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第16号 平成19年2月27日(火曜日)

会議録本文へ
平成十九年二月二十七日(火曜日)委員長の指名で、次のとおり分科員及び主査を選任した。

 第一分科会(皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、内閣府及び防衛省所管並びに他の分科会の所管以外の事項)

   主査 斉藤斗志二君

      井上 喜一君    大野 功統君

      園田 博之君    三ッ林隆志君

      枝野 幸男君    馬淵 澄夫君

 第二分科会(総務省所管)

   主査 三原 朝彦君

      小野寺五典君    金子 一義君

      細田 博之君    前原 誠司君

      阿部 知子君

 第三分科会(法務省、外務省及び財務省所管)

   主査 森  英介君

      遠藤 武彦君    大島 理森君

      倉田 雅年君    岡田 克也君

      丸谷 佳織君

 第四分科会(文部科学省所管)

   主査 萩山 教嚴君

      佐藤 剛男君    中野  清君

      増原 義剛君    岩國 哲人君

      佐々木憲昭君

 第五分科会(厚生労働省所管)

   主査 実川 幸夫君

      稲田 朋美君    河井 克行君

      中馬 弘毅君    小川 淳也君

      大口 善徳君

 第六分科会(農林水産省及び環境省所管)

   主査 山本 公一君

      河村 建夫君    馳   浩君

      深谷 隆司君    大串 博志君

      中井  洽君

 第七分科会(経済産業省所管)

   主査 杉浦 正健君

      笹川  堯君    西村 康稔君

      野田  毅君    川内 博史君

      中川 正春君

 第八分科会(国土交通省所管)

   主査 赤松 正雄君

      臼井日出男君    三ッ矢憲生君

      宮下 一郎君    原口 一博君

      松木 謙公君    糸川 正晃君

平成十九年二月二十七日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 金子 一義君

   理事 斉藤斗志二君 理事 実川 幸夫君

   理事 杉浦 正健君 理事 園田 博之君

   理事 萩山 教嚴君 理事 森  英介君

   理事 枝野 幸男君 理事 中川 正春君

   理事 赤松 正雄君

      井上 喜一君    稲田 朋美君

      臼井日出男君    遠藤 武彦君

      小野寺五典君    大島 理森君

      大野 功統君    川条 志嘉君

      河井 克行君    木原 誠二君

      木原  稔君    倉田 雅年君

      佐藤 剛男君    坂井  学君

      笹川  堯君    篠田 陽介君

      杉田 元司君    鈴木 馨祐君

      田中 良生君    中馬 弘毅君

      とかしきなおみ君    土井 真樹君

      中野  清君    中森ふくよ君

      西村 康稔君    野田  毅君

      橋本  岳君    馳   浩君

      林   潤君    広津 素子君

      深谷 隆司君    福岡 資麿君

      福田 良彦君    藤井 勇治君

      藤野真紀子君    細田 博之君

      馬渡 龍治君    増原 義剛君

      三ッ林隆志君    三ッ矢憲生君

      宮下 一郎君    山本 公一君

      若宮 健嗣君    岩國 哲人君

      小川 淳也君    大串 博志君

      岡田 克也君    川内 博史君

      寺田  学君    中井  洽君

      長安  豊君    原口 一博君

      馬淵 澄夫君    前原 誠司君

      松木 謙公君    大口 善徳君

      丸谷 佳織君    石井 郁子君

      佐々木憲昭君    阿部 知子君

      辻元 清美君    糸川 正晃君

    …………………………………

   総務大臣         菅  義偉君

   法務大臣         長勢 甚遠君

   外務大臣         麻生 太郎君

   財務大臣         尾身 幸次君

   文部科学大臣       伊吹 文明君

   厚生労働大臣       柳澤 伯夫君

   農林水産大臣       松岡 利勝君

   経済産業大臣       甘利  明君

   国土交通大臣       冬柴 鐵三君

   環境大臣         若林 正俊君

   防衛大臣         久間 章生君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     塩崎 恭久君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当) 高市 早苗君

   国務大臣         大田 弘子君

   国務大臣

   (規制改革担当)

   (国・地方行政改革担当) 渡辺 喜美君

   外務副大臣        岩屋  毅君

   財務副大臣        田中 和徳君

   厚生労働副大臣      石田 祝稔君

   国土交通副大臣      渡辺 具能君

   外務大臣政務官      松島みどり君

   経済産業大臣政務官    高木美智代君

   国土交通大臣政務官   吉田六左エ門君

   環境大臣政務官      北川 知克君

   防衛大臣政務官      大前 繁雄君

   政府特別補佐人

   (公正取引委員会委員長) 竹島 一彦君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  原  雅彦君

   政府参考人

   (内閣府規制改革推進室長)       田中 孝文君

   政府参考人

   (内閣府国民生活局長)  西  達男君

   政府参考人

   (内閣府沖縄振興局長)  清水  治君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           久元 喜造君

   政府参考人

   (総務省統計局長)    川崎  茂君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  稲見 敏夫君

   政府参考人

   (財務省大臣官房長)   杉本 和行君

   政府参考人

   (財務省主計局長)    津田 広喜君

   政府参考人

   (国税庁次長)      加藤 治彦君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          銭谷 眞美君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  松谷有希雄君

   政府参考人

   (厚生労働省職業能力開発局長)          奥田 久美君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       大谷 泰夫君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  水田 邦雄君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  渡辺 芳樹君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 薄井 康紀君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  青柳 親房君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      舟木  隆君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院長)     広瀬 研吉君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房長) 竹歳  誠君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局長)            宿利 正史君

   政府参考人

   (国土交通省道路局長)  宮田 年耕君

   政府参考人

   (国土交通省自動車交通局長)           岩崎 貞二君

   政府参考人

   (国土交通省航空局長)  鈴木 久泰君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  大古 和雄君

   政府参考人

   (防衛省人事教育局長)  増田 好平君

   政府参考人

   (防衛施設庁長官)    北原 巖男君

   政府参考人

   (日本政策投資銀行総裁) 小村  武君

   参考人

   (独立行政法人沖縄科学技術研究基盤整備機構理事・事務局長)        三木 義郎君

   参考人

   (独立行政法人沖縄科学技術研究基盤整備機構財務部長事務取扱)       寺本 吉広君

   参考人

   (独立行政法人沖縄科学技術研究基盤整備機構施設企画グループ総括)     榎田 章三君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十七日

 辞任         補欠選任

  臼井日出男君     木原  稔君

  遠藤 武彦君     鈴木 馨祐君

  小野寺五典君     木原 誠二君

  大野 功統君     土井 真樹君

  河村 建夫君     篠田 陽介君

  笹川  堯君     杉田 元司君

  中野  清君     橋本  岳君

  西村 康稔君     坂井  学君

  野田  毅君     川条 志嘉君

  深谷 隆司君     田中 良生君

  細田 博之君     広津 素子君

  三原 朝彦君     若宮 健嗣君

  岡田 克也君     長安  豊君

  川内 博史君     寺田  学君

  佐々木憲昭君     石井 郁子君

  阿部 知子君     辻元 清美君

同日

 辞任         補欠選任

  川条 志嘉君     野田  毅君

  木原 誠二君     藤井 勇治君

  木原  稔君     馬渡 龍治君

  坂井  学君     中森ふくよ君

  篠田 陽介君     藤野真紀子君

  杉田 元司君     笹川  堯君

  鈴木 馨祐君     遠藤 武彦君

  田中 良生君     深谷 隆司君

  土井 真樹君     大野 功統君

  橋本  岳君     中野  清君

  広津 素子君     福田 良彦君

  若宮 健嗣君     とかしきなおみ君

  寺田  学君     川内 博史君

  長安  豊君     岡田 克也君

  石井 郁子君     佐々木憲昭君

  辻元 清美君     阿部 知子君

同日

 辞任         補欠選任

  とかしきなおみ君   福岡 資麿君

  中森ふくよ君     西村 康稔君

  福田 良彦君     細田 博之君

  藤井 勇治君     林   潤君

  藤野真紀子君     河村 建夫君

  馬渡 龍治君     臼井日出男君

同日

 辞任         補欠選任

  林   潤君     小野寺五典君

  福岡 資麿君     三原 朝彦君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成十九年度一般会計予算

 平成十九年度特別会計予算

 平成十九年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

金子委員長 これより会議を開きます。

 平成十九年度一般会計予算、平成十九年度特別会計予算、平成十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般的質疑を行います。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、お手元に配付のとおり政府参考人の出席を求めることとし、その手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

金子委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

金子委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。糸川正晃君。

糸川委員 おはようございます。国民新党の糸川正晃でございます。

 本日は、私がトップバッターでございます。また、時間もいただきましたので、外国人の研修生問題をまず冒頭やらせていただきたいなと思います。

 今日、国際関係が一層緊密する中で、我が国を含む先進国、開発途上国などに対してさまざまな支援を行うことによりまして、国際社会全体の発展を目指すため貢献を行うことが期待されるわけでございますが、そうした国際関係、そして国際貢献の一つの柱といたしまして、外国人の研修・技能実習というものがございます。外国人の研修・技能実習制度が制定されました経緯及び本来の目的についてまずお尋ねしたいと思います。法務大臣。

長勢国務大臣 おはようございます。

 研修・技能実習制度は、我が国で習得した技術、技能等を、その国の経済発展や技術の進歩に寄与するという、人づくりを通した国際協力、国際貢献を目的として制度化されてまいりました。

 まず、研修制度ですけれども、多くの企業が海外に進出するようになりまして、技術研修の目的で入国する者が増大をしたということを背景に、昭和五十六年の入管法の改正で、本邦の公私の機関により受け入れられて、産業上の技術または技能を習得しようとする者に係る在留資格が創設され、その後、平成元年の改正で現在の研修の在留資格が設けられております。

 これにより、海外進出した日本の企業が、現地法人や取引関係等のある企業の社員に対し、関連する技術や技能、知識を我が国で効果的に習得させることが可能となるとともに、中小企業向けには、商工会議所、中小企業協同組合等が研修生受け入れ事業の主体となる、いわゆる団体管理型による外国人研修生受け入れが開始されたわけでございます。

 さらに、平成三年十二月に、第三次臨時行政改革推進審議会第二次答申において外国人技能実習制度の創設が提言され、さらに、同月に閣議決定された「平成四年度に講ずべき措置を中心とする行政改革の実施方針について」において、外国人研修制度について新たな制度の創設を検討することとされました。

 これを受けまして、平成五年には、研修期間中に一定水準以上の技術等を習得した外国人について、研修終了後、研修を受けた企業等と雇用契約を結び、研修で習得した技術等についてより実践的な磨きをかけられるようにする技能実習制度が創設されました。

 技能実習制度は、創設以後、この制度を活用できる職種が逐次拡大され、また滞在期間の延長等の措置も講じられるなどして、現在の研修・技能実習制度となった経過でございます。

糸川委員 出入国管理局長にお尋ねしますけれども、ちょっと今の補足をしていただきたいんですが、この研修を実施するに当たっては研修計画を作成しなければならないということですが、現在これの実施状況というものがどのように把握されているのか。そしてまた、研修から技能実習への移行の割合についてお尋ねしたいのと、もう一点、帰国後、研修・技能実習の成果というものが発揮されているかどうか。

 例えば、この項目の中に、見ておりますと、山から出ていらっしゃった方が、これはいけないとは言いませんが、漁業の技能実習をやられて帰られる。こういう方々が、お帰りになられてからしっかりと発揮をする場についていらっしゃるのかどうか、そういうこともお答えいただけますでしょうか。

稲見政府参考人 お答えいたします。

 三点御質問ございました。第一点の研修計画の実施状況の把握でございますが、私どもでは、まず、研修で入国する前に私どもの地方入国管理局に研修計画というものを出していただきまして、適正な研修ができるかどうか審査をしているわけでございます。なお、研修計画書の中には、研修の内容、必要性、実施場所、期間及び研修生の待遇というものが記載されるようになっております。

 それで、お入りになった。お入りになった後は、研修の在留期間の更新、あるいは、研修から技能実習に移行していただく際は在留資格の変更という対応をさせていただくんですが、その際に、研修がどのように進捗したか、あるいはどういう待遇をしているかということをあわせてチェックさせていただくという形になっております。加えて、必要に応じまして私どもの職員を研修の現場に派遣いたしまして、その研修の実態を把握するというようなこともあわせてやっております。

 続きまして、研修から技能実習への移行の割合でございますが、昨年、平成十八年一年間に技能実習に移行した人数は、四万一千人でございます。この四万一千人は、対象となります研修生は研修が一年、技能実習がその後の二年というのが基本的なモデルでございますので、十八年に技能実習に移行した研修生はその一年前に入った方ということになります。ということで、分母はその一年前の研修生の入国者八万三千人余になりますので、移行の比率といいますのは四九・三%、ほぼ研修生お二人にお一人が技能実習に移行しているというのが現状でございます。

 それから、三点目の帰国後の成果でございますが、実際にお帰りになってからどのように日本で学んだ技能、技術を発揮しているか、私どもが直接見るというわけにはまいりませんので、実は昨年、私どもでは、日本の研修生を送り出した百四十九の機関、ここで八百七十六人の研修生、技能実習生を日本で研修・技能実習し、送り出したんですが、ここに対しまして調査をさせていただきました。

 その結果、研修で来る前と同じところに七割の方がお帰りになっている。ということは、そこで多分日本で身につけた技術なり技能を生かされているであろうということでございます。それから、残り三割のうちの一割は、実は企業は変わっているんですが、同じ職種で仕事をされておる。これも、多分同じように日本で身につけた技術、技能を生かしているのかなと推測している次第でございます。残りの二〇%は、大学に行ったとか御結婚されたとか、そういうものでございます。

 以上でございます。

糸川委員 ぜひ局長、これはもちろん、せっかく日本に来ていただくわけですから、研修を目的としていらっしゃって、そして実際には技能実習への移行割合は五〇%程度、これが高いか低いかということは別として、本国に帰られて、やはり成果というものをしっかりと発揮できているかどうかというところも見ていただければ、少しサンプルをとって見ていただきたいなというふうに思います。

 次に、今回外国人の研修・技能実習制度というものを勉強するに当たって、JITCOという団体でしょうか、この団体が発行している制度概説というのがございました。これは、受け入れ機関ですとか送り出し機関、外国人の研修生に対するさまざまな支援事業を実施する機関ということでございますが、実際、JITCOというのはどのような機関で、どのような業務を行っておるのか、そしてまた、その役割というものを十分に発揮されているのか、お答えいただけますか。

稲見政府参考人 お答えいたします。

 御質問の財団法人でございますが、これは、法務省、外務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、五省共管の公益法人でございまして、平成三年に設立されたものでございます。

 そこの業務は、おおむね三つのカテゴリーに分類されるかと思います。

 第一のカテゴリーは、これから研修生、技能実習生を受け入れて事業を行う、それを適正にかつ円滑に行っていただくために、受け入れ機関に対して総合的な支援、指導、助言を行うというものでございます。具体的には、説明会、セミナーを開催いたしまして、受け入れに関します総合的な援助、相談に乗るというもの、あるいは、研修計画の作成につきまして相談、援助に応ずるというものでございます。

 第二のカテゴリーは、研修生、技能実習生に対しまして、その悩みや相談にこたえるというような形で、入管法令、労働法令等によります法的権利の保障に寄与するという業務でございます。具体的には、研修生、技能実習生の母国語によります情報誌を作成し、配布しております。また、健康、医療、メンタルヘルスその他の相談に母国語で応ずるというようなことをやっております。

 第三のカテゴリーの業務でございますが、これは、実施されました、もうアイ・エヌ・ジーで進行している研修・技能実習が制度本来の目的どおり成果が上がるように、受け入れ機関、研修生、技能実習生に対しまして支援を行うというものでございまして、具体的には、日本語教育についての支援、あるいは、受け入れ機関の調査、巡回指導というような業務がこれに当たっておるところでございまして、研修・技能実習の適正な実施につきましてなくてはならない存在というぐあいに考えておる次第でございます。

 以上でございます。

糸川委員 今から幾つか例を挙げて御質問させていただきますけれども、実際、こういう相談とかがあれば、起き得たんだろうかというような、例えば私の地元の福井県では、中国の山東省出身の女性の技能実習生が、劣悪な環境の工場寮でストレス障害を発生されまして就業が困難になってしまった、そういうことから中国に帰国を余儀なくされたわけでございます。この実習生は、プレハブなどの寮に住んでおりましたけれども、七人とか十人の共同生活で、プライバシーがないわけです。クーラーや網戸もない、こういうようなところに住まわされていたというふうに報道もされておるわけでございます。

 まず、このような劣悪な環境に外国人技能実習生が置かれている実態について、厚生労働省としてどのように把握されているのかお答えいただけますか。

奥田政府参考人 お答えいたします。

 ただいまの委員御指摘のような、技能実習生が劣悪な住環境に置かれているということにつきましては、技能実習の適正な実施の観点だけでなく、実習生の健康上の確保という観点からも、非常に問題があるというふうに認識をしているところでございます。

 宿泊施設等の住環境につきましては、先ほどのJITCOを通じまして、宿泊施設等の住環境について留意すべき事項というものを定めまして、実習生受け入れ企業に対しまして周知をしているところでございます。また、JITCOの巡回指導におきまして、宿泊施設が著しく狭隘である、あるいは衛生上問題があるというようなものにつきましては、指導を行っているところでございます。

 また、今年度、九月にJITCOを通じまして、全受け入れ企業、一万四千五百ございますが、そこに対しまして自主点検表を送りまして、みずから企業で自主点検をしていただくということをしていただきました。今、その点検表を回収いたしましたので、これに基づきまして、問題があるところにつきまして巡回指導を強化するということにしておるところでございます。

 また、違反があるようなところにつきましては、労働基準監督機関、また入国管理機関とも連携をいたしまして、宿泊施設だけでなく、他の分野につきましても、制度全般につきましての適正化を図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

糸川委員 何か、今、自分で問題があるかどうかをアンケートでお答えになっているということですけれども、本当にそれで正確な調査ができるかどうかということも含めて、また御再考いただきたいなと。

 また、こんな事例もあるんです。これも福井県なんですが、越前市の中国人研修生そして実習生を受け入れる企業でつくる協同組合が、逃亡防止のために、研修生には月二万円、実習生には月三万円の預金というものを強制し、しかもその通帳まで取り上げてしまう、そういう報道がございました。

 これは国の方針で、平成十一年二月の法務省入管局の発表されました方針、これに反するだけではなくて、研修生そして実習生に対する人権侵害でもあるのではないかなというふうに思いますけれども、このような実態というのは把握されていらっしゃるんでしょうか。

稲見政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の案件につきましては、現在、実は事実関係を調査中でございまして、まだ結論には至っておりません。

 ただ、一般論として申し上げますと、研修手当の一部を強制的に預金させる、あるいは研修生の預金通帳を受け入れ機関が取り上げるというような、こういう事実があったといたしますれば、委員御指摘のとおり、私どもの指針で掲げております不正行為に当たるということになろうと思います。

 現実に、昨年一年間で不正行為と認定した中に、預金通帳を強制的に保管、取り上げたということを理由に不正行為に認定した案件が実在しております。ということで、御質問の件につきましては、把握はしておりますが、なお調査にお時間をいただきたいということでございます。

糸川委員 やはり、この預金通帳を取り上げるという行為を考えますと、通常、研修を本気でさせようとしているのか、研修ではなくて労働をさせようとしているのかということを、よくこれは法務大臣そして関係所管で協議をしていただいて、また御判断いただきたいなと思います。

 福井県の労働局が県内で外国人研修生を雇用している事業所に実際に立入検査をしたところ、実に九割の事業所が、時間外労働の賃金の未払いですとか、法定労働時間の超過、そして労働基準法違反などの労働関係法の違反があった、こういう発表もございました。

 平成十四年の違反率が九九%、十五年が九六%、十六年及び十七年は九三%だと。ここ数年、連続して九割を超える状態で推移しておるわけでございますが、このように九割以上も違反があるということ、ここの一例だけを見ていますと九割以上あるわけです。ということは、恐らく日本全国同じような例があるのではないかなというふうに思うわけですが、この国の方針と現状がかけ離れ過ぎているのではないかなと思うんですが、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 研修・技能実習制度につきましては、特に技能実習生に係る法定の労働条件の履行の問題につきまして、従来から重点的に取り組んでいるところでございます。

 監督対象事業場については、投書等の各種の情報から、法定労働時間の履行確保上特に問題があると考えられる事業場を選定して調査を行っているところでございますが、御指摘の違反率になっているのにはそういう関係も作用しているというふうに思います。

 この九割ということは、確かに無視できない非常に高率の違反でございます。もう糸川委員も御承知かと思いますけれども、これは賃金の問題、労働時間の問題、それから健康管理の問題、寄宿舎の問題、安全衛生の問題というように、そのいろいろな問題についてどこかで引っかかっている、こういう事態で、そういうものをトータルしますと九割になるということですけれども、いずれにしても、これは非常に高率でございますので、引き続き監督対象事業場を的確に選定しまして適切な監督指導を実施することによって、技能実習生に係る法定労働条件の履行確保についてはこれをしっかりと図ってまいりたい、このように考えております。

糸川委員 大臣、九割を超えるということ、これは日本全国どのくらいなのかということも御存じでしょうから、余りにも高過ぎる。やはり、それを受け入れる機関が、JITCOなりと相談をして、どういうふうに受け入れていったらいいのかということをうまく把握できていないんじゃないのかということもありますので、その辺また、ぜひ調査をしていただいて、修正できるところを修正していただきたいと思います。

 また、研修生というのには実は研修手当が支払われるわけです。ここは賃金ではないはずなんですね。ところが、ここにいわゆる時間外労働が行われているという実態があるわけです。この事実から、実態としては、研修生に労働をさせて、そして受け入れ事業者から賃金が支払われている、こういう事実があるのではないかということを疑わざるを得なくなるわけですね。

 研修生に対する賃金の支払いの有無についての実態、これをどのように把握されているのか、また手当のあり方について、簡潔に、管理局長、御説明いただけますか。

稲見政府参考人 お答えいたします。

 外国人研修生は、技術、技能、また知識を学ぶということを目的に在留するものでございまして、時間外における労働はもちろんのこと、労働の対価として報酬を受けることはできません。

 入国管理局におきましては、研修の在留期間の更新申請、あるいは技能実習への在留資格の変更申請に際しまして、研修の進捗状況、研修生の待遇というようなものを文書で確認しているほか、現場に赴きまして、時間外労働の有無とか賃金支払いの有無などを確認し、不正行為が行われていないかどうかということについて、その実態の把握に努めているところでございます。

 現実に、昨年一年間、実はこの不正行為に二百二十九件を認定しているんですが、そのうちの六十九件は、時間外労働を行わせていた、あるいは賃金を支払っていたなど、研修生を労働者として取り扱っていたことを理由とするものでございます。

 以上でございます。

糸川委員 これは大臣、中国ですとか東南アジアの方々がこういう研修制度を多く利用されていると聞きますけれども、やはり彼らは研修で来るという認識ではないんですよね。逆に、労働で行くんだというような認識で、出稼ぎに行こうというような認識でいらっしゃる。こちら側が幾ら研修でいらっしゃいというふうに言っていても、要は、双方に相違があるものですから、なかなか実態が伴わないというんでしょうか、逆に、研修で行こうと思っている人でも、受け入れ側は労働のつもりで、労働者としてビザがおりないから、研修生としてまずはビザをとろうじゃないか、こういうような実態があって、途中で、こんな劣悪な環境ではだめだといって帰ってしまう人もいる。

 それでは、これは日本の恥につながっていってしまうんじゃないかなということで、こういうトラブルの実態、だんだん、年々年々、不正の件数ですとか不正行為の認定件数もふえてきておるわけです。

 そこで大臣、増加していく傾向、この件数が増加していくことにどのように今後対処していくのか、そしてまた、このような事態に対してどのような認識をお持ちなのか、そして、今後どのようにこの制度を強化する、制度というものにどのようにお取り組みになられるつもりなのか、お答えいただけますでしょうか。

長勢国務大臣 今、中国からの方々について、研修を受けに来ているつもりはないんじゃないか、受け入れ側との間にそごがあるんじゃないかというお話でございましたが、先生よく御存じのとおり、余りそごはないんじゃないかと思うんですね。それは制度からすると非常にまずいことなんですけれども、趣旨とは違うという実態がそれなりに起きているんじゃないかということは、私は、この制度の、これからどういうふうにするか、非常に難しいことだと思っております。

 ただ、先ほど来御指摘のような、不正行為がでは蔓延しているかといえば、そういうものは厳しく取り締まるということですし、特にそういう方々の法的な保護をどういう仕組みでやるかということは今検討しておりますし、至急に体制を整えていかなければならないと思いますが、根本的に、低賃金労働者として扱っているという実態は覆いがたいものがあるのではないか。しかも、そのことについてはさらに受け入れ圧力というのがかかっている、また流入圧力もかかっているというのが実態ですから、こういう現実を見据えて、日本の労働市場の問題あるいは治安の問題とも絡みますので、早急に、なるべく早く結論を出すように今法務省としても検討させていただいておるところでございます。

糸川委員 ありがとうございます。

 ぜひこれは実態に合うような法律にしっかりとしていただかないと、なかなか、これを利用する、例えば日本国内の企業が研修生を呼んでしっかりと研修させてお国に戻って、そこで提携をして何かやるというときに、やはり実態にしっかりと合ったものにしていただきたいなというふうに思います。

 次に、昨年十月に、高等学校における必修不足というのでしょうか、未履修の問題が発生したということで、中学校段階においても、必修教科の未開設ですとか標準授業時間を大幅に下回る授業が行われているおそれがあると思いましたので、教育基本法の改正の中で、私、十一月に質問主意書というのを出したわけですね。その調査が必要じゃないのか、中学校の中においても未履修というものが存在するんじゃないのかということで、私、大臣に何度もこの場で御答弁いただいたわけでございます。

 ようやく、まずこういう履修の実態について把握ができたというようなことでございますので、まず冒頭、学習指導要領における中学校の必修教科、これはどのような趣旨で、そしてどのように定められているのか、簡潔にお答えいただけますでしょうか。

銭谷政府参考人 中学校の教科等につきましては、学校教育法の第三十八条の規定に基づきまして、学校教育法の施行規則第五十三条及び第五十四条によりまして、すべての生徒に指導する必要がある必修教科とその年間の標準の授業時数が定められております。

 その趣旨は、中学校におきましては、義務教育の最終段階として、人間形成を図るという観点から、確かな学力、豊かな心、健やかな体の育成を図るために、個人として、また国家社会の一員として社会生活を営む上で必要とされる知識、技能、態度を養うということが求められているからでございます。

糸川委員 今、銭谷局長から答弁いただきましたけれども、だからこそ大臣に、私、昨年、中学校における履修漏れの実態について調査をして、その後教育基本法の改正を行っていかないと危険じゃないのかということでお尋ねしましたら、実態について調査をするんだということの御回答があったわけです。

 中学校の場合は、高等学校と異なって、生徒の卒業に、必修漏れがあっても未履修というような言葉ではないわけですね、ですから直接影響は及ぼさないわけですけれども、これは義務教育の、心身を育てるということの基本ですから、一刻も早くその実態を明らかにする必要があるわけですが、大臣、この場で、私いただきましたけれども、私から説明しませんので、実態調査の状況についてお答えいただけますでしょうか。

伊吹国務大臣 教育基本法の審議に際しまして、先生や民主党の野田委員からこの未履修の問題についていろいろ建設的な御示唆、御批判をいただいたことに感謝をまず申し上げたいと思います。

 それを受けまして、高等学校については、既に御報告をし、御審議に供しているとおりですが、中学校につきましては、高等学校が終わり、そして野田委員の御要請に沿ってさかのぼってさらに調査をした後になりましたので、一部私学等で調査の取りまとめに手間取り、大変遅くなって申しわけございませんでした。やっと調査結果の集計が出ましたので、きょうは、この場をかりて国会に御報告をさせていただきます。

 まず、中学校は全国で一万八百九十一校ございます。このうち、国立、公立については、先ほど政府参考人が申しました必要な教科の未開設の学校はございません。私立については、大半の学校については該当はございませんけれども、残念ながら、七十二校、これは一万八百九十一校のうちの〇・七%でございますが、ここに教科の未開設や著しく少ない時間数の学校がございましたので、いろいろ知事部局を通じて指導して、現在、ほとんどのところでその状態が解消に向かっているということでございます。

 それから、未開設ではないんですけれども、例えば国語科については、写書といいまして毛筆等で字を写すということをお願いしているわけですが、これが必ずしも実施できていない学校が全体の約一%ほどございます。ここについても同じように、そういうことの解消に努めるようにという指導をいたしまして、完全にはいっておりませんが、ほぼ解消の方向で今授業が進んでおります。

糸川委員 大臣、それじゃちょっと納得できないわけで、私がいただいたところですと、私立が六百九十九校ございますね。ですから、国立と公立はないわけですが、私立は、六百九十九校のうち、学校教育法の不適切な取り扱いのある学校数というのは、一〇・三%で七十二校なんです。全国の一万八百九十一校でいうと〇・七%ですけれども、私立だけを見たときには一〇・三%あるわけです。

 その人数を言いましょうか。私立の場合は、二十四万九千九百九十四人の生徒数がおられる中で、八・六%の二万一千四百四十九人の方が、履修が受けられていないとか何らかの不適切な取り扱いがあるという生徒数ですよ。二万人ですよ。

 義務教育というのは、子供たちの一人一人が個人として自立をする、そしてそれぞれの個性を伸ばして変化の激しい社会というものを生き抜いていく必要があるんだ、育成する重要な場だというふうにお答えいただいているわけですが、私立学校といえども、国の教育課程の基準である学習指導要領を守らないということになりますと、義務教育段階においてこういう事態があるというのはどのように大臣お考えか、お答えいただけますか。

伊吹国務大臣 御指摘は甘んじて受けなければいけない部分が率直に言ってあると思います。

 そして、現在この三十四校についてどういうことになっているかといいますと、教科を開設し授業を実施中、もしくは実施予定をしているというのが二十四校、実施については検討中というのが二校、実施予定なしと知事部局を通じて回答してきた学校が八校ございます。しかし、この八校については、一年生、二年生の間に三年生で教えるべきことを既に教えているという状況にあるわけです。

 そこで、先生がおっしゃったように、私立といえども学校教育法のもとにあるわけですから、これは当然、先生がおっしゃっているとおりの義務をもってやっていただかなければなりません。

 今、既に御承知のように、私学の行政の流れがどうなっているかというと、これは知事部局にあるわけです。大体、知事部局の総務部の文教課あるいは学務課というところで対応いたしておりますけれども、私学助成費の交付をすることが主になって、どちらかというと、先生が今御批判になったようなカリキュラムの編成その他について、一般の国公立学校のように、きちっとした教育委員会のチェックのような機能が必ずしも十分ではないと私は思っております。

 そこで、今、中教審で教育委員会のあり方等を御審議願っておる中で、まさに先生の御指摘になった私学のカリキュラムの編成について、知事部局の要請を受けて教育委員会が関与をして、先生がおっしゃるように、私学といえども、国民の税金を私学助成費としてもらって、そして日本の法律のもとで義務教育をなしている限りは、同じようにやっていただかなければならないのではないかということを申し上げて御審議をいただいておりますので、先生の御注意に沿ったように、いずれ法案ができましたら国会で御審議をいただき、国会の御意思も示していただきたい。

 今、先生が御指摘になったことは、今までの私学行政の中で、建学の自由、建学の精神その他私学の自由という中で、少し私はやはり抜けていた部分ではないかと反省をいたしております。

糸川委員 これは大臣、少しじゃないですよ。二万人の方が、やはりこれは過去にも恐らくあったんでしょうから、自分たちは受けられなかったんじゃないのかとかということで、これは子供のストレスにもつながるかもしれませんし、子供の傷になるかもしれないわけですね。ですから、少しじゃないわけですよ。

 これは大問題としてやはり大臣はお考えいただかなきゃいけないわけで、そして、途中、知事部局、知事部局というふうにおっしゃられますが、今の制度でいえば、教育の問題というのは国の根幹であって、これは私は何度も言いましたけれども、最終的な責任は国が負うんだというふうに私は思っているわけです。ただ、今の中学校の教育内容が学習指導要領に反していても、大臣が直接是正の措置がとれない、今回の未履修問題というものは、教育行政のあり方について大きな問題を投げかけているんじゃないかというふうに私は思うわけです。

 地方自治体がこのような問題を解決できない、そういうようなことを考える以上、子供たちの教育を受ける権利を守る観点から、国にこのような事態を直接是正できる権限を与えるべきじゃないのかなと思うんですけれども、どうでしょうか。

伊吹国務大臣 これは今、新聞やマスコミでも、地方分権を重視するのか、国の教育の責任を明確にするのか、教育委員会のあり方等について両論あって、いろいろな御意見のあるところだと思います。

 中教審に今、地教行法の改正をお願いしている中で、最後には、私は国という言葉は使いたくないんですけれども、私はいつもこれを持っているんですが、やはり「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、」というのが憲法の始まりなんですね。ですから、国会で決めていただいた法律は、私学といえども、どの学校であろうとも、やはり国民の意思として守っていただけるという担保をどこかに置いておかないと手が出せない部分があるということは重々承知いたしておりますので、中教審の御審議を今お願いしている途中でございますから、先生のきょうの御意見も、国会というのは国民の代表が集まっておられるところですから、こういう強い御意見もあったということも中教審に一つの御意見として御報告をさせていただきます。

糸川委員 大臣、私、これを近々にもらったばかりなわけですけれども、例えば各県別も出していただかなきゃいけないでしょうし、そして、もう今卒業の時期になってきているわけですけれども、中学生は卒業は問題ないわけですよね。ですから、そういうことも含めて今後しっかりと対応していただいて、そういう中で、昨国会の中で教育基本法が成立してしまったということ、これは今後もしっかりと議論をさせていただきたいなと思いますので、よろしくお願いします。

 終わります。ありがとうございました。

金子委員長 これにて糸川君の質疑は終了いたしました。

 次に、石井郁子君。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子です。

 初めに、文科大臣に一問お伺いしたいと思います。

 ただいまの続きにもなるわけですけれども、中学校段階での必修科目の未履修問題ということで、昨年の臨時国会で、教育基本法特別委員会でずっと高校段階の問題で大変審議になりました。その折に大臣は、できるだけ早く結論を出させるという答弁だったと思うんですね。しかし、ようやくというか、糸川議員の要請で糸川議員の手元に調査結果がもたらされたということなんですが、私どもはまだ正式には伺っておりません。

 しかし、この問題は、今受験シーズンでもあります、高校受験が終わったところもあるでしょうし、また、真っ最中のところもあるかというふうに思うんですが、私はやはり、義務教育段階の未履修と高校受験などがどうかかわってくるのかということは、またどう取り扱うのかというのは、一つは大きな問題だろうというふうに思います。

 まず質問をしたいのは、このように調査がおくれた問題と、また、調査結果の報告もおくれたことについて、私は、文科省としてどう責任を感じておられるのかという点が一点、それから、現在大変な数でこの未履修が起きているということがわかったわけですけれども、なぜこういう事態になっているのかということ、その原因と今後の対応についてどのようにお考えか、伺っておきたいと思います。

伊吹国務大臣 結果がかなり手間取りましたのは、率直に言って、特定の県の名前を挙げるのはちょっとはばかりますが、大きな都府県でなかなか集計が出ない、上がってこない。つまり、文部科学大臣というのはどこまで知事部局に指示をする権限があるかということにもかかわってくるんですが、調査依頼の締め切りを一月の十五日としたんですが、大幅におくれた。

 もちろん、その前段階として、教育基本法の御審議をいただいたときに、先ほど来御質問がございましたように、国民新党、民主党さんから、高等学校の未履修、そして、高等学校の未履修についてさらにさかのぼって調査をしろという御要請があって、それをまず処理しなければならないということもございました。それが終わってからようやく都道府県教育委員会と知事部局にお願いをした結果、先ほど御報告をしたような数字になっておりますので、もちろん先生のところにもすぐお届けをするようにさせますが、おくれたというのは、そのような事の運びであったということでございます。

 それから、先ほど御報告をいたしましたように、国立、公立においては未開設の学校はございませんでしたけれども、私学については七十二校ございました。このうち、一番急がねばならないのは、三年生で未開設の教科を持っている学校、これが三十四校ございます。それから、入学後三年間を通じて未開設の教科を持っている学校が十一校ございますので、この四十五校については、いずれも当該教科を開設し授業を実施するように知事部局を通じてこちらから要請し、そしてそれが実施され、または実施される予定となっているということです。

 先ほど来、御質問の中で御示唆がありましたように、私学については、ある意味では建学の精神というものが重視をされて、そしていろいろな戦後の経緯から、教育委員会の所管にならずに知事部局の所管になっている。残念ながら、知事部局に指導主事のようなカリキュラムを見ている人がどの程度いるのかとか、結果的に、いろいろな問題が集積をした残念な結果があらわれた。ですから、生徒に迷惑をかけられませんので、先ほど申し上げたように、三年生あるいは三年間を通じてのところは大至急手を打たせております。

 それと同時に、制度的な欠陥を是正すべく、中教審にも、ある程度を教育委員会がカリキュラムに関与できるようにしてはどうかという案を今お願いして、御審議を賜っているところでございます。

石井(郁)委員 きょう私は、このことではこれ以上の質問は控えたいと思いますけれども、今の答弁では、ただ私学に対してどういう国としての権限を強化するかというような発想で聞こえてくるんですけれども、しかし、なぜこのような未履修が起きるのかというのは、やはり日本の教育のあり方、現実に起こっている受験競争とか受験教育、そういう中であると思うんですね。私学で中学を卒業した人も、公立を受ける方だっていらっしゃるわけですから、公立、私立ともに中学校教育がどうなっているのか、そしてまた高校受験の公平性を保たなきゃいけない、そういう問題があると思うんですね。

 だから、文科省は、教育基本法の審議を焦ったけれども、現実に起きている重大な問題、そして、本当に日本の教育の根本から問わなければならない問題についてはやはり対応していないという点では、大変な昨年の審議の問題があったというふうに改めて申し上げたいと思うんですけれども、今の答弁では私は大変不満であります。

 引き続きこの問題は関係するところできっちり審議をしていかなければならないということを申し上げまして、大臣はこれでお引き取りいただいて結構でございます。終わりたいと思います。

 さて、私きょうは、地域における小児科、産科をめぐる危機的な状況と女性医師の勤務環境の問題で質問をいたしたいと思っています。

 日本は国民皆保険制度をとっています。それは、国民だれもが、どこに住んでいても、ひとしく必要なときに医療を保険で提供するための制度だというふうに思うんですが、この制度の趣旨をまず確認させていただきます。

柳澤国務大臣 我が国は、今、石井委員御指摘のように国民皆保険制度をとっているわけでございますが、改めて、この国民皆保険制度とは何ぞやということについて、確認のための御質問がありました。

 私どもといたしましては、まず第一に、すべての国民が何らかの医療保険に加入していること、それから第二に、また、我が国の医療機関の多くが公的医療保険の診療を行う保険医療機関となっていること、こういうことを通じまして、必要かつ適切な医療は基本的に保険診療により確保する、そういう制度が国民皆保険制度である、このように考えております。

石井(郁)委員 今何が起きているかといいますと、地方においても都市部においても、医師不足から診療科の閉鎖、縮小が相次いでいるわけですね。国民の健康と命にとって危機的な状況が急速に広がっています。

 この実態は、住んでいる地域によって受けられるはずの医療が受けられないという状況でありまして、私は、皆保険制度を崩していることにならないかと言わざるを得ないわけですが、この点はいかがですか。

柳澤国務大臣 国民皆保険制度のもとで、私どもとしては、医師についてもその総数は増加しているというふうに認識をしておるんですけれども、また、現にそうだと考えておりますけれども、ただ、医師の偏在によって、地域やあるいは診療科によっては必要な医師が必ずしも確保できない状況が見られるということも承知をいたしているところです。

石井(郁)委員 総務大臣にもお願いします。

菅国務大臣 医師の偏在によって、一定の地域や産科とか婦人科だとか特定の診療科、こうしたものにおいて深刻に医師不足である、このことについては私ども認識をさせていただいておりまして、例えば、これを解消するために長崎県では、県とかあるいは関係機関がさまざまな創意工夫をしている。医師をプールして不足病院に派遣をする、そうした取り組みも実は長崎県では行っております。

 総務省としましても、厚生労働省や文部科学省と連携をしながら、こうした都道府県が行う仕組みを支援していく。都道府県だけで対応できないものについては、私どもがまたそれに緊急対策を行う。また、人材の有効活用、救急及び僻地医療の推進策などの支援策をまとめた新医療確保総合対策、これを各省庁でまとめておりますけれども、今後も、引き続いて厚生労働省と共同して地域医療体制の充実に努めていきたいと考えています。

石井(郁)委員 偏在という問題はそれ自身としての議論も要るんですけれども、偏在ということで片づけられないような、もう本当に全国各地域で医師不足問題が起きているわけですから、そのことで伺ってまいります。

 地方病院で何がまた進んでいるかといいますと、勤務医が不足しています。内科や外科の診療休止、縮小がありますけれども、特に、産科、小児科のある病院がなくなっています。だから、地元で子供を産めない、また、子供が病気になってもかかるところがないという状況があるわけですね。まさに、健康と命の地域格差というような事態が起きています。だからこれは、保険料はあまねく皆さん払っていらっしゃるわけですから、保険料を払っても医療は受けられない、こういうことではないかと言わなければなりません。

 私、小児科、産科をめぐって地域で何が起きているかと具体的に申し上げたいと思うんですが、これは兵庫県内ですけれども、二〇〇四年以降、既に八つの病院の小児科が閉鎖されました。なおその後も閉鎖が見込まれています。

 大阪で市立松原病院というのがございますけれども、平日の二十四時間救急が中止、土曜と休日に限定されました。小児科医七人のうち、三十代の女性医師が過労で倒れました。その後、出産を機に退職した人もあって、今女性が四です。

 滋賀県では、公立の高島病院では昨年産科が閉鎖されました。彦根も、産婦人科の常勤医が三人から一人になった。分娩などの診療を大幅に制限しています。

 奈良県では、これは新聞でも大きく報道されましたけれども、重体となった妊婦が、十九もの病院から搬送を断られて亡くなられるということまでありました。周産期医療体制の不十分さというのがこの背景にあるという指摘もされているところです。

 それで、幾つか申し上げましたけれども、やはり、妊産婦、子供の命が守られていない、安心して子供を産めないというゆゆしい事態が進行しているわけですね。これはもう緊急に解決を要する問題ではないかと思いますが、大臣、いかがですか。

柳澤国務大臣 ただいま石井委員が指摘されたような状況というのは、そこかしこに見られるということは御指摘のとおりというふうに承知をいたしております。

 地域で必要な産科、小児科のお医者さんを確保するためには、まず国と都道府県が協力をして、地域の医療関係者の理解も得ながら医療機関相互のネットワークを構築するなど、医療資源を効率的に活用した医療提供体制を構築していくことがまずもって大事だ、このように考えております。このため、医師が集まる拠点病院づくりや、この拠点病院と地域の診療所や助産所との連携体制を明確にすることによる医療機関相互のネットワークの構築、これを進めているところでございます。

 もちろん、そのほかにも、こうしたことの状況を惹起している背景としてある、例えば産科でございますと、訴訟の増加によって産科医療が萎縮しているのではないかということも懸念されますので、死因究明制度の制度化を検討するとか、あるいは無過失補償制度の検討をいたしておりますし、また、助産師の活用というような対策をとっているところでございます。

 また、小児科につきましては、特に小児緊急医療体制の整備ということで、当番制による開業医等の活用で病院のお医者さんの負担を軽減するとか、あるいは、小児救急電話相談事業の推進を行ってその対策としているところでございます。

 それから、産科、小児科に共通しておりますのに、女性医師が非常に多くなっているということもございますので、この就労環境の整備のために、院内保育所の設置と運営に対して補助をするとか、あるいは女性医師バンクということで、ライフステージに応じた就労支援を行うというように、さまざまな対応を実施しているところでございます。

 いずれにいたしましても、国としては、いま一度それぞれの地域の実情をしっかりと把握して、都道府県と協力をして地域ごとに具体的で実効性のある医師確保対策を講じていきたい、このように考えておりまして、今、そのための取り組みを早急に検討しているところでございます。

石井(郁)委員 いろいろ述べられましたが、最後に、国としての対策は考えたいということは本当に大変大事だというふうに思うんですが、その点で具体的に伺いますけれども、それでは、周産期医療センター、これの整備はどのように進んでいるでしょうか。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘の周産期医療センターでありますが、平成十八年四月時点で、総合周産期母子医療センターが六十カ所、それから、地域周産期母子医療センターが二百七カ所設置されております。

 また、安全で安心できるお産の場を確保するため、こうした総合周産期母子医療センターなど高次の医療機関と、それから一般の産科病院等との連携体制を確保いたします、いわゆる周産期医療ネットワークというものを全県で整備を目指しておりますが、現在、三十九都道府県で整備されておりまして、厚生労働省といたしましては、平成十九年度までに全県で整備されるよう、各都道府県に対してその取り組みを促してまいりたいと考えております。

石井(郁)委員 この周産期医療センターは、少子化対策の中でも政府の政策のかなめというような位置づけだったというふうに思いますし、政府の公約でもありました。二〇〇四年度までに全県で整備ということではなかったんでしょうか。ところが、奈良県も含めて八県でまだ未整備という状況だと思うんですけれども、私は、国が決めた目標であり、本当に優先的にきちんと整備をさらに進めていただきたいということを申し上げたいと思います。

 それで、国の責任として医師、看護師確保や財政支援ということがあるわけですが、産科、小児科不足というのはもう一刻も放置できない問題でありますから、特に、国公立病院などでのやはり国の責任というのは非常に重いと思っています。

 これも、近畿で見ますと、一九九六年には十四の国立病院に産婦人科がありました。二〇〇四年には七病院に半減です。さらに舞鶴と南和歌山医療センターの産科が閉鎖です。姫路も産科が閉鎖ということで、産婦人科を持つ国の病院というのは今たった四つです。だから、三分の一以下、減少しているという状況ですよね。

 それで、お産難民という言葉まであります。だから、妊婦が、お産ができないために施設を求めてさまよい歩くという状況なんですね。国が率先して地域から産科を奪ってきた状況があると言わざるを得ませんが、その点はいかがですか。

柳澤国務大臣 厚生労働省の医療施設調査によりますと、開設者を国としている産婦人科及び産科の設置状況は、国立病院のほか、国立大学法人等国の設置する法人等と合わせますと、平成八年十月一日現在百八十カ所が、平成十七年十月一日現在百四十五カ所となっておりまして、率にいたしますと一九・四%の減ということで、その点は承知をいたしているところでございます。

 ただ、このうち国立病院機構の病院につきましては、行政改革による国立病院・療養所の再編成計画というものがあったわけでございまして、この計画に基づきまして地方公共団体等への移譲、譲渡が行われております。平成九年から十七年度にかけ、それらの移譲、譲渡をした産婦人科を設置する二十六病院が減少している、こういうことも原因になっているということで、この点はまた別途に御理解を賜りたいところでございます。

 いずれにいたしましても、国立病院機構を初めとして、国の設置する病院につきましては、今後とも、都道府県の策定する医療計画を踏まえまして、地域の医師会及び医療機関との連携協力を図って産婦人科の確保に努めていかなければならない、このように考えております。

石井(郁)委員 行政改革のことを言われましたけれども、あのときでも政府の答弁としては、必要な医療は確保するということだったと思うんですよ。ところが、国が率先してそういう産科を閉鎖し追い込んでいくという状況ですから、これは国会答弁からも本当にずれているんじゃないかと言わざるを得ません。

 それからまた、地域医療の確保というのは国や自治体の責務ですよね。これは医療法で定められているわけです。だから、今の実態というのは、まさにその自治体の責務からしても大きく外れているし、確保されている状況とは到底言えないわけであります。

 私は、この医師不足問題というのは、大臣からもいろいろ御答弁がありましたけれども、最初に、医師数は足りている、ふえつつある、ふえているという御答弁、これは大変問題だと思うんですよ。現実は各地で医師が足りない。これは地域の偏在ではなくて、絶対数が足りないからなんですよ。

 大臣はもう御存じだと思うんですけれども、OECD加盟国の三十カ国中で見ても、フランス、ドイツと比べても十八万人足りません。平均と比べても日本の医師数というのは十四万人少ないんですね。だから、地域の偏在という問題についてもよく言われますけれども、人口十万人当たりOECD加盟国の平均三百十人をずっと下回っている、すべての都道府県で平均を下回っているわけですよ。

 だから、医師数が足りているという前提からしますと、偏在で、何とか集約して解決しようということしか考えないようですけれども、絶対数が足りないんだ、このことにきちんと目を向けていただかなければ、一層これからも深刻な状況が惹起されると言わざるを得ないと思うんですね。

 それからもう一つは、低医療費政策というのを政府が続けている限り、なかなか病院の経営が大変だという問題もあるし、人員削減という状況も続いていくわけですから、このことを私は厳しく指摘をしておきたいというふうに思います。

 きょうは、もう一点の大きな問題としての、先ほどこれも大臣も触れられましたけれども、産科や小児科の場合は、女性医師が勤務できる状況、これをつくらなければ、やはり閉鎖、縮小にならざるを得ないという問題があるわけです。

 では、その女性医師、これは小児科では三割が女性です、産婦人科では二割が女性が占めている。また、その分野への女性の希望者も大変多いということは御存じのとおりでありますし、また国民も、もっとそういう分野で女性が出てほしいということを望んでいると思うんですよ。そういうことでいいますと、妊娠、出産や子育てをしながら働き続けられる状況をつくるということが非常に重要だというふうに思います。

 これは、大阪府の医師会、昨年、勤務環境に関するアンケート調査というのがございまして、それを見ますと、女性医師の就業環境、育児と仕事の両立は難しいという方が七割です。困難だと思う方が七五・六%です。できないという方も二割以上なんですよ。育児休暇をとりたいけれども、とれない。育児休暇をとったことがある人は七・六%です。

 勤務医の過重労働も問題ですけれども、女性医師希望者がふえている中でこの環境を続けていたら、本当に小児科、産科は一層厳しい状況になっていくんじゃないでしょうか。いかがですか。

柳澤国務大臣 女性医師が非常に多くなってきている中で、家庭生活と仕事の両立を支援していかなければならない、こういう認識は共有させていただいていると申し上げてよろしいと思います。各病院等におきましても、育児休業の円滑な取得の推進や短時間労働の促進、さらには女性医師の復職支援等に取り組んでいただかなきゃならない、このように考えております。

 一方で、女性の勤務医を含めた勤務医全体を取り巻く厳しい労働条件は十分に認識をいたしておりまして、さしずめ、当面の対処策として、十九年度予算におきましては、拠点病院から医師が不足する病院へお医者さんを派遣する、そういうものに対して助成をする、それから昨年四月には、産前産後休業や育児休業等を取得したお医者さんの代替要員としての医師派遣はこれを解禁するというようなことで、当面の緊急の対策としては、そのような措置も含めて取り組んでいるということでございます。

 先ほど来お話のあります女性医師に着目した施策といたしましては、女性医師の継続的な就業、あるいは、出産、育児等により一たん退職した女性医師の復職を支援するために、まず第一に、女性医師の児童等を対象とした病院内の保育所の、先ほど私は施設費も含めてちょっと申し上げたんですが、正確には運営費の一部を補助するということを行いますとともに、退職した女性医師等に対する支援として、本年度より、ライフステージに応じた就労を支援するための女性医師バンクを設立するということなどの取り組みを進めております。

 いずれにいたしましても、私ども、女性医師それから看護師等の不足に対処するためには、事業所内というか、病院内の託児施設というようなものの充実を図ることが非常に喫緊の課題だという認識を持っているところでございます。

石井(郁)委員 日本の女性医師は総医師の一六・四%にしかすぎません。これも、OECDの二十六カ国で見ますと最下位なんですね。三割台の国が二十三カ国もあります。四割台、五割台、女性が占めているという国が多くなってきています。ですから、日本でも医学部に女子学生もふえているわけですから、やはり働きやすい環境をつくるというのは本当に喫緊の課題だと思います。

 それで、要望の中で最も強いのが、やはり代替要員の確保なんですね。児童養護施設などではあるわけですよ。だから、なぜ病院ではとれないのかということは多くの団体、学会などからも声が出ているところでありまして、ぜひ検討を急いでいただきたいというふうに要望しておきます。

 この勤務医の問題は女性医師だけではありません。厚労省の調査でもありますけれども、平均勤務時間は週六十三時間を超えています。直近では、日本医療労働組合連合会の調査もございました。それによると、本当に驚くんですね。連続勤務三十時間以上の医師、七一%です。三十代、四十代の医師の約六割がもう職場をやめたいと言っています。過労死寸前という状況が浮かび上がっているわけですね。これは二十三日の夕刊でも私見ましたけれども、小児科医の過労死が認定される、月百時間以上の時間外労働をしていると。本当に大変な実態だと思います。

 だから、医師が足りているんじゃなくて、本当に代替要員も含めて医師数の絶対数をやはりふやさなければ、日本の地域医療はもう崩壊の危機に瀕していると言わなければならないと思います。このことを申し上げて、きょうは質問を終わりたいと思います。

金子委員長 これにて石井君の質疑は終了いたしました。

 次に、辻元清美君。

辻元委員 社民党の辻元清美です。

 きょうは、安倍総理が憲法のことをたびたび発言されておりますので、憲法問題、憲法の議論と内閣の関係などについて質問をしたいと思います。

 官房長官中心にと考えておりまして、今記者会見に行っていらっしゃるようですので、五分ほどおくれてこられるということですので、まず、伊吹文部科学大臣に長崎県での発言についてお聞きしたいと思うんです。

 人権だけを食べ過ぎれば、日本社会は人権メタボリック症候群になるんですねとおっしゃったそうです。私はちょっと驚いたんですね。人権メタボリック症候群とは一体何なのかと思いました。人権という言葉をこのように使うのは不適切ではないかとも思いました。どういう御趣旨ですか。

伊吹国務大臣 官房長官が来るまでの五分と言わず、もう少し問答させていただければ結構だと思うんですが。

 まず、先生の党は何よりも護憲の党ですから、そのことに私は敬意をあらわしたいと思いますが、憲法第十二条に、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任」がある。「すべて国民は、個人として尊重される。」そして「国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、」云々という規定がございますね。

 私が担当している学校現場で、この前通知を出しましたが、きょう、ある新聞が私のメタボリック症候群の見立ては誤診だという社説を書いておられましたが、私のカルテを十分読んでおられるのかなと思いました。それは、こういうことが書いてあるんですよ。学校現場でいじめられている子供の人権が侵されていることを、担当している文科大臣が人権メタボリック症候群などと言うのはとんでもないという趣旨のことが書いてあります。

 問題は、いじめられている子供に対して、いじめる子供がいるんですよ。そして、この子供、いじめる子供を授業に出られない状態にするとか教室の外へ出てもらうというような、一種の体罰的なものを行った場合に、必ず学校現場で起こることは、子供の教育を受ける権利はどうなるんだ、うちの、処罰をされた子供の人権はどうなるんだということが常に起こります。そしてこれは、多くのかわいそうな、いじめられている子供の人権、少数の人たちの人権を守るために、公益の範囲内で、やはり、いじめをする子供の権利というものは制約をしなければならないんですよ。

 ですから、私が申し上げたのは、ここにきっちり書いて、前後をどの程度読んでいただいているのかと思いますが、個人の立場だけを考えると、大切な権利には義務が伴う、守るべき自由には規律がある。これは一緒に両方とも極めて大切にしないと、自由と権利だけを振り回している社会はいずれだめになる。自分の権利だけを考えていると、感謝の気持ちはなくなるし、育ててくれた親やおじいさん、おばあさんのことはどこかにいってしまって、家庭内暴力、自分に授かった命である子供を虐待したり、育ててくれた親を逆に殴り殺したりするという嫌な事件がずっと起こってくる。人権は大切だ、個人の権利は大切だということは今も変わらぬ真理です、侵してはならない真理ですが、濫用はしてはならないものです。このように申し上げているわけです。

辻元委員 今の御発言で、私は、大臣は人権ということと権利ということをちょっとごちゃごちゃに使っていらっしゃるのではないかと思うんですね。

 人権という概念は、人権を尊重すると言います。権利は濫用してはならぬ、これは権利という言葉にくっついてきます。人権を濫用ということは、普通、おっしゃったことはないと思うんですね。

 というように、人権というのは、人それぞれどんな人でも人として尊重されるべきだということが人権という概念であって、その上で権利や義務があるわけですね。ですから、私は、権利は濫用してはならぬはそのとおりだと思うんですけれども、人権という概念、日本は果たして、では人権意識が進んでいるのかどうか。

 権利の濫用、先ほどおっしゃったとおりですよ。いじめる子供の問題も、権利の制限とおっしゃいました。子供の人権の制限はこれはできないわけです。その子にも人権があるわけです。ですから、御存じのように、ニュージーランドなどでは加害側の子供たちのケアというのを物すごく考えているわけですね。そこをやらないと、制約をするとか、それから、体罰ということはお考えになっていないと思いますけれども、罰するだけではだめだということ。

 ですから、人権ということ、例えばこの前、柳澤大臣が女性は産む機械だという発言をされて問題になりました。これはやはり女性の人権との関係で問題があるじゃないかという指摘が多々なされたわけですね。

 ですから、私は、大臣に申し上げたいのは、日本は決して人権大国ではないと思います。やはり、その柳澤大臣の発言も、人権意識が足りない国ではないかと国際的にも見られていると思いますし、障害者の問題にしましても、これはここで私は議論はしませんけれども、応能負担か応益負担かという。応益にするというのは、私は障害者の人権との関係で問題があると思っているわけです。かつ、例えば民法の、この間、七百七十二条の議論もされてまいりました。これも、子供の人権の立場から見てどうするのがいいかということなんですよ。

 ですから、私は、文部科学大臣ともあろう方が、非常に大事な立場ですから、人権ということを、まだまだこれからこれは、メタボリックどころか栄養不足で、どんどん栄養をやって人権意識は育てていこうと。しかし、権利については、多々、今おっしゃったような議論がございます。この人権と権利ということをしっかり概念として分けて考えていただくということが大事じゃないかと思っております。これは指摘にとどめておきます。今後またちょっと議論をしたいと思いますので。

 では、一言だけですね。

伊吹国務大臣 先生、私どもが大学で習った法哲学によると、人権というものは人間に固有の権利なんですよ。そして、それを担保するものが、法律上書き連ねられている権利なんですね。ですから、人権と権利というものは全く別問題ではありません。これは盾の表裏のようなものでして、お互いに補完し合いながら守っていくものですから、私は、人権は大切だ、個人の権利は大切だということは今も変わらぬ真理です、侵してはならない真理ですと申し上げているわけです。

    〔委員長退席、斉藤(斗)委員長代理着席〕

辻元委員 今おっしゃった人権と権利の関係ですけれども、今、日本はもう少し人権大国になるように政治の側でも努力すべきだ、人権は大切だとおっしゃったところで、その趣旨は同趣旨だと思います。

 ただ、私はやはり、先ほど最初の御答弁で、御発言を紹介していただいた折に、人権という言葉と権利というのがごちゃごちゃに入っていました。ここの部分はしっかりお考えいただきたいというように指摘をしておきます。でないと、この間から柳澤大臣の発言も出まして、また文部科学大臣が人権とメタボリック症候群をくっつけて発言している。これはメタボリック症候群で悩んでいる人に対しても失礼な……(発言する者あり)何かそうだというふうに、何か悩んでいるのかどうか知りませんけれども、失礼な話だと思います。人の健康の状況と人権をくっつけるものではない、これは不適切な発言だということを指摘しておきたいと思います。

 さて、そういう中で、憲法の問題について質問をしたいと思います。

 官房長官にお伺いします。

 安倍総理が、就任以来たびたび、最初はこうおっしゃっていたんですね、自分の在任中に憲法改正をなし遂げたいと。途中から、いろいろ指摘されたからかもしれません、期待するとか、発言を変えていらっしゃいますけれども、これは安倍内閣としての方針なんでしょうか。

塩崎国務大臣 今御指摘のように、総理は憲法改正についていろいろな発言をしてきておりますが、施政方針演説では、新しい国づくりに向けて、国の姿、形を語る憲法の改正についての議論を深めるべきです、日本国憲法の改正の手続に関する法律案の今国会での成立を強く期待しますと言っております。

 それから、辻元先生の質問に対して一月三十日に答えていますが、このときは、現在、憲法改正について与野党において積極的な議論が行われているところであります、新しい時代にふさわしい憲法のあり方について議論が一層深められ、方向性がしっかりと出てくることを願っています、まずは、日本国憲法の改正手続に関する法律案の今国会での成立を強く期待していると答弁しているわけですが、政府としてどうか、こういうお尋ねでありますけれども、政府において、現在、憲法改正の検討を行っているわけではございません。

辻元委員 ということは、ちょっと確認したいわけですけれども、安倍総理は最重要施策の一つであるかのようにたびたび憲法改正について言及されているわけですね、公の場で。これは、今、内閣として検討していないとおっしゃったわけですけれども、内閣としては憲法改正に積極的に関与する方針、予定は今ないということですか。もう一度確認します。

塩崎国務大臣 総理は、これまでずっと政治家として、総理になる前から憲法改正については発言をしてきました。総理になっても、政治家として同様の発言をしてきているということで、今申し上げたように、政府として、具体的な今の御指摘について、憲法改正を検討しているのかしていないのか、あるいは政府の方針か、こういうお話でありますけれども、憲法改正の検討を行っているわけではございません。

 これからどうなんだ、こういう御指摘でありますが、これからのことについてはまだ何も決まっておりません。

辻元委員 ということは、総理大臣が所信表明演説でも述べ、年頭の会見や所感でも述べられているわけですね。あれは個人の思いの吐露ですか。

塩崎国務大臣 さっき施政方針のその部分を読み上げましたけれども、「憲法の改正についての議論を深めるべきです。」、深めるべきですとこう言っているわけであって、これはやはり政治の場で、国会で三分の二、両院の三分の二の賛同を得て発議をしないといけないという、それだけ大きな政治課題であるわけでありますから、政治家として、憲法改正は行われるべきではないのかなというふうに言いながら、やはりこれは国会の幅広い議論があってのことであるわけでありますので、こういうような表現で、議論を深めるべきですということを言っている。政治家としての考え方だと思います。

辻元委員 今、深めるべきだ、国会の場でというような御趣旨の発言をされたと思います。

 では確認しますが、この憲法改正の議論というのは、国会のマターであって内閣のマターではないという御認識ですか。

塩崎国務大臣 これはもう先生と政府との間で議論が何度も行われてきたことだと思いますけれども、内閣に憲法の改正の提案権があるというふうに政府は考えていますが、今の段階では、今申し上げたとおりの位置づけで政府の中で考えているところでございます。

辻元委員 今、内閣に憲法改正の提案権がある、提出権があるという御発言でした。

 これは、この点をちょっと確認しておきたいんですけれども、内閣法制局の御見解は、憲法七十二条の議案には憲法改正原案も入るから、憲法上、内閣にも憲法改正原案の提出権があると。さらに、これは参議院での議論の中で、国会が定める憲法改正手続法で、内閣の憲法改正原案を否定した場合には、それは憲法違反の法律だと法制局が述べております。

 ということは、今、国会の中で国民投票法案の議論をしていることは御承知のとおりで、その成立も期待すると安倍総理はおっしゃっていますけれども、今議論されている与党案にも内閣の提出権は入っておりません。国会のみなんですよ。ということは、この法制局の参議院での御答弁によれば、これは違憲ですかね。いかがですか。

塩崎国務大臣 政府はそれについて判断する立場にないと思います。

辻元委員 これは法制局の見解ということで、内閣に提案権が、提出権があるという立場が今の内閣の立場だという御答弁にひっついてこの話はあるわけなんですよ。

 私は、安倍総理の議論を聞いていて、国会の中の、今どうなっているかと、憲法状況を余り御存じなく発言されているんじゃないかなと思う節が多々あるわけですね。内閣の立場をはっきりしていただきたいわけです。内閣に提案権がない法案は違憲なんですか、違憲じゃないんですか。

塩崎国務大臣 さっき申し上げたのは、憲法改正の提案権のことを申し上げているわけであります。今先生がおっしゃっているのは手続法の問題をおっしゃっているのではないかと思いますが、改正の提案権そのものについては、提案権はあるじゃないかということを言っているわけであります。

辻元委員 それは承知しているんですが、提案権はあると、内閣の立場ですね。今国会で審議されている与党の案も、それから民主党案も、内閣の提案権、提出権といいますか、認めていないんですよ。政府はあるという立場ですね。国会はないと。それについて内閣法制局に見解を求めたら、それは違憲であるという、参議院での議論で、これは阪田第一部長が当時答弁しているわけですね。ですから、ここは政府の立場はどうなのかということをしっかりお聞きしておきたいと思ったわけです。

 政府は違憲だと思っているが、国会で審議しているというような立場で、国民投票法案の成立を期待するとおっしゃっているわけですか。

塩崎国務大臣 個別の法律が憲法違反かどうかということについて政府はそれは判断ができないわけであって、それは最高裁が決めることだと思うんですね。

辻元委員 今、この点についてはちょっとさらに議論を深めていきたいところですけれども、観点を変えて、もう一点、この場で確認しておきたいと思います。

 先ほど、内閣には憲法改正の提出権がある、提出という言葉に統一するとすればですね、という御答弁でした。今後のことはわかりませんということでしたけれども、国民投票法案の今の審議されているものの中にはそれはないわけですね。

 将来、内閣として、内閣法とか国会法の改正を内閣として提案して、提出権を持つという方向に変えていくというおつもりは今は一切ないと理解してよろしいですね。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、まだ政府として検討をしているわけではないと、憲法改正について。

辻元委員 今、政府として憲法改正について検討していないという官房長官の御答弁だったんですが、総理はあれだけ一生懸命おっしゃっているわけですよ。ちょっと忠誠心が足りないんじゃないですか。

 あれだけ総理は、憲法改正、憲法改正と、もう寝ても覚めてもという感じでどの会でも発言されているわけで、要するに、あれは総理大臣がおっしゃっているだけなんですね。

 ちょっと角度を変えて、国民投票法案の話が今出たわけなんですけれども、総理はこんなこともおっしゃっていますね。憲法改正の理由に、新しい憲法をみずからの手で一から書き上げるということをおっしゃっているわけなんです。一から書き上げられると思いますか。

 これはどういうことかといいますと、全面改正が果たしてできるのかどうか。国民投票法案という手続法の議論の場では、これは与党の方も含めて、数カ所の改正というか、数カ所を想定しているという答弁なんですよ。

 これ、総理は全面改正とおっしゃっているわけなんですけれども、一番総理と近い官房長官、これも現実離れした御主張を本会議場などでとうとうとされているということになると思いますが、いかがですか。

塩崎国務大臣 忠誠心の話でありますが、先ほど来申し上げているように、国会において議論をしてほしい、こう言っているわけであって、そこに情熱が出ているわけで、何しろこれは、憲法の九十六条は、「この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。」こういうことでありますから、基本的に国会の皆さん方で議論してほしい。さっきも申し上げたとおり、三分の二の賛同を得られなければ発議もできないというぐらい重要な問題であるわけであって、そのことについて国会で議論してほしいということを繰り返し言っているわけであります。

 したがって、我々も同じような気持ちでいますけれども、それが、政府でやっていないということをもって忠誠心があるとかないとかいう話とは、ちょっと違う次元の話ではないでしょうか。

辻元委員 国会の話ですよね。でも、所信表明演説で、新しい憲法を一から書き上げることが大事だということをとうとうとおっしゃる。

 これ、もう一度確認したいですが、では、内閣は白けているわけですか。総理が思いを一人で言っていると。これは全面改正につながるような発言をされているわけですけれども、想定された議論が、国会の中の審議を尊重するというのであれば、されていない。これも現実離れしています。

 冬柴大臣に、きょうは公明党の政治家としてのお立場で、公明党も、斉藤政調会長が、改正についても一、二カ所かなと。そんな新しく書き上げるとか全面改正なんという、総理がおっしゃっているようなことは想定されていないようなんですが、これ、総理はそう力説されていますけれども、いかがですか。

冬柴国務大臣 ただいま官房長官も読み上げられましたけれども、憲法改正規定は、周知のとおり九十六条にあります。その憲法改正規定、この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案をして承認を経なければならない、こうなっているわけですから、発議者は憲法上は国会であります、国会。

 そして、これに対して、国会がどういう憲法改正をこれからやるのか、それは国会が両議院の三分の二以上の議員の賛成で決めていくわけでございますから、一部なのか全部なのか、それはわかりません。

 私自身は、今ここに立っているのは、公明党として立っているわけではありませんで、国務大臣として立っているわけです。したがって、九十九条には、国務大臣は、この憲法を尊重し擁護する義務を負うと書かれていますので、私は、この憲法の改正が発議されるまでは、この憲法を尊重し擁護する、その義務を尽くすつもりでございます。

    〔斉藤(斗)委員長代理退席、委員長着席〕

辻元委員 今、冬柴大臣は、発議は国会にあると。先ほど官房長官は、内閣にも発議権はあるんだという御答弁だったんですが、この点、冬柴大臣はどのようにお考えですか。

冬柴国務大臣 憲法ではそのように規定されています。どういう理論的運びで内閣が発議ができるようになるのか、それは法制局長官にもよく聞いてみなきゃわかりませんけれども、これを一つの内閣が、国会とそれから司法ですね、三権分立ですから、それを取り除いたすべての権限を掌握しているということになれば、ただ、両議院の、各議院の三分の二以上の賛成がなければ政府としても提案はできませんけれども、そういう提案をするということを認める理論を立てることはできるのではないかと私は思います。

 憲法九十六条には「国会が、これを発議し、」と書いてあります。したがいまして、典型的には国会しかないという考え方が通説だろうと思いますけれども、しかしながら、内閣が独自の立場で、そういう賛成を前提に、そういうものを提案するということができるという理論を構築することは可能だろうと思います。

辻元委員 今、冬柴大臣からの御答弁もいただいたんですけれども、官房長官は、あると今までの内閣の見解を踏襲された御発言をぱっとされた。

 なぜこういうことを申し上げるかというと、内閣と国会との関係、憲法を議論するときには、何ができて何ができないのかということをはっきりしておかないと。なぜかというと、安倍総理が口出しし過ぎなんですよ、国会の話に。そう思いませんか、憲法憲法と。

 もう一つ申し上げたい点がありますけれども、押しつけ憲法論。総理が、改正の一番の理由に、押しつけ憲法だったということを挙げているわけです。

 ところが、憲法調査会、五年にわたって衆議院が議論した中でこの議論も取り上げられたわけですけれども、衆議院議長に院として提出した報告書ではこうなっております。日本国憲法の制定過程において、一連のGHQの関与があったことは確かであるが、その点ばかりを問題視し強調すべきではないという意見が多数であったと。押しつけだということを改憲の理由にはもはやできないというのが、うんうんと文科大臣もおっしゃっていますけれども、これが衆議院の報告書の一つの結論なんですね。

 ところが、所信表明でも一番に、いや、制定過程に問題があるとか、二番に、新しい憲法を書き上げるんだと。両方とも非常に今の憲法論議からおくれた御認識で、総理大臣が国会の中での議論すらフォローせずに御発言されていて、官房長官としてちょっと注意された方がいいと思いますけれども、いかがですか。

塩崎国務大臣 国会での答弁で、総理は、国の理想、形を物語る憲法は、日本が占領されている時代に制定され、六十年が経過しました、私たちは、二十一世紀にふさわしい日本の姿や理想を反映した新しい憲法をみずからの手で書き上げるべきと考えていますと言っているんですね。これは憲法に関する総理の基本的な認識を示されたものであって、押しつけだからどうのこうのという話を言っているわけではないわけであります。

 それから、さっきの、ちょっと戻りますけれども、提出権云々の話でありますけれども、これまでの政府の答弁というのは、要は、憲法九十六条の規定も含めて議案の提出権を内閣が有しているということを言っているわけであって、これを否定する憲法上の明文規定はないということがあって、一方で、憲法七十二条に、内閣に対して議案を国会に提出する機能を認めているということですから、発議は国会でありますけれども、議案の提出権が政府にないということはないんじゃないかということを言っているわけでございます。

辻元委員 今、安倍総理の本会議での御答弁だったかと思いますけれども、制定過程の話から、新しい憲法を書き上げると。

 その今読まれた総理の御主張というのが、衆議院で五年間議論してきた中で、ほとんど否定といいますか、そういうのは執念としての思いとしてはあるかもしれないけれども、今の現実の憲法論議の中ではもうかなり古い話であって、今通用しなくなっているわけですよ。それを根拠に、それも内閣も、官房長官でさえ憲法改正については予定もしていないし、今内閣が何か進んで、提出権はあるけれども率先して進めようともしていない。そして公明党は公明党で、公明党じゃなく大臣として座っていらっしゃいますが、お立場がありますね。これは総理大臣が、私はある意味、不見識だと思います。

 官房長官、忠誠心が問題になっておりますけれども、議会に任せるなら議会に任せたらいいじゃないですか。そこを内閣としてはっきり統一していただきたい。内閣としての意思なのか、それとも総理大臣の思いであるならば、私は、議会に期待するという発言であっても、必要以上に、それも理由が理由ですから、既にもう衆議院で議論し尽くして、ちょっとその意見はなというようなことを根拠にされている総理大臣というのは、私も国会の中で憲法論議をしてきましたけれども、ちょっとお粗末ではないかと思っておりますので、内閣としての憲法に対する姿勢をまとめていただきたい、総理も含めて。官房長官に最後それを聞きたいと思います。

金子委員長 塩崎官房長官、時間が来ておりますので、簡潔にお答えください。

塩崎国務大臣 いずれにしても、憲法というのはまさに国の形を定める基本法であるわけであります。最も大事な基本法であって、これに関して、これは多分与野党を問わず、辻元先生の党はちょっと違うかもわかりませんが、私ども、地元でもいろいろな人と話をしてみても、新しい時代にふさわしい、あるいは新しい国の形にふさわしい憲法があってもおかしくないじゃないかという考え方はとても多いと思います。今のままでいいと思っている人は少ないと思うんですね。

 そういうことを思っている人たちは国会の中でもたくさんおられるわけで、そういうことで与野党を問わず多くの議員の先生方が議論をこれまでしてきたわけで、それだからこそ国会にも調査会がずっと長い間あった、そういうことだと思うんですね。

 さっきの総理の答弁も、占領の時期に制定されたという客観的な事実を言っているだけで、押しつけだということを言っているわけでは全くないわけであって、そういう……(辻元委員「どこかで言ったんですよ」と呼ぶ)いや、それは総理になる前の話とかそういうことをおっしゃっているのかわからないけれども、そんなことを総理として言っているわけでは決してないと思います。

 したがって、あくまでも発議は国会ですから、国会の先生方にぜひ御議論をいただいて、新しい時代にふさわしい国の形を一緒に考えながら、それを文字にして、法律にして、みんなで一緒に新しいページを開きましょうということを総理は言いたいんだろうと思うんですね。そういうことでは、認識は、多分我々も忠誠心の高い閣僚としてみんな賛成しているんじゃないかと思います。

辻元委員 終わります。

金子委員長 これにて辻元君の質疑は終了いたしました。

 次に、中川正春君。

中川(正)委員 民主党の中川正春です。

 きょうは、ちょっと落ちついて幾つか議論をしていきたいというふうに思います。

 まず最初に、北朝鮮に関しての問題でありますが、私は、どうも以前から、なぜそこまで議員外交にこだわるんだろうということを不思議に思っております。

 二〇〇四年、このときには、山崎さん、それから平沢勝栄さん、二人が北朝鮮に出かけて、それぞれ家族八人の帰国あるいは来日ということについて議論をしてきた。それに対して、その当時の、これは安倍さんですが、日朝交渉は政府に一元化することになっているので気をつけるべきだ、これはやってはだめだというふうな話がありました。

 今回も、山崎さん、六カ国協議の事前に北朝鮮に行って彼独自のルートの中で交渉してきているわけですが、それに対して、塩崎官房長官自身も、国民を代表する国会議員が渡航するのは望ましくないというコメント、これは新聞紙上に出ているんですが、あるいは安倍首相も、これは行くべきでないというふうなコメントをしています。

 こういう日本の姿勢に比べると、アメリカあたりは、民間人も含めていろいろなチャネルで北朝鮮に行っておりますし、私が交流している議員たちも、独自のルートで北朝鮮に行って、さまざまな議員外交を繰り広げている。それが至極当然だということでありますし、政府自身は、それを包含しながら、そうしたものを自分の外交力にしながら交渉していくという非常に弾力的なスタンスをとっているわけです。

 これは、日本の議員外交を見ていても、どうも日本だけが異常に思えます。ほかの国はみんな積極的にやっている。例えば、軍事政権で同じような体制にあるミャンマーなんかも、それぞれの陣営と議員というのはそれぞれの立場でやっている、これは至極当然だ、こういうことになっています。

 北朝鮮だけが、このことについて一つ一つ、こうした一元化、一元化、こういう話になるんですね。これは、どうしてそのことを強調されるんですか、官房長官。

塩崎国務大臣 まず第一に、議員外交については、一般的に言えば、極めて有効であって、私自身もやってまいりましたし、先生もやってこられたと思います。ですから、これについて、一般的な問題として議員外交を否定するものでは決してないということをまず申し上げたいと思います。

 山崎先生の訪朝の問題については、まず第一に、国会議員として好ましくないと私が申し上げたのは、その前段がございまして、昨年七月のミサイル発射のときに、日本は独自の制裁措置を発表いたしました。その中に、公務員の北朝鮮への渡航は原則として禁止という項目がございます。国会議員はもう言うまでもなく公務員そのものでありますから、これに反しているということにおいて、国民に範を垂れなければならない国会議員がみずからこの制裁措置を破って行く、それも私どもに特に通知も何もあったわけではないわけでありますから、そういう意味合いにおいて好ましくないということを申し上げたのがまず第一点であります。

 それと、議員外交といっても、懸案事項が山積みされている国との間のことで、政府と全く連携をせずにおやりになるということは、往々にしてこれは誤ったメッセージを先方に与えかねない。つまり、我々は、交渉しているわけですから、対話と圧力で話し合いをする、あるいは圧力をかけながら交渉をしていかなければならない。そういうときに誤ったメッセージを送るということは決して交渉上好ましいわけではないということを申し上げているわけです。

 この北朝鮮の問題については、やはり一丸となって強力に交渉を進めていかなければ、今回の日朝の協議でもうまくいかないんだろうというふうに思いますから、我々としては、今申し上げたような理由から、政府とばらばらにおやりになることは余りいいことではないのではないのかということを申し上げたかったわけでございます。

中川(正)委員 公務員という定義が恐らく違うんだと思うんですね。議員外交を、政府のいわゆるシステムの中の一つの公務員として見ていくという感覚が一つは間違っているというふうに思います。

 もう一つは、さっきのお話でいったら、野党外交はできないことになるんですよ、一般的な話でいけば。それは、政府の外交方針と野党の外交方針というのは当然違うわけですから、違った形の中でトータルで外交を進めていくことによって選択肢が広がる、最終的な選択肢が広がっていって、いろいろなチャネルの中で最終責任をとっていくのは政府だ、こういうことがあって初めて外交のダイナミズムが出てくるわけでありまして、私は、どうもそれ以外の理由、さっき二つ官房長官は挙げましたけれども、これは、根本はそんなところにあるんじゃないなというふうに前から見ているんです。

 というのは、官房長官、このことを御存じですかね。安倍総理が、二〇〇三年ごろ、官房副長官をやっておられたころに、安倍さん自身も彼独自の議員外交を模索していた、実際にその交渉に当たっていたということ、これが指摘をされているんですね。こうしたことは知っておられますか。

塩崎国務大臣 承知しておりません。

中川(正)委員 実は、これは最初、週刊誌で取り上げられまして、我が党の議員がこの問題をそういうベースで取り上げたら安倍総理が激高しまして、えらく興奮したものですから、私は何であれだけ、まあ、よく興奮する人なんですが、何でここで興奮するのかなということが不思議になりまして、それで、実は、そこで出てきた話の裏づけをとってきました。

 この話というのは、二〇〇三年ごろの話なんですが、安倍さんが独自にそれぞれ外交ルートをつくり上げようとしていた。その相手というのが崔秀鎮といいまして、これは中国の中の朝鮮族の方なんですが、実業家として大成をしている人で、北朝鮮との取引がある。そんな中で、第三者に聞いても、いわゆる北京筋の情報に聞いても、金正日に非常に近い関係にある人だということ。私もそれぞれのインタビューで確認をとってきました。それから、もう一人は李正一という人なんですが、これは韓国人で、元民主党の議員なんです、今落選をしているんですが。今の盧武鉉大統領が大統領になっていく過程で、それこそ右腕として活躍をされました。もともと、この方も企業家なんですが。

 その二人を一つのチャネルにして、いわゆる家族、そのころはまだ家族が帰ってきていなかったわけでありますので、それを何とか取り戻そうというふうな努力をしていた。具体的に、彼らに会って、彼らの証言、私は証言に基づいて話をしているんですが、彼らの証言の中でも、安倍さんの秘書が北京に出向いて具体的な交渉をしていたということ、そんな事実が確認をされました。

 だから、こうやって見ていると、この中身はともかくとして、恐らく、これは途中でこのルートが切れたものですから、切れたというのは、安倍さんが言っていることとやっていることが違うじゃないかというふうな話になって切れたようなんですけれども、切れたということが安倍さんの興奮につながったのかなと、切れていてうまくいかなかったということがあったものですから。そういうような印象を受けたんです。

 そういうことで、彼自身もやっているんですよね。そんな中で、自分もやってきたけれども人がやるのはだめだ、こういう話なんですよ。そこがどうも異常なんですよ、これは。異常なんですよ。なぜ北朝鮮のことになるとこれだけ二元外交にこだわるかということなんです。そこのところを一遍調査してもらいたいというふうに思うんですが、どうですか。

塩崎国務大臣 今の官房副長官時代のお話でありますが、山崎代議士のケースは、これは内輪みたいな話で大変申しわけないんですけれども、与党の代議士でいらっしゃいます。

 私ども、今のお話を聞いていて、官房副長官として、まさに外交は、政府に外交事務は任されているわけでありまして、政府そのものですよね、官房副長官というのは。この立場にある人がどういうルートやどういう手段を使ってやるかというのは、外交そのものの中でやっているわけであります。

 ですから、誤ったメッセージを送るということではなくて、解決を見るために何をすべきかという中で官房副長官としてのお考えでやっているわけであって、今回のように、まず第一に公務員、国会議員もやはり公務員であることは間違いないですよね、中川先生。それで、なおかつ政府がやっていることと違うメッセージを送ることについては、連携をしているならいざ知らず、そうではないということであるならば問題ではないのかということを先ほども申し上げたとおりであります。

 今の副長官の時代のことは私も存じ上げませんけれども、政府の重要なポストにいる人間がやることでありますから、政府とまさに一体の話であるわけですので、特に問題があるというふうには思いません。

中川(正)委員 いい点を出していただいたと思うんですが、一体であるかどうかということはぜひ調べてもらいたいんです、さかのぼって。これは内容は余り言いませんけれども、そのときに出ていた、いわゆる秘書を通じて、さまざまな協定文書なんかが週刊誌に出ていますけれども、その中身とそのときに政府自体が交渉していた中身とは違うんですよ。相当違うんです。場合によっては、それは裏切りといいますか、そういうところに結びついていくような、そんな中身まで交渉をされていたというふうなことが週刊誌に書かれていますけれども、これは私も本当かどうかわからない。ここは、真実はやはり調査をすべきだというふうに思うんですが、そこのところをはっきりさせないといけないというふうに思います。

 それからもう一つ、このときに一緒にチャネルとしていたさっきの崔秀鎮さんあるいは李正一さんの証言を聞いていても、話を聞いていても、安倍さん自身は、どうもその当時の小泉総理やあるいは官房長官と、特に官房長官と連携をしてこの話を進めていたかということになると、違うと。そこがあったので外交交渉を途中で切ったんだ、安倍さんの言っていることとどうもその背景が違うよという、そこの疑念が出てきたのでそこは切ったんだ、こういう証言もあります。

 だから、そういう意味からいうと、さっき官房長官がまさに指摘をされた、これこそ政府の中にいて、まだ政府の外、特に我々野党の立場から政府とは違った形のチャネルをつくりながらさまざまにウイングを広げていくということはあるんだろうと思うんですが、政府の中にいて、しかも官房副長官という立場で独自外交を求めていたということ、これがどうも、すべての資料を総合して、かつ、現地に行って携わっていた人たちの証言を聞くと、私の段階でははっきりしているということなんです。

 ぜひここは、そうした意味で、そこまで官房長官も二元外交にこだわるのであれば、このことはしっかり調査をして、その調査結果を発表すべきなんじゃないですか。

塩崎国務大臣 今のお話は週刊誌情報でありますので、それに対して私どもとして答えるわけにもいかないんじゃないかなというふうに思います。

 先ほどの、一体かどうかという話でありますけれども、官房副長官はまさに政府、閣内と言ってもいいわけでありますので、それは最終的に結果責任を内閣というのはいつもとるわけでありますから、その範囲内でやっていたことがあったのかもわからないなというふうに思いますが、いずれにしても、政府は一体としてやらなければいけないということは何も変わらないというふうに思います。

中川(正)委員 出発は週刊誌情報なんですけれども、私もそれなりに裏をとってきたわけであります。だから、もしそこではっきりしないということだったら、はっきりすべきなんじゃないですか。これは調査すべきだと思うんですよ。

金子委員長 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

金子委員長 速記を起こしてください。

 中川正春君。

中川(正)委員 それぞれ話し合いをした結果、こんなふうにまとめました。

 私も、この崔秀鎮氏と李正一氏に会って、具体的にさまざまな、そのときに議論された中身、それから証拠書類、写真みたいなものですよね、それからパスポートだとか、いつどんなところで安倍さんに会ったかとか、そんなのを確認してきているんですよ。聞いたら、政府のサイドからそうした意味での確認はいまだないと。

 例えば、李正一さんあたりは、何だったら私が、日本の国会の中で証言が必要なんだということであれば、そういうこともやぶさかでない、週刊誌で書かれていることの中で何が真実かということを話をするためにもと、そんな話も出ています。

 だから、そういう意味で、政府からも一度、直接この人たちに会って、面会をして、何が起こっていたのかということを聞き取りをすべきだというふうに思うんです。それをやるということを要求したい、要望したいというふうに思います。

塩崎国務大臣 御質問いただくことは全く問題ないと思いますけれども、調査をしろと言われても、週刊誌情報しか我々にはないわけであって、それに基づいて政府が調査をするというわけにはなかなかいかないんではないかというふうに思います。

中川(正)委員 いや、週刊誌情報だけじゃないんですよ。私が現に会ってきた。それで、こういうことが存在したと言っているわけですから、このことについてさらに調査を進めるために、週刊誌情報じゃなくて、具体的にこの人たちに一度会う、会って何が起こっていたかということをはっきりさせるということ、それでいいと思うんですよ。

 委員長、この話はちゃんと通っているでしょう。理事会で預かってもらえますか。

金子委員長 理事会でやります。

中川(正)委員 では、理事会預かりで、後で協議しましょう。

 これは、ずっと一連のこれまでの対応を見ていると、拉致問題というのは、なぜ大きな壁に当たっているかというと、二国間協議に押し込められてしまっているということ。二国間協議でやれば、これはけんかしているだけで、お互いがカード、カードといったって日本は何もないわけですから、そういう中で大きな壁にぶつかっているんだというふうに思うんです。だから、周辺の世論も、それから専門家も、これは六カ国協議の中で多国間のテーブルをつくっていかないとだめなんだということですね。

 その中で特に大事なのは、韓国との協力なんですよ。韓国にも拉致問題がある。日本だけの問題だとしているのが間違いなんだ。韓国にも拉致問題がある。もっと言えば、さっき出た人権の話ですよね。人権ということからいけば、それぞれ離散家族の問題もある、九万六千人、日本から行った在日の人たちの人権もある、収容所の問題もある。そういうものを包含しながら、多国間の中でこの拉致というのをしっかりとグリップしていくというような、そういうスタンスがないといけないねというのが私自身のこれまでの主張なんです。

 そんなことから考えていくと、どうも安倍さんは、安倍さん自身が総理大臣になった過程というのが、拉致の存在、拉致の問題に取り組んできたという、そのことで大きく世論を動かしたという背景があるものだから、何もかも自分でやらなきゃいけないな、拉致は自分の領域だ、ほかの者は手を出すな、こういうような形で今外交自体が進んでいる。これは日本にとって悲劇ですよ。その流れが日本を孤立させていくんだというふうに思うし、拉致問題を難しくしているんだというふうに私は思うんです。そういうことを指摘しておきたいというふうに思います。

 それだけに、この外交チャネルのあり方もしっかり見直していくべきだというふうに思います。もうちょっと弾力的にそれぞれのチャネルを包含しながら使い込んでいくという、そんな外交姿勢が大事なんだというふうに思うんです。

 せっかく外務大臣に来ていただいておりますので、そこのところをひとつコメントしておいてください。

麻生国務大臣 総理大臣が北朝鮮の拉致の問題を一人で抱え込んでおられるかのごとき印象を受ける御質問でしたけれども、私の知っている範囲で言わせていただくと、少なくとも、この種の拉致とか人質とかいう話は、これは何も日本だけの話ではなくて、あちこちで、人質問題、いわゆる英語で言うキッドナップと称される問題は、いろいろな国で起きておりますのは、もう中川先生御存じのとおりだと存じます。しかし、この種の話を一国の政府が正面切って取り上げているという国を、私は日本以外知りません。そういった意味において、総理大臣が先頭切ってやられるということは、私はそれなりの姿勢として決して間違っていると思っていないというのが大前提であります。

 また、総理一人だけというお話ですし、また、日本だけが一人でやっているかのごときお話になっておりますが、この問題を取り上げてから今日に至るまで、少なくとも、アブダクションという、拉致という単語が正式に国連総会で、または安保理で、いろいろな形でこの輪が広がりつつあることも間違いない事実でもありますから、そういった意味では、日本の努力によってこの問題が広く世界に周知されつつあるというのが今の現状だと思っております。

中川(正)委員 そういう公式答弁でずっと来たわけですが、基本的には、韓国との連携ができて、今の日朝間のテーブルも、この問題については韓国も一緒にやろうというふうなところまで韓国を引っ張り込んだら、それが本物になってくるんだと思うんですよ。そうじゃなくて、いや、日韓のいわゆるほかの状況と絡めて考えていって、絶えず日本の拉致問題が韓国の問題と切り離されているというふうな現状がある、ここはしっかり問題意識としてとらえていかなきゃいけないというふうに思います。そのことを指摘しておきたいというふうに思います。

 さっきの理事会に預けた問題を含めて、よろしくお願いをしたいというふうに思います。

 次に、政治と金の話に移っていきたいというふうに思います。

 まず、いろいろな具体事例というのが挙がってきましたけれども、まだここではしっかり取り上げられていないんで、中川幹事長、これはちょっと私と同じ名前なんでややこしいんですが、自民党の中川秀直幹事長の問題を取り上げていきたいというふうに思います。

 新聞報道によると、この新聞報道というのはもう大分昔の話ですが、一九九六年の二月十七日の朝日新聞なんですが、このときに取り上げられたのが、また再び二〇〇七年の二月八日に、今度は週刊誌の方で、週刊文春で再び取り上げられております。

 この中の新聞の方なんですけれども、事実関係からいくと、一九六一年に中川氏の義父から千四百平米の建物、それからもう一つは、その後で建てた自宅ですね、この二つが、建物とこの自宅が、財団法人の耕道会館、この財団法人によって所有をされておる。これは、中川さんが義理のお父さんから引き継いだ。それで、引き継いだ時点で財団法人化をしているということですね。このことで、その財団法人の中身が、本来の趣旨ではない、いわゆる公益法人ではない、財団法人としての趣旨を逸脱しているんじゃないか、そういう趣旨で指摘をされたということであります。

 それで、まず聞いていきたいんですが、平成十七年度のいわゆる会館使用料収入というのは一千十万円上がっているんですが、そのうち中川議員側から家賃収入が九百六十万円、これは、後援会の事務所、それから自宅ですね。これは家賃として九百六十万円相当ということになっています。

 これは、公益を目的として設立された財団法人の趣旨に反しているんじゃないか。本来は相続するはずであったものを財団化して、自宅と会館と建てて家賃を払っているということなんですよね。この形態で財団法人というのは、これは本来の趣旨から離れているんじゃないかということなんですが、総務大臣、見解を伺いたいと思います。

菅国務大臣 済みません、通告がなかったものですから。

 私どもは政治資金問題でありまして、財団は私どもの所管ではないというふうに思っております。

尾身国務大臣 私の方も、質問通告ございませんので、答弁の用意がございません。

 事実関係に基づいて、国税当局は常に法令に照らして適正な取り扱いをしております。

中川(正)委員 みずからの土地を寄附した後も、家賃を支払っているとはいえ、本人やその家族が住み続けているわけですよね。これは、後、未来永劫といいますか、秀直さんの後の世代も、家賃さえ払えばその家族が住み続けていくことができる、相続税もそれで免れていくという構図になっていくわけでありますね。実は、こういう指摘があって、中川さん自身も、このことについては改善をしていくということ。

 この本質的な指摘以外にも、例えば理事のメンバーというのが、現在六名になっているんですけれども、その中身は、中川夫妻、それから次男、後援会長あるいは前後援会長、こういうような形で、それこそ後援会そのものになっておるんですよね。そういうような、いわゆる政治活動の関係者のみが財団の理事になっているというふうな指摘であるとか、あるいは、広島県の監査を受けていて、それで、ほかにもいろいろ指摘をされていることがある、これは時間の都合で省略しますけれども。

 そんなことは改善をするということを本人みずからコメントをその当時しているんですけれども、この改善というのはあったんでしょうか。これは所管官庁、財務大臣。――通告したつもりだったんだけれども、そっちは準備がないんですね。わかりました。では、これは今からやっていても仕方ないので、またこの問題については具体的にやります。

 このことでも一つの例示になるように、あるいは、この間から話の出ていた松岡さんや、それこそ伊吹大臣のお話にもあるように、あるいは佐田さんの問題でもあるように、ここのところはしっかりとした議論をしていかなければいけないところなんだろうというふうに思うんです。

 そんな中で、総務大臣、こうした問題は、国民にとって、あるいはマスコミも絶えずこれについては問題視をしていますけれども、どこが問題だ、何が問題になっているのか、どこがポイントになっているのかというふうに把握をされていますか。

菅国務大臣 政治資金のあり方について、このところ国民の関心も極めて高くなっております。やはりその焦点というのは、私は、今の政治資金規正法は、入りについては規制がありますけれども、出についての部分というのがなかなか国民からすれば透明性に欠けているとか、そういう問題があるのではないかなというふうに思っております。そういう意味においては、出の部分についての関心が一番高いのではないかなというふうに私は考えております。

中川(正)委員 出の部分について、具体的に何が問題だというふうに認識されていますか。

菅国務大臣 今の制度では、例えば事務所費、これについても、事務所の賃借料だとか、あるいはそれに対しての税金だとか保険だとか、それと電話とか切手だとか、あるいは事務所の通常維持に必要な経費だとか、非常にその部分がわかりにくい。不透明になっている。そして、それも一括して計上していいことになっていますから、項目別にも実は計上されていませんので、国民から見ればその部分が非常に不透明でわかりにくい。そこの部分が一番の問題ではないかなというふうに思います。

 さらに言うならば、議員会館はただなのにおかしいというような、そういう議論になってしまうんですね。しかし、事務所費の中にそういう切手代とか電話代等も含まれている。そして、それも地方、地元の事務所も議員会館で計上していい、そういう仕組みにもなっておりますので、そういう意味では、この制度が非常に出についてはわかりにくいというのが、やはり一番改善すべき点ではないかなというふうに私は考えております。

中川(正)委員 さっきのお話だと、手続というか、帳簿にどの項目でこれは分類するのかという程度の話ですよね。私は、国民の意識というのは、その後ろにある問題をもっと意識しながら、これではだめだと言っているんじゃないかと思うんです。その後ろの問題というのは何かといったら、我々に対する不信感なんですよ。

 その不信感の具体的な問題というのは、一つは虚偽記載。本当の支出項目じゃなくて、違った大義名分で記載をしているんじゃないか、本当は使ったらいけないものに使っているんじゃないかという、その虚偽記載ということが一つあるんだと思うんです。

 それからもう一つは、私的流用だと思うんですね。これは、本来は政治活動のために使わなきゃいけないというものが、私的、私のものとして、例えば家族で海外旅行に行ったというものをここから落としてしまったとか、前に伊吹大臣がグレーゾーンという表現でされたけれども、香典を持っていったけれども、これは私の分なのか、それとも公的な分なのかという、そういう意味での私的流用。ここが問題だ、これをはっきりさせるためにどうしたらいいかという議論を国会はすべきだというふうに言っているんだと思うんですよ。

 その中で、普通であれば、これはチェック・アンド・バランスというか、ちゃんとしたチェックシステムがあって、その中でみんなが納得をしていくということなんですが、今回の場合、我々の場合、どこがそのチェックをしているか、チェックシステムになっているかということなんですね。

 一つは、虚偽記載については、これは私は、いわゆる総務省の、選挙を束ねている、そこへ向いて書類を私たちが出している部局だと思っていたんですが、このことについて、選挙局長、どこまでチェックが今できる体制になっていますか。

久元政府参考人 政治資金収支報告書につきましては、会計責任者が事実に即してこれを記載して、そして宣誓書もつけていただいて私どもの方に出していただく。私どもは、その収支報告書を公表して、そしてその内容を国民に正確に知らせるということが私どもの基本的な任務であるというふうに考えております。

中川(正)委員 その事実認定をやっているんですか。それが正しく記載されたものかどうか、うそを言っていないかどうかということは、チェックはできるんですか。

久元政府参考人 これは、法律の規定に基づきまして、私どもは、書類に不備があるとか、あるいは形式的に不備があるとかということにつきましては指摘をさせていただいておりますが、さらにそれを突っ込んで、それが事実かどうかということにつきましては、実質的な調査権を持っておりませんので、私どもはそういう調査をする権限はありませんし、そういうことはやっておりません。

中川(正)委員 これは調査権限がないんですよね。だから、出してきたものを公表するだけという組織になっているんです。

 もう一つ、私的流用の部分ですが、もしこれがあるとすれば、ここには税金がかかっていませんから、これは本来、国税局がこれへ向いて関与をしてしっかりチェックをしていかなければならないということだと思うんですよね。そのシステムができ上がっているかどうか。

 例えば、今、嫌疑がと言うとあれですが、国民が、どうもそういう意味では二つともクリアじゃないんじゃないか。いわゆる閣僚の中でいろいろ問題が起こっている。松岡さんにしても伊吹さんにしても、そういう疑いが出てきたときにはっきりさせようと思ったら、国税局がちゃんと入ってきて、いや、はっきりしてますよということを言ってもらうのが一番これはいいわけですよね。そういう準備が、そういうような体制になっていますか、国税局。(発言する者あり)

金子委員長 ちょっと趣旨がよくわからないな、今のお話は。もう一遍ちょっと質問。(発言する者あり)嫌疑は取り消した……(中川(正)委員「もう取り消していますよ」と呼ぶ)

 それでは、国税庁次長。

加藤政府参考人 個別にわたる事柄については答弁は差し控えさせていただきますけれども、一般論で申し上げますと、国税当局といたしましては、課税の問題につきましては、従来からいろいろな機会を通じまして資料情報の収集に努めております。その結果、課税上問題があると認められる場合には、税務調査等も行いまして適正な課税の実現に努める、これが一般的な私どもの立場でございます。

中川(正)委員 これは、実は、私たちの政治後援会、あるいは政治資金団体、あるいはそれに類するというところがあるわけですが、今私たちの議論だけをしていますけれども、これは、そういう形で、いわゆる結社の自由、それに基づいて同じような形態で運営されているのが七万以上あると聞き取りしたときに聞いたんですね。そうすると、その中にはさまざまな団体が入っている可能性があるんですよ。それが、全部一緒くたにして、私たちの今やっているようなシステムで走っているわけです。

 さっきの国税局、一応答弁はしてもらいましたけれども、中には上げてくるのもあるんだろうけれども、ほとんどノーチェックということ、これは国税局にも書類は出していないわけですから、我々は申告していないわけですから、ここの部分についてはほとんどがノーチェックという状態で野放しになっているということ、ここが恐らくこの問題の原点なんだろうというふうに思うんです。

 そういう状況の中に今我々はあるわけです。ノーチェックなんですよ。そこを受けて、民主党の場合は、第三者のチェック機関をここへ置いていこうということで、監査システムというのを税理士に関与させながらやる、それを導入したわけなんですね。これも一つの前進だと思うし、まだこれでも足りないというふうなことがあるんだろうと思うんです。

 そこで、今の状況を見て、官房長官、この国民のいろいろな議論にこたえていこうと思えば、あとは情報公開しかないですよね。みんながオープンにしよう、オープンにしていこうということで、今の問題、今ある問題をそれぞれ解決していこうと思ったら、これは与党の話だけじゃないと思うんです。我々もそうなんですよ、野党の方も。これは両方、国会議員の信頼をしっかりとした根拠に基づいて組み立てていく一つの作業なんだと思うんですよ。それをみんなが何やかんやと言いわけしながら逃げている。あるいは、特に閣僚と言われる人たちが、例えばここで率先してそれをオープンにしていくということがどれだけ大きなリーダーシップをそこから見出すことができるかということ、そんなことも含めてこの問題にはあるんだと思うんです。

 だから、どっちがどっちと言っていないで、ここはしっかりとリーダーシップを持ちながら、官房長官、みんなでやっていこうよ、閣僚はまずそれを率先してやろうよというような話に持っていくのが筋だと思うんですよ。そこを答えてください。

塩崎国務大臣 我が国は法治国家でありますから、法にのっとって物事が行われなければならないということだろうと思いますので、安倍内閣も法にのっとってやっていきたい、このように思っております。

中川(正)委員 都合のいいときには法を持ち出して、そうでないときには違う話をする。

 もう一つやりましょうか。こうやって国民の方が、オープンにしなさい、こう言っているわけです。我々は政治家を信頼できればいいんだけれども、その信頼をできるという状況をつくり出すためにもオープンにしてくださいよと国民は言っているわけです。これは、ある意味では挙証責任、私たちが、無実である、国民が今考えているものに対してこれだけクリーンである、クリーンであるということを示すという責任が私たちにかけられているわけですよね。そういう意味では挙証責任が我々にあるという状況をつくり出している。それに対して、あなたは、やる必要はない、こう言っているわけです。

 ところが、もう一つ、これはちょっと話が飛びますけれども、例えばイラクに対するスタンスを見たらどうかということです。あのときの大量破壊兵器があそこにあったかなかったかという議論ですよね。

 これは、ブッシュは、それがないという証明をフセイン自身がしなきゃいけないんだ、その証明ができていなかったから武力攻撃をやったことが大義として認められるんだというのが彼の理屈ですよ。それに対して、日本政府も、官房長官自体も、いや、あのブッシュの考え方あるいは大義というのはそれで正しかったんだ、日本はだから支持をしたんだとこの間から何回も何回も外務大臣、防衛庁長官か、そういうスタンスで答えている。それは疑われた方が挙証責任があるんだということを片方では一生懸命宣伝して、それで我々の大義があるんだ、こう言っているんですよ。そのことと構造的にはこれはつながっているんです。

 今回、この挙証責任は我々の方にある、そうした一貫した話だったらいいんだけれども、自分に都合の悪い部分については、いや、法に基づいてそんなことしなくていいんだ、こういう話なんです。これは余りにも国民に対して愚弄した話だと思うんですよ。そこのところをしっかりと整理した上で答えてください。

塩崎国務大臣 内閣の一員が、アメリカに大義があったから日本がイラク攻撃を支持したとかいう話は、一度も言ったことはないと思います。日本は独自の判断をしているわけでありますので、あしからず申し上げたいと思います。

 政治と金の問題については、先ほど申し上げているように、今定められている法律にのっとって適正に処理をしているものが法律以上のことをやるということはいかがなものかということを言っているわけであって、各党各会派で大いに議論をしてもらって、今の法律がおかしいということであれば、これは各党各会派の議論の結果、政治資金の問題というのは、政府の問題ではなくて、国会の皆様方の議員の問題として御議論を賜って、それにのっとって何かをやれということになった場合には内閣としても従うということを明快に何度も申し上げているわけで、別に逃げているわけでもないわけでありますので、あしからず御了解をいただきたいと思います。

中川(正)委員 法律以上のことをしちゃだめだって、そんな矛盾した話はないですよね。法律以上のことをしたら、国民は手をたたくんですよ、このケースは。何を言っているんですか。

 だから、そこはしっかり指摘をしておいて、いずれにしても、これは私たちのこれからの政治活動の中で、基本的な制度に対する欠陥もあるということは、これはこれから法律をつくっていくということでありますけれども、今ある問題を、しっかりと国民の負託にこたえていく、あるいは我々の信頼を取り戻すという意味から解決していくためには、お互いがしっかりと開示をしていく、そのリーダーシップを総理大臣そして官房長官がとるべきだというふうに思います。そのことを指摘して、まだまだこの話は続きますから、次に移っていきたいというふうに思います。

金子委員長 中川委員、取り消されたとはいえ、嫌疑がかかったものですから、伊吹大臣にちょっと一言だけ。(中川(正)委員「またの機会にしましょう」と呼ぶ)

 では、中川正春君。

中川(正)委員 次に、PFIの問題を取り上げていきたいというふうに思います。

 これは、以前にちょっと入り口だけやったんですが、地域の格差が出ている。これは、前回は、三位一体の改革の中で、行財政の部分で、三位一体自体が特に財政格差をつくり出したということを指摘させていただきました。あのときは財政ということだったんですが、民間の資金、これがいかに中央へ向いて流れていくということがあるか、これは一つの例示ですが、構造的に中央と地方の関係はこんな形でコントロールされているんだということ、これを一つ例示するためにこのPFIの問題を挙げてみたいというふうに思います。

 事例は、私の地元で小学校が三つ同時に建った。これは普通一つ一つ、普通の建ち方でいけば、地元の業者が普通に入札をして受注していくということでありますが、これはPFIでやるんだということで、一挙にやろうというので三つ重ねてやったという事例があるんですよ。このときにPFI協会というのが中にかんできまして、このPFI協会というのは、専門家筋が業界団体を束ねて協賛金を取って、PFIの推進のために協会をつくって頑張っていこう、こういうことです。もう一つはコンサルタント、それから講演、こういうことなんですね。それが入ってきてやったわけであります。

 ちょっと一つ、まず入り口のところでお聞きをしておきたいんですが、現状、この間の答弁では二百五十事例ぐらいPFIがあるということだそうですね。PFI協会だけじゃなくて、中央の、いわゆる東京のコンサルタントがかんで、資金調達の方法だとか書類の書き方、あるいはいろいろな条件のクリアの仕方なんかを入り込んでやっている事例というのは、恐らく二百五十事例ほとんどでそれをやっているんだと思うんですが、そういう認識でいいんですか。

大田国務大臣 個別の地域の事例を、内閣府が全体を把握する立場にございませんので、ちょっと全体像はお答えできません。

 私の把握するところでは、例えば宮城県の仙台市ですとか山形県の事例では、地元企業が受注するというケースもだんだん出てきていると把握しております。

中川(正)委員 いや、一足飛びに地元企業が受注するという、そんなところまでいってもらうと困るんですよ。その前の構造というのがあるので、そこのところを聞きたかった。だから、このコンサルタントの役割というのが一つポイントになっているんです。

 実は、PFI協会というのはいろいろなコンサルタントのうちの一つですが、例えばここの理事長というのは、一九九九年から二〇〇一年までこのPFIの推進委員というのを務めていまして、PFIの設計と、それからガイドラインをつくっていったそのメンバーの一員なんですよね。その人が、PFIのガイドラインの作成もやって、それを持って自治体へ行って、こういう形でPFIをやっていこうということで自治体の職員を含めて教育するわけですね。

 それだけならいいんですけれども、業者の選定の委員の中にも入っていって、結果的には自分の協会のメンバーを、さっきの協賛金だとか会費だとかを払っているそのメンバーの会員である企業を選定事業者として選定して、結局のところ、それはゼネコンですから、東京の企業が地元へそんな形で入り込んでくる。もう一つは、ファイナンスそのものも、地方銀行で金を回すんじゃなくて都銀が入り込んでくる、あるいは、そういうファンドが入り込んできて組み立てる。

 結局は、本来は地域でやれたものがこんな形で中央へ向いて吸い上げられていく、事業そのものが中央から来た形で組み立てられていくという構造がここにある。その構造の基本になっているのは、中央政府で仕組みをつくった、そのときのメンバーとその身内ですべて固めていってしまうというこの構造なんですよね。これはPFIだけじゃない、いろいろな形の事業というのが、特に法律で新たにつくられたものは、その専門家集団がこのようなことをやっているんだろうということなんですよね。

 そこのところは地方自治あるいは地方の活力という形で、名目はいいんですけれども、我々、地方で活動している議員それぞれが今感じているんだろうと思うんですが、実感として、このままいけば全部東京にやられちゃうよという構造をつくり出しているというふうに思っているんです。そこのところをどう考えていくかということなんですが。

大田国務大臣 個別事例を把握する立場にはございませんが、先生から前回、四日市市、小中学校のお話がありまして、担当者にヒアリングをいたしました。

 選定過程においては、それぞれの委員が個別に記入した評価を合算してなされたものであって、恣意的な判断は入る余地のない透明なプロセスは確保されたと思います。そして、この事例の場合は、地域企業をなるべく入れる取り組みもなされまして、最終的に受注したのは大成建設グループですが、発注額の三分の一、三四%は地元企業に発注するという予定になっているというふうにも聞いております。

 ただ、やはりPFIの場合、透明性を確保するというのは大変重要なことですので、その枠組みづくりというのは国のレベルでもこれからさらに整えていきたいと思います。

 その上で、一言申し上げます。このPFI事業というのは、民間の資金、経営能力、技術的能力を活用して社会資本整備を効率的、効果的に行うという新しい取り組みですので、その趣旨は大切に生かしていきたいと思います。ただ、一方で、地元企業がさまざまな形で参画することで地域経済の活性化が図られるという視点も大変重要だと思いますので、私どもも、その趣旨がかなうように関係省庁に働きかけてまいります。公平性を担保しながら、地元企業がノウハウを蓄積して、受注しやすい環境整備に努めてまいります。

中川(正)委員 これは普通だったら一〇〇%、個々に建てたら地元なんですよ。それを、わざわざ集めて三分の一だけ地元に出したよというのは、地元はなかなかそれでは納得しないということなんですね。恣意的に企業を選んだということを指摘しているんじゃなくて、構造的な話をしているんです、構造的な。構造的にこうしたことが、このPFIの問題だけじゃなくて、地方と中央の形の中ではありますね。

 その中で、ちょっと具体的に改善をしてもらいたいというふうに思うんですが、PFIのガイドラインの中に、地元企業を活用していくということをしっかりとポイントとして明示すべきだというふうに思うんですよ。そんな改善。それから、いわゆる監査機関ですね。さっきの話も、これは追及していったら、いろいろな利権にかかわってくるようなものが出てくる可能性があります。それをチェックしていくシステムが今ないんですよね。そういうようなもの等々含めて、具体的な改善というのを約束してください。

大田国務大臣 平成十七年に閣議決定されました地域再生基本方針、この中でも、「PFIの推進は、民間の事業機会を創出することを通じて経済の活性化にも資するもの」というふうにされております。この指針も踏まえて、PFIを通じた地域経済の活性化の推進がなされるよう、私どもも関係省庁に働きかけているところです。今後のガイドラインのあり方、また工夫を重ねていきたいと思います。

中川(正)委員 次に、環境大臣の方ですが、NOx・PM法についてお聞きをしていきたいというふうに思います。

 これは、それぞれ大都市を中心にした地域を地域指定して、その中に、これは車庫規制ですね、車庫を登録しているトラックあるいは車について買いかえを促していく、そういうことによって、空気をきれいにしていく、改善をしていくということであります。

 今、どれほどの成果が上がってきていますか。

若林国務大臣 中川委員がおっしゃいますように、このNOx・PM法の趣旨は、一定の大都市地域に交通量が非常に集中をする、特に貨物交通量が集中して、その地域の大気の汚染、健康に被害が及んでくるということに対する対応の制度でございます。

 そして、いろいろな施策を講じておりますが、平成二十二年にはそれらの地域におきましても大気環境基準の確保が図られるということを目的としておりまして、全体的には非常に順調に大気汚染の解消が図られてきているわけでございます。

 ただ、特定の地域にありましては、局地的に、交差点でありますとか、あるいは渋滞の激しい地域でありますとか、そういう都市構造上の問題などがありまして、なお改善が順調に進んでいないというような地域もございますので、ただいまNOx・PM法の見直しにつきまして、審議会の御意見を伺いながら検討をしているところでございます。

中川(正)委員 これは以前から指摘をされていることなんですけれども、まだ特定のポイント、ポイントで改善が進んでいないというレポートを私ももらっています。

 これはどういうところに原因があるかというと、流入車なんですね。今規制しているのは、地域を指定して、その中で営業をしている、いわゆる車庫登録をしている車についての買いかえを促進していくということなんですが、その地域といっても、外から入ってくれば、これはノーマークで入ってくるわけですから、地域で活動しているところだけを買いかえさせていったって、全体がきれいにならなければこれはだめです。いわゆる流入規制をしなかったから今最後の懸案というのが戻ってくるというようなことだと思うんですよ。

 もっと言えば、これは実は、これを入れたことによって、車庫ですから、そこに車庫を持っていなければ、例えば境界のすぐ近くに営業している会社にとっては、車庫飛ばしでその地域の外に持っていったら、それで問題はクリアするんだということですね。これは、合法的に持っていく場合と、偽装して車庫を飛ばした場合と、両方あると思うんですが、そういう流れが非常に大きな形となって出てきた。これはこれまで何回もこの国会で指摘をされました。

 それと同時に、もっと深刻なのは、これは零細で弱小な企業に対して非常に大きな負担になってきて、結局、その外で営業している会社と中と比べると、それは中にたまたま車庫を持っていたからということで、一〇〇%、小さな会社はそこが本社で、そこしか営業所がないということになると、もうそこで全部の車をかえなきゃいけないという話になってくる、たとえ小さくてもですね。ところが、大きなネットワークを持っている会社は、それは調整できるわけですよね。そういう違いも出てきて、同じ土俵で外の人たちと競争する、あるいは大手と競争するということになると、断然、弱小で零細企業というのは弱い立場に立たされてくる、そういう構造を持った法案なんですね。それについて、これは経済のいわゆる競争原理というのをゆがめていく、そういう欠陥を持った法律だということで、これも何回もこの国会の中で指摘がされてきています。

 そのことについて、これまで各大臣は、そのことについては認めます、そのとおりだという答弁を何回も得ているんですけれども、それ以降のこれに対する問題解決の方法は、お金を貸しますよ、低利貸し付けの用意をしましたよ、こういう答弁なんです、ちょっと時間の関係で全部先取りしちゃってやっていますけれども。それを踏まえた中でも、弱小の業者にとっては、まだ倒産というのは相当続いてきたんです。

 その事実をどこまでつかんでいますか。

若林国務大臣 委員はまとめていろいろとおっしゃったものですから。認識の違いもあるんですよ。NOx・PM法が何かあたかも悪法であるかのような認識をしておられますけれども、しかし、このことによって、委員の地元であります四日市、愛知の地域もそうですが、東京周辺あるいは関西の地域などの交通渋滞の激しい地域の大気汚染がかなり改善されてきているわけであります。

 それじゃ、そういう規制を全国一度に網を張ってやるか、それとも一定の地域を絞ってそういう車種規制などをするかという問題がまずあったわけであります。

 その地域を絞って、先ほど零細企業というお話がございましたけれども、実は貨物自動車は非常に零細なものなんです。申し上げますと、平成十八年度末の三月三十一日でいいますと、十両以下が五四・五%、十一両から二十両までのものを入れますと七六・八%ですよ。三十両以下がもう八六%なんですよ。(中川(正)委員「もういいよ、そんなこと聞いていない」と呼ぶ)

金子委員長 簡潔に頼みます。

若林国務大臣 だから、全体が中小企業であって、大企業もいないわけじゃありませんけれども、中小企業対策ということを念頭に置きながらこの制度を組んだんです。

 そこで、一定の指定地域内に車庫を持っている事業者、これは非常に蓋然性が高いんですね、その中で営業している。そこで、高いところをまず規制した。

 しかし、おっしゃるように、その地域外の車も規制をしなければならないような事情も出てきておりますから、今度の検討に当たっては、地域外の流入車に対しましても一定の規制をかけながら、局地的に残った地域の大気汚染対策に有効な措置を講じたい、こんなふうに考えて今進めておるところでございます。

中川(正)委員 そうすると、流入規制をかけるんですね。

 というのは、私は、これを公平にすべきだと言い続けてきたんですよ。例えば、やり方として、東京都は独自の規制で流入規制をかけているんです。だから、東京都に入ってくる車というのは東京の基準に合わさなきゃいけない。外の車であっても、そうした装備をつけていないと東京の中に入ってきてはいけませんよ、そういう形で規制をしているんです。それだと、東京の中で運搬事業をやっている人たち、あるいはたまたまここに車庫のある人たちでも、外で営業している人たちでも、東京圏の中での営業というのは公平に行き渡る。それが正しいやり方じゃないかと言っているんです。

 それを、環境省の場合は、実情を見ずに、頭の中で都合よく考えて、いや、車庫が登録してあればそれでいいだろうということで車庫でやったものだから、そこでいろいろな矛盾が出てきている。特に、その中で競争力の弱いところへ向いてしわ寄せが今行っているということを指摘しているんです。

 だから、早いところこれも流入規制をやったらいいじゃないか、トータルで、その地域に入ってくる車については、九州から入ってきても北海道から入ってきても、東京に入ってくる車、あるいは中部圏あるいは大阪に入ってくる車というのはそうした一律の公平なコントロールができますよというシステムをなぜつくらないんだ、こういうことを言い続けてきたんです。

 だから、そういう意味で、さっきの答弁で、流入規制するということだったら、それでいいんですよ。

若林国務大臣 時間が十分でない中で御自分の主張をしておられますが、答弁は、きめ細かくしなければ誤解を招くんですよ。

 流入規制というのも、今、東京都が周辺三県と相談しながら条例上で講じているような地域もございます。そういうようなことをそのまま全国的に広げようという意図ではございません。それぞれの地域の実情に応じて対応していただきたいのでございますけれども、今、二十三日に報告をいただいて、部内で検討しております。

 まずは、流入してくる車につきましては、ステッカーを張って、基準を守っているか守っていないかというようなことを、中に入ってくるものはみんなステッカーを張ってもらう。そのことによって、いわばユーザー側からの排出に対する要請というようなものに応じているのか応じていないかといったようなことを、ある種のプレッシャーでございますけれども、そういうようなことを通じて効果が出るようにする。いわばステッカー制度というようなものを導入するといったようなことで関係省庁と協議してまいりたいと思っております。

中川(正)委員 ステッカーを張ってどうなるんですか。

 私が今指摘しているのは、環境行政というのは、よくこういうことになるんですけれども、いわゆる経済の市場原理というのをしっかり頭に入れておかないと、とんでもない形でそれをゆがめてしまうんだ、一部に対して負担が大きくかかっていって一部が利益を得ていくという構造になってしまうんだ、その一例がこのNOx・PMで、しかも、格差と言われていますけれども、その中で零細の小さなところへ向いてこの法律は一番負担がかかっていくんだというところを今指摘しているわけです。そのことを歴代の大臣は認めているんです。

 解消するためには、どういうふうに公平性を持っていったらいいか。これは、競争原理を同じテーブルにのせたらいいということでしょう。だから、私は、規制をするなと言っているんじゃなくて、もっと規制をかけろという意味で言っているんですよ。最初のあなたの印象では逆をとらえておられますけれども、全然違うんです。規制をかけてしっかり頑張りなさいよ、こう言っているんですよ。そのかける方法として流入規制があるじゃないか、なぜそこまでいかないんだということを言っているんですよ。それに対して答えてください。だから、ステッカーを張るなんというような話じゃないんですよ。

若林国務大臣 環境に適合した車種に切りかえていくということは、全国的な問題でありまして、今委員おっしゃるようなものは一般基準として対応をする。流入車がどうとかいうようなことじゃなくて、一般的な基準として規制を全般に及ぼしていって、新しい車に切りかえるときは新しい車種に切りかえてもらうというようなことを進めているわけでございます。

 流入車の問題につきまして、今地域内で行っているのと同じような形で今後車種の切りかえ、規制をするとなると、これは大変なチェックが必要になって、大変な行政コストもかかりますし、中小企業者に対する大変多くの負担がかかるわけでありますから、やはり蓋然性の高い車についてはそのような努力をお願いするという今の方式が基本的には適切だ。これは中環審の方の検討の結果もそういう結果になっているのでございます。

中川(正)委員 大臣はよくわかって答えておられるんだろうと思うんですが、東京都は確かにステッカーを張っているんですよ。そのステッカーを張ることによって、さっきの規制管理をしているわけですよ。この車は適合車か適合車でないかというのを見ながら流入車に対してコントロールしているわけですよ。

 東京都でできて、何で国でできないんですか。何があるんですか、ここには。

若林国務大臣 そのような流入車規制を公平に徹底しようとなりますと、大変な行政上のシステム、体制を整えなければできないわけでございまして、東京都はいろいろな事情の中から踏み切った。特に東京は、今、大気の汚染が激しい局地、そして平成二十二年までの目標年にこれをクリアすることが難しいという地域も抱えている、そういう東京都独自の事情がございます。そういうことについて、その行政コストを考えながらもそれに踏み切ったわけでございまして、我々は、それを大都市圏全体に及ぼすというのは、非常に行政コストが高く、かつ、中小零細な輸送業者に対する負担が重いという認識をしているわけでございます。

中川(正)委員 残念なことに時間が来てしまいましたが、では東京でどれだけ行政コストがかかっているんだと、こんなのを表に出したら、それはさっきの答弁は恥をかきますよ。そういうことじゃないでしょう。

 だから、もう少ししっかりと環境行政の中で市場原理というのを見ていただきたい。その中に乗せていって初めていろいろな具体的な効果が出てくるんだということ、このことを指摘しておきたいし、今度の改正の中でぜひ流入規制を導入すべきだというふうに思っております。

 伊吹大臣、時間配分がうまくいきませんでした。またの機会を楽しみにしながら。済みませんでした。

 以上です。

金子委員長 これにて中川君の質疑は終了いたしました。

 午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時開議

金子委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。大串博志君。

大串委員 民主党の大串博志でございます。

 きょうは一時間という時間、早速質疑に入らせていただきたいというふうに思います。

 まず冒頭に、地方分権のことについて少し触れさせていただきたいと思います。

 前回、前原委員からの指摘もありましたけれども、この内閣、地方分権の問題について右に向いているのか左に向いているのかよくわからないというのが正直なところでございます。具体的なところで問わせていただければというふうに思うんですが、一つは、今回、頑張る地方を応援するということで、頑張る地方応援プログラムというのがつくられております。地方交付税を使って、自主的に頑張る地方を交付税で応援していこうというもの、これがございます。

 もう一つ、先般総務大臣もお話しになりましたけれども、新型交付税というものがあります。これは、総務大臣、この間も御説明されましたけれども、交付税の算定方式が極めて煩雑といいますか複雑だ、これをシンプルにして予見可能性があるような形にしていきたい。ですから、算定基準を、人口とかあるいは土地の広さ、こういうふうなものに統合していこうというものでございます。

 今の政府が地方分権を本当にしようとしているのか、それとも中央の、むしろ集権しようとしているのじゃないのか、ここが非常によくわからない。

 例えば、頑張る地方応援プログラム、これは先ほど申し上げました新型交付税の算定方法を簡素にするという観点からすると、逆行しているんですね。すなわち、頑張る地方応援プログラム、資料もお配りしましたけれども、冒頭、資料に頑張る地方応援プログラムの内容をつけておりますけれども、二ページ目を見ていただくと、この二ページ目の真ん中ほど、(2)支援措置1地方交付税による支援措置、ことしは二千七百億円程度ですけれども、ここの点線の四角の囲みの中にあります行政改革指標、農業産出額、製造品出荷額、事業所数、出生率、転入者人口、小売業年間商品販売額、若年者就業率、ごみ処理量、こういうものがプラスに動けば動いた幅の分だけコストが多くかかっているだろうという考えのもとに、それに対して交付税をつけますと。つまり、この部分だけ交付税の算定措置はいわゆる補正係数としてより複雑に加わってくるわけですね。

 ところが一方で、新型交付税ということで簡素にしようと。この新型交付税、今、地方の方から一体どうなるんだろうかと非常に不安の声も上がっています。

 菅総務大臣、交付税を単純にしようとしているのか、それともより複雑にしようとしているのか。すなわち、単純にすればより自主性は高まります、複雑にすれば国の裁量は高まります。一体、この内閣はどちらの方に向いているんでしょうか、お答えください。

菅国務大臣 単純にして地方分権を進めたい、そういうことであります。

大串委員 新型交付税を入れられた、交付税の抜本的な簡素化を図りという考え方と、頑張る地方応援プログラム、この交付税の算定、補正係数がふえる、これは相矛盾しないんですか、お答えください。

菅国務大臣 まず、ぜひ地方の現状を考えていただきたいと思うんですけれども、全国どこに行っても地方にはそれぞれ特色があって魅力があるわけでありますから、そこの地方が頑張るものを引き出したい。そういう形の中で、頑張る地方応援プログラムというのをつくらせていただきました。それについて、今委員から御指摘のありましたように、それぞれの項目がふえることは事実であります。そして、一方において、新型交付税、これによって九十数目の算定項目が実は六十数目になって、簡潔になって、そしてまた予見可能を高めることも事実であります。

 このことだけをとってみますと、委員の指摘のように、どっちを向いているんだということになりますけれども、昨年、地方分権改革推進法案、成立をさせていただきました。その法案の中で、国と地方の役割を明確に分担して、国から地方へ権限と財源と税源を移譲させたい、このことを強く行っていきたいと思います。そこまでの間の措置として御理解をいただければありがたいと思います。方向性は、あくまで地方分権です。

大串委員 あくまでも過渡的な措置ということでしょうか。であれば、将来に本当の地方分権の世界が待っているのかと申しますと、私は非常にそれは疑わしいと思っています。

 例えば、地方分権推進法、先般国会を通過しました。この内容に関して、私としては非常に満足していない者の一人でございまして、委員の皆さんはどのぐらい条文を読まれたかわかりませんが、地方分権推進法、以前にもこれはつくられております。地方分権推進計画というのがつくられて、九九年には分権一括法なるものができておる。しかし、前回の地方分権推進法のもとで本当に分権が大幅に進んだという評価の声は、いまだに聞いたことがありません。

 そういう中で、ところが、今回の地方分権推進法、法文の内容、文章を見ておりますと、目的規定から、その次まで含めて、条文、前回の地方分権推進法と、若干内容が違うところもありますけれども、ほとんど同じです。前の地方分権推進法のもとで、どのように地方分権が進んでいかないかということを、私、当時大蔵省の主計局で目の当たりにしました。地方に対する奨励的補助金をなくしていこう、こういう自主性を高める動きに関して、各省がいかに抵抗し、従わなかったか。それを政治も守るんですね。

 だから、前回と比べて何ら、法文上も含めて、進歩する内容が入っていない今の分権に関しては、私は非常に、政府として分権を本当に一生懸命進めようとしているのか、疑問を持たざるを得ません。

 もう一つ、より具体的なところでお尋ねさせていただきたいんですが、文科大臣にお尋ねさせていただきたいと思います。

 教育再生の取り組みでございますけれども、午前中も議論がございましたが、いま一度御意見をお聞かせいただければと思います。教育再生会議のもとでは、教育委員会に関する国の関与に関しまして、一定の条件のもとで是正し、指示する、そういう国の権能を地方教育委員会に対して持たせなければならないということが勧告といいますか、まとめられており、一方で、規制改革会議の方では、それに対して、二月に入ってからでございますけれども、そのような、中央が地方に対して是正、勧告するような制度を入れることは規制改革の観点から適当でないと、政府の中でも割れている。

 かつ、地方団体の方からは、今回の教育委員会に対する国の勧告、是正権は地方分権に逆行する、これも分権一括法で自治事務ときちんと整理し直したところでございます、自治事務なんだから、それに対して勧告、是正というのは論理的にもおかしかろうと。

 もっともなことだと思うんですが、この点に関して今、中教審で議論されていると思いますが、文科大臣の御所見をお願いします。

伊吹国務大臣 大串委員も行政の御経験がおありですからおわかりだと思いますが、再生委員会は、これはもう閣議決定で決めた、総理の教育に対する一つの意見具申機関です。ですから、再生会議で何か言ったからやるという筋合いのものではないんです。

 法律提出権を持っているのは、御承知のように、国会と行政府である内閣ですから、内閣の長である安倍総理が、ひとつ教育委員会の法律も含めて三本の法律を国会にお諮りしてくれないかということを私におっしゃいました。その際、再生委員会の意見も参考にしなければなりませんし、規制改革委員会がおっしゃっているのも、是正命令権を入れちゃいけないとは言ってないんですよ、よくお読みになると。

 御承知のように、日本の統治システムというのは、憲法上、主権は国民にあるわけですから、国民は正当に選んだ代表をもって自分の意思をあらわすわけですから、国会がまさに国民の意思なんですね。国会で決めた法律どおり行われない、特に義務教育あるいは普通教育について、最終的に、行っている自治体と行っていない自治体が出てきたというのが、未履修の問題なんですよ。

 だから、私は、今、中教審にどうするかということをお伺いしている立場ですから、私が余り意見をぺらぺらしゃべるのは適当じゃないと思うんですが、一言で言えば、地方分権はどんどん進めた方がいい、そして、学校長にできるだけ権限を与えて闊達にやらせた方がいい。しかし、ちょうど市場経済においても、公的介入は余り望ましくないけれども、最後に、国会で決めた法律が守られていない場合には、検察が出ていき、そして公取が出ていくわけですね。そういう権限だけは担保しておかなければいけないなということです。

大串委員 考え方については、おっしゃることはわかります。しかし、今議論になっていることは、基本的には、国会で決めたことが国の法律になるというのはそうなんですが、憲法で決められた考え方、基本的な法の骨格をもとに国の法律というのはできているんですが、その中でどういうふうに地方分権していくかというのは、また一つの制度のつくり方としてあると思うんです。

 そこに関して、今の内閣がどちらの方に、地方分権を進めようとしているのか、それとも中央集権にしようとしているのか、そこの動きが私にはいま一つはっきりしないように思います。むしろ、どちらかというと、中央集権化の方に向かっているんじゃないかなというふうな思いすらし、それに関してはある一定の危うさを感じているということを申し述べさせていただきたいというふうに思います。

 次の論点に参らせていただきますけれども、ここで、済みません、質問通告の順番をちょっと変えさせていただきまして、沖縄の問題から先に議論させていただければと思います。

 といいますのは、沖縄のいわゆる大学院大学の開発の問題につきましては、先般来、議論が国会の中でも行われてきたところでございます。その中で、馬淵委員、それから原口委員の方から、事実関係の確認、そして資料の請求も含めてなされておりました。

 特に、直近のところでは、沖縄関係につきましては、これまで、白雲荘の改修工事にかけて、競争入札、そして随契、このやり方に関して適切でないところがあるんじゃないかという議論が展開され、その中で答弁も二転三転する中、それではということで、資料をぜひ提出していただきたいと。

 すなわち、これまで、機構と内閣府、そして必要に応じて財務省の間で、予算及び決算、資金の使い方でございますので、そのやりとりがあったでしょう、そのやりとりに関して資料を出してくださいというのが先般来の原口委員からの問いかけでありまして、それについて、国会のこの審議の場でも、誠実に対応したいと思いますという答えが返ってきていたところであります。

 さらに、これに関して、競争入札、随契と非常に不透明、不自然な資金の流れ、使われ方をしているところから、政治家の関与がどこかであるんじゃないか、働きかけがあるんじゃないか、もしそういうことがあったら大変だから、政治家の関与、働きかけがあったとしたら、その資料も開示していただきたいというふうなことも申し上げ、それに関しても、高市大臣も、情報公開法の趣旨も含め、きっちり提出していきたいということも申していらっしゃいました。

 それが、今段階まで、きのうの夜もほとんど夜中までかけて議論し、けさも議論しておったところでございますが、つい先ほどまでまたこれも議論しておったところでございますけれども、資料がほとんど出てきません。そういう中での審議であると、非常にそこはこの審議の実質を欠かしめるものだというふうに、問題は大きいというふうに言わざるを得ないと思います。

 委員長に重ねて、原口委員から明確に、前回の先週末の質疑のときに、内閣府や財務省とのやりとりについて資料をすべて出してくださいということ、そして、働きかけが政治家からあった場合にはその資料を出していただきたい。そしてさらに、審議に関して答弁が二転三転したその経緯について説明してください、こういう点に関して提出してくださいということは明らかに申し述べております。この資料の提出、促進されるよう、委員長、よろしくお取り計らいください。

金子委員長 委員長から申し上げます。

 既に先般の理事会でも、資料請求について、資料担当理事間でお話をしていただいておる、一定の前進を見ておるというのを理事会で聞いております。さらに、十分なのかどうかということについては、不十分であるとすれば、それは理事会で協議をさせていただきます。

大串委員 前進はありません。その議論もさせていただきますけれども、前進はありません。ですから、資料に関してはぜひきちんと出していただくようによろしくお願いしたいと思います。

金子委員長 理事会で協議いたします。

大串委員 この機構の問題、随意契約、資料できちんと見ていただいた方がいいと思います。済みません、分厚い資料になって大変恐縮でございましたけれども、きょうはほとんどもらえませんでしたけれども、前までもらった資料を焼き直しでつけさせていただいておりますけれども、時系列でちょっと確認させていただきたいと思います。

 九ページでございますけれども、これがよくわかると思いますのでこれでやらせていただきますが、白雲荘の改修工事、十一月九日に日建設計・コーンバーグ・国建共同体に実施設計が発注され、その実施設計が十一月三十日に出てきているわけでございます。そして、先般の説明では、このうち、三つに分けて、その1、その2、その3というふうな議論がありました。その1については十二月十二日に入札を行った。これを國場組が落札されたということでございます。そして、その2、その3については、もう一度理由をきちんと聞かせていただきたいと思いますが、同じく、密接連関性の高い事業であるということで、随契ということの御説明がありました。

 では、ここで改めて問わせていただきます。その2、その3が随契になった理由について御説明ください。事務方の方で結構です。

三木参考人 お答えいたします。

 契約の三つのうち、その2、その3につきまして随契とした理由ということでございますが、当該工事が既に進められております工事と重複しておりまして、工事内容も密接に関連しておりますため、同じ業者に発注した方が施工の品質を確保することが可能である、工期も短縮できるというのが大きなところでございます。あわせまして、施工期間が非常に短い中で重複しておりまして、現在、その時点で使用しておりました仮設物あるいは安全施設、こういったものの継続使用が可能でございますので、共通施設経費の軽減等、同じ業者に発注する方が有利である。

 こういった判断から、落札業者に見積もりを求め、当該業者に見積もりを求めまして、その見積もり額について審査したところ、適正でありましたために、随意契約にさせていただいたものでございます。

大串委員 今の随契、単なる随契の理由なんで、ちょっと質問のやり方が私も悪かったかもしれない。変えまして、その1、その2、その3と分割した理由は何だったのか、これについてお答えください。

三木参考人 お答えいたします。

 予算的に内示いただいた数字というのがございました。これは、実質的にきちっと仕事ができるものであったとは存じますけれども、非常にタイトなものでございまして、世界最高級の大学院大学を条件的に厳しい沖縄につくる、そしてまた世界トップの方に来ていただく、そういうことでございまして、非常にいいものを財政事情が厳しい中でもつくらせていただきたい、また、そういった要望が理事長あるいはさまざまな研究者の方々からございました。そういうことで、査定の予算が少しオーバーする、そういった要望が積み重なりまして、予算が足りなくなったのは事実でございます。

 しかし、第一号の予算といたしましては、制約がございますので一つにまとめようとしまして、入札をいたしました。その時点で一つの、本体工事そのものはまとめたということで入札いたしました。

 しかし、結果といたしまして、当時の沖縄の経済事情、あるいは、いろいろな事件と申しますか、公正取引委員会の調査とかがございまして、結果的に入札の価格が非常に下がりまして、資金的に、補助金でございますけれども、余裕ができた。そういうことで、二として追加的に、プライオリティーを下げていた、外されていた事業をやりまして、それで結果的に、その1、その2という本体そして外構工事ができることとなった次第でございます。これにつきましては補助金でございました。

 その3としてもう一つ随契がございましたけれども、これは内装工事でございまして、本体に付随する工事でございまして、これにつきまして、あわせてその内装工事ということでやらせていただいた。

 その三つの工事を分かれて結果的にやらせていただいた次第でございます。

大串委員 今お話がありました。中心的な理由は、もともと策定していた予算、これをつくってみよう、その1、その2、その3をつくってみようとしたときにはオーバーすることが設計が完了したときに判明したということでしたね。

 それではお尋ねしますが、当初検討されていた予算額、そしてオーバーした、恐らくそれは十一月の半ばごろにわかったんだと思いますけれども、オーバーした額、これは幾らだったのか、これらについてお答えください。もし、理事、お答えになれなかったら、もうお一方の技術者の方の答弁でももちろん結構です。どちらでも結構。お願いします。

三木参考人 施設整備補助金として国から当初いただいておりましたものは、三億三千万でございました。これが、五億五千万余となった次第、要望と申しますか、見積もりではそういうものが出てまいりました。

大串委員 我々は資料をもらいました。予算額としてもらっていらっしゃるのは、この資料によると、二十二ページ目ですけれども、十月の十七日に施設整備補助金として三億三千万、これが今おっしゃった予算ですね。確認できました。それで、あと、これが予算として十一月十七日に交付決定されて確認されていた予算だということがわかりました。

 そして、では、設計段階でどれだけ額がオーバーしたのか。これは先般の原口委員の議論でもありましたけれども、資料でいうと十七枚目に、直接工事費として四億三千五百万、これが書かれております。これがオーバーしたんだというのが前回の説明でありましたけれども、今、五億五千万という話がありましたが、五億五千万とこの四億三千五百万の関係はどういう関係ですか。

三木参考人 その差額は一般管理費等でございます。四億三千万が直接工事費でございまして、その差額が一般管理費等ということでございます。

大串委員 今話がありました。四億三千五百万、これが直接工事費で、一般管理費を入れると五億五千、五億六千、大体、率でいうと二五%ぐらい。こんなに大きな一般管理費が乗っかってくる工事というのもどうかなという気がいたします。

 この点についてもやはりしっかり、公共工事だから緩くていいということじゃなくて、後々精査していきたいと思いますが、これが四億三千五百万。すなわち、これに一般管理費を入れると五億五千万、六千万。これが出てきたのはいつですか、お答えください。

三木参考人 お答えいたします。

 五億五千万余の予算が出てきたのは、十一月半ば、十一月十八日だったと思います。

大串委員 十一月十八日に、今の四億五千あるいは五億五千という非常に予算額をオーバーしたものが出てきた。

 それでは、この設計を発注されたのはいつで、発注されたときにはどのくらいの予算額でこれをやってくれと発注されたんでしょうか、お答えください。

三木参考人 お尋ねは実施設計の発注ということでございますが、十一月九日、いただいていた予算が三億ないしは三億三千万、設計とかいろいろ入れても三億三千万でございますので、基本的にはそれを前提としてございましたが、オーバーの予算が結果的には出てきたということでございます。

大串委員 今、日程をちょっと振り返ってみたいと思います。

 この九ページの資料にもありますけれども、十一月九日に日建設計・コーンバーグ・国建共同体に実施設計について発注をした。そのときに、三億円でこの工事をやってくださいということで発注をしていらっしゃるということでございますし、それは確認できました。

 であるにもかかわらず、先ほどおっしゃいましたように、九日後の、たった九日後の十八日、五億五千万、六千万というほぼ二倍近い費用の見積もりが出てきている。これは一体どういうことですか、お答えください。

三木参考人 私ども、管理を預かっております機構の事務当局といたしましては、いただいた予算が基本でございますので、三億でお願いしたところでございますが、冒頭申し上げましたように、基本的な施設はそれでできますものの、やはり沖縄という特別な、条件的に悪い地点で、しかし、財政的には厳しゅうございますが、世界最高級のモデルになるような、ランドマークになるような第一号の施設を恩納村内に設置する。世界的にトップの先生に来ていただいて、また学生さんにも来ていただきまして、いいものができると……(発言する者あり)

金子委員長 御静粛にお願いします。答弁中です。

三木参考人 そういうお考えが強く先生方、理事長、あるいはボード・オブ・ガバナーズというノーベル賞学者で構成される委員会がございますけれども、そういった先生方から強く御意見が出されまして、そういう意見が反映されまして、設計側が……(発言する者あり)

金子委員長 御静粛に願います。

三木参考人 それは、非常に、設計側の方にそれが反映されたところでございまして、我々は抑える努力はしたところでございます。

大串委員 ぜひきちんと答弁していただきたいんですけれども、委員長に一言申し上げておきますが、先ほどおっしゃったように、理事長やボード・オブ・ガバナーの皆さんからいろいろな意見が途中でありました、それで予算が膨れ上がりました、そういうメモ等々のやりとりもあるはずなんです。そういうことも出てきておりません。

 そういうことも含めて、これは先般の国会の議論で明らかになりましたが、施設整備補助金ですから、施設整備補助金は運営費交付金とは違って、一本一本の要求、つまり申請ですね、そして交付という行為がございます。ですから、見積もり等々もしっかりあるはずなんです。

 こういうあるはずのものを全くゼロ回答というのがこの国会の審議を妨げている、そういうことで、先ほど私、申し上げたところでございますので、ぜひ、資料に関しては、大臣からも答弁をいただいておりますので……(発言する者あり)今ないんですか。

 先ほど申しましたように、三億三千万、これをつくった、このときの詳細な資料、三億三千万で本当はできるはずだと思って予算請求、つまり施設整備補助金を要求されているはずなんですよ。そうでなければ、すなわち当初から見積もりがへんてこりんな予算だということであれば、まず予算要求のあり方からおかしいんじゃないかと問われなければならない。

 そうであってはいかぬというふうに思いますので、まず、施設整備補助金の三億三千万というふうに要求したときの詳細な内容、それは、その1、その2、その3を含んでいたものではなかったのか。そして、世界最高級のものをつくれつくれと先生方がおっしゃっている、その声は当然聞かれていたでしょうから、それを踏まえたものと当初からなっていなかったのか。その辺はいかがでしょうか。資料があるんだったらぜひ今お出しいただいて、かつ御答弁いただければと思います。どうぞ。

三木参考人 資料につきましては、先ほどまで先生の目の前で、あるものをお見せしながらお渡ししたりしておりまして、誠実に対応してきたつもりでございますが、不十分なところがありましたとすれば、おわびいたします。

 なお、予算につきましては、機構が発足したのが二〇〇五年の九月でございますが、予算要求そのものは、機構が発足いたしますはるか前、一年以上前に要求されておりまして、それについては、ちょっと今現在私どもの方では持ってございません。

大串委員 こうやって話していると、少しずつ、いかに資料請求に対して対応していただいていないかということがわかってくるわけでございます。

 先ほどの、理事長やボード・オブ・ガバナーの方々が最高級のものをつくれつくれというふうにおっしゃった、そのメモはあるはずです。特に、理事長は常に日本にいらっしゃるわけではない、私はそのことも問題にしたいと思いますが、時々といいますか、定期的にこの地を訪れていろいろな会議をやられていく。そのときの会議の会議録はすべて残っているはずであります。そういうのも出されていない。

 この点も問いたいし、かつ、今話がありました施設整備補助金に関しては、機構ができたのが昨年九月、その一年前に予算要求していたんだと。つまり、機構に関するこの予算に関して予算要求し、内閣府や財務省とやっているわけじゃないですか。そういう資料もあるはずです。ところが全然出てきていないんですよ。その点、資料があったらぜひお出しいただけますか。御答弁ください。

三木参考人 予算要求でございますので内閣府とは存じますが、お出しいたすようにしたいと思います。

 それから、資料につきましては、本当に誠心誠意出しているつもりでございまして、理事長との打ち合わせにつきましても、先ほど、部分的には、ある範囲でとりあえずお出ししておりますので、その辺は誠心誠意やっていることを御理解いただきたいと思います。

大串委員 頑張ってやっていらっしゃることはお認めします。しかし、国会の場です。予算がどういうふうに使われていくか、税金がどういうふうに使われていくか、国民の皆さんがかたずをのんで見守っていらっしゃる。ですから、極めて緊張感を持って、かつ誠実、単なる誠実じゃなくてやっていただきたい。

 きのうの晩でも、資料はあるんですかと夜の十二時近くまでやりましたよね。あしたには出そうと思います、あしたには出そうと思いますということでした。しかし、朝出てきたものは、それまでのこういうふうな要求資料も含めたやりとりの資料ではなく、つい最近、これまでの経緯をまとめた二、三枚の紙でした。これのどこが誠実な対応と言えるのか。私はその点、大きな声でお訴えしたいというふうに思います。

 内閣府の方にもお尋ねしたいと思います。先ほど話のありました施設整備補助金の予算要求資料、これはないはずがないし、それに向けてどういう検討をしたかという資料がないはずはない。なぜそれを出されなかったのか。出されない理由があったのか。議事録をよく読んでいただきたいと思います。この件について、内閣府や財務省とやりとりのあったものは出していただきたい。どこをどう読んでも、明らかにしゃべっております。

 内閣府の方にお尋ねします。なぜその資料を出されなかったのか、何かまずいことでもあったのか、ぜひお答えください。お願いします。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 これまでの委員会での御議論の中で、施設整備費補助金の申請に係る内閣府や財務省あるいは機構との間のやりとりということでございましたので、補助金の申請等の資料はお出ししたところでございますが、さらにお求めの資料があれば、それはちょっと確認の上、あれさせていただきます。

大串委員 今、施設整備補助金の資料はお出ししましたとおっしゃいましたよね。確かに、前回、申請した資料、申請書、それから交付書、それはいただきましたよ。しかし、そこに明らかに、添付でこういう資料がついています、関連資料はこういうのがついていますと表に書かれているにもかかわらず、関連資料、全部のけてしか出してきていないじゃないですか。先ほど、三木理事もおっしゃった。一年前に既に施設整備補助金は予算要求されているじゃないですか。予算要求の資料も当然あるはずですよ。なぜそれを出されないのか。そのところ、もう一度御答弁ください。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 予算要求の資料につきましては、先ほど御説明の中で御要求がありましたので、確認して、お出しできるものはお出しさせていただきます。

大串委員 極めて不誠実な答弁だと思います。

 よく聞いてください、局長。議事録を読ませていただきます。原口議員のこの間の議論です。これは塩崎国務大臣からのそれに対する返答ですね。機構と内閣府、それから内閣府、財務省、こういった間にしかるべき書類が残っているのではないのかという原口委員の御指摘でございます、存在は私自身はまだわかりませんので確認をいたしまして、存在するならばしかるべき手続にのっとって御提示をしたい、こう思います、こういうふうに官房長官おっしゃっているんですよね。

 そして、三木理事、今おっしゃった、去年予算要求していると。予算要求に紙を使わないで予算要求しているなんて私は知りません。紙を使っているはずです。それを出されていない。どういうことがあるんですか。なぜ出していらっしゃらないのか、そこをぜひもう一回御答弁ください。

清水政府参考人 予算の要求についての資料、先ほどお求めがございました。それで、とりあえず、私どもで今ございましたのは、予算執行協議に関する資料が今ございましたので、これについては後ほど提出させていただきたいと存じます。(発言する者あり)

金子委員長 ちょっと速記をとめて。

    〔速記中止〕

金子委員長 速記を起こしてください。

 もう一遍、大串博志さん、質疑をしてください。

大串委員 では、一言。

 三木理事がおっしゃった施設整備補助金、聞いているんですか、三木理事がおっしゃった施設整備補助金の要求した資料、要求されたと、去年要求したとおっしゃっているんだから。要求資料は当然、内閣府と財務省のやりとりの資料でしょう。それを塩崎官房長官が出すとおっしゃっているんですよ。持っているなら出してくださいよ。

清水政府参考人 概算要求書資料については、速やかに提出させていただきたいと存じます。

金子委員長 では、委員長から沖縄振興局長に聞きますけれども、今持っているんですか、今あるんですか。

清水政府参考人 今、手元にはございません。

金子委員長 大串委員に聞くよ。あなたは、ちゃんと振興局長と話をされて、この資料を出してくれと言ったのね。(大串委員「当たり前ですよ」と呼ぶ)要求したのね。(大串委員「要求しています、全部出してくださいと」と呼ぶ)

 清水局長に聞くよ。あなた、要求されて出してこないの。

清水政府参考人 きょうの予算委員会の始まる前の、先生にレクを申し上げるときに、予算要求について資料があり、それは至急確認して提出するとは申し上げてございますが、ただいま、まだ手元になかったという事情でございます。

金子委員長 では、速記をとめよう。

    〔速記中止〕

金子委員長 速記を起こしてください。

 質疑を続行いたします。大串博志君。

大串委員 今、手元に二枚の紙が参りました。先ほど三木理事は、施設整備補助金だから去年九月に機構ができたその一年前……(発言する者あり)ああ、そうですね、おととし九月にできて、その一年前に施設整備補助金の予算要求はしていますというふうにおっしゃっていた。予算要求しているならば、そういうやりとりもあるでしょう、それを、そういうやりとりを出してくださいというのが、もともと国会での原口委員の指摘でした。ですから、資料があるんだったら出してくださいと。

 この二枚の、これはもともと見ると、何ですか、要求額、金額、計のところに六億という額があって、それが横棒で削られていて、三億三千四百四十二となっています。横棒で削られているがゆえに、恐らく、上の方のいろいろな各資金の項目もいろいろ横棒で削られていますけれども、これは一体何の資料ですか。

清水政府参考人 概算要求のときの資料でございます。

大串委員 清水局長も財務省にいらっしゃったから、概算要求はいつやるか御存じですよね。概算要求というのは八月の末までにやります。概算要求の資料というのは、この横線が入ったりしません。今の答弁は虚偽の答弁だと思われますが、言い直されますか。

清水政府参考人 ただいま御提出しましたのは、概算要求の資料に査定が入って、この補助金の最終的な十七年度の予算額三億三千万という数字が手書きで入っているかと思います、その経過がわかる資料ということで取り急ぎお持ちしたものでございます。

大串委員 概算要求の資料という言葉は訂正されて、要求資料に対して査定が入って、だからこういう横棒が入って、削られて、もともとは六億要求されていたんだけれども、それが三億三千になった、こういう資料ということですね。

 これがそうだとするならば、お尋ねしますが、この予算要求をしたときに、基本的には、予算要求ですから、何をつくる、何をどう整備するというのはきちんとプランをつくった上で、現実性もきちんと考えた上で予算要求をするのが、予算という大事なものを使う上での態度だと思います。

 この三億三千、今回、工事はその1、その2、その3と分割発注されてしまっているわけですけれども、予算が足りなかったからという理由で。この三億三千、もともと六億予算要求して三億三千になっているわけですけれども、その1、その2、その3が今つくられようとしている形の中でできるという前提できちんと精査されていたものと理解してよろしいですか。お答えください。

清水政府参考人 機構の事務棟、セミナー棟として利用いたしますために、旧白雲荘の改修工事として要求したものでございまして、それが、具体的に機構が発足してから今御指摘のような一番目のその1、その2、その3に対応してくるものと承知してございます。

大串委員 今の答弁、確認させていただきたいと思います。

 この三億三千万の予算、その1、その2、その3工事に対応したものだということが今確認されました。ところが、先ほど来議論のありましたように、この日程表にまた戻りますが、十七年の十一月九日、実施設計を発注して、三億円でやってくださいね、三億円という予算でできるような計画をしてくださいねというふうな発注をしたにもかかわらず、十一月十八日と先ほどおっしゃいましたが、ほんの九日後の十八日には、何と三億どころか五億五千万、六千万という額での費用が上がってきている。この予算要求、査定は一体何だったんですか。お答えください。

清水政府参考人 内閣府の方からこの要求について御説明申し上げ、財務省より査定をいただいたものでございます。

大串委員 資料の性質、物を聞いているんじゃないんです。

 今おっしゃった、三億三千万という予算要求をされて、予算をとっていらっしゃるわけです。そして、明確にこれも国会で答弁されました、今まで答弁が二転三転されたこともありましたけれども、今も明確に答弁された。その1、その2、その3に対応するものだということで、三億三千万の予算をとったんだとおっしゃいました。

 ところが、先ほど来議論の中で明らかになってきているように、十七年の十一月十八日には、設計を発注してほんの九日後、三億三千万から一・五倍ですよ、五・五億、五・六億というコストが設計会社から返ってきているんです。そして、先ほど申し上げたように、コストがふえているから、資金に合わないから随契だというふうな説明をおっしゃった。

 だから、もともとのこの三億三千万が正しい査定だったのか、正しい要求だったのか、正しい金額だったのかというのが、随契が正しかったかどうかということのコアのところにかかってくるわけです。そこで尋ねている。三億三千万、その1、その2、その3、入っている。しかし、十一月の十八日には、五億五千、六千万、そういうコストが設計士から上がってきている。これはどういうことですかということをお尋ねしているんです、お答えください。

三木参考人 お答えいたします。

 当初いただきました三億三千万という予算、これは国の査定でございますので、当然ながら重く、これは施設の整備の基本的なものを整備するためということであったと思います。

 冒頭申し上げましたように、やはり理事長を初めとしましてトップサイエンスの皆様方から、世界最高水準の大学院大学をつくる、また、いい環境を一つのモデルとして沖縄の地にお見せする、いろいろな方がお見えになったときに、おお、いいものができると、沖縄に自立型の経済の基盤をつくるための一つの施設として有力なものをつくる、そのランドマーク、最初の施設にしたい、またそうあるべきだという議論が、予算の査定の一年の後に本格的な機構の活動がなりましたときにほうはいとしてわき起こりまして、当然といえば当然……(発言する者あり)失礼しました。ほうはいというか、非常に強い意見として出てきたところでございます。

 その声は、我々は、沖縄におきまして、非常に気候とか風土は恵まれておりますけれども、学術の振興ということでは非常に厳しい条件にございます、そういう意味で、やはりシンボルとして、ランドマークとしていいものをつくらせていただきたい、そういうことで、予算的には、基本を重視しつつ、その他の枠の余裕ができる場合には、運営費交付金を使わせていただいて整備の水準を高めさせていただいた、そういうことでございます。(発言する者あり)

金子委員長 御静粛に願います。

大串委員 今お話ありましたけれども、運営委員を初め関係者の皆さんから、いいもの、世界最高水準のものをつくっていただきたいという声があったので、予算をとった後からつけ加えたんだということでございましたけれども、これももう資料請求していますので、運営委員会の議事録を出してください。

 これも、今おっしゃった、予算ができて以降、運営委員会の方々が世界最高水準のものをつくってくださいとわんわんおっしゃるから膨れたんだ、そこの議事録みたいなものを何ももらっていないじゃないですか。これはもう原口さんも前から明らかにしていますよ。こういうところも、運営委員会の議事録もあると思うんですけれども。

金子委員長 議事録は一部出ていないの。ちょっと、事務局長。(発言する者あり)いいんだ、事務局長、答弁して。

三木参考人 おしかりを受けておりますが、十全ではないにせよ、既に若干お出ししております。ただ、足りないところにつきましては、今、先ほどもお話しいただきましたように精査中でございまして、速やかにお出ししたいと思います。

大串委員 若干出していますと。きのうの夜聞いたところでは、いや、今精査しておりますから、あしたには出せると思いますということでしたので、きのうの夜は私も、それではということで了解しました。

 若干出している、ほかの資料に関しては精査しているので出しますということでしたので、今おっしゃった、予算ができた後、いろいろな委員の方がふやせふやせとおっしゃった、その資料を今お持ちですね。それを出していただけますか、今。お願いします。

三木参考人 原口先生がお示しになっている資料を、先ほど大串先生にもお渡ししたところでございます。

 その他の資料につきましては、一時間余前に、お出しするべく御回答申し上げまして、今調べておるところでございます。沖縄の現場でやっているところでございます。(発言する者あり)

金子委員長 事務局長、何時間後に今の資料は出せるんですか、それを答弁してください。きょうじゅうに出せるのか。あなたが今答弁した、出すべく準備しているとおっしゃったのに対して、どの程度の時間がかかるんですか。

三木参考人 一時間、二時間で出せると言いたいところでございますが、残念ながら、もう少しお時間をいただきたいと思います。

 きょうじゅう、私も沖縄にこれから戻りまして、みんなの資料を突き合わせて、いいものをお出しするように努めたいと思います。(発言する者あり)

大串委員 今お話がありました予算がふえた理由、予算要求して予算が三億三千万とれた後に、運営委員会の皆さんから、理事長も含め、世界最高級のものをつくろう、最高級といいますか最高のレベルのものをつくろうということで、ふやせふやせという意見があちこちからありましたという意見がありました。

 運営会議の議事録に関しては出してくださいと、二月二十一日の段階でもう既に原口さんから紙で出されているんですよね。一つ、ミーティングミニッツというものをさっきもらいました、さっきです。これは何かといいますと、この内容も、皆さん、後で御説明申し上げますが、九月五日、これは何かと申しますと、設計してつくるコストが三億三千万じゃ入りませんよ、超過しますということが九月五日の段階でもう既にわかっているというミーティングのメモなんです。この点も大きな問題ですから。

 いいですか、九月五日の段階で既に三億三千万では入らないということがもうわかっている、それがこの九月五日のミーティングですから。さっきおっしゃった、ふやせふやせというふうに運営委員会の方々がおっしゃった議事録とは違うんです。その議事録を出してくださいと申し上げているんです。出していただけますか。

三木参考人 速やかに精査してお出ししたいと思います。(発言する者あり)そのつもりでございます。

大串委員 理事、御努力されているのはわかります。御努力されているのはわかりますけれども、こんなに資料が、先ほど言葉で、こういうことがある、こういうことがあるとおっしゃればおっしゃるたびに、資料を出していらっしゃらないのが明らかになってくるわけですよ。出てきているものも、ぱらぱらぱらぱら。何かを隠そうとされているんじゃないかというふうに疑っても仕方がないじゃないですか。そういうふうなやり方なんですよ。

 しかも、これは、問題がない予算であればこんなに言わないです。随契という非常に異例な形になっている。しかも、予算が足りないからという理由で随契になっている。そういう非常に不自然な流れを経ているからこそ、この予算に関して内閣府や財務省とやりとりをされているでしょう、そのやりとりの資料を出してくださいということで資料要求していたわけです。それはぜひ誠実に対応していただきたいというふうに思います。

 そして、もう少し踏み込んで質問させていただきますが、十一月九日の日に、三億円でやってくれというふうに設計を発注している。そして、十八日の日に、その二倍、五・五、五・六、この二倍の費用が資料として出てきた。だから、三億三千万の予算では入り切らないから、入り切らない分はまた別途工事することにして、三億三千万の予算で入る部分だけ入札でやろうというふうに考えたというのが先ほどの入札にする部分に関する説明であり、残りの部分は随契になったということの説明でありました。

 問題にしているのは、では、三億三千万のこの要求とは何だったのか。この三億三千万の要求は、当然、普通に考えると、要求段階ですから、きちんとしたプランに基づいて、完成品を見据えてつくられているはずです。そうでなければ、極めて不適切な要求と言わざるを得ないし、あるいは操作された要求というふうに言わざるを得ない。

 この三億三千万に関しては、先ほど局長の方から明確に、その1、その2、その3を含むものですという話がありました。

 その1、その2、その3を三億三千万の中に含むものでありながら、なぜ五・五億、五・六億とふえたのかというふうなことをお尋ねしたら、先ほどの説明は、その後、運営委員会の方々がふやせふやせと言ったからということで、後づけ後づけになって、非常にそこがよくわからないわけです。

 今ここに、メモを先ほどいただきました。十七年の九月五日、これは英語のメモですけれども、ブレナー理事長も入られた上で、三木理事も入られています、それから機構の方々もたくさん、事務方の方も入っていらっしゃる、そこで議論がされています、もちろん設計の方々も入っていらっしゃる。この議論のメモがありますけれども、そこで何が明らかになっているかというと、九月五日の時点です。

 すなわち、この一連の流れよりずっと前、つまり、運営費交付金三億三千が申請されて、交付されているのは十月十七日です。それより一カ月以上前の段階で、既にコストが、三億八千五百万プラス浴室部分の改修も含めると五千万、合わせて四億三千五百万、これだけかかる。すなわち、コストをオーバーするということがこの時点でわかっているんですよ、既に。にもかかわらず、この一カ月ちょっと後の十一月十七日に三億三千万分の運営費交付金の申請をされて、それをもらわれているんです。すなわち、もともと予算は足りない。

 もっとここを説明しますと、内閣府の方からも説明されています、予算は三億円ですよと。ですから、ここの部分は内閣府の方が言われているかどうかわからないということらしいんですけれども、残りの部分はブレナーさんの予算、これは運営費交付金という意味ですよね、運営費交付金で賄わなければなりませんよ、ブレナーさんはこれに合意しましたということが書かれています。

 すなわち、運営費交付金を申請する前の段階で、三億三千万を申請する前の段階で、既に三億三千万を大きく超える額の建設になるということがわかっていて、残りの部分は運営費交付金でやらなければならないということは前からわかっていて、できレースだったんじゃないかというふうに思うわけですが、その点、どうでしょうか。

三木参考人 三億三千万というのはあくまでも基本でございまして、常にそこの中に押し込めるように努力してきたところでございます。

 ただ、ボードあるいはブレナー理事長、理事長になる予定者ということでずっと活動されてきたわけでございますが、やはり整備の水準は、先ほど来申し上げておりますように、突如十一月十八日ではなくて、そういったところに出てきたわけではなくて、議論が継続されてまいりました。

 それで、先ほどもそういう趣旨で申し上げております。(発言する者あり)

金子委員長 御静粛に。御静粛に。

三木参考人 九月五日につきましては……(発言する者あり)ちょっと忘れてしまいまして、済みません。ちょっとのどが詰まったものですから、申しわけございません。ちょっと本当に……(発言する者あり)

金子委員長 御静粛に。

三木参考人 三億円という基本の数字をいただいておりましたが、どうしても整備できないものが出てくる場合には運営費交付金、もう釈迦に説法でございますが、施設整備補助金と違って、渡し切りの予算ということで弾力的な運用が可能でございます。

 建物をがっちりしたものをつくる、こういったものは交付金にはなじみませんが、ただ、内装ですとか研究室をしつらえる、そういったものにつきましては運営費交付金を通常使っておりますので、そういったものが充てられるものについては充てようということで、九月五日時点で施設整備補助金のほかにも可能性はあるという含みをその時点で持ったものでございます。

大串委員 すなわち、十月十七日の段階で運営費交付金三億三千万を申請され、かつ交付を受けておられます。その一カ月前に既に、このコストは三億三千万では大きく足りず四億円台になろうかということが明らかになっていて、今まさにおっしゃったように、その段階から既に運営費交付金も使ってやらなければならないかなというふうな思いを持っていらっしゃったということでございますね。

 そうしたら、先ほどの説明とちょっと食い違うと思うんです。すなわち、先ほど随契になった理由をおっしゃいました、資金的に入らないから随契でやらざるを得ない。今おっしゃったことは、資金的に運営費交付金も使えば賄えるという考えを持っていらっしゃった、そういうことじゃないですか。いかがですか。

三木参考人 考え方としては同じでございまして、九月五日時点では、そういう含みを持たせる、そして、直接の施設整備補助金では足りなくなったという、それが現実化した、それでその運営費交付金を現に充てること、その時点で、運営費交付金がほかにもいろいろ使われる可能性がございます、全体として精査した中で、運営費交付金も幾らかこれに充てられる、そういうことで、その時点で判断した次第でございます。

大串委員 運営費交付金は、確かにおっしゃるように、資金の性質としては色なしです。ですから、理事長の判断で、中期計画に向けて成果を出せるという前提で、柔軟な用途に使っていいということにはなっています。

 その上でお尋ねしたいんですけれども、運営費交付金をそうやって精査して使うということを頭に置かれていたのであれば、私、ちょっとそこをきちんと説明していただきたいんですけれども、施設整備補助金と運営費交付金をもって、コストはオーバーするけれども何とかそれで賄えるなというふうな思いを持っていらっしゃいながら、なぜ資金が全部をカバーしないからといって一部を随契されたんでしょうか。そこがわからないんです。そこをぜひ教えてください。一括発注すればいいんです。ぜひ教えてください。

三木参考人 随契にしました理由は、最初申し上げたとおりでございますが、この契約が随契で、一本でなくて少しおくれてやったということが含まれていると思いますが、実は、一月十日に、ボード・オブ・ガバナーズというノーベル賞学者ほかのメンバーの方で構成される委員会がございまして、そこに、白雲荘改修、今はシーサイドハウスでございますが、それがいかなるものになるのか、建物の基本構造はある程度固まっておりましたけれども、先ほど来申しておりますように、いい雰囲気の施設をしつらえようということでボード・オブ・ガバナーズに報告いたしまして、そういうことでおくれたこと。

 もう一点は、やはり予算制度上、補助金による本体部分、そして運営費交付金による内装部分ということで、予算の費目が違いますので、それを一本にして契約することの妥当性について私どもどうかと思いまして、一本の契約でなかった。また、ボードに報告する都合上、一月十日以降になった。そういうことでございます。

大串委員 一月十日にボードに説明するというのは、一つのちょっと違う内容だと思います。

 大きな今のポイントは、すなわち、施設整備補助金で三億三千万、これで整備する部分と、足りないから運営費交付金を引っ張ってくる部分、この部分、予算の費目が違うので、それを一本としてやっていいかどうかわからなかった。すなわち、三億三千万の部分は独立させなければならないんじゃないかと思った。そうした場合には、三億三千万では、四億数千万、一般管理費も乗せると五億数千万、これは賄い切れないので、五億数千万のこの部分を削って、すなわち、その2、その3というのを切り離して、この部分は後出ししたということですが、予算の、いいですか、機構の方ですから、ぜひ機構の会計規程に沿ってきちんと説明していただきたいんですが、あるいはここのことがおわかりにならなかったら、きょう、会計の担当者も来ていらっしゃいますから、会計の担当者の方でも結構です。

 機構の会計規程上、資金の入りの部分が施設整備補助金、運営費補助金、二本に分かれているからといって、資金の出口面の規制である、競争入札にしなきゃいけないか、随契にしなきゃいけないか、ここの部分が変わってくるということがあるのか。私は、資金の入りが二つであっても、一括発注して全体を入札にするというのが基本的な考え方じゃないかと思います。機構の会計規程を基本にお答えいただきたいんですが、機構の会計規程か何かに、資金の出元が二つであれば、分けて発注しなければならないなんということは書かれているんですか。

寺本参考人 お答え申し上げます。

 支出の帳簿については、補助金の交付要綱に従いますと、分離して記帳することにはなっておりますが、入り口の部分については書かれておりません。

大串委員 ありがとうございました。

 いま一度、ちょっとわかりやすく御答弁いただけたらというふうに思います。済みません。

寺本参考人 要は、補助金の交付要綱というのがございまして、そちらの方に書かれてあるのは、必ず帳簿は他の財源と分けて記帳しなさいということは明確に書かれておりますが、補助金と交付金を一本で入札してはいかぬということは書かれていないということでございます。

大串委員 すなわち、入札するときに施設整備補助金と運営費交付金を分けて入札しちゃいかぬということはどこにも書かれていない。にもかかわらず、三木理事、なぜあえて分けて、分けた結果、その1に関しては競争入札、その2、その3に関しては随契ということになったわけですが、なぜそういう判断をされたんでしょうか。

三木参考人 お答えいたします。

 判断ということでございますが、私も長く理化学研究所等、現場で在籍しておりましたが、こういう費目、非常に重要な、国からいただく補助金ですとか交付金、かつては出資金とか補助金でございましたけれども、そういう費目を超えて一本で契約する、そういうことは今まで全く私は見たことがございませんで、また、会計的にも通例見ないのではないかと私は思っております。

 確かに、お話しのように、禁じられているかと言われれば、条文上はないのかもしれませんが、通念上そのようにしたということでございます。

大串委員 先ほどお話が経理部長の方からありましたように、会計規程上は、資金の入りのところは分けないで一括発注することも必ずしも排除されていないにもかかわらず、御判断として分けて、その1とその2、その3を分けて随契されたということでございますけれども、結果として何が起こっているかというと、かかった予算は、もともと設計として上がってきたものは五億五千、六千万という非常に大きなもの。ところが、とった予算は三億三千万。残りの部分は運営費交付金だからということで、その部分に関しては随契というこの論理がまかり通ると、予算を少なくとって、大きなプロジェクトを後からどんどんつくる。

 しかも、今回の場合は、予算をとった後に、先ほどおっしゃったように、運営委員会の方々がふやせふやせとおっしゃっているものだから、どんどんどんどん設計が大きくなって、スペックがよくなっていって予算額がふえている。そうなると随契部分が多くなる。これは、典型的な分割発注、そして、合法的に見える随契をつくり出す、そういうふうな手法になってしまう。極めて不適切じゃないかと思うんですが、三木理事、いかがでしょうか。

三木参考人 随契をその時点ではいたしたわけでございますが、この一年、あるいはもっとかと思いますけれども、随契を特に、なくするように、減らせという政府の方針でございます。これを肝に銘じて、減らすように当然の措置をさせていただきたいと思っております。

大串委員 今の答弁からもわかりますように、極めて考え方が整理されていないと思うんですね。それで、ルールがないにもかかわらず、自分で判断してしまって、随契部分が生まれるように、しかも三億三千万という部分だけが一般競争入札で、一億数千万のところは随契という、非常に大きな随契部分を生ましめていることになっているわけですね。

 この辺について、後からスペックがどんどん上がって、いろいろな声がかりがあって、どんどんどんどんふえていって随契部分が生まれている。そして、機構に関する、大学院大学に関する土建工事の、先般来、馬淵委員からも質問がありましたが、土建工事に関しては八六%を國場組という一つの組がとっている。今回も、競争入札は國場組が落札し、かつ、随契でその後の一億数千万のものもとっている。

 こういうふうな中で、本当にこれが適切な、全体の、表に見えるところ以外のところも含めて、適切な中で、いろいろな働きかけ等々がない中でやられたのかというところに疑義があることから、先般来、原口委員も、政治家の方々も含めてのいろいろな働きかけはなかったんですか、この働きかけ等々があるのであれば、メモを出していただきたいということも資料請求させていただいておりました。

 高市大臣、いかがでしょう。その働きかけ等々に関して、調査は行われましたでしょうか。どういう調査が行われましたでしょうか。

高市国務大臣 まず、機構がこの工事に関してさまざまな意思決定をしていく中で、政治家からの働きかけは全くなかったのかどうかということは、金曜日の聞き取り、約三時間行いました聞き取りのときに、私自身から機構に確認をいたしました。これは、誓ってもないということでございました。

 また、内閣府の職員にも、これはもう昨年就任直後の話でございますが、もしも政治家から何か行政の執行をねじ曲げるような働きかけがあった場合には速やかに大臣に報告すること、大臣は報告を受けて、その政治家に対して、行政の公正な執行を担保するために話をつけますから、私が責任をとりますから言ってくださいということを伝えておりました。これは、大臣官房審議官から私の所管のすべての局に徹底をいたしております。

 今般の沖縄の件についても、なかったでしょうねということは改めて確認をいたしましたが、ない、中にそういった書類もないということでございます。

大串委員 国会での答弁は非常に重い。高市大臣、情報公開請求、情報公開制度に基づいて請求されれば、それは出すんだからということもおっしゃっていました。以前もそういうことをおっしゃっています。

 済みません、きょう各大臣にお声がけしていて、お問い合わせできなくて大変申しわけなかったんですけれども、お聞かせいただこうとしている中で、松岡大臣のWBEFというところとのやりとりがあったかなかったか、そういうことに関しても内閣府のメモが出ております。三月の二十八日付のメモでございまして、この資料の中にも入れておりますけれども。このメモに関して、後から内閣府のメモであるということが確認されたわけではありますけれども、これに関して、高市大臣は記者会見のときに、後から確認しましたなることをおっしゃっています。すなわち、先ほどおっしゃった、やはり確認しないと、あるかないかわからないんだと思うんですよ。自動的に上がってくるだろうというふうな思いだけで、すべての働きかけがなかったとは言えないと思うんですね。ですから、この点に関しても、しっかり精査していただきたいというふうに思います。

 そして最後に、きょう各大臣に御通告申し上げて質問できなくて、大変申しわけございませんでした。この点、心からおわびさせていただきます。

 最後に、資料、先ほど申しましたように、この沖縄の予算に関して、内閣府、財務省との予算のやりとり、そして原口さんは二月二十一日にちゃんと紙にも出していますから、こういうことも含めてきちんと出していただくように最後に改めてお願いして、期限を切っていただいて、ぜひあしたまでにでもというふうに私は申し上げたいと思いますけれども、お願いしたいと思いますけれども、委員長、いかがでしょうか。

金子委員長 とり漏れがないように、あるいは趣旨が違わないように、資料担当理事にメモで出していただくようにお願いいたします。先ほどおっしゃったのは、何々も含めてとあなたはおっしゃったんだけれども、その含めてがまた違う解釈もありますので、請求をお願いいたします。

 これにて大串君の質疑は終了いたしました。

 次に、小川淳也君。

小川(淳)委員 民主党の小川淳也でございます。

 先ほどの大串委員のやりとり、こうした予算の調整あるいは執行過程そのものに、いろいろな御説明はあり得るんでしょうが、疑念を抱かせることそのもの、ぜひとも閣僚の皆さんには振り返っていただきたいと思いますし、また、御担当の皆様にも、しっかりとした資料の提出等を改めてお願い申し上げたいと思います。

 あわせてきょうは、こうした問題に加えて、官製談合を中心とした構造癒着の問題について、現在の状況あるいは今後の調査等についてお伺いをしたいと思います。

 まず初めに、昨年、官製談合に関する集中審議をこの予算委員会で行わせていただきました。その際の議論の経過について、成果、あるいは成果となっていない部分を含めてお尋ねを申し上げたいと思います。

 昨年二月二十二日のこの予算委員会集中審議での議論でございます。当時、私の方から、各中央官庁での落札率の公表について、一般競争入札と指名競争入札、これを区分して公表するようにお願いをしたところでございます。これに対する当時の安倍官房長官の御答弁、その方向で取り組みたい、一層わかりやすい取り組みを進めたい、御指摘のとおりであるという官房長官の御答弁がございました。

 あれから約一年、塩崎官房長官、その後いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 昨年二月二十二日の先生からの御質問がございました。

 落札率の公表につきましては、行政効率化推進計画におきまして、これまで、各府省ごとに定める一定金額以上の公共調達について、毎年度取りまとめたものを一覧表にして公表することとされているわけでありますけれども、一般競争入札及び指名競争入札の区分、今御指摘の点でありますが、これはそこまでは求めていなかったというのがその当時のことであります。

 しかしながら、より一層わかりやすい公共調達に係る情報開示を行う観点から、先生からの御指摘もございました、昨年の八月に行政効率化推進計画を改定した際に、一般競争入札及び指名競争入札の別を明らかにして公表することを各府省共通の取り組みとしたところでございます。

小川(淳)委員 ありがとうございました。

 もう一点お尋ねを申し上げます。

 当時、一年前です、各省庁において談合情報を入手した際の対応方針、対処方針については、整備をしていたところ、備えを持っていなかったところがございました。

 その際の指摘として、全省庁において統一的に対処いただくことをお願い申し上げました。これに対しても前向きな当時の安倍官房長官の御答弁をいただきましたが、その後一年、状況をお伺いしたいと思います。

塩崎国務大臣 談合の問題について先生から御指摘があったわけでありますけれども、談合情報のマニュアル、これにつきまして、公共工事に関しては、公共工事の入札及び契約の適正化の促進を図るための措置に関する指針というのがありまして、これは平成十八年の五月二十三日に閣議決定をしておりますけれども、これに基づいて、談合情報を得た場合等の、違反行為があると疑うに足るる事実があったときの取扱要領の策定を進めてきたところでございます。

 昨年の二月二十二日の時点では、一部省庁において、これは四つありましたが、まだ未策定でございました。この先生からの御指摘も踏まえまして、できる限り早く策定するようにということで督励をしてまいりましたけれども、現在はすべての省庁においてその整備を済ませたところでございます。

 今後も談合排除の徹底に努めてまいりたい、このように思っております。

小川(淳)委員 ありがとうございました。半歩半歩前進をぜひこれからもお願い申し上げたいと思います。

 ちょっと、質疑時間を短縮いたしました関係で御指摘にとどめさせていただきますが、先ほどの落札率の公表に関して、八月二十五日の財務大臣通知と八月二十九日の関係省庁連絡会議の申し合わせ事項との間に若干のそごが見られるような気がいたします。これはぜひ、また細かい点、追って事務的にやりとりをしたいと思いますが、あわせて規定の整備をお願い申し上げたいと思います。

 こうした準備を政府は政府で進めておられるわけでございますが、昨年の和歌山、福島、宮崎におけます地方自治体での官製談合、そしてことし早々も、冬柴大臣には大変衝撃的なニュースが飛び込んだわけでございますが、旧建設省あるいは国交省本体に関する談合に対する関与疑惑、こうした疑惑が報じられました。

 公正取引委員会は国土交通省本体に対して官製談合防止法の適用を決定する見込みだという報道がございます。この点、どう受けとめておられますか、冬柴大臣にお伺いをいたします。

冬柴国務大臣 談合はあってはならないものであります。とりわけ、それに官が絡むというような官製談合は絶対にあってはならないものであると思います。

 御指摘のように、一月の六日、七日、我が国土交通省の元職員等がこれに絡んでいる疑いがあるという実名報道、写真入りでされまして、私は大変な衝撃を受けました。

 したがいまして、それは休み中でしたけれども、休み明けの九日に、事務次官初め幹部を全部集めまして、これは徹底的に究明しなければならない、もしそういうことがあれば本当に国民に対して申しわけないことになる、遺憾千万であるということで、直ちに我々は調査委員会を、名前は後にきっちり、入札談合防止対策検討委員会と長ったらしい名前になりましたが、省を挙げてこれはやろうということで、事務次官を長といたしまして、外部から九名の専門家、だれが見ていただいても納得をいただける人たち、例えば元高裁長官、元特捜部検事、元公正取引委員会事務局長、それから弁護士、そしてその余五名は専門の大学教授、計九名の外部の人を直接委員に入れまして、そして、その人を含め国土交通省の職員等六十一名の陣容でこの検討委員会を発足させ、今鋭意調査を遂げているところでございます。

 本当にこれがもし事実であるとするならば、本来は、これは公正取引委員会が調査をして告発あるいは起訴というようなことになったら、今までは、過去はそういう調査委員会が各省で開かれておりましたけれども、我々はそれを待つことなく、我々は我々としてやろう、そして、事実関係、背景、動機、それを踏まえた対策を立てていこうということで発足をさせ、現在に至っているところでございます。

小川(淳)委員 ありがとうございました。

 各大臣の皆様、簡潔な御答弁、ぜひ御協力をお願い申し上げたいと思います。

 実名報道、確かに大臣がおっしゃるとおりでございまして、元建設施工企画課の課長補佐の方、そして元技監の豊田さん、さらには元国土地理院長の山口さんということで大変な疑惑の対象になっているわけでございますが、この件が最初に報道されたのは昨年の三月でございます。その後、六月に国土交通大臣は、この件に関してのひとまずの調査の経過を記者会見等で公表をされておられます。その際に、この実名を挙げられた方々あるいはこれに関係した方々についての関与の疑惑等は把握をされていたのか、いなかったのか、お答えをいただきたいと思います。

竹歳政府参考人 お答えいたします。

 昨年の報道の時点ではそこまで明らかでございませんでした。したがいまして、私どもとしては、現役職員百六十七名に対して調査を行いまして、この過程では現役職員の不正行為は確認できませんでした。

小川(淳)委員 きょうは、昨年大きな議論になりまして、また、その後さまざまな対策を進めてこられたはずでございます、防衛施設庁北原長官にお越しをいただきました。

 この施設庁のまとめられた調査委員会の報告書、拝読をさせていただきました。冬柴大臣もぜひお読みをいただきたいと思いますし、お目通しをいただきたいと思いますが、北原長官、あれから一年、この調査報告に至るまでのさまざまなやりとり、あるいはこの調査を受けての職員に対する処分、そして関係企業、受注先に対する処分等々経過があったと思いますが、概要で結構です、その後の防衛施設庁の取り組みについて御説明をいただきたいと思います。

北原政府参考人 小川先生に御答弁申し上げます。

 その前に、本当に我が防衛施設庁におきまして大変な事態を生起いたしましたことを、改めて国民の皆さんにおわび申し上げます。

 そして、私どもの職員三人が逮捕されました、前職も含まれておりますが。それが昨年の一月三十日でございまして、直ちに翌日一月三十一日から、私を委員長とする調査委員会並びに副長官を委員長とする再発防止検討会を立ち上げたところでございます。

 そして、それぞれ並行してやってまいりましたが、私どもの調査委員会は六月十五日に報告書をまとめました。そして、再発防止策を翌六月十六日にまとめました。大変広範にわたるものでございます。契約のあり方、人事管理、組織等々でございますが、今現在は、防衛省、防衛施設庁挙げて、その再発防止策を着実に実施していく、そして、失った国民の皆さんの理解を一日でも早く回復したい、そういうことで今努めているところでございます。

小川(淳)委員 冬柴大臣、後ほどこれはかいつまんで中身を御紹介申し上げたいと思いますが、先ほど、昨年の六月の調査結果で、今回報じられている、容疑者と言ったら失礼なんでしょうが、名前が挙がっている方々についての疑惑を解明する、あるいはそこに探り当たることができなかったというお話でございますが、今、国交省の担当の局長さん、御答弁いただきました。なぜ、このときは現職の職員に限って調査をされたんですか。なぜ、OBに調査をしようということに思いが至らなかったのか。

冬柴国務大臣 現職の職員に対しては、雇用契約上、我々から呼び出して、我々の問いに対し答えていただくということを行うことができます。しかしながら、OB、すなわち退職をしてしまった人たちに対しては、何らかの端緒、今回のように実名報道があるとか、あるいは、これがこのような談合にかかわったとかいうような端緒がなければ、この人を呼び出して調べるというわけにはいきません。

 したがいまして、百六十七名は、疑いをかけられた部門で過去十年間とか、この場合は五年間だと思いますが、担当した人たちを、地方に行っている人もみんなありますけれども、そういう人たちを調べたわけでありまして、その中にはそういう今の疑惑の人はいなかった、そういう趣旨でございます。

小川(淳)委員 今改めて一月にスタートされた調査でどの程度本気でやられるのか、そのことにかかってくると思います。

 これは防衛施設庁さんの調査委員会の報告書、国会の場でも当時議論になりました。これは組織的にやられたことなのかどうか、あるいは、それが後任から後任へと受け継がれていたことなのかどうか等々ですね。これは北原長官御自身がまとめられたわけでありまして、私は、途中経過としてはやはり評価すべき内容だと思います。非常に赤裸々な告白といいますか、それがなされている。

 冬柴大臣、かいつまんで御紹介申し上げますのでちょっとお聞き届けをいただきたいと思いますが、このとき施設庁は、現職の職員百九十五名、そしてOB百十名、合計三百五名に対して聞き取り調査を行っています。施設庁の全職員三千百人に対してアンケート調査を行っています。

 その結果明らかになった事実として、まず、こうした官製談合についてはこういうものがあるんじゃないかという前提で調査を行う必要があると思いますが、工事の割り振り表であります。これについては施設庁は、再就職先の確保、また、再就職先でOBが寂しい思いをしないようにということへの配慮を目的として毎年作成をしていた、技術審議官が決定をしていたんだそうです。そして、受注先企業をあらかた決定すれば、本省の企画官から地方の計画課長へ、目的を明らかにしないまま、指名業者に加えるよう非公式に連絡をしていたんだそうです。

 その割り振り表の配分基準でございますが、指定職で退職した技官、六十歳までの若年者については年間一人当たり十一億、六十歳を超えますとやや減って八億、六十四歳を超えますと六億、つまり、退職をしたあるいは再就職した時点の役職あるいは年齢によって一人頭の金額を決めて、その金額を天下りをしたOB分合算して受注表を作成していたということでございます。

 割り当て工事の大体の概要ですが、平成十七年、四百八十九件、六百億の工事のうち約三百億、半分がこの割り振り表によって配分された可能性が高いと結論づけています。過去をさかのぼっても同様であります。

 本庁施設庁の建設部が中心になったわけですが、人事部局からほかの部局の職員についても、再就職先を確保するために、その要請を受けて会社、協会と密接な接触を図ったということであります。

 その動機づけ。退職した先輩、同僚の再就職先の確保に役立っている。自分の利益を図るものではないので許される。先輩、同僚が再就職先で肩身の狭い思いをしたらかわいそうだ。やがては自分もその世話になる。これまでも発覚していないので自分も大丈夫だろう。仕方がない。こういう動機のもとで綿々と繰り返されてきたのがこの官製談合。

 さらには、悲しい実態があります。歴代の企画官の中には、上司に対して、こうした行為を中止したい、そう進言した者があるんだそうです。これに対して上司は、企画官としての仕事であり、嫌なら仕事をやめるしかないと人事的な措置を迫った、こうした実態が非常に赤裸々につづられているわけでございます。

 今申し上げたようなことからいえば、冬柴大臣、この疑いがかかった、しかも国交省です、公共事業の発注の全体の八割を預かって、しかも、都道府県を初め、あるいは各省庁に対して入札契約の適正化を旗振り役として推進していかれるお立場であります。やはりこうした構造癒着、現役職員だからどうだとか、OBにだってこれはやはり防衛施設庁はやったんです。しっかり話を聞かないといけないと思いますし、こうした構造癒着があるんだと、これと同等の報告書がやはり国交省から出てこないと、私は、本当に切り込んだという評価は世間から受けないと思います。改めて決意をお述べいただきたいと思います。

    〔委員長退席、萩山委員長代理着席〕

冬柴国務大臣 防衛施設庁のその問題は、ちょうど私が衆議院の決算委員長のときに取り上げた問題でございまして、それを契機で逮捕という衝撃的なことがありました。

 その調査はその逮捕の後ではないですか。すなわち、その後これは有罪になり、そして当時、自衛隊の隊員というのはほかの役所の人よりも若年で退職するわけです。もっと年を上げられないかということもいろいろ議論になりましたけれども、諸外国では軍人は四十代で退職さす。そういう人たちが、この長寿社会の中にあってその後どう生きていくかということがその背景にあったと私は思います。

 しかし、私どもも、今まだ逮捕もされていません。それどころか、公正取引委員会はまだ調査中でございまして、いわゆる業者が談合したかどうかということの確定もまだしていません。もしそれが確定した後に、今度は官がそれに対して関与したかどうか、これは、三要件、今度一つ加わって四要件ですけれども、関与したかどうかという順序で解明されていくわけでありまして、まだ公正取引委員会も確定的にそのような事実をしていないわけであります。

 冒頭申し上げたように、また委員から御指摘がありましたように、我々はこういう入札契約をたくさんやっておりますし、そういうものがあってはならないということで今まで努力を重ねてきた官庁としてこんな恥ずかしいことはないわけでございますから、今の立派な報告書のように私どもはきちっと報告もするし、そしてまた、それによってその動機とか背景をきわめて、今後こういうことが起こらないような処置をとりたい。

 二度と再びこういうことに手を染めた場合には、官の方はもう生涯その人生を失ってしまう、それから業者の方は、それをやればその会社は幾ら大きくても倒産してしまうんではないかという大きなダメージを受ける、そういうような処置まで、今講じつつありますけれども、我々としてはとりたいというふうに思っております。

小川(淳)委員 大臣、おっしゃることはよくわかります。しかし、施設庁のこの北原長官の取りまとめに当たって、当時の額賀長官の相当なリーダーシップがあったことは紛れもない事実でございます。ましてや、国交省の大きなお立場を踏まえれば、相当な緊張感、相当な御決意、覚悟を持ってこの調査に当たっていただきたいと思います。

 北原施設庁長官、これ、御報告を取りまとめられたのは六月十五日であります。六月十五日はどんな日だったか御記憶ですか。十六日はどんな日か御記憶ですか。

北原政府参考人 私まず、十九回にわたりまして調査委員会を開いてやってまいりました。そして、六月十五日になりましたが、この発表をさせていただいたところでございます。あわせて国民の皆さんに調査内容を記者会見等で御報告させていただき、さらに、三千百名全職員を集めまして、二度とこういうことがないように、初心忘るべからずで本当に厳正に仕事をやっていこうじゃないかという訓示をしたところであります。そして、十六日に、再発防止策ができ上がったということでこれが公表されているところでございます。

 御質問の趣旨が必ずしも明らかではございませんけれども、その後の国会等で御指摘を受けましたのが、国会がもうぎりぎりのときとか、そういったのをねらって発表したんじゃないかという御指摘を受けましたけれども、決してそういうことではございません。本当に、我が防衛施設庁に与えられた最後の行政府としての自浄能力を示すということで懸命にやってきて、結果として十五日の発表になったものでございます。

小川(淳)委員 そういう御説明になろうかと思いますが、今おっしゃったとおり、六月の十六日が国会の会期末でございました。

 冬柴大臣、ぜひ御決意のほどをいただきたいんですが、一月、ちょうど調査のスタートは去年の施設庁とほぼ同じタイミングであります。ぜひこの国会中に、しかもできるだけ早いタイミングで、もちろん、公正取引委員会の捜査の進捗段階と異なることはあるでしょう、しかし、できるだけ早いタイミングでできるだけ根の深い調査、この国会で御説明をいただくこと、御決意をいただきたいと思います。

冬柴国務大臣 そのように努力をする決意でございます。

小川(淳)委員 あわせて松岡大臣、昨日、水門談合事件に関して農水省の御担当の方々の関与が報じられました。この件に対する御所感、そして、私が申し上げたいのは一点、農水省においても、こうした施設庁の内部調査あるいは冬柴大臣が進めておられる国交省の内部調査、これに類するあるいは同等の調査をぜひ進められるべきだと思いますが、松岡大臣、いかがですか。

松岡国務大臣 小川先生が御指摘の点でございますが、きのう、そういったような報道がございまして、この点につきましては私ども報道をまことに重く受けとめておりまして、また、この点につきましては今公正取引委員会で調査中でございますから、それをまず見守るというのが基本的な姿勢でございますが、これまでこの公正取引委員会の調査に対しましては、我が省といたしましても全面的に協力を申し上げてきたところでございます。もし、その結果として不正なことがあれば、これは厳正に対処する必要がある、まずこのように思っております。

 そこで、今、小川先生御指摘の調査の件でございますが、報道によりますと、九六年までは農水省の職員が関与しておった、それからその後、〇一年まではOBによる受注調整が行われておった、こういう報道でございますが、その事実関係については私どもまだ把握をいたしておりません、確認をいたしておりません、できておりません。したがって、報道でもそのようなことがあったことでありますので、いずれにせよ、事実関係がどのようなことなのか、私としても、きのう、可能な限り最大限の範囲でその確認をするよう指示をしたところでございます。

 ただ、過去のことでもございますし、それから、今、OBの方ということになっておるものですから、当時は構造改善局がこの水門関係は所管をしておった、したがって、当時の幹部、こういった方々に可能な限り最大限お聞き取りをする、こういうことになると思っております。

 いずれにしても、その事実関係を把握した上でその後の対応ということについてはしかるべく考えたい、このように思っております。

小川(淳)委員 現時点ではそのような御答弁だと思いますが、松岡大臣、後手に回らないように、ぜひ、みずから積極的に手を突っ込む覚悟でこの問題のお取り組みをお願いしたいと思います。

 渡辺大臣、この官製談合に関連して、公務員制度改革あるいは公務員の再就職の問題、根深い問題としてやはり背景にある、これはもう皆さんがお認めのことだと思いますが、かねてから議論になっています、総理が所信の中でおっしゃった押しつけ的な天下りという言葉、あるいは、一月二十九日、経済財政諮問会議で大臣御自身が資料として提示された中に押しつけ的な再就職という概念を提示しておられる。

 あったとかなかったとかいろいろな議論がありますが、これはやはりあったということでよろしいですね。

    〔萩山委員長代理退席、委員長着席〕

渡辺国務大臣 総理答弁で申し上げておりますように、あるから根絶をするわけでございます。

小川(淳)委員 すばらしい御答弁でした。

 これから多分各役所の担当者の方々は、いろいろな弁明、いろいろな言いわけ、いろいろな説明を考えてこられると思います。しかし、一切そういうのは封じて、とにかく、あった、あったかもしれない、恐らくあったという前提に立ってぜひこの公務員制度改革を進めていただきたいと思うんです。

 もう一つ突っ込んで、先ほど施設庁の調査報告を御紹介申し上げました。これを見ていると、天下りを受け入れたことで仕事がセットになってついてくるんですね。これを押しつけというべきなのか、あるいは、ウエルカム、ウエルカム、どうぞ仕事をしょってきてくださいということなのか。私は、これは受け入れ側の主観的な要素をむしろ問題とすべきではなくて、主観のいかんにかかわらず、構造癒着の問題として切り込んでいただく必要があると思いますが、大臣、いかがですか。

渡辺国務大臣 押しつけ的あっせんによる再就職というのは、内部から見ますと、役所の方から見ますと、余りよく見えないんだろうと思うんですね。したがって、確認されていない、こういうことになるのかもしれません。

 一方、今御指摘のように、受け皿の方から見た場合は一体どうなのか。役所サイドから見ると押しつけではないと思っているが、受け皿の側から見るとかなり強烈なプレッシャーを感じている場合なんかもございます。

 いずれにしても、公務員制度改革の要諦は、公務員がやる気と情熱を持って仕事に邁進してもらうことと同時に、国民が公務員制度に対する信任、信頼がなければこれは元も子もない話でございます。したがって、国民の側から見て押しつけのように見える、つまり、予算と権限が背景ですから、国民の方から見て押しつけのように見えるものについても、これはどこからどこまで押しつけ的なあっせんになるのかを検討しなければならないと考えております。

小川(淳)委員 大体の場合において発注者側と受注者側であるケースが多いわけですから、関係は対等ではありません。そのこともよく踏まえた上で、主観のいかんにかかわらず、構造癒着の問題としてぜひ引き続き御検討、精査をお進めいただきたいと思います。

 以上、国土交通大臣、そして農林大臣、行革担当大臣、あわせて公正取引委員会にはきょうお尋ね申し上げませんが、厳正なる処罰をもって厳しい課徴金の適用等々、特に、今回の国交省の事案は官製談合防止法の罰則が適用される以前の行為でございますが、それも含めて対応をお願い申し上げたいと思います。

 先日来、事務所費を初めとした問題、そして、内閣の一体感といいますか総理のリーダーシップの問題、そしてきょうこの構造癒着の問題、さらにもう一つ、私、どうしても昨年九月からぜひ一回議論をさせていただきたいんですが、一体、この安倍内閣の閣僚の皆さん、本当に国民の声を拾っておられるのかどうか、私はその点に本質的な疑問を持ち続けてまいりました。

 ちなみに、昨年十月の内閣府大臣官房で行われました国民生活に関する世論調査、あるいは各新聞社の世論調査等で、これはお答えになられる方はぜひお答えをいただきたいんですが、一体、国民の声は今の政府に対して、政治に対して何を一番望んでいるのか、何を一番望んでおられるのか、柳澤大臣、御存じでしたらお答えください。

柳澤国務大臣 平成十八年十月十九日から十一月五日に行われました、内閣府の面接方式によります国民生活に関する世論調査によりますと、政府に対する要望として一番この上位に挙げられましたのが「医療・年金等の社会保障構造改革」ということでございまして、非常にこの面での要望が強いということでございます。

 この要望が強いという裏側には、恐らく、年金、医療等の社会保障制度に対するあるいはその安定に対する不安感というものがあって、だから不安がないような改革を要望したい、これが国民の意識ではないか、このように考えております。

小川(淳)委員 ありがとうございました。おっしゃるとおりです。

 七二・七%が社会保障制度の構造改革を望み、また、関連しているんでしょうが、五四%が「高齢社会対策」、そして「雇用・労働問題」等が続くわけです。一方、安倍内閣が大変大きく掲げておられる、例えば憲法の改正問題あるいは防衛、安全保障問題、新聞社の世論調査ですと、六%とか九%とかそのたぐい。

 柳澤大臣、これは社会保障制度を立て直せという国民の声だと思いますが、これは一体何をどうせよという国民の声だと理解しておられますか。何をどうすればいいんですか、これは。

柳澤国務大臣 やはり社会保障制度についての透明性というか、そういうことで国民にわかりやすくその安定性というものをもっと示してもらいたいというようなことが一番根幹に横たわっている問題ではないか、私はこのように考えています。

小川(淳)委員 大臣、そこはもう見解の相違なんですが、安定であることを十分わかりやすく説明できていないということではなくて、国民は不安定さをいぶかっているというふうに私は認識しています。

 そこはぜひ議論をしないといけないわけですが、例えば、三年前の二〇〇四年、厚生年金等々の抜本改革と言われた改革がございました。百年安心というふうに銘を打たれた。そのときにこれも本当はお聞きしたかったんですが、指摘にとどめます。

 例えば、ことしに入ってからも再計算されたわけですね。年金財政についての収支を再計算された、暫定試算。例えば、内閣府の示した長期金利と財務省がお使いになる財政収支のための長期金利の水準、それから、厚生労働省さんがお使いになる年金の運用利回りのための金利水準あるいは運用利回り、これは全部ばらばらなんですよ。私は、かた目に見積もるならわかります。年金は年金で低目に見積もる、財政は財政で、国債の支払いに備えないといけませんから高目に見積もるならわかります。しかし、事は逆なんですよ。年金は高目に見積もる、財政は低目に見積もる、内閣府の試算よりですよ。

 こういうことの繰り返しが、これはわかりやすく説明するとかいうことを超えて、非常に国民はいぶかしがっているんだと私は思います。理論的に数字まで含めて理解している人は恐らくいないでしょう。しかし、直観的にわかっているんですよ。やはり、これから本当に人口構成が大きく変わるわけですから、もうとにかく現役世代でお年寄りの暮らしを支えていく、その構造そのものが限界に来ているというのが私は国民の直観的な判断じゃないかと思います。

 これに関連して、厚生年金に加盟している会社が今全国の会社のどのくらいの割合なのか、大臣、御存じですか。

青柳政府参考人 全国の会社のどのくらいが厚生年金に適用されているか、こういうお尋ねでございましたが、全国の会社というのを、どこを母数にとるかということはさまざまな調査によって数字が違っております。

 厚生年金につきましては、適用事業所ということでとらせていただいております数字が、平成十七年で百六十五万カ所というふうになっております。

小川(淳)委員 ざっと申し上げます。全国には三百万の法人があるんですね。大臣御存じだと思いますが、会社、法人というのはすべて厚生年金に加盟しなければならないことになっています。そのうち、ざっと百五十万から百六十万、半分しか入っていないんですよ、厚生年金に。これは恐らく、法人税総額に匹敵する事業主負担、これを嫌ってのことだと思いますし、これは二重の意味で、厚生年金に加盟している会社がこれからもどんどん減り続ける可能性があります。そして、雇用そのもの、事業主負担を負わせられる正社員を抑制していく傾向に働く可能性が高いと思います。

 私は、この現役世代あるいは現役企業、現役法人がこのことも含めてお年寄りの暮らしを支えていくにはここから先限界があるという前提に立って、この制度そのものを組み直していく必要があることを強く御指摘申し上げたいと思います。これは、百五、六十万社を三百万社に上げるということですから、並大抵の、徴収率向上みたいなそんな小手先の話ではどうにもならない問題だと私は思います。

 あわせて、この年金不安の最たるものは国民年金だと思いますが、この国民年金の支給基準額、どう決まったのか、どう決まっているのか、そして、それは老後の生活保障として十分だとお考えかどうか、大臣のお考えをお聞かせいただけますか。

柳澤国務大臣 先ほど来のお話はどういう前提に立っているのか、ちょっと小川委員の立場がわかりませんが、現役世代がその時々の高齢者世帯を支えていくという方式が限界に突き当たっている、こういうことは、小川委員は、今の例えば年金制度なんかを賦課式ではなく積み立て式にしない限り国民の信頼が得られないというようなお立場なのかどうか、これはもう非常に根本的な問題だというふうに思います。これから将来、長きにわたっていろいろな議論があり得ると思うんですけれども、それはそれでお立場はわかりますけれども、現実論としては、なかなかそこまで飛躍した考え方でもって議論をするということは現段階では難しいのではないか、このように思います。

 それから、今、国民年金の基礎年金、厚生年金の基礎年金部分もそうでございますけれども、基本的にこれは、全体の、特に厚生年金については、報酬比例部分との絡みもありまして、基礎年金部分を一体どのぐらいにするのが所得再分配の効果としてもあり得るかというようなことも勘案しながら、国民年金の基礎的な部分の金額が決まっている、このように理解をいたしております。

小川(淳)委員 大臣、もしご存じなければ申し上げます。国民年金の支給基準は、全国消費実態調査から参考にとった、高齢者世帯の食料費とか住居費とか、それから光熱・水道費、家具や被服、こうした費用が当時大体四万から五万ぐらいという計算に立って設定されたんだそうですね。これを少しずつ経済成長に伴って伸ばしてきて、現在の満額で六万六千円ということになっているわけですが、現在の消費実態調査に合わせて、これは総務大臣にお越しをいただきました、今、昭和六十年当時につくられた計算の参考数値を基準にこれを現在の全国消費実態調査に置き直すとどのくらいの数字になりますか。あるいはその趣旨等も含めて、総務大臣からお答えをいただきたいと思います。

菅国務大臣 最新の平成十六年の全国消費実態調査によりますと、六十五歳以上の無職の単身世帯における食料等の基礎的な支出額としては、食料、住居、光熱・水道、家具・家事用品、被服及び履物を合計すると、月額七万六千六百六円となっております。

小川(淳)委員 ありがとうございました。

 柳澤大臣、お聞きのとおりです。当時、四万七千円で設定された。現在、国民年金の支給満額六万六千円。しかし、当時と同じ水準で高齢者の生活支出を測定すると七万六千円。もう一万加えないとだめなんですね。そういうことも含めて、私は感覚的にすごく気にかかってしようがないんです。

 大臣もよく熟読されたと思います、この安倍総理の「美しい国へ」という御著書ですね。この中に年金に関していろいろな記述がございますが、「早く死ぬと損するのが年金というもの」、それはそうでしょう。八十五まで生きれば、払った額の二倍の給付が受けられる。そうなんでしょう。自分が払うのは半分だけ、残りの半分は国が払う。年金の破綻というのはないんだ。もし破綻するというのは、どこかで将来払えなくなってしまう。払えなくなってしまうことを破綻というのだ。年金というのは、ざっくり言ってしまうと、集めたお金をためて配るというシステムだ。それはそうなんですよ。こんなローリスク・ハイリターンの金融商品というのはめったにないのではないか。これは全部そうなんです、当たっているんですが、単に預けたお金が損しないように返ってくるだけということなら、わざわざ国家がやる必要はないじゃないですか。

 やはりこれは、明らかに老後の生活保障なんですよ。だから、本当にこの国で安心して年をとれる金額を是が非でも確保しないとだめなんじゃないですか。それのために必要だったら、現役世代の負担が必要なら、これは命がけで説明しなきゃいけないんじゃないですか、柳澤大臣。

 年金は金融商品、そうなんですよ、そうなんですが、老後の生活保障だということに対する思いが十分至っていない。この感覚こそが、まさに最初に申し上げた、国民が一番不安がっていることの最大の原因じゃないかと思います。柳澤大臣、いかがですか。

柳澤国務大臣 要するに、年金が安定するというのは、長期にわたって負担と給付が安定的な関係にあるということでございます。したがいまして、これは、給付を多くしようとしたら今度は保険料として支払う負担が多くなるというところでありまして、そういったものを総合的に勘案して、それぞれの負担それから給付の状況を見て、それをバランスするところでその水準を決めていくということだろうと思います。

 しかし、これだけ長期のものを国民がそれなりに信頼をして、この制度の中で老後を考えるとかというようなことというのは、国家の信用あるいは国家の保証というものがその基本にないとやはり難しいだろうと私は思います。

 したがって、そういうものとして今も公的な年金制度ほかいろいろな社会保障制度が国家の信用、保証のもとで行われているんだ、このように私は理解をいたしております。

小川(淳)委員 大臣、私も老後が不安なんですよ、議員年金が廃止になりましたからね。国民年金だけで本当に大丈夫かな、物すごく不安です。この同じような不安を、やはり、もちろん厚生労働大臣そして総理にもお持ちをいただかないといけないんだと思いますね。でなければ、国民の不安感、感覚に本当に寄り添った政策決定とか政策判断というのはなかなかできないんじゃないかと思います。

 少し話がそれるんですが、麻生大臣、私は、安倍総理のいろいろなお言葉あるいは国会での御答弁、御著書の中でも非常に気になるのが二点ございます。

 一つは、御著書の中でおっしゃっておられます。中国との関係についてかつておっしゃっていました。政治問題を経済関係に発展させない、政経分離だというお考えが一つ。そして、歴史認識について政治家は積極的に語らないんだ、歴史家に任せるべきだ。今、日中歴史共同研究なんかされているみたいですが、この二つは麻生大臣も同じようなお考えですか。いかがですか。

麻生国務大臣 二つというのは、歴史認識の歴史の話でしょうか。(小川(淳)委員「政経分離」と呼ぶ)ああ、政経分離。

 歴史の話につきましては、これは基本的に、安倍総理が語っておられるように、政治家が語るのは極めて謙虚でなければならぬという話を言っておられるんだと存じます。

 この件に関しましては、生まれられる前の大分前の話だと思いますが、松岡洋右、小村寿太郎という二つの例だと思います。当時、ポーツマス条約を結んだ小村寿太郎は、焼き討ち食うやらえらい騒ぎで迎えられた。傍ら、国際連盟を脱退した松岡洋右はちょうちん行列で迎えられた。歴史はどっちを評価したかといえば、明らかに小村寿太郎の方が高かったのではないか。私どもは、歴史を見るときにそういうことを考えると、こういうことに関しては、その現象に関して極めて自分ではよくやったと思ったつもりでも、歴史の評価にたえ得るかいかがかは別の問題なんだというのは、そういう認識があります。

 それから、日中の話でもう一つが政経分離の考え方で、この話に関しては、政治問題を経済関係に影響させてはならずという例のせりふなんだと存じますけれども、私は、これは政経分離というのではなくて、二つは車の両輪みたいなものであるべきが最も正しいんだと思いますので、少なくとも、社会主義国において政経分離というのはなかなか現実的には難しいというのは、だれが考えたってそうなんじゃないでしょうか。

 しかし、現実問題としては、政冷経熱とかいろいろ言われておりましたけれども、昨年、中国に対する日本からの対中投資は、四月―九月で三一・四%ぐらいマイナスになっておりますので、そういった意味では、極めて厳しいことに昨年はなった。トータルで三〇%前後だったと思いますので、そういう意味では、今度は逆に政治の方がそこそこ十月以後動き始めて、経済の方が逆に厳しくなっておるという状態になっているのではないかというのが私の認識であります。

小川(淳)委員 大臣、ありがとうございました。

 私も麻生大臣の今の御見解に全く賛同であります。やはり、政治と経済は不可分で切り離せないんだという前提に立ってこそいろいろな発言が生まれてくるんだと思いますし、いろいろな政治的な取り組みが進められるんだと思います。

 ただ、安倍総理の頭の中がどういうことなのかな、私もここ半年近くいろいろ考えていたんですが、ある日、新聞でこの歌を目にしました。岸信介さんの歌だそうです。「名にかへてこのみいくさの正しさを来世までも語り伝へん」というこの岸信介さんの思い、これをやはり総理は引きずっておられるんだろうなと。そうするといろいろなことが、憲法に対する思い、安全保障、歴史観も含めていろいろ見えてくるんです。

 しかし一方で、一般国民、一般庶民は、さっき申し上げたとおり、この社会保障制度を何とかしてくれよ、談合を初めとした無駄遣いを何とかやめてくれよ、松岡大臣、ぜひ一回、改めて農政について議論させていただきたいと思いますが、地方の経済、地方の活性化を何とかしてくれよと。

 総理の思いは個人的に本当によくわかるんですが、国民的なニーズ、国民の本当の不安感、関心の置きどころとは甚だ乖離をしておられる。このことをやはり強く御指摘を申し上げて、ここにこそ私たち民主党の出番がなければならないと思っておりますが、これからも正面から政策論争を闘わせていただきたいと思います。

 きょうはありがとうございました。

金子委員長 これにて小川君の質疑は終了いたしました。

 次に、松木謙公君。

松木委員 大分、一日いっぱいのこの予算委員会ですので皆さんもお疲れだと思うんですけれども、ここで一回深呼吸をしていただきたいなというふうに思います。どうも御苦労さまでございます、皆さん。

 それでは、早速質問の方に移らせていただきます。

 ちょっと自分の話なんですけれども、自分は、子供のころから切手収集なんというのが実は好きだったんですね。それで、私、今四十八歳なんですけれども、年齢の近い方だったら、お金がなかったけれども「見返り美人」だとかそんなのが欲しいなんて、子供のころのことをちょっと思い出す方も多分いると思うんですけれども……(発言する者あり)「月に雁」というのもありましたね。

 それで、政治家でいえば、森山眞弓先生のだんなさんの森山欽司先生が、この切手収集というのでは、その世界では有名な方なんですね、もう今はちょっと天国に行かれていますけれども。そして、海部先生、あるいは小渕元総理なんかも結構お好きだったというそんな話も聞いておりますけれども、この切手というのは、その国の歴史とか自然とか、あるいは芸術、そして偉人ですね、いろいろな。日本でいえば、郵便の世界であれば前島密ということになると思うんですね。ここのところドラえもんも出ていますけれども、それは偉人とは言わないというふうに思いますね。

 そして、切手というのは、本当に凝縮された最小面積の最大の芸術品、こういうふうに形容されて、一方では、小さな外交官、こういうふうにも言われているんですね。この小さな紙片が、郵便料金の前払い証紙の役目だけではなくて、送り手から受け手への心のメッセージとして世界を駆けめぐるということなんですね。

 そして、先日、第二次大戦中のドイツを舞台にした「白バラの祈り」という映画、久しぶりに私、見てみたんですけれども、ナチス・ヒトラーの台頭に対して、ミュンヘン大学の医学生たちが白バラという組織を結成して、非暴力、反ナチ運動を展開するというストーリーですね。東部戦線でのドイツ軍の敗退を市民に知らせたり、あるいはヒトラー政権を批判した反戦ビラを学内でまいたりとか、いろいろなことをやっていました。結局どうなったかというと、ゲシュタポに逮捕されて、たった五日後に首を切られて死刑にされるということになったわけですね。

 このことは、ゲシュタポに兄さんとともに捕らえられたゾフィー・ショルという人物の、これは実在の方なんですけれども、その事実の記録がこの映画なんですけれども、反戦ビラが各地に郵送されるんですね。そして、ヒトラーやゲッベルス、こういう方々にもこれが届けられた。大胆不敵なことをやるものだなと思いますけれども、届けられた。そのときに封書に張られていた切手が実はヒトラー切手というもので、皆さんに資料としてお渡ししたのがその切手なんですね。この横に書いてある、私全然読めないんですけれども、これは別。この切手だけですね。これがヒトラー切手というんですね。ぜひ覚えておいていただきたいと思います。

 そして、この映画を私も見て、改めて、我々、切手を集めるなんというのは、やはり平和であればこその趣味だという思いを非常に強くしました。そして、ともに、独裁と戦争の狂気についてやはり非常に深く考えさせられたというふうに思っております。

 このところ、イラクでの自爆テロ、これはもうすごいですね、皆さん。とどまるところを知らない感じですね。二十四日から二十五日にかけて、テロだけでも三件で百人以上の市民の方が亡くなった。そのうちの一カ所は大学だったんですね。そして、四十人以上の学生がそこでは亡くなっています。そこには悲しむ何百という家族がいるわけで、もし日本のどこかの大学でこんなことがあったら、本当に、それだけの事件が起きたら、震撼するどころじゃない、これはもう大変なことになるというふうに思いますけれども、イラクでは今テロのあらし、五万人も六万人も市民が死亡している。そして、アメリカの兵隊さんも三千百四十九人亡くなられたというふうに外務省から私はお聞きしました。

 そこで、久間大臣の御発言、今国会ではいろいろな問題になりましたが、実は私なんかはちょっといいなという気持ちを少し持っておりまして、その見識というのは結構、陰で見えないようにして拍手したりなんかしたわけですけれども、どうもこれはもう今のイラクというのはベトナム戦争のときとほとんど同じ、そんな感じになってきたんじゃないかなというふうに言っても過言ではないというふうに私は思っているんですけれども、結局のところ、アメリカのイラクへの取り組み、これはちょっと失敗だったかなというふうに思われませんでしょうか。

久間国務大臣 アメリカはアメリカの判断でイラクに武力行使をしたわけでございますが、後の問題については、あんなふうに宗派対立があるとはやはり考えていなかったんじゃないかな、そういう感じがしますので、もう少し早く収拾できると思っていたんじゃないかなというふうに思います。

 そういう点では、やはり、始まる前にキッシンジャーが、イラクにおけるクルド、それからシーア派、スンニ派、この対立は大変厳しくて、この三つのグループの問題が残るんだということを新聞等で書いておりましたけれども、やはりそういう問題は結構あるんだなというふうな感じはいたしております。それだけに、やはり今のアメリカの政権も何とかしてイラクの安定を図ろうということで全力を挙げようとしているという、その決意はわかるわけであります。

松木委員 いや、失敗じゃなかったよと言われるのかなと思ったら、結構ちょっと私と似たような感想をお持ちの感じはしました。ちょっと失敗かなというような、まあ、大臣の立場ですからそんなことは言えないけれども、しかし、ちょっとそれに近い、そんな気持ちがにじみ出ていたような、そんな気がしておりますけれども。

 それにしても、麻生大臣の発言もありましたね。これも含めて、お二人の大臣がなぜわざわざ問題になる、そういうことをわかっていて発言をされたのかと、ずっと私、実は考えていたんですね。実は、これは私の考えなんですけれども、安倍総理とも十分に連携してプレーをしていたのではないかなというふうに最近は私は思っているんですね。つまり、イラク武装勢力の使用している武器がイラン製であることを米軍が発表していましたけれども、きのうも、アメリカの統合参謀本部の中にイラン爆撃計画策定グループというのが設けられたというような報道もありましたね。そして、六者協議での北朝鮮への妥協も、もうこれはいきなりの妥協だと思うんですね。イランへのシフトというんですかね、攻撃を想定してのことという憶測も流れているぐらいなんですね。

 お二人の大臣がイラクの問題に微妙な発言をされたのも、もしアメリカがイラン攻撃に踏み切ったとしたら、幾ら何でも日本は断固として協力できないと主張するためのある意味の環境づくり、あるいは布石、こういうものなのかなというふうに私はちょっと理解をしたわけです。

 防衛大臣、どうですか。仮定の話で恐縮ですけれども、もしイランに米軍が攻撃をするようになれば、日本はやはりイラクのときのように協力されるのか。個人的な見解でも結構です。そしてちょっと、まあ答えづらいというならこれはしようがないことですけれども、できるだけ答えてみてください。

久間国務大臣 委員会での答弁というのは防衛大臣として政府の立場で話すわけでございまして、政府としては、アメリカ政府は今そういうことは考えていないというような、そういうことをアメリカが言っているということを理解しておりますし、また、そういうことは、仮定の話に答えるわけにもいきませんが、そういうような状況であります。

松木委員 仮定の話には答えられない。確かにそうかもしれないですけれどもね。余り仮定の話に突っ込むとろくなことがないということなんでしょう。しかし、私は何となくそんな気がしたんですよ。何でもかんでもアメリカに引っ張られないように、ぜひ、防衛大臣もタフネゴシエーターでいていただきたいというふうに思っております。

 いずれにしても、じゃ、どうだといって、日米同盟というのはもうどうでもいいのか、そんなことは我々言わないですよ。これはもう大切なものだということはもう言うまでもないことなんですね。当然、本当に大切なことなんですね。

 でも、これは我が党の小沢代表もよく言っているんですけれども、本当のパートナーになった方がいいぞと。本当のパートナーになるには、やはり耳に痛いこと、ちょっと言いにくいこと、そういうこともやはり言うべきだろう、こういうことをよくお話をされているわけでございますね。

 ノーをはっきりと言える日本、そういうふうにあってほしいと思いますので、イラン攻撃に関しては明確に協力できないというメッセージをできたら送っていただきたいけれども、まあ仮定の話には答えられないということです。しかし、この時点で強く要望しておきます。ぜひ、そういうときがあったら、大臣、ほんのちょっと、もう一回答えてみてください。

久間国務大臣 イラクの場合は十二年間の間に十七回国連決議があっておりまして、たび重なる、挙証責任はあなたにありますよということをやっていたのも事実なわけですね。だから、私は、イラクももっと早く、肩怒らせてさも核兵器があるかのようなそぶりをせずに、オープンにしたらああいう結果にならなかったんだ、そういう思いも一方ではあるわけであります。

 そういう点では、あの当時の、確かに国連の、しかも各国含めてかなりのところが国連決議をやっておった、そういう状況、そういうこともありますから、今仮定の話は答えられないというのは、そういう状況と比べたときでもまたちょっと違うんじゃないかなという思いもいたしておりますから、先生の思い込みのほどの緊迫感は私自身も考えておりません。

松木委員 世の中いろいろなことがありますので、ぜひ今のうちに大臣、いろいろなことを頭の中に思いめぐらせて、考えておいていただきたいなというふうに思っております。

 それでは話はかわりまして、お手元の配付資料一をまず見ていただきたいんですけれども、二月十八日に大阪の吹田市で二十七人の死傷者を出したあずみ野観光バスの、スキーバスの事故について。長距離では二人運転手さんが必要なわけですね。それに一人しか乗っていなかった。あるいは専務さんが、何か三台も車をかけ持ちで、それで二カ月も休みがなかったとか、あるいは亡くなられた十六歳の弟さんですね、お子さん、車掌として乗車をしていたということなど、人手不足とはいえ、余りにもやはり無謀だった。ちょっと胸が痛むなというふうに思っております。そして、見たら、けさの朝日新聞にもかなり大きな記事がこれまた載っておりました。

 少なくとも、人の命を預かる仕事をなさっているわけですから、厳しい安全への姿勢、点検が求められることというのは言うまでもないわけですけれども、二十六日の読売新聞の、バス業界の規制緩和に伴うずさんな安全管理、そういう記事のくだりを読んでいますと、国交省は一体何をしていたのかなというふうに思うわけでございまして、しかも、あずみ野観光バスさん、事故の二週間前に監査を受けているという話も聞いております。なのに、事故を防ぐことができなかった。どういうことなんでしょうかね。

 このことについて、何でも監督責任、監督責任でもないんでしょうけれども、しかし、国の監督責任、これを大臣、どういうふうにお考えでしょうか。

冬柴国務大臣 我が国土交通省は、国民の安全と安心を、あらゆる意味で、陸海空そしてまた河川等、そういうものを背負った役所だと思っております。したがいまして、国民からそのような信託を受けている以上、それにこたえなければならない。

 ただ、今回の監査について、平成十四年の七月には、地方運輸局の組織再編当時は、地方運輸局及び運輸支局で合計百八名の監査、こういうところを監査する職員であったわけでございますが、これではどうしても手薄だということで、本年一月からは百六十六名の体制にし、そして平成十九年度予算案におきましては、これを二百名体制にしようということで、監査の頻度を二・八年に一回という頻度までしようというところにしたわけであります。

 ただ、このお配りになっているあれではもっとすごく低いように書かれていますけれども、それは平成十四年から十六年までの実績で、これは五・三年ということで、ところが、今回は二・八年に一回の頻度まで短縮しようとしているわけでございますが、それではだめじゃないか、もっとやれということになりますと、どうしても要員をふやさざるを得ないというのが実態でございます。

 しかし、そのような少ない中でも、昨年の二月からは、新規参入業者というのが案外多いわけですが、こういうことも、参入後六カ月以内に早期監査をやるとか、あるいは、昨年八月からは、過労運転とか酒気帯び運転というような悪質違反を引き起こした事業者については厳しい行政処分をするための監査を行ったりとか、あるいは、昨年二月以前に新規参入した事業者のうちで、監査を実施していない一般貸し切り旅客自動車運送事業者や、高速道路や深夜時間帯、また長距離を運行する、そういう一般貸し切り旅客自動車に対する監査の実施について、もっと頻度を上げたいということで今検討も進めているというのが実態でございます。

松木委員 なるほど、一生懸命、大臣、いろいろなことをされているみたいですね。でも、結果はなかなか出ていないですよね。どうもやはり厳しいですね。

 実は、こうしたことはバス業界だけでなくて、トラックあるいはタクシー業界でもかなり顕著にあらわれているわけですね。そして、二〇〇二年に改正道路運送法というのが施行されて以来、やはり事故が急増しているんですね。タクシーに関しての質疑というのは、これは今までもう十何人の方がこの委員会とかいろいろなところで随分やっているわけですね。しかし、結局、何の成果があったのかなという感じなんですね。

 そして、例えばタクシーの台数も規制緩和によってふえたわけですね。しかし、これは考えてみると、きょう環境大臣はいないけれども、これだって、CO2の削減にもある意味で逆行しているんじゃないかなというふうに私は思うんですね。そして、競争が激化して、結局、資料二のように、収入が大幅に減るわけですね。長時間労働を余儀なくされて、それで疲労の蓄積によって事故が急増するという悪循環が繰り返されているというわけですね。

 私、タクシー会社を経営している仲間がいるものですから、ちょっと聞いてみました。運転手さんが一昨年と去年ですか、自殺されたそうです。悲惨な話ですよね。そして、平均給与が手取りで十一万だそうですね。非番の日にアルバイトすることだとか奥さんのパートで何とか辛うじて生活している人が多いということで、厳しい実態がかなりひしひしと伝わってきたわけですけれども。運転手さんのだれもが、こんなに車両が余っているのに増車するのはおかしいですねと言っていますよ。皆さんも、多分、この近くでいえば、赤坂なんか夜行ったら本当にタクシーだらけですよね。お客さんがいない状態。

 このことについて、大臣、どのように認識されますか。

冬柴国務大臣 確かに、規制緩和後、特に運輸事業者が急増したという事実があります。それが、一つは、東京、大阪というようなところは特に過激でして、大阪なんかはですね。北海道でもそういうふうな実態があるというお話も今聞きましたけれども、ただ、アンケート調査をしますと、乗客の中では、東京、大阪はそうでもないんですけれども、東京、大阪では道を知らぬそして無愛想だとかいうような運転手が多いとかいう文句が多いんですが、ほかの地方都市へ行きますと、多様なサービス、例えば福祉タクシーとか非常に多様な、それから親切な運転手がふえた、そういう意味での評価をしていただいているところもあります。それから、運賃が安くなったというようなところもあります。

 しかし、そのしわ寄せが、長い不況とも重なりまして、運転手さんのそのような収入とかそれから長時間労働とか、厳しい労働条件になっているという実態があることはこれは否めません。我々といたしましても、厚生労働省と、最低賃金というようなものの違反がないかどうかというようなものを指導強化したり、労働環境の確保を図るという点を含めて対策をとろうと。ただ、今この規制緩和というものを逆戻りさせることが国民全体として納得していただけるかどうか、私としても、どうかなという感じはします。

 ただ、景気がよくなれば若干の状況は変わってくるのではないかなという期待も含めているわけでありますが、確かに厳しいことは事実であります。

松木委員 私があえてこのバス、タクシー業界というのを予算委員会で取り上げたのは、結局、小泉内閣の五年半で徹底された市場原理主義、新自由主義といいましょうか、こういうのが、社会政策の結果をこの業界が見事にある意味で象徴しているんじゃないかなという気がしてならないんですね。

 規制緩和、これはもちろん、すべてが悪いなんて私は言いませんよ。もちろん、いいこともいっぱいあるでしょう。でも、やはり物には光も影もあるんでしょう。いわゆる輪っぱを握るというんですかね、こういう業界というのは、やはり規制緩和というのは厳しいんだなとつくづく思うわけですよね。やはり、その緩和したタイミングもちょっとよくなかったかなという気もしていますよね。

 どうもこのやり方は、全部が悪いとは言いませんよ、でも、今言ったとおり、この輪っぱを握る仕事というのは、やはりある程度のいわゆる秩序の中でやっていく方が、それは皆さん、少し運賃が安くなったといったって、命と運賃はてんびんにかけられないでしょう。そういうことが起きるんですよ。ですから、これはやはり考えていかなきゃいかぬ。

 であれば、二〇〇二年に決めた改正道路運送法というんですか、これをやはり思い切って見直すということを考えてみたら私はいいと思うんですよ。やってみたけれども失敗だったということだってあるじゃないですか。あれば、もう一度直せばいいんですよ。直せばいいというだけじゃないかもしれないですね、それで犠牲になった方もいるから、これは大変なことですけれども。しかし、そういうことをやはり、もちろん規制緩和するというのも大切なことだけれども、そこも大切だというふうに私は思っています。

 渡辺大臣、どういうふうに認識されますか。

渡辺国務大臣 先ほど冬柴大臣もお述べになられたように、お客さんの方から見ますと、バス、タクシー、非常に利便性が向上したと言えると思うんですね。私なんかも、タクシーに乗りまして、昔だったら非常に愛想が悪かった、嫌な思いをしたのが、最近はほとんどそういう運転手さんに会わない。バスなんかも、非常に創意工夫をして、料金も下がっているし、いろいろな新しい新機軸が出てきていますよね。したがって、そういうことを考えれば、やはり昔の、例えば免許制とか、そういうところに逆戻りをするというのはいかがなものかなと思うんです。

 ただ、一方、松木委員御指摘のように、この規制緩和で増車がなされて過剰供給構造に拍車がかかっちゃった、そうすると、そのしわ寄せが運転手さんの方に行って賃金が相当下がってきている。これは一種のデフレ状態なんですね。要するに供給過剰なわけですから、だからデフレはどんどん続くわけですよ。

 ですから、このデフレ状態から脱却するには、需要をふやすか、つまり、お客さんの懐が暖かくなってどんどんタクシー、バスに乗ってくれるということになれば、このデフレ状態はなくなるわけですね。それは、景気全体がいまいち個人消費まで回復していないというところもあるいはあるのかもしれません。

 一方、私は産業再生という担当をやっていまして、産業再生機構はいずれ、間もなく解散しちゃうのでございますが、こういう過剰状態の中にあって何が問題なのかなということを考えますと、バス、タクシー、それからトラックなんかもそうなんですけれども、空気を運んでいる比率が結構高いんですね。空気を運んじゃっていると、これは生産性が高くならないわけですよ。ですから、この生産性をどう見るか、この検証は大田大臣のところで今やっておられますけれども、そういう観点からも検証が必要かと思います。

松木委員 そうすると、渡辺大臣の認識は、この運送関係の改革というのは成功であったというふうに思われるわけですか。問題はなかったというふうに思いますか。

 僕は、それは、言ったとおり、いいこともあると思いますよ。でも、てんびんにかけてみてくださいよ。これはかわいそうよ。余りにもひど過ぎるもの。やはり、もうちょっと優しく、いろいろな人間がいるんだから、もうちょっと優しくしてやらなきゃだめだなと思いますよ、僕は。

 もしよかったら、大臣、さっきから答弁したそうですから。

冬柴国務大臣 この運輸事業者の規制緩和によって、いわゆる失業していた方が相当働く場所を得られたことは、事実だと思います。これは、そういう意味では、その部分はあると思います。

 それから、大都市、さっき東京、大阪と言いましたけれども、政令指定都市でも、流しをしているところの運転手には、たくさんの人が入っていますけれども、地理を知らないとか、それからつっけんどんだとかいうような傾向が見られます。

 そういう意味で、今国会にそういう運転手の登録制度とかいうものも採用する法案を提出させていただいておりますけれども、何とかそういうところを通じてこの事態が改善されていくように頑張っていきたいなというふうに思っています。

松木委員 ぜひ、大臣、この改正運送法、これを少し、やはり手直しが僕は必要だと思いますので、それをぜひ考えていただきたいというふうに思いますけれども、もう一度、どうですか、ちょっと考え直してみようと。

冬柴国務大臣 承知しましたと言いたいところですが、規制緩和の流れを逆戻りさせていいのかどうかは非常に大きな問題でありますので、もう少し考えさせてください。

松木委員 わかりました。

 何回も言いますけれども、規制緩和が全部悪いなんて言っていないんです。しかし、ミスもあるんだから、それは、うまくいかなかったなと思ったら、僕は、すべて一緒に、全部同じふうに戻せとは言いません、何かもうちょっと工夫していただくとか、そういうことをやっていただかなきゃいけないなというふうに思います。

 大体、冬柴大臣は公明党御出身の大臣ですから、公明党の方々は、弱者の味方、昔からそう言われている政党ですから、ぜひこれはちゃんとしていただきたいというふうに思っております。

 今の政府の政策というのは、やはりちょっと、どっちかといえば、強者の政策の方に引っ張られているというふうに僕は思いますね。弱者がどんどんどんどん切り捨てられて、格差が広がっていっている。

 民主党が格差社会の統計を発表しましたが、例えば自殺者が、一九九〇年は二万一千三百四十六人、それが二〇〇五年には三万二千五百五十二人。自己破産、二〇〇〇年で十四万五千件だったのが、二〇〇五年には十八万四千件。余りいい数字じゃないですね。そして、生活保護受給者世帯、これは七十五万世帯から百四万世帯、こうなっていますね。虐待の件数も、一万七千七百二十五件から三万四千四百七十二件ですよ。随分ふえていますね。やはり格差社会というのはあるんですね。これは何とかしていかなきゃいけないと思いますね。

 私は、前回の質問でも、農業の所得補償政策を取り上げて指摘させていただいたわけですけれども、弱い者に優しい政治ということをやはり見失っているんじゃないかなという気がするんですよ。

 ちょっと古い話で恐縮なんですけれども、かつて、ケネディ大統領が就任時に、日本人の記者団から、日本で知っている人はだれですかと言われたときに、ヨウザン・ウエスギ、こういうふうにお答えになっているんですね。これは有名な話なんですけれども、米沢藩主として危機的な赤字財政を立て直して、藩政を見事に立て直したということで有名な方ですけれども、英邁なる主君として今でも名を残している方なんですね。

 その上杉鷹山公、民の父母としての藩主の根本方針として三つ挙げているんですね。それは、みずからを助ける、すなわち自助、そして近隣社会がお互いに助け合う互助、そして藩政府が手をかす扶助、この三つなんですね。

 そして、この三助を挙げて、具体的には、自助の実現のために米作以外の殖産興業の振興を図って、互助の実践としては、農民には五人組、十人組、そして一村単位で組合をつくって、お互いに助け合うこととしたわけですね。特に、孤児、孤老、そして障害者、こういう方々は、五人組、十人組の中で面倒を見させていただくような、そういう形になっていた。そして、一つの村が火事あるいは水害とかそういうことになると、近隣の四カ村が救援すべきことということで定めていたわけですね。

 天明の飢饉では、藩政府の扶助として、藩士、領民の区別なく、一日当たり、男性は米三合、そして女性は二合五勺の割合で支給して、かゆとして食べることとして、鷹山以下、上杉家の全員も、領民と同様、三度の食事はかゆとして、それを見習って、お金持ちの人も、貧しい方々を競って助けた、こういう史実もあるんですね。

 改革の精神に必要な根本姿勢というのは私はここにあると思うんですね。日本の美しい国柄というのは、私は思うんですけれども、やはり国民の格差が少ない、ここにあったんじゃないかなという気がしております。

 規制緩和だけ進めても、やはり相互扶助の精神を忘れては、ただ殺伐とした冷たい競争社会をつくり出してしまう。ある意味では、日本社会はそうした方向に今急激に歩みつつあるんじゃないか、そういうふうに思えてなりません。言い過ぎなのかもしれないですけれども、でも、やはりそういう気がしますね。

 それは例えば、身近な話で、公僕という話があるんですけれども、いわゆる役人の方ですね、この方々の精神状況というのがかなりやはり厳しいみたいで、いろいろなものを見ると一目瞭然なんです。先日、現役の自衛隊の幹部の方から、うつ病で悩んでいて、それに対して職場の対応がなかなかよくなくて困っているという相談が私のところにあったんですね。

 ところで防衛省、自衛隊での精神的な障害で休職されている方の現状と対策について、簡単にちょっと御報告をいただけたらと思います。

久間国務大臣 最近、うつ病などの精神的障害による自衛隊の休職数は、統計が十三年度以前はないものですから十三年度以降ですけれども、ふえておりまして、十三年度で百二十四人、十四年度で百二十三人、十五年度で百五十五人、十六年度で百七十九人、十七年度で二百三十五人となっております。

 私どもとしましても、自衛隊の隊員というのは、本当に強い使命感を持って、我が国の防衛という崇高な任務を全うするためにおるわけでございますから、こういう意味でも精神的健康を保持することは大事でありますから、メンタルヘルスにはこれから非常に取り組んでいこうということで、今、一生懸命努力しているところでございます。

 いろいろな要因があるかもしれませんけれども、職場等においても見られる身近な状態であることでございますから、やはり、うつ病に関する啓発教育をする、カウンセリングの利用を促進する、うつ病等を患った隊員に対する業務負担の軽減とか適切な治療のための医療との連携を図るとか、あるいはリハビリテーション等の復職支援をするなどして、とにかくこれに対して対策を今講じようとしているところでございます。

松木委員 いろいろな対策を速やかに講じるように頑張ってください。

 添付した資料をちょっと見ていただきたいんですけれども、資料の三から七まで見ていただきたいと思います。

 国家公務員が二倍強ですね。そして地方公務員で三・五倍、公立学校の教員では三倍以上、警察職員でも二・八倍。いわば、小泉さんになってからというふうには、そればかり言ってもいけないんだけれども、この五年余りで、精神障害での休職者というのがこんなにふえているんですね。

 このことを官房長官どう思いますか、端的に。

塩崎国務大臣 今、防衛の方から、自衛隊における精神障害の問題についてお話がございましたが、ふえているということで、公務員の話も今先生が御指摘のとおりであって、精神障害は、だれでもなり得るような、二百万人以上全国でいるわけでありますが、やはり、ストレスなどいろいろな原因が重なってこういうようなことになってきているのかなということで、余りこれは好ましい傾向とは言えない状態だと思っております。

松木委員 最近、子供が親を殺すとか、親がまた子供を殺すとか、非常に何か病んでいるような、そんな気がします。ストレスというんでしょうか、そういう世界なんでしょう。そして、今までやはり競争競争ということがちょっと厳しくなり過ぎているんじゃないか、そんな気も私はするわけですね。少し、やはり相互扶助の精神というんですか、この相互扶助の精神もしっかりと入れて美しい国をつくらにゃいかんな、こういうふうに私は思うんですね。ぜひ、そういうこともお考えをいただきたいと思います。

 時間も余りなくなってきましたので、実はいっぱい質問を用意していたんですけれども、やる前から十分間削られちゃいまして、せっかく来てくれた大臣で、ちょっとお話しいただけない方、今のうちに謝っておきます。済みませんでした。

 それでは最後に、前回も質問させていただいたんですけれども、北見のガス事故についてですが、ここに資料の十の北海道新聞の記事がございます。北見市内では、一カ月たってもいまだに老朽管を公表しないことや、二月に入っても新たに三件のガス漏れが発生したことで、市民の不安がぬぐえないでいると書いてありますね。二月の三件も含めると四十カ所でガス漏れがあったことを私は経産省のガス安全課の方にお聞きしたんですね。そうしたら、こう言われましたよ。至極微量で、つめの先のようなもので大したことはない、こういうふうに私は言われました。

 北見の事故のときにも、二日前にガス漏れに気づいた市民の通報にも適切な対応をとらなかったガス会社の方、そういう人と同じような感覚だなと私には感じられましたが、こうした対応に関して、市の対応もそうですね、国は直接、監督指導、こういうものは行われないんでしょうか。

広瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 一酸化炭素を含むガスを供給している事業者は、全国に十六ございます。私ども、北見の事故がありまして、直ちにこの十六事業者に緊急点検を命じたところでございます。

 この十六事業者の、合わせまして九十九件の漏えいがございましたが、すべてこの修理等は完了しておる状況でございます。

松木委員 これは、北見のことだけじゃなくて、十六カ所こういうところがあるということですので私は聞いているわけですけれども、事故原因技術調査委員会の初会合が開かれて、「土壌のずれで破断か」と新聞には報じられていますけれども、ここまで書かれているんですから、もう少しいろいろな話、どんなことがされたのかな、内容について教えてくださいというふうに私はお願いしたんですね。そうしたら、そういうのは出せませんと、けんもほろろに私は言われたんですけれども、ちょっと解せなくて、ならば、新聞にここまで詳しく書かれているのはおかしいではないのかという言い方もしたんですけれども、結局、言いわけばかりで、中身については教えていただけませんでした。ですから、ここの場所でもう一度やっているわけですけれども。

 前回私が質問した次の日に、大臣の、北見市に対して、移管してたちまち事故が起きたことを深刻に受けとめてほしいと御忠告をいただきましたですね。これに対して、「原因は「土壌のずれ」」と記事が出ていたわけですけれども、それではまるで自然災害のように聞こえて、どこにも責任がないような、何かそんなふうにも聞こえてくるんですね。ですから、調査委員会での議論の概要を聞かせていただけないかとお願いしたわけですね。

 そこで、甘利大臣にお伺いしたいんですけれども、新聞に書かれている程度のことを認識しても返事もいただけないのは何でなんでしょうね。そして、今後の安全対策についてと北見のガス事故の責任の所在、こういうものをちょっと、再度御所見を伺いたいと思います。

甘利国務大臣 新聞報道は、まだ委員会として取りまとめた結論ではありません。どういう経緯でどういう掲載になったのかというのは、詳細は存じ上げておりませんが。

 今、この北見の事故につきましては、もちろんこれからの現地調査も含めて、専門家の知見を結集してできるだけ正確な結論を出したいと思っておりまして、今、専門家から成る北海道北見市ガス漏れ事故原因技術調査委員会というのを設置しておりますが、中間的な取りまとめは三月末をめどにいたしておりまして、今まだ検討中でございます。二月の十七日に第一回会合が開催されたのでありますが、現時点では、新聞報道にありますような特定の原因に絞り込んで検討がなされているという事実はありません。これが正式な話でありまして、三月末には中間報告ができると思いますし、その間に現地をしっかりと調査するということも行われるはずであります。

 私どもとしては、この調査委員会が出す結論をしっかり見守って、それで責任の所在がどこにあるか、それまではなかなか軽々な判断はできないと思っております。

 ただ、前回もちょっと触れましたけれども、北見市から移管されて何十年もたっているわけではありませんので、一年移管がずれていたらこれは北見市の管理のもとでの事故になっていましたよ、ですから、そういう思いで深刻に受けとめて迅速な対応をお願いしますということで注意を喚起したことは事実でございます。

松木委員 ありがとうございました。国としてさらに適切な御指導を賜りますことをここでもう一度お願いしたいというふうに思っております。

 やはり、公に生きる者の心構えとして、我々もそうなんですけれども、国民の皆さんの税金によって我々はなりわいを立てているんですから、これからも上杉鷹山公の三助の精神を思い出していただいて、みんなで、一人一人、国民に真摯な態度で接していくということが大切だと思います。ぜひそこら辺のお気持ちを官房長官からもう一度、頑張りますよと。

塩崎国務大臣 先ほど来、災害の問題を取り上げていただいております。

 人災、天災、いろいろあって、役所の方はそれぞれの役割分担で、新たに内閣府には防災担当大臣というのが設けられておりますが、いずれにしても、そういった災害が起きないようにすることが一番大事でありますから、最大限その予防に努めて、そういった面で犠牲が出ないように努力を重ねていくことが大事ではないかということで、改めて、それぞれの所管省庁、そしてまた自然災害の場合の防災担当大臣を含めて、内閣挙げてこれに取り組んでまいりたい、このように考えております。

松木委員 ありがとうございました。

 いずれにしましても、やはり弱い人を切り捨てるのではなくて、みんなでよくなっていく、そういう国をつくっていきたいというふうに思います。

 以上でございます。ありがとうございました。

金子委員長 これにて松木君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

金子委員長 この際、御報告いたします。

 昨二十六日の分科会設置の際、分科員の配置及び主査の選任につきましては委員長に御一任をいただいておりましたが、分科員の配置につきましてはお手元に配付いたしておりますとおりといたします。

    ―――――――――――――

  第一分科員

      井上 喜一君    大野 功統君

      園田 博之君    三ッ林隆志君

      枝野 幸男君    馬淵 澄夫君

  第二分科員

      小野寺五典君    金子 一義君

      細田 博之君    前原 誠司君

      阿部 知子君

  第三分科員

      遠藤 武彦君    大島 理森君

      倉田 雅年君    岡田 克也君

      丸谷 佳織君

  第四分科員

      佐藤 剛男君    中野  清君

      増原 義剛君    岩國 哲人君

      佐々木憲昭君

  第五分科員

      稲田 朋美君    河井 克行君

      中馬 弘毅君    小川 淳也君

      大口 善徳君

  第六分科員

      河村 建夫君    馳   浩君

      深谷 隆司君    大串 博志君

      中井  洽君

  第七分科員

      笹川  堯君    西村 康稔君

      野田  毅君    川内 博史君

      中川 正春君

  第八分科員

      臼井日出男君    三ッ矢憲生君

      宮下 一郎君    原口 一博君

      松木 謙公君    糸川 正晃君

    ―――――――――――――

金子委員長 また、各分科会の主査は次のとおり指名いたします。

        第一分科会主査 斉藤斗志二君

        第二分科会主査 三原 朝彦君

        第三分科会主査 森  英介君

        第四分科会主査 萩山 教嚴君

        第五分科会主査 実川 幸夫君

        第六分科会主査 山本 公一君

        第七分科会主査 杉浦 正健君

        第八分科会主査 赤松 正雄君

以上であります。

 なお、分科会審査は、明二十八日及び三月一日に行います。

 次回は、来る三月一日午後一時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十七分散会


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