衆議院

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第5号 平成19年2月8日(木曜日)

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平成十九年二月八日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 金子 一義君

   理事 斉藤斗志二君 理事 実川 幸夫君

   理事 杉浦 正健君 理事 園田 博之君

   理事 萩山 教嚴君 理事 森  英介君

   理事 枝野 幸男君 理事 中川 正春君

   理事 赤松 正雄君

      井上 喜一君    井脇ノブ子君

      稲田 朋美君    臼井日出男君

      小野寺五典君    大島 理森君

      大野 功統君    河井 克行君

      河村 建夫君    北村 茂男君

      倉田 雅年君    木挽  司君

      佐藤 剛男君    坂井  学君

      杉村 太蔵君    平  将明君

      中馬 弘毅君    中野  清君

      西村 康稔君    西銘恒三郎君

      野田  毅君    深谷 隆司君

      細田 博之君    増原 義剛君

      三ッ林隆志君    三ッ矢憲生君

      三原 朝彦君    宮下 一郎君

      山本 公一君   山本ともひろ君

      岩國 哲人君    小川 淳也君

      大串 博志君    岡田 克也君

      川内 博史君    中井  洽君

      原口 一博君    馬淵 澄夫君

      前原 誠司君    松木 謙公君

      大口 善徳君    丸谷 佳織君

      佐々木憲昭君    阿部 知子君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   総務大臣

   国務大臣

   (地方分権改革担当)   菅  義偉君

   法務大臣         長勢 甚遠君

   外務大臣         麻生 太郎君

   財務大臣         尾身 幸次君

   文部科学大臣       伊吹 文明君

   厚生労働大臣       柳澤 伯夫君

   農林水産大臣       松岡 利勝君

   経済産業大臣       甘利  明君

   国土交通大臣       冬柴 鐵三君

   環境大臣         若林 正俊君

   防衛大臣         久間 章生君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     塩崎 恭久君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当)       溝手 顕正君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (科学技術政策担当)

   (イノベーション担当)

   (少子化・男女共同参画担当)

   (食品安全担当)     高市 早苗君

   国務大臣

   (金融担当)       山本 有二君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   大田 弘子君

   国務大臣

   (規制改革担当)     渡辺 喜美君

   内閣官房副長官      下村 博文君

   法務副大臣        水野 賢一君

   財務副大臣        田中 和徳君

   厚生労働副大臣      石田 祝稔君

   経済産業副大臣      渡辺 博道君

   環境副大臣        土屋 品子君

   厚生労働大臣政務官    菅原 一秀君

   厚生労働大臣政務官    松野 博一君

   国土交通大臣政務官    藤野 公孝君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    宮崎 礼壹君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    石井 道遠君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            青木  豊君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月八日

 辞任         補欠選任

  井脇ノブ子君     北村 茂男君

  臼井日出男君     木挽  司君

  遠藤 武彦君     坂井  学君

  大野 功統君     平  将明君

  笹川  堯君     西銘恒三郎君

  増原 義剛君     山本ともひろ君

同日

 辞任         補欠選任

  木挽  司君     臼井日出男君

  坂井  学君     遠藤 武彦君

  平  将明君     大野 功統君

  西銘恒三郎君     杉村 太蔵君

  山本ともひろ君    増原 義剛君

同日

 辞任         補欠選任

  杉村 太蔵君     笹川  堯君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 予算案に関し少子化その他について


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     ――――◇―――――

金子委員長 これより会議を開きます。

 予算案の審査を進め、昨日に引き続き、少子化その他の集中的審議を行います。

 この際、お諮りいたします。

 予算案審査のため、本日、政府参考人として財務省主税局長石井道遠君、厚生労働省労働基準局長青木豊君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

金子委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

金子委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 おはようございます。日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 まず、柳澤大臣の発言についてただしたいと思います。

 一月二十七日の女性は産む機械、装置という発言、二月六日の子供を二人以上持ちたいというのが健全だと述べた。これらの発言は、私は根本的なところでつながっているのではないかと思うんです。それで、安倍総理は、この産む機械という発言について不適切な発言だったとお述べになりました。

 まず確認したいんですが、あの発言のどういう点が不適切だったのか、どこが悪かったから不適切だったのか、その点を確認したいと思います。

安倍内閣総理大臣 まず、大臣の機械という発言そのものが極めて不適切であるということでございます。これは女性の尊厳を傷つけるものであり、そもそも、そのような表現をするということ自体が全く不適切であったということでございます。

佐々木(憲)委員 柳澤大臣は反省していると答弁されましたが、あの発言のどこを反省しているのか、何が悪かったのかという点、改めてお聞きしたいと思います。

柳澤国務大臣 今、佐々木委員御指摘のとおり、私が一月二十七日に講演しまして、その講演の一部で人口推計の説明をした際、女性と人口との関係について説明をしたくだりがございます。その中で今御指摘のような箇所がございまして、それらについて、そういう不適切な発言をしたということをまことに申しわけないと感じておりまして、深くおわびを申し上げますとともに、反省をいたしておるということでございます。

佐々木(憲)委員 不適切な発言であった、機械という表現、これが女性を著しく傷つけた、こういうことなんですが、表現が悪かったという認識で果たしていいのかどうか。

 つまり、柳澤大臣は具体的にはこう言っているわけですね。十五歳から五十歳の女性の数は決まっている、産む機械、装置の数は決まっているから、あとは一人頭で頑張ってもらうしかないというふうに発言をされている。

 ここには、一人一人の人間としての尊厳、あるいは女性の人権、これを尊重するという姿勢が全く見えてこないわけです。発想の根本にあるのは、国のために産めよふやせよという発想であります。だから、二人以上産む人が健全だという発言は、それ以外の人はそうではないということにもつながりかねない。国民の中には、産まない人、産んでいない人、あるいは産みたくても産めない人、そういうさまざまな方がいらっしゃるわけですね。そういう人々の気持ちを踏みにじることになるわけであります。つまり、一人一人の置かれた状況、その心情に思いを寄せるという発想がそこには見えない。ですから、これだけ大騒ぎになっているのは、国民の多くがそこを問題にしているからであります。

 そういう性格の問題だというふうには大臣は思いませんか。

柳澤国務大臣 とにかく、人口推計の説明に当たりまして、女性と人口との関係につきまして大変不適切な発言をしたということでございまして、その点はもう本当に申しわけなく思っているということでございます。

佐々木(憲)委員 どうも、私のこの問題提起が余りしっかり受けとめられていないような感じがいたしますね。

 これは、我々一人一人が問われている問題でもあるんです。ここに座っておられるほかの大臣も、この問題は、あれは柳澤大臣の発言なんだ、自分は関係ないというふうに思っているのではないか。これはやはり人ごとではない。人間である以上、誤りを犯すことはあると思います。何が悪かったのかということを突き詰めるということが大事なので。

 私は、お座りになっている一人一人の大臣にその考えを聞きたいところでありますが、時間がありませんので、代表して、大臣のお隣に座っている尾身大臣、そのお隣の麻生大臣、このお二人に、これまでの議論を聞いて、柳澤発言のどこが悪かったのか、何を反省すべきなのか、この考え方をぜひお聞かせいただきたいと思います。

尾身国務大臣 私も、話を聞いておりまして、柳澤大臣の発言は全体として不適切なものであると考えております。私も、内閣の一員として、ともにおわびをしたい気持ちでございます。

麻生国務大臣 先ほど安倍総理からも既に答弁があっておりましたとおり、私も、その内容につきまして、不適切、適切さを欠いていたということははっきりしていると思っております。したがって、両院において柳澤大臣からそれに伴っての陳謝があったというふうに理解をいたしております。

佐々木(憲)委員 不適切だったというその理由を聞いているんですが。何が不適切だったかということを聞いているわけですが、どうも、ああいう発言をしたのが、表現が悪かったというような認識ではないのか。私は、その程度の問題だというふうにとらえること自体が問題であって、だから、上辺だけ済みませんでした、悪かったですと言っているだけでは反省とは言えないわけです。

 それで、総理が柳澤大臣はやめる必要はないというふうにかばい続けておられますが、ほかの大臣も結局そういう総理の姿勢と同じ姿勢であって、私は、こういう人間としての尊厳を傷つけるという発言をした人が、国民の福祉ですとか、健康ですとか、あるいは労働の分野、そういう分野で人権を守るということを職責とする、そういう厚労大臣の資格が問われたと思うんです。私は、資格はないと思う。

 大臣は辞職をすべきだと思いますけれども、辞職をするかあるいは罷免をすべきだというふうに思いますが、改めて総理の見解をお聞きしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 当該の厚生労働大臣の発言は極めて不適切な発言であり、厚労大臣も繰り返しおわびを申し上げているところでございますし、また、私も国民の皆様におわびを申し上げた次第でございます。

 柳澤大臣は、厚生労働行政の責任者として、今後、常に国民の皆様の立場に立って、社会保障政策、社会福祉政策、あるいは厚生労働行政に取り組んでいくことによってその職責を果たしていただきたい、こう考えております。

佐々木(憲)委員 どうもこの発言の重大性というものを深く理解されていないようだし、また、なぜ悪かったのか、謝ってはいるけれども、その基本のところが認識が非常に浅いと私は思うんです。だからこそ罷免もしない、やめもしない。

 では、その職責を果たすんだということですけれども、今、国民の立場に立って取り組んでいくというふうに総理もおっしゃいました。大事なことは、それならばどんな政策を進めるかということです。安心して結婚し子供を生み育てられる、そういう環境づくり、これが今問われているわけですね。

 今、日本社会の現実はどうか。パート、アルバイト、派遣などの非正規雇用がどんどんふえております。雇用が不安定になっております。所得が低下し、家計が非常に苦しくなっている。そのために若い方々が結婚ができないという状況もある。結婚して子供を産もうとしても、産科医はどんどん減少しております。この場でも議論になりました。子供を産んでも託児施設、保育所が足りない、働いているお父さん、お母さんは職場で育児休暇がとりにくい、または、長時間勤務で父親の育児参加も大変困難になっている。これらの非常にたくさんの制約要因といいますか、そういうものが複合的に絡み合って少子化という現象があらわれているのではないか。

 柳澤大臣、そういう認識はありますか。

柳澤国務大臣 労働の現場で女性の活躍が現にありますし、さらに我々としては期待をしたいというふうに考えておりまして、その場合には、子供さんを産んでいただく、あるいは育てる、そういうこととの関係でワーク・ライフ・バランスの実現というのは、これはもう絶対必要でございます。

 今、先生が具体的にお挙げになられた育休、あるいは育休のもとでの経済的損失、逸失の利益、こうしたものの補てんを私どもとして今一生懸命やっているわけですけれども、まだなおこれは十分なものではない、こういう認識のもとに、厳しい財政事情のもとではありますけれども、それを一歩一歩着実に充実させていくために努力をしている、こういうことでございまして、今後とも同じ方向で努力を積み重ねたい、このように考えております。

佐々木(憲)委員 今の発言を聞いていても、本当に実態というものを正確によく把握しているのかどうか。

 これらの先ほど挙げたような問題点は、平成十八年度少子化社会白書、これはもう皆さん御承知のものですけれども、この中にもはっきり書かれているわけです。

 例えば、ここに書かれていることを挙げてみますと、結婚や結婚後の生活の資金がない、雇用が不安定であるため将来の生活設計が立てられない、結婚すると仕事と家庭、育児の両立が困難となる、育児や教育にかかる費用が重い、妻の精神的、肉体的負担の増大、夫の育児、家事の不参加、出産、子育てにより仕事をやめた場合に収入が失われる問題、これは、政府の内閣府の少子化社会白書でこういうふうにはっきり書いてあるわけです。

 しかも、現実に我々が皆さんの声を聞いていると、こういう問題点がだあっと出てくるわけです。直接国民の声を聞けば、これらの問題が少子化社会の一番の根本にある。その問題を解決するために取り組むということが対策じゃないんでしょうか。私は、その認識がどうも不十分だと思うんです。あるいは欠けていると思う。知っていれば、女性に対してすべての責任を負わせて、一人頭頑張ってくれ、そういう発言にはならないはずなんです。

 では、この現実に対して政府はまともに対策をとっているのか。先ほどの、働く実態に対して、有給休暇がとれないとかそういう問題も挙げられましたけれども、では、本当にそこが解決するような努力を政府はしているか。私は極めて不十分だと思うんです。

 一つの例を挙げたいと思うんですが、特に深刻なのは母子家庭の場合ですね。現在、母子家庭は百二十三万世帯あります。命の綱と言われる児童扶養手当、これを受給している世帯は九十六万世帯です。今はどうなっていますか。安心して子供を生み育てられる環境を整備すると言うなら、これは当然真っ先に充実するというのが当たり前じゃないでしょうか。

 ところが、平成十四年、支給から五年たったら手当の一部を停止するということを決めたそうですけれども、それは事実ですか。

柳澤国務大臣 御指摘の児童扶養手当の問題ですけれども、平成十四年の法律改正におきまして、離婚等による生活の激変を緩和するための給付というふうに、いわばその位置づけを見直したわけでございます。そういうようなことで、受給期間が五年、この激変の期間を大体そんな期間ということで考えているわけですけれども、これを経過した場合にその一部を支給停止する仕組みを導入いたしまして、平成二十年四月からこれを実施するということを予定いたしております。

 その際、法律では、八歳未満の児童を養育している者あるいは障害を有する者などについては、一部支給停止の対象外といたしておりまして、また、支給停止をする場合も、全額を停止するということではなくて、給付額については少なくとも二分の一は保障しなければならない、こういうことになっております。

 なお、今後、平成二十年四月の実施に向けて、支給停止をする額を具体的にどうするかというようなことについては、政令で定めるということになっているわけでございますが、その政令で定める場合には、この法律を成立させていただいたときの衆参両院の厚生労働委員会における附帯決議というもの、これをよく念頭に置いて、それを踏まえて対応していかなければいけない、こう考えております。

 その際、概略ですけれども、附帯決議で何が指摘されておるかといいますと、改正法施行後におけるいろいろなこうした世帯に対する施策の進展状況が一つ、それから、その後の離婚の状況、それからまた、母子福祉団体など幅広く関係者の意見を聞くことということが附帯決議されておりまして、これらを踏まえて考えていく、こういうことでございます。

佐々木(憲)委員 いろいろ説明をされましたが、しかし、カットすることには変わりないんです。カットの仕方をどうするかという検討をするという程度の話であって、私は余りにもこれはむごいやり方だと思いますよ。今、母子家庭のお母さんは、仕事を見つけて就職することさえ大変なんですよ。

 二〇〇二年十一月二十一日の参議院厚生労働委員会で参考人で発言をされた方、小山田さんという方がおられますが、その議事録を見ますと、こういうふうに証言しています。昼夜、パートなどで働きながらも就職活動を続けました。五年間に百社余りの面接を受け、五年ですよ、百社の面接を受け、子供が小学二年になったときようやく正規雇用での職が決まりました。しかし、不況のあおりが厳しく、この春、賃金カットになってしまいました。

 この方は、私たちに対してこういうふうにお話をされています。

 私がショックだったのは、所得制限を引き下げた九八年の改悪です。つまり、児童扶養手当の所得制限を引き下げた。このとき手当ががくっと減ってしまいました。寝ずに働くと言葉で言うと簡単だけれども、二十四時間三百六十五日、いつもいつも眠たくて、それでも子供の声には耳を傾けなくちゃいけないと頑張って、子供が熱を出したときも、嘔吐してもいいように洗面器を置いて出勤している。多くの一人親家庭は同じような状況だと思います。子供を高校、大学に行かせたいと思っているから、寝ずに働いている。何も総理大臣のために働いているわけじゃない。頑張って働くほど私たちの手当を減らすような人が大臣になったらどうなるのかと思っていたら、二〇〇二年にも所得制限でがくっと手当が減らされ、二〇〇三年には支給開始五年で最大半額まで減額される、本当に大変だ、こういうふうに訴えているんです。

 この声に正面からこたえ対応するというのが厚労大臣、総理大臣の責任じゃないんですか。私は、職責を果たすと言うなら、こういう方々が安心できるような状態にするというのが本来の筋だと思うんです。総理、どうですか。

安倍内閣総理大臣 この平成十四年の改正において、経済的な支援と同時に、就労支援もしっかりと力を入れていこうという中においての改正であったというふうに私は承知をしております。生活の支援、そして就労を支援していく、また、養育費の確保についても何とかこれは努力をしていかなければいけないということでございます。

 ですから、厚生労働大臣が答弁いたしましたように、附帯決議において、実際に平成二十年からこの改正に沿って実施される際には、就労の状況等々、生活支援の状況や、また養育費の確保の状況等々をよく勘案するということになっているわけでございます。

 しかしながら、十四年のこの趣旨としては、母子家庭の方々がいろいろな困難の中にあるわけでありますが、就労について支援をしていく。そういう観点から、例えばマザーズハローワーク等々においては、就労のきめ細かな支援を行うように努力をしているわけでございます。

佐々木(憲)委員 今は就労支援と言われましたが、就労ができない、就職ができない、そういう状況が続いても、五年たったらカットするというのがこの仕組みじゃないんですか。そういう仕組みをつくっておいて、何が自立支援ですか。就職ができて、所得が上がって、それでこの児童扶養手当というものが必要がなくなるというならわかりますよ。そういう必要があるのに、支給されなければならない対象なのに、就職もできないのに五年たったらカットする、そういうむごいやり方がこの仕組みなんですよ。

 この人は、一九九四年に母子家庭になって、その後、七月に児童扶養手当の支給を受け始めました。その当時は四万二百四十円。ところが、四年後の九八年に所得制限が導入され、一部支給の二万八千百九十円になった。大幅なカットですね。二〇〇二年に所得に応じた十円刻みの支給額となって、一万二千五百三十円になった。これが来年四月から六千円になったらどうするんですか。最初に受けた額の六分の一とか七分の一ですよ。

 反省すると言うなら、こういう仕組みを見直す、それを直ちにやる、その決断をこの場でやるべきじゃないんですか。どうですか、大臣。

柳澤国務大臣 児童扶養手当の一部支給停止ということでございますけれども、これは、経済的な支援から、今総理が御答弁申し上げましたとおり、総合的な支援にする、こういうことで就労支援などをその中に入れ込んでいく。あるいは養育費につきましても、今の離婚される御夫婦の場合に、養育費というものに対する義務の感覚というものが全然ないがままに行われるというようなケースもかなり見られるというようなことで、そういったことについても、法的な義務としてこれをしっかり考えていただくということ等の法律改正もこの間行われているというふうに承知をいたしております。

 というようなことで、母子家庭の自立の促進を目的とするという観点からは、この四月からの実施ということについて、私どもはこれを取りやめるということは考えておりません。今先生は、就労支援が、逆に就労するとこの金額が逓減してしまうというような御指摘もありましたけれども、これも、全部就労した収入金額が意味のなくなるようなことをしているわけではなくて、やはり、そこに一定の、就労する所得に加えてこの児童扶養手当も残るというような仕組みで、連続的に逓減をするというような制度の仕組みにもとよりなっていたということでございます。

 この点は、やはり国の財政資源をいろいろなところに適切に配分していくという趣旨も背景にあるわけでございまして、ぜひ施策のこれからの展開というものについて御理解を賜りたい、このように思います。

佐々木(憲)委員 全然理解できない、そんなのは。こんなむごいやり方をしておいて、何が自立支援ですか。就労支援という言葉はいいですよ。では、就職ができていない人の、そういう人のこの支給を何で五年でカットしちゃうんですか。そういうやり方を見直すということが大事なんじゃないですか。

 少なくとも、もう一度その点は見直してみる、そのぐらいのことを言わないで、反省しているとか、尊厳を踏みにじったのはまずかったとか、そんな口先だけの話じゃだめなんですよ。具体的にこういうことをやることが本当の反省じゃないんですか。

 もう一度総理にお聞きしたいんです。再検討、少なくともそういうことをやるべきじゃないんですか。

安倍内閣総理大臣 この十四年の改正の趣旨については、先ほど私が申し上げたとおりであります。

 その中でこれはそれなりにきめ細かく対応をしているわけでありまして、保育所についても優先入所の法定化を行い、また、ヘルパーなどの派遣による子育て・生活支援を実施する等々の子育ての生活の支援を行っています。

 また、就業支援についても、母子家庭の就業・自立支援センター事業の推進、ハローワークと連携をして母子自立支援をさらに充実していく。そしてまた、能力開発を希望する方に対しては、そういう対応をしていく、職業訓練も実施をしていく。そのように就業支援に対しての強化をしているわけでございます。

 そういう中での総合的な対策であるというふうに御理解をいただきたいと思います。

佐々木(憲)委員 全然だめだね、そんな姿勢では。

 大体、少子化社会白書という中で先ほど挙げたようなさまざまな問題点、国民の苦しみが書かれているにもかかわらず、あなた方はただ書くだけなんだ、これは。具体的に、困っている人たちを救う対策を一つでもやったらどうですか。こんなこともできないようで反省していると言うことは、言葉だけになってしまって何も中身がない。

 この児童扶養手当のカットをやめるとはっきりここで言えないそういう内閣は、柳澤大臣の発言の問題は個人の問題じゃない、これは内閣全体の問題だ。総理大臣を初めとして、それをかばい、まともな対応が出てこないというのは、全く私はこの内閣自身に根本的な問題があると言わざるを得ない。私は、こういう問題さえできないようでは、もう全然話にならぬとはっきり言っておきたいと思うんです。

 弱者に冷たい姿勢というのは、何もこの問題だけじゃないですよ。いろいろな問題にあらわれている。例えば税制です。

 まず確認したいんですが、この一月からの定率減税の廃止で所得税、住民税はどうなるのかという問題でございます。

 国税庁はいろいろな説明をしておりまして、チラシなども出して、この所得税、住民税については、税源移譲があるので、合わせた全体の負担は変わらないというようなことを言っておりますが、そんなことはないんです。所得税が平成十九年一月、つまりこの先月から減って、住民税が六月からふえることになりますので、御承知おきください。何か増減が変わらないような説明をいろいろな文献あるいはチラシなどでやっております。しかし、その中にも、「別の要因により、実際の負担額は変わります」、小さな字で書いてあるわけです。これはどういう意味ですか。負担はふえるのか減るのか。

 具体的に聞きたいんですが、例えば夫婦子供二人で年収七百万の場合、政府の説明文の中にありますけれども、住民税、所得税はどれだけ増額になるのか、その増税の総額は幾らか、お答えください。

石井政府参考人 今、先生御指摘ございましたように、税源移譲に伴いまして所得税から住民税に税源が移譲されますが、そのトータルの額は変わりません。ただ、定率減税の廃止という別途の制度改正がございます。これにつきましては、もともと平成十一年に当時の経済状況に照らして景気対策として導入されたものを、その後の経済状況の好転等を踏まえまして、平成十八年分からは半減、平成十九年分からは廃止ということにいたしております。

 今、お尋ねがございました給与収入七百万の夫婦子二人世帯につきまして、平成十八年分それから平成十九年分、この二つを比較いたしますと、所得税、住民税合計でございますが、平成十八年分の四十一万八千円の負担から、平成十九年分では四十五万九千円、四万一千円の増というふうになります。

佐々木(憲)委員 四万一千円の増じゃないですか。増税ですよ。

 二〇〇一年と二〇〇七年の比較、これも大変私は大事だと思っておりますのは、小泉内閣が発足してからこの庶民増税というのがどんどん進んできた、高齢者に対しても増税が進んできた、負担がふえた。弱いところに対して非常に重い負担がじわじわと広がってきたのが、小泉内閣以来、この安倍内閣もそれを引き継いでいる、そういうのが実態だと思うんです。

 数字をもう一度お聞きしたいんですが、世帯収入二百七十九・二万円、三百四・二万円、三百七十九・二万円、四百万円、この二〇〇一年と二〇〇七年を比較すると、それぞれ一体どういう税負担になりますか。

石井政府参考人 今、先生が御指摘ございました夫婦のみの世帯、妻の収入ゼロの給与世帯と妻の収入が七十九・二万円の年金世帯、その二つの世帯におけます二〇〇一年と二〇〇七年分の所得税、住民税を合わせた税負担額の比較という御質問でございました。

 給与世帯についてまず申し上げますと、収入二百七十九万二千円の場合には五万四千円から十一万九千円、六万五千円の増加になります。収入三百四万二千円の場合には七万二千円から十四万二千円、七万円の増加でございます。収入三百七十九万二千円の場合には十三万から二十一万二千円、八万三千円の増加でございます。収入四百万の場合には十四万八千円から二十三万四千円で、八万七千円の増加となっております。

 他方、年金世帯について同様に申し上げますと、収入二百七十九万二千円の場合には両年分ともゼロでございまして、税負担増はございません。収入三百四万二千円の場合にはゼロから二万七千円、二万七千円の増加でございます。それから、収入三百七十九万二千円の場合には四千円から十四万一千円、約十三万七千円の増加、収入四百万円の場合には六千円から十七万円で、十六万四千円の増加でございます。

 年金世帯につきましては、年金課税の見直しに伴い生ずるものでございますが、これは、十六年度改正におきまして、世代間あるいは高齢者間の税負担の公平を図るという観点から制度改正が行われたものでございます。

 ただ、標準的な年金で暮らしておられる方については十分配慮をいたしておりますし、それから、年金を受給する世帯と現役世帯との間では、同じ収入でも税負担は軽くなっております。

佐々木(憲)委員 私は、事実をどうかと数字を聞いているんですよ。そういう理由の説明は大臣にお聞きしますので、数字だけ答えてください。

 今聞いた数字、皆さん、お手元にある資料の一枚目がそれなんですけれども、これだけこの六年間負担がふえている。このほかにも、さまざまな社会保険の負担あるいはサービスについての使用料の負担、そういうものがどんどんどんどん積み重なってきているわけです。また、それが相互に連動しております。一番弱いところにこういうものが積み重なっているというのが実態だと思うんです。そういう実態をどう我々は考えたらいいのか、いつまでも続けていいのか、そういうことを全体として考える必要があると思うんですね。

 次のページをめくっていただきますと、この四年間だけとりましたけれども、所得税、住民税の負担増というものが全体として四兆五千六百十三億円になっております。こういう状況を一方で庶民中心に負担を押しつけていきながら、では、今非常に利益が上がっている大企業はどうか、大手企業の税負担はどうか。今度の税制改正で、その大手企業を中心とする減税策というのが次々と出されているのが特徴です。だれのための税制なのかというのが問われているんですよ。

 例えば減価償却制度ですけれども、国、地方を含めてどれだけの減税になるか、これをお答えください、数字。

石井政府参考人 今回の減価償却制度の見直し、国際的なイコールフッティング確保という観点で行うものでございますが、その減収額について申し上げますと、設備が除却されるまでの期間全体を通じて見ますとこれは減収増減はゼロになりますが、短期的な減収額を申し上げますと、平年度ベースで五千百十億円、初年度ベースで四千二十億円と見込んでおります。

佐々木(憲)委員 それは国税だけですね。これは、地方税も含めますと七千四百億円ぐらいになるんです。そのうち、資本金十億円以上の大企業に何%集中するか、これが問題だと思うんですが、約六割が集中する。

 それからもう一つ、大企業向けの減税制度として連結納税制度というのが導入された。二〇〇五事務年度の連結納税制度の状況について、何件の申告件数で、申告所得金額は幾らか。それから、親会社、子会社すべての所得金額の総額は幾らか。所得の通算効果は幾らか。その点についてはもう既に皆さんのお手元に資料を配付してありますが、全体として、四百六十七グループに対して三千六百八十八億円の減税なんです。これは中小企業はほとんど利用できません、グループを形成するほど巨大な資本ではありませんので。専らと言っていいほど大企業に集中しております。

 連結納税制度が導入されてから二〇〇五年までにどれくらいの減税効果があったか、この試算を出してください。

石井政府参考人 連結納税制度の利用による減収額の試算でございます。

 平成十五年度、約三千四百億円程度、十六年度、三千二百億円程度、十七年度、約三千七百億円程度となっておりまして、以上合計いたしますと、三年間で約一兆円程度と見込んでおります。

佐々木(憲)委員 その数字は皆さんのお手元にありますが、一兆三百八億円ですね。

 それから、証券優遇税制というのもある。これは、株の売り買いで得た利益、この所得税を大幅に軽減するものです。時間がありませんので、資料を見ていただければわかりますが、この減税は極めて一部の方々に集中するわけであります。五千万円を超える所得のある方々、そこに対して六割ぐらいの部分が集中するわけであります。それは資料の四を見ていただければわかります。

 さてそこで、庶民に対してこれだけ税負担がふえると一方で見ながら、他方で、巨大資本、大手企業、それから、株の取引で大もうけを上げているような大資産家に対して減税がどんどん行われている。強い者の味方ではないのか。庶民に対しては増税を押しつけながら、何で大企業減税をやるんだ。お金が足りないと言うなら、もうかっている大企業や大資産家から相応の、応分の負担、これを求めて、そこからもらったらどうか。これが普通の庶民の感覚なんです。

 何でそういうふうにやらぬのかというのを明確にお答えいただきたい。

尾身国務大臣 税制改正についていろんな御質問がございまして、私も先ほどから説明をさせていただきたいと思ってうずうずしておりました。

 定率減税でございますが、定率減税は一九九九年一月から実施したものでございます。小渕政権のときでございまして、あのときの、今から七、八年前を思い出していただきたいのでございますが、経済が大変な状況でございました。失業率四・三%、有効求人倍率に至っては〇・五だったんです。今は一・〇八でございまして、求人の方が求職より多い。その求職と求人の比率が半分になっている、そういう状況でございました。いわゆる不良債権も、あの当時は全体の債権の六・一%、現在はほとんど解決しておりまして、一・五%という、不良債権問題は解決したと言われているわけでございます。さらに、長期信用銀行の倒産があったり日債銀の倒産があったりして、経済が大変な状況でございました。

 これを何とかしなければならないということで、臨時異例の措置として減税をしたわけでございます。その減税は、むしろ高額所得者に対しては緩くして、中低額所得者に対して非常に大きな減税をいたしました。

 具体的に言いますと、所得税については、二十五万円を限度といたしまして納税額の二〇%を減税いたしました。したがいまして、これは低額所得者に物すごく厚い減税でございました。住民税も、四万円を限度として所得割の一五%を控除するということでございました。

 その減税を、二年前の、ほぼ経済が正常な状態に戻ったということで、前に行った減税をもとに戻すということでございました。したがいまして、前に低額所得者、中額所得者に厚い減税をしたわけでございますから、その分だけは戻すということになれば、その分の減税をもとに戻すという効果が出たのは当然のことだというふうに考えております。

 それから、もう一つ言われましたのは年金課税の問題でございます。

 十六年度に、世代間、高齢者間の税の不公平感、つまり、高齢者については、同じ所得であっても税が非常に低過ぎる、若者の世帯、働く世帯について、これは子育て世代もそうなんでありますけれども、同じ所得でありながら高齢者に比べて税が非常に高い、そういうことを是正するべきであるということで、例えば公的年金控除、六十五歳以上の方々の上乗せの措置をやめたり、あるいは老年者控除を廃止したということでございます。

 しかしながら、なお、働き世代、つまり子育て世代も含めた働き世代の税金は、同じ所得であっても高齢者の世帯よりも高い、そういう差別がついているわけでございます。

 この具体的な数字を申し上げますと、二百八十万円の高齢者世帯の場合は、基本的には税負担が生じておりません。しかし、同じ二百八十万円の所得であっても、夫婦で二人、若者の場合には、いわゆる働き世代の場合には、所得税が四万円、住民税が八万円で、合計十二万円の税負担がかかっているわけでございます。

 そういう意味で、今でもなお、同じ所得であっても、高齢者についての税は優遇をして、働き手の方に高齢者に比べて高い負担がかかっているという実態にございます。したがいまして、高齢者について非常に厳しいという御批判は当たらないというふうに考えております。

 企業減税についても申し上げます。先ほどお話がございました。

 減価償却、九五%を今度は一〇〇%にすることにいたしました。したがいまして、今、経済が国際化する中で、企業がどの国を生産拠点、経済活動の拠点として選ぶかということを決められる時代になりました。日本も、そういう意味で税制において諸外国とイコールフッティングの税制にしなければならない、そういう考え方のもとに改正をしたわけでございまして、減価償却については、今まで九五%しか償却を認めていなかったのは日本だけでございまして、それを、ほかの国並みに一〇〇%の償却を認めるということにしたわけでございます。

 なお、これは大企業に固有のものではございませんで、中小企業も全く同じにしたわけでございまして、大企業優遇という批判は当たらないと考えております。

 まだ申し上げたいんですが、時間がございませんから、まだ幾つか残しておりますが、これでとりあえず終わりにさせてもらいます。

佐々木(憲)委員 質問に対してまともに答えないで、長々長々長々と時間ばかりつぶして、だめじゃないですか、そんな答弁じゃ。中身もなっていない。

 私が問うたのは、利益の上がっている大企業、そういうところにどんどん減税をして、今、消費が低迷しているとミニ経済白書も言っているときに、家計に負担を負わせることばかりやっている、それがおかしいんじゃないかと聞いているんですよ。一つ一つの税制の説明を聞いているんじゃないんだよ。基本的な姿勢を聞いているんですよ。そんな細かな、細かなとは言いませんけれども、長々長々答弁されると、私が言いたいこと、まともに答弁になっていないということじゃないですか、それは。

 本当にどうにもならぬね、これは。こんな状況だと、委員長、これでもう時間がなくなっちゃって、答弁の仕方についても理事会で問題にしていただきたい。このことを指摘しておきたいと思います。

 いずれにしましても、今の答弁で明らかになったのは、大企業に対してどんどん減税をする、大金持ちに減税をするのが当たり前、庶民に増税するのも当たり前という、この内閣の国民に対する冷たい姿勢が非常にはっきり浮かび上がった、それだけは確かだということを指摘して、質問を終わります。

金子委員長 これにて佐々木君の質疑は終了いたしました。

 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 私は、本日の柳澤大臣の発言をめぐる集中論議の前段に、まず安倍内閣総理大臣にお伺いしたいことがございます。

 去る二月六日、いわゆる在外被爆者、日本の広島、長崎で被爆をされて、その後海外で暮らすようになられた方、在外被爆者について、日本に住んでおられないからその間の健康管理手当を不支給にするということをめぐりまして、最高裁の判決がございました。

 被爆者はどこにいても被爆者。当たり前のことですが、被爆したという事実は消えませんし、そのことがその人個人にもたらした大きな傷もいえるものではありません。この在外被爆者に対して、いわゆる五年の期限を区切って健康管理手当を不支給にしてきた自治体の行為について問題があり、即刻支給せよと、並びに、厚生労働省の七四年通達、国内への居住を支給の要件と認めましたものについても誤りがあるという最高裁判決が下りました。

 まず、戦後レジームの転換ということをおっしゃる安倍総理には、あの戦争で深い傷を受け、それは、何度も申しますが個々人が背負っておる傷であり、そのことについて健康管理手当が支給されるべきであったところ、この間の国の行政の誤りによってその権利を行使できなかった皆さんに対して謝罪をしていただきたいと思います。いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 既に、政府におきましては、今委員が御指摘になったように、二〇〇三年に方針を転換しているわけでありますが、今回の裁判におきまして、地方自治法上の時効に関する法的な解釈が争われていたものであります。また、これは高裁での判断も分かれていたこともあり、広島県において最高裁の判断を仰いだものであります。

 今回の最高裁の判断において、これまでの取り扱いが適切ではなかったと指摘されたことを重く受けとめ、在外被爆者の方々の気持ちを十分に踏まえて、手当の支給のための措置を速やかに行わさせていくことによって責任を果たしていきたいと考えております。

阿部(知)委員 私の質問は、支給の問題以前に謝罪をしていただきたいと。これは、やはり問題が行政的に生じたことについては、内閣総理大臣が内閣の責任においてきちんとした姿勢を示していただくということが大事であります。いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 ただいま申し上げましたように、今回の最高裁の判決を重く受けとめまして、時効の問題について争ってきたわけでございますが、この判決を重く受けとめまして、我々も被爆者の方々に対しての気持ちを込めて、一日も早く支給するように実施をしていきたいと考えております。

阿部(知)委員 ハンセン病においても、小泉前総理はきちんと現実のハンセン病の患者さんに謝罪をなさいました。それくらいは政治家の品性であります。内閣総理大臣ですから、そういう姿勢をやはり各閣僚の皆さんにお示しください。そうでないと、やはり政治家あるいは時のいろいろな政策によって被害を受けたり、実際に権利を行使できなかった国民に対しての姿勢が問われていると私は思います。

 引き続いて、柳澤大臣の御発言に移らせていただきます。

 安倍政権が誕生した当初、私にとっては柳澤大臣というのは、ある種、最もサプライズ人事でありましたし、また、期待も高い大臣でありました。熱心なお仕事ぶりも、既にいろいろな税制関連のお仕事あるいは金融関係のお仕事で知っておりましたし、その大臣がよもや、よもやです、こんな発言はなさるまいと思ったのが、あの、女は産む機械という発言でありました。

 冷や水を浴びせられるという言葉がありますが、本当にぞっとしましたし、もちろん、その後、大臣は不適切であったという、先ほどの安倍内閣総理大臣は、人間を機械に例えるなんてとんでもないというふうにもおっしゃいました。そして、本日の集中審議に至るまで、野党側からは柳澤大臣の辞任要求が出され、私は辞任に値するほどの言葉だと思います。柳澤さんの個々のこれまでの業績や人格は否定するものでありませんが、しかし、この発言の与えた影響の大きさゆえに辞任はしていただきたいと思いますが、そうした辞任要求のさなかにも、柳澤大臣御自身も二週間、針のむしろであったと思います。

 そして、昨日、本日のこの審議の中で、あるいはそれまでのメディアとのインタビューの中で次々と出てくる発言、次には機械ではなくて役割という表現が使われましたし、そして、実は最も問題に感じましたのは、昨日の最終バッターである小宮山さんと柳澤大臣のやりとりの中で、合計特殊出生率をめぐるやりとりでございました。

 柳澤大臣は、それまで、既に厚生労働委員会においても、合計特殊出生率を、いわゆる数を目安にするものではないのだ、それがある意味で目安となって、逆転することのないようにという言葉を言っておられましたが、また一方、昨日の委員会審議の中では、やはり税を投入している限り、目標設定をせざるを得ないというふうにおっしゃいました。ここでまた、人間と数値の逆転が起こってまいります。

 柳澤大臣に冒頭お伺いいたします。

 政策の問題であっても、政策とは何かというと、この国の国民が、一人一人が自分の生き方を選び、子を持つことも選び取り、人間らしく生きていくということが目標であります。その一つの中に、時に数値にあらわれるものもございます。しかし、逆に、税が投入されているゆえに数値の目標を持たざるを得ないでしょうと言われましたときには、もとにある人間が消えてしまいかねません。この点について、柳澤大臣にまず真意をお伺いいたします。

柳澤国務大臣 私の一月二十七日の松江における発言、これは人口推計を御説明させていただく話の中で、女性と人口との関係について、もう本当に今反省しているわけですけれども、不適切きわまりない発言をいたしてしまいまして、女性の方、また国民の皆さんに大変心を傷つけるようなことになりましたことを、心からおわびいたす次第です。まことに申しわけないと思っております。

 きのうの小宮山委員との質疑応答というか話の中で、合計特殊出生率を目標としているのか、こういうふうなお尋ねがありましたので、今阿部委員からも御指摘いただいたわけですが、かつて、真偽はわかりませんが、その質疑者が指摘をした、前大臣が一・三九というのを目標にしたらどうかということを言ったという前提で、同じように大臣は考えますかという御質疑がありました。私は、その際、目標というのはよくないと思っておりますということを申し上げて、むしろ目標視するという考え方を明確に私としては否定させていただいたわけでございます。

 そうした上でのきのうの質疑応答でございましたので、目標ですかとまた再度聞かれまして、目標とはいたしません、それはかねてからの私の考え方ですと言いながら、それじゃ何なんだ、こういうふうに言われましたので、政策を進めるに当たって結果として出てくる、そうした数値でございますけれども、若い人たちが結婚し、子供を産みたいという希望が現実のものになっていない、そのギャップを埋めようということの政策をやるわけですが、その政策が的を得ているかどうかというようなことも考えていかなきゃいけないので、そういう、考えていくときにやはり念頭に置かせていただくという性質のものではないかということを申し上げたつもりでございます。

 ぜひ御理解をいただきたいと思います。

阿部(知)委員 出産や人間の生き死ににかかわりますことというのは極めて微妙ですし、どこまで政治がそこに介入できるかということもあるということは、実は柳澤大臣がきのうの答弁の中でも大平内閣時代の家庭基盤の整備ということに対しても言及されておりました。

 私は、この審議を通じて、政治と個人、国と個人、極めて個人的な出来事である産む、産まないというような問題に対してこの緊張感を忘れればやはり非常に問題が大きくなるし、逆に、人はもちろん物ではない、機械でもない、数でもないという政策をぜひこれからの厚生労働行政のもとに置いていただきたい。

 きのう、枝野議員が、柳澤大臣はずっとマクロのことをやってこられたから、ミクロの人という存在とマクロの経済ということで非常に感覚のずれがおありだったのではないかという指摘もありました。私は、先ほどの例えば児童手当の問題にしても何にしても、人がそこにいて生きていくという現実にどこまで密着できるかが厚生労働行政の根幹と思いますから、この点については私も再度大臣には確認させていただいた上で、しかし、もう一つ明らかにしておかなきゃいけないことがあると思います。

 私は、現内閣、安倍政権のもとの内閣が、人間の生き死に、あるいは人はだれも一人だけでは生きられない、すなわち、家族があり、地域があり、社会があり、あるいは国という器もあるでしょう。この中で、今どういうかじを切ろうとしておられるのかということについて、非常に懸念されるものがございます。

 実は、柳澤大臣がおっしゃいました大平内閣当時の演説がここにございます。大平内閣当時の認識も、日本人の持つ自立自助の精神、細やかな人間関係、相互援助の仕組みを十分に守りながら、これに適正な公的福祉を加味した公正で活力ある日本型福祉社会を建設する。安倍内閣総理大臣の所信表明演説とも実はそう変わらないものであると思います。

 しかしながら、その時々、置かれた家族像がどのようなものであるかによって、必要な施策が行き渡らず、結果的に弱い個人、小さな個人に矛盾がしわ寄せしていくという結果がとられます。私は、その一つのあらわれが、数値でとれば少子化問題だと思います。

 皆さんのお手元の資料の三ページ目をおあけいただきたいと思います。これは柳澤厚生労働大臣がもしかして合計特殊出生率で毎日説明を受けられた思いも深いグラフかもしれません。

 このグラフを見ておりますと、一九八〇年代に入りましてから、各先進諸国いずれも少子化の経緯をたどっておりますが、特に我が国においては一九八五年あたりから低下の一途で、各先進諸国がそれなりの、ある意味で数値上の回復を見せているにもかかわらず、日本はこの前イタリアを抜いて少子化一位、そして最近では韓国が少子化の、率でいえば一・二〇になりましたから、そのトップランナー争いをしておるわけであります。

 家族政策と申しますと、家族政策そのものの重要さは言うまでもありませんが、そこにどんな家族像を持つかということ抜きに私は正しい方針、政策は出てこないんだと思います。現在、安倍内閣総理大臣が考えられる家族のさまざまな形態、どのようなものを念頭にこれから我が国の家族政策を担っていかれますでしょうか。総理にお伺いいたします。

安倍内閣総理大臣 私は、いわば国の基本というのは、やはり基盤は家族であろう、このように思います。家族の中で子供がはぐくまれ、そして成長していく、お互いに助け合い、そして愛情を注いでいく、そうした家族のきずなを大切にしていく国でありたい、このように思っています。

阿部(知)委員 私がさらにお伺いしたかったのは、今家族の形態が多様だということであります。ひとり身で、お父さん、お母さんお一人でお育ての方、あるいはいわゆる法的結婚をせずに同棲という形をとられる方、さまざまな家族がいて、それもまた家族であります。ですから、残念ながら、柳澤大臣がおっしゃったように、女性が産む機械で、一人頭二人産んでほしいというような家族像では、現在の我が国のこの時代の家族政策にフィットしてまいりません。みんなそれぞれ生きてきたその歴史に刻まれていますから、自分の家族観があると思います。

 昨日、自民党の前少子化担当大臣がおっしゃいましたように、年代の差もございますでしょう。しかし、今この時代に最も必要なことは、多様な家族が家族であれるための政策。それには、母子家庭の支援、単身家庭の支援、あるいは、今世の中的には十組に一組のカップルが事実婚で赤ちゃんが生まれて、その後、法的な結婚をなさるというデータも上がっております。広く現実の若い人たちの思いや生き方の選択に合わせた家族政策が必要となっていると思いますが、柳澤大臣、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 非常に世界的に情報がたくさん行き交って、人間が生きる上での選択肢が広がっているということが背景にあるんだろうと思いますけれども、人それぞれがいろいろな生き方を選択し、そしてその中で自己実現し、また社会的な貢献をしていくという生き方が非常に広がっているということであります。そういう中で、家族として自分が人生の中でどういう選択をするかというような選択も広がっておりまして、そういう意味では、多様な家族像が並列的に今存在している、そういう世界になっているというふうには思います。

 そういう多様な家族に対して、必要な政策というものを我々は考えていかなければいけないんだろう、このように考えております。

阿部(知)委員 そうであれば、先ほど佐々木憲昭さんがお尋ねになりました児童扶養手当等々、本当にお一人のお母さんでも、あるいはお父さんでも育てていけるような仕組みを、社会的サポートが必要なんだと思います。

 私は、きょう、皆さんのお手元にお示ししました資料の二枚目に、各国の家族政策というものを引かせていただきました。「家族政策の各国比較」の右の端には、実は、各先進国が迷いながら、戸惑いながら、例えばイギリスのように、伝統的な家族政策は家族のあり方に基本的に不介入であったが、ブレア政権は、貧困がサッチャー改革の結果進み、その貧困に対しても、家庭の貧困に手当てするということを通じて、保育、経済支援の充実へと向かったこと。あるいは、フランスでは、既に一九八二年、全国家族会議というものが開かれて、これは企業も含めて、家族という生活単位を支援するためのさまざまな取り組みがなされています。

 一方の、我が国の大平内閣当時は、むしろ逆に、いわゆる終身雇用型の男性とその妻に対しての家族観から家庭基盤整備が行われました。例えば、介護をする嫁の表彰、配偶者特別控除、いずれもその時々の社会を見たものであると思いますが、逆に、見方を誤れば十分な家族政策はしくことができません。

 安倍内閣総理大臣に伺います。一九九四年、国際家族年ということが国連で提案されましたが、その内容等々は御存じでしょうか。

安倍内閣総理大臣 突然の御質問でございますので、今、私はお答えをする資料を持っておりません。

阿部(知)委員 安倍総理のお話は、いつも、家族は国のために大切だと逆さに逆転してまいります。この国際家族年での一番の中心は、家族は最小限の民主主義の単位であるということから発足してございます。

 私は実は小児科医で、今、子供は親といる時間を奪われ、親は子供といる時間を奪われて、本当に、不安と不安定の中に社会が推移しているように思います。内閣総理大臣として、安倍首相がこのたびの政策の中で家族ということにもっと温かな支援をと思われるのであれば、国際動向を見きわめて、そして今何が必要か、家族の中で何が苦しいことなのか、そういう声を聞く。上から下ではなくて、下から上に向けて地域や人間の生活単位をつくっていくということをやっていただきたいと思います。

 この一九九四年の国際家族年の取り組みは、本当にさまざまな世界各国で、今現状で進んでおるものでございますので、日本の視野も広く国際的にお持ちいただきたいと私は思います。逆に、そういうものがないと、例えば子供を産む数あるいは女の役割、産む機械という形の、いわば国家やその時々の価値観が個人に強制されていくという逆さの向きにすごく進むことが懸念されます。そのことを私は多くの国民が感じ取り、もっと多様な生き方、そして今の家族のあり方、私たちはどう生きたいのか、子供たちはどう育てられるべきかという答えが出されてしかるべき年に二十一世紀はなっていると思います。

 総理が御存じなければ、ぜひ、国際家族年のこの取り組みということは、もう一度念頭に置いていただきたいと思います。

 さて、次の質問に移らせていただきますが、きょう皆様にお示しした資料の一枚目は、派遣労働の女性の年齢分布というものが示してございます。

 この少子化問題の論議の中で、いわば最も手だてが遅く、後回しになってきたのは、産んで以降の政策ではなくて産むまでの政策であります。幾ら女は一人頭二人とか割り当てをいただきましても、なかなか産むに産めないじゃないのという声も各委員からの御指摘がありました。また、産むことはもちろん女性だけでは、産むという作業はできますが、子供をなすということは、これはクローン技術でも用いない限り、なかなかやはり、男性と女性で産み、お互いにいろいろな役割をして子供を支えていくわけであります。

 この間の論議の中で、私は一番実相を見ていないのは、一九八五年、男女雇用均等法が制定され、翌年から施行。と同時に労働者派遣法が制定され、翌年から施行。スタートが一緒でございました。二十年たって女性たちは働きやすくなったか、産みやすくなったか、産むことを選び取れるようになったかというと、到底そういう状況から遠い、これが現実の日本であります。

 柳澤大臣に伺います。この「派遣労働者の年齢分布」というものをごらんになって、まず大臣の感想をお伺いいたします。

柳澤国務大臣 これは非常にグラフとしてはわかりやすいグラフであるわけですが、これに対する感想いかん、こういうことでございます。

 大体において、派遣労働者につきましては、これは男女を通じての話ですけれども、消極的な理由もありますけれども、同時に積極的な理由もあるというふうに私ども考えております。積極的理由のうち、一番高い率を示しておりますのは、専門的な資格、技能が生かせるからということがございます。それからもう一つは、次に高いのは、次の次ですが、ほぼ二位に位置しているのは、自分の都合のよい時間に働けるからというのが次の積極的な理由として我々つかんでいるわけでございます。

 今ちょっと、この男女を通じての数字以外に女性だけ、男性だけの同様の統計データはないかということを聞いたんですが、ちょっと間に合いませんでしたので、ここから以降は推測的なことになりますが、やはり専門的な資格、技能が生かせるからというようなことが積極的な理由としてあるとすると、むしろこれは、女性の方にそういう背景がある場合が多いのではないか。あるいは、自分の都合のよい時間に働けるからも女性の方に多いかもしれない。特に第一のところはそういったことがあって、今このような派遣労働者の中の女性の年齢分布にあらわれているのではないかというふうに感想を持った次第でございます。

阿部(知)委員 大臣、やはり厚生労働大臣になられたわけですから。私は、この図から、もちろん派遣という働き方もあり得るということは、今大臣がおっしゃったように専門技術を生かすとか、ございます。でも、大臣に感じていただきたいのは、では果たして、この二十五歳から三十四歳の女性たち、本当に派遣という働き方の中で産むことを選び取っていけるかどうかなんですね。

 このたびの政府の労働法制のさまざまな関連する法案の中でも、期間を限定された有期雇用の問題はほとんど触れられておりません。期間が限定されるということは、例えば、妊娠したらその派遣という働き方が続けられるのかどうか、非常に多くの若い女性が悩んでいます。これは男性を平均に入れてならすと、こうした特徴的なカーブは描きません。しかし、専門職として二十歳代、三十歳代の男性も決して少なくはございませんが、こうした特徴的なカーブは出てまいりません。

 大臣は産む役割とかいうことでおっしゃいますが、大事なのは、産めるような選択ができるような働き方になっているかどうかなんです。であれば、派遣という形態が現実に女性たちにとってどのように産むことが選び取りやすいか、有期という期限を限られた形態が影響をどう与えているのか、そういうことをもっときちんと精査していただかなくてはならないと思います。

 おまけに、大臣、御存じと思いますが、今、個人請負という形がございます。これは、雇用契約を結ぶものではなくて、自分が仕事を請け負って、例えば雑誌の編集者あるいはディズニーランドで踊っている人たち、女性たち、彼女らもみんな個人で請け負って仕事をやります。労働基準法も適用されません。最低賃金の枠もありません。本当に働き方がばらばら、多様になったがために、産むこと、選ぶことが、実は男性も女性も非常に厳しくなっています。

 その中で、昨日の審議の中で柳澤大臣は、少し去年が上がったから、その数値が少し上がったから。それはいいことだとは思います。でも、そこで安心していただいては困ります。特に、九〇年代後半からの働き方のノールールが今いかに若い人たちが産むことを選びづらくしているか、男性も女性も同じであります。

 大臣にここで質問があります。

 派遣労働という形態の中で女性が産むことを選びやすく、選び取りやすくなっているかどうか、実態についてつまびらかに調査をなさり、必要があればしかるべく対策をする。あるいはまた、派遣法はどんどん拡大してまいりました。製造分野にも拡大しております。昨日の審議の中でも、御手洗さんの御発言を引いて、この派遣の問題をどう業界側も考え直すかということをおっしゃっているやに伺いました。私は、日本の社会にとっても、ある意味で、期間があり、特に若い女性たちがここに中心的にいる働き方について、日本の少子高齢化を担う大臣がきちんとした現状把握をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 派遣につきましても、消極的に、正社員として働ける会社がなかったからという方々が、これは男女を通じてですけれども、多いということも事実でございまして、これに対しては、私どもは今度、パート労働法等でも、これをできるだけ正社員化するという方向で、方向づけていくという法律改正を考えているということでございます。

 それから、有期労働の方々についても、私どもは、契約法という法律を新たに創設しまして、できるだけ労働者の保護の方向で考えて法律改正をいたしたい、そういうことで今準備をしているということを申し上げさせていただきます。

阿部(知)委員 ちょっと論点はずれてございますが、私がお願いしたのは、やはり派遣という働き方の中で、女性がなかなか産むことを選べないということをもっと認識していただきたい。

 ちなみに、私のお出ししました資料の次のページには、長時間労働の女性ほど子供を持つことができない、少ないという資料がページの四枚目、これは厚生労働省の資料でございますから、有配偶者、これは女性正社員、正規のうちでもそうでございます。労働時間の問題も、賃金の問題も、働き方の問題も、まさに、例えば今まで手つかずの、本当の意味の手のついていない部分だと思います。大改革が必要なんだと思います。

 あともう一つ、喫緊の課題で、産む場の確保、お産をする場所の確保ということについて御質問をいたします。

 昨日の審議の中でも、これも枝野委員がお取り上げでございますが、今、お産難民という言葉が生まれて、女性たちがどこでお産をしたらいいのか、その場所がないという声が上がっております。

 きのうの大臣の御答弁であれば、医師の数は、産婦人科医は減ってきたけれども、一人の医師があずかる出産の数はそうそう変わっていないという認識でありました。私は、ここでまた数値と人間が逆転していると思うんです。女性たちは自分の生活圏の中で産みたいわけです。少子化してまいりますと、確かに数では一人の医師が扱うお産の数は一緒でも、エリアが広くなってまいります。場所が広がってまいります。自分の近隣には産む場所がない、これが今のお産難民であります。これを幾ら集約化しても、ますます生活基盤からは遠くなる。すなわち、家族政策からは遠くなるわけであります。そうであれば、大規模な、私は根本的な発想の転換が必要だと思います。

 例えば、カナダでは、助産師さんたちの活用を国の政策の中で大きく位置づけました。日本にも助産師法がございますが、昨日の枝野委員との審議を聞いておりますと、なかなか、本当に国が、地域で、その場で、自分の生活圏でお産をできるということに対しての手だてが、私は根本発想が転換されていないと思います。

 例えば、潜在助産師さんを、あるいは現状で看護師さんを夜の学校で教育して、申しわけないけれども、短時間の、本当に、非常に、看護師さんたちは日中の厳しい看護ということを、働いて、その後夜また学校へ行って、本当にそういう形で、看護師さん自身が体を壊すかもしれません。そんなに安直にできないんだと思います。

 国が助産師さんの養成ということに、例えば、もっと養成所に社会人枠をふやすなり、枠をふやすなり、補助を出すなり、私は医師会がやられることに、それは前向きなことですから、しかし、その中で、本当に、日中看護師さんをやって、夜また勉強して、人の体は機械ではありません、二十四時間働きづめはできません。そんなに簡便にいい助産師さんたちの教育ができるとは思いません。

 安倍総理に伺います。突然で済みません。

 産む場所の確保。実は、助産師さんというのは、単に産む、産まないという作業だけではなくて、家族サポートという大きな意味を持っています。国の政策の中で、今、産婦人科医ももちろん足りません、これはこれで手だてしなければいけません。でも、もっと助産師さんの活躍の場と育成に国として力を入れるべきではありませんか。お願いします。

柳澤国務大臣 大変恐縮ですが、先ほど阿部委員が、私の昨日の枝野委員に対する答弁で、あなたはこういう趣旨のことを言ったではないかというお話がありましたが、私は、女性の身近に、助産院というのは最近は少なくなりましたがいらっしゃる、それから診療所もあるということを否定してはおりません。これはむしろ充実させなきゃいけないということをしょっちゅう指示しております。

 ただし、非常に難しい状況になった妊婦さんの手当てというものは、やはり集約化して、高度な技術を持ち合って、複数のお医者さんがいるような、そういう中核的な拠点の病院をつくる必要があって、それとの間で、それぞれ、妊婦さんの近回りにいらっしゃる助産院を含めて、あるいは診療所との間できっちりしたネットワークをつくっていくということを我々は政策として考えておりますということを申し上げましたので、大変恐縮ですが、一言だけ申し上げさせていただきました。

安倍内閣総理大臣 きのうも答弁をさせていただいたわけでありますが、助産師の数が不足をしている、我々はそれは大変重大な問題であるというふうに認識をしております。

 であるからこそ、潜在助産師の方々を活用する、そしてまた、あるいは、助産師を養成する学校に対しての補助をしていく、たしか四十人規模で八校を新たに助成して拡充していくという計画がある、このように思っております。現在は九三%、約九四%が、厚労省のあれですと、いわゆる需給見通しということになっておりますが、これを、見通しでは、平成二十二年に九七%になっていくということであります。

 さらに、今申し上げましたようなことを拡充しながら、しかし、これは全体の数ですから、であれば、なかなかそういう方々がおられない僻地とか地方というところにも、地域的な、まさにミクロに目配りをしながら、連携を図るなり、そういうところに果たして人員が配置されているかどうか、助産師さんがいるかどうかということも十分に配慮をしながら、この充実に努めていきたいと思っております。

阿部(知)委員 一言だけ、厚労省の需給見通しは非常に現実を反映しておりませんので、そのことだけ申し添えて、終わらせていただきます。

金子委員長 これにて阿部君の質疑は終了いたしました。

 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 私も数多くの質問を過去にさせていただきましたけれども、予算委員会の場で少子化問題について質問をするのは、私の中では初めてかなと。大臣に対しましては、恐らく厚生労働委員会で何度か質問させていただいたわけでございます。

 まず冒頭、私は、少子化について総理にお伺いをしたことがないものですから、まずは総理に対しまして質問をさせていただきたいというふうに思うわけです。

 総理の施政方針演説におきまして、子供は国の宝です、安心して結婚し、子供を生み育てることができる日本にしなければならない、同時に、家族のすばらしさや価値、これを再認識することも必要です、このように発言をされたというふうに思います。

 我が国の合計特殊出生率の動向、それから人口構造の変化、こういうものを踏まえれば、少子化対策というものを強力に推し進めていくんだ、これは明らかでありまして、そして、安心して結婚して、子供を生み育てる、こういうことができる国にするということは喫緊の課題であることも事実だというふうに思っております。

 しかし、それは、国のために産めよふやせよ、こういうものであってはならなくて、産みたいと思う人が産みたいときに産んで育てることが、そういう社会的な、経済的な体制というものを整えていく、こういうことが必要であって、個人の選択ですとか価値、こういうものに踏み入っていくものではないというふうにも思っているわけでございます。

 家族のすばらしさですとか価値を再認識させるべき、こういう点についても確かに重要なことであるというふうには思いますが、それは国が国民に対して啓発していくような分野の問題なのか、価値観というものは人間の思想の根幹、こういうものをなすものではないのかなと。それを変えていくための施策を国がとろうとする、これは、例えば思想統制につながる場合もあるのではないかなというふうにも考えるわけですが、今後の少子化対策において、国が、個々人の価値観の問題、これをどのように扱っていこうというふうに考えられているのか、総理のお考えをお答えいただけますでしょうか。

安倍内閣総理大臣 子供を産む産まない、どういう形態の家族を構成する、あるいはまた、どういう生き方をする、それに対して国が立ち入るべきでない、これは当然のことでございます。日本というのは自由で民主的な国であり、基本的な人権を守ってきた国であります。それは今後とも変わっていくことがない。そうした個人の生き方に対する多様性、価値観に対して国が介入すべきでないということは、これはもう当然のことであろう、このように思います。

 と同時に、しかし、家族の価値、これは私は普遍的な価値ではなかろうか、このように思います。親が子供に対して愛情を注ぐ、あるいは子供がお父さん、お母さんを尊敬し、また、おじいさん、おばあさんを大切にする、そうした価値はやはり私は大切ではないか、このように思います。そうした家族のきずなについて、これはやはり、私は、殊さらおとしめていくことは間違っていると思います。そして、そういう風潮があるのも事実であるのであれば、そういう価値について、これはやはり大切な価値なんだなということをもう一度見詰め直していく必要があるのではないか、私はこう考えております。

糸川委員 ありがとうございます。

 そうしますと、先日の柳澤厚生労働大臣の発言の中で、女性という産む機械、装置の数は決まっている、あとは一人頭で頑張ってもらうしかない、こういう発言がありまして、安倍総理の内閣の一員であります高市大臣も、私自身、過去に病気をして子供を授かりにくい、というより授かれない、私は機械なら不良品かなということになる、同じ事情を抱える人、健康でも授かれない人もいる、女性が頑張っても少子化はなくならない、こういうような発言をされたというふうに思いますが、その中で不快感を示されているわけです。

 多くの女性たちからは、高市大臣の不快感というものは多くの女性が同様に感じていると言っても過言ではない、それから、国を代表する大臣があんな発言をするのであれば世の女性への蔑視というものを助長しそうで怖いんじゃないか、こういうような声も数多く寄せられておるわけです。

 国民の自由な意思による、子供をもうけるもうけないという価値観について、国が干渉することは疑問に思うわけですね。これは今総理も答弁されたわけですが。また、女性に対して、国民すべてに対して不快感や違和感を与えるような発言というものを公の場でなさった大臣は罷免されるべきではないかなというふうに考えますが、改めて、総理の考えはいかがか、お聞かせいただけますでしょうか。

安倍内閣総理大臣 当該の柳澤厚生労働大臣の発言は極めて不適切な発言であり、国民の皆様に対しまして、私からもおわびを申し上げたいと思います。また、柳澤大臣も、この問題に対して、直ちに発言を撤回し、そしておわびを申し上げているところでございます。

 今後、決して柳澤大臣が、今おっしゃったような、御指摘のような大臣ではないということを政策において証明していくことによって、しっかりと常に国民の皆様の立場に立って厚生労働行政を行っていく、特に、今課題となっている少子化対策について政策を実行していくことによって、また国民の皆様から信頼を得て、そして結果を出していくことによって職責を全うしてもらいたいと思っております。

糸川委員 変わらないという御答弁なわけでございます。これにつきましては、もう国民の皆様に判断をしていただくのがよいのかなというふうに思っておりますので、どうぞ、世論調査等もよく御検討いただいて、御判断いただきたいなと思います。

 厚生労働大臣にお聞きをしたいんですけれども、またこれもおとといぐらいですかね、二人以上の子供を持つ、そういう健全な考えを持っていらっしゃる人たちが多いというような発言をされたわけですが、それは、私も何を根拠かなと思っていましたら、こういう「月刊世論調査」なんかにも、これは内閣府の大臣官房が出されているもので、これは十月号なんですけれども、そこの中にも、十七年二月の調査から今回の調査も含めてですけれども、二人以上が理想の子供の数だと言っていらっしゃる方が非常に多いわけですね。八割以上の方がこの「月刊世論調査」というものでは言っているわけです。こういうものを根拠に言っていらっしゃるのかなと。

 ただ、今の出生率というものはそこに至っていないわけで、多くの方がこういう健全なとおっしゃるんだったら、その健全な考えを持っていらっしゃる、大臣のおっしゃる、健全なとおっしゃる人たちが多いのであれば、出生率との今のこの差というのはどこにあるというふうに御認識されていらっしゃいますでしょうか。

柳澤国務大臣 若い方々の、これはいろいろな人がいるわけですけれども、それを集計して全体として見ますと、そういうことで、今御指摘の状況、八〇%以上ですよということでございますが、それが、そういう希望を持つ方がそんなに大勢いながら、現実の私どもの直面しているものというのはそこに到底至っていない、希望がかなえられていないということでございます。

 したがいまして、その希望がかなえられていない状況を我々はますます真剣に分析をして、そこに本当に有効な手だてを考えていくということが私どもに課せられた任務だ、このように考えております。

糸川委員 その希望がかなえられていないというのは、大臣、どの部分が、若い人たちが希望をしているというふうに認識をされていらっしゃるのでしょうか。

 例えば、私は二人持ちたい、でも、いろいろな観点から一人しか持てないとおっしゃられる方々のことなんだろうと思うんですが、そういう方たちの希望というのは、政府として、どこにギャップがあるんだというふうに認識をされているのか。例えば、経済なのか、社会全体なのか。それを認識した上でないと少子化対策というのは難しいのではないかなと思うわけですが、厚労大臣としてどのように認識をされているのか、お答えいただけますでしょうか。

柳澤国務大臣 一つには、今糸川委員が御紹介いただきましたように、経済的な状況ということがあろうと思います。具体的には、自分の雇用が本当に安定しているか、それから収入というか所得というか、そういったものの現状、あるいは将来の展望、こういうようなものも影響しているだろうと思います。

 それからもう一つは、労働の時間と、それからほかの生活のもろもろの活動に割き得る時間、このバランスも非常に大きく影響しているだろうと思います。

 それから、さらに言えば、実際に子供を持った場合のいろいろな社会の施設、環境、保育所はどうだろうかとか、それは近いところにあるだろうか、こういうようなことも影響しているだろう。

 このように、もろもろあるだろうと思います。

糸川委員 大臣、ここの「子育ての辛さの内容」というところに、やはり「子どもの将来の教育にお金がかかる」ということが一番の大きな理由で、「自分の自由な時間がなくなること」とか、それから、「子どもが小さいときの子育てにお金がかかること」とか、「自分が思ったように働けないこと」とか、こういうようないろいろな例があって、これは内閣府さんがとられているわけですから、ぜひまた参考にしていただいて、生の声を反映させるような、ぜひそういう政策にしていっていただきたいなと思うわけです。

 もう一つ聞きたいんですけれども、少子化ということで特殊出生率が減少している、これが問題だということはよくわかるわけですが、正直、例えば、では、日本の総人口として、大臣がお考えになられる、年金の問題とかいろいろな問題をお考えになられる上で一番根本になると思うんですけれども、総人口、理想の人口論というものは今お持ちでいらっしゃるのか。例えば、一億五千万人がいいのか、一億三千万人がいいのか。

 出生率で見ますと、一・二五というものであれば著しく低いから、急激に降下しているから、これが問題なんだ、そこに対する対策を打たなきゃいけないということはわかるんですが、どういう形でというのは、それは今政策として挙げていらっしゃる。でも、理想の国家像というものを描かれたときに、当然その人口論というものが出てきてもおかしくはないのではないかなと思うわけですが、大臣、いかがでしょうか、その辺。

柳澤国務大臣 理想の人口論というようなことは我々は考えられない、このように思います。

 そうではなくて、ちなみに申しますと、例えば、現在、我々が人口問題研究所等を通じて、若い人たちの、結婚あるいは出産に対する意向調査というものを世論調査の形で調べたわけでございますが、ここに表明された希望がそれぞれどの程度かなったら日本の国の状況はどうなるだろうかということを調べているわけでございます。推計をしたわけでございます。

 そうしますと、二〇五五年の時点だったわけですが、希望がほぼ一〇〇%かなうような場合には、合計特殊出生率は一・七五になる、その場合には我が国の総人口というのが一億人を切らないレベルになるだろう、こういう推計が最近示されたわけでございます。

 そういうことで、ですから、なかなか希望をすべてかなえるというのは難しいかとも思いますが、できるだけかなえる方向で我々は政策を考えていくということが私どもの任務なのではないか、このように考えているところです。

糸川委員 確かに、政府としてこれだけの人数がということは言えないのかもしれませんけれども、例えば私の今おります福井県ですと約八十万人の人口なわけです。地方の分権が進んだりなんかしていきますと、本当にこの人数でこの県を守っていかれるんだろうかと、教育の観点からも、医療の観点からも。いろいろなところで、税収も含め、非常に悩むところであるわけです。

 ぜひ、今後の課題としても、どのくらいにしていかなきゃいけないんだ、そのために出生率を上げていかなきゃいけないんだ、あらゆる政策をとるんだ、少子化対策をとるんだというところを、やはり頭の中にはどこかに置いていただきたいなという希望がございます。

 そういう一つの中に、これは今度ちょっと総理に聞いてみたいんですが、仕事と家庭の、一つのテーマとして、自分の自由な時間が持てなくなるとか、仕事と両立が難しくなるとか、そういうことがテーマになっているわけですから、職場環境を整備することの第一歩として、育児休業の取得を促進させる、こういうことも一つの少子化対策という観点からも、そして雇用対策として積極的に取り組む必要があるのではないかなというふうに思っておるわけです。

 しかし、私の地元であったり同世代の知人女性たちから意見が寄せられておるわけですが、そこで総理にお尋ねしたいんですけれども、ある既婚女性が就職活動を行っていたときに、ほとんどの面接官が、彼女が既婚者であることを知ると、お子さんの予定はと聞く。質問された求職者の方は、すぐにも欲しい、こういうような回答をすると、これが原因かどうかというのはあれかもしれませんが、不合格になる。また、実際に出産の予定があると、こういう女性を雇いにくいんだというふうにきっぱりと言われた例もあるようでございます。

 総理は、こういうことが現実問題として存在しているんだということを認識されていらっしゃいますでしょうか。

安倍内閣総理大臣 ただいま糸川委員が指摘をされましたような相談が行政窓口に寄せられているということは、承知をいたしております。私どもとしては、女性がその能力を生かして社会にチャレンジできる、そのチャンスにあふれた社会をつくっていかなければいけないと考えております。

 今御指摘のあった点、女性の方にのみそういう質問をして、それを理由に雇用を行わないということは、やはり私は、それは問題であろう、このように思うわけであって、差別的な取り扱いを禁止しているわけでありまして、違反がある場合には、都道府県の労働局において厳正に対処しなければならないと思っております。

 そしてまたさらに、これは経営者側、雇用する側がやはり意識を変えていかなければいけないし、また意識を変えていくように我々も促していかなければいけない。女性を、また子育てをしている女性を雇用している会社に対して、そうした会社に対して我々がそうしたことをすることによって、会社にとってもやはりそれは有益なことであって、その会社の目指すべき方向である、そういう社会にしていくべきだろう、このように考えております。

糸川委員 今度、厚労大臣に質問させていただきたいんですが、仕事と家庭の両立というものを可能とする職場環境、これは先ほども、整備をしていかなきゃいけないんだ、それはあらゆる観点から整備をしていかなきゃいけないんだと。これは少子化対策の一環として必要なことなんですが、我が国の育児休業の状況を見ますと、女性の取得割合というのは非常に低い、七二・三%。ただ、五百人以上の規模では八七・三%なんですが、小規模、五人から二十九人の会社の規模ですと五八・五%と、企業規模によって取得率に差が生じているわけでございます。

 「少子化社会対策大綱に基づく重点施策の具体的実施計画について」、これでは、おおむね十年後の目指すべき社会の姿の例として、希望する者すべてが安心して育児休業等を総理がおっしゃられるように取得できる職場環境、こういうものにする、こういうことを示しておりますけれども、このような小規模企業では育児休業の取得というものが進んでいない。

 この要因はどこにあるのか、また、その対策として、厚生労働大臣として今後どのようなリーダーシップを発揮されるおつもりなのか、お答えいただけますでしょうか。

柳澤国務大臣 糸川委員が御指摘になられましたとおり、育児休業の取得率は、事業所規模でいいますと、やはり大企業と申しますべきでしょうか、五百人以上のところと二十九人以下のところではかなりの差があるということでございます。

 ただ、きのう小宮山委員から御注意がありましたように、これは、出産を機に退職をしてしまった後、継続して就業を続けていらっしゃるという前提で、そういうことが分母になって、それで育児休業の制度を利用している方の比率ということも我々念頭に置かなければいけないということでございますが、いずれにしてもそういう状況である。

 これは、一体どこからそうしたことがきているかといえば、やはり中小企業の場合、大企業に比べて経営の環境が非常にきつい、経営の基盤も弱いということが当然第一に挙げられると思います。

 しかし、第二に、育児休業を与える場合に、実は、賃金を払う必要がない、それからその方にかかわる社会保険料負担をそこではしていただかなくてよくなるというようなことが事実としてございます。育児休業手当というものをその女性なり男性は育児休業をするときにはいただけるわけですが、それはその企業からではなくて雇用保険からいただける、こういうことでございますので、実は経済的負担としてはないわけでございます。そういうことで、もちろん、そこをぽっかり、日ごろいろいろな仕事をしていらっしゃる方が抜けてしまうわけですから、それは別の手当てをしなければいけないということでございますが、そういったこともろもろが心理的な抵抗感になってこのような事態を招いているのではないか、このように考えられるわけでございます。

 そこで我々は、平成十八年度からですが、もう既に、百人以下の中小企業に対して、育児休業取得者が初めて出た場合には助成金を支給するというような制度を設けまして、育児休業の制度にもっとなじんでいただいて、これをしっかりと運用していただく、現実の企業の中で運用していただく、こういうことを推奨、誘導していこうということで、今、この助成金を活用しつつ、そうした普及、定着を図っていきたい、このように考えている次第であります。

糸川委員 ぜひ大臣、総理も、この職場環境については中小企業をやはりいろいろな面で、経済が伸びていくというときに大企業が先に伸びるということはよくわかるんですが、中小企業をぜひ守っていただいて、日本の多くは中小企業に支えられておるわけです、ですから守っていただいて、そして、そこで働いていらっしゃる労働者の方たちの労働環境も整えていただく、そういう支援をしていただくということが大きな意味での少子化対策につながるわけですから、ぜひ取り組んでいただきたいと思います。

 私は、あえてきょう非正規雇用の方たちの話をしませんが、私は持ち時間が少ないものですからしませんが、ぜひそういうところにも取り組んでいただきたいなと思います。

 もう時間がございませんので、一つちょっとお聞きしたいんですが、これは厚生労働大臣にお聞きしたいと思うんです。

 少子化対策関連の法案として、児童手当法の改正ですとか雇用保険法の改正、こういうものが予定されておるというふうに思います。児童手当法の改正では、三歳未満児の手当、これを五千円から一万円にされたというふうに思います。そして、雇用保険法の改正では、育児休業給付というものを休業前の賃金の四割から五割に引き上げるということでございます。

 三歳未満児の手当を、五千円だったものを一気に倍増させるということですが、この根拠は、どういうところに根拠があったんでしょうか。

柳澤国務大臣 乳幼児加算と我々は呼んでいるわけですが、普通の児童手当に加えて、三歳までの乳幼児を持っている場合には加算をしまして、児童手当を充実するということをいたしたわけでございます。これは、三人目のお子さんについては既にやっておったことですけれども、これはそうではなくて、一人目のお子さん、二人目のお子さんに対しても同様のことをすべきであるというふうに考えて、そうした措置をとらせていただくことに予定をいたしております。

 その理由いかんということでございますが、これはよく言われるわけですけれども、特に乳幼児の期間というのは、やはりいろいろな意味でお母さんが接触の度合いも多くしなければいけないというようなこと、それからまた、そもそもそのぐらいの年齢のお子さんを持っていらっしゃる若い両親の方々の所得のレベルを考えると、やはりそれを何とか支援していくべきだ、こういうようなことを考えまして、今回、特に一人目、二人目、こういうような、むしろそういうお子さんを持つ御両親こそ児童手当の充実を図るべきだ、このように考えて、そのような措置をとらせていただいたということでございます。

糸川委員 もう時間が終わりましたので質問を終わりたいと思いますが、五千円が一万円になったということですけれども、本当にこれで足りるのかどうか、今若い人が苦しいから一万円にしたんだとおっしゃられますけれども、場合によってはもっと大幅に予算を増額して、本当に今少子化に取り組むんだということであれば、確かに今回、取り組んでいらっしゃらないとは言いませんが、ぜひ総理にも一気呵成に取り組んでいただきたいなということを要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

金子委員長 これにて糸川君の質疑は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時二分散会


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