衆議院

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第11号 平成15年2月14日(金曜日)

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平成十五年二月十四日(金曜日)
    午前九時一分開議
 出席委員
   委員長 藤井 孝男君
   理事 斉藤斗志二君 理事 自見庄三郎君
   理事 杉浦 正健君 理事 萩山 教嚴君
   理事 宮本 一三君 理事 末松 義規君
   理事 原口 一博君 理事 細川 律夫君
   理事 石井 啓一君
      伊吹 文明君    池田 行彦君
      石川 要三君    岩崎 忠夫君
      衛藤征士郎君    尾身 幸次君
      大原 一三君    岡下 信子君
      亀井 善之君    栗原 博久君
      左藤  章君    高鳥  修君
      竹本 直一君    津島 雄二君
      中山 正暉君    丹羽 雄哉君
      葉梨 信行君    萩野 浩基君
      原田昇左右君    松岡 利勝君
      三塚  博君    持永 和見君
      山口 泰明君    石井  一君
      上田 清司君    海江田万里君
      鎌田さゆり君    河村たかし君
      田中 慶秋君    武正 公一君
      中村 哲治君    長妻  昭君
      伴野  豊君    細野 豪志君
      前田 雄吉君    吉田 公一君
      米澤  隆君    赤羽 一嘉君
      斉藤 鉄夫君    黄川田 徹君
      達増 拓也君    中塚 一宏君
      樋高  剛君    赤嶺 政賢君
      佐々木憲昭君    矢島 恒夫君
      金子 哲夫君    中西 績介君
      横光 克彦君    井上 喜一君
    …………………………………
   総務大臣         片山虎之助君
   法務大臣         森山 眞弓君
   外務大臣         川口 順子君
   財務大臣         塩川正十郎君
   厚生労働大臣       坂口  力君
   経済産業大臣       平沼 赳夫君
   国土交通大臣       扇  千景君
   国務大臣
   (内閣官房長官)     福田 康夫君
   国務大臣
   (国家公安委員会委員長) 谷垣 禎一君
   国務大臣
   (金融担当大臣)
   (経済財政政策担当大臣) 竹中 平蔵君
   国務大臣
   (規制改革担当大臣)   石原 伸晃君
   内閣官房副長官      安倍 晋三君
   内閣府副大臣       伊藤 達也君
   内閣府副大臣       米田 建三君
   法務副大臣        増田 敏男君
   外務副大臣        茂木 敏充君
   財務副大臣        小林 興起君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   厚生労働副大臣      鴨下 一郎君
   経済産業副大臣      高市 早苗君
   内閣府大臣政務官     木村 隆秀君
   法務大臣政務官      中野  清君
   財務大臣政務官      田中 和徳君
   経済産業大臣政務官    桜田 義孝君
   経済産業大臣政務官    西川 公也君
   国土交通大臣政務官    高木 陽介君
   政府特別補佐人
   (内閣法制局長官)    秋山  收君
   政府参考人
   (警察庁警備局長)    奥村萬壽雄君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局長
   )            西田 恒夫君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局軍
   備管理・科学審議官)   天野 之弥君
   政府参考人
   (外務省アジア大洋州局長
   )            薮中三十二君
   政府参考人
   (外務省北米局長)    海老原 紳君
   政府参考人
   (外務省中東アフリカ局長
   )            安藤 裕康君
   予算委員会専門員     中谷 俊明君
    ―――――――――――――
委員の異動
二月十四日
 辞任         補欠選任
  奥野 誠亮君     岩崎 忠夫君
  栗原 博久君     竹本 直一君
  津島 雄二君     岡下 信子君
  河村たかし君     前田 雄吉君
  吉田 公一君     武正 公一君
  中塚 一宏君     黄川田 徹君
  矢島 恒夫君     赤嶺 政賢君
  中西 績介君     金子 哲夫君
同日
 辞任         補欠選任
  岩崎 忠夫君     左藤  章君
  岡下 信子君     津島 雄二君
  竹本 直一君     栗原 博久君
  武正 公一君     伴野  豊君
  前田 雄吉君     河村たかし君
  黄川田 徹君     中塚 一宏君
  赤嶺 政賢君     矢島 恒夫君
  金子 哲夫君     中西 績介君
同日
 辞任         補欠選任
  左藤  章君     奥野 誠亮君
  伴野  豊君     鎌田さゆり君
同日
 辞任         補欠選任
  鎌田さゆり君     吉田 公一君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 平成十五年度一般会計予算
 平成十五年度特別会計予算
 平成十五年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――
藤井委員長 これより会議を開きます。
 平成十五年度一般会計予算、平成十五年度特別会計予算、平成十五年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般的質疑を行います。
 この際、お諮りいたします。
 三案審査のため、本日、政府参考人として警察庁警備局長奥村萬壽雄君、外務省総合外交政策局長西田恒夫君、同局軍備管理・科学審議官天野之弥君、アジア大洋州局長薮中三十二君、北米局長海老原紳君、中東アフリカ局長安藤裕康君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
藤井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
藤井委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。海江田万里君。
海江田委員 おはようございます。
 私の持ち時間、一時間でございますが、この平成十五年度の予算及び関連の事案につきまして幾つかお尋ねをさせていただきます。
 最初に、竹中金融大臣でございますが、二月の七日の閣議後の大臣記者会見、ここで、ETFと呼ばれますが、株価に連動する投資信託、株式投資信託ですが、これが、各大臣に、いいものだからお買いなさいということをお勧めになって、そして最後に、記者さんに、大臣はどうされるのですか、買います、絶対もうかりますと言い切りをしておりまして、これがいろいろ、この発言が問題になっておりまして、一昨日の財務金融委員会でも竹中大臣はいろいろ弁明をしております。ただ、この弁明を見ておりましてもやはり、買います、絶対もうかりますという言い方は、金融担当大臣としては、これはもう不適切のきわみだというふうに私は思いますので、それから、恐らく多くの同僚議員あるいは大臣もそうお考えになると思いますので、私はこの際、これは発言を謝罪をして、発言を撤回なさるならよろしいと思うわけでございますが、いかがでしょうか。
竹中国務大臣 私の発言についてでございますが、趣旨そのものは、ETFの閣僚懇等での発言の趣旨等々は御理解いただけるかと思います。貯蓄から投資へという流れを受けて、そういった、いわば日本の未来を買うという意味で、閣僚が率先してそういった問題に関して積極的に取り組みましょうということを呼びかけまして、閣僚懇でも御理解をいただいたということであります。その一層の普及促進への協力を要請したところでございます。
 私の発言でございますけれども、その後の記者会見で、それに、TOPIXや日経二二五に連動するETFを私自身が購入するかというふうに言われまして、私自身が購入します、これはもうかると思っておりますという、私自身のことについて述べたものでございます。
 これは、言うまでもありませんが、例えば証券販売員が、これ絶対もうかりますから買いなさい、これはやはり問題なわけでございますが、そういう趣旨で言ったわけではない。私自身がもうかると思っていると、投資家として申し上げたということでありますので、ぜひその趣旨は御理解をいただきたいと思います。
 しかしながら、当該発言の趣旨は、発言の趣旨を誤解されかねない部分があったという点においては、必ずしも適切ではなかったというふうに思っておりますので、以後、注意して当たりたいというふうに思っております。(発言する者あり)
藤井委員長 竹中金融担当大臣、いま一度、金融担当の監督大臣としての、を踏まえて、御答弁をお願いいたします。
竹中国務大臣 私の発言の趣旨は、記者会見におきまして、あなたは購入しますかというふうに言われまして、私は買います、私はもうかると思っておりますと、個人の発言としてしたものでございます。
 しかしながら、発言の趣旨が誤解されかねない部分があったという面においては、必ずしも適切ではなかったと考えておりまして、以後、注意して行政に当たりたいと思っております。
海江田委員 誤解されかねないから適切でないという話ですが、これはもう誤解のしようがないんで、絶対もうかりますとはっきり言っているわけですから。
 適切でないということをお認めになるんでしたら、これはもう撤回をされたらいいんじゃないですか。金融庁のホームページの上にはっきり残っているわけですよ、これは。「大臣はどうされるのですか。」「買います。絶対儲ります。」という形で。だから、この発言を撤回して、謝罪をして撤回をして、このホームページを消したらどうですか。どうですか。
竹中国務大臣 繰り返し申し上げますが、そこの前後の脈絡からいいまして、これは、私が買いますと言って、私がどう思っているかということを申し上げているわけでございます。その点は御理解をぜひとも賜りたいと思います。
 しかしながら、繰り返し申し上げておりますように、誤解されかねない面があったという意味で、適切ではなかったというふうに思っております。これ以後、注意したいというふうに思います。
海江田委員 適切でないというのは火を見るより明らかな話であって、問題は、やはりさっきから話しているように、こんなのが残っていたら、さっき販売員がやったらいけないと言うけれども、いいですか、販売員がここのところを、「買います。絶対儲ります。」というところを、これを持っていってお客に勧めたらどうなんですか。証券業法違反じゃないですか、これは。今言ったじゃないですか、違反だって。
竹中国務大臣 証券会社の外務員等が顧客にETF購入を勧誘する際に、例えば私の発言を引用した新聞記事等を使用すること自体は、これは別に問題ないわけであると考えますけれども、その発言を悪用して、ETFの価格について断定的判断を提供して勧誘していると認められるような場合は、これは証券取引法の違反になるというふうに思います。その意味で、以後注意したいというふうに思います。
海江田委員 だから撤回しろということを言っているんですよ。
 では、いいですか、私が営業員になって、大臣が、買います、絶対もうかりますと言っています、ETFというのはそういう商品です、お買いくださいと言ったらどうなんですか、これは。違反でしょう。
竹中国務大臣 撤回ということの意味でございますけれども、先ほどから申し上げていますように、誤解をされかねない面があったという意味で、必ずしも適切ではなかったと考えておりまして、以後注意したいと思います。
海江田委員 では、もう一回お尋ねをしますから、もう一回聞きますけれども、いいですか、よく聞いてくださいよ。
 私が外務員で、営業の担当員で、証券会社の社員で、大臣がいつ幾日こういう形で言っています、絶対もうかりますと言っています、私もそうだと思います、ですからお買いくださいと言ったらどうなんですか、これは。違反なんですか、どうなんですか。
竹中国務大臣 勧め方のちょっと具体的な内容になるのだと思います。これを悪用して、断定的判断を提供して勧誘しているという場合については、これはその外務員は違反になるということだと考えます。
 しかしながら、これは御理解いただきたいんですが、例えば、日本の株価は過小評価されていると思う、したがって、日本については、その株価については、将来これはもっともっと上がるものである、日本の経済はそういう体力を持っている、そういう趣旨は我々は繰り返し申し上げているわけでございまして、そういう中で御理解を賜りたいと思います。
海江田委員 僕が理解するとかなんとかいうことじゃなくて、一般の投資家に向けて、さっきも聞いていますけれども、大臣のこの発言をとって、このETFというものについて「大臣はどうされるのですか。」問い。答え、「買います。絶対儲ります。」ここのところだけを切り抜きをして、そして、投資家に対してこれを提示して、そして、大臣がこう言っているんだから、営業員が、私も絶対もうかると思います、お買いください、こういうような営業の仕方は違法じゃないですかということを聞いているんですよ。判断できるでしょう、そんなことは。
竹中国務大臣 おっしゃるように……(発言する者あり)
藤井委員長 速記、とめてください。
    〔速記中止〕
藤井委員長 速記を起こしてください。
 竹中国務大臣。
竹中国務大臣 私の発言は誤解を招くものであり、不適切であったというふうに思います。以後、注意をいたします。
海江田委員 それはさっきも、三回目、同じ言葉を聞くのは三回目で、私がお尋ねをしたのは、竹中さん、いいですか、ここに、私もびっくりしたんですけれども、ホームページにこういう形で、「大臣はどうされるのですか。」「買います。絶対儲ります。」こういうふうに書いてあるわけですから、ここのところを営業の人が持っていって、大臣がこう言っているんだから必ずもうかりますということを言ったら、これは証券取引法の四十二条の違反じゃないですかということを言っているんですよ。イエスかノーか言ってくださいよ。わかり切った話じゃないですか。
竹中国務大臣 お尋ねの件、そのように悪用した場合は、その外務員が法律違反になります。私の発言を悪用して、断定的判断を提供した場合は証券取引法に違反すると考えられます。
 したがいまして、そういうことが生じませんように、私の発言をホームページから削除する方向で検討したいと思います。
海江田委員 いいですか、悪用じゃないじゃないですか、これは。だって、絶対もうかりますといって、あなたが言っているんだから。あなたが言っているんだから、それを言ったら、少なくとも、いいですか、そういうふうな形で利用をされるおそれはあるわけですよ。
 だから、そのことについてやはり、では責任、どうとるんですか。やはり責任とってもらわなきゃだめですよ、これは。いや本当に、それは。そうじゃないですか。どう思っているんですか、あなたは。
竹中国務大臣 悪用をされませんよう、ホームページから削除するということを検討させていただきます。
海江田委員 あと、前にニューズウイークのときも、自分の言葉の意味を意訳してとかなんとか、本当にああ言えば竹中でいろいろ言いますけれども、あなたは本当に自分の置かれている立場、金融担当大臣という、あるいは経済財政の担当大臣としての立場、やはりこういう認識が非常に少ないですよ、軽いですよ、それは。大反省をしていただかなきゃいけない。
 しかも、削除するんだったら、やはり一言謝罪してください。それから、こういうことは、絶対もうかるなんてことはありませんということをはっきり言ってくださいよ、これは。言ってくださいよ……(発言する者あり)いや、ないよ。もうかるときもあるし、もうからないときもあるんだということを当然言うべきですよ。言ってくださいよ、そのことを。言ってくださいよ。(発言する者あり)
藤井委員長 御静粛に願います。
 竹中国務大臣、竹中大臣は、金融・経済財政の担当の大臣であり、国務大臣でありますから、そういったことを踏まえて、公的の責任の最大の責任者でありますから、そういったことを踏まえての発言は十分気をつけていただきたいと思いますので、いま一度、監督大臣としてのお立場で御発言をお願いいたします。
 竹中国務大臣。
竹中国務大臣 ETFに関しましては、これは元本保証のない商品でございます。そのことは、事実として重要な点であるかと思います。
 発言に不適切な部分があったということを踏まえ、以後、注意をいたしたいと思います。
海江田委員 これは大いに、本当に反省をしていただかなければいけないわけですが、そういう形で、一日も早く削除した方がいいですよ、本当にこれは。それはやっていただけるわけですね。それは、ぜひ本当に一日も早くお願いをしたいと思います。
 それでは少し、今最初に竹中大臣からも、貯蓄から投資へという流れの中に資するんじゃないだろうかとかいうような話もありましたけれども、だけれども、あなたが言うと本当にうそらしくなるので、もう少し、これは塩川財務大臣にお尋ねをしたいんです。
 もう片一方で個人国債、個人向けの国債が大変売れたということですが、個人向けの国債が売れたということが、貯蓄から投資へという方向に役立っているのかどうなのかということで、御意見をお伺いしたいわけですが、これについてはどうでしょうか。
塩川国務大臣 私は、今、貯金が少し多様化して保有される方がいいと思いまして、そういう意味において、預貯金だけじゃなくして、いろいろな債券に移動していくことが望ましい、そういう意味を私は前から持っておりました。
 今回、国債のことは、私は別にそういう深い考えではなくして、私は担当大臣として、実際どんなものだろうか、実物、一回顔を見たいなと思いましてやったことでございますから、そういう誘導的使命とかそういうようなものを持ってやったものではございませんで、しかし、関心を持っておるということは事実でございます。
海江田委員 国債は債券ですから、株式とは違うわけで、貯蓄から投資へというのがどういう意味で使われておるのか。私が思慮するところに、日本はどうしても間接金融になって、そのことがオーバーバンキングになって直接金融が育っていかないから、直接金融の方へ資金を回していこうということなんだろうというふうに思っているわけですが、今回、個人用の国債が大変売れたということでありますが、ただ、実際にこのお金の流れを見ておりますと、郵便局で大変売れているわけですね。これは手数料が、手数料というのは口座維持手数料、大臣は銀行でお買いになったそうですが、口座維持手数料を取られて、一年間はほとんど利息がつかないことになるんじゃないだろうか、こんなような印象を、感想もお持ちだったようでございます。
 郵便貯金のお金が国債に置きかわった、あるいは、一部は銀行でも売れたようですが、ペイオフ対策で国債へ振りかわったということであると、一つは、大きな流れとして、貯蓄から投資へという流れ、これは先ほども私なりの考えを言わせていただきましたけれども、間接金融から直接金融という流れと、それからもう一つの流れとして、やはり資金が公的なところに滞留をしているんじゃなくて、いわば公的なセクターにある資金を民間に回していくというのも、この資金の流れの中からいくと、貯蓄から投資へということと同じくらいに私は大切なこれからの流れではないだろうか、そのように考えるわけですが、それが、国債を大変人気化して、そしてこれからも個人用の国債を大量に個人向けに売っていくということを考えますと、公的セクターの資金を民間に回すという役割、果たしてそういう方向に向かっていくんだろうかどうなんだろうかという点で大変大きな疑義が残るわけでございますが、その点については、財務大臣はどういうお考えをお持ちでしょうか。
塩川国務大臣 私は、やはり公的セクターのところにありますところの資金は、そこへ一極集中することは余りよくないと思っております。ましてや、これから財政投融資計画というものも、その本質も変わってくることでございますので、そういう公的セクターの金は、広く民間にも活用できる道を開きたい。国債に振りかえたからといって民間に回っていないじゃないかという説はございますけれども、それによって、少なくとも民間金融機関が国債を買う分については、個人的な消費でそれをカバーするということができますので、国債の多様化、国債消化の多様化ということには私は効果があると思っております。
 同時に、今国民が国債を持っている率は国債の中の二%弱ということでございますので、これは余りにも国民が国債というものに関心が少ないと思っております。ましてや、これから地方財政が大きく変わりまして、地方債がそれぞれの自治体のいわば評価によって相当格差がついてくるということは当然想像しておかなきゃならぬと思いますが、その際にも、やはり自治体の一般住民が自分らの自治体の債券に対して関心を持ってくれるような方法をこれからも考えていくべきだ。そのためには、一つの先鞭として、国債に対する国民の認識というものを正確にとっていただいて、これをまた積極的に評価してもらうようにしたい、こういう気持ちを持っておることは事実であります。
海江田委員 今の、国債を大量発行しますから、それをどう売りさばきをしなければいけないか、国債管理政策でありますとか、それから、今大臣お話しになりました、我が国の個人の国債所有が二から三%、欧米は大体七%から十何%あるから、個人がもっと持つようにすべきではないだろうか、個人が持てば中途換金なんかは余りないから、安定的な国債の、例えば暴落だとかいうことに対するショックアブソーバーの役割も果たすことができるんじゃないかとか、そういう点は評価できるわけでございますが、やはり資金の大きな流れの方向からいって、私は、貯蓄から投資へという流れと、公的セクターの資金を民間に回すというこの流れ、これはやはり大切なんじゃないかなというふうに思うわけです。
 そうすると、例えば、これから税制なんかで、今度のこの国債についても、税制のところでの手当てはなかったわけですよね。国債を個人投資に向けるためには、例えば相続の評価のとき、これを軽くした方がいいんじゃないだろうか、実際の額面は百万円でも相続の評価を半分ぐらいにしろとか、七掛けにしろとか、いろいろな議論がありましたけれども、こういう制度はとらなかった。そのかわり、国債を、例えば一年以上たって売ってもこれは元本を保証しますよとか、貯蓄の方に近づけたとか、そういういわばおまけをつけて売ったわけですけれども、税制のところにまでは踏み込まなかったということ。これは私は、その意味でいうと、一つの、いわば先ほどお話をした大きなお金の流れで、貯蓄から投資へ、それから公的セクターから民間へという流れの中で、ぎりぎりの一つの選択だったかなというふうに思って、その点は評価するわけですよ。
 ただ、問題は、そこからさらに、この国債、しかも今度の個人国債というのは、債券の特徴であります、満期前に売買をしたらこれは時価になるよというリスクをなくしてしまったわけですから、これはより一層貯蓄に近づいたわけですから、そうなっていくと、じゃ、貯蓄から投資という流れを今後さらにもっと加速化するためにどんな方法が考えられるのかとか、あるいは、資金を公的部門から民間へという方向性の中でどんなことが考えられるのかということもやはりお尋ねをしておきたいわけですよ。
 例えば、証券税制について言うと、今回の税制改正では、一応これは配当を一〇%にして、二〇%ですけれども向こう五年間は一〇%ですよということ、それから株式の譲渡益も、二〇%ですけれども向こう五年間は一〇%ですよという手は一つ打ちましたよね。ここでもう終わりなのか。さらにここからもう一歩進めるとすれば、配当課税の場合は、アメリカなんかでは、今度の税制改正で実は配当課税は〇%にしたわけですよ。そういうような方向にさらに動いていくのか。今の一〇%というのは五年間の暫定的な措置ですから、五年が終わったら二〇%になるわけですから、例えば、やはりこの五年間の一〇%というものを将来的にもう少しこの辺で据え置きという考え方もあるでしょう。
 あるいはもう一つの観点でいうと、これはなかなか財務省はうんと言わないんですけれども、配当の二重課税の問題、これはやはり残っているんじゃないですかとか、そういう問題はどういうふうにお考えになっているのか。
 あるいは、譲渡益の問題でいうと、これも二〇%で、一〇%にそろえましたけれども、それからもう一つ大きなポイントとしては、譲渡損失の三年間の繰り越しということも、これは前の改正から入ってきたわけですけれども、この譲渡益の問題、譲渡益課税の問題を将来的にどういうふうにしていくのか。将来的には、利子配当、株式譲渡益の課税の一体化に向けた今回の措置だということを財務省は言っているわけですけれども、この一体化というのがどういうことをイメージしているのか。
 例えば、今、先ほどもお話をしましたけれども、一応譲渡益も二〇%、だけれども五年間は一〇%ですよ、株の配当も、二〇%、だけれども一〇%ですよ、それからあと、株式投資信託なんかの譲渡損と株式の譲渡益とを通算できるとか、そういうような形で、いわば暫定的な一体化というのは、前段階の一体化はできているんですよね。だけれども、ここをさらに、将来の一体化に向けた措置だということであれば、さらにここから進めて、これはよく二元所得論という話になるわけですけれども、そういう金融性の所得を一本化して、そして今度は、例えば普通の勤労性所得だとかあるいは事業性の所得だとか、そういうものと通算のところにまで考えを持っているのかとか、そういうことを少し税制のところに踏み込んで、これは大臣の今の段階でのお考えでよろしいわけですが、そういうものをやはりお示しいただきたいというふうに思うわけでございます。
塩川国務大臣 実は税制がまだ決定しておりませんので一刻も早く御採決いただきたいと思っておるんですけれども、とりあえず、これだけの改正をいたしました税制改正を一般の国民が正確に認識してくれて、それをやはり活用してくれる時間的なものを与えなけりゃいけないと私は思っております。
 要するに、私もいろいろな後援会の人たちに接しましたら、どのように証券税制が変わったのか、相続税とか贈与税の関係もどう変わったのかということを本当はまだ知らない。それは当然でございまして、まだ国会で議決されておらないのでございますから、あるだろうと思いますけれども、まず、私は、その認識をして証券になじんでもらうということをしてもらいたい。
 今度のことでも、銀行で国債を買ったら二百万円以上買わなきゃ利益にならないということがわかって、何でだと。管理手数料というものが銀行にあるんだということ、これは証券会社はないということ、こういうのがわかってきまして、そうすると、証券会社のなじみというものが銀行とは隔離されて非常に遠かったんですけれども、逆に、銀行より証券の方がなじみやすい、そういう空気ができてくれば、貯蓄からやはり投資へと一つの流れができるのではないかと思っておりますが、そういうそれぞれの機関、すなわち銀行とかあるいは証券会社がその努力をまずしてくれにゃいかぬと思うんですね。
 それと同時に、今回の税制改正の趣旨と実益を正確にもっと広報活動して周知徹底して利用してもらうということ、その上で、その反応を見て、また、さっき海江田さんがおっしゃったような、さらなる税の改正と、あるいはそれに対する優遇措置、担保扱いなんかでも変わっていいんじゃないかと思うんです。
 国債とか証券が登録制になりましたもので、担保の扱い方が非常に難しくなってきた。この手数を変えてやれば、案外、有価証券も活用されるのではないかと思っておりますが、そういうものを総合的に考えてみたいと思っておりますが、とりあえず、この法改正したことの実態を正確に認識してもらって活用をしてもらう。その状況を見た上で進めていきたいと思っております。
海江田委員 状況を見た上でというお話ですが、本当はやはりあった方がいいんですよ、中長期的な方向性といったもの。
 それで、恐らく、今私がちょっと時間をかけてお話をしましたけれども、ああいう方向性に私はなると思っています。そうならなければ本当に、掲げております、貯蓄から投資へとか、それから公的セクターの資金を民間の方へということにはならないわけですから。それを税制で後押しをするためには、やはりああいう方法が一つの考え方だろうと思うんですが、そういうことをきちっとアナウンスをしないと、実際、なかなかお金は動いていくものじゃないです。間違った、本当に金融大臣がああいうていたらくですので。これは、あえて言わせていただきますが。
 それから、財務大臣も、やはり去年大変混乱をしたと、一般の投資家が税制もわかっていないと言いますけれども、投資主体別売買動向というのを証券業の協会が発表しています。あれはなかなかおもしろい数字ですから私はいつも見ているんですが、去年の九月から十二月で、個人投資家がたしか九千億ぐらい売り越しているんですよ、去年の九月から十二月。これは何が理由かといえば、まさに去年の九月から十二月の間に個人投資家が、その意味ではまさに貯蓄から投資へ行かなきゃいけないのに、逆行しているんですよ。
 この理由というのは、はっきり言って、この一月から変わった税制なんですよ。この税制。だから、税制がいかに、その意味でいうと大きなお金の流れというものに逆流を、間違った方向を与えてしまって、そして、それの取り返しに随分時間がかかるということは、これはやはり財務大臣も税制の責任者で、いろいろなわけのわからない税制をおつくりになったのは、その意味では塩川財務大臣なわけですから、これは大いに反省をやはりしてもらわなければいけないわけでありまして、その意味で、はっきりとこれからの方向性というものを私はぜひ出していただきたい。
 その中の一つのプロセスとして、こういうような税制の中身があるんだよということを言っていただかないと、これから恐らく財務金融委員会でこの税制の議論が行われるんでしょうけれども、やはり議論がちっとも煮詰まっていかないということになると思いますので、そこの点はぜひそういうふうにお願いをしたいということでございます。
 いろいろ言いたいこともあるかもしれませんが、ここまでにいたしまして、この続きは財務金融委員会でやらせていただくとしまして、扇大臣と法務大臣、それから外務大臣にもちょっとお尋ねをします。
 政府は、我が国を観光立国にしなければいけないということで、これは総理も施政方針演説の中で、日本から海外へ一千六百万人、海外から日本へ五百万人にとどまっていると。ただ、正確に言うと、これは五百万人じゃないんですよね、たしか四百七十七万人。ただ、政府は、どうも今度の国会では必ず五百万人、五百万人という数字を使っていて、これは若干膨らし粉が入っていますので、私は正確に四百七十七万人ということを言った方がいいと思うんですが、これを二〇一〇年に、倍増、一千万人にするということです。
 扇大臣は、昨年末の経済財政諮問会議で観光立国の重要性といったものを力説されておって、その中で、日本から海外へ出ていくときは例えばビザがない国がたくさんございます、だけれども、海外から日本へ入ってくるとき、ビザがあることによって入ってくるのにブレーキがかかっているんじゃないかというような問題点を指摘されていると思いますが、その点、改めて、ごくかいつまんで、その経済財政諮問会議でお話をした内容をなるべく手短にお話をいただきたいと思います。
扇国務大臣 今おっしゃいましたように、昨年、海外へ日本のお客様が行ったのは千六百二十二万人、そして入ってくる方は、今おっしゃったように四百七十七万人が正確な数字でございます。
 それから、経済財政諮問会議で言いましたことは、こちらへ来るときにはビザをもらって、向こうへ行くときにはビザがないというようなものがあります。
 ちょっと簡単に、今事例だけとおっしゃいましたので。
 例えば香港。日本人が香港へ行こうと思いますと、三カ月以内の場合はビザが免除でございます。それから、インドネシアも二カ月以内のビザは免除。韓国、タイも一カ月以内ですと免除。そして、フィリピンは三週間以内は免除。そして、台湾は二週間以内の場合はビザが免除でございます。ところが、その人たちが日本へ来る場合はすべて要るということで、私は、まず、このビザは両方が公平でなければいけないのじゃないかということが一つ申し上げたこと。
 それから、先ほどおっしゃいましたように、今約四百七十七万人という、これを一千万人規模にしたいという小泉総理の御希望ですけれども、そのためには、少なくとも受け入れ体制の整備が必要であるということ。それが、今の一番のビザと、それから国際空港。成田で、外国人の入るブースが二つで、二時間で飛んできて一時間並ぶんです。そして、国内線の乗りかえに成田から羽田まで一時間半、タクシーで二万円以上。これがやはり外国のお客が来ない理由の二つ目でございます。それから三つ目は、そのアクセスができていないということ。四つ目には、少なくとも、今のETCとかCIQが各省庁連絡が悪いのを、ぜひ総理の発言で、内閣が一致してこの観光倍増に協力できるような体制をとっていただきたいということを御要望申し上げました。
海江田委員 今幾つか、相互主義の観点からいって、向こうの人たちが入ってくるときにビザがある国あるいは地域がありましたけれども、一つ、香港特別行政区の問題を取り上げたいと思います。
 法務省は、昨年末、香港の特別行政区の移民局長であります黎棟国という方をお招きして、そして、その意味では、香港の側の懸念というのは、中国の大陸の方から、本土の方から香港に入ってくるんじゃないだろうかという懸念があるようですが、そのあたりについての説明、あるいは、そのビザをぜひなくすようにというような要請も受けたというふうに聞いておりますが、どういうような状況であったかお教えいただきたいと思います。
森山国務大臣 確かに、香港の黎さんという方が法務省へおいでになりまして香港側の希望をるる御説明くださいました。
 査証に関する仕事というのは、実は外務省が仕事としておられることでございまして、法務省が責任持ってお答えする立場ではないのでございますが、あえて申し上げますと、おっしゃるように、国際的な人的交流がさらに盛んになるということは望ましいことでございまして、観光振興にも資するというふうに私も考えております。他方、おっしゃいますように、我が国においては不法入国、不法滞在というものが非常に深刻な問題になっておりまして、仮に査証について外務省から御相談がありましても、そのことをよく頭に置きまして対処していかなければならないと考えているところでございます。
海江田委員 特に香港の場合、黎さんから、香港のパスポートがいかに信頼性の高いものであるとか、それから、中国の方と香港との間の入管がいかに厳密に行われているかというようなことについてもお話があったと思うんですが、その香港の方の話を聞いて、一般に流布されているような誤解というものは、どうなんですか、なくなったんじゃないですか。この香港との問題についてどういうふうにお考えですか。
森山国務大臣 おっしゃるとおり、黎さんが特に来られましてそのような御説明があったということも事実でございます。
 しかし、残念ながら、日本における不法滞在、治安の問題などにもかかわることでございますので、慎重に考えなければいけないという気持ちは変わっておりませんので、外務省から御相談がありましたときは、そのようなことも頭に置いて考えなければいけないと考えています。
海江田委員 実は、今、日本の観光業、私がお話しをするより専門の方がたくさんいらっしゃいますけれども、私もせんだって東京タワーに行ってみましたら、ちょうどいわゆる春節の季節なんですね。アジアからの観光客というのはやはり春節の時期に来る人たちが大変多いわけです。
 ところが、その春節のときにいろいろなビザの、一時期、かつての日本みたいで、休みの時期というのは本当に春節の時期かゴールデンウイークか時期が決まっておって、そのときに大変向こうも混雑をして、特に日本のビザの受付なんかがかなり、希望者は多いんだけれども、ビザが間に合わないということで来られなくなっちゃう人たちがたくさんいるんですよ。
 そうすると、日本の観光業というのは、かなりその時期稼ぎどきなのに、しかも、日本のレベルでいくとニッパチですから、ちょうどそのとき東南アジアから来ていただくと一番いいわけですね。
 そういう意味では、日本のビザがあることによって失われる利益というものは大変大きいので、もちろん、てんびんの片一方にはそういう治安の問題なんかも重視をしなきゃいけないんですが、私は、やはりそのおもりをかけてみて、それから相互主義の観点からだとか総合的に考えてみて、もうそろそろ、特に香港の問題でいうと、これはビザなしにしてもいいんじゃないだろうかという意見を持っておるんです。
 外務大臣、先ほどからビザについては外務省の所管だというふうにお話がございまして、この問題、どういうふうに考えておられるのか、あるいは現場で大変ビザの申請などで特にこの時期、春節の時期なんかに困っているような事例もあれば、そこはわからなければお答えいただかなくても結構ですが、特に東南アジア、とりわけ香港特別行政区の場合などは、どういうふうにお考えになっておるのかということをお聞かせいただきたいと思います。
川口国務大臣 私も今、法務大臣の御答弁を伺っていて思い出したんですけれども、私のところにも香港の方がいらっしゃって、委員がおっしゃられましたように、香港のパスポートというのは非常にきちんとしたものであるというお話をいただいた記憶があります。確かに、ビザがないということは、観光客がふえるという意味では非常にプラスだというふうに思います。また同時に、法務大臣がおっしゃったような問題がありまして、また日本国民のそれに対する懸念が最近ますますふえてきているということだろうと思います。
 香港の総領事館におけるビザの申請についての仕事量については、ちょっと今把握しておりませんけれども、この問題は、国内の関係の御当局と引き続き相談をしていきたいと思っております。
海江田委員 私は、先ほどもお話をしましたけれども、特に東南アジアからのやはり日本への観光客というのは、これは扇大臣もおっしゃっていますけれども、特に重要でありまして、そこではビザの問題が大変大きな問題になっている。
 しかも、その人たちが来る時期というのは、例えば春節の二月ごろだとか、日本がちょうどニッパチで、余り国内の旅行も盛んでないときなんで、これは本当に非常にいいことですので、ぜひ、扇国土大臣、森山法務大臣それから川口外務大臣、三者のところでよく御協議をいただき、とりわけ森山大臣と川口大臣のところだろうと思いますが、よく御協議をいただき、なるべく前向きに、しかも早目に、そういう形でできることはやっていく。それがなければ、私は、とてもじゃないけれども、四百七十七万人の日本への観光客を、二〇一〇年までですか、倍増するなんというようなことは、それこそ本当に絵にかいたもちに終わってしまうということをもう一度指摘しまして、この問題は終わらせていただきます。ぜひよろしく御協力、そして御協議のほどをお願いしたいと思います。
 次の問題で、今本当に喫緊の課題といいますか、焦眉の課題といいますか、やはりイラクの攻撃、アメリカを中心とした、アメリカ、イギリスになりますのか、そのほかの国がどういう態度表明をしますのかまだはっきりしておりませんが、私は、イラクに対する攻撃と申しますかイラクでの戦争は、日本の経済に対して大変大きな影響を与えるというふうに思っているんですね。
 既に原油の価格なんか、生活レベルでいきますと、かなりガソリンの価格も上がっておりますし、それから為替でありますとか株価でありますとか、そういう影響が大変大きいと見ておるんです。ここは経済産業大臣、イラクで戦争が起きた場合の、とりわけ日本経済に与える影響というのはどのようなものだと、石油の価格などを中心にどういうふうに見ておられるか、お聞かせをいただきたいと思います。
平沼国務大臣 海江田先生にお答えさせていただきます。
 確かに、イラク状況は緊迫の度を加えておりまして、今、原油価格も、昨日のニューヨーク市場は一バレル三十六ドルを超える、こういうような形で高値に推移しているわけであります。
 一つの例としては、過去のいわゆるイラクのクウェート侵攻のときの状況というのがある意味では参考になると思っておりますけれども、あのときは、やはりイラクのクウェート侵攻が始まったときに、それまで二十ドルでありました原油価格が、ピーク時には四十ドルにもはね上がった、これはやはり相当大きな経済への影響がございました。そしてさらに、これはドル安を惹起いたしまして、百四十七円であったものが百三十円になるというような形で、これもいろいろな経済的な影響があったわけであります。
 私どもはエネルギーを所管しておりますから、その需給ということは非常に注目をしているところでございまして、今イラクからは、私どもは日量で約五千バレル、全体の〇・一から〇・二%ぐらいの量が入ってきております。そして、一番たくさん日本に入れているのはサウジアラビアでございまして、それからUAE、クウェート、こういうような順でございます。
 その中で、まだサウジアラビアには日量約百万バレルの余力がございまして、さらにOPEC九カ国合わせますと、二百三十万バレル近い余力があるわけでございまして、そういう意味では各産油国も、日本とのこれまでの関係から、日本に対する原油の輸出は最大限努力をする、こう言ってくだすっています。
 そしてまた、一方、消費国のIEAに関しましては備蓄を進めておりまして、百十四日分あるわけであります。我が国は民間とそれから国合わせて百七十一日分確保しておりますから、これが前回のように短期で終わる場合は、私はそれほど大きな影響はないと見ておりますけれども、これが中期あるいは長期にわたりますと、やはりいろいろ、シンクタンクの状況でも、例えばGDPにマイナスに響くということは明らかでございます。
 そういう中で、私どもとしては、十分経済を見守っていかなきゃいかぬと思っておりますし、また、勃発したときには、IEAの諸国と協調をして、備蓄の放出等を含めて、価格の維持、そういったことにも努力をしていきたいと思っておりますし、また、消費マインドに与える影響も非常に大きいわけでございます。
 ですから、そういう意味で株にも影響があるわけでありますから、いずれにしても、御指摘のように大きな影響があると思っておりますので、私どもは特にエネルギーを所管しておりますから、そういった安定供給というところに力点を置いて、大きな影響が極力出ないように最大限努力をしていかなければならない、こういうふうに思っております。
海江田委員 今の話でおわかりになったと思います。私の認識もほぼ同じような認識でありまして、イラクでの戦争というのは、日本経済にとって、これは日本経済だけではありませんで、世界経済にとってもいいことは何にもないわけでございますから、その意味では、本当にこの問題が、イラクの大量破壊兵器などの廃絶といったものについては、しっかりと国際社会でそういう方向に向けて努力をしていかなきゃいけないのはもちろんですが、ただ、やはり、一たん戦争が起きた場合の日本経済に与える影響あるいは世界経済に与える影響といったものは大変重大だということも念頭に置いて、日本の進んでいく方向を決めなければいけないというふうに思うわけでございます。
 外務大臣、きょう十四日、まだ現地の時間では最終的な報告が出ておりませんけれども、査察の報告があって、そして、アメリカはただ片方で、安保理に対してもう一回決議を出すとかいうような演説もパウエルさんがやっておるようでありますが、やはり日本政府は本当にこの問題に対してどういうふうに対応していくのか。
 とりわけ、昨日は、公明党の書記長ですか、幹事長ですか、駐日アメリカ大使ともお目にかかって、アメリカは国連の安保理での決議がなくても、新しい決議がなくてもやるときはやるんだというような発言もあるわけでございますが、安保理の中の構成を見てみても、実際なかなか、本当に、仮に決議を出したところでそれが通るかどうか非常に微妙な状況ですよね。アフリカの何カ国がどっちにつくかというところで、アフリカの二、三カ国を相手に今一生懸命、外交攻勢をかけているようでございますが、そういう中で、本当は、日本は日本としての毅然とした態度といったものをやはり改めて示すことが必要なんじゃないだろうかというふうに思っているわけです。
 いよいよ十四日、日本時間ではもう十四日に入って、ニューヨークの時間ではもう少し時間があるようでございますが、最終的な局面で、これまでの国会の議論なども踏まえて、日本政府はこのイラクの問題にどういう対応をするということを今の時点でお考えか、改めてお聞かせをいただきたいと思います。
川口国務大臣 委員がおっしゃいますように、十四日、日本では夜中以降になりますけれども、国連に報告がなされて、それで議論が行われることになると思います。
 そして、新しい決議につきましては、これは、我が国の立場は新しい決議があるのが最も望ましいということを各国にずっと伝えてきておりまして、それぞれ、さまざまな努力がさまざまな国の立場であることになると思います。どのような決議に対して安保理の理事国が反応をするかということは、まさに決議の内容いかん、文言次第で、どこの国が賛成をする、どこの国が反対をする、あるいは全員一致する、さまざまな形になっていくと思います。
 この動きについては、現在、私が直接話をした範囲でも、いろいろなことをいろいろな国が考えているということだと思いますけれども、お尋ねの我が国の立場ということにつきましては、先ほど申しましたように、新しい決議があることが最も望ましい。そして、ないという状況ということもあり得るかもしれないということも考えておかなければいけないわけですけれども、その際には、我が国は、その時点で、我が国の国益を考えて、何がいいかということを態度を決めるということでございます。
 何をそのときの考慮の点にするかということについては、一つは、大量破壊兵器、これが我が国にとっても非常に重要な問題である、そういう考え方であります。それからもう一つは、イラクが、これは報告の中身によりますけれども、どういうような違反の状態あるいはさらなる違反の状態ということになっているか、それについての安保理の議論の状況、国際社会の考え方ということであると思います。そしてさらに、我が国は、世界の中でも、世界の秩序あるいは動きについて大きな責任を持っている国ですから、そういった立場をきちんと踏まえる。
 それだけではないと思いますが、そういった点を踏まえながら態度を主体的に決定をする、そういうことでございます。
海江田委員 はい、わかりました。この問題ももっと議論したいんですが、時間が限られておりますので。
 恐らく最後になるんですかね。本日、昨年の十月―十二月のQE、これの速報値が出ましたが、名目でマイナス〇・一、実質でプラスの〇・五という数字ですが、これは当初思っていた数字と比べてどうなのかということ。
 それから、私、やはり去年の成長をある程度引っ張ってきたのは個人消費だろう、とりわけ高齢者の個人消費だろうというふうに思っておるんですが、その高齢者の個人消費がどうも、これは別の資料ですけれども、総務省の資料ですかね、あるいは内閣府の資料でもそういう傾向が出ていると思いますが、高齢者の消費がやはりこの十月ぐらいから少し落ち込んできているんじゃないだろうか。
 そうなりますと、本当に、今度これからいよいよ、まさに十月ぐらい、高齢者の消費が落ち込んでくるということは、ちょうど昨年の秋からの高齢者医療の問題もありますし、それから、この四月からはそれこそ一般の勤労者の医療費の負担増もありますし、それから、高齢者に限って言えば、年金のマイナス〇・九%、実際減るわけですよ。
 確かに、デフレというのは、高齢者の間で借金がない人たちにとってみれば、物の価値が下がる、物の値段が下がるわけですから、お金が使い勝手があるわけですけれども、いよいよ年金が減ってくるということになると、来年の見通しの中でも個人消費については対前年度比〇・四%程度の増という形で見込んでいるわけですから、これが本当に達成できるのかどうなのかというふうに大変大きな疑義を持っておるんですが、その点についていかがでしょうか。
竹中国務大臣 海江田委員御指摘のとおり、きょうの九時前に出されました十―十二月期のGDPでは、前期比でありますけれども、〇・五%ということで、これは民間の事前予測の平均値はマイナス〇・二%ということでありましたので、数字そのものに関しましては、予想よりといいますか、一般の見方よりは高い数字が出たということになっております。
 しかしながら、その内容につきましては、ここのところ、我々は三カ月連続して経済の見方を下方修正しておりますけれども、内需について、特に消費についてはやはり弱含んできている、弱含みではありませんけれども、増加はしておりますけれども、低下は……(海江田委員「どっちなんだよ」と呼ぶ)弱含みではありません、増加はしておりますけれども、その伸び率が低下しているという状況になっている。
 その中で、来年度の経済見通しでありますけれども、まさにマクロの効果でありますけれども、補正予算の効果、それと先行減税の効果等々で、マクロ経済全体を少し押し上げながら、消費についても安定的な増加ができるような形での経済運営が可能であろうというふうに思っております。
 しかしながら、先ほど委員も御指摘のように、アメリカの問題を中心に不確実な要因がありますので、その点についてはしっかりと見ていかなければいけない状況であるというふうに思っております。
海江田委員 かなり私は、ただ、そう言うとすぐ、悲観的で、もっと楽観的な見方をしろと言う方がおられますが、やはりこれは本当にきちっとシビアに見ておかなければいけないので、今のイラクの問題も、あるいはイラクの問題がなくたって、先ほどお話をした、特にことしに入ってからの個人の懐を直撃する各種のいわば施策といったことが、個人消費、とりわけ何とかことしの成長を支えていた高齢者の個人消費に与える影響というのは非常に大きいというふうに私は見ているわけでございますので、その点は本当に、これからいよいよ私ども野党が出しました医療費などの負担増に対する撤回案、こういうものをしっかり国会で議論をしていただかなければいけないというふうに思うわけでございます。
 ただ、これは竹中大臣に、今御答弁もいただいたんですが、すっかり元気がなくなっておるわけでございまして、これはまあ反省をしている証左だろうと思いますが、これは私だけの意見ではありませんで、多くの委員の意見でございますが、先ほど来の答弁を聞いておりまして、これはやはりもう竹中大臣に本当に金融担当を、特にこれから三月の本当に金融危機だとかいろいろなことが言われているときに、任せておけないという声が大変大きいんですよ。
 ですから、その点をどうしてもやはり最後に尋ねておかなければいけませんけれども、私は、やはり竹中大臣がこの際おやめになった方が、日本の経済は、あるいは日本の金融といったものはきちっとした行政ができるんじゃないだろうか、そのように思うわけでございますが、これまでのたび重なる失言の数々を深く反省する中から、おやめになるというのも一つの選択だろうと思いますが、いかがでしょうか。
竹中国務大臣 金融の再生に向けまして十月末に金融再生プログラムを発表し、日本の金融は徐々にではありますが変化しつつあるというふうに思っております。このトレンドをしっかりと定着させることが私の役割だと思っております。
 御指摘をいただいた点等について、反省すべきところは反省しながら、ぜひともしっかりとやっていきたいというふうに思っております。
海江田委員 持ち時間が来ましたので、終わります。ありがとうございました。
藤井委員長 これにて海江田君の質疑は終了いたしました。
 次に、米澤隆君。
米澤委員 おはようございます。米澤隆でございます。
 というよりも、お久しぶりでございますと言うのがあいさつの仕方だろうと思いますが、ちょうど昨年の十月、僥幸が重なりまして繰り上げ当選というもので帰ってきました。まるで六年ぶりでございます。したがって、ここに立つのも六年ぶりでございまして浦島太郎ですから、行ったり来たりしますけれども、よろしくそのあたりは御理解をいただきたいと思います。
 ここに来るまで田舎で伏せっておりますときに、新聞を見たりテレビを見たり、たびごとにいらいらしておりました。何にいらいらしたかといいますと、やはり日本の経済の問題でございます。このままいったら日本の経済はぐちゃぐちゃになって再生できないところまでいくんじゃないかという心配でございました。
 そういう意味で、この小泉内閣というのは、大変不思議なことに支持率は高いんでございますが、事経済に関してはもう史上最低最悪、経済無策、のうてんき内閣と言ってもいいのではないか、そう思ってきましたし、今でも出たらそういう演説をします。
 竹中さん、何か反論でもありますか。
竹中国務大臣 経済に関しましては、まさに非常に多くの構造的な要因が重なって、これを再生させるのは非常に難しいという状況に日本の経済は置かれていると思っております。しかしながら、これを短期間で、一夜にして再生させるような魔法のつえはないというのも、これはやはり我々が認識しなければいけない事実でありまして、その構造の一つ一つ、歳出の構造、歳入の構造、金融システム、それと規制の改革、その一つ一つをやはり丁寧にほぐしていって、やるべきことをしっかりやっていく、これが私は、日本の経済を本当の意味で自律的に再生させる唯一の道であるというふうに思っています。
 総理がおっしゃる、改革なくして成長なしというのはまさにそういうことであろうというふうに認識をしておりまして、ここは我慢強く、ぜひともしっかりとこの構造改革を進めていきたいというふうに思っております。
米澤委員 このごろ総理は、本会議あるいは予算委員会の場におきまして、できる限り早期のプラスの物価上昇率実現に向け、政府は日銀と一体となって総合的に取り組みを実施するという答弁をされております。これはいわゆるインフレターゲット論みたいなものですか、それとも、それではない何か別のことをおっしゃっておるんでしょうか。
竹中国務大臣 今のデフレを克服するのは大変難しい仕事であると思います。そのためには、政府、日銀が一体とならなければいけない。政府がやるべきことはたくさんございます。また、金融当局である日本銀行がやるべきこともたくさんある。
 具体的に、物の値段が下がるのは、需要の要因、供給の要因、貨幣的な要因、それぞれあるわけでございますから、例えば規制改革、今回の補正予算もそうですけれども、そういうものを通じて、やはり政府としては需要を拡大していく、民間の需要が拡大するような措置をしっかりととっていくことが重要であろうと思います。
 その一方で、価格が上がる下がるというのは、これは貨幣的な現象であるという面も否定できませんから、その面に関しては、貨幣供給を担当する日本銀行にも、政府と問題意識を共有してしっかりとやっていただきたい。総理がおっしゃっている、政府、日銀一体となって、できるだけ早期にプラスの物価上昇を目指すというのは、そのような趣旨であるというふうに理解をしております。
米澤委員 この前、経済財政諮問会議で決定しておりました中期経済財政展望の改定の中で、デフレからの脱却を二〇〇五年度まで延ばす、先送りするということを決められた由でございます。デフレからの脱却が最優先課題だとされながら、インフレターゲットを率直に否定はしませんが肯定もしない、そして解決の方は先送りをする。どういうことを考えていらっしゃるんですか、これは。
竹中国務大臣 日本の物価は、GDPデフレーターで見る限り、一九九〇年代の半ばからもう七、八年、かなり長期にわたって下がってきております。このトレンドを反転させるというのは、先ほど申し上げましたようにやはりなかなか難しい仕事であり、であるからこそ需要の側面、供給の側面、貨幣の側面、それを総合的にしっかりと持ち上げていかなければいけない。それにはやはり若干の時間もかかるというふうに思われます。
 しかし、そこを当面は不良債権の処理の加速、いわゆる集中的な調整期間ということで厳しい状況を覚悟しなければいけませんけれども、それを経て金融仲介機能が正常化されて、マネーもふやせるような状況をつくって、その間にさらに規制改革等々で内需の掘り起こしも進めて、それによって二〇〇五年ころには経済が本来の成長力である二%に近い成長力に戻っていく、と同時に、このデフレの問題も、今までの申し上げたような幾つかの政策の合わせわざで克服していきたい、そのようなシナリオを描いているわけでございます。
米澤委員 昨年の末に本屋に寄りまして、竹森俊平先生が書かれました「経済論戦は甦る」という本を読ませていただきました。これは、一九三〇年代、アメリカのフーバー大統領のときに大恐慌が起こりまして、このデフレをどう脱却するか、そういうことに関して二つの学説があったということが書いてあります。
 一つは、竹中さんは先生ですから、我々が言わぬでも、もうおまえの言うことはわかるということかもしれませんが、シュンペーターさんの言う清算主義あるいは創造的破壊の理論、生産性の低い衰退企業を市場から追い出せば、開放された資源が成長分野に振り向けられて、新しい付加価値が創造されるという考え方だそうでございます。
 もう一つは、フィッシャー先生の、デフレ期には債務負担が必要以上に重くなり、本来生き残っていける企業までも破綻させてしまうデットデフレーションが発生するので、財政、金融を拡張して物価を上げるリフレ政策が必要だ、こういう二説があって、さあ、どちらにするかという論争が行われたそうでございます。
 今、小泉・竹中ラインで進めております日本のデフレ脱出論というのは、いろいろ見ておりますと、明らかにシュンペーター博士が言う清算主義という考え方に立っておられるのかなという感じがします。
 すなわち、デフレというのは需要よりも供給が多いために生じる、需給バランスを回復するためには供給を減らせばいい、だから、デフレ脱却のためには不良債権処理を加速して非効率な問題企業を市場から退出させる、デフレは問題企業が存在するという構造的要因に基づいており、その整理には時間がかかるからデフレからの脱却は長引く、思い切った金融緩和や財政出動は不良企業を残すだけだ、何の効果もないという考え方が支配的であるような感じがします。
 そういう意味で、この竹中流のデフレ脱出論はいわば、丸々そのとおりだとは言えないかもしれませんが、シュンペーター方式をとっておられるのかなという感じがするんですが、実際はそういう位置づけでいいんでしょうか。
竹中国務大臣 今の経済状況を一九三〇年当時と単純に比較するのは、委員の御趣旨は決してそういうことではないとは思いますが、類似性を求めるのは、私はやはり適切ではないと思います。
 現状において、いわゆる需給ギャップ率、供給と需要のギャップというのは、我々の計測では三%台ということで、過去の不況に比べて決して大きいわけではありません。大恐慌のときの需給ギャップ率、ちょっと数字は記憶しておりませんが、これはもう比較にならないものであったというふうに思っております。
 かつ、今の政策の体系がシュンペーター流であるということに関しても、シュンペーターから学ぶべきところはたくさんあるとは思いますが、決してそのような形にはなっていないというふうに思っています。
 現実問題として、財政金融政策は、かなりの程度今活用しているわけです。金融についてはゼロ金利に近傍になっているわけでありますし、財政についても、三十何兆円という財政赤字を今また出している。その意味で、むしろ金融も財政も可能な限りの活用をしている。しかし、その一方で、供給サイドについても、生産性を上げていくというような努力はやはりしていかなければいけない。時代に合わなくなった制度はやはり変えていく、民間にできることは民間に、地方にできることは地方にというのは、その意味では生産性を高める、そういうことも一方でしていかなければいけない。その意味では、あちらかこちらかということではなくて、現状に即して、考えられる政策を総動員しながら運営に当たっているつもりでございます。
米澤委員 確かに、一九三〇年時代とがらっと世の中が変わったのは事実でしょう。しかし、現象的に見ると、不良債権の前倒しをやって中小企業がばたばたいっておるという姿を見ますと、形は今おっしゃったようなことかもしれませんが、実際は、破壊、創造的破壊といいますかな、破壊した方が新しい、いいものが生まれてくる、そういう発想がよく散見されると私は思っています。
 そういう意味では、つぶれるやつはつぶれた方がいい、市場に生き残っていけないやつは申しわけないが退出してください、そういうことが結構現実の社会の中で行われているような感じですね。そういう意味で、竹中流がいいとか、不良債権どんどん早くやれという方の中には、結局、産業再生だとか産業再生機構法、あんなものには反対だという人が結構重なるんですね。
 そういう意味で、きょうは平沼大臣に来ていただいておりますが、今のような政府の経済政策、現象的に出てくる、立っていけない企業がどんどんつぶれていく。一方では、大臣の立場からすれば、ちゃんとしっかり立って、この日本の経済を支えてほしいという気持ちがあると思いますね。そういう意味で、どうも産業再生と今竹中さんがおっしゃったような議論とどこか整合性がとれていないという感じがするんですが、どうでしょうか。
平沼国務大臣 今、米澤先生御指摘のように、中小企業の倒産というのは非常に高水準で推移しているのは事実でございまして、この三年をとりましても、大体一万八千件半ばを超えるぐらいで推移をしております。ですから、そういう意味では非常に厳しい状況であります。
 それで、シュンペーターとフィッシャー、こういう両説を御披瀝になられました。今私どもが取り組んでおりますのは、やはり日本の現状というのは、これはもう先生御承知のように、一方においては過剰な供給構造があり、また過剰な債務構造がある、これがなかなか景気の本格的な回復に結びつかない大きな要因になっています。その中で、私どもは前提として、やはりやる気と能力のある、そういう中小企業というものはしっかりと私どもは手当てをしていかなければならない、こういう基本的な考え方を持っています。
 そういう意味で産業再生ということを考えますと、やはり企業の持っているそういう有用な資源というものを活用して、そこを活性化して伸ばしていくということが産業再生にとっては非常に必要なことだと思っておりまして、そういう意味では、産業再生法を抜本改正させていただいて、一つは、企業レベルの選択と集中を行って、そしていいところはどんどん伸ばす、そういう一つの方向。それからもう一つは、企業のいわゆる壁を越えて、やはり例えば統合等によって新しいパワーを生み出して、さらに活性化をさせていく。こういう形で商法、税法をやはり特例措置を設けて、そして我々は、シュンペーター方式で全部切り捨てる、こういうことじゃなくて、その中で活力を与えて、そして伸ばすところは伸ばしていくという手法が、産業再生法そして産業再生機構の基本的な考え方であるわけであります。
 それから一方、少し長くなって恐縮ですけれども、我々は、繰り返しになりますが、中小企業でやる気と能力のあるところに対しては、今の厳しい現状の中でぎりぎりのセーフティーネットを張らせていただいて、これも対策を講じさせていただいております。補正予算の中では十兆円の規模のセーフティーネットを張らせていただきました。その中で、一生懸命、まじめに返済されているそういう中小企業に対しては、支払いの繰り延べを含めた借りかえというようなこともやらせていただきましたし、そういった形で我々としては、言ってみれば、シュンペーターも一つの理論でございますけれども、フィッシャーの理論もやはり一部活用をしながら、やはりこの国の、潜在的に日本は潜在力を持っているわけですから、そこを活用するための方策というものを今一生懸命取り組んでやらせていただいている、こういうことでございます。
米澤委員 ありがとうございました。ぜひ、シュンペーターの亡霊に負けないように頑張っていただきたいと思います。
 さて、次は日朝交渉の関係で御質問いたします。竹中さん、結構です。平沼さん、結構です。どうもありがとうございました。
 昨年の九月に初めての日朝首脳会談が行われました。この結果、日本政府が北朝鮮に拉致されたと認定していた九件十一人に二人を加えた十三人の安否が確認され、蓮池さんら四人の北朝鮮での生存、横田めぐみさんを含む八人の方が既に死亡されているということが明らかになりました。会談の中で金正日氏は、首相に対し、拉致に関してはまことに忌まわしい出来事で、率直におわびしたいと謝罪し、これからは絶対にこのようなことはないと再発防止を言明したと報道されました。
 しかし、両首脳が合意されました実効ある文書では、日朝共同宣言には「日朝が不正常な関係にある中で生じたこのような遺憾な問題」とだけ記されて、拉致があったこと自体言葉にはなりませんでした。北朝鮮の国家的責任にも言及されておりません。
 どちらの方がこの宣言文を書かれたかわかりませんけれども、戦前の日本に対する非難やおわびの文章はたくさん並んでおりますけれども、拉致そのものも、まさに日本にとりましては、国家犯罪として認めたことでございますから、やはりわびの一言ぐらいは、済まぬなということではなくて、文章に残すべきだ。そして初めて、拉致を解決する、核心に迫る勢いがついていく話だ、こう思うんですね。そういう意味で、拉致についても、あるいは国家的責任についても全然触れられていないこういう文書は、どこか第三国の人が書いたような感じがするのでございます。
 我が国の主権を不法に侵して、日本人を不当に拉致し、誘惑し、何十年にもわたって安否を明らかにすることもせず拘束し続けるという国家犯罪を、かくも簡単な文言で片づけられるものなのか、そんなに拉致事件というのは双方にとって軽いものだったのかと私は感じられてなりません。
 しかし、この結果を受けて総理は、北朝鮮との国交正常化交渉を再開すると決断されたそうでございます。行かれる前には、直接会談して国交正常化交渉の可能性があるかどうか見きわめたいということで行かれたように聞いておるのでございますが、結局、拉致を彼が認め、そしておわびをしたというただそれだけのことで、じゃ今度は正常化の話ですねとなるその軽さがどうも気に入らぬのでございます。
 何か、今まで認めていなかった拉致を本人が拉致だと言い、それで済まぬという釈明をしたということだけで舞い上がって、じゃ今度は正常化だという話になったんでしょうか。
 官房長官にお尋ねしたいと思います。
福田国務大臣 今、平壌宣言についていろいろ御意見ございましたけれども、そんな軽いことではない、極めて重い文書だと私は思っております。
 拉致のことについて書いていないというふうにおっしゃるけれども、それはもうそういうことを含めて、また、安全保障上の問題も含めて両首脳が合意をしたということでございまして、その中身は極めて重いものがある。具体的に書くか書かないか、具体的に書き出しますと、あらゆることを書かなければいけないということになります。また、我々も、日本側としましても、北朝鮮の実態をすべて承知しているわけじゃございません。ですから、そういうような状況も判断して、すべてを対象にして北朝鮮側の約束を取りつける、こういうことは極めて有効な、適切な書き方だったというように私は理解いたしております。
 そういうことでありますので、それをこれからは着実に進展させていく、そういう努力が求められるわけでございます。
米澤委員 この平壌宣言も、今おっしゃったような見方で見ればそういうふうに読めるのかもしれません。しかし、客観的に、冷静にこれを読んだときに、拉致という国家犯罪を、ほとんど「日朝が不正常な関係にある中で生じた」「遺憾な問題」という言葉で代弁しておられるような、それで、これからはそんなことがないように「適切な措置をとる」。じゃ、今まではどうだったの、どう考えておるのという常にそんな疑問がわいてくるのでございます。
 今まで、いろいろなところでこの首脳会談の中身や共同宣言には、いろいろな注文がついたり質問があったと思いますけれども、私は、少なくとも国交正常化交渉の再開というのは余りにも拙速である。今、北朝鮮を取り巻くいろいろな過去の問題、現在の問題があらしのごとく噴き出しておりますけれども、そういうのを見れば見るほど、本当に国交正常化交渉をするに足る今その国なのかという疑問がわき起こって仕方がありません。
 何で総理はそんなに急がれたのか、急ぐのか。何か総理の背中を押し上げる人がおるんでしょうか。ただ行って、手を握って、宣言して、今まで拉致を認めなかった人が認めたよ、謝罪もしたよと、そういうことで帰ってこられて、何か小泉内閣の人気でも出るというふうに思ったんでしょうか。それとも、行く前からこういうできレースを描かれた中でこの日朝交渉が始まったのか、そのあたりを明らかにしてもらいたいと思います。
川口国務大臣 日朝平壌宣言の署名について、ここに書かれていること、これはさまざまな問題があるわけです。拉致の問題も、それから安全保障の問題も、すべての問題をこれから話をしていこうということを言っているのがこの日朝平壌宣言であるわけです。
 拉致の問題は、委員がおっしゃったように、総理はこのとき非常に、我々みんな国民そうだったわけですけれども、大変なショックを受けた。そして、総理はその場で抗議をなさったということでございます。金正日はそれに対して、認め、謝罪をし、そして関係者を罰したということを言い、また、今後二度とそういうことがないようにする。それから、この点についてはまた北朝鮮の外務省の声明にも出ているわけです。
 こういったさまざまな問題、拉致の問題についても事実の究明を申し入れております。まだまだ亡くなったとされる方の状況等について我々は知らなければいけない。そういうことを、会談を、対話をやって、その交渉の中でそれをはっきりさせていく。
 それで、ここに書いてございますことは、そういうことをやって後、初めて正常化をすることができる、そういう問題が解決をしない限りは正常化交渉は妥結をしないということを北朝鮮はよくわかっているわけでして、また、正常化しなければ経済協力もないということをはっきり言っております。
 安全保障の問題についても、この地域の平和と安定に資するような形でやっていくということで考えております。
 これは、これをベースに、これに沿って、拉致の問題あるいは安全保障の問題を解決していくということの紙であるということです。
米澤委員 というような答えしか今のところ返ってこないんですよね。しかし、先ほども申しましたように、拉致なんか文章に入らなくてもいいという答えの仕方から、現に拉致の問題はあれ以来全然進んでないんじゃないですか。
 あちらの方はまじめに拉致の問題を受けとめて、拉致の問題が日本の一番大きな懸案問題であるならば、こうしようああしようという、そんな発想が出てきてもおかしくないんじゃないでしょうか。今、ほったらかしですよね、何も。ましてや、帰ってこられた五人が帰ってこないから約束違い、違反だとか言ってみたり、あるいはまた、余り拉致にしがみつくと次はテポドンだぞとおどしたり、やっていることが全然フェアじゃないですね、これは。
 そういう実態を事実外務大臣ですら承知しておられながら、よくも平気でそんな話ができるものだ、そう思っています。
川口国務大臣 拉致の問題について、私たちは今、北朝鮮に対して事実関係の解明と、そして、日本に戻ってきている五人の方の北朝鮮にいる家族の方、この方が日本に来るということを求めてきているわけです。
 これはその後、一回目の再開交渉をやりました後、二度目の交渉ができる状態に今なっていないということは非常に残念なことですけれども、さまざまなルートでこの点は引き続き働きかけをしておりますし、我が国として、他国に話をする、あるいは国連の人権委員会の場その他、今可能な限りの手段を使ってこの拉致の問題についての解決を先方に働きかけている、そういうことでございます。
 目に見えるような結果が今の時点で出ていないというのは、本当に残念でございます。
米澤委員 確かに、交渉のテーブルが途絶えておるわけですから、交渉の場でいろいろな問題提起ができないというのはわかりますよ。ただ、今から安保理に上げられたり、核の問題で韓国がアメリカともやり合ったり、そうする中で北朝鮮が、今この宣言文で書いてあるようなことを誠実に、念頭に置きながら日本に対して対峙しようなんて思っておるんでしょうかね。
 北朝鮮の労働新聞というのが「正論」という本に、仰天報道が掲載されておりました。それを読みますと、彼らは、一番大事な優先順位は過去の清算をすることだ、そういうのを横に置いて、拉致だとか核問題のような余計なことを言うなということを書いてあるんですね。だから、彼ら、今の北朝鮮の中には、拉致なんというのはもう余計なこと、過去の清算が済んでから考えればいいことというような発想しかないんじゃないでしょうか。そして、小泉さんが訪朝をされた時点で拉致の問題は片づいた、こういう書き方がしてあるんですね。小泉さんが来られたのは、罪深い過去を清算することが基本で、日本の総理はこの問題を解決する政治的な決断と意思を持って我が国を訪問したのでありという書き方がしてあるんですよね。
 こういうのを読めば読むほど、日本がこの宣言を何か誇りにするようなことをおっしゃり、それゆえにまた、拉致の問題は正常な交渉で解決が進んでいくというふうに思っていらっしゃるかのごとき答弁は、全然気に食いませんね。もう彼らは終わったと思っているんじゃないですか。
    〔委員長退席、萩山委員長代理着席〕
川口国務大臣 委員が北朝鮮の労働新聞の方を我が国の政府よりもより信じていらっしゃるとは私思いませんけれども、当然のことながら、北朝鮮は北朝鮮の立場を言っていく、これは当たり前のことでございます。
 北朝鮮はずっと交渉の過程で、第一回交渉の過程でも、彼らがまず取り上げるべきだと考えているのは正常化の話であり、あるいは、それに関連した経済協力の話から取り上げたいということはずっと言っているわけでございまして、それに対して我が方は激しく、それはそういうことではない、安全保障の問題、拉致の問題、そういうことの議論をすべきだということで第一回目の交渉を激しくやり合った、そういうことでございます。
 当然に、これは二つの国の立場が違うわけですから、向こうは向こうの立場を言う、こちらはこちらの立場を言う、そう言ってやっていくのが交渉だと思います。拉致の問題の解決は、これは非常に大事なことでございます。我が国は既に向こうに、事実関係の究明をすべきだ、調査をすべきであるということを言い、向こうは調査をするという約束をしてくれています。今話がこういう状況になっているのは本当に残念ですけれども、粘り強く交渉をしていきたいと考えております。
米澤委員 ということをおっしゃる割には、全然進んでいませんよね。交渉の再開ができないから進まないというのはだれでも言える話で、にもかかわらず、こういう形で着々と交渉を進めております、あちらの方も誠実な対応が見えますというのが答えだったら、私は納得します。
 私も、何も北朝鮮の労働新聞を定期購読しているわけじゃあるまいし、あるいはまた、書かれていることがすべてだとは思いません。それぞれプロパガンダもありましょうし、いろいろと駆け引きの中でこういう書き方もあるんだと思いますが、しかし、こういうのを読んでいますと、やはり彼らは本当のことを言っておるな、彼ら自身は本音のことを言っておるんだなというふうに見えるんです、信じる信じないは別ですが。
 現に、五人の方が帰ってこられて、そして、今日本に落ちつかれて大変幸せそうな顔をされていることを大変我々もうれしく思っておりますけれども、しかし、あの五人の子供さんなんか、家族の皆さんの交渉は全然進んでいなくて、帰ってこられない。
 きょうの産経新聞なんか見ますと、何か裏にはいろいろなトリックがあったようなことが書いてありますね。だから、それぞれ勝手に物は言っておるんだと思いますが、あの五人が帰ってくるときでも、実際は、すぐ帰しますからというような感じで連れて帰ってきたのか、そのあたりがちょっと、どうせそんなことじゃないかなと私は思えてならぬのです。だから彼らは盛んに、最初の約束が違う、こう言っておるんですね。約束は、すぐ帰しますからという感じで連れてきて、それがこっちの方でも帰さないと言い出したものだから約束が違うというせりふになっているのかな、そう思うんですよね。
 そして、いろいろな文章を読みますと、平壌宣言をお互いに取り交わしたらすぐ日本から経済協力というのか大金がおりてくるような、そんな感じの中でこの平壌宣言を見ているというふうにしか思えないんですが、実際は交渉の中でどんなやりとりがあったんでしょうか。
薮中政府参考人 お答え申し上げます。
 まさに、総理の訪朝に至るまでの経緯の中で、包括的にすべての問題を取り上げるということでの話がございました。北朝鮮側に対しまして懸案事項の解決、これに正面から取り組む、当然その中には拉致の問題がございます。そして、その他国交正常化に係る基本的な方針ということを策定して正常化交渉を再開するという包括的な交渉方式というのが想定されて、そして日朝の間での平壌宣言ができたわけでございます。
 そして、お話しのとおり、まさに正常化交渉ということで、平壌宣言ができました後の第一回の交渉におきましても、日本側からは、拉致問題の解決、そして核問題、その他の安全保障上の問題というのが日本側にとっての最優先課題である、この解決なくして当然国交正常化があり得なくて、したがって経済協力があり得ないということは、繰り返し繰り返し北朝鮮側に大きな声で、そしてはっきりと伝えたわけでございます。
 そうした中で、その後、まさに五名の拉致被害者の方々の御帰国の話もございました。この点につきましても、当初は、御本人あるいは御家族の御意向ということも踏まえて、先方から滞在期間一、二週間という話もございましたけれども、これはまさに御帰国されてから、皆様方の家族を含めて、そして我々としまして、日本政府として、その方々の自由な意思をどうやって決められるのかということからいえば、御家族もすべて日本に帰ってきていただいて、そこで決めるしかないというのを日本政府の判断として行いまして、そうして今日に至っているという状況でございます。
 引き続き、この問題につきまして毅然とした形で北朝鮮側に臨んでいきたいというふうに思っております。
米澤委員 政府は都合のいい言葉を包括的にとおっしゃるね、よく。拉致の問題や安全保障の問題等をそんな簡単に包括的に議論できるんですか。現に北朝鮮は、安全保障の問題はアメリカとの関係であって日本なんか関係ないと言っておるじゃないですか。そういう言い方をされている相手に日本の安全保障がどうだ、テポドンがどうなんという話を本当にされるんですか、できるんですか。
薮中政府参考人 まさに、核の問題につきまして、北朝鮮側が、これは米朝、アメリカと直接対話をする問題であるというふうに言っております。
 私どもとしましては、もちろんアメリカもそうでございます、あるいは中国、ロシアもそうでございますけれども、この問題、つまり北朝鮮の核開発問題というのは、国際社会全体の問題である、そして、国際社会全体としてこれを許すわけにはいかない、認めるわけにはいかないという問題でございまして、そういう意味で、国際社会全体としてこれから引き続き北朝鮮に当たっていく必要があるということだと思います。
 そして、日朝の間でも、まさに先ほども申し上げました正常化交渉、再開された第一回の交渉におきまして、我々、この核問題、ミサイル問題を取り上げました。当初は、北朝鮮側は、まさにこれは核問題はアメリカと話し合う問題だという態度をとりましたけれども、我々といたしましては、この日朝平壌宣言、この文言に基づいて、まさにこれは日朝間の問題でもある、日本にとってもこの地域の安全にとっても大変大きな問題で、日本として当然これを取り上げる問題であるということで、その後、我々の懸念ということを引き続きこの交渉の中では大半の時間を使って、我々は拉致の問題とそして核の問題を取り上げたというわけでございます。
米澤委員 日本としては、執拗にそういう話をしたというところまでは私は信用します。しかし、交渉ですから、相手がその気になるかどうかが問題なんですね。言うのは簡単だから。十二時間しゃべったってあっちがノーと言えば終わりだから。そういう意味で、本当にあちらが誠意を持って交渉しようという気持ちになるぐらいに、本当に心を動かしてくれるまであなた方は交渉は進んでいるというふうに理解していいんですか。
川口国務大臣 交渉は先ほど言いましたように粘り強くやっていくということですけれども、北朝鮮に対してはっきり言っていることは、そういった問題を解決して国交正常化が行われない限り、北朝鮮に対して日本は経済協力を行わないということでございます。
 我が国は、北朝鮮に対して、そういう意味ではてこを持っているという意味で、さまざまな交渉のやり方をしていく、そういうことであると思います。
米澤委員 それじゃ、その結論は、そう遠くないうちに今おっしゃったようなことで話は進むというふうに信じていいですか。思い込みはだれだってできるんです。
    〔萩山委員長代理退席、委員長着席〕
川口国務大臣 我々としては、北朝鮮との間でできるだけ早く日朝の正常化交渉を再開させたいと思っています。北朝鮮と我が国がそういったことがいつ再開できるか、これは委員御案内のようなさまざまな今の国際情勢、そういったことも絡んできますので、そういった問題に対しても、核の問題ができるだけ早く国際社会の中で解決をするための努力も行いながら、その中で日朝国交正常化交渉を早く再開させる、そのための努力を行っているわけです。
米澤委員 御案内のとおり、最近北朝鮮が核を、まあおもちゃにすると言ったら語弊がありますが、核に関する発言を中心にして何か危険水域に入っているような感じがしてなりません。
 私は、日本の国民感情は、先ほどから話をしておりますように拉致問題が最優先するわけでございますが、国際的には北朝鮮の核開発の方が関心が高いように見えます。
 現時点では、そういう意味で、いかなる援助も北朝鮮の核開発を助長するということを念頭に、願わくば、政府が安易な人道主義に陥られないように期待もし、決意もしてほしいと思っておりますが、政府としてどうですか。
川口国務大臣 まず、経済協力全般から申しますと、これは先ほど申しましたように、正常化がなければ行わないということでございます。
 それから、人道的な支援については、これは従来から、人道的な観点、そしてさまざまなその他の観点を総合的に勘案して判断をしてきているということでございますけれども、現在の時点で人道的な食糧の支援を行うことを考えているかということであれば、現在は考えていない、そういうことでございます。
 なお、国際的には、さまざまな国がその必要性を感じて議論をしているということはございます。
米澤委員 この議論はちょっと精査しなければならぬと思いますが、例の米朝の合意ができましたね、一九九三年か四年かな、あの時点からアメリカは北に優しくなりましたね。韓国も北に優しくなりましたね。日本も米なんか支援したりして、優しくなりましたね。
 結局、あの時点で北朝鮮の核は大体おさまったなとみんな安堵の胸をなでおろして、その後は、それ以上激しくするとまた彼らが機嫌を損なうという意味で、結構、太陽政策みたいなものが始まったのはそのあたりからだと思うんです。しかし、そういうことをやりながらつき合ってきたら、ふたをあけたら核という問題が出てくる。
 そういう意味で、これからの交渉次第だと思いますけれども、特に経済協力等については、あるいは人道主義的なものについては、変に仏さんみたいな気持ちにならずに、過去は過去として検証して、そのことが本当に北朝鮮の核を放棄するような方向に動くのかという、そこだけは本当に精査した上で気配りをしてもらいたいなというのが私の心からの願いでございます。
川口国務大臣 核の開発を北朝鮮が行っている可能性、あるいは現実に持っているかもしれない可能性、そして、一連のNPTの脱退あるいは核の拡散につながる疑念、これは我が国にとっては看過できない深刻な問題であると思います。我が国だけではなくて、国際社会が一緒になってこの問題に対して対応をし、北朝鮮が国際社会の中での責任のある国となる、そういうことを見きわめる必要があると考えております。
 委員の御意見に、そういう意味で賛同をいたします。
米澤委員 くどいようですけれども、この核については、平壌宣言を読みますと、「朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を遵守することを確認した。また、双方は、核問題及びミサイル問題を含む安全保障上の諸問題に関し、関係諸国間の対話を促進し、問題解決を図ることの必要性を確認した。」言うだけはただですね、これは。
 しかし、九月十七日に行かれて、この平壌宣言に署名された後、北朝鮮はどんな動きをしたんでしょうか。この宣言にあるような動きをしていますか。
薮中政府参考人 お答え申し上げます。
 その後の北朝鮮の核問題、核開発問題に関する動きでございますけれども、まことに遺憾な事態が続いていることは、委員御承知のとおりでございます。
 その後、北朝鮮とアメリカとの間でまず話がございまして、そこでウランの濃縮開発プログラムということについてのアメリカ側の問いかけに対して、あるいは問いただされたのに対して、北朝鮮側としてそのことについてそういうことをやっているということの話があって、それ以来、北朝鮮の核開発をめぐる疑惑が大きな国際的な問題となっていることは御承知のとおりでございまして、国際社会としては、これは一致団結して北朝鮮の核開発計画を必ずやめさせる必要がある、そういうことで当たってきておりますけれども、残念ながら、北朝鮮はそれ以降、いろいろな今まで凍結しておりました措置、これを解除し、あるいはNPTから脱退を声明するといった行動に出ております。
 国際社会としては、まさにこれに対して、一致団結してそうしたことをやめさせるということで、例えばIAEA等で、日本も中心となりまして、きっちりとした、はっきりとしたメッセージを北朝鮮に対して送っているというのが現状でございます。
米澤委員 遺憾なことがあるということは、今おっしゃったように国際的に云々というよりも、二国間の関係でこの平壌宣言は守られているとお思いですかという意味を込めて質問したんです。何のためにこれを結んだんですか。
川口国務大臣 平壌宣言が署名をされた後、米国のケリー国務次官補の訪朝等に端を発したさまざまなことがあって、その結果として今薮中局長が申し上げたようないろいろなことが起こってしまったわけでございますけれども、この平壌宣言というのは政治的な重みを持った重い文書でありまして、我が国の立場というのは、そういった北朝鮮が今行っていることをもとに戻して、例えばNPTに再び入るというようなことをやって、この平壌宣言を守る形で国交の正常化の交渉を進めていくということがこの平壌宣言の意味である。そういうことを行って国交正常化をし、我が国としていろいろな問題の解決をする、そして国交正常化をする、そういうことだと考えております。
米澤委員 今の答弁は政府としてあらまほしきことをおっしゃっただけでございまして、実際は、この宣言どおりに彼らは守ろうとすら思っていないのではないかと。NPTから抜け出すとか、IAEAの査察をノーと言うとか、そういうときには何か日本に言うてきたんですか。済みませんが、いろいろありますから、平壌宣言の関係から、こういうことでやりますから済みませんなんて言うてきましたか。完全になめられておるんじゃないですか。
川口国務大臣 北朝鮮と我が国との間のやりとり、ないわけではございません。いろいろございますけれども、これについては、今まさに外交上の進行中のことでございますので、ここで申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
 それで、その上で、この平壌宣言を守らなければ国交正常化がないということは北朝鮮はよくわかっている、正常化がなければ経済協力はないということが北朝鮮はよくわかっているわけでございまして、まさにそれを言いながら、正常化のためのいろいろな問題の解決を図っていく、そういうことでございます。
米澤委員 ということは、この平壌宣言があろうがなかろうが、全然変わっていないということですね、これは。この宣言をされたならば、それ以降はこれを遵守しながら、少なくとも交渉も関係ももっと正常化していい。まだ正常化交渉はでき上がっていませんよ。しかしながら、この宣言にサインをした以上は、お互いに遵守しようという気持ちぐらい出していいじゃないですか。今話を聞くと、何にも変わっていない、前も後ろも。なくてもいい話ですね、こんなのは。
 そして、こういうものが、常にじゅうりんされるというのかな、言葉はちょっとあれですが、約束を破られるということは、それを結んだ小泉さんも一緒にばかにされるんだよ。何であんな約束するんだとか、何であんな宣言に署名したんだと、何でそんなのにだまされるんだと。結ぶことは、彼らはわがままをやるかもしらぬ、彼らがわがままをすると同時に、我が国の小泉総理大臣も一緒に、おまえあほかと言われるんですよ。一蓮託生なんですよ、関係が。
 そのあたり、わかりますか、本当に。外務大臣。
福田国務大臣 委員、懸念されている現状については、私どもも全く懸念をしているわけでございます。
 平壌宣言は、これはまさに、北朝鮮が国際的な安全保障上の問題も、これも遵守し、かつ、拉致問題とかいったような我が国との関係についても、これも謝罪し、そして、今後そういうことを起こさないということを取り決めたわけでございます。そういう趣旨から申しますと、今北朝鮮が行っていることはその趣旨に沿っていないという、そういうような状況にあると思います。ただ、平壌宣言をすべてほごにするというような状況までには至っていないというのが私どもの認識であります。それよりも、この平壌宣言に基づいて、これから平和的に解決する道を探っていくということが大事なんではなかろうかと思っております。
 北朝鮮側からすれば、米国から重油の供給がなくなったという、非常に北朝鮮側にとっては大きな変化もあったわけでございます。それは米朝間の問題であるということではあるかもしれませんけれども、そういうことは北朝鮮からすれば、これは極めて重要なことであり、そしてまた、このKEDOの枠組みというそういう枠組みを持っておるという日本も、枠組みの中にいる日本としても、これは関係なしというわけにはいかない問題でもあるわけでございまして、そういうことを総体的に考えて、北朝鮮は北朝鮮として、少しでも自分の立場をよくしよう、そういう気持ちがあるのではなかろうかと思います。
 しかし、その方向性については、日本の、少なくともこの平壌宣言にあります日本の考え方とはマッチしていないものである、こういう認識をしております。ですから、北朝鮮に対しては、今後、これ以上のことをしないように、そしてまた、この平壌宣言の精神に戻ってほしいということはもう再三申し上げているわけでございます。
 しかし、核の問題という大きな、北朝鮮にとっては生命線と考えているこの核の問題が解決しないという状況の中において、ほかのいろいろな問題、例えば拉致の問題についても順調に話が進まないという現状があるということも、これはそのとおりでございまして、このことについてはさらに我が国として、我が国の立場を北朝鮮に対して伝えながら、そして、全体として北朝鮮も国際社会の一員として、今後平和的な関係において発展をしていく道があるんだということを、これを示唆しながら、粘り強く交渉していく、この態度が大事なんだろうと思います。
 私は、この平壌宣言があったために、我が国は北朝鮮と交渉することもできるようになったわけでございますし、現実の問題として、拉致の五人の方々は帰ってこられたということはございます。そういう変化があるわけでございますので、これを否定するようなことは、これは今の段階ですべきでないというように考えております。
米澤委員 政府としては大変苦しい答弁のような気がします。しかし、一事が万事、これから常にそういう苦しい答弁をしなければならぬような関係になったことだけは事実だろうと思います。できれば、明るい答弁ができるような日が一日も早く来るように、ぜひ頑張っていただきたい。日本人としてお願いしたいと思います。
 さて、IAEAの緊急理事会で、ついに、北の核の問題は国連の安保理事会に処理を付託するということに相なりました。がらっと情勢は変わってきましたね。
 このことにおいて、これから北朝鮮はどんな動きをするかなと考えますけれども、決して、静かに粛々とおさたを待つなんという話じゃないだろう。これから暴れ始めるだろう。結局、この安保理で彼らの機嫌を損なうようなことが決まると、それは宣戦布告とみなすと言って、もうおどし始めておりますよね。今から大変暴れるような感じがしてなりません。そういう意味で、このような安保理の動きに合わせて、政府の対応も時には苦しい場面が出てこざるを得ない、そう思うんです。
 その意味で、この際、この安保理事会において政府はどのような方針で臨まれるのか、その基本方針をここで聞かせておいていただきたいと存じます。
川口国務大臣 我が国は今、残念ながら安保理の理事会のメンバーではないものですから、直接にその会議を動かすということは難しいわけでございますけれども、今、安保理のメンバー、理事国に対しては、韓国と日本、この二国が北朝鮮との関連では死活的な関係を持つ国であるので、二国の意見が反映されるような形でやってほしいということを、これは安保理のP5の国を初めさまざまな国にその話をいたしまして、現に、そういうような形で今動いているということがまず一つです。
 それから、IAEAが安保理に付託をしたということでございますが、この結果、IAEAの付託を受けて安保理がどのような行動をとっていくかということは、まだ今の時点では全く見えていないということでございます。
 IAEAのこの間採択されました決議におきましては、これは報告することを決定した、安保理に報告することを決定し、同時に、北朝鮮の核問題の平和的な解決についての機関の希望と右目的に向けた外交的な努力の支持を強調しということを言っておりまして、安保理に報告をするけれども、平和的に、そして外交的な努力をやって解決をすることが重要なんだということも言っています。北朝鮮がこれを受けてどういう対応をとっていくかということは、まさに我々としても、これは全くわからないわけでございますけれども、我が国の立場は、慎重に対応をするということをずっと働きかけてきているわけでございます。
 それで、安保理の中で今、制裁とかそういうことの議論が、全くそういうことについて、それを議論しようと思っている国は全くない、あるいはほとんどないという状況でございますので、当面、安保理がこれをどのように取り上げるつもりかということでございます。その際は、先ほど言いましたように、我が国と韓国の立場がきちんと反映されるようなやり方でやってもらうということです。
 我が国としては、IAEAの特別理事会で採択をされた決議については、これは国際社会として北朝鮮に、核の拡散あるいは核の開発についての国際社会の態度、これをきちんと伝える必要があるということでございまして、我が国としてこの決議に賛成をいたしております。
米澤委員 何か、外務大臣の話を聞いていますと、昔はやった「あなたまかせの夜だから」という、そんな歌を思い出しますね。
 さて、そういうような何か中途半端な方針で臨まれて、果たしてうまくいくのかどうか。これまた結果を見なければどうも言いようがない、そういうことなのかなという感じがしてなりません。
 それで、経済制裁には反対なんですね。経済制裁をしようということは反対なんですね、日本は。いいですか。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、今、安保理でどのようにこれが取り上げられるかわからない。制裁を、経済制裁も含めて、これを議題にして議論をしようと言っている国は、私が知っている限りはございません。
 したがいまして、我が国としては、まだ議論をされていないことですので、それについて賛成とか反対とか、そういうことを言う段階では全くないということですが、基本的な我が国の立場といいますのは、これはずうっと言ってきていますけれども、この問題を平和的に解決する必要がある、核の開発、核の拡散、朝鮮半島に核があることは、これは我が国としては認められないということを言っていまして、日米韓三カ国が中心になってそういった考え方で進めていこう、慎重に、冷静に対応しなければいけないということだと思います。
 制裁がそういった目的を果たすのに適したやり方かどうかということは、考えてみれば、今の時点ではそういうことではないということは明らかであろうと思います。
米澤委員 そういうことであれば、これまた先を見てからの話になりましょうが、いわば国連の段階で経済制裁をするしないという結論が出ない前に、今、新聞紙上等でいろいろなことが書かれていますね。もう少し、あっちの言葉で万景峰というのは何ですかね、これは。何と読むんですかね。
 万景峰の入港禁止を考えたらどうかとか、日本円の持ち出しぐらいは禁止したらどうかとか、あの船を利用して不正送金があるそうだとか、ハナ信組から送金するのをやめさせたらどうかとか、不法入国、不法滞在者の取り締まりをもっと強化したらどうかとか、特に工作員、いろいろな話の中では工作員がバックしていますね。日本はスパイ天国ですが、この工作員が対日という関係では物騒なことをいろいろなところで熱心にやられておる。一体この問題をどうするんだとかいう話。余り刺激しちゃいけないよということで、余りこのあたりはまともに議論するような雰囲気はないのでございますが、いろいろなことがばれるに従って、朝鮮総連とは一体何なんだという憤りみたいなのが感じられて仕方がありません。
 そういう意味で、現段階で、今申し上げたような点がどういう議論の俎上に上っているのか、政府の中ではどんな議論がなされているのか、なされていないのか、そのあたりをはっきりしてほしいと思うんです。
谷垣国務大臣 今、米澤委員が切歯扼腕されまして、いろいろなことをお挙げになりました。私の守備範囲である、工作員をどうするかというお話がございましたので、これを答弁させていただきたいと存じます。
 戦後約五十件の北朝鮮関係の工作員を検挙いたしておりますが、その活動を通じまして、いろいろな彼らの工作の実態が浮かび上がってきております。こういう問題を考えますときに、中に入れてしまう前の水際が大事でございますが、沿岸部において潜入、脱出を企てた工作員等の事件というのは今まで十五件ほど検挙いたしております。
 警察におきましては、今既に、海上保安庁等、関係各機関と連携を図って情報収集とかあるいは沿岸警備を行って、北朝鮮工作員の不法入国に対する取り締まり、あるいは日本国内で活動する北朝鮮工作員の摘発に努力しているところでございますが、国家公安委員長としても、さらに力を入れてやるように警察当局を督励しております。
扇国務大臣 米澤議員から御指摘のありましたとおり、一般国民から見ましても、なぜという疑問符が出てまいります。
 そこで、私どもは何とか、不法入港ではないかということで、開港してあるところを疑問のある船を検査できるのか、あるいは入港拒否ができるのか、そういう点を私は皆さんで考えようということで、昨年の十二月の六日でございましたけれども、閣僚懇で、各関係省庁力を合わせて、これを調べることができるか、あるいは開港しているものを入港拒否ができるか、それは検討したいということで、安全と環境と保全と、そういう意味で一致協力して、頭を絞ろう、知恵を出そうということを決議したわけでございますけれども、今その各省庁の連携をしております。
 他方、海上保安庁といたしましても、今おっしゃったように、谷垣担当大臣からございましたけれども、海上保安庁としては、船舶を利用した密航、少なくとも減少傾向にはございます、減少傾向にはございますけれども、平成十一年までは千名以上の密航者がございました。また検挙しておりましたけれども、平成十四年は検挙数が百三十七名と減少はしておりますけれども、より巧妙になっているのではないかという疑義もございますので、今申しましたように、海上保安庁の検査の強化と、なおかつ、今冒頭におっしゃいました万景峰等々、それから北朝鮮の船が今、日本じゅうで十隻、座礁したり何かで放置されています。そして、保険もなく何もなく、船員も船長も帰ってしまったということで、これは地方自治体の負担になっておりますので、これも含めて、入港拒否、あるいは保険を掛けていない船をどう処理するかということを検討中でございます。
米澤委員 歯切れがよくていいですね。
 次に、時間もありませんが、先般、拉致された皆さんはたったあれぐらいの数じゃありませんよ、可能性を秘めた人はこんなにありますよといって、特定失踪者問題調査会の方が、拉致の可能性を排除できない失踪者として新たに四十四名、その前に既に四十名の実名が出されてありましたが、トータル、リストの中には二百十名に上る方々がひょっとしたら拉致されているのではないかという、疑ってもおかしくないよという名前が公表されました。この中にはそうでない方もひょっとしたらおられるかもしれませんが、しかし、今までの手口だとか、拉致と認定するに至った経過等を教えていただきますと、かなりの数がまだ北朝鮮に拉致されているであろうと想像にかたくありません。
 我が国の主権を破って連れていかれたという意味では、我が日本人がまさに拉致されて今北朝鮮におられるということでございますから、何とかして帰ってきてもらう。そのために国は汗をかくべきだ。そのためにどんなことを今考えておられるのかというのが、また心配になるわけでございます。
 今までのような、警察の方で挙げられて、これは拉致だろうと認定されるまで相当の時間がかかる。あるいはまた、この二百人近い方々が一つ一つ検証されて、これは拉致だ、拉致でないなんということをいつわかるのと言われれば、これまた二十年後かもしれない。そのときには、本当にどうなっているかわからない。
 我々はこの問題を、単に運の悪かった人がいなくなったではなくて、いつでもこういう可能性がある状態に今まで日本があり、そして、連れていかれた以上はおれたちがまた引っ張り戻すんだ、そういう決意のもとに、それなりに政府は汗をかく機関を、特に集中して取り組めるような機関をつくっていただくことが非常に大事な時期になっているのではないかなとこの数字を見ながら思ったわけでございます。
 今は、拉致被害者の家族支援の方は一生懸命頑張っておられますが、それはそれとして多としますが、同時に、北朝鮮に連れていかれて、それこそ早く故国に帰りたいという皆さんが確実におるとすれば、何とかしてそういう人を日本に連れ帰る、そういうことをまじめに考えよう。拉致被害者の方々が、一体我々のために、幾ら叫んでも振り向いてもくれなかったというようなことをおっしゃる方もおられますけれども、まさにむべなるかなという感じがしてなりません。
 そういう意味で、このような多くの皆さんが拉致されているかもしれないというこの実態を前にして、政府は何らかの形で、組織的に連れ帰る物理的な組織をつくるべきではないのかなと思えてならぬわけですが、谷垣さんの方でしょうか、答えは。
谷垣国務大臣 今、二百十名のリストが公表されまして、警察としても、これは大変重要な参考資料として考えております。
 それで、今御指摘になりましたように、拉致がありましてから四半世紀の日数がたつわけでありますけれども、拉致が起こりましたときに、なかなか捜査も、率直に申しまして、簡単ではない面がございます。被害者が実在しない、あるいは目撃者もほとんどいない、証拠も残っていない、こういうような状況で、長い間捜査がかかった例があるわけでありますが、十件十五名認定をいたしました。
 しかし、今米澤委員がおっしゃいましたように、我々もこれ以外に、北朝鮮関与の可能性が排除できない事案がかなりあるのではないか、こう思っておりまして、全国の都道府県警察に今洗い直しをしてもらっているところでございます。
 それで、その際にやるべきことはいろいろございますが、今回、こういういろいろなまた世論が非常に高まってまいりまして、それと同時に新しい情報が入ってくるということもございますので、家族あるいは関係者の聞き取り、それに加えまして、先ほどから御議論でございますが、海上保安庁、あるいはそれぞれのまた関係官庁と連携を深め、さらには海外の情報収集、こういうようなことも必要でございますが、今、協力体制を強化いたしまして、やっているところでございます。
米澤委員 外務大臣、このような疑わしき人まで入れて、北朝鮮の方から、ひょっとしたらこの人は私が連れてきたんじゃないでしょうかね、そんな話が出て、初めてこの宣言は生きているというふうに私は感じるんです。これをまた日本の警察の方で調べ上げて、こんな証拠があるから拉致されたんだ、これは一体どうなったんだという話をこっちから持っていかなければあちらは返事もしないという状態は、こんな宣言はなくてもいいんです。本当に、そう言われれば、我々は間違ってこういう人がおりますというようなことをあちらの方から提出されて、本当は、実は申しわけないという話が出て、初めてこの宣言に記載されている文言が生きているというふうに我々は見たい。そういう関係になって、初めてこの宣言は生きたというふうに感じるものではないでしょうか。
 そういう意味で、交渉をやって、いろいろこっちから言うて、あっちも反論してというような交渉のお遊びではなくて、現実にそういうものを踏まえて、実はという話が出てきて初めて、日朝交渉の結果、正常化しようかという、国交がそこから始まってもおかしくないと私は思うんです。
 そのとき初めて、拉致の問題が解決しない限り正常化の交渉には当たりませんという今まで小泉さんがおっしゃったことが生きてくるんであって、実際はそういう環境にもないのに、正常化交渉を何しろ急ぐんだという、その裏には何かあるんじゃないかなと思わざるを得ないのでございます。
 特に、今いろいろなところでささやかれております太陽政策ですね。新しい韓国の大統領が選ばれました。この方は、現在の金大中さんの太陽政策を引き継ぐとおっしゃっています。それについて小泉さんは、それは賛成だとおっしゃった。予算委員会等でも、小泉さんは太陽政策を支持するとおっしゃった。それは個人的な見解ですからいいですよ。しかし、太陽政策の行き着くところ、やはり、今まで問題が指摘されたような関係が増幅してしまう。結果としては、あしき者を利するという結果になるんじゃありませんかということを私は危惧するんです。
 そういう意味で、この太陽政策、小泉さんは好きだそうですけれども、もしそれが本当ならば、この平壌宣言は太陽政策の延長線にあるのかなと思ったりもするんです。そこらが、もやが晴れない。いつ何どき走り出すかわからぬなという危惧の念を持ちながら、これから韓国、日本、アメリカ三国、特に連携しながら北の核を抑え込むという話でございますけれども、余り太陽政策、まあ他国のことですから内政不干渉でございますが、あれはもう失敗していると私は思うんです。それを、またぞろ、隣国との関係がある、また今度は韓国に行かれるという関係もあるんでしょう、何か太陽政策を支持するかのごとき言動は、私は今の段階では慎んでもらいたいな、そう思うんですが、答弁ありますか。
福田国務大臣 韓国の太陽政策と一言に申しますけれども、これは、私どもが考えておりますのは、基本的には話し合いということなんです。話し合い路線ということを我々は考えておりまして、太陽政策の中身、正確でないかもしれませんけれども、しかし、一番大事なことは話し合うことである。今まで委員もいろいろ御懸念、指摘されましたけれども、やはりこの問題を解決するについては、話し合いがなければ解決の糸口というのはないんだろうというように思います。
 そういうことでございますので、今後とも政府としては、話し合いをする、そして誠実に対応してもらう、その道を求めていく、このことに尽きるわけでございまして、この路線を今後とも継承してまいりたいと思っております。
米澤委員 話し合うことが基本だ、全くそのとおりだと思いますが、しかし、話し合いというのは、話し合える人と、話し合ってもだめな人がおるんですね。我々は、今、北朝鮮を取り巻くいろいろな環境、やっておること、すべてを見て、本当にそれに値するお人ですかということを常に危惧の念を持ちながらこれから日朝交渉を眺めていくということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。
藤井委員長 これにて米澤君の質疑は終了いたしました。
 次に、末松義規君。
末松委員 民主党の末松義規でございます。
 きょうは、私の質問に入る前に、午前中の竹中大臣と海江田委員との間で行われた質疑に関しまして、私自身ちょっと納得がいかないというものがありますので、予算委員会の理事としても、きちんとそこは国民の皆様にはっきりとさせておかなきゃいけない、そういう観点から質問をさせていただきます。
 まず、竹中大臣、あなたは、国務大臣として、経済財政・金融担当大臣ということでありますし、不良債権の処理等を通じて、銀行の経営がどうなっているか、特別検査とか一般検査を通じて、銀行業界あるいは金融機関等の内容について一番知り得る立場にありますよね。まずそこから答えてください。
竹中国務大臣 銀行を検査監督する当局が金融庁でございます。そこの担当をさせていただいている大臣でありますので、委員がおっしゃるような、そのような立場に、重要な立場にあるというふうに思っております。
末松委員 そうしますと、竹中大臣が海江田委員との間で言われていたことですが、ETFについて、私も買いますと、それから絶対もうかりますということでございますが、これについて、一般の人が、例えば私が絶対もうかりますよと言ってもだれも信じてくれないかもしれない。でも、大臣、その内容に一番精通した大臣が絶対もうかりますという話になりますと、これは信頼性の点で、御自分でどう思われますか。
竹中国務大臣 これは、そもそもの経緯は、貯蓄から投資への流れをつくるというその一環、日本の未来を買いましょうということで、閣僚懇で意見を出しまして、みんなでそういう、閣僚が率先して日本を買うという、一種のデモンストレーション効果というのを期待して、みんなが買いましょう、そういう申し合わせをしたわけでございます。
 その中で、私自身も買いますと、私自身は、これはよい投資でありますというふうに申し上げたつもりなんでありますが、いずれにしても、先ほど申し上げましたように、その趣旨を誤解されかねない部分があったという面においては適切ではなかったというふうに思っております。
末松委員 まあ、言わずもがなでしょう。あなたが言った一言はやはり重いんですよね。
 閣僚懇の席で言われたと言いましたけれども、閣僚懇というのは、申し合わせてといったのは、どういった方々がおられたんですか、ここで言ってください。
竹中国務大臣 閣僚懇では、大臣規範等々いろいろございますけれども、その大臣規範の中で認められているもの、投資信託等々は別に認められているわけでありますけれども、その問題について、以前から、もっと積極的に閣僚が率先してやろうではないかという議論がございました。
 私の方から、金融を担当する大臣として、今回、特にその中でもETFについては、日本の未来を買うという意味で率先して買おうではないかということを申し上げて、それを引き取る形で、官房長官の方から、今の竹中大臣の意見を受けて、そのように閣僚として率先して努力いたしましょう、そういうお話がございました。
末松委員 ほかに閣僚がいたんですか。だれがいたか言ってください、今、官房長官がおられたというのは私も聞きましたけれども。
福田国務大臣 閣僚懇談会、私が司会をしておりますので、全員閣僚がおりましたということを申し上げます。
末松委員 竹中大臣が、私も買いますし、絶対もうかります、そして閣僚の皆さんも率先して買いましょう、こういうことを言ったわけですよね。これはやはりとんでもないんじゃないですかね。
 要は、このETFという金融商品、この一つの特定の商品に対して一番情報を持っておられる大臣がそういったことを閣僚の間で申し合わせをするというようなことであれば、それは海江田委員が言われたように、一般の人々、証券マンがだれかを勧誘する場合に、このETFという商品は、竹中大臣が率先されて、そして閣僚がみんな買うと申し合わせもされた、これはもう当然安全と思わざるを得ませんねというふうな形で、そこで、海江田委員の質問の繰り返しになりますが、そのときにそういった形で勧誘した場合、あなたは先ほどは、悪意にとって、そしてねじ曲げた形でそれを勧誘するならば法律違反、証取法違反になると言われました、証券取引法の。では、そういったことで、実際にこういうことを言われたんですよと、本当に、コピーを持って回ったら、そして、やはりこれは安全ですよと、私は信頼できますよ、大臣も閣僚も全部言っているんだからと言ったら、それは法律違反になりますか、竹中大臣。
竹中国務大臣 我々は、これは特定の商品といいましても、要するに株価に連動したものでございますから、まさに日本経済の未来を買うということで、閣僚が率先して一種のデモンストレーション的な意味で、株式市場を活性化、元気づけようということで、今回閣僚懇で議論をしたわけでございます。
 お尋ねの、これは事実でございますから、その事実があるということを、閣僚懇でそういう議論があったということをもしも販売員が知らしめることだけについては、それはそういう問題ではないというふうに思います。しかし、今おっしゃったように、これは安全ですよというようなことをもし言ったら、これは断定的に予見を与えていることでございますので、法律にその販売員は違反するということになります。
末松委員 これを販売しちゃいけないというのが、前提として予見に当たるからだめだと。
 では、もうちょっと問い詰めさせてください。そうしたら、これは絶対もうかると言ったら、これは前提として予見を与えないんですか。
竹中国務大臣 この法律は販売員に対する法律でございますから、販売員が顧客に対して、絶対もうかりますということになりますと、これは予見を与えていることになります。(発言する者あり)
末松委員 そう。今、やはり、見ている国民はそう思いますよ、大臣が言ったんですよと。では、大臣は販売員じゃないから言っていいんですか。大臣、では、絶対もうかりますと、彼がほかの商品に対しても、これは絶対もうかります、あれももうかりますと言っていいんですか。竹中大臣、ちょっと答えてくださいよ、おかしいじゃないですか、そんなの。いや、もしそれでいいと言うんだったら、あなたは言っていいんですよ。それは後は裁判所の判断になりますよ。
竹中国務大臣 この商品がいいですとかそういうことを言うのは、これは誤解を招くことになります。私が申し上げたのは、私のことを申し上げたわけでありますので、お尋ねの件と少し違うとは思っておりますが、それでも、これは海江田委員も御指摘になりましたように、誤解を招きかねない発言であったということはそのとおりだと思っております。したがって、不適切だということでホームページからも削除するようにいたします。
末松委員 削除するのは当たり前の話です。そして、おわびするのも当たり前の話でしょう。ただ、私たちが問題にしたいのは、やはり金融担当大臣としてのあなたの資質なんですよ、適格性なんですよ。
 つまり、特定の商品であれば問題ですがと言ったけれども、ETFといっているものは確かに株価の指数がかかわりますよ。でも、あれは特定の商品じゃないんですか。あれだけ違うんですか。何か一般の商品で、全然関係ない商品なんですか、あれは。おかしいじゃないですか。ETFは特定の商品じゃないんですか。大臣はそう判断しておられますか。
竹中国務大臣 投資信託の一つの形であるということでございます。
末松委員 それはあなたが言っているのは、特定の商品を勧誘したということをお認めになられたわけですね。では、あなたは絶対もうかりますと言われた。これは重い事実なんです。本当はこんなことを言っちゃいけないんですよ。やはり、差し控えたい、立場があるから差し控えたい、これを言わざるを得ない、当たり前でしょう。それがなされていないからおかしいと言っているわけですよ。
 では、絶対もうかりますと言った根拠は何ですか。あなたも根拠なく言っているわけじゃないんでしょう。
竹中国務大臣 閣僚懇でも議論しましたように、これは日本の未来を買うということで、閣僚もそういったことに積極的に参加しようというふうに議論をしたわけでございます。
 私自身は、これは自分は買います、これは日本の未来を買います、私は日本の未来は明るいと思っております、そのように申し上げたかったわけであります。
末松委員 日本の未来を買う、いいでしょう。私たちも日本の未来のためにやっているわけですから、それは明るくあるべきですよ。
 ただ、それが絶対もうかりますという表現とどうつながっていくのか。あなたは、一番金融と経済と財政について情報を持っている人なんですよ、日本で。その人が絶対もうかりますと言ったら、一般の人々は当然それは今もうかるんだろうと思いますよ。あなたははっきり具体的に言ってくださいよ、その根拠を。
竹中国務大臣 「改革と展望」に示していますように、調整期間を経た後、構造改革の効果が発現して、日本の経済は必ずやよい方に向かうだろう、そのような運営をしなければいけないと思っておりますし、そういう意味で日本の未来を買いましょうということを閣僚懇で議論したわけでございます。(発言する者あり)
藤井委員長 末松君、末松君、もう一度質問してください。
末松委員 これは、あなたが単に頭を下げればいいという問題じゃないんですよ。いいですか、一九二九年でしたか三〇年でしたか、当時の大蔵大臣が鈴木商店がつぶれると言って、それから取りつけ騒ぎが起こったんですよ。そういった、あなたは、御自分の発言の重みというのを知らないといけない。本当にそういった意味で私は、危ういんですよ、そこは見ていて。
 それはあなたのアイデアはいいかもしれない。非常にアイデアマンというのは、私もいろいろと啓発をされたことも何回もあります。だけれども、あなたは、大臣としてやっちゃいけないことをやったんですよ。いいですか、根拠を全然、改革をして、そして未来がよくなるだろう、これだけで、絶対もうかりますという発言が出るんですか。ちょっと根拠を言ってください。納得できない。
竹中国務大臣 先ほどから申し上げていますように、みんなで日本の未来を買いましょうということを閣僚懇で議論をしたわけであります。だから、私は、日本の未来を信じておりますし、私は買います、その意味でこれはよい投資だと自分でも思っております、そのような趣旨を申し上げたわけでございます。
藤井委員長 竹中大臣、いま一度答弁をお願いいたしますが、先ほど海江田委員の質疑に答弁されたように、国務大臣として、金融・経済財政担当大臣という立場、重みのある立場として御発言を願いたいと思います。
竹中国務大臣 私は、申し合わせの後、記者会見で、大臣は買いますかというふうに聞かれまして、私は買いますというふうに、私の立場で申し上げたわけでございます。
 しかしながら、いずれにしても、発言の趣旨を誤解されかねない部分があったという面においては、必ずしも適切ではなかったというふうに思っております。その意味も踏まえまして、ホームページについても削除する方向で対応させていただくつもりでございます。(発言する者あり)
藤井委員長 竹中国務大臣。
竹中国務大臣 発言としては、不適切なところがあったというふうに思っております。それに関しては、ホームページの該当部分を削除するとともに、今後、国務大臣として反省すべきところは反省して、問題が起きないようにしっかりとやらせていただきたいというふうに思っております。
末松委員 今、一見殊勝なお言葉をいただいた。
 私は、これを、それで終わればいいと思うかもしれませんが、これはある意味で犯罪なんですよ。いいですか、例えば、証券取引法の百五十八条、相場変動を目的とする不正行為、風説の流布等、これなんかは、結局、金融担当大臣が全閣僚を巻き込んで、そして風説を流した。市場は、あなたがいつも言っているように、市場は市場に任せればいい。そこをやればいいのに、あなたは、その風説、言説でもって市場を上げようとしたんですよ。それはあなたのポリシーとどう……(発言する者あり)それは実際、今議場でも言われていますけれども、一時的に上がったんですよ、あれがために。あれで上がって、そしてまた下がったりして、それで損した人は、あなたがそれを償うんですか。あなたによって乗せられたんですよ。
 それについて、あなたのふだんのポリシーとこれはどうかかわる発言なんですか。(発言する者あり)
藤井委員長 御静粛に願います。
竹中国務大臣 先ほど申し上げましたように、誤解を招きかねない発言があったということに関しては不適切だというふうに思っております。今後注意して対処をさせていただきます。
末松委員 今、その誤解を招くようなということよりも、私が問題にしたのは犯罪性なんですよ。
 例えば、あなたが、いいですか、これはちょっと勘ぐった見方ですよ。つまり、例えば、あなたの友達にずっと、いや、今度はETFというのはいい商品だから、これ買っておいてねと言ったとしましょう。そして、あなたのその発言、予定されたときに、予定のようにETFは絶対もうかりますよと言った。そして相場が上がった。それはまさしくインサイダー取引に当たるじゃないですか。そういうことをあなたはないと言うかもしれないけれども、それはそういうことが当然出てくるから、犯罪行為もうすれすれ、あるいは犯罪行為じゃないですか。あなたはそれに対してどう思っていますか。ただごめんなさいと言うだけじゃないでしょう。
竹中国務大臣 基本的には、先ほどから申し上げていますように、閣僚懇におきまして、日本の未来をみんなで買いましょう、閣僚が率先してそのような姿を見せましょうというデモンストレーションとして呼びかけさせていただいたわけでございます。
 そのことについては、閣僚の一員として、これは日本の未来をよくするために今構造改革を行っているわけでございますから、その未来そのものを我々自身が率先して買いたい、さらにそれをよくしていきたい、そのような中での行動でございます。
 繰り返し申し上げますが、しかし、誤解を招きかねないという意味で不適切であったというふうに思っておりますので、その点については今後注意をしなければいけないと思っております。
末松委員 ちょっと今、竹中大臣自身の信頼性が問われているので、法制局長官の方に聞きます。
 法制局長官、例えば証券取引法百五十八条に、何人も相場を変動することを目的として不正行為を働いてはならないという、この件についてどうですか。これは、何人もというのは、大臣は免れるんですか。
秋山政府特別補佐人 個別具体の行為についての法規の当てはめにつきましては、それぞれ担当省庁で行うべきものと考えますけれども、ただいまの何人もの範囲につきましては、まさに言葉どおり何人もということになろうと思います。(発言する者あり)
 何人もの中には大臣も入ると思います。
末松委員 官房長官にお尋ねします。
 今、竹中大臣が不適切な発言だったということでありましたけれども、私は、この間、彼が例えばニューズウイークのインタビューで、四大銀行のグループはツービッグ・ツーフェールというような、大き過ぎるからつぶれないといったようなことはないんだということで、かなり誤解を与えるような発言もしているわけですよ。そういったやはり、彼が学者さんとしては非常に優秀かもしれませんけれども、これはちょっと口が軽過ぎる。そして、場合によっては、これが金融危機ということを、ひょっとして引き金を引くようなことがあるかもしれません。
 そういったことを勘案して、あなたは小泉総理大臣の代理ですから、それに対して、この竹中大臣を解任する気はありませんか。あるいは、あなたはその責任について、あなたもその閣僚懇を主宰していて、そしてそれに乗ったわけですから、これは閣僚みんなが実は反省して陳謝してもらわなきゃいけない、そう思いませんか。
福田国務大臣 この問題は、多分リクルート事件までさかのぼるんだろうと思います。要するに、株を買うと、インサイダー取引が、お話ございました、それがあるんではなかろうかという疑いを持たれる。したがいまして、閣僚においては、特にそういうことについては疑念を持たれないようにしようというようなことで、閣僚になりますと株からはずっと遠ざかっておった。ただ、大臣規範におきましては、投資信託は、これはいい、こういうことになっているんです。投資信託はいいことになっているんです、大臣規範では。
 ただ、投資信託もいろいろな投資信託がございますけれども、ETFも、これも大きく分けて二種類あるんですよ。一つは、先ほど来竹中大臣が説明しておられる日経二二五と、それからTOPIXに連動する、こういう日本の株式市場を示す、そういう株式市場を代表する形の投資信託。それからもう一つは、もう少し細かくなりまして、例えば機械産業だけのETFとか、それからまた輸送機器だとか、そういう産業別、こういうのがございます。
 私どもがこの間、この分なら疑惑を持たれないで済むだろうというようなことで選びましたのは、TOPIXとそれから日経二二五、この部分についてのみ推奨しようじゃないか、こういうふうな話になったわけでございまして、この今申しました分につきましては、これはまさに竹中大臣が言われるように、日本の、日本経済の未来を買う、こういう趣旨にかなうだろう、こういうことでございます。
 これは、なぜそういうふうに限定したかというと、あくまでもインサイダー取引の疑念を持たれないように、こういう趣旨だからでございまして、そういうことで、我々としては十分注意をしながらこの問題については対応したというように考えております。
 ただし、先ほど来竹中大臣からも言っておられるように、絶対もうかるから、こういうことですね。これは、実は閣僚懇の中でも大臣から、これを買ってください、もうかりますから、こういう話がありました。ただ、それは冗談だと私どもは受けとめておりまして、その証拠に、閣僚から笑い声が出たんです。そういうような経緯もございました。(発言する者あり)
藤井委員長 御静粛にお願いいたします。
福田国務大臣 ですから、この後、記者会見だとかいうようなところで、もうかるからというようなこと、これは全体に対して言うわけですから、これは多少問題があったんじゃないかなというようには思いますけれども、そういうようなことで、我々としては、疑念を持たれないということを中心に考えて、限定して限定して今回こういうような措置をとった、こういうことでございます。
末松委員 今、官房長官の答弁で、ETFの説明がありました。何かにこにこしていますね、竹中大臣。
 ETFは、つまり金融株も入っているんですよ、みんな、指数の中で。彼は一番それを知り得る立場なんですよ。そして閣僚懇の中で、いや、絶対もうかりますと言ったんですよね、今あなたが確認したように。そこでやった後で、そして今度は国民に対して、絶対もうかりますという話をしているんですよ。
 私があなたにお聞きしたのは、閣僚懇の中で、そして、言いました、注意して対応しているんだと、インサイダーとかあるいはその疑念が持たれないように。注意して対応したことが、結局こういうことなんですか。閣僚懇でこれをすべて、もうかりますから勧める、そしてさらに国民に発表する、これがその閣僚懇のやったことなんですよ。つまり、竹中大臣だけじゃないんですよ。閣僚懇、閣僚すべてがそこに対して関与しているということじゃないですか。そこに対する責任はどうなんですか。そして、さっき僕が聞いたのは、竹中大臣の責任をあなたはどう思われるんですかと。不適切な発言だったと、それで済むんですかということについて、小泉内閣として、はっきりとそれを表明してください。
福田国務大臣 この閣僚懇談会で竹中大臣からそういう話があった、これは今申しましたような経緯でございまして、私どもは、それは竹中大臣が冗談でつけ加えたことだというように考えておりました。しかし、その後で、公式の記者会見とか、そういったようなところでもってそういう発言があるとしますと、これはちょっと冗談が過ぎておる、こんなふうに私は思います。
 この責任については云々ということは、これは、私はこれ以上申し上げるわけにまいりません。私は任命権者でございませんし、私の立場を申し上げるわけにいきませんけれども、そういうような経緯があったということだけ申し上げておきます。
末松委員 質問時間が終了しましたのであれですが、今のお話だと、冗談が過ぎた、つまり、冗談の範囲だったということを金融大臣が言うというのは、本当に、僕はとんでもないことだと思いますよ。それをもってまた後続の議員がこれについて追及しますので、それでまたその質問をさせていただきます。
 どうもありがとうございました。
藤井委員長 この際、暫時休憩いたします。
    午後零時二分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時十四分開議
藤井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。末松義規君。
末松委員 午前中、竹中大臣の本当にとんでもない発言のことについて追及をさせていただきました。
 そこで、私は、最後に官房長官の方から、内閣全体として閣僚懇でやった、本当に、みんながつるんでやったみたいな形になっているんですよ。そういったことを、この責任、やはりそこは竹中大臣が、いや、あれは冗談が過ぎたと。冗談が過ぎたということを、官房長官がそれを公式のこの予算委員会の場で言われる。これは私はおかしいと思う。だから、そこは官房長官、さっきの答え、どうなんですか、それは。おかしいと思いませんか。国民は納得しませんよ。
福田国務大臣 午前中の委員の御質問に対して、とっさのことでございますので、よく整理していないでいろいろ申し上げて、混乱をさせてしまったということがあるのであれば、私どもの意に沿わないことでございまして、ちょっともう一回まとめて申し上げます。
 竹中大臣の発言は閣僚懇の後の雑談の中で行われたものであり、竹中大臣自身の、ETF購入に関して、投資家としてもうかると思っていると言われたもの、この発言は、竹中大臣が個人的な投資家として日本経済の未来は明るいと考えていることを表明されたものと理解しているが、いずれにしても雑談の中でのやりとりであった、こういうことであります。
 また、その後の記者会見の場における、買います、必ずもうかりますという発言についても、記者から大臣自身が購入するのかと問われているのに答えて、大臣自身としても購入し、投資家としてもうかると思っているという発言をされたものであって、決して、もうかるから買いなさいと言われたものではないということです。しかしながら、会見の場でのこのような……(発言する者あり)
藤井委員長 御静粛に。御静粛に。
福田国務大臣 会見の場でのこのような発言については、その趣旨を誤解されかねない部分があったという面において、必ずしも適切でなかったと考えている。
 私の発言も、記者会見の内容をよく点検した上で申し上げたわけでないので、多少私自身も誤解があったかもしれません。
末松委員 今の発言を聞くと、どうも都合のいいように、今までの発言は、全く竹中大臣が個人的に思って、しかも、私は考えるんですけれども、やはりきちんと閣僚懇という公式の場で言った、そして記者会見の中ではっきりと言った。それで午前中の答弁は、彼は、竹中大臣は、日本の希望の未来、これを買ってくれということで勧誘したということで言っているんですよ。
 内閣官房長官、ちょっと、今のあなたの発言は午前中の答弁とそごを来すんじゃないですか。全然違いますよ。
 ちょっと委員長、そこは私は納得できない。午前中の答弁と全然違う。立場をころころ変えて責任逃れをするようなことはやめるべきだ。
福田国務大臣 先ほど申しましたように、私は、急なことでございます、記憶違いということも多少あるかもしれぬけれども、しかし、そういうやりとりがあったことは認めます。しかし、その場の雰囲気、閣僚懇というのは時々冗談も出てくるということもございますし、それはその場の雰囲気ということもあるわけでございますので、笑い声も出たということも、そういう意味合いの中において、そういう雰囲気の中で出たことでございます。
 それ以外、私は別に間違ったことは言っていないというふうに思っております。
末松委員 そうしたら、日本に輝かしい希望の未来があるということも冗談だったということなんですか。
 竹中大臣、お聞きします。
 あなたは、冗談半分でそういうことを言ったんですか。あなたの個人的な、全く個人的な気持ちだけでそれを言ったんですか。午前中の答弁を踏まえて言ってくださいよ。後で私は精査しますからね。
竹中国務大臣 閣僚懇では、基本的には、閣僚が率先して日本の未来を買おうではないかということを、構造改革を進める立場で申し上げたわけでございます。
 閣僚懇の後の記者会見で、これはそういう一種の、我々としては、閣僚が率先してデモンストレーションをしようではないかということでありますから、これは、では、あなたは買うんですかというふうに聞かれまして、私は買います、これは私はもうかると思っておりますというふうに、私の立場として申し上げたことでございます。このETFがもうかるものであるから買いなさい、こういうふうに言うと、これはもちろん非常に大きな問題であると思いますが、これはそういう趣旨ではございません。
 ただ、いずれにしましても、その部分だけ取り出しますと、何度も申し上げていますように、これはやはり誤解を招きかねない面があったという意味で、不適切であったというふうに反省をしております。そのような趣旨での発言であるということの御理解を何とぞ賜りたいと思います。(発言する者あり)
藤井委員長 御静粛に願います。
 では、もう一度質問の趣旨を、末松委員、もう一度国務大臣に質問をしてください。(末松委員「いや、質問はしました。答弁がおかしいんです。言ってください」と呼ぶ)いや、もう一度。委員長から、またその答弁がまた気に入らないという話になるといけませんので、いま一度質問をお願いいたします。
末松委員 竹中大臣、午前中、あなたは、記者会見でも、日本の将来を買ってほしい、そういった意味で、絶対もうかるということで記者会見で言ったと。それは国民に対して言っているわけですよね。それを、公的な部分じゃなくて、官房長官が言われるように、全くあれは個人的な、あなたの単なる個人的なプレーでやったんだというのが解釈として官房長官から出てきたんですよ。
 私が聞きたいのは、あなたは午前中に、そういう真摯な思いで、公的な形で、日本の株も上げたいという思いがあるということも述べられていたわけですよ。そういうことで言ったのを、個人的なものということで言ったということで、あなたはそれでどうなんですかと。午前中の答弁はそう公式に言ったけれども、それは私的なものだということをここで答弁を変えるんですか、それとも、その思いは一緒ですということなんですか。
竹中国務大臣 基本的には、そもそも閣僚懇で閣僚が率先してやりましょうというのは、これは公的な立場で、我々自身がその一種のデモンストレーションの先頭に立とうではないかということを呼びかけたわけでございます。
 それに対して、これは、今度は個人として私は買いますかというふうに聞かれて、記者会見では、これは個人として、私は買いますよ、私はもうかると思っておりますよ、そのように答えたわけでございます。
末松委員 まず、もう一度お伺いします。ちょっとわからないんですよ。あなたの答弁が二転三転しているんですよ。
 いいですか、閣僚懇であなたが閣僚に言ったわけですよ、もうかりますからと。それは、その場で言ったのは、あなたは冗談で言ったんですか、そこを答えてください。
竹中国務大臣 閣僚懇では、閣僚が先頭に立って買いましょう、ETFとはこういうものでございますということを説明させていただきました。閣僚懇の後の雑談のときに、これはあなたはどうするのかというふうに聞かれて、私は買いますよ、これは個人としてはもうかると思っていますよ、そういう趣旨のことを閣僚懇のこれは雑談で申し上げた。
 それと類似のやりとりが記者会見でありまして、記者会見では、これは当然のことながら、個人的にどうですか、個人的に買いますよ、これはもうかると思っておりますよ、そのように申し上げた次第でございます。
末松委員 官房長官、要は、閣僚懇でそういう話が出て、閣僚で一致したんですか。そこでみんな、買わせようということを、みんなで閣僚が買おうじゃないか、そういうことは言ったんですか。
福田国務大臣 これは、そういう提案が金融担当大臣からございましたけれども、協力をお願いしますというような文章だったと思います。
 ですから、協力するかしないかは個人の判断であるということで、それは、個々の閣僚の考え方に基づいて協力するかしないかを決めればよろしいことであります。
末松委員 本当に、私は、やはり大臣として言葉が軽過ぎる。さっき官房長官が、いや冗談が過ぎましたねと。多分これは、言葉はとっさのことでと思ったけれども、とっさのことに大体本音がみんな含まれるんですよ。だから、官房長官、これを、今答弁されたように、全体として買わせる、こういうことを閣僚の中で決めたわけじゃないんでしょう。それはもう一回、ちょっとはっきりと言ってくださいね、イエスかノーかで。
 それから、竹中大臣は、本当に個人の売買ということで言ったんじゃない、それをあなたは公式に言ったんですよ。そこは本当に、午前中の答弁をきちんとそれは一致させてくださいよ。いいですか。
 だから、官房長官、ちょっとそれは、今までのこれを、市場にそういう影響を与えるとか、そういうことを閣僚が言うということは、僕らはけしからぬと思っているんだ。そこをはっきりしてくださいよ。あなたがそれをはっきりさせないから、何か冗談とかなんとかいう話にするから、これはおかしくなるんですよ。それをきちんと言ってください。
福田国務大臣 そもそも閣僚懇談会というのは、閣議が終わりまして、その後で、割合自由な雰囲気の中で各閣僚が思い思いのことを言うところなんですよね。(発言する者あり)ですから、記者会見のことはまた竹中大臣に聞いてください。そういうことでありますので、冗談も時々出ます。いろいろな話をするわけでございます。
 そして、それは公的なものでないから、すべて記者会見で発表するという性格のものでもない、こういうことであります。(発言する者あり)もちろん決定するような性質のものではありません。
 それから、あともう一つ何か言われましたね。
藤井委員長 それでいいです。
末松委員 では、政府の方ではそれは内々に、実質的に決定したということではないというのが今のあなたの答弁ですね。
 では、あれは個人的にあなたが口を滑らせた、そういうことですよ、記者会見で。絶対もうかりますとか、それは不謹慎な発言だ。そうじゃないですかね。
 だから、そこの責任はやはりとってもらいたい。私は、そういった意味で、委員長にも、私は党としても、彼がそういった軽はずみな発言をこれまでも繰り返し、そして今、今回も繰り返したということに対して、極めて重い重責があると思っている。だから、その意味で、私たちは、本当にそこは辞任に値する行為だと思っています。党としても、そこはきちんとこれから追及をしていきます。
 そして、委員長におかれましては、これは理事会で、今官房長官が、政府としてはそういうことを決めていないということ、それは言葉でいただきましたけれども、やはりまだ疑念がある。そういった意味で、きちんと理事会で、紙の形で、その事実経過、そういったものを含めて、そこは理事会の中で検討していただきたいと思います。
藤井委員長 理事会で協議をさせていただきます。
末松委員 次に、私の方できょうはテーマとして持っているのは、国立追悼施設、この構想についてお伺いをしたいと思います。
 国立追悼施設、これは懇談会、官房長官のもとで、この一年間ですか、昨年一年間やられてきたんですが、まず、この経緯について、官房長官からお話をお伺いします。
福田国務大臣 この懇談会は、一昨年の八月十三日に出されました小泉内閣総理大臣の談話を踏まえまして、何人もわだかまりなく戦没者等に追悼の誠をささげ平和を祈念することのできる記念碑等施設のあり方について幅広く議論するために、一昨年の十二月十四日、私のもとに御指摘の懇談会を開催することになりました。
 これは唐突に思いついたということでなくて、かねがねこういうふうな話はあったわけでございますね。それでまた、ある団体は具体的にその場所も決めてやりたいといったような話もずっと聞いてきております。
 ですから、そういう背景があった上で、この懇談会を開いて国民的にどういうような議論がなされるものかということを見定めたい、こういう趣旨でございます。
末松委員 それで、懇談会は十回ぐらい開かれて、十二月の二十四日に報告を出したということでございますが、報告書の内容についてしゃべっていただけますか。説明ください。
福田国務大臣 これは、報告書、ございます。これはそれほど長いものでございませんけれども、要するに、なぜ、今、国立の追悼・平和祈念施設を必要とする時期が来たと考えるのか、こういうことでございます。
 これは、いろいろな、過去、特に戦後、問題がございました。例えば、講和、独立から約半世紀たって、その間に冷戦の終結というものがございました。これも十年たったわけでございます。そしてまた、グローバル化の進む中、新たな国際社会形成の動きが見られる、こういうような状況になっております。また、一昨年の九・一一テロに見られるような世界平和への新たな挑戦が生まれてきている、そういう、現在、平和について国民の関心も高まってきている。さらには、近隣諸国なども国際社会における日本の今後のあり方に注目をしている。こういうような国際環境の中に日本が置かれているという考え方が基本的にございます。
 そういう中でもって、我が国として、我が国のメッセージというものを外国にも積極的に発信していかなければならないのではないかというのもこの懇談会の提言の趣旨の大きな柱になっていると思います。
 その中には、追悼と平和祈念、こういう二つを掲げてございます。追悼と平和祈念とはどういうふうな結びつきをするのかということにつきましては、日本の平和の陰に数多くのとうとい命があることを常に心し、そして、日本と世界の平和の実現のためにこれを後世に継承していかなければならないということでございます。
 そして、理由のいかんを問わず過去に日本の起こした戦争のために命を失った外国の将兵や民間人も、日本と区別するということでなく、戦争に関係した方々の多くを追悼の対象にしようということでありまして、この考え方のもとに、そういうものを追悼するという中に、今後の日本の、我が国のあり方と申しますか、平和を祈念するというふうな気持ちを込めて、平和祈念を今後の日本の基本的な考え方、日本のあり方の基本というふうにしたいということでございまして、そういうことで二つをパッケージにした。
 非常に簡単に申してわかりにくいところでございますけれども、この提言をぜひ読んでいただいて、そして、委員は読まれていると思いますけれども、その上で御判断をいただきたいと思っております。
 いずれにしても、この提言については、国民的な議論を踏まえて、その後で政府としてどういうように取り扱うかということを決めてほしいということがこの提言の中に書いてございますので、そういう方針に基づいて我々としても対応してまいりたいと思っております。
末松委員 安倍官房副長官、おられますよね。安倍官房副長官もこの提言は読まれましたか。
安倍内閣官房副長官 読みました。
末松委員 どういう感想をお持ちになられましたか。
安倍内閣官房副長官 有識者の方々がお集まりになられまして、回を重ねて、誠実な議論を重ねられたというふうに思っております。
 また、報告書の中に、本懇談会で検討した事項は、いずれも、国民的な議論を踏まえ、最終的には政府の責任において判断されるべき重要な事項であるというふうな指摘がございますから、現在、政府としては、新たな国立の施設について、国民の間での議論を注視し、国民世論の動向を見きわめているというところでございます。
末松委員 安倍副長官は、この国立追悼施設に反対する会に名前を連ねたり、あるいは神社神道の政治連盟の事務局長もやられていますけれども、これについて個人的な御意見を、述べたくないというのであればそれで結構ですが、個人的な御意見があれば言ってください。
安倍内閣官房副長官 私は神道議員連盟の懇談会の事務局長をしているということでそういうことを御指摘だと思いますが、一方、私、浄土宗の浄光会の事務局長も、他方務めているわけでございます。それぞれの立場として私の思いもあるわけでございますが、国としては、立場としては、今官房長官がお述べになったとおりであるというふうに思っております。
末松委員 なかなか慎重な発言ですよね。そうだろうと思っていました。
 実は、この追悼施設の問題というのは、やはり一番私は、両者のことについて感じるんですが、靖国に参拝した小泉さんに対して、韓国とか中国とか大変な反発があって、これはまずいと、あるいは国内でも反発があった。だから、官房長官が言われたように、何人もわだかまりなく追悼の誠をささげる、そういったことをやるにはどうすればいいんだろうということで、国立追悼施設をつくろう、つくるべきかどうかの懇談会が官房長官のもとでできたわけであります。これが大体十回ぐらい開かれて、今井さんという経団連の前会長のもと、十名近くの委員が一生懸命に議論をされて、この結論書といいますか、報告書になったわけですね。
 私は、いたずらにこの問題を対立の具にしようと思っているわけではありません。私の意図するところは、この追悼施設をつくるという発想と、それから、靖国神社にお参りをしよう、そして靖国神社を、もっときちんと追悼の誠を靖国神社の方にささげていこうよ、そういうふうな方々の対立が見られるわけであります。私自身は、靖国神社は靖国神社として、きちんとお参りされる方はお参りをされればいい、それは靖国神社の大きな役割であるし、過去、従来、ずっとその役割を靖国神社が担ってこられた、そこは非常に敬意を表するわけです。
 ですから、そこの中で私がお聞きをしたいのは、靖国神社と国立追悼施設の基本的な考え方の相違が二つあるんですよ。
 一つは、やはり戦争観についてなんですよね。靖国神社の方に立てば、日本の戦争というものを、やはり英霊思想ですから、英霊思想というのは、日本が行った戦争に対して自分の命を張って頑張ってくれた、そういった方々を神として祭って、そしてきちんと追悼、あるいはここでは鎮魂といいますか慰霊といいますか、そういう形をしていこうじゃないかというのが靖国神社の発想であります。
 ですから、そういった意味でいけば、その前提となる戦争は、日本が侵略戦争を犯したという位置づけになってしまうと、これに対して協力をしてきた過去の英霊たちは結局間違ったことに対して協力をしてきたんだ、そういうことはとんでもないことになるわけですね。だから、その取り得る前提としては聖戦、つまり自存自衛の戦争を日本はしてきたんだ、これがきちんとやはりまず根っこにないと英霊思想というのが成り立たないんですよ。そういった意味で、これが靖国の発想。
 一方、国立追悼施設の発想は、戦争そのものを、やはり戦争の惨禍、これは非人間的だ、だから戦争をやること自体がおかしいんだ、戦争はだめなんだというのが根本的な発想にあるわけなんです。だから、そのもとで亡くなった方は基本的にはその犠牲者だ、戦争というそのものが狂気なんだ、それを起こしちゃいけないというのがこの国立追悼施設の発想なんですね。と私は考えていますが、官房長官、どういうふうに思われますか。
福田国務大臣 委員の御指摘のとおりだと思います。戦争をして個々の人を対象にして追悼する、こういうことではないんで、それは個々の人ということでなくて全体に対して追悼する、そういう考え方に立っております。そういう場合には、個々について、そのいいの悪いのといったような、そういう判断もなくなるのではないかと思います。それは追悼する人の思いの中にあるんだ、こういうことになります。
 英霊という言葉、英霊思想、これについては、これは宗教上のことでございまして、私どもとしてこれについて定義をするとか、そういうことはちょっとできない立場にございます。
末松委員 英霊思想で本当に自存自衛の戦争を日本が行ってきた、これは靖国神社がそうお考えになられて、そしてそれを信奉するのは個人の宗教上の自由です。それはそういったところがあるべきです。だから私自身はそこは何ら問題視していないし、どうぞ頑張っていただきたいという思いだし、私も靖国神社に私的に参拝します。
 だからといって、私は、戦争観を、政府のもとで靖国神社と同じような戦争観を今持っているのかどうか、そこをちょっと再度、その戦争観の中で、戦争に対して、忌むべきものであって否定すべきということだろうと私は確信をしていますけれども、官房長官、そこの点についてはっきりと述べていただけますか。
福田国務大臣 比較をするというのは難しい。すなわち、靖国神社、どちらに立つかと……(末松委員「どっちでもいいわけですよ、それは」と呼ぶ)ええ。
 靖国神社の考え方、これは宗教上のことでございますので、これについて云々できないし、また比較もしにくい問題だと思います。しかし、この施設については個々の死没者を慰霊顕彰するための施設ではないということでありまして、そこのところは靖国神社と根本的に違うということですね。
末松委員 ちょっと、余り私自身、その今の答弁はまだ評価の対象にならないんですけれども。
 もう一つ大きく違う点が、追悼の対象が大幅に違うということなんですね。
 靖国神社の方は、基本的には、A級戦犯を含めた軍人軍属のみで、二百四十六万体に、三人の皇族の方が祭られているわけですね。これだけなんですが、今度、国立追悼施設の方は、基本的に軍人軍属だけじゃない。一般人、例えば、空襲で殺されたり、あるいは虫けらのように殺された一般の方々、さらには、日本人であってもなくても、日本人であろうがなかろうがそれは平等に追悼の対象になる。さらに、敵味方なくそこは追悼しよう。それは、なぜそんなことが出てくるかというと、戦争というものそのものが狂気だ、そして悲惨なものなんだ、だから、やはりそれはやっちゃいけないんだという思いの中で、犠牲者として見るからそういう形の発想になるわけなんですね。
 ですから、そういった意味でいけば、今官房長官が言われたように、国立追悼施設をお参りする方の心の中にその対象が出てくるわけですよ。例えば、A級戦犯の御遺族の方がその国立追悼施設の前に行ってお祈りするときに、そのA級戦犯の方を思って追悼する、そういう場合もあるでしょう。一方、そうじゃない、逆に、例えばA級戦犯を否定するような方が行って、自分の親戚が死んだ、それに対して、自分の親戚に対して心の中で思ってその方を追悼する。だから、その個人の心の中にその追悼の対象がそれぞれにあればいい。
 だから、靖国神社のように名簿があって、そういうことをせずに、その個人個人の思いにゆだねられている、そういう追悼のやり方で非宗教的な追悼施設というのをつくろうとしている。その考えでよろしいですか、解釈として、官房長官。
福田国務大臣 そのとおりだと思います。
 戦争に赴いて亡くなった方のみならず、東京で罹災した、また沖縄で罹災をした、そこで亡くなられた民間人を含むという考え方でございまして、そういう施設は全国に今ございますけれども、しかしばらばらになってしまっているというようなこともございます。そういう方々も含めた施設であるということでございます。
末松委員 靖国神社参拝、公式参拝問題を考えますと、憲法の二十条、国家機関が宗教的活動をしてはいかぬ。国家機関には、総理大臣を含め、閣僚も含め、みんな入りますねということであるので、これを公にはできない。だから、中曽根総理が八五年に参拝したように、参拝の儀式を、様式を簡略化して、神社に向かって二礼二拍手一礼ですか、というような形式を簡略して、一礼だけしてやるという、ある意味じゃこそくな形でのやり方でお茶を濁したというのが多分事実であろうと思います。
 ですから、もし靖国神社の方で、これを国家的にも認めてくれということで、ある論者がいるとすれば、それは憲法二十条までそれを変えていけばいいという解決法をとるのか、あるいは、そうではなくて、もし靖国の参拝をしたいということであれば、私的な参拝にとどまるしかないというのが私の考えであります。
 ちょっと形をかえて聞きますが、外務大臣に聞きます。
 この靖国、小泉さんが訪問をしました。そこで、韓国とか中国、こういったところの反応を教えてください。
川口国務大臣 反応でございますけれども、中国と韓国と両方から、それぞれ本国とそれから日本で、反応といいますか、抗議がございました。その趣旨は、基本的に遺憾であるということ、そしてA級の戦犯の位牌のある靖国神社に参拝をしたということについて遺憾の意を表す、そういうことでございました。
末松委員 これからの時代の場合は、確かに韓国、中国が内政干渉だという御意見もあるかもしれませんが、やはり戦争というものをこれは忌むべきものであるということで、その犠牲者という立場に立てば、敵の人もあるいは味方もないわけで、さらに、例えば私も韓国の方なんかと話したときに、中国人の方とも話しましたけれども、やはり自分たちの家族とか両親を殺した人を指導した、それがA級戦犯の話になるんでしょう、ここを祭ってあるところに自分たちとしてはお参りはできないというのも素直な気持ちであろうと思います。
 だから、そういったことにも配慮をして、やはり一歩大人になって、そういう方々もお参りできるようなところを、限定的にとらえるんじゃなくて、もっと寛容になって、そういう人にもやはり追悼をする機会を与えるという、その寛容さが私は今求められているんだろうと思うんですね。
 私が実はここで怒っている点が一つだけあって、それは何かと申しますと、この報告書が、一年かけて非常に枢要な専門家のもとで審議をされて、国立追悼施設をつくるべしという意見が報告となった十二月二十四日の二十日後ですよ、たった二十日後に、また小泉総理が靖国神社をこの問題があったときと同じような形で参拝をされたんです。
 それは私にとって、せっかくここまでのきちんとした報告書ができて、それを審議する、検討する状況が整ったにもかかわらず、そこを彼が、自分で実はテーマを与えておいて、それで審議しろよといって一年間やってきた、その結論を何かあたかも無視するかのように彼が行ったこと、それは私は非常にけしからぬと思っているんですよ。それは官房長官として、もうその結論は無視をしたんだということで政府でお決めになったんですか。
福田国務大臣 ことしの小泉総理の参拝は、一月の十四日でございました。確かに委員御指摘のとおり、昨年の末にこの懇談会の報告が出たわけですね。それを無視するかのごとくと、こういうような御趣旨でございますけれども、まあ小泉総理は、もうかねてから言われているように、これは自分の信条として行くのだということを言われておるわけで、それはもう、もちろん総理大臣でございますから、そうじゃないんだ、そういうふうな見方もあるかもしれぬけれども、しかし、それは信条としてはそういう信条でございまして、そのことについては、これまでもいろいろ御批判がある、そういうときには総理みずからも説明をされるということもして、努力をされてきているわけでございます。
 また、この懇談会自身も、この提言、報告書を見ましても、靖国神社は靖国神社だ、これは宗教法人で、これは別にあるんだということはもう明らかに認めて、はっきりと書いてあるわけでございまして、そこに私的な立場でもって小泉総理が行かれるということについて、これはだめだとかいったようなことは言っていないわけですね。むしろ、これはこの懇談会報告書が出たときの山崎正和座長代理が言っておりました。戦没者の追悼の施設は、これは総理大臣が自由にどの神社にもお参りすることができるというような環境をつくる、またそれが皆さんからも納得してもらえる、そういうような状況になるんだというようなことを言っておりますので、ですから、私は、今回の提言、報告を全く無視して小泉総理が行動したというようには全く思っておりません。
末松委員 坂口大臣にお伺いしますが、坂口大臣、公明党でございますね。公明党を代表して、この国立追悼施設の建設について、御党の御意見をお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 先ほど官房長官からお話がございましたとおり、追悼・平和祈念のための記念碑等施設の在り方を考える懇談会、ここが結論を出されたわけでありまして、私も、全部それを、中を詳細に拝見をしたわけではございませんが、先ほどから御紹介をいただいたような内容であるというふうに感じております。
 したがいまして、この問題は今後、閣議等におきましても議論をされるものというふうに思っておりますし、その議論がありましたときには、私は賛成の立場をとりたいと思っております。
末松委員 賛成の立場をとられるということで、官房長官、最後に、ちょっと時間がなくなりましたので、短く。これを、この貴重な提言をこれから生かすような形で前向きに取り組んでいきたいという御決意をいただければと思います。
福田国務大臣 この報告書にございますとおり、国民の議論、これを見きわめて、こういうようなことでございますので、これはしたいと思います。
 今までになされた新聞社の世論調査などを見ますと、賛成をする、この追悼施設に賛成するというのも結構多いようでございますので、そういうことを踏まえまして今後考えてまいりたい、こう思っております。
末松委員 ちょっと時間がなくなりましたのですが、あと一問だけ、川口外務大臣に聞きたいと思います。
 けさのニュースで川口大臣が、イラクについて、米国の立場に立って、非常任理事国への働きかけを我が国もしたいと。ということと同時に、今資料に配られた、この変化する安全保障環境と日本の外交という百八十ページに、今資料として提出しておりますが、その中で、川口大臣はこれはかなり、「論座」という、ことしの三月号なんですけれども、この百八十二ページで、米国の関与とリーダーシップというのはどうしても欠かせない要素なんだ、米国との緊密な協議がバイタルであると言って、ただ、日本としては、そんな米国にこの我が国の考えを反映させていけるという、いくべきであるというような形で言った後、この百八十三ページの方で、我が国は米国に対して、このイラクの問題は米国対イラクの問題ではなく、国際社会対大量破壊兵器を持つイラクという国際社会全体の問題であり、国際協調を通じた解決を模索すべきと主張し、米国もブッシュ大統領の国連総会演説でこうした考えを表明しましたと。
 これは、ある意味じゃ、自分の考えをブッシュも受け入れたよねというような書き方をしているわけですが、これは、米国対イラクの問題ではなくというふうに前提があるのは、やはりこれはアメリカが米国対イラクと考えがちだという前提があって、この話をしているわけですね。
 もう一点、国際社会対大量破壊兵器を持つイラクといった場合、この国際社会という場合には、もし安保理決議が、今度新たな決議ができないときに、米国が対イラク攻撃するといった場合に、国際社会対大量破壊兵器を持つイラク、大量破壊兵器を持つかどうか今査察の段階なんですけれども、これはちょっと、あなたの論理からしたら、国際社会対という話になれば、安保理決議がどうしても必要になるんじゃないですか、武力行使容認決議が。そこを、あなたの考えを、この考え方との関係を言ってください。
川口国務大臣 残り時間が非常に短くなって、多分お答えするのに十分ぐらいかかる御質問がありましたので、非常に簡単に申し上げますと、まず、委員のおっしゃった幾つかの質問のうち、前提が違っているものがあります。
 まず、非常任理事国への働きかけ。これは、国際協調が、きのうも予算委員会で言いましたけれども、非常に大事なときですから、協調して新しい決議を出すのが望ましいというスタンスで働きかける。これは、副大臣にもきょうこれからやっていただきますし、私も昨日やったということです。
 その上で、この問題の設定のフレームワーク、これはよく誤解をしがちなものですから、そうではなくて、大量破壊兵器を持つイラクと米国、そういう図式なんですよということを、我が国はアメリカに、同盟国としてずっと前から言っています。そして、アメリカも、そのサジェスチョンについては非常にありがたいと思うということを言っています。
末松委員 質問を終わります。ありがとうございました。
藤井委員長 これにて末松君の質疑は終了いたしました。
 次に、黄川田徹君。
黄川田委員 自由党の黄川田徹であります。
 通告に従い、順次質問していきたいと思います。
 まず最初に、世界的に著名な経済学者で、大変な知日家でありますハーバード大名誉教授のガルブレイス氏の寄稿文を日経新聞で目にいたしましたので、多少長いわけでありますけれども、引用させていただきたいと思います。
 経済情勢が変われば、経済の実績に対する旧来の評価基準は時代おくれになるのだ。
 近代の産業経済に適用されてきた成功の尺度、つまり進歩や実績の基準は、もはや陳腐化している。この基本的な事実が認識されていないのではないか。
 過去何世紀にもわたって重要だと考えられてきたのは、芸術、文学、建築、そして科学を初めとする知的な業績であった。だが、現在の関心事は、雇用の確保やGDPの伸びである。
 既に多くの経済問題を解決してきた日本人にとって、今や世界に先駆けて他の価値観を受け入れるための機が熟していると言える。
 現在の私はもう、GDPのような単純な数字によって「クオリティー・オブ・ライフ」を評価しようとは思わない。GDPが高くなった結果、個人、そして共同体に何がもたらされたのか。さらに、生産された財やサービスに、個人や共同体がどう反応するのかということが大事なのだ。
 新しい鉄道が建設されたり、自動車の台数がふえたりすることは、もはや繁栄の重要な指標ではないのであります。
 日本は今、リセッションという深刻な経済問題を抱えているとみなされている。
 しかしながら、それは世界で最も進んだ産業経済を誇る日本が、みずからがなし遂げてきたこと、すなわち経済の成熟がもたらす社会の質的な変化に対応し、軌道を修正しなければならないということである。
 戦後の日本は経済で世界を主導してきた。それよりもはるかに困難な仕事かもしれないが、今度は生活をより深く、より多彩に、より豊かに楽しむ点でも、日本にリーダーシップをとってほしい。
 以上、長くなりましたけれども、引用させていただきました。
 要するに、同氏は、物質万能主義を戒め、ソフト面での新しい価値観に対応した考えを自分で模索し、世界に模範を示すことを求めているのであります。
 多くの国民がこのような考え方にどう反応するのかわからない点もありますけれども、きょうおりませんけれども、小泉総理は、オペラ、歌舞伎を鑑賞し、多くのスポーツを愛好し、日本古来の文化を尊重していると私は理解しております。しかしながら、政策運営は成長至上主義で、改革なくして成長なしの同じ言葉を繰り返し繰り返し、本当に繰り返すばかりで、今回の施政方針演説にも新鮮味がないのであります。
 そこで、本来なら直接総理に聞きたいところでありますけれども、経済財政担当の竹中大臣に質問したいと思っております。
 経済財政諮問会議では、骨太政策から始まりまして、多くの政策が霞が関用語で国民にアナウンスされておるところであります。しかも、最近、経済財政運営の指針となります中期展望の改訂版では、安易にデフレ克服時期を二〇〇五年に二年先送りするなど、結果責任がうやむやになっている。そうなっているんじゃないでしょうか。
 また、総理は、確かに約束は守られていないが、総理大臣はもっと大きなことを考えないといけないとも言っております。したがって、国民が政治や経済にますます閉塞感を深める中、同氏が言う物質万能主義を戒め、新しい価値観を求める意識改革を竹中大臣はどう考えますか。そしてまた、これらを踏まえまして、今の政府の政策にどう反映させる所存でありますか。あわせてお尋ねいたします。
竹中国務大臣 ガルブレイスの文献の引用から大変スケールの大きな御質問をいただいているわけでございますけれども、基本的に我々は、やはり国民の生活を豊かにするということを目指しているわけでございますから、物質的なものだけですべてが満たされるはずはない、この点はやはり大変重要なポイントであろうかと思っております。
 経済財政の運営という観点からいきますと、一方で、景気をよくしてくれという声は当然のことながら非常に強い。景気、一つの側面はやはり、所得を高くしてくれと。その意味では、GDPがもっと安定的に伸びるような状況をつくってほしいという声も根強くある。それはそれで着実に実現していきながら、しかし、さらにその向こうに、国民の生活の質が本当にソフトの面で高くなってくるような状況をつくっていかなければならない、これがやはり政策の目指すところであろうかと思います。
 骨太方針の第一弾の方に七つの改革を挙げておりますが、そのうちの一つが、実は、生活維新という言葉を掲げております。ガルブレイスが言うような大きなもののごく一部ではありますけれども、新しいライフスタイルがつくれるような、そのようなものも政策の中には十分織り込んでいるつもりでございます。
 経済財政だけではなく、それが国民にどのような生活をもたらすかということに関しましては、これは、官房長官の発案で、内閣府の中に未来生活懇談会というのを設けまして、その中で報告書、専門家に集まっていただきまして、そういった議論もさせていただいているところでございます。
 そういうことをあわせて、総合的に、国民の生活を質的に豊かにするという方向をぜひとも模索していきたいというふうに思っております。
黄川田委員 竹中大臣は、外から、請われて国務大臣になったわけでありまして、答弁も、工程表とかいろいろなことをつくっておりまして、何か大分永田町に毒されたといいますか、もう官僚そのものになったというふうな感じでありますが、本当に竹中さんに血液が流れておるのか。先ほどはガルブレイスの大きなスケールということでありますけれども、そして市民、国民も、本当は本当の意味での質の高い生活をしたいんだ、しかしながら現状はそうでないということなんですよ。
 スケールの小さな話をちょっとします。
 私は、地方におります。今の小泉内閣の政策の大きな柱は大都市の再生でありますが、日本の国家は大都市だけで成り立っておるわけではありません。今、地方の経済の疲弊、どんな現状か、肌身で感じていますか。それから国民生活、どのようになっておるのか。
 例えば、うちは田舎でありますからですけれども、厚生労働大臣の政策がよかったのか、年金を持っている親にすがって、息子が働かない。働かないんじゃなくて、働けない、雇用の場がない。だれが金を持っているか、年金生活者。こういう実態なんですよ。そういうところ、肌身で感じておりますか。
竹中国務大臣 限られた範囲ではございますが、私もルーツは地方都市でございまして、その中で、地方都市との行き来も通しまして、そういったものを感じられる範囲では感じているつもりでございます。
 お金を持っているのは年金生活者だということでございますが、私の両親も年金生活者でございますが、小さな商店をしていたという関係で、年金の額も、決して今の生活を支える分には十分ではない、そういったことを、私自身も親を支えてやっておりますものですから、そうしたものを通して、やはり国民の生活をもっともっと豊かにしたいものだというふうに思っております。
黄川田委員 それで、話を戻しまして、新しい価値観といっても、これは本当に難しい問題でありまして、私はこれまで、国会議員になる前までは市町村職員でおりましたので、国民の生活の原点に立ち返って考えますと、月並みですけれども、安心して安全に、環境の時代でありますので、そういうふうなクリーンな環境で毎日の生活が送れること、そういうことなのかなとも思っております。
 さて、現在、我々の生活の周りの中で、世界標準で当たり前の事柄が世界と大きく異なる、こういうことが多いわけであります。今回は、そのギャップの一つとして、天然ガスを主体にエネルギー問題を考えていきたいと思っております。
 石油公団及びその関連会社等の負債など、過去を見詰めるフィードバック的な議論はやめまして、天然ガスの利用促進を促し、国民経済に対する新しい価値を創造し、将来を見据えたフィードフォワード的な議論をしたいと思っております。
 例えば、新しい価値の創造として、燃料電池等の水素エネルギー社会の実現を目指す中、それに先駆けて天然ガスエネルギーの位置づけが問われると思っております。
 総合資源エネルギー調査会天然ガス小委員会の最近の報告によりますと、パイプライン等のインフラ整備については、「経済性や政策的重要性等を勘案しつつ、環境整備、公的支援等、国による関与の在り方を広く検討すべきである。」としております。
 そこで、最初に平沼大臣にお伺いしたいと思います。
 最近、経済産業省は、石油公団傘下の有力な開発会社を統合いたしまして和製メジャーの育成を目指すとしております。その中で、天然ガスの開発と利用拡大が我が国のエネルギー基本戦略の一つと私は思っておりますけれども、平沼大臣の御認識をお伺いしたいと思います。
平沼国務大臣 お答えさせていただきます。
 御指摘のように、天然ガスの利用というのは非常に大切なことだと思っております。
 天然ガスというのは、もうこれは釈迦に説法で恐縮でございますけれども、アジア地域、太平洋地域、それから、サハリンを中心とした極東地域にたくさんあるわけでございます。しかも、天然ガスは、石油や石炭に比べて環境に優しいエネルギー源でございまして、CO2の排出量でいいますと、石炭の約六〇%の排出量、石油では七五%、こういうふうに言われておりまして、そういう意味では非常にクリーンなエネルギーであります。
 そういう中で、今御指摘がございました総合資源エネルギー調査会の天然ガス小委員会の中で二〇〇一年の六月に答申をいただきまして、やはり国として天然ガスの利用促進を高めるべきだ、こういう答申がございました。私どもも、これに基づきまして、やはり環境に優しく、そしてもう一つは、日本の場合には石油が一次エネルギーの五二%を占めておりまして、そのうちの八八%が中東に依存している。そういう観点からいいますと、天然ガスにシフトするということはエネルギーの安定供給にとっても非常に大切なことでございますので、今、経済産業省といたしましては、例えば天然ガス、そしてさらに、もう一つの新エネルギーといいましょうか、これも天然ガスの範疇に入ると思いますけれども、メタンハイドレート、こういったものについて積極的に今シフトをしているところでございます。
 お尋ねの石油公団、これは、目下再編、こういう形で取り組んでおりまして、そしてこれも、将来新しいそういう形ができたときに、天然ガスというのはその主要な柱の一つにしていこう、こういうふうに思っております。
黄川田委員 お話もありましたけれども、このエネルギーの安全保障であります。
 日ロ米中の外交上の位置づけとしまして、エネルギーの安全保障が政策の最上位に位置することは、これは変わりがありませんけれども、サハリンの天然ガス問題が、LNG船で輸送する方式で商業化の先鞭がつけられることがほぼ正式に決着したとの新聞報道が行われました。これは、我が国の近隣にエネルギー供給施設が整備されまして商業運転を始めたことを意味し、安全保障上からは好ましいことであります。したがって、LNG船方式を否定することなく、私は本命と思っておるわけなのでありますけれども、パイプライン輸送の必要性、有効性を検討し、いかに早期実現を図るかが次の戦略テーマになろうと思っております。
 西シベリアのガス、石油を欧州方面に供給するインフラは、一九七〇年代以降整備されてきております。しかしながら、東シベリア、サハリンを含むロシアの極東地区に埋蔵される膨大な資源を開発し市場に運び出すインフラ整備は、まだほとんど着手されないという状況であります。したがって、この面への我が国の支援は、今後の日本、ロシアを含む東アジア全体のエネルギー供給源として、経済成長のために非常に重要であります。
 そこでまた平沼大臣に伺います。
 ロシア極東地区の資源開発、特に初期の大規模な市場創出に果たす日本の役割、これは大きいと思います。それにより日本の国際的評価も高まることが期待できる、こう私は思っておりますけれども、どうでしょうか。そしてまた、先般の小泉・プーチン会談の背景もその認識に基づいていると考えておりますけれども、あわせてお尋ねいたします。
平沼国務大臣 御指摘のように、東シベリア、サハリン、ここには非常に埋蔵量が豊富だということが確認されておりまして、その中でサハリン1と2、こういうのが非常に具体化の方向で既に試掘も終わり、一部積み出しも行われているわけでございます。サハリン1というのが約十七兆立方フィートというような大変な埋蔵量があり、2もそれを上回る十八兆、そういった大きな埋蔵量があるわけであります。
 そういう中で、やはりここに関与をすることは、需要ということだけではなくて、上流部門に参画をするという形で日本のエネルギーの供給安定に非常に大きな意味を持つものだと思っております。
 そこで、先ほども御指摘ございましたけれども、本年一月に小泉・プーチン会談がございました。その中の行動計画の中でも、特に東シベリアそしてサハリン、ここに着目をいたしまして、パイプラインを含めたそういった両国の協力関係をさらに構築をして前進させていこう、こういうことに相なっておりまして、このことは日本の国益上非常に大切なことだ、ですから積極的にこのことは今後取り組んでいかなければならない、このように私どもは思っております。
黄川田委員 きょうの日経新聞に載っておりましたことがあるわけなんです。インタファクス通信はこのほど、東シベリア原油の輸送ルートに関しまして、ロシア・エネルギー省が中国向けルートと太平洋、ナホトカ向けルートの折衷案を採用する省案をまとめたと報じたと。「同案は途中で分岐して二方向に向かう。日中両国の顔を立てたように見えるが先に建設するのは中国向け。実質は「中国ルートが勝ちそう」」というこの東シベリアの油田開発あるいはガス開発なんであります。
 そしてまた、あわせて中国なんでありますけれども、やはり中国も、経済成長とそしてまた環境問題の解決ということで、やはり石油、石炭からガスへ移行しようという形になっております。
 先ほどちょっと言いましたけれども、地方の経済が疲弊している、そして、物づくりは日本の真価が本当に世界に問われて、メード・イン・ジャパンで来たんだけれども、今やあらゆるものがアジア、その中でも中国だということで、そしてまた、世界の工場ということで大規模な石油あるいはガス化ということで、こういう流れになっておる中で日本の生き残り策等々あると思うんでありますけれども、このきょうの日経に出ました、こういう何か中国ルートが勝ちそうとか、いろいろな報道に対して平沼大臣の所見をお伺いいたしたいと思います。
平沼国務大臣 日本経済新聞の今御指摘の記事は私も読みました。しかし、私どもとしては、どういう背景があって、どこまでそれが信憑性があるかということについては、まだ把握をしておりません。
 しかし、御指摘のように、中国というのは大変な今石油エネルギー消費国になりまして、そして、今後の世界のエネルギー事情というものを考察いたしますと、やはり、ここ二十年ぐらいを考えますと、アジアにおける石油エネルギーの消費量というのが世界の中で群を抜いてアップをする、その大半は中国であろう、こういうふうに言われています。したがいまして、中国も、東シベリアでございますとか、中東でありますとか、あるいはサハリン、そういったところのエネルギー源に対して大変意欲的に展開をしております。
 ですから、私どもは、今おっしゃったような中国を経由するルートと、また太平洋に来るルート、この二つをロシアはいわゆる計画として持っているということは承知しておりまして、私どもとしては、将来、小泉・プーチン会談でも、やはり、このエネルギーの協力関係を構築していく、こういうことでございますから、日本に対するルートということに関しても、我々は積極的に関与をし、ロシアとしっかりと話をしていかなければならない、こういうふうに思います。
黄川田委員 この東シベリアの支援は、狭義には原油パイプラインでありますけれども、実際に必要なのは、道路であるとか港湾であるとか、そういうふうなインフラ整備を含めた総合的なプランだと思うわけなんですね。ですから、パイプラインのみに矮小化といいますか、小さく考えるのではなくて、東シベリア・アジア開発基金等を創設して大いに貢献したらどうかと思っておりますが、これに対する所見はいかがでしょうか。
平沼国務大臣 やはり今、世界の経済の中でもこの東アジアというのは非常にポテンシャリティーがあって、発展性が大きいところであります。ですから、そういう意味で、日本、中国、こういったところが中心となって一つの大きなネットワークを構築するということは、私は、世界経済にとっても非常にいいことだ、こういうふうに思っております。
黄川田委員 それでは、ちょっと具体の方に入って伺いますけれども、大臣からサハリン1、サハリン2の話もいただきました。
 そこで、首都圏までわずか二千キロ弱の距離にあるサハリンのガス田から、サハリン2はLNG船で運ぶということでありますよね、わざわざ冷凍しLNG船で運ぶという方法は、三千キロ程度より短い距離はパイプラインの輸送の方が安いという国際常識と異なっておると私は思っております。LNGもよいのでありますけれども、パイプライン輸送に比べて、コスト的には決して安くはないと考えるわけでありますが、これについていかがでしょうか。
 そしてまた、ヨーロッパの場合は、西シベリアから数千キロパイプラインで運んでも、日本より安く天然ガスを欧州各国に供給できていると聞くわけでありますが、これはなぜでしょうか。
 二点お伺いいたします。
平沼国務大臣 天然ガスの輸送に関しましては、一つの目安といたしまして、今ちょっと先生もおっしゃいましたけれども、千五百キロから三千キロぐらいまででありますとパイプラインの方が有利であるというような一つの見方がございます。
 日本の場合には、やはり天然ガスを利用するということに当たって、発電所でございますとか、そういった必要なガスの製造所、そういったところが直結してございましたから、LNG船で運んでくる、こういう形で非常に進んできてしまった背景があります。
 ヨーロッパの方は、一つの背景としては、そういった天然ガスの需要が起こるとタイミングを同じゅうして、いわゆる北海において天然ガス油田というものが発掘をされまして、そして、それをすぐに導入する、そのためのパイプラインとかインフラがずっと整備されていました。そういったところでヨーロッパは、今おっしゃったように、コスト的にも、それから、そういう歴史的な背景で、天然ガス利用というもののインフラが進んでいるということがございます。
 日本の場合は、これからでございますけれども、日本の場合にはLNGでインフラが進んできておりますので、今の場合にはLNGが主体でございます。しかし、LNGなりにはコストが下がってくるとか、効率、そういったことはあるレベルでは維持されていますけれども、しかし、例えばサハリン1というのはパイプラインでやる、そういう基本的な考え方があります。
 ですから、そういう中で、我々は、やはり実際にそのパイプラインをやる場合のフィージビリティースタディーといいますか、そういったことを既にやっておりまして、総合検討をして、やはりパイプラインというものも有用な手段として私どもは利用していかなければならない、こういうふうに思います。
黄川田委員 大臣から、パイプラインも重要な施設であるし、LNGの果たした役割もこれはこれであるということで、積極的に関与していこうという話でありますけれども、そしてまた、歴史的にLNGに頼らなきゃいけなかったということ等々お話しいただきました。
 ちょっと思うところで、何でパイプラインがなかなか前に進まないのかなというところの中で、ちょっと疑問点があります。いや、それは誤解だぞというならそれでいいわけなんですけれども、一つには、ガス会社に地域独占権を与えていたので、幹線パイプラインは地域独占を脅かすものとなり、なかなかかかわれなかったという方もおるわけなんですが、これについてはどうでしょうか。
平沼国務大臣 LNGを利用するということに関して、先ほどと答弁がダブりますけれども、一つは、そういう発電所でございますとか、ガスの大もとの供給施設というものが港に近いところにあり、そこに直づけをする、こういうような方式でございます。
 もう一つは、日本の場合には、御指摘のように、それぞれ独立したガス会社の供給体制がございますので、例えば私の場合には岡山県でございますが、岡山は岡山でそれをカバーするガス会社がある、そうすると、県境を越えてそれはつながっていない。そういうようなことがございまして、網の目のようないわゆるパイプライン網が敷設されなかった、そういったことも背景としては私はあると思っております。
黄川田委員 サハリン1ですか、パイプライン方式ということで、二つの考え方があって、海底パイプライン、そして陸上パイプラインというものがあるわけなのですけれども、それで、たしか五十億弱ですか、お金をかけて、多分海底パイプラインの方を調査したと思うわけなのでありますけれども、大臣は、陸上と海底のそれぞれのパイプライン、どのように認識し、選択肢といいますか、どんな形で考えておるのか、お尋ねいたします。
平沼国務大臣 サハリン1というのが一番具体性があると思うので、ここは、パイプライン方式でやる、こういうことで一応決まっております。それを海上にするか陸上にするかという判断は、私は、最終的に、いろいろなチェックポイントをチェックして事業者が決めていくことだと思います。
 しかし、その効率性について大きな枠の中からそれの優位性等を検討するのは、当然、国も、相談を受ければ、それは協力することにはやぶさかじゃありません。そういう中で、陸上をやった場合のいわゆる優位性、あるいは海上の優位性、これは、今御指摘のように、予算をつけ、今検討しているところでございまして、私は、その結果の中でおのずから決まっていくことであろう、こういうふうに思っております。
黄川田委員 民間が主体として考えてほしいというふうな話もされましたけれども、我が国のエネルギーの安全保障といいますか、エネルギー政策の根幹をなす資源外交といいますか、私は川口大臣には求めておりませんでしたけれども、これが非常に大事だと思っておりますし、やはり国もきっちり関与する形をとらないと大変なことになるのじゃないかと思っておりますので、また一言大臣からお言葉をいただきたいと思います。
平沼国務大臣 当然、エネルギーの安定供給というのは経済大国の日本にとって非常に必要なことですから、国もこれは積極的に関与をしていかなければなりません。
 そういう意味で、この一月の小泉・プーチン会談においても、私どもとしては、このパイプラインのプロジェクトというものを行動計画の中に織り込んだわけでございまして、国としても、責任を持ってこの推進というものを民間を後押ししながらやっていかなきゃいかぬと思っております。
 例えば、現実に国際間でパイプラインができております。ですから、一つは、例えばアゼルバイジャンと、それからグルジアを通ってトルコ、そういったところは、グルジアだとかトルコだとかアゼルバイジャンでそれぞれ三国協定ができておりますし、また、ロシアとトルコとの間にもパイプラインのいわゆる国際協定ができているわけでありまして、当然、そういう中で日本も、例えばサハリン1というものがより具体化してきたときにはロシアとそういう二国間協定を結ぶ、あるいは、その中に中国も入る、そういったケースも私は考えられると思っておりまして、国としては、そういった意味で、積極的に関与をして、しっかりと後押しをして、国のエネルギーの政策上、しっかりとした安定供給をしていかなければならない、こういうふうに思います。
黄川田委員 そこで、ロシアンエナジー誌の二〇〇二年九月九日付のサハリン州副知事のコメントがありまして、サハリン1は原油の生産を二〇〇五年に開始する予定でいる、ガスについては二〇〇八年と言っている、しかし、今のところ、天然ガスに関する具体的な計画を示すものは、サハリン政府機関や連邦政府側に何も提出されていないという報道がありますし、ロシア側によると、石油、ガスの開発計画はまだ政府に提出されていない上、開発計画書も原油開発のみで、ガス開発の計画は含まれていないというふうな問題点といいますか、そんな話になっておるんですが、これはどういうことなんでしょうか。
平沼国務大臣 サハリン1、2というのは、埋蔵量も、先ほど申し上げたように、天然ガスではサハリン1が十七兆、そして2が十八兆、こういう埋蔵量が確認されています。そういう中で、我が国の企業も参画をしてコンソーシアムというのができて、今その具体化に向けてそれぞれ努力をしているところでございまして、ロシア政府も非常にこの開発には関心を持っているところでございます。
 したがいまして、今いわゆる緒についたという段階でございますから、ロシアでこの一月に首脳会談があり、行動計画の中にも入ってきましたから、これから、そういうもう原点はあるわけですから、より具体化されてくる。我々も積極的にそこに関与していかなきゃいけない、こう思っています。
黄川田委員 それでは、後で扇大臣にもお伺いいたしますけれども、エネルギーは経済産業省の管轄でありますけれども、幹線パイプラインになると旧建設省、今の国土交通省と一緒に仕事をしなければならないので、エネルギー行政の独占が崩れ、省益にそぐわないのではないかと思うところは経済産業省にはないのでしょうね。確認しておきます。
平沼国務大臣 私どもは、省庁の壁を超えて、そして、日本のエネルギーの安定供給のためには協力し合うところはしっかりと協力し合っていかなければならない、こういう基本的な考え方でございます。
    〔委員長退席、萩山委員長代理着席〕
黄川田委員 それでは、パイプライン輸送の基本的課題についてちょっとお伺いしたいと思っております。天然ガスのパイプラインのインフラ問題であります。
 欧米では、幹線パイプラインは、ネットワークを形成し、有機的に都市間を結び、道路や電線と同様、貴重な社会的インフラであるとの認識があります。したがって、天然ガスパイプラインは法律で道路や電線と同列に取り扱われ、優先権が与えられております。米国では、パイプラインそのものに関しては道路と同様に運輸省が建設と安全に関する管轄を行い、中身の天然ガスに関してはエネルギー省が公正な取引が行われているかどうか監視するという、役割分担がきちんとなされております。
 ちなみに、幹線パイプラインの総延長は、ヨーロッパで十数万キロメートル、アメリカも同様に十数万キロメートル、アジアでも、韓国で千キロメートル、インドで四千キロメートルでありまして、日本には幹線パイプラインと呼べるものは一切存在せず、大きく立ちおくれておると私は思っております。
 そこで、扇大臣にお尋ねいたしたいと思います。
 高速道路は車両だけを輸送するものではなくて、既に光ファイバー等で情報も伝達しているところであります。そしてまた、加えて、天然ガスなど気体エネルギーも輸送することになれば、運賃収入もふえ、道路公団改革にも寄与できるのではないか。かつ、現在、社会資本整備の、さまざま国土交通省ありますよね、道路整備であるとか河川であるとか、また、運輸省も一緒になりましたから、そちらの方の基本計画もありますよね。そういうものを、長期計画、抜本的に見直すということでありますので、この幹線パイプラインの整備に関しまして、省庁間の隔壁を意識せずに、むしろ国土交通省が欧米に倣いまして指導的役割を果たすべきであると私は考えますが、いかがでしょうか。
扇国務大臣 今の経済産業省の大臣とのやりとりを拝聴しておりまして、少なくとも今の日本の現在の中では、石油会社等、民間の皆様方の希望といいますか要望といいますか、そういうものがまず一番最初に来るべきであろうというのが今の日本の現状でございます。
 ただ、今黄川田議員がおっしゃいましたように、幹線パイプラインというのは、ただ道路を走るだけではございませんで、今御自身がおっしゃいましたように、少なくとも下水道でありますとか光ファイバーでありますとか、電線あるいは地下鉄等々、地下を利用するもの、あるいは幹線道路パイプラインを利用するもの、今、多々ございます。
 けれども、そういう中で、少なくとも時代のニーズに合わせて、省庁の壁を取り除いて、御要望があればしていくというのは、いささかも私どもも省庁の壁があるわけではございません。少なくとも今、現段階では幹線のパイプラインというものに関しましては、高速道路で千五十九メートルございますし、また直轄事業の中では、直轄国道の中では三万三千六百七十四メートルということができておりますので、民間の御要望と、そして我々の省庁の壁を取り除いた協力とによって、私たちは、二十一世紀型がもし御要望があれば、いつでも対応できる体制はできております。
黄川田委員 民間にできることは民間に、地方にできることは地方に、これは基本的な認識であります。しかしながら、エネルギーの安全保障であるとか確保であるとか、国が責任を持ってやらなければならないところには、受け身じゃなくて、最前線に出て大臣がやらなきゃいけないと私は思っております。
 私は、この二年間、本当はエネルギーは門外漢でありますけれども、何でこういうことをずっと話しておるかといいますと、エネルギーによって地域の疲弊した経済が何とか元気を出してくれないのか、それから、環境問題であるとか原子力の問題、CO2の排出の問題、いろいろあるので、それとあわせて、地域の経済が元気になればなということで、平沼大臣も、産官学で何とか地域にも産業が起きるようにと頑張っておるわけなんであります。
 このサハリン天然ガスの陸上輸送方式ですか、この重要性を何度か資源エネルギー庁の長官に問いかけてきました。寒冷地でエネルギー需要の高い北海道、私は東北でありますから、東北から関東、首都圏へと陸上を縦貫する幹線パイプライン方式は、環境問題は当然のことといたしまして、先ほどお話ししたとおり地方経済の活性化あるいは安全性、経済性等から、私は海底方式に比べてすぐれているのではないかとたびたび話してまいりました。
 ちなみに、ロシア国境から首都圏までの天然ガスパイプラインを想定しまして経済性を試算しますと、ペイアウトが陸上方式は十四年程度でありますけれども海底方式は二十三年と、陸上方式の方が大幅にすぐれているのではないか、こういう試算もあります。そしてまた、この前提条件といたしまして、発電所の天然ガスの需要、あるいはまた産業用の代替需要、あるいはまたコジェネや燃料電池の新規需要等から成る将来のガス需要を含めずに、既存のガス・灯油需要の一部がパイプラインで置きかわるとして計算した結果であります。かつ、海底方式は、太平洋沿岸あるいは日本海沿岸、案でいきますと太平洋沿岸ですか、豊富な漁場であること、そしてまた、一たび事故や災害、そういうものに遭遇しますと復旧に困難をきわめるのではないかということを私は思っておるわけであります。
 ヨーロッパ、特に北欧では、この天然ガスのパイプラインが敷設された周辺地域では、分散型電源や、あるいはまた地域冷暖房を初めとしまして、新しい事業の創出がなされておるというところもありますし、本当に地方経済が活性化された事例が多いわけであります。
 また一方、この天然ガスの新規需要を価格の面から見ますと、現在、電力やガス会社はカロリーベースで原油と等価でLNGを長期契約で購入しておりますけれども、日本はこのパイプラインのネットワークがないなどのために市場原理が働いていないと私は思っておりますし、その分、高いものを買わされておるのではないかとも思っております。そしてまた、長期契約ですか、これも二〇〇六年ごろをピークに更新時期を迎えておるのではないかとも思っております。
 そしてまた、ロシア、ドイツの取引など海外の例を見るまでもなく、国境を越える取引は、民間企業ではなくて、国と国が交渉を行う資源外交ですか、これが重要だと私は思っております。先ほど言いましたとおり、日本は国の役割と民間の役割が逆のことが多いと私は思っております。扇大臣は話されましたけれども。今回も、サハリン州の政府は、これだけ開発が進んできているのに日本政府は何ら反応を示していないと不平を漏らしているとも耳にしておるところであります。
 そこで、再度大臣にお伺いいたします。
 以上の観点から、このサハリンの天然ガスの輸送問題を、特殊法人とその関連会社が主導する海底方式ですか、そればかりでなくて、陸上方式も支援できる、国が主体性を持った体制をつくることが必要であると私は考えております。重ねてお尋ねいたします。また、国は国としての本来の役割、すなわち天然ガス輸入に関する基本協定を締結するなど、やはりそれも考えていかなきゃいけないと私は思っておりますが、この二点、大臣にお伺いいたします。
平沼国務大臣 前段の方に関しては、扇国土交通大臣からもちょっとお答えがございました。これは今コンソーシアムができて、そして民間主体で、そのフィージビリティーについては一生懸命スタディーをしている段階であります。そういう意味で、海上方式というのが前面に出てきているわけでございますけれども、陸上方式というもののメリットも、御指摘のような点も確かにあると私ども思っております。
 ですから、そういう意味で、どっちの方式であれ、我々としては、その安全基準ですとか、あるいは今の後段の方で政府間協定、これは先ほどの御答弁でもちょっと申し上げましたけれども、私どもとしては、ロシアとの間にしっかりとした、ほかの国がやっているような政府間協定も結んでいく用意はございますし、私どもとしては、国のいわゆるエネルギーの安定供給確保のためにできるだけの努力はしていく。今までもしてきたつもりでございまして、サハリン政府から日本の政府が主体的ではないというようなことも今お話の中にありましたけれども、小泉総理が出かけていって、そういう意味では明確に行動計画の中に入れて、それにロシア側も呼応する、こういう形で順調にこれから進んでいく、私どもはこのように思っております。
黄川田委員 それでは最後に、ガス供給インフラの整備と規制緩和についてお尋ねいたしたいと思います。
 国内のエネルギー供給システムですが、これに目を転じますと、天然ガスのパイプライン供給インフラの整備は、先進国では常識でありますけれども、ひとり日本のみが例外であります。昨今のエネルギー事業にかかわる規制緩和でも、天然ガスの供給インフラの整備が前提となっております。それが備わっていない日本では、制度上の規制緩和ができても、実態としての自由な市場拡大が遅々として進まないわけであります。全国的な天然ガス供給インフラの整備、すなわち陸上幹線パイプライン網は、長期的な日本の経済成長に私は不可欠と思っております。
 具体的に供給上の課題を考えてみますと、陸上幹線パイプラインのインフラなしでは、LNG船方式にしろ、あるいはまた海底パイプライン方式にしろ、点から点への輸送にすぎず、首都圏を主体に既にある国際的に高価格構造な供給インフラにのみ込まれてしまい、価格体系は何も変わらず、需要拡大は図れないと私は思っております。しかし一方、物理的に独立した地上幹線のパイプラインが、サハリンから需要見合いで、北海道そして東北、低価格体系を維持しつつ独立して市場を形成しながら南下しまして、最終的に首都圏の市場に結びつけられれば、市場原理が働き、真の規制改革、構造改革が実現すると私は思っております。
 そこで、ガス市場の規制緩和に関して、以上の観点から石原規制改革担当大臣の見解を求めておきたいと思います。
    〔萩山委員長代理退席、委員長着席〕
石原国務大臣 ただいま黄川田委員が御指摘されましたことを、実は昨年の三月末にまとめました総合規制改革会議の三カ年計画の改定の中で、ほぼ同じ趣旨で、規制改革を進めるべきであると指摘をさせていただいたわけでございます。
 きょうの議論を聞かせていただきまして、委員はエネルギーのセキュリティーの問題また環境問題の両面から切り込まれたわけでございますけれども、環境問題にもこの点は非常に重要であると私どもも認識し、環境のところでも同意見を書かせていただきました。
 そして、規制改革と相まちまして重要なことは、先ほど来委員が御指摘されておりますような、全国的なパイプライン網の整備、日本にないものの整備ということであります。これはなぜかといえば、ガス市場の競争環境が整備されて、高コストと言われるこの日本のエネルギーの値段が下がるわけでございます。
 そんな中で、この規制改革、自由化の流れの中でいろいろなことが起こってきております。先ほど委員がこれも御指摘されていました供給区域、これに規制があることによって、日本は横断的な、委員がつくるべきであるというものができていなかったという御指摘がありますが、こういうものを超えて、東京でも千葉の方に事業者が出ていくようなケースも出てきておりますし、あるいは全く違う石油業者も、こういう供給区域を超えたパイプラインの設置業者として名乗りを上げてきております。
 これからも、規制改革の立場から、新規パイプラインの施設者を支援するような規制改革や、あるいはこれは扇大臣の所管ではございますけれども、市街化地域での高圧ガス管の埋設深度、これは今一・八メートルですけれども、私どもは一・二メートルぐらいまで緩和してくれと言っておりまして、今年度中には扇大臣の方で御処理いただけると思いますが、こういう保安規制の見直しなど必要な改革を、関係省庁と連帯を持ちながら努力をさせていただきたいと考えております。
黄川田委員 いずれ実態に合った規制改革をよろしくお願いいたしたいと思います。
 それからまた、本委員会でも、公務員制度改革等さまざま論判されたと思いますけれども、私もそれも質問したいと思いましたけれども、時間がありませんので、天下りあるいはキャリアシステムあるいは能力等級制度、ILOとの関係、あるいはまた改革の手順の透明性の問題など、議論すべき課題が山積しておりますので、これらについては改めて別の機会に質問させていただくことを申し上げまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。
藤井委員長 これにて黄川田君の質疑は終了いたしました。
 次に、赤嶺政賢君。
赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。
 きょうは、イラク問題について外務大臣に質問を行いたいと思います。
 今、イラクの問題というのは、査察の継続あるいは武力行使かという大変切迫した局面になってきております。これまでも平和解決のための国連の努力があったわけですが、私は最初に、湾岸戦争が終わって、九一年から九八年まで国連は査察をイラクに行ってまいりました、その成果について政府はどのように認識しておられるのか、御答弁お願いしたいと思います。
天野政府参考人 ブリクス委員長は、一月の二十七日の安保理報告におきまして、安全保障理事会決議六百八十七号の履行により、湾岸戦争の間に破壊されたものよりも多くの大量破壊兵器が廃棄されたと述べております。
 このように、湾岸戦争終了後、安全保障理事会決議六百八十七号に基づいてUNSCOMが設置され、イラクが一定の大量破壊兵器の廃棄を行っております。しかしながら、UNSCOMのもとでイラクの大量破壊兵器につき一定の廃棄は行われましたが、なお多くの疑惑が残っていると受けとめております。
赤嶺委員 ブリクス委員長の報告を引用されたわけですが、具体的にどういう成果が上がっているのか、それについてはお答えできませんか。
天野政府参考人 お答えいたします。
 多少詳しくなりますけれども、例えば、化学兵器弾薬につきましては四万発以上が廃棄されました。また、スカッドミサイルについては八百十七基が廃棄されました。
 他方、残った疑問といたしましては、化学兵器弾薬が九百発残っている、あるいはスカッドミサイルが二基残っている。生物兵器につきましては、大量の生物兵器が疑惑として残っているなどの事実関係がございます。
赤嶺委員 それで、今具体的な数字を挙げていただいて、先ほどブリクス委員長の一月二十七日の報告も引用されましたが、決議六八七の履行は顕著な軍備解体をもたらした、こうブリクス委員長は言っているんですね。この決議のもとで廃棄された大量破壊兵器は、湾岸戦争で廃棄された数を上回っている。さらに、九四年にUNSCOMの監視のもとで大量の化学兵器が廃棄された。イラクはわずかな証拠だけで、すべての生物兵器を一九九一年に一方的に廃棄したと主張しているが、UNSCOMは一九九六年に多数の生物兵器生産施設を破壊したことは間違いのない事実だ、IAEAによって大規模な核インフラが破棄され、核分裂性物質がイラクから除去された、こう述べているわけですね。
 外務大臣、このブリクス委員長の顕著な軍備解体をもたらしたと述べている成果について、政府も認識を共有できますか。
川口国務大臣 UNSCOMの報告についてはそういうことであろうと思います。ということは、一定の大量破壊兵器が廃棄をされた、それと同時に、また生化学兵器を中心にわからないものがたくさん残っている、そういうことでございます。
赤嶺委員 そこで、UNSCOMの査察官として八年間イラクで働いたスコット・リッターさんという方が、最近「イラク戦争」、こういう本を出して、既に外務大臣も御承知だと思いますけれども、元国連大量破壊兵器査察官として、この間国会にもお見えになりまして、参議院で国会議員と懇談をする機会もありました。そのリッターさんが、九一年から九八年の期間、イラクの大量破壊兵器は九〇%から九五%まで検証可能な形で廃棄され、生物化学兵器を製造する施設はほとんど破棄されている、このように証言しておられます。これは事実でしょうか。どうでしょうか、外務省。
天野政府参考人 お答えいたします。
 九〇%破棄されたかどうかという点についてはつまびらかにいたしませんが、残っているものについて申しますと、疑惑について申しますと、ボツリヌス毒素については二万リットル、炭疽菌については八千五百リットル、アフラトキシンについては二千二百リットルなどが残っているということでございます。
赤嶺委員 残っているというのは先ほどもお答えになっておりました。私が言っているのは、リッターさんが査察官としてイラクに八年間入り、査察活動をして、生物化学兵器についてもその製造のインフラ施設についてはすべて破壊した、大量破壊兵器はもう九〇%から九五%まで破壊したんだということを言っているんです。先ほど皆さんの御報告にも、恐らくUNSCOMから取り出した数量だろうと思うんですが、圧倒的多数のものが破壊されたという報告だったんですが、その九〇%―九五%まで破壊されたというのは事実であるかどうかということを皆さんが確認しているかどうかということを聞いているんです。
天野政府参考人 お答えいたします。
 UNSCOMの報告の中でそのような数字を見たことはございません。
赤嶺委員 それで、そういうスコット・リッターさんの証言については、皆さんは、それを否定できる、そういうものも持ち合わせておりますか。否定できる根拠も持ち合わせておりますか。
天野政府参考人 お答えいたします。
 否定できる根拠というものは具体的に持ち合わせておりませんが、ボツリヌス毒素、炭疽菌、アフラトキシンなどの廃棄実績についてはゼロというふうに報告されております。
赤嶺委員 リッターさんは生物化学兵器についても触れております。インフラ施設についてはすべて破壊した、これはもうUNSCOMの報告の中にも出てきますから皆さん御承知だと思いますけれども、廃棄されたという証明がない。つまり、残っているのかあるいは廃棄されたか、それは証明がないのが今生物兵器ということになっているわけですよね。
 生物化学兵器物質について、炭疽菌を保存できるのは三年間でしかない、それから化学兵器用物質も五年間が期限となっている、三年たてば、五年たてば、兵器として役に立たなくなる、こういことをリッターさんは海外の議会の中でもちゃんと証言していらっしゃるわけですよ。この点について政府は、そのリッターさんの証言、そのとおりだと考えますか。これは事実ですか。
天野政府参考人 お答えいたします。
 化学兵器につきましては、さまざまな種類がございますので、一概には言えないかと思います。また、炭疽菌につきましては、UNSCOMの報告で、何年間たてば無害になるというようなことは、記述はございません。
赤嶺委員 それで、そこを皆さんとして否定できるかどうかということを聞いているんです。生物化学兵器というのは存在しているということをはっきり皆さん言えるんですか。
川口国務大臣 それをまさに証明しなければいけないのがイラクの責任であるということです。
赤嶺委員 要するに、日本の外務省としては、イラクに生物化学兵器があるということについての証明は持ち合わせていないということですよね。そういうことでしょう。
川口国務大臣 国際社会が、国連決議という形で、イラクがそれを証明しなければならない、そういうことを言っているわけです。
赤嶺委員 だれが証明しなければいけないかという議論じゃないんです、今は。やはり査察の成果をきちんと確かめたいということですよ。それについて政府は、生物化学兵器についての存在を日本政府としては証明できないというのは、今の外務大臣の答弁ではっきりしたと思います。
 外務大臣と議論していますと、いつもどんな質問でも、最後は、イラクが答えるべきのその一つしか回答を持ち合わせていませんので、それで、ちょっと次の質問に移りたいんですが、外務大臣、もしお答えがあるならお願いします。
川口国務大臣 UNSCOMによって、廃棄が、イラク側が証明をしなさいということを言われているもの、これについてイラクは証明をしていない。挙げますと、砲弾等約九百発。VXガス二・四トン以上、これにつきましては、例えば六ミリグラムで致死量でございます。それから、ボツリヌス毒素約二万リットル、炭疽菌八千五百リットル、生物兵器用弾薬百五十七発、スカッドミサイル二基、生物化学兵器用ミサイル弾頭四十五発、ミサイル推進剤約五百四十トン。少なくともこれだけがUNSCOMによって残されている疑惑であって、それをイラクが証明しない限り、国際社会としては、イラクに疑惑が残る、問題があるということを考えるということでございます。
赤嶺委員 外務大臣の、生物化学兵器、日本の外務省は証明できないという答弁には変わりありませんでした。
 それで、UNSCOMの課題が言われました。UNSCOMで残された課題、これを今UNMOVIC、ここで精力的に査察をやっているわけですね。十一月に査察が始まって二カ月目、一月二十七日に、ブリクス委員長が二カ月間の成果について報告を国連の安保理で行っています。
 十一月から始まった査察の成果と今後の課題についても、ブリクス委員長は、イラクにおける我々のプレゼンスを確立した、この二カ月の間に我々は二百三十以上の施設で約三百の査察を行った、このうち二十以上の施設は以前には査察されていなかった。このように、先ほど外務大臣の答弁にありましたように、UNSCOMで課題は残りました、残って、そして今ブリクス委員長を中心に査察を開始して、二カ月間でこれだけの査察の成果を上げたとブリクス委員長は報告しておられます。
 報告書は外務省にもちゃんと届いていると思いますが、この二カ月間の成果について、政府はどのように考えますか。
天野政府参考人 お答えいたします。
 一月の二十七日の安全保障理事会で、ブリクスUNMOVIC委員長及びエルバラダイIAEA事務局長より、昨年の十一月の二十七日から実施された査察におきまして、イラク側から手続面の協力は得られているが、イラクが提出した申告書は、過去の疑惑、先ほど申し上げたものを含みますが、に答えておらず、イラクからは疑惑解消のための十分な協力が得られていないという報告があったと承知しております。
赤嶺委員 査察が完了だという報告が今できるのであれば、これはもう本当に我々にとっても喜びにたえないですよ。イラクの国民にとっても、そのことによって経済封鎖が解除されて、国民生活がもとに戻ることもできる。それはみんなが待ち望んでいることなんです。そして、ブリクス委員長は、そのことを、いわば査察を成功させる上での課題を述べたところを今あなたが読み上げているわけですよ。
 この二カ月間の成果についてもブリクス委員長は触れている。このブリクス委員長の報告は、我々はこの二カ月の間に二百三十以上の施設で三百の査察を行った、このうち二十以上の施設は以前には査察されていなかった、こういう成果を報告している。
 査察で成果が上がったという報告があることについて政府はどう考えているかということを、外務大臣、これはお答えください。
川口国務大臣 ブリクス委員長が言っておりますことは、問題点がたくさん残っている。化学兵器について言いますと、イラクは、約六千五百発の化学兵器砲弾について廃棄した証拠を示していない。査察の結果、合計十六発の化学兵器用の弾頭を発見した。査察の結果、ある施設の研究所でマスタードガスの先駆物質を発見した。イラクは湾岸戦争当時に保有していたVXガスの行方についての疑問に答えていない。炭疽菌の廃棄について確実な証拠を示していない。査察団による調査の結果、イラクが開発を進めているアルサムード2型ミサイル及びアルファタ型ミサイルが百五十キロメートルを超える飛行能力があることが判明した。UNSCOM当時、査察団がイラクに対してミサイルの直径を六百ミリ以下にするように制限したにもかかわらず、七百六十ミリに増強されたミサイルがある。イラクはミサイル製造施設を更新した等々を、それから、まだありますけれども、イラクは、ミサイルのエンジン三百八十基を決議に違反して輸入した。イラク国内在住科学者の自宅で濃縮ウランに関する文書を発見した等々を言っています。
赤嶺委員 査察の成果を述べている部分について政府はどう考えるかと言ったら、全く別の部分を持ってきて、これが答弁だということになったらおかしくなりますよ。私がさっき読み上げたブリクス委員長の部分は、ブリクス報告の中にあるんですか、ないんですか。
天野政府参考人 お答えいたします。
 査察が実施されたということは確かにございます。査察が実施されましたが、その成果としてどうかということになりますと、疑惑が解消されていないということを申し上げています。(赤嶺委員「ブリクス委員長の、さっき読み上げた部分が報告の中にあるかないかを聞いているんですよ。私、でっち上げを読み上げているんですか」と呼ぶ)はい。二百三十回云々というのがございます。
赤嶺委員 ちゃんと成果も述べているんですよ。そして、残された課題についても報告の中では出している。これが査察なんですよ。
 それで、例えば、エルバラダイIAEAの事務局長は、同じ一月二十七日の声明の中で、我々の仕事は確実に前進している、この本来の道筋を進むことが認められるべきである、我々はこの数カ月以内にイラクには核兵器開発計画がないとの確証を出すことができる、今後数カ月は、これは一月二十七日からということになりますが、今後数カ月は平和に対する価値ある投資であろうと述べている。査察の成功を目指してエルバラダイ事務局長もこのように声明を出しているわけです。これは国連安保理に対して出した声明です。
 そういう査察を成功させたい、このように出している声明について、政府はこれをどのように考えておりますか。
川口国務大臣 イラクを査察する場合に、イラクが全面的に協力をしなければいけないという意味は、能動的に、積極的に、先ほど私が申し上げましたような疑惑にこたえる行動をとらなければいけないということですけれども、例えばブリクス委員長が言っているのは、これは私どもの副大臣におっしゃったことですけれども、手続面については妨害をしているわけではない、ただし、サブスタンスの面、実質的な面、すなわちそれは先ほど来申し上げているような、廃棄の証拠を見せるとかそういうことであるわけですけれども、そういうことについては十分な協力が得られていない、すなわち、疑惑解消のための十分な協力が得られていない、そういうことをおっしゃっていらっしゃるということでございます。
 いずれにしても、この報告は、十四日、本日のニューヨークでブリクス委員長及びエルバラダイ事務局長が報告をすることになっているということでございますので、そこで、今委員がお聞きのことのその後の進展についてわかることになると思います。
赤嶺委員 外務大臣は、本当に聞かれたことに答えていないんですよ。私は、ブリクス委員長が査察の課題が残っているということについても、先ほど来言っておりますよ。そして、イラクがそれに対して誠実にこたえていないという問題もある。にもかかわらず、ブリクス委員長やエルバラダイ事務局長は、査察を成功させたい、このように報告の中で言っておられる。この姿勢、ここを政府はどう考えるんだと。
 これ、言わなかったこと、どこか公式外の場で発言しているようなことを引っ張り出してきて皆さんに質問しているんじゃない。一月二十七日のお二人の報告と声明の中にきちんと書かれていることですよ。査察を成功させたいと言っている、この二カ月間で成果も上がっている、これについてどう考えるかということを聞いているんです。
川口国務大臣 ブリクス及びエルバラダイ事務局長は、これは一月二十七日の安保理においてですけれども、査察プロセスへの安保理の一致した支持、各国からのさらなる情報の提供、イラクの能動的な協力が今後必要とされるということを述べています。この査察を成功させるかどうかというのは、まさにイラクにかかっているということだと思います。
 そしてさらに、今月の五日の国連での場ですけれども、ブリクス委員長も、武力行使の開始時期に限りなく近づいており、イラク指導者はそのことを知るべきである、そういうことも言っている、そういうことでございます。
赤嶺委員 査察を成功させるという立場に外務大臣、立っておられるのか、あるいは査察について今どんなふうに考えているのか、極めて不明なんですが、査察を成功させようという立場ではないんですか。
川口国務大臣 私は、ぜひ査察を成功させたいと思っています。そして、その成功させたいという国際社会の気持ちをイラクが理解をして、成功させるための能動的な協力をする必要がある、それがなければ査察は成功しない、そういうことだと思います。
赤嶺委員 イラクの能動的な協力がなければ査察は成功しない、ここには非常に外務大臣あるいは日本政府の巧みな論理が隠されていると思うんです。
 確かに一四四一決議はイラクの能動的な協力を決議しております。ただ、査察というのは、どういうことなんですか、全部イラクが持ってこいということでは、今までの前進面では、そういうところじゃないわけですね。一九九一年から一九九八年にかけても大きな成果が上がった、湾岸戦争を上回る大量破壊兵器が破棄されたとブリクス委員長は言っている。ここで上がった成果というのはイラクの能動的な協力によって上がった成果ですか。イラクのさまざまな妨害を国連が一致協力して、団結して、これをはねのけながら、イラクの大量破壊兵器、これまで放棄させてきたじゃないですか。そして、残された課題についても書いてある。この残された課題を国連が一致協力してやれば見通しが出る、こういうことをブリクス委員長もエルバラダイ事務局長も言っているじゃないですか。そういう政府は査察ということについてどんなふうにお考えなんですか。
川口国務大臣 一四四一の目的というのはイラクの武装解除であって、査察はそのための手段であるということです。査察自体が目的だということではない。この一四四一で武装解除の義務を遵守する最後の機会をイラクが与えられたということです。
 そして、イラクは、一四四一に書いてあることを、いろいろございますけれども、例えば年二回の申告書の提出に加えて、決議の採択の日から三十日以内にさまざまなことを出さなければいけない。それで、その書類を見たところ、そこには新しいことは何も書いていなかったということになっているわけでございまして、それもやっていないということです。
 したがって、査察をしてイラクを武装解除するということが国際社会が今考えていることであるわけですけれども、それをやるための過程においてイラクは協力をしていないということが現在起こっていることであるわけです。
赤嶺委員 ですから、イラクが一九九一年以来、さっき言った八年間の査察についても、まともな協力なんかなかった。でも、査察は、イラクの大量破壊兵器を破棄させる上で大きな前進をかち取ってきた。でも、残っている。そして、この二カ月査察をした。この査察をしたら、今、外務大臣、文書の話をしました。しかし、新しいサイト、新しい施設についても査察官が入って成果を上げている、こういう報告もある。
 それで、国連の一四四一決議というのは、同理事会の関連の決議のもとでの武装解除の義務を遵守する最後の機会を与えることを決定し、その結果、決議六八七及びその後の同理事会の関連の決議により設置された武装解除プロセスを、完全かつ検証可能な形で完了する目的のために強化された査察体制なんですよ。
 今度一四四一で設置された査察体制は、まさに、今までやり残してきた仕事を査察でやり遂げようじゃないか、完了しようではないかということを一四四一決議に書いてあるじゃないですか。そういう意味では、査察を通してイラクを武装解除する、大量破壊兵器を放棄させる、こういうことを政府は求めるべきじゃないですか。
安藤政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど来、イラクが九〇年代において査察に協力をしてきた、あるいは査察の成果が上がってきたというお話……(赤嶺委員「していたとは言っていませんよ」と呼ぶ)査察の成果が上がってきたということをおっしゃっておられましたけれども、一面において、査察が実施されて、その結果、大量破壊兵器の一部が廃棄されたということは事実でございます。
 他方、ちょっと問題の所在をもう一度繰り返させていただきますが、イラクは、湾岸戦争の停戦条件として、大量破壊兵器をすべて完全に廃棄しなくてはいけないという義務を負ったわけでございます。その後、査察が始まったわけでございますけれども、その間イラクは、虚偽の申告を査察団に対して行ったり、あるいは査察団に対して妨害行為を行ったりということをしてきたわけでございます。現実にそういう例があるわけでございます。
 一、二、具体的に申し上げますと、例えば、イラクが飼料工場と主張していた施設が、査察の結果、生物兵器工場であることが判明したとか、あるいは、当初、生物剤の存在及び核兵器開発計画を否定しておったわけでございますが、一九九五年にフセイン大統領の娘婿であるフセイン・カーメルが亡命したことをきっかけにして、これが誤りである、うそであるということがわかって、イラク政府もこれを認めざるを得なかったというような経緯もあるわけでございます。
 また、九七年以降、査察団の立ち入りを拒む、あるいは証拠物件を持ち出す、あるいは大統領施設への査察団の立ち入りを拒否する、こういうようないろいろな事例が相次ぎまして、ついには、御案内のように九八年の十月に査察の協力を全面に停止するということになったわけで、それ以来全く査察が行われていない。
 したがって、決議の一四四一は、こういう過去のイラクの行動にかんがみて、イラクに大量破壊兵器を廃棄する最後の機会を与えるんだといって、今査察が行われているということでございます。
赤嶺委員 今の局長の答弁、よく聞いていますと、やはりイラクは大変な妨害をしているんですね。妨害している中で査察をしたら、彼らが隠しているものを見つけて、そして兵器を破壊していく、廃棄していく、こういう力を持っているんですね、国連の査察というのは。こういうのを持っているんですよ。
 それで、スコット・リッターさんもこの本の中で、どんなにイラクが妨害したか、そして、彼はその妨害を受けた現場にも立ち会って、あわや一触即発という場面もありながら、それでも努力して大量破壊兵器を九割から九五%廃棄してきたんだ、そして、今、証明できない生物化学兵器についても、今や兵器としての能力は持ち合わせていないんだということをこの本の中で言っているわけです。だから、妨害していることは当然なんです。
 しかし、国連の査察活動というのは、そういう妨害を押しのけて、国際社会の力で査察をしていく、そういう成果を上げてきていると思うんです。例えば、今、八年間の査察の成果、この二カ月間の査察の成果を申し上げました。それで、パウエルさんが国連の安保理会合で証拠、アメリカの情報を提供した、決定的な証拠ではないと言ったわけですが。
 今、そのイラクの態度をめぐって非常に緊迫した情勢にあるわけですけれども、今度はイラクそのものが態度を軟化してきている。課題であった、一月二十七日のブリクス報告で課題の重要な一つとされた偵察機U2も受け入れる、それから、科学者の聴取についても立会人なしに行うことを受け入れるというブリクス報告で出した二つの課題について、イラクはそういう変化を見せてきております。
 それから、こういう点で、査察をめぐる情勢が大きく変化してきている、この変化してきている中で、外務大臣はどこかで、イラクは、U2偵察機なんというのは、もう既にこたえているべきものを今こたえたんだ、けしからぬと言っておりますが、けしからぬことには間違いないけれども、それが大量破壊兵器をなくするという大きな目標に向かって見れば、前進じゃないですか。前向きの変化じゃないですか。
 そういう意味でも、査察を徹底して行っていくという立場に立つべきだと思いますが、いかがですか。
川口国務大臣 今委員が質問の中でもおっしゃいましたように、U2を受け入れたということ自体は、これは一四四一に書いてあってとっくにやっていなければいけないこと、それを受け入れたにすぎない。科学者についてもそういうことでございます。それは、ブリクス委員長が言われるところの手続面においての協力である、それにしかすぎないということです。しかも、それはずっと前にやっていなければいけなかったこと。
 サボったことをやっても、進歩だといえばそれは進歩に違いありませんけれども、実際に査察を成功させるという観点から、そして平和的に物事を解決するということから重要なことは、能動的にイラクが、先ほど来たくさん出ている幾つかのといいますかたくさんの疑惑、これを廃棄したという証拠を出していく、そういうことであるわけです。
 最後の機会を一四四一は与えたということでして、にもかかわらず、その能動的な協力という意味ではイラクはまだやっていないというふうに考えておりますが、いずれにしても、この細かいことについては、十四日、国連の場でさらなる報告がありますので、その報告を見た上で、さらに検討をしたいと思います。
赤嶺委員 外務大臣、やはり査察の報告についてしっかり読みこなしていないなという印象を今受けました。
 手続面で協力しているというのは、ブリクス委員長の一月二十七日の報告の中にあるんですが、その手続面の中でも協力していなかったこととして、偵察機の問題と科学者の問題が挙げられているんですよ。これはすぐに解決しなきゃいけないということになっているんですよ。そこは、査察全体については前向きですよ、一四四一決議がまた実行に移される機会を得たということになるわけです。査察を否定することにはつながらないと思います。
 そこで、もう時間もありませんけれども、ブリクス委員長がウィーンの国際センターでスピーチしたものをインターネットから取り出して引いてみました。こう言っています。
 我々は査察の選択肢、軍事行動の道に対する代案である査察の道によってイラクの軍備解体を見たい。イラクの側の積極的な協力がなければ、効果的な査察を実現することは困難である。私はそれが不可能だとは言わない。我々には、そこで多くのことが達成された八年間がある。しかし、我々はそのときよりも一層迅速な軍備解体を行いたい。そういう過去の八年間の経験に照らせば、イラクが協力しないという困難はあるけれども、我々には査察を成功させることが前向きに考えられるということを言っております。
 そこで、ロシアとドイツとフランスが三国の共同宣言を出しました。これは、査察の継続強化によってイラクの問題を平和的に解決しようという立場であります。これについて、外務大臣、何度もこの場で答弁しておられるようですが、政府としては、この三国の共同宣言、そして中国が支持した、査察の継続強化でイラク問題の解決をと願っているこの立場、これはどのように認識しておりますか。
川口国務大臣 基本的な認識として、ドイツ、フランス、中国も、イラクが能動的に武装解除を行うということが重要であるということを言っているわけでございます。そして、その上で、査察をやることの意味というのは、まさにイラクがどれぐらい協力をするかということにかかっている。イラクがそれをやるかどうか、やらないのではないかということについて、今国際社会は懸念を持っており、日本としてもその懸念を共有している、そういうことでございます。
赤嶺委員 外務大臣のお話、そして外務大臣は六日に声明を出しておりますが、パウエル国務長官の国連での報告を受けてのあれでは、もう今のようなイラクの非協力な態度があれば査察も限界だ、こういうことになっているわけですが、今査察否定をしたら、残された選択肢というのは武力行使しかありません。外務大臣は、その武力行使を選択されるんですか。
川口国務大臣 大量破壊兵器、これが人類にとって大きな問題であるという懸念を私は持っております。特に今、我が国は当然こういった懸念を持ってしかるべきであると思います。
 これを、どうやったら大量破壊兵器を持っている国を武装解除することができるか、このための努力を国際社会は十二年続けてきていて、それに対してイラクは十分にこたえていないというのが現実であるということだと私は思います。
 したがって、今国際社会がさらにやらなければいけないことというのは、イラクがそのような行動をとるように最大限の圧力をかけていく、そういうことであると思います。
赤嶺委員 十二年間圧力をかけてきた、イラクは協力しなかった。しかし、イラクの大量破壊兵器は確実に査察によって破棄されるなど、前進が始まってきており、ブリクス委員長もエルバラダイ事務局長もそこの方向に、平和解決の方向に活路を見出しております。
 今、一貫して査察の成果について否定してこられた日本政府の立場というのは、平和解決の世界の流れ、そしてイラクへの武力行使は何とか回避してほしいという日本の国民の圧倒的多数の世論の流れにも逆行している態度であるということを指摘いたしまして、私の質問を終わります。
藤井委員長 これにて赤嶺君の質疑は終了いたしました。
 次に、金子哲夫君。
金子(哲)委員 社会民主党・市民連合の金子です。
 雇用問題に関して質問したいわけですけれども、その前に、昨日質問をしました在外被爆者問題について、少し大臣に改めてお伺いしたいと思います。大臣、本音のところでぜひ、もう大臣の率直なお気持ちをお聞かせいただきたいという思いで質問させていただきます。
 各種手当の申請、再申請の場合については今後検討していくということですけれども、最初のときにはぜひ一遍来てほしいということですけれども、大臣、ここはちょっと確認しておきたいんですが、被爆者健康手帳の申請のことでしょうか、それとも各種手当の場合にも一度は日本に来なさいということでしょうか。どちらのことで必ず一度は来てほしいということをおっしゃっているんでしょうか。
坂口国務大臣 私が一度は来てほしいというふうに申しましたのは、原爆を受けられたという認定を受けてもらわなきゃなりませんね、そして一応手帳を交付するということをしなきゃなりません。そのときには一度これは来てほしいということを言っているわけでありまして、それで、お受けをいただいた後外国に帰られた場合には、それはこちらからお送りをします、こういうことを申し上げているんです。
金子(哲)委員 大臣の今の答弁でぜひ確認しておきたいのは、手帳の申請については日本に来ていただきたいということを明確におっしゃいました。きのうの答弁の中でも、一度は日本に来てほしいということは、手帳の交付を受ける際には日本に来てほしいということですね。
 そうしますと、各種手当の申請については、手帳を持っておれば被爆者として認定をされたわけですから、その手当の申請は例えば居住国からできるというふうに解釈をすべきだと思うんですが、それで結構ですか。
坂口国務大臣 これはもう金子議員は専門家ですから、今さら申し上げるまでもありませんが、皆さん方はわかりにくいのでちょっと申し上げますと、一番原子爆弾の放射能の影響をお受けになった方は、医療特別手当というのをお受けになっていますね。それで、その方が、一応病気は治ってきたというときに……(金子(哲)委員「いや、内容はいい」と呼ぶ)いや、わかっておる。ちょっと、皆へ言わないとわからぬ。それは特別手当というので、これは出ている。
 しかし、原子爆弾による影響で病気になったという、そこははっきりとした証拠はない。例えば血圧が高くなった、腎臓が悪くなった、そういう人たちがいる。それは直接の原因かどうかははっきりしないけれども、そういうふうになっている。しかし、そうでないという証拠もこれまたない。こういう人たちは、健康管理手当というのが出ているわけです。
 ですから、血圧が悪くなった、心臓が悪くなった、腎臓が悪くなったというのは、それはまた治っていくこともあるわけですね、御承知のとおり。一般の人の中にも、血圧が高くなった、心臓が悪くなった、腎臓が悪くなったという人も存在するわけです、一般の人の中にも。だから……(金子(哲)委員「援護法適用の中身の論議をしているわけではないです」と呼ぶ)いやいや、それはちょっと僕は比較を、中身のことを言うのには全体のことを言わなきゃわからないから僕は言っているわけで、それで、そういうふうな人たちもいるから、心臓が悪くなった、腎臓が悪くなったという、直接放射能による影響であるという確実な証拠のない、そういう人たちに対しては五年ごとの見直しをひとつしてくださいということを言っている。だから、日本におみえになる皆さんも五年目には見直しをしていただいて、そして、また悪ければ継続をしている、こういうことであります。
金子(哲)委員 大臣、僕も途中で話を切って大変申しわけなかったけれども、今答弁されたことは私の質問に何も答えてないじゃないですか。私は、居住国からそういう手当の申請ができるかできないかということを問うているわけですよ、中身を問うたわけでなくて。それは、幾ら申請しても条件に満たなければだれしもが認められない、申請が認められないのは、これは日本人であろうと在外の人であろうと当たり前のことです。私は、そもそも、そういう申請が居住国からもできるかできないかということを問うているわけで、そのことについて答えてください。
坂口国務大臣 手帳の申請、それから手当の申請、それから手当の再申請、これは日本に来てもらわなければならないということに今なっている。それで、出国後の手当の支給ですとか、それから国外の、国外在住者による各種届け出、これは、亡くなるということもあるでしょうし、住所を変わられるということもあるでしょうし、そうしたことを、一々これは来ていただかなくても、それは外国からお知らせをいただければ結構でございます、こういうことでございます。
金子(哲)委員 今ちょっと最後のところがよくわからないので、もう一度ちょっとお答え、最後のところだけ。
坂口国務大臣 一番最後に申し上げましたのは、これは外国に在住しておみえになる方が、住所を変わられるとか、あるいは亡くなられるとか、そういうことはあるでしょう。結婚する人はもう高齢者ですからないでしょうけれども、そういう変化がある。そのときにはそれを韓国なら韓国からお知らせをいただければそれで結構、一々来ていただく必要はありません、結構でございますということを言った。
金子(哲)委員 きのうの答弁は、私はその話をして、日本に来て健康管理手当の申請を行った、それで、帰国をして健康管理手当を受給していた、三年、五年たって、まだ病気が治らない、だから再び継続して申請をしたいというときに、また日本に来なきゃいけないんですかということを問うたら、大臣は、それは検討しましょうということをおっしゃったんですけれども、今の文章は、官僚が書いた文章ですよ、今読み上げられている。だから私は、大臣に生の声で聞きたいと。
 ですから、いいですか、きのうは、私は大臣に、つまりそういう人たち、在外の人たちに、そういう条件があって日本に来ようとしても来れない人たちがいらっしゃる、それを放置したことができるんでしょうかということを問うたわけですよね。そうしたら、今、全部後退をして答弁になっているようですけれども。
坂口国務大臣 きのう申し上げましたのは、これからの話をしたわけで、これは現状について、現状はこうなっていますということを今申し上げたわけで、そうでしょう。
 それで、今中心になっていますのは、手当の再申請をするときにどうかということなんですよ。その再申請というのは、先ほど申しましたように、その病気が、心臓だとか腎臓だとかいうような病気のときには、それを継続をしてその人たちに支給をしなきゃならないものかどうかということを五年目ぐらいには一遍検査をさせてもらわなきゃいかぬということになっている。金子議員のおっしゃるのは、日本に来なければそれができないのか、外国におってもそういう証明があればいいのかということを言っておみえになるんだと思うんですね。だから、きのう申し上げたのは、そこのところは一遍検討させてもらいますということを申し上げたわけです。
金子(哲)委員 わかりました。ぜひ検討してください。
 そうであれば、実は私は、一度来てほしいという話がありますけれども、これから手帳を申請される方、そして取得をされる方が新たな手当を申請される場合は、私は、そういうことは条件としていいと思います。
 ただ、きのうもお話ししましたけれども、過去に手帳を取得した人たちは、現行の援護法の制度上、申請した翌月にしか支払いがされないということで、その月しか滞在しない人たちは、残念ながら、手帳はもらったけれども、どうせ申請しても支払いを受けられないということで、申請そのものを放棄された方がいらっしゃるんですよ。それは、そもそもその当時、そのことがおかしいということになったわけですから、帰国しても支払うという昨年十二月の上告断念の決定が、方針が早くあれば、その人たちは手帳を取得したと同時に、そういう手当の申請をしていたわけですよ。それができていなかった人たちは、私は救済されるべきだと思うんですよ。
 日本の政府の援護法の解釈の誤りによって救済されなかった人たち、今帰国されている、きのう私が話をした中国の人ですよね、中国の人。この人は、保健手当の場合は、きのうも言いましたけれども、二キロ以内で被爆をしておれば健康診断書も要らない、ほかの手当さえ支給を受けていなければ、だれしもが申請さえすれば受けられるわけです。四人のうち二人は、そのために二カ月、月をかわって滞在をしたから、申請をしてこれを受けた。その二人の人は、今回五年さかのぼって支給されますから、約百万近いお金でしょうか、今度支給をされることになる。しかし、残りの二人は、たまたまその月に帰るということで、当時の厚生省の方針によって、もう幾ら申請しても自分は受けることはできないということで帰国をされたわけです。当時九三年、八十歳です。今もう九十です。この方に、当時の日本の政府の、いわば厚生省の指導が誤りであったために申請しなかった九十の人に、改めて中国から今回来て申請をしなさいということなんでしょうか。それとも、この人がもし病気で、どうしても動けないという人にまで来なきゃできないということなんでしょうか。
 在外の被爆者でも、一たび日本に来て手帳を受ければ、被爆者として今回認定をする、被爆者たる地位を失わないということを認める判決を国が受け入れたわけですから、そうであれば、そういう人たちに対して救済をするというのは、私は、そのとき人道的な立場で上告を断念された坂口厚生労働大臣ならそんなことはわかると思うんですけれども、その点についてはどうお考えですか。
坂口国務大臣 この法律ができましたときには、社民党さん、政権に入っておみえになったときにできた法律ですからね、あの当時野党だった私がしかられておるのもどうかと思いますけれども。
 これ、ただ……(発言する者あり)いや、冗談。おっしゃるとおりのこともそれは多分あったんでしょう。それは、個々のケースの場合はちょっと個々にそれは検討させてください、一々ここでええとか悪いとか言いがたい問題がありますから。個々のケースはひとつ個々のケースで検討させてください。大筋のところにつきましては、先ほど申しましたように、手帳の申請、手当の申請はどうぞ日本でお受けをください、それから、手当の再申請のときのことについては検討させていただきます、こういうふうに答えているわけですから。
金子(哲)委員 大臣、私は大臣に何度かこういう話をしておりますので、現実の被爆者の皆さんの声も聞いていただいておりますので、本当にその気持ちはよく御承知で、今、ケースによってお話をしたいということですから、私もぜひその点を尊重していきたいと思うんです。
 ただ、私自身は、あの社会党の政権の時代だった。法律法律とおっしゃいますけれども、実は私もその点で援護法を勉強させてもらいました。
 先輩の皆さんがお決めになった被爆者援護法第二条はこう書いております。「被爆者健康手帳の交付を受けようとする者は、その居住地(居住地を有しないときは、その現在地とする。)」これは、在外被爆者の方が日本に来られたときのことを考慮して「現在地」という言葉を入れていただいたわけです、「の都道府県知事に申請しなければならない。」となっております。つまりは、居住地もしくは現在地で申請をしなさいということが書かれております。
 それに比較して、手当の項はどのような書き方がされているかといいますと、健康管理手当、「前項に規定する者は、健康管理手当の支給を受けようとするときは、同項に規定する要件に該当することについて、都道府県知事の認定を受けなければならない。」となっております。
 ここには、明らかに違うのは、「その居住地の都道府県知事に」と被爆者健康手帳の際には明記をされておりますけれども、手当の際には「居住地の」という表現はありません。都道府県知事が受ければいいということであれば、代理の申請、郵送も含めて可能であります。
 皆さんが、大臣はそうではありませんけれども、厚生労働省の官僚の皆さんが根拠とされているのは、あくまでも法令の施行規則なんです。これがいつの間にか、省令、施行規則の五十二条になりますと、この「認定」のところで、健康管理手当の申請に書類を添えて、「これを居住地の」という言葉がここで突然として入ってきているわけです。援護法の中では記載をされていないこの「居住地の」という表現が、施行規則になって突如として出てきている。
 明確に、援護法における、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律の第二条と第二十七条では、明らかに記載の表現が違うわけであります。そのことを拡大的に解釈してやっていただければ、大臣の今の気持ちと、この援護法の本体の本文そのものの表現を援用していただければ、私が今申し上げているようなことは解決できる課題だ、このように私は思うわけです。大臣、どうでしょうか。
坂口国務大臣 施行令でありますとか政令でありますとか、それは法律をさらに具体化するわけでありますから、それは若干詳しくなっているということはあるというふうに思いますが、しかし、政令であろうと施行令であろうと、法律に書いてあることと違うことを書いたらいけないわけで、それはそのとおりにしなければならない、それは当然のことだと思うんですね。私はそんなことはないというふうに思いますけれども、しかし、何もしゃくし定規を当てたことだけでは解決ができないというふうに思っておりますから、だから、検討すべきところは検討したいということを先ほどから申し上げているところであります。
金子(哲)委員 ありがとうございました。
 それでは、本論の雇用問題について、質問に入らせていただきます。
 失業の問題なんですけれども、非常に長期化をしているということが今深刻な状況になっております。雇用をどうやってつくるかということは、いろいろな課題で、緊急地域の雇用対策とか、さまざま政府も打たれているわけですけれども、昨今、厚生労働省も十二月になって発表されているいわゆるサービス残業の問題が、これまた長時間労働の問題を含めてかなり大きな課題になっております。民間のシンクタンクなんかの報告によっても、このサービス残業を解消すれば百五十万人ぐらいの雇用がつくられるのではないかというような数字を出しているところもあるわけであります。
 この問題について、厚生労働省も最近緊急の調査を行われて、厚生労働省の担当者は、サービス残業や過労について全国の労働局を通じてこれまで以上に厳しくチェックするよう指示するということを言われておりますけれども、その具体的なことについてどのような対策をとられているでしょうか、お聞かせいただきたいと思います。
坂口国務大臣 総論といたしまして、経済の状況が非常に厳しいというような状況の中でリストラ等が行われる、そして会社が少ない人数の中でお仕事をやってもらっている、そして、その少ない人数の中で、今度はそこに残った人たちに対して時間外労働等が多くなってきているというような状況があることは事実でございまして、かなり各労働基準監督署等にもそうした訴えというものも多くなってきているわけでございます。
 したがいまして、これは申告受理件数でございますが、それは解雇の問題もあれば賃金の不払いの問題もありますし、労働時間の問題もある。これらの問題がかなり全体として多くなってきているわけでありまして、申告の受理件数でいきますと、平成九年で見ますと二万三千件余りでございましたが、それが平成十三年では三万四千件、五千に近づいてきているというような現実がございまして、これはそうした訴えられる人の数がふえてきているということでございます。
 それに対しまして、サービス残業というものにつきましては、これもかなりお訴えがあるわけでございますのでなくしていかなければならないというので、各監督署に対しましてもより積極的に対応をするように言っているところでございます。
 この各監督署の結果等について、必要だったら後でまた述べます。
金子(哲)委員 サービス残業が大きな問題になり、これをなくしていく、これはまず労働基準法上の問題も第一にあるわけですね。
 これは、使用者側も組合の側もそのために、なくすために努力しなければなりませんけれども、今この問題が、先ほど私言いましたように、サービス残業の根絶ということがある種の新規の雇用を開拓する側面を持っているという点についてはどうお考えでしょうか。
坂口国務大臣 それは、サービス残業をなくして新しい人を雇っていただければ、雇用が拡大することは間違いがないわけです。
 そこのところにつきましても、よく経営者にも理解をしてもらわなければなりませんし、サービス残業でなくて労働時間を、時間外労働を非常にたくさんおやりになっているところもありますから、それも少なくして人を雇っていただければそれにこしたことはないというので、それもお願いをしている、こういうことでございます。
金子(哲)委員 大臣の答弁を聞いておりますと、率直に申し上げまして、サービス残業の問題に対して余り深刻な問題意識がないようにちょっと受けとめるんですけれども、そこで、先ほど言いましたように、サービス残業をなくすとすれば、それは使用者側の責任が極めて重大だということは言うまでもないことですし、労働組合の側の問題もあるというふうに私は思っておりますけれども、さらには、やはり政府全体としてそういうものをなくしていくためにはしっかりとした体制をとらなきゃならないと思うのです。
 今大臣もお話がありました労働基準監督署の状況は、先ほど大臣がおっしゃった申告件数だけ見ても急増しているわけですね。しかも、その申告の件数の中身も非常に深刻になっているわけです。
 つまり、賃金の不払い問題とか退職金の不払いの問題とか、その中身の問題が深刻になっているから、労働基準監督署の監督官の仕事というのは優先的にはそこをやらなきゃいけない。倒産してしまった後では労働債権を回収することができないから、早く取り組まなきゃいけない。そういう案件が先ほど大臣も認められましたように急増している状況が、今の労働基準監督署の状況です。
 例えば、広島県の労働基準監督署、九つの事業所がありますけれども、その中で、労働基準監督署で監督官四十一名しかいないんですね。全体で、その対象事業数は十万九千社、一人が二千六百社を持つわけですね。よく回って一人が百社というのが実情だけれども、さっき言いましたように、この近年はむしろそういう申告などの対応に追われて、そういう普通の、通常行うべき労働安全の巡回だとか、そういったことが抜け落ちているということが今の実情です。
 それで、要員を聞いてみますと、ほとんどその基準局の監督官の要員は横ばいもしくは減少傾向にあるというのが実情ですね。それで、今のサービス残業の問題にしてみても、それをやっていくということが本当にできるんだろうか、この体制で。その辺はどうお考えでしょうか。
坂口国務大臣 限られた人員の中でこの仕事をしなきゃならないことだけは事実でございますが、そうした中にありましても、皆、各省庁減らしている中におきましても、この監督署の監督官につきましては、若干ずつでもふやしていただいてはきているわけであります。平成十五年度も、四十九名ぐらいですから、そうすると、各都道府県にいったら一人ずつじゃないかということになるわけでありますけれども、しかし、ふやしていただいていることは間違いがない。
 ただし、少々ふやしましても、今お申し出のようなことに全部対応できるかといえば、それは私は対応できないと思うんですね。ですから、そこのところは、各経営者の皆さん方に対してそのことを徹底する以外にないわけであります。
 ですから、いろいろの機会を通じてお集まりをいただいて、監督署関係の、健康管理の問題でありますとかいろいろなことをお話を申し上げるときがあるわけでございますので、その皆さん方に対して、できる限りここは守っていただかなければならない、これは法律に違反する問題だということを徹底してやはり浸透させていく以外に私はないだろうというふうに思っておりまして、そうしたふだんからの取り組みというものを強化させていただいているところでございます。
金子(哲)委員 それは、企業がそういうことで改善されればいいですよ。しかし、サービス残業の実態というのはもっと厳しくなっているわけでしょう。そして、厚生労働省自身が緊急の調査を行わなければならないほどにサービス残業は蔓延化し、あらゆる企業に広がっているわけですね。そうであれば、このサービス残業の問題についてはある意味では徹底してやるような体制をとらない限り、ただ通達を出しますと。今回、この賃金不払い問題、サービス残業問題で逮捕まで出るというところまで悪質化しているというか問題化しているわけですから、そういうところであれば、確かに要員の問題、大変でしょう。ですから、きょうは片山総務大臣にもお越しをいただいておりますけれども、総務省も全体として要員削減ということですけれども、私は、全体として雇用を拡大していくということは、政府全体としての大きな課題だと思います。
 そういう中で、サービス残業の撲滅ということがある種の役割を果たすとすれば、そこに今既に、大臣もおっしゃったように一定の要員が張られておりますけれども、一定のプロジェクトチームをつくるようなことを含めた、例えば要員配置とかというようなことをやっていくという考え方をとってもおかしくないんじゃないかと思うんですけれども、ぜひ片山大臣に、そういうある種の政府全体として考えなきゃいけない対策に対しては、要員の問題についても、一定に考えを示していく、先行的にやっていくということが必要だと思うんですが、その点どうでしょうか。
片山国務大臣 この国家公務員の定数問題は大変難しい問題なので、委員も御承知のように、十年間で二五%減らす、こういうことをやっているんですね。
 しかし、減らすだけじゃ能がありませんから、やはりめり張りのある、必要なところはふやす、しかし、全体ではスリムにしていくということをやっておりまして、ここで、今の労働基準監督官の問題なんですが、私どもも必要性は十分認識しておりますので、労働基準関係全体では来年度は五十人ふやす。四十九人が労働基準監督官ですね。十四年度、本年度は五十四人ふやしまして、二十五人が監督官。十三年度は五十三人で、二十人。こういうことで、監督官はかなりふやしていっているんです。
 ただ、五十人か四十九人か、こういう議論があることは確かなんですが、私は、厚生労働省は大きな役所ですから、大きな役所の中で再配置やいろいろな工夫をしていただく、こういうことも必要だと思います。
 今、委員御提案のようなことを含めて、厚生労働省とは引き続いて前向きに協議をしてまいりたい、こう考えております。
金子(哲)委員 確かに要員の問題はいろいろな壁もあることは承知をしておりますけれども、やはり全体の雇用状況の中で、こうしたサービス残業の問題というのは、今片山総務大臣からもそういう答弁をいただきましたけれども、厚生労働省としてもぜひその問題にかかわっての取り組みというものを要望しておきたいというふうに思います。
 片山大臣、どうもありがとうございました。
 さて、もう一つ。そういう労働条件の問題とあわせてでありますけれども、再就職の際にミスマッチというような問題がよく指摘をされております。今度雇用保険法の見直しというところでまた論議をしなければなりませんけれども、私、最近見てみますと、ミスマッチにもさまざまな要因があるんです。大きな要因の中に、そういういわば雇用保険で受給する金額と新たな求人に盛られている給与との差という問題もありますけれども、例えば年齢制限の問題などもあるわけですね。
 実際上、年齢制限の問題は、努力義務規定ということで、行ってはならないということになっておりますけれども、どうもハローワークなどで、連合広島の皆さんなどの調査なんかの状況も聞いても、やはり年齢制限がどうしてもひっかかるんだということが強く言われております。
 この問題について、努力義務というものを、義務規定等を含めて向かわせていくということについては、どんなお考えでしょうか。
坂口国務大臣 お若い皆さんといいますか四十五歳未満の皆さんと、それから四十五歳を超えた皆さんとのいわゆるミスマッチの状況というのはかなり違うわけでありまして、高齢者の、四十五歳を超えた皆さん方の場合には、一番大きいのはやはり年齢の問題ということになっております。
 そこで、私たちも努力義務として、これも企業にかなり徹底してお願いをいたしておりまして、今までは、法律の改正をします前におきましては一・六%ぐらいしかいわゆる年齢を問わないというのはなかったわけでありますが、それが最近ではようやくして一三%まで上がってきたということでございます。一三%ではちょっといけませんので、とにかく第一段階、第一ベースとして三〇%はやってもらわなきゃいけないというので、今努力をしているところでございます。さらに、それができましたらその次へ進むということにしたいというふうに思っております。
金子(哲)委員 さらに、大きな問題は、今労働現場はどうなっているかというと、さまざまな労働条件の切り下げ、賃金の切り下げが起こっております。
 実は私は、ハイヤー、タクシーの部門は新たな再就職先としては多いんじゃないかというふうに思って、現場の方に聞いたんです。そうしたら、そうなっていないんです。去年の二月に改正道路運送法によって自由参入ができて、台数は六千台近く増車になっているんです。ところが、働いている人たちの数はそんなにふえていない。確かに再就職の人たちがその職場におみえになることは多いんですけれども、試用期間のうちに、大体四十歳代後半の人が来ても試用期間中に半分以上の人がやめていくというわけです。六千台も台数がふえたけれども、結局今どうなっているかというと、かつて一台を二・五人ぐらいで回していたのが、二台で三人もしくは一台で一人、一台一・七人という、非常に厳しい運転で回っている。
 しかも、この現場は出来高払いということで、不況の影響ももろに受けて運収も上がらない。ですから、サービス残業、あそこは非常に難しい。労働時間も、見るのは難しいわけですからはかりにくいわけですけれども、非常に劣悪な条件になっている。売り上げも出来高払いですから非常に減っておりまして、時間がないものですから詳しくお話しできませんけれども、例えば、一九九一年のころにハイ・タクの運転手の皆さんの年収は四百三十万ぐらいだった。他産業との格差は百万ぐらいだった。ところが二〇〇一年は、年収は三百三十四万になっている。他産業との格差は二百三十万と広がっているわけです。
 実際には、ミスマッチ、ミスマッチと言っても、こういう現場は実際に労働条件がどんどん切り下げられて、そこに一生懸命働いている皆さんもいらっしゃるわけですから、大変なことなんですけれども、なかなか再就職先として見つからない。
 しかも、このハイ・タクの現場では、最近事故などが多くて、死亡事故や運輸局の指導を受けることがたくさんある。そして、入ってみると、厚生労働省などが出しております、そして旅客自動車運送事業運輸規則二十一条一項に盛られているような、いわば労働者の労働条件、例えば拘束時間は一カ月二百九十九時間等々の厚生労働省の改善基準告示などもありますけれども、そういうものをも下回っている事例がほとんどなんですね。
 そうして見ますと、先ほどのサービス残業の問題もありますけれども、そういった労働現場の無権利な状況、低賃金の構造の状況、そういったことにもしっかりとしたメスを入れていくということがなければ、ミスマッチ、ミスマッチと言うだけでは、これは改善しないんではないか。そういった問題もしっかりと取り組んでいくということが重要だと思うんですけれども、その点についてのお考えをお聞きしたいと思います。
坂口国務大臣 各分野に大変いろいろな問題が出ていることはそのとおりというふうに思います。
 タクシー運転手さんの場合にも、今お話にありましたように、全産業平均の人の賃金とタクシー運転手さんの年間賃金との間にかなり格差が広がってきていることも御指摘のとおりと私は思います。
 監督署におきまして、いろいろのお申し出があって、そこを調査させていただきましたその中、例えば、三百七十六事業場調査をさせていただいておりますが、その中でも二百九十九事業場に違反が見られたといったようなことがございまして、私たちも十分見ていかなきゃいけないなというふうに思っております。
 賃金その他の問題、個別の条件につきましては、これは労使でお決めをいただくことでございますから、労使でお決めをいただく以外にない。ただ、違反のないようにちゃんとやってくださいよということを申し上げているわけでございます。
金子(哲)委員 ぜひその指導を強めていただきたいと思います。
 もう時間がありませんので最後の質問になると思いますけれども、財形年金のペイオフからの別枠保護問題についてちょっとお伺いしたいと思います。財形年金をぜひペイオフ限度額の一千万円別枠として保護していただきたいということを検討していただきたいということであります。
 勤労者が、財形年金の場合は、会社が指定した金融機関の中から財形年金の預け入れ先を選ばなければならないという特殊な問題があります。勤務先にもよりますけれども、数社のところもありますけれども、一社しかないようなところもあります。さらには、一たん決めましたら預け入れ先を途中で変更できないということにもなっております。ある意味で、その他の預金については自己責任によって移動が可能ですけれども、この財形年金というのは、そういう自己責任によっての移動を、自己責任を問うことができないような形になっているわけでありますね。
 この財形年金そのものが、今、年金の問題がいろいろ論議されておりますけれども、老後のためにこつこつと貯蓄をしたものでありますから、そういう意味で、ぜひこの問題を考えていただきたい。
 米国においては、従来から、老後に備えた貯蓄、IRAというのは別枠として保護されているということにもなっておりますので、この際、ペイオフの再々延期ということがあったわけですから、この勤労者の財形年金のペイオフからの別枠保護ということについて、特殊な条件があるだけに、ぜひとも考えていただきたい。厚生労働省として、労働者を担当する部局として、金融庁を初めとしたところにぜひ強く働きかけをしていただきたい、このように思いますけれども、大臣の御意見を伺いたいと思います。
坂口国務大臣 今御指摘いただきました財形年金貯蓄につきましては、これは上限が五百五十万円の範囲でございますから、五百五十万円なら、これはもう全然問題は起こらないわけですね。ただ、あわせて預金をしていただいている方があれば、それは別のところでまたやっていただかなきゃならない。財形の分だけですと、上限が五百五十万ですから、これは問題ない、こういうことです。
金子(哲)委員 もう時間になりましたので終わりますけれども、ただ、移動できないその制度の枠組みというものがあるわけですから、そういった制度の性格上も考慮して、ぜひ検討していただきたいということを要望して、終わります。
藤井委員長 これにて金子君の質疑は終了いたしました。
 次回は、来る十七日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時十六分散会


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