衆議院

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第14号 平成20年2月26日(火曜日)

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平成二十年二月二十六日(火曜日)委員長の指名で、次のとおり分科員及び主査を選任した。

 第一分科会(皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、内閣府及び防衛省所管並びに他の分科会の所管以外の事項)

   主査 倉田 雅年君

      井上 喜一君    金子 一義君

      佐藤 剛男君    中馬 弘毅君

      笠井  亮君

 第二分科会(総務省所管)

   主査 田野瀬良太郎君

      岩永 峯一君    小坂 憲次君

      深谷 隆司君    赤松 正雄君

 第三分科会(法務省、外務省及び財務省所管)

   主査 増原 義剛君

      臼井日出男君    大野 功統君

      小池百合子君

 第四分科会(文部科学省所管)

   主査 西銘恒三郎君

      河村 建夫君    中山 成彬君

      三原 朝彦君

 第五分科会(厚生労働省所管)

   主査 森  英介君

      菅原 一秀君    園田 博之君

      長勢 甚遠君    江田 康幸君

 第六分科会(農林水産省及び環境省所管)

   主査 遠藤 利明君

      大島 理森君    杉浦 正健君

      野田  毅君

 第七分科会(経済産業省所管)

   主査 山本 幸三君

      逢沢 一郎君    斉藤斗志二君

      坂本 剛二君

 第八分科会(国土交通省所管)

   主査 富田 茂之君

      伊藤 公介君    尾身 幸次君

      三ッ矢憲生君

平成二十年二月二十六日(火曜日)

    午前九時四分開議

 出席委員

   委員長 逢沢 一郎君

   理事 遠藤 利明君 理事 田野瀬良太郎君

   理事 中山 成彬君 理事 増原 義剛君

   理事 森  英介君 理事 山本 幸三君

   理事 岡田 克也君 理事 前原 誠司君

   理事 富田 茂之君

      赤澤 亮正君    新井 悦二君

      井上 喜一君    井脇ノブ子君

      伊藤 公介君    岩永 峯一君

      上野賢一郎君    浮島 敏男君

      臼井日出男君    小川 友一君

      小此木八郎君    尾身 幸次君

      大島 理森君    大野 功統君

      片山さつき君    金子 一義君

      亀井善太郎君    河村 建夫君

      木原 誠二君    北川 知克君

      倉田 雅年君    小池百合子君

      小坂 憲次君    佐藤 剛男君

      斉藤斗志二君    坂本 剛二君

      菅原 一秀君    杉浦 正健君

      薗浦健太郎君    園田 博之君

      平  将明君    高鳥 修一君

      中馬 弘毅君  とかしきなおみ君

      中根 一幸君    中森ふくよ君

      長勢 甚遠君    丹羽 秀樹君

      丹羽 雄哉君    西本 勝子君

      野田  毅君    深谷 隆司君

      三ッ矢憲生君    三原 朝彦君

      御法川信英君    安井潤一郎君

      太田 和美君    郡  和子君

      笹木 竜三君    田名部匡代君

      田村 謙治君    武正 公一君

      長妻  昭君    原口 一博君

      平岡 秀夫君    細野 豪志君

      馬淵 澄夫君    松木 謙公君

      松本 剛明君    山井 和則君

      吉田  泉君    笠  浩史君

      渡部 恒三君    赤松 正雄君

      江田 康幸君    福島  豊君

      笠井  亮君    高橋千鶴子君

      阿部 知子君    糸川 正晃君

    …………………………………

   内閣総理大臣       福田 康夫君

   総務大臣         増田 寛也君

   財務大臣         額賀福志郎君

   文部科学大臣       渡海紀三朗君

   厚生労働大臣       舛添 要一君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     町村 信孝君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   大田 弘子君

   国務大臣

   (少子化対策担当)    上川 陽子君

   財務副大臣        森山  裕君

   厚生労働副大臣      西川 京子君

   内閣府大臣政務官     加藤 勝信君

   厚生労働大臣政務官    伊藤  渉君

   厚生労働大臣政務官    松浪 健太君

   政府参考人

   (財務省主計局長)    杉本 和行君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    加藤 治彦君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  外口  崇君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局長)            高橋 直人君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            青木  豊君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       大谷 泰夫君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  水田 邦雄君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  渡辺 芳樹君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 薄井 康紀君

   予算委員会専門員     井上 茂男君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十六日

 辞任         補欠選任

  臼井日出男君     亀井善太郎君

  大島 理森君     丹羽 雄哉君

  大野 功統君     浮島 敏男君

  金子 一義君     高鳥 修一君

  河村 建夫君     赤澤 亮正君

  小坂 憲次君     中森ふくよ君

  坂本 剛二君     片山さつき君

  菅原 一秀君     安井潤一郎君

  園田 博之君     御法川信英君

  中馬 弘毅君     小此木八郎君

  長勢 甚遠君     薗浦健太郎君

  西銘恒三郎君     新井 悦二君

  深谷 隆司君     平  将明君

  三ッ矢憲生君     中根 一幸君

  三原 朝彦君     北川 知克君

  笹木 竜三君     吉田  泉君

  中川 正春君     松木 謙公君

  馬淵 澄夫君     長妻  昭君

  山井 和則君     田名部匡代君

  笠  浩史君     平岡 秀夫君

  赤松 正雄君     福島  豊君

  笠井  亮君     高橋千鶴子君

同日

 辞任         補欠選任

  赤澤 亮正君     西本 勝子君

  新井 悦二君     小川 友一君

  浮島 敏男君     大野 功統君

  小此木八郎君     中馬 弘毅君

  片山さつき君   とかしきなおみ君

  亀井善太郎君     井脇ノブ子君

  北川 知克君     三原 朝彦君

  薗浦健太郎君     長勢 甚遠君

  平  将明君     深谷 隆司君

  高鳥 修一君     金子 一義君

  中根 一幸君     三ッ矢憲生君

  中森ふくよ君     小坂 憲次君

  丹羽 雄哉君     木原 誠二君

  御法川信英君     上野賢一郎君

  安井潤一郎君     菅原 一秀君

  田名部匡代君     山井 和則君

  長妻  昭君     馬淵 澄夫君

  平岡 秀夫君     笠  浩史君

  松木 謙公君     太田 和美君

  吉田  泉君     郡  和子君

  福島  豊君     赤松 正雄君

  高橋千鶴子君     笠井  亮君

同日

 辞任         補欠選任

  井脇ノブ子君     臼井日出男君

  上野賢一郎君     園田 博之君

  小川 友一君     丹羽 秀樹君

  木原 誠二君     大島 理森君

  とかしきなおみ君   坂本 剛二君

  西本 勝子君     河村 建夫君

  太田 和美君     田村 謙治君

  郡  和子君     笹木 竜三君

同日

 辞任         補欠選任

  丹羽 秀樹君     西銘恒三郎君

  田村 謙治君     中川 正春君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成二十年度一般会計予算

 平成二十年度特別会計予算

 平成二十年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

逢沢委員長 これより会議を開きます。

 平成二十年度一般会計予算、平成二十年度特別会計予算、平成二十年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として財務省主計局長杉本和行君、財務省主税局長加藤治彦君、厚生労働省医政局長外口崇君、厚生労働省医薬食品局長高橋直人君、厚生労働省労働基準局長青木豊君、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長大谷泰夫君、厚生労働省保険局長水田邦雄君、厚生労働省年金局長渡辺芳樹君、厚生労働省政策統括官薄井康紀君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

逢沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

逢沢委員長 本日は、年金・医療等社会保障問題についての集中審議を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。丹羽雄哉君。

丹羽(雄)委員 自由民主党の丹羽雄哉でございます。

 きょうは、年金、医療、介護など、社会保障の集中審議でございますので、この分野に絞って質問をさせていただきたいと思っております。

 急速な少子高齢化社会、そして厳しい財政状況の中で、今、国民の皆さん方が最も関心があるのが社会保障であり、最も不安を感じているのが社会保障ではないか、こう思っております。そこで、きょうは、福田総理、舛添厚生労働大臣を初め関係閣僚との議論を通じまして、国民の皆さん方が少しでも将来に向かって安心感を持てるような議論を通して、要するにそういった視点に立って議論を深めていきたい、こういう立場でございますので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。

 まず、年金の問題でございますが、年金の財政方式をめぐりまして、現行の社会保険方式と、すべての税財源で年金給付を行ういわゆる税方式の論争が最近にわかに活発になってまいりました。この問題につきまして、私なりの考え方、私見を交えながら、政府側の考え方を率直にお聞きしたいと思っております。

 今日、国民の皆さん方が一番危惧をしておりますことは、国民年金の未納、未加入問題と、欧米よりは三倍ないし四倍のスピードで急速に進む高齢化の大きな波の中で、特に若い方々の間で、果たしてこのまま給付と負担との関係がうまく回って、将来若い世代が約束された年金をもらうことができるかどうかということではないか、こう思っておるような次第でございます。

 まず最初に、この問題に国民の皆さん方が率直に不安を抱いていることに対しまして、総理はどのようにお考えになっておられますのか、御見解をお聞きしたいと思っています。

福田内閣総理大臣 日本は世界に例を見ないほどの急速な少子高齢化が進んでおりまして、社会経済の大きな変化とともに、昨今、年金記録問題といったような年金制度の信頼を失わせるような不祥事もありまして、若い世代の方はもちろんのこと、国民全般に年金制度の将来に対して不安を抱いている、こういう指摘があるのは当然でございます。

 しかしながら、年金制度というのは国民の老後生活を支える柱でありまして、特に、昨今のように、経済の成長は昔と比べて二%、三%というようなことになりますので、将来の生活に不安を覚える方は多いと思います。そういう社会経済の変化の中でも持続可能で皆が安心できるものにしていくということは、これは年金制度の必須条件であるというように思います。

 そういう意味で、平成十六年の制度改正におきまして、長期的な給付と負担の均衡を確保して、制度を将来にわたって持続可能とするための改革を行ってまいりました。

 年金制度を国民が安心できるものとしていくためには、喫緊の課題であります年金記録問題、この問題の解決に全力で取り組むということがもう大前提であります。御指摘の未納、未加入の方が生じないように、きめ細かな対応を行っていかなければいけません。また、基礎年金の国庫負担割合について、所要の安定した財源を確保する税制の抜本的改革を行った上で、平成二十一年度までに二分の一に引き上げていくという必要がございます。

 こういうような問題に真っ正面から取り組んで、年金制度を国民の皆様にとって確実で信頼ある制度にしていくようにしたいと思っておるところであります。

丹羽(雄)委員 最近、経済界などの一部から、基礎年金を全額税で賄う、いわゆる税方式を求める声が出ております。また、昨年の経済財政諮問会議でもこの点につきまして議論がなされまして、また、今般総理が立ち上げました社会保障国民会議でも議論がなされているところでございます。

 保険料未納問題が解消せず、保険料を払っていても本当に大丈夫なのかどうか、国民の皆さん方が御心配を抱いていらっしゃるのもまた事実でございます。

 また、税方式にすればその問題は解消する、こういう指摘もございます。しかし、この問題は、財源構成が変わるという問題と考えてよいのかどうか。私は、そう単純には言い切れない問題ではないか。

 まず、自由社会であります我が国におきましては、社会保障のみならず、すべての分野において、まず自立があり、そして次に、お互いに助け合う、総理もおっしゃっておりました共生もそうですけれども、いわゆる連帯と共助があり、最後に国が公助で面倒を見るという仕組みを、長い間、この国のよき慣行にしてまいっております。

 六十五歳になってから税で国がすべて面倒を見るというのは、この考え方そのものと逆転するのではないか。これについて、厚生労働大臣の考え方をお聞きします。

舛添国務大臣 今、丹羽委員おっしゃったように、まず自助をやる、そして社会全体で助け合う、これはもう年金だけじゃなくて、健康保険にしても介護保険にしても、同じ思想が貫いているんだと思います。そして最後に公助ということが来ますので、そういう意味では、社会保険方式でやる。そして、すべてを税でということになると、この理想と少し違うかな、そういう気が私はいたします。

丹羽(雄)委員 まず、いきなり公的な部分が前面に出てくるということが、私が申し上げたいことは、これまでの社会保障のあり方、そのほか、すべてのあらゆる分野においてそういういわゆるシステムとは異なるんだということを、大変重要な哲学でございますので、あえて申し上げたような次第でございます。

 我が国におきましては、世界に冠たる皆保険、皆年金によりまして、すべての国民が、その能力に応じて保険料を拠出し、何らかの給付、サービスを享受できるというセーフティーネットというものを構築してまいったわけでございます。

 税方式というのは、負担のいかんにかかわらず給付を行うという仕組みでございます。ですから、これは、いわゆる負担と給付との関係というのが断ち切られるわけですね。負担と給付との関係が断ち切られる。これによりまして、当然のことながら、お金の、所得のある方々は要するに受給を遠慮していただく、こういうふうになっていくと思います。

 私は、税方式にするということは、結局は年金制度を第二の生活保護に変質させてしまうのではないか、こういう危惧を持っているものでございます。全額税でございますので、給付水準が極めて低くなる可能性があるわけでございます。

 と申しますのは、これは、常識的に考えて消費税で賄うしかないわけでございますので、消費税について、消費税がどのぐらい上がれるかどうかによって年金の給付水準というものも決まってしまう。消費税を上げることが容認できれば、高い、要するに現行のような、六万六千円のような年金給付というものもあるいは給付できるかもしれませんけれども、この問題はそういったような問題を抱えているのではないか。そのときの政治情勢によって年金の給付額というものが動く可能性が多分にあるんじゃないか。そうすると、国民生活そのものに多大な影響を与えてくるんじゃないか。

 ですから、その辺のところにつきまして、私は社会保障の根幹にかかわる問題ではないかな、こう思っておるわけでございますが、福田総理の考え方をお聞きしたいと思います。

福田内閣総理大臣 現行制度の中の社会保険方式でございますが、これまでいろいろな議論がございまして、他方、最近さまざまな提案がなされております税方式、これにつきまして、その内容、長所、短所、実現可能性といったような観点から、なお十分な議論が必要であると考えております。

 また、社会保険方式かあるいは税方式かといったような問題は、御指摘のとおり、単に財源の問題にとどまらず、社会保障の根幹にかかわるという問題であると思っております。そのために、今般設置しました社会保障国民会議において、中長期的な視点に立って、年金制度を含め、社会保障のあるべき姿や、その中での政府の役割、負担の仕方などについて議論を行ってまいりたいと考えておるわけでございます。

丹羽(雄)委員 総理、恐縮でございますが、私は、要するに、消費税が上がるか上がらないかによって当然のことながら年金の給付水準というのも変わってくるんじゃないか、連動してくるんじゃないか、その辺の考え方というのはどういうふうにお考えになるのかということについて、恐縮でございますが、もう一度、ちょっとその辺、お考えがございますならば。それとも、全く関係ないんだということになるのか、その辺のところについてお考えをお聞きしたいと思います。

福田内閣総理大臣 これは、年金制度の基本的な財源調達の問題でありまして、保険がいいのか税がいいのかといったような議論になりますけれども、消費税で極端にすべてを賄うといったようなことにはならないと私は思っております。

 やはり、基本的な保障部分は税でやってもいいけれども、しかし、それを超える部分については保険制度でやるというのが、今そういうふうになっておりますけれども、将来においてもそれが妥当性が高いというように私は思っております。

 いずれにしましても、そういう考え方について国民会議でもって大いに議論してもらおう、こう考えているところなのでございまして、今、私は、どこまでというふうに思っておるわけではありません。

丹羽(雄)委員 これから議論をしていただくというところで、総理という大変重い立場でございますので、私からこれ以上お聞きすることは差し控えたいと思いますが、私が申し上げたいことは、いわゆる消費税をどれだけ上げるかによって年金水準も変わってしまうんだ、こういう可能性が多分に将来出てくるんだ、もし仮に税方式にした場合。そのときに、要するに年金水準というものが非常に不安定なものになるんじゃないかということを税方式の問題で私は危惧しているんだということを申し上げたいんだ。(発言する者あり)ちょっと、私、一生懸命やっているんですから、聞いてください。いろいろまた後で質問してください。

 ということを申し上げたいんだ、こういうことでございまして、これは大変重要な問題でございます。

 それから、社会保障のいわゆる給付というのは、九十兆円を上回る規模になっておるわけでございますが、実は、御案内のように、その三分の二は保険料によって賄われているんですね。三分の二は保険料。そのうちのまた半分が事業主、こういうことになっておるわけでございます。これは、医療にしても、年金にしても、介護にしても、同じことでございます。

 これをずっと調べてみますと、我が国の社会保障というのは、これは、いいか悪いか、その判断は別として、我が国の企業が、良質な労働力を確保したい、従業員の皆さん方が安心して働いていただきたい、こういうことで、病気のときやいわゆる老後の生活を支えて、企業の従業員のきずなを深めて、質の高い労働力を確保していく、こういうところからスタートしてきた長い間の経緯があるわけでございます。これが実は我が国の社会保障の出発点です。

 これは話は違いますが、児童手当なんかも全くそうなんです。国が先に始めたわけでもない、地方が始めたわけではない、いわゆる企業が始めた、それを後追いしたというのが事実なんです。

 だからこれは、いいか悪いかは別として、どちらかというと、我が国の企業が、いわゆる労働力、良質な環境の中で働いてもらうという中でスタートした、医療にしても年金にしても介護にしても同じだ、こういうことをあえて申し上げたいわけでございます。

 そういうような歴史的な経緯といいますか事実を無視して、未納、未加入があるからといって、直ちにすべて消費税で賄うということは、私は、現在、企業が負担している保険料が事実上、今度は、企業の、いわゆる事業主が半分負担をしている部分が家計に回るわけですから、要するに家計につけかわるということになるわけでございまして、これはかえって困難になるのではないか。

 こういう考え方につきまして、西川副大臣の考え方をお聞きしたいと思います。

西川副大臣 お答えさせていただきます。

 今、日本の社会保障制度、保険料方式でやっております。その中で、確かに民間の会社というのが、日本の、特に経済成長の時期からずっと、社会の中での厚生、社員の厚生という、大変力を入れてきて、いわば社員の人生、生活を会社がかなりの部分を請け負ってきたという面があったと思います。

 そういう中で考えますと、この税方式というのはいきなり公がどんと出てくるわけでございまして、今先生がおっしゃったように、大変会社と社員のきずなというのでしょうか、そういうものを深める一つの役割も果たしていたと思うんですね。

 今、会社に対しての、会社は株主のものだという考え方に動き出す中で、かなりそういう意識というのは変わってきつつあります。私個人としては、やはり会社の半分は社員のものだという思いがありますけれども、そういう中での今回の税方式か保険料方式かという議論は、大変社会の変化と大きく連動しているような気がいたします。

 そういう中で、やはり三分の二の半分を会社が負担していたという現実があるわけでございまして、そういう中で、仮に基礎年金部分を税方式にしたということだけでも、実は、十八年度で三・八兆円、これが大きく会社の負担から家計の負担に変わるわけでございますから、一つの考え方そのものが変わってくることだと思います。

 今、現に社会保障給付費が十七年度で八十七・九兆円ありますけれども、そのうち、保険料収入が六五%、五十四・七兆円です。そのうちの企業の負担、拠出が二十六・三兆円となっております。

 以上でございます。

丹羽(雄)委員 先ほどから私が申し上げておりますように、税方式を採用すべきだという主張の最大の理由は、どちらかというと、いろいろ同僚議員にも聞きましても、いわゆる未納、未加入問題というものが解消しないからだ、こういうことなようでございます。この未納、未加入問題、大変重要な問題でございまして、これは何とかしなければならない問題であるということは十分承知しておるわけでございますが。

 問題は、私は先ほどから申し上げておりますように、いわゆる給付のあり方から、だれが負担をするかという負担の主体まで、制度の根本を変えてしまう税方式をというのは、私は、十分に慎重に議論をしていかなければならないことですし、余りにもこの問題が最近、ムード的とは言いませんけれども、短絡的にちょっと議論されているのではないか、こういうような私なりの感想を持っておるわけでございます。

 これにつきまして、先ほど厚生労働大臣のお考えをお聞きしましたけれども、改めてもう一回お聞きしたいと思います。

舛添国務大臣 まず、自立自助、それから共助、公助、この哲学に必ずしも適合しない。それから、先ほど委員がおっしゃった生活保護との絡みをどう考えるのかということがございます。それから財源の問題があります。仮に税方式にした場合に移行措置をどうするのかということで、それまで年金の掛金を払ってきた方、その方とそうでない方との公平の問題。それから、それでは未納、未加入だった方をどうするのか。六十五年間ほっておくのか。そうすると六十五年以降にかかる、極論で言えば。そういうさまざまな問題をきちんと議論するべきだというふうに考えております。

丹羽(雄)委員 民主党も、さきの参議院選挙で、現行の消費税率五%を一切引き上げずに、六十五歳以上のお年寄りに対しては現行の基礎年金の水準の六万六千円を給付するという、私にとっては何か手品のような考え方を明らかになさったわけでございます。

 これは、私なりに好意的に解釈すれば、厳しい経済情勢というものを配慮したのかどうかわかりませんけれども、先ほどから盛んにやじを飛ばしていらっしゃる岡田代表が、前の参議院選挙のときは、私もはっきり岡田代表の口から聞いておりますけれども、いわゆる年金に特化した消費税を導入して消費税率を三%引き上げる、こう公約をおっしゃった。(発言する者あり)

 将来という言葉があるかどうかわかりませんが、いずれにしましても、私はキツネにつままれたような感じがいたしまして、こうもわずかな間で、くるくるくるくるこれだけ大きな方針が変わるのかな、大変器用な政党だな、こういう思いがいたしておるわけでございまして、また機会があったら岡田代表の方から、なぜ変わったのかということをきちんと国民の皆さん方の前に説明する説明責任があると私は思うんです。全く違うことをおっしゃっているということでございます。

 その中で、これも財源を埋めるためかどうか、現役でも、一度でも六百万円以上の収入のあった方からは、六十五歳までにあった方ですよ、つまり、ある意味でいうと二十歳から六十四歳までの間に、その方から半減をと。それから、一千二百万円以上の収入のあった方は、最低保障年金と称する年金をすべて辞退してもらう、こういう考え方を主張していらっしゃるのであります。

 しかも、私もこれはいろいろ報道等から見たところでありまして、確かな点はよくわかりませんけれども、一部には、いわゆる報酬比例部分というものに加入していない方に対する最低保障年金は給付しない、こういうことをおっしゃっている。そうすると、未納、未加入という問題が解消できるのかどうか、ここが私はよくわからない。

 未納、未加入というものを解消するために、いわゆる報酬比例、最低保障年金と言っているけれども、実際問題、比例報酬部分というものに加入しない者は最低保障年金も出さないんだということをはっきりとおっしゃっている幹部の方がいらっしゃる。そうなりますと、この問題はどうなのかな、こういう、私はこれまたキツネにつままれたような感じを持つわけでございまして、これも機会を持って堂々と国民の皆さん方の前に明らかにしていただきたいと思っておるような次第でございます。

 私が申し上げたいことは、六十五歳になってから六百万円とか千二百万円の方について辞退するということは常識的に考えられるんですけれども、その前なんですね。しかし、人生は山あり谷ありですから、四十五歳だか五十歳のときに六百万円、一千二百万円を稼いでいた人間も、六十五歳、要するにもうリタイアして、そうしたら病気になって一銭も働けなくなった、こういうようなことが実際にあるわけです。そういう方に対しては、あらかじめ預金をしておけ、預金をしてためておけ、こういうことしか考えられないわけでございますけれども、この辺のところはやはり、これは今二大政党と言われております、それでシャドーキャビネットも持っていらっしゃるわけでございますので、堂々と国民の前に明らかにしていただきたい。

 私は、社会保障というのはそういうものじゃない。長い人生、山あり谷ありなんですね。何があるかわからない。そのためにみんなで支え合っていくというのが社会保障であって、老後に働けなくなったときに給付を受けられるようにするのが社会保障であって、これは年金制度ではないんじゃないか、あるいは、社会保障というのは、セーフティーネットというのは何かということをよく御理解なさっていないのではないか、こう私は考えておるわけでございます。要するに、年金ゼロになるというのは、これまで、二十から六十四歳までに六百万円以上の収入があったら半減するとか、一千二百万円以上の収入があったら年金ゼロということは、私はおよそ社会保障とかけ離れた発想ではないか。

 これは、私も、民主党さん、小沢代表さんにお聞きしたいところでございますけれども、これにつきましてお聞きするわけにいかないわけでございますので、厚生労働大臣はどういうお考えを持っていらっしゃるのか、御感想をお聞きします。

舛添国務大臣 私の立場で民主党の案にどうこう言う、コメントする立場ではございませんけれども、今委員がおっしゃったように、現役の時代に稼いでいたからといって老後そのまま豊かであるかというのは、それはわかりません。特に、八十五まで生きるわけですから、リタイアして二十年、二十五年の先はわかりません。そういうときに、セーフティーネットとしての年金ということを位置づけるならば、全く年金が出ないというような形であるのは好ましくないな、そういうような感じがいたします。

丹羽(雄)委員 それでは、再度厚生労働大臣にお伺いしますが、すべての税財源で、現行の基礎年金の水準、六万六千円ですね、これを六十五歳以上のすべてのお年寄りの方に支給すると、給付総額というのはどのぐらいになりますか。

舛添国務大臣 平成二十年度時点で六十五歳以上の高齢者約二千八百万人すべてに六万六千円支給すると仮定して計算いたしますと、年間の給付総額は二十二兆三千億円でございます。

丹羽(雄)委員 二十二兆三千億円ということでございますが、それでは財務大臣にお伺いいたします。

 この給付を先ほどから議論しておりますすべて消費税で賄おうとすると、いわゆる消費税率にして何%になるのか。現行五%でございますけれども、これを何%ぐらい引き上げればなるのか。

 ただ、消費税率の問題も、地方の分も配慮した議論と配慮していない部分があるものですから、これは両方お答えいただければありがたいと思っております。

額賀国務大臣 今厚生労働大臣がおっしゃったように、六十五歳以上のすべての方々に給付をいたしますと、二十二・三兆円かかるということはおっしゃるとおりでございます。

 これを消費税率で賄うとどうなるかというお尋ねでございますけれども、消費税の一定の割合は地方財源となっていることはおっしゃるとおりでございますので、現行消費税率五%に対応する税収のうち国分の税収が平成二十年度見込みで約七・五兆円であることを換算すると、約一五%の消費税率に上げていかなければならないということになります。

 消費税率の一部が地方財源となっていることを考慮しない場合は、今の二十年度見込みでの消費税は十三・二兆円でありますから、これをもとに換算すれば、八%半ば程度への消費税のアップにつながるということです。

丹羽(雄)委員 私どもは政治家ですから、当然のことながら、消費税の問題にしても、負担の問題にしても、国民の皆さん方がどの程度容認してくださるか、この政治判断というものは大変重要なことだと思うんです。

 そこで、私が申し上げたいのは、今、現行の五%から何と一五%、一〇%以上も引き上げないと、当然のことながら地方も配慮してですけれども、要するに賄っていけない、こういうことでありまして、巨額な財源が必要なことでございます。そのためだけに消費税をこれだけ引き上げることについて、国民の皆さん方が果たして現時点において容認してくださるのだろうか、理解を得られるとお考えになるのか、総理はその辺のことについてどういうお考えをお持ちになっているのか、ちょっとお聞かせ願えますか。

福田内閣総理大臣 給付と負担の関係で、給付がこれだけあるので、そのコストは負担としてこれだけあります、それをどういうふうに払うかということで、それを税金でお願いしますというようなことになった場合に、さあ、どうなんでしょう。

 私も、断定的に申し上げる根拠はないんですけれども、やはり公平の原則とか年金の性格、老後困るだろう、だから最低のものを支給しよう、そういう趣旨。それ以上支給しようとすれば相当な年金額になりますので、やはり多い金額を差し上げるという趣旨ではないんだろうというように思います。

 そうしたら、その分を何で負担するか。私は、税金で一部負担してもいいし、また、個々のこれまでの収入によってその分を加算したものをもらうという、基本的には現在のやり方というようなものはよさそうに思うんですけれども、そういったようなものについても、どの辺のバランスでやるのかといったような議論もありますので、この辺はただいま立ち上げております国民会議なんかで議論をしてもらうのかな、こういうふうに思っておるところでございます。

丹羽(雄)委員 年金や医療、介護などの給付費は、御案内のように、高齢化によって年々増加いたしております。国の予算だけでも毎年七千五百億から八千億に近い、これだけの社会保障の自然増というものが毎年なされておるわけでございます。

 その一方で、歳出歳入一体改革、こういうものが進められておるわけでございますが、社会保障の伸びを抑制するように要請されておりまして、二千二百億円の要請、私ども、大変苦労しているところでございますけれども、高齢化に伴う給付の増加を抑制するために、二〇〇四年の年金の改正におきましては、御案内のように、保険料率を一八・三〇%に固定した、それから国庫負担を二〇〇九年から二分の一にするんだとか、いわゆる積立金の切り崩しだとか、こういう改革を行いました。それから、二〇〇五年には、御案内のような介護保険制度で、給付、いわゆる給食費というものを外した。二〇〇六年には医療制度改革、こういうものを行っておるわけでございます。

 後ほど質問をさせていただきたいと思っておりますけれども、医療や介護の現場はもう青息吐息でございます。税方式を使用する場合には、こうした事態というものを、医療や福祉の実態というものを十分に加味して考えなければならない。こうした事態の中で、消費税をすべて年金に、要するに特化するということが、果たしてこういう選択ができるかどうか。私は、およそ非現実的な議論ではないか、こう思っておるような次第でございます。

 厚生労働大臣に、このことにつきまして御見解をお聞きしたいと思います。

舛添国務大臣 今、大きな数字で、日本のGDP五百兆円、そのうち、年金、医療、介護を合わせて九十兆から百兆になろう。そうすると、GDPの二割をこれに割かないといけない。しかも、年金が、これも丸い数字で五十兆、医療が三十兆、介護が十五兆、比率で、丸い数字でそういうことでございます。

 ですから、消費税、これは国民がどこまで負担してくださるかにもよりけりですけれども、それをすべて年金に注ぎ込むということは、まさに私も今、日々、医療、介護をこの限られた財源の中でどうするかということで苦労に苦労を重ねておりまして、もう限界に近いということをいつも私は申し上げております。そういう中できちんと議論をすべきでありまして、すべて年金に消費税をというのは余り現実的ではないなという感じがいたします。

丹羽(雄)委員 仮に、全額税方式に移行するといたしましても、これまで保険料を払った人と保険料を払っていなかった人、これをどう扱うかという大変大きな問題がここで残されるわけでございます。

 税方式論者の中には、税を財源とする現行水準、つまり六万六千円の年金に上乗せして、これまでの保険料を払った期間に応じた年金を出すとか、あるいは、これまで保険料を払わなかった期間に応じて、税を財源とする現行水準六万六千円から少しずつ一定額を減額するとか、いろいろな案が乱れ飛んでおるわけでございますけれども、いとも簡単におっしゃいますけれども、果たして、私はそんなに簡単な問題ではないんだろう。

 私が申し上げたいのは、どちらの方式をとるにいたしましても、現行制度の加入というものが、期間が四十年間でございます。平均的な年金の受給期間が二十年程度。ですから、こう考えてみましても、完全に移行するためには半世紀以上にわたっていわゆる移行の期間が必要となってくる、大変これは重要な問題ではないか、こう思っておるような次第であります。

 その間は、既に保険料を払った年金の受給者が、さらに年金給付のための消費税を負担させられる、いわゆる二重負担なんです。保険料を払ってきた人がもう一回消費税を払う、こういう問題。それから、現役時代に保険料を払わずに無年金になった高齢者が、亡くなるまで年金をもらえないのに、年金給付のための消費税は払い続ける、こういう問題が起きてくるわけでございます。

 こういったことに対する不満をずっと抱えながら、この移行期間というものを過ごさなければならない、これは当然のことでありますが、私は、政治に携わる者として、現実問題として、こうした状態が混乱もなく半世紀以上も続けられるかどうか、このことを大変危惧しているんです。

 私はこれまで、今後半世紀以上も年金の論議だけに終始してしまっていれば、これもまた深刻になってくるだろう。今、舛添大臣からお話がございましたような医療であるとかあるいは介護であるとか、こういう社会保障という問題もすっ飛んでしまうんじゃないか、こういう危惧すらしておるわけでございますが、厚生大臣の考え方をお聞かせ願いたいと思います。

    〔委員長退席、遠藤(利)委員長代理着席〕

舛添国務大臣 委員御指摘の、今、仮に制度移行時に、二十の方は八十五まで生きるとすると六十五年間、これだけ移行に時間を費やすのかという問題があります。だから、やはり新しい制度に移行するときに、これは暫定措置とか激変緩和措置では済みません、六十五年ということは。

 それからもう一つ、仮に、私が六十五歳になる、年金受給資格が出る、こつこつ毎月きちんと払ってきた、しかしきょうから制度が変わって、私は、平均寿命でいうと、六十五だと二十年間生きますから、二十年間、自分がもらう年金のために過去一月の未納もなく払ってきたのに、また払えというのか、消費税をと。これは高齢者の間でいさかいが起きますよ。そうすると、丹羽さん、あなた払っていないね、だから消費税出しなさい、消費税一五にしました、五分は要らない、必要です、一〇%分はあなた払いなさい、そういうことができるか。大変な問題だ、事実上不可能だと思います。

丹羽(雄)委員 国民生活に影響のある、まさに負担の問題でありますから、私がここで申し上げたいのは、白地に絵をかくようにはならないんだ、このことをあえて国民の皆さん方によく御理解をいただきたい。そういう観点に立って……(発言する者あり)この後いろいろ申し上げますから、黙って聞いていてください。私はあえて申し上げている。その点を、お互いに議論を深めながら乗り越えていかなければならないんだということを、私はここで強調しておきたいと思っております。

 未納、未加入問題、大変大きな問題であることは言うまでもありません。年金全体の加入者七千万人のうち、実に三百万人の問題でもあるわけでございますが、厚生年金に加入しているサラリーマンについては、所得の多寡、多い少ないにかかわらず、比例した保険料が給料から天引きされているんですね。要するに、高い人がその分だけ高く引かれている、保険料が取られている。自営業者や厚生年金の適用を受けていないパートの方々が本来加入すべき国民年金、これに生ずる問題でも実はあるわけでございます。

 国民年金の保険料は定額で、現在一万四千百円でございます。四十年間保険料を納め続けて受け取ることができる年金額が、定額で、現在水準で六万六千円でございます。これは、まあいわば長期保険の宿命とも言えるかもしれませんけれども、実際問題として、低所得者であるとかあるいはパートの方々にとっては年金としてちょっと魅力に欠けるのではないか、このような御指摘もあるわけでございますけれども、これにつきまして、西川厚生労働副大臣に、どういうメリットがあるのか、この点を明らかにしていただきたいと思います。

西川副大臣 お答えさせていただきます。

 魅力と言われると大変厳しいお話かなとも思いますけれども、今回、二十一年度までに税負担が二分の一になるという、一応法律で明記されております。

 そういう中で、今、保険料方式は、考え方として、賦課方式と、少し積立方式ということも入っていると思うんですね。そういう中では、あらゆる民間の年金よりも、半分利子がついてくるんですよという考え方もできると思いますので、そういう意味では大変お得ですよ、そういうことがあると思います。それと、税金が入っているわけですから、当然、絶対安心です、国が最低保障します、そういうことになるかと思います。

 それと、今、未納、未加入の問題、これに対しましてさまざまな工夫を凝らしておりまして、一つは、払いやすくするということで、振替口座の利用とか、コンビニエンスストアで払い込める、あるいは、若年者猶予ということで、不正免除の問題がありましたけれども、正当な学生の間とか、そういう間には、きちんと説明責任を果たして猶予制度を導入する。そういうことで、平成十四年度のときに六二・八%でありました納付率が、今は六六・三%までふえております。目標値としては、十八年度目標七四・五%で、まだやや開いておりますが、精いっぱい努力していきたいところでございます。

丹羽(雄)委員 それでは厚生労働大臣にお聞きしますが、本来、国民年金の対象である農家や自営業者に比べまして、厚生年金の適用が望ましいと考えられますパートなど非正規雇用の方々に未納者が多いのではないかと考えられますが、実態がどうなっているのかということについて、まず第一点。

 そうだとすれば、私は、一日も早くこの被用者年金一元化法案を成立させるとともに、これは要するに、年金一元化法案に、パート労働者、現在三十時間というのを今度二十時間に引き下げるということが含まれておるわけでございますので、あえて申し上げるわけでございますが、法案を成立させて、これを突破口として、さらにパート労働者など非正規雇用の方々の厚生年金の適用を拡大させることによって国民年金の未納、未加入を減らしていくことができる、現実的にそういう観点に立って考えているので、御見解をお伺いしたいと思っております。

 私は、本来、賃金が支払われるべきときには、厚生年金といいますか、社会保障そのものが不可分でなければならない、こういう考え方に立つものでございます。そうはいっても、中には就業時間が極めて短く、厚生年金が適用されない人もいるだろうと思います。そのような方の中には免除対象者も私は少なくないと思いますけれども、せめて、所得税や住民税に取られているのと同様に、企業が、ここが大切なことなんです、企業が国民年金の保険料を代行して給料から天引きをして徴収機関に納付するということも検討してしかるべきではないか。厚生年金も、実はサラリーマンの方はみんなそうなんですが、あらかじめ天引きされるということがこれだけの高い収納率につながっておるわけでございますので、それでみんな加入しているということがありますので、その程度の親切さというものを企業に求めても、この未納、未加入問題の解決のために大変重要なことではないか、こう考えます。これにつきまして厚生労働大臣のお考え方をお聞きします。

    〔遠藤(利)委員長代理退席、委員長着席〕

舛添国務大臣 まず、データでございますけれども、いわゆる一号期間滞納者について言いますと、自営業者が二三・〇%、家族従業者が二一・三%、今御指摘の臨時、パート、これが二九・五%と、極めて高い数字になっております。

 今、委員おっしゃったように、やはり稼いだ給料というか得たものから自動的に社会保障の給付費は出すんだ、そのための、天引きであれ何であれ、仕組みについて企業が協力するというのは、企業の社会的責任から考えても、私は十分検討していいことだろうというふうに思います。

 それから、昨年の通常国会で提出した被用者保険の一元化法案ですけれども、これがうまくいけば今の問題も片づくわけですし、今委員おっしゃったように、パートについても適用するということを方針として拡大しただけで比率は上がってきておりますので、ぜひこの被用者年金一元化ということについて、一日も早く法律の制定をお願いしたいと思います。

丹羽(雄)委員 企業の協力も得まして、国民年金も代行していただく、こういうことを進めていきますと、あとは国民年金は、まさにみずから事業を営む、本来の意味でのいわゆる自営業者しか残らなくなってくるわけでございます。非正規雇用の方々に対しても、保険料の未納がなくなってくるわけでございますし、雇用労働者にふさわしい年金を給付することができるようになる、こういうことでございます。

 私がここで申し上げたいことは、何も未納者が多いからすぐに税方式にするんだという考え方ではなくて、税方式にしなくても問題は解決できるんだと。これまでどちらかというと、先ほど西川副大臣からありましたが、PRだとかコンビニとかいろいろありますけれども、こういったようないわゆる国民年金の納め方そのものも検討していく、そういうことによって未納、未加入問題というものが大きく解決に近づくのではないか、私はこう考えておりますが、改めて厚生労働大臣のお考えをお聞きします。

舛添国務大臣 今委員おっしゃったように、未納、未加入問題の解決策は税方式しかないということではないと思います。きめの細かい対策をやる、そのためにもぜひ被用者年金の一元化をやっていただきたいということとともに、さまざまなきめの細かい対応が必要だろう、そういうふうに思っております。

丹羽(雄)委員 恐縮でございますが、総理はどうお考えでいらっしゃいますか。

 要するに、国民年金のパートの方々に対して企業があらかじめ徴収して納めるという考え方についてどう思いますか。

福田内閣総理大臣 私も、今厚生労働大臣が答弁されたと同じ考えでございまして、税方式に頼らなくてもきちんと徴収する仕組みというものはできるというふうに思います。

丹羽(雄)委員 ありがとうございました。

 それでは、年金法の改正でございますが、二〇〇四年で所要の税制改正を行いました。そして、先ほど総理から御決意がございましたけれども、現時点では三六・五%、いわゆる基礎年金の国庫負担の割合が引き上がってきておるわけでございます。二〇〇九年までに二分の一、五〇%にするということが法律に明記してあるわけでございます。

 これは、税方式の議論もこれから大いに議論しなければならないと思っておりますけれども、私どもは、目前に迫りました国庫負担割合の二分の一への引き上げをまず実現するということが先決だと思っております。

 私は、いかなる事態があろうとも、この二分の一への約束は守らなければ、将来世代の給付と負担の前提が崩れまして、制度の崩壊にもつながりかねない、こう考えておるわけでございますけれども、二〇〇九年に二分の一引き上げを実現する、そのためにはことしの暮れまでに財源の確保にめどをつけなければならないわけでございますが、これにつきまして総理はどのような御展望をお持ちでいらっしゃるか、お聞きしたいと思います。

福田内閣総理大臣 当面の考え方、これはもう従来と変わっておりません。そして、二〇一一年度にプライマリーバランスを達成する、そういう大前提を持っておりますので、それに合わせるように予算の割り振りを考えていかなければいけない、そういう中でもって社会保障を考えるということであります。

 社会保障を考える場合に、これも大変窮屈な状況になってきております。ですから、ここのところは、個々の案件を考えた場合に悩ましい問題がたくさんあるんです。あるんですけれども、そういう中で、いろいろ工夫をしていかなければいけないと思います。歳入歳出改革を一体で進めるということは、これはもうしっかりとやらなければいけない、そういう中から社会保障財源が生み出されるように努力をしてまいりたいと思っております。

丹羽(雄)委員 ところで、年金制度に関しましては、年金給付の根拠となります年金記録問題、これまで社会保険庁の、私どもの想像を絶するような管理のずさんさがあったことによりまして、多くの記録が、基礎年金番号が未統合のまま、国民の皆さん方に多大な御迷惑やら御心配をおかけしているところでございます。

 いよいよこの四月からは、すべての年金受給者と現役の加入者の皆さん方にねんきん特別便、これをお送りし、市町村や企業、そして、社会保険労務士会の方々などの協力を得ながら、これまでお送りした方を含めまして、一億人の加入者の受給者全員、お一人お一人に、御自身の記録の確認をお願いするという新しい段階を迎えるわけでございます。

 結局のところ、この未統合の年金の記録問題、これを解決するためには、私は、国民の皆さん方のお一人お一人の御協力がなければできないんだ、このことを国民の皆さん方に率直にお願いをしなければならない。そのためには、ねんきん特別便を通じまして、国民の皆さん方にどういうような工夫をして協力を得るようにするのか、国民の目線に立った努力が求められているのではないかと思っております。

 これにつきまして、厚生労働大臣のお考え方をお聞きしたいと思います。

舛添国務大臣 昨年の七月五日の政府・与党の工程表に基づきまして、ただいまねんきん特別便をお送りしているところであります。

 ねんきん特別便にしましても、成り済ましとか不正とかそういうことを防止しようという観点もありましたので、いささか抑制的になっておりましたけれども、いろいろな皆さん方の御指摘を賜りまして、新たなバージョンをつくり、わかりやすいようにする。

 それから、窓口の対応にしても、その方が御本人だというのは、もうほとんどあらゆる記憶をよみがえらせる手だてをやるということで確実に手段を講じております。

 それから、ねんきん特別便のダイヤルの席数を、昨年末は三百五十でございましたけれども、現在千席までふやしておりますし、四月から特別便を送りますから、もっと対応体制を充実させたいと思います。

 それから、一月二十八日に社会保険労務士会の皆さん方に私から直接お願いして、市町村や農協、漁協、郵便局などに場所を借りまして、そのために、市町村を含め、関係機関には御協力を既に私から要請しておりますので、そういうところで社会保険労務士の方々にも御相談に乗っていただく、そういう努力をしております。

 それから、いろいろな新しい政策をとる、新しい手をとるときに、逐一、それが問題点がないか検証していく。そのために、私のもとに年金問題に通暁した方々、そしてとりわけ社会保険庁に批判的な方々も集めました作業委員会を設けておりまして、その作業とともに、国民の目線に立ってきちんとやる、一人一人の年金を確実にする。

 そのためにも、これはもう本当に御高齢の方はこの書類を見るのは大変だなという気持ちはわかります。しかし、ぜひ御協力いただきたい。そして、例えば結婚で名前が変わられた方、これは二月、三月、結婚で姓を変えられた方に対する特別キャンペーンをやっておりますので、ちょっと御注意して見ていただく。

 国民の皆さんの協力をいただければそれだけ早く、そして国民の皆さん方の記録をお一人お一人確実に取り戻すことができる、そういう思いで全力を今後とも挙げてまいります。

丹羽(雄)委員 ありがとうございます。

 私も、今度のねんきん特別便で国民の皆さん方がこの問題について全面的な御協力をしていただきますことを心から御期待を申し上げておるような次第でございます。

 年金の問題はこのぐらいにいたしまして、残りの時間で医師不足や介護従事者の確保の問題について若干お伺いしたいと思います。

 私、昨年、北海道の釧路でこんな話を聞きました。これまでは、いわゆる救急センター、休日夜間救急センターでございますが、医師会がやっていたけれども、今度は市が運営しなければならないんだと。一番の問題は夜間の部である。要するに、夜の七時から朝の七時まで十二時間、この救急医療センターに従事してくださる先生が必要なんだと。年間百二十日間である。勤務する医師が、百二十日間ということからでしょうけれども、最低で三人必要だということであるけれども、まだ一人しかめどが立っていないんだと。ですから、丹羽さん、どなたか医師を紹介してくださいませんかと。医師がいないとだんだんだんだんこの町には住めなくなってしまうんだということで、町そのものが崩壊していくんだ、こういうような話を聞きまして、私は、これが本当に医療崩壊なのかな、こういうことで、胸が痛む思いがしたわけでございます。

 これは、過疎地帯、地方の一部だけでなく、地方のいわゆる中核都市においても同じような状態が非常に深刻になってきておりまして、釧路はまだよい方でございまして、私がお聞きしましたところ、人口十万対医師の数で見ますと、釧路は二百十一人だというんですね、釧路は二百十一人。隣の根室に至りましては百人だというんです、百人。札幌市の三百人に比べますと地方の医師不足は大変深刻な状態である、こういうことでございます。

 額賀大臣、私の地元であります茨城県も同じような状態でございまして、額賀先生と私と同じ選挙区でございます小美玉市の方の国保病院でも、眼科の医師を筑波大学から何とかしてもらえないかとか、こういう話をしょっちゅう聞かされておるわけでございまして、これは大変大きな深刻な問題でございます。

 そこで、舛添大臣、たびたび恐縮でございますが、今の話をお聞きになりまして、この医師不足対策につきまして、どういうような認識とどういうような対応をお持ちでいらっしゃるか、お聞きしたいと思います。

舛添国務大臣 今の釧路のような話、また茨城のような話、私も全国各地で聞いております。先般、長野県の飯田市に参りましたけれども、やはり同じような状況であります。幸い、飯田市立病院は信州大学から一人派遣していただくということで、この四月から里帰り出産をやめようというのをやめないで済むようになりました。

 さまざまな要因があると思います。特に産科、小児科なんかは訴訟リスクの問題があったり、女性の医師の比率がふえていたりとかいうようなこともございます。

 昨年五月に、政府・与党で緊急医師対策をいたしましたけれども、もうそれでも喫緊の課題に間に合わないということなんで、今全力を挙げて、私自身、産科医の方々、救急医学会の方々にお願いして、何とか出していただけないかと。

 そういう中で、今釧路の例がありましたけれども、臨床研修医のあり方、特に大学の医局の力が落ちている。だから、札幌医大の先生が、ちょっと大変だけれども、君、釧路に二年間行ってくれないか、そうするとその後は札幌に戻れるよ、こういう形でやっていたのが、今、そうでなくなった。

 その他、多々問題はありますけれども、喫緊の課題に全力を挙げて取り組むとともに、例えば医師不足というけれども、では、本当に不足しているのかどうなのか、偏在の問題はどうなのか、こういうことを含めて、やはり私は長期ビジョンが必要だと思いますので、安心と希望の医療ビジョンということで、今、私のもとに直属の研究会を設けて、長期的な対策についても取り組んでいるところでございます。

丹羽(雄)委員 大変結構なことでございますけれども、医師の数は、OECD諸国の中の平均が人口千人に対しまして二・六人なんですね。フランス、ドイツは三人以上、それから、アメリカやイギリスでも二・四人というレベルでございます。我が国は二・〇人でございまして、OECD諸国の中で下から四番目なんです。

 他国に比べまして医師の数は少ない状況にあると私は思いますけれども、まず、我が国は、医師の数の問題についてどういうお考えなのか。大臣、いろいろ御苦労なさっていらっしゃるようでございますが、これで十分とお考えなのか、その点についてお聞きしたいと思います。

舛添国務大臣 私は、一般的に言って医師の数が十分ではないと思っていますから今一生懸命対策を立てておりますが、しかし、例えば人口千人当たり何人いれば十分なのか、不十分なのか。

 これは、委員御承知のように、国によって非常に違います。アメリカは余り数が変わらないんですね、二・〇と二・四ぐらい。ただ、アメリカの場合は、メディカルクラークとかアシスタントがたくさんいて、お医者さんがお医者さん本来の業務に集中できるようになっております。

 そういうことを考えますと、ただ単に数がどうだということではなくて、今はやはり診療科による偏重、都市と地域による偏重、開業医は多いじゃないか、こういう話もありますので、そういうこと全体を踏まえて、余り、数が不足している、ふえているということを議論するよりも、今問題の課題について手を打っていく、これが大事だろうというように私は思っております。

丹羽(雄)委員 それでは、医師の数、それは私も今の中でやりくりしなければならないことも十分承知しておりますけれども、医師の数をふやすために大学の医学部の定員をふやす考えがあるのかどうか。定員をふやさないと、今のままですと医師不足というものが将来とも続くのではないか、こう思っておりますけれども、これにつきまして、文科大臣の考え方をお聞きしたいと思います。

渡海国務大臣 今、舛添厚生労働大臣からもお答えがあったわけでありますが、現時点をどう見るかという問題もございます。同時に、医師の養成というのは大変時間がかかるわけでございますから、中長期的なビジョンというものをしっかり立てて、その中で考えていかなきゃいけない。その中で、今、緊急医療対策として定員枠というのをふやしましてやっているわけでありますけれども、今後どういう方向に行くかということは、なおさらなる努力をしていかなきゃいけないんだろうなというふうに私は考えております。

 この点につきましても、厚生労働省、また大臣ともよく話をしまして、長期的なビジョンに立った全体的な定員というものを考えていきたいというふうに思っておるところでございます。

丹羽(雄)委員 それでは、介護従事者の問題についてお伺いをしたいと思っております。

 私、昨年の暮れ、御婦人の皆様方が大勢集まるある決起集会に、依頼を受けまして、出席をさせていただきました。全国から集まった介護福祉士など、いわゆる従事者の皆さん方が、介護の厳しさ、待遇の低さ、悪さ、月に十四万から十五万という低賃金のために勤務が長続きしないんだ、こういったような切実な生の声をお聞きしたわけでございます。皆さん、介護の仕事はやりがいがあるけれども、これでは生活ができないんだ、みんなやめていったけれども私は要するに乗りおくれてしまったとか、こういうような話をお聞きしたわけでございます。介護福祉士やケアワーカーまたデイサービスに携わってくる学生などの真剣な訴えというものは、私は、これは大変心にずしんと響くものがあったわけでございます。

 こうした介護従事者の現状をどのように認識されていらっしゃるのか、厚生労働大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

舛添国務大臣 介護に携わる方々の処遇が必ずしもよくない、その意見を聞いております。今、生きがいだけではやっていけないんだ、やはり生活していかないといけないということで、極めて切実な声を聞いておりますので、私も今の問題はきちんと把握しています。

丹羽(雄)委員 時間が参りました。

 これまで私は、年金の問題に始まりまして、医療、介護の人材をめぐる問題について若干お聞きをしてきたわけでございます。

 そこで、改めて社会保障全体の状況を見ますと、二〇〇四年から二〇〇六年にかけまして、年金、医療、介護の一連の改革を進めてきまして、将来の高齢化に伴います給付の伸びを、先ほども申し上げましたけれども、七千億から八千億伸びがあるということを二千二百億ずつ五年間かけて、要するに抑制していこうじゃないか、こういうことで、こういう見通しになってきましたけれども、そういった一方で、今、一、二御質問を申し上げましたように、医師不足の問題であるとか介護の問題であるとか、この医療、介護の現場は大変悲惨なものになってきているということ、これも紛れもない事実ではないかと思います。

 私は、財政再建の旗はおろすべきではない、こういう考え方を持っておりますけれども、一方で、この社会保障というのは、総理御存じのように、市場経済の中で競争できない方々が、社会保障の中でセーフティーネットとして救済されている、こういう側面があるわけでございます。ですから、私は、よく、一時はやりました抜本改革、抜本改革という言葉に踊らされることなく、やはり大切なことは、医療や介護、こういった現場というものを十分に配慮して、十分にこれを洞察して、いわゆる数字のつじつま合わせであってはならない、これでは国民の皆さん方が安心できないんだということをあえて申し上げたい。

 一番大切なことは、冒頭申し上げましたように、セーフティーネットとしての社会保障は、国民の皆さん方が安心感を持つことである。福田政権は安心感を持つ政治ということをおっしゃっていらっしゃるわけでございますけれども、その意味において、最後に総理の御見解をお伺いしたいと思っております。

福田内閣総理大臣 社会保障は、若い人にとっても関心事であり、また高齢者にとってはまさに受給を受ける、そういうことにあるわけでありますから、長い人生の中で、いかにして自分が、将来何かあったときでも安心して生活できるんだというよりどころを求めなければいけない、それを与える制度が社会保障だというように思いますので、この制度をきちんとしたものにすることはとても大事でありまして、そしてまた、公平感のあるものでなければいけないということ、そしてまた財政的に支えられるものでなければいけないといったようなこともありますので、なかなか難しいテーマなんですね。だけれども、これはつくらなければいけないんですね。

 そしてまた、この社会保障制度も、戦後ずっと続けてきまして、積み足し、積み足してやってきた部分もあるんだろうと思います。ここでもって全部、特に少子高齢化という顕著な兆候が出てきたそういうときに、ここで一回考え直してみるということも必要なのではないのかな、それが今の時期だというふうに思いますので、しっかり検討させていただきたいと思いますし、また先生方の御意見も十分に承りたい、こう思っているところでございます。

丹羽(雄)委員 ありがとうございました。

 時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。

逢沢委員長 これにて丹羽君の質疑は終了いたしました。

 次に、福島豊君。

福島委員 公明党の福島豊でございます。よろしくお願いいたします。

 総理にありましては、韓国の新大統領との会談、大変御苦労さまでございました。外交日程も大変お忙しい中でこの委員会で質問させていただくことを、改めて御礼を申し上げたいと思っております。

 総理は国民の安心ということを強く主張しておられると思います。今、国民の中にはさまざまな不安が広がっていると私は思います。

 一つは、高齢化がさらに進んでいる、その中で自分の生活は大丈夫なんだろうか、こういう心配。そしてまた、医療の崩壊ということも言われております。病気になったときに本当に診てもらえるんだろうか。たらい回しという事態もあるわけであります。そしてまた、少子化が進んでいるじゃないか、日本の将来はどうなってしまうんだ、こういう心配もあると思いますし、本日も国の債務について新しい報告がありましたけれども、これだけ国の借金がふえて本当にこの国は大丈夫なのかねと。また、サブプライムローンの問題もあります。日本の経済はこれからも成長を続けていくんだろうか。

 こうしたさまざまな不安に対してきちっとこたえていく、これが今の政治の役割であります。国民のお一人お一人に安心をしていただける、そういう方向性をぜひ総理のリーダーシップでお示しいただきたい、冒頭そのようにお願いを申し上げる次第でございます。

 ただいまも年金の問題についていろいろと御議論がございました。年金制度、税方式か社会保険方式か、こういう議論があったわけでありますけれども、私は、いま一度現実に立ち返って、年金というのは高齢期の所得保障の制度であります。現在、日本の高齢者の方々の所得保障というものは本当にしっかりしているのかどうか、この事実をきちっとすることが必要だと思います。

 昭和三十六年、国民年金の創設によりまして国民皆年金制度がスタートした。そこから半世紀以上が過ぎたわけであります。年金制度によって、どの程度日本の高齢者の方々の所得というものが安定してきているのか。

 お手元に資料をお配りさせていただいております。これが、最近の国民生活基礎調査等に基づく実態であります。

 資料の1、高齢者世帯の年間所得分布、百万円未満の方は一五・七%。全世帯におきましては六・〇%でございますから、倍以上も高齢者においては多いということであります。約六世帯に一世帯は百万円未満の所得で生活をしておられる。

 二枚目は、高齢、特に女性単身世帯の所得の低さということであります。六十五歳以上の者のいる世帯、二千七百八十五万世帯の中で、男性の単独世帯は百二十一万世帯、女性の単独世帯は四百二十八万世帯。

 この単独世帯に着目しますと、五十万円未満の年間の所得しかない方々は、男性では六万世帯、女性は三十五万世帯と、女性の単身世帯の所得の低さということが浮き彫りになるわけであります。これを百万円未満まで広げましても、女性の場合には百十三万世帯、百五十万円未満に広げましても九十四万世帯と、男性を圧倒的に上回る数があるわけでありまして、合計しますと、百五十万円未満の世帯は二百四十二万世帯。これは実に、高齢女性単独世帯の二世帯に一世帯は百五十万円未満である、三世帯に一世帯は百万円未満である、そしてまた、十世帯に一世帯は五十万円未満の年間の所得で生活をしておられる、こういうことになるわけであります。

 そして、もう一枚おめくりいただきますと、三枚目のスライドということになりますが、単身高齢者の相対的貧困率の変化、これは白波瀬佐和子先生の資料でありますけれども、一九八六年と比較して二〇〇一年の段階で、相対的貧困率、これは世帯全体の等可処分世帯所得の中央値より五割に満たない比率というふうに定義されておりますけれども、どう変化したか。

 男性の場合には、死別の場合には五〇%から二四・七%、また、離別の場合には四七・四%から二七・八%と、これは一九八六年に比べると格段に改善をしておる。これは年金の充実ということがあるんだと思います。

 しかし、未婚の場合に、これはいろいろな事情があったんだと思います。もともと現役のときに所得が低いというようなことが背景にあるんだろうと私は思いますけれども、五八・三%が四三・五%、一五%程度の改善にしかすぎません。そしてまた、女性の場合は、特に離別の場合は六四・二%から五五・一%、実はこの十五年間で一〇ポイントも改善をしていないんですね。相対的な貧困率の高さがいまだに続いている、こういう事態が指摘されるわけであります。

 続いて四枚目でありますけれども、年金額の格差ということで、これは年金制度基礎調査の数値でありますけれども、これを見てわかりますことは、厚生年金、正社員中心で現役世代に働いた方は、男性で二百十七・七万円ということで、これは大丈夫だろうという水準だろうと思います。しかし、女性は、正社員中心で働いたとしても、やはり所得格差というものがありますから、百十九万七千円でしかない。それ以外の常勤パート、アルバイト等にいきますと、これは八十万円もいきません。これが実態であります。男性においても同じでございます。

 そうしたことから、もう一枚めくっていただきまして、こうした方々は最終的には年金だけで生活できないということから、被保護世帯、生活保護の受給世帯に移っていくわけであります。

 被保護人員数における高齢者の割合、これも厚生労働省の調査でございますけれども、平成十七年のものでございます。

 総数百四十三万三千二百二十七人のうち、六十五歳以上は五十五万五千九十六人、三八・七%が高齢者であります。そのうち、女性が三十二万四千五百五十六人、二二・六%、男性は二十三万五百四十人、一六・一%。女性の単身者は、二十三万五千五百七十四人、一六・四%という比率を占めております。

 先ほどもありましたように、所得が五十万円未満の女性の単身世帯は三十五万人でありますから、そのうち三分の二程度は生活保護の方に移行しているということが言えるんだろうと思います。直接つなぎ合わせたデータではありません。

 被保護高齢者における年金の受給状況であります。これは、次のスライドでありますけれども、平成十年と平成十七年を比較しております。

 被保護人員数九十四万六千九百九十四人から百四十七万五千八百三十八人と、五五・八%の増加をいたしております。このうち、六十五歳以上の者の増加率は、三十一万九千八百二十人から五十五万六千三百八十人と、七四%の増、平均よりも拡大をしている。

 そして、年金受給者に至りましては、十七万二千九百四十人から二十六万二千三百二十人。これは、五四・一%の受給率から四七・一%ということで、若干の低減がありますけれども全体としては増加をしておる。非受給者に至りましては、十四万六千八百八十人が二十九万四千六十人と倍増している。要するに年金の、いわゆる所得保障というものが十分届いていないところがあって、そこのところが生活保護の世帯の増加の一つの大きな要因になっている、こういうことが言えるんだろうというふうに思います。

 もう一枚めくっていただきますと、これは無年金者数が将来一体どのくらい出るんだろうかと。

 これはたしか長妻先生の要請で厚生労働省が推計を出した数字だと思いますけれども、今後納付できる七十歳までの期間を納付しても二十五年に満たない者、六十五歳以上で四十二万人、六十歳から六十四歳では三十一万人、そしてまた六十歳から六十四歳で現時点において二十五年に満たない者、これは追納していただければ二十五年になるというものでありますけれども、そこまで入れると六十五万人。六十歳未満、下限は、これは四十五歳ということになりますけれども、四十五万人。これだけ予備軍が実は待機をしているというのが実態であります。

 六十歳から六十四歳の方でありましても、実際にこれから七十歳まで追納して本当に年金受給世帯になるんだろうかと言われると、私は、それは大変疑わしいんじゃないか、そのような資力というものを持ち合わせていないんじゃないかというふうに思います。

 なぜこういうことになるのか。その次が、OECD諸国における年金制度の構造ということで、最近OECDの本が翻訳をされましたけれども、一階部分、二階部分は、それぞれの国にあります。一階部分は再分配的な年金制度、そしてまた二階部分は所得比例の年金制度、これが一般的な形でございます。

 日本の年金制度というのはある意味で特殊だと、私はこのOECDのレポートを見て思いました。

 一階部分については、OECDのレポートでは、社会扶助、それから特定階層向け年金、基礎年金制度、報酬比例制度の一部としての最低年金、この四つの類型に実は分けております。そして、三十カ国のうち、どの国がどの制度を持っているのか。一つだけの制度のところもありますし、複数の制度を持ち合わせているところもあります。

 基礎年金制度に着目しますと、これは、一律の年金を給付するという制度であります。それは十一カ国にあるわけでありますけれども、しかし、その中で三カ国、日本、韓国、ニュージーランド、ニュージーランドは税方式でありますけれども、これは基礎年金制度だけなんですね。それ以外の八カ国というのは、特定階層向け年金であるとか報酬比例制度の一部としての最低年金、これは制度がちょっと違うわけでありますけれども、そういうものを組み合わせている。それは、高齢者の所得に応じて一定の配慮が加えられるような制度になっている。

 このOECDのレポートを見ると、日本の基礎年金制度はすべての人が全部同じ額をもらっているような報告になっていますけれども、現実問題としては、すべて同じ額をもらっているわけではありません。それは、現役のときに年金の保険料の未納期間というものがある、所得が低ければ低いほどそういう期間は長い、したがって、もらえる基礎年金の額も低い、こういうことになるわけであります。そういう事態に対して、それをきちっと補完するような制度、これはさまざまなOECDの諸国にあるわけでありますけれども、日本は裸のままの基礎年金制度だ、ここのところに実は一番大きな問題があるのではないかというふうに思います。

 もう一枚めくっていただきますと、国民年金制度、基礎年金制度の問題点ということで、現役世代のときに所得が低い、国民年金の保険料も納められるか納められないかわからない、かつかつのところで納める。ですから、年金記録の問題については大変な怒りが沸き起こったということもあるわけであります。

 資産形成も同時に不十分であるでしょう。結果として、受給資格が得られないとか、受給資格を満たしたとしても低年金だとか、こういう方々が発生してきて、そしてそれは生活保護という形で、これはラストリゾートでありますけれども、対応する、こういう流れになっている。

 今、税方式か社会保険方式かということで、未納、未加入の問題がいろいろと議論されます。そこからいきなり税方式というのは、私は話が少し飛躍しているんじゃないかという気がいたします。問題は、こうした年金が不十分で、高齢期の所得保障が十分なされていない、こういう方々に対して、今の日本の年金制度をどう変えるべきなのか、安心していただくためにはどうすべきなのか、こういう議論がなされるべきではないかと思います。

 実際に、未納、未加入の方々の問題にしましても、全体の五%の問題であります。五%の問題だから小さいということではなくて、この方々に対して本当に高齢期の所得保障がしっかりできるような制度を今こそ議論すべきじゃないか、私どもはそう思っております。

 そこに、最後に私の意見のまとめですが、税方式への転換、先ほど丹羽先生からもいろいろとありましたけれども、いろいろな問題があることは事実であります。巨額の財源をどうするのか、移行期の問題をどうするのか、移行期の組み方によっては、こうした無年金、低年金の問題というのは十分解消しないということにもなります。そしてまた、みずから納めた保険料について、それの貢献をどう評価してくれるんだ、もう少し上乗せの年金が欲しい、こういう意見も当然私は生まれてくると思います。

 何よりも、制度を大きく変えるということは、大変な事業であります。むしろ私は、高齢者の所得保障という、年金が何をしなければならないのか、こういうところに着目して、今の年金制度の足らざる部分を真正面から見据えて、どう制度改革するんだ、こういう議論をする方がより現実的ではないかというふうに思っております。

 現実的には二つあると思います。一つは、被用者年金を拡大する。ただこれは、今まで拡大していなかったので、これからそれがきいてくるには相当時間がかかりますけれども、被用者年金の拡大。現在、政府が法案を出されておりますけれども、その成立をぜひとも図るべきであるというふうに思っております。

 一方で、これは新しい制度として、低年金や無年金者の方々への所得保障を充実させる方法を考えるべきだ。補足年金という制度、私どもは加算年金ということを、本年はいろいろと、いろいろな場で主張してきましたけれども、そういう制度について考えるべきではないか。そしてまた、これから発生する人を少しでも減らすためには、受給資格期間を短くすべきではないか、そしてまた追納の拡大をすべきではないか、こういった対応をすべきではないかと思います。

 税方式か社会保険方式かということでさまざまな議論がありますけれども、やはり、原点に戻って、高齢者の方々の所得を安定させて、安心して生活していただく、これに対してどういう答えを出すのか、こういうことで、私は、社会保障国民会議でもしっかりと御議論していただきたい、そのように思っております。

 社会保障国民会議では年金の問題も当然大きなテーマになるわけでありますが、総理のこれからの取り組みについての御決意をお聞きしたいと思います。

福田内閣総理大臣 今委員が御指摘されましたように、社会保障制度は非常に複雑な様相を示しているわけですね。また、今の日本の社会というのは転換期でありまして、社会構造が変わっていくという時代でありますので、まさにそういうような転換をどのようにリードしていくかということは、この社会保障制度の大きな目的だというふうに思います。

 そういうような観点から、社会保障国民会議を開催いたしておりまして、今後の社会保障のあるべき姿、そしてその中での政府の役割、負担の仕方などについて議論を行っていくということにいたしております。

 年金制度については、御指摘のとおり、若い世代の雇用の問題等とあわせまして、生涯を通じた所得の確保という観点からの検討が必要と考えておりまして、社会保障国民会議に設置した三つの分科会の一つのテーマとして、所得確保・保障を設定いたしております。

 御指摘の低年金とか無年金の問題を含め、高齢者の所得保障の問題は、年金制度のみならず、社会保障全体にかかわる問題でありますので、幅広い視点から検討されるべきテーマと認識しております。

 いずれにしましても、年金制度は、国民の老後生活を支える柱であります。これを確実で信頼できるものとすることが、高齢者にとっても、また若い世代にとっても重要であります。社会保障国民会議における議論を通じて、少子高齢化時代の国民の立場に立った議論を行っていきたいと思っております。

 また、この会議では、さまざまな分野の方からいろいろな意見をお聞きしたい、もちろん政治家からも話を聞きたい、また政党からも意見を出していただきたい、そのように思っているところでございます。

福島委員 しっかりと御議論いただいて、国民が安心できるビジョンをぜひつくっていただきたいとお願い申し上げる次第でございます。

 次に、年金記録の問題でございます。先ほど丹羽先生もお取り上げいただきましたけれども、未統合記録の統合の作業の進捗状況について簡単に御報告いただきたいと思います。

舛添国務大臣 昨年七月五日の政府・与党の工程表にしたがいまして、まず、コンピューター上の名寄せ、これを今、結果が出たものから順次お送りしております。

 それから、四月から十月まで、これは、それにかかわらない方々にも送る。つまり、十月の段階で、一億人の方すべてにねんきん特別便をお送りする。

 それから、そのほかさまざまな課題が出てきたことについては、一つ一つ着実に対応していって、一人一人の年金の記録を確立しようと思っております。

 そして、社会保険労務士の方々の御協力も賜れましたし、年金のコールセンターについても三百五十を千にふやす、さらに今後また拡充していって、万全の体制で臨みたいと思っております。

福島委員 私の地元でも、最初ねんきん特別便が着きましたときに、こんなものは見てもわからないということで、事務所に問い合わせがあったりいたしました。その後、大臣におかれては、本当に柔軟に、臨機応変に、国民の目線に立ってこの年金記録問題の解決を図るんだということで各般のお取り組みをいただいていると思います。

 四月からは、すべての受給者そしてまた被保険者にも特別便を出させていただく。国民の皆様の御協力がなければ進まない作業である。ぜひとも大臣におかれましては、さまざまな場で国民の皆様に御協力をお訴えしていただきたい、このように思うわけであります。

 そしてまた、大事なことは、三月までに、政府が約束したとおり、コンピューター上の照合はすべて終えて、そしてそれを発送させていただく。しかしながら、四月から一体どうするんだと。そしてまた一方で、民主党の皆さんがつとに御指摘ありますように、八億五千万枚の台帳の問題をどうするんだ、こういう指摘もあるわけであります。

 実際に、ねんきん特別便を出しまして、訂正がなされている比率というのは、これはお手元の資料でありますと13という番号が振ってありますけれども、これは、二月七日現在で、百二十八万人に発送させていただいて、そして訂正に至りましたのは約十二万人である。この数字を見ると、非常に確率の高い方々にお送りしているにもかかわらず、一割でございますね、一割の訂正にしか至っていない。

 こういうことを考えると、四月からの作業をどう進めていくのかということについて、政府からの明確な発信があってしかるべきではないか、私はこのように思うわけでありますけれども、この点についての大臣の御見解をお聞きしたいと思います。

舛添国務大臣 ねんきん特別便が最初非常にわかりにくかったということで、特に、訂正ありなしについては、お手元に届いて、そこに印字されているものについての訂正ありなしですから、本来は、隠してあるわけですね、見つかったものを。これについてのお問い合わせは、ほぼ全員がやっていただかないといけない。これを繰り返し、新聞広告を含め、今度これからはテレビのスポットも使って、国民に訴えていきたいというふうに思っています。

 それから、約三八%の千九百七十五万件につきましてもこの二月、三月、結婚なさった方は旧姓と新しい姓、これをチェックしてくださいよ、そういう特別キャンペーンをやったりというようなことで、これの解明もやっていきたいと思います。それから、紙台帳につきましても、八億五千万という数、これはモニタリングをやる、サンプリングをやる、こういうことで、一つ一つ、どういう形で対応していけるかということを考えていきたいと思っています。

 そして、そのためにも、作業委員会を私のもとに設けまして、専門の方々に、逐一、すべての問題について答申をし、そして、毎日のようにこの作業をやって、より完璧なものにしたいということで、今後とも引き続き努力を継続してまいります。

福島委員 しっかりと頑張っていただきたいと思います。そしてまた、四月以降、どのようにお一人お一人の方が御返事いただけるのか、こういう状況もしっかりと注視をしていかなければならないと思っております。

 いずれにしても、国民の大切な財産でありますところの年金権でございます。最終的な解決をどのように図っていくのか。これは私は、与野党を超えて、どういう対応をすべきなのかということについて、双方が知恵を出し合って、そしてまた政府としては、そうした声を柔軟に受けとめて作業を進めていく、このことが非常に大切なことだというふうに思うわけであります。民主党の皆さんにもこのことはぜひ御協力をいただきたいというふうに思うわけであります。

 そしてまた、日本年金機構、これは新しい組織どうなるんだねと。このことについては、メディアでも、本当に大丈夫かね、こういう御批判もあります。それは、やはり十分な情報が伝わっていないのかなと。こういうふうに新しい組織は確実なものとして構築していきます、こういうことが適切なる時期に明確に発信される必要がある、私はそのように思いますが、政府の御見解をお聞きしたいと思います。

舛添国務大臣 社会保険庁が、積年の病弊というか、もう本当に多くの問題を抱えている。これはいろいろな委員会でも既に指摘されているところでありますので、こういうものを一つ一つつぶしていく、民間のいい要素はそれを入れていく、それから、例えば国税庁の持っているような非常な厳しい取り立ての権限、こういうものについてどう参考になるか。

 そういうことで、ただいま、内閣官房のもとに年金業務・組織再生会議が開かれております。これは、あえて厚生労働省じゃないところにそれを置いてやるということで、それで、本年の五月を目標に最終的な整理が行われた後に、六月をめどに基本計画をつくりたいと思っておりますが、具体的な事項につきましては私が任命する設立委員が行います。

 この設立委員の任命に関しましては、私みずからが責任を持って、要するに、厚生労働省の役人、社会保険庁の役人がこういう人がいいですよと言ったような人をそのままうのみにするのではなくて、極めて厳しい立場で私自身が責任を持って任命する、そういう覚悟で立て直す、もう二度と社会保険庁と同じようなことはやらせない、二十二年一月に成立する新しい組織においては。国民の信頼、これを回復する、政府全体に対する信頼、国家全体に対する信頼を損なってきたわけですから、二度とこういうことのない、すばらしい組織に生まれ変わらせたい、全力を挙げて取り組みます。

福島委員 大臣にしっかり頑張っていただきたい、そのように思います。

 そしてまた、日本年金機構という新しいシステムをつくると同時に、国民とのインターフェースとして社会保障カードをしっかりとつくる、この両方が同時にスタートしていくということが、年金制度に対して、また社会保障制度全般に対しての信頼を回復するために極めて重要な取り組みだと思います。この点についてもいろいろと検討がなされておりますが、政府の検討状況をお聞きしたいと思います。

西川副大臣 福島委員にお答えいたします。

 今回の年金番号の統合の問題、本当に大きな混乱を起こした中で、そういう中でしっかりと一つの基礎年金番号にきちっと統合する、そしてそれが、実は、健康保険証やあるいは介護保険証とも連動して使える、きちんとしたわかりやすい一つの形としてできないものか、そういう検討の中から、社会保障カードの導入ということが昨年七月五日の政府の検討委員会でも決まりました。

 その中で、平成二十三年度を目途に導入するということが決まっておりますけれども、今回、社会保障カードをつくるに当たりましては、このあり方に関する検討会というのを設置いたしまして、先月、これまでの議論の整理として、社会保障カードの基本的な構想に関する報告書をまとめたところでございます。

 そして、今後、さらにこれを具体的な形として検討していくわけでございますけれども、実は、基礎年金番号のこのカードを導入することによって、基礎年金番号の重複付番の防止になるという、かなり大きな効果が出てくると思いますので、社会保障カードを導入することは、大変大きな期待を持って私どもも検討しているところでございます。

 そして、これは、個人情報保護の観点からも非常に慎重に取り扱うことになっておりますけれども、自宅でオンライン上で厳格な本人確認が行われるもとに、自分のそれまでの年金記録あるいは健康保険に関する病歴とか、個人が常にいながらにして自分のきちんとした経歴を確認できる、そういうメリットも持っておりますので、これから慎重に、きちんとした御意見をちょうだいして、いいものにしていきたいと思っております。

福島委員 次に、医療の問題、また介護の問題もありますが、についてお尋ねしたいと思います。

 私は、年金の税方式への移行ということについては、賛成する立場ではありません。一つは、先ほども、大変巨額の財源が要る、こういう御指摘もありました。一方でまた、医療や介護に関して、二〇二五年までの間に、医療は二十兆円、そしてまた介護は十兆円、費用が増加するわけであります。この費用をどうやって賄うのかということを考えたときに、本当に社会保障の財源を年金だけに集中投入するということができるのか。医療や介護は我慢してください、こういう話にはならないと私は思います。

 医療崩壊ということが常に言われております。また、介護労働現場の疲弊ということも言われております。そうした中で、安心して医療を受けられる、介護を受けられる、このためにも、大切な租税財源というものは年金だけに集中させるべきではない、このように私は思っております。

 医師不足の問題、産科、小児科の医師不足から、昨今は救急医療の危機ということが言われております。患者のたらい回しということが、大阪でもつとに取り上げられる事態になっております。

 一昨年、公明党として、厚生労働大臣に申し入れをさせていただきました。昨年もまた官邸に対して申し入れをさせていただき、さまざまな対策を打っていただいております。しかしながら、いまだにその事態ということが十分に解決したというところにまでは至らないのではないか、このような思いがいたします。

 時間の関係から若干質問を省略させていただきまして、医師数の問題、先ほど丹羽先生からもお取り上げがありました。

 私の資料ではスライドの14、九ページ目でありますけれども、OECDとの比較の表があります。医師数は、OECDの平均で三・一人、そして、日本では千人当たり二・〇人、こういうことで五割少ない、こういう実態であります。確かに、アメリカのように、クラークがたくさんいる、スタッフがたくさんいるという事態であればいいんでしょうけれども、日本はそちらも少ないというのが実態ではないかと思います。

 そしてまた、昨今の救急医療の危機の現場には何が起こっているかというと、今まで、市中の救急病院、夜間の当直スタッフというのは、大学の医師がアルバイトで勤めていることも多々ありました。それも、大学病院における医師不足ということが波及して人材の確保が困難になっている、こういうことも一つの原因になっているようであります。

 私は、今まで、日本の医療において医師数を推計するに当たって、こうしたさまざまな、非正規のといいますか、非常勤の労働形態があって、例えば、大学から市中病院にアルバイトに行くということもありますし、そしてまた、大学病院の中でも大学院生が無給で医療をやっている、こういう事態も実はあります。そういったようなことが真正面から実は余り評価されてこなかったのではないか。本来、そうした非正規の形で医療提供を担っている、こういう人の数まで含めれば、もう少し医師数というのはふえるんじゃないかというふうに私は思います。

 そしてまた、産科、小児科の医師不足に続いて今問題になっておりますのは、外科の医師不足が必ず起こるということでございます。私の母校でも、外科医局に対しての入局者は、十年、二十年前は何十人と入りましたけれども、今は数人だということでございます。この方々が十年たって一人前になる。今、団塊の世代はたくさん外科医がおりますけれども、それが激減したときに手術自体も簡単に受けられない、こういう事態が生まれるんじゃないかと思います。

 こうした医師数の目標については、そうしたさまざまな労働形態で支えられている、こういうことも踏まえながら、そしてまた、外科なら外科の医師数は一体どの程度必要なのか、こういうことも踏まえながら、より私は詳細な検討をすべきじゃないか、このように思っておりますけれども、御見解をお聞きしたいと思います。

舛添国務大臣 先ほども医師の偏在ということで、診療科による偏在、都市と地方の偏在、そういうのがございますけれども、やはり具体的に幾らの数値目標というのはなかなか、地域の情勢もあると思いますから、各地域地域で、これだけの人口のいるこの地域には産科医はどれだけ必要だ、外科医はどれだけ必要だ、こういうのを地域ごとにきめ細かくやるべき時期に来ていると思いますので、何か具体的にそういうことができるか検討させていただきたいと思います。

福島委員 現在の医療の危機というのは、累次にわたりましての診療報酬の引き下げということが大きな影響を与えている、これが一つだと思います。そしてまた、臨床研修制度ということで、医師を育成するシステムと、そしてまた医師を派遣するシステム、これは医局という制度においては両者が統合されておりました。ですから、育てる中で派遣をする、リンクしていたわけです。今は育てることと派遣をすることが分かれてしまって思うに任せない、こういう制度に実はなってしまったんだと思います。この二つのことが、病院におきます勤務医の過剰勤務であるとかそういったことの背景にあると私は思います。

 今回、ことしの診療報酬の改定では、勤務医の負担軽減ということで、病院に対して手厚い診療報酬の評価をしていただきました。ただ、私は、そこで振り返って、本当に診療報酬の対応だけで大丈夫なんだろうかと。日本の戦後の医療提供体制というのは、皆保険になりましたときには、保険があっても医療機関がないじゃないか、どうするんだということで、国保病院とかいろいろなものがつくられたわけです。

 日本の戦後の医療提供体制の拡充を支えてきたのは、一つは、診療報酬が非常に手厚くて、そして医療機関の中で資本の蓄積が行われて、再投資をして診療所から病院に、こういうことで広がってきたということが一つあると思います。そしてまた、いろいろと昨今御批判がありますけれども、保険料を使って、そしてまた年金の財源を使って医療機関をつくってきた、こういう話もあります。そしてまた一方では、税金を使ってさまざまな国立病院、そしてまた自治体病院、こういうものをつくってきた。そういうことが組み合わさって医療提供体制というのが今日に至っている。

 一方で、そこのところで病床過剰があるじゃないかという御批判もあるわけでありますけれども、これから日本の医療の基盤をどうしていくのか。特に、産科であるとか小児科であるとか救急であるとか、基幹的な医療というものをしっかり維持していくためにはどうしたらいいか。やはり原点に戻って、今まで医療を支えてきたのは診療報酬だけではない、診療報酬だけでできる範囲というのは、私は限られているんじゃないかと思います。むしろ、直接的に国なり都道府県なりがしっかりと支える医療があってもいいと。

 ただ、これは一方で、公費の投入というのは自治体病院の不効率というようなことも言われております。どういう形で投入すると効率的で、しかも基盤的な医療というものをしっかりと支えていくことができるのか、この制度設計をもう一度しっかりし直す必要があるんじゃないかというように思います。

 お手元の資料の九ページ目のスライドの15でありますけれども、医療提供体制の構築のための財政対応ということで、厚生労働省所管の補助金について、これは細目を私がまとめさせていただきましたけれども、トータルで言うと、千七百三十六億八千六百万円、内数のものもありますので、それを省きますと一千六百六十六億三千九百万円、この中で実際に救急医療の運営等に関しては百七十一億五千九百万円、三十兆を超える日本の医療費の中では、ほんの微々たるものしか実は直接的に投入されていない。それ以外にも自治体病院に対しての交付税の措置もありますし、そしてまた自治体の単独負担もあります。その下にありますように、大学医学部の附属病院に対しては、これは文科省の予算の中で交付金という形で投入されているものもある。

 今、医療費というと、診療報酬で一体どうするんだ、この話だけになっておりますけれども、その外には、実は公費で支えられている部分もある。そして実は、その公費で支えている部分というのが、私は、救急とかに関して言えば実に少ない、こういう事態があるんじゃないかと思います。

 財務大臣、全体の国家予算の中で、こうした公的に支えられているといいますか、公費が投入されているというのは、全体の医療費に対してどの程度のものかということについて、これはなかなか数字をまとめるのが難しいと思うんですけれども、御見解をお聞きできればと思います。

森山副大臣 お答えを申し上げます。

 医療サービスに関する国庫補助といたしましては、医療保険等に対する国庫負担を平成二十年度予算では八兆六千億計上しております。例えば、僻地医療や救急医療を行う医療機関に対する支援など、それぞれの政策目的に対応し、医療機関に対してさまざまな支援を行っているところでありますが、先生御指摘になりましたとおり、救急医療や施設整備のための厚生労働省の補助金として平成二十年度で約千七百億円、また、平成二十年度地財計画に計上されております自治体病院等への繰り出し金として約六千百億円、国公立大学の運営費交付金のうち、附属病院に交付されたものは決算ベースでしかわかりませんので、平成十八年度の決算ベースで見ますと、約千五百億円でございます。

 これを、機械的に数字を当てはめてまいりますと、医療費に対する比率というのは大体二・六%程度になるのではないかというふうに考えております。

 以上でございます。

福島委員 救急病院でも、やってほしいことは、空床を確保してほしい、どこに空きベッドがあるのか一生懸命探すという話になりますけれども、空床を確保するためには、そのための財政的な裏打ちが必要ですよ、支援が必要ですよ。そしてまた、人を確保しておく、必ずしも患者が来るかどうかわかりません、そのためにも支援が必要ですよ。こういうものは、診療報酬はやったことに対してしか払いませんから、そうでないところをどうするか、こういう話が大事なんだろうというふうに思います。

 そして、厚生労働大臣、今、医療ビジョンを検討中である、こういう話でありますけれども、こうした診療報酬ということで、もちろんこの中には税も入っていますけれども、そういう形で対応されるのではないもう一つのツールをしっかりと厚生労働省は持って、そして国民の安心できる医療というものをつくっていくべきだ、このように私は思いますけれども、検討していただければというふうに思います。

舛添国務大臣 その問題は、私のもとにあります長期ビジョンでもきちんと検討させていただきますとともに、このたびできました社会保障国民会議の場においても、政府全体で検討したいと思います。

福島委員 時間が限られておりますので、また若干省略をさせていただきます。

 きょうは、大田経済担当大臣、お越しでございますので、ぜひ大臣にお聞きをしたかったことが一点ございます。

 それは、かねてから、我が国の財政とそしてまた社会保障の問題では国民負担率は五〇%程度、こういう議論がなされてまいりました。そしてまた、国民負担率がふえ過ぎると経済成長に対してはマイナスだ、国際競争力をやはり減らすという議論がなされてきたというふうに思います。

 ただ、お手元の資料でありますと、16のところに、これは社会保障国民会議の資料でありますけれども、社会保障の給付規模の国際的な比較ということで、アメリカ、イギリス、日本、ドイツ、スウェーデン、フランスとあります。

 先般の大臣の所信演説のときに、一人当たりGDPは十八位になってしまったと。大分順番が入れかわりました。その間に、北欧四カ国は全部日本よりも上位に行っています。それぞれ、やはり日本よりも国民負担率は大きいですね。しかしながら、実際のところは、国際競争力ということで比較すると、日本よりも高いです。高いし、そしてまたこの十年程度の間に日本よりも追い越していった。

 こういうことを考えると、今までのように、国民負担率が引き上がると競争力が低下する、こういう議論は経済学的にはもう通説ではないというふうにも伺っておるんですけれども、大臣としては、どのように御認識でございますか。

大田国務大臣 国民負担率と経済成長率の関係は、幾つかの分析がなされております。その期間のとり方によってもまた異なってまいります。

 私が思いますのは、官の比率それから民間の経済活動、どちらも改革を進めていくことが大事なんだろうと思います。

 スウェーデン、フィンランド、そういうところは、国民負担率は高いですけれども、どう効率的に提供するかということもまた一生懸命改革を進めております。民間経済の活動も改革を進めております。

 重要なことは、先生がおっしゃるように、国民負担率が幾らだからいいということではなくて、社会保障も真に国民に必要なサービスを提供する改革を行う、民間もより効率的な、最大限の資源の効率化がなされるような改革を行うということが必要なんだろうと考えております。

福島委員 もう一つお尋ねしたいのは、スウェーデンの経済、九〇年代の金融危機を乗り越えて安定して成長しております。その中で、医療でありますとか介護でありますとか、そういうサービス分野というのは全体の三〇%程度を占めているんでしょうかね、これが一つは内需拡大の非常に大きな原動力になっている。向こうは公務員で担われていると思いますが、非効率を脱するために地方分権が進んでいるということだと思います。

 日本の経済の状況というのは、もう大臣、本当に御専門でございますから、今の経済の回復というのは外需依存である、そして内需がまだまだ弱い、こういうことが言われております。そして、内需の分野、ドメスティック産業は競争力がなかなかない、どうするんだ、こういう話であります。

 その中で、医療でありますとか介護でありますとか、こうした分野、これは言ってみれば福祉市場というか、一般の市場経済とは異なるわけでありますけれども、そこのボリュームを厚くしていくということは、実は日本の経済成長にとってもプラスじゃないか。もちろんこれは、将来世代のツケでやるというわけにいきません。やはり我々の世代がしっかりとそれを担って拡大をしていくということが必要だと思いますけれども、経済成長と社会保障の関係について簡単にお教え願います。

大田国務大臣 医療や介護は、これから高齢化社会の中で需要がふえる分野ですので、やはりそこは、需要にこたえていくというのは経済成長にも重要だと思います。生産への波及効果、雇用の誘発効果、ともにございます。したがいまして、成長戦略の中でも、生活に直結したサービスを充実させるということは、柱の一つに据えております。

 ただ、社会保障の場合は、その負担をだれが担うのかという問題がございます。後世代に重過ぎる負担が行ってもいけませんし、企業や家計への負担が重くなると、これはやはり経済成長へのマイナスの効果はあるんだろうと思います。

 したがいまして、その給付と負担のバランスというのは本当に難しい国民の選択になってまいります。これは、社会保障国民会議の中でも、国民の選択をやっていくということが大事だと考えております。

福島委員 最後に、上川少子化担当大臣、御出席でございますので、お尋ねをいたしたいと思います。

 今まで公明党も、児童手当の拡大、育児休業給付の拡大、制度の拡大、保育サービスの拡大、さまざまに取り組んでまいりました。総理も、新待機児童ゼロ作戦ということで、新たな検討をいただいておりますが、なかなか、どの程度効果があったのかなというのがやはり正直なところだと私は思います。

 ただ、これは、方向性は間違っていない。規模がどうか。これは、昨年末にまとめていただきました子どもと家族を応援する日本重点戦略について、財政投入ということについて、これは課題として掲げられているんだと思いますけれども、少子化というのは、やはり何とかこの流れを食いとめなきゃいかぬ、直近の数字でも横ばいだというのが実際のところじゃないかというふうに私は思います。

 そういう意味では、より規模を拡大してしっかりとした少子化対策をやる、これは当然我々の世代が担わなければいけない、こういう話だと思いますけれども、これからの方向性について御決意をお聞きしたいと思います。

上川国務大臣 我が国の少子化は、一・五七ショック以来、一九九〇年から少子化対策を一連の取り組みとして進めてきているわけでございまして、家族の子育てニーズにこたえるものとして一定の効果があったというふうに私は思っております。

 ただ、仕事と生活の両立支援ということについての施策につきましては、例えば、今おっしゃいました育児休業制度の部分をとってみましても、女性が七〇%を超えている取得をしているにもかかわらず、男性の方は〇・五%と大変低い水準になっておりまして、実態としては、制度があってもそれをとり得る部分につきましては女性にやや偏りがちであって、ある意味では男性も含めた働き方の改革をしながら、全体としての少子化への取り組みを促進していく必要があるというふうに思っております。

 先ほど御指摘いただいた財政的な規模ということにつきましては、海外の事例等、各国の実情は異なりますけれども、やはり家族政策のボリュームという意味で見てみましてもまだまだ低い水準にあるということでございますので、そういう意味では、思い切った財政的な支援ということにつきましては、非常に大事ではないかというふうに思っております。

 子どもと家族を応援する日本重点戦略、ここにつきましては、働き方の改革をして、仕事と生活を両立していくための憲章と行動指針を取りまとめて、そして国を挙げて進めていこうということで、この一月の八日にも推進室を立ち上げまして、中核となってこの方向を進めていくことになりました。

 それと同時に、両輪のもう一つの柱であります子育て支援策の再構築ということにつきましても精力的に進め、またその税制改正も含めまして、財政的な部分についての検討も、この間、経済財政諮問会議や国民会議等の議論もよくよく注視しながら進めてまいりたいというふうに思っているところでございます。

 特に、施策の検証と、そしてこれまでの施策をいかに効率的にしていくかということについては、大変重要な課題であるというふうに思っておりますので、ことしは仕事と生活の調和元年ということで、決意を持って断固とした形で進めてまいりたいというふうに思っております。

福島委員 終わります。

 どうもありがとうございました。

逢沢委員長 これにて福島君の質疑は終了いたしました。

 次に、平岡秀夫君。

平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。

 きょうは、年金・医療等社会保障問題の集中審議ということで、私は、薬害問題、そして時間があれば産科医療の問題について取り上げさせていただきたいというふうに思っております。

 ことしの一月、薬害肝炎問題については議員立法という形で解決がされたということで、それ自体は高い評価がされてしかるべき問題だというふうに思いますけれども、ちょっと私が思うのは、内閣の主導的な姿勢というのが見えなかったのではないかというふうに思いまして、福田総理は、自民党総裁としては解決できても内閣総理大臣としては解決できなかったということに関して、今どういうお考えをお持ちでしょうか。

福田内閣総理大臣 本件は、私自身も、一日も早くこの問題を解決したい、こういうふうには思っておりました。思っておりまして、そういう動きもしたんですけれども、地方裁判所ごとに違う内容の判決が出ているということですね。その訴訟について司法の判断を踏まえながら、一方で、原告団の方々の一律救済の要請にどうこたえるか、こういう問題があったわけです。

 そこで、判決がありまして、そして、あの場面では裁判官の仲裁案が出たんですよ。これは、原告団の方も同意してその仲裁案が出た。そういうことでございますから、その段階では、これはやはり司法の流れの中で解決すべきというように考えたわけでありまして、その司法の仲裁案に対してお答えをした。しかし、それは原告団の入れるところではなかった。こういうふうなことがありました。

 そこで、私は、これは行政面からは無理であるということ、行政が司法の判断を覆すとかそういうようなことは、これは無理でありますので、ですから、これは議員立法にお願いをするしかない、要するに、国会でお願いするしかない、こういうことになったわけであります。そういうことでいいですか。

平岡委員 議員立法ならよくて内閣提出の法案であればだめだというのも、ちょっとよくわからない理屈だと思いますよね。やはり総理として、本当にこの問題を処理する必要性があるということであるならば、私は、内閣として、もっと主導的に対応するということも可能であったのではないかというふうに思います。

 それはそれとして、ちょっと資料を見ていただきたいと思うんですけれども、これまでサリドマイド事件、スモン事件、HIV事件、薬害ヤコブ病事件など、いろいろ薬害問題が起こってきておりまして、この表にあるように、判決前に和解といったような形で解決されている問題もいろいろある。

 薬害事件というのはできるだけ起こらないように体制を整備し、そして薬務行政を運営していくということが大変大事だということだと思いますけれども、ただ、不幸にして薬害事件が起こるということも否定はできない。そうなったときに、一体政府としてはどういうような対応をしていくということを考えているのか、その基本的な姿勢について総理にお伺いいたしたいと思います。

福田内閣総理大臣 薬害というのは、これは絶対に起こらないというわけじゃないですよね。万全の体制をとってやったとしても、それは体質その他いろいろな事情があって、また場合によっては、予見できないような製薬上の問題があったというようなことがあります。ですから、これは起こり得るんだということは一つ前提にしなければいけないと思いますよ。

 ですから、そういう起こったときにどうするかということが大事なんですよね。健康被害の救済制度が今まで整備されてきておりますので、この救済制度でもって救済する。私、その中身はちょっと承知しておりませんけれども、そういう整備がされているというように理解しております。

平岡委員 そういう救済制度がしっかりと本当にカバーできているのならいいのかもしれませんけれども、これから私が具体的な問題を指摘する中で、もう一度、そうなっているかどうかということをよく検証していただきたいというふうに思います。

 そこで具体的な問題としては、肺がん治療薬のイレッサ、商品名ですけれども、一般名はゲフィチニブ。それから、これを輸入、総販売をしているのはアストラゼネカ社なんですけれども、便宜上、A社というふうに呼ばせていただきたいと思います。

 このイレッサについては、これまでの薬害事件と異なりまして、現在も使用中の薬についての薬害事件ということで、今までとは少し性格が違うという面もあろうかというふうに思います。死亡に至る割合の高い重篤な副作用が発生しているという一方で、腫瘍を小さくする効果などの効き目があるというようなことから、現在も、限定的な範囲ではありますけれども、使用が行われているということであります。また、先ほど総理が指摘されたように、医薬品副作用被害救済制度というものがある中で、これは抗がん剤であるというようなことで、現在、対象外の医薬品とされているという問題も抱えているということでございます。

 以下、私としては、新たな被害者を出さないために今何をすべきか、これまでの行政あるいは企業等の関係者の責任をどのように明らかにしていくのか、そして被害者の救済をどう行っていくのかといった観点に立って質問していきたいというふうに思います。

 このパネルは、次の二枚目の資料にありますので、それをちょっと見ていただければというふうに思うんですけれども、このイレッサは、その投与によって、副作用としての間質性肺炎等の急性肺障害を多発しているわけでございまして、二〇〇二年の七月十六日に販売を開始してからきょうまでと言いたいんですけれども、今使える資料が、一番下のところですけれども、昨年の七月七日時点のようでありまして、七百三十二名の死者が出ているということであります。

 他方、外国のことを考えてみますと、EUについては、会社の方が使用の申請を取り下げているというような状況が二〇〇五年の一月四日。そしてアメリカの方では、FDAが二〇〇五年の六月十七日に新規患者への投与の原則禁止をしているというような状況にあるわけですね。

 そういう被害の多発している状況、あるいは外国のような状況を見たときに、日本でも新規患者への使用というものを一たん停止することが必要ではないかというふうにも思うんですけれども、この点については、厚生労働大臣、いかがでしょう。

舛添国務大臣 これは、委員御指摘のように、抗がん剤でがんを抑える機能は極めてあって、これで延命効果が得られた方もたくさんございます。そして、抗がん剤というのは副作用が非常に激しゅうございまして、今のような事例もあります。

 そこで、これは医学界の方でも検討していただいておりますし、それで、こういうケースについて、まず、二〇〇二年の十月に緊急安全性情報を発出するということでありまして、その後、死亡例が販売開始直後に比べて減少している。つまり、間質性肺炎という副作用が起こり得ますよということを注意した。それから、二〇〇七年の二月の薬事・食品衛生審議会の安全対策においても、今後どうするかということで、この安全性情報の発出という形で対応しようということを基本とするという答申が出ております。そして、今、肺がんの治療の専門家の方々に聞きますと、基本的にこの方向でよろしいということでございますので、今のような方策をとっております。

平岡委員 今、延命効果があるというような表現を厚生労働大臣はされましたけれども、今までの調査でいくと、試験でいくと、延命効果がないというものが多く出ているんですよね。ここの二〇〇二年の八月とか、二〇〇四年の十二月であるとか、あるいは二〇〇五年の三月であるとか。そして、アメリカの国立がんセンターの資金提供によって行われたSWOGの解析では、これは効果がないということで試験も中止されたというような状況で、延命効果があるというのは確かに一部言われているかもしれませんけれども、どちらかというと、がんを、腫瘍を縮小する効果についてはあるというふうなことは、これはサブセット解析、つまり、本当の意味での分析ではないけれども、一緒にあわせてやったようなものでそうなっているということであって、決して立証されていないんですね。

 そういう意味でいくと、まだ延命効果ということが立証されていない中で副作用というものが問題になっている、こういう事態であるならば、私は、薬の効果が出る可能性があるというふうに言われており、かつ副作用が起こりにくい患者等に限定して臨床試験的に実施していくということが必要ではないかというふうに思うんですけれども、どうでしょうか。

高橋政府参考人 ただいま先生、パネルでちょっとお示しになっている中で幾つか、延命効果なしだけではなくて、標準治療との比較において延命効果が有意差がなかったというようなものもあるわけでございます。

 例えば、昨年の二月、先生のパネルでは〇七、去年の二月一日の比較臨床試験では、これは標準治療、いわゆるドセタキセルとの延命効果の中では非劣性を示せなかったということで、延命効果がないとまでは言っていないんですけれども、統計的には、全体をならすとそういうことであるけれども、現実の臨床の現場のお医者さん方から見れば、この治療薬はもともとは……(平岡委員「私の質問したことに答えてください」と呼ぶ)ですから、全部ないんじゃなくて、標準治療の効かない方について、さらにその上で使う治療薬としてどうかといった場合に、大変よく効く患者さんもいらっしゃるから、こういうことでやはりいろいろな、女性とか非喫煙者の中で大変効果があるような場合もあるということで使われているということです。

 そういった意味で、安全対策を講じていて、現在こういった方途をとっていることについては御理解いただきたいと思います。

平岡委員 今の答弁は、どうも現場対応みたいな話になっているような、現場任せになっているような気がするんですよね。これだけ大きな問題になっている以上は、もっとしっかりとやはり行政的対応ということが私は必要だというふうに思います。

 その一つとして、例えば、先ほどお話が出ておりましたけれども、今現在は、日本肺癌学会がつくっているゲフィチニブ使用に関するガイドラインというものが作成されて、それに基づいていろいろと薬が使われている、そういう状況にあろうかと思うのです。ただ、いろいろ指摘がある中では、このゲフィチニブ使用に関するガイドラインの作成委員という方々について言えば、A社との経済的利害関係があるというふうに指摘されている方がたくさんいるんですよね。

 この問題について指摘しましたら、そういう専門家が少ないものですからどうしてもそうなるんですよということはちょっと説明としてありましたけれども、では、あえて私としては、この作成委員の方々についてはどういう経済的利害関係にあるのかということについて、厚生労働省の責任で公表するということをしっかりとやってほしいというふうに思うんですけれども、どうでしょうか、厚生労働大臣。

舛添国務大臣 これはすべての医薬品についてそうなんで、いわゆる天下りなんかがいて、そこで手心を加えているんじゃないかとか、いささかもそういう国民の不信を招くことがあってはいけませんので、少し状況を調べた上で、きちんと公表できるものはしたいと思います。

平岡委員 きちんと調べた上で公表できるものは公表する。まあ、公表できないものが何かあるのか、私はちょっとよくわかりませんけれども、こんなものを公表して何がいけないのか、それこそ何か癒着関係があるから公表できないというのでは、これはまた逆の話ですから、しっかりと厚生労働大臣に対応していただきたいというふうに思います。

 そこで、この使用をこれからどうするかという問題について話しましたけれども、むしろ私は、これまでの被害者の方々の発生状況を見ますと、これは販売を開始してから一年半ぐらいの間に四百四十四人も亡くなられたというようなことで、その承認、そして承認直後の対応というのが本当に正しかったのかということについて問題を指摘していきたいというふうに思います。

 二〇〇二年の七月に厚労省がイレッサを承認いたしました。そのときに、承認に当たって承認条件というのが付されているんですよね。しかし、その中には、全部の症例を調査する全例調査というものが付されていなかったということであります。

 これについては、安全対策課長も、二〇〇五年三月二十四日に行われたゲフィチニブ検討会の中で、全例調査としてどういうものについてやるかといえば、特に抗がん剤であるとほぼ数十%の確率で副作用が出ています、その中でも重篤な比率が高いものについては、その副作用の様子を早く集めようということで、全数調査をかけるという対応をしていますというようなことを言っています。

 実は、その前に行われた、ゲフィチニブ安全性問題検討会、二〇〇二年の十二月二十五日、これは多くの被害が発生したことがわかってきた直後に行われたものでありますけれども、そこで出席しておられたこの承認審査にかかわられている委員の方の発言の中にも、これは、治験の段階で出ていないさまざまな問題点が出る可能性があるから、市販後、臨床試験をきちんと組むというのが条件だったと思う、その中で、当然直ちに行われ、少なくとも全症例のチェックが行われているだろうと思っておりましたが、これからプロトコールを組むということですというようなことで、その対応のおくれとか全例調査を実施していないことについての問題提起がされているというようなことであります。

 さらに言えば、被告会社がつくります添付文書の中にも、こうした急性の肝障害の問題については通り一遍の説明しかしていなかったというような状況があったということでありますね。

 この点については、やはり私は厚生労働省の責任が重いんじゃないかというふうに思うんですけれども、どうでしょうか。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 このイレッサの承認におきましては、治験において百例を上回る程度の症例数とすることが実態的には抗がん剤においては多うございますけれども、イレッサの国内治験の症例数は百三十三例と同程度の症例がありまして、これに基づき副作用の発現状況などを整理分析できたこと、それから、国内、海外臨床試験結果からは、骨髄抑制による白血球の減少などの重篤な副作用の発現がほかの抗がん剤と比較して非常に少なかったことなどから、全例調査を義務づけなかったものであります。

 また、間質性肺炎につきましては、国内治験におきまして三例の発生が報告されておりますが、いずれも承認の容量の二倍量を投与していること、それから、国内治験においてはいずれの症例も回復していることなどから、警告に記載するまでの必要はないというふうに判断されたものであります。ただ、添付文書の重大な副作用という欄に、間質性肺炎を記載して注意喚起を行っていたものでございます。

平岡委員 私は、この質疑に当たって詳細な質問レクをし、厚生労働大臣、自分がみずから薬害問題についての行政について何と語っているか覚えておられますか。「今までの薬事行政を振り返ってみたときに、国民の視点、患者の視点、そしてその家族の視点というのがどうしても欠けていたんじゃないか。これは副作用報告書の取り扱いについてもそうでございます。こういう点をきちんと改めて、国民の目線に立った薬事行政を展開してまいりたいという決意をここで述べさせていただきたいと思います。」こういうふうに言っておられて、何か役人に答弁を任せるような話。

 私は、別に細かいことを聞こうとしているわけじゃないんです。基本的な、これまでの厚生労働省の対応がどうだったのか、その姿勢はどうだったのかということを聞いているんですから、ちゃんとこれは、厚生労働大臣、答えてくださいよ。

舛添国務大臣 今引用なさったことはそのとおりでありまして、実は、患者さんの立場で、早く大臣、この薬を承認してくれ、何で承認しないんだ、この薬があれば私は命が助かるんだ、そういう苦情や要請がいっぱい片一方で来ています。しかし、だからといって、では、そうですかと承認したときに、今の副作用を含めてあったらどうするんだと。

 そういう厳しい中で、患者さんもおられる、しかし薬害の患者の方もいる、そういうことを全体を見てやっておりますので、きちんといろいろなことは検討させていただきますけれども、極めて専門的な薬に関することは、私は薬の専門家ではありませんから、そういう点については政府委員を活用するということでありまして、基本的な姿勢についてはきちんと答弁をいたします。

平岡委員 今いみじくも厚生労働大臣は、いっぱい要望があった、早くやってくれという要望があった、しかし、他方、副作用があったらどうするんだというような問題もあったと言われるんだったら、今のやり方でいけば、その臨床試験というのは一相、二相、三相とあって、二相までの試験をやったところで、三相試験をやらないでも導入するという形でやっている。しかし、導入した後に、どういう状況なのか、副作用がどうなっているのか、これをしっかりと調べるという姿勢で導入すべきであったということではないんですか。

 それを、全例調査もしない、それから、これから指摘しようと思いましたけれども、三相試験である臨床試験については、いつまでにそれをやりなさいというような期限も付されていない。結局、導入されて一年二カ月後にようやく第三相試験である臨床試験が始まった。こういう状況というのは、まさに厚生労働省の怠慢じゃないですか。どうですか。

舛添国務大臣 これは、委員の今の指摘があり、またお医者さんからそういう指摘もありますけれども、基本的には、肺がんの専門家の方々の御意見をまず賜る、そしてその上で、今委員が御指摘のような、もう少しこれを踏み込んでやるべきであるというような御意見がありますから、これはきちんと検討させていただきます。

平岡委員 先ほど政府参考人の答弁の中に、医薬品のこのイレッサの審査の話がありました。わずか半年間の間に、これはアメリカでは二年近くかかっているんですよ、この申請が出てから承認が出るまで。我が国はわずか半年間。そして、海外でもかなりの副作用の事例が報告されているにもかかわらず、その事例についてはほとんど審査をすることなく承認をしてしまった。そして、その承認をするときに、今大臣が言われたように、事後調査といいますか、導入した後の全例調査とか、あるいは臨床試験をしっかりやるという仕組みで導入していたのであれば、私は、こんなに多くの被害者が短期間の間に出なかったんじゃないかというふうに思いますね。

 その点について、これからしっかりと厚生労働省として責任を認識して対応していただきたいと思うんですけれども、この問題について、しっかりと厚生労働省の中で、なぜこんなことになったのか、厚生労働大臣の主導的なリーダーシップで取り組んで調査をしていただけますか。どうですか。

舛添国務大臣 先ほど申し上げましたように、患者の方が一日も早く薬がほしいということで、例えばアスベストの中皮腫の薬、それからHIVの薬、これはもう極めて、普通四年かかるのを半年ぐらいでやりました。ムコ多糖症についても急ぎました。こういう面もございます。しかし、今委員から御指摘のように、やはり強烈に効く面があれば副作用も大きくて、今この亡くなった方の数をお挙げになりましたから、少し、もう一度点検させていただきます。

平岡委員 そこで、先ほど総理が医薬品副作用被害救済制度の話にちょっと触れられましたので、ちょっとお聞きしたいと思うんですけれども、実は、このイレッサについては、厚生大臣の指定によって、その制度の対象外にされているというふうに伺っておりますけれども、それでよろしいでしょうか。

舛添国務大臣 これは、法律によりまして、がんその他の特殊疾病に使用されることが目的とされる医薬品であって、厚生労働大臣の指定するものについては制度の対象外としているということで、一般的に、抗がん剤というのはほとんど副作用があるということで、そういう意味で対象外となっております。

平岡委員 一般的になっているけれども、個々に厚生大臣が指定するという仕組みになっているということですよね。だから、厚生労働大臣がなぜこの分については指定しなかったのかということについては、私は、厚生労働大臣としてもやはり責任をしっかりと持たなきゃいけないと思います。

 それはともかくとして、私が言いたいのは、先ほどちょっと触れましたけれども、今の抗がん剤について言えば、本来で言えば、臨床試験というのは、一相、二相、三相試験というふうに分かれていて、すべてが終わって、これなら大丈夫だし薬効もあるしというようなことで承認をしていくということが普通行われるわけでありますけれども、抗がん剤については、一相試験、二相試験をやった後に承認がされて、三相試験の部分については承認後に行うということも認めているということなんですね。

 そうなりますと、実際には、副作用がどの程度激しく出るのかというようなことについてはよく確認がされていないというような状況で承認がされる。そうなったら、私は、こういう制度として進めている以上は、やはり抗がん剤であったとしても、そういう途中段階での試験で終わっているものについては、やはり医薬品副作用被害救済制度の対象としていく、そういう考え方を持ってもいいんじゃないかというふうに思うんですね。

 先ほど厚生労働大臣が言われました、国民の立場、患者さんの立場に立って考える。確かに、患者さんの中では使いたいという方もおられるけれども、しかし、場合によっては、しっかりとした臨床試験が終わっていないので副作用が出る可能性がある。その非常に難しいところを一体どうやって制度的に救済していくのかということを考えたときには、私が先ほど提案したような対応というのはあるんじゃないかというふうに思うんですけれども、厚生労働大臣としてどう考えられますか。

    〔委員長退席、田野瀬委員長代理着席〕

舛添国務大臣 抗がん剤について、今、一般的に非常に副作用が大きいということを言いましたけれども、もう一つ、その薬のかわりになるものがない。そうすると、患者さんたちが、もうとにかく副作用があっても使わせてくれ、少しでも命を長らえたいんだ、そういう御要望が片一方であります。しかし、それできちんとインフォームド・コンセント、こういう副作用がありますけれども、それでもお使いになりますか、お医者さんもちゃんと言うし、医薬品にもそれを明記してあるということですけれども、今委員が御指摘のこともございますので、これもまた、本当にこれは両方の要請のぎりぎりのところで緊張を持って判断しないといけないと思います。

 ですから、いささかも、何か検査がいいかげんであったりとか、それから癒着しているような学者が承認したのであったりとか、そういうことがあったら国民の信頼を得られませんから、そのことも含めてきちんと検討する。そして、本当に薬については、そういう緊張感を持ってぎりぎりの選択肢ということが、私を含め、厚生労働省の職員一同をもってやらないといけない。肝に銘じてやりたいと思います。

平岡委員 副作用が予想されるというお話がありましたけれども、今回のイレッサの間質性肺炎等について言えば、どの程度予想されていたかよくわからない。つまり、先ほど言ったとおり、添付文書にもほとんど警告とかというのはないような状態で導入をされたわけですよね。承認審査のときも、この問題についてはほとんど審査がされていない状態で通っちゃった。しかし、やってみたら、予想もしていなかった重篤な副作用が出てしまった。

 こういうような事態というのは、先ほど大臣が答弁された、予想される副作用があるからというようなことじゃなくて、当時の承認時は予想されない副作用が出てしまった。インフォームド・コンセントも、その段階では十分できていないと私は思いますよ。そういう問題としてこの問題を考えたときには、一体どうあるべきか、しっかりと検討していただきたい。それは、検討しますと言われたので、重ねて私の方から要請しておきたいと思います。

 そこで、このイレッサの問題でありますけれども、総理にお聞きしたいというふうに思います。

 先ほど、冒頭、過去の薬害事件について総理にちょっと見ていただきました。大体、判決前に和解というふうになっているんですよね。それで、判決前といっても、裁判所から和解勧告というのが出て、その和解勧告を受けるか受けないかというような形の中で和解がされていったということでありますけれども、もしこのイレッサの件で裁判所から和解勧告が出た場合、総理は、総理大臣として解決に臨まれますか、それとも自民党総裁として解決に臨まれることになりますか、どうでしょう。

福田内閣総理大臣 前にハンセンのことがありましたよね、ハンセン病。あのときは、裁判所は判決を出したんですよ。それに対して政府の方が控訴するかしないかということを考えておったんですけれども、最終的に控訴しない、判決を受け入れる、こういうことでありましたから、それはもう司法のとおりにしたわけですから、これは行政的にきちんとした手続で行われたということです。

 今回のフィブリノゲンの場合には、これはちょっと事情が違ったんですよ。先ほど申しましたような事情で違ったわけであります。ですから、行政としてはこれを、裁判所の言うことと違うことをすることはできない、こういうことでありまして、これは国会の方で判断していただくしかない、こういう判断をしたわけです。

 今回のイレッサのものは、これは今裁判をしているわけですね。これが、さあ、どうでしょうか、ちょっと私も今ここでどういうふうに申し上げていいかわかりません。また、裁判に影響を与えるということもないわけではないから、それは慎重にせざるを得ないだろうというように思いますので、申しわけありませんけれども、私は中立にさせておいていただきたいと思います。

平岡委員 私は、この問題について言えば、裁判をやって、国が裁判の一つの当事者なんですよね。裁判がどういうふうに推移していくのか、どういう論点があるのか、国がよく知っているんですよ。そういう中で、仮に和解勧告が出たときに、この前の薬害肝炎のように、何か議員立法にゆだねてしまうというんじゃなくて、国がよく知っているわけですから、どういう流れの中で、どういう対応を国としてすべきなのかということをしっかりと踏まえて、場合によっては、立法をしないで対応できるなら立法をしないで対応するし、立法が必要なものならば、立法も含めて政府としてちゃんと考えていく、検討していくということが私はあってしかるべきだというふうに思います。

 そういう意味で、内閣総理大臣としての職務、職責をしっかりとこの問題についても果たしていくよう要請して、私の質問を終わらせていただきます。

田野瀬委員長代理 これにて平岡君の質疑は終了いたしました。

 次に、山井和則君。

山井委員 民主党の山井和則でございます。

 これから三十分間にわたりまして、消えた年金問題等年金問題について、福田総理、舛添大臣に質問をさせていただきたいと思います。

 現在、ねんきん特別便が約三百万通、受給者の方を中心に送られております。それで、これから残り七百万通も、ねんきん特別便が送られるわけであります。福田総理、これが一千万通、三月末までに合計して送られるということになるわけです。

 ところが、なかなかこれは効果が上がっていないのではないかというふうに思えてなりません。また、きょうの新聞を見ますと、内閣支持率、三割を割るというのが出ておりまして、二八・七%、その理由の一つが、これを見てみると、年金問題への対応というものに関して、福田内閣の対応が、評価するが二〇・八%、評価しないが六九%ということになっております。

 言うまでもなく、この消えた年金問題や年金改革の問題は国民の一番大きな不安であり、関心事でありますので、この三十分を使って、ぜひ福田総理の年金改革、また消えた年金問題についての解決の意気込みをお伺いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 そこで、最初に、この問題について、福田総理は、七月五日の政府・与党の基本方針にのっとって行うということをおっしゃっておられます。それを読み上げさせてもらいますと、この問題につきましては私の内閣の責任において必ず早期に解決をし、最後の一人までチェックをして正しい年金をきちんとお支払いします、これが政府・与党の基本方針として発表されたわけであります。そして、これについて十二月十一日、福田総理は記者会見で、解決すると言ったかなということをおっしゃったわけです。

 改めて福田総理にお伺いしたいと思います。これは解決されるということでよろしいんですか。

福田内閣総理大臣 今そのフリップを出していますけれども、ごく一部ですよね。一部でそうやって、そうなんだって決めつけるようなやり方というのはアンフェアと私は思います。

 ちゃんと言っているじゃないですか、その後で。名寄せをする、それを三月末までにやるという意味ですと。その聞き方による。ぶら下がりですからね、記者の。ですから、ラフな質問だったんだろうというふうに思いますけれども、それに対する答えであって、来年三月までに名寄せをするということはします、それで三月までに解決をしますというようなことではないですよということで言ったわけですよ。そこのところはそういう意味です。全部解決します、そういうふうに言ったわけじゃありませんよということです。おわかりになりますね。

 それで、私は、昨年の七月五日の政府・与党の基本方針にのっとって、厚生労働省を中心としてこの解明作業をしている、こういうことでございます。その作業の内容は、これはもうよく御案内のとおり、委員に御説明申し上げるまでもないと思いますから、はしょってもよろしゅうございますが、本年三月末までにコンピューター上で記録を突き合わせて、その結果結びつく可能性がある方々へねんきん特別便をお送りする、そしてその後も統合できずに残る記録については四月以降も粘り強く統合を進めていく、そういうことを私は常に申し上げてきたのであります。

 そういうふうなやり方を今しておりますので、引き続き国民の御納得を得るまで粘り強く取り組みを続けてまいりたいという考え方は、これは全く変わっておりません。そして、その経過についても、状況報告ということで発表、公表させていただいておるというところでございます。

山井委員 福田総理、もう一度大事なことを確認したいんです。今国民が一番関心を持っているのは、この必ず早期に解決をするというここなんですよね。必ず早期に解決をするということが政府・与党の基本方針、七月五日で述べられているわけです。必ず早期に解決をするということでよろしいですか。これが福田総理の公約ということでよろしいですか。福田総理。(発言する者あり)だって、これを引き継がないんだったら大問題になりますよ。書いてあるんですから、これ、基本方針に。

福田内閣総理大臣 それは入っております。早期に解決をするというように書いてあります。私は、施政方針演説では、「この問題は、四十年以上にわたるさまざまな問題が積み重なって生じたものですが、私の内閣で解決するよう、全力を尽くしてまいります。」こういうように申し上げております。

山井委員 福田総理、今の表現、まさにおっしゃったように、微妙にこの表現から後退しているんですね。七月五日の基本方針では、必ず早期に解決をし、最後の一人までチェックをして正しい年金をきちんとお支払いしますということを出しているわけです。

 だから、改めて申し上げますが、この方針は福田総理の公約ということでよろしいですか。

福田内閣総理大臣 早期にというのが、いろいろな見方があるんだろうと思います。私も別に逃げるつもりはありませんけれども、しかし、できるだけ早く解決をしたい、そういう気持ちをあらわしているものだと思います。

山井委員 改めて確認します。この文章は福田総理の公約として受け取っていいということですね。

福田内閣総理大臣 これは、七月五日の政府・与党の合意ですからね。ですから、それを私は引き継いでおるということであります。

山井委員 ぜひ、この早期に解決ということを実行していただきたいと思います。

 それでは、舛添大臣にお伺いします。

 ここで、では、この早期解決、最後のお一人までお支払いするというのがどれだけ進んでいるかということが問題であります。舛添大臣、五千万件のうち、現時点で何万件、ほぼ何%が統合されていますか。そしてまた、今回、今お送りされているねんきん特別便で記録訂正の見込みがある人は何%、何人ですか。

舛添国務大臣 まず、後者の点からお答えさせていただきたいと思います。

 コンピューター上の名寄せをやりました。二月十五日時点で千三十万人の記録を回復して、これは件数にすると千二百五万件でございます。

 それから、今、最初におっしゃいました統合、これは、記録が出てきて、これがあなたの記録だということで、年金相談、裁定によって統合が進んだのが、ことしの一月三十日時点で三百八十五万件です。これは、ねんきん特別便を送ってからじゃなくて、もっと前の、一昨年の六月一日からずっと始めてということであります。それで、五千九十五万件のうちの三百八十五万件ということを割合で見ますと、約七・六%でございます。

山井委員 そこが問題なわけであります。

 今大臣がおっしゃったように、六月からの相談において三百八十五万件、七・六%、統合がされた。

 しかし、問題は、このフリップにありますように、ねんきん特別便を送っているわけですが、その中で、二月七日現在で百二十八万件送っても、訂正ありというのがたったの九%なんです。これは社保庁の方に聞くと、ほとんどの方が一対一対応。例えば、昭和三十七年一月六日、山井和則、男性、性別、名前、生年月日が、三条件どんぴしゃりと当たって、一対一対応がほとんどです。ですから、かなりの高い確率で、社保庁の方によると、八割、九割ぐらいは訂正ありとなるんだと思っていたと。ところが、ふたをあけてみたら、何とその十分の一、たった九%しか訂正ありで回答が返ってきていないわけです。

 ここで福田総理にお伺いしたいんですが、先ほど早期に解決をするということをおっしゃったわけですけれども、これでは、おまけに未回答が五七%。繰り返しになりますが、生年月日、名前、性別も合って、ほぼその人だろうと社保庁が思った人にねんきん特別便を送っても、九%の人しか訂正ありとなっていない。予想どおり進んでいないんですね。

 これは、福田総理、この現状についていかが思われますか。福田総理、いかが思われますか。いかが思われますか、この現状について。

    〔田野瀬委員長代理退席、委員長着席〕

舛添国務大臣 何度も御説明申し上げているのは、最初の特別便の説明の仕方が悪かったわけでありますけれども、今一生懸命捜し出したものを最初から書いてあれば、ああ、これがいわゆる消えた年金だなということがわかると思いますけれども、そうじゃなくて、既にわかっているところを書いてあって、それについて訂正はありますか、なしですかですから、そこにあるのは印字された部分であって、ですから、例えば八百五十万人、送った方々ほぼ全員が電話をかけてきてくださって、欠落している部分を見つけてくださったんですね、それは何ですかと答えを言ってくださらないと答えられないような、そういう二兎を追うような形になっているので非常にわかりにくい。

 したがって、二月の六日からそれがより明確になるようにいたしましたし、こちらからもいろいろ手を打って、どうか皆さん、コンタクトしてくださいよ、こういうことでございますので、今後とも努力を重ねてまいります。

山井委員 これは非常に深刻な問題で、福田総理、未回答が五七%もおられるんですよ、これで年金がふえるであろうという可能性が非常に高いにもかかわらず。その最大の理由は、今、舛添大臣もお認めになりましたように、非常に不親切なんですね。そして、改善されたといっても、注意喚起文といって、加入記録の読み方しか書いていないんですよ。

 そこで、福田総理、我が党は、今までから、ヒントや、どういう期間が抜けていたのかを親切に書いてあげないと記録につながりませんよということを言っていたんです。

 そこで、私たちが今提案しておりますのは、実際、舛添大臣も方針を転換されて、相談ダイヤルや社会保険事務所の窓口に行ったら、記憶がない方に関しても答えをお教えするという方針に転換されたわけですよ。

 社会保険事務所に行ったり、年金相談ダイヤルに電話したら答えを教えてもらえるんだったら、福田総理、ここにも書きましたように、「下記の年金記録のうち「※赤字部分」の時期に、年金に加入していたかどうかご確認ください。」ということで、先ほども言ったように、一対一で当たっている人は、米印、昭和五十八年から五十九年まで十二カ月、福田商事というのは見つかりましたよ、一対一でわかっているわけですから、それを入れて送るのが、先ほど丹羽議員への答弁で福田総理がおっしゃった、きめ細かく丁寧な対応ではないか。こういうことをすれば画期的に、もうイエスかノーかしかないわけですから、多くの人が年金記録を回復すると思うんです。

 こういう抜本的なことをすべきだと思うんですが、福田総理、いかがですか、こういう案については。

舛添国務大臣 当初それを入れなかったのは、成り済ましとかいろいろな事故があるといけないということが原因でありました。それは、今委員がおっしゃっていただいたように、懇切丁寧に窓口で対応いたします。

 ただ、今、そのあれで、厚年、福田商事というのを書くということになると、これからプログラムの開発をしないといけない。四カ月から半年ぐらいそれにかかってしまうということでありますので、社会保険労務士の方々の御協力も賜り、市町村、農協、漁協、郵便局の御協力も賜りまして、事実上きちんとそれができるような体制を今後とっていきたいということでございます。

山井委員 これを本当にお役所仕事というんですよ。

 我が党は、これを九カ月前から指摘しているんですよ。例えば、五月三十一日、衆議院本会議で長妻議員は、「五千万件の記録で名前と生年月日と性別が同じものを取り出して、そしてシノダさんならシノダさんに、これはあなた様の記録ですか、これを工夫してお示しをする。昭和四十年何月何日から何月までこういう会社に勤めた記憶はありますか、あるいは、昭和五十年何月何日から何月何日まで国民年金に入っておられませんでしたかと直接その方に工夫をしてお示しをして確認を求める、こういう手法をとらない限り、前に進まないと考えております。」これは去年の五月、九カ月前から言っているじゃないですか。

 おまけに、これは民主党の参議院選挙のときに配ったチラシ、年金通帳にも、民主党は、データを訂正した上で、持ち主と推定される方には記録を工夫して示し、確認していただきますと。民主党は九カ月前から提案しているんですよ。

 私たちは、別にこれを政争の具にしようと思っているんじゃないんですよ。こういうふうにしないと見つからないですよと言って提案しているにもかかわらず、そのまま突っ込んで見つかっていないということなんですね。ですから、私は、こういうのは非常に深刻な問題だと思います。

 さらに、このはがきにも、福田総理、これは今何が問題になっているかというと、先ほど後ろの岩永議員がやじで、訂正なしなら訂正なしでいいじゃないかとおっしゃっていたんですけれども、よくないんですよ。訂正なしの人に電話してみたら、二二%の人が実は私の記録でしたと言っているんですよ。おまけに、四二%の方が電話番号不明となっているわけなんですね。

 でも、これは、本来、電話番号欄を書けばいい話なんですよ。電話番号を書くようにということも、私たち民主党は一月から提案しているんですよ。にもかかわらず、まだ修正せずに、このまま電話番号も書かずに七百万通送る。となると、訂正なしで返ってきた方々、百万人、二百万人に、全部一〇四で電話番号を調べて、電話番号のない人には戸別訪問まですると言っているんですよ。これはまさに、百六十億、百七十億かけて年金記録訂正をやって、私は本当に無駄遣いだと思えてなりません。

 そして、こういうことを象徴する問題がもう一つあります。

 十二月の十八日に裏マニュアルというのを出したわけです、社会保険庁が社会保険事務所に。事業所名について、お客様が事業所名を失念しているような場合であっても、事務所サイドからは事業所を特定する部分について一切告げないこと。期間についても、勤めていた期間について、何年ごろ勤めていませんでしたかとか言ったらだめだ、だれもが知っているような社会的な出来事しか言ったらだめだと。これは極めて不親切なわけなんですね。

 そこで、ここで問題になっているのが、福田総理、十六ページを見ていただきたいんですが、一月末に配られたマニュアルの中で、いろいろな社会的な出来事を受給者の方が相談に来られたら昔を思い出すヒントで言ってください、こうなっているんですね。この最後、十六ページにどう書いてあるか。福田総理、十六ページを見てみてください。

 平成六年、上から二段目、これは社保庁が出している現場に対するアドバイスです、その当時のことを思い出せない人にはこういうことを言いなさいと。流行語、当時、「同情するならカネをくれ」。こんなことを社会保険事務所の窓口の人が、年金が宙に浮いて困っている、そして、ほとんどその人だと確からしいにもかかわらずに思い出せなくて苦しんでいる人に、「同情するならカネをくれ」、こういう時期に年金に入っていませんでしたかとか、これは非常識だと思いませんか。ちょっとこの感想を一言、福田総理、言ってください。福田総理、お願いします。

福田内閣総理大臣 頭を一生懸命絞って、連想するものは何かというので、その一点でやったのかもしれぬけれども、正直言って余り有効じゃないですね。ただ、これは全面的にやりかえたそうでございますので、どういうふうにやっているかは聞いてください。

山井委員 今、社会保険事務所に一時間前に確認したら、これでやっていますと言っていますよ。どう言っているかというと、相談マニュアルは今でもそのまま使っている、特段支障があったという報告はないというふうに回答しているわけですよ。

 そして、もう一点……(発言する者あり)常識的に考えろと言いたいのはこっちですよ。次の十四ページも、福田総理、見てください。十四ページの下から三段目、昭和六十二年、思い出すきっかけとして、「懲りない面々」。「懲りない面々」は社会保険庁じゃないんですか。裏マニュアルをつくったり、ヒントも出さなかったり。「懲りない面々」、受給者に言う言葉じゃないと私は思いますよ。それで、昭和五十六年「なめんなよ」とか、「すったもんだがありました」とか「ケセラセラ」、そして「大往生」とか、これはやはり受給者の気持ちを逆なでするんです。

 逆に言えば、この中に、年金保険料の記録が消えた方々に対して、社保庁のミスの可能性が高いんだから、丁重に、平身低頭対応するようにというような、そんなことは書かれていないんですよ。

 福田総理、やはりこれは私は見直すべきだと思いますが、いかがですか、このようなヒント集は。

舛添国務大臣 いろいろなマニュアルについて、これを今一つ一つチェックし、不備なものは直していく。そして、先ほど言ったように、懇切丁寧に教える。

 それで、最初に民主党の案、これは私も検討しましたけれども、要するに、一次名寄せから二次名寄せに来ると、姓名と生年月日と男女別、このうちの三つじゃなくて二つしかない要素があったときに、一つのデータで十人、二十人出てくる可能性があります。そのときに、そういう不正があっちゃいけない、そのことの配慮があったからそういうことをしているので、何にも考えないでやったわけではありません。それがまず一つ。

 そして、今委員はそのヒント集のうちの幾つかを引かれましたけれども、お年寄りで、四十年前、五十年前について、こういう会社ですか、こういう会社ですかといってもなかなか思い出さない。あのとき東京オリンピックというのがありましたね、こういう言葉がはやっていましたね、それで何かヒントになりますかねというようなことも援用しようということですから、どうか余り悪意にとらないでいただきたいというように思います。

山井委員 そういう感覚がずれていると私は言うんですよ。「懲りない面々」、「なめんなよ」、「同情するならカネをくれ」、何でこんなことをマニュアルに入れるんですか。どれだけ年金記録が消えた人が苦しんでいるか、わかっているんですか。多くのお年寄りの方々からも悲痛な叫びの相談、手元にいっぱい来ているんですよ。百万円、二百万円、多い人は二千万円も、年金記録、戻ってきた人がいるわけですよ。「同情するならカネをくれ」なんて、窓口で何で言う必要があるんですか。

 福田総理、せめてこれぐらい直すべきだと思いますが、いかがですか、このヒント集。

福田内閣総理大臣 ただいま厚生労働大臣から答弁申し上げましたように、あらゆる手だてを尽くしてやらなければいけない。また、今までのことについても、そのたびごとに考え直すとかいうものがあれば、それは修正して進めていくということでありますので、そういうことを御承知願いたいと思います。

山井委員 私がなぜこんな問題を取り上げているかというと、こういうところに、まさに国民の目線に立っていない、被害者の痛みがわかっていない社保庁の体質、そして政府・与党の体質がにじみ出ているんですよ。こういう感覚がわからないんです。

 それで、舛添大臣の答弁に私はショックを受けました。先ほど、一人の記録で十人、十五人いるケースがあるとおっしゃいましたが、ほとんどレアな、例外的なケースですよ。九割が一対一じゃないですか。まさにそれは官僚の言い分で不親切にやってきたんじゃないんですか。ですから、私はそういうことが非常にショック。

 そこで、時間がないので、福田総理にお伺いしたいと思います。

 その結果、何が起こっているか。このように、払っても社会保険事務所に行って闘い取らないと年金がもらえないから、国民年金の実質納付率、免除や猶予も分母に加えたら、もうこれは四九%になっているんですよ。二人に一人が国民年金を払っていないという現状になっているわけですよ。国民皆年金であるにもかかわらず、四九%。

 おまけに、一番深刻なのは、先ほどの質疑にもありましたが、若い世代がもう払わないんです。二十五歳から二十九歳では四〇%しか払わないということになっているんです。

 シンプルな質問ですが、ですからこそ、後ほど松本議員も質問されますが、我が党は、もう年金を一元化して、最低保障年金は税方式でやるべきじゃないか、そうしないともうもたない。どんどんどんどん納付率は下がっているんですから、幾ら努力したって。根本的に制度を変えないとだめだということを言っているわけですが、税方式での最低保障年金、この民主党の考え方について福田総理の御見解をお伺いします。福田総理。

舛添国務大臣 先ほど丹羽委員の御質問に対してお答えいたしましたように、例えば、税方式にしたときに公平の観点からどうなるか、それは移行について非常に大きな問題がありますから、そういうことはきちんと検討して、しかも、社会保障に関する国民会議の場でも、そういうことも含めて検討したいというように思っております。

 それから、先ほどの、年金について二次名寄せをすると、三要素じゃなくて二要素ですから、ふえていく。第三者委員会、最後のラストリゾートとして行っているところにも不正に申し立てしている人がいる、こういうことを考えて発言したことでございます。

山井委員 最低保障年金はもう税方式化して、年金を一元化するしかないという民主党の考え方についていかが思われますか。

福田内閣総理大臣 その答弁に真っすぐ答えているかどうかわかりませんけれども、国民年金制度は国民全体で支えられているものでございまして、被用者や制度の加入者全体、これは約七千万人ですけれども、加入者全体から見た未納、未加入率は約五%、約三百四十万人でありまして、この問題が直ちに年金財政に大きな影響を与える状況にはないということであります。

 しかしながら、国民年金保険料の未納問題は、制度に対する信頼を損なう、また、将来の無年金者や低年金者の増加といった事態を招くことから、負担能力が乏しい場合には、保険料の免除や納付猶予などきめ細かな配慮を行う。それから、口座振替の利用やコンビニエンスストアでの納付促進、悪質なケースについては強制徴収の実施など、徹底した未納対策を講じていくことが必要と考えておるところであります。

山井委員 未納対策を講じて年々下がっているから言っているんじゃないですか。今年度もまた下がっていますよ、今。そういう危機感がないから年金不信が高まるんです。

 それで、最後に福田総理に、ちょっと別の、介護のことでお伺いしたいと思います。

 先ほども議論になりましたが、介護職員の低賃金と待遇の悪さが非常に深刻な問題になっております。この問題は、党派を超えて認識は一緒だと思います。

 そこで、私たち民主党は、一月九日の日に介護人材確保法を衆議院に提出しました。これは、約半数の介護職員の方々の月給を二万円ぐらい上げる、現場の方々から多くの署名も出ている、介護職員の給与引き上げの突破口となる法案であります。

 そこで、自民党総裁である福田総理にお願いしたいのが、この法案の審議に与党は消極的なんですよ、でも、ぜひ、こういう大切な法案はせめて審議はしてほしいんです。反対されるなら結構なんですけれども、審議もしない、これは現場の介護職員の方々に対して余りにも失礼です。

 私たちは、緊急的にこの四月から介護報酬を上げて、介護職員の賃金を上げるべきだと言っております。このことについて、審議は行うという姿勢を、ぜひ、総裁である福田総理から御答弁をお願いしたいと思います。

福田内閣総理大臣 申しわけありません、内容を見ていないので、見て検討させていただきます。

山井委員 年金保険料流用禁止法案もそうですが、年金保険料を年金給付以外に使わないという、一番国民の切実な願いの法案も、衆議院の厚生労働委員会で審議を与党がこれ以上拒否して、採決も拒否しているじゃないですか。そういう姿勢が、やはり国民は、福田総理は話し合いとか言っている割には、全然、年金のことも介護のことも医療のことも不熱心だということになっているのではないでしょうか。

 薬害肝炎の議員立法を与党が出されたときも、民主党は喜んで、いい法案だったら協議しましょうと言って、一緒に審議をして成立させたじゃないですか。

 介護問題に党派の違いはないと思うんですね。ぜひ前向きな答弁を、福田総理、最後にお願いします。

福田内閣総理大臣 同じ答弁で恐縮ですけれども、内容を見て検討させていただきます。(山井委員「審議です、審議ですから」と呼ぶ)審議は、ここで、委員会のことですから、私から口を出すことじゃないんですよ。ただ、その内容を見て、いいものかどうか検討させていただきたいと思います。

山井委員 内容を見てじゃないでしょう。悪い法案だったら審議を拒否するんですか。自民党に不利な法案だったら審議を拒否するんですか。それは国会のあり方じゃないでしょう。ですから、それを整々と審議するのが国会じゃないんですか。

 今のままだと、ねんきん特別便も送るだけ送って、統合はできない、そういう深刻な問題になります。早期に解決するという総理の公約はこのままでは到底実現できない、そういうことを強く問題提起して、私の質問を終わります。

 ありがとうございます。

逢沢委員長 これにて山井君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時四分開議

逢沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、年金・医療等社会保障問題についての集中審議を行います。

 質疑を続行いたします。前原誠司君。

前原委員 民主党の前原でございます。

 私は、医療の問題について質疑をさせていただいて、最後に財政論を総理と議論させていただきたいというふうに思います。

 まず取り上げますのは、療養病床の改変についてであります。

 この療養病床の問題というのは、昔は老人病院という言い方をされておりました社会的入院の是正ということであります。

 一九七三年の老人医療の無料化に伴いまして、多くの老人病院が創設をされました。老人病院というのは、出来高払い。居住環境の悪い大部屋で薬漬け、検査漬け、こういったものがどんどんどんどん広がっていったわけであります。

 その後に、一九八五年に、第一次医療法改正で地域医療計画が策定をされましたが、その内容は、医療施設の量的整備が全国的にほぼ達成されたことに伴い、医療資源の地域偏在の是正と、医療施設の連携推進を目指すものでありました。そこで都道府県の医療計画制度が導入されました。

 この医療計画制度というのは、本来は、病床の総量規制のはずでありましたけれども、一定の経過期間を設けたために、各病院は、特に一般病院は既得権益確保のために増床を繰り返して、駆け込み増床という言い方をしますけれども、結果的には、病床は大幅に増床されて、高齢者の社会的入院の温床となった。

 その後、幾つかの、介護保険も含めて改正がなされておりますけれども、今回の療養病床の見直しというのは、こういった流れの中で行われるということで、いかに社会的入院というものを是正するかということと、医療費の削減ということが大前提になっているわけであります。

 そういう大前提は認めながらも、ただ、実際に今病院に入院されている方々はおられるわけであります。そういう中で、具体的に、この療養病床の改変がはらむ問題点というのを幾つか議論していきたいというふうに思います。

 まず、このように、老人医療無料化あるいは駆け込み増床というところで社会的入院の温床となった、そしてまた、猫の目が変わるようにそれを是正していくようなことで、減らしていくような方策もとったわけでありますけれども、最近、最近というのは去年、厚生労働大臣になられた舛添大臣にしてみれば、これは、猫の目のように変わって、医療機関は大混乱しているということがまず一つ。

 そして、今までの厚生行政というもの、つまり医療行政というものは、高齢者の医療政策と高齢者の住宅政策というものを混在させてしまっていたのではないか、私はそういう問題意識を持っているわけでありますが、簡潔に、その点同意されるかどうか。

 二点お答えをいただきたいと思います。

舛添国務大臣 一番大きなのは、やはり医療費の増大をどうして防ぐか。それは、予防して、みんな健康寿命を保つとかそういうこともありますけれども、その中で社会的入院というのは非常に大きい。それはおっしゃったとおりです。

 それから、介護は必要だけれども別に病気でもない、こういう方々は、恐らく御自宅で快適な生活をなさった方がいいだろう、ホームヘルパーさんなんかを使いながら。だから、そういう、一つの新しい、介護と医療のすみ分けの問題が一つ。

 それから、委員が住宅政策というのを、どういうのをおっしゃっているかもっと細かくお伺いしたいんですけれども、私は、地域社会のあり方、家庭のあり方、昔は子供たちが面倒を見ていたわけですから、そういうことができなくなったときに、それに代替するものとして地域やNPOの力を使う、こういうことの総体としてやらないといけないので、それが、では完璧にハーモナイズされて調和を持ってできてきたかというと、やはりいろいろ反省しないといけない点があると思っています。そこで今おっしゃったようなさまざまな問題点が出てきているんだろう、そういうふうに考えています。

前原委員 総理も含めて、少しこのパネルをごらんいただきたいと思います。今回厚生労働省が出してきている療養病床の改変の問題であります。

 まず伺いたいのは、この医療療養病床それから介護療養病床というもの、当初は、二十五万床そして十三万床ということで、合計三十八万床あったわけでありまして、それを平成二十四年度の第一期終了までに、医療療養病床については十五万床に削減をする、介護病床については、法律でなくすということが決まっているわけでありますので、これはなくす。そして、要は、なくすということの経過措置の中で、老健施設やケアハウス、そういったものに移行していくということであります。

 まず、厚生労働大臣に伺いたいんです。

 当初、医療療養病床というのは十五万床にまで減らしますという話だったんですけれども、一部新聞報道によると、なかなか十五万までは難しそうだということで、二十万という数字も出たりしていますけれども、今どういう都道府県からの集約状況で、そしてどのようになるか、その点、お答えをいただきたいと思います。

舛添国務大臣 これは、介護の現場がそれぞれの地域でございますので、今委員がおっしゃったように、今都道府県に集約をさせていまして、現状をしっかり確認した上で全体の総計をやってみたいというのが今の状況でございます。

前原委員 見通し等は、いつの時期に集約をして、どのぐらいになる予定ですか。

舛添国務大臣 できるだけ早く集約をしたいと思っていますが、今明確に、何年何月までということはちょっとまだ申し上げられません。

前原委員 病床の数もですか。めど。厚生労働大臣。

舛添国務大臣 何とか病床の数だけは年度内に出したいというふうに思っています。わかり次第、またお知らせいたします。

前原委員 厚生労働省が出してきている数字によると、療養病床の削減によりまして、平成二十四年度の医療費の増減というのは、医療給付費は四千億円減らすことができる、そして介護についてはプラス一千億になって、差し引き三千億円減らすことができると。

 先ほど申し上げたように、本来の療養病床の再編というのは、社会的入院の解消と、そして医療費のコストをどのように見ていくかというこの二つが大きなポイントだったわけでありますけれども、今のところ、私が見る限りは、後者の、コストをいかに下げるかというところに重きが置かれているような気がしてならないんです。

 少しそれを具体的に申し上げたいと思います。

 大臣のお手元にお配りをしている資料の三枚目を見ていただけますか。これは都道府県のある県という言い方をしておきますけれども、ある県が厚生労働省と話をしてまとめたものであります。これを見ると、若干おどしに近いようなことが厚生労働省から出ている。

 読みます。「今後、目標に向けて、診療報酬、介護報酬で、療養病床からの転換誘導等を行う。医療療養の診療報酬を今後上昇させる考えはない。今後、病床転換のためにいろいろな手を打つので、そのことを前提に、引き続き療養病床を希望したり、未定である医療機関等に、それでも療養病床でよいのか、念を押しておく方がよい。」ということで、厚生労働省から都道府県に対して。

 同じように、各都道府県でやっておられると思いますよ。各都道府県がその集約をしている中で、とにかく減らせ、今減らしておかないと優遇措置はないぞ、こういうようなおどしをかけながら療養病床の削減というのをやっている。

 そして、「A県のように未定が多く、かつ数値目標額に基準以上に高い場合は、今後転換意向を決めた段階で助成金を希望しても、対応できない可能性が高いことを医療機関によく説明しておくこと。」こういうふうに、かなり無理やり厚生労働省が都道府県に対して、言ってみれば、金目のことを含めて療養病床を持つ医療機関をおどしているというようなことが私はあるのではないかと思います。

 厚生労働大臣、これは、適切ないわゆる療養病床の規模というものを求めるのに、あるべき姿でしょうか。

舛添国務大臣 これがそのまま現物であるとすれば、いかにも表現がちょっと粗いというか、これは基本的な方策が間違っているわけじゃないわけですから、やはりきちんと丁寧に、療養病床から介護病床に転換してくださいよと。例えば、「いろいろな手を打つので、」というのも、これこれこういう支援策をやったり、きめ細かい手段をとりますから、ぜひこの考えのもとに誘導、転換してくださいよというふうな表現にすればいいんだろうと思いますので、お役所の言葉にしても、ちょっとこれは余り感心しないなと思いますので、ちょっと調査をして。

 私は、本来の目的は決して間違っていないと思うんです。どうしても財源の問題が出てくるというのは、もうそれは片一方でしようがありません。しかし、きめの細かい手をやっていかないと、お年寄りが万が一にも追い出されて困るというようなことがあっちゃいけないわけですから、そのためにはやはりきめの細かい手だてをやらないといけないので、文書一つのつくり方、書き方からして、私の目の届く限り、きちんとこれは指導していきたいと思います。

前原委員 方策は間違っていないという言い方をされますが、若干、私は異論があります。

 この医療療養病床についていえば、医療区分一、軽度な方、これは老健施設に行ってもらう、この下の方に行ってもらうということであります。しかも、医療区分一だけではなくて、医療区分二の三割も、要は医療療養病床には引き受けませんよ、老健施設、ケアハウス等に持っていきますよという話なんですね。それで、逆に、介護療養病床じゃなくなるわけです。介護療養病床についていえば、医療区分二の人も七割は、言ってみれば老健施設、ケアハウス等に持っていくと。つまりは、医療療養病床には、医療区分一はもちろんのこと、医療区分二の方も引き継ぎませんよ、こういうことになるわけであります。

 医療区分一というのを調べてみますと、これは、軽いのかなと思ったら、結構軽くないんですよね、医療区分一も。これは大臣、御存じだと思いますけれども。

 例えば、たんの吸引が一日八回未満必要な人、あるいは、寝たきりの人だけれども難病に該当しない疾患を持っている人、口からの栄養摂取が困難で胃や鼻からチューブによる流動食の注入管理が必要な方、排尿が困難で尿道からのカテーテルの注入による管理が必要な方、こういう人であっても医療区分一なんです。

 ということは、医療区分二ということは、さらにそれよりも重度の方々も、いわゆる医療療養病床には引き継がれませんよということになるわけですね、厚生大臣。これは、果たして本当にそれで担保できるのかなと。

 要は、医療療養病床だと百人当たりの人員配置はどうなるか。患者さん百人当たりの配置だと、医師は三人、看護職員は二十人、介護職員は二十人なんです。平均的な一人当たりの費用額は大体四十九万円ということで高い。だから、先ほどおっしゃったように、適正化という名のもとの医療費の削減をしていかなきゃいけないということで、老人保健施設、老健施設あるいは特別養護老人施設というものに移行していこうということですけれども、先ほど申し上げた、医療区分一の人でもなかなか大変だ、ましてや医療区分二の人も含めて老健に入れて、老健は、では百人当たりのお年寄りに対してどういう人員配置かというと、医師は一人ですよ、それから看護職員は九人、介護職員は二十五人。つまり、医師は三から一に減り、看護職員は二十から九に半分以下に減らす、同じ人数当たりで。果たしてそれでやっていけますかね。

 つまりは、こういう受け皿は、医療費を削減するために受け皿はこちらに移すけれどもということで、そして、人員配置基準、設置基準はこれだけ減るわけですよ。もちろん介護職員は二十から二十五にはふえますけれども、果たして対応できますか。

舛添国務大臣 実は、まさにこの問題は、私が自分の母親を介護していたときも同じ問題に直面していました。完璧に介護だけで全く医療が必要ないかというと、年をとってくるとなかなかそういうわけではありません。老健とかケアハウスに行ったとき医療のサービスがないということは、やはり一番困ります。

 それで、今、転換を図るときにそういうことがないように、療養病床から老人保健施設に転換するというようなところには、例えば二十四時間対応できるように医師は配置する、そういうような手当てをやるような形をとっておりますので、経過措置としてはそういうことをやる。

 それから、今、区分で一、二のお話をなさいましたけれども、やはり一人一人の個人の生活であり、ケアでありますから、本当にきめの細かい手当てをしないといけないと思いますから、私は、機械的にこれだからこっちにと、必要なときにも全く医療のサービスを受けられない、そういうことがないように指導はしているつもりです。

前原委員 経過措置とおっしゃいましたけれども、ただ、最終的な人員配置基準はそうなっているわけですよ。つまりは、今大臣がまさにお母さんの介護の経験からおっしゃったように、私は聞いて、医療区分一というのは全然軽度じゃない。医療区分二の人も含めて医療療養病床には引き継がれない。そして、医師も百人当たりに対しては三から一に減り、看護職員については二十から九に減る。

 本当に、金を減らすためだけにこういった形で人を移して、そしてその人たちがまともな医療を受けられるのか、介護を受けられるのかということについて大きな疑問があるんじゃないですか。これは、もう一度この療養病床のあり方を含めて見直すべきじゃないですか。

舛添国務大臣 先ほどの私のお答えがちょっと間違った点があるので訂正させていただきますと、療養病床から転換した老健についての医療サービスの付加ということ、つけ加えるということは、経過措置じゃなくて、それはずっと恒常的にやるということなので、まずそれを訂正させていただきたいというふうに思います。これは、夜間の日常的な医療措置などを評価して、二十四時間看護、利用者全員についてのこれをきちんとやるということであります。

 それで、これは本当に地域差があるんですけれども、療養病床で何とかもっているというところはたくさんあって、いろいろな御要望がございます。ですから、そういうことも踏まえた上で、しかし、所期の目的もありますので、検討はきちんと今後ともやっていきたいと思います。

 そして、私が先ほど経過措置という言葉を使ったのは、細かい要求に対して、一つ一つ、お医者さんと看護師等の配置についても御不便を来さないような形でローテーション、数値、そういうものを組み立てたいと思っております。

前原委員 ちょっと生意気な物の言い方をしますけれども、問題はやはりお金じゃないと思うんですよ。これは人の生き方、死に方の問題、人の命の問題ですよね。

 机の上で、こういう形をとりましたと。しかし、実際、平成十八年からもう追い出しは始まっているわけですよ。

 例えば、平成十八年でいえば、七月からですけれども、医療区分一の患者さんの入院基本料が、一日一万一千八百七十円から七千六百四十円に減っているわけですよ。そうすると、これはもう、軽度な人を、医療区分一は軽度では決してないと私は思いますけれども、相対的に軽度な人を病院が、療養病床が抱えていては経営的に成り立たないということで、受け皿がないまま、もう既に追い出されが始まっているんですよ。

 つまりは、これは、一人一人の命ということを考えたときには、受け皿がないまま見切り発車でこういった療養病床の転換というものが行われてきて、私は極めて大きな問題をはらんでいるんじゃないかと思うんです。後でもう一度、総理を含めて議論をいたしますけれども。

 私は、舛添厚生労働大臣あるいは厚生労働省には、基本的には気の毒だと思っているわけですよ。つまりは、社会保障費増の二千二百億円、これを、ちまちまとした診療報酬の改定の中で毎年カットしなきゃいけない。そして、自分たちの納めなきゃいけないというものはありますけれども、でもこれは、人の生き死に、一人一人の命の問題ですよね。

 もう追い出しが始まっている。行き場所のない人たちもいる。先ほどお話があった在宅とかにしていくということですけれども、今、これは厚生労働省からもらった資料ですけれども、大臣、特別養護老人ホームへの入所申込者の数、つまり待機者の数というのは全国で何人いるか御存じですか。私の出している資料に書いてあるんですよ。一番最後の資料を見ていただけますか、これは厚生労働省からいただいた資料ですから。

 単に申し込んでいるという人もいるでしょう。でも、これは三十八万人を超えているんですよ。つまりは、今の施設でも三十八万人以上の人たちが待機している、受け皿が整っていない。しかし、もう確実に金目を減らさなきゃいけないということで追い出しが始まっているわけですよ。これはやはり、人の命を軽視しているということを言われても仕方がないんじゃないですか。

 つまりは、もしやるのであれば、受け皿を先行させて、そして療養病床の改変というものをおくらせてやるというのが本来の姿であって、そんな、同時進行にやって、先に追い出しが始まっている、これは私は順序が逆だと思いますが、厚生労働大臣、いかがですか。

舛添国務大臣 療養病床を介護用の病床に変えていく、したがって、そのまま移行させるという基本的な方針でありますから、すぐに在宅ということではありませんので、そこはぜひ誤解がないように。

 ただ、この特養待機者三十八万人というのは、私が母親を介護していたのは十年以上、十年ぐらいになりますけれども、そのころも同じように大量の待機者がいた。これはもっと議論したいんですが、やはり最終的には、在宅か施設か、これは二律背反ではなくて、在宅も一部使います、しかし、上手に施設を組み込む。それはデイケアであったりショートステイであったり、いろいろな組み合わせの仕方があると思うんですけれども、現実、これはもうお一人お一人のお年寄りに合わせてつくっていかないといけない。

 ただ、例えば、ショートステイさせてくださいと。普通、在宅ですよと、介護者の、家族の立場も考えて。そうすると、夏休みとか、みんな同じ時期にそれを求めてきますから、とてもではないけれどももう施設の方で対応できない。ですから、そういうことになれば、いろいろなコストも含めてやらないといけない。しかし、今委員が御指摘の問題、追い出して、何でもかんでも自宅に追いやる、これはないようにしたいと思います。

 しかし、片一方で、やはり住みなれた家でケアを受けたい。そうすると、夜のナースステーションであるとか、夜の訪問介護であるとか、こういうことについて手だてをしないといけないので、ケアを受ける人一人一人の、そして家族の立場に立った、いい介護のシステムをつくりたいというふうに思っております。

前原委員 療養病床から、先ほど申し上げたように、介護療養病床というのはなくしていく。そして、医療療養病床についても、現在の二十三万床から十五万床に減らしていくということで、これは、先ほど申し上げたとおり、十五万床を二十万床にふやすというような話もあるわけでありますけれども、先ほど、設置基準では医師が減るということを申し上げました。では介護職員はというと、ふやすんですよね、人員配置で。でも、厚生労働大臣、介護職員というのはそんなにいるんですか、人が。人が本当にありますか。

 ちょっとこれを見てください。大臣にお配りをしている表でいうと六ページですね。六ページをごらんいただけますか。

 上の図は、これは福祉人材センターの有効求人倍率ですよ。つまりは、福祉人材センターはハローワークの一般を完全に超えて、要は、一をはるかに超えているということは、足りないということなんですよね。足りないし、ましてや、今度は下の図をごらんいただいたら、これはおわかりだと思いますよ。一番上が、これが全産業の合計のいわゆる平均賃金ですよ。これは軒並み、社会保障にかかわる人の賃金というのは物すごく低いんですよね。保育士、看護師、それから介護支援専門員、福祉施設介護員、そしてホームヘルパーということで、大臣、ホームヘルパーさんだったら全産業の半分近くですよ、平均給与は。福祉施設介護員にしたって、平均給与が三百万いっていない。介護支援専門員、ケアマネジャーの人だって、全産業のまだ下ですよね。こういう状況がある。つまりは、人が足りない。そして賃金が安い。

 だけれども、机上の空論とあえて言わせてもらいますけれども、机上の空論で、医者は減らす、看護職員も減らすことができる、そして一人当たりの平均費用額は減らすことができる、医療療養病床だったら四十九万円かかったのが、老健施設だったら三十一万に減らせると。

 だけれども、それは介護職員をふやすという前提で計算しているわけでしょう、設置基準は。人、いるんですか。そしてまた、こんなに低い賃金で、果たしてこのままでいいんですか。

舛添国務大臣 委員御指摘のように、残念ながら本当に介護に携わる人が減っていくというか、ふえていない。そして、それは、一番の問題はやはり処遇にあるというふうに思っています。

 今のシステムだと、国民の皆さんの御理解を賜って例えば介護保険料を上げていく、その分を報酬に反映させるというのは一つの方法であると思いますけれども、全体的に、不況のどん底に日本があるときは結構たくさんの方が来られていたんです。しかし、だんだん景気が回復基調になってくると、これはもう使命感だけでやっていくというのは非常に大変なきつい仕事ですから、数が減っている。これはもう何とか手だてをしないといけないので、今言った介護保険料をどう見直すかということも含めて、きちんと対応しないといけないというふうに思っています。

 ですから、委員が御指摘のように、大きな理想は掲げながら、今の介護人材の問題を含めて、机上の空論とおっしゃったように、なかなか思いどおりの成果が上げられないということですから、これは一つ一つ着実に、問題点を見ていきながら直せるところは直していきたい、そういうふうに思っております。

前原委員 苦しい答弁ですよね。苦しいお顔で答弁されていますので、よくわかります。

 増田大臣、要は政府としては、全体の金を減らさなきゃいけない、医療費を抑制する、削減するということで療養病床を減らして、そして老健施設なんかをふやしていくと。つまりは、医療から介護へという、財政負担を減らせる方向にいこうということでトータルやっているわけですよ。

 でも、今お話ししたように、介護施設というのは、これは地元の自治体の負担というのは大きくなりますよね。先ほど申し上げたように、これは十五万床に減ったという前提でいきますけれども、トータルで三千億円減らせるんですけれども、医療が四千億減って、介護は一千億ふえるんですよ。

 今でも自治体の中では、新規設置を認めない、これ以上施設をふやしたら介護保険料が、自治体負担が上がってもう大変だという中で、とめているところが結構あるんですよ。私の地元でもそうですよ。三十八万人以上の待機者がいる、何とかそれを解消するために施設をつくらなきゃいけない、施設をつくろうかと思ったら、都道府県、自治体がブレーキを踏んでいるというのが今の実情なんですよ。

 そういう中にあって、つまりは、医療費の庭先はきれいにして、負担を自治体に追いやるような仕組みになっている中で、これは総務大臣として認められますか。

増田国務大臣 正直に申し上げますと、実は私も、知事をしておりましてこの計画を最初に聞きまして、あのときは三十八万床から十五万床、こういう話でございましたが、大変心配しました。それから、現場でこれをこなすのが大変難しいなという思いがございました。

 今、舛添大臣の方からもお話ございましたが、全体の中で今後この問題を考えていかないかぬと思いますけれども、でき得ることならば、現場でのそういう人員体制、それから財政的な問題、これについてのきちんとした対応をとらなければいけない。私も、総務大臣としても、もちろんこの問題にいろいろ考えていく。

 それから、あと、都道府県で医療計画というものをつくります。それから、ことしから新たに医療費適正化計画というものを都道府県がつくらなければいけないという中で、これは総務省、あるいは都道府県の問題としてもきちんと考えていかなければならないと思いますが、今後、厚労大臣とよく相談をして、大きな構想といいますか、傘のもとで、現場が困らないように努力していかなければならない、このように考えます。

前原委員 総理大臣、今やりとりを聞いていただいていたと思います。

 つまりは、療養病床を削減するという方向性については一定の理解はあるわけです。老人病院、そしていわゆる駆け込み増床という中で、社会的入院がふえた。今もゼロとは言いません、ある程度の社会的入院があると思います。そういう中で、医療費もかさばる、そして社会的入院をなくすというこの二つの目的の中で、療養病床改変というのが行われている。

 しかし、先ほど申し上げたように、受け皿が整っていないにもかかわらず追い出しが始まっているということ。そして、追い出しだけではなくて、都道府県の調査のときには、おどしも含めてやっているということ。それから、医療区分の一というのは、一般的にはそれほど軽度の人じゃないんですよ。そういう人たちの、いわゆる単位当たりの医師数は三分の一に減るんです、そして看護の人は半分以下に減るんです。そういう話でいいのかどうなのか。

 そして、先ほど申し上げた、では介護に移していくというけれども、介護の人たちがマンパワーがない。そして地方自治体については、言ってみれば財政的な負担で今はストップをかけている状況。今は三十八万人以上の待機がいる。そういう状況で、まさに絵にかいたもちである療養病床再編をこのまま機械的に進めていっていいんですか。

 これは一度立ちどまって、受け皿をつくるとか財政的な措置をきっちりしてから進めないと、医療難民という言い方がありますけれども、今病院にいる人たち一人一人の生活とか健康とか家族にとっては物すごく深刻な問題ですよ。金のことに重心を置き過ぎている。もう一度私たちは全体像を見直すべきだと思いますが、いかがですか。

福田内閣総理大臣 私も以前、療養所で、不要な方もおられるんじゃないかといったような話、それは聞いたことは何度もあります。それでこういうような再編というふうな形になったのかもしれませんけれども、いざそういう再編計画を進めますと、本当に必要な人まで影響を受けてしまう可能性というのは、これは世の中よくあることなんですね。ですから、そういうことがないようにといっても、なかなかその区分けが難しいということで、再編の現場では悩みもあるんだろうと思います。

 しかし、それが、行き過ぎが顕在化してしまうというようなことはあってはならないことだというように思いますので、御指摘の点なども踏まえまして、この再編が正しく行われるように、きめ細かい点検を厚生労働省を中心としてやってほしい、また、それに対して総務省も協力してほしい、こういうように思います。

 今、社会保障制度も曲がり角にあるんではないかと思いますよ。それは、財政削減という観点から、社会保障も歳出改革の対象にもなっているわけで、そして、いろいろな分野で節減、節減ということになる。そういうことが、今言ったようなこの療養所のこともそうですけれども、こういうことがほかの分野でも起こってはいけない。何のための社会保障なんだ、こういうことになりますから、そういう趣旨をわきまえた行政が非常に今求められているというふうに私は思っております。

前原委員 これは集中ですので、抽象的な答弁は要らないんです。

 さっき申し上げたように、一人一人、追い出されて困っている人たちもいる。あるいは、医療から介護へということで、自治体の財政負担の問題とか、あるいはマンパワーがいない、そして給料が低いという中で、本当に受け皿がつくれるのかどうなのかといった問題がある中で見切り発車で療養病床の削減をやっているわけですよ。少なくとも、タイムラグを設けて受け皿づくりを先行させるということでないと、これは生身の人間が本当に難民になりますよ。

 もう一度、総理、それは余り抽象的なことではなくて、具体的に、その立場に置かれた人の身になって少し御答弁いただけますか。

福田内閣総理大臣 私はそういう問題点を申し上げたわけでありまして、私もそういう問題点があるんだろうというふうに思っておりますので、その辺は、具体的には厚生労働大臣とよく相談をしてまいりたいと思います。

前原委員 総理、それから厚生労働大臣、これは失敗しますよ、このままいったら。だって、受け皿がないんですから。受け皿がなくて、とにかく社会的入院を減らす。それは、ある程度は理解する。しかし、金を減らすことを中心に考えて、受け皿がなかなかうまくいっていない。そういう中でこのように機械的に進んでいったら、本当にこれは大失敗をして、そして、取り返しのつく問題だったらいいですけれども、人の命の問題ですから、今本当に困っている方々、そしてその家族の問題ですから、今総理おっしゃったように、これは少し立ちどまって、まず受け皿づくりを先行させるなどの無理のない形でこれが進むように、ぜひ考え直していただきたいということを要望しておきたいと思います。

 それで、ちょっと時間が限られておりますけれども、次の質問に行かせていただきたいと思います。これは厚生労働大臣に伺いましょう。

 人間、いつまでも健康であることというのは一番いいわけですよ。言ってみれば、できるだけ健康であれば一番いいわけでありますが、なかなかそうはいかない。しかし、できるだけ健康にするためには予防ということが大事だと思うんですね。

 そこで、私は、歯科の医療において、いわゆる老後の健康を維持するための予防、あるいは、人はだれでも年をとりますよね、年をとってなかなか病気にかからないようにするための方策というものを、やはりしっかり考えなきゃいけないんじゃないかと思うんです。

 私は、昨年の末、歯科医療の向上のための質問主意書というものを出させていただきました。そこで厚生労働省も、歯科医療については予防につながっているということはしっかり認めておられるわけですよ。

 例えば、「歯周病の予防・管理が糖尿病や動脈硬化の予防・重篤化抑制、早期低体重児出産の抑制につながるとの調査報告があることは承知しており、国民の健康の保持増進を図るため、今後とも、口腔の健康と全身の健康の関係について科学的な知見の集積を図る観点から調査研究を進めることは重要であると考えている。」こういうこととか、それから八〇二〇運動、つまり、八十歳で二十本の歯、「八〇二〇運動を始めとする疾病予防及び健康増進を目的とした歯科保健医療の充実に努めてまいりたい。」認知症というものの、なりにくいとかおくれというものを、しっかり歯が、八〇二〇運動を達成した人の比率は高い、それについては厚生労働省も十分認識をしている、こういうような答弁書が来ているわけであります。

 ただ、私の質問主意書の中で幾つか納得のできないものがあるのもこれまた事実なんですね。どういったところかといいますと、私が質問した中身は、要は検診の話なんです、企業における検診。この検診をしっかりやることが大事ではないかということで私は質問をさせていただいたわけです。

 この検診は、どういうことかというと、労働安全衛生法というもので、企業に検診を行わせることが重要ではないかということを私は質問させていただいているわけであります。

 具体的に申し上げると、労働安全衛生法第六十六条一項に「医師による健康診断を行なわなければならない。」とあるけれども、歯科の定期健診は明記されていない。そのことによって、学校保健によって培われた歯の健康は損なわれ、老人保健における対策は手おくれになってしまう。だから私は質問主意書の中で、この労働安全衛生法第六十六条一項に基づいて、歯科検診も含むと解釈をして、しっかりとした、先ほどの八〇二〇運動、あるいは嚥下性肺炎とかあるいは動脈硬化、こういったものの抑制につながっていくというような効果があるということを厚生労働省も認めているわけであります。

 しかも、労働安全衛生法改正に伴う、これは平成八年九月の労働省労働基準局長の通達、第五六六号にはこう書いてあります。「高齢化に伴う労働者の健康確保対策の重要な課題として、歯周疾患の予防対策がある。歯周疾患の予防対策としては、事業場を通じて、労働者がこれに取り組むことが効果的であることから、適時、歯周疾患に関する健康診断の機会が事業場において提供されることが望ましい旨の啓発指導に努めること。」

 通達を出しているんですよ。まさに労働省の労働基準局長が通達を出している。今の厚生労働省ですよ、大臣。にもかかわらず、この答弁書には、どういう答弁が返ってきたかというと、要はそういったことは必要ないという答弁が返ってきているわけですね。

 これについては、大臣、どうですか。法改正をすることが私はベストだと思いますが、セカンドベストとして、法改正はしないまでも、今申し上げたように労働基準局長の通達があるわけですから、これは大臣の判断で、しっかり歯科医療の検診も入れてくれと。そして、それが結果的には予防につながって医療費の抑制につながるということで、政治判断されたらどうですか。いかがですか。

舛添国務大臣 歯の大切さは私も非常に痛感しておりまして、介護の場でも本当にそれは経験したことでありますので、私自身は自分で定期的に歯医者に行って、そのたびにきれいに汚れを取って、それで健康な歯を保つというふうに頑張っております。

 労働安全衛生法というのは、基本的に労働に伴う障害、具体的に言うと、例えば塩酸とかそういう劇物を扱って歯が溶けるというようなことを想定してあるわけですけれども、この労働安全衛生法を援用するかどうか。委員がおっしゃったように、治療より予防ということで、予防がしっかりすればそれは医療費全体の抑制につながるわけですから、この労働安全衛生法を、例えば改正するとか運用を弾力的にするとかいうこともひとつ検討してみたいと思いますけれども、何かほかの手がないかなと、学校にいるときはきちんとやったわけですから。

 むしろ、私は今、個人で、そういう経験から自分で歯の管理をやっていますけれども、個人もそうだし、例えば会社も、社員に対する一つの社会的責任としてやるというようなことがあっていいんじゃないか。そうすると、大きな会社が持っている健康保険組合にしても、これは自分たちの負担は減りますから。ちょっと、何かいいアイデアを少し検討させていただきたいと思います。

前原委員 ぜひ前向きな対応策を検討して出していただきたい、これを要望させていただきたいと思います。

 時間も迫ってまいりましたので、総理大臣、ちょっと財政論を総理大臣とやらせていただきたいと思うわけでありますが。

 実は二月の十八日に、この予算委員会、私、同じく医療の問題を取り上げました。そして、そのときに舛添大臣とやりとりをしたわけでありますけれども、この医療の問題で、きょうは取り上げませんでした、他の同僚議員が取り上げていただけるというふうに思いますけれども、医師不足の問題というのは極めて深刻ですよね。これは総理も認識をされていると思います。

 総理、ちょっと資料をごらんいただければと。

 縦軸が人口千人当たりの医師数、それから横軸が一人当たりのGDPということで、日本はOECD三十カ国の中でも二十二番目なんですよ、人口千人当たりの医師数は二人でありまして、二十二番目なんですね。そして、GDPというものにつきましても、医療費は対GDP比八%ということで、これはもう何度かお耳にされたことがあると思いますけれども、極めて低いわけであります。

 逆に言えば、これだけ低い医療費、あるいは少ない医師で、これだけの医療体制が今までよく保ててきたなとむしろ思うわけでありますけれども、地方の医師不足というものは深刻でありますし、それによってたらい回しの事案などが生まれてきているというのは総理も御承知のとおりであります。

 私は、毎年毎年、自然増を二千二百億円下げるために、抑制をするためにキャップをかけているということが果たしてまともな医療制度のあり方を考えることにつながるのかどうかというと、そうではないと思うんですね。

 本来であれば、先ほど同僚議員の質問で厚生労働大臣がお答えをされ、また福田総理もお答えをされたように、地域によっては、例えば診療科ごとにこのぐらいの医師が必要だ、拠点病院はこれぐらいの配置基準が必要だ、医師数はこれぐらい必要だということで、やはり全体の絵をかく。これは今厚生労働大臣はグランドデザインということでまとめておられるという答弁がありましたけれども、そのグランドデザインをかくためには、二千二百億円のキャップをかけていてはとてもじゃないけれども無理だと思うんですね。

 先ほどの療養病床の問題、あるいは介護の問題も含めて、同じことでありますけれども、少し、今の崩壊しかかった医療を直すためには、そういうキャップを取り外して、厚生労働大臣のもとで、あるいは増田総務大臣も連携をしながら、特に自治体病院なんて今大変ですから、そういうもとで今グランドデザインをつくっている、それを、妥当であれば二千二百億円のキャップを外して考える、そしてその財源については、いろいろな形、私なんかは、まずは道路特定財源の一般財源化がいいと思いますが、そういうことも含めて考えるなんということもあっていいと思いますし、将来的には消費税の話もあっていいと思います。

 もう一つ提案をさせてもらいます。

 例えば財源の問題で、これは、たばこなんですね。これは厚生労働省の出先機関がまとめたものでありまして、要は、現在というのは、そのときの一箱の価格というのが二百五十円のときですね。そうすると、喫煙者がこれだけおられる、そして直接喫煙による死亡者は十万人を超えている、たばこによる医療費は一兆三千億円、たばこによる税収は二兆二千億ということでありますけれども、これが、厚生労働省の外郭団体が調べていった場合、三百円の場合はどうなるか。喫煙者は減るわけですね。そうすると、死亡者は減る、それで医療費も減るわけです。

 三百円の場合は、税収は減ります。要は、吸う人の人数が減ってたばこの税収は減るんですけれども、一箱五百円にした場合、あるいは千円にした場合、その中間ぐらいが妥当な線かなと思うんですけれども、この委員室の中にも、たばこを吸われる方には申しわけないんですが、そうすると、死亡者数は激減するわけですね。医療費も激減する。税収はふえる。これはプラスマイナス考えると相当大きなものになるんですね。

 ですから、総理、私が申し上げているのは、今の医療崩壊というものをなくしていくためには、この二千二百億円の自然増の抑制というものを一たん外して、あるべき医療制度というものを絵をかく。そして、そのために財源をどうしたらいいか。他のところの無駄を削るのもよし、あるいは他の税を持ってくるのもよし。あるいは、今申し上げたようなたばこ、たばこを吸う方には不評だとは思いますけれども、医療費は下がって税収は上がる。これは上下倍ですから、大きいですよ。

 だから、そういうことも含めて、あるべき医療の姿をかく時期に来ている。そうしないと医療崩壊はとまらないと思うんですけれども、総理、いかがですか。

福田内閣総理大臣 社会保障に対する財源の問題ですけれども、これは年々、社会保障費というのは、高齢者がふえるという観点から、ふえざるを得ないようなものであるというふうに認識されております。

 そういう意味でいえば、今まで社会保障も、やはり財政の改革、歳出改革という一環から対象にせざるを得なかったということはあったと思います。しかし、これをずっと続けるということはなかなか難しいんだろうと思います、実際問題言って。そうしますと、本当の意味における社会保障が成立しなくなってくる、もしくは社会保障の質を下げるということになりますから、おのずと限界はあると思います。

 ただ、きめ細かい点検は必要だという意味において、これは、もし切り過ぎだというのなら、ふやす方のきめの細かい点検も必要だし、なお削れるというところがあるのであればきめ細かく削っていく、そういう努力も必要だと思いますけれども、なかなか難しい段階に来ているのではないかという認識を私は持っております。

 そのためにどうするかの問題で、一つ、たばこの例がございました。

 私もたばこを吸いませんから割合冷淡なんですけれども、上げてもいいななんてかねがね思ってきたんですけれども、この表でいいますと、三百円に上げますと減収なんですね。ですから、三百円じゃだめ。だけれども、これは差し引きですから。それから、五百円になりますとこれで四千億円ぐらいふえるということで、これは効果があるというように思えますけれども、しかし、五百円上げますと、たばこを吸う人は減るでしょう。年々減ってくると思いますよ。

 要するに、社会保障というのは持続可能であるということが一つの大きな必要条件でありますので、そうしますと、これをその次は千円にしなきゃいかぬ、しかし、そのときにはもうたばこを吸う人はもっと減っているという可能性もありますから、これが持続可能かどうかというのはちょっとよく考えなければいけない。

 ただ、私は、たばこ自身は、健康のことからいってもそんなにお勧めしたくはないと思っております。

前原委員 持続可能かどうかということ。これは財源になるわけですよ。そして、先ほど申し上げたように、医療費は下がる、そして税収は上がる。行って来いなんですよ。そういう部分で、私は持続可能な財源だと思いますよ。

 そして、それと同時に、先ほど申し上げたように、この二千二百億円のキャップをかけていること自体がもう医療崩壊の危機に瀕しているわけです。先ほどのいわゆる歯科医療の定期健診化なども含めて、予防もする、無駄も削る。だけれどもそれは、人口構成がこうなんですから医療費は上がりますよ、自然増が。ですから、無理やり二千二百億円削っていることが、今の医師不足、たらい回し、そして無理な療養病床の削減という医療崩壊をまさに加速させることになっているということで、これは見直さなきゃいけない時期に来ている、そういう認識ですね、この二千二百億円については、総理。

 もう一度お答えください。これは今手をつけても、これをもとに戻すのはなかなか一苦労ですよ。今手をつけて、ようやく五年たって、何とかまた日本の医療はよくなったなと。先ほど申し上げたように、GDPでいうと八%、OECDの中でも下から数えて八番目と非常に低い額なんですよ。よくここまで医療関係者を含めて頑張っておられると思いますよ。

 そういう意味では、今転換のチャンスであるということ、もう一度そこの点は、今変えなきゃいけない時期に来ているという認識がおありかどうか、御答弁ください。

福田内閣総理大臣 そういう御意見を尊重し、よく点検をさせる必要があると思います。

 また、社会保障国民会議がございますので、そういう観点の議論もしていただこう、こう思っておるところでございます。

前原委員 社会保障国民会議も結構でありますが、国会でしっかり議論をしたらいいと思いますので、ぜひ前向きに、そういったことはお互い建設的に議論していきたいと思います。

 終わります。

逢沢委員長 これにて前原君の質疑は終了いたしました。

 次に、松本剛明君。

松本(剛)委員 民主党の松本剛明でございます。

 医療そして年金の集中審議ということで、総理に予算委員会においでをいただいて審議をさせていただくということになっておりますので、よろしくお願いいたします。

 もうこれは御答弁は求めませんけれども、私も一年以上、年金記録のことも訴えをしてまいりました。先ほど山井議員とのあれでも、中身を入れるのにはプログラムで四カ月、五カ月かかるというお話でしたけれども、もう一遍真剣に考えてみてください。結局、一番最初にそのことも試みていただいていたら、今ごろできているわけですから、そういうことも含めて真剣に考えていただきたいということを強く要望申し上げて、年金の制度の問題に入らせていただきたいと思います。総理、よろしゅうございますか。

 ことしの施政方針演説で総理は、「国民生活の基盤を支える医療、年金、介護、福祉などの社会保障制度については、少子高齢化の進展などにより、制度の持続可能性が問われています。」こうおっしゃいました。今の現行制度に対する信頼、そして持続可能性というのをどう評価されているのか。この「持続可能性が問われています。」ということの意味はどういう意味なのか、御説明をいただきたいと思います。

福田内閣総理大臣 「制度の持続可能性が問われています。」こういう表現を申し上げました。

 年金制度というのは、これはもう申し上げるまでもないことでありまして、国民の老後生活を支える、こういうことでありますので、極めて重要な社会保障制度の柱であると思っております。これは、少子高齢化という社会経済の変化という中にあっても、持続可能でなければ皆が安心できるものではないという意味であります。

 そういう意味において、平成十六年の制度改正なんかもいたしましたけれども、しかし、年金記録問題のように、年金制度の運営にかかわる事務や組織について立て直しが必要となっているということもございますし、無年金、低年金対策の充実を図るべき、こういう御指摘もございます。それから、基礎年金国庫負担の二分の一への引き上げに向けた安定財源の確保ということも、これも課題でございます。

 そういうような意味において、中長期的な視点に立って、年金制度を確実で信頼できる制度にするために、私どもの方で社会保障国民会議というものを開催いたしまして、年金制度を含める社会保障のあるべき姿や、その中での政府の役割、そしてまた負担の仕方などについて議論をしてもらいたい、こう考えているところであります。

松本(剛)委員 総理は、今の部分で続いて、「将来にわたり持続可能で、皆が安心できるよう、社会保障制度を立て直さなければなりません。」こうおっしゃっておられます。

 これまでも実は、この年金の制度の議論では、いつも入り口の部分で、本当に今の状況をどう認識するのか、立て直さなければいけないんだとすれば、我々とある意味では同じスタートラインで一緒に考えさせていただくことができます。しかし、私も今までいろいろな形で与野党の討論に出させていただきましたが、平成十六年の、この前の年金の改正でよかったんだという話に戻ってしまうんですね。今の仕組みで何ら問題はないんだと。

 先ほど総理御自身で御説明をされていてお感じになったんじゃないかと思いますが、いっぱい課題があって、全部継ぎはぎのように、一つ一つそれに対して対策をする。先ほども国民年金の未納の話の議論がありました。しかし、結論からいえば、残念ながら効果を上げていない。根幹の問題に触れる問題だと思うからこそ、総理が、持続可能性が問われていて立て直さなければいけない、こうおっしゃるのであれば、今の年金制度を改めることを含めて抜本的にお考えになる、そういうおつもりで今の立場はおられるのかどうかを確認したいと思ってお聞きをさせていただいています。どうぞ、総理。

福田内閣総理大臣 制度の問題もございましたけれども、しかし、それを上回る、はるかに上回るような形で年金記録問題というものが出てきたわけですね。それからもう一つは、少子高齢化と申しますか人口減少時代に突入した、そういう変化もあり、なおかつ、出生率の低下というような数字も入ってくるというような、そういう状況の変化もあります。

 ですから、そういう状況の変化を踏まえて、さらに今のあり方でいいかどうかといったようなこと、これは年金だけでありません、ほかの分野についても先ほどいろいろと御質問ございまして、私どももそういうことについて十分考えていかなければいけないというように思っておりますので、そういうことも含めまして、この際、年金制度、そして社会保障制度の中で年金がどういうように位置づけられるかといったようなことも含めて、これは一回議論してみる必要があるのではないだろうか。そしてまた、多くの国民がというか、すべての国民がこの社会保障制度について理解をしてくださり、そしてそれを信頼してくださるようなものに仕上げなければいけないというのが、これが一番大事なことだというふうに私は思っているところです。

松本(剛)委員 今まで、政府におかれては、先般の改正で一つの形ができているんだ、こういう話でしたが、そういうことも含めて根本的にあり方を見直すことが必要である、こういう御認識であるとすれば、ここからしっかりまたこの国会でも議論をさせていただきたいと思っています。

 そういったことも踏まえてなのかもしれませんが、総理のもとにおつくりになった国民会議でも、また経済界からも、いわゆる全額税方式というのが出てきております。これは、移行過程をどうするとかいろいろな問題がいっぱいあるんですけれども、この全額税方式についても一つの検討対象として総理はお考えなのかどうか、御意見をちょっとお伺いしたいと思います。

舛添国務大臣 けさ以来ずっと、この全額税方式については、問題点を御指摘してきたとおりでございます。生活保護との関係をどうするかとか、それから、今給付を受けている方が再度例えば消費税で負担を負うのをどうするか、それから移行過程の問題もあります。

 ただ、もう一つは、今企業の方というお話がありましたけれども、厚生年金については半額負担をしているわけですから、これがなくなるということになれば、ではその負担は家計に転嫁されるのか、そうするとその分企業の負担は軽くなる、そういうことでいいんだろうかということがありますので、議論はきちんとやっていいと思いますけれども、さまざまな問題点がありますということは御指摘申し上げたいと思います。

松本(剛)委員 大臣おいでいただきましたから、念のため確認をしますが、いわゆる全額税方式ですと、雇用者、使用者の負担が大幅に軽減をされて、それがどこかに行かざるを得ない。これは、税という形であれば全国民でしょうし、最終的にはそれは家計であるかもしれない、こういうことでよろしいですよね。

 この全額の税方式というのもいろいろ問題があると思うんですが、この機会に、昨日から、けさからですか、昨日もあったような気がしますが、議論がありましたが、民主党の案について改めて少しお話をさせていただきたいと思っております。

 お手元に配りました資料の一番上に出ておるかなというふうに思いますが、これまで民主党のマニフェストその他でも、この表では下の絵で私ども御説明をさせていただいてまいりました。しかし、まさに私から申し上げれば大変不毛な議論で、全額税にすると幾らかかって、それでいくと消費税は幾らかかるんだということを、私自身も、去年は政調会長をしておりましたが、参議院の選挙のときから何度もその話をさせていただいて、何度も説明をさせていただきましたが、半年以上たってまだ同じことが繰り返されているというのは非常にあれだと。説明の仕方をひとつ改めさせていただくというか、こういう説明の仕方もあるということで、上の図を出させていただきました。

 これは、実は、もとも私が全部長さもはかって、きちっとつくりました。この黄色い部分の面積は同じであります。当然、この上の黒い線でしょうか、受け取る年金額も同じ金額であります。上下同じグラフを指しています。ただ、台形の部分のある場所が下にあるのか上にあるのかということで違ってまいります。

 実は、参議院の選挙の間も、代表以下民主党の側からは、所得比例の年金に加えて、これまでの保険料を払うものが少なくて、当然、所得比例は現役時代に払った保険料総額が少なければ少なくなりますので、そうすると、極端に言えばゼロの人から、極めて少ない金額しか受け取れない人が出てくる。しかし、それでは所得保障という形にならないので、最低保障というものを上乗せさせていただきたい、これは税でさせていただく、こういうことを申し上げてまいりました。

 この形でいきますと、これも参議院の選挙のときにもはっきり国民の皆様にも申し上げました。税を払ったのにもらえない人がいるではないかというお話がありました。そのとおりであります。そのように我々も申し上げてまいりました。保険料は、払った分はきちっと返ってくるようにという形でこのようにさせていただいて、しかし、税については、いわば国で集めて再配分、年金を受け取る方で少ない方のために使わせていただく、多額の税を払った方であるかもしれないけれども年金を受け取る額が多い方は我慢をしていただく、これははっきり申し上げてまいりました。これは、最終的に税の使い方の国民の選択だというふうに我々は思っております。

 先ほど総理にも少し申し上げました。私どもは、今この案を、今から年金を変えていく場合に、先ほど自民党の丹羽議員も話をしておりました、白地に書くわけにいかないという話もありました、過去債務の問題もあります、どうやって移行するかという問題もあります、全部いろいろ考えた末に、今、抜本的にこうやって変えるのが一番いいのではないかということで提案をさせていただいたわけであります。

 総理も先ほど、あり方を根本的に見直す必要がある、こういうお話であれば、どういった形で国民会議に諮問されているのかわかりませんが、ぜひ、政府・与党におかれても、今の年金制度をこう変えるべきだという民主党の対案を出していただきたいと思いますが、総理の御見解を伺いたいと思います。

福田内閣総理大臣 全額というのじゃないんですね。(松本(剛)委員「私はずっと最低保障年金と申し上げております」と呼ぶ)今のあの図でよろしいんですね。(松本(剛)委員「はい。上も下も同じですから」と呼ぶ)その方式ですね。一つの考え方としてとり得るものだというふうに思います。

松本(剛)委員 実は、これは上の段には使用者負担も書かせていただきました。引き続き、やはり日本の仕組みの中で使用者の方々にも負担をお願いしていく必要があるのではないか、こういうことで出させていただきました。

 もう一枚おめくりをいただくと、今の全額税方式、現行方式、あくまでイメージですが、こういう形になっているというふうに理解をすべきではないかなということで、国民年金、厚生年金、共済年金、いろいろな区分があったり、三階の部分があったりするのはかなり捨象して出させていただきました。この使用者負担の部分が、下のいわゆる全額税方式にすれば軽減をされるということを、これは先ほど厚生労働大臣もおっしゃっていた部分だろうというふうに思います。ですから、これを見ていただいても、民主党の案とこの全額税方式というのは大分違う話であるということはぜひ御理解をいただきたいと思います。

 ここでは、きょうは医療、年金の集中ですからあれですけれども、道路の話のときもそうでしたし、この話のときもそうなんです。政府のお考え方がある、ない。道路については案が出ていますし、年金については、今のところ、現行制度を維持が基本的に政府のお考えなのかもしれません。暫定税率がなくなるととか、全額税方式にするととよくおっしゃいますが、それは、おっしゃっているのは、どちらも民主党の案ではなくて、新たな第三の案をやり玉に上げて攻撃をされておられる。全額税方式はひょっとすると、経済界が言っておられる部分が多いので、経済界を自民党は批判をされておられるのかもしれませんけれども。ぜひ、そういう的外れで不毛な議論はそろそろここらで打ちどめにして、しっかりと前向きの議論をさせていただきたいと思っております。

 一つは、先ほども、自民党の議員の方に我々は答弁する機会がなかったので申し上げておきたいと思いますが、消費税のお話もありました。私どもも党内で三%いただくということにかつてしていたのを、徹底的に議論をした上で、今回の参議院の選挙ではいただかないということにしました。まさに、自民党の丹羽先生が言われたように、だれが税金をどのぐらい担えるのかということが非常に大きな問題だということの話がありました。

 この三、四年で、定率減税の廃止を初め、大変な家計への負担増がやはりあったということを考えると、どこから財源を持ってくるのかと考えたら、家計に負担を押しつけるわけにはいかないという結論でそういうことになったわけでありますが、年金の制度の仕組みとしては、我々、基本的な考え方を維持してさせていただいているということをお話しさせていただきたいと思います。

 あわせて、これも後ほど話があると思いますが、そうすると、この所得比例年金、これに入っていなければ最低保障年金が受け取れるのか、受け取れないのか、こういう話もあったわけですけれども、この所得比例年金を公的年金としてすべての人に公平にするために、我々は歳入庁の構想を訴え申し上げているわけであります。

 そういう意味では、あえて誤解を恐れずに言えば、強制保険料方式プラス最低保障と言わせていただいた方が近いのかもしれないと思っていますが、これは、入っていない人はどうするんだとか、所得が捕捉できないじゃないかとか、いろいろおっしゃいますが、税金を、そうしたらそもそも公平に取っていないのかと。やはり税金も、もちろん完全に捕捉できるとは言えませんが、できるだけ公平に取れるようにやはりしていかなければいけない。

 当然、税を公平に所得を捕捉して取るのと同じように、歳入庁で保険料も公平に取っていくことをきちっと実現をするということが大事な話でありまして、一部に時々、これは、自営業者の所得が捕捉できないからどうするんだ、こうおっしゃる方がいますが、それは、自営業者の方々に対しても、あたかも税をちゃんと払っていないかのような、非常に失礼な表現だろうというふうに思いますし、政府の側としては、所得の捕捉ができていないというのは、不公平を野放しにするんだと言っていることに等しいわけでありますから、ぜひそういったこともきちっと前向きに見直すということで新たな制度を加えていただきたいと思っています。

 その上で、我々は、こういったことを実現するためには、やはり一元化が必要だろうということで訴えさせていただいています。後ほど長妻議員からも一元化の話をさせていただきたいと思っていますが、先ほどパートの話もありました。

 パートの方々、非正規の方々から、年金の保険料を負担していただくかどうかというのは大変大きな議論になってきていますが、私どもからすれば、やはりこれは、非正規の方々がこんなに多くなる前にもうちょっときちっと議論をしておくべきであって、確かに、これだけ大きくなってくると、多くの非正規を抱えた企業にとっては激変になるわけですね。大変な負担になってくる。そうすると、これをどうするのかということを考えていかなければいけないわけですけれども、続いて、後から後から、そうすると、ちょっとずつ追っかけていっても、いつまでたっても追いつかないという状況が発生するのではないか。

 やはり、抜本的に制度を組みかえるときに、これからあしたへ向かってどういうふうに保険料を払っていただくのかということでは、一度制度を根本的に組みかえる必要があるということを強く訴えさせていただきたいと思います。

 総理からも、一つの考え方としてはあり得るというお話でございました。全額税方式というのも検討の俎上にのせるという話でありましたけれども、ぜひこの機会に年金の話を国会でしっかりと議論をさせていただきたいと思っております。

 何か御所見ありますか。もういいですか。

舛添国務大臣 今委員がお示しくださったこの上のグラフで随分わかりやすくなったと思います。

 ただ、上のその黄色い部分の最低保障年金の財源は消費税、これが、だからどれぐらいの規模になるのかということと、それから、移行措置、移行に伴うときの混乱というのは回避できるのか、こういう点についての議論をやはりいろいろやっていく必要もあるかなというふうな思いで聞いておりましたけれども、下の図よりもはるかにお考えはよくわかるということを申し上げておきたいと思います。そして、そういう議論を今後とも国会の場で続けていきたいというふうに思います。

松本(剛)委員 質疑応答が逆転をしておりますが、お答えをさせていただきたいと思いますが、この制度への移行については、やはり、いわば保険料は、変わった時点から新しい制度で払っていただきたいと思っています。しかし、受け取る年金については、当然そこまでの既存の権利があるわけですから、私は今四十八歳ですので、言うなれば、二十八年分と今後六十五歳までの十七年分の組み合わせの年金を六十五歳以降受け取る。ですから、最終的な移行には、今二十の人が、いわば保険料を払い終わる六十五まで四十五年ぐらい、スタートを何年にするかですけれども、かかるというふうに我々も思っています。

 その間は、ただ、保険料に関しては、即日、できるだけ歳入庁による強制保険料方式で取っていきたい。いわば、保険料を払わないということも、脱税に等しいぐらい、これは国民のために公的な負担としてはきちっとやっていただきたいというふうに思っていますから、いわば未納の問題、今から納める側の問題というのは制度を変えた時点から新しいステージになるというふうには考えております。

 これだけ抜本的な改革をやはりしていく、今の年金制度を今のままでいいと与党がおっしゃるのであれば、もう一度我々はこれを掲げて、国民にどちらがいいのかというのを選択していただくということになります。

 一つ、最後に総理に、財務大臣にも関係をされるかもしれませんが、お聞きをしておきたいと思います。

 もうこれで、全額消費税にすると消費税何パーセントで何とかかんとかというような不毛な議論はここで打ちどめにしていただくということでよろしいですか。

額賀国務大臣 我々は、お話を伺っていまして、二〇〇九年度にはこれまでの基礎年金の国庫負担を二分の一にするということについて、この秋に向かってしっかりと議論をしていかなければならない。そういうことも踏まえて、それはもう消費税を含めて、所得税だとか法人税、そういういろいろな分野について議論をする中で、そういう財源を考えていかなければならないということ。

 それからもう一つは、先ほど総理もおっしゃったように、今後、十年、二十年、三十年先のことを考えることと同時に、財政再建のことも考えていかなければなりませんので、当然、社会保障に対する安定した財源と、それから財政再建をどういうふうに実現していくか、そういうことを幅広く考えていかなければならないというのが我々の考え方でございます。

 それから、私は、個人的には、やはり社会保障全般について社会保障国民会議でいろいろ議論をこれからしていくわけだけれども、本当の弱者というのはだれなんだと。やはり医療とか、病気になった方々、これは若い人もお年寄りもみんな突然病気になったりするわけですね。だから、本当の弱者というのはだれなんだと。あとは、介護という人たちは、そういう人たちは本当に一番弱者なんじゃないのか。そういうことについてもよく、年金とか基本的に入り組んだ形で、総合的に考えていく必要があるんじゃないかなということを感じます。

松本(剛)委員 既にマスコミにも対外的にも、私どもも、これは三十年、四十年先まで、当然、切りかえの時期はいろいろな年金の組み合わせの支払いにもなります、全部、試算をしたものも発表しておりますので、その上で申し上げているということだけまず申し上げておきたいと思います。

 あとは、年金の制度については、総理は、施政方針演説でも、また今おっしゃったように、現状を真摯にお受けとめいただいているのではないかと思いますが、財務大臣は、職責上かもしれませんが、今の制度の二分の一を積み上げることをやるんだと。若干というか微妙に方向が違っているのが最後は大きな違いになるのではないかと思いますが、ということを指摘させていただきます。

 そして、今から医療のテーマに移りたいと思いますが、財務大臣、まさにおっしゃるとおりだと思うんです。医療、介護は大事だと思うんですから、政治家として、全部一律に切るんじゃなくて、二千二百億を切るというもののしわ寄せが今まさに医療、介護に行っているわけですから、そこは財務大臣として御判断をいただく時期に来ていると思いますので、後ほどまたお伺いをしてまいりたいと思います。

 そうしましたら、医療について、高齢者医療のあり方と医師不足の問題について何点かお伺いをさせていただきたいと思います。

 まず、高齢者の医療制度、今度新しくされて、後期高齢者の医療を独立させるということになったわけですけれども、本当に、独立をさせるということのメリットというのはどこにあるんでしょうか。

舛添国務大臣 人それぞれ、健康状態や何かもケース・バイ・ケースで、個々違いますけれども、一般的に申し上げますと、七十五歳以上になって、いわゆる後期高齢者という言葉で呼んでおりますけれども、その心身の特質というのはやはり若者や壮年とは違うだろう。

 そういうときに、全体的に十分なケアを行っていく、そして、そのための保険制度も安定して運営できるような形で、持続可能な健康維持のシステムをつくっていく、保険のシステムをつくっていく、そういう観点から、ただ疾病ということよりも、生活全体を見るような何か仕組みができないかということで、後期高齢者の医療制度ということをこのたび発足させることにした次第であります。

松本(剛)委員 保険料の収入から独立した保険制度、保険者として独立するというふうに私は理解しているんですが、提供される医療とか診療報酬の体系は、基本的には若年者と後期高齢者で変えるわけではないというふうに説明を聞きましたが、今のお話だと、提供するものも変えるんですか。

舛添国務大臣 医療のサービス自体を変えるということではなくて、やはり、かかりつけのお医者さんが高齢者の方々を全体的に面倒を見るような、そういう仕組みにするということで、診療報酬が後期高齢者とそうじゃない方がかかったときに違う、そういうことではございません。

松本(剛)委員 そうすると、後期高齢者として保険料を別にして財政もきちっと分けるということの意味というものの説明、かかりつけの体制であれば今でもお進めをいただいてきたわけですし、そうしたら、保険者として何らかの形で別に進めようということなんですか、かかりつけ医の形を。そういう政策にはなっていないんじゃないか。つまり、後期高齢者の方を分けたわけですよね、その方々に何か別の施策をやるということなんですか。そうではないんじゃないですか。

舛添国務大臣 後期高齢者の方にも、これは比率でいうと十のうちの一の負担をいただく。そして、現役、若年者の支援が四、そして公費で五、こういうような形で現役も公にも支えていく。だから、いわゆる自助の部分が一、共助の部分が四、そして公助の部分が五、そういう財政的な負担でこれを運営していきたい、そういうことでございます。

松本(剛)委員 今までの老人保健制度の直近の負担状況とこれは同じですよね。その意味では、財政的に特に変わるわけではないんじゃないですか。

舛添国務大臣 そういう点では、例えば国民健康保険、今負担の比率をおっしゃいましたけれども、それは基本的には変わりません。

松本(剛)委員 幾つかの対象の方々はこれによって負担がふえるんですよね、保険料を払っていただくとか、そういう形になってきますから。ですから、この制度をなぜ入れたのかという明快な理由の説明がどうしてもわからないんですよ。

 お聞きをしてまいりたいのは、私自身は、むしろ保険というのは、特に医療の保険というのは、やはりリスクをお互いにカバーをするから保険なわけですね。そうなれば、その七十五歳以上という、特質があるとおっしゃいましたけれども、限定すればするほど、ある意味ではそこにリスクが集中する中でリスクを処理しなきゃいけなくなるという問題があります。

 加えて、これまでの拠出金でもそうでしたけれども、若い人の側からすれば、あえてきつい言葉を言えば、お金を取られている、そちらへ入れられているということで、一体となって支えているという感覚も薄れてくるわけですよね。

 何を目的にこの後期高齢者の制度をつくっているのかということを考えたときに、残念ながら、財政の理由、お金の理由ということになるのではなかろうかということを疑わざるを得ないというふうに思っているんです。

 今回、これから高齢者の方々にとって、今回の変更では負担は基本的には変わらないとおっしゃいますが、所得の少ない方々の負担はやはり大きくなりますよね。いかがですか。

舛添国務大臣 その前にもう一つ、この保険の主体を都道府県単位でやるということが一つ大きゅうございます。というのは、市町村単位で今までやっていましたから、どうしても安定的な運営ができない、これがもう一つあります。

 そして、新しい制度に移行するときは、当然負担がふえたり減ったりということがありますから、これは、きめ細かく、そういうことがないように軽減措置をとるという形で対応したいと思っております。

松本(剛)委員 きめ細かくとおっしゃいましたけれども、現実に、今回の制度、今既にもう仕組みはでき上がっているわけですね、しばらく凍結していますけれども。この制度でいけば、所得の低い方々にとっては相対的に負担が大きくなる可能性が高いのではないですかと申し上げたんですけれども、事実はいかがですか。

舛添国務大臣 それは、ですから基本的には、先ほど委員自体がおっしゃったように、基本的には変わらないと思います。だから、ケース・バイ・ケースで負担が大きくなることについては手当てをする、そういう方針で臨みたいと思っています。

松本(剛)委員 既に制度はでき上がっているので、手当てをするという方針で臨みたいということではお答えにならないと思います。

 もう一つお聞きをしたいと思いますが、その前に、増田大臣もおいでをいただいています。

 先ほど広域でやるというお話でしたけれども、それであれば、これは特別地方公共団体になるわけですよね、広域連合という新しい団体になられるわけですけれども。今、医療圏とか医療政策は、基本的には県ですよね。今回のは、市町村の連合体がこの保険者になるわけですよね。今度、政管健保も、また県単位で別の法人もできるわけですよね。保険者もそして政策の主体もばらばらで継ぎはぎだということで本当によくなっていきますか。

 我々は、一つの医療圏としてきちっと統一をしたものにすべきではないかということを二年前から提案をさせていただいているんですが。増田大臣もよくおわかりだと思います、学校教育もそうですよね。ばらばらになっているということの問題というのがたくさんあると思いますが、どうお考えですか。

増田国務大臣 この問題は、市町村ごとよりも広域で、市町村ごとにいろいろな財政力等もばらつきがございますので、広域で今後運営していく方が安定性があるということと、それからあと、今まで広域自治体たる県あるいは都道府県の役割がこういう医療制度の場合に非常にあいまいであった、これから都道府県の役割をはっきりとさせて、従来は国が大きな方針を決めて、あとは市町村がそれに絡むということでございましたが、こういう場合に、都道府県として、広域自治体としてこうしたものに一定の役割を果たしていく、こういう大きな考え方のもとに制度改革に動いてきた、一般的にそういう動向がございます。

 ただ、今お話がございましたとおり、二次医療圏、三次医療圏、そして医療計画、それから医療費適正化計画等、まだそうしたところについてきちんとした統一が全部とれているというよりも、改革を進めていく中でより広域性を持って、個々の市町村にゆだねるというよりも、より制度の安定性を図る、そういう改革を今行っている途上であるというふうに考えていただきたいと思います。

松本(剛)委員 あえておわかりになっていてそういう御説明をしたのかもしれませんが、都道府県単位と都道府県は別ですよね、都道府県単位のまた新しい特別地方公共団体が設立されているわけですから。そこへ保険者としてある意味で機能を集中させるのであれば、それはそれで一つの考え方だと思いますが、今であれば、都道府県があってまた広域連合があるわけですから、ばらばらにどんどんなっていっているわけですから、ぜひそのことは今後早急に、やはり抜本的な見直しを考えていただきたいということを厚生労働大臣と総務大臣に要請しておきたいと思います。

 厚生労働大臣、戻りますが、先ほどの高齢者の負担の問題ですが、これは、これから一人当たりの高齢者の医療費が上がれば、その分はほぼストレートに高齢者の保険料にはね返ってくるということになりませんか。

舛添国務大臣 それは、おっしゃるように負担がふえれば、医療費がふえれば、それは当然そうなる。

 それから、もう一つやはり考えておかないといけないのは、人口比率の問題で、五対四対一、つまり、公費、若年者、高齢者は一割、その四に当たるところの若年者の人口比率が減るということになれば、相対的にそれは高齢者にかかってくる。したがって、ただ、これは今の財源論だけではなくて、例えば先ほど前原委員がおっしゃったように治療より予防というようなことも含めて、健康寿命、これをいかに延ばしていくか、地域全体の医療力そのものを総合的に高める形でこういう問題に対応していきたい。

 実を言うと、この後期医療制度も、かかりつけ医が全人的に診る、そして地域全体で医療の力を高めていく、そういう大きなコンテキストの中であるということを御理解賜ればと思います。

松本(剛)委員 舛添大臣、これも保険ですから、未払いになれば当然、資格証明のような形になって償還払いになりますよね。つまり、お医者さんへ行ったときに、その三割なりの自己負担だけではなくて、十割払って後からお金が返ってくるという形になってしまうわけですよね。

 高齢者の方々の、先ほど公明党の福島委員も、高齢者の所得保障の問題をされておられましたけれども、高齢者の七十五歳以上の方々に相対的に大きな負担が、結局この未払いがどんどんふえることになってくると、皆保険がここから崩れてくるのではないかという懸念があるということを指摘させていただきたいと思いますが、これに対する対策なりお考えがありますか。

舛添国務大臣 もう機械的に、あなたは払えない、そして一年滞納したら資格証明書だというのではなくて、とにかく窓口に相談に来てください、きめ細かく対応します。そして、例えば生活保護を受けないといけない方というのはそういう保険料の支払いはありませんから、そういう方は全部それはきちんと対応する。そして、さまざまな、例えば自分の事業が失敗したとか、急な事故に遭ったとか、そういうようなことについては減免措置がきちんと決められておりますので、それは私の方からも、各現地の窓口に対してきめ細かく対応し、そういうことがないようにということであります。

 それから、資格証明書一年、それから短期の場合も、それを発行するというのは、実は、ちゅうちょして窓口に来られない方に対しても、とにかく、こういうものが来ました、これは何ですか、とにかく窓口に来てくださいよ、あなたの経済的実情、そういうものを細かく相談させていただきます、そして御無理のない形で御負担していただきますよ、そういうことで、きちんときめ細かく対応してまいりたいと思っております。

松本(剛)委員 大臣、私は大臣の気持ちを否定する気はありませんが、我々はやはり、ここで制度をどうつくるかという話をしていますので、きめ細かく対応するということは、制度の問題に対する答えにはならない。ぜひ、その点、先ほどから御説明をお聞きしていても、後期高齢者は最終的には高齢者の方々に大きな負担を、財政的つじつまを合わせるために役に立つのかもしれませんが、医療とか七十五歳以上の方々の健康的な暮らしのためにどういうメリットがあるのかということは結局わからないままここまで来ているんですね。

 総理、これは大きな問題をいろいろ抱えているということも含めて恐らく凍結があって、今与党でも抜本的な改革を検討していただいているというふうな話は聞いております。ぜひ、やめるということも含めて、本当に抜本的に考えていただいて、抜本的が看板倒れにならないようにしていただきたいと思いますが、御所見を伺いたいと思います。

舛添国務大臣 きめ細かく対応しても制度がなければどうしようもないわけでございます。きめ細かく対応するという前提に、例えば先ほど申し上げましたように、特別な事情があればいいんだと、例えば財産につき災害を受け、また盗難にかかったとか、生計を一にする親族が病気にかかったり、こういうことをきめ細かく制度として決めておりますから、その点についても御理解賜りますようにと思います。

 そして、新しい制度に移行するときには現場でいろいろな問題が起こってきます。そういうことに対して一つ一つその問題を検証してさらに前に進めていく。しかし、大きな理想を掲げてやっていることについては方針としてきちんとやっていきたい、そういうふうに考えております。

福田内閣総理大臣 厚労大臣からるる御説明を申し上げたとおりでございますけれども、この問題について問題意識を持ちまして与党の方も検討しているところでございますので、さらに検討をさせていただきたいと思います。

松本(剛)委員 医師不足の問題についてお伺いをしたいと思いますが、これは舛添大臣にお聞きした方がいいんでしょうか。

 二〇〇六年ですから平成十八年七月に、医師の需給に関する検討会の報告書というのがありますが、今でも政府としての医師の需給の見通しというのはこれが公式なものだという理解でよろしいんでしょうか。

舛添国務大臣 今、そういう需給の見通しがありますけれども、私は長期ビジョンを策定したいということで、今私のもとで、そのための検討会を開いておりますので、私自身は、医師が足りているのかなというと、そうではないなという感覚を持っております。それから、診療科による偏在、地域による偏在、そういうさまざまな問題を抱えております。

 ただ、何度も申し上げていますように、どれだけあれば十分で、どれだけあれば不足かというよりも、それぞれの地域のニーズに合わせた形できちんと対応してまいることが国民のために最も役に立つと思ってやっております。

松本(剛)委員 総理もぜひ聞いておいていただきたいと思いますが、この平成十八年の報告書は、例えば医師の勤務時間が四十八時間ということになっていますが、この四十八時間に何を入れるかということで非常に大きな問題になっております。

 今、この報告書で、検討会で使っている四十八時間であれば、実際には、今これだけ忙しいお医者さんでも、その基準でいったら四十八時間働いていない人がいっぱいいる状況なんですね。つまり、今よりお医者さんがもっと働いた上で足りているという計算になっているとか、あと七十歳以上の人も全部カウントしているとか、そういう問題があるということは、大臣、御認識いただいていますか。

舛添国務大臣 それは、四十八時間だけじゃなくて、今御高齢の方の例を出されましたけれども、いわゆるパート的に若いお医者さんが来てやっている、こういうものを総体的に勘定すれば、では医師の数はそれだけの数ふえるのかなというようなことになりますけれども、私は、やはり現場が非常に、これは勤務医の方々が過重な労働をやっていますから、こういうことを軽減していくためにきちんと政策をとらないといけないと思っております。

松本(剛)委員 大臣、おわかりになっているんだろうと思いますが、お医者さんは四十八時間働くとして、仕事量がこれだけあって、その四十八時間働いて、割るとお医者さんが何人要る、こういう計算をしているんですよ。しかし、その四十八時間という中には待機時間とかそういうものを含めていませんから、今のお医者さんで、その基準で四十八時間働いている人というのは、いないとは言いません、その方がたくさんいらっしゃるわけです、四十八時間働いていない方が。ですから、それを基準にすると、今よりもお医者さんがさらに忙しく働いて、今回の需給見通しの計算になってくるという計算に平成十八年の計算はなっているんですよということを申し上げました。御理解をいただいていると思います。

 ですから、あの計算で、二〇二二年ですか、平成三十四年に需給均衡になるという計算になっていますが、今は、これでは多分ならないのではないかという認識で動いておられるという前提でよろしいですか。

舛添国務大臣 たしかあれは四十八じゃなくて、実際は六十三かそれぐらいだったというふうに思っておりますので、私は、そういう問題点も認識した上で、新しい医療ビジョン、つまり、十年がかりでお医者さんを養成しないといけないですから、そういう長期的な政策を立てたいと思っております。

 委員の問題意識はよくわかっておりますし、私はその点は認識しております。

松本(剛)委員 早急にこの平成十八年版を改めるのであれば、検討会、もう設置されたんですか。

舛添国務大臣 安心と希望の医療ビジョンという形で委員会を、私の直属で設置しております。これと連動した形で、今の指摘についても検討してまいりたいと思います。

松本(剛)委員 ぜひ、大臣のいわば私的諮問機関にとどまらず、この需給の検討会というのはいわば半ば公式の役所の組織でしょうから、これで見直していただきたいと思います。国土交通の方でも、小泉さんがここで言ったけれども、閣議決定も法律も変えていないから、実は何も変わっていないんだということに等しいようなお話がありましたので、しっかりこれは変えていただきたいというふうに思います。

 私の持ち時間もほぼ尽きてまいりましたので、あと幾つかだけ御提案をさせていただいて、御検討いただきたいということを関係の各大臣にお願いさせていただきたいと思います。

 資料の五のところにありますが、一つは臨床研修医の問題、これのいわば配置が随分とずれてきたことで、あちこち医師不足になってきたのではないかという話があります。これは上と下を見ていただいたらわかります。私どもでも、例えば足立信也参議院議員とか鈴木寛参議院議員とか、もちろん厚生労働の関係の人間、さまざま議論して、いろいろなことを提案していますが、これを見ていただいたらもうおわかりだと思います。

 今は、いわば実際に配置をされる方より定員が多目になっていますので、行きたいところに行くと、どうしても必ずしも人気のないところはあきが出る。しかし、これはかなりの、足らないという人もいますけれども、補助金を国が出しているわけですよね。ぜひやはり枠をもうちょっとぴしっとしていただいて、配置が再配置できるように検討をしていただきたいと思っております。もうお願いをするということでよろしいですか。ぜひ早急に検討していただきたいと思います。

 それから、これは当面の緊急の対策という意味では、渡海文科大臣にもおいでをいただきましたが、今いるお医者さんをどういうふうにうまく回していくかということを考えますと、国立大学の先生、そして地方公務員の、県立とかにおられる病院の先生、いろいろな方々を、やはりお医者さんの働き方というのは普通のサラリーマンとはちょっと違いますよね、週に何曜日かは診察をされるとかいう形もあるわけですから、やはりかけ持ちをしていただくということ。実際に地方でも幾つか新聞に出ているケースがありますね。隣接もしくは離れたところの市立病院が比較的近い、かけ持ちをしようと思ったけれども、給料をどっちが払うんだということで難しくなったとか、そういう話があります。

 ぜひ、この兼職の規定というのを、特にこれだけ医療崩壊の時期になれば、お医者さんについて見直していただくことを検討する必要があるのではないかというのが私どもの有志の議員の考え方でありますけれども、お願いをさせていただくということでよろしいですか。では、ぜひお願いします。

 最後に、渡海大臣には、大学の定員の話は既にけさも出ましたが、今、大学院大学、その意味では医科の大学院大学についてもぜひお考えをいただきたいと思っておりますので、大臣の方から御検討を指示されるかどうか、その判断も含めてお願いをさせていただきたいと思っております。何かありますか。

渡海国務大臣 委員がおっしゃっているのは、いわゆるメディカルスクールみたいなイメージだと思います。そのことも含めて、それから学士入学の制度というのもありますから、そういったこと全般について今調査をいたしている最中でございます。

 いろいろな方面から我々は検討して、医師の養成は厚生労働大臣もおっしゃいましたように時間がかかりますので、スピード感を持って、今後どういう体制をとっていくか、そういうことを検討していきたいというふうに考えております。

松本(剛)委員 これで終わりますが、医師不足についても、私どもはある意味では政府よりも早く医師不足ではないかということを御指摘させていただいてきた。その分だけ、今も申し上げたように、幾つかの点を真剣に考えて御提案をさせていただいていますので、ぜひ国民のためにお酌み取りをいただきたいということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

逢沢委員長 これにて松本君の質疑は終了いたしました。

 次に、長妻昭君。

長妻委員 民主党の長妻昭でございます。

 きょうは質問の機会を賜りまして、ありがとうございます。端的に御答弁をいただければ幸いでございます。

 まず、自民党の厚生労働委員長の茂木敏充議員に対して、厳重に抗議を申し上げたいと思います。

 これは、先月、厚生労働委員会の発言の議事録が職権によって削除されました。私の発言でございますけれども、与党というのは一度でも不祥事を追及したことがあるんですか、政府の、この発言で、いまだに回復をされておりません。

 これは、このまま放置をしておくと、本当に後世に汚名を残してしまう。これに対して撤回を何としてもさせるということでいきたいと考えておりますので、厳重抗議、回復を求めてまいります。

 そして、きょうの質問でございますけれども、戦中戦前の消えた年金問題をまず議題とさせていただきたいと思います。

 旧令共済というものがございまして、戦中戦前に陸軍、海軍の工場で一生懸命働いた皆さんがおられ、推計で百四十三万二千人の方がその共済に軍属として加入をされたというものでございますけれども、これも当然、厚生年金の基礎年金部分には、受給に反映される記録でございます。その納付記録というのは今どんな状況でございますか。

額賀国務大臣 今御指摘の点につきましては、国家公務員共済連合会は、これまでも社会保険庁からの要請によりまして旧令共済組合員期間の確認作業に協力をしてきたところでありますけれども、最近の確認要請件数が増加しております。加入記録の保有状況について、連合会に対しまして、きちっと把握するように調査を指示したところでございます。

長妻委員 戦後六十年以上たって、今調査を要請したということでありますけれども、例えばこれは平成十九年度、ことし一月末までの数字ですけれども、自分の旧令共済、あのとき、戦中戦前に共済に入っていたから、その記録が抜けているから探してほしいという申請者が今年度三千九百二十二人もおられ、そして判明した方が二百五十四人ということで、いまだにこの意味でも戦争は終わっていないというような、非常に扱いが冷たい形になっている。

 今から探すんですか、旧令共済の納付記録が連合会に保管されているかどうか、こういうお言葉でありましたけれども、いつまでに探し出しますか。

額賀国務大臣 これは、長妻委員のお声もあって、私もはっきり言うと知らなかったことなんだけれども、調べてみますと、これは昭和二十五年に旧令共済組合等からの年金受給者のための特別措置法というのが制定されまして、国、共済連合会が旧令共済組合等の権利義務を承継し、年金支給を行うこととされた。この際、上記の承継された支給の対象は、法律施行当時、既に旧令年金受給資格期間、つまり、組合により、十五年または二十年、外地にいた人とか陸海空にいた人の期間を満たしていた人たちに限られていたということであります。満たしていない人たちには、旧令共済組合の解散時に残余資産の中から一時金の分配等が行われたということなので、一たんそこで処置が終わったのかなという印象を持っておったということを聞いておりましたので、最近またいろいろな問い合わせがあるので、改めてきちっと調査をさせているということでございます。

長妻委員 これは余りにも冷たいと思うんですね。戦争中あるいは戦前、一生懸命国のために働いた方、そして、その記録が、何か探すこともしない。

 そして、今申し上げたのは納付記録そのものでありますけれども、勤務の記録は、軍属としてどこに勤務したかという記録は、今現在、厚生労働省が、あるいは都道府県が保管をしております。外務省も保管をしております。ただ、その記録は、御本人から社保庁に申し出があって、ここで自分は働いていたはずだと強く強く言わないと、その記録を探して出してこない。

 ある方は、山梨県まで、東京から県庁まで自分の記録をとりに行った。何度も社保事務所に足を運んで、らちが明かないので県庁まで自分でとりに行って、それをまた東京の事務所に渡す。こういうような、その方はもう八十歳の方でございますが、終戦当時二十歳の方は今現在八十三歳で、まだ御存命の方も多い。

 厚生年金に基礎年金部分は反映されるということで、これはぜひ、この勤務の記録というのは、私の手元にもコピーがありますけれども、これは臨時陸軍軍人軍属届ということで、女性ですよ、昭和十九年の四月一日から大阪の陸軍で工場で働いて、一カ月のお給料が一円十三銭ということで、きちっと書いてあるんですね。これは書類があるんです。

 ですから、そういう意味では、これをコンピューターに入力してさしあげて、その方には、ねんきん特別便と同じように、その記録が抜けているわけですから、コンピューターに入っていないわけですから、せめてお亡くなりになる前にきちっとお届けする。しかも、これは、厚生年金で遺族年金が出ている場合は遺族年金が値上がりというか、反映されるわけでありますから、お亡くなりになった方も、この記録が発見されれば遺族年金、遺族の方の年金がふえるということで、戦中の御労苦に報いるためにも、これは探してコンピューターに職歴を入力して、ねんきん特別便などできちっと反映させるということを、ぜひ福田総理、総理、きょうせっかくおいでいただいているので、御決断、ツルの一声で、これは総理が決断すればできるんです。よろしくお願いします。

額賀国務大臣 これは、おっしゃるように、戦中戦後、大変御苦労なさったという意味では私も同じ思いでございますので、しっかりと早急に調査をして、きめ細かく対応させるようにします。

長妻委員 いや、総理、やはり社保庁のコンピューターに入力する、そうしないと、年金、この記録もくっつかないので、その検討をするという、せめてそのぐらい御答弁いただきたいと思うんです。総理、ぜひ。いや、総理ですよ、総理。これは全部またがっているんだから。関係ないです。関係ないです。総理、総理。

逢沢委員長 最初に舛添厚生大臣、その後に福田総理から御答弁をいただきます。

舛添国務大臣 これは、今額賀財務大臣がお答えになりましたように、まず、軍人軍属含めて、この人事表をきちんと資料を抽出する必要があります。その上で、一件一件この調査を行う必要があると思います。

 さらに、今、基礎部分については通算可能だというのは、今委員が御指摘したとおりでありますので、そういうことについても周知を徹底していく、そういう上での作業になると思います。

福田内閣総理大臣 実は私も、この問題、知らなかったんですよ。だけれども、これはこれで、そういう問題、あるということがわかりましたので、ひとつ前向きに検討させていただきたいと思います。

長妻委員 これはぜひ、先ほど舛添大臣、手間がかかるような話がありましたけれども、手間の問題じゃないですよ。国家の威信の問題なんですね、これも。戦中に本当に御苦労された方々に対して誠の心をささげるという姿勢を持っていただきたい。

 もう一点、これは私も調べてびっくりしたんですけれども、戦中戦前、軍人の方で陸軍、海軍に勤務されておられた方、その方々というのは恩給が出ます。しかし、いろいろ要件があって、十二年という期間がある。これは、激戦地とか外地で、外地加算とかいろいろありますけれども、おおむね十二年軍隊に勤めていないと恩給がフルに出ない。

 では、十二年未満の方はどうなるのかというと、軍人の期間が十二年未満の方は、その後国家公務員になれば、あるいは地方公務員になった方は、その軍人の期間も自分たちの共済年金にフルにカウントされるということなんですね。

 ところが、軍人で十二年未満の方で、その後サラリーマンになったり国民年金になったり自営業になったりした方は、その軍人の期間が全く厚生年金、国民年金に反映されない、あるいは二十五年ルールの空期間にも反映されない、こういう非常に官尊民卑の状況があって、かつて国会でもこれは一部論議になったことがございます。

 これは総理も御存じだと思いますけれども、ぜひこれは見直す御検討を始めていただきたいと思うんですが、いかがですか。

舛添国務大臣 これは戦後処理をどうするかという問題の一つの大きなテーマでございまして、委員御承知のように、昭和五十六年に、戦後処理問題についてどのように考えるべきかという、戦後処理問題懇談会、これは内閣官房長官の私的諮問機関ですけれども、ここでさまざまな議論をいたした結果、十二年、それから三年以上というのも少しありますけれども、正式には十二年、これぐらい軍に勤めていないと、年金制度における取り扱いでは、今おっしゃったように、長く勤めたら恩給が出ます、その恩給制度との絡みで、これは年金制度と通算しないという決定を戦後処理でやった。

 それに対して、これはそのかわりと言ったらなんですけれども、そのときに、恩給欠格者の方々に対しては、平和祈念事業特別基金等に関する法律ということでそれを行っているわけでありますので、昭和五十年代の終わりに決定した戦後処理のあり方というのを、例えば、どういう形でこれを見直すのか、そういう大きな問題にもかかわってくるというように思いますので、少し検討させていただきたいと思います。

長妻委員 これはぜひ総理に御決断をいただきたいんですけれども、戦争に、陸軍、海軍に行かれた方は、当然、志願された方だけではなくて、赤紙で行った方も数多くおられる。

 例えばこういうことなんですね。軍人の、軍隊に行った期間が例えば十年あった方がいらっしゃった。その方が戦後公務員になった場合は、その十年分が丸々公務員の年金に、基礎部分も比例報酬部分も加算される。公務員でいたと同じような扱いを受ける。しかし、軍人の期間が十年だった、その後サラリーマンや自営業になった方は、それが全く反映されない。

 例えば、その後、戦後サラリーマンになって、二十年しかいろいろな事情があって年金保険料を納められなかった方は一銭ももらえないんですね。日本は二十五年ルールという冷たい制度がありますから、その人は二十年分の掛金は没収された上、一銭も受給ができない。しかし、その二十年分が、公務員と同じように軍隊分の十年分が加算されれば受給できるわけでありまして、なぜ公務員だけ軍隊部分が年金が出て、それ以外の方は出ないのか。

 私のところにも相談があったわけですね。つまり、戦友がいた、自分の戦友がいて、その戦友は年金に軍隊時代が加算されている、自分は加算されていない、おかしいということで問い合わせたら、その戦友の方は、戦後公務員をやられていたんですね、だからくっついて出る。ところが、その方、自分は民間なのでそれが出ないと。

 同じ苦労をしたのに、なぜ公務員の場合は軍隊部分が丸々出るということなのか。これは検討して是正をすると、総理、ぜひ御発言いただきたい。

福田内閣総理大臣 戦争中のことについて、戦後処理というものが必要に応じてなされたわけですね。いろいろなケースがございますので一概に言えないんですけれども、そういう中でもって、一度は決着したと思われていたものが、その後、やはり公平性の問題からいっておかしいのではないかといったような議論も当然出てきておかしくないと私は思います。

 ですから、そういう経緯を踏まえまして、一度よく考えさせていただきたいと思います。

長妻委員 そして次に、政府の消えた年金問題の三月末公約の件でございますけれども、今の現状をお伺いしてこのフリップにまとめましたけれども、つまり、当初、未統合の記録は五千九十五万件あった。そして、先月、一月末までに統合された記録というのは三百八十五万件だと。全体の七%しかまだ統合されていない。この調子で行くと、同じペースだとすれば十三年かかる。

 この三月の公約というのは、これは到底守られるとは思えないわけでありますけれども、これはもうギブアップ宣言をして、一から根本的にやり方を変える、こういうことを御検討いただかないとできないと思うんですが、いかがですか。

舛添国務大臣 統合された記録は一月末で三百八十五万件。そして今、十二月の終わりから特別便を送っております。そして、来年の十月までに一億人の方々にお送りする。その過程で、一つ一つ、一人一人の年金の記録について再構築をしていく、そういう形ですから、今七%ですけれども、これは今から着実にふえていくというふうに思います。

 それは、だれも今までやったことのない作業であります。そして国民の皆さん方の御協力もいただかないといけないことでありますので、ただ、今が全体の七%だからできないということではなくて、一歩一歩、昨年七月五日の政府・与党の工程表に基づいて、全力を挙げて、一人一人の皆さん方の年金記録を再確立していく、この努力は続けていきたいと思います。

長妻委員 三月末に、当然これは一月末の数字ですから、少しは上乗せになると思いますけれども、その数字で公約を達成したと強弁をするというのは、これは到底許されないと思います。

 私どもは、三つの失敗があると言っているんです。我々、一年前からやるべきであるという大きな三つの提言、これは全部無視されて、政府は暴走した。

 先ほど山井議員からもねんきん特別便の話がありましたけれども、一つは、このねんきん特別便の失敗であります。郵送物の中に抜けた記録を工夫して入れろ、そして窓口に来た方に抜けた記録をお教えしろと。そして、訂正がないという返信用はがきを入れるのもおかしいわけで、つまり、ほぼ間違っている人に送るときに、訂正がないという返信用の選択肢を設けること自体もおかしい、これが一点目でございます。

 二点目といたしましては、これが最大のものですけれども、紙台帳が八億五千万件ある。厚労省の調べですから、さらに私は隠されたものがあると思うんですが、その紙台帳すべてをコンピューターデータと照合してコンピューターを正しくする、この作業をやれということを一年前から我々は言っておりましたけれども、いまだに一枚も紙台帳の照合はなされておりません。それも並行的にやらなければ、三月末のこの公約が達成しにくくなる。

 そしてもう一つ。最後は、第三者委員会の増強です。これも我々は、被害者はけた違いですよ、潜在的被害者も含めると大変な数だ、国家プロジェクトで取り組めと何度も申し上げていたのですが、第三者委員会も非常に小ぢんまりと始まって、今現在、証拠のない方を見る第三者委員会でございますけれども、この受け付け総数、これが二月二十二日時点でございますから、四万二千七百七十七件のうち判定が済んだ方が三千二百十三件。七・五%です、白黒ついた方が。そのうち、申し出がオーケーと認められた方が一千四百八十四件。つまり、全体の三・五%しか認められない。しかも、判定済みのうちの五四%は却下なんですね。選挙前は、判定された方全員が認められた、一〇〇%だったものが、今は半分以上がはねられる。これは、このペースでいくと、判定済み、今受け付けた方だけで処理が済むのが約九年かかります、このスピードだと。しかし、さらにまた受け付け件数がふえます。

 つまり、これは総理にお伺いしたいんですが、これはもはや国会で何度もこういう議論をして、実際になかなか問題ができない、またやり直す、この繰り返しというのは本当に不毛だと思うので、これはやはり、一つは、私は、社会保険庁、厚生労働省の方と質疑のためにいろいろレクを受けたりして感じますのは、もう無理です。社会保険庁や厚生労働省に任せていては、この問題は永久にできません、解決できません。ですから、ぜひ総理に英断を下していただいて、できる限り社保庁、厚生労働省の職員はこの作業から外して、そしてほかの役所の人間をきちっと入れて、そして政治家を、これは与党ですから政務官を十人ぐらいふやしてもいいと思いますよ、それで社保庁の中に入れて、きちっと部長の隣に席を設けて、政治家がきちっとコントロールする。私は、そういうやり方をしなければもう解決できない。しかし、もっと言えば、今の政権では解決できない、そういうふうに思っておりまして、本当は早く下野していただきたいんですが、ただ、今の現状の中では、私が申し上げた手段を総理に本当にとっていただきたい。

 私は、他省庁にも優秀な方がたくさんおられると思います。そういう意味では、国家の危機だと。総理も国家の威信にかかわると言われました。まさに、安全保障と社会保障、その二つというのは国家の礎なのでありまして、そういう意味では、国家プロジェクトとして、そして民間にも守秘義務をかけて、きちっとおろす、こういう形にしなければ、この紙台帳の照合も、今の体制じゃできません。今すべて、社保庁に問い合わせると、いや、五千万件が忙しいのでほかはできません、できません、こういう状況になっているわけでございまして、ぜひ、社保庁、厚労省を外して、外せる部分は外して、そして新しい血を入れて、政治主導でこの問題を国家プロジェクトでやる、こういう御決断をいただきたいと思うのですが、いかがですか。

舛添国務大臣 まず、三月末までの公約は、コンピューター上で名寄せをする、そして昨年七月五日からの工程表に基づいてきちんとやる。それで、マンパワーも財源も無尽蔵にあるわけではない中で、やはり優先順位をつけてやることが必要だろうと。

 だから、その優先順位は、私は、十月までに一億人全員の国民にお知らせする、そうすると、その方々に御協力いただいてチェックをする。それから、節目節目で、長妻委員からも貴重な御提言を賜っておりますので、特別便もよくする、それから窓口対応も変える、できるだけの努力は重ねております。

 この年金の問題は、私が厚生労働大臣として全責任を持って、政治家の立場で指揮監督をする。そして、社会保険労務士の皆さん方の御協力も、市町村、農協、漁協、郵便局の皆さんの御協力もいただく。そういう形で、厚生労働省、社会保険庁の職員も一生懸命頑張ってやります。もちろん、他省庁やほかの方々の御支援も賜る。先般、首相補佐官に任命されました伊藤達也さんの御支援もいただくということで、着実に一歩一歩やっていく。

 そして、例えば、八億五千万枚につきましても、特別台帳、国民年金の台帳、それから厚生年金という形で、サンプリングをしながら一つ一つやっていく。そしてまた、問い合わせがあって、一億人全部が見て、これはおかしいよと。そのときに旧台帳との突き合わせもやるわけですから、そういう形で一つ一つ着実に進めていきたいというふうに思っております。

 私は、私の責任において、全力を挙げて、政府、国家に対する信頼を取り戻すために頑張りたいと思います。

福田内閣総理大臣 厚労大臣が今ああいう決意を述べておられるので、私も信頼をしております。

 ですから、予定のスケジュールをきちんとやっていくということが今大事なんですよ。やはり物には順番があるんだろうというふうに思います。

 紙台帳につきましても、これはいずれ手をつけなければいけないことかもしれません。私もその必要性等について正確に承知しているわけじゃありませんけれども、いずれは、こういう関係についてはすべてチェックする、そういう体制というのは必要なんだろうと思います。

 しかし、作業の対象となる記録は膨大でございますので、これは実効性とか効率性とかいうようなものを考えた上で、順番をつけるしかないんだろうというふうに思っております。

 そういうために、この厚生年金の記録については、現在実施しております、二万件のサンプリングをやっております。サンプリング調査しておりまして、その結果を踏まえて、今後の作業の優先順位、それから効率的な実施方法の検討を行うということにしておりますし、また、平成二十年度におきましては、複雑で特殊な記録であります国民年金の特殊台帳、これについても突合を行う、こういうふうなことをして、そういう段取りを考えておるわけであります。

 もちろん、そのとおりきちんといくかどうかわかりません。もっとほかにいい方法が考えられれば、そういう方法を選ぶ。まずはサンプリング調査の結果を見たい、こう思っているところです。

長妻委員 今三つの失敗ということで、三つの要請をいたしました。

 そういう意味で、もう今のペースで行くと、私は、下手すると解決まで二十年かかってしまうおそれがある。そして、厚労省、社保庁の体質をよく見てください。今でも隠ぺいをしております。そういう職員がおります。ぜひ、外していかないと、これは本当に解決できない。三月末になって、これができない場合、本当にギブアップして下野していただきたいと思うわけでございます。

 そして、年金の一元化の問題を申し上げますけれども、先ほど松本議員から、民主党の年金制度を申し上げましたけれども、例えば、国民年金に着目するとどういう状況になっているかということなんです。

 これは私、一昨年の三月一日に予算委員会分科会で川崎二郎厚労大臣といろいろ興味深い議論をさせていただきました。私が老後の最低限の生活を保障するのが年金ですかというふうに川崎厚労大臣に申し上げましたところ、答えはこういう答えでありました。「国民年金については、若い時代から、いやまた先祖様からもあるかもしれません、ストックというものと年金というものを組み合わせて生活を送っていく、こういう認識をいたしております。」こういう御答弁がありました。

 つまり、国民年金というのは、今、丸々四十年間払っても一カ月六万六千円。しかし、なかなか丸々払う方は少なくて、今、平均で四万円台です、国民年金を受給されておられる方。それだけでは生活できない。なぜそういう年金なのかというのは、川崎大臣の話でよくわかるわけです。

 つまり、国民年金というのは自営業の方が多いから、御先祖様とかいろいろなところからあるお店とか土地を引き継いで、そういう資産がある方が多いから、まあ、少ない年金でも、それと合わせて生活できるぐらいの制度設計だ、こういう趣旨の御答弁だったと思うんですが、ところが、現実をぜひ見ていただきたい。

 これは言うまでもありませんけれども、これは社保庁調べですけれども、国民年金の被保険者はどういう方々が被保険者かということで、この真っ赤なところですけれども、平成八年にはアルバイト、パートさんが一三・八%だったものが、平成十七年度調査では二五・二%ということで、もうアルバイト、パートさんが比率として倍になっておられる。そして、自営業の方は、家族従事者も含めると、平成十七年のこの最新の調査では三割を切っておられる。これは無職の方も、この常用雇用というのは、個人事業所ですけれども五人未満なので入る必要がないということで入っていない、これもいわゆるサラリーマンの方でございまして、そういう、自営業の方は三割を切っているのに、まだこういう時代錯誤的な発想を政府が持っているとすると、これは雇用もゆがめる。今、国際的な年金の基準、考え方の一つは、雇用あるいはライフスタイル、その変化にも柔軟に対応できる年金、これが世界標準になりつつあります。

 だから我々は、国民年金も入れて、被用者だけじゃなくて、国民年金も入れた一元化、すべての方が同じ年収であれば、どんな仕事、職業でも同じ保険料を払って同じ受給額だ、この一元化が不可欠だというふうに申し上げまして、国民年金も必ず一元化の中には入れないと、また国民年金だけ置き去りにしたら、そこにゆがみが来て、働き方がゆがめられ、そういう弱いあるいは雇用が不安定な方がそこにほうり投げられてしまう、事業主負担を嫌って。

 そういう弊害を生まない、無年金を出さないためにも、国民年金も入れた一元化が重要だと申し上げているんですが、これは順繰りにやっていてはひずみを生みますので、被用者だけではなくて一気に一元化をするということを、総理、ぜひここで方針を決断いただきたいと思うんですが、いかがですか。

舛添国務大臣 総理が一気に御決断なさるかどうかの前提として、我々が被用者年金の一元化ということを法案を出して言っている中に、今御指摘の、自営業者以外のパートの方々、この人たちも正社員と同様に厚生年金に入っていただくということを盛り込んでおりますから、まずそれを通していただきたいというふうに思います。

 それから、今は企業負担が、厚生年金、被用者の場合は半分ありますから、これは先ほど松本委員がお示しになった図でも、私は、個々の自営業の方々の負担が倍になる、今よりも倍になるということは変わらないのではないかなと思いますから、この点をどうするか。それから、もちろん所得の正確な捕捉ということも問題だと思いますので、こういうものをきちんと議論するということを前提にした場合に、まず、私は、被用者の制度を一元化する、そして、長期的な課題として全体の問題を考える、こういうステップ・バイ・ステップの方がより現実的であろう、こういう考えに立っております。

福田内閣総理大臣 国民年金を含めた公的年金の一元化に関しましては、検討すべき課題であると思っております。現在のように、制度が分立しておりまして、複雑ですよね、そういう中から誤りも起こる可能性もあるわけでございますので、一元化を進めていく方向については、これはいいんだろうというふうに思います。

 さらに、中長期的には、年金制度を確実で信頼できる制度にするという観点から、社会保障国民会議におきまして、年金制度を含め社会保障のあるべき姿、その中での政府の役割、負担の仕方などについて議論を行っていく、こういうことにしておりますので、各党各会派が年金制度のあり方に関して真摯に話し合うことは必要であるというように思っております。

長妻委員 そうすると、今、被用者年金一元化法案が出ておりますけれども、それではなくて、国民年金も含めた一元化、こういう方向で御検討いただく、こういうことでよろしいんですか。

福田内閣総理大臣 私は、これから国民会議がありますので、そこで十分議論していただきたいと思います。いろいろな形というのが考えられると思いますので、そのうちの一つの形態として、当然考えられるべきものと考えております。(長妻委員「何が考えられるんですか。もう一回、ちょっと」と呼ぶ)

 さっき言ったとおりです。国民年金の一元化ということです。

長妻委員 そして、平成二十年度予算を見ますと、消えた年金問題の対策で二百九十八億円の税金が対策費として入っている。これは、今後も数百億円の税金が投入される。しかし、国民の皆様が納得できないと思うのは、責任者が何にも表に出てこないし、実態も全く明らかになっていない。

 ということで、私は前回のこの予算委員会で、責任追及を徹底するという鳴り物入りでできた総務省の検証委員会が元長官を三人ヒアリングした、責任追及だということで。ところが、その元長官の三人のヒアリングの議事録も全くない、メモもない。そうしましたら、官房長官が答弁に立って、いや、それは、ヒアリング内容がどこかの会議で報告されているはずだから、その会議の議事録はある、こういうような御発言がありましたけれども、その議事録は、その後事務方から聞いたら、一切ありませんということでしたけれども、官房長官、どうなっているんですか。

町村国務大臣 ヒアリングは、委員会ではなくて委員懇談会の場で開かれた、そういうような御説明を長妻委員にされたようでございます。したがって、懇談会だから議事録、議事要旨等は作成されていない。そして、このヒアリングの結果報告は、座長が作成した備忘録のようなものをもとに座長から委員会に報告をされた、こういうことのようでございます。

 しかし、もう報告書は出され、その中には当然、三人の歴代社保庁長官からヒアリングした結果も含まれているわけでございましょうから、私は、ヒアリングの概要につきましては、一言一句は別として、概要については検討してこの場でお答えをするというのが適当であるということで、総務大臣には指示したところでございますので、総務大臣からお聞きいただければと思います。

増田国務大臣 先般の委員会で、ちょうど私はおりませんでしたが、局長の方から委員の方にお答えをしたようでございますが、この委員懇談会で、今官房長官からお話がありましたとおり、議事録はとっていないところでありますけれども、座長が作成した、委員の皆さん方で考え方を共有するための備忘録のようなものがあるということでございます。

 いわゆる五千万件の所在について認識していたかどうか、それから裁定時主義についてどう考えていたか、また社会保険庁が持っている組織問題について、例えば例の三層構造問題があります、人事の仕組みの問題、それから組合の問題等についてどのように考えていたか等について、この三人の元長官に聞いたということでございますので、そういうふうに聞きましたので、こうしたものをお示しすることとしたいというふうに思います。

長妻委員 しかし、これは奇怪な話で、その三人の元長官のヒアリングは委員会だとばかり思っていたら、議員が有志で聞いた。しかも、その報告会は懇談会で、議事録が残らないようになっている。

 しかも、そのヒアリングは、総務省の建物じゃなくて、十一ページでございますけれども、わざわざパレスホテルでこういう委員が、あるいはKKRホテルとか、税金で部屋をとって、何かひそひそというか、こそこそというか、聞いているということで、これは改めて、歴代の長官をきちっとやはりお呼びして、公の場でお話をお伺いする、こういうふうに政府もしたらどうかと思うんですが、福田総理、最後、御決断をいただきたいと思います。

増田国務大臣 前回、局長の方からの御説明も不十分だったのかもしれませんが、まず、場所の問題は、総務省をあえて避けたとか、そういうことでは決してございませんで、総務省内の会議室を確保できなかったので、今言ったようなところ、パレスホテルは五万幾らですか、KKRホテルは三万幾ら、それから、あと法曹会館、ここは無料で場所が確保できましたので、座長にいろいろ御配慮いただいて、そうしたところを使ってヒアリングをした。

 それから、あと、この内容について、ちょうど委員懇談会で話を聞いたということでございますが、かなりもう審議が大詰めになってきたところでございますので、その後もかなりの回数は、委員懇談会という形で、いろいろとお互いに審議を尽くしていった。そして、起草の段階に入ってきつつあるところでございましたので、その中で、かなりの数、その後、委員懇談会という形で全員が考え方を共有して、そして審議を行ったということでございます。

 それから、この三人の皆さん方についてでございますが、これは、御経歴からもおわかりのとおり、年金記録の管理業務などに詳しいと考えられる人間、すなわち、歴代の長官の中でも、厚労省の本省を経験して、一番最後の段階で社保庁の長官に就任した者等もございましたので、ここは、座長と各委員の判断で、年金記録の管理業務などに詳しい、かつても社保庁の中で何回か業務を経験している、こうしたこれまでの問題の積み重ねについて知っている人間に話を聞こう、こういうことで判断をした、このように伺っております。

長妻委員 この三人は、村瀬元長官、佐々木元長官、真野元長官、三人だけ、非公開と。

 我々は、一番重要なのは、この国民年金の紙台帳の廃棄命令を出した当時の正木元長官がキーマンだ、そして、その廃棄命令を出した当時の年金保険部の部長の長尾さん、そして業務第一課長、三人の参考人招致をこの委員会で申し上げましたけれども、これもまた自民党の反対できょう実現できないということで、公の場で一人のお話も聞いていないですよ、これ。税金が平成二十年度予算で三百億円ですよ。だれ一人のお話も、公の場では何にも聞いていない。備忘録がちょっとあるから手持ちのメモをちょろちょろと見せます。何ですか、これ。これはおかしくないですか、総理。

 ぜひ総理、今度、御決断いただきたいんです。公の場で、公開の場で話をまずお伺いする、そういう場をぜひ設けていただきたいんです。総理。

逢沢委員長 増田総務大臣、簡潔にお願いします。

増田国務大臣 簡潔に申し上げますが、委員ヒアリングを委員会等で行ってまいりましたし、それから委員懇談会等も、その後七回ですか、行った上で委員会にかけていますので、決して、各委員の中で、公式の場でやっていないということでなくて、考え方を共有されているというふうに思います。この点だけはもう一度確認をさせていただきます。

福田内閣総理大臣 国会の運営上のことですから。それは私が決断することじゃないですよ。(長妻委員「政府の中で」と呼ぶ)いや、私の決断することではないので、それはこの委員会にお任せをするしかありません。私の答えることではありません。(長妻委員「政府はもう聞かないんですか」と呼ぶ)

 検証委員会では議論を尽くしたものというように承知をしております。

長妻委員 結局、何にも表にヒアリング内容が出ずに、検証委員会は去年の秋に解散され、結局、全員責任があります、この一行で終わっちゃった。これで三百億円出せと言うんですか、国民に。全然明らかになっていない。とんでもないですよ。参議院選挙の前に、当時の総理大臣は、徹底追及するという趣旨の発言をされていませんでしたでしょうか。

 そしてもう一つ、総理に財源問題をお伺いしたいんですけれども、政府は、消費税を上げないとなかなかもたない、もたないというような発想をお持ちでございますけれども、これは今、では、国の支出というのは本当に無駄遣いがないのか。我々は、もうべらぼうなものがあるというふうに考えているんですが、例えば、今、日本国、国の支出というのは幾らなんだろう、現金、一年間に出ていく現金は幾ら出ていくんだろうというふうに考えると、特別会計とか一般会計ありますけれども、二重計上、ダブり部分を除くと、財務大臣、平成十八年度の決算ベースで、現金が国から平成十八年度一年間で幾ら出ていきましたか。

額賀国務大臣 平成十八年度決算ベースの一般会計と特別会計を合わせた歳出を純計しますと、二百五十・九兆円であります。

長妻委員 これは、二百五十兆円の現金が平成十八年度一年間で、国から現金が表に、外に出た、こういう数字であります。

 では、総理にこれは聞きたいんですけれども、この二百五十兆円の中で無駄はどのくらいあるというふうにお考えになりますか。まさかないとは、言っていただくと困るんですけれども、どうですか。

額賀国務大臣 これはもう、我々は、毎年度、単年度で予算編成をするときに、無駄のないようにしっかりと、歳出をきちっと査定をしたりしてきているわけでございます。

 また、前年度より予算が減ったからといってそれは無駄ということではないのであって、それは時代の変遷によって重点的に対応していくことになるわけです。

福田内閣総理大臣 それは、無駄ゼロを目指しているわけですけれども、しかしながら、残念ながらいろいろ出てくる、そういうものがありまして、そういうことがないように努める、もう最大限の努力をするというのが我々の務めである。(長妻委員「どのくらいあると思いますか」と呼ぶ)いや、これはわかりません。

長妻委員 いや、何でこういう話をしたかというと、我々は、参議院の選挙のマニフェストで、一年間十五・三兆円削減する、こういうふうに、きちっと無駄遣いを含めた一覧表を出して国民の皆さんの審判を仰いだわけです。そうしたときに、自民党から、いや、民主党は十五・三兆円なんて、こんなの、無駄があるはずない、こんないっぱい。削れない、削れないというオンパレードでしたから、では自民党は一年間に幾らぐらい無駄があるんですかと我々が問い返しているわけで、総理、教えてください。

 十五・三は出ないというのであれば、幾らなら出るんですか、年間。

額賀国務大臣 例えば二十年度の予算ベースで見ますと、七割は、国債の償還とか利払い費とか年金、医療だとか、そういうことで占められているわけでございます。

 無駄というのは、我々は、毎年度毎年度きちっと査定をしています。例えば民主党との、あるいは野党の皆さん方との国会の議論でいいますと、随意契約の見直しなんかで三百数十億円減額させていますよ。そういうように、毎年毎年そういうことを積み上げてきているわけです。

長妻委員 いや、自民党は、政府は、これは今の発言はもう無駄はないというようなお話じゃないですか。我々は十五・三兆円と申し上げているのに……(発言する者あり)自民党から今も、自民党の席から、できっこない、明細を示せと。明細はちゃんと細かく出していますよ。できっこないという話が中山さんからありました。では、中山さん、自民党ならば幾ら削れるんだ。今の答弁だと自民党は一銭も削れないじゃないですか。自分たちは幾ら削れるのか、きちっと数字を出してくださいよ。こういう削減競争をきちっとしなければならないということを申し上げているんです。一円も削れないというのはあり得ないじゃないですか。

 総理、どうですか。総理。(発言する者あり)

逢沢委員長 額賀財務大臣。

 静粛に願います。

額賀国務大臣 例えば、二十年度予算では特別会計の改革もありまして、十八年度の決算と比べて総計で三十八・三兆円減額して、先ほど二百五十・九兆円が十八年度の決算ベースと言いましたけれども、二十年度では二百十二・六兆円ですよ。それくらい我々は、合理化を図ったり効率化を図ったり、無駄を省いて努力をしているわけです。

長妻委員 質問を終わります。無駄遣いをなくしてください。

逢沢委員長 これにて長妻君の質疑は終了いたしました。

 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは、医師不足と地域医療の問題について質問をしたいと思います。

 今、全国で医師不足、お産ができない、救急の受け入れ先がないなど、深刻な悲鳴が上がっています。東北のどこを歩いていても、必ず、公立病院の医師不足、病院がなくなる、何とかしてほしいと訴えられます。

 厚労省は、一貫して、地域や診療科ごとの偏在は認めるけれども、全体としての医師不足を認めてきませんでした。その背景に、八二年、九七年と、閣議決定によって医学部の定員削減、抑制を進めてきたことがあったと思います。しかし、全国の深刻な実態と増員を求める声に押されてか、今国会で、そして先ほども、何度も舛添大臣は、医師は不足していると答弁をし、また内閣総理大臣名の答弁書も、二月十二日、「総数としても充足している状況にはない」と正式に出されました。

 そうであるならば、医学部の定員を削減すべしとした閣議決定は撤回されますか。

舛添国務大臣 今委員から御指摘ありましたように、偏在の問題、地域の格差の問題、たくさんございますけれども、総体的に、私は、今の医師で十分だとは思っておりませんですから、御指摘の閣議決定を含めまして、さまざまな条件を勘案し、考えながら、必要な対策を講じてまいりたいというふうに思います。

    〔委員長退席、遠藤(利)委員長代理着席〕

高橋委員 今のは、閣議決定を含めましてさまざまなというので、ちょっとわかりにくいんですけれども、要するに閣議決定撤回でよろしいですね。

舛添国務大臣 新しい状況に応じて新しい対策を立てていく、そして、国民の目線でこの医師不足の問題に全面的に取り組む、そういうことでございます。

高橋委員 はい、理解しました。

 次に、文部科学大臣に伺います。来年度、増員になるのはわずか百六十八名です。決して効果が期待できる数字とは言えません。

 ことし一月、東奥日報で、元弘前大学学長の吉田豊氏が、当時の文部科学省とのやりとりを証言しています。全国の学長会議や学部長会議で堂々と国は医師が余ると説明していた、減らすということを国で決めて、あんたところは何ぼ、あんたところは何ぼというぐあいに割り当てられたと。しかも、当時、弘前大学は百二十名の定員を百名まで絞っていました。それなのに、国は八十名にせよと迫ったのだそうです。今は百名で頑張ったわけですけれども、いろいろな資料を示して説明し、医師は過剰になると信じ込ませた、ある種の洗脳であった、こういう証言であります。

 医師は余るとして定員削減を決めた当時の国の見通しが甘かった、今日の医師不足の要因となったことを認めますか。

渡海国務大臣 先ほど舛添厚生労働大臣がお答えになったとおりだと思います。そして、いろいろな意味での状況の変化というものも起こっておると思います。研修制度等がその一つでありますけれども、そういったことも踏まえて、総合的に、厚労省ともよく連携をとりながら、今後の定員問題に対応していきたいというふうに考えております。

高橋委員 これも、要するに見通しが甘かったという意味だと確認してよろしいですね。

渡海国務大臣 全体の医師数をどう見るか。これは、我々は養成ということを担っているわけでありますが、養成ということは、中長期的な観点に立たないとなかなか判断ができないわけでありますね。それは、医療制度とかそういった全体の見通しというものを政府として、特に厚労省を中心に立てていくわけでありますから、そういう中で我々はやはり対応していくということであろうと思います。

 見通しという点については、先ほど厚生労働大臣がお答えになったとおりでございまして、そういったことをしっかりと踏まえ、そしてやはり今起こっている問題にきっちり対応できるように、我々の方も、これは、養成という意味では中長期でございますから今すぐ結果が出ないわけでありますけれども、例えば、先ほども松本委員からも御質問をいただきました、中核医療としてどういう役割を果たすか、また病院勤務医にどのように地域に貢献していただくか、そういった観点から、しっかりと国民の要望にこたえていきたいというふうに考えているところでございます。

高橋委員 当時の見通しが甘かったということと、閣議決定を撤回するということ、このことは、確かに、今定員をふやしてもすぐには結果が出ないかもしれません。しかし、そのことを医療関係者の皆さんがどれほど待ち望んでいたか。どこまで頑張れば見通しが見えるんだと。そのことを国に認めてほしかったし、これまでの過ちをしっかり認めてほしかった、そこで頑張ることができるんだ、そういう意味での大きなメッセージを期待しているわけです。次の質問の中で、総理からもぜひそういうメッセージをいただきたいと思います。

 その前に一言言っておきますけれども、舛添大臣は、一月十九日に長野県の飯田市で開かれた医師確保対策をテーマにした対話集会で、仮に今足りないからと医師をふやすと、十年後には医師のホームレスが生まれるかもしれない、こういう発言をされました。全く厚労大臣として不見識きわまりないと言えるのではないでしょうか。

 さっき紹介したように、二十年前からやってきたことの積み重ねでこういう実態が起こっているときに、またそういうことを繰り返すのか。同じことを繰り返してはならない。

 これは質問しません、指摘をするだけです。(発言する者あり)では、後で答えてください。

舛添国務大臣 発言に誤解があるといけないので。

 そのときに、今歯医者さんが余っていて、歯医者のホームレスが生まれるという言葉があったんです。私は、十年、二十年という長期計画を立てて、今ふやすべきだと思ってやっていますけれども、十年後に、逆にふえ過ぎだということもあり得る、したがって不断にこの計画を見直していくということが重要だ、そういうことで申し上げましたので、不見識な発言として申し上げたことではございません。どうか御理解を賜りたいと思います。

高橋委員 会場から出た言葉にあったとしても、それを受け取ってホームレスという言葉をお使いになったことは事実だと思います。またしかも、そのために、それだけふやすということであればその半分は国民にお願いしたいということで負担についても大臣が触れている、このことも指摘をさせていただきたいと思います。

 続けます。

 総理、このグラフをごらんになっていただきたいと思います。お手元の資料の二枚目です。病院勤務医男性の週の平均労働時間です。

 先ほど舛添大臣がちょっと紹介していた平均六十三・三時間ということになっておりますけれども、これは三種類あるんですね、滞在時間、従業時間、診療時間と。当然、二十代というふうにだんだん年齢が若いほど勤務時間が長いということがわかると思います。二十代は病院の滞在時間が七十四・九時間、診療時間だけで見ても五十一・三時間にもなっています。

 総理に伺いたいのは、毎年医師数そのものはふえていても不足していると言われる背景には、医師、とりわけ勤務医の過重労働があると思います。私は、人の命を預かる医師が人間らしく働ける条件、まさに、ゆっくり休めて家族の顔も見られる、そういう条件を整えなければ解決にはならないと思いますが、見解を伺います。

舛添国務大臣 そういう過酷な労働条件を緩和するためにも、勤務医のために診療報酬の配分ということを今回決めましたし、また、例えば女性医師に対して、院内で保育をする、さまざまな対策をとって、この過重な労働条件を緩和したいというふうに思っております。

高橋委員 総理に通告してありますので、一言お願いします。

福田内閣総理大臣 せっかくの質問でございますので、お答えを申し上げます。

 来年度予算案におきまして、今の委員の御指摘に対応するような形でもって、医師確保対策の予算を大幅に増額しました。一・七倍でございます。病院勤務医の職場環境の整備などの対策を盛り込む、こういうことになっております。

高橋委員 実は、一昨年の需給検討会で問題にしたのは、このグラフの真ん中の部分なんですね。さっき、大臣は六十三・三時間とおっしゃいましたけれども、滞在時間は、最初から検討会では勤務の時間とは見ていないわけです。週四十八時間になるには、二〇〇四年ベースでは九千人不足だと。何か二年たてば、これで埋まりそうな計算をしているわけですよね。

 でも、従業時間というのは、診療のほかに、他のスタッフへの教育とか会議などを指します。では、滞在時間とは何か。検討会によれば、休憩、自己研修、研究といった時間を指します。この時間を週四十八時間までに下げるには六万一千人ふやす必要がある、これが検討会の報告でありました。しかし、これらをすべて勤務時間と考えることは適切ではないとただし書きがあって、そこまでやるつもりはないと言っているんですね。

 日々進歩する医学の場で研修や研究に取り組むこと、緊張が続き、いつ呼び出されるかもわからない状態で仮眠をとることが勤務ではないのでしょうか。医師の実態から目を背けず、労働基準法がしっかり守れる、人間らしく働ける体制のためには、どれだけふやす必要があるのか、数字で示してほしい。

舛添国務大臣 そういうことも含めまして、私の長期ビジョンの研究会の中で今検討をさせていただいております。

高橋委員 明確に、これだけ必要なんだということを打ち出していただきたいと思います。

 昨年三月に行政訴訟が確定した小児科医の四十四歳の中原利郎医師の過労自殺事件では、この宿日直勤務を労働時間と見るかが争点となりました。新宿労基署が労災を認定しなかった言い分は、仮眠室があり、患者さんが来ない間はそこで寝ていたはずだ、月八回の宿直があっても睡眠はとれただろうと、大変非現実的なものでした。

 医療機関が宿日直の許可を出せば、割り増し賃金も三六協定の締結も必要ない、そういう通知を二〇〇二年に基準局長名で出しております。ほとんどが許可の範囲を超えて働かされている。実質、医師は労基法とは無縁になっています。

 日本病院会の二〇〇六年の調査では、七五%が職場をやめたいと、時々あるいはいつも考えている。今手を打たなければ完全に医療が崩壊する。実態に合った目標を示して対策をとるべきだと指摘をしたいと思います。

 時間がないので、次に進みます。

 過重労働と絶対数の不足を解決しなければならないのは、看護職員も切実であります。超過密労働に燃え尽きてリタイアする。日本看護協会の〇五年の調査では、新人看護師の十人に一人が就職後一年以内に職場を去っています。

 一昨年、国が、患者七人に看護師一人という看護配置基準の改正を十八年ぶりに行いました。そのこと自体は運動の成果でもありますが、ここに絶対数の不足で追いつかないために、看護師争奪戦があちこちで起こり、地域医療をますます困難にしています。

 国は、看護師確保法において、看護職員の確保や処遇の改善に対する責任を負っているはずです。一刻も早く看護職員需給見通しを見直し、必要な看護職員の確保を財政措置も含めて行うべきと考えますが、見解を伺います。

舛添国務大臣 スウェーデンのような北欧諸国を見ると、例えばこの七対一の今おっしゃった比率よりはるかに厚く手当てをしてあります。それだけに財政負担はあるわけですけれども、そういうことも含めまして、看護職のあり方というのもきちんと検討したい。

 その中に、お医者さんと看護師の人たちの役割分担をどうするか、これも一つの大きな問題でありまして、アメリカなんかだと、看護職の中で医療行為がかなりできるようになっている。こういうことも含めて、全体的に看護職のあり方、そして、どれだけの定員にすべきかということも、これも先ほど申し上げた医療ビジョンの研究会の中で検討課題とさせていただいております。

高橋委員 医療ビジョンはよろしいのですけれども、いつこれを出すかということなんですね。

 医師不足の対策の中で、やはりスタッフとの連携も非常に重要視をされているわけですね。そういう中で、特に看護職員の場合は、需給見通しを発表した後に七対一看護の方針が出された。ですから、全く実態に合っていないわけですよ。一刻も早く見直しをしなければなりません。いかがですか。

舛添国務大臣 これは平成十七年に調査をして、その結果に基づいて平成十八年ということでありますので、こういう策定計画というのは毎年毎年ということよりも、何年かに一度やっていく、そういうことであると思いますけれども、しかし、現実にどうなっているのか。

 それで、私は実は、単に需給見通しというよりも、例えばお産や子育てで一遍職場から離れられた方々がもう一度看護職として帰ってこられる、こういうことに対して今政策を予算もつけて行っている、再訓練というようなことを行っているわけでありますから、潜在的な供給源はたくさんあると思います。

 こういうことを活用していって、現実に医療の現場で看護職の皆様方が過重な労働にならないように、そして患者の皆様方のケアができるように、そういう方向で努力をしたいと思います。

高橋委員 今お話しされたようなあらゆる努力をとることは大事だと思います。

 ただ、先ほど私がお話ししたように、燃え尽きてリタイアしている方にもう一度看護の現場に戻りたいですかと言うと、さすがにそれはできないと言っているんです。ですから、若い人がどんどん先にやめていってしまう、その実態に歯どめをかけるという点で、国としてはやはり責任を持って財政措置もするということを強く要望しておきたいと思います。

 次に、地域医療の問題で質問したいと思いますが、これもやはり、地域医療の崩壊ということがあちこちで言われるのも医師不足が最大の要因であるということもまず間違いないと思うんですね。

 その中で、全国約九千の病院の一割以上を占め、離島、僻地のみならず、地域医療を担い、不採算医療など重要な役割を果たしてきた自治体病院が今深刻な危機に瀕しています。骨太方針の二〇〇七に基づき、総務省が昨年十二月に公立病院改革ガイドラインを発表し、各自治体は二〇〇八年度中に、三つの視点、再編・ネットワーク化や経営形態の見直しなどの計画を策定することを求められています。

 昨年八月二十九日に、このガイドラインをつくる過程での懇談会、この第二回の会合で、小山田恵全国自治体病院協議会の会長が参考人として出席し、次のような指摘をしています。経済第一主義、経営の合理化あるいは効率化が先行するような改革は自治体病院の設立の趣旨からしてそぐわない、このたびの改革が、自治体病院の医師あるいは病院を管理している職員にとっては、自治体病院の将来に対して希望を失う、倒産に追い込むのではないかと。

 私は、官から民へのかけ声のもと、自治体病院も例外ではないとの経済界の圧力が強まる中、これは大変重要な指摘だと思います。

 増田大臣は、かつて、岩手県コンビで小山田先生ともに自治体病院の全国組織の代表を務めていらっしゃいますが、公立病院改革ガイドラインは自治体病院と地域医療を再建することができるでしょうか。

増田国務大臣 昨年暮れ、私どもの方でガイドラインを出したわけですが、これは背景として、今委員お話ありましたように、自治体病院の経営状況が悪化している、これは診療報酬等の問題があると思いますけれども、あと、医師不足の深刻化など、幾つかの要因が複合的に重なっている。

 一方で、それぞれの地域に置かれている自治体病院、僻地医療等を担当していますので、欠くことのできない病院が大変多いんですが、その経営実態を見ると、他の周辺の民間病院に比べて人件費が高かったり、利用率、空きベッドの数が多くなっているものもあったり、それから、周辺の病院と診療科目が重複していて、そこに医療資源の適切な配分に欠けている部分があったり、それから、経営形態としてどうしても、開設者が素人なものですから、きちんとした経営ができていないというところがございます。

 そこで、こうした公立病院の役割は十分に私ども認識をしながら、しかし一方で、経営効率化、それから再編・ネットワーク化、医師を集約するということですが、あと、経営形態の見直し、この三つの視点に立った改革をぜひ実行していただきたいということでガイドラインをお示しして、二十年度中に改革プランをそれぞれでつくっていただきたいと思っています。

 今、小山田先生のお話がございました。岩手の県立中央病院の院長をしておられましたし、私も、全国の自治体病院開設者協議会の会長をずっとしていました。小山田先生は自治体病院の協議会の会長で、二人でいろいろこの問題は話をしながら行ってきて、昨年の八月の先生の御指摘も、実は、そういった視点で経営の効率化のみを追求することになっては自治体病院の役割を見失うことになってしまう、そういう危機感も持っておりましたので、決してそういう観点に走らないように、しかし一方で、効率化すべきところ、地域の実態に合わせて経営改革をすべきところは経営改革を促す、こういう視点でガイドラインをおつくりしたものでございまして、自治体病院の再建といいましょうか、こうした経営状況を改革して地域に十分な機能を発揮していただくということは、これは必ずなし遂げていかなければならない、こういうふうに思っております。

高橋委員 確かに、指摘されたようないろいろな経営上の問題点があり、それを見直すことは必要だと思います。ただ、増田大臣が何も有識者と同じような発言をされなくてもいいのではないかなと。私は、もう少し公立病院の側に立ってお話しされてもいいのではないかなと思うんですね。

 一昨年の五月八日に福島での地方公聴会において、佐藤力国見町長の意見陳述が、自治体病院の経営悪化について端的に証言をしていたと思います。

 公立藤田病院という三町の組合立病院ですが、三百三十五床、二十一の診療科を持つ総合病院です。これは、近くに病院があるということで、病気の軽いうちに医療を受けることができ大病になる人が少ないということで、国保料も比較的低く抑えられ、数年前までは健全経営だったとおっしゃっているんですね。しかし、さっきちょっと話にもありましたが、近年の診療報酬のマイナス改定、患者負担増、そうしたことが続いて経営が非常に大変になる中、医師は朝七時前から夜七時、八時までの勤務、日直、当直、救急と激務が続く中、相次いで勤務医が開業、退職、総合病院でありながらお産を断らなければならない実態になったと。

 ですから、ガイドラインで自治体に迫っていることは、こうした根本原因、さっき大臣もおっしゃいましたけれども、解決できない、もっと政策的に大きな問題がありますからね、できないのに経営努力して黒字化しなさいということは、何を起こすかということですよね。首を切るとか病院を縮小するとかいうことしかできなくなっちゃうわけです。

 ですから、まずその前段として、総務省は、病院に対する交付税措置、これに対しては維持ではなくきちんと拡充していくべきだと思いますが、いかがでしょうか。

増田国務大臣 決して経営効率だけを私は言っておりませんで、病院の改革をすべき点については努力をしつつ、一方で、地域の問題でございますので交付税で、特に、僻地にあるこうした公立病院、それはもうそれ以外の民間の病院や診療所がないようなところで、地域唯一の病院として維持されているようなものでございますので、そこには交付税措置を来年度は充実強化させる方向で検討しなければいけない。今、いろいろ案を考えているところでございます。

 したがいまして、そうした重点化ということを今後図っていくと同時に、やはり医師不足ということが公立病院の経営に大変大きな問題になってきていますので、これなしに単に公立病院側で改革を進めてもこれは貫徹できませんから、一方で大きな国の政策として、医師不足の問題の解消などに同時並行的に精力的に取り組む。

 その中で、自治体病院は待ったなしの、あすからの地域医療を担っている。お医者さん不足については、やはりある程度の年月をかけていかないとこの問題は解決できませんので、そういう中で、そちらもにらみつつ、自治体病院の置かれている現状にかんがみて、あしたの医療を守るという点から、交付税措置の拡充、充実強化なども今検討しているところでございます。

高橋委員 しっかりお願いします。

 次に、支え手はどうでしょうか。

 今、北秋田市が、来年から指定管理者制度を導入して三百二十床、二十一診療科の総合病院を新設するということを準備しています。これが周辺の二次医療圏の中の病院、四つありますが、診療所や、縮小するという形でいわゆるネットワークをつくるということなんですけれども、公立米内沢病院が、病床縮小に伴って早期退職者を募り、さらに職員を四十六人削減したいと言っているんです。

 これは、確かに米内沢病院で見ると病床の削減をするということなんですけれども、いずれ新病院がオープンすれば、移行して、必要な人員なわけですね。そういうことを考えれば、地域住民の不安を取り除き、円滑な移行ということを考えたときに、職員の処遇をきちんと確保しておくべきではないかと思うんです。

 このようなガイドラインに基づく再編や民営化などの経営移譲がこれからもいろいろ出てくるわけですけれども、職員の処遇についてどのようにお考えでしょうか。

増田国務大臣 公立病院の再編を考えるときに、職員の問題をどう考えるかはやはり大変大きな問題になってきます。私も地元で、岩手でこうした問題を経験してまいりました。

 まず、やはり任命権者側として、雇う側として、今までそういった当該業務に携わっていた公務員の皆さん方に適切な配置転換に努めていただく。そして、仮に経営形態を大きく変えるといった形で職員の希望退職を募集する場合にも、求職活動についてきちんとした支援を行う。

 要は、こうした問題は地域から理解を得られないと解決はなかなか難しいわけでございますので、新しい体制、それはどういう形になるか、指定管理者になるのか何になるのか、いろいろ形態はあると思いますが、新体制への円滑な移行が図られるように配慮するということは大変重要な要素でありますし、そのために、そうしたきめ細かな対策をとらないと、現実には、例えば県立病院と市立病院を一緒にしたり、あるいは指定管理者、民営化といったことは難しいというのは各地域の現状でございますので、任命権者側としてそうした適切な努力をしていただく、これはもう大前提だろうと思います。

高橋委員 そこで、再編・ネットワークの問題。総務省は、山形の公立置賜病院をイメージしているんだということで、こういう図を描いているわけですよね。今お話しした米内沢病院も、そのうちの、周辺のある病院の一つなわけです。

 危惧されているのは、拠点病院がある、そしてここに急性期に特化をするんだということによって何が起きるかということなんです。そのことによって、中長期の入院患者を受け入れることが不可能になるのではないか。すき間が生まれないか。これは実は、さっき紹介した米内沢病院の新しい整備構想の中にも出ているんです。ベッドが、療養病床、受け皿が四十床足りなくなる、米内沢病院のほかにどこにもないということが書かれている。そういうすき間は必ず出てきます。

 そしてもう一つ、二十四時間の勤務、救急体制が求められます。当然、集約化された先の拠点病院には医師をふやす必要が出てきますが、いかがですか。

増田国務大臣 山形の置賜病院、先生も東北でございますので大変お詳しいと思います。私もこの病院の再編については大変関心を持ってずっと見てまいりましたけれども、基幹病院にお医者さんを集めて、あの周辺で初めてだったと思いますが、ここに書いてありますが、救急救命センターをつくったり、全体としての医療水準が大変上がった部分はあるんですよね、ここの限られた資源の中で。

 したがって、基幹病院の患者さんの数もふえて大変喜ばれたと思っていますが、一方で、周辺のいわゆるサテライト病院の方のお医者さんの数がその後やはり減ったりなんなりということがございまして、そういうことが原因で、周辺の皆さん方からもその後しばらくしてからいろいろ御意見が出てきたかというふうに思っていました。私がちょうどやめたあたりにも、聞いたときにそんな話がございました。

 それで、こうした真ん中の基幹病院が二次、三次の高次医療、それからかなり専門的なところ、周辺のところはどうしても初期医療ということになりますと、周辺に病院があるかどうか、診療所があるかどうかということにもよってきますが、やはり都道府県が定めている医療計画などによって、そこのあたりの調整をよくしておくといったようなことが大事になると思います。それから、周辺のサテライトの方をもっと思い切って縮小して、診療科をもっと大胆に集約化するといったような、そんな決断も必要な場合もあろうかと思います。

 対応は多々あると思うんですが、ただ、気になっておりますのは、従来のままでありますと、どうしても共倒れになる危険性が高い。それに対して、限られた医療資源をどのように有効に活用していくか、あるいは、こういった救急救命センターのようなものの機能を付加していくかという観点で考えておりますので、もちろん十分に地域の皆さん方、あるいは、やはり県の役割が大事だと思いますが、そうした皆さん方の意見を十分に酌み入れるということが大事だと思いますが、やはりこうした地域に合った再編・ネットワーク化のイメージというものを持っていただいて、改革プランにぜひ反映させていただきたい、こういうふうに思っております。

高橋委員 増田大臣も舛添大臣も、ぜひ置賜病院にもう一度行かれたらよろしいかと思います。サテライト病院が深刻になっているのもそうです。それと同時に、救急指定病院、拠点病院に患者が集中し、一年間で五名の医師が処分を受ける、このような深刻な状態になり、この構想は失敗だということが公言されている実態であります。

 確かに、共倒れにはなってはならない、そういうこともあると思います。その際に、先ほど大臣がお話しされたように、本当に、では何ができるか、どうすればいいのかということを住民参加できちんと話し合って解決の道を探るべきだ、そのことは実はガイドラインの中に明確にされていないんですね。そのことを指摘して、時間が来たので終わりたいと思います。

遠藤(利)委員長代理 これにて高橋君の質疑は終了いたしました。

 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日は、たくさんの皆さんが医師不足問題をお取り上げくださいました。私も、医師になったのは一九七四年でありますから、自来三十年以上、本当に、医師不足という問題がいつこの日本の政治の場できちんとした答えを得るのか、心から待ち望んでおりました。きょうがそうした発端になればという大きな期待を込めて質問をさせていただきます。

 私がこのように申しましたのも、現在、この医師不足という問題は、社会崩壊にまで至るような極限にまで来ている、雪崩はもうすぐそこに来ていると思います。

 私は、先回の総理のおられる質疑の際にも救急医療のことを取り上げさせていただきましたが、そのときに申し上げましたように、私が新聞紙上で知り得た救急車のたらい回し問題は十二件であったと申しました。それは、ことしの一月の下旬までの約一年半の数でございます。その後、二月にまた二例、救急搬送のたらい回しで亡くなられた事案が報道されております。

 二月十日付の新聞では、千葉県の山武地区というところで、五十六歳の男性が受け入れを十五回拒否された。おうちで発見されたときは既に心肺停止であったので、心臓がとまっていたかわかりません、意識と呼吸がないということで救急車が駆けつけて、いろいろなところに問い合わせたが、どこも受けてくれないから、ついにはドクターヘリをお願いした。そうしたら、ドクターヘリは心臓も呼吸もとまった人は運ばない。それで運ばれませんでした。そこで、また救急隊は必死に周辺を探して、やっと受け入れてもらった。心マッサージを続けながら、本当に必死だったと思います。受け入れていただいたけれども、四十分後に死亡した。五十六歳男性。

 もう一方ございます。これは二月十九日の報道ですから、恐らく十八日だったと思いますが、東京の小平市で、これも、六十一歳の女性が公立昭和病院というところに、心疾患、心臓がお悪くて、カテーテル検査などをしておかかりであった。午前中かかられたけれども、お帰りになってから容体が悪くなって、御家族としては当然かかっていた病院だから受け入れてほしいと救急車で運んだけれども、医師は他の処置でとても手が回らないということでお断りになって、結局この患者さんも亡くなられたということです。

 実は、この公立昭和病院は、去年の暮れも清瀬市からの患者さんの搬送を断った。そう聞くと、この公立昭和病院が悪いんだろうかと思うと、私は決してそうではないんだろうと思います。

 実は、この前も話しましたが、三十年前、私の母もこの病院に運ばれ、受け入れられず、亡くなりました。私は、あの悪夢がもう一度よみがえってきたような気持ちでこの救急問題は質問をしております。そこまで医療現場が追い詰められているんだということでございます。

 そのほかにも、いわゆる三次救急、どんなときにも命の最後のとりでという三次救急が実は一つまたつぶれました。これは、北海道の室蘭市の日鋼記念病院というところが、全国で初めてだと思いますが、三次救急の救命救急センターを廃止されました。救命救急は、何度も言いますが、最後のとりでで、国の施策で一生懸命つくってきて、でも、人がおやめになって閉じざるを得なかったということであります。

 そこで、毎日新聞の調査を御紹介します。皆さんのお手元には印刷物になっておりますが、こちらのパネルをごらんいただきたいと思います。

 このように、本来は断ってはいけない、断るはずもない、断る想定外であることが多発している三次病院の実態。二百三カ所に、なぜ要請を断る例が増加したかということを毎日新聞がアンケートし、百二の病院から報告を受けたそうです。

 医師、看護師不足が一番多い理由。二番目は、二次病院の受け入れが減少しているので、自分たちのところに来る前に行っていただきたい方が全部来てしまう。あるいは、後方病床への転送が困難というのも、これも実は二次病院のことであります。三次は一生懸命救命救急して、少し容体が安定されたら帰したい、だけれども、帰れない、帰せない。これは後ほど伺いますが、公立病院を中心とした二次病院の疲弊。そして、三番目が救急患者の増加。四番目、その他となっております。

 どう見ても、例えば三次救急がつぶれるのも医師がいなくなっていることだし、受け入れるはずの、受け入れなければいけない国の仕組みの中の三次救急が断っている理由も医師不足であるということであります。

 舛添厚生労働大臣に伺います。

 私は、先ほど皆さんがお取り上げになった、厚生労働省がつくられた平成十八年七月二十八日発表の医師の需給に関する検討会報告書というのを見ると、本当に心から怒りが沸きます。ほっておいて、医師が減っていっているのを横目に見て、今日まで、このような状態が来るまで置いておいたのかと、怒りにも等しいものを覚えます。

 昭和五十八年、厚生省保険局長が医療費亡国論というのを発表なさいました。医療費が上がれば国が滅ぶ、医療を提供しているのは医師だ、医師の数を抑制しよう、それが昭和五十八年から始まった取り決めでありました。その中でこれは、それを踏襲しながら、昭和百年、平成三十七年には、舛添厚生労働大臣がさっきおっしゃった医師のホームレスという、余りいい言葉じゃないけれども、そういう書き方じゃないけれども、医師が余るだろうと。

 平成三十七年、昭和百年には一体日本の医師は十万人対何人になると厚労省は予測していたんでしょうか。まず、それをお願いします。大臣が御存じなければ原局の方でお願いします。

    〔遠藤(利)委員長代理退席、委員長着席〕

舛添国務大臣 ちょっと私の手元にも資料がないので。申しわけございません。(発言する者あり)

阿部(知)委員 今、中山先生からも御指摘がありましたが、先生、知らないのと。どこにも出ていないんです、なぜ過剰と試算されたのか、何人なら過剰なのか。私はこれを実は一生懸命読みました。

 そして、私がここで申し上げたいのは、昭和五十八年といえば一九八三年で、欧米諸国は医療がそれからますます高度化し、専門分化し、高齢社会がやってくるということで、そのことを先取りして医師の養成数をふやしていった。そのときまでは日本と欧米の医師の数は、例えば十万人当たりで、そうそう遜色のない百五十人という数でした。しかし、ここから、現在、欧米諸国、OECD諸国は十万人当たり三百人にふえ、我が国は二百人と、微増だと思います。

 私は、高度化した医療、専門分化して病院で診療をつかさどっていれば、今、大変に失礼な言い方ですが、回転ずし状態で患者さんは回っていきます。どういうことかというと、入院日数を短くしろ、短くしろ、短くしろと言われる中で、私たちは日夜働きます。手間暇はもう本当に三十年前とは雲泥の差です。それを、ほとんど増加していない人数、まして、大臣も御承知のように、女性医師がふえて、現場の臨床力は減っています。その中で、みんなくたくたになってきたと。

 私は、きょう御答弁がいただけなければ、厚生労働省は、平成三十四年とか三十七年の医師の数を、これは二〇二二年、そこまでいったら一割以上が余っちゃうんだという数は、一体幾らと試算されていたのか。

 そして、私は、本当はもうちょっとたってから総理に伺おうといたしましたが、我が国は今、クールアース50、安倍晋三前総理のときの目標ですが、環境問題でも何でも、今は大きな目標を前に立ててそこに向かって計画的に政策をプログラムしていく、そういう時代なんだと思います。道路の特定財源問題も、十年間で五十九兆、この試算は、私どもは、おかしい、おかしい、これは違うでしょうとやってきました。

 さて、医師は今後十年間かけてどのくらいの数まで、私はOECD平均並みを求めます。それは、OECDにまさる医療を我が国はやっているからです。ここで、道路の目標は立つのに、十年間、五十九兆、一万四千キロ、なぜ医師の数の目標は立たないのか。大きな目標がなければ、大きな見通しがなければ、小手先だけの、本当につけ焼き刃的な医師対策では、私は実は実らないと思います。

 総理に伺います。OECDのことは、総理も、きのうまで韓国にもいらしていたし、世界にいろいろお出かけだし、サミットのこともございます、一番世界に目が開かれたお立場にあると思います。果たして十年後、我が国の医師はどこまでふやせばいいのか、目標は何なのか、どうお考えですか。

福田内閣総理大臣 OECDの中でも医師の数が少ない、こういうふうなことになっておりますけれども、また医療費も少ない、こういうことです。これは、その国々によって制度が違いますので一概に比較することはできないかもしれないけれども、高いと言うわけにはいかない、こういうふうな状況だと思います。

 今、現実問題として、医師が不足をしているというふうに言われております。これは、毎年医師はふえているんでしょう。だけれども、今現在を見ると不足をしている。こういうふうな状況にあるので、そこを起点にして将来どうするかということです。

 今おっしゃった推計の仕方として、今までは過去の延長線上で、延長を引っ張って将来を予測する、こういうことがありました。今おっしゃったように、今、時代の変化というか、変化の激しいところですから、そういうようなときには、バックフォーカシングというんですか、逆に、そういったような推測の仕方、政策の決定の仕方というのが当然あってしかるべきですよね。

 しかし、それで正しいかどうか、正しいことができるかどうか、それは私がここで申し上げる自信は、特に医師の場合に、自信はありません。しかし、それは現実からスタートして、むしろ諸制度との組み合わせという問題もありますので、そういうものとの兼ね合わせで考えていくべき問題だというように思っております。

阿部(知)委員 舛添大臣にはまた別途同じような質問がありますので。

 私は、そうはいっても、総理、今ここで、こういう、本当に悲しい、人間の命が失われているという現状を、そうはクールには言えないんですよね。

 現場で働いている医師たちが、足りないと。例えば三次救急の病院の先生たちにアンケートをとると、不足数は一つの病院で六・七人くらい足りないんだと、みんなそう思っています。それが、今までの政府の御答弁では、偏在だ、科別の何だかんだと。

 でも、総理、よく聞いていただきたいんです。救急というのは総合力なんです。その病院自身の全体の医師力の成果が一つの救急なんです。もちろん、救急部の専属の医師もいます。でも、連携して、みんなで支える、本当に臨床力を見る一番いい指標です。それがここまで落ち込んでいるということを私は重く見ていただきたいです。

 そして、二枚目の資料をおあけいただくと、今度は、これはパネルはございません。病院が救急をやめた理由で、二次病院の方を例示させていただきました。これは、実はデータは朝日新聞からいただきました。

 この一年余りで救急病院約百七十数カ所が二次救の返上をした、やめた、二次救急やっていられない、もう続けられないというデータがございます。数は、正直言って、多少はとり方で違ってまいります。

 でも、やはり二次救がなくなるということは、さっき増田総務大臣もお答えでありましたが、地域で、例えば救急車で一時間運んでも、呼吸がとまり、心臓がとまっていたら、三分、五分の勝負なんです。そこで何とかしてから運ばないとどうにもならないんです。さっき言った、もう心肺停止ではヘリコプターは運ばないと言われても困るんです。とにかく心臓を動かし、呼吸を何とかして維持してでも、それから運ぶ。でも、その第一陣、まず当座の処置ができなくなってくるということであります。

 この二次救が、病院が救急をやめた理由、同じように朝日新聞調査によれば、二百四病院が回答しておりますが、一番手が、やはり医師、看護師不足。二番目は、病院をもうやっていられない、ベッドを持っていられないから、診療所に変更した。三番目は、療養型に変えた。四番目は、輪番制、順番の救急当番からおりた。これは、増田大臣よく御存じでしょうが、一般財源化しましたので、輪番制につけられていたお金を他の財源に振りかえた自治体もございます。あるいは、倒産や廃院、病院がつぶれちゃった。三次救急よりもより悲惨な実情というものがこの二次病院にはあると思います。

 そこで、大臣、その二次病院の全部に責任をとは言いません。しかし、大臣が所管しておられる公立病院で二次救の輪番をやめられた病院があるのかないのか、御存じでしょうか。これは私は、きのうからずっと省庁に問い合わせています。

舛添国務大臣 私自身、そのデータは持っておりません。

増田国務大臣 ちょっと今、にわかにはデータは多分ないので、少し探してみます。ありましたら、当然お出しをいたします。

阿部(知)委員 私がお願いしたいのは、これから公立病院の再編ということが行われます。人口割りだけでいったら、実は、遠いところまで、それこそ高速道路じゃなくてもいいんです、二十分、三十分と行かなきゃならなかったら、さっき言った、呼吸もとまった、心臓もとまった、どこにも助けられない人が出てきます。ですから、先ほど総務大臣お答えでありました、採算だけではない、地域の命を支えるという側面をこの再編の中にしっかりと入れていただかないと、私は、命の保証がされない。

 ちなみに、私は、救急搬送のために高速道路をつくろうという試算についても大きな疑問がございまして、データも出していただいて、きちんと一緒に検証したいと思っています。日本の平均の現在の県別の搬送時間は、県別でとるとほとんどが六十分以内です、三次救急までは。そして、特に搬送に長いのは、東北と九州と、そして北海道くらいだったと思います。日本の全国平均値は六十分以内となっておりますから、あの試算で約七兆が救急搬送のためとなっておりました。きちんと検証して、本当に、それだったら病院を地域につくってくれ、それだったら病院があれば命が助かるんだと、私は、本当にあの試算、検証したいし、必要性の順序を御一緒に決めていきたいと思います。

 私がきょう実は本当に皆さんとお話ししたいのは、何人もの方もこれもお取り上げいただきましたが、医師の教育についてであります。私は、医師たちを、例えば、奨学金をつけて、次は地域に行く地域枠を設けた云々というやり方は、実は十分効果を上げているのかどうか、大いに疑問に思っております。

 増田大臣のお手元に、私の資料の四枚目を見ていただきますと、これは平成十九年度の医師確保対策の予算とその執行状況であります。予算がまだ執行されずにあります。

 奨学金を出して、医師にお金を出して医学部に来ていただいて、後、例えば地域内に行ってもらうというスキームが実は本当に有効なのかどうか、この十九年度の予算と決算を見れば、私は疑念が起きます。にもかかわらず、今度、十年かけ十人枠をそうやって国は新たに設けました。ないよりはましかもしれません。でも、根本改革をしないで、そうしたつけ焼き刃をして重ねていることによって、現状はなだれていくと思います。

 私がきょう提案したいのは、実は、救急の問題に関連して、臨床研修指定病院に果たして救急の指導医はどのくらいおられるだろうかという数でございます。

 見ていただければわかりますが、指導医と申しますと、本当にその道の指導をできる方、そして、それに準ずるというか次ぐ者として専門医と認定医という方々がおられます。現実に、若い人たちが臨床研修をするその病院で、しかし、現状で救急指導医がいる、認定医がいるという病院が半分、より高次な指導医がいるという病院は、上にありますように一五・六%であります。見直すべきは教育なんだと思います。

 渡海大臣にお伺いいたします。

 私は、先ほど医師の大きな目標数を立ててくれとお願いいたしました。それは、実は去年も同じように、はっきりではないがお伺いいたしましたが、早急にでも医師の定員枠を広げてほしい、プラス、教育を充実させる。私は、定員枠だけがばっと広げれば事が解決するとは思っておりません。それに見合う教育をどうするか。

 例えば、指導に当たる教官が少なければ、いい医師は育ちません。ですから、数も必要、質も必要。この二つを両立していくためには、縮み思考の中でやっていたのでは拡大再生産されていかないんです。そのこともあって、きょう大臣には、特に全体の定員枠をどのようなプロセスで見直していくのか。

 そして、私が先回お願いいたしました学士入学、すなわち、四年間ほかの、医学部以外の大学を卒業されて、その後医学部に四年間行く。これは大学院大学ではちょっとございません。学士入学と言っていただいた方が正しいです。これは、普通六年かかる医学が四年コースでいきますから、そして、社会性を身につけた人たちが大学に入ってこられる。

 現状、皆さんのお手元にお示ししたように、枠は非常に少のうございます。医師の入学定員が全体で七千六百とか七百のうち、この学士入学枠は二百五十そこそこでございます。社会経験を積んだ人がどんどんお医者さんになる、その方が、実は本当に自分は何をしたいのか、何のために医療をするのか、何が自分の未来像なのか、もっとリアルにわかる医師たちが生まれてくると私は思います。

 二つの質問です。大学の医学部定員はどのように大幅に見直されるのか。そして、この学士入学枠は、せめて現状の一割、七百人あったって、キャパシティーからすれば十分です。なぜなら、医師は八千三百人まで入学枠があったんですから。その二つに御答弁願います。

渡海国務大臣 学士入学の件につきましては、昨年御質問をいただきまして、それ以来、この件について我々もきっちりと調査をしなければいけないということで、現在、メディカルスクールの制度がどうなっているかも含めて、これは先生の趣旨とちょっと違いますが、国際的な問題も調査をしながら検討いたしております。

 ただ、全体枠をどう考えるかというお話でございますが、これについては、中長期的にどういうふうに物を見ていくかということをやはり厚労省と連携をしながらしっかりとした計画を立てていかなきゃいけないというふうに考えております。

 それから同時に、今お話がございました臨床研修の件ですね。この指導医がやはり不足しているという件から、地域の偏在ということに対して対応力が少し落ちているような気がいたします。例えば、医師を派遣するにしましても、例えば研修医であったとするならば、これは指導する立場からすれば、離れたところへ行けば指導できないわけでありますから、そういった問題も総合的に考えて、そして、先ほど言いました今の調査を踏まえながら今後検討していきたい、そのように考えております。

阿部(知)委員 医療は国家百年の計ですし、きちんとした目標を持って、なおかつ教育を充実させていただきたいと思います。

 終わります。

逢沢委員長 これにて阿部君の質疑は終了いたしました。

 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 本日は、福田内閣が目指そうとしている今後の社会保障制度のあり方について質問をさせていただきたいというふうに思います。

 医療制度は、社会の最も基本である国民の生命、そして健康を守っていくという役割を担っておりますけれども、最近、報道等でもありますけれども、救急患者、これを受け入れない、こういう医療機関が多くなってきておりまして、国民の間にも大丈夫なのかという不安が広がっております。

 救急患者の受け入れ拒否につきましてはさまざまな背景があるわけでございますが、医療機関側、患者側、そして保険や国の財政事情、こういうものがあるというふうに思います。それぞれの状況を細かく分析して、対策を丁寧にとっていくということが必要でありますけれども、喫緊の課題としては、とにかく重症の救急患者の皆様方が放置される状態がない、今阿部先生の質問にもありましたけれども、放置される状態、こういうことをなくすということが最優先ではないかなというふうに考えております。

 これまでは、小児であったり妊産婦に係る救急医療の体制整備、これが問題になってきたと思いますが、こういうのは政府において重点的な取り組みを進められているということでございます。

 最近では、高齢者の救急搬送の受け入れ拒否、これが問題になってきているわけでございますが、高齢化の進展に伴った救急搬送の件数自体が増加してきてしまっているという事情があります。それとともに、また高齢者の場合、回復期間が長引くというようなこともございまして、救急病院が敬遠してしまっているというような現状があるということが報道としてありますけれども、この実態について、まず舛添大臣、いかがでしょうか。この実態というのは把握されていますでしょうか。

舛添国務大臣 きょうは、委員の御質問も含めて、救急医療体制についてさまざまな御質問を皆さんから賜りましたけれども、今おっしゃいました高齢者の問題も含めて、極めて深刻な状況であるというふうに考えておりますので、昨年十二月から、救急医療の今後のあり方に関する検討会というのを省内に設けまして、この問題について検討しているわけでありまして、例えば脳卒中とか心筋梗塞、こういう方の対応をどうするか、それから、これまでるるきょう一日議論がありましたような医師不足の問題、こういうことにつきましてもきちんと対応してまいりたいと思います。

糸川委員 今おっしゃられたような、例えば高齢者の方、脳卒中の方が多くなったりということで、救急患者の受け入れ拒否が続くというようなことの背景の一つに、また、これまで厚生労働省が進められてきた、初期、二次、三次という三段階の救急医療体制の整備方針、これが現状に合わなくなってきているんではないかなという意見があるわけでございます。

 そこで、救急病院が患者を受け入れられる環境、これを整えるには、病状が安定した患者さんを転送できる後方支援の医療機関を地域で整備していく、こういうことも含めて、救急医療のあり方、こういうものを全体を見直していくという必要があると思います。

 そこで、先ほど大臣もおっしゃられましたけれども、救急医療の今後のあり方に関する検討会というものが立ち上げられているわけでございますが、こういう点に対しての見直し、今、脳卒中というようなことも言われましたけれども、それ以外の方向でも、高度救命救急センターの役割の見直しという点も含めて、どのような方向性、そして今後の検討というのを行っていかれるのか、お聞かせいただけますか。

舛添国務大臣 かかりつけ医から始まって二次、三次、高度の医療体制、こういうネットワークをいかにどう機能させるかということが大変大きな課題であると思います。

 そして、三次に搬送されても、先ほどの阿部委員のお話のように、二次の、つまり後方支援体制がなければそこに戻れない、それから新生児にしても、新生児のNICUに入れても、そこに長期にいないといけないということでは新たな赤ちゃんが来たときに受け入れられませんから、やはり、後方支援体制もきちんと整備しないといけないと思います。

 いろいろな問題があると思いますけれども、こういう問題、一つ一つ着実に対応してまいりたいと思います。

糸川委員 また、大臣、この四月からスタートされるようでございますが、救急医療を含む四疾病五事業ごとの連携体制、これを新たな都道府県の医療計画で記載するということでございます。

 その直前に、厚生労働省が、救急医療のあり方、これを見直すこととされましたけれども、検討会での議論、それから医療計画に係る国の基本方針、また地域の医療計画との関係、これはどのように整理されていかれるのか、お聞かせいただけますでしょうか。

舛添国務大臣 今、委員御指摘にありましたように、四つの疾病と五つの事業ごとに医療機関の連携体制を記載した医療計画を四月から策定しよう、四月をめどに策定しようということになっておりますけれども、救急医療や僻地医療などについては、以前からそれぞれ整備されていました。だけれども、こういうものを総合的に整合性を整えて、どうするのかと。僻地の問題、それから救急医療の問題、それから今言った四つの疾病の問題。それで、検討会で、連携がうまくいく、そしてそれぞれの基本計画というのを一つのきちんとした医療計画の中に位置づけたい、そういうことを今努力してやっているわけでありますので、四月めどといっても、ゼロから積み上げるという、ゼロから、全部最初からやるということではなくて、既にある計画を全部統合する、そういう方向で今動いております。

糸川委員 わかりました。

 それから次に、今回の診療報酬改定において、政府は、救急医療に対する重点的な配分、救急医療に対して配分をしっかりと行っていくということでございます。この点に関しては、関係者の取り組みに対して確かに一定の評価はできるのかなというふうに感じるわけでございます。

 しかし、今回の改定で、救急医の負担、これがどれだけ軽減されるのか、これには疑問があるわけでございます。この救急医療に携われば携わるほど赤字になってしまうという状態が解消されることになるのか。

 それからまた、病院の収入がふえたとしても、勤務医の負担軽減ということにつながるのかどうか。例えば、当直回数が減らせるような交代制勤務というのが可能になるのか。こういう問題に対してもしっかりと見きわめていく必要があるのではないかなというふうに感じるわけです。

 今回の診療報酬改定において、厚生労働省では、三百床規模の病院では約五千万円の増収が見込まれる、こういうような説明をされております。これは、救急患者を受け付けております地域の中小病院でも同じというふうに考えていいのか、または、そうではないのか。それから、歯科、調剤を除く医科が〇・四二%の引き上げで、一千億円強の医療費ベースでの増額ということですが、また国庫負担ベースでは約三百億円強ということですが、この増額が見込まれている。救急医療関係では一体どのくらいの増額を見通されているのか。この二点についてお答えいただきたいと思います。

西川副大臣 お答えさせていただきます。

 さきの診療報酬改定で〇・四二%上げましたが、そのほとんどを、今の病院勤務医の過酷な状況を何とか改善したい、あるいは小児、産科、周産期医療、これに特化して使おうということで、約一千五百億円ベースで充てることにいたしております。

 先生おっしゃったように、三百床規模の病院で大体五千万ぐらいの収入がアップするかというお話でございましたが、これは当然、その病院の規模あるいは中の患者さんの状況その他で多少ばらつきがあるということはあると思いますが、大体一つの目安としてそういうことが言えると思います。その中で、やはりそれ以外の病院でも、特に救急医療に特化しては病院の収入アップにつながるということを十分配慮しているところでございます。

 療養病床等の種別の病床をどのくらい有しているとか、そういういろいろな病院の状況がありますが、少しでも状況改善に寄与できるものと考えております。

糸川委員 大臣、ちょっともう一回確認させてもらいたいんですが、三百床規模の病院では確かに増収なんですけれども、中小規模、今副大臣もおっしゃられましたけれども、中小の病院、ここでの、救急患者を受け付けている中小の病院ほど救急医の負担というのが結構あるわけですよね。そこの軽減につながるかどうかということなので、そこを大臣、もう一回おっしゃっていただけませんでしょうか。

舛添国務大臣 これはもうケース・バイ・ケースで、一概に、一般的にこうということは言えませんけれども、例えば、ハイリスクな妊産婦、こういう方が搬送されてきた、これに対しては、当然診療報酬が加算されるような形になっていますから、そういうのを積み上げていくと、年間何百万か何千万かわかりませんけれども、そういう形で救急医療をきちんとやっていただくと病院に対しての報酬が上がるような仕組みには、結果的になると思います。それは中小も含めてです。

糸川委員 中小の救急病院というのは、もう本当に地元でしっかりと活躍されていらっしゃるところが多いものですから、そういうところの負担軽減、ぜひ、しっかり取り組んでいただきたいなというふうに感じます。

 厚生労働省の補助金で都道府県が実施している救急医療情報システム、これは、病院の空きベッド状況、こういうものが、情報が更新されていない、消防機関でほとんど利用されていない地域があるということが、昨年の九月の総務省の行政評価・監視結果というので指摘をされております。その調査結果の中で、情報の更新作業には医療機関の協力が欠かせない、入力作業を行う経費、これを診療報酬で対応する、こういうことが検討されるべきではないかということが意見としても出ておりました。

 今回の診療報酬改定では、医師の事務負担、これを軽減する観点から、医師の事務作業補助者の評価、こういうものを行うこととしておりまして、作業補助者の業務には、この救急医療情報システムの入力作業、これが明確に示されているということでございます。

 しかし、勤務医の負担が過重となっている、特に地域の中小の救急病院にこの医師事務作業補助者という方が配置できるような枠組みになっているのか。それからまた、小児救急拠点病院であったり地域支援病院等の指定を受けていない地域の救急病院について、この作業補助者に係る基本的な算定要件、これはどのようなものを考えているのか、お答えいただきたいと思います。

舛添国務大臣 もちろん第三次救急医療機関や地域医療支援病院には、当然このメディカルクラークの配置が加算されますが、それに加えまして、緊急入院患者が年間二百名を超える病院についても同様の措置がとれ、そしてそのメディカルクラークが救急情報の更新ということがやれることになっております。

糸川委員 大臣、今のところ、この作業補助者については、緊急入院患者の数に対して評価する仕組みを考えられているようにも見受けられるんですけれども、夜間、休日の急患受付では軽症患者と重症患者、こういうものが混在しておりまして、例えば救急患者を受け付けているだけでは評価されないというようなことになってしまうのではないかなというような懸念があるんですけれども、これでは地域で奮闘されていらっしゃる救急医の負担軽減にはつながらないのかなというふうにも考えるんですが、どうでしょうか。

舛添国務大臣 ちょっと御質問の趣旨を私がよく理解できていなかったら再度御質問いただきたいと思いますが、基本的に、どういう急患の方が来られるかで、病院によってはトリアージということで選別をいたしますけれども、地域全体で選別するという体制をやっておかないと、本当に重篤な患者が来られたときに対応できない。ですから、そういう一つの手当てが必要だと思う。

 今、地域の病院が非常に困っているのは、今申し上げたように、普通、日中、昼間来ればよかったのに、ちょっと熱を出しただけで来られるという方に対する、これは、もちろん診療報酬的にはきちんと対応はしておりますけれども、ただ、お医者さん一人ですから、その患者を診ているとき重篤な患者が来たら、よそにたらい回しということになりますので、これは地域の住民の方々で、例えば兵庫県立の柏原病院なんかは小児科を守る母親の会というのをつくって、そういういわゆるコンビニ診療をやめようということもやっていますので、地域全体で今の問題にも対応していく必要があると思っております。

糸川委員 ありがとうございます。

 厚生労働省の今年度の予算案、救急搬送に対する支援体制の確保ということで救急医療情報システムの充実・改善、それから、救急患者の受け入れ先の病院探し、これを調整するコーディネーターというのでしょうか、この配置ということで約八億円を計上されておられます。確かに、こういう救急医療体制の整備ということに対しての取り組みは非常に評価できるというふうにも思うんですが、ただ、この病院探しのコーディネーターというのはどういうものなのか。

 それから、患者の重症度、こういうことを判断するトリアージというのを、今大臣がおっしゃられるように、そういう方々をトリアージしていくということを行うとすれば、これは専門家の医師など、そういう方々がコーディネーターとして対応する必要があるのかなというふうに思います。

 救急医療という二十四時間体制で対応を求められた場合に、病院探しのコーディネーターとしての医師というのが確保できるのかなというふうに感じるのですが、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 コーディネーターとして一番いいのはお医者さんであって、しかも、その地域、どこにどういう病院があるかという地域の実情をよく知っていられる方がいいんですけれども、なかなかやはり、予算措置はつけましたけれども、そういうお医者さんが見つかるかどうかわからない。そうすると、例えば看護師さんでそれが対応できないか。それで、オブザーバー的に看護師さんを指導するお医者さんが要る。いろいろな知恵を働かせまして、この医療コーディネーターというのを何とか成功させたいと思っております。

糸川委員 特に地方の中小の病院、多くあるところもあります。ぜひ、そういうところの負担の軽減をどうやったらできるのかということを重点的にやはり感じていただきたいなと。

 救急医の皆さん方、本当に苦労されて、自殺されちゃうというケースもあります。そういうところまで、やはり厚生労働省として、最終的には、これは国民の安全、安心というところにつながってまいりますので、どうかお取り組みをいただきたいなというふうに思います。

 先ほどから申していますけれども、救急医療というのが崩壊するのではないかというような危機に面しているわけでございますけれども、現状を分析してさまざまな側面から対策を講じていくということも必要なんですが、救急医療という医療制度の中で最も重要なシステムの崩壊、こういうものを食いとめていくということは政策の大きな方向転換が必要じゃないかなというふうにも感じるわけです。

 政府におきましては、今議論してきましたけれども、さまざまな対策を講じていらっしゃると説明はされております。ただ、小出しの対策にすぎないのかなという感じもいたしますし、また、その背景には、骨太の方針で示されました社会保障の分野、特に医療、介護を中心に毎年二千二百億円の歳出削減というようなことも方針が示されておりまして、十分な財源が確保できない、こういう背景があるからじゃないのかなというふうに感じるわけです。このような骨太の方針というのは撤回する必要があるんではないかなというふうに考えます。

 限りある医療資源を有効に活用する。もちろん、無駄なことは排除するということは必要なんですけれども、ただ、小泉内閣において診療報酬の本体の引き下げ、それから経済財政諮問会議の民間議員の方々の主導で行われた大幅な社会保障の財源の抑制、こういうものによって医療現場を締めつけてきたという結果が今の崩壊の危機というような原因にもなっているんではないかなというふうに感じるわけです。

 舛添大臣も、このような毎年二千二百億円の社会保障分野での歳出削減、これはもう既に限界じゃないかという発言をされておりますけれども、このような社会保障分野での削減、まだ今後も行われていくのか、そしてまた、そういうことは行われるべきではないというふうに今でもお考えなのか、大臣の御見解をお聞きしたいと思います。

舛添国務大臣 もちろん、いろいろな効率化、それから歳出抑制ということの努力も続けないといけませんけれども、ことしは、健康保険の間での助け合いということ、それからジェネリック、後発医薬品、これの推進、薬価を下げるということで何とか二千二百億円を捻出しました。

 しかし、何度も私申し上げていますように、本当にもう限界に達していると思いますので、そういう観点から、今後、まさに例えば消費税の増税ということも含めて、きちんと国民的な議論をしていく必要があるというふうに思っています。そして、社会保障に関する国民会議がこのたび設立されましたので、そういう場において私もそういう意見を述べてまいります。

 ただ、もちろん福田内閣の一員として政府の方針にはきちんと従ってまいりますけれども、議論を国民的に深める必要がある、そういう認識は変わっておりません。

糸川委員 大臣がおっしゃられるように、確かにもうこれは限界だということですから、そろそろ骨太の方針、これを撤回できるように、大臣、しっかりと働いていただきたいなというふうに感じるわけです。

 総理、確かに、国の財政収支のバランス、これも大事だと思います。ただ、国民の命、健康、こういうものを守るというのが総理の最重要課題ではないかなというふうに思うんですが、医療等を中心に歳出を削減する、こういう骨太の方針、この部分については、国民生活重視を掲げられたわけですから、福田総理は撤回をすべきだというふうに私は思うんですが、いかがでしょうか。

 総理からまずお聞きしたいと思うんですが、大田大臣にもこの点についてお聞きしたいなと。

大田国務大臣 高齢化を乗り切る財政をつくっていくということは大切なことですので、骨太二〇〇六に書かれた五年間のプログラムはやはり守っていかなきゃいけないんだと思います。

 ただし、現在の医療の本来の機能を損なってでも財政健全化すればいいということではもちろんありませんので、一律に削減するとか、あるいは金額の規模だけにこだわった改革をするということはあってはならないし、現場の状況に対応した、実態に応じた対策というのが必要だ、これは十分に理解しております。

 ただ、一方で、今の医療には効率化すべき点というのは私はやはりあるんじゃないかなと思っております。例えば、重複検査ですとか、複数の病院にかかった場合の薬の過剰投与の問題、それから、長野県と福岡県で老人の一人当たり医療費が一・五倍違うという問題、あるいは、レセプトの電子化がおくれておりますから医療費のデータ解析が十分できないといった問題があります。したがいまして、昨年から、厚生労働省と連携をとりまして、医療・介護サービスの質向上・効率化プログラムというものを実行しております。

 こういっためり張りをつけた努力が必要だと考えております。その上で、なお賄い切れない費用については、負担増ということを、これは国民の選択で検討しなくてはならないと考えます。

福田内閣総理大臣 申すまでもなく、日本の財政状況、非常に厳しい状況にある。そういう意味で、歳入歳出改革を一体として進めていくということで二〇〇六の枠組みもできておるわけであります。ほかの費目は、社会保障費と科学技術予算以外は皆減少している、こういうようなことで、社会保障もそういう中で節減に努めていただくということはどうしても必要なんだろうというふうに思います。いろいろな方策を工夫しながらやっていくということであります。

 ただ、そのために、今大田大臣から言われたように、国民の安全を損ねるようなことになってはいけないというのが大前提だと思いますので、その点は十分注意していかなければいけない。

 しかし、ほかの予算もすべて、例えば教育だろうが、それから道路をつくる公共事業だろうが、みんな国民のためではあるんですよ。安全保障もそうなんですね。ですから、そういう意味において、全体のバランスをどうとっていくかということがあると思います。

 しかし、命にかかわるようなこととか生活を支える基本については、しっかりとこれを支えていくシステムは、これは近代国家としてどうしても必要なものだというふうには私は思っております。

糸川委員 ただ、総理、先ほど私も言っていますけれども、救急医療というのがやはりもう崩壊の危機に瀕しているということで、今、安全を守る、国民の皆様に対してのサービスは低下させないと言っていても、実際問題、たらい回しであったりということも起きてしまっているのも現状ですから、そこに関してはやはりしっかりと対応していただきたい、このように感じます。

 先ほど舛添大臣も、平成二十年度において、二千二百億円の歳出削減のために、薬価の引き下げであったり、後発品の使用促進、それから政管健保の国庫補助を一千億円削減してほかの被用者の保険料財源で穴埋めをされようとしておられるということでございますが、これまで、皆保険体制の維持に向けて、医療保険制度で国庫補助の仕組みを設けて長年にわたって制度運営の安定化というのを図ってこられたというふうに思います。

 このような経緯を無視して、国庫補助を受けていないほかの制度の被保険者から集めた保険料財源、これを穴埋めに使う手法というのが最良だというふうにお考えなのか。これはせっかくですから福田総理にもお聞きしたいというふうに思います。

舛添国務大臣 大変厳しい財政事情の中で健保組合の皆さん方に、被用者全体の助け合いという一環でぜひお願いしますということで、まげてこれをお願いした次第でありますので、これが常態化するというようなことであってはならないというふうに思っています。そういう意味で、私は、やりくりするのは限界に近いなということを申し上げている次第であります。

 この厳しい財政状況と、国民の命を守る、こういう目的とをどう両立させるか、今後とも、選択肢は限られていますけれども、そういう努力はきちんと続けていく中で長期的な医療の明るいビジョンを打ち立てたいと思っております。

福田内閣総理大臣 今、厚労大臣から言われたように、まさに助け合いなんですよ。助け合いの一環として行ったものでございまして、医療保険制度全体の安定的な運営と国の適切な財政運営との両立を図るというために必要な措置であるというように考えております。

糸川委員 こういう仕組みというのが、医療の保険料というのは、必要な医療、それから重要な医療に要する費用に充てるべきではないかなというふうに感じます。例えば、保険料や国庫負担分の財源、これが一千億円あれば、今回の診療報酬改定で救急医療の対策、こういうものをさらに充実させることが可能だったのではないかなというふうにも考えるわけでございます。

 それで、先ほど舛添大臣が、安定した財源ということで、やはり消費税をそろそろ議論すべきではないかと。私も以前ここの場で質問をさせていただいたときも、安定財源は何ですかということをお聞きしました。その際にも舛添大臣は消費税だというふうにおっしゃられたわけですけれども、政府・与党が、消費税のお話を大臣がされていらっしゃる以上、これを目的税とされるのか、それとも、どういうものとして消費税を上げようという考えを持っていらっしゃるのか、これは舛添大臣とそれから額賀財務大臣、そして最後に福田総理にお聞きしたいなというふうに思いますが、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 これは、どういう財源をもとにするかは国民的な議論が必要だというふうに思っています。

 そして、仮にそれを消費税ということにした場合に、目的税化するということは、国民の一定の理解を得やすいとは思いますけれども、目的税化ということになると、これがかえって自由度を奪うんじゃないかという点も考えないといけない。そういう点も含めて、広く、この国民会議を含め、国民全体で議論をして、国民の納得いく形で財源の手当てをするべきだ、そういうふうに考えております。

額賀国務大臣 先ほどからお話を聞いていまして、我々は不断の努力で歳出削減をしたり効率化を図ったりしているわけでございますけれども、財政再建は財政のためにやっているのではなくて、国民生活、日本経済全体のために財政というのはあるべきものだと思っております。

 消費税については、やはり社会保障とか、それから財政再建のことにも関連しますけれども、安定した財源をどういうふうに確保するかという視点で、消費税というのは一つの有力な手段であるというふうに思っております。消費税は、余り経済の、景気の変動に左右をされない、それから世代間でもどちらかというと不公平感がないということ、そういうことから、社会保障関係の財源として国民の皆さん方に理解をしてもらえる点では、私は、非常に有意義な、説得力を持つものではないかと思っておりますので、今後十分に議論した形で、そういう方向を見きわめながら対応していくことがいいのではないかというふうに思っております。

福田内閣総理大臣 社会保障を持続可能な形で維持していくということになりますと、給付の合理化、効率化、そういうことは当然しなければいけないけれども、安定した財源であるということ、それからあらゆる世代が広く公平に分かち合う、そういうふうな観点、そういうことを考えますと、消費税というのは適当な財源なのかなというふうに思います。

 しかし、そういう消費税を含めまして、今後この税制改革を考える中でもって検討すべき課題であるということでありまして、今何かを特定しているということではありません。

糸川委員 舛添大臣は、安定財源としては消費税がいいのではないかというような考えを持っていらっしゃり、ただこれは、目的税ではなく、目的税だとかえって自由度も失ってしまうかもしれないというようなこともおっしゃられていますので、では、何のために今度は消費税の話になるのかなということも思います。

 きょうは救急医療という点についてちょっと議論をさせていただきました。もう時間が参りましたのでこれで質問を終わりますけれども、とにかく、もうこれ以上国民の皆さんの負担を上げるのではなくて、そして、無駄を減らして、今までまだまだ無駄があるわけですよね、先ほど大田大臣も言われていらっしゃるような無駄もどんどん削減していきながら、ただ、地域の医療というのはしっかりと守っていただかないと、矛盾しているわけではございませんから、しっかり守っていただくということを前提に取り組んでいただきたいなというふうに思います。

 きょうは終わります。ありがとうございました。

逢沢委員長 これにて糸川君の質疑は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十分散会


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