衆議院

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第6号 平成20年2月12日(火曜日)

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平成二十年二月十二日(火曜日)

    午前九時三分開議

 出席委員

   委員長 逢沢 一郎君

   理事 伊藤 達也君 理事 遠藤 利明君

   理事 田野瀬良太郎君 理事 中山 成彬君

   理事 森  英介君 理事 山本 幸三君

   理事 岡田 克也君 理事 前原 誠司君

   理事 富田 茂之君

      あかま二郎君    井上 喜一君

      井脇ノブ子君    伊藤 公介君

      岩永 峯一君    臼井日出男君

      大島 理森君    大野 功統君

      片山さつき君    金子 一義君

      亀井善太郎君    亀岡 偉民君

      河村 建夫君    倉田 雅年君

      小池百合子君    小坂 憲次君

      佐藤 剛男君    斉藤斗志二君

      坂本 剛二君    篠田 陽介君

      菅原 一秀君    杉浦 正健君

      園田 博之君    平  将明君

      中馬 弘毅君    長勢 甚遠君

      野田  毅君    深谷 隆司君

      藤野真紀子君    増原 義剛君

      松本 文明君    三ッ矢憲生君

      三原 朝彦君    安井潤一郎君

      小川 淳也君    太田 和美君

      川内 博史君    笹木 竜三君

      園田 康博君    武正 公一君

      中川 正春君    原口 一博君

      平岡 秀夫君    細野 豪志君

      馬淵 澄夫君    松本 剛明君

      山井 和則君    笠  浩史君

      渡部 恒三君    赤松 正雄君

      江田 康幸君    笠井  亮君

      穀田 恵二君    阿部 知子君

      保坂 展人君    糸川 正晃君

      下地 幹郎君

    …………………………………

   内閣総理大臣       福田 康夫君

   総務大臣         増田 寛也君

   法務大臣         鳩山 邦夫君

   外務大臣         高村 正彦君

   財務大臣         額賀福志郎君

   文部科学大臣       渡海紀三朗君

   厚生労働大臣       舛添 要一君

   農林水産大臣       若林 正俊君

   経済産業大臣       甘利  明君

   国土交通大臣       冬柴 鐵三君

   環境大臣         鴨下 一郎君

   防衛大臣         石破  茂君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     町村 信孝君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 泉  信也君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (国民生活担当)     岸田 文雄君

   国務大臣

   (金融担当)

   (行政改革担当)     渡辺 喜美君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   大田 弘子君

   内閣官房副長官      大野 松茂君

   内閣府副大臣       木村  勉君

   内閣府副大臣       中川 義雄君

   法務副大臣        河井 克行君

   財務副大臣        森山  裕君

   文部科学副大臣      松浪健四郎君

   厚生労働副大臣      西川 京子君

   農林水産副大臣      今村 雅弘君

   国土交通副大臣      平井たくや君

   環境副大臣        桜井 郁三君

   内閣府大臣政務官     加藤 勝信君

   法務大臣政務官      古川 禎久君

   文部科学大臣政務官    保坂  武君

   経済産業大臣政務官    荻原 健司君

   国土交通大臣政務官    谷  公一君

   衆議院調査局長      清土 恒雄君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   原田 正司君

   政府参考人

   (内閣府沖縄振興局長)  清水  治君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    米田  壯君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大野恒太郎君

   政府参考人

   (財務省主計局長)    杉本 和行君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          金森 越哉君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       森口 泰孝君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  西山 正徳君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            太田 俊明君

   政府参考人

   (国土交通省道路局長)  宮田 年耕君

   政府参考人

   (国土交通省航空局長)  鈴木 久泰君

   予算委員会専門員     井上 茂男君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月十二日

 辞任         補欠選任

  伊藤 達也君     西銘恒三郎君

  臼井日出男君     藤野真紀子君

  尾身 幸次君     松本 文明君

  大島 理森君     片山さつき君

  大野 功統君     亀井善太郎君

  河村 建夫君     井脇ノブ子君

  小坂 憲次君     安井潤一郎君

  深谷 隆司君     平  将明君

  中川 正春君     平岡 秀夫君

  細野 豪志君     小川 淳也君

  山井 和則君     園田 康博君

  笠  浩史君     川内 博史君

  渡部 恒三君     太田 和美君

  笠井  亮君     穀田 恵二君

  阿部 知子君     保坂 展人君

  糸川 正晃君     下地 幹郎君

同日

 辞任         補欠選任

  井脇ノブ子君     河村 建夫君

  片山さつき君     篠田 陽介君

  亀井善太郎君     大野 功統君

  平  将明君     深谷 隆司君

  藤野真紀子君     臼井日出男君

  松本 文明君     あかま二郎君

  安井潤一郎君     小坂 憲次君

  小川 淳也君     細野 豪志君

  太田 和美君     渡部 恒三君

  川内 博史君     笠  浩史君

  園田 康博君     山井 和則君

  平岡 秀夫君     中川 正春君

  穀田 恵二君     笠井  亮君

  保坂 展人君     阿部 知子君

  下地 幹郎君     糸川 正晃君

同日

 辞任         補欠選任

  あかま二郎君     亀岡 偉民君

  篠田 陽介君     大島 理森君

同日

 辞任         補欠選任

  亀岡 偉民君     尾身 幸次君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成二十年度一般会計予算

 平成二十年度特別会計予算

 平成二十年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

逢沢委員長 これより会議を開きます。

 平成二十年度一般会計予算、平成二十年度特別会計予算、平成二十年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑を行います。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官原田正司君、内閣府沖縄振興局長清水治君、警察庁刑事局長米田壯君、法務省刑事局長大野恒太郎君、財務省主計局長杉本和行君、文部科学省初等中等教育局長金森越哉君、文部科学省科学技術・学術政策局長森口泰孝君、厚生労働省健康局長西山正徳君、厚生労働省職業安定局長太田俊明君、国土交通省道路局長宮田年耕君、国土交通省航空局長鈴木久泰君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

逢沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

逢沢委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田野瀬良太郎君。

田野瀬委員 おはようございます。

 ちょっと記憶が定かではないんですが、たしか小泉総理だったと思うんですが、新聞だったか雑誌のインタビューに答えまして、総理になって一番うれしかったのは何だったですかという問いに、やはり予算が通ったときですねという、そういう記事を読んだことが記憶に残っておるんです。それだけに、この予算委員会、総理、大変だろうと思いますけれども、ぜひ予算成立に向けて、ひとつ我々も精いっぱい支えてまいりますので、頑張っていただきたいと思います。大臣の皆さん方もどうぞ頑張っていただきますようにお願い申し上げたいと思います。

 きょうは、私は過去二十数年の間に、幼、小、中、高、大を設立、運営させていただいた経験がございまして、そこから、昨今ちょっと気になる教育問題に絞って、二、三点、総理並びに文科大臣に提案、提議あるいは御質問をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げたいと思います。

 今国会の冒頭に、大田大臣から、もはや日本の経済は二流だ、こんな話がございました。それは、バブルがはじけて十四、五年、ほとんど日本の経済は成長しなかったんですから、それもそのとおりだろうと思います。しかし、その間、手をこまねいて何もしなかったというわけではなくて、懸命にいろいろな施策を講じる中で、厳しい歳出削減の中で、日本のこれからの生きる道はもう科学技術創造立国以外にないんだということで、科学技術予算は確実に伸びてまいりましたし、科学技術研究者あるいはまた研究室を取り巻く環境は随分整備されたと思います。

 しかしながら、その科学技術者を目指す卵、一流の科学技術者、研究者が誕生するまでのプロセスの中で、もっと具体的に申し上げますと、大学受験生の中で大変なことが実は起こっておるということをきょうは御報告させていただいて、提案させていただきたいと思うんです。

 実は、理系志望者の大学受験者の優秀な学生たちは、今、大方国公立の医学部を志望しております。国公立の医学部、四十七都道府県、大体各県一つずつございます。定数八十人から百人でございますので、おおむね五千人と見ていいんでしょうか。概して言うならば、一番から五千番までは、東大の理三、京大の医学部を初めとして、大方国公立の医学部を志望するんです。そして、その五千番からずっと、東大の理一、理二あるいは京大の理学部、工学部と、こう続いていくんですね。

 とにかく優秀な、気が遠くなるような優秀な連中でございます、この五千人ほどは。これが全部医学部志向だということでございまして、しかも、大変難しいですから、二浪、三浪はざらなんです。この優秀な連中が二浪、三浪して行くという、言うなればちょっと異常な状況が実は続いておるところでございます。

 例えば、私の、奈良県立医科大学というのがございますけれども、ここに入る学生は、全部東大の理一、理二に受かります。もうほとんどそうでございます。そういう状況になっておるところでございます。

 どうしてそんなことになっておるのかということでございますが、バブルがはじけて経済が非常に低迷している状況の中で、おおむね、御両親、特にお母さんですね、安定志向でございまして、子供に、医者はいいね、医者になりなさい、こういうことで、どんどん親が医学部を勧めるということが一つ。

 それから、私はめったにテレビは見ないんですけれども、見る機会がないんですが、最近も、難病の救急の患者が、お医者さんが素早くチームを結成して、そしてその治療に当たって問題を解決したという、言うなれば非常に格好のいいドラマがテレビ等々で放映されておるというようなこと。

 ところが、それに引きかえて、研究者、科学技術者は、まあ本当に、我々の目に触れないというか、近くにいないんですね。一体どんな仕事をしておるのかということが全くわからない。そんなことで、ついつい、近くにおる格好のいいお医者さんにぜひなりたい、こういう子供の心理が働くんでしょうか。そういうことで、もう本当に優秀な子供たちが医学部へどんどん行く。

 確かに、医療の世界にも優秀な学生がどんどん行くことはいいことでありますけれども、この学生たちが、環境の分野であるとかバイオの方向だとかナノだとか、いろいろな方向に科学技術者として散らばっていく、こういうことになりますと、私は、それこそノーベル化学賞がもっともっと日本から輩出するんではないかな。これを何とか、医学部一本調子の目を、子供たちを、もうちょっといろいろな方面にしむける方法はないのかということを、つくづくと経験しながら痛感するわけでございます。

 さすれば、どうしたらいいのかということなんですが、やはり、見えない科学技術者、研究者をもっともっと子供たちに触れさす施策を講ずる必要があるのではないか。

 大体、私立ですと、高一から高二に進む段階で進路を決めます。公立の場合は、高二から高三の段階で決めるわけでございます。私は、できれば中学の段階から、あるいは高一、高二の段階でもっともっと、科学技術者がどれほど社会に、国家に貢献しておるのか、どんな仕事をしておるのか、こういうことを子供たちに触れさす、そういう施策、まあ、でき上がった科学技術者、研究者にいろいろな補助金を出して応援するということはかなり進んだと思うんですが、最も大事な、人材を育てる高一、高二の段階のいろいろな施策、そこにもっともっと視点を当てるべきではないか、このように思うわけでございますが、文科大臣、いかがでございましょうか。

渡海国務大臣 全く大賛成でございます。

 田野瀬先生は、これは持論でございますよね、従来から、優秀なのはみんな医者になる、そのことをどうやって考えていくかということをおっしゃっております。

 やはり、いろいろな機会をつくって、研究者というのは実は魅力があるんだ、また、物づくりというのは魅力があるんだということをしっかりと教えていかなきゃいけない。そういう機会がふえれば、ああ、おれも将来はああいうふうになりたいという子供もふえるわけでありますから、全くそのとおりだというふうに思います。

 ただ、そういう機会をどうやってつくっていくかということに関して、政策的にいろいろな支援はしておるわけでありますけれども、そういった情報がしっかりと伝わっているかどうか、それはちょっと疑問だなというふうに私も思いました。

 もっともっと情報を発信する。例えば、そういう試みをやろうとする、そういった高校なり、まあ中学の段階でも大事でしょう、それがあったときには、しっかりと、どこへアクセスすればどういう人に来てもらえるか、また、どういう機会があるかといったものをもっともっと発信していく必要がある。今後、そういう政策を積極的にとっていきたいというふうに考えておるところでございます。

田野瀬委員 その国公立の医学部に進んだ学生たち、もちろん研究者として立派に活動、活躍する生徒もおるんですが、大方、臨床医、あるいは開業して町のお医者さんになっていくというケースでございまして、そういう意味では、この優秀な生徒たちを何としても分散して、研究者の方向にしむけていくという施策をぜひひとつ一層講じていただきますように、よろしくお願い申し上げたいと思うんです。

 科学技術創造立国ということであれば、科学技術者、研究者の活躍ぶり、あるいは、いかに大事なことかということを国家を挙げてPRするというような施策を、ぜひひとつよろしくお願い申し上げたいと思いますし、中あるいは高一、高二へ、ノーベル化学賞であるとか、優秀な研究者がどんどん出かけていって講義をしていただくとか、あるいは学生を優秀な研究所へ招いて日々の業務を見せるとか、余りお金がかかりませんので、そういう施策をぜひひとつ一層講じていただきますように、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 それから、その次、二点目でございますけれども、私、実は、私学から教育を一方的に見ても、一方的過ぎるかわからないという思いから、先日、私の同級生、小学校の校長、中学の校長、高校の校長を経験した、もうリタイアしている連中ばかりでございますけれども、割合私の同級生は教育者になっておる人が多うございまして、昨今の教育について一遍議論をしようじゃないか、質問するのにぜひひとつ皆さんの経験談を必要とするんだということでお願いしましたら、快く集まってくれまして、随分、一晩いろいろと、ああでもない、こうでもないという議論をいたしました。

 まず、先生の質とは一体何なんだという議論をしたんですが、いろいろなものが出てきました。

 やはり、何といったって専門的な知識をちゃんと教育できる力のあることがまず大事だろうとか、あるいは、専門的知識教育だけではなくて、生活指導、あるいは徳育と言っていいかもわかりません、しつけ教育と言っていいかもわかりませんが、生活指導のちゃんとできる先生、あるいは、学級崩壊がいろいろ問題になっておりますけれども、学級の運営力の備わった先生、あるいは人間的な魅力の備わった先生かなと。

 学校というのはチームプレーでございますので、協調性のない先生は非常に困るんだということで、やはり協調性も欲しいな、あるいはモラルのない先生は困るなとか、あるいは、何といったって子供が好きな先生じゃないとだめだとか、保護者への説明力、あるいは社会性、実に保護者とのコミュニケーション力のない先生が多いんだ、とにかく保護者へのコミュニケーション力が欲しいとか、あるいは、同じようなことかもわかりませんが、子供、親からの信頼感のある先生だとか。

 まあいろいろ出たんですが、結局、集約いたしますと、そういったことすべてが、専門的知識教育力と学級の運営力に集約されるなと。子供や保護者から信頼があるということは、結局、学級の運営力につながりますし、この二つだろうなということに集約したわけでございます。そういう結論に至りました。

 さすれば、この二つがちゃんとみんな現場の先生方には備わっておるのかということになりますと、どうもそうでもないんだと。どうもやる気がない先生が多い、八時半に来て五時半にすっと帰っていくという先生が実に多いと。どうしてだと。いやいや、余計なことをして、問題を起こしてやめさせられるということよりは、まあまあ無難にやっていった方がいいという先生も本当に多いと。そういうことですから、いろいろトラブルを起こして、学級崩壊を起こしたり、父兄ともトラブルを起こして、校長の出動が非常に多いんだ、校長がおさめてくると。結局、先生方にこの二つの資質が備わっていただいたら本当にありがたいんだがなという話になりました。

 そうしたら、そのやる気はどうしたら先生方に生まれるんだと。いや、実は、最近の先生方は非常に厳しい採用試験を経て優秀なんだ、昔と違って、昔は、でもしか先生が大勢おりましたですけれども、最近は、非常に優秀な先生が多いので、やる気さえ起こさせれば学校も教育も随分進展するだろう、こういうことでございまして、そうしたら、やる気を起こさせるためにはどうしたらいいのかねと、こういう議論を随分したものでございます。

 とにかく、専門的教育はできるけれども生活面での指導ができない、生活面の指導はできても専門的教育ができない、両方備わっているという先生は本当に少ないんだ、実はこういう話でございます。

 そういえば、生活面で荒れてくる、学級が荒れてきますと確実に成績が落ちてくるという経験を私もいたしております。成績が上がるということは、生活面でも非常に安定しておるということでございまして、この両面の資質、先生にどうしても必要なわけでございます。

 実は私、学校をつくったときに、民間と違うのは、学校現場は実にポストが少ないんです。校長と教頭しかないんです。あとは全部、俗っぽく言うと、会社で言うなれば平社員というか、そういうことでございます。私は、学校をつくってまず感じたのは、実にポストが少ないな、これでは先生方のやる気、あのポストを目指して頑張ろうという気力、そういうものができてこないな、そんなふうにつくづくと痛感いたしました。

 実は、私の学校には中高六十人ほど教師がおるんですけれども、大体二十人ぐらい、三分の一は部長だとかあるいは次長だとか、あるいは主任だとか、あるいは室長だとか、そういうポストをつくって、そして、やる気のある、頑張った先生にはそういうポストがたくさん待っているよという状態にして現在も運営させていただいておるんですが、そういう意味では、公立の小中高、非常にポストが少ない。これが、やる気を起こさせないというか、逆に、もうちょっとポストをつくることがやる気を起こさせる一つの大きな施策になるのではないかということを痛感し、どっちかへ私は誘導したのかもわかりませんが、そうじゃないか、どうかと言うと、それだ、こういうふうにその校長経験者三人も異口同音に同意いたしました。そういえば、もうちょっとポストがあればいいのになと。

 そこへもってきて、校長には全く人事権がないんですね。高校の場合は若干あるようでございますけれども、小中は特に校長に人事権がないのです。いろいろ指導するんですけれども、ある教師なんかは、おれは何も、あなた、校長先生に採用されたわけでもないし、あなたが引っ張ってくれたわけでもないし、何もあなたの言うことを聞く必要はない、そういう答えも時には返ってくる。あるいは、校長に一生懸命協力して学校を盛り上げていこう、そして校長に重用されて、どんどんどんどん前へ前へ進んでいきたいというような心理も働いておらない、人事権が校長にないものですから。そういうことも大きな原因ではないか、こんな話になってまいりまして、ぜひ校長に人事権、あるいは人材を異動させたり採用したり、採用権というんでしょうかね、そういうものも与えていただくと非常に学校現場がやる気が出てくるのではないか、こんな話でございました。

 そんなことで、私は、先生方のやる気を起こさせるためには、ぜひひとつ、ポストをもう少しつくるということと、地教委あるいは校長の人事権あるいは異動権、採用権、そういったものを持たせることが学校現場に大きな活性化を生んで、やる気のある先生がどんどん出てくるのではないか、このように思うわけでございますけれども、いかがでございましょう、文科大臣。

渡海国務大臣 先生のこれまでの経験、また御友人の校長先生等ということでございますが、私は、先ほど先生が分析をされました教員としての資質、そのことについては全く異論がございません。加えて、やる気を起こさせる、そういうお話をされました。このやる気というのは非常に大事であるというふうに思っております。やはり、先生がやる気になって、本当に情熱を注いで、子供はついてくる。

 全米ナンバーワン教師というのがあるのは、田野瀬先生、御存じでございましょうか。あれは、たしか小中高の二百五十万の中から一人だけ選ばれる、そういうふうに聞いておりますけれども、ちょうど四年前ぐらいに、副大臣のときに来られまして、そして、何であなたはナンバーワンなんだ、何で成功したんだと聞いたら、おれのやる気だと言っていましたね、態度だと。これはやはり大事なんだと思うんですね。

 先生が何となくしゃくし定規に教えているというだけじゃ子供はなかなかついてこない、そういうことだと思いますから、そのやる気を起こさせるためにという切り口だったと思いますが、そのために新たなポスト、主幹教諭という制度もできたことも御存じだと思います。二十年度予算からは、この主幹教諭をつけることによって、授業が少し減る分といいますか、その分の手当ての定員増も実は要求しておるわけでございますけれども、そういったことによって学校のマネジメントをよりやりやすくするということも今やろうとしているところでございます。

 また、校長の人事権の問題でございますが、これはなかなかいろいろな意見のあるところでございます。そして、今でも、これも制度としては校長先生がいろいろな要望は出せることになっているわけでありますけれども、現実になかなか、要望を出してそのまま通るというふうなことにはなっていないということも事実でございます。

 なお、いろいろな意味で、そういう校長先生がリーダーシップを発揮できるような制度面での工夫というもの、また制度改正というものも必要に応じてやってまいりたいというふうに考えております。

 あと一点。先生方が人間性といいますか社会性という意味で力をつけていただく意味では、やはり研修面でのさまざまな工夫というのが大事であろうというふうに思っております。初任者研修、十年目の研修とか、いろいろな研修が今あるわけでありますけれども、そういったものをより改善して、先生自身にいろいろな面の対応力をつけていただく。

 同時に、今度、地域支援本部というのができるのは御存じだと思います。中学校区に一つずつ、二十年度は千八百カ所ですからまだ全体ではありませんけれども、将来、設置をする。そういったところで、社会との接触という面で地域の皆さんにもお手伝いをいただくというふうなことも含めて、全体的な教育力を上げていきたいというふうに思っておるところでございます。

田野瀬委員 我々政治家も、人事のシーズンになりますと、ポストを求めてすさまじい活動があるわけでございまして、そのたくさんなポストが我々のやる気を起こさせてくれている、このように思います。

 また、役所の世界を見ても、それこそ、局長から審議官から課長から課長補佐から係長から、大変な、中間管理職もたくさんあって、それを目指してみんな頑張るわけでございまして、教育の現場は校長、教頭だけで、中間管理職はほとんどないんですね。そういうことで、もう少し教育の現場にもポストをたくさんつくるということ、これが必要ではないか。

 私ども人間のやる気は、結局、人間関係の中で起こっていくと思うんです。上司がおれを認めてくれた、えらい仕事を任されたんだ、これだけ認めていただいたんだから頑張らないかぬ、期待にこたえなきゃならない。あるいはまた、上司は部下をしっかりと、おれが引っ張ってきた部下だから、これをしっかりと育てていかないかぬ。そういった人間関係の中でやる気が起こってくるのでありまして、私は教育の現場も同じことだと思います。

 そういうことで、やはり校長、教頭に一定の人事権を与えて、おれはこういう学校をつくりたいんだ、だから、君、来て協力してくれというような、そういう人間関係の中で学校づくりができていく、このように思うわけでございまして、どうぞ、そんなこともぜひひとつ御検討いただければありがたい、このように思います。

 もうほとんど時間がなくなって、あと一点準備してありましたのですが、言いっ放しになるかと思うんですが、昨今の学力の低下、私も大変心配をいたしております。もはや日本の経済は二流になったという話でございましたけれども、私も、いずれ近い将来に、このままいきますと、日本の教育もいよいよ二流になったという日が近いのではないかと。

 実は私、過去に、少人数学級の方がよほど効果が上がると思って三十人学級にした経験があるんですが、見事に失敗いたしました。三十人学級にして、非常に教室がアットホームになって、数が少ないですから先生も力が入らない、ゆったりしてしまいまして、少人数学級というのは往々にして競争原理が働かないんですね。

 あるいは、習熟度別学習も、アルファ、ベータ、ガンマと三クラスに分けてやったんです。よくできる子、中間の子、あるいは進度の遅い子と。ところが、ガンマのクラスは、親も子供も劣等感にさいなまれて、学級が荒れてきまして、ますます成績が下がってしまった、そんなことで、少人数学級も習熟度学習もやめてしまったという経験が実はございます。

 今もって、現場の教師に聞きますと、四十人から五十人のクラスが活気があって一番いい、それは調査書を書くのも大変だ、人数が多いけれども、やはり一定の人数を確保して活気のある学級を運営することがいいんだ、こういう答えでございます。

 そういう意味からいきますと、どんどんと今クラスの人数が減る傾向にある。あの昭和四十年代、五十年代の生徒の急増時期にどんどんつくった学校が統廃合できずにそのまま残って、どんどん今生徒の数が減ってきておりますのに、そのまま少人数学級にどんどんなっていくというような学校がたくさん、もう五万、十万の町でもそういう傾向にあります。ましてや田舎の過疎地帯は、もう五人、十人の生徒しかクラスにいない。これではコミュニケーション力も競争力も培われないわけでございます。そうしたらこの五人、十人のクラスが、少人数学級が効果があるというのであれば、非常に成績がいいかというと、決してそうも言えないですね。

 だから、少人数学級というのは、いたずらにどんどん進めていくことが昨今の成績を落としておる大きな原因になっておるのではないかという危惧を非常に私はいたすわけでございます。少人数学級になりますと、先生も教育力がなくなっていくんですね。そんなことで、学力低下の原因、これをぜひ調査して、一遍この学力低下の原因を解明していただきたい、このように思うわけでございます。

 二〇五〇年になりますと一億二千五百万が九千万になるというデータも出ておりまして、現場の学校はますます少人数学校になっていく。学校の規模も、一学年一クラスでは本当に寂しいですね。学校の規模も、やはり四クラスは最低欲しいなという現場の先生方の話でございまして、ぜひ今からしっかりと生徒減の対策を立てておかなきゃならない、このように思うわけでございます。

 こんなことをお話しさせていただいて、ぜひ総理の御感想をひとつよろしくお願い申し上げたいと思います。

福田内閣総理大臣 教育問題というのは、だれでも御意見を持っているわけで、いろいろな議論があるわけで、今、最後の方に、少人数よりは少し多い方がいい、こういうお話もございました。

 私も、それは両方、利点もあり、そしてまた悪いところもあるんだろうというふうに思いますけれども、本当にさまざまなんです。そういう中から本当に必要な人材を確保していくというのは、これは日本にとっても欠くことのできない大事なことであるということであります。

 先生の問題、そしてまた教育委員会とかそういったような組織的な問題もあるかもしれませんけれども、要は、やはり先生が社会の中で尊敬されるような立場というのはとても大事だと思います。尊敬されない先生が幾ら教えたって生徒が先生の言うことを聞くかどうかという、この原点を忘れてはならないと私は思います。ですから、そのことをまずどのようにしたらいいかということも、教育問題を語る中で欠かすことのできないことであるというように思っております。

 さまざまな御意見がある中で、そして、その御意見の中で一番いい方法は何かということについて、もうかねがね文部科学省を中心として大変苦労しているところでございますけれども、今後とも、先生の御協力というか御助言をいただきながら、しっかりとやらせていただきたいと思います。

田野瀬委員 時間が参りましたので、これで終了いたします。

 ありがとうございました。

逢沢委員長 これにて田野瀬君の質疑は終了いたしました。

 次に、三ッ矢憲生君。

三ッ矢委員 おはようございます。自由民主党の三ッ矢憲生でございます。よろしくお願いいたします。

 総理並びに各閣僚の皆様方、連日御苦労さまでございます。

 今回の予算では、何といいましても道路特定財源の問題、これが一番大きな焦点になっておるわけでございますが、この件につきましては連日のように各党から質問も出ておりますし、ほかにも実はいろいろ重要な問題がございます。

 そこで、きょうは、私からは司法関係と航空関係を中心に質問をさせていただきたいと思います。質問の順序が通告と逆になるかもしれませんが、最初に、司法関係で質問をさせていただきたいと思います。

 質問に先立ちまして、昨日、沖縄県で、十四歳の女子中学生がアメリカの海兵隊員から暴行を受けるという事件が発生いたしまして、当該海兵隊員が逮捕されたというニュースが入ってまいりました。この件に関しましては、起きてはならないことがまた起きてしまったという印象を持つわけでございますが、沖縄県民の方々、皆さんの胸のうちを考えると、本当に心が痛む思いでございます。

 まだ調査中でございますので、はっきりしたことは言えないと思いますけれども、政府としましても、ぜひ、このような事件が二度と起こることのないように、しっかりした対応をとっていただきますようにお願いを申し上げておきたいというふうに思います。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 現在、自民党内で、新時代の捜査のあり方に関するプロジェクトチームというものが設置されております。私、実はその座長を務めさせていただいておるわけでございますが、これは、鹿児島の志布志事件でございますとかあるいは富山の氷見の事件、これを契機としまして、被疑者の自白の任意性、もっと広く言いますと、基本的人権の保障と治安の維持の確保との間にどう折り合いをつけていくかという問題を提起しておるわけでございます。

 人権尊重の立場からは、取り調べの可視化、可視化という言葉はなかなかこなれていない言葉だと思いますが、平たく言いますと、録音、録画をしろという要請がございます。他方、治安を維持するという観点からは、全面的な可視化、録音、録画には疑問が呈されておりまして、正直、私も取りまとめに非常に苦慮しているというのが実情でございます。

 そこで、きょうはせっかくの機会でございますので、この件に関し、当局側に幾つかお尋ねしたいと思います。

 まず、法務大臣と国家公安委員長にお伺いしたいと思いますが、我が国において取り調べの全面的な録音、録画、これを義務づけた場合に、どのような問題点あるいは影響があるというふうにお考えなのか、まず法務大臣にお尋ねしたいと思います。

鳩山国務大臣 志布志事件とか氷見事件のような、特に氷見事件の場合は冤罪ということでありましょうから、こういうことが二度と起こらないように厳しく指導をしていこうと思っております。

 もちろん、そういうことは絶対あってはならないんですが、三ッ矢先生おっしゃったように、治安の問題、犯罪のない、少ない国家にしていかなければなりませんし、犯罪を犯したにもかかわらず真相が究明されないで罰せられないということもまたあってはならない。

 そういう中で、我が国は諸外国と違いまして、被疑者の取り調べということに大変重点を置いてやってまいったわけでございまして、それを警察段階から、逮捕されたときからずっと全面的に録音、録画、可視化ということを行いますと、かなり弊害があるのではないだろうかというのが私の結論でございます。

 つまり、例えばですが、組織犯罪のようなものであるとすれば、録音、録画されているということになればどうしても供述をためらう、当然だろうと思うわけでございます。一般に、取り調べをする側は、被疑者の琴線に触れるような話をしたり、あるいはプライバシーに触れたり、いろいろ説得をして心を開かせていくわけですが、これが全部録音、録画されておりますと、なかなかプライバシーに触れるような話ができなくなるというふうに思うわけでございます。

 結局、きょうの予算委員会も、これはテレビ中継ではありませんけれども、すべてが録音、録画されているということがわかれば、取り調べられる側の被疑者もやはり心情的にいろいろ変化するんじゃないか。ある意味で言えば、パフォーマンスをする可能性もあるでしょう。録音、録画向けに物を言うということもあるかもしれません。先ほど申し上げたように、組織犯罪であれば供述をためらうだろうと思うわけでございます。そういうさまざまな問題があるものですから、あるいは、供述調書というのは当然承諾を得てつくるわけですが、調書には書かないから真実を、事実を言ってごらん、そういう取り調べは当然あると思うんですね。ところが、一種の取引じゃありませんが、そういうことも全部録音、録画されたら、これはしゃべらなくなる。

 そういうことを総合的に考えますと、自白の任意性を証明する手段として使うのはいいのですが、逮捕から全部録音、録画すれば、当然、私は、供述というもの、いわゆる取り調べというものの機能が相当損なわれて、結局、真実、事実を究明、解明することができないで、取り逃がしというか、正しい裁判ができなくなるおそれが十二分にある、そんなふうに考えております。

三ッ矢委員 同じ質問でございますが、国家公安委員長にもお願いしたいと思います。

泉国務大臣 刑事手続のあり方につきまして考える際には、人権を守る、事案の真相を明らかにする、そして犯人を正しく処罰する、その上に立って市民生活の安全の確保を図るという視点が大変重要だと思っております。

 取り調べの全過程の録音、録画につきましては、今、法務大臣からもお話がございましたが、取り調べの機能が大きく阻害されることになる、あるいは事案の真相解明を困難にする、犯罪の検挙活動自体に支障を来すおそれがある、そうしたことから、義務づけるということにつきましては慎重な検討が必要であると思っておるところでございます。

三ッ矢委員 捜査当局の方の言い分は恐らくそういうことだろうというふうに思います。

 どういう方法を用いれば、冤罪という言葉がいいのかどうかわかりませんが、冤罪防止に本当に役立つのかということをよくよく考えてみないといけないというふうに思っておるのです。

 また、法務大臣の方からもお話がございましたが、捜査の手法が我が国と諸外国でかなり違っておりまして、ここのところを、例えば通信傍受でありますとか、おとり捜査でありますとか、あるいは司法取引でありますとか、なかなか我が国では認められにくい捜査手法を諸外国はとっておるというようなこともあって、そことの関係でこの問題をどういうふうに処理していくかというのは、非常に難しい問題だというふうに思っております。

 そこで、警察庁は、実は先般、警察捜査における取調べ適正化指針を策定されたということでございます。私自身は、こんなことを申し上げると失礼かもしれませんが、警察にしては相当踏み込んだ内容の指針をつくったんじゃないかなというふうに思っておるわけでございますが、改めまして、その内容と取り組み状況についてお伺いしたいと思います。

米田政府参考人 委員御指摘の警察捜査における取調べ適正化指針でございますが、先ほど質問の中でお触れになりました鹿児島の志布志の事件あるいは富山の氷見事件を受けまして、昨年十一月一日、国家公安委員会において「警察捜査における取調べの適正化について」が決定されたことを受けまして、警察庁におきまして策定をいたしたものでございます。

 この作成に当たりましては、部外の有識者、あるいは、実務の問題もございますので都道府県警察の意見を参酌し、あるいは志布志事件等の問題点を改めて抽出し検証しまして、その結果、一月二十四日、この指針をまとめ、国家公安委員会の了承を得たところでございます。

 内容でございますが、この指針におきましては、まず、取り調べに対する監督の強化を図るために、取り調べに係る不適正行為につながるおそれのある行為、これを類型的に定めた上で、捜査を担当しない部門、つまり総務部とか警務部でございますが、これが当該行為の有無を確認すること等により、取り調べに対する監督を行う。

 それから、現在、身柄拘束被疑者につきまして作成が義務づけられております取り調べ状況報告書、これは任意捜査段階の被疑者取り調べにも義務づけるとしております。

 次に、取り調べ時間の管理の厳格化を図るために、原則として、深夜または長時間の取り調べを避けなければならないこととするとともに、一定の時間帯等に取り調べを行おうとするときは、警察本部長または警察署長の事前承認を受けなければならないということとしております。

 また、適正な取り調べを担保するための措置として、取り調べ室の設置基準を明確化し、また、取り調べ状況の把握を容易にするために、透視鏡の設置等、施設整備の一層の充実を図ることとしております。

 さらに、捜査に携わる者の意識向上を図るため、適正捜査に関する教養の充実、勤務成績の処遇への的確な反映、不適正な取り調べにつながるおそれがある行為を認めた場合の厳正な対処等を推進することとしております。

 警察庁としては、現在、この指針に基づき具体的な施策を実行するために、二月八日、警察庁次長を長とする取調べ適正化施策推進室を設置しまして、全庁を挙げて推進の体制を整備したところでございます。これによりまして、総合的な検討を実施し、早期に実効性ある施策を推進してまいりたいと考えております。

三ッ矢委員 現場できちんとワークするような形でないと私は意味がないというふうに思っておりますので、今後、この実施段階で、ぜひ現場で本当に機能するものにしていただきますようにお願いを申し上げておきたいと思います。

 しかし、さはさりながら、この問題に関して申し上げますと、来年の五月に実は裁判員制度が導入されることになっておりまして、いわば裁判が素人化してくるということでございます。

 裁判員に対しては、わかりやすい形でいろいろな状況、証拠等を提示する必要があるというふうに思っておりまして、特に、取り調べでの自白の任意性について、どのようにわかりやすく裁判員の方に提示していくかということが非常に重要になってくるというふうに思っているわけでございますが、そのためにどのような方策を具体的に検討されているのか、法務当局にお伺いしたいと思います。

大野政府参考人 ただいま委員御指摘のとおり、裁判員裁判におきまして、取り調べで自白が任意になされたことを裁判員にわかりやすく迅速に立証することは、大変重要であります。そこで、検察当局におきましては、公判前整理手続によりまして争点を絞り込むことや取り調べ官の証人尋問、被告人質問の効果的な実施というようなことを努力してまいるものと承知しております。

 これに加えまして、検察当局は、現在、取り調べの一部の録音、録画を試行しております。これは、裁判員裁判における任意性の立証方策の検討の一環といたしまして、立証責任を有する検察官の判断と責任において、任意性の効果的、効率的な立証のため必要性が認められる事件について、取り調べの機能を損なわない範囲で、検察官による取り調べのうち相当と認められる部分の録音、録画を試行しているわけであります。平成十八年の夏から昨年の暮れまで、百七十件の試行が行われたと聞いております。

 こうした録音、録画の記録につきましては、取り調べ室の状況、取り調べ官の発問状況、被疑者の供述状況、さらにその表情、動作等を客観的に記録したものでありますことから、裁判員裁判におきまして、自白の任意性を裁判員の方々にもわかりやすく迅速に立証するための有効な方策の一つになると考えておるところであります。また、実際に、このような録音、録画の記録につきまして、裁判所が任意性等の有無を判断する上で有力な客観証拠として用いた事例も既にあらわれているところでございます。

三ッ矢委員 ぜひその試行の評価というのでしょうか、これをまたいつか早い機会に御公表いただいて、また我々にもお示しいただければというふうに思っております。大変難しい問題でございますけれども、引き続き、政府部内におかれましても、人権の保護、それから捜査の適正化といいますか治安の維持、この観点から、適切な対応をしていただきますようにお願いを申し上げておきたいというふうに思います。

 次に、話をかえまして、航空問題についてお伺いしたいと思います。

 福田総理の施政方針演説の中で、経済成長戦略の柱の一つとして、日本を世界により開かれた国とするグローバル戦略を展開することを挙げておられます。それに関連して、日本の空の自由化に取り組むということも明らかにされているというふうに考えておるわけでございます。

 観光立国の推進、あるいはそれを通じた地域振興というんでしょうか、今後、国際的な観光交流を拡大していくためにも、航空自由化を進め、日本と海外を結ぶ国際航空ネットワークの充実を図っていくことが不可欠であろうというふうに考えております。

 政府は、昨年五月にアジア・ゲートウェイ構想を策定されまして、その最重要項目として航空自由化の推進を位置づけたわけでございますが、このアジア・ゲートウェイ構想に基づく航空自由化の推進にその後どのように取り組んでおられるのか、冬柴大臣にお伺いしたいと思います。

冬柴国務大臣 国土交通省といたしましては、アジア・ゲートウェイ構想に盛り込まれた航空自由化のための施策に、これまで着実に取り組んでまいりました。

 昨年の八月以降、韓国、タイ、マカオ及び香港との間におきまして、日本側から航空自由化の提案を行いました。空港容量に制約のある我が国の首都圏の空港関係路線を除きまして、お互いに路線や便数の制約をなくす航空自由化の実現に合意をしたところでございます。今後、他のアジアの各国との間でも航空自由化のための交渉を着実に進めていきたい、このように考えているところでございます。

 また、羽田空港の国際化につきましても積極的に進めております。昨年九月二十九日、すなわち日中国交正常化三十五周年目の日でございます。この日を記念日としまして、羽田と上海の虹橋空港を結ぶチャーター便の就航を実現いたしました。双方二便ずつですね。私もその初便、第一便に乗りまして上海に参りまして、向こうの中国民用航空総局長との間で喜び合い、そして、日帰りで日本へ帰ってきたわけでございます。

 また、本年八月の北京オリンピックの開催を控えまして、羽田と北京南苑空港を結ぶチャーター便の就航について、中国側と調整を行っているところでございます。

 北京は人民広場から、北京国際空港というのは、北東部でしょうか、二十三キロぐらいのところに空港があるわけでございますが、この南苑空港というのは、その場所から南に十三キロという非常に至近の距離にある国内専用の空港でございますが、そこへ入れさせてほしいということを申し入れました。大変難しい問題もありますが、もちろん、これは国内専用空港ですから、税関とか検疫とか、そういう施設がないんですね、しかし、ぜひお願いしたいということで調整を行ったところでございます。福田総理と温家宝総理の十二月の会談におきましても、この問題を取り上げて、事務的に話を詰めようじゃないかという合意をしていただいたという経緯もございますが、そのように羽田についてもできるだけのことをやっているところでございますし、また、深夜早朝時間帯や特定時間帯を活用した国際チャーター便も入れております。

 今後とも、アジア・ゲートウェイ構想に基づいて積極的に航空の自由化に取り組んでまいりたいというふうに思っています。

三ッ矢委員 今、大臣の御答弁の中にもございましたが、やはり一番問題は空港容量の制約だと思うんですね。これをどう解消していくか。

 特に首都圏におきましては、私の承知しているところでは、今、成田空港の滑走路の延伸問題、それから羽田の四本目の滑走路の整備の話がございますが、この両事業の進捗状況と、今後、この羽田と成田、これはどうやって連携させて機能分担させていくのか、その点についてちょっと大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

冬柴国務大臣 逼迫する首都圏の空港容量を拡大するために、成田空港の北伸事業、二千五百メートルの延伸でございますが、それから羽田空港の再拡張ということで急ピッチに進めております。

 羽田につきましては、四本目の滑走路、昨年三月末に本格着工いたしまして、二十四時間三百六十五日、突貫工事で進めております。けさも私、見てきたところでございますが、桟橋部がもう一部海面上にあらわれている状況でございます。成田空港の北伸二千五百メートル化事業は、平成十八年九月から着工して、現在、これも突貫工事でやっておりまして、予定どおり順調に進んでおります。羽田の二〇一〇年十月それから成田の二〇一〇年三月供用開始に向けて、頑張っているところでございます。

 両方の関係でございますが、羽田空港は国内線の基幹空港、それから成田空港は国際線の基幹空港という基本的な考え方のもとに、再拡張後の羽田空港におきましては、将来の国内航空需要に対応した発着枠を確保しつつも、成田空港の国際空港機能を補完するということで、供用開始後、年三万回の近距離国際旅客定期便を就航させるように考えているところでございます。

三ッ矢委員 今話題になっています空港の外資規制について、実は総理にお伺いしようかと思ったんですが、今、官邸の方でこの問題を引き取っていただいて検討されているということでございますので、機微にわたる問題でもございますので、きょうは質問を差し控えさせていただきたいと思います。

 空港に限らず、重要な社会インフラ、これに関する投資に関して、私は多面的な検討がやはり必要なんじゃないかなというふうに思っております。総理も、先般の伊藤委員の質問に対する御答弁で、バランスをとった考えが必要ではないかというふうにお答えになっておられます。私もそのとおりだと思います。

 ただ、この問題を通じてちょっと私が考えさせられましたのは、一体、企業というのはだれのものなのかということなんですね。それは本当に株主のものなのか。あるいは、株主だけじゃなくて、その会社で働いておる社員、もっと言いますと、会社が企業活動を通じて提供する財貨あるいはサービス、それを享受する利用者、消費者、あるいはもっと言いますと国民といった、社会的存在であるという面も大きいんじゃないかなというふうに思うわけでございます。

 もちろん、経営の効率化という観点からは民営化をする必要もあると思いますし、それを進めていくのは当然だというふうに思いますけれども、国家安全保障の観点でございますとか、あるいは、特に、多額の公的資金、国民の税金をつぎ込んでつくってきた施設、その運営をする企業、これについてはもう少しいろいろな面で検討を加えていく必要があるのではないかなというふうに思っておるわけでございます。

 これは私の感想でございますのでお答えいただく必要はございませんが、どうか、今官邸で検討されております作業がいい形で結論を出していただきますようにお願いを申し上げまして、多少時間が余りましたが、私の質問をこれで終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

逢沢委員長 これにて三ッ矢君の質疑は終了いたしました。

 次に、江田康幸君。

江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。

 冒頭、質問通告はいたしておりませんけれども、先ほどもございました、一昨日、沖縄北谷町で起きた在沖米海兵隊による十四歳少女の暴行事件につきまして、一言申し上げたいと思います。

 沖縄における米兵による少女暴行事件は、再三の再発防止策にもかかわらず後を絶たず、被害者の人権のみならず県民の尊厳を傷つけるものであり、日米安保体制の重要性いかんにかかわらず、断固許せるものではございません。公明党としましても、事件の解明と再発防止を強く求めるものでありますが、総理の御決意をお伺いいたします。

福田内閣総理大臣 一昨日に起きました沖縄における事件につきましては、これはもう本当に委員の御指摘のとおりでございまして、許されることではない。そして、過去においても何度か起こっている、しかし、にもかかわらずまた起きてしまったということについて、これは本当に重大なことであるというように受けとめております。

 したがいまして、政府といたしましても、米国とその辺はしっかりと交渉してまいりますけれども、まずはこの事実関係の究明ということがございます。そしてまた、再発の防止のためにできるだけのことをしていくということでありますけれども、この事件につきましては、我が国の法と証拠に基づいて適切に対処していく、こういうふうに考えておるところでございます。

江田(康)委員 どうぞ事件の解明と再発防止に強く取り組んでいただくようによろしくお願いを申し上げます。

 本日は、地球温暖化問題について御質問をさせていただきます。

 地球温暖化問題は、人類が現在直面している今世紀最大の課題でございます。また、総理御自身もおっしゃっておられますように、本年七月の北海道洞爺湖サミットの主たる議題となるものと理解しており、二〇一三年以降の次期枠組みの構築に向けて、ぜひとも総理のリーダーシップをお願いしたいと思うわけでございます。

 昨年十二月にバリで開催されました第十三回締約国会合、COP13で、米国や中国、インドの参加する形で次期枠組みを議論する作業部会の設置が決まりました。この決定により、まず議論の場をつくるという段階から、米国や主要排出国を含む新たな枠組みそのものの議論を行う段階に大きく前進したと言えます。

 その中で、先月のダボス会議で行われましたG8議長国の首脳としての総理の発言には非常に期待もし、また注目もしておりました。私としましては、産業界などから反対のある中で、我が国が国別総量目標を掲げると宣言されたことは、高く評価しております。

 一方、二〇五〇年に世界の排出量を半減するという長期にわたる大幅削減の目標に向けて、セクター別に積み上げて各国間の負担削減の公平性を確保しようとする方法論も提案されました。私は、公平性の確保は重要であり、総理の提案は現実的な方法論として評価いたしますが、願わくば、我が国、また総理のリーダーシップとしては、温暖化の緩和に向けて、各国が国情に応じてでき得る限りの貢献をするというプラス思考の流れをぜひともつくっていただきたいと要望するわけでございます。

 そこで、セクター別積み上げの国別総量目標でございますが、具体的にはどういう手法をとられるのか、また途上国についてはどういう対応を求めるのか、さらに世界全体での排出削減のめど、目標との関係をどうするのか、総理の見解をお伺いいたします。

福田内閣総理大臣 私は、先般開催されましたダボス会議におきまして、クールアース推進構想、こういうことを提案いたしました。その中で、主要排出国とともに、今後の温室効果ガスの排出削減について国別総量目標を掲げて取り組むという決意を示したわけであります。

 その際には、各国間の削減負担の公平さを確保するためにセクター別のアプローチを活用する、そして、エネルギー効率や今後活用される技術など、科学的かつ透明性の高い尺度を用いた積み上げ方式による作業を進めることを提案いたしたわけでございます。

 我が国の主要な産業部門や運輸部門、民生業務部門におきまして、今後どの程度の排出削減ができるか、技術的な可能性を含めて検討を行うということも含めまして、今後、国内で必要な作業を加速し、そして、このような方法の採用を国際交渉の場を通じても主張していきたい、こんなふうに考えております。

 途上国の行動につきましては、百億ドル規模の資金メカニズムでございますクールアース・パートナーシップというような構想の構築を提案いたしました。そして、省エネ努力などの途上国の排出削減への取り組みに積極的に協力をするということとともに、気候変動で深刻な被害を受ける途上国に対しては支援の手を差し伸べるというようなことでもって、途上国とも連携を強化して、そして地球全体での温室効果ガスの削減を目指してまいりたいというように考えております。

 また、IPCCが、破局を避けるためには、地球全体の温室効果ガスが次の十年から二十年の間にピークアウトし、そして二〇五〇年には少なくとも半減しなければならないというように警告を発しておりますので、そういうことを踏まえまして、我が国として、クールアース構想推進の提案の実現に向けて作業を直ちに開始してまいりたいと思っております。

江田(康)委員 今、セクター別積み上げの国別総量目標等について総理の見解をお伺いしたわけですが、先ほど、プラス思考の流れをリードしてほしいと私は申し上げました。その意味で、我が国も思い切った数値の中期目標を早期に掲げて、先頭に立って削減を進めていくとの姿勢を世界に明らかにすることが必要と思います。

 そこで、一つ確認しておきたいのは、我が国もメンバーである京都議定書下の作業部会の決議で、二〇二〇年で先進国の排出量を九〇年比二五から四〇%減という数字が特に言及されております。この数値に対する環境大臣の見解をお伺いいたします。

鴨下国務大臣 今御指摘の数字でありますけれども、いわゆる京都議定書に基づきますAWG、特にオールドAWGと言われているバリでの結論文書におきまして、IPCCのシナリオに基づいた場合、先進国がグループとして削減する必要がある幅を二〇二〇年までに一九九〇年比で二五から四〇%の範囲まで削減する必要がある、こういうようなことを認識する、日本語で言うと認識する、英語ではレコグナイズ、こういうようなことが書かれているわけであります。

 この認識を踏まえまして、サミット議長国としての我が国の立場も考慮に入れながら、これは今、江田議員御指摘のように、我が国の国別総量目標の具体的な数字あるいはその打ち出し方につきましては、国内で精力的にその検討作業を行っているところでありますが、この数量目標につきましては、すべての主要排出国の参加や公平性の確保、こういうようなことを我が国の大前提としながらも、国際交渉の状況を見つつ、その結果をできるだけ早い段階で明らかにしていくべきだ、こういうふうに今考えているところでございます。

江田(康)委員 今、警告ということでございましたけれども、まさに、先日からの議論にもありますように、IPCCの議論にしても、またAWGの議論にしても、これは、警告というよりも、前提として考えていくべきものではないかと思います。

 このような国際的なリーダーシップを発揮していくためには、マイナス六%の京都議定書の目標を達成することは当然の前提であると考えております。年度内に京都議定書目標達成計画の改定計画の閣議決定が予定されておりますけれども、中期的な大幅な排出削減を見通せば、従来以上の思い切った施策の導入が必要ではないかと考えております。

 先週、環境省と経済産業省の合同審議会で、京都議定書目標達成計画の見直しに関する最終報告が取りまとめられました。

 ここで、甘利経済産業大臣にお伺いをいたします。

 今回のこの目標達成計画の見直しにおいても、産業界の自主行動計画は極めて大きな位置を占めております。全体で三千七百万トン、そのうちの産業部門では千九百万トンの追加削減効果が見込まれるなど、産業界の自主的な努力に改めて敬意を表したいと思いますが、他方、自主行動計画の目標はあくまで産業界が自主的に設定するもので、そのレベルも自主的に決める上、指標も多くは総量削減目標ではなく、生産量当たりのエネルギー使用量など、生産量がふえれば総量もふえてしまうという効率の指標でございます。

 今後、世界全体の未来に目を向ければ、我々は、十年から十五年でこの温室効果ガスの排出をピークアウトさせて、そして、二〇五〇年には少なくとも半減していかなければならないわけでございます。また、総理は、今後、国別総量目標を掲げて取り組んでいくとの御決意も表明をされております。

 こうした中で、いつまでも産業界の自主的な努力に頼っていていいのかという点でございます。このような枠組みをメーンにして大幅削減ができると考えられているのかどうか、経済産業大臣にお伺いをいたします。

甘利国務大臣 経済界の自主行動計画、自分で目標を掲げて、言われるまでもなく努力をしていきますというのは、よその国でもやっているのか、できるのかといいますと、よその国ではできないんですね。これは、アメリカでもEUでも、要するに、産業界がみずから進んでということが一番望ましいのですが、それができないのであります。

 日本はそれをできるのでありまして、これは、産業界の自助努力というのはかなり評価していいんだというふうに思っております。目標を達成して、なおかつ積み増しを要請しているわけであります。目標を達成していないところは必ず目標を達成せよ、達成できたところは、それに一割二割乗っけて、目標を引き上げてやってくれということをやっていて、それに向かってもみんな前向きに取り組んでいるわけであります。

 産構審・中環審合同会議も、今次の最終報告におきましても、CO2約二千百万トン、すなわち、まだ不足をしているという全体量の六割から九割、これを追加で産業界に要請して、産業界はそれをクリアしますというふうにしたわけであります。

 ただ、御指摘のとおり、確かに、量でこれだけやるというところと、それから原単位だけを目標、指標にしている業種もあるわけであります。ですから、原単位を積み上げていくとこういう総量になるということも含めて、しっかり目標をクリアしていきたいというふうに思います。

 ただ、二〇五〇年に向けては、今ある、あるいは近未来で投入される技術だけではこれはクリアできませんから、例えばCO2ゼロエミッションの石炭火力発電所の建設等、あるいは次世代の原子力等、そういう革新的な技術を投入してブレークスルーを図っていかなければならないということで、クールアース・エネルギー革新技術計画というものを策定いたしまして、日本の技術力をフル回転させて、ブレークスルーできるような技術を開発していくということとあわせて、目標を達成していくということであります。

江田(康)委員 確かに、自主行動計画、日本であるからこそ削減が達成できる可能性があると思いますが、実際、エネルギー転換部門の排出量でも、間接排出量では六・一%ですけれども、直接排出量では三〇・七%、こういうような、基準年に対して二四・九%というような大きな伸びを示していることもございます。

 そういうような大きな伸びを示しているCO2排出に対して、革新的エネルギーも大変重要でございますけれども、システム自体、これは五〇年には半減をさせるという目標で、この十年、十五年でピークアウトさせるという大変大きな目標があるわけでございますので、果たしてこれでいいのかという点を私は問題を挙げておきたいと思うわけでございます。

 六%削減目標の達成は、これは至上命題でございます。何としても達成しなければならない課題でございますけれども、その先には、二〇五〇年に世界の排出量の半減、そして中期目標もあるわけでございます。私は、そうした観点から、特に日本モデルの国内排出量取引を早期に導入することが必要であると考えます。

 国内排出量取引につきましては、既にEUで導入されて、米国では排出量取引の導入のための法案が昨年十二月に上院の委員会で可決されました。二月五日のスーパーチューズデーで次期大統領候補に目されているクリントン、オバマ、マケイン各氏も、法案の提案者になるなど、排出量取引の制度化に非常に前向きでございます。

 この排出量取引の導入について総理の見解をお伺いしたいところでもございますけれども、このような状況の中で、国内排出量取引の導入を強く進めていくリーダーシップを総理にお願いしたいと思うわけでございます。

 先日の代表質問におきまして、我が党の太田代表が温暖化に関する賢人会議を提案して、総理も先日、内閣に環境問題の司令塔をつくりたい、この発言をなされたと聞いております。私としても高い期待感を持っておるわけでございます。関係省庁の縦割りの弊害を超えて、現在の経済産業省、環境省の審議会の合同部会が結論を出せなかった国内排出量取引とか環境税の導入などの課題について、的確に方向性を示せるような会議にしていただきたいと思うわけでございます。

 きょうは、幾つかの質問、なかなか時間の制限がございますので申し上げるだけでございますけれども、ぜひともこのような思いで総理のリーダーシップをお願いしたいと思うわけでございます。

 次の質問に入らせていただきます。

 次は、原爆の被爆者の救済策についてお伺いをさせていただきます。大きく話は変わりますが、よろしくお願いを申し上げます。

 与党の原爆被爆者対策プロジェクトチームの積極的な取り組みで、在外被爆者の支援の拡大、また原爆症認定基準の見直しについては大きく前進してきたと思っております。

 残るは、幾つかの課題がございます。長崎の課題でございます。長崎の被爆体験者精神影響等調査研究事業というのがございますけれども、これは、原爆投下時に爆心地から半径十二キロメーター以内の被爆未指定地域にいた者で、放射能による直接的な健康影響は認められないけれども、被爆体験に起因する不安による精神的な要因に基づいて特定の精神疾患を有する者に対して医療費を支給するもので、平成十四年度から国の事業として実施をされております。

 そもそも、この被爆地拡大につきましては、長崎の被爆者の四半世紀にわたる悲願でございました。広島では爆心地から半径十二キロメートルの円形で被爆地が認定されましたけれども、長崎は、南北十二キロ、東西七キロの楕円形でございます。明確な被爆体験を持つ一万人弱の人が認定外となりました。以来、拡大を求める地元に対しまして、当時の厚生省でございますが、一度決めたこととして再調査にすら応じませんでした。

 平成十二年、公明党の働きかけで、長崎市が独自に八千七百人を対象とする証言調査を実施いたしました。未認定地域の人たちの被爆体験による不安障害が医学的に証明されたわけでございます。当時の森総理も、国としての再調査を指示しました。現地調査の結果、不安障害を認めました。

 当時の坂口厚生労働大臣の尽力、また地元の熱意も加わって、平成十四年四月には、ついに半径十二キロメートルの被爆地拡大が実現して、本事業がスタートしたわけでございます。戦後、長年にわたって放射能不安障害に苦しんできた長崎の被爆体験者の苦労が報われた瞬間でもございました。

 しかしながら、平成十七年度の制度改正でこの事業の対象となる判断基準が変更されたために、放射能不安による精神健康の悪化を訴えているにもかかわらず、被爆体験の記憶がないとの理由から、二千八百十一人もの人が対象外になっております。この問題について質問をいたします。

 舛添大臣、この二千八百十一人が対象外となっている大きな要因は、それまで、被爆体験に起因する不安障害が確認されれば認定されていたものが、不安障害だけでなく、被爆体験の記憶がなければ認定されなくなったことによるわけであります。

 手元に長崎市の資料を配付いたしました。一枚目でございます。

 対象外になった者の大部分は、被爆当時の年齢が〇歳、一歳、二歳、三歳、四歳、それと三十六歳以上に集中しているのが一目瞭然です。被爆者でなくても、そんな幼児のころの記憶というのははっきりしないのが普通ではないでしょうか。大臣は、一歳のときのことを記憶されておいででしょうか。また、当時三十五歳以上の人は、今、九十八歳以上でございます。高齢であって、記憶も確かとは言えないのではないでしょうか。放射能不安があるにもかかわらず、被爆体験の記憶がないとの理由から事業の対象外となるのは、私はおかしいのではないかと考えます。

 本制度創設の科学的根拠となりましたPTSD等に関連した健康影響に関する研究報告書では、放射能災害が精神的障害を引き起こす原因として考えられるものは、記憶のほかに、被爆の有無や程度、その影響に関する不安、被爆に関する世間の偏見の影響を挙げておりまして、PTSDだけでなく、不安障害などのストレス関連障害も対象となっております。

 このような状況の中で、厚生労働大臣にお伺いいたしますけれども、記憶がなくても被爆体験に起因する不安障害を発症している者は本事業の対象とすることができるのではないでしょうか。原爆投下時幼かった人や現在の高齢者など、被爆体験の記憶が難しい者の救済を私は図るべきと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 この制度については、今委員が御説明してくださったとおりであります。

 この制度が導入されてからどういう実態であるかというのは、これは繰り返し検証してみないといけない。それで、専門家から成る検討会を行った結果、精神的疾患の治療の必要のない者まで対象になっているとか、対象外の疾患にまで医療費が払われているというようなことがございましたので、十七年に、今御説明いただいたような見直しを行ったところであります。

 つまり、被爆体験の記憶。ただ、今委員がおっしゃったように、私が一歳のころを覚えているか、ほとんど覚えていない、それから、御高齢になって九十を超えるような方は記憶を失われている可能性がある。こういう方に対してどういう対応をとるべきかということは、長崎市の要望も県の要望もお伺いしておりますし、また委員の指摘もございますので、今後、検討の課題として取り組んでまいりたいと思います。

江田(康)委員 時間もございませんが、制度改正前においてそのような指摘が確かにございました。そのことについては、対象外の疾患に対する医療費の支給実態とか事業効果への疑問、こういうことに関しては、長崎市もその実態があることを認めて、そして改正後においては、事業の適切な実施運営のために、毎月五千件に及ぶレセプトにより公費請求の内容をチェックして、対象外疾患に係るものがあった場合には、医療機関に対して医療費の返還を指導して、その確認を実施しております。また、精神疾患の治療を適正に受けていない者については、医療費の支給の停止も行っておるわけでございます。

 このように、この制度改正の起因となりました主な問題については、長崎市などの関係者によって事業の適正化が図られているわけでございますので、私は、舛添大臣であれば、この問題について大きく改善をできる方だと思っております。

 時間が限られておりますので、ほかの質問もしたいわけでございますけれども、もう一つ、総理に最後にお伺いをいたします。

 平成十七年の制度見直しによりまして、放射能不安による精神障害を発症しているにもかかわらず、当時幼くて被爆体験の記憶がないばかりに二千八百十一人もの人が対象外となって、適切な医療を受けられずに毎日の健康不安に悩まれているわけでございます。制度創設の原点というのは、長年にわたって、六十年以上にわたって苦しんできた被爆体験者の幅広い救済にあったはずでございまして、行政はこの原点を見失ってはいけないと思うわけでございます。

 この問題に限らず、国という大きな行政機構というのは、一度築いたシステムを常に守り抜こうとして、いつの間にか、何のためのシステムかさえ見失うことがあるんではないか。

 ハンセン病の問題もそうでございました。福田総理、総理は、ハンセン病の問題もまた薬害肝炎の問題も、公明党と同じ国民の側の視点で政治解決を断行して救済してこられました。今回の被爆体験者の問題に対しても総理の英断をお願いしたいと思いますが、総理の御見解をお伺いいたします。

福田内閣総理大臣 この問題は、十八年度に再検査を行って、制度対象外とされた方に対しましても追加認定を行ったという経緯がございますけれども、議員の御指摘も踏まえまして、さらに何らかの対応が考えられるかどうかということについて、厚生労働省において、先ほど答弁ございましたけれども、引き続き検討していくという考え方でおります。

江田(康)委員 大変力強い総理のリーダーシップを感じ取りました。

 舛添大臣、ほかにもいろいろと、証書更新時の診断について、制度改正前には三年に一回であったものが毎年受けなければならなくなっているとか、また、新たに発症した疾患の追加についても次回の証書更新まで待たなければならぬとか、その間の治療費は対象者負担であって、この証書追加後に給付されます。対象者は高齢化が進んでいます。この手続における負担軽減を図ることも必要となっています。こういうことも含めて、舛添大臣の強いリーダーシップもあわせてとっていただきたい、そのことをお願い申し上げまして、きょうの質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

逢沢委員長 これにて江田君の質疑は終了いたしました。

 次に、馬淵澄夫君。

馬淵委員 民主党の馬淵でございます。

 今国会、予算委員会で、初の質疑の機会をいただきました。

 まず、きょうの予算委員会の質疑冒頭に、私の方から確認をさせていただきたいというふうに思います。

 先週二月の八日、当委員会におきまして、同僚の笹木委員が、自民党の政党交付金の支出について、これについては、政党交付金は国民の税金が直接入っているから、会計検査院の検査も含めて、また罰則も含めて今後検討すべきだ、このことを指摘させていただきました。

 費目をもっと詳細に明らかにするように、説明がつくように、このように笹木委員は指摘をしたわけでありますが、それに対して町村官房長官が、これに対しての答弁として、あたかも自民党が非常に何かいいかげんなことをやっているようなお話をされた、自民党はきちんと内規を持ってやっておるんだ、不明朗だ不明朗だとおっしゃるのならば、━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━このように発言をされました。

 公の場、国会というこの予算委員会、大事なこの審議の場で、町村官房長官の発言として、━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━どなたのことを指され、どの党のことを指されているんでしょうか。事実に基づいて発言をされたのであれば、この国会の中で、これは重要な問題だと思います。

 町村官房長官、これについてお尋ねいたします。お答えください。

町村国務大臣 今委員が御指摘になられた部分、私の二月八日の答弁につきましては、誤解を与えるような表現だったと考えておりますので、その後の理事会で与党を通じてお願いをし、御協議をいただきましたとおり、議事録からの削除をお願いをしたいと存じております。何とぞよろしくお願い申し上げます。

馬淵委員 誤解を生む発言をしたから削除してください、よろしくお願いします、それで済むんでしょうか。この予算委員会、テレビ入りの中で、国民の目の前で町村官房長官は、━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━明確にお答えください。

町村国務大臣 御質問のことにつきまして、また私があれこれ述べますと、またさらなる議事録削除の問題も出てこようかと存じますので、先ほど申し上げましたように、ひとつ議事録から削除ということでよろしくお願い申し上げます。

馬淵委員 こうした公の場で、官房長官は内閣のかなめであります、内閣のかなめである官房長官が、八日の委員会ではみずから発言をされたんですよ。笹木委員が官房長官に発言を求めたわけではありません。御自身がみずからの意思で発言されたわけです。そのことに対して削除を求めるのであれば、この国会で正式に謝罪すべきではないですか。どうぞ官房長官、この場で謝罪をしてください。

町村国務大臣 大変御迷惑をおかけしたことをおわびを申し上げます。

馬淵委員 御迷惑をおかけしておわび申し上げますとの明確な謝罪をいただきました。このような発言が内閣の一員、かなめの官房長官から発されることのなきように、よろしくお願いしたいと思います。

 また、笹木委員は決して憶測で物を言ったのではありません。笹木委員の質問の中では、政党交付金、国民の税金たるものは、それこそ、政治資金規正法の立法趣旨、国民の不断の監視のもとにさらされなければならないという趣旨に基づいて指摘をしたわけであります。

 こうした委員の質疑に対するこれは極めて不適切な御意見、御答弁だったというふうに私は思っておりますが、今、謝罪をいただきました。今後なきように、改めてお願いを申し上げたいというふうに思います。

 それでは、私の方では本題に入らせていただきたいというふうに思います。

 今国会の予算委員会、非常に重要なテーマとして、道路問題が再三再四委員から質疑に上がっております。この道路問題、とりわけ中期計画、これが取りざたされ、また、先週の予算委員会、基本的質疑一日目、二日目と、その中期計画の積算根拠等々各委員から質疑が上がっております。私も、この中期計画を中心にお尋ねをしていきたいというふうに思います。

 まず、この中期計画が出てきた経緯について若干おさらいをしたいと思いますが、平成十八年の十二月八日、「道路特定財源の見直しに関する具体策」として閣議決定がなされました。この閣議決定で、平成十九年中ですね、「十九年中に、今後の具体的な道路整備の姿を示した中期的な計画を作成する。」と定められました。

 そして、これに基づいて平成十九年の十一月、国土交通省、道路の中期計画(素案)が策定されたわけであります。ここには、六十五兆円総額の事業の大きな大枠、フレームが示され、また、この中では、高規格幹線道路点検結果、検証という形でここにも概要として示されております。この六十五兆円という大変途方もない数字ではありますが、今後の必要な道路として、国土交通省が具体的な道路整備の姿を示した計画として提示されたわけであります。

 これに対して、即座に政府・与党では、見直しを図るというメッセージが出されました。昨年の十二月七日、「道路特定財源の見直しについて」といういわゆる政府・与党合意でございます。ここには、中期計画の策定について、計画の推進に当たっては厳格な事業評価あるいは徹底したコスト縮減等々を図っていく、そしてその上で、この事業量は「五十九兆円を上回らないものとする。」とされました。また、政府・与党合意の中では、「真に必要な道路整備を促進する。」このように定められております。

 六十五兆円がある意味一声で五十九兆円に下がった。その積算根拠については、同僚議員も再三質疑をさせていただき、また冬柴大臣からも、これは御提示いただく、このように答弁をいただいております。

 私の方でまず確認をさせていただきたいんですが、このように閣議決定で具体的な道路整備の姿を示したのが中期計画、そして、その中期計画は道路整備を促進するためのものであるという位置づけであると理解をしておりますが、この整備という言葉、再度確認をさせてください。

 この五十九兆円という範囲の中で道路整備を促進するということは、すなわちこれは、道路をつくる、あるいは補修をする、工事をするということでよろしいでしょうか。大臣、端的にお答えいただけますか。

冬柴国務大臣 そのとおりでいいと思います。それでよろしい。

馬淵委員 ありがとうございます。

 整備とは、道路の建設あるいは維持修繕等々でございます。この中期計画の中では、すなわち道路の工事を行う、五十九兆円を上回らない中で道路の工事、つくると一概に言うと、また修繕も入るので難しいのかもしれませんが、これは、道路工事を行っていくということがこの計画に定められているということになります。

 しかし、冬柴大臣、また福田総理も、我が同僚議員あるいは他の議員の質問の中でも、何もすべてつくると決めたわけじゃない、このような発言を再三されておられます。二月八日の武正委員の質疑に対しても、冬柴大臣は、この中期計画にのせられたら、それでそのままもう整備が始まるとかいうことではない、このように発言をされています。また、福田総理も同様の趣旨の発言をされていますね。これも同じく武正委員の質問に対してですが、この十年間決めました、だから、それは何が何でもやります、こうよくおっしゃいますよね、御党の方はと。そういうことはしないんですよ、毎年の予算編成の際に、そのときにその一年間の事業量、また予算額を決める、このように発言をされています。

 再度、この中期計画というのは整備の促進を具体的に進める計画です。そして、冬柴大臣は、これは何が何でもやるわけではないとおっしゃっていますが、この計画そのものにのせたものは、具体的な姿を示しているわけですから、これはやはり整備が進む、工事をしていくという前提に立っているという理解の方が一般的に私は正しいのではないかと思うんですが、いかがでしょうか、大臣。

冬柴国務大臣 もちろん、目標を定めているわけでございますから、それに向かっていろいろな作業をいたします。しかし、具体的に整備に、先ほど言う道路の整備に着手するということになりますと、それにはその具体の時期における、例えばBバイCもそのときに取り直さなければなりません。最新のものを使ってやるわけでございます。そしてまた、高速道路、高速国道におきましては、当然に国幹会議の議も経て、そして承認された分について進めるわけでございますが、財務省の評価というものも当然ございます。

 そういうものがございますから、そこで、では、なぜそれを中期計画にのせたのか。それは、今一万四千キロというものについて、いまだ検討されていなかった部分が二千九百キロ残っていました。その部分について、その時点でもう一度調査をし直して、そしてBバイCも一・二、そういう高いハードルを上げて、どういうふうにしたら、これは本当につくらなきゃならないのかどうかということもその時点で検証したものでございます。

 もちろん、四車線でやるということではなしに、完成二車線というものもあれば、あるいは現道を利用するという部分もありまして、一・二以上にそれがなっていることは御案内のとおりでございます。

馬淵委員 つくるとは決めていないけれども、それは財務省の査定もあり、あるいはBバイCを含めた検討を行う、このような大臣の御答弁だったと思いますが、しかし、具体的な道路整備の姿を示した計画、これは過去にも同様のものがございました。

 過去においては、第一次から始まる道路整備の五カ年計画ということであります。この五カ年計画、この中期計画ができる前の今年度、現在の現五カ年計画がございます。そして、その前の五カ年、これは前五カ年計画、そして、それまでには第十一次までに及ぶ道路整備計画が今日まで行われてまいりました。

 大臣は今御答弁では、さまざまな経緯がある中でそれは検討するんだということではございましたが、過去を振り返ってみますとどうか。十一次までの五カ年計画、さらには直近の前五カ年、現五カ年、これを見ますと、実は計画、それを上回る実績、すなわち達成率が数値として出ております。

 国土交通省が発表している道路整備五カ年計画の実績と対比というこのデータを見ますと、これは直近でいうと、いわゆる暫定税率が引き上げられ始めてから整備がどんどん進むようになりました。第八次一〇一%達成率、これは計画を超えているんですね。第九次九六・六%、第十次一〇三・九%、第十一次九四・五%。いずれにしても、計画したものは今日までつくってきたという実績がございます。

 大臣、今日まで少なくともつくり続けてきた、計画に対して計画を上回る実績があったということについてはお認めになられますね。

冬柴国務大臣 これは道路整備だけについてですけれども、今委員がおっしゃったとおりの数字を発表しておりまして、上回っているところもあれば、上回っていない、九六・六というのもありますけれども、それはそのとおりでございます。

馬淵委員 つまり、少なくとも、こうした数次にわたる五カ年計画、道路整備計画の中で、計画を上回る実績値、達成率が残っている、これが今までの現状なんですよ。

 そして、今大臣は、いや、この中期計画に関してはそんなことないんだとおっしゃいますが、現実、これまでの推移は、ずっと計画を立てればそれを上回ったり、一〇〇%に近いところで道路をつくり続けてきたんです。だから、幾ら大臣が強弁されても、やはりこれは、見直すという言葉が私は空虚に聞こえて仕方がないのではないかという気がしてならないんです。

 さて、こうした五カ年計画というのがどういう位置づけになっているかということについて少し確認をさせていただきたいんですが、この五カ年計画というものが十一次までつくられてまいりましたが、それと別に、並行して、平成十五年の三月、社会資本整備重点計画法というものが定められました。これは社会資本整備重点計画として、道路のみならず、鉄道や空港や港湾、あるいは航路標識、都市公園、下水、河川、砂防等、本当にさまざまなこの国のインフラ全体を社会資本整備の重点計画として把握していこうということでこの法律は定められたというふうに理解をしております。

 そして、この十五年三月の法律制定後、閣議決定で社会資本整備重点計画が決定されました。平成十五年の十月十日のことであります。社会資本整備重点計画、これは十五年度から十九年度までの計画期間、すなわち五カ年なんですが、この五カ年の社会資本整備重点計画が閣議決定で定められた。

 さて、お尋ねをしたいんですが、冬柴大臣、実績として計画あるいは計画を上回る数値でずっと今日までつくり続けてきた五カ年計画、この五カ年計画というのは社会資本整備重点計画とはどういう関係になるんでしょうか。それについて端的に御答弁いただけますか。

冬柴国務大臣 先ほど馬淵委員は、超えた部分の数字を言われました。しかしながら、第十一次の、すなわち平成五年から九年は九四・五%、実績ですね。それから十二次は平成十年から十四年度まで、これは八三・八%。それから十五年から十九年度、これは現在ですね、八八・五%。いずれも相当下回っているということでございます。

 それから、それとの整合性でございますが、当然、社会整備五カ年計画、その中で、これは予算等で査定もされますし、道路についてだけが別に扱われるわけではありませんけれども、しかしながら、道路につきましては、着手してからできるまで少なくとも十年かかるのはおおむねそうです。二十年、三十年かかる部分もあります。そういうときに、それらをつくることができる、いわゆる安定的な財源というものは確保されなければなりませんので、こういう特定財源ということが、国民の御了解を得ながら、五年刻みで今日まで来ているわけでございます。したがいまして、こういういきさつも踏まえながら、その中で整合性をとっていく、当然のことだと思います。

馬淵委員 ちょっと何か遠回しでわかりにくかったんですが、私がお聞きしたのは、五カ年計画というのは、社会資本整備重点計画との関係、どういう位置づけですかとお尋ねしたんですが、いや、これは法律で定められておりますね。道路整備費の財源等の特例に関する法律の第三条の中で明確に定められております。社会資本整備重点計画法に規定する社会資本整備重点計画、いわゆる閣議決定で定められたこの五カ年計画、これについて、道路の整備に関する事業の量の案、これは閣議で決定しなきゃならないとなっているんですが、これは「即したものでなければならない。」このように定められているわけであります。

 大臣、ということは、五カ年計画は社会資本整備重点計画法のその社会資本整備重点計画に即したものであるということだという理解でよろしいですか。

冬柴国務大臣 それはそのとおりだろうと思います。

馬淵委員 そこでお尋ねをしますが、大臣、この中期計画は、まさに五カ年計画のその次に来るものであります。この中期計画、これは十年間に延長した計画でありますが、この中期計画も社会資本整備重点計画に即したものであるという理解でよろしいんでしょうか。

冬柴国務大臣 即したものでなければならないと思います。推進します。

馬淵委員 確認をさせていただきました。中期計画も社会資本整備重点計画に即したものであると。

 今般、法律の改正を内閣からは出されておりまして、今、先ほど申し上げた道路整備費の財源等の特例に関する法律については改正案を出されております。これも同様でありますね。仮にこれが、法律が通るか通らないかは別の問題ではありますが、現行の社会資本整備重点計画に基づく、のっとった、即したものが中期計画であるということの確認をさせていただきました。

 さて、中期計画の位置づけが明確になる中で、いずれにせよ五カ年計画は、その達成率は、一〇〇%を超えるもの、あるいは九割、九割に近いものという大変高い達成率で今日まで実績としてつくられ続けてきたわけです、道路はつくられ続けてきた。これは事実であります。

 その上で、この中期計画、これはどういうふうに進められるかというところをひもときますと、この中期計画の冒頭に、厳格な事業評価、これが載っております。基本的な事項として、客観的データを用いつつ、そして厳格な事業評価、またコスト縮減などを行いながら進めるということでありますが。

 そこで、お尋ねします。厳格な事業評価とは何を示すんでしょうか。

冬柴国務大臣 最新の客観的な資料あるいは学説等、そういうものを全部総合して、皆さんから見ていただいて公平公正な基準で行われるということでございます。

馬淵委員 具体的には何を示すんでしょうか、大臣。

冬柴国務大臣 具体的には、例えば道路の将来交通需要推計というようなものが非常に大事だというふうに思います。

馬淵委員 具体的な厳格な事業評価というのは、これは中期計画に書いております。これは二十二ページに載っているんですが、「新規採択時から事業完了後まで事業評価の厳格な運用を実施」と書いております。

 ここで、国交省が出しております平成十五年四月一日施行の、これはお手元の資料の1に載せておりますが、国土交通省所管公共事業の新規事業採択時評価実施要領というのがございます。また、同じく再評価実施要領というのはお手元の資料2に記しております。ここに、中期計画に載せてある厳格な事業評価、新規採択時そして再評価時、そして、その実施要領には費用対効果分析と書かれています。再評価も同様であります。

 お尋ねいたします。

 この厳格な事業評価、すなわち国交省が定める実施要領に書いてあるこの費用対効果分析とは何を指すんでしょうか。大臣、お答えください。

冬柴国務大臣 それはBバイCと言われるものです。コストとベネフィット、それを公式で示したものでございます。

馬淵委員 費用対効果分析と実施要領に示してあるのは、大臣が今端的にお答えいただきました、BバイC、すなわち費用と便益、これの対比であります。

 お手元の資料3をごらんいただきたいと思いますが、平成十五年の八月に、国土交通省から、費用便益分析マニュアルというのが出ております。なかなかわかりにくい言葉だと思いますが、費用は、道路をつくる費用ですね。これは、土地収用代や、あるいは人件費、まさに工事費ですね、さまざまな費用をすべて合算しています。これはイメージはわかりますが、便益と言われるとなかなかわかりにくいんですね。

 ここには便益というのがどういうものかということで、これも中期計画の中に書いてあります。走行時間短縮便益、走行経費減少便益、交通事故減少便益、三つの便益の合計を社会的便益としたと書いてありますが、これも、わかりやすく言えば、道路ができた、道路ができて車がスムーズに流れるようになった、だから時間の短縮ができた、経済効果が上がるだろうということでこれをお金に換算した。

 あるいは、走行経費。渋滞で車がのろのろ走ると、これはオイルも使うわ、あるいはガソリンも使うわ、車の摩耗が発生する、さまざまな経費がそこで膨れ上がるから、これも、道路ができればスムーズに流れることによってこれが減少する。つまり、お金に換算する、何らかのプラスがあった、これを足したもの。

 交通事故も同様でしょうね。恐らく、車がスムーズに走る中で、安全対策が図られる中で、事故の減少によって社会的損失が減ったということでお金に換算する。すなわち、効果があったという、これを換算した。便益でございますが、この便益をB、ベネフィット、そして費用をC、コストとして、BバイC、便益を費用で割ったもの、これが費用便益と呼ばれるものです。

 お手元の資料の3、費用便益分析マニュアル、実施要領に示す費用対効果の分析の具体的なマニュアルとしてここでお示しをしましたが、明確に書いております。改めてで申しわけございませんが、4を見ていただくと、費用便益分析というのは、新規事業採択時評価及び再評価に当たり、事業の妥当性を評価し、効果的な事業執行を促すことを企図するものであると、費用便益分析の趣旨が明確に示されております。

 このように中期計画の中では、費用対効果、このことを厳格に、これをチェックしながら進めていくんだということが書かれており、費用対効果とは費用便益なんだと書かれており、それは新規事業や事業の再評価でこれをしっかりと計算して進めていくんだ、こう説明をされていることだと思います。

 さて、大臣、今の私の説明でよろしいですか。これはイエスかノーで結構です。

冬柴国務大臣 そのとおりでございます。

馬淵委員 その上で、中期計画は、費用便益分析ということでBバイCを計算しておられるわけですね。かかった費用と得られる効果、それをお金に換算して、かけたお金と、そしてかかった費用と得られる効果、それを比較したときに、かけたお金分以下だったらこれはやる意味がないということで、BバイCが一より下回る場合は見直すんだ、計画そのものもやっちゃいかぬということだと思います。これは実施要領にも明確に書いてある。BバイCが一を上回るものが、これが実施に進められていくということだと思います。BバイC、費用便益、この分析の結果が中期計画の中にも明確に示されているわけであります。

 さて、この費用便益分析という計算にいろいろなファクターがあると先ほど大臣もおっしゃっておられましたが、当然ながら、どのような便益が、例えば交通量だとかいろいろなデータがあると思うんですが、どのような利益が出るかということについては、一番端的に出るのは車の交通量。先ほどもお話がありましたね、交通需要推計というものが非常に大きな要因であるということが考えられるわけであります。

 そこでお尋ねをしたいんですが、需要推計というのは費用便益分析に影響を大きく及ぼすものでありますか。これも端的にお答えいただけますか。

冬柴国務大臣 非常に大きな要素でございます。

馬淵委員 非常に大きな要素、極めて大きな要素であると私も理解をしております。

 お手元の資料に、5をごらんいただきますと、これは将来交通量予測のあり方検討委員会報告書、平成十六年三月のものでありますが、道路計画における交通需要推計の主な目的として、評価システムでの活用というのが4に示されております。BバイC等と書いてありますが。つまり、道路をつくるためと言ったらちょっと語弊がありますが、道路をつくっていく上においては、費用便益が非常に重要である、これが一を超えなければつくっちゃならぬわけですね。そして、この費用便益を出す上においては、この交通需要推計というのが極めて大きなファクターとなると今大臣からも御答弁をいただきました。

 そして、この需要推計というものは何に基づいて算定されるのかということを、じゃ、大臣、少し御答弁いただけますか。

冬柴国務大臣 まずは交通センサスが大事だと思います。これは、全国三万七千カ所で通過する車の種類とか台数とかいうものをとるものでございまして、交通センサスはそれが一つ。それからもう一つは、全国を六千に細かく分けて、そして、どこからどこへ、起終点、起点はどこか、終点はどこかというようなものを通過した車両にお尋ねいたしまして、ですから、これは六千掛ける六千ということですから大変な数値が出てくるわけですが、そういうものをもって交通センサスということで、通りました道路の断面を通過する車両の数というものが推計されてくるわけでございまして、このセンサスというのが大事でございます。

 しかしながら、これがそのままこのBバイCに使われるわけではなしに、将来交通予想推計というものを基礎にして、それから、例えばGDPはどうなのか、人口はどうなるのか、都市部における生活様式とか、あるいは車両に対する嗜好が大型から小型に変わるとか、いろいろな面を含めて、それから三年ぐらいの日をかけて将来推計がつくられるということでございます。

馬淵委員 この需要推計というのは、交通センサスと称される、いわゆる交通情勢調査で決されるということの御答弁をいただきました。

 そして、もちろん、この需要推計に基づいてBバイCだけですべてが決まるのではないという御答弁でございましたが、お手元に配った資料6、パネルを用意しておりますが、ごらんいただいたらわかるように、道路がつくられる。私はこれは「整備」と書きましたが、道路整備というのが、先ほど大臣の答弁にもありました、これは大きなファクターだとお話しになりましたが、需要推計によって決定されるわけであります。道路の中期計画(素案)において、高規格幹線道路の場合も、平成十一年度の全国道路街路交通情勢調査、センサスに基づいて需要推計が十四年十一月に公表されて、そしてそれは、先ほど私がお示しをしたマニュアルに基づいてBバイCが決定され道路整備に進む、この中期計画にもそのように書いてありますね。

 さて、この流れ、もちろん、これは端的に模式化したものでありますから、細かいもの、ほかの要因もあるというのはわかっております。しかし、需要推計が非常に重要なものだという先ほどの答弁を受けて、このように私は今整理をしたわけでありますが、この整理をさせていただく中で、大まかなこの流れ、交通センサスから需要推計が得られ、BバイCそして道路整備に流れていく、大臣、これはよろしいですか。

冬柴国務大臣 それは結構です。そのとおりです。

馬淵委員 そこでお尋ねをしますが、大臣、すなわち、この需要推計が非常に重要であり、その需要推計を導き出す交通センサスが重要であるということになるんですが、先週の武正議員の質問に対して大臣の御答弁は、このセンサスについて、武正議員から、これは平成十一年センサスなんですが、平成十七年にもセンサス調査をやっているではないか、なぜそれを使わないんだという質問をされました。そして、先ほどにもお話ありましたが、大臣答弁では、二十年の秋ごろになるんだ、ちょっと時間がかかるというお話でありましたが、その時々の一番新しい道路交通需要推計というものを用いてやっていく、こう答弁をされています。

 確認なんですが、現時点において道路の中期計画、これを我々は今審議、議論しているわけですが、現時点において最新のものとは、すなわちこの十一年センサスに基づく十四年の需要推計であるということでよろしいんでしょうか。御答弁いただけますか。

冬柴国務大臣 そのとおりでございます。

馬淵委員 お手元の資料の7をごらんいただきたいんですが、これはパネルを用意しております。これが今回の中期計画の中で用いられた、走行台キロという単位を使うんですが、全国将来交通需要、平成十四年の十一月に公表されたものであります。

 実線であるのは、お手元の資料はカラーでなくて申しわけありませんが、このパネルにありますように、赤の実線である部分というのがちょうど実績値でございまして、現実には、数値でいうと、この全車というのが乗用車、貨物車を合わせたものでありますが、七千七百六十億台キロでありますか、これは二〇〇〇年、平成十二年の実績値でございます。これをもとに今回の中期計画というのはつくられてきたということになります。

 これを見ますと、それまでの五カ年計画、先ほど私お尋ねしましたね、計画値より上回る実績もあれば、九割に近い、あるいは九六%なんという数字もありましたが、計画に基づいてどんどん実績として道路をつくってきた。この平成十四年においては、そのときの現五カ年計画というものの推計は点線矢印なんですね。つまり、かなり高いところの推計をしていたのを、平成十四年では下方修正したということです。

 これを見ますと、全車は二〇二〇年がピークですね。貨物が若干減っていくので、乗用車のピークが二〇三〇年ですが、全車の、全国で車が走る量ということになるんでしょうか、これは二〇二〇年がピークになっております。

 この推計をもとに中期計画、BバイCまで先ほど私は流れを説明しました。センサスがあり、需要推計があり、BバイCがあって、そして整備がある。この推計をもとにこの中期計画、高規格幹線道路の計画はなされたということでよろしいですか。

冬柴国務大臣 その資料で判断をしております。

馬淵委員 これは、二〇〇〇年、すなわち平成十二年で実績、とまっているんですね。この実績については国土交通省は把握しておられますか、大臣。実績値ですね、全車、乗用車、貨物車とありますが、走行台キロの実績値、この中期計画では二〇〇〇年の実績値までしか入っていないんですよ。それで計画をつくっているんです。実績、少なくとも直近までの実績というのは、国土交通省、把握されていますか。

 では、局長で結構です。端的にお願いします。

宮田政府参考人 お答え申し上げます。

 最新値で追っておりますので、十八年度まで、ちょっと今手元に出てきませんが、持っていると思います。

馬淵委員 平成十二年までの実績しか入っていない推計をもとに中期計画がつくられました。しかし、実績は平成十八年までちゃんと追っかけておられますよね。そして、それはこの中期計画の中では実は反映されていないんですね。国土交通省の中で、私、調べました、こういう需要推計の中に実績がプロットされているものはないかと。これは公表されていませんね。この点だけ端的に、公表されているかされていないかだけ、局長。

宮田政府参考人 お答え申し上げます。

 数値についてはホームページで……(馬淵委員「数値じゃないですよ、こういう表、グラフ」と呼ぶ)グラフは公表しておりません。ただ、報告書についてはオープンでございます。

馬淵委員 さまざまなグラフはあるんですけれども、ないんですよ、実績が入っているのは。

 私もこれは探しました。自動車輸送統計年報というのがあるんですね。平成十二年から、私、全部これをひもときました。その中に細かな台キロの数値が載っています。貨物の台キロあるいは乗用車の台キロで全車を出していくんですけれども、これは、カウントがダブルカウントになっているところがあったりして、なかなか素人目には難しいですね、私もこれは再三間違えましたが。

 お手元の資料には8でこの表紙をつけております。平成十八年度分です。9に貨物の数値を載せています。9をごらんいただきますと、走行キロとして、二四一八四九一七〇、丸めますと二千四百二十億台キロですか、の実績の数値がこの自動車輸送統計年報から出せるんですね。十二年から十八年まで私全部これを拾いましたよ。拾って、プロットしました。

 10の資料をごらんください。パネルを用意しております。平成十八年の実績を見れば、このように明らかに推計値から落ちているんですよ。これは十八年のデータとして、国交省は把握されているんです。把握されているにもかかわらず、このことは公表されずに、オープンにはされずに、逆に言えば、最も大事な審議に資するべきデータであるはずなのに、予算委員会では一度も出てこなかった。

 ごらんください。横ばいから、過去三年間はこれはずっと右肩下がりなんです。トレンドは下がっています。この乖離は、全車で五・八%の乖離があります。明らかに推計値と離れてしまっている。二〇〇六年の数値、私が先ほど示しました十八年の統計年報から入れました。実数です。明らかに推計値から乖離しているではありませんか。大臣、これはどのようにお考えになりますか。

冬柴国務大臣 自動車の走行台数、台キロと、それから今BバイCをそこに載せている部分は、高速自動車国道についてやっているわけです。では、高速自動車国道の走行台キロはどうなっているかということを比較しなきゃならないと思います。十一年から十七年、交通センサスをやったこの二つの時間の間では、高速道路を走った車は五%ふえております。五%ふえております。

 では、どうしてそうなるのか。これは、地方における道路とかそういうものが延びました。したがいまして、高速道路をどうするかという議論のときに、高速道路の走行台数がどうなるのかということが非常に大事でありまして、その意味で、私は矛盾はしていないというふうに思います。

馬淵委員 私が申し上げているのは、需要推計というのは極めて重要な要素であるという御答弁をいただく中で、いや、高速道路はまた別なんだというのは、これは全く矛盾した御答弁であるとしか私は思えないんですよ。

 いいですか。実績は明らかに乖離しています。そして、この推計値から離れてしまっている現状を踏まえてお尋ねしますが、国交省はこうした状況の中で新たな推計というのはなされていないんでしょうか。

 大臣は、平成十一年センサスが最新のものだ、このようにおっしゃいましたね。すなわち、先ほど出しましたパネル、平成十四年のあの推計が最新のものだ、このように大臣は御答弁をいただいております。これが最新のものなんだと。しかし、実績は乖離しています。

 では、その実績乖離に対して、何ら推計をやり直すということはされていないんでしょうか。大臣、いかがですか。

冬柴国務大臣 道路の中期計画というのは、いわゆる納税者、すなわちドライバーの方に税をお願いするに当たって、十九年末に、将来こういう道路をつくりますという、いわゆる受益と負担をあらわすものをしたわけでございます。これはその段階で最新のものでございます。しかしながら、今後道路をつくっていくときには、つくっていくためには、最新の資料をもってBバイCもとりますし、そういうことによって起こるということでございます。(馬淵委員「質問に答えてください」と呼ぶ)質問に答えていますよ。質問に対して答えています。

 我々は、道路を今から整備するためには、それでファイナルではありません。これからつくるときに、つくるに当たって、先ほどお示しいただいたあなたの資料から見てもわかりますように、準備する段階でBバイCをとります。それから、もう一度国幹会議にかける場合にも、その直前にはBバイCをとっております。それから、着工して五年たったらまたBバイCをとっています。

 そのように、我々としては最新のデータをもってそれをつくっているわけでありまして、それはその時点における最新のデータでございます。

馬淵委員 全然答えになっていないですよ、大臣。

 BバイCはそのときでやっても、交通需要推計はセンサスのデータに基づいた需要推計を使っているんですよ。これは、だから、平成十一年のセンサスに基づいた需要推計がずっと今日まで生きているんです。私がお尋ねしたのは、今、今日実績が乖離しているにもかかわらず、推計はし直していないんですかとお尋ねしたんですよ。それに対して何一つお答えいただけない。

 お示ししました資料の11をごらんください。これは平成十九年三月、昨年の三月です。私が先ほど示した実績をプロットして新たな推計を行っているという資料です。

 平成十八年度将来交通需要推計に関する検討業務、国土交通省が財団法人計量計画研究所に外部委託をして発注したものであります。ここにその報告書がございます。この報告書の中に、実績との乖離を十分評価しながら、再度、これはかなり無理なV字回復ですよ。先ほどでも下方修正して、そして実績を入れたら明らかに下がっている。三年、トレンドで下がっているんです。にもかかわらず、これはまたV字回復で無理な上方修正した推計値、あるじゃないですか。

 大臣、推計値はありますよ。先ほど最新のもの、最新のものと言うが、最新のものは平成十一年センサスに基づく十四年のものなんです。今、十九年三月に国交省はこのデータを把握しているじゃないですか。推計をしているにもかかわらず、中期計画ではなぜそれをふたして、このような平成十四年の推計のままで出すんですか。おかしいじゃないですか。

冬柴国務大臣 御指摘の試算値につきましては、道路交通センサスによる交通量、将来人口の推計値など一部のデータのみを単に新数値に置きかえたのみでありまして、まだ途中段階のものでございます。

 新たな将来交通需要の推計に当たりましては、データを最新値にするだけではなく、女性や高齢者の運転機会の増大や、軽自動車の保有率あるいは利用頻度の増大、貨物における長距離トリップの増大等、各種指標の動向を整理するとともに、将来の傾向を予測した上で、適切なモデルを構築することが必要であると考えております。また、特に、大都市圏では下がっておりますが、地方では上がっているとかいうことが事実でございます。そこに書かれているのは、人口あるいは交通量実績、GDP速報値、そういうもののみで出されているわけで、我々は隠しておりません。それはオープンにいたしております。

馬淵委員 いや、オープンじゃないですよ。これはなかなか出なかったんですから、大変だったんですが、まあそれはいいですよ。

 大臣、今お話ありました、一部だとおっしゃいますが、これは、先ほど私示しました将来交通量予測のあり方検討委員会の報告書、十六年三月、ここには、交通需要、これに関連する人口、GDP推計値、こうしたものの実績値に乖離が生じた場合ということで、こう記されています。

 大規模な交通行動データが更新されていない場合においても、これはつまり交通センサスが行われていないという前提です。その場合においても、全国の将来交通需要推計値が実績値(陸運統計等)、これはまさに私が拾ったものですよ、これと乖離した場合には、将来交通需要推計値の見直しの検討に着手すべき、こう書いてあるんです。

 本来ならば、十九年三月に、この報告書が上がって、実績と乖離をしている状況の中で、これは検討に着手しなければならない。少なくとも、十九年の十一月に十四年のデータを使ってのうのうと出せるような状況ではなかったはずなんです。いかがですか。

冬柴国務大臣 我々は完成した最新のデータでそれをつくっております。したがいまして、それが拘束するものではなく、今後具体的に、着工する場合には、新たな、今おっしゃるその時点、まだ今でも、ことしの秋ごろには出るというふうに思いますが、将来交通予測が出たときには、それを用いてBバイCを行うわけでございますから、それはそのつくるときの最新のデータで行っているものでございます。

馬淵委員 大臣、一部を直しただけとか、先ほどおっしゃいましたね、このデータについては。これは、契約書を見れば、九千八百四十九万円、一億円もかけてつくっているんです。

 この財団法人計量計画研究所は、これは天下りの巣窟となっているのかもしれません。これは長妻議員などが指摘をされた部分でもありますが。この財団法人、ここでつくったこの報告書、その業務請負の仕様書を見ますと、このように書いてありますよ。「次期社会資本整備重点計画の議論に活用するための将来交通需要予測を行う」と。

 先ほど私は確認をしました。中期計画はまさに社会資本整備重点計画に即したものであるという御答弁をいただきました。その中期計画の議論をする中で、これは活用するためにあるんですよ。このことは業務請負仕様書に明確に書かれている。これを無視することはできないじゃないですか。なぜそれでこの中期計画が最新のものだ、最新のものだと言い張って逃げられるんですか。その説明がない限り、これは質問できませんよ。これ以上、この予算委員会の質問の前提が崩れるわけですから。それを明確に出してください。

冬柴国務大臣 本年の秋、最終報告が出ることになっておりまして、その今かざされているのは途中経過でございます、途中報告なのでございます。

馬淵委員 今示した報告書の推計値、これは緑のラインですよ、V字回復に無理くりつくっていますが、緑のライン。そして、この中期計画の使用した推計値はこのオレンジのラインですよ。二〇三〇年の数値で、これは既に八・七%も乖離しているんです。中期計画の中には、明確に、厳格な事業評価の前提として、平成十四年のセンサスの値から二〇三〇年の交通需要を計算してと書いてあります。しかし、現実には、八・七%、二〇五〇年でいえば一五・六%も乖離する推計が出ているんですよ。

 そして、その推計値は、単に途中の話ではなくて、この業務請負仕様書に書いてあるように、社会資本整備重点計画の議論に活用するための将来需要予測だと書いてあるんですよ。それを無視するのはおかしいじゃないですか。

 どういうことですか、これは。説明してください。でなければ、これはもうこれ以上、議論の前提が崩れます。

冬柴国務大臣 毎年度、個別事業の採択に際して行う費用対便益分析というのはあるわけです。それは、有料道路の採算性の確認などに当たりまして、将来交通需要推計は欠かせないものでございます。

 したがいまして、完成した交通需要推計、現在、一番最新のものは、我々が用いました十四年十一月のものでございます。したがいまして、これから、ことしの二十年の秋ごろということですから、十月か十一月かには次の最新の将来交通推計があらわれるわけでございまして、できる限りそういう最新のものを用いていたします。それは間違いなくそうです。

 他方、我々の中期計画の素案には、高速道路だけのことを言っているわけではありません、渋滞対策、通学路の整備など、政策課題ごとに具体的な目標を掲げて、要対策箇所の中から重点的に対策する箇所数を整理しているというところが重要であります。これは、現状の課題の大きさなど、事業効果等の観点から整理しているものでありまして、将来交通需要推計の結果によって要対策箇所から対策する箇所数が左右されることは想定していると考えているところでございます。

 なお、将来交通推計につきましては、平成十一年の道路交通センサスや平成十四年の将来人口推計を活用して得られた将来交通量が、現在のところ最新のデータであります。これに直近の実績の動向を勘案しつつ、必要に応じて感度分析を実施するなどして使用しているものでございます。

 いずれにせよ、個別事業の採択に関しましては、その時点で活用可能な最新データに基づいて客観的かつ厳格な事業を行うこととし、経済社会情勢や国民のニーズの変化に的確に対応してまいりたい、このように考えているところでございます。

馬淵委員 これは本当に答弁になっていませんよ、大臣。

 私が先ほど来言っているのは、業務請負仕様書の中に明確に、社会資本整備重点計画の議論に活用するための予測なんだと。だから、このことはこのデータをもとに議論しなきゃならないんですよ。中期計画は社会資本重点整備計画だと先ほどおっしゃったじゃないですか。即しているんですよ。だから、このデータが前提でないと中期計画は議論できないんです。そのことについてお答えいただいていないですよ。二十年の秋というのは、これはもう計画、この予算委員会の審議は終わっているじゃないですか。単に先延ばしの話ですよ。

 この業務請負仕様書に書いてあることをなぜ無視されるのか。それの明確な答弁をいただきたい。

冬柴国務大臣 直近のものも三年かかっているんです。平成十一年九月から十一月のセンサスに基づいて、三年後の平成十四年十一月に将来交通需要推計が行われた。平成十七年の九月から十一月に行われた分については、平成二十年の秋、すなわちことしの秋に出ても遅くないわけであって、その分析は非常に詳細ですよ。本当に、我々はわかりません、専門家の、非常に学問的なものを通じて行われているわけでございまして、最新のものはそれでありますから、御了解をいただきたいと思います。

馬淵委員 違うじゃないですか。平成十四年が最新のもので、二十年秋に出るという答弁は何度も聞きましたよ。しかし、その中間の段階で、まさに社会資本整備重点計画の議論に資するための検討報告書が出ているんですよ。なぜそれを無視するんですかとお聞きしているんですよ。

 この業務請負仕様書に示されて、一億円をかけているじゃないですか。それを無視するんですか。大臣、明確にお答えください。答えになっていません。

冬柴国務大臣 我々は、BバイC一・〇以上であれば着工してもいいということになっていますけれども、我々は、そういうものもアローアンスを見て、それを見ていただいたらわかりますよ、一・二以上でやっていますよ。したがいまして、我々としては、誠心誠意それはつくったと思います。そして、それは今示されておりますけれども、完成品ではないわけでして、完成品をもとにそれはやらなければならないというふうに思います。

馬淵委員 今のBバイCの議論、全然違いますよ。私が言っているのはあくまで推計の話なんですからね。話をごまかさないでくださいよ。

 推計値が実績と乖離している中で、その実績乖離を踏まえた検討結果が出ているんです。そして、その検討結果というのは社会資本整備重点計画の議論に資するべきものだという業務請負仕様が定められているんです。なぜそれを破るんですか。

 大臣、あなたが今やろうとしていることは、まさに税金をかけて行った事業、その結果を隠ぺいしようとすることですよ。そうじゃないですか。大臣、なぜこれを無視するのか。二十年秋に出るから待てという話では、これは通りませんよ。今予算委員会で審議しているのはこの計画の話なんです。そうじゃないですか。

冬柴国務大臣 ここの百三十ページから百三十六ページにかけて、細かくBバイCしています。全部あらわしています。それだけではありません。偏差値も書いてあります。それで、一・二以上のものについてこれをやる、そういうことでございまして、それはやはりそういうことでございます。十年前と言うけれども、それが一番最新なんです。それは……(発言する者あり)違います。それで、最新のデータがそれなんです。最新のデータがそれなんです。そういうことでございます。

 それから、今の百三十から百三十六ページのものについては、先ほど言いましたように、それと同種の高速道路におきましては、十一年と十七年の間では、通行量、いわゆる台数ですけれども、五%ふえていますよ。それと違うんです。それは全体をやっていますけれども、高速道路をどうするかという議論の中で、高速道路の需要はふえている、そういう事例もあるわけでございますから、これは御理解をいただかなければならないと思います。(発言する者あり)

逢沢委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

逢沢委員長 速記を起こしてください。

 冬柴国土交通大臣。

冬柴国務大臣 その資料は途中経過ですよ。私はそう思います。ですから、我々は最新のデータでそれをつくっているわけでございまして、しかも、それだけじゃないんですよ、その冊子の中には、渋滞対策とかいろいろ、十六の項目にわたって、今講じなければならない国民のニーズ、それをしているわけです。高速道路については最新の資料でそのようにしているということは、御理解いただきたいと思います。

馬淵委員 大臣、あなたが言っている最新というのは平成十四年十一月の公表データのことなんですよ。だけれども、ここでは十九年三月にちゃんとこの検討委員会の中の報告書が出ているんです。しかも、その検討委員会の報告書、これについては、乖離が起きた場合には、これは見直しの検討に着手すべきと明確に書いてあるんですよ。なぜそれを無視するんですか。そして、その前提でこの中期計画を予算委員会の中で通そうとしているじゃないですか。そんなでたらめが国民に通ると思っているんですか。

冬柴国務大臣 最新のものとはいいますけれども、時間がたっています。したがって、一・二以上で、BバイC……(発言する者あり)いや、一・二以上ですよ、アローアンスを見ていますよ。そういうことで、しかもそれは……(発言する者あり)将来予測は大事です。ですから、それでつくってあるわけです。その結果出てきたものが一・二以上の評価というものでやっているということを、ぜひ御理解いただきたいと思います。

馬淵委員 いいですか、一・二とか一・〇の話をしているんじゃないんですよ。

 その前に、需要推計というのは最も重要なファクターである。しかも、これは八・七%、二〇三〇年の数値を前提にしているんです、この中期計画は。既にこの推計ですら、私はこれをかなりおかしいと思っていますよ、V字回復させているんですから。トレンドは下がっています。本来ならもっと厳しい。

 ほかにもデータはありますよ。原油価格、ガソリン価格が上がれば走行台キロは減っていきます。さまざまな減る要因がある中で、感度分析はきょうはしませんが、次回に持ち越しますが、間違いなく減る要因がある中で、八・七%、二〇三〇年の数値を前提にする中で、これは乖離しているんですよ。その乖離については、新たに検討し直すべきと明確に報告書に書いてある。それをなぜ無視されるんですかと聞いているんですよ。

 答えになっていませんよ。最新は十四年十一月はもう結構ですよ。それを見直しとここに、国交省は把握しているじゃないですか。

冬柴国務大臣 いろいろなファクターがあって、今、分析中であって、正確なものを出しますということを言っているわけで、途中経過のものを出されても困るわけです。したがいまして、アローアンスを見て一・二というものを見ているということが一つ。

 それから、中期計画は十九年末に出しますという約束をしているわけです。その時点で、これは末にすぐやったわけではなしに、十九年の初めからずっとやってきているんですよ。相当な膨大な作業を重ねてそれはやっているわけでございます。したがいまして、これは御理解いただかなければならない。

 それから、これは高速道路についてやっているわけでしょう。したがって、それ以外の渋滞対策とか、あるいは子供たちの通学路の問題とか、あるいは道路に対して土砂崩れがするとか、そういうものは急がれているわけです。高次の拠点病院まで行くためにはどうかとか、そういう問題も重要でありまして、詳細なデータを用いてそこに記述してあります。したがって、御了解いただきたいと思います。

馬淵委員 大臣、私が聞いていることに何一つ明確にお答えいただいていません。

 総理、今私は一時間の時間をかけて、この道路整備というものは、BバイC、費用便益の分析によって決定される、そして、この費用便益に最も大きな影響を与えるのは需要推計だということもきちっと丁寧に確認をしてきた。そして、中期計画は今日まであるこの社会資本整備重点計画に即したものであるという確認もした上で、社会資本整備重点計画の議論に資するべきものという、一億円かけてつくった報告書の中で、需要推計がもう乖離、変わっているんです。変わっているにもかかわらず、それを一切使わないでこの計画を議論していることはおかしいじゃないですかと申し上げているんですよ。

 総理、なぜこの計画、この報告書に基づく推計で、新たにこれを検討し直すべきと規定されているわけですから、なぜそれを行わないかということに対して、私は冬柴大臣に再三尋ねていますが、お答えいただけません。総理の見識、見解をお尋ねします。

 このように、既に国土交通省が把握している需要推計は下振れしているんです。二〇三〇年の値をもとに計画した中期計画の前提が八・七%も乖離してしまっている。この状況で、中期計画の議論はもはや意味をなさない。

 二十年の秋といえば、これはもう通ってしまった後かもしれないわけです。今まさに議論すべき段階において、この事実が明らかであるにもかかわらず、冬柴大臣は一向にそのことに対してはまともに答弁をされない。

 総理、お尋ねします。総理の見解、見識、これに基づいて、今まさにすぐ検討し直すべきではないですか。いかがですか、総理。

福田内閣総理大臣 先ほど来国土交通大臣から説明しておりますのは、それは最新の持てる資料を使っているということでありますけれども、一方で、走行キロが減少している、こういうふうな傾向もある、こういう至近時点の情報もある、こういうことですね。国土交通省はいろいろなデータを持ってこの必要量を出しておる、こういうふうなことです。

 もとより、もちろんデータは新しい方がいいに決まっていますよ。ですから、そういうようなことも配慮は当然しているんだろうと思いますけれども、しかし、今あるデータ、すなわちセンサスも、平成十一年、まあ確かに古いといえば古いですよ。古いといえば古いけれども、しかし、それが最新のセンサスだということで、これはもうじき新しいものが出るという話もあるようでございますから、そういうセンサスが出たら最新のデータに切りかえるということは当然可能なわけですよね。

 ですけれども、今そういうものがないというのであれば、十一年のセンサスを使うというのも合理性はあるんだろうというふうに私は思います。

 それから、もう一つ申し上げれば、個々の事業の実施に際しては、さらに最新のデータを使用しなければいけないというふうに思います。

 具体的なことについては、これは御納得いただけないというのであれば、さらに国土交通省の方から十分な説明をさせるしかない、そういうふうにさせるべきだというふうに思っておるところであります。

馬淵委員 今、総理は、新しいものがいいという御答弁をいただきました。新しいものがいいということであれば、まさに平成十九年三月、昨年の三月時点で国土交通省はこの検討委員会の報告書で挙げた需要推計に乖離してしまっている、この実績値を見て、乖離してしまっている需要推計をもとに中期計画をつくり直すべきなんですよ。このことは早急に着手されなければならないと業務仕様書でも確認されているわけです。

 総理、政府見解を出してください。国土交通省が行った十九年三月の値を用いるということに対する明確な政府見解を出してください。これを使う必要がないというのであれば、一億円もかけたその検討は一体何なんですか。まさに業務仕様書です。確認されているわけですよ。

冬柴国務大臣 道路の中期計画自体は小泉内閣のときからいろいろ議論がありました。そして、暫定税率というものを維持するためには、納税者に理解をいただくために、その姿を示さなければならない。ぜひ、真に必要な道路という抽象的な表現ではだめだということで、それを具体的な中期の計画として示すということで、これは早くからそこの作業に入っているわけでございまして、そのとき用いるのは、権威ある、だれが見てもファイナルな資料を用いざるを得ないわけです。

 しかしながら、それはでき上がったもので、そのまま使うというわけじゃなしに、個別的に道路の整備をする場合には、あるいは準備にかかるとき、あるいは整備にかかるときには、またそのときの最新のデータで見直しをいたしますということを言っているわけでありまして、これは私はここで申し上げているわけでございまして、それと矛盾はいたしません。したがって、それをつくり直すというようなことはあり得ないと思います。

馬淵委員 私は政府見解を求めています。総理、私は総理に政府見解を求めています。内閣としての政府見解、総理から御答弁をいただきたかったんですが、御答弁いただけますか、政府見解。今の前提に基づいて、しっかりとこれはやり直すべきなんですよ。総理、政府見解。

福田内閣総理大臣 この資料そのものがどういうように使われるべきかとかいったようなことも、正直言って私自身はわからない。そこは技術的なことですから、国土交通省によく聞いていただきたいと思います。しかし、そういうような要素、ほかにもいろいろな要素はありますから、そういうものを総合して計画はつくられるべきものなんですよ。

 申し上げますよ。例えば、ここでもってこういうふうに全車で急激に減っていますね。では、最新のがいいといって急激に減るような傾向をそのまま使ったら、このまま下がっちゃいますよ。そういうことなんですよ。

 統計というのは、一年で使うことが必要なときと数年間を見るべきものといろいろあるんです。私も昔、そういうことを若いころやったことがあるんですよ。ですからよくわかっておりますけれども、それは、やはりあとはいろいろな人間の判断というのがあるんです。判断が大事なんです。その判断は、いろいろな要素を加味して判断するんです。ですから、一つをとって物事が決まるということはないと私は思っております。

馬淵委員 私は、だからこそ、ここに書いてあるように、業務請負仕様書に書いてあるように、これは今検討に着手すべきなんですよ。これを前提に本来ならば中期計画の検討をしなきゃならないんです。十九年三月の段階でやらないかぬのですよ。それをやらずに、今日、十四年十一月の公表データでやってきたことに欺瞞があると申し上げているんです。消えた年金のときもそうでした。すべて覆い隠して、結果、大騒ぎになったときに、いや、これは申しわけない。それではいかぬから、この予算委員会がしっかりした議論になるように私は申し上げているわけです。

 委員長、政府見解を求めます。理事会で協議してください。

逢沢委員長 理事会で適切に取り扱いをいたします。

馬淵委員 同僚議員の時間を大分使ってしまいましたが、この問題については、引き続き当予算委員会でしっかりと議論をさせていただきたいと思います。

 以上で終わります。

逢沢委員長 これにて馬淵君の質疑は終了いたしました。

 次に、松本剛明君。

松本(剛)委員 質問を通告させていただいていますが、ちょっとその前に、冬柴大臣に一つお聞きをしたいと思います。

 大臣、これは御存じでしたか。(資料を示す)いつお聞きになりましたか。

冬柴国務大臣 最終報告はこの秋にいただく、そういうことであるというふうに聞いております。

松本(剛)委員 ということは、役所の方で将来交通需要推計に関する検討業務ということで依頼をし、その結果というのは大臣のところに上がっていなかったという理解でよろしいんですね。

冬柴国務大臣 大事なことではありますけれども、事務方に答弁をさせてほしいと思います。一々細かいことを私に、何日にどういうものが出たかというのは、これは膨大な仕事でございまして、それは、そういうところに委託をして、秋に最終報告が出るということは聞いています。しかし、その途中経過がどういうふうに出たかどうか、そういうことはわかりません。

松本(剛)委員 大臣御自身は、一部かもしれませんけれども、こういう調査が出たという結果の報告は、では、今の段階では、この予算委員会のこの時点までは受けていなかったということでよろしいですね。

冬柴国務大臣 それはそのとおりでございます。

松本(剛)委員 馬淵議員の方からもお聞きをさせていただきましたが、今、政府の方は、言うなればこれから十年間、岡田委員からも申し上げましたが、国民一人当たり五十万の請求書を既に国民に出しておられる。その請求書のもとになるデータというものはできるだけ新しい方がいいことは当たり前だということは、先ほど総理もおっしゃいました。

 私から見ても、この時点で、計画を立てなければいけない時点で、こういう形で検討を指示された、だれかまともな感覚の方がおられた。でも、結果が出てきて、大臣まで上がらずに、先ほど馬淵議員からもお示しをしたように、それまでの推計とは明らかに違う数値が出てきて、なおかつ、さらに詳細な検討が必要だということまで指摘をされているというデータが出てきた。にもかかわらず、そのことに全く関係なく、これから十年の、いわば一人五十万円の請求書を国民に出しているということで本当にいいんでしょうか。

 この秋に正確な数値が出るのであれば、暫定税率はもともとこの三月三十一日をもって終わるはずだったんですから、秋まで待って、その数字をもとに何が必要で、どのぐらい必要でというのをきちっと積み上げていただいて、もう一度国民に請求書を出し直すのが筋じゃないでしょうか。

冬柴国務大臣 起案をするときに最新のデータを使わなきゃならないということは、だれもが考えることでございます。

 しかしながら、それに基づいて、一・〇、ぎりぎりのものをつくるということを言っているわけではなしに、そこに、見ていただいたらわかりますけれども、一・二以上のものということでございますから、若干のそういう問題があっても、それについては、それに十分対応はできるわけでございます。

 しかしながら、中途の資料を用いて、十九年の三月ですか、そこから十二月に向けて全部をつくり直すということは、かえってそれの方が混乱するんじゃないでしょうか。きっちりした推計というものに基づいて、センサスじゃなしに、推計に基づいてやるわけでありますから、十四年十一月現在の最終の、最新のものを使ったわけでございます。

松本(剛)委員 ここまでの議論を聞かせていただいても、大臣も、きちっとお役所がグリップできているのかどうか。大変失礼な申し上げようをしていることは承知で申しますが、これだけ大事な、しかも、今までと傾向が変わっているのではないかということが明らかに指摘をされている報告が、ここまで御存じないまま大臣はこの間ずっと中期計画の説明をさせられていたわけですよ。

 そして、今のお話の中でも、大臣御自身も、これまでこの委員会でも、中期計画は通学路だと、いろいろおっしゃったけれども、きょうは高速道路の話になってしまった。この交通量というのは、中期計画の中でも大きなウエートを占めている渋滞対策にしても、交通量が一割変われば渋滞箇所というのも全然変わってくるわけですよね。根本的にいろいろなものが変わってくる。

 そして、暫定税率が切れることは、もう何年も前からことしになっていたはずなんですよ。それを、交通量調査をして、わざわざ暫定税率を、今の与党のスケジュールでいえば、決めた後の秋に新しいデータを全部出しましょうと。そういうやり方で国民の皆さんが本当に納得すると思われますか。

 大臣の御答弁、そして総理にも御所見を伺いたいと思います。

冬柴国務大臣 中期計画は、あくまで目標をきちっと定めているわけでございまして、具体的にそれを進めるということについては、毎年の予算の査定もあります。そういうことを前提に、その目標としていいかどうか、そういう問題を査定したのがそれです。そのときの最新のデータがそれでありまして、それがすべてではありません。

 今言われましたけれども、国民の広いニーズは、先ほど言いましたように、十六の項目、渋滞対策とか通学路とか、そういうものは非常に大きなウエートを占めています。そして、そこで、我々がBバイCを示したものは、いいですか、その部分については交通量はふえているんですよ。五%ふえています。そういうことを加味していただきたいと思います。一・二という、〇・二を、アローアンスを置いたということも含んで考えていただきたいと思います。

松本(剛)委員 通学路の話をされましたが、国民のニーズは大きいとおっしゃいましたけれども、中期計画の中で、金額ベースで通学路の占める割合は限られています。やりくりをすれば暫定税率なしでもできるかもしれない。限られた税金を使うということは、そういうことでなければいけないはずなんです。

 少し視点を変えて、大臣にもう一つお聞きをします。もう一度、この検討業務、この報告がきょうまで上がってこなかった、大臣が直接ごらんになる機会がなかった、こういう役所の中の統治のあり方でいいと思われますか。

冬柴国務大臣 それはもちろん何もかも私が知ることが好ましいことですけれども、最終報告でないもの、そういうものを逐一私が知らなければならないかどうか。それは、時間は限りがありますし、これ以外の仕事はたくさんあります。そういう意味で、私は、それは道路局が悪いとは思いません。しかしながら、ファイナルのものが出てきたときにはそれをきちっと使うということでありますから、御了解いただきたいと思います。

松本(剛)委員 大臣、一番上におられる方が、予定どおり進んでいるということの報告は割愛をされていても問題はないと思います。しかし、これは今までの流れとはどうやら違うらしいという結論と言ってもいい報告が上がってきているわけですよ。これが大臣のところに上がらずに、そのまま、今までの流れのままの計画書で、なおかつ、国民に対して一人五十万円の請求書につながるという計画をそのまま通すということでは、これはとても政治主導と言えないということになります。

 ぜひ、大臣、これが上がってこなかった点は、何でそういうことになったのか、省内できちっとお調べになるべきだと思いますが、そういうお気持ちはありませんか。

冬柴国務大臣 当然それは調べます。しかしながら、ファイナルでないということは事実でございます。そこはお認めいただきたいと思います。

松本(剛)委員 五十九兆円の内容なんですよ。ファイナルでない、ファイナルでない、そして、あと半年たてば出てくるのに、わざわざ五年も六年も前の数字を使う。しかも、五年、六年前の数字と秋に出てきそうなファイナル、最新の調査とはどうもずれがある可能性が高いという報告書が一億円かけて出てきているわけですよ。その状況の中で、国民に対してこの請求書のままでいいと本当に、大臣、政治家としてお考えなのかどうか。

 役所の中で調べるとおっしゃいました。ぜひお調べをいただいて、この委員会に御報告をいただきたい。委員長にもお願い申し上げておきたいと思います。

 まずそれをお願いした上で、大臣としてそれでいいのか、そして、総理、こういう形でこんな大事なものがきちっと政治家のところにどうやら上がってきていないのではないかと思われる中で、引き続き政府として国民にこの請求をお出しになるというので一向に問題ないんだという御見解なのかどうか、承りたいと思います。

福田内閣総理大臣 今、委員がちょっとお触れになった、こういう変化のとき、こういうふうにおっしゃった。私も同感です。人口が減少するということはどういう影響があるかということは、我々政治家として、そして大事なことを決めていく立場として十分考えていかなければいけないと思いますよ。

 そのことは配慮しているということを申し上げた上で申し上げますけれども、そういう意味では、今までの走行キロの上昇、それからこの数年の……(発言する者あり)減少。減少になっていないグラフなんですよね。これはほとんど横ばいに近くなっているんですね。随分変化がありますよ。

 だから、そういう変化を国土交通省だってやはり理解した上で、そういうものを計画には織り込んでいるんだろうというふうに思います。ですから、それを後どういうふうに織り込んでいくかということは、これはいろいろな裁量もあります、判断があります、見通しもある。もちろん、慎重にやらなければいけないということはあります。ですから、何も根拠もなしに今までやってきたんじゃないということは、国土交通省の説明でおわかりだと思います。

 そしてまた、もうじき、今年中というふうに言われていますけれども、センサスも出るということであります。ですから、そういうセンサスも踏まえて今後のことを考えていくというのは、これは妥当な考え方だというふうに思います。

松本(剛)委員 今、総理は最新のものを織り込んでいるでしょうとおっしゃいましたけれども、国交省は中期計画でこれを織り込んでいるという答弁は、我々は聞いたことがありません。十四年の、これを織り込む前の古いデータで基本的につくっている。

 では、これを織り込んでいるんですか。

冬柴国務大臣 一・二というのは、そういうことじゃないですか。アローアンスですよ。(発言する者あり)ですから、一・〇ですよ、一・〇。だから、中期計画は、BバイC一・二以上であるということは明確に書いてありますよ。(発言する者あり)

逢沢委員長 速記をとめておいてください。

    〔速記中止〕

逢沢委員長 速記を起こしてください。

 冬柴国交大臣。

冬柴国務大臣 そこに出されているのは、委託調査の中間報告なのでございます。したがいまして、そういうものを織り込んで国土交通省として考えて、そして一・二という高いハードルを掲げているわけでございますから、それは、今後十月にならなければ、さっきからるる申し上げますけれども、交通センサスが出た後、それを分析し、処理するのに三年かかるわけでございます。

 したがいまして、その中間報告がそれでございますから、中間報告の結果も踏まえて、そして国土交通省としてBバイC一・二というものを設定しているわけでございますから、そういうものも含まれているというふうに私は思います。

松本(剛)委員 大臣、これと同じことを、五年前というんでしょうか、前回もやっていますよね。やっているんですよ。そのまま、それに基づいて動いているんですよ。今回は、これが終わって、なぜかこれが出てこなくて、前のでやっているんですよ。

 大臣、その状況をそもそも把握できていないんじゃないですか。

宮田政府参考人 調査の時期でございますが、十七年の調査をやってございます。その前は、六年前に、十一年に調査をやっております。

 十七年にセンサスを移しましたのは、国勢調査の年次が一年ずれておりましたので、それからもう一つは、国土交通省のいろいろな調査がその年度に固まっておりましたので、全体の統計データを最もとりやすい平成十七年度に実査を移したというのが実態でございます。

松本(剛)委員 いよいよ大臣がお答えできなくなったということが非常に残念であります。これだけ大事な国民に対する請求が、結局、局長以下のところで決まっているのではないかと言わざるを得ないと思うんですね。

 今、いつの時期に合わせるかとかいろいろありましたが、出口からもう一度申し上げたいと思います。

 今回、政府は、十年間一人五十万円の請求書をいわば国民に送られたんですよ。そのときのデータを当然国民が理解できるものにするべきなんであって、今までどおり秋に出るからといって、内容は、見積もりは後からです、請求書は出します、お金ももうその時点から取ります、こんなことが国民に対して通るわけないじゃないですか。大臣、本当にそれでいいんですか。

冬柴国務大臣 松本委員は、国民一人当たりとすぐに言われるんですけれども、我々は、ドライバーの方にお願いしているんです。その方に税負担をお願いしているわけであって、国民全部、お年寄りの方とか子供さん一人当たり五十万というようなことは言っておりません。これが一つ。

 それから、それに対して、税を負担していただくからには、それに対する裏づけ、見返り、この受益というものを明らかにしなきゃならないじゃないですか。それを平成十九年の暮れまでに出しますと約束しているわけで、その作業は膨大です。したがいまして、そのときの最終の、権威ある、だれが見ても納得できる資料、それをもってこの中期計画というものを起案しているわけでありまして、私は、ドライバーの方はそれで納得していただけると思います。

 しかしながら、それがオールマイティーじゃなしに、そこで一・二以上が出たからそれをつくるというのではなしに、今後つくっていく場合には、個々具体的に、最新の、すなわち、ことしの秋にでも出るでしょう、そういうものを、将来推計をもとにして、そしてそれは財務省の評価も受けて、いわゆる国幹会議の議も経て初めてつくっていくわけでございます。

 したがいまして、それは一つの段階における、そのときの最新の資料を用いてやっているということでありますから、それは御理解いただきたいと思います。

松本(剛)委員 大臣、本当にこれでいいんですか。

 中期計画が今回の暫定税率十年延長の見積書だという位置づけだという理解でよろしいですよね。そして、この中期計画が最新のデータに基づくべきだと総理も大臣もおっしゃっているけれども、最新のデータ、役所はもっといろいろなものを把握しているのに、ファイナルじゃないからという理由をもって、大臣にはこの存在すら、恐らく大臣は、この予算委員会直近になってお知りになったのではないかと思う。

 本当にこんなことで、税を決めるのは国会の、政治の大事な役割ですよ。この根っことなる部分を、これだけ重要なことを、方向が違っているということを大臣のところに報告がきちっと上がっていない。全部を把握しろなんて言っていないんです。これは大事じゃないんですか。最も根幹にかかわるデータの一つですよ、今までの例からしても。大臣。

冬柴国務大臣 これは書いてきていますけれども、あくまで中間報告、私の考えどおりですよ。それはあくまで中間報告。需要推計は、中期計画の一つの参考データ。もろもろの偏差や不確定要素を織り込んでBバイC一・二としている。私、それはずっと言ってきている。これは私に書いてきているけれども、そのとおりでありまして、私の認識もそうでございます。

 したがいまして、中期計画というのは、そのときの最新のデータに基づいて誠心誠意つくっていますよ、見ていただいたらわかりますけれども。しかしそれは、それによって全部つくるとかつくらないとかいうことでないということは、再々申し上げているとおりです。

 そのときには、先ほどの方の出された資料にも書いてありますように、まず、整備に着手するかどうかといったら、調査期間というのが二、三年かかるんですよ。それについても、財務省にお願いするときにはBバイCが要求されるわけです。そして、その結果つくるということになれば、今度は本格的なBバイCをやって、それと変わるかもわかりません。でも、その段階においては最新のデータでつくったものでありますから、それ以上にこれをつくりかえるとか、そういうことはあり得ないことでございます。

松本(剛)委員 十二時を回りましたので午前中はこれで最後にしたいと思いますが、総理も、そして冬柴大臣も、答弁でおっしゃったことは、最新のデータを使って、最新の状況を織り込んでと極めて常識的なことをおっしゃいましたが、個々に伺っていったら、出てくるデータと数字はそうなっていないということを我々はここで指摘させていただいているわけであります。本当にそれでいいんですかということをお聞きさせていただいているということを申し上げて、午前中の私の質問を終わりたいと思います。

逢沢委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時四分開議

逢沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。松本剛明君。

松本(剛)委員 午前中に引き続いての質疑をさせていただきたいと思いますが、ここからは、やはり政治主導の問題として、一つ、クラスター爆弾の問題についてお伺いをしていきたいと思っています。

 国会でも何度か議論になってきておりますが、もう外務大臣、防衛大臣よく御案内のとおり、ことしはこのクラスター爆弾の禁止について非常に大きな動きのある年になるのではないかというふうに思っております。現在の経緯とか進捗とかもお伺いをしていこうと思いましたけれども、時間も限られておりますので。

 ついこの前、いわゆるCCWの専門家の会合が終わって、来週からは、御案内のとおり、今度はオスロ・プロセスの会議がウェリントンで行われるというふうに私どもも承知をしております。これは、クラスター爆弾という非人道的な爆弾の禁止に日本がどういう立場で臨むかという問題があると同時に、広く外交全般の問題としても、NGOも関与をするオスロ・プロセス、対人地雷の問題でも一つ大きな流れができたわけでありまして、こういったところで日本がどういうビヘービアをとるかということが、ひいては広く日本の外交全体の信頼にもかかわる問題になってくるのではないかという認識を持っておりますので、ぜひ、さらに踏み込んだ政治的決断が必要な時期に来ている、こういう認識で私はお聞きをしたいと思っております。

 間もなくオスロ・プロセスのウェリントン会議も始まりますが、日本としてどういう方針で臨むのか、お伺いをしたいと思います。

高村国務大臣 日本の方針は、あくまでCCW、特定通常兵器使用禁止制限条約の枠組みにおいて国際約束をつくろう、こういうことであります。

 それで、中身について言えば、ことし一月に第一回CCW政府専門家会合が開催されて、我が国は、人道面と安全保障面のバランスを考慮しつつ、CCWの枠組みにおいて新たな国際約束を作成すべきことを改めて主張すると同時に、具体的には、信頼性、正確性の低いクラスター弾については一定の移行期間の後に使用を禁止すべきである、そして、その開発、生産、取得または移譲については即時に禁止すべきである、こういう主張を行ったところであります。これは、今までから一歩踏み出したことを言っているわけであります。

 ウェリントン会議については、今どういう対応をするかは検討中でありますが、CCWの枠組みを重視しつつ、さまざまな場におけるクラスター弾に対する国際的な議論に積極的に参加していくというのは大切なことでありまして、我が国が主張しているような結論になるようにウェリントン会議もそれは活用できるかどうか、そういうことを今検討しているところでございます。

松本(剛)委員 総理、よろしいでしょうか。

 環境の会議というのでしょうか、国際的な流れの中で、いろいろな形のプロセスが動いている中で、結局総理も、ダボス会議でも、数量の問題、そして最終的には我が国がどれだけ温暖化ガスを削減するのかといったことについても踏み込んでいかなければ、外交の国際的な流れの中でリーダーシップをとれないという御判断をされたんだというふうに私どもは理解をしております。

 もちろん、内容についてもまだまだ我々はお聞きをしたいことがあるわけですけれども、このクラスター爆弾についても、対人地雷のときもやはり大きな政治的決断があって日本は大きく前進をいたしました。このクラスター爆弾の問題も、もちろん長い海岸線を有する我が国にとって一定の効果のある武器だというお話もいただいております。しかし、世界の大きな流れがことし動いていく中で、いわば外堀を埋められてから動いたということでは、日本の価値というのはなくなってしまう。

 先ほどのCCWの中での高村大臣のお話も伺いましたけれども、私は、世界の流れはもっと速いのではないかということを感じているわけでありまして、ぜひ、今週、一つの大きな判断をしていただく時期ではないかというふうに認識をしておりますので、総理のお考えを承らせていただきたいと思っております。

高村国務大臣 主要な生産国で、あるいは保有国、最も大きなビッグスリーともいうべきアメリカ、中国、ロシアは、このいわゆるオスロ・プロセスに参加していないわけであります。ですから、オスロ・プロセスで一定の結論が出たとしても、その最も大きな生産国、保有国が参加していない中で結論を出しただけでは、それほどの意味があることではなくて、最終的にCCWでどういう国際約束ができるかということが一番大きな課題でありますから、それに貢献するように、日本は日本の主張をきっちり示して今やっているところでございます。

福田内閣総理大臣 現状、我が国の立場というのは今外務大臣から御説明申し上げましたけれども、このクラスター爆弾というのは、人道上の問題、そういう懸念というものもございますので、そういう点も踏まえた上で検討していくべきだというふうに私は思っております。

 そしてまた、一方、安全保障また戦略上の問題ということはあります。しかし、我が国は専守防衛ですから非常に限定的だということは言えますけれども、そういう安全保障上の問題もございますので、その辺の調整を政府部内でこれからしていかなければいけないと思います。なるべく早く結論を出したいと思っております。

松本(剛)委員 今お答えをお持ちでなく、なるべく早く結論をというようなお話だったと思います。

 対人地雷のときも同じでありました。安全保障上ないよりあった方がいいということは、お話としては承っております。しかし、私どもは、安全保障をしっかりしていかなければいけないわけですが、同時に、大変大きな外交力を確保していきながら世界全体の平和に貢献をしていかなければいけない。となれば、どこで私たちは先頭に立っていくのかということになると思います。

 今おっしゃったように、環境の問題においても、やはり大きな排出国をどうやって巻き込むのかということに腐心をされてこられた。バリでも恐らくそうなんだろうと思いますけれども、私どもが質問させていただいたように、世界から見る目というのが少しずつずれてくるということが懸念をされるわけで、ぜひ今週中に結論を出していただくように、一つの結論を出していただいてウェリントン会議に臨んでいただきたいということを御要望申し上げて、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 一点、総理がおいでのときに、日本銀行の独立性についてお伺いをさせていただきたいと思っております。

 新しい日銀法は独立性と透明性が重要ということでありますけれども、この独立性というのは大変重要な要素であるというふうに私どもも認識をしております。財政政策と金融政策、景気か物価か、そして、通貨供給量をどうするのか、インフレの問題、こういったものとの関係から、政府からの独立性というのが私は強く求められているというふうに認識をされますが、そのような認識でよろしいかどうか伺いたいと思います。

額賀国務大臣 これはもう松本委員おっしゃるとおり、金融政策の独立性につきましては、日銀法において、通貨及び金融の調節における自主性は尊重されなければなりません。それは明記されているわけであります。

 と同時に、日銀法は金融政策が政府の経済政策の一環をなすものであるということも踏んまえておりまして、政府の経済政策の基本方針と整合的でなければならないというふうに思っておりまして、常に政府と日銀は一体的な、十分な意思疎通を図っているということも理解していただきたいというふうに思っております。

 金融政策運営における独立性は日銀が市場の信認を得る意味においても極めて重要でございまして、具体的な金融政策の運営については政府はコメントは差し控えております。そういうことからもよくわかっていただけるものと思っております。

松本(剛)委員 総理、これは今、額賀大臣もおっしゃったように、改正日銀法は独立性と透明性を強化するということを一つのポイントにして制定をされたわけですけれども、そして、今大臣もおっしゃったように、政府の役割、また政策決定会合においての関与の仕方についても、かなり細かくいろいろ定義をされています。逆に言えば、政府と日銀の関係において、独立性を担保しながら非常に微妙なバランスの上に成り立っている、きちっと制度がつくられているというふうに考えてもいいというふうに思っております。

 ぜひ総理も、その日銀法の趣旨、独立性、これを重視していただくという、その部分の御決意を伺っておきたいと思います。

福田内閣総理大臣 日銀法でもって、金融政策運営の独立性ということについて、また、通貨及び金融の調節における自主性、これは尊重されなければならないというように明記をされているところでございます。同時に、日銀法は、金融政策が経済政策の一環をなすものであるということを踏まえて、政府の経済政策の基本方針と整合性を持たなければいけないというように、常に政府との連絡は密にして、十分な意思疎通を図るということが求められている、こういうふうに私は理解しておるところでございます。

 いずれにしましても、日銀の金融政策運営における独立性、それからその重要性というのは、日銀が市場の信認を得る、そういう大きな役割を担っておるわけでございますので、その点についても、具体的な金融政策運営について政府の方から一々物を言うということではありませんけれども、先ほど申しましたような考え方というのは十分必要である、そういう立場でもって、しっかりと日銀としての立場を明確にしていかなければいけないと思っております。

松本(剛)委員 この独立性の問題というのは、おっしゃったように、市場の信認の問題に深くかかわってくるというふうに認識をしております。

 政府からの独立といった場合に、額賀大臣、これは主として財政当局を指すという理解でよろしいですね。

額賀国務大臣 これは、松本委員が何を言いたいかということは、いわゆる財金分離とかそういう意味のことですか。

 今、私が説明したように、金融政策については日銀の自主性に基づいて行われなければならない、ただ、経済政策は、これはお互いに不即不離の関係でありますから、連携をとって、国全体あるいは国際社会の中で整合性のとれたものにしなければならないという意味であります。

 一般的によく財金分離とか何か言われておりますけれども、この言葉は、日銀と政府の関係というよりも、金融政策の企画とか検査監督等をしている金融庁と財務省、今の財務省との関係を指して言っているのが通例のことであるというふうに思っております。

松本(剛)委員 金融行政は金融庁がやっておりますけれども、金融政策を主に担っているのは日本銀行だというふうに理解をすべきではないかというふうに思います。

 その場合、中央銀行の独立性という原則論を今お聞きしているわけで、その場合には、やはり政府からの独立といった場合は、各大臣おられますけれども、当然、財政当局を主として指すという理解でよろしいですねということを申し上げたんです。よろしいですか。

額賀国務大臣 財政政策と金融政策というのは、これは、一国の経済を見た場合でも、世界経済を見た場合でも、全くつながりがないわけではない。お互いに、金融政策が重要視されたり、あるいはまた財政政策が重要視されたり、あるいは問題点は、その時々の時代時代によって変わってくるものであります。その点は、お互いに、経済全体を見ながら整合性のとれた政策を実施していくというのが我々の考え方であり、金融政策については、日銀が日本の経済、世界経済をよく見定めた上で適切な金融政策を打ち出してくれるもの、打ち出してきてくれたし、打ち出していくものと期待をしているところであります。

松本(剛)委員 額賀大臣、独立性の話をしているんですけれども、一体となってというのが少し多過ぎるんじゃないですか。

額賀国務大臣 だから、それぞれの、日銀の独立性に基づいて、金融政策は自主性を持って行われてきたし、これからも行われていくというふうに考えていただきたいと思っております。

松本(剛)委員 今お話があったように、そしてまた、これまでも言われているように、政府としては、これまでも、日銀との政策、経済、特に景気を考えれば、一体となりたいというのが基本的にあるからこそ、独立性というのをどの程度担保するのかという制度づくりが大変重要であり、また、その制度が市場の信認にもつながってくる、こういう仕組みになっているんだというふうに理解をしております。財政当局が一番、その意味では、経済政策の根幹を担っているとすれば、財政当局とのかかわりというのも非常に重要であります。

 先ほど申し上げたように、今の日銀法というのも、大変微妙な、その意味では、独立性を担保しながら、政府はここまで関与していいということをいわば政策決定会合への参加の仕方などで定めているわけでありますから、ある意味で、私は、これが微妙なバランスがとれている、そういう内容だとすれば、そのことを是認していくとすれば、くれぐれも人事などでこのバランスが崩れたと市場から見られないようなことをしていただきたいということを私の方からは申し上げるだけ申し上げておきたいと思っております。

 済みません、外務大臣、防衛大臣、もう結構でございます。ありがとうございました。何か答弁ありますか。よろしいですか。では、要望させていただいたということでまいりたいと思います。

 それでは、道路の問題に入りたいと思いますが、まず、経産大臣にお聞きをさせていただいたらよろしいんでしょうか。暫定税率を廃止すると国民生活が混乱をすると言われるのは、石油価格のことを言っておると思うんですが、どういう意味でお使いになっているのかということを御説明いただきたいと思います。

甘利国務大臣 税制改正法案に関しましては、現在、与野党間で年度内に一定の結論を得る旨の合意がなされたと承知しております。

 政府としては、それらの年度内成立がぜひとも必要と考える中でありますから、仮に暫定税率が廃止された場合にという仮定の話であるならば、私から余り言及するのは適当ではないと思いますが、一般論として申し上げますと、ガソリン等の件でお話をすれば、一般論として、税の大幅な変更が行われる際、それは、下がった直後と再度上がる手前には買いが殺到すると思いますし、それから、上がる直後には当然買い控えになると思います。ですから、通常の流通形態が損なわれて、一時的に買いが殺到したり買い控えが大量に起こったりということを指して、石油製品の供給にある種の混乱が生じるという懸念はあると思います。

松本(剛)委員 大臣、混乱が生じることが懸念をされるということであると、税率は今後も一切動かせないということになりはしませんか。

甘利国務大臣 これは、将来にわたって安定的に少しずつ上がるとか少しずつ下がるとか、いつから先はこの分だけはずっと上がらないとか下がらないとかあるいは下がるとかいうことではなくて、一時的な現象として、突然ある相当な額で下がる、あるいは、また近い将来に上がるということが想定をされるといろいろな消費行動が起きるということであります。

松本(剛)委員 今、国会では、与党は暫定税率維持の法案を出されて、私どもは暫定税率というのには一つ区切りをつけるべきではないかというふうに申し上げているんですが、その場合は、私からすれば、維持されるか下がるかだというふうに思いますが、下がって上がる場合というのは、甘利大臣は仮にとおっしゃいましたが、どういう場合を想定されておられるんですか。

甘利国務大臣 与野党で合意がなされているということで、個別論議で仮定を置いて言及はしません。一般論として、そういう場合があればというふうにお答えをさせていただきました。

松本(剛)委員 一方的に政府から、混乱が生ずるということが言われているようでありますが、維持される場合はそのままでありますけれども、では、下がる場合、これを特に混乱とは言わないという理解でよろしいですか。下がって上がる場合だけが混乱だ、こういう理解でよろしいですか。

甘利国務大臣 個別の議論については、与野党間で、衆参両院議長のもとに、一定の結論を得るということが合意されているわけでありますから、それを我々は、政府としては見守るということであります。

 ですから、仮定の話にはお答えできませんがということで申し上げまして、仮に、上がったものが下がり、下がったものがごく短い期間の間に上がるということがあるとするならばということでお答えしました。

松本(剛)委員 甘利大臣ではありませんけれども、政府として、本会議でも、廃止の前後には消費者の購買行動や市場の流通に混乱が生じるなど、国民生活に大きな影響を与えるおそれという言い方をされておられますが、これから、政府としては暫定税率が下がるということが混乱だというふうには言わないということでよろしいですか。

甘利国務大臣 先ほど来申し上げていますが、個別の案件に関して申し上げているわけではありません、答弁しているわけではございませんで、一般論として、そういう事態の場合、こういうことが生じることをもって混乱と言うのではありませんかと申し上げたのであります。

松本(剛)委員 税率を変えるということ、下げるということ、これは政策判断の問題になってくると思います。そして、我が国は市場経済でありますから、そのことを受けて小売はそれぞれ値をつけられるというふうに思っています。

 少なくとも、これまでのさまざまな政府側からの発信を承っていると、混乱をするからやめなければいけない、こういう言い方をされているように受け取られるわけですが、きょうのやりとりをお聞きする限り、そういうことではないということを政府として確認させていただいたということでよろしいでしょうか。

甘利国務大臣 今回のその法案に関して言えば、衆参両院議長のもとの合意を見守るということであります。

松本(剛)委員 軽々に混乱を生じるからといったようなことをおっしゃらないようにということを強く申し上げて、それでは、次の話題に移りたいと思います。

 資料の一をお手元にごらんいただきたいと思うんですが、報道で、今回の暫定税率廃止で経済を押し下げる効果があるというふうな報道がありました。ずっと探しましたけれども、ここの一紙だけのようでありますが、報道では、政府の試算によるとというふうに書いてあります。

 関係をする省庁に私もお聞きをさせていただいたんですが、改めてお伺いをしたいと思います。政府としてこのような試算をされたのでしょうか。大田大臣のところへお聞きすればよろしいですか。

大田国務大臣 内閣府では、このような試算はしておりません。

松本(剛)委員 案件の内容からすれば国土交通省もあるかと思いますが、ないということでよろしゅうございますか。

冬柴国務大臣 それは承知をいたしておりません。

松本(剛)委員 官房長官に、政府の発信の責任者としてお伺いをしてよろしゅうございますか。

 実は、ほかの省庁にもお聞きをいたしましたけれども、私のところであるというところはどこもございませんでした。政府としてはこのような試算はないということを確認させていただいてよろしゅうございますか。

町村国務大臣 政府として試算したことはございません。

 ただ、一般的なことを申し上げれば、固定資本形成、公共事業が一兆円減れば、それは一兆円の効果だと。あと、乗数がどうなるか。例えば同額を減税した場合には、貯蓄に回る部分がありましょう。したがって、短期的には、多分公共事業の方が一兆円減れば大きな影響が出るということが言えるのではないかと思いますが、あと、何年間の時間をとってみると、またいろいろな変化が出てきますから、中長期的にはなかなかそこは難しいところがあろうかと。

 いずれにしても、公式の試算をしたことはございません。

松本(剛)委員 残念ながら、政府としては試算をされたことがないというものが政府試算としてひとり歩きをしているということでありました。ぜひ官房長官、こういったものが流通をすることそのものが大変大きな問題であるというふうに思っています。

 先ほど大臣もおっしゃいました、経済はいろいろな試算の仕方があると思いますから、いろいろな数字があると思いますが、この数字は、私が見る限り、相当偏っているというふうに思っております。

 おっしゃったように、減税と公共投資というのは、かねてから経済学でもさまざま議論のあるところでありますけれども、この場合は、減税、特にガソリン、揮発油税の場合は、運輸等を通じていろいろなところに波及する可能性も想定をされるわけでありますが、プラスの方は、個人消費を、恐らく個人の分から貯蓄を引いたものだろうと思いますが、だけしか織り込まず、道路投資の方は投資額にプラスになるような計算をされているという数字がひとり歩きしています。

 GNPの〇・四といったら非常に大きな数字だというふうに私どもも思っていますので、政府としては、この試算は政府の試算ではないということを確認していただいたということで確認をさせていただきたいと思います。

 それでは、環境大臣にお伺いをさせていただきたいと思いますが、暫定税率廃止でCO2がふえるという試算を国立環境研究所がされたというふうにお聞きをしておりますが、その内訳をお示しいただきたいと思います。

鴨下国務大臣 環境省としては、暫定税率を廃止した場合の環境への影響に関する試算、こういうようなことで数次にわたって試算をしているわけでございますけれども、国立環境研究所においては、二〇〇八年から揮発油税、地方道路税、軽油引取税の暫定税率を廃止した場合に社会全体でのCO2の排出量がどうなるか、こういうようなことを試算したものでございます。

 この試算におきましては、暫定税率を廃止した場合には、京都議定書の第一約束期間の平均で、年間約八百万トンのCO2の排出量が増加する、こういうような結果が示されております。

 また、その内訳につきましては、ガソリン、軽油の使用量増に伴う排出増が五百二十万トン、そして自動車以外の経済活動の活性化による排出増等が二百七十万トン、こういうような試算の結果でございます。

松本(剛)委員 減税と価格変動と公共投資の増というのを全部織り込んで経済モデルを動かしたというふうにお聞きをいたしました。

 暫定税率を廃止すると経済活動は増大するんですよね、この試算によれば。

鴨下国務大臣 先ほど申しましたけれども、これは、CO2の排出量がどう変化するか、こういうようなことを試算させていただきました。その結果として、自動車以外の経済活動の活性化による排出増は二百七十万トンということでございますけれども、経済がトータルでどういうふうになるかというようなことについての試算ということではない、こういうような位置づけでございます。

松本(剛)委員 ですから、ぜひこれも金額をきちっと出していただきたい。

 CO2がふえるんです、ふえるんですと言うときには、経済活動の増加まで見込んで、まあ、今政府のではないというお話でありましたけれども、町村官房長官も、公共投資と減税であれば、一般的に言えばとんとんか、マイナスのこともあると今おっしゃった。こっちの、CO2の話のときは、経済も活性化してCO2もふえるんですと言い、経済の話をするときには必ずしもプラスにならないんですと言い、数字をそのときそのときで使われたら困るんですよ。

 ぜひ、きちっとした試算をしていただくのも一つの方法だと思いますけれども、大田大臣、おやりになる予定はないですか。

大田国務大臣 内閣府で使っておりますモデルは日本全体の経済財政をやっておりますので、国と地方の複雑な移転関係は組み込んでおりますけれども、道路だけを公共投資の中から抽出して区別していることはございません。

 それから、道路特定財源を他の間接税から区別して独立して取り扱っているということもございませんので、内閣府のモデルでその効果を試算することは困難です。

松本(剛)委員 国立環境研究所においても、CO2の排出増を訴えたかったんだろうというふうに思いますけれども、そういう数字をおつくりになるのであれば、全部をきちっとつなげていただかないと、CO2の部分だけが発表されて、実はその内訳の中には経済活動の増は入っているということになると、この暫定税率の議論も、先ほど中期計画の中身も冬柴大臣と議論をさせていただきましたけれども、一つ一つきちっと数字を詰めて冷静な議論をさせていただきたい。

 その意味では、こういう一方的な発信をあちこちからされるということは非常に残念な思いがいたしております。

 この環境の、CO2の問題についても、当然……(発言する者あり)委員外の方はちょっと静かにしていただけませんか。

逢沢委員長 傍聴席の方は発言を慎んでいただきますように、委員長として御依頼を申し上げます。

松本(剛)委員 あわせて、甘利大臣にちょっともう一度お聞きをしたいと思いますが、この環境省の国立環境研究所の試算では、やはり、ガソリンの価格が動けば当然消費が動くと。短期、長期と分けて価格弾力性を出しておられますけれども、しかし、これまで環境税の議論のときは価格と消費は余り関係ないという議論が主流であったように思いますけれども、今の段階では価格と消費は関係があるというのが政府の認識でよろしいですか。

甘利国務大臣 思い起こしますと、環境税の議論のときには、リッター当たり二円とか三円に該当するというお話じゃなかったですか。一円とか二円ですね。そういう一円、二円あるいは三円のレベルで消費に相当な影響をするということは考えにくいんじゃないでしょうか。

 ただ、昨今、何十円という金額で上がっておりますが、直近のデータですと、やはりそれだけのマグニチュードだと消費抑制効果はあるという統計になっています。

松本(剛)委員 では、環境問題に熱心に取り組む政府としては、何十円の環境税も考えていただかなければいけないということにつながってくるのではないかなというふうに思っております。(発言する者あり)委員長にもう一度注意をさせるようなことは慎んでいただけませんか、石原さん。

 それでは、道路についてあと何点かお聞きをさせていただきたいと思っていますが、引き続き何度か質問の機会があると思いますので、一点だけお聞きをさせていただきたいと思います。

 道路の計画を拝見させていただきまして、先日、岡田委員の質問のときも、全体構想の一万四千キロ、それから、当時の道路公団というんでしょうか、一万一千五百二十キロ、それから一般の自動車専用道の二千四百八十キロ、また、一万一千五百二十キロの中の九千三百四十二キロ、こういう数字が出ていたと思うんですが、ずっとこの経緯を、ことしの予算なども拝見をさせていただくと、もう一つ、並行する道路というのがありますね。これはどういう位置づけだという理解でよろしいんでしょうか。

冬柴国務大臣 これは高速自動車国道ではありませんが、国道と並行して、国道が著しく混雑をする中心市街地を通っている場合には、その外側にバイパスをつくる、そういうことでございまして、そういうものを指しております。

松本(剛)委員 冬柴大臣、これは、一万一千五百二十キロと九千三百四十二キロの間のもの、民営化のときには点検対象にならなかったものと並行しているものもありますね、その今の道路というのは。九千三百四十二キロから一万一千五百二十キロの間のネットワークと並行してつくっているものもあるわけですよね。

冬柴国務大臣 もう少しそれは調査します。

 しかし、一万一千五百二十キロ、それから九千三百四十二キロ、九千三百四十二キロのうち、査定をした時点では七千三百四十三キロはもう供用しているんですよね。残り千九百九十九というものについて、今後も道路公団、すなわち新会社でつくっていいのか、有料としてつくっていいのかどうかというのが、あのときの議論であったわけです。

 したがいまして、この今おっしゃる一般国道の部分、特にバイパスが多いわけですけれども、そういうものと今の議論とは違います。次元が違います。

松本(剛)委員 一万一千五百二十キロには含まれていて、九三四二に含まれていない路線がありますね。これと並行している国道というものがあるのではありませんかと申し上げているんです。

冬柴国務大臣 ございます。ごめんなさい。

松本(剛)委員 この事業は着々と進んでいるという理解でよろしいですか。

冬柴国務大臣 着々とと言っていいでしょうか、例えば山陰自動車道というのがございます。それは、鳥取から島根を経由して山口へ行く、その部分については道路をつくるということになっていますけれども、なかなか進んでいないのが事実でございます。しかし、鳥取市内等、大変狭隘になって混雑するところがあります。そういう部分についてつくっております。

 したがいまして、そういうものが着々とと言われるか、そういうものは進んでいるということを申し上げていいと思います。

松本(剛)委員 先日の自民党の谷垣委員の質問のときにも高規格幹線道路網図というのを出されましたが、この中には、今おっしゃったものも高規格幹線道路として入っていますよね。

冬柴国務大臣 今の場合は、そういうふうには入っておりません。将来でき上がった場合にそれがどうなるかは別として、現在は国道のバイパスという位置づけでつくっております。

松本(剛)委員 先日お使いになったこの表の中で、それは入っていないですか。局長でも結構です。

宮田政府参考人 お答え申し上げます。

 点検対象としては入っております。ただ、大臣が答弁申し上げておりますように、渋滞解消でございますとか現道の防災対策、そういった国道が有する課題に緊急的に対応する観点から、一般国道のバイパス、そういうものとして整備をしてございます。

松本(剛)委員 局長、この青いところに入っていませんかとお聞きをしているんです、既に走っている供用部分で。

宮田政府参考人 お答え申し上げます。

 高速自動車国道に並行して一般国道のバイパスとして整備をしている、そういうものがございまして、それを、バイパスを、高速道路ではありませんが、その機能として、二重投資を避ける意味でカウントしているということはございます。

松本(剛)委員 並行する道路は、その部分について、先ほどおっしゃったように都市部であったりバイパスとして必要だからつくったということになるはずですけれども、全部こういう表に落とし込むと、大臣も時々おっしゃいます、細切れだからつながなければいけない、その細切れの核にもなっているところがあるのではないですか。

 このネットワークの中にこういう形でお書きになると、当時の総理と我が党の岡田委員とが、九三四二からその先は白紙ですねと言いながら、その部分に重なる部分の工事は別の名前で実は進んでいるということに結果としてなってしまう。今おっしゃったように、それぞれの地域の必要性でつくってあるのであれば、今度はその道路はつながなければいけない道路ではないはずなので、そこを混同されているのではないでしょうかということを申し上げております。

 ぜひそこを整理していただきたいというふうに思いますが、大臣の御答弁をお聞きして、引き続き質問の機会があると思いますので、私の質問はここまでにしたいと思います。

冬柴国務大臣 御案内のように、一万四千キロにつきましては、一万一千五百二十キロ、これは高速自動車国道として整備するということになっておりますし、その残りについては一般国道自動車専用道路としてつくるということになっております。

 この一一五二〇のうちの九千三百四十二キロにつきましては、そのときの協議によりまして、これを有料道路で全部つくることはできない。要するに、費用、BバイCは成立するけれども、その中で料金を、そんな高い料金をいただくことはできない部分があるのではないか、そのような考えの中から、残りにつきましては、千百七十七キロについては有料道路として使うけれども、しかしながら八百二十二は一般でやるというような仕分けがされたわけです。

 それで、二十兆かかると言っておったものを、道路をつくる部分については、いろいろと構造を変えたりして十兆五千億まで減額をし、そして国道としてつくる部分については、それを三兆円、すなわち二十兆を十三兆五千億まで圧縮したというのがあの改革であったと思います。

 したがって、その外側で、多くの混雑や渋滞やというものが生ずるわけでありまして、それについては国道として整備を進めざるを得ないわけでございまして、それについては混雑している実情に合わせてバイパスという形でつくらせていただいているわけでございまして、決してその議論を超えるものではございません。

 ただ、そこをつくるときに、将来それには予定路線というものがあります。例えば、そこの山陰自動車道もそうです。そこへつくるからには、やはり将来それが高速道路としても能力が発揮できるようにしておいた方がいい、無駄遣いにならないという配慮でしていますけれども、実際、それは国道であることは間違いないわけでありまして、決して有料道路をこれからどんどんつくっていくとかいう、その議論とは関係がありませんので、その点、御理解いただきたいと思います。

松本(剛)委員 また次の機会にお聞きをしたいと思いますが、大臣、九三四二を超える分は白紙だとその時点で議論になっておりました。白紙がなぜ方向転換になったのかというのは私どもも質問させていただいていますが、同時に、白紙だと言われた部分に並行するものが、高速自動車国道に並行する一般国道自動車専用道路ということで、事実上名前を変えて工事が進んでいるということになっているのではないかということを御指摘させていただいて、引き続き具体的にお聞きをさせていただきたいと思います。

 終わります。

逢沢委員長 これにて松本君の質疑は終了いたしました。

 次に、前原誠司君。

前原委員 民主党の前原でございます。

 基本的には総理にお答えをいただきたいと思います。私から各大臣に対して個別にお願いすることがありますので、それ以外は、基本的に総理にお答えをいただきたいというふうに思います。

 前回の質問でも使ったパネルでございますけれども、もう一度、今、日本の置かれている状況というものを確認しておきたいと思います。

 お手元にお配りをしたグラフであります。人口は、現在が一億二千七百万、それが二〇五五年、二〇五〇年と言ってもいいですけれども、九千万人を割り込んで、六十五歳以上の人口は、今の二〇・八%が四〇・五%ということで倍になる、生産年齢人口、十五歳から六十四歳は一五ポイント減っていく、こういう状況にあるわけであります。

 そこで、総理にお聞きをしたいと思います。簡単な質問です。

 大田経済財政担当大臣は所信の中で成長ということをおっしゃっておりましたけれども、今のこの前提条件に立てば、相当努力しなければ日本の成長路線というのは確保できないと私は思います。これからも日本はこういう客観情勢の中でも成長路線を歩むのか、それとも、これはなかなか、ずっと成長し続けるということは大変だ、いつかは天を迎えてGDPも縮小傾向に入るのはやむなしと考えるのか、まず、福田総理としての考え方を聞かせてください。

福田内閣総理大臣 今、表をお示しいただきました。これは二〇五五年ということで、まだ先で、まだちょっと間があるんですね。その間にどういうふうにするかということが問題だと思います。

 これは、傾向線でいえば、こういうふうになってしまうんだろうと思いますよ。そうならないようにすべきなのかどうかということも含めての御質問だというふうに思います。

 私は、人口がどんどん減るというようなことは、日本全体の国力という観点からいうと余り好ましいことではないと思います。だからといって、これをふやさなきゃいかぬというので目標をつくってというわけにもいかないようなことはあります。問題は、そこに住んでいる人がいかに幸せな日々を送れるかということに着目してこれからの経済政策をする必要があるんだろうというふうに思います。

 ただ、そういうことを考えた上でも、やはり人口が余りに急速に減るというのは好ましくないというように思っておりますので、少子化対策というものをもちろんしっかりやらなければいけないし、また同時に、働く意欲のある人には定年制など設けないでしっかりと働いていただく、こういう社会も必要なんだろうし、また、個々の生活がより充実したものであるように、それを目指していろいろな経済政策をやっていかなければいけないと思います。

 そんなふうなことでございまして、これは答えになるかどうかわかりませんけれども、おぼろげながらわかっていただけると思います。

前原委員 私がお伺いしたかった核心は、日本のGDPというのがこれからも拡大し続けるための政策をとり続けるのかどうなのか、あるいは、今おっしゃったように、これはもうこういう客観情勢、もちろん、これをいかにつなぎとめるか、あるいはブレーキを踏むかという努力はしなくてはいけないけれども、しかし、いずれはそういった拡大傾向にも限界が来るというふうにお考えになっているのか、それによって私は全然経済政策が変わってくると思うんですね。

 今私がお伺いしているのは、こういう客観情勢であるけれども、これからも日本の経済というのは、拡大、つまりは成長路線というのを維持し続けるかどうか、その点をお伺いしているわけです。簡単で結構です。

福田内閣総理大臣 GDP、日本の全体の経済力ということで申し上げれば、これは人口が減るということによって小さくなる可能性はあるんですね。ただ、問題は、一人当たりということになりまして、一人当たりの経済力がGDPよりもより大きな成長をするということがあるならば、これからGDPも人口も減るかもしれぬけれども、全体として減るということにはならないかもしれぬ、しかし、当面は減る可能性があるということを考えた方が合理的だというふうに思っております。

前原委員 きょうの議論の前提なので、しつこいようですがお伺いします。

 成長戦略というのは、とにかく、こういう所与の前提でも、経済の拡大を続けるためにいかに努力をするかという前提で今までの安倍政権はあったと思うんですけれども、福田政権はそれは不変なのか、変わったのかということを伺っているわけです。

福田内閣総理大臣 これは、国全体と個々人の問題と、ちょっと分けて考えなければいけないかと思いますね。

 やはり、一人当たりの所得が減るという状況というのは、生活のレベルを落とすということにつながる可能性がありますね。というのは、人口減が激しければ、そういう日本全体のGDPも人口の減少とあわせておっこちてしまう。しかし、それを食いとめるということは必要だと私は思いますよ。少なくとも、一人当たりが減るというようなことは想定しにくい。むしろ、してはいけない。そういう意味では、一人当たりがふえ、かつ、GDPがふえればいいんですよ。ですけれども、そこのところは、先ほど申しましたように、なかなか厳しい状況にあるかもしれないというふうな感じがいたします。

前原委員 若干弱気というか、私はやはり、いかに成長力を高めるかといったところに中核を置かないと、地域の格差の問題とか、あるいは個人の生活のレベル、特に少子高齢化が進んでいくわけですから、医療、年金、介護、こういった社会保障の費用というのは、いかに無駄を削ったとしてもふえていくと思うんですね。そうすると、成長というものを、されど成長と言う方がおられますけれども、いかに確保していくかということが私は大事な基本認識じゃないかというふうに思っております。

 その中で、では、今私が申し上げたことの前提に立つならば、この人口減少、少子高齢化が進む中で成長路線をとり続けようと思った場合に何が必要なのか。これは総理、何が必要だと思われますか。

逢沢委員長 額賀財務大臣、簡潔にお願いします。

額賀国務大臣 前段だけ。

 これは、御承知のとおり、人口が減っているわけでありますから、当然、ほっておけば成長は低くなっていく。我々が今直面している課題、人口減少とか環境問題だとかエネルギー問題だとか、そういうものにきちっと真正面から取り組んで、それを乗り越えて解決策を見つければ日本はフロントランナーですよ。そういうことをきっちりとやっていくことだと思います。

前原委員 その解決策を聞いているんじゃないですか。その中身を聞いているんです。そんなものは、だれだって言えますよ。財務大臣じゃなくたって言えますよ。

 本質の議論に入りたいので、ちょっとはしょります。

 大田大臣だったらこう答えていただくと思いますけれども。つまり、人口は減るわけですよ、ポピュレーションは減る。そうなると、イノベーション、それからグローバリゼーションへの対応、そして、やはり人ですよね、人への投資というものをどのように高めていくか。この三つが不可欠なんだろうというふうに私は思うわけです。

 そこで、私が申し上げたその三つのところで、グローバリゼーションというところできょうは議論していきたいというふうに思っているわけであります。

 私なりにグローバリゼーションということを考えたときに、二つのポイントが必要だと思います。これは大田大臣にお答えをいただきたいと思いますが、やはり日本は資源が乏しい。教育水準は落ちているといっても、やはり資源は人である、技術力であるということを考えたときには、FTAやEPAを推進して自由貿易の中で日本の強いところを目いっぱい生かしていくということ。FTA、EPAの推進が一つ。あとは、これも後で具体的に議論していきたいと思いますけれども、日本としては、いかにこれから外国の資本を受け入れていくかということがこのグローバリゼーションの波に日本がしっかり乗っていくためには必要かと思いますが、この認識、どういうふうに思われますか、大田大臣。

大田国務大臣 先ほど総理は、二〇五五年ということを念頭に置いてGDPが減少するかもしれないということを答弁いたしましたけれども、やはり、少なくともここ十年ぐらいは現在程度の成長率を維持したいということで福田内閣の成長戦略を立てております。

 そのかぎは、今先生がおっしゃいましたように、グローバリゼーション、それからイノベーション、そして人です。グローバリゼーションに関しましては、外の成長エネルギーを国内に持ってくるということは極めて重要なかぎになっております。

 政府では、平成二十二年までに対内直接投資残高を対GDP比で五%程度まで倍増させるという目標を立てております。現在、十八年末にGDP比二・五%だったものが、十九年九月末時点では約三%のところまで順調に伸びてきております。今後も引き続き、投資環境の整備といった包括的なプログラムを実行したいと考えております。

 あわせて、さらにその目標達成を着実なものにするために、対内直接投資を阻害している要因は何であるのか、少し集中的に点検したいと思いまして、先月末に私のもとに有識者会議を設置いたしました。春ごろまでに集中的に点検して取りまとめたいと考えております。

前原委員 外資を日本へどう引きつけてくるかということは後で詳しく議論させてもらいたいと思いますが、総理、去年の十一月に韓国の全国経済人連合会の趙錫来会長という方とお会いをされていると思います。趙錫来、忘れられましたか。全国経済人連合会、日本でいうと経団連みたいなものでしょうか。その会長が、要は、日本に対して、アメリカに先を越されましたねという話をされている。つまり、日韓FTAの話であります。

 李明博政権が二月の二十五日に誕生するわけであります、総理も行かれるという話を聞いておりますけれども。この新しい大統領が誕生する、そしてシャトル外交も復活をさせる、こういう話をされているやに聞いております。

 私は、きょうは安全保障の話は直接にはいたしませんけれども、六者協議の中の核の国というのは、やはり日本、アメリカ、韓国、そして中国ということで、特に韓国との関係改善、連携強化というのは、私は、これは李明博政権で特にやっていかなくてはいけない問題だろうと思います。

 お互い言い分があるにしても、この日韓FTAはしっかりまとめ上げるということが私は日韓関係の強化の大前提のような気がいたしますが、これについて総理の御決意をお聞きをしたいと思います。

福田内閣総理大臣 日韓FTAは数年前に交渉を始めました。しかし、いろいろな事情があったんだと思います。経済的、そしてまた政治的な事情もあったかもしれない。そういうことで、ちょっと立ち消えになってしまったんですね。それで、韓国も政治情勢がこれから変わるわけでありますので、こういう機会にまた日韓でその話を再開したいと思っておるところです。

前原委員 再開してぜひまとめ上げる、そういう決意をいただきたいと思いますが、いかがですか。

福田内閣総理大臣 相手のあることですけれども、努力したいと思います。

前原委員 おっしゃるように、これは相手もありますし、ただ、これはお互い、国家戦略としてFTA、EPAを結んでいくということで、お互いに言い分があると思いますけれども、それを乗り越えていかないと、アメリカと結ぶ、そして韓国はヨーロッパともそういった交渉をやはり行っているわけでございまして、そこはしっかりと政治が意思を持ってまとめ上げるということが必要なんだろうというふうに私は思います。

 そこで、きょうの中心テーマの一つのファンドについて話を移していきたいというふうに思います。

 先ほど大田大臣がおっしゃったことでありますけれども、倍増させていくということでございますね。

 日本を初め他国の対内投資の表をちょっと見ていただきたいと思います。お配りをしているお手元の資料でいえば四枚目であります。左側が一九九〇年、右側が二〇〇六年ということでありますけれども、極めて低いですよね。日本の海外からの対内直接投資残高というのが極めて低い。イギリスと比べると、もう何十倍も違うような状況になっている。これを進めていくということで先ほど大田大臣からお話があったわけであります。

 ただ、昨年の実績で見ますと、株式を中心に日本の資産に投資するヘッジファンドだけで申し上げると、ヘッジファンドからの資金流出、約九千億円の流出がある。これはシンガポールの調査会社、ユーリカヘッジというところが調査をしているところであります。先ほど、実績が上がってきましたよという話はされましたけれども、しかし、昨年をとってみれば、株、ヘッジファンドだけ見れば、資金流出は九千億円。これはまた株価が下がる一つの大きな要因になっているわけであります。

 大田大臣、いわゆる資産が逃げていっている、資金流出の原因は何だと思われますか。

大田国務大臣 今まさに、何か、阻害要因がどういうものがあるのか、制度的な要因であるのか、あるいは運用上の問題であるのか、そこの検討を集中的に始めたところです。

前原委員 では、幾つか私もそれに資するような質問をさせてもらいたいと思いますが、一つは司法判断、それから先ほどお話があった規制、こういったものが日本に存在をするのではないかということであります。

 司法判断について、少し事例を申し上げたいと思います。

 まず大田大臣にお伺いをして、そして鳩山法務大臣にお話を伺いたいというふうに思いますけれども、村上ファンド事件のときの東京地裁の判決であります。判決文の中でこう書かれている。安ければ買うし、高ければ売るのは当たり前との利益至上主義には、慄然とせざるを得ない。

 スティール・パートナーズによるブルドックソースの買収事案、これは東京高裁の判決でありますが、創業以来百年余の歴史の企業が解体される理由はない。

 これは一般論で結構です、大田大臣。私から見ると、安ければ買うし、高ければ売るのは当たり前というのは、利益至上主義には慄然とするんじゃなくて、当たり前のことじゃないですか。当たり前のことだと私は思うんですが、三権分立ですので、これは司法判断ですから、それにコメントを加えてくれということではなくて、こういう言葉についてはどう思われますか、大田大臣。

大田国務大臣 司法の判断ですので、一般論とはいえ、コメントは控えさせていただきます。

前原委員 司法の判断が問題にされるわけですよ。これは大田大臣が一番よく御存じだと思います。これでかなりの外国人投資家というものは、日本というのは極めて閉鎖的、何だ、この司法判決はというふうに思っているわけですよ。私も立法府の人間ですから、司法に対して介入をするつもりはありません。しかし、申し上げましょう。

 要は、これは二〇五〇年の経済大国ということで、先ほど福田総理や大田大臣からは少し寂しい話がありました。十年間は成長だ、だけれどもその後はようわからぬという話がありましたけれども、ゴールドマン・サックスの推計でいうと、二〇五〇年の経済大国は中国。これは、今GDPが二・七兆ドルです。それが十六・四倍になるんですよ。そして、アメリカは、今世界第一位のGDPですけれども、中国に抜かれて、二・七倍、三十五・二兆ドル。そして、第三位がインド。そして、日本とかブラジル、ロシア、あるいはここには書いていませんけれどもメキシコ、こういったところが大体一緒ぐらいになってくるんじゃないかということになるわけですね。ということは、これだけBRICsを中心に経済が飛躍的に伸びていくと、当然ながら外貨準備高あるいは手持ち資金も含めて莫大なものになっていくわけですね。

 もう一つ図を見ていただきたいと思います。オイルマネーによるSWF、つまりは国家ファンドの話であります。

 これも私が申し上げるまでもありませんけれども、アラブ首長国連邦は八千億ドルから一兆ドルぐらいあるんじゃないか。サウジ、ノルウェー、ノルウェーも北海油田、シンガポール、これは三千億ドルずつぐらいあるんじゃないか。クウェートも二千億ドルぐらい。ロシアは一千億。中国も二千億ドル。こういうように、国家ファンドというものが今物すごい勢いで伸びてきているわけですね。一般的には、今、全体のSWF、ソブリン・ウエルス・ファンド、政府系ファンドの資産規模は、推定で二兆五千億ドルぐらいあるんじゃないかと言われているわけです。

 大田大臣、これは、二〇一五年には十二兆ドルに達する見通しなんです、十二兆ドル。オイルマネー、BRICsによる経済発展、もう世界は目まぐるしく変わっていく。その中で、私は、今の日本というのはかなり幕末と相似形なんだろうと思うわけですね。つまりは、これだけ他の国が経済発展をしていってお金を持っている。ソブリン・ウエルス・ファンドなんかが今運用のお金を積み上げていっている状況ですね。ここで閉鎖的になるのか、あるいはオープンになるかによって、磁石のように引きつけられれば相当私は日本の企業は発展することになると思うわけです。

 ですから、大田大臣、石橋をたたいて渡るような答弁ではなくて、別に司法に対して判断を下してくれと言っているわけじゃないんです。私の言った言葉に対してどう思われますかと言っているんです。

 もう一遍言いますよ。安ければ買うし、高ければ売るのは当たり前でしょう。当たり前かどうか、イエスかノーか、それだけでいいですよ。あるいは、創業以来百年余の歴史の企業が解体される理由はない。経営努力を怠れば、創業百年余だって解体されるわけですよ、買収されるわけですよ。それが今の日本の置かれる状況じゃないですか。

 司法判断を求めているんじゃないんですよ。今申し上げたことについて、経済財政担当大臣としてどう思われるかということをお伺いしているわけです。

大田国務大臣 まず、一点だけ。十年間成長して、あとはどうでもいいということは全く申し上げておりません。成長戦略として、この十年間、現在程度の成長を続けるということをまず目標にしているということを申し上げます。

 それから、司法判断とは全く別にしまして、やはり経営努力というものは必要ですし、収益を追求していくということは当然のことであると考えます。

前原委員 鳩山大臣、司法がこういう判断を下している、そしてまた、英訳をされて、世界じゅうの投資家に、日本の司法判断はこうだということが全世界で知れ渡っているわけですね。

 ここは立法府です。だから変えろということではありませんけれども、所管をされる大臣として、裁判官なり司法判決のあり方というか、尊王攘夷じゃないですけれども、開国をしなければいけない状況にあるわけですよ、今、日本は。そういう中にあって、司法判断が鎖国状態のままではないかと私は思うわけですけれども、法務大臣、どう思われますか。

鳩山国務大臣 御指摘の問題は大変難しいことだと思います。

 確かに、外国が日本に投資したくなるような環境であるべきだとは思いますが、アメリカの例を出すまでもなく、日本のさまざまなものを守らなくちゃならぬ、こういう感覚も当然必要なわけでございます。

 例えば、ブルドックの問題、スティール・パートナーズがTOB、テークオーバービッドをしかけた、そのときに、現在の制度で許されるものとして、新株予約権の株主への割り当てをして企業防衛をやった、こういうことだと思うんですね。それを、差しとめ請求をしたスティール・パートナーズに対して、これはたしか地裁、高裁、最高裁と、全部判断したんだと思うんです。結果としては、先ほど先生が指摘されたような判決の文章は、私はびっくりいたしましたけれども、適法性を認定をしているということだろうと思いますから、私が、司法判断がいい悪いというのはもちろん言えないわけで、立法府、そしてこれからどういう道があるかということは、政治家の皆さんで判断をしていかれることだと思っております。

 ただ、余計なことを申し上げますが、私は、安ければ買う、それはよくわかるのですが、梅原猛先生とノーベル賞候補と言われた松井孝典東大教授が対談している本を見ておったら、アメリカにはフロンティアがあった、今やニューフロンティアもなくなった、宇宙にフロンティアを求めるならばいいけれども、金をフロンティアの世界として求めていって、金で金を買う、そのもうけでTOBをしかける、MアンドAだ、こればかりの実体経済を離れた経済になったら人類はおしまいよ。そういう文章も読んだことがありまして、いつも参考にはいたしておりまして、日本に投資したくなるような、そういう環境は新たな立法等が必要であろうと思いますけれども、そんな点も少しお考えください。

前原委員 若干、要らぬ答弁だったなと私は思いますが。

 要は、今からちょっと空港とか電力会社についての議論をさせていただきたいと思うわけでありますけれども、先ほど来申し上げているように、日本を取り巻く環境はすさまじい変化を遂げているということなんですね。

 例えば、昔は、企業買収といえば、アメリカが有名なエクソン・フロリオという条項をつくった。これはユノカルなんかで規制強化したというのがありますけれども、もともとは、やはり経済大国になってきた日本に対する牽制という面が多かった。しかし、今や、日本の企業が、欧米ではなくて、オイルマネーやBRICsといった国々のファンドによる投資をされる、ひょっとしたら買収をされる。

 私が最近読んだ本で一番ショッキングだった題名の本は、「ガスプロムが東電を買収する日」という本が出ているわけです。それがあり得るかどうかということは別にして、しかし、そういうことも想定をしながら物事を考えていかなくてはいけない時期に至っているんだろうと思います。

 話をもとに戻しますが、総理、先ほどのような司法判断、大田大臣、それから鳩山大臣から御答弁がありましたけれども、やはり司法において、グローバリゼーションの中でのいわゆる企業のあり方というものが私はついていってないような気がするんですね。ついていくためには、例えば金融裁判所みたいなものも含めて考えていかないと、これから日本はもっとおくれていくのではないかというふうに思いますけれども、先ほどのやりとりを聞かれてきた感想でも結構ですので、今の私の、金融裁判所というものをつくる、そうしないと日本はまさにお金を引きつける一つの力というものをなくしてしまうのではないか、その点についてどうお考えか、御答弁ください。

福田内閣総理大臣 これは大変難しい議論が国内で起こっていると思います。私も、海外に開かれた国というのであれば、それを受け入れやすい環境を整備しなければいけないということは当然あると思います。それがほかの国並みということなのかどうかは別にしましても、そういう対応の仕方はとっていかなければいけないと思います。

 一方で、お金だけでもって日本の市場が混乱するような、そういうようなことになっては元も子もないということも思いますので、そこのところは、まだ日本全体なれていないんですね。そういうような世界の動向になれていない。やはり早くなれなければいけない。そして、その中で知恵を出していかなければいけないと思います。その知恵の一つが、今おっしゃった金融裁判所という形であるかどうか、これは別にいたしまして、やはり日本はそれを受け入れる、そういう姿勢をしっかりと持たなければいけない、持つべき努力をすべきだと思っております。

前原委員 今、総理がお答えをされたように、これは悩ましい問題です。つまりは、お金を引きつけることによって日本は成長する可能性というものが大きく広がると同時に、何を守るのかというところの線引きというものが私は極めて大事なんだろうと。それが政府・与党の中で、例えば成田空港の民営化ということに大きく議論が分かれていると聞いていますし、閣議決定が先送りをされているということであります。

 ためにする議論で聞くつもりは全くありませんので、自由にお答えをいただきたいというふうに思いますけれども、まず総理、成田国際空港の完全民営化という閣議決定の方針にはお変わりありませんか。

冬柴国務大臣 変わりありません。

前原委員 これは、一九六六年に公団が設立をされて、小泉政権の二〇〇二年の特殊法人改革で、完全民営化に向けて特殊会社にする、こういう閣議決定が行われていて、二〇〇四年に一〇〇%政府出資の特殊会社としているということで、今、国土交通大臣は閣議決定は変わりないということで、総理、これもよろしいわけですね、国土交通大臣のお答えで。いいんですね。はい。

 そこで、今議論になっているのは、ここに渡辺大臣と大田大臣、お二人おられますけれども、閣議決定はまだされていませんので、閣内不一致なんて意地悪な質問をするつもりはありません。つまりは、お金をしっかり受け入れなければいけないということと同時に、守らなきゃいけないものは何かということで、お二人の大臣は、出資規制というものを行うということ、三分の一以下、外資に対して出資規制を行うということに対しての異論を述べておられると思います。

 では、出資規制をしなかった場合に、この成田空港、あるいは、後で質問いたします例えばJパワーのような電力会社、あるいは羽田空港のターミナルビル、こういったところは日本の極めて重要なインフラで、特に空港、滑走路だと、これは有事の際に使わなきゃいけないという話にもなるし、また、ターミナルビルは、単なる土産物を売っているだけではない、入管という、例えばテロリストを水際で防ぐとか、そういう大事なことを担っていかなくてはいけないわけですよね。電力も、自由化だといっても、特にJパワーなどというのは、各電力会社の送電線、それから、水力発電、石炭発電、今、大間の原子力発電所もつくるという話になってきている。

 出資規制をしない場合に、では、どういう形で日本のインフラを守れるか。よく行為規制という言い方がされますけれども、お二人はこの閣議決定に反対されたと伺っておりますが、どういう行為規制だったら今私が申し上げたことは守られますか。あるいは、それ自身は守る必要はないという御意見なら、それでも結構です。渡辺大臣。

渡辺国務大臣 今まさにその点を政府の中で詰めている最中でございます。

前原委員 閣議決定の直前まで行って、渡辺さん、慎重になられるのはわかりますけれども、ただ、もし反対されるのであれば、対案を持っていなければいかぬわけですよ。つまりは、行動規制というものが、では、どういう行動規制だったらそれが守られるかというところがなければ、三分の一の外資規制というのは間違ったメッセージを与えるからだめだということにならないでしょう。

 だから、検討しているところだけれども、御自身の考え方でいいですよ、どういう行為規制というものが、行動規制というものがあり得るのか、御自身の考え方を開陳してください。

渡辺国務大臣 資本規制という手段を使わなければ達成できない目的なのか、まさに目的と手段との関係において、他のとり得る手段はないのか、そういう議論をやっているものと思います。

前原委員 まだ閣議決定されていない、それで、国会の場でこれから行為規制の内容について議論していく、詰めていくわけでしょう。その御自身の考え方をおっしゃったらいいんですよ。

 大田大臣、堂々と言ってください。そんなの、今から考えるんじゃなくて、議論するところが国会でしょう。そのことについてしっかりと、閣議決定に反対されて、今、閣議決定、延長されているんでしょう。どういうようなお考えが、その行為規制、あるのかどうなのか。私は、その出資規制で外資に対して間違ったメッセージを与えないというのは、一つの見識だと思いますよ。そうだったら、それにかわる行為規制というのはどういうものがあるのかということを示されるのは、やはりお務めでしょう。

大田国務大臣 安全保障や危機管理と外国に対してオープンであるということをどう両立させるかというのは、大変重要な課題だと考えております。

 それをどういうやり方でやるのがベストであるのか。有事法制あるいは外為法の対象にするのかということもあるでしょうし、仮に出資の場合にしても、国土交通省が審議会で出しております答申の中には、外資規制のほかに、例えば、一株主当たりの保有比率を制限する方法、あるいは黄金株といったような方法も出されております。そういうものを総合的に今政府の中で検討中であるということでございます。

前原委員 甘利大臣、Jパワーのことについて、同じ文脈の中でお伺いをしたいと思います。

 TCIというイギリスの投資ファンド、ザ・チルドレンズ・インベストメントというところが、一月の十五日に、今九・九%の持ち株比率、これを二〇%まで高めたい、こういうような申請をしていて、普通ならば三十日以内ということでありますけれども、十五日から三十日以内であればもうそろそろ。しかし、新聞報道で見ると、少しじっくりと、それこそ今話のあったようなことで延長していかなくてはいけないということであります。

 甘利大臣に伺いたいのは、私もJパワーさんにいろいろ話を伺いました。そうすると、過去の例で、このTCIというところが、要は、水面下で他の外資系のファンドと連携をして、自分たちが、単独でない、つまり連携の、いわゆる協力関係を持って企業の比率を高めていって、結果的には、例えば、申請するよりも多くの持ち株比率を持つのではないかという懸念がある、こういう話もございました。

 九月に外為法の運用改正がなされましたよね、政省令で。ここでは、そういった協力関係にあるところも含めて、外資のいわゆる出資比率というものを勘案するということになっていると思うんですけれども、大臣、このTCIのJパワーに対する投資の話について言えば、そういったところについては、今の外為法、九月で運用改善したものでクリアをされるのかされないのか。

 例えば、ドイツ証券取引所、オランダのABNアムロ、あるいは香港のリンクリート、こういうところでTCIが行ったさまざまなやり方、他の外資と連携を実は水面下ではしていたということ、こういうことについて今の外為法では排除できるんですか。九月の政省令でいわゆる運用改正されたものについては排除できるんですか。

甘利国務大臣 まず、現状だけ申し上げますと、TCIの方から、一〇%以上の株式取得について、その用意があると。その場合には事前に届け出なければならないことになっておりまして、これは御案内のとおり、OECDの資本移動自由化コードの中で、国の安全と公の秩序という項目の中に電力というのはきちんと位置づけられております。そのOECDルールに従って、今、外為法、最初の三十日間をやっているわけであります。

 引き続き審査をする必要性を判断した時点でさらにということになりますけれども、その判断は、ぎりぎりですから、あしたのしかるべき時刻になろうかと思っております。

前原委員 総理、この問題は、これから成田空港の問題、あるいはTCIにかかわるJパワーの問題を含めて、ここがまさに幕末の、尊王攘夷なのか開国なのかという大きな岐路だと私は思うんですね。

 ただ、チャンスでもあるし、これだけ日本の経済規模より大きな経済大国がたくさん出てきて、その背景でソブリン・ウエルス・ファンドのようなものが生まれてくるということになれば、ウエルカムをすると同時に、いかに守るかという二律背反のことを一緒にやっていかなきゃいけないという、大変難しいかじ取りをこれからやっていかなくてはいけないと私は思います。

 基本的な線は、行為規制をしっかりしいて、あとはオープンだという形にしていくのが大事なポイントだというふうに私は思いますけれども、総理の基本的な考え方を述べていただきたいと思います。

福田内閣総理大臣 今回は空港という、そういう施設なもので安全保障上の問題がある、こういうことなんです。安全保障で、特に外資だということなんですけれども、安全保障といったら何も外資だけじゃないですよね。国内だって安全保障上いろいろ対応しなければいけないことは幾らでもあるんだろうというふうに思いますよ。これから何が起こるかわからないということも含めて考えてそういう配慮もしなければいけないということですから、これは、内外ともに十分将来を見通して考えていくべき問題だというように思っております。

前原委員 今、総理おっしゃったように、外資だけではないと思うんですよ。国内の投資家だって、それは安心かといえば、外資だけ悪者で国内の投資家がすべて善かというとそうではない可能性もあるわけですから、そういう意味では、単なる外資脅威論というものに偏ることなく、しかし安全保障の根幹にかかわるようなものについてはしっかりと、今申し上げたような行為規制というもので網を張って、基本はオープンだというところで私は臨んでいただきたいということをお願いしたいと思います。

 次に、安倍政権のときに掲げたものでうやむやになっているものが三つあるんです。きょうは余り時間がなくなってきましたので、三つ挙げて、そして一つか二つ聞ければいいなという思いを持っておりますが、少し質問をさせていただきたいと思います。

 一つは、オープンスカイ、アジア・ゲートウェイ構想、これがどうなっていくのかということ。これは、きょうはちょっと質問はいたしません。それから二つ目は、日本版NSC。これは安倍政権の肝いりでしたよね、日本版NSC。それから、柳井元駐米大使を座長にしたいわゆる法的懇談会というもの。この三つについて、私は、どちらかといえば、福田総理が政権につかれてから、やめるとも聞いていないし、さりとて積極的にやるとも聞いていないし、何かうやむや、宙に浮いているような気がしてならないわけでありますが、まず石破防衛大臣に伺いたいと思います。

 法的懇談会で議論している四点、ありますね、集団的自衛権、ミサイル防衛とか、あるいはPKO活動なんかをしているときに他国の部隊を守れるかどうかといったあの四点、四類型と言われるもの。皆さん方のお手元に資料としてお配りをしています、最後のページであります。産経新聞社さんの絵も拝借をしておりますけれども、この四類型。

 私は、これからさまざまなまさに危機を想定してこの四類型というのを整理しておくことは極めて大事だというふうに思いますけれども、防衛大臣としてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

石破国務大臣 それは、委員のおっしゃるとおりだと思っております。

 集団的自衛権の行使は自衛の必要最小限度を超えるので我が国は行使できないという立場を我が国としてはとっておりますし、それは現段階において、変えるという方針も全くございません。しかし、それはそれとして、時代の進歩とともにいろいろなことが起こってくるであろう、そのことについてどうなのだという御議論をこの懇談会でしていただいているものというふうに承知をいたしております。そういたしますと、集団的自衛権とはそもそも何だという定義も含めて、時代に合ったような議論をするということは、それはそれで意義のあることだというふうに考えております。

 この四類型についてそれぞれ申し上げるのが委員の御質問の趣旨だとは思っておりませんので、そのような根本的な御議論をしていただいておるものというふうに承知をしております。閣僚としてコメントする立場にはございません。

前原委員 福田総理、この法的懇談会、四類型の議論をされてきたわけですけれども、総理のもとでこれをまとめられるという御意思はありますか。安倍さんがやろうとされていたこと、これをまとめられる御意思はありますか。福田総理。

福田内閣総理大臣 御指摘の安保法制懇ですか、ここでは、いろいろな例示をして、そして結論を予断することなくさまざまな観点から議論している、こういうふうなことのようでございます。これはまだ我々として報告書を受け取っているわけではございません。

 今後の安全保障のあり方というものを考える上の参考になるかなどうかなということで、ただ、集団的自衛権の問題につながりますので、これは憲法論議なのか、こういう事例でもって具体的にやった方がいいのかというところは、結果が出てきてから考えたいと思っております。

前原委員 ということは、福田総理のときに結果をまとめられて、そしてその法的懇談会の結論をもとにどういう対応をとられるかということは、総理御自身が御判断をされるということでよろしいんですか。

福田内閣総理大臣 これは、中身がどうなのかということについて、まだ承知しているわけではありません。ですから、それは、出た段階で判断するしかないと思います。

前原委員 これは宙に浮いていますので、どういう結論を出されるかは別にして、やはり、まとめた上で、そしてその中身を判断される、それはそのとおりだと思います、安倍さんが総理のときとまた違うわけですから。しかし、この結論について、どういう議論を国民的にもしていくかということをやはり明らかにしていただきたい。何か知らぬ間にお蔵入りになっているような、そういうことがないようにお願いをしたいと思います。

 それからもう一つ、これは閣議決定までされました日本版のNSCの設置でありますけれども、私は決してあの法案がベストだとは思っていません。しかし、日本は、やはり各省庁の縦割りというものが非常に強くて、統一的な国家意思をまとめるのはなかなか難しい。怪獣で例えればキングギドラみたいなものですね。頭がたくさんあって、そしてどちらの方向に向いていくかということがなかなかわからない。ちょっと古いかもしれませんが、キングギドラというたくさん頭のある怪獣でありますけれども。それを、しっかりと頭を一つに統一していく、つまり、横ぐしを刺して国家の統一的な戦略をまとめていくということが私は大事だというふうに思います。

 ですから、あの法案自体はベストだと思いませんけれども、そういう意味で、国の安全保障、これから安全保障というのは防衛だけじゃないですよね、特に、逆に言えば、環境とか、あるいはエネルギー、省エネ、あるいは食料、こういった総合安全保障的なものを各省庁調整しながら国としての方向性をしっかり持つということが私は大事だと思います。

 そういう意味では、この日本版NSCというのは私は第一歩であると思いますけれども、これは閣議決定されたのに、どうされるんですか。これは、また出し直してやるんですか、それとも、自分の内閣ではやらないということなんですか。どちらですか。

福田内閣総理大臣 この問題は、確かに必要だといえば必要な部分があるかもしれません。ただ、おっしゃったように、指揮命令系統とか、また、それなりの大きな組織を持たないと完璧には動かないというような事情もありますから、それは欠陥もあるんですよ。では、今現在も、安全保障は何もやらないのか、官邸中心でやらないのか。それはそうじゃない。今でもあるんですよ、実際に。そして、安全保障会議がございますけれども、安全保障会議は形式的だという議論もあります。だから、その安全保障会議を形式的でなくするというのも一つの解決方法だと思います。

 今現在、いわゆる安全保障的なことにつきましては、官房長官、外務大臣、防衛大臣というような三大臣が集まりまして適宜協議をするという体制をとっておりまして、また、そういうふうな体制のもとに情報収集とかそういったようなことも準備するとかいうようなこともしているわけでありまして、この問題については、我々は非常に重要な関心を持っております。特に、今おっしゃったような食料の安全保障とか、少し中長期的な問題も含めて考えるような場がやはり必要なんだろうというようには思っております。

前原委員 先ほどもお話ししましたように、いかに官邸主導で、そして省庁の縦割りの弊害を排除しながら統一的な国家的な戦略をまとめていくか。環境、省エネルギー、食料、そして何よりも地域の安全保障、こういった問題、私は大事だと思います。

 そのためには、NSC、先ほど欠陥があると申し上げました。私は、二つ申し上げます。これは御答弁は結構です、また議論させていただきたいと思うので。

 一つは、生意気ながら、これは総理おっしゃったので、よくおわかりをいただいていると思うんですが、情報というものがコインの裏表でなければ、やはり戦略というものを立てることはできません。その情報というものが、また、これ、縦割りになって、お互いの役所が共有できない、あるいは上がらない仕組みになっていっている。そこの弊害を、NSCはあわせて情報のところも統合するようなものでなければ、なかなか機能していかないんだろうということが一つ。

 あと、NSCをつくったとしても、今の憲法六十六条だと、閣議決定というのは全閣僚、全員でやらなきゃいけない。そうすると、NSCなるものをつくって、ある一部の大臣で安全保障にかかわる問題について合意をしたといっても、今の憲法六十六条の解釈だともう一遍やり直さなきゃいけないということになって、NSCというものは屋上屋を重ねるようなものになる可能性があります。

 ですから、そういったマイナス点もありますので、大事だという総理のお言葉については私はぜひそれは信じたいと思いますし、とにかくこれから莫大な借金、そして少子高齢化、人口減少社会、環境問題、食料、エネルギー、こういった、まさに国家百年の計を考えながら考え出すような仕組みについては、官邸の中に統一した国家戦略がまとめられるような、情報の裏づけを持ってできるようなことで、ぜひ頑張っていただきたいということを最後に申し上げまして、私の質問を終わります。

逢沢委員長 これにて前原君の質疑は終了いたしました。

 次に、川内博史君。

川内委員 川内でございます。

 総理、初めて総理とは議論をさせていただきます。よろしくお願いを申し上げます。

 各閣僚の皆様方もどうぞよろしくお願いを申し上げます。

 道路のことについて聞かせていただくわけでございますけれども、まずその前に、総理、総理大臣としてではなく個人として、今十万円お小遣いがあるとすれば、総理は何に使おうかなというふうにお考えになられますか、持っているとすれば。(福田内閣総理大臣「きょうじゅうにですか」と呼ぶ)いや、きょうじゅうじゃなくてもいいです。何に使おうか。

福田内閣総理大臣 いろいろありますけれども、しばらく本屋に行っていないので、本でもたくさん買い込むんじゃないかと思います。

川内委員 いろいろあります、しばらく本屋に行っていないけれども、本でも買いたいと。何にでも使えますよと言われると、そういう自分の自由な使い方というものができる。

 ところが、これ、かばんしか買えない十万円ですよと言われると、かばんしか買えないということになってしまうし、そうすると、十万円のかばん、本当は一万円で足りるんだけれども十万円のかばんというような形で、そういうお金の使い方になっていく。

 私、昭和二十八年当時の、田中角栄先生が当時のガソリン税に関して、特定財源にしていくべきであるということを議員立法されたときの議事録なども全部読ませていただきましたけれども、当時の大蔵省は、予算の編成権を縛られるので余り好ましいことではないと考えていると、当時の大蔵大臣などは答弁をそれに対してしていらっしゃいます。

 しかし、その当時は、インドよりも日本の道路は整備率が低い、道路の総延長十六万キロのうち、通行不能区間が一万六千キロ、さらには舗装率が十何%だった。ところが、現在、百二十万キロの道路総延長、これは農道とかを含まない、百二十万キロが道路の総延長である。さらに、舗装率も一〇〇%に近いという状況にまでなっている。平成十五年の社会資本整備審議会の答申では、我が国の道路整備の水準は一定の水準に達しているというふうに書かれているわけでございます。

 そういう中で、今国会の議論が行われるということで、私は、この道路特定財源が道路にしか使えないということになると、何とかして使わなきゃいけないということになるから、無駄遣いにつながっているのではないかと。そしてまた、そのことの一端が、この委員会でもあるいは参議院でも次々に明らかにされてきていると思うんです。

 まず、公益法人あるいは特殊会社、あるいは人事院に承認を受けて再就職をしている民間会社に対して国土交通省出身者が何人ぐらい再就職をしているのかということについて、長妻議員の質問にもあったわけですが、再度、正確な数字を、資料をおまとめいただいているようですから、国土交通大臣の方から、道路整備特別会計で支出をされている関係法人に国土交通省出身者が何人天下りをしている、再就職をしているという正確な数字を教えていただきたいと思います。

冬柴国務大臣 国土交通省出身者が民間企業にどれぐらい再就職しているかについては、離職後二年以内に人事院の承認等を得て再就職した者については把握することが可能でありますが、それ以外のケースも含めて、民間企業に現在どれぐらい在籍しているかについては、国土交通省としては把握することができません。

 なお、調査するとしても、あくまでも任意の調査として相手企業の協力により聞き取りを行うしか方法はなく、調査の対象企業が道路特会から支出している企業といった膨大なものになると、事実上困難であります。

 それでも、事務的に相当の能力が必要だということであっても、川内委員の関心がどの部分にあるのか、そういうことを聞かせていただいて、焦点を絞ってやるということの方法は残されていると思います。

 道路特会の契約件数というのは、平成十八年四月から十二月までに二万件あります。小規模契約二百五十万円以下、あるいは委託は百万円以下というものを除きましても、それだけあります。それから、有資格業者数ですか、これをやりますと、工事請負業者数は五万社、コンサルタント業務は二万社というふうに非常に広がってしまうんですね。ですから、どういうところをやれとおっしゃるのであれば、その方向で協力を求めたいと思います。

川内委員 大臣、私がこのようなことを申し上げるのは大変恐縮ですが、私の質問をよく聞いて御答弁をいただきたいのですが、私は、次にその質問をするつもりでいたんです。

 今の質問は、国土交通省が私に提出をしていただいた道路整備特別会計による支出というこの表で、関係公益法人、特殊法人、特殊会社並びに人事院の承認を受けて天下りをしている民間会社の資料があります。これに、再就職をしている国土交通省出身者はすべて数字が書き込んであるので、正確に人数を教えていただけますかということをお聞きしたのでございます。人数だけ答えてください。

冬柴国務大臣 千三百四十三名です。

川内委員 千三百四十三名の方々が再就職をしていると。これは、今申し上げたように、道路整備特別会計から支出をされている公益法人、特殊会社、特殊法人とか、さらには人事院の承認を得て再就職をしている人々の数。

 ところが、それ以外にも、道路整備特別会計で、今、国土交通大臣が勘違いをされて答弁をされたとおり、膨大な支出があると。どこにだれが行っているのなんかは、それはわからないということでございましたけれども、しかし、我が党が平成十八年に予備的調査を要求して、中央省庁の補助金等交付状況、事業発注状況及び国家公務員の再就職状況に関する予備的調査をしていただきたいということで、衆議院調査局に調査をお願いしました。そうすると、道路関係事業に係る支出先の団体における、これは国家公務員再就職者数ということになりますが、ある程度把握ができております。

 この予備的調査によれば、道路整備特別会計から支出を受けているであろう、これは公共工事を請け負っている民間企業まで全部含めて、あくまでも自己申告ですけれども、その会社が、うちには国土交通省出身者あるいは国家公務員がいますよと、何人ぐらいいるというふうにお答えになっていらっしゃるかということを衆議院調査局からお答えいただきたいと思います。

清土調査局長 国土交通省から道路関係経費を支出している団体に在職する国家公務員再就職者数についての御質問ですが、平成十八年十一月、松本剛明議員外四十五名からの要請に基づき、決算行政監視委員会からの調査命令を受けて、平成十八年度上半期の中央省庁の補助金等交付状況、事業発注状況及び国家公務員の再就職状況を調査したものがあります。

 この予備的調査は、道路関係事業に係る支出先の団体における国家公務員再就職者数を直接把握するものではありませんが、本予備的調査から国土交通省分を取り出し、道路局など道路に直接関係あると思われる部署の金銭交付先における国家公務員再就職者数を集計しますと、常勤、非常勤を含めて千七百七十人となります。

 また、このほかに、地方整備局の河川国道事務所など、道路と河川等、他の業務を一緒に行っていて分けにくい部署もありますので、そのうち道路と直接関係ないと思われる金銭交付先の再就職者数を除いて集計しますと、常勤、非常勤を含めて三百三十五人と、三百三十五人が別にあります。

 なお、ここでの国家公務員再就職者数は、国土交通省だけでなく、他省庁からの再就職者数も含んだ人数であります。

 以上です。(川内委員「合計を言ってください」と呼ぶ)

 二千百五名ということです。

川内委員 総理、公益法人とかあるいは人事院の承認を受けて再就職をしているというところでは、国土交通省出身者が千三百四十三人、対象をもっと広げると、国家公務員ということになりますけれども、国家公務員出身者が、道路特別会計から支出されている先ですけれども、二千百五人、最低二千百五人、これより多分ふえると思います。というような、道路特別会計でこれだけの公務員の再就職者が御飯を食べているということになるわけでございまして、それは、適正な業務をしているのであればまだしも、特に公益法人などは随意契約で御飯を食べているわけですね。

 では、その随意契約が果たしてどのような随意契約であるのかということです。

 国土交通大臣にお尋ねいたしますが、道路の中期計画でBバイCを行った百七十八路線について、これを委託した先は何という公益法人でしょうか。

冬柴国務大臣 財団法人国土技術研究センターでございます。

川内委員 常勤の役員は何名で、そのうち国土交通省出身者が何名でしょうか。

冬柴国務大臣 常勤役員は四人でありますが、そのうちの国土交通省からの再就職者は四人であります。

川内委員 この財団法人国土技術研究センターは民間企業からも職員が派遣をされてきていると思いますが、民間企業から派遣されてきている人数と、さらに、どういう企業から派遣されてきているかということについて教えてください。

冬柴国務大臣 二十八社から各一名、二十八名と聞いております。

 どういう会社か、これにつきましては、建設業が二十四社、製鉄業が二社、セメント業が一社、情報関連業が一社であります。

川内委員 建設業からの方々がたくさんそこにいらっしゃって、そこでBバイCを計算する。要するに、仕事につながる計算ですから、それが果たしてどのくらい公正中立なものと言えるのかどうか、私はしっかり議論をしなければならないだろうというふうに思います。

 これは質問レクで申し上げていないので、国土交通大臣あるいは財務大臣、総理大臣にもぜひお聞きをいただきたいんですが、昨年から、公益法人に対する随意契約はなるべく競争性のあるものにしていこうということにして、そういう契約に変わるように仕組みとしてはなっています。

 この国土技術研究センターに発注されたBバイCの計算も、形上は公募なんですよ。公募した結果、国土技術研究センターしか応募者がいなかったから、ここと随意契約しましたということになっています。

 しかし、ではどういう形で公募をしたんですかと聞いて、書類をいただきました。多分、大臣は御存じないと思います。それに何と書いてあるかというと、財団法人国土技術研究センターを契約相手とする契約手続を行う予定としていますがと、もう手続の文書に国土技術研究センターと契約を行う予定だと書いちゃっているんですよ。それで、たくさんの人から公募したんですと言われても、それはちょっと違うんじゃないですかと国民的には思いますよ。

 法的な手続としては、いや、適正な手続を踏んだんだというふうにおっしゃるかもしれませんが、私は、こういう細かいところを、やはりしっかりと閣僚の皆さんに事務方を御指導いただくような仕組みあるいは方法というものが必要だというふうに思いますが、総理、御所見を。

冬柴国務大臣 同じようなお尋ねが前回でしたか前原議員からもありまして、大変私も、競争、競争としながら現実には競争相手がないような条件がついている、この御指摘は大変な指摘だというふうに思いまして、総理も同じようなお考えを持たれたようでございます。

 私は、改めるようにということで、早速これはだめだと。非常に難しいようです。非常に難しいようですけれども、ただ外形だけ整えたことはだめだということで、本当に真剣に、すぐに国土交通省の幹部を集めまして、重く受けとめました。

 私は、これを、今後、そのような指摘がなされないように、難しいけれどもこの条件は整えて、きちっと国民の理解が得られるようにしなきゃならないというふうに思っていますし、少なくとも四月からは、そういうことのないように企画競争の形でやるということについて、やりたいと思います。その条件は、できるだけ多くの人が応募できるような形にしたいと思っております。

川内委員 国民の皆さんは、道路特定財源あるいは道路整備特別会計が無駄遣いをされているのではないか、大変な無駄遣いにつながっているのではないかという大きな疑問を持っているわけで、私たちは、それをただしていかなければならないし、そのために今議論をさせていただいているわけでございます。

 もちろん、私は、国土交通省道路局が今まで一生懸命道路整備をされてきたことに関して敬意を表していますし、感謝もいたしております。私、道路局長が九州地方整備局長でいらっしゃったころ、くわ入れ式を一緒にやったこともあります。そういう意味では大変に感謝しています。しかし、今この議論をするに当たって、道路特定財源が道路整備に全額充当されることが果たして国民の幸せに本当につながることなのかどうかということは厳密に議論をしなければならない、そういう気持ちで今議論に臨んでおります。

 そこで、ちょっと基本的なことをお尋ねいたしますが、昨年十一月に国土交通省が発表した道路の中期計画、これは政府の案なんでしょうか、国土交通省の案なんでしょうか。

冬柴国務大臣 国土交通省が発表した素案でございます。

川内委員 そうしますと、平成十八年十二月に内閣が閣議決定をした文書にあります、平成十九年内に道路整備の具体的な姿を示した中期的な計画を作成するという政府の案というのは、平成十九年内のいつ作成され、それはどのような形で私たちにお示しをいただいているのでございましょうか。

冬柴国務大臣 これは、整備量、量を明らかにしているわけでございまして、我々は当初この中期計画に盛ったものは六十五兆というふうに書きましたけれども、政府及び与党が検討されまして、五十九兆を超えないものにすべきであるということで言われました。これに基づきまして、我々としましても、この目標は変えずにその金額で整備が、これは毎年毎年判断されるわけですけれども、進めるようにしようということで、閣議決定は、今の五十九兆、事業量が五十九兆であるという閣議決定をしていただくということになると思います。

 それは、やはり、予算の審議、成立とあわせて、時期は考えなきゃいけませんけれども、しかし、五十九兆というのは超えないということは政府・与党の申し合わせで示されておりますので、それで閣議決定をしていただきたいというふうに思っています。

川内委員 ここで余り議論をしても時間が経過をするわけですが、平成十八年の十二月の閣議決定文書には、「十九年中に、今後の具体的な道路整備の姿を示した中期的な計画を作成する。」と書いてございます。道路整備の具体的な姿を政府は十九年中にお示しをされなければならなかったわけでございますが、今の国土交通大臣の御答弁は、五十九兆円を上回らないという政府・与党合意が具体的な道路整備の姿であるという御答弁であったかと思いますが、それでよろしいでしょうか。

冬柴国務大臣 そう御理解いただいて結構だと思います。

 過去におきましても、五年ごとにやっておりますが、例えば平成十五年に、平成十九年までの五カ年間に総額三十八兆円ということで閣議決定をされております。その内容につきましては、資料として細かいものはありますけれども、それは道路の中期計画と同じような細かいものでございます。

川内委員 具体の文言の解釈については政府にゆだねられているわけですから、私がいろいろ申し上げる筋ではないですが、具体的な道路整備の姿というのが五十九兆円という金額だけを指しているのだというのは、ちょっとあんまりだなというふうに思いますし、これも、暫定、暫定といいながら今後十年間暫定を続ければ半世紀近くになるというのと似たような感じで、もうちょっと国民の皆さんに政府としての誠実な対応を望みたいというふうに思うわけでございます。

 では、国土交通省の案である道路の中期計画、昨年十一月に発表された道路の中期計画の一万四千キロ、高規格幹線道路の一万四千キロメートルは、国土交通省としては、今後整備したいな、あるいは整備するぞと思っているキロ数なのかということを教えていただけますか。

冬柴国務大臣 一万四千キロについては、御案内のとおり、昭和六十二年六月に閣議決定をされました。そして、そのうちの一万一千五百二十キロにつきましては、当時、国土開発幹線自動車道建設法の別表を改正いたしまして、その道路の名前及び起終点も明らかにして、そう整備するということが決定されました。そして同じ日に、当時の建設大臣ですか、天野建設大臣だったと思いますが、この残りの部分を一般国道自動車専用道路として整備するということで決定をされまして、これについても起終点及び道路の名前も明らかになっておりますから、国民の期待は相当高いわけです。川内議員の地元もそのとおりだと思っております。

川内委員 制度論を私たちは議論しているわけで、ここでよく大臣は、質問する議員の地元のことをおっしゃられて、優しい言葉で恫喝をされていらっしゃるように思うんですが、今この場は全体の制度を議論する場であって、個別の路線を議論する場ではないんですよ。個別の路線を議論する場ではない。要するに、何を整備する、整備しないということを議論する場ではなく、それは今後のことなんですね。

 では、例えば午前中から話題になっている費用対効果分析について、これから二十分余りお聞かせをいただきたいと思いますが、まず、平成十九年度に供用を開始された高規格幹線道路十四路線のうち、供用開始された後の現在交通量が推計交通量を上回っている路線は何路線ございますでしょうか。

冬柴国務大臣 通告いただいていますか。(川内委員「はい、言ったよ、聞くよと」と呼ぶ)ちょっと待ってください。(発言する者あり)

逢沢委員長 では、速記をストップしてください。

    〔速記中止〕

逢沢委員長 速記を起こしてください。

 冬柴国交大臣。

冬柴国務大臣 十四路線のうち十二路線が下回っているということでございます。

川内委員 現在交通量が推計交通量を十二路線で下回っている。要するに、計画どおりだというのは十四分の二だということですね。

 さらにその上でお尋ねをいたしますが、個別路線の費用便益分析というものを事業開始前に国土交通省はおやりになられることになっていますが、今お手元に配付させていただいております資料をごらんいただきますと、まず、一般国道四十二号那智勝浦道路という道路について、事業評価の表がついております。これは大変立派な道路です。私が言うのは、この道路は無駄だということを言うんじゃないんです。丸で囲んでありますね、千二百四十億円かけて、便益が、丸で囲んであります、千八百五十億円、走行時間短縮便益が千六百七十七億円、こういう道路です。

 では、国土交通大臣、お答えをいただきたいと思いますが、千二百四十億円の事業費をかけて、この事業は費用便益分析でいうと平均走行時間は何分短縮をされるのでしょうか。

冬柴国務大臣 例えば那智勝浦道路につきましては、新たな道路を通過する車両、これは一日当たり一万五千台でございまして、その走行時間が二十六分短縮され、そしてまた、現道、前の通り、道を通過する車両は一日当たり五千五百台でございまして、混雑の解消により十分短縮されます。これらの時間価値、例えば乗用車の場合は、これは六十二円八十六銭、一分間という数式がありますが、掛け合わせますと、これはまた四十年間という便益を算出いたしますと、一千六百億円となります。

 短くなる時間を聞かれましたが、それは、上を走る人は二十六分、それから下を行く人は混雑があれして十分短縮される、こういうことです。

川内委員 いやいや、国土交通省は、ちょっと、ごまかしちゃだめですよ。この事業評価のバックデータとしてついている費用便益分析の条件というのを私は聞いているんですよ。この費用便益分析の条件に、平均走行時間ということで、何分短縮されますと。この何分短縮されるんですかということを聞いているんですよ。

冬柴国務大臣 これはまた、私謝ってばかりですが、川内さんに言われて、この資料というのは、実際は紀伊半島全体のものをやっているわけです。ですから、これは、ここが違うんです。AマイナスBは〇・二というのを丸が振ってありますが、そうじゃなしに、ここの道路についてのBバイCは二十本とか十本とか、その周辺の道路だけなんです。これは、四百本以上の道路をとったものがこれなんです。

 したがいまして、これを新たに出したということ自体が誤りだったと私は思っています。

川内委員 いや、誤りってどういうことですか。この政府の資料、これは私が勝手につくったんじゃないんですよ。それを、これは誤りだというのであれば、これ以上議論できないですよ。これをもとに議論していくんじゃないんですか。これは、国土交通省が発表しているデータですよ。それを、いや、私はそれは違うと思いますとここに来て言われても、私も困りますよ。

冬柴国務大臣 これは、紀伊半島全体の道路を、ほとんど影響を受けていないものまで入れたものでございますが、この〇・二の後にずっと指数が並ぶんですね、これは。それを〇・二で切ったものを出したということが誤解になる。

 例えば、先ほど言われたものは、〇・〇というものまで出していますね。(川内委員「十津川道路ですか」と呼ぶ)十津川道路。〇・〇であったら、どうにもなりません。これは、先ほど言いましたように、十津川の場合は、道路を三区分いたしまして、その部分がどうなるかということはとっているわけです。しかしながら、近畿地方の場合は紀伊半島全部の道路についてどういう影響があるかというような数式があるためにこんなものを出したわけですけれども、でも、ずっと極限までゼロということはないわけで、その後ずっとやればそれは数字が出てくるんですが、そういう資料をお渡ししたということのおわびを私は申し上げたわけです。

 ですから、するのであれば、十津川のそれについてやったそのBバイCのものを出すべきであるのに、そんなものを渡したらこれは混乱するじゃないかということをおわび申し上げたわけでございます。

川内委員 国土交通大臣が、この委員会でもあるいは参議院でも、BバイC評価を厳正にやるのだというふうにおっしゃっていらっしゃるわけでございます、厳密にやるのだと。ところが今は、いや、こんな資料を国土交通省が出したことが間違いなのだということをおっしゃられる。それでは、BバイC評価というのは、今までやられたものはすべてやり直していただかないといけないわけですよ。正しい資料に基づいて私たちは議論をしなければならないと思います。

 では、那智勝浦道路の本当のBバイCは幾つなのかということを教えていただかないと、議論が進みませんけれども。

逢沢委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

逢沢委員長 速記を起こしてください。

 冬柴国交大臣。

冬柴国務大臣 どうも失礼しました。

 川内議員から提出をいただきましたこの資料の一の……(川内委員「これは国土交通省の資料ですからね」と呼ぶ)ですから、提出いただいたその中に書かれておりますが、BバイCは、事業全体、一・五と書かれてあります。それが正解です。

 それで、これを出す根拠を言われるわけですが、これについては、説明をすれば物すごく長くなるかもわかりませんけれども、きっちりしてあります。当たり前の話です。厳格にとってあります。それに基づいた最後の結論が、今の一・五というものが出てきているということでございます。

 したがって、それを出すには物すごい計算がされているわけでありまして、これをお渡しすべきであるのに、先ほど示されたものをお出ししたために、それは誤解が生まれるのも当然だと私は思いますので、それでおわびを申し上げたわけであります。

川内委員 いや、私が申し上げているのは、そういうことではないんですよ。だって、国土交通省さんがインターネットで、ウエブサイト上で公開をしている事業評価の分析条件というところにこの数字が載っているわけです。

 では、資料の六ページを見ていただくと、これは那智勝浦道路のすぐそばにある十津川道路という地域高規格道路です。これは、先ほど大臣がおっしゃられた整備なしと整備ありでは、A引くBがすべてゼロです。すべてゼロになっています。

 ここで注目すべきは、一番の総トリップ数というところなんです。那智勝浦道路は、三百三十四万四千六百六十三トリップ、広くとっているわけですね。十津川道路は、さらに広くとっているんです、一千六百五十五万四千四百八十七トリップ。めちゃめちゃ広範囲にトリップをとって計算をしている。トリップというのは、要するに車で一回移動するということです。

 要するに、費用対効果の分析が非常に恣意的なんです。厳格なBバイCをするというふうにおっしゃっていらっしゃるけれども、BバイCそのものには、どのような範囲でその条件をとるか、総トリップをとるかということは一切決められていませんから、厳格ではないんですよ。要するに、費用対効果が一以上になるように計算をすればいいんですよ。トリップ数をとればいいんです。そういうことだと思いますよ。

 いや、それは、道路局長、ここは国土交通大臣にきちんと答えていただきますから。国土交通行政に責任を持っていますからね。

逢沢委員長 宮田道路局長。(発言する者あり)指名をしました、私が。委員長が指名をいたしました。

 答弁してください。議事をスムーズに進めるために答弁を許します。(発言する者あり)

 冬柴国交大臣。

冬柴国務大臣 便益を算出する場合には、道路網の範囲につきましては、対象とする道路整備のプロジェクトの有無により、交通量に相当の差があるような道路をすべて含むように道路網を設定することを規定しておるわけでございます。これは、個別事業ごとに道路整備による影響の範囲が異なるためでございます。

 したがいまして、非常に、その地勢によって、物すごく広くとっているところとそうでないところがあるようでございますが、このような十津川のような道路を見る場合には、直接影響を受けているのはせいぜい十本ぐらいの道路だろうと私は思うんですね。

 したがって、それをとったものをお届けすべきであったというふうに思うわけでございますが、近畿地方を全部とったって、十津川へ行ったことがない人はたくさんおりますから、そういう意味で、申しわけありませんということを申し上げているわけです。

川内委員 大臣、それでは議論が前に進まないですよね。これは国土交通省がつくられた資料ですから、それでは今大臣が御答弁されたような形で費用対効果を分析し直していただかないといけないわけです。分析し直していただかないといけない。(発言する者あり)

逢沢委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

逢沢委員長 速記を起こしてください。

 冬柴国交大臣。

冬柴国務大臣 その数字が出てきた根拠になる係数とか、それは早急にお出しをいたします。

川内委員 費用対効果は事業採択に当たって一を超えなければならないというのは、これはもう大臣も御方針として掲げられているわけでございます。そういう意味では、このBバイCがどうなっているのかということについて今のような御答弁では、私は、はいそうですかと言うわけにはいかないわけですね。国土交通省が今まで、いや、これは一を超えています、だから事業を推進するんですと言っていたものが、前提が崩れた。

 私は、何もこの道路が無駄だと言っているんじゃないですよ。国土交通省道路局は技術屋さんの集まりで、技術屋さんは最新の技術でいいものをつくりたいと思うんですよ、お金があれば。しかし、千二百四十億かけてつくらずとも、半分の値段で普通の道路をつくって、残りの半分は地域で自由に使ってください、千二百四十億のうち、六百億で那智勝浦道路を、バイパスを整備しました、六百億は地域で、どうぞ地域再生、地方分権のために使ってくださいというふうなことをしていくのが実は政府の責任なのではないですかということを申し上げたいがために、このBバイCのことをまず取り上げているわけです。

 そこに至る結論にはちょっとまだいろいろ段階があるので、きょうはもう時間がないのでお聞きできないわけでございますが、このBバイCについてもう一つだけ聞かせてください。

 もう一つ不思議なことがあります、財務大臣。このBバイCは、十ページを見ていただくと、乗用車は、時間価値原単位で、単位が円パー分・台となっています。要するに、時間短縮効果が一台一分につき六十二円八十六銭ですよと、これは書いてあります、丸囲みしてあります。

 じゃ、一時間にすると乗用車一台は幾らになりますか、国土交通大臣。

冬柴国務大臣 六十倍した数値でございます。六十二円八十六銭に六十倍をしたそれ、そういうことでございます。

川内委員 三千八百円余りでよろしいでしょうか。

冬柴国務大臣 三千七百七十一円六十銭ですか、そんなものだと思います。

川内委員 乗用車一台につき一時間三千七百七十一円六十銭の時間短縮効果があるということでBバイCを見積もると。

 一時間、これは時給ですわな、時給、時間が一時間短縮されると三千七百円もうかりますよと言っているわけですから。時給三千七百円の人が日本全国に果たして何人いるんですか。余りにもこの時間原単位も過大に見積もっているのではないかというふうに思いますが、国土交通大臣、どうですか。

冬柴国務大臣 ドライバーの機会費用、それから同乗者の機会費用、それから業務あるいは非業務、あるいは平均乗車人数等々を勘案してこの金額は出されているものでございまして、それを一律にやっているわけでございます。一人ではありません。

 したがって、その人が業務、非業務、それから同乗者、その人の業務、非業務というものも全部入っているわけでございます。

川内委員 乗用車一台につき何人乗っていると仮定しているんですか。

冬柴国務大臣 推定では、同乗者の機会……(川内委員「何人乗っているんですか」と呼ぶ)平均乗車人数は、一台にあって、業務の場合は一・二二、それから非業務の場合は一・三二ということでございます。

川内委員 どちらにせよ、総理、時給三千円なんですよね、時給三千円。時給三千円で計算して、時間短縮便益が一千億ありますとか五百億ありますとかいう計算をしているわけでございまして、私は、今、与党の先生方が、いや、そんなことは別にこんなところでやるなということを……(発言する者あり)いや、遠藤先生がおっしゃいましたよ、おっしゃっていますけれども、こういう細かいところを注意しておかないから、道路局の人たちは、何とかしてお金を使わなきゃいけないからということで無駄遣いをしてしまっているという現状があるんじゃないでしょうかという問題提起をしているんですよ。

 最後に、きょうはちょっと中途半端になってしまって大変残念なんですけれども、費用対効果には大変な問題がある。その費用対効果の問題については、至急、国土交通大臣は資料をお出しいただけるということでしたから、その資料をお出しいただいた上でまた議論をさせていただきたいというふうに思いますし、一人三千円、大臣、私の言うことを聞いてください、三千円の時給について、その根拠も計算式をお示しいただきたいというふうに思います。

 さらに、大田大臣にお願いでございますけれども、二兆六千億の暫定税率分ですね、二兆六千億分の道路投資を続けることと二兆六千億の減税、ガソリン、軽油、自動車重量税の減税をすることと、どちらが経済効果が現下の経済社会情勢においてあるのか。私は、経済財政担当大臣として、国民経済計算を担当されるわけですから、推計をして、本委員会にお示しをいただきたいというふうに思いますが、大臣の御所見をいただきたいと思います。

大田国務大臣 内閣府の経済財政モデルは国民経済計算を使ってやっておりますが、日本全体の経済財政の動向を見るためのものですので、国と地方の移転はかなり複雑なものを組み込んでおりますが、道路の投資が、公共投資全体の中で道路だけを抽出して投資を計算することはしておりませんし、道路特定財源を他の間接税や譲与税と区別して取り扱いをするということはしておりませんので、道路だけを取り出して効果を計算することは困難です。

川内委員 今、この大きな議論になっているときに、大田大臣は困難ですということですが、総理、どうでしょう。私は、国民の皆さんに、二兆六千億、道路投資を続けた場合と減税する場合と、経済効果は、それはどっちになるかわかりませんよ、政府の試算ではこういうふうになりますということで、選択肢をお示しいただきたいというふうに思いますが、総理の御所見をいただきたいというふうに思います。だめですか、総理。いや、やらないならやらないでいいんですよ、そんな必要はない、もう政府として案は決定しているんだというのであれば、それはそれでいいんですよ。

福田内閣総理大臣 この議論の大もとは、予算案に埋もれた特定財源ということで議論されているわけでありまして、政府としてはぜひいろいろな観点から、いろいろ説明がありました、そういうようなことを勘案した上で、これが一番いいというような形でお示ししているわけでございますので、その考え方を変えるということは当面ないわけでございます。

川内委員 今、総理はいろいろなことを勘案してというふうにおっしゃられたわけですが、先ほどの松本委員の質疑の中では、政府として試算をしたという事実はないということが政府の見解として示されているわけですから、少なくとも道路投資を続けることと、暫定税率分ですよ、三兆円の本則は残るわけですが、暫定税率分の投資を続けることと減税することと、どちらが国民経済に効果が高いのかということについて、政府としては現状では試算していないということですから、いろいろ考えたということは、総理の御答弁としてはちょっと違うんじゃないかなというふうに思います。

 もう時間が来ていますから、でも、一言。

冬柴国務大臣 その点につきましては、百三十九ページに詳しく書いていますが、マクロ計量経済モデルを使いまして、一兆円の投資がどのように影響するかということが書いてあります。

 したがいまして、これを減税してここがなくなると、いいですか、ここがなくなるということは、これが失われるということでございます。私どもはそこに説明してありますので、よろしくお願いいたします。

川内委員 政府として、先ほどから申し上げているように、BバイCがきちんとされていないとかいろいろなことがあるわけですから、もうちょっと誠実にいろいろなことをお答えいただかないと、政府は私たちにとっても政府なんですよ。野党にとっても私たちの政府なんですから、私たちの質問に対して誠実に答える御努力をしていただかなければ、総理は話し合いしましょう、しましょうと言っているわけですから、その話し合いを前に進めていくためにもぜひ誠実な御対応をお願いして、質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

逢沢委員長 これにて川内君の質疑は終了いたしました。

 次に、穀田恵二君。

穀田委員 冒頭、米兵による少女暴行事件について総理にお聞きします。

 二月十日夜、沖縄県北谷町で米海兵隊員が女子中学生をだまして連れ回したあげく暴行するという極めて卑劣な事件が発生しました。被害者とその家族の心情は察するに余りある。私は心から怒りを覚え、抗議するものであります。

 総理は先ほどの答弁で、再発防止を言いました。考えてみますと、九五年の少女暴行事件以降も沖縄ではこのような事件が多発しています。そして本土でも、横須賀での強盗殺人事件、これは二〇〇六年でした。さらには広島での女性集団暴行事件、これは二〇〇七年、相次いでいます。

 政府が再発防止を繰り返し言ってきたにもかかわらず、米軍人によるこのような重大な犯罪が繰り返されていることについて、総理はどのように認識されているのか、明らかにしていただきたい。

福田内閣総理大臣 先ほども答弁いたしましたけれども、過去においても何度かあったわけですね。また今回もこういうふうなことが起こってしまったということでございまして、まことに残念であり、かつ、このことは厳しく米国にも、再発が絶対ないような要請を今回改めて強くしなければいけない、そういう思いを持っております。

 いずれにしましても、本件は、既に沖縄県警が容疑者の身柄を拘束しておりますので、日本側において、我が国の法と証拠に基づいて適切に対処してまいりたいと思います。

穀田委員 政府は、米軍犯罪が起きるたびに再発防止を言うわけですよね。でも、事件は一向になくなっていないんですよ。米軍犯罪の大もとにある日米協定の抜本的見直しと、さらには米軍基地の縮小に踏み切らなければ、やはり問題の根本的な解決はできない、このことを改めて私は強調しておきたいと思います。

 そこで、道路特定財源の問題について、私どもは二十数年来、一般財源化すべきであるということを主張してきましたが、私は、この点について質問したいと思います。

 午前中にも議論がありました。道路を含む九本の公共事業分野別の計画を一本化した社会資本整備重点計画が五年前にできました。ダムや港湾や空港、河川、これらの事業は、総額を先に決めてどれだけやったかという事業の額で見ていくようなやり方は無駄をつくるからやめようということになりました。ところが、道路以外の公共事業すべて、総額を明示するやり方をやめたのに、道路だけは三十八兆円という総額方式が残りました。私たちは、こういう先に総額があるというやり方はやめるべきだと指摘しましたけれども、政府は強行しました。今回もまた、道路だけ五十九兆円という総額を決めようとしています。

 なぜ道路だけが総額先にありきなのか、なぜ道路だけは特別扱いし、特定財源にこだわるのか。福田総理から、国民にわかるように説明をしていただきたい。

福田内閣総理大臣 今回、政府が予算案を提出しております。現下の厳しい財政事情のもとで、道路の受益者である自動車ユーザーに負担をお願いすることによって真に必要な道路整備を行うと同時に、これを上回る額は、納税者の理解が得られる範囲で一般財源として活用するということにいたしております。他方で、福祉や教育ということについては、直接受益する方のみに負担を求めるというのではなくて、国民に広く負担をお願いしているところでございます。

 現実的にも、道路財源があるからといって道路予算が優遇されているというわけではございませんで、道路予算は、十九年度、これは補正後でありますけれども、ピーク時の十年度の四割減となっております。また、その一方で、社会保障関係費は同じ期間で四割増となっております。

穀田委員 いつも、この問題を質問すると、大体、受益と負担の関係それから納税者の理解、こうくるんですね。でも、納税者の理解、自動車ユーザーの理解と言うけれども、これは何度も議論していて、自動車ガソリン税というのは当然小売価格にも反映しているわけですよ。今や、受益者、負担者は、直接的な自動車ユーザーだけではなく国民全体と考えるべきだということは、この間の政府の議論でもはっきりしているんですね。

 安倍内閣は、〇六年十一月三十日の経済財政諮問会議で、いわゆる道路特定財源の問題について議論し、安倍総理は、特定財源として自動的に道路ができていく仕組み自体は変えていかなければならないと述べ、一般財源化を進めていくということを基本方針として確認しているんです。このときに、納税者も議論になっていて、八千万人が免許を持ち、八〇%もの世帯が車を持っており、納税者とはやはり国民全体だ、国民一般が払っている税金を国民一般のために使う視点を確立することは非常に重要だという議論が既にあったわけです。それを前提にして、自動的に道路ができる仕組みを変える、一般財源化を進めていくと当時議論したわけです。

 当時の閣僚は、先ほど帰りましたけれども大田さんや、冬柴さんも当時の安倍内閣の閣僚だったんです。それ自身は乗り越えた議論ではなかったのですか。はっきりしてください。

冬柴国務大臣 小泉政権のときにやられた議論というのは、九千三百四十二キロの、その当時、整備命令、施行命令が出ていた部分について、このまま進めていいかどうか、そういう議論が始まっているわけでございまして、その外側にある部分について、それを、白紙という言葉はありますが、やめるとか、あるいは法律を改正するとか、あるいは閣議決定を取り消すとか、そういうアクションはありません。予定路線として国民は期待しておられるわけです。したがって、これをやめるという、そういうことではなかったと思いますよ。

 ですから、今おっしゃるのは、その部分については、そのまま有料道路としてつくり続けていいのかどうかということが非常に大きな問題であったと私は理解しています。

穀田委員 質問を全然理解しておられないというか、次の話はそれへ行くつもりですけれども、今言っているのは、もともと一般財源化するというのは基本方針ではなかったのかと。しかも、納税者という問題についていえば、理解とおっしゃられたけれども、そのことは既にクリアしている議論だということを言っているんですよ。そういう話をしているときに、何か次の、要するに九千三百四十二キロの話をしたって、それはだめですよ。

 そこで、では、逆に聞きましょう。先日、民主党の岡田議員が、小泉元総理が九千三百四十二キロを超える路線については白紙とまで言った路線が、一万四千キロの高規格幹線道路の建設として突如生き返ったと指摘しました。それに対して、総理が発言しているので総理に聞きたいと思うんですが、まともに答えていないんですね。

 一万四千キロが決められたのは、一九八七年の第四次全国総合開発計画、いわゆる四全総。当時はバブル経済の入り口で、後年に、当時建設大臣だった江藤元建設大臣は、右肩上がりが続くと思っていたと言った時期なんですね。それまで七千六百キロの有料道路、高速道路計画を一気に倍にする計画だったんです。それぐらい、とてつもない計画だったんです。

 ですから、総理大臣にもう一度お聞きしたいと思うんです。小泉元総理が白紙だと言った九千三百四十二キロを超える路線が、なぜ中期計画に盛り込まれ、復活したのか。もう一度答弁してください。

    〔委員長退席、遠藤(利)委員長代理着席〕

福田内閣総理大臣 小泉総理は、確かに、九千三百四十二キロを超える区間については白紙である、全部見直す、こういうふうに言っておられます。その際、同時に、民営化した場合は、民営化の会社が採算をとれるか、地域の人が必要になったら地域の人が負担できるのか、そういうことを考えながら、真に必要な道路はつくらなければならない、必要な道路は税金をかけてでもつくらなければならない地域があると思いますよという答弁もされているんですね。

 ですから、小泉総理が、そういう意味で九千三百四十二キロ、これを絶対的だというように考えているということでなかったと思っております。

穀田委員 それは違いますよ。

 小泉さんは、当時、今総理も言われたように、一万四千キロ白紙ですと言ったんです。そして、整備計画区間の九千三百四十二キロの中で、全部つくるんじゃないと明確に答弁したんですよ。そういうことだったんですよ。しかも、それを有料か有料じゃないかのような話にして次の話をしては、それはだめなんですね。今の話でいうと、結局、全部つくろうということになるじゃありませんか、一万四千キロ。

 そこで、皆さんにお渡しした資料を見ていただきたいと思います。

 その一ページ目にありますけれども、「「高速道路」の基幹ネットワーク」、実は、高速道路というのは一万四千キロだけではないんです。その下に地域高規格道路というのがありますが、これは道路の中期計画に盛り込まれています。何もこれは地方の生活道路のことではありません。この道路は、信号なし、そして立体交差、自動車専用道路という高速道路そのものであって、例えば首都高速、阪神高速、京都の高速道路なども含まれます。これも一般に言う高速道路です。この道路は中期計画にどのように位置づけられているか、この路線の計画はどうなっているか、明らかにしていただきたい。

宮田政府参考人 お答えを申し上げます。

 二点御質問があったかと思いますが、地域高規格、中期計画の素案でどういうふうに盛り込まれているかという点につきましては、第一番目の国際競争力の強化、あるいは地域の自立、活性化というところに基幹ネットワークとして盛り込まれております。

 二番目の御質問は、地域高規格道路はどういう計画であるかということでございますが、地域高規格道路は、平成十年のいわゆる五全総、二十一世紀の国土のグランドデザインに位置づけられておりまして、高規格幹線道路のネットワークを補完し、都市圏の育成や地域相互の交流促進などの機能を持つ道路でございまして、計画路線につきましては、都道府県等が作成する広域道路整備基本計画に基づいて出されました要望を踏まえまして、路線全体の整備計画を進める路線として、百八十路線、六千九百五十キロが計画路線ということで定められております。

穀田委員 今お話ありましたが、一万四千キロメートルとそれ以外の地域高規格道路がつながって初めて高速道路網のネットワークとして機能する、補完することになるということですよね。私が示しました資料にあるように、今答弁もあったように、高速道路の建設計画は一万四千キロ、これを超えてさらに百八十六路線、正確には六千九百五十キロでいいですよね、つくろうというものであります。

 そうすると、当時、九千三百四十二キロメートルの計画だったものを一万四千キロに膨らませ、さらにはこの地域高規格道路計画路線、百八十六路線含めて、六千九百五十を足すと全部で二万一千キロメートルにもなる。これを全部つくるつもりということなんですか。いかがですか。

冬柴国務大臣 これは、まず五十九兆、それを超えないという、十年間の話でございますが、それから毎年毎年財務省の評価がございます。そういうことで、全部つくるというわけではなしに、目標として、今までこのように閣議決定なりあるいは法改正なりして国民に示したものでございます、予定路線は。そういう意味で、そういうものを全く抜きにして考えるわけにいかない。

 地域高規格道路は、例えば、全く穴のあいているところがありますね。京都の宮津から豊岡へ行って、そして鳥取というところは高速道路が全くないですね。そういう意味で、日本海沿岸が、そこがつながれば全部つながるわけですね。そういう補完をする部分もございます、全く着手していませんけれども。また、高知と徳島を結ぶところも大変な道ですよ。しかし、そこは高速道路網には入っていません。また、三陸においてもそうでございます。

 そういうところについては、ここで位置づけられているわけですから、大変な要望が強いわけでございます。

 以上でございます。

穀田委員 地方のせいにしたらあきまへんで。先ほどもお話ありましたけれども、これはどういう計画を議論しているのかという話であって、個別のここを、例えば、先ほどもありましたように、私が京都に住んでいるということで、すぐ京都の例を出すんですね。

 それは地域のせいにしたらだめですよ。それはいろいろな形で要望しているわけだけれども、当然、先ほど私言いましたけれども、もともと、国がつくる高速道路計画を補完し、ネットワークとして機能させるためにやっているだけの話であって、そういうものを何か地域の要望であるかのようにしてやるという言い方は、私は語弊があると。もちろん、当然、要望があることはありますよ。それは縮まった方がええのやから。それだけでは済まぬ問題がある。

 そこで、もう一度資料を見ていただきたい。地域高規格道路でいえば、今明らかになった計画路線、百八十六路線、六千九百五十キロメートル以外に、候補路線というのもある。これはどういうものですか。資料をお示ししていますよね。

冬柴国務大臣 地域高規格道路の候補路線につきましても、都道府県等が作成する広域道路整備基本計画に基づいて出された要望を踏まえて、整備の妥当性、緊急性等を検討を進める路線として百十路線が候補路線となっているわけでございます。

 以上でございます。

穀田委員 今聞いてわかったかと思いますけれども、九千三百四十二キロがあった。それはもともと、七千六百台であったものを大きくしようという話になった。一万四千にした。そしてさらに、今お話ししたように、六千九百五十ある、それ以外にもあるということなんですね。

 そこで、資料の二を見てください。「関西の新たな都市圏をネットワークする環状道路。京奈和自動車道は、その一翼を担います。」という資料ですね。この資料は、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山を結ぶ高速道路のネットワークの地図です。一番内側は大阪湾環状線、真ん中が関西中央環状道路、そして一番外側が関西大環状道路という高速道路の構想であります。

 一番外側の関西大環状道路は、京都、奈良、和歌山を結ぶ京奈和自動車道や第二名神高速などをつなぐ計画で、世界遺産に指定されている奈良の平城京跡の地下を通る計画や、京都市内に高速道路を乗り入れる計画で、多くの市民が反対している計画です。関西大環状道路を基幹ネットワークとして完成させようと思えば、和歌山から淡路島の海に巨大な長大橋をかけないと道路としてつながりません。それが紀伊淡路連絡道路とされているわけです。

 紀伊淡路連絡道路も、地域高規格道路における、先ほど指摘をした候補路線には入っているんでしょう、大臣。

宮田政府参考人 入ってございます。

 候補路線というのは、先ほど申し上げました国土のグランドデザインの中で、七千キロから八千キロ、地域高規格ということを言われておりまして、そこの中の構想レベル、そういう話も含めて候補路線ということでございます。

穀田委員 総理大臣、では、ちょっとそこを聞きますけれども、確かに、一つ一つの路線、今お話しした計画路線とか候補路線といったって、なかなかそれはわからぬでしょう。でも、こんなふうに大きな計画になっているということだけはわかっていただけましたやろ、今の実態が。

 それだけかと。この問題は実はほかにも、東京湾口道路、伊勢湾口道路、豊後伊予海峡道路、関門海峡道路、島原・天草・長島架橋の、いわゆる六つの長大橋道路計画の大型プロジェクトが二十一世紀のグランドデザイン、いわゆる五全総で一九九八年に閣議決定している。地域高規格道路の百十という候補路線にこういうものも全部入っているんでしょう、大臣。

宮田政府参考人 入っております。

穀田委員 大臣、知っておいてくださいよ。だから、今私が言っているのは、この一万四千キロ、六千九百五十、そして候補路線で百十、この中には六長大橋道路も入っているということなんですよ。総理、こういう膨大な高速道路計画、今後もつくり続けるつもりですか。

福田内閣総理大臣 これ、お話を聞いていると夢のある話で、一見よさそうですけれども、しかし、その裏づけがつくのかどうか。それは、これが本当にこういうニーズが生ずるということであるなら、そのときに判断するということはあるかもしれませんけれども、しかし、今の段階でそこまで計画してそれに裏づけをつける、そういう段階ではとてもないと思っております。

穀田委員 そうじゃないんですよ。

 私、きょう、国土形成計画(全国計画)(原案)というのを持ってきました。

 これは、国土交通省がつくって、いわゆる国土総合開発計画、それ自身を改めて、そして名前を変えて国土形成計画法というのをつくりましたよね。その中に、結局、夢のある話だとか、ニーズはないとか、いろいろ言っていましたけれども、これは国土形成計画(全国計画)というんですけれども、その中に、一つは四全総の一万四千キロの計画、二つ目は地域高規格道路、三つ目に、湾口部、海峡等を連絡するプロジェクト、全部を閣議決定しようとしているんですね。

 そんな話が、お金があればという話じゃなくて、あなたのところがこれに基づいて全国計画という形で決定しようとしていることを御存じですか。

冬柴国務大臣 年度内の閣議決定を目指して今準備しているところでありまして、長大橋までつくるとか、そういうような思想は、そこに書かれているかわかりませんけれども、それは、目標とかというのはあるとしても、私どもは、今度、それをやるためには、広域地方計画というのが八つのブロックでつくられるわけです。そこで、地元の御意向等を承りながら、これをそのブロックで、例えば東北地方であれば、六県にプラス新潟を足したその範囲でどう道路整備をするのか、港湾、空港はどうするのか、観光はどうするのか、そういうことを地元でやっていただく、それの指標といいますか、そういうものを指すわけでありまして、具体的にそれがそういうものではないと私は思います。

    〔遠藤(利)委員長代理退席、委員長着席〕

穀田委員 そんないいかげんな話をしたらあきまへんで。これは冬柴臨時議員提出資料なんですよ。この中にそれが入っていると言っているんですよ。入っているか入っていないかわからぬみたいな、入っていないみたいな話をしたらあきまへんで、それは。あなた自身が提出している資料で、これを決めるということをやっているから、私は問題じゃないのかと言っているんですよ。しかも、それは、今ずっとるるお話ししたように、どんな話になっているか。結局のところ、こういうやり方が続く根底に何があるかという問題について言っているわけですよ。

 しかも、これは、先ほど来お話がありましたけれども、では、この問題について、道路、この地域高規格道路、これについてはどこで決めるんですか。路線はどこで決めますか。閣議ですか、どこが決めますか。国幹審ですか。

冬柴国務大臣 一部はもちろん国幹審で決める部分がありますけれども……(穀田委員「地域高規格道路ですよ」と呼ぶ)地域高規格はそうではありません。私が決めます。

穀田委員 先ほど来、見直す、精査する、一つ一つやる、こう言うんだけれども、実際は、先ほど言いましたように、国幹会議でやるんだなどという路線でもないということが明らかになった。つまり、大きな計画を次から次へと出していて、今度、国土形成計画によれば、今お話しした地域高規格道路、長大橋の話、路線、これは国幹会議で決めるのではなくて、国土交通大臣の指定によって決めるということですよね。

冬柴国務大臣 そういう大きいものにつきましては、バランスから見ても国幹会議で諮るというのが当たり前のことだと私は思っておりますので、抜けている部分があれば改正をさせていただきます。

穀田委員 改正はいいけれども、今の仕掛けはそうなっている。ですから、私が言いたいのは、こういうふうな計画が、冬柴大臣が言うような、一つ一つ吟味してとか国幹会議にかけてとかいう仕掛けはない、現実にはないということなんですね。それははっきりしている。ないんですよ。

 したがって、そういう点でいいますと、もう一度かける、それはいいでしょう。だけれども、それは改めて言うまでもなくて、問題は、それほどまでに大きく広げるというあたりをしっかり私は見てとらぬとあかんということを言っているんですね。

 そこで、私は、このやり方が際限なく高速道路をつくり続けるということだ、結局のところ。今お話ししたように、高規格幹線道路建設、そして地域高規格道路の建設、その中にある計画路線、候補路線、こういう形でやっていくというやり方というのは、結局のところ、やはり際限なく道路をつくり続けるのではないか。とまらないということなんですね、結局。高速道路をつくり続けるために、したがって財源が必要になる、そしてそれが道路特定財源だと言わざるを得ない。したがって、財源が入ってくるからこそ際限なく高速道路をつくり続ける、こういう悪循環になっているんですよ。

 だから、こんなやり方を改める、特定財源をやめて一般財源にすることが必要ではないか。これが、安倍前総理の言うところの、特定財源として自動的に道路ができていくという仕組みそのものじゃないか。この点について、総理大臣、いかがですか。

額賀国務大臣 これは、安倍大臣、その前の小泉大臣、また時代の流れからいっても、昭和二十八、九年のころは道路建設というのは優先的でありましたし、そういう意味で特定財源化されていったと思いますけれども、ここまで道路も整備されてくると、財政を硬直化させるという意見もあるし、いろいろな意見の見直しが出てくるのも当然だというふうに思っております。

 その中で、小泉政権、安倍政権と引き継いできまして、福田政権のもとで、揮発油税を改正して、道路整備を上回るお金はきっぱりと道路には使わない、一般財源化をするという法律を出しているわけでございますから、そこはもう明確になっているわけでございます。

 だから、今後、国会の御議論をいただいたり、あるいは国の情勢等々、いろいろなことを考えながら、財源は有効に使わせていただかなければならない、そういう方向で一般財源化の端緒を開いたということでございます。

穀田委員 額賀さんはいつもそうおっしゃるんですけれども、それは、参議院の議論も含め、明らかにまやかしだと思うんですね。

 だって、単年度で余った分を一般財源化できるというものでしかないんですよ。しかし、その分を翌年度の道路整備に充てなければならないという内容の法律でしかないんですよ。そのことはもう既に議論を通じて冬柴大臣も認めたところであって、硬直化などと言っているのを、それを変えるみたいな話をしていますけれども、内実はそれこそ一般財源化とは似ても似つかぬものだということだけは、私ははっきり言っておきたいと思うんです。

 最後に、住民にとって本当に必要な道路の補修だとか整備というのは、本当に今削られているんですね。地方自治体も深刻で、住民の身近で緊急な道路整備の予算が組めず、大変な思いを多くの方々がしておられます。

 政府は、口を開けば、特に冬柴さんは、渋滞解消のためにということで高速道路だ、工場の誘致に高速道路だ、それから果ては、救急病院へ一刻も早く搬送のために高速道路だ、こうきます。高速道路をつくれば何でも解決するような発言をしています。これは間違っていると思うんですね。だって、それだったら、今まで道路をつくったところへ全部工場が来たのか、過疎はなくなったのか、ずっと道路をつくり続けてきたんだから。そんなことになっていないじゃないですか。

 地方からは、今大事なのは、高速道路の建設を優先するから、道路の中でどれを優先してつくるべきか、道路の中自身でですよ、高速道路をつくるのか、それとも地方のそういうさまざまな道路の補修をすべきなのか、そういう選択が奪われている。そして同時に、道路をつくるのか、それとも社会保障に金を使うべきなのかという選択も奪われている。これが道路特定財源のもたらす悪いところなんです。

 だから、本当の意味で全部一般財源化する、先ほど額賀さんが言っているように、そんな法律で適当なまやかしをするんじゃなくて、どんとするということが今求められているんだということを強調しておきたいと思います。

 何かあれば、総理。

額賀国務大臣 これは、一般財源化をして道路以外のところに自由に使ってもいいという形になっているわけでございます。しかし、一方では、日本の予算は単年度主義でございますから、その年々でこれはきっちりと道路整備以外のところには一般財源化をするということを毎年繰り返していくということになっているわけです。それで、二〇〇三年までは歳出改革をして、どんどん道路というのは減っているわけであります。

 ですから、道路を建設することが我々は目的ではないのであって、道路を建設することによって地域の渋滞が解消されたり、子供を守ったり、地域が発展をしていったり、そういう目的に沿って道路というものはつくられていくわけでございます。

穀田委員 もう一度言っておきますけれども、一般財源にできるとしているだけで、使えるとしているだけで、次の年には戻るんですよ。それはもう議論済みなんですよ。それははっきりしている。

 しかし、大事なことは、今そのお金を道路にだけ使うというやり方がおかしい。これが、実は、道路の選択にとっても、地方に大きなそういう困難を強いている。そして、道路に使うべきか、それから社会保障に使うべきか、そういう選択も奪っている。これによってつくり続けるということが自己目的になっている。そのためにお金がある、だからお金を使うんだ、こういう論理は間違っているということを言っているんです。

 以上で終わります。

逢沢委員長 これにて穀田君の質疑は終了いたしました。

 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 福田総理に、冒頭、一昨日沖縄で起きた痛ましい事件について、この予算委員会でも午前中から答弁されておりますけれども、先ほど、私は東門美津子沖縄市長とお話をしてまいりました。

 市長が言うには、一月の七日にもタクシー強盗致傷事件が起きたそうです。やはり抗議をし、再発防止、綱紀粛正、こういう対応を米軍側は応答したということですけれども、この繰り返しでいいのか、このことを繰り返すだけでいいんだろうかということを強く伝えてほしいということでした。

 この繰り返しではなくて、実効性のある措置を米軍及びアメリカ政府に求めるよう、決意を伺いたい。

高村国務大臣 まさにあってはならないことで、極めて遺憾であると。

 昨日、ドノバン臨時代理大使の方に西宮北米局長から、きょうは薮中外務次官がドノバン臨時代理大使を外務省に招致して、再発防止、綱紀粛正を申し入れたところであります。

 その中で、まさに今委員がおっしゃったように、何度も繰り返されて起きているということは非常に遺憾であると。それで、今、綱紀粛正のためのプログラムというのを在日米軍が持っているわけでありますが、それについて再点検が必要ではないか、我が方も協力するので、その再点検に手をつけてほしいということを改めて申し入れたところでございます。

保坂(展)委員 福田総理、綱紀粛正あるいは再発防止ということを繰り返してきました。沖縄県民の皆さんに、今回は、今までの繰り返しを米軍も言っていてはだめだ、それこそ安心して町に出られるように、しっかり具体的、実効性のある措置をとれと、強く日本政府として迫ってくださいよ。

福田内閣総理大臣 このようなことが再発するという状況を踏まえて、しっかりと対応いたします。

保坂(展)委員 それでは、道路問題に行きたいと思います。

 私は、二月一日に、社民党調査団の一人として、西九州自動車道の建設中の佐世保道路の建設の現場を見てきました。これは既に参議院予算委員会で冬柴大臣と我が党の福島党首とのやりとりもございますが、改めて驚いて帰ってまいりました。

 米軍住宅に、十一戸ですかね、二十八億二千万円の予算が道路特定財源から出ている。これは一戸当たりにすると二億五千万円だなという話もありましたけれども、数えてみると、実は、建物でいうと八つしかないんですね。二軒長屋が三つあって、独立一戸建てが五つあるので、そうすると、一棟当たり三億五千万円という信じがたい超豪華住宅、これは金額からいえばですね。ごらんのように極めて異様な形状で、これは何ですかね、現代版お城なのかとりでなのか要塞なのか、町並みとはもちろん全く調和をしない、こういう状態で建てられています。

 しかも、では、この土地代はどうなったのかというふうに現場の所長さん、国交省ですね、聞きましたら、これは無料ですと言うんですね。これは、米軍基地がかつて使用していた土地を、日本側に返還されたんだけれども、再提供してもらったと。これは土地が無料なんですね。では、撤去費用はどうだったのか。それも別の道路費用で出しましたと言うんですね。

 冬柴大臣に伺いますけれども、国民の住環境にも責任を持っておられる大臣ですから、この米軍住宅のいわばコストを全く度外視したつくり方、国民の理解を得られますか。

冬柴国務大臣 今までその方々がお住まいになっていた部分が西九州自動車道のインターチェンジになるということで、そこから転居をお願いしたわけであります。

 ところが、ここは、もう行かれて、私も行きましたけれども、大変海と山が迫っていて平地の少ないところでございますが、そこに家が密集しているわけですね。米軍の人たちにとっては基地の近くに宿舎が欲しいということからこの場所が選ばれたわけですが、大変急峻な場所でして、では、盛り土をするか切り土にするかということになるんですが、その上には、神社ですけれども、見られたと思いますが、ありますし、とてもこれは切るというわけにいかないということから、盛り土ということで、十五メートルの高さの堰堤を建てざるを得なくなったわけでございます。

 しかも、このところを調査すると、戦時中だと思いますけれども、大変なごうが出てきたんですね、物すごくたくさん。それで、そこを埋め戻しをしてコンクリを詰めて、そして盛り土をしたというようなことから、実際は、その土地はただだったけれども、十四億円もかかったということがございます。

 そういうことでございますので、西九州自動車道のインターチェンジをつくるということで米軍にどいてもらった代替として、そこへかわっていただいたということでございます。

保坂(展)委員 国民の理解が得られますかという質問でしたが、それに対する明確な答弁がないんですね。

 石破大臣に伺いたいんですが、こちらの住宅なんですけれども、昨年の八月にオープンしたようです。アメリカ海軍のホームページを見ますと、これは十八年前に日米合同の事業としてスタートしている、こういうあいさつというか説明が書かれているんですね。ところが、国交省から説明を受けますと、これは米軍と防衛施設庁等へ返してここに米軍住宅を建てることが決まったのは、最終的には平成十五年だと。つい最近の話ですよね。

 この十八年前、実は合意があったということを調べていきましたら、これはアメリカの情報公開法でとられた「在日米軍」という本がありまして、ここに、一九九〇年の段階で、九二年から九六年までの五カ年の計画の中でこの地域に米軍は住宅が欲しい、日本に今返還しているけれども、もう一回再使用させるんだ、させたいというような内容の、いわばこの予算ははるかに少ない二百万ドルですけれども、書かれている。この関係について、ちょっと整理をして答弁してもらえませんか。

石破国務大臣 これは、今、国交大臣からお話がありましたように、移転補償として行ったものでございます。

 この経緯でございますが、平成八年三月以降、つまり、日本側から提案をいたしましたのは平成八年三月でございますので、その以降につきまして、日米間の事務レベルにおきまして土地返還の必要性についての説明が行われました。そして、返還区域をどこにするかという確認、そして代替の米軍住宅建設の必要性等につきまして種々の調整を続けておったものでございます。

 そういたしますと、幾つかの省庁が関係をいたしますので、関係省庁において所要の検討を行う必要があった。そしてまた、米側内部でも、確かにそういうような文書があることは、今委員から御指摘を受けたものも私は承知をしておるわけですが、米軍において本当にそれでよいのかという検討が米軍の中でも行われたというふうに承知をいたしております。

 したがいまして、日米合同委員会の合意は平成十六年の五月となったというふうに私どもとしては把握をしておるところでございます。

保坂(展)委員 石破大臣に伺いますが、これが超豪華住宅というふうに言われながら、見たところ、これはツーバイフォーか何かでつくられたのかななんというふうに見えたのですが、実は鉄筋コンクリート二階建てということらしいんですね。この独立した住宅が六千五百万円。高いですね。

 ちょっと石破大臣に、福島党首とのやりとりの中で、要するに、全体の予算の中に土地代も含まれていると思いますよというふうに言われていた部分があったんですよ。それから、日米地位協定二十四条二項によって再提供されているところ、それについても、地位協定は直接関係ないんじゃないかというようなことをおっしゃっていたので、それはちょっと認識が違うと思いますので、そこの部分、きちっと。

石破国務大臣 先ほどの答弁で申し上げましたが、移転の補償として行われたということだと承知をいたしております。それが豪華ではないか云々という御指摘ですが、それは今、国交大臣からもお話がありましたように、非常に狭隘な土地に土地を確保しなければならない、そして多くのいろいろな困難があったということでございます。

 したがいまして、私どもといたしまして、これは移転の補償として行われたものであって、今の委員の御指摘というのは当たらないのではないかと考えております。

保坂(展)委員 ちゃんと議論がかみ合っていないんですね。

 要するに、福島党首とのやりとりで、これをつくっている総費用の中には土地代も入っているんでしょうとおっしゃっているんですが、実は入っていないんですよと。なぜならば、これは日米地位協定に基づく国有地を日本側が提供しているわけですね。そこのところは認識を改めてもらわないと困りますよと言っているので、これははっきり答えてください。私の言っていることは違いますか。

石破国務大臣 これも先ほど来お答えをしておりますように、移転の補償として行ったものでございます。その中に土地代がどれぐらい含まれておるかにつきましては……(保坂(展)委員「入っていないでしょう、再提供だから」と呼ぶ)再提供ですから、それは土地代というものは含まれません。

保坂(展)委員 地位協定によってこれは再利用で提供されているんだということはもう間違いないわけですから、それは石破大臣、きちっと認識をしておいてもらわなきゃ困ると思います。

 では、次に、いろいろ米軍住宅の問題を入り口にして考えてみると、これは冬柴大臣に伺いたいんですが、この道路は佐世保駅の前をこうやって通っていくわけですね。一キロ当たり二百億だ、この説明はもう繰り返さなくていいです。ただ、柱が非常に太いので、これはどうなっているのかと現場で聞いてみたら、これは四車線の計画です、四車線で用地を全部取得している、四車線でつくろうとしたけれども、なるべく早く通したいので暫定二車線で工事をしているんですということでした。

 この暫定二車線で工事をしているというものが相当あるというふうに聞いているんですけれども、佐世保道路の暫定税率と暫定二車線の関係、これは議論を深めなきゃいけないと思います。現在、高速道路を建設している中で暫定二車線でつくられている道路というのは何%ぐらいあるんですか。これは、大臣に答えていただいた後、局長に詳しく答えていただきます。

冬柴国務大臣 現在、高規格幹線道路一万四千キロのうち、既に供用されている区間は九千三百三十二キロ、事業中区間が三千九十八キロとなっています。暫定二車線で事業中の区間は、このうち二千三百九十七キロメートルで、約八割を占めております。

保坂(展)委員 つまり、今工事中の道路の八割は暫定二車線という形でつくられている。これはコストを検証しなければいけないと思いますよ。

 つまり、暫定二車線で、最後に四車線に広がって、全部そうだということでは必ずしもないんですね。十年たっても拡幅されないところがある。大体、今、この佐世保道路、その前の区間が相当数、十年以上拡幅されていないんですね。ただ、暫定二車線で八割工事を続けているわけですから、当然、用地取得費も高いわけです。

 そこで、では局長に伺いますが、この佐世保道路などの市街地に暫定二車線でつくる場合、つまり、四車線で用地取得をして二車線でとりあえずつくるという形と、完成二車線、最初から二車線でつくろうやという場合と、どのぐらい経費が違うんですか。

宮田政府参考人 お答え申し上げます。

 佐世保道路のように、市街地を通過する高架構造の完成二車線というのは事例がございませんので比較が困難でありますが、建設コストの比較で申し上げますと、地方部で行われております高規格幹線道路の事業について平均をとりますと、四車線の完成形に対する暫定二車線整備コストは七三%でございます。完成二車線整備のコストは四車線整備の約六五%になってございます。

保坂(展)委員 冬柴大臣、国交省からいただいた資料では、十年以上拡幅していない道路もある。中には二十年を超えているものも、わずかですが、ある。

 今八割やっているわけですね、暫定二車線で。これ、精査する必要ないですか。ここは完成二車線でつくろうよといったって、道路はできるわけですよ。交通量、先ほど議論がありましたけれども、そこもしっかり精査すべきじゃないですか。

冬柴国務大臣 まさに将来の道路の交通推計によって、その道路が日量二万四千台を超えますと、これは二車線では無理だということになるわけです。

 しかしながら、この佐世保西道路というのは、もう御存じのように、九州にとっては幹線の道路でございます。まだ工事中ですけれども、とにかく早くしてほしい、そういう御要望は非常に強いんですね。

 私も、呼ばれてそこへ行きました。そのときも、各種団体から何から全部来られて、早くつくってもらいたいという話でした。けれども、今、四車線でやるということについては、バランスが崩れますので二車線で整備して、将来、二万四千台を超え、そして、それがあっちこっち出ると思うんですけれども、これについてもやはり、やらなきゃならないというときにはそれを四車線にできるようにしておかなければ経済的に不利益でございますから、そういうふうにしているわけです。

 トンネルも、二車線で一本掘って、後からするときはもう一本掘るんですよ。そういうことがありますので、暫定二車線というのはそういう意味だと御理解いただきたいと思います。

保坂(展)委員 福田総理、今、冬柴大臣は、暫定二車線で今八割やっているんです、工事を八割。それは四車線にするところもあるでしょう。文字どおり、二車線でやっておいて四車線にするというのはあると思いますよ。しかし中には、これはもう最初から完成二車線でいいのかなというところだってあるはずです。八割ですから非常に多いですね。価格も非常にかかっている。

 ここは精査する必要ないと思いますか。我々はあると思いますよ。いかがですか。総理、答えてください。

福田内閣総理大臣 毎年、見直しというか次年度の予算をつくるわけで、そのときに当然、そういう地域の状況も精査の上で計画をつくる、そして予算化していくということだと思います。やらなければいけないと思います。

保坂(展)委員 総理は、やらなければならないと。ぜひ冬柴大臣も、暫定二車線、絶対必要だと頑張らないで、ここは本当に必要なのかどうか検証をするというふうにしていただきたいと思います。

 ちょっと待ってください。次の質問も関係あるんですよ。

 実は、東京新聞、土曜日ですが、こちらですね、「簡易名目で高額インター」という記事が出ました。ちょうどこの議論を深めなきゃいけないなと思って読んでみると、冬柴大臣が昨年の参議院予算委員会におきまして、スマートインターチェンジということで、サービスエリアなどにつくられて費用がかからないんだ、三億ないし五億、せいぜい八億ですと言われていたいわばこのスマートインターチェンジが、実はふたをあけてみると、どうもサービスエリアに直結するものではなくて、本線に直接入っていく。つまりは、導入路というか、その区間、拡幅しなければいけないわけですね。多くは暫定二車線の道路で、拡幅しているそうなので大変費用がかかっている、二十カ所に三千億だ、ほかに、工事費として二千五百億もつけている、一カ所当たり百五十億とか百二十億とか、大変な額になる。これは、冬柴大臣、どこがスマートなんですか。重々しいじゃないですか。

冬柴国務大臣 スマートインターチェンジというのは、今三十一カ所ですか、現にやっておって、また、社会実験をやっているものが四カ所あるようですけれども、サービスエリアとかあるいはパーキングエリアという既存のものに、ちょっと穴をあければそれでいけるというものが大宗であったわけです。参議院の質問も、場所も特定されておったわけですけれども、そういうものでありますから、したがいまして、これについては比較的安くできますと申し上げているわけです。

 ただ、その後、これは、欧米のインターチェンジとインターチェンジの間は平均して約五キロぐらいなんですね。ところが、日本の場合は十キロあります。そういうことから、スマートインターチェンジを私の方もつけてほしいというのが、随分たくさん要望があります。確かに、これをつけることによって非常に効果が上がっている部分はあります。もう今詳しく申し上げませんけれども、社会実験の結果、すごく周辺があくとか、そういうものがありますので、これは考えなきゃいけないと思います。

 ところが、今の完成二車線なり暫定二車線で走っているところへこれをつけるということになりますと、当然それは、進入するためにもう一車線ふやさないとできないですね。もちろん、相当の距離です、百キロに加速するまでの距離のものをつくらないと危ないわけでございまして、そうなると、車線数がふえるわけですから、そこではそう言っていますけれども、国幹会議に諮ることになります。そういう手続が必要になると思います。

保坂(展)委員 サービスエリアにETCだけつけるというのは簡単な工事だなと思いますけれども、それでも八億以上かかっているんですね。見ると二十億とかですね。ましてや、インターチェンジで、人がいる、要するにお金で払えるところがあるかないかで、それがない、ETCのみだというぐらいで百二十億から百五十億というのは、全くスマートじゃないですね。このお金というのは、建設費は五十九兆円の中に含まれているんですか。どこから出ているんですか。

宮田政府参考人 お答え申し上げます。

 五十九兆には含まれておりません。別途五千億、二兆五千億の料金値下げ、あるいはスマートインターチェンジの増設等、そういうところに含まれてございます。

保坂(展)委員 これは、冬柴大臣、へそくりですか、五十九兆。別途またつくるんですよ、インターチェンジを。おかしいじゃないですか。

冬柴国務大臣 これは、五十九兆以外に、そういうことによって道路整備と同じような役割を果たせるようなものがあるということで、別の法律で二兆五千億の、いわゆる現在整備されている有料道路というものをもっと活用できるようにするために料金を値下げする。その分で、これは十年間の分ですが二兆五千億と、今言いましたように、スマートインターチェンジをつくることによって道路をつくるのと同じような、いわゆるタックスペイヤーに対する便益として還元できるということで、これは別に五千億をお願いする、これは別の法律でお願いするということであります。

保坂(展)委員 福田総理、これは余りスマートじゃない話なんです。三億、五億でできるという話、それはいいかなと思っていたら、いつの間にか、この五十九兆の整備以外にも、道路特定財源から五千億引っ張り出して、スマートインターチェンジという名前で、実は百二十億から百五十億という大変な金額をかけたものも建設できると。透明じゃないんですね。加えて、道路特定財源、何でも使える。先ほどの米軍住宅もそうです。

 これは本当に無駄に切り込んでいますか、今。そこの認識はいかがですか、総理。総理に聞いています。

福田内閣総理大臣 それは、国土交通省も無駄を認識してやっているとは思いません。

 しかし、もともとこのスマートインターチェンジは、そういう趣旨で始まったのでそういう名前もついたんだろうと思いますから、やはり原則を余り逸脱するというようなことは疑いを持たれるもとになりますから、気をつけなければいけないと思います。

保坂(展)委員 気をつけるのなら、ちゃんと全部情報開示してくださいね、冬柴大臣。

 舛添厚生労働大臣、お待たせしておりますけれども、前回の補正の審議のときに、私は旧台帳の問題についてお聞きをしましたね。きょうは時間が余りなくなってしまったので一点だけなんですが、平成十八年から十九年の上半期にかけて二千七百四十六を捜してみたら、ありますかということで社会保険庁からワンビシアーカイブズ倉庫に捜してみたら、五〇%だったという話はもう大臣も御存じだと思います。

 そして、先般、社会保険庁の方から、十月はどうだったの、十一月はどうだったのと聞くと、昨年の十月に六百三十一件、そして十一月には千二十一件、計千六百五十二件も捜しているんですね。十二月はまだ聞いていないんですが、昨年のこの三カ月で何件捜して、ずばり何%あったのか。

 つまり、これは索出依頼票というのに、あったかないかに丸をつけるだけなのではっきり答えられると思うんですが、大臣、お願いします。

舛添国務大臣 今お尋ねの昨年十月から十二月まで、旧台帳の引き抜き依頼件数が二千五百四十五件、そのうち索出不能であったものは千四百六十九件であります。

保坂(展)委員 舛添大臣、では、五〇%を超えてないわけですね。見つからない。五〇パーも超えてしまった。

 舛添大臣、もう一問よろしいですか。まず、何がどうなっているのか全く情報公開しないんですよ、社会保険庁は。我々は、もう一回行って、見て、どういうふうに混乱をしているのか、事態を把握したいと思っています。行かないまでも、どうしてこんなことになっちゃったのか、全く情報公開しないんですよ。保管リストも出さないんですよ。何回話してもだめなんですよ。

 こんなことで、これは整理するにもお金もかかりますし、その整理するお金だけじゃなくて、年金受給権にかかわる大変な問題でしょう。これは舛添大臣の方から指示して、今、率直な状況を開示してくださいよ、どうなっているのか。大変な問題でしょう。

舛添国務大臣 私もワンビシへ行ってきまして、少し整理のぐあいが悪いので、これは整理し直せということを指示しました。

 それで、今の索出不能が半分というのはこういうことです。

 大きな数字でいいますと、ワンビシの倉庫にある旧台帳、これは磁気テープ化するということはオンラインに載せた、これが約千四百万件。マイクロフィルムのままのものが千四百万件なんです。今、名寄せ作業をやっていますね。番号がわかって、ホサカ何、わからない、捜せといって旧台帳に当たる。そうすると、旧台帳にぽんとあれば出てきます。もう一つは、マイクロフィルムの方であると、そっちを見ないといけないですから、千四百、千四百だと確率的に半分ということになります。

 ただ問題は、要するに、私も見た倉庫に完全に順番に並んでいないんですね。こういうこともやらないでおいて、それで見に行って、倉庫をあけてみてなかった、ほかの箱に入っていたということがありますから、これは直ちに指示をして、少なくとも順番どおりに並べかえる作業をやらないといけない。こういうことをこれまでやっていないんですね。それで、早急に今検討して、近々この作業に入るようにいたします。

 そういうことで、一つ一つ確実にこの問題点、今委員がおっしゃったような問題点をやっていく。それで、もちろん個人情報ということがありますから、それにひっかからない限りできるだけ情報公開する、そういう思いで頑張ってやりたいと思います。

保坂(展)委員 情報開示が全くないので、並べかえが新たな問題を起こしてしまうんじゃないかということを非常に不安に思っています。ぜひしっかり情報開示をしていただきたいということを求めて、終わります。

逢沢委員長 これにて保坂君の質疑は終了いたしました。

 次に、下地幹郎君。

下地委員 二月の十日に起こりました少女暴行事件、一九九五年に沖縄県民が大きな怒りとなったあのことをまた思い出させるような事件で、本当に許せないことであり、残念ですね。

 しかし、総理、平成十八年がこういう事件が五十七件、平成十九年が六十三件ですから、ふえていることだけは確かなんですよ。そして、外務省が、局長、大臣、政務官で、この五年間で綱紀の粛正を米軍に申し上げたり抗議をしたりというのは八件あるわけです。こうやって八件やってなかなか成果が出ないということは、やはり真剣にとらえなきゃいけないと思うんですね。

 日米安保条約の中で、日本は基地の提供責任があります。これはやらなければいけない。しかし、この提供責任を受けて、その最前線である市町村が幾ら予算をもらっても、反面、こういうふうな米軍による事件、事故というのは、予算と事件の数が減るというのはイコールにならない。こういう現実をしっかりと見なければいけない。だから、総理がいかに厳粛なお言葉を述べてアメリカに抗議をしても、今は沖縄県民の中で信じる人というのはそんなにいないんです。

 また、東門市長がきのう涙ながらに話をしたり、県知事が怒りをあらわにして、私どもも、ここに来る前に、沖縄の地元の新聞に絶対許せないと言っても、沖縄県民は政府と同じように私たちを見ているんです。またおまえら抗議行動して文句言って終わりかと。政治家として、沖縄を代表している政治家としておまえら何やっているんだと言われているんですよね。そういう意味では、責任のなすり合いをやるのではなくて、何をすべきかということを考えてやらなければいけないと思う。

 それで、私、一個だけ提案させていただきたいんですけれども、こういう事件、事故が起こるのは土曜日、金曜日ですよ。大体、北谷町だとか沖縄市とか繁華街ですね。いろいろな繁華街の中でざわざわしたところに、海兵隊や外人の皆さんも金曜、土曜日に集まるということになってくるわけです。このときに、沖縄県警が幾らパトロールしても、酔っぱらっている海兵隊を逮捕することもできませんよ。基地に帰れと言うこともできません。

 だから、私は前からお話ししているんですけれども、自治体と米軍と沖縄県警でパトロールして、沖縄県警が逮捕権はある、しかし、こういうふうな事件が起こりそうな酔っぱらっている人たちには、MPが、おまえ基地内に帰りなさい、もう帰らないとだめですよと注意をすることを毎週金曜日、土曜日にやれば、私は成果が出てくるんじゃないかと思うんです。グアムはこれをやっているんです。また、沖縄県の金武町においても、角、角にMPが立っていて、酔っぱらって来る人には、戻りなさい、戻ったらゲートで電話を入れなさいと言っているんですね。

 先ほどお話を聞いたら、具体的な政策をもう挙げるべきだというんだったら、石破大臣のところも、日本の平和を守るために日米で共同訓練をしているじゃないですか。共同訓練をやって信頼関係を高めてこの国を守ろうとしているんだったら、ぜひ、沖縄県民や岩国やさまざまな軍を抱える市町村の人たちを守るために、日本とアメリカが共同でパトロールして被害者を出さない、こういうふうなことを日米で合意して、総理が提案してやると、私は基地を提供する自治体の人たちが国に対して信頼がわいてくると思いますけれども、それをおやりになるつもりはありませんか、総理。

福田内閣総理大臣 まことに残念なというか、起こってはならぬことがまた起こったということで、これに対してどういう対応をすべきかということをこれから本当に真剣に考えなければいけないと思います。

 そういう中で、今のお話ございましたようなことが有効なのかどうか、有効なような感じがしますので、そういうことも含めて検討させていただきたいと思います。

下地委員 総理、有効です。これをやれば被害、事件、事故が減ることに間違いありませんから、ぜひ決断を持ってやってもらいたいと思いますね。

 今度の施政方針演説で、総理が国民と生活者と消費者という言葉を使ったのが五十回ありますね。安倍総理が十二回ですから、数からすると相当多く使っています。生活者、消費者が主役となる社会を実現するとか、さまざまな消費者を考えた政策を打っていきたいということをお考えになっていますけれども、総理がお使いになっているこの国民、生活者、消費者という言葉の、総理の本当の思いをお聞かせいただきたいと思います。

福田内閣総理大臣 だれか私の施政方針の国民という数を数えてくれて、五十回というのはそのとおりなんですよ。小泉総理も三十六回使っているんですね。

 それはともかくとして、私は、今の時代、これはやはり国民本位の政治というのは必要なんじゃないか。政治だけじゃありません、行政も必要だと思いますよ。そういう国民本位でない政治、行政が行われてきた結果、いろいろな問題も発生してきた。いろいろなことがございます。具体的に申し上げると切りがないので申しません。そういうような発想の転換と申しますか、基本的な考え方をこの際変えた方がいいんじゃないかなということがございます。

 今の行政、政治は、やはり特に行政の効率化といったようなことからこういう縦割りでやっておりますね。しかし、末端の国民にとってそれが本当に役に立つのかどうかということですね、何か縦割り行政を国民に押しつけているような感じもしまして。ですから、国民の方から見てどうあるべきかということをこの際考えるべきではないかな、こう考えて、国民との接点、国民が日々必要とするような部門については特に早くそういうふうな体制に変えていく必要があるんだというようなことで、消費行政の一元化といったようなことを今考えておるわけでございます。

 きょうは、そういう関係の第一回の会議を官邸でするわけでございますけれども、この際、国民本位の、そして、そのことが国民のためになるというよりか、やはり日本の社会を変えていく一つのきっかけになるんじゃないかな、こう思っているところでございます。

下地委員 総理が何回か国民本位と申しましたけれども、道路特定財源の話が今あらゆる議員からも質問がありますけれども、自民党が考えている、道路特定財源で、暫定税率を維持して道路をつくる、そして経済の活性化を図っていくという考え方。民主党が言っています、暫定税率を廃止してガソリンを安くして、道路特定財源も全部一般財源化するという考え方。そして、国民新党・そうぞう・無所属の会がこの前提案した、道路特定財源も維持して、暫定税率も維持して、道路もつくりながらガソリンも安くする、両方やるというやり方……(発言する者あり)これを今から話します。

 そういう意味で、国民、消費者、生活者はその三つのうちどっちを望んでいると総理はお考えになりますか。自民党が考えている、道路をつくるという考え方、民主党が言っているような、暫定税率を変えて一般財源化するという考え方、ガソリンを安くするという考え方、それに、国民新党・そうぞうが言っている、道路もつくるけれどもガソリンも安くする、この両方をやるというやり方を、国民はどっちを今考えているのかということをお聞きしたいと思うんです。

福田内閣総理大臣 みんな必要なんですよね。その中で、限られた財源というものがございますから、どういうようにその資源配分をしていくか、それが国民のために、また国の将来のためにいいのか、こういう観点で考えなければいけないと思います。

 道路も大事です。それから、もちろん教育とか医療とか社会保障全般とか、国防もありますよ、ODAもあるかもしれない。そういうものすべて、どのように配分するかという、その基本的な考え方をしっかり持つということが大事なんだというふうに思っております。

下地委員 きのうも首長の皆さんと話をしましたけれども、暫定税率がなくなったら大変だと言っていましたね。そして、一般の方々と話をすると、消費者物価は十二月に〇・八%上がっていますから、年間五百万円の世帯で四万円上がりますよ。しかし、これは生鮮食料品は入っていませんから、四万円じゃなくて六万円ぐらい上がっていると思いますね。やはり生活は苦しいですよ。

 だから、そういうふうに考えると、今、国防もおありになる、いろいろなものもおありになると言っていますけれども、総理がおっしゃっている国民、消費者、生活者となると、今この時期は何を優先すべきかといったら、この両方を選択するという政治決断が必要じゃないかと思うんです。

 先ほど財源をどうするかと言ったから言います。今度も、九兆五千億円、特定財源から回して、負債、借金に回しますけれども、そうじゃなくて、そういうふうな特定財源の中の一部を今回はガソリンを安くする政策に回していくということになれば、国民からすると、この生活苦をきちっと乗り越えられる、この一年守ってもらえるという思いになるかと思うんですけれども、そのことについてお考えいただきたいと思うんです。

額賀国務大臣 下地先生の御意見は、非常に消費者、国民の立場を思っていろいろ考えた末の話だと思いますけれども、特定財源の剰余金というのは、特別会計法を改正しまして、余剰金が余ったら、これは膨大な借金を抱えていますから、その返済に充てていくということが原則になっておりまして、これは国際的な信頼をつくるとか、そういう意味でも非常に意義のあることなんですね。

 これからも、我々は特定財源とかの議論をしていますけれども、そういう特別会計については明朗性を持ってしっかりと利益が出るように運用はして、一般財源に貢献するような形をぜひつくっていきたいというふうに思っております。

 ただ、今度我々が出したこの特定財源の話は、やはり長い間道路をつくってきましたから、どうしても財政を硬直させるというところもこれはやむを得ないところがあって、どうやったら直していくことができるのか。しかも、なおかつそのユーザーの皆さん方の御理解を得る中でという形で一つの法改正を出させていただいて、道路の余った分は一般財源化をするという形にさせていただいたわけでございまして、これを一般の負担者にも御理解をいただき、しかも、なおかつその硬直性を打破する、そういう問題意識を持ってやらせていただいているということは御理解いただきたいというふうに思います。

下地委員 企業においても、借金の支払いよりも、今、経営、運営にこのタイミングで回すということがありますよね。だから、今国民のその環境をどう判断するかで、借金に回すべきなのか、国民に回すべきなのかというのを決めていくというふうになってくると、今のタイミングは、国民の物価高やさまざまな株価の暴落などという経済状態からすると、国民が安心する方向に回すというのが硬直化しない財政の運用だと僕は思うので、そのことは、逆に財務大臣の頭が硬直化しないで、しっかりとお考えいただくことが大事かなというふうに思いますね。

 それと、もう一個お話しさせていただきたいんですけれども、岸田大臣にちょっとお伺いしたいんです。

 今度、県民所得というのが出ましたけれども、東京が四百七十七万で沖縄は二百二万なんですよね。その差は二・四倍に開いておりますけれども、ガソリンが高騰しても、東京の人は電車や地下鉄があるから車を使わなくても生活できるんですよ。大臣が担当している沖縄は、電車はモノレールの十三キロしかありませんから、車社会なんですよね。所得の一番低い人がガソリン高騰の一番の影響を受けているんですよ。

 それで、今私たちが、その沖縄が自立をする、観光客が一千万人来ると言っていますけれども、観光客が一千万人来ると、今で大体レンタカーが二万台近く来ますから、一千万台になると四万台ですから、交通渋滞が甚だしい。沖縄県に今五千人の方々が移住してきますから、来たらすぐ何やるかといったら、中古車買うんですよ。だから、道路整備がないと、間違いなく環境問題にも影響を及ぼすし、経済もマイナスになるし、両方だめなんですね。だから、ガソリンの価格の影響も受けている、道路もつくらないと経済の自立ができなくて悪循環を起こすというふうになっているんです。だから、大臣が担当している沖縄が、両方どうしてもやらなければいけない県なんです。

 しかし、大臣は沖縄に立脚した発言がないね。両方やるべきだと福田総理に、沖縄を担当している大臣として、これは両方やってもらわなきゃいけないよという大臣の声が県民に届く、これが大事じゃないか。沖縄担当大臣が何で復帰後生まれてそれがあるのかといったら、政府の中においても沖縄の立場を申し上げる立場にある、そういうふうな声をこのときに上げるべきだと思うんですけれども、大臣、いかがですか。

岸田国務大臣 委員御指摘のように、この沖縄の経済、一人当たりの県民所得、最も低い水準にあり、そして、雇用におきましても、高い失業率を考えますときに、本当に依然厳しい状況にあると認識をしております。

 その中にありまして、御指摘の社会資本整備、戦略的な社会資本整備を進めなければいけない、これは大変大きな課題だと認識しております。ぜひこれはしっかりと沖縄振興計画に基づいて進めていかなければいけない大きな課題だと思います。

 そして、あわせて、県民生活の充実を図らなければいけない。その際に、もちろん雇用対策、ミスマッチ対策初め雇用対策も進める等、しっかりとした対策を進めていかなければいけないわけですが、何よりも経済の中で国民生活を引き上げていかなければいけない、民間主導の経済の発展を導入しなければいけないということで、さまざまな施策を政府としては進めているところです。

 これは、沖縄の優位性や特異性を生かした産業の振興ですとか、沖縄における科学技術の定着ですとか、人材育成とか、こういったさまざまな施策を積み重ねることによって、県民生活をバックアップすることで、今先生が御指摘になられました生活と社会資本整備を両立させるという考え方を進めていく、これが基本的な考え方だと思っています。

下地委員 私は、長々と御答弁いただきましたけれども、沖縄を思う気持ちはわかりますけれども、やはり生活が苦しい、道路もつくらなければ自立ができないという原点を忘れないようにして、沖縄に立脚した発言というのが大臣の立場では必要だということを再認識してお仕事していただければありがたいというふうに思いますね。

 それで、もう一つ、中国のギョーザの問題をちょっと質問させていただきますけれども、今回、天洋食品の製品の届け出件数が八百二十三件。冷凍食品の平成十九年度の輸入件数が二十二万件で、そのうちの十四万件が中国から来ていますね。六三%あります。平成十九年度の輸入食品の総額は六兆円で、そのうちの九千二百億は中国から来ていますね。農林水産物の輸入金額は八兆円、これもどんどん伸びてきていますね。それで、日本の鉱工業製品の輸出は七十四兆ありますから、今度、輸出の車の台数とか、海外でつくる生産台数とか、一千六百万台ですから、これは史上最高になりました。

 こういうふうな数字を羅列していますけれども、結果として、昭和四十年の自給率七三%が、今回三九%になっているんです。この三九%になっているのを見て、国民の七六%が食の安全に問題だという統計が出ていて、今度の中国のギョーザを見ると一〇〇%に近づいてくると思うんですよ。

 私は、この数字を見ていて思うんですけれども、日本は先進工業国にはなったけれども、食料安保の破壊した、そして、農林水産業が輸入や冷蔵食品に頼らなければいけない国になっている。この鉱工業と農業のバランスをもう一回、政治もそして国民も考える機会に、今度の中国のギョーザの問題は、私たちは視点を移してやらなければいけないと思うんですね。現象だけを見て物事を考えるんじゃなくて、そこをどうするかということが大事だと思うんです。

 そこで、総理にお伺いしますけれども、二十七年までに自給率を四五%にするというようなことを国は決めております。その中で、総理が今度の施政方針演説で、農商工業の連携とおっしゃっておりますし、安倍前総理は一兆円の農林水産物の輸出だと言っておりますね。

 この自給率四五%を達成するには、農林水産業の輸出がちゃんとできる、豊作貧乏にならないような農業体系をつくらないと自給率は達成できないと思うんです。この農商工連携というのと一兆円の輸出という中で、総理が考えている自給率四五%はどういう絡みで実現をしたいと総理はお考えになっているのか、お聞きしたいと思うんです。

福田内閣総理大臣 農商工連携というのは、これは日本の農業の足腰を強くするという方向に向かうべきものなんですね。今まで農業は農業ということでやってまいりましたけれども、農業産品のいわゆる商品としての価値を高める、そして新しい商品をつくるといったような観点の取り組みというのは、割合と農業の中だけでは考えられない。それも、農家が小規模農家というような形ですから。そこに商工業のノウハウを投入しようじゃないかというようなことで、そこの農業と商工業の連携関係をつくっていこう、こういう考え方なんです。

 そこで、農業の生産性を上げるというようなこともできるかもしれないし、それからまた新しい商品の農産品を開発し、そしてまた輸出する、そういうノウハウも商工業の方にはあるんだろうというふうに思いますので、そこら辺をうまく組み合わせて、農業を一段と活性化しようという取り組みなんです。

 これは、国内農業の足腰を強くし、そして農業の自給率も結果として高まるということであれば大変いいんですけれども、そういう方向に行くように指導していきたいと思います。

下地委員 農商工業の連携というのは、僕は非常に大事だと思いますね。

 そして、自給率を四五%にするというのが国家存亡の危機で大事だというふうになってくると、今の農林水産省だけの輸出の機構ではなかなか難しい。国を挙げて、総理が消費者庁をおつくりになったのと同じように、輸出庁をつくるぐらいの気持ちで、今ジェトロがその役割を果たしていますけれども、ジェトロを強化するのか、新しい省庁をつくるのかといって、輸出に力を入れる国の姿勢を見せることが、私は自給率も成功する大きな要因になるのではないかと思います。

 こういう機構をつくってみたらいかがでしょうか。

甘利国務大臣 従来から、経済産業省は、農水省と連携をとりまして農産物の輸出振興をしてまいりました。

 これはジェトロが深くかんでいるわけでありますが、ジェトロは、海外五十四カ国、七十三カ所に展開しているわけでありまして、ノウハウそれから人材も持っているわけであります。どういうことをすれば輸出が伸びるか、見本市への出展支援とか、貿易相談とか、バイヤーとのマッチングとか、市場調査とか、そういう工業で培ったノウハウを農産物の輸出ドライブにも十二分に活用できるというふうに思っております。

 人材というのは一日にして育つものではありませんし、ノウハウも長い年月をかけて培ったものでありますから、これをぜひ有効活用していきたいというふうに思っております。

若林国務大臣 農産物の輸出促進を図るための新しい機構、組織についての御提案でございました。

 現在、申し上げますと、平成十六年に農林水産省には輸出促進室というものを設置しまして、六人体制でスタートしましたが、その後、体制を強化いたしまして、現時点では十三人体制で行っております。そして、この輸出促進室が中心となりまして、官民一体となる体制をつくり、農林水産物等輸出促進全国協議会を立ち上げて、これに取り組んでいるところでございます。

 実績を評価いただきたいと思いますが、輸出は、平成十七年に対前年一二%増、平成十八年は一三%増、平成十九年には一六%増と順調に拡大しておりまして、今のこの伸びを継続していきますと、目標でございました一兆円に達することが可能だというふうに考えております。現在の取り組み体制はそれなりに有効に作用し、役割を果たしてきていると考えているところでございます。

 海外の新しい需要を開拓するということは、今、甘利大臣がお話しいただいたように、ジェトロを有効に活用する。さらに、先ほど総理がお話しいただきましたけれども、工業あるいは輸出産業、販売業といったような商工の持っているノウハウとか技術といったようなものと連携を深めまして、輸出の促進を図っていくということであると思います。

 なお、輸出を促進するためには、やはり各国とも検疫の問題がございますから、検疫協議を加速化しまして輸出環境を整備する、そして、意欲のある農林漁業者に対する輸出に関する支援、そして、日本食、日本食材などの海外への情報発信などを積極的に実施してまいることによってこれを達成したい、このように考えております。

下地委員 総理、今両省庁は一生懸命やっていると言っていますけれども、数字が出ていないんですよ。出ていれば、こういう質問もしませんね。もう一回総理の農商工連携の評価を、成果をしっかりと示すように、私は、頑張って自給率を上げる作業をしてもらいたいと思います。

 どうもありがとうございました。

逢沢委員長 これにて下地君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして基本的質疑は終了いたしました。

 次回は、明十三日午前九時から委員会を開会し、一般的質疑を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十一分散会


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