衆議院

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第7号 平成18年2月8日(水曜日)

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平成十八年二月八日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 大島 理森君

   理事 金子 一義君 理事 田中 和徳君

   理事 玉沢徳一郎君 理事 松岡 利勝君

   理事 茂木 敏充君 理事 森  英介君

   理事 細川 律夫君 理事 松野 頼久君

   理事 上田  勇君

      井上 喜一君    伊吹 文明君

      臼井日出男君    小川 友一君

      尾身 幸次君    近江屋信広君

      大野 功統君    奥野 信亮君

      河井 克行君    河村 建夫君

      北村 茂男君    斉藤斗志二君

      笹川  堯君    清水鴻一郎君

      実川 幸夫君    篠田 陽介君

      関  芳弘君    薗浦健太郎君

      園田 博之君    高市 早苗君

      渡海紀三朗君    土井  亨君

      土井 真樹君    冨岡  勉君

      中山 成彬君    根本  匠君

      広津 素子君    二田 孝治君

      町村 信孝君    三原 朝彦君

      宮路 和明君    山本 公一君

      山本 幸三君    山本 有二君

      石関 貴史君    小川 淳也君

      大串 博志君    岡田 克也君

      加藤 公一君    川内 博史君

      黄川田 徹君    小宮山泰子君

      郡  和子君    佐々木隆博君

      笹木 竜三君    高山 智司君

      永田 寿康君    原口 一博君

      伴野  豊君    古川 元久君

      馬淵 澄夫君    前田 雄吉君

      三日月大造君    三谷 光男君

      佐藤 茂樹君    坂口  力君

      高木美智代君    赤嶺 政賢君

      佐々木憲昭君    阿部 知子君

      辻元 清美君    糸川 正晃君

      徳田  毅君

    …………………………………

   内閣総理大臣       小泉純一郎君

   総務大臣         竹中 平蔵君

   法務大臣         杉浦 正健君

   外務大臣         麻生 太郎君

   財務大臣         谷垣 禎一君

   文部科学大臣       小坂 憲次君

   厚生労働大臣       川崎 二郎君

   農林水産大臣       中川 昭一君

   経済産業大臣       二階 俊博君

   国土交通大臣       北側 一雄君

   環境大臣

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当) 小池百合子君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     安倍 晋三君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当)       沓掛 哲男君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      額賀福志郎君

   国務大臣

   (金融担当)

   (経済財政政策担当)   与謝野 馨君

   国務大臣

   (規制改革担当)

   (行政改革担当)     中馬 弘毅君

   国務大臣

   (科学技術政策担当)

   (食品安全担当)     松田 岩夫君

   国務大臣

   (少子化・男女共同参画担当)           猪口 邦子君

   内閣官房副長官      長勢 甚遠君

   防衛庁副長官       木村 太郎君

   総務副大臣        山崎  力君

   外務副大臣        塩崎 恭久君

   財務副大臣        竹本 直一君

   厚生労働副大臣      赤松 正雄君

   厚生労働副大臣      中野  清君

   農林水産副大臣      宮腰 光寛君

   経済産業副大臣      西野あきら君

   国土交通副大臣      江崎 鐵磨君

   環境副大臣        江田 康幸君

   内閣府大臣政務官     後藤田正純君

   内閣府大臣政務官     平井たくや君

   内閣府大臣政務官     山谷えり子君

   防衛庁長官政務官     高木  毅君

   総務大臣政務官      上川 陽子君

   総務大臣政務官      桜井 郁三君

   法務大臣政務官      三ッ林隆志君

   財務大臣政務官      西田  猛君

   文部科学大臣政務官    吉野 正芳君

   文部科学大臣政務官    有村 治子君

   厚生労働大臣政務官    西川 京子君

   農林水産大臣政務官    金子 恭之君

   経済産業大臣政務官    片山さつき君

   国土交通大臣政務官    石田 真敏君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    阪田 雅裕君

   政府参考人

   (金融庁証券取引等監視委員会事務局長)      長尾 和彦君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大林  宏君

   政府参考人

   (財務省主計局長)    藤井 秀人君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    牧野 治郎君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          銭谷 眞美君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房技術総括審議官)       外口  崇君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  中島 正治君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           中村 秀一君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  磯部 文雄君

   政府参考人

   (国立がんセンター総長) 垣添 忠生君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           中川  坦君

   政府参考人

   (国土交通省土地・水資源局長)          阿部  健君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  山本繁太郎君

   参考人

   (食品安全委員会委員長) 寺田 雅昭君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月八日

 辞任         補欠選任

  臼井日出男君     薗浦健太郎君

  大野 功統君     篠田 陽介君

  奥野 信亮君     宮路 和明君

  亀井 善之君     広津 素子君

  笹川  堯君     関  芳弘君

  園田 博之君     小川 友一君

  高市 早苗君     清水鴻一郎君

  野田  毅君     冨岡  勉君

  二田 孝治君     近江屋信広君

  町村 信孝君     土井  亨君

  三原 朝彦君     北村 茂男君

  岡田 克也君     郡  和子君

  加藤 公一君     三日月大造君

  笹木 竜三君     小宮山泰子君

  高山 智司君     黄川田 徹君

  原口 一博君     三谷 光男君

  古川 元久君     永田 寿康君

  桝屋 敬悟君     佐藤 茂樹君

  佐々木憲昭君     赤嶺 政賢君

  阿部 知子君     辻元 清美君

同日

 辞任         補欠選任

  小川 友一君     土井 真樹君

  近江屋信広君     二田 孝治君

  北村 茂男君     三原 朝彦君

  清水鴻一郎君     高市 早苗君

  篠田 陽介君     大野 功統君

  関  芳弘君     笹川  堯君

  薗浦健太郎君     臼井日出男君

  土井  亨君     町村 信孝君

  冨岡  勉君     野田  毅君

  広津 素子君     亀井 善之君

  宮路 和明君     奥野 信亮君

  黄川田 徹君     前田 雄吉君

  小宮山泰子君     石関 貴史君

  郡  和子君     岡田 克也君

  永田 寿康君     古川 元久君

  三日月大造君     加藤 公一君

  三谷 光男君     川内 博史君

  佐藤 茂樹君     高木美智代君

  赤嶺 政賢君     佐々木憲昭君

  辻元 清美君     阿部 知子君

同日

 辞任         補欠選任

  土井 真樹君     園田 博之君

  石関 貴史君     笹木 竜三君

  川内 博史君     原口 一博君

  前田 雄吉君     佐々木隆博君

  高木美智代君     桝屋 敬悟君

同日

 辞任         補欠選任

  佐々木隆博君     高山 智司君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 平成十八年度一般会計予算

 平成十八年度特別会計予算

 平成十八年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

大島委員長 これより会議を開きます。

 平成十八年度一般会計予算、平成十八年度特別会計予算、平成十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑を行います。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として金融庁証券取引等監視委員会事務局長長尾和彦君、法務省刑事局長大林宏君、財務省主計局長藤井秀人君、財務省理財局長牧野治郎君、文部科学省初等中等教育局長銭谷眞美君、厚生労働省社会・援護局長中村秀一君、国立がんセンター総長垣添忠生君、農林水産省消費・安全局長中川坦君、国土交通省土地・水資源局長阿部健君、国土交通省住宅局長山本繁太郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

大島委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮路和明君。

宮路委員 私は自民党の宮路和明でございますが、我が党で実は、官公労、自治労、そして日教組に関するプロジェクトチームというのをつくっておりまして、私はその座長という役をやらせていただいておりますので、そういった立場から、きょうは、昨年来我が党で取り上げさせていただいております山梨の日教組、県教組問題を中心として日教組問題を取り上げてまいりたい、このように思っておるところであります。

 御承知のように、小泉改革は、小さくて効率的な政府というものを目指して、国家公務員で五%以上の純減、地方公務員で四・六%以上の純減、そしてさらに給与体系の見直しといったような、いわゆる公務員改革を断行していこうということにしているわけであります。

 民間では、厳しい市場原理、競争原理のもとで、生き残りをかけて、リストラを初めとして自己改革というものが行われている。そして、最近において経済の立て直しもだんだんと実現してきた。それも、こうした民間の並々ならぬ努力、改革があってのことだろう、こう思っておるわけでありますが、ところが、こうした公務員改革が喫緊の課題である、そういうことを前にして、昨年来、大阪市職員の厚遇問題や、あるいは社会保険庁の職員の問題、そしてまた山梨県の県教組の問題等々、民間の常識を超えた異常な事態というものが起こっておりまして、公務員天国などと相変わらず言われている状況が続いておるわけであります。

 なぜ、こういった公務員の勤務実態あるいは給与というものが批判されるようになったのか。こうした状態が生じた背景に、私は、官公労、自治労、日教組といった問題がこれは大きく横たわっている、こう思っておるわけであります。そして、この組合が、自分たちの生活の向上あるいは勤務条件の改善ということに、余りにも力ずくで、政治的な力まで駆使してそれに取り組んでいる。したがって、そこから民間では考えられない状況がつくり出されてきているんだ、こう思っております。

 ここに産経新聞の去年の六月十四日版を持っておるのでありますが、民主党の都連が作成した東京マニフェスト二〇〇五の中で、東京の水は高くてまずい、都営地下鉄と東京メトロの経営統合など改革をうたい込んだ民主党のマニフェストが、連合東京からの異論が出たために、十万部配布してあったものを、これをもうほごにするといったようなそういう記事であります。それぐらい、このこと一つもってしても、連合東京からの力、圧力によって民主党はマニフェストを撤回するといった、こういう状況であります。

 そこで、我々としては、去年来、山梨県の日教組問題に取り組んできたのでありますが、まず最初に法務大臣にお尋ねしたいと思いますが、民間の有識者が、この山梨県の日教組問題に関連して、日教組が中心となってつくっております政治団体県政連の政治資金規正法違反ということで、告発を昨年二月七日に行っておるわけであります。この告発、その後どのようにこれが処理されたか、決着を見たか、このことをまずお聞きしたいと思います。

大林政府参考人 お答え申し上げます。

 甲府地方検察庁においては、本年一月十八日、山梨県民主教育政治連盟代表者及び山梨県教職員組合財政部長について、政治資金規正法違反により略式命令を請求し、一月二十三日、甲府簡易裁判所において、これら二名に対し、それぞれ罰金三十万円の略式命令を発し、同罰金が納付されたものと承知しております。

宮路委員 この告発、当初は、その相手方としては、県政連の広瀬という会長と、あと書記の人二名を告発対象として取り上げておったわけでありますが、途中の捜査の結果、山教組の財政部長長田英和なる者がこの問題に関係しておった、この山教組の財政部長が政治団体の金庫番としての役割を果たしてお金を収集し、そして管理しておった、こういうことが実は捜査の過程で発覚をしたわけでありまして、そこで、政治団体県政連の会長広瀬智徳と山教組の財政部長長田英和、二人が罰金刑を受けることになった、こういうことであります。

 我々は、昨年来、この県政連という政治団体と山教組は一体であるということを強く指摘してきておったわけでありますが、そのことが、捜査の結果、司直の手によって証明をされたということであります。そして、この件で、先ほど申し上げたように、広瀬県政連会長も罰金刑を受けたわけでありますが、その広瀬会長みずからが、県政連には事務員がおらず、事務作業のほとんどを山教組にお願いしていた、ビラの作成も、私がワープロを打てないので、山教組の書記長たる堀内一義さんに頼んでおいた、しかし、本来ならやってはいけないことだった、こういうふうにこれは語っているわけであります。このように、県政連による資金カンパ等は山教組の組織的な関与の中で行われていたということが、このことをもってしても鮮明にわかるわけであります。

 この財政部長につきましては、一昨年の十二月二十七日、この問題に関連して山梨県の教育委員会が発表いたしました調査の結果では何ら触れるところがなかったわけでありまして、当時県教育委員会が行った処分についてもこれはもちろん漏れておったわけでありますけれども、こういうぐあいに刑が確定いたしまして、この財政部長長田英和に対してどういう処分がその後なされたのか、あるいはなされることになっているのか、このことを文部科学省に聞きたいと思います。

小坂国務大臣 宮路委員御指摘の山梨県の民主教育政治連盟、すなわち県政連との関係におきまして、山教組財政部長長田英和氏に対する県教育委員会の処分がどのようになっているのか、こういう御質問でございますが、山梨県教育委員会におきましては、長田財政部長そのものが告発を受けて捜査を受けた、そういう事件のさなかであるということから、この長田氏本人に対する事実関係の調査というものが若干おくれぎみになっていたということでございまして、略式命令も出て事実関係も法的には明らかになってきたという状況の中におきまして、改めて、在籍専従者の教員十六名全員についての事実関係を調査中であります。

 私どもとしては、現地調査に昨年末入りまして、昨年の十二月二十七日には指導通知を出しているわけでございますが、これらすべての在籍専従中の教員についての県政連への関与等についての業務実態について、速やかに事実関係の調査を終えて、厳正な措置をとるようにということを求めておるところでございます。本年一月に、県教委の教育長に対してその旨重ねて指導を行ったところでありまして、今後とも県教委の対応を厳しく見守ってまいりたいと存じます。すなわち、現在進行中という形であるというふうに認識をいたしております。

宮路委員 今、小坂大臣の方から、この長田英和財政部長は在籍専従者だったというお話がありましたけれども、在籍専従の許可を得て組合活動をやっていいということで組合活動をやっていた者が、その域を越えて県政連の資金管理を行うといったような違法な政治活動に手を染めていた、一生懸命そういう政治活動をやっていたということでありますので、これはもうまさに在籍専従の許可に違反をするわけであります。したがって、この在籍専従の許可は一体だれがどういうようなことで与えたのか、そしてその責任というものも当然問われなきゃならない。

 今、小坂大臣の方では、その辺を含めてしっかりと調査をやっていきたい、そしてきちっとそれに対応していきたいというお話でありましたので、それを信じたいと思いますが、ぜひこれを、この財政部長長田英和個人の問題としてではなくて、恐らく、以前からこういうような実態を繰り返しておった、こういうふうに思うわけでありますので、ひとつ徹底した調査、そしてそれに対する厳しい対応を求めていってもらいたい、このように思っております。

 この県政連につきまして、私ども、実は現地調査も山梨まで行ってやってきたわけでありますが、そのときの調査の結果、この県政連という政治団体の個人の寄附金収入というのは、さかのぼってもずっとゼロであるという状態が続いておったんですね。平成十二年、十三年、十四年、いずれも個人寄附収入はゼロという報告が県の選管になされている。

 ところが、告発を民間有志の皆さんがなさった途端に、十五年もゼロということで報告がなされておったわけでありますが、急遽それを撤回いたしまして、十七年になってから、一千二十一万円の実は個人の寄附がありましたという修正申告を行っている。そして十六年は、何とこれは五千百四十二万円も寄附収入がありましたという届け出をやっているんですね。五千百四十二万円、先ほどの修正申告いたしました一千二十一万円と加えますと、六千万余りの金がこの山教組の皆さんからなされているということであります。そして、そのお金が、東明会という、これは山梨県選出の参議院議員の政治団体でありますが、そこに三千万円、今度は十六年でなされたということになってきておるわけであります。

 まことにもって、組織ぐるみでこういう違法献金を行っているということがこの数字をもってしてもよくわかるわけでありますが、こういう事態をごらんになってというか、こういう事態を知って、小坂文部大臣、こういう状況についていかがお考えになりますか。

小坂国務大臣 委員御指摘の件につきましては、先ほどの答えとも若干重複する部分もございますけれども、山梨県教職員組合に専従をすべき人間が、山梨県民主教育政治連盟、県政連で仕事をしていたということ、これも専従の本来の枠を超えているのではないかという御指摘であり、また、その点は調査中でありますが、あわせて献金というものも明らかになってきた。その中において、県政連と山教組、そしてまた東明会という組織との関係もあるようなことであるんではないのか、そういったことについて全体的にどのように考えるか、こういう御指摘かと思うわけでございます。

 この点につきましては、教職員という立場であります者が政治的な献金を行うとか、あるいは、それについてその献金を集めるような活動をするとか、そういった点についてどのような事実関係があるかということを、精査しなければわからない部分はまだたくさん残っておりますが、仮にそのようなことがあったとすれば、これは重大な問題であるということでございますので、事実関係をしっかりこれから把握に努めて、その問題点がありましたならば厳正な対処をしてまいりたい、このように考えているところでございます。

宮路委員 小坂大臣、厳正な対処をしていきたいというお話でありますが、こういう違法な資金カンパをやっておったということは、もう既に前からわかっておったんですね。ところが、この金目がどのくらいだったかということは、ようやくここで、この告発を受けた結果、彼らが修正申告をしたり、十六年分についてはしっかりと個人寄附収入としてこれを報告するということになってきたものですから、お金の方はこんなすさまじい巨額の金であるということがわかってきたわけであります。

 ただ、どうも違法な資金カンパをやっておったなということは前からわかっておったわけですね。文部省も、何回も何回も県の教育委員会を呼んで、もっともっと調査を徹底させて、そして処分も、いいかげんな処分でなくて、きちっと法令にのっとった処分をするようにということを繰り返し指導してきたんですけれども、今もってほとんどこれが前進を見ていない、そういう状況なんですよ。

 ですからこれは、単にここの答弁で厳正に対処してまいりたいとおっしゃっても、過去の経過から見て、なかなかそう簡単にいくような話じゃないんじゃないかというふうに思うんです。ですから、私のこの指摘についてはもう一遍しっかりとお答えをいただきたい、このように思います。

小坂国務大臣 御指摘のように、教職員が中立的な立場であらなければいけない、すなわち、地方公務員といえども公務員でありますから、地方公務員法の規定に従い、また教育公務員特例法の規定に従って、選挙運動等をしてはいけない、また、政治的な資金等の募集に関与してはならないという規定があるわけでございますから、事実関係をしっかり把握して、もしそのような事実があれば厳正に対処をしてまいりたい、このように考えるところであります。

宮路委員 ぜひぜひ、小坂大臣、ひとつ法令にのっとってしっかりとした処分がなされるように、これは厳正にも厳正を期してひとつ指導の徹底を図っていただきたい、このことを強く求めておきたいと思います。

 先ほど、山梨県の山教組の財政部長を初めとする在籍専従、その実態の調査をしたいというお話でありましたけれども、実は、大阪市の職員の厚遇問題、そこで浮かび上がってきたのがあのやみ専従だったわけでありまして、そのやみ専従問題に端を発して、総務省が、実は地方公務員の職員団体・労働組合に係る職務専念義務の免除等に関する調査というものをいたしました。これまでになかった調査だそうであります。労働組合に関係する人たちがどういうような形で職務専念義務免除等を受けているかという調査結果でありますが、それによりますと、昨年の十月一日現在で、全国の都道府県そして政令市で合計九百人近い教職員が在籍専従職員となっている、九百人ということであります。こうした物すごい数の在籍専従職員が、山梨県の財政部長のようにこれまた政治活動をやっていないとも限らない、こういう感じがするわけであります。

 したがって、もっと突っ込んだ、この教職員の在籍専従の人たちがどういうぐあいに活動をしているのか、この実態調査をこれは全国的にやってみてもらったらどうかというふうに思うんですが、どうでしょうか、文部科学大臣。

小坂国務大臣 委員御指摘のいわゆる在籍専従は、地方公務員法に基づいて行われている制度でありまして、一定の年数に限り、専ら職員団体の業務に従事するかわりに都道府県からは給与は支給しない、こういう枠組みでございまして、今御指摘のように、総務省の調査によりますと八百九十七名、全国の都道府県あるいは政令市におきまして在籍専従職員がおるという状況でございます。

 これらの実態について把握すべきではないか、こういう御指摘でございます。この人数については、総務省の調査のみならず、私どもにおいても把握いたしているところでございますが、その制度の趣旨に沿った運用がなされていないような場合であればこれは問題でございますので、県教育委員会の人事担当者会議等で私どもも既に言及し、この具体的な事例を参考に例示して、このようなことがあってはならないという指導を行っているところでございますが、さらに、全体的な必要に応じて調査を行って、文書による指導というものも厳しく行っていきたい、このようなやみ専従のような事例が発生しないようなそういう注意を喚起してまいりたい、このように考えておるところでございます。

宮路委員 ぜひ、在籍専従の実態について全国的な調査をしていただいて、それに基づいてまた厳正な指導を行っていただきたい、このように思っております。

 昨年の十一月末に実は新たな問題として、山梨県教育研究所という、全くこれは任意団体なんでありますけれども、そこに山梨県の教員が、研修と称して、給料をもらいながら三年にわたって派遣されていたという事態が発覚をいたしました。

 この団体は、山梨県教組と一心同体といいましょうか、そういう研究所であるというふうに我々は承知をいたしておるわけでありますが、文部省としても既にこれについては調査をされて、研修ということでこれは派遣されているけれども、研修の体をなしていないというようなそういう受けとめ方を文部科学省としてもされているというふうに聞いておりますが、この点はどのようにお考えでありましょうか。

小坂国務大臣 宮路委員御指摘のとおり、昨年の末に私どもが実施いたしました山梨県への現地調査におきまして、御指摘の山梨県教育研究所における教員の研修派遣の実態等についても調査を行ったところでございます。

 その結果、山梨県教育研究所への長期研修派遣ということが行われている。これはすなわち有給で行われるわけでございますので、先ほどのいわゆる在籍専従とは違う形でございます。そこにおきましてその教員は、事務局長などの肩書きを用いて実質的に当該研究所の運営を担っているという実態が明らかになったところでございます。このような団体運営の事務への従事というのは、教員の研修としてはふさわしくないという事務でございますので、このようなことから、県教育委員会に対して、派遣を取りやめるように指導をいたしたところでございます。

 県教育委員会におきましては、文部科学省の指導を踏まえまして、本年度をもって研修派遣を取りやめる旨の報告を行ってきているところでございます。

 この教育研究所というのは、組合とは密接な関係があるということでありますけれども、そのものとは言えないということでありまして、もし同一ということであれば、これはいわゆるやみ専従に当たるということにもなりますので、この辺は事実関係をしっかり把握して、このような指導を行ったところでございます。

宮路委員 まさにやみ専従である可能性が非常に高い、そういうこれは事案じゃないかな、我々はそう思っておるわけであります。即刻これはもうやめるということにしていただいたそうでありますから、それはそれでよかったな、こう思うわけでありますけれども、こういった例はいろいろ尽きないんですね。

 昨年の十月十七日、研修派遣教諭に対する違法な給与支出に関する住民訴訟というものがありまして、その判決が福岡高裁で出されております。このケースでは、現職の職員が年間何と十二、三名に及ぶということでありますが、それぐらいの現職職員が研修名目で福岡県の同和教育研究協議会の事務局に派遣されていたわけでありますけれども、福岡高裁は、本件派遣及び派遣教諭に対する給与支出は違法である、そういう認定を下しておるわけであります。

 そして、またこれは同じような事案なんでありますが、札幌市の教育研究協議会という任意団体でありますが、その業務に、また研修と称してやみ専従まがいのことを行っておった。つまり、教員が給与をもらいながらこの札幌市の教育研究協議会の業務に従事をしていたという問題も明らかになっているわけであります。この教員の給与の半分は、国が義務教育国庫負担制度に基づいて負担をしているわけであります。

 このように、教員としての仕事もせず、やみ専従まがいの、やみ専従と言ってもいいかと思いますが、そういう事態を放置しているものになぜ国が義務教育の国庫負担をしなけりゃならないのか、本当に解せないわけであります。この問題については、既に地元では住民監査請求が出ているようであります。

 文部科学大臣、この件については現在どのようになっているのでありましょうか。

小坂国務大臣 御指摘の札幌市の教育研究協議会への教員の派遣でございますけれども、任意団体であります当協議会に、副理事長との肩書で、現職の教員が勤務時間の一部を使ってその業務に従事しているという事実が確認をされました。したがいまして、文部科学省といたしましては、このような勤務は適法なものとは認めることはできない、その旨を札幌市の教育委員会に対して指導いたしました。

 現在、札幌市教育委員会においては是正に向けた検討が進められている、このように承知しておりますが、文部科学省といたしましては、札幌市教育委員会に対しまして、二月中を目途に検討結果を取りまとめるよう求めているところでございます。

 今後とも、札幌市教育委員会の対応を厳正に見守ってまいりたいと存じます。

宮路委員 いずれにしましても、教育公務員には研修が大切であると、たしか教育公務員特例法でもその研修の大切さがうたわれて、研修を積極的にやるように、そういうことが法律上もうたわれておったかというふうに思うのでありますが、この研修というものを逆に使って、そして、研修ということを隠れみのにして不適切な教員の派遣がいろいろな団体に行われて、そして、払わなくてもよい給与が税金によって払われているという実態が、もう随所にこれは見られるわけであります。

 この際、この研修の実態というものについて、文部科学大臣、やはり全国的な調査をしていただいて、そして、これもきちっとまた対応していただく必要があるんではないかな、このように痛感するわけでありますが、どうでしょうか。

小坂国務大臣 教員の派遣ということでございますが、私どもとしては、習熟度別の指導などを行うための教員を増員配置する、いわゆるチームティーチング等の施策を行ったり、あるいは、適切な人数に対する少人数教育の実現に向けての教員の充実というのを図っている一方で、このような教員の本来の研修内容ではない派遣が行われているとすれば、これはこの制度崩壊につながるゆゆしき問題だ、このように認識をいたしておりまして、これまでも、不適切な事例が明らかになった場合には、改善を求め、適正化を行ってきたところであります。

 例えば、広島県の福山市において同和教育研究団体に対して教員を派遣していた、研修派遣、この問題につきましては、平成七年、八年度に国庫負担金の返還を求める等の対応もしてきているところでございます。

 また、ただいま御指摘がありましたような派遣を中止させるような事例もあることから、教員の長期研修につきましては、資質の向上を図る上での有意義なものとしてのその本来の目的がちゃんと着実に実施されるように、全国的な状況について調査、把握をすることが必要だ、私もそのように認識をいたしております。

 したがいまして、調査を実施するとともに、不適切な事例が明らかになった場合には厳正に対応してまいりたい、このように考えるところでございます。

宮路委員 ひとつ今の御答弁のように、この研修、これはもう本当に多くの問題をはらんでいる、そういう可能性が極めて強いわけでありますので、ぜひ、この際徹底した調査をしていただいて、そして正すべきところはしっかりと正していくということをやっていかないと、御指摘のように、この研修制度そのものが崩壊してしまう、そういうやはりおそれなしとしないということだろうと思います。ぜひ、これまた厳正な調査と対処方を強く要請申し上げておきたいと思います。

 これまで、山梨の例、福岡そして札幌の事例を取り上げてまいりましたが、このほかにも、神奈川県の日教組が一昨年の参議院選挙に際しまして、これは民主党の国会議員でありますが、那谷屋正義参議院議員のために神奈川県の日教組が、ほかの官公労と、具体的には、川崎交通労組と一体となってこの那谷屋参議院議員の選挙のために猛烈な運動を展開した。その結果、日教組の委員長そして川崎交通労組の委員長両方が買収事件を起こしまして、懲役刑を受けるという事件も起こっているところであります。

 このように、全国的に多かれ少なかれまだまだ恐らくいろいろな問題がこれはあるのではないかな、こう実は思うわけであります。幾多こういうことを考えますと、教職員組合というのは何をやっているんだろうか、こういうような強い懸念が起こってくるわけであります。

 ここに、行政改革の重要方針、去年の十二月二十四日閣議決定された行政改革の重要方針というのがあるのでありますが、地方公務員の純減目標、そういう項目がありまして、そこで教職員のこともしっかりとうたい込まれておるんですね。「特に人員の多い教職員については、児童・生徒の減少に伴う自然減を上回る純減を確保する。」こういうことがきちっと明記されておるわけであります。まさに、こういったいろいろな日教組に関連した事案を掘り下げれば掘り下げるほど、多くの無駄な人員を抱えているがゆえにこういうことが起こっているのではないかなということを印象づけるわけであります、強く強く我々に。

 ですから、この教職員の定員削減の問題、これは、ぜひともほかの分野以上にひとつ力を込めて取り組んでいってもらいたい、このように強く思うわけでありますが、これについての総理のお考えをひとつお聞かせいただければと思います。

小泉内閣総理大臣 国家公務員は、政治活動、厳しい制約を受けておりますし、地方公務員も、罰則は国家公務員よりも緩いようでありますが、やはり政治活動というのは制約を受けております。本来のみずからの職責に専念するのが筋ではないかと思っておりますし、御指摘の点を踏まえて、そのような違法行為、ないように、政府としても十分配慮しなければならないと思っております。

小坂国務大臣 委員の御指摘ございますが、教育の成否というのは教員に負うところが大きいわけでございます。したがいまして、教職員のすぐれた人材の必要数確保ということは極めて重要な課題でございまして、公立学校の教職員定数につきましては、義務教育の水準維持向上ということから、数次にわたる計画的な改善を行いまして、四十人学級の実現あるいは習熟度別の少人数指導の実施を行ってきたところであります。

 しかし一方で、政府といたしまして、総人件費改革の実行計画、着実な実施ということがやはり重要な課題でございます。特に人員の多い教職員については、御指摘のように、「児童・生徒の減少に伴う自然減を上回る純減を確保する。」とされているところでございまして、私といたしましては、教育水準の向上のために、特別支援教育等の充実配員等を行う一方で、教員の資質の向上やすぐれた人材の必要数を確保することに努めながら、この総人件費抑制にも取り組んでいく、このようなことから、具体的に、国が配置基準を定めた教職員の自然減に加えまして、給食調理員や用務員等を含めた教職員全体の削減を図ることによりまして、「自然減を上回る純減を確保する。」このようにしたところでございます。

宮路委員 最後にしたいと思いますが、このように、日教組あるいはまた自治労、野方図に違法行為あるいは違法行為まがいの活動を行っているわけでありますけれども、その背景には、彼らが強力なやはり政治的力を持っていて、そして日常茶飯事のようにこういう政治活動、選挙活動を行っているということが私はあるというふうに思います。

 公務員改革を実効あらしめるためには、まずはやはり、彼らのこうした政治的な力というものをそぐ必要がある、本来の姿に戻す必要があるのではないか、こう思うわけであります。山梨県教組の場合を現地調査してみても、政治活動、選挙活動に原則的には罰則がないということが、彼らをこのように野方図な活動をさせるもとになっているということを否めません。

 今回は、政治資金規正法違反ということだけでこれが事件とされて、そして先般、罰金刑ということでこれは決まったわけでありますが、もともとは、こういう政治資金規正法違反ではなくて、地方公務員法違反あるいは教職公務員特例法違反としてこれは当然挙げられなきゃならないそういう事件が、罰則がないために司直の手にこれをゆだねることができないということで、そこで行き詰まってしまっているということであります。

 ですから、ぜひ我々としては、こうした地方公務員あるいは教職員についても、その政治活動、選挙運動に対しては、罰則を国家公務員並みに設けることが必要ではないかな、適切ではないかな、こう思っているわけであります。

 昨年十月四日の参議院の予算委員会において、我が党の椎名議員の質問に対して総理は、地方公務員も公務員である限りは選挙運動はしてはいけない、した場合には、国家公務員並みの罰則を設けることについてはきちんと対応しなければいけないと思っているという旨の答弁をされておられるわけであります。我々もまさにそうじゃないかなというふうに思いますが、今の総理のお考えもお変わりはないでしょうか。

小泉内閣総理大臣 公務員のあるべき姿ということを考えれば、地方公務員も国家公務員もその使命は同様であります。きちんと、罰則も含めて、与党でもよく検討していただきたいと思います。

宮路委員 どうもありがとうございました。

 それでは、これで終わります。

大島委員長 これにて宮路君の質疑は終了いたしました。

 次に、田中和徳君。

田中(和)委員 自由民主党の田中和徳でございます。

 私の座右の銘は、意思あるところ道ありという言葉であります。この言葉は、英国のカティーサーク号という船のボディーに彫られた言葉を和訳したものだと言われております。小泉総理は、まさしく、意思あるところに道あり、数々の荒波を越えて、改革の成果を上げるために必死で頑張ってこられました。

 私は、川崎選出の議員でありますけれども、長年にわたりまして中選挙区時代は小泉総理が選挙区とされ、御活躍された舞台でもありました。先輩の姿を拝するときに、大変私も感銘をしておりますし、またこれからもひとつぜひ元気で頑張っていただきたいものだな、このように期待をしております。よろしくお願いを申し上げ、質問に入らせていただきます。

 今般の凶悪犯罪ともいうべき耐震偽装事件、そしてその後、対象物件の調査によって発覚した大手の施工業者の不良工事疑惑などに端を発した建設、建築全般に関しての不安や不信が、今国民の間に大きく広がっております。耐震偽装による被害者の方々に心よりお見舞いを申し上げますとともに、急がれる国民のこれらの不安、不信を払拭するためのシステム構築についてお伺いをしてまいりたいと思います。

 例えば、耐震偽装により全国で初めて建築基準法九条第一項の使用禁止命令を受け、引っ越しを余儀なくされる、私の地元の二十三戸が生活しているグランドステージ川崎大師の建てかえ費用は、都市再生機構も見積もりをしたようでありますけれども、総工費が高いということで、他のゼネコンで見積もりがなされました。六億円であります。そこで、被害者は建築資金の融資を受けるために銀行と協議をしたわけでありますけれども、銀行より示された融資の上限額が三億円でありまして、それ以上は無理と言われ、仮に建築費が六億円としたら、残りの三億円が不足になることが判明をいたしております。

 被害者の方々より相談も受けましたけれども、差額の捻出の見通しは全く立っておらず、本来ならば、瑕疵担保責任に基づき、このマンションを販売したヒューザーは当然に一〇〇%の支払う責任があるわけでありますし、また、重大な違法行為を犯した建築設計事務所も当然に支払いの責任があります。しかし、財力不足のため、支払ってくれる見通しが全く立ちません。

 当然に、事前に当該建築物の建築確認をして、また建築の許可をし、完成後の検査済証を発行した責任のある地方自治体も、民間の指定確認検査機関に委託したとはいえ、判例でも明らかなように重大な責任があるのであります。また、故意による耐震偽装の物件を建設した施工業者にも不良工事の賠償責任もあわせてあり、被害者の皆さんは、この支払い能力のある両者に賠償請求をせざるを得ないと言っている状況にあります。

 しかし、税金より支払う自治体はもちろんのこと、施工業者も、賠償の割合や金額が不明確なままでは支払いはできず、裁判になれば、和解しない限り、最終的な判決が出るまでには十年近くの長い年月を要します。

 グランドステージ川崎大師の被害者は、今、先行きの見通しが立たず途方に暮れており、夜も眠れない日々を過ごしておられます。我が自由民主党にも要望書が提出をされております。マイホームはあきらめ、借金だけが残るという最悪の事態だけは何とかしたいと考えるのは当然であります。

 以上、一例を挙げました。

 確かに、政府の迅速な対応により、先日可決された補正予算において引っ越しや解体を含めた建てかえに五十億円、耐震診断に三十億円、合計八十億円が予算化されるなど、これから一定の対策は講じられることになっておりますが、これだけでは到底、被害を受けた人たちの不安、不信をぬぐい去るには至っておりません。

 被害の実態の解明はこれから刻一刻と進んでいくと思いますが、政府としても、被害者の方々の救済を最優先として取り組まれますよう、私からも強く要望しておきたいと思います。

 日本は世界に冠たる先進国として繁栄を築いてきましたが、建設業は、我が国のGDPの六・七%を占める主要産業であるとともに、そこで働く人々の数も約六百万人と、全労働力人口の約九%に上っております。建設業の我が国経済に及ぼす影響を考えますと、自己責任を求めながらも、政府が指導力を発揮してセーフティーネットの構築を急がなければならないと考えます。分譲マンションや建て売り住宅などの住宅の買い控え、ありとあらゆる建築物の発注のためらい等が生じて、やっと回復の芽が出てきた景気にも著しい悪影響を及ぼすのではないかと私も危惧しております。

 そこで、その対策として、第一に、今回のような不心得者が出ないようにするための関係法令の徹底した罰則の強化、第二に、事前の建築確認や完成の検査を行う行政機関や指定確認検査機関の賠償責任制度の明確化、第三に、完成後、大臣の認定した機関がもう一度審査を行い、十年間の保証制度になっております住宅の品質確保の促進等に関する法律とあわせて、現在一割程度の活用しかない住宅の性能表示制度を改正し、一般の建築物にも活用できるようにすること、第四に、物件を担保にとり融資した金融機関の責任の明確化や損害保険制度の検討などが考えられるのではないかと思います。

 いずれにしても、国の強いリーダーシップが求められるわけでありますけれども、まず、総理のお考えをお伺いしたいと思います。

与謝野国務大臣 今回の、強度を偽って建設されたマンションを購入された方々の現在のお立場を考えますと、本当にその苦境は察するに余りあると私は思っております。

 先生の御質問、私どもの担当していることで幾つかございますが、一つは、金融機関のローンについてお話がございましたが、ローンの提供というのは、やはり建築基準法できちんと確認をされたということが前提となっておりまして、金融機関自体が建築基準法上合致しているかどうかということを審査するというのは少し無理なことではないかと思っております。

 しかし、今般、この苦境の中で、北側大臣から御要請がありましたので、全銀協にもお願いベースでいろいろなことをお願い申し上げました。全銀協の方としては、金融機関として許される範囲内で最大限のことをしようということで、後ほど詳しく御説明申し上げますけれども、いろいろな措置をとってくださるということを自発的に申し合わせてくださいました。

 それからもう一つは、保険制度を導入したらどうかというお話でございましたが、今先生の御質問の中にありましたように、一体だれがその保険加入者になるのか。マンションの購入者なのか、指定機関なのか、あるいは自治事務を担当しているところなのか、こういう問題もあります。

 しかし、保険でカバーできないかというのは有力な御提言ですので、北側大臣の方とこの問題についても可能かどうかを含めまして検討に既に入っております。まだ結論は出ておりませんので、確たるお答えはできませんけれども、品質保証制度という制度もあり、また、それが保険に拡大できないのかどうかという御趣旨の御質問だと思いますので、この点については、保険という商品にふさわしいものかどうかを含めまして、きちんと検討してみたいと思っております。

北側国務大臣 今回の耐震偽装事件を受けまして、もう二度とこうしたことが起こらないように、再発の防止に向けまして、まずは今回の事実関係、また建築確認の実態、そういうものの総点検を今させていただいておるところでございます。

 その上で、今、社会資本整備審議会で、建築士法のあり方、また建築基準法の建築確認のあり方、それについて御審議をいただいているところでございます。今委員の方からおっしゃった罰則の強化等も含めまして、緊急に措置をすべきものにつきましては二月の末までに取りまとめをいただいて、今国会で法律の改正もお願いをしたいというふうに考えているところでございます。

 今与謝野大臣から御答弁ございましたが、私の方から、もう昨年でございますが、与謝野大臣にお願いいたしまして、やはり民間の金融機関におかれましても、住宅ローンの負担軽減についてぜひ御議論をお願いしたいということで、先般、全銀協から一定の方針が出されたところでございます。

 また、今後、消費者保護、こういう特に分譲マンションの居住者の方々の消費者という観点からの保護をやはり強化していく必要があると考えております。今回の案件も、売り主としての建築主が瑕疵担保責任を負っているわけでございまして、それをしっかりと実行してもらわないといけないわけでございますが、それが十分に果たされない。瑕疵担保責任の規定があっても、それでは意味がないわけです。

 この瑕疵担保責任についての実効化をしていくために、先ほど与謝野大臣もおっしゃった保険制度について、やはり一定の建物については、このような分譲マンションのような一定の建築物についてはこの保険加入というものを義務化していく、そういうことも今御議論をいただいているところでございます。

 いずれにしましても、こうした事件が二度と起きないように、また、建物の建築確認に対する信頼性を回復していくために、全力を挙げて取り組みをさせていただく決意でございます。

小泉内閣総理大臣 田中議員は、よく地元で、現場で、また現地の被災者の声を十分聞いての御質問でありますので、今の与謝野大臣、北側大臣、各省連携をとって、救済策、防止策、政府としても対応しなければいけないなと思っております。

田中(和)委員 総理のただいまの御答弁、さらに関係される国土交通大臣、金融担当大臣の御答弁をいただきまして、大変真剣な取り組みをしていただいているということと速やかな対応をしていくという姿勢を伺うことができました。

 幾つかの点について、重ねてお尋ねをいたしてまいります。

 まず、非姉歯の初の耐震偽装が福岡市で見つかったという話でありますけれども、どういう状況なのか。また、こういうことになっていくと、どんどんと国内にこういう問題が広がっていく可能性もあるわけであります。私も大変危惧しておりますけれども、大臣から状況を御説明いただければと思います。

北側国務大臣 今回の耐震偽造事件を受けまして、姉歯元建築士の設計した物件について、これはすべて調査しようということでやっております。とともに、姉歯元建築士の設計ではないが、今回の事件で、木村建設だとかヒューザーだとか総研だとか、そういう姉歯元建築士とかかわっていた業者がいらっしゃいます。そういう方々が携わっている物件についても、姉歯元建築士がかかわっていない物件であろうとも、その建物の安全性に問題ないかどうか、これを調査しようということで、今調査をしているところでございます。

 現在、姉歯元建築士が関与していない物件、六百七件あるわけでございますが、そのうちの三百九十件まで調査が終わりました。その過程の中で、今委員のおっしゃった、福岡市におきまして、これは木村建設の施工物件でございます。木村建設の施工物件の調査を私どもの依頼に基づいて福岡市がやったわけでございますが、その結果、サムシング株式会社、一級建築士事務所が構造計算を行っておりました賃貸共同住宅四件について、福岡市が再計算を専門家の方に依頼をしておりました。社団法人日本建築構造技術者協会というところに委託をしておったわけでございますが、これについて、二月三日、先週の金曜日に報告がありまして、この四件中三件について偽装があったと考えられるということが福岡市の方に日本建築構造技術者協会から報告がなされ、国土交通省にも報告がございました。

 福岡市は、その後、この報告書の内容の精査を行うとともに、このサムシング株式会社、一級建築士事務所の管理建築士に対する事情聴取を昨日行いまして、事実関係の確認を進めたところでございます。昨日、建築士へのヒアリングを通じて事実関係の確認を求めた、事情聴取をしたところでございますが、福岡市から偽装を確認した旨の報告を受けました。ただ、これは、まだこの管理建築士の方は偽装であることを否認していらっしゃいますが、事実関係からいうと偽装があったというふうに福岡市は判断をし、けさ早く国土交通省の方に報告があったところでございます。

 ただ、この耐震度につきましては、三件が偽装ということですけれども、一件は一・〇以上ございます。また、あと二件も〇・九、〇・八五という数値でございまして、緊急に安全性が問題となる状況ではございません。再度詳細な検証をしようということで、その検証を行うというふうに福岡市の方から報告を受けているところでございます。

 まずは、このサムシング株式会社、一級建築士事務所がかかわった、関与物件が一体どれぐらいあるのか、そこをしっかり特定していく必要があると思いますし、また、今回の事実関係の詳細な把握をさらに進めてまいりたいと思っています。

 きょうは、県が立入検査等に入ってさらに詳しく事実関係を掌握する、また国といたしましても、地方整備局で事実関係の聴取を行うということになっているところでございます。この事実関係を把握した上で、偽装というものについて事実関係が明らかになった上で、明確にさらにさせた上で厳正な処分を行っていきたいというふうに考えているところでございます。まずは今は事実関係をしっかり掌握させていただきたいと思っております。

田中(和)委員 ただいまの国土交通大臣のお話を聞きまして、心を大切にしてきた品格の国家であるはずの我が国あるいは人々が本当にどうなっているんだろうか、世界の人たちから、こういう事実が次から次に明らかになることによってどう思われているんだろうかと大変心配をいたすところでありますし、政治家としても、教育等、問題を解決するための努力を本当に痛切に、責任も含めて感ずるところであります。

 幸いにして、耐震性の問題については、すぐに退去しなければならないという状況ではないようでございますけれども、大変数多くの対象物件があるわけでありますし、また、いろいろな人たちから情報が寄せられて、調査をせざるを得ない、こういうことになるのかもしれません。どうぞひとつ、大変だと思いますが、お取り組みをよろしくお願いしておきたいと思います。

 それから、続けて国土交通大臣にお尋ねしてまいりますけれども、先ほど来よりお話ししておりますように、今の制度の中で、また自己責任ということを中心に考えるときに、なかなか今回の被害者の人たちを救済するということについて限界があるということも事実であろうと思いますが、このような突如として起こった、予想されなかった、まさしく想定外の内容について、やはり国がしっかりと対応していただく、被害者をひとつ守っていただく、このような姿勢が大事ではないかと思いますが、重ねてその点、お伺いしておきたいと思います。

 続いて、建築基準法の罰則強化や建築士法の改正についてもお尋ねをしてまいります。

 建築物は、言うまでもなく、住宅、商業ビル、公共施設、倉庫などさまざまでございまして、また、販売形態別に見ましても、注文、分譲、賃貸と多種多様であります。

 今回の耐震偽装問題や、今大変な問題になっておりますビジネスホテル東横インの問題など、モラルの低下による、まことにけしからぬ建築に係る事件が多発しております。

 建築基準法は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めておりますが、その罰則が軽く、今回の耐震偽装事件でも、第二十条の構造耐力の規定に重大な違反をした建築物を設計したにもかかわらず、罰則はわずか五十万円以下の罰金が科せられるのみでありますし、また、同法に基づいて事前審査と完成後の審査を行う行政機関や指定確認検査機関の賠償責任の明確化も、私はこれからは必要だと思います。当然、建築を請け負うゼネコンの責任も明確にしていく必要があるのではないでしょうか。

 さらに、建築士法を改正して、建築士の質の向上のため、計画や意匠、構造、設備という三つの専門分野に分割して責任の所在を明確にする、そして国民の信頼にこたえられる建築士の制度を確立する、こういうことも必要であります。

 先ほど来より御答弁をいただいておりまして、既に検討を進めておられますし、二月末までには一定の形を示していく、こういうことでありますけれども、この点について国土交通大臣にお伺いをいたしておきたいと思います。

 あわせて、時間の関係でもう一点、重ねてお尋ねをしてまいります。

 まず、これからのセーフティーネットの分野でございますけれども、今ある住宅の品質確保の促進等に関する法律と住宅の性能保証制度を改正して、どのような建物にも拡大をして保険つきの保証制度を確立するとともに、完成し自治体より検査済証が発行された建築物を第三者機関が再チェックをして、もし建物に問題があれば早期に発見できるシステムを確立したらどうかと思います。もちろんこれは、法律に定められた重大な過失だとか故意があったものは保険の対象にならないことは明らかでありますけれども、この制度は私は大変有効だ、このように思います。

 住宅の品確法は平成十二年から施行されておりますけれども、それまで短くなりがちであった瑕疵担保の責任の期間を売り主、建築業者に十年間義務化しましたし、あわせて、任意で、有料でありますけれども、一戸当たり十万円から十五万円出せば、国土交通大臣が認めた第三者機関がチェックをして、住宅を九項目にわたり性能表示をすることになっております。先ほども言いましたように、このチェックで、重大な故意や重過失の不良工事物件についても発見が早期にできる、このように私は思います。

 また、住宅の性能保証制度についても、新築の住宅を瑕疵担保責任のある十年間にわたり、財団法人住宅保証機構に住宅の所有者が加入手続をすることにより、チェックを受けますけれども、一戸当たり掛金七万円から十万円を掛けるだけで保険で保証するというものでありまして、まことによい制度ですが、この住宅の性能保証制度を利用している人は、わずか、新築の対象物件の中でも約一割の十一万戸にとどまっている状況にあります。

 これは全国に向けてもっとPRをするべきと私は考えますし、加入すると、十年間は、瑕疵担保責任のある業者が支払いが不能になっても、補修費用を九五%保険でカバーし、住宅の所有者が手厚く保護されるようになっておるわけでございまして、これらをもう少し幅広に改正をして国民の不信を払拭する、安心を取り戻す、こういうことができないだろうか、こういうことであります。

 御答弁をお願いいたします。

北側国務大臣 今、田中委員からさまざま御提言をちょうだいいたしました。大事な問題ばかりでございまして、今後の制度の見直し論議の中で、今の御提言をしっかり踏まえて論議を深めさせていただきたいというふうに考えております。

 すべての御質問にお答えできないかもしれませんが、まずは、危険な分譲マンションにお住まいの居住者の方々、この方々の居住の安全を確保していく、これが何よりも最優先でやらなきゃならないことであったというふうに考えております。

 そういうことで、そういう十の危険な分譲マンション、二百八十八世帯お住まいでございますが、私どもの支援策も出させていただいて、また補正予算についても通させていただいたわけでございますが、現状は、二百八十八戸あったわけでございますけれども、既に二百四十三戸については退去がなされました。さらに、残りの四十五戸のうち四十三戸についても退去が明らかになっております、予定が明確になっております。残り二世帯だけ退去予定がまだ明らかになっていない、こういう状況になっているところでございます。

 まず、この居住の安全をしっかり確保していく、また居住の安定を図っていくということに、特定行政庁、地方公共団体とよく連携をとって進めさせていただきたいと考えているところでございます。

 また、建築基準法における罰則の強化については、もう全くおっしゃっているとおりでございまして、懲役刑の導入も含めました罰則の強化について今検討をしているところでございます。

 また、建築士資格の専門化の問題につきましても、やはりこの建築士というのは、デザイン、意匠と、それから構造、設備、大きく三つの分野に分かれているんですが、その辺の責任の所在が明確になるようにしていく必要があると考えておりまして、例えば建築確認申請書類の中に、そうしたかかわった設計士の方々のすべての名前がきちんとわかるような形にしていきたいというふうにも今議論をしているところでございます。

 また、住宅の品確法につきましても御指摘があったわけでございますが、この住宅の品確法につきましては、消費者保護の観点からこの法律はつくられております。住宅以外の建築物について広げていくということは、これは事業者同士の契約関係が中心のものでございまして、この法律の性格からすると、すべての建築物に拡大するというのはなかなか困難だというふうに考えておるところでございます。

 ただ、住宅性能表示制度については、おっしゃっていますとおり、まだまだ十分普及されておりません。これがしっかりともっと普及がなされるように促進をさせていただきたいと考えているところでございまして、この住宅性能表示制度の充実強化についても今御議論をいただいているところでございます。

 そして、住宅性能保証制度、保険でございます。こちらもまだ新築住宅で加入されているのが一三%というふうな状況でございまして、これにつきましても、一定の住宅につきましては加入をしていただく、保険への加入、また銀行による保証というものを、やはり消費者保護、住宅取得者の保護の観点から加入していただくようにすべきではないか、こうした議論も今させていただいているところでございます。

 きょう、今委員の方から御指摘があったテーマにつきましてはしっかりと議論をさせていただき、こうした耐震偽装の事件が二度と起きないように、再発防止策、しっかり取り組みをさせていただきたいと考えております。

田中(和)委員 大臣の前向きな御答弁、ありがとうございました。

 ここで、金融担当大臣にもう一度お伺いをさせていただきたいと思います。難しいことを承知でお聞きしておりますので、御理解いただきたいと思っております。

 今の国土交通大臣に御答弁をいただいた住宅の性能保証制度というのは、これはやはり、住宅品確法の八十七条と八十八条に定められた、柱やはりなどの構造耐力上主要な部分、雨水の浸入を防止する部分に限定された保険でございまして、何でもというわけにいかないのでございます。

 工事に重過失があろうと故意があろうと、損害保険による補償制度もあるのではないかということで、よその国、先進国を中心に調べてみたのでございます。船舶を対象にした船主と造船会社に関する完全補償制度の保険はありましたけれども、建築、建設に関してはほとんどありません。アメリカやフランスにはございますが、事業者の責任を問うことなく住宅の欠陥を補償する保険でありましたので、大変ニーズが高くて、いずれも倒産したり収支が赤字になって、民間の保険の枠組みだけではうまくいかないことが明らかになっております。特にフランスの場合は行き詰まってきておるようでございます。

 これらは民間の保険制度としてはやむを得ないと思いますけれども、被害者の救済のために、行政が民間企業、とりわけ建設の業界だとか金融の業界だとかと協力して何かいい制度をつくることができたら、私はこれらの信頼をもっと回復できるんじゃないか、このように思っております。

 特に、アメリカのカリフォルニア州では、建設時に第三者による慎重な検査を何度も繰り返すピアレビューのような制度が導入されておりまして、保険会社も安心して保険を掛けているようなんですね。さらに、物件を担保にとって融資した金融機関の責任やいかにという部分も検討はあるように思います。他の国では相当の責任を負っているところもあります。

 そういうことで、私は、先ほど大臣からお話があったんですが、全銀協の方から先日示された案でございますけれども、三年間金利、元金は待ちましょうと。しかし、当然金利はもらうわけでございます。延びるだけですから、その間も金利がかかるわけでございます。私は、余り前向きな対応ではなかったんじゃないかなと、ちょっと寂しいというのか残念に思っているものの一人なのでございます。

 いずれにしましても、私が今言っている話はそれほど簡単な話ではないわけでございますけれども、極めて政策通の、政治家として高名な与謝野大臣でいらっしゃいますので、ぜひひとつお話をお聞きしたい、このように思います。

与謝野国務大臣 この問題に関しては、お金を貸した方に責任があるかといえば、どう考えても、お金を貸した方は、建築基準法で適法な建築物であるということを前提にお金を貸しているわけですから、その責任を問うというのはやや法理論的には無理だろうと思っております。これは北側大臣も同じ認識だと私は思っておりますが、しかし、そうはいっても、現実に困っている人がいます、お金を借りてマンションを買ったけれども、そのマンションは全く無価値になった、そういう場合、やはり金融機関として御協力願えないだろうかと。

 これは三つの分野にわたりましてお願いをしたわけですが、ローンを借りますと、約束があって、こういうスケジュールで返していきます、こういう金利を払っていきますと。しかし、その支払い能力が非常に難しくなっているわけですから、いろいろな銀行でいわばリスケジューリングをしていただきたいと。それから、その期間の金利も何か御考慮いただけないだろうかということで、一部銀行では、その期間の金利は要りませんよという御意思を持っているところもあるようでございますが、これは全銀行、そういうことを強制するわけにはまいりません。

 第二は、取り壊した後の土地の上にいろいろな抵当権が設定されていまして、何々銀行、何々信用金庫、何々信用組合、そういう抵当権を抹消するときにやはりきちんと協力してほしい、これも協力しますと。

 それから、新しくその上にマンションを建てたときのローンをどうするか。これも銀行として可能な限り協力してくださるということでございますから、一応、金融機関としては、銀行として許される範囲で、現時点での最大限の協力をしてくださったものと私は実は感謝をしております。

 そこで、保険の話をもう一点話されましたけれども、一体、そういう保険を考えるときに、任意保険の制度にするのか、あるいは、家を買った人、つくった人、建設会社、全員が入る強制保険なのかという問題があります。

 それから、買った人がなぜ保険料を払わなきゃいけないのかという問題があって、建築基準法上適法のマンションを買って、なおかつ、危ないかもしれないからといって保険でバックアップをしておくというのは、制度としてはどうなのかなという理論的な問題を指摘する方もおられます。

 しかし、いずれにしても、こういうことが起きて、現実に困っておる方がおられるわけですから、保険とか保証制度とかというものを含めまして、北側大臣とよく御相談をして、将来、家を新築したり、マンションを買ったりする方が不慮の災難に遭わないように、私どもは制度的な工夫を考えてみたいと思っております。

田中(和)委員 総理初め、各大臣の御答弁、ありがとうございました。

 質問はたくさん用意しておったのでございますが、時間が参りましたので、これで終わらせていただきたいと思っております。

 ただ一言、担保にとってお金を貸すということは、担保を十分調査することはやはりどうしても金融機関にとって大切な仕事ではなかろうか、その部分についての責任はあるのではないかな、私はこのように思っております。

 終わります。ありがとうございました。

大島委員長 これにて田中君の質疑は終了いたしました。

 次に、坂口力君。

坂口委員 五年ぶりに質問させていただくことになりました。どうぞよろしくお願いを申し上げたいと存じます。

 昨年、大きな出来事はいろいろございましたけれども、その中で、やはり二〇〇五年、人口減少時代に突入したということは、歴史上残る大きな出来事ではなかったかというふうに思っております。

 人口減少に入って、今はまだいいわけでございますが、その表をちょっとごらんいただきますと、これは厚労省の研究班の方でつくられたものでございますが、九年先、二〇一五年になりますと、今のままで進んでいきますと四百万人ぐらい労働力人口が減る。しかし、女性あるいは中高年あるいは若年の皆さん方の仕事をつくり出していくということになりますと百十万か百万少々ぐらいな減少で抑えることができるだろうということでございます。

 しかし、十年先はまだいいんですけれども、二十年先になりますと一千万からの労働力人口が減少してくる。いろいろなことを一生懸命やりましても数百万人は減るだろうということを覚悟しなければならない。これは少子化じゃなくて、もう少なくなってしまった後の話でございますから、決定的な話でございます。

 さて、ここをどうしていくかということになるわけでありまして、総理にお聞きを申し上げたいのは、こういうふうに減少していきましたときに、それを埋めていくのはどうするか。先ほどから言っておりますように、女性や高齢者あるいはまた若者を、できるだけ仕事のできやすい環境をつくり上げていくということは大事でございますけれども、それだけではなかなか埋まらないかもしれない。

 そういたしますと、多少国内総生産が減りましても、皆で動員しながら総動員で頑張っていくか、さもなくば外国から少しお手伝いの人に入ってもらうようにするか、その選択を迫られるわけであります。十年先、二十年先の話ではございますけれども、今からどちらをどうするのかということは考えて政策を積み上げていく以外にないのではないかというふうに思いますが、総理の率直な御感想をまずお聞きしたいと存じます。

小泉内閣総理大臣 久しぶりに答弁者が質問者になって、よく存じている方が、知っているのを承知で知らない人に聞いているような感じでありますけれども。

 人口の問題と労働力の問題、経済活性化の問題、それぞれつながっていると思いますが、日本は人口減少社会に昨年ぐらいから入ったようでありますが、これは、今までの歴史を見ますと、日本の歴史始まって以来、最も現在は多い人口なんですね。明治時代が三千万人台、そして四千万、五千万、七千万、戦後にようやく一億に達した、それで一億二千万になった。これは、有史以来、最高の人口を今持っているわけです。

 そこで、どのぐらいの人口が適切かというのは、人によっていろいろ見方が違います。しかし、今坂口議員御指摘のとおり、今後、労働力が足りなくなってくるじゃないか。ちょっと前までは失業者で困っていて、失業者がもっとふえるんじゃないかということから、最近は、深刻な労働力不足になる、このことを危惧しているのがよく出ております。私は、人口が、有史以来、一億を超えたのは初めてで、そこで今は減ってきた。子育てをしながら男性も女性も社会に参加していこうということを政府も支援しておりますし、そういう時代になっていくと思います。

 外国に比べまして、特に先進国に比べて、日本はまだ女性の社会進出の割合が低いわけであります。ということは、現在の女性の社会進出の割合を高めていくということ、そして、子育ての喜びを感じながらも、やはり仕事も生きがいであるという仕事環境、生活環境、子育ての環境、少子化の流れをとめるためにどういう対策をしていくか、これも並行してやっていかなきゃならないと思っております。

 かつてとは違って、高齢者も元気です。六十歳定年で、はい、もう何もしなくていいですというよりも、できれば仕事があった方が健康のためにも生きがいのためにも張り合いがあると思っている人はたくさんいるわけですから、そういう六十過ぎの高齢者も、仕事の場があれば喜んで仕事につくという人が多いわけですから、今後、女性のみならず、高齢者がどのように社会に参加してもらえるか。

 さらに今、これから懸念材料であります若者、フリーター、ニート。今は大した定職につかなくてもアルバイトでやっていける、一日八時間働かなくても、一日何時間か、しかも毎日働かなくてもいいんだという方も多いようでありますが、やはり将来、長い将来を見れば、定職につくような訓練なり支援活動、仕事探し、こういうものについて支援していく必要があると思います。子供のころから、仕事の重要性、仕事のとうとさというものをわかってもらうような教育も必要だと思います。

 そして、これがちょっと問題なんですが、労働力が足りないから外国人を入れればいいじゃないかという議論がよく出てまいります。ある程度外国人労働者を入れるというのは一つの時代の流れですけれども、一定の規模、一定の外国人の労働者がふえると、必ず衝突が起こります。これを事前に防ぐような対策を練って、考えながら、外国人労働者を必要なら入れていくという方策が必要だと思います。安易に、労働力が足りないからどんどん入れればいいんだということにはならないんじゃないかと思っております。

 今でも、不法でも日本に入って仕事をしたいという人がたくさんいるんですから。現在、推定して外国人不法労働者が約二十五万人いると言われております。不法ですからなかなか就職しにくいですよ。金を稼ごうと思えば犯罪行為に走りかねない。どこに潜んでいるのか、記録に載っていないんですから捕まえにくい。

 こういう不法滞在者をなくすように努力しておりますけれども、もっと対策を講じると、またその網の目をくぐって何とか、一度退去を命じた人がまた再び偽造パスポートで入ってくる。こういう点については、法務省とも外務省とも警察庁とも連絡とって防いでおりますけれども。

 外国人労働者を一挙に開放すると、労働力はよくても、衝突が起こって犯罪が多くなっては元も子もないということがありますから、外国人労働者の受け入れについては、専門職とか技術職というのは当然一定の条件のもとに入れざるを得ない時代だと思いますけれども、安易にどんどん受け入れるようなことで労働力の不足を補っていこうという考えは、慎重に考える必要があると私は思っております。

坂口委員 ありがとうございました。

 大体お考えを聞かせていただきました。八分ぐらい御答弁いただきまして、私、三十分しか時間がないものですから、ひとつよろしくお願いを申し上げたいと存じます。しかし、具体的にお聞かせをいただきましたので、総理のお考え、わかりました。

 先ほど申しましたように、十年先はまあ何とかいくんだ、今は失業者でも三百万いるんですから、百万、二百万減ってもそう問題はないんだろうというふうに思います。しかし、二十年先になって一千万から減ってくるということに話がなってきますと、これは経済成長もしていかなければなりませんし、働く人の数が日本の中で減ってくるということは、労働生産性をよほど高めないと日本のプラス成長になっていかないということでございましょう。

 その労働生産性のお話でございますが、総理、二枚目の紙をちょっとごらんいただきたいというふうに思うんです。

 これは二、三年前につくってもらったものでございますから若干日がたっておりますけれども、G7の中で日本の労働生産性というのは、英国と日本が最下位を争っているという状況でございまして、トップがイタリア。私はイタリアがトップだとは思わなかったんですけれども、えらいイタリアに失礼でございますが、見てみましたらイタリアがトップでございまして、日本は英国と最下位を争っている。

 また、二〇〇一年ではなくて二〇〇四年を見ましても、二〇〇一年とそんなに変わっていない。若干計算方法が変わったという話ではございますけれども、二〇〇一年が四千五百三十四円、これは就業者一人当たり一時間であります、二〇〇四年には四千五百六十円、若干はふえていますけれども、余り変わっていないということでございます。

 それで、働く人の数が減っていくということになれば労働生産性をかなり上げていかなきゃいけない、今まで以上にピッチを上げていかなきゃならないというふうに思うんですが、ここは二階経済産業大臣に、日本の中でこの辺のところをどうやっていこうというふうにお考えになっているかをお聞きしたいと思います。

二階国務大臣 坂口先生はかねてより労働問題については大変御見識の高い方でございまして、既に大臣としていろいろ施策を実行していただきました。そのだめ押しといいますか、激励をちょうだいしているものと思っておりますが、私は、この人口減少社会においても、なお国富の拡大ということをもたらす新しい成長が可能だというふうに考えております。

 また、改革の先にあるものは何か、これを国民の皆さんに指し示す必要があるわけでありまして、明るい展望であること、経済産業省としては、このための新経済成長戦略の検討を開始してまいりました。

 新しい成長を実現していくためには、御指摘のように、労働の生産性の向上、特に技術革新やITの活用による生産性のさらなる効率の改善ということが必要だと思っております。

 例えば、世界のイノベーションセンターとして国際競争力のある最先端の産業を育てるとともに、アジアの近隣諸国と協調して国際社会における労働生産性の向上に貢献していくことが必要であり、また可能であると考えております。

 また、地域の発想、やる気のある地域に対して積極的に激励し支援をしていくと同時に、中小企業の再活性化にも大いに努めてまいりたいと思っております。

 先ほども申し上げましたが、生産性の向上に役立つITの効果的活用、このことに真剣に取り組んでいきたいと思っております。

 なお、先ほど申し上げました新経済成長戦略は、三月の中旬ぐらいまでに中間報告をまとめ上げ、五月いっぱいに国民の皆さんにこれをお示しし、御協力願うように呼びかけてまいりたい、このように考えております。

坂口委員 これは内閣府が出されました年次経済財政報告、十四年版でございますけれども、九〇年代の労働生産性が低下したということに対する分析を非常に具体的におやりいただいております。

 その中でも、資本装備率の方を上げるためには機械化の進展、機械化をお挙げになり、それから、全要素生産性を上げるためには経済全体の効率化と技術進歩の進展、この二つを挙げている。研究開発、技術進歩とそれから効率化というものだというふうに思いますが、効率化は、各企業の中の効率化というのはかなり進んでおりますから、今以上もう一つ効率化というふうになりましても、これには限界もあるというふうに思っております。

 したがいまして、ここのところでは、やはり研究開発そして技術進歩というものに集中して、ここをどうするかという話になってまいりますが、それをするためには人材を養成していかなきゃならないわけでございます。人材の養成をするのにどうするかという話になってまいります。

 本当は経済産業大臣にもう一問お聞きをして、人材の養成というのはどういうふうに、企業にお願いするのか、個人にゆだねるのか、それとも国が、公的な機関が一生懸命やるのかということをお聞きしようと思ったんですが、ちょっと時間がありませんから割愛させていただきます。

 いろいろのデータを見ますと、個人が自分で新しい仕事につくようにということをやっておりますのも、だんだんと落ちてきているんですね。それから企業の方の教育訓練というのも、いわゆる教育訓練費に使っている額というのは落ちてきているんですね、最近。かなり低くなってきている。企業が経済状態が悪くなりましたときに一番先に切ったのは何かというと、教育訓練費なんですね。教育訓練費、広告それから交際費ですか、三Kと言うんだそうでございまして、それらを切るということになってきているわけであります。だから、かなりここはなかなか企業の方も厳しいということになって、さてどうするか。

 ここは財務大臣にひとつお聞きをしたいわけでございますが、人材投資促進税制というのが御承知のとおりございまして、十七年度から行われております。これは、過去二年間、去年、おととし、例えば二年間なら二年間の平均とことしとを比較して、伸びた分の二五%を控除するという内容でございますが、感じからいきますと、これぐらいではなかなか企業の方はやってくれる方向に行きにくいのではないか、もう少し何とかならないかという気持ちもございますが、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 今坂口先生がおっしゃった人材投資促進税制、これは、いわゆる骨太の二〇〇四で人間力ということが大きなテーマになりまして、そのための総合的な施策の一環として取り入れたものでございます。今坂口先生がおっしゃいますように、過去二年間、ふえた教育訓練費の二五%を税額控除しようというものでございます。

 それで、実は平成十七年度から入れまして、まだ一年間年度がたっておりませんので、私どもも、どういう効果が出てきたのかということをよく見たいと思っておりますが、率直に申しますと、二五%の税額控除というのはかなり頑張ったものだというふうに私は思っておりまして、これを十分利用していただきたいと思っておりますが、どういう効果があらわれてきているのかというようなことは、よく見させていただきたいと思っております。

坂口委員 ぜひこの辺のところは、もう一工夫していただければというふうに思います。

 それから、文部科学大臣に今度はお聞きをさせていただきたいというふうに思いますが、IMDというレポートがございまして、それを見ますと大学教育が経済のニーズにこたえている度合いが示されておりまして、六十カ国中、日本は五十八番目という余り喜べない数字が出ているわけでございます。

 これはいろいろ見方にもよりますし、必ずしもここがこういうふうに評価したからこうだとは私も断言いたしませんけれども、アカデミックな面だけではなくて、地域経済に目を向けた教育というのがもう少し必要ではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。何かいい案ございましたらお願いいたします。

小坂国務大臣 坂口委員御指摘のIMD、すなわち国際経営開発研究所の国際競争力ランキング、以前五十八位でしたが、ことしは五十六に、若干、二位ばかり上がっておりますが、いずれにしても、我が国が経済力を維持していくためには、持続的な発展を可能とする研究開発投資というものが必要でございます。その意味で、各大学が、その個性、特色に応じて、地域産業等の産業界のニーズを踏まえた人材育成や研究を行うことは極めて重要と認識をいたしております。

 そんな意味で、例えば、企業と協同した教育プログラムの開発やインターンシップの実施などの取り組みの進展が必要であろう、このように考えておりまして、文部科学省といたしましても、大学や産業界のニーズを踏まえつつ、両者が連携した人材育成を支援するための各種の施策を推進してまいりたいと考えております。

 内容といたしましては、地域活性化や、企業と連携したキャリア教育、それから社会的なニーズに対応した人材育成の取り組みの支援、大学院における長期インターンシップの推進、こういったことに対して積極的に取り組んで委員御指摘のようなニーズに対応してまいりたい、このように考えております。

坂口委員 ぜひお願いしたいと思いますし、産業界との連携もひとつお願いをしたいと思います。

 これは経済産業省の方でいただいたペーパーでございますが、これを拝見いたしまして、確かに産学連携人づくりというのを進めておみえになるわけですけれども、大学との、何でもこれで二十八・四億円、これは一番多い方でありまして、中小企業や高専等との連携というのは四億円。まあ、三億とか四億というのが多いわけですね。金の額ですべて決まるとは言いませんけれども、この辺のところはもう少し力を入れていかないことには、日本の将来、大変になってくるのではないか。

 先ほど申しましたように、労働力人口は減ってくる。そうすると、それに掛け合わせる方の労働生産性を高めなければならない。その高めなければならない労働生産性は、いろいろの若い人たちの技術開発、その技術力、人間力と申しますか、そうしたものを上げていかなければならない。この上げていくところをもう少し力を入れないことには、将来少し心もとないではないですかということを申し上げているわけであります。

 時間がなくなってまいりましたので、厚生労働大臣にひとつお伺いをいたしますが、厚生労働大臣の方では、これは研究機関の報告で、企業は、能力開発の責任主体を企業から労働者へ移行させつつあることや、業務効率化に伴う事業規模の縮小などにより企業内における教育訓練投資も減少してきている、こう述べておりまして、先ほど申しましたように、なかなか企業の中も厳しくなってきている。この辺のところをどう進めようとお思いになっているかということが一つ。それをお伺いしたい。

 それで、もう時間ございませんので、あわせて、女性に対します問題。今度男女共同参画の法案も御提出になるようでございますが、女性の働き方ということにつきましてもどうお考えになるかということをあわせてお答えいただければありがたいと思います。

川崎国務大臣 御指摘のように数字がだんだん落ちてきておりまして、労働費用に占める教育訓練費の割合、一九八八年で〇・三八、二〇〇二年で〇・二八。〇・一ポイントほど下がっているのが現実でございます。そういう意味では、税制等で誘導しながら、しっかりとした体制をまず大企業は持っていかなきゃならぬだろう。一方で、中小企業がそこまではということになりますので、やはり人材育成、そこに対して実習と教育訓練、こういうものを組み合わせた形で私どもバックアップしてまいりたいと考えております。

 それから、今御指摘の女性の雇用の問題でございます。

 現実の社会は、近年、妊娠、出産等を理由とする解雇、退職の勧奨、正社員からパートタイマーへ変更の強要等の事案が、正直言って増加してきております。若い子育てする夫婦をどう社会が支えていくかという中で残念な事態が生じてきておりますので、厚生労働省においては、妊娠、出産等を理由とする解雇禁止の規定の強化に加え、解雇以外の不利益取り扱いの禁止等を内容とする男女雇用機会均等法の改正案を今国会に提出させていただいて、先ほどから御議論いただきましたように、まず第一に女性の雇用、そして第二に、坂口さんの時代におつくりいただきました高齢者の雇用、それからIT問題、そしてその後に海外からの方々の問題を考えていくべきであろう、こんなふうに考えております。

坂口委員 時間がなくなってまいりましたので、与謝野大臣にも一言だけお聞きをしたいと思います。

 先ほどから申しまするように、企業の効率化といいましても、企業の中の効率化はなかなか、もうぎりぎりのところまで来ている。日本全体の中の企業のあり方というものを生産性の低い部分から高い部分へ移行していかなきゃならないということを内閣府のこの中にも書いてございます。

 そういうことでございますと、国全体としても、企業にそういうふうにしてほしいというだけではなくて、国もそれなりの骨格をつくっていかなきゃいけないと思うんですが、その辺につきまして一言お答えをいただいて、終わりにしたいと思います。

与謝野国務大臣 小泉総理が長年言われておりました構造改革という言葉の意味、いろいろな意味がありますけれども、一つは、今、坂口委員がおっしゃった、いろいろな生産要素、例えば資本と労働が効率の悪いところから効率のいい方に移動するというとらえ方も構造改革という言葉には私はあると思っております。

 したがいまして、一人一人の生産性を上げるということも極めて大事でありますけれども、構造改革によってより効率のいい経済社会をつくる、資本と労働を初め、いろいろな生産要素が効率のいい使われ方をするということが国全体としての生産性を上げるゆえんだというのが構造改革という主張であると私は思っております。

坂口委員 ありがとうございました。時間が参りましたので、終わります。

大島委員長 これにて坂口君の質疑は終了いたしました。

 次に、笹木竜三君。

笹木委員 民主党の笹木竜三です。質問を行います。

 まず冒頭に、きのうも我が党の岡田前代表から質問がありましたが、昨日、秋篠宮妃紀子様が御懐妊されたという報道がされたわけですが、確認もされたと思うわけですが、総理はこの国会で皇室典範の改正案を出すと、きのうも、基本的には姿勢は変わらないのかなというふうな、そんなコメントのように思いましたが、その後も、いろいろ確認された後も、今現在でも、今国会中にこだわって皇室典範の改正案を出される、この決意に変更はないのかどうか、確認をさせていただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 昨日、秋篠宮妃殿下の御懐妊の兆候があるという報告を受けました。まことに喜びにたえないところでございます。

 もとより、日本国天皇陛下、日本国民の象徴でありますし、この皇位が安定的に継承されるためにはどのような法改正が必要かということで、昨年、有識者会議の間で議論をしていただき、その結論の報告を受けております。

 安定的な皇位継承のためには、現在の男子男系にのみ限定するということになると将来なかなか難しいのではないかということから、この改正案におきましては、女性天皇も認める、また女系天皇も認めるという改正案を準備しているところでございます。

 こういうときに、皇太子殿下の弟宮妃殿下が御懐妊されたという兆候があるということでありますので、皇室の繁栄にとって好ましいことだと思いますが、この皇室典範改正の問題につきましては、慎重に議論して、だれもがこういう改正が望ましいなという形で成立するのが望ましいと思っているんです。そういうことを考えまして、より具体的にも議論されると思います。

 私は、じっくりと時間をかけて慎重に審議をすることによって、大方の国民が、今、賛否両論、意見が分かれているようでありますが、政争の具にしないように慎重に取り運んでいきたいと思っております。

笹木委員 重ねてで申しわけないですが、賛否が二分されている現状、これを慎重に、政争の具にならないようにと。状況によっては今国会改正案提出ということにこだわらないこともあり得るということでしょうか。

小泉内閣総理大臣 まずは、私はもともと、こだわるとかこだわらないという問題じゃないという認識なんです。だから、慎重にということを最初の段階から言っているんです。そして、よく議論し、慎重に議論していけば、政争にならないような議論がなされるのではないかということを期待しているんです。

 まず、よく議論して、慎重に、各党において、また国会においても議論をしていく場をつくって、冷静に、穏やかに議論されることが望ましい。その結果を見てから判断すべき問題ではないでしょうか。

笹木委員 はい、わかりました。

 ぜひ、この問題はほったらかしておくわけにはいかないということで取り組まれたんだと思います、しかし、お言葉のように、こだわらずに慎重に運んでいただきたい、そう思います。

 きょうは基本的質疑です。ぜひ、総理にお聞きすることも多いと思いますが、基本的な問題について基本姿勢を聞きます。細かいことは聞くつもりありませんし、それこそ足を引っ張るような質問をするつもりもありません。いや、その割には、何だよ、ちゃんと入っているじゃないか、ライブドアもBSEもと言われるかもしれませんが、この問題は小泉改革の本質にかかわる問題だと思って、その問題についても質問させていただきます。

 最初に一つだけお話ししたいんですが、久しぶりに小泉総理のこの予算委員会での質疑を聞いていて、やはりきのうも少しそういう意見がありましたが、ちょっとはぐらかしというか、そういった答弁が多過ぎるんじゃないかなという印象を率直に持ちました。

 例えば、これはきのうですか、前原代表が、教育における格差の再生産、格差が固定化されていく可能性があると、図表を出して質問をされました。こういう機会の平等がなくなっていく可能性があるけれども、それに対してどうするんだという質問をしたことに対して、いや、勉強だけじゃない、他の分野で、勉強はできなくてもいろいろな能力があるし、そういうのも伸ばしていけばいいんだ、これはやはりどう考えてもはぐらかしだと思います。

 差が悪いと言っているわけじゃないし、違いがあるのが悪いと言っている質問でもありません。格差が再生産されて固定化される、このことについて、この事実についてどう思うか。

 例えば、普通だったら、では、他の能力もあるんだから、他の能力を伸ばすようなこういう方法を今考えているとか、こういったことに取り組むとか、あるいは、この格差の再生産、固定化を避けるために、奨学金制度を充実するとか教育に金がかけられるようにするとか、そういったふうにお答えになるのが普通の答弁ではないかと思います。それが、ほかの能力もあるからそれでいいんだということでは、やはり国会の議論が先に進まない。ぜひ、はぐらかしの議論なしできょうはお答えをいただきたいと思います。

 最初に、ちょっとごくごく大ざっぱな、大枠の基本的なことについてお聞きしたいわけですが、国民直接投票制度ということについて、もうそんなに時間はとりません、総理のお考えをお聞きしたいと思います。

 総理は、かつて書かれた本の中で「首相公選――。つまり総理大臣を国民投票によって選べば、政治はいまよりはるかにわかりやすくなる。政治家にしても、官僚に惑わされることなく指導力を存分に発揮できる構造になるはずだ。」「国民はより政治に、政治家に関心を持つようになり、同時に責任を感ずるようになってくると思う。」

 よく言われます、この間の郵政解散とその選挙は、一点だけのテーマについての国民投票的な意味もあった、あるいは、その一点だけについての首相の信任を問うた、首相公選的な意味合いもあったと。よくそういう議論があるわけですが、大事な争点のたびに解散をやっていたら、何回解散をやっても切りがないわけですし、ああいう選挙というどたばたの中で、重要なテーマについて賛成か反対か、賛成の人は公認をしますということであれば、その内容はそんなに知らない方でも、公認になるのならとりあえず賛成、そういう方が紛れ込んでこないとも限りません。

 あるいは、この中の閣僚の方の中でも、いや、この間の選挙は郵政民営化に賛成か反対かの選挙だった、ホリエモンさんの応援は、彼が郵政民営化賛成だから応援に行った、そういう答弁もありました。その結果、その人選が適当だったのかどうか。

 大事なテーマは、一点のテーマについては、選挙という形じゃなくて国民の直接投票でやる、これはヨーロッパの国はたくさんの国がやっています。EUの統合をめぐっても、いろいろなエネルギー政策をめぐっても、今、日本でいえばFTA、アジアでのFTAの問題、先般も自民党の議員からも、なかなかリーダーシップが発揮されていない、そういう意見もありました。

 ぜひ、国民直接投票制度、これを検討すべきだと思いますが、総理の御認識をお聞きしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 国民投票制度につきましては、憲法改正の手続の問題に関して、今、自民党、公明党、民主党で、この国民投票法案をどのように整備するか、検討が進められていると聞いております。

 また、一つの政策ごとに選挙をやるかどうかというのは、その時々の争点によって違いますが、大統領制をとっている民主主義国でも、あるときは一つの問題が大きな争点になるし、複数の問題が争点になる場合もある。そして、任期が四年なり七年なり決まっていれば、そのときの大きな争点が解散になるかというと、そうでもありません。

 ですから、日本の場合におきましても、大統領制ではありませんし、議院内閣制でありますけれども、昨年の九月の総選挙におきましては郵政民営化が最大の争点になって、政策と政党と首相、これをともに選ぼうというような、今までの日本の政治史から見ると変わった選挙だと言ってもいいかもしれません。しかし、これが常になるとは限りません、政治なんですから。あるときはAだけれども、あるときはB。一つの例が起こるとこれがずっと続くんだというのは、ちょっと無理があるんじゃないでしょうか。

 でありますので、基本的に、選挙終われば、日本の場合は、四年間選挙なしに政権を担当して、その結果を見て国民が次の選挙、どの政党を選ぶか、どの候補者を選ぶかという選挙だと思います。しかし、その期間、どういう事態が起こるかわかりませんから、その四年以内であれば、時の首相の判断によっていつでも解散できる、そういう憲法を持っていますから、日本は。そのときに判断されるのであって、個別ごとに私はいつも国民投票しなきゃならないとは思っておりません。

笹木委員 この議論は、また別の機会に続けてやっていきたいと思っています。

 小泉改革は、小さな政府を目指す。要は、借金も多いんだし無駄遣いしている暇はない、税金の無駄遣いをなくす、これはだれも反対しません。民主党も、野党だけれども、お人よしだと言われるくらい、無駄遣いをなくすということについては与党の案については賛成もしてきたわけですが、ぜひ確認をしたいわけですが、総理大臣の決断だけで、あるいは例えば財務大臣の決断だけですぐに削っていける無駄は、たくさん足元にもあります。

 例えば国有財産。これはいろいろ思い出があるんですが、役所の方も、借金のことはいつも言うけれども、では、国がどれだけ財産を持っているのか、資産を持っているのか、全然報告しないじゃないか。数十年間、密室の中にあった。ようやく数年前からバランスシートも出すようになってきた。

 しかし、資料の一ですが、例えば国有財産を無料で借りている国家公務員共済組合連合会、KKRの直接宿泊施設、全国に四十八カ所あるわけですが、これは数字間違っていますが、そのうち十六カ所は国有地を無料で借りている。このことについては、谷垣大臣、御存じでしょうか。

谷垣国務大臣 ちょっと最初に一般論を申し上げますが、国有財産は国民共通の資産でもありますし、今おっしゃったように、こういう財政の厳しいときでもありますから、今までよりも、国有財産について、より効率的な使用ということを考えていかなきゃいけないと思います。

 したがいまして、今国会も、そういう趣旨を盛り込んだ国有財産法の改正を提出して御審議をいただくことで今準備を進めておりまして、一棟全部がもう不必要になったものは直ちに売却するわけですが、一部不必要になったものを、今までの仕組みですと、民間に貸し付けたりすることができません。そういうようなこと等々を含んで、今、国有財産法の改正の準備をいたしているところでございます。

 そこで、今、国家公務員共済組合、KKRの宿泊施設十六棟、確かに無償貸し付けをしているわけでございます。それで、KKRの宿泊施設は今まで、事業の効率化、合理化で、この十年ぐらいでもう三割ぐらい圧縮してきたわけですが、十六施設無償使用を許しておりますのは、国家公務員共済組合法で、国が使用主として行うべき福利厚生事業を代行する面も有しておりましたので、法でもそういう利用にすることを許しているということがございましたし、また、民間でも従業員の福利厚生のために施設を無償提供している事例がございますので、そういうことを踏まえて今までこういう取り扱いをとってきたということでございます。

 今後、よくその実態も見て私どもは検討していきたいと思っております。

笹木委員 今、谷垣大臣は、役所の理屈を聞いてこれまでこういう考え方でやってきたと御説明されたんだと思いますが、これが典型的な役所の考え方だと思うわけです。

 バランスシートを出せ、資産いっぱいあるだろうと。最初、数年前、一切出してきませんでした。行政権の侵害だとまで言いました。額が一向にわからない。そうすると、国連の勧告に従って国連に出していた資料があった。それを見たら、何百兆もあるじゃないか。その中に、国有財産じゃない行政財産というのもいっぱいあった。おもしろい理屈なんですよね。本当は、全部もとは国民のもの、国民の税金から買ったもの。しかし、それは国のもの、国のものは役所のもの、役所のものは国家公務員のもの。だから、今言ったような理屈になるんだと思います。

 民間は、例えば保養施設、そういったものを、あるいは社会保険の掛金も従業員と経営者とで折半でやっている。だから、国家公務員、国の土地は国家公務員の土地だから、当然、民間の企業が無償で貸すように、公務員に対しては無償で貸してもいい。こんなことを言っていたら、有形固定資産百八十二兆円、これだけあります、いつまでたっても多分処理がされないでしょう。

 今までの認識はわかりましたが、これからどうするのか、こんなのはいいかげんにやめるということを確認させていただきたいと思います。

谷垣国務大臣 確かに先ほど民間でもあるということを申し上げましたけれども、委員がおっしゃったように、民間も、経営状態を改善するために福利厚生施設等をどうしていくかと相当真剣に今まで取り組んでこられたことがございます。

 したがいまして、私どもも、先ほど効率的な使用を考えていかなきゃいけないと申し上げましたが、確かに民間との対比とか法の趣旨等もございますけれども、より効率的な使用をしていくためにはどうしたらいいかということも考えて今後検討したいというふうに考えております。

笹木委員 資料の二枚目には十六カ所のリスト、丸で囲んだところを出してありますが、こういった足元のことも変えられないで、無駄をなくすと言っても、全く説得力がない。

 別に役所だけじゃありません。衆議院だってある。資料の三枚目ですが、衆議院の元事務総長公邸、あるいは衆議院の元法制局長公邸。一体、今何に使っているんだろうか。事務室分室だとか、法制局の分室だとか。使用状況、主に国会議員、職員の会議、臨時宿泊等に月二回程度使用、元法制局長の公邸。そういうふうに使用していると言いますが、私も議員ですが、そんなことは一回も聞いたときありません、使っていいという連絡も聞いたときもありません。一体だれがどういうふうに使っているのか。

 これは財務省が出しているわけですが、谷垣大臣、このことは御存じですか、実態も御存じでしょうか。

谷垣国務大臣 衆議院の元事務総長公邸が今会議所になっているということでございますが、私もかつて衆議院で議運委員会等に属しておりましたので、ある程度存じております。

 こういう国有財産、私ども管理する立場に今おりますから、有効利用していただかなきゃいけないのはもちろんでございますが、まず衆議院の方でやはりその辺はどうなのか御議論をいただきたいと思っております。

笹木委員 総理にここでお答えいただきたいわけですが、今例に挙げました、もうごく足元の役所であったり衆議院の施設であったり、国有地が無駄に使われている。これは、有効活用すれば当然無駄は削れるし、あるいは収入の新しいもとになるかもしれない。ちゃんと期限を区切って、こういうばかなことをやめさせる決意があるのかどうか、確認をさせていただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 国有地の有効活用のためには、積極的に公開して、どのような有効利用があるかという方針で今進めております。

笹木委員 いや、検討しますとか進めています、この今の施設をそれぞれ聞いたときにも、今後の使用方法を検討している、今協議している、必ずそういう答えは返ってきます。

 この間も本会議の討論でも例に出させていただきましたが、ばかの一つ覚えですが、総理が米百俵の例を挙げられました。あのころ、長岡藩は行政の経費もなくて、給料も藩士にろくに払えない。そんな中で、せっかく親戚の藩から来た米百俵、この食事の分もみんなで使ったら数日でなくなる。だから、決断すればすぐできることはみずから身を切ってやったということです。

 こんなことぐらい、スケジュールを決めて、日程を決めて決断できない方が、無駄を切ることは、それぞれ関係のある方がいるわけですから痛みを伴います、国民に身を切ることを訴えることができるのだろうか。協議をする、その程度の御答弁ですね。総理大臣にお答えいただきたい。

与謝野国務大臣 この六月には、小泉内閣としては、歳出歳入一体改革の選択肢をお示しすることになっております。

 その中で重要なことは、国が持っている資産をどれだけ圧縮できるか、そして、ストックで得たものを、ストックの減少、すなわち債務の減少にどの程度使えるかということをきちんと出さなければならないと思っております。これは、小さいものであれ、大きいものであれ、国として不用な資産というものを処分する、こういう強い姿勢がありませんと、財政の再建に関して国民の理解を得られない。先生の御表現をおかりすれば身を切るという意味だろうと思いますが、そういう身を切るということについても資産債務圧縮ということで、谷垣大臣が国有財産の御担当でございますので、きちんと数字を出していただいて、きちんとそういうものを整理していく。

 もう一方では、使っている資産についても、それが、その資産が持っている潜在力を最大限に発揮しているかどうかという有効利用という面があります。これは総理から、民間のいろいろな知恵や考え方も活用して有効利用を考えたらどうかという御指示もいただいておりますので、そういう面でも工夫してまいりたいと思っております。

小泉内閣総理大臣 私が穏やかに言ったから誤解されているようですけれども、進めますとは、進めています、有効活用のために進めていますと言ったはずですよ。いつまでじゃない、今もう始めているんです。できるだけ穏やかに答えを出しているんですけれども。

笹木委員 ぜひ一般の方々が納得できるスピードでやっていただきたいと思います。

 もっと足元の問題があります。自由民主党の本部、これは国有地を借りて、確かに賃料は払っています。しかし、大体同じような場所にある例えば民主党、民主党の場合には、全部で二千六十五平米、これで年間一億五千七百万円の賃貸料を払っているわけですが、自民党の場合は、三千三百六平米、これで年間七千百万円払っている。しかも、国から自治体に対して、総務省から交付金が出ていて、固定資産は国有地の、そこを貸している場合は免れているわけですから、一般であれば固定資産税の分も賃貸料に上乗せされている、民間の、普通だったらそうだと思うわけですが、その分も上乗せされておりません。

 さっき、役所あるいは衆議院に属するいろいろな施設、無駄という話をしましたが、自民党本部の賃貸料、並びに、交付金で自治体に払って固定資産税分が全く上乗せされていない。いつ、どういう経緯で国から借りるようになったのかは知りませんが、こういったことも一般的な常識に照らして安くないのか、検討するおつもりはあるのかどうか、お答えいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 お尋ねの自民党本部の国有地でございますが、昭和三十六年当時からの議論で貸し付けをしているわけでございますが、貸付料は不動産鑑定士の意見価格により算出したものでございまして、借地権つきの継続貸し付けであるということから、そうでない場合と異なると公認会計士からは意見を聞いております。

 したがって、私どもは、これは適正な水準にあるというふうに考えております。

笹木委員 総理も同じような御認識でしょうか。仮に、他の民間の常識に比べてやはり優遇され過ぎているというようなことがあれば、見直すおつもりはありますでしょうか。

小泉内閣総理大臣 いや、お尋ねの貸付料についてですが、不動産鑑定士の意見価格により算出したものであり、適正な水準であるという報告を私は受けております。

笹木委員 また後日、この問題も続けてやりたいと思います。

 次に、政治とお金の問題について、政治資金の問題について確認をさせていただきたいんですが、まず、これも小泉総理大臣の「官僚王国解体論」、その中にこういう文章があります。まだ総裁、総理になっていない時期ですが、天下りの問題について言われています。

  もし、私が総裁選に勝っていたら一気に郵政三事業民営化の方針を打ち出しただろう。こういう方針がきちんと立てられれば、おそらく財政再建の道筋もつき、しかも九十二の特殊法人の整理、統廃合も進み、とかく国民から批判の多い省庁からの天下りも半減する。

こういうふうに書かれています。なかなか熱のある文章だと思いますが、きのう、おとといと、いろいろな民主党の委員からも質問がありました。一向に天下りは減っていないじゃないか、防衛施設庁から中間の財団法人、ここ二年間はできないという抜け道をつくって、さらに民間にも天下りをやっている、決して数は少なくなっていない。あるいは、昨年夏に、国土交通省からの一年間での天下り、例外的にという断り書きはついていましたが、約三百人、一年間で天下りをしている。

 総理の言われた天下りを半減するという、そういった目標とはほど遠いのが現状だと思うんですが、どうしてこの天下りが一向に減らないのか、総理の御認識をお聞きしたいと思います。

中馬国務大臣 天下りそのものにつきましては、公務員が途中で退職した場合、民間の方で大いに活躍されている方もいらっしゃるわけでございまして、これが出身したお役所との癒着関係だとか、あるいはそこから何か転勤するについて、一つのまた恩恵を受ける、受ける方が企業です。こういったことがあってはならないのであって、天下りが全面禁止ということでは少し意味が違う。それと、今回のようなあの不祥事が起こったこととはまた別問題だと思っています。

 しかし、そういう要素を含んでいることは事実でございますから、公務員が退職して、それが二年間はすぐには行けないという形にしていることは御承知かと思います。御党は五年とおっしゃっていますが、それともう一つ、肩たたきといいましょうか、途中で同期の方が幹部になられましたら、あとの方は退職するという一つの慣行がございますが、こういったこともこれからは少し延ばしていくべきだということで、五年で三年間延ばすことにいたしまして、今一・五年ぐらい延びております。

 ともかくそういう形で、そういう弊害をなくすようにはしておりますけれども、やはり職業選択の自由もございますし、また、それぞれの人材を活用する大きな民間的な活力も必要でございますから、そういったことに対しましては今取り組んでいるところでございまして、それを一概に、何か機械的に禁止するというようなことは、ちょっと私たちは考えておりません。しかし、そういう方向で進めていることは、今御説明したとおりでございます。

小泉内閣総理大臣 私、就任以来、特殊法人等の改革を進めて、既に独立行政法人並びに特殊法人の長とか常勤役員については、二分の一以下を目標にするということでやっているわけです。

 さらに、最近のこの官製談合の問題から、二年間は役所をやめた後関連企業に天下りを制約している条件がありますけれども、この点について、それが適切かどうかということの議論もあります。そういう点も踏まえて、改善策はどういうものかということについてもやはり検討していかなきゃならないなと。

 それとまた、四十代で肩たたきしてやめさせていくという、これはもう慣例ですけれども、こういうのがあるとやはり就職口を世話しなきゃ無理だなということから、つい先年、この退職肩たたき慣例、三年間引き上げよう、できるだけ六十歳近くまで働いてもらおうということになっておりますが、この三年間延長でいいのかどうか、これを三年間延長するだけでも五年かかるというんですから。

 公務員の身分保障、そういうものを考えながら、この天下り是正という点についても改善策を講じていくための検討が必要だな、現状ではまだ不十分じゃないかという御指摘も踏まえてやっていかなきゃならない問題だと思っております。

笹木委員 不十分、それは認められましたが、やはりお話を聞いていておかしいと思うんですね。いや、早く退職するから、そこを変えないとなかなかいつまでも天下りを続けようとする、それは事実でしょう。そういうことはあるでしょう。しかし、では、どこかちゃんと用意してあげるから天下りやめなさいよという話ではないはずです。

 総理が自分の本でも書かれているとおり、さらに、きのう質問の中にもありました、公共調達四十兆円、この談合と天下りの関係の中で、価格上乗せ二割、三割はざらだと。一体幾らの税金の無駄遣いなのか。役所だけじゃありません。民間の方でもいろいろな既得権益はあります。程度の差だと思います。無駄をなくそうとすれば、身を切る方が必ず出てくる。そのときに一々、いや、身を切るかわりにこっちは保障してあげるから、だから我慢してください、そういう話ではないはずです。

 まずはしっかりと、今、年限を変えるのに五年かかりますと。どこかの国の総理大臣が、改革はスピードが大事だと言われています。ぜひ、そういうどこかかわりの場所を確保してからという話じゃなくて、これに速いスピードでメスを入れる。

 あわせて言うと、この天下り禁止とかそれにかかわる法案は、野党の方から、民主党から何度も何度も出ています。これも、どこかの国の総理大臣が、いや、反対ばかりじゃなくて野党もいいことは賛成をしてくださいと。ぜひ与党も、責任与党になって、責任政党になって、野党の言うことでもいいことは賛成する、そういう姿勢で、速いスピードでこの天下り、最低でも半減に取り組んでいただきたいと思うわけですが、もう一度お答えください。

小泉内閣総理大臣 これは公務員制度とも関連があるものですから、仮に三年今退職年齢を引き上げるということでも、一年じゃできないんですよ。その点も御理解いただいて、それぞれの議論を聞きながらやっていかなきゃならない問題だと思います。生首は切れません。そういう点も考えてやっていくべき問題だと思っています。

笹木委員 もう一つ、では、どうして天下りがなかなかなくならないのか、どういう構造なのか。きのうの答弁の中でも、天下りと談合、これは関係がないとは言えない、そういう答弁がありました。

 天下りと談合の関係だけですか。官と業の関係だけですか。もう総理御自身がよく御存じのように、政官業の癒着でしょう。防衛施設庁の場合でも、あるいは耐震偽装の問題でも、恐らく政治家も関与しているんだろう、恐らくほとんどの国民の方はそう思っています。政官業の癒着。政治家は役所に対して天下りを大目に見る、その見返りで、役所に対して特定の業界であったり特定の企業であったりの口ききをする、この政官業の癒着の中でこういった天下りも温存されてきた。これは、総理が書かれている、今まで発言されてきている、その中にも書いてあることです。

 この政官業の癒着を断つために結局どこを変えるんだ。お金の問題でしょう、政治資金の問題でしょう。政治資金の透明度を増すための改革、こういったことに、この数年間、全く小泉総理は不熱心だったと思います。

 ここで一つ官房長官に御質問したいんですが、自民党から政策活動費というのが幹事長に配付をされるみたいですが、大体どのぐらいの額ですか。官房長官が幹事長だったときに、一月から九月まで、細かい数字はいいです、どのぐらいのけたの額だったか覚えておられるでしょうか。

安倍国務大臣 今にわかに質問があったものでありますから、正確を期したい、このように思いますので、後ほどそれはお答えをさせていただきたいというふうに思います。

笹木委員 大体一月から九月までで八億円を超えています。その後、九月から十二月までで、武部幹事長、三カ月で一億八千五百万円、これだけの額が政策活動として配付をされているわけです。

 細かいことはいいですが、官房長官は幹事長時代に、この政策活動費、その後どういうふうに使われましたか。巨額な額です。

安倍国務大臣 政治資金規正法にしっかりとのっとって、合法的に政策活動費を政策活動費として使っております。

笹木委員 一つは、この八億に上る額がその後どういうふうに移っているのか、全くたどることができません。政党から例えば政党交付金の一部、あるいは、先ほどからお話ししています企業であったり団体であったり業界であったり、そこから国民政治協会に寄附があった、国民政治協会から自民党にお金が寄附をされる、そこのお金も入っているんだと思います。政党交付金の一部であったり、こういった企業、団体、業界からの献金の一部が政策活動費として恐らく幹事長本人に渡されているんだと思いますが、それがその後どういうふうに使われて、資金管理団体に当時の幹事長が寄附をしたという形跡もありません、どういうふうに記載をされているのか。

安倍国務大臣 まず、政策活動費について言えば、これは献金が原資でございます。我が党の場合は、当然、政党交付金についてはもちろん政策活動費には使っておりません。これは法律にのっとって、法律上必要とされるものについては、すべてきっちりと公開をしているわけでございます。

笹木委員 この中には政党交付金が入っている可能性を打ち消すことはできません。個人からの寄附という、あるいは資金管理団体である晋和会の十六年の収支報告書には、安倍さん個人名での寄附は記載されていません。個人からの資金、例えば今政党から、自民党から個人でお金を安倍さんがいただいた、政策活動としていただいたそのお金が、資金管理団体には全く寄附の形跡もありません。その額に当たるものがどこに流れているかも全くわかりません。

安倍国務大臣 よく意味が私はわからないわけでありますが、政党交付金につきましては、自由民主党本部として、すべて全額を公表しておりますから、まずそれをよく見ていただきたいと思います。

笹木委員 例えば、武部幹事長の場合、さっき言ったように、三カ月で一億円を上回る寄附を政策活動として、幹事長として受けているわけですが、御自身の資金管理団体、全く収入はゼロになっています。それ以外の政治団体間のお金のやりとりも非常に入り組んでいまして、全く実態がつかめません。

 ここでお話ししたいのは、話を戻しますと、天下りと、そして談合と、そして業界、企業からの迂回献金であったり不透明な献金、これが政官業の癒着を続けている、これは間違いのないことです。ですから、透明度を増さないと、例えば政党交付金だけを公認会計士の監査の対象にしていても、それは例えば、そのお金と国民政治協会で集めたお金とがまじって移されている。その後、支部と本部のその部分だけは監査されていますが、政治団体も監査の対象にしなければ、これはお金の流れがはっきりつかめないんです。

 結局、そういうお金が迂回献金で、ほかの委員からの質問もありましたが、ある業界から国民政治協会でお金を受け取る、そのお金がある個人に渡っていく、その個人がある特定業界であったりある特定企業のために口ききをする。これは実際に、記憶に新しい日歯連の問題のときにあったわけです。

 ですから、そういうことを踏まえましても、外部監査の義務づけを、政党交付金だけじゃなくて政党の収支全体に対してやるべきだ。これをしないと、政党の収支全体を監査の対象にしないと、迂回献金を防ぐことができないということです。あるいは、迂回献金の禁止、これもしっかりと法律でチェックしないといつまでもなくならない。これが、政官業の癒着、天下りもいつまでもなくせない、この根本の原因になっている。この改正が必要だと思うわけですが、御認識をお聞きしたいわけです。

安倍国務大臣 議員は今回、全く質問通告をしておられなかったわけでございますので、議論を深めるためにもぜひとも質問通告をしていただきたい、このように思います。

 自民党では、まず、政治資金の処理については、政治資金規正法にのっとって適正に処理をしてきております。これまでも政治資金規正法に違反する迂回献金を行ったことはありません。先ほど、委員が日歯連問題に関して指摘をされましたが、一昨年秋に、幹事長のもとで迂回献金があるかどうかについて調査した結果、自民党が政治資金規正法に違反するいわゆる迂回献金を行った事実はないと報告を受けております。

 また先般、政治団体間の寄附制限、口座振り込みの義務化などの法改正を行い、本年一月から施行したところであります。

 政治献金に関しては、引き続き、政治資金規正法にのっとって適切に対応し、国民から誤解を受けることのないよう透明性の確保に努めていきたい、このように考えています。

笹木委員 余り認識がないみたいで、もう一度確認しますが、政党交付金だけを外部監査しても、政党の支部が、今言った業界であったり企業であったり、そういった献金のマネーロンダリングの窓口になっている可能性がある。それと、政党の収支そのものを外部監査しないと、今言った迂回献金も防ぐことができない。

 ですから、政党交付金だけじゃなくて、しっかりと国民の批判にこたえるためにも、耐震偽装もあるいは今回の官製談合も、そういった政治の不透明なお金がいつまでもこの構造を変えられない。だから、そこにしっかりとメスを入れて、政党交付金以外の収支、外部監査にかける。あるいは、政治団体間も、武部幹事長の時代の政治団体間の不明朗な架空の資金の移動のような、そういったものがたくさんある。これをチェックするために、ここもしっかりと銀行振り込みを義務づけする。こういったことは当たり前でしょうと言っているわけです。そういう必要があるんじゃないかと言っているわけです。

安倍国務大臣 この問題は、政府としてお答えをするというよりも、しっかりと、例えば政党間でよくお話をいただければと、このように思うわけであります。

 自民党は既に党改革をしっかりと行いまして、その党改革の成果については既に公表をしているとおりでございます。

笹木委員 何度も言いますが、この問題は何度もこれからも取り上げますが、政党交付金以外の政党の外部監査、それと政治団体間の資金の移動も銀行振り込みにすべき、これをしないと、いつまでも迂回献金、不明朗な資金の流れというのはとめられない、このことを確認しておきます。

 次に、資料の六に移りたいわけですが、ライブドアの問題です。

 「敗軍の将、兵を語る 勝ってたら首相も見えた」。「最終的に自民党からの公認を得られなかったのは、社長を辞めろとか訳の分からないことを言い出すので、最後はふざけんなよという話になったんです。本当に政治家ってバカだなと思ったんだけど。」「まあ自民党に行きますよ。そうじゃないと首相にはなれませんからね。それは当然考えていた。」

 同じく堀江さんの発言ですが、「小泉さんはどうやって総理大臣になりましたか。彼は党内派閥の論理で勝ちあがったのではないですよ。総裁選の党員選挙のおかげで勝ったんです。ちなみに自民党員は百五十万弱だそうです。その党費は四千円だとか。なら数十億あれば自民党総裁、総理大臣のイスも買えますね。」こういう発言を堀江さんが当時している。

 きのう、堀江さんを応援したことを、それで、株で損をした人がいても自分の責任じゃないというようなお答えをされましたが、これはやはり、危ない企業に対して、あるいは政治に対してもこういうような発言をしている方に対して、何にも知らずに応援をしたのか、総理大臣にお聞きしたいわけです。

小泉内閣総理大臣 今の発言の紹介は、選挙後の、落選した後のお話を紹介されたんだと思いますが、私は堀江氏の本は読んでおりませんし、具体的にどういう発言をしていたかというのは知りませんが、お金があっても選挙で当選するとは限らないんです。党員を全部、党費を払って買収して、総裁、党首になんかなれるわけないんですよ。どういう考えを言ってもいいですけれども、若い人だから、そんな世の中、金ばかりで動くものじゃないんです。

笹木委員 いや、世の中は金ばかりじゃないと思います、金ばかりで動くんじゃないと思います。しかし、そういう方を選挙において応援されたわけです。一緒に改革をやっていきましょうと持ち上げた方がたくさんおられるわけです。その責任はないのか。

 これ、たまたま、先週ですが、この近くの大衆盛り場で、ある中年のおばさんたちがこの堀江さんのことを話をしているんですが、いや、それにしても自民党はだらしないね、ああいうおかしいこと、危ないことをやっていたのを本当にわからなかったのかしら、こういうふうに雑談をされていました。本当に、こういう危ない経営者だということを、何にも情報を得ていなかったんですか、わからなかったわけですか。それで応援をされたわけですか。総理大臣にお聞きしたい。

小泉内閣総理大臣 わかりませんでした。彼は無所属で出馬しましたけれども、私はわかりませんでした。

笹木委員 それにしてもだらしないと思うのは、あの官製談合にしても、防衛施設庁の問題についても、このライブドアの問題についても、政治がいつまでもほっておいている、政府がいつまでもほっておいている。そのだらしなさを検察がチェックをしている。

 ここで与謝野大臣に聞きたいわけですが、証券取引等監視委員会、こういった危ないことをやっていることについて何にも把握をされていなかったのかどうか、お聞きしたいわけです。

与謝野国務大臣 監視委員会は、名前のとおり監視がその仕事でございますから、この件だけではなく、目立った、目立つこと、あるいは監視すべきだと思うことについては、合法的に入手できる情報、資料はすべて集めるようにしております。

笹木委員 いつごろから、かなり危ないこともやっているからということで、調査を本格的に始められましたか。

大島委員長 いつからというのは、どこのことをいつからと聞かないと、具体的に言えない。笹木さん、もう一回。

笹木委員 ライブドアに対する調査をいつから意識して始められましたか。

与謝野国務大臣 監視委員長からお伺いしましたら、具体的な、あるいは正確なことはお伝えできない、しかし、大体三年ぐらい前からきちんと見ていたと理解していただいて結構です、こういうお答えをいただいております。

笹木委員 ここで竹中大臣にお聞きしたいわけですが、竹中大臣は、堀江さんがそんな悪いことをしていたというのは知らなかった、悪いことを隠していたわけだから、隠していることは知りようがないと、この間も答弁の中でお答えになりました。竹中大臣は、こういう危ない事業を、行動をやっている堀江さんのことを本当に御存じなかったんでしょうか。

竹中国務大臣 私は知りませんでした。

笹木委員 竹中大臣は、金融担当の大臣もされています。先ほどお話があったように、三年ほど前から意識をして調査を始めたと。竹中大臣が金融担当で活動された時期にも、この調査はもう既に始まっているわけです。もちろん逐一報告されるようなものじゃないにしても、何にも知らなかった、どう考えても常識では考えられません。もう一度お答えください。

竹中国務大臣 私は、平成十四年の秋から十六年の秋まで金融担当大臣をさせていただきました。その間に、証券取引等監視委員会からライブドアのことについて報告を受けたことは一切ございませんでした。

笹木委員 常識に反していますね、全く知らなかったというのは。

 ここで総理大臣にお聞きをしたいわけですが、もう一度お聞きしたいんです。無駄をなくす、だれも反対しません。しかし、小さな政府というのはどうやって成り立つんだろうか。無駄をなくすだけで本当に小さな政府というのは成り立つんだろうか。

 これも何とかの一つ覚えですが、もう数十年前に小さな政府改革を断行したサッチャーさんが言われているのは、一人一人の個人の中に、自分を抑える、自己抑制する、その力がはっきりとあればあるほど政府の干渉は少なくて済むんだ、もしそれがなければ、小さな政府はあり得ない、世の中が混乱して、結果的に大きな政府の干渉を、必ず、時期はずれるけれども招くようになる、こう数十年前に改革を断行された方が言っています。

 そういった意味で、一人一人の、個人の中の自己抑制、常識あるいは良識、これを確実に欠いている方を候補者として持ち上げて応援した、そのことの政治的な責任が本当にないと思われるのかどうか、もう一度確認をさせてください。

小泉内閣総理大臣 自己を抑える、サッチャー氏の発言をとられましたけれども、これはイギリスの古い一つの思想だと思うんですね。自助の精神と自律の精神、セルフヘルプ、セルフディシプリン、自己抑制とみずからを助ける、これがあらゆる国家の発展のもとだ、私もそれは同感なんです。

 堀江氏について見抜けなかった、その責任と言われれば、それは甘んじて受けなきゃならないと思っております。

笹木委員 改革の前提の基盤までも崩している、そういう行動なのだということをぜひ御認識いただきたいと思います。

 最後に、中川大臣にお聞きしたいわけです。

 どこの役人が書いたか知りませんが、議長に対する答弁書、あれは個人に対する答弁書じゃありません。資料もつけてありますが、質問主意書に対する答弁というのは議長あて、河野議長あてになされています。

 議長に対する答弁を、もともと閣議決定は行動の指針として決定している内容を、解釈が変わったから好き勝手に変えられるとしたら、これは、すべての国会の審議、質疑、これも、解釈が変わったから、すべてそれで安易に変更することができるようになってしまいませんか。

中川国務大臣 今の御質問は、十一月十八日にお出しした米国産牛肉輸入再開に関する質問主意書に対する答弁書のことだと思いますが、よろしいですか。(笹木委員「はい」と呼ぶ)

 それにつきましては、政府統一見解でもお示しいたしましたように、輸入再開に当たっては輸入再開前に現地へ行って調査をするということのくだりにつきましては、あの時点、質問主意書を閣議決定した時点での我々の認識、考え方をお示しし、その考え方について政府として是として閣議決定をしたものでございまして、解釈が変わったというふうには私どもは理解しておりません。

笹木委員 内閣が、行政府が立法府に対してここまで好き勝手にできるとしたら、立法府の空洞化が進むと思います。

 ぜひ委員長に提案をしたいわけですが、これは、議長あてになされた答弁書の扱いについてこの委員会で問題になった問題です。国会法二十条で、議長は委員会に出て発言することができるとあります。ぜひ議長にこの件についての御意見を委員会でお聞きになっていただきたい、あるいは委員会に出ていただければなお結構だと思いますが、そのことを協議していただきたいと思います。

大島委員長 笹木君に申し上げます。

 そういうことを含めて、議会のルール、議会の権威の問題でありますから、議運、しっかりそこで議論してくださいと既に私からお願いしてあります。

 これにて笹木君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

大島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、参考人として食品安全委員会委員長寺田雅昭君の出席を求め、意見を聴取し、政府参考人として厚生労働省大臣官房技術総括審議官外口崇君、厚生労働省健康局長中島正治君、厚生労働省老健局長磯部文雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

大島委員長 質疑を続行いたします。高山智司君。

高山委員 民主党の高山智司でございます。

 本日は、一昨年にありました上海総領事館の自殺の問題について、まず総理に伺いたいと思っております。

 この事件、中国側の卑劣な諜報戦によって我が国の館員が自殺にまで追い込まれたという非常に痛ましい事件でもあり、本当に重大問題だというふうに私も思っておりますけれども、まず総理、この件を初めて知ったのはいつですか。

小泉内閣総理大臣 いつだったか日にちは定かでありませんが、新聞報道で記事が載った後であります。

高山委員 この件に関しまして報道がなされたのは、去年の十二月の二十七日の週刊誌が初めてなんですけれども、同じ質問を安倍官房長官にも、これは、いつこの事件をまず知りましたか。

安倍国務大臣 十二月の二十七日であります。

高山委員 この件に関しまして、総理、官房長官は新聞報道あるいは週刊誌の報道ということでございましたけれども、官邸の中に、内閣情報官ですか、こういういろいろな事件がありますというのをまとめて報告するポストがありますけれども、そちらに情報が届いたのはいつですか。

安倍国務大臣 ただいまの御質問については、インテリジェンスにかかわることでございますので、答弁は差し控えさせていただきたいと思います。

高山委員 二橋官房副長官の記者会見によりますと、私も聞いておりませんでしたということを一月六日の記者会見でおっしゃっておりますけれども、では、官房副長官にも情報が行ったのはことしに入ってからということなんでしょうか、それとも、昨年のその週刊誌報道の後ということなんでしょうか。官房副長官に情報が行ったのはいつなのか。

 これは、官房副長官を要求しておりましたけれども、御本人はちょっと出席できないということなので、官房長官の安倍さんに答えていただきたいと思います。

安倍国務大臣 二橋副長官も、同様に週刊誌報道の後というふうに承知をしております。

高山委員 二橋官房副長官もこの事件に関して知ったのは、週刊誌報道の、つまり昨年の十二月二十七日の後ということで間違いないでしょうか。もう一度確認させてください。

安倍国務大臣 報道されているような内容について二橋副長官がこの問題を知ったのは、週刊誌が発売された以降であるというふうに承知をしております。

高山委員 週刊誌、私も読ませていただきました。三週にわたって非常に詳細に、長いのであったんですけれども、総理大臣がそこまで全部目を通すということもなかなかでしょうけれども、この内閣情報官というのが情報に関する会議を開いていて、隔週で総理にブリーフィング等をなさっているということでした。総理にブリーフィングなさらないまでも、あるいは官房長官、あるいは内閣情報室長というのでしょうか、そこに定期的に各省から情報が上がってくる制度になっているということが閣議決定にもありますけれども、その中で、事の詳細に及ばないまでも、この外務省の、中国の上海総領事の職員が自殺したというこの一行だけの情報も、官邸にはその報道以前には上がっていなかったのでしょうか。

安倍国務大臣 ただいまの御質問は、情報収集にかかわることでございますので、答弁を控えさせていただきたいと思います。

高山委員 官房長官、これは情報収集にかかわることと言いますけれども、迅速にすぐ伝わっただとか、そういう情報のルートをまず教えてくださいという話ではなくて、これはかなり重大な出来事ですよね、我が国の特に外務省に関して。この出来事が、たとえ一行でも、詳細にわたらないまでも、我が国の外交官が自殺したという事実、この事実だけでも、官邸にはではこの新聞報道、週刊誌報道がある前は一切伝わっていなかったと、こういうことですか。

安倍国務大臣 先ほど私が答弁をいたしましたことについてでございますが、外務省からの報告については、それは官房副長官のところにも来ていなかった、こういうことでございます。

高山委員 今官房長官の方から、外務省からの報告は来ていなかったということですが、外務省以外からの報告は週刊誌報道以前にはあったのでしょうか。

安倍国務大臣 その件につきましては、先ほど答弁をさせていただきましたように、情報の収集にかかわることでございますので、答弁を控えさせていただきたいと思います。

高山委員 いや、外務省以外からの報告があったかなかったかというだけの質問です。しかもこの事件は、最近のことではなくて、一年七カ月も前の出来事で、それが一年の間に一回ぐらい報告があったんじゃないんですかというちょっと常識的な質問だと思うんですけれども、答えていただけませんか。

安倍国務大臣 ただいまの御質問に答えることは、私どもの情報収集そのものにかかわることでございますので、情報収集においてそうした事実をどのように把握をしていたということにもかかわることでございますので、答弁は控えさせていただきたいと思います。

高山委員 いや、総理、官房長官にちょっとこれを伺いますけれども、平成十年ですか、中央省庁の改革基本法というのができて、内閣情報官というのが総理から直接選任されて選ばれる官として新たに選出されて、これは、平成十年の閣議決定で、内閣情報会議というのもつくりましょう、これは年に二回ですか、やるようにしようと。あとは、事務レベルでもって、内閣情報官というのを入れて隔週に一回情報交換しようじゃないか。この中には、当然、内閣情報官、警察庁の警備局長、防衛庁の防衛局長、公安の方、あとは外務省国際情報統括官等々いろいろ入っているわけですよね。そうするとこれは、外務省の方から、その事の詳細がどうこうということじゃないですよ、我が国の館員が自殺している、しかも、領事館の館内ですから結構特殊な事例だと思うんですけれども、この報告が一切なされていなかったということなんでしょうか。

安倍国務大臣 ただいま御質問がございました内閣情報会議及び合同情報会議における議題については、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。

高山委員 いや、これ、最近話題になっていることであれば、確かに差し控えなきゃいけないだろうというのはわかりますけれども、これは一年七カ月も前ですよ。報告があったかなかったか、その事実だけ聞いているんですよ。

 それは総理、ちょっと本当に答えてください。

小泉内閣総理大臣 新聞での報道以前には、私のところには報告はありませんでした。

高山委員 総理は、先ほどから総理のところには報告がなかったということですが、この情報官の会議の議題にも出ていたのかどうか、そういうことを先ほどから伺っているわけなんですけれども、これは、この担当だった、今の担当の兼元情報官ですか、これを私、きょう参考人として呼んでください、本人に聞かなきゃわからないからということだったんですけれども、やはりこれは本人に聞かなきゃわからないと思うんです。だって、今の官房長官の答弁だと、それは何か機密にかかわるので答えられない、答えられないということばかりですので、これがあったかなかったかの確認というのは、これはもう本人にするしかないと思いますけれども、官房長官、何か責任を持って答えられますか。

安倍国務大臣 先ほど申し上げましたように、内閣情報会議及び合同情報会議につきましては、これはまさに我が国の安全保障にもかかわる事柄について情報交換をする場でございまして、ここでどういうことが話し合われたか、あるいはまた議題そのものについても一切お答えはしない、こういうことになっております。

高山委員 では、最後にもう一回確認させていただきますけれども、総理、官房長官はこの報道のあった十二月の二十七日以前は御存じなかった、この件に関して。これは、去年の十二月二十七日以前、官邸にこの情報が行っていたかどうかに関しては、ちょっともう一回確認させていただきたいんですけれども、情報は行っていたんでしょうか、行っていなかったんでしょうか。十二月の二十七日以前に、十二月のこの報道がある以前に、領事館員が自殺したというこの情報が官邸には報告が行っていたんでしょうか、それとも行っていなかったんでしょうか。

安倍国務大臣 外務省からの報告については、一切官邸には来ておりませんでした。

高山委員 いや、外務省ももちろんですけれども、外務省以外のところからの報告もあったのでしょうか。それも全部含めて、一切、あったかなかったかということを教えてください。

安倍国務大臣 再三答弁申し上げておりますように、これはまさに情報収集そのものにかかわることでございまして、内閣情報調査室による個別の調査内容や事実を明らかにすれば、我が国の情報関心、また情報収集重点が明らかになり、他国との信頼関係や国の安全に支障を来し、以後の情報活動に支障を来す可能性がございますので、その観点から答弁は控えさせていただきたいと思います。

高山委員 済みません、どうしてこの件が、この件のその詳細じゃないですよ、どんな遺書があった、何だかんだという詳細じゃなくて、外務省の館員が自殺という非常に不自然な死を遂げているというこの事実が官邸サイドに情報として上げられていたんですか、上げられていなかったんですかということを、ただそれを聞いているだけなんです。全然その情報のソースがどこでしたかということは聞いておりませんので、もう一度答弁してください。

安倍国務大臣 今の御質問にございますように、我が国の情報関係者がそうした情報を把握していたかどうかということについても、これはインテリジェンスにかかわることでございますので、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。

高山委員 官房長官、どうして、我が国の担当者がその事実そのものを知っていたか知らないかということがインテリジェンスにかかわるんでしょうか。それを説明してください。

安倍国務大臣 私が申し上げておりますのは、つまり、そういうことについては、これは、どういう情報収集をしているのか、どういうところに重点を置いているのか、また、どういうところで我々は情報を収集していたかということにかかわるわけでありまして、その点についてはお答えを控えさせていただきたいと思います。(高山委員「同じ質問ですよ、これは。時間をとめてください。次の質問に行けないですよ。次の質問に行けないし、副長官も情報官も呼んでいただけないんじゃ、質問もできませんよ、これじゃ」と呼ぶ)

大島委員長 高山智司君、もう一回質問して。

高山委員 これも、委員長からも、国会でぜひともこの辺をはっきりさせていただきたいということで、今もう一度質問をしてくれということを言われたんだと思いますけれども、官房長官に伺いますけれども、この自殺という事実があったということが官邸に報道以前には伝わっていたんですか、伝わっていないんですか。別にソースを明らかにする必要はありません。

安倍国務大臣 本件の主管官庁は外務省であり、官邸への報告の有無及びその是非を検証する対象はあくまでも外務省であるというふうに考えています。

 本件に関する内閣情報調査室のかかわりについては、これはまさに、先ほど来御説明を申し上げておりますように、内閣情報調査室による個別の調査内容にわたる事項であり、事柄の性質上、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。(高山委員「そんなことは聞いていないんです」と呼ぶ)

大島委員長 高山智司君、高山智司君。(発言する者あり)

 いま一度、安倍官房長官からお答えをさせていただきます。

安倍国務大臣 報告事実の有無を明らかにすることというのは、すなわち調査をしていたかどうかという事実をこれは明らかにすることになるわけでありまして、官邸の情報関心や、あるいは調査手法が明らかになってくるわけでありまして、これは先方に我々の関心事項等々が推認されるわけでございますので、答弁は控えさせていただきたいと思います。

高山委員 総理、私は今、どういう調査をなさいましたかとかいうことを聞いているのではないんです。仮に、この館員がこういう卑劣な手段によって自殺したんじゃないにしても、ただの自殺だったにしても、上海総領事館の館内で自殺されているわけですよね。この事実そのものが全く、即時じゃなくても構わないですよ、こんな一年半もの間に一回も、総理のお耳に入らなくても、官邸の内閣情報官ですか、情報を全部集約するという部署ですよね、そこに集まらなかったんですか。一回もそこに集まっていないんですか。だから、それを聞いているだけなんですよ、それが来たのか来なかったのか。

小泉内閣総理大臣 それは、情報は整理されて私のところに来ます。どの情報を上げるかというのは、さまざまの情報交換の上で、情報官が私にこの情報は上げるべきかどうか、あるいは上げないでいいか判断して私のところにやってきておりますが、この今御質問の上海の件については、報道の後知ったわけであります。だから、その以前に私のところには来ていないということであります。(高山委員「それは何度も聞いています。それは再答弁求めていません」と呼ぶ)

大島委員長 高山智司君、手を挙げて発言してください。

高山委員 総理、私はそこは何の答弁も求めておりません。

 先ほど官房長官が、調査の対象を何かこちらから教えるようなものになるというのは、それはもうそんなことを教える必要は僕もないと思いますよ、今言う必要はないと思いますけれども、ただのこの館員の自殺という事実、これが伝わっていたか伝わっていなかったんですか、しかも、この一年七カ月の間、別にいつですかなんということは聞いていないですよ、週刊誌報道の以前に伝わったことがありますか、ありませんかという事実の確認だけさせてください。

安倍国務大臣 このことを調査室が把握していたかどうかということは、つまり、調査室が例えば上海においてあるいはまた他の地域においてそういう調査活動を行っているかどうか、あるいは情報収集、情報関心があったかどうか、またあるいは、それを知り得るのであればどういう手段が必要であったかということをこれは先方に当然推認させることになるわけでありまして、ですからそれは、把握をしていたかどうかということも含めてお答えすることはできないということであります。

高山委員 いや、別に、その内閣調査室の人がどこに調査に行きましたかとか、今何か官房長官の方からそういう御示唆がありましたけれども、そういうことを今聞いているんではないんです。定期的な、隔週行われる会議の中で、こういうちょっと特異な事例ですよね、省庁の方が自殺されている、しかも庁舎内で死んでいるというこういう特異な事例が、こういう事例がありましたと一行でもこれは報告があってしかるべきだと思うんですけれども、そういう報告すらなかったのですかという質問で、全く調査の対象を明らかにする必要は、私も国益を考えて明らかにする必要はないと思いますけれども、この報告があったかどうかだけはまず確認させてください。内閣情報室にあったかどうかをお願いします。

安倍国務大臣 先ほど来再三お答えをしておりますように、まさにこれは情報収集にかかわってくるわけでございますから、お答えは控えさせていただきたいと思います。(高山委員「全然答えになっていないですよ。これはちょっとひど過ぎますよ、幾ら何でも。全然、私そんな、ソースを明らかにしろとか調査の対象を明らかにしろなんて言っていないですよ」と呼ぶ)

大島委員長 高山智司君。(発言する者あり)

 ちょっととめなさい。

    〔速記中止〕

大島委員長 それでは、速記を起こしてください。

 官房長官からもう一度答弁を求められておりますので。

 安倍官房長官。

安倍国務大臣 先ほど御答弁いたしましたように、内閣の情報機関による個別の調査内容や事実は、すなわち我が国の情報関心あるいは情報収集重点であるため、他国との信頼関係や国の安全にかんがみ、これを明らかにしないことは原則でございます。これは各国の情報機関も同様であり、いわば情報機関の常識というべきものではないかというふうに考えております。

高山委員 それでは官房長官に、先ほど、そういう一行記事でもあったかなかったかは、ちょっとそれを答えることはできない、こういうような御答弁だったと思うんですけれども、その自殺があったという事実が内閣情報室に伝わっていたのか、そういう事実があったのかなかったのか、それとも官房長官が今わからないのか、この三つの中でどれなんですか。ちょっと答えてください。

安倍国務大臣 ただいま申し上げましたように、お答えができないということでございます。

高山委員 とにかく、今の館員の自殺で、しかも、週刊誌報道によればですけれども、これはかなり重大な国家機密が漏えいしていたんじゃないかみたいな話にまでなっているわけですよね。その問題が、今総理がお答えになったように、週刊誌報道がある以前まで全く聞いていなかったということを総理がおっしゃいましたけれども、そのことそのものが問題だと思いませんか。ちょっと総理に伺いたいんですけれども。

小泉内閣総理大臣 報道の後、私は、そういう事件があったのかということで、今のような情報の上げ方でいいのかどうか、よく外務省内、情報官を含めて検討するように、どこまで上げて、どこまで上げないでいいかという点についてはもっと注意して、私のところにしかるべき情報は持ってくるようにという指示は出してあります。

高山委員 今の総理の御答弁ですと、今後、そういう危機管理に関してどういう情報を上げるか上げないかという指示を出されたということですけれども、当然、その指示を出される前提として、この上海総領事の自殺の問題に対してどういうところで情報が遮断されてしまったんだ、どういう人がうっかりしてこれを上げなかったんだ、あるいは故意に隠してしまったんだ、これは検証する必要があるという今は総理の御答弁ですか。

小泉内閣総理大臣 それは、省内において、また個人のプライバシーもあるし、それから外交上の問題もある、そういうのはわかると。そういうものを含めて、どうしてこういうことになったのかというものは十分検証しなければならないし、このような情報を総理にあるいは官房長官に上げるべきか、上げないでいいかという点も含めて、よく今後検討するようにということでございます。

高山委員 まさに、では、この上海総領事の情報伝達の問題、この件に関しましても総理は、その報告をしてくださいということじゃないですよ、総理として、危機管理体制のあり方として検証はされるということですね。この件に関して情報伝達が一体どこで遮断されたのか、どうだったのか、この情報伝達のあり方を検証されるということですか、総理として。

小泉内閣総理大臣 情報伝達というのはどういうことか、週刊誌なり記事に漏れたのかどうか、あるいは、総理まで上げることの情報伝達か、ちょっと御質問の趣旨がわかりません。

高山委員 総理も、この事件、先ほどからも御答弁されていますように、本来であれば、その事件があったときに言ってほしかった情報だったと思うんですけれども、それはいかがですか、総理は。

小泉内閣総理大臣 それは、私は、この情報は総理に上げるべき情報ではなかったかという点も含めて、外務省に指示しております。

高山委員 これは総理並びに官房長官にも伺いますけれども、この情報は、本来であればやはり官房長官にも到達といいますか、報告されるべき案件だったなというふうに今はお考えですか。

安倍国務大臣 今回の件につきまして、この件について外務省がしっかりと適切に対応したかどうか、あるいはまた再発防止にどうすべきか、そしてまた、官邸への連絡等に問題点はなかったかどうかについて外務省に検証をさせたわけでございまして、その結果については、既に外務省からも、また私の方からも御発表をさせていただいているようなわけでございますが、官邸への連絡に関しては、インテリジェンスにかかわる本件のような場合、事案の内容や我が国としてとるべき措置の内容、相手国との関係等を総合的に勘案した上で、官邸への報告、協議の必要性が検討されることになります。

 また、その判断については、今回の経験を踏まえ、外務省の主管部局の長が、大臣官房とよく相談しつつ、責任を持って判断し、事務次官、外務大臣と相談し、そして決定することを徹底した、こういうことでございます。

高山委員 ただいまの総理及び官房長官の御答弁にも、この件も含めて今後こういうことがないようにというか、危機管理の情報を徹底していくというようなことで、それは一面安心した部分もあります。

 この件も含めてということですので、今度は外務大臣にちょっとこの件の情報の伝達のルートについて伺いたいんですけれども、まずこれは、この当の自殺された方、この人は電信官という仕事だったそうですけれども、これはどういう仕事をされるんですか。

麻生国務大臣 基本的に、省内というか、いわゆる出先の大使館内のことに関する情報連絡を、暗号文等々いろいろな形をもちまして本省に連絡するをもって主たる業務といたしております。

高山委員 そうしますと、外務大臣、こういう本省への暗号の情報を扱うこういう方、この方から情報が漏れていたかどうかというのは、これは本当に国家機密の漏えいにもかかわる重大な案件だなと思うんですけれども、この方はしゃべっていないと私は信じておりますけれども、仮にこの方がおどされてしゃべっちゃったとなれば、暗号なりあるいは国家機密が漏れたおそれはあるということですよね、外務大臣。

麻生国務大臣 今、まことにそういった可能性があるかという仮定を前提にちょっとお答えしにくいところですけれども、基本的に、電信官という立場にある者がいろいろな形で情報を漏らし得る立場にあることだけは確かです。したがいまして、それが、暗号、乱数表、乱数表の意味はおわかりと思いますが、暗号に関するいろいろなそういったものを含めまして、いろいろその他の情報が漏れ得る可能性は否定できるものではありません。

 したがって、ここは私どもとしては最大の関心のあるところでもありまして、今回の件につきましてもその点が、自殺ということになった後、最も私どもとして関心を、事後対策としても、また、それまでの起きた事件に関しましても、一番注意を払ったのは、もう既に漏れちゃっているのかどうかというところが一番の国家としては大事なところでありまして、御本人の死亡の原因等々はもとよりのことですが、その点につきましては、今御指摘のとおり、一番の関心を払ったところでもあります。

大島委員長 安倍官房長官。(高山委員「指していません」と呼ぶ)いや、今、補足しなきゃなりませんということで。

安倍国務大臣 本件発生後、在上海総領事館などに対し、外務省より専門家を派遣いたしまして徹底的に調査を行った結果、外交通信の秘匿に係る暗号システム等の情報が漏えいしたことはないことが確認されたというふうに承知をいたしております。

 再発防止策については、情報防護を含む秘密保全体制の点検及び周知徹底を図るとともに、研修の強化等を行っていくことといたしております。

 今後とも、関係省庁間での連携を確保しながら、政府全体として情報防護への対策、対応強化を図っていく考えでございます。

高山委員 今は外務大臣に御質問したんですけれども、何か安倍長官の方から補足というようなことで言われましたけれども、外務大臣に確認ですが、今、安倍長官の方から、情報漏れはなかったんだというお話ありましたけれども、外務大臣からも、この件に関して情報漏れはなかったということを断言していただきたいと思います。

麻生国務大臣 本人の遺書というのは複数通ありました。その内容を開示するのは不適切だと存じますけれども、その内容を見ましても、国家を売るつもりはない等々の文章がございましたし、私どもも調べた上で、漏れている気配はありませんでしたし、また、本人が使っておりましたそれまでのシステムそのものを変更いたしておりますので、それ以後はもちろんのこと、その本人が漏らしたという形跡を私どもの調べた範囲では発見できておりませんし、事実、あの遺書の内容から見ても、漏らしていない、漏らさないためにという可能性の方が高い、私どもはそう思っております。

高山委員 いや、外務大臣、今までこれ一年七カ月間、ほっておかれたというと変ですけれども、何かさしたる抗議もしないで、しかも、情報漏えいがあったのかどうなのか何か調査もあいまいなまま来ちゃって、ここで麻生大臣にかわって、おお、これはきちんとやってくれるんだなとちょっと期待もしているんですよ。ですから、情報漏えいは確実になかったんだということを断言していただけますか。そうしないと、ちょっと安心できませんので。

麻生国務大臣 お答えさせていただきます。

 情報漏えいはありませんでした。

高山委員 それは、どういう調査に基づいて情報漏えいはなかったんだということが言えるのでしょうか。

麻生国務大臣 これは、かかって諜報、情報等々の話は、極めて、いわゆる安倍官房長官の言葉をかりればインテリジェンスということになろうと思いますけれども、総合的な意味でのインテリジェンスにかかわる話、公安とか諜報とかいう話でも部分でありますので、どのようなあれをもってやったかという内容の、調べた手法についてのちょっと御答弁は差し控えさせていただきます。

高山委員 詳しい調査手法ですとか情報ソース、こういうのは明らかにする必要はないと思うんですけれども、これは、正式な調査団か何かを、中国に行ってきちんとヒアリングしてという調査をする必要が当然あると思うんですけれども、そういうことをやられているんですか。まず外務大臣。

麻生国務大臣 何となくいわゆる型どおりの、余りこの種のことに詳しくない人を送っていた、やらせたのではないかという御心配なんだと思いますが、きちんとしたプロを送って、その上で調べさせております。

高山委員 この国会で公表してくださいということではございませんが、そうしますと外務省内では、こういうのをいろいろヒアリングして、事件は、遺書なんかも見て、これこれこういう経緯であったということは、一通りの報告書といいますか、そういう形にはなっているんでしょうか。

麻生国務大臣 査察報告は上がっております。

高山委員 その報告書が上がってきたのはいつですか。(麻生国務大臣「ちょっとお待ちください」と呼ぶ)

大島委員長 ちょっとお待ちください。速記もちょっと、長くかかりそうですから、ちょっと待ってください。

    〔速記中止〕

大島委員長 速記を戻してください。

 外務大臣。

麻生国務大臣 十六年五月と聞いております。

高山委員 外務省内では、では、十六年五月にはもう報告書が上がってきたということですけれども、どうして官邸には伝えなかったんですか。

麻生国務大臣 事件発生直後に外務省に直ちに内容が通告されたのも事実でありますし、今申し上げましたように、査察というか監察をさせて、五月に報告書が上がったのも事実でありますが、事件発生直後から昨年末まで、御指摘のとおり、外務省から官邸への報告は行っておりません。それで、本件が報道された昨年末、いわゆる十二月の、先ほど言われました日、二十七日でしたかに発売された以後に報告をいたしておるというのが事実であります。

 こういったことについて、私どもとして、個々の案件に応じてこれは判断すべきものなんだと存じますけれども、先ほど言われましたように、仮にも自殺にかかわること等々に関しましては、外務大臣まで上がったけれども、それから先上に上がった、官邸に報告していないということのように思われますので、この種の話に関しましては、先ほど安倍官房長官の方から御報告がありましたように、外務大臣に上がると同時に、それがこの種の問題に関しましては、きちんと整理の上、官邸まで報告をするべきだということで、以後、私のところまで必ず上げてくるというように、省内のシステム等々の報告のルール、規則を変更させております。

高山委員 今、麻生大臣、この種の情報に関しては、私のところに上げるのと同時に官邸に上げるというようなことをおっしゃいましたけれども、つまり、この上海総領事の件に関しましては外務省から官邸に情報が上がらなかった、この点については外務省に不備があるということですか。

麻生国務大臣 私はその時点でこの問題に関しましては中国側への抗議等々も行っておりますし、当時の外務省としては、これは官邸に上げる必要はないというように判断した結果だと思っておりますので、それはその当時の判断として、見解の相違はいろいろあるんだとは思いますけれども、二年たった今の段階で考えて、私だったらとか思って個人的なことを申し上げても余り意味がないとは存じますけれども、当時ではそういう判断を省としてしておりますので、これが悪かった、あの人が悪かったというような形で責任を追及するというようなのはいかがなものかと思っております。

高山委員 いや、今の大臣御答弁の中で、この種の情報に関しては私のところにもきちんと上げるし、また官邸にも上げるべきだったというような趣旨の発言をされていますけれども、ただ、やはり上海総領事のこの事件が、調査までされて、しかも報告書まできちんと上がってきて、それが即時にということを私は突いているんじゃないですよ。この一年七カ月の間ずっと報告がなかったわけですから、この一年七カ月の間、官邸に報告が行かなかったということは、これは外務省に不備があったなと麻生大臣はお考えですか。

麻生国務大臣 この間、事件の発生直後から平成十六年の五月中旬以降、関係者に対してはそれぞれいろいろなレベルで申し述べております。回数も書いてありますけれども、そこらのところで私どもとしては、向こう側に申し入れたことに対して向こう側から、関係者の関与はしていないとする主張が向こうからなされておりまして、これは職務の重圧であったのではないか等々一方的に話がありましたので、我が方としては、そのような主張は受け入れられぬということで抗議をしたままでずっとその後継続をしておるというので、結果が出ていないという状況にあることもまた事実であります。

高山委員 麻生大臣、対中国の問題ですから、これはもう相当、何というんですかね、外務大臣ももちろん先頭に立って頑張られますけれども、総理及び官邸も一丸となってこれは、闘うという言い方は変ですけれども、やらなければいけない問題だと思うんです。

 それで、今おっしゃいましたように、事件があってから外務省のいろいろなレベルで抗議をされた、向こう側から、これは職務の重圧だ、自殺じゃないか、そういう報告もあったというやりとりがありましたけれども、このやりとりは官邸には報告していますか。

麻生国務大臣 昨年の十二月の二十七日以降上げた報告書の一連の中で、いろいろなレベルでこれまでやってきたという報告は上がっておりますが、それに至るまでの間の御報告は、先ほど申し上げましたように、十二月二十七日前の段階では、今申し上げたような経過をずっと官邸に上げているということはございません。

高山委員 麻生大臣、事件そのものの第一報ももちろんですけれども、その後、調査団も送られている、それで報告書も上がってきた、そしてその後、どういうレベルかわかりませんけれども、外交ルートできちんと交渉もしている、向こう側の返答も来た、それに対して外務省としては納得できるものではない、この経過も官邸には報告していないという今御答弁でしたけれども、これは不備があるんじゃないですかね。

麻生国務大臣 向こう側との交渉というかやりとりの内容でもありますし、我々としては、自殺に追い込まれたんじゃないかという私どもの言い分に対して、向こうは職務の重圧だという言い合いになった形になっておりますので、その段階で官邸に上げるべきかどうかというのは、判断のちょっと分かれるところだと存じます。

高山委員 では、その段階で事件もきちんと確定しているわけでもないし、そういう段階で官邸に上げるのは、判断としては当時正しかった、こういうお考えですか。

麻生国務大臣 当時の省内として、そういうことだったんだと理解をしております。

高山委員 麻生大臣は、そういう当時の外務省の判断はしようがなかったんだ、是認できるんだと、ちょっと甘いんじゃないですか。ちょっとびっくりしたんですけれども、麻生大臣のお言葉とはちょっと思えないなという感じがいたしますけれども。

麻生国務大臣 私どもとして甚だ遺憾だということは確かだと存じますけれども、やりとりをしている最中、まだ継続をしていることでもありますので、私どもの立場としては、私だったらどうとか、あの人だったらどうとかいう話をし始めると話が非常に混乱をいたしますので、私どもとしては、きちんとした対応はなされた、その対応に対してはもっとやるべきじゃなかったかという御不満等々があるんだと思いますし、官邸への報告はおくれているのではないか、もっと速やかにしておくべきであったのではなかったか等々、いろいろ御指摘なんだと存じます。

 ただ、当時、交渉の最中でもありましたし、一応、向こうとのやりとりというのはかなり激しいものが行われてもおりますので、私どもとして、その段階にさかのぼって、今遡及するような形で責任を追及するという考えはございません。

高山委員 責任を、個人的な当時の官房長がどうしたとか局長はどうだったとか、こういう話は私はまだ一切しておりません。

 外務省として官邸に上げるべき情報というのがあると思うんですけれども、当時、その報告書までつくられて、しかも激しいやりとりも中国とあった、こういう事実を官邸に伝える必要がなかったんだということですね、大臣。

麻生国務大臣 事件のまだ結果が出たわけでもありませんし、事件のまだ決着がついているわけでもありませんし、最初に報告すべきだったという点に関しましては、私もすべきだったと。今考えてみれば、その時点で言っておくべきではなかったかなという感じが、正直、私個人としてはいたしますけれども、事それから一年七カ月ぐらい経過をいたしておりますので、それまでの間いろいろやりとりをやっておりますので、そういったものを考えますと、結論がまだ出ていないので、今、この途中経過としては、もう一回、私が着任早々すぐまたそれを出すかというのもどうかなという感じが、私が聞いたのもその十二月の二十何日にしか聞いておりませんから、それまでの段階にさかのぼってどうのこうのということを、私ども、その途中で聞いていたわけではありませんから、十二月の二十何日に内容を聞いて、全部報告を受けた後の感想としてはいろいろ今申し上げることはできますけれども、その当時の判断としては、それなりに、事件の途中経過の最中でもありという判断は決して間違ってはいなかったと言わざるを得ぬと思っております。

高山委員 いや、麻生大臣だったらもっと厳しくやってくれるかなと、ちょっと残念な思いもいたしますけれども。

 今、大臣、私も着任早々は知らなかった、週刊誌ですか、新聞の報道があってから知ったものでみたいなお話ありましたけれども、先ほど、安倍官房長官の判断ですと、官邸に情報を上げるか上げないかは所管官庁である外務省の判断だったのでみたいな話がありましたけれども、大臣、着任早々、この案件ありますよ、これは交渉継続中ですという報告は受けていないんですか。

麻生国務大臣 前大臣からの引き継ぎというのがございますけれども、その引き継ぎのときに、引き継ぎというのは結構膨大にございますので、その引き継ぎの中にその話を直接伺うということはありませんでした。

高山委員 麻生大臣、先ほどちょっと私、官房長官といろいろやらせていただいたのは、外務省から官邸に情報が上がっているかどうかというところを随分聞かせていただいたんですけれども、外務省内ではもう当然情報は把握されていて、ただ、こういうインテリジェンスにかかわることなので、他の省庁というか、官邸にはという判断があったのかもしれませんけれども、外務省内でも全然情報の伝達がなされていないじゃないですか。だって、週刊誌を見てから知ったということですよね、大臣。

麻生国務大臣 その事件の当時の在職の大臣は御存じだったと存じますが、大臣に着任をいたしました十一月でしたか、それ以後、その種の問題に関して外務省から、この種の問題がという話を直接受けたことはありません。

高山委員 今、その当時の大臣なら御存じだったかもしれないというようなお話でしたけれども、総理に伺いたいんですけれども、当時の大臣、川口外務大臣ですけれども、週刊誌報道があってから、これは何なんだ、どういうことなんだということで川口大臣にお話を伺いましたか。

小泉内閣総理大臣 川口大臣はもう外務大臣じゃありませんから、別の人から事後報告は受けております。

高山委員 官房長官にも伺いますけれども、官房長官も川口元外務大臣から、当時どうだったということを、この週刊誌報道があってから聞きましたか。

安倍国務大臣 この件に関しましては、川口大臣からお話は伺っておりませんが、外務省から説明を受けております。

 また、今後の体制につきましては、今後の外務省から官邸への情報伝達につきましては、先ほど申し上げましたように、私が外務省に再検討するように指示をいたしまして、今後は、今回の経験を踏まえて、外務省の主管部局の長が、大臣官房とよく相談しつつ、責任を持って判断し、事務次官そして外務大臣と相談して決定することを徹底したわけでございます。

 この件が発生当時はそうしたルールが決まっていなかったわけでございまして、その中での裁量の範囲内での決定がなされたものである、このように思うわけでありますが、今後は、こうした事柄については、基本的には、このレベルの話については官邸に上がってくるということになると思います。

高山委員 私、川口当時の大臣からこれは話を聞くのがすごくわかりやすいと思うんですね、どうして上げなかったのか、そういう判断をされたのか。ですから、これはぜひお話を伺いたいなと思ったんですけれども、総理動静というのがあるんですよ。例えば、十二月二十五日午前、公邸で過ごす、こういうのがあるんですけれども、十二月二十六日月曜日、これは週刊誌報道の前日だと思うんですけれども、二十七日に発売ですからね、二十六日の午後四時二十六分、川口順子参院議員と書いてありますけれども、この際、これはどういうお話をされたんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 忘れました。

高山委員 前の日に川口大臣を呼んでいるので、私、てっきり、この話はどうなっているんだと総理が、しかりつけると言うと変ですけれども、お呼びになって聞いたんじゃないかなと思ったんですけれども、内容は忘れたということでございます。

 当時の大臣であるこの川口大臣から、総理としても、これはちょっと話を聞かなきゃなということでお話を伺うつもりはありますか。

小泉内閣総理大臣 ありません。

高山委員 いや、外務省の報告によれば、官房長、次官も通じて大臣まではきちんと情報が上がっている。でも、そこから先、総理のところまでは情報が行っていないということは、これは大臣の問題だと私は思います。

 だから、本当は、大臣にどうしてこういう情報を上げてこないんだということを、どういう判断だったんだということを聞くべきだと私は思いますので、またこれはインテリジェンスにかかわることですから、インフォーマルな形でも結構ですから、総理大臣としては川口大臣にぜひこれは聞いていただきたいなとも私は思います。

小泉内閣総理大臣 川口元外務大臣以外の詳しい方から事情は聞いております。

高山委員 それでは、今度は外務省の方に伺いますけれども、麻生大臣に伺いますが、これは引き継ぎの中にはなかったということですけれども、麻生大臣的感覚でしたら、これは当然引き継がれてしかるべき、しかも今交渉中の案件ですよね。これはもう終結しているならまだしも、まさに激しく交渉している案件であれば、当然これは引き継いでおいてもらわないと、大臣としても、ええ、それは知らなかったということじゃ困ると思うんですけれども、引き継がなかった、なぜこういうことが引き継がれていなかったんだということは省内では問題にしましたか。

麻生国務大臣 当然のこととして、これが出た後、これはどういう話だということで、その問題に関して担当者を呼んで詰問をいたしたことは確かです。

高山委員 私も犯人捜しみたいなことはやりたくありませんけれども、一応これだけの問題になって、その当時の関係者、このけじめはやはりつけなきゃいけないと思うんですけれども、本来であれば、この情報、領事館から本省に入ってきて、それを見て、担当の少なくとも課長、局長は見るでしょう、それで官房長あるいは次官、こういうふうに行くと思いますけれども、その当時の責任者に対して何か注意あるいは懲戒等の処分は今なされましたか。

麻生国務大臣 懲戒等々の処分というのを申し渡したわけではありませんし、今この段階で申し渡すつもりも、今の段階ではありません。

 ただ、私どもとしては、この種の問題については、少なくとも、仮にも館員が自殺に追い込まれるという事態は普通の事態ではない。そういう状況を考えて、直ちに本省に報告が上がってきたもよし、査察を出したのもよし、そこまではよかったが、この種の事件というものを、今考えてみれば、官邸に報告ぐらいはしておいてもおかしくない種類の話じゃないのかという話で、ちょっと私が言うと、叱責と言うとちょっと聞こえが、ちょっときつく聞こえるかもしれませんけれども、かなりきつく言ったことは確かです。

高山委員 本件は、この担当の自殺された電信官の方、この方は情報を漏らしていないとは私は信じておりますけれども、これは重大な問題だと思います。情報漏えいしたかどうかという重大問題だと思うんですよね。考え方によっては、当時の外務省の、これは仮に今情報漏えいしていればですけれども、物すごい不始末ですよね、国家機密を外務省の職員の人が漏らしちゃったとすればですよ。これは、官邸に情報を上げなかったのは、うがった見方をすれば、自分の省内の不始末を上に報告しなかった、こういうことなんじゃないんですか。どうですか、外務大臣。

麻生国務大臣 少なくとも、その内容が直ちに本省にその日じゅうに伝達され、直ちに局長、官房長から上に上がっておるのは、翌日には既に上がっておりますので、その段階で隠ぺいしようといって、それだけ上がりますと、なかなか隠ぺいといったってそうはいかないということだろうと思いますので、その段階で、今考えてみれば、官邸に報告しておくべきだったのではないかというような感じが今の段階の私としてはいたしますけれども、その当時は多分対応に追われていたということだったろうと思います。

 また、暗号のいわゆるシステム自体が外に漏れていたかいないか、これは大問題です。もうおっしゃるとおり、ここが一番の問題なんだと思いますが、これが漏れたか漏れていないかが一番の問題でしたので、直ちにそれを改修するということになりますし、今、御存じのようにシステムというのは、一部盗まれたり壊れても全体のシステムがどうのというシステムじゃございませんし、今は新しいシステムになっておりますので、一部とられた、盗まれたからといって全体がわかるような形のような簡単な機械ではなくなってきておりますので、漏えいの件に関しましては、重ねて申し上げますけれども、漏れていることはございません。

高山委員 私も、この自殺された方が本当に頑張っていただいて漏えいはなかったんじゃないかとも思いますけれども、私が言いたいのは、漏えいが疑われるような自殺あるいはこういう事実があったことを外務省が隠ぺいしようとしているんじゃないかと、みずからの不始末を。防衛庁も、前、額賀大臣、調達本部の事件で随分証拠を焼かれたりなんだり、隠ぺいやりましたよね。それで、自分の省庁の不祥事をそうやって隠したりする体質があるんじゃないのかなと。

 今回の防衛庁の談合でもひょっとしたらと、それは後に譲りますけれども、そういう考えもありまして、外務省も今回のことを、その不祥事そのものを、外務省より上といったらもう官邸しかないですから、隠したかったんじゃないんですか、そういう隠ぺい体質があったんじゃないですか、大臣。

麻生国務大臣 だれでもおのれの失敗は隠したいものだとは思いますけれども、この種の話は国家の機密にかかわる重大事項だと思いますので、これは基本的に隠してどうのこうのという種類の話でもありませんし、確かにおっしゃるとおりに、インテリジェンスのいわゆる機密中の機密というよりは、このシステム自体が漏れているのではないか、漏えいしているのではないかという点が最大の関心であったことは確かですが、それが大丈夫だという確信が持てたということもありましたので、これが漏れているとなった場合は、私どもとしてはもっと事は重大だったろうと存じます。

 ただ、これをもって、無理やり隠ぺいして外に出さないようにしようとしたというために官邸に隠そうとした意識が動いたというような気配は、私の調べた範囲ではございません。

高山委員 私も、麻生大臣がまさかこんな、ポスト何とか言われていますけれども、そんな隠ぺいなんかしてやるとは思いませんよ。ただ、当時、こういう不祥事ですよ、不祥事を、自分のところの省庁の外務省のさらに上である官邸に報告もしないでおこう、こんな不祥事だからちょっと省内で何とかおざなりにしちゃおうよと、こういうことが、次の町村大臣にも引き継がれていない、またその後の麻生大臣にも引き継がれていない。だからこれは、大臣もむしろだまされていて、外務省の、どこまでのレベルかわかりませんけれども、この事件そのものをちょっともみ消しちゃおう、こういう何か力が働いていたんじゃないんですか。大臣はその点に関しては調べましたか。

麻生国務大臣 この事件が週刊誌に出た後の話で私も知ったのは事実、その点について直ちに釈明等々のことがありましたけれども、これを隠ぺいして握りつぶしちゃおうということに関しましては、これはインテリジェンスの話ですので、中国の公安とやる話ですので、なかなか外に出にくいという種類の話であることも確かです。

 したがいまして、その部分が大きな要素であって、しゃにむにこれを隠ぺいしようといって、こっちに隠ぺいしようというようなつもりはちょっと正直なところ感じられませんでしたし、私の場合は、特に中国には結構激しくいろいろ言うネタを提供したがる人も世の中にはいっぱいいらっしゃいますので、あおられて余り乗せられないようにしなくちゃいかぬなと思うところもあるぐらいいろいろ教えていただくことはありますので、その中でも出てこなかった。別に隠ぺいしようというような感じは、正直なところ感じませんでした。

高山委員 私も、今麻生大臣おっしゃったように、むしろ麻生大臣だったら、着任早々、実はこういう話があるんですよ、大臣しっかり中国側と今やってください、一年何カ月もらちが明かなかったので、そういうのがあってしかるべきかなと思ったんですけれども、その大臣ですら週刊誌報道で知ったと。大臣のおっしゃることが本当だとすれば、これは官僚の方で何か情報隠しをやっていたんじゃないかなと、非常に怪しい話だなとも思います。

 また、きょうは本来、私、初めの質疑通告では、この上海総領事の問題とあわせて……

大島委員長 高山君、時間が来ておりますので。

高山委員 はい。

 防衛庁の談合の問題をやらせてもらおうと思っていたんですけれども、大変遺憾なことがありまして、昨日、防衛庁の談合問題に関して、私、大臣も随分意気込みがあったので、資料を出してくださいということを言いましたら、こういうペーパーが来たんですよ。要求資料を提出できない理由、別紙(1)、(5)、(7)については、衆議院予算委員会与党理事から、当該資料は現在理事会協議となっている事項に関するものであり、全省庁にかかわるので、その取り扱いについては今後の理事会協議を待つ必要があるので出せない、こういう回答、これはペーパーでもらっていますけれども、防衛庁長官に伺いたいんですけれども、これは私の質問権に関することですから、ぜひとも……

大島委員長 高山君、時間になっております。

高山委員 資料に関しましては協力をしていただけますようにお約束いただきたいと思いますので、防衛庁長官からの最後答弁だけいただいて、終わりたいと思います。

大島委員長 これにて高山君の質疑は終了いたしました。

 次に、川内博史君。

川内委員 民主党の川内博史でございます。

 きょうは、米国産牛肉の輸入問題に関して、絞って質疑をさせていただきたいというふうに思います。

 政府・与党の皆様方、閣僚の皆様方と私とは、与党と野党ということで立場が違うわけでございますが、国民の皆様方の食の安心と安全を守るということでは認識を共有しているというふうに思いますので、その立場から質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、中川農水大臣に御報告をいただきたいのですが、新聞報道で、北海道の道立畜産試験場がBSEの感染実験をしていた、その感染実験について、茨城県つくば市の動物衛生研究所に依頼した解剖結果が報告をされているようでありますが、詳細について御報告をいただきたいと思います。

中川国務大臣 今、川内委員御指摘のように、北海道立畜産試験場が平成十六年二月から、BSEを発症した牛の脳の一部をほかの牛の脳に接種して人工的にBSEを再現させる実験を実施していたところでございます。

 このたび、接種した牛三頭にBSEの発症を疑う所見が見られたため、確認検査を実施した結果、いずれの接種牛もBSEであることが確認されました。このような方法による人為的な発症実験は、外国では既に多数の例がありますが、日本では初めての事例であり、外国の事例と同様に、脳内接種によれば約二年程度で発症することが明らかとなりました。

 今後、こうした発症実験の結果を生かし、BSE発症メカニズムの解明や、体内における異常プリオンたんぱく質の動きの解明などに向けて、さらに研究を進めていきたいと思っております。

川内委員 中川大臣、確認をさせていただきたいんですが、この三頭に接種をした病原体の量というのは、答弁書の中にありますか。

 では、いいです。一ミリグラムです。要するに、牛―牛の感染は、ごくごく微量であっという間に感染をするということがこの実験結果からわかるということでございます。BSEは、牛―牛の感染の場合には、ごく微量であっという間に感染をするということがこの実験結果からわかるわけでございます。

 小泉総理、BSEの原因となるのは肉骨粉ではないか、あるいは牛脂ではないか、さまざまな原因説があるわけでございますが、今、まだこれは確定をしていない、原因がわからない。しかし、牛が牛を食べるということによる感染症であるということが言われておりますし、さらには、牛から人への感染というのは種の壁があるからなかなか感染しにくいということを言われておりますけれども、確かに、牛から人に感染するという事実は、これはもう確定をしている。バリアントCJDという、これは公衆衛生の問題に発展をするわけでございます。だから厚生労働省は、イギリスへの渡航歴のある方を、献血を認めていないということが今国内措置として行われているということは、閣僚の皆さんもよくよく御案内だというふうに思います。

 総理は、今から四年前の平成十四年三月二十六日の参議院予算委員会、BSEの質疑におきまして、我が党の江田五月議員からの、肉骨粉についての、牛が共食いをするということは問題ではないのかということの質問につきまして、すばらしい御答弁をされていらっしゃいます。読み上げさせていただきますと、

  大変大事な問題を指摘されたと思うんです。

  要するに、牛も動物、人間も動物、動物の健康を作るのは食物、食べ物だと思うんです。自然界の世界を見ても、草食動物を肉食動物が捕らえて、野菜なんか食べなくても生きていけるんですよね。人間と違う。

  この今回のBSEにつきましても、牛は本来草食動物ですよ。それを肉骨粉という違うものを食べさせたわけでしょう。食べ物が原因で病気になっている。私は、いかに食べ物が大事かと、人間においても動物においても食べ物こそ健康の基本である

というふうに答弁で述べていらっしゃいます。

 この牛と肉骨粉との関係については、現在も総理はその認識を変えていらっしゃらないということでよろしいでしょうか。

小泉内閣総理大臣 私は、BSE、どういう形でそういう病気になるかというのはよくわかりませんけれども、人間にとっても動物にとっても食べ物は極めて大事なものだと思っております。食べ物こそ健康の基本である。食育推進もその趣旨から展開しているわけであります。

川内委員 質問通告をしてあったので、もしかしたら官僚の皆さんから肉骨粉という言葉を出すなと言われたのかもしれませんが、牛の肉骨粉を牛が食べるということがこのBSEの大もとの原因であるという認識を平成十四年の質疑の中で明らかにされていらっしゃるわけです。そのことの認識は変わりませんかということをお聞きしているんですけれども。

小泉内閣総理大臣 肉骨粉が原因であるということは聞いておりますけれども、それ以上、何を食べればそういう病気になるのかというのは、私は、まだ詳しい原因、それが一つかどうか、ほかにも重なり合っているのか、ともかく肉骨粉は原因の一つであるということは報告を受けております。

川内委員 今、認識を変えていないということを総理に確認をさせていただいたわけでございます。

 ところで、総理、アメリカでは牛に牛の肉骨粉、特定危険部位が入っている肉骨粉を与えることは禁止をされています。法令で禁止をされています。しかし、豚や鶏に与えることは禁止をされていません。特定危険部位入りの肉骨粉を飼料として鶏や豚に与えることは、米国内においては規制をされていないんです。このことを御存じでしたでしょうか。

小泉内閣総理大臣 いや、知りませんでした。鶏は肉骨粉を与えてもいいんですか。カラスなんというのは肉だろうが骨だろうが何でも食べるけれどもね。知りませんでした。ああ、そうですか。(川内委員「いや、人間はカラスは食べないですけれどもね」と呼ぶ)

大島委員長 川内君、委員長の許可を得てから発言してくださいね。

川内委員 はい。

 総理、食の安心と安全を議論しているわけです。ここで言うトリというのは鶏ですね。カラスは人間は食べませんから。鶏は人間が食べるんです。だから私は申し上げているんですよ。特定危険部位入りの牛の肉骨粉をアメリカでは鶏や豚が食べています。そのことを総理は御存じなかった、今認識されましたね。

 さらにもう一点申し上げますが、米国内においては、鶏がふんをしますよね、うんちをします。そのうんちに甘いみつをかけて、ハチみつみたいなものをかけて甘くして、牛の飼料として使っています。これをチキンリッターといいます。

 そうすると、特定危険部位入りの肉骨粉ですから、異常プリオンが肉骨粉に含まれている場合には、それが鶏のふんの中にまじり、それがまた牛に戻る。要するに、特定危険部位入りの肉骨粉を鶏が媒介をして、また牛が食べているということに米国内の状況はなっているということなんですけれども、そのことをもちろん御存じなかったですよね、初めて聞いたと。

小泉内閣総理大臣 今の話も初めて聞きました。

 そこで、鶏や豚がその肉骨粉を食べて大丈夫なんですか。

川内委員 そこはまさしく、総理、いい質問ですよ。

 鶏や豚は、あっという間に人間が食べちゃうから。異常プリオンというのは、蓄積されて脳に来るまで時間がかかるわけですよ。牛は五年、六年、長いものは七年、八年飼育されるから発症するわけです。鶏や豚はあっという間に、鶏なんてもう数カ月でしょう。数カ月もかからないかもしれない。豚は大体十カ月で出荷されますから、異常プリオンがどこにあるかわからない、脳まで行かないうちに食べちゃうわけですね。(小泉内閣総理大臣「人間が」と呼ぶ)人間が。そういう状況だということです。

 アメリカは、いいですか、総理、特定危険部位入りの肉骨粉を、鶏や豚を経由してまた牛に戻っている。

 この点、中川大臣、私が昨年十月の質問主意書の中で、FDAのクロフォードという副長官が、その、鶏を経由してまた牛に戻っている肉骨粉の総量が百万トンであるというふうにある化学雑誌に書いているが、それは真実であるかどうかということを確認してもらいたいという質問主意書、質問主意書は話題のところだけではなくて膨大な量を出させていただいているんですけれども、そこについて数字を確認されたかどうか、ちょっと御答弁をいただきたいと思います。(発言する者あり)

大島委員長 そういうのは委員長が判断するんです。(発言する者あり)静かにしなさい。

 どうぞ、中川大臣。

中川国務大臣 失礼しました。

 質問主意書では、今総理の答弁にもございましたように、アメリカでは、鶏のふん、チキンリッターと呼んでいるそうでありますけれども、等々を牛に、鶏のふん等がぐるりと回って牛のえさになるということまで禁じていないというのは、川内委員の御指摘のとおりでございます。これらのアメリカにおける鶏関連の特定危険部位入りのものがどのぐらい流通しているかということについては、公的な統計はないというふうに私どもは承知しております。

 いずれにいたしましても、日本とアメリカあるいはOIEとの間で、先ほどの川内委員と総理との質疑のように、国際基準、あるいはアメリカ、そして日本で、えさの規制については違っております。日本が一番厳しいわけでございますので、去年の食品安全委員会の答申をいただいた中の附帯事項の中にも御指摘がありますことも踏まえまして、日本として、今、えさ、あるいはまたそれに関連する交差汚染につきまして、一層日本の要望を受け入れるように強く申し入れているところでございます。

川内委員 要望を受け入れてもらうように強くアメリカに申し入れているというのは後でちょっと議論をさせていただきたいんですが、その量がどのくらい流通しているかわからない、統計がないのでわからないということだったんですが、私は、それを米国農務省に確認をして、数字を正確に食品安全委員会に、プリオン専門調査会に報告をしてくれということをずっと申し上げているわけです。

 なぜならば、米国内のBSEリスクを評価する上で、どのくらい鶏、豚を経由して肉骨粉が牛に戻っているかというのは、それは大変大事な数字だからであります。私は、もう三カ月、去年の十月から十一、十二、一、三カ月半、その数字をお待ちしているわけでございまして、これは多分プリオン専門調査会の先生方も興味を示される数字であろうというふうに思いますので、中川大臣、USDA、農務省に、その鶏ふんがどのくらい流通をしているのか、牛の飼料として使われているのかというその数字については、しっかり答えてくれ、例えば二月いっぱいまでに答えてくれとか、期限を区切って要請をしていただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

中川国務大臣 今、川内委員の質問主意書を改めて拝見させていただいておりますけれども、米国のレンダリング業界団体であるナショナル・レンダラーズ・アソシエーションが発表した云々というところでございますね。これにつきまして、先ほどお答えいたしましたように、確認したところでは、公式の記録がないというふうに把握をしておりますが、食品安全委員会の附帯事項でもあり、また、既に強く要望しているところでもございます。

 また、川内委員からも今御指摘があったところでございますので、現時点におきましては、一月二十日のあの事件の状況、あるいは再発防止策を今待っているところでございますけれども、それも含めまして、さらに、正式にUSDA等々に、本当にデータがないんだろうと思いますけれども、ぜひ実態把握をしてもらいたいということを、報告書の後になるかもしれませんけれども、日本として強く改めて要求したいと思います。

川内委員 総理、これだけじゃないんですよ。実は、米国内においては、今、シカのプリオン病、狂シカ病というのが大流行をしています。このシカの死体もレンダリングをされて、シカというのも反すう動物ですから、レンダリングをされて、肉骨粉になって、鶏や豚に与えられ、その鶏ふんや鶏舎のごみ、鶏小屋のごみがチキンリッターとなって、また牛に戻っているという実態がございます。

 このことなんかは、とても総理は、そんなことを多分御存じなかったと思うんですけれども、この狂シカ病というのは筋肉にも……(発言する者あり)狂シカ病、シカが狂う。だから、わかりやすく言っているんですよ、狂シカ病と。狂シカ病は、筋肉、要するに肉にも異常プリオンが付着をしているという学者の論文も既に発表されていて、狂シカ病由来ではないかというバリアントCJDと類推をされるような報告もあるわけです。このえさの問題というのは、実はBSE全体のリスクを低下させる上では絶対にしっかり議論をしなければならない課題なんです。

 総理、日本とEUは、もう肉骨粉を絶対使わないというふうになっているわけですよね。もう肉骨粉は絶対使わない、全量焼却だということになっている。えさとして流通しない仕組みをとっている。ところが、アメリカでは、特定危険部位入りの肉骨粉が流通をしているという状況がある。これは、BSEのリスクというものがアメリカでは拡大をしているというふうに見ていいわけです。

 実際に、プリオン専門調査会の吉川座長が時事通信のインタビューにお答えになられて、このようにおっしゃっていらっしゃいます。これは、プリオンの専門家ですよ、座長が言っているんですよ、私が言っているわけじゃないですからね。米国はまず完全な飼料規制を実施すべきだ、今の規制だと米国におけるBSEのリスクは減らない、飼料規制を強化しないで、これ以上議論をすることはできないということをおっしゃっていらっしゃるわけです。

 総理、さっき中川大臣も強く要望するというふうにおっしゃられたわけでございますが、先ほどから申し上げているとおり、BSEのリスクというのは、牛どんとか牛タンの問題にとどまらず、公衆衛生の問題になる。

 今、総理、イギリスで起きていることをちょっと御説明しますけれども、イギリスで、BSE由来のバリアントCJDに感染をした方が輸血をされたわけですね。自分が感染していることをわからずに輸血をした。それが血液製剤になって、何千人の方に使用されたわけです。そうすると、その何千人の方々が今度はvCJDのリスクを抱えるということに今なっているんです。実際に英国政府も、その何千人の方々に、あなた方はリスクを抱えていますという勧告をしているわけです。

 だから、牛一頭でもBSEが発生したら、それはあっという間に感染する。そして、なかなか人間には種の壁があってうつらないかもしれないが、しかし、うつることはもう証明されている。うつったら、それがまた何千人の人に対するリスクになる。かつての薬害エイズや水俣病、水俣病はうつる病気じゃないですが、あるいはアスベスト、これもうつる病気じゃないですが、甘く考えていると、将来、ああ、あのときちゃんとやっていればよかったということになるわけです。

 だから、日本は、飼料規制をばっちりやる、SRMの除去もばっちりやる、トレーサビリティーもやります、さらに全頭検査、まあ全頭検査は実質全頭検査ですよね、この四本柱をやっているわけです。世界一の対策をとっているわけです。これはなぜかというと、公衆衛生のリスクに発展をする可能性があるからこの四本柱でやっている。

 しかし、米国内においては、今申し上げたとおり、特定危険部位入りの肉骨粉がいまだに流通をし、それがまた牛に戻っている事実があるわけです。事実がある。このことについては米国政府に対して強くおっしゃっていただかなければ、食の安心と安全を守るという立場からはとても、この米国産牛肉の問題を議論する大前提だというふうに思うんです。

 総理、総理御自身からも、ブッシュさんと仲よしなんですから、この飼料規制については、日本の人々は、国民は非常に心配していると。もちろんFDAは規制を強化しようとしているわけですが、その強化しようとしている規制さえ不十分なんですから、特定危険部位をすべて取り除こうとはしていないわけですから、そのことをぜひ総理御自身からも何かの機会にしっかりと伝える、申し入れるということを御答弁いただきたいというふうに思います。

小泉内閣総理大臣 人間にとって食べ物は重要ですし、当然、動物にとっても、えさ、飼料は重要だと思います。今のお話、具体的な事例を挙げてアメリカ政府にもきちんと伝える、あるいは警告するというのは大事だと思っております。

川内委員 ぜひそのような形をとっていただきたいというふうに思います。

 それでは、総理からもおっしゃっていただけると。さらに、中川大臣からも、この飼料規制の問題については甘く考えていると大変なことになるよということをぜひ強くUSDAのジョハンズさんにお伝えをいただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

中川国務大臣 今総理からも御答弁ありましたし、既に一月二十日以降、ジョハンズ長官、あるいはまた関連してポートマンUSTR代表と何回かダボス等で話す機会がありましたけれども、先方からの電話あるいはこちらからの話しかけを含めて、常に言っているところでございます。

 今ちょっと川内委員がお話しになったように、アメリカ自身も、特定危険部位を豚、鶏に与える場合でも、よりリスクの少ない三十カ月以下にしようと検討をしているというふうにも聞いておりますけれども、いずれにしても、いかにレベルを日本並みにしてもらうかということが食品安全委員会の答申の御趣旨でもございまして、そういう結論の中で、リスクの差が非常に小さいという、EVプログラムを前提にすればそういう御結論でございますが、さらにそのリスクを下げるという観点から、附帯事項という中に、交差汚染のリスクを下げるためにこの特定危険部位等のえさの問題の御指摘もあって、それを踏まえてアメリカに強く要請をしているところでございますけれども、先ほど申し上げたように、さらに強く、そしてまたできるだけ早く日本の要望が取り入れられた米国産牛肉ということが確立されるように、強く要望したいというふうに思います。

川内委員 それでは、次の問題に移りたいというふうに思います。

 USDA、米国農務省が発表した文書でありますが、米国農務省監察局、米国農務省の活動を監察する部局でございますが、この監察局が、オーディットレポート、USDAのBSE対策に対する監査報告というものを出しております。この監査報告の簡単な概要で結構でございますので、大臣の方から御説明をいただきたいというふうに思います。

中川国務大臣 この米国農務省監査室、OIGという組織は、米国農務省の組織の一つでございますけれども、大変に独立した機関でございまして、農務省の中のほかの機関を独立してチェックするというところでございます。

 今御指摘の報告書が先日出たわけでございますけれども、この報告書におきましては、ダウナー牛、へたり牛ですね、ふらふらとか立てないとかいう牛の屠畜に対する不適切な手続がUSDAの機関において適用されていた事例でありますとか、また、監査報告に基づく勧告が出されているとか、あるいはまた、先ほど申し上げたFSIS、米国農務省食品検査局にガイドラインを制定すべきであるとか、そういった厳しい指摘がこのBSEに関する調査の結果、公表されたところでございます。

川内委員 屠畜解体の過程の中に、要するに、食用になるルートの中にダウナー牛というハイリスク牛が入っているということがこの監査報告の中で報告をされている。さらには、今農水大臣はおっしゃらなかったんですが、特定危険部位の除去についても、その実態が不明である、さらに、サーベイランスについても甚だ不十分であるということがこのUSDAのオーディットレポートに、これはすごく分厚いので、私も英語が余り得意じゃないので、全部を、偉そうに言っているわけじゃないんですが、ぜひ中川大臣、このオーディットレポートを、きちんと仮訳をつくっていただいて、食品安全委員会に提出をしていただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

中川国務大臣 OIGレポートにつきましては、そういう大変大部のものでございます。また、御指摘のように、大変に日本の運用と違うことが米国内で行われていることがOIGレポートで報告されたところでございますので、きちっとした仮訳、こういう日本語があるのかどうかわかりませんが、きちっとした日本語にして、食品安全委員会を初め関係各方面にお示しをしたいというふうに思います。

川内委員 この中のダウナー牛、いわゆるハイリスク牛が食肉ルートに入っているという指摘があるわけでございますが、そのことについてちょっと詳しくお話を承りたいのですが、今回、十二月十二日の輸入再開決定を受けて、農林水産省、厚生労働省が発表された文書がございます。

 「米国産牛肉等の輸入再開に当たって」、平成十七年十二月十二日付文書でございますが、この中に、中川大臣、「厚生労働省と農林水産省は米・カナダ両国内における輸入条件の確実な実施を担保してまいります。」というふうに書いてございます。この担保というのはどういう意味ですか、確実な実施の担保の担保とはどういう意味ですかということを農水省にお尋ねいたしましたら、家畜衛生条件を締結すること、さらに、EVプログラムを確定させること、さらに、その家畜衛生条件、EVプログラムに基づく品物については検疫証明書が発行されること、これらが担保であるというふうに御説明をいただきました。

 それでは、今回OIGレポートで明らかになった、ダウナー牛が屠畜解体ルートに紛れ込んでいるということを、この担保という言葉で防げるかということをお尋ねさせていただきたいと思います。

中川国務大臣 このOIGレポートの調査期間というのは、たしかおととしの十月から去年の九月までの一年間ということでございました。

 そして、御承知のように、食品安全委員会の御答申をいただき、衛生条件に基づいてアメリカがEVプログラムというものをつくって、事前に案はできておりましたけれども、正式に日本の十二月八日の答申を踏まえて、そしてEVプログラムをつくって、それをチェックして十二月十二日に再開決定をしたわけでございまして、その以降、日本向けの食肉処理施設が認定され、そして日本向けに出されているわけでございます。

 出される条件というのは、御承知だと思いますけれども、二十カ月以下であること、それがきちっとチェックされること、特定危険部位が除去されていること、そしてまた、日本向けの肉その他がきちっと分別管理されていることといった幾つかの条件があるわけでございまして、その条件が守られているという範囲におきましては、先ほどのOIGレポートの例のような、日本にとっての、入れてはならない、また、日本の食のマーケット、流通の中に入り込まないということ、逆に言うと、入り込むリスクは極めて少ないというふうに理解をしております。

川内委員 長々と御説明をいただいたんですが、最後の部分、ダウナー牛が日本向けの屠畜解体ルートに入り込むリスクは極めて少ないと。しかし、入り込む可能性はある、ダウナー牛が入り込む可能性はあるということでよろしいでしょうか。確認させてください。

中川国務大臣 食品安全委員会の答申も、EVプログラムがきちっとそのとおりにやられているのであれば日米のリスクの差は非常に小さいという御答申をいただいているわけでございまして、先ほどの、例えば交差汚染の問題でありますとか、いろいろな可能性も、あくまでもリスクをできるだけ小さくしようということで、OIEの基準、アメリカの基準、それからヨーロッパの基準、日本の基準、それぞれ違うわけでありますけれども、多分、主な国の中では日本が一番厳しい基準で今運用していると思いますが、その基準に照らしても、リスクの差は非常に小さいということになるわけであります。

川内委員 いや、中川大臣、私が聞いているのは、OIGで指摘をされている、ダウナー牛が屠畜解体ルートに入っていると。本来は入らないんですよ。本来は、法令では、ダウナー牛、ハイリスク牛というのは屠畜解体ルートには入らないことになっている。しかし、それが脱法なのか違法なのかわかりませんが、とにかくリスク牛が屠畜解体ルートに入っている。それは日本向けのものであってもダウナー牛が入る可能性を示しているということですねということを確認しているんです。

中川国務大臣 ですから、おととしの十月から九月までの調査の結果、OIGが発見した出来事が指摘されているわけでありますけれども、その後の日本のシステム、つまり、リスク評価をしていただいた食品安全委員会の答申、それから、それに基づくEVプログラムというものでアメリカの農場あるいはまた加工施設に入ってくる段階では、EVプログラムにのっとってやっていれば、入ってくる可能性は極めて低い。

 逆に言うと、じゃ一〇〇%かと言われますと、一〇〇%ですと、またこれ断言しないと難しいことになりますけれども、とにかく、日本のシステムに入ってくるところで、仮にそのOIGのレポートにあるような牛が日本に入ってこようとしても、入ってくるとは思えないんですけれども、二十カ月以下ですから。でも、何らかのルートで日本向けのラインに仮に入ったとしても、EVプログラムにのっとってやれば、そこで遮断されるというふうに理解をしております。

川内委員 いや、ダウナー牛が屠畜解体ルートに入るというのは、EVプログラムとは無関係です。きのう私に説明したとおり大臣にちゃんと説明しなきゃだめですよ、事務局は。

 ダウナー牛は屠畜解体ルートに入る可能性があるんですよ。可能性があるということを言わなければ議論にならないんですよ。もう一回、大臣、答えてください。

中川国務大臣 どうも失礼しました。

 川内委員も御承知の上での御質問だと思いますが、ダウナーイコールBSE感染ではない。したがって、OIGレポートでも、しかし、たしかレポートに書いてあると思いますが、けがをしてダウナーになった牛も入っちゃいけないというふうに書いてありますね。でも入っていたから、ダウナーが入っていたという意味でAPHISのやり方がおかしいという指摘があるわけでございます。

 いずれにいたしましても、このダウナーという意味でいえば、これは日本向けの食肉のラインに向かってくる可能性はありますけれども、しかし、EVプログラムの中で、これはその段階でまたスクリーニングされるわけでございますから、そのリスクはまた極めて低くなるというふうに理解をしております。

川内委員 やっとお認めになられたわけでございますが、寺田委員長、食品安全委員会プリオン専門調査会は、ダウナー牛が屠畜解体ルートに紛れ込んでいるということを評価の前提にしていましたか。

寺田参考人 評価の前提にしておりました。

 それで、一般的に、先生御存じのように……(川内委員「どこに書いてありますか」と呼ぶ)いや、議論をしたかという話ですから、議論はしたということです。書いてある文書……(川内委員「だから、文書のどこに」と呼ぶ)いや、そこには書いていないです。文書には書いてありません。

大島委員長 川内さん、答えてから、また手を挙げて質問してください。

寺田参考人 文書には書いていないですけれども、中では議論いたしました。ダウナーのこと、あるいはそれの向こうの、それはサーベイランスにかかわる問題ですから、その面で検討いたしました。ダウナーだけをサーベイランスするのはおかしいではないか、そういう意味でやりました。

川内委員 いやいや、食品安全委員会の委員長とも思えない御答弁ですね。

 寺田委員長、食品安全委員会の答申の中のどこにダウナー牛が紛れ込んでいる可能性があるということを評価していますか。食品安全委員会の成果物というのは、議論じゃないです、食品安全委員会の答申が食品安全委員会の成果物じゃないですか。その成果物の中に書いていないことを、あなたはいかにも答申の中にそのことが盛り込まれているというようなことを御発言になられたが、それでいいんですか。

寺田参考人 答申の中に書いてあったかどうかということで、そういうふうに質問でございましたら、なかったということになります。そのとおりです。

川内委員 いや、そもそも、この食品安全委員会のプリオン専門調査会の議論は、特定危険部位が完全に除去されている、あるいは二十カ月齢以下であるというこの輸入条件、輸出条件が完全に遵守をされればというもとでの評価でしょう。だから、米国で、法令違反なんですよ、法令に反して、法令ではダウナー牛は屠畜解体ルートに入らないんですから。それが紛れ込んでいるということが、このOIGレポートに書いてある。

 もちろん、先ほど中川大臣がおっしゃられたように、ダウナー牛がBSE牛なんということは私は一言も言っていない。ハイリスク牛だというふうに、だから申し上げているわけです。

 寺田委員長、いいですか。食品安全委員会の答申は、管理措置が法令どおりすべて遵守されているということを前提にした評価でしょう。どうですか。

寺田参考人 答申書にきちっと書いてありますように、そのとおりです。

川内委員 そうすると、先ほど中川農水大臣が、ダウナー牛が日本向けの屠畜解体ルートに仕向けられていたとしても、そのリスクは極めて小さいというふうにおっしゃられました。リスクは極めて小さいかどうかは、農水大臣が判断することではない。それはリスク評価ですからね。リスクを判断するのは、食品安全委員会が判断をすることであります。

 そうすると、食品安全委員会の寺田委員長、先ほど中川農水大臣は今回のOIGレポートをきちんと訳をして食品安全委員会に提示をするというふうにおっしゃられた。先ほど御紹介を申し上げた吉川プリオン専門調査会座長は、同じく通信社のインタビューに対してこのようにおっしゃっていらっしゃる。仮説に基づいて評価しているため遵守状況の報告を政府に義務づけている、データが集まったら専門調査会として再評価したいと。要するに、諮問を受けなくても、今回の一連の経緯についてみずから評価をしたいというふうにおっしゃっていらっしゃいます。寺田委員長として、この吉川座長の御発言に対してオーソライズされますか。

寺田参考人 プリオン専門調査会の座長であります吉川先生の細かいお話の内容は知りませんが、それはあくまでも吉川先生の個人的な御意見だと思います。

 御質問のところの再評価をするかということでございますが、私どもは、評価書、答申を出しまして、私どもの委員会としての役割はそれをきちっとフォローアップする、そういう形の上で、管理官庁から、アメリカの新しい管理方式、そういうことを含めましてどういう条件のもとに再輸入をするのかということをきちっと聞いていきたいと思います。そういうことです。

川内委員 随分消極的な御答弁であるというふうに思うのです。食品安全基本法に定められた食品安全委員会の役割に関して申し上げれば、OIGのレポートではサーベイランスが極めて不十分であるというふうに書いてございます。そして、米国では、サーベイランスの予算を来年度から大幅に削減する、要するにサーベイランスを縮小すると言っているわけですね。しかし、食品安全委員会の答申の中では、サーベイランスの拡大が必要だというふうに書いてございます。

 今明らかになったように、ダウナー牛についての問題もある、SRMの除去についても極めて不十分であるということがこのOIGのレポートに書いてあります。法令が守られていないということが書いてあるわけです。

 先ほど寺田委員長がおっしゃられたように、法令が遵守されることを前提に食品安全委員会は評価しましたというふうにおっしゃられているわけです。しかし、今私が申し上げてきたとおり、OIGレポートではいろいろな部分で法令が守られていないということが明らかになり、サーベイランスも不十分であるということが明らかになった。これは吉川座長がおっしゃられるように、みずから評価を、私はすべきだと思いますが、しかし、みずから評価をするとここで言えないというのであれば、せめて食品安全委員会のもう一つの機能である調査、調査審議をするということぐらいはしっかりおっしゃっていただかなければならない。このOIGレポートも出たわけですからね。新たなフェーズに入っているわけですから、このBSE問題というのは。

 松田大臣、どうですか。農水省、厚労省の言うとおりやりますと言うかどうかです。

松田国務大臣 OIGの、向こうの農務省の中の、先ほど先生がおっしゃったとおり別の部分の監査であります。まず、米国農務省がこれを受けてどういうふうに対応なさるのか、私どもも非常に注意深く見守っております。

 御案内のとおり、農務省が、中川農林大臣初め皆さんおっしゃっておられるように、こちらからおっしゃっていることにしっかり対応していただくことが、まさに私どもの評価の前提になっております。その点が十分守られることが、この評価がそのままであっていい前提であります。したがいまして、そこのところを、先ほど委員長もおっしゃっておられましたけれども、私どもとしては、実に注意深く見守ってまいります。

川内委員 大臣、何か重々しく答弁されましたけれども、何もやらないと言っているわけですよ、何もやらないと。実に注意深く見守ってまいります、何もやらないと言っているわけですよ。

 あなた、それで大臣としての役目が果たせるんですか、食品安全担当大臣としての。せめて、OIGレポートをいただいてしっかり分析しますとか、そのぐらい言いなさいよ。何を言っているんですか。大臣でしょう。

大島委員長 松田大臣、しっかりとお答えしてください。

松田国務大臣 大臣として答弁を申し上げておるわけであります。

 今の段階においては、これからやっていただくことがたくさんあります、それぞれの部署において。それを今の段階の私は注意深く見守ること、これが私の最大の任務だと思っております。

 私は、何もやらないと言っているわけではありません。ですから、評価を担当していただく食品安全委員会の活動をしっかり見守り、全体をしっかり見ておるのが私の今の立場でございまして、まさに私がやるべきことを素直に、率直に申し上げておるわけでございます。

川内委員 総理、情けないですよ、僕は。能動的なアクションを何かされますかということをお聞きしているわけですね。食品安全担当大臣あるいは食品安全委員会として、今回のこのOIGレポートを受けて。

 なぜかならば、食品安全委員会の答申は、法令遵守が前提のもとでの評価であった。しかし、OIGレポートでは、法令が遵守されていないという数々の事例が明らかになっている。したがって、評価の前提が崩れているんじゃないですかということを申し上げているわけです。

 その上で、食品安全担当大臣あるいは食品安全委員会として何をされますかということを聞いているんですが、注意深く見守りますと。それは、注意深く見守るというのは何もしないという意味であって、もう大臣から何か期待できる答弁はないので、どうぞおかけいただいて、ゆっくりお休みください。見守ってください。それこそ質疑を見守ってください。

 あと時間もそろそろ、大変残念ですよ。私は、この重大な、OIGレポートというのは私は重要なレポートだと思いますからね。このレポートをしっかり精査をして、それは、農水省、厚労省というのは管理官庁としてそれぞれやるべき仕事があるし、食品安全委員会あるいは食品安全担当大臣としてはやるべきことがあるわけですよ。そのやるべきことは何ですかと聞いたわけです。それを、見守りますというのが食品安全担当大臣の答弁だというのは、私は甚だ残念、国民の皆さんに本当に申しわけないという思いでございます。

 最後に、事前調査問題、やはりこれをお聞きしなければならないわけでございます。

 十二月十二日に輸入再開決定が行われた。しかし、私が聞き及ぶところによると、農水省の担当の方からお聞きをしたんですが、その随分前から、米国内の日本向けの食肉加工処理施設では施設認定の手続が始まっていたというふうに説明を受けました。どのくらいの時期にその施設認定の手続が始まったのかということをお答えいただきたいというふうに思います。

中川国務大臣 輸出再開決定が行われたのは十二月十二日でございますが、いわゆるEVプログラムの案というものは既に五月ぐらいにアメリカの中で作成されておりまして、これは諮問をいたしました食品安全委員会にも、その案を案として提出させていただいております。

 したがいまして、アメリカの日本向けに輸出をしたい食肉処理業者は、その案を前提にして、あくまでもこれは停止条件つきでありますけれども、日本向けの認定をとるための準備を進めていたということでございます。

川内委員 いや、その申請がいつごろ始まったのかということをお尋ねしているんです。

 十二月十二日に十三施設、十二月十三日に十施設でしたか、どんどん認定されているわけですね、十二日に輸入再開決定されて。それで荷物がすぐ来たという状況は、もう私が説明するまでもないわけですが、十二月十二日に日本の政府が正式に輸入再開決定する前に、どのくらい前にアメリカでは具体的な施設認定のための動きが始まっていたんですかということをお聞きしているんです。

中川国務大臣 今、一月二十日のあの事件を踏まえて、このEVプログラムがなぜ守られなかったのか、再発防止のために何ができるのかということをアメリカ側が徹底調査していることを日本としては待っているところでございますが、そういう過程におきまして、一連の調査の中にこういうものが入っているかいないかというものを我々は待っているわけでありますが、一般論といたしまして、その調査内容が不十分であれば、我々としては不十分であるということになりますので、これについて、アメリカ側がいつから実質的に施設の認定の申請をしたかということについては、今後確認しなければいけない状況だというふうに思っております。

大島委員長 時間です。

川内委員 終わらせていただきますが、いつごろ申請が始まったかさえ、現段階で農水省は把握していないと言ったんですからね。それで日本の政府にミスがなかったなんて、総理、私はちょっとどうかなと。まだこの問題は、委員長、さらに私やらせていただきたいと思っていますので、よろしくお願いを申し上げて、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

大島委員長 これにて川内君の質疑は終了いたしました。

 次に、古川元久君。

古川(元)委員 民主党の古川元久でございます。

 私は、今国会の大きな焦点の一つでございます医療制度改革の関連で、きょうは特にがん対策についてお伺いをしたいと思います。

 その大前提といたしまして、この国会に政府の方で提案をされようとしております医療制度改革、その中心は、今後増大すると見込まれる医療費の抑制にあるというふうに感じておりますけれども、政府としてどういう形で抑制していくのか、この基本的考え方について最初にお伺いをしたいと思います。

川崎国務大臣 御指摘いただきましたように、今、医療費は給付で約二十八兆円でございます。これが、人口構造の大きな変化、七十五歳以上のお年寄りで約四割、十一兆円の医療費が使われておりますけれども、俗に言う団塊の世代の我々が高齢者というときになりますと約五割が高齢者のための医療になるだろう、したがって相当な金額に上がってくるだろうという一つの認識。

 今、抑制という表現を使われましたが、私どもは適正化という表現を使わせていただいております。中長期的には、やはり予防の問題と入院の問題であろう。特に、欧米に比べて我が国の入院日数は大変長うございます。これを適正化していく。そのためには、国と都道府県で医療の適正計画をしっかり書きながら、県もその一つとなっていただいて推進をするというのが一つでございます。

 それからもう一つは、短期的には、今回の法案の中には、高齢者の患者負担の見直し、食費、居住費の負担の見直し等の公的保険給付の内容、範囲の見直し、それから診療報酬、三・一六%のマイナス改定を行うということで考えさせていただいております。

古川(元)委員 今、大臣の方から医療費の適正化というお話がありましたが、どうもお話を聞いていると、政府の考えているのは、要するに政府の視点で、医療というのは公的保険で賄われておりますので、そちらから医療にいわば枠をはめて、何とか政府の視点から財政的に賄えるようにというそこの視点が優先しているような気がいたすのですが、私は、医療というものは、国民の健康、そして最終的には命にかかわる問題ですから、国民の視点に立って、国民がどのような医療を求めているのか、まずそこが大前提にあって、その視点から、ではそこで、どれくらいの負担、どれくらいの費用をかけてもいいのか、そういう視点から考えなければいけないというふうに思っております。

 私ども民主党は、政府・与党に対して、私どもとしても医療制度改革の考え方を今まとめておりますけれども、我々は、国民の視点に立って、国民の立場に立って考えれば、国民が求めているのは、医療は、安心できて、納得できて、安全である、安全と納得と安心。その視点からきちんと医療制度、安心できるもの、納得できるもの、そして安全なものをつくり上げて、ではそこにかかる費用をどういう形で賄っていくのか、そうしたことから考えていかなければいけないのではないか。当然、医療の無駄や過剰、そういうものは徹底的に削っていかなければなりませんけれども、国民の視点から医療のあり方を考えるべきだろう。

 そういう視点から考えますと、今、予防と入院と、中心のところを言われましたけれども、まず国民にとって一番好ましいのは、病気にかからないことですね。だれも病気にかかりたい人はいないはずであります。病気にかからない、健康に過ごすことができれば、PPK、ぴんぴんころりなんという言葉もありますけれども、医者にかからないで、気がついたときには天国に行けている、そんな人生が送れれば、これに一番こしたことはないわけであります。

 では、病気にかからないようにするためには、やはり予防が大事なわけですね。特に、今後増加が予想されます生活習慣病、こういうものは常日ごろの生活習慣というものをきちんと変えていったりしないと、今のままでは、多分、そこに座っていらっしゃる閣僚の皆さんも、そして私も含めて、ここの部屋にいる人たちはかなり生活習慣病にかかりやすい生活を送っているんじゃないか。大体、そういう状況を放置しておいて、そこできちんと手当てすることなくして、とにかく病気にかかったところで抑えようとしても、それは手順としては順序が逆ではないか。まずは予防のところに徹底的に全力を挙げる。病気にならないためにはどうしたらいいかということを考えるべきだ。そのことが医療制度改革のまず一番頭に来なければいけない。

 その次に、国民の視点で考えればどうか。幾らいろいろと気にしていても、それは病気になることもある。インフルエンザなどは、やはり気をつけていたってかかることはあるわけであります。では、病気にかかったときにどうするのか。早期に発見をして早期に治療すれば、当然、軽いうちに治せば早く治るし、また結果的に医療費も少なくて済むわけであります。そういう意味では、早期発見、早期治療、それができるような環境を整えることが極めて重要だ。国民の視点に立って医療制度のあり方というものを考えて構築していくということが大事じゃないかと思っています。

 早期発見、早期治療、予防を含めて、そういう視点が極めて重要な、大事なものとして、がんというものがあるんじゃないか。特に、総理も御存じのように、今や二人に一人はがんにかかって、三人に一人はがんで亡くなられるという状況で、がんに対する関心というものは極めて高いわけであります。まさにがんの場合には、発見がおくれれば、あるいは状況が悪ければ、あるいは適切な対処がされなければ命にかかわる問題。

 だからこそ政府も、昨年、がん対策本部を設けられたんじゃないかと思いますけれども、この立派なパンフレット、対がん戦略、「がんの罹患率と死亡率の激減を目指して」と書いてあるんですね。減少を目指してじゃないですよ、激減を目指す。ここに私は政府の意気込みが感じられるというか、あるなというふうには、これだけ見ると思うんですが、そういう認識で、総理、よろしいですか。

小泉内閣総理大臣 はい。

 がんが一番の死亡率になっておりますし、だれでもがん患者になり得る可能性があるわけですし、政府としても、今までも力を入れていましたけれども、さらに力を入れて、がん対策、いろいろな意味においてしっかりやっていこうということを込めてのその対策でもあります。

古川(元)委員 余りいつもの元気がなく、もっとこういうことに、国民が関心を持っていることですから、もっと勢いよく言っていただきたい、そういう思いでありますけれども、一応、総理としては認識はそう持っておるというふうに理解をさせていただきたいと思います。

 そこで、きょう、まさにがん治療の前線に立っておられる国立がんセンターの垣添総長にも、お忙しい中、おいでをいただいております。

 先日、総長のところへお伺いして、いろいろとお話を聞かせていただきました。がんセンターに訪れる患者さんの状況を見ると、やはりがんについては、予防やあるいは早期発見、早期治療というのが極めて重要だ。がんセンターにいらっしゃる患者さんの多くが初診の段階でかなりがんが進行していて、それがために結果的に命を失われる、そういう状況があるというお話を伺いましたけれども、それでよろしゅうございますね、総長。

垣添政府参考人 がんの一次予防、がんにならないということは、がん対策の出発点で、非常に重要かと思います。

 過去、第一次対がん十カ年総合戦略、第二次対がん十カ年総合戦略、約二十年にわたる、主に基礎研究の成果として、がんが、遺伝子の変化が蓄積した、積み重なった結果発生する細胞の病気であるということがわかってまいりまして、その遺伝子の変化を促す要因として私どもの生活習慣が深くかかわるということが言われておりますから、それに対して的確な研究をし、かつ、それを国民に敷衍するということは非常に重要であるというふうに認識しております。

古川(元)委員 がんセンターのもとで、まさに第三次対がん総合戦略研究事業として、生活習慣改善によるがん予防法の開発と評価、資料の一ページ目でございますけれども、やられたわけであります。そこの結論として、日本人における喫煙、飲酒とがんの関連を総括し、野菜、果物とがんとの関連について科学的証拠を整理した云々とあって、結果については、本研究班において開設したホームページで公開し、国民への還元を図ると。がんセンターとしてはこのレベルなのかもしれません。

 資料の二枚目には、その研究成果を踏まえて、肥満と大腸がんの関係、男性で肥満だと大腸がんになりやすいとか、多分、この情報がここのホームページで公開をされているという形だと思うんです。

 総長、がんセンターがこれを研究されて載せた、がんセンターとしてはそこまでのところなのか、あるいはもっと別のことをまさにこれを生かすためにやっておられるのか、あるいはこれをどう生かしていくか、どういう形でやっていったらいいかということについて、御意見、お考えがあればお聞かせいただきたいと思います。

垣添政府参考人 御指摘のように、私どもは、特に研究所を中心にしまして、がんの一次予防に役立つような発がん要因の解析とかがん予防因子の解析とか、そういうことを取りまとめてまいりました。

 その一つとして、例えば、過去、日本じゅうの十四万人くらいの住民に対して、さまざまな生活習慣、たばことか運動だとか食生活の情報をお聞きしまして、それから、その半数くらいの方からは血液サンプルを提供していただいて、十年以上追跡調査した。その結果として、今幾つか例を挙げられた、野菜や果物の話だとか、あるいは食塩の話だとか、たばこの話とかいう成果は上げてまいりました。

 これを、研究成果として取りまとめただけでなくて、国立がんセンターのホームページで提供している。これは月に大体百八十万件くらいのアクセスをいただいておりますから、私どもが提供する情報がこれで万全であるとはゆめゆめ思っておりませんけれども、少なくとも国民に非常に信頼していただいているということで、私どもは大変うれしく思っております。

 それから、それ以外に、じかにさまざまな人に対して働きかけるという意味で、講演会あるいはシンポジウムその他さまざまな取り組みをしております。もちろん、パンフレットをつくるとか、そういった情報提供をしております。

古川(元)委員 がんセンターとしてはやれることをやっておられると思うんですが、こういうものを見る人は、多分比較的まじめな生活習慣を送っている、自分の体を気にしているような人であって、逆に、こういうのを見ないような人、わざわざそういうことを心配しないような人の方が不摂生をやっているという可能性が高いと思うんですね。

 そういう意味では、相当これは政府の側から、行政の側から一般の人たちに働きかけていく、そして問題がある人は生活習慣を変えてもらう、そういうことをやっていかなきゃいけないと思うんですけれども、こういう研究事業をやられて、これを厚労大臣はどのように生かしていかれるんですか。

川崎国務大臣 先ほどの御指摘、大変厳しく受けとめております。私は八十四キロありまして、毎日二千五百歩ぐらいしか歩いていないものですから、やせることと一万歩歩くということをまずの大きな基本方針にしておりますけれども、なるべく努めてまいりたいと思っております。

 いずれにせよ、先ほど申し上げたように、国と都道府県の連携、これが今度の医療制度改革の基本でございます。後でも御質問があると思いますけれども、例えば検診の問題でも平成十年に市町村へ移譲している、そういった中でなかなかうまく進まない、これが実態でございます。

 そういった意味では、やはり都道府県が核になりながら、国と市町村を結びつけながらしっかりやっていかなきゃならない、そういう認識の中でこの予防の問題も取り組んでまいりたい、このように思っております。

古川(元)委員 取り組んでまいりたいと。「がんの有効な予防法の確立を目指す。」こうやって総合戦略にも書いてあるんですが、では、具体的にどうするのかというのが何も見えてきていないんですね。こういう研究はやっているかもしれませんけれども、では、実際に研究した結果をどうするのか。

 例えば、大臣が今御自分で言われましたけれども、どう具体的に体重を減らしていくのかということを何か考えないと、こうですよといっても、では、あしたから大臣が突然歩けるようになりますかということですよ、今の状況の中で。

 やはり、研究をしたら、そしてこういう事実が出てきたら、それにあわせてとるべき対策というものを具体的にとっていかないと、予防が大事だ、こういうことをやらなきゃいけない、研究してもその結果を、研究したところこういう関係が出ましたということで終わらせていたのでは、何の予防にもならないわけです。それを実際に国民の皆さん方に変えてもらうためにどうしたらいいのか、そういう具体的なことは考えていないんですか。あるいは、具体的なことは、この第三次対がん十カ年総合戦略が始まって本格的にことしから動くわけなんですけれども、予算もつけて、そこの中にないんですか。

川崎国務大臣 古川さんはやせているからそう簡単に言っていらっしゃいますけれども、民主党にもかなりいらっしゃいますので、そこのところは一人一人の自覚の話だろう。

 しかし、先ほど申し上げましたように、まず、基本的に検診という仕事を今市町村にゆだねております。一方で、国との一つのつながりの中、それから医療計画全体を変えていく中、やはり都道府県が核になりながらやっていくわけですから、国と都道府県が連携しながら、今お話しいただいたようなことをどこまで下に浸透させていくか。そして、一番浸透しやすいのは、検診という事業を通じながらやっていくというのが一番私は浸透しやすいだろうと考えております。

古川(元)委員 次につなげていただく御答弁をいただきましたから検診の話をしますけれども、我々民主党は、やはり予防をきちんとしていくためには、国民皆健診を実現して、すべての国民の皆さん方、きちんと検診を必要なときに受けるようにして、そのときに生活習慣も含めたアドバイスというものをしていけるような体制をつくっていくべきだというふうに思っているんです。

 今、大臣は、検診を通じて地方自治体とも協力してというふうに言われましたけれども、資料の三枚目を見ていただくと、がん検診の受診者及び受診率の各年度、平成六年からずっとあるんですが、ほとんど伸びていないんですね。胃がんなんかも平成六年一三・八%、十五年度でも一三・三%、肺がんは二〇・七が二三・七、大腸がんが一二・二、一八・一、子宮がんが一五・五が一五・三、乳がんが一二・〇が一二・九。検診を進めていこうという割には、検診を受けている割合というのは余りにも少な過ぎませんか。

 これは、先日総長も、私がお話を伺ったときに、がん検診、死亡率を減らそうというところまで検診をやろうと思ったら、少なくとも六〇%以上の人は検診を受けないと死亡率の低下にはつながらないというふうに言われましたけれども、どうですか、この点の検診の重要性と、どの点までやらなきゃいけないということについての御意見は。

垣添政府参考人 先ほど、がんの一次予防、がんにならないということをお話ししましたが、もう一つ、極めてがん予防の中で重要なことは、がんになったときに早く見つけて、がんになっても死なない、つまり、検診が非常に重要であるというふうに思っています。

 我が国のがん検診の一般的受診率としては、今御指摘のように一五%から二〇%ということで大変低い状況であり、また、検診の精度管理が必ずしも十分いっていないということは大変重大な課題であるというふうに認識しております。

 ただ、なぜ我が国でそういう状況かということをいろいろ考えますと、一つは、平成九年でしたか、がん検診が地方交付税化されたということもあるでしょうし、それから、何よりもやはり、住民といいましょうか国民の検診に対する認識が非常に私は重要だと考えています。

 現に、検診を受けてがんが見つかると怖いから受けないという方がたくさんおられまして、そういう方に対して私自身の経験をお話ししてアピールしているんですけれども、私、昨年の五月に、国立がんセンターの中にできましたがん予防・検診研究センターを体験受検しましたら、たまたま腎臓にがんが見つかりまして、早期発見ですから部分切除で済ませられましたので一週間で退院しまして、二週間目にはWHOの会議でジュネーブに出張してまいりました。

 つまり、がんだと言われても、早く見つければ非常に小さい治療で済み、かつ、すぐ元気になって社会復帰できるということを、一般の方に、私自身を例にして訴えております。こういった、人々の認識を変えていただく、これが検診の受診率を上げる非常に大きな要因ではないかというふうに思います。

 それから、あと、同じ人が毎年受検されるというのは、がんを発見する上では非常に効率がよくないということで、今厚生労働省はがん検診の見直しに関する検討会を進めております。私、座長を務めさせていただいておりますが、初年度、女性がんとしての乳がんと子宮頸がんの見直しをしまして、従来、毎年検診という形だったのを二年に一遍にしたということがあります。

 二年に一遍、別々な人が受けることによってだけでも、例えば二〇%が四〇%に、機械的な計算をすれば上がるということがありますので、そういったさまざまな組み合わせによって検診の受診率を上げていく、あるいは精度管理を進めていくということが必要ではないかというふうに考えております。

古川(元)委員 川崎大臣、やはりこの状況は、何か数値目標でもつくって検診率を上げるということをやらないといけないんじゃないですか。

 今の総長の、いろいろな問題点を指摘されましたけれども、そこについて大臣はどういう認識を持っていらっしゃいますか。

川崎国務大臣 私も資料を見まして、正直申し上げて、まず資料というものの正確性をもう少し期すようにと。

 基本的にはこれは市町村単位の話ですから、国保の人たちと、それから奥様方が対象になっています。それでは、会社関係でやっている人たち、また我々のような者たち、こういうものを総合的に、日本全体としてどのぐらいが検診しているか、正確なデータを出すようにと。これは市町村でやっているものだけを取り上げていますので、少しデータ的には不足している、ここをまずきちっとしなきゃならない。数値目標を挙げるにも、まず基本的なデータをもう少し把握しなきゃいかぬじゃないかということを、考え方としてまず第一に思っております。

 それから、二番目につきましては、今、女性のがん緊急対策、まず提言をもらったことをやっていこう。その中で、乳がんの検診、これはマンモグラフィーというのを使いますと検診がやりやすいということでこの予算づけをことしはさせていただいて、二十三億円の予算づけをいたしました。

 ただ、これも本来は地域医療機関で持っていただくというのが普通であろうと思いますけれども、なかなか進まないという中で、国の予算で整備をさせていただこう。ただ、市町村がどこまで御理解をいただいているかということになると、まだばらつきがある。これはばらつきがあることも間違いない。

 しかし、一方で、もう平成十年度に一般財源化されて、基本的には地方がこの問題について責任を負うんだよと決めたものを、また国が今度取り上げて、国がやるんだよというのも、これもおかしなものであろう。

 したがって、先ほどから申し上げているように都道府県がまず基本的に、今御提案いただいたように、がん検診の目標数字というものをやはり設定していただく、そういう方向づけを我々も努力していきたい、このように思います。

古川(元)委員 今大臣、基本的なデータが問題だと言われましたけれども、医療制度改革をこれから議論するに当たって我々がいつも困るのは、必要なデータがないんですよ。がんだって、きちんとしたがん登録が日本はされていないんです。がん対策をやる、これまで何回やってきたんですか。これは第三次ですよ。今まで何できちんとしたデータを、最低限どういう対策を打つか、それがどういう効果があるかを見るためにはきちんとデータをとるということが大事なわけじゃないですか。がん登録さえも今まで行われてこなかったわけです。

 ことしの予算を見ても、がん登録を推進するために目立った予算がついたようにも見えていませんし、今データの話を言われましたからちょっと横にそれたんですけれども、とにかくあらゆることに関して、これから医療制度改革を議論する中で、データをきちんと用意していただかないと建設的な議論ができないんです。

 やはりそこのところはしっかりとデータを、大臣からも指示して、またこれから我々もいろいろなデータを出していただくようにお願いしますけれども、きちんとデータに基づいた議論ができるようにそのデータを、必要であればそういうものを大至急収集する。例えばがん登録なんかは一気に、とにかくまずがん対策をこれからやろうというんだったら、一体だれがどんながんにかかってどういう経過をたどっているのかとか、どういう治療方法をやっているのか、そういうものをまず集めるところから始まらなきゃ、次になんか進まないはずなんです。ぜひそこのところをやっていただきたいと思います。

 また、今大臣は、検診は地方に任せた、地方の責任でやってもらいたいと言われましたけれども、がん対策、対策本部をつくって、国の責任で、これはさっきも言いましたよ、がんの罹患率と死亡率の激減を目指すと言っているんでしょう。地方だから地方が頑張ってくれ、それだけでいいんですか。

 しかも、がん検診に係る交付税の措置額、平成十七年度と平成十八年度、変わっていないんですね、竹中大臣。国は、地方にやれ、国としての国家戦略としてがん対策に取り組むといって対策本部もつくって、検診を進めなさい、でも、それは地方の責任ですから地方で金も工面してやってくださいと。それで本当に進むと大臣は思っているんですか。それに、地方がそういう財政状況にないのは竹中大臣もよくおわかりでしょう。

 しかし、国家戦略としてがん対策をやろう、その大事な部分として、早期発見の端緒になっていく検診を拡充していこうというんだったら、もうちょっと予算できちんとした措置がとられたっていいはずじゃないですか。竹中さん、どうですか。

竹中国務大臣 私、がん対策そのものはもちろん担当ではございませんけれども、今委員御指摘のように、特に検診の関係費について地方が重要だというのは御指摘のとおりだと思います。

 地方の事務としてこれは同化定着しているという判断のもとに、御指摘のありましたように、平成十年度に一般財源化をしました。言うまでもなく、その所要額については、普通交付税の基準財政需要額に算入をしているわけでございます。十年で制度が変わったわけですが、その前後で受診率が大きく変化したということはなかったというふうに認識しております。

 現在、約六百四十億円の需要額を見込んでいる。財政事情は大変厳しいですから、その中でのやりくりをしているわけでございますけれども、各地方団体、やはりその地域の実情に応じてがんの検診に取り組んでいただいているというふうに思います。

 検診の必要性というのは、これは今御指摘あったように、今後もさらに高まる。その意味で、国において積極的にPRしていくということが当然必要でありますし、その点は、今、川崎大臣のところで一生懸命いろいろなことをお考えだと存じます。

 我々総務省としては、国と地方がどのような役割分担のもとで受診率の向上に取り組むのがよいかというふうな点、これは所管省庁とぜひいろいろな形で相談に応じてまいりたいというふうに思っております。

古川(元)委員 これは、厚労大臣、総理も聞いていただきたいんですけれども、本当に国家として、先ほど総理が最初に言われたような大事なこととして考えているんだったら、そして早急にこの受診率を上げようというんだったら、今のあり方でいいのかどうか。とにかく、がんの罹患率、死亡率、激減を目指しているんでしょう、ちょっと減らそうとかいう発想じゃないんでしょう、国家として。やはりそれくらいのことを厚労大臣もこのがん対策本部の中で考えるべきじゃないですか。どうですか。

川崎国務大臣 さっきおしかりいただきましたけれども、実態を私もお話しさせていただいているんです。それで改善すると言っているんですよ、正直申し上げて。実態を隠して、やろうとは思っておりません。きちっとしたデータに基づいて対策を考えてやっていく。そして、先ほど申し上げたように、今度の医療制度改革を通していただいたら、都道府県と我々が一体になってやっていく。

 先ほど御指摘ありました、ある程度目標を持てと。私どもも、その目標を持ちますと同時に、一方で、それでは都道府県単位ごとで受診率がどうなっているんだというのも公表しながらやっていこう、こんな考え方をしております。

 いずれにせよ、数字をしっかり出しながらやっていきますので、どうぞ御協力のほど、お願い申し上げます。

古川(元)委員 これは大臣、もう去年、大々的に政府は打ち上げたわけですよ、がん対策本部。だから、当然そのときに先まで考えてやっておくべきであって、患者の皆さんから申したら、対策本部ができて一年たってようやくデータの整備から始めますというんじゃ、本当に一体どこまでやる気があるのかと。そういうがんの患者さんたちの気持ちに立ってみてくださいよ、命がかかっているんですから。本当に真剣にやってもらわないと、がんの患者さんたちはいたたまれませんよ。

 次に、これはがんの患者さんたちにとっても非常に今度の予算の中でも関心の高い、そして政府としても目玉のところの政策として出されている、がん情報ネットワークについてお伺いしたいと思います。

 資料の四ページ目のところに「がん情報提供ネットワークの概要(案)」というのがありますけれども、来年度予算の中で、がん対策情報センターを国立がんセンターに置く、これに十五億円ぐらいついているわけですね。

 ここは、この前も総長にお伺いしましたら、いろいろな情報を各地から集めて、あるいは最新の情報を世界からも集めて、そして各地のがん診療拠点病院に情報を流していく。個別のがん患者さんたちは国立がんセンターのこの情報センターでいろいろ相談を受けるんじゃなくて、その患者さんたちの相談を受けるのはそれぞれのがん診療拠点病院の相談支援センターだというお話を伺っています。

 では、この相談支援センター、まさに患者さんの窓口となるわけなんですけれども、この設置のために、大体、がん診療拠点病院一病院当たりどれくらいの予算がついているんですか。

川崎国務大臣 その前に、もうNHKで二回にわたりましてがんの問題を特集しまして、そのときに指摘されたから申し上げておきますけれども、がん拠点病院、四十都道府県が一つのネットワークとしてでき上がっておりますけれども、七県が未達成。十三年からやっておりますけれども、やっていない県がある。そういった意味では、がんセンターを頂点としながら情報ネットワークをつくり上げる、これが基本です。その中で、残念ながら七県が欠落している、ここを早くしなきゃならぬ。

 それから、もう一つの問題としまして、この拠点ネットワークに入っていただく中で、国立大学医学部の病院、これが入っていない県がございます。これは文部大臣にもお願いしまして、きちっと入ってくださいというネットワーク構築をする。

 四十七都道府県できちっとネットワーク構築ができますれば、先ほど御指摘のように、どのような患者がどういう形で医療を提供され、どういう形で治ったか、また残念な形になったか、そういうものをきちっとがんセンター全体がネットワークとして吸い上げられることになるだろうと思っております。

 そういう意味では、それをつくるために、今まで、予算が多いからこのネットワークに加わっていただくとか加わっていただかないという問題ではないと思うんですよ、正直言って、地方からいいまして一番大事な話ですから。

 そういう意味では、金額については、いろいろ御議論ありますけれども、二百万円でありましたところを七百万円、それから拠点につきましては千五百万円という予算をことしふやさせていただいたというのが実態でございます。

古川(元)委員 予算というのは、谷垣大臣も言っておられますけれども、きちんと、本当に必要なところにつけないと、薄く広く、何か砂漠に水をまくようにまいても、これは無駄遣いになっちゃいますよ。

 七百万というので、一体どこまでのことができるのか。静岡のがんセンターは、患者さんたちのいろいろながんにかかわる相談をするために四人のスタッフをつけて、予算八千万だというお話をこの前総長からもお伺いしましたけれども、現実に七百万という中で、それは病院がほかのものを削ってでもやれというふうなお話なのかもしれませんけれども、しかし、患者さんたちのニーズに合うようなものがそういう金額で本当に立ち上がるのか、できるのかどうか。

 それは地方がやらなきゃいけない、それぞれの病院がやるべき責任だというふうに言われるかもしれませんが、しかし、患者さんたちは、先ほどから申し上げておりますけれども、とにかくわらをもすがる思いで動いていらっしゃる。本当に正しい情報や安心できる情報、いろいろな相談に乗ってもらう、そういう場所を求めて、いらっしゃるわけです。そういう意味で、この情報センターには非常に期待をしておられる。

 せっかく国立がんセンターに情報が集まってくる。それはまだ七都道府県足らないところがある。早くきちんと手当てをしていただきたいと思いますけれども、しかし、それでも今、百三十五はもう拠点病院になっているわけですね。そこに情報が流されたところで、では、流された情報をもとにして、そこに相談にいらっしゃる患者さんやあるいは家族の皆さんにケアをする人、相手をする人、どうやってこの七百万、しかも七百万というのは、別にこの相談支援センターだけの話じゃないという話ですよね。

 これは総長、現実に現場で責任を持っていらっしゃる立場からして、一体これで本当に、総長もNHKの番組に二度も出られていろいろ患者さんたちのお話を伺って、その患者さんたちのこの情報センターにかける思い、それにこたえられるような体制ができると思いますか。どうですか。

垣添政府参考人 先ほど大臣がお答えになりましたように、国立がんセンターにがん対策情報センターを設けて、それから地域がん診療拠点病院あるいは都道府県の基幹病院に相談支援センターを設けて、私どもは、がんの一般的な情報、最新の情報を常に更新しながらそれを全国に提供していく。個々の地域がん診療拠点病院あるいは基幹病院では、相談支援センターを通じて、患者さんや家族あるいは国民のいろいろな希望される情報提供をするという体制を考えております。

 それで、これまで、先ほど大臣がお答えになりましたように、地域がん診療拠点病院に指定されても初年度二百万しかつかなかったのが、今度から七百万あるいは千五百万がつく。私どもは、これで十分とは思いませんけれども、少なくともこれが極めて重要な第一歩であるというふうに考えております。つまり、これは、がん医療の均てん化といいましょうか、病院間格差あるいは地域間格差を埋めていくための大事な施策というふうに考えますが、それを進めていく上で、とにかく前に一歩進めていかなくてはいけない、その極めて重要な第一歩であるというふうに私は考えております。

古川(元)委員 役所の立場やそういうところからすれば、限られた中で頑張っているんだ、わかってほしいと言うかもしれませんが、これこそ総理、総理が主導権をしっかりとって、予算にめり張りをつけて、一病院七百万、千五百万、それでも第一歩だと。もう少し、せめて拠点病院に二人や三人、ちゃんと相談できる人が配置できるぐらいの、ほかのところを削ってでもそういうめり張りをつけた予算を組むというのが本当の予算編成のあり方なんじゃないですか。一言あるならどうぞ。

川崎国務大臣 そこは先ほどから申し上げますとおり、地域拠点病院というのは地域のためですよ。知事さんがリーダーシップをとり、市町村がリーダーシップをとって基本的にはやるべきで、余り国から押しつけるべきではないだろう。しかし、何で七県が抜けているんだということで、私は押しつけろと言った、正直申し上げて。

 しかし、それでは、予算は全部国が面倒を見ますからやりましょうというのが今の時代でしょうか。私は違うと思いますよ。国と県が力を合わせてやるべきだ、きちっと。

古川(元)委員 総理にちょっと聞きたいですけれども、これ、国家戦略なんじゃないんですか、対がん戦略というのは。地方で頑張ってやってください、そういう話なら別ですよ。がん対策本部をつくって、国が先頭に立って、がんの罹患率と死亡率の激減を目指すというんでしょう。話は、これは国が主導権をとってやるといって決めたんじゃないですか。総理、どうですか。

小泉内閣総理大臣 国も地方も一般国民も協力してやらなきゃ、これは効果を発揮できません。生活習慣病も、お医者さんがあるから、薬があるから、これじゃ治りません。日ごろから、食生活、休養、運動、そういう、生活習慣病にかからないような注意を国民自身もしていただく。そして、国と地方が協力して、がん検診も大事ですよ、そういう国民運動というのが大事じゃないでしょうか。

 お金だけつければいい、これは簡単ですよ、財源持ってこいと。バランスを考えてやっているんですから。そういう中で、財政削減しろ削減しろという中でやっているんですから。社会保障関係、医療関係の予算は、黙っていたらどんどん伸びていきます。そういうバランスを見て重点をどこに置くかということをやっているんですから、その辺は、大蔵省にいたからよくおわかりでしょう。

古川(元)委員 今の総理の発言をがん患者が聞いたら嘆きますよ。重点をつけるというんだったら、まさにこういうがんのような、二人に一人ががんにかかって、三人に一人ががんで亡くなられるような状況の中で、国家を挙げてがん対策に取り組むというんだったら、そこに必要な予算をつけるのは、これこそ当たり前のことじゃないですか。そのことをきちんとやらないようでは、国家戦略だなんというふうにはこれはとても言えないと思いますよ。

 それで、少し時間が押してきていますから次の話に行きますけれども、がん専門のスタッフ、これはがん対策をやるときには、当然、今がんには、専門医を初め、そしてコメディカルと言われるような周辺の、専門医を支える人材というのがいなければ、機械だけ入れても、マンモグラフィーを整備したってマンモグラフィーの映像が読める技師がちゃんといなければ機能しないのと同じように、きちんとした人材育成が必要なわけです。がん医療の水準の均てん化のためにも、専門医のスタッフの養成というのは喫緊の課題だというふうに思っています。

 それで、資料の五枚目を見ていただくと、これは、がん専門医等のがん専門スタッフの育成のための今回ついている予算なんですけれども、要は、がんセンターで、それぞれの専門のスタッフを年二回、各分野の指導者を二十名ずつということになっているんですが、このスピードでやっていくと、地域で拠点病院ができても、そこに専門医やあるいはスタッフ、そういう人たちが十分に配置されないというような状況が起きてきますよ。

 これは、本来は数値目標でも立ててきちんとそれを達成していく、そのための環境をつくっていくべきだと思いますけれども、総長にちょっと伺いたいんですが、この年二十人というのは国立がんセンターの物理的な制約なのか、それとも、予算がこれだけしかつかないからこれだけの育成しかできないのか。これはどういう状況ですか。

垣添政府参考人 御指摘のように、人材育成というのは、がん医療の均てん化を進めていく上でかぎになる極めて重要な対策だというふうに思います。

 国立がんセンターでは、現在、中央病院と東病院、二つ病院がありますが、そちらで、医師に関して言えば、レジデントを年間に約三十六名、それから、がん専門修練医、別名チーフレジデントと言いますが、三年間勉強した後、さらに二年間勉強する専門的なコースを終える人が年間約三十名おります。

 これは全国の要望からすればまだまだ足りないわけですが、しかし、お金をつけさえすれば物事が動くということではなくて、人を育てるという意味では、がんの治療に係る手術療法、それから放射線治療、あるいは薬物療法、そういうところを支える画像診断とかあるいは病理診断とか、そういうところをぐるっと回って人を育てていくわけで、そのカリキュラムとか指導に当たる人材も総合的な対策が必要であるということになります。

 したがって、国立がんセンターでは、日本じゅうで要望されるすべてを国立がんセンター一施設で育成するということは到底不可能なことはよくおわかりだと思いますが、私どもは、全がん協、全国がん(成人病)センター協議会という組織がありますが、その中の基幹施設とか、あるいは都道府県の基幹施設、地域がん診療拠点病院の中の基幹施設とか一部の大学病院とか、そういうところとも連携しながら人を育てていくという努力をしていかなくてはいけないというふうに思っています。

 それから、今、年間二十名というお話がありましたが、多分、これは、平成十八年度から新たにスタートする、がん専門薬剤師、つまり薬剤師の仕事もがんに関してはかなり専門化してまいりましたので、そういう人たちを育てるためのレジデント制度がスタートするということを指しておられるかと思います。それに加えて、年に二回、研修を三カ月ずつ受け入れるということがありまして、そういうふうに専門的な薬剤師が育ってくれるというのは、がん医療を支える上で非常に重要であるというふうに思いますし、それから看護師も同じようにさまざまな、日本看護協会などが中心になって人を育てておりますので、コメディカルと医師がチームをつくって全体を底上げしていくという努力が必要であろうと思います。

古川(元)委員 厚労大臣、いろいろな物理的な制約も、それは国立がんセンターもあるんでしょう。これは数値目標でも立てて、それぞれの拠点病院とか何かでも育成して、いつまでに何人を育成して、それこそ拠点病院にちゃんと配置する、やはりそれくらいの数値目標を立ててきちんとこなしていく、それぐらいのことをやるべきじゃないかと思いますが、いかがですか、大臣。

川崎国務大臣 御指摘いただいていますように、がんセンター自体の機能を私自身はもう少し高めていく必要があるだろうと思っております。

 今は、まさに、医療をやっている、OJTで人を育てている、そしてそこででき上がった技術というものを地方の拠点病院に流していく、また、拠点病院から研修に来てもらってやっている、そういう体制でやっております。

 しかし、その機能というものがだんだん大きくなって、かつ、私は高くならないといけないと思うんです、欧米に比べて。我が国のまさにがん医療の中核でありますがんセンターが、より高い技術レベルを持っていく、指導者レベルを持っていくというところが一番大事だろうと思っていますので、まさに委員もそういう御指摘だろうと思って、しっかりやるように努力をいたします。

古川(元)委員 これは本当に、しっかりやるようにという言葉だけじゃなくて、具体的に成果が出ていかないといけないと思うんですね。

 がん対策推進本部の政府の体制をちょっと見ていただくと、政府を挙げてという割に、余りにこれは政府は力が入っていないんじゃないかと私は思うんですね、六ページを見ると。がん対策関係省庁連絡会議に入っているメンバーは厚労省と文科省と経済産業省で、地方が大事だと言いながら、総務省は入っていないんです。

 本来は、それこそがんについての啓発が必要だったら、私はかつて大蔵省にいたときに消費税の導入に携わりましたが、あのときは、全省庁、それこそ消費税の広報活動をやるので、私は宮内庁までパンフレットを持っていった覚えがありますけれども、それくらい、政府を挙げてやるというのは全省庁入って一生懸命やるものだと思うんですが、省庁連絡会議でこの三つの省庁しか入っていないというのでは、これは政府として本当にどこまでやる気があるのか。

 最初に総理は、政府としてこれは最重要な課題として取り組んでいる、そういう認識を示されたような気がしますけれども、実態を見たら、やっていることは全然、これは政府の中の一部分のところがやっている。厚労省の中にがん対策推進室をつくって、わずかな数名のメンバーで、その中では一生懸命やっているのかもしれませんが、とても、政府としてやっている、全体としてというような状況には見えないんですね。

 これは、総理、もう一回組織再編成して、総理のもとにきちんとしたがん対策の本部を置いて、全省庁、全政府を挙げて対策をすべきじゃないですか。いかがですか、総理。

小泉内閣総理大臣 何でも総理やれと言われちゃうんですよ。そうすると、私のところに全部本部長、名前だけ。今、私は逆に、整理しろと言っているんです。各省庁担当があるんだから、そこが責任を持って各省連携とればいいじゃないかと。何でも、総理やってください、議長になってください、官房長官、議長になってください、体が幾つあったって足りないですよ。

 だから、できるだけそういう形式にこだわらないで重点的にやって、何か必要があったら出ればいいじゃないか、何か必要があったら総務省を呼べばいいじゃないか。

 しかし、主要な役割というのは、病院、厚労省。がん治療、これは科学技術、今すごい進歩ですから、ちょっとした、DNAで、今まで、いい薬を打つと、がんの患部には効くんだけれども、いい細胞まで壊しちゃう。それがようやく最近は、いい細胞は壊さないで、本当にがんに侵されている部分だけを壊滅させちゃうというような、そういう薬、注射なりを開発する、これはやはり科学技術、文部科学省。そして経済産業省、これまた今、企業が医療機器、すばらしいものをつくっていますから、がん撲滅のためにはそういう機械も大事だろう。

 そういうことから、今、主要ながん対策については、厚労省、文科省、経済産業省、必要に応じて、地方のときには総務省を呼ぶ、そういう形でないと、何でも、総理やってくれ、官房長官だったら、会議に出るだけで、はい、一分、一分、一日過ぎて終わっちゃうんだよ。そんな会議ばかりやらないように実際の対策をやろうということで今整理しているところでありますので、何でも、形だけ、総理だけ持ってくればいいというものじゃないんです。

古川(元)委員 だったら、何で郵政民営化、竹中さんに任せなかったんですか。自分の好きなことだけ。

 これは、総理のがんに対する認識がその程度だということを今明らかにしたということですよ。何でもかんでもやれと言うんじゃない。がんは大事でしょう。これで国民の皆さんが、がんの撲滅、それで政府も対策本部として取り組む、その総理の決意と意気込みがなきゃ、がんの罹患率そして死亡率を激減させるなんということは簡単じゃないですよ。それを、今みたいに何でもかんでも自分にやらせてというような、そんな認識じゃ、本当にがん患者さんたち、いたたまれないと思うんですよね。

 総理、覚えていますか、がんセンターのところに御自分が国立がんセンターと書を書かれたの。覚えていますか、総理。

小泉内閣総理大臣 私は厚生大臣も経験していますし、がんセンターにもよく視察に行っておりますし、がんセンターという題字も書きましたし、おやじもがんで亡くなっていますし、親友もがんで亡くなっていますし、がんの恐ろしさも十分認識しているつもりであります。

古川(元)委員 であれば、もうちょっと、総理が先頭に立ってがんと闘うと。あのニクソン大統領だって、自分が、大統領が先頭に立ってキャンサーアクトという法律をつくって、そして、実際にアメリカでは、九〇年代に入っていろいろな、がんの罹患率とか死亡率、下がったりもしているわけですからね。それくらいのことを示してもいいんじゃないかと思うんです、意気込みと決意を。

 垣添総長、せっかくいらっしゃっていますから、ぜひ総理に、今の、がん、先頭に立ってやっていらっしゃる思いと、そして、これは本当に総理を先頭にして取り組まないといけない課題なんだと、最後にぜひ思いを述べてください。(小泉内閣総理大臣「がんセンターも改築したよな」と呼ぶ)

垣添政府参考人 今、総理もおっしゃいましたように、六年前ですか、がんセンター中央病院は十九階建ての全く新しいものになりましたし、患者さんのアメニティーは格段に向上しました。少なくとも、国立がんセンターを受診される方々にとっては、最善のがん医療、がんサービスを提供できるようになったというふうに思って、感謝しております。

 私は、日本のがん医療にさまざまな問題点があることは、課題があることはよく承知しておりますけれども、現在、第三次対がん十カ年総合戦略という非常に大きな研究費を加えた国家プロジェクトが動いているということ、それから、昨年五月、がん対策推進本部ができたということ、厚生労働省の中の局横断的な組織が一つの疾患に対してできたというのは、私が知る限り初めてではないかと思いますが、こういうものができたということは大変すばらしいことだというふうに思っています。それから、健康日本21というのも動いておりますし、がん検診の検討の結果として、例えば乳がん検診は視触診だけではだめだ、マンモグラフィーを整備しなくちゃいけないということで、機械が足らないということであればマンモグラフィーの機器の緊急整備が進む、こういうさまざまな成果といいましょうか動きというのは、私は大変ありがたいことだと思っております。

 それで、今後さらにこれを充実していく上で、特に臨床現場に身を置く立場としましては、これがさらに充実していけば大変ありがたいというふうに考えております。

古川(元)委員 総長、お忙しいところありがとうございました。ちょっと時間が超過してしまいましたけれども、どうぞ御退席ください。ありがとうございました。

 時間がもう本当になくなってしまって、いろいろ年金のお話を伺いたかったんですが、一つだけちょっと総理にお伺いしたいと思います。

 総理のトップダウン、これについては、これくらいがんも言ってくれればいいなとその当時は思いましたが、議員年金廃止というのが、与党の中では温存させる、そういう案が出てきたのを、総理の話で議員年金廃止に動くはずだったわけなんですけれども、現実に成立した法律は、名前は議員年金廃止法となっていますけれども、これは偽装の廃止だと言われたって仕方がないような、実際には受給資格のある方々は年金が受け取れるという法律になってしまっているわけなんです。我々が出した、本当に廃止する法案は否決されて、実際には議員年金を温存する法案が、法律が通ってしまった。

 この成立した法律の内容というのは、これは総理が指示した、議員年金を廃止しろ、その意向に沿ったものですか。

小泉内閣総理大臣 私は、議員年金廃止の方向でいい案を考えてくださいと言って、議員の皆さんが、議長が各党まとめた案を否定してつくり直したわけでしょう。そして、議員年金廃止すると法律上難しい点がある、既にもらっている人まで剥奪するのは無理だということで、選択できる余地を残した。議員年金を受け取りたい人は減額して受け取りなさい。議員年金要らない方は一時金、今まで払った金額、幾らか削減していただきなさい。だから、選択できるからいいと思いますよ。

 議員年金、嫌な人は、民主党みたいにだめだだめだという人は議員年金受け取らなくていいんですから。選択の余地を残している。私は、万機公論に決すべし。それは年金欲しいという人もたくさんいて、さんざん私のところにも苦情が来ましたけれども、今までもらっているのを剥奪するのはけしからぬといって多くの方から苦情が来ましたけれども、これは国会で決められたことでありますからといって御勘弁いただいているんですけれども、選択制です。議員年金受け取るのが嫌だったら受け取らない。だから、私は、国民に対してもよくその点は説明して御理解をいただく。これからは議員年金は廃止するということで、議員は選択できるんですから、その辺はよく国民も見ていただければいいと思います。

古川(元)委員 要は、では、これが総理の言う廃止なんですね。確認させていただきます。

小泉内閣総理大臣 廃止の方向で、私は、専門家の間、よく議員の皆さんで相談してくださいということで、廃止、実現できたんです。

古川(元)委員 小泉改革と言われるいろいろなものが、実は看板だけで中身がない、この象徴が私は議員年金の廃止じゃないかと思いますけれども、では、総理は、一切これは見直すつもりはない、これでいいと考えているというふうに理解してよろしいですね。最後に伺います。

小泉内閣総理大臣 せっかく四月から廃止するんですから、しばらくは見守って、後は後のこと、何年かたてば、見直しするというのはそのときの国会議員が考えるべき問題だと思います。

大島委員長 古川君、時間でございます。

古川(元)委員 極めて残念ですが、質問を終わります。ありがとうございました。

大島委員長 これにて古川君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 きょうは、米軍再編について質問をいたします。

 最初に、二月一日に参議院の予算委員会で我が党の井上哲士議員が、防衛施設庁が全国の防衛施設局にメールを送って米軍再編の反対決議を行わないように理解を求めて働きかけてほしいという問題があったわけですが、そのとき額賀長官は調べてみたいと答弁されております。調査の結果、どうでしたか。

    〔委員長退席、森(英)委員長代理着席〕

額賀国務大臣 赤嶺議員にお答えをいたします。

 御質問のメールの件につきましては、先般、参議院の予算委員会において井上議員から質問を受けまして、速やかに庁内で確認をし、二月の六日、井上議員事務所に御説明をしたところであります。

 本メールについては、十二月十三日に、防衛施設庁本庁の地元調整実施本部の担当者から、地元調整を直接担当する各防衛施設局の施設部長及び施設本庁の米軍再編問題の各担当者に対しまして、米軍再編に関する地元調整を行うに当たっての留意事項として、地元の理解と協力を得るためには地方議会の動向を把握することが肝要であるとの趣旨で、施設本庁に情報を提供することを求める旨のメールを送ったものと思っております。

 その趣旨というものは、地元調整をするのが担当である防衛施設庁としては、地方議会の皆さん方に理解をしていただいて、円満にこの再編問題が進行できるように配慮をした形で行ったものであって、御指摘のような、圧力をかけるつもりではなかったというふうに聞いております。

赤嶺委員 地方調整の中心が、米軍再編に反対の地方議会の決議を上げないように地方議員に理解を求めていきなさいと言うこと自身が驚くべきことであります。これは本当に圧力と言わざるを得ません。

 そこで、米軍再編について聞いていきます。

 去年の十月に「日米同盟 未来のための変革と再編」、これに両政府合意いたしました。地元自治体から大きな反対の声が起きているのは、御承知のとおりです。

 改めて総理に伺いますが、今回の再編の柱の一つは負担の軽減、こう言ってきました。これは間違いないですね。

小泉内閣総理大臣 日米安保条約の持つ意義の大きさをよく踏まえながら、抑止力を維持すると同時に、沖縄初め基地の負担の軽減を図るという趣旨でございます。

赤嶺委員 それでは、その大きな柱でありました負担の軽減、米軍再編を示されて、全国の自治体で、あるいは首長で、これが負担の軽減かという声も上がっているわけですが、普天間飛行場の問題について具体的に聞きます。

 きょうは、実は簡単な資料を持ってまいりました。お手元にも配付をされていると思いますが、普天間飛行場の問題というのは、今回が三回目の代替施設の移設先の問題になっています。最初が一九九六年のSACO合意、そして間に九九年の閣議決定があって、今度の2プラス2の共同文書です。

 そもそも、九六年のSACO合意のときは施設の長さは千五百メートル、今回は千八百メートルです。建設場所は海上で、今回は陸上を含む沿岸域であります。施設の性格ですが、SACO合意のときは撤去可能のヘリポートでした。そして、九九年の閣議決定のときには、撤去可能という思いが知事の十五年使用期限ということになり、閣議決定の中でも、知事のそういう思いを重く受けとめて日米交渉で交渉の議題にしていくということまで言っておりました。

 今回は恒久的な施設になっているわけですね。最初の案に比べても、閣議決定に比べても、大変な違いがあるわけです。こういうものが何で、総理、負担の軽減なんですか。

    〔森(英)委員長代理退席、委員長着席〕

額賀国務大臣 これは、議員御承知のとおり、橋本・モンデール会談で普天間の全面返還を目指すということを目標にして、浮体工事による撤去可能な基地をつくるということ、それを推進しようとしたところ、地元の皆さん方の強い要望等々もありまして、沿岸の埋立地になったわけでありますけれども、その基本計画が決まったのは平成十四年でございました。

 その後、ボーリング調査等々もしながら推進をしようとしたわけでございますけれども、結果的には、一昨年の夏にヘリの墜落事故があって、こういうことがあの普天間市のど真ん中で起これば住民を巻き込んでしまうので、大惨事になりかねない、そういう危機意識をお互いに共有をいたしまして、これでは、一日も早く普天間を返還するためには別のところにつくった方がいいのではないかということで、たまたま米軍再編の協議が行われていたものですから、日米協議の中で、今度のキャンプ・シュワブの沿岸案にこのヘリポート基地だけをつくるということになったわけであります。

 普天間基地は三つの機能を持っているわけであります。一つはヘリの訓練、もう一つは空中給油機の機能、もう一つは有事の際に滑走路を使うということであります。その際に、我々は稲嶺知事の思いも託しまして、普天間の機能を本土に分散しようということで、有事のときの滑走路は九州に持っていく、そしてまた給油機能は鹿屋地区に持っていく、そういう形で負担を軽減させていただいている。しかも、ヘリポート基地はこのシュワブにつくらせていただくということで、負担の軽減がなされております。

 と同時に、稲嶺知事も評価しておりますけれども、海兵隊七千人はグアムに移転をするとか、あるいは嘉手納以南の基地の土地は相当規模で返還をすることになっている、そういうことで大きな負担が軽減されると思っております。日本全体としても負担が軽減されます。

赤嶺委員 危険な普天間基地を宜野湾から名護市に移すのは、地元では危険の除去とは言わずに、がんの移転と言っているんですよ。だれが好んで県内にこんな危険な基地を持ってこいと望むものですか。しかも、だからそういう問題があるから、稲嶺知事は、将来は必ず撤去してくれるんですね、十五年使用期限と言った。今回は恒久化ですよ、つくったら動かさないんですよ。見ているように、がんの移転を期限つきでと言っていたのが、恒久化する。

 これでは、苦渋の選択だといってSACOの案に賛成してきた人たちまで、今みんな反対に回っているんですよ。長官、御存じでしょう。地元で賛成する人、だれもいない。これが負担の軽減だというなら、そんなことにならないですよ。だから、今沖縄で、SACOに賛成した人たちもSACOに反対した人たちも、島ぐるみになって、こんな恒久化につながる沿岸案には反対だというような広がりが起きているじゃないですか。

 そういう状態の中で、総理はこの普天間問題、どうするつもりですか。

額賀国務大臣 私は長官就任直後に、すぐ基地のある知事さんあるいはまた市町村長さんをお伺いしまして、率直にお話をいたしております。

 関係市町村長さん、それから知事さんの話は、私はこういうふうに受け取っております。日米同盟関係を中心にして日本の安全が守られている、安全が守られているから、日常の生活が安心して暮らせる、あるいはまた、日常の経済活動が、貿易もできるし製造業に励むこともできる、そういうことを前提にして評価をしております。ただ、基地のある町、基地のある地域においては、それは負担がありますから、これ以上の負担をふやさないように努力をしてほしいということが、私は地域住民の皆さん方の率直な考え方だと思います。

 したがって、私は、できるだけ抑止力を維持しながら国民の皆さん方の負担を軽減するためにどうしたらいいかということを、日夜考えているわけであります。普天間の皆さん、それから名護市の皆さん方にも率直に、日本の国の立場と地元の皆さん方の立場と、国全体の安全と地域の発展のことを考えながら、接点を求めて、誠意を持って御理解を得る努力をしたいというふうに思っております。

赤嶺委員 理解を求めるといっても、もう受忍限度を超えているんです。求めようがないんです。だから、SACOに賛成していても今度の米軍再編には反対だと、島ぐるみ、意見が一致しているんです。

 そこで、私は聞きたいんですが、今回の移設案は、世界的な米軍再編、とりわけ太平洋におけるアメリカ海兵隊の再編の一環に位置づけられたものだと思いますが、この点いかがですか。

額賀国務大臣 米軍再編の背景は、やはり九・一一のテロリストの問題、あるいはまた世界じゅうに広がっている大量破壊兵器の拡散、そういう新しい安全保障環境に対応して、米軍においても自分の国の軍事のあり方が再編されているということであります。

 日本においてもやはり、この日本を取り巻く周囲の大量破壊兵器の拡散、あるいはアジアあるいは世界に広がっているそういうテロの危機、そういうことに対応して、我が国の自衛隊もみずからの判断で主体的に自衛隊のあり方を再編しようと思っているわけでございます。

 我々は、そういう流れの中で日米同盟関係がどうあるべきかという大局観に立って、今度の米軍再編を行っていることでございます。

赤嶺委員 ですから沖縄の海兵隊、中でも普天間飛行場は、その中で位置づけられた作業になったわけですよね、米軍再編の中で。それはそういうことですね。

額賀国務大臣 米軍の海兵隊の削減については、我々は強く米軍に要望をいたしております。その結果、我々の意向が通じた結果、米軍は今度思いも寄らず七千人削減するというふうに言っているわけであります。

 今、非常に物の運ぶ能力が日進月歩の速さで進歩しております。一方で、言ってみれば精密誘導兵器とか、その軍事力が日ごとに変わっております。そういう流れの中で、やはり軍事作戦の展開あるいは軍事力というものが日ごとに変わっている中で海兵隊の移動というものが行われているものと思っております。

赤嶺委員 やはりアメリカの世界的再編の一環として、七千人というのも、アメリカ海兵隊のハワイ、沖縄、グアムをつなぐ能力の向上の一環としてやられている。

 それで、長官や総理に言っておきますけれども、県民の負担の軽減と言っていますけれども、七千人はほとんど司令部の要員ですよ。実戦部隊はそのまま残るんですよ。基地を抱えて、婦女暴行を体験し、放火を経験したある町の首長は何と言っているか。実戦部隊が残るなら、これはサファリパークだと。人殺しも起きれば、婦女暴行も起きれば、放火だってとまらない、何で実戦部隊を軽減しないのか、こういう意見が出るんですよ。単純に人数が減る、負担の軽減、こんな甘い理解は、まずそこから改めてほしいと思うんです。

 私は、今度の、SACOまでは少なくとも普天間飛行場の危険の除去だったんですよ。だから、人口が多いところよりは少ないところの方がいいでしょうと。しかし、移すにしても、それはいつまでも移すんじゃないんです、やはり基地の整理、縮小、撤去はやっていくんですよというぐらいは政府は言っていたんですよ。SACOの後、総理大臣の談話が出ましたけれども、この談話の中で当時の橋本大臣は、普天間飛行場の、地位協定の見直し及び米軍基地の整理縮小を求める今回の県民投票に込められた沖縄県民の願いを厳粛に受けとめますという、県民の願いを厳粛に受けとめていたんですよ。

 ところが、今回の米軍再編の共同文書は何て書いてあるか。海兵隊の能力の維持、そして本当に機動的な展開を求めるために沖縄に置かれなければいけない、こう言っているんですよ。恒久化じゃないですか。永久化じゃないですか。基地のない沖縄を願っている、そういう沖縄県民に頭越しで押しつけたものじゃないですか。こんなことを言い出した内閣というのは小泉内閣が初めてですよ。私はこういうことを厳しく言っておきたいと思うんです。

 それで次に、それでは沖縄の負担の軽減のために本土に移したらどうなるかという問題です。さっきも出ました、普天間の緊急使用の機能を築城に移しますだとか、嘉手納のF15を築城や新田原や百里や千歳に移していきます、百里にも移していくと言っている。その自治体に回って、では、F15を何機、どのぐらい、兵員はどのぐらいの規模を移すという説明をなさったんですか。

額賀国務大臣 この一月の十七日にワシントンで日米防衛首脳会談を開きまして、この中間報告について、詳細が決まっていない分野について率直に意見交換をしました。

 私のスタンスは、日本も努力するけれどもアメリカも譲るべきはきちっと譲ってもらわなければならない、その上で、この再編問題を成功させて同盟関係を堅持していくことが大事であるということであります。

 この問題、嘉手納の訓練の移転については、まだ詳細について決まっておりません。今週末、実務的な事務レベルの協議が行われますけれども、その席でこの問題を精力的に話し合ってもらいたいというふうに思っているところであります。

赤嶺委員 最初、長官は、防衛施設庁が全国の米軍再編担当の施設局に送ったメールは、地方議員に理解を求めてほしい、理解させて決議を上げないでほしいというメールだと言った。今、地方自治体に説明に行った長官自身が、アメリカから詳細については聞いていないから説明していない、していないんですよ。

 私も、築城や新田原の周辺市町村を回ってきたんです。長官来られて、詳しい説明はなかった、不安だと言っているわけですよ。説明できないものを、理解だけ最初に求めようとしている。この地域は、自衛隊の基地、この爆音に苦しめられながらも、しかしそれは国策だろうといって、首長の中には渋々我慢していたのもいる。しかし、今後どのぐらいの規模でどんな戦闘機が移ってくるかわからないのに、理解してほしいと言われている。

 小泉総理は、何か、本土が基地を引き受けないのは、その地元の人たちが嫌がっているのは問題だ、もっと沖縄の負担の軽減を図るために理解してほしいというようなことをおっしゃっているわけですけれども、こんなことで本土の自治体に基地を引き受けてくれというのが総理の立場ですか。

大島委員長 額賀防衛庁長官。(赤嶺委員「総理の立場を聞いているんですよ、総理の発言を聞いているんです」と呼ぶ)まず防衛庁長官から。

額賀国務大臣 まず、誤解があるから。

 今、嘉手納の訓練移転については、日米の間で詳細が決まっていないから説明をしていない。詳細が決まっていないのに説明できるわけないじゃないですか。

 だから、決まった問題は逐一これまでの過程で説明をしているわけです。いろいろ決まった問題については、ちゃんとそれぞれの自治体に行って説明をして、そして地元の意見も聞いているわけです。順を追って、誠意を持って、逐一逐一我々はそういう協議をしているということをまず理解していただきたいと思うんです。

小泉内閣総理大臣 この基地の難しさは、やはり日本の安全を確保するためには米軍の基地の存在であろうと認める人も反対があるし、もともと米軍の存在自体も認めないという人もいると承知しています。それと、この基地の問題でも、SACOでも、一たん合意しても必ず反対運動が起こるんです。自治体が合意しても反対者があって建設できなかった、あの辺野古沖の海上建設、そうですね。

 何やっても、基地がない方がいいに決まっています。そういうことの中で、この日本を守るための米軍との協力を円滑にして、抑止力を維持しながら、現在ある米軍基地の負担を、いかに地元の負担を軽減していくかという中でやっているのでありまして、なかなか賛成してくれるような状況にない。

 しかし、今後、具体的な要綱が決まり次第、防衛庁長官等、関係者、手分けしながら、各自治体の協力を少しでも得ることができるように、全力を挙げて、この抑止力を維持しながら基地の負担を軽減する。大変難しい問題を解決していかなきゃならないと思っておりまして、私は、基地の問題で沖縄の方々が大変苦労されている、そして、沖縄の負担を軽減するためにその沖縄の部分をほかの地域に移そうというと、その移す方々も大変反対が多いということを言っているのであって、国民の負担はどうでもいいなんということを私は一度も言ったことはありません。

大島委員長 赤嶺君。時間が参っておりますから。

赤嶺委員 沖縄の負担の軽減のためにF15を嘉手納から移すといいますが、嘉手納基地には自衛隊の航空機が来て共同訓練を始めますよね。総理、始めるんですよ。負担の軽減だといってF15を移した、航空自衛隊が嘉手納に来てやれば、負担の軽減になりませんでしょう。共同訓練は負担の軽減にならないと嘉手納町議会は決議を上げているんですよ。沖縄市議会は、たらい回しは国内でも県内でも負担の軽減にならない、撤去以外にないと言っているんですよ。

 この点、最後に総理の御意見を聞いて質問を終わりたいと思います。

大島委員長 総理、短目にお願いします。

小泉内閣総理大臣 抑止力の維持を図りながら負担を軽減していく、粘り強く各方面の理解と協力を得るように努力していかなきゃならない課題であります。

赤嶺委員 終わります。

大島委員長 これにて赤嶺君の質疑は終了いたしました。

 次に、辻元清美君。

辻元委員 社会民主党・市民連合の辻元清美です。

 四年ぶりに小泉総理大臣と議論をさせていただきます。ですから、きょうはヒートアップせずに冷静にやっていけたらいいなと思います。テーマは、小泉総理大臣の靖国参拝問題です。

 まず最初に、ちょっと事実関係を確認させていただきたいと思います。

 総理は、一九七二年、今から三十四年前に衆議院議員に当選されてから、厚生大臣に二回なっていらっしゃいます。そのとき、総理大臣になるまでには、八九年の四月と九七年の八月の二回、厚生大臣のときに靖国神社を参拝されております。

 そこでお聞きしたいんですけれども、二〇〇一年、要するに総理大臣になられるまで、厚生大臣のとき参拝された以外はどうされていたんでしょう。

小泉内閣総理大臣 よく地元の皆さんと靖国神社に参拝しておりましたし、何回か回数は覚えておりませんね。地元の皆さんが東京に来られる、靖国神社に行くということで、日にちも決まったわけではありませんし、毎年、いつ行くかも今は記憶は定かではありませんが、何回か行っております。

辻元委員 私は、総理が総裁選に出られたとき、はっきり覚えているんですけれども、八月十五日に靖国神社を参拝するということを公言されました。ですから、てっきり、それまでも毎年八月十五日に参拝されているのかなというように思っていたわけですけれども、そうではなかったわけですね。

小泉内閣総理大臣 八月十五日に毎年行っていたかどうかは覚えておりません。行かないときもあったでしょうし、行ったときもあったと思います。

辻元委員 はい、わかりました。

 さて、それを前提にしまして、次に、先日総理は、一月二十五日の参議院の本会議でこうおっしゃっています。アジア諸国において中国、韓国以外に私の靖国参拝を批判する国はどこにもない、どこの首相も参拝を批判したことはないと発言されているんですけれども、私はちょっと認識違いじゃないかなというふうに思います。

 例えば、昨年の五月の十八日、シンガポールのリー・シェンロン首相が訪日前記者会見されまして、こういうことをおっしゃっているんですね。「シンガポール人を含む多くの人にとって、靖国参拝は日本が戦時中に悪い事をしたという責任を受け入れていないことの表明、と受け取れる」と。これは日本でも報道されました。私は、これは批判と受けとめます。

 きょうの新聞でも、これも同じシンガポールの前首相、総理も御存じだと思いますけれども、ゴー・チョクトン、今は上級大臣が、アジア太平洋円卓会議で、小泉首相の参拝を中止するよう強く求めた、そして、この件に関しては日本は外交的に孤立しているという指摘がされたという報道もきょう出ておりました。

 私は、もしも総理が中国、韓国以外は批判していないじゃないかという御認識をお持ちであるんだったら、ちょっと国際情勢を読み誤っていらっしゃると思うんですが、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 それは、見誤っているのは批判している方々じゃないですかね。孤立なんか全然していません。

 また、現に、東南アジアの、シンガポールの首相とも会談しておりますが、批判したことは一度もありません、首脳は。しかし、国においては、日本だって靖国神社参拝を批判する方がたくさんいるんですから、それは外国にもおられるでしょう。しかし、各国の首脳と会談するたびに、靖国神社参拝、小泉首相はしてはいけないとか、したらもう二度と会談しないなんという首脳はいませんね。

辻元委員 私は、今の御答弁をお聞きしてちょっと悲しくなりました。やはりよくごらんになった方がいいと思います。そういう甘い状況に今日本はないと思うんですね。

 私は、次に、これは、総理は心の問題とおっしゃっていますので、ぜひ心の問題の迷路から抜けていただけないかというように思いながら、ちょっと議論させてほしいと思うんです。

 確かに、みんな心には自由があります。しかし、それを何か行動や発言に移したときには責任が生じますよね。自分の心に思ったことを発言して、そして、だれかが、それによって私はそれで差別を受けたとか、侮辱されたとか、名誉を毀損されたという反応が出てきたときに、いや、私は心のままに動いたでは、これでは一般的にも通用しません。

 ですから、心の中で私はこう思うという自由と、それを行動や発言に移したときには、責任やその行動や発言に対しての批判や評価、これが起こるのは当たり前であるし、それはもう心の自由から別次元の話になっていると思いますが、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 心の問題は大事じゃないですか。憲法十九条においても「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」と。

 靖国神社参拝、これは、戦没者に対する哀悼の念と、戦争反省を踏まえて、二度と日本は戦争を起こしてはいけないという、そういう気持ちで私は靖国神社に参拝する。しかも、日本の一施設ですよ。その日本の一施設に対して、よその国が、総理大臣がこの施設には行っちゃいけないとか、あの施設ならいいとか、それが本当に妥当なものだと思いますか。

 辻元議員、靖国神社参拝はいかぬと、辻元さんは、してはいけないと言う気持ちはわかりますよ。そうしたら、ほかの人の反応はどうか。中国、韓国がいいと言えば行ってもいいんですか。中国がいけないと言っているからいけないんですか。辻元さんの立場はどうなんですか。

辻元委員 きのうも同じようにおっしゃっていました。それは、政教分離の問題や、それから過去の日本の戦争の責任という問題で、私は、総理大臣は行くべきでないと。それは、日本みずからの立場として、そう思っております。

 ただ、今質問しましたのは、その心の問題と、例えば、今、ムハンマドの風刺画問題、これが世界じゅう大混乱を引き起こしていることは総理も御存じだと思うんですね。これは、十二枚の風刺画をめぐって、イスラムの人たちが非常に屈辱的だということで、世界じゅうにデモが広がっています。私、これも突き詰めていけば心の問題だと思います。ですから、心の問題を軽く扱うと大きな国際問題などに発展するということを、特に総理大臣であったり、それから、それは一個人の問題ではないと思うんです。

 実際に、EUでは、閣僚会議がおととい開かれました。そして、この問題について、EUと国連などが一緒に共同声明を出しまして、表現の自由の問題も絡んでいますが、表現の自由のためには、責任と行動、慎重な判断が必要であると。

 日本政府も、この反発している、これはたった十二枚の絵じゃないか、表現の自由じゃないかということに対して、イスラム教徒の間に生じている強い反発を十分理解すると。これはお互いの価値観とか、そしてさらに日本政府はこう言っています。懸念している、異なる信条や文化を有する人々との間での理解をしていかなきゃいけない。この異なる信条とか歴史観とか価値観というのは、心の問題なんです。

 ですから、お互いの外交、そして価値観や歴史でいろいろなトラブルがあったところほど、それぞれの心のぶつかり合いをいかに回避していくか、心と心のぶつかり合いをいかに折り合いをつけていくのかというのが私は政治の役割だと思うんですね。

 靖国の問題も、小泉総理個人の心の問題では片づけられない国際問題に発展していると思いますよ。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 それは、靖国神社に参拝して、ムハンマドと同じように、同列に論じられておりますが、私がどこを、中国を侮辱していますか、韓国を侮辱していますか。日中友好論者であり、日韓友好論者であり、首脳と会談したこともある。そして、友好関係を深めて、今さまざまな分野で交流が広がっている。貿易額も、今やアメリカを抜いて第一位になっている。相互依存関係はますます深まっている。

 そういう中にあって、私が靖国神社に参拝することを、ムハンマドと同じように、中国を侮辱している、韓国を侮辱しているととるんですか。そうじゃないですよ。これは心の問題じゃないですか。戦没者に対してどう思うのか。今日の平和というのは、我々今生きている人だけだというふうに考えるべきじゃないんですよ。とうとい命を犠牲にした方々の上に、亡くなった方々の上にまさに成り立っているんです。

 そういうときに、靖国神社で会おうと言って亡くなっていった人たち、こういう戦没者に対して、一年に一度ぐらいは敬意と感謝の誠をささげよう、二度と戦争をしてはいかぬという気持ちを持って参拝するのがなぜいけないんですか。これが私はわからない。

辻元委員 私は、その話は何回もお聞きした上で質問しております。

 今までの歴史の中でも、紛争とか対立、さまざまな理由がありました。その中でも、民族対立とか宗教対立、歴史的恩讐、いろいろなものがあるんですけれども、それを突き詰めていきますと、お互いの心の問題、価値観、歴史認識の違い、これが一つの大きな国際紛争につながっていったという、だからこそ政治の役割が必要だと思うんです。

 私は調べてみました、衆議院の調査室にお願いしまして、現在起こっている国際紛争、どういう性質のことが原因か。今、主に三十四を分析していただいたんですけれども、一つは民族対立、これは二十五。宗教、十五。民族や宗教の問題は、歴史的な、お互いに侵略された、されなかったということも関係しています。これは、民族や宗教という、一つの宗教心であったり心の価値観の対立の問題だと思います。そして、領土対立というのは三。資源は七なんですよ。

 ですから、総理、それぞれの歴史認識の違い、特に、過去の戦争で被害を受けた国とそして被害を与えた国、この間での心の問題というのを軽んじたらあかんと思います。

 実際に中国では、御存じですか、今でも、旧日本軍が放置した毒ガス、今も事故は起こっていますね。四十万発ぐらい放置していますよ。三・五万発ぐらいしか回収していません。去年もおととしも、子供たちが小川で遊んでいて被害に遭ったりとか、私は、戦後の傷がいえていない。お互いの傷がいえていない。それは心の問題ですよ。

 ですから、この心の問題が原因になって紛争などにつながっていくという認識をやはり私は総理大臣であるならばお持ちになるのがいいという観点からの指摘なんです。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 だからこそ、中国と協力しながら、かつての兵器の処理にしても環境にしても、経済の面においてもODAの面においても日本は協力してきたじゃないですか。今も協力しているじゃないですか。さまざまな分野で交流を広げているじゃないですか。

 そして、日本人として、辻元さん、日本人の心の問題というものを考えたことないんですか。(辻元委員「両方考えなきゃいけない、考えています。それは後から議論します」と呼ぶ)それを、心の問題を外国政府から言われて、精神の自由というものは、日本人も大事だし、中国人も大事です。(辻元委員「そうです」と呼ぶ)そうでしょう。日本の総理だって人間ですよ。心は自由ですよ。それを、では、中国がよいと言えば行っていいんですか、靖国神社に。中国がいいと言っても靖国神社に行っちゃいけないんですか。どっちなんですか。

辻元委員 きのうも言ってはりました。それしか言えないんでしょうか。私は、日本人の心の問題も、中国人も韓国人も大事です。私は、総理の、主体的に日本の総理大臣として過去の歴史認識もどう見るかということです。

 そこで、私は総理に提案をしたいと思うんです。

 総理はこうおっしゃっているわけです。今おっしゃったとおりですよ。「先の大戦における内外のすべての犠牲者に謹んで哀悼の意を表します。悲惨な戦争の教訓を風化させず、二度と戦火を交えることなく世界の平和と繁栄に貢献していく決意です。」と、総理大臣談話を先日も出されました。私、これを形につくっていくということは非常に、アジアの信頼構築だけじゃなくて、世界の平和に大事だと思うんです。

 そこで、具体的に提案したいことがあるんです。

 総理、沖縄に行かれたことあると思うんですけれども、沖縄には平和の礎というのがあります。礎と書いてイシジと読むんですが、それは、先ほど総理がおっしゃったとおり、沖縄戦で亡くなった日本人だけじゃなくて、アメリカ人も、そして台湾の人たちや朝鮮半島の人たちも一緒に哀悼の念を示そうという礎なんです。

 ここで、クリントン大統領がいらっしゃったときに、その日米激戦の地でこう演説されました。

 沖縄戦は最も悲劇な戦争でした。しかし、それを祈念してつくられたこの平和の礎は最も人道的なものです。なぜなら、ここではすべての悲しみがその存在を認められているからです。ほとんどの追悼碑はどちらか一方しか追悼していませんが、この礎は敵も味方も、そしてどちらの側にも立たなかった人々をも追悼しています。すなわち、この礎は、一つの戦争の慰霊碑という意味だけではなく、すべての戦争の悲劇の祈念碑であり、そのような破壊行為を二度と起こさせないようにするという私たち共通の責任を訴えているのです。

 私は、このクリントン大統領の演説を非常に感銘を持って受けとめました。要するに、軍人である、非軍人である関係なく、空襲で亡くなられた方、八十万です。四分の一は空襲で亡くなられているわけです。靖国神社には軍人だけです。私は、そういう国籍も問わずというような施設があるということは、日本にとっては世界に誇れることだと思います。

 そして、小泉総理大臣の先ほどの「すべての犠牲者に謹んで」というすばらしい言葉を刻み込んで、アジアとの信頼構築に一歩進んだという偉業をなし遂げていただきたいと思うんですが、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 それは、硫黄島にも、日本軍人だけの慰霊碑でなくて米軍兵士の慰霊碑もあり、一緒に慰霊行事をやっております。各地域に慰霊の碑なりさまざまな施設があると思いますが、今後、そういう問題についても検討してもいい課題ではないかなと思っております。

辻元委員 総理、未来に向かって二度と戦争をしない決意をされるとおっしゃっています。そして、先ほど、総理は硫黄島に行かれて、アメリカの死者そして日本の死者に哀悼の誠をささげられたことも、私、存じ上げております。そのことを盧武鉉大統領にお話しされたことも存じ上げているわけです。

 ですから、私は、日本として、やはりだれでも、アジアの人たちも含めて、戦闘員、非戦闘員を問わず死を悼むという慰霊碑の前で、日本の総理大臣とアジアの首脳たちが一緒に慰霊ができる、私、それがやはり未来に向けての慰霊であり、本当の意味での和解につながると思います。

 実際に、ドイツではこういうのがあります。戦争と暴力支配の犠牲者のためのドイツ国立中央追悼所というのを一九九三年につくりました。ここには、ドイツ人だけではなく、旧ソ連やポーランド、そしてユダヤ人を含む民間人、軍人、そしてさらにはナチに反対して殺された人々をも一緒に、死者の魂に哀悼の念をささげて将来への平和を誓い合おうという国立の追悼所をつくりました。

 私は、このような追悼所をつくることこそ、日本にとって今話し合われなければいけないことだとつくづく思うんです。もう一度、総理、どうですか、あと九月まで、それで、何かやめるとおっしゃっていますけれども、時間があります。きちっとその方向性をつけられたらいかがでしょうか。どうですか。

小泉内閣総理大臣 今後、それは検討していい課題だと思っていますが、かといって、靖国神社に参拝してはいけないということではないと思うのであります。

大島委員長 時間でございます。

辻元委員 総理、ぜひ、御自身の心の問題を言われるのなら、犠牲者たちの心の問題であったり、心を広く、深く持っていただくことを切にお願いして、質問を終わります。

大島委員長 これにて辻元君の質疑は終了いたしました。

 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党・日本・無所属の会の糸川正晃でございます。本日は、教育問題についてお尋ねいたしたいと思います。

 まず、小坂文部科学大臣にお尋ねしたいんですが、大臣に就任されましてもう三カ月たつわけでございますが、大臣は、今のこの教育の現状をどのように受けとめられ、また、今後どのように改革を進められていこうとされているのか、大臣のお考えをお尋ねしたいのです。

小坂国務大臣 糸川委員にお答え申し上げますが、我が国の教育は、やはり人材が国をつくり、世界の平和も維持していくわけでございますから、人づくり、教育というのは国家百年の大計と言われるとともに、国民みんなの関心事であろうと思っております。

 そういう中で、今日の教育の現状はどうかといいますと、戦後教育の中で、公共の心といいますか、奉仕する心とか、そういったものが薄れてきたんじゃないだろうかとか、あるいは思いやりが薄れてきたんじゃないだろうかとか、あるいは、学力が最近は低下してきて、国際的な比較の中で学力の問題が指摘をされてきたり、あるいは、義務教育のあり方というものについて、先生の質というものも問われるようなことも出てくる。

 こういった多くの教育に関する問題が出てきていることは、皆さんと同じように認識をいたしておりまして、そのためには、義務教育から始まって教育全体の見直し、教育基本法で決められた、その中でやってきた教育でありますけれども、今日の世界情勢、そして日本の二十一世紀の発展を考えるときに、心豊かでたくましい人材の育成ということが今求められているんではないか、そういう意味で、新たに教育全体の見直しを行う中で教育改革を進める必要がある、そういう認識を持っております。

糸川委員 教育基本法の第一条教育の目的というところで、「教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。」というふうにあるわけです。教育の目的に照らし、国は教育に対する責任をもっと自覚するべきだというふうに思っているんですが、義務教育はその中でもとりわけ重要だろうというふうに考えております。

 まさに義務教育の質の向上ということが、今、日本の未来を、将来を左右するのかなというふうに思っているわけですが、先ほど大臣答弁されましたが、我が国では今後どのように義務教育の質の向上をされるのか、また、大臣のその辺の御所見をお伺いするとともに、教育に対する国の責務についてどのように考えていらっしゃるのか、お答えいただけますでしょうか。

小坂国務大臣 義務教育は、一人一人の人格形成と国家社会の形成者の育成を担うものでありまして、その役割は非常に重いということにおいては論をまたないと思いますが、今後どのように義務教育の質の維持向上を図っていくのか、こういう御質問でございます。

 国が明確な戦略に基づいて目標を設定して、そのための確実な財源確保など基盤整備を行った上で、教育の実施面では、できる限り、市区町村、教育現場である学校、この権限と責任を拡大し、裁量権の拡大を図っていくことが必要であろうと思っております。

 教育の結果を検証するために学校評価の充実や全国的な学力調査を行うなど、今日の教育の成果がどのようなレベルにあるのかということをまずしっかり把握した上で、どこに問題点があるか、その問題点を把握して、それに対する対応をしていくことが必要だ、このように考えておりまして、その際には、教育現場の創意工夫を促し、習熟度別の指導を行う、あるいは学校評価などを通じて教育の質の向上を図り、また、教員免許というものも、ただ終身免許としてそれを与えるだけでなく、その教員の、今日的な課題にしっかり対応できる力を持っているかどうか、そういう意味では、教員そのものの評価をこれから加えていかなければならない。

 また、教育の現場から、社会を担う人材としての働く意欲を持った、みずから問題解決に当たれるような、そういうたくましい人材のために、中学校を中心とした五日間以上の職業体験を実施するなど、義務教育段階から各学校段階を通じて体験的なキャリア教育や職業教育を充実することによって勤労観、職業観を育成していく、そういう方向性を持って推進してまいりたい。

 このような意味で、今後とも、教育改革の重点行動計画というものを先ごろ発表いたしましたけれども、そういった目標を定め、段階的に進めてまいりたいと存じます。

糸川委員 今、財源の話があったのですけれども、今回、義務教育の財源保障のための義務教育費国庫負担金が、二分の一から三分の一に引き下げられたんですね。この残念な結果について、大臣の見解をお尋ねいたします。

小坂国務大臣 義務教育の財源保障のための義務教育費国庫負担の制度というのは、やはり、国が憲法の要請に基づいて、全国どこに生まれて育っても同じレベルの教育をしっかり受けられる、その基本となるものだと認識をいたしておりまして、中央教育審議会の答申をしっかり踏まえ、またその中で、三位一体改革の要請に基づいて地方の分権というものも推進する、その大変はざまにあって、私は、多くの方々の意見を慎重に聞いて、そして丁寧にその問題に取り組み、今御指摘もありましたが、最終的に国庫負担二分の一から三分の一へと引き下げを行ったわけでありますけれども、あくまでも、この義務教育費の国庫負担制度の根幹を維持する、国と地方においてその財源を一〇〇%保障するということを維持しつつも、また、先ほど申し上げたような、市区町村における教育現場の裁量権を拡大する、そういう方向性を持って結論を出した、このように私として判断をしたところでございまして、御理解を賜りたいと存じます。

糸川委員 いずれの改革も、その責任の所在というものを明らかにして、特に今、義務教育の話の中では地方ですとか市区町村の責任の話が出たのですけれども、都道府県とか国や学校、家庭、地域、そういうさまざまな責任を明確にして、それで取り組んでいただければなというふうに思います。

 先ほどから自主性をというようなことの話があったわけですけれども、そこで、将来何になりたいかとか、将来何をしたいかという意識というのが、これは学びの動機づけになるのかなというふうに思うのですけれども、ニート問題の根本的な解決策にもそういうことがなるのかなというふうに思っていまして、教育改革の中でも特に子供たちに、先ほど大臣が答弁されましたが、職業観それから就労意識というものを持たせる、そういう教育が最重要課題なのかなと。

 それで、近年、学校の中や自治体なんかで独自の取り組みを持ってさまざまな学習の工夫がされているというふうに思うのですが、例えばシミュレーション的な授業を導入されているところもあると思いますけれども、シミュレーションが、例えば株式の取引を疑似体験できるとか、そういうことは私は必要ないのじゃないかなと。これは正直、そんなお金を安易に、株式の取引というのは、私も投資顧問でしたから、非常に難しいのですが、安易に架空の体験をさせてしまうと、非常にそこはニートをさらに生み出す可能性もあるのかなと。

 ですから、総合的学習の時間を使ってそういうような取り組みをしている学校なんかには、特にまたそういう学びの方針というものですか、そういうところをまた注視していただければなというふうに思っています。そういうシミュレーション的なところじゃなくて、実際に教育や学校を離れて社会を実体験することというのが大事なのかなと思っていまして、学校教育の中にさまざまな体験活動を取り入れていただくことで学びも深まるというふうに考えます。

 そこで、小中学校の義務教育段階における職業観とか育成する部分で、就労意識について、どのように認識されて、どのように取り組まれるのか、大臣の答弁を求めます。

小坂国務大臣 ただいま糸川委員のおっしゃったように、株式の取引のようなシミュレーションは必要ないではないかと。

 私は、教育現場でいろいろなシミュレーションをやることは決して否定はするものではない、そういう意味ではないと思いますが、当然、そういう株式のシミュレーションをやる学校というのは、その前の段階で、汗をして働くことの意義とかそういったものを教えながら、あわせて、資本主義、そしてその社会の成り立ちについて説明をする意味で、理解しやすい例としてそういった体験をさせる。また、決して、その中で、イージーに、安易にお金というものは入ってくるものだ、そんな意識を植えつけるためにやっているものではないと思うわけでございますが、委員の御指摘の意味は、小中学校の段階から組織的、系統的にキャリア教育というものを体験的にさせるべきではないか。

 その御指摘のとおり、現在、全国四十八地域において、キャリア教育推進地域指定事業というものを実施いたしております。また、中学生から五日間以上の職場体験を行うキャリア・スタート・ウイークというものを推進いたしておりまして、これはことしの二月から、現在、全国の百三十八地域で実施するわけでございますが、こういった文部科学省独自の施策に加えまして、厚生労働省あるいは経済産業省と連携をしながら、省庁横断的なニート対策、そして勤労観の育成、こういったものに取り組んでいるところでございます。

糸川委員 この十八年度予算なんかは、フリーター、ニート対策では、三百六十三億円が厚生労働の方で予算要求されて、百二十九億円の方が文部科学省でこういう対策に対して使われる。私は、雇用される側だけの、一方、雇用側だけの予算であってもいけないですし、雇用側からのフリーターやニート対策だけではなくて、やはり学校教育の根幹の部分から対策をしていただくということが非常に重要なんじゃないかなというふうに思っています。

 特に、今、国会の見学なんか子供がいらっしゃいますけれども、ただ通り過ぎるだけじゃなくて、例えば、政治家がだれか一人持ち回りで案内したら絶対心に残る、そういうふうに思うんですね。そういうのも一つの教育なのかなというふうに思ったりもします。

 今までの質問を踏まえまして、もう時間もほとんどございませんので、総理に最後、教育の、総理は最後、先ほどから辻元議員もおっしゃられていましたが、九月に一応、一たん終わられるということですが、そこで、総理の集大成として、教育の現状と改革について御所見をお伺いしたいというふうに思います。

小泉内閣総理大臣 世界の中で就学率も極めて高い国になっている、文盲率も低い国になっている、外から見れば日本は教育熱心だなと高く評価されますけれども、実際、国内を見てみると、教育がおろそかにされているんじゃないか、今の子供の教育はなってないという批判を多く聞く昨今であります。

 ここまで日本が発展してきたのは教育を重視してきたからだと思っておりますし、これからも、企業は人なりといいますけれども、何事についても、人、人間の力、人材をいかに育成するかというのが極めて重要なことだと思っております。

 今、文科大臣がそれぞれ具体的な取り組みを示されましたけれども、子供の教育ということを考えると、一番大事なのはやはり大人じゃないかな、親じゃないかなと私は思っております。大人の姿を見て子供は育つわけでありますから、やはり子供というのは社会全体の宝だなということを念頭に、家族の力、家庭の力が弱っている昨今、核家族化の現状を踏まえますと、一家庭だけにその責任を負わせるのでなく、学校や家庭や地域全体が協力しながら人間教育充実に意を注ぐべきではないかな、不断の努力が大切だなと思っております。

糸川委員 教育基本法第一条の「自主的精神に充ちた」というところをよく重んじていただいて、改革を行っていただければというふうに思います。

 終わります。

大島委員長 これにて糸川君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして基本的質疑は終了いたしました。

 次回は、明九日午前九時から委員会を開会し、一般的質疑を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時六分散会


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