衆議院

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第8号 平成19年2月14日(水曜日)

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平成十九年二月十四日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 金子 一義君

   理事 斉藤斗志二君 理事 実川 幸夫君

   理事 杉浦 正健君 理事 園田 博之君

   理事 萩山 教嚴君 理事 森  英介君

   理事 枝野 幸男君 理事 中川 正春君

   理事 赤松 正雄君

      安次富 修君    赤澤 亮正君

      新井 悦二君    井上 喜一君

      飯島 夕雁君    稲田 朋美君

      臼井日出男君    遠藤 武彦君

      小野 次郎君    小野寺五典君

      大島 理森君    大塚 高司君

      大野 功統君    亀井善太郎君

      河井 克行君    河村 建夫君

      北村 茂男君    倉田 雅年君

      木挽  司君    佐藤 剛男君

      笹川  堯君    平  将明君

      中馬 弘毅君    冨岡  勉君

      中野  清君    長島 忠美君

      西村 康稔君    西本 勝子君

      野田  毅君    馳   浩君

      深谷 隆司君    牧原 秀樹君

      増原 義剛君    松本 洋平君

      三ッ林隆志君    三ッ矢憲生君

      三原 朝彦君    宮下 一郎君

      武藤 容治君    盛山 正仁君

      矢野 隆司君    安井潤一郎君

      山本 公一君   山本ともひろ君

      若宮 健嗣君    岩國 哲人君

      小川 淳也君    大串 博志君

      岡田 克也君    川内 博史君

      田島 一成君    中井  洽君

      長妻  昭君    原口 一博君

      古本伸一郎君    馬淵 澄夫君

      前原 誠司君    松木 謙公君

      大口 善徳君    丸谷 佳織君

      赤嶺 政賢君    佐々木憲昭君

      阿部 知子君    保坂 展人君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   総務大臣

   国務大臣

   (地方分権改革担当)   菅  義偉君

   法務大臣         長勢 甚遠君

   外務大臣         麻生 太郎君

   財務大臣         尾身 幸次君

   文部科学大臣       伊吹 文明君

   厚生労働大臣       柳澤 伯夫君

   農林水産大臣       松岡 利勝君

   経済産業大臣       甘利  明君

   国土交通大臣       冬柴 鐵三君

   環境大臣         若林 正俊君

   防衛大臣         久間 章生君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     塩崎 恭久君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当)       溝手 顕正君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (科学技術政策担当)

   (イノベーション担当)

   (少子化・男女共同参画担当)

   (食品安全担当)     高市 早苗君

   国務大臣

   (金融担当)       山本 有二君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   大田 弘子君

   国務大臣

   (規制改革担当)     渡辺 喜美君

   内閣官房副長官      下村 博文君

   内閣府副大臣       林  芳正君

   総務副大臣        大野 松茂君

   総務副大臣        田村 憲久君

   法務副大臣        水野 賢一君

   外務副大臣        岩屋  毅君

   財務副大臣        田中 和徳君

   厚生労働副大臣      石田 祝稔君

   環境副大臣        土屋 品子君

   防衛副大臣        木村 隆秀君

   内閣府大臣政務官     岡下 信子君

   総務大臣政務官      谷口 和史君

   総務大臣政務官      河合 常則君

   法務大臣政務官      奥野 信亮君

   外務大臣政務官      松島みどり君

   文部科学大臣政務官    小渕 優子君

   厚生労働大臣政務官    菅原 一秀君

   農林水産大臣政務官    永岡 桂子君

   国土交通大臣政務官   吉田六左エ門君

   国土交通大臣政務官    藤野 公孝君

   防衛大臣政務官      大前 繁雄君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    宮崎 礼壹君

   会計検査院長       大塚 宗春君

   最高裁判所事務総局経理局長            小池  裕君

   最高裁判所事務総局刑事局長            小川 正持君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           久元 喜造君

   政府参考人

   (外務省大臣官房地球規模課題審議官)       鶴岡 公二君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 木寺 昌人君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 本田 悦朗君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 伊原 純一君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   中根  猛君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            奥田 紀宏君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    小田部陽一君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   小松 一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  松谷有希雄君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       藤崎 清道君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            高橋  満君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       大谷 泰夫君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  阿曽沼慎司君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  水田 邦雄君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 金子 順一君

   政府参考人

   (国土交通省土地・水資源局長)          松原 文雄君

   政府参考人

   (国土交通省道路局長)  宮田 年耕君

   政府参考人

   (国土交通省国土地理院長)            藤本 貴也君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  山崎信之郎君

   参考人

   (日本銀行総裁)     福井 俊彦君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月十四日

 辞任         補欠選任

  稲田 朋美君     西本 勝子君

  遠藤 武彦君     牧原 秀樹君

  小野寺五典君     小野 次郎君

  大野 功統君     安次富 修君

  笹川  堯君     大塚 高司君

  中馬 弘毅君     赤澤 亮正君

  中野  清君     矢野 隆司君

  西村 康稔君     木挽  司君

  野田  毅君     松本 洋平君

  深谷 隆司君     平  将明君

  細田 博之君     北村 茂男君

  増原 義剛君     山本ともひろ君

  宮下 一郎君     新井 悦二君

  山本 公一君     冨岡  勉君

  小川 淳也君     長妻  昭君

  川内 博史君     田島 一成君

  中井  洽君     古本伸一郎君

  佐々木憲昭君     赤嶺 政賢君

  阿部 知子君     保坂 展人君

同日

 辞任         補欠選任

  安次富 修君     大野 功統君

  赤澤 亮正君     中馬 弘毅君

  新井 悦二君     宮下 一郎君

  小野 次郎君     小野寺五典君

  大塚 高司君     笹川  堯君

  北村 茂男君     長島 忠美君

  木挽  司君     盛山 正仁君

  平  将明君     亀井善太郎君

  冨岡  勉君     山本 公一君

  西本 勝子君     飯島 夕雁君

  牧原 秀樹君     安井潤一郎君

  松本 洋平君     武藤 容治君

  矢野 隆司君     中野  清君

  山本ともひろ君    増原 義剛君

  田島 一成君     川内 博史君

  長妻  昭君     小川 淳也君

  古本伸一郎君     中井  洽君

  赤嶺 政賢君     佐々木憲昭君

  保坂 展人君     阿部 知子君

同日

 辞任         補欠選任

  飯島 夕雁君     稲田 朋美君

  亀井善太郎君     深谷 隆司君

  長島 忠美君     若宮 健嗣君

  武藤 容治君     野田  毅君

  盛山 正仁君     西村 康稔君

  安井潤一郎君     遠藤 武彦君

同日

 辞任         補欠選任

  若宮 健嗣君     細田 博之君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 公聴会開会承認要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成十九年度一般会計予算

 平成十九年度特別会計予算

 平成十九年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

金子委員長 これより会議を開きます。

 平成十九年度一般会計予算、平成十九年度特別会計予算、平成十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑を行います。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、お手元に配付のとおり政府参考人の出席を求めることとし、その手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

金子委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

金子委員長 次に、お諮りいたします。

 最高裁判所事務総局小池経理局長、小川刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

金子委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

金子委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小野寺五典君。

小野寺委員 自由民主党の小野寺五典です。きょうは、質問の機会をありがとうございます。また、連日大変御苦労さまです。

 まず冒頭ですが、済みません、質問通告はなかったんですが、昨日、六カ国協議の合意文書の採択ということでこの協議が閉幕しましたので、ちょっとこのことに簡単に触れて御質問させていただければというふうに思っています。

 内容については既にもう報道で明らかになっておりますが、私ども大変心配しておるのは、いわゆる交渉相手がかの国といいますか北朝鮮、今まで、もう何度もいろいろな交渉をしながら、ある面ではのらりくらりと、ある面では約束をほごにされたということは言い過ぎかもしれませんが、そういう苦い経験がございます。

 早速、昨日北朝鮮内で報道された中には、例えば寧辺の実験用原子炉、これをこの合意では六十日以内に閉鎖ということになっていますが、北朝鮮内では一時停止という報道がなされ、またいろいろな不安が今後出てまいります。

 私ども日本として大変心配なのは、仮にもし北朝鮮がこの合意に基づきまして停止ということを行い、そしてまた、約束をしましたそれぞれの部会がございます、北朝鮮の非核化の問題とか米朝関係の正常化、そして日本にとって大切な日朝関係の正常化、これは拉致も含むというふうに伺っております。そのほか、五つの大切な部会がございますが、仮に北朝鮮がこの実験炉を含めて閉鎖し、また、この核施設の無力化ということも漸次行っていった場合、最後に、作業部会ということがあると思いますが、日本と北朝鮮の正常化の部会だけが例えばその進展が取り残され、あるいは部会は開かれてもここで拉致の問題の協議がなされない、これがネックになった場合に日本は非常に難しい対応を迫られると思うんですが、交渉事でありますので、なかなかここでいろいろなことを言うことは難しいと思いますが、もし現在の総理のお考えを聞かせていただければありがたいと思います。

安倍内閣総理大臣 六カ国協議で合意がなされたことは本当によかった、こう思っています。

 この合意の中で、初期段階の措置、これは六十日以内に実施をしなければいけない。この措置の中で、最終的に放棄をすることを目的として活動停止、これはシャットダウン、及び封印、シールするということになっています。これは寧辺の核施設であります。

 そして、今委員が御指摘になったように、初期段階の次の段階においては、すべての核計画の完全な申告の提出及びすべての既存の核施設の無力化等を行うということになっておりまして、この段階に進んでいくように北朝鮮に対して今後とも強く促していかなければいけませんし、そうした方向に進んでいくことを私も強く希望をしているわけでございます。

 その中で、拉致の問題でございますが、作業部会の中に日朝の正常化の作業部会が置かれているわけでございまして、これは、この作業部会において日朝は諸懸案を解決して国交正常化をする。この諸懸案の中には当然というか、この諸懸案の中でも最大の問題は拉致問題であるわけでありまして、この拉致問題が解決をしなければ正常化はしない、これははっきりとしているわけであって、それはこの作業部会が目的を達成することができないということになるわけでございます。

 つまり、北朝鮮は、この問題を解決しなければ、六カ国協議においての合意で決まったこの部会がすべて合意に達して北朝鮮をめぐる懸案が解決された状況にはならないということになるわけでありまして、つまり、この六カ国協議の中の枠組みの中に、我々、拉致問題もしっかりと位置することができた、このように思います。

 しかし、それはそう簡単なことではなかったわけでございまして、そもそも基本的にはこの六者協議は北朝鮮の核に対応するために設けられたものであり、日本は日本のこの問題を主張し、この六者協議で議論をし、そしてこの枠組みの中にも位置づけることができたわけでございます。

 今後とも、日本はこの問題を解決するためにも、外交力を生かして、また対話と圧力の基本的な交渉姿勢のもとに、この問題の解決を目指してまいりたいと考えております。

小野寺委員 これからまた長い交渉が続きます。大変御苦労があると思いますので、私ども期待しておりますのは、拉致の問題も含めたこの問題の解決ということになります。総理の強い姿勢ということが、北朝鮮側にも、そしてまた一緒にこの交渉をやっていただいているほかの四カ国にもしっかりと伝わると思いますので、ぜひ、この拉致の問題が解決しなければ、日朝の正常化、そしてまたこの支援、六カ国協議の今回の枠組みというのは日本としてはとても応じられない、そういう強い姿勢が必要かと思っております。総理の手腕に期待をしております。

 次に、同じくこれは外交問題になると思うんですが、一部新聞の報道によりますと、イラク特措法、これの二年延長というのが政府内でほぼ方針が固まり、そしてまたその内容でこれから国会審議に進んでいくという報道がなされていますが、このことについて、このような内容について既に政府内では固められたかどうか、お伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 イラク特措法の期限は七月三十一日でありまして、その期限以降の同法の扱いについては、現時点では具体的な方針は定まっておりません。

 これまで日本は、イラクの安定化が日本の国益にも資するという観点から、主体的に、自衛隊による人的貢献やODAによる支援といったものによってイラクの復興を支援してまいりました。そして、そのことは国際社会において評価されている、このように思います。

 自衛隊の活動につきましては、イラクの政治状況、また現地の治安状況、国連及び多国籍軍の活動や構成の変化など諸事情をよく見きわめながら、イラクの復興の進展状況なども勘案をして、そして適切に判断をしてまいります。

小野寺委員 まさしくそのとおりだと思います。イラクの現在の状況、そしてまた人道復興支援の進捗状況というのを判断しながら進めていくことがとても大切だと思います。世の中ではうがった見方をする方がいて、二年という延長幅、これはちょうどブッシュ大統領の選挙の幅に合わせているのではないかというちょっとうがった見方もありますが、そのような誤解を招かないように、きちっと日本としての体制をとっていただければと思っています。

 それでは次に、少し地域の課題についてお話をさせていただければと思います。

 昨日来いろいろな地域の経済あるいは都市経済、その差の問題について議論がなされました。確かに、例えば有効求人倍率であれば、愛知県が一・九一、それにかわって、例えば青森であれば〇・四六とか、沖縄が〇・四二、こういう地域によってそれぞればらつきがある。地域によってはまだまだ景気回復の明るさが見えない、そういうこともあると思うんです。

 私、地域、地元を歩いておりまして、こういう経済とか雇用のこと以外の面でたくさん生活の不安の声というのを聞きます。その声というのが、もしかして、この地域に住む皆さんが、なぜか私たち、美しい国ということ、非常に理想として、言葉としてはすばらしいんですが、ここに、もう一つふっと心に入ってこない、そういうところが反面にあるのかなと思っております。その内容について、少し、具体的な事例についてお話をさせていただければと思っています。

 初めに、お配りした資料の、済みません、二枚目をちょっと見ていただけないでしょうか。これは、特別養護老人ホームの入居者の方の利用者負担という問題です。ちょっと細かい資料で恐縮なんですが、平成十七年の十月に制度が変わりまして、これは、厚労省としましては、なるべく生活の厳しい方に対して優しくしたというお話がありました。

 例えば、第一段階というのがあります。丸の中で、利用者負担、以前は一カ月二万五千円、二・五というのは二万五千円だったのが、それが、右の方に行きますと、二万五千円、変わりません。その下、二段階になりますと、四万円が現行は三・七万円。三段階になりますと、これは年金八十万以上の方ですが、四万円が五・五万。こういう数字になっているんです。なるほど、そんなに大きな変化がないのかな。あるいは、一カ月の利用者負担というのは、二万五千円なり三万七千円なり五万五千円。もちろん、所得がある方は八万一千円という金額になっていますが、問題は括弧の中なんです。

 この括弧の中の数字というのは、実は、個室ユニット、ユニット形式のいわゆる個室型の施設になります。現状、実は、厚生労働省は、ほとんどの福祉施設、特養をこの個室にしようというふうになっています。現実に、新しく入ろうとすると、この個室、括弧の中の数字の金額を払う必要があります。例えば、この利用者負担であれば、生活保護の方は五万円。第二段階、年金八十万以下の方は五万二千円。第三段階、八十万から二百十一万の年金の方は九万五千円。金額は決して低くないと思います。

 ちょっと次のページを開いてみてください。

 これは、年金の受給の額です。国民年金と厚生年金を比較してみました。男女それぞれ分かれていますが、国民年金の場合、七十歳が男性が六万一千円、八十歳が男性が四万六千円、八十五歳以上が男性が三万七千円ということになっています。現在、特別養護老人ホームに入っていらっしゃる方というのは、恐らく八十五歳以上の方、平均の年金は、男性が三万七千円、女性が三万五千円ということになります。逆に厚生年金、これは八十五歳以上であっても、男性が十八万七千円、女性が十万五千円ということになっています。

 実は、地方、特に農山漁村は、国民年金の受給者の方が大変多いんです。都市であれば、厚生年金とか、あるいは公務員の共済年金に入っている方、勤労者が多いんですが、地方は国民年金の方が大変多い。そうすると、国民年金で、では、この福祉施設に入れるか。

 もう一度、前のページをごらんください。

 この年金から、三万七千円の国民年金から、実は、介護保険料四千円から六千円が引かれ、さらに医療保険も二千円から六千円ぐらい引かれてしまいます。そうすると、この保険から多分残るのは二万数千円です。これ以外に、当然、施設に入っていても、いろいろな細かい日常の日用品を買ったりすることもあります。

 ですから、本当に年金から残る額というのはごくわずかなんですが、それでいて、例えば今の年金者というのはこの第二段階に入ります。個室ユニット形式ですと、月五万二千円かかります。これは、ずっと国民年金を納めて、まじめに額に汗して働いた方が、実は最後に、では施設に入ろうかと思ったときには入れない、地域ではこういう不安の声がたくさんあります。

 せっかくの年金制度があります。ぜひ、この負担ということについては、心配りをしていただきまして、ちゃんと国民年金に入り、本当に仕事に従事し、一次産業に従事しても、最終的には息子、娘の世話にならない、自分の年金できちっと老後が送れる、そういうことが今後、制度設計として必要だと思いますが、このことについて、もし御意見があればいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 今、小野寺委員が御指摘になられたように、平成十七年の十月に介護保険制度を見直し、改正いたしました。そのときに、在宅と施設入所の方の負担の公平性という観点から、介護保険施設等における居住費、食費というものについては保険給付の対象外ということにいたしました。

 したがいまして、少しその分利用料が総体としては増嵩する、かさがふえる、こういうことになりましたけれども、当然のことながら、低所得者の皆さんには過重な負担とならないよう、所得に応じた負担上限額の減額を図っているところでございます。国民年金以外に収入のない高齢者につきましても、食費や居住費の負担を含めましても、制度改正よりも利用者の負担は総体としても軽減されるということをねらいとして負担軽減をしているということでございます。

 その他、社会福祉年金が運営主体となっている特別養護老人ホームについては、社会福祉法人の負担でもって利用者の負担を図るというようなことも同時に行って、利用者にとってさらなる負担軽減を図っているところでございます。

 そうした中で、今典型的な例を数字を挙げておっしゃっていただいたわけでございますけれども、そこの一番問題として提起されたゆえんのものは、要するに、最近の特養については個室型ユニットというものを推奨しているではないかと。そちらがどんどんどんどん数が多くなってきて、多床式というか、従来の特養というものが少なくなっている中で、実際に自分が高齢者としてそこに入居しようとするとその高い方のユニット型のしかないというような状況のもとで、こちらが負担できる財政力との間にギャップが起こるということが困るということでございますが、この点についてはちょっと誤解もあるようなんです。

 私も実は、この立場に立つまでは同じことを地元で訴えられていまして、けしからぬみたいな気持ちがしていたんですが、そういうことではなくて、今や都道府県の中で一般財源としてその施設を、どちらが多床式、どのくらいユニット式を建てるかということをお決めになって、地域住民のニーズに合った対応をとっていかれる、このように今承知をいたしております。

小野寺委員 そういうお話ですが、実際は、平成十六年にできた全国の老人福祉施設は、特別養護老人ホームの九八%が実はこの個室ユニット。いわゆる個室の立派なものしか今つくっちゃいけないとみんな思っているんです。この高いものしかできない。今から入る人は新設のところに入るしかないですから、既存のところは既にいっぱいですから。新設のところはみんな高い施設。その高い施設に入れる人は逆にどんな人かというと、共済年金とか厚生年金とかこういう方々。この制度をつくっている方は国家公務員共済の方なんでしょう、みんなそう思っているんです。

 きょういらしている議員の皆さん、私ども、議員年金がなくなりました。ということは、私たちも実は国民年金で将来ここに入らなければいけない。そう思った場合には、本当に同じ立場に立つ必要があります。

 それからもう一点、大事な指摘があります。

 実は、第一段階、生活保護を受けている、軽減しているという方がいますが、この方は個室ユニットには入ってはいけない制度になっているんです。ですから、生活保護の人は多床室、たくさんベッドがある従来型の施設しか入れないので、新しく生活保護になって、私は福祉施設へ入りたいと思っても、できているのは全部個室だけ。したがって、入れないんです。こういうことがある。こういう不安が地域の格差を招いているのではないかというふうに思っています。

 二点目、医者の問題。済みません、後でまた一緒に答えていただければと思いますが、お医者さんの問題があります。

 資料の一枚目をごらんください。

 これは、都道府県のお医者さんの数ということで、人口十万人当たりの数値を示しています。一番多い徳島県から一番少ない県までそれぞれ出ているんですが、県で見ると確かに差というのはそれほどないように見えます。

 ところが、例えばこの中の宮城県というのを見てください。仙台、人口十万人当たり二百九十余人、黒川というところは四十五人です。六・五倍あります。地域によって、同じ県内という数字のくくりじゃないんです。住んでいる人は県内のどこでも施設に行けるわけじゃなくて、地方に行けば行くほど、実は県庁所在地から三時間もかかるような場所がたくさんあって、地域の中で大変な格差があるということです。本当に医者不足は深刻になっています。

 こういう中で、一つお伺いしたいのは、実は自治医大という制度があります。自治医科大学、これは全国の僻地医療を担う先生方を養成するという目的で、たしか全国百人募集している。ところが、これは各県二名ずつということで、東京都も実はこの自治医大の枠を持っています。神奈川も持っています。たしか、理事長というのは東京都知事だと思っています。どんなに医者が少ない県でも二名の割り当てしかない。

 私は、この自治医大の問題、もし国としてできるのであれば、ここにしっかり、例えば五十人なり百人の別な枠をつくって、そして、全国の足りない地域、お医者さんが少ない地域に、そこに派遣するような、こういう均等割ではなくて、そういう新たな別な枠をつくってやる、そういう制度が必要じゃないかと思うんですが、このことについて、もし御意見をいただければと思います。

菅国務大臣 医師不足が非常に深刻であることは私どもも承知をいたしております。そうした状況にかんがみまして、昨年の八月に、総務省、厚生労働省、そして文部科学省、この三省共同で、自治医科大学について、平成二十年度から十名、最大十年間にわたって暫定的に定員増を認めるという新医師確保総合対策というのが取りまとめられました。内容は、委員御指摘のとおり、それぞれ都道府県二名ずつであります。

 ただ、この自治医科大学は都道府県が共同で設立をした医科大学でありますので、その定員増にかかわる定員枠の配分については、当然、全国知事会だとか自治医科大学が相談の上決めることになっておりますけれども、しかし、地域によっては非常に医師不足のところがあるわけですから、当然そうした地域に重点的に配されるものと考えております。

小野寺委員 十名ふやして、それも各県の寄り合いで、理事長が東京都知事という体制では、やはり本当に必要なところにお医者さんが回るのかというふうに心配があります。ぜひ、地域の安心枠みたいなものを国で設けていただいて、例えば五十名の定員をふやして、その五十名の定員が、地域医療、特に全国の中でここはどうしても必要だな、足りないなというところに充当できるような、そのぐらいの踏み込んだ政策をぜひお願いできないかというふうに思っております。

 もう一点、同じく地域を歩いて非常に不安な声が聞かれます。それは、恐らく、強い農業基盤をつくるということで今回制度を入れていただいて、大変御努力もいただいていると思うんですが、品目横断的経営安定対策、これはどうしても、例えば担い手に農地を集約するとか集落営農を推進するとかということになってしまいますので、取り残された農業、農地、小規模農家、こういう方々が、一体、私たちはこれから切り捨てられるのか、こういう不安を持っています。これも、どうも中央と地方で何か差があるなと思う根幹にあると思うんですが、そのことについて、ぜひ、安心だということ、そしてまた、決して、余りこの政策が、所得補償が前面に出るようなばらまきではないんだということを踏まえて、ちょっとお話を聞かせていただければと思います。

松岡国務大臣 お答えいたします。

 先生御指摘の点ですが、いろいろ御心配な点につきましては、私どものところにもいろいろ意見が参っておりまして、それを踏まえまして、さらなる対応をしっかりしなきゃならぬと思っていますが、まず端的に申し上げまして、今回の改革といいますのは、歴史的に言うと本当に一度か二度かあるかないかぐらいの改革でございますから、いろいろな戸惑いや混乱もそれなりにあるかと思っております。

 しかし、これは切り捨てではなくて、今のままでは三反、四反の方々は認定農家になるとか法人経営に移行するとかいうことは、規模的にもこれはかなり難しゅうございます。したがいまして、そういった方々がまとまっていただくことによって、集まっていただくことによって、みんなが担い手の中に入っていける、これはまさに切り上げ、底上げの政策でございまして、日本の農業の総合力を最大限に発揮していく、そのために進めているところであります。

 今現在、例えば秋の段階で、これは全国での平均ですが、目標に対しまして九〇%の加入率、一〇〇%を超えているところもありますが、地域によってはまだまだ十分でないところもありますので、先生の御指摘の点も踏まえまして、決してそれは切り捨てじゃない、切り上げなんだ、底上げなんだということで御理解いただきながら、皆様方に加入してもらうように努力をしてまいりたい、このように思っております。

小野寺委員 中山間地とか、どうしてもそういう、集約してある程度の規模拡大ができない場所もあります。そういう方にもちゃんと手当てをしてあげないと、本当にこういう面で日本の地域農村社会の崩壊につながらないように、ぜひお願いしたいと思います。

 最後に、最後の資料をごらんください。ちょっとカキのことをお話をしたいと思います。

 この資料の右の方の「カキの価格と生産量」というのを見ていただければと思います。左の棒グラフが、これは〇三年から〇五年、いわゆる平均の出荷数量です。右側が〇六年の、今漁期の出荷数量です。十一月下旬は大体同じような数字でしたが、十二月下旬にがくっと下がり、一月中旬にもがくっと下がっております。現在は、金額でいうと、二月では、例年に比べて約一六%しか実は金額が上がっていない、もうひどい状況になっています。

 なぜこんなことになったかということなんですが、左の方にあります。実は、十二月初めにノロウイルスの報道が出ました。ノロウイルスはどうして起きるのかというときに、実は厚生労働省のホームページで、ここにありますように、食中毒の原因として生ガキ等の二枚貝あるいはこれらを使用した食品の献立、こういう名前が書いてあります。しかも、下の方に写真が出ていまして、カキがどうもノロウイルスの元凶じゃないかということで、これがばあっと広がりまして、実は大手の量販店も、カキは出荷してくれるなということです。価格も下落、量はほとんど出ない。一年間カキ養殖に頼っている漁業家、漁家の方はたくさんいらっしゃいます。実は、この十二月中旬現在で、日本全国でカキ由来のノロウイルスの食中毒は一件も起きていなかったんです。ですから、全く無実の、本当にぬれぎぬを着せられたのが今回の状況でした。

 済みません、このことについて、その後していただいたことはありますが、ぜひ対応についてお話を伺わさせていただければと思います。

柳澤国務大臣 昨年十二月のノロウイルスの流行につきましては、昨年十二月八日、薬事・食品衛生審議会食中毒部会におきます専門家の先生方の御意見を踏まえまして、感染拡大防止の観点から「ノロウイルスに関するQ&A」というものを配布させていただきまして、手洗いの励行などの国民への周知を図ったものでございます。これが先生のこの資料ということでございますが、その資料の中に、やや立ち入ったところもありまして、途中の三分の二くらいのところ、Q12の三分の二くらい以下のところ、「また、」のところは、これは先生方の要望もございまして、ここはもうここで言うべきではないじゃないかということで、時間の経過でございますが、その中でこれ、改めさせていただいた、削除させていただいたところでございます。

 いずれにしても、その後、十二月十九日に風評被害の防止に努めるよう通知をいたしましたし、また、十二月の二十二日には、現実によく調べた結果、カキが原因食品として特定されたものはありませんでした、こういうようなことを明確にいたして、風評被害の縮小に努めるようにいたしました。

小野寺委員 今も本当にほとんど売れずに、もうことしの所得は平年の二割とか三割とか、これじゃ生活できないというのが現実で、しかも全く無実の状況です。

 今、大臣、その後ホームページを直されたと言いますが、実は今、手元に国立感染症研究所感染症情報センターというところのホームページ、これはきょう開いてきたものですが、ここにノロウイルスの感染症ということで、「代表的なものは生ガキによる集団食中毒である。カキの中腸腺に蓄積されたノロウイルスがヒトの小腸で増殖して引き起こされる急性胃腸炎である。」と書いてあります。厚生労働省の中でも、直すと言っても全然徹底されていないことがあります。本当にいまだにこういうかわいそうな目に遭っている方がいらっしゃるということをぜひ知っていただければと思います。

 時間がなくなりました。実は、こうやってきょう多岐の話をさせていただきました。本当に一つ一つ大切な課題なんですが、一問一答という形になりましたが、今回の、地方に住む方の気持ちとして、こういう一つ一つの不安が積み重なって、今の政権に関して、応援したいんだけれども、もう少し何か胸に入ってくる、すっと心に入ってくる、そういう言葉とか優しさとか政策とか、そういうものが欲しいな、そういう声が地域にたくさん満ち満ちているということをぜひ、総理、最後に一言受けていただきまして、優しい総理ですので、しっかりとした対応というお答えをいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 本日、小野寺委員が御指摘になった御質問は一つ一つ本当に大切な質問であり、地域の私は切実な声なんじゃないか。しっかりとそうした声に私たちこたえていくことによって、国民の皆さんが、日本の未来は明るい、各地域に住んでおられて一生懸命頑張っている皆さんが、日本の未来は明るい、そう考えていただけるような、そういう日本にしていきたいと思います。

 私も早速カキフライを食べたいと思います。特に宮城県産を食べたいなと思っています。

小野寺委員 どうもありがとうございました。

 カキも、フライも生もなべもおいしいので、よろしくお願いします。ありがとうございました。

 終わります。

金子委員長 これにて小野寺君の質疑は終了いたしました。

 次に、小野次郎君。

小野(次)委員 小野、小野と二人続きますけれども、総理、閣僚の皆様、きょうは、改革をとめるなという合い言葉で誕生いたしました自民党新人議員の一人として、安倍政治の原点ともいうべき問題につきまして総理に質問させていただきたいと思います。

 一遍聞いてみたかったという質問を用意してまいりましたが、予定した質問のすべてを消化することにこだわるものではございません。むしろ、限られた時間の中で、総理のお口から、同僚議員あるいは国民の皆様に対してわかりやすく存念を語りかけていただく機会となれば、私としては大変幸せでございます。

 昨年九月に誕生いたしました安倍内閣、当初七〇%を超える国民の支持が寄せられておりました。就任に際して、改革の炎、たいまつを燃やし続けると明言された安倍総理に対する国民の期待をあらわしていると思います。しかし、その後の五カ月の間に内閣支持率が、物によっては半分近くにまで低下してまいりました。世論調査の結果に一喜一憂せずというのはこれまでの内閣でも同じでございますけれども、それは、支持率が上がったり下がったりする場合に当たる言葉だろうと思います。

 国政選挙の結果を入学試験に例えるのが適当かどうかわかりませんが、仮に例えるとすれば、世論調査というのは、そのときそのときの模擬試験とか期末試験の結果というようなものだろうと思います。その意味で、成績が下降傾向にあるときには、一喜一憂せずなどとおっしゃらないで、率直に、思うように点がとれていない教科の克服に力を入れるべきだろうと思うわけでございます。

 私は、六年前の、改革の炎をともした小泉改革は、実は二つの柱から成っていると思っております。一つは、経済分野、郵政民営化など個別の改革であり、もう一つは、そうした改革を可能にする政治のあり方についての改革であろうと思うわけでございます。政治は国民全体のもの、あるいはまた、改革に反対するなら自民党をぶっ壊す、そういった有名な言葉は、いずれも、政治改革、自民党改革に関するものであります。

 政治改革と自民党改革に対する期待こそ、安倍内閣に対しても国民支持の土台をなすものでありまして、道路特定財源の一般財源化への方向づけなど成果を上げておられますけれども、こうした個別分野における改革の成果をもってしてもこれに取ってかわることは難しいと考えております。内閣発足以来、支持率がいま一つ上がらない、低下がとまらない事実を見ましても、この点に対する当初の国民の期待、それに対して信頼、期待が低下しているように感じられて仕方ございません。

 そこでお伺い申し上げます。小泉改革の一方の柱である政治改革及び自民党改革に向けた安倍総理御自身の存念を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 小野委員とは、総理秘書官を務めておられた小野委員と、私は官房副長官を務めておりまして、一緒に官邸で仕事をしたわけでございます。

 私は、総理に就任をいたしましたときに、改革の炎を燃やし続けていく、そのように宣言をいたしました。構造改革を進めていく。この構造改革を進めていくのは、構造改革自体が目的ではございません。人口が減少していく社会にあって、そして経済のグローバル化が進んでいく中にあって、構造改革を進めなければ日本の未来はない、このように考えたからでありまして、そして、この構造改革を進め、美しい日本をつくっていくというのが私の基本的な考えでございます。この姿勢にはいささかも変化はないということをはっきりと申し上げておきたい、こう思うわけでございます。

 昨年の予算編成におきましても、また税におきましても、道路財源をこれはまさに五十年ぶりに我々改革を行った、このように自負もいたしているわけでございまして、今後とも、この構造改革の炎は燃やし続けながら、断固として進めていくという決意を維持しながら進めてまいる所存でございます。

 また、政治改革につきましても、私は、官房副長官をやめた後、幹事長、そしてその後幹事長代理に就任をしたのでございますが、その際、党の党改革実行本部長に就任をいたしました。そして、自由民主党をもっとオープンな政党にしていく、若く、情熱のある人たちが自由民主党において国政を志したいという気持ちがあればそれを可能にする政党にしていく、そう宣言をしたわけでございまして、そして、党本部主導による公募制度を導入し、その仕組みも構築をしたのでございます。また、政治資金の問題におきましても、恐らく政党としては最も厳しい内規を決めることもできた、このように思うわけでございます。やはり、政治に対する信頼、これを私ども失ってはならないわけでございます。

 この構造改革そしてまた政治改革に私どもしっかりと決意を持って取り組んでいくことをここにお誓いを申し上げたいと思います。

小野(次)委員 ありがとうございます。

 最近、私の会館事務所に私の支持者である地元の市会議員が数名訪れまして、いすに座るや否やカメラを取り出して撮影しようとするので、私を撮ろうとしているのかなと思ったら、部屋を撮らせてくれと言うんですね。ここで年間数千万円もの事務所経費が落ちるんですかねというコメントなんです。私の方は、総理大臣から一年生まで、部屋の大きさや広さ、構造は全く同じですとだけ答えておきましたけれども、こういう笑えないやりとりが行われるくらい国民の国会議員を見る目には厳しいものがあるということを、私たちは重く受けとめなければならないと思うわけでございます。

 新人議員の多くは、政治の世界に入ってからの期間が短い分だけ、それまでの一般社会の会計経理の方になじんでいて、むしろ、政治資金収支報告の仕方には戸惑うことがしばしばございます。友達の公認会計士や税理士にどうしたらいいんだろうと聞いても、そちらのものはちょっと特別だからと取り合ってくれないことが多いんですね。領収書一つを取り上げても、百円未満のものまできちんととっておかなければ税務署は認めてくれません。経理の専門家を雇うことができないような個人事業者の方にとっては、これは本当に日々大変な負担をかけているんだろうと思います。

 それと比べて、より公的色彩が強いと私なんかは感じているお金を扱っている私どもがそうした手間や負担を免れていいんだろうかと素朴に感じるわけでございます。

 また個人的な話になりますけれども、先ごろ、選挙区支部の街頭活動用に中古のワゴン車を支持者から寄附を受けました。名義を書きかえる際に、私は当然政党支部とか政治団体の名義にできるのかと思ったら、できませんで、私個人の名義になってしまいました。価格は十万程度だと思うんですけれども、それであっても、スピーカーがついているような街頭活動用のものであるし、また、寄附してくれた方の意図を考えても、名義だけ見ると私の私用の車と同じになってしまうというのは、何か気持ちが悪いわけでございます。

 今疑問が指摘されている政治団体による不動産の所有についても、根底に同じような法的問題があるように私は感じます。

 総理は、既に法改正を視野に入れて検討するよう党内に指示したと述べておられます。

 そこでお伺いいたしますが、政治資金収支報告に関して、基本的にすべての使途について領収書添付を義務づけるとともに、政治団体が使用する不動産や自動車については、政治家個人名ではなく、真に所有し使用する政治団体名で登記や登録ができるよう法改正する必要があるんじゃないかと私は考えておりますが、総理御自身の御認識をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今、小野委員がおっしゃった論点は、今までもずっと議論がなされてきた論点であります。政党また政治資金管理団体、政治団体に法人格を与えるか、政党はそうなったわけでありますが、政治資金管理団体に与えるかどうかということも、たしか議論になったのを私も覚えているわけであります。

 この問題については、まさにこれは政党において、政党間で議論することではないか、私はこのように思うわけでありまして、今、行政府の長たる私がこれはこうするべきだと言うのは控えておいた方がいいのではないかと思います。これはまさに、議員の活動、政治の自由、そしてまたそれと同時に、政治資金の透明性の問題もございます。そういう観点から、政治資金規正法の改正も含めて議論をしていただきたい。まず自由民主党において議論をして、そしてそれをまとめていただくことが大切だろう。

 小野委員のように、いろいろな活動をしておられる方がおられるわけでありますが、その中において有権者の声、国民の声に真摯に耳を傾けながら、そして実際に活動している上において、経験の上においてこうすべきだという議論を深めていただきたい。そして、その上で、先ほど申し上げましたように、国民の信頼を得なければいけません。信頼を確保する、維持するという意味においてどう対応していくかという案を取りまとめなければならないと考えております。

小野(次)委員 この問題も政治改革の一環かなと思って総理御自身の御認識をお伺いしたかったわけでございますけれども、次の質問に移ります。

 収支報告のルールが変われば新しいルールに従って処理するだけだと考えているのは私だけではない。新人議員の場合には多いわけでございます。その意味から、政治資金収支報告のあるべきルールについてぜひ建設的な議論を速やかに始めていただきたいということを期待しております。

 既に指摘されている政治資金収支報告に関する疑問に関しては、この委員会、ほかの委員会を通じてその実態を明らかにする努力も当然必要だろうと思います。しかし、それだけでは、国民の前に与野党間の、泥仕合と言っていいのかどうかわかりませんが、言い合いだけの様子を見せるだけに終わってしまうんじゃないか。国民もそういう心配を持っていると思います。これまで疑問が指摘されている国会議員は、与野党とも自発的に国民の前にその詳細を明らかにすべきであると私は思います。

 そこでお伺いいたします。

 小沢民主党代表が事務所経費の詳細を公表するとおっしゃっておられますけれども、それと同時に、またはそれに先だって、事務所経費について同様な疑問が指摘されている閣僚、その他自民党議員についても、その詳細を国民の前に公表するよう総理から御指示されるお考えがおありかどうか、お伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 まず申し上げておきたいことは、何も、そういう事務所経費についていろいろと指摘をされている閣僚が隠しているということは全くないということははっきりと申し上げておきたい、このように思います。そのことはくれぐれも誤解がないようにしていただきたいと思います。

 そしてまた、閣僚が閣僚の職にかかわって、あるいは閣僚の所管にかかわって何か問題が指摘されているわけではありません。いわば、議員活動の中において、議員活動の一環において事務所経費がどうかという指摘がなされているわけでございまして、ですから、この問題については、一定以上の金額が例えば事務所経費に記載されているということであればそれは公表しなければいけないという規定をつくれば、それに従うのは私は当然ではないか。では、そのラインはどこか、幾らぐらいからそういう義務を課すかどうかということは、これはぜひ、先ほど申し上げましたように、議員同士が議論するべきではないか、私はこのように思うわけでございます。

 政治においては、入りの方も出の方も、何といってもこれは国民の目があり、そして、国民の信頼の上から初めて政策は実行できるわけでありますから、その考え方のもとに、真摯に、いろいろな批判を受けとめながら案を取りまとめなければならないと思います。

 私も党改革実行本部長のときに、いろいろな批判がございました。その中で、例えば政治資金においては、これは今まで現金で受け取るということがあったわけでありますが、この現金で受け取ることをすべて禁止して、銀行振り込みでなければならないということにいたしました。そうすれば、そのお金の流れが捕捉されることになるわけでございます。そしてまた、銀行の残高証明書を出すということも義務づけられていなかったわけでありますが、残高証明書を出す。これは一般の経理においては当たり前のことでありますが、それも導入をしたわけでございます。

 そのような形で、国民の批判にこたえ、そして信頼を確保するためにも……(発言する者あり)あなたは質問者じゃないんですから、少し静かにしていただけますか。いいかげんにしてくださいよ。

 ですから、そういう意味においてしっかりと党で議論をしていただきたい、私はこのように思います。(発言する者あり)

金子委員長 御静粛に願います。

小野(次)委員 ところで、与野党とも政治資金の透明性を高めるための議論をしている中で、政党により取り組みに温度差があるということを指摘せざるを得ません。

 日本共産党の国会議員の政治資金収支報告のあり方について、総務省にお伺いいたします。

 共産党の顔ともいうべき、国会議員である志位委員長及び穀田国対委員長について、御当人が代表を務める地元の政党支部及びそれぞれの方の資金管理団体の登録がなされているかどうか、総務省にお伺いいたします。

久元政府参考人 総務大臣に届け出がある政治団体、また、通告をいただきました神奈川県選挙管理委員会、京都府選挙管理委員会に届け出がある政治団体につきまして両選挙管理委員会にも確認をいたしましたところ、志位和夫議員、穀田恵二議員が代表を務められる政党支部あるいは資金管理団体の届け出はないところでございます。

小野(次)委員 その今の答弁を聞いて、どうも普通の政治家と違うなとまず疑問に思うわけでございますが、私が調査したところでは、その一方で、日本共産党の例えば京都府では、府委員会、その下に置かれている十五の地区委員会で支出されている事務所経費は年間一億数千万に上るというデータがございます。

 総務省にお伺いいたしますけれども、既に事前に通告申し上げているわけですが、この京都府委員会及びその下に置かれる十五の地区委員会において、政治団体の届け出及び政治資金収支報告書は出されているんでしょうか。

久元政府参考人 通告をいただきました日本共産党京都府委員会ほか十五団体につきまして京都府選挙管理委員会に確認をさせていただきましたところ、いずれも日本共産党中央委員会の支部として政治団体の届け出がなされているところでございます。

 また、これらの政治団体につきましては、いずれも平成十七年分の収支報告書が提出されているところでございます。

小野(次)委員 今、国政を預かる政治家一人一人の政治資金の透明性が議論になっているわけですけれども、共産党の国会議員は、各人が代表を務める地元の支部もない、政治資金管理団体も置いていない。そうすると、各人が使用する日常の事務所経費は、今私が質問した府委員会などの経理の中で処理されていると考えざるを得ません。このこと自体、各政治家ごとの支出実態が全く見えてこないという意味で問題だと私は思いますが、もしこれが事実だとすれば、日本共産党は、他の政党の場合の政治資金管理団体と同じ土俵にのせて、この府委員会などの事務所費の詳細を明らかにしていただく必要があるんじゃないかと私は指摘させていただきます。

 しがらみのない新人議員だから申し上げることができるのかもしれませんが、この際、与野党とも、政治資金の透明性を高めて国民の期待にこたえていくべきだということを私としては申し上げておきたいと思います。

 三番目の話題に移らせていただきますが、一年ほど前、私は、テレビ番組の中で、同僚の新人自民党議員と憲法改正に関するアンケートに答えました。憲法改正に賛成か反対かという問いで、多くの方は自民党ですから賛成だと答えたわけですけれども、私は賛否いずれにも手を挙げませんでした。それは、改正案各条の内容が明らかになった時点で初めて政治家として賛否を考えることができると思いましたので、その設問のあり方がおかしいということを司会者に申し上げたら、あなたは頭がかた過ぎるとからかわれてしまいました。

 現在公になっている改憲案は、あくまでも自民党の草案にすぎないと私は理解しています。また、今国会に提案されるであろう国民投票法案では、法成立から実際に憲法改正が提案できるようになるまでに一定の冷却期間を置くということが想定されていると私は承知しています。

 そこでお伺いしますが、総理は、次の七月の参議院選挙における争点に憲法改正問題を取り上げると御発言になっておられますけれども、その時点で憲法改正の具体的案文を、国民に是非を問えるような、提示して国民に是非を問うという御趣旨なのかどうか、確認させていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 自由民主党において、私が幹事長のときに憲法改正の草案を取りまとめるという方向を打ち出したわけでございまして、その後、党において相当の議論を行いました。一年近い議論を行った後、結党五十年を記念した式典の際に発表したわけであります。この自民党の憲法改正草案についても、党内でさまざまな議論を経て党の正式な決定をした後に、結党五十年大会において正式に発表したところでございます。

 もちろん、憲法改正については国会議員の三分の二以上の発議が必要でございます。大変高いハードルがあるわけでございまして、その中で、我が党の案がそのままそれは憲法改正ができる、我が党の案でできるということでは私はそれは当然ないんだろうと。しかし、私どもの考えは示さなければならないのは当然であります。憲法改正ありきではなくて、どういう憲法をつくるかということも、当然、極めてこれは重要なことではないかと思います。

 私が憲法改正をするべきだと考える三つの理由については、累次述べてきておりますのでここではそれは避けたいと思うわけでありますが、あの案が、まさに私が総裁をしている自由民主党の案であります。与党の中でも議論、そして政党間でも協議をして、憲法改正に向けて進めていきたい、そして、その中で私は憲法改正について政治スケジュールに乗せていきたい、このように申し上げているわけでありまして、歴代の総理の中でそれを具体的に申し上げているのは私が初めてであろうと思います。そうでなければ、これは全く前進をしないということになってしまう。ですから、参議院の選挙におきまして、私はこの憲法改正について、政治スケジュールとして憲法改正を目指していきたいということは申し上げます。

 そして、私たちの案としては、自由民主党で既にお示しをした案でございます。これはもう前文からすべて全文の書きかえというか、新しい憲法をつくるという考え方のもとに白地から書き上げたものでございます。それが私どもの案でございますが、その案そのものを、これは、具体的に例えば来年できるということでは全くないわけでありますから、議論を開始しようということを強く訴えていきたい、このように思っております。

小野(次)委員 今の御答弁はよくわかるような、では、どう争点にするのかな、どこを争うのか、その議論をすること自体、あるいは、そういう方向を目指すこと自体に賛成か反対かを国民に聞くのかなと、そこがちょっと明確でないような気がして、いずれにしても、七月の時点で、この案文について国民の皆さん賛成ですか反対ですかというのを聞くのではないという意味では、そう理解してはいけないんですか。

安倍内閣総理大臣 ですから私どもは、自民党の案は自民党の案としてでき上がっているわけであります。ただ、政党間協議が行われていませんね。しかし、自民党の案としてはこれですよということで当然それは戦うわけでありますが、しかしそれは大変大部なものであります。

 そしてそれと同時に、憲法は指一本触れちゃいけないという時代が長い間あったじゃないですか。それに対して、それをどうするかということを我々が挑戦していくということでございます。その点については、国民の理解を得るために訴えていくというのは当然ではないだろうか、このように思います。

小野(次)委員 憲法を改正できないと私ども学校教育の中でも教わってきましたが、そんなタブーはあり得ないんだということについて国民の理解を得るというんであれば、よくそれは理解できるところでございますけれども、次の質問に移らせていただきます。

 国民投票法というのは、将来、国会あるいは国民の間に憲法改正について意見の集約が図れるめどが立ったときに、では、どうやって憲法改正の手続をとるかという手続を定めるものでありまして、その意味では、私は、憲法改正の是非についてニュートラルな性格のものだろうと思っています。

 そこでお伺いしますけれども、今国会で審議されると言われている国民投票法案に賛成するということが、将来、国会で議論される具体的な憲法改正案に対する賛否に結びつくものではないんだということについて、私は、この時点で、国会議員、同僚議員や国民の皆さんにもよく周知、また理解していただく必要があるのではないかと思いますけれども、総理の御認識をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 この国民投票法案は、憲法第九十六条にある改正手続において具体的にどう手続を進めていくかということを定めるものであって、むしろ、憲法九十六条が定めているこの改正の手続を私たちは国会議員として立法によって定めていく、まさにそういう意味においては義務を果たしていくということではないだろうか、このように思うわけでございまして、この国会において議論がなされ、成立していくことを期待したい、このように思います。

小野(次)委員 最後の話題に移らせていただきますけれども、総理は、自民党総裁また総理に就任されるに当たって、「美しい国、日本」をつくるということを掲げられました。それ自体、大変高い理想であることはわかるのでありますけれども、その内容については何か十人十色の理解がなされているように感じます。文字どおり、自然景観のことなどと理解している方もおられますし、我が国の歴史や文化について誇りを持つことであると解している人もおられます。

 しかし、日本に限ることではありませんけれども、ある一つの国の自然、社会、歴史、そして文化には、一方で美しいと感じたり誇りに思う面があると同時に、見苦しいとか自慢できないなと感じる面もあって当然だろうと私は思います。そうしたネガティブな面について言えば、それを人の手によって手直しできる性格のものと、もうどうにも動かせない、変えられないものというのもあるということも事実だろうと私は思います。

 そこでお伺いしますが、総理の掲げている「美しい国、日本」づくりとは具体的にどのようなイメージのものか、いま一度、大変恐縮でございますけれども、わかりやすく説明していただければ幸いでございます。

安倍内閣総理大臣 あと数分間しかなくなってしまいましたが、私が目指す美しい国の姿、それは、今委員が御指摘になった美しい自然や文化や伝統や歴史、そういうものを大切にする国でなければならないと思います。そしてまた、自由な社会を基盤として、自律の精神を大切にする凜とした国でありたい、こう思っています。そしてそれと同時に、成長し続けるエネルギーあふれる国でなければならない、このようにも思っています。そしてさらには、世界の人々からあこがれと尊敬を持たれ、そして愛される国でなければならない。

 そういう国になっていくためには、まずやはり私は、何といっても人材が大切ではないか。そのための教育再生に取り組んでいかなければならない。であるからこそ、私の内閣においての最重要課題として教育の再生を掲げているわけでございます。

小野(次)委員 政治が「美しい国、日本」という高い理想に向かって国民の皆様を導いていこうとするならば、今、総理のお言葉にもございましたけれども、世界の国からも尊敬されるようなという表現があったように思いますけれども、そういう理想を掲げるときには、政府も、内閣も、政治家も、その理想を語るだけの尊敬と信頼を国民から得られる存在でなければならないと私は思います。

 そこで最後の質問でございますけれども、「美しい国、日本」づくりを進める上で、やはり私は、美しい心を持った日本人がその土台になるものだろうと思います。そのためにも、清潔で信頼できる政治を実現することこそ肝要だと思いますが、これに取り組む不退転の決意を総理がお持ちかどうか、もう一度御認識を伺って、私の最後の質問にさせていただきます。

安倍内閣総理大臣 私は常々申し上げていますが、政治家は、やはり国民の信頼がなければ仕事ができない存在ではないか、このように思います。私ども、信頼をしっかりと確保するために全力を尽くしていきたい。

 そしてまたそれと同時に、やるべきことは断固としてやっていくという信念を持たなければならない、こう思っています。みずから省みて直くんば一千万人といえども我行かん、この精神で進めていきたいと思います。

小野(次)委員 私ども新人議員も、経験こそ少ないですけれども、そういった総理の高い理想実現のためには本当に粉骨砕身お手伝いさせていただきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

 きょうはありがとうございました。

金子委員長 これにて小野君の質疑は終了いたしました。

 次に、丸谷佳織君。

丸谷委員 おはようございます。公明党の丸谷佳織でございます。

 本日は、北海道夕張市の財政再建と、また夕張市の将来像につきまして質問をさせていただきます。

 昨年六月に地方財政再建促進措置法に基づいて財政の再建に取り組むことを表明しました夕張市の責任問題につきましては、昨日の当委員会でも議論をされまして、私も政府の考え方につきましては注意深く拝聴をしておりました。

 実績赤字額が三百五十三億円、これは夕張の標準財政規模の八年分に相当するという額でございますけれども、これほど膨大な赤字を抱えるに至った理由には、一義的には、当然のことながら、市の不適切な財政運営にあったことは間違いございません。と同時にまた、ほかの要因もあることも事実でございます。

 例えば、一九六〇年の夕張市の人口というのは約十二万人でございました。平成十八年の十一月時点では一万二千九百六十九人と、この四十五年間で約八八%の人口減になっております。また、高齢化率は四〇%を超えておりまして、全道一の高さになってございます。

 背景には、当然のことながら、石炭から石油へと国のエネルギー政策の転換というものがございまして、旧産炭地法等々の法施行、実施はございましたけれども、いまだに北海道では、旧産炭地からは、国の責任というものを問う声が少なくないというのが現実でございます。

 観光事業あるいは宅地造成事業などの特別会計とか病院事業などの企業会計の赤字を埋めるために行われました不適切な会計のあり方は、市の責任でございまして、責められるべきものというふうに考えております。しかしながら、その陰で、財政破綻をした町に暮らすという不安の中でも、現在、この雪深い夕張の市におきまして必死に頑張っている市民がいることも同時に忘れてはならないと思います。

 実際にお伺いをしました声では、自分がたとえ最後の一人になったとしても、市の行政を全うするために頑張っていこうと腹を決めましたという市の職員の方、あるいは、他市町村への移転が相次ぐ中、大好きなふるさと夕張を再建させるために自分はここで頑張ろうということを決意しました青年の方、今、多くの市民の方が自分たちにできることは何なんだろうということを考え、そして実際に行動を起こし始めているというこの夕張の現状を目の当たりにしたときに、夕張市が悪いということだけでは市民を勇気づける政治的なメッセージにはなっていかないのだろうというふうに考えまして、質問をさせていただきます。

 まず、総理大臣から、財政再建団体に至りました夕張市についてどのような見解を持っていらっしゃるのか、お考えを聞かせていただきます。

安倍内閣総理大臣 ただいま丸谷委員が御指摘になったような事情、まさに産炭地として全盛時代には十一万人であった人口が、これは昭和三十五年ですか、平成十七年には一万三千人に急減したということでありますが、こういう中にあって、投資規模がやはり過大になってしまった。そしてまた、人口減少等により大変大幅に収入が減少した。それへの対応ができなかったし、また十一万人というかつての規模のままの投資が行われていたということもある。さらには、不適正な財務処理があった。つまり、実際の財政状況を正しく把握することができずに、むしろ、それを隠していた等のことがあってこのような多額の赤字を抱えるに至ったわけでございます。

 しかし、地方の町は多かれ少なかれ人口減少に悩んでいるわけでありまして、そういう町、地域によっては、確かに人口が減少していけば収入も減少していく、そういう中でどうしていこうかという大きな不安を抱えているところがたくさんあるのも事実であろう、このように思います。

 しかしながら、夕張市が行ってきた過度な投資や不適正な財務処理等々の結果ということに対して、国がどう対応していくかという課題がございます。こういうことは、やはり基本的に、地方は地方でちゃんと責任を持っていただかなければならない。一方、そこに住んでおられる方々、今丸谷委員が御指摘になったように、何とかこの地域で頑張っていきたい、そういう人たちに、何とか将来に夢を与えたいという気持ちも当然私たちにあるわけでございます。

 その中で、地方自治体の財政運営はやはりそれぞれの責任において行われるものであって、財政再建も夕張市の責任において行うことが基本でございますが、その際には、基礎的な行政サービスの提供を確保することが当然前提になる、これは当然私どもも認識をしています。その地域で頑張っている人たち、何とかその地域で自分たちの力を生かしたいと思っている人たちがいれば、当然そういう基礎的なサービスは行っていかなければいけない。

 そしてまた、夕張市の財政再建に当たっては、徹底した歳入歳出の見直しをする中にあっても、高齢者と子供たちには特段の配慮が必要である、こう考えています。

 また、市民生活にも長期にわたり大きな影響が生じるわけでございまして、北海道とも緊密に連携をして、地域の再生に向けて必要な支援を行っていかなければならないと思っています。

丸谷委員 ありがとうございました。

 総理がおっしゃるとおり、少子高齢化、世界の中でも著しい我が国におきまして、現在の財政の中で徹底した無駄遣いの廃止、あるいは行財政改革というのは当然行っていかなければなりませんし、小泉政権から、また安倍政権の中で引き続き行われているものと承知をしております。

 その中で、不適切な財政運営を行った夕張市の行政に対して責められる部分と、また、財政破綻をしながら、その市において再チャレンジをまさしく今しているこの市民の皆さんに向かって安倍内閣がどういったエールを送ることができるのかというのが、まさしくこの夕張問題の根本でもあるというふうに思います。

 その中で、今総理がおっしゃいました、高齢者の方また子供に対する特段の配慮という御発言がございましたけれども、菅総務大臣は、昨年、暮れも押し迫る十二月二十九日に実際に夕張市を訪問してくださり、実態をごらんになっていただきました。

 巨額な赤字を抱えます夕張市においては、当然のことながら、徹底しました行財政改革が行われておりまして、例えば市の職員の給与は、一般職で平均約三割のカット、特別職の方は六割から七割のカット、また退職手当も、段階的に削減をしていき、平成二十二年度では最大で四分の一の額まで削減を行うこととなっております。また、生活に密着したところでは、火葬場も含めまして、施設の使用料は五〇%のアップ、そして、ごみ処理ですとか住民票交付などの各種手数料も軒並み引き上げになっております。

 廃止する事業も非常に多く、生活福祉に関しては特に不安を訴える声が多い中で、生活をする上で支援を必要とする方に対しては十分な配慮がやはり必要だと考えることから、菅大臣にお伺いをさせていただきます。

 大臣の御発言の中でも、高齢者また子供に対する配慮が必要だという御発言がございました。夕張市は、この大臣の発言も受けまして再建計画の考え方を修正したところでございますけれども、その内容について、大臣が配慮が必要だと言っていただいた旨の修正がなされたものというふうにお考えになっているのかどうか、この点についてお伺いをいたします。

菅国務大臣 私、昨年の暮れに夕張市を訪問しました。そして、総理から言われたことは、高齢者と子供には配慮をするように、そういう御指示でありました。

 私自身、夕張に行った目的が二つありまして、一つは、今夕張で生活をしている市民の皆さん、国は、一定水準の住民サービスというのは、これは保証します、ですから、ぜひこの夕張で安心をして住み続けていただきたい、これが一つの私のメッセージであります。

 そしてもう一つは、これから夕張市から私に対して再建計画が参ります。それに私は同意をする立場でありますので、その同意をする前に、やはり現場というものを自分の目でしっかりと見て判断の参考にしたい、そういう二つの思いで夕張市を視察しました。そして、多くの施設も見ました。そしてまた、市民団体の皆さんともお話し合いをさせていただきました。

 そして、私が行った結果、総理の御指示の中で高齢者に配慮、当時の計画と変わった項は二点ありまして、当初は、敬老パス、バス運賃の助成でありますけれども、これは廃止する予定でありました。しかし、これは、行ってよく話を聞いてみますと、病院まで行くのに一番高い人で九百三十円かかるというんですね、片道。やはりこれは高齢者の皆さんにとっては大変な負担になるだろう、そういう思いで、当時は自己負担二百円でありましたけれども、それを百円上げていただいて三百円、そのかわり敬老パスは残させていただく。

 あるいは、公衆トイレでありますけれども、全部でこれは七カ所あったんです。公衆トイレというのは、ない地域も数多くあります。しかし、高齢者の皆さんからお話を聞いたときに、その近くに民家もないのでぜひというお話がありました。ここは二カ所残させていただくことにしました。ただ、これにつきましても、地域住民の皆さんの協力によって経費というのを大幅に削減するという形で二カ所残させていただく。

 そして、子供でありますけれども、保育料の引き上げでありますけれども、これは国並みの水準にしてほしいという当初の考え方でありました。現に、北海道でも国並みの水準にしている市町村があるんです。しかし、一番高い方で一カ月一万円ずつふえる方がいらっしゃいましたので、それは、数年間猶予をして、段階的に国並みにしていただこうと。ですから、当初三年間は今のままという形でなってきております。

 それと、プール、これは全部で五カ所あったんです。当初の案では全部これは廃止でした。しかし、やはり子供たちにプールというのは私は必要だと思いましたので、夏の間一カ所、子供たちがプールで泳ぐようにできる、それが必要かなというふうに思いました。

 それと、学校統合でありますけれども、中学校は一つでありますけれども、小学校は、実は四百数十人の中に七校の小学校があったんです。これはだれが考えても余りにも多過ぎますから、当初一つの予定でありましたが、地域が非常に細長いということもありまして、地域住民の中で、皆さんで、一カ所であれば余りに不都合であるということであれば、それは二カ所ということもあり得るんじゃないかな、そういうこともぜひ含めて検討してほしい。

 それが、当初と比較をして高齢者と子供で変わった点であります。

丸谷委員 高齢者と子供に対して安倍内閣として特段の配慮をしていただいたものと思います。

 実際に、小学校、現在、子供の数にしては多過ぎるという御指摘もあると思いますけれども、やはり土地的な問題もございまして、学校の数を減らすに当たっては、遠方からその学校に通ってくる子供も当然発生するわけでございますので、スクールバスの導入等、運ぶ手段というのも今後新たなテーマとしてまた出てくるものというふうに考えておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 また一方で、廃止される事業の例を挙げさせていただきますと、市民法律相談を設置していたものの廃止ですとか、あるいは高齢者の配食サービスの廃止、精神障害者通所交通費の補助の廃止、あるいは重度障害者の福祉タクシー料金給付の廃止、子育て支援センターの廃止、農業担い手誘致対策の廃止等々、生活に密着したものも数多くございます。

 先ほど申し上げましたとおり、市職員の退職手当を段階的に減らしていくという影響が非常に大きくございまして、本年三月までに、一般職三百九人のうち百五十二人が退職予定でございます。一気に半減する事態となっておりまして、これに対しては、行政サービスの水準を保つために道からも職員を派遣していただいている次第でございますが、この再建期間自体が十八年間という、比較的長い、かなりの長期と言ってもいいと思いますが、再建期間になってございます。

 この計画素案につきまして政府としてどのように評価をされているのか、この点について菅大臣にお伺いいたします。

菅国務大臣 まず、委員からも御指摘ありましたけれども、夕張市の職員の数なんですけれども、当初十一万数千人いたときは六百人だったんですね。今、十分の一になりました。しかし、まだ三百人いるんですね。全国の一万三千人ぐらいの規模というのは大体一万五千を切っておりますから、少なくとも全国平均ぐらいまでは下げてもらわなきゃならないというのは、これは国民の声だというふうに私は思います。夕張市ができるだけ……(発言する者あり)百五十人ですね、失礼しました、職員の数が。一万三千人に対して職員が三百人おりましたから、それを、全国平均が百五十人ですから、少なくともそれぐらいまでには夕張市も頑張ってほしい、これは当然のことだというふうに思っております。

 そして、私自身も夕張市に行って、夕張市の市民の皆さんから、自分たちのこの市は自分たちでつくっていくという、そうした息吹というんですか、私にはそういうものを肌で感じ取ることができました。ですから、そういう意味で、夕張市が全国と比較をして、これだけ頑張っているんだからということであれば、これは全国の国民も国もできるだけ支援をしていく、このことは私は間違いないというふうに思っております。

 再建期間、十八年でありますけれども、これは当初は二十年だったんです。やはり、夕張で生活する人にとって将来に対しての希望というものがなければならないと私は思いましたので、それは、できるだけ短ければ短い方が実は私はいいと思いました。そういう中で、夕張市が最大限の努力をし、北海道庁もさまざまな支援をする、この十八年というのはぎりぎりの判断であるかなというふうに実は思っています。

丸谷委員 ありがとうございます。

 続きまして、再建法制のことについてお伺いをいたします。

 政府は、昨年の十二月に、新しい地方財政再生制度研究会の「新しい地方財政再生制度の整備について」の取りまとめを受けまして、現在、地方公共団体の新たな再建法制を検討されていると承知をしておりますが、この中で、現行法制では認められていない収支不足を解消するための地方債を制度化するお考えというのはお持ちなのでしょうか。また、こうした地方債が制度化された場合に、法律制定後、夕張市に適用するということは可能になるのでしょうか。

菅国務大臣 現在の再建法制では、地方団体が再建をするということを議会で決定しなければ国は何もできない。ただ、その時点においては、すべて、やりようがないぐらいの状況になって初めて破綻するわけであります。しかし、私どもは、中間地点があっていいじゃないのか、例えばレッドカードに行く前にイエローカードというのがあってもいいじゃないかと。そういう、いわゆる第三セクターとか市が関係するすべての指標というものを新たに出して、それが一定水準のものになったらそこで危険信号を出して計画を出してもらう、そういうことを今度の国会に出させていただきたいというふうに思います。

 その中で、今委員御指摘されました地方債、これについては検討をいたしております。この法律が成立をすれば、これは当然夕張市にも適用されるというふうに私は考えています。

丸谷委員 現行の再建法制下で現在夕張市は再建計画を策定しているわけでございまして、実際には、赤字相当額を繰り上げ充用しながら、実態として一時借入金の借り入れを繰り返しながら財政再建を進めているという状況でございます。

 こういった中で、金利の安定化などを図るため、北海道は、その支援策としまして、市の赤字相当額約三百六十億円を低利の〇・五%で貸し付けることといたしました。この利子の軽減分につきましては北海道が負担をするということになりますけれども、夕張市は、いわば、こう言っていいのであれば、国の制度改正のはざまにあって、現行法のもとでは、北海道がかわって必要な措置をとらなければならないという状況であるとも考えます。

 このほかにも、北海道としては、医療ですとか、あるいは交通、除雪等の面でも支援を行うこととしていますが、菅大臣は、北海道に対しまして、道が行う支援については国も支援をするという旨の発言をしてくださいました。改めて、北海道の負担に対する国の財政支援についての大臣のお考えをお伺いいたします。

    〔委員長退席、萩山委員長代理着席〕

菅国務大臣 財政再建期間中であっても必要な市民サービスというのは当然行わなきゃならないというふうに思っていますし、そのことは私どもも保証させていただきたい。

 そういう中で、今委員御指摘のとおり、北海道は、財政支援をする、そういうことを決めています。国としましては、北海道というのは、道庁は北海道全体の市町村のことをよくわかっていますから、そういうものの中で、これぐらいは支援をしてもいいだろう、そういう判断のもとに道はするというふうに私は思っていますから、道が支援することについては、私どもも支援をさせていただきたい。

丸谷委員 どうぞよろしくお願い申し上げます。

 夕張市自体が再建を果たしていくためには、歳出の削減ばかりではなく、歳入の増加を目指すために何をしていくべきなのか、これを考えることも非常に重要だと考えます。

 地域経済を支えていくためには、地元企業の受注機会の確保ですとか雇用機会の確保が必要であることは言うまでもございません。実際、現在、夕張市が行う公共事業というのは、望めないというか好ましくない状況でございますので、現在行われている大規模な公共プロジェクトの着実な実施と、そして雇用機会確保への期待が地元からは多く寄せられている現状がございます。

 その大規模プロジェクトの一つは北海道横断自動車道でございまして、夕張、占冠、トマム、そして十勝清水間の開通が、北海道全体の幹線道路網の面からも急がれています。また、夕張の治水あるいは農業・水道用水の確保のために、平成十七年に本体を着工いたしました夕張のシューパロダムは、二十四年に完成予定となっております。

 社会資本の整備を促進するという観点から、この事業におくれがないよう、かつ、継続して着実に実施をしていただきたく、冬柴国土交通大臣に見解をお伺いいたします。

冬柴国務大臣 地域の活力なくして国の活力なし、総理もよくおっしゃることでありまして、安倍内閣の一つの指針でございます。国土交通省といたしましても、地域の活力あるいは再生ということに取り組んでいるところでありますし、また、安全、安心な国民の生活基盤の確立ということも我々の大きな仕事の内容でございます。したがいまして、夕張市におきましても、先ほど丸谷議員がおっしゃったように、私一人になってもここにとどまるんだというような頑張る市民がいらっしゃるこの地域において、今御指摘の事業は着実に進めていくつもりでございます。

 この夕張シューパロダム、シというのが源流とかいう意味で、ユーパロが夕張になったそうでございますが、このシューパロダムというのは、夕張川それから石狩川、千歳川のはんらんを予防する、防止する重要な、国民の生活の安全、安心につながるものでありますし、また、利水面におきましては、これが農業用水あるいは水道水、また発電にも用いられる重要なダム工事でございまして、総額が千四百七十億円という巨額なプロジェクトでございます。これは、夕張がこのような財政破綻をしたとしましても、国としては着実に進めて、二十四年度完成を目指して頑張ってまいり、そしてそこで雇用機会も創出されるだろうというふうに考えるところでございます。

 それから、北海道の横断自動車道、これは、夕張から十勝清水間の八十一キロでございますかをつなぐ道路でございまして、これも、平成十九年度にトマムから十勝清水までの二十一キロが供用開始されることとなっておりますし、平成二十三年度から夕張までが全通するということでございますので、おくれることのないように頑張ってまいることを申し上げようと思います。

丸谷委員 ありがとうございます。

 地元の声としましては、冬柴国土交通大臣にぜひ行政視察に来ていただきたいという声もございますので、この場をおかりしましてお伝えしておきます。

 最後の質問になってしまうかと思うんですけれども、現在の夕張市におきましては、市の運営あるいは活性化の主体が行政から市民へとバトンタッチをされている現状でございます。

 例えば、夕張には「希望の杜」という森がございまして、これは、吉永小百合さんが主演をされました「北の零年」が夕張市内でロケをされまして、そのセットの一部を保存している森でございます。観光事業の一環でございますが、これはもう市が運営できないということになりました。NPOの方が立ち上がっていただきまして、また、吉永小百合さん、あるいは北海道の経済人の皆様が支援に名乗りを上げてくださいまして存続できることが決まりました。

 また、いろいろな事業が廃止をしていく中で、現在閉館中の市立図書館をボランティアグループで開館させようとしている皆様、あるいは地域の体育館を町内会で自主運営をする計画を持っている地域、あるいは独居老人宅の屋根おろしを町内会で行っていただいている、また、ことしの成人式も若者の手づくりで行っていただいたなど、市の元気の源、動かすエンジンがまさしく市民になっている。

 この頑張っている夕張市に対して、新規の予算の中で、頑張る地方応援プログラムの二千七百億円がございます。これは、行政改革の進展などを評価しまして、地域の自立化、活性化を図るための交付税と承知をしておりますが、夕張を初めとしまして、夕張の教訓を受けた旧産炭地域は徹底した行財政改革を現在行っています。こういったことを評価し、例えば夕張にこのプログラムを適用させること、利用させることは可能になるのでしょうか。

菅国務大臣 当然そのように考えています。

 それと、夕張市、今まで行政が行ってきた観光施設とか、今回売却に出したのが二十九カ所もあったんです。それを今、お話ありましたけれども、NPO初め市民の皆さんが自分たちの手でやっていこうという、私は非常に、ある意味では、すばらしい熱い思いを現地へ行って感じてきました。特に観光ボランティアの皆さんなどの、将来は自分たちの町は自分たちでやっていくという非常に熱心なそういう夢を、ぜひ私どもも北海道と協調しながら、側面からこれは支援をしていきたい。そして、やはり将来に希望を持った夕張市になるようにしたいと思います。

 私は、先般、閣議後に関係省庁のそれぞれの大臣にもお願いしました。できるだけさまざまな事業は夕張市でやっていただきたい。例えば修学旅行なんかも、観光、いろいろなことを、できましたら中小企業対策、ぜひ、夕張市が頑張っている限りにおいては、国はしっかりと支えていきたいということであります。

    〔萩山委員長代理退席、委員長着席〕

丸谷委員 どうもありがとうございました。

 現在、夕張市に残っています財産である観光資源、例えば映画に特化しましたまちづくり等、歳入を増加させるための観光事業の支援ですとか、あるいは有名な夕張メロンなど農業支援において、この頑張る地方応援プログラムを実際に利用できるように、現在の夕張が持っているものを十分に活用できるような計画を立て、それを国に提出できるように、北海道また国のお知恵をかしていただきながらさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 再チャレンジが可能な社会の構築を目指す安倍内閣でございますけれども、この夕張ほど再チャレンジが成功するか否かが試されている地域はないというふうにも考えております。どうか市民のチャレンジの下支えをしていただきますようにお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

金子委員長 これにて丸谷君の質疑は終了いたしました。

 次に、岩國哲人君。

岩國委員 岩國哲人でございます。民主党を代表して質問させていただきます。

 まず最初に、これは私は余り好きな質問ではありませんけれども、柳澤大臣にぜひともこれだけは聞いてくれと私のところに手紙や電話がたくさん来ております。私のふるさと島根県からです。私の母も島根県人、私の妻も島根県人、私の長女麻利も島根県で生まれました。多くの親類、友達、そういう人たちから、あの大臣はなぜよその県でおっしゃらないことを島根県でだけおっしゃったのか、それを聞いてほしい、日本じゅうの女性がそのように侮辱されたのか、島根の女性だけがそのように言われたのか、どちらなのかはっきり言ってもらいたい。どうぞお願いします。

柳澤国務大臣 今、岩國委員から御指摘になられましたように、私、一月の二十七日に、土曜日の日だったと思うんですけれども、休日ということで、かねて依頼をされておった島根県の県議選出馬予定者の応援演説というか、後援会の講演に出向いたわけでございます。そのときに、勢い、もちろん選挙演説で応援をしておったんですけれども、私の演題にいろいろ私の仕事絡みの表題が載っかっておりましたので、個人の応援演説だけで退くのもいかがかということで、少し仕事絡みのお話を申し上げなくちゃいけないということで、その一部で人口推計のお話をさせていただきました。

 その人口推計の話をするくだりで、女性と人口の関係について、今先生の御指摘あるいはインプリケーションをされた発言をいたしてしまったということでございまして、これはもう私の本当に申しわけない点であったということでおわびを申し上げておりますが、事は、人口推計の話をするということで、説明の発言がよくない、皆さんを傷つけてしまったということでありますので、格別、お国のお母様であるとか、奥様であるとか、お嬢様であるとかというような方々を初めとする島根の方々というようなことを念頭に置いて発言したものではございません。

 しかしながら、大変御無礼をいたしたことはおわびを申し上げますので、ぜひまた先生の口からも、くれぐれもお三方に対してよろしくお伝え願いたいと思います。

岩國委員 多くの委員がこの場で質問されました。しかし、私は、島根の男として、そして島根の母を持つ男として、この質問だけは聞かなきゃならぬと思いました。多くの方から、なぜ、ああいう立派な方が、よそでは全然そんな話をされないことをなぜ島根県でだけ、島根県は自民党だらけで、こういうことを言ってもここなら許してくれるだろう、そういう甘えを持っておられたんじゃなかろうか、こういう意見もありました。中には、島根県の女性はおとなしいから何を言われても怒られることはないだろう、そういう雰囲気を感じ取られたのだろうか、いろいろな声が私のところには伝わってきております。

 島根県へもう一度お帰りになっておわびされる気持ちはおありなのかどうか、よそでも同じことをおっしゃったかどうか、もし島根県だけだったら、これだけ大きな問題になったことをできるだけ早く、またそういう機会を持って訂正されるお気持ちがおありかどうか、それをお答えいただきたいと思います。

 島根というところは、これは日本じゅうどこも歴史を持っておりますけれども、あのヤマタノオロチの神話の中にあらわれるように、娘さんを救う、そしてイナダヒメ、日本で最初の結婚式。歴史の上で残る最初の結婚式というのは、八重垣神社で行われたあのイナダヒメとスサノオノミコトの結婚式。そして、そこには二本のツバキの木があり、それが途中で一本の木になり、そして花を咲かせている。幸せな結婚の象徴ということで、資生堂もそれをブランドに使っているぐらいのところです。

 そういう日本の女性の幸せを願った神話を持っている伝統の地、そして日本の農業を神話の時代から支えてきた女性が一番多いところ、そういう島根を選ばれたということを私は大変残念に思うんです。

 大臣である以上は、一般の議員と違って、それ以上に、舞台の上であいさつされるときには、ここではどういうことを話ししようかということは順番が来る前にお考えになっているはずのことだと思います。また、大臣という肩書でのごあいさつであれば、それなりの影響があります。

 そういう点で、もし島根県民に対して、また選挙応援等で行かれるということがあれば、ぜひその点を十分に含んで、そういうメッセージを出していただきたい、そのことをお願いして、次に総理に質問させていただきます。

 この国会においても格差の問題がそれぞれの委員から質問されておりますけれども、総理の目や耳ではなくて頭の中に格差というものはどれぐらい、今、どんな種類の格差、どういう表現で言われているか、幾つかを御紹介いただけませんか。いつも気にしていらっしゃる格差の問題にはどういう格差があるのか、総理の頭の中に。お願いします。

安倍内閣総理大臣 いわゆる格差、これはいつの時代にも存在するわけでございます。この格差、どういう格差があるかという委員の質問でありますが、例えば、それは所得の格差であります。そしてまた、形成した資産の格差、所得は少なくても資産がたくさんある方もおられるんだろう、このように思います。そしてまた、やはり地域の格差、そういう格差が存在する、このように思います。

岩國委員 総理、ふだんからこういう質問をお受けになって、あの格差、この格差、いろいろな言葉に接しておられると思いますけれども、日本じゅう差別が多い、もともとそういういろいろな伝統もありました。しかし、最近はこの格差という形で言われています。その格差の中で、私は、一票の格差、これも人権として非常に大きい問題ではないか。これについてどのように意識しておられるのか。

 あるいは、教育格差。これは世界じゅういろいろなところで問題になっております。交通の面にも格差があります。参議院で青木幹雄先生が質問されましたけれども、島根には格差の宝庫と言われるぐらいにいろいろな種類の格差があります。教育の面でも格差がある、あるいは高齢社会がどんどん進んでおる。そういった中で、この一票の格差、総理は、格差問題の中でどのように位置づけ、どのように取り組んでいこうとしておられるか。簡単で結構ですけれども、お願いいたします。

安倍内閣総理大臣 一票の格差においては、今まで累次、訴訟もございました。裁判所の判決もあり、それに対応して定数の是正も行ってきたところでありますが、私どもとしては、当然、一人一人の一票に差があってはならない。そういう中で、他方、選挙制度とのかかわりがある中で最善を尽くしていかなければならないと考えております。

岩國委員 こういう人権そのものに直結する格差というものは、経済的な格差と同等あるいはそれ以上に、この内閣としてもしっかりと掲げて取り組んでいただきたい、そのように思います。

 もう一つ、中央と地方の経済的な格差。けさほど小野寺委員からも、いろいろな、そういった地方の目線でという御意見がありましたけれども、中央と地方との格差という点から見れば、道路がどれだけそろっているのか。高速道路もない、新幹線もない、そういった地域は日本にはまだまだありますし、島根県もその中の一つであります。島根から日本を見れば日本の格差が一番よく見える。東京から日本を見たのでは日本の格差はまず見えないだろうと思います。しかし、そういう格差を受けているところから日本を見る、そうすると、交通の面でも教育の面でも、いろいろな格差が目に見えてきます。

 ところで尾身大臣、バーナンキ米国連邦準備制度理事会議長が一週間前にネブラスカ州で大事な演説をされました。何について演説されたんですか。お願いします。

尾身国務大臣 今初めて聞く話で、私は聞いておりません。

岩國委員 FRB議長のいろいろな大事な演説というのは、日銀の、あるいは財務省の駐在員から必ず報告が入っているはずだと思います。入っていない演説はないと思います。

 アメリカで注目されているのは、バーナンキ議長が、金利を上げるか下げるかについての発言ではなかったんです。ドルを上げるか下げるかということでもなく、財政再建でもなかったんです。社会の格差について彼はしゃべったんです。二十年以上、FRB議長が社会の問題について大事な会議で話すということはありませんでした。ボルカーFRB議長が一九八〇年の初めごろに、格差が広がる兆候が見えるという演説をしました。それ以来、FRB議長が社会の問題について語ることはありませんでした。なぜFRB議長が、その立場でありながら、アメリカの格差社会が広がりを見せている、しかも固定化しつつあると。

 今、日本が直面している問題を、もう既にアメリカは通りつつあるんです。二十年前からこれは始まっている。安倍総理がニューヨークにいらっしゃったころ、私も当時アメリカにもおりました。あのころがアメリカンドリームの終わりの始まりだったんです。アメリカンドリームというのは、皆さん御承知のように、今、再チャレンジという言葉もありますけれども、だれにもチャンスがある、だれにも夢を実現する、そういう自由な社会、チャンスがアメリカにはあった。二十年前からそれが消えていったんです。そういう成長の陰に、成長路線をアメリカは、好景気を二十年近く続けている、そのアメリカで今一番大きな問題となっているのは、格差の広がりと固定化なんです。

 この演説について、なぜ総理も財務大臣も、今、日本で、世論調査で、格差が一番大きな問題だと国民が訴えているではありませんか、四〇%が。憲法改正に関心あり、期待しているは四%。総理も大臣の皆さんも、こういった格差に対する認識の度合い、日本の国民と内閣との間の認識格差、認知格差こそ私は問題ではないかと思うんです。

 日本の先を行っているアメリカが、既に好景気を二十年間続け、そして、成長路線の上に格差の解消を目指そう、そのアメリカが大きな失敗をしているときに、そちらの方を研究しようともせずに、アメリカが二十年前に考えたのと同じようなことをのうてんきに今考えておられる。私は、そこの認知格差が大きな問題だと思うんです。

 バーナンキ議長が指摘していることは、格差社会の拡大をもたらしている一番大きな理由、アメリカ社会において、それは教育だというのです。高所得者の子女が高い教育を受ける、高い教育を受けた者が高い所得の仕事につける。したがって、所得格差が教育格差を生み、その教育格差が次の所得格差を生み、次々とそれが循環し、固定し、拡大していく、そのことを指摘しております。

 アメリカン大学のトム・ハーツ教授も、三十年間の研究の結果を発表しております、発表したのは昨年の初めだったと思いますけれども。そのトム・ハーツ教授の発表によれば、所得の上の五%、所得の下の五%、そういうところの子弟が、次の世代にどれだけ高所得層に入っていけるか、所得の低い層の子弟はわずか一%しか入れない。所得の高い層から二二%が入れる。二十二対一のチャンスの差がそこで生まれ、そしてそれは拡大再生産されていく、こういう問題を指摘しております。

 これについて、総理、御感想があればおっしゃってください。

安倍内閣総理大臣 日本とアメリカを比べる場合、社会の成り立ちもかなり違うわけでありまして、抱えている問題もかなり違うんだろう、このように私は思うわけでございます。ですから、アメリカの格差がそのまま日本の格差になるとは私は考えていませんし、また、アメリカのような社会をつくっていくことも全く考えていないわけでございます。

 例えば、制度におきましても、セーフティーネットの制度、日本は、医療保険制度というのは、国民皆保険を私どもなし遂げているわけでありまして、これはもう世界に冠たる制度であろう。だれでも同じ料金で医療のサービスを得ることができる、この仕組みは守っていかなければならない、私は再三このように申し上げているわけでございます。また、介護になったときにも、すべての方々が介護保険を利用できる制度を構築している。このように、セーフティーネットはしっかりと張っていくことが大切ではないか。

 そして、子供たちの教育、これはまさに委員が御指摘になる極めて重要な点であろうと思います。格差の固定化、格差の再生産をしないためにも、子供たちが未来に夢を持てるような、そういう社会にしていくためにも、子供たちが就学の機会を保障される、そして家族が、所得が低くてもやはり同じように高い水準の教育、また高い水準の規範意識を受けることができる、そういう環境を、またそういう教育を私たちは保障していくための教育再生に今取り組んでいるところでございます。

 そういう厳しい困難を抱えている家庭に対しては、就学援助、また奨学金の制度をさらに私たちは拡充させていくために力を尽くしていきたいと考えております。

岩國委員 教育格差について、いかに深刻な状況になりつつあるかは、後ほどまた触れたいと思います。

 今総理にいただいた答弁の中に、アメリカと日本は違うと。いろいろな違いはもちろんあります。しかし、似ている面が非常に多いということも、世界の中では、日本とアメリカはいろいろな、経済のシステムから社会から、類似性を増しつつあるということは、恐らく総理も認めていらっしゃるだろうと思います。

 その中で、一つの違いとして、確かに、日本の健康保険制度は、私はアメリカでも保険を持っておりましたけれども、すぐれていると思います。しかし、そのすぐれている、格差社会を固定化させないように一つのセーフティーネットとして日本がしっかりと持っているべき健康保険制度、これを今政府は壊そうとしているんじゃありませんか。そういう世界に冠たる制度を、惨たんたる、惨たる制度に今少しずつかじが変わってきています。

 新年会。議員の方もいろいろなところで、それぞれ選挙区あるいは近くのところで新年会にお出になったでしょう。私もたくさんの新年会に出ました。

 その新年会の中で、一番私がびっくりしたのは、医師会とか病院協会とか保険医協会とか、お医者さんの会合では暗い話が多くて、まるで私が健康であることが悪いような気になってくるんですね。いかにお医者さんの経営が、お医者さんの仕事がやりにくくなったか。去年、おととしまでは、お医者さんの会合といえば、そんな暗い話なんかほとんどありませんでした。それを、政府を、知事を、あるいは横浜市長を批判されるようなごあいさつが余りにも多くて、私は、ことしの新年はなぜこんなに急に変わってきたのかなと。

 敏感に、患者さんと接しておられるお医者さんはそのことを、今までの日本の健康保険制度が変わりつつあるということをもう知っておられる。また現に、政府に対してもいろいろな、神奈川の保険医協会だけではなくて、いろいろな意見書が出ていることは御承知のとおりです。

 次に、底上げの会議について、官房長官いらっしゃいませんから、大田大臣にお伺いしたいと思いますけれども、底上げと言うときの底上げの概念、そしてその底上げの概念の中には、どういうものをこれから底上げしてくれるのか、どうなれば底上げができたというふうにおっしゃるのか。底上げという非常にある意味では俗な、ある意味ではあいまいな表現で、それが本当にどういう政策目標に結びついていくのか、そして政策評価はどのようにできるのか、端的におっしゃっていただけませんか。

大田国務大臣 底上げの意味ですが、経済成長を下支えする基盤、人材能力、就労機会、中小企業の向上を図ることということです。

 主な目的は、働く一人一人、あるいは一つ一つの中小企業が能力を高める機会を持つということ、それによって全体の生活水準、所得水準を引き上げていき、全体の成長力を高めるということです。

 先ほど岩國先生がバーナンキの講演をお挙げになりました。その中で、教育が格差を生むとおっしゃいましたが、もう一つ言っておられることがあります。技能が格差を生むということもあわせて言っておられます。

 これについては、アメリカも日本も同じ格差、所得の問題を抱えておりますが、アメリカの場合は技能が格差を生む、ところが日本は、正規雇用になりませんとなかなか技能形成の機会も恵まれない、日本の終身雇用がつくってきた企業内訓練という仕組みによって、これが非正規の方に著しく不利に働いているということがあります。

 したがって、この底上げ戦略の中では、技能形成の機会を持たない人について技能をしっかりと訓練していくという点が重要な柱になっております。それから、公的扶助を受けている方で働く機会に恵まれない方にも就労支援をしていく、それから、生産性上昇の機会を持たない中小企業にも支援をしていく、これが三つの柱です。

岩國委員 大田さんはバーナンキ議長のこれをお読みになっているようですけれども、教育と職業訓練、彼はこういうふうに言葉を続けて言っております。

 職業訓練も一つの広い意味の教育でありますから、教育の場を広げること、雇用機会の創出をすること。そして、これはバーナンキ議長とは関係ありませんけれども、ロサンゼルス・タイムズとか、それからブルームバーグが調べた世論調査によりますと、国民の七五%が、アメリカでも既に所得格差は深刻な問題、七五%という圧倒的な数字で、この所得格差に対する恐怖をアメリカ社会が感じている。これは、共和党支持者でも五五%が所得格差が問題だと。これも一番大きな問題点として指摘されることを申し上げておきます。

 その今の底上げですけれども、こうした底上げについてはいろいろな努力はされる。再チャレンジ、自民党の中でもそういう会議をおつくりになったようです。しかし、その再チャレンジが、除名した人たちが帰ってきて、その人たちに再チャレンジの機会を一番最初に与える。世間の目には再チャレンジとこの復党問題、再チャレンジの一番最初の適用を受けたのは除名された議員の皆さんたち。こういうふうなことで、本当にこれは再チャレンジと底上げと教育訓練、そういうことが結びついていくのだろうか。私は非常に難しいと思います。

 この底上げの中に、個人の消費動向というものがどの程度大きく影響するのか。売り上げの、あるいは金利利上げ、あるいは賃金の賃上げ、あるいは物価の値上げ、それから土地の価格の地上げ、いろいろな上げという言葉があります。売り上げ、利上げ、賃上げ、あるいは地上げ、こういう中で、この底上げ目標に対して一番即効性のある対策としては何がありますか。

 教育は大切です。職業訓練も大切でしょう。これは時間がかかることです。三カ月、六カ月ではありません。尾身大臣がいつかおっしゃったように、春の桜が咲くころに。私は、どこの桜かということを前に聞きました、東京の世田谷の桜だ、こういうお答えをいただきましたけれども。しかし、それほど即効性がないものではなくて、即効性のある底上げ対策としては何がありますか。

大田国務大臣 成長の基盤は人です。人の能力を高めるということにおいて、それほどの即効性はないというふうに思います。

 しかし、今働きたいと思っている人が、技能訓練を受けることで、三カ月、半年で技能を得られるかもしれない、働く機会を得られるかもしれない、そのことは非常に重要な成長基盤をつくることになると考えております。

岩國委員 そういった教育の重要性を私は否定するものではありません。しかし、少なくとも、底上げというのは、経済の世界の中でそれをお使いになる場合には、やはりもう少し即効性があって具体的な数量化できるようなもの、それを私は掲げていただきたい、そのように思います。

 次の質問に移らせていただきます。

 総理、美しい国という表現、これはもう非常に浸透しておりますけれども、この美しい国にふさわしい予算、そういったものの中で、今度の予算で、総理があるいは環境大臣が美しいと思われるポイントは、どういうところにそれは具体的にあらわれているのか、予算の項目の中で。

 そして、先ほどの御答弁の中で、世界から評価される、世界の国から尊敬される国、こういうのも一つの条件だというふうに総理はおっしゃいましたね。その世界の国が尊敬する国というのはどういう国なのか。それは、世界の国をまず知らなければ、世界の国が評価してくれるような国を目指すわけにはいかないでしょう。

 総理自身は、高校時代に、世界史、日本史は単位は修得されたんですか。お伺いします。

安倍内閣総理大臣 履修をしております。

岩國委員 失礼な質問をしたと思います。しかし、官房長官に私は、教育基本法のときに、総理それから各大臣は高校生に世界史を勉強しなさいとおっしゃっているけれども、総理の口から、自分も勉強したから、高校生の諸君、君たちも勉強しなさい、そうすれば若くして総理になれるんだよ、そういうメッセージがあれば高校生の子供たちももっと一生懸命になったと思うんです。そのお言葉がなかったから、私はあえて確認させていただきました。

 次に、美しい国についてお伺いしたいと思います。

 美しい国の条件を満たすような予算の項目、この中でどういうところであらわれているのか。総理それから環境大臣それぞれに、美しい国と自分が思って、この点について美しい国の予算だと思われるのを、二項目、三項目、おっしゃっていただけませんか。

安倍内閣総理大臣 私が、美しい国の姿として、例えば歴史や文化や伝統、そして自然を大切にする国でなければならない、このように申し上げました。自然、例えばまた森を大切にする、そのための予算も組んでおります。

 そしてまた、自由な社会を基盤として、自律の精神を大切にする、凜とした国でなければならない、このように申し上げてまいりました。

 そしてまたさらには、成長し続ける、成長するエネルギーを持ち続ける国でなければならない。そのためには、やはり、成長するためには、人口減少局面にあっても、イノベーション、そしてオープンな姿勢で成長を図っていきたいと考えております。このイノベーションにおいて、中小企業も、また企業も、そのための投資をしていくための予算も組んでおります。

 そしてまたさらに、世界の人々から尊敬され、そして愛される国になりたい、このようにも申し上げておりますが、そうした国になっていくためには、やはりこれは人材であろう、このように思います。

 世界の人たちから信頼される、また愛されるためには、世界に貢献をしていく必要もあるでしょうけれども、日本人のたたずまいというか立ち居振る舞いが、やはり日本人というのはすばらしい、美しい、このように思ってもらえるためにも、やはり私は教育が大切ではないか。明治期に来日をした海外の多くの学者、知識人が、日本人の立ち居振る舞いはすばらしい、それは豊かな人もそうでない人も、みんな人に対する思いやりもある、このような評価をしているわけでありますが、それはやはり江戸期の教育の成果でもあっただろう。このための教育に対する政策的な経費については、充実を図っているところであります。

若林国務大臣 美しい国というものの概念、理念、これは今総理がお述べになったとおりでありますが、環境行政という立場から、環境政策という立場から申し上げたいと思います。

 何といっても、日本の国は豊かな自然の恵みに支えられて経済社会活動を発展させてまいりました。また、春夏秋冬、四季折々の変化がすぐれた文化を生み出してきたと思います。

 しかし、委員御承知のように、現在、地球温暖化に代表されるさまざまな環境問題が、人間の健康、食料、水資源、居住地、生態系など、あらゆる分野に脅威を与えてきております。その意味で、これらの環境問題に真摯に取り組むことによって、美しい国、すなわち、自然と人間が共生し、健全な物質循環が確保されるような国をつくっていく、将来の世代にこれを引き継いでいく必要がある、このような視点で、環境省としては、十九年度予算で幾つか重要な項目を要求しております。

 まず第一は、地球温暖化問題に関しますことで、バイオマスエネルギーの導入の加速化や地域の知恵を生かした温暖化対策など、京都議定書目標達成計画を確実に実施するための予算を計上しています。

 また、次に、循環型社会を形成するために、廃棄物エネルギー利用など地域における循環システムの構築や、不法投棄対策の予算を計上いたしております。

 また、生物多様性の保全に関します取り組みとか、エコツーリズムを初めとした自然資源の賢明な利用などを一層進めるための予算を計上しているところでございます。

 さらに、環境、経済、社会の総合的な向上を目指しまして、委員の専門でありました金融面からの環境配慮の推進とかあるいはグリーン購入の推進など、経済のグリーン化のための予算も重要であると思っております。

 もちろん、かねて課題、問題になっております大都市圏の自動車排ガス対策とかヒートアイランドの対策など、都市環境の整備も重要な課題と考えているところでございます。

 幾つか挙げますと、以上のとおりでございます。

岩國委員 総理は抽象的な表現も随分されますし、また具体的なことも少しはおっしゃっていますけれども、一般の国民それから外国の人から見て美しいと思われるところは、まず、目で見てわかる、それがやはり美しい国の最低条件でもあり、一番わかりやすい一つの表現でもあろうかと思うんです。

 そういう点から見ますと、外国の人が、日本の国を美しいと言ってくれる人はたくさんいます。日本は美しい国だということを言う。それを聞いていますと、山がきれいだ、緑がきれいだ、富士山のことも言ってくれます。そういう目で見てわかりやすい美しさということを保つことも、やはり美しい国を推進していく上で一番必要なことではないか、私はそういうふうに思います。

 また、日本については、山や森だけではなくて、海がきれいだ、島がきれいだ。やはり海や島の大切さ、それから山や森の大切さ、これは今大臣御答弁いただきましたように、京都議定書の中でも、これからの温暖化防止のために、この山や森の大切さというのはあの時期で再認識されたはずだと思うんです。

 それ以後、この美しい国内閣になってから、美しい国項目がどれだけふえているのか。例えば、山や森を守るための予算がどれだけふえているのか。

 今、山や森を守る人の現状はどうなっているか、資料の一をごらんいただきたいと思います。

 この資料一をごらんいただきますと、ずっと右肩下がりで林業就業者の数が減りに減っています。そして、平均年齢は上がりに上がっております。数は少なく、しかも平均年齢は高くなり、ごく少数の高齢者の方が一生懸命山や森を守っている。あと二十年すれば、山や森を守る人はいなくなるかもしれません。これでいいんでしょうか。

 もうこの辺ではっきりと、この林業就業者の数をもっとふやして、私たちの世代だけではなくて、永久に日本の財産である財産を守るためのメンテナンスだと、そういう感覚も必要ではないでしょうか。美しい国とそして日本の大切な財産を守る、何よりも環境対策として必要なことではありませんか。

 京都議定書をうたい上げたその舞台となった日本だからこそ、私は、こういう内閣になって、京都議定書を批准してからどれだけ予算がふえたか。林業関係の予算はほとんどふえていないじゃありませんか。林業就業者の数は減っているじゃありませんか。これが、京都議定書の批准をいろいろな国に勧める日本のやり方でしょうか。

 資料一の下の方をごらんいただけますでしょうか。

 これは、森をたくさん持っているというイメージのある国、イギリス、ドイツ、フランス、日本、オーストラリア、アメリカ。それぞれ面積は違います。イギリスは、一万二千人と日本よりは少ないんですけれども、森林面積は十分の一。そして、同じ面積当たりの森林でも、御承知のように、イギリスの山はそういうケアがしやすいような山なんです、日本の山に比べますと。ですから、実質的な意味では、イギリスはしっかりと日本以上の林業就業者がいるということ。それから、ドイツ、フランス合わせても日本の倍を持っております。アメリカは、ほとんど減っておりません。オーストラリアは、むしろふえております。

 日本の下げ方だけが異常に目立つではありませんか。総理、どういうふうにお考えになりますか、これについて。

安倍内閣総理大臣 詳しくは農林水産大臣がお答えをいたしますが、私も委員と大体同じ問題意識を持っております。

 海外に旅行に行って日本に帰ってくると、やはり日本の美しい山や森を見て本当にほっとするわけでございます。国土の三分の二を山や森林が有しておりまして、こうした森の保全を図ることは国土の保全につながり、そしてまた何といっても環境のためにも、世界の環境のためにも保全をしていかなければならない、このように考えております。

 私は、「美しい国、日本」をつくっていくための礎にもなる森をしっかりと守っていく。古来から、日本は木の文化、こう言われてきているわけでありますから、美しい森づくりに取り組んでいく必要がある、このように考えまして、先般、農林水産大臣に、美しい森づくりに取り組んでいくための運動の進め方について早急に検討するように指示をいたしたところでございます。

 私自身も、ほとんど財産的な価値はないんですが山を持っておりまして、いかにそうしたものを維持していくことが困難であるかということは、十分に承知をいたしております。

 具体的にどういうことをやっていくか、農林水産大臣からお答えをさせます。

松岡国務大臣 先生にお答えいたします。

 先生の御指摘は大変重要なことと思ってお答えさせていただきますが、まず、今総理からも全体的なことをお話ございました。予算がどのように確保されているのか、こういうことでございますが、全体が減る中にありまして、森林整備という項目に絞って見ますと、ずっとここのところ重点化、集中化ということでふやしてきているという実情にございます。

 特に今回の予算におきましては、まず、平成十八年度の補正予算におきまして、災害防止を目的とした森林整備を集中的に行う、こういう観点、それから、平成十九年度の当初予算におきまして、さらなる森林整備への重点化を図り、加えまして、農林水産関係事業一体としての森林整備も行う、こういうことで、総額七百六十五億円、今までにないような形でこれを措置いたしたところでございます。

 先生御指摘の京都議定書との関係でございますけれども、これも全体で六%減らさなきゃならない。これは、現実には相当大きな十数%の数字になっているわけですが、一九九〇年時点で六%、そのうち三・八%が森林が支える分だ、こういうことでございまして、そのためには炭素トンに直して一千三百万炭素トンの吸収をしなきゃならない、こういうことでございます。

 今までの通常の整備ですとまだなお足りない、あと残された六年間で百二十万ヘクタールの追加的な整備をしないとこれは達成できない、そういうようなことで、十八年度の補正予算、十九年度の当初予算合わせまして二十三万ヘクタールの追加的な整備を実施する、こういうことで、あと六年間の最初になりますが、そういったような予算措置を今いたしておるところであります。

 そして、ちょっと長くなりますが、先生御指摘の就業者数につきましても、御案内のとおりの状況でございますが、緑の担い手雇用対策事業、これが始まりました平成十五年からは、実は、それまで二千人だった林業への新規就業者が三千五百人ということで、倍まではいきませんが、倍近くふえつつある、こういうことでございまして、さらにそれを加速化させていかなければならない、こう思っております。

 そして、総理から先ほどお話がございましたように、先般、美しい森づくり、これを国民運動として積極的に大きく取り進めていくように、具体的なその進め方について検討をすべく命じられたところでございます。私といたしましては、関係省庁としっかり緊密に連携をとりながら、国民各界各層の御協力もいただいて、どのように進めていくかということにつきましてしっかり検討してまいりたい、このように思っております。

 いずれにいたしましても、先生の御指摘は大変重要な点でございますと同時に、また、私どもに対しまして叱咤激励、そういった意味も込めてのことと受けとめまして、しっかりやってまいりたいと思います。

岩國委員 松岡大臣、それほど重要だと思われるのだったらもっと予算の上でもめり張りをつけて、要するに、山や森はどんどん弱くなっていくのを待っているわけにはいかないんです。そして、こういう林業就業者、集まれと言ってすぐに集まるものではないんです。もっと早く出動しなきゃいけない。

 鳥取の山をずっと眺めてこられた大臣はよくおわかりでしょう、山陰の森も。森は、山は、CO2を、一年三百六十五日、土曜日も日曜日も一日も休まず一生懸命働いているんです。私は、山や森に給料を払うべきだと思います。県庁の職員は、給料をもらって土曜日、日曜日休んでいます。しかし、県の山は、土曜日、日曜日なしで、一生懸命CO2を吸って酸素を出して東京や大阪へ送り届ける。こういう努力に対して、現に、これは林野庁の方で出されたその資料にもありますけれども、日本学術会議の答申によれば、この貨幣価値、経済価値は年七十兆円。いいですか、この七十兆円の大切な資産をメンテナンスするのに五百億だとか七百億だとか、そういう金額ではおかしいんじゃありませんか。

 また、七十兆円の資産をお守りするのに、わずか六万人ぐらいの人で、日本じゅうのいろいろな、山岳の形状もそれぞれに違います、困難な仕事、私は、ぜひこういうところにもっと目を向けて、日本がいつまでも、美しい国がいつ実現できるかは別として、少なくとも山や森を見てほしい。世界で一番美しい国は日本なんだという誇りを次の時代に引き継いでいくこと、それは我々の時代にやらなければならないこと。

 そして、繰り返して言いますけれども、この就業者、毎年毎年お年を召している、そして少なくなっていきます。早く手を打ってください。そのことをお願いしておきたいと思います。

 私は、出雲市長時代に、木のお医者さん、樹木医制度をつくりました。林野庁の応援で、それが今千三百三十三人にふえています。十人で始まった出雲市の小さな樹木医、木のお医者さん。人間にはお医者さんがいる、動物には獣医さんがいる。木にも命がある、その命のある木にだけはお医者さんがいない。私は間違いだと思いました。命のあるものすべてを守る。小さな子供にもすぐにわかることです。木にお医者さんがいる、木にも僕たちと同じように命があるんだ。木に命があるということを知った子供たちは木をいじめなくなるんです。そういう命のあるものを愛する気持ちを育てるためにも私は必要だと思って、樹医制度を始めました。

 今、千三百三十三人。世界で木のお医者さんを持っているのは日本だけなんです。私は、そういうことをもっともっと海外にもしっかりとアピールして、そして、自衛隊だけではなくてこの樹木医の部隊が、地球を守るために、いろいろな国へ行って、戦争のないときも一生懸命汗を流しているのは、あれはどこの国だ、あれは日本なんだと、そういう世界から尊敬される、そして美しさを守るために汗をかいている、それが、総理、美しい国のあり方の一つではないかと私は思います。

 この樹木医について、農林大臣あるいは文科大臣、学校の子供たちにちゃんと教科書の中でそれは教えていますか。千三百三十三人の樹木医さんが日本の美しい森を、木を守っている、それについてどの程度学校で教えておられるんですか。これはわかりやすい話だと思います。

伊吹国務大臣 後ほど農林水産大臣からもお答えすると思いますが、樹木医そのものについて触れました教科書というのは、残念ながらございません。しかし、先生が今るるお話しになった森林の大切さ、水源涵養、防災、そして何よりも二酸化炭素同化作用、これらの、環境についての森林の果たす役割、大切さについては、これはもう当然のことなんですが、社会科、理科、生活科、家庭科、保健体育科、さまざまな科目でその点は教えております。

 先生が今おっしゃったことを大切にする心根を持つ日本人がいなければいけないわけですから、例えば小学校五年生の社会科の教科書では二十五ページを割いて、これは教科書全体の、社会科の中の一三%のページ数です。それから、中学校の理科の教科書では十七ページ、これは全体の約六%のページ数です。こういうものを使って教えておるわけです。

 何より大切なことは、先般の改正教育基本法の中で新たに教育の目標というものができまして、「生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。」こういうことがございます。これに従いまして、いずれ国会でお願いしますが、学校教育法を変えます。変えると、それに従って学習指導要領というものができてきます。その学習指導要領に従って教科書ができてまいりますので、その際には、先生から今お話があった木のお医者様のことも記述ができるように私はなるんじゃないかと。しかし、文部科学大臣がそれを強制しますと、教科書検定の問題がございますので、よくその点も留意してやらせていただきます。

松岡国務大臣 これまた大変重要で、かつまたある意味ではありがたい御指摘をいただいたと思っております、私どもの立場といたしましては。

 これはもう先生御指摘のとおり、実は今、樹木医制度というものを全国で財団法人の日本緑化センターというのが主体になってやっておりまして、先ほど先生がおっしゃいました数字がちょっとふえておりまして、今、十八年の十二月現在では千四百五十一名、こうなっております。

 これはもともと岩國市長が出雲市長としてお始めになった、それをもとに全国として始めた、こういうことでありますから、もうまさに岩國市長の創設であります。そのことには心から敬意を表したいと思っております。

 そこで、さらに御指摘の、教科書の中にどう記述されているか、こういうことでございますが、私ども農林水産省といたしましては、毎年、教科書会社の関係者の方々に、森林の働きや役割や林業の重要性、必要性といったこと、これを御説明を申し上げておる、こういうことでございます。

 今、伊吹文科大臣から大変ありがたいお言葉をいただいたんですが、私どもといたしますと、記述をもう少し充実していただきたいというか、もう少しきちんと位置づけていただきたいといいますか、そういった立場で今お願いをいたしているところでございまして、先ほどの伊吹文科大臣のお話もございますから、ぜひまた先生方の後押しもいただきまして、さらなる充実を目指して取り組んでいきたいと思いますので、またよろしくお願い申し上げたいと存じます。

岩國委員 こうした樹木医さん、順調にふえて活躍していただいているようですけれども、この樹木医に対しての予算がゼロというのはおかしいじゃありませんか、それだけの役割をしていただきながら。いいですか。林野関係の予算もふやしていない。役所は、林業については、どちらかといえば私は冷たいと思います。

 ところが、この樹木医、民間の方ですよ、役所の方じゃなくて。民間人はどんどん熱を上げて熱心にこの問題に取り組んでいる。役所は冷たく民間は熱心で、この現象について大臣は反省しなきゃならないと思いますよ。そういう民間の人さえも、千何百人の人が志して、試験を受けて、樹木医になって日本の森や木を守っている。そういうときに、役所が森や林を守るその予算が全然ふえていないというのはおかしいと思うんです。

 それから、伊吹文科大臣が先ほどいい答弁をされました。命をとうとび、それから自然に親しむ、こういう教育が大切だ、私はまさにそうだと思います。法律がどうだろうと、どの党がどういう提案をしようと、この真理には私は変わりはないと思うんです。

 私は、世界のいろいろな国に住んで、そして見てまいりましたけれども、イギリスでこういう風景を見ました。横断道路を渡ろうとしているおばあさんがいました。どこの国でもだんだん道路の幅が広くなって、お年寄りがなかなか青信号の間に渡れなくなってきている。ちょっとこのおばあさん、足が弱そうだな。信号が赤から青に変わったときに、そばにいた若い青年が、さっとそのおばあさんの腕をとって、そして向こうまで一緒に介添えして渡って、そしておばあさんにバイバイと言って別れていったんです。明らかに他人同士でした。

 こういうことが自然に身についている。若い青年だったら、若い女性だったらそうしたかったかもしれません。しかし、そういうお年寄りのおばあさんに、そういう困っている人にさっと手を差し伸べる。しかも、それがごく自然な振る舞いとして出てくる。私は、こういう国も非常に美しい国だと思うんです。

 もう一つ。ニューヨークのセントラルパーク、マンハッタンの中にあります。私が勤務を終えて家へ帰ろうとしてそこを通ったときに、大勢の人が、人だかりがしていました。有名なスターでも来ているのかなと思ったら、みんな上を見上げているんです。セントラルパークの並木の枝に、もう秋のころでしたから、葉が落ちていました。小鳥が一羽、何か足を絡まれてばたばたとして、飛び立てない。みんなが下にいて、しかし、だれも助けられない。そこへニューヨーク市の消防署が駆けつけて、そして、若い青年がするすると上へ上がって、その小鳥を手にした。みんなが一斉に拍手しましたよ。まるで自分が救ってやったかのように、みんなが拍手をして、そしてみんながいい気持ちになって、一つの小さな命を救った、その喜びをもらって、みんな家へ帰ったんです。私は、こういう国も美しい国、美しい風景だと思うんです。

 やはり、命を大切にする教育、そのためには、私の樹木医にこだわるようですけれども、木にも命があるということ、特に木の文化を誇りとする日本だからこそ、安倍総理大臣おっしゃいましたように、木の国を誇りとする日本だからこそ、そういうことを小さいときから子供に教えるべきだと思うんです。

 私たちの小学校一年生の国語の教科書の一ページ目は、「サイタ サイタ サクラガサイタ」、小さいときから、桜が咲いたことを喜びとし、自然に対する尊敬、美しさに対する関心、何よりも、こんないい国に生まれた喜びを、国語の教科書の一ページ目で、それをさっとあの短い言葉で教えてくれたんです。今の国語の教科書、何ページ探しても、桜も出てこない、竹も出てこない、そういう教科書になってしまいました。もっとそういう点は、私は文科省としても気をつけていただきたい。

 もう一つ。これは国土交通省が御担当。

 世界地図というのがありますけれども、世界地図というのは、いろいろな国が、道路があるようにかいて、実際にはその国を攻めてみたら道路がなかったりとか、軍事上で、みんな継ぎはぎだらけ。しかし、我々は正確だと思って一生懸命勉強しました。それではいけないというので、もう今は地球地図、これを提唱したのは日本であります。最初十一の国が参加してきました。今は百五十六ぐらいにふえておりますでしょう。日本が提唱して、世界の国がついてきた。

 この地球地図に対する予算は、この十年間どの程度伸びてきているのか、その点について大臣からお答えいただきたいと思います。

冬柴国務大臣 お答えいたします。

 十九年度は六千二百三十万七千円、十年前ということになりますと、九年ですが、平成九年は五千九百十五万三千円というようなものでございまして、途中、平成十三年には九千七百六万九千円というものが計上されたこともありますが、順調に事務は進んでおります。

 これは日本発でございますが、平成六年からこのようなすばらしいプロジェクトを日本が提唱いたしまして、今委員がおっしゃいましたように、我が国を含めて今二十五カ国がデータを整備して、そして完了して世界に提供している。七十八カ国がデータを公開準備中に入っているということで、平成十九年度末、本年度末までにはおおむね陸域全体の地球地図データの整備が行われる予定だということでございます。

 これは日本が発案したんですが、岩國委員が市長であられたときに、平成四年八月四日の朝日新聞の「論壇」に「各国共同で地球地図の作製を」という提言をされました。こういうものが契機になりまして、このすばらしい、日本発の世界に対するこのようなプロジェクトができたということ、これについても私も岩國委員に対して敬意を表したいと思いますし、ますます我々が提唱国としても積極的にこの事業を進めてまいりたい、このように考えているところでございます。

岩國委員 私がお手伝いしたことのその陳情をしているようで申しわけないと思いますけれども、しかし、これは世界のために、地球のために大切だと大臣も思っていらっしゃると思います。そして、美しい国というのであれば、日本は美しい地球を目指す、それだけの心構えを、憲法改正をされるときにはぜひ前文にでもそれをうたうぐらいの、地球を守る、それぐらいの大きなことが言えるだけの実績をしっかりと、こういうことを私はやっていくべきだと思うんです。

 地球地図、これは国の数で既に八一%が参加しています。そして人口の割合では九六%、いただいた資料によりますと。逆に言いますと、まだ参加できていない、恐らく財政的な事情があって、それがなかなか許せないんでしょう。

 私は、ぜひ、外務省のあるいはODAの予算を使ってでも、一日も早く地球全部が、日本が始めたこの地球地図で地球全部をすっぽりと包む、その日をもっと早めていただきたい。そうすることによって、さっき環境大臣がおっしゃったように、京都議定書の先頭に立つ日本は、地球を守るこの地球地図、これがなければ本当の環境対策というのはどこでもできてこないんです。どこの森林が消えているのか、どこの湖が移動しているのか、正確な地形、気象の変化というのを読み取って、そして、同じ金でも効率よくこういうことのために使っていかなければ、効率の悪い環境運動とか環境対策をやっておったのではしようがないんです。

 特に、これは近くのアジアの国についても言えることだと私は思いますから、ぜひこの地球地図を一日も早く完成し、そして、完成したからいろいろな国が環境対策にどんどん使い出したと、つくるのが目的じゃなくて使うのが目的ですから、早く使うような体制に持っていくこと。これもそんなに大きなお金がかかることじゃないと思いますから、ぜひお願いしたいと思います。

 私は、特にきょうの委員会でこの環境の問題を取り上げているのは、アメリカの民主党が昨年の秋、選挙で勝って、そして議会では多数派になりました。そのアメリカの民主党が、京都議定書の第二ラウンドを目指して、ことしの七月までに新しい環境対策、アメリカ提言をまとめようとしているでしょう。これはどういうものが中身に入っているのか、既に調べていらっしゃいますか。アメリカは、京都議定書では腰が引けていました。しかし、第二ラウンドでは先頭に立とう。それは、アメリカ民主党の政策として七月末までにまとめて発表する。

 だからこそ、日本の実績、日本の政策というものは、もっとその前にしっかりと、出すものは出し惜しみしないで、予算の上でも私はめり張りのついた実行をやっていただきたい、そのように思います。それを要望して、私は次の質問に移らせていただきます。

 地方の教育赤字についてお伺いいたします。

 この地方の教育赤字、これはお手元に差し上げました、各県別に調べた。その県の高校を卒業するまではそこにいて、しかし、大学がないために、あるいは特定の大学に入りたいために、それぞれの県から東京へ、京都、大阪へ、あるいは名古屋へ出ていく若者。民族大移動といえば、日本で起こる民族大移動というのは、この十八歳のときの民族大移動なんですね。私もその一人でした。

 それぞれの県からどれぐらいの比率でそのふるさとを離れていくのか。島根県、鳥取県の場合には、約九割が十八歳でふるさとを離れます。そして、ふるさとを離れて、二十二歳で就職をして、そのままふるさとへ帰ってこない。

 二十二歳まで、大学を卒業させるまで、島根県の両親は幾らお金がかかるのか。この教育コストについて、以前、小坂文部大臣に質問したことがありますけれども、しっかりとした返事は返ってきませんでした。

 その後、いろいろな資料をいただいて計算しますと、二十二歳の男の子、女の子もそうですけれども、二十二歳に育てるまで約二千万円です。そして、その二千万円のお金をかけた約二千七百人近く、二千七百人近くの二千万円お金をかけた高級車を東京へ送り出しているんです。そして、代金は一銭も受け取っていない。その二千万円のお金をかけた、高級車に例えるのはおかしいんですけれども、四十年間一生懸命働いて、税金をよその県に払って、そして税金を払わなくなったころにふるさとへまた帰ってくるんですね。

 これは、税源を中央から地方へと言っておられますけれども、逆に地方が中央へ税源を送り届けているんです。島根県の場合には、約二千七百人近くの子供を毎年送り出すということは、五百億のお金を送り出していることなんです。毎年五百億の負担を、島根県は、子供を育て、そして東京で、大阪で、名古屋で、いろいろな役所で、企業で働くために送る。この教育負担というのは大変なものです。この教育赤字というものを視野に入れて、三位一体とか地方分権とかおっしゃいますけれども、私は、地方分権が進んで地方に自立を迫るならば、もっと公平公正に、それだけの負担と給付に対する感謝の気持ちとそれから金銭的な交付、助成金というのがなくてはおかしいと思うんです。

 島根県の所得水準というのは、小泉内閣になってから下がりに下がって、以前は東京に比べて六〇%、それが五五%、そして今は五〇%を割ろうとしています。東京の人の所得の半分で、東京でも役に立つような子供を育てるために、倍のコストがかかるということなんです、負担感は。

 半分の所得で、東京へ出て机を並べて、同じ会社で、あなたはどこの県から来たのと言われなくても済むような、そういう子供を育てるために、どれだけ地方の県が、これは島根県だけではありません。鳥取県もそうでしょう。青森県もそうでしょう。秋田も、そして宮城県の気仙沼もそうだし、全国各地でそれだけの所得格差を背負っているところが、一生懸命、子供のためには、どこどこで育ったから、両親の収入が低いから学力が低いと言われたくない、その気持ちが日本の教育を支えてきたと思うんです。

 日本の教育予算が、先進国に比べて、五・五%に対して三・五%。そのギャップの二%というのはだれが負担してきたのか。みんな、日本のお父さん、お母さんの子供に対するせつない思い、それが負担してきたんです。しかし、それにいつまでも頼っているようじゃおかしいじゃありませんか。そういう力のない、助けを求めているところに手を差し伸べる、それが政治の役目です。強い者がいい学校に行き、そしていい仕事をとり、それでは政治は要りません。政治が本当に感謝されるのは、地方のこの教育赤字を解消することじゃないかと思います。

 もう一つ、子供が出ていって帰らないように、今度は預けたお金の面でも同じようなことが起きております。

 県別に、それぞれの県で預けたお金が地元で貸し出しに回っているかどうか。預けと貸し出し、預貸比率といいますけれども、その預貸比率を県別に見てみますと、島根県の場合には、預けたお金の半分ぐらいしか返ってこない。つまり、子供も出ていく、お金も出ていく、元も子もないというのはこのことなんですね。出たお金も返ってこないし、出ていった子供も帰ってこないし、税金は石原慎太郎都知事に払い続けている、そして、払わなくなったらやっとふるさとへ帰ってくる。

 この教育赤字、それからこういった金融の面での見えざる赤字、負担。これは、金融の世界はグローバルですから、金利の高いところにお金は流れます。金利の高いところというのは、東京、京都、大阪、名古屋。こういうところの企業の方が金利を払って、お金を使う力が強いんですよ。これは、強者の論理の市場の原理ではそうなりますから。

 そうすると、地方の預けたお金というのは、全部中央に吸い取られる、こういう仕組みに、グローバルになればなるほど、金も出ていく、子供も出ていく、それが中央の、東京の財源となるんです。出ていったお金が働いて財源となる、出ていった子供が税金を払って税源となる。こういう構造を根本的に変える、それがこの内閣の予算にはさっぱり見えてこないわけです。

 これについて、どのように総務大臣はお考えになるのか。地方自治体の目線で、こういう教育の赤字、そして金融の赤字、これに対してどのような助成措置が講じられるのか。文科大臣の御担当かもしれませんけれども、私は、教育助成金というのを、こうした教育赤字の実情をよく見た上で、それぞれの県に御苦労さん、子供を産んで大切に育てて、そしてそれを教育して、それからお国のどこかで役に立つような人材をやっているのは、文部省じゃありませんよ、地方のお父さん、お母さんですよ、地方の自治体じゃありませんか。その地方の自治体に対してどういう対策を考えておられるのか、お考えがあれば聞かせてください。

伊吹国務大臣 後ほど総務大臣からもお答えがあると思いますが、先生がおっしゃっているのは二つの点があると思います。一つは、パブリックセクターじゃない御両親が養育費をかけたお子さんという面、それからもう一つは、パブリックセクターがそれをどう補てんしていくかという面、二点の御指摘があったと思います。

 安倍内閣は、教育再生を最優先の課題としておりますので、何分もう概算要求ができた後、安倍内閣はできておるわけですから、来年総理が大きな御判断をされるということを私は期待いたして、文科大臣としては当然期待をいたしておりますが、同時に、民主党も含めてぜひ考えていただきたいことは、従来、義務教育国庫負担金というものを二分の一の国の補助で、残りを地方が御負担になってやっておりました。しかし、三位一体、地方分権だということで、税源を地方自治体に渡し、これを三分の一にいたしましたね。ということは、結局、東京に財源を渡したということなんですよ。そして、東京に財源を渡して、国の義務教育国庫負担金は二分の一から三分の一、つまり六分の一減っちゃったということですよ。ですから、例えば島根県あるいは出雲市は大変苦しくなっていると私は思いますね。

 だから、地方分権という限りは、やはり地方の財源を均等に補てんしなければならないわけですから、この地方分権ということの大きな何か美しい言葉があれば何でも財源を渡したらいいのかということは、少しやはり各党考えていくべきことだと私は思っております。

菅国務大臣 委員は島根県から、そして私は秋田県から出て、二人とも横浜で衆議院議員をやっている。ここの多くの皆さんも、そうした方はたくさんいらっしゃるというふうに思います。そういう人間にとって、やはり地方への思いというのをみんなそれぞれ持ちながら生活をしているだろうというふうに私も思っております。

 そういう中で、今どうなっているかといえば、もう今、既に御承知のとおり、義務教育だとか高校教育というのは、まさに国庫負担金という形で、国税あるいは地方交付税で財政力指数の低いところでも財源保障をしている。ですから、全国一律、そこまでにおいては一定水準の教育ができるようになっているということ、これは御理解をいただけているというふうに思います。

 ただ、そういう中で、ようやくこれから地元に金を落としてくれそうになるときに若者が都会へ流出してしまっている、このことが今一番大きな問題ではないかなというふうに思っています。やはり地方において、そこで働くことのできる雇用の場、あるいはまた地方に自由度がないわけですから、私は、地方分権というものを進める中で、権限、財源、そして税源、ここも含めてきちっとした形の地方分権を進めることが極めて大事なことであるというふうに思っています。

 そういう中で、さきの臨時国会で地方分権改革推進法が成立をしました。総理も最重要課題として、まさに地方の活力なければ国の活力ない、そういう観点に立って、今議員から指摘をされましたことを私ども十分踏まえて、地方に元気が出る、そうした施策を展開していきたいと思っております。

岩國委員 地方に権限を渡す方が先行して、財源を渡す方がおくれている。言ってみれば、仕事はさせて、その下請代金だけがいつまでも支払いが滞っている、こういう状態が続いているわけです。

 私は、野田当時自治大臣に聞きました。いつになったら権限や仕事だけではなくてお金の方も渡すんですか、お金は、今苦しいけれども、景気がよくなったら。今、戦後最長の好景気と言われているときに、まだ財布は地方に渡されていないじゃないですか。私は、この辺もいいかげんな答弁だったんじゃないかと今から思っております。

 今、文科大臣、総務大臣から御答弁いただきましたけれども、安倍総理、ぜひこの教育については、世界の先進国と我が国とを比べて教育予算が低いということはもういろいろな人が指摘していることでもあります。ぜひ、こうした地方の活性化ということも含めて、教育予算を倍増するぐらいの勢いで、こうした新しい環境ができれば、教育予算は教育そのもの、そして地方に住んでいる両親の教育負担を軽減するという意味からも、私は、こういうことに対しては反対する人は非常に少ないんじゃないかと思うんです。ぜひそういった面で思い切った方策というものを。

 金だけ出せばすべてよくなるというわけではありません。しかし、すべて金が世の中という表現もあるように、口ばかり出している、それで法律ばかり変えている、いつまでたってもお金がやってこないでは、やる気が出てこないわけです。金をまず、見せると言うと失礼ですけれども、お金をしっかりと予算の上につけて、だから私はけさからずっと言っていますが、環境対策、格差対策、教育対策、全然予算もふやさないで口ばかりふえている、言葉ばかりが躍っていて、もっとしっかりとお金を数字で見せるということが大切なことではありませんか。予算委員会で審議する一番大切なことは、私はそれだと思うんです。

 さて、労働分配率、働く人の分配率について、いろいろな議論が既にここでも交わされました。そして丹羽委員からは、外国と比べても分配率はほとんど同じだという御意見もここでありましたけれども、厚生労働大臣として、この労働分配率は各国と比較して遜色はないというふうにお考えになっているかどうか、もう一度お答えください。

柳澤国務大臣 労働分配率、日本の統計では二つの方法で、国民経済計算の上で出す方策と法人企業統計から出す方策、二つありますが、大体同じトレンドをたどっていますから、どちらによってもいいかと思います。とりあえず国民経済計算によってフォローしてみますと、〇一年の不況の時代に七四・四%を記録して、〇二、〇三、〇四、〇五と徐々に低下しまして、現在は七〇・五というレベルにございます。

 これは、私どもといたしましては、景気がよくなると労働分配率は低下する傾向にある、こういうことで、景気が余りよくなくなると逆にこれが上昇するというか、そういう一般的なトレンドがあるというふうに考えておりまして、今日までのトレンドについては、大体、景気回復期にある一般的な動きとしてとらえることができよう、このように考えております。

 ところが、今先生お尋ねの諸外国の労働分配率はどうかといいますと、これも、それぞれの国が今言ったような景気変動との間で相関関係を持っておりますので、一概に一つの年度で比べるのがいいかどうかということでございますけれども、例えば日本の、先ほど申した七一・二というのが一番最近ですが、その前の〇三年の七二・五あたりを比べますと、諸外国の分配率とほぼ肩を並べている。フランスが多くて七三・三でございますけれども、それに次いで日本が高位を保っている。

 その後、日本はさらに景気の回復に応じて若干下げておりますので、その行方はしっかりと見ておかなければいけない、このように私としては考えております。

岩國委員 労働分配率の比較、しかし、これは、各企業の利益の中からどれだけ賃金に回しているか。安倍総理も経団連の幹部の方にもおっしゃったようですけれども、そうした企業の利益をもっと働く人に渡せ、それは実感として、これは組合の人もおっしゃっていますけれども、日本の労働分配率は各国と同じぐらいという見方は私も間違っていると思う。

 間違っている一つの理由は、よその国は全部、金利を払ったお金を使っているんです。日本の企業だけは金利ゼロのお金を使っているでしょう。ゼロ金利政策、だれがそれを負担しているのか。これは働く人も含めた国民ですよ。毎年十兆円以上のお金を銀行から受け取るかわりに企業にそれだけ渡している、所得移転。そして、それが企業の利益となって出ているじゃありませんか。ゼロ金利で国民が失った十兆円を借り手の企業がちゃんと払っているならば、それだけ利益は少なくなるはずなんです。したがって、日本の労働分配率というのは、このゼロ金利という異常な環境が続いている五年、六年の間に大きくひずみを来していると思うんです。七一・二%じゃないと思います。もっと低いはずです。

 そういう計算を厚生労働省としてはちゃんと見なければ、本当に働く人の財布の目線で考えていないんじゃないですか。あるいは、企業経営者がどこから利益を得て、その利益を賃金として払っているのか。労働者から見たら、七一・二%の中の一〇%は自分が渡した預金利子が会社からただ返ってくるだけ、したがって、六一・二%というのが実態に近いんじゃないかと思うんです。

 こういう異常なひずみを伴った数字でもって外国とほぼ同じぐらいだということで納得しているようじゃいけないと思います。もっと日本の企業経営者は、自分たちの使っているお金が、なぜコストがそれだけ安いのか、コストの安いお金を使っているからこそこれだけの最高利益が今来ているわけです。その最高利益の恩恵をちゃんと働く人にも返さなければならない、それがこの労働分配率の一番フェアな考え方だと私は思います。

 御意見があれば、大臣、おっしゃってください。

柳澤国務大臣 先ほどは国民経済計算で計算しましたけれども、今先生は支払い金利のことをお触れになりましたので、ここでは付加価値と法人企業統計の方に少しコンセプトを移して申し上げますと、私は、にわかの御質問ですから、的確性についてややおぼつかない点はありますけれども、付加価値の中で支払い金利が多かったらやはり企業の上げる利益の方がそれだけ少なくなるというようなことで、結局、分母の、構成要素は変わりますけれども、それ分の分子の、人件費ですね、雇用者に対する支払いというものの比率は基本的に変わらないんじゃないか、このように思うわけでございます。

岩國委員 奪われた利子が賃金となって返ってくるのであれば、私はこれはフェアな考え方だと思いますね、働く者からいえば。しかし、そうした企業が払うべき利子を払わないで済んでいるということは、当然、その企業の利益を増加させることに役立っているはずです。

 これは、厚労省としても、そういう異常な金利情勢の中では、公平な労働分配率はどうあるべきかということはぜひ研究してみていただきたい。そして、働く人にも納得できるような新しい理論が私は必要じゃないかと思います。

 最後に、政治と金の問題について。もうこれはしょっちゅうこの委員会の最初から出ておりますけれども、一億円のお金が右のポケットに入ったのか左のポケットに入ったかわからないような、そういう事件もありました。どこへ消えたのか。払った人だけはいるけれどもだれも受け取った人はいない、そういう不思議な事件。

 こういう政治と金。特に、世界先進国の中で企業の政治献金が比較的目立つというのは、アメリカもそうです、イギリスもそうです、方法はいろいろ、仕組みは違いますけれども。そして、日本も、そういう企業が政治に熱心だということは、ある面ではいいことでしょう。しかし、その熱心さが時々汚いお金あるいは不法なお金となることは避けなきゃならないと思います。

 政治と金について、私は、総理がもう徹底的にこういったことはきれいにしますと。もちろん、美しい国の最低条件は、きれいな政治家が存在するということでなければとても美しい国と言えるわけがないんです。

 この政治と金について、アメリカやイギリスでは政治献金番号というのを使っております。私は、以前にこの予算委員会でも紹介しましたけれども。この資料の一番最後に英語で書いてありますところを見ていただけますでしょうか。

 クリントン、ヒラリーと書いてあります。これは、今話題の女性、ヒラリー・クリントン。ヒラリー・クリントンがお金を集めるとき、恐らく今アメリカで一番たくさんお金を集めているのは彼女だろうと思いますね。しかし、だれでもその中身をみんなのぞくことができるんです、何州のだれが幾ら払っているかということを。そして、領収書にも全部その政治献金番号がついていますから、ですから透明性は一〇〇%。そして、そこに登録番号というのがありますね。ID、これは登録番号のことです。Sというのは、彼女は上院議員に立候補しましたから、セナター、上院議員。それから、下院議員の場合にはCがつくわけです。上院議員で、その次はゼロです。ゼロというのは、西暦二〇〇〇年に彼女は立候補しましたから、一番最後の下一けたをとってゼロになる。S0というのは、上院議員に二〇〇〇年に立候補した。選挙区はどこか。NY、ニューヨーク。偶然ですけれども、これはS0NYになっていますね、とてもいい番号だと思いますけれども。そして、その後、00188。この番号はどこへも全部ついて回るんです、お金を払うときも、受け取るときも。

 私は、こういう透明性の高い、今、納税者番号ということが言われています。税金を払う人に番号を強制する我々政治家が、まず政治家が隗より始めよ、私たちが番号をつけるべきじゃないでしょうか。住基番号にしてもそうです。パスポートも運転免許証も全部番号、次々と番号制を国会は打ち出しながら、政治家自身への番号というのは一遍も打ち出したことがありません。

 イギリスでは、受け取る人ではなくて払う人が法人番号、会社番号を使って、全部その番号が登録されていますから、すぐに寄せ算ができるんです。ですから、ブリティッシュ・ペトロリアムがどこに献金したか、BPの法人番号、会社番号というのをたたけば、すぐに寄せ算がさっとできる。したがって、政治献金に対する信頼感が高い。したがって、政治家に対する信頼度にもそれがつながっていくわけです。

 政治改革のまず一番の決め手は、総理、お金について透明性を高めることじゃありませんか。私は、これは難しいことじゃないと思うんです。総理のお考えを聞かせていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま委員が御指摘されたように、まさにこの政治資金の流れの透明性というのは、政治への信頼という観点からも極めて重要なことだ、このように思っています。団体番号制度について今先生からお話を伺っておりまして、この透明性を高めていくという一つの考え方として、大変興味深く拝聴をさせていただいておりました。

 各国には、それぞれの選挙制度、そしてまた政治資金規正法があるのではないか、このように思いまして、政治資金制度のあり方は、この政治資金規正法あるいは選挙の制度とも密接にかかわりがあるだろう、このように思います。ですから、各国の例を一概に我が国とそのまま比較することは難しいのかもしれませんが、しかし、今委員が御指摘になったこの団体番号制というのは、確かにその透明性を高めていくということにおいては一つの有力な手段だろうと思います。

 こうした先生の御指摘等々も踏まえながら、さらに政治の信頼性を高めていく上において、各党で協議をしていくことが大切ではなかろうか、このように思います。

岩國委員 総理、私はぜひ真剣に取り組んでいただきたいと思います。どんな政権ができても、どんな内閣ができても、いつまでもこれから逃げているようでは、要するに、与党も野党もみんな番号をつけられるのが嫌なんだ、あいまいにしておくのが一番いいんだ、それが日本の政治家のレベルよと、国民、有権者はみんなそういう目でしか見てくれないでしょう。我々は番号をしっかり持っている、これが政治家としてのライセンスプレートなんだという誇りを持ってやるようにしたらどうでしょうか。ぜひ真剣に取り組んでいただきたいと思います。

 最後になりますけれども、総務大臣に国際交流について私は御意見申し上げたいと思います。

 韓国、中国との間には、いろいろな歴史的に不幸な事件がありました。私は、出雲市長時代に、漢中という中国で一番古いところと姉妹都市、そして韓国とは長承浦、巨済島、日本に一番近い島のところです。韓国、中国と市民が交流を重ね、そして、韓国に対して、中国に対して見方がすっかり変わっていきました。

 いい方へいい方へとお互いに交流が進み、日本と韓国の間にそういう都市間交流、韓国との間に百の橋をつくる、中国との間に五百の橋をつくる。その橋をしっかりと両方の人が行ったり来たりすれば、もちろんこれは観光にもプラスになるでしょうけれども、そういう人の交流というものがなければ、たまたま総理と向こうの代表とは非常によかった、あるいは悪かった、そんなもろい関係ではなくて、やはり外交の根本は、国民と国民を結ぶ、その多くの橋をつくり上げることじゃないかと私は思うんです。

 総務大臣の御担当ではないかと思いますけれども、こういう地方自治体を対象にして国際交流を推進するためのもっと大きな援助をするシステムというものを、外交を支援するためにおつくりになる考えはないのかどうか。今でもゼロではありませんけれども、何か新しいことをお考えになっているのかどうか、あるいは新しいことは全然考えておりませんということなのか、お願いします。

金子委員長 菅総務大臣、時間が来ております。

菅国務大臣 確かに私も、国際交流の中で姉妹都市交流というのは極めて大事だというふうに思っています。私ども、十八年に姉妹都市交流の際の大臣表彰というのを初めてつくらせていただきまして、この三月には表彰をさせていただく。まさに、草の根の中でお互いの国民が交流することは、歴史あるいは文化、そうしたものを共有することによって交流が深まってくるというふうに思っています。

 今までは、JETプログラムで多くの外人、若者を日本に来ていただいたり、あるいは姉妹都市を行っているところに対して交付税等で私ども招致をさせていただいていますけれども、まさにこれからもこうしたことに積極的に支援をさせていただきたいと思います。

岩國委員 もう時間が参りましたので、終わります。

 最後に、柳澤大臣、繰り返すようですけれども、ぜひ命を大切にする政治を積極的にと願って赤ちゃんを産むお母さんの喜びをうたった一つの句を私は紹介します。「今までの 世界がどんなだったのか わすれそうです 君が生まれて」初めて生まれた命を抱えたお母さんの喜びです。

 私の大変好きな句ですけれども、小さな命を抱えて自分の命までも変わっていきそうだ、これが本当の愛というもの、そしてお母さんの気持ちなんですよ。機械という表現などはおよそこの世界の中に入ってこないということは、大臣、よくおわかりになったでしょう。

 終わります。

金子委員長 これにて岩國君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

金子委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。原口一博君。

原口委員 民主党の原口でございます。

 きょうは、通告に従って、安倍総理並びに閣僚に質疑をさせていただきます。

 まず、北朝鮮の問題についてでございますが、きょうここに、「うらさんの祈りはダイヤモンドになって」という生島うらさんのことを書かれた、特定失踪者、生島孝子さんのお母様、九十九歳まで待っていらっしゃいましたが、結局亡くなりました。

 総理にまず伺いたいのは、拉致の問題、そして特定失踪者の問題、これをどうやって解決していくのか。大変、私たち国民的な関心事でございますが、特定失踪者の問題は、二十年も三十年も前に国家によって行われた犯罪、その犯罪を個人が証明しなければいけない、しかも国家機関によって行われた可能性が非常に高い、ですから証拠も隠滅されている可能性が高い。それを個々人の家族が一生懸命情報を集め、自分の家族はどこに行ったんだろう、そういう思いで捜していらっしゃる。やはりそこに大きな矛盾と問題点があるというふうに思います。

 総理にお伺いしますが、この特定失踪者の問題については、今申し上げましたように、国家犯罪を個人が証明しなければいけないというのはやはり非常に不合理ではないか。私は一層の取り組みが必要ではないかと。拉致議連でも御一緒させていただきましたが、総理の御見解をまず伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 現在、国として認定をしております十二件十七名以外の方々においても拉致の可能性は、これは私はもちろんある、このように思っております。

 そもそも、曽我ひとみさん、ミヨシさんについては、当初、私どもは拉致被害者に認定していなかったわけでございますし、その後の認定においても、当初は認定されていなかった方が認定されたというケースもあるわけでございます。

 そういう中におきまして、いわゆる認定をされている方々以外の方々についても警察当局においてしっかりと捜査するように、そのように指示をいたしておる次第でありますし、また、警察当局におきましても、国として認定をしている方々以外の方々についても、その可能性について、随分年月がたってしまったからいろいろな困難があるんですが、当時の状況等も含めて捜査を続行しているところでございます。

 そしてまた、御家族の方々にとっても、もしかしたら私の息子や娘が拉致をされたかもしれない、そういう思いの方々に対して、いろいろな御心配、いろいろな御苦労があると思います。そういう方々に対しての家族の御相談にも乗るように、このように指示をしているところでございますが、今後とも、いわゆる特定失踪者の方々に対する御家族のケア、そしてまた捜査は、我々国として責任を果たしていかなければならないと考えております。

原口委員 総理にお答えいただいてありがとうございます。やはり証拠主義に基づきますから、どうしても証拠そのものが隠滅をされている、そういう危険性もあるということで、一層の取り組みを求めたいと思います。

 委員長にお願いをして、理事会で御許可をいただいた資料を各委員のお手元に配付させていただきたいと思います。よろしいでしょうか。

 まず、昨日合意をされたという六カ国協議、六者会合の第三セッションの概要、きのう外務省から届いたものに沿って、少し総理と、あるいは関係閣僚と議論をしていきたいと思います。細かいことについては、予算委員会は閣僚と議論する場でございますが、きのうのきょうでございますので、事実関係については事務方でも結構でございます。

 まず、この六者会合の目的、午前中、小野寺委員の質問にもお答えになっていましたが、私は、朝鮮半島及び北東アジア地域全体の平和と安全、安定、世界の平和、これが目的ではないかと思うんです。前回の、二年前ですか、九月の六者協議で、北朝鮮の核問題を話し合う場というふうに六者の意見が目的として統一したように聞いておりますが、私は、単に核問題だけをここで話していて済むということは思っておりません。総理の基本的な御認識を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 この六者協議、六者会合を持ったそもそものきっかけとしては、北朝鮮の核開発によるものであって、そして、そこに集まった国々のほとんどの関心はそこにあったのも事実でありますが、しかし、その目的としてはまさに今委員が指摘されたとおりであろう、私はこのように思います。朝鮮半島と北東アジア地域の平和と安定のためにこの六者協議を持った。

 その意味におきましては、作業部会において、北東アジアの平和及び安全のメカニズムをつくるための部会も設置をされておりますし、また、米朝そして日朝が正常化をしなければ、これはやはりこの地域の安定、平和はないという意味におきましては、私は、まさに委員が御指摘になった目的が大きな目的であろう、このように思います。

原口委員 そういう認識に立てば、やはり人権の問題、人間の尊厳の問題、これこそ平和と安定の基礎でありますので、拉致問題がないがしろにされては決してならない、このように思います。

 そこで、このペーパーに沿って幾つか、これは事務方でも結構ですが、伺いたいと思います。

 昨日の朝の三時過ぎでしたか、中国の草案というものを、私ども、こんなものじゃないかというふうに聞いたことがありまして、それによると、六十日とか三十日とか、そういう以内に実施する初期段階の措置は五十万トンプラスアルファだったんではないかと認識していますが、当初、議長国である中国が出してきた草案、これはいかなるものでしたか。事務方、答えられる範囲で結構ですので、教えてください。

伊原政府参考人 交渉の過程でさまざまなやりとりはございましたけれども、今議員の御指摘のような額を含む案が中国から提示があったということはございません。

原口委員 五十万トンという額プラスアルファというのは、それは違うということですね。わかりました。

 そこで、この緊急支援ですけれども、この緊急支援というのはいつからスタートするのか、これには何か条件がついているのか、教えてください。

伊原政府参考人 今回合意されました六十日以内のいわゆる初期段階でとる措置については、それぞれが今後とられていくということでございます。

原口委員 それぞれがとられていくというのは、どういう意味でしょうか。私の聞き方が多分漠然としていたんだと思いますが、例えば経済・エネルギー支援、重油五万トンに相当する緊急エネルギー支援を開始すると。これは、即この六十日以内に実施される、そういう措置であるということで理解してよろしいですか。

伊原政府参考人 それぞれの措置が六十日以内にとられるということでございますので、その重油の五万トンについては六十日以内に開始されるということでございます。

麻生国務大臣 原口先生の御疑問はもっともなんだと思うんですが、基本的には、我々の方はまだ疑っていまして、五部会立てるって、本当に立てるかというところですよ。だから、本当に、立てる立てると言って立てないかもしれませんから、立っても動かさないとかいうことになったら、まずは、本当に立ててスタートしたら五万トン出します、そういうぐあいに御理解いただければよろしいかと存じます。

原口委員 ということは、私たちも、今、麻生外務大臣がおっしゃるように、ここにも、一九九二年、南北の、あるいは九四年の枠組み合意、その後のさまざまな、北朝鮮が約束をしたという文書を全部持ってきました。ことごとくそれは実施に移されていない。このことを考えてみると、今外務大臣がおっしゃったこともむべなるかなと思います。

 作業部会の設置そのものも、立てられるかどうかです。私は、きのうペーパーをいただいたときに、初期段階の措置には何らの条件はついていないというふうに思いましたけれども、しかも、この初期段階の五万トンに対しては、我が国は五万トンを供給するということはない、その中には我が国は入っていないという認識でございますが、他国も、例えば作業部会の設置というものがなければこの五万トンというのは供給しない、そういう理解でよろしいでしょうか。

麻生国務大臣 一応紙に書いて約束をしておりますので、立てるというところまでは、一応立ち上がった形になると思いますけれども、実際、何の反応も出ない、動かない、立てっ放しで格好だけつけて何も動かさないという可能性というのを私どもは最も恐れるところでもありますので、具体的に動いていくというのがわかったらまずは五万トンという話をいたしておるというように御理解いただければと存じます。

 その五万トンの中に、日本がそれに関与している、それを支払うということはございません。

原口委員 ありがとうございます。

 次に、皆さんのお手元のペーパーの、北朝鮮がやるべきこと、これの3でございます。「すべての核計画(抽出プルトニウムを含む。)の一覧表について、五者と協議する。」と。この「一覧表」というのは何を意味するのか。

 私たちが懸念をしているのは、核施設だけではありません。昨年の秋に実施をしたとされている核実験、あるいは、ということは核爆弾も持っているかもわからない。そういったことについても含むのか。この「一覧表」の意味、事務方で結構ですから教えてください。

伊原政府参考人 初期段階の次の段階で北朝鮮が提出すべき申告については、核計画の完全な申告ということでございますので、すべてが含まれると思っております。

原口委員 いや、私が伺っているのは初期段階の措置の中で、まだ初期段階の次の措置に行っていませんので、落ちついて御答弁いただきたいんですが、初期段階の措置で「核計画(抽出プルトニウムを含む。)」と書いてありますね、皆さんが私にきのう下さった資料。この「一覧表」というのは何を意味するのか。

 なぜここを私が聞くかというと、何を対象にして合意をしたかということがとても大事なんですよ。だから伺っているので、正確に。

伊原政府参考人 議員の御指摘のとおり、初期段階で議論するリストについては、抽出されたプルトニウムも含まれるということは明確でございます。

原口委員 いや、プルトニウムが含まれるというのは書いてあるんですよ。書いてあることはわかる。だけれども、私たちが懸念をしていたのは、核計画の中でも、例えば濃縮ウラン計画があったんではないか、あるいはその核を使ったいわゆる核爆弾、核実験の計画があったんではないか。そういったものもこのリストの中に入るんですか。あるいは、きょうのニューヨーク・タイムズとか見ますと結構いろいろな議論が出ていて、北朝鮮が確保済みの核兵器とか濃縮ウランプログラムについて何か合意されたんではないんだと。それではまだ十分ではないという批判も一方である。だから、何をこのリストの中に含めるかという認識はとても大事なんですよ。

 プルトニウムが含まれるという答弁でなくて、ほかのものは何なのか、教えてください。

伊原政府参考人 今回の措置の実施については、二〇〇五年の共同声明を実施するためのものでございます。二〇〇五年の共同声明では朝鮮半島の非核化ということが目的になっていて、まさにそのために、まずリストを出して議論をしようということでございますので、これについて、完全なリストにしていくべく今後議論が行われるということであろうと思います。

麻生国務大臣 これは原口先生もう御存じのように、最初のころの、ことしの一月の初めぐらいのところまでは、正直言って、この三番目の計画まで向こうがおりてくると思っていませんでした。これはかなり我々の交渉が成果が上がったんだと思いますが、そういう意味では、今向こうが出してくるということを言っておりますが、その内容につきましては、プルトニウムまでは確実になっておりますが、その他、濃縮ウラン、ウラニウム、その他核の遠心分離機等々、いろいろな、核爆弾をつくるために必要な計画等々一切というように我々は理解をし、アメリカもそう理解しておりますが、果たしてそれがそのとおり出してくるかどうかは、これは今後まだわからぬところだ、私どもはそう理解しております。

原口委員 この辺がやはり微妙なところで、今お話しになった、これは前回、二〇〇五年の九月十九日、第四回の六者会合に関する共同声明では、基本原則は、約束対約束、行動対行動だったんですよ。ところが、今回の合意、初期段階の措置ですから、「行動対行動の原則に従い、」というのはうたわれていますけれども、肝心の約束対約束というのは今回の文書から抜けていますね。非常に懸念、交渉した相手をもともと信じないというやり方はもう交渉にも何にもなりませんから、国際法と正義に基づいて北朝鮮が約束を守ることを期待しますが、今回の合意の中にはその約束対約束という行動原則が外れているということは指摘をしておきます。

 さて、けさの質疑の中で、六者協議の中で拉致の問題を総理はきちんと位置づけることができたというふうに御答弁を小野寺委員になさっています。どこでどのように位置づけられているのか、非常に拉致家族の皆さんの不安もある意味高まっています。それはどの部分に位置づけることができたという御認識ですか。

安倍内閣総理大臣 お答えをする前に若干整理をさせていただきますと、この第三セッションの概要について、まず、「六十日以内に実施する「初期段階の措置」」ということで(1)、(2)、(3)、(4)と、これがまさに六十日以内で、この中のパッケージで進んでいくということでございます。ここに、五万トンのエネルギー支援の約束と、そしてまたその上に北朝鮮がやるべき措置について書いてあるわけでありまして、ここがまさに行動対行動で進んでいくということでございます。

 そしてまた、その下に書いてある作業部会は、三十日以内に開催をする、こういう仕組みになっているということで御理解をいただきたいと思うわけでありますが、その中で、日朝国交正常化が作業部会として設置をされるわけでございます。そして、この中におきまして、共同声明の実施のための初期段階の措置といたしまして、朝鮮民主主義人民共和国と日本国は、平壌宣言に従って、不幸な過去を清算し懸案事項を解決することを基礎として、国交を正常化するための措置をとるため、二者間の協議を開始すると書いてあります。明示的に拉致問題とは書かれておりませんが、懸案事項は、まさに我が国にとってはこれは拉致問題を指すわけでございます。

 私も、施政方針演説で述べているとおり、拉致問題の解決なくして国交正常化はないということをはっきり申し上げているとおりでありまして、この作業部会のゴールである国交正常化は、拉致問題が解決をされなければ正常化はしない、つまりこの作業部会は完結をしないということでございまして、この六者協議の中に設置をされました作業部会において拉致問題を解決しなければならないという、まさに協議の場ができた。そしてまた、それを北朝鮮がまさに乗り越えなければ、この問題を北朝鮮が解決しなければ、この六者協議の中においてすべての問題が解決をされたとは言えないという枠組みをつくることができたという意味において、そう申し上げたわけでございます。

原口委員 そこのところ、もう少し議論をしていきたいと思いますが、皆さんのお手元には配付できていませんが、共同声明の実施のための初期段階の措置ということで、その共同文書を、速報ではなくて訳したものを拝見しますと、今総理がおっしゃった作業部会についてはこう書かれています。作業部会の「作業の進捗につき報告を行う。」これはいいですね。ところが、「原則として、ある作業部会における作業の進捗は、他の作業部会における作業の進捗に影響を及ぼしてはならない。五つの作業部会で策定された諸計画は、全体として、かつ、調整された方法で実施される。」こう書かれています。

 つまり、今外務大臣は、この作業部会そのものがちゃんと開かれるような期待をお示しになりましたけれども、恐らく拉致の問題は、この日朝国交正常化という三番目の作業部会で話し合われていくでしょうけれども、ほかの作業部会、ほかの国からのいろいろな拉致の問題についての圧力あるいはその影響というのはここには及ばない、ここで拉致の問題を解決しなかったからほかの作業部会が破綻するなんということは原則としてあってはならない、このように書かれているような気がいたします。

 ちょっと、パネルを。これは皆さんのお手元の資料に配付をして、いろいろな北朝鮮の核関連施設については報道がなされています。これは、韓国の朝鮮日報やさまざまなほかのメディアでも書かれていたものから書いたもので、これが本当かどうかというのは正直わかりません。核実験がこの北朝鮮の北東部で行われたであろうということはわかりますけれども、寧辺の原子力、プルトニウムの施設以外にどういうものがあるのかということも、私たちはつまびらかに本当は知らなければいけない。このリストをしっかりと知って、そして北朝鮮が開示をし、核兵器の開発を断念する、このことが一番重要なことであるというふうに思いますが、外務大臣の基本的な御認識を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 原口先生もうよく御存じのとおり、基本的に、今回の六者協議の優先順位の断然高いところは、六カ国全員で北朝鮮を核保有国として認めない、これが優先順位の断トツ一番だと思います。これが何といっても、今回はそこのところが一番の到達せねばならぬ最大のターゲットだと思っておりましたけれども、一応、その点に関しては断念する。正確に言うと、断念するかのごとき処理に一応今なりつつあるというのが正確なところだと思います。まだきちんとしておりませんので、六十日以内にすべてすることに一応なっておりますので、六十日後には六者の閣僚会議をやるというところまで一応合意をされておりますので、そこを目指して日朝は三十日以内でスタートをすることに一応なっております。

 いろいろなものが、きのう夕方のというか、正確にはおとといの晩、大分遅くまでかかっていろいろしておりましたし、何時でしたか、大分遅くやっていました。ちょっと正確な時間は覚えていませんけれども、とにかく夜中、こっち時間。現地時間でも約二時間差ですから、ほぼ夜中の一時というところだと思いますが、そういうようなところまでかけて、きちんと最後まで詰めてきておったのにもかかわらず、これでいいねというのにもかかわらず、またもう一回、朝もう一回、ちょっと本省に訓令を仰ぎたいというから、もう帰ると。何回も何回も、権限を与えられていない話なんかやっておられぬという話になって、結構険悪な雰囲気でしたけれども、最終的にはそれをもらってきて、四時が四時半になり、五時になり、最終的にはそれで結論は得ておりますので。

 まだまだ詰めねばならぬというところは幾つか残っておるとは思います。しかし、大筋、今そこにお手持ちの紙とほぼ大筋のところで合意をいたしておると思っておりますので、ちょっとここのところはどうとかというのは、幾つか細かいところはまだまだ詰めなくちゃいかぬところは当然出てくるとは存じますが、大筋、今のところで合意をしたというところが肝心なところで、一番のところは、日本の場合は、御存じのように拉致という特殊事情を持っております。

 御存じのように、これも、拉致という問題を国家が正面切って、政府が正面切って取り上げている国は世界じゅうで日本だけですから、北朝鮮に関してだけではなく。少なくとも自国民が人質とか誘拐とかいうような騒ぎになっておる話に対して、政府が正面切って出てきておりますというのは日本だけ。北朝鮮に対しての話ですけれども。

 そういうところになっておりますので、その意味では特殊かもしれませんが、これは人権上、最も譲れないところの一つでもありますし、そういった意味では、日本は韓国、中国、アメリカに対してやくやくこの話はして、少なくとも今のところ、この問題に関しては理解を得た上で進んでおりますので、向こうが日朝会談に応じ、いろいろなこちらの懸案を解決ができれば、日本としても、その百万トンの石油の話に関して、解決すれば後でしかるべき応分の対応はしますということに関して、他国は、四カ国はそれに納得をしておるというのが、今、現状であります。

安倍内閣総理大臣 先ほどの質問の中で、私は、いわば拉致問題について、六者協議の中で、この枠組みの中に位置づけを行ったというお話をした後、原口委員から、この初期段階の措置のペーパーの中において、「ある作業部会における作業の進捗は、他の作業部会における作業の進捗に影響を及ぼしてはならない。」このように書いてあるではないかというお話がございました。

 その後の次の段落に、「五つの作業部会で策定された諸計画は、全体として、かつ、調整された方法で実施をされる。」つまり、作業部会を進めている中においては、それぞれの五つの作業部会は進めていく、しかし、最終的には、これはどれか突出するということではなくて、最終的には全体としてやはり完結をしていくように調整していく。これは私どもが主張してまさにこの中に入れ込んだところでございまして、ということで私たちは担保をしているというふうに御理解をいただきたいと思います。

原口委員 そこが一番、過去の経験からすると心配なんですよ。エネルギー支援、過去にも何回もやりました。そして、食糧支援も行いました。しかし、その結果は今の結果でありますので、要は結果をどのようにして出すかということが問われているというふうに思います。

 作業部会についてですけれども、五つの作業部会には議長国だけ書かれています。この作業部会はそれぞれの国も入る、そういう理解でよろしいんでしょうか。例えば、「米朝国交正常化」という中にほかの四カ国が入るというのは普通考えられないけれども、「経済及びエネルギー協力」なんというのは、これは全体でやる話でしょうし、「北東アジアの平和及び安全のメカニズム」あるいは「朝鮮半島の非核化」、こういったものは日本も必ず入る、こういう理解でよろしいでしょうか。

伊原政府参考人 五つの作業部会のうち、米朝についてはアメリカと北朝鮮、日朝については日本と北朝鮮、それ以外の三つの作業部会については六者のすべての国が参加する、そういう理解でございます。

原口委員 そこで、この初期の段階の措置の2でございますが、北朝鮮が行うべき措置の中の「すべての必要な監視及び検証を行うために、IAEA要員の復帰を求める。」これは、北朝鮮はNPT脱退を宣言しておって、これはNPTに戻って、そしてIAEAの要員の査察を受け入れる、こういう意味ですか。

伊原政府参考人 この部分につきましては、まず、北朝鮮がIAEAと合意の上でIAEAの監視を受けるということでございます。

原口委員 ちょっと意味がよくわからなかったんですが、IAEAと北朝鮮が合意の上でということは、NPT条約にも復帰するという理解、その意思をここで示したということでよろしいですか。

伊原政府参考人 そういうことではございません。今回、活動を停止し、封印される施設についてIAEAが監視、検証を行うために、北朝鮮がIAEAと話をしてアレンジするということでございます。

原口委員 やはりそこが問題なんですよ。

 だから、この後の議論になりますが、ちょっと時間の関係で少しただしたいことはほかの委員会に回しますが、初期段階の次の段階における措置ですね。ここで、北朝鮮が「すべての核計画の完全な申告の提出及びすべての既存の核施設の無能力化等を行う。」と。だから、どれを無能力化するのか。まだやはり出していない施設があってみたり、濃縮ウランのところがあってみたりすると、今お話しのように、初期段階ではIAEAの要員が寧辺の核施設に入る。それ以外はどうなるんだ、その間もまた、核をつくるものを稼働させながらやっていくのか。

 今回、何が合意されて、何が合意されていないかということを知るためには、既存の核施設の、これはリストが出ているでしょう。違いますか。既存の北朝鮮が持っている核施設、その中の何と何と何を議論したのか、そこを教えていただけませんか。

伊原政府参考人 既存の核施設については、私どもが納得できるきちんとしたリストはございません。したがいまして、今回、まず寧辺については、寧辺の今の核施設、これは再処理施設も含む核施設となっておりますけれども、第二段階においてまず完全な申告を求めるということになっておりますので、まさにそういったことは、今後、この六者協議の中で、特に作業部会の中で議論を進めていくべき問題であると思います。

原口委員 私は、だから、そこのところが、今回の合意が手放しで喜べないところなんですね。

 これはよその国の新聞ですから、ニューヨーク・タイムズの記事をあえて引くと、今回はあくまで現状の凍結というレベルの解決策であり、北朝鮮が既に、これはニューヨーク・タイムズの言っていることですけれども、確保済みの六基以上の核兵器と核物質、そして秘密のウランプログラムには手をつけられずにいる。ニューヨーク・タイムズはこう書いています。だから、私たちはよほど慎重に議論を進めていかなければならない。総理、このように思うわけであります。

 さらに、エネルギー支援について伺います。

 重油九十五万トン、大変大規模な支援であります。重油九十五万トンに相当する規模、これは初期段階の次の段階における措置で、それを限度とする経済、エネルギー及び人道支援を供与するというふうに書いてあります。一体何に使うんだろう、重油の九十五万トン。

 これは当然、我が国は、きのう総理が御答弁なさったように、拉致問題の解決なくしてはそれは支援をしない。その支援の仕方は、直接的にも、例えば食糧計画に食糧を渡してそこから支援してもらうという間接支援の仕方も食糧支援ではありましたね。そういう直接間接支援も、北朝鮮に関する拉致問題が解決しなければ支援をしない、この九十五万トンは我が国から出ることはないというふうに理解してよろしいでしょうか。

安倍内閣総理大臣 最初の五万トンも、またこの九十五万トンも、拉致問題について進展が見られなければ、我が国としては当然それは出すわけにはいかないということでございます。そしてまた、そのことは米国を初めとして関係国には理解をしていただいているところでございます。

原口委員 なかなかそこのところ、まだ合意したばかりですから、私たちも確信を持ち得ずにいます。中国や韓国、あるいは米国の中にも、日本はそこまでかたくなにしないで、しっかり協調体制をとるべきだという意見もあります。しかし、私たちは、やはりこの拉致問題の解決といったことを対話と圧力の中で行う限りにおいては、慎重な判断が必要だと思っています。

 そこで、ではこの九十五万トン、最初は五カ国が平等に均等割にするというようなお話でございましたが、この九十五万トンも割り当てがあるんじゃないかと思いますが、その割り当てはどうなっていますか。

伊原政府参考人 九十五万トン、あるいは最初の五万トンについては、先生御指摘のとおり、日本を除く四カ国で供与することになっておりますが、それをどのように分担するか等については、私どもはまだ全く承知しておりません。

原口委員 それでいいですか。九十五万トンは日本を除く四カ国なんですね。つまり、百万トンは、私たちはその支援というのはないわけですね。きのうの答えと違うでしょう。

麻生国務大臣 今の御質問は、五万トンプラス九十五万トンのエネルギー支援というか石油の支援については、日本は関係なく、残り四カ国でしか対応しないというのは確かかという御質問……(原口委員「そうです」と呼ぶ)そのとおりです。

原口委員 ということは、この注のところにある「米中韓露が実施。拉致問題を含む日朝関係に進展が見られる」、日朝関係が進展したら我が国はエネルギー支援もする、そういう理解ですね。つまり、拉致問題が解決するまでは一切のエネルギー支援はない、そういう理解でよろしいですか。

麻生国務大臣 いわゆる日朝問題というのは、人質というか拉致の話を含めて、御存じのようにこれまでの経緯いろいろありますけれども、とにかく日朝関係が進展をしない限りというのが正確だと思いますが、これからその内容によっては、いろいろバリエーションというか、いろいろな変化があるんだとは思いますけれども、私どもとしては、日朝関係の進展があれば、少なくともこの問題に関して、百万トンに、それ相応の、応分の対価を払う用意はあるけれども、これ、進展しない限りは、このエネルギーの百万トンに関してはうちは関係ないということに関して理解を得た。

 したがって、これが進展をすれば、その段階でどういうやり方をするか、今四分の一ずつ払っているのが今度五分の一ずつになるのかどうか、四カ国でどうやって比率で割るかも私どもはよくわかりませんので、四カ国の話が、どういう応分の割り方をするのか、均等割するのか、私どもちょっとまだそこのところはわかりません。ただ、私どもとしては、それに関与していない、日朝が進展すれば、その段階で我々もしかるべき対応をしますということです。

原口委員 そこのところ、ちょっと、しつこいようですけれども、今、日朝関係の進展、例えば一緒にテーブルを囲むだけでも、これも北朝鮮の今までのかたくなな態度からすれば、テーブルにちゃんと着いて、さっき大臣がおっしゃったように、部会の中で幾つかの誠実な対応が出れば、これも進展と見るのか。それとも、私たちが、先ほど生島さんの例を引きましたけれども、拉致の問題が解決をする、全面的に解決をする、このことをもってエネルギー支援をするかというのは、相当幅がありますね。それはどのように考えればよろしいでしょうか。

安倍内閣総理大臣 もちろん、対話の場、極めて大切ですから、対話と圧力、私どもは圧力をかけておりますが、圧力だけでは解決をしない、対話の場を通じて最終的な解決を図らなければならないという意味においては、今回、日朝の協議の場ができたことはよかった、こう考えています。

 しかし、この協議の場をただつくって延々と議論し、先方が拉致問題なんというのはもう事実上終わっているという発言に終始するのであれば、これは全く進展がないと言ってもいい、このように思います。

 そこで、どこまでいけば進展と判断するのか、これは我々が判断をするわけであって、北朝鮮ではないわけでありまして、我々が適切に判断をしながら決めていきたい、このように思います。

原口委員 そこで、この合意文書を見ると、「アメリカ合衆国は、未解決の二者間の問題を解決し、完全な外交関係を目指すための二者間の協議を開始する。アメリカ合衆国は、朝鮮民主主義人民共和国のテロ支援国家指定を解除する作業を開始するとともに、朝鮮民主主義人民共和国に対する対敵通商法の適用を終了する作業を進める。」というふうに合意文書にはあります。

 つまり、バンコ・デルタ・アジアも含めた金融資産の凍結あるいは金融制裁、こういう経済制裁も含めたものを終了させる。ある方によると、あのニクソン・ショック以来の頭越しの大ショックではないかと言う人もいます。それは今の段階では私はわかりません。しかし、アメリカが大きく今までの姿勢を柔軟にとって、対話の路線にかじをとっているだろう、こういう判断はできます。アメリカはいつごろまでにこの金融制裁を解除するのか、どのようにやるのか、他国のことですが、どう理解されているのか。これは事務方で結構です。

 一方、我が国は万景峰号の入港禁止も含めた幾つかの経済措置、制裁措置をとっています。この経済措置について、どのような判断をするのか。

 二点、伺います。

麻生国務大臣 アメリカがバンコ・デルタ・アジアについてどのような対応をしようとしているのか、これはいろいろ説がございます。白、グレー、黒の部分を分断して別々にするとか、一括するとかしないとか、いろいろ話が出ております。この内容について、我々は知っているわけではございません。

 それから、日本の、万景峰号の話が出ましたけれども、これは日朝の話でありまして、少なくとも私どもは、今回は六カ国協議の中でこの話をやってきております。バンコ・デルタ・アジアの話は、アメリカ財務省と北朝鮮との間の、いわば現金洗浄の話が主たるものでありますから、六者協議と直接関係しているわけではないというのが基本的なアメリカの立場でありますし、我々は、この六者協議と関係しておる部分でいきますと、北朝鮮の一連の動きに対して万景峰号の入港禁止等々を措置しておりますのは、これはBDAとは全然関係なくやっておる話なので、私どもとしては、この万景峰号の話を、北朝鮮との間の進展が、我々の満足できる進展がない限り、今の段階で解除するつもりはございません。

原口委員 経済制裁法案は私たち超党派でつくってそれを通したわけでございますが、総理に改めて確認をさせていただきます。

 我が国が現在行っているさまざまな経済制裁措置、これは、外務大臣がお答えになったように、今回の六者協議の結果のいかんにかかわらず解除するという判断は今されない、そういうことでよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 現在、日本として経済制裁措置をとっております。この経済制裁措置がとれるのも、原口委員を初め議員の皆さんが、対抗する手段として経済制裁を可能にする議員立法を成立させていただいたおかげであろう、こう思っております。

 我々は、この経済制裁を科したときに、当時私は官房長官でございましたが、この経済制裁の理由として、拉致問題について誠意ある対応を示していないということも挙げたわけでございます。その趣旨にのっとって経済制裁をしているわけでございます。

 ですから、現段階で私たちはこの経済制裁を解除するという考え方はないわけでありまして、今後の北朝鮮の出方を見ていかなければならないと思っております。

原口委員 もうこれで北朝鮮問題については最後にしますが、一方で、そういう中で、これは与党の中でも我が党の中でも、本当に情報というのは伝わっているんだろうかと、官邸や外務大臣に。一月のベルリンでの協議も、さっきリストを出してくださいと私はお願いをしましたけれども、そのリストも出ているんじゃないか、北朝鮮とアメリカとの間では割とハードな話がされているんじゃないだろうかと。その中で日本だけがずっと直球を投げ続けていて、そして日本だけが孤立をしてしまうんじゃないか。

 現実に、与党の副総裁をなさった方も、バスに乗りおくれるというような御発言をされています。そのことについて、総理、どのように、まあ与党の方の御議論ですから、議員がどんなことを言うのもそれは自由でしょう。

 しかし、私たちが一致して拉致の問題を解決していこうという中で、国民の間にも幾つかの、やはり核の問題というのは日本国全体の、暴発をして大変なことになってしまうと国民全体が大変なことになる、拉致の問題は大事だ、しかし、その中で日本が孤立していくと、本当に拉致の問題も解決できるんだろうか、こういう不安の声も聞こえていますが、総理はこういう声にどうおこたえになりますか。

安倍内閣総理大臣 私は、バスに乗りおくれるなという意見に対しては、ではバスに乗って何を得ようとしているんだというふうに言いたい、このように思います。

 外交によって国益を確保するためには、これは当然孤立してはならないわけであります。それと同時に、主張すべき点は主張していかなければ国益は守ることができない。特にこの拉致問題、日本人の生命がかかっている大切な問題であります。このことについては我々は譲ることのできない問題ではないか、このように思っております。

 しかし、結果として、この問題を解決するためには国際的な理解が必要である、こう考えています。そこで、我々は、日米の関係、また六者会合に臨んでいる中国との関係、韓国との関係、ロシアとの関係において連絡を密にしております。

 特に日米については、ベルリンの米朝の接触等も含めて、我々は極めて緊密な連携をとっておりますし、我々も、言うべきことは米国に伝えているわけであります。すべてをつまびらかにすることができないわけでありますが。

 また、中国との関係においても、かつてはこの拉致問題についてなかなか厳しいかたくなな態度が見られたこともあったわけでありますが、現在は大変理解は進んだ、このように了解をしております。

 これも、政府としても努力をしてまいりましたが、原口委員を初め多くの議員の方々が国際社会に対してもこの拉致問題の重要性を訴えてきていただいた成果ではないか、私はこう思うわけでありまして、今回、我が国が重油を提供しない、拉致問題が解決に向かって、進んでいく、進展がなければ重油を提供しないという判断においても、各国としてはやはり、もちろん、日本にも持ってもらいたい、負担をしてもらいたいという気持ちもあるかもしれませんが、日本の立場を理解し、基本的には、我々がそういう考え方であるということについて支持をしていただいている、このように了解するわけであります。我々も、当然孤立をしてはならないし、実際に孤立はしていない、このように思うわけであります。

 しかし、国際政治の場においてはいろいろなことがあるわけでありますが、我々は、さまざまな情報をしっかりと収集しながら分析をし、正しい判断をしていきたいと思います。

原口委員 私は、毅然としてみずからの国益、主張をはっきりさせるというのはとても大事だと思います。しかし、そのためにも、その国益を実現するための基礎が大事だなと思います。

 これは通告をしていませんが、私はイラク対策特別委員会の筆頭理事をさせていただいていますが、在イラク日本大使館チェックポイントへの発砲、日本時間の十日十二時二十分ごろ、通りすがりの乗用車一台から在イラク日本大使館のチェックポイント方向にけん銃による発砲が二発あった、大使館関係者に被害はなかったという情報を得ていますが、これは事実でしょうか。

麻生国務大臣 今言われたのは私どもの発表した文だと思いますので、そのとおりです。

原口委員 私の手元にこの紙が来たのは二月の十三日。それで、やはり、発表されたのも二月の十三日。きょうが二月の十四日、バレンタインですね。きのうですね。つまり、適宜適切な情報がちゃんと伝わっているんだろうかということを一方で確認をしたいと思います。

 昨年でしたか、神戸でロシア人の女性が、これはサンクトペテルブルク出身の、プーチンさんと同じところの御出身の女性が殺害されるという事件があって、そのことでロシアは随分紛糾をしたらしいですけれども、そういう情報もちゃんと上がって、そしてちゃんとした判断をするということがとても大事なのではないか。

 イラクについても、航空自衛隊をどのようにするかまだ決めていないということでございますけれども、昨年の暮れに有識者会議が出したレポートの柱は、総理、二つありました。一つは、米軍を逐次、イラクの軍隊の力を強めることによって、治安維持の力を強めることによって撤退をしていくというのが一つの柱。もう一つの柱は、隣国のシリアやあるいはイランといったものの協力も得ながら、中東の安定を、イラクの安定を図っていこうという柱でありました。しかし、ブッシュ政権がおとりになった政策は、この提案書とはおよそ似ていないものでありました。

 その中で、七月に期限が切れますが、本当に撤退させようと考えれば、今からでももう準備をしなきゃいけない。イラクの情勢についてどのようにお考えになっているのか。これは、一緒にサダム・フセイン時代のイラクに参りました久間長官、どのようにお考えなのか。

 外務大臣は、イラクの占領政策にも、アメリカの占領政策にもある一定の問題があるというような御発言をされていますが、それは何なのか、教えていただければ幸いです。

久間国務大臣 イラクが一日も早く復興して、そしてまた安定することを望んでおるわけでございますけれども、私たちの期待したとおりにはなかなかいっていないなというような、そういう思いがいたしております。

 それ以上の詳しいことは、外務大臣からお聞きください。

麻生国務大臣 私のイラクに関する発言の話ですか。ちょっと済みません、今、久間先生への質問だと思い込んでいたものですから。

 これは、私の話と久間先生の話とよく一緒になるんですが、イラクに関するいわゆる武力行使が誤りであったと言ったようなことは私の方はありません。そこのところはちょっと、よく一緒にされると困るんですけれども、そこのところはちょっと違うんです。ぜひその点だけは。

 それで、今、イラク地域とは限りませんけれども、中近東が安定化するというのは、これはもう日本が石油を九割輸入しておりますので、この地域が安定するかしないかというのは日本に非常に大きな影響を与える。したがって、今どういう形で安定かというのであれば、少なくとも憲法をつくり、選挙をやり、いわゆる民主主義によって選ばれた政府がそこにありますから、その政府がきちんとした形で動いていくということをサポートする、それがイラクの復興につながり、支援につながっていくんだ、私どもはそう思っております。

 ただ、そのやり方に関して見ていると、私どもは、これまでは、アフガンの武装解除にしても、それからきのう来ていましたカンボジアのいわゆるクメールルージュの裁判、あれは日本人の裁判官で野口というのが裁判をするんですが、そういった司法制度、それから民事訴訟法、民法、これはみんな今、日本がつくっている最中なんですけれども、そういったような混乱が一応終わって、一応平時と言われるような状況になった後の復興に関する支援に関しては、我々はかなりな実績もありますので、そういった意味の知見を利用した方がいいのではないかという趣旨で申し上げたというふうに御理解いただければと存じます。

久間国務大臣 今、外務大臣が、私が誤りであったと言ったように言われましたけれども、そうじゃなくて、私が言っているのはニュアンスがちょっと違うので、そこのところは誤解のないようにしていただきたい。きのうも私は答弁しています。

原口委員 質問していると、今五年前を思い出しました。目の前で、あのときは外務大臣と外務次官がけんかしたんですよ。よく似ていますね。よく調整してください。

 きょう、そのことに深く入りませんが、きのうの答弁でも僕は問題だと思います。現閣僚として、イラク戦争を支持したときの情報はもう入るはずで、そういったことはよくわからないけれども、今、安倍内閣として支持しているから、イラク戦争を支持している姿勢をとっているから自分も支持するんだということでは、なかなかこれは同盟国や国民に対しても説明ができない。そこだけ指摘をしておきます。

 きょうの論点は本当はそこではないので、お手元のペーパー、ごらんになってください。これは、イラクの自衛隊派遣の合憲性について、ここだけは一つ総括質疑の中でただしておきたかったんです。

 ちょうど一九九〇年十月二十六日、質疑者は冬柴大臣ですね。いわゆる国連軍への平和協力隊への参加と協力について、答弁者は中山太郎外務大臣です。つまり、憲法に抵触しないためには二つの基準が必要であるということを冬柴大臣は国会の席で答弁を引き出されています。その二つの柱というのは、指揮下に入らない、それから、一員として行動しない、この二つであります。

 では、今度のイラクの今の現状がどうなっているか。次のページをごらんになってください。

 今まで陸上自衛隊が展開をしていたときは、陸上自衛隊に対して航空自衛隊が支援をする、こういったことも成り立ったでしょう。しかし、今、陸上自衛隊が撤収を完了して、空自だけで行動している。空自だけでイラクの復興支援に当たっている。私も、アリ・アルサレムの空軍基地に、直接、昨年の暮れ、石破さんや三原さんと一緒に伺って、大変な作業です。とうとい作業だと思う。

 しかし、それが憲法に照らしてどうかということは、二つの疑義があります。それは、多国籍軍の中で、統合された司令部のもとにあって、この統合された司令部というのはアメリカの議会で何と言っているかというと、これは米軍のことであると。つまり、統合されたもとの中で、指揮下に従って私たちが行動している。米軍司令部の下にあると言いながら、指揮下にないと主張しているんです。多国籍軍の中で行動すると言いながら、一員として行動しないと言っているんです。

 私は、総理、憲法を改正する、憲法を考える、これはとても大事なことだと思います。しかし、そのためには少なくとも二つの条件があります。一つは、現行憲法を、幾らいろいろな憲法をつくってみても、それが勝手に破られてしまえば何の意味もない。憲法を尊重、遵守するということがどれだけ強く守られているかというのが一つ。もう一つは、憲法を議論する人は、憲法というのは、権力に対する歯どめ、これを国民の方から持つものですから、少なくとも、人権やあるいは歴史に対するきちっとした認識がない、そういう人たちに憲法をいじってもらっては困る、私はそのように思います。

 そこで、内閣法制局長官に伺いますが、この指揮下にないというのはどういう意味なのか、教えてください。

宮崎政府特別補佐人 お答えいたします。

 ただいま御指摘の、平成二年の中山外務大臣がお述べになった政府見解に出てまいります、これは昭和五十五年の政府答弁書で触れておりました憲法上禁止される参加というのは何かということにつきまして、国連軍、当時、この国連軍はかぎつきで、多国籍軍ということをほとんど意味しておりますが、かぎつきの国連軍司令官の指揮下に入り、その一員として行動すること、こういうものを狭い意味の、問題のある参加だというふうにお述べになったわけです。

 今の御質問は、そこで言う、その中の指揮下とは何かということでございますが、それは、当該多国籍軍の司令官の指揮に服して、当該多国籍軍の司令官の指揮に従って行動することが義務づけられる、換言すれば、自衛隊の活動について我が国として主体的な判断を確保することが困難であるような場合、こういうものを指すものというふうに理解しております。

原口委員 いや、だから、ここにわざわざそのときの冬柴先生が引き出された答弁を持ってきたんです。多国籍軍なんてどこにも、どこに書いてあります。これは国連軍と書いてありますよね、私が皆さんにお示しした。

 指揮下に入らないと言いながらも、実際は米軍の司令部のもとで、そのオペレーションの中でやっているんじゃありませんか。違いますか。

宮崎政府特別補佐人 平成二年のころは多国籍軍というのが直接問題になっておりませんで、かぎつきの国連軍という表現で、国連が主宰をし、あるいは国連の呼びかけに基づいて組織されるような軍隊を広くいうものだというふうに理解されたいという前提でかぎ括弧つきの国連軍というふうに当時説明がついていた、それを前提にして申し上げました。

 それから、ちょっと先ほどの御質問の中で、この中山答弁の中で、二つの問題、指揮下に入るということと、その一員として行動することがともに必要だというふうにおっしゃったように思いますけれども、そうではごさいませんで、この中山答弁の意味は、かぎ括弧つきの司令官の指揮下に入った上で、一員として行動すること、それを狭い意味の参加というんだというふうにおっしゃったものというふうに理解しております。

原口委員 いや、要するに、この二つの要件のどっちかに抵触すれば憲法違反でしょう。仮に指揮下に入っていても、今の御答弁では、一員として行動しなければ憲法違反にならないということですか。

宮崎政府特別補佐人 簡単に言えばそういうことでございまして、平成十六年のころに多々議論がされました。

 一員としてというのが、またその別の意味で、多国籍軍の登場に伴って用いられておりますけれども、一般にといいますか、一員としてという言葉自体はどうだというふうにお聞きになれば、それは通常の意味、一般的な意味の多国籍軍のメンバーとして行動するというだけの意味でありまして、その中には、司令官の指揮に従って行動する態様もあれば、またそこから、そういうことではなくて、主体的な判断を許されて行動するというものも両方含む、そういう意味で一員としてというのは使われていたというふうに理解いたします。

原口委員 これは委員長、後で精査をしてください。私たちがイラク特措法の議論でも、この間の委員会の議論でもやってきたことと百八十度違います。

 今までは、指揮下にないということ、だから、この二つのあれに抵触するから、そのどっちかでもないということを政府は答弁し続けてきたんですよ。いや、指揮下にあっても一員でないんであったら憲法上問題ないというんだったら、今までの答弁が全部違うじゃないですか。

久間国務大臣 実態からいきますと、ここは危ないから行ってくれるなと言われれば、そこは部隊としてはやめますよね。それは指揮下に入ったことになるかどうかの問題はまた法制局と詰めてください。

 それと同時に、我々は一員として行動するんじゃなくて、あくまで主体的に自衛隊として行動しているわけです。ただ、そのときに連絡調整その他緊密にやっていますし、今のような意味での指揮下に入るかどうかは、ここはもうおれたちは自信がないからそこは行ってもらっちゃ困ると言ったときには、うちの方はそれに従いますよ。だから、そういうような意味で、それは、だから指揮下に入るという。

 だから、それはまた、危ないところに行ってくれるなと言うときには、うちもそれは主体的に判断してそれに従うわけですから、主体的に判断するかしないかがここは決め手になって、一体化するかどうかの判断はすべきだと思いますね。

原口委員 今、防衛担当大臣に聞いていませんから。実態がどうかというのは聞いていないですから。法律論を今交わしているわけで、今まで言ってきた法律論からすると、今の答弁は非常に不適切である。不適切というよりか、これまでと違う。もう経済に入らなきゃいけないので、これは理事会でぜひ詰めてください。

金子委員長 理事会で詰める前に、もう一遍、法制局宮崎長官。

宮崎政府特別補佐人 先ほど申し上げましたように、中山外務大臣答弁の中で、国連軍司令官の指揮下に入り、その一員として行動することというのは、これは続いた一体の言葉というふうに理解しておりまして、指揮下に入るということとは別に、一員として行動するということが憲法上の問題の独立の要件だというふうには考えていなかった。これは、十六年のやりとりをずっと見ても、私が今申し上げているような理解であったというふうに考えております。

原口委員 残念ながら、私の時間の中ではこれは詰めることはできませんので、後でさらに議論をしていきたいと思います。

 日銀総裁、お見えいただきました。G7、この結果についてお尋ねをします。それからもう一つ、あわせて、日銀の独立性、先日、野田委員が大変すばらしい質問をされていましたけれども、なぜ日銀の独立性というものがしっかり保障されなければいけないのか。私は、政治家がいろいろなことを言うのはそれは結構かもわからないけれども、圧力ととられるような、あるいは、日銀を一定の方向に強制的に向かわせるようなことは決してやるべきではない、このように考えていますが、G7の結果とあわせて伺います。

 そして三番目ですが、ことしの経済の成長の阻害要因、それは何なのか。アメリカの経常収支がいわゆる七千億ドルを超えて、日本はその第二位の輸出国でありますけれども、それをどのようにお考えなのか、お尋ねをします。

福井参考人 簡潔にお答えを申し上げます。

 まずG7でございますが、今回のG7は、いつものとおり、世界経済の現状及び先行きにつきまして率直な意見交換ができたと思います。世界経済、よりバランスがとれた形で堅調な拡大を続けているという認識が改めて共有されたというふうに思います。

 また、グローバルな金融市場の安定性を改善させるための方策、これは、委員御指摘の今後のリスク要因になりかねないという意味で、諸外国の関心が集まったところでございます。

 そうした点が話し合われましたほか、さらにロングランに見て、原油高あるいは地球環境保護の観点も踏まえて、エネルギー利用効率の向上、こういった点についても議論が行われたのは、G7としては最近では新しいことでございます。

 私からは、日本経済につきまして、現在緩やかに拡大している、先行きにつきましても、生産、所得、支出の好循環のメカニズムが維持されるもとで緩やかな拡大を続けていく可能性が高い、ただ、このところ強弱さまざまな指標が出ている、こうした情勢をさらにしっかりと見きわめていくことが大切だということを御報告いたしました。

 今後とも、我が国経済が物価安定のもとで息の長い成長を達成すべく、フォワードルッキングに政策運営を行っていくということを明確にいたしました。

 中央銀行の独立性でございますが、過去の歴史の教訓を踏まえて、各国で認められた重要な原則でございます。金融政策の目的は、物価安定を通じて健全な経済の発展に資することでございます。中央銀行が中立的かつ専門的な立場から経済、物価情勢の分析を行い、これに基づいて自主的な判断と責任において政策を運営していくことが適当だという考えに基づいております。

 現在、世界経済全体として非常に調和のとれた姿で進展をしているということでございますが、主要国の中央銀行が独立性を背景として相互の金融政策の運営を十分理解しながら運営している、このことがこうした世界経済の好ましい姿に大きく寄与しているというふうに思います。

 日銀法では、同時に、政策運営の透明性確保に努めるとともに、政府との十分な意思疎通を図らなければならないというふうに明記されております。今後とも、こうした趣旨に沿って政策運営をしっかりと行ってまいりたいと思っております。

 世界経済及び日本経済の今後のリスクということでございますが、世界経済につきまして、米国経済が、住宅市場の調整を出発点として、今、調整の過程を歩んでおります。いわゆるソフトランディングのパスにおおむね沿う形で幸いにも今日まで来ているということでございますけれども、経済の調整が行き過ぎないか、あるいは十分インフレ圧力が吸収されるか、この両面のリスクについて引き続き注意深く見守っていく必要があるというふうに考えております。

 日本経済につきましては、そうした海外環境のほかに、やはり、内需、外需、バランスのとれた形で安定的な成長を遂げるように、物価安定を軸に、こういった好ましい動きが途切れることなく長く続くように十分注視しながら金融政策をやってまいらなければならない。リスク要因が消えつつあるというふうに楽観的に思っておりません。さまざまなリスクを満遍なく、注意深く、丹念に点検していく必要があるというふうに思っております。(拍手)

原口委員 拍手が出る理由がよくわからないですけれども。

 過剰流動性を懸念するという声が世界的にやはり広がっています。そして、私は、ことしはデフレとインフレのある意味では境目、非常によく考えておかなきゃいけない、国民にとっては極端なデフレも極端なインフレも生活を不安定にしますから。総理にぜひ考えていただきたいのは、民のかまどから煙が上がっているか、急激な変化で国民の皆さんが不安に思っていらっしゃらないか、このことはぜひしっかりと見届けていただきたいと思います。

 ちょっとパネルを用意してきました。これは、会社はだれのものかという議論がございました。皆さんのお手元にも同じものを配付させていただいています。

 いわゆる一九八六年―八九年における役員給与、賞与、従業員給与、株主への配当、それが大企業、中小企業、どうなったのか。大きな経済成長のもとでそれぞれ伸びていました。しかし、二〇〇一年―二〇〇四年の増減、これはまさに、会社は株主のものであるという言葉を反映するように、株主への配当は大変大きなものがありました。しかし、従業員給与は伸びていない、むしろマイナスになっている。この中で、役員給与あるいは賞与といったものも伸びています。もちろん、この中にはストックオプションの権利の行使とかいうものは入っていませんから。ここにも一つ格差の原因があるのではないかというふうに思います。

 もう一つ、きょうは上げ潮路線について議論を詰めたかったんですけれども、問題提起だけしておきます。部門別の資金過不足の推移というものをごらんになってください。これを見ると、家計が一貫して下がっているということがわかります。八〇年代、GDPの一〇%近くあったものが、もう今は三%、二%、そういう数字であります。政府部門は、一般政府は相変わらず資金不足、苦しい財政運営がここで起きている。しかし、金融機関、非金融法人企業、これはすべてプラスであります。

 こういうときに、上げ潮路線というものが何を意味するのかわかりませんが、超低金利政策を続けて、そしてそれを、円安やあるいは金利が低い、そういうことだけでやっていけるのだろうか。超低金利を続け、円安をやっていけば、ある意味では、名目GDPを伸ばそうと思えば、物価を上げれば名目GDPは上がりますし、それは国民生活を直撃します。

 もう一つ、さっき過剰流動性の話をしましたけれども、いわゆる民間部門に余剰なお金が生まれればそれは何に行ったかというのは、バブルのときを考えればよくわかる話で、将来の国民の生活に当たるものが、結果、不採算なものに投資をされ、あるいは、ドルという形で外に流れてしまえば、それは結果、名目GDPは伸びているでしょうけれども、国民の今の生活の豊かさにはつながらない、あるいは将来の生活の豊かさにもつながらない、こういうことになるのではないか。

 上げ潮路線に対抗して私たちは言うわけではないですけれども、もっと生活重視の政策を打つ必要があるんではないか、このように考えます。これはもう指摘だけにとどめさせていただきます。

 最後に、外務大臣に伺いますが、十二月の十四日に、国連で障害者の権利条約、これが採択をされました。この国会で私たちはその批准を目指していきたいと考えていますが、その批准に向けた総理の御決意を伺いたいというふうに思います。

安倍内閣総理大臣 障害者の権利条約についての御質問でございますが、この条約は、昨年の十二月十三日、第六十一回の国連総会の本会議において採択をされました。我が国は、この条約の起草段階から交渉に積極的に参加をしてまいりました。

 政府としては、この条約、障害者権利条約の締結に向けて、国内の法制度による実施措置を含めて必要な検討を現在行っているところでございます。

原口委員 その中の中心がやはり差別と闘うということであります。差別というのは、何も直接的差別だけではなくて、合理的な配慮を欠いた、それも、間接的な差別も差別であるということを定義したのが、画期的な条約がこの国連障害者の権利条約であります。

 これで最後にしますが、お手元に、これまで女性の、産む産まないの差別についての、これは民俗学の柳田国男さん、その記述をここに載せています。言葉にしません。どれほど多くの抑圧や差別が、産む産まないの権利についての、女性に対してあったかというのを、これは、総理、ごらんになればおわかりになると思います。議事録に残すのも不吉な言葉なので、皆さん、目で追っていただきたいんですが。

 そういう中で、私たちは、少子化対策について、やはり非常に偏った議論をしているんではないか。少子化対策というのは、産みたくても産めない、あるいは育てたくても育てられない人たちをしっかりとサポートしていくこと、それも大変大事であります。しかし、少子化であっても社会が成り立つようにすることが、これも大きな対策であるというふうに思います。

 私は、柳澤大臣がああいう発言をされたということが、いまだに信じられません。厚生労働省には、さまざまな差別と闘うための条約やあるいは法律というものがこれから生まれてきます。差別と闘おうと思っても、厚生労働省の中にはその差別と闘う機関はありません。

 私は、この国会の中で、何が一番厚生労働大臣の発言で問われるべきか。ただ与党と野党が、あれはけしからぬ、だめだと言って終わりだというふうにしてはならないというふうに思います。社会全体が何と闘ってきたのか、女性が何を侵害されていると思っていらっしゃるか、そのことを十分に認識する必要があるというふうに思います。

 この資料の、これは町田の女性セミナーで配られた資料ですけれども、リプロダクティブヘルス、これは、国連の定義では、生殖システム及びその機能と過程に関連するすべての側面で、単に病気や疾患にかかっていないということではなく、肉体的、精神的、社会的に完全に健康な状態をいう。したがって、リプロダクティブヘルスとは、人々が、満足のいく安全な性生活を送ることができ、生殖能力と、子供を産むか産まないか、いつ何人持つかを決める自由を持つことを意味する。そのための情報を得たり、安全で効果的、しかも簡単に入手でき受容できる自分で選ぶ家族計画法を利用できる権利、適切なヘルスサービスを受ける権利である。これは国連の定義であります。

 この権利を保障するのが、政府の役割であり、私たち国会議員の役割ではないか。その権利をないがしろにした、あるいは差別を助長するようなものと闘っていく必要があるというふうに思いますが、総理の御所見を伺って、質問を終えたいと思います。

安倍内閣総理大臣 私のこの安倍内閣においても、ただいま原口委員がお話しになったように、さまざまな差別をなくしていく、そしてまた、さまざまな障壁、障害、壁をなくしていって、人々が自由に、価値の多様性の中で、それぞれみずから生きたいと思う生き方ができる、そういう社会をつくっていきたい、このように考えております。

原口委員 終わります。

金子委員長 これにて原口君の質疑は終了いたしました。

 次に、長妻昭君。

長妻委員 民主党の長妻昭でございます。

 本日は、質問をさせていただく機会をいただきまして、どうもありがとうございます。

 まずお伺いしたいのは、八甲田山の雪崩が発生をして被害が大きく出ているということでございますが、どんな状況でございますか。

溝手国務大臣 私の方からお答えをいたします。

 青森県の八甲田で雪崩が発生いたしまして、ツアーの客が巻き込まれたような様子でございます。県警情報あるいは消防情報、交錯しておりまして、まだ正しい情報を収集している段階でございます。

 なお、自衛隊には派遣要請を県知事から出されている模様で、たまたま自衛隊が現地に、訓練中でございまして、救助に向かっているという情報を受けております。

 現在のところ、二、三人程度の死者と行方不明ではないかというように想定されております。

長妻委員 現地はかなりの吹雪だということでございますので、全力で救助活動をしていただきたい。いずれにいたしましても、お見舞いも申し上げるところでございます。

 さて、質問に入りますけれども、今、私の手元にこういう資料がございまして、これは国土交通大臣もお持ちの資料だと思いますけれども、コンフィデンシャル、厳秘というふうに右上にございまして、「新会社設立について」とタイトルがあり、括弧して「港湾局説明資料」と。港湾局というのは当時の運輸省の港湾局のことだと思います。日付が二〇〇〇年の四月十二日ということで、下には四人の方、港湾局長を初め、財団の理事長さん、財団の専務さんの限定配付資料というようなこういう資料がございますけれども、国土交通大臣、これはどんな資料でございますか、そして、どなたがつくった資料でございますか。

冬柴国務大臣 委員からの質問通告によりまして、私の方からこれを取り寄せ、この作成経緯等を聞き取ったことがあります。

 それによりますと、これを作成したのは、下に書いてある黒田OCDI専務が書いたということでございました。これは、左側に書かれている二人目の川島技術参事官ですか、こういう人に対してこういう説明をしたという資料だと聞いております。

長妻委員 私自身、この資料を見まして、いわゆるファミリー企業というんですか、それをつくる経過が非常によく書かれている資料ではないかというふうに考えております。

 この「新会社設立について」というのは、この新しい会社の設立のきっかけというか、設立の動機というのはどういうことだとお考えになっておられますか。

冬柴国務大臣 これは、先ほど言いましたOCDIにお勤めの方々三人が、これは優秀な技術者でございますが、独自に三人で会社を立ち上げて、そして民間企業として活動をしたいということでございます。

 では、なぜそういうものを説明したのかといいますと、このOCDIというのは、御存じのとおり、旧運輸省系の財団法人なんですね。そこから三人の技術者が抜けるということは、本省にとっても大きな影響があるだろうということで説明をされたというふうに聞いております。

長妻委員 建前はそうなのかもしれませんけれども、ここの資料には、どういう経緯かといいますと、基本的に、今大臣が言われたOCDI、これは、財団法人国際臨海開発研究センターというところでございまして、海外の港湾関係の調査などをしている財団だということでございます。受注先というか発注元というか、JICAですね、JICAから仕事を多くもらっていた。

 ところが、そのJICAが今までは特命随意契約でこの財団法人に仕事を流していたんだけれども、これからは競争入札で仕事を流すようにしよう、こういうふうにJICAから言われて、それがきっかけで、この財団の中で、財団が民間企業と一緒になって競争入札するのはみっともない、それでは、ファミリー企業というか、かわりに受注できるような株式会社をつくろうじゃないか、こういうような経緯が書かれているところでございまして、そして、そういう会社をつくるということでこの黒田財団専務が資料を作成してこれを港湾局に説明した、そういうことだと思います。

 問題なのは、この資料の中にこんなような記述が随所に出てくるんですね。

 「新会社の収支見通し」ということで、前提としては、設立から平成十七年度まではOCDI、これは財団ですね、財団経由で運輸省調査を〇・五から〇・八億円の範囲で受注すると。運輸省からの調査費支援により、当初より黒字経営が可能である。そして、新会社は、運輸省の支援もあり、順調に単年度黒字を重ねる予測となっているということで、御丁寧にこの中にも表がございまして、設立されたのがこの新会社は平成十三年の四月でございましたけれども、その設立前のこれは運輸省に対するプレゼンテーション資料でございますが、平成十三年、十四年、十五年、十六年、十七年と表があって、その下に「支援体制」とありまして、「支援体制」の横に「運輸省」、平成十三年度は運輸省から〇・八億円、十四年、十五年は運輸省から〇・五億円。これは、書いてありますのは、運輸省から直ではなくて、この財団経由で金を流そうというような書き方でございます。平成十六年、十七年度は運輸省から財団経由で〇・五億円、平成十八年度からはもうお金は流さないよ、こういうようなことが書いてございます。

 これは、中央省庁といいますかお役所が一般の民間株式会社が設立前に既に受注というか発注の約束をしている、こういうような資料があると。調べていただきまして、委員に配付をしております資料の一枚目でございますけれども、では、その設立後、この新会社に現実にはどれだけお金が流れたのか。

 こちらのプレゼンテーション資料には、平成十三年度、先ほど読み上げたように、〇・八億円、〇・五とかいろいろ数字がございます。確かに数字は低いんですね。低いんですが、お金は流れております。平成十三年度、OCDI、財団からこの新会社に三千七百万円、平成十四年度は新会社に二千八百万円、平成十五年度は九百万円、平成十六年度はゼロ円、平成十七年度は一千五百万円ということで、それで、ちょうどこのプレゼンテーション資料にあるように、平成十七年度でこの資金の流れはなくなっているということでございます。

 国から、国土交通省から財団には、平成十三年度には二・五四億円、平成十四年度には三・三四億円、平成十五年度には三・四〇億円、平成十六年度には三・三二億円、平成十七年度には二・八六億円ということで国交省から財団に金が流れて、それがこちらに流れると。下請的という表現もこちらにはございますけれども、こういうことは、非常に疑わしい疑義を私は持ちますのは、ある意味では官製株式会社じゃないのかと。官製というのは、官製談合でも使いますけれども、官僚の官に官僚が製造するの製ですけれども、もうあらかじめ中央省庁が会社設立前に発注金額を決めている。そして、似たようなお金が現実にも流れている。しかも、定番どおり、この新会社の役員は三人全員が旧運輸省の天下りです。旧運輸省からこの財団に全員が天下って、その財団からまた新会社に天下っておられる。

 この財団自身も、財団法人国際臨海開発研究センターも、常勤役員四人全員が国交省のOBというような、全部天下りで固められた構造になっておりますけれども、官製株式会社だと私は疑うわけでございますけれども、こういうような状況を大臣はどうお考えでございますか。

冬柴国務大臣 長妻委員は金が流れたと言われますけれども、これは売り上げでございまして、契約に基づいた支払いでございます。

 それから、官製と言われるんですけれども、この株式会社、ファミリーとか子会社というもの、そういうふうな範疇にも入らないと思うんです。というのは、財団法人国際臨海開発研究センター、OCDIというものがもし親だとするならば、この株式会社の株を過半数持つということがファミリーとか子会社とかいうものの要件だろうと思うんです。ところが、この株式会社は、三名の優秀な技術者がこのOCDIを退職しまして、そして、みずからの能力とかそういうものを生かして、高度な技術力を生かして新たに民間の企業をつくりたい、そういう意欲のもとに発足した株式会社でございます。

 それでは、先ほど挙げられた冊子というのは何なんだ。これは、そういうものをつくるときの黒田という人が、希望、こういうふうにしてほしいという企画を述べられたわけでありまして、もちろん、これを当時の運輸省とか国土交通省が承諾をしたとか、あるいは約束をあらかじめしたとかいう性格のものではございません。

 したがいまして、今委員ももうあらかじめ指摘されましたように、八億円という約束とか五億円を発注するとかいう約束事が、希望でございますが、あったようでございますけれども、そういう高額の発注はしていないということから見てもこれはおわかりいただけるのではないかと思います。

長妻委員 確かに金額はきちっと一円単位で合っているというわけではありませんけれども、今大臣が言われたのは、このプレゼンテーション資料と、お金の流れというのも仕事の流れという意味で私は申し上げているわけで、偶然こういうようなお金の流れがあったんだというような御表現でございましたけれども、これは、創業型天下りの疑いがあるんじゃないか、天下り団体をどんどん新規に株式会社という隠れみのでつくる、そういう疑いがあるのではないのか。

 我々が国会で昨年も指摘をして、どんどんこの随意契約の問題点をあぶり出しました。そして、随意契約は問題だと、政府もやっと重い腰を上げて一般競争入札に一部移行をする。そうしたときに、まさに財団が危機感を持つ、今までうちは随意契約で受注できてきたけれども、随意契約がなくなる、ではどうしたらいいんだろう、では会社をつくろう。

 しかし、大臣が言われるように、資本関係がきちっとあるわけじゃありません。厳密な意味で子会社じゃありませんけれども、ただ、人物も横滑り、しかも、ぐるみといいますか、こういうような資料もつくり、そして、実際に受注がこういうふうに国交省あるいは財団からもあるというようなことはきちっと調査をしていただいて、この案件を含めて、そういうファミリー企業といいますか、株式会社だけれども問題があるものはないのかどうか、ぜひ調査をしていただきたいと思うんですが、いかがですか。

冬柴国務大臣 このような冊子があったということ自体、私は本当に驚きでございます。したがいまして、今御指摘のような点について、こういう冊子をつくって受注金額を明らかにするとか、私はそれはもう言語道断だと思いますので、そういう意味では調査はしてみたいと思います。

長妻委員 安倍総理にもぜひ御答弁いただきたいんですが、こういう企業、株式会社というのは、基本的には、形態をとったら民間なので、自由主義経済の中では我々はもう手を触れることができない。しかし、そうとは言えないような非常におかしな形態の、半官半民というか、官製株式会社的なものがあるのではないかと私は感じているのでございますけれども、ぜひそういうのを、そういうものがあればこれは全省的に是正をしていくというような御答弁をいただければと思います。

安倍内閣総理大臣 今、長妻委員が御指摘になった例というのは今までにない例なんだろう、このように思いますが、公務員の再就職の規制のあり方について、範囲については現在検討中でございまして、さまざまなケースを検討してまいりたいと思います。

 また、財団法人と密接に関係あるというか、関係あるように見える法人のあり方については、公益法人改革の中で考えていくべき問題ではないかと思います。

長妻委員 そして安倍総理は、天下りの件で所信表明演説でこういうような発言をされておられます。「予算や権限を背景とした押しつけ的なあっせんによる再就職を根絶する」、こういうふうに言われております。そして、同じ意味だと思いますけれども、「いわゆる押しつけ的な天下り」、こういう表現もされておられますので、こちらの短い表現で、押しつけ的な天下りということで表現させていただきます。

 そうすると、根絶しよう、安倍総理がこういうふうに所信表明で言われたものというのはどのくらい今まであるのかということでございますが、配付した資料の三ページ目をごらんいただきたいと思うんです。

 この三ページ目は、かつて私どもが質問主意書を出させていただいたときに、一九九九年から二〇〇三年まで国が天下りのあっせん、仲介をした人数は何人ですかと聞きましたら、合計五年間で三千二十七人だと。一番あっせん件数が多いのが国土交通省九百十一人、二番目が法務省の六百二十九人、三番目が総務省の三百十三人だ、こういうことなんでございますが、安倍総理、それでは、これまで安倍総理が根絶しようというふうに宣言をされたそういう押しつけ的な天下りというのはどれほどあったんですか。なかったんですか、あったんですか。

安倍内閣総理大臣 いわゆる押しつけ的あっせんについて、委員が質問主意書で出されております。いわば、文書で確認できるものについては今までなかったというのが恐らく答弁書なのだろう、このように思うわけでありますが、我々としては、実態としてはやはりあったのではないか、このように考えております。

 そういう認識のもとに、私は、また安倍内閣としては、予算や権限を背景とした押しつけ的ないわばあっせんをこれはなくしていかなければならない、このように考えております。

長妻委員 いや、これ、今安倍総理言われましたけれども、お役所は、文書で確認できるのはなかった、こういうふうに言っているんですね、私の質問主意書の答弁書でも。あと、昨日お役所に聞いても、基本的にはないんだ、こういうことを言っているわけですよ。

 予算や権限を背景とした押しつけ的なあっせんによる再就職というのは今現在ないんだよ、これまでもなかったんだ、こういうふうにお役所は言っているわけで、変な話、幽霊というか、ないものを根絶する、下手をするとこういう非常に上滑りなことになりはしないかという懸念がありますので、ぜひ具体的に、押しつけ的なあっせんというのが、安倍総理、具体例を御存じないわけですか、一例も。

安倍内閣総理大臣 ただいまここで個別具体例を申し上げることはできませんが、しかし、先ほど申し上げましたように、文書等々によって確認できるものはない、このようなお答えをしていると承知をしておりますが、私も、また私の内閣としても、押しつけ的ないわばあっせんがなかったとは言えないと考えております。それがあるからこそ根絶をしなければならないと考えておりまして、その調査については、鋭意行っていきたいと思います。

長妻委員 そうしたら、これは非常に重要なことでありますので、押しつけ的なあっせんによる再就職というのが何件これまであったのか、今まで政府は何にもないと文書で言っているんですよ、ありませんと。では、これを安倍総理、リーダーシップを持って、これまで押しつけ的は何件あるのか、その事例や件数、これをぜひ調べて公表していただきたいと思うんですが、いかがですか。いやいや、安倍総理。

渡辺国務大臣 十六年の長妻委員の質問主意書に対して政府が答えておりますのは、「各府省において、平成十一年から平成十五年までの五年間に企業、団体等に職員の再就職の受入れを要請した事例として確認されたものはない。」という答えをしているわけでございまして、あったかもしれないけれども確認していないというケースも中にはあるということを意味しているんですね。

 ですから、安倍総理がおっしゃられています押しつけ的天下りというのは、現在その制度設計を考えているところでございまして、その定義がまだ確定していないわけでありますから、これを調べろと言っても、これは無理な話なんです。

金子委員長 簡潔に答弁してください。

長妻委員 いや、これはとんでもない話ですね。まだ実態を定義もしていないものを根絶すると所信表明で言うんですか。どういう実態か何にもわかっていない、定義がない、それを根絶する。

 だから私が言っているのは、では、早目に定義は決めてくださいよ。何カ月もかからないでしょう。そうしましたら、定義をきちっと決めて、押しつけ的な天下りというのはこれまで何件あったのか、この件数をきちっと公表するということを、安倍総理、ぜひ言っていただきたいと思うんです。

安倍内閣総理大臣 政府として、また私としての大きな方針を示したわけでありまして、押しつけ的なあっせんによる再就職があってはならない、それは根絶をする、この方向を示したわけであります。

 そして、その範囲、また、それをどうやって根絶していくかという制度設計を今渡辺大臣のところで鋭意行っているところでありますが、近年の、例えば摘発をされている官製談合等の背景には当然押しつけ的なあっせんがあったのであろう、私はこのように推測をしております。

 今後、当然、件数を今直ちにここで申し上げることはできませんが、我々、どういうものが私どもが根絶をしようとしている押しつけ的なあっせんによる再就職の範囲に入るかどうか、どの範囲を押しつけとするかどうかは決めていきたい、このように思います。

 今後の件数、しかし、それはわかるものとわからないものがあるわけでありますが、当然、調査はしていきたいと思います。

長妻委員 いや、また、定義を決めても、お役所に聞いたら、ゼロ件です、こういうふうになりかねないですよ。だから、今、総理の答弁で最後に調査されると言われましたですよね。言われましたので、ぜひ定義を決めて、そして、そういう天下りがこれまで何件あったのか、それをぜひ調査をいただきたいということを明言していただきたい。

安倍内閣総理大臣 まさに我々は、押しつけ的なあっせんによる再就職を根絶する、そして、それはこういう範囲だ、こういう範囲では規制をやっていくということをこれから決めるわけです。そして、それを各省庁に徹底していくということであります。

 しかし、今まで過去にさかのぼって、そういう範囲を決めて、これについてはだめですよということを徹底していなかったものですから、なかなか今まで、文書による、そういうものはあったかどうかという調査をすれば、なかったという答えになってしまうわけでありまして、そういう調査の難しさは過去にさかのぼれば難しいものがあるわけでありますが、これからは必ずそういうものをなくしていくということはお約束をしたいと思います。(発言する者あり)

金子委員長 御静粛に願います。

長妻委員 いや、そういうやり方が天下りを根絶できないんですよ。これまでの押しつけ的な天下りは無罪放免だと。彼らは押しつけ的天下りはないと言っているんですよ。ある意味ではきちっとした文書を、むしろ、正式にそういう天下りの報告を今まで出してきていないわけですよ、全く問題ないと言っているわけですから。

 これまでのものもきちっと調べて、そして公表して、そして厳重注意をするということなしには天下りなんかなくならないですよ。(発言する者あり)何で与党が、自民党が、こういうふうにやじが飛ぶのかわかりません。天下りを一緒になくしましょうよ。何でこれブレーキかけるんだ、与党は。(発言する者あり)

金子委員長 御静粛にお願いします、与野党ともども。

長妻委員 そして、もう一点申し上げるのは……(発言する者あり)

金子委員長 与野党ともども、御静粛に議論願います。

長妻委員 それで、安倍総理、私がもう一点申し上げたいのは……(発言する者あり)ちょっと静かに……

金子委員長 御静粛に、与野党ともお願いします。

長妻委員 安倍総理に申し上げたいのは、押しつけ的な天下り、これがいかぬと言っているんですが、私は、天下りのあっせん、仲介を全部禁止する、こういうことをやはりやらないとだめだと思うんですね。

 先進国で天下りのあっせん、仲介を中央省庁がしている国というのはないですよ。日本だけです。何で日本が、御丁寧に再就職の先を役所の秘書課や人事課が全部面倒見るんだ。超大企業はどういうような退職のシステムか知りませんけれども、普通は、民間の方は、定年退職したら、あるいは仕事がなくなったときに、町中にある普通のハローワークに行って探すわけですよ。何でお役人だけ特別なんですか。ハローワークへ行って再就職を探せばいいじゃないですか。何で、御丁寧にあっせん、仲介をこんな三千人もするんですか。あっせん、仲介をもうやめるということが重要だと思います。

 というのは、押しつけ的じゃない天下りでも問題の天下りはいっぱいあるんですよ。例えば企業や公益法人が、下心といいますか不純な動機を持って、OBを下さいと。それは押しつけじゃないけれども、企業とか公益法人から、うちに天下りを下さいと。これは別に押しつけじゃない、向こうから下さいと言っているわけだけれども、それは下心があって、官製談合、OBに談合情報を教えてもらおうとか、あるいは公益法人であれば、偉い人を入れれば予算がつくんじゃないかとか、そういうようなことで、あるいは会計検査院のOBであれば、検査院のOBを入れれば検査に手心が加わるんじゃないかとか、そういう不純な動機で入れるような天下りというのもあるわけで、押しつけだけを禁止しても、普通の天下りのあっせん、仲介もきちっと禁止しないと、また抜け道、抜け道で同じような、結局何にもならなかったということになりかねないと思うわけであります。

 あるいは普通の天下りにしても、高額の給料をもらって何カ所も渡り歩く、こういう天下りだってこれは問題なわけで、非常に矮小化した議論を総理はされて、いまだに定義も決まっていない、所信表明で言ったのにその中身も決まっていないというのは余りにも無責任じゃないかと私は思うわけでございます。

 ぜひ、役所があっせん、仲介をもうやめる、一般の方と同じように公務員もハローワークで探していただく、こういうことにしましょうよ。どうですか。

安倍内閣総理大臣 ただいま、公務員の中では早期勧奨退職の仕組み等々もあります。その中で、公務員制度全体のあり方も我々は今検討しているわけであります。

 しかし、公務員の方々が第二の人生を送るに際して、一般の企業においてもいろいろなケースがあると思いますよ。それはやはり、もともと所属をしている会社が世話をしているケースというのも当然たくさんあるわけであって、そういう中で、要は、談合の温床となったり、特に官製談合の温床となってはならないわけであって、その官製談合の温床となりやすいこの押しつけ的なあっせんは根絶する、そのための制度設計を今しているわけであって、私どもが今やろうとしているこの仕組みをつくっていけば、私たちは、必ずこうした官製談合及び押しつけ的なあっせんによる再就職は根絶できる、このように確信をしております。

長妻委員 非常に官製談合だけをターゲットにしてやっているようなお話でありますけれども、天下りというのは、それ以外の弊害の方が大きい場合もあるんですよ。

 民間ではそうでないところもあると言われましたけれども、これは、私もかつて民間会社にいましたけれども、非常に大きい企業で景気がいいところは、定年退職後、再就職するときに、子会社とかそういうところを会社が就職を紹介するところはあるかもしれません。しかし、民間は全部が全部そんなことをしてくれませんよ。何で、公務員だけが全部そういうふうにされるんですか。天下りのあっせん、仲介をやっているじゃないですか。

 何か自民党は、公務員天国をストップするというふうに言われていますけれども、天下りをきちっと根絶する、あっせん、仲介をやめる、何でこういう決断を下さないんですか。

 それで、これはちょっと調べました。ここに、私どもが調べた予備的調査と、あるいは随意契約、私どもが政府からいただいた資料を突合して調べた分厚い天下りのリストがございますけれども、それによりますと、これは私もびっくりいたしました。これは全部国の天下り団体。株式会社とか学校法人は除いています。公益法人あるいは独立行政法人、特殊法人、認可法人等々でございますけれども、ここに、まず、補助金などが流れ込んでいるのは、平成十七年度の予算をベースに計算をしております。国との随意契約の金額は、平成十六年度の実績で計算をしております。そういたしますと、約千百の団体に六兆円も税金が流れているんですね。これは、千百の天下り団体がありますが、六兆円の税金が一年間で流れていた、こういう事実がございました。ここには約七千人の方が天下っておられます。

 ぜひ安倍総理にお願いしたいのは、これもお役所からいただいた最小限の数字を我々が計算をしたものでありますけれども、さらにもうちょっと大きい数字になる可能性もございまして、今、年金、医療、介護などの社会保障をどんどん削る、こういうことをやられておられますけれども、それをやる前に、特別会計や、天下りあっせん、仲介システム、随意契約のシステム、こういうシステムにメスを入れて、日本は無駄遣いがいっぱいあります、先進国で最もあります、国のど真ん中に。(発言する者あり)

金子委員長 御静粛に願います。

長妻委員 それをやめて、その無駄遣いの金をすべて社会保障に注ぎ込む、それでも足りないときに国民の皆さんに御負担をお願いする。こういう順番をとらないで、いきなり御負担を、老年者控除をゼロにしたり、あるいは公的年金控除を縮小したり社会保障を削減したりする前に、こういう天下り団体を徹底して見直す、ゼロベースで厳しく見直していく、あっせん、仲介をやめると同時にそういうことをぜひやっていただきたいんですが、総理、意気込みを言ってください。

安倍内閣総理大臣 ただいま委員がおっしゃった六兆円というお金でありますけれども、これは、平成十七年秋に、衆議院の調査局において独立行政法人等の各種の法人に関する資料を各省庁から徴求した結果等に基づき、それを民主党が独自に取りまとめたということでございまして、我々、中身についてよく承知をしておりませんのでコメントのしようがないわけでありますが、その上で申し上げますと、独立行政法人や特殊法人等に対する補助金については、例えば、科学技術振興、エネルギー対策、政策的必要に基づいて支出をされています。

 その中には、例えば国家公務員の共済組合の年金の負担金も入っているわけでありまして、六千億円も入っているわけでございます。これをなくすということが当然できないのはそれはもう御承知のとおりではないか、このように思います。

 また、所管公益法人等との随意契約については、昨年見直しを行った結果、平成十七年度の実績ベースで、約二・二兆円の約七割に当たる一・五兆円を一般競争入札等の方式に改めていくこととしたところでございます。

 今後は、この計画を着実に推進して、引き続き随意契約の適正化、透明化に努めていかなければならない、このように認識をしております。

長妻委員 残念ながら、私には非常に消極的に聞こえるんですね、総理の御答弁が。天下りに手を触れると官僚と戦争になる、だからそれを避けるんだ、まさかこういうようなお気持ちがないことを祈るわけでございますけれども、ちょっと次の質問に移ります。

 今、官邸の中で、いろいろな話が聞こえてきますけれども、官邸の危機管理というようなこともいろいろ言われておりますが、官邸で自動車の事故で破損したケースが三回あったということですが、何か、塩崎官房長官も自動車に乗られていたときの事故だったということでございますが、どんな事故でございますか。

塩崎国務大臣 今御指摘のは、私の乗っていた車の事故のことでございますか。(長妻委員「三件」と呼ぶ)三件、わかりました。

 御指摘の、官邸の入り口に、警備のためにゲートのほかに車どめが下から上がってくるものがございます。この車どめと政府の車両が接触する事故が合計三件あったという御指摘でございまして、平成十七年六月、それから十八年の八月、十八年の十月、この十八年の十月というのが私が乗っていたものでございまして、事故が三件ございました。

 現在は、こうした事故が起きないようにということで、このゲートの前に車どめの操作を指示する専任の警備官を新たに一名配置をして、安全を期すようにしているということでございます。

 いずれにしても、事故が起きないようにということで、官邸の管理については、今後とも万全を期して注意を促しているところでございます。

長妻委員 平成十七年六月二十二日には野田危機管理監が乗っていた車がそういう事故に遭って破損したということで、危機管理監が乗っている車でありますから、これは綱紀が緩んでいるという内部からのお話もございます。もし仮に海外の要人が乗っている車がこういうことになったとき、非常に大きな問題に発展する危険性もありますので、ぜひ御注意をいただきたいと思います。

 そして、年金の問題を柳澤大臣そして安倍総理に御質問申し上げますけれども、今、私どもで調べておりますのが、消えた年金保険料といいますか、厚生年金、国民年金の保険料を払い込む、しかし、払い込んだ記録が消えてしまう、そして払い込んだはずなのに未納にされてしまう、こういう被害がたくさん出ております。

 いろいろお伺いをしたところ、五十八歳通知という制度を使ってかなり多くの方が、自分の年金記録は違うから訂正してくれ、こういうふうに訂正要求を社会保険庁に出していると思うんですが、その最新の数字を教えていただきたい。

柳澤国務大臣 五十八歳通知というのをやらせていただいております。これは、実際に支給が行われる、現在では六十二歳ということですが、六十歳というようなことも考えまして、その二年前にこの被保険者の方に確かめていただく、こういう制度でございます。いわば、ねんきん定期便のはしりというふうに御理解をいただきます。

 五十八歳通知に伴う本人からの回答件数ですが、三百三十一万二千八百六十七件でございます。それで、確認のはがきが返送されたものが二百九十万三百四十九件、年金加入記録照会票により記録調査の申し出があったものが四十一万二千五百十八件でございまして、うち、年金加入記録照会票の照会記録を調査して、その結果を本人に既に回答したものが三十四万六千四百九十七件でございまして、現在、四十一万二千五百十八件と三十四万六千四百九十七件の差額であるところの六万六千二十一件について、確認の手続中でございます。

長妻委員 今、非常に大きな数字が出ました。これは平成十八年の十二月末の数字ということでございますけれども、そうすると、発送したうちの八・八%の四十一万人の人が、自分の年金記録は違うから変えてくれ、こういうふうに四十一万人もの人が社会保険庁に自分の記録の訂正要求をしている、こういうことであります。

 そのうち三十四万人に訂正要求の回答をしたということでございますけれども、では、内訳ですね、あなたの訂正要求を認めますよというのと認めませんというのと、一体どのぐらいなんですか。

柳澤国務大臣 発送件数がほぼ三十五万件ということでございますが、その回答内容のうち、訂正したものの件数等の内訳につきましては、業務上特段の必要がないことからデータとして整理をしておらないということでございまして、これを調査する場合には、本来業務もかなり多忙のうちに処理しておりますので、調査の期間はかなりかかる、こういうことでございます。

長妻委員 いや、信じられない話ですね。つまりどういうことかというと、今言われたのは、三十五万件、つまり、自分の年金の納付記録が間違っているから訂正してくれ、こういう方々がいらっしゃって、その三十五万人の方に回答を送付したということです、今の話は。社会保険庁が回答書を送付した。

 しかし、その回答の中身は、満額回答、あなたの言うとおりに、全部社会保険庁が間違えたから記録を訂正してあげましたよと言うのか、あるいは、いや、あなたの記録はどんなに探してもないからだめですと言ったのか、それがさっぱりわからない。何件あるのか、特段必要がないのでデータの整備をしていないと。

 特段必要がないんですかね、それ。国民の皆さんにきちっと公表する数字じゃないんですか。どれだけ救済されるのか、国民の皆さんは死活問題の方も多くいらっしゃいますよ。それが、長期間かかるから調査ができないというのはどういうことなんですか。

柳澤国務大臣 これは私も、長妻委員がおっしゃるとおり、業務の遂行上はそういう整理があった方が、後々、トレースをする、これから事務処理の改善点などを検討するためにもいいかと思うんですが、しかし、年金の事務そのものは、被保険者と、今もそうですが、社会保険庁の問題で被保険者が納得して、あとまださらに続くわけです。この調査だけで別にすべての関係が切れるわけじゃございません。

 したがいまして、そこの最終的な支給の事務が適切に、適正に行われるということが眼目だということは御理解を賜りたいと思います。

長妻委員 ちょっと理解ができないですね。三十五万人の人は、どれだけ救済されて、切り捨てられているんですかね。では、それは調査されるんですか。

 いやいや、だからぜひ調査してください。

柳澤国務大臣 私、もう少しつまびらかに申し上げますと、原資料みたいなものはある、保存されている、こういうわけです。しかし、そういうものをまた新たにカテゴリー別に分けて集計をしてという手間をかける時間的な余裕がないということで、それは今そのまま保留されている、こういうことです。

 ですから、これを今からやれと言われればできないことはないんですが、それは時間がかかりますということです。

長妻委員 いや、時間がかかるということでありますけれども、ぜひやっていただきたいと思うんですが、いかがですか。(発言する者あり)

金子委員長 御静粛にお願いします。御静粛に。

柳澤国務大臣 私は、そういうものの処理も、実は、当然、回答も様式化して、もうあらかじめフォームをつくっておいて、やって、それがすぐトレースできるようにしておいた方がいいと思うんですけれども、それがやはり今までの社会保険庁の力だと思うんですけれども、そういうところにまでなかなか気が回らなくて、被保険者との間の関係を処理することにだけ力が集中している、こういう状況です。

 ですから、結論的に言ったら、調査をさせます。

長妻委員 そしてもう一つ、年金を今受給されている方も安心ではありません。既に年金を受給されておられる方のうち、どうも受給金額がおかしいんじゃないかということでいろいろ社会保険庁に交渉したりクレームを言った方々で、受給金額が変更になったという方々がこれは何人ぐらいいらっしゃるかおわかりですか。最新の数字を教えてください。

柳澤国務大臣 これは既裁定者の問題ですね。

 既裁定者につきまして、十五年度から十八年十二月までに、社会保険事務所からの進達に基づいて、十四万三千九百八十一件の裁定変更処理依頼を受け付けております。

 それで、裁定変更処理の主な事例として御参考までに申し上げますと、裁定請求時点においては被保険者記録の一部が双方で未確認だった、そこで、本人の希望で先に裁定してくださいということであったんだけれども、その後、被保険者期間が別途被保険者の手元で確認されたので、記録の追加によってこれの補正をしてください、こういうものであるとか、本人の確認の上、裁定を行ったんだけれども、そのときは自分自身も余り未確認の期間があるとは知らないで、それで裁定はされたんです。後に本人から期間の補正の申し出があって、それによって裁定のし直しをした。それから、事業主の方から賞与等の記録の訂正に伴って裁定変更が必要になったもの等、区々のようであります。

長妻委員 いや、これも非常に大きい数字だと思うんですね。つまり、例えば、本人も気づかないケースの可能性はあると思うんですね。これまで納付したけれども、この期間が抜けていても、まあ抜けていたのかなと。しかしそれは、きちっと社会保険庁を信頼しているんですよ、かつては。それで、きちっと自分が納めた保険料は記録として残っているとこれは思うわけですね。例えば銀行に例えて言えば、銀行に預金を預けたら消えちゃう、心配だからいつも確認しないといけない、そんな銀行は日本にありません。そういうような、非常に油断していると消えてしまうような、自分がしっかり全部記録を、証拠を持っていないと、申告しても取り上げられないようなそういう非常におかしな状況で、今言われた十四万三千九百八十一人の方が受給金額が変わったということであります。

 これはまたちょっとお伺いしたいんですが、この十四万三千九百八十一人のうち、年金をもらっている金額がふえた方、ふえた変更というのは大体どのぐらいあるんですか。

柳澤国務大臣 これもまた恐らく私想像するに、被保険者との間の事務処理だけをやって、そうした部内の手続のプロセスを保存しておくというようなことにどうも気が回らない事務組織ということとしか考えられないですが、そうなんですけれども、システムとして把握する仕組みになっていませんでした。それがゆえに、原資料のものでは、そこに当たればもちろんわかりますので、これもまた調査をすればわかりますがということが現状でございます。(長妻委員「調査してください」と呼ぶ)これも調査を。まあ、調査をするというか、こういうものをシステム化するということの方が私としては大事かなと。

 ですから、調査して、これをこうでしたということをお答えするよりも、理事会でまた御協議いただきたいんですが、本来のシステムをもうちょっとしっかりさせるということの方が、それでもって、そうした今の長妻さんのような御質問にもいつでもお答えできるということにするというのも一案だ、私としてはこのように考えます。

長妻委員 これは本当に、調査をあくまでされないということ……(発言する者あり)

金子委員長 与野党とも御静粛にお願いします。

長妻委員 調査をあくまでされないということでありますけれども、これは、国民の皆様方が知りたい情報としては、例えばトータルで増額になった方がいらっしゃったとしたら、その増額分の全体の金額というのはではどのくらいなのかと。逆に言えばそれは、今まではもらえたはずなのにそれがもらえなかったということですよね、再裁定の前は。ですから、そういう意味で、どれだけ莫大な金額が本来はもらえたのにもらえなかったのかということもそういう情報として御提起をいただきたいということなんです。

 そしてもう一つ、次の問題へ参りますけれども、これは、かつて国民年金の保険料を納付したときには、コンピューター化されていないときは、柳澤大臣、手書き台帳で管理していた。つまり、Aさんが来て今月国民年金の保険料を納めましたといったらば、その納めたAさんは何月から何月と、社会保険事務所が手書きでその納付記録を管理していた。市区町村からデータをもらって手書きで管理していた。

 ところが、その手書き台帳を捨てているんではないのか。つまり、昭和五十九年前後に厚生年金、国民年金が全面的にオンライン化になりました、コンピューター化になりました。そうしたときに、その手書き台帳を基本的にはすべてコンピューターに入力してコンピューターの中に入れたはずなんだけれども、そこで大量のミスがあったんではないのか、こういうことが言われているんです。しかし、コンピューターに一回入れたから、その台帳を捨てちゃっているんじゃないのか、一部はマイクロフィルム化して残しているけれども、すべてをマイクロフィルム化して残していないのではないのかという疑念があるんですが、マイクロフィルムとして残していないで捨ててしまった台帳というのは実際あるんですか。どのぐらいあるんですか。

柳澤国務大臣 まず第一に、厚生年金保険につきましては、これはすべて……(発言する者あり)ちょっとお聞きください。すべての被保険者名簿等のマイクロフィルム化を実施し、これを保管している。

 国民年金につきましては、社会保険業務のオンライン化に伴ってすべての記録を今のような磁気ファイル化いたしましたけれども、一部未納記帳や特例納付記録等があるというケースがありまして、このような特殊被保険者台帳については磁気ファイルでは収録されない情報があったことから、昭和六十年度から、各社会保険事務所におきましてマイクロフィルム化を実施し保管をしている、こういうことです。

 ですから、今のように、磁気ファイル化したものとマイクロフィルム化したものとがある、こういうことでございますが、磁気ファイルの作業が完了した被保険者台帳、つまり、こちらの厚生年金でいえばマイクロフィルム化したものですね、それと同じものにしたものはこちらは廃棄したということでございます。

 したがって、先ほどの特殊なものについては、これは今言ったように、磁気ファイルの作成が完了した被保険者台帳は廃棄することとしたが、廃棄した台帳が何人分であったかについては、当時の廃棄に関する契約書類の保存期限が経過しており、確認することはできない、こういうことでございます。

 したがって、紙台帳で管理していた、厚生年金もそうですが、国民年金の情報については、すべて磁気ファイルまたはマイクロフィルムにおいて適正に管理を行っている、こういうことであります。

 したがって、長妻さんのように、そこのマイクロフィルム化あるいは磁気ファイル化のところで何か事故が起こったのではないかということを疑われると、これはとことん最後まで何か原資料を残さなければならなくなる、何のためにマイクロフィルム化をするのかわからなくなってしまうということもあるということでございます。

長妻委員 いや、柳澤大臣、ちょっと大臣は勘違いされておられるかもしれません。

 私が申し上げたのは、国民年金の手書き台帳で、今言われたように、特殊台帳、一部はマイクロフィルム化しました。マイクロフィルム化した台帳は捨ててもいいんですよ、だって同じものを写真に撮っているわけですから。それはいいんです。それを捨ててけしからぬと私は言っているんじゃないんです。マイクロフィルム化したのは一部ですが、マイクロフィルム化しないで、コンピューターにもう既に入力したからいいだろうということで、マイクロフィルム化しないで捨てたものもたくさんあると聞いているので、それが問題じゃないかと言っているんですね、大臣。

 ちょっととめてください。一回とめてください。

金子委員長 では、とめてください。速記をとめます。

    〔速記中止〕

金子委員長 では、速記を起こしてください。

 柳澤厚生労働大臣。

柳澤国務大臣 磁気ファイルに入れたものとマイクロフィルムに入れたものがある、こういうことでございまして、したがって、磁気ファイルの作成が完了した被保険者台帳は廃棄することといたしました、こういうことでございます。

長妻委員 だから、ちょっと私はそれが信じられないというか、問題じゃないのかと。

 つまり、マイクロフィルム化して捨てる分にはいいですよ、だって同じものですから。ところが、コンピューターに入力した、しかし、その入力ミスじゃないかと疑われるケースもあるし、これだけ年金の記録が間違っているという事例がいっぱいあるわけで、それを最終的にさかのぼる手段がなくなっちゃうじゃないですか、入力した後捨てちゃったら。全く証拠はないですよ。変なグリーンピアをつくるのであれば、そういう倉庫なんか幾らでもつくれるじゃないですか。何でそれを捨てちゃうんですか。

 聞いたらば、捨てるのは通達で捨てたということも聞いているんですが、そういう通知があったんですか。つまり、マイクロフィルム化していないものも捨てなさいという通知も出したんですか。

 これは、昨日、どういう質問をするのか、非常に長時間かけて事務方の方にすべてお教えして、そして、大臣にそれを全部説明します、そして検討の上回答しますということで、すべての質問を事細かに申し上げているわけです。ぜひ大臣、お答えください。これは、責任ある大臣が答えないといけない重要な問題ですよ。

柳澤国務大臣 これは、昭和六十年九月三日、庁業発第三十一号ということで、都道府県民生主管部国民年金主管課長あての通知と言っていいかと思うんですが、「新しい事務処理方式(後期計画)の実施に伴う国民年金被保険者台帳の取扱いについて」ということで、そういう通知を……(発言する者あり)これは、社会保険庁年金保険部業務第一課長、業務第二課長連名の通知ですね。

長妻委員 だから、そういうのを捨てていいという通知を出しているわけですよね。その方がせめて亡くなるまではその原票をきちっとやはり保管するということがないと、救済される方が非常に狭まる危険性もあるんじゃないかというふうに考えております。

 この問題については、安倍総理、ずっと聞いていただいたと思うんですが、ぜひ緊急事態宣言を出して、これだけ多くの方がいろいろ疑義がある方もいる。しかし、自分の納付記録を確認していただいているという方は一部なんですね。ほとんどの方は、自分の納付記録をきちっと、抜けがあるのかどうか確認されていないんですね。そういうこともございます。潜在的な被害者が大変多いのではないかと危惧するところでございますので、緊急事態宣言をして、社会保険庁は、被保険者と受給権者の皆様全員に納付記録を郵送して、抜けがあるかどうか緊急に点検してください。わかりやすい納付記録を郵送して、緊急に点検してください。こういうような緊急チェックをされたらいかがかと思うんですが、ぜひ御答弁いただきたい。

 総理に最後聞いているんです。

柳澤国務大臣 その前に、台帳のマイクロフィルム化についてという先ほど読み始めました通牒の中身ですけれども、社会保険事務所で管理している台帳のうち、昭和五十八年六月二十九日付及び同年七月二十七日付の通知に基づき整理された国民年金被保険者台帳、以下特殊台帳という、については、保険料還付及び通算対象期間の確認等の業務処理に当たり、当該台帳の索出を容易にし、業務処理を円滑に行うため、また、破損、摩耗の防止並びに職場環境の改善を図るためマイクロフィルム化すること、こういうことになっているわけです。ということです。(発言する者あり)

金子委員長 お静かに願います。

安倍内閣総理大臣 ただいま御提案がありました緊急事態宣言をすべての被保険者に出す、これは年金そのものに対する不安をあおる結果になる危険性があるのではないか、私はこのように思うわけでありまして、そうした中で、いわば年金の支給に際しては、従来から個別に御本人に年金の加入履歴を確認していただいているわけでありますが、昨年の八月から年金記録相談の特別強化体制をとって、すべての被保険者から、受給権者からのお問い合わせに迅速にお答えをするようにしているわけでありますし、また、必要な修正等を行っています。こうしたことを周知徹底していかなければならない、このように考えております。

長妻委員 非常に今残念な御答弁だったと思います。不安をあおる、緊急点検をして皆さんに本当にきちっとチェックしていただくことが何で不安をあおるのか。私は逆に信頼性を高めると思いますよ、きちっとチェックをして処理をすれば。理屈が私はわかりません。

 最後の質問でございますけれども、この年金保険料の流用の問題でございますが、かつて、この予算委員会で、平成十六年の二月二十五日の予算委員会、自民党の、この方は、与党年金制度改革協議会の座長をされておられる方が党を代表してこういう発言をされておられます。「この厳しい年金財源の時代に、年金資金というのは、年金財源というのはやはり年金の給付以外にはびた一文使っちゃいけない、こういう反省が出ております。 我々は、この年金の保険料、国民の皆様の大事な年金の保険料は年金の給付以外には絶対使わない、こういう誓いに達したわけでございます。」ということで、こういう宣言を自民党の方がやられた。国会の場で非常に重い発言だと思いますが、しかし、にもかかわらず、今、これは予算委員会ですから平成十九年度の予算を審議しておりますけれども、一体、福祉名目とか事務費名目で年金の保険料が幾ら流用されている予算なんですか。お答えください。

柳澤国務大臣 まず区分で申し上げますと、年金事務費というものがございます。それと、福祉施設費というのがございます。そのうち、国庫負担が十九年度予算で千七百九十六億円、それから、特例措置として、今回の特例公債法でもって保険料で支払うことを可能とされたものが九百五十七億円、それから、福祉施設費で、本来保険料で支払うべきものとされて、今回そのような予算化が行われているものが千二十六億でございまして、合計で三千七百八十億でございます。

長妻委員 結局、保険料を使っているじゃないですか。結局、福祉という名目で、平成十九年度予算で厚生年金、国民年金の保険料を合わせて千二十六億円が流用されている。事務費という名目で厚生年金、国民年金保険料九百五十七億円、足し算すると二千億円近くの保険料が流用されている。先ほどの、国会で高らかにうたい上げた誓いというのは全くこれはほごになっているんでしょうか。

 そして、もう一つ驚くのは、こっちの左側ですね、これは何でも福祉法とでもいうべき法律なんでございますけれども、これは配っておりますので、これが非常に問題だったんです。福祉を増進する、これは今現在ある法律です、こっちは。厚生年金保険法七十九条あるいは国民年金法七十四条に、福祉を増進するためには年金保険料を使っていいよ、こういう条文があるんです。これを拡大、拡大解釈して、年金保険料でグリーンピアあるいは観覧車もつくっちゃった、メリーゴーラウンドもつくっちゃった。これが大きな問題、皆さんの批判を受けたわけです。

 こういうばかな法律はもうやめようということで、先ほど自民党の方が予算委員会で言ったように、もう年金の保険料をほかには使わないということで、これを削除するということを政府は決断したわけです。なるほどと思いましたら、これのかわりにこういう条文を昨年の末の臨時国会に出してまいりました。つまり、この条文、福祉というのはイメージが悪いからこれは削除する。しかし、もっと幅が広がる法案を提出してきた。

 この条文を読みますと、昨年末の臨時国会に提出してきました条文は、今度は四つカテゴリーがあって、教育及び広報には保険料を使えます、相談その他の援助には保険料を使えます、利便の向上に資する情報提供も保険料が使えます、年金保険事業の円滑な実施を図るために必要な事業であって、厚生労働省令で定めるもの、これも使えますと。最後がきわめつけで、必要な事業には使えると書いてあるわけですね。

 つまり、前はまだ福祉という縛りがあっても拡大、拡大したのに、今度は、この縛りなしに必要な事業には年金保険料を使える。これはもう何でも流用法じゃないかということで、昨年末は、ねんきん事業機構という社会保険庁改革案、政府が断念されて廃案となりました。ことし、そちらの部分は新しい法案を出すというふうに聞いておりますけれども、こっちの部分もセットになっているんですね、この部分も。何でも流用法、必要な事業。まさか、昨年末の臨時国会と同じようにこの流用法を出してこないというふうには思うんですが、ぜひ出さないでいただきたい。

 ただ、事務方に聞きますと、もうこれは変えないで国会に法案として提出する方針ですと事務方は言われておられますけれども、どうですか、これ。全部削除しませんか。

柳澤国務大臣 これはよくないと思います。

 したがいまして、どういう名称になりますか、新しい組織法における業務の箇所にはそのようなことは一切とらない、削除したい、このように思っております。

長妻委員 それは、先ほど読み上げた国会でのどなたか、どなたかというか自民党の方の協議会の座長さんと同じように、では、本当にもう流用はしないということですね。ほかの名目でするということですか。必要な事業というところだけ削って、年金の広報とか教育とか、私は、最小限のものは、本当に必要不可欠なものは税金で措置するべきだ、こういう発想を持っているんですが、大臣、今のは本当でしょうね。もう一円も流用しないということですね、一円も。

柳澤国務大臣 先ほど組織法と言いましたけれども、事業法でした。

 だから、あえて長妻先生に答えた事務当局は、事業法は組織法の巻き添えを食って廃案になっちゃったけれども、できればそのまま出したいなという気持ちがあってそう言ったんだろうと思うんですが、私もそんなことはとても認めませんから、そこは、あくまで削除した案を提案するということで御理解を賜りたいと思います。

 その上で申し上げますと、年金事務費と福祉施設費のうち、どのような部分をどのように振り分けるかというのは、これはなかなかしっかりした議論の要る話であります。

 したがって、現在わかっているのは、直接に年金の収納あるいは給付といったようなものに関係する事務費、こういうものはきちっとこの保険料をもって御負担をお願いする、これは当然だと思います。

 それから同時に、かつて福祉施設費と言われたもの、これは当然もう名前も変えなきゃいけませんけれども、それらのうちで同じように給付と非常に密接な関連のあるもの、こういったものについては、引き続いて保険料にするという考え方であります。基本的にそういう考え方。

 しかし、その内容については、私がきちっと精査いたしまして整理をして提案したい、このように思います。

長妻委員 削除するというのは、何かそういう前提があって、流用するは続くということじゃないですか。それは、流用の法案が出たらすぐに無駄は出ないとは思いますよ、いきなりは。ただ、それが、大臣が例えば退陣されてほかの大臣がずっと続くときにそういう問題が起こってきた歴史があるわけでありまして、安倍総理、年金流用に関して、最後、お考えをお聞かせいただきたい。

金子委員長 時間が来ておりますので、質疑なしで。(発言する者あり)質疑時間終了後の質疑は、原則としては認めません。

安倍内閣総理大臣 既に厚生労働大臣が答弁をいたしておりますが、ただいま長妻委員が御指摘になったように、かつて福祉施設としていろいろな施設をつくった、そんなことはもう絶対に起こらない、これはまずお約束をしたいと思います。

 そしてまた事務費、相談をしたりとか、この年金の制度を円滑に運用させるために、事務費等々は、当然、これはやはり年金の財政の中でやらなければいけない、さらにはその中で当然精査を行っていく、これは厚生労働大臣が答弁したとおりでございます。

長妻委員 以上です。

金子委員長 これにて長妻君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 総理は、施政方針演説の中で「日米同盟を一層強化していく」、このように述べられました。昨年五月に日米が合意したロードマップに基づいて、米軍と自衛隊の司令部を一体化させる、あらゆるレベルで共同訓練を強化する、そして今後、日米があらゆる問題に一体となって対応できる体制をつくろうという米軍と自衛隊の再編計画が進められております。

 そこで、今焦点になっています普天間飛行場の移設問題について、総理に伺っていきたいと思います。

 我々は、この問題について、県内たらい回しではなく、即時閉鎖、撤去を求めてまいりました。しかし、政府は、SACO合意以来、県内移設をあくまで進めようとしてきたわけであります。昨年四月に、名護市長らとの基本合意に基づいて、日米両政府は、名護市辺野古に滑走路二本をV字形に配置した普天間代替施設を建設することに合意をいたしました。ところが、その後、V字形滑走路に反対、これを公約した仲井真知事が誕生したら、年末から、久間大臣がV字案の修正に言及する、高市沖縄担当大臣が名護市の沖合修正案を検討するよう要請するなど、いろいろな動きが起こったわけであります。

 安倍総理は、一月三十日の閣議の後で、関係閣僚を集めて、政府案を基本として県や名護市などと調整していくと従来言ってきている、皆さんもそれを念頭に置いてやってほしい、このように指示されておりますが、まず、総理の立場を確認したいと思います。日米間で合意したV字案を進めていくというのが総理の立場ですか。

    〔委員長退席、斉藤(斗)委員長代理着席〕

安倍内閣総理大臣 日米で合意をいたしましたV字案を基本に、そのV字案を基礎として、よく地元と調整をしながら、また地元にも説明をしていきたい。当然、地元の切実な声にも耳を傾けていきたいと考えております。

赤嶺委員 V字案を基本として地元の意見にも耳を傾けていく、修正もあり得るということなんですか。

安倍内閣総理大臣 ただいま申し上げましたように、V字案を基本として、私どもはそれが一番いい、このように考えておりますし、米側とも調整をある意味では終えたわけでございます。このV字案について沖縄の理解を得るべく努力をしていきたいと思います。

赤嶺委員 つまり、日米で合意したV字案について沖縄の理解を得ていく作業をしたい、沖縄の意見を聞いて修正ということは考えていないということなんですね。

安倍内閣総理大臣 現在のところ、私ども、このV字案について、沖縄の皆様に御理解をいただくべく、また、当局に対して御理解をいただくべく、さらに努力を続けていかなければならないと考えております。

赤嶺委員 それでは、そのV字案について聞いていきたいと思います。

 総理も御存じのように、二〇〇五年の十月は、滑走路一本、沿岸案だったわけですよね。それを、滑走路を二本つくるV字案に二〇〇六年五月に変更したわけですね。その変更した理由について、滑走路二本V字案というのは住宅地上空を飛ばないようにするため、このように説明してきたわけですが、総理も同じ認識ですか。

安倍内閣総理大臣 このV字案については、建設場所も含めて、住宅地の上空、騒音等の問題、あるいはまた環境に対する影響等々を総合的に判断をしたわけでございます。

赤嶺委員 ですから、そういうV字案というのは、少なくとも住宅地上空を飛ばないようにするために考え出された案だという認識はお持ちですか。

安倍内閣総理大臣 住宅への騒音等の被害を最小限に抑えていくためにどういう案がいいかということを考えた結果出てきたのが、このV字案であるということでございます。

赤嶺委員 被害を最小限に抑えるということと住宅地上空を飛ばないということはニュアンスが違うんですが、どちらなんですか。

安倍内閣総理大臣 これは、基本的には上空を飛ばなくてもいいように設置をしている、このように承知をしております。

赤嶺委員 住宅地上空を飛ばないということと騒音を最小限に抑えるための措置というのは、幅が非常にあり過ぎる答弁なんです。

 今、総理は、住宅地上空を飛ばないようにするために、このようにおっしゃいました。ところが、ローレス米国防副次官は、双方向型V字滑走路の合意の後の五月のJNNのインタビューに登場して、ヘリコプターの運用というのは、その性質上予測できないもので、通常どおり運用できないという状況は出てきます、このように述べているわけですね。それで、ラーセン在日米軍副司令官も、これは去年の六月のNHKの特集番組です、「変貌する日米同盟」、この中に出て、私たちアメリカ側としては再編協議の中で住宅地上空を飛ばないという合意をしたわけではないと述べているんです。

 アメリカの交渉当事者も米軍の司令官も、そういう住宅地上空を飛ばないという約束はできない、このように明言しているわけですが、総理は、そういうアメリカ側の発言を御存じですか。

安倍内閣総理大臣 私は、その発言は承知をしておりません。

赤嶺委員 これは、V字形の合意が大問題になって、本当に市街地上空を飛ぶか飛ばないかという大議論になって、交渉当事者にメディアがインタビューした。そして、NHKも司令官にインタビューして、画像ではっきり話しているんですよ。私もその画面を見ておりますが、メディアの報道ではなくて、そういう報道を御存じないんですか。

安倍内閣総理大臣 このV字形については、設計上そうならないように配慮をしているところでございます。

 米側のこの発言、今引用された発言は、どういう文脈においてそれがなされたかどうかは私は承知をしておりませんが、もしなされたとすれば、それは、運用において緊急な事態等々を念頭に置いているかもしれない。しかし、どちらにしろ、私は、その発言について、詳細について承知をしていないわけでございますので、ここではコメントを述べることは控えさせていただきたいと思います。

赤嶺委員 設計上、V字形は市街地上空を飛ばないように設計されているんだけれども、米軍の運用によってはそうでない場合が出てくるかもしれないというお話に聞こえたんですけれども。

 アメリカ側は明言していないんですよ。民間地区上空を飛ばないような運用をやらないということを言っていないんです。約束に同意していないんじゃないんですか。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 今の一連の質問については全く通告がございませんので、私も米側との交渉の詳細について用意をしておりませんので、それについては、よく詳細を当たってからお答えをさせていただきたいと思います。

赤嶺委員 総理大臣、いわば普天間問題というのは、それができるかどうかというのは、米軍再編全体に非常に大きな影響を与える大事な問題なんです。その中心問題がV字形の運用になっているわけです。そのことを聞くということはちゃんと通告してありますけれども、そういう詳細を大臣が認識していなかったということであれば、事務方でいかがですか。防衛庁長官、いかがですか。(発言する者あり)失礼いたしました。事務方でもいいですし、防衛担当大臣でも結構ですから、お答えください。

久間国務大臣 たびたび言っていますように、この普天間の移設というのがとにかく一番キーポイントになりまして、私が防衛庁長官に任命されたときも、とにかくこの問題をやってくれと言われて、私は、これは一生懸命、この問題をやるために就任したつもりでおりますから、やっていかなきゃならないと思っております。

 よくいろいろな言葉が誤解されますけれども、私は、米国と日本とそして地元と、三者がうまく話がまとまらなければならないので、まとまればいいんだと言っていますけれども、政府としては、かつてV字形でいくということを決めて、しかも、それについては、ある程度の地元の合意も得ながらやってきておったわけです。ただ、選挙がありましたから状況も幾らか変わっておりますけれども、これを基本としてやっていくということでございますから、それでもう行く方向は決まっているわけでございます。

 ただ、運用上、緊急事態その他のときに集落の上を飛ばないことがあるのかというと、それは飛ぶことだってあるし、飛ばないように努力はすると思いますけれども、基本的にはV字形でいくということが一番、いろいろなことを考えたときにベストである、そういうようなことから、今、V字形でいくことについては、ほぼ意見が集約されつつあるわけであります。

赤嶺委員 安倍総理大臣、今、結局、久間長官も総理と同じ認識ですよ。V字形は、設計上市街地上空を飛ばないという工夫はされているけれども、運用によってはそうならない場合がある、緊急時の場合がそうだと。これは、久間大臣が実はそういう答弁を去年の十一月の安保委員会で私に行っていることでもあります。

 その後、在沖米国総領事のケビン・メアさんがこういうことを言っているんですよ。有事に備えた訓練やタッチ・アンド・ゴーで双方向着陸は必要、このように述べておられるんです。つまり、緊急時にとどまらず、有事に備えた訓練の場合でも双方向を飛ぶことはあり得る、このようにケビン・メア米国総領事は話しておられるんです。

 有事に備えた訓練というのは、米軍基地で毎日やっている訓練が有事に備えた訓練ですから、緊急時に限らず、平時も市街地上空を飛ぶような運用の仕方はあり得るということですよ。これは、久間大臣が否定されて、その後、そのことについてメアさんはそう言っているんです。

 できる限り飛ばないようにしてほしいという日本政府の立場はわかるけれども、しかし、米軍は、飛ばないという約束はしていないということをはっきり言っているわけですから、いわば、この間の、もう日本政府の側からも緊急時の場合はと言い出してきているわけですから、滑走路を二本にした合意の前提、これは崩れているんじゃないですか。

安倍内閣総理大臣 最初に私が答弁したとおり、また久間大臣からも詳しく答弁をいたしましたように、V字形というのは、いわば騒音の影響を最小限に抑える、そして住宅の上空を飛ばないようにするためにこういう工夫をしたわけでございます。今私が申し上げましたような理由でそういう工夫をしたということは、米側にもよく理解をしていただいています。米側も、その上で運用を行う。当然、通常の運用に当たっては、今私が申し上げましたように、住宅の上空は飛ばないということになるわけであります。

 しかしながら、緊急の状況、緊急避難的な状況というのは起こるわけでありますから、そのときには、そうでない場合もある。しかし、今委員がおっしゃったように、運用の仕方によって飛ぶときもあれば飛ばないときもあるということにはならないということは、申し上げておきたいと思います。

赤嶺委員 緊急時はそういう運用の例外的だというようなことを、沖縄で米軍がそういう日本政府の考え方を知ったらどうなると思いますか。すべて緊急時から始まっているんですよ、沖縄の場合は、この乱暴な米軍基地の運用の仕方は。最初は緊急です、暫定ですと言いながら、恒常化していっているのが沖縄の現状じゃないですか。一たん決めたものも、数年後には全く逆のことをやっているのが米軍じゃないですか。緊急時は認めますなどというようなことは、これは机上の空論ですよ。そんなことを認めてしまったら、結局、市街地上空を飛ばないという約束は全くどこに行ったかわからないということになってしまうんです。

 私、きょう、資料をちょっと用意してきました。皆さんのお手元にも配付をしておりますが、これは「航空機墜落事故等」と書いておりますが、普天間飛行場の所属戦闘機に限定したものであります。ほかにも、嘉手納飛行場もありますけれども、昭和四十七年、沖縄県が復帰をして以降、一番近くは去年の十二月十三日、普天間所属のCH53E大型輸送ヘリが、ワイヤでつり下げ運搬中の廃車を海上で落下させた、けが人なし。これだけの事故や墜落事故や、あるいは物資落下や不時着が次々と引き起こされているのが、普天間飛行場の軍用機であるわけです。

 そして、この中をごらんになったらわかると思いますが、宜野湾市だけではないんです。北は国頭村から南は糸満市まで、沖縄本島全域ですよ。それだけにとどまりません。九州も四国も中国地方も全部入っているんです。普天間所属機、戦闘機、ヘリが起こした事故というのは、ここに持ってきましたけれども、結局、こういうような飛び方をするわけですよ、米軍基地というのは。

 あなた方なんか、国会で聞くたびに、運用上、制約を米軍が守るかのように言っているけれども、毎日毎日、普天間飛行場のヘリは沖縄じゅう飛び回り、九州や四国や中国まで飛んでいき、そして、墜落事故も起こせば、不時着も起こせば、物資落下も起こす。基地をつくれば、米軍というのは、そういう運用を軍事上余儀なくされるわけですよね。余儀なくされるというか、やっていくわけですよ。だから、あなた方が、何か約束事を守ってくれるかのように言いますけれども、何で普天間飛行場の移設が十年たってもできないのか。

 最初は海上ヘリポート案ですよ。SACOで合意しました、日米で合意した海上ヘリポート案ですよ、九六年。九九年は、閣議決定しました軍民共用空港案ですよ。そして、二〇〇五年にはL字形案、二〇〇六年にはV字案。少なくとも、日米両政府が公式に合意した四つの案がことごとく今までできなかったんです。なぜですか。さっき言ったような、米軍基地の運用のあり方があるからなんですよ。だから県民は、基地の県内たらい回しはやめてくれと言っているんです。

 県内たらい回し、やめるという御意思、総理、ありませんか。総理に聞いているんです。県内たらい回し、やめるかどうかです。

久間国務大臣 十年前に、普天間の危険性を除去するために代替施設をつくるということで、橋本・クリントン会談で合意したわけであります。その後に、今言われたように、いろいろな閣議決定がありましたけれども、なかなか実現しませんでした。だから、今度こそは、とにかく代替施設をつくって普天間の危険性を除去しよう、そういう思いでやっておるわけでありますから、やはり、ぜひその実現に向かって協力していただきたいと思うわけです。

 今の普天間の状況だったら、今言われるようなことが二度と起きないかと言われると、私は、絶対ないとは言い切れないので、一日も早く代替施設をつくって、危険性を除去して、今度の場合は海岸線につくるわけでありますから、かなりその危険性は除去されてくるわけでございますので、もうそういう点では一日も早くやりたい、そういう思いでいっぱいでございますので、どうかひとつ御理解を賜りたいと思います。

赤嶺委員 防衛大臣、現場を知らない方々が多いと思って、海岸線につくると言いますけれども、普天間飛行場の代替施設をつくれば、さっき言ったように、沖縄全県を飛び回る、九州や四国や中国地方まで飛び回る、墜落事故はどこにでも起きる、そういうような基地ができるわけですから、そういう米軍の運用について何の制限もかけてこられなかった政府が、今度こそつくらせてくれ、そんなことを金輪際沖縄県民に向かって言わないでいただきたい、そして、本当に県内たらい回しでは絶対に成功しないということを申し上げておきたいと思います。

 それで、もう一つは、嘉手納基地の問題です。

 皆さんは、嘉手納基地は爆音が激しいので、その騒音を軽減するためにF15戦闘機を本土各基地に移設して負担を軽減すると言いました。今、嘉手納基地、どういう現状にあるか、総理、御存じですか。

    〔斉藤(斗)委員長代理退席、委員長着席〕

久間国務大臣 何を意図されているのか。F22が来たことを指して、それを言っておられるのか。(赤嶺委員「現状を聞いたんです」と呼ぶ)

 現状は、今度は各地区で受け入れてもらうことに、全国六カ所で受け入れてもらうことでおおむね合意をいただいておりますから、かなり訓練は減るんじゃないでしょうか。

赤嶺委員 各基地で受け入れていただいたからかなり訓練は減るとおっしゃいました。

 防衛大臣、何を意図するかということに、私の質問についておっしゃいましたが、結局、本当に負担軽減になるのかどうかを聞いているということなんです。意図は明白ですよ、最初から。嘉手納は負担軽減だと言いましたでしょうと。

 そうしたら、どうですか、F15が訓練移転します、そのかわり、嘉手納では自衛隊那覇基地からF15がやってきて共同訓練します、そうですよね、米軍再編ではそうなっている。

 もう一つどうか。今度は、去年の九月から十月にミサイル防衛計画の一環としてPAC3のミサイルが配備された。県民は喜ぶべきだと防衛大臣はおっしゃった。これで兵員が六百人、家族が九百人ふえました。ふえた兵員の中から既に暴行事件が起きているんですよ。これで喜べというような話になりますか。PAC3で九百人ですよ。

 今度は、パラシュート降下訓練。嘉手納基地では行わないとしていたSACO合意、これをひっくり返して、日本政府も同調して、日米合同委員会で嘉手納基地でも暫定的にやれるようにいたしました。

 早朝離陸訓練。北谷町長は、新年早々から始まった早朝離陸訓練、本当に深夜爆音を立てていく、車の中でじっと一晩じゅう聞いていたというお話を僕にしていましたけれども、本当に地獄のような、戦場のような苦しみを味わっているわけです。おまけに、さっき防衛大臣がおっしゃっていましたステルス戦闘機F22が嘉手納に配備される。約二百五十人の兵員増ですよ。未明離陸に対しては、米軍の無法なやり方は限界を超えていると言っています。負担の軽減どころか基地強化じゃないですか。

 私は、訓練移転する関係基地の市町村長にもお会いしてまいりました。私が訪問しましたら、町長の中には、沖縄から来ているからF15を受け入れてくれというお話かと思った、そのぐらい沖縄の負担には同情している、だから、それを考えると受け入れざるを得ないかもしれないというぐあいに話しておられました。ところが、本土には沖縄の負担の軽減だと言って受け入れさせておきながら、肝心の嘉手納基地は機能が強化されている。負担の軽減どころか、負担は増大していっているんです。

 安倍総理、いかがですか、そういうことについて。

安倍内閣総理大臣 先ほど防衛大臣からも答弁したように、F15においては、十八年度から本土の各基地に移転して訓練をする、十九年度もそうでありますが、これは間違いなく負担の軽減になるということは申し上げておきたいと思います。

赤嶺委員 F15を移転する、それにかわって自衛隊が嘉手納で共同訓練する、そして米軍再編の合意には全くなかったPAC3の部隊がやってくる、ステルス戦闘機がやってくる、パラシュート降下訓練が行われる、早朝離陸訓練は全く改善しようとしない、これのどこが負担の軽減ですか。総理、このどこが負担の軽減ですか、嘉手納基地の。

安倍内閣総理大臣 まず、F15については、移転して訓練をする、これはかなり大幅な負担の軽減になるだろう。そして、自衛隊の共同訓練については、この負担の軽減状況を見ながら共同訓練を行う。これはもう、絶対に負担が重くなるということはないということは、はっきり申し上げておかなければならないと思います。

赤嶺委員 声を荒げて絶対に負担は重くならないと言っても、現に今、負担が重たい嘉手納基地の状態があるんですよ。

 結局、総理、あなた方は、沖縄の負担の軽減をだしにして、本土の各基地に訓練移転をした、本土の各基地も強化した日米共同作戦体制、そういうことになるじゃないですか。沖縄をだしに使って本土の基地まで強化するのはやめろということと、具体的に嘉手納の負担の軽減をすべきじゃないですか。

 そういうような基地の苦しみに本当に県民がもがいているときに皆さんが出してきたのが、あの米軍再編の特措法であります。いわば、再編計画を受け入れた自治体に対して事業の進捗に応じて交付金を出す、いわゆる出来高払い方式の制度をつくろうとするもの、これは、今でさえ基地の重圧に苦しむ住民の再編反対の声を金で抑えつけて受け入れようとさせるものだというぐあいに我々は言ってきたわけですが、現に基地で苦しんでいる苦しみは除去しようとしないで、米軍の運用には何の制限もかけ切れないで、問題が起きたら金で解決しようとする、これが安倍総理の立場ですか。

久間国務大臣 現実に嘉手納の負担は減るんですから。各地区にお願いして、六カ所にやってもらうわけですから。

 それで、自衛隊の共同訓練というのは、これは沖縄だけではなくて、例えば九州でも、うちの五島の上でも新田原でも、あちらこちらでやってもらうわけでございますので、だから、そこのところは、自衛隊が来ることまで反対と言われますと、しかも、今までと比べたらかなり減るわけですから、その辺は負担の軽減に必ずなるという確信を持っております。

赤嶺委員 大臣、この間、あなた方は、負担の軽減に確実になると、F15の訓練移転をとらえて。我々は、それは本土の基地の強化としかとらえないんです。それを、沖縄の負担の軽減を口実にして本土各基地に押しつけた結果だ。肝心の沖縄の嘉手納基地では何の負担の軽減にもなっていない。

 パラシュート降下訓練をこの間やりました。SACO合意で嘉手納基地ではパラシュート降下訓練をやらないと言っていたものを、あなた方は日米合同委員会合意でひっくり返して、やれるようにいたしました。

 何で県民がパラシュート降下訓練を怖がっていると思いますか。落下事故でトレーラーが落ちてきて、そして棚原隆子ちゃんがトレーラーに押しつぶされて死んだ、そういう県民の経験があるからでしょう。あるから、こういう基地に恐怖心を持っているわけでしょう。それを、何かごまかして、F15が移転したら確実に負担の軽減になるじゃないかと。そんなことは本当に言わないでほしいと思いますよ。

 そういう問題を解決しないで、お金で、再編交付金で解決する、これが美しい国の日本の安倍内閣がやることですか、基地の苦しみは解決しないで。いかがですか。

金子委員長 時間が参っておりますので、簡潔に最後にお願いします。

安倍内閣総理大臣 委員の立場は、もう米軍は全部出ていけ、日米安保条約は必要ないという立場ですから、我々と基本的な立場が違うと思います。

 我が国を守るために日米同盟は必要であると我々は考えている中において、しかし、基地の負担が沖縄に集中をしている、この負担を減らさなければならないという中において、負担の軽減とそして抑止力の維持という中において、我々は工夫しながらこの米軍の再編を行っていかなければならない。

 沖縄においては八千名の海兵隊を移転する、これは大変な負担の軽減だと思います。我々も、今後とも、この米軍再編の中において地元の負担の軽減に心がけていきたいと思います。

赤嶺委員 以上です。

金子委員長 これにて赤嶺君の質疑は終了いたしました。

 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 きょうは、裁判所の予算執行について伺っていきたいというふうに思います。

 これから間もなく始まろうとしている裁判員制度のPRのために、裁判所は毎年十三億四千万円、一面の新聞広告やいろいろなところでPRを我々も目にします。こういった中で、裁判員制度タウンミーティング、こういう企画が平成十七年からあって、昨年の国会で議論がありました。いわゆる内閣府が主催をした小泉内閣当時のタウンミーティングで三千円なり五千円なり、小泉内閣当時では五千円ですけれども、こういったやりとりがあったという議論がされているそのときに、裁判員制度のフォーラムで、まさに、これは新聞社の判断ということになっていますが、人が集まらない、集まらなければ一人五千円あるいは三千円で集めよう、こういうことが起こっている。これが二週間前に明らかになりました。

 そこで、冒頭に伺いたいんですが、裁判所の方に伺います。

 二週間前に、最高裁や最高裁から全国フォーラムの実施業務全体を請け負った株式会社電通は、一切関与していないということを報道で明らかにされています。最高裁はともかくとして、株式会社電通が関与していない、こういうふうに事実認定した根拠、これは一体何だったんでしょうか。

小川最高裁判所長官代理者 最高裁が報道発表した時点までの調査におきまして、電通からは、同社は一切関与していないという旨の説明を受け、また、不適切な募集行為を行った各新聞社からも、各社の独自の判断で行ったことであるとの説明を受けていることから、その旨の発表をしたものでございます。各新聞社が最高裁の報道発表の翌日に掲載いたしました記事にも、同様の記載がございます。

保坂(展)委員 裁判所、特に最高裁というのは、言い分に争いがあったり認定が難しいことについて、慎重また厳密な検証を重ねて判断をしていくところというふうに思っていましたが、当事者がやっていないと言えばやっていないと発表するというのは、ちょっといかがなものかなと思います。

 委員の皆さんにお配りをしておりますけれども、最高裁判所から各種契約の資料を出していただきました。これを見ていて、まず驚いたことがございます。

 実は、資料をめくっていただくと、これは二枚目ですね、この裁判員制度全国フォーラムは、平成十七年度から五十回、集中的に、土曜、日曜、祭日に開催をされております。キックオフイベント、これは福岡で行われた。早見優さんとか芸能人の方もゲストに入って行われているんですが、この隣に契約書を出しております。この契約書の契約期日というのは、前の日なんですね。前日に契約をして、四百人の人が翌日に集まってくるというようなことは、通常、あり得ないこと。

 これは委員長の許可を得て、これは、最高裁からお借りして、この質問の後に返すことになっていますが、一枚しかないそうです。裁判員制度全国フォーラムの福岡。

 このポスターは、地方裁判所、高等裁判所あるいは各検察庁などにも張られていたわけですね。これは、十月一日、九月三十日の契約の恐らく一カ月以上前からこのポスターは張られていたはずじゃないですか。これは最高裁主催というふうに書かれているんですね。主催者のところに高等裁判所、地方裁判所も入っています。

 これは、契約書を締結する前にこういう募集行為、いわゆる契約の実務内容にもう入っているということは、どういうふうに理解すればいいんでしょうか。裁判所の見解を問います。

小池最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 この十七年度のフォーラムにつきましては、契約の発端というのは、十七年の四月に企画競争を実施するという旨の公告をいたしまして、その後、所要の手続をとりまして、六月の十三日に、株式会社電通の企画を最優秀企画として選定いたしました。

 その後、契約は九月三十日付で締結したわけでございますが、業者を選定してから、今御指摘のように、フォーラムの開催の当日前から、ポスターとか新聞の広告というような募集業務が行われていたことは明らかでございます。契約書がないのに事業の実施が先行していたという点は、まことに御指摘のとおりでございます。そういった意味で、そこの順序が普通の形ではないという可能性があるというのは、御指摘のとおりでございます。

 少し補足させていただきますと、このような事情が生じましたのは、十七年度は初めてのこういうフォーラムの実施ということでございまして、企画内容の確定あるいは経費の積算に時間を要した、それから、五十カ所にわたるものでございましたので、開催の概要を固めるのに相応の時間がかかり、そういったものが後手に回ったというところでございます。

 私ども、一生懸命やったわけでございますが、そういった不都合がございました。今後は、一層、会計事務の適正化に努めてまいりたいと考えております。

保坂(展)委員 質問をした点についてだけ答えていただきたいんですが、裁判所は最も厳格な機関、日本社会でも、裁判所というのはやはり信頼があるわけですね。そうでなければ、また困るわけですね。したがって、裁判所が、特に最高裁の事務総局が株式会社電通と契約をいつ結ぶか、これは互いに、どこから見ても不思議がない、おかしくない、こういう契約でなければいけないと思います。

 会計法の二十九条の八を見ると、契約の相手方を決定したときには契約書を作成しなければいけない、そして、契約書を作成する場合には、契約担当官等が契約の相手方とともに契約書に記名押印しなければならないというふうにありますよね。

 とすると、このやりとりを最高裁の方としたときに、では、九月三十日の前に、これだけのポスターあるいは新聞広告あるいはチラシまきをやっている、あるいは、いろいろなPRも、お金をかけて、契約内容に踏み込んでもう実施行為に入っているということは、一体どういうことなのか。これは、では、広告代理店が勝手にやっていたことで、契約が結ばれていないので、これは裁判所は契約上の責任を負わないという行為なのか、契約は結んでいないけれども、代理店の方、ぜひやってください、契約は後にしましょうということなのか。どっちですか。

小池最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 この企画競争におきましては、私ども、審査基準を定めておりまして、企画内容と経費の点についていろいろ案を出していただいています。その最初のところで、私ども、額として大体このぐらいの目安というものを申し上げておりまして、そういった流れの中で準備が進められておりました。

 そういう意味で、いわば契約意思のところはそごはなかったわけでございますが、先ほど申し上げましたような事情で、契約の、今御指摘のような会計上の処理というものがおくれた可能性が高いということでございます。

保坂(展)委員 会計検査院の院長に来ていただいていますが、この資料につけた一番初めの左側には「企画競争入札」という言葉が見えるんですね。企画競争入札というのはどういう概念なのかなといろいろ頭をひねりながら、しかし、いろいろ調べていくと、これは、どう考えても随意契約の相手を決めるための企画競争であって、いわゆる競争入札か随意契約かといえば、随意契約の相手方を決める企画競争、これで間違いないですか。

尾身国務大臣 企画競争といいますのは、公共調達におきます随意契約の相手方の決定に当たりまして、競争性、透明性を確保するために、複数の者に企画書等の提出を求めまして、その内容について審査を行う契約方法であります。

 財務省といたしましては、昨年八月に、各省庁に対しまして、企画競争を行う場合には、特定の者が有利になることのないよう参加者を公募すること、それから、審査に当たって、あらかじめ具体的に定めた複数の採点項目により採点を行うこと等によりまして、競争性、透明性を確保するよう通知を行ったところでございます。

保坂(展)委員 会計検査院、よろしいですか。

大塚会計検査院長 一般に企画競争とは、複数の者に企画書等の提出を求め、その内容について審査を行うことにより、競争性及び透明性を確保しつつ、随意契約の相手方を決定する方法をいうというふうに理解しております。

 会計検査院は、契約事務が適切に行われているかについては従来から厳正に検査をしてきたところでありますが、企画競争を経て締結された契約についても、契約相手方の選定理由の妥当性など、契約の競争性、透明性にも十分留意して、引き続き厳正に検査をしてまいりたいと考えております。

保坂(展)委員 では、裁判所に伺います。

 こちらの資料の右側につけておきましたけれども、これは説明会を行ったわけですね、裁判所の方で。説明会を行って、提案書の提出期限を設けた。提案書を提出した企業は、どこの企業で、何社あったのか、そして、見積金額はそれぞれ幾らだったのかをお答えください。

小池最高裁判所長官代理者 応募のありました社は五社でございました。時事通信、廣告社、NTTアド、第一印刷所、そして電通の五社でございます。

 企画の内容等につきましては、ちょっと今資料を持ち合わせてございませんので、ちょっとお答えしかねます。(保坂(展)委員「金額は」と呼ぶ)金額については、各社のものについて持ち合わせておりませんので、申しわけございませんが、今お答え申し上げられません。

保坂(展)委員 委員長、これは、きのうから最高裁控室の方、それに事務総局の方に、金額があったのかないのかは大きな問題ですよね。金額がないのに企画競争。企画競争の中には、きょう最高裁からいただきました審査基準の中に、ちゃんとあるんですよ。業務委託のいろいろな内容について、本件の企画及び業務等に要する経費の中で、経費が適正かつ経済的に積算されているかどうか。これが持ち点三十点ですよ。これで公正にやった、こういう話だと思うんですが、金額があったかどうかもわからないんですか。

小池最高裁判所長官代理者 これは、内容としては、金額の点もございます。企画の中身及びその見積もりというものはございます。

 ただ、この内容につきましては、どういう手続でこういう企画書を出していただきますかということは、私どもも透明性のある手続ということをやっておりますが、その企画の内容については、それぞれノウハウにかかわるところもあるので外には明らかにしないということを申し上げております。

保坂(展)委員 これは引き続き、企画書の内容については、営業の秘密だというようなことをおっしゃったんですが、金額の明示があったかどうかを聞いているので、これはしっかり報告をしていただきたい。

 次に、最高裁の刑事局長にお聞きしますが、では、どうやってこの五社を絞り込んだんだろうというふうにお聞きしましたところ、特に会合は持っていない、持ち回りでこの案件を回して、最後に刑事局長が決裁をした、こういうふうに聞いているんですね。

 では、どうですか、御記憶として、例えば審査評価基準の採点表があったのか、そして金額は明示されていたのかどうか。これは、先ほど尾身大臣が言われた透明性、公平な競争かどうかという大事なところですので、どうぞ。

小川最高裁判所長官代理者 その点については、ちょっと私は報告を受けておりませんので、わかりません。申しわけございません。

保坂(展)委員 委員長、これはだめですよ。今、お二人、局長が見えられているんです。経理局長と刑事局長なんです。この決裁者は刑事局長なんです。決裁した人が答えられないということはあり得ないですよ。これも何回も予告していますから。

 では、決裁しなかったんですか。覚えていないというんじゃ話にならないですよ、刑事局長。

小川最高裁判所長官代理者 私の前任者が決裁したということでございますので、ちょっと私は記憶がございませんが、決裁したというふうに報告は受けております。

小池最高裁判所長官代理者 私どもも、経理局でございますので、今の答弁を補足させていただきます。

 これは、そういった金額というのはございます。決裁の中にもございますし、それから、責任者は刑事局長でございますが、私どもの関係の局にもそれは意見照会が参ります。

 それで、金額については、これは一定のルールを申し上げますと、一定の、私どもの予定しているとか一定の基準金額を決めまして、それぞれの提案が、見積金額もございますし、その低い方の金額について満点の点をつけて、それで、あと、その基準価格との差額のところをまた点数制にして積算していく、そういう方法をとっております。

保坂(展)委員 これは一番大事なところだったんですが、十分なお答えが得られません。

 というのは、この五十カ所の裁判員制度タウンミーティングを、六月十三日に業者選定をしたというふうに聞いているんですね。それは前任者ですよ、刑事局長、決めたのは。六月十三日に決めて、十月一日からだあっとこれだけできるのかというふうに考えると、なかなかこれは困難かな。それは地方都市の大会場ですよ、四百人、五百人というのは。そういうところをきちっと押さえて、滞りなく回していくには、相当前からこれは準備、仕込まなきゃいけない。もともとこれは、業者、初めからあったんじゃないかというふうに私は強く疑っていますね。

 最高裁のホームページには、この資料の最後につけました。一番後ろです。これは随意契約にした理由について、「本件は、裁判員制度タウンミーティングの実施業務につき、企画の招請手続を行ったものであり、」ここまではいいですね。「採用された企画を実施できるのは、これを提案した(株)電通のみであるため、競争を許さない。」これは日本語として変じゃないですか。提案をした人じゃなきゃできないというんだったら、そもそも企画競争という概念は成り立たない。これはどういう意味ですか。

小池最高裁判所長官代理者 こういう企画業務につきましては、裁判員フォーラムというものに最も適切なものを企画競争の中から一つ選ぶ、それが最もこの業務遂行に適しているという事柄でそういう表現をとらせていただいたわけでございます。それがまた随契のいわゆる要件を満たすものである、こういう表現でございます。

保坂(展)委員 林副大臣に来ていただいていると思うんですが、内閣府でタウンミーティングの調査をされまして、前に明らかになった平成十三年度分の費用、九億円以上のこういう費用がかかっている、これも随契でしたね。そして、この内閣府の調査自体に、さかのぼり契約の可能性がある、こういう指摘がございますね。契約締結時に見積もられた価格と、契約額、そして請求額が、これはぴったり一致しているというのはおかしいんじゃないかということが書かれていますが、もしそういう事実があったとすれば、どういう問題があるんですか。その議論をちょっと短くお願いします。

林副大臣 お答えします。

 官房長官がおられないので、かわってお答えさせていただきますが、調査いたしますと、平成十三年度における随契の問題として、契約書の作成が実際のタウンミーティングの開催後になってから過去にさかのぼる形で行われていた可能性が高いということが、今委員がおっしゃったように明らかになってきたわけでございまして、この問題の背景は、タウンミーティングの実施が急遽決定し、開催準備が短期間に進められていたため、業務の実施が先行し、契約手続に必要な書類等を整える作業が後手に回ったという事情があったことが、報告書において指摘をさせていただいたところでございます。

 さかのぼり契約につきましては、先ほど委員から会計法の規定を引いての御指摘がありましたけれども、それが本来の形でありますから、我々としても、好ましくないという表現を使っておりますけれども、そういう指摘をさせていただいたところでございまして、今後は、コスト削減の観点をより重視してきちっとやっていただきたい、こういうことでございます。

保坂(展)委員 的確な答弁をいただきました。

 もう一回最高裁に確かめますが、これは、さかのぼり契約ではありませんか、九月三十日というのは。間違いなく九月三十日にやっていますか。

小池最高裁判所長官代理者 これは九月三十日よりも後にその契約書面をつくった可能性が高い、こういうふうに、これも私、その当時はまだ前任者がやっておりましたのであれですけれども、そうとらえております。

保坂(展)委員 これは驚きましたね。裁判所に対する信頼は崩壊するんじゃないですか、こんなことをやっていたら。最高裁ですよ、しかも。あらゆる契約の紛争、契約の一言一句をめぐって人の人生が変わっていくわけですよ。それが、さかのぼり契約したんですか。こんなことが通っていたら、司法制度改革なんかできるんですか、これ。国民を拘束するんですよ、これ。

 安倍総理、これまでの議論をお聞きになっていて、これは国の機関です、裁判所も。国の機関としては法務省も若干やっています、裁判員制度の広報を。いささかルーズ過ぎやしないかというふうに思いますが、総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 最高裁のことでございますから、行政府の長としてコメントについては慎重でなければならないと思いますが、いずれにせよ、この裁判員制度については、国民の皆様に御理解をいただかなければこの制度はうまく動いていかないわけでございます。まさに身近なものとして国民の皆様に参加をしていただかなければならないという意味においては、国民の皆様の信頼も極めて重要であろうと私は思います。

 この観点から我々も取り組んでいきたいと思います。

保坂(展)委員 委員長、今、さかのぼり契約を事務総局、お認めになった。いろいろな細かい経過、きょうは時間も限られていますので、改めて、誠意を持って、国の予算の執行ですから、どういう経緯を踏んでこの事業の予算執行があったのかということを当委員会に求めていただけないですか。

金子委員長 理事会で引き取ります。

保坂(展)委員 本当に残り少ない時間となりましたけれども、伊吹文科大臣と総理に一言ずつ答弁していただきたい、一問で終えますので。

 出席停止の問題が、いじめの問題で議論されております。これは本当に、教室の中の事実認定というのは難しいんですね。裁判所でも難しいわけですけれども。子供たちの間で、いじめている子だというふうに思って、教師が、あの子が一番悪いと思ってこの子だというふうに断定したときに、実はその子は、いわゆる子供の言葉で言うパシリだった、つまり、もっと強い子に威迫されていじめの先頭に立っていた、むしろ被害者だった、こういうケースがあるんですね。その場合、学校の先生がちょっと勇み足で、その子に、出ていけというふうにもし仮にやったら、それが大変な傷になります。

 教育再生会議でこの出席停止の問題がいろいろ議論されている。我々は、もっと議事録を明かしてほしい、中身を知りたいというふうに思います。

 きょうの新聞で、教育再生会議の議事録の公開を、これは都道府県の教育委員長協議会、教育長協議会の皆さんも、現場を預かっている身としてぜひ知りたい、こういうことでしたが、この点について伊吹文科大臣、そして議事録の公開について、教育再生会議、安倍総理にお話を聞いて、終わりたいと思います。

伊吹国務大臣 安倍総理の教育再生にかける強い思いのあらわれとして私に御指示がありましたのは、児童と、そしてまた児童を学校に預けておられる御父兄が安心をして子供を学校に行けるようにと。そのために、学校現場が荒れている場合、あるいはいじめられている場合について、現行法の中でやれることについて、各教育委員会に指示というか依頼をしてほしいという御指示がありました。それで、確かにそういう依頼をいたしました。

 先生がおっしゃっているとおり、いじめは非常に多様な形態がありまして、いじめている者が被害者であったり、あるいは被害者である者がまたいじめに回ったり、集団でいじめている場合にだれが本当にいじめているのか、いろいろなことがございます。

 ですから、この通知の一番最初に、日ごろから教師は、できるだけ個々の生徒の性格、性向、いろいろな行動等について十分把握をすることということを、まず最初に、日常の生活指導のことをかなりのスペースを割いて書いております。その後で、今の出席停止のことを書いております。

 私から、記者会見でも、あるいは各教育委員会の責任者が来られたときも、教師も安易に出席停止に逃げ込まないように、できるだけ生徒指導をもって対応するようにということをお願いしてございます。

安倍内閣総理大臣 野依座長も、議事録を公開するということはおっしゃっておられます。

保坂(展)委員 時間になりましたので、終わります。

金子委員長 これにて保坂君の質疑は終了いたしました。

 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 まず冒頭、総理に、これは質問というよりは所感でございますが、東京都板橋区の東武東上線ときわ台駅におきまして、自殺志願の女性を助けようとして電車にはねられ、警視庁の板橋署常盤台交番の巡査部長、今は警部でしょうか、宮本邦彦さんが殉職されたことに、心より弔意と敬意を表したいと思います。

 多くの警察官は、国民の安全を守るために、みずからの危険を顧みずに勤務をされているというふうに思います。こうした第一線で勤務されている警察官の努力によって国民の安心が保たれている、こういうことを、報道でもたくさんの方が温かい言葉をかけているのを拝見して改めて感じました。

 総理は、施政方針演説におきましても、国民生活の基盤となる安心、安全の確保は政府の大きな責務だ、こういうふうに述べられておられます。総理はこの宮本警部を弔問されたというふうにお伺いしておりますが、今回の事件を受けまして、安倍総理の所感を、まず冒頭、お述べいただければと思います。

安倍内閣総理大臣 毎年、何人もの警察官が、国民の命を守るためにあるいは職務において殉職をされておられます。毎年慰霊祭がとり行われるわけでありますが、私も出席をいたしました。また宮本警部も、危険を顧みずに、自殺をしようとする女性を助けようとして殉職されたわけであります。

 こうした方々のこうした行為によって町の安全は守られているんだろう、このように思うわけでありますし、このように、本当に、みずからの命を顧みずに職務を全うした宮本警部のような方の行為、総理として、また日本人として、本当に私は誇りに思うところでございます。改めて、警部の御遺族の方々にお見舞いを申し上げ、また警部の御冥福をお祈りしたい、このように思います。

糸川委員 ありがとうございます。

 では、質問をさせていただきたいと思います。まず、本日、アフリカ外交のことについて総理に質問をさせていただきたいと存じます。

 昨年の十月十日の予算委員会におきまして、私から安倍総理に対しまして、アフリカ外交について、これも重要なのではないかということをお尋ねしました。そうしましたら、アフリカは国連加盟国の約三割を占めており、極めて重視をしている、アフリカ開発会議などによりアフリカ発展のために貢献するとともに、我が国が国連外交において主導的な役割を担うためにもアフリカ外交を重視していく、こういうような発言をされております。

 しかし、ことし一月の総理の施政方針演説では、アフリカとの関係について直接的な言及というものはされませんでした。また、総理就任以来、国会の場において総理がアフリカについて語られたのは、前述のこの予算委員会での答弁の一度きりでございます。来年、二〇〇八年には、我が国が主導するアフリカ開発会議、これの四回目の会議が日本で開催される予定でありまして、ここでいま一度、アフリカ外交の意義と今後の方針について総理のお考えをお伺いしたいというふうに思います。

    〔委員長退席、森(英)委員長代理着席〕

安倍内閣総理大臣 ただいま委員が御指摘になられましたように、国連加盟国の約三割を占めるアフリカとの関係強化というのは、国際場裏における我が国において、我が国が積極的な外交を展開していく上においても極めてアフリカの諸国との関係は重要である、このように認識をいたしております。また、我が国が国際社会の責任ある一員として、アフリカに集中する世界的な課題の解決に向けて応分の貢献を行っていくこと、経済関係の強化を図ること及びアフリカの発展に貢献することも重要でございます。

 先般、欧州を訪問いたしました際に、欧州の国々の首脳とともに、このアフリカの問題、例えば貧困の問題、あるいは感染症の問題について、これを解決していくというのは我々の大きな責務ではないか、そしてそれは、アフリカのためというだけではなくて世界の発展にも大きく資するものである、このように我々は認識を一致させたわけでございますし、また、開催が予定をされておりますドイツでのサミットにおきましても、アフリカは大きな課題になると思います。また、来年における我が国のサミット、そしてまた、来年は第四回のアフリカ開発会議を開催する予定であります。日本としては、引き続きTICADプロセスを基軸とする対アフリカ外交を積極的に展開していきたい、このように思います。

 また、安倍内閣におきましてもこのアフリカは重視をいたしております。残念ながら余り報道されないわけでありますが、アフリカの首脳と累次首脳会談を行っているわけであります。昨年の十月にはモンゲラ全アフリカ議会の議長、そしてまた十月の三十一日には赤道ギニアの大統領、そしてまた十一月にはタンザニアの大統領、そしてやはり同じ十一月にはルワンダの大統領、そしてまたやはり同じ十一月にはガーナの大統領、ことしに入ってからはモザンビークの大統領と、首脳会談を累次行ってきているわけでございます。

 こうしたアフリカとの積極的な外交を今後とも推進していきたいし、そして、最初に申し上げましたように、アフリカの発展のために日本として当然その責務を果たしてまいりたいと思います。

糸川委員 総理、ぜひ、今のお言葉を信じて、これが予算の中に反映されるように積極的に取り組んでいただきたいなというふうに思います。

 そこで、外務大臣にお尋ねをさせていただきたいと思うんですが、我が国は、二〇〇五年の四月のアジア・アフリカ会議におきまして、今後三年間でのアフリカ向けのODAの倍増、七月のG8、グレンイーグルズ・サミットでは、今後五年間でのODAの百億ドル積み増しを発表し、対アフリカ支援を充実していくんだ、こういうことをアピールされております。

 我が国の人的交流としての外交体制というのは、残念ながらまだまだ不十分であると言わざるを得ないわけでございます。昨年十月のこの予算委員会でも指摘をさせていただきましたが、アフリカにおける我が国の大使館の数は二十四しかございません。先ほど総理がおっしゃられました赤道ギニアにも、当然大使館はございません。これに対して、近年特にアフリカ外交に力を入れております中国は、外交関係のある国のほとんど、約四十八カ国に大使館を置いておるわけでございます。

 逆に、アフリカ諸国のうち、日本に大使館がある、実際に施設を構えているのは三十五カ国ということで、アフリカ諸国の五十三カ国のうち、相互に大使館を持たない十八カ国、これが我が国との間ではスピーディーな情報のやりとり、こういうものに何か障害のようなものがあるのではないのかなと思っております。

 これは、アフリカ開発会議を主導として対アフリカ支援を中心とする対アフリカ外交というものを進めていこうと今総理もおっしゃられましたが、我が国にとって大きな弱点になるのではないかなというふうに思います。

 我が国では、ことし四月から、マラウイ、それからボツワナ、マリ、この三カ国に大使館を新設されるということでございますが、それが実現したとしても、アフリカ諸国の五十三カ国というものを見れば、半分に達するにすぎないわけでございます。

 そこで、これは個人的なアイデアなんですけれども、例えば、我が国が大使館を置けないのであれば、日本も今財政も厳しいわけでございますから、これは法律的にもいろいろあるのかもしれませんが、日本の負担で、相手国の外交官を呼んで、それなりの施設を建設してそこに入っていただく、そういうことができないんだろうか。相互に大使館を持たないアフリカの国々を対象に、ODAの予算等から充当する形で支援ができないんだろうか。とりあえずはそういう形で、財政的に厳しい、そういう中で大使館をつくることも難しい、そういうことであれば、何らかの対策を打つ必要があるのではないかなというふうに考えるわけでございます。

 また、大使館をつくりますと、治安面での不安のある地域も多々あるということでございますので、こういう何か手法を用いていくことも必要なのではないかなというふうに思います。

 いずれにいたしましても、アフリカに対する援助、金額ですとか内容の充実、こういうものはもちろんのことでございますけれども、今回、三大使館を新設するごとく、それを担う外交体制、人材の充実、これをしっかりさせるということが急務であるというふうに考えておりますけれども、そこについての政府の見解というものをお聞かせいただけますでしょうか。

    〔森(英)委員長代理退席、委員長着席〕

麻生国務大臣 国連加盟国百九十二カ国、そのうちアフリカが五十三カ国、約三割ということになろうと存じます。その中で、日本の大使館がそこにある国が半分以下の二十四。このたび、いろいろ御努力をいただきまして、それが三つふえることになりますので、やっと半分ということになったと存じます。中国、フランスは約四十五あると思いますので、そういった意味では、大使館というものの絶対量にはかなりの差がある、二十ぐらいそれでも差があるということだと存じます。

 御存じかと思いますが、アフリカ五十三カ国全部足して、GDPが大体韓国よりちょっと前後ぐらいなものですから、そういう、余り決して豊かでないところは日本に大使館を持っていて、こちらの方が向こうにはないという国が我々としてはちょっとぐあいが悪いところです。それが約二十、先方の大使館が日本にあるのが三十幾つですか、ちょっと差があるんです。そこのところが私どもとしてはちょっと何となくぐあいが悪いなと思っておりますので、何としてもここらのところはきちんと対応していかなならぬと思っておりますのが一点。

 それから、よく兼轄すればいいじゃないかというお話をいただくんですが、地図の上で見ますと隣なんですけれども、実は、隣に行く飛行機、道路はほとんどなくて、大体、元宗主国だったロンドンとかパリとかには行く飛行機があるものですから、隣に行こうと思っても、まずパリに戻って、それからまたおりるとか、ロンドンに行ってから戻るしか行く方法がないというぐらい、なかなか交通事情も厳しいというところであります。

 いずれにしても、日本としては、こういったところで、いわゆる国連の票でいきましても、三割を超える票というのは決して無視できるような票じゃありませんので、この票は大事にしなくちゃいかぬと思っております。私どもとしては、このたび、人員の充実やら何やらいろいろしておりますので、大使館に限らずそういったところをうまくやる方法をいろいろ考えなくちゃいけないところなんですが、まず政情が不安定だとちょっとどうにもならぬというところもありますので、政情が結構そこそこというところを、先ほど名前三つ言われましたけれども、その名前のところに今回出させていただくということで、今安倍総理からもこの点に関しては、アフリカをやるという話は、三倍にすると言っているんだから、とにかくこの方向でやろうということで今努力をさせていただいております。

糸川委員 ぜひ大臣、取り組んでいただきたいなと。

 これはちょっと余談かもしれませんけれども、ベナン共和国の、名前は聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、ゾマホンという方がいらっしゃいまして、その方といろいろ話をしますと、日本に来るのは天国に行くよりも難しいということを言っているぐらいなわけです。日本に行きたいけれども行く手段がない、大使館がなければビザもなかなかとれないんだと。そのために彼は、中国を経由して、中国で北京大学に行って、そこで留学をして、日本の大使館がそこにありますから、そこから日本に入ってきているわけですね。こういうことで、優秀な人材だと思いますが、そういう方もいらっしゃるんだということですから、早く相互に連携をとれるようにしていくことが重要なのではないかなというふうに思うわけです。

 そこで、今大臣から、中国がすごいんだ、中国は一生懸命努力しているんだと。この中国の対アフリカ外交に対する評価をちょっとお聞きしたいなと思うんですけれども、中国の胡錦濤国家主席は、先月末からスーダンそれから南アフリカなどアフリカの八カ国を歴訪されているというふうに聞いております。胡主席は昨年四月にも四カ国、それでまた、温家宝首相は昨年六月に七カ国、これをそれぞれ歴訪されている。アフリカとの関係強化への熱意がうかがえる。先ほど総理も、会談はしているということでございますけれども、中国の場合は、これは歴訪しているわけでございます。

 昨年十一月には、北京で中国・アフリカ協力フォーラムというものを行われておりまして、アフリカ五十三カ国のうち四十八カ国の代表が参加されております。中国との新たな戦略パートナー関係をうたった北京サミット宣言と行動計画、こういうものが採択されているというふうに思いますが、中国とアフリカ諸国との貿易額倍増、これを一千億ドルにしようとか、中国による援助の倍増、基金設立、こういうものが決まっている。それから、協力強化策というものは資源とエネルギー分野に集中させている、こういうふうに聞いておるわけでございます。

 中国は、昨年一月に発表されました対アフリカ政策文書におきましても、政治的条件をつけずに援助を続けるんだ、こういうことを柱の一つに掲げて、住民虐殺で国際的非難を浴びるスーダンですとか、圧制国家とも批判されておりますジンバブエ、こういう国への援助拡大に対しては、国際社会からも非難が強い。資源確保をねらって、人権抑圧国家を援助しているんじゃないか、こういうような声も聞かれておるわけでございます。

 我が国や欧米諸国は、援助拡充の前提として民主化推進、先ほどいろいろな問題があるんだとおっしゃられたわけですけれども、透明性の確立ですとか汚職追放とか、こういう努力をアフリカ諸国に求めて、二〇〇五年のG8の合意文書にもこれは盛り込まれておるというふうに思いますが、我が国が主導するアフリカ開発会議、これも、国際社会による積極的な対アフリカ支援の必要性も認めていると思うんですが、アフリカ諸国の自助、これが重要であるというふうにも思っておるわけです。

 そこで、内政不干渉を唱えて援助を続ける中国の対アフリカ姿勢というものは、我が国を初めとする国際社会がこれまで行ってきた対アフリカ支援の方針とは異なって、これまではぐくまれてきたアフリカ側の自助の精神、こういうものを損なうおそれもあるんじゃないのかなというふうに思っておるわけです。そういう形で中国がどんどん強くなっている、外交的に強くなれば、やはり日本という立場もまたいろいろな面で難しくなってくるところもあると思いますが、その辺は見解としていかがでしょうか。

麻生国務大臣 中国のアフリカに対するいわゆる支援、それ自体は決して悪いことではありません。問題は、その内容等々が甚だ透明性に欠けるところが問題なんだと、私なりにはそう思っております。

 例えば援助額、幾らと言われてだれも答えない、その内容も言わないというのが例えば一つです。

 それから、いわゆる債務をしょったりする場合は、その債務に関してちゃんと返す約束でみんなやっていると、返さないところというのが出てくるわけですから、そういうところに関してはいわゆる債務の持続可能性というのをずっといろいろ言うんですが、それはもう全然、普通の用語でいえば手形のジャンプというんですが、こういうのは役人用語じゃ通じない言葉ですけれども、民間用語、あなたは民間から来られたから手形のジャンプという意味が、役人には全然通じない言葉ですけれども、そういうのを言うわけですね。ジャンプでまた払ってくれればいいけれども、それもないという話になりますので、ちゃんと自立自助が基本ですよと。

 借りているのは返す前提だから、借りるんじゃなくて、それは、くれという話と借りるという話は前提が違うんだからという、国際常識のゼロからきちんとやっていかないかぬ。そうすると、いや、政権がかわったからとかなんとか言って、また全然変わっちゃうとか、もうこれまでいっぱいそういうのがありますので、それは各国、日本に限らず、皆同じようなことをやって、皆それぞれ努力しているというところにも構わず、そこは資源があるからばあっと出てくるというと、それはパリ協定違反じゃないかとか、いろいろな話があります。名前を言うとぐあいが悪いけれども、アンゴラとかそういったところは幾つも出てくるところです。はっきり言って、これは世界じゅうに知れ渡った話でありますけれども。

 しかし、人権侵害のところで、今言われました、そういったところも問題点がある。そういったところに関する国際ルールというのが一応ありますので、そういったルールどおりやってくれないとおかしいんじゃないのという話は、中国に対して日本としてもいろいろなところで、ちょっとこれはルールとしてはおかしいんじゃないのという話は我々もいろいろな形でしているところですが、今現在のところは、糸川先生が言われたような形になっておるというのが現状であります。

糸川委員 そうすると、やはり、総理もあれですけれども、アフリカの発展途上国を取り込みたいんだという中国の影があるという中で、今度、では中国との外交はどうなんだと。そういう一生懸命取り込んでいこうとしている中国、今手形のジャンプなんという言葉も出ましたけれども、そういう国との外交として、今後どういうふうにしていくのかなと。

 その中で、安倍総理は昨年十月、中国を訪問された、就任早々行かれたというふうに思います。胡錦濤国家主席と戦略的互恵関係の構築で一致されている。この訪中により、小泉前総理の靖国神社参拝等の、こういう理由に途絶えていた日中の首脳交流というものが再開された。それ以降、現在までに既に二回の首脳会談が行われるということで、日中関係は改善の兆しがあるのかなというふうに思います。

 ことし四月に温家宝総理が来日する予定でございますけれども、また日韓関係についても、昨年十月の首脳会談以降、改善に向けた期待が高まってきている。他方、それでもまだ、依然として、大臣、いろいろな懸念があるということでもございます。

 その一つとして、東シナ海の中国が進めている資源開発。中国は一生懸命、アフリカも資源があるからどんと投資しちゃうんだということもあると思うんですけれども、こういう中国が進めている東シナ海の資源開発。我が国が再三にわたって情報提供を求めているにもかかわらず、中国側からは回答がないんではないのかな。もしあるならば言ってくださいね。ガス田の共同開発に向けた協議というものも進捗が見られない。

 二月四日に中国の海洋調査船が、我が国の排他的経済水域内で事前通報なしに調査活動、こういうものを行った。これに対して外務省が抗議をされた。ところが中国は、通報義務がないんだとして活動を正当化されているということでございます。

 また、中国は、一月、ミサイルによる衛星破壊実験を実施もされております。これは、我が国や米国の安全保障上の脅威、こういうふうになり得るばかりか、経済活動を支えている通信衛星ですとか気象衛星の正常な運行を妨げるおそれもあるわけでございます。

 日韓の間では、竹島問題として、竹島の領有権について争いがあります。この同島周辺の排他的経済水域に関する日韓の境界の画定交渉では、海洋調査にかかわる相互の事前通報制度の創設を提案する我が国と、日本が実施する調査には韓国の同意が必要だというふうに主張しております韓国との間で、議論が平行線をたどっているわけでございます。

 この日中韓は、東アジア地域においても、政治的そして経済的に特に大きな影響を有する三国であるわけでございますが、さまざまな懸念を抱えつつも、最近において高まりつつあるこの関係改善というんでしょうか、総理も一生懸命目指されている、大臣もしっかり目指されていると思いますが、そういう機運というものを縮小させないためにも努力をすることが重要であるわけでございます。

 そこで、政府は、今後、中国、韓国に対してどのような方針で外交を行っていくのか、まず麻生大臣の見解をお聞きしたいと思います。

麻生国務大臣 御存じのように、両国とも長い歴史のある国であり、我々と隣国でもありますので、そういった意味では、基本的には大変大事な関係を有しているところだと思っております。

 幸い、昨年十月の安倍総理の訪中、訪韓によって、関係改善というのがかなり進んだと思ってはおります。ただ、今言われましたような問題はすべからくまだ解決をされておりませんので、この四月に温家宝総理が来日される、李肇星外務大臣は金曜日、あさって日本に来ることになっておりますので、そういった場面においていろいろな話をさせていただくことになるんだと思いますが、基本的には向こうも、日本と一緒に相互関係を組んでいった方がいいんじゃないのというところが一番大事なところだと思います。自分でやるより、一緒に共同開発した方がより安く、より利益が高いんじゃないのというところ、例えば油田の開発とかなんとかというので例に引けば。

 そういうのを含めて、基本的に、双方できちんと話をしていくといって、こちらの方がプロフィタブル、より利益が多いということをきちんと言っていく、説明が要るとか、いろいろなことをきちんと言っていくというのはすごく大事なところなのであって、両方とも何となくこういがみ合っているだけでは、およそ非建設的な話にすぎないと私自身はそう思っております。

 韓国も同じように、これは大事な隣国なんですけれども、宋旻淳、宋旻淳というのは今度の新しくなった外交部長ですけれども、日本にこの間来たのは、自分が外務大臣になって最初の訪問国を日本として、過日来ておりますけれども、いろいろな形で関係改善をしようということに関しては双方とも一応話が合ってきておりますので、今までのように何となくとんがった関係から少しずつ、時間はかかるんだと思いますが、そういったいろいろ、こざこざしている、ごたごた、ぎすぎすしている部分というのは確かにありますので、そこらのところが、今すぐ直ちにすぱっと解決する話とは思いませんけれども、時間をかけてきちんと対応していくべきだと思っております。

糸川委員 もう時間がございませんので、質問はいたしませんが、これは国民も関心を持っておりますし、昨日、私どもの亀井静香先生も、だんだん国も縮小してきているのではないかなんという発言をしておるわけでございます。ですから、ぜひ毅然とした外交を今後もしていただいて、その中でアフリカもぜひ見ていただいて、しっかりとした外交というものをしていただきたいなというふうに思います。

 ありがとうございました。終わります。

金子委員長 これにて糸川君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして基本的質疑は終了いたしました。

 このまましばらくお待ちください。

    ―――――――――――――

金子委員長 この際、公聴会の件についてお諮りいたします。

 平成十九年度総予算について、議長に対し、公聴会開会の承認要求をいたしたいと存じます。

 公聴会は来る二月二十一日、二十二日の両日とし、公述人の選定等の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

金子委員長 起立多数。よって、そのように決しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三分散会


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