衆議院

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第1号 平成15年11月25日(火曜日)

会議録本文へ
本委員は平成十五年十一月二十日(木曜日)議長の指名で、次のとおり選任された。

      伊吹 文明君    植竹 繁雄君

      尾身 幸次君    大島 理森君

      大野 功統君    北村 直人君

      倉田 雅年君    小泉 龍司君

      小杉  隆君    笹川  堯君

      杉浦 正健君    鈴木 俊一君

      園田 博之君    滝   実君

      玉沢徳一郎君    中馬 弘毅君

      津島 雄二君    中山 成彬君

      丹羽 雄哉君    西川 京子君

      萩野 浩基君    蓮実  進君

      二田 孝治君    町村 信孝君

      松岡 利勝君    石井  一君

      石田 勝之君    海江田万里君

      河村たかし君    古賀 一成君

      末松 義規君    田中 慶秋君

      達増 拓也君    中塚 一宏君

      中村 哲治君    長妻  昭君

      原口 一博君    樋高  剛君

      平岡 秀夫君    藤田 幸久君

      細川 律夫君    細野 豪志君

      吉田  治君    米澤  隆君

      遠藤 乙彦君    大口 善徳君

      斉藤 鉄夫君    谷口 隆義君

      佐々木憲昭君    照屋 寛徳君

十一月二十日

 笹川堯君が議院において、委員長に選任された。

平成十五年十一月二十五日(火曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 笹川  堯君

   理事 大野 功統君 理事 北村 直人君

   理事 杉浦 正健君 理事 園田 博之君

   理事 松岡 利勝君 理事 末松 義規君

   理事 原口 一博君 理事 細川 律夫君

   理事 谷口 隆義君

      安倍 晋三君    伊吹 文明君

      植竹 繁雄君    尾身 幸次君

      大島 理森君    倉田 雅年君

      小泉 龍司君    小杉  隆君

      鈴木 俊一君    滝   実君

      玉沢徳一郎君    中馬 弘毅君

      津島 雄二君    中山 成彬君

      丹羽 雄哉君    西川 京子君

      萩野 浩基君    蓮実  進君

      二田 孝治君    町村 信孝君

      井上 和雄君    石田 勝之君

      市村浩一郎君    岡田 克也君

      海江田万里君    河村たかし君

      菅  直人君    小泉 俊明君

      古賀 一成君    田中 慶秋君

      達増 拓也君    中塚 一宏君

      長妻  昭君    長浜 博行君

      樋高  剛君    平岡 秀夫君

      藤田 幸久君    細野 豪志君

      馬淵 澄夫君    前田 雄吉君

      山岡 賢次君    吉田  治君

      遠藤 乙彦君    大口 善徳君

      斉藤 鉄夫君    高木美智代君

      長沢 広明君    冬柴 鐵三君

      古屋 範子君    赤嶺 政賢君

      佐々木憲昭君    照屋 寛徳君

    …………………………………

   内閣総理大臣       小泉純一郎君

   総務大臣         麻生 太郎君

   法務大臣         野沢 太三君

   外務大臣         川口 順子君

   財務大臣         谷垣 禎一君

   文部科学大臣       河村 建夫君

   厚生労働大臣       坂口  力君

   農林水産大臣       亀井 善之君

   経済産業大臣       中川 昭一君

   国土交通大臣       石原 伸晃君

   環境大臣         小池百合子君

   国務大臣

   (内閣官房長官)

   (男女共同参画担当)   福田 康夫君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (青少年育成及び少子化対策担当)

   (食品安全担当)     小野 清子君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      石破  茂君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (個人情報保護担当)

   (科学技術政策担当)   茂木 敏充君

   国務大臣

   (金融担当)

   (経済財政政策担当)   竹中 平蔵君

   国務大臣

   (規制改革担当)

   (産業再生機構担当)   金子 一義君

   国務大臣

   (防災担当)       井上 喜一君

   内閣官房副長官      細田 博之君

   内閣府副大臣       伊藤 達也君

   内閣府副大臣       佐藤 剛男君

   防衛庁副長官       浜田 靖一君

   総務副大臣        田端 正広君

   総務副大臣        山口 俊一君

   法務副大臣        実川 幸夫君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   財務副大臣        山本 有二君

   文部科学副大臣      原田 義昭君

   厚生労働副大臣      森  英介君

   農林水産副大臣      金田 英行君

   経済産業副大臣      泉  信也君

   国土交通副大臣      林  幹雄君

   内閣府大臣政務官     西川 公也君

   内閣府大臣政務官     宮腰 光寛君

   防衛庁長官政務官     嘉数 知賢君

   総務大臣政務官      平沢 勝栄君

   総務大臣政務官      松本  純君

   法務大臣政務官      中野  清君

   外務大臣政務官      田中 和徳君

   外務大臣政務官      松宮  勲君

   財務大臣政務官      七条  明君

   文部科学大臣政務官    田村 憲久君

   文部科学大臣政務官    馳   浩君

   厚生労働大臣政務官    竹本 直一君

   経済産業大臣政務官    江田 康幸君

   経済産業大臣政務官    菅  義偉君

   国土交通大臣政務官    佐藤 茂樹君

   環境大臣政務官      砂田 圭佑君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    秋山  收君

   参考人

   (日本道路公団総裁)   近藤  剛君

   参考人

   (日本銀行総裁)     福井 俊彦君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十日

 辞任         補欠選任

  米澤  隆君     井上 和雄君

同月二十五日

 辞任         補欠選任

  蓮実  進君     安倍 晋三君

  石井  一君     小泉 俊明君

  海江田万里君     長浜 博行君

  河村たかし君     市村浩一郎君

  中村 哲治君     馬淵 澄夫君

  長妻  昭君     菅  直人君

  細野 豪志君     岡田 克也君

  斉藤 鉄夫君     冬柴 鐵三君

  佐々木憲昭君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  安倍 晋三君     蓮実  進君

  市村浩一郎君     前田 雄吉君

  岡田 克也君     細野 豪志君

  菅  直人君     山岡 賢次君

  小泉 俊明君     石井  一君

  長浜 博行君     海江田万里君

  馬淵 澄夫君     中村 哲治君

  冬柴 鐵三君     長沢 広明君

  赤嶺 政賢君     佐々木憲昭君

同日

 辞任         補欠選任

  前田 雄吉君     河村たかし君

  山岡 賢次君     長妻  昭君

  長沢 広明君     古屋 範子君

同日

 辞任         補欠選任

  古屋 範子君     高木美智代君

同日

 辞任         補欠選任

  高木美智代君     斉藤 鉄夫君

    ―――――――――――――

十一月二十五日

      大野 功統君    北村 直人君

      杉浦 正健君    園田 博之君

      松岡 利勝君    末松 義規君

      原口 一博君    細川 律夫君

      谷口 隆義君

 が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の互選

 国政調査承認要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 予算の実施状況に関する件




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     ――――◇―――――

笹川委員長 これより会議を開きます。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 このたび、院の命により予算委員会の委員長を命ぜられました笹川堯であります。

 委員会の進行につきましては、公平公正に行います。委員各位の御協力を心からお願い申し上げまして、ごあいさつにいたします。(拍手)

     ――――◇―――――

笹川委員長 これより理事の互選を行います。

 理事の員数は、議院運営委員会の決定の基準に従いその数を九名とし、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 それでは、理事に

      大野 功統君    北村 直人君

      杉浦 正健君    園田 博之君

      松岡 利勝君    末松 義規君

      原口 一博君    細川 律夫君

   及び 谷口 隆義君

を指名いたします。

     ――――◇―――――

笹川委員長 次に、国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。

 予算の実施状況に関する事項について、議長に対し、国政調査の承認を求めることとし、その手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

笹川委員長 予算の実施状況に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として日本道路公団総裁近藤剛君及び日本銀行総裁福井俊彦君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

笹川委員長 基本的質疑を行います。

 この際、委員長から一言お願いをいたします。

 質疑に際しまして、不規則発言等のないようにという御意見もございましたので、この点十分にお考えいただきながら、議事の進行を進めたいと存じております。

 それでは、質疑の申し出がありますので、順次これを許します。安倍晋三君。

安倍委員 自由民主党の安倍晋三でございます。

 今回の総選挙の結果を受けまして、十一月の十九日に召集をされました特別国会におきまして、首班指名選挙、大差で再び内閣総理大臣に指名をされました小泉首相に、今後どのようにリーダーシップを発揮され、そして総理はこの国の進むべき道をどのように考えておられるかについて質問をしたいというふうに思います。

 まず、今回の総選挙の結果を総理はどのように受けとめておられるかお伺いをしたい、このように思います。

 我々は、今回の総選挙、二年半の小泉改革の成果を問う選挙、そしてまた小泉構造改革路線を、国民の皆様にその是非を問う小泉構造改革選挙、こう位置づけたわけであります。一方、民主党は、この選挙を、政権選択の選挙、こう位置づけましてマニフェストを発表したということでございます。

 解散時の勢力におきまして、我々自由民主党そして連立与党と民主党との間には大きな差があったわけでありますが、あえて私たちはこの挑戦を受けて立ちました。政権公約を発表し、選挙戦を戦ったわけであります。

 そしてその結果、我々連立与党は、絶対安定多数であります二百六十九議席を大きく上回る議席を得たわけであります。また我々自由民主党も、この特別国会が始まるまでに、単独過半数である二百四十一議席に達したわけであり、また保守新党と合流し、我々の勢力は二百四十五議席、こうなったわけであります。この選挙の結果、国民の皆様は連立与党を選んだのか、あるいは民主党にこの国を託したのか、極めて結果は明白だ、このように思うわけであります。

 もちろん、我々自由民主党といたしましても反省すべき点は多々あるわけでありまして、真の改革推進政党に脱皮をしていくためにも、日々党の改革に努力をしていきたい、こう考えております。そのために、党に党改革の評価検証推進委員会を設置し、これからも党の改革に努めていきたい、こう思っております。

 そこで、小泉総理に、今回の総選挙の結果をどのように受けとめておられるかお伺いをしたい、このように思います。

小泉内閣総理大臣 今回の選挙の大きな争点は、政権選択を問う選挙だと思いました。自民党中心の政権がいいのか民主党中心の政権がいいのか、いわゆる政権交代是か非か、これを問う選挙だったと思います。

 結果は、おかげさまで、自民党が目標としておりました単独で過半数の議席を確保することができました。また、自民党、公明党、保守新党、三党の安定多数のもとで今まで進めてきた改革を進めていきたいということを我々は訴えてきたわけでございますが、これにつきましても、三党で絶対安定多数の議席を確保することができました。

 保守新党も自民党と合流いたしまして、いわば自由民主党と公明党、合わせて安定多数の議席を確保することができました。国民から信任を受けたと受けとめておりまして、これからも、今まで進めてきた改革に芽が出てきた、この芽を大きな木に育てていくというのが我々に与えられた責任だと思っておりまして、国民の賢明な判断に感謝しております。今後とも、国民のこの大きな支持のもとに自信を持って改革を進めていきたいと思っております。

安倍委員 ただいま総理がおっしゃっていたように、この選挙の結果は、私どものこの改革の成果に対して評価を与えていただいた、このように私は受けとめております。

 確かに改革は前進をしております。政府、行政における効率化は進んでいるわけでありますし、また、経済・産業界の構造改革が進み、競争力は向上しているわけであります。それが証拠に、十月の三十日に発表されました世界競争力ランキングにおいて、二〇〇一年に二十一位であった我が国は、この小泉構造改革によって、二〇〇三年、十一位に競争力を向上させたわけであります。二年以内に、私は、必ずベストファイブにカムバックできるのではないか、このように確信をいたしております。

 国民の皆様にこの構造改革の必要性は御理解をいただいている、そして各分野で大変な努力をしていただいて、その成果がだんだん出てきている、このように思うわけであります。

 しかし、我々が目指しているこの聖域なき構造改革、これに取り組んでいるわけでありますが、この聖域なき構造改革をなし遂げた先に、ただ単に物質的に豊かな国、また競争力だけが強い国をつくろうとしているわけでは決してないわけであります。

 我々はかつて、ある種の繁栄のきわみであったバブル経済を経験し、またそのはかなさも知っているわけであります。今一生懸命我々が頑張って、そしてこの改革をなし遂げた先にどのような国家をつくろうとしているのか。小泉総理が考えておられます国家像について、そのエッセンスについて、国民の皆様に語りかけていただきたい、このように思います。

小泉内閣総理大臣 まず、国家の発展の原動力は人だと思います。それぞれの人が努力して、その努力が報われるような社会を築いていく、そのために新しい時代の変化に対応できるような体制を整えていくというのが政治として大事な役割だと思っております。いわば人の意欲、やる気をいかに発揮させていくか。また、人間個人の持てる力をどのように高めていくか。同時に、企業の意欲というものを、企業がみずからの努力で発展できるように、そしてまた国民に多様なサービス、いい商品を提供できるような環境を整えていくこと。同時に、地方におきましても、地方にはそれぞれの個性があります、地域の特性があります、特色があります。その特色を生かせるように、地域おこしは国おこしという観点で、全体の意欲を発揮できる。

 さらには、個人でも、企業でも、地域でも、国家全体でも、持っている可能性といいますか、潜在力をいかに発揮できる環境を整えていくかということが政治で極めて大事なことだと思います。特に、人間、人材、人間力、これをいかに向上させていくか。古今東西、私は、天はみずから助くる者を助くということがあります。みずから自分を助けるという意欲を持ってもらう。同時に、足らざるところはお互い社会が助け合っていく。さらに、ともに、お互い足らざるところを補い合って、助け合っていこうという、自助、公助、共助。

 そして、日本の国家をどのように繁栄させていくか。お互いの権利と義務というものを両面を考えながら、基本的人権、それをお互いがどのようによりよきものにしていくか。平和をどのように守っていくか、独立、安全保障をどのように守っていくか。そういう中で、いろいろな政策を展開していかなきゃならない。いわば総合的に国民の持っている潜在力、可能性をいかに高めていく改革をしていくか、これが政治として極めて大事なことだと思っております。

安倍委員 我が党は、あと二年で結党五十年を迎えるわけであります。誕生してはすぐ消えていく政党とはここが違うわけでありますが、その中で、今、総理に国家像についてお示しをいただいたわけでありますが、我々自由民主党におきましても、この結党五十年を前に、我が国のあるべき姿、また、さらなる五十年、我が党がどういう理念を持っていくべきかについて、しっかりと議論をしてまいりたい、そのための結党五十年プロジェクトを立ち上げていきたい、こう考えております。

 その中で、我々は、この結党五十年までに新しい憲法草案をまとめる、そう選挙でお約束をしているわけであります。

 私は、三つの理由で憲法を改正するべきである、こう考えております。

 一つは、やはり現行憲法の制定過程でございます。占領軍であるGHQの一部の人たちが短期間に書き上げたのが、この現行憲法であります。結果がよければ、中身がよければいいという議論もあるわけでありますが、やはり国の基本法でございますから、その成立過程を問題にせざるを得ない、こう思っております。

 また、二つ目は、この憲法ができてもう既に半世紀以上が経過をしております。昭和から平成へ、そして二十世紀から二十一世紀へと時が移ったわけでありまして、時代に適合できない条文もあるわけであります。その意味からもやはり憲法を改正するべきである、こう考えております。

 そして、三つ目は、新しい時代に向かって私たちの手で新しい憲法をつくっていこうという、この創造的な精神がまさに新しい時代を切り開いていくことにつながっていく、このように思います。そういう気分がみなぎってくることも、私は、極めてこの国の改革をしていく上で重要である、このように考えております。

 そこで、総理に、憲法改正についてお考えをお伺いしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 二〇〇五年に自由民主党結党五十周年を迎えます。このときに、結党五十年、この機会に自由民主党として憲法草案、新しい自主憲法をどのようにつくっていくべきかという案をまとめてみたいと思っております。

 この点につきましては、これから党としても本格的に調査会で議論が進んでいくと思いますし、国会においても、衆議院、参議院、両院において憲法調査会が設置されて、これまでも熱心な議論が展開されてまいりました。極めて広範囲にわたって今まで議論もされておりますので、自由民主党として、結党五十年を機に、あと二年ほどありますので、この二年間に、議論だけでなくて、まとめの段階に入って、そして一つの案を政党として国民に提示しよう、そういうことによって各党も、自民党はこういうことを考えているんだったら自分の党はこう考えている、案を出してくるでしょう。同時に、国民も、具体的な条項まで自民党がこう考えているんだったら、自分たちはこう思うといういろいろな議論が出てくると思います。そういうことによって、新しい時代の憲法はどうあるべきかという国民的な議論が起こることを期待しております。

 もとより自民党単独で憲法改正ができるものではありません。各方面、各政党の意見を聞きながら、よりよい憲法をつくっていくべきではないかというふうに私は考えておりますので、結党五十年の機会に、政党として、自民党として案をはっきり国民に示すことは極めて有意義だと思っております。

安倍委員 この選挙において、よく総理は、改革に熱中する余り、景気や経済またデフレ克服には興味がないのではないか、こういう批判もあったわけでありますが、しかし「改革と展望」の中で、来年度、我が国は名目経済成長をプラスにする、そして再来年度、デフレから脱却、そしてさらに、その次の年には名目経済成長を二%以上にするというしっかりとした目標を立てているわけであります。

 総理が非常に重要視をしておられます財政の健全化を図るためには、景気を回復し、そしてまたデフレの克服がどうしても必要であります。そして、さらには、二〇一〇年の初頭にプライマリーバランスを黒字化する、その目標も「改革と展望」の中にしっかりと書いてあるわけであります。そのプロセスについて御説明をいただきたいと思います。竹中大臣、お願いします。

竹中国務大臣 御指摘のように、「改革と展望」において、二〇〇六年には実質でも相当の高い成長率、二%を上回るような成長率、そして名目でもそれに匹敵するような成長率を実現するという明示的なシナリオをこの「改革と展望」の中で示しております。

 そこに至るシナリオということでありますが、名目成長率を二%強にするという限りは、やはり実質成長率をできれば二%程度十分に保つ、同時に、物価上昇率もプラスに、これをあわせて実現しなければいけないということになろうかと思います。

 実質成長率に関しては、御承知のように、ことしの第二・四半期三・五%の成長、第三・四半期は二・二%の成長ということで、まさに総理がおっしゃったように、改革の芽が出つつあって、実質成長率についてのその芽は私は確実に出ているというふうに思っております。

 しかしながら、物価の緩やかな下落というのは残念ながら続いております。この物価の緩やかな下落、GDPデフレーターの下落というのは既に八年ぐらい前からもう日本を覆っている問題でありまして、これを解決するのは容易ではありませんが、我々としては、それを実現するためには、やはり貨幣が増加する、マネーサプライが増加するような状況をどうしてもつくっていかなければいけない。

 しからば、そのために何が必要かというと、これは二つのことが必要であって、一つは、まさに政府が構造改革を通して経済を活性化させながら、具体的には、マネーが、銀行部門がリスクをとれるような状況、より具体的に言いますと、不良債権の低下を目指していかなければいけない。これも私たちの認識では、徐々に軌道に乗りつつあるというふうに思っております。

 加えて、日本銀行においては、具体的にマネーが増加するようなさまざまな新たな仕組みをいろいろ工夫していただかなければいけない。その点が、政府、日銀一体となったというその努力の目標になっているわけであります。

 繰り返しますが、実質成長率は徐々に回復しつつあります。残る不良債権の処理と、結果的にマネーサプライがふえるような状況を政府、日銀一体となってぜひつくっていきたいというふうに思っております。

安倍委員 今回の選挙戦の最中、総理は日本各地を飛び回られたのではないか、このように思います。ただいま竹中大臣の御説明のとおり、確かに日本全体としては景気を回復しつつあるわけでありますが、地方は大変厳しい状況にあるのは事実であります。中小企業もそうであります。

 その中で、政府は地域再生本部を立ち上げ、総理が本部長になり、そして、金子大臣が担当大臣となったわけであります。やはり、地方の皆さんが将来に希望が持てる、夢を持てるような国家をつくっていかなければいけないわけでありますし、大都市のみが栄えていく、いびつな日本になってしまったのであれば、もはや美しい日本とは言えないわけであります。

 この地域再生本部においてどのように地方を活性化しようとしているのか、今までの地方活性化策とどのように違うのか、御答弁をいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 後ほど金子担当大臣からも答弁があると思いますが、私は東京だけの都市再生を考えているわけではございません。就任当初から地域再生の重要性を指摘しておりましたし、稚内から石垣までということを、機会あるごとに都市再生で重要だということを言っているわけであります。現に、稚内でも石垣でも、その地域の特色を生かした地域おこしが始まっております。

 さらに、各地区におきまして、それぞれの特色をどのように生かしていこうかということで特区構想も出ております。全国的に規制の改革が無理ならば、その地域に限って規制改革をしようじゃないかということで、これは財政支援が必要なくても発展の余地はあるんだということで、地域が手を挙げてまいりました。既に、その手を挙げてきた中にも、多くの地域においてその構想どおりにいろいろな改革が進んで、みずからの地域おこしに取り組み始めました。

 地域におきましては、規制改革の点におきましても、あるいは、今後、人が気づかなかった、自分たちで地域おこしを考えていこうということで、あるところにおいては、歴史的なたたずまいを生かした地域づくりをしていかなきゃならないと。規制改革というのは規制緩和ばかりではありません。逆においては規制を強化しなきゃならない地域もあるでしょう。それぞれの地域が考えることであります。

 そういう点については、私は今回、地域においては、今まで、大分県では一村一品運動というのがありましたけれども、そういうことをもっと一地域一観光ということにつなげていくこともいいことじゃないかということで、眠っている観光資源というものにも目を向けて、もっと地域おこしに資する点はないものかと。日本人がその地域を訪れるだけではない、外国人にとっても、もっと来てもらいたいという取り組みも各地域で進んでおります。

 こういう点は私は地域の再生に極めて有効だと思っておりますので、この取り組みを今後も積極的に支援をしていきたい、それがひいては地域再生につながっていくものではないかと思っております。

金子国務大臣 今小泉総理からお話がありましたように、地域にそれぞれ大変な潜在能力を持っている、その潜在能力をもっと顕在化させていきたいというのが基本的な考え方であります。

 そういう意味で、今観光の例を総理がお話しになりましたけれども、観光のみならず、産業、技術、農業でも林業面でもいろいろなアイデアが地方から出てきております。そういったものを、今までは規制改革、構造改革特区ということで進めてまいりましたけれども、今度、再生本部では、これに加えまして権限移譲というのも入れていきたい。

 そして、あと、既に各省庁が予算のメニューを持っておりますけれども、今度は地域再生という観点からそういう予算をもう一遍見直して、そして地域がそれぞれいろいろなアイデアを持ってこられる、もう既に出てきておりますけれども、そういったものが実現できるような措置も講じてまいりたいと思っております。

安倍委員 続きまして、外交問題についてお伺いをしたいというふうに思います。

 まず、北朝鮮の問題でありますが、報道によりますと、十二月の十七日に六者協議が開催をされる、このように報道されております。この六者協議を通して、北朝鮮をめぐるすべての問題を解決すべく努力をしていただきたい、このように思います。

 その中で、北朝鮮は、拉致の問題をこの六者協議では話したくないということで、日本に対して、なるべくこの拉致の問題を六者協議のテーブルでは取り上げるべきではないとの意見があるやに聞いているわけでありますが、しかし、この六者協議の場で、しっかりと我が国の問題である拉致問題を取り上げることは極めて重要であります。そうでなければ、核の問題、北朝鮮に核開発をやめさせる、そして、核の開発を廃棄させるというプログラムだけが進んでいって、拉致の問題が横に置かれる危険性があるわけであります。

 その点について、総理のお考えをお伺いしたいというふうに思います。

 あわせて、日米首脳会談におきまして、対話と圧力という姿勢で北朝鮮の問題を解決していく、その中で、もし北朝鮮がさらに状況を悪化させるようであれば、さらなる追加的な処置をとるということで一致をしているわけであります。

 この追加的な処置の中には経済制裁の問題もある、こう思います。拉致の問題について、もし状況を悪化させたときには、これは、拉致の問題は我が国の問題でありますから、我が国独自の経済制裁を発動できるようにしておくべきではないか、このように思います。

 我が党におきまして、そのための外為法、また外国貿易法の改正案、既に党内手続を終えているわけであります。これは議員立法でございますから政府の総理がコメントする問題ではないわけでありますが、この経済制裁について、選択肢をふやしておくことは必要であると思います。

 それについての総理のお考え、御感想をあわせてお伺いしたい、このように思います。

小泉内閣総理大臣 六者協議はまだ日程は決まっておりません。

 この六者協議におきましては、第一回会合のいろいろな状況を踏まえながら、いかにこの場を活用していくかという点が重要だと思っております。北朝鮮と日本との二国間の問題、当然ありますが、六者協議の場においても、日本の立場としてはこう考えているんだということは、やはりはっきり主張していく必要があると思っております。

 また、経済制裁につきましては、現時点では日本政府としては考えておりませんが、この状況をさらに悪化させるというような事態が来るならば、今後検討しなきゃならないかなと考えておりますし、今、外為法等の問題について自民党の中でもいろいろ議論がされております。これから対話と圧力という面から北朝鮮に対して働きかけていくということを考えますと、いろいろな選択肢を持つということはいいことだと思っておりますし、十分検討していかなきゃならない問題だと考えております。

安倍委員 そうした法案をつくるということは、まさに選択肢をふやしておくということにつながるわけでありますから、これによって政府の外交力も私は当然強まっていく、このように思います。その意味におきまして、来るべき通常国会においてこの法案の成立を図りたい、このように考えております。

 続きまして、イラクの問題について御質問を申し上げたい、こう思います。

 今、世界は、イラク人のイラク人のための政府をつくる、その産みの苦しみを味わっているわけであります。しかし、国際社会は、イラクを平和で、そして民主的な、自由なイラクにしていくために努力をしていく、その目標に向かって今頑張っているわけであります。その中で我が国も、イラク特措法を成立させる、この復興支援を行っていくという決意を示したわけであります。

 ただ、このイラク特措法におきましては、自衛隊、他の国の軍隊とは違い、特別な制約もあるわけであります。ですから、当然、自衛隊を派遣する場所また時等、そして業務内容は選ばなければならないわけでありますが、大切なことは、決してテロに屈してはいけないということであります。テロに屈するということは、結局、テロリストがその目的を達成するということにほかならないわけでありまして、その結果、まさにこの中東地域は大変な混乱の世界になってしまうわけであります。

 我々は決して、対米支援、対米協力のために自衛隊を派遣しよう、また復興支援をしようとしているわけではないわけでありまして、まさに世界の、国際社会の目的として、このイラクを自由で繁栄したイラク人の国にしていく、そのために頑張っていこうという中で、我が国もその役割を、責任を果たしていくということであります。

 そしてまた、このイラクを含む中東に我々はエネルギーの多くを頼っているわけであります。この地域が平和で安定をしているということは、まさに我が国の国益に資するわけであります。まさに私は大義名分がある、このように思います。

 その中で、今確かにイラク情勢は大変厳しいわけでありますが、この自衛隊の派遣をどのように総理は考えておられるか、お伺いをしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 イラクの復興支援、イラク人の政府を早くつくるということ、そしてイラクに安定した民主的な政権を誕生させるということに対して、日本としても努力していくべきだと私は思っております。

 対米支援も重要であります。国際社会とともに協力していくことも重要であります。また、日本の国益の観点からどのように支援を進めていくかということも重要であります。自衛隊の派遣も、必要であれば派遣しなきゃならないという点も極めて重要な問題であります。資金的な協力、人的支援、そういう点について日本としてできるだけのことをして、早くイラクが安定した民主的な政権を樹立することができるように日本としても汗をかいていこう、また国際社会で責任を、責任ある国家として役割を果たしていこうという視点が極めて重要なことだと考えております。

安倍委員 総理におかれましては、この総選挙の結果を踏まえ、自信を持ってリーダーシップを今後とも発揮をされ、構造改革、さらに強い外交を推進していただきたい、このように思います。

 これで質問を終わります。どうもありがとうございました。

笹川委員長 これにて安倍君の質疑は終了いたしました。

 次に、冬柴鐵三君。

冬柴委員 公明党の冬柴鐵三でございます。

 第二次小泉内閣出発、自公連立でこれからしっかりと国民の負託にこたえてまいりたい、このように思います。

 きょうは、国民の関心の高い、そしてまた早急に結論を得なければならない公的年金の問題を中心にお尋ねをしていきたい、このように思います。

 我が国は、有史以来、人類がかつて経験をしたことのないスピードで少子高齢社会へ傾斜を強めております。合計特殊出生率、これが一・三二ということ、これは大変な問題でございまして、三組の夫婦、六人の大人、三人のお父さんと三人のお母さんから、日本国じゅう押しなべて四人しか子供が生まれていない、こういう問題でございます。

 一世代を二十年から二十五年と仮定いたしますと、二十年から二十五年すると、六人が四人になる、三分の一も減る、しかも、その減る年代が若年層である、これは大変な問題だと思います。

 また、男性は七十八歳、そしてまた女性は八十五歳、この平均寿命というものは世界最長寿国でございます。

 このように、我々は、人類がかつて経験したことのない少子高齢社会というものを迎えているわけでございますが、戦前は、長子が家産を相続し、そして年老いれば長男夫婦とその孫たちに囲まれて平穏な生活を営むというのが、日本の習俗というか、普通の形であったように思いますが、現在は、一人っ子ということが原則になってまいりますと、その一人っ子が一緒に住んでくれるかというと、また結婚すれば別居、すなわち核家族化が待っているわけでございます。核家族化で別居したその子供たちが長い老後を迎えている父や母たちを扶養するということは、ほとんど不可能でありましょう。

 かといって、では、若いときに自分の高齢期をどう過ごすかということで蓄えを残すということ、これができるのも、ごく恵まれた一握りの人を除き、国民の大多数の大衆は、働いた報酬というものを将来のために残していくということもこれまた今不可能ではないか、こんなふうに思います。

 このように考えてきたときに、私は、一番大事なことは、公的年金というものをきちっと整備する、これが一番大事になってくる。これは、ただに今高齢期を迎えている人だけの問題ではなしに、必ず高齢期を迎える今の若年の人にとっても、自分の将来の生涯設計というものを考える上において非常に大事な問題、すなわち、国民全体が考え、解決をしなきゃならない、国民全体が協力をしてこういうものを構築していかなければならない、私はそのように考えるわけでございます。

 そのような意味で、持続可能な安心できる公的年金を構築するということは、今や未曾有の少子高齢化社会を迎えている日本政治に課せられた最大の問題ではないのか、これを解決せずして国民の不安というものを取り除くことはできぬのではないか、私はこんなふうに思うわけでございます。

 この問題について、厚生労働省は一つの案を発表されました。そこで私は、順次、厚生労働大臣にその考えなり思想をお尋ねしていきたいと思います。

 まず、第一には、厚生年金の部分で結構ですが、給付水準をどのようにお考えなのか、これについて厚生労働大臣から御説明をいただきたい、こんなふうに思います。

坂口国務大臣 ただいまお話がございましたとおり、少子高齢社会を迎えまして、その中で、負担と給付をバランスのとれたものにどうしていくかということは、大変大きな課題でございます。

 その中で、今御指摘のありましたように、負担の方、そして給付の方、両方ございますけれども、給付についてのお話でございますが、厚生労働省として出しました案は、負担の方につきましては二〇%を上限とし、そして給付の方につきましては五〇%を下限にするという案を発表させていただいたところでございまして、これに対しまして、いろいろの団体、そしてまた与党間でいろいろと御議論をいただいているところでございまして、そしてそれらの意見に従っていきたいというふうに思っております。

冬柴委員 公的年金が、先ほどるる述べましたように、高齢者の生活の基本的な部分を支えるものとして国民生活にとって不可欠なものである、このようなことを考えたときに、私は、やはり現役世代が平均的にいただいている手取り額、それの半分は保障するべきではないのか。すなわち、厚生労働大臣が今五〇%は下回ることがないということが必要だと考えていることを述べられましたが、それは普通の国民が考えることではないのか、私もそのように、それを支持するものでございます。

 公明党も、そのような考え方、五〇%ないし五〇%台の半ばということを言っておりますし、また、野党第一党の民主党も五〇%から五五%ということをおっしゃっているわけでございます。野党第一党である民主党は、追加したマニフェストの中で、五〇%から五五%が必要であるということを述べていられると思います。

 そこで、総理にお尋ねいたしますが、十月の二十八日、すなわち衆議院の公示の日ですけれども、NHKの報道番組に出演されました。そこで、給付水準についてはやはり五〇%程度でしょうねと、このように述べていられるわけでございますが、その根拠となった思想を、今厚生労働大臣が言われたような、あるいは私が言っているような、そういう思想的根拠に基づいておっしゃったのかどうか、そこら辺についてお尋ねいたします。

小泉内閣総理大臣 給付は多ければ多いほどいいというのは、年金もらう人の立場から見れば当然だと思いますが、やはり負担する人のことも考えなきゃいかぬということだと思います。

 そういうことで、具体的に、厚生労働省等では五〇%という考えが出てまいりました。今後調整しなきゃなりませんが、私は、五〇%程度が、各党各会派、そういう点がお互いの意見の集約できる程度だなと。

 だから、別に私は五〇%が下限とか上限とか言っていません。五〇%を基準にして、程度ですから、その点の前後は今後各党間の調整次第ではないかなと。また、国民の、各方面の意見を聞いて、五〇%程度にした場合に、それじゃ保険料負担はどうするのかという点も出てまいりますので、総合的に考えていく必要があると思っております。

冬柴委員 厚生労働大臣に、ちょっと細かい話ですけれども、私は、今回の選挙でずっと回っておりまして、高齢者の方ともいろいろと話し合う機会がありましたが、一番関心が高いのは、既裁定年金、すなわち今いただいている年金の額というものを、これは実質下げない、下げてもらっちゃ困るよ、こういうことがたくさんの方に言われました。

 そこで、厚生労働大臣にお尋ねしますけれども、実質的に厚生労働省の案ではこれは下げないというふうに私は読んでいるんですが、それでいいのかどうか、それを。

坂口国務大臣 既裁定の年金につきましては、名目額としては下げないということにいたしております。

冬柴委員 これは高齢者の方々にとって、テレビで見ていられる高齢者の方は安心されただろうと思います。

 そこで、年金の保険料率について次に説明をいただきたいと思います。

 先ほどもちょっとお触れにはなりましたけれども、後に基礎年金部分への国庫負担割合を二分の一に引き上げるということは、これはもう法律で決めているわけですが、引き上げた結果で結構です、厚生年金部分についてのこの保険料率、これについて御説明を賜りたいと思います。

坂口国務大臣 保険料につきましては、これは個人負担の分、それから企業が負担をいたします分、両方ございますけれども、フィフティー・フィフティーといたしまして、合計で二〇%以下という案を厚生労働省としては出しているわけでございます。したがいまして、個人の立場からいたしますと一〇%以下ということになるわけでございまして、そうした案を提示させていただいているところでございます。

冬柴委員 一〇%と一〇%、折半ですね、二〇%。この厚生労働省案を私読ませていただいたんですけれども、これは直ちに来年やるわけではありません。二〇〇四年から始めて二〇二二年まで十八年間かけて二〇%まで、そして二〇%となればそこで打ちどめというふうに書かれてあったと思うんですが、そういう理解でいいですか。

坂口国務大臣 二〇二二年、したがいまして来年から何年になりますか、約二十年になりますか、かかりまして徐々に引き上げていきまして、そして二二年に上限二〇%以下にする、こういう案を厚生労働省の案は定めているわけでございます。

冬柴委員 これについては相当、閣僚の中でも高いという話がこれは聞こえています。それで、財界からも随分話があることはわかりますが、私は、フランスで現在行われている年金保険料率、これは二一%もう行われている。しかも、これは労使折半ではなしに三分の二と三分の一、使用者の方が六八%を負担し、そして被用者の方は三二%を負担している。もちろん、こういうものは国家が抱えている国債残高、債務とかあるいは労働生産性とかいうようなもの、いろいろなものがありますけれども、しかし、そういう外国の例があるというふうな認識があるわけでございますが、この点についてはそれでいいんでしょうか。あるいはもう少しほかに例があれば、それも挙げていただきたいと思います。

坂口国務大臣 今お話ございましたとおり、フランスは二一・八五%ぐらい現在負担をいたしておりますが、その中で約七〇%、企業負担になっております。しかし、これは、現在の税制とりわけ法人税制等との絡みもございますし、その他、御指摘にありましたような労働生産性の問題もございますし、全体的な、いわゆる社会構造とかかわっている問題だというふうに思っております。

 フランスがそういう高い率を出しておりますのは、それはやはりそれなりの国づくりと申しますか、少子高齢社会に耐え得るような国づくりをしているということの一つの証拠ではないかというふうに思っております。

冬柴委員 では、総理に、同じ番組でこの点についても論及されました。個人負担は、給料の一〇%がサラリーマンにとっては限界じゃないでしょうかというふうなことを言われているわけでございますが、この点についても総理からのお話を聞きたいと思います。

小泉内閣総理大臣 今一〇%、個人一〇%、企業一〇%、合わせて二〇%という案も出ておりますが、これは、それぞれ負担が重過ぎるという意見も各方面から出ております。

 私は、選挙中でしたか、その公開番組で、負担の限度は個人としては一〇%が上限ではないかなというふうに話したと思います。今後、一〇%がいいという方と重過ぎるという方がありますので、この点も給付とあわせて考えていくべき問題ではないかなと思っております。

冬柴委員 私は、総理が、もちろん五〇%程度とか、一〇%が上限とかいう言葉で述べられているわけですけれども、もう結論はあと一カ月以内ぐらいに出さなきゃならない話です。そして、これについては多くの国民が、いろいろな利害が絡んで、私冒頭申し上げましたように、何としても持続可能でそして安心できる、こういうものをつくり上げなきゃいけない、これは政治の課題です。

 その中にあって、総理がそのようにリーダーシップを発揮しておられる、私はすばらしいことだと思うんですよ。ですから、私はこういうリーダーシップ、五〇なり一〇%という言葉は非常に重いものであるし、そしてまた私は、選挙というようなものの中で言われたことについて、国民は一つの期待をしておられると思うわけでございます。

 そういう意味で、年金関係で最後になりますけれども、基礎年金の国庫負担割合は二分の一に引き上げるということが平成十二年の改正のときには明記されているわけでございます。平成十六年、これはもう来年でございます。そのときに当たって、二分の一に引き上げるためには二兆七千億円という巨額の財源が必要になってくるわけでございますが、その点について、政府なかんずく財務省はこれまでどのような検討をされてきたのか。

 また、我々はマニフェストの中で、年金課税を創設して二千億円をしよう。それからもう一つは、小渕内閣のときに、制度改正ではない、景気がよくなれば廃止するということを前提に定率減税というものを導入されました。私は、そういうものを時間をかけて廃止していくことによって、これは国、地方の関係もありますけれども、そこから二兆五千億を捻出して、そして、合計二兆七千億を手当てして、我々は二〇〇八年から二分の一を入れようということを具体的に提案しているわけです。ほかの党ではないんじゃないですか、そういうことを具体的に言っているのは。そういう意味で、これについての感想も聞かせていただきたい。

谷垣国務大臣 今冬柴委員おっしゃいましたように、平成十二年度の改正の附則で、給付と負担の関係それから財政方式を見直して、そして安定的な財源を講ずるものとするということになっておりまして、先ほど委員がおやりになったような議論、今経済財政諮問会議で激しくやっていただいておりまして、給付の前提となる負担のあり方、それから財政負担のあり方として不効率なところがないか等々議論しながら、財源はどこに求めるべきか、今議論を続けているところでございます。

 いずれにせよ、安定的な財源ができませんと持続可能なものという安心につながりませんので、その意味で、公明党が出していただいた案は極めて真摯に問題に取り組んでいただいたことではないかと思っております。

 ただ、今おっしゃった定率減税につきましては、広く勤労者負担の問題と結びついてまいりますので、これは国民的な議論をやっていかなきゃいけないんじゃないか、こう思いますのと、それから、年金課税の問題に関しては、世代間あるいは世代内の公平という観点から見直すべきだという議論、今までも政府税調の中でもございました。

 そういう議論もあわせて、先ほどのいろいろな給付、負担見直し等にあわせてさらに詰めてまいりたい、こう思っております。

冬柴委員 もう答弁は要りませんが、今、対北朝鮮との関係では大きな問題がありまして、とりわけ拉致の問題につきましては、先ほどの安倍幹事長の質問にもあったとおり、これは本当に何をさておいても優先して解決しなきゃならない問題だというふうに認識をしておりますが、ただ、北朝鮮に集団帰還した人たちがいるわけで、日本国籍を持っているわけですね。この人たちが里帰りができない。千九百人にも及ぶ人たちが、本当に二十年、三十年、四十年慟哭をしておられるわけです。こういうことがある。

 ぜひ、政府全体でこの問題も、帰りたい人については帰らせるような人道問題の措置をとっていただきたい。このようなことを申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

笹川委員長 この際、谷口隆義君から関連質疑の申し出があります。冬柴君の持ち時間の範囲内でこれを許します。谷口隆義君。

谷口委員 公明党の谷口隆義でございます。

 今回の衆議院選挙、総理、大変御苦労さまでございました。

 今回の選挙、二大政党論、二大政党選挙、このように言われたわけでございます。

 当初は、自公保の連立政権対民主党を中心とする政権、どちらを選択する選挙か、こういうことが最大の争点であろうというように思っておったわけでありますけれども、マスメディアを中心としまして、自民党と民主党とどちらがいいのか、こういうことが喧伝されまして、非常にあおり立てられた議論が、また報道が多かったわけでございます。

 私も小選挙区で出まして、今回公明党は、三十一から三十四、議席は増加をさせていただいたわけでありますけれども、私の選挙でも大変やはり厳しい状況であったわけでございます。

 そこで、本日はこの二大政党論について若干お伺いをいたしたい、御所見をお伺いいたしたい、このようにも思う次第でございます。

 今回、この二大政党論といいますと、英国また米国のことが必ず出てまいるわけでございます。

 米国におきましては、南北戦争以前に、南部の代表として、州権主義を標榜する民主党、また、北部の代表としまして、連邦主義を標榜しておる共和党、このような歴史的な対立構造があったわけであります。また、英国におきましても、産業革命以降、資本家階層を代表するところの保守党、また労働者階層を、この声を代表する労働党、このような選挙構造、対立構造があったわけであります。

 これは、そもそも国内の基盤、また社会的な伝統、また政治的な土壌、こういうような観点で、この米国、英国の二大政党論というのはまいったわけでございます。

 果たして、我が国の今回のこの二大政党論はそういう立場に立ったものであろうか、こういう疑問を私は大きく持つところでございます。そのような歴史的な対立構造、社会的な基盤、また政治的な土壌があったのかどうか、こういうことでございます。

 また、最近のアメリカまたイギリスの状況を見ておりますと、変化が見えております。

 アメリカにおきましては、御存じのとおり大変多民族国家でございまして、この多民族国家の中で果たして二つの政党でしかない、選択肢がないということが果たしていいのかどうか、このようなことが言われており、これは民主主義の硬直化ではないか、このような声が強くなっておると聞いております。

 また、イギリスにおきましても、第三党に、日本の自由民主党と同じ名前ですけれども、自由民主党というのがございまして、これが、下院の議席数が六百五十九議席のうち、五十二議席今持っているんですね。非常に存在感のある第三党なんでありますけれども、この政党が、総得票率の一五%から二〇%をとったときに、議席数が十数議席しかとれなかった、このようなことがあったわけでございまして、単純小選挙区制というのは果たして多様な民意を反映できるのかどうか、こういう議論が非常に高まっておるわけでございます。今、イギリスの中ではそのような比例代表制を導入すべしというような意見もある、このように聞いておるわけでございます。

 今、そのような状況の中で、今回の選挙、先ほど申し上げましたように、政治的な土壌、また国内の基盤、このようなことにさらにつけ加えまして、今回の二大政党論、果たしてその政策に大きな違いがあったのかどうか。このようなこと等々を考えますと、従来から言われておる二大政党論と違うのではないか、このような疑問を持たざるを得ないわけでございまして、このような結果、二大政党論が不可欠なのか、またすべてがうまくいくのかというような議論に対しては、大きな疑問を持つところでございます。

 こういうような状況の中で今回の選挙があったわけでありますけれども、総理、若干このことについて御所見をお伺いいたしたいというように思う次第でございます。

小泉内閣総理大臣 制度に完璧な制度はないと思います。それぞれ長所もあれば短所もある。

 今回、二大政党論がかなり喧伝されましたが、自由民主党、民主党はともかく、そうでない政党にとっては余り歓迎すべき議論ではないということは私も理解できます。各政党それぞれ自分の勢力拡張を目指して選挙を戦うわけでありますので、公明党は公明党なりに、やはり二大政党論に埋没されない独自の主張を展開されて、それ相当の支持を得られたんだと思います。

 これからもこの小選挙区制度が続く限りは、私は、大きな政党が二つ、勢力を拡張していく、さらには、国民にとってどちらの大きな政党に政権を担当させるべきかという視点は今後も大きくなっていくと思います。

 そういう中で、必ずしも一党が単独過半数とれるとは、その選挙によっては限りませんから、そういう場合には、その他の政党と連立を組まなきゃなりません。

 そういうことを考えますと、私は、現在の日本の制度において、小選挙区だけではありません、比例代表制がありますので、二大政党だけで続くとは思っておりません。当然、第三党、第四党の存在が重視されてまいりますし、一党で単独過半数得られない場合は、さらにどの政党と組むかということによって大きく左右されますので、今後とも第三党なり、第四党なりの役割は十分あるのではないかと私は思っております。

谷口委員 この二大政党論というのはむしろ例外でございまして、ヨーロッパの各国においては今多党制が主流でございます。それで、連立内閣が一般的であるわけでございまして、そういう観点でいいますと、私は、死に票を少なくして国民の多様な民意をいかに拾い上げるか、こういう観点も非常に重要なポイントだというように考えておるわけでございます。

 この二大政党論についてはその程度で終えたいというように思いますけれども、時間がほぼまいりましたので、最後にちょっと私申し上げたいんですけれども、今、アジアにおきましてアジア債券市場の育成ということを、アジア債券市場育成イニシアチブというものを言って、アジア域内の経済の活性化を訴えております。

 これもぜひ、谷垣財務大臣、今後も継続して、アジアの成長は日本の成長に結びつくんだという観点でやっていただきたいというように申し上げまして、終わらせていただきます。

笹川委員長 これにて冬柴君、谷口君の質疑は終了いたしました。

 次に、菅直人君。

菅(直)委員 総選挙が終わりました。今回の総選挙で、私たち民主党は二千二百万人を超える国民の皆さんに比例では投票いただき、第一党という形になりました。また、比例、小選挙区合わせて百七十七名が当選をいたしまして、衆議院における定数の三七%を占める二大政党の一方の柱という立場になりました。まず、私たち民主党に御支援をいただいた国民の皆さんに心からお礼を申し上げたい、このように思っております。

 その上で、目標といたしました政権交代というものを残念ながら果たすことはできませんでした。その点では、率直に負けは負けと認めておきたい、このように考えております。

 しかし同時に、政権交代ができなかったからといって、二大政党の一方の柱になった民主党がまたばらばらになっていいということではもちろんありません。この十年間、多くの政党が誕生し、そして多くの政党が消滅をいたしました。そういった意味で、二大政党が定着するかどうか、これはまさに私たち民主党がこれからどういう活動をしていくか、このことにかかっている。それだけに大きな責任があると私は思っておりまして、その責任を痛感しながら活動を進めてまいりたい、このように思っております。

 ただ、幸いにして、民主党は、生まれてから、少人数の離党者はあったことがありますけれども、順調に大きくなってまいりました。(発言する者あり)大島さん、少し黙った方がいいですよ、後、ちゃんと答えますから。そういった意味で、今、大島さんの方からいろいろとやじが飛んでおりますが、私自身の経歴をちゃんと申し上げますので、よく聞いておいてください。いいですか。

 私はこの二十三年ぐらい国会に籍をいただいておりますけれども、私が籍を置いた政党が選挙で議席を減らしたことは、幸いにしてこれまで一度もありません。そして、今回の選挙においても幸いにしてそのジンクスは破られませんでした。そういった意味では、次回のチャンスには必ず政権交代ができるよう、五十八名の新人議員の皆さんとともに国会で、そして全国各地で積極的な活動を続けていきたい、このことを申し上げ、国民の皆さんにもこれまでに変わらない一層の御支援を、お願いを冒頭申し上げておきたいと思います。

 そこで、この総選挙の中での大きな争点の一つでありました、イラクに対する自衛隊の派遣の是非という問題、これについてお尋ねをいたします。

 総理は、自衛隊派遣が必要だという主張をした与党が安定多数をとったのだから国民はイラク派遣を支持したんだ、こういう趣旨のことを述べられております。しかし一方では、世論調査などでは、イラクに対する自衛隊派遣に対しては反対論、慎重論が極めて強くなっております。

 まず、総理、総理や官房長官のこの問題をめぐる発言は日々変化をし、迷走の一途をたどっているように思えます。本年中、二〇〇三年中の自衛隊のイラク派遣を行われるのかどうか、国民の前ではっきりとお答えをいただきたい。

小泉内閣総理大臣 私は一貫してお話ししております。状況をよく見きわめて判断する。自衛隊派遣、自衛隊の復興支援、人道支援、イラクにおけるその活動分野、あると思っております。そういう際によく状況を見きわめて判断するということは、イラク支援法が成立した後も現在も変わっておりません。

 私は、資金的な支援も人的な支援も、イラクに民主的な安定した政権が早くできるように、これは日本としても応分の支援をしていかなきゃならないと思っております。

菅(直)委員 相変わらず全く答えておられません。

 イラク特措法が私たちの反対を押し切って成立をしたのが七月であります。そして、それ以来何度となく政府はいろいろな調査団を派遣されました。どうですか。調査団の報告書というものはきちんとすべて国会に報告されているんですか、どうですか。

福田国務大臣 調査団というのは何回か送っております。いろいろな形でもって、その時々の必要に応じてやっているということでございます。

 調査の報告を、じゃ、その都度国会に報告しているかどうか、こういうお尋ねでございますけれども、それは、できるものについてはしなければいけない、こういうふうに思っておりますけれども、この調査の内容につきましては、その内容が、自衛隊員の安全の問題、また文民もございますけれども、安全の問題とか、それから現地にいる各国部隊との協議とかいうようなことがございますから、そういう観点から、相手との話の内容を申し上げるわけにいかないといったようなことがございますので、これは、できるものはいたしますけれども、できないものはできない、こういうようなことでございます。

菅(直)委員 今まで報告したことがありますか。今まで国会に報告をしたことがありますか、官房長官。

福田国務大臣 私も正確に記憶していないんでありますけれども、先般、国会の中で、このイラク関係の委員会におきまして部分的に報告をしているかどうかということであろうかと思います。全体まとめて報告するということはなかったと思います。

菅(直)委員 全然答弁違うじゃないですか。できるものはするけれども、できないものはしない、しかし一つもしていない、一体どういうことなんですか。全く答えていないじゃないですか。

福田国務大臣 ですから、そういう国会において求めがあれば、それはその都度対応するということでございます。まずそういうことで、今までそういうことがあったのかどうか、求めがあったのかどうか、その辺は私も今記憶がございませんので、これ以上お答えしようがないということでございます。

菅(直)委員 じゃ、求めていますが、なぜしなかったのか、ちゃんと答弁してください。――とめてください、それなら。

笹川委員長 速記をとめて。

    〔速記中止〕

笹川委員長 速記を起こして。

 福田内閣官房長官。

福田国務大臣 今般の国会において、国会の中、委員会の中においてそういうようなお話があったというようなことでございますれば、それは、先ほど申しましたような状況の中でどこまでお答えできるか、こういうことでございます。

菅(直)委員 いいですか。いろいろな各種、与党三党も含めて十四回の調査団が出ていると聞いております。そしてここに、きょう朝、我が党の理事から、六月のときの紙一枚の調査報告というものが届いております。総理は、状況を見て判断する、状況を見て判断すると。そのために十四回にわたる調査団を派遣して、しかし、その中身は全くと言っていいほど示さない。一体、これで国民に対する説明ができていると言えるんでしょうか。

 そこで、具体的にさらに踏み込んでお聞きいたしますが、サマワというところに自衛隊を出そうということで、いろいろと調査団が今日も行っていると聞いておりますが、総理、このサマワはイラク特措法で言う非戦闘地域に入るという判断ですか、どうですか。また前のように、そんなことをわかるわけはない、そう答弁されるのですか。これは総理からお聞きしたい。つまり、総理と私は非戦闘地域について議論をした経緯がありますから、総理から、逃げないで答えをお聞かせいただきたい。

福田国務大臣 具体的なことでございますので、私の方から答弁をさせていただきます。

 サマワにつきましては、これまで、現地を担当するオランダ軍に対しまして、今まで攻撃が行われたことはないということもございます。また、サマワ周辺の部族の序列が同市の評議会に反映されておりまして、評議会が機能している。こういうようなことでもって、ほかの地区に比べて安定した治安情勢にある、こういう認識をいたしております。

 この地区に対してどういうふうにするかという対応、これにつきましては、各種の最新の情報を総合的に分析するということでございます。

菅(直)委員 だからどうなんですか。

 非戦闘地域について派遣をするという枠組みに、派遣できるという枠組みになっている。ですから、総理に以前聞いたら、そんなこと知るわけがないと。しかし、そろそろ出そうかどうか、状況を判断してということは、相当その状況を見ておられるんでしょう。はっきり言ってください。この地域が非戦闘地域ということになるのかどうか、はっきり言ってください。

小泉内閣総理大臣 非戦闘地域に復興支援、人道支援のために自衛隊を派遣すべきときは派遣する。その際に、どこが非戦闘地域かということについては、調査団の報告というものをよく見きわめて最終的に判断いたしたいと思います。

菅(直)委員 一体何回、この数カ月間、同じ答弁を繰り返されているんですか。それなら、もうとてもではないけれども、今の状況から見てことし中の派遣は無理だ、はっきりそう言うなら、そうはっきり言われればどうですか。それをアメリカが、いや、そんなことは自分たちの期待に反することだと言われたら、翌日には官房長官の発言がまた、いや、ことし中に派遣することも考えると言ったり、いや、ないと言ったり、毎日毎日答弁がぐるぐるぐるぐる、まさに変わっている。迷走しているじゃないですか。これが自主的な外交なんですか。

 先ほど安倍幹事長が自主的な外交というようなことを言われていましたが、まさに全く自主性のない外交じゃないですか。総理、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 これは私ははっきりと答弁しているんですよ、何回も。何回も同じ質問だから、同じ答弁というのは当然じゃないですか。それは勝手に決めつけられても困りますよ。

 そして、対米協力も必要であります。国際協調も必要であります。民主党だって、日米同盟、重要性を考えておられる。国際協調、重要だと考えておられる。

 私は、現在の状況においても自衛隊の派遣は無理だと断定する状況にないと思っております。非戦闘地域に、復興支援のために米英初め三十数カ国の部隊が協力している、そしてイラクにイラク人のための政府をつくらなきゃならないということも認識しております。対米協力、国際協調、日本の国益も考えて、イラクに民主的な安定した政権をつくることが必要だと思っております。

 その際に、資金協力だけでは済まないと思っております。できる限り人的貢献もしたい。その際に、自衛隊が活躍できる分野があれば、自衛隊を派遣したいと思っております。その際には、自衛隊、民間人、政府職員を含めて、どの地域に派遣しようが、安全面には十分配慮しなければならない。これはイラクの支援法案、法律にのっとって考えなきゃならない問題であります。

 ですから、法律にのっとって、憲法の枠内で、そして対米協力、国際協調、日本の国益を考えて、資金協力も人的支援も日本はしていく必要があるということを何回も繰り返し答弁しております。

菅(直)委員 小泉総理、いいですか、私たち……(発言する者あり)ちょっとうるさいですね、尾身さん。黙らせてください、尾身さんを。

 いいですか、小泉総理、私たちは、単にイラクが危険だから自衛隊を派遣すべきでないと言っているのではありません。そうではなくて、イラクに対して、本来日本を守るというためにつくられた自衛隊を送る、それだけの大義名分があるかどうかということを問題にしているんです。

 私は、小泉総理は大きな判断を二度にわたって間違えたと思っています。第一度は、まだ私たちが大量破壊兵器の査察を継続すべきだと言ったときに、アメリカの先制攻撃を、大量破壊兵器が拡散してテロが拡大するからと言ってそれを支持したという、その判断の間違いです。第二は、大規模な戦争が終結しそうな段階で、これで治安が回復するという見通しの中で、人道支援、復興支援に自衛隊を派遣する、そのことを実質上アメリカと約束をした。この二つの判断の間違いがあったと思います。

 そしてその後、今日のようにさらに、事実上これはテロというよりはゲリラといった方がいい状況になっている。イラク全土が戦争状態にいわば逆戻りしている中で、その判断の誤りに基づいてアメリカと約束をした小泉総理が、いわばみずからのメンツ、みずからの政治的なその責務といいましょうか、アメリカとの約束を守るために、大義名分のない形での自衛隊の派遣を強行しようとして、しかし、国民世論の反対、野党の反対もあってうろたえているというのが現状じゃないでしょうか。

 私は、小泉総理がそうした二つの大きな判断の誤りをしたことにこの原因がある、このことを指摘しておきますが、小泉総理、反論があったらお聞かせください。

小泉内閣総理大臣 いずれも菅さんの主張には賛成できません。私の判断は正しかったと今でも信じております。

 アメリカを支援しフセイン政権を倒し、そして、イラクに民主的な安定政権をつくるために米英初め今各国が協力している。このときに、民主党、菅さんの言うように手を引いた場合に、イラクがどうなるかということを考えていただきたい。そして、国連の安保理決議においても、国際社会がイラクの復興支援のために協力するという決議が採択されている。

 こういう状況において、私は、治安の状況においては必ずしも安全とは言えません、非常にテロ、ゲリラ、こういう面があります。そういう中において、それでは、テロ特措法も反対、資金も巨額過ぎるからということで反対、人的もやらない、これで果たして、日米同盟、国際協調、日本が、国際社会が協力して、イラクに混乱を起こさせたくない、テロに屈しない、テロのおどしに屈しない、日本も応分のイラクの安定した政権づくりに協力しようということの判断において、私は正しかったと今でも信じております。これからも、資金協力だけでなくて、自衛隊もできる分野があれば派遣したいと考えております。

 それで、自衛隊がだめで人的ならいいと。今無差別ですよ。赤十字も攻撃する、国連も攻撃する、大使館も攻撃する、イラクの警察官も攻撃する。そういう中にあって、自衛隊はだめだけれども民間人ならいい、私は、それはかえって危険な面もあると思います。

 そういうことを考えれば、私は、今の時点、危険でないとは言えません。しかし、そういう中においても、安全面を十分に確保しながら、日本が、米英初め各国の部隊が協力している、このイラクの安定した政権づくりに資金においても人的な面においても協力しているのは、日本の国益から考えても、対米協力を考えても、国際協調を考えても必要だと思っております。それは菅さんと全く違います。

 それと、アメリカを非難されますが、私は、ブッシュ政権を危険な政権だとは思っておりません。大義と善意を持ってイラク復興支援に尽くされている。しかし、その大義と善意が多くの国に理解されていないという面もあります。そういう点については、アメリカも国際協調体制をとれるように努力する必要があると思います。

 もしこのように、菅さんについて、今まで、テロ支援も反対、自衛隊も反対、資金も反対、ブッシュ政権は危険な政権だと言って、政権をとった場合に日本の国益というものをどう考えるのか、その辺をお聞きしたい。

菅(直)委員 まずちゃんとお答えを私からもしますから、静かに聞いてください。

 まず、私たちは、イラクの戦争を開始することには反対でした。しかし、戦争が終わった段階で、復興や人道支援について、一般的にそのことについて反対をしたことは一度もありません。そうではなくて、イラクの特措法というものに基づく自衛隊の派遣に反対をしてきたわけです。

 そこで総理、もっと根本的な話をされたので、私も根本的な話をしますから、よく聞いてください、皆さん。

 今から二年前の九・一一のアメリカに対する連続テロが、いわばこの問題の残念ながらスタートになりました。そして、そのとき、これは私たちも、多くの、世界じゅうが、あるいはアメリカの皆さんは特に、こういうテロの続発を何としても抑えなきゃいけない、封じ込めなきゃいけない。それには、そのテロを起こしたと思われるアルカイーダを支援したタリバン政権を攻撃するという形でアフガニスタン攻撃が行われました。私たちも、それに対しては一定の理解をいたしました。

 しかし、それに対して、さらに、フセイン政権、イラク政権もそれに関与がある、あるいは将来そういうものの原因になる可能性がある、大量破壊兵器を持っているという前提のもとに先制攻撃を加えました。そして、フセイン政権は、確かに圧倒的な米軍の軍事力の前に倒れました。

 しかし、九・一一の連続テロのときに目的とした、目標としたそのことは達成されたと言えるんでしょうか。まさに私たちが、先ほどの選挙じゃありませんが、目的としたものには、政権交代達成できませんでした。しかし、アメリカも、戦争には勝ったけれども、テロをこれ以上拡散させない、防ぐんだ、抑え込むんだということに成功したと言える人がこの中にだれか一人でもおられますか。アフガニスタンの中でもまだテロが続いております。イラクにおいては、テロというよりもゲリラ戦がいわば勃発をしております。(発言する者あり)うるさいですね。ちゃんと言っているんですから。

笹川委員長 御静粛に。

菅(直)委員 そういった意味で、総理は、アメリカの今の政権がやっていることにただ盲目的に賛成することが日米関係を大事にするかのように言っています。しかし、現実には、アメリカと長年同盟を結んでいるNATO諸国であるドイツやフランスにおいても、この戦争に対してはスタートの段階からおかしいと言い、国連決議に対して賛成をしても、フランスもドイツも一兵たりともイラクには送っておりません。私たちが自衛隊を派遣するのを反対だと言ったら、すぐに反米か、そういう言い方をされるけれども、そういう言い方をすること自体がいわば議論のすりかえじゃないですか、もともと。

 では、九月十一日のテロからのこの一連の流れの中で、私は、テロというものと戦争というものの性格の違いを根本的に理解していないアメリカの政策にも大きな誤りがあった。今、アメリカの政策に対してアメリカ国内でも、この間の政策についてですよ、ブッシュ政権下のネオコンに引っ張られた政策について、見直しの機運が圧倒的に高まっているじゃないですか。

 つまり、国と国との戦争は、一九四五年八月十五日、日本国政府が敗戦を認め、そして無条件降伏をしたら、ごく一部はあったかもしれないけれども、基本的にはテロやゲリラは起きませんでした。それは、国の意思で、税金で戦った戦争でありますから、国の意思が変わればストップするわけです。

 テロというのは、国の意思だけではありません。国の意思が関与することもありますが、個人の意思やいろいろな集団の意思が絡みます。ですから、その国の政権を倒したからといって勝てるかどうか。戦争なら勝てるかもしれないけれども、ゲリラは逆にその種をまき散らす可能性がある。現実にそうなったじゃないですか。

 そういう根本的なことを言おうと思うと、すぐ二言目には、テロに屈するのか、常にそういう言い方で、ますます攻撃を強めて、結果がうまくいくのならいいですよ。

 私は、その手前まで言えば、パレスチナにもう一つの原点があると思います。パレスチナの、いわゆるイスラエルが強硬な軍事力をもってそれを抑え込もうとしたところから自爆テロが頻発をしたというのは、この数年の経緯を見ていれば明らかじゃありませんか。

 そこで、ちょっと局面を変えてお聞きしますが、アルカイーダという名を名乗った、その関連組織を名乗ったところから東京に対してのテロ攻撃の予告があったと報道されておりますが、そういうことに対して警察当局はどうとらえ、あるいはどういう対応をしようとしているのか、お聞かせください。

小野国務大臣 お答えさせていただきます。

 御案内のとおり、九・一一以降、同時多発テロ以降でございますけれども、我が国の重要施設の警備あるいは警戒警備、一昨年の米国における多発テロ以降、重要施設及び米国関連施設等の警戒警備を恒常的に行っているというのがまず現状でございます。

 我が国には、イスラム教過激派がテロの対象としてきました米国関連施設が多数全国的に散らばって存在をいたしております。これらを標的といたしましたテロ、これが菅議員おっしゃるように懸念されるところでもございます。そうした関連からいたしまして、我が国は米国の軍事行動に対する支持を明確にいたしております。まず一つでございますね。明確に……(発言する者あり)ちょっとお黙りくださいませ。我が国は、軍事行動に対する支持を明確に、イスラム過激派によるテロの根絶を目指します国際社会と共同歩調をとっているというのが三点でございます。

 ですから、標的とされるような米軍の関連施設があるということと、それから米国の軍事行動に対する支持を我が国が明確にしているということが二点と、三点はテロの根絶を目指す国際社会と共同歩調をとっているという、この三点からいたしますと、標的になる可能性があり得るということを私どもも認識いたしております。

 そういった観点から、先ほど申しましたように、恒常的に警戒警備を充実させていただいているということが現実でございますけれども、情報についての信憑性、これが一点でございます、それから背景等につきましては、まだ私ども分析途中でございまして、そういったことに、各都道府県警、そちらの方に私どもの方から警戒警備についてさらなる徹底を指示していると承知をいたしております。

 今後も引き続きまして、国内外関係機関との連携を密にさせていただきまして、情勢の変化に応じ各種のテロ対策を強力に推進し、未然にこれを防ぎますように万全を尽くしてまいりたい、そのように考えております。

菅(直)委員 この問題についてもう一度だけ申し上げておきたいと思います。

 私は、ちょうど高校生から大学生のころがベトナム戦争でありました。当時のアメリカも、今と劣らないぐらい世界で最強の軍事力を持っておりました。しかし、あのベトナムに勝つことができませんでした。いろいろ理由はあったと思います。私は、あえて言えば、その理由の中の最大のものは、本当の意味の大義名分が弱かった、あるいはなかったから、このように思います。

 今回、イラク・フセイン政権を圧倒的軍事力でアメリカは倒しました。しかし、なぜ戦争に勝った後これほどまでにいろいろな状況が悪化しているのか。私は、一言で言えば、アメリカの攻撃というものが世界全体あるいはイラク国民含めて本当によかったと思われていない、大義名分がないことに根本的な原因があると思っております。

 そこで、やってしまったことを今さらその前の段階まで戻すことはできません。できるとすれば、大義名分というものが成り立つ形に今からでも少しずつ方向を変えることだと思います。それは、先制攻撃を加えたアメリカ、イギリスを中心としたイラクの統治というものを、できるだけ国連を中心とした、攻撃に加わらなかった主要な国が相当程度の責任を持つ体制に変えていき、そして、当然ながら、イラク国民による統治にできるだけ早い時期に移していこうということだと思います。

 そのときに、もう一つ大きな問題はイラクの石油です。よく防衛庁長官はイラクの石油を指摘されて、日本の国益のことを総理も言われます。確かに日本にとっても国益なんですけれども、逆に言えば、イラクの国民から見たら、石油が目的で攻撃したんじゃないの、そういう見方をしている、そういうことを私は各方面から情報として聞いております。少なくとも、安定した国に回復するということは国際社会の共通した目的です。しかし、イラクの石油を目的にアメリカ、イギリスが攻め込んだという理解が広く存在している中で、果たして大義名分というものが成り立つのか、私は、その根本のところまでさかのぼって考える必要がある。

 あえて申し上げれば、今日本がかかわるべき形は、占領軍の米英にいわば加わった占領軍になると少なくとも相手から見られるような形をとるのではなくて、やはり国連を中心として、米英中心ではない形の、もっと中立的なイラク統治の機構に一日も早く変え、そしてイラク人中心の政権に移していく、このことだと思います。

 総理にもし反論があれば、お聞かせください。

小泉内閣総理大臣 反論ということでもありませんが、私は、対米協力も必要だと思っています。国際協調体制をつくることも必要だと思っています。日本独自の支援をすることも大事だと思っております。米英と一緒に参戦しなかった国、ポーランドとか韓国とかモンゴルでも今部隊を派遣しております。私は、日本としてできるだけの努力をしていくべきだと思っております。

菅(直)委員 問題を移しますが、一言だけ、私は対米協力がいけないとは言っておりません。対米というのはアメリカという国との協力です。もしアメリカのある政権が間違った政策を出したときに、それまで盲目的に協力するのが対米協力とは思いません。日米関係というものはもっと根の深いものだ。まず、このことだけは申し上げておきたいと思います。

 そこで、北朝鮮に対する経済制裁の一環としての送金の停止について、私たちは選挙中に、追加のマニフェストの中で、送金が停止できるような枠組みをつくるべきだ、このことを盛り込みました。きょうの安倍幹事長の話の中にもそうした話がありましたが、総理はなぜこのことに対して消極的なんですか。私は、経済制裁を初めから、例えば輸出入の禁止なんということまでやれと言っているんじゃありません。日本からの送金です。

 これまでも、国連決議に基づいてイラクやリビアについて送金停止をやったことがあります。イラクやリビアに対してやったことが、北朝鮮に、今すぐやるかどうかは別として、やれるという法律整備をすることがなぜできないのか、その理由をお聞かせください。

小泉内閣総理大臣 できないともすべきでないとも言っておりません。現在、経済制裁をするつもりはないと言っているんであって、今党でそのような法案を準備、進めております。十分検討に値するものだと私は思っております。

菅(直)委員 政府として責任を持ってやるつもりはない、党に任せておる、こういうことですか。それとも、平壌宣言というものがあるから、そのことを政府が言い出すとその宣言に反することになるということですか。はっきりと国民に、ちょっと、官房長官に聞いているんじゃありませんから、総理に聞いているんですから、ちゃんと答えてください。平壌宣言にサインしたのは総理ですからね。

小泉内閣総理大臣 私は、現在、六者協議で、北との対応については平和的解決を目指す、外交的解決を目指すという努力が日本、アメリカ、韓国のみならず、中国、ロシア等においても行われている、そして北朝鮮も話し合いに向かって動きを進めている、そのときに、現時点で経済制裁を行うのがいいかどうかという判断をしている。

 同時に、これから、送金停止等の外為法の問題につきましては、自民党ですから、党でよく今検討しているそうです。党でも準備を進めているということでありますので、与党でありますから、自民党でありますから、その点についてはよく相談して、検討に値すべき問題だと考えておりますので、今後ともよく党と相談していきたいと思っております。

菅(直)委員 平和的と言われますが、経済制裁も、少なくとも軍事的ではありませんからね。

 それで、答えておられないことがあります。平壌宣言との関係でできないということなのですかということについて、関係がないなら関係がない、関係があるなら関係ある、はっきり答えてください。

小泉内閣総理大臣 平壌宣言は平壌宣言であります。この問題とは関係ありません。

菅(直)委員 今、関係ないとおっしゃったようですが、それならそれで結構です。私は、読みようによれば、平壌宣言というのは、日朝間の関係を、いろいろな前提条件があって、私たちは、崩れたと思っていますが、総理は、崩れていないと言われますから、崩れていない中で日本が送金停止といったようなことをやることは、平壌宣言に反するということでちゅうちょされているのかなと思いましたが、関係ないと言われるなら、それで結構です。

 もう一点、今、ジェンキンズさんがもし日本に来られたときの扱いをめぐっての議論がありますが、日米犯罪人引き渡し条約第四条の中に、政治犯については、不引き渡しに該当すると国、日本政府が宣言すれば引き渡す必要がないという規定がありますけれども、これを適用するという考え方を宣言するということはお考えになっておりませんか。

小野国務大臣 お答えさせていただきます。

 国際刑事警察機構における手配の有無につきましては、手配を要請した国の捜査にかかわることでもございまして、回答を差し控えさせていただきたいと思います。

菅(直)委員 官僚の答弁を読まれるだけなら、出てこなくて結構です。

 総理、これは政治判断ですよ。これは政治判断ですから、政治判断として、日本の拉致被害者で日本に帰られた方の御主人が元アメリカ国籍があって、アメリカからいわば刑事犯罪として逮捕状なり何が出ている、日本に帰られたときにそれを引き渡すのかどうかというのは一つの大きな政治判断です。

 こういう規定に基づいて引き渡さない、そういう考え方はありませんか、総理。総理の判断。

小泉内閣総理大臣 この点については、アメリカとの問題もあります。アメリカともよく協議していきたいと思っております。

菅(直)委員 自主的な外交と言う割には、こういう日本の法律に基づく適用ですら、はっきりしたことを言われないというのは残念です。

 そこで、少し国内の問題に議論を進めたいと思います。

 総理は、改革の芽が出てきたと言われておりますが、地方に行っても、その芽は全くと言っていいほど見当たりません。また、この春卒業した若者の多くは就職をいたしておりません。無業者という定義があるそうですが、大学卒業生で見ると、二割を超す人が無業者になっている、このような発表があります。

 総理は、特にこの若年層の就職の困難な状況について、どのような対策をお考えかをお聞かせください。

小泉内閣総理大臣 この若年者の失業問題につきましては、やはり厚労省だけじゃなくて、文部科学省、経済産業省、政府やはり挙げて取り組むべき問題だということで、各省連携してこの若年者対策を進めていこうということで、既に協議、対策本部を設けてやっております。この点については、今後とも各省連携のもとに進めていきたいと思います。詳しく各省それぞれ意見を持っておりますので、そういう点、お互い協力してやっていくことが必要だと思っております。

菅(直)委員 改革の芽という言葉は、何かさわやかな言葉になっておりますが、現実を見て言っておられるのか、それとも新丸ビルとか六本木の建物だけを見て言っておられるのか、私は、どうもそのように思えてならないということを申し添えておきたいと思います。

 そこで、きょうは、道路公団総裁、お見えですね、道路公団総裁にまず御意見をお聞かせいただきたいと思います。

 さきの選挙においてもそうですけれども、私は、この間、例えばアクアラインに乗ってみました。道路公団のものではありませんが、本州四国の橋も何度か渡ってみました。膨大なお金を使われてつくられたこれらのトンネルや橋は、非常に交通量が少ない。当初予定の半分とか三分の一であります。

 私たちは、それなら、思い切って現在の道路に使われているガソリン税などの一部を公団の負債の償還に充てて、思い切ってこれらの通行料を無料にすることの方が日本経済全体にとってプラスになる、地域経済にとってプラスになる、そういう考え方で提案をいたしました。

 経済界でも、私の知るところ、ある新聞には、ソニーの大賀名誉会長とか何人かの方がそのとおりだという趣旨のことも言われておりました。

 新総裁は、外国の生活も長いと聞いておりますけれども、アメリカなどでフリーウエーが無料だということはもちろんよく御承知だと思います。今、立場上いろいろ言いにくいところもあるかもしれませんが、ひとつ一民間人として、たしか就任前には道路についてそれほど詳しい立場ではないと言われましたが、ある意味での、経済界に身を置かれた立場として、そうした、思い切ってこれまでの道路財源、私どもの計算では、国、地方で約九兆円余りありますけれども、その一部を償還に充てれば、まあ経済上からいうと、あすからでも無料にできるわけでありますから、そういうやり方の方が日本の全体の経済にとってプラスになるのではないか。

 かつて信長が、いわゆる楽市楽座という形で関所を撤廃いたしました。私は、高速道路の通行所を撤廃する、関所を撤廃することによって日本経済を地域から興していく、このために役立つと思いますが、新総裁のこの問題に対する個人的な見解で結構ですから、お聞かせをいただきたいと思います。

近藤参考人 お答えさせていただきます。

 個人的な考え方、感想ということで御容赦を賜りたいと存じます。

 基本的に、私は、物事すべて、ただのものはないと考えております。ただほどまた高いものはないというふうに考えております。

 道路につきましても、これはただではございません。一般道路につきましても、これは納税者が負担をしているわけでございます。したがいまして、これを無料にするということは、利用者にとりましては無料でございますが、一般国民に対しては税金でしっかりと負担をするということでございます。したがいまして、これはただではない。ただのものは、この世の中にはございません。

 したがいまして、ただという言葉は一般国民に対して大変誤解を与える言葉ではなかろうかな、そのように私は個人的に考えております。

菅(直)委員 まあ総裁も、残念ながら、選挙中は自民党の参議院議員でおられたので、自民党のマニフェストに拘束されているのかもしれません。

 私は、一度もただということを申し上げたつもりはありません。通行料を無料にすると言ったんです。その財源は道路財源から出すということですから、ガソリン税などから出すということを今申し上げたんです。申し上げているのを御承知の上で、わざわざ通行料の無料のところだけを取り上げられるというのは、残念ながら、民間人というよりは、やはり自民党の政治家を単に当てはめただけだな、そういう感想を持ったことをまず申し上げておきます。

 その上で、高速道路について、もう一つお聞きします。

 民営化という議論が進んでおりますが、私が見るところでは、もともと民営化という議論は、採算性の悪い道路の建設を抑えたいとする、例えば猪瀬さんなどの意見が大きく反映してここまで議論が進んだと思いますが、どうも今のこの一年間の議論を聞いておりますと、もうその枠組みは壊れてしまっている。ことしの一月の予算案でも、つまりは採算性の悪いものは国が直接つくりましょう。これなら、まさに道路公団以外がつくるということですから、見方を変えれば私たちが言っていることとやや似てくるかもしれません、過去であるか未来であるかは別として。つまり、道路財源からつくりましょうということですから。

 そういう意味で、今、道路公団を民営化するという枠組みそのものが何の目的なのかほとんどはっきりしなくなっています。しかも、九千四百二十キロですか、三十キロですか、その整備計画についてもそれは必ずやるんだとかやらないんだという議論が盛んであって、いわばそういう計画が進み得る民営化ならどうぞどうぞやってください、進み得ない民営化など絶対にやらせない、これが自民党の道路族の考え方じゃないでしょうか。

 そこで、もう一つだけ申し上げておきます。これは新総裁にも申し上げておきますが、自由民主党が好きなのは、できた道路を使うことではありません。使うことであれば、私たちが提案をした、アクアラインを無料化して、本州四国を無料化すれば、もっともっと道路は使う人がふえるでしょう。そうではなくて、つくることが目的なんじゃないですか。ですから、建設をするための枠組みを残すためには、民営化でも建設ができるんなら結構ですよ、建設ができないんなら困りますよと。

 私たちはそんなことは言っておりません。九兆円の道路財源の中で、償還に充てる二兆円を除けば大いにその枠の中でつくればいいけれども、自由民主党は、九兆円の道路財源以外に二兆円の通行料もつくる方に充てたい。さっき新総裁は間違ったことを言われましたけれども。つまりは、二つのポケットでつくりたいから今の枠組みを守ろうとしているのであって、ただだからどうだということとは関係ないんです。つくれれば何でもいいんです。

 国交大臣、通されるんですか、計画は。九千四百三十キロの計画はそのまま実行されるんですか。

石原国務大臣 ちょっと誤解があると思うんですけれども、自民党の道路に関係する方が、道路をどんどんどんどんただつくればいいというふうなことを私のところに言っていらっしゃる方はいないということを名誉のために申し述べさせていただきたいと思います。

 私どもは、むだな道路はつくらない。地方の方々、民主党の方も含めて、無料化という話はされている方が、私、全国回らせていただいて大変少なかったような印象を持ちます。

 この問題点については、さきの予算委員会で議論をいたしましたので、御答弁は割愛させていただきますが、後段の御質問は、要するに九千三百四十二キロをつくるかつくらないか。

 今、近々、これは近々ともう申させていただきたいと思うんですけれども、これから、九三四二の中でできていないところが二千キロぐらいありますけれども、路線ごとに、この道路の採算性、あるいは先ほどお話が出ていた社会的な外部効果、こういうものを一本一本お示しいたします。それも民主党の皆さんにもお示しいたしますので、それでつくらないというような道路があるんだったら逆に言ってきていただきたいですし、私は、BバイCが残事業量を引いてやったところで一を切るようなものは、やはり有料高速道路としてはできないんだと思うんです。

 そういうものの基準を客観的にお示しするということをこの民営化の前提に置いているということもぜひ御理解いただきたいですし、菅代表の御質問の中にありましたように、これは、民営化は目的じゃございません、何度も言うように手段です。四十兆円の借金を、菅さんは二兆円ずつ今のキャッシュフローの中から返せということをおっしゃっていますけれども、じゃ、そこで発生する借りかえの金利分はどうするのか。現在の七兆円のところからしょっぴいていくのかという議論もこの間させていただきましたけれども、そういうものもパッケージでぜひお示しいただきましたら……(菅(直)委員「示している、示しているよ。示しているよ」と呼ぶ)それは論理的にちょっと破綻しておりましたので、またぜひ金利の部分のお話もしていただきたい。

 御心配になるようなことはないように民営化のスキームをつくらせていただいております。

菅(直)委員 新国交大臣ですから余りいじめないようにしたいと思いますが、言っておられることがほとんど自己矛盾を起こしているということを申し上げておきたいと思います。

 つまり、採算性を最終的に判断するのは、もし民営化するんであればその民間会社が判断するのが当然なんですね。それを何か民主党にも言ってきてほしいと。何か陳情を求められているようですけれども、一体何を勘違いされた答弁をされているんでしょうか。

 つまりは、本当に民営化するというんであれば、判断を含めて、民営化された会社に任せる。総理は、せんだって私の質問に対して、永久にそれだと料金が有料のままじゃないですかと言ったら、それは新しい会社の社長が判断することですと。まあそれはそのとおりでしょう。しかし、どの会社の社長が判断したって、永久有料化になることは間違いないところですから。

 ですから、そういう意味でもう一度申し上げますが、この民営化という議論が一体何のための民営化なのかということが、国民の皆さんから見てほとんどわからなくなっていると思います。

 もう一度、私たちが申し上げた料金の無料化についてだけ申し上げますと、私たちは、通行料を取らないということは、その分に当たる道路建設はできなくなるということです。現在日本では、ガソリン税などで九兆数千億、そして通行税で二兆数千億、いろいろ借りかえとかありますけれども、合わせて約十二兆円の、一般道と高速道路を合わせて十二兆円の道路予算が毎年使われているわけです。

 私たちの提案は、まずその通行料分、それを償還に充てる充てないは別として、通行料分はなくするということです。そして、ガソリン税などの九兆円余りの中から償還財源を出すということは、ただじゃありません、その税金でちゃんと返すということです。そして、その残った七兆円余りで十分に、日本の道路も効率よくやれば建設できるはずだ。フランスとイギリスとドイツの道路建設財源は、合わせても七兆円は達しておりません。

 そういうことを考えますと十分にやれるということを申し上げて、まさにワンパッケージで申し上げたんですが、どうも国交大臣の理解力では理解がされなかったようでありますけれども、そのことを申し上げておきたいと思います。

 そこで、もう一度、もう一つだけ申し上げておきます。

 総理、もう一つ、マニフェストの中で三位一体改革というものが言われて、今回、一兆円のいわゆる地方への補助金の削減が指示されたと言われております。国民的に見ると、一兆円というと相当頑張っているのかなという見方もできるんですが、しかし、自治体の皆さんからすると、一兆円の補助金が独自財源としてそのまま移されてくるのか、それとも、単に一兆円が一円も来ないで削減されてしまうのか、一〇〇とゼロ、全く意味が違います。

 総務省の話を聞きますと、いやいや、できるだけ財源を移譲する方にウエートをかけたいと言われていましたけれども、必ずしも総理の指示は、せめて七割は財源移譲、三割はカットとかいう枠でもあればまだわかるんですけれども、一兆円という数字だけで、全部が移譲なのか、全部がカットなのか、どの割合が移譲なのか、全くはっきりしておりません。総理の三位一体とかという言葉は、言葉は躍るんですけれども中身がないというのは、こういうところにあるんですね。

 ですから、総理大臣、どういうイメージなのか、せめて、七、三なのか、五分五分なのか、九、一なのか、そのぐらいのことは国民に説明される責任があるんじゃないでしょうか、これは総理の口から。

小泉内閣総理大臣 私ははっきり申し上げているんですよ、補助金、交付税、税源移譲、これを三位一体で改革すべしと。総理大臣としては、方針を出すことが重要なんです。

 そして、これから一月かけて予算編成、具体的な数字が出てまいります。各省の担当大臣がいるんです。担当大臣にも腕を振るってもらわなきゃいけない……(発言する者あり)利害が対立している場合は総理大臣が調整する。よくわかって、総理大臣が細々、あれこれすべて口出しすべきとも思えません。方針を出して、そして方針にのっとって各担当大臣が指導力を発揮していただく。最終的に調整がつかない場合は私が出ていかなきゃならないなと。

 できたら、私が出ないでも、各担当大臣ならそれぞれうまく指導力を発揮して、解決できて、総理大臣、お呼びでありませんということなら、なおいいと私は思っております。

菅(直)委員 これは国民の皆さんにもぜひ御理解いただきたい点ですが、私たちがこのマニフェストの「五つの約束、二つの提言」の第一項目に掲げたのが、「霞が関からの「ひも付き補助金」を全廃します。」そして、具体的には、二十兆円の補助金のうち十八兆円を財源移譲しますという最終目標を段階的に進めていくということを提案いたしました。

 それに対して小泉総理のマニフェストには、三位一体で三年間で四兆円を、今言われたように、削減、それから移譲、それから何でしたか、三つの、交付金を含めて三位一体と言われていました。しかし、結局のところは、四兆円の財源が自治体の自主的な財源に移るのか移らないのかということは、これは大問題じゃないですか。基本的な方針じゃないですか。

 つまりは、総理にとっては三位一体という言葉が本質であって、その方向性、つまりは、ひもつき財源を独自の財源に移すのか移さないのか、どれだけ移すのか、どれだけの比率を移すのかということは一言も言わないでも、それは細かいことですから各大臣にお任せします、これが細かいことだったら、三位一体の公約なんというのはほとんど意味を持たないということじゃないですか。

 そういった意味で、小泉総理の三位一体のマニフェストというのはほとんど意味がなかった、そう理解していいんですね。

小泉内閣総理大臣 私が方針を明示しているから、各省、必死になって今この実現に向けて努力しているんですよ。意味が十分あるんです。

菅(直)委員 では、せっかくですから、財務大臣、どうぞ。

谷垣国務大臣 補助金の削減は小泉内閣にとりまして極めて大事な問題で、先般、一兆円を目標として削減せよという御指示が出ました。したがいまして、今まで骨太の方針二〇〇三で、菅さんが言っておられました工程表がございますが、それとあわせて、いろいろな知事会や何かから、地方としてはこうしてもらいたいという要望も出てまいりましたので、それを踏まえて、各大臣に汗をかいていただいてまとめていきたい、こう思っております。

 そして、財源移譲もできる限りやっていきたい。できる限りと申しますのは、補助金の中には、もうこの際廃止した方がいいだろう、地方にやっていただく必要もない、むだだというようなものも、一つ一つ検討していくとあるだろうと思います。それについて財源を移譲するというのは、むだの上塗りになりますから、そういうところは当然省いていかなきゃならない。しかし、でき得る限りやっていこう、こういうことでございます。

菅(直)委員 私の持ち時間はそろそろ終わりますので最後にしますけれども、私たちは、この選挙の前に、全国知事会の皆さんからも何度もお話をいただきました。多分、自由民主党にも行かれたと思います。そして、県が担当している補助金のたしか九兆円ぐらいを独自財源に移してくれ、それに加えて、市町村の皆さんからもいろいろと要請をいただきました。私たちは、その考え方が賛成でありましたから、先ほど申し上げたように、このマニフェストでそのことを実現するように盛り込みました。

 残念ながら、今回政権をかわることができませんでしたから、私たちは政権という立場でそれは実行できませんけれども、こうした国会の質疑などを通して、この問題についても、あるいは高速道路の無料化についても、きょうは私は取り上げませんでしたが、年金改革という最も重要な課題についても、私たちの案をきちんと提示していますので、野党の立場ではありますが、責任ある野党としてしっかりと取り組んでいく、このことを国民の皆さんにもお約束をして、私の質問を終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

笹川委員長 この際、岡田克也君から関連質疑の申し出があります。菅君の持ち時間の範囲内でこれを許します。岡田克也君。

岡田委員 民主党の岡田克也です。菅代表に引き続いて、総理に質問したいと思います。

 まず、この国会の意義でありますが、私は非常に大事な国会だというふうに認識をしております。総選挙が終わりまして、自民党の規約によりますと、小泉総理は解散でもない限り三年間総理としてこれからこの国をリードされる、残念ながらそういうふうになっております。

 この国会は、選挙が終わって最初の国会ですから、まさしく三年間総理としてこの国をどのように持っていくのか、リードしていくのか、自分として何をしたいのか、そのことをはっきり国民に述べるいい機会だと思いますが、この予算委員会も衆議院わずか四時間半でありますし、施政方針演説もありません。

 なぜ総理は、施政方針演説の中で、国民に対してこの国会の場できちんとみずからのお考えを述べようとしないのか、そのことをまずお答えをいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 施政方針演説は通常国会ですることになっております。そして所信表明は九月の臨時国会でも行いました。そして選挙中にも国民にいろいろ訴えました。今回、特別国会でこのように予算委員会も開いております。いろいろな意見を述べる機会はあります。

 私は、一月にそういう施政方針演説の機会がありますので、今予算編成等いろいろな問題が山積しておりますので、今国会におきましては、そのような代表質問といいますか、国会の本会議の場で所信表明を行う必要はなく、今後の近い将来に行えばいいと思っております。

岡田委員 総理は私の質問に答えていただいていないと思うんですが、通常国会の冒頭に行う施政方針演説、これは、基本的には、予算を含むその年一年間、国のリーダーとして何をしていくかということを述べるものであります。

 総理は所信表明と言われましたが、所信表明は、毎国会やられることもありますが、今回は、先ほど言いましたように解散があって、そして第二次の小泉内閣がスタートしたからこそ、改めて国民に対して述べるべきではないか、こう申し上げたわけです。いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 私は、その所信表明の機会は近い将来あるから、そのときに譲る。今回におきましても、こうやって議論して所信を述べる機会は十分あるわけです。岡田さんの質問に答えて、菅さんの質問に答えて、十分あるんです。特別国会で、首班指名と議長だけで閉じた国会も何回かあります。時期を考えて判断していいのではないでしょうか。

岡田委員 今の小泉総理のお答えに反論しておきたいと思いますが、戦後、今回を除いて、総選挙は十九回行われました。その中で、その直後の特別国会で所信表明を行ったのが十三回、それから、特別国会では短期で閉じて行わなかったけれども、その直後の臨時国会で所信表明を行ったのが五回、つまり例外は一回だけです。

 その一回の例外は何かというと、総理も御存じのように、任期満了選挙で三木内閣が選挙を行って、そしてその直後に福田内閣にかわったために通常国会の冒頭まで所信表明の機会がなかった、これ、一つの例外なんです、唯一の。唯一の例外です。(小泉内閣総理大臣「そうじゃない、違う」と呼ぶ)もし違うと言うなら、具体的に述べてください。

小泉内閣総理大臣 今私の手元にある資料では、一回だけでなくて、所信表明がなかった国会は、第二次大平内閣、第八十九国会、昭和五十四年、召集日が十月三十日、閉会日が十一月十六日、会期が十八日間。第九十二国会、鈴木内閣、召集日が五十五年の七月十七日、閉会日が七月二十六日、会期が十日間。それと第三次中曽根内閣、百六国会、召集日が七月二十二日、閉会日が七月二十五日、会期は四日間。そして第二次橋本内閣、第百三十八国会、平成八年十一月七日召集、閉会が十一月十二日、会期が六日間。それと第百四十八国会の森内閣、召集日が平成十二年七月四日、閉会日が七月六日、会期が三日間。いずれにおいても所信表明がなかったということであります。(発言する者あり)

 今私は、質問が、言えと言うから言っているんですよ。丁寧に答えているんですよ。答弁しなくていいと言ったら答弁しないんですけれども、言えと言うから答弁しているんですよ。そうでしょう。

岡田委員 総理、例えば今、大平内閣と言われましたね。第一次大平内閣、五十四年の十月に内閣改造をやって、それで所信表明をしていなかったと。しかし、その直後に、五十四年の十一月二十六日にまた国会を開いて、その臨時国会でやっているんですよ。だから、通常国会までやらなかったんじゃないんですよ。あなたの言っていることは間違いなんですよ。どうですか。

小泉内閣総理大臣 今、国会が閉会したとしても、一月には通常国会が行われるんですよ。待つことも必要です。決して逃げているわけではなくて、しかるべきときに所信表明なり施政方針演説をやるということは当然でありますので、一月ぐらいは待てるでしょう。

岡田委員 総理は論点を今変えられたわけですよ。私が申し上げたのは、解散があって、そして新しい内閣がスタートしたときに、その直後に通常国会まで所信表明をやらなかった例はありませんよと言っているんですよ。あなたの言ったのはその例じゃないんですよ。その質問に対してあなたは答えてなくて、突然、一カ月ぐらい待てないのかという違う議論にすりかえているじゃないですか。どうなんですか。

小泉内閣総理大臣 これは、過去の慣例とかいうことに関係なく、これから予算編成も始まるんです。いろいろな問題が山積しております。そして、既に九月に臨時国会を開催して、改造を行って、所信表明を行っているわけです。代表質問も受けているんです。予算委員会も開いているんです。選挙もやって訴えているんです。今回、そのままの閣僚なんです。再任しているんです。そして、一月には通常国会がある。そのときにやればいいと思います。

 これは政府の判断であり、私の判断であります。

岡田委員 基本的に、小泉総理は国会の意味というのがよくわかっておられないと思います。つまり、解散があって、国民に新しい国会議員が選ばれて、あなたの第二次内閣がスタートしたからこそ、所信の表明を求めているわけですよ。その前のことを言っているんじゃないんですよ。

 もし、あなたがどうしても国民に説明するのを逃げたい、国民から逃げたいとおっしゃるのなら、それはなぜなんですか。やはり、あなたは総理大臣として国民に対して説明する責任があるんじゃないですか。どうですか。

小泉内閣総理大臣 私は、何も逃げていませんよ。そう決めつけないでくださいよ。岡田さんの意見と違うだけです。

 これから、予算編成ではきちんとした数字を示して、今までの選挙中に国民に訴えた公約の実現のためにいかに予算を組むか、そして一月には通常国会が始まります。そのときにしっかりと施政方針演説の中でこれからの考え方を述べたいと思っておりますし、今の予算委員会においても、お聞きしたいことがあれば、私はしっかりと答弁いたします。

岡田委員 戦後、解散・総選挙があって、そして、通常国会の施政方針演説まで国民に語らなかった初めての総理になりますよ。その認識はありますか。

 民主党としては、通常国会までに、これから臨時国会の召集を求めたいと思います。ぜひその求めに応じて、しっかりと国民に向かって総理の考え方、所信を述べていただきたい、そういうふうに御要望申し上げておきたいと思います。

 それでは次に、内政の問題について幾つか御質問したいと思います。

 まず、政治倫理の問題です。

 総理は、選挙の期間中から、自民党は変わった、改革政党になったと盛んに言われました。しかし、どこが変わったのか。特に政治と金の問題、政治倫理の問題、この問題について、自民党のどこがどう変わったのか、具体例でお答えいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 自民党は政治資金規正法の改正に取り組んでまいりましたし、既に、政党においては企業献金は認められておりますが、個人については企業献金も禁止になりました。そして、公開の基準も、今までと比べてかなり上限が限られてまいりましたし、それぞれの議員が今までの国会の審議を真剣に受けとめて、いかに資金の問題におきまして疑惑を持たれないように努力していくかということで、私は、かなりの面において改革は進んできたと思います。

岡田委員 企業献金を受けないことにしたのは最近の話じゃありませんよね。小泉総理になってから変えた話でしたか。

 それから、私が聞いたのは、自民党として何が変わったのかと、制度全体が、法律が変わった話じゃなくて。例えば、民主党であれば、公共事業受注企業からの献金をみずから制限しています。党のホームページで政治資金収支報告を公開しています。党本部の政治資金収支について外部監査を導入しています。公設秘書の名前を公表しています。そういった自己改革の努力をこの半年間、一年間続けてまいりました。

 小泉総理は、総裁として自民党の改革を何を具体的にされたのか、お答えいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 それは、党の改革におきまして、先国会においても法案を提出しておりますし、今後におきましても、私は、各党間で協議しながら改革を進めていきたい。それは、自民党単独でできることもあるでしょうし、あるいは各党間の協議によってできることもあると思われます。今後もいろいろな各党の意見、自民党内の意見を聞いて、進めるべきは進めていきたいと思っております。

岡田委員 自民党が具体的に改革したものはないというお答えだというふうに受けとめました。

 それでは、制度論について聞きますが、前国会で廃案になりました公開基準の話ですね。公開基準も随分下がったというふうに総理みずからさっきおっしゃったけれども、しかし一方で、月二万、年間二十四万にまた不透明性を高めよう、そういう法案が前の国会で出たわけですね。廃案にはなりました。この法案はもう出さないという約束をしていただけますか。

小泉内閣総理大臣 私は、二十四万というのは妥当だと思っていますよ。民主党は全部公開しろと言うんですけれども、これは、実際献金を受ける場合と、それから献金をする側の立場を考えて、二十四万円公開基準がなぜいけないのか、私はわかりません。今までは無制限だった。かつてはもう政治資金となれば無制限だった。あるいは百五十万円だった。それを二十四万に上限を抑える、月二万円ですね。

 献金する側にとっては、できたら名前は出したくないという方もおられる。できるだけ献金する立場のことも考える、受ける立場も考える。政治家にとって、秘書に聞いてごらんなさい、この手続の煩瑣、そういうことを考えて、私は二十四万というのは決して高額と思っていません。月々二万円献金してくださる方、これは本当にありがたいと思っています。そういう点について、私は二十四万がいけないとは思っておりません。

 この点については、民主党は恐らく一円以上。一円以上を一々記名しなきゃ受けちゃいかぬ。カンパはどうするんですか、カンパ。今、千円、一万円カンパしてくれる人はざらですよ。こういうことまで一々名前を書かなきゃ寄附できない、カンパを受けちゃいけない。これは現実的に考えて、やはり現実を見なければいかぬ。献金するのは悪いことじゃないんです。むしろ、献金してくれる方をいかにふやしていくかということも大事なんです。税金だけでやればいいというものじゃないんです。

 こういう点もよく考えれば、私は、二十四万円というのは決して野方図な高い額とは思っておりません。毎月毎月、一万円、五千円、献金してくれる方々というのは、本当に貴重な政治活動支援者です。そういう立場の方、名前を出したくない、あの人に献金をしてこの人に献金しない、言われるのが嫌だからできるだけ名前を伏せてくれという人もたくさんいるんです。そういうことを考えれば、月二万円以内の、名前は出さないでしてくれという献金する立場の人も考えていいんじゃないでしょうか。私は、決してこれは後退だとは思っておりません。

岡田委員 先ほど総理自身が、政治資金の公開度が高まってきた、こう言われましたよね。年間五万円にしたんですね、十年前に。その後、あなたは、二十四万というのはそれを変えるということじゃないですか。だから、透明度高まったんじゃなくて、透明度はやはり低くしたんじゃないですか。違うんですか。

 総理が全く政治資金の公開ということについてそういったお考えはないということがよくわかりました。

 では、なお一票の重さについてもちょっとお聞きしたいと思いますが、選挙の前に、我が党の菅代表の質問に対して、二倍以内におさめることに賛成であると。一票の重さですね。確かに、今回、格差が二倍を超える都道府県を見てみますと、千葉とか兵庫とか静岡とか北海道、実は民主党が非常に強いところが不利益をこうむっているわけですね。

 そういった、総理御自身がおっしゃった、二倍以内におさめることに賛成だということについて、解散があったわけですから、これを具体化していくいい機会だと思いますが、この点、いかがでしょう。

小泉内閣総理大臣 選挙制度の改正については、いろいろ各党意見がございます。私は基本的に、一票の格差を二倍以内におさめるということは賛成であります。その中で、現行の制度のまま改正しようという意見と、やはり中選挙区制に戻した方がいいという政党もあります。この点は今後、制度改革ですから、よく検討すべきじゃないでしょうか。

 私は、小選挙区比例代表制のもとにおいても、一票の格差は二倍以内におさめた方がいいと思っております。この点については、各党意見がありますから、比例代表においても小選挙区制においても定数削減した方がいいという議論もあります。今後、十分に議論する必要があるんじゃないでしょうか。

岡田委員 これは、同じ予算委員会の中で、比例八十の削減と我々はマニフェストで約束をしたわけですが、この質問に対しても、削減の方向で各党各会派が見直していくことは賛成であると総理は述べられたんですね。今のお答えを聞いていると、大分ニュアンスが変わってきたというふうに思います。

 つまり、今の制度を前提にして比例を減らすという考え方から、制度そのもの全体を論じなきゃいけない。随分公明党の主張に寄られたなという感じがしますが、それはやはり選挙結果ですか。

小泉内閣総理大臣 私はもともとこの小選挙区比例代表並立制に賛成じゃなかったんですけれども、結果的にこうなりました。私は、この制度の改革というのは一党だけで、特に選挙制度は一党だけの都合で改革するのは無理があると。

 現在も、小選挙区制度は二大政党制を促すからいいんだという意見もあります。しかし、現実問題、今の小選挙区制度においても二人区といってもいいですね、落選した人が当選してくるんですから。必ずしも一人一区の選挙区じゃないんですよ。今の選挙制度は、単純小選挙区、一選挙区から一人しか当選できないんだとみんな言っていますけれども、実際は落選した人が当選してくるんですから。

 本当に、現実に一選挙区で一人しか当選できないところもありますけれども、比例で復活、落選した人が当選してくる選挙区もかなりあるんですよ。中には三人当選しているところもありますよ。選挙前には、今度は一人しか当選できないんだと言うけれども、終わってみると二人も三人も当選している。これは小選挙区じゃないんじゃないかと。結局、一人区、二人区、三人区の選挙区じゃないかというのが現実、小選挙区比例代表制もそうなんです。

 だから、私は、この選挙制度については、それぞれの政党、考えありますけれども、今後、定数格差の是正と、果たしてこれが本当に一人一区なのか、一人しか選べない選挙だと言っているけれども現実そうじゃないということの実態を考えて、各党よく協議すべき問題だと思います。

岡田委員 総理、答弁も結構ですが、ちょっと長過ぎますから、端的に答えていただきたいと思います。

 もう一つだけ、選挙に関係して御質問をしておきたいと思います。

 これは我が党も若干自戒しなければいけないところがあるんですが、政党本位の選挙というときに、小選挙区ではみずからを投票してください、しかし、比例では公然と他党を応援してくださいと。まあこれは、もし我が党にそういうことが現実にあれば、私は幹事長としてきちんとした対応をしたいと思っていますが、総理は、自民党でもそういうことが非常に各地で行われたわけですが、この点についてどう思われますか。ほかの党を公然と比例で入れてくれと、これはやはり政党政治を逸脱していると思いますが、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 これは、自民党の中にも、小選挙区は自分に投票してください、比例代表は公明党にという候補もいたと思います。民主党にもいたそうですね。民主党にも、やはり比例は公明党にと、いたそうです。

 私は、これは個人の判断ですから、好ましいと思っていません。私はしません。候補者として、個人の候補者の良識ですから、それがどう判断されるかというのは有権者の判断。御本人の人間性の問題にもかかわるでしょう。ですから、私は、政党人として、自分の政党以外の他党に投票してくださいというのは、まあ好ましいものとは思えませんね。

岡田委員 まあ私は、政党政治というときに、これは個人の問題ではなくて、やはり政党としての本質的な問題だというふうに考えています。ですから、私は、民主党においてはそういう例がたくさんあったとは思いませんが、仮にそういうことが明白にあったんであれば対応しなければいけない、そういうふうに幹事長として考えているところです。

 さて、年金問題について御質問したいと思います。

 まず、この年金の問題について議論する際に、やはり私は前提があると思うんですね。つまり、なぜ今年金に対して国民が不信感を持っているか、厚生労働省に対して不信感を持っているか。

 それは、一つは、やはりだれから見ても、もう信じられないような例のグリーンピアの問題ですよ。つまり、皆さん国民が本当に働く中で払った保険料を本当にわけのわからない使い方をしていて、しかも、それがだれが責任とるのか、なぜこうなったのか、そういう説明が全くないわけです。そして、結果的にはそれはたたき売られ、あるいはもとに戻って、そのお金が消えてしまうという。やはり、ここに対してきちんと政治が責任を果たしていかないと、いつまでたっても年金制度、国民に信頼されるものにならないと思うんですよ。

 ここについて総理はどういうふうにお考えですか。責任の問題を含めてお答えいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 この問題は確かに問題があったと思います。だからこそ、今後このようなことがないように今対応しているわけでありますが、私も実際厚生大臣のときにこの問題を指摘して、直すように指示をし、現実にどのように改革していくか今進んでいるわけであります。

 しかし、このグリーンピアにしても、かつて労働省がやっていた能力開発機構にしても、これは本当にどうかしていますよ。だからこそ、今改革しなきゃならぬということでやっているようなわけであって、ただ、地方の現実の問題があります、現実の対応。このまま続けていくんではますます問題が大きくなるから、これを自治体に移管するのか、あるいは移管できない場合に、民間にやってもらうときに、余りにも建設費と実際の売却費に差があり過ぎるんじゃないかという問題もあります。こういう点について、我々は、確かに政府として責任があったと思います。こういう点については十分反省して、こういうことがないようにやっていかなきゃならない。

 これは、地元は歓迎してきたからやるんだということでやってきたんだと思いますが、確かにいい施設ができれば反対する人もないんですが、やはり全体を考えて、税金のむだ遣いがないような対応を今後しっかりやることによって責任を果たしていかなきゃならないと思っております。

岡田委員 責任を感じているとか、今後二度とないようにしたい、そういう精神論だけではなくて、やはり過去になぜそういったことをやってしまったのかということをきちんと総括をして、そして責任をとるべき人が責任をとる、こういうことがなければまた繰り返されるだけじゃないですか。

 ですから、私が求めているのは、例えばこのグリーンピアの問題であれば、そういった過去の経緯、そしてなぜ起こったのか、責任をとるべき人はだれなのか、責任をちゃんととったのか、そういうことについてしっかりと政府の中で調査をして、そしてこの国会にその報告書を出して、そしてお互い議論すべきじゃないか、そういうふうに思っているんですが、いかがでしょう。

小泉内閣総理大臣 そういうことは必要だと思っておりますし、議論の問題におきましても、今までの国会でもそれぞれお話も伺っております。この点については、御指摘のとおり二度とこういうことがないような体制をとっていく必要があると思っております。

岡田委員 ぜひそういった調査報告書を出していただき、大いに議論したいと思います。総理もそういう趣旨でおっしゃったというふうに理解をいたします。

 もう一つは、株の運用ですね。これは随分損が出るわけです。損が出ている。これは私は、個々の運用もそうですが、時々、株価が下がると自民党筋から、例えば政調会長とか、株価対策に年金の金を使え、郵貯の金を使え、すぐそういう話が出ますよね。私は現実どうなっているかわかりません。しかし、もし株価対策にそういう形で年金のお金も使っていたとしたら、それだけの損が出るのは当たり前じゃないですか。つまり、自民党がそういう事態を招いているんじゃないですか。ここはどうなんでしょうか。

坂口国務大臣 そこは、年金の積立金につきましてのお金は、どういう使い方をするかということを明確に決めてやっているわけであります。そのときそのときの経済の状況によってそれをふやすとか減らすとかということは、一切やっておりません。余りにもそこが、しかし硬直的過ぎるのではないかと思うほど硬直的にやっている。

 ですから、例えば、株が上がりましたときに、そうしますと全体の額がふえるものですから、そうするとその株の額を減らさなきゃいけない、全体で枠が決まっておるものですから。そういうことがあって、かえってマイナスになることもあるわけでございますので、その辺につきましては、今後株にそれをどれだけ利用していくのかというようなことについてもちゃんと整理をして、もう一度ここはやり直したいというふうに思っております。

岡田委員 今大臣が言われることが正しければ、そういった、株が下がるたびにといいますかそういう折に、自民党の幹部が、株を支えるために年金資金を使え、あるいは使ったというふうに言っているのは、それは間違いだということですね。ないということですね、それは。確認をしておきます。

 次に、この年金改革について、私は非常にスピードが遅いと思うんですね。選挙の前にもっと具体案がきちんと出て、そして選挙を通じて議論すべきはずが、選挙が終わるまでずっと、特に自民党は案がありませんでした。総理は口頭で少し述べられたことはありますが、基本的な公約の中にありませんでした。そして今ごろ急に出てきている。もう年末になっています。十分な時間がありません。国民生活にこれだけ関係の深い年金制度について、こういったおざなりな対応で本当にいいんでしょうか。私は、総理に相当責任があると思いますが、いかがでしょう。

小泉内閣総理大臣 後ほど坂口大臣からも答弁があると思いますが、私は、この年金の問題について、年末の予算編成には具体的な数字が出てくる、選挙中にはっきりしたことは申し上げないと。

 ただ、考え方として、給付と負担、両方考えていく、そして安定した財源、これを総合的に考えていかなきゃならない。なおかつ、社会保障の基本でありますから年金だけというわけにはいかぬ。医療の問題、介護の問題、これはもう社会保障の基本中の基本であります。

 そういう総合的な視点もあるし、この年金の問題につきましては民主党はかなり大胆な案を出しております。これについて今後いろいろな各方面で意見が出てきますが、私は、この年末の予算編成に向けて、来年の通常国会に法案を出さなきゃなりませんから、これはもう決して逃げるどころじゃないんです。というのは、来年参議院選挙がありますから。こういう中で、また法案ができればより深く議論ができますから、決して逃げているわけじゃない。

 各方面の意見を聞いて、現在でも、給付を五〇%程度にしろとか、あるいは負担は上限を一〇%ほどにしろとか、あるいは二分の一基礎年金の部分を税で負担する場合にも、消費税がいいと言う人もいれば、いや定率減税、所得税を使おうとか、いろいろな議論が出てきております。こういう点については、今後、この一カ月、わずか一カ月の間でありますけれども、具体案が出てまいりますから、そういうときにまた来年の国会でより深く議論できるんだと思いまして、決して逃げているわけではありません。

 しかも、年金の問題については、これはもう高齢者も若い人も関心を持っていただかなきゃなりません。特にこれから四十年、五十年、百年先のことですから、これを理解していただくためにはよほど多くの方々の意見を聞かないとなかなか難しい点もありますので、私は、そういう中での年金改革でありますので、わずか一カ月でありますけれども、来年の国会に法案を出さなきゃならないという期限が迫っております、できるだけこの問題について精力的に取り組んで法案を出したい。

 そして、法案が出れば当然来年の通常国会で、民主党も独自の案を持っておられるわけであります。これは、政権交代のたびにくるくる変わって果たしていいかという問題もあります。国民が安定的に年金を受けることができる、また負担する側も安定的に、この程度の負担なら耐えられるという案を出さなきゃなりませんので、これはしっかりと考えて年内に法案をまとめていきたいと思っております。

岡田委員 総理の御答弁は矛盾しているわけですね。

 それほど大事なことだからこそ早く国民に案を示して、この選挙のときにも議論すべきだと私は申し上げたわけです。それを、ぎりぎりまで、一カ月になるまで出さなかった。今でもまだ、厚生労働省の案と財務省の案とありますから、出ていないわけですね。つまり、ぎりぎりまで議論をする場をつくらなかったというところが問題だと私は申し上げているわけです。

 そして、その結果として今何が起こっているか。今、給付と負担の問題と言われましたが、年金の問題というのは給付と負担の数字合わせの問題だけではもちろんありません。厚生労働省のまとめた紙の中にも明確に書いてあるわけですね。長期的な制度体系のあり方については議論は残ると。つまり、先送りしたわけですよ。長期的な制度体系のあり方というのは、例えば、民主党の言っていることなんです、税方式にする、国民年金の部分を全額税方式にするとか、あるいは所得比例年金制度を導入する。そういったことについては、今回はまだ議論しないということで先送りしたわけです。もっと早くから議論を始めたら、そういうことまで含めてしっかりとした議論ができたにもかかわらず、今回先送りして、また五年先ぐらいになっちゃうわけですね。

 こういう年金の問題は、早くきちんとした制度をつくって、そして国民が安心できるようにしなければいけない。制度の安定性が大事です。しかも、若い人から見たら、改革がおくれればおくれるほど負担はふえていくんです、若い人の。だからこそ急ぐ。にもかかわらず、なぜそういった制度的な改革について先送りしたんでしょうか。お答えを求めたいと思います。

坂口国務大臣 決して先送りをするつもりはございません。ただ、私は、二段階に考えております。どうしてもことしの年末までに早く決着をして来年の予算に反映させなければならないもの、それから、今、岡田さんがおっしゃったように、いわゆる制度体系そのものについてもこれは議論を深めて、そしてやっていかなきゃいけないというふうに思っておりますが、この制度体系の問題は、それを変えますと、その背後にあります社会的ないろいろな問題も変えなきゃならないことがありますから、来年四月からそれを実施するというわけにはまいりません。大きな改革であればあるほど、二十年ないし三十年かけてそこは変化をさせていかなければならないというふうに思います。

 しかし、今からまた四年も五年も先に送ってはいけませんので、一年なら一年という期限を切って、その中で御議論をいただいて、そして結論を出していただくということが一番私は大事ではないかというふうに思っております。

 したがいまして、この制度体系の問題につきましては、民主党がお出しになりました案も一つの案でございましょう。中には、もう二階の部分は全部民間にしてしまえというような御意見もあるわけでございまして、そうした問題も含めて、これは、一年なら一年という期限を切って、そしてそこで将来の問題を考えて、そして結論を出す。それぐらいのやはり時間をかけないとこれは結論が出にくい問題ではないかというふうに私は思っておりまして、ぜひそういうふうにお願いをしたい。

 もちろん、来年の国会の中におきましてもいろいろ御議論をいただいて私はいいというふうに思っておりまして、それは歓迎をしたいと思っております。

岡田委員 小泉政権、発足してもう二年半たっているんですよね。ですから、今まで何をしてきたのかということなんですよ、これは。

 そして、この制度的な改革の話とそれから当面の給付と負担の問題というのは、非常にこれは関係するわけですよ。例えば、今、二〇%負担、企業、個人合わせて二〇%。そして給付、五〇%から五五%。さっきも議論が出ていました。しかし、ここに全額税方式を導入すると、給付の水準は下げずに、負担は二〇を下げることはできるわけですよ。だから、関係しているんです、これは。

 あるいは、今回の厚生労働省の案では、国民年金、四割の人が払わないという国民年金に対する抜本策はないんですよ。だけれども、税方式にしたらこの問題は解決するんです。あるいは三号被保険者の問題も解決するんですよ。ですから、絡まっているんです、この制度論と今回の給付と負担の問題は。だから一緒に議論すべきだと我々は主張しているんです。あなたたちが先送りしたことによって、そういった問題も解決しないまま一定の限られた範囲で議論していることになって、それは本質的な解決にならないじゃないですか。いかがですか。

坂口国務大臣 負担と給付の問題は、どんな姿形にいたしましても、これは必要なことは御承知のとおりでございます。したがいまして、この負担と給付はどうしても必要でございますから、申し上げているわけでございます。そして、その負担の場合に、それを保険料にするか、あるいは税にするかということによって保険料の額が違ってくる、それはもう御指摘のとおりだというふうに思っております。

 それにいたしましても、来年の四月からそれを導入するというわけにはいかないんですから、これは一応この負担と給付を決めさせていただいて、もしも大きい改革をするのであれば、年間をかけてそれを徐々に行っていくという方向に持っていかなければいけないというふうに思っている次第でありまして、その辺のところはぜひ御理解をいただいて、そして、いろいろと御議論をいただきたいというふうに思っております。

岡田委員 私も、初当選してからもう十四年になりますが、五年ごとにこの年金の議論をして、いつもそういった議論をしながら、先送り、先送りですよ。だから申し上げているんです。またそうなりますよ。でも、もう限界に来ているんですから、これはぜひしっかり議論する必要があるというふうに申し上げておきたいと思います。

 具体論をちょっと申し上げますが、とりあえず国庫負担割合二分の一にするということは各党がほぼ合意していることだと思いますが、どうやって二分の一に国庫負担の割合を引き上げていくかということについては、与党の中でも意見が違います。

 公明党は、選挙のマニフェストの中で、先ほども出ておりましたが、所得税の定率減税をやめる、そして年金課税をするということを言われました。私は、年金課税を強化するということは基本的には賛成ですが、所得税の定率減税をやめるということは、それは経済に及ぼす影響も大きいですし、今の経済状況ですから、しかも、基本的には、もしこの定率減税が一時的なものだとすれば、それは将来的に赤字国債の返済に充てるべき財源であって、それを年金で先食いするということは許されないことだと思いますが、総理はこの点どういうふうにお考えなんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 これは私は、この二分の一に引き上げるということについて、消費税は上げないということを言明しております。しかし、安定した財源を確保するという上においては今後柔軟に考えると。

 公明党が所得税の定率減税の案を出しております。この点についても、一年でやるのか複数年でやるのかといういろいろな意見がありますし、もちろん反対論もあります、賛成論もあります。

 この点については、やはり安定した財源をどこから見つけるのか。歳出を削減しろということについても民主党は言っているようでありますが、これが必ずしも安定した財源かどうかという、結びつくかどうかということも議論があります。一時的に終わるのじゃないかという議論もあります。

 そういう点を含めて、私は、安定した財源をどう確保するかという問題も含めて、これから予算編成に向けて実に大事な問題になると思っておりますし、この点についてもいずれ具体的な数字を出さなきゃならないと思っております。

岡田委員 私は、歳出削減が安定した財源にならないということは言えないと思うんですね。

 例えば、我々が主張している、国直轄の公共事業についてこれを三割削減する。これは一回限りじゃなくて、ずうっと三割削減の状態を続けていくわけですよ。例えば、今十兆使っていれば、それを七兆にずっとしていくということですから、安定的に三兆円出てくるわけです。もちろん、国直轄ですから十兆ありませんけれどもね。あるいは、国家公務員の人件費を四年間で一割カットするということを申し上げています。これも、そういった形で国家公務員の数を減らし、人件費を減らしていくわけですから、安定した財源なんですよ。そういったことこそ今必要なんじゃないんですか。増税じゃなくて、そういった歳出削減でその財源をつくっていくということが今一番求められていることだと思いますが、いかがなんでしょうか。

谷垣国務大臣 どこに財源を見つけていくかというのはいろいろな知恵を出していくことが必要だと思いますが、先ほど岡田委員が、公明党案の定率減税というものを廃止した場合にはそれは国債の返還に充てるべきだとおっしゃいました。

 それで、今の点も、これだけやはり国債を発行していろいろな予算、歳出に充てているわけですから、その歳出カットをどこに充てていくかというのはまた同様の議論があるんだろうと思います。歳出削減の努力が必要なのはもちろんですけれども、さて、その歳出削減したものが果たして年金の財源に向くのかどうか、それとも国債の財源に充てていくのか、その辺はもっと国民的な議論をしなければ答えが出ないんじゃないかと思います。

岡田委員 歳出削減というのも痛みが伴うんですね。だからこそ、これを年金の財源に使うということで国民的理解は得られると私は思いますよ。だから申し上げているわけであります。財務大臣の意見を突き詰めていけば、やはり年金特定財源をつくるという話にまでいかないと説明できなくなりますよ。私はそうじゃないと思うんですよ。

 今の議論の中で、そういった歳出削減も安定した財源に含まれるということは確認できたと思いますので、ぜひそのことを私は小泉内閣としても真剣に検討してもらいたいということを申し上げておきたいと思います。

 それから、道路の問題は先ほど菅代表が言われました。私も、道路の一番の本質は、これからどんどんつくっていくのかどうかという、そこだと思うんですね。そこの議論がどっかに行ってしまったかのような民営化論というのはほとんど意味のないものだ、こういうふうに思っています。

 同じように、郵政三事業の民営化の問題も、何が本質かということなんですね。

 私は、最もその本質的な部分は、三百五十兆というお金を官が集めて、そして官がそれを基本的に使っている、そこに、日本の国の資金の流れに大きな官という部分が存在しているということが最大の問題であって、そこをどうするかということがまず答えとしてなければ、どんな民営化をしてみても意味がないと思うんですね。

 現実にその三百五十兆、今までは財投ということで直入で使われてまいりました。そこは制度が若干変わりましたが、今でも財投機関債や財投債購入、あるいは最近は国債の購入という形で一般会計までその郵貯の金が使われるという結果になっています。そういう形で、本来民で使われるべき金の流れが、官がそこに、三百五十兆という非常に大きなボリュームが入ってきてこの国の資金の流れを阻害しているということが最大の問題だと思いますよ。そこをどうするかという答えをまず総理はきちんと出して、その上で民営化の問題を議論しないと、これは何の意味もないことをやっていることになりませんか。総理、どうですか。

小泉内閣総理大臣 十分意味がある議論なんですよ。改革の本丸とも言ってもいいんです。

 まず、民営、民間にできることは民間にと。私は、全部民間でやっていける事業だと思いますよ。できるんですよ。できるのに、なぜこれまで、今まで反対してきたのか。そして同時に、財政投融資制度、特殊法人、全部つながってくる改革なんです。これにメスを入れなきゃならない。

 民営化、是か非か、もうこの議論は超えたんです。この選挙の公約ができる前でも、民営化はいけない、いや、民営化よりも、この資金を利用してまた別の政府機関をつくった方がいいという、民営化とはほど遠い議論も出てきております。しかし、私は、民間にできることは民間にということで、財投とか特殊法人とか、全部官の分野、官僚の分野の機構改革に、行政改革、財政改革、全部通ずるからということでこの民営化論を打ち出したんです。民営化論を打ち出した場合に、一、二カ月で結論なんか出るものじゃありません。まず大事なのは、民営化、賛成か反対かなんですよ。それを民主党は示していない。逃げているというのは、私は、民主党の方が逃げていると言いたい。

 私は、質問だから言いますけれども、郵政改革において大事な視点はもう決まっているんです。どういう視点で改革するか。まず基本原則というのは、「「官から民へ」の実践による経済活性化を実現する」活性化原則です。「経済の活性化に資する形で、郵政三事業を実物経済及び資金循環の両面における民間市場システムに吸収統合する」。これは大事です。「構造改革全体との整合性のとれた改革を行う」、これは整合性原則、二つ目。「金融システム改革、規制改革、財政改革等との整合性をとる」ということであります。第三に、「国民にとっての利便性に配慮した形で改革を行う」利便性原則。「郵政が国民や地域経済のために果たしてきた役割、今後果たすべき役割、利便性に十分配慮する」。四番目には、「郵政公社が有するネットワーク等のリソースを活用する形で改革を行う」資源活用原則。「郵便局ネットワーク等が活用されるよう十分配慮する」。そして五番目に、郵政公社の雇用、これはやはり三十万人近くいますから、「郵政公社の雇用には、十分配慮する」配慮原則。

 こういう五つの基本原則にのっとって、どういう民営化の案がいいかということを来年の秋までに、専門家の意見も聞いてまとめるんです。それを、まだ決まっていない、まだ決まっていないと。決める方がおかしいですよ、これだけ重大な問題を。一カ月や二カ月で決まるわけないじゃないですか。

 これも私が言っているように、まず方針を出すということが大事なんです。今まで、民営化、是か非かの議論で行ったり来たり、一歩も進まなかったんです。これを民営化という方針を出すことだけでも、いまだに反対論者が多いじゃないですか。それを初めて、私の持論が政党の公約になって、内閣の方針になって、この公約実現に向かって、これから自民党も全部協力することになっているんです。

 そういう中で、民主党がこの民営化に反対だというのは、民間にできることは民間にという基本原則に反するのではないかと私は思っております。

岡田委員 総理は私の質問に全く答えていないわけですね。つまり、三百五十兆というお金があるときに、これをどうするのかということがまずなければ、民営化なんというのは、それこそ絵にかいたもちになっちゃうんですよ。そのことについて、総理としての基本的な方向を示せと言っているんですよ。

 では、民営化したらその新しい株式会社が三百五十兆を自分で運用するんですか。その能力がどこにあるんですか。我々は、まずその三百五十兆のボリュームを減らさないと話が始まらないということを、まじめにきちっと申し上げているわけですよ。総理はそれに対して、その民営化の入り口のところで、民営化するんだ、それだけじゃないですか。それでは答えにならないでしょう。もっと具体的に踏み込んで、総理としての方針が出なきゃ、民営化論の議論はしても結局答えは出ませんよということを申し上げているわけです。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 これも全く岡田さん、理解していないね、残念ながら。方針をはっきり出しているんです。民営化で五原則を出しているんです。来年の秋、一年間かけて専門家の意見をいろいろ取り入れて出すんです。

 私は独断専行いたしません。私のような浅学非才よりも、この問題については、金融問題、財政問題、行政問題、そして世界的なグローバル化に対応する問題、実に深くて広いんです。ですから、私一人の手には負えない。私よりもっと知恵のある方がたくさんいます。そういう専門家の方々の意見も聞いて、一年間かけてまとめようと。

 私に何でもしろと言う方が無理ですよ。総理大臣として大事なのは、方針を出すことです。この方針に沿って、多くの方の協力を得ていい案を出していくこと、これが総理大臣の責任だと思っております。

岡田委員 総理も民営化の話というのはもう十年以上言っておられるわけですが、その総論だけで十年間もったというのは、これは奇跡に近いと思いますね。(小泉内閣総理大臣「総理というのはそういうもんです。だから、総理というんです」と呼ぶ)いや、総理になったのは最近でしょう。やはり、国会議員、政治家として、民営化を述べるのであれば、もっと具体的なところに踏み込んで本来言うべきだったんじゃないですか。それが全然ないまま、民営化、民営化、念仏のように唱えても、それじゃ答えは出てきませんよ。また迷走するだけですよ。はっきり申し上げておきます。この民営化は必ず迷走します。

 外交の問題について最後にちょっと確認をしたいと思います。

 総理はよく日米同盟を言われますが、私は、今、日本の外交が、この日米に余りにも重きを置き過ぎた結果、ペンペン草が生えている、そういうふうに思うんですね。

 例えばASEANの問題。ASEANというのは、日本にとっては非常に重要な相手国、アメリカに次ぐ貿易量もあります。そのASEANに対して、宮澤内閣のときにアジア経済危機が起きて、そのときには八百億ドルの支援表明をしました。そのときぐらいまでは非常にいい関係ができてきたと思いますが、今や全くさま変わりしていますね。これは、やはり日本の政治のリーダーシップがないからですよ。

 中国との関係あるいはインドとの関係、そういったところが重要になってきている、ASEANの国々にとって。それは、東南アジア友好協力条約についてノーと言ったりイエスと言ったり、あるいは、例えばタイとの間の自由貿易協定について、農産物がひっかかって本交渉に入れなかったり、それは全部政治のリーダーシップがないからそういうことになっているんじゃないでしょうか。

 私は、ASEANという地域、国々は非常に大事だと思いますから、そういったところに対してしっかりリーダーシップを発揮すべきだと思いますが、総理、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 それは、ASEANとの関係は重視しております。これまでも重視してきましたし、これからも重視していきます。ともに進み、ともに歩むというASEAN諸国との関係というものは、ASEAN諸国も日本を必要としているし、日本にとってもASEANは重要であります。

 今までの会合におきましても、毎回、ASEAN諸国との関係というものを重視していく方針は変わらないということも私は表明しておりますし、来月には、初めて日本とASEAN首脳との会議が東京で開催されます。この場におきましても、ASEAN重視政策、基本方針は変わらないということをはっきり表明いたしますし、私は、ASEAN諸国と日本との関係は極めて良好に進んできていると思っております。この良好な関係を今後とも維持発展させていきたいと思っております。

岡田委員 ASEANの国々の首脳は決してそういう認識じゃないと思いますよ。

 では、日中の問題ですけれども、今回の北朝鮮をめぐる六カ国協議でもそうですが、やはり中国の役割というのはアメリカと並んで非常に大事になっております。しかし、その中国と日本の首脳間の外交というのは信頼関係がなくて、いまだに総理も中国にきちんと行けない状況が続いていると思います。その原因が総理にあることも、総理御存じのはずです。

 私は、個人的な靖国神社に対するいろいろな思いがあることはわかるけれども、しかし、今のこの北朝鮮をめぐる問題について、例えば中国が非常に重要な役割を果たすということであれば、やはりそこは、せっかく再選されたときに、公約していなかったわけですから、あのときに靖国にまた行くと言わなきゃよかったわけですよ。それなら、もっと中国との関係もきちんとつくれたかもしれない。そこは私は、総理がみずからの考え方を押し通した結果、非常に国益を損なっているというふうに思いますが、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 私、それも全くそう思っておりません。中国が行くなと言うから行かない、これがどうして国益に沿うのか、わかりません。

 日本には独特の伝統、文化、習慣というのがあります。靖国神社に行くというのは、私は、今日の日本の発展の基礎、平和の礎というのは、心ならずも戦場に行かなきゃならなかった方々のとうとい犠牲の上に築かれている、そういう方々に対して敬意と感謝、真心をささげてお祈りするというのは、私は当然だと思っております。そして、二度と戦争を起こしてはいけない、日本は平和国家としてこれからも発展していくんだという誓いを新たにする、これは何ら非難されるべきことではないと思います。

 もし、岡田さんなりが、菅さんなりが総理大臣になったら、中国の言うとおり従って靖国には参拝しないというんなら、それは民主党の考え方でしょう。私は、そういうことにはならないんじゃないか……(発言する者あり)全然逃げていませんね。

 私は、毎年行っていますし、これから中国との友好関係を維持していくことの気持ちは変わりません。新しい未来に向かって、中国と日本との関係は極めて重要であります。各分野においての交流拡大は進んでおりますし、今後とも、中国と日本との関係、政治、経済、文化、スポーツ、あらゆる面において拡大を進めていきたいし、私は、中国の目覚ましい発展は日本にとって脅威ではない、むしろ日本にとってチャンスと受けとめるべきだ、そういうこともはっきり言明しておりますし、これからの日中関係は極めて重要である、その方針にのっとって、私は、中国との友好協力関係を今後も誠心誠意進めてまいりたいと思います。

岡田委員 外交というのは相手のある問題ですから、みずからがどう考えたとしても、相手がどう受け取るかということもこれまた重要であります。

 私は、今、総理の答弁を聞いて、一国の指導者というのはどうあるべきかという、そこのところについての基本的考え方が総理と私で違うということがよくわかりました。今この北朝鮮の問題を抱えた日本が中国に対してそういった態度をとるということが国益を損なう、私ならそう考えます。

 それでは最後に、中東の問題も一言申し上げておきたいと思います。

 先般、イランの核疑惑の問題がありました。この問題について、独、仏、英の外相がイランに行って、そして、追加議定書への署名をイランが行うということになりました。この問題について、本来であれば、私は、イランと日本の今までの関係からすれば、日本の外相が行ってそういった話まで詰めることも十分に可能だったんじゃないかと思うんですね。しかし、そのことができなかった。そして、ヨーロッパの外相たちにその役割を、まあ、果たしていただいたことはいいことなんですが、しかし、日本としては、何のために今までイランとの関係をしっかりつくってきたのか。

 もう一つ申し上げましょう。きょうの新聞では、核の問題ですけれども、小型核兵器をアメリカが予算をつけたと。日本の伝統的な外交の中ではやはり核軍縮というのは非常に大きなウエートを持ってきたと私は思うんですね。しかし、この話も、最近、アメリカが公然と小型核兵器の開発を進めるということについて日本政府がどう述べたかというのは聞こえてきません。

 つまり、いろいろな問題が、今まで日本外交が戦後築いてきた、対中東、対ASEAN、あるいは核軍縮、あるいは対中国、そういった問題がこの日米の陰に隠れて非常におざなりになっていて、これでもしブッシュ大統領がかわるようなことがあったら、日本外交に何にも残りませんよ。そういったことについて、総理、どう考えておられるんですか。余りにもバランスが崩れていると思いませんか。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 私は、民主党の方がバランスが崩れていると思いますね。対米協力を対米追随と言ってみたり、ブッシュ政権を危険な政権だと言ってみたり、アフガニスタン、テロへの対策、これは必要だと言いながらテロ特措法に反対してみたり。今回のイラクの問題についても、イラク復興支援、人道支援、日本が進めていく。アメリカ政府を非難するけれども、なぜテロリストを非難しないんですか。なぜフセイン政権が問題があったということを言わないんですか。私は、むしろ民主党の外交感覚を疑っている。これでどうして日米同盟、国際協調体制を築いていけるんですか。

岡田委員 私の質問には全く答えてもらっていないんですね。我々は、テロリスト、これに対しての批判は当然していますし、我々の言っていることをきちんと理解していただいていないというふうに思います。

 それでは、総理、ちょっと視点を変えて質問しますが、最近、アメリカがこのイラクの占領政策についての考え方をかなりがらっと変えましたね。つまり、まず憲法をつくって、その上で選挙をやって、そしてイラクの国民による政権をつくるという考え方から、五月に暫定議会をつくって、六月に移行行政機構をつくり、そのときにCPA、連合暫定施政当局を解散するというふうに考え方を変えました。総理はどっちの考え方がいいと思うんですか。

小泉内閣総理大臣 私は、イラク復興支援、人道支援、イラクに安定した民主的な政権をつくるということに今米英初め各国の部隊が努力している、これに対して、非常に危険な仕事である、自分たちの国にとって直接攻撃されているわけでもない、そういう中でイラクの復興支援に尽力されている方々に心から敬意を持っております。

 そういう中にあって、これからアメリカができるだけ多くの国際社会の協力を得て、アメリカの、イラクに民主的な安定した政権をつくるという大義と善意を理解してもらうためにも、国際協調体制をつくることが必要だし、国連の関与を高めていくことも必要だということを折あるごとに述べております。その方向に向かっているということは好ましいことであり、ブッシュ政権を批判されますが、アメリカの民主党もこのイラクに対する対応は支持しております。

 私は、そういう面において、ブッシュ政権とアメリカは違うという民主党の考え方には同調できませんし、対米非難をすれば日本が追随しないという受けとめ方はしておりません。日本とアメリカの関係は極めて緊密に進めていくことが、日本が世界各国と協力関係を進めていく上において極めて重要だと思っております。日米同盟と国際協調、これを両立させるということは、今までも、現在も、将来も、日本にとって変わるべきでない基本的な、重要な外交政策だと思っております。

岡田委員 総理は私の質問に全く答えなかったわけですが、私が言ったのは、ブッシュ政権が政策を大きく転換した、つまり、早くイラク人の手による暫定政府をつくるという考え方に変えた、総理は、その前の考え方を支持するのか、変えた後の考え方を支持するのかと。それに対して総理はお答えになりませんでした。我々は、早くイラク人の手による政府をつくるべきだという主張をしてきましたから、今回のアメリカの政策転換は、不十分ですが、それなりに評価すべきところもある、こう考えています。

 なぜ総理は、前の考え方と転換した後とどちらがいいかということについて答えられなかったんでしょうか。それは、結局、その時々のアメリカの言うことをみんな、イエス、イエスと言っているから答えられないんですよ、あなたは。だから、総理は、恐らく、ブッシュ政権はどうなるかわかりませんよ、だけれども、もし大統領がブッシュ大統領から違う大統領にかわったときにも、そこで一定の政策転換が行われるでしょう、いろいろなことについて、さっきの核なんかもそうだと思います、そのときにもまた、イエス、イエスと言うんですか。結局、その時々のアメリカの政権に対して一〇〇%イエスと言い続ける、それが本当に独立国なんですか、あなた。

 私は、そのことだけ申し上げて、質問を終わります。

笹川委員長 この際、山岡賢次君から関連質疑の申し出があります。菅君の持ち時間の範囲内でこれを許します。山岡賢次君。

山岡委員 民主党の山岡賢次でございます。

 きょうは、景気の回復と雇用の安定、こういうことをメーンテーマにお聞きしたいのでございますが、民主党のしんがりでございますから、今まで、菅代表、岡田幹事長からの御質問が続いてまいりました、関連するものもつけ加えさせていただきたいと思います。

 早速でございますが、今道路公団のお話が出ておりましたけれども、前藤井総裁の幻の財務諸表の問題、大きく取り上げられてまいりました。答弁が何度も変わっている。二転三転している。藤井総裁の更迭を私どもは強く主張したのでございます。

 しかし、そのときには、例えば九月の二日には、扇前大臣が、あるいは国土交通省もあわせまして、一連の財務諸表については疑惑はない、藤井総裁が責任を負うことはない、こういうふうに発表して更迭を否定いたしました。小泉総理もそれを了承していたと報じられております。ところが、九月の二十二日になりますと、石原国土交通大臣が扇大臣にかわって就任をされるや否や、突然、総裁更迭に転ずるところと相なったのは御承知のとおりでございまして、小泉総理にお伺いをいたします。

 我が党が何度も藤井総裁の更迭を要求したときに、そのときにはなぜ更迭をしなかったのか、その理由をお伺いいたします。

小泉内閣総理大臣 物事には時期というものがあるんです。時期をよく判断する、これも大事であります。

山岡委員 それでは、扇大臣のときには更迭をしなかった、その理由と、今度は石原大臣になったら更迭する、時期は変わったんですが、理由も変わったんでしょうか。

石原国務大臣 まず、私がなぜ藤井総裁を解任に処したかということをお話しさせていただきたいと思いますが……(山岡委員「そんなこと聞いていないよ」と呼ぶ)これをお話ししませんと、なぜ扇大臣がという質問にお答えになりませんので、ちょっとお時間をちょうだいしてお話をさせていただきたいと思います。

 十月五日の日でございますけれども、五時間にわたっていろいろな御議論をさせていただきました。私の質問に対して、正面からお答えになることが大変少なかったという印象を持ちました。

 一つのエピソードをお話しさせていただきますと、二時間たったときに、では、大臣の言う、今二つと言いましたけれども、それは何ですかと。ずっと私が話していたことに対して、何にも聞かないで全く別のことを話している。こういう方にこの未曾有の道路公団の改革というものを任せるわけにはいかないなということを私は強く感じたわけであります。

 そして、その日に藤井総裁に対しまして辞表を提出願いたいと言ったら、そのときは御了解をいただいたわけでございますけれども、その翌日、よんどころない事情で辞表が出せなくなったというお電話をちょうだいし、過去の、五日の審議の経過を控えると、大臣に対しては申しわけないと伝えてくれ、こういう話があったわけであります。

 そこから質問にお答えすることになるわけですけれども、では、何で扇大臣のときは解任しないで私になったらかという質問だと思うんですけれども、扇大臣のときには、今山岡委員が御指摘されましたように、幻のいわゆる財務諸表の問題、なぜ幻かというと、根拠が脆弱であるから、そして扇大臣のイニシアチブによりまして財務諸表をつくった、そしてその財務諸表が社会的にも認められるものであるのかということを、公認会計士の方々、言葉をかえますと監査法人に確認してもらわなければならなかった、そういう問題が八月いっぱいかかったわけであります。

 九月になってどういう問題が今度出てきたかというと、料金の別納制度の問題が出てきたわけです。これは大変大きな不正があったというような報道によってなされた問題ですけれども、こういう問題。

 要するに、避けては通れない問題を扇大臣は解決に当たっていた、その結果、この時期というものが私が就任したときにずれ込んだと御理解をいただきたいと思います。

山岡委員 そうすると、扇大臣のときには解任をするようなものはなかった、財務諸表には問題はなかったと。ところが、石原大臣になったら解任するだけの理由の問題が出てきた、そういうことを言っているわけですか。もうちょっとはっきり言ってください。何が違ったんですか。

石原国務大臣 先ほども御答弁をさせていただきましたように、未曾有の改革を行う総裁として、私がお話を、五時間、私は初めてしたわけであります。そのとき、その人間性、あるいは私の質問に対しての答え等々を総合的に勘案して、この未曾有の改革を行う人物としてふさわしい、ふさわしくない、こういうものを総合的に判断をしたわけであります。

 扇大臣もそういう御答弁はされておりますし、扇大臣としては、どうしても避けては通れない、道路公団改革を行う上で避けては通れない問題を抱えていたわけです。道路公団という公団が抱えていて、この問題を、その総裁をかえることによってよりこの問題の解決に時間がかかってしまう。すなわち、さっき委員が御指摘になった幻の財務諸表の問題、そしてまた料金別納の問題、こういう問題が八月、九月と連続して起こり、公団がつくった財務諸表に対しての社会的な信頼性をどうやって確立していくかということを扇大臣は苦慮されて、といいますのも、会計事務所がこれに対してお墨つきを与える、検査をするということに対して、一般入札をしてもだれも応募してこなかった、そういうもろもろの問題を解決するとき、総裁を更迭するという時期としては不適切だと扇大臣が考えられたものだと私は理解しております。

    〔委員長退席、北村(直)委員長代理着席〕

山岡委員 そんなことは全くないんです。更迭する理由がないから、こういうふうに言ったわけですよ。だから、財務諸表の問題については扇大臣は、更迭する理由にならない、こういう判断で更迭をしないで、総理もそれを了承した。

 ところが、石原大臣が五時間話しても、いいかげんな話で煮え切らない、腹立ったからやめさせた、こういうことですか、あなたの言っていることは。そういう理由で総裁をやめさせるんですか。

石原国務大臣 道路公団法を読んでいただければわかりますように、不適格と考えられるときはその地位をかわっていただくことができるという条項がしっかりと書かれているわけですね。

 それは、いろいろな問題があったということは委員も御承知の上で、その上で公団自体が抱えている問題として解決をしなければならない、避けては通れない問題を処理していくことによって時間的経過があったということは事実だと思います。

山岡委員 もうそういう話を聞いていてもしようがないですから、結論を申し上げますと、いろいろな問題があった、そのとおりなんです。しかし、そのことについては、扇大臣のときには、これは責任はない、こういうふうにそのことを決断した。ただし、その後、あなたがかわっていろいろと話をしたら、非常に人間性にも問題があるからそのことを変えた、こういうふうにしか聞こえない。

 しかし、このことは後で、小長井良浩弁護士、これは藤井氏の代理人ですが、十月十八日の会見で、解任が選挙の道具に使われており、人事権の乱用だ、人権の侵害ですよ、こういうふうに言っているんですよ。このことについて、総理、どうお考えになりますか。

小泉内閣総理大臣 それは、人事権は国土交通大臣が持っているんですから、不適格だと思えば解任していいんでしょう。役人は解任してはいけないという身分保障がありますけれども、そういう中にも、規定があるんですから、不適格と判断した場合は解任していい。どうして解任しなきゃならないのかという点については、大臣としてもいろいろ立場があります。改革に必要だと思ったから解任したんでしょう。私はそれでいいと思いますよ。

    〔北村(直)委員長代理退席、委員長着席〕

山岡委員 大臣に解任権があるのは決まっていますけれども、しかし、お役人の皆様にも人権もそれこそあるわけで、理由をはっきり示さなければ、解任ということは大変な事態ですから。

 それじゃ、石原大臣、申し上げますけれども、こういう理由で解任したと後で文書で説明していただけますか。気に入らないからじゃないんでしょう。

石原国務大臣 この問題につきましては、聴聞の手続の中で明確にお示しをさせていただいておりますので、山岡委員に、委員長の許可を得れば、後日、その文書を配付させていただきたいと思います。

山岡委員 いいですか、委員長、後でもらって。

笹川委員長 許可します。

山岡委員 許可、いいですね、それは後でいただきますから。

笹川委員長 わかりました。

山岡委員 わかりましたと。まあ、新任委員長ですから。

 もう一つお伺いしたいんですが、この解任の日というのは、気に入らないからというような理由じゃない、立派な理由がある、こう言われましたが、なぜわざわざ十月の五日にしたんですか。十月の五日というのは、十分わかっているとおり、民主党と自由党が合併をするそれぞれ歴史的な日であったわけです。

 総理、笑っているけれども、本当に総理らしいやり方だな、こういうふうに思いますよ。やはり政治家というのはそれぞれお互いの立場を考えていくということでずっと今までやってきた。敵と味方と戦うのはそれはありますよ。しかし、わざわざ相手が一番重要なセレモニーをしているときに、なぜその日にぶつけたんですか。前の日だってできたじゃないですか。その前の日だってできたじゃないですか。いいですか、自民党の人たちから聞いたんですよ、幾ら何でもあれはないよな、山ちゃんと。

 どうですか、石原さん。

石原国務大臣 山岡委員がかつて自民党に所属され、その一番最初は私も同じ政策集団で一緒に研さんを励んだ仲でございますので、山ちゃんがどなたかはわかりませんけれども、物理的な理由でございます。

 これは私の公表されている日程を見ていただければわかりますように、ずっと予算委員会等々がその前の週はございました。土曜日は地方に応援に頼まれておりまして、私おりませんでした。そのような物理的な中で、五時間というまとまった時間をとれるということは、ウイークデーにはとれないという現実があったわけでございます。

 そして、自由党と民主党が合併するというのは歴史的なことでございますから、その歴史的なことがニュースの正面に来ているということは新聞を見ても明らかなわけだと私は考えております。

山岡委員 その明らかなところにわざわざその日を選ぶ、まあ、義理も人情もない政治になってきたのかもしれませんが、そういう自民党に変わってきたのかもしれませんが、まあ、こういう、弁護士さんの選挙目当てのやり方だとか、こういう日にちをぶつける、まさに、言うなれば、おやりになっていることは、いかにも、首を切る、こういうことをすれば、血を流して改革をやっているんだ、中身のない改革が中身のある本当にすごいものであるかの、こういうような印象を与えるのは実にうまい小泉総理です。

 また、そのときに、選挙の前に、中曽根元総理と宮澤元総理のその首も実は比例代表名簿からばっさりと切り落としている。民主党は若手がそろっている、自民党もこうやって若手にシフトしたんだ、そういうことをお考えになりながら多分やっているんだろうな、こういうことが平気にできる総理がやはり現代的な総理と言うのかなと。あなたはそうやって笑っているけれども、恥ずかしくて笑っているんじゃないですか。

 そこで、総理にお伺いいたします。

 菅代表から総理に公開質問状をお渡ししてあるはずでございます。どういうことか念のために読ませていただきます。

 小泉内閣の石原伸晃国土交通大臣は、十月五日の藤井治芳日本道路公団総裁との会談の席で、政治家のイニシアルを挙げて疑惑を指摘する話が総裁からあったということを、テレビ番組の中で明らかにしました。政官癒着こそが、税金のむだ遣いの最大の原因であります。

 小泉内閣として、国土交通省政官癒着疑惑について、事実関係の徹底した解明を行う必要があると考えますが、小泉総理の見解をお伺いしたい。なお、今週発売の週刊誌の中で、藤井総裁は、青木幹雄自由民主党参議院幹事長から地元の道路工事に関連した電話を受けたこと、並びに小泉総理の飯島秘書官から人事に絡んで電話を受けたことを述べたという記事が掲載されておりますが、事実関係はいかに。事実とすれば、どのような内容であったのかを明らかにされたい。

 以上、質問する。速やかに回答を願いたい。

 こういう文書がお渡しになっておられるのは御存じなのか、それに対する回答はないんですが、今ここで回答していただけますでしょうか。

石原国務大臣 ただいまの山岡委員が御指摘されましたこの質問状というものは、選挙期間中に、私、ちょうだいいたしました。そして、この質問状の冒頭が私のテレビでの政治家のイニシアル云々ということから始まっておりますので、私の方から御答弁をさせていただきたいと思っております。

 これは、具体的な話は何にもないんです。さっきの山ちゃんじゃないですけれども、ABCDのアルファベットを言って、私は、何でそんな話をするんだろう、私がこのアルファベットからだれを想像するんだろうということを意図されて発言したとしか思えなかったわけであります。ですから、エピソードとしてそういうお話をさせていただいたわけであります。

 また、週刊誌のことについて私がとやかくお話しするのは不適切かもしれませんけれども、いわゆる青木幹雄参議院議員に関する件については、高速道路建設にかかわる工事発注に関することと、週刊誌を読む限り、私は理解をさせていただきました。これは、日本道路公団の業務の執行上の問題であるということは言うまでもございませんので、国土交通省として、その経緯とかあるいは事実関係を日本道路公団からこうこうこういうことがあったという報告を受けている、それだけのこととしか掌握をしていないし、ただそれだけのことであると認識をしているわけであります。

 また、青木さんの次に言っております飯島秘書官でございますか、公団内の人事に関する記事というふうに私は一読して承知しております。しかし、道路公団の人事に関することであるとするならば、道路公団の総裁が判断する事柄であり、どういう人事があったかというようなこと、不正等々大きなものがないわけでございますので、国土交通省が公団の細かい人事まですべてを把握しているという事実はございません。

山岡委員 それでは、端的にお伺いいたします。

 週刊誌は三名というふうに書いてありますが、あなたの談話では五、六名のイニシアルが述べられた、こう言われております。実名を言われたのか、それはだれなのか、あるいはだれのことだと思いますか。

石原国務大臣 これがまさに先ほどの山ちゃんで、山ちゃんでだれを想像するのかということと全く同じだと私は考えておりますし、こんな問題は、五時間の討論の中では本論じゃないわけですよ。本論じゃないことを言って、何でこういうことをこの方が言うんだろうということを疑問として私が持ったのであって、私がそのイニシアルでだれを念頭に置いたかというようなことは、今記憶にございません。

山岡委員 石原大臣と藤井総裁の間の話では本論じゃないかもしれませんが、しかし、語られていることは、この今の政治の本質的な問題が語られているんです。今日の不景気はどこから来ているか。私どもはいつも言っていますが、政官業癒着の構造から、これが、国民の血税がそういう政官の方に流れてしまっている、地方や国民の方に流れていかない。そこが問題なんだということを国会で再三再四追及をし、そのたびごとに事件が起こり、または国会議員がやめていっている、これが現実じゃないですか。

 そういう名前が語られたということは極めて重要なことであって、あなたにとって重要なことじゃないかもしれないが、国会や国民にとっては極めて重要なんですよ。名前を言ってください、名前を。

石原国務大臣 山岡委員は物語をつくっていますよね。私はそんなことを申しておりません。私がこのイニシアルに対してだれを思わせるかということを意図して話をしたんですよ。ですから、これは本則ではないけれども、こんな話をしたから五時間話がかかったということを紹介したのであって、今、山岡委員の言われるような物語があるとするならば、具体的にあるとするならば示していただきたい。私も、あるならば、それは徹底的に厳正に調査いたします。

山岡委員 では、わかりました、示してあげますよ、示してあげますから。いいですか、あなたははしゃぎ過ぎたんですよ。テレビで出たり記者会見したり、選挙演説でぺらぺらぺらぺらと自慢げに、こんなことをやっているんだとさんざんしゃべってきたじゃないですか。今さら物語だなんて、よく言っていただきますよ。聞かない話で物語を述べない。

 いいですか、では、あなたは、十月十二日のテレビ出演や記者会見で、藤井氏は、だれだかわかるようなイニシアルで五、六人の政治家を挙げ、自分が建設省勤務時代のこととして、国有地の払い下げなどこんな疑惑があることを知っているぞ、道路関係議員は自分が面倒を見ているんだということを自慢げに話したと。あなたはそう言っているんですよ。これがうそなんですか。私は、不正があったら公にしてください、こう言ったら、死人が出る、こういうふうに言ったと。さらに、自分がすべてを話せば大変なことになるぞとおどしをかけてきたと。二十一日の記者会見では、何か土地の話はしたんですけれども、何とかの土地がどうのこうのというとか、こういうふうにあなたは極めて具体的に言っているじゃないですか。これは作文じゃないですよ。あなたの会見が全部載っているんですよ。インターネットで見たらどうですか。証拠があると、出せと言うのなら、これはどうなんですか。このことをあなた言ったのか言わないのか。

石原国務大臣 先ほどの質問は、イニシアルをだれだと思うかという質問だから、だれを思うか、そのときだれを思わせようと思ったのかということを私はそのとき思ったという話を御披露したという話を正直に御説明させていただいているわけでございます。

 今の点につきまして……(発言する者あり)私、答えているんですけれどもね。(山岡委員「どうぞ」と呼ぶ)いいですか。どうもありがとうございます。

 私がお話をさせていただいたのは、そういうイニシアルを出して国土交通大臣との話にそういうことを言うことは筋違いだ、もしそこに不正があるなら、総裁がみずから明らかにしなさいという話をしたという話を御披露させていただいたわけでございます。(発言する者あり)全然違わなくないじゃないですか。私はずっと言っている。

 こういう全く話の違うことを言う。そういう意味で、ニュージャパンの話とかされたわけですよ。ニュージャパンの話というのも、私は、はばかるから、広い意味で国絡みの土地の話が出たという趣旨でお話をさせていただいたということは、もう記者会見でもはっきり言っているわけであります。国有地という言葉が勝手にひとり歩きしているだけであります。

 この話は、もう私言っておりますし、その問題も私調べましたよ。仮にニュージャパンという話が出て、週刊誌に出ちゃいましたからね。まさかそんな話を総裁がべらべらしゃべるとは思わなかったから。そうしましたら、国土交通省がこの土地の絡みで民都機構から相談を受けたという事実はありましたけれども、値段が高かったんだそうです、その買ってくれという金額が。だから、一切これはやめろということを事務的に積み上げていったということも私は確認いたしたわけでございます。

山岡委員 あなたの言っていることをやると、これは一日やっていなきゃならなくなるんですけれどもね。

 もう一回言っておきますけれども、あなたは、だれだかわかるようなイニシアルで言った、こういうふうに言っているんですよ。これがうそだというのならまた話は別ですが、そういうふうに言っている。さらに、そのイニシアルが、私が言ったら非常に迷惑をかけると思います、こうまで言っているんですよね。だれだかわからずに迷惑をかけるんだと。まあ、それはいいです。もう時間、ほかに経済問題をやりたいわけですから、この辺でやめますけれども。

 いいですか、ここで委員長に申し上げますが、彼の話というのは、今ここでは、言っていないとか、明らかにもう全部残っているんです、そういう点においては。そして、その話はどんどんどんどんどういうわけか後退をしている。逆に今では居直っている。非常に不明確であるということが一つ。

 それからもう一つは、石原大臣が、本人が言っているんですが、最後にとうとう、疑惑があるなら藤井総裁がはっきりさせるべきだ、こうも言っているんですね。言っていますわね。藤井総裁にボールを投げている。これが二つ目。そういうふうに言っているんですから。

 三つ目は、藤井総裁自身も、代理人の言葉として、本人は墓場まで持っていくというのが基本的な考えだが、しかし自分の身を守るためやむを得ないこともある、必要ならはっきりさせたい、こう言っているんですよ。

 本人もはっきりさせたいと。あなたも本人から聞きたいと言っている。あなたの話も大分変わってきている。これでは、もう一回藤井総裁を、ここに来ていただいて、参考人として呼んでいただきたい。そして、予算委員会を改めて開き直していただきたい。委員長にお願いいたします。

笹川委員長 後刻理事会で協議いたします。

 質問を続行してください。

山岡委員 時間がなくなっちゃって恐縮なんですが、道路公団総裁、おいでですね、済みません。

 総裁にもちょっとお聞きしておきたいんでございますが、総裁は、就任したら、なかなかやはり歯切れのいいことを言っていらっしゃいます。十一月十六日の民放の報道番組で、公団内で話を聞いて必要なら調査をやるのも選択肢の一つと考えると、イニシアル問題を内部調査するという可能性を述べておりますし、また、明日から公団内部の関係者からヒアリングをしたい、それ以上の行動が必要ならその点で考える、こういうふうに公式に発言をされていらっしゃいますが、調査はされたのか、それともこれからするのか、お答えをいただきたいと思います。

近藤参考人 お答え申し上げます。

 私自身、公団内で知り得る情報があれば、しっかりと私自身把握をしたいと考えております。したがいまして、先週から、公団内の関係者、複数でございますが、話を聞き始めたところでございます。

山岡委員 もう一度お聞きしますが、では、正式に調査する、こういうことですね。

近藤参考人 お話を関係者から聞いた上で、その後の措置については、その措置が追加的に必要なのかどうかも含めまして、私、責任を持って判断をさせていただきたいと考えております。

山岡委員 なかなか立派な総裁ですよ。それが当たり前なんです。やはりきちっと正式にこの調査をして、それを公表していただく。そうしなければ、公団自身がこれから信用されませんから、あなたも運営を非常にやりにくい。ぜひ委員会に報告していただきたいと思います。よろしゅうございますか。――では、答弁はその後でいいです。もう一回、別なことを一緒に聞きながら、答弁をいただきたいと思います。

 またちょっと別件ですが、この話とは違いますが、総裁はその際に記者会見で、公団は会社更生法を適用する状態に限りなく近づきつつある、こういうふうにお述べになりましたね。そして、何とかキャッシュフローは回っているが、金利動向によっては極めて厳しい、民間企業と同じ尺度で債務を計算すると二〇〇二年で約二十八兆円、年間の高速料金収入は二兆円にすぎず、単純計算で返済完了まで十四年もかかる、金利が上がれば返済額はさらに膨らむため、金利の低いうちに返済を急ぐ考えだ、こういうふうに述べておられます。

 限りなく会社更生法に近づいていると。これでは民営化できませんよね、総裁。さっきの話と一緒にあわせて答えてください。

近藤参考人 お答えをいたします。

 先ほどの調査結果といいますか、私のヒアリングの結果の公表でございますが、要するに、私なりにしっかりと公団内で知り得る情報は把握をしたいということで、今関係者から話を聞いているわけでございます。その結果につきまして、さらに追加的な措置が必要なのかどうかにつきましては、私はその時点で判断をさせていただきます、そのように申し上げたわけでございます。

 それから、今の、限りなく会社更生法適用に近づいているのではないかというお話でございますが、これは、仮に公団が民間企業であったとすればと、そういう前提で私お話しさせていただきました。

 それで、先ほど引用された私の発言でございますが、そのようには私は発言しておりません。それは新聞の恐らく推測記事であろうかと思います。

 それで、なぜそのような発言を私がしたかということでございますが、基本的には、大変今厳しい財務状況にあるということを端的に表現をしたい、そう考えたからでございます。その理由といたしましては、先ほどの読み上げられました、推測記事ではございますが、確かに今、借入金、これは二十八兆あるわけでございます。総収入が、ラウンドナンバーではございますが、二兆でございます。金利支払いが、昨年度、一年間を通じてみますと、七千億円を超えた金利支払いをしているわけでございまして、ただ、御承知のとおり、現在、金利は非常に低い水準でございます。これが正常な金利に戻った場合にはなかなか厳しい状況になるなということでございます。

山岡委員 あなたは民間からなられたんですから民間的発想で見るのは当たり前で、逆に言うと、民間的発想というのは当たり前な発想で、官僚的発想とか政治家的発想の方が実は狂っているんです。だから、あなたは正しいんです。だから、あなたの目から見て、そういう、限りなく会社更生法に近づきつつあるということは、これは民営化をできない、こういうふうに言っているのと同じことで、ただ、そう言えないから言わないんでしょうけれども、お気持ちはよくわかります、そういうふうに受けとめております。

 また、近藤総裁は、二十日の記者会見で、この財務諸表について、信憑性に疑問が出ている、六月の発表した財務諸表は仮置きのもの、必要なら追加措置をとる、見直す可能性もある、こういうふうに述べておられますが、それもそのとおりですか。

近藤参考人 六月に一応発表しておりますあの財務諸表につきましては、その後、新日本監査法人がその計算方法の監査といいますか検証をしております。その結果が八月の末にたしか発表されているということでございますが、この内容につきまして、私、近くきちんとお話を伺う予定にしております。

 また、本年度、平成十四年度の決算につきましては、昨年以上に精度を上げた、民間並みの財務諸表をつくる努力を今している、そのように私は承知をしておりまして、その作業状況につきましても、近く私、関係者から、公団内の関係者からお話を聞く予定にしております。

山岡委員 総裁、御苦労さまでございました。

 ただ、せっかく民間からおなりになったんですから、本当にそのよさを……(発言する者あり)失礼しました、政治家から、しかし、その前は民間ですけれども、その初心を忘るべからず。最初の記者会見の元気と今とは若干トーンが落ちてきたような気がするんですが、どうか、そうなったら値打ちがないんですから、何のために小泉総理が民間から起用したかという意味もなくなる、多分。ですから、それは格好つけだけに終わらないで、小泉総理の格好つけだけで終わったんじゃ困るんです。やはりあなたが本当に中身のことをやっていただきたい、勇気を持ってやっていただきたい。そのことなら我々もこれはバックアップをしてまいりますから。

 御苦労さまでした。もういいですよ、帰って。

 では、景気の問題についてお伺いいたします。竹中大臣にお伺いをいたします。

 十一月二十日の会見ですか、ああ、そうじゃなくて、これは関係閣僚会議に出席されて月例経済報告の中身を報告されましたけれども、景気は、持ち直している、日本の景気は回復軌道に乗っている、こういう認識を示されました。

 また、日銀総裁、済みません、お待たせしました。こんな長くなるつもりはなかったんですけれども、十一月二十一日は、十一月の金融経済月報で「景気は、緩やかに回復しつつある」、マスコミによれば底離れ宣言だ、こういうふうに報告をされているわけですが、先に竹中大臣にお伺いをいたしますけれども、この詳しい中身はいいですから、レクチャーを受けに来たんじゃないですから。

 いいですか、このあなたが報告した中身については、今、一時的にそういういい数字が出てきた、こういうことを言わんとするのか。要するに、景気づけよう、元気づけよう、わかりやすく言えば、塩じい方式と言うんですけれども、そういうのを。中身はないが、元気な、いいことを言わにゃなんねえよななんて平気で財務大臣のときに言っていましたが、そういうために今言っているのか、それとも本当に上向いてきているのか、どっちなのか、そのことだけ言ってください、こうこうこうだからというのは余り要りませんから。

竹中国務大臣 基本的には、日本の景気はきちっと持ち直しの動きにあるという認識を持っておりまして、そのことを報告させていただいております。

 これは、昨年の最初から持ち直しの動きがあったんですが、昨年の後半はいろいろ、イラクの問題、その後のSARSの問題等々がありまして、踊り場的な状況にあった、それが、世界の経済全体がさらに持ち直しに向かう中で日本もそのはっきりとした動きが出てきた、そうした動きが、とりわけ企業の業績であるとか設備投資とか生産の中にあらわれているというふうに考えておりまして、こうした動きをさらにしっかりとしたものにぜひ持っていきたい、さらに地域や雇用に浸透させていきたい、そのように思って月例経済報告を行っております。(発言する者あり)

山岡委員 事実誤認だなんという今話がありますが、月例経済報告にすら、よく見ていけば、個人消費は横ばいで推移している、そして、手がたさがなんて書いてありますが、見られるというので、要するに横ばいだということで、手がたさが見られるのはだれが判断したのかさっぱりわからないことで、自分らで勝手に手がたさが見られると。どういう数字が手がたいのか。

 消費マインドは持ち直しの動きが、これも見られると。持ち直していると言えばいいじゃないですか、持ち直しているんなら。どういう数字かというと、見られると。これは感想ですよ。

 機械受注は足元ではやや弱含んでいるが基調としては持ち直している。ひどいですね、これは。企業収益の改善が続くものと見込まれる。見込んでいるだけですよ、これは。こんな、見込んでいたんじゃ、銀行は金も貸してくれないですよ。設備投資に先行投資が見られる。

 住宅着工は底がたく推移していることが期待される。

 倒産件数は緩やかに減少している。つまり、ほとんど変わらないということを言っているんですよね。

 雇用情勢は、完全失業率が高水準で推移し、依然厳しいものの、持ち直しの動きが見られる。持ち直してなんかいないんですよ。五・四が五・一になったなんというのは数字のマジックで、実際の失業者数は減っていないんですから。求人しないだけですから、むだで、あきらめて。三百四十三万人もいるわけですから、こんなのはもう数字のマジック。

 こういう状況に書いてあるものを、平然と、景気は回復したと。あなたは反論をしたいでしょうから、別にしないでいいです、こう書いてあると私は言っているんですから。これをやっていたらもう水かけ論で切りがないので、あなたのレクチャーを聞いてもしようがないので、これだけのことをはっきりと書いてある、こういうふうに言っているんですよ。それは認めますね、書いてあるんですから。

 そこで、福井総裁、お時間がないところ済みません。

 あなたも、景気は回復している、こういうふうに歩調を合わせました。まさか、政府が言っているのにあれはうそだとは言えないから、しようがないんでしょうけれどもね。

 米国など海外景気の回復を背景にして輸出が増加、それから鉱工業生産が横ばいから増加に転じたことなどを挙げて、生産の増加が明確に確認できて、前向きの循環が実際に動き始めた、こういうふうに言って、景気は底離れをしたということのニュアンスで言っておりますが、同時にあなたは、回復のテンポは緩やかなものにとどまると。あなたの方が正直ですわね。良心の呵責にとがめられていると思いますね。

 そこで、今は確かに一時的に数字はよく出ている、こう言いたいのか、今後ともずっとよくなる、こういうことを言っているのか、お答えください、同じように。

福井参考人 お答え申し上げます。

 先週の金曜日、連休の直前に私ども確認いたしました経済の判断、今のお言葉のとおり、経済はようやく底離れをして緩やかな回復過程に入った。私どもの判断は、来年にかけてこの回復は続くということでございます。

 ただし、非常に力強い回復まで展望できるかといいますと、まだ企業も金融機関も、過去の過剰投資等の重荷を引きずりながら、この問題を克服しながら前進しなければなりませんので、足取りはそんなに力強いものにならないというふうに見ておいた方がよかろう、そういうふうな判断でございます。

山岡委員 総裁の方が正直だと言っているのは、確かに今、数字は少しよく出ているんですよ。しかし、それは何かといえば、国内的には、デジタル関連商品、薄型テレビだとかDVDレコーダーとかデジタルカメラとか、これが今たまたまヒットしているんです。また、九月時の決算は、去年の三月と比べると非常によく出たのは、株価の一時的な値上がりですよ。圧倒的に大きな要因は、北米や中国からの外需によるもの、こういうことなんですよ。だから、今、景気の数字がちょっとよく出ているんです。

 しかし、総裁、もうわかっているんだと思いますけれども、デジタル製品というのはもう値下げが始まっているんですよ、そういう点においては。これがみんな一斉に入ってきたら、例によって、電化製品というのはいつもそうなんです。最初のうちはぱっと勝つけれども、後でだあんと落ちて、みんなもうあっぷあっぷになっちゃう。しかし、参入しないわけにはいかない。こういうことを繰り返しているわけです。

 そして、株価も、あのときに比べて九月は二八%上がったんですけれども、例えば、あのときは一万二百十九円。そうでしたね、九月末は。きょうは、三時に聞いたら九千九百六十円、三時の時点では。ちなみに、小泉総理が就任したときは一万四千円弱。これでは、中身はもうどんどんと低下をしている。しかも、アメリカは大統領選挙を控えているわけですから、釈迦に説法かもしれませんが、これはもう国内内需を拡大していかなかったら選挙にならない。当然、ドル安・円高基調にシフトしてきていますね。だから株が下がってきているわけです。

 また、鉱工業がよくなっていると。それはそうなんですよ。中国はオリンピックと万博でバブルですから、今。これも今終わってきているわけですね。終わってきている。しかも、これからイラクの戦争では泥沼ですね。

 私が日銀総裁なら、とてもこんなことは言えませんわね。どうですか。

福井参考人 経済を取り巻く環境を見ますと、今おっしゃいましたとおり、さまざまな逆風が引き続き吹いている。その中を、やはり勇気を持って前進していかなければならない。我々の政策体系も、それに十分整合性がとれるような組み立て方で前進していきたい。

 必ずしも悲観的な材料ばかりではございませんで、国内的に見ましても、企業は、やはり血のにじむような努力をしてリストラの成果を上げ、収益を上げています。そして、その収益は、過去の借金も返しておりますが、同時に、今、デジタル関連とおっしゃいました、これを新しく需要を開発しながら、つまり、消費者の心を刺激しながらの新しい投資も始まっているわけで、こうしたところをしっかり支えていかなければいけない、それは可能だというふうに考えております。

山岡委員 いい面もある、そういうふうに言っておられますが、それじゃ、あなた、これからよくなるということに責任を持ちますか。持てないでしょうけれども、そこまで言うんなら。

福井参考人 先ほど申し上げましたとおり、日本銀行の政策決定会合で正式に確認した情勢判断でございます。緩やかに回復するであろう、ただし手放しの楽観はしていない、そういう判断については、日本銀行の責任を持って申し上げます。

山岡委員 手放しの楽観はしていないと言っているから、これはもう政府よりましで、それ以上言いたくありませんけれども、実際、日銀短観で大企業の製造業がワンポイントプラスをつけた、そういうことでしょう。

 それはそのとおりですよ。だから、そういうことをして、ああ、よくなったよくなった、こう言いたいんでしょうけれども、実際には、大企業の非製造業はマイナス一三ポイントですよ、御案内のとおり。さらに、中小企業、製造業はマイナス二三ポイントと非製造業はマイナス三一ポイントですよ。壊滅的な数字ですよ、実際は。これで景気がよくなったなんて言ったら、きょうは、みんな選挙をやって、自民党の皆さんも選挙をやってきたんでしょうけれども、地方の皆さんや中小企業や商店街の皆さんがもう本当に、政治家は景気がよくなったなんて言ったら殺されますよ。おれたちの命はどうなっているんだ、いいかげんにしてくれ、これが本音ですよ。これが実態ですよ。

 なぜかといえば、結局、これはこういうことなんですよ。なぜ、大企業の製造業のポイントがワンポイントになったか。それは、外需であったりあるいは本業でなったのならいいんですけれども、やはりそれはまだ一部なんですよ。実態は、結局は下請関連企業の工賃を一五%引き、二〇%引き、三〇%引き、四〇%引きですよ。当然、下請は、リストラ、リストラをしていかなきゃやっていけない。そういうことでみんなリストラをして、給与はベースダウン、そして、サービス残業だって、しちゃいけないと言われていたって、していかなきゃ生き残れないのが現実じゃないですか。みんな悲鳴を上げているんですよ、実際には。当然、奥さんのパートもないんです。だから、買い物にも行かなきゃ消費も起こらない。だから、これをもってよくなったなんて考えて政治をやっていたら、もう日本はつぶれてなくなる、そういうことを意味しているんですよ。

 だから、竹中大臣もあなたも政治家じゃないからこれ以上言いませんけれども、もうそういうことを考えたときには、結局はそういうところのマイナスがプラスに出たというだけのことじゃないですか、要するに。依然として何にも変わっていない。確かに、北米や中国の外需は少しよくなった、あるいはデジタル製品は売れるようになった、しかしそれは一過性だ、だから先行きはこのままじゃ大変厳しいですよ、こういうことを私は申し上げたいんです。

 そういうことで、実体経済というのがいかに厳しいか。小泉総理は、十一月一日に名古屋市内で街頭演説した際に、少なくとも三年間はまだ景気は本格的に回復しないと思っている、しかし、ようやく明るい兆しが見えてきたと言っておられるわけだ。そう言っておられますわね。そういうことですか、小泉総理。

小泉内閣総理大臣 そうですね、二〇〇六年に二%成長を目指しておりますので、それが続いていくということがやはり本格的な景気回復軌道に乗ったというふうに私は考えておりますので、それまで、今ようやく出てきた明るい兆しをより強いものにしていきたい、三年間で消費税を上げる環境にないということを申したわけであります。何とか二〇〇六年度に二%を上回る成長軌道に持っていきたいために、改革を進めていきたいと思っております。

山岡委員 思っているだけで、役所に命じております、命じるのが総理の仕事ですと。もう二年半たっているんですよ。具体的に出てくるものなんか何もないです、実際には。もう民間は生きていけませんよ。二年半食うや食わずで来て、これからあと三年ぐらい厳しいでしょう、痛みが伴います、言うのは簡単だが、これはもう生活していくのは、とてもじゃないけれどもやっていけない。

 今、悪い話ばかり言いたくないが、そういう考えで景気対策をやらないんだったらもう日本はつぶれちゃうから、もう少し言っておきますと、今大体ヘッジファンドというのは一番敏感なんですよ、そういうものに対して、商売や景気に対して。このヘッジファンドが強気の見方を修正し始めて、衆議院の選挙後、早くも売りに転じ出しましたよ。それは、選挙前はいろいろやるからみんな買いますが、もうこの後はだめだと。ヘッジファンドに見限られるということは大体だめなんですよ。そうは言いたくないけれども、あの人たちには。

 また、一時十四社まで減った時価百円割れの銘柄、今五十五社になっておるわけですよ。そして、再び信用リスクというのがどんどん増加してきた。

 来年卒業の大学の内定率、菅代表も言いましたが、六〇・二%。昨年と比べると三・九%減。一九九六年度の調査開始以来、最低の数字ですよ。せっかく大学を卒業しても就職できない、こんな世の中、これを続けるんですかと、学生から私、怒られていますよ。

 また、高校生になるともっとひどい。三四・五%の内定率。過去二番目の悪さ。女子に限ると三〇%しか内定しない。過去最低。そして、若年層は失業率九・四%と、もう非常に低いんです。

 だから、こういう状況が立て続けに来て、悲観的なことは言いたかないが、景気はよくなるんですよと気持ちいいことを言えば、それだけでみんな浮かれて、町へ行くと言いますよ、不景気な話はしないでくれ、気分悪くなるから、何か景気のいい話をしてくれと。気持ちはわかりますが、我々は政治をやっているわけですから、そういう点では、政府としてはそのことに対してどういう対策をやっていくのか、あとどのくらい待てば景気はよくなって生きていけるのか、いつも私は聞いているんですよ。

 総理、目の子でもいいから言ってください、みんなそういうことを希望しているんですから。どれだけ頑張れば、いつまで頑張れば生き返るのかと。

竹中国務大臣 委員のお話、実態として我々も、その地域、特に一部の産業等々について厳しいということはもちろん十分に認識をしているわけです。その上で、しかし、委員の話を聞いている限り、やはり単純な景気循環の話と構造の問題をかなり混同してお話ししておられるように私には思えます。

 これは、GDPそのものは、繰り返し言いますが、第二・四半期に三・五%、二・二%成長しているわけですから、これ以上景気をよくしてGDPを五%、六%ふやすことなんて、これはできないわけです、今の勢いでは。したがって、何かというと、今の二%、三%の成長でもそれなりにそれぞれにこの効果が浸透するような、そういう構造をつくらなければいけない。これはまさに構造問題です。そのための構造改革というのをやっているわけです。

 具体的には、地域の再生、地域再生本部をつくって、その中で、公的な部分のアウトソーシング、基幹産業の強化等々の今構造改革を進めている。そういう改革を進めることによって、具体的には「改革と展望」に示しているような形で、二〇〇六年には名目成長に十分な成果が出るような形に持っていきたい。私たちは、そのシナリオに基づいて、そのシナリオを示して、構造的な枠組みもつくって、今この政策を進めているわけです。

山岡委員 だから竹中大臣の話は聞きたくはないんです。ぺらぺらしゃべっているからまことしやかのように聞いている人もいるかもしれないけれども、中身が何にもない。それじゃ、大学に行ったって先生も勤まらない、残念ながら。私も慶応大学だけれども。アメリカへ早く行っていただきたい。余計なことをしゃべらないでほしい。

 中身の話をしますと、だから私たちは、御批判があるなら別なことをやっていただきたいんですけれども、十八兆円を地方にお渡ししよう。そして、地方は地方でそのことをビジネスとして使っていただこう。地方の商店が繁盛し、地方の中小企業が繁栄して、そして地方の職場が守られていく、失業もなくなっていく、雇用も確保できる、そういうものに使っていただこうじゃありませんか。これが、中央のひもつきや中央の金でやると、今何回も言っていますが、みんなそこに行かないうちに別なところに消えちゃう。言いたくはありませんが、政官業の方に行っちゃう。だから、それを国民の方にお渡ししましょうと我々は言っているんです。

 あなたたちは何を言うんですかと言っている。三位一体なんて名前だけで、中身が何にもわからない。地方の知事も困っている、一体どうなっているんだ、わかるのは名前だけだと。そして、我々が言っているのは、またこの中小企業は長期不況で非常に苦しんでいるんですから、これは各種業法というのを解放して、そしていろいろと役所のコントロールも解放して、そして商売が非常に自由にやれて、もうかるようにやれて、なおかつ、新しい職種をどんどんどんどんと民間がやれる、中小零細もやれる、一般の国民もやれる、そういう制度に変えよう、こういうことを何度も提案をして、自由党の時代には国会に法案まで出したんですけれども、これは実現しない。させないのなら、何をやるんだ、生き残れないじゃないですか、こういうことを我々は申し上げております。

 高速道路の無料化について随分けちをつけているようですけれども、高速道路を無料化すりゃ景気はよくなりますよ。高速道路がただになるだけじゃなくて、あらゆる商品の物流にコストがかからなくなるし、例えば、私の県でいけば、完熟イチゴを朝とって、そしてそのまま東京に持ってくりゃ高く売れるんですよ、イチゴというのはもたないんだから。しかし、高速道路代を出したら採算が合わない。これがただになれば大繁盛ですよ、イチゴは日本一なんですから、我がところは。

 だから、そういうことや、住宅や自動車のローンの利子減税制度を設けよう、こういうことも提案しているんです。そうすりゃ家が建ちますよ。ゼネコンの下請をやっている限り、日本の建築、土建業者さんの三分の二は倒産するんですよ。そのことを早く建築、土建業者さんは気がつかなきゃいけない。今の政治を一生懸命支持したって、これは、殺してくれ、殺してくれと言っているようなものですよ。わかっている人はわかっているんだ。だから、そういうふうに地域で家を建てるようにしていけば、ゼネコンは入れないんです。地場の工務店や大工さんや、そういう皆さんが入っていけるんです。

 その他、失業率を四%以下に下げるために、我々は、いろいろな、福祉部門の産業育成、良質な環境の整備、NPOの育成等、公的部門を含めた積極的雇用、福祉と、一個ずつやっていると長くなって、もう質疑時間が終了したようですからこれで終わらせていただきますが、私たちが政権をとれば直ちにやる。自民党に何の方策もない、何も答えられない。また先々やります、こう言っているんであったら、これはもう国民は生きていけなくなるわけですから、一日も早い政権交代をする以外に、この景気回復と雇用の安定と、日本が沈没しないようにする道はない、こういうことを申し上げて、終わらせていただきます。

笹川委員長 これにて菅君、岡田君、山岡君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 私は、イラク問題について絞って質問を行います。

 これまで、総理と過去二回にわたってイラク問題を議論してまいりました。そのたびに、私は、イラクの泥沼化について指摘をしてまいりました。今やその泥沼化は一段と激しいものになっております。米軍は、空爆を始めたり、ミサイルを使った攻撃を始めたりしている。名づけて鉄槌作戦、こういう言葉まで使い始めている。これではもうまるで戦争状態への逆戻りだと思うんですね。にもかかわらず、あなたはイラクへの自衛隊派兵計画をやめようとしない。今こういうイラクに自衛隊を送ることは、無法な占領を応援するものであり、かつ憲法で禁じているまさに参戦行為そのものになる。私たちはそういうイラクへの自衛隊派兵は反対であるということをまず冒頭申し上げておきたいと思うんです。

 そこで、きょう議論したいことは、その今のイラクの現状を、どうやったら泥沼化から解放し、本当に自由で民主的な安定した国という、皆さんがいつも繰り返すそういう国になれるのかという問題です。

 現状は、アメリカの占領は行き詰まっています。これはもうだれの目にも明らかです。問題は、どのようにしてそれを打開するかということなんですが、確かに、イラクの混乱というのは、アルカイダや外国のテロリスト勢力が入り込んできている、そういうこともあるでしょう。それから、フセイン残党勢力の反乱が続いている、こういうこともまたあるでしょう。しかし、同時に、今のイラクに起こっているイラクのこの混乱の大もとにあるのは、アメリカの占領政策に対してイラク国民が反発をしている、力ずくのアメリカのこの占領に対して抵抗している、いわばレジスタンスですよ。ところが、あなたは、テロだ、テロとの闘いだとばかりしか言わない。本当に、今の混乱の大もとに、アメリカの力ずくの政策に対するイラク国民のレジスタンスの感情、抵抗の感情、あると思うんですが、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 これは共産党一流の一方的な議論だと思いますが、私は、テロリスト並びにフセイン政権の残党が、何とかイラクを混乱させたい、米英軍を追い出していわゆるテロリストの拠点にしたいという強い意思を持って無差別テロに移っているんだと思います。こういうテロリストの動きに同調してはなりませんし、テロの撲滅のためにやはり日本としても国際社会の一員として責任を果たしていかなきゃならないと思っています。

 一方では、確かに治安面において混乱、不安があります。また、イラクの国民の中にも反米感情、根強いものがあります。しかし、同時に、最近の興味深い、イラク人の生活不安について、バグダッドの大学の心理学研究センター調査が行われましたけれども、この調査におきましての六月時点と現在の十一月時点においてやはり変化があります。米英の占領軍の駐留がしばらくは必要と思うかということについて、六月においては、必要でないというのが多かった、約五八%。しかし、十一月においては、必要だというのが何と七一・五%になっています。やはりイラク人にとっても、今ここで米英軍に撤退してもらったらかえってまた混乱が起こる、不安が起こるという心理状況もこの調査では出ているんだと思います。

 また、統治評議会をどう思うかという調査におきましても、十一月におきまして、新イラク建設の第一歩として統治評議会の存在を認めるというのが六割を超えている、六三・二%となっているということを見ても、一面だけでは評価できない。

 確かに反米感情があるのは事実だと思います。しかし、イラク人にとっても、早く何とか自分たちの手によって自分たちの国をつくりたい、自分たちの手によって安定した政府をつくりたいという意欲はあると思います。そういうことに対して、我々としては、国際社会が協力して、イラク人のイラク人によるイラク人のための政府づくり、また、イラク人の復興支援に努力すべきではないかと。

 日本は、決してイラクの戦闘行為に参加するわけではございません。イラクの復興支援、人道支援のために応分の協力をしようということである点も御理解いただきたいと思っております。

赤嶺委員 総理、あなたは今の答弁の中で、共産党特有の考え方だ、こうおっしゃいながら、私が指摘した反米感情に基づくレジスタンス、それは一面としてあるだろうということを、また自分で繰り返しておられるんですね。私たちの特有の考え方じゃないんですよ。今、世界はそのことに大変懸念した思いを抱いているんです。

 それから、この米軍の撤退なんというようなことを、今世界がそこを問題にしているんじゃないんですよ。米軍の力ずくの占領政策を問題にしているんですよ。だれが撤退だと言って、今国連で米軍が撤退せよと言う、こういう議論は起こっていません。今起こっているのは、アメリカが余りにも力ずくでイラク国民の人権や尊厳を無視した行動に出ている、これに対してイラクの国民が怒りを持って抵抗している。これ、レジスタンスという言葉も使われ始めています。そういう状態じゃないですか。それが、今のイラクが泥沼化から抜け出せない大もとな原因になっている、こういうことじゃないですか。

 例えば、今も報道でもこう言っています。イラクの有力紙の編集委員の言葉です。米軍に反発する一般住民が多くの事件を引き起こしている。今起こっている事件はですよ。こういうことを言っています。それから、イラクの大学生の言葉が出ていました。「我々はサダム支持者じゃなかったが、米軍の攻撃が続く以上、ジハードに立たなくてはならない。ファトワ(宗教見解)が出ている。武器を持って戦え、それができない者は情報、金、武器を供出せよ、と。戦えない私は銃弾二百五十発を出した」。

 まだありますよ。運転手の男性。「米兵はいまだに、武器狩りと称してイラク人を殴り、手錠をかけ、動物扱いする。サダム時代でもここまでひどくなかった」、こう言っているんですよ。

 ですから、イラクでイラクの国民が、アメリカがイラクに自由と民主主義をもたらす解放軍、このように考えている国民が少なくなっているんですよ。撤退であるかどうかじゃないんです。

 アメリカはイラクで解放軍なのかどうか、こういうようなことで、アメリカの調査会社がイラクで調査したアンケート結果、米軍に対する攻撃はだれによるものか、これは、占領へのレジスタンスというのが四九%です。バース党の残党が二九%です。そして、結局、解放軍と考えているのは一四・八%、占領軍六六・六%。ここなんですよ。アメリカが占領軍として横暴な支配をイラク国民に続けて、そのことがイラク国民の抵抗になってあらわれている、米兵を襲撃している、そういう面もあるんじゃないですか。

小泉内閣総理大臣 今のお話で、共産党は、アメリカが撤退しなくていいという議論ですか。(赤嶺委員「私、撤退って言いましたか、今。アメリカの横暴な占領と言っているんですよ。どうぞ答えてください」と呼ぶ)ですから、国際社会は米英軍撤退しろと言ってない、私はそうだと思います。今まで共産党も、米英軍の駐留はやはり必要だと思っておられるのですか。そういう前提と……(赤嶺委員「質問に答えてください」と呼ぶ)いや、質問の中でお話があったからそう聞いているのです。どちらの点で、どちらの立場で質問されているのか私はお聞きしたかったのです。

 私は、テロリストのそういう自爆する、あるいはアメリカを追い出せという動きに乗ってはいけないと思っているんです。イラクの復興支援のために、やはりここは米英軍と協力すべきところは協力する、国際社会の関与をもっと深めていく、そういう点に日本としても役割を果たしていかなきゃならないという点があると言っているんです。

 今のお話ですと、共産党も米英軍の駐留が必要だと思っておられるんですか。その点をちょっとはっきりお聞かせいただければいいと思います。

赤嶺委員 米英軍の撤退について、国際社会で何と言われているか。米英軍は占領に責任を負うべきだ、だからといって、その占領がいわば正しい、正当性のあるものじゃないということを言っているんですよ。これは一四四一決議でも言っているわけでしょう。そういう立場ですよ、国際社会は。治安の維持は、アメリカは負うべき。しかし、その場合でも、治安の維持を負う場合でも、アメリカは横暴な支配をやめるべき。横暴な支配をやめるためには、治安の権限を国連に移すべき。国連の監視のもとに国連の多国籍軍が治安を維持する。こんなのは当然のことじゃないですか。

 そして、今起こっているものは、そういうアメリカのイラク占領の横暴なやり方に対して、イラク国民が抵抗し始めている、レジスタンスを始めている。イラク占領のあり方に憎しみを抱いている。テロだテロだと言って力ずくの攻撃しかやらない、その力ずくの攻撃が逆にまたイラク国民の抵抗を広げている。このことについて認めるかどうかを聞いているんです。

小泉内閣総理大臣 私もお答えする前に、共産党も米英軍の駐留を認めているわけですか、その辺をお聞きしたかったんですよ。

赤嶺委員 米英軍の責任を認めています。米英軍の責任を認めているという意味です。

 それで、例えば今、米英軍は無法な侵略戦争を始めたんですよ。イラクの社会を破壊したんですよ。そして、その治安の維持をやらなきゃいけない責任を国連から負わされているんです。しかし、治安の占領者としての権限は国連に渡せと言われているんです。こんなのは国際社会の常識じゃないですか。なぜそれがわからないんですか。

 そして、今そういうような状態に対して、アメリカの無法な占領、力ずくの占領を、ブレマー長官に対してABC記者が質問したんです。これでは、アメリカの余りにも一方的な、力ずくの占領というのは、ゲリラに対して水を得た魚になっているようなものじゃないか、あなた方の占領に反抗するイラク国民の抵抗の中には国民の側の応援もあるじゃないかというぐあいに聞かれて、ブレマー長官は認めているんですよ。総理は認めますか、そういうことを。

小泉内閣総理大臣 いや、私も質問の趣旨がよくわからないんです。

 米英軍がイラクの治安に責任を持てということは、駐留しないで責任を持てないと私は思うんです。共産党は駐留することを私は否定して言っているんだろうと思ったんです。それが、今のお話だと、共産党も米英軍のイラクの駐留を認めているのかなと思ったから、そこら辺はどうかと。それによって私はお答えしなきゃいかぬと思っているんです。

赤嶺委員 全然答えようとしていないんですよ。

 それで、今国連がイラクには何の権限も持たされておりません。今アメリカが間違っているのは何か。占領者としての治安の責任を負う、こういうようなことではなくて、イラクを占領しよう、そしてイラクに将来も米軍基地を置こう、こういう流れがはっきりとあらわれているわけですね。

 私、イラクでデメロさんに、国連の特別代表に会ったときに言われましたよ。国連はアメリカの占領を支援するんじゃない、国連はイラクを独立国として再建するために頑張るんだ、そして、アメリカは権限を全部国連に移すべきだ、そして国連のもとで治安の維持やあるいは人道支援、復興支援をやるべきだ、こういうことを言っていたんです。世界はそういう方向に大きく流れているんです。

 アメリカの占領を支援するのは、逆にイラクの泥沼化を深め、治安を不安定にし、そして民主的で平和なイラクの国づくりをおくらすだけだということを指摘して、私の質問を終わります。

笹川委員長 これにて赤嶺君の質疑は終了いたしました。

 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社会民主党・市民連合の照屋寛徳です。

 私は、今度の選挙戦を通して、イラクへの自衛隊の派遣には反対であるということを強く訴えてまいりました。私の選挙区は、極東最大の嘉手納基地、そして海兵隊の普天間基地を抱えて、いわばこの国の安全保障の犠牲と負担が集中をし、沖縄の縮図のような選挙区でございます。この選挙区で、圧倒的に多くの県民は、イラクへの自衛隊派遣を容認する自公保の候補者ではなくして、イラクへの自衛隊派遣に反対をする社民党の照屋寛徳を国政へ送ったのであります。

 御承知のことだと思いますが、五十八年前の夏、沖縄は唯一の地上戦が展開をされて、二十万余のとうとい命が犠牲になりました。私が選挙戦のときに出会った老婆は、十八歳のときに片足を爆撃で吹っ飛ばされて、そしてつらい思いで五十八年間生きてきて、アメリカ兵も憎いけれども日本軍の兵隊も憎い、こう言いました。そして、照屋さん、イラクへ自衛隊を送ってはならない、こういうふうに強く訴えたのであります。幾多の世がわりを経験し、ありったけの地獄を集めたような沖縄戦を体験した沖縄の人たちは、総理、命どぅ宝、命こそが何にも増して宝である、こういう思いで生きてきたのでございます。

 そこでお尋ねをいたしますが、小泉総理は、現下、イラクの治安情勢が非常に厳しい状況にあって、ことしじゅうにイラクへ自衛隊を派遣しようというお考えなんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 年内か年明けか、これはまだ決めておりませんが、私は、イラクの復興支援、人道支援、これに対して日本としても応分の協力をすべきだと思っております。今後、イラクの復興のために、今、米英軍を初め各国の部隊が、どのようにイラク人の政府を構築していくか、努力されております。日本としても、資金協力だけでなく、人的な協力もすべきだと思っております。

 そういう点について、派遣する場合には、イラクの状況をよく見きわめて、安全面にも十分配慮して、イラクの復興支援、人道支援に当たるべきだと思っておりますので、よくイラクの情勢というものを見きわめまして、派遣すべきときは派遣しなければならないと思っております。

照屋委員 イタリア軍に対する自爆テロ、あるいは日本大使館へ向けての発砲事件などなど、今や、反米武装勢力あるいはテロの攻撃の標的というのは、もう無差別化をしているんじゃないかと私は思うんですね。

 総理、もしイラクに自衛隊を派遣した場合に、自衛隊が標的にされるという危惧や懸念を私は強く持っているんですが、総理はいかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 その問題につきましては、可能性を論ずれば私は切りがないと思います。これは、自衛隊のみならず国連に対しても攻撃しておりますし、赤十字に対しても攻撃しておりますし、イラク人の治安に当たっているイラク人に対しても攻撃があるわけですから、可能性を言ったら私は切りがないと思います。

照屋委員 私は、これまで政府が繰り返し国民へ向けて主張してきた南部地域の安全神話というのはもはや崩壊をしたんじゃないかというふうに思っているんですね。いわば今の状況というのはイラク全体がベトナム化しているような状況にあるのではないかと思います。

 政府は、非戦闘地域に自衛隊を派遣するんだというふうにおっしゃいます。もちろん、それは、イラク特措法でもそうしかできないわけですね。ところが、イラクに自衛隊を出せばそこが戦闘地域になってしまうんだ、そういうおそれは非常に高いし、強いというふうに私は思っております。その点について、総理のお考えをお聞かせください。

小泉内閣総理大臣 これは、なかなか難しい問題で答弁も難しいんですが、確かに、ある部隊が派遣されるというふうになると、これを標的にしようというテロリストの動きが出てくると思います。しかし、安全面に十分配慮すれば、その部分は戦闘地域にならないという場合もあるんです。これは重要であります。私は、しっかりとした安全面に対する防備策、そういう体制というものを構築することは可能だと考えております。

 例えて言えば、米軍が出動した地域におきましても、米軍の警備が厳重なところというのはテロリストも襲ってきませんね。そういう点も私は考えられる。これは非常に難しい問題なんです、地域によって。

 私は、今の状況におきまして、もしも自衛隊の部隊が派遣される場合には、そういう安全面に対して、日本独自の対策、各国との情報交換、協力、いろいろな面が考えられますので、そういう点については十分配慮しなければならないと思っております。

照屋委員 けさからの当予算委員会での議論の中で、石油との関連あるいは国益との関連の議論もございました。一方で、多くの国民が自衛隊を送ることについて不安に思っていますのは、イラクの治安情勢もさることながら、自衛隊を派遣する大義は一体何なんだということについての国民の不安があるだろうというふうに私は思っております。

 そこで、イラク問題はおいておいて、沖縄の基地問題を少しお話しさせていただきます。

 一九九六年の十二月に、日米両政府のSACO最終合意で、海兵隊普天間飛行場を五年ないし七年以内に返還すると約束してから、来る十二月二日で七年の最終期限が到来をいたします。

 総理、これは、普天間飛行場の上大謝名地域での爆音被害、平成九年と平成十四年を比較したものでございますが、もう恐ろしいぐらい爆音が激化をしているんですね。そのことによって、生活破壊、健康被害が増大をいたしております。市民は、一日も早く普天間飛行場を返還してもらいたいと願っております。

 去る四月には、普天間飛行場の五年以内の返還を公約にした伊波市長が誕生いたしました。また、私も選挙戦では、速やかに閉鎖もしくは海外への移設を訴えて当選をさせていただきました。

 もはや、普天間飛行場に関する限り、私は、SACOの合意は破綻をしたんではないかというふうに思っておりますが、小泉総理はこの普天間飛行場の返還問題についてはどのようにお考えになっておられるか、そして、今後どういう取り組みをしようというふうにお考えなのか、お聞かせください。

小泉内閣総理大臣 普天間基地の移設、返還につきまして、普天間においては、市街地にあるということから、早くこの合意に基づいて返還しなきゃならないし、また、その準備を進めていかなきゃならないと思っております。

 その際に、やはり地元の公共団体の意見というものを十分聞いて、この移設、返還を進めていかなきゃならない。地元の方々の御意見というものについては、今後とも十分県知事初め各公共団体の意見を聞いて、できるだけ早くこの移設、返還に取り組んでいかなきゃならないと思っております。

照屋委員 ぜひ、私たち沖縄県民は戦後五十八年間も基地の犠牲と負担を強いられているわけでありますから、特に県民は危険な普天間飛行場の早期返還を願っておりますので、総理の強い取り組みを要望しておきたいと思います。

 次に、去る十一月十四日の総理とラムズフェルド国防長官との会談で、沖縄の基地問題についてはどういう話し合いがなされたのか、お聞かせください。

小泉内閣総理大臣 ラムズフェルド国防長官とはイラク問題、北朝鮮問題等をお話ししましたが、その中で、沖縄の問題につきましても、日本におきましては沖縄に米軍基地が集中している、沖縄県民にとっても、日本国民にとっても、沖縄の負担を軽減していくということは大きな問題なんだ、国防長官としての立場、米軍全体の問題を考える立場から、ぜひとも沖縄基地の負担軽減について取り組んでいただきたい、これは日本国民全体の考え方なんだということを申し上げたわけでございます。

照屋委員 外務大臣にお伺いをいたします。

 私は、日米地位協定はもう運用の改善では限界だ、だから、この国の主権と、国民の人権と、そして環境の視点で全面的に改正するようアメリカに強く迫るべきだという考えでございます。

 その点についての外務大臣のお考えと、それから、おとといですか、報道されたところによりますと、米兵容疑者の現行犯逮捕の場合にもアメリカは政府関係者を立ち会わせろ、こういうことで日米交渉が行き詰まっておるという報道がなされておりますが、事実関係、いかがでしょうか。

川口国務大臣 まず、日米地位協定のことでございますけれども、これにつきましては、従来からも申し上げてきておりますけれども、その時々の問題に対して、運用の改善によって機敏に対応していくということが合理的であるということを考えておりまして、その考えのもとで運用の改善に努力をしてまいりたいと考えております。また、今までも運用の改善に努力をしてまいっております。

 そして、仮に運用の改善で十分でないということであれば、改正問題を視野に入れるということでございますけれども、今、運用の改善で十分であるというふうに考えておりますし、沖縄県等から今までその運用の改善についていろいろな御意見が寄せられてきておりますけれども、運用の改善を行うに当たっては、それらを十分に参照にさせていただきたいというふうに思っております。

 それから、お尋ねの、立ち会いの問題でございますけれども、これについては、今、日米間で協議を進めてきております。具体的なその内容につきましては、まさに今協議をしている中でございますので、具体的なことについてのコメントについては差し控えさせていただきたいと存じます。

照屋委員 時間ですので、終わります。

笹川委員長 これにて照屋君の質疑は終了いたしました。

 次回は、来る二十七日木曜日午前十一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十六分散会




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