関係について、どうなのかということで、調査しているのは事実であります。
 そこで、今までにおきましても、このいわゆる破綻朝銀については、派遣された金融整理管財人が旧経営陣等の民事、刑事の責任追及を行っている、また、刑事事件としての実態解明も進められているわけであります。現に、刑事責任があると認められているものについては告訴も行ってまいりました。また、金融整理管財人の告訴を受けた捜査当局においては、破綻朝銀の旧経営陣を逮捕、起訴するなどして、厳正に対処しております。また、朝銀の東京前理事長らの業務上横領事件の一審判決において、元総連財務局長らが横領した朝銀の資金の一部が総連側の使途に充てられていた事実が認められております。
 そういう中で、今後も、法に基づいて厳正に対処しなければならないと思います。
前原委員 これで終わりにしますが、最後に、委員長に要望します。
 今総理の御答弁されたことは今までの答弁の繰り返しですし、何度も申し上げるように、立件されているものというのはごく一部なんですよ。一兆四千億円の話のごく一部。しかも、もう時効の話もたくさんあるんです、バブルのころの話からですから。そうすると、全体像の把握には、今おっしゃったようなことでは絶対ならない。
 全体像の把握をしてもらわなきゃいけないし、責任追及もしてもらわなきゃいけませんので、やはり政府挙げての報告書を提出していただきたいと思いますが、委員長に要望させていただきたいと思います。
藤井委員長 理事会で協議いたします。
前原委員 はい、お願いします。
 では、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
藤井委員長 この際、枝野幸男君から関連質疑の申し出があります。菅君の持ち時間の範囲内でこれを許します。枝野幸男君。
枝野委員 民主党の枝野でございます。
 今回の予算で、デフレを何とか克服したいという強い意欲だけは示されていますが、そもそも、デフレというのはどういう状況なんでしょうか。これは竹中さんで結構です。
竹中国務大臣 これはもう言うまでもありませんが、デフレというのは収縮するという意味でありますから、個別で言えば、やはり物価が下がっている状況ということになろうかと思います。具体的に日本の場合は、GDPデフレーターは一九九〇年代の半ばからもう七年、八年、一時期を除いて下がっておりますし、消費者物価についてもここ数年間下がっている。
 ただし、一般にデフレと使う場合は、純粋に物価が下がるだけではなくて、景気が悪い、不況だということも含めて使われる場合もありますので、これは人によるわけでありますけれども、ここで我々が議論しているのは、物価が下落している状況、それを何とかストップさせたい、そういう趣旨でございます。
枝野委員 さて、このデフレから脱却しなきゃならない。要するに、物が売れないからデフレになるわけですね。それで、デフレを解決させるためには、物が売れるようになるか、それとも、物が余らないように供給を削減するか。まさか供給を削減するとは思っていないですよね。やはり物が売れるようにならないと、あるいは、物というものの中にはサービスも含めてですけれども、そうしなければデフレは解決しないと思うんですが、そういう認識でいいですか。
竹中国務大臣 これももう既に何度か御議論させていただきましたが、デフレ、物価が下がる要因は極めて複合的なものであるというふうに思っております。
 需要が供給に比べて不足している、需給ギャップがあるという面も確かにあります。しかし、今の需給ギャップ率は過去に比べてそんなに大きいわけではないというのも事実でございます。さらには、海外から安いものが入ってくる、IT革命でパソコンの値段が下がるという供給側の要因もございます。さらに、我々がやはり一つ注目するのは、これはすぐれて金融的な現象であるということで、マネタリーな側面、金融的な側面であります。社会全体でマネーの量が余りふえていない状況にある。
 これに関していろいろな議論が今なされているわけでありまして、そのすべての問題をやはり考えていかなければいけないというふうに思っております。
枝野委員 マネーの話は、日銀が供給量を非常に緩和をしているのにお金が途中で詰まっている。これは、一番最後のところで中小企業金融の話でさせていただきたいというふうに思いますが、消費者の立場、一般の国民の皆さんの立場から考えてみます。
 「改革と展望」の中で、政府は、二〇〇四年度までの集中調整期間後にはデフレは克服できると見られるとお書きになっています。政府が正直であるということは一般的にはいいことだというふうに思うんですが、時々やはり、すべてのことは伝えることができない部分、例えば外交上などにそういった部分があるのはわかります。何でここだけばか正直にお答えになっているのか、お書きになっているのか私にはよくわからない。
 実は、昨年もこの議論をさせていただきましたが、二〇〇四年度までの集中調整期間後にはデフレは克服できると見られるということは、二〇〇四年度中まではデフレの状態が続く、つまり、物価が下落することは続くということはやむを得ないんだというか、避けられないんだという認識を示されているわけですね。
 消費者の立場から見れば、もちろん、時期を選べない必要なものについてはこの期間においてもお金を出して買い物するでしょうけれども、二〇〇四年度が終わるころまでは物価は下がり続けると政府も太鼓判を押してくれているんだったら、不要不急の買い物は二〇〇四年度の終わりごろ、つまり二〇〇五年の二月か三月ぐらいまで買わないで待っていた方がいいなというのが消費者心理として当たり前だと思いますね。そうするとますます物が売れなくて、需給ギャップが広がって、物の値段が下がって、デフレを加速することになるんじゃないですか。
 総理、どうですか。難しい話じゃないんで、経済の難しい話じゃない、シンプルな話です。
小泉内閣総理大臣 学問的なことは竹中大臣に後ほど答弁させますが、確かに、一般的な感覚としてそういうことも当てはまるかもしれません。
 と同時に、今消費者は賢いですからね、不要不急のものは買わない、しかし、高くても買っている人はいるんですよね、この時代に。それで、安ければ安いほどいいという人もたくさんいる。同時に、高くても質がよければ買おうという、消費者が非常に賢明になっている。確かに全体としてこれから物価はそんなに上がらないだろう、下がるだろうというときにおいては、もうちょっとこれは待った方が下がるかなという動きも確かに出ると思います。
 しかし、そういう中で、各企業等が努力して、いかにサービスを提供していくか、いい商品を提供していくか、そういう努力をすることによってまた新たな需要が出てくる。いかにそういう環境をつくっていくかというのも非常に私は大事なことではないかと思っております。
 学問的なことは、ちょっと竹中大臣、どうぞ。
枝野委員 微妙に論点をずらされてお答えになっているなと思うんですが、もちろん消費者は賢い。消費者は賢いという中で、どうしても欲しいものは高くても買う。それもそのとおりです。
 しかし、全体として、マクロの日本経済全体としてどれぐらい消費が伸びるのか下がるのかということを考えたときに、これから物価は下がりますと政府がお墨つきをつけてくれている状況の中で、国民の皆さんが、例えば不動産、土地を買おうかどうしようか、こんな大きな買い物だから、まだデフレが続くんだったら、もっと下がったときに買った方がいいなという方向に気持ちがなっていって、そうした中でも、やはりいいものだから早く買っておこうという人はもちろん一部にはいますけれども、全体としてはやはり消費を冷え込ませることになっていくのではないか。
 この消費者心理といいますか、消費者の立場から経済を見ないで、学問的なところから、一生懸命先ほど難しいことをおっしゃっていましたが、デフレは何だかんだということをおっしゃっているから、いつになっても経済が回復しないのではないかというふうに思っていますが、そういう観点から税制改正の話をちょっとお尋ねさせていただきたい。
 税制改正は何のために今回なさったんですか。景気の回復そしてデフレの克服のためではないんでしょうか。
塩川国務大臣 経済の活性化を図るということ、これに、一点に絞って税制改正いたしました。
 そのためには、企業が積極的に投資をしてくれること、あるいは研究開発に投資をすること、それからまた個人の資産が流動しやすく、例えば親の財産が子供に移転して、子供がそれを積極的に経済活動に使うこと、あるいは証券投資を積極化するために貯蓄から証券へと資金が動く、そういう資金の流動を通じて活性化を図るという面を考慮してやったものであります。
枝野委員 ところが、もう政府もお認めになっているとおり、今回の減税は、税制改正は先行減税だけれども税収中立だと。将来、今回減税になっている分はどこかで増税をして取り返す。しかも、その取り返す増税の中身というのは、酒、たばこという大衆増税であったり、あるいは配偶者特別控除の廃止、これまた大衆増税です。
 国民の皆さんは、総理もおっしゃったとおり賢い消費者でありますから、今回いろいろ減税をしてくれているようだけれども、その減税になった分はこういう大衆増税で、配偶者特別控除だなんというのは、基本的にはかなりの一般の庶民の皆さんが受けているもの。酒、たばこ、もちろん嫌いな方もいらっしゃるでしょうけれども、多くの方々が酒、たばこの消費者であります。そういう皆さんにとっては、なるほどいろいろな減税をしているようだけれども、その分はどうせ後で取り返されるんだなということがわかっているときに、さあ消費者の皆さんは、せっかく減税もあったことだしお金を消費に回そうか、こういう方向に向かっていくと思いますか、総理。
小泉内閣総理大臣 私は、皆さん増税のことばかり言いますけれども、酒、たばこ、二千億円増税しますけれども、研究開発投資とかあるいは住宅取得しやすいような減税とか、二兆円しているんですよね。それを、増税二千億円、酒、たばこ。しかもお酒は発泡酒でしょう。一缶十円ですよ。たばこは一本一円ですよ。これで二千億円の増税ばかり言いますけれども、二兆円の減税、みんな言わない。(発言する者あり)いやいや、だから、二兆円の減税して二千億円の増税するから、差し引き一兆八千億円なんですよ。そうだよな。そう、そう、そう。
 だから、そういうことを考えると、しかも、それじゃ減税だけすればどういうことになるか。その穴埋めはまた借金でするんですか。そういうことじゃなくて、やはり長期的に財源がないといろいろな政策執行できないんだから、そういうことも考えて、単年度じゃなくて多年度でやろうということなんですよ。
枝野委員 私も質問の中で今申し上げましたけれども、減税はされている、だけれどもその減税分は、税収中立で、いわゆる先行減税なんだから、将来その分増税しますと公言しているわけです。
 そのときに、消費者の心理として、幾らことしの分だけ見たら減税ですと言われても、だけれどもその分は将来増税されて取り返されるんですよというメッセージを投げていて、それが消費者の購買意欲、物を買おう、サービスを買おうという意欲にはどういう影響を与えますか。もちろん財源が必要だ、それは後で申し上げます。だけれども、消費者の心理との関係でどういうふうにお考えなんですかと聞いているんです。
小泉内閣総理大臣 しかし、経済というのは、消費者だけ、一部だけじゃありませんね。それでは、もう減税だけやって、あと財源考えないで借金しようということになった場合に、国債が暴落する、長期金利が上がる、こういう影響もやはり考えなきゃいかぬ。そういうこともやはり必要じゃないでしょうか。
枝野委員 財源の話は後で。我々、八・八兆円分の財源を生み出すということで、民主党の予算案、きのう菅代表が提示をさせていただいていますが、財源は、きちんと必要度の小さいところを削減するということで借金をふやさなくてもできると私たちは考えています。
 そして、まさに消費者、消費だけではない、確かに経済は消費だけじゃありません。しかし、僕はそこのところがやはり根本的に間違っているんじゃないかと思うのです。というのは、企業の設備投資、大変大事です。設備投資が伸びてくれないと経済は活性化しない、それはそのとおりです。しかし、設備投資というのは最終的に消費をしてくれる人がいるから設備投資の意味があるんです。
 ちなみに、この間の日本の不況は、輸出のところが落ち込んで、そのことで不況になって、デフレになっているわけでは基本的にはありません。輸出の部分は必ずしも悪くありません。国内で物が売れない、あるいはサービスが売れない、最終的な消費者の皆さんの財布のひもがかたく閉ざされている、だから不況になっているんです。この部分が、財布のひもが緩んで消費者の皆さんが最終消費をしていただかなければ、設備投資だけふえたとしても、設備投資をした分がまた供給過剰になってしまうだけです。
 ですから、やはり最終消費、消費者がどういう気持ちになるのか、消費者の皆さんがこれならばお金を使おうという気持ちになっていただかなければ、投資のところで幾ら減税をしようが何しようが、実は効果は上がってこない。このことは実は何年間も繰り返しているんじゃないですか、総理。
小泉内閣総理大臣 今いみじくも枝野さんも言われたように、経済活性化というのは消費者だけのことじゃない、全体ということを見なきゃいかぬということを言ったわけでありますが、消費を刺激するというのは、これは、民間が今消費に占める割合は五〇%以上になっていると思いますね、六割。かなり民間の部分が大きいわけです、政府の役割以上に。そういう点も考えると、いかにやはり企業にやる気を出させるか。設備投資にしてもそうです。消費者だけじゃなくて、それがひいては企業の活力が出てくると雇用にもいい影響をもたらす、それがめぐりめぐって消費者にも影響してくる。
 だから、消費者の一部だけ見ますと、例えて言えば、日本は消費税が五%だけれども、二〇%以上持っている国は消費がもう減退しているのかというと、そうじゃないでしょう。一部だけ見ると違うんですよ。だから、一部だけじゃ見れない、そこの点もやはりよく考えていただきたいと思うんですね。
枝野委員 消費者の性向というのは、確かに消費税の税率が五%の国もあれば二〇%の国もあります。だけれども、これから増税になっていくんだという状況における消費者の心理と、それから将来について安心なんだという消費者の心理と、それはどれぐらい消費に向かうのかという意欲は全く違っている。しかも、確かに私どもも、いわゆる公的な、いわゆる公共事業的なところで最終消費をふやそうという考え方は違うと思っていますので、民間が頑張っていただかなきゃいけないんですが、民間が頑張っていただくためにも、消費者の皆さんの財布のひもが緩むようなことをできるだけしなきゃいけないのに、大衆増税をする。このことは財布のひもを閉じる。
 もう一つだけ。
 医療費の自己負担が二割から三割に上がる。これも明らかに消費者の心理からすれば、病気になったときに病院で、窓口で払わなきゃならない負担が、五〇%の値上げですよ。二割から三割という言い方をしているから何となくちょっとのように感じますけれども、五〇%の値上げをされるんだ、うかつに病気にもなれないな。うかつに病気にもなれないんだったら、病気のときに備えてますます財布のひもを閉ざして、できるだけ物を買わないで少しでも貯蓄をふやさないといけないな、そういう心理になるのが当たり前じゃないか。
 最終消費をふやさなければならない、デフレを克服しなきゃならないというときにこういう改悪をするというのは、明らかに経済に対してマイナスだと思いますが、いかがですか。
小泉内閣総理大臣 今、医療費の三割負担のことを言及されましたけれども、これも、医療費は健康な人も保険料を払っているんですよね。当然、税金は、今防衛費は五兆円ですけれども、たしかことしはもう七兆円超えているんじゃないかな、税金投入。国民も負担しているんです。医療保険というのは、全員が支えているんです。病気にならない人も、病院へ行かない人も、健康な人も保険料を負担しているんですよ。
 だから、今回、今まで診療報酬なんか下げたことないと今お医者さん、みんな怒っています。野党の皆さんは、お医者さんと相談して、つぶせ、つぶせと今やっているでしょう。そういう、お医者さんは怒る、自分たちも診療報酬下げられて、とんでもないと怒って、自民党も応援しないなんか言っている。野党を応援しようかななんか言っちゃっているんだよ、本当に。これは、もういかに自由民主党が国民全体のことを考えているかという一つのあらわれだと思うんですが、ともかく、そういう医療保険というのは、国民の全体の、病気になっていない人も、保険料を負担している方のことも考えなきゃいかぬ。同時に、税金ももう七兆円、毎年毎年負担している。そしたら、病気になった人も、これはもうお医者さん、ただで診てくれれば、病院行けばいいんだというんじゃ健康にならない。医療費が安くても、やはり薬にだけ頼っちゃいかぬ、お医者さんにだけ頼っちゃいかぬ。日ごろの生活習慣、よく休養をとって、食事も気をつけて運動もするということがやはり健康につながるんで、そういうことも全体考えて。
 この日本の医療保険というのは世界に冠たる保険なんですよ、医療保険制度なんですよ。病院に行けば安く診てくれる。三割負担といっても、百万円かかったら三十万負担じゃないんですよ、上限が設けられている。低所得層はさらにその半分。今まで六万三千六百円が今回七万ぐらい、上限は。だから、百万かかろうが二百万かかろうが、七万円程度の上限が設けてある。二十万、三十万じゃない。今、もう毎月、一年間百万じゃない、毎月百万、二百万かかる患者さんも多数いるんです。驚くことなかれ、一月一千万かかっている患者さんもいるんですよ。それを病気にならない人も負担しなきゃいかぬのだ、そういう点も考えなきゃいかぬ。
 今、じゃ、医療費の負担を三割、反対だといった場合に、それじゃ、もっと税金を投入すると言っている。どこで増税するんですか。(発言する者あり)財源はあると言っているけれども、その不正請求もちゃんと正している、今まで。いろいろなことをやっている。だから、非常な、全体を見ながら対応しなきゃいかぬ。
 それで、今皆さん……(枝野委員「聞かれたことからもう超えていますよ」と呼ぶ)ああ、もういいか。
枝野委員 聞かれたことに正面からお答えをいただきたいんですけれども、これでは消費者の皆さんが財布のひもを閉ざすんじゃないですかということを言っているんです。
 確かに、医療保険制度というのは抜本的に見直さなきゃいけない。このままいったら、高齢者の方がどんどんふえていけば医療費はどんどんふえていきます。このままいったら破綻をしてしまうから何とかしなきゃならない。そこで、小泉さんが一年九カ月前に登場したときに、聖域なき構造改革という言葉に多くの皆さんが期待をしたんじゃないですか。これ、構造改革で二割から三割の負担増なんですか。
 例えば、医療保険の保険者が不正診療とか過剰診療とかをチェックできるような保険者機能、きちんとチェックしましょう、あるいは、これからお年寄りがどんどんふえていって高齢者の皆さんほど医療にかかる比率は高くなりますから、そういうところの高齢者医療制度を抜本的に改善しましょう、そういうことで、医療全体のことを見直しましょうというのが構造改革のはずなのに、単にお金が足りないから二割から三割に上げます、これが構造改革なんですか。
 そうしたら、また抜本的な改革がないところで高齢者はどんどんふえていくんですから、次は三割が四割ですね、四割が五割ですよ、お金足りなくなって。その抜本のところをやらないで、そして消費者の心理を冷やすところ、とりあえず数字のつじつま合わせの負担増だけしているから、これでは景気に対してマイナスで、抜本改革も行われていない、こういうことなんじゃないかということを申し上げているんです。反論ありますか。
坂口国務大臣 今お話しございましたように、少子高齢社会、これからさらに進むわけでございますし、そしてまた、医療技術の進歩というものもございますから、トータルで考えましたときに、なかなかこの医療費が下がっていくということは考えにくい。これからどうしてもやはり上がっていくということをある程度前提にした上で将来を考えていかなければならないというのは、これはもう枝野議員も御存じのとおりでございます。そうした中で、今御指摘の抜本改革の問題につきましても取り組んでおりまして、この三月までにその結論を出したいというふうに思っております。
 まず、この診療の中でも……(枝野委員「抜本改革の中身はいいです。そんなこと言ってないです」と呼ぶ)保険の問題につきましても、ほかのことに、診療以外のところでたくさんのことが入り用になっておりますところを、そこを削らなきゃならない、診療自身にそれが向いていくようにしなきゃならない。そうした意味で、保険の統合の問題ですとか、さまざまな問題も今考えているわけでございます。
 そうしたことで、将来の目標としまして、総医療費の中で自己負担というのは大体一五%ぐらいのところへ持っていきたいというふうに思っています。今一七%ぐらいのところです。総医療費ですよ、総医療費の中でそのぐらいなところに持っていきたいと思っているところでございます。
枝野委員 抜本改革をしたいしたい、するんだするんだというのは、もう一年九カ月ずうっと聞いてきているんです。ずうっと聞いてきているんだけれども、抜本改革の話が出てこないで、負担増の話だけが具体的には出てきているというのが今の現状なんだ。これで本当に、将来ちゃんと医療制度を抜本改革してくれて、今回は二割から三割に上がるけれども、これが最後で、これから高齢化がもっともっと進んでいっても、これからの医療は安心なんだなと本当に国民の皆さんが思っていらっしゃるのか。そこのところが、先ほど来ずっと言っている消費者心理との関係で、不況克服、デフレ克服という観点から大事なんだというふうに申し上げているんです。
 さて、先ほど来、財源がないじゃないか、財源がないじゃないかということを総理は繰り返しおっしゃられました。確かに政府の予算案を見ると、お金が足りない。これ以上借金はできないということかもしれません。しかし、まさに財政の構造改革をしましょうという話というのは、減らすべきところを減らして、ふやすべきところをふやす。今回の施政方針演説の中でも総理は、大胆に重点配分しましたとおっしゃっているんです。それから、一年九カ月前、小泉総理が就任をしたときの所信表明演説に対して、民主党を代表して代表質問を本会議でさせていただきましたが、そのときの答弁でも総理は、ふやすべき予算がある、減らすべき予算がある、そういうところを、どこの予算を削るのか、ここが大事だと総理御自身がおっしゃっています。
 では、この二年間、そしてことし、国民負担増をこんなに入れなきゃならない、消費者心理を冷やすような国民負担増をしなきゃならない、その前提として、何をどれぐらい、どんなふうに大胆にカットしたんですか。
塩川国務大臣 今回、おっしゃるように、めり張りをつけるのはどこにつけたかということですけれども、一つは社会保障関係にはうんと増額をいたしました。それと、科学技術の振興費ということでございますが……(枝野委員「減らした方を聞いている、減らした方」と呼ぶ)減らした方は、食料安定供給施設の整備であるとか、あるいはまた、ODAでございますね、そういうところ、あるいは公共事業、そういう点について削減しております。
枝野委員 それぞれ幾らぐらいずつですか。そして、何%削減したんですか。
塩川国務大臣 公共事業では三%、それからODAでは四・七%、それから食料関係で五・八、大体そんなところであります。
枝野委員 公共事業三%に絞ってやりましょう。
 幾らですか。
塩川国務大臣 約六千億円ほどであります。
枝野委員 総理、これが大胆なんですか。
小泉内閣総理大臣 これは、限られた予算の中で、ふやせ、ふやせという要求の中で減らすということは、これはかなり大胆なことなんです。
枝野委員 いいですか、国民の皆さん。総理の言っている大胆な改革というのは、三%削減で大胆だという、それが大胆な改革なんだということを、国民の皆さん、ぜひよく聞いておいてください。
 私どもは、例えば公共事業の国費部分で三・六兆円公共事業費をカットするということで、三・六兆円分公共事業予算を一般会計の中からカットする、そういうことで、きのう菅代表が提起をしました民主党予算案を組んでみました。これぐらい減らすというのが大胆なカットなんじゃないですか。
小泉内閣総理大臣 その場合、当然予算というのは財源を考えなきゃいけませんから、ざっと拝見しましたけれども、ODAを五〇%削減しようと言っていますよね。これは、本当に日本の外交的な立場を考えて実現可能かどうか。
 しかも、予算というのは全体のことを考えなきゃなりませんが、医療費を上げるなということになりますと、これまた支出がふえます。(枝野委員「聞かれたことに答えさせてください。公共事業の削減のことについて」と呼ぶ)
藤井委員長 ちょっと静かにしてください。
小泉内閣総理大臣 だから、公共事業を削減した場合に、恐らく民主党にも、公園をつくってください、住宅をつくってください、河川の改修をしてください、いろいろな公共施設があると思います。それを本当に、今大体八兆円程度、それを三兆円以上カットできて、これは国民のいろいろな要望にこたえることができるかどうか。(発言する者あり)ああ、できるというのは大したものだ、これは。
 そういう場合、しかも、三十兆円を三年間法律で縛るというんだよ、国債発行。民主党はそう言っていたんですよ。国会で、法案提出していたんですよ。三十兆円に縛るという中でどうやって組むかというのは、これは私は非常に疑問に思っているんですよ。
枝野委員 まず、後段の話をよくきちんと反論しておきますが、私たち、一年九カ月前に、一年九カ月前の経済状況の中で政府支出から経済運営からきちんと間違えないでやれば、こんな税収減になっていませんから、三十兆の枠で十分縛れるんです。この一年九カ月、我々は経済運営の執行権を持っていないんです、間違った経済運営をした結果、税収減になって、それで三十兆円を守れなくなりましたという責任を野党に押しつけられても困るんです。我々に政権を預けていただければこんなことになっていなかった。皆さんは、少なくとも失敗をしたことというのは結果を出しているんですから。我々がやったときにできたかどうか、もしやってできていないんだったら我々の責任です。皆さんが経済運営をしていたということを忘れないでください。
 それから、公共事業全体で八兆のうち三・六兆も削って本当にやるべきことができるのか。わかっておっしゃっているのか、それともわかっていないでおっしゃっているのか、どちらかわかりませんが、三・六兆円公共事業予算を削ることで、いいですか、名目で、公共事業全体、どれくらい減るとわかっていますか、総理。
小泉内閣総理大臣 そこまで細かいことを言わせないでくださいよ。
枝野委員 いいですか、国費ベースの公共事業予算を半減近く我々はカットする、三・六兆カットすると言っています。これは、特別会計の出入りの部分とか特別会計で移せない部分がありますから、完全に半減ではありません。でも、一般会計では半減する、三・六兆円削減して、これをほかのところに回そうとしています。
 しかし、ではこれで、例えば建設業者の皆さんが半分仕事がなくなるのかと思ったら大きな間違いです。というのは、公共事業の大部分は地方がやっているんです。地方がやっている中で、国の予算を三・六兆円カットしても、全体としての公共事業、国、地方を合わせた公共事業の総額は八%しか減らないんです。いいですか。そのことをわかっていらっしゃいますか、総理。
片山国務大臣 民主党なり枝野委員は、一括交付金を地方に渡すので、その中で単独事業をやれ、単独事業的な建設事業をやれ、こういうことだろうと思いますけれども、今、私どもの方の地方財政計画を間もなく国会に出させていただきますが、大変単独事業に各地方団体は慎重になっておりまして、なかなか決算との乖離が大きゅうございますので、我々は、やってもらわないけません、これは景気対策もありますから、しかし、それは厳選してやってもらう、生活インフラを中心にやる、こういうことで今指導しておりまして、直ちに一括交付金をもって単独事業が公共事業並みにふえるかということには、必ずしもそういう見通しは持てないと私は考えております。
枝野委員 そちらから出していただきましたので、民主党の基本的な予算の資料も配らせていただいていますが、大きな概略を御説明させていただきますが、今わざわざ資料を配らせていただいております。(パネルを示す)一番上にあるのが、政府の予算の主な項目配分です。資料を皆さんには配らせていただいております。それです。一枚紙です。こういう資料です。同じものですね。
 我々は、一括交付金として、全体の三〇%を地方に自由に使ってくださいというお金にしようと思っています。実は、この三〇%分というのは、現在の政府の予算でも地方が使っているお金です。国が事業を発注して行っているのではなくて、地方自治体、市町村や都道府県の皆さんが行う事業に補助金をつけています。しかし、その補助金の使い方というのは、役所の縦割りの中で、このお金はこの事業に使いなさい、このお金はあの事業に使いなさいと。さすがに最近は減っていると思いますが、よく言われてきているのは、その縦割りのせいで、片方は農林省予算でついている農道、すぐ隣に、これは総務省でしょうか建設省でしょうか、県道が、二本立派な道路が並行して走っていますねというようなむだが地方で出ていたりしています。
 それから、地方公共団体の皆さん、事務で何に一番手間をとられるか。補助金の、この補助金つけてください、あの補助金つけてくださいという、申請業務に物すごい事務の手間がとられているというふうに言われています。地方が、それぞれの地域でどこに道路が必要なのか、どこに橋が必要なのか、こんなことは、霞が関のお役人よりも、それぞれの地域に住んでいる人たちの方がよくわかっています。我々だって、自分の選挙区の、くまなく全部のところを、どこの道路をどう直したらいいのかなんてなかなかわからない。それぞれの地域の人たちが一番わかっているのです。それを、国の基準に基づいて、ここにつけます、あそこにつけますだなんてやっているから、むだなところに道路がつくられたり、本来必要なところがなかなかつくられなかったりしているというわけです。
 ですから、これを、そっくりと自由にお使いくださいと。国の基準に合っていようが合ってなかろうが、例えば、二車線道路じゃなくてもいいですよ、車が少ないところだったらもっと規格のよくない道路でもいいですよ、自由に使ってくださいというようにお分けをします。しかも、今総務大臣がおっしゃられたとおり、それを借金の返済に充てられては困るわけです、地方で。これは事業を行ってくださいということでやるわけですから。
 ですから、何でも丸ごとじゃなくて、真ん中の段を見ていただければわかるとおり、カテゴリーごとに分けます。教育関係に今まで使っていた補助金は教育関係の枠内で使ってください、今まで公共事業で使っていた補助金は、一括して渡しますけれども、公共事業という枠の中では何に使ってもいいですけれども、それ以外のことには使わないでください。こういうことで、それぞれのカテゴリーごとで使ってくださいということですから、このお金を渡した分は、公共事業でちゃんと使っていただければ、単独事業でやっていただくことになるわけで、事業量は減りません。
 こういうやり方をすれば、先ほど申し上げた地方の役人の皆さんも、補助金の申請業務で物すごく手間がとられている。遠い皆さんは、東京まで陳情に上がってくる公務員の皆さんのあの交通費だって、あれは公費でしょう。こういう予算など、それから、先ほどの農道と県道が並行して走っているみたいなところは、減っているとはいいながらも、いろいろな精査をして集中的に使えるでしょうということで、ここでトータルを二割カットしますが、それぐらいの分で、事業の規模としては、地方では十分確保できますね。こういう案を我々は提供しています。
 国の、霞が関の、その地域なんかに行ったことない人が判こ押さないと補助金が出ないという自民党政府がいいのか、それとも、それぞれの地域の事情に合わせて公共事業ができる民主党の予算がいいのか、これは国民の皆さんに御判断をいただきたいというふうに思います。
 さて、次の質問を伺います。
 総理は、菅代表の補正予算に対する審議の中でも、もっと大きなことがあるということで、行財政改革をおっしゃっておられました。そこで、道路公団の民営化の話についてお尋ねをしたいと思います。
 総理、何で道路四公団民営化しようと思っているんですか。
小泉内閣総理大臣 今までの公団方式でやりますと、ますます借金が膨らんでくる。今でも約四十兆円。これをだれが負担するのか。しかも、道路が必要だからということで、どこが必要かと言うと、全部必要だと言ってくる、どの知事さんも市長さんも国会議員も。地元の負担がなければ、つくってくれ、つくってくれというこの要求にどうこたえていくか。やはり費用対効果、採算性というのも考えなきゃいけないだろうということを総合的に考えますと、今の方式だったらどんどん借金が膨らむ、この債務をどんどん先送りする構造、そして本当に必要な道路、費用対効果を考えるというためには、やはり民営化した方がいいんじゃないかということから始めている。
 なおかつ、ファミリー企業とか建設コストの問題、いろいろ指摘されています。こういう点も直すには、公団方式よりも民営化方式の方がいいんじゃないかということから、民営化に持っていこうということを考えた次第であります。
枝野委員 民営化をすると費用対効果を考えることになる、それは総理のおっしゃるとおりです。
 そうだとすると、きのう菅代表もお尋ねをいたしましたが、直轄無料高速道路を今度また別途、この道路公団民営化の議論と別にやろうとしている話、それは矛盾しませんか。
小泉内閣総理大臣 これは矛盾しないんです。
 それは将来、民営化の会社が、これはいろいろ採算性とか必要性とかを考えて判断して、つくる道路、つくらない道路、出てくると思います。しかし、民営化会社がつくらない道路も、どうしてもこれは地域にとって必要だ、国全体の発展のために必要だという場合には、税金でつくる方がいいという意見が当然出てくるんです。その場合に国の税金をどのぐらい投入するか。それから地域の場合、地域にとっては一番地域がプラスになる場合に、地方にもやはり負担してもらわなければならない。
 では、どの程度の道路が必要かという場合には、どの程度の費用がかかるかということを考えないと、今みたいに地方は全然負担してくれないというんだったら、つくってくれ、つくってくれの大合唱ですよ。こういうことだったら、これはもう借金はふえることがあっても減ることはないということを考えて、やはり税金でつくる道路は将来必ず出てくると思いますよ。民営化がやらなくても、必要な道路は税金でやらなきゃならないという声がもし出てきたならば、それに対してもやはり謙虚に耳を傾けて、では、お互いどの程度の税金を負担すれば、どの程度のいい道路ができるかということを考えながらつくっていくことも必要じゃないでしょうか。
枝野委員 片方では採算性ということを考えて、民営化をすることで採算のとれない道路はつくらないようにするんだ、でも片方では、本当に必要な道路はちゃんと判断してつくるんだと。
 ちゃんと必要な道路の判断を政府ができるんだったら、今の公団方式だって、必要な道路をつくりますということで言えばいいだけの話なんであって、そこは民営化をする、僕は民営化に対して大賛成で、この意見書をちゃんと守るべきだと思いますが、しかしその一方で、税金で直接つくる。それが本当に必要な道路に限定してつくられるんだったら、今の公団方式でもつくれるはずなのに、それができていなかったから民営化するというのに、また政治の判断で高速道路をつくりますというのは私は矛盾していると思います。
 さて、この意見書、総理は「基本的に尊重する」とおっしゃっています。「基本的に」とはどういうことですか。総理。総理がおっしゃっているのです。
石原国務大臣 ちょっと細かい話なので、閣議決定をしたときの経緯等々も含めて私の方からお話をさせていただきたいと思います。
 これは委員御承知のとおり、四十兆円、先ほど総理が言われたような莫大な債務を返還するということを一義的に置いて、そして建設コストの削減とかファミリー企業の問題等々、八割は七人の委員の方が共通した認識を持たれて案をまとめられました。
 しかし、御承知のように最後の段階で、道路資産、すなわちこの道路は公共公物なのか、あるいは民間の会社が持っていいのか、さらには、いつ上場するのか。十年後に上場しろ、こう言う方がいらっしゃいますけれども、十年後の債務、調べても三十兆円あるわけですね。キャッシュフローの十五倍以上あって、本当に上場できるのか。あるいは、賃貸料、リース料をどういうふうに設定するのか。また、通行料を半分にしちゃえ、いや、それは無理だ、五%でいいんだ、一〇%でいいんだ。こういうふうに意見の対立点があったわけであります。
 こういう問題が残った以上は、政府として責任を持って対処していかなければならないので、もちろんこの答申は基本的に尊重しますが、細部の詰めは政府で責任を持つ。その結果、「基本的に尊重する」という文言になったわけでございます。
枝野委員 政府の私的諮問機関というのはよくあります。私的諮問機関だったら今のような答弁もあるかもしれない。中の議論の中で複数の意見が出る、どうこう。これは、法律に基づいて、ここで、国会で我々も審議に加えさせられて、そして、国会で法律で決めてこの委員会をつくったんですよね。そして、法律に基づいて施行令も決まっているんです。
 施行令は何と書いてありますか。「委員会の議事は、委員で会議に出席したものの過半数で決し、可否同数のときは、委員長の決するところによる。」初めから、七人の委員の皆さんの意見が分かれることはあるかもしれないけれども、そういうときは多数決で決めて意見書を出してくださいと法律で決めているんですよ、法で。それなのに、中で意見が複数ありましたから、だから意見の話はそのまま受け入れられませんというんだったら、違法行為じゃないですか。
石原国務大臣 ただいま委員が御指摘されました道路民営化推進委員会の法律案では確かにそのように書かせていただいておりますが、今回のように、この特別な委員会、いわゆる三条機関ではなくて八条機関をつくって物を決めていくとき、橋本行革の中で、本来あるべき審議会の姿という行革の基本みたいなものを実は決めさせていただいてあるわけでございます。その中には、明らかにこういうものは全会一致を目指すべきであるということを規定してある。すなわち、原則論、この審議会等々のあり方の憲法みたいなものもあるということを御理解いただきたいと思います。
枝野委員 今の橋本行革云々というのは、それは法律ですか。法律ですか、それは。
石原国務大臣 閣議決定でございます。
枝野委員 閣議決定と施行令、法理論上どっちが優先ですか。政令の方が優先じゃないですか。
石原国務大臣 ですから、私申しましたように、この委員会の法律ではそのように明記されておりますと冒頭明確に申させていただいております。
枝野委員 ですから、法律に基づいて過半数で決して出てきた意見書を、中で意見が分かれていたから云々だなんということは理由にならないんですよ。後から、やはり党内で反対する人がいそうだから、もっと骨抜きにするために、そのプロセスのところで意見が分かれていたと、法律上、答申の影響力には全く効果を及ぼさない部分のところを取り出して、そして骨抜きにしようとしているとしか私は言いようがない。
 では、もう一つ聞きましょう。
 「基本的に」と言ったその「基本的」の中に、意見書の九ページにあります(四)機構の具体的な内容の2業務のアで「機構から」、これは保有機構ですね。何か上下分離して、高速道路の道路そのものの所有は何とか機構が所有をする。「「機構から新会社、国等への新規投資資金の一部の支出」は機構の業務とはしない。」その前に、「機構は、」「貸付料を徴収するとともに、債務の返済、借換えのみをその業務とする。」つまり、民営化された道路公団から高速道路を保有している保有機構は貸付料を徴収するけれども、その貸付料は全部、債務の返済や借りかえに使うべきであって、その金を政府に吸い上げさせたり、新しい道路をつくることには使わせない。
 これは、「基本的に尊重する」の基本的部分に入りますか、石原さん。
石原国務大臣 ただいまの御質問にお答えする前に、先ほどの前段の御質問に若干補足してお答えしたいと思うんですが、さっき申しましたように、十年後に上場しろ、すなわち、土地を新会社が買えという答申になっておりますけれども、現実問題として、どんな試算をやっても十年後に三十兆円以上の負債が残っていて、それで本当に上場できるのかといったような具体的な問題がありますので、そういうものを精査していかなければならないので、基本的に答申を尊重する、そういうふうに御説明を申し述べたわけでございます。
 それと、今申しました点は、九ページの「業務 ア」でございますが、この答申は明らかに、機構から新会社、国等への新規投資資金の一部の支出は機構の業務としないと答申にはなっております。ですから、基本的にはこの答申を尊重するということでございます。
 しかし、もう一点進めさせていただきますと、議論の過程の中で、この答申をつくる前に何度も何度も議論をさせまして、その都度都度に委員会としての守るものというものを決めてあります。決まったことを列挙してあります。その中にはこのような文言がないということもまた事実でございます。
枝野委員 法律に基づいてでき上がった委員会の答申としての意見書なんですよ。そのプロセスは、皆さんはかかわっているかもしれませんけれども、国民との関係では、最終的に多数決で決められて決定したものが答申なんですよ。その答申にこう書いてあるのを、それを基本的に守るのか守らないのかということをお尋ねしているんですが、どうもあいまいなようなんですが、まあいいです。
 道路公団総裁、来ていただいていると思います。道路公団の総裁、当然、まないたの上のコイでもあるわけですけれども、法律に基づいてこの委員会ができて、この委員会が法律とその法律に準拠した施行令に基づいて多数決で決められた意見書、公団としても、これに従うべく一〇〇%協力しますね。
藤井参考人 私どもは、こういう委員会の結論については承知しております。それで、いずれにいたしましても、与党と政府の間で昨年十二月に打ち合わせがあったことも承知しております。そして、それらを含めて閣議決定をなさったことも承知しております。したがって、私どもといたしましては、政府機関の一つでございますから、こういう国の、政府の最終的な決定に従いながら、国土省の指導に基づいて適切に対処していくというのが基本的な姿勢でございます。
 しかし、その際に、要は、数年にわたって、非常にいろいろとこの民営化という問題を国全体で議論してまいりました。そのポイントは、道路公団の持っているいろいろな問題点、経営の不合理性であるとか……(発言する者あり)天下りもそうでしょう、その他いろいろな問題があると思います。そういったものを全部、一つ一つ解決していくことは、この結論がどうであるかということとは抜きにやらなければいけない問題だ、そういうふうに認識をいたしております。
枝野委員 私は、独自に努力をされるのは当然のことなので、そんなこと聞いていないです。法律に基づいて出てきている意見書なんです、これは。それに従うという法的な義務を道路公団も道路公団総裁も負っているんだ、負っているんじゃないですかということをお尋ねしているんです。
 具体的に、この意見書に従っていただきたいところを申し上げます。二十ページの一番下、「直ちに取り組むべき措置」ということをこの意見書は決めています、書いています。その「2 民間企業経験者の登用等 直ちに、道路関係四公団の現首脳陣に代わり企業経営について豊かな経験と知見を有する複数の民間人を登用する。」と書いています。「直ちに、」と書いています。
 先ほど御本人も、天下りも問題点だとおっしゃっています。総裁も、建設事務次官からのいわゆる広い意味での天下りです。この意見書を尊重するという立場から、おやめになった方がいいんじゃないですか。
藤井参考人 今、天下りという、「複数の民間人を登用する。」こういうくだりにつきましては、私どもは、その趣旨は、いわゆる役人やあるいは政府機関の人間だけではこういう民営化の作業が滞りがある、民間の知恵をどんどん積極的に早く入れるべきだ、こういうふうに理解をいたしております。
 したがって、そのための作業は今着々とさせていただいておりますが、私個人に関して言えば、私は国から、国土交通相から任命を受けた立場でございますので、そのもとで精いっぱい努力をしていくということ以外にお答えしようがございません。
枝野委員 ですから、今度は任命権者の方に聞きます。
 この答申を基本的に尊重するということで、わざわざここに、現首脳陣にかわり、かわりですよ、現首脳陣にかわり直ちに複数の民間人を登用すると。ちなみに、同じ文書の後の方には、例えば、二〇〇二年度決算とか、二〇〇二年度内に作成するとか、二〇〇二年度内というのは期限として書いてあるものの、その前に「直ちに」と書いてあるんですから、当然、これはもう現首脳陣にかわり複数の民間人を登用されたんでしょう。
扇国務大臣 今枝野議員はわかっていておっしゃっていると思いますけれども、公団法という法律がございます。そして、総裁の任命権者は私でございますから、まず私に聞いていただくのが先だろうと思いまして、私が任命した人に、あなた、いつと言われても、私が任命しなければかえられません。そのこともおわかりで、わざとお聞きになっているんだと思います。
 それから、民間人を登用するということは、私は大変貴重なことだと思って、今、累次どういう民間人がいいかということも選定に入っておりますけれども、これは、公団の総裁の、職員に関しては総裁が任命権者ですけれども、理事ではなくて、理事もこれは公団法で任期が来なければかえられません。特に不祥事なことがあったり、あるいは法に触れることがあればかえられますけれども、現段階では、何の落ち度もない人を、あなた、首ですよというのは、公団法によってかえられませんけれども、総裁の任期が四年、そして理事が二年ということで、私は、できれば、理事が二年の任期中に不祥事がなければ、参与というポストもございますので、まずそこに民間人を入れていただいて、今おっしゃった答申と、出たものに対して一歩ずつ近づいていくという方向をしたいと思っております。
枝野委員 今おっしゃった後段のことがわかっているから、私は一番最初に総裁に、おやめになったらいいんじゃないですかと。
 つまり、任期がある話だから、任命をした側から、あなた、やめてくれとは言いにくいでしょう、任期が切れていないし、不祥事もないのに。だけれども、道路公団の改革について、法律に基づいての意見書の中で、直ちに民間人に現首脳陣にかわりとまでわざわざ書いて、直ちにと書いてあるんだから、建設事務次官までやって、天下国家のために長年功績がある総裁は、みずから、ああ、こういう意見書が出たんだから、やめろと大臣も言いにくいだろうから、御自身で、自分から、やめます、民間人にかえていただいた方がいいですねとおっしゃるのが筋じゃないですか。
 大臣に聞いていないですよ。それが筋じゃないですかと総裁にお尋ねをしているんですよ。違いますか、総裁。
扇国務大臣 私、枝野議員はわかっておっしゃっていると思いますけれども、この法律は、十六年度に法律として出させていただくということを明言してございます。ですから、私は法律に、皆さん方に御審議いただくまでに一つずつ整理していかなきゃいけないことを一つずつしているということの中で、法律の中でもきちんと新たに総裁を民間人にするということも書かせていただくかどうかも、今後の法律を出すまでに私は審議させていただきたい。
枝野委員 結局先送りなんですよね。
 この意見書に基づいて、民営化そのものの法律は来年の今ごろ出してくるんでしょう。だけれども、それに先立って「直ちに取り組むべき措置」ということで書いてあるから、今、何でやらないんだと聞いているんですよ。
 その中には、ほかにも書いてありますよ、二〇〇二年度中にコスト削減計画書を作成しろとか、二〇〇二年度内に入札資格要件を撤廃しろとか。法律はもう一年かかるかもしれないけれども、その前にできることをやれと。その中に、現首脳陣にかえてと、法律に基づいて、これは総理が任命をしたのかな、その人たちが多数決で決めた意見書に書いてあることなんだから、それは、法律ではやめさせることはできないだろうけれども、御自身の意思で、この趣旨に基づいたら、みずから身を引きますとおっしゃるのが当たり前じゃないですかということを申し上げている。
 既にもう骨抜きが始まっているということを私は今回明らかにできたというふうに思っています。
 もう一点。郵政民営化の話を総理は一生懸命おっしゃっておられます。ことしの四月から公社化がスタートするとおっしゃっておられます。
藤井委員長 枝野委員に申し上げます。
 道路公団総裁はもうよろしいですか。
枝野委員 もうちょっと、別の件で聞きます。
 郵政を民営化する、民営化すると言いながら、公社化がスタートするだけで、そこから先のことは決まっていません。どちらに向いているんですか、この公社はということをお尋ねしたいんです。
 総理、どちらに向いているんですか、この公社というのは。
小泉内閣総理大臣 これは、公社化するというのはもう決まっていたんですよ。順序があるんです。直ちに民営化する、民営化の方法だってたくさんありますよ。
 そういう前提のもとで将来のことを言っているのであって、私は、公社化は実質的な民営化の第一歩だと言っていますよ。まず、企業会計原則を導入するんでしょう。民間参入認めていけるんでしょう。民間にできることは民間にということを、総論はみんな賛成だ。今、郵政三事業、民間にできないことはあるのか。私はないと思いますね。
 だから、将来を見れば民営化当たり前だというのを、みんな反対したじゃない、国会。初めて私が民営化と言っているので、民主党も何か賛成してくれるかどうか、これからわかりませんけれども。そういう、自民党が反対していたのを賛成に回したんですよ。公社化法案出すのも、自民党の了解得なくて内閣が出したんですよ。こんなのはつぶしてやると言っていたのが、最終的には自民党、協力してくれたじゃないですか。民主党は賛成してくれたっけ。していないでしょう。そうなんですよ。いかに自民党は、一部では反対があっても、最終的には、小泉内閣の構造改革進めるのに全体を考えて協力してくれるか。自民党は変わってきているんですよ。
 公社化になって、これから将来、これは総裁も民間人、そして設立委員も民間人入っている。なおかつ、私ははっきりと、四年間、自民党の一部には民営化の議論は公社化の間はしちゃいかぬというのを、当然公社化になってもしますよといって、党の部会の了解を得なかった法案を出して、最終的には、自民党、協力してくれたじゃないですか。だから、私は、これは民営化の実質的な第一歩だということを言っているんです。
 公社化、一つ一つやっていかなきゃ。さっき言った道路公団も、すぐ民営なんかできっこないですよ。法律があるんで、国会があるんで、民主的な手続があるんです。独裁じゃないんです、私は。独裁者じゃないんですよ。(枝野委員「委員長、独裁じゃないんならやめさせてください」と呼ぶ)やめさせてくれって、私、指名されたんだから。
枝野委員 聞かれたことだけ答えてください。どっち向いているんですか。どっち向いているかわからない法案だから我々賛成できないんですよ。その部分を聞きます。
 この公社化をされた郵政公社は、従来の郵便局時代にやっていた業務よりも、業務範囲、拡大をしたりやりやすくしたりということはあるんですか、ないんですか。どっちですか。
片山国務大臣 これは、郵政公社につきましても、どういう商品、どういうサービスをするか全部法律で決まっておりますから、その法律の範囲でやるということで、基本的には変わりませんが、ただ、法律が決めている範囲の中で、いろいろな経営努力をして、より質のいいサービスをやるとか、もっときめ細かくやるとか、そういうことになるだろう、こういうふうに思っております。
枝野委員 どちらの方向に向かうんですか。つまり、広げるという方向に向かうんですか、それとも縮小するという方向に進めるんですか。
片山国務大臣 当面は、我々は公社の立ち上げを最優先に考えておりますから、そういう中で、設立委員会議でもいろいろな議論をしてもらっております。しかし、当面、それを拡大するようなことは考えておりません。
枝野委員 ということは、従来の郵便局のやってきていることと新しい公社がやることは、国民の側から見れば変わらないという理解でいいですね。
片山国務大臣 範囲や幅は法定されておりますからこれは変わりませんが、今言いましたように、やり方や質の高さやきめの細かさ等については今度公社で考えていく。公社によって、なるほど変わったな、よくなったなということを国民の皆さんに実感していただくように考えております。
 それから、一部やじがございましたが、市町村がやっております各種証明書の受け付け、交付については、法律に基づいて市町村と郵便局で受託契約をして行う、こういうことになっております。皆さん御承知のとおりであります。
枝野委員 この郵政事業の改革というのは、総理御自身も、就任のときの話、所信表明に対する質疑の中で私にお答えになっていますが、民業圧迫をしないということです。
 ところが、公社になっても、郵政公社は税金を払いませんね、一般的な意味で。それから、貯金であれば、銀行預金には預金保険料があります。それから、保険であれば、今若干問題になっていますけれども、生命保険の契約者の保護機構があって、そこに拠出金を出しています。簡保は出していません。したがって、明らかに民間の銀行や民間の生命保険会社に比べて競争上有利な立場にあります。
 競争上有利になっている公社が、その競争上有利であるという部分をいじくらずに業務範囲を拡大したり業務をしやすくさせたりすれば、小泉さんの言っていたこととは逆に、民業に対するますます圧迫になります。そういうことはしないということを、総理、約束してください。
片山国務大臣 今度公社になりますので、税金については旧公社、かつての公社並みの税金を払おうと。例えば固定資産税や不動産取得税は一定の、例えば固定資産税、二分の一にしますけれども、それは払う、あるいは自動車重量税、自動車税、軽自動車税、宅地開発税等は払う、こういうことにいたしております。それから、郵便貯金は預け入れの限度額が一千万でございますし、簡保の方も一千万でございまして、そういう意味では制約条件をつけておりますし、例えば職員の基礎年金の国庫負担分については、民間金融機関は国が払っているわけでありますが、我々の郵貯、簡保は、これは全部その郵貯、簡保事業の中で払う。それから、今言いましたように、いろいろな商品もサービスも法律で限定されておりますし、やり方についても相当限定されておりますから、私どもは、民間と比べてプラス・マイナス、ほぼ似ているのではなかろうか、こういうふうに思っております。(発言する者あり)
藤井委員長 御静粛に願います。
枝野委員 今の最後の答弁、総理、それでいいんですか、今の状況で民間との競争条件ほぼ一緒じゃないかという。
 確かに、今度は固定資産税とかも払うようになった。でも、銀行の営業所とか生命保険の営業所とか、全部固定資産税を普通に払っているんですよ。郵便局は半額で済むわけですよ。いろいろな制度がいろいろ、確かに郵便局の方が競争上不利なもの、若干はありますけれども、何よりも、預金保険料を払っていない、契約者保護機構に対する拠出金を出していない、それから法人税を払わない。全然、競争上有利じゃないですか。競争上有利だという条件のままで営業範囲、業務範囲を拡大したりやりやすくしたりするというのは、総理の意図と反して、逆行して、民業圧迫が進むと思いませんか。総理、絶対こんなことはやめさせてください。
小泉内閣総理大臣 その主張はいい点なんですよ。そういう主張が国会で出てきたということは私は歓迎しますし、そういう意見を私が言って、いかに今までたたかれてきたか、それをようやく、だんだん私の意見がもっともだなと認められてきた。そして、ともかく公社化に踏み出して、民間人を総裁にして、しかも民間参入を認める、企業会計原則を導入する、そういう段階にやっと来た。この法案を出すときに、自民党も認めなかった。それを出して成立させたんです。
 そして、今言った民業圧迫のこと、これはやはり今後の公社の運営で気をつけていかなきゃならないと同時に、国民の多くの中には、やはり公社になってももっとサービスしてくれという点も強いんです。その辺も考えながらやっていかなきゃならない。しかし、将来、これは公社化になると、これから私は実質的な民営化の道を歩むように改革を進めていきますが、その段階でむしろ公社の方が、こんなに縛られるのは嫌だ、どうせなら民営化してくれという意見が私は必ず出てくると期待しているんです。やはり民間も参入してくると、民間のサービス競争に勝ち抜くためにはもっといろいろなことをやりたいという声が、私は今民営化反対論者の中からも出てくるということを期待しているんです。
 そして、急がば回れという言葉があります、せいては事をし損ずるという言葉もあります。ようやく、これだけ反対の多かった公社化も実現させてきて、そしていろいろ実現して民業圧迫にならないような……(枝野委員「聞かれたことに答えさせてください」と呼ぶ)今言っているんじゃないですか。民業圧迫化にならないようなことも気をつけながら……
藤井委員長 総理、答弁は簡潔にお願いします。
小泉内閣総理大臣 いかに国民にサービスを提供していくかということも考えてやっていきたいと思っております。
枝野委員 いいですか、総理が何をおっしゃっても、その前の総務大臣の答弁は、これなら民間と対等じゃないかということをおっしゃっているんですよ。総理が幾らそこで力んでおっしゃっていても、今、流れとしては公社化なんだから、もっとやりやすくするべきだという議論が実際にあるわけですよ。ところが一方では、民間よりも競争上有利な条件というのは公社である限りやはり続くわけですよ。
 この宙ぶらりんな状態というのは、利用者にとっても、圧迫されている銀行や生命保険会社という民業からしてみても、あるいはその職場で働いている人たちにとっても、この公社化というのは御本人もお認めになりましたけれども小泉内閣の成果ではなくて橋本内閣の成果ですからね、橋本内閣が公社化を決めたんですから。その公社化という状況の、宙ぶらりんな状況で、どっちに向かっているのか。
 総理は民営化民営化とおっしゃっているけれども、どうも、政府・与党の中にも民営化じゃなくてあくまでも公社の形態でずっといくんだという声もたくさんあって、どっちに向かっているかわからないから、宙ぶらりんな状態でよくないんじゃないですかと。公社なら公社でスタートで、これが一歩だというんだったら、しばらく公社でやりますなら公社でやりますでいくしかないし、それとも民営化に向けてということであるならば、きちんと、ここからどういうステップで民営化にいくのか。そういうことを示さずに、ただ民営化だ民営化だと、いかにも民営化をしそうだという話の宙ぶらりんな状態にしておくのはよくないんじゃないかということを私は申し上げているんです。
 それでは次に、公務員制度についてお尋ねをします。
 せっかく、道路公団総裁は建設事務次官経験者でもあって、今道路公団の総裁でもあるということなので、非常に具体例としてわかりやすいのでお尋ねをさせていただくので、ちょっと気の毒といえば気の毒なんですが、建設事務次官というのは大体退職金幾らぐらいもらえるんですか。
藤井参考人 私の建設省の退官時には、約八千万ということでございました。
枝野委員 大変大きいなと、多分、テレビをごらんになっている方、ラジオをお聞きになっている方は思っていらっしゃるんじゃないかと思います。
 昨年、外務省のいろいろな不祥事があって、大使をおやめになったりとかした人の退職金幾らなんだという話で、一億近い額で非常に高いじゃないかということが議論になりました。そうすると、公務員全体が退職金物すごく高いんだなということを、世の中はついそう受けとめてしまいますが、実はどうもそうでないらしいということを調べてみたら知りました。
 指定職、一般的に局長級になった途端に、退職金が二五%も上がるという制度になっているそうですね、総務大臣。
片山国務大臣 退職手当は退職時の俸給月額を基準に算定いたしますので、指定職、局長クラス以上は俸給月額は高いんですよね。何で高いかといいますと、これは、例えば管理職手当だとか通勤手当だとか住宅手当だとかあるいは勤勉手当というのはないんですよ、指定職というのは無定量の勤務ではありませんけれども、そういうことの属人的な手当だとか勤務評定的な手当は全部外しているんですね。それだけやれということなものですから今枝野委員が言われたように俸給月額が高くなっておりまして、これは、今の我が国の給与原則は職務給でありますから、職務の複雑、困難、責任の度合いにおいて給与は決まっているんで、指定職は特別重い責任を課しているから高くなっておりまして、したがってそれが退職手当でも高くなる、こういうことであります。
枝野委員 指定職の直前までは、いわゆる管理職手当が、本俸とは別に管理職手当としてついている。ところが、指定職になった途端に、その管理職手当に相当するようないろいろな手当が本俸の中にどんと含まれる。その結果として、本俸の掛け算で出てくる退職金が一気にどんと上がるんですよね。こういう制度で間違いないですね。
片山国務大臣 指定職には管理職手当はありませんから。今言いましたように、幾つかの手当はないんです、指定職の場合には。それは俸給月額そのもので手当しておりますから、委員の言われるようなことになるわけであります。
枝野委員 それで、その結果として、指定職までなってやめると、その毎月毎月もらっている給料として給料袋から渡されるお金としては、それは本俸なのか管理職手当なのか何手当なのかお金に色ついていませんから、余り変わらない、急にぐんと上がるわけではないのに、退職金のところだけは、ある瞬間にがんと本俸の中に組み込まれるから退職金はぐうんと上がって、国民の皆さんから見るとちょっともらい過ぎじゃないのという額になっているんじゃないですか。
 だとしたら、退職金の計算のときに、指定職未満の方の本俸の相当分が上に上がるほど上がっていくということに掛け算をするのか。それとも、指定職未満の人たちの退職金についても、管理職手当とか何とか手当とかを含めたものに対して退職金を支払うことにして、全体としてその何%という部分を率を下げて、全体としての退職金の総額は現状維持、あるいは場合によっては僕は縮小すべきかもしれないと思いますが、ということにするけれども、指定職以上になったらぐんと上がるというこのアンバランスを変えるべきじゃないですか。
片山国務大臣 指定職には管理職手当はないんですよ。管理職手当という考え方がもともとないんですよ。
 というのは、先ほども言いましたが、指定職はもともとは一官一職的な思想でございまして、これは、それだけ職務の複雑度、困難と責任の値が高いので、そういう位置づけの制度なんですね。それは国会で決めていただいたんですよ、給与法の中で。だから、私は、今の仕組みならこういうことになる、こう考えております。
枝野委員 だから、国会で決めているものだから国会で議論しているんですよ、おかしくないですかと。
 確かに、その理屈はわかりますよ。例えば民間企業でも、役員になれば、それまでサラリーマンで上がっていって役員になる方でも変わります。でも、民間企業の場合、こうしていますよね。取締役になる時点で退職金を受け取って、従業員という立場を離れて、今度は役員になる。政府組織の場合には、指定職級というのは民間企業でいえばちょうど取締役みたいなものなんだから、むしろ指定職になる時点で退職金を支払ってしまってそこまでの計算をチャラにして、今度は幹部として政治任用的にきちんと責任も負ってもらうということもあるかもしれない。
 そこまで一気にいかないんだとしても、今のように、指定職になったらぐんと二五%退職金が上がるというこの実態を、やり方はいろいろあると思いますよ、やり方はいろいろあると思いますが、きちんと精査して、それは、幹部の人も頑張っているかもしれないけれども、例えば、実際に仕事を一番やっているのは課長補佐クラスじゃないかということは世間でもよく言われています。それどころか、仕事の中身を一番わかっているのはノンキャリアの人じゃないかと言われています。こういう人たちだって一生懸命やっているんですよ。
 なぜキャリアの上の方の局長級になれた人だけそんなにぼんと退職金をもらうのか。理屈はいろいろある、説明はわかりましたけれども、やはり実態としてアンバランスじゃないですか。
片山国務大臣 民間企業の場合には、取締役になる前に一度退職するんですね。株主総会で選ばれるんですよ。だから、身分が続いているようで、切れているんですよ。
 ところが、公務員の場合には、指定職になる前からずっと続くんですね。今の公務員の退職手当の考え方は、枝野委員御承知のように、長期勤続報賞ということですから、身分が続く者について、そこで一遍やめてこれを二度払いをしろ、これはなかなか今の制度では私は考えられない。
 ただ、地方なんかの場合で、知事や副知事や出納長の特別職は、特別職になる前に一遍そこで清算をして、特別職をやめるときにもう一度払う、こういうことは条例でやっている地方団体は幾つかあります。
枝野委員 ですから、理屈の話じゃなくて、実態としてアンバランスじゃないんですか。その実態としてのアンバランスを変えましょう、そういうところの制度に手をつけましょうというのが構造改革だったんじゃないんですか。結局、そういう構造改革の話になると、今の制度はこうなっていますからという説明で、実態のアンバランスを変えないというのは全くわけがわからない。
 もう一つ、公務員制度について、公務員制度改革大綱が出てきていて、これは去年もやりました、公務員試験の合格者の数を今よりも倍にしよう。つまり、どういうことかというと、合格しても採用されない人をぼんとふやしましょう、そのかわり、各役所が恣意的にその中から好きな人を選びましょう、しかも役所の中でもっと能力評価をきちんとやるということ、これは方向性自体は私は否定しませんけれども、しかし、では、それを実際にだれがやるんですか。
 大臣や副大臣や政務官がきちんと採用のときにやるんですか。採用のときに大臣や政務官がやるとなったら、これは政治の介入で、行政の中立性を損ないますね。政権がかわるたびに採用される人が変わってくる、人事、能力評価も政権がかわるたびに変わってくる。公務員の中立性というところと矛盾をしますね。こういうことをやるのが公務員制度改革なんですか。
 今の退職金の問題のアンバランスあるいは天下り。結局、天下りは何か変わるんですか、この公務員制度大綱で。今までは、人事院という一応は第三者的機関がチェックをしているものを、さすがに大臣の了解で天下りできるようにするというんじゃだめだから、閣議了解か何かにするということにしましたが、では、閣議了解で、天下りチェックがきいていますか。今でも民間以外に対する天下り、先ほどの道路公団なんかに対する天下りは閣議了解事項ですね、全部ひもつきじゃないですか。自分の関係している省庁に天下っていて、そこの特殊法人の幹部になっているじゃないですか。
 結局、チェック、働いてないじゃないですか。むしろ、人事院から民間企業の分までそこに奪ってしまったら、役所のお手盛りで天下りが認められると、民間にまで広がるじゃないですか。こんなことが公務員制度改革なんですか、総理。
石原国務大臣 総体的な話は総理から伺わせていただくにしましても、細かい点は私の方からお話をさせていただきます。
 二点の御質問だったと思います。
 その一点は試験制度の問題で、試験だけではなくて合格者数をふやすことは情実ではないかという御質問、二点目は、天下りについてどういうふうに考えるのか、規制を今回の構造改革の中でやっているのかという質問だったと思います。
 委員もう御指摘のとおり、実は合格者数を去年の試験はふやしました。試験で受かる方から、すなわち逆を返せば、入る方、公務員になれる方の数が減ったということは事実でございます。
 それは、じゃ、なぜかというと、もうこれも委員御承知のことだと思いますが、試験に偏重し過ぎた採用というものがここ数年行われてきたという事実があると思います。すなわち、どの省庁で採用された方にお話を聞いても、全員、どこの大学にいようが、予備校に通っていらっしゃった。公務員試験を受けるための予備校に通わないと通れない試験になってしまった。それを是正していくためにふやしたわけであります。
 もう一点、今委員が御指摘になったのはもっともでございまして、やはり公務員の皆さん方のための再就職、天下りであってはならないということは事実だと思います。そういうことをなくすために、二重三重に今回は縛りをかけたわけです。しかし、この縛りについても、臨時国会等々の中でも、大臣承認制というものは人事院が承認するよりも悪くなるんじゃないか、こういう御指摘が多々、いろいろな分野から出たことは事実でございます。
 こういうことを考えますと、いずれにいたしましても、総体的には、国民の皆さん方の天下りに対する批判、あるいは退職金につきましても、退職金の限度額を減らすという法律案もきょう閣議決定いたしましたけれども、この大臣承認制の運用に関する内閣の総合調整のあり方というものを十分検討して、国民の皆さん方の批判あるいは今の枝野委員の批判にこたえられるようなものにしていかなければ、何のための改革かということだという認識はしっかりと持っております。
枝野委員 全部論点がやはりずれているんですよね。試験制度のせいにする。
 確かに、一種のペーパーテストみたいなもので、いい成績だから公務員になっていただくということではよくないでしょう。だけれども、結局、各役所で面接して、その面接に基づいて採用するんですよね。試験制度自体の中身に、いわゆる学力偏重、ペーパーテスト偏重じゃない方向に、人事院と相談をして、要するにペーパーテストだけではない部分というのを、公務員試験の合格、不合格の時点できちんと入れればいいじゃないですか。それを何でわざわざ、合格はしたけれども採用されない人をたくさん出すんですか。
 私から言わせれば、実は、面接とかなんとかしても、民間企業に就職するのにも、面接のマニュアルのためだといって予備校みたいなものがたくさんばっこしている時代ですから、どれぐらい機能するかわかりませんけれども、試験制度の方を変えることで幾らでも対応できる話だし、今の人事院の第三者的チェックでも天下りが野放しなのに、それをより役所に近いところに持ってくるというのは改悪でしかないということを指摘しておきたいというふうに思います。
 この公務員制度に絡んで、実は、総理は国際協調とかいろいろなことをおっしゃられていますが、日本が常任理事国をやっているILOという機関があります。ここで、日本の現行の公務員制度、そして今回の大綱は、これはよくないことだ、これではだめだという勧告が出ているのを御存じだと思います。
 憲法まで持ち出しませんよ。国際協調と言ってみずからが常任理事国をやっているILOでそういう勧告を受けているのですから、当然従うべきだと思いますが、いかがですか。
小泉内閣総理大臣 ILOの勧告が出ていることは承知しております。
 そういう中で、公務員の労働基本権の問題、そして日本にあります人事院制度の問題、いろいろ、ILOの認識と日本の公務員制度に対する認識、若干違っている部分はあります。そういう点について誤解のないように説明することも必要じゃないか。
 今、公務員制度の改革につきましても、いろいろな国民の意見を聞きながら、改正していかなきゃならない点もたくさんあります。同時に、公務員として民間人と違う役割もございます。そういう中で、ILOが確かに勧告を出されておりますが、こういう勧告の背景にある実情について、日本の立場というものを、日本の状況というものをやはり説明しなきゃならない。そういう中で私は理解を求めていく努力も必要じゃないかと思っております。
枝野委員 先ほど来繰り返し言っていますけれども、日本はILOの常任理事国です。この問題が、急に突然、ある日降ってわいたようにILOから勧告が出てきたんじゃないんです。長年にわたってILOは世界各国の公務員制度や労働条件についていろいろと調べて、その中で日本の公務員制度についても長年にわたって議論がされてきている。
 説明が不足だったともし本当におっしゃるんだったら、今までの外務省あるいは労働省でしょうか、関係の人たちは何をやっていたんだという話ですよ。ちゃんと長年にわたって、日本の実情がわかった上で勧告は出ているんですよ。国際協調というんだったら、都合のいいところだけ理解されていないだなんて言わないで、ちゃんと国際機関の示している勧告に従うべきだということを申し上げておきたいと思います。
 本当は二十分ぐらい残して金融の問題をやりたかったんですが、最後にちょっとだけ、残された時間で一つ伺います。
 中小企業に対する貸し渋り、貸しはがしが非常に深刻だと受けとめています。中小企業と大企業との金融、実際に金融検査等のところで、どの程度、どういうふうに違いをつけているんですか。短く答えてください。
竹中国務大臣 これは、検査マニュアルの別冊、中小企業編もつくりまして、その中で実態に応じて判断すべきであるということを徹底させているつもりでございます。このことは、もちろん現場に徹底しなければいけないと同時に、銀行さらには債務者にも知ってもらう必要がありますので、今そういう広報のキャンペーンにも力を注いでいるつもりであります。
枝野委員 その中小企業の実態というところを金融庁がどれぐらいわかってやっているのか、あるいは銀行、金融機関がどれぐらいわかってやっているのかということが問題なんです。そして、日本の中小零細企業に対する金融というのは、私はやはり相当な特殊性があるというふうに思っています。
 二つ申し上げるんですが、裏表だと思いますが、一つは、日本の場合、残念ながら、直接金融、株を買うとか有限会社の出資金を出すとかという形での出資がなかなか定着をしていません。だけれども、企業を回していくためには、恒常的に資金が回っていかなきゃならないという、資本に本来相当する部分というのは一定の規模必要です。でも、有限会社、株式会社を最低の資本金でつくって、中小金融機関を中心として基本的にはぐるぐる回しで連続して貸し続けるんだけれども、本来資本金で出してもいいような種類のお金なんだけれども貸付金という形でお金を借りて、それを資本にして、そして企業を回している。こういう実態が中小企業金融の場合圧倒的多数です。
 ところが、これを大企業に対する金融と同じような基準で不良債権かどうかという査定をすれば、結果的に過少資本になるんですよ、名目上の資本金というのは小さいですから。したがって、貸し渋り、貸しはがしが起こるの当たり前なんです。
 だから、実質的には資本に相当するような部分を貸し付けという形でやってきたという歴史が日本の中小企業金融にあるわけですから、その実態をしっかりととらえて、こういう部分については、というか、もともと中小企業金融については、いわゆる今問われている不良債権問題の議論の対象からきちんと外さなきゃならないんじゃないか。
 もう一つ、特殊性です。
 日本の中小企業金融の場合は、大部分と言っていいほど、その経営者やその親族が個人保証をしています。個人の資産を担保として提供しています。本来おかしいですよね。株式会社、有限会社というのは、株主が出資した額しか責任を負わないから株式会社なんです、有限会社なんです。しかし、個人保証させられているというのは、それは企業に貸しているのと同時に、その連帯保証している経営者個人を信用して貸しているんです。個人に対する信用というのは、不動産の価値が下がったとか、一時的に利息の支払いを怠ったとか、こういうふうなものだけでは実ははかれないんですよね。
 仮に担保の価値が下がっても、例えば、全く別の次元で住宅ローンの場合は、今のように土地が下落しているときは、借りた途端に不良債権ですね、一種の。建物を建てて、家を建てたら、その途端に土地が下がっているんですから。だけれども、これは不良債権だから回収しなきゃならないといったら、住宅ローンができなくなります。
 同じように、人に貸しているというのは、夜逃げをしない限り、とにかく苦しいけれども、歯を食いしばって企業を回していて、ちょっと一カ月利息を待ってくれと言って、でも、ちゃんと額に汗してまじめに働いている限り、よっぽど恒常的にだめな業種もあるかもしれない、だめな企業もあるかもしれない。でも、多くの場合は夜逃げせずに、きちっと頑張っているところというのは、まさにその人を信用して貸しているんだから、それを、担保価値が下がったとか利息が一カ月おくれたとかということで不良債権だと認定をしていたら、貸し渋り、貸しはがしがたくさん出るのは当たり前なんです。
 この二つをもっと明確に区分しなければ、不良債権処理の結果として、実際には不良債権と言えないような、人に対する信用で貸している部分がどんどんつぶれていくんです。ここを明確に変えてください、竹中さん。
竹中国務大臣 事実の問題、中小企業の特性等々に関して、委員が御指摘になっているところの多くの部分、私も非常に共感、共通の認識を持っているということをまず申し上げたいと思います。
 その上で、まず、どうしてもこれはなかなか御理解いただけないんですけれども、この別冊の中小企業編のマニュアルをぜひもう一度詳細に見ていただきたいんですが、これは、中小企業、特に零細企業等に関しては、財務状況のみならず、今御指摘のようなことも踏まえて、さまざまな要因を総合的に勘案して、実態を踏まえて判断をしてと、何箇所もそういうふうに書いております。
 したがって、まず、我々はそもそも中小企業についてはやはり別の基準で見ているんだということを、これはこれで御理解をいただきたいと思います。
 例えば、これは、銀行についても、そういった中小企業を対象とした国内の金融については、自己資本の求める比率も八%じゃなくて四%にしている。これも、実はアメリカなんかでは八%だけれども、日本ではそういう状況を勘案して既に四%にしている。しかし、それに加えても、さらに日本の場合は特殊性を加味しなければいけないと思っております。
 そういう問題意識から、まさに間柄ですね、今、夜逃げしないだろうというふうに言われましたけれども、そういうリレーションシップ、間柄の、リレーションシップバンキングについての新しい基準をつくろうということで、金融審にワーキンググループも立ち上げて、これは急いで結論を出すようにしておりますので、この点についても、御指摘のような点も踏まえて、我々なりに今努力をしているところでございます。
 個人保証については、経産省、法務省等々でそれなりのまた努力をいただいているというふうに思っております。
枝野委員 マニュアルに幾ら書かれていても、これはテレビやラジオでお聞きになっている当事者の方が一番御存じだと思いますけれども、実際の現場ではそういう運用をなされていない。だから、中小企業に対する実際の貸し出しは大幅に減っているし、しにせで回っていたはずなのに何で倒れるんだというところが、中小零細企業がばたばた倒れているという実態があるんです。
 だから、書いてあるからいいじゃないかというわけにいかない。そこはきちんと政府の責任として、本来、不良債権を処理しても中小零細がばたばた倒れるということ自体おかしい、今やっていることはおかしいんだという認識、全然別次元のことなんだということをしっかり認識を持って、実際の効果として出てくるようにしていただかないと、現実に企業が倒れていくわけですから、現実にそのことでみずから命を絶っている人たちがいるんですから。そこのところをしっかりと考えてやっていただきたい。そのことを申し上げて、同僚議員にかわりたいと思います。
 ありがとうございました。
藤井委員長 この際、原口一博君から関連質疑の申し出があります。菅君の持ち時間の範囲内でこれを許します。原口一博君。
原口委員 民主党の原口一博でございます。
 冒頭、委員長にお願いをいたしますが、きょう、資料を十二、配らせていただきます。それで、昨日も同僚議員から大変突っ込んだ議論がありましたが、テレビをごらんになっている方、国民の皆さんには、そういう資料もしっかりと踏まえた上で論戦を判断いただきたい。ただ、メディアに対して、やはりこういう資料もしっかり提示できるように、電子化できるように、理事会で御協議いただきますように冒頭お願い申し上げます。
藤井委員長 理事会で協議いたします。
    〔委員長退席、斉藤(斗)委員長代理着席〕
原口委員 中には障害を持った方々もおられて、こういう手元の資料だけではわからない。私たちは、国民の皆さんに論戦の中身をしっかりと丁寧に伝えていく、こういう努力をしなければいかぬというふうに思います。
 その上で、小泉政権下の二十カ月を少し振り返ってみたいと思います。
 お手元の資料1をごらんになってください。資料1です。
 これを見ると、株価、そして、すべての指標が、この間、小泉政権下に入ってマイナスを示しているというお話をさせていただきましたが、まさに、同時多発テロ、青木建設の破綻、それから補正予算の編成、デフレ対策第二弾というのは出ましたけれども、しかし、それはほとんどきかずに株価は下がり続けて、昨年の七月七日、竹中大臣は、補正予算を編成するなんというのは愚の骨頂だということをNHKテレビで御発言になっていますが、しっかりと二〇〇二年度の補正予算は出てきていて、そして今また同じような政治状況、いや、もっとさらに厳しい社会状況の中で来年度予算案を審議している、こういう状況であります。
 そこで、総理に伺いますが、私は、総理の政治姿勢、最初はやはり抵抗勢力に対して既得権を壊す、そういう日本の古い、ある意味では官僚社会主義とも言えるようなそういう人に対して、そういう古い構造に対して思いっ切り真正面から挑戦をしていく、その旗手だというふうに受けとめた方もいらしたかもわからない。しかし、先ほどの道路公団での議論あるいは郵政の議論、さまざまな議論や予算の範囲を見てみると、まさに総理も、もう今や抵抗勢力の方々から見ても扱いやすい、そして自分たちには大変歓迎すべき、そういう総理になったんじゃないか。あるいは、もとからそうだったとは私は思いたくありません。
 六年前からずっと質疑をさせていただいて、私は、批判だけをするのが野党ではないと思う。いいところも言わなきゃいけない。人の悪を言わず、そして、言ったことはずっと同じ言葉で絶叫し続ける、大事なことだと思います。また、今回の所信表明の中には、今までになかった、北方領土の「我が国固有の領土」という文言も入っている。こういういいところは、私は率直に認めたいと思う。
 しかし、総理の政治姿勢はもはや古い政治と一体なんではないか、抵抗勢力のくみしやすい、そういう総理になってしまったんじゃないか、そういう声がございますが、総理、何か御反論ありますでしょうか。
小泉内閣総理大臣 原口議員がそう思うのは御自由ですが、私は全くそうは思っておりません。
 私の総裁・総理就任に反対してきた方々は、小泉はますます扱いにくくなったと思っているんじゃないでしょうか。私は本当に思っています。私の改革に対する決意は本物だな、どうしようかと困っているのが抵抗勢力の実態だと思っています。
 いかにかけ声どおりに実施に移しているか。そのためには、いかに多くの方の協力を得なきゃならないか。地道に努力してきたということを私は多くの方は理解してくれていると思っております。
 私の総裁に反対してきた自民党の方の中にも、とんでもない男を総裁にしてしまったなと後悔している方もたくさんいると思っています。しかし、そういう敵も味方、抵抗勢力も協力勢力だという形に持っていくのが総理・総裁としての大事な役割だとも思っております。
 私の決意は全く変わっていないし、これからもその決意に向けて、地道に、苦しくとも批判に耐えながら実施に移していくのが私の責任だと思っております。原口議員の見方とは全く違います。
原口委員 全く違うかどうか。そして、きのうの国会質問だってそうじゃないですか。総理のことを支持して、そして与党の議員が、政調会長がそうじゃないということを言っているじゃないですか。出てきた資料はどうですか。全くあなたの政策を、政策不況をそのまま示す。
 ここでの委員会質問は、それは与党という立場に配慮して踏み込まないところもありましたよ。しかし、言っている内容は、あなたではだめだということを言っているわけです。
 確かに、総理が扱いにくい人だというのは私はわかります。質問していても、実際にこうやって真正面から答えが返ってくるかというと、そういうときばかりじゃない。きょうは、真正面からぜひお答えをいただきたいと思います。
 資料の2をごらんになってください。この予算ですが、一般会計歳出と前年度の一般会計歳出、決算の比較を示したのが資料の2でございます。インターネットの私のホームページで資料については掲示をしていますので、国民の皆さんには申しわけないですが、見えにくいところはそこでごらんいただきたい。
 これを見ますと、一般会計ベースで大変なマイナスの予算をずっと当初では組んでいるんですね。十三年度マイナス七・四、それから十四年度マイナス四・二、そして十五年度もマイナス二・三。
 総理は、民主党も三十兆円の法律を出しているじゃないか、だから、三十兆円も出している、そういう国債を出している国というのは緊縮財政じゃないんだということをおっしゃいます。しかし、それは間違いなんです。なぜ間違いか。エネルギーの法則を考えていただければわかりますが、エネルギーは加速度掛け質量なんです。変化率掛け量なんです。つまり、総理がおっしゃっているのは、出している量だけをおっしゃっていて、変化率については何にもおっしゃっていないんです。
 これだけ大きな変化率が経済に対して負荷をかけている、この実感はございますか。
小泉内閣総理大臣 それは、全体の中で言っているのと個別に見ているのとそれぞれ違ってきていますが、一般歳出とか一般会計歳出については確かに削減しております。しかし、予算というのは全体でやらなきゃいけないんです。そういう点で見て、国債三十兆円以上も発行してなぜ緊縮財政と言えるのか、そういうことを私は言っているんです。だから、全体の構造を見て、これは限られた状況の中で今の経済情勢に対応しようと努力している姿だということを御理解いただきたい。
原口委員 私が申し上げているのは、この変化率が余りにも急激なために経済に対してマイナスのインパクトの与え方が激し過ぎるということを言っているんです。総理がおっしゃっているのは三十兆という量の問題、量をおっしゃっているんです。私は変化のスピードの話をしているんです。
 わかりやすいように、この資料3をごらんになってください。これはもう予算そのものです。「一般会計税収及び歳出総額の推移」という形で、当初では前年度に対してこれだけのマイナスをやりながら、結果的には補正補正を繰り返して、年度別の歳出、これも落ちていますけれども、当初ほどは落ちていないんです。結果として、財政再建もできているか、税収も上がっているか。下のこの小さなグラフが税収の伸びです。税収がどんどん落ちているんですよ。つまり、経済に対して思い切り、この財政の面で中立であればそれはいい、しかし、財政の面でも大きな負荷をかけることによって、かえって財政赤字が拡大している。これは私が勝手につくった絵じゃないんですよ、皆さんが出してこられた絵。
 ですから、総理が登りたいと思っていらっしゃる山、財政再建、構造改革、そして社会の再生、経済改革、歳入構造改革、これは私たちも一緒ですよ。しかし、そこに向かう道が間違っているんじゃないですかということを申し上げているんです。いかがですか。
小泉内閣総理大臣 間違っているとは思っておりません。
 確かに、税収も減っております。景気に対して、刺激型とは言いません、中立型と思っておりますが、しかしながら、今の限られた状況の中では、国債をさらに四十兆、五十兆発行して景気刺激型の予算をつくっていいかとも思っておりません。それは構造改革という点も踏まえながら対応していかなきゃならない。
 そういう中で、当初の予定どおりに税収も上がってこないということは事実でありますが、だからこそ、経済状況を見ながら柔軟に対応する場合もあるということで、今まで、補正予算を組まなきゃならない状況だったら組んできた。今までの国債発行枠、三十兆円枠を守ることはできなかったけれども、経済状況を見ながら、守ることと、国債を発行して、ふやして今の状況に対応するのとどっちがいいかということを、バランスを考える。そういう点については、私は柔軟に対応する必要もある。
 御指摘の数字はそうであります。しかしながら、民主党の予算も総額ふやさないというんですから、総額ふやさないと言ったんだったら、これは専門家であります竹中大臣が答えてくれますけれども、これはどんなに予算を組み替えても、しかも公共事業を大幅に減らして、景気効果出るんですか。逆の効果ですよ、全体。そういう点を考えて総合的に判断しなきゃならないと思っております。
原口委員 今総理がおっしゃったのは、当初予算で組んだ経済の見通しをいつも間違っているということを言っているのと同じじゃないですか。間違っているわけでしょう。
小泉内閣総理大臣 見通しどおりにいかないということは事実であります。見通しが常にいっていたら、常に経済成長して、景気不況なんかありませんよ。見通しというのはあくまでも見通しで、見通しどおりいけばいいですよ、いかないときにどう対応するかというのが政治でも大事なんです。
竹中国務大臣 見通しは、なかなかそれは、経済は変動しますので、これは日本だけでなくてどの国でもそれなりの調整が必要になってまいります。我々はそれをやるに当たって一つの原則を立てているわけです。原則として、それはビルトインスタビライザーを活用させていただく。
 それともう一つは、緊縮緊縮とおっしゃいますが、緊縮かどうかというのは、ぜひともこれは貯蓄投資差額で判断をしていただきたいと思います。経済演説で、私は、貯蓄投資差額から見てことしは景気中立型に運営するというふうに申し上げていますので、その点は御理解をいただきたいと思います。
原口委員 私は、竹中さんが出てくるんだったら、あなたが経済の見通しを誤ったことを謝りに来るんだと思いましたよ。そうではなくて、ほかの視点で見れ、何を言っているんだと。
 二〇〇一年の四月に小泉内閣がスタートして、この財政のもと、そのときは森政権ですからあなたは予算編成していない。しかし、企業整理をし、株価は暴落し、そして景気は急落し、金融不安定化しました。そして今度、第二次補正、二次にわたる補正をその翌年しているんですよ。そして、ダイエーを起点に企業別の個別の救済を全面展開する、何やっているか全くわからないんですよ。
 最初に思い切り予算を落としておいて、そして年度末に、あるいはその翌年に補正を組む。そして、財政赤字はどんどん拡大している。今、統一地方選挙を先に抱えていますが、後で出てくる予算なものだから、自分たちに本当に有効なところに使われますか。ある程度の見通しを持って、そして経済に対して中立の予算を組むべきだということを言っているんです。
 では、財務大臣に伺います。
 今まで、財政の構造改革というものを私たちは何回もこの国会で議論をしてきた。そこで、財務省が試算をされたもので、橋本内閣のときは経済の成長率が一・五と三・五、このときに財政赤字、要調整額がどうなるかという試算をされていましたね。そのときに、一・五だと財政赤字は拡大する、要調整額はでかくなる、こういう試算も出ていたと思いますが、私が申し上げていることは間違いありませんね。
塩川国務大臣 そういう御意見がございました。
 それで、それは過去における平均と最近における経済の情勢との間の格差があって弾性値が違うということも、私の方から答弁したということでございます。
原口委員 私が申し上げているのは私の意見ではなくて、皆さんが出してこられたものなんですよ。私の意見じゃないんです。
 今もあなた方は、弾性値、今弾性値とおっしゃいましたね。国民の皆さん、わかりやすいのは、前の年とことしと税収がどれぐらい変化したか、プラスになったかマイナスになったかというのが簡単に言うと弾性値ですよ。この弾性値はずっと一・一で試算しているじゃないですか。一・一でしょう。そして、成長率は、今回の場合、〇%の場合、〇・五%の場合、いろいろやりますよ。しかし、これでやってみても赤字は発散するんです。そうじゃないですか。
 では、税収の弾性値一・一の予想が当たったことありますか、この五年間。ずっとマイナスですよ。違いますか。
谷口副大臣 原口委員の税収弾性値のことについてのお伺いでございますが、おっしゃるように、バブル崩壊前にはほぼ一・一程度の税収弾性値であったわけでございますが、それ以降大きく振れておりまして、安定したデータがないということもございまして、従来の一・一を使っておるわけであります。
原口委員 びっくりするような答弁ですね。谷口さんは、一緒に財政構造改革を志してきたかつての同志ですから、私が申し上げたいことはわかっていらっしゃると思います。
 今の答弁のとおりなんです、総理。バブルの崩壊前の数値でもって税収を見積もっているんですよ。これでどうやって財政再建化できますか。かえって減っているだけじゃないですか。国民を追いまくるのももういいかげんにしてほしい。どうですか。
塩川国務大臣 確かに、平成に入って十三年までの間の弾性値の平均と、最近とりました弾性値の平均、それはとり方が違うということは事実であります。
原口委員 財務大臣、人ごとのように言ってもらったら困るんですよ。社会保障も削る、そして公共事業も削る。地方によっては百億、二百億、三百億という税収の赤字を抱えていますよ。そして交付税も減らされる。そういう中で日本全体があえいでいるんですよ。今みたいな無責任な答弁はありません。
 では、今のこの五年間の税収の弾性値の平均は幾らですか。
谷口副大臣 昭和六十一年から平成十三年度までの税収弾性値は、マイナス五・五から五・二三ということになっております。
原口委員 国民の皆さん、お聞きになったとおりです。つまり、財政は再建するどころか赤字が発散している。グラフで見るとこのとおりなんですよ。目の前の歳出のカットをする、しかし、財政赤字が膨らむのがそれを大きく上回っている。
 この実態を考えないで、皆さんは一月二十四日に「改革と展望」二〇〇二年度の改定版というのを出されました。これも税収の弾性値一・一でしょう。だから、絵にかいたもちを常に国会に報告をして、国民に出して、粉飾したもののもとに国民を追いまくっているんですよ。やめたらどうですか。
    〔斉藤(斗)委員長代理退席、委員長着席〕
竹中国務大臣 名目成長率とか企業収益との関係というのが大変不安定化しています。その要因として、例えば時価評価の会計が導入されているとかそういった特殊事情がありますので、単年度で弾性値を求めて、単年度の弾性値で議論するということが大変不適切になっているというふうに思います。したがって、中長期の安定的な関係の弾性値でどのようになってくるか、それをマクロモデルを用いてどのような形になるかということを「改革と展望」で示しているわけです。
 「改革と展望」で我々が唱えているようなデフレの克服、不良債権の処理の加速、それと、構造改革を進めて安定的な軌道に乗せていったならば、財政は発散しない。しかし、そうしないと発散するであろうということも、これはある程度想像できるのであろうかと思います。
 これは、もしこのまま発散するんだというふうに原口委員おっしゃるのであるならば、ぜひとも民主党としての試算を示していただきたいと思います。私たちとしては、改革を進めればこのような形で十年後こうなるという試算を示しているわけですから、それが発散するというのであれば、ぜひとも対案となる試算もお示しいただければ、我々も勉強させていただきたいと思います。(原口委員「あなたは、小泉内閣……」と呼ぶ)
藤井委員長 ちょっと、指名してから発言してください。
 原口君。(発言する者あり)御静粛に願います。
原口委員 あなたは、小泉内閣が発足する一週間前に、私たち民主党議員と一緒に、自民党をどうつぶすかという会議をやっていたじゃないですか。本当にびっくりするような、あなた方が今精緻なモデルをたくさんのお金を使いながらやっていること自体の前提が崩れているんじゃないですか。
 そして……(発言する者あり)ちょっとおまえ黙れ。これ……(発言する者あり)この人をあれしてください。静かにさせてください。
藤井委員長 どうぞ、それぞれ良識のある方々ばかりでございますので、冷静にお願いいたします。
原口委員 総理、ですから、私が何を申し上げているかというと、財政に対して、財政を中立的に保った方が、こういう変化率をやるよりも経済に対する負のインパクトも少ないし、そして、赤字がかえってふえて財政構造改革が遠くに行くことも防げるんじゃないですかということを申し上げているんです。
 今、私たちは、日本経済は三つの危機を抱えています。一つは世界的なデフレ、もう一つは規制や構造改革が進まないことによって新たな職業が生まれないということ、三つ目は小泉政権による政策不況です。
 この政策不況を、きのうもおとといも総理は認められたんじゃないですか。財政の基本姿勢、税収の弾性値を一・一というバブル前の数字を今も使いながら、そして、さも財政が再建されるようなことを言っていたのでは、国民を欺いてしまうし、本当の改革もできないということを申し上げているんですが、私が申し上げているのは間違いでしょうか。
小泉内閣総理大臣 それは、民主党がせっかく対案をなされて、今政府の考えているものとそうは変わらない。そして、国債発行も我々と同じだと。それで、いろいろな歳出削減している、減税も要求している、負担は軽くしろと言っている議論に比べれば、政府というのはもっと具体的で、景気に中立だし、今の状況に対応できている予算だと思っていますよ。それは、確かに見通しどおりいきませんでした。それは認めます。しかし、どの国の経済も、一国の見通し、当たればいいですけれども、それはいろいろな世界的な要因もあります。
 そういう点を考えて、見通しどおりいきませんでしたけれども、いかないときにどうやって柔軟に対応していくかということでやっているのであって、財政中立ということはどういうことを言っているのか。私は景気中立だと思っています。財政中立ということはどういう意見か、伺っていませんが、教えていただければそれは拝聴したいと思います。
原口委員 私が言葉を間違えました。景気に対して中立という意味です。つまり、一般歳出の伸びを思い切り下げるというやり方が、本来の目的と異なった効果を生むということを申し上げているのです。
 この問題だけを延々とやっていても、私は、数字そのものを、一・一ということをずっとこだわってモデルをつくることに限界があるということを申し上げて、日銀総裁、お見えいただいていますので、日銀総裁に幾つかの点をお尋ねしたいと思います。
 昨年の暮れに、株価の変動リスク軽減策という形で、政策委員会・通常会合議事録というのを委員会に出していただきましてありがとうございました。これを見てみると、日銀がティア1のいわゆるオーバー分二兆円、日銀のアッパーが二兆円、格付がトリプルBプラスですか、それを買う合理的な理由がどこにあったのか。
 この議事録を見ますと、委員はこう言っているんです。日本銀行の収益そのものがパブリックマネーであるということなので、税金そのものでないにしても、パブリックマネーを使うのかという問いには覚悟せざるを得ない。あるいは、本当に銀行がこれに応じてくれるのか。あるいは、日銀を利用して株価を引き上げるようなことはやっちゃいけない。一部黒塗りなので、私は全部を見ることはできませんけれども、この議事録を見て、どうして日銀が大手銀行の株を買い取らなければいけないのか。
 実際に政府は、昨年、無理無理、株の買い取り機構というのをつくっている。これは日銀が、私たちの、国会の財政の領域に踏み込んだことになっているんじゃないか。この議事録からどうしてああいう決定がなされているのか。これがまず第一点。
 それから第二点は、私は、日銀のバランスシートが崩れること、これは後で総理にも人事のことで伺いますが、日銀のバランスシートが崩れてしまうと、日本全体の信用が失われるんです。ここは速水総裁は一生懸命頑張ってこられた。だけれども、その最後の部分で、なぜこれをなさるのか私にはわからない。今、現実どうなっているのか。
 二点についてお尋ねを申し上げます。
速水参考人 まず、第一問の金融機関保有の株式買い取りの背景について申し上げます。
 我が国の金融機関は、歴史的な経緯ということで多額の株式を持っていることは御承知のとおりでございます。ほかの大国では、ドイツを除いてはほとんど持っておりません。その株価の変動が、個別の金融機関の経営とか金融システムのシステム全体の大きな不安定要因になっていることは御承知のとおりでございます。特に、昨年の株が非常に動き始めてから、これが著しくなったわけです。
 こうした状況を踏まえまして、日本銀行は、異例ではありますけれども、必要な措置として、時限的に金融機関の保有株式を買い取るということを決意したわけでございます。本措置は、金融システムの安定確保、それから不良債権問題の克服に向けた環境整備といいますか、特に金融機関の自己資本の安定化という観点から、金融機関が保有する株式の価格変動リスク軽減を促すということを目的として、一定の基準で設けたわけでございます。
 私どもがそうした思い切った措置を講じて以降、金融機関、政府などの関係者の間でも、不良債権問題の克服に向けた取り組みが積極化しているものと受けとめております。
 それからもう一つの、私どもの財務の健全化について御心配をいただいておるので、この点につきまして説明をさせていただきます。
 長期金利が上昇していけば、日本銀行はたくさん国債を持っているから損失が生ずるんじゃないかということを中心にした御心配ではないかと思います。日本銀行は、保有する国債の価格の変動に対しましては、リスクの適切な把握を行いながら、十分な引き当てを実施しております。現状、財務の健全性に問題があるとは認識しておりません。
 日本銀行にとりまして、財務の健全性の確保ということは、政策運営努力の維持、通貨の信認を支える上での重要な基盤だというふうに考えております。今後とも、財務の健全性の維持には努めてまいる所存でございます。
原口委員 私が求めた答弁とはなかなかほど遠い。
 日銀のバランスシートを資料4に示しています。総理もごらんいただきたいのは、これは先月末の、ですから平成十五年一月三十一日現在、日銀のバランスシート、日銀の総資産は百二十四兆円に膨張しています。そして、そのうち三分の二に当たる八十三兆円、これが国債です。内訳は、長期国債が五十七兆円、短期国債が二十六兆円。加えて、担保として受け入れている国債も四十五兆円あります。物すごく大きな額なんです。
 ですから、何で人事の話に行く前にこういうことを申し上げるかというと、仮に長期金利が一%上昇すれば、総裁、含み損は幾らになりますか。また、長期金利が何%上昇すれば、日銀の自己資本がゼロとなりますか。
速水参考人 日銀のこの長期金利、今おっしゃいましたとおり約五十七兆ぐらいを持っておりますけれども……(原口委員「長期国債ですね」と呼ぶ)長期国債ですね。これが、金利が上昇していった場合に、どのくらいの金利上昇になるかということにつきましては、これは今持っている国債の期間がいろいろございますので一概には難しいんですけれども、あえて十四年九月末の長期国債の保有状況を前提にして計算いたしますと、十年物金利が一%上昇する、すなわち価格が低下する場合のケースを想定いたしますと、約一兆円程度の損失が発生する計算となります。
原口委員 後段の質問にはお答えにならなかったんですが、日本銀行にも自己資本があるわけですよ。この自己資本が毀損されることを私たち政治家は最も恐れなきゃいけないんです。私は、財務大臣にも、財務金融委員会でも何回もお話をしました。なぜか。日銀は経済のアンカーだからです。アンカー、いかりなんです。だから、このいかりを痛めるような政策は、どんなに苦しくてもやるべきではない。
 日銀の金利が何%上昇すれば日銀の自己資本はゼロとなりますか。今の計算で結構です、長期国債ですね。
速水参考人 日本銀行の自己資本、広い意味で申しまして、法定準備金や債券取引の引当金あるいは外国為替の損失の引当金、そういうものを全部入れまして、約五兆一千億の準備金が積んであります。
原口委員 今総裁がお話しになったとおりです。つまり、長期金利が一%上がると一兆円の含み損が出る、そして積んであるお金は五兆円である、こういう状況なんですね。ですから、私はもうこれ以上言いません。総理に今議論を聞いていただいた、こういう機会をいただいてよかったなと思いますけれども。
 そこで伺いますが、日銀はやはり我が国の金融政策をつかさどっているんです。その総裁はその業務を総理する立場にあるので、経済運営におけるその重要性というのは、今申し上げたように果てしもないものがあります。任期は五年ですから、特別な場合以外は在任中、これは解任されることはありません。また、日本銀行総裁、副総裁は、衆参両議院の同意を得て内閣が任命することになっています。つまり、総理が決断をされるわけです。こういう重要な使命を担って、しかも五年先までの責任を負う。総裁、副総裁の任命に当たっては、これは私たち両院、衆議院としては、同意の意義を理解しないといけない。今申し上げたような状況です。
 そして、何で前段に国債の発行額、あるいは税収が落ちているかというと、平成二十年には百三十兆円、もう借りかえないといけないんです。今のような財政運営をやっていると、本当に長期金利も上昇する、そういう危険なところにある、そういう中でこの日銀総裁人事が行われようとしているんです。後で外交についてはお話をしますが、外交についても大変厳しいところにある。経済についても今大変な時期なんです。
 そこで、私は総理に、どういう方針で、そして国会には、事前に基本的なスタンスをしっかりと私たち国会議員もわかった上でそれに同意をしたい。インフレターゲットやさまざまなことをやる人なのか、それとも、日銀のアンカーとしての役割を重視して、そして堅実に運用をしていく人なのか。どういう人を選ぼうとされているのか、総理の基本的な御認識と、そして国会に対する説明責任、これをどう果たされるのか、二点についてお尋ね申し上げます。
小泉内閣総理大臣 最後の質問に対する答弁の前に、今、原口議員が指摘されたことからも、いかに、私が国債を増発すれば経済がうまくいくものじゃないと言っている点が御理解いただけたと思うんです。三十兆円発行して、十兆、二十兆国債を増発して景気がよくなるんだったら、私はすぐやると言っていた。しかし、そうじゃないということを考えながら経済運営をしなきゃならない。
 今までやっている民間の外国の企業が、国債の格付をアフリカの国よりも下に下げたことがありました。しかし、今幸いにして、これだけ国債を増発しても、長期国債は一%になる。しかし、将来、今御指摘されたような点も考えて、私は経済運営を考えていかなきゃならない。
 そういう中で、今、日銀総裁の人事でございますが、私は、国会同意人事であるということも承知しております。当然、国会に承認を求めます。なおかつ、これからの総裁につきましては、デフレ退治に積極的に取り組んでくれる方、なおかつ見識を持ったすぐれた方を選任したいと思っております。
原口委員 私たちは、審議の中で、どういう方が総裁になられるべきかということもしっかりと示していきたい。
 総理にお願いしますが、私は、さっき申し上げたことを国民の皆さんが誤解されるので、二十兆、三十兆、たくさん国債を出して景気を拡大しろなんて一言も言ってないんですよ。そうではなくて、逆に、こういう財政運営をしていて赤字が積み重なっているということを指摘しているんです。
 よく総理は、多分、抵抗勢力の皆さんに対してお話をしょっちゅうされているので、そこに対する答えを私たちにされているんだと思うんですけれども、私たちが質問していること、極端に二十兆、三十兆とか、そんなこと言ってないんです。この下げの幅をこんなに大きくしない方がいいですよと。下げが物すごいですよ、当初で。結果的には年度末で埋めるんだったら同じじゃないかということを申し上げているんです。しっかりと経済運営の見通しを立てて、その上でやるべきだということを申し上げているので、誤解をしないでいただきたいと思います。
 さて、そこで、国債負担と財政の収支見通しということで、財務大臣、先ほどお話をしましたが、私は、このままでは大変大きな問題が起こるということだけ指摘をして、金融政策の中でもう一つ、BIS規制について指摘をしておきたいと思います。
 先ほど枝野議員が指摘をしましたが、中小企業については、私は、世界に対してさまざまな活動をやっているところの会計基準と、中小企業、地域の限られたところの会計基準は違うべきだ、そして、それが右へ倣えをしないようにしっかりとした基準をつくるべきだということで、昨年の一月二十八日でした、あの日は、私の目の前で田中外務大臣と事務次官が別の会見をされて、この質問がほとんど国民に伝わりませんでした。しかし、平沼大臣はそのことを実践されたというふうに思いますが、その後、会計基準についてどのような議論がされ、どういうふうになっているのか。中小企業独自の資本構造を変えていって、そして私は、よく河村議員が言っていますが、中小企業を病人扱いするのはおかしいと思うんです。一生懸命頑張っているところがあるんです。しかし、経済政策、政府の施策によって、平沼大臣とは言いませんよ、財務省の非常に一方的なマインドコントロールのきいた予算であったりとか、そういうもので政策不況が起こっているんです。政府がやるべきこと、平沼大臣、会計基準についてどういう検討をされ、どういう状況ですか。
平沼国務大臣 お答えさせていただきます。
 中小企業の会計基準に関しましては、やはり円滑な資金調達が可能になるように、しっかりした計算書等が整備されているということが非常に重要だと思っています。しかし、現在の会計基準というのは上場企業というものが対象になっておりまして、株主の数でございますとか債権者の数が少ない、そういう中小企業に対しては、なかなか適用するのが難しいという状況になっています。
 そこで、我々といたしましては、検討会を開きまして、関係団体にも入っていただきまして、中小企業の会計基準のあり方について鋭意検討してまいりまして、昨年の六月に中間的な報告を取りまとめました。
 現在、これを受けてくださって、そして、税理士組合の連合会の方々や公認会計士協会の皆様方がさらに実態に即した形で今検討を進めていただいています。やはり一つ問題点としては、金融機関というものが、こういうことをやるに当たって中小企業に対してぴっちりと門戸を開いてくれるようなインセンティブが必要なことも事実でございまして、そういったことを踏まえながら、今一生懸命それをまとめている段階でございます。
 それからもう一つは、自己資本の充実ということも中小企業にとって大変大切なことで、現在の厳しい資金繰りの中で自己資本の充実をするということが大切なので、私どもとしては、中小企業を今おっしゃったように本当に弱いものだとかそういうことじゃなくて、やはりしっかりしていただかなければいかぬということで、自己資本比率が五〇%以下のそういう中小企業に対しましては留保金制度というものを停止させていただきました。これによりまして、中小企業の約八〇%がそれに適用されますので、そういう意味では非常にいいことだと思いますし、やはり今の間接投資を直接投資にしなきゃいかぬという形で、中小企業の投資事業の有限責任組合、これも私どもは法改正によりまして範囲を拡大して、そして中小企業に対する直接投資、そういった形で中小企業の自己資本比率、そういうものを高めていく、こういったことにこれからも努力をしていかなきゃいかぬ、このように思っております。
原口委員 私は今の答弁を了とします。
 しかし、留保金についてもまた課税がある、それから、皆さん、今外形標準課税を導入しようとしている、その中で、資本割という形もやろうとしている。ただでさえ、いわゆる自転車操業をしなきゃいけない、今おっしゃったような資本の薄い中で借り入れで賄っている。そして、今のデフレの中で、デフレの中はキャッシュを持っている方が強いんですよね、借りている方が弱い。こういう状況を脱するためには、政府の施策がやはり跛行的であってはならない、ちぐはぐであってはならないということを指摘しておきます。
 資料6をごらんになってください、これはBIS基準。
 私は、総理、伺いますが、どうして事業法人や個人に対する貸し出しリスクが一〇〇で、そして国債を持っている、保有のリスクがゼロなのか。このBIS基準についてももう見直しの議論を私たちはずっとやってきていますが、ここを変えないといけないと思いますよ。貸す方が一〇〇で国債を持っている方がゼロだったら、みんな国債を持ちますよね。このことも大きく改正していかなきゃいけないポイントだというふうに思うんですが、総理、基本的なお考えを伺いたいと思います。
竹中国務大臣 委員はよく御承知だと思いますけれども、バーゼル銀行監督委員会では、BISの基準そのものについて、いわゆる新BIS規制について、ことしの第二・四半期に第三次案を公表する、本年中に最終案を公表するということで、リスクのとり方を含めていろいろな検討を進めております。もちろんこれは日本としても積極的に議論に参加しているわけでありますので、その中でいろいろな観点からの議論がなされていくというふうに思っております。
 あとは、それとBIS基準はBIS基準として、国内での中小企業に対してどのような配慮を行うべきか、それはそれでまた我々、先ほど申し上げましたように、今、金融審で地域金融、中小金融を中心としたリレーションシップバンキングのあり方というのを考えておりますので、その双方から実情に即したきめ細かな対応ができるように努力をしたいというふうに思っているところでございます。
原口委員 バーゼルで日本はどういうスタンスで主張しているんですか、このBIS規制について。私は、日本の場合は、やはり中小企業、これが日本の活力なんですよ。中小零細企業が私たちの最も大きな力です。ここの収益率を上げてここの元気をもっともっとつくる、そして新しい仕事をつくっていく、規制改革でつくっていく、このこと以外に今の現状を打破する道はないと思っているんですが、バーゼルで日本は何と言っているんですか。
竹中国務大臣 基本的には、この信用リスクの考え方等々、やはり実態に即してやるべきであるという立場でありますので、そうした点を踏まえて、さまざまな観点から日本も貢献をしているということであります。
原口委員 非常にいつもは理論的で、私は、竹中さん、きょうテレビの前だからあえて言いますが、本当に命がけで小泉改革を支えようということで閣僚になられたと思いますよ。金融の問題も、それから財政、経済の問題も本当に命がけだと思う。だから、頑張ってほしいと思います、方向は間違っていると思うけれども。
 しかし、今のことはとても聞き捨てならないんです。なぜかというと、日本の場合は間接金融が大きいんです、今平沼大臣がおっしゃったように。だから、日本の国益に即した主張があるはずなんです。それは何ですかということを聞いているんです。
竹中国務大臣 これは大変ちょっと細かな話ですので、今の時点で十分なお答えができるかどうかということはあれなんですけれども、基本的には改革の方向として議論されているし、日本もまた、それに対して主張しているのは、信用力の高い優良先向けの貸し出しや、リスク分散がきく中小企業、個人向け貸し出しの自己資本の負担を軽減する。その一方で、リスクの相対的に高い資産の自己資本負担を割り増す。
 したがって、BIS規制の見直しの方向そのものが、全体としては高くも低くもしないということで、その中を見直そうということですから、その意味では、先ほどから申し上げているように特に中小企業向け、個人向けというのはリスク分散がきくわけでありますから、その部分についてはリスクを軽減する方向である。そのように日本も考えているわけです。
原口委員 答えは返ってきません。この間、我が党の田中議員がここで指摘をしましたように、日本の場合、非常に個人保証が問題になっている。こういうことからも、日本の実情に即した議論をしっかりと主張していただくようにここで要請をして、次の質問に行きます。
 生保の予定利率の引き下げについてでございます。
 これも差し上げておりますが、資料の5、「生命保険会社の利源別損益の状況」。生保の利源、つまり利益のもとというのはこの三つになります。よく、いわゆる逆ざやがあって超低金利だから生保は厳しいという認識がこの国会でも言われましたが、四十三社計で、実は利源の計はプラスなんですね。五ページです。なぜか。平均寿命が長くなっていて、そしてそういうところからも大きな利益が来ているんです。これを死差損益というそうです。それと費差損益。
 総理、伺いますが、今、政府の中で生保の予定利率の引き下げ、これについての法案を出す用意がありますか。
竹中国務大臣 ちょっと個別のことでありますので、済みませんが、お答えさせていただきます。
 御指摘のように、三利源の中でいわゆる利差の部分は逆ざやでかなり厳しいマイナスになっているが、それを死差等々で補っていて、全体としては利益が上がっているという構造になっている。しかしながら、生保の経営そのものを見ますと、いわゆる逆ざや問題と、それと保有契約者の減少、株価等々、やはり総合的な要因で大変厳しい環境にあるということになります。その意味では、利差のものは、ほかのことが埋まっているからそれでいいのかどうかということも含めて検討しなければいけないという状況にあります。
 お尋ねは、今引き下げ問題についてどういう状況にあるかということでありますけれども、これは、バブルのときに高い利回りを約束してしまっていて、今それが随分状況が違ってしまっているという大変厳しい事実、しかし一方で、これはあくまで約束してしまったことなんだから、やはりモラルハザードの問題もあり果たすべきだという議論、それと、このままいって、本当に利差がマイナスのままで大丈夫かというような議論、やはり非常に考えるべき複雑な問題があるというふうに認識しております。
 銀行の問題も難しいんですが、銀行の問題に関しては諸外国で若干の参考になる事例もある。生保についてはなかなか参考になる事例もないものですので、今我々としては本当に汗をかいて一生懸命勉強しているという段階でございます。まさに勉強しているというふうに御認識ください。
原口委員 勉強しているということですが、総理、なぜ私がこれを伺うかというと、生保の予定利率が下がるというのは、要は、自分たち、国民の側から、契約者の側からすると、もらうお金が下がるということですね。その理由はやはりはっきりさせてもらわないといけない。
 四十三社の各社に、竹中大臣、これは竹中大臣で結構ですが、各社の三利源の内訳を、今議論をし、勉強しているということでしたけれども、三利源の内訳を公表させるということをお考えになりますか。
竹中国務大臣 三利源の内訳そのものでありますけれども、これはディスクロージャーそのものは大変重要だと思っています。ですから、平成十二年度決算から、その基礎利益等々を創設して公表も行っているわけですけれども、各社ごとの三利源ということになりますと、これは競争戦略にかかわる一種の内部管理指標であるということでありますので、我々としてはやはり慎重に考えなければいけないというふうに思っております。
原口委員 そうしたら、予定利率にさわらないでほしいですね。なぜかといえば、国民の方は、どの生保がどういう状況なのかというのもわからないで、そして法律でもって利率を下げられたのでは、たまったものじゃないんじゃないですか。
 では、それぞれ経営戦略だから、また一律、この間破綻のところは一割カット、予定利率一割カットということをやられましたね、そういう形でやるんですか。今勉強しているというその前提を、やはり国民に対してしっかりと開示をしていく。小泉内閣の基本姿勢は、積極的な情報公開と説明責任だったんじゃないですか。いかがですか。
竹中国務大臣 これは当然のことながら、議論が煮詰まった段階で、いろいろ幅広く議論をさせていただくつもりであります。
 ただ、これは非常に複雑で、考慮しなきゃいけない問題がたくさんあって、これが一点だけが取り上げられて出てしまって、非常に不測の、そういう風評を生むということにも配慮しなければいけないものですから、我々として、できるだけ詰めるべき問題をしっかりと勉強させていただいて、その上でいろいろな考え方についてお示しをして御議論をいただく、これは当然のことながらやるつもりでございます。
原口委員 やはり、しっかりと判断の材料がなければ判断しようがないんです。
 総理、判断の材料を、私は経営の根幹にかかわるものまで出してくれなんて言っていませんよ。生保の中で頑張っていらっしゃるところもたくさんある。しかし、こんなことはないと思うけれども、一律利率を引き下げるなんということを、そんなことも聞こえてくるので、絶対にそういうことないでしょうねということだけ確認をしておきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 今、生保の予定利率の問題については、竹中大臣が話されましたように、いろいろな角度から勉強させております。
 確かに、デフレの時代になって、物価上昇は当たり前だという時代に考えてきた予定利率とは違ってきた、見通しどおりいっていないということは事実であります。そういう中で、生保会社の財務状況をできるだけ国民にわかりやすく提供していくということは大変重要なことだと思っております。
 何よりもやはり契約者保護、そういう観点から幅広く勉強させておりますので、そういうのをよく考えながら、この予定利率の問題については対応していかなきゃならないと思っております。
原口委員 今の答弁を誠実な答弁と把握をして、しっかりと私たちも国会で議論をしていきたいと思います。
 さて、もう午前中の時間があとわずかになりましたが、総理のいわゆる公約に対する発言については、私たちにもたくさんのメールや手紙が来ました。ここに座っていてどうして撤回させないんだ、この議事録がずっと未来永劫残るんだと。
 総理は、私が意見を求めたときに、率直に謝罪をされました。それは多とします。しかし、撤回をする気はないと、その後、同僚議員の質問に対してお答えになりました。なぜ撤回しないんですか。
小泉内閣総理大臣 撤回しようが、削除しようが、ずっと残るんですよ。撤回しようが、削除しようが、ずっと残るんです、これは。そういうことを考えて、確かに不適切な発言だったと反省しているんです。そういう点を考えれば、その批判は甘受していかなきゃならない、今後の行動で信頼を得られるように努力していかなきゃならないということなんです。
 御理解いただきたいと思います。
原口委員 余りにも国会を軽視していませんか。議事録の中にそれが残るのと残らないのは、えらい違いですよ。
 今の答弁はとんでもない答弁なんで、午後またさらに質問をさせていただきます。
藤井委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時一分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時一分開議
藤井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。原口一博君。
原口委員 民主党の原口一博でございます。
 午前中に引き続き、総理に質問を申し上げますが、あの公約発言に対して撤回しないと。私は、とんでもないと思います。普通であれば、申しわけなかった、民主政治を守っていく立場から、私は撤回するから議事録からも削除してくれ、これが普通の政治家の感覚です。なぜ撤回しないんですか。
小泉内閣総理大臣 繰り返し答弁しているでしょう。不適切だったと反省していると。撤回しても、削除しても、皆さんが相変わらず持ち出すというのはよく承知していますよ。よくワンフレーズポリティックスとかマスコミから批判されていますけれども、あれは、マスコミが勝手にワンフレーズ取り上げているだけですよ。全部取り上げてくれない。一部だけ。毎回毎回。もう新聞、新聞の見出し、テレビ、ワンフレーズポリティックスをやっているのはむしろ報道機関ですよ。
 だから、私は、それは、野党の皆さんに同調しろと、野党の議員がそう言うのはわかりますよ。政府、閣僚として同調する必要は私はないと思っております。ときによっては同調する必要もあるけれども、ときによってはする必要はない。見解の相違は、これは政治家同士、当然。だから、もう撤回しても、削除しても、相変わらず何回もこれは取り上げられますよ。
 そういう点において、不適切だった、反省している、これから信頼を得るために日々の行動で努力していきたい、これが私の答弁なんです。イエスかノーという答弁だけじゃないんです、答弁は。それをやはり同じ政治家同士で、国会の場で、自分に同調しなきゃけしからぬというのは、これまたいかがなものか。私は、これが答弁なんです。何回言われても同じ答弁なんです。
原口委員 まあ、本当に傲慢不遜そのもの。私に同調してくださいと言っているんじゃないんですよ。総理は、この予算委員会の質問でほかの委員に、個別名は申しませんが、議事録削除してくれと一年間言い続けられたでしょう。忘れましたか。あなた御自身がここは不穏当だからというので、私たち一年間走り回ったんですよ。人の意見は削除してくれと言い、御自身は、これほど民主主義を冒涜し、国会を冒涜する言葉を吐いておきながら、撤回しないというのは了見違いじゃないですか。
小泉内閣総理大臣 まあ、それはいろいろ発言ありますから、同じ発言じゃないですもの。そうでしょう。
原口委員 本当に、この問題で私は納得できません。スタンスがやはり違うなと。私たちは民主主義をはぐくもうと思っている。そして、公約の重みはしっかりと、一回言葉に出したことは確認をしなきゃいけないと思っている。総理のそういう姿勢は、これ、資料をごらんになってください。資料の11です。国会答弁のいわゆるレクについて、質問者名と出席大臣、それから全文入手またはレク開始の時間、質問を各省に配付した時刻、これで、まさに閻魔帳みたいなものをつくっているじゃないですか。
 今、これほど不況のときに副大臣、政務官を置いて、本来は副大臣、政務官がこの質問取りに来るんですよ。それを全くやらないで、しかも議員ごとにこうして質問者名を記載して、そして、まさにそれを政治的に利用するかのようなことをやっているのはどういうわけですか。しっかりとした答弁をいただきたいと思います。
上野内閣官房副長官 お答えさせていただきますけれども、副大臣会議というのが一昨年の一月六日から発足をしているのは御承知のとおりだと思いますけれども、その中で、質問がなかなか早く出していただけないということで、国家公務員の健康管理、超勤が非常に多いという問題が従来から問題とされております。そして、一昨年の十一月にも一度申し入れをさせていただきまして、これは衆参の議運委員長、それから国対の関係者にもお願いをしたわけでございますけれども、再度また昨年の十月の副大臣会議の中で、やはり国家公務員の健康状態、そして超勤を何とか少なくするということで、今度、実態調査をある程度踏まえて、そして申し入れをさせていただこうということになりまして、副大臣会議で調査をさせていただきました。
 そして、副大臣会議の都度に、我々は記者会見できちっと、こういうことをやらせていただくということも十月に申し上げましたし、そして、十二月の十九日に結果が出ましたので、これも発表させていただきましたけれども、しかし、これは目的が国家公務員の勤務状態、健康管理をするということでございますから、そういう観点から、副大臣会議として、国会に対しては、二日前の午前中というのはほとんど守られておりませんから、少なくとも前日の十二時までにお願いできないかということ、一方、役所の方も、余り長い時間をやるということはまずいと思いますので、六時間程度で仕上げる、そういうことであれば夕方の六時までにできるということでございます。
 今、この目的以外に全然そういう意図はございませんので、そのことはちゃんと申し上げたいと思っております。
原口委員 では、そうであるのだったらどうして質問者、個人名を調べる必要があるんですか。そして、あなたは党派別にブリーフをしているんじゃないですか。
 政務官は今何をやっているんだ、多くの給料をもらって、そして何にもやってないじゃないか。今のこのときだって、地元を回っているのがいるじゃないか。だれが質問を取りに来たんだ。全然違うことをやっておきながら、しかもこうやって質問者名を出して、そしてやっている。
 あなたの主張に沿うと、私も国家公務員の人権や健康は大事だと思う。これを見ると、十七時以降の通告がたくさんあるわけです。そうしたら、全部二日前にやればいい。それを政府がお願いをするということで、公式に。いいんですね。(発言する者あり)
上野内閣官房副長官 まず……(原口委員「聞いたことだけ」と呼ぶ)いや、今聞かれたので。
 個人の名前をなぜ出しておるかということですけれども、これは調査票に、いろいろな省に質問をされますから、同じ議員が。(発言する者あり)
藤井委員長 御静粛に願います。
上野内閣官房副長官 ですから、それが一回の質問になるわけでございますので、そういうのを整理するという意味でその議員の名前を出しているということはございますけれども。
 それから、私がブリーフをしたということでございますけれども、私は、副大臣会議の結果を会見いたしましたけれども、党派のことについては一切触れておりません。
 我々の方は、これは国会のことでございますから、政府としてこういう実態があるのでぜひ御配慮をお願いしたい、これは十二月二十四日に与党の国対委員長の先生方にお願いをいたしました。あくまでも結果は国会で判断していただくことだと思っております。
原口委員 それは当たり前の話で、今、個人の名前をつけなきゃいけなかった理由は全く言っていない。総理が国会の答弁を本当に重視するんであれば、やはりしっかりとしたレクも受けてもらって、そして、かみ合った質問と答弁をするべきだ、そのことを指摘して、これはこの委員会だけではなくて、議運や国対でも議論をされているようでございますから、そちらに譲ります。
 さて、安全保障の問題で数点伺います。
 まさに、イラクに対する査察、最後のチャンスの時間はあと残されていない。こういう状況の中で、北朝鮮の瀬戸際外交、これの状況も非常に厳しくなってきている。そういう意味で、政府に伺いますが、ミサイル発射実験を北朝鮮が再開する、こういう危険性が高まっているんではないか、このように思いますが、いかがでしょうか。
川口国務大臣 北朝鮮が核の凍結をやめる、あるいはNPT等の国際的な約束から脱退をするというようなことを言っているという事実がございます。そのコンテクストでいろいろな懸念が日本にはあるということもそういうことかと思います。
 我が国としては、北朝鮮に対しては、NPT等の国際約束に戻り、そして核の凍結を再び行い、核の開発のプログラム、これをやめるようにいろいろな場において働きかけているということをやっております。北朝鮮が国際社会の責任ある一員となるために、我が国として引き続き働きかけるということが大事なことだと思い、そのような外交努力を今やっているということでございます。
原口委員 防衛庁長官に伺います。
 現在の状況、そして、インド洋にイージス艦を派遣していますが、先日、プリエンプティブ・ディフェンス、セルフ・ディフェンスについて、いわゆる先制的自衛についてここで議論をしましたが、防衛庁長官は、どのようなアメリカの新しいドクトリンに対して姿勢をお持ちなのか。この二点についてお尋ねします。
石破国務大臣 お尋ねは、現在インド洋においてどのような行動が行われておるかということだと思いますが、それでよろしゅうございますか。(原口委員「いや、北朝鮮の脅威が高まっていると思うが、その警戒について」と呼ぶ)
 北朝鮮の脅威につきましては、今外務大臣からお話があったとおりであろうと思っております。
 私どもは、いろいろな手段を使いまして、もちろんそれは我が国独自で収集するものもございます、あるいは友好国の情報を得る場合もございます。その情報の把握、分析には全力を尽くして、遺漏なきを期しておる次第でございます。
 米国のドクトリンにつきましてでございますが、それは合衆国の政策でございますから、そのことにつきまして私どもがとやかく申し上げることだとは思っておりませんが、決してそれは侵略を行うものではない、そしてまた、それを口実に、それに藉口してといいますか、そういうような攻撃をしかけることはあってはならないというようなことも申し述べられておるわけでございます。
 米国が先制攻撃を常に行うということを決めたものでもございません。それはあのペーパーだけではなくて、その後に、ライス補佐官でありますとかいろいろな方が言及をしておられる、そういうものを総合的に判断して、私はそのような感想を持っております。
原口委員 今防衛庁長官が御答弁されたのは大事なところで、アメリカの新ドクトリンが変われば我が国の戦略もそれにつれてやはり見直しが、あるいは多くの議論が必要ではないか、このことを提議したということで、きょうは外交、安全保障については詰める時間がございませんので、後ほどまたやらせていただきたいと思います。
 資料に戻りますが、資料の10、これはちょっと見にくいので、コピーが悪くて恐縮なんですが、これは、いわゆるヘリコプターによる農薬の空中散布、これによって、今、化学物質過敏症あるいは有機燐系の中毒、農薬に対する過敏症、非常に大きな問題が出ているんですが、実際は、ここに書いておりますように、目まいや緊張、不安あるいは学力の低下、抑うつ、眠気あるいは呼吸困難、こういった事態まで報告をされています。
 無人ヘリコプターによるいわゆる空中散布の実態をつぶさに調べてみると、東京の空気が危険で、地方が安全だとは言い切れないなというようなことまで思わざるを得ない、そういう実態であります。
 そして、実際、この有機燐系の殺虫剤の空中散布は、場合によっては、一リットルの薬剤を一億五千万粒の霧に変えて、そしてこれを散布する。つまり、空気で入るものというのは、これは、隣に自見さんいらっしゃいますが、もうほとんど注射しているのと同じですね。非常に危険な状況が行われている。そして、五倍希釈の高濃度でやっている、そういう実態も幾つか報告をされています。
 私は、この空中散布による有機燐系の農薬による健康被害、この深刻さ、農林水産省としてどういう実態把握をされているのか。政府からいただいた資料では、物すごい勢いで伸びています。
 今、農家も担い手が少なくなって、そして農薬散布もこれは簡単な話じゃない。農家の負担軽減というのも一方で大事です。しかし、このような状況を放置するわけにはいかない。二キロも三キロも離れたところで農薬が散布されると、このような形で散布されると、大変目まいや頭痛、そしてこの多くは、今までは有機燐系中毒とはわからずに、精神のさまざまな病気であるとか別の病気じゃないかということで子供たち、学校に行く子供たちにも大きな影響が出ている。
 このように私どもの調査ではわかってきたんですが、農林水産省、大臣、どのようにこの実態を把握されているのか。それから、生産現場での規制は、先ほど申し上げたように、これは守られていないところもあるというふうに聞いておりますが、その状況をお聞きしたいと思います。
大島国務大臣 委員御指摘の航空事業で農薬をまくという姿でございますが、有人とラジコンでまく、この二つの形態がございます。
 それで、物すごくふえているというよりは、私どものデータではむしろ減ってきておるのが現状です。特に、それは先ほど委員が御指摘いただいたような健康に対する影響とかそういうものもございますし、私どもも数々の指導、規制を加えております。さらに、例えばでございますが、現在十三年度で大体三百六十二万ヘクタール、実施面積がございます。そして、ラジコンでやるのは約三十万ヘクタールぐらい、私どもはこう考えております。
 いずれにしても、これは委員が御指摘いただいたように、空中からまくわけでございますから、よほどの使用規制というものをしっかりと設けなければならぬと思っております。特に、御指摘のあった有機燐酸の問題でございますけれども、環境庁の検討会が大気中の農薬濃度、いわゆる気中濃度評価を定めているところでございますけれども、この基準を超えないように私どもは指導はいたしております。
 今、私ども、明確な、委員が御指摘いただいたような因果関係というものはまだ定かに、私どもはそうだというところまではいっておりませんけれども、いずれにしても、今後、空中濃度評価値を超えないように、周辺住民への空中散布の周知、散布方法の工夫と被害防止対策に万全を期さなければなりませんし、なお研究もしなきゃならぬ部分があると思います。したがいまして、環境省ともよく相談しながら、そういうものに対して対応していかなきゃならぬと思っております。
 それから、規制を守っていないんじゃないか、こういうことに対しては、あってはならないことでございますから、委員からの御指摘もございますので、そういうことのないようにさらに徹底して努力してまいりたい、こう思っております。
原口委員 同じ質問を坂口厚生大臣に伺いますが、厚生省としてはどのように実態調査をしているのか。そして、健康被害がどのように出ているのか。
 この写真をごらんになってもおわかりのように、限られたタンクですから、できるだけ濃いものを入れた方が効果もあるわけです。私も、地元で農家の人たちに聞きました。あれは効くばい、あれは効くばいと。物すごく効くんですよ。効くということは、人間にも効いている。そういうおそれがある。
 厚生省にも昨年、実態調査をお願いしたいということを要請しておきましたが、どのように把握されていますか。
坂口国務大臣 農薬の中には、確かに劇物、毒物が含まれているわけでありまして、それらの使用につきましては、やはり厳格にやらなければならないというふうに思っております。
 その被害者のデータというのは、残念ながらなかなかうまいぐあいに集まらないものですから、私の方も今のところ十分なデータを把握いたしておりません。今、一つの例としてお挙げになりましたような非常に大きな影響を与えるというような人は、これは医療機関で把握できますけれども、いわゆる中間的なと申しますか、それほどひどくないような人たちというところまでなかなか把握はできないというふうに思っております。
 これはしかし、私たちも、この毒物、劇物のときには、それはちゃんとやらなければいけませんので、これからその把握は、明確なものはちゃんと把握をしたいというふうに思っております。
 また、地方の病院でありますとか、あるいはまた病院等に対しまして、毒物、劇物でこういうふうなときにはどういう症状が出るから注意をしてほしいということも徹底をしたいというふうに思っている次第でございます。
原口委員 時間が押してきましたので、このことはぜひ、小さい子供たちにも大きな影響が出ています。文科大臣、通学路の安全性、学校のシックハウス、学校に行きたくても化学物質過敏症で行けない、こういう子供たちもたくさん報告がされています。ぜひ、各省挙げて、問題意識を持って取り扱っていただきたい、このことを要請いたします。
 法務省の刑事局に来ていただいていますので、東京女子医大の医療事件について。
 東京女子医大で医師が起訴されましたが、この起訴内容についてお尋ねをいたします。
樋渡政府参考人 お答えいたします。
 お尋ねの件につきましては、平成十四年七月十九日、東京地方検察庁において、東京女子医大病院の医師一名を業務上過失致死罪で、同病院の他の医師一名を証拠隠滅罪で、それぞれ公判請求したものと承知しております。
 業務上過失致死罪の公訴事実の要旨は、平成十三年三月二日、東京女子医科大学附属日本心臓血圧研究所の手術室におきまして、被害児童、当時十二歳の女子の心臓手術が行われた際、人工心肺装置の操作を担当していた被告人が、手術チームで事前に申し合わせた同装置の操作方法を必要性もないのに独自の判断で変更し、さらに、業務上の注意義務を怠り、危険な方法で同装置を操作した過失によりまして、脱血不能状態等を発生させ、よって被害者に重度の脳障害を負わせ、同月五日、同研究所において死亡させたというものであると承知しております。
 次に、証拠隠滅罪の公訴事実の要旨は、同手術のチームリーダーの立場にあった医師が、前記事件について、他と共謀の上、ICU看護記録中の記載を改ざんしたり、同手術に係る人工心肺記録中に虚偽の記載をするなどして、他人の刑事事件の証拠を変造または隠滅したというものであると承知しております。
原口委員 まさに、医のモラルというよりも、これは犯罪ですね。しかし、こういったことをどうしてチェックしていくのか、そのことに踏み込んでいくと、とても、私たちはまだまだやらなければいけないことはたくさんあるということがわかります。
 この東京女子医大の医療事件に関連して、私たち民主党は被害者支援チームをつくりました。全国各地から医療過誤あるいは医療犯罪、こういうものに対してたくさんの症例が、事例が寄せられました。こんなちっちゃな、子供の心臓というのはこれぐらいですね。ちっちゃいんです。真っ黒になった子供さんの心臓の写真を持ってこられた御両親もいらっしゃいました。だけれども、患者の側からすると、はるかに知識が違いますから、それを医療ミスであるとか、あるいは医療事件であるというふうに証明していくことは、もう本当に至難のわざです。
 医療法はまさに戦後すぐできたもので、これはある意味では衛生法の体裁をしています。医療のサービス法になっていない。中には、私たちが扱った事案の中には、病院側が患者の同意も何にもなしに、カルテまで開示して記者会見をしている、まさに法律違反じゃないかというような事案までありました。圧倒的な知識の強者と、そしてそれを受ける側との差。
 厚生大臣、カルテの信頼性についてどのように担保していくのか。それから、こういう医療の質をだれが、手術やその中身をだれがどのようにチェックしていくのか。医療の窓口負担だけはふえていくけれども、医療の質をだれがコントロールしていくのか。そのことについてお尋ねをしたいと思います。
坂口国務大臣 医療に対するミスの問題は、これは外からはなかなかわかりにくいものでございます。したがいまして、その医療を行いますその病院なら、病院自身においてそれは明らかにしていくものでなければならないというふうに思います。したがって、そこは各医療機関が、やはり自分たちの誤りがあったときには率直にそれは誤りであることを明確にするということがまず第一歩として大事でございます。そして、それをいかに公表してもらうかということが大事でありまして、そのことに対して我々は、医療ミスに対します徹底的な医療機関に対する対応を今要求しているところでございます。ところが、そういう中で起こりましたことが明らかに外に出ないということもあるものですから、そこをいかに明らかにするかということが大事でございますので、そのことも今あわせてやっているところでございます。
 いずれにいたしましても、できる限りこれは、ミスは起こさないようにしなければいけないわけでありますから、いかにしてミスを予防するかということもあわせて今やっております。
 それから、カルテのお話が出ました。カルテにつきまして、この東京女子医大のときにはカルテの改ざんをやっているわけでありまして、それはもう本当に医の倫理に反することでございますから、あってはならないことだというふうに思っている次第でございます。
 器具をどう正常にうまく使うかということと、そして、それを記録したものをどう正確に皆さんにも公表をするか、公表をするかといいますか、その患者さんに対しましては明確にするかということでありまして、書きかえるなどということはあってはならないことだというふうに思っておりますし、これを一体どう防止していくか。そういう悪意がないような事件も中にはございます。しかし、それらもあわせて、誤りが起こりましたときに、それをどう病院の中で全体が共有をし、そして明らかにしてもらうかということに今全力を挙げているところでございます。
原口委員 私は、患者の側に立った、民主党が出しているような権利法、そういうものがない限り無理だというふうに思います。
 政治と金の問題については、後、集中という審議の中でしっかりとただしていきたいけれども、総理に最後に要請をします。抵抗勢力小泉純一郎と言われないように、しっかりと政策運営、そして国会対応をしていただきたい、そのことを申し上げます。
 ありがとうございました。
藤井委員長 これにて菅君、前原君、枝野君、原口君の質疑は終了いたしました。
 次に、山岡賢次君。
山岡委員 自由党の山岡賢次でございます。総理もお疲れさまでございます。
 きょうお聞き申し上げたいことは、もうキーワードは一つでございまして、景気の回復ということの一点なんでございます。一点と言っておきながら、後になって時間がなくなるといけませんので、最初に二つだけ聞いておきたいことがあります。
 一つは国会移転の問題でございますが、このことは、もう今さら説明するまでもなく、平成二年に国会移転をするという決議が、本会議で、衆参でなされました。そして、平成三年に委員会ができて、営々と今日まで論議をされてきたわけでございまして、そして二年前に、もう十二年間やってきたんだからと、こういうことで最終的に候補地を決めるということを決めたのでございます。委員会で正式に決定をしたのでございます。そして昨年、その時期がやってまいりまして、いよいよそれを決定するというときになって、さあ、これでいいのかという議論がまた起こってくる、こういうことに相なったわけでございます。経緯を説明するとそういうことなんです。
 そして、今般、この委員会を拡大して、大きくして、もっと幅広く意見を取り入れる。それは結構なんですが、今までのものをすべてこの委員会でまとめて、報告する、こういう委員会にするということに相なりました。そして、協議機関をつくって、これをどうやって最終的に決定するかの決め方を決める、こういうことなんでございまして、そうして、今国会中には決着をつけよう、こういうところまで与野党の国対委員長会議で一致をしているわけでございます。これが経緯です。
 私の個人的な意見を先に申し上げさせていただきますと、二年前に委員会で正式に決定した。この委員会も、国会で決議され、何の瑕疵もなく、一生懸命、たくさんの人が時間をかけてやってきて結論を出したことなんでございます。そういうことであるなら、委員会のレベルですから、最終候補地はどこにするのかということを決定すべきであって、その先のことは、またその先、いろいろと手続はあると思いますが、そうすべきであったと思うことを一つつけ加えさせていただきます。私どもの委員長がずっとやっておりますものですから、我々にも責任があるわけでございます。
 そこで、私は不思議でしようがないと思っていたのですが、一方においては、総理が今お入りになっている立派な官邸が、着々とつくっておられて、今できているわけでございまして、さらには、議員会館を高層ビルで建てかえよう、こういう話もまとまっております。赤坂の宿舎も大きなものに建てかえよう、こういうことも決まっているわけでございます。一方においては国会を移転しようということを一生懸命審議していて、また一方においては絶対に東京から離れないぞということを平気でやっている。私は、国会というところは、国民から見れば、まことに不思議なところであり、また不合理なところであると見えるんじゃないかと思います。
 結論はこれから国会でやっていきますから、それはそれでいいんですが、やはり日本国総理にはひとつ聞いておいておかなきゃならないのでございまして、この国会移転について、あなたは賛成であるのか、反対であるのか、あるいは特に意見は持っていない、こういうことなのか、お答えをいただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 私は、基本的に国会移転賛成論者なんです。同時に、国会移転されても、東京を十分に魅力的な都市にする方法はたくさんある。これは両立できると思っているんです。問題は時期なんですね。それと国民的な合意形成。だからこそ、国会に特別委員会までつくって、国会移転の候補地まで決めようという議論が起こってきたんだと思います。
 しかし、私が総理大臣だからといってあれもこれもと、そんなことはできないのは私も十分知っていますよ。しかも、一年たつとやめろやめろという声が起こってくる日本の総理大臣ですから、そういうことを考えると、どういう課題を小泉内閣で政治課題にするかというのも、これは大変大事な問題なんです。
 でありますので、今の時点で国会移転しようとなると、また大議論が起こって、肝心な行財政改革とかこの今の経済状況に対応する問題、これにやはり支障が出てくるのではないかということで、私は、この問題については慎重に発言しているわけであります。そういう点について御理解をいただければと思います。
山岡委員 ほかの重要な問題に支障が起きるといけないのでと聞くと、ちょっとひっかかるんでございますが、この話が重要でないのか、こういうことを言いたくなりますが、ここで論戦をするつもりはありません。少なくとも総理はその意向だということは、委員会でやっていただきます。そういうことでやっていただきたいと思っております。
 しかし、一つだけ申し上げますが、ほかのこともそうなんですが、これからも申し上げますが、立派なことをたくさん言われていて、その意向はよくわかるんです。大体考えは同じなんですが、問題は、やるかやらないか、こういうところでございますから、やるならやる、やらないならやらないと言わないと候補地はたまらないんでございます、何年も何年も引っ張られて。そういうことで、それだけで結構でございます。扇先生、結構でございます、長くなりますから。
 では次に、もう一つだけ聞いておきます。
 例の公務員制度の問題でございますが、我が党の中塚議員から総理に御質問をさせていただきました。このILOの条約違反だというふうに指摘されたことに関連して、我が国憲法は、日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを遵守するということが必要であると書いてあるが、いかがですか、こういう質問でございました。それに対して総理は、遵守します、そして、いろいろ誤解を解くための努力をし、今後、ILOに関しましても、よく意見を踏まえて、公務員制度改革にも生かしていかなきゃならないと思います、こういうふうに答弁されているわけでございますが、私は、このことは評価をさせていただいております。
 そこで、ちょっと二、三質問しますが、これも余り長くお答えいただかないで結構でございますから、イエスかノーで結構でございます。この論戦をするつもりはありませんから、見解だけをお聞きしたいんでございますが、政府は、引き続き情報提供をして理解を得る、こういうふうに言っておられますが、最終的に出された勧告に対して、政府は国際基準としてこれを受け入れるのかどうか、必要な制度改正を行う方針であると理解していいのかどうか。この意見はいいです。結果だけ言っていただけますか。
片山国務大臣 委員御承知のように、今出ているのはILOの中間報告なんですね、最終報告じゃございませんので。
 これについては、るる今までも議論がございましたが、今までのILOの考えと変わったところ、それから、特に公務員制度改革大綱についてはもう一つ理解が足りないところがあると我々は思いますので、三月ごろに政府の見解をまとめまして、ILOの理事会で説明をさせていただこう、こういうふうに思っておりますし、その他、ジュネーブにも代表部がありますので、いろいろな形での情報提供で誤解を解いてまいりたい。最終の勧告になるのか意見になるのかわかりませんが、それについては、我々とすり合わせたものにぜひいたしたい、国内では関係の職員団体とも十分話し合いたい、こう思っております。
山岡委員 努力をするというお話で、結論の方は聞きませんでしたけれども、それは結構ですが、一つだけ。
 何度も問題になりますが、あれは中間報告ですがというのは、あれは日本の訳ですからね。ILOからすれば最終報告で、ただこちらが、結論が出ていないものをそれが悪いとかいいとか断定できないから中間と言っているんで、ILOにとっては最終報告なんです。中間ですから、中間ですからということは、あれはこの訳の間違いですから、それを皆さん間違えずに、あれはILOの最終報告だということをよく認識をしておいていただきたいんでございます、坂口厚生大臣も含めまして。
 それから、そういうことで、調査をされる、そういうふうに前に言われましたから、されるという報告をするのはいいですが、ILOから呼んで、状況を聞いたり、説明をされてはどうですか。いかがですか。
片山国務大臣 ILOからミッションを呼んでと、こういう御意見がございますが、私どもはまだその段階ではない、こういうふうに思っております。
山岡委員 いずれその段階になるというふうに解釈をしておきます。
 それでは最後でございますが、ILOは、要するに、制度改正を再検討しろ、こう言ってきているわけでございますから、労働基本権の制約の政策の転換を求める、こう言っているわけでございます。この法案を提出するに当たって、ILOとの合意がなされるまで、さっき言ったように、折り合いがつくまでこれを出されない、要するに、関係の皆さんともよく相談をして折り合いをつけてからお出しになる、あるいは見切り発車をする、いずれなのか、その答えだけお聞きをさせていただきたいと思います。結論だけでいいですよ。
石原国務大臣 ただいま片山大臣が申しましたように、これまでの見解と今、百八十度とは申しませんけれども、かなりかけ離れているという認識を政府としては持っていますので、誤解があるならば誤解を解いて、大きなあつれきを持って制度改革が行われないように十分注意を払っていきたいと考えております。
山岡委員 結論はお聞きしておりませんけれども、これはもう限りない論戦で今までもやってきましたから、これ以上申し上げません。
 それでは、いよいよ景気回復についての本題に入らせていただきます。
 何回も申し上げますけれども、総理は平成十三年に華々しく日本の総理大臣に御就任をされたわけでございました。そのときの所信表明には皆感激をいたしました。構造改革なくして景気回復なし、こういうふうに高らかに宣言をされたわけでございます。私はあのときの質問で、今あなたの人気は国民の悲鳴が期待に変わったものです、ここでこういうふうに申し上げたはずでございまして、あのころ、もっとずっと前からもう悲鳴が続いているわけでございまして、小泉さんなら何とかしてくれるんじゃないか、こういう期待であの人気が上がって、そこにこたえる、言うなれば宣言をされたと私は思っているわけでございます。
 しかし、去年もお伺いしましたが、確固たる返事が得られませんでしたけれども、施政方針演説においては、「改革本番の年」「経済再生の基盤を築く年」、こういうふうに言われたわけでございます。そして、平成十五年は改革の成果を国民に示す、つまり、ことしは示す、何回も指摘されておりますが、そう言われて期待を持たせていたわけで、去年はそれはそれで私も承知をしたつもりでございます。
 しかし、ことしになりますと、この施政方針では「改革は道半ば」、こういうふうに言われますと、何だったんだあれは、そういうことになるわけでございまして、まだまだ痛みが伴う、改革は痛みが伴うんだから我慢を続けろ、こういうことを言われているような気持ちというか、そのものでございます。
 そこで、総理に、国民を代弁して、国民が今一番聞きたがっていることなんです、それをお答えいただきたいと思います。難しいことじゃないんです。この構造改革なくして景気回復なし、こう言っておられるが、ここは途中のことはどうでもいいですが、一体いつになったら景気がよくなるのか、いつまで待ったらいいのか、一年なのか、二年なのか、三年なのか、五年なのか、三十年なのか、百年待たなきゃだめなのか、そういうことを言っていただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 これは「改革と展望」の中においても示しておりますように、二〇〇五年か六年の段階でプラスの経済成長に持っていこうということであります。
山岡委員 二〇〇五年ですね。二〇〇五年ですね、本当に。別に長くても何でもいいですけれどもね。もういいです、いいです。いえ、もう総理から聞けばいいんです。
 もう国民は二〇〇五年、こういうふうに期待していきたいと思っておりますが、まあそうはなかなかいかないのが、例えばこの間の経済財政の運営の指針の中期展望でも、これは、集中調整期間は一年延ばし、デフレを克服する期間は二年延ばし、経済が着実な成長を取り戻すのも二年延ばし、そのときになるとまた延びる。もう延び延び延び延びの連続でございまして、去年からことし直るはずだったのがまた道半ばになり、そして計画も変更される。どうかこれ以上そのことを次から次へと先送りしないでいただきたい、こういうことをお願い申し上げます。
 今、全体像をお聞きしましたが、一つずつ、各論についてお伺いをさせていただきます。
 もう随分話が出ていますから、その内容を一々全部掘り下げるということはいたしません。しかし、端的にお聞きしますけれども、郵政の民営化、これは総理の構造改革の目玉でございますが、郵政を民営化するとどうして景気がよくなるのか、御説明いただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 これは、直接景気という問題よりも、行財政改革の主眼点なんです。これは、将来的には当然税金のむだ遣い構造をなくしていく。そして、役所がやっていたことを民間がやるんですから、当然税収も上がってくるでしょうし、税金を使っていた部分が税金を納めてくれる側に変わってくるんですから、それは、私はそういう面において経済効果は出てくると思います。
 そして、郵貯、簡保、郵便事業、三事業なんです。これは財政投融資制度という、今まで、戦後ずっと培ってきて、成功した例になっているんです。しかし、今まで成功してきたからそれがいいか。
 それのいい例が特殊法人です。もう特殊法人は数えられないぐらいありますよ。これはもう郵貯、年金のお金を使って、財政投融資制度から全部資金が行っているんです。必要だから使おう、この問題。なおかつ、財政投融資というのは投資、融資ですから、当面は痛みを伴わない、後でちゃんと返済される予定になっているんです。これが、今は税金の負担がないものですから、将来返せばいいということで、安易な見積もり、安易な計算になっているんじゃないか。
 こういう点を直すためには、今まで官主導だった、役所主導だった、これを民間主導にしていこうというもとが郵政三事業だということで、私は、入り口の郵政と、日本の特殊法人を支えてきた財政投融資制度、そして個々の特殊法人の出口、これを一体的に改革しようということで、今その道筋を歩み始めたところなんです。
 そういうことから、私は、恐らく私の在任中には成果は出てこないでしょう、しかし、将来大きな果実となってこの改革は生きてくる、だからこそやらなきゃいかぬと思っているわけであります。
山岡委員 私の在任期間中には成果は出てこない、将来という話になると、どのくらい将来なのか、どのくらい待っていたら景気はよくなるのか。私がお聞きしたのは、景気はいつよくなるんですかということをお聞きしたんで、このこととは関係ありませんとお答えになるならわかるが……(小泉内閣総理大臣「直接的には」と呼ぶ)わかりました。そうすると、小泉改革の目玉の郵政の民営化は、景気の回復には直接は関係ないと。
 そして、もう一つ問題がありますのは、財投の話は財投の話で問題ですよ。よくわかっていますよ。御説明いただかなくたって、私だって専門家ですからよくわかっています。しかし、財投の話というのは、それならそれでこれは自主運用をさせればいいことであって、財投は財務省がやっていることなんです。郵政がやっているんじゃないんですよ。財務省の問題じゃないですか。言うなら、ひっくるめてお考えになっているけれども、総理の立っているスタンスが財務省、銀行だというのは周知の事実でございますけれども、そこから見ればそういうふうに見えるんです。しかし、財投は向こうが直せばいいんであって、郵政とは何の関係もない。こういう問題が一つあること。
 それから、民営化されれば、確かにそれは国に税金が入ってくる。それはそのとおりですよ。しかし、それで景気がよくなるという問題じゃないですよね、おっしゃったとおり。そういう問題じゃないです。そういうことよりも、もし景気がよくなるとしたら、民間がどんどん参入できて、民間が潤って、そして民間が繁盛するから景気がよくなるんであって、その程度のことでは景気はよくならないんです。
 大体、これやって、クロネコヤマト、総理のよく知っている会社ですよね。私もよく知っていますけれども、関係はありませんけれども。しかし、何でこれがそれじゃ参入しないんですか。クロネコヤマトも商売にならないと言っているわけでしょう。これでやって何が景気がよくなるのか。今、よくならないと言ったから、まあわかりますけれどもね。それから、将来にならなきゃよくならないと言ったから、それもそれでわかりますけれどもね。
 だから、私がなぜ景気がよくなるんだということを聞いているというポイントに絞ってお答えください。
小泉内閣総理大臣 それは、勝手に解釈されても困るんですが、即効薬はないというんです。直ちに民営化できるという問題でもないでしょう。方法はいろいろ、みんな、国民からも議論を聞かなきゃいけない。
 そういう面で、将来必ず経済効果は出てくる。それで……(山岡委員「いつか、百年後かと聞いている」と呼ぶ)
 いつかというのは、それは民営化なされて、財政投融資制度、特殊法人というのが改革なされれば、私はこれは絶大な効果が出てくると思います。
藤井委員長 御注意申し上げますが、個々に質疑はしないでください。
小泉内閣総理大臣 それで、なおかつ、これをほっておいて、郵政にも改革、手をつけない、財投もそのまま、特殊法人もそのまま、借金ふやして景気対策やって、私はよくなるわけないと思いますよ。
 そういう点から、私は今回の改革も必要な改革だからやらなきゃいかぬ。そして、いつ改革の成果が出るんだといえば、それは時間がかかると言っているんです。
山岡委員 いつかかるかは時間がかかっていつになるかわからない、そこまでならだれだって言えるんですよ。政治家やっていなくたって言える、総理大臣じゃなくたって言える。
 何のための政治家であり、何のための日本国総理大臣で、何のために日本国のすべてを任されているのか、そういうことを考えたら、いろいろなやり方はあります。しかし、あなたはこれだ、こういうふうに言っているんですよ。別に反対はしていない。しかし、そのうちよくなりましょうじゃ政治にならないんですよ。総理大臣になった以上、途中は民主的に、どうプロセスをみんなで考えてやっていただいて結構。しかし、総理大臣の政治責任、政治家の責任というのは、いつ何どきまでに私はやりますというのが公約なんですよ。そこでできなかったらやめます、それには命をかけます、こう言っていただかなきゃ、国民はたまりませんよ。
 こんないいことはだれだってわかっているんですよ、全部いいか悪いかは別として。我が党は、率直に言えば郵便の民営化は反対ですよ、我が党のことを言えば。こういうものは国でやるべきだ、隅々まで行くのはまだまだ民間じゃ無理、今の段階はそこは国でやる、国民の本当に大きな意味で福祉につながることはこれは国でやる、こういうことで中の意見は反対ですけれども、そのことは申し上げずに、このあなたの、そういうことで、期限を切っていただかなかったら、どこに政治責任があるかわからないじゃないですか。いつまでになるんですか、これは。
小泉内閣総理大臣 では、自由党はすぐ郵政民営化しろと言っているんじゃないですか。ちょっと主張、矛盾があるんじゃないですか。
 だから、私は、二〇〇五年度、六年度にはプラスの成長に持っていきたい、それを目指して今いろいろな対策を打っているということでございます。
山岡委員 このことが、総理の気持ちだけはよくわかりましたが、総理にしかできない、期日を決めるということが定められた以上、これはただの物語にすぎないということは、これはもうみんなそういうふうに思っているんです。もうこの公社化で大体終わりだと。
 事実、確かに企業会計原則もやられましたけれども、おっしゃるとおり、しかし財投はそのままやることになりますし、常勤十一人の役員は全員役所からの天下り、株式会社の主体も国、そして三十万の身分は国家公務員、そして公社化だと言っているわけでございますが、これでは民営化とは全く言えないわけでございます。
 また、当の生田総裁もこう言っているんですよね。月に行くロケットの入り口に立っているようなものだと自分で言っているんですね。月に行くロケットの前に立っていると。どういうことを意味するかといったら、まさかどこかへ行っちゃうということじゃないと思いますが、永遠の先のようなところのパイロットを、責任者を任されたようなものだ、こういうふうに言っております。
 名前は言いませんけれども、有名な方ですが、自民党の大幹部の方は堂々と、仮に小泉総理がこの秋に党総裁選に再選されたとしても、任期はあと三年、中期計画中に首相がかわれば民営化の話はすべて消滅すると公然と言っているわけでございます。
 総理はあと一年でやめろなんという話がありましたが、三年おやりになってもあんなものはなくなる、こういうふうに言っているわけでございますし、事実、諮問機関も、三つの民営化案を併記しただけで、具体的にいつ何だという話は全く出ていないわけでございますから、これはもう総理のおっしゃるとおり先は五里霧中。このことは景気に関係ないと言われればそれまでですが、それじゃ一体いつ景気はよくなるのかという当ても全く出てこない、こういうことに相なるわけでございます。
 関連しますけれども、道路公団の民営化についても同じことをお聞きしたいんでございます。
 これもいろいろありますけれども、この道路公団の民営化というのをやって、いつ景気をよくしていただけるのか。これをやれば景気はよくなりますよ、本当に。郵政とは違いますから、なると思いますよ。いつやっていただけるのか、総理。
扇国務大臣 山岡先生御存じのとおり、来年法案を出しますので、その法案の中を、今までの答申を入れて、なおかつ国会の御意見も聞いて、そしてより景気が上がるように、例えば一つだけ、時間がないでしょうから、例を挙げさせていただきますと、今、料金の収受業務というのをやっておりますけれども、この料金、要するに高速のチケットのもぎりですけれども、あれを取るだけでも二十五社あるわけですね。そして、年間に道路公団がこの二十五社に払っているお金というのが八百七十五億でございます。それも、あれをETCにするだけで三千億円の経済効果が上がる。
 こういうことをもってしても、早く実現するということがより経済効果が上がるということを私は申し上げておきたいと思います。
山岡委員 見解はまさに同じとおりなんです。今までおっしゃっていることは我々も全く一致しているんです。要は、我々にはやる力も権限もない、皆さんにはおありになる、だから与党と野党なんです。だから、我々は、いつやるんだ、早くやってほしい、こういうことを申し上げているわけです。
 ただ、扇先生、せっかくだから申し上げますが、そういう、いろいろ事が起こると、部分だけはやって、やったじゃないか、やったじゃないかと。それでは景気はよくならないんです。これだけで景気がよくなるとは思いませんでしょう。言うなれば、本当に道路公団が全部民営化されれば、これは物すごい景気がよくなりますよ、本当のことを言って。
 そこで、何度も言われておりますが、閣議決定をせっかくしても、例の推進委員会の話ですね、これで世間が思っているのは何かというと、丸投げ、そして委員長がやめることに対して、はしご外し、そして最後は骨抜き、こういう言葉が定説になって流れているわけでございます。
 なぜそういうことを言われるかといえば、それは、閣議決定では、与党とも協議をしてこれをやる、こういうふうに入っておりますよね、当然のことながら。当然のことではありますが、では、その自民党の道路調査会はどういうことを言っているかというと、現行整備計画九千三百四十七キロの残事業の早期整備を求め、最終報告は容認できないという決議をしているんですよね、その当の協議する相手は。そして、扇大臣も、党で決まらないことはやれますかというような否定的な発言をしていたような気がいたしますけれども、もうお聞きしません。
 この一月の二十二日には、国土交通省、政府の方が何をしているかというと、民営化法案策定に向けて実務者協議というのを立ち上げたそうでございまして、そして、推進委員会で何を決めようと基本的な考え方は改めてそこで検討するんだ、こういうふうについ最近やっておりますし、一月の三十一日といえばこの前でございますけれども、推進委員会に佐藤道路局長がお出ましになって、国土交通省においてはその検討委員会の結論を踏まえて決める、こういうことを報告してしゃあしゃあとしているわけでございます。
 石原大臣がいますから、石原大臣に聞いてもいいんですが、そのことを聞いた石原大臣が、閣議決定もあるのに何をか言わんやと言って怒っていらした、こういうことが実情なんですよ。こういうものをみんな知っていて、これでできるなんて思っている人は一人もいないのでございます。
 総理にやはりお尋ねしたいのでございますが、これは総理しかできないんです。総理の構造改革が構造改革と言えないと私が言っているのは、期日が決められていなきゃ実現できないじゃないですか。三十年後でもいいから、期日をお決めになったらどうですか。
小泉内閣総理大臣 反対があるのは承知していますよ。第一、郵政民営化だって、みんな大反対だったじゃないですか。公社化だって反対だったじゃないですか。今だって、民営化の議論まで許さないという実力者がたくさんいるじゃないですか。堂々としているじゃないですか。
 同時に、道路公団も、あの推進委員会の結論なんて話にもならない、容認しないと言っている方はたくさんいますよ。それを小泉内閣は今やろうとしているんじゃないですか。(山岡委員「いつやるのかと言っているんだ」と呼ぶ)これは、ことし法律をつくる準備をして、来年法案を出すんですよ。独裁者じゃないから、右向け右、あした民営化する、そんなことできるわけないでしょう。準備を考えて、専門家の意見を聞いて結論、話にならない、容認できないという中、わざわざ施政方針演説にも、基本的にあの意見を尊重する、やっているんですよ。それで、この一年間、いろいろな議論があるから、すぐ一カ月やそこらでできるんじゃないんです、一年間かかるんです、法案の作業に。今、来年法案を出す準備をしているんです。
 みんな反対は知っていますよ。反対の中を私はやろうとしているんじゃないですか。その自民党も当初は反対したけれども、今、民営化反対する人そんないないよね。一部はいるけれども、最終的には私は、協力してくれるというふうに期待しながら、初心を忘れずこの改革を進めていこうとしているんです。石原大臣は、大体、役所の中では、確かに一部いると思いますよ、民営化に反対な方ばかり気遣ってうろちょろしているのもいるかもしれない。そんなこと絶対させませんから。基本的に尊重する、そういう姿勢で断固やっていきます。
山岡委員 断固やるのは結構でございます。断固やってほしいんです。
 では、その法律を出すときに、いつまでという期日を入れるんですか、入れないんですか。
扇国務大臣 山岡先生御存じだと思いますけれども、委員会の報告を、尊重するとおっしゃったことを一つずつ私が今手入れしているわけです。
 例えば財務諸表一つとってみても、これは、今まで、特殊法人七十七の中で財務諸表をつくっているのは十一社しかない……(発言する者あり)いや、だから、九月に財務諸表を出すというのを、五月に締めて六月の通常国会までに財務諸表を出す、それで法案の準備にかからなければ、道路公団の財産もわからなくて法案つくれませんから。一歩ずつ進んでいるということだけは、私は……(山岡委員「指名していないのに出てきて長いんだ、この人は」と呼ぶ)いやいや、指名されました。
藤井委員長 指名しています、私が。
扇国務大臣 指名されました。
 ですから、そういう説明を聞かないで、やっていないと言わないでいただきたいと思います。
山岡委員 これから考えていろいろやるのは当然なんですよ、そんなことは。手品みたいに出てこないんですから。
 しかし、一番肝心な最終方針を出して、それに基づいてできるというものが、これが組織というものであって、みんなで適当に考えて、最後に出たものを、そしてそれに乗っかりましょうというのは、江戸時代のばか殿のやることなんですよ、言うなれば。そういう国は滅びるんです。
 だから、総理に申し上げておきますけれども、総理は二つのことを使い分けているんです。一つは、自民党をぶっ壊すんだ、新世紀維新だと。維新というのは革命ですからね。聖域なき構造改革なんだと片っ方では言っているんですよ。革命者やリーダーにはそのことは必要なんですよ。必要なんだ。そして、それをやるのかと思ったら、私は独裁者じゃありませんから、みんなと相談して決まったことはやります、こういうのを二律背反と言うんですよ。
 私が言いたいのは、いいですか、リーダーの責任としてそこはきちっとやる、そして、途中は民主的にみんなで相談して、そのゴールにいかにうまく着くか、そんな万能なリーダーはいないんですから。そういうことを十分やってそこにつなげてください、責任は私がとりますと、これがリーダーじゃないですか。違うんですか。
小泉内閣総理大臣 それは、方針を出して、その方針の実現のために、努力するために手続も大事です。多くの方々の意見を聞くことも大事です。また、多くの方々の協力を得ないと、国会、法案一つ通りません。それを努力していかなきゃならないのが政治家だと思うんです。まして、総理大臣という責任を負っている立場であります。独裁者ではない、当然であります。各党各会派、意見を十分聞いて、そして方針のもとに進んでいく。その努力をしている過程で賛否両論出るのは当然であります。批判も結構であります。
 そういう中でも、できるだけ理解を得られるような案を出していきたい、方針に従って実現していきたい。反対者もあります。反対者を切り捨てろという時代ではありません。反対者の意見にも耳をかしながらよりよいものをつくっていく。そうすると、ああ、また妥協しているとか、ああ、骨抜きだとか、言う人は勝手ですよ。しかし、何をやっても批判するんですから、これは仕方ないんです。しかし、私は、最初の方針どおり着実に進めていくし、今も進んでいると思っております。
山岡委員 毎回毎回同じ話を聞いておりますからこれ以上は申し上げませんが、着実に進めております、独裁者じゃありません、こういうふうに言っておりますが、何でもかんでもやれと私は言っているんじゃなくて、小泉さんには小泉さんの方針がある。だから総理大臣になったわけですから、そのカラーも打ち出された。しかし、それはスローガンじゃ困りますよとみんな言っているわけです。
 では、スローガンであるかないか、そのどこで区別をつけるか。
 それは、ゴールがあれば、法律というものがあるわけですから、だれが何と言おうと、そこでできちゃうわけですね、できちゃう。今みたいに、みんなで考えてください、いい法律をつくって、いつかやってくださいと言ったら、さっき言ったように、あっちやこっちで反対が出てくる。閣内でもあると言ったけれども、石原先生みたいな方がいじめられるといけないから私は余り聞かないけれども、しかし、そういうものをきちっとやるのが総理大臣じゃないか、私はこういうことを申し上げているわけでございます。
 もう大体これで、全部同じですから尽きちゃうんですけれども、要するに、景気がいつよくなるのかということの原点に戻りたいのでございまして、そうすると、その他の特殊法人の廃止、民営化をやる、こういうふうにも言っておられますが、今やっているそれをやると、いつ、どうして景気がよくなるのか言っていただきたいと思います。
石原国務大臣 これは、山岡委員もう既に御承知のことで御質問されていると思いますが、七十七ある特殊法人のうち、九つを廃止、二十五を民営化、二十九を独立行政法人化、そしてギャンブル五法人は平成十七年度までに結論を出す、また八つの政府系金融機関については、四年間は民間金融機関の状況にかんがみてフル活用する、そういう整理をさせていただいたわけでございます。
 この結果どういうことが起こっているかといいますと、十三年度予算で一兆一千億、そして今年度予算で三千億弱、税金が注入されるものが減っております。これが減税あるいは他の有効分野に配分されるということで、景気にプラスなことは数字的には明らかでございます。ただ、それによってすぐにすべてがよくなるということではないということは、もう総理が既に御答弁されております。
 これによりまして、やはり特殊法人というのは、ある意味では水道の蛇口みたいなところで、日本の経済で国のお金を日本全国隅々まで流す蛇口としてこの特殊法人を使っていた。しかし、そこに非効率性、不透明性があるので、これを、民間に任せられることは民間にということで、民間に代替してもらえば、宿泊施設の例をとるまでもなくて、むだが削減され民間が潤う、そういう間接的な経済波及効果があるということでございます。
山岡委員 石原大臣とは私も親しいですけれども、あなたに教育をしていただこうとは思っていないんです。おっしゃっていることは当たり前のことなんです。だれでもそう思っている。
 ただ、問題は、こうやれば、景気はよくなるじゃないですか、税金がこうなる、部分的に何だっていいところもあるんですよ、それは。そこだけを取り出してやって、それじゃこれで景気はよくなるんですかということを私は聞いているだけで、なりませんよ、要するに。
 なぜならないかといえば、実際にこれを民営化しているのは営団地下鉄ぐらいで、あるいは石油公団は廃止ということはやりましたけれども、百十八ある特殊法人のうちのほとんどは独立行政法人に、言うなれば看板をつけかえただけなんでございまして、天下りも変わらないし、事業の独占も変わらない、民間も参入できない、人の流れも変わらない、役員数は大幅にふえる、給与も高くなって、退職金も前と同じ。中には、民間よりも二倍みたいな、そういう法人がごろごろいる。
 これを名前を変えて、いいところだけ述べて、素人はそうかなという人もいるのかもしれませんが、国会議員じゃいないと思いますけれども、こういうことをやって景気がよくなるなんということを言う方が恥ずかしい。だから、これをやったってちっともよくならないということは、明々白々なんです。
 小泉総理が、厚生大臣を二度おやりになりましたね、たしか。医療問題には大変関心が深く、そのことに一生懸命努力をされているのはわかりますが、今度の小泉医療制度改革、こういうことをやってどうして景気がよくなるのか、教えていただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 これは、景気の問題よりも、医療制度をどうやって安定的に持続可能なものにしていくか、国民ができるだけ、いい治療を受けられるか、さらに適切な負担で治療を受けられるか、要するに、国民皆保険制度を持続可能なものにしていこうということでやっているんです。
 そういう観点から、一時的にそれは、二割負担から三割負担ということでこれは国民負担だと言いますけれども、どっちにしても、例えば二割負担を一割負担に下げても国民負担なんです。税金を投入しなきゃならない、あるいは病気にならない人の保険料を上げなきゃならない。
 そういう点を考えますと、私は、この医療制度の改革というのは、皆保険制度を維持していこう、そして安定的なものにしていこう、効率性を図ろう、あるいは、医療のむだ、診療報酬のあり方、出来高払い制度がいいのか、あるいは包括払いがいいのか、定額払いがいいのか、医療機関の改革も必要ではないか、総合的な面をやっているんです。直接景気には関係ありませんけれども、これはやはり将来の少子高齢化社会を見ていけば必要な改革だということであって、今これが景気にどうなるのかという問題とはまた別の次元で考えていただきたいと思うのであります。
山岡委員 そのとおりであることはわかって聞いているんです。要するに、景気回復になるのかと聞いているだけなんです。構造改革なくして景気回復なしと言っているから、どの構造改革をやると景気がよくなってくるんですかということを聞こうと思って、順番に聞いているんです。
 どれを聞いても、今、当面よくなりません、関係ありません、こういう話ばかりで非常にがっかりしているんですが、これは、当然のことながら、やれば悪くなりますよ、表現はともかくとして。しかも、改革とは言っているが、コップの中をいじっているだけで、改革と言えるようなものじゃない。これは、また後で我が党の案を説明しまして、総理も御意見があると思いますから、そこでやりたいと思います。
 そのほかにも、順番にずっと聞いていくと大体同じような答えだと思いますので、中身も結果も想像がつきますので、これはとりあえずお聞きしないことにします。
 そして、一つだけ、金融改革、このことについて、これは極めて重要でございますので、お聞きをしておきたいと思います。
 竹中大臣、大手銀行の大口融資先を対象に、特別検査がきのうから始まったそうでございますが、前回、すなわち一昨年の十月から昨年の三月に実施された特別検査では、百四十九社のうち七十一社の債務者区分が格下げされる、こういう新たなことが出てまいりましたし、したがって、新たに積み増しされた不良債権処理に伴う損失額は一兆九千億、そして、格下げされた債権額は七兆五千億、そのうち破綻懸念先は三十四社の三兆七千億であったはずでございますけれども、今回また特別検査をやれば、必ず新たな債務者の区分の格下げの会社や格下げ債権、そして新たな損失が計上されると思います。どこをどういうふうに検査して、どういう結果になると思うか、御説明をいただきたいと思います。
竹中国務大臣 特別検査、決算期に合わせて実施をしておりますけれども、いつから実施をするということも含めまして、これは検査でございますので、詳細のお話は控えさせていただきます。
 それによって何が生じるかということは、まさにこれは検査の結果を見ないとわからないわけでございますが、基本的には、特別検査を昨年行いまして、それを今年度も引き続いてリアルタイム検査、リアルタイム検査という意味は、決算で向こうが検査するのと同じときに検査が入って検査するという意味でございますけれども、これは、資産査定の厳格化等かなり進んでいるというふうに思っておりますので、その意味では昨年と同じような結果になるということでは必ずしもないと思っております。
 しかし、それにしても、検査は検査でしっかりやっていただきたい。同時に、今回、一部資産査定の方法等々も見直しておりますので、これは厳格に資産査定が行われるものというふうに思っております。
山岡委員 やらないうちから、こういう結果を予想できますなんということは言えないんじゃないかと思いますが、実は言えるんですけれどもね。実は言えるんです。なぜ言えるかというと、そういうからくりになっているから言えるんですけれども、それは申し上げません。
 これは、今回やれば、また新たな不良債権が必ず出てまいります。対象は、大手銀行の債務残が百億以上あって、株価の価格が急落したり、問題の債権のところを選んでやるわけでございますが、どこを選ぶかということが一つの問題であるわけでございまして、どこを選んでどうやれば大体こういう結果が出るというのは、やる前から本当はわかっているんですけれどもね。しかし、その結果は、必ず新たな不良債権が、どのくらい出てくるかわからないけれども、出てくることは間違いないと思いますが、いかがですか。
竹中国務大臣 大手銀行の資産査定は、前回までの自己査定と金融庁査定の格差を公表する等とか、さまざまな仕組みの中で相当厳格になってきているというふうに思っております。
 今回、前回と継続して行うというところに意義があるというふうに考えておりまして、その検査を厳しく継続したいというのは、これは当然のことでございますけれども、それによってどういう結果が出るか。私は、基本的には、銀行の資産査定というのは、去年からことしにかけて非常にきっちりとなってきているというふうに思っておりますので、そういう気持ちで検査の結果をぜひ見てみたいというふうに思っております。
山岡委員 この期間を見ていただくとおもしろいんですが、昨年も、その前の年から始まって三月に終わっているんです。ことしも慌てて始めましたけれども、二月から始めて三月までには終えるんです。
 なぜこんな時期にやってくるか。こういうことを言えば、これは結論から先に言えば、今回も、各銀行とも長い間の粉飾会計や不正会計による多額の不良債権を抱えているわけですから、どこまで公表されているか、またどこまでつかんでいるか、公表もされていなければつかんでもいないんですけれども、抱えておりますから、それが必ず出てくることははっきりしているんです。だから、今回もやれば、また必ずある程度出てくるんです。
 では、何のためにやって、何のためにある程度出てくるかというと、言うなれば三月決算があるからでございます。この三月決算の危機を乗り切らなきゃならない。小泉総理は声高らかに、三月危機は起こさせませんと去年も言って、ことしも言っておりますが、三月危機は起こさせないのは、問題を解決させますと言っているんじゃないので、問題を先送りします、こういうふうに本当は宣言していただきたいのでございます。
 今度の検査で新たな不良債権が見つけられても、当面の三月危機を乗り切るだけの自己資本比率の積み増しを今各銀行は必死にやっています。新聞を見ればおわかりのとおりでございます。かなりどぎつくやっているところもあるわけでございまして、増資や資本調達、組織の再編、応急ピッチを間に合わせるように、あっちはあっちで急ピッチでやっているわけでございます。
 しかし、幾らそういうことをやっても、このことは解決しないんです。バブルがはじけて以来、もう伝統的にやってきた粉飾会計と不正会計がなくならない限り、公的資金を幾ら投入したって、もともとあった不良債権と新たに出てきた不良債権を隠していたものの、言うなればこれは糊塗するものにすぎないわけでございます。だから、この不正というものと的確な中身というものを完全に掌握していかなかったら、言うなれば今投入している、あるいは投入してきた公的資金というのは、これはもうその場しのぎのむだ金、国民の税金のむだ遣い、こういうことに相なるわけでございますが、竹中さん、いかがですか。
竹中国務大臣 委員のお考えなんでございましょうけれども、これはしかし、日本の決算システムに対する信頼性とか、さらに言えば、やはり検査に対する信頼性に対して非常に疑問を投げかけるような御発言であるというふうに私は思います。
 しかし、検査官は、これは大変厳しい日程の中、懸命に今検査の作業を行っておりまして、彼らの名誉のためにも申し上げますけれども、金融庁の検査は非常に厳格に、厳しくやっておりますし、その中で、銀行の資産査定も、この一、二年で非常によくなってきている。だからこそ、その資産査定の検査の厳格化等々によって、不良債権が十四年の三月期にたくさん出てきている。それを今さらに継続してやっている。加えて、自己査定と金融庁検査の格差も発表して、銀行に自覚を促して、その自覚の一端が今のさまざまな増資の行動になってあらわれているというふうに思っております。この点はぜひとも金融庁の検査を御信頼いただきたいし、そうした方向に金融システム全体が動いているんだということを、やはり国会議員の先生としてもぜひ御認識を賜りたいというふうに思います。
山岡委員 検査をしている方の名誉のために私も申し上げますが、している方は、一生懸命、必死になってやっているんですよ。要するに、警察でも検察でも、取り調べをしている人は必死になってやっているんです。そのことを言っているんじゃないんです。その枠組みの話をしているんです。
 例えばアメリカでは、金融問題を解決していきましたが、それをやったときに、五千人が逮捕されて千六百人が投獄されたんですよ、実際に。日本が何人対象になっていますか。日本だけがそんなきれいな、格好いい国ですか。そんなことはあり得ないんです。だから、不信を招くようなことは言わないでくれなんというきれいなことを言っていると、いつまでたってもこれは解決しないんです。
 日本は護送船団システムというのをずうっとやってきておりますが、この特別検査には実は当局も関知しているんですよ。関知しているというのは中身を関知している、そして不正会計も、もう前からずっと知っているんです、私も知っていましたけれども。そして、内密にどうしろという指導までしてきているんですよ。
 平成三年の証券・金融スキャンダルで、私は自民党にいましたけれども、その追及にこの私が立ったんですよ。山一証券も富士銀行も私がやったんです。そして、そのときの中身が、もうよくわかったが、そのときは言えなかった、与党だったから。しかし、山一証券にはちゃんと言ってあげたんです、ここで手を切らなかったらあなたの会社はつぶされるぞと。案の定、六年後につぶされましたよ。
 そういうことで、当局というのはこんなことをして、やっているのが日本の実情なんです。それを護送船団というんです。はしの上げおろしから、商品の値段から売り方から、もうすべてをやっている。さっき郵政の民営化の話がありましたけれども、銀行は民営でありながら限りなく国営ですよ、これは。国の管理の中でやらされている、そういうことになっているわけでございます。したがって、言うなれば、三月期決算に備えてなぜやっているかというと、このままいけば、大企業が倒産すれば、銀行は自己資本比率の関係で、それをかぶれば自分もおかしくなっちゃう、だからつぶすわけにはいかない、したがって、ここでそのものを注入して共倒れを防ぐ、企業も倒れないようにし、銀行も影響を受けないようにする。そして、そのツケを受けるのが中小零細企業、こういうことになるわけです。
 なぜかといえば、自己資本比率を守るために、ちゃんとやっている人も、まあちょっと手入れをすればよくなる人も含めて、そういう護送船団には関係ない、共倒れには関係ない大部分の、かなりの数の一般の中小零細企業の皆さんは、そこで貸しはがしや貸し渋りに遭う、こういう仕組みが続いているわけでございますから、ツケの先送りをやったって、これは苦しむのは中小企業の皆さんだけ、こういうことになるわけでございまして、がんも治らなければ、倒産、失業もちっとも減らない、したがって景気も一向によくならない、こういうものなのでございます。
 竹中さんが一九九八年の緊急提言で、銀行経営の責任を三年間棚上げして、七兆五千億の公的資金を投入した。その後も公的資金の投入が続けられて、ダイエーや大京やフジタ、いっぱいここに書いてありますけれども、それだけを言ったって、投入したのはたくさんある。大京、それからフジタ、長谷工、飛島、熊谷、ハザマ、ミサワ、オリエントコーポレーション、アプラス。そして、幾らやって幾ら棒引きにしてあげたか、こういうこともありますが、しかし、そういうことを幾らやっても、不良債権の絶対量を把握しない限り、これは立ち直るということはないんです。
 したがって、ここで申し上げておきますが、不良債権がどれだけあるかということを本気でちゃんとつかもうとしておられるのかどうか。してないとは言わないでしょうけれども、どういうふうにやろうとしているのか、大臣にお伺いをしたいと思います。
竹中国務大臣 日本の金融、情報開示のシステム等々、過去のものについて、やはり幾つか反省すべき点はあったのだと思います。そういうものを受けて、ここ数年、逐次、制度の整備がされてきたというふうに思っております。委員おっしゃったようなことと今現実に変化し始めたことは、はっきり申し上げて、やはりかなり違うということをぜひ御認識いただきたいと思います。
 そういう資産査定をやはり厳格にしなければいけない、そのための仕組みを、昨年十月の金融再生プログラムではさまざまな形で織り込んだつもりでございます。例えば、要管理先の大口については新しいディスカウント・キャッシュフロー等々のやり方を含めようではないか、さらには資産の、幾つかいろいろな会社名も挙げられましたけれども、再建計画を持っているところには、検査部の中に特別の再建計画を検査するチームをつくる、そこには民間のプロフェッショナルにも入っていただく、そういう形で、再建計画が本当に実効性のあるものか、実体のあるものかどうかを見定めようではないか、そういうこともやっております。
 先ほど申し上げましたように、健全なプレッシャーを銀行に持っていただくために、自己査定と金融庁の検査の乖離につきましても、これがどのぐらい開いているか、どういう分布になっているかということもはっきりとさせました。
 そのような意味では、今、検査そのものの仕組み、情報開示に対するプレッシャー、さまざまに変わってきている。例えば、今いろいろな銀行が増資の要請をしておりますけれども、きちっと情報開示をして、それによって将来に対して大丈夫だというようなはっきりとした見通しを示せないと、これは増資にも応じてもらえないわけで、その意味では真剣勝負のビジネスになりつつあるというふうに思っております。
 過去の反省すべきところは、踏まえるところは踏まえて、非常に大きく変わり始めたという点をぜひ御認識賜りたいと思います。
山岡委員 過去の反省は踏まえてというところだけは評価をいたしますが、しかし、今のやり方をやっていても、実はいつになっても解決しないんですよ。
 そこで、もう時間がありませんから、私の方から解決策を申し上げさせていただきます。
 まず第一に、今この時点で不正会計を正直に認めたらば、その方は免責とする。もう今までの過去のことは免責とする。しかし、これからもし不正会計を続けた場合には厳罰に処する。例えば五年以下の懲役にする、実刑にする。こういうものを定めて、さあ、今のうちに出しなさいと。
 今は出してこれないんですよ。出してくれば、自分たちだけでなくて、前任者の責任も問われる、監督官庁の責任も問われる、場合によっては一部の政治家の責任も問われる。だから日本は、出したくたって出せないんです、彼らは。だから、それをこの際、しようがないじゃないですか、すべて免責にする、過去のことは。だからすべて出しなさいと。そして、不良債権は一体幾らあるのかということをここで決めなければ、日本はずるずるずるずる泥沼。金融危機は起こさせませんというのは、三月は起こさせませんというだけの話で、ツケが先に行っているだけなんです。
 もう一つ申し上げます。
 そして、今、不良債権がどれだけあるかというのはつかめないんですけれども、金融再生法開示の額でいくと、預金取扱機関全部でいうと五十二兆四千億ある、こういうふうに言われております。今はですよ、言われているんですよ。それから、たびたび指摘がありますけれども、金利を払うのに非常に問題のあるところというのは、これは百二十五兆以上ある、こういうふうに言われているのです。それに対する、この引き当てに対する資金投入を銀行にぼんと一挙にしてやれば、これはどうするかといえば、彼らは、嫌々生かしていた、もうどうにもならない先行き見通しのないところは切れるんです。そして、中小零細企業のような、ここでバックアップすれば立ち直るのがたくさんあるんです。十年待てばぴんぴんするのがいっぱいいるんです。それをみんな生かすようにそれを投入する。しかし、自分の自己資本比率は落ちない、ちゃんとした経営ができる。自分のことを考えるのは当たり前ですから、それをしないでやれというのは、やるわけないんです。
 だからその二点を、ちゃんとやるのかやらないのか、お聞かせいただきたいと思います。
竹中国務大臣 委員の御提案は大きく二点あったと思います。とにかくもう今までのことは免責にするから全部出してこいという点と、それと、いわば強制的に、引き当て不足的なものについては公的なお金を使え、この二点であったかと思います。
 第一の点については、ちょっと急なお尋ねでありますので、そういう司法取引的なことがこの国の法律でできるのかどうか、私はちょっと承知しておりませんが、少なくとも、今のような厳しい検査体制の中で、しかも健全なパブリックプレッシャーの中で、次第に情報が開示されつつあるというふうに私は認識をしております。
 それと、第二の強制投入、これは御承知のように、そういう法律はこの国にはございません。資本投入に対する法律というのは預金保険法の百二条でありますけれども、これについては、御承知のように、危機であるということの状況、認識、宣言のもとに申請するということであります。
 ただ、我々としても、これだけで十分かどうかということは問題意識を持っておりますので、これは金融審議会の中にワーキンググループをつくりまして、新たなそういった法的枠組みが必要かどうかの検討は今急いで行っているところでございます。
    〔委員長退席、萩山委員長代理着席〕
山岡委員 大臣は立派な方ですけれども、やはり実務は御存じない、こういうふうに思います。
 そこで、そういうルールはないんですよ。ないから今の範囲でやれといったって、立ち直れないんです。では、このまま金融がだめになって日本がだめになってもいいか、そうはいかないでしょう。だから、何とかしなきゃならぬのじゃないですかと言っているんです。ほかにいい案があったら私は聞きたいですよ。
 だから、これはそういうルールをつくらなきゃだめなんです、両方とも。あなたにはできないんです、今の立場では。総理にはできるんです。やるか、やらないかなんです。総理、どうですか。
小泉内閣総理大臣 金融危機は起こさせない対応はきちんとしております。
山岡委員 そういうのをのうてんきと言うんです。現に起きていて、いつまでたっても直らない。これで起こさせないなんて言えるなら、よほど度胸があるか、よほど無知としか言いようがない。
 それで、その次に行きます。
 要するに、これをしなきゃ直らないんですよ。しかし、これはやりそうもありませんから、そういうことになると、金融の不良債権は解決をしない。解決する方法は、今の政府ではもう銀行から行ってもだめだと。どこから行くかと言えば、景気をよくすることなんです。
 きのう麻生政調会長も言っていたとおりですよ。上から行こうとするからだめなんです。下から行けばいいんですよ。景気をよくすれば、株も上がるし土地も上がるんです。土地の話をしていましたけれども、土地が非常に上がっていけば、自己資本比率が自動的に上がって銀行は立ち直っていくんですよ。上下逆なんです。やろうとしていることは同じかもしれないけれども、実体経済は生き物ですから、だから、景気の回復はいつするんですかと私が言っていたんです。こういう金融でやっている限りは起きませんよ、だから小泉改革では景気はよくなりませんよということになるんです。
 そこで、どうしたら景気はよくなるか、こういう話をこれから申し上げたいと思います。
 いろいろ随分出てきましたけれども、要するに、もう時代が変わったということはみんな認識のとおりなんです。ちょっとパネルをお願いします。もう我々はみんな知っていることだと思いますが、知っていながら意外と対応していないのがこの時代の変化というものなのでございます。
 戦後が終わって、今日はよく言われるようにグローバル化の時代になったんです。なったのはわかっているが、そこに政治が対応してきていないから景気がよくならない。
 IT化時代になっているんです。なったんだけれども、対応しているつもりでも、根幹のところで対応していないんです、実は。だから、いつまでたってもよくならない。
 高齢化時代、これもよく、しょっちゅう言われているんですが、言われているんだけれども、実際の対応が十分なされていない、だから景気がよくならない。
 さらに、きのうは自見先生からもお話がありましたけれども、地球環境の悪化の時代、これが今世紀の最大の課題になってくるわけでございまして、これにやはり今からきちっと対応していかなければ、今の日本の景気もよくならないし、これからの日本もよくならない、こういうことを申し上げたいわけでございます。
 大相撲の話は、総理、お好きだと思います。朝青龍が優勝いたしました。これは幕の内の優勝で、大変おめでたい、結構なことだと思いますが、十両もモンゴルの方でございましたし、また幕下はグルジアの人でございました、アジア圏でございますが。三段目もモンゴルの人、それから序二段がただ一人日本人、そして序の口もモンゴルと。一人を除いて、全員よそから来た方が優勝されている、それが先場所です。そのことはそのことでいいと思います。横綱も、両横綱とも外国人。
 しかし、これは相撲ならいいのですが、日本の製造業や農業ということに当てはめたら、それでいいというわけにはいかないんですよ、当たり前なことですが。要するに、こういうふうに、もはや、日本だけ先進国でアジアは我々がリードしているんだとまだ錯覚から抜けませんが、今やむしろアジアの方に追いかけられて、抜かれて、そして今日のこのグローバル化に対する対応ができていないから、日本はこんなに厳しい状態になっているのは御承知のとおりなんです。中国は、二十分の一の給料で五分の一のもので商品ができれば、これはかなうわけありませんし、また、日本のいい農業製品を持っていって、日本と同じようにつくって、同じものをつくって日本に持ってこられたら、これもかなうわけないわけでございますから、そういうことに対する対応が十分できていない。その辺に対してどうするかということが日本の大きな問題であるわけでございます。
 総理は、言うなれば貴乃花に感動して、あの傷の痛々しさに感動しましたけれども、今、引退しました。あの姿が日本の姿だということも一緒に思っておいていただきたいのでございます。
 次に、IT化時代でございます。
 森さんのときに、IT、IT、ITと、朝から晩までITと来ておりましたが、しかし、どうなったのかというと、竹中大臣十分御存じのとおり、五百三十万人の雇用を創出すると言っておきながら、実際はそうはいかなかったんです。あのとき五百三十万人の雇用が創出されていれば、今三百三十万人が失業なんですから、二百万人が職探しをしていることになるんです、計算上からいうと。そうでしょう。なぜそれができなかったのか。それは、言うなれば、日本にいかなかった理由は、日本の国情が違うんです。
 つまり、ITというのはどういうところで発達するかといえば、言うなれば、個人の社会、若者の社会、知的高齢者の社会、中小零細企業者。少ない人数でやるところの方が伸びるし、小規模で、小回りがきいて、しかも付加価値の高いものをやれるところが成功するんです。日本の大量生産、大量販売式じゃ、これは成功しないんです。
 また、アジアは、これは幸か不幸か、結果的には、言うなれば余り進んでいなかったから、ばらばら。しかして、ぴったりだったわけですね。だから、一人一人にずっとITが普及して、そしてインドなんかでも大変な発展を遂げた。
 残念ながら、我が日本国は、戦後をこうやって立派に発展させてきたシステム、このことは評価しますが、これはいつも言われているように、中央集権、護送船団、日本株式会社、官尊民卑、そして規制国家、このことが日本のITの発展を妨げちゃっているんですね。これがある限り、太刀打ちできないんです。
 そういう答弁を、竹中大臣は覚えておりますか、参議院の、大分昔でございますが、しておりましたよね。アメリカと日本は状況が違うんです、アメリカは倍になったけれども、日本は出てきませんでした、日本はこういう問題がありますと言われましたよね。ちょっと言ってみてください。
竹中国務大臣 ちょっとその前に、五百三十万人雇用というのは、ITだけではなくて、サービス業全体であろうかと思います。しかも、五年間でということだと思います。
 御質問は、ITについて、日本ではなかなかそうは進んでいないということでありますが、あの答弁をさせていただいてから、実は、現実には、日本もIT人口といいますか、インターネット人口は随分とふえました。最新の統計では、恐らく四二%ぐらい日本はインターネット人口がいる。それは、二年前の一九%から倍増しているということであろうかと思います。
 その意味では、やはりIT戦略本部等々でいろいろ議論して、思い切った規制緩和等々を行って、ブロードバンドの、家庭内での価格でも二十ドルというのは世界で一番安いということも実現した。
 その意味では随分と広がってきたんだけれども、それでも世界の中での順位は、たしか十三位から十六位ぐらいに後退していたというふうに思います。その意味では、日本も動いているんだけれども、世界はもっと速く動いている、さらに一層の努力が必要だということだと思います。
山岡委員 そんなによくないんですよ。二十一番目ですよ、ハーバードが調べて。これだけやっても、世界の二十一番目。日本全体のランクづけは六番目に位置されていますけれども、ITに関しては二十一番目。
 そういうことで、竹中大臣が御自身で答弁したんです。そのころは、まだそう責任を感じないで言ったのかもしれませんが、日本の規制や古い慣習の硬直性が新規ビジネスのチャンスを阻害している、こういうふうにあなたは答弁しているんですよ。そういうことでしょう。そういうことなんです。だから、これをなくさない限り、これは幾らITのことにやって、総理は施政方針演説では、二〇〇五年に世界最先端のIT国家を実現しますと施政方針で言われましたが、どうやってやるのか、私はお聞きしたいんです。聞きませんけれどもね、できるわけがありませんから、今のままでは。
 そして次に、高齢化社会の問題。
 これは、もう今までに何度も言われておりますから。今、高齢者というのは持っている預貯金がなぜ使えないか。それは、先行きの社会保障の不安だけじゃなくて、核家族も実は不安なんですよ。そして、自分の職がない。
 なおかつ、これがよく忘れられがちですが、金利を銀行のためにただにされちゃっている。銀行救済のために金利がただになっちゃっているものですから、昔は、この金利が使い道だったんです。それで買うから、誘導されてもっとほかのものも出てきたわけでございますが、十年前なら、それこそ十年間持っていたら倍になったんですよ、金利が。資産が倍。アメリカでは、今、四、五年で倍。日本でこれを倍にしようと思ったら、どのくらいかかると思いますか。千年預けておかなきゃならないんですよ、倍にするのに。十年前とこれだけ変わっちゃったんです。だから、金利は使おうという心理があったものが、一銭も使えない。
 お孫さんにお小遣いやって一生懸命お世辞とったお年寄りが、最近は、お孫さんが学校から帰ってくると、よそ向いて逃げていっちゃう。これが現実の姿ですよ、でも。このくらい大変なんです。こんな気持ちで消費が起こるわけがないんですよ。
 だから、高齢化社会に対して、口では言っているが、実際の対応が全くない、こういうところに問題がある、こういうことを申し上げたいのでございます。またその意見を聞いていると、もう時間がなくなっちゃいますから。
 地球環境の悪化の時代に対しても、これは、きのうお話があったとおり、大変な問題になってしまいます。しかし、環境問題、重要なことです。そして、その環境問題に同じになって重要なのが、これは食糧の安全保障の問題なんです。
 この間、この先生が、ツバルですか、ツバルの皆さんがニュージーランドにみんな引っ越していっちゃった、あるいは上海が三分の一沈んじゃうと言われていると。モルディブという国は、百年たつと八割が沈んじゃうんだそうですよ。そして、温暖化で沈む地域というのは、みんな河口地域なんです。河口地域というのは、農耕地なんですよ。だから、これからは農耕地がどんどん失われていく。それは、かんがいでこんなことをやれる国は数少ないんですよ、大概はその辺のデルタ地帯でやっているわけですから。さらに、人口はふえていく、また地球環境は悪化していく、オーストラリアは大水、ヨーロッパも大水、そういう状況になってきて、これは、世界は食糧の自給に一生懸命今努めているんです。
 これは総理にお聞きしたいんです、大きな国策の問題ですから。日本だけが先進国の中で自給体制をとっていないんですけれども、このことについてはどうお考えですか。
小泉内閣総理大臣 食糧確保、また農業というのは、国の基本であります。
 農業の面におきましては、各国とのWTOの交渉の中でも大変重要な課題になっておりますし、日本としては、食糧輸入国であります。そういう中で、もっと輸入せよ、もっと輸入せよと言われているんですが、この点については、やはり農業の重要性を考え、なおかつ、農業というのは食糧確保の観点だけじゃない、環境の保全、いわゆる多様性、文化、伝統にも影響してくるものですから、農業の重要性を認識しながら、どうしてこの自由貿易を促進させていこうかというところに日本としては大変重要な視点を持っていく必要があると思います。
    〔萩山委員長代理退席、委員長着席〕
山岡委員 基本認識はそういうことであることは評価させていただきます。問題は、どういうふうにやるかなのでございまして、今度出している法案について農水大臣にお聞きしようと思ったんですが、時間もなくなるし、余り言ってくれるなとさっきだれかが来たものですから、あえて申し上げません。
 この法案は、いろいろなことを言われておりますけれども、結論から言えば、減反制をやめると言うが、結局は、収量を減らす。中身は減反強化であり、減反手当はいろいろ名前を変えてほかにかえていきますが、減反手当の縮減なんです、要するに。そして、消費者を向いて、コストを考えて、こう言いますが、その消費者やコストを考えている人たちの食糧がなくなるんですよという話をしているわけで、そこを考えないと、当面の、今の措置だけをやっていたら、二十一世紀は、これは農家も生きていけない。この法律をやれば、もう農家はやるな、農家は死ね、こう言っている法律と同じですよ、実は。しかし、それは、農家だけじゃないんです。都会の皆さんも、我々の子供や孫たちの食糧も、沈みはしないでしょうけれども、なくなりますよということを言っているわけでございます。
 そこで、我が党のそれに対する法案というのを、時間がなくなりましたけれども、急いで説明をさせていただきたいと思います。
 今までのことをもろもろひっくるめてこれを申し上げますと、小沢党首がさきの代表質問で説明したものが、きょう、その中で、景気対策に関係ある、こうすれば景気はよくなるじゃないですかというものだけ見繕って、五本、ここに提案をさせていただいております。
 まず、減税ですけれども、小沢党首は、税制改革基本法案、こういうふうに申し上げましたが、私がここで申し上げたいのは、所得税と住民税は現在の半分にして、あわせて、公共料金も、現在の料金の二割五分から五割ぐらいを減らす。先ほどITのところでも申し上げましたが、日本は世界一高い公共料金だから、日本でやるのはもうむだで、やりたくない、こういう国なんですね。東京が世界一住みにくいというのは、そういう国なんです。だから、それをやっていこう、こういうことで、税は国家なりと言われておりますが、国民が自分の所得の使い道を自分で決める仕組みにした方が、もう規制国家や中央集権国家よりも日本はよくなる。
 財源はどうするんだ、こう言いたいでしょうけれども、この話をすると長くなりますから、言うならば、今のことをなぜ申し上げたいかというと、いいですか、お返事は簡単なんですよ。今のものを今の体制で全部やってつけ加えてこれを出したら、やれないじゃないですかという返事に決まっているんです。そういうのを新世紀維新とは言わないんですよ。また、そういうことを言いたくないから言わないんですが、新世紀維新と言うなら全部組み替えればいいんです。そうすれば、どこを中心にするかという、中心にするところはこういうところですよということを申し上げているので、今のままの前提でやると言うからこういう騒ぎになるんです。だから日本はよくならないんです。
 補助金を地方に一括交付、これも小沢党首が、地方自主財源交付法案として提案をいたしましたけれども、今の地方分権、行革というのは、ずっと言われてきている。しかし、一度も行われたことはないんです。なぜ行われないか。中央集権体制が崩れるからですよ。したがって、地方分権と言うけれどもやらない。まず、権限と財源を渡す。財源から渡す。補助金というのをひもつきにしないで、今ある六兆円分ぐらいをそっくり全部地方に渡す。そして、地方は地方でやってください、こういうことをやらなければ、地方の景気なんかよくならないんです。北関東も中国も九州も、行ってみていただきたいんです。
 また、次は、三番目が民間の事業の規制を廃止する。これは、党首が市場経済基本法、こういうことで提案をいたしましたけれども、たくさん、すべての業種が縛られている。あんまマッサージ指圧法、クリーニング業法、墓地埋葬法、銀行法、その銀行法のおかげで銀行はこうなっているんです、銀行サイドでいけば。政府が大変だと。これから言いませんけれども、予定利率を幾らにしろと決めたのは財務省なんだ。その責任を今、おまえら民間で勝手にとれと、よく言える、私たちから見ればそういうことなんですよ。こういうもので縛ってやってきて、実は全部国営、さっきも言ったけれども。
 だから、そういうものを開放しなきゃ、日本では外国人を日本に案内するのに通訳の資格を持たないと案内できない。どうしてそんな国があるんですか。また、ヘルパーがこう薬を塗ってあげたり、目薬を差してあげたり、また血圧をはかってやってもいけない、これはお医者さんじゃなきゃやっちゃいけない。この手のたぐいのものばかりですよ。
 そういうものを全部開放すれば、新たな職業なんというのは、ワークシェアリングなんかやらなくたって、無数、ごまんと出てくるんです。では、お医者さんはやってくれるかというと、やってくれていないんですよ、手が回らないんだから。だれもやれない仕掛けになっている。
 こういうものを開放していけば、また田中さんみたいな人がどんどんと出てきて働ける。この間は、田中さんのことを褒めておられました。私も評価しますよ。しかし、あれは、小泉さんがあるいは政治がよくて田中さんが出てきたんじゃないんですよ。まさかあの人がとみんな思ったぐらいですよね。ノーベル賞だから認められたのであって、そういうことが国内でどんどんと開発されるあるいは必要とされる、そういう社会になれば、まだまだごまんといるんです。あそこに述べられた人だけじゃないんですよ。そういう規制社会を撤廃すべきだ、こういうことを申し上げているわけでございます。
 また、期間のことを言うでしょうけれども、我々は、これは変えたっていいですよ。三年で一応全部撤廃をしよう、ゴール。そして、本当に必要なものはつくり直そう、こう言っているんですよ。それは我々は政権を持てば責任を持ちますよ。しかし、五年になるかもしれないし、六年になることも部分的にはあるかもしれない。そんなことは当然なんですよ。しかし、私らの責任で三年で打ち出しますと。できるものはほとんどですよ。そして必要なものはやる。それは民間に、みんなに民主的に任せていく、そうやらなきゃできるわけないんです。
 特殊法人についてもさっき申し上げましたが、これは申し上げません。道路公団でも、もし本当にやれば、我々からいえば、高速道路代は十分の一だって済むんですよ。そして民間企業はどんどん入れるから、その仕事は莫大にふえる。なおかつ、乗っているお客さんたちも交通費が安い。日本は世界一高い。こんな国はないんです。だから、そうするのは賛成だと言っているんです。しかし、できる当てがなきゃだめだ。我々は、そういう特殊法人を、やはり期限を切って、三年以内に全廃して、必要なものは全部つくろうというのがこの法律であります。
 さらに最後に、社会保障目的税の設置、こういうことを申し上げております。
 このことについてもいろいろ御意見はあるでしょうが、総理は党首の話を聞き間違えたんだと思いますが、我々が言っているのは、今の消費税五%を社会保障目的税に充てよう、こういうことを言っているんです。今大不況なんですから、ここをしのごうという話で申し上げて、これで永遠にやれるなんて言っていませんよ。まあ五年ぐらいしかもたないんじゃないかと思いますよ、それは確かに。しかし、五年を負担をかけずにもたせれば、言うなれば、庶民に負担をここでかけたら、また景気は悪くなりますから、だから、これをやろうと。
 石原大臣のことを言いますけれども、クマの方が歩いている道路なんか余りつくらなくたっていいんですよ。人のところに向けたらいかがですか、こういう消費税の話です。
 そして、新たにやらなきゃならないということを三つ申し上げたいのでございます。
 一つは、小泉総理の好きな言葉で申し上げました。新世紀維新型殖産興業プロジェクトというのをつくったらどうだ、こういうことを申し上げたいんです、大好きな言葉だと思うんですけれども。
 これは、独立プロジェクトといたしまして、国家戦略科学技術機構、こんなような組織をつくって、毎年十兆円の予算規模で十年間、百兆円で、先端技術や基礎研究、国家規模での戦略的な取り込みを果敢にやって、果実を民間に上げる、今の日本の民間で先端技術、基礎研究を開発したら、みんなつぶれちゃいますから。しかし、今のままでいったら、グローバル化、IT化でかないませんから、こういうものこそ、ほかのものは民間にやらせるが、国がやらなきゃできない先ほどの食糧の問題とか、あるいはこういう問題こそ国でやるべきだ、こういうことを申し上げているわけでございます。
 今、尾身先生などが中心になって科学技術のことには大変お力を入れているのはよく知っておりますけれども、しかし、今の体制の中で、役所の縦割りでそれぞれがそれぞれのことをやっている。使った予算のつもりが、実は大学の先生の給料になっている。給料になって先端技術や基礎研究を研究してもらったって、象牙の塔にこもっていて一向に外に出てこない。これじゃ日本の役に立たないし、民間は生き返りませんよ。
 だから、そういうものを一体的にまとめて、日本の英知や、田中さんのような英知や世界の学者を全部集めてきて、そこで殖産興業、これをやらなきゃ、もう日本は生き返らない。銀行なんかに幾ら金を注入したって、日本はもう生き返りません。こっちを先にやって、土地を上げることです。政調会長、いないですね。
 そして、その次に申し上げたいのが、何度も指摘をされていますが、中小零細企業ですよ、今、九割以上いる。ここを救わなきゃ日本の景気の回復なんかないんです。わかっていながらやらない。
 そこで、我々は提案をいたします。
 平成十年に我が党が提案をしてやっていただいた中小企業向けの特別融資を、もう一度、三十兆規模で、十年のつなぎ資金ができるような、十年間でやる。かかる予算は何ということないんだ、六千五百億ですから。だから、これをやることが一つ。
 もう一つは、中小企業向け借りかえ専用保証制度、こういうのをやって、今借りているものを、銀行にお伺いを立てなくても、国の担保でこれをやってもらえる、それで借りかえる。これをやらなければ、このままいったら日本の中小零細企業はみんな死んじゃいます、商店もですね。
 それはもう、平沼大臣、よくわかっていると思います。大臣の方に反論をしてくれと言いますと、当然言われるのが、それはもう今やっております、セーフティーネットでやっておりますときょうお答えしておりましたけれども、まあ、そういうふうにお聞きになっているのかもしれませんが、あれじゃだめなんです。
 なぜだめかといいますと、あれは、ここに書いているように、これはどういう人が対象かというと、計画的な返済可能性のある中小企業者なんですよ。そんな人がどれだけいると思いますか。そんな人は、今銀行から幾らでも借りられるんですよ。借りてくれ、借りてくれと言っているんですよ。何で政府がやってやらなきゃいけないんですか。こういうのの対象にならない人をやらないと救われない。現実性がないんですよ。役所にごまかされているんですよ。だから、こういう我々のをやって中小零細企業を救っていただく、こういうことをぜひお願いしたいのでございます。
 最後に、食糧安全保障のことでございますが、これは……
藤井委員長 山岡委員、御質問されるんですか。もうそろそろ時間でございますが、御質問されるんですか。
山岡委員 五十五分でしょう。余計なこと言わないでください。
藤井委員長 いや、余計なことじゃないんです。御質問されるんですか。
山岡委員 いやいや、いいです。結構です、時間がありませんから。
 我が党が出そうと思っている法案はこういうものです。
 主食用穀物の自給率は一〇〇%を目指す、余剰米は備蓄米として全部買い上げて食糧の備蓄にする。その経費はどこから出すかといいますと、今、農水省予算というのは二兆四千億ぐらいあるのですが、そのうちの、この五年間で一兆円ぐらいが土地改良予算でございました。この土地改良予算の半分の五千億で二百万トンを一万五千円で買っていけば、これは言うなれば五千億なんです。残りの五千億が、冷凍で備蓄をできるという設備をつくっていく。そうすれば、この予算を出さないで、今の農政を変えるだけで、これは減反をやらないで、好きなだけつくって、なおかつ日本の将来のために備蓄できるんです。今の予算でもこれはできるんです。だから、このことをぜひやっていただきたいということをお願い申し上げます。
 五十五分のはずなんですが、もう終わりなんですか。
藤井委員長 いや、テレビですから、時間一分前でそうしてください。
山岡委員 五十五分のはずですが、もう時間だと言われますからこれで終わらせていただきますが、今提案をさせていただきましたが、もう大島大臣はよくおわかりになると思います。農業をやっている皆さんなら農家のことを考えているんですから、ただ、なかなか今方法がない。お手上げだというわけにはいかないと思います。農家のためにも、これからの日本のためにも、都会の人のために、特に我々の子供たちや孫たちのために、しっかりとした農政を、農政に関心を持っていただいて、ぜひやっていただきたいと思います。
 ありがとうございます。
藤井委員長 これにて山岡君の質疑は終了いたしました。
 次に、志位和夫君。
志位委員 日本共産党を代表して質問いたします。
 まず冒頭に述べたいのは、昨日、この予算委員会の場で自民党議員によって、医療事故・事件を党略的に利用した不当な誹謗中傷が民主医療機関と日本共産党に対して加えられたことについてであります。
 昨日、自民党議員は、民医連、全日本民主医療機関連合会に加入している四つの病院で起こった医療事故・事件を名指しで取り上げ、口汚くののしりました。それぞれの医療事故・事件については、もちろんあってはならないことであります。しかし、自民党議員が挙げた四つの病院は、すべてみずから進んで事実を明らかにし、率先して自浄作用を発揮し、行政による真相究明にも進んで協力し、再発防止のために努力している医療機関であります。
 例えば、自民党議員は、二年半前に起きた大阪堺市の耳原総合病院でのセラチア菌による院内感染問題をイの一番に取り上げました。しかし、耳原総合病院では、院内感染を疑った段階で、法的にはこれは届け出義務がないにもかかわらず、直ちに保健所と国立感染症研究所に届け出て、堺市が設置した外部の専門調査班の指導援助を得て、徹底した原因究明と感染防止対策に取り組み、感染対策を五つの改善点としてまとめました。私たちの痛恨の経験をほかでも生かしてほしいと全国の医療機関に教訓を伝えています。堺市としてもその教訓を普及しています。この真摯な取り組みは、医療界でも高く評価され、マスコミでも注目されました。
 こうした医療事故が起こったときに、そして医療機関が真剣な事故究明をやっているときに、社会がどう対応すべきかというのは大事なことです。私は、ここに持ってまいりましたけれども、堺市での調査班の責任者を務めた大阪大学微生物病研究所教授の本田武司さんが、これは堺市の取りまとめた「セラチアによる院内感染事例報告書」という報告書の中で、この事件を振り返って次のように述べております。(発言する者あり)よくお聞きください。
 「セラチア感染症は、法的には保健所に届ける必要は特に無いので、わが国での第一線の病院での実態についての情報があまり無い。実際のところ第一線の多くの医療機関では、コンプロマイズドホスト」、これは抵抗力が弱まっている人のことだそうでありますが、「での発熱時の血液培養を実施していないことも多いのではないかと思われる。そして原因不明な終末期感染症ということで処理し、セラチア感染症に気付いていない可能性もあるのではないかと思われる。ましてや届け出た(公にした)ばかりにその病院をマスコミが袋叩きにするような報道は、ますます届け出はもとより、今後発熱時の血液培養すら避けることになってしまう可能性がある。記者会見でこのことを訴えてきたこともあり、概ね冷静な報道に終わったことに安堵している。」これは、調査班の班長さんをやってこられた本田教授の序文であります。
 厚生労働省に確認しておきますが、これは厚生労働省も一体になって取り組んだ問題ですから、こういう指摘がされているのは事実として確認したいと思います。
小島政府参考人 報告書には先生が指摘されましたように記載されております。
志位委員 そういう教訓を導いているわけですよ。
 この本田教授は、記者会見で繰り返し言っている。まじめに自主公表し、教訓を広げようとする病院を犯人扱いする報道では、今後こうした院内感染問題や医療事故を自主的に公表しようとする医療機関は出てこなくなる、こう言って、マスコミに冷静な報道を繰り返し要請したんです。
 私は、これは報道のみならず政治にも求められている姿勢ではないかと思います。まじめに自主公表をし教訓を広げようとしている病院に対して政治がなすべきことは、その努力を支援し、全国の病院の教訓として、二度と再びこういうことが起こらないようにする、その責務を果たすことじゃありませんか。
 昨日の自民党議員のように、再発防止のために真剣に努力している病院を国会という場で名指ししてやみくもに犯人扱いする態度は、医療事故・事件を根絶するというまじめな立場とは全く無縁の党利党略と言わなければなりません。しかも、自民党議員が、医療事故・事件の原因が日本共産党の選挙活動にあったかのような荒唐無稽な発言を何の根拠も証明もなしに行った、これは公党に対する許しがたい誹謗中傷であります。
 選挙活動について言えば、病院の個々の職員が自主的に日本共産党後援会の活動を行うことがあっても、日本共産党は、自民党とは違って、民医連であれ他の団体、組織であれ、我が党への支持を求めるということは、一切そんな事実はありません。
 なお、自民党議員は、昨日の質問の中で、民医連の軌跡という本を持ち出して、日本共産党が民医連を設立したかのように発言しました。日本共産党は、戦後直後の時期に診療所をつくった歴史を持っていますが、これは戦後の荒廃の中で医療をまともに受けられない庶民のために取り組まれたものであって、私たちはこの歴史を誇るべきものだと考えております。
 民医連について言いますと、その後、各地のさまざまな医療機関が連合して、一九五三年に自主的に結成されたものであり、それをあたかも日本共産党が設立したかのように述べた自民党議員の発言は、歴史を全くゆがめるものであります。
 我が党への党略的攻撃のために事実をゆがめて、医療事故・事件という重大な問題をもてあそぶ自民党議員の態度は、全くこの国会を汚す行為だということを初めにはっきりと述べておきたいと思います。
 質問に入ります。
 イラク問題について、首相の姿勢について伺います。
 イラクの問題をめぐりましては、今、国連安保理を舞台に、戦争か平和か、非常に重大な局面となってきております。私は、今この状況、非常に大きく動いているさなかですので、総理に一点に絞って立場をお聞きしたいと思います。それは、国連による査察の継続、強化についてであります。
 米国のパウエル国務長官は、昨日、国連安保理にイラクの大量破壊兵器問題についての情報を提示しました。パウエル長官は、イラクが査察に積極的に協力せず、隠ぺい工作や査察妨害を行っていると主張しました。しかし、イラクが大量破壊兵器を保持しているとする米国の主張を裏づける決定的証拠を示すことはできませんでした。
 しかし、仮にパウエル長官の言うように隠ぺい工作や査察妨害があるとするならば、それは、査察を継続し、強化することが一層必要になっていることを示すものだと思います。査察の継続、強化という声は、昨日の安保理の諸国の外相がすべて言明しましたが、安保理でも多数の声、大勢の声となっております。
 私、総理に率直に伺いたい。端的に伺いたい。今非常にこの問題、世界政治は重大な岐路です、重大な瞬間です。日本政府も、査察を継続し、強化して、査察による平和解決を図れという主張をはっきり言うべきだと思いますが、いかがですか。
小泉内閣総理大臣 今まで何年間にもわたってイラクが査察に協力してこなかった、妨害してきた、こういう事実があるからこそ、国際社会は一致してイラクに査察に対する能動的な、積極的な協力を求めているわけであります。そして、査察団の査察が始まり、ブリクス委員長も再度、またイラクを訪問いたします。
 査察を継続すべしという議論でありますが、今継続しているわけです。今後、その状況を見ながら、私は、査察をするということに対しましては、国際社会が一致して査察を働きかける、協力を働きかけると同時に、イラクも、この査察に協力すれば何にも問題ないんですから、そして、大量破壊兵器がないということをイラク自身が見せることによって平和的解決がなされるんですから、その方向に向かって日本としては努力すべしと。そして、査察も今継続しているんですから、いつまで継続するかというのはこれからの議論であります。その点は十分、国際社会の意見も状況も見ながら、日本としては外交的努力を、イラクに対してもアメリカに対しても各国に対しても続けていきたいと思っております。
志位委員 小泉首相、悪い癖があるんですね。それは、自分の困ったことを聞かれた場合に、聞かれていないことを答えて、聞かれたことに答えないという癖なんですよ。
 私が聞いたのは、今後査察を続け、強化するということを日本政府として言うべきじゃないかということを聞いたんです。今査察をやっているというのは、これは事実ですよ。その事実を聞いたんじゃありません。今後継続し、強化して、この査察の手段できちんと解決を図るべきでないかということを私は聞いたんですよ。答えてないです。
 それで、私は、どういう討論が国連安保理でなされたか、きのう調べてみました。そうしますと、例えば、フランス外相は、パウエル報告を受けて、査察を新たな段階へと引き上げ、さらに強化するために努力しなければならない、査察官の数を二倍から三倍にふやし、監視能力を強化し、現地事務所を増設することが必要だ、こう述べております。ロシアの外相は、本日提供された情報は、イラクでの査察官の活動が継続されるべきであることを示している、安保理は査察を支援するため、あらゆる可能なことを行わなければならない、ロシアは航空機と査察官をさらに提供する用意がある、こう述べています。中国の外務大臣は、我々は国連査察団の意見を尊重し、引き続く査察を支持すべきであると述べています。ドイツの外相は、平和的解決が引き続き探求されなければならない、査察の手段が強化されるべきだ、フランスの提案を評価すると述べています。
 すなわち、多くの国が、査察を継続し、強化すべきだと。フランスなどは、そのための具体的な手段、二倍、三倍にするとか、そういうことも含めて提案をしているわけであります。こういう方向に賛成かどうか聞いているんです。
 今国際社会は――総理に聞いている。今国際社会は、イラクにきちんと義務の履行を迫るというのは当たり前です。どの国も一致してこれを求めています。しかし、それを、査察という手段を継続して、強化して平和的にやるのか、それともそれを中断して戦争という手段に訴えるのか、この二つに一つが今問われているんですよ。日本政府はどっちなんですか、継続、強化という立場なんですか、総理、お答えください。
小泉内閣総理大臣 まず、何年間にもわたって査察しているんですから、これにイラクが協力すべしなんです。そして、査察の報告がなされ、再度、また査察団長がイラクに入って協議して、十四日ですか、たしか、十四日にまた査察の報告があるんですよ。まず大事なことは、査察をいつまで続けてもいいんだと。イラクが、大事なことは、協力すべきなんです、妨害しないことなんです。だから、それは十四日の報告を待って日本としては判断すべしと。査察に反対なんか全然していませんよ。査察すること、これに対して協力している。そして、査察がきちんと実施に移るように日本もイラクに対しても外交努力を続けている、これが一番大事なことである。そして、平和的解決は、イラクが協力さえすればそれはなされるんですから、この点は日本としてもよく見きわめながら、さらに外交的努力を続けていかなきゃならないと思っております。
志位委員 要するに、総理、いろいろおっしゃいましたけれども、国際社会の様子を見て決めようということだけですよ、今言ったのは。ほかの国はみんな査察の継続、強化ということを具体的に言っている。それを、これだけ聞いてもはっきりお言いにならないわけですよ。
 では、逆に聞きましょう。
 アメリカはそういう立場じゃないですね。アメリカのパウエル国務長官は、問題は査察団に対してどれだけ時間を与えるかではもはやない、もはや査察を続ける段階じゃない。そして、フランスが査察を強化すべきだと提案したのに対して、パウエル長官は拒否していますよ。こういう態度を日本政府は賛成するんですか。査察を中断しようとしているこのアメリカの態度を日本政府は賛成するんですか。はっきり答えてください。
小泉内閣総理大臣 日本としては、十四日に査察の報告が再度なされますから、その状況を見て判断すると。そして、イラクに対しては、協力しなさいと。アメリカに対しては、国際協調を構築できるように引き続き努力を求めているわけでありますから、これがもう日本としての態度なんです。
 戦争を求めるなんというのはとんでもない。日本のはっきりしている態度は、いかに国際協調体制を築いて平和的解決をしていくか。日本の国是として、国策として、たとえ世界各国が国連決議で武力行使を容認しても、日本は武力行使しないんですから、日本の立場はこれほどはっきりしていることはないですよ。
志位委員 全く答えませんね。私が聞いたのは、査察の継続、強化に賛成するのか、アメリカがこれを中断しようとしていることに反対するのか、これについては何にも答えないで、要するに、十四日の報告を待って、周りを見て判断するとしか言わないんですね。
 今世界が、査察による平和解決か、戦争による全く悲惨な事態に扉を開くのかというこの決定的瞬間に、査察の継続、強化ということを言えない、これは戦争という選択肢を事実上選ぶことになるんですよ。私は、これは歴史に汚点を残す答弁だと思う。私は、世界の多数の国々、世界の多数の世論が求めている平和解決、査察による平和解決ということを日本政府は、今からでもきちんと言うべきだということを強く述べておきたいと思います。
 次に、経済政策について伺います。
 まずただしたいのは、四兆円負担増の問題です。こんな深刻な不景気のもとで、年間四兆円もの国民負担増を押しつける政策を強行していいのかという問題であります。
 政府が今方針として決定している今回の一連の計画が強行されますと、社会保障のあらゆる分野、医療、介護、年金、雇用保険、合計して二兆七千億円もの負担増、給付減となります。発泡酒やたばこの増税、配偶者特別控除の廃止による所得税の増税、消費税の免税点の引き下げなど、庶民への増税で一兆七千億円であります。今の計画を全部やられますと、合計して四兆四千億円もの負担増、給付減となる。これを強行したら一体どういう事態になるのか、私は、三つの角度から総理の基本的認識を伺いたいと思います。
 まず第一に、国民の命が犠牲にされるという問題です。
 四兆円のうち約一・五兆円は医療費の負担増です。そのうち、お年寄りの医療費の自己負担、これは、今まで一回八百五十円の定額負担だったわけですが、一割から二割の定率負担に昨年十月から引き上げが既に行われています。これが何を引き起こしているか、総理は御存じでしょうか。
 私、全国各地のお医者さんからさまざまな訴えを受けます。患者さんからも受けます。
 例えば、在宅酸素療法という治療が危機に瀕しています。これは、慢性呼吸不全や心不全によって心肺機能が弱った方々に在宅でも酸素吸入ができるようにするもので、生活の質を向上させ、寿命を延ばす大きな役割をこれまでも発揮してきました。年間、現在十一万人が受けているわけであります。
 ところが、総理、よく聞いてくださいよ。お年寄りの自己負担の医療費の引き上げで、大体これまで月八百五十円の負担だったものが一万円前後まで引き上がって、多くの患者さんが治療中断を余儀なくされているという実態があります。酸素を奪われた患者さんは苦しさで外出もできない、動くこともできない状態となると聞きました。昨年十月以降、治療中断によって呼吸不全、心不全が悪化し、亡くなった患者さんもいるということが伝えられています。
 私、きょうここに、ことしの一月二十三日に朝日新聞に投稿された福岡県のお医者さんの投書を持ってまいりました。「弱者の命軽視 医療制「改悪」」という題名がついております。こう述べております。
 在宅酸素療法は、
 重い呼吸障害のある人が自宅で酸素を吸うことで、「生活の質」を大きく改善することができるものですが、この自己負担額が十月から一挙に十倍近くまで引き上げられました。
  そのため、この療法をあきらめる方が全国で一〇%前後に達すると言われています。この方たちは酸素がなければ生活の質が大幅に低下するばかりか、確実に命を縮めてしまうのです。
  首相にお聞きしたい。あなた方はこういう実情があるのをご存じですか。これが「痛み」の一言で片付けられるものかどうか、よく考えてください。「医療費の払えない低所得者は死んでも仕方がない」と言っているのと同じなのです。
 私、この告発の声、なかなか重いと思いますよ。この告発で言われている、これが痛みの一言で片づけられるものかどうか、よく考えてみてください、この声に総理はどういうふうにお答えになりますか。
小泉内閣総理大臣 医療負担のことですが、高齢者のことより全般のことを言いますか。(志位委員「今聞いたでしょう、具体的に」と呼ぶ)痛みがありますが、これは負担額だけでなくて、医療保険制度全体のことをやはり考えていただきたい。
 そして、二割負担から三割負担で多大な痛みを伴うと言われますが、国保というのは既に三割負担なんですよ。そして、なおかつ、私は、高齢者に対しましても一割負担をお願いしますけれども、これもやはり上限が設けてあります。
 痛み痛みということよりも、それでは、この負担をお願いする際に、現行どおりにした場合に、これはやはり税金を投入するか、ほかにはね返ってきますよね。そういうことを考えて、私は、むしろ、高齢者も若い世代もともに皆保険制度を維持する、そして適切な医療が受けられる制度を安定的にするという点にも十分配慮していただきたい。
 ただ痛み痛みだけ、負担負担の部分だけ言われますが、どういうことをしてもだれかが負担しなきゃならないんです。それがやはり保険制度じゃないでしょうか。
志位委員 総理は私の質問を聞いていなかったんじゃないですか。
 私が聞いたのは、医療保険の問題についての全体像については後でやりますよ、そうではなくて、今起こっている事態なんです。
 酸素の在宅療法も受けられなくなってしまっている、これが痛みの一言で片づけられますかと聞いているんです。酸素をとられちゃっている人にとって、これは動けなくなるだけじゃありませんよ。お医者さんに聞きますと、睡眠がとれなくなる、栄養の吸収もできなくなる。そういうことが痛みの一言で片づけられるものなのか、命を奪うようなことをやっておいて、痛みの一言で片づけられることなのかということを聞いているんですよ。あなた、全然答えてないですよ。だめです。総理、総理、答えてください。
小泉内閣総理大臣 これは私の答弁なんですよ。まさか、酸素をとられたら命なくなっちゃう、そんなばかなことするわけないでしょう。
志位委員 これは起こっているんです、現実に。酸素の取扱業者さんに聞いても、やはり大変な規模で起こっていますよ。
 では、総理、この問題、少なくとも調査してください。こういう実態について調査してください。
坂口国務大臣 確かに、十月から医療制度が一部変わったことは事実でございます。高齢者の場合には一割の、いわゆる定額から定率になったことは事実でございます。その中でさまざまなことが起こっていることは当然考えられるわけでございますが、我々といたしましては、その患者の皆さん方それぞれにできるだけのことはしたいというふうに思っております。
 しかし、先ほど総理からも御答弁がありましたとおり、これだけ高齢者がふえてきたわけでありますから、高齢者がふえてきたその中で、お互いに助け合って、この医療制度を実現していかなきゃならないわけでありますから、当然、自己負担というのもあるでしょう、ありますけれども、そこはしかし一部お願いをしていかないと、全体としてやっていけない事態になってきている。命にかかわることでありますから、それは命にかかわることであるだけに、我々はそのことを全体としてお願いをしたい。
 酸素のことにつきましては、我々もよく聞いておりますし、今後検討していきたいと思っているところです。(志位委員「調査は」と呼ぶ)調査、それはわかっているんです。わかっていますから、今後これまた対応していきたいと思っております。
志位委員 調査はすると約束してください。調査してないでしょう。
坂口国務大臣 調査は、今さら改めてしなくても、大体どのぐらいな状況になっておるかということはわかっているわけでありますから、それに対して、どれだけそれに対応できない人があるかということは見なきゃいけない。しかし、そうしたことを見きわめながら我々は対応したいというふうに思っています。
志位委員 対応するということを言いましたから、しっかりした対応をお願いしたいと思うけれども、そのためには調査は当然必要です。
 私、この問題をなぜ取り上げたかといいますと、小泉総理と私とは、この医療費の自己負担の問題は何度も論戦したことがあります。九七年の、サラリーマンの自己負担を一割から二割にしたときも論戦しました。党首討論でも論戦した。私は、この問題、繰り返し私たちが提起したのは、医療費の自己負担を上げれば必要な医療が受けられなくなる、私はそう言いました。そうすると、総理は必ず、いや、必要な医療は抑制しないんだと。しかし、現実起こっていることは、まさに必要な医療の抑制なんですから、中断なんですから、やはりここは現実を見た対応がどうしても必要になる。
 医療保険制度ということを言いましたけれども、この問題、酸素の問題だけじゃありません。やはり、例えば日本医師会の調査を見ましても、糖尿病の問題、高血圧の問題、慢性病にまずしわ寄せがいくんですよ。そして、慢性病の早期発見、早期治療ができなくなれば、健康は悪化し、保険負担も結局重くなって、制度自身の維持もできなくなるんです。
 だからこそ、国民皆保険制度の解体の危機だと言って、日本医師会も日本歯科医師会も薬剤師会も看護協会も、四団体そろって、三割負担は凍結すべきだ、そして、お年寄りの医療費については軽減を図るべきだということを言っているわけですから、この声に耳を傾けるべきだということを強く言っておきたいと思います。
 二つ目の角度です。私は、景気悪化の中でこの国民負担増を押しつけた場合の日本経済に対する打撃をどう認識しているのかを総理に伺いたい。
 九七年に橋本内閣が強行した消費税の増税、医療費の値上げ、合わせて九兆円の負担増がありました。あのときも、総理は厚生大臣を務められていたので、総理お答えくださいよ。財務大臣はだめです。それで、この問題は、日本の経済を九兆円負担増が危機に陥れたというのは、もう歴然たる事実です。
 これが大失政だったことは、当の橋本首相自身が、一昨年四月の自民党総裁選挙の際にこう言っている。結果として今の不況の原因の一つとなっていること、これは私、率直に認めて、国民におわび申し上げますと。当人が言っているんですから、これは失政だということは、もう歴史の決着ついています。
 今回の四兆円の負担増、負担増の額自体は前回に比べて小さいように見えるけれども、経済に与える影響はどうなのか。
 九七年の際には、大体、雇用者の所得が、弱々しいながら景気は回復途上にありましたから、年に平均五兆円ふえていました。五兆円ふえているところに九兆円の負担増をかぶせて、差し引き四兆円の所得が減って大不況になったのが九七年です。
 ところが、今回は、政府の統計で雇用者所得を見ますと、年平均二兆円ずつ減っているんですよ。これは、景気が悪い、リストラや倒産も多い、所得がどんどん減少するもとで、四兆円の負担増、合計六兆円の所得を奪うことになります。下り坂を後ろからぼんと背中を突いて、突き落とすようなものです。
 私は、これを強行した場合に、総理に伺いたいんですが、経済の六割を占める家計にどういう影響があるというふうに認識しているんでしょうか。家計への影響です。総理に伺っています。総理に伺っているんです。
小泉内閣総理大臣 私も答弁しますが、せっかく全閣僚出席しているんですから、より詳細なことは担当大臣に答弁させますが、私は、負担増のみだけに焦点を当てるのは、これは余り好ましいとは思っておりません。橋本内閣の時代と現在違うという状況も考えなきゃいかぬ。同時に、今回は消費税は上げておりません。そして、なおかつ先行減税しています、二兆円の。酒、たばこの二千億円の増税ばかり言いますけれども、二兆円の先行減税をしているということも考えなきゃいかぬ。
 そういう全般的なことを考えて、なおかつ、国債発行の状況とか財政状況を考えながらやっているわけでありまして、社会保障給付もこれはふえているんですよ。福祉関係も予算を減らす中でふやしているんですよ。そういう観点もやはりあわせて考えなきゃいけないなと思っております。
志位委員 またちゃんとお答えになりませんね。私は家計にどういう影響が及ぶか聞いたんです。先行減税、家計に関係ないじゃないですか。先行減税二兆円と言うけれども、大企業向けの研究関係の減税とか投資減税とか、そういうものが中心でしょう。家計に関係がない話ですよ。
 私、家計にどういう影響が及ぶかということを私たち試算してみました。(パネルを示す)これは、九七年と今回の負担増の家計への影響の比較表です。これは、勤労者の標準世帯、財務省がいつも使っているあの標準世帯です。四人家族、片働きの世帯の平均の年間額です。九七年の負担増の際と今回の負担増の際の比較です。これは総務省の家計調査から私が責任を持って算出したもので、あなた方はこういう試算やっていないと思いますが、これは間違いない試算として国会にお出しいたします。
 九七年のを見ていただきたいんですが、このときは、所得、一番左の青い棒、十一・二万円ふえていたんですよ。しかし、消費税などの負担増が十三・六万円であったために、差し引きで二・四万円所得が減って、不況への引き金を引いたわけですね。
 今回、見てください。所得がただでさえ十五・一万円減っているんです。リストラがどんどんやられる、不良債権処理の名で中小企業がつぶされる。所得が減っているんです。所得が減っているところに、今度の負担増は十一・一万円の負担増ですよ。消費税が入っていないと言うけれども、例えば配偶者特別控除、これは来年から実施はありませんけれども、実施されることを決めているでしょう。これは非常に響きますよ、勤労者世帯には。
 ですから、私たちが試算するとこういうものになります。合計しましたら、皆さん、見てください、今度の場合、二十六・二万円の所得が奪われることになるんです。標準世帯でですよ。前回は、二・四万円の所得が減ったことによって、あれだけの不況が起こった。今度は二十六・二万円です。十倍以上の所得減が起こった場合に、これだけ家計を痛めつけたら、私は、橋本内閣の大失政の二の舞になることはもう火を見るより明らかだ、経済破綻につながることは火を見るよりも明らかだと思いますが、総理の見解はいかがですか。
小泉内閣総理大臣 これは、医療費からそういう論理をされるわけですが、家計だけ、関係ないと言っていますけれども、先行減税も関係あるんですよ。
 結局、企業活動を活発にすることによって、雇用の拡大とかあるいはこれから研究投資、設備投資が始まる。全体を見れば経済にいい影響を与えるということで、これは家計にも影響してくる。
 なおかつ、それでは医療費の三割負担をしないで現行を据え置いた場合、国民皆保険制度はどうなるのか。恐らく、もっと公費負担しろと共産党は言うんでしょうけれども、公費というのは税金ですからね。そういう点を考えて総合的に見る必要もあるのではないか、私はそう思いますね。
志位委員 私は今の総理の答弁を聞いて驚きました、共産党は家計だけに注目していると。家計というのは日本経済の六割を支えているんじゃありませんか。家計の消費が経済の六割ですよ。それに注目しないで、一体どこに注目するというのか。大企業を活発にすればいずれは家計に及ぶ、この議論は成り立たないのですよ。
 九七年のこの負担増のときにも、その後、法人税がどんどん下げられた。三七・五%の基本税率はもう何度も下げられて、三〇%まで法人税、下げたでしょう。家計は負担増を押しつけたけれども、大企業は負担を軽くした。それをセットでやったけれども、景気はちっともよくならないじゃありませんか。企業の減税のために家計から吸い上げるというやり方は破綻しているということは、もう事実が証明している。
 私、総理の答弁を聞きまして、家計への影響に対する認識がない、検討もしていない、経済にどういう影響が及ぶかの検討もしない。それでこれだけの負担増を国民に押しつけるということをやったら、これは本当に恐ろしいことになると思います。
 私は、この場で六年前に橋本総理と論戦したことを思い出します。あのときに私は同じ議論をしました。家計が底割れになる、そのとき橋本さんの答弁は、日本の経済は余力があるから何とかなりますよと言って、あれをやったんですよ。しかし、実態はああいう不況の引き金を引いた。そして橋本さんは、余力があると思っていたのは間違いだったと言っている、今、反省すると言っていますよ。
 やはり、こういう問題を何の検討もなしに、家計だけとか言って、まさに六割を占める家計を軽視して、日本経済に同じ過ちをもっとひどい形で繰り返すことになるということは、私はもう明瞭だと思います。
 次に、私、移りたいと思うのです。
 そこで最後に、総理が言ってきたのは、制度をどうするんだ、制度は持続可能にならなくなるじゃないかというお話でした。しかし、私、第三の論点として、庶民に巨額の負担増の政策をやるならば、財政も社会保障も、持続可能どころか、逆にその土台を破壊し、空洞化が進み、持続不可能にする。これも事実で証明されていると思います。
 例えば、最近の日本経済新聞がこう書きました。「厚生年金 空洞化の兆し」。厚生年金に入らない企業がふえている、零細企業が保険料負担を嫌い加入を見送っているためで、加入義務のある事業所のうち二割程度は非加入と見られる、正社員を加入義務のないパートに切りかえる動きもあり、加入者、被保険者はピーク時から百三十万人も減った、既に加入者が深刻化している国民年金に加え、厚生年金でも空洞化が進むと、公的年金制度は大きく揺らぎかねない。
 ここに言うピーク時というのは一九九七年のことです。九七年の負担増をきっかけとした景気悪化で、厚生年金一つとっても、加入事業所が減り、加入者が、この記事では百三十万人減ったと書いてある。
 厚生省に確認しておきますが、この時期にどれだけ厚生年金の加入者は減りましたか。
磯部政府参考人 厚生年金の被保険者の数は、一九九七年度末では約三千三百四十七万人、二〇〇〇年度末には約三千二百十九万人となり、この三年間で約百二十八万人減少しております。
志位委員 百二十八万人減っているんですよ。つまり、社会保障の空洞化という事態が起こっている。
 私は、この事態について調べてみました。(パネルを示す)これは、税収と社会保障収入の推移がこの約十年間ぐらいにどうなったかというグラフであります。
 青い棒線のグラフは税収のグラフです。国税と地方税の合計のグラフです。これを見ますと、一九九四年度に八十六・五兆円だった税収が、九七年には九十一・八兆円にふえていますが、その後ずっと減りまして、二〇〇三年度には七十六・〇兆円と、この間に十五・八兆円税収が落ちている。
 それからもう一つ。緑の棒の方は社会保障収入でありますけれども、保険料と資産収入の合計です。九四年には五十六・九兆円だったものが、九十七年には六十五・三兆円までふえたものが、今では六十・五兆円に減っております。これは直近の数字が二〇〇〇年です。最近はもっと減っていると思われます。景気の悪化と、それからもう一つは資産運用で穴をあけたという問題もあると思います。
 こういう実態があるわけですね。これは九兆円負担増をきっかけにして、九七年をきっかけにして税収も大きく落ち込んだ、社会保障収入も落ち込んだ、合計、合わせて二十・六兆円も税と社会保障の収入は落ちているんですよ。こういう空洞化が起こっているんです。
 ですから、国民に負担増を安易に押しつけるというやり方をとると、結局は税金も減るし社会保障も減ってしまう。これが実態として示されているわけですから、この事実に照らしても、私は、今度の四兆円の負担増をやったら、この点でも持続可能どころか不可能にする、こう考えますが、いかがですか、総理。総理、総理に。
小泉内閣総理大臣 後ほど担当大臣に答弁させますが、逆に、今の改革をしなかった場合に、結局、税で負担しろということでしょう、税で。国債増発も恐らく共産党は反対だと思いますね。全体を考えて、どうするのか、これ。
 これを一部分だけ見てやっているからいかぬ、いかぬと言うけれども、改革をするためには、やはり高齢者にも若い世代にも公平に負担してもらわなきゃいかぬ。そして、皆保険制度というものもやはり維持していかなきゃならないということで、今回三割負担にしている。逆に、三割負担しているのを、乳幼児なんというのは二割に下げている。高齢者についても、これは高齢者必ずしも若年者に比べて低所得とは限らない、今、統計から見ても。だから一割程度は負担していただこうということなんですから、これは負担ばかり見ていますけれども、全体の財政を見ながら、なおかつ減税等、税制改革等を考えながらやっているんですから。
 もっと詳しいことがよければ、担当大臣が答えますけれども。
藤井委員長 塩川財務大臣。(志位委員「いいです、いいです」と呼ぶ)
 私は指名しています。指名権ありますから。志位さん、ちょっと待ってください。
 答弁は答弁権もありますから。(志位委員「簡単にしてくださいよ」と呼ぶ)
塩川国務大臣 志位さんの四兆円、四兆円というのは、共産党は皆四兆円あるいは四兆三千億円と言っています。これは年度をごっちゃにした話で、私はこれいつも、もうこの前から申し上げておるんですが、十六年度実施のもの、あるいは十七年度実施の分も全部入れて十五年度から実施という計算でやっておられるからそういうことが出てくる。実際はそうじゃない。
 確かに、社会保障関係の負担の増は二兆六千億円、これはふえていきます。しかし、税の方を計算しても、一兆七千億ふえてくる、ふえるんじゃありません。このうちの二千数百億円はふえます。けれども、あとは後年度負担になってくるんですから。ですから、それを一緒にして、十四年度にこれだけふえる、十五年度はこうなる、この論理は、私はちょっとおかしい計算をしておられると思うんです。
志位委員 まず財務大臣、よく私の質問を聞いてから答弁してくださいよ。
 私は二〇〇三年度に四兆円ふえるといつ言いました。いつとも言っていないでしょう。政府が今計画をしている負担増の計画が全部やられたら、年間四兆円ふえることになると言ったんです。それは、二〇〇三年度にやられるものもある、二〇〇四年度にやられるものもある、一部は二〇〇五年度もかかっていますよ。しかし、今と比べたら四兆円ふえるという事実は厳然としてあるんですよ。ごまかしちゃいけない。ごまかしちゃいけないです。
 私、この問題、私が言っていないことを、そうやって二〇〇三年度に四兆円ふえると言ったかのようにして、こうやって答弁の時間つぶしをされるのは全く困るということを言っておきます。
 そして、総理の方に戻りますけれども、総理がおっしゃったことは、結局、税金でやるしかないじゃないか、どうするんだ、財源はということだと思いますよ。しかし、私、そう言うだろうと思って、もう一枚こういうパネルをつくってまいりました。
 これは、国と地方の税収のうち、社会保障に向けられている割合の試算です。OECDとILOの資料からサミット七カ国の比較を行いました。
 すなわち、国と地方に納められている税金全体のうち、社会保障の給付となって返ってくる分ですね、それが、見返りがどのぐらいかという率であります。これは直近の数字でありますけれども、日本は二二・〇%、イタリアは三二・三%、カナダは三九・一%、フランスは四二・七%、アメリカは四五・五%、イギリスは五七・八%、ドイツは六五・九%、こうなっております。
 ですから、日本が仮にイタリア並みに一割引き上げたら、増税しなくても税金の支出を大体八兆円ふやすことができます。あるいは、フランス、アメリカ並みに二割引き上げたら、増税しなくても十八兆円の税金の支出をふやせる。イギリス、ドイツ並みに三割引き上げたら、二十四兆円の税金の支出ができるんです。
 これはなぜこんなことになっているかといったら、やはりサミットの諸国の中では、日本が、国と地方を合わせて四十五兆円から五十兆という、公共事業に異常な肥大した額を充てているという財政のゆがみがあるわけですよ。
 ですから、まず税金の使い方にメスを入れるということをやれば、私は、四兆円の負担増の必要はなくなると。逆に、今四兆円の負担増をやれば、私がきょうるる言ってきたように、まず国民の命が犠牲になる、それから日本の経済が本当に破綻の危機に瀕する、それから税制と社会保障の持続可能どころか不可能にする。
 私は、本当に一かけらの道理もないこの計画は、今からでも、やはり将来の社会保障や税のあり方については大いに議論したらいいけれども、この経済危機の中で負担増を押しつける政策はやめるべきだということを強く述べて、次に進みたいと思います。
 不良債権の処理の問題であります。
 中小企業の現場がどうなっているかについて……(発言する者あり)
藤井委員長 志位委員、ちょっと指名しますので。
志位委員 じゃいいです。どうぞ、いいですよ。
藤井委員長 小泉内閣総理大臣。
小泉内閣総理大臣 今、税収のうち社会保障費二二%、これ違いますよ。来年度予算、税収は四十二兆円程度だけれども、社会保障関係は十九兆円ですよ。どんな項目よりも、今政府の予算で一番使っているのは社会保障費ですよ。だから、それはとんでもない間違いですよ。
志位委員 総理も人の質問をよく聞いてください。
 私は、国と地方の税収のうちと言ったでしょう。あなたが言っているのは国税の話でしょう。十九兆というのは国税の話でしょう。国と地方の税収全体の中での支出の割合はこの数字になるんですよ。これはもう明らかです。これは政府の資料なんです。
 ですから、そんな認識もないようで財源財源という議論自体が、本当に間違っているということを指摘します。
 次の問題に進みます。
 不良債権処理の加速という方針のもとで中小企業の金融の実態がどうなっているかについて、私は次に伺います。
 現場では非常に深刻な貸しはがしと貸出金利の引き上げが進んでおります。一月十四日放映のNHK「クローズアップ現代」で、「金利引き上げ・悩む中小企業」と題するレポートがやられました。総理、ごらんになりましたか。なっていないようですね。私は非常に興味深くこれを拝見しました。
 突然の貸出金利の見直しは、運転資金のほとんどを金融機関に頼らざるを得ない中小企業にとって大きな打撃となっています、こういうナレーションから始まります。この番組では、中小企業家同友会が昨年十一月に発表した、貸出金利についての全国千社に対して行った調査を紹介しています。
 過去一年間に金融機関から金利引き上げを要請された企業は全国でおよそ二五%、特に大手銀行との取引の多い首都圏では四〇%に上るという調査結果であります。要請を受けた企業の半数以上が、金融機関から納得のいく説明を受けないまま、無理やり金利引き上げを押しつけられているということも調査結果から明らかになっております。
 一、二%の金利引き上げと言いますが、中小企業の経営にいかに壊滅的な打撃になるか。番組では、ある繊維メーカーのケースを紹介しておりました。
 黒字経営で、返済を滞りなく続けている中、突然に大手都市銀行から金利を二倍に引き上げてくれと要請された。要請に従えば、年間に支払う金利は八百万円ふえる。この会社の経常利益は一千万円。コスト削減に努めて何とか確保した利益のほとんどが、ふえる金利の支払いに消えてしまう。黒字経営で、返済をちゃんとやっている企業ですよ。こういう企業への貸出金利が一方的に引き上げられて、利益のほとんどを吸い上げられてしまう。私は、これは企業の努力の成果をほとんどむしり取るようなやり方で、許されないやり方だと思いますが、総理の見解を伺いたい。
藤井委員長 竹中金融・経済財政担当大臣。
 総理、総理、私は指名していません。
小泉内閣総理大臣 何でもかんでも総理総理と言うけれども、せっかく担当大臣……
藤井委員長 総理、今指名しましたから。
 竹中金融・経済財政担当国務大臣。
竹中国務大臣 経済の問題というのは、実は国民負担の場合もそうでありますけれども、一面だけをとらえると非常に誤った見方になるのではないかと思います。
 先ほどの負担の問題に関しましても、トータルで一体民間部門にどのように負担になるのかということに対して、我々は、政府の貯蓄投資差額というのを出しているわけでありますので……(発言する者あり)
藤井委員長 静粛に願います。
竹中国務大臣 その点で、そういう負担はかからない、九七年とは違うということの試算をきちっとした上でそういった政策をとっておりますので、そういったマクロの、全体のバランスを見ていただきたいというふうに思います。
 お尋ねの中小企業の金融に関しても、これは個別の問題を云々するのは大変難しいと思います。これは、中小企業のお話も、我々も聞くことはありますけれども、確かに、銀行はなかなか貸してくれないというお話がある。一方で、銀行から言うと、いや、実はあそこの会社には隠れた負の資産があって、それで金利を引き上げざるを得ないんだ、そういうお話もある。そのような意味では、なかなか一般論として申し上げるのは難しいのだと思います。
 ただ、あえて言えば、総じて銀行がリスク管理をやはりしっかりしなければいけない、リスク管理をしっかりしなきゃ銀行自身の経営がだめになる、そういった中で、リスクに見合ったリターンを求めるところがふえているのであろうというふうに思います。
 問題は、その場合にやはり優越的な地位を銀行が利用して、非常に強制的にそういった行いがある。これはやはり大変問題なわけで、そういうものに対してはしっかりと監督をしていかなければいけないというふうに思っております。
 我々としては、そういった意味での貸しはがし、貸し渋りに対するホットラインをつくって、それに対して、それを活用して監督を強めようというふうにしておりますので、そうした中で問題が悪化しないように、ぜひしっかりと監督をしていきたいというふうに思っております。
志位委員 個別の問題だとおっしゃいましたけれども、小泉内閣になってから、中堅・中小企業向けの貸し出しは、全国銀行ベースで三十兆円以上減っているんですよ。これは事実なんです。それから、首都圏では四割もの中小企業に金利の引き上げが一方的に強要されているのも事実なんですよ。個別の問題じゃないんです、全体の問題なんです。
 そして、どこがねらい撃ちにされているかということを、NHKの番組でも紹介されていたんですけれども、中小企業家同友会の全国調査ではこういう調査結果が出ているんですね。すなわち、中堅・中小企業への貸出金利の引き上げの要請がどういう企業に対してやられているかということのグラフなんです。これは、NHKでも同じグラフを出されました。(パネルを示す)
 これを見ていただきたいんですが、まず「やや赤字」、「赤字」の企業、ここにはかなり激しい金利の引き上げの要請がやられていることがわかります。こういうところは、事実上、金利の引き上げをのまなければ融資の打ち切りだと、貸しはがしの口実として使われている場合が非常に多い、これが実態です。しかし、今赤字の企業であっても、十年間の不況の中で生きている企業なんですから、金融機関の適切な支援があれば再生の可能性をみんな持っている、そういうところが貸しはがされているという実態がここにあらわれています。これも許されがたいことだと思います。
 ただ、もう一つ、これに注目していただきたい。これはNHKも番組で注目していたんですが、「やや黒字」、この企業がねらい撃ちにされて、金利引き上げの対象になっているんですね。
 この「やや黒字」の企業というのはどういう意味を持つのか。これは、十年来の大不況の中でやや黒字という業績を持っている企業というのは、これはまさに将来伸びていく健全な企業ですよ。そして成長企業ですよ。将来の日本経済の牽引車にならなきゃならない企業でしょう。そこを金利引き上げのターゲットにされているんですよ、今実態として。
 これは、先ほど竹中大臣が、リスクに見合った金利は当然だと言うけれども、リスクに見合った金利じゃないんですよ。取れるところからむしり取っている、これが今の実態なんですね。私、これを見まして、小泉さんがずっと不良債権処理について言ってきたことが全くの空論だったということを裏づけていると思います。
 すなわち、小泉さんは、不良債権処理をやれば成長分野にお金が回るようになる、こう言い続けてきた。しかし、やればやるだけ、実態は逆に成長分野に対する資金供給を困難にしている、これが今の実態なんですよ。逆のことが起こっている。現実には正反対のことが起こっている。これをどう説明するんでしょうか。これは総理に伺いたい。――だめですよ。
小泉内閣総理大臣 より詳しいことは担当大臣に答弁してもらった方がいいと思いますが、確かに今、志位さん言われたような面も一部にはあると思いますよ。そして金融機関についても、努力が足らない点もあると思います。成長分野ともう破綻を免れない分野と見きわめるのは大変難しいと思います。
 現に、私のところにいろいろな話を聞かせてくれる方も、むしろ成長分野のところに資金が行っていない面もあるということを聞かせてくれる方もいます。この不況下でちゃんと黒字でやっている企業は大したものですよ。これを成長分野と見きわめて、単なる担保とかそういうのじゃなくて、その経営者の手腕とかそういうところに融資するというのは、やはり金融機関として努力が大切だということは認めます。全体として、しかしながら、不良債権処理を進めないと、今の金融機能というものがうまく機能しないというのも事実だと思います。そういう点をよく考えてやっていきたい。
 もっと詳しいことは、担当大臣からお願いしたいと思います。
竹中国務大臣 志位委員言われたように、一部の銀行の中で、不良債権処理の中の銀行自身も大変苦しいわけですけれども、なかなかやはり、いわゆる貸し渋り、貸しはがし的な、社会的な問題が起こっているであろうということは、私たちも否定する気はありません。
 その点に関しては、したがって、セーフティーネットでありますとか、我々もそのためにホットラインをつくって情報を収集しているわけでありますし、さらには新しい、新規の参入の仕組み等々も考えている。さらには、中小企業の融資編のマニュアルの中では、とにかく中小企業、零細企業については、財務内容だけではなくて、総合的に勘案して、経営実態を踏まえて総合的な判断をするようにということを繰り返し繰り返し述べているし、その周知徹底を図っているところであります。
 ただ、重要なのは、これはまさに総理おっしゃったとおり、では不良債権がたくさんあると融資をしてくれるのかというと、これはあり得ないわけでありますから、やはり不良債権を処理していくということは、これはどうしてもやっていかなければいけない。
 その中で、今まで銀行、なかなかリスク管理にも日本の銀行はなれていない、その意味では、日本の銀行、しっかりしていない、していなかったというふうに思いますけれども、その銀行をきちっとさせながら、一方で新しいセーフティーネットの保証の制度、政策金融の制度、さらには新規の参入とか、ありとあらゆる総合的な手段でもって問題の発生を抑えながら、不良債権の処理を進めていきたいというふうに思っているところであります。
志位委員 竹中大臣は、銀行の貸し渋りを否定しない、いろいろ対策を打っていると言いましたけれども、それをさせるのはあなたなんですよ。その自覚がないんですね。
 不良債権の処理を二、三年と期限を区切って無理やりやれ、バランスシートから落としなさいということをやれば、銀行も損失が出る、自己資本に傷がつく。自己資本の傷を取り戻そうとしたら、銀行がやることは二つしかありませんよ。分母を小さくする、資産を圧縮する貸しはがしと、分子を大きくする、そのための貸出金利の引き上げですよ。あなたがやらせているんですよ。あなたが金融担当大臣になってから、日本の経済、ちっともいいことないじゃないですか。すぐやめていただきたい。研究室に帰った方が世の中のためだと思いますよ。
藤井委員長 竹中金融・経済……
志位委員 いいです、もういいです、いいです。
 それで、私は……
藤井委員長 そこまで言ったら、答弁権がありますから。竹中金融・経済財政担当大臣、どうぞ。
竹中国務大臣 先ほどから中小企業に対する貸出残高が減っているというふうにおっしゃいましたけれども、これはここ数年来ずっと減ってきているわけですね。これは、不良債権の処理を進めざるを得ない状況の中で、貸出残高というのはやはり減ってきているわけです。
 今回、不良債権に関して、より総合的な観点から、不良債権の処理はもう進めざるを得ないんだから、資産の査定、自己資本の充実、それとガバナンスの強化、それを総合的にやろうということが我々のプログラムの目標なわけです。
 したがって、確かに、資産査定しっかりやってもらわなきゃいけないんですが、同時に、銀行は、現実問題として、自己資本の充実に対して今までとは全く違った行動をとり始めたじゃないですか。その中で自己資本を充実していく。自己資本を充実していくということは、とりもなおさず貸し出しの残高、貸し出し余力を高めるということであって、そうした中で銀行も活性化し、健全な資金が健全な企業に回るような仕組みができていく。そのプロセスを経ずして、不良債権処理をやめてそれで金融がよくなるということはあり得ないじゃないですか。
志位委員 だれが不良債権をやめろと言いましたか。不良債権を無理やりバランスシートから期限を区切って落とすようなやり方じゃなくて、もっときちんとした解決方法があると言っているんです。これは今から言います。
 それから、今、竹中さんがおっしゃったことで、全然事実に違うことをぺらぺら言ってもらっちゃ困る。ずっと貸し出しは減り続けてきたと言いますけれども、私、数字言いましょう。この五年間で六十五・四兆円減っているうち、三十三兆円は小泉内閣になってからですよ。このわずか一年半のうちに半分減っているんですから、あなた方の政策的な責任なんです。それを全然自覚していない。私は、この問題、政府のとっているやり方というのは全く空理空論で、現実を見ないものだと思います。
 先ほど成長分野にお金が回らないじゃないかということを言いましたけれども、これは経済財政諮問会議でも同じような議論をやられて、テレビで紹介されるような優秀な技術を持ったところにもお金が回らないとさんざん問題になったじゃないですか、あなた方のところでも。やはり現実によって破綻してしまっている。
 私、「クローズアップ現代」を見て非常に印象に残ったのは、これは茨城のある地方銀行ですけれども、この銀行では、百社の格付を、貸出先、上げているんですよ。つまり、経営改善のためのアドバイス、サポートを銀行がやっているんです。一緒になって経営を立て直して、そして、破綻懸念先から要管理先に七十社、それから要注意先から正常先に三十社、百社の格付を上げた。そして、不良債権を減らして、六十億円の引当金を減らしたというんですね。
 銀行というのは、単なる金貸し業じゃないんです。借り手企業を育成、支援する、これ大事な社会的機能を持っているわけですよ。そういう活動をしっかり銀行がやった結果、不良債権が減っていく、この茨城の地方銀行がやっているように。こういうやり方こそ、私は政治が支援すべきだと思います。
 ところが、これは事情をよく聞きますと、時間がかかるんです。この茨城の地方銀行でやっているのは時間がかかる、時間が。すなわち、銀行と取引先というのは、信頼関係がなかなかないんですね。ちょっと自分の商売の状況を正直に言うと融資を打ち切られるという心配がある。信頼関係がない。だから、本気になってこれは立て直してくれるとわかるまで一年かかるといいます。それで、再建計画をつくって、企業が本格的に再建の軌道に乗るまで四年から五年かかるといいます。それぐらいの手間と時間がかかるんですよ、企業を立ち直らせるには。
 やはりそういうやり方をとるべきであって、二、三年と期限を区切ってばさっと落としてしまうというやり方をとったら、今ある成長分野の芽を摘んでしまう。長い間赤字で苦しんで、しかし生きている企業、支援さえあれば立ち直れる企業の芽も摘んでしまう。これは、やはり政策の転換を求めたいと私は思います。
 最後に、私は、公共事業受注企業からの献金問題について伺います。
 昨年二月の長崎県知事選をめぐる違法献金問題で、自民党長崎県連の浅田前幹事長らが逮捕されるという事態が起こりました。この問題で重大なのは、公職選挙法百九十九条、二百条の特定寄附の禁止事項、すなわち公共事業受注企業からの選挙に関する寄附を禁止する条項に違反したことが犯罪とされたということであります。公共事業受注企業からの献金は、仮にそれが政治献金という名目で、政治資金規正法に基づいてきちんと届け出がされていたとしても、実質的に選挙に関する寄附であれば違法になります。そのことを長崎の事件は明らかにした。
 これは、政府に確認しておきますが、公職選挙法で言う「当該選挙に関し、」というのは、選挙に際し、選挙に関する事項を動機にしてという意味であると政府はこれまで説明してきましたが、間違いありませんね。
片山国務大臣 昔から、今、志位委員が言われた解釈だと、こういうことにしております。
志位委員 今、確認をいたしました。
 長崎の事件を受けまして、自民党の全国幹事長会議では、これで違法ならどうやって政治資金を集めればいいのかという声が上がったと伝えられました。違法献金は長崎だけの問題ではなく、全国の問題ではないのか。
 我が党は、独自に調査を行いました。その第一次分が、皆さんに今配付をさせていただいた資料であります。今回、調査対象としたのは、国会議員で、閣僚、副大臣、与党各党首脳に限って調査対象といたしました。
 まず、私たちは、選挙に際しという条件に当てはまる献金を抜き出しました。すなわち、対象にした国会議員ごとに、公共事業受注企業からの選挙期間中の献金を抜き出しました。選挙期間中というのは、衆議院選挙については、与党党首会談で投票日を正式発表した二〇〇〇年五月十八日から投票日の六月二十五日まで、選挙期日が決まっている参議院選挙については、約一カ月前の二〇〇一年六月二十一日から投票日の七月二十九日までといたしました。
 次に、その中から、選挙を動機にという条件にかかわって、献金を行った企業ごとに、過去三年間の献金の有無、金額を調査し、選挙期間中の献金が明らかに突出している、多いものに限って一覧表といたしました。
 その結果が、皆さんにお配りした資料であります。五名の閣僚、七名の副大臣、七名の与党首脳、合計十九名の政治家が選挙期間中に、合計七十四社の公共事業受注企業から合計八千二百八万円の献金を受け取っていることが明らかになりました。
 閣僚のリストを見ていただきたいんですが、九七年、九八年、九九年、総選挙の前三年間は献金がゼロなのに、二〇〇〇年の総選挙の年だけは選挙期間中に献金している企業がずらりと並んでいることがわかると思います。
 上からいきますと、解散二日前の五月三十一日に五十万円献金している企業がありますが、この企業はその前の三年間は献金ゼロです。次のリストを見ますと、総選挙の公示日の六月十三日に三百万円献金している企業がありますが、この企業もその前の三年間は献金はゼロです。それから、公示三日後の六月十六日に三百万円献金している企業がありますが、これもその前三年間はゼロです。その次も、六月十六日二百万の献金をしている企業がありますが、その企業についてもその前三年間はゼロです。こういう企業がずらりと並んでいるでしょう。
 それまで全く献金が三年間はなかった、私たち責任を持って調べましたが、三年間はなかった企業が、解散や選挙の公示の声を聞いたら、にわかにずらりと献金を行う。
 これは、首相にまず基本的にこの表を見た感想を伺いたいのですが、これらの献金というのは、明らかに、先ほど片山大臣がおっしゃられた、選挙に際し、選挙を動機に行われた献金であるということはだれが見てもこれは明らかだと思いますが、いかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 私は、選挙に際しということでなくて、政治活動として一般的にもらっている献金は事実あります。しかし、正規に政治資金規正法で届けて、選挙の際にもきちんと収支報告をして適正に処理していると思っています。他の閣僚についてはそれぞれ、私はわかりませんけれどもね。
志位委員 今総理は、政治活動としていただいている、政治資金としていただいているということをおっしゃられました。これは、政治資金として届け出をちゃんとしていても、実質的にこれは選挙献金だと認定されたら違法になるというのが長崎の事件なんですよ。ですから、政治献金として届け出ていたから違法でないということにはならないのですね、これは。もし、これは選挙資金だというふうに届け出ていたら、即、公選法百九十九条、二百条違反で違法ですよ、これは。即違法ですよ。また、もし届け出ていなかったら、やみ献金でこれも違法ですよ。当たり前なんです、これは。政治献金として届け出ていても実質的に選挙献金の場合は違法になるというのが長崎の事件なんです。
 あなたの例について出されたので、これを見ますと、あなたのところに行っている企業も、五十万円、これは解散の二日前に五十万円出しているわけですけれども、その前三年間は献金ゼロでしょう。献金ゼロの企業が、ちょうどこの解散の二日前というのは、我々野党四党が内閣不信任案を出した日なんですよ。ちょうどこの不信任案を出したその日に、ずうっと献金していなかった企業がぼんとお金を出す。これは選挙を動機にしたお金だと推定されてもしようがないでしょう。どうですか。そうでしょう。
小泉内閣総理大臣 それは、私はこれが実質的に違法だという捜査を受けたこともないと聞いております。自民党支部でしょう。私が代表を務める自民党支部です。
 そして、なおかつ、五十万円という額が突出しているかどうか。私は突出しているとは思いませんけれども、かなり多額だということはありがたいと思っております。そういう方々の政治活動資金の提供によって、党の活動も、また私の活動も今まで成り立ってきた部分が随分ありますから、それはきちんと適正に処理しなきゃならないと思っております。
志位委員 五十万円だからいいということにならないですよ。五十万円でも、この法律というのは非常に厳しい法律で、禁錮一年数カ月、執行猶予何年という刑を受けた方もいるんです。ですから、額は関係ないんです。
 それから、ゼロ、ゼロ、ゼロだったものが五十になるのを、これを突出と言うんですよ。
 私は、総理の献金について、一つ一つその違法性をここで、裁判所じゃありませんから、論ずるつもりはありません、これ以上。しかし、このリスト全体について、同じようなケース、たくさんあるでしょう。たくさんあるでしょう。これは、自民党の総裁なんですから、全体について調査をする、国会に報告すると。少なくともこれは、私は、選挙に関する寄附だと疑われても仕方がない献金であることは間違いないものがこの中にたくさん含まれている、ですから、総裁としてきちんと調査をして国会に報告すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 それは、すべての議員に対して、きちんと法にのっとって処理するということは、常に指示しているところであります。それぞれ、議員の活動あるいは選挙区の党の支部の活動は、実情は違うと思いますが、それは疑惑が持たれたら、御本人なり責任者が説明するということは、私は当然だと思っております。
志位委員 総裁の責任、首相の責任を問うているんです。自民党の議員、たくさんいるでしょう、この中に。閣僚だってこの中に五名入っているでしょう。七人の副大臣が入っているでしょう。閣僚の中にだっているんですよ。これは、個人の政治家の問題で済まないんです。
 もう一回、ちゃんと答えてください。きちんとこれについて調査をすると。この問題は、政府の答弁でも、その目的、趣旨、内容、状況を個々に判断して、その問題、違法性についてきちんと吟味をする必要があるというのが、これまでの答弁でもたくさん出ていますよ。ですから、みずから調査したらどうですか。いかがですか、総理。
片山国務大臣 私も志位委員のリストに名前が出ているようですが、これは、私のところの政党支部に対する、政党活動に対する寄附でございまして、これは適法に法律に基づいて処理したわけであります。
 選挙のとき、選挙のときと言われますが、選挙のときが政党支部の政治活動も一番盛んになるときなんですよ。だから、そういうときに、一般的にそういうケースもある。しかし、いずれも政治活動に対する寄附として、適法に出し、適法に処理したわけでございます。
志位委員 私、一人一人名前を挙げなかったのに、どんどん私の私のと言って出てくるんで、言いますけれども、片山さんの場合、私たちが調べただけで合計九社ですよ。この九社は、九社全部が、九六年も献金ゼロ、九七年も献金ゼロ、九八年も献金ゼロ、九九年も献金ゼロ、二〇〇〇年も献金ゼロ、そして二〇〇一年の選挙期間中だけに全部が、献金が集中しているんですよ。ですから、これは選挙を動機にということにならざるを得ないじゃないかということを問題にしているんです。幾ら政治活動だと言ってみたところで、選挙のために出したんだと言われたって仕方がない。
 そうじゃないと言うんであれば、そうじゃない証拠をきちっと出す必要があるんですよ。疑惑をかけられたら、疑惑をかけられた政治家が証拠を出す必要があるんです。
片山国務大臣 何度も言いますが、政党支部に対する政治活動の寄附でございまして、それは、それが違うと言うんなら、どうぞ志位さんの方で証明してください。
志位委員 だから、私は、幾ら政党支部に入れられた政治資金として処理されたものであっても、実質的に選挙献金だったら、違法になる可能性がある、そうじゃないと言うんだったら、この献金の意味を説明する義務があなた方にある、このことを言っているのでありまして、私たちはこの問題を引き続きやっていきます。
 私たち、企業献金の禁止、公共事業受注企業からの献金禁止、これを言ってまいりましたけれども、あなた方はやろうとしない。現行法すら守ろうとしない。こういう利権と腐敗の構造が浪費の構造をつくり、国民の暮らしを痛めつけている。この問題を徹底して追及するということを述べて、質問といたします。
藤井委員長 これにて志位君の質疑は終了いたしました。
 次に、横光克彦君。
横光委員 社民党の横光克彦でございます。質問をさせていただきます。
 総理は、このデフレ不況、デフレ克服が今の内閣の最大の課題である、この克服に向けて全力で取り組む、このように今表明されております。
 そういった意味から、財政の分野でこの十五年度予算案、デフレ克服に向けて十分対応されている予算案であるかどうか、まずその御認識を伺いたいと思います。
小泉内閣総理大臣 限られた状況の中で対応した予算だと思っております。
横光委員 デフレというのは、本当に克服することは、口では言いますが、そう簡単なものではない。そういった意味で、財政での役割、今の御答弁ではその意欲さえ私は見られない、そういう気がしますよ。デフレ克服に向けてのこの予算案は余りにも力不足であると私は言わざるを得ない。いわゆるもっともっと景気にウエートを置いた、あるいは国民の不安を解消するような、そういった予算案でも何でもないわけですね。
 それが証拠に、まだこの予算案が審議される前から与党の幹部の皆様方は、もう既に十五年度の補正の声が上がる。さらに、もっと激しい人は、十四年度の二次補正もやるべきだというような声が上がる。こういうことは、審議している我々にとっては非常に不愉快でございます。
 ある面では当たっている部分がある。いわゆるそれほどにこの予算案は不十分であるということの声を上げているわけですね、財政運営が十分でないということ。そしてもう一つは、それほどに経済が危機的な状況にあるという声の裏返しであろう、私はそういうふうに思うわけでございます。
 デフレの原因、これはきのう、きょう、質疑者あるいは答弁者、それぞれ意見を述べられておりますが、まさにそのとおりだ。いろいろなものが、あらゆるものが複合的に複雑に絡んでデフレが深刻化している、こういうところで私も認識を一致するところでございます。いわゆる循環的なデフレではない、構造的なデフレであるということですね。
 そういった状況の中で、総理はいつも、我々が経済関係で暗い数字を挙げますと、暗いところばかり見ないでくれ、明るいところも見てほしい、こうおっしゃられます。しかし、明るいところがどこかあるんですか、経済関係で。あれば言ってください。あれば、私たちだって、こういう明るい面はありますが、でも、こういう厳しいところがありますから、こういう厳しいところはどうしますかという質問になるんですが、明るいところを言ってくれと言っても、明るいところがないものですから、どうしても暗いところばかり言う。
 しかし、その暗いところを見逃してばかりいてはだめでしょう。やはり、つらいかもしれないけれども、そういった暗い数値をしっかりと認識した上でなければこのデフレに対応できないし、ましてや克服することなんて私は非常に難しい、そういった思いでいろいろと数値等を提案しているわけでございます。
 このような状況の中で、克服すると先ほど言われました。内閣府の試算では二〇〇五年に、先ほど総理もそのようなことをおっしゃられましたが、二〇〇五年度には克服するとなっておりますが、試算どおり本当に克服する可能性はあるんでしょうか。総理、お答えいただきたい。
 いや、内閣府の試算ですから、最終的には総理がお決めになったことですから。
小泉内閣総理大臣 それは、小泉内閣が決めたところですが、担当大臣がちゃんと出席しておりますから、担当大臣から。
竹中国務大臣 デフレは確かに厳しい状況であるわけですが、物価の下落だけをとりますと、二〇〇一年、平均で見ますと、いわゆるかつての卸売物価、企業物価はマイナス二・五%程度の低下でありました。最近の四半期について見ますと、この低下幅はちょうどその半分、マイナス一・三ぐらいになっておりまして、これは、今年度の予想成長率はゼロであったものが〇・九ぐらいになりそうだ。
 その意味で、経済は厳しいながらも一応予定より少し上ぐらいのところで何とか推移している。それに補正予算及び先行減税を加えて、需給ギャップも少し縮まっておりますので、先ほど申し上げましたように、二年前に比べますと、もう物価の低下幅も下がってきた。これに金融の政策等々も合わせて、これで何とかデフレを克服に持っていきたい、そのように考えているわけでございます。
 経済、確かに暗いわけですけれども、例えば、自動車メーカーに関しては史上最高の利益をこの半期で出している、こういう明るい面もあるわけですので、ぜひいい方向に持っていきたいというふうに思っております。
横光委員 確かに自動車関係、すばらしい収益を上げているわけでございます。そういった確かに明るい面もありましたね。済みませんでした。
 しかし、今のような試算あるいは見通し、私は甘いと思いますよ。これから不良債権、処理が始まるわけでしょう。そういった中で、今のような見通しでは、二〇〇五年にデフレを克服するということは、すべての政策を大転換しない限り私は不可能じゃないかという気がする。現に、三菱総研では、二〇〇八年度まではデフレは解消しないであろう、そういった民間の声もある。そういった状況であるということを私は認識していただきたいということでございます。
 このように、経済が停滞をしてデフレが進行すれば、当然のごとく財政のバランスは大きく崩れてしまう懸念は非常に高いわけですね。現に、この十五年度予算案を見ましても、税収は歳出の半分ちょっとしか賄っていない。いわゆる大きく財政はバランスを崩してしまっているわけですね、十五年度予算においても。ですから、このようなデフレ下においての財政運営というのは、私は、慎重の上にも慎重を期すべきであった、もっと細かなところにも配慮すべきであった、そういった配慮をしていれば、あのような大きな税収不足に落ち込むことはなかったのではないかという気がしてならないわけでございます。
 昨年の秋口に税収不足が懸念されまして、そして補正予算が必至、そういった判断をされた段階で私は政策を転換する必要があったのではないかという気がするわけですが、結果的には補正予算を編成せざるを得なくなってしまいました。そしてまた、総理は、この程度の約束は守れないのは大したことではないというような発言に至ってしまった、公約を守れなかったということで。そして、一番総理が避けたかった、結局、財政の出動も許さざるを得なかった、こういったことになってしまったわけですね。
 ですから、補正をやらないと言ったのなら、やらないと言ったのはそれに関しては政策ですが、結果的にやることになったのなら、もっと早く、もっとスピーディーに、的確な判断で私はやるべきではなかったのかと。結局、総理が三十兆円枠に固執した余りタイミングを逸してしまって、そしてその結果、マーケットに失望感を与えてしまった。
 民間の試算では、十月―十二月期のGDP、これは下方、マイナスに押し下げる、ひいては最悪の失業率、それから株価、あるいは経済指標の下落につながっているわけでございます。これはどこから見ても、先ほどから各委員の質問にございますが、私は明らかに小泉内閣の経済失政である、このように思うわけですが、総理もそのような認識はお持ちなんでしょうか。
小泉内閣総理大臣 思い切った景気対策を打っていないと御批判されますが、私は、三十兆円枠を守れなかったことについても批判を受けています。質問をされる方は、いろいろな観点から批判されるのは御自由ですが、それじゃ、本当に守って好ましかったのか。経済は生き物です。これ、じゃ、守れ守れと言って三十兆円枠を守って、この景気経済情勢を配慮して、どういうことになるのかという点も考えなきゃいかぬ。
 私は、税収の落ち込みと、あるいは最近の経済状況、あるいはアメリカ初め外国の景気情勢を見ながら、私の三十兆円枠を守るということと柔軟に対応するのと、どっちがいいかという判断をして、補正予算を組むことによって三十兆円枠は守れなかった、それは率直に認めます。
 それで、景気対策、不十分だ、不十分だと。片っ方は、三十兆円枠を守れなかったのはおかしい、おかしい。守れなかったからおかしいのか、守ればよかったのか、そういうこともやはりよく考えて、立場をはっきりして質問されればわかるんですが、どっちやっても批判、どっちやっても批判、そういう点がもう、どういう立場で質問されているのかというのはなかなか難しい、答弁も難しいんですけれども、その点もやはり御理解いただきたいと思います。
横光委員 私は、昨年の秋口から今日までの、補正予算の編成する時期、タイミング、そういったことが大きく影響したんじゃないかということを言っているので、そういったことが現在のさらなる経済状況の悪化につながったのではないか、そういったことを言っているのであって、まさに経済は生き物でありますし、間違うことだってありますよ、当然のごとく。
 ですから、間違いは間違いと認めるか認めないかが次の一歩につながるわけでしょう。どういう方向に、この考え方の違いによって方向も違ってくると思うんですよ。ですから、そういった、ああ、あれはちょっと失敗だったなという思いがあって次の方向に進むのか、いや、あれは間違いでなかったという思いで進むのか、そこの違いがあるということを私は言っているわけでございます。
 今、小泉さんいろいろとおっしゃられましたが、私からすると、やはり昨年の秋口から今日までの、いわゆる経済失政に対する言いわけにしか聞こえない。これは、国民の皆様方もなかなか納得する今お答えではなかったのではなかろうかと思います。総理のこだわりが、今後の社会的コスト、つまり歳入の欠陥とかあるいは国債の増大とか、こういったことを招いたのはもう厳然たる事実でございますので、そういったことからすると、やはり大きな責任があるのではないか、そういう気がするわけでございます。
 また、デフレ克服のためには、もちろん金融や税制、いろいろなものが対応が必要でございましょうが、財政の面におきましては、デフレ克服の一番大事なことは財政のむだ、むだ、これをいかに排除していくか、また排除できるかどうか、これが大きな課題だと私は思うんですね。
 ですから、例えばこういうふうにデフレが進行する中、コスト意識の高い民間企業は何をやるか。まず、支出を物すごく厳しくチェックしますね。そして、むだがないか物すごく努力をする、むだを省く努力をする。そうして、その節約したことが評価される。この節約の中にリストラが入り、非常に厳しい現実が起きているのは残念ですが、そういった節約したことが民間企業の場合は評価される。
 ところが、公的部門はどうですか、そういった節約が評価されることは非常に少ない。評価されるどころか、むしろ省庁で使い残しをしようものなら、省益を侵すものとみなされて批判さえされるというのが現状なんですよ。
 今でも政治家や官僚は、依然としてこの予算獲得に示したパワーがそのまま政治力として評価されるという、そういった社会風土がございます。これは、財政支出によって社会的にどのような成果が上げられたかという大事な点は横に置いておいて、この道路は何々先生がつくった道路だとか、あるいはあげくの果てには銅像を建てて業績を評価するとか、そういった時代があった。高度経済成長時代はそうだった。
 そして、そういった社会的風土はまだ残っていると思うんです。そういった風土が結局、事業量が確保されれば社会資本が充実されるという錯覚を生んでしまって、そこに私は大量のむだが生じたと思っているんです。
 ですから、こういった構造的なところを直していかなければならない。つまり、歳出節約に努力したことが評価される社会に変えていかなければならないと思うんですね。ですから、そのためには、歳出の節約に努力した省庁では次年度の予算概算要求上配慮したり、あるいは努力しなかった省庁には何らかのペナルティーを科す、それぐらいのことを検討する時期に来たんではないか、そういう時期に来たんではないか。この辺のことを総理にお聞きしたいと思います。
塩川国務大臣 まず、横光さんにお答えする前に、我々は平成十四年度のときに、総額でいうと約一〇%の予算の削減をいたしました。そして、八十一兆円の現計を保った。そして、十五年度においては、十四年度においてと同等の予算規模で実質やっていくということにいたしました。
 そのことは何を意味するかといいますと、十四年度から十五年度に対して、当然増だけで、社会保障関係だけで一兆五千億円ふえるんです、一兆五千億。当然増なんです。しかも、きょう、今御審議いただいておる健康保険の保険料の値上げ、三割に上げるということ等をお願いして、なおかつ一兆五千億円上がる。これを、予算の吸収をして十四年度並みにおさめたということでございます。
 そのような節約をしておるということは、これは何をしておるかというと、一般歳出を削る以外にないんです。国債費と地方交付税は削れませんので、一般歳出で削っております。
 その一般歳出を削るについて、一つのことは、めり張りをつけようということでありました。めり張りのいい方は、増額しましたのは社会保障関係であり、それから科学技術の振興ということ、これは将来の産業開発を見ましてそれをいたしました。そして一方、削る方は、公共事業を中心として、ODAであるとか、あるいは文教施設の一部のものについて削るとか、そういうことを努力してめり張りをつけて、十四年度と同等の予算規模にしたということであります。
 そして、それでは何を効率化したかとおっしゃいますけれども、我々は一昨年の夏ごろから、各予算の執行状況を、主計局を中心として、効率的であるのかどうかということ、むだがないかどうか調べさせました。そうしたら、随分とそういう要件が出てまいりまして、全部で、反映いたしましたのは、件数にいたしまして約四十八件。四十八件、要するに合理化、効率化ということを進めてきたんです。
 その中の一つを申しますと、例えば自動車、省庁において持っておりますところの乗用車あるいは貨物用の自動車、こういうようなものは省庁の中で整備をしたり部品を買ったりしておりますが、これを民間委託にして、民間の整備工場へ任せたら随分と違ってくる。そういうようなことが一例としてあるわけでございます。
 そういうのを削りまして相当な節約をして、そしてやっと、当然増を含んで十四年度以内におさめたということであります。
横光委員 今、事細かにおっしゃられましたが、私は、まだまだ、国民が納得いくような、財政のいわゆるむだなものが随分あるんじゃないか。今、執行状況をこれから勘案するということがございました。これは非常に大事なことでございます。決算がこれから非常に私はウエートが大きくなってくる。こういったところで初めて大きなむだがいっぱい見えてくるんですね。そういったところは、やはり鋭意、物すごく反映させていかなければならない。もっともっとむだな状況がある。
 例えば、年末になりますと道路が掘り返される。あの姿なんというのは、まさに国民からするとむだの典型にしか見えないわけで、そういったことがありながらなお負担が来るわけですから、非常にそういうところが納得いかないわけなんですよ、国民から見ると。
 ですから、この予算案で、やはり年金の物価スライド実施とかあるいは生活保護の見直しとかいうものも盛り込まれていますよ。しかし、一方で財政構造の甘さを放置したままこういったことをやられたら、国民はたまったものじゃないという気がするわけですね。ですから、やるべきことはまずやってほしいということを今お願いしている。
 年金受給者の皆様方、それは物価スライドですから、上がるときは上がる、下がるときは下がる、やむを得ない部分はありますが、まずやってほしいことをやったならというような気があると思うんですね。
 今度、夫婦二人のモデル、厚生年金の場合は約二千百三十三円給付が下がる。国民年金の方は千二百円下がる。これは下がるだけじゃない。もう医療費は上がっているわけですね、病気になってしまえば。それから介護保険料も上がる。まさに私は、高齢者の方々、今、踏んだりけったりの状況に追い込まれているんじゃないか、そういう気がしてならないわけでございます。
 また、こういった国民負担というものが今どれほど国民の生活に重くのしかかっているか。これは国民の皆様方がいろいろな世論調査で、数値で示していますように、本当にやってほしいことの第一が何であるかということはもう閣僚の皆様方も御存じでしょうが、小泉経済対策に対して国民はもう既に期待していないんじゃないかというような数字が出てしまっているんですよ。
 ですから、そういったマイナスの期待しかしないのであれば、国民はそのとおりの行動をとってしまいますよ。つまり、消費の買い控え、あるいはリスクの回避。そうしますと、どうなりますか。先ほどお話がございましたように、一番景気回復に大きなウエートを占める個人消費が伸び悩んでしまうわけですね。物すごく影響を与える。
 ですから、私は、今大事なことは、こういった不況下の中では、経済のマクロモデルによる説明ではなくて、国民の信頼を取り戻すことが最も重要な課題である。国民の信頼を回復することこそが景気の回復に一番近道である、そんな気さえするわけです。そういった意味からも、国民の負担を少しでも軽減する努力が必要ではなかろうか、私はこのように思うわけです。
 その一つが、先ほどからお話が出ております医療費ですよ。これは、社会保険方式というのは本当に非常にわかりやすいと思うんですね。保険料がふえれば、当然のように充実したサービスが受けられる。また、サービスを引き下げてしまえば保険料が引き下がる。非常に連動した形で、非常にわかりやすい方式だと思うんです。
 ところが、今度の医療費の改定、昨年、数の力で国民の声に耳を傾けることなく決めてしまったこの健康保険法。では、医療の質は改善されたんですか、向上したんですか。これは今までどおりなんですね。ところが、負担だけは上がってしまった。いわゆるこれまでの連動が崩れてしまったわけです。給付が上がれば負担も上がる、こういったものが崩れてしまった。まさに異常事態だと言わざるを得ない。ですから、私は、これは保険制度の根幹を否定するような状況に今陥っていると思うわけでございます。
 医療の効率化を進め、そしてまたむだを削るということが、政治の責任として当然のごとく先に行われるものでなければならない。ところが、医療の抜本改革を先送りして負担増だけ先に行われた。これは小泉内閣の本末転倒の姿だと私は思わざるを得ません。
 今度、健康保険法附則に、二〇〇二年度中に、診療報酬の体系の見直しについて、その具体的内容や手順及び年次計画を明らかにした基本方針を策定することになっておりますが、どこまでその進捗状況が進んでいるか、厚労大臣、お聞かせください。
坂口国務大臣 抜本改革につきましては、現在鋭意進めているところでございまして、二〇〇二年度中、ことしの三月末までに明確にしまして、お示しを申し上げたいというふうに思っております。その中には、今お話のございましたように、余分なところに出ないように、むだをどうしたら省けるかといったようなこともあわせてそれは発表をしたいというふうに思っております。
 ですから、保険料の徴収にいたしましても、今まで年金は年金、医療は医療というふうに別々に徴収しておったのを一つにして、そして徴収費を節減するとか、そうしたこともございますし、またその他の保険制度の整理統合化もやりたい、こういうふうに思っている次第でございます。
横光委員 何か、今の答弁じゃよくわかりませんね。この診療報酬体系の見直し等を、基本政策をつくるというのはどこぐらいまで進んでいるのか、いつごろまでに実施していくとか。
 では、例えば包括払い制度はどのようになっておるんですか。
坂口国務大臣 今、三月末までに明確にお示しを申し上げますということは、言ったとおりでございます。
 包括払いにつきましては、これはことしの四月からでございますけれども、大学病院等大きい病院を中心にいたしまして包括払いの方に移行をしていく。ただし、四月からといいましても、大学病院の中には一、二カ月、運用期間、少し調整期間をとってほしいというような話もありますから、それはそれぐらいはやむを得ないというふうに思いますけれども、原則といたしまして四月から包括払い制度に移行をしたいというふうに思っております。
 では、もう少し詳しく申し上げましょう。
 一つは、保険制度の抜本的な改革は、統合化、統合一元化を目指した方向に進めていく、その中に高齢者医療制度もきちっと位置づける、これが一つでございます。
 もう一つは、診療報酬体系につきましても、その診療報酬の基本をどうするか。基本を明確にして、医療従事者の皆さん方にも、それから患者の皆さん方に見ていただいても、それが明確になるようにしていこう、これが二番目でございます。
 そして三番目には、質の高い医療をどう提供するかということの、これは中身は細々としたものがたくさんありますので、時間とりますから今言いませんけれども、そうしたものをまとめて、国民の皆さん方にもお答えをしていこう、こういうことでございます。
横光委員 抜本改革、抜本改革と言いますが、非常にいろいろな項目が含まれていると思うんですね。ですから、ある項目には三年後とか、ある項目は五年後とか書かれている部分がありますが、いわゆるこの抜本改革をやるということを前提に今回皆さん大きな痛みを強いられているわけでしょう。その抜本改革の姿がなかなか見えないんですよ。本当に抜本改革をやるのだろうか、またこの前のように先送りされるんではなかろうかという不安があるわけですね。ですから私は、そこのところは逐一国民に、やはり安心を与えるために説明していくべきであろうと。
 小泉さんの言葉で言えば、改革なくして成長なしと言うんなら、この医療制度の抜本改革なくして負担増なしと言わなきゃなりません。ところが、抜本改革先送り、負担増ありでは、これは国民はなかなか納得いかないわけですから、そこのところを国民の皆様方は一番今心配、また先取りばかりやられるんじゃないかという。抜本改革やるやると言いながら、どういうことでいつまでやるのかということがはっきり見えないところにさらに大きな不安があるんではなかろうか、そんな気がいたしております。
 産業再生機構のことでちょっとお尋ねしたいんですが、私は、企業の再生を支援していくこと、そのためにこのような機構をつくる、枠組みをつくるということは決して否定するものではありません、むしろ必要であるという思いは持っております。しかし、政府がつくろうとしている産業再生機構、多くの問題点があると思うんですね。
 一つ言われておりますのが、再生ではなく、これはゼネコンなど特定の企業を救済するための枠組みではないのかという疑問もある。私も感じる、国民もそういった疑問をたくさん持っている。
 日経新聞に、銭高組の社長さんが「「産業再生機構」への疑問」という一文を載せております。非常に納得できる指摘でありますが、総理、これ読まれましたか。物すごくよくわかる。本当にこういうことの危険性があるんだということがわかるんですね。
 ちょっとこれ要約してみますと、この産業再生機構では健全な競争を通じて市場から撤退すべき企業をも救済することになりはしないかということであり、そうなれば、産業の供給過剰は是正されるどころではなく、企業は生き残りのためさらなる厳しい競争に巻き込まれる、これでは健全な企業までが疲弊してしまうではないか、果たしてこれが産業再生なのかという指摘をしているわけですね。
 現場の人たちがこのことにこういった不安感を持っている。この市場の健全性というものはどのように担保されるんでしょうか。
谷垣国務大臣 私も、今お読みになった銭高さんの論文は読ませていただきました。巷間、ゾンビのようなものを生かして、みんなで足を引っ張って沈んでいくようなことはしてくれるな、こんなような表現で、私のところにも随分いろいろな方の御意見が寄せられております。
 それを払拭するためには、まず第一に、我々は助けようとする企業の債権というか債務を買うわけですが、それが、甘い査定でやりますとゾンビを生き返らすということにもなりかねません。したがって、今度の法案では、その買い取り価格を、再生を念頭に置いた適正な時価を上回ってはならない、つまり時価でなきゃならぬということを書いているわけであります。
 それと同時に、再生計画がつくられるわけですが、その再生計画がつくられますときに、産業再生法のスキームであります財務健全化基準であるとかあるいは効率化基準というようなものを踏まえまして、そして、三年間の再生計画の期間がたちましたときに、よし、これなら応援してやろうという支援、サポートする者があらわれる、あるいは独自にそれがファイナンスをやっていける、そういうことを見据えて計画を立てることにしております。
 また、その判断の的確性を担保するために、専門家から成ります産業再生委員会というものもつくってその判断を得なければいけないということにしておりますので、御指摘のようなことにはならない仕組みになっていると考えております。
横光委員 その産業再生委員会というのが非常に私は重要な責任、役目を果たすと思うんですが、これはまた政治的に、恣意的にやられることのないように。
 また、この問題ではもっともっとやりたい。これは大企業中心になってしまいますので、中小企業の産業再生はどうなるのか、あるいは二次ロスはどうなるのか、この処理はどうするのか、このあたりもちょっとお聞きしたいんですが、また後日にさせていただきます。済みません。
 制度改正について厚労大臣にちょっとお尋ねしたいんですが、小泉流の、小泉構造改革においては、雇用の流動化が激しくなっております、これはもう総理みずからお認めになっておりますが。そういった中で、雇用の延長あるいは定年退職後の再雇用などによって、六十歳代でも働き続ける勤労者がふえております。また逆に、このような厳しい状況の中リストラされて、五十歳代前半で、あるいは四十歳代で退職したり転職したりする勤労者もふえております。
 そういった中で、老後の生活を賄う勤労者の自助努力を国が応援するいわゆる財形年金制度というのがございますが、この財形年金は、勤労者が現役のときにこつこつ積み立てて、これを六十歳以降に年金として受け取る仕組みなんでございますが、利子非課税の特典がございます、五百五十万円というささやかな額ですが。そして、六十五歳からとなった厚生年金をもらうまでのつなぎ年金として役目を果たしている。財形年金の重要性は、少子化を展望した年金改革を進めなくてはならない政府としても十分承知していることと思います。
 この財形制度は、転職したりあるいは退職したときの仕組みとして、退職から一年以内に転職した場合、こうした場合は、転職先に財形制度があれば財形をそのまま継続できるわけですね。そしてもう一つ、財形年金に限っては、五十五歳以降であれば積立金を据え置くことができるようになっている。つまり、五十五歳以降ならば、転職をしようが退職を余儀なくしようが、そのまま年金として六十歳から受け取れる、そういう仕組みなんですね。
 ところが、問題は、この五十五歳前、五十四歳で退職あるいは転職する事態に至った場合はどうなるかということ。これは、昔のように終身雇用制度というのがだんだん崩れてきて雇用体系が変わってきていますので、今、こういった五十歳代で、五十五歳の前で転職、退職という方がふえてきているわけです。時代が変わってきた。
 そういった中で、五十四歳で退職あるいは転職する事態に至った場合はどうなるか。転職先に財形制度がなければ、これは現行制度では最大五年という据置期間の制限があるために、せっかく積み立ててきたこのお金、いわゆる財形年金の契約を解約せざるを得ないんですね。そういった羽目に陥ってしまうんです。つまり、年金として受け取れなくなってしまうわけです。何十年もこつこつとためてきて、こんな仕打ちを受けなくてはならない。これは私は明らかに制度的な矛盾だと思うんですね。
 この矛盾の解消は、私は、そんな難しい話ではない、この五年という据置期間を見直せばいいだけだと思うんです。これは労働者サイドの労働者福祉中央協議会だけでなく経営者サイドの日本経団連も、据置期間をもっと延ばしてほしい、あるいは撤廃してほしい、そういった改善を求めております。労使ともに今こういった問題に苦慮しているわけですが、やる気があればすぐできる、私たちは実現できる課題だと思いますが、厚生大臣、確固たるお答えをいただきたいと思います。
坂口国務大臣 この財形年金につきましては、今お話しいただきましたとおりでございます。五年間の据置期間があるわけですが、これをなかなか、延長するというのは、課税上の問題等もありまして、そう簡単な話でも実はないんです。ないんですが、御指摘いただきましたので、一遍検討いたします。責任持って検討いたします。
横光委員 確かに、課税の問題はあります。しかし、今言われたように、昔の日本の国の終身雇用制度のときは五年間の据え置きもそれなりの意味があったわけです。しかし、これほど時代が変わって五十歳代前半で転職をせざるを得ない、退職せざるを得ない人たちには全くむだになってしまう制度になってしまったんですよ。
 課税課税と言いますが、そういった課税ということを言えば、じゃ、私、一つ提案いたします。要求だけするんじゃなくて提案いたします。
 税制上の問題をクリアできる妙案が浮かぶまでの当面の対応として、例えば、現行の五年を超えて据え置き延長した期間、そういった期間は一時的に課税扱いとする選択肢もあるじゃないですか。それだと税の損失にならない。五年過ぎたときには課税扱いとして払うわけですね。そういった選択肢もある。例えば、五十三歳で転職したら、二年間は課税期間として、五十五歳になったら非課税扱いに戻せば事は済むわけでございますので、そういった案も含めて、今厚労大臣、検討するというふうにおっしゃっていただきましたので、ぜひともこの問題、多くの皆様方が今こういった問題で苦慮をしているわけですので、よろしくお願い申し上げたいと思います。
 次に、ちょっと政治とお金の問題をお尋ねいたします。
 実は、さきの補正予算の審議のときに、一月二十三日の当委員会で民主党の菅代表が、総理のいわゆる公約を守れなかったのは大したことではないという暴言、失言、こういったことを引き出した日ですが、その日はマスコミがすべてその一点に集中しましたね。
 しかし、いま一つ、その同じ日に総理は大変な失言をしているんですよ。それは、もう心の中で思っていると思いますが。実は、私は、その日に、公共事業受注企業からの献金を禁止すべきじゃないかという質問をしたんです。ところが、総理はこれに何と答えたか。「法律を幾つつくっても、法律に違反しているんですから、これはもうどうしようもない」、こういう答弁をされたんですよ、総理。覚えていると思いますが、あのとき、かっかかっかきていましたが、覚えていると思います。
 こういう答弁をする総理こそ、どうしようもないんじゃないですか。法律に違反しているんだから法律をつくってもどうしようもない。総理は立法府の一員であるということを忘れないでくださいよ。法律をつくるサイドにおるんですよ。そういう人がこんなことを言ったらどうなるんですか、本当の話。
 やはり、法律に違反しているのは、じゃ、一体だれなんですか。みんなあなたの政党の人ほとんどがそうでしょう。(発言する者あり)企業献金の、公共事業の関係を言っているんです、この前の。あなたが、総裁がそのようなことを言ってしまったんじゃ、これはもう身もふたもない。
 自民党をぶっ壊すとかあるいは受注企業からの献金を一時禁止すると提示されました。こういったことも、例の大したことではないということになってしまいますよ、総理。
 ですから、本当に、先ほどから、あるいは我々はもう長くから言っているんですが、企業献金を一挙にやめるというのが皆様方はできないなら、せめて公共事業受注企業からの、先ほどもございました、ほとんどが公共事業絡み、こういった国民の血税が還流するような形の献金だけでもやめようと、これは総理がみずから言ったわけですから。あと、これは公明党の神崎さんも言われましたし、残っているのは自民党の皆さん方だけ。そして、そういう不祥事を起こすのがまた自民党の皆さん方がほとんど。そういった矛盾をなぜ直そうとしないか。総理の一言で決まることだと思います。いかがですか。改めて、もうやると言いましょう、総理、もう。どうぞ。
小泉内閣総理大臣 法律を破るんだからしようがないというのは、法律を守れということですよ。(横光委員「また、うまいことを言う」と呼ぶ)いや、そうでしょう。法律をつくっているんだから、法律を守りなさいということを言ったんですよ。
 そして、何しろ、今、企業献金は禁止されているんですよ。それも自民党は賛成したんですよ。政治家個人に対する企業献金はもう禁止しているんです。ただ、政党活動を賄うのに、企業献金を禁止して税金だけで全部手当てしようというのは、これはまたいかがなものかという問題がありますから、こういう問題については今各党いろいろ意見が出ています。
 なおかつ、公共工事受注企業からも、もう個人には献金できません。禁止されています。これを守ってもらわなきゃしようがない。破ったらしようがないというのは、守れということなんです。
 それと同時に、政党に対して、政治活動資金というのは、これは政治家になってみて、これほど金がかかるとは思っていなかったと思います、だれも。調査するにしても、どこへ行くにしても、会合するにしても、講師を招くにしても、電話一台置くにも、車一台、宣伝バスにも。はがき一枚出すのにも何百万かかる。それはわかると思うんです。これを……(発言する者あり)いや、実際そうなんですよ。これは、はがきを政党で例えば五十円十万枚出せば、それだけで五百万でしょう。
 政治活動というのはいかに金がかかるかというのはわかる。それを全部税金でやれという意見もわかりますが、これはまた無理だ。そこで、どの程度の制約を設ければいいかということについて今自民党も検討していますから。一歩でも前進できるようなことを検討しているんです。既にもう企業献金、個人は禁止されています。
横光委員 もう総理は検討する、検討している、検討していると。ボクシングをやっているんじゃないんですからね。何を検討、どれだけ長く検討すれば済むんですか。まるで丸投げじゃないか。
 総理は自民党の総裁ですから、総裁が一言一回言ったときに動いたんですから、もう一回言えばもっと動くんですよ。また言いわけのように、どうしようもないというのは守ってほしいというようなことにこじつけましたが。あのときは、とんでもない。法律をつくっても守らないから法律をつくってもしようがないという思いであなたは言ったんですよ。それを今度は別なことで。そんな、もう総理は本当にうまい。
 政治に金がかかる、それは確かにそうでしょう。しかし、金のかからない努力もしましょうよ。そして、金のかからない政治活動をしている人もいっぱいいるんですから、それは理由になりませんよ、総理。
 ですから、こういったいわゆる公共事業絡みで汚職事件、口きき収賄事件等が起きたときに必ず言うのは、やはり反省する、あるいは疑惑を持たれないようにする、襟を正すと言いますが、それじゃだめだと思います。言葉だけでの反省では私はもうだめだと思います。国民だってそんなことを信用していませんよ。
 ですから、言葉だけの反省ではなくて、形ある反省をやりましょう。形ある反省、つまり法律の強化でございますよ。これしかないんです。法律を守らないんなら、守るような厳しい法律をつくるしかないということなんです。
 それから、総理、もう一つ、総理御自身の問題をお聞きいたします。
 この前、一月一日の朝日新聞に出たことをお聞きしましたら、総理は、そんな、ないよ、疑惑なんか。それはにせの報道だと血相を変えて怒られた。あのときはもう時間切れだったので審議になりませんでしたが、物すごい勢いで怒られた。
 私は、そのことが違法だと言ったんじゃないんですよ。疑惑が報じられましたよと。あなたは、疑惑が報じられないように政治活動をしなきゃなりませんよと言ったから、そう言っていた人が疑惑を報じられたので、言っていることとやっていることとそごがあるじゃないか、どう思うかということを聞こうとしたら、疑惑はない、にせの報道だと。
 疑惑の報道なんです、総理、一月一日の。
小泉内閣総理大臣 だから、疑惑がないのにあたかも疑惑があるように報道されるのはけしからぬ、そう言ったんですよ。どこに疑惑があるのか調べていただきたい。政治資金として、政治活動として受け取って、正規の手続をとって報告している。全く疑惑はないんですよ。献金を受けたことが疑惑、これはもう一方的な推量で、こういう報道は本当に心外なんです。
 政治活動を受けるというのは、政治家として何ら疑惑がない、適正な行動なんです。しかも、これは政党への献金でしょう。それをどうして疑惑として報道するのか、私は本当にわからない。意図的な報道としか思えない。疑惑があるんだったら、どこに疑惑があるのか。調べても全く疑惑がない。
横光委員 これは、違法とかなんとか言っているんじゃないんですよ。疑惑でもないと言っているけれども、疑惑として報道された。なぜ疑惑として報道したか。それは総理だけじゃないんですね。
 しかも、一番の問題は、二〇〇〇年の例の選挙の、さっきお話がございましたね、解散の二日前に献金されたということで、報道は疑惑に近いということで取り上げたと思うんですね。ですから、そういったこと自体が、やはりおっしゃっていることとどうしてもそごが出てくるわけでございます。
 ですから、あのように、なぜ私は青筋を立てて怒られるのか非常に不思議だったんですね。事務所の皆さんも、そういった献金があった、ただ、適正に献金されたというようにお答えになっていますが、それは選挙直前に献金されたなら、例の特定寄附行為に当たるんじゃないかという疑惑があったから、ただしたわけですよ。ですから、そういうことを言ったわけでございます。
 大島農水大臣にお尋ねをいたします。
 前の国会からこういった疑惑が出て、あなたは秘書さんとの間のメッセンジャーボーイ役を務めていただきましたが、その役をやっていただいて、これは何もその事件の解決にはつながらないんですね。やはり臨時国会が終わったらこの問題はおしまいだというわけにはいかないと思うんです、どうしても。ですから、この国会にも引き継いで、疑惑追及のために我々は参考人招致をしているわけですが、なかなか与党の皆様方はオーケーをしない。
 私はその中で非常に不思議に思うのは、宮内さんともう一人、A氏という方を、参考人で来ていろいろとお話を聞きたいということを言えば、A氏は、大変な家庭の状況がありながらも、私は国会で呼ばれれば行ってお話をしたい、こうおっしゃっている方がいるんですね。そういった方を我々は要求している。にもかかわらず、与党の皆さん方は反対する。
 嫌々の人を引っ張ってくるんじゃないんです。報告したいという人にそういった場を与えない、そういった人に門戸を開かない、そういった国会であっていいのかという非常に素朴な疑問を持っているんですね。そこで、国会で話してくだされば、かなり疑惑が解明されていくだろう。そして、それに反論すれば、反論する人が出てきてくれればいいんであって、何かそこのところが、出たい人までも拒否するような国会であっていいのかという気が非常にいたしております。
 それと別に、大臣、今度、あなた個人の新たな疑惑がまた報道されましたね。これはまだ疑惑の状況ですよ。ですから、お尋ねするんですが、今度は八戸市立病院ではなく八戸医療技術専門学校の件。これを、あなたは学校建設に当たり厚労省に働きかけた。
 これは参議院ではもう事実確認していますね、質疑の中で。これは何も違法でもない、政治家として当然やってもいいことだと思います。しかし、その後の、要するに受注業者を、関係する業者を押し込もうとしたり、あるいは工事に口を挟んだ、これはもうある意味では権力の乱用につながるわけでございます。
 その受注業者から、あなたまたはあなたの秘書さんが金銭を受け取ったことはありますか。あるかないかだけで結構です。
大島国務大臣 横光委員にお話を申し上げますが、私がその建設経過の中で、何か業者を押し込んだと今お話がありました。
 私は、きのう、週刊文春を提訴いたしました。そして、今、委員が責任を持って、私がそういう業者を押し込んだということをもしあなた自身が私に確証を持って言うんなら、私は、そのことについても、どういう確証があって私に言ったのか証明していただきたい。
 それから、一切、今までも私は、特定の業者、そういうものをお願いしますとか、あるいはそれによってお金を得るとか、そういうことは一切ございません。
横光委員 押し込もうとしたと言ったのは、申しわけありません、この報道を受けて私が言ったことでございます。ですから、そのことを確かめようとしたわけです。ですから、あなたが提訴したということは、非常に私は進歩だと思います。このことで事の真実は非常に明らかになるわけですから、それでよしとします。
 それで、一切、受注企業からの献金、ないんですね。それだけ聞きたいです。
大島国務大臣 委員会は、少なくとも権威あるところだと思います。したがって、報道によるのであればという、そういう言い方をしてほしいと思います。きちっとそこのところは改めておっしゃっていただきたいと思います。
 それから、第二点として、私がそのことによって私どもの献金をいただいたことは、一切ございません。
横光委員 一切ないということですね。このことは、提訴もされたことですから、いずれはっきりすることと思います。それは、ないのが一番いいわけですから。
 ただ、こういった政治家の疑惑が報道されればされるほど、国民はもう嫌になってしまうわけですよ。ですから、こういった疑惑が出ること自体、やはりいろいろな政治家の倫理に頼るような状況ではなくなってきた以上、何とかして、法律の強化によって国民にせめてもの期待を持ってもらうような努力を国会がみずから示さない限り、いつまでもこのことは永遠に繰り返されるであろう、私はこのことを総理に本当に強くお願いをいたしまして、質問を終わります。
 ありがとうございました。
藤井委員長 この際、重野安正君から関連質疑の申し出があります。横光君の持ち時間の範囲内でこれを許します。重野安正君。
重野委員 それでは、同僚横光議員の持ち時間の範囲内で質問をさせていただきます。
 私は、ちょっと趣旨を変えまして、いわゆる公務員問題に絞って質問を申し上げますので、明快に答弁をお願いしたいと思います。
 この公務員制度をめぐる動きが、国内外においても際立ってまいりました。政府においては、公務員制度改革の作業を進めておりますし、近々、この法律が整備されれば国会に提出をされる、このように聞いております。
 ところが、一方、国際機関でありますILO、この場においても、我が国の公務員制度について非常に活発に議論がなされているという状況があります。昨年十一月に、ILOのいわゆる勧告がなされました。もちろんこの勧告は、守らなければペナルティーがあるとか、そういうふうな性格のものではありません。しかし、国際機関であるILOからそういう勧告がなされるということを政府は重く受けとめなければならぬ、このように思います。
 それに対する政府の見解、要約しますと、「理念及び内容について、全ての関係者と十分、率直かつ有意義な協議が速やかに行われるよう要請したものと理解している。」こういう総務省の見解が出されているわけであります。
 であるならば、この後、いわゆる関係諸団体等々と、文字どおり積極的に話し合い、あるいは協議がなされてしかるべき。私がこの間の経過を見るにつけ、どうも言葉だけで、実態として、そういう政府と関係団体との協議がこの勧告を受けて進んでいる、このようには受けとめられない。
 最高責任者として、内閣総理大臣たる小泉総理の、この問題について、そういうILOという国際機関の勧告を受けての現状についての考え方を出していただきたい。
小泉内閣総理大臣 日本政府としては、今までもILOの勧告を尊重してきたところでありますし、これからも尊重していきたいと思っております。
 ただ、日本の国情というもの、あるいは、ILOの勧告と日本の実情にそぐわない点、そういう点についてはよく理解を得るような努力をしなきゃいかぬ。
 いずれにしても、今後よく、日本の事情なり、あるいはILOの勧告なりをどう受けとめるかということについては、日本政府としてもしっかりと対応して、誤解を解く努力、さらにILOの勧告を尊重していくという立場というものも理解してもらうような働きかけは当然必要だと思っております。
重野委員 この問題に対する質問のたびに同じような答弁を聞いてきました。
 この十一月の勧告の中で、私は、この国に住むあるいはこの問題に関係を持つ者として非常に恥ずかしい思いがした文言があるんです。それはどういうことかというと、結社の自由委員会、この委員会が、日本政府が要望すれば技術的支援を行う用意がある、こういう一文が勧告の中に盛られているんですね。これはこの国にとって決して誇るべき言葉じゃありませんよ。これに対して政府は、今総理が述べられたように、我が国の法制度であるとかあるいは実情を十分理解していないんだ、こういうふうに述べられています。
 そこで、我々は昨年、野党三党で調査団をILOに派遣いたしました。調査団の報告を聞いてみますと、まさにILOの側はこの勧告に対して自信を持っている、こういう話でございます。問題は、我が国はこのILOの常任理事国という主要な立場に立たれておるという点でございます。
 ちなみに、ILOの常任理事国というのは、アメリカ、中国、ロシア、フランス、ドイツ、イタリア、イギリス、G7を含む十カ国がこのILOの常任理事国を構成している。もちろん我が国はその中に入っているわけです。その国際機関の常任理事国たる我が国が、この結社の自由委員会から、政府が要望すれば技術的支援を行う用意があるなどということを言われること、私はこれは問題ありと言わなければなりません。
 こうした状況に今置かれておるということに対しての総理の認識、そこら辺をひとつ聞かせてくれませんか。
坂口国務大臣 このILOの方はジャビリエさんという方、国際労働基準局長さん、一月にもお見えいただきまして、いろいろとお話をいたしました。話はずっとやっているわけでございます。日本の国としましては、ILOが今まで言っておみえになりましたことと、そして今般言われることとの違いがある、そこがなぜこう変わったのかということも、これは明確にひとつ問いたださなきゃいけないというふうに思って、いろいろと御質問も申し上げているわけでございます。
 今までは、従来はILOの方は、一般職の国家公務員及び地方公務員の団体交渉権につきILO第九十八号条約に適合した方法で行われている、こう今までは言っていたわけでございます。今般は、国の行政に直接従事しない公務員に結社の自由の原則に沿った団体交渉権及びストライキ権を付与すべきだ、こういうふうに変わってきている。人がかわればそのごとに意見が変わるのか、その辺のところもこちらとしては困惑をいたしておりますので、そういう技術的なことを議論する、技術的なことをお聞きするという前に、その原則についていろいろ意見を交わさなければならない、こう思っている次第でございます。
重野委員 この問題、公務員の労働基本権をめぐる論議というのは、もう本当に長い長い時間がかかっているんですね。この問題が、国際機関であります国連のILOで審議というか話に上ったのは、一九五七年というふうに私は聞いています。それ以来ずうっとこの問題は続いているわけで、もう四十六年間ぐらい続いている計算になるわけですね。四十六年間といったら、これは大変な時間であります。
 その間、ILOの側からの何回かのアクションがあっていますね。これは、私が言うまでもなく御承知のとおりだと思うんですが、一九六五年に八十七号を批准いたしました。それから、その年に結社の自由委員会が日本に来まして、日本の調査を行いました。その年に調査報告書が発表される。一九七一年、第百三十九次報告、一九八三年、第二百三十六次報告というのがILOに報告をされるわけですけれども、しかし、この報告は、いずれも八十七号条約に不適合という形の評価を受けている。
 これをとってみましても、私は、時間がこれだけかかっていながら、先ほど来の答弁に見られるように、今のレベルなのかと、こういうことを言わざるを得ませんね。
 ILOの結社の自由委員会だけではなしに、国連経済社会理事会という機関がありますが、そこでもこの問題は取り上げられているわけです。それで、勧告が出ています。その内容は、中身的には同じ問題です。争議権の一括全面禁止は問題あり、国際人権規約留保条項を撤回しなさい、それから、不可欠業務以外の公務員労働者の争議権を認めなさい。これは、この国連経済社会理事会というところでそういうふうな報告が出されているんですが、いずれにいたしましても、国際機関たる国連あるいはILOの、この国の今の公務員制度に対する国際的な見方というのは、そういう見方に集約されると思うんですね。
 今、それを受けてどうなのという点です。この点について、もう一度答えてください。
片山国務大臣 今、重野委員言われましたように、ILOとは長い歴史と経緯があるんですね。
 そこで、我々は、今の公務員、国家公務員も地方公務員もそうですけれども、労働基本権制約の代償機能として、人事院の存在なり勧告制度、いろいろありますね、これはこれで機能していると。あるいは、よくILOが言うのは、消防職員と監獄職員の団結権の問題ですよね。あるいは、職員団体の登録制度の問題。これについては、我々は、長いやりとりの中で、ILOは一定の理解を示してくれたと思っているんですよ。まあやりとりはいろいろありましたよ、経緯的には。
 ところが、今回は中間報告なんですよ、勧告といいますがね。この間、私どもの方の職員に、ジュネーブに行かせて事務的にいろいろ話をさせました。そうすると、中間報告はILOと日本政府との対話のプロセスだと。中間報告なんですから、最終報告ということはまた後ですからね。
 だから、そういうことで、今までの理解が変わったのかな、今、坂口大臣言われましたが、我々はそういう懸念を持っているのと、もう一つは、公務員制度改革大綱を、中身はまだこれからですよ、レジュメか何か決まったぐらいですから。それについて職員団体の皆さんがILOにいろいろ言われたということも聞いておりますけれども、そういうことの中で、私は、ちょっと変わってきたな、こう思っておりますので、どう変わったか、何で変わったか、我々がどういう説明や情報提供をすればいいのか、今政府の中で相談しておりまして、先ほど答弁いたしましたが、三月には政府の見解をまとめて、これをILOに出して、具体的ないろいろな協議に入ろう、こういうふうに思っておるわけでございます。
重野委員 政府は、いや、これはあくまでも中間報告だという言い方を盛んにされるんですが、私がさっき指摘したように、この問題は、この国においては既に四十数年間という時間の経過があるわけです。その先に、なお中間報告ですよというふうに、今回の勧告をそういうふうに政府が受け取るということについては、私は問題があると思うんです。やはり、そういう時間の経過というものを無視するわけにいきませんよ。
 それを踏まえた上で、そして、この勧告なんというのはそういつもかつも頻繁に出るものじゃありませんよ。そういう客観的な状況というものを踏まえた上でこの問題にやはり真っ正面から向き合っていただきたい、このことを指摘をしておきたいと思います。
 そこで、これは先ほども質問の中で提案がありましたけれども、かつて、結社の自由委員会が我が国に来まして調査をしたという歴史的な経過がございます。今こういう勧告も出されました。そして、時あたかもこの国においては、新しい公務員制度をつくっていこうということで今議論がされておる。まさにいろいろな意味で私は潮目のときと思うんですね。
 そこで、そういうこの国のやらなきゃならぬという方向も出されているこのときに、やはりこのILOの、国際機関のいろいろな意味で意見を聞くという意味において、この国に来てもらって実情をやはりしっかり見てもらって、そして各般の意見を聞いてもらってという作業が私は大事じゃないか、こういうふうに思います。
 そこで、政府においてそういうふうな取り組みあるいはそういう考え方というものについていかがに受けとめられるか、聞いておきたい。
片山国務大臣 これも先ほど答弁させていただきましたが、まだ私どもはそういう段階でもないし、その必要も今のところはないと。我々ができるだけの情報提供や協議をして、ILO側のもし誤解があるとすれば誤解を解く、理解が少し浅いところがあるとすればそれを深めていく、こういう努力をいたしたいと思っております。
重野委員 先ほどもそういうふうな話でしたけれども、私は、今この国が新しい公務員制度、どういうふうなものにでき上がっていくのかまだまだ不透明な部分がありますけれども、その作業を進めている、そういうタイミングから見て、この際、二十一世紀、今から続くわけですけれども、国際的にもたえ得るこの国の公務員制度というものをつくっていくという点から見れば、やはり、労働者はもちろんでありますけれども、そういう国際的な意見というものも受けとめながらつくっていくということが大事だろう、こういう意見を申しておきたいと思います。
 次に、今進められています公務員制度改革でありますが、これがこの国の公務員制度やあるいは人事評価制度に大きな変革をもたらすであろうというふうに思うにかたくないわけであります。
 であれば、私は、今三百二十万、国家公務員、地方公務員合わせて、その三百二十万の人々、これはいや応なしにこの制度に縛られていくわけですから、したがって、今言うように、この二十一世紀にたえ得る制度としてつくり上げていくという点から考えても、この三百二十万の実際にこの制度を適用されて働く側の思いというものも積極果敢に僕は聞くべきであるし、聞いてもらいたい、こういう思いを持つわけであります。
 今回のILOの勧告は、もちろん労働基本権付与にも触れておりますけれども、本来、法を適用される側からすれば、ある種の対抗装置を持って、そして政府に物申していくということになるのだろうと思うんですが、残念ながら、我が国においてはまだまだ労働基本権、ストライキ権なんというのは付与されておりませんから、したがって、そういう仕掛けにはなっていきません。
 だけれども、私は、何回も言うように、たえ得るものをつくっていくために、可能な限り、むしろ聞くことに意味があるわけで、そういう心がけ、そういう仕掛けをぜひつくっていただきたいと思うんですが、そこら辺はどうでしょうか。
片山国務大臣 国家公務員の公務員制度改革大綱は、内閣官房が中心になって、我々は公務員制度を所掌しておりますから、そういう意味では連携をして現在やっておりまして、その過程では、もう既に石原大臣なり私も職員団体の皆さんと話をしておりますけれども、さらに、ILOのこういう中間報告もありますし、関係団体の皆さんとはコミュニケーションをさらに深めてまいりたい、強めてまいりたい、こういうように思っております。
重野委員 勧告には強制力はないことは重々承知しています。例えば、ニュージーランドという国がありますけれども、ここは、うちはもうILOのいわゆる結社の自由委員会からいろいろコメントをもらうようになってかれこれ五十年近くなるということを申しましたが、ニュージーランドも最初はやはりそうだったんですね。結局、十年間の対話の中でニュージーランドの労働基本権というものもひとつ決着を見たという歴史がございます、事例がありますけれども、何回も申しますけれども、労働基本権というのは、世界基準から見れば極めて当然なことであるけれども、残念ながら我が国においてはそれが定着していないという、そういう状況がある。そこで、労働側がILOに対して、より上位の異議の申し立てというのは、その手段はあるんですよね。あるけれども、私はやはり、そこまでいくべきでない、このように思っています。
 そういうふうな客観的な状況もこれあり、そして、このILOの勧告を私は完全に無視をするということにはならぬと思います。私はやはり、まともに受けとめてやってもらいたいんですが、しかし、この例のない勧告が出されて、それを受けて出される結論というものについては、これはやはり国際機関も注目をするだろう。そういうこともしっかり受けとめて、まあこの国はG7のメンバーでもあるし、OECDのメンバーでもあるし、国際的によく言う大国と言われる国であります。だから、そういうレベルのやはり大国になるようにやってもらいたい。
 その点について、最後に総理、総理の感想なり思いをお聞かせください。
小泉内閣総理大臣 ILOの問題、公務員制度の改革の問題、これは皆さん方も大きな関心を持っておられることと思います。
 公務員の皆さんが志を持って、意欲を持って働いてくれるためにはどういう改革が必要か、なおかつ、国民一般の労働条件というものを勘案しながら、今よりも進んだ改善というものはどういう点が望ましいかというものを、今、内閣府におきましても官房におきましてもあるいは総務省におきましても、あるいはまた与党におきましても協議をしておりますので、各方面の意見を聞きながら、いい案を出していきたいと思っております。
重野委員 終わります。
藤井委員長 これにて横光君、重野君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして各会派一巡の基本的質疑は終了いたしました。
 次回は、来る十二日午前九時から委員会を開会し、一般的質疑に入ります。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後五時三十一分散会


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