衆議院

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第20号 平成21年2月25日(水曜日)

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平成二十一年二月二十五日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 衛藤征士郎君

   理事 小島 敏男君 理事 佐田玄一郎君

   理事 鈴木 恒夫君 理事 田野瀬良太郎君

   理事 根本  匠君 理事 山本  拓君

   理事 枝野 幸男君 理事 菅  直人君

   理事 富田 茂之君

      井上 喜一君    伊藤 公介君

      石田 真敏君    岩永 峯一君

      上野賢一郎君    臼井日出男君

      小野寺五典君    尾身 幸次君

      近江屋信広君    大野 功統君

      木原 誠二君    木村 隆秀君

      岸田 文雄君    小池百合子君

      斉藤斗志二君    坂本 剛二君

      下村 博文君    菅原 一秀君

      杉浦 正健君    園田 博之君

      平  将明君    中馬 弘毅君

      土井 真樹君    仲村 正治君

      永岡 桂子君    野田  毅君

      葉梨 康弘君    広津 素子君

      深谷 隆司君    福岡 資麿君

      藤野真紀子君    三原 朝彦君

      武藤 容治君    安井潤一郎君

      山内 康一君   吉田六左エ門君

      若宮 健嗣君    渡辺 博道君

      泉  健太君    大島  敦君

      逢坂 誠二君    川内 博史君

      篠原  孝君    仙谷 由人君

      園田 康博君    田村 謙治君

      高井 美穂君    筒井 信隆君

      中川 正春君    細野 豪志君

      馬淵 澄夫君    前原 誠司君

      渡部 恒三君    池坊 保子君

      江田 康幸君    笠井  亮君

      佐々木憲昭君    塩川 鉄也君

      阿部 知子君    菅野 哲雄君

      照屋 寛徳君    鈴木 宗男君

    …………………………………

   総務大臣         鳩山 邦夫君

   法務大臣         森  英介君

   外務大臣         中曽根弘文君

   財務大臣

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   与謝野 馨君

   文部科学大臣       塩谷  立君

   厚生労働大臣       舛添 要一君

   農林水産大臣       石破  茂君

   経済産業大臣       二階 俊博君

   国土交通大臣       金子 一義君

   環境大臣         斉藤 鉄夫君

   防衛大臣         浜田 靖一君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     河村 建夫君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 佐藤  勉君

   国務大臣

   (規制改革担当)

   (行政改革担当)

   (公務員制度改革担当)  甘利  明君

   外務副大臣        伊藤信太郎君

   財務副大臣        平田 耕一君

   農林水産副大臣      石田 祝稔君

   経済産業副大臣      高市 早苗君

   国土交通副大臣      金子 恭之君

   環境副大臣        吉野 正芳君

   防衛副大臣        北村 誠吾君

   内閣府大臣政務官     宇野  治君

   農林水産大臣政務官    江藤  拓君

   環境大臣政務官      古川 禎久君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    宮崎 礼壹君

   政府特別補佐人

   (人事院総裁)      谷  公士君

   会計検査院事務総局第一局長            諸澤 治郎君

   政府参考人

   (人事院事務総局総括審議官)           菊地 敦子君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 西川 正郎君

   政府参考人

   (内閣府規制改革推進室長)            私市 光生君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    池田 克彦君

   政府参考人

   (総務省大臣官房長)   田中 順一君

   政府参考人

   (総務省人事・恩給局長) 村木 裕隆君

   政府参考人

   (総務省自治行政局公務員部長)          松永 邦男君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大野恒太郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   河相 周夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 羽田 浩二君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 川村 泰久君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長)            齋木 昭隆君

   政府参考人

   (外務省欧州局長)    谷崎 泰明君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   鶴岡 公二君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        山中 伸一君

   政府参考人

   (社会保険庁長官)    坂野 泰治君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房技術総括審議官)       吉田 岳志君

   政府参考人

   (経済産業省経済産業政策局長)          松永 和夫君

   政府参考人

   (経済産業省産業技術環境局長)          鈴木 正徳君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官) 石田  徹君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房長) 増田 優一君

   政府参考人

   (国土交通省道路局長)  金井 道夫君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  寺田 達志君

   政府参考人

   (防衛省防衛参事官)   枡田 一彦君

   政府参考人

   (防衛省経理装備局長)  長岡 憲宗君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  井上 源三君

   予算委員会専門員     井上 茂男君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十五日

 辞任         補欠選任

  石田 真敏君     平  将明君

  木村 隆秀君     藤野真紀子君

  下村 博文君     福岡 資麿君

  菅原 一秀君     木原 誠二君

  園田 博之君     近江屋信広君

  深谷 隆司君     山内 康一君

  渡辺 博道君     武藤 容治君

  仙谷 由人君     泉  健太君

  前原 誠司君     田村 謙治君

  笠井  亮君     佐々木憲昭君

  阿部 知子君     菅野 哲雄君

  糸川 正晃君     鈴木 宗男君

同日

 辞任         補欠選任

  近江屋信広君     土井 真樹君

  木原 誠二君     安井潤一郎君

  平  将明君     上野賢一郎君

  福岡 資麿君     下村 博文君

  藤野真紀子君     木村 隆秀君

  武藤 容治君     渡辺 博道君

  山内 康一君     若宮 健嗣君

  泉  健太君     篠原  孝君

  田村 謙治君     園田 康博君

  佐々木憲昭君     塩川 鉄也君

  菅野 哲雄君     照屋 寛徳君

  鈴木 宗男君     糸川 正晃君

同日

 辞任         補欠選任

  上野賢一郎君     広津 素子君

  土井 真樹君     永岡 桂子君

  安井潤一郎君     菅原 一秀君

  若宮 健嗣君     深谷 隆司君

  篠原  孝君     仙谷 由人君

  園田 康博君     高井 美穂君

  塩川 鉄也君     笠井  亮君

  照屋 寛徳君     阿部 知子君

同日

 辞任         補欠選任

  永岡 桂子君     園田 博之君

  広津 素子君     石田 真敏君

  高井 美穂君     前原 誠司君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成二十一年度一般会計予算

 平成二十一年度特別会計予算

 平成二十一年度政府関係機関予算

 決算及び平成二十一年度予算に関する予備的調査についての報告


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     ――――◇―――――

衛藤委員長 これより会議を開きます。

 平成二十一年度一般会計予算、平成二十一年度特別会計予算、平成二十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般的質疑を行います。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として人事院事務総局総括審議官菊地敦子君、内閣府規制改革推進室長私市光生君、警察庁警備局長池田克彦君、総務省大臣官房長田中順一君、総務省人事・恩給局長村木裕隆君、総務省自治行政局公務員部長松永邦男君、法務省刑事局長大野恒太郎君、文部科学省スポーツ・青少年局長山中伸一君、社会保険庁長官坂野泰治君、農林水産省大臣官房技術総括審議官吉田岳志君、経済産業省経済産業政策局長松永和夫君、経済産業省産業技術環境局長鈴木正徳君、資源エネルギー庁長官石田徹君、国土交通省大臣官房長増田優一君、国土交通省道路局長金井道夫君、環境省地球環境局長寺田達志君、防衛省防衛参事官枡田一彦君、防衛省経理装備局長長岡憲宗君、防衛省地方協力局長井上源三君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局第一局長諸澤治郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

衛藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

衛藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。前原誠司君。

前原委員 おはようございます。民主党の前原でございます。

 質問通告をしておりますテーマについて質問させていただきますが、若干順序を変えて、まずは公益法人改革についてお話をさせていただきたいと思います。

 官房長官と国土交通大臣が主に御答弁をいただくことになろうと思います。よろしくお願いいたします。

 まず、官房長官、確認でございますが、麻生総理が、天下り、わたりについては禁止をするんだ、そして先般のこの委員会でも、政令については今国会中ということで出して、そして天下り、わたりについては政府を挙げてなくしていくと。そういうことでよろしゅうございますか。

河村国務大臣 御指摘のとおりでございます。

 また、わたりについてはこれを一切認めないという方向、それから天下りの問題については、いわゆる権限、予算を持った押しつけ的な天下りについてはもう全廃する、強い意思でやる、こういうことを明言いたしております。

前原委員 ただ、我々と認識が違うのは、政府が認めたいわゆる押しつけ的な天下りとわたりについては禁止をするけれども、慣習的に行われているものとか、押しつけ的とかあっせん型ではないもの、あるいは定例化して常態化して行われているものについては、それは天下りでないというような認識がありました。

 ただ、ここがちょっと我々とは天下りの定義あるいはわたりの定義が違うんだと思いますが、しかし、仮に本気で天下りやわたりをなくすということであれば、先般私が議論させていただきましたとおり、公益法人そのものをゼロベースで見直していくということが私は大事だと思いますので、少しきょうはその議論をさせていただきたいと思います。

 公益法人は四千六百余りありますけれども、大体四つのパターンに分けられるんじゃないかと私は思っております。

 一つは、国や地方自治体から発注をされるもので、お配りをしている資料でいいますと七枚目でございますけれども、官房長官、もしあれでしたらこっちを見ていただいても結構ですが、今お手元の資料ですね。

 つまり、パターン一というのは、特命随意契約かもしれません。まだ特命随意契約は残っていますが、ただ、特命随意契約はなくしていくということでありますので。公益法人しかできないというものもあるかもしれない。これがパターン一です。

 パターン二というのは、民間企業には発注していない、つまりは、国や地方自治体は公益法人に発注しているんだけれども、再委託をしている。つまりは、民間企業にも全部またはその一部を仕事として委託している場合。

 パターン三というのは、公益法人、民間企業が競って入札をしている場合。

 パターン四というのは、公益法人と民間企業が競って受注をして、なおかつ公益法人が民間企業に再委託をしている、こういうパターン。

 どのパターンの公益法人は要らないかという議論をしていきたいというふうに思います。

 まず、パターン二とパターン四というところで、少し事例をお話ししたいと思います。国土交通大臣、ちょっとしっかり聞いておいていただきたいんです。

 まず、事例一でありますけれども、これはある企業の会社概要なんですね。それで、皆さん方に資料としてお配りをしております。一応企業名は消してありますが、どういう仕事をとっているかということで、国土交通省からするとどこの企業かというのはすぐわかると思います。枚数にすれば六枚目と七枚目ですね。ページが書いてないものとページが六と書いてあるもの、これは実は一枚紙を切っておりますので、ページが一つ載っておりません。

 ページ数が書いてないものと次のものを見ていただいたらわかりますけれども、発注者というのが一番左に書いてあって、そして国土交通省とか栃木県日光市とか東京都とか、いろいろな国や自治体が発注者で書かれていて、そしてこの企業が受けられた業務名というのが書いてあるわけですね。それで、その先に何が書いてあるかというと、元請と書いてあるわけです。例えば、財団法人リバーフロント整備センターとか港湾空間高度化環境研究センターとか日本マリーナ・ビーチ協会とか、これは全部社団法人、財団法人という公益法人なんですね。

 どういうことかというと、国や地方が発注した業務を、この企業はいわゆる再委託を受けているということが書いてあるわけです。意味がわかられますか。つまり、発注者は国や地方だけれども、この元請と書いてあるのは、実際にとったのは公益法人。しかし、その仕事をやっていますということは、この企業が公益法人から再委託を受けたものがずらっと書いてあるわけです。つまりは、二か四のパターンであります。

 この二と四のパターンで問題なのは、国土交通省関東地方整備局東京湾口航路事務所の、ある肩書の方からこの企業に対してどういう要望があったかというと、かねてより要請してまいりましたがいまだに対応がなされていません、株式会社何とかさんのホームページ掲載の業務実績について国発注の財団からの再受注に関しては公表されては困ります、早々に様式変更もしくは掲載どめをお願いしますということを、国土交通省関東地方整備局東京湾口航路事務所のある方からこの企業に対して、つまりは、再委託を受けているということを会社概要に載せてもらったら困る、再委託がばれるじゃないかということで、載せてもらったら困りますということを言っているわけです。

 もし再委託というものが堂々としたものであれば、こういうことを言う必要は全くないわけですね。しかし、再委託をしたことが表に出るのが嫌だから、実際問題として、こういった要請文を会社に出している。

 金子大臣、確認をされていないし、もしあれだったら後でお渡しをいたします、それは会社も含めて。その会社に対していわゆる制裁措置がとられないという大前提においてそれはお渡しをしますけれども、こういう再委託が行われていて、そして国の機関から、再委託をされては困ります、掲載どめ、様式変更願いますという、この関東地方整備局東京湾口航路事務所の要請が事実だとすれば、どう思われますか。

金子国務大臣 制裁しないという前提で、ぜひ資料をお預かりさせていただきます。

 ただ、既にこの再委託について、一括丸投げといいますか再委託は厳に慎むことという、いわばこれは財務省通達でもありますけれども、出しております。それから、一部再委託という場合も、適正にそれが正当な理由で行われるものということで指導をしておるところでありますので、その趣旨から外れるかもしれません。

 お預かりさせていただきたいと思います。

前原委員 今、金子大臣がおっしゃったように、丸投げ、全面再委託はだめだということになっていますけれども、しかし、例えば三分の一以下にしなさいということであれば、同じような仕事を三社やっているところに、三分の一ずつ三社に対して再委託をすれば、一つの企業に対しては丸投げはしていないけれども、全部については再委託をしているということになるんじゃないですかね。つまりは、この再委託をある程度の比率以下に抑えなさいということを財務省通達で言ってはいるわけでありますけれども、しかし、それは、まさに今私が申し上げたように、同種の仕事をしている企業に対して細切れに分割発注をすれば、結果的に丸投げというのは可能になるということですから、本来は、もし自分たちができないのであれば、再委託ということはしなくて、もともと民間企業ができるのであれば、民間企業にやってもらうようにすべきじゃないですか。

金子国務大臣 十九年十二月、おととし十二月から、公益法人と民間企業との条件を要件緩和する、つまり、今まで発注を受けるのに国の実績が必要だったというものを、県でも政令指定都市の実績があっても発注要件として認めるというような要件緩和をしてまいりました。

 ただ、それでもどうも不十分であるということで、去年の十一月には、今度は、公益法人であるから有利にならないようにする。つまり、天下りOBがいるから有利かよという、そんな話はもうしない。民間でもちゃんとしかるべき技術者がいれば同等に扱う。それから、民間企業の受注要件も、単に地方公共団体だけでなくて、電力会社の受注実績があればいい。それから、発注ロットを短くしていくということも要るだろう。

 それから、当然でありますけれども、こういう、なぜ民間が入れなかったかというのには、もう一つは、発注のためのリード期間、準備期間というのが今まで少し少なかったということで、一カ月間のいわば発注リード期間をとるといったような対応を二十一年度からするということで、昨年の十一月にそういう方向をまとめたところであります。

 ですから、そういう意味では、今おっしゃったのは減少して、どんどん対応できるようになっていくということを、またそれをきちんとやれるようにしていきたいと思っています。

前原委員 改善するように対処するということでうまくいったためしというのは、今までないわけですよ。

 この間私が質問したことをもう一度申し上げます。

 これは平成二十年度の路面下空洞探査分析業務というものでありまして、これは財団法人道路保全技術センターがとったものであります。これについて、同種の仕事をやっておられる複数の会社に委託をしたところ、一日の平均的に必要な人数というのは十二・五人であるという計算になったわけですけれども、これをとった道路保全技術センターの関東支部においては、空洞解析ルームには二人しかいない。これはこの間申し上げたとおりであります。

 平成二十年度ですよ。つまりは、この年度でさえ、まだそういった、自分たちでは処理できない人数しか抱えていないのに、実際問題、過大な仕事を抱えているということが行われているわけです。

 ですから、私は今、個別の話をどうのこうの言っているのではなくて、金子大臣、要は、民間企業にできる仕事、あるいは再委託をするのであれば、そこはわざわざ財団法人がとる必要はないんですよ。財団法人がとらなくて、民間企業に任せたらいいんですよ。

 これは、官房長官、もう一つだけ例を言いましょうか。いろいろな例があるんですよ。おもしろいと言ったら語弊がありますけれども、おもしろい例があるんです。その例を踏まえて、一括して御答弁をいただきたいと思います。

 TECRISというのがあるんですね。測量調査設計業務実績情報サービスというものであって、財団法人日本建設情報総合センターに実施業務を登録し、つまりは、やった仕事を登録して、発注機関に対して情報提供をする仕組みなんですね、システムなんです。ということは何かというと、自分たちはこれだけ仕事の実績がありますよということを登録して、それがいわゆる受注実績になって、そして、いわゆる簡易プロポーザル方式とか、さまざまな入札方式のときにはそういった受注実績というのが一つの要件になりますので、これに登録をすると、実際問題、仕事をそれだけやりましたということがカウントされていく仕組みがこの測量調査設計業務実施情報サービス、いわゆるTECRISというものなんです。

 ある会社が、財団法人国際臨海開発研究センターから再委託を受けた。そして、再委託を受けて、もうおわかりになっていると思いますけれども、TECRISに登録したわけです。だって、再委託を受けたから、仕事をやったんですから、当然ながら、受注実績として登録をしていいはずですね。そうしたら、この財団法人国際臨海開発研究センターから、TECRIS登録削除についてという要望が来て、お手数をかけますが、業務カルテの削除方よろしくお願いしますと。つまりは、再委託を受けて実施をしたということを業務実績として登録するなと。

 だから、構造としてはさっきと一緒なんですよ。つまりは、先ほど金子大臣にも申し上げた、会社概要にいわゆる再委託を受けたものを載せてくれるな、あるいは財団法人国際臨海開発研究センターからは、業務実績に登録するTECRISから削除してくれ、こういう要望が出ているということ自体、官房長官、どう思われますか。

河村国務大臣 これは、先ほど来金子大臣も答弁されておりますが、いわゆる再委託のあり方、その前の再委託のあり方については、もう丸投げ的なものは一切認めない、これは禁止する方向できちっと行政指導しているんだと。ただ、その一部、三分の一と言っておりますが、一部そういうものがまだ残っていることは事実です、御指摘のとおり。

 一般的に、本体業務を一切その能力もないのに自分のところに受けて、しり抜け的に受けて丸投げする、こういうことはもう認めない。ただ、本体業務はセンターが持っている、財団法人、社団法人等々持っている、しかし、それを受けて、その中の本体業務を施行するに当たっての事前の準備とか、例えば何かつくるときにボーリングが要るとか、これは自分のあれじゃないけれどもどこかにお願いをしてやってもらって本体業務に移るとか、こういうものについては厳格な審査のもとでやりましょうということで、第三者機関において調達方式等もきちっとやっているんだと。それで、発注計画等も公表して、こういうことを明らかにしてやってもらう。事後には業務成績評定を行って、全体の入札時の実績評価、企業評価に反映するということ。これを建前に、きちっとしておるわけであります。

 しかし、現実に、その委託の仕方がそこを抜けてやっているから誤解を招くので、そういうことを受けたということについての公表はするなという意図なのかどうなのか私はわかりませんが、いわゆる厳格にやっているはずが厳格にできていなくて、まるで委託をしているような形がばれるから困るんだということでは、これは認められない話であります。

 ただ、一部委託したのに全体業務を受けているような形の実績にとられることについては問題がある、こういう指摘ならわかるのでありますが、いわゆる一部の委託なのに全体委託をしているというふうにとられることを嫌ってのことなのか、それを委託しないということになっているのに、したことが明らかになることを防ぎたいという意図なのか、そういうことはやはり認めるべきことじゃないというふうに思います。

前原委員 そういう前提つきで認めるべきではないという話じゃないんですよ、官房長官。

 つまりは、登録者も、別に委託を受けたもの以外も含めて登録しているわけじゃないんですよ。自分たちがやった仕事だけは登録しようと思ったら、そのことすらも業務実績として登録するなと、そういうことを国土交通省所管の公益法人からいわゆるお願いをされている、お願いというか、プレッシャーをかけられているわけですよ。そして、再委託をしたことを業務実績として会社概要に書いたら、様式を変えてくれ、削除してくれということを言われているわけです。

 若干口幅ったい言い方ですけれども、仮に政権交代があれば、我々はこの公益法人をゼロベースで見直すわけですよ。そして、少なくともパターン二、パターン三、パターン四の公益法人は、私はなくしたらいいと思うんです。

 だって、公益法人が仕事を受けて、パターン二なんかは民間企業に再委託をしないとできない。パターン三というのは公益法人と民間企業が競争し合ってとっている。

 パターン三でいえば、官房長官、民間企業と公益法人が同列で競争するというのは、実は不公平な競争なんです。何で不公平かわかられますか。民間企業はもうかったら税金を納めなきゃいけない。公益法人はもうかっても税金を納めなくていい。そして公益法人は、いわゆる内部留保という形でお金をためていて、仕事をとろうと思ったらダンピングしてでもとれるんですよ。つまりは、仕組みとして公平な、公正な競争にならないんですよ、パターン三というのは。だったら全部民間企業に任せたらいいじゃないですか。

 そして、四なんかなおさら、民間企業と公益法人が競争していて、なおかつ、それからまた再委託をしている。公益法人の存在意義すらないですよ、こんなパターン四なんかは。

 パターン三とパターン四の公益法人は、これは民間企業と同等に競争するんであれば基本的に要らないと思われませんか。

河村国務大臣 最近は、市場化テストというような話も出てまいりまして、役所がやっている仕事と民間もやっている仕事を実際に競争させて、民間の方が実際にうまく効率的にやっているということであれば役所の仕事をもうやめてしまうという方向に流れてきております。そういうことから考えてみても、実際に民間企業で全部できる、比較してもできるんだと。基本的な問題は、できるだけまさに官から民へという方向づけです。

 もちろん、公益法人が生まれた経緯というのも、必要性から生まれていったものもありますから、その存在意義、やはりそれは第三者機関等を通じてそういうものについてのチェックはやらなきゃいかぬし、公益法人のあり方も、今から五年間の中で全部移行していく方向になっておりますから、そこできちっとチェックすべきものはチェックすればいいのではないかというふうに思います。

前原委員 いやいや、官房長官、答弁になっていないんですよ。

 つまりは、民間企業と競争している、官から民へとおっしゃいましたね、しかも、競争は不公平なんです。民間企業はもうかったら税金を納めなきゃいけない。こちらは内部留保でためて、税金を納めなくていい。しかも、内部留保を吐き出して、とりたいときはダンピングできるわけですよ。だったら、公益法人なんて要らないじゃないですか。ましてや再委託をしているパターン四なんというのはもっと要らないじゃないですかということを言っているんですよ。そんな第三者機関云々じゃなく、へのごの言わずに、要らないと思われませんかと言っているんですよ。どうなんですか。

 天下りやわたりをなくすんでしょう、本気で。なくすんだったら、こんな公益法人、要らないじゃないですか、理屈的に言っても。まだ、要るという答弁をされますか。それだったら、天下りやわたりをなくすというのは本気じゃないということですよ。

河村国務大臣 今回の天下りについての見直し、これを全廃する方向、いわゆる財源、権限をもって押しつけ的なことはもう一切しない方向で進んでおりますから、そういう視点で、今後官から民への流れをもっと強めていく、これは必要なことだというふうに思います。

前原委員 それは、やらないということと同じなんですよ。

 もう一度言いますよ。こればかり余り時間をとりたくないんですが。これは私が初当選したころの政治改革の議論とよく似ているんですよ。つまりは、これは負の遺産をどう変えるかという話です。

 政治改革が別に負の遺産だと言いませんよ、民主主義の基盤ですから。政治改革の議論は大切だったけれども、しかし、政治改革の議論で私はあのときほかの大切な議論が余りされていなかったように思うんですよ。これも同じ。こういう負の遺産をどう清算するかという議論で、もっと前向きな生産的な議論を私はここの場ではすべきだと思うんですよ。我々、政権をとったら、これはゼロベースで見直す、なくしていくという話をしているわけですよ。

 だったら、今申し上げたように、公益法人と競争し合っている、しかも、不公平な競争、不公正な競争だ、しかも、パターン四については再委託もしている、そうなのであれば、この公益法人は要らないんじゃないですかと言っているわけです。イエスかノーかで答えてください。要ると思うのか、要らないのか。

河村国務大臣 民間企業が公益法人と競争して、不公平な条件のもとで競争が行われるとしたら、それは非常に問題があるし、もう民間企業でできるのであれば公益法人の役割というのは終わったのではないか、こういう結論になるだろうと思います。

前原委員 いや、見直していないから言っているわけですよ。つまりは、私はパターン二も入れるべきだと思いますが、少なくともパターン三、パターン四の公益法人なんか要らないです。要らない。つまりは、民間企業と仕事をとり合っている。ましてや、とり合って、できないから再委託をしている。だから、こういうようなところはまさになくしていくということで、ぜひ、不毛な議論はもうこれ以上続けない、本当に天下りやわたりをなくすのであれば。

 つまりは、官が認めた天下り、わたりをなくすということではなくて、こういうパターン三やパターン四のように、民間企業と競争して、不公平な競争で仕事をとって、しかも、できないから再委託をしているなんということはなくすべきなんです。だから、それをはっきり言えばいいわけですよ。何かありますか。

金子国務大臣 道路関係の五十法人については、既に見直しを与党もチームをつくってやっていただいておりまして、今御指摘もありましたけれども、四法人は廃止する。あとはスリム化してしまうといったような、そういう……(前原委員「そんなこと聞いていない。もういいです。そんな答弁だったら時間がもったいない」と呼ぶ)いや、それともう一つだけ、済みません……(前原委員「違う、違う。もういいから。いいです」と呼ぶ)

衛藤委員長 前原君、ちょっと大臣の答弁を。

金子国務大臣 先ほどありました空洞化の、道路保全センターがやっている……(前原委員「今、私が質問していることと違うじゃないですか」と呼ぶ)いや、さっきお話があったので。

 地下が空洞化されているという問題について、あれは、こんなもの要らないじゃないかとおっしゃったんだけれども、道路空洞化について、これはレーダー車を走らせるというようなことはもう民間企業でもできるから、それは全部分離発注する、単独で分離発注する。レントゲン写真と一緒です。あれを最後レーダーで照射して、そして、これが本当に穴があいているのかどうか、それから穴があいているとすれば、どうやって補修するかということについての提言だけは、これは今保全センターが技術を持っているものですから、企画競争力でやっている。

 つまり、必要なものと、それから民間企業でできるというものをどんどん分離発注しよう、こういうことです。

前原委員 そんなもので時間を浪費しないでください。

 民間企業でできるんですよ、それはもう。できるという話を聞いているんですよ。それで……(河村国務大臣「済みません、ちょっと一言だけ」と呼ぶ)はい。

河村国務大臣 御指摘の点は、まさに公益法人のあり方が問われているんだと思います。ただ、公益法人も収益事業でもうかったら税金を納めていますから、まるで税金を納めない状況でやっているというのは、ちょっと誤解を招きますから……(前原委員「何が誤解ですか」と呼ぶ)いや、公益法人は全然税金ゼロでやっているとおっしゃったから、そうじゃないということです。

前原委員 違う、違う。そうしたら、内部留保をためていって、基準よりも内部留保をためているところはいっぱいありますよ、いまだに。これは我々が何年もこの国会でやっているんですよ。

 先ほど国土交通大臣がお答えされた道路関連予算が入った公益法人の見直しを言ったのは、私ですから。去年のこの予算委員会の場で、整備局のいわゆる建設協会とか建設弘済会なんというのは要りませんねということを言ったのは、私ですから。だから、それはもう、別に答弁していただかなくても私はよくわかっています。

 だから、それを広げていって、今私は受け皿の話をしているんです。だから、公益法人と民間企業で競争し合っているものは、官から民へであれば、民間にできるものがあったら民間でやったらいいじゃないですか、だから三や四はなくしたらいいじゃないですかという話をしているわけですよ。

 もういいですよ。やる気がないんだったら、政権交代してやりますから。本気でやる気がないんですよ、天下り、わたりを。だって、今話をしていることで、なくすことは簡単にできるじゃないですか。民間企業と競争している、しかも競争して民間企業に再委託をしている。何でこんな公益法人が要るんですか。要らないでしょう。要りますか。

河村国務大臣 さっき申し上げましたように、公益法人のあり方を問うておられるんだと思います。役割を果たした公益法人はなくなっていく、これは当然のことだというふうに思いますので、御指摘の点は、官から民への一つの流れの方向ですから、十分実態を見ながらその方向でやっていく、これは必要なことだと思います。

前原委員 私がそちら側だったら、基本的に三、四はなくしますと言いますよ。だから、もういいですよ。やる気がないということです。はっきりわかったんですから。見直しをしていくということは、今までの政府でいえば、だらだらこの公益法人が続くのと同義なんですよ。もういいです、このことについては。時間がもったいないですから。

 総務大臣、国の出先機関についての質問をさせていただきたいと思います。

 国の出先機関の話でありますけれども、地方分権改革推進委員会、伊藤忠の丹羽会長が答申されたものでありますけれども、私は、この個別の話に入る前に、そもそも総務大臣はどういう分権社会というものを目指しておられるのか、最終ゴールですね、そこを議論しないと三位一体と同じようになるわけですよ。最終ゴールが決まっていないのに、何か知らないけれども分権だ分権だということで、ゆがんだ形で分権をしたようになるということで、私は、ですから、ベクトルがしっかりと分権の方向、最終ゴールに向いているかどうかということが極めて大事だと思うんです。

 総務大臣が地方分権を担当でいらっしゃいますけれども、今二つの大きな議論があると思うんです。道州制という議論、それから、基礎自治体というものに基本的には権限や財源を任せていくという議論。大まかに言えば、道州制にしても、いろいろな形の道州制、かたい道州制あるいは緩やかな道州制、言葉をかえて言えば広域連合のような道州制、こういった二つの流れがあるんですけれども、今の麻生内閣というか総務大臣が今担当されている分権について言えば、最終ゴールはどういう分権像を目指しておられるんですか。

鳩山国務大臣 日常的には、地方分権改革推進委員会の二次勧告が出先機関のことについて整理するということで、出先機関の改革というのは、実は、国と地方の役割分担の話とほとんどイコールだと思うんですね。つまり、直轄国道とか一級河川の範囲をどうするかということとつながってくるので、そういう議論が多いわけですけれども、今の前原委員のお話で言うならば、私は、やはり道州制というものをにらんだ形で地方分権改革を進めていかなければいけないのではないか。つまり、この先に道州制というものを、これは憲法改正とも絡むからそう簡単なことでないのはわかるんですけれども、道州制というものを見詰めていきたい。道州になれば、それは相当なものを移せるわけですから、それが本当の地方分権というものではないかと思います。

 ただ、私は、今前原委員はやわらかいとかかたいという表現を使ったけれども、道州制といっても、アメリカ合衆国的なものは余り考えたくないんですね。それぞれが国に近いような形という見方もあるでしょうけれども、やはり日本という国は一つであって、個性のある道州が幾つかあるという形にしたい。

 それは、例えば川勝平太さんが、正確に覚えていませんけれども、森の国とか山の国とか海の国とか、昔のディズニーランドの分け方みたいなことをおっしゃっていますけれども、概念としては一つの考え方であって、例えば北海道だ、東北だと、まるで選挙区のブロックみたいなものを所与のものとして考える必要はないのではないか、そう思っております。

 ただ、もう一つだけ言わせていただきたいのは、私は、日本の国の特徴は風土というものを重んじる、つまり、和辻哲郎さんの風土論が生まれて生きている国だと思うのです。ですから、今先生のおっしゃった基礎的自治体ということであるならば、基礎的自治体が市町村と考えるとしますが、その市町村は全部それぞれの風土に根差して、人の心も違う、幸せ観も違う、そういうものが千八百あるというふうに考えたい、そういうものがこれからも息づいていくような日本の国を考えたい。

 悪口を言うわけじゃありませんけれども、アメリカへ行くと、どこの町並みも似ていますよね、ガソリンスタンドがあったりモーテルがあったり。そうじゃなくて、日本はやはり和辻哲学の生きる国として将来もあり続けるべきだと思います。

前原委員 委員会のやりとりじゃなかったら、総務大臣の話は大変興味深くておもしろいんですが、答弁は短くしていただけますか。お願いいたします。

 この分権の話ですけれども、では分権をやる意味というのは一体何なんだろうということをやはり考えるべきだと思うんです。

 では、私の方からちょっと申し上げますので、同意されるかどうか、短く御答弁いただけますか。

 私は、分権の意味というのは四つあると思っているんですよ。

 一つは、まさに今大臣がおっしゃったように、多重行政、いわゆる多層的な行政機構を正すことによって、行政の無駄あるいは問題解決のスピードアップにつなげていくということ。つまりは、私は、究極の行政改革は分権だと思っているんです。これが一つ。

 二つ目は、いわゆる地域に権限、財源を与えることによって、まさに補助金行政からの脱却で、補助金行政というのは、まさに今大臣がおっしゃったように、アメリカはどこも同じかどうかわかりませんが、日本も地方都市のJRの駅をおりたら大体同じような風景が広がっていますね。また、補助金というものは、例えば昔なんかは、児童公園だったら滑り台とブランコと砂場がなかったら補助金が出なかったとか、そういうことはあります。つまりは、かなり国の統制というものが強くなってしまって創意工夫が発揮されない、そのことによって地域の潜在力がふたをされたままであって、地域の独自性とか、あるいは創意工夫が生かされない仕組みになっている。潜在力のふたをあけるというのが二つ目。

 三つ目は、やはり地域に権限、財源を与えることによって、公の仕事を別に行政がすべてやる必要はないんですよ、これは今でもそうですけれども。つまりは、行政がやることと、あるいはボランティア、あるいは、先ほどの公益法人の話じゃないですけれども、民間がやることで地域によっていわゆる公の線引きを変えていく。特に、これから少子高齢化社会ですから、六十歳あるいはそれ以上の方が定年退職を迎えて、今の六十歳の方というのは非常にお元気ですよ、その方々が地域に帰って何もしないというのは悲劇ですよ。だから、その公の仕事を半分以上ボランティアで引き受けていただいて、サービスが高くて、しかし非常にコストがかからないような行政サービスをやるような仕組みを分権社会でやっていくということ。

 あと四つ目は、最後は、これは地方の箇所づけとか細かなところまで口を出すことが国の仕事じゃないですね。国がやるべきことは、外交、安全保障、マクロ経済政策、あるいは国の根幹にかかわること、これに限定をして、そういう国家戦略のもとに立っての国の運営ができるような仕組みをつくっていく。そのためにも、地方にできるだけ権限や財源を与えていく。

 この四つが私は分権の大きな意味だと思いますし、それを本気にやっていけるかどうか、これは霞が関の解体にもつながりますから、本当にやれるかどうかが問題だと思うんですが、これについては賛同されますか。

鳩山国務大臣 一番目の二重行政とか多重行政、これは全くそのとおりだと思います。

 二番目の地域の創意工夫が生きるというのも、全くそのとおりだと思います。

 三番目のは、概念として完全にとらえられたかどうかわかりませんが、そういう理想的な地域社会があったらいいなと思います。

 四番目は、全く私の考え方と同じで、基本的には同じでございます。

前原委員 そして、今おっしゃったことでいうと、では、本題に入りますが、出先機関の見直し、これは果たして行政のスリム化に本当につながるのかということなんです。私はつながらないと思っています。

 例えば、経済産業省、国土交通省、農水省といういろいろなものがあって、今は省庁の縦割りだけれども、それを地方ごとに統合していくという話で、大臣のおっしゃる意味での道州についてはイメージが近いのかもしれません、その道州ということについて言えば。

 しかし、我々民主党は、基礎自治体というものにできるだけ権限、財源を与えて、そして広域にわたるものについては、それは道州や広域連合でやっていきましょうと。つまり、先ほど国道とか河川とおっしゃいましたけれども、河川も、今の県で完結する河川もあれば、私は京都ですけれども、淀川水系というものでいえば、大阪、滋賀、そして我が京都、一部三重県、こういったところが共同してやっていかなくてはいけませんねということで、淀川水系の水の使い方とか、あるいは治水、こういうものについては広域行政でやっていかなきゃいけない。だけれども、基礎自治体でやれるものについては徹底的に基礎自治体でやっていくというのが我々民主党の考え方なんです。つまりは、道州制はあってもいいけれども、道州という箱に入れるものはできるだけ少ない方がいいですねというのが我々の考え方なんです。

 言葉をかえて言うと、いい道州制と悪い道州制があって、悪い道州制というのは、今の中央集権体制をそのまま細切れにしてミニ中央集権を道州ごとにつくってしまうというやり方。

 私は、この出先機関の見直しは悪い道州制につながっていくんじゃないかと思いますが、いかがですか。

鳩山国務大臣 基本的な前原理論は、私はむしろ賛成できる部分があるわけです。

 つまり、基礎的自治体を信頼する、まさに定額給付金はそうやって配るわけでございますけれども、基礎的自治体を信頼して、できればその基礎的自治体がみんな個性豊かに。私は、この間ちょっと地方で講演したときに、もう無理な町村合併、市町村合併はしない方がいいということを言ったんです、全く風土が違うものをくっつけていくことは。だから、そういう意味ではよろしいんですが、中央集権にしたものを道州で割っていく、そういう感覚は私はよくないと正直思います。

 ですが、この地方分権改革、出先機関の見直しの問題について言えば、これは私の心の中にもいろいろな考え方が浮かぶんです。

 私は一切うそをつけないタイプですから、正直に申し上げると、若いころは、若いころというか数年前ぐらいまでは、昔から道州制論者だったんです。道州制論者だったんですが、一気に行ったらどうだろうと。一気に行く、これが究極の行政改革だ、こう思っておったんですが、今では、これができないようであっては道州制はとてもできないなというふうに考え方が大分シフトしてきているんです。

 だから、まずこれをやって、その勢いに乗って道州制へと。ここでとまってしまったら、正直言って意味が半減すると思います。

前原委員 私は、今の御答弁は非常にいい御答弁だと思います。

 言った言わないの話になると不毛ですので、述べるだけにとどめますが、麻生総理も、初めはこれは廃止、地方整備局とかは廃止も含めて検討しろということをおっしゃったわけですよね。だけれども、それが最終的には統合というところに逃げ込んだわけで、結果的には、この出先機関の見直しは、先ほど申し上げた悪い方の道州に近寄った仕組みになってしまうと。

 ですから、今大臣がおっしゃったように、これは一里塚であって、これから先、いわゆるこの統合したものも含めてなくしていく、あるいは基礎自治体に任せられるものについては任せていくという一里塚だったらまだいいんですよ、それはこの人たちの雇用もありますから。あるいは、受け皿の地方自治体が一挙に受けられるかどうかわからない。今おっしゃったような、本当にこれが一里塚なら、私はそれはありだと思いますよ。

 これは本当にその先のことまで、最初は地方整備局や地方農政局を含めて廃止でいこうというふうなことを言われたけれども、いろいろな意見が出てきて、またぶれて、そしてこういう形になってきた。総務大臣がぶれたというんじゃないですよ。おたくのトップがぶれたという話をしているわけですから。

 そういう意味においては、今おっしゃったように、これは通過点であって、この先にさらなる基礎自治体に対する権限移譲をやっていくんだということですか。

鳩山国務大臣 廃止という言葉は、丹羽委員長は非常によく使われるんです。私もよく使ってしまうのですが、例えば地方整備局はこれでもう廃止なんです、地方整備局という名前、組織はなくなるんですから。

 ですから、問題は、そこに残る地方振興局や工務局ができるだけ小さなスリムなものでなければいけない、その理念を徹底することが大事だろう。

 つまり、地方振興局や工務局がばかでかいもので、結局統合ではないかというような実態だったら、何の地方分権にもならないし、出先機関の見直しにもならない、私はそう思っておりますので、この右側ができるだけスリムになることをこれから勝負してやらなくちゃならぬな、こう思っております。

前原委員 総務大臣、確認ですが、これは通過点で、この右側をさらにスリム化していくことをやっていく、こういうことでよろしいですね、認識は。

鳩山国務大臣 当然そういうことだと思います。

 それから、ちょっと余計なことを言っていいですか。前の課題。ありましたね、先ほど公益法人の。

 私は、先生のお話を聞いていて、非常にいいお話だし、そういう方向であるべきだと思います。ただ、民間というのは全部正しいという前提でいくと、民間といろいろな公的なものとの微妙な関係の中で民間が妙な得をするというのがあのかんぽの宿の問題の本質だと思いますので、まあ、このことはこれでいいんですけれども、民間は全部正しいという理屈は私は持たないんです。

前原委員 いや、だれもそんなことは言っていないわけであって、何でかんぽの宿がここで入ってくるのかよくわかりませんが。

 要は、でも、民間にやらせるときに、その民間の行動規範というか、そういうものを決めるのが法律であり規則じゃないですか。そういうものがきっちりしていたら、民間に任せたらいいんですよ。そんな、問題を逆方向にするようには言わないようにお願いしますよ。

 これについては、これは一里塚で、さらにスリム化をするということで、最終ゴールはまた議論していったらいいと思いますけれども、その認識を聞けただけで私は前進だと思います。

 さて、経産大臣、時間がなくなってきたので、財務大臣にもお話を伺いたいものですから、一つだけちょっと質問させていただきます。

 この間、メタンハイドレートのことは以前は危なっかしくて口にもできなかったけれども、このごろは堂々と口に出せるようになりましたということをおっしゃいました。

 私は、海洋基本法、努力をした一人でありますし、今、自民党や公明党、民主党でやっている海洋基本計画のフォローアップチームの民主党の責任者をさせていただいているんですが、ぜひメタンハイドレートというのは進めていきたい、あるいは海底熱水鉱床の開発というのは進めていきたいというふうに思っているわけです。

 そこで、時間がありませんので一点だけお聞きをしたいんです。

 メタンハイドレートのMH21、フェーズ1、これは終わりますね。フェーズ2に入っていこうとしているわけでありますが、南海のいわゆるメタンハイドレートの開発にかなり重きが置かれていると思うんです。ただ、「資源」という探査船もできまして、これは二階経産大臣のお耳にも入っていると思うんですけれども、日本海とかあるいは三陸沖の海底にむき出しになったメタンハイドレートというのが発見されているんですね。

 つまりは、南海のいわゆる地層の割れ目にあるものはかなり奥深いものですけれども、日本海とかあるいは三陸については、どれぐらい全体の埋蔵量があるかわかりません、それはこれから調べていかなくてはいけませんけれども、現在でも、今推定されるだけでも十三年分ぐらいの、いわゆるメタンハイドレートというのは要は天然ガスと一緒ですよね、だから、それが要は、十三年分ぐらいあるということは、さらに見つかっていけば大きなものになっていくということですので、余り南海のみに、もちろん南海は中心でいいんですよ、ただ、むき出しになっているものは、恐らく開発費用というのは物すごく低価格で済むと私は思うんです。

 一部の方々は魚群探知機で、メタンハイドレートが、いわゆる塊が、圧力と温度が低いことによって固体になっているわけですけれども、むき出しになっているものは若干それが気化しているんですね、魚群探知機に映って、メタンハイドレートがどこにあるか、魚群探知機でさえわかる。

 ですから、ぜひ日本海や三陸沖の、フェーズ2には南海のみならずそういったところも含めて日本全体のメタンハイドレートを、まさにこれから日本の大切な資源として、これがしっかり開発できれば、ひょっとしたら日本は資源小国じゃないかもしれない。そういう意味では、かなり広い範囲でフェーズ2ではメタンハイドレートの開発をしていただきたいと思いますが、大臣の御所見を伺いたいと思います。

二階国務大臣 メタンハイドレートに対しまして大変御熱意をいただき、感謝をいたします。

 私どもも、資源小国、資源のない国というのは、お互いに小さいころからそういうふうに言い伝えられておるわけでありますが、そんなことばかり言っておるだけでは経済産業省の役割は果たせない。我々は、必ず新たな資源を見出していかなくてはならない。そういう意味で、メタンハイドレートにも積極的に挑戦をしようとしておるところであります。

 そこで、今御指摘のような、日本全国にメタンハイドレートが存在しているのではないかというようなことを、今学者の皆さんでもいろいろ御提言いただく場合があります。御指摘の南海、熊野灘なんかのメタンハイドレートも、一説によると日本のエネルギーの百年分埋蔵されておる、しかし、別の学者によりますと、二百年分あるんだ、こういうことで、このごろは中をとって百五十年というようなことを言っておりますが、いずれにしても、我々が想像及ばないほどのエネルギーが存在していることはほぼ想像できるというところまで来ております。

 ですから、今前原議員御指摘の、もっと容易に、もっと簡単に、低価格で取り出せるところに存在しているのではないかという点につきまして、我々は新たに、ぜひ、夢で終わらせることなく、実際に日本のエネルギーの大きな役割を果たせるようにしたいというふうに思っております。

 そこで、私は、メタンハイドレートというようなことをいろいろなところで申し上げると、みんなうなずいてくれるんですが、それではごらんになったことはありますかといって聞くと、余りごらんいただいているような気配はありませんので、前々から申し上げております新エネルギーパーク等においてメタンハイドレートを実際にいろいろな皆さんに見ていただくということが大事だと思って、今やっております。そして、多くの皆さんの御理解をいただいて、国民的な合意のもとに、我々の将来のエネルギー源としてこれを採用できるようにしていきたいと思っております。

 先般、試しといっては大変失礼でございますが、中東の六カ国の大使の皆さんに、このメタンハイドレートを見ていただきました。つまり、日本もただ高い石油を買い求めるということに右往左往しているだけではなくて、我々自身が新しいエネルギー源の追求に対してこんなに真剣に取り組んでいるんですよということを中東の皆さんにも知っていただくことが大事だと思って、資源外交上、そういうことを申し上げましたが、関係者の皆さんは大変、日本がここまでやっているんですかと。

 この間、ロンドンのエネルギー会合におきまして、カタールの副首相が、今度日本へ行ったときにはメタンハイドレートを見せていただきたい、こういうことでございますから、場合によっては一緒に研究できるようなことを考えてもいいんじゃないかと思っております。

前原委員 メタンハイドレートについては、私も映像でしかまだ見たことはありません。しかし、容易に取り出せるものですし、全般的にフェーズ2では、今の熊野灘は大臣の御地元の近くでありますが、そこのみならず、日本全体をしっかりと開発するということで、入れていただきたいと思います。

 最後に、ちょっと時間がなくなってしまいましたが、経済の問題を若干話をさせていただきたいと思います。

 責任のあるお立場として、財務大臣、きょういろいろな資料、数字用資料、すべてが、アメリカもEUも、それからアジアも日本も、いわゆる景況感指数、あるいは生産、消費が直滑降に落ちているような状況であります。これからまさに本番だろうというふうに私は思うわけです。大臣は御答弁はいいですよ。大臣がおっしゃると株価に影響しますから、これは結構です。

 ただ、私が、今の景気の悪さというのは山登りに例えると二合目から三合目じゃないかという話を、この間、あるアメリカの学者、経済の研究者の方と話をしたら、その方が驚くことを言ったわけですよ。いや、まだ五%から八%じゃないか、一合目にも行っていませんよ、こういうような話をされていて、背筋が凍る思いをしたわけです。

 二つ考えていかなくてはいけないんだろうと思います。

 一つは、すべての経済が冷え込んでいる中で、やはり需要をどう公的部門が喚起していくかというところでの思い切った施策というものが必要であるということと、それから、今の政府の雇用対策では私は生ぬるいというふうに思うんです。

 思い切って、税金を使ってでも雇用対策をやるというのであれば、連合さんが百八十万人という雇用計画をおっしゃっているんです、三年に区切って百八十万人。では、例えば、年間平均で二百万円ずつその百八十万人の人を政府が雇用する。そして、職業訓練、例えば医療や介護や農業、漁業、林業、あるいは英語とかITとか、そういったものをそういった方々に対して実践で、しかし職業訓練しながら時限的に国が直接雇用して、それを百八十万やったとしても、年間かかるお金というのはたかが三・六兆円ですよね。(発言する者あり)いや、たかがですよ。僕は、この総需要政策で国がやらなきゃいけないのは、プラスして三十兆でも少ないんじゃないかと思うぐらいですね。今うなずいておられますけれども。

 つまりは、思い切ったいわゆる財政出動と同時に、今のような雇用対策を一遍リセットして、思い切った、そういう日本の弱い分野あるいは人の足りない分野、これを国がむしろ直接雇用して、そして育て上げていくぐらいのことが私は必要だと思いますけれども、財務大臣の御所見を伺いたいと思います。

与謝野国務大臣 それは前原先生のおっしゃるとおりでございまして、今の雇用対策と言われているものは、失業された方に対する対策、これがすぐイメージとしてわいてくるんですけれども、やはりレベルアップをして次の段階に進めるようにきちんとしなきゃいけませんし、また、そのレベルアップしている期間の生活をどうするか、こういう問題もやはり国の仕事として私はやってもいいのではないかと。そうしませんと、ただ地方に雇用創出しろといって、比較的易しくお金を使ってしまうという可能性があって、スキルアップとかそういうことをきちんとやった上での雇用対策ということを考えないと、やはり社会全体としてのレベルは上がっていかない。

 この予算が上がりますと、いろいろな経済論議、景気論議というのが出てくると思うわけでございまして、連合にも御提言いただきたいと思いますし、また、民主党もぜひいろいろなすばらしい知恵を発表していただきたい、私は心の底からそういうふうに思っております。ありがとうございます。

前原委員 終わります。

衛藤委員長 これにて前原誠司君の質疑は終了いたしました。

 次に、筒井信隆君。

筒井委員 民主党の筒井信隆でございます。

 きょうは、地球温暖化対策の問題を中心にお聞きする予定でございますが、最初に農水大臣に、前回の続きと、農水省の地球温暖化関連の問題について、幾つか確認をしたいと思います。

 石破大臣は、最近、ある雑誌でこういうふうなことを言われております。この前の参議院選挙でもって、自民党は品目横断的経営安定対策を出した、それに対して、民主党は農業者戸別所得補償制度、これを出した、その結果、自民党は惨敗をした、こういうことを認めているわけでございます。

 そこで言われているように、今、民主党の所得補償制度に対する支持はずっと一貫して高い、自民党の補助金行政といいますか経営安定対策に対して圧倒的に勝っている、こういう状況でございまして、それは石破大臣も認めておられるんです。

 ただ、それに頭にきているのかどうか知りませんが、その雑誌でこういう批判を民主党の所得補償政策についてしております。今はいいかもしれないけれども、十年先、二十年先に展望のない政策だということが一つ、それと、WTOでは完全に容認されない、日本だけにとっていい政策なんだという、二つの批判をしております。

 まず、その一つ目。今だけいいんだという政策なんだという理由はどこにあるんですか。どういう趣旨からそういう発言をされたんですか。

石破国務大臣 民主党のNCの農政の責任者であります先生から御質問をいただきました。

 これはまた農林水産委員会等々で子細に議論をしたいと思っておりますが、要は、消費者の意向というものをどのように反映するかということについて議論をさせていただきたいと思っておるわけです。

 もちろん、民主党の法案にもそのことは書いてございますが、要は、米はこれだけですよ、麦はこれだけですよ、大豆はこれだけですよ、トウモロコシはこれだけですよと、生産調整とかどういう言い方をするかは別にいたしまして、やはりこれだけの生産目標というものをすべて設定するというやり方が消費者の需要というものといかにマッチをするかということなんだろうと私は思っております。すべてのものについて生産目標を設定するというやり方が本当に産業としてどんなものなのだろうかということ。やる気のある人に資金なり、そしてまた農地なりというものが集積するということも考えていかねばならぬだろう。

 そして、できたものをどう売るか。あるいはできたものに対してどう補償するかという考え方も大事ですが、売れるものをどうつくっていくかということを考えていかないと、産業としてはいかがなものかというふうに考えております。

 もちろん、御党の中に、需要というものをすべて無視したということを私は申し上げているわけではありません。ただ、そこのところのアクセントのつけ方の問題というのがあるのではないかというふうに思っております。

 すべてのものに生産目標を設定するというやり方について、私として、将来的にいかがなものかというふうに考えておる次第でございます。

筒井委員 まさに、主食米について、今の消費量が八百万トンぐらい、以前の二分の一に下がっている。しかし、水田全部でそのまま主食米をつくったら一千二百万トンを超える。需給がアンバランスですから、現在の消費の量に需給調整をする、こういう中身に主食米はなっているわけでございます。

 そして、また同時に、主食米以外の小麦とか米粉とか大豆とか、これらに関しては、今物すごい大量に輸入されているわけでございますから、その輸入の食品に関する消費者の不安感というのは高いわけですから、それらについては、上限設定ではなくて、どんどん国内で自給をしていく、生産をしていく。

 そういう制度ですから、主食米に関しても主食米以外に関しても、まさに消費者の視点で考えられているものでございまして、将来的に、主食米について、今よりも消費量が上がっていくならば、先ほどの米粉とか小麦と同じような扱いになる可能性もあるわけでございまして、しかし、それに関してもきちんと対応できる制度になっている。これがどうして、今だけいいんで、十年先、二十年先がだめなんだということになるのか、全く今の説明じゃわからないじゃないですか。

 民主党の所得補償の仕組みについて、まさに厳密に検討しないでそういうことを言われたのではないですか。もう一回答えてください。

石破国務大臣 そのために国会の議論の場があるわけで、先生がおっしゃいますように十分理解をしておらないのだということであれば、また委員会の場を通じて議論させていただきたいと思います。

 私はその場に居合わせたわけではないので存じませんが、まさしくあの法案を発表されましたときに、これには実施法が伴わねばならないのだということを提案者の方も記者会見でおっしゃっておられます。すなわち、あれを実現するためにどのような実施法を伴うのか。あれが理念法だけだとは申しませんが、実施法を伴っているものだというふうには思っておりませんし、それは提案者もおっしゃっておられることでございます。ですから、これを実際に動かしていくとどうなるのかということは、実施法のイメージみたいなもの、これもあわせて農林水産委員会で議論をさせていただきたいと思っております。

 そして、自給率を設定する、これを法定するということが果たしてあり得るのか。これを法定した場合に、私はいつも申し上げているんですが、自給率というものは、それは法定をすべきものと私どもの方で目標とするというものは、またそこに大きな差があるんだと思っております。

 自給率というものは消費者の選択によっていかようにも変わるものでございますので、自給率自体を法定するということは、それ自体が自己目的となるということに対して私は危惧を持っておるものでございます。

筒井委員 先ほど私が申し上げた点に関しても、まさに今、事実上認められたと思いますが、農水委員会の中で具体的に、もっと私の方でも説明してもよろしいですし、議論していきます。まさに民主党の所得補償制度の仕組みを完全に理解されないでああいう発言をされたことははっきりしていると思う。

 それから、今さらに自給率の法定ということを言われましたが、自給率の法定なんか全くしておりませんよ。私たちが出しているのは、自給率の向上、十年先に五〇%を目指す、そのさらに十年先に六〇%を目指す、さらに将来的には完全自給を目指す、こういう方向性を出しているのであって、これは自給率の法定というんですか。

石破国務大臣 法律に、目指すと言おうが何しようが、数字というものを書き込むということは、それを目標として政策が動くということだと思っております。

 私は、自給率を法律に書き込むということについてまた議論をさせていただきたいと思っておりますが、私は本当に、委員も御案内のとおり、昭和三十年ぐらいと今と日本人が摂取するカロリー量が変わったのかといえば、実は変わっていない、ほとんど変わっていない。問題は、おっしゃいますように、それが米中心から畜産物あるいは油脂類にシフトをしてきたというところにございます。

 私どもとしては、必要なのは、農地であり、農業者であり、その構成年齢であり、そして農業所得、人、金、物というものについてどうやって持続可能性を維持するのかということが極めて大事であると思っております。自給率を上げるということについて異論を唱えているわけではございませんが、そのことが自己目的になった場合に政策として倒錯を起こさないかということを危惧しているのでございます。

筒井委員 今のも意味不明ですね。

 政府は、政府の目標として十年以内に五〇%ということを挙げているでしょう。それを、こちらはその五〇%という数字を具体的に目標として挙げていることが何か倒錯を起こすんですか、やはりそれも。

石破国務大臣 そういうことになる危険性なしとしないということを申し上げたのであって、それは倒錯を起こすと断定をしたというふうに聞かれたとしたら、そこは訂正をいたします。

 問題は、本当にそれが十年先、二十年先、持続可能性を持つものなのかどうかということでありまして、それが今、筒井委員も注意深くおっしゃいましたが、米に限らずほかのもの、つまり畜産物まで含めて生産目標を設定するということがあの法案の特色の一つではないかというふうに考えております。

 米に限らず果物もそうだ、主要作物というふうに書いてありましたから、どこまでカバーエリアとしておられるのか私には判然といたしませんが、そういういろいろなものについて生産目標というものをあらかじめ設定するというやり方が、私としては、正しいのかどうかということを申し上げている。

 そして、農業者それぞれの創意工夫というものがどのように生かされるかということを最大限引き出すために、どういうようなやり方があるかということを今後議論させていただきたいと思っております。

筒井委員 議論するのは構わないんですが、よくわからないうちに、将来展望がない政策だなんて断定はしないでいただきたい。

 先ほど私申し上げましたが、今の状況の中で、米が過剰ぎみの中で、米に関する、主食米に関しての需給調整をしているんですよ。それ以外のものに関しては、まさに国内での生産を上げるために上限設定はしない、そういう形でやっていくわけですから、主食米に関する需給の状況が変わったら、それに変わった形で応ずることができる仕組みになっているわけですから、何の問題もない。将来においてもずっと持続的にやっていく。

 それどころか、今の政府の方が、よくそんなこと言えると思いますよ。

 私たちは、そういう継続的な、持続可能な農業をやるためにもこういう政策をしなければいけないということを言っているわけです。

 だけれども、政府は今、何ですか、燃費が上がった、生産費が上がった、これに対して、その都度その都度物すごい大議論をして補助金を出しているでしょう。猫の目農政ですよ。それで、米価が下がった、そうしたら、そのときそのとき議論をして、米の買い上げをして価格支持政策をやっているでしょう。政府の方が、全く、今だけいいなら、今起こった問題だけを補助金をばらまいて解決する、そういう政策で、将来展望が全くない政策じゃないですか。

 それを、正反対の民主党の政策について、よくそういうことが言えるなということだと思います。

 それと、今もう一つ言われましたが、生産数量目標を設定すること自体がおかしいんだという発言でございましたけれども、では、今の農水省は生産数量目標は設定していないんですか。それが間違いだとすれば、まさか設定しているなんて言わないでしょうね。今、農水省は、米を含めて生産数量目標を設定していませんか。

石破国務大臣 ですから、そういうものを全部見直していく、少なくとも再検討することは必要。つまり、政府の政策がすべて正しいとするならば、農政のすべてにわたっての見直し、検証などということは必要がない。私自身、委員が冒頭御指摘になりましたように、一昨年の選挙で支持されなかったということは真摯にきちんと受けとめなければいけない、そのことはよくわかっております。

 そのときに、すべてのものに私どもは生産目標を設定しているわけではございません。米は確かに需給調整を行っております、生産調整を行っております。しかしながら、その制度についていろいろな指摘があることも事実でございますので、私は、政府の今までやってきたことが無謬だということを申し上げておるわけではございません。

 ただ、正反対の民主党の政策というふうにまさしくおっしゃいました。それが正反対であるがゆえにすべて正しいのかといえば、それはそうではないのだろうと思っております。

 ですから、そのこと一つ一つは検証しなきゃいけませんし、これは当たるも八卦当たらぬも八卦というわけにはまいりませんので、すべてのシミュレーションをやった上で、こうなったらどうなる、こうなったらどうなるという議論は、きちんと精緻にしていかねばならないものだというふうに思っておるところでございます。

筒井委員 私は、だから、今の農水大臣の発言として驚いたから聞いているんですよ。生産数量の目標を設定すること自体が間違いだと、あれほど断定して民主党の政策を批判したから。

 だから、政府は今、今答弁でも事実上認めましたが、米に関して生産数量目標を設定しておりますね。それだけ。あとはいいですから。

石破国務大臣 生産調整を行っておるというところでございます。

筒井委員 だから、生産調整ですから、生産数量目標を設定しているじゃないですか。自分たちがやっているのは正しいけれども、民主党がやるのは完全な間違いだという……。

 あるの、どうぞ。

石破国務大臣 すべてにわたって、どこまで民主党さんの法案が予定をしておられるのか存じません。それは、米が主食であり、そしてまた、米というものをきちんと自給するという体制は我が国にとって必要なことである。ですから、米というものとほかのものを分けた形で政策の体系があるわけでございます。

 ほかのものに対してすべてに生産目標というものを設定しておられるということがあの法案の特色であって、その場合の日本農業の姿はどうなるのだろうかということを申し上げているのです。

筒井委員 全く、だから民主党の政策をきちんと理解しないで言われている。

 先ほど私も強調しましたが、主食米に関してだけ生産数量目標は上限設定という意味がある。これはやはり需給調整が必要ですから、それ以上はつくらない、そういう生産数量目標に従う農家に所得補償を補てんすると言っているんです。

 それ以外の小麦とか何かに関しては、これは今だって農水省も転作奨励金を出したりなんかしているわけですよ。それに関しては上限設定として意味はない。しかし、なるべくそういうものをつくってほしいわけですから、そういうものをこのぐらいつくる、このぐらいつくる、そういうものは政府も出してもらっているでしょう。それでなかったら、大体補助金の予算がつかないですから。

 だから、その点では同じなんですよ。ただ、その仕組みが違うんですよ。今の生産数量目標の設定に関して言えば一緒でしょう。それを一緒じゃないと思っていたこと自体が、大体民主党の政策についての先入観なんです。

 ただ、私、きょうはこれだけで時間を終わらせるつもりはないものですから、そのことだけ申し上げておいて、もう一つの批判。WTOでは完全に容認されない、こういう発言もありました。

 しかし、この所得補償制度というのは日本はまだ全然やっていないんですよ。大体自民党は補助金行政ですから、農水省一係に一つの補助金みたいな形で何十項目にもわたる補助金……(発言する者あり)何百項目、その補助金の仕組みもわけがわからないんですよ。

 私が畜産関係の補助金とか何か説明を聞いたりなんかするんですが、あれはプロでさえなかなか理解できない補助金の仕組みですよ。あんな補助金を物すごくいっぱいつくって、これはやはり族議員が自分の権限を示すためのものでもあるし、農水省の官僚はそこで必要なんだということを示すという意味もあるし、それで票をとるという、この補助金つけたよと……(発言する者あり)適切なやじですから、今のやじはみんな正しいやじでございまして。しかも、そういうものが継続的であるだけではなくて、今度の定額給付金のように、一年限り、一回限りのばらまきの補助金がいっぱいあるんですよ。わけがわからないんですよ。

 だから、日本の農家の補助金の絶対額というのは、特にヨーロッパと比べたら圧倒的に少ない。十分の一以下なんですよ。だけれども、消費者から見たら、農業は補助金漬けになっている、こういうイメージがあるんですよ。だから、それはそういうふうな今の補助金行政にあるんです。

 それを、ヨーロッパとか欧米、EUやアメリカは所得補償制度を確固として打ち立てているわけですよ。特に、EUはその所得補償制度が明確になっている。これは、我が民主党は、まさにその所得補償制度に一本化する、補助金を原則なくす、全部所得補償制度に一本化をして、そしてわかりやすくして消費者の理解を得る。

 では、この所得補償を何で一次産業にだけ出すんだといったら、まさにこの前の質疑でも言った多面的機能ですよ。多面的機能に関しては、一次産業は無償で国民にサービスを提供している、この金額が何十兆円に及ぶ物すごい金額。このほんの一部の対価として所得補償するんだ、そのことを明確に消費者の皆さんに理解を求めていかなければいけない。

 だけれども、今多くの消費者が完全に理解しているかというと、今の補助金行政は複雑でわかりにくいですから、農業だけ何で補助金漬けになっているんだ、こういう間違った誤解があるんですよ。だから、所得補償制度に一貫する。

 それで、これはEUもアメリカも確立していますから、WTOでは、緑あるいは青の政策として、こういう主張をEUもアメリカもやっているでしょう。私たちも、この所得補償制度は緑の政策である、少なくとも青の政策である。それを、WTOで容認されないというのは、緑あるいは青じゃないと考えているんですか、石破大臣は。

 それと同時に、もう一回時間の関係で言っておきますが、もしも黄色の政策であって削減対象だとしても、もちろん石破大臣は御存じですが、AMSという制度があって、一定の黄色の政策は削減するんだけれども、しかし一定限度までは容認されている。日本の場合三兆円ありますから、そのうち、今黄色の政策として認定されているのは七千億ですから、まだ枠が二兆三千億あるんですよ。もし最悪黄色の政策だったとしても、そのAMSの限度額の範囲内ですから、WTO上何の問題ないでしょう。どうしてWTO上容認されないなんという間違った発言をされたんですか。

石破国務大臣 農業予算の組み方については、本当に議論をさせていただきたいと思っております。補助金のあり方もそうです。私は今のやり方がすべて正しいと思っているわけではございません。

 補助金の体系も、おっしゃるように、プロでもわからぬ、何が何だかさっぱりわからぬというものが余りに多くて、これは相当に整理をしなければいけないということで、今プロジェクトを進めております。補助金はやはり整理統合していかなければいけないし、補助金ありきで、それに伴ってお役人がおったり政治家がおったり、それは本末転倒というのであって、それは思い切って見直していかねばならぬ、そうだと思います。そこは同意します。

 そしてもう一つは、農業予算の組み方として、確かに、私もアメリカあるいはEUと日本の農業予算の組み方の比較というものはずっと勉強しておるところですが、公共事業がやたらと多いということはそのとおりでございます。(発言する者あり)それで結構です。農業土木が多いということだと思います。その農業土木なるものが一体いかに必要なものなのかということについての挙証責任は私どもにありますので、日本の農業予算の組み方というのが他国と比べて非常にユニークなものであることは事実です。その農業土木がこれだけ予算があるということが正しいのだという挙証責任は、私どもにあるということだと思っております。よく認識をいたしております。

 EUのやり方、あるいはアメリカのやり方という御指摘がありました。その場合に、私はきのうもラミー事務局長と夜いろいろな議論をしておったのでありますが、それでは輸出補助金なるものをどのように考えていくのかということの議論はあるのだろうと思っております。フランスの農業も、あそこまでいきましたのは、相当の輸出補助金をつけてきたからだということがございます。ですから、EUの政策をそのまま日本に持ち込むということがいかがなものかという議論はしなければいけません。

 その中で、直接支払いというものがどこまで、つまり、いかなるものの対価としてこれを払うのかということ、そしてそれが納税者の理解が得られるのかということについては、私は、納税者負担型へのシフトということは本当に考えていかねばならないことだと思っております。ですから、私は委員とそんなに認識が違うと思っておりません。

 ただ、日本の場合に、個人に払われるというよりは集落に払われるという形もとっております。条件不利地域などはそうですね。そのときに、日本の水田営農というものの形態をどう考えていくか。一人一人に対して払うというのと、集落を維持する、すなわち一人が違う考えを起こせば集落自体が維持できないという水田営農の特性というものをどう考えるかということなのだと思います。そこは中山間地で、委員は新潟でいらっしゃいますから、都会の選挙区の方と違って、本当に、地方において水田の営農というものはどういう役割を果たしているか、集落というものはどういう役割を果たしておるかということは、よく御案内のことだと思っております。

 ですから、そこにおいて、だれにどのようなお金の支払い方をするかということは、EUと、そして日本と、全くそのまま用いるということについては相当の議論があるところだというふうに承知をいたしております。ですから、認識は全く違うというわけではございません。

 青か黄色かということについてでございますが、これが仮に、民主党のおっしゃっておられることが、毎年の生産実績に応じて生産費と市場価格の差額を払うというものであるとするならば、これは不足払いに当たるということは議論の余地がないと思っております、仮にそういうものでありとせばですね。でも、それは削減対象なのであって、いいじゃないかということだと思いますが、では、それをずっと続けることができるだろうか、あるいは、WTOのパネルの場で何か提起された場合に、これをどうやって、十年先、二十年先も続くものだということを国内に向けて説明するかということだと思っております。

 ですから、今申し上げましたように、毎年の生産実績に応じて云々かんぬんということであるのかどうなのか、それが削減対象なのかどうなのか、そして、それが十年も二十年も続く政策たり得るかということだと私は考えております。

筒井委員 今、大分、問題をいろいろずらしましたけれども、まず、輸出補助金の問題じゃありませんからね。輸出補助金はアメリカが物すごい多いわけですが、それを完全に削減しろと、こっちが要求しているので、私たちの政策が輸出補助金をつけるなんというのとは全く無関係、正反対ですから、そんなことを答弁で言う必要は全くないわけです。

 それから、面積に応じて支払いますから、これは生産促進的な要素はないわけでございまして、その点でも黄色の政策ではない。

 それから、今の話、大分逃げは逃げなんですが、ただ、はっきりしているのは、補助金行政は確かに問題だということは認められました。農水省の役人のためになっている、政治家のためになっている。まさにそうなんですよ。補助金というのは政官業癒着構造のあらわれなんですよ。わけのわからない補助金もある、それも認められました。その上で、では、新しい政策は納税者が負担する、消費者が負担するのではなくて納税者が負担するという方向でなければいけないということも言われました。

 その二つを合計したら、所得補償政策しかないじゃないですか。補助金か所得補償か、所得補償しかないじゃないですか。それ以外に、所得補償と補助金とは全然違う政策が何かあるんですか。

石破国務大臣 これは本当にまじめな話、委員とよく議論をさせていただきたいと思います。

 ですから、補助金の体系が極めて複雑であってわかりにくい、使いにくいということは、そうだと思います。ここは簡素化しなければなりません。体系をきちんとしていかねばならない、これは認めます。そのプロジェクトを今進めております。

 もう一つは、輸出補助金のことをおっしゃいました。私は、御党が輸出補助金をつけろと言っているとか、そんなことを言っているのではありません。ただ、今日のEU農業の姿というものが、それに負うもの、特にフランスなんかはそうですが、それで今日のフランスの自給率二〇〇%を超える農業があるのだということは、私ども考えていかねばならないことだと思っております。日本農業にどのようにして力をつけるかというときに、その選択肢はとり得ないことを私どもはよく認識をしなければいけないということだと思っております。

 最後におっしゃいました、では、納税者負担型とすれば直接支払いしかないではないかと。それが世界の潮流であることは、私自身よく存じております。高い関税を取るということは消費者が負担をしているということなのですが、毎年毎年、この予算はどうなのですかという国会の審議を経ない形で農業を保護するやり方が本当によろしいのかという認識を、私自身持っておるところでございます。やはり、きちんと政策効果が発現されたかどうかということは、国会の御審議を経るということが重要なことだというふうに私は思っております。

 ですから、そういうような形にしていくということを……(発言する者あり)いや、ですから、今までそういうところがなかったのではないかということです。ですから、そこへシフトしていく場合に、では、どのようなことに対して納税者が負担をするのかということをきちんと検証していかなければいけない。

 その場合にどういう政策があり得るか。最も大事なのは、何を対象として、つまり御党は、すべての販売農家という言い方をしておられるわけですね。(筒井委員「生産数量目標に従う」と呼ぶ)ですから、生産数量目標に従ったすべての販売農家とおっしゃっておられるわけです。しかしながら、農家は、自給的農家というものが相当部分を占め、それが集落を担っているということも私どもはきちんと直視をしなければなりません。

 何を対象としてどのようにした支援を行うのか、そしてそれが日本の農業にとって何が一番よいのかということは、役所の利益とか政治家の利益とか、そういうことは捨象して考えなければいけないと、私自身は当然のことながら思っております。

筒井委員 要するに、今の話は、所得補償制度の仕組みで、制度の中身はどう決めるかで悩んでいるというところじゃないですか。

 もう所得補償の方向しかない、そういうことを前提に先ほどから答弁されておりますし、だけれども、所得補償を導入すると言ったら物すごい批判が来るんでしょう、何で民主党と同じような政策に変わるんだと。それは、最後の一言は言えない。それで、何かわけのわからないことを言いながら、しかし、中身を善解すれば、所得補償の仕組みに具体的にこういう問題点があるんだというふうに答弁をしている。その点は今の答弁全体を読み返せばはっきりしているので、それももう時間の関係でやめますが。

 ただ、私が今の質問ではっきり聞いているのは、民主党の所得補償政策はWTOで容認されないと言った、その発言を問題にしているんですよ。今のお話だと、それは撤回されますね。

石破国務大臣 フランスの自給率は、一時期二〇〇を超えておりましたが、今一二二でございます。先ほどの答弁は少し訂正をさせていただきます。

 先ほど来申し上げておりますように、毎年の生産実績に応じて生産費と市場価格の差額を払うものであればという前提で申し上げました。ですから、そうではないのだというような議論を、新しい法案を提出されましたので、これは実施法を伴うのだということをおっしゃっていますが、できれば実施法というものも、御党におかれて、それがなければこれは政策の実効性たり得ないということは、筒井議員がまさしく記者会見でおっしゃっておられることですから、まさしく中身を伴った上で、同じ前提というか同じ条件に立って議論をさせていただきたいと思っております。

 先ほど、前提つきでそれは黄色の政策になり得る、それはそうではないのだということであれば、実施法においてそれをお示しいただきたいと思っております。答弁ベースではなくて、それは実施法というものもできれば拝見させていただいた上で議論をさせていただきたい。

 そして、それが削減対象であることは事実であって、仮にこれから先も永続性を持ち得ないとするならば、どのようなやり方をその後考えるかということもぜひぜひ御提示をいただきたいと思っておるところでございます。

筒井委員 私は所得補償制度についてよく知らないけれども、もしこういう仕組みであればWTOで完全に容認されない問題点がある、そう言っているのなら私は批判しないんですよ。いや、これはこういう仕組みなんだから大丈夫だと説明すればいいことですから。だけれども、そんな条件をつけないで、前提条件を一切つけないで、民主党の所得補償政策はWTOで容認されない、こう断定しているから、それは間違いだと言っているんですよ。

 そのことは……(発言する者あり)いや、もういいですよ。こればかりやっていたら、もう時間になってしまいますよ。きょうの本論に入る全然前ですから。

 それで、この問題はその程度にしまして、地球温暖化対策について、農水省、農林漁業は大きくかかわっております。京都議定書で九〇年比六%の削減義務があるわけですが、そのうちの三・八%を森林を吸収源として達成する、こういう方向性を政府は出しております。このために、今、年間二千億円程度の予算をつけていて、それによって間伐等々の森林整備の作業をしております。

 これをきちんとやらなければ、大体、目的が達成できないわけでございますが、森林に関してだけそういう主張をされておりますけれども、農地の温暖化ガス吸収源としての役割については、石破さんはどういうふうに考えておられますか。

石破国務大臣 当然、水田のみならず農地もその吸収源たり得るというふうに考えております。現行の京都議定書におきましても、各国が選択可能な温室効果ガス吸収源の一つというふうに位置づけられておるところでございます。カナダとかデンマークとかポルトガルとかスペインとか、この四カ国におきましては、農地を温室効果ガスの吸収源として選択をしているわけでございます。

 ただ、我が国として今まで、科学的な知見が十分じゃなかった、あるいは有機物の施用量や耕起面積などを的確に把握するためのモニタリングが実施されていなかったということでございまして、第一約束期間の吸収源としては選択しなかったということでございます。

 その条件整備というものをきちんと進めたい、農地を吸収源として位置づけることが可能になるように、第一約束期間の期間後の次期枠組みにおいて、委員御指摘のように、農地を吸収源として位置づけることが可能になるように、条件整備を進めていかねばならないと思っております。

 去年の三月に、農地土壌の温室効果ガスの吸収機能について知見の集約、取りまとめを行ったところでございまして、先ほど申し上げましたように、第一約束期間後の次期枠組みづくりに向けた国際会議において、我が国の農地が炭素の吸収源として適切に位置づけられますように、各国とも連携をし交渉に臨まなければならないと思っております。

筒井委員 先ほどから強調しております多面的機能について、日本学術会議が多面的機能の経済的価値を試算いたしました。林業に関しては年間七十兆円、農業に関しては年間八兆円、漁業に関しては年間十兆円、こういう経済的価値があるというふうに試算をしてくれました。

 そのうち森林に関しては、二酸化炭素の吸収の機能についても、きちんとその中で、合計一兆円ですか、一兆幾らの価値があるというふうに試算の項目に挙がっておりますが、農地については全く挙がっておりません。

 どういう根拠で農地が吸収源になるのか、これを短い時間で。例えば、畜産をやったりした場合に、あるいは、農地の中で、堆肥を入れた場合に、メタンの発酵もありますから、かえって温暖化ガスを発生させる面もあるわけですから、その差し引きとして、どういう根拠で農地が吸収源となって、それはどの程度のパーセント、どの程度なのかということについてお答えをいただきたいと思います。

吉田政府参考人 お答え申し上げます。

 農地土壌への炭素の貯留でございますけれども、幾つかの考え方がございますが、特に我が国で今注目しておりますのは、農地に一定量以上堆肥を投入することによって、有機物は地中に投入されますと当然地中の微生物で分解されますが、一定量以上入れますと分解されない、いわゆる腐植という形で土壌中に蓄積されることがわかっております。

 また、これまでの試験場のデータから、営農上望ましい量、例えば水田ですと十アール一トン、畑ですと一・五トン、これを継続的に堆肥投入しますと、日本全体で約二百万トン程度の炭素が貯留されるという試算も出てございます。

 この二百万トンは、我が国の第一約束期間における削減約束目標量の約一割に相当するものでございます。

筒井委員 時間がないのでね。

 漁業についても、海藻等々の存在があるし、大体、海水そのものが吸収するというふうにも言われております。漁業についての吸収源としての役割、これはどういうふうに考えておられますか、お答えください。

吉田政府参考人 海藻を温室効果ガスの吸収源として利用すべきという御意見でございますが、海藻類については、当然のことながら、これも地上の植物と同じように、光合成で炭素を吸い、当然、枯れるとまた炭素が放出されるというメカニズムであろうということはわかっておりますけれども、海藻自体の定量的な炭素蓄積あるいは放出、それからその集合体であります藻場、この全体における炭素吸収機能のメカニズムについては、まだ学術的に確立していないというふうに理解してございます。

 そこで、来年度、二十一年度から、藻場におけます炭素循環に関する基礎的知見の充実あるいは炭素吸収機能の定量的な評価、こういったものに取り組んでまいりたいというふうに考えております。

筒井委員 それともう一点、先ほどの自給率の関係で、まさに、地球の裏側からも含めて遠いところから、物すごい長距離の間、莫大な燃料を使ってたくさんの食品を日本は輸入している。まさに食料の輸入大国、世界最大の大国になっているわけでございまして、これも、フードマイレージというふうに表現されておりますが、まさに地球温暖化を促進している一つの理由になるわけでございまして……(発言する者あり)大きい原因だ。それが、地産地消あるいは自給率を完全自給にまで上げることによって、物すごく地球温暖化ガスの排出を少なくすると思います。

 それについての石破大臣の考えと、どの程度それによって、例えば一〇〇%にした場合に、完全自給にした場合に削減量がどの程度になるのか、それらについて、わかるならば、まだわからないでしょうね、お答えください。

石破国務大臣 この間、少し間違った答弁をしましたが、例えば、北海道産小麦で食パン一斤を焼きました、アメリカの小麦で食パン一斤を焼きました。これを比べた場合に、北海道でつくられた小麦で食パンを焼くと普通のリビングルームの冷房の利用時間を四時間減らすことができる、すなわち、量にすれば百十グラムのCO2が削減できるというような試算がございます。

 これをフードマイレージという形でどこまで精緻にできるかということは、実は急いで計算しなきゃいかぬし、そして、それにおいて地産地消ということと組み合わせていかなければいかぬ。フードマイレージ、イギリスの学者の試算によれば、日本なんかはもうとにかく圧倒的に多いわけであって、これが本当にいいわけがないというふうに認識をしております。

 ただ、近場でつくった、いろいろな温室でつくったものと遠くの露地でつくったものととか比較をする場合に、いろいろな前提を置かなければなりませんので、どういうやり方が一番いいか。やはり私どもは、フードマイレージというものはこういうものであり、このようにして消費者に知っていただき、あるいは生産者に知っていただき、消費も生産もあわせてフードマイレージというものを減らしていくべきという取り組みをするためにどういう表示の方法がいいかということを今考えておるところでございます。ぜひ、委員におかれても、こういう表示のやり方があるのだということがあれば御教示をいただきたいと思っております。

 私が今関心を持っておりますのは、まだ試行段階でございますが、例えば、韓国において、フードマイレージを削減した場合に公共交通機関にポイント制で乗れるとか、そういうものを試行しているという話も仄聞をしたことがございます。このやり方は、我が国としてきちんと確立をして、消費地にも、あるいは生産地にも御理解をいただきたい。ぜひ委員のお知恵をかりたいと思っておるゆえんでございます。

筒井委員 農水大臣に対しては最後の質問に入りますが、バイオ燃料、バイオマテリアル、これは農水部門に深い関係がありますのでお聞きします。

 今、我が地元の新潟県では、減反田で多収穫米をつくって、そこからエタノールをつくって、それをガソリンにまぜて、それをJAのガソリンスタンドで売るという実証事業が始まっております。これらのバイオ燃料は、まさに今、日本版グリーン・ニューディールの中で大きな柱の一つとなっているわけでございまして、これを大幅にふやしていかなければいけない、これが一点。

 それからもう一点は、時間がないのでまとめて聞きます。バイオマテリアル、これに関しても、今我が地元では、木くず、もみ殻、それから政府のあの事故米、在庫米からバイオプラスチック、バイオビニールを製造して商業販売をしております。そのバイオビニールが上越市のごみ袋に採用されました。

 これらのバイオ燃料とバイオマテリアルを広範に広げていかなければいけないわけでございますが、例えば二〇二〇年までにどの程度までそれを広げていくか、こういう数値目標の設定はありますか。あったら、その二つについてお答えください。

石破国務大臣 二〇三〇年ごろに六百万キロリットルの国産バイオ燃料の生産が可能であるというふうに計算、試算をしておるところでございます。

 ということは、今のガソリン消費量は六千万キロリットルございますので、この一割を賄うことが可能になると考えておるわけでございますが、これは、相当の技術開発を行い、また、我が国の未利用のバイオマス賦存量を最大限活用した場合に可能になるというふうに考えております。(筒井委員「未利用賦存量で燃料のうちの一〇%」と呼ぶ)そうです。我が国の年間ガソリン消費量である六千万キロリットルの約一割と計算をしておりますが、ただし、これは前提がございまして、バイオ燃料を大量に生産する技術開発を行い、我が国の未利用のバイオマス賦存量を最大限活用した場合に生産可能になるということでございます。

 ですから、これでは足りないんだという考え方もございますが、どのようにして技術開発を行い、コストを下げるかということを考えていかなければなりません。

 マテリアルにつきましては具体的な目標を現在持っておりませんが、そのことにつきましてもよく留意をし、考えていきたいと思っています。

 別に私は宣伝するわけじゃありませんが、今から二十三年前に委員がこの本をお書きになりました。それは炯眼と思っております。その時代から、だって、当時はバイオマスなんという言葉もほとんどだれも知らなかった時代、まだ昭和なんて言っていたころでございますから、委員がその当時からこういうことに積極的に取り組んできておられるということに対しては、心から敬意を表す次第であります。

 要は、食用に供されないものをいかに使っていくかということを考えていかねばなりません。つまり、食用に供されるものをバイオ燃料にしちゃうという考え方は余り正しいものではございませんで、それが競合を起こさないように、食用に供されないものをいかにして使っていくかということに配意が必要であるというふうに考えております。

筒井委員 私の本を紹介してくれたせいではありませんが、農水大臣への質問は、きょうはこれにして、あとは、予算委員会あるいは農水委員会の中で、また引き続いてしていきたいと思います。

 それで、地球温暖化対策全般の問題についてお聞きをいたします。

 この前の施政方針演説で麻生総理は、世界最先端の環境・エネルギー技術を日本は持っている、こういうことを言われました。そして同時に、最近の経済財政諮問会議で、世界最先端の低炭素社会を実現する。低炭素社会という表現自体にも問題はあるわけですが、それにしても、まさに世界最先端の技術を持っているから、それによって世界最先端の、地球温暖化ガスが削減された、そういう循環型社会を目指す、こう宣言をされたわけでございます。

 それだけの宣言をされるんだから、物すごいきちんとした、具体的な施策があるんだろうというふうにだれでも思うわけでございますし、私もそう思ったわけですが、しかし、具体的に見てみますと、まず地球温暖化ガス、CO2削減の中期目標、長期目標、この中期目標に関しては何か六月まで引き延ばしで、今まだその中期目標の数値は全く出ていない、こういう状況ですよ。

 今、先進国で中期目標の数値を明確に出していないのは、日本とロシアだけでしょう。これで最先端の低炭素社会を実現するなんということが言えるんですか。これで世界最先端の環境・エネルギー技術を持っていると豪語することなんかできるんですか。まさに、総論はすごいことを言うけれども、具体的なものになると全くしおらしくなっちゃって、全然問題にならない。先進国から、あるいは世界から全く信頼されない、あそこは口だけなんだよというふうに言われるという状況になるんじゃないですか。

 これは経済産業相と環境大臣、お願いします。

二階国務大臣 地球温暖化対策は、今日大変な経済的な制約の中でありますが、我々は、むしろこれをチャンスととらえて対応していこうと。

 太陽光発電や電気自動車、我が国は国際競争力のある環境技術を多く有しておることは事実であります。世界最先端とか世界でトップを行っているというようなことを自分たちの側からしょっちゅう言って回ることは、これはいかがかと思いますが、やはりそれだけの意気込みもなければならぬわけでありますから、今関係者の間でそういうことが盛んに言われておるわけでありますが、これに対応できるように、今御指摘のようなことを考えていかなきゃいけない。

 そこで、新経済成長戦略の改訂版を昨年の九月、閣議決定をいたしておりますが、この中で、将来の展望というものを開いていくためのシナリオを策定しなくてはならない。そこで、一つには低炭素革命、一つは健康長寿、そして底力発揮、この三つを柱にして、新たな市場そして新たな雇用の場を大胆に生み出していく、こういうことで今取り組んでおるところであります。(筒井委員「中期目標については」と呼ぶ)

 中期目標については、前日銀総裁の福井さんが座長を務めていただいて、審議会をやっております。

 我々は、世界最先端を行っておる国だと言う以上は、やはり数量ともにしっかりしたものを出さなきゃいけないし、同時に精緻な科学的な裏づけがなくてはならない。したがって、今これを慎重に熱心に会議を続けていただいておりますが、六月ということを目標にして、私は決して遅くはないということを思っております。

斉藤国務大臣 簡単に御答弁申し上げます。

 長期目標については、二〇五〇年までに六〇ないし八〇%削減するということはもう閣議決定をしております。

 問題は、中期目標でございます。この中期目標につきましては、正式に我が国の中期目標はこうだというふうに決めている国は基本的にはない。ECも、EC全体としてこういうものはどうかという案が出ている段階でございます。

 日本も、先ほど二階経産大臣からお話がございましたように、これは、一たん決めたら国民全体で取り組まなくてはならないことですから、国民の皆さんにもよく提示をして議論をして決めるべきもの、最終的には政府が責任を持って決めるということですけれども、私自身は、科学の要請にこたえた地球を救うものでなくてはならない、中国、インドなどが積極的に入ってくるというものでなくてはならない、そして、技術開発を促して、今の日本の優位な技術をより一層進めるものでなくてはならない、そういう観点から決められるべきもの、このように考えております。

筒井委員 IPCCは、先進国は二五%から四〇%の削減、これを中期目標として実現しなければいけない、こう言っていて、EUは二〇%を出しております。しかし、諸外国がさらにやるなら三〇%だという二段階の数値目標を出していて、ドイツは四〇%というすごい高い数値目標を既に出している。

 一番おくれていたのは日本とアメリカだったわけですが、それはブッシュ大統領のああいう路線がありましたから。しかし、オバマ大統領になって、もう具体的にそっちの数値目標も出してきたという状況ですよ。日本は、少なくとも、その中期目標の設定に関しては、まだ六月までにやるなんて、もう物すごいおくれている。世界最先端ではなくて、この中期目標の設定に関しては、世界で一番おくれているのは何というんですか、最後尾の状態であることは間違いないでしょう。

 その中で、今両大臣ともいろいろな言いわけをしておりますが、経産大臣が言われた政府の中期目標検討委員会、今度この報告がなされました。あの報告を見て驚いたんですよ。選択肢として六つとか何か出しているんだけれども、その一つ目が、九〇年比よりもプラス五%とか四%と。九〇年比よりもさらに温暖化ガスをふやす、こんなのが選択肢としてあるんですか、大体。

 京都議定書で九〇年比マイナス六%ということが言われている。これを義務達成していない。しかも、もっとふやしている。これも、先進国で日本とアメリカぐらいのものですよ。アメリカは京都議定書に参加していませんから、京都議定書に参加している国としてふやしているのは日本ぐらいなものですよ。

 もうその中だけで国際的な不信を買っているのに、自分で口だけでは世界最先端とかと言いながら、それで中期目標も今出していない。しかも、その中期目標を出すという検討委員会でもって出した案が、何ですか、プラスするというのも選択肢の一つだというふうな選択肢を示した。ますます国際社会の不信を買うわけですね。

 少なくとも、選択肢の中から、九〇年比プラスなんという、こんな選択肢は排除すべきではないですか。

斉藤国務大臣 この六つの選択肢は検討委員会で出された案でございまして、我々政府の立場から、出すなとかと言う、そういう立場には我々ございませんけれども、私自身も、プラスのようなものを日本が将来選択するという、そんな恥ずかしいことをするとは考えておりません。ただ、比較の対象としての一つのレファレンスというふうに私は考えております。

 いずれにいたしましても、野心的なものを出すことが日本の技術開発につながり、日本の地位を高めるものだ、このように考えておりまして、その選択肢の中から我々政府が責任を持って決めていく、麻生総理がきちんと決めていくということでございますので、御理解をいただきたいと思います。

筒井委員 済みません、最後。

 今環境大臣が、政府の選択肢としてはそんなのはないというふうに言われましたが、経産大臣もそうですね、プラスなんというものは。

二階国務大臣 今審議会にお諮りをしている最中に、私どもの方でどうだこうだという予見を与えることはいかがかと思いますが、仕上げをごらんいただきたい、こう申し上げておきたいと思います。

衛藤委員長 筒井君、時間が来ました。

筒井委員 また引き続いて質問します。きょうは終わります。ありがとうございました。

衛藤委員長 これにて筒井信隆君の質疑は終了いたしました。

 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 本題に入る前に、きょう甘利大臣に来ていただきましたので、一言お聞きしておきたいと思います。

 昨日の大臣の記者会見で、内閣改造に言及し、選択肢の一つだ、こういうふうに述べられました。現職の大臣が内閣改造に言及するというのは極めて異例なことだと私も思います。きょうの報道によりますと、町村派の幹部が、麻生さんがアメリカに出発する前に甘利さんに言っておけと指示したんじゃないか、こういうふうにも言われていますが、これは、なぜああいう発言をされたんでしょうか。

甘利国務大臣 総理からの指示は全くありません。

 あれは、会見をしまして、記者から聞かれました、内閣改造についていろいろと取りざたされているけれども、どう思うかと聞かれました。

 私は、そのときに、これは総理の専権事項ですから、一閣僚が申し上げることではありませんと。その前提の上で、一与党議員としてどういう思いを持っているかと問われるのであるならば、現状では総理のメッセージがそのまま国民に届く状況になかなかなっていない、総理はいいところがたくさんあるし、それを伝えたいけれども、視野が曇ってなかなか視界が不良だ、これを何かクリーンにさせる方法はないかという点で、そういう選択肢はあるということを申し上げたのでございます。

佐々木(憲)委員 内閣改造をしなければならぬということは、現在の内閣がもう役に立たないということをみずからお認めになったものだろうと思うんです。

 そこで、本題に入りますが、与謝野大臣、かんぽの宿というのは今大問題になっております。国民の共有財産であったものをオリックス不動産に不明朗な安価で一括譲渡されるという計画でありました。これは国民が怒るのはもっともなことだと私は思うんです。

 国有財産を管理するその所轄の大臣ですので、一般論としてでも結構ですが、国有財産、国有地を格安でディベロッパーなど民間企業に売却して、買った企業が転売してぼろもうけする、あるいは利用してぼろもうけする、こういうことは私はあってはならないというふうに思いますが、大臣、どのようにお考えでしょうか。

与謝野国務大臣 国有地は、もともと持っている国有地であれ、税を通じて国のものになったものであれ、適正な価格で適正な手続にのっとって処分をするというのが、やはり国民の財産を守るという意味では重要なことであります。

 これは、それぞれ財産の処分の仕方は、法律で決められた、あるいは政省令で決められた手続にのっとって処分せられるべきものであって、そこに任意性というものは入る余地がないと思っております。

佐々木(憲)委員 そこで、きょう取り上げたいのは雇用促進住宅の問題でございます。

 舛添大臣にお伺いしますけれども、今、派遣切りに遭って、雇用不安が非常に広がっているわけです。私も名古屋の中村区役所に参りましたけれども、連日百人の方々が相談に押し寄せるという状態。厚生労働省の調査でも、三月末までに十二万五千人の非正規労働者が職を失う。こういうときに、雇用促進住宅というものの役割と使命は一層大きいと私は思いますが、大臣の基本的な認識をお聞きしたいと思います。

舛添国務大臣 もともと雇用促進住宅というのは、職業をかわる、それに伴って住居の心配がないようにかわれるようにということで、雇用保険の三事業からこういう政策をやってきていたものでありますし、とりわけ今非常に厳しい状況ということで、これは譲渡する、廃止するという方向で閣議決定がございますけれども、しかし、緊急な状況でございますので、こちらへの入居をしていただくということで今やっているところでございます。

    〔委員長退席、鈴木(恒)委員長代理着席〕

佐々木(憲)委員 具体的な数字をお聞きしたいんですけれども、現在、雇用促進住宅の総戸数は幾らですか。それから、入居戸数と人数ですね。それから、派遣切りに遭った方々を受け入れた世帯数、人数。これを示していただきたい。

舛添国務大臣 今譲渡や廃止が進んでいますので、総戸数というのは、ちょっとすぐ細かい数字は出ませんが、今入居している戸数が、この平成二十一年一月三十一日現在で九万四千三百四十五戸です。一戸に何人住んでいるかという数字がございませんから、人数は出ません。

 それから、今おっしゃった、雇用促進住宅で、派遣切りに遭った方々の入居決定件数ですけれども、この二十一年二月二十三日現在で四千二百八十四件でございます。

佐々木(憲)委員 従来からの住宅の全体の戸数は十四万戸と言われておりまして、住んでいる方は約三十万人と言われております。今の大臣の指摘にありますように、雇用情勢の深刻な事態の中で、この住宅の役割というのはいよいよ非常に重要だというふうに思うんです。ところが、現実には、この役割が大きくなればなるほど、この住宅を減らす方向に行く、あるいは廃止の方向に行く。逆行しているんじゃないかと思うんですね。

 一九九九年の雇用・能力開発機構の法案を提出された際に、政府は、雇用促進住宅の管理運営は機構の事業としては廃止するけれども、地方自治体などに譲渡される、こういうふうにされました。

 九九年三月二十三日の参議院労働・社会政策委員会で、市田議員に対する答弁では、譲渡即退去、住んでいる人たちを退去させるということにはならないと言われておりました。甘利大臣は、当時、雇用・能力開発機構法案の所管大臣でありました。我が党の議員の質問に、次のように答弁しております。「この十四万戸の雇用促進住宅には三十八万人という人が現在現実に入居をされているわけでありますし、結論から申し上げますれば、入居者の理解を十分に得ながら譲渡を行っていくということであります。」と。

 これは、入居者を一方的に退去させるものではない、こういう趣旨の答弁だったと理解しますが、改めて確認しておきたいと思います。

甘利国務大臣 十年前の私の答弁を覚えていただいてありがとうございます。

 雇用促進住宅につきましては、まず一点として、移転就職者用の宿舎の整備という時代的な役割が終わったこと、二点目として、本来の趣旨に合わない者にまで入居が認められていること、三点目として、建物の老朽化が進んでいること等の指摘を踏まえまして、平成十九年の閣議決定でありますけれども、規制改革推進のための三カ年計画におきまして、当該住宅の売却を可能な限り前倒しして、遅くとも平成三十三年までに譲渡、廃止することとされたわけであります。

 譲渡、廃止を進めるに当たっては、平成十一年当時、私が労働大臣でありましたけれども、御指摘にありましたとおりの答弁でありますが、入居者の生活に配慮しつつ、理解を十分に得ていくことが重要であると考えておる、そういう答弁であります。具体的には、譲渡スケジュール等についての説明を行う、近隣の公営住宅等に関する情報の提供、かわりの住宅のあっせん等を行っていくことが重要だと考えております。

佐々木(憲)委員 一方的な退去をさせるということはしないというのが基本的な見地だったと思うんですね。

 ところが、昨年、入居者に対する通知というのが出されまして、普通借家契約者用あるいは定期借家契約者用、二つありまして、こういうふうに言われております。平成二十年四月に新規入居を停止し、平成二十年十二月に定期借家契約の契約期間満了を迎える方から再契約を中止し、雇用促進住宅の廃止を進めていくこととしております、平成三十三年までの十五年で譲渡、廃止することが決定されました、二十三年までに全住宅の二分の一程度に前倒しして廃止を決定し、売却業務を民間等に委託するなど、売却を加速化するための具体的方策を速やかに講ずることとされました、こういう通知が一方的に入居されている方々に配付されたわけです。これは、入居している人はびっくり仰天で、一体どうして自分が住んでいる住宅が廃止になるんだろうと。

 私も話を直接聞きました。これは岐阜県の雇用促進住宅の方です。七十三歳の高齢者の方、こう言っていました。ここに住んで二十五年になる、だれにも迷惑をかけずに生きてきた、今は職もない、年金も十万そこそこだ、民間の住宅に行けと言われても、家賃が五万も六万もする、それに光熱水費を入れれば七、八万円になる、どうやって食べていけというのか、年寄りいじめだ、死ねというのと一緒だ、もう考えたら夜も眠れない、こういう訴えですね。

 あるいは、還暦を前にした男性はこう言っています。住んでいる人間が納得いくかどうかがポイントだ、皆が金持ちで若いならどこにでも行ける、しかし高齢者はどこに行けばいいのかと。

 甘利大臣、あのときのあの答弁と違う現実が生まれているわけです。こういう現状をどう思いますか。

甘利国務大臣 いずれにしても、現実にそこに生活があるわけでありますから、入居者の生活に配慮しつつ理解を得ていくということは、当然今日でも大事だと思っております。

佐々木(憲)委員 現に住んでいる人は三十万人と言われているわけです。三十万人という数は非常に大きい数なんですよ。中堅の都市が一気に消えてしまうような、そういう規模の、住んでいる方々を、要するに国がホームレスをつくるようなことをやる。これは私はとんでもない話だと思っております。

 今、派遣切りで住居を失う人が大量に生まれていまして、雇用促進住宅というのがいよいよ必要になっているわけであります。何でこんなことになってきたのかということが問題なんですね。

 小泉構造改革が発端でありまして、官から民へ、こういう規制緩和の路線が実行されました。二〇〇一年十二月、小泉内閣の閣議決定で、できるだけ早期に廃止するが、現に入居者がいることを踏まえて方策を検討する、その段階ではそういうことを言っていたんです。

 二〇〇三年五月に検討会が開かれて、そこでは、三十年程度を目途に事業廃止に努めるが、建物の取り壊しではなく譲渡が基本である、こういうふうにされていた。その際、入居者の保護を考慮し、民間への譲渡ではなく、地方公共団体等を中心に譲渡を進め、譲渡できなかった住宅は耐用年数経過後に廃止、こういうふうにされていた。ですから、当初、この当時はまだ追い出すという発想はなかったんですよ。

 舛添大臣、当時はそういうことでありましたね。どうですか。

舛添国務大臣 先ほど甘利大臣からの答弁もありましたように、この住宅の整理ということに伴って、新たな住宅のあっせんをやるというようなこともきちんと手当てをするということでございましたし、十九年六月の規制改革推進のための三カ年計画においては、平成三十三年度までにすべての処理を終わるということでありましたので、細かい手当てをするということが前提だというふうに理解しております。

佐々木(憲)委員 この小泉内閣の最初の段階ではまだ、譲渡が基本である、住んでいる人は追い出さない、これが基本だったんですよ。ところが、どういうことか、二〇〇五年十二月、オリックスの宮内会長が議長を務めた規制改革・民間開放推進会議、ここが出した規制改革・民間開放の推進に関する第二次答申というのがありまして、この第二次答申で廃止を強引に加速したんです。

 この答申では、三十年をかけるという考え方は撤回する、つまり、長期にわたってやるということについては撤回だと。従来の地方公共団体への譲渡という方法、これに加えて、重大なのは、更地にすることを前提に、入居契約を解消し、速やかに跡地を民間等に一般競争入札で売却すると、非常に荒っぽいことを報告で示したわけです。

 この方向に沿って、二〇〇七年六月の安倍内閣の閣議決定では、遅くとも平成三十三年までにすべての処理を完了する、民間事業者のノウハウを活用し、売却を可能な限り前倒しできるようにするとした。その年の十二月二十四日の閣議決定では、進捗状況が十分でないということで、まず二分の一程度に前倒しして廃止決定し、売却を加速化する。そして昨年、二〇〇八年四月には、機構が七百八十四住宅の廃止を決定する。余りにもこれは強引ですよ。

 それで先ほどの通知です。もう廃止です、あなたと契約は更新しません、出ていってくださいと。こんなやり方は認められるのか。その際、更地にすることを前提に入居契約を解消ですから、壊して更地にして民間に売り払う、こういう経緯で今来ているんじゃないですか。

 舛添大臣、この事実経過、間違いありませんか。

舛添国務大臣 譲渡、廃止を前倒しして加速化するということは、そういう、今委員が御説明いただいたとおりでございます。

佐々木(憲)委員 とんでもない話なんですね。雇用促進住宅はもともと雇用保険財政で建てられて維持されてきたものです。いわば国民の貴重な財産。その国民の財産を何で譲渡、売却する必要があるのか。

 ここに、二〇〇七年一月三十一日、三菱総研が出した報告書があるんです。「雇用促進住宅の早期事業廃止に向けた方針の策定支援に係る業務委託」。三菱総研に対して、この廃止を推進するための業務をどういうふうにやるかということを調査研究させた報告書なんですね。これを見ると、重大な問題が書かれていると私は思います。

 要するに、これは民間の資本が研究したものですよ。「全国で千五百以上もの事業廃止対象住宅があることをふまえると、相応の陣容を擁する必要もあると考えられる。」つまり、推進体制ですね。「本調査で検討した売却方策及び目標売却期間を実行していくためには、法律の専門家としての弁護士の知見を活用するとともに、売却担当の責任者などに、民間の不動産取引にかかる専門家などを複数含む強固な体制を構築するべきである。」こういうふうに書いてある。これはどういうことか。

 要するに、国有財産を民間に売る、売り渡す、その際の売却担当の責任、売る側の責任者に民間の不動産取引の専門家を入れるというわけですよ。国有財産を売るのも民間、買うのも民間。自分で財産を評価し、それを自分で買うようなものですよ。これは余りにもやり方としておかしいと私は思います。

 舛添大臣、この方針でやっているんですか。

舛添国務大臣 委員御承知のように、この雇用促進住宅は、先ほど申し上げましたように、雇用保険三事業ですから、だれがお金を出しているかというと、企業の経営者、事業者、事業主が出しているわけであります。そういう中で、この機構が独立行政法人になる。シンボリックな例でいうとスパウザ小田原、こういう無駄がありましたということで、行政改革を進めていくという一つの方針がございました。

 そういう中で、現下のこの厳しい経済状況の中で、この住宅を促進して、派遣切りに遭った人たちを助けようということでありますから、片一方で、行政改革の方針に従って、今委員がおっしゃったように、退去ということ、廃止ということをやっていて、片一方で、困っている人を入れます。そうすると、この二つの方針の整合性はどうなのかということで、退去なさる方々についても、原則はありますけれども、今のような二つの矛盾をどう解決するのであるかということで、今、鋭意検討を進めさせていただいております。

佐々木(憲)委員 まともに今の私の質問には答えていないんですけれども。

 この報告書には、こういうことも書いているんです。「優良物件と売却困難物件でバルクを構成し、売却していくことが考えられる。優良物件は、現在のシミュレーション上は売却順位が概ね後ろに想定されているが、この想定時期にあわせて売却困難物件を売却することや、優良物件の売却順をあえて繰り上げてバルク販売を実施するなど、状況に応じて柔軟に対応していくべきである。」と書いているんです。

 どういうことかというと、優良物件を売るというのは、それは最後にしたい、売却が困難な方から売りたい、これは売る側からすれば当然の考え方だと思うんです。ところが、この報告書によると、いや、優良物件と悪い物件を一緒にして、一括でバルクでぼんと売ってしまおう。そうすると、優良物件が売れる、あるいは順位を優良物件から売るようにしたらどうか、こういって、国民の共有財産を民間の大手不動産会社が、まずいいところから買えるようにしようじゃないか、その意図がここに見え見えなんですよ。これは余りにもひどいんじゃないか。

 私は、官から民へという、民間企業にたたき売りするようなもので、この発想は、かんぽの宿とほとんどこれは発想が同じだと思いますよ。

 実際にどんなことが行われているかといいますと、例えば、大阪府八尾市の別宮団地ですけれども、住民に説明が全くないわけです。全くないまま、入居者がいないということで、二号棟がどんどん取り壊されておりまして、住民に取り壊しの説明が一切ないんです。知らされたのは直前で、しかも、工事を請け負った業者からお知らせが来たというだけなんですね。アスベストが使われているのに説明もない。住民から怒りの声が出ているんです。

 大臣、こんなやり方をあちこちでやるんですか。

舛添国務大臣 八尾市の住宅の取り壊しについて、私のところに報告が来ているのは、平成十七年に建築の専門家によって耐震補強ができない危険な住宅であると診断されたことから、説明会等を通じ入居者の退去を促し、退去が完了した棟から取り壊すこととしたもので、本年の二月九日から工事を開始したということでありまして、今の耐震補強ができない危険な住宅であるということでありますので、これは譲渡、廃止の推進方針とは直接関連しておりません。

 それから、アスベストが使われているのではないかという旨ですが、検出されていなかったし、念のため、含有していたとしても飛散のおそれの少ない工事法を採用しているということでございますので、きちんと十分な説明をしたかどうかということについては、さらにこれは検証してみたいと思っております。

佐々木(憲)委員 住民への説明なしにどんどん目の前が壊されていくということは、住んでいる人から見ると非常に不安なんですよ。しかも、アスベストがあるんじゃないか、それもまともな説明がない。

 厚労省は、昨年十二月二十六日に、「廃止決定した雇用促進住宅の活用について」という文書、これを発表されています。その中で、閣議決定された整理合理化計画のあり方や、廃止決定を行った住宅に現に入居している方々への退去の促進のあり方等について、「これまでの考え方の見直しを含め、引き続き検討・調整を進め、可能な限り早期に対処していく考え」だ、こういうふうな説明をされているようです。

 大臣は、昨年の国会審議の中でも、行革推進の大きな閣議決定があって、今それを法律的にどうクリアするか検討を進めております、これは十二月十八日の参議院での答弁であります。

 これは今、重大な経済状況のもとですから、雇用促進住宅が緊急の住宅対策として期待され、またその役割を担っていかなければならない。先ほど矛盾だと言われましたけれども、入居者を退去させる方針というのは、これはやはり凍結すべきだと思いますよ、今。その上で、全住宅の廃止なんというこの閣議決定そのものも根本的に見直す、やはりそういう方向でいかなきゃならぬと思います。いかがでしょうか。

舛添国務大臣 もともとの雇用促進住宅のつくった意味というのは、先ほど申し上げましたように、転職に伴って住宅の確保ということで、この目的そのものについて言うと、もうほとんど目的は達成されたということからこの閣議決定が出てきたんだろうというふうに思います。

 ただ、先ほど申し上げました二つの方針が、必ずしも整合性がないということでありますので、今早急に検討を加えているところでございます。

佐々木(憲)委員 閣議決定の見直しも含めて検討するということですね。

舛添国務大臣 現に困っている方々がおられる、その方々を救うのがまず第一ですが、それが、閣議決定の見直しをすることがいいのか。それは非常にハードルが高いと思います、閣議決定というのは。そうじゃない方法で、とりあえず手当てするのがいいのか。

 そういうことも含めて、まさに閣議決定の見直しということも含めてですけれども、すべて検討させていただきたいと思います。

佐々木(憲)委員 最後に、与謝野大臣、一番最初に私お聞きしましたけれども、国有財産あるいは公的な公有財産を、民間企業が入ってきて、分け取りをするための仕組みもつくり、そしてそこで評価をし、売る側も民間、買う側も民間、これは、仕掛けとしては、非常に重大な疑惑を持たれる仕組みだと私は思うんです。

 こんな仕組みのあり方について、どう思われますか。

    〔鈴木(恒)委員長代理退席、委員長着席〕

与謝野国務大臣 あの時代を振り返りますと、国がやっていることがみんな間違いで、民間がやることが正しいんだといういわば空気があって、そういう中で今の三菱総研のレポートなんかは書かれている。やはり、国有財産を処分するときには、その処分については、法律、政省令に基づいた厳格な手続、そして厳格な価格の設定、審査というものが必要なんであって、民間の知恵をかりれば何かいい方法があるんだというようなものではないと私は思っております。

佐々木(憲)委員 時間が参りましたので、以上で終わります。ありがとうございました。

衛藤委員長 これにて佐々木憲昭君の質疑は終了いたしました。

 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 社会民主党の菅野哲雄です。

 最初に、天下り、わたり問題について質問させていただきます。

 紆余曲折を経て、麻生総理が、省庁のあっせんによる天下りとわたりを今年限りで廃止する、そのために新たな政令をつくるとおっしゃいました。工程表にも、天下り根絶という言葉が出てきています。

 しかし、天下りは根絶されるのではなくて、官民人材交流センターを通じて今後も続くわけです。さらに、省庁があっせんしなくても、天下り先の官僚OBからの働きかけ、これまで確立されてきたルートを通じて、自動的な天下りの可能性は排除できません。

 省庁のあっせんを通さない天下り、わたりの実態を把握、公表して、規制していく考えはおありでしょうか。行革大臣の見解をお聞きします。

甘利国務大臣 省庁のあっせんを通さない天下り、わたりの実態把握云々は総務省が行っているところでありますが、今月の三日に国家公務員制度改革推進本部におきまして決定をされました公務員制度改革に関する工程表におきましては、総人件費の抑制を図りつつ、定年まで勤務できる環境整備等を進めるために、任用、給与制度等、全般にわたる抜本的見直しを行うことを定めたわけであります。

 具体的には、現行制度上、これらの見直しには人事院勧告等を経る必要があることを踏まえつつ、検討を最大限に加速して、まず二十一年中に可能な限り早期に人事院に対し勧告の要請を行い、二十二年中に所要の法案を国会に提出し、二十三年から実施に移すという段取りを定めたわけであります。あわせて、定年延長につきましても、総人件費の抑制という観点にも留意しつつ検討を行いまして、平成二十三年中に一定の結論を得るということといたしました。

 御指摘のような、省庁の関与のない再就職についてどういうふうに取り扱うかというのは難しい問題と思いますが、いずれにいたしましても、このような取り組みを積極的に進めることによりまして、いわゆる天下りの根絶に対応した新たな人事制度の実現に取り組んでまいります。

菅野委員 私は、省庁のあっせんによる天下りの廃止、こういう決定をしたとしても、あっせんによらないわたりというものはずっと存在していくんじゃないかという危機感があるわけですね。そういう意味では、政府全体を挙げて、その実態を把握して、国民の前に公表していくということを通じてしか規制することはできないんだという私の基本的な考え方があるわけです。

 そして、国民は、省庁のあっせんがあろうがなかろうが、一部の官僚が天下りを繰り返して常識外れの退職金を得ていること、天下りが官製談合の温床になっていること、このことに厳しい目を向けているんだというふうに思います。

 本当に根絶していくんだということであれば、先ほどから言っているように、省庁のあっせんの有無を問わずしっかりと把握して公表していく、こういうことを政府全体を挙げて取り組んでいただきたいというふうに思うんです。

 それから、今も甘利行革担当大臣の方からもお話がございましたけれども、課長以上で勧奨退職した人の退職時の年齢はおよそ五十七・五歳、六十五歳定年制導入に向けた環境整備を先行させていけば、人材交流センターによる政府公認の天下りあっせんの必要性もなくなっていくわけですから、今、鋭意検討しているということでありますけれども、六十歳定年じゃなくて、六十五歳年金支給年齢というものを念頭に置いて退職勧奨制度ということをなくしていく、この努力こそ私は求められているんだというふうに思うんですが、このことは強く要望しておきたいというふうに思っております。このことにしっかり取り組んだ公務員制度改革というものを実行していただきたいというふうに思っております。

 次に、人事院総裁に伺いますが、総裁はこの間、職員の給与の格付を行う級別定数の設定を内閣人事・行政管理局に移管することは憲法上の疑義があると指摘されております。私もそのとおりだと思います。もともと国家公務員制度改革基本法では、内閣人事局、内閣人事・行政管理局は、幹部職員等の人事の一元化を図るための組織とされています。課長職以下の一般係員の勤務条件を内閣人事・行政管理局が取り扱うことは、基本法を逸脱していると考えておりますが、どのように考えておりますか。お答え願いたいと思います。

谷政府特別補佐人 国家公務員制度改革基本法におきましては、内閣官房に内閣人事局を置き、同法第五条四項に掲げております幹部職員等の一元管理のための事務などを、内閣人事局が新たに担う機能を実効的に発揮する観点から必要な範囲で関係機関の機能を移管するというふうに第十一条に規定しているところでございます。

 これに対しまして、工程表の内閣人事・行政管理局におきましては、御指摘にありましたように、幹部職員等以外の一般の係員にまで対象を広げますとともに、級別定数や任用、採用試験、研修などの中立公正性確保にかかわる基準設定機能などを幅広く担うものといたしております。そういたしますと、中央人事行政機関としての人事院の基本的な性格にも大きな影響を及ぼすものと考えております。

 このような内容は、基本法の制定段階におきましては一切議論をされていないところと承知いたしておりまして、幹部職員等の一元管理を中心的課題とする基本法の枠を超えているものと考えている次第でございます。

菅野委員 甘利大臣にお伺いいたします。

 課長職以下の給与の格付を内閣人事・行政管理局ができるとした条文上の根拠、国家公務員制度改革基本法のどこにあるのか、お示し願いたいというふうに思うんです。

 それから、工程表を決めた二月三日、総理が記者団に、いろいろ異論はあるが、まだ調整しなくちゃいかぬ部分もあると語っています。異論とは、まさしく今人事院総裁が指摘している部分と私は推測するんですが、調整が進んでいるのでしょうか。調整の結果、法案化の際に見直しはあるのかどうか、お答え願いたいと思います。

甘利国務大臣 まず、基本法の中の五条ですか、この中に幹部職とそれから管理職と書いてあるんですね。人事院の方は、ここに管理職ということも書いてあるにもかかわらず、幹部職、つまり指定職だというふうにおっしゃっているわけです。まず、ここが基本法と人事院が外れているところであります。これは書いてあるわけですよ、法律を読めば。

 続いて、二条の基本理念の中の七項目めに、政府全体を通ずる国家公務員の人事管理について、説明責任を負うと。これは、スポークスマンとして発表するというわけじゃなくて、責任を負うということは管理上の仕組みを担うということと一緒の話でありまして、その仕組みを担えなければ責任を負えないわけであります。でありますから、全体の責任を負うと。

 なおかつ、この法律の中に、総務省そして人事院から機能移管を行う、これは条文に書いてあります。その機能移管に関して、国会のやりとりで渡辺大臣は、では、人事院からの機能移管は何を指しますかというときに、明確に級別定数とお答えになっているわけです。これは議事録に載っています。その議論を通じた後に民主党も社民党さんも賛成をされているわけであります。でありますから、それに従って私どもは作業をしているわけであります。

菅野委員 今、調整は進んでいるのかという質問をしたんですが、この点についてお答え願いたいと思います。

甘利国務大臣 この工程表を提出いたしました国家公務員制度改革推進本部会議におきまして、総理から、この工程表に沿って調整をせよという指示をいただいております。沿って今調整をしておりますが、具体的に、ほかの省庁とは話ができましたけれども、人事院とはできていないというのが現状でございます。

菅野委員 きょうの新聞報道等を見れば、こう書いてあるんですね。「人事院から内閣官房に移管する機能は公務員の給与ランク別定数を決める「級別定数」をはじめ、「任用」「試験」「研修」の企画立案機能。」「当初から打ち出していた大幅な機能移管方針を法案でも堅持した。」というふうにきょう報道されているんです。

 私どもは、今なぜこのことを問題にしているのかというと、甘利大臣は、社民党も民主党も賛成したんじゃないかということなんですけれども、私も国家公務員制度改革の特別委員会の委員を務めてずっと議論をしてきているわけです。当時の資料をもとにして振り返ってみたわけですけれども、内閣人事局という部分は、最初は内閣人事庁だったんですね。そして、今進んでいるのは内閣人事・行政管理局という形で進んでいるわけです。この変更が物すごい議論のもとになされて、そして与野党合意して、最終調整案というものの資料も私たちも検討して、今日に至っているわけです。

 このことをしっかりと踏まえた対応というのを行うべきだということで今ここで議論しているわけであって、すべて当時の大臣がこう答弁したからこのとおりに進むんですという形じゃなくて、なぜこの修正が行われたかということの本質というものを、私は今の行革担当大臣として真摯に検討すべきだというふうに思うんですね。このことに対する見解をお聞きしておきたいと思います。

甘利国務大臣 私どもは、基本法の趣旨、それから基本法が審議をされた国会でのやりとり、修正案提案者からのお話、議事録を精査いたしました。その中で、修正案提案者からのお話も精査をしますと、総務省行管局からの機能移管、それから人事院からの機能移管、これが非常に重要なところですというやりとりがきちんとあるわけであります。それに基づいて設計をさせていただいた次第であります。

 なお、申し上げれば、級別定数の移管に関しては、人事院は、憲法二十八条、労働基本権制約の代償措置というふうにおっしゃっているわけであります。

 これは、級別定数というのはポストの位置づけですね、ポストの重要度。つまり、課長ポストが例えば十あるとしたら、そのうちの幾つを重要課長とし、幾つをそれ以外とするというポストの位置づけであります。これは、まさに基本法の一条に掲げる目的、つまり、経済社会、時代の変化に応じて対応できる組織にする、機動的な対応ができるようにする、これはすなわち企業でいえば経営判断じゃないでしょうか。経営判断として、今はこのポジションが重要、この課題に向かうにはこっちが重要、これは昔はそうだったかもしれないけれども今は歴史的使命を果たした、そういう判断をするのは、企業でいえば経営側じゃないんでしょうか。そういう判断に基づいて内閣人事・行政管理局で行う。

 ただし、人事院がおっしゃっているように、二十八条の代償措置。そこで、そうした行為に対して意見を申し出る、あるいは改善勧告ができる、そういう機能をちゃんと人事院に置くわけでありますから、それはちゃんとそこを担保しているというふうに考えております。

菅野委員 もう一つ、基本法の十二条も修正協議でもって修正された中身なんですね。これは、労働基本権の代償措置として人事院が存在するんだ、そうすると、内閣人事局に権限を集中させていくことによる弊害というものが存在してくるわけですから、同時に、これは、ここに「自律的労使関係制度を措置するものとする。」という、これが一方で担保された中身として推移していくものと私どもは考えているわけです。

 ぜひ、与野党修正協議をほごにするもの、そういう方向で進んでいくことだけは、法案化の際に強くそのことを意識して法案を作成していただきたい。新聞報道で報道されていますけれども、こういう状況ではなくて、お互いにもっともっと真摯に話し合いを積み重ねた上で制度設計していただきたいということを強く要望しておきたいと思います。

 次に、総務大臣にお伺いします。

 総務省の研究会報告書によると、地方自治体で働く臨時、非常勤の数は約五十万人、労働組合の調査では約六十万人とも言われています。他方、常勤、いわゆる正職員の数は、平成七年から昨年まで十四年連続して減少し、約三十八万三千人も減りました。正社員を減らして非正規に置きかえていくやり方は民間と全く同じなんです。

 自治体の相談員や学童保育の職場では臨時、非常勤が職員の九割を占め、学校給食や保育士なども五割以上が臨時、非常勤です。常勤職員と同じような働き方をしながら、事務職で働く臨時、非常勤の賃金が物件費として物と同様に扱われている現状、年収で二百万円に達しないような人が約六割。

 大臣、このような官製ワーキングプアとも言えるような自治体の臨時、非常勤の実態をどのように認識しておられますか。答弁願いたいと思います。

鳩山国務大臣 地方自治体における臨時あるいは非常勤職員の数というのは、非常に調査しにくかったわけで古い数字で申しわけありませんが、平成二十年四月一日現在で、結局、一週間とか一月しか勤めないような方は計算しようがないものですから、大体半年以上、あるいは半年以上そういう非常勤の状態で続けるであろう、しかも一週間当たりの勤務時間が二十時間以上はあるという方を調べて、本当に一日一時間とかいうのはちょっと計算しにくいものですから、カウントしにくいものですから、それで四十九万八千人、約五十万ということだと思います。

 地方自治体は、行政ニーズが多様化する中でどうやって簡素で効率的な行政体制をつくるかということに腐心をしているわけでございまして、それぞれの実情に応じて、いわゆる常勤職員、正規職員、つまり、任期の定めのない常勤職員と臨時、非常勤職員との組み合わせのパターンをいろいろつくってきているんだろう、そう思っております。

 これは確かに、地方の行政改革、すなわち定員削減は、国が五年間五・七%、ちょうどこれはぎりぎり達成だと思うんですが、地方の場合は、五年五・七%を上回って、多分七%近い減になるだろうと思っておりまして、そのことと私は無関係とは思いませんが、それぞれの地域の事情というものを御理解いただきたいと存じます。

菅野委員 一方で人事院は、国家公務員の非常勤に対して、通勤費のみならず、期末手当の支給を求めています。ところが、総務省の研究会報告が手当の支給はまかりならぬとしているのは、私は理解に苦しむんです。国家公務員と地方公務員では臨時、非常勤の扱いについても法律が異なるという説明では、だれも納得できません。

 大臣、自治体の臨時、非常勤の方々の通勤費、一時金や退職金などの手当支給を検討すべきじゃないですか。答弁願いたいと思います。

鳩山国務大臣 地方自治法第二百四条において、常勤に支給されるのは給料と手当、非常勤の場合は報酬と費用という形になっているわけです、費用弁償というのでしょうか。これは仕方がないわけで、従事する職務内容や任用根拠もそれぞれ多様でございまして、実際、非常勤職員の報酬の制度やその金額水準は、一律にガイドラインを示すのではなくて、各地方公共団体等が条例によって定めているわけでございまして、任期付短時間勤務職員というのは、先生御承知と思いますが、これは給料とか手当の支給は可能でございますので、これがまだ定着しないので、できるだけふやしていただきたいと願っております。

 そこで、給料とか手当というものは地方自治法上支給できないのですが、通勤費用相当分については費用弁償として支給することができますので、そのような方向で指導していきたい、そのような方向で進んでいくことを期待いたしております。

菅野委員 今の大臣の答弁を了といたしますけれども、やはり、官製ワーキングプアという部分をどう是正していくのか。私は、公が率先してそのことを行っていくということが今日の全体をリードする、そういう状況につながっていくわけですから、ぜひしっかりと指導していただきたいというふうに思っています。

 それで、なぜ自治体で臨時、非常勤がふえているのか、なぜ劣悪な労働条件のまま放置されているのかというと、この間の行政改革、自治体でいえば集中改革プランが現在実施されていますが、この行革が職員の人員削減ありきで進んだ結果ではありませんか。

 さらに、先般、総務大臣は、三位一体改革には失敗の部分があるとおっしゃいましたが、まさに地方財政難に拍車をかけた三位一体改革も、職員の臨時、非常勤への置きかえを進める要因だったとも思います。

 この間の行革あるいは三位一体改革が臨時、非常勤の増加をもたらしたのではないかという指摘に対して、大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。

鳩山国務大臣 世の中全般で、これは永遠の課題でございますが、行政の効率化や無駄を省こうという行政改革というのは永遠の課題ですが、この数年あるいは十数年、非常に色濃く出てきていると思うわけでございまして、そうした中で、国と地方との関係も含めて、三位一体改革というのが行われたと思っております。

 これは、国税を地方税に移すという意味では地方分権への第一歩という大きな意味はありますけれども、私は、郵政も同様ですが、大きな改革には光と影が伴うということだろうと思います。

 最近の地方の財政状況の厳しさ、これは、地方税の減収、あるいは、少子高齢化で義務的な経費が歳出増要因となってくる。そういう中で地方交付税の急激な減少というものがあったものでありますから、とりわけ、やはり人数を減らそうということで、ある意味では行革の一つの空気の中では大きな成果とは言えますが、かなり厳しい状況の中で業務遂行において臨時、非常勤職員の活用の方に頼っていったという傾向は、私は否定できないと思います。

菅野委員 やはり、大臣が認めたように、三位一体改革が地方に物すごい影響をもたらしてしまったという反省の上に立って、今後、この三位一体改革、財務大臣もおりますから、このことは、地方の実態を見て、そしてどういう影響をもたらしているのかということを真剣になって考えていただきたいというふうに私は思っております。

 官製ワーキングプアの例をとってお話ししましたけれども、地方経済がすっかり冷え切ったものにさせられてしまったというこの状況をどう克服していくのかというのは、政治に課せられた大きな役割だということを私は申し上げておきたいというふうに思います。

 さて、最後になりますが、四月から能力・実績主義に基づく人事評価制度が国家公務員に適用されます。職員の能力や業績を絶対評価するといっても、実際に任用や給与に反映していく際には枠が設けられ、順番がつけられます。

 さらに、これほど大きな労働条件の変更でありながらも、労働基本権の回復が後回しにされていることはやはり問題だと思います。

 今後、実施段階に入るとさまざまな問題が出てくるだろうと思うわけですが、その際、職員の意見や疑問を反映し、制度の見直しを図っていく考えはあるのかどうか、総務大臣の答弁をお聞きします。

鳩山国務大臣 今まで累次の人事評価の試行が行われまして、いよいよことしから人事評価が本格的に始まるわけでございますが、今まで制度設計をしてくる段階においても、いわゆる職員団体等との意見交換を通じて随分それを取り入れてきた、そういう形で人事評価の具体的な制度設計を行ってきたわけでございます。

 ですが、やはり人事評価というのは、行われる以上は信頼性、納得性あるいは平等性、公平性みたいなものがなければ、これはかえってマイナスになるわけでございますので、そういう意味で、評価される職員の主体的な取り組みというのをできるだけ保障する。つまり、職員による自己申告あるいは上司との面談、自分の評価はなぜこうなのかという苦情をちゃんと受け付ける仕組み、それらを設けることによって、信頼される制度になることを期待しているわけでございます。

 これから本格実施をいたしますけれども、職員団体との意見交換あるいは苦情受け付け等は、我々総務省としてどんどんやっていきたいと思っております。

菅野委員 今、議論してきたんですが、天下り、わたりというのは、私は抜け道だらけだというふうに申し上げなければならないと思うんですね。

 それから、労働基本権の回復などの重要課題は先送りしたまま、使用者側である内閣の権限を肥大化させていく、このことも私は改革の名に値するとは到底思えないんです。この人員削減と人件費切り下げだけを優先させてきた行政改革のあり方も根本的に見直すべきだということを指摘して、私の質問を終わります。

衛藤委員長 これにて菅野哲雄君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

衛藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、お諮りいたします。

 政府参考人として内閣府大臣官房審議官西川正郎君、外務省大臣官房長河相周夫君、外務省大臣官房審議官羽田浩二君、外務省大臣官房参事官川村泰久君、外務省アジア大洋州局長齋木昭隆君、外務省欧州局長谷崎泰明君、外務省国際法局長鶴岡公二君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

衛藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

衛藤委員長 質疑を続行いたします。馬淵澄夫君。

馬淵委員 民主党の馬淵でございます。

 先週に引き続きまして、質疑の機会をいただきました。

 まず、先週金曜日、私が集中審議で質疑をさせていただきました、その中での金子大臣答弁について確認をさせていただきたいというふうに思います。

 先週、私は、国総研、国土交通省の所管であります国総研から出されている平成十九年度高速道路料金割引社会実験効果推計調査検討業務報告書、これにつきましてお尋ねをさせていただきました。

 金子大臣は、まずこの報告書の目的についてお尋ねしましたところ、これは、高速道路の料金引き下げについて、さまざまな効果分析の方法を研究することを目的に、このように述べられております。しかしながら、この調査の目的というのは、この報告書の一の一ページに記されておりますが、ここには具体的に、調査の目的として、一般道から高速道路への交通転換を予測し、交通量、旅行速度データを用いて、CO2削減効果、渋滞量削減効果、利用者便益の推計を行うものである、このように明確に書かれております。

 金子大臣、研究をすることを目的とおっしゃっておられましたが、国総研という研究機関が調査をされたものでありますけれども、この報告書は明らかに具体的なこうした推計を行うものであるということで、答弁の確認、訂正をしていただければというふうに思います。お願いいたします。

金子国務大臣 お答え申し上げさせていただきます。

 前回答弁させていただきましたように、本業務、国総研の報告でありますけれども、平成十九年度に料金社会実験が実施されたことを機会に、国総研が研究活動の一環として行っているものでありまして、具体的には、全国一律で均一の割引を行った場合、仮に、道路整備事業で用いる、走行時間の短縮、走行経費の減少、交通事故減少の三便益で算出するとどうなるか等々について検討を行ってもらったものであります。

 国総研は、もとより国土交通省の直轄の、職員そのものであります。国土交通省の政策に関する調査研究等を行う機関でありまして、その研究成果等は施策と一体であるべきものであることは御理解いただきたいと思います。

馬淵委員 私は、まさに、その施策と一体であるということを前回の質疑の中でも確認をさせていただいたつもりなんですが、殊さらにといいますか、大臣の御答弁の中では、これはあくまで研究目的、このようにおっしゃったので、これは恐らく、この委員会、あるいはあのときにはテレビをごらんいただいた皆様方にも、誤解を招いてはいけないということで確認をさせていただきました。

 今答弁をいただいたように、これは十九年十月に発注ですから、平成十九年度に実施予定だった高速道路料金の割引社会実験、この具体的なデータを用いて推計を行っていく、効果のほどを確認していくというものであります。これは、ここは別にこだわるつもりはございませんが、変更業務仕様書、あるいは変更特記仕様書などを見ますと、この料金の割引社会実験が二十年の三月まで延長されました。それによって、この変更特記仕様書には、二十年二月までのデータを用いて解析結果の取りまとめを行うとしております。すなわち、現実に料金の割引実験を行ったときの効果というものを具体的に把握するためのものである、このことを再度確認させていただきたいというふうに思います。

 大臣、これでよろしいですね。これは端的に、もううなずいていただきましたから、そうだということで御了解いただきました。

 さて、大臣の御答弁の中であともう一点。

 私は、前回の質疑の中で、いわゆる十割引きというものについての検討のことについてもお尋ねをさせていただいたわけでありますが、その場合、十割引き、すなわち無料化でございます。そのときに、大臣の御答弁はこのようにおっしゃっておられますね。高速道路がその結果として渋滞するという可能性だってあるわけですと。これは私は、十割引き、すなわち無料化、これを実施すれば、どれほどの国民利益、経済効果を得られるかということについて、総理はどのようにお考えですかと尋ねたところ、金子大臣から、高速道路がその結果として渋滞するという可能性だってある、このようにお話をされたわけであります。

 まず、私、確認をさせていただきたいんですけれども、仮に無料化をしたとしても、渋滞が当然発生する可能性もあるわけですが、これはさまざまな可能性があるわけですけれども、渋滞を起こしたとしても、総便益、すなわち、この報告書で述べられているような全体、すべての路線をつないだ総便益、ここには渋滞も加味した結果があらわれているんだということでよろしゅうございますね、大臣。

金子国務大臣 その点については異論ございません。本業務で国総研が便益の算出等を行っていることについて、社会実験の実施に伴い、効果の算出についての一定の仮定の計算を置いた上での試算であります。

 そして、私も読み返させていただいておりますけれども、前回、高速道路の渋滞についてお答えしましたのは、渋滞の影響を便益に加味しないということではなく、料金引き下げにより高速道路が渋滞する場合もあり得ます、引き下げに関する大きな課題となるという現象面を申し上げたものであります。

 料金の引き下げというのは、三便益以外に、観光旅行がふえる、物流が効率化されるなどの効果もありますので、必要に応じてこれらの評価もする必要があると思います。

馬淵委員 現象面をおっしゃったということでありますが、便益のお話をする上においてこれを誤解されてはなりません。これは、すべての路線をつないだ形で総便益をこの報告書では出しておりますので、渋滞する区間があるといって、それでも便益が出るというのに対して、あたかも、いや、それが減る可能性があるではないかというふうにとられてはなりませんので、今大臣には確認をさせていただきました。

 おっしゃるとおり、渋滞の可能性も十分これはあるかと思います。例えば、そのようなときには、これは私の私見ではありますが、今、現行の上限千円というのは三割引きに該当するということを前回の質疑でも確認をさせていただきましたが、それこそ社会割引実験を一斉に行えば、これを例えば全線無料化などというような形で行って、全体の渋滞発生区間などを社会実験によって明らかにするといったことも考えられますし、また一方で、そうした場合に、交通流量そのものをコントロールしていくというような形で、料金抵抗としての料金を課していくといった方法も考えられます。これは一般に、交通需要管理、TDMと呼ばれるものの考え方であります。こうしたさまざまな考え方に立って、本来求められる政策というのが決定されなければならないというふうに私は思います。

 そして、金子大臣、前回の答弁でこのようにも述べられました。すなわち、前回もお示ししましたけれども三割引き、五割引きで走行便益が出ているということでありましたが、これについては、国総研の部分は、走行時間の短縮それから燃料費、これだけを主に、費用便益だけで判断されるというのは、これは評価するのはおかしい、このように答弁をされたわけであります。加えて、料金引き下げというのは、観光旅行がふえる、物流が効率化されるなどの全体の経済効果で評価する必要があると思いますと。それは私も全く異論ございません。

 しかし、この便益の問題というのは、昨年の道路の予算委員会での議論の中でも、得られる効果として最も高いもの、それが走行便益である、こうした前提に立って道路の事業の適否というものを議論してまいりました。逆に言えば、道路事業そのものは、便益、ベネフィット、Bですね、BバイCが一より大きくなければこれは事業整備は行わないということ、これも昨年の国土交通大臣の答弁ではっきりと確認をしております。したがいまして、便益で判断するのはおかしい、このような表現というのは、これも大きく誤解を招く可能性があると私は思います。

 大臣、ここは明確にしていただかねばならない点なんですが、便益で事業は整備が決定されるわけですから、この便益、これだけで判断するのはおかしいというのは、これはまさに主客転倒、本末転倒になりかねません。ここについては明確な御答弁をいただかないと私としても先に議論を進められませんので、確認です。この部分は撤回されますか。

金子国務大臣 便益もありますけれども、一方で政策判断も加味しながら決めなければいけないという考え方で申し上げたところであります。

馬淵委員 政策判断も加味するということ自体は私も否定をいたしません。ただし、便益で判断するのがおかしい、評価するのはおかしい、ここに関しては、これは誤解を招きますから、大臣、再度の確認です。

金子国務大臣 前回馬淵委員からお話ありました、道路を無料化すれば二兆三千便益があるよね、それから年間二兆五千の通行料金を払っているよね、これも払わずに済むので、合計四兆八千、五兆円の規模の経済効果が生まれるというお話が前回委員からありました。

 それに対しては、便益だけでなくて、無料化するコストというものが一方でありますね、そういう意味で、便益だけでの議論というのはいかがなものかということを申し上げたところであります。

馬淵委員 前回の大臣の答弁はそのようにはおっしゃっておられません。今そのようにお答えされるのであれば、そこは細かく申し上げませんが、便益だけで判断されるのはおかしいと。そこに、むしろ、料金引き下げは、観光がふえる、物流が効率化されるなどの全体経済効果で評価する必要がある、ここは異論ございませんよ。ただ、便益で評価するということ自体は、これが道路整備事業の根幹ですから、これを否定されるような御発言というのは撤回していただかねばならないというふうに私は思います。

 その後の話を今つけ加えておっしゃったと思うんですが、いずれにしましても、このように大臣がおっしゃったこの便益については、やはりよく検討しなければならないというふうに私は思っております。

 そこで、先ほどのお話の中にもかかわるかと思うんですが、きょうはいらっしゃいませんけれども、麻生総理が、私が、三割引き、五割引きという国総研の報告書、しかし、十割引き、すなわち無料ということを考えた場合に、これは国費投入をどのようにお考えかということを総理にお尋ねしました。総理は、便益を受ける方と受けない方ということを考えたときには、そこは明らかに公平性を欠く、このようにおっしゃっておられます。

 しかし、私は思うんですが、例えば国民の皆さん方が毎日手にする製品や商品、サービス、それこそ生鮮類の肉や魚、野菜、果物、こういったもの、お米なんかもそうですが、常にこうしたさまざまな製品、商品、サービスというのは物流の手を通って消費者の手元に届くわけであります。したがいまして、便益を受けている者というのは、すなわちこれは、確かに道路の料金を払っている、その方が負担しているから受益者だということを国土交通省は今まで金科玉条のように言ってこられましたが、実際には、ネットワークというのはすべて連携して、今回もこうした形で全線の、すべての路線網というものを検討されているわけでありますから、私自身は、便益を受けるのは国民すべてである、このように考えるわけであります。

 したがいまして、この国民すべてであるということを考えたときには、公平性を欠くというのはいかがなものかと考えるわけですが、これは、きょう麻生総理はいらっしゃいませんので、金子大臣、この麻生総理の発言を踏まえてどのようにお考えでしょうか。

金子国務大臣 前回、総理は、無料化というのは公平性の観点から問題があるとおっしゃられたんだと理解しておりますけれども、高速道路の建設費、この借金の返済を道路を使っていない方々の税金で賄うという点が公平性の観点から問題があるということをおっしゃっているんだと思います。

 今、馬淵委員が言われましたように、ネットワークして、そして全体として、高速道路があることによって物流コストが、トータルとして国民が便益を受けているということは全く否定するものでもありません。

馬淵委員 高速道路だけじゃありません、大臣。こちらの検討報告書には、一般道も含めてすべてが網羅されているわけですね。このように、当然ながら全国の道路網が網羅されて、三割引きで五千二百億、五割引きで一兆二百億の便益が出るという検討結果が出ているわけですが、しかしながら、今回の千円で上限という施策については、これはおおむね十年間で二兆五千億、二年間で五千億、合わせて十年間で三兆円。すなわち、大ざっぱに言えば年間三千億。これは、まさにこの部分が高速道路債務の償還、借金の返済に充てられるわけですよ。これは埋め合わせられるわけです。これは税で投入されるわけです。料金収入ではありません。

 まさに受益と負担の関係で公平性を欠くとおっしゃるのであれば、今の政策そのものが公平性を欠くことになりはしないですか。三割ではよくて十割では公平性を欠くというのは全く筋違いではないでしょうか。これは、大臣、どのようにお考えですか。

金子国務大臣 そこのところが政策判断の違いになっているんだと思いますが、無料化に必要な費用の規模というのは、料金引き下げに比べて必要なオーダーが全く異なってまいります。そこが無料化とは同一に論じられないところであります。料金引き下げは、高速道路利用者が払う料金で高速道路の債務や維持管理の費用を四十五年で着実に賄っていくという前提に基づくものであります。

馬淵委員 大臣、それは全く筋が通らないと思いますよ。三割では公平性は欠かない、十割だと公平性を欠く。では、五割はどうなんですか、五%はどうなんですか。少なくとも、この公平性を欠く議論というのは、受益と負担の関係で、ドライバー以外は全く負担しちゃだめだというところに成立する論理なんですよ。

 しかしながら、国土交通省は、割引施策をせざるを得ない状況というのを、国民の声も踏まえて、あるいは我々民主党の政策を踏まえて、そのように考えられたんじゃないんですか。公平性を欠くということをおっしゃるならば、三割引きで公平性を欠かないという理屈にはなりませんよ。

 これは、大臣、きちっと答弁いただけませんか。この予算委員会のきょうの私の質疑でこの問題は終わるわけではありませんから、非常に重要な答弁ですので、ぜひきちっとお答えいただけませんか。

金子国務大臣 乏しい限られた財源の中でいかに効果をもたらすようにしていくかということをベースに我々は提言をさせていただいておりまして、三割がよくて五割が不公平だというような議論では……(発言する者あり)いやいや、そんなことは言っておりません。ただ、料金引き下げは、提案しておりますのは、十年間で我々の与党案では三兆円でありますが、一方で、もし無料化するということになりますと、毎年の料金収入二・六兆円が入りませんので、十年間で三兆円に対して二十六兆円のコストがかかるということに無料化の場合にはなるということ、ここのところはある意味、政策の判断であると思っております。

    〔委員長退席、佐田委員長代理着席〕

馬淵委員 大臣、私は、総理の答弁をフォローされた大臣の今の御答弁に対して確認しているんですよ。公平性を欠くということについては矛盾しませんか、三割引きなら税の投入がオーケーで、十割引きは公平性を欠くということについては、これは矛盾しませんかということについては何らまともにお答えいただいていませんよ。

 大臣、これはけたの違いとかじゃないんです。私が申し上げているのは、あくまで無料化とは別で、こうした税の投入によって割引施策を実行しようとされているわけです。そして一方で、その根拠となる国総研の報告書の中には、三割引き五千二百億、五割引き一兆二百億の便益が出るという報告書がなされています。

 このように、割引によって便益が大きく出ることの確認はされている中で三割引きということに踏み込まれた。ならば、公平性を欠くということについては、これはもう撤回せざるを得ない、方針転換だと明言していただかなければならないんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。

金子国務大臣 今度の議論は、高速道路、四十五年間で四十兆円の借金がある、これを返していかなければいけない、これを無料化によって国民の税金で払うということにするのか、我々はそうではなくて、軸足は料金で払っていただく、乏しい限られた財源の中で、利用者に少しでも便を享受してもらうのに何がいいかということを議論し、国総研で三割、五割の検討をしたところであります。

馬淵委員 大臣がお答えいただけないので、では、別の観点でお伺いしましょう。

 三割、五割の国総研の報告書がございましたが、一方で、十割引きの試算はございませんかということで、前回の質疑の中で、これは総理や大臣ともに、見たことはなかった、資料を見たことは私はないと麻生総理はおっしゃっておりますし、金子大臣も、私のところにも今の十割の試算は来ておりませんということでございましたが、実際には、私は昨日の国交省の道路局有料道路課からの説明で、業務の途中過程で十割引きの検討をしていた、このように回答をいただきました。

 これについては、端的で結構です、これで事実としてよろしゅうございますか。

金子国務大臣 本業務は研究目的として、途中経過で、三割、五割に限らず幅広く検討することとし、その一環で十割も検討していたようであります。ただ、最終的には、料金の社会実験の実施内容と合わせるということにしたものであります。

 十割引きの検討内容について、私も二・七兆円の便益が発生するとの試算を行っていたとの報告は受けました。

馬淵委員 お手元にお配りをしております資料一ですけれども、このように、前回お配りしたのが三割、五割引きの国総研の報告書です。そしてもう一つの、研究過程なんですかね、それがこちらでございますが、少なくとも、このように十割引きで二兆六千七百億、ここに書いてありますように、二・七兆円パー年と試算される、こういう形で便益が出ているわけですね。十割引きというものが検討されていた。

 ごらんになられなかったのは、これは私はそういった事実なんだということで理解をいたしますが、結局、国土交通省道路局が、無料化という選択を検討してみたんだけれども、これはちょっと、民主党も言っているし、まずいなということで、私は隠したのではないかと前回も言いましたが、これは検討過程の、途中過程のものだから削除したということなのかもしれません。ただ、いずれにせよ、このような形で十割引きの検討をしていたわけです。

 こうしてしていたものについて、これは公にするべきじゃないんでしょうか。これは明確に、こうした検討結果、二兆七千億の便益なんですよ。これについては明らかにするべきじゃないでしょうか。金子大臣、いかがでしょうか。(発言する者あり)

佐田委員長代理 お静かにお願いします。

金子国務大臣 研究の報告には盛り込まれていないということは、先ほど申し上げたかもしれません。途中経過のもので提出できるものは提出をさせていただきたいと思います。

馬淵委員 大臣、実はこれは非常に重要な資料なんですよ。お手元の資料に、十一、十二、十三、十四、ちょっと別刷りでお渡ししましたものがありますが、前回、私はパネルにもして示しました。三割引き、五割引きというこの報告書、公に出ている報告書ですね。

 ここでは、例えば十一番は走行便益ですね。そして十三番は、これはCO2の排出量の部分なんですが、こちらですね、これをごらんいただきますと、要は、三割引き、五割引きといういわゆる料金の割引形態のときには、このように効果というものが顕著ではないんですよ。ところが、十二番を見ていただきますと、このように、十割引き、無料にした瞬間にどんと、東富士五湖道とか延岡南道とか米沢南陽道とか、上がるんですね。

 つまり、この解析の重要な点は、全道路をつないで、リンクさせて解析して、道路交通量の配分をシミュレーションをすると、三割引き、五割引きのその想定上にはない、全く違う流量の変化が生まれることを示しているんですよ。

 この検討というのは、すなわち、今政府は三割引き、千円と言っていますけれども、もっと多大な効果を無料化がもたらすということを示しているんです。この検討結果を公に議論せずに、私は、この問題をこのまま、いや、三割引きですばらしいんだ、千円で青森から鹿児島までとかいろいろなことをおっしゃいますけれども、政策というのは、まさにこうした検証を行って、我々自身が国会の中で最もあるべき姿につないでいくものじゃないんでしょうか。

 私は、金子大臣、先ほどこれはしっかりと出すとおっしゃっていただきました。これは明確にこの国会の中へ出していただかねばなりません。先ほどの答弁をいただきましたので、私のこのように申し上げる、三割引き、五割引きとは意味が違うんです、十割引きにすると交通配分量ががらりと変わる、こうした検証を公にして、どんどん国民の皆さんの前でオープンな議論をすべきなんですよ。

 これはぜひ、金子大臣、私のこうした意見に対しての御答弁をいただけませんか。

金子国務大臣 十割引きの検討はどうかということなんですけれども、無料化の便益が大きいのは当然だと思います。

 ただ、無料化によって、そのコストを一方でだれかが負担していただく、これは税金だと思いますけれども、こういう無料化についての、四十兆円の高速道路の債務の償還、それから維持管理の費用をだれが払うのかという財政負担の問題、これも考えて、与党として今回の案を政策として提出をさせていただいているところであります。今大いに議論をしていただいているんだと思いますよ。

    〔佐田委員長代理退席、委員長着席〕

馬淵委員 大臣の見解としては、これがベストだ、ベストプラクティスだというお答えなのかもしれませんが、資料二に示しておりますように、この国民負担というものが、いわゆる通行料金なのかあるいは国費なのかということです。これは大臣の答弁にもつけかえだという表現がございましたが、しかしながら、トータルの国民受益としては、これは見ていただければわかりますが、一千七百億という形で、これは国民の利益としてはプラスという計算が出ます。

 では具体的に、このような中で、ベストプラクティス、三割なのか、あるいは、私は無料ということがこれほど大きな結果、効果をもたらすことが国会の中で明らかになることは非常に重要だと思いますが、それこそ、さらには、より細かな精査のもとに、きめ細かな割引の方法、あるいはまた違った方法があるのかもしれません。

 いずれにしても、今日において、この十割引きの検討をしていたことは国民の前に明らかにしていただくとさっき答弁をいただきましたので、国交省、我々民主党からの要求に対して、これは出していただくこと、はっきりとお約束いただいたと思いますが、こうした上で本来の議論を行うべきであるということを私自身は前回の質疑の中で総理にも金子大臣にも御理解をいただきたかったということでございます。

 いずれにせよ、このように明確な検証結果というものがございますので、これをもとに我々も、高速道路無料化、あるいは現在行われようとしている千円上限三割引きというものについて、では、いずれが適否、国民の理解を得られるのかということも、これはオープンに、公に議論をしていこうではありませんか。私はそのように思っております。

 それで、済みません、先ほど、公開、出しますというふうにおっしゃっていただきましたが、では、明確に。これは確認ですから。大臣、大臣は先ほど出すというふうにおっしゃっていただきましたが、出してください。

金子国務大臣 途中経過のものであると思いますが、精査の上、提出させていただきます。

馬淵委員 大臣、とにかく出していただくということで、期限の方も、速やかにということでよろしゅうございますか。(金子国務大臣「結構です」と呼ぶ)はい。こう言っていただきました。

 高速道路の無料化というものがようやくまともな議論の俎上にのると私は思いますので、そういう意味では、皆さん方から出していただけることを本当にありがたく思いますし、ようやく国民の皆さん方に、本来、検討結果からいえば、より国民の利益となるものがいずれかということを明らかにしていただける、こういうふうに思っております。

 さて、高速道路の件は前回の答弁の確認ということで質疑をさせていただきましたが、それでは、二月四日の質疑でございます。これも私、二月四日のときに金子大臣にさまざまな質問をさせていただいたわけでございますが、この金子大臣への質問の中で、新需要推計並びに新たな費用便益の分析ということについて質問をさせていただきました。

 これは、昨年二月の予算委員会で、私は、当時の冬柴国交大臣に、需要推計というものが平成十一年センサス調査のものに基づいている、しかしながら、新たなセンサス調査の結果があり、そして、その検討段階で、既に需要推計、将来交通量が落ちているではないか、その報告書も提示をしながら、新たな需要推計の策定、これを最終的に福田総理の御判断で決めていただいたわけであります。

 そして、これは前回も私は確認しましたが、平成二十年、昨年の五月十三日に閣議決定をしていただきました。これは、新たな中期計画として定めていく、この閣議決定の部分だけを読みますと、「道路の中期計画は五年とし、」これは十年だったものを「五年とし、」ということですね、「最新の需要推計などを基礎に、新たな整備計画を策定する。この計画は、二十年度道路予算の執行にも厳格に反映する。」このように閣議決定で決まっておりました。

 さて、そこで、厳格に平成二十年度予算の執行にも反映させるというこの需要推計をどこで反映していくかということになるんですが、この需要推計の反映というのは、いわゆる事業評価制度の中の事業評価に使われます。

 そこで、この事業評価についても前回、大臣にお尋ねしましたが、いろいろとおっしゃっていただきましたので、私の方で簡単に取りまとめて申し上げれば、事業を新たにスタートする、これが新規事業採択時の評価、これがスタートですね。そして、それから十年間たってまだ継続している事業についてはそこで再評価を行う、これが再評価です。そして、さらには、ここに五年間未着手の事業というのもあるんですが、未着手の部分は少ないので、大抵の場合は事業が新規事業採択時評価で評価された。これはBバイCで評価されるんです、一・〇以上ということで評価されるんです。これで事業が始まりました、十年間たって再評価。

 したがいまして、この十年間の間どうなっているかということを確認していきたいわけでありますが、まず、平成十四年度以降の直轄事業等の再評価の総件数。これは参考人で結構です。この事業再評価の総件数というのは何件になりますでしょうか。

金井政府参考人 お答えいたします。

 平成十四年度以降の再評価の実施件数、一千六百五件、これだけやっております。(馬淵委員「直轄事業等ですよ、私が申し上げたのは」と呼ぶ)いわゆる道路事業における再評価の実施ということで、十四年度以降、千六百五件ということで申し上げました。

馬淵委員 直轄事業等ですね。これについてはもう一度確認です、御答弁いただけますでしょうか。

金井政府参考人 直轄事業それから高速道路を含めまして六百十八件、平成十四年度以降、再評価をやらせていただきました。

馬淵委員 直轄事業、高速道路等を含め六百十八件という答弁をいただきました。

 この六百十八件、この中で、平成十四年度以降の再評価で、五年間未着手及び着工準備等予算化後五年間経過した事業ということでありますが、いわゆるその他部類に入るんですが、これは何件でございますか。

金井政府参考人 全体で、事業化後五年間未着工で再評価したもの三十三件、うち直轄、高速等は十六件でございます。

 それから、着工準備について同じく五年間経過したもの十五件、うち直轄、高速等は十三件。

 以上でございます。

馬淵委員 ありがとうございます。

 幾つかの数字を言っていただきましたので、委員の皆様方にはわかりにくくなった部分があるかもしれませんが、お手元の資料三、これはちょっと私の方でミスプリで六百十九となっていますが、六百十八の間違いですので、訂正させていただきます。

 お手元の資料三をごらんいただきますと、平成十四年度から十九年度の再評価、六百十八件の内訳として、再々評価、これは、十年たってその後五年後ですから、十五年後あるいは二十年後ということになりますね。再々評価が四百十四件。十年たって継続ですというのが百七件ということで、この十年継続あるいは再々評価で合わせて八四・二%、これらが再評価、再々評価が行われたもの、再評価が行われたものであるということです。

 つまり、これは何を申し上げたいかというと、結局、新規事業が採択時評価でBバイCをとられた後、十年間ノーチェック、BバイCによるチェックはないんです。そして、いわゆるこの事業評価制度に基づく評価はない、そして、その後五年間もないんです。最低限十年間はノーチェックで予算が継続してつけられるというのが実態なんですね。

 そこで、私は確認をさせていただきたいのは、これも前回、大臣はちょっと違った答弁をされたんですが、平成二十年度予算執行についてなんですけれども、私は前々回の質疑の中で、二月四日に、平成二十年度の箇所表と呼ばれる直轄の改築事業、これはいわゆる道路事業なんですが、それについてお尋ねをしました。

 まず数字だけ押さえたいと思いますので、参考人の方にお願いいたします。平成二十年度箇所表にある直轄の改築事業総数、何事業でございますか。

金井政府参考人 平成二十年度の道路予算の箇所づけ、直轄事業の改築事業数は七百二十七件でございます。

馬淵委員 平成二十年度ですからもう予算は執行されているんですけれども、これについては七百二十七事業ありますと。そして、この七百二十七事業の中で、新規採択時評価及び再評価を受けた事業、これについては何件ありますでしょうか。これも参考人で。

金井政府参考人 お答えいたします。

 新規事業化に伴い評価をしました箇所数は十七件でございます。それから、事業着手後未着工で五年経過もしくは事業着手後十年経過、もしくは前回の再評価から五年経過した、このような事業で、再評価の対象となりまして再評価を行った事業は九十六件でございます。

馬淵委員 これもお手元の資料四をごらんいただきたいと思うんですが、平成二十年度執行のこの道路事業について言うと、新規事業採択時十七、再評価九十六ということで、すなわち、執行された予算は一・三兆円ほどなんですが、約一兆円、これは一兆三百億だったと思うんですけれども、一兆円は評価されていないんです。先ほど申し上げたように、結局十年間ノーチェック、そして、その後十年間に関しては毎年毎年予算が自動的についていく。平成二十年度だけでも、一兆円は事業評価されていないんですよ。

 これだけ、一兆円にも上る事業が、事業評価制度に基づく評価をされていません。そこでお尋ねをしたいと思うんですが、平成二十年五月十三日の閣議決定では、明確に、平成「二十年度道路予算の執行にも厳格に反映する。」としているんです。何を反映するか。これは計画です。計画とは何か。新たな中期計画です。そして、新たな中期計画に盛られているものは何か。新たな需要推計です。行われていないんですよ。

 金子大臣、閣議決定からこれは外れているじゃないですか。閣議決定とは違うことをされていませんか。お答えください。

金子国務大臣 昨年五月の閣議決定は、地域経済、地方財政への影響を最小限に抑えながら、可能な限り新たな需要推計を予算執行に反映させる旨を述べたものであります。

 これを踏まえまして、特に国会で厳しい指摘が行われました高規格幹線道路等の新規事業、これは、今報告がありましたとおり執行は保留しておりまして、平成二十年度予算への厳格な反映という趣旨は徹底されております。

 なお、継続事業あるいは直轄国道事業、これは、需要推計が出ましたのは、もう御存じのとおり、二月の四日も答弁させていただきましたけれども十一月の末であります。今申し上げた継続事業あるいは直轄国道というのは、既に二十年の四月に執行されております。そういう意味で、この予算執行というものを留保した場合には、地方経済、地方財政への影響が大変大きなものである、平成二十年度の予算の年度内執行というのは、これは無理になります。

 ただし、十一月の需要推計を受けまして一月から再評価をスタートさせておりまして、これは、これもこの間御答弁しましたけれども、来年度事業、年度内には再評価を完了する予定でおります。

馬淵委員 閣議決定に従っていないんですよ、これは。

 五月十三日の閣議決定では、少なくとも、総理が平成二十年度予算執行について厳格に反映と国民の前で明らかにしていったんです。三月二十七日の段階の福田総理の記者会見で、当時は暫定税率が廃止になるかどうかというところの攻防もございました。しかし、総理は、国民に対して呼びかけたんですよ、一般財源化する、そしてこの中期計画を全面的に見直すと。そして、それを受けて、五月十三日の閣議決定では、平成二十年度予算執行、明確に反映させるということを述べているにもかかわらず、実は、この五月の段階でこれはすべて執行してしまっているんですね。

 では、もう一つお尋ねしますよ、金子大臣。道路事業、とめるわけにはいかないと。しかし一方で、高規格幹線道路の十一事業はとめているんですよ。なぜとめられたんでしょうか。これも端的にお答えください。

金子国務大臣 高規格の幹線十一事業、地域高規格十四事業、これらの着工を見合わせておる理由は、国会でも特にこの事業について厳しい御指摘があったということと、もう一つ大きな理由でありますが、前国会では、新規の事業化に当たりまして手続の一層の透明化を求められたというところがやはり大きな理由であります。

馬淵委員 昨年の国会の予算委員会の審議の中で、私は、需要推計が下がるであろうということを明確に申し上げて、そして、そのことも踏まえて見直しを図るとした、平成二十年度予算執行にこれを反映するとしている。しかし、高規格幹線道路に関してはとめられたんですよ。それは、新規の事業化については、これも何かおっしゃっていましたね、一層の透明性を確保した手続を経ることとしたところというふうにおっしゃっておられますが、これは言いかえれば、この高規格幹線道路十一事業に関しては、BバイCが一を下回る可能性があるということではないんでしょうか。金子大臣、いかがですか。

金子国務大臣 今点検しておると申し上げましたけれども、その点検、再評価、仮にBバイCが一を切る場合には、当初予算を留保し、速やかに再評価を実施する予定であります。

馬淵委員 つまり、この高規格幹線道路十一事業に関しては、BバイCが一を切る可能性があると判断されたから事業をとめられたということでしょう。一方で、この直轄、一兆円余りのこの事業に関しては、全くそのことを予見しようともせずに執行してしまっているじゃないですか。これは閣議決定を著しく反する、あるいは逸脱する行為になりませんかと私は確認しているんですよ。大臣、十一事業はとめているから大丈夫だという話じゃないんです。

 前国会の中で、とにかく、ある意味、これは事業評価のことは明らかになりませんでした。このように、事業評価というのは、これはもう繰り返しになりますけれども、お手元の資料五をごらんいただいたらわかるように、新規事業採択時評価をしてから十年間ノーチェックでずっと予算がついてくるんですよ。こういう仕組みの中で、本当に必要な社会資本整備かどうかということも明らかにならない状況が続いてきた。ようやく昨年の国会の中で議論の俎上にのったんです。そして、それを閣議決定でもって、厳格に反映する、このように決めていたにもかかわらず、実態は、一兆円もの道路事業に関してはもう既にやってしまっている。

 十一の高規格幹線道路はとめました。なぜとめたのか。これは、先ほどお話しのように、BバイCを切る可能性があると判断されたからにほかならないんです。このことを考えれば、他の一兆円余りの事業に関しては、予見できるにもかかわらず、その予算執行を閣議決定に反して行ったということになるじゃないですか。金子大臣、お答えください。

金子国務大臣 閣議決定、厳格に反映する。一方で、福田総理は、秋に出てきますセンサスの結果を見て、その差が今の計画と大きな乖離があるということならば、可能な限り是正していくというようなこともおっしゃっております。

 特に、やはり経済への影響です。こういう地域高規格等々の部分と、四月から執行されております道路予算、これの予算を秋までとめるということ、年度内に執行ができなくなること、今の経済状況の中で、やはり大変な影響が地方経済にも出る、地方の財政にも影響が出る、それはやはりそういう状況というのを考えていかなければならない。

 それから、地域高規格については、あるいは高規格幹線については、手続の透明性ということも十分配慮しなければいけないということで、留保をしているところであります。

馬淵委員 私は、閣議決定違反ではないかということを申し上げているんですよ。結局、この今の麻生政権、いや、自民党政権と言っていいんでしょう。さきの天下りの問題もそうでした。政令で読みかえてしまう。これは仙谷委員がガバナビリティーの問題だということを強くおっしゃっておられました。

 閣議決定で、国民の前には、それこそある意味、私たちはやり直します、ちゃんと見直します、国民にそのような発表をしておきながら、実態は違うことをやっている。これが今の政府の姿じゃないですか。

 私が申し上げているのは、なぜこういった事態に対して真摯に向き合おうとしないのかということなんですよ。今やっています、そんな話じゃないです。少なくとも自分たちが犯した過ちならば過ちを認めて、その上でこういうふうに変えていくんだというその議論こそが、建設的な議論として国会が本来の機能を果たすんじゃないですか。

 閣議決定からこれは逸脱しているじゃないですかということを私は確認しているんですよ。大臣、もう一度だけお答えいただけませんか。

金子国務大臣 昨年五月の閣議決定は、地域経済、地方財政等への影響を最小限に抑えながら、可能な限り新たな需要推計を予算執行に反映させる旨を述べたものであります。実態的に、先ほど来申し上げましたとおり、閣議決定がゆえに新たな予算が執行できないというようなことというものは、やはりよく考えなければいけないことであると思っております。

馬淵委員 恐らく、お立場でいえば、私が就任する前の話だという思いでいらっしゃると思いますし、もうやってしまったものはどうしようもないというお気持ちになられても無理はないなと私も思いますよ。大変苦労した答弁をされているんだろうなというのもこれはそんたくできます。

 しかし、やはり、国土交通大臣としてのお立場でいえば、これは閣議決定だということはお認めいただくべきじゃないでしょうか。そして、あえて言えば、麻生政権というのがまさにガバナビリティーを逸脱してしまっている状況だということを御自身がしっかりお認めいただかないと、こうした道路事業の見直しのみならず、すべての予算執行に対して同じことが起きるんですよ。

 大臣、閣議決定について、これは明確に逸脱しているということ、この一点については、再度確認ですが、総理がいらっしゃらないので、与謝野さんは通告外になりますので、お聞きいただいてなんという部分はありますかね。

 与謝野大臣、お疲れも大変よく理解できるんですけれども、今三つの所掌をつかさどるお立場で予算審議に参加していただいておりますが、このように、今、この一連の私と金子大臣のやりとりをお聞きいただいて、この二十年度予算を厳格に執行するといった閣議決定から逸脱している状況が今生まれているではないか、私はこのように申し上げているわけです。

 このようなことがあっては、政権としての信頼性というのは全く得られませんよ。与謝野大臣は、所管の財務大臣として、こうした予算執行に対する責任というのをどのようにお考えですか。閣議決定、これは私から見れば、これはだれがどう聞いたって逸脱する部分になりますよ。与謝野大臣にお願いします。

与謝野国務大臣 閣議決定文書を読んでいただきますと、「道路の中期計画は五年とし、最新の需要推計などを基礎に、新たな整備計画を策定する。この計画は、二十年度道路予算の執行にも厳格に反映する。」ということですから、厳格に反映しているかどうかということは、財務省としてもきちんとチェックをしてまいります。

馬淵委員 これも与謝野財務大臣が就任される前の話でありますから、もう既に二十年度予算は執行されてしまっています。二十一年度でやるというお話でありますが、ここは非常に重要なところでございますので、金子大臣に確認を求めますが、二十一年度予算、これに対しては、すべての事業について、これは厳格に実施ですから、平成二十一年度以降も当然含まれますから、すべての事業について事業評価実施の要領に基づいて行うということを確認されますか。

金子国務大臣 これは、前回もお答えさせていただきましたとおり、平成二十一年度の予算執行に当たりましては、高規格幹線道路及び直轄国道のすべてについて新たな需要推計に基づく費用便益の点検を年度内に行う予定であります。

馬淵委員 金子大臣、私もその答弁は前回もいただいておりますよ。そこが問題なんですよ。

 年度内というと、これは三月三十一日に例年出ているんですよ。事業評価が出されるのと、そして担当官が執行するいわゆる財務省における実施計画の承認、これは同時なんです。要は、もう予算審議は終わっているんですよ。三月、年度内という言葉でずっとこうやってごまかしてきているんですよ。先ほどの話と全く一緒なんです。

 五月の十三日、閣議決定で厳格に反映すると言いながらも、その直前に、いわゆる再議決によって関連法案がすべて通りました。一斉に箇所表が配られて、箇所づけが実行されているわけです。反映しようがないんですよ。もう機械的に流れていくんですよ。

 大臣、こういうお話をすると、恐らく金子大臣はこのようにおっしゃるかもしれません、これは予算の審議の制度の問題だと。予算審議制度の問題に私はせずに、求めます。このことについて、大臣の手によって変えることができるんです。それは何か。事業評価、国土交通省が所管している公共事業の事業評価の実施要領、いわゆるガイドライン、これを変えればいいんです。これを変えてください。ガイドライン、実施要領に、予算の審議が始まるまでに事業評価を提出する、そこで公表すると決めればいいんです。年度内ということを書いているから、結局は何の審議もなされずに、同時に出されるんですよ。審議は終わっていますよ、三月三十一日。

 金子大臣、あなたにできることです。国土交通省の公共事業の実施要領、これを提出の公表時期、年度内ではなくて、一月の初め、あるいは年内、変えられるじゃないですか。どうですか、これを金子大臣、明言してください。

金子国務大臣 現実に、公共事業、私も預からせていただいて、都度都度感じることでありますが、地元の調整、直轄負担金もあります、地元の議会、地方自治体の議会もあります、用地の問題もあります。そういう意味で、地元調整の状況など、予算執行までの間に変化する要因が多い。これはもう委員もよく御存じのことだと思いますけれども。

 したがいまして、実施計画の段階において、具体的な事業箇所、内容、規模等を確定しているところであります。

馬淵委員 それは、大臣、あなたにできることなんですよ。大臣の手でできることなんです。それを言っていれば、結局、ずっとこれは、今年度末までに、今年度までにということは、三月三十一日に出続けているんじゃないですか。

 過去において十年間ノーチェックで予算が執行されてきたことを、私、たった今、閣議決定違反だという重大な事実も突きつけながら指摘しているんですよ。

 しかし、この予算制度、審議制度そのものを変えようとなると、これは大変な作業が要ります。だから、そこについては、私は今踏み込もうとはしません。国土交通大臣のお立場で、実施要領を変えればいいんですよ、これは。実施要領は国土交通省所管で決められるんですから。なぜそれが言明できないんですか。あなたが言っていることは、結局は今までどおり何も変わらないですよと言っているのと同じですよ。

 金子大臣、ここはひとつ、このことをしっかり御答弁いただかぬといかぬと私は思っていますが、もう一度お伺いしますよ。この三月の年度内になんという言葉ではだめなんです。二十一年度予算はまた閣議決定違反することになりますよ、これは。結局は、何ら我々の審議のところに乗っかってこないんですから。

 再度確認します。実施要領の変更を明言してください。いかがですか。

金子国務大臣 先ほどおっしゃったように、ぎりぎりの地元調整をやる、地方議会にも対応してもらうということが、変化する要因が非常に多いものですから、国会の都合だけでこういう事業実施計画を、あるいは細目をペーパー一枚で変えるということは、地方自治体に大変な影響が出てくる話であります。

 そういう意味で、これをできるだけ早くやっていくということについては、もとより否定するわけではありませんが、しかし、きちんと事業評価が行われている、事業評価はしないという話じゃありませんから、きちんとBバイCの評価をする。

 それから、もう一つ大きな理由としまして、今、一段とBバイCというのが厳しくなってきただけに、今度は、事業化していって一を切るような場合には、川内議員がよく御主張されますように、それではローカルルール、あるいは車線を変えようとか、こういう変更というのも地元とやっていって、そして何とか一を上回るような規格にしてやるといったような苦労もされているということでありますので、今の段階で、私、委員の御提案を、はいそうですかと言うわけにはなかなかいかないと思います。

馬淵委員 これは大臣は、要は、今までどおり、何もやらないと言っているのと同じことなんですよ。

 結局、福田総理がある意味大英断されたことを閣議決定、その閣議決定の変更すら行わずに、やっているやっていると言いながらも、実際には閣議決定違反を続け、さらには、みずからが判断して行動できることすら、自分一人では決められない。ペーパー一つと、ペーパー一つなんて言っていませんよ。こんなの、議論すればいいじゃないですか。実施要領を変えられるんですから、国土交通省で。これは法定でも何でもありませんよ。それすらあなたは否定するんですか。国土交通省の所管の大臣として、役所に対してあなたが御下命すればいいじゃないですか、考えろと。なぜそれができないんですか。

 地方がいろいろなことを言うのはわかっていますよ。それでも、こうして国民からは、不断の監視のもとにしっかりとやれという声が上がるからこそ、閣議決定までして決めてきたんじゃないですか。それを変えることができない、自分ではできない。だったら、あなた、国土交通大臣をおやめになる以外ないですよ。金子大臣、あなたの指示でできるんですよ。あなたの判断、決断でできるんですよ。

 もう一度だけお伺いしますよ。私の言葉をここで、はいそうですかと聞くことはできない、そんなこと申し上げていません。私の言葉ではない、まさに審議の流れの中で、結果じゃないですか。一時間かけて私はお話ししてきました。論旨明快だと私は思っていますよ。

 金子大臣、最後にどうですか、お答えください。

金子国務大臣 やはり、先ほど申し上げましたように、本当にぎりぎりの調整をやりながら、何とか規格も変更してやろう、あるいは、コストの削減もしよう、地主の了解も得ようということで今やっておるところでありますので、国土交通大臣としてやらなければいけないことは幾らでもありますけれども、私が必要だと思っていますことは、やはりきちんと事業評価すること、手続はきちっと透明化していくこと、これは必ず守っていくべきことだと思っております。

馬淵委員 もう何をお聞きしてもお答えいただけない状態になっておられると私も思いますよ。しかし、まさに官僚内閣制、政治主導とはほど遠い。こういう予算審議、これをもしテレビでごらんいただいたら、国民の皆さん、残念に思いますよ。なぜそこで英断できないのか、そのように感じられるんじゃないでしょうか。

 今、地方のこと、大変なんだという思いでありましたから、きょう、ちょっとお待たせしましたけれども総務大臣もお越しいただいていますから、地方の話もちょっとさせていただきますよ。

 道路というのは、地方も絡んでくる、まさに直轄事業の問題です。直轄事業の問題では、いわゆる地方の負担の問題というのは、再三当委員会で、今年度に関しましても何名かの方が質疑をされておられます。この地方の問題、道路が必要だという地方の声もあれば、いや、道路事業じゃなくて自分たちは教育なんだとかあるいは医療なんだ。これは、一番わかりやすい例で言えば、橋下大阪府知事などが、直轄事業の負担金については、自分たちはこれは払えないんだ、いや、もう払わないんだ、押しつけだ、このようにおっしゃっておられる。

 こうした押しつけに対して、まあ押しつけかどうかわかりませんが、そのようにおっしゃっている中で、鳩山大臣は非常に踏み込んだ発言を十二日の衆議院本会議でなさいました。

 これは原口議員の質問に対してでありますが、いわゆる直轄事業の地方の裏負担問題ということで原口議員が質問されたわけでありますけれども、鳩山総務大臣は、国と地方の権限配分の問題としても根本から考え直していかなければならない事項であると思っております、こうお答えをいただいております。

 また、さきの他の委員からの質疑にも同様に、どのような形がいいのかといったことも踏まえて答弁をされておられますが、地方ではこうした社会資本整備は、必要だ、不要だ、これはそれぞれの事情がある、しかし国が直轄でこれを押しつけていくような形があってはならない、根本から見直すんだという答弁をいただいております。

 それは、今ここで決まっているわけではないのは重々承知しておりますが、具体的に、方向性としては鳩山大臣の御意向というのはどういうところにあるのか、これを明確にお答えいただきたいと思います。

鳩山国務大臣 直轄事業の問題は、基本的には私は、国と地方の役割分担、あるいは事務あるいは権限の分担の問題ではないか、こう思っております。

 直轄事業というのは、一般的に三分の二は国が負担をするが、当然直轄ですから、直轄という言葉からいえば国が全部出しておかしくないんだけれども、三分の一、地方に負担を押しつける。事前によく相談がなされていない場合があるようで、これを直轄でやるから三分の一負担しろと言われて、それこそBバイCではないけれども、うちの地元にどれくらい利益があるかよくわからないな、金だけ取っていくのかという思いに首長さんたちや知事さんがとらわれることが多いのではないかと私は思う。

 したがって、直轄事業をやるのであれば、本筋は国が全部つくって、ただ、地域にベネフィットがあるから、地域に若干の負担ということも考えることがおかしいとは思わないけれども。しかも、県が補助国道をつくった場合は、県が全部維持管理をやるわけですね。ところが、直轄といいながら、維持管理だって半分弱持たなくちゃならない。

 こういうことであるならば、よほど地域が納得していなくちゃいけないということですが、私は、基本的に直轄事業というものをうんと減らせばいいと。それは、先ほど前原委員でしたか、国の出先機関の整理の問題があったけれども、要するに直轄事業が多過ぎるわけですよ。

 だから、本当に直轄にしなくちゃいけないものは幾つかあると思うんです。今度の新しい直轄の高速道路とかあると思うけれども、私は、ほとんどのものは直轄事業である必要がない、基本的にそう思っているわけでございまして、だから、それこそ与野党の垣根を越えてそれを話し合うべきだと思うし、現在まだ直轄の負担金の積算やその明細について余り透明でなくて、何でうちがこれだけ負担するのかなという不満も随分出てきております。

 地方分権改革推進委員会が今、国と地方の役割分担の見直しについて議論しておりまして、二次勧告が出ておりますが、いずれ直轄事業の負担金の見直しについても、そこで検討してもらおうと思っております。

馬淵委員 鳩山大臣は非常に明快にお考えをお持ちいただいているんだなというのは、繰り返しの御答弁、申しわけございませんでしたが、再度確認させていただきました。

 まさに、国が本来行おうとしているのであれば国の事業として行うべきではないのか、また逆に言うと減らすべきではないのか、こういう方向でありますが、これは本当におっしゃるように、事業が実際に直轄事業でスタートする、しかし、それが決算してみると膨らんでしまっているというようなことも往々にございます。

 国土交通省に、これは参考人にお尋ねします。平成十九年度、全国の直轄事業、当初予算と決算額、端的に数値だけで結構です。

増田政府参考人 お答えを申し上げます。

 平成十九年度の国土交通省関係の直轄事業負担金でございますが、当初予算で約九千三百十億円、決算額で約一兆百六十五億円となっております。

馬淵委員 これは約九%ふえているんですね。結局、国の直轄事業というのは、地方の要望だなんだとか言われながらふえてしまっている現実があります。一割ふえているんですね。もちろん減っているところも、これは都道府県を全部見ればいろいろでこぼこはありますが、トータルでいうと一割ふえている。

 このようなことに対して、かつての行政の長でおられた片山善博前鳥取県知事が、これは昨年の三月の新聞の中でこのようにおっしゃっております、現場をよく御存じですから。国は計画変更をよくやります、後から、事業費が二倍に膨らんだので県の負担分も二倍になりますといって、過大な請求書を送りつけてくる、たちの悪い場末の風俗店みたいなやり口です。これは私には実感がわかないのでありますが、このように、要は請求書がどんと来る、片山さんがそのようにおっしゃっているんですね。これが実態なんですよということであります。実際に一割、一〇%近く、九%ふえています。

 こうした地方の状況でありますが、そこで国交省にお尋ねをします。これも事務方で結構です。国土交通省から地方自治体への出向者数ということで、二月六日に確認したという数字で、数字だけお願いします。

増田政府参考人 お答え申し上げます。

 国土交通省からは、平成二十年八月十五日現在で、課長級以上のポストということでございますが、二百八十四名の職員が出向いたしております。

馬淵委員 お出しいただきました資料は添付すると膨大になりますので挙げておりませんが、いわゆる県の土木部長、整備部長、あるいは土木課長、都市計画課長、こういったところにずらずらと出向されているわけですね。

 鳩山大臣もいらっしゃるので、総務省もちょっと数字だけ確認しますね。課長級以上とあとすべてという、二つの数字だけお願いします。

田中政府参考人 総務省から地方公共団体へ出向している職員、先ほどの国土交通省と同じでございますが昨年の八月十五日現在の状況で、まず総数で申し上げますと、二百九十三人でございます。今御指摘の課長級以上の職員につきましては、二百三人となっております。

 以上です。

馬淵委員 金子大臣、ちょっとお休みいただいたので、少し御答弁いただけますか。

 先ほど金子大臣、地方とのいろいろな、これは大変なんだとおっしゃっていますが、地方は、現場には実は国交省の職員が行っているんですよ。地方は、まさに国交省、総務省もありますが、このような形で国の本省から出向した部長、課長たちが、そこである意味、差配している。

 この直轄事業、地方は疲弊をしている、確かに、首長になられた方というのはこれを非常に強く感じられるでしょうね、手足を縛られているような状態だと。橋下知事、あるいは最近では新潟の泉田さんなんかもおっしゃっておられます。片山さんなんかも、これはすごく痛感されたんだと思いますが。

 このように、首長として実際に行政を動かす立場であれば、これは大変だなと思われるが、実態としては、中央省庁、府省の支配下に地方自治体が置かれてしまっている。直轄事業は国が行うべきであり、原則的にはこれは減らすべきだ、おっしゃるとおりですが、出先機関の地方自治体に府省から出向させていって、そういう意味ではすべて枢要なポストを握っている。だから、先ほど申し上げたような、自動的に予算が次から次へとついて何のチェックもなく延々と事業が続くという仕組みができ上がっていくんですよ。

 金子大臣は先ほど地方との、いや、地方とのせめぎ合いが本来的にお互いに主張をぶつけ合う形であればいいですよ。そうじゃないんです、実態は。このように、申し上げたように、国土交通省からは土木部長だ整備部長だとさまざまな形で出向して、肝心の事業をそこで、これは出向ですから本省に戻るんですよ、本省の意向、命を受けて動かすように行動するのは想像にかたくないじゃないですか。実際に、道路整備やさまざまな社会資本整備がこのように中央の意思を受けて動いてしまう。鳩山大臣が一生懸命、これはちょっと見直さないかぬなとおっしゃっても、この仕組みを変えないことにはどうしようもないんですよ。

 鳩山大臣、これは今後、分権改革推進本部の中でも議論するとおっしゃっておられますが、この部分抜きでは、結局は中央省庁の思惑のまま動いてしまうことになる。鳩山大臣、いかがでしょうか。

鳩山国務大臣 せっかくのお話なんですけれども、身びいきな言い方をするわけではありませんが、総務省から地方へ出向している場合は多少違うと思いますよ。

 それは、ほとんどは地方の首長さんからぜひ欲しいということで差し向けているわけで、総務省は旧自治省ですから、地方自治に非常に詳しい。私、いまだに地方交付税の積算とか、それは正直言ってまだ数カ月では完璧に理解できませんよ。それは逢坂先生の方がはるかに詳しいわけだ。

 要するに、そういう意味で、旧自治関係の人間が行った場合は、それは地方税にしても地方交付税にしても詳しいから、非常に便利なんではないかな。総務省の言うことを聞かせるというのではなくて、自治体が総務省とか地方自治をよく理解できるという意味でですね。それは中には、いろいろ地方へ行って帰ってきた総務官僚の中で、地方で大分威張ってきたんじゃないかと見える人もいるけれども、大多数は謙虚にやってきていると思います。

馬淵委員 わかりました。

 総務省は違うという御答弁でありますが、いずれにせよ、私が申し上げたいのは、このような形で中央による支配ということが厳然と、このような出向者の数を見れば明らかであり、そのポストを見れば明らかですよ。

 それで、直轄事業の話に戻りますけれども、しかしながら、もう地方の財政は疲弊していますから、もはや払えない、このような発言をされておられます。では実際にこのような形で、補助金削減などという報復も恐れてなかなか踏み出せないといった地方自治体もあるかもしれませんが、もしこの負担金が払えないんだというようなところについては、鳩山大臣は、これは大阪府についてだと思いますが、事業の進行がおくれるというふうな形になってしまうのは、まあやむを得ない、このようにお話しされています。

 そこで確認しますが、鳩山大臣、これはつまり、進行がおくれるというふうな形になると事業は一たん停止する、そういうことでよろしいんでしょうか。これは端的にお答えをいただけますでしょうか。

鳩山国務大臣 先ほどお話ししたように、橋下知事初め、やはり必ずしも評判のよくない部分がありますから、橋下知事がおっしゃっていることは心情的にはよく理解できますが、今の仕組みのもとで地方が負担されないということであるならば、例えば道路でも河川でも、三分の一負担をしていただくというその金額が減れば、それだけ整備されるところが短くなってしまうということを申し上げているんです。(馬淵委員「事業がとまるということですか」と呼ぶ)事業というか、だから、例えば直轄国道一キロ分の整備のところが七百メーターとか八百メーターに縮んじゃうということを申し上げているわけです、その年の事業として。

馬淵委員 その年の事業としてこれが短くなってしまう、縮んじゃうと今表現されましたが、これはつまり、その部分は事業がとまるということですね。

 国土交通大臣にお尋ねします。直轄負担金の支出を拒んだ場合、事業はどうなるんですか。

金子国務大臣 地方自治体、地方整備局は、こういう直轄事業について繰り返し繰り返し意見交換と情報交換を行いながら事業を進めておると思っております。

 ただ、そうはいっても、地方自治体、知事等から見ると必ずしもそれが円滑に行われていない、費用が増加するとその分が自動的にツケに回ってくるといったような、知事と国交省から県に出ている土木部長、要請されているので決して押しつけているとは思いませんけれども、しかし、その人たちと知事との間の情報というのも、やはり必ずしも十分でないようなところもあるのかもしれません。

 そういう意味では、現実に補正予算で、知事、自治体によりまして、補正について今回はパスしたいというようなことをつまり選択している、これについては直轄事業にこたえるけれども、これについてはやらないといった選択を今自治体が始めているという現状であると思っています。

馬淵委員 済みません、金子大臣、鳩山大臣は非常にわかりやすく御答弁いただいたんですが、金子大臣、もう一度聞きますよ。今のはちょっと私、よく理解ができないんです。(発言する者あり)おっしゃるとおり、頭が悪いので申しわけないです。

 地方負担金を拒んだ場合、国交省として事業はとめることになるのかどうかと私はお尋ねしているんですよ。明確にお答えいただけませんか。

金子国務大臣 各県一つの事業だけではありません。この事業はつける、この事業は見送る、その場合に、見送った事業については予算はつかないということであります。地方が選択を今されているということを申し上げたところであります。

馬淵委員 それは地方が決めるということですか。もう一度確認しますよ、金子大臣。

 直轄事業を国が決めているわけですね。そして、国が決めて、当然地方の負担が発生するわけですけれども、この地方負担について、いや、これはもう払えませんと言うということは、では事業は要らないんだな、とめるぞという話じゃなくて、地方が決めるんだ、そういうことですか。

金子国務大臣 先ほど申し上げたように、国交省、地方整備局でありますけれども、県と本当に話し合いながらやっております。

 ただ、自治体によっては、これについては事業負担は財政が厳しいので見送る。例えば、大阪の例でいえば、第二京阪は、予算、一〇〇%直轄負担金を出すけれども、その他の事業については見合わすという選択を地方自治体としてやっているということを申し上げたんです。

馬淵委員 済みません、甘利大臣も谷総裁にももう質問の時間がなくなっておりますので、準備をしておりましたが、お仕事忙しいでしょうから、本当に申しわけございません。(発言する者あり)いえいえ、金子大臣にどうしてもこれは確認しておかないかぬですから。

 済みません、金子大臣、今のお話は地方が見合わすということですが、そうじゃないんです。今、橋下府知事がおっしゃっているのは、これはもう払わない、拒むんだと。少なくとも、負担について拒否した場合に、国土交通省はどう判断し行動するのかというのを私は聞いているんですよ。地方がどうしたかじゃないんですよ。

 今、鳩山大臣の方には、どのようになりますかと聞いたところ、これは道路あるいは河川なり、その整備が短くなる、すなわち減る、つまり事業はとまると。これは鳩山大臣の方ではそういう解釈をされました。

 国土交通省として、いいですか、金子大臣、大臣は、先ほど来の議論の中でも地方の声をさまざま聞くとおっしゃっている。しかし、地方には国土交通省から出向した幹部、幹部ですよね、部長なり局長級で行っているわけですから。そういった方が張りついていて、そしてこの直轄事業について押しつけられたと行政の長の方々はおっしゃっている。だから、払えないのでもう払わない、疲弊した財政の中で、払わないと言う。

 総務省のお立場でいえば、もうそれは縮むでしょう、つまり事業はないでしょう、事業はとまるでしょうというお立場で発言をされた。しかし、これはあくまで総務省の見解です。

 所管である国土交通大臣は、では、これは払わなければ事業はとまるということなのかを明確にお答えいただけませんか。

金子国務大臣 橋下大阪府知事のケースが出ましたので申し上げますけれども、直轄負担金は払えないということでおいでになられまして、話し合いをさせていただきまして、最終的に払うという話し合いの結果が、負担をするという結果が出ました。

 ただし、先ほど申し上げたように、第二京阪については払うけれども、それ以外の直轄については払わない、したがってその事業はできない、そういうことであります。つまり、その選択は、相当話し合っておりますけれども、地方自治体が選択されているという部分も多いということであります。

馬淵委員 これも大事な答弁をいただきましたよ。国土交通省としては、その判断の中で、国土交通省は事業をとめるということではないということですね、今のお話ですと。そういうことですよね。

 これは、直轄事業について、国が求めて、そしてその負担を当然ながら地方自治体にしていただくと今の法令で定められてはいますが、しかしながら、大阪府を横に置いておきますよ、負担ができないと言った場合には、これは、しっかりと、国土交通省としては事業をとめるということではないということですね、今のお話ですと。

 ちょっと、イエス・オア・ノーで、もう一度。

金子国務大臣 今の枠組みでは、負担できない場合には事業はできなくなります。

 ただ、福岡県の知事会長もやってまいりまして、こういう直轄負担金のあり方について、国と知事会と協議をしよう、今協議の場をつくろうということで合意をしております。

馬淵委員 九十分の時間をいただきながらも、もう時間がなくなってまいりましたが、今、余り明確に私には聞こえなかったんですけれども、何とかお答えをいただいた。少なくとも、国土交通省としては、負担をできなければ事業は進められないという御判断だということで理解をいたしました。

 いずれにせよ、先ほども、道路問題を踏まえて、地方の声を聞いて、そしてそれを踏まえてやっているから時間がかかるんだとかいう話じゃなく、国交省から地方自治体に幹部として出向させて、そしてさまざま地方の事情を把握した上で直轄事業というものがそのまま自動的に流れる仕組みが今日続いているということ、このことをこの予算委員会の中できょうは九十分かけて明確にさせていただいたということで、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

衛藤委員長 これにて馬淵澄夫君の質疑は終了いたしました。

 次に、逢坂誠二君。

逢坂委員 民主党の逢坂誠二でございます。

 きょうは、前半が三十分で間が入って四十五分ということで、若干時間が変則なんですが、やらせていただきたいと思います。

 まず最初に、きのう私どもの同僚の細野議員から話のありましたアフラトキシンについて若干お伺いをさせていただきたいと思います。

 アフラトキシン、御案内のとおり、地上に存在する物質の中で最も発がん性の強いものというふうに言われているわけですが、まず、厚生労働大臣、舛添大臣にお伺いしますけれども、厚生労働省の検査で国内産の食品からアフラトキシンが検出された経過というのはこれまでございましたでしょうか。

舛添国務大臣 輸入時に水際検査をやっていますので、外国製品については幾つか出ていますが、お尋ねの国産食品につきましては、食品衛生法の規定に基づく都道府県等の監視指導のほか、厚生労働科学研究、食品中のカビ毒の毒性及び暴露評価に関する研究においてアフラトキシンの検査が実施されているものの、アフラトキシンが検出された旨の報告はないということであります。

逢坂委員 同じく今度は石破大臣にお伺いしますけれども、国内産の農産物からアフラトキシンが見つかった例というのはこれまであるのでしょうか、お伺いいたします。

石破国務大臣 これまで検出されたという報告は受けておりません。

逢坂委員 そうなんですね。これまでアフラトキシンが検出されているのはすべて海外からの農産物あるいは食品ということでありまして、国内産からは検出されないわけであります。その理由は、既に石破大臣、舛添大臣御存じかと思いますけれども、アフラトキシンを産出するカビというものが実は基本的には日本にはいないというふうに言われているからなんですね。カビがいないわけであります。いないから、当然、国内産の食品からはアフラトキシンが出てこないわけであります。

 ところが、きのうの石破大臣の答弁の中で、私はこれは重要な答弁だというふうに感じたわけでありますけれども、きのうの細野委員とのやりとりの中で石破大臣がこう申しております。

 若干途中省略いたしますが、平成二十年の四月から十二月、MA米で、要するにミニマムアクセス米でカビが発見され、分析が終了したものは二十一件、このうち、アスペルギルス・フラバス種、これがアフラトキシンを発生するカビですけれども、アスペルギルス・フラバス種なるものが同定されたのは十六件、そのうち、アフラトキシンB1という悪いものが検出されたのは一件、こういう発言をしているわけです。

 私は、アフラトキシンそのものが国内に入ってくるということは大変なことだというふうに思いますけれども、同様に、アフラトキシンを産出するカビが国内に入ってくるということについては、やはり相当な危機感を持って対処しなければいけないのではないかというふうに思うんです。

 ただし、アフラトキシンにはある一定の生息条件がございます。湿度と温度というものがございます。もちろん、それはアフラトキシンカビがある一定の自然界の中にいるときはそうなのでありますけれども、そのカビが必ずしも自然界だけにいるとは限らないんですね。すなわち、私が言いたいことはどういうことか。暖かい場所や湿った場所というのは人工的につくり出すことができたり、あるいは室内や倉庫の中でそれが繁殖しないという保証はないわけであります。

 したがいまして、私は、石破大臣に強くここのところを認識していただきたい。アフラトキシンが入ってくることだけが問題なのではなくて、アフラトキシンを産出する可能性のあるカビが入ってきていることが実は極めて問題が大きい。万が一それが日本で繁茂するということになれば、国内の食品にも影響を及ぼしかねないおそれを否定できないというふうに思うわけですが、大臣、いかがでしょうか。

石破国務大臣 おっしゃるとおりであります。

 したがいまして、昨年十二月八日から、販売前にすべての袋をあけます、詰めかえますということで目視で確認し、二月の十九日、つい先日でございますが、その販売直前の目視の確認に加え、カビ毒分析を実施し、アフラトキシンB1が出ない、すなわち、陰性のもののみを食用として販売するということにいたしておるところでございます。

逢坂委員 ぜひこの点は強く認識をしていただきたい。単にアフラトキシンが検出されなければよいということではなく、そのカビの存在そのものが国内を脅かすもとになりかねないということでございます。

 実は、なぜ私がこういうことを言うかといいますと、私、学生時代にある菌類を使って一年半実験をいたしておりました。それは大学の三年生から四年生にかけての時期だけだったのでありますけれども、具体的な年数は忘れましたけれども、五年か六年たってから、その実験から私が全く離れた後に、私が持っているかばんの底、革のかばんでしたけれども、そのかばんの底にその菌類が再び生えてきたという経験を持っているんですね。しかも、その菌類はどこの株であるかというものを明確に同定して我々は実験をやっておりましたので、まさに私が五年か六年前に大学でやっていた実験のその菌類が私のかばんの底に生えてきた。しかも、そのかばんは、私が学生時代に使っていたかばんではないわけであります。学校を卒業して新たに買って日常的に使っていたものにそういうようなことが生まれたということで、ですから、菌類、胞子というのは実は極めて生命力の強いものでもあるということをぜひ石破大臣に御認識をいただきたいと思います。

 そこで、もう一つお伺いしたいんですけれども、現在、日本ではMA米の輸入量というのは大体八十万トンとか九十万トンという程度であります。それに比べまして、小麦の輸入量でありますけれども、これはオーダーが一けた変わりまして、五百とか六百万トンという単位になるわけですね。

 そこで、舛添大臣にお伺いしますけれども、輸入小麦についてアフラトキシンの検査は行っているのかどうか、お伺いをいたします。

舛添国務大臣 輸入小麦につきまして、検疫所のモニタリング検査におきましてこのアフラトキシンの検査をやっておりますが、平成十九年度には、アフラトキシンが検出された事実はございません。

逢坂委員 今、十九年度ということでありますけれども、ほかの年度については、大臣、いかがでしょうか。これまでそういう例はあったのかなかったのか、それはいかがですか。

舛添国務大臣 今、私のところには十九年のデータがございます。細かいそれ以前のデータがどういうふうになっているかということは、また新しいデータが入り次第お知らせしたいと思いますけれども、今の段階では、十九年度についてはないということですので、データはわかり次第お知らせします。

逢坂委員 データがないのであればこれ以上議論になりませんので、また後ほどということにしますが、今度は石破大臣にお伺いします。

 小麦に関して……

衛藤委員長 答弁をちょっともう一度。

 厚生労働大臣舛添要一君。

舛添国務大臣 大変失礼しました。

 今、過去のデータがありまして、今までもなかったということです。

逢坂委員 石破大臣にお伺いしますけれども、農水省として、国家貿易枠というんでしょうか、これで小麦を輸入している。商社の親玉という言い方は失礼ですが、そのような役割をして小麦を輸入しているというふうに伺っておりますけれども、これについては農水省として検査はやっているんでしょうか。

石破国務大臣 米はやっておりますが、麦はやっておりません。

逢坂委員 石破大臣、麦をやらない理由は一体何なのでしょうか。

石破国務大臣 そんなの理由になるかという御指摘を覚悟の上で申し上げますが、これは、米とは異なり、輸入から販売までの間が二カ月から三カ月と短いんです。その間に発生しないなんて何で断言できるんだ、こういうことになるんだろうと思います。

 それから二番目は、お米は精米で入れますが、お米の場合と違って、麦の場合には原麦で輸入をしている。つまり、精米にしますと、その過程で傷がついちゃったりして、委員は専門家ですから御存じですが、そこでカビが繁殖することがあるが、麦の場合には原麦なのだと。そして、過去五年間に輸入検疫検査で検出された事例がないということから、カビが発生する可能性が低い、それが今まで行っていなかった理由である、このように認識をいたしております。

逢坂委員 今まで行っていなかった理由、そんなのが理由になるかと言われそうだということを石破大臣みずからおっしゃいました。私もそのように、石破大臣のおっしゃったとおり、思うわけでありまして、ぜひ、大臣、これは今後検討していただきたいというふうに思うんですね。

 と申しますのは、実は、麦というのは、生育している最中、穂が出ますね、穂が出るときに、実際、麦の殻のままで結構カビがつくんですね。穂発芽というものもありますし、雨が多くなると麦の穂にはカビがつくという、つきやすい性質のものでもありますので、ぜひ、このことは、大臣、すぐできるかどうかはわからないにしても、流通量が全く違っていますので、御検討の方、いかがでしょうか。

石破国務大臣 御指摘をいただき、ありがとうございました。

 その方向で検討いたします。

逢坂委員 順調に質疑が進んでおりまして、ありがたく思います。

 それでは、何せ三十分しかないものですから、次の話題に入りたいと思いますが、ことしの一月一日、NHKのニュースでこういう報道が流れました。ちょっとその全文を読ませていただきます。

 去年、全国の自治体で裏金づくりなど補助金の不正流用が相次いで発覚したことから、会計検査院は、ことしから、国が自治体に配分している総額十六兆円に上る地方交付税について、本格的な検査に乗り出すことがわかりました。会計検査院は、昨年、検査の対象とした十二の道府県すべてで、国からの補助金など八億円余りについて、裏金にしたり物品の購入に流用したりする不正なケースが見つかったことから、ことし、残る三十五の都府県と政令指定都市についても検査を進めることにしています。これに加え、国が自治体に配分している地方交付税についても、ことしから本格的に検査を行うことを決めました。地方交付税は、本来地方が集めるべき税金を国がかわりに集めて配分するもので、補助金と違って使い道が制限されず、検査の対象にはなりにくいものでした。しかし、自治体によってはずさんな使い方がされているという指摘もあることから、四月に専門のセクションを新設し、検査に乗り出すことにしたものです。地方交付税は一般会計の一八%近くに当たるおよそ十六兆円に上っていて、会計検査院は使い道などを詳しく調べることにしています。

 これがことしの元旦にNHKで流れたニュースであります。私はこのニュースを聞いて、非常にぎょっといたしました。そしてまた、私がぎょっとしたのと同時に、全国の自治体の関係者からも、逢坂さん、あのニュース、本当なの、一体国はどうなっているんだいというようなことを言われたわけであります。

 地方交付税法の規定によれば、地方交付税法第三条二項に「国は、交付税の交付に当つては、地方自治の本旨を尊重し、条件をつけ、又はその使途を制限してはならない。」というふうに規定されているわけですね。

 したがいまして、条件をつけたり使途を制限してはならないというものに対して国が会計検査をやるというのは、私はちょっと違うんじゃないか。もし自治体で使い方に対して問題があるというのであれば、自治体議会だとか、自治体監査だとか、自治体首長の権限や責任の中でまず第一義的には行われるものだというふうに思うわけですが、総務大臣、いかがでしょうか。

鳩山国務大臣 一月一日のNHKのニュースにおいてそのような報道がありましたことは、先生から質問通告を受けて初めて知りました。

 おっしゃるとおりでして、会計検査院というのは、私の理解が間違っておったら別ですが、国のお金の使い道についてこれをトレースするものではないかと思うわけです。したがって、補助金として出したものがおかしく使われていれば、これは会計検査院が調査をする。

 それで、今のNHKの報道の、つまり、調査しなかったところの残る三十五の都府県と政令指定都市についても検査を進めることとしていますという話は、私は正しいと思っております。

 ですが、地方交付税というのは、基本的に、いろいろ理屈はあっても、最終的には地方が自由に使える財源でございますから、地方交付税をああ使った、こう使ったということについて、会計検査院は口を出すべきものではないと私は思います。

 ただ、いわゆる一般財源化して、地方交付税の積算根拠、すなわち基準財政需要と収入の差、この基準財政需要を積み上げるときに、例えば、義務教育の負担金みたいなもの、国庫負担制度のようなもの、これが二分の一が三分の一になったわけですが、学校の数が全然違っていたりすると、基準財政需要の積み上げが全くおかしくなりますから、そういうことについては今までも例があったと思うし、これからもあるかもしれませんが、地方交付税全体について、その使い道を会計検査院が調べるということはあってはならないことだと思います。

逢坂委員 全く総務大臣のおっしゃることで私は正しいと思うんですが、会計検査院にお伺いというか、お願いをしたいんです。

 先ほども言いましたとおり、地方交付税の交付を受けた団体の検査を行う場合には、交付税法の第三条二項、「国は、交付税の交付に当つては、地方自治の本旨を尊重し、条件をつけ、又はその使途を制限してはならない。」というふうに規定をされているわけですが、この交付税法の趣旨を尊重して検査を行っていただきたいというふうに思うわけですが、この点、会計検査院、いかがでしょうか。

諸澤会計検査院当局者 地方交付税の交付金の検査についてのお尋ねでございますが、お答えを申し上げます。

 会計検査院は、地方交付税の検査に当たりましては、国の収入支出について検査をしなければならない旨を規定しております会計検査院法第二十二条第一号、これに基づきまして、地方交付税交付金の検査を行っているものでございます。

 また、会計検査院は、必要と認めますときには、会計検査院法第二十三条第一項第三号の規定に基づきまして、国が直接または間接に補助金、奨励金、助成金等を交付しているものの会計等について検査することができるとされているこの規定によりまして、会計検査院が必要と認めるときは、地方交付税交付金の交付を受けた地方自治体の会計経理についても検査をすることができるものでございます。

 ただし、先生お話ございましたように、会計検査院は、地方交付税の交付を受けた地方自治体の検査を行うに当たりましては、地方交付税法第三条第二項の、「国は、交付税の交付に当つては、地方自治の本旨を尊重し、条件をつけ、又はその使途を制限してはならない。」という規定の趣旨を尊重して検査を行う必要があると考えているところでございます。

逢坂委員 それでは、このNHKの件については、以上で一件落着ということで終わりたいと思います。

 それで、一問ちょっと戻らせていただきたいんですが、石破大臣、大変恐縮です。

 昨日、大臣は、既にカビの分析発注をしたものの分析が終了していない三十三件について、最後まで分析を行う旨の表明をしておりますけれども、一月までにカビが発見され、まだ分析発注をしていない二十七件についてもカビの分析を行うべきだというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

石破国務大臣 きのう、細野議員の御指摘に対しまして、すぐのお答えにならなくて失礼をいたしました。

 残り二十七件につきましても、カビ対策の改善強化のための資料とするために、残り二十七件につきましても分析を行うということにしたいと存じます。

逢坂委員 石破大臣、もうよろしいと思います。ありがとうございます。

 それでは、次の問題に入りたいと思いますけれども、一昨日、二十三日に、国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通しというものが発表されております。これに対して、各新聞などを見ましても、非常にこの見通しが楽観的であって、これは逆に国民に不安を与えるんじゃないか、こんなものを発表して本当にいいのか、撤回しろみたいな声まで出ているわけであります。

 それで、幾つかちょっとお伺いをしてみたいと思うんです。

 まず、実質賃金上昇率ですね。平成十年から十九年までの実質賃金上昇率の単純平均はマイナスの〇・六%。ところが、これを二%以上改善するというようなことが前提になっている。これは本当に大丈夫かというような声が、マスコミのみならず、いろいろなところから出ているわけであります。

 あるいは、実質運用利回りについても、十年から十九年までの実質運用利回りの単純平均一・七%、特に経済状況がいいとされている二〇〇二年から七年の間の最も高い利回りでさえ二・四三%なわけですね。ところが、今回、これを四・一というふうにやっているわけでありますけれども、これも本当に大丈夫か。

 それから、全要素生産性ですね。これも、前回の二〇〇四年の改定では、基準ケースで〇・七%というふうにされていましたけれども、今回、中位一・〇%に引き上げられているわけであります。

 それで、舛添大臣、ほかにもいろいろ例があるんですけれども、申し上げませんけれども、押しなべてこの前提が楽観的過ぎて、本当に大丈夫か、この点についていかがでしょうか。

舛添国務大臣 これは、五年に一遍こうやるというルーチンの仕事でありまして、それで、経済、金融の専門家の皆さん方がおやりになって、いろいろなデータのとり方でございますけれども、例えば運用利回りにしても、過去実績二十年―二十五年を、今度、将来実績二十―二十五年にプロットする。それで、例えば二〇一〇年、つまり二年後にどうなっているかで、経済が急速に回復するシナリオ、中位のシナリオ、まだまだ低迷しているシナリオで数字が違いますけれども、全部中位をとってあります。

 それで、具体的には、では、いつまでのデータを入れているんだというと、経済状況によって、例えば株価については昨年十二月末までの水準を入れております。それから、全体的には、経済財政の中期展望と十年展望比較試算というのを一月に公表されましたけれども、こういう内閣のデータを使っていますので、今、現下の状況で見ればそういう御感想はあると思いますけれども、二十年―二十五年のプロットをしたときに、これはどういう形で経済が急速によくなるかわからない。二十年―二十五年の範囲でやっているんだというのをまず御理解いただいておきたいというふうに思います。

逢坂委員 そこで、舛添大臣、経済の情勢、雇用の情勢などについてはいろいろなことが言われると思うのでありますが、今回のこの財政検証の中で、国民年金の財政見通しというのも持っているわけですね。この国民年金の財政見通し、これは収納率を一体何%で見ておられますか。

舛添国務大臣 これは、努力目標ということで八〇%という数字を使っております。

逢坂委員 そこで、社会保険庁にお伺いします。

 直近のデータで国民年金の収納率というのは何%になっていますか。そうして、努力目標で今八〇%というふうに舛添大臣からお伺いをしましたけれども、事務方から伺ったところ、今回のこの推計のどこから八〇%を適用させるかについては、平成二十一年度以降ずっと八〇%で推移をするというようなことで推計をしているというふうに聞いておりますので、直近のデータで何%かと、二十一年にそれは八〇%になるのかならないのか、社会保険庁の推計をお伺いします。

坂野政府参考人 直近のデータで申し上げますと、平成十九年度の国民保険料の納付率は六三・九%でございます。

 また、平成二十一年度以降でございますが、私ども社会保険庁としては、平成二十一年十二月末をもって新しい年金機構に変わるわけでございまして、二十一年度については、平成二十一年の十二月末までの事業目標をついせんだって設定いたしました。そこでも、私ども、目標としては納付率八〇%を設定することといたしております。ただ、その実現は、率直に申し上げて、なかなか容易ではない。

 ただ、これは直近の状況、現在置かれている状況ではそういう状況にあると思いますけれども、しかし、私どもとしては、この八〇%は平成十五年以来、中長期的な目標として設定をし、それに向けて努力をしておる中で、最大限の努力を払うということにしておるわけでございます。

 詳しくは申し上げませんが、納付率を上げるための努力もさまざまな手段を講じて努力をしてまいりたい、その中で、中長期的な目標としての八〇%をできる限り達成していきたい、そのように考えておるわけでございます。

逢坂委員 今社会保険庁の長官から、努力目標として、二十一年、八〇%だということが披瀝をされた。しかしながら、なかなか容易ではないという話も率直にされたわけであります。

 舛添大臣、今六三%だ、もし仮にこれが二十一年までに八〇にならないとするならばどの程度の影響が出るのかというところについて、実は、昨日、これは厚生労働省から、そうなった場合にどうなんだという話を聞かせてもらいました。

 これは社会保障国民会議所得確保・保障分科会の第四回の会議に厚生労働省が出された資料で、納付率八〇%のケースが所得代替率が五一・六%、納付率六五%のケースでそれよりもマイナス〇・五ポイントというふうに厚生労働省が出しているわけですね。まさに今の現実がこれに当てはまるのではないかと。八〇%に設定しているけれども実際には六三%台だということでありますから、〇・五ポイント下がるとするならば、今回のこの出生中位、経済中位で五〇・一%というのは、そもそも四九・六というのが正しいのではないか、もしそうなれば。

 だから、私が言いたいのは何かというと、国民年金のところ一つをとってみただけでも、もうこれはそもそも破綻しているんじゃないか、この検証結果が。私はそう思うわけであります。

 大臣、これは、一回出し直すとか検証し直すとか、そうしないと逆に国民の不安をあおることになりはしないか。あるいはまた、あわせて、これほど経済の状況が激しく動いているときですから、昨年末の状況をなるべく入れ込んで計算した、推計したというふうに言っていますけれども、それを早急にもう一回スクリーニングし直すということが必要なのではないかと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 これは人口統計と同じで、定期的に五年に一遍やるということに意義があります。そして、先ほど言ったように、二十年―二十五年、二〇三八年の姿を書いております。

 ですから、極端に言うと、どういう要因で急速に経済が回復するかもしれない、しかし、御懸念のようなさまざまな問題があると思います。それはきちんと配慮した上で、昨日も申し上げたと思いますけれども、四本柱、つまり十六年改正の四本柱、二分の一の国庫負担とか、五〇%を切らないようにする、そして保険料も上がらないようにする、積立金を活用する、こういう大きなパッケージというのは若干の差があっても守っていけると思いますので、直ちに破綻ということはないと思いますが、注意深く今後の経済を見通していきたいと思っております。

逢坂委員 私が申し上げたのは、年金制度が直ちに破綻をするということを申し上げたのではなくて、この財政の検証結果というものそのものが破綻をしているのではないかということを言いたいわけであります。

 そして、法律上の規定では、五年ごとに見直すではなくて、五年以内という規定になっていますから、それを早めることは可能なわけですね。

 私は、大臣が言うとおり、きっちり定時的に五年ごとにやるということは、データのサンプリングの仕方としてまことに正しいというふうに思いますが、しかしながら、あわせて、早めて、経済の情勢が大きく変わっているんだから、これは今は見直さなければならない、一回取り下げて早急に新しいものをやった方が国民に安心を与える、そうは思われませんか。

舛添国務大臣 先ほど申し上げましたように、一定のルールに基づいて一定の指標を使った、しかも二十年―二十五年のプロットをやったということで、これは私が見ましても日本の一流の経済学者、金融学者が入っております。この方々がきちっとやったわけでありまして、私どもの仕事は、そういうような厳しい経済情勢の中にあっていかにして皆さんの将来の年金を確保するかということでございますので、そちらの方の努力は全力を挙げてやっていきたいというふうに思っております。

逢坂委員 それで、もう一つ、年金に関して御質問があります。

 実は、消えた年金記録の問題でございますけれども、あれについて、十九年度の決算から二十一年度の予算までどのぐらいの経費がこれまでかかっているかということでありますけれども、総務省分でこれまで二十一年の予算まで含めて二百六十億円、それから厚生労働省分でこれまで一千四十二億円、予算まで含めてかかっている。両方合計すると、一千三百二億円かかっているわけでありますね。

 それで、これを最後のお一人お一人まできちっとやりますということを舛添大臣はおっしゃっているわけでありますけれども、一体これからどれぐらいの費用がかかるのか、どれぐらいの期間がかかるのかということについて、だんだんだんだんコストがかかってまいりますと、これがいろいろと心配される声も出てくると思うんですよね。そうして、その一方で、実は調査が進まないということもあるわけでございまして。

 ですから、私は、大臣にぜひ申し上げたいのは、私どもの長妻議員がよく言っておりますけれども、サンプリング調査などをやって、海の深さ、山の高さ、要するに、この問題がどれほど膨大な作業量が必要なのかをある程度類推、推計をして、そうして、やはり今のお一人お一人最後までという方法でいいのか、それとも、もうちょっと別な方法へ行くのか、そろそろこれも考えておかなければならないのではないか、そういうふうに思うわけですが、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 そういう考え方も一つの考え方だと思いますが、やはりこれは何十年にもわたって積み重なった社会保険庁の不祥事の山でありまして、一つ一つ片づけていっていますけれども、時間がかかっております。

 片一方ではデータを解析しながら、また片一方ではねんきん特別便、そしてこれからは定期便という形で、国民の皆さんの御協力を得ながらやっていきたいと思いますので、一つ一つ着実に時間はかかりますがやっていく、そういう中で、今の委員のような御意見も参考にしながら、最終的には国民の皆さんの御判断を仰ぎたいと思っていますが、今の私の立場としては、最後の一人、最後の一円まで頑張ってやるんだ、こういうつもりで引き続き地道な努力を続けてまいりたいと思っております。

逢坂委員 一部、終了いたします。

衛藤委員長 次に、鈴木宗男君。

鈴木(宗)委員 質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 官房長官、記者会見は三時四十五分でしたか。(河村国務大臣「四十五分に始まります」と呼ぶ)ここを半ごろ出るんですね。わかりました。

 では、先に官房長官にお願いします。

 与謝野大臣、休んでもらってよろしいですよ。私の時間のときは質問ありませんから、一時間十五分。

 ただ、せっかくですから、大臣、質問通告はないんですけれども、せっかく予算委員会ですから、ちょっと大臣の認識だけお願いします。

 与謝野大臣、小泉政治以後、俗に新自由主義政策、ハイエク型、アメリカ型といいますか、その政治がずっと流れてきた。その結果、格差が広がった。あるいは、勝ち組、負け組、あるいは都会と地方だとかという溝ができてしまった。ここは政策転換しなければいけない。

 特に、小泉政権のころ、能力主義だ、実力主義だと言いましたね。若者もそれに呼応した。しかし、結果としてそれが非正規雇用社員だとか契約社員に流れていきましたね。私は、日本の財産は勤勉性だと思っているんです。システムとしては、終身雇用だとか年功序列だとかが合っていると思うんですよ。

 そういった意味で、今、これだけ日本経済、私も九州から北海道からずっと歩いて、さまざまな声を聞くとき、やはり公平配分、ケインズ型が日本には合っている。従来の積み上げ方式といいますか、こつこつまじめに働く人が、額に汗する者が栄光の座に着くというやり方がいいという声がよく聞かれますけれども、与謝野大臣の見解、認識はいかがでしょうか。

与謝野国務大臣 私が自民党に鈴木先生と一緒におりましたとき感じたのは、やはり自由民主党というのは、がちがちの資本主義というよりは、社民主義に近い政党ではないかなと実は思っていたわけです。

 そういう中で、ここ十年か十五年ぐらいの間に一番変わりましたのは、やはり所得税制だと私は思っておりまして、所得税制の累進構造というのは所得再分配に相当大きな意味を持っていた。それから、そういう累進構造を持っているということが、ある種の公平感をみんなに与えていたという側面があったと思います。これが、世界的な所得税制をフラット化しようという波の中でややフラットになったということで、この際、税制抜本改革のときには、所得再分配機能に着目した所得税制のあり方ということをやはり国会の皆様方にお考えいただかなきゃいけないことだろう。それが一つです。

 それからもう一つは、やはりバブルの崩壊というのは非常な不幸を我々にもたらしたと思っております。それはやむを得ないこととして、過剰雇用、過剰借り入れ、過剰設備というものを整理していった。その間、やはり労働力の流動化、フレキシビリティーということが盛んに言われて、それが善であるというふうにみんな信じたわけです。その結果、非正規雇用というようなものも生まれ、格差も発生し、その間、日本人が長年大切にしてきた最大のセーフティーネットである終身雇用制度というのが半ば崩壊した。これがやはり大変な社会不安を呼んでいると思います。

 私はだれだれのせいにするというつもりはありませんけれども、何か思想として、やはり、勝ち組があり負け組があり、能力主義で実績主義だというような雰囲気が社会に流れることというのは決していいことではない、私はそう思っております。

鈴木(宗)委員 今の与謝野大臣の答弁、私も大体同感ですね。守るべき日本のよき伝統というか文化がやはり失われてしまった。

 例えば、過度な規制緩和の結果、これまた今、国民はやる気を失っちゃっているんですね。特に若者。アンケートをしますと、努力しても報われるかといったら、十年前までは七〇%、八〇%が報われると答えておったのが、今は逆なんです。報われるは一〇%か二〇%で、努力しても報われないという、やる気のなさがある。そこにまた私は国力が落ちてしまうという感じがします。今、所得の再分配の話が出ましたけれども、ばらまきはいけませんけれども、私は、やはり公平公正においての再分配は必要だと思うんですよ。

 今、だれの責任ということは言わないということで、与謝野大臣らしい配慮があって、私は非常に懐の深い答弁だった、こう思っているんですけれども、与謝野大臣、ここは私は、新自由主義から公平配分の政策に、社会民主主義を一部取り入れる、日本型といいますか、そういったやり方が日本に合っていると思いますから、やはり政策転換が必要でないかと思いますが、いかがでしょうか。

与謝野国務大臣 いろいろなことをやってまいりました。構造改革は私はすぐれた政策だったと思っております。規制緩和もすぐれた政策だったと思いますけれども、本来規制緩和をすべきでないところ、例えばタクシーの需給調整を国が放棄する、これは本当に正しかったのかどうか。それは、今のタクシーの運転に従事されている方の年収が、あれだけ危険な過酷な労働にもかかわらず、平均すると年収二百万にならぬということを言われているのは決して正しいことではない、私はそういうふうに思っております。

鈴木(宗)委員 今の認識も、私もそのとおりだと思うんですよ。タクシーの運転手さんは、東京も札幌も沖縄も鹿児島も同じ認識です。過度な規制緩和でやはり所得が、ノルマですから、上がらない。奥さんがパートに出てやっと生活しているという声が、これは全国共通している。

 私は、委員の先生方も、耐震偽装問題なんかも、のど元過ぎれば熱さ忘れるで、これはだめですね。これも規制緩和で、公の機関がチェックすべきものを民間にゆだねたから、民間同士でなれ合いになってあの結果です。

 私は、そういった意味では、やはり与謝野大臣の見識をもってして、しっかりとした、年功序列だとか勤勉性を旨としてきたこの日本の姿、形、守るべきは守っていくという姿勢をぜひとも貫いていただきたい。さらに、所得の再配分、ばらまきはいけないけれども、必要なところにはきちっと、公正公平につけるという姿勢だけはぜひとも貫いていただきたいな、こう思っております。

 あとは、どうぞ大臣、休んでいてください。ありがとうございました。

 官房長官、日米首脳会談が終わりましたけれども、この首脳会談についての官房長官の認識はいかがでしょうか。

河村国務大臣 総理は、今、日本に向かって帰国中でございまして、きょう夜十時に羽田着の予定でございますが、私も、けさ六時過ぎに北米局長から状況について連絡があったわけであります。あとはテレビで見る程度でありますが、率直に言って、まずは両首脳が率直な話し合いの中で信頼関係を築き上げていく、そういうことができたのではないか。

 既に一度電話でやっておられるわけでありますが、お互いに、今の経済危機の状況の中で、経済的な規模、世界一、二を誇る両国がしっかり手を握ってこの危機を乗り切ろうということ。それから、世界的ないろいろな課題があります。その関係はやはり日米同盟を基軸としてやっていきましょう、特にアジア大洋州の関係、こういうものをしっかりやりましょうということ。気候変動の問題等々、課題がたくさんある中で、まず日米同盟を基軸としてやっていこうと。

 テレビで見たのでありますが、冒頭、改めてオバマ大統領から、クリントン国務長官をまず日本にやり、そして一番に迎えた、これが何よりの日米関係強化の証左である、こう言われたことが極めて印象的だった、このように思っております。

鈴木(宗)委員 官房長官、やはり首脳同士が信頼関係を結ぶというのは私はとてもいいことだと思うんです。そういった意味では、先週の日ロ首脳会談もこれはよかった、こういうふうに思っています。

 それで、今回、アメリカに麻生総理が行く前に、アメリカから何か要望が出されるのではないかという話が出ました。アフガンの問題しかりでありますし、また、米国債の話も情報として流れていましたね。

 今回の首脳会談で、特別、アメリカから日本に対して、これはやっていただきたい、あるいは、この件はぜひとも協力いただきたいという何か要請はあったんでしょうか。

河村国務大臣 詳細は今晩伺おうと思っておりますが、少なくとも私が受けた報告の中には、具体的にアメリカ側から、こうしてもらいたい、ああしてもらいたいという要望はなかった、このように承知をいたしております。

 ただ、むしろアフガン問題等は、パキスタンも含めて、日本もパキスタン支援の会議を持ちたいと思っている。あるいは、むしろ日本側から、既にアメリカは特使を用意しておられますが、日本もパキスタン、アフガニスタン問題については特使を用意して、お互いに連携をとってやりましょう、こういう話し合いがあったように聞いております。

鈴木(宗)委員 内閣のスポークスマンとして、また総理大臣の番頭さんとして、ぜひとも河村官房長官に頑張っていただきたい、こう思います。

 それで、官房長官、中川前財務大臣の辞任は不幸なことでした。私は率直に、中川大臣、御縁のある方ですから、もし国内での出来事なれば、本人が反省しておわびをすればまた理解の得られる、守れることだったかもしれませんね。たまたまローマ発世界行きのニュースになったものですから、これはどうにもできなかったわけでありますけれども。

 あのとき、河村官房長官は、十六日ですけれども、中川財務相から帰ってきた朝に連絡があった、体調がすぐれなかったということだったんですけれども、どうしてもこれは性善説で考えるしかないですね、本人の申告であるから。ただ、これは本来、麻生総理に私は聞きたかったんですけれども、十六日に総理が会ったとき、続投を指示しましたね。あれなんかはちょっと甘かったのかなという見解を私は持っていますけれども、結果として、官房長官、どうでしょうか。

河村国務大臣 当日の朝、報告をいただきまして、ただ、私もテレビを見ていて、時々、痛みどめと風邪薬とそれにアルコールが入りますと、ああいう傾向があらわれたことがありましたものですから、ちょっと心配をしたわけであります。

 しかし、本会議といいますか本会合はきちっとこなされたということでありましたし、まだ、どういう状態であったか、あの時点ではっきりわからない面もあったわけであります。しかし、ああいう体調でもありましたので、行く前から風邪を引いておられたことを私も承知しておりましたし、そういう疲れと一緒になったんだろうな、こういうふうに思ったわけでありまして、総理にもそのような報告を私もいたしました。

 しかし、やはり医者に直接行ってしっかり診てもらった方がいい、医者の報告も受けた上でということもございました。あの後、予算委員会もあった。しかし、それを見ている限り、やはりこの体調では非常に厳しいという思いもあって、ああいう結果になりました。

 確かに、後の結果を見れば、やめなきゃいけないな、あの時点でという話もあろうかと思いますが、あの時点ではぎりぎりの、本人の強い、この国会、少なくとも予算のめどがつくところまで乗り切りたいという強い意思がありましたので、それをまず受けとめたということでありました。

鈴木(宗)委員 あと、官房長官、きのうあたりの報道になりますと、記者会見が終わった後、バチカンに行きました、そこで、何かバチカンで警報器のブザーを鳴らしてしまって注意を受けてしまったなんという話も今出ていますけれども、これは官房長官のところに報告はあったんでしょうか。

河村国務大臣 これにつきましては、本人からは、すぐ入院をされたというふうに伺っておりますので、直接聞く機会を逸しております。

 報道等で様子を見て、そして実際にそういうことがあったということは聞いたわけでありますが、大変熱心にごらんになった、見られたということも聞いておりますし、あのことは非常に楽しみにしておられたという報告を受けておりましたものですから、自分としてはあれに行きたいという思いがあって段取りをしてあるので、失礼に当たったらいかぬのだ、こういうことでというふうに後から伺いました。

 縄を越えて入られたとか、何かそんな話もちらっと聞きましたけれども、特に、それによってバチカン側から、博物館側から抗議があったとか、そういうことは聞いておりません。

鈴木(宗)委員 官房長官にはいろいろなタイプがあると思うんですけれども、やはり私は、総理に仕える側にいる人は、いい話よりも悪い話をしてやることが大事だと思いますね。

 小渕内閣のとき、小渕総理はブッチホンというのが得意でした。だれかれなく電話するブッチホン。ところが、あのとき、総理になってからも、小渕総理が電話すると、その電話を利用する人がいるんです。おれは総理から電話をもらったとか、あるいは、おれはこれだけ総理と近いんだとかいって、自分の商売だとか、自分のステータスというか、立場をよくするために使う。

 そこで、当時の野中官房長官は、総理になってから二カ月目ぐらいで、こう言いました。小渕総理、総理になる前の電話はだれに電話してもいい、しかし、なった以上は選択をしていただきたい、総理のためにもぜひともこれは進言させていただくと官房長官が襟を正しながら話されましたよ。それはちょうど昼食時でした。

 私は、野中先生の性格も小渕総理の性格も知っています。小渕さんは、よく人柄の小渕なんていいますけれども、なかなか意地は強かったですから、若干私は緊張しましたね、総理がどんな反応するかと思って。このときの総理の反応は、官房長官、あなたの親切はよくわかる、しかし、おれはこの電話で中曽根、福田と伍してきたんだ、小渕恵三からこの電話を取ると小渕恵三でなくなる、官房長官、あなたの親切はよくわかるけれども、これは私の専管だと毅然と言われました。

 逆に今度は、私は野中さんの態度を気にしましたね。野中先生は立派でした。すっくとまた立ち上がって、四十五度に頭を下げて、総理、総理がそこまでのお考えならば、私ごときが言う話ではありませんとさっと引いたんですよ。これは私は、二人ともやはり大した人だと思って感銘を受けました。

 それで、部屋を出るとき、私は小渕総理に言ったんです。総理、先ほどの野中先生の話はよかったですねと私が聞いたら、総理いわく、鈴木君な、君もそうだけれども、官房長官も、いい話は言ってこなくていい、さっきのような、野中官房長官のような率直な話が自分には必要だ、同時に、権力者には必要なんだ、こういう答えでした。私は、非常に懐の深い、まさに総理も立派だったと思うんです。

 そういった意味でも、ぜひとも官房長官、ここは官房長官と総理との信頼関係ですけれども、きちっと嫌な情報、嫌な話を上げるのが、やはり権力の側にいるときのチームプレーの姿勢として大事でないかと私は思っているんですね。その点、ぜひとも官房長官に頑張っていただきたいんです。(発言する者あり)

 遅いという声もありますけれども、ただ、職務は二十四時間、これは日本国のために大事なんです。内閣総理大臣は二十四時間内閣総理大臣、官房長官も国務大臣もすべて二十四時間国務大臣なんです。これは与党だとか野党の話じゃないですね。そういった意味で、ぜひとも、それは自分の職務の、自分の分というものだけはわきまえていただきたい。私は、これが国民のためになっている、こんなふうに思っているんです。

 官房長官、もう一つ、時間ですから。

 今、与党の方から、本予算がまだ衆議院を通過していない段階から次の補正を考えなければいけないなんという話がありますね。これは皆さん、官房長官ですよ、与党は腹にあっても言っちゃいけません。これだけでもおかしい。

 同時に、そういう責任感なり、今、日本の経済の状況だとするならば、本来、麻生総理は、景気の回復には与党も野党もない、ぜひとも野党の皆さんと、今、予算は出しました、しかし、これでは足りない、組み替えしてでも、皆さん方の意見も聞いて国家国民のためになる予算をつくりたい、ぜひとも協力をいただきたい、このぐらいの腹を持ってやるのがまた責任ある政治でないか、こう思っているんです。

 みんなばらばらの意見ですよ。これでは、逆に、どうなっているんだという話になる。きのうなんかも、総理のいないときに内閣改造の話をしている人もいる。これは論外だと思いますよ。総理のいる前で、総理に向かって進言するのならわかりますよ。

 どうぞ官房長官、この点も官房長官がそれなりの発言なり注意をするしかないわけですから、ぜひとも、あるべき姿、姿勢として毅然とやってもらいたい、こう思いますが、いかがでしょうか。

河村国務大臣 先輩として官房長官の心構えをいろいろ御指導いただきまして、拳々服膺させていただきたいと思います。

 前段の、小渕総理時代、私もブッチホンを受けた身でございまして、あそこまで気を使っていただくのかと思いました。ただ、別に私は麻生総理をかばうつもりはございませんが、たしか麻生総理も、いや、いいことはいい、もうそういうのは言わなくていいから悪いニュースをしっかり言ってくれということは麻生総理も言っておりました。それは、まさに今おっしゃったことを私の方が注意をしなきゃいかぬ、こう思った次第でございます。

 それから、閣僚の発言については、昨日直ちに関係閣僚には直接そのことは申し上げました。

 それから、予算についてもまさにそのとおりでありまして、今もうここまで議論をいただいて、まずは二次補正、当初予算を通して、そして、そのことにまず全力をかけるのが内閣の使命である、そのことは閣僚にも改めて注意を申し上げて、全力投球で頑張る。先のことは、これはまた党は党でいろいろお考えもあろうけれども、まずはこれに全力をかける、このことで乗り切っていきたい、こう思っております。

 かねてから総理が言っておりますように、まずは景気対策、これは予算を通すことが最大の景気対策につながるんだ、そういう思いで一致結束して頑張ってまいりたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

鈴木(宗)委員 今の官房長官の答弁というのは常識的だと思うんですね。

 ただ、官房長官の発言としてでも、やはり、景気の回復はわかります。いつも言うのは、政局よりも景気回復だと言うんですね。何も予算審議の議論は政局じゃないんです。この点、どうも麻生総理も、政局よりも景気だという、民主主義の手続による、憲法で保障されている一番の手法は選挙です。そういった意味では、どうも、選挙と政局を一緒にしているだけでも、私は言葉の使い方が間違っていると思うんですよ。

 この点、選挙というのは民主主義の、これは保障されている、与えられている大事な手続であるということ、それを政局というふうに置きかえる言いぶりだけでも、私はちょっと、総理も官房長官も何かしら一緒くたにしているなという感じがしますから、やはり、ここら辺のめり張りというか仕分けといいますか、その点はぜひともきちっとお考えおきをいただきたいと思いますが、いかがですか。

河村国務大臣 麻生総理は、政局より政策を優先するのが我々の務めではないかと言っております。

 もちろん、民主主義の手続によって、まさに選挙によって民意が反映されるということ、これは絶えず頭の中に置いておかなきゃいけないことは間違いないことだと思いますので、今御指摘のように、そのことを混同しないようにという御指摘でありますから、そこのところはしっかり踏まえながら、まず国民の目線に立って、国民のために何をすべきかということを中心に頑張ってまいりたい、このように考えます。

鈴木(宗)委員 あと、麻生総理は、二月二日の参議院本会議において、例の国会議員の歳費や定数削減に関して、政治家が先頭に立って改革に取り組むことは重要だ、自民党で検討してほしいと答弁されています。

 私は、これは大事な話だと思うんです。本当にやるならば、今、議員会館の工事をやっていますね、これはやはりとめる。ストップしても、やる。今の定数で工事をしているんですから、もし削減するならば無駄になりませんか。どうですか。

 本当にやる気があるならば、定数削減だとか歳費のカットだとかなんかは、与党、野党、一週間か二週間で詰められる話じゃないですか、国民の目線にあって判断するならば。工事は粛々とやりながら、本会議で、定数削減やりましょう、こう言っている。そこに矛盾があるし、逆に、言葉の遊びじゃないかという国民の指摘も出てくると思うんですよ。

 この件について、官房長官、どうですか。

河村国務大臣 鈴木先生のおっしゃること、私もわからないわけじゃございません。

 ただ、総理が国会答弁で申し上げたことは、その心構えを持たなきゃいかぬと。しかし、まずこれは国会議員の根幹にかかわるような問題だし、政党政治をやっているわけでありますから、総裁としては、まず党のところでしっかりまとめ上げて、各党間、これは与野党ない話でありますから、まとめ上げて、方向性を出さなきゃいかぬ、こういうことを申し上げたわけであります。

 今、もう工事はああいうふうに進んでおりますし、議員会館は非常に狭くて皆さん大変だ、外に事務所を持つ人まであらわれる、こういう無駄を省くためにもという思いが皆さん非常にあって、我々にとっては待望の議員会館、新しいものだと期待もいたしております、執務上からしても。

 そういうことで、その方向性がある程度、もう審議会等も開かれて方向が打ち出されたという時点であれば、それはそういうことも考えなきゃいけなかったでしょうが、これはそういうことでもありませんし、まず、ここまで来ておることでありますから、それを今とめるというわけには、私は率直に申し上げて、なかなかそうはいかないのではないかな、このように思います。

鈴木(宗)委員 総理の発言あるいは今自民党内での動き、あと野党の皆さんの各党での動きも、やはりここは定数削減はやむを得ないかな、あるいは、この議論はしなければいけないなという雰囲気、流れになっていますね。では、間違いなく四百八十の衆議院議員はなくなると思いますよ。二百四十二人の参議院議員も減ると思いますよ。

 今、その規模で設計図もできていて、工事もしている。今、そちらの方で、その方が無駄になるなんという話をしておりましたけれども、言っている人が無駄ですね、僕に言わせれば。そうじゃないですか。

 だから、やるならばやるで、やはり果敢に決断をする、総裁イコール内閣総理大臣になっているんですから。総理・総裁が私の考えはこうだとぴしっと方向づけをすれば、また議論も加速するんじゃないですか。そのことを私は言っているんですよ。ぜひとも、ここは官房長官から総理に進言をしてください。

 あるいは、私はよくこの委員会でも指摘している、文書通信交通費を月百万もらっていますよ。東京の議員さんも沖縄も北海道も、みんな一緒です。これが本当に公平かどうかということ。同時に、これは領収書の添付も要らなければ、報告義務もないんですよ。年間一千二百万といったら大きなお金じゃないでしょうか。

 こういったものをきちっと、予算の提出は内閣なんですから。よく国会であるいは院で議論をしてくれと逃げますけれども、予算を提出するのは内閣なんですから。その点、無駄をなくす、あるいは国民の思いはどこにあるかというものを考えたら、そういった疑問点が指摘されている部分については速やかに手をつける、これが私はやはり一番だと思います。

 ですから、例えば定額給付金のとき、総理が、消費税を三年後景気がよくなれば検討いただきたいという発言をしたけれども、国民は、その前に国会議員の数を切れだとか、特権だとか手当を切れという声が出てきましたね。これは世論調査でもあらわれている。やはり私は、敏感に反応するのが、ここにいる政治家はもちろんですけれども、全国会議員の使命だと思っているんですよ。

 この点、ぜひとも官房長官から総理に進言して、そのことが逆に支持率のアップにつながる一番手っ取り早い道だと思いますから、私は、国民のための政治という面で進言をいただきたいな、こう思いますが、よろしいですか。

河村国務大臣 本日の予算委員会でそのような強い御提言があったことを伝えさせていただきます。

鈴木(宗)委員 官房長官、もう記者会見の時間ですから、結構です。ありがとうございました。

 法務大臣、この委員会でも、また昨年来、鳩山法務大臣のときから、私は可視化の話をしてまいりました。検討課題にはなっていると思っていますけれども、今現在の状況では、どういう進捗状況でしょうか。これは、検察庁における可視化の問題です。

森国務大臣 検察庁における取り調べの可視化の実施状況及び実施した結果に対する検察庁の今の状況を御報告申し上げたいと思います。

 検察当局においては、平成十八年の八月、裁判員裁判における被告人の自白の任意性の効果的かつ効率的な立証方策を検討するために、裁判員裁判対象事件に関しまして、立証責任を有する検察官の判断と責任において、取り調べの機能を損なわない範囲内で相当と認められる部分の録音、録画の試行を開始いたしました。

 その後、平成二十年四月から本格的な試行に入ったわけでございますけれども、検察当局においては、原則として、裁判員裁判対象事件のうち、自白調書を証拠調べ請求することが見込まれる事件の全件について、取り調べの録音、録画を実施いたしているところでございます。

 そして、最高検察庁においては、平成二十一年の二月十八日、取り調べの録音、録画の試行の検証結果を公表いたしたところでございます。その検証結果においては、これまで検察庁において試行されてきた録音、録画は、自白の任意性等を刑事裁判になじみの薄い裁判員にもわかりやすく、かつ効果的、効率的に立証するために有用であることが明らかになりました。

 しかしながら、一方で、録音、録画が取り調べの真相解明機能に何がしかの影響を及ぼす場合があることが明確となりまして、録音、録画の実施方法については、真相解明の観点から十分な慎重さを要することが一方で明らかになったところでございます。

鈴木(宗)委員 法務大臣、今の答弁だと、それは容疑者なり被疑者に対しての話だと思うんですよ。

 私は、よくこの委員会で言ったのは、参考人、特に純粋参考人や証人に対しての全面可視化が必要だと思うんです。ここを私は指摘しているんですよ。今の法務大臣の話は容疑者なり被疑者の話ですね、真相解明について影響を与えるという話は。

 しかし、去年でも、おととしでも、法務大臣も知っているとおり、志布志事件だとか富山事件だとか、あるいは佐賀農協事件だとか、冤罪になった事件がたくさんあるんですね。これまた社会的な問題にもなっております。映画にもなったりして、大きな反響を呼んでいます。こういった例を見ても、やはり強制自白だとか誘導、誤導があるんですよ。

 特に、調書重点主義の日本の裁判なんかでは、一般の人のいわゆる参考人聴取、そこで調書をとる、その調書が非常に裁判の判決にも影響してくるんですね。だから私は、証人だとか参考人に対する全面可視化をしなければ、逆に、本当の意味での真相解明の裁判はできないと思っているんです。そこで私は、いつもこの問題を取り上げているんですよ。

 純粋参考人や証人に対してどうかということを、まず法務大臣、答えてください。

森国務大臣 ただいまの御質問は、前段の質問として、容疑者、被疑者についての実情を答弁せよということというふうに受けとめましたので、先ほどのような答弁を申し上げたわけでございます。

 被疑者以外の者の取り調べにつきましては、まず、身柄が拘束されていない状況であること、それから、弁護人がその供述調書を証拠とすることに同意しない場合には証人尋問が改めて行われる、こういう刑事訴訟法上の取り扱いをも踏まえまして、録音、録画を義務づけた場合に、刑事手続全体における取り調べの機能を維持できるかできないかということとのバランスから申し上げまして、やはり私としては慎重であるべきだというふうに思っております。

鈴木(宗)委員 法務大臣、それは刑事局がつくった答弁だと思うんですよ。法務大臣の認識よりも、役所の論理で言っていると思うんです。委員の先生方も聞いてほしいんです。例えば私の裁判なんかでも、調書優先ですよ。

 そこで、これは裁判所でも採択されている話なんですよ。例えば、検察は誘導するんですね、おまえたちは罪はない、何を言っても罪にならぬと。こっちのねらいは鈴木だから、こっちに協力するかどうかだという、言ってみれば一つのプレッシャーをかけてくるんです。

 同時に、やまりん事件の社長さんが言っていますよ。私を取り調べた吉田正喜検事から、業者が政治家にお金を渡すのはお礼かお願いしかないと細々と説明され、どちらなのだと言われて、この件はお礼という趣旨では通らないと思い、お願いとしてしまったんですと、検察に誘導されたと言っているんですよ。

 だから、やまりん関係者一同の気持ちは官房副長官就任のお祝いであり、だからこそ官房副長官のお部屋へ堂々と祝儀袋を持っていったんですと。もし賄賂だと思っているならば、人の出入りのあったところでそのようなことはしませんよということも明確に言っている。

 ところが、この人たちは一審のときこれを言ってくれればいいんですけれども、検察は一審のときは私を保釈させないんですよ。こうやって無理した調書をつくっていますから。先生方もねらわれたら終わりですからね。それで私は言っているんです。一審で検察側の証人尋問の裁判が終わらぬ限り、私を保釈しなかった。どこの世界に、私の金額からしたって、四百三十七日も勾留されるような話じゃないですよ。戦後最長の勾留なんですから。私が正直に、もらっていないものはもらっていないと否認したら、反省の情がないだとか否認したということでしゃにむに引っ張られる。

 法務大臣、これが実態なんです。その調書をとられた人が言っているんですよ。だから、私が全面可視化をしてくれというのはそこなんです。

 あるいは、もう一つ、島田さんという、私の事件でこう言っています。島田さんは、プレッシャーから、裁判の証人を終わってから、帰った翌日、脳梗塞で倒れてしまったんですよ。そこで奥さんがかわりに言ってくれて、これも裁判所に出されましたけれども。

 夫の話では、検察官はあらかじめ文書をつくっていて、その表現内容が夫の認識と違うと言っても受け付けてくれず、どのように対応したらよいか困っているということでした。夫は納得のいく形での調書をつくってもらえず、そのあげく、鈴木宗男代議士は逮捕され、また島田建設も贈賄行為をした企業とされて指名停止を受けてしまいました。おれが検事の言うままにサインしたのが悪かったかな、申しわけないことをしたとため息まじりに愚痴っていました。夫は刑事裁判になったら法廷ではちゃんと真実を述べるつもりだったようですが、鈴木さんの事件の法廷に立つ前に急性の脳梗塞になって倒れてしまいました。

 こういう涙の出るような話があるんですよ。

 だから、委員長、証人だとか参考人の取り調べ、調書づくりなんかでは、全面可視化した方が本当に真相が明らかになる。被疑者や容疑者の場合はまた別の観点での検討が必要だと私は思いますよ。しかし、一般の人が東京地検に呼ばれたら、みんな名前を聞いただけでもう言うとおりですよ。そして、談合でおまえたちの会社をやるぞとおどかされたら、会社がなくなった方がいいか、それともこっちに協力すればそっちはやらぬぞという取引まで持ち出されたというんですから。

 そういうことは、やはり全面可視化すればなくなるんですよ。真に公正公平な調べができる、資料もつくれるんです。法務大臣、そのことを言っているんですよ。だから、ぜひとも私はこれを検討してもらいたい。

 鳩山法務大臣はこう言っていますね。自分は被疑者の可視化については慎重でなくてはいけないと思ったけれども、参考人だとか、そういった後に証人になる人については全く初めて聞いたから、これはやはり考えてみなければいけない課題だなというふうに答弁してくれているんですよ、去年の四月二十二日の委員会で。

 ですから、森大臣、何も私は事実でないことを言っているんじゃないんです。こういった裁判所も取り上げたその話をもって私はしているんですから。ぜひともここはきちっと、公正公平、真実を解明するという意味でも、あるいは冤罪をなくすという意味でも、私はやってもらいたい。

 これは、委員の先生方、例えば富山事件でも、婦女暴行をしていなくても婦女暴行をしたと認められて、刑務所にまで入ってきた、出てきたら別に犯人がいましたと。では、その人の人生、どうなるんですか。

 私も八年前にあれだけマスコミにたたかれて、ムネオハウスで捕まるとか、三井物産の北方支援で捕まるだとか、アフリカODAで捕まると言われたけれども、一切裁判はやっていませんよ。全部これまた世論操作ですよ、権力側の。ですから、何もないものですから、また国民世論は、鈴木ほど悪いやつはいない、何でやらないんだという、また世論によって追い込まれてしまう。

 こういった、言ってみれば重箱の隅をつつくような事件で、しかも、やまりん事件なんというのは、平成十年に問題になって釧路地検が取り上げた、しかしこれは事件にできないということで下がった事件を四年たってまた持ってきたのが東京地検のやり方ですよ。

 どうか法務大臣、これは真実だとか真相を明らかにするためには必要な手法だと私は思っているんです。この点、ぜひともきちっとした検討をしていただきたい、こう私は思いますが、いかがでしょうか。

森国務大臣 一昨年、鳩山元大臣に同じ趣旨のお尋ねがありまして、御要請がありまして、昨年またことしと御意見は承りました。

 鈴木委員の体験を踏まえた御提案ですから非常に重く受けとめたいと思いますけれども、私もほったらかしているわけじゃなくて、省内においていろいろな形でもって検討を続けておりますし、自分なりに考えております。

 ただ、現時点においては、やはり、身柄を拘束されていないし、それから弁護人の同意がなければ証拠採用されない、そういう状況下にあって、被疑者以外の者に対する可視化、全面可視化をするという必然性というか、そのマイナス面と引き比べた上での必要性というものについては、私は、まだそこまで踏み切るには至っていないということを申し上げたいと思います。

鈴木(宗)委員 森大臣、被疑者についての判断と参考人、証人について一緒に扱っちゃいけないと思いますよ。

 参考人、証人について、何が問題ありますか。要は、真実を述べればいいんですから。真実を述べない、逆に、検察側が誘導、誤導するところに問題があるんですよ。だからこれまでに冤罪も起きてきたんじゃないですか。だから、そういうのをなくすためには、少なくとも参考人だとか後に証人になる人たちは罪を受けるわけじゃないんですから、そういった誘導や誤導をなくす上でも、きちっと可視化して何が問題あるかということなんですよ。

 わかりませんか、大臣。わかりますね。私はそのことを言っているんですよ。いいですか、勘違いしないでください。被疑者の対応はまた、私は、大臣の答弁、わかる部分もあるんです。しかし、証人、参考人は全く別なんですから。純粋の善良なる一市民なんですよ。その人らを誘導する。

 なぜこういうことを言うかというと、このやまりん事件でも、平成十五年、裁判所で証言する前に、証人尋問の四日前から毎日、東京地検に出向いて尋問のリハーサルを行いましたが、その際、吉田検事から、不正な行為の働きかけをお願いした旨の答えがあらかじめ書き込まれた尋問事項書を渡され、答えに間違いはないか何度も念を押されたからです、なお、用意された尋問事項書はリハーサルの終了時に返すように言われ、私の手元には存在しませんと。こういう事実があるんですよ、法務大臣。意図的に、善良な市民を自分たちの都合のいいようにつくっていく、それが冤罪じゃないんですか、結果的に。現にあったわけですから。

 ですから、恐らくここにいる委員の先生方だって、証人だとか純粋参考人に対して可視化して、何も問題ないでしょう。被疑者になればまた自分の立場を守るために、あるいは、身柄を拘束されているならば何かしらまた違う対応をするかもしれませんけれども、参考人、後に証人になる人らについては、何のペナルティーもないわけですから、私は、ここら辺は、公正公平の面からもぜひとも全面可視化。

 大臣、何もここで結論を出す話じゃないですけれども、ここはきちっと、私はこういった事実を踏まえて言っているわけですから、この事実を尊重して御検討いただきたいということをお願いしているんです。

森国務大臣 引き続き検討させていただきます。

鈴木(宗)委員 法務大臣、私は、不幸な人を少なくするためにも、ここは公平公正の原則で、何よりも真実や真相を明らかにするという面で、ぜひとも検討をいただきたいなと心からお願いしておきます。法務大臣、もうよろしいです。

 法務大臣と官房長官でちょっと時間をとってしまって、外務大臣、待たせて済みません。あともう一点、せっかく文部大臣が来ておりますから、例の相撲協会の指導について聞きます。

 この委員会でも大臣にも聞きましたけれども、財団法人、しかも日本相撲協会、相撲は日本の国技ですね。これはまた格別の文化といいますか、歴史を持ってきているものですね。その所管する役所が文部科学省です。きちっと指導していきたいと言うけれども、具体的に何を指導しているか見えてこない。しかも、今、相撲も国際化しまして、外国人力士も多くなった。しかし、その中でも、やはり守るべき日本の伝統といいますか、国技としての尊厳があると思っているんですよ。

 そういった意味で、文部科学省の果たす役割は重い、こう思いますので、具体的にどんな指導をしているのか、この点、的確にお答えをいただきたいと思います。

塩谷国務大臣 お答え申し上げます。

 まことに残念な事件が暴行事件あるいは大麻事件と続いておりまして、相撲協会に対して再発防止の点について指導をしているところでございます。

 特に、昨年、暴力事件あるいは大麻事件が起こって、外部の人材による再発防止をやっていただいておりますが、その結果といいますか成果が出ないうちに、またことし引き続いてあったということはまことに残念でございまして、今回も、その後、再発防止のことで、今相撲協会の方で独自にやっておりますので、その結果をもって近いうちに多分協会と話し合いができると思っております。

 たびたびこうやって起こるということは、やはりいろいろな面で問題があると思っておりますので、そういった再発防止をどこまで実行しているかどうか、今まだ具体的に報告を受けていませんので、そういった一つ一つをしっかりと実行しているかどうかもこれから確かめて、同時に、相撲は、今先生おっしゃったように、国技であり、国際的にも大変価値ある、意義あるスポーツだと思っておりますので、それにふさわしいあり方というのをまた検討していく必要があると思っておりますので、またしっかりと指導してまいりたいと思います。

鈴木(宗)委員 文部大臣、私も相撲は大好きだし、これはまた日本の国技としてもこれからもきちっと存在しなくてはいけないと思いますから、しっかりお願いしたいと思います。

 あと、せっかく佐藤国家公安委員長が来ていますから、黙って帰すのは申しわけないですから。

 質問通告をしています。質問の中身はわかっていますね。ちょっと個人的な名前もありますから、私はそれは控える意味で、ただ、少なくとも、当時の金重警備局長に私が恫喝をして、ロシアの大使館員の追尾や尾行をやめろ、こう言ったなんという話が、ありもしない話がちょっとひとり歩きしておりますけれども、それの確認はしてもらったでしょうか。

佐藤国務大臣 警察におきましては、治安維持の責務を全うするため、法に基づき必要な情報収集を行っているところであります。

 その具体的内容にかかわる事項については、支障を来すおそれがあるのでお答えは差し控えたいと思いますが、一般論として申し上げれば、情報収集等の活動は職務上の必要に基づいて行っているところでありまして、外部からの働きかけなどによって左右をされるなんということは一切ございません。

鈴木(宗)委員 大臣、最後の部分だけでよかったんです。どうも、私が何か当時の金重さんを恫喝して、ある国の外交官の追尾や尾行をやめさせろなんという話があったというけれども、本当に迷惑な話です。

 あわせて、共産主義社会、自由主義社会ではおのずから受けとめは違うと思いますね。やはり、自由と民主の国になった国は、それなりの共通の同じ思想としてのまた全く違った判断が働くわけでありますから、こういった意味でも、今の大臣の最後の答弁で結構なんですけれども、どうもそういう話が出ていますので、この点はまたきちっと国益にかなった仕事をぜひともやってもらいたい、こう思っております。

 文部大臣もどうぞ、もう結構です。ありがとうございます。

 済みません、外務大臣、お待たせしまして。

 予算委員会でも日ロ首脳会談あるいはサハリン訪問についてお尋ねしたんですけれども、サハリンについて、麻生総理が初めてサハリンに行きました。サハリンは、日本は放棄したけれども、時間がありませんから簡単に言います、放棄したけれども帰属は決まっていないと。そこに総理が行くのはいかがなものかというような一部論評、報道もありましたね。今、正確に、外務省はサハリンに対してどういう認識でいるんでしょうか。

谷崎政府参考人 お答えいたします。

 我が国は、サンフランシスコ平和条約で、南樺太に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄しております。この帰属については見解を述べる立場にはないというのが日本政府の立場でございます。

 また、この条約は、南樺太の最終的な帰属先については規定しておりません。政府としてはその最終的な帰属先は未定であるとの立場ですが、南樺太はソ連及びロシアが現実に支配しております。ロシア以外の国は領有権を主張していないというのも、またこれは事実でございます。

 以上を前提として、麻生総理がサハリンに訪問したことは、南樺太の法的地位に関しましては何ら影響を及ぼすものではないというのが外務省の、政府の見解でございます。

鈴木(宗)委員 外務大臣、北方四島もまだ解決されない、同時に、南樺太を日本は放棄したけれども帰属は決まっていないというこの言いぶり、私は現実的でないと思っているんです。

 なぜならば、サハリンに総領事館をつくったときの外務省の見解もあるし、交換公文もあるんじゃないんですか。これは、もう今はロシアが実効支配している。ロシアというか、当時はソ連、そしてロシアですね。ソ連の権限を引き継いだのはロシアですから。あわせて、ユジノサハリンスクに総領事館をつくるときはロシアの了解なくしてできないわけです。これも事実ですね。私は、これは言わずもがなの議論だと思っているんです。

 そういった意味でも、もう今ロシアがサハリンをきちっと実効支配もしていれば、だれもこれはクレームをつけるような話じゃないですよ。しかも、日本も総領事館を置いた。置いたということは、ロシアの了解なくしてない。そうですね、外務大臣。総領事館を日本が置いたというのは、それはロシアの了解なくして置けないわけですよね。そのことを確認しておきます。

中曽根国務大臣 サハリンに関する日本の立場は今欧州局長が述べたとおりでございますけれども、総領事館の設置については、先ほど委員からもおっしゃいましたけれども、交換公文も交わされました。往復書簡が交わされました。

 また、ロシアの承認を受けて行われたかどうかということにつきましては、今申し上げましたように、往復書簡を取り交わしたわけでありまして、ロシア側の同意を受けて我が国としては在ユジノサハリンスク総領事館を開設した、そういうことでございます。

鈴木(宗)委員 同じく大臣、総領事のアグレマンはどういうふうになっていますか。

中曽根国務大臣 アグレマンにつきましては、これは日ソ領事条約第三条(1)の規定に従いまして、在ユジノサハリンスク総領事を任命するに当たりましては、いずれもロシア側の同意を得ております。

鈴木(宗)委員 これも私は当たり前のことだと思っているんですが、もうサハリンは今はロシアが実効支配している。そこで、ロシアの承認、許可をもらって総領事館も出している、あるいは総領事の発令に当たっても向こうのアグレマンをとっているということで、何もこれは議論する話ではない。

 外務大臣、こういった事実関係というのはもっともっと国民に知らせるべきです、間違った判断をさせちゃいけませんから。ぜひともここら辺、ただ放棄した、帰属は決まっていないなんという間違った一部の動きがあることは逆に日ロ関係を損なう、私はこう思っておりますし、解決しなければいけない問題もあるわけでありますから、この点はきちっと、約束事、取り決めがあるわけですから、もっともっと国民に広く外務省としてもこれは説明をいただきたいな、こう思っております。

 私は、領土問題、不法占拠されている、主権が侵されているという点では、北朝鮮の拉致問題と一緒だと思っているんです。どうも、拉致問題ではいろいろな関心を持って強く言う人はいますけれども、領土問題、不法占拠されているという面では、ちょっと私は、国民世論、特に北方領土なんか見ても、非常に関心が内閣府の調査でも低いというデータも出ていますから、この点を懸念しておりますので、とにかく外務大臣、今のサハリンの総領事館の問題だとかサハリンの法的地位の問題についても、やはり国民にきちっと正しい認識をしてもらう、これが大事だ、こう思うんです。

 そこで、大臣、この前の続きになりますけれども、独創的で型にはまらないアプローチという、総理のメドベージェフ大統領との会談後の記者会見での発言は、元島民だとか、領土返還運動の原点の地の根室では、非常に神経質になっております。市長さん初め関係者は、何を言っているんだろうかと。必ず今までは四島の帰属の問題を解決してという言葉があったけれども、総理の記者会見では、向こうが二、こっちが四では前に進まない、政治家が判断しなければいけないというまた記者会見での発言もあって、なお当惑している面があるんですよ。

 この独創的で型にはまらないというやり方は、交渉の中身を聞いているんじゃないですよ、交渉の中身じゃなくて、新しい提案なり政策転換をしたものかどうか、これを簡潔に答えていただきたいと思います。

中曽根国務大臣 二月十八日に行われました日ロ首脳会談、ここで、今委員がおっしゃいましたような、メドベージェフ大統領が指示を出しました新たな独創的で型にはまらないアプローチのもとで作業を行うということが、会談の中のポイントの一つとしてございます。

 委員御承知と思いますが、これは大事なことですからちょっと申し上げますけれども、この首脳会談では四つのポイントが一致をしたわけです。申し上げますと、この領土問題を我々の世代で解決をするということ。それから、これまでに達成された諸合意及び諸文書に基づいて作業を行うということ。三番目が、今申し上げましたけれども、メドベージェフ大統領が指示を出しました新たな独創的で型にはまらないアプローチのもとで作業を行うということ。そして四番目は、帰属の問題、これは、国境の画定の最終的な解決につながるよう作業を加速すべき追加的な指示を出すこと。そういうことで一致したわけでございます。

 こういうようなポイントがありますけれども、この首脳会談においては、これまでに達成された諸合意それから諸文書に基づくことを基本としながら、今申し上げた、メドベージェフ大統領が指示を出しました新たな独創的で型にはまらないアプローチのもとで作業を行うということで一致したわけでありまして、したがいまして、今回の首脳会談におきましては、これまでの政府の交渉方針を転換したということではございません。そういう事実もありません。

 政府といたしましては、今回の首脳会談の結果を踏まえまして、領土問題の最終的解決に向けて引き続いて粘り強い努力をしていくということでございます。

鈴木(宗)委員 首脳会談翌日の十九日、この委員会で私も直接麻生総理にただしたら、総理の答弁は、「四島の帰属の問題、ここが一番の肝心なところです。委員の言われたとおりです。」という答えをもらっているんです。

 その四島の帰属というのは、日本ということですよ。外務大臣、よろしいですね。

中曽根国務大臣 委員がおっしゃるとおりでありますけれども、従来から、政府といたしましては、北方四島の我が国への帰属が確認されれば、実際の返還の時期や態様については柔軟に対応する、そういう立場をとってきているわけで、委員がもう十分御承知のことでありますが、今後ともこのような立場に基づく解決を主張していく考えということでありまして、まず、日本の領土であるということを、そういう帰属を決めるということでございます。

鈴木(宗)委員 外務大臣、ぜひとも、この日ロ首脳会談、やはりロシアという国を見るとき、トップの判断が重いですから。同時に、よくマスコミなんかで、支持率が低い日本の総理が行っても何が成果を出せるんだなんという記事がありますが、それは間違いなんです。ロシアは、やはり日本国総理大臣として受けてくれますから。ですから、世論の支持云々は関係なく、きちっと評価をしてくれる。

 そういった意味でも、大事なのは、説明のフォローアップが足りないんですよ。記者会見で、向こうが二、こっちが四、それでは進まぬと言ったらそれだけが走っちゃって、日ロの首脳会談で初めて四島に言及しなかったという話になっちゃっているんですね、いろいろ報道を見てわかると思いますけれども。この点、外務大臣、もっと事務方もしっかりと、国民に対してよく説明する、これが大事でないかと思いますので、この点しっかり指導をいただきたい、こう思います。

中曽根国務大臣 この北方四島の問題は我が国の最重要課題でございますから、私たちも、十分国民の皆さんに御理解いただけるよう、今後も努力していきたいと思います。

鈴木(宗)委員 とにかく、元島民はもう八十代、九十代の人が多いんです。もう人生先がないんですね。そういった意味でも、ぜひとも外務大臣、空想的な解決よりも現実的な解決論でいっていただきたい。

 ソ連時代は四島一括と言いました。その上に、向こうは領土問題がないと言うから、即時というまくら言葉までつけたものですよ。しかし、ソ連からロシアになってから、四島の帰属の問題が解決されれば、その島の返還時期、態様については柔軟にやってまいりますと、日本も相手のやはり変化に応じて柔軟姿勢をとったんです。

 少なくとも、外務大臣初めそのつかさつかさにある人は、返還運動をしているんじゃないんですよ、交渉をしているんです。交渉というのは結果を出さなければならないんです。私は、結果を出すための努力をしてもらいたい。そのためには、やはりきちっとした、原理原則は、守らなければいけないものは断固として守る。それは国益ですね。その中で、どうしたら解決するか。外交にも相手があるんですから、日本の主張だけで通るとも思っていません。

 そういった意味では、四島の帰属が確認されれば、その島の返還時期、態様については柔軟に対応する、このことをもっともっと我々政治家も理解しなければいけないし、国民にもよく話をして、私は解決の方に持っていっていただきたいと思うんです。そういった意味では、どうもちょっと国民に対する説明がない。逆にまた、その説明がないおかげによって、私なんかも間違ったメッセージで、鈴木宗男は二島先行で、二島ぽっきりで終わりでないかと国賊扱いされましたよ。

 しかし、今回の首脳会談なんかを見ていると、私よりも逆にまた、麻生総理はより柔軟な対応をしてくれたんじゃないか。これはやはり現実的解決に向けてそういう手法をとったのかなという感じで私は見ているんです。

 そういった意味でも、ぜひとも外務大臣、四島の帰属を日本に認めてもらう。これにはやはり、私は、日本自身が、日本側がカードを切らぬといけないと思っているんです。そのためのカードは、また次の首脳会談が大事だと思っていますよ。これもこの前の委員会で大臣に質問していますけれども、私は、次、四月二日の金融サミットにおける首脳会談というのは有効な場でないか、こう思っているんです。

 そういった意味で、四月二日に向けて、外務省としても裂帛の気合いでこの首脳会談実現のための努力をしてほしいと思いますけれども、いかがでしょうか。

中曽根国務大臣 まず、総理の御発言でございますけれども、これは日本側の従来の立場、すなわち、北方四島の我が国への帰属が確認されれば、委員も今おっしゃいましたけれども、実際の返還の時期や態様については柔軟に対応するとの考えを述べたものでございまして、従来と変わらないということを確認させていただきたいと思います。

 それから、四月の二日のロンドンでの会議に関することでございますが、次回の日ロ首脳会談につきましては、サハリンでの首脳会談の結果を踏まえまして、四月二日にロンドンで行われます金融経済の首脳会議、この際に可能な限り行いたい、そういうふうに考えておりまして、両首脳の意向を受けて、今外務省においてしかるべく準備が進められているわけであります。

 また、サハリンでの首脳会談におきまして、両首脳は、プーチン首相の訪日を五月に行う、それから、七月のイタリアでのG8サミットの際にも首脳会談を行う方向で調整するということでも一致をしているということでございます。

鈴木(宗)委員 大臣、ぜひともその実現に向けて努力をいただきたいな、こう思っております。

 次に、日本では、この領土問題というのは北方領土と竹島の問題があるということでよろしいですか、大臣。

中曽根国務大臣 そのとおりでございます。北方四島と竹島の問題です。

鈴木(宗)委員 北方領土は、内閣府にも担当部署があるし、外務省もロシア課できちっと外交交渉をやっておりますね。

 竹島問題では、その部署というのはあるんでしょうか。

中曽根国務大臣 竹島の問題につきましては、関係省庁が協力または相談しながらやっております。

鈴木(宗)委員 その関係省庁というのはどことどこでしょうか。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 関係省庁、外務省また内閣府等の省庁でございます。

鈴木(宗)委員 そこで、役所として、例えば北方領土問題ならば、内閣府に北方担当の参事官もいるし、部屋もあるんですよ。竹島問題もそこに一緒にあわせて、外務省から人を出してもいいと思うんですが。

 私はやはり、不法占拠だというし、李承晩ラインが設定されるまでは竹島は日本の領土で、漁もやっておったんですよ。李承晩ラインが設定されてから、向こうが勝手に、施設はつくられるわ、日本はもう入っていけなくなってしまったんですね。私は、何も韓国とけんかせいという話ではないんです。隣国ですから仲よくしなければいけません。その上において、お互い、のどにとげが刺さった状態であるのはよくないんですから、やはり話し合いの場を持つことが大事だ。

 そのためには、特に竹島を抱える隠岐町だとか島根県の意向も大事だと思うんですよ。やはりそれは、島根県の意向等は、ぜひとも、役所というか、担当の課なり部屋を置いてもらいたいという希望があるんですね。これの検討はできるんでしょうか。

齋木政府参考人 竹島は歴史的にも国際法的にも日本固有の領土であるということはもう明らかでございまして、日本政府としましては、韓国との間で長年にわたって、この問題について早く決着を目指そうということで、いろいろ努力しているわけでございます。

 外務省としましても、この竹島問題につきましては、島根の知事さんを含めて、島根の方々から頻繁にその早期解決に向けての御要望を受け取って、また、これを政府の中でほかの関係の部局といろいろと相談しながら、どうやってこの問題を早く解決したらいいかということについて、いろいろと知恵をめぐらせているところでございます。

鈴木(宗)委員 齋木局長、ぜひともその知恵をめぐらせてください。知恵をめぐらせて、島根県の皆さん方は、竹島の日までつくって頑張ってやられていますね。そういった地元の声というのは私はやはり重いものだと思いますので、北方領土と竹島だけがこの日本にとっての領土問題、まだ未解決の問題だという中で、しっかり取り組んでいただきたいものだな、こう思っています。

 そこで、中曽根大臣、竹島の日に必ず外務省なり政府等に案内状が来ていると思うんですよ。ところが、政府関係者はだれも出ないんですね。大臣が忙しいならば副大臣、副大臣が忙しいならば大臣政務官でもいいと思うんです。また、そのすべてが忙しいならば担当局長なり担当課の人が行くだとか、私は対応したっていいと思うんですけれども、なぜ竹島の日には、招待状があっても、都合がつかなくてだめだということでけんもほろろの扱いをしてきたのか。これはちょっと大臣の見解をお尋ねしたいと思います。

中曽根国務大臣 ことしの島根県の竹島の日の関連行事につきましては、招待を受けておりました私、それからアジア大洋州局長等は、諸般の事情から欠席をいたしました。外務省として祝電等のメッセージを送付したということもございません。

 ただ、竹島の日の関連行事には欠席をするということになりましたけれども、政府といたしましては、さっき申し上げましたように、北方四島とともに竹島問題、これの重要性は十分に認識をしておりまして、その平和的な解決を図るために全力を挙げてやっているということでございます。

鈴木(宗)委員 中曽根大臣、解決のために全力を尽くしてやっているという話ですけれども、案内をもらって電報も出さないというのも、私は普通考えられませんね。

 例えば、北方領土の日は、東京でもやれば地元でもやっていますよ。その地元での会合にも必ず副大臣なり事務方の担当者も出せば、北方領土の集会、何かイベントがあれば、外務省の人が、大臣メッセージとしてロシア課の人が読んだりしていますよ。

 やはり、竹島の日もある、地元は地元で、そういった県民から選ばれた議会決定において、日をつくって大会まで実施していることをかんがみるとき、それに少しでもこたえてあげる、私はこれがやはり大事でないかと思うんですよ。

 これは、なぜ電報すら打たないのか、何が問題なのか。外務大臣、どうお考えでしょうか。

中曽根国務大臣 政府といたしましては、地方公共団体が行っております個別具体の施策について見解を述べることは差し控えているわけでありますけれども、先ほど申し上げましたけれども、我が国のこの問題に対する立場というのは一貫しておりまして、平和的解決を図るため、粘り強い外交努力を行っていく考えでございます。決して、この竹島の問題を軽く扱っているということではございません。

 以上でございます。

鈴木(宗)委員 時間ですからやめますけれども、どうぞ大臣、領土問題は北方領土と竹島であるということ、不法占拠されているということは国家主権が侵されているということですから、きちっと、やはり毅然と交渉するのが日韓のためになる、私はこう思いますので、今後とも竹島問題もしっかり取り組んでいただきたい。あわせて、北方領土問題はなお、テーブルに上がっている問題ですから、前に進めていただきたい。このことをお願いして、終わります。

 ありがとうございました。

衛藤委員長 これにて鈴木宗男君の質疑は終了いたしました。

 次に、逢坂誠二君。

逢坂委員 民主党の逢坂誠二でございます。

 先ほどに続きまして、またやらせていただきます。

 お手元にちょっと資料を用意させていただきましたけれども、まず最初に、金子国土交通大臣にお伺いをしたいと思います。

 お手元の一枚目の資料でございますけれども、これはことしの一月九日付の官報でございます。入札公告、建設工事というのが載ってございます。これは工事名が八ツ場ダム本体建設工事ということでございますけれども、これが二十一年度の予算のものなんでありますけれども、これは一月九日に入札公告に出ているわけですね。この時点では、二十一年度の国の予算というのは閣議決定すらされていないわけであります。

 この時点でこういう入札公告を出すということについて、法律上はだめだという規定はないということは私、確認させていただいているんですけれども、金子大臣、こういう入札公告というのは適切なものなんでしょうか。あるいはまた、なぜこういう入札公告をしなければいけないんでしょうか。

    〔委員長退席、鈴木(恒)委員長代理着席〕

金子国務大臣 御指摘のとおり、予算成立前の一月の九日に入札の公告を出しております。これは、大規模な工事に係ります一般競争入札におきましては、入札公告から契約に至る一連の契約手続に非常に長期間を要する。今回は六カ月程度を考えているようでありますが、企画競争といったようなことも入ってくる。そういう意味で、工事の着手時期、施設の完成時期を考慮しまして、契約手続を実施することが必要であったということでございます。

 特に今回、八ツ場ダムにつきましては、二十七年度の完成に向けて工事工程を考慮しまして、平成二十一年度本予算成立と予算の示達を契約締結の条件として、一月九日に入札公告を行ったものでありまして、契約手続に問題はありません。既に、ほかのこの種の例では、湯西川ダム、津軽ダム等々で行われております。

逢坂委員 金子大臣、今、この入札のための準備には六カ月程度必要だという話がございました。これは実際、入札は何月ぐらいに予定されているんですか。

金子国務大臣 一月九日に入札公告をさせていただきまして、申請書、資料等の提出を平成二十一年二月、技術提案の提出を二十一年の三月、それから技術提案の審査を五月から始める。そうして、今回は特に技術対話、ヒアリング型というものを想定しておるようでございます。

 それはどういうことかといいますと、技術提案が出されましたときに、その提案に対してもう一遍ヒアリング、対話というのを発注者側と繰り返しながらやっていくという意味で、技術提案を改善していく。

 見積書の提出は二十一年八月、入札の札をあけるのは二十一年の九月、契約は二十一年九月から十月をめどとしております。

逢坂委員 金子大臣、これを例えば三カ月ずらすということはそれほど不都合のあることなんですか。三カ月ずらすというのは、今回の入札公告を一月にしないで、予算が成立した四月一日にする、それで事実上は三カ月程度ずれるわけですね。それでそんなに問題のあることなんですか、今のスケジュールを思えば。九月の契約が十二月になることでそれほど問題のあることなんでしょうか。

 そもそも、予算というのは議会で議論されて、国会で議論されて、そしてそのことがはっきり決まってからじゃないと着手できないというのは基本ルールじゃないでしょうか。どうですか。

金子国務大臣 この八ツ場ダムにつきましては長い間経緯がある、委員御承知のとおりであります。

 それで、平成二十年九月、関係都道府県でございますけれども、地元の群馬県知事からは、ダムの完成については極力早期の完成を期してほしい、埼玉県の知事からも、さらなる工期延長がないよう万全を期されたい、千葉県知事、工期を厳守すること、東京都知事、さらなる工期の延長がないよう万全を期すことということで、生活再建等々の問題もかねて経緯があるだけに、工期、二十七年ということについて極力守っていきたいというための措置であります。

逢坂委員 いや、それであるならば、二十年度は二回も補正予算を提出しているわけですし、別にやりようというのは幾らでもあるんじゃないですか。二十年度の中でやっていくということだって可能だし、二十年度の補正でやり切れないものであるならば二十一年度に繰り越すということだってあるわけですよ。まさに定額給付金がそういうやり方でやっているじゃないですか、総務大臣。

 だから、なぜそれをあえて、二十一年度の予算なのに一月に入札公告を出して。地元から要望があったから早くやらなきゃいけない、だったら具体的な手続、正当にやれる方法はあるじゃないですか。何でこれだけこうやって逸脱するんですか。

金子国務大臣 ダムの工事でありますので、発注手続に入りましてから、出水期というものがあります。この出水期のときに川を、流れを別の川に流していくという工事の技術的な理由もある。三カ月間これがおくれますと、もう一年おくれるということになってしまうという技術的な、つまり逆に言いますと、仮締め切りの工事のおくれというものが発生しますと二十七年完成が難しくなるということであります。

逢坂委員 それは工事としては理解できるわけですけれども、ならば、二十一年度予算じゃなくて二十年度予算に計上して、予算をはっきりと議決した上でやればいい話じゃないですか。しかも、八ツ場というのはきのうきょう始まった事業じゃないわけで、去年から要望を受けているとか、前からずっと要望を受けているのであれば、二十年度予算に組み込んで、それで執行できなければ繰り越すという手続だって十分にあるわけですよ。議決も何もされていないどころか、閣議で決まっていない予算を入札公告に出して、あたかも国民の皆さんにはその予算に対してある程度の予見を与えるようなことをやるというのは、国会軽視じゃありませんか。どうですか。

金子国務大臣 冒頭にお答えしましたとおり、これについては条件がついている。二十一年度の本予算成立と予算の示達を契約の締結条件としておるということでありますので、そこは、予算が通らなければこの契約はできない、あるいは無効になるということであります。

逢坂委員 これは、過去にもやっていたという話でございましたけれども、幾ら条件がつこうがどうしようが、私は、国会の予算審議を形骸化させる、やはり本来やってはいけないやり方だというふうに思うんですね。

 それで、これはぜひとも私は避けるべきだと。あらかじめそういうことになって手続が進んでしまいますと、地域の皆さん、国民の皆さんに、この予算に対してある種の予見を与えるわけですね。金子大臣、これは絶対にやめるべきだと私は思うんですけれども。

 財務大臣、いかがですか、予算が閣議決定もしない前からこんなことが行われているというのは。いかがですか。

与謝野国務大臣 先生の御主張のとおり、予算は国会の御承認をいただかなければ予算とならないわけでございますから、当然、落札者を決定したり契約を締結するということは違法なことだと私は思っております。

 ただし、やむを得ない場合というものもあるということで、その場合にはある程度の準備作業というものはどうしても必要だということは、ぜひお認めをいただきたいわけでございまして、原則は、先生の御主張のとおり、予算が通ってからやるというのが通常の手続ですけれども、やはりやむを得ない場合というものもあって、そのような場合には準備のいろいろな手続をとらせていただくということも合理性に欠けてはいないと私は思っております。

逢坂委員 財務大臣の御答弁ではありますけれども、そうはいうものの、閣議でも決まっていない、実際の入札をしようとするときから八カ月も前だ、では、いつまでさかのぼることができるんだ。

 しかも、合理的な理由がある場合というふうにおっしゃいましたけれども、補正だって二度も二十年度予算、組んでいるわけですから、その中に滑り込ますことだって、場合によっては可能だったのかもしれない。しかも、それが契約に至らない場合であるならば、繰り越すという手続だってあるわけですね。先ほども例に言いましたけれども、二十年度予算で補正をした定額給付金は、まさにそれは繰り越してやろうとしているわけですから。いろいろなやり方があるのにあえてこれだけやったというのは、私は極めて不適切だというふうに言わざるを得ません。

 この問題ばかりやっているわけにはいきませんので、金子大臣、次に、もう一つお伺いします。

 二十一年度予算案に盛り込まれた首都機能移転関係の経費、これをお知らせください。今、思わずちょっと委員会室に笑みのようなものが漏れたようでありますけれども、大臣、お願いします。首都機能の二十一年度予算案に盛り込まれた額です。

金子国務大臣 四千八百万を計上しております。

逢坂委員 そうなんですね。これは、首都機能移転の関係の予算というのは四千八百万計上されているんです。

 そこで、大臣に確認でお伺いしますけれども、十八年度にはこれが三億四百万、それから十九年度は二億六千二百万、二十年度は二億三千万、そして二十一年度、四千八百万というふうに盛り込まれている。

 しかも、その体制ですね、体制。これは国土交通省国土計画局首都機能移転企画課ですか、そういうところがあって、十八年度、十九年度は課長以下八名体制でやっている。だから、人件費を含めると、先ほど私が言った経費以上にかかっている。それから、二十年度、二十一年度は課長以下七名体制でこの仕事をやっているわけです。

 ところが、ここの委員会室の皆さんにもお話ししたいんですけれども、首都機能移転という議論を今どこでやっているんですか。これほど霞が関の省庁を建て直して、議員会館も今建て直すと言っていて、何で今首都機能なんですか。しかも何億も、何で今まで予算を計上しているんですか。大臣、これ、合理的に説明してください。

    〔鈴木(恒)委員長代理退席、委員長着席〕

金子国務大臣 この首都機能移転につきましては、平成十六年十二月二十二日、これは、そもそも首都機能移転は議員立法で定められたんですね。それで、この議員立法で定められた首都機能移転に対して国はその責務を負うという議員立法が、もうちょっと正確に申し上げさせていただければ、国会移転に関する法律ということで、「国の責務」として、この「具体化に向けて積極的な検討を行う責務を有する。」というふうに、これが議員立法で定められているんです。

 ただ、平成十六年の、国会等の移転に関する政党間両院協議会、これは与野党でありますけれども、座長とりまとめが出ました。衆議院の座長は鈴木恒夫筆頭理事でありますけれども、その座長とりまとめは、分散移転や防災に関する調査を行うという取りまとめが行われておりまして、それで、御指摘のように、予算がこれまでついてきたところであります。

 しかし、何をやってきたかということについて申し上げれば、首都機能を移転したときの防災上の問題は何なのか、あるいは防災管理機能というものを、首都機能を移転した場合にどうあるべきか、あるいはほかの都市との連携をどういうふうにすべきかといったようなことについて調査を行うということでやってまいりました。

 ただ、そうはいいましても、今の政党間の両院協議会が平成十六年以降行われていない状況になりまして、先ほど御指摘いただきました平成二十一年度については、今年度二億三千万でありましたが、これを四千八百万、必要最低限の調査にとどめさせていただいたということであります。

逢坂委員 私がここで問題にしたいことは幾つかあるのでありますけれども、一つは、やはり首都機能移転という議論が、もうある程度の大きな山を越えて収束に向かっているにもかかわらず、議員立法でつくったもので両院の協議もあったからといって、予算を、ある種、惰性のようにつけ続けているというのは、これはやはり相当な問題だというふうに思うんですね。

 しかも、国家百年に一度の危機だというふうに言っていて、一円たりとも無駄にできないというふうに言っているこの予算の中で、億単位のお金が平気でつけられているわけであります。人件費も含めてですよ。だから、これは、例えば今直轄事業負担金を払えないと言っている自治体の関係者から見れば、いかにも国は大盤振る舞いをやっている、とんでもない、そういうふうに言わざるを得ないんだというふうに思うんですね。

 それと、私は、きょうのこの質疑は予算質疑のあり方について議論をしたいと思っているんですが、もう一つ問題は、では、この一般会計予算書の中で首都機能移転の予算がどこで読み取れるのかという話なんです。

 いろいろ調べてみました。この平成二十一年度の一般会計予算書、白表紙のものですが、この七十三ページに、「国土形成推進費」という項が上がっています。この項の合計金額が二十五億一千百五万五千円です。それで、国土交通省に聞きましたら、逢坂先生、この中に含まれていますということなんですね。二十五億の項の中にこの事項が含まれている。それでは詳しい明細書が後ろについているからごらんくださいということで、見せていただきました。

 後ろのページは七百九十一ページ。同じように項があって、「国土形成推進費」。そして、その次に、今度は事項というのがございまして、「総合的な国土形成の推進に必要な経費」二十五億一千百五万五千円。さらに説明がありまして、「総合的な国土形成を推進するための調査等」というふうに書いてあるわけです。

 これじゃ何が何だか、予算の議論にはならないわけですね。私は、何も全部細かいものを積み上げて資料を出せということを言っているわけではないのでありますけれども、でも、国民が予算の中身を知りたいと思ったときにわかるような仕組みにしておかなければ、今のような議論もできないわけです。特定の関心を持ってここはいかがですかと聞けばやっと出してくるということでは、これは全く予算審議にならないというふうに思うわけです。

 そこで、こういう話をすると、大体次のような話がされるんですね。いや、逢坂さん、そうは言いますけれども、財政法の二十三条の規定の中に「歳入歳出予算は、」という規定があって、「歳出にあつては、その目的に従つてこれを項に区分しなければならない。」と。これに従って法律どおりやっているんだから何の問題もないと。そうは言うんですけれども、余りにも、項だけのことでは予算の中身が判断できない。これは、私は強く指摘をしなければいけないというふうに思うんですね。

 これは、何も金子大臣だけの問題ではなくて、日本の国家予算を考えるときの非常に大事なポイントだというふうに私は思うんですが、財務大臣、いかがでしょうか。余り御関心はないでしょうか。

与謝野国務大臣 そもそも首都機能移転というのはバブルの時代の遺物ではないかと思っておりますが、しかし、国会は、大まじめに首都機能移転に関する決議をやって、平成四年には議員立法で法律もつくりました。私ら東京の議員としては甚だ遺憾に思っていたわけです。

 まして、私が残念だと思いますのは、那須野ケ原に行っても、首都がもしかしたら来るかもしれない、岐阜県に行っても、山の中に、首都は岐阜になんて書いてあった。こういうもので随分無駄な努力や無駄なお金が使われているんじゃないかなということを思ったことがあります。

 しかし、議員立法でできていて、国はそういういろいろな調査等に協力しなければならないということが書いてあるわけでして、そのために必要最小限の予算を計上せざるを得ない。そういう事情もぜひ御理解をしていただきたいと思っております。

逢坂委員 私は、ここで首都機能移転の是非を問うということよりも、そういったことが、公式に出されている予算のこのデータからはわからない、こういう仕組みになっていることが今の日本の予算審議の問題点だということを言いたいわけです。だから、財政法も、項に区分するということにはなっていますけれども、それよりも一歩踏み込んだ、求められたからやっと出すというものではなくて、求められるとか求められないにかかわらず、予算情報をしっかりと公開しておくということの指摘をしておきたいというふうに思います。

 時間もありませんので次に行きたいと思います。

 次に、予備費についてちょっと話をさせていただきたいと思います。

 平年ですと一般会計の予備費は三千五百億でございますけれども、今回、それとは別に一兆円の予備費が計上されたわけでございます。私は、この予備費について、やはり必ずしも適切ではないのではないかという印象も持つわけであります。

 これは釈迦に説法でありますけれども、この予備費というのは、予見困難性がある、そういうことで計上するんだ、あるいは、補正では間に合わないというようなこともあるから出すんだということでありますけれども、財政上の国民主権という観点から考えると、余り適切ではないというふうに思います。

 それから、予見しがたい、予見しがたいということばかり言っていると、何でもかんでも予見しがたいということを言えば予備費がどんどん拡大していくおそれもあるわけでございまして、財務大臣、この予備費の問題についてどうお考えになるでしょうか。

与謝野国務大臣 実は、経済対策の一環として平成二十一年度の予算をどうするかというときに、通常の予備費のほかに、やはり経済がこういう状況で何が起きるかわからないので、予備費として予期せざることに対応できるようにしようという議論をやっておりました。もちろん、先生御指摘のように、国会の予算の審議権との関係で、無原則な予備費というのは許されないであろう、そういう議論もいたしました。

 結局、予備費とはいえ使途が限定されているということも御理解をいただいていると思うんですけれども、これは、雇用対策等あるいは中小企業金融等、社会資本整備、こういうことで、いわば限定的に列挙して、それに対する予備費ということでお許しをいただけるんではないかというので、一兆円というのは通常の年に比べて大き目であることは間違いないわけですけれども、そういうことで、経済が異常な事態でございますから、使い道を限定的に列挙した上で予備費としてお願いするということは、国会にお願いできるのではないかという判断をしたわけでございます。

逢坂委員 今の財務大臣の説明は、ルールとしては私も理解をするわけでありますけれども、そこでまた、もう一つ指摘をしたいんです。

 確かに、予備費、使途もある種限定されているということでございましたけれども、その使途の限定の仕方も、先ほど私が言うところの、財政法で言うところの項のレベルなわけです。項のレベルというと、やはり非常に幅が広いわけですね。例えば、財務省、財務本省の経費の中の項で「政策金融費」というふうに上がっている。これに使えますよということでありますけれども、さすれば、政策金融というのは一体どの程度の広さのところまでお金を使えるのかということになると、これまたいろいろ議論があるわけでございまして、やはり、これは予備費そのものの問題があるのと同時に、日本の予算を項だけで議論しようというところに限界があるということを私は指摘させていただきたいと思います。

 これは指摘だけにさせていただきまして、それで、財務大臣にもう一つ、この予備費に関してお伺いしたいことがあるんです。

 もし仮に、仮にの話は麻生総理はよく答えられないというふうに言うんですけれども、私はそんなことはないとは思うんですが、これで二十一年度中に補正予算を組まなければならないというような事態が発生したときに、例えば経済対策などでそうなったときに、この予備費というのは使い切ってから補正予算を組むものなのか、あるいは、予備費はそのまま温存したまま補正予算を組むものなのか、あるいは、予備費が残っているものを補正予算に溶け込ませるべきものなのか、これは私は、技術的に結構、あるいは政策的にも政治的にもいろいろな関係があるとは思うんですが、その辺を財務大臣はどうお考えになりますか。

与謝野国務大臣 まず、予備費ですけれども、勝手に使えるというものではなくて、やはり国会に対してきちんとした説明をする、また、し得るものにしか使えないと私は思っております。

 それから、補正予算の話は実はまだ考えておりませんので、お答えしづらいというのが正直なところでございます。

逢坂委員 それでは、次の問題に移りたいと思うんですが、金子大臣にお伺いします。

 金子大臣、二月四日の私どもの馬淵委員の質疑の中で、予算審議のあり方についてこうしゃべっているんです。「予算審議では全体の枠の調整と決定をやらせていただく。」あるいはまた別のところで、「この予算委員会というのは、全体の枠の議論をさせていただいておるのでありまして、個別の箇所づけ、これは、事業進捗の状況、予算の全体枠、これを十分に精査した上で当該年度の予算額を確定する。」あるいは別のところで、「この予算委員会は、個別箇所づけを議論する場というよりも、全体の予算の調整を、額を決定するということであります。」という話をされているんですが、私は、この発言に若干違和感を覚えるわけであります。

 では、あたかも、金子大臣の発言を聞くと、個別事業の議論を何か封鎖しているようにも聞こえるわけですが、この発言の真意をちょっとお聞かせください。

金子国務大臣 個別箇所づけの議論を封鎖しているという考え方は毛頭ありません。予算委員会でありますので、これは与謝野大臣の所管でありますけれども、予算の規模あるいは重要事項というものをお示しして審議しているところであります。

 ただ、個別の箇所につきまして予算委員会で取り上げられれば、当然でありますけれども議論をさせていただく。特に分科会はもう個別箇所がほとんどというくらい議論されておりますので、決して、予算委員会は個別の箇所をやっちゃいけない、あるいはやらないところということを申し上げているつもりはまるでありません。

逢坂委員 本当はもう少し深く議論したいんですが、時間の関係もありますので、与謝野大臣に、日本の予算審議のあり方についてちょっとお話をさせていただきたいんです。

 手元に資料を用意いたしました。資料の二枚目でございます。これは、私の事務所が国会図書館にお願いをいたしまして、各国の予算審議の流れをまとめていただいたものでございます。一番左端に日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツというふうに並んでおります。

 これを見ますと、予算審議の期間が、日本が二・五カ月程度、アメリカ八カ月、イギリス五カ月、フランスが三カ月、ドイツが四カ月ということで、予算審議の時間が、この比較の中だけ見る限りは、日本は必ずしも長くはないというよりも、この表の中では一番少ないというふうに思われるわけです。

 私は、予算審議というのは、やはりもっと丁寧にやるべきだ。きょう、私、幾つか事例を挙げました。入札の問題を挙げました、首都機能移転の問題を挙げました、それから金子大臣の、大変失礼とは思いましたけれども、発言も取り上げさせていただきましたけれども、もっと多角的に日本の予算というのは議論されるべきだというふうに感じるわけです。

 その意味において、予算審議のあり方というものを、ことしすぐ直すのは私は不可能だとは思うのですが、将来に向かって、もっとしっかり、じっくりと議論できる方向へ直していかなければいけない。国際比較から見ても、これはやらざるを得ないのではないかという気がするわけです。

 そのポイントは、実は二つございまして、一つは、もちろん期間と仕組みの問題がございます。これが一つです。

 もう一つは、先ほどの金子大臣の発言は私は半分正しいと思うんですよ。半分正しいというのは、まず一つは、個別の細かい事業が日本の予算審議の中ではほとんどわからない。先ほどの首都機能移転なんかもこの予算書から全く読み取れないわけです。何が予算に入っているかわからないということもありまして、ミクロ的な議論ができるように情報公開をしっかりやるというのが、まず予算審議の大前提だというふうに私は感じます。

 しかし、一つ、ミクロ的な議論をやったとしても、合成の誤謬ということがございます。ミクロでどんなに正しくても、実際予算を組み合わせてみたら大きく方向が間違っているということはあるわけでございますので、もう一つは、大きな経済やさまざまな国際関係の流れなどによって、大きな方向の議論をする、マクロ的な議論をするという予算の方法、この二つを組み合わせなければ私はだめだというふうに思うわけです。

 したがいまして、財務大臣、きょうは、今後に向かって、日本の予算編成のあり方というものは今のままでは十分ではないんだ、私がこの短い時間の中で幾つか指摘をしただけでも、まだこれは議論足りないぞとか、これはおかしいぞというのはいっぱいあるわけでございますので、ぜひこのあたりについてのお考えをお聞かせ願えればと思います。

与謝野国務大臣 与党というのは恵まれた立場にいて、予算編成が始まるときからいろいろ提案もし、討議もしという機会があります。しかし、実際は、予算書が国会に出てきてから、年度内成立を目指してお願いをする、この時間の長短というのが皆様にとっては大変重要なことだろうと私は思っております。

 私も、初めて当選したのが鳩山総務大臣と一緒のころで、三十数年前ですが、国会に参りまして、予算委員会というのは予算の中身を審議するところだろうと思いましたら、予算委員会というのは予算以外のことにほとんど時間を費やしているというのでびっくりしたことがありました。まあ、それ以来は、予算委員会というのはそういうところなんだなと思いながらやってきましたが、やはり予算の中身を国民に知っていただくということも、この予算委員会の一つの大事な仕事であるというふうに私は思っております。

逢坂委員 財務大臣、与党であれば割と野党よりも先に内容を知れるとか、より詳しく知ることができるとか、野党であるならば予算案ができてからだみたいな、そういうことではなくて、国民主権という立場に立って考えるならば与党も野党もないわけでございまして、国民にとって本当にこの予算の中身が伝わっているかということが大事なわけですね。

 よもや今、国民の皆さん、ことしの二十一年度予算の中に首都機能移転費が入っているなんて、多分思っていないんじゃないか。あるいはまた、八ツ場の入札公告が、予算議論をしている以前、閣議決定される以前に入札公告が出ているなんということはほとんどわからない、そういうふうに思うわけですね。だから、そこは国民目線で予算の審議のあり方というものをこれから直していかなきゃいけないということを申し上げさせていただきたいと思います。

 そこで、中期プログラムについてちょっとお伺いをしたいと思うんですが、私、この中期プログラムを見せていただいて、どうも合点がいかないわけであります。合点がいかないというのは、「持続可能な社会保障構築とその安定財源確保に向けた」と、「社会保障構築」というふうに書いてあるんですけれども、私には、この文書を読んで、どう見ても社会保障には読めないんです。

 まずそこで、政府参考人をお呼びしておりますけれども、この中期プログラムの中に、「社会保障制度の財源のうち、公費負担については、現在、その三分の一程度を将来世代へのつけまわし(公債)に依存しながら賄っている。」という記述があるんですけれども、この算定根拠というのは、私が三枚目の資料で用意したものということで、政府参考人、よろしいでしょうか。簡潔にお願いします。

西川政府参考人 お答えいたします。

 算定の算出の根拠は、こちらの資料で間違いございません。

逢坂委員 それで、私が用意したこの三枚目の資料を見ていただきたいんですが、これを見ると、「社会保障に係る公費」というのが左側の欄にございまして、次に「公債依存度」というのがございます。「公債依存度」ですね。すなわち、この中期プログラムで言っている、社会保障の公費負担のうちの三分の一程度は借金で賄っていますよというのは、この表を見れば一目瞭然なんですが、単に公債依存度を掛けているだけなんだ、掛け算をしているだけだということなんですね。

 この原理原則でいけば、例えば、国家公務員人件費のうち公費負担の中の公債依存度というふうにいえば、この表で同じ結果が出るわけですね。あるいは、教育経費における公費負担のうちの借金の割合といえば、これと同じ考え方で出るわけです。

 ということは、何もこれは社会保障費だけが特に公債依存度が高いとか低いとかということを言っているものではなくて、単に日本全体の予算の公債依存度が高いですよというふうに言っているにすぎないのではないかというふうに私には思われるのでありますが、財務大臣、この辺いかがでしょうか。

与謝野国務大臣 そのとおりでございますが、国の財政の三分の一も後の世代にツケを回しているというのはやはりどこかでやめなきゃいけない。

 特に、そういう中で、社会保障だけは絶対守らなきゃいけないという思想が実は中期プログラムの中に流れておりまして、それからもう一つ、表では論じられていませんけれども、やはり税制の抜本改革を唯一国民に理解いただけるのは社会保障の持続可能性という観点からだけではないかという思いが、実はその中期プログラムの中に書かれていると私は思っております。

逢坂委員 そうなんですね。まさに私は、この中期プログラムを読んで、社会保障というものを引き合いに出せば国民が納得しやすい、あるいは、国民が社会保障であるならばある種財源の確保についてイエスと言いやすいというような、そういうものを出したのではないかというふうに思わざるを得ないんですね。

 もしこれが仮に公共事業の公費負担部分の借金比率というものをここへ出して議論したとしたら、それは実は、必ずしも財源を確保するという議論には進まずに、逆に、公共事業を少し削減した方がいいんじゃないかという議論に進む可能性も否定できないわけです。

 すなわち、この中期プログラムは、あたかも社会保障を何とかしましょうというふうに言っているようには見えるけれども、日本の財政全体の問題の中で本来考えるべきことを、社会保障にフォーカスを当てて、何となく増税とか財源の確保が納得してもらいやすい、そういう意図でつくられているというふうに私には感じられて仕方がない。

 まさに先ほど財務大臣もそうおっしゃられたように思うんですが、改めて、どうでしょうか。

与謝野国務大臣 社会保障が続けられなくなったらこれは一大事でございまして、その点は当然、国民とともに、どうやって持続可能性を図っていくかということは考えなければならない点でございます。

 これは、財源を確保する、そしてその財源は次の税制の抜本改革の際に確保しようという考え方で中期プログラムはつくってありまして、人に幻想を与えようとか、だまして税金を取ろうとか、そういう思想は全くなくて、正面から、社会保障を持続可能にするためにはこれだけの財源が必要でございますということを正直に申し上げているのがこの中期プログラムだと私は思っております。

逢坂委員 いみじくも大臣の方から、幻想とかだますという言葉がございましたけれども、私は、一般論としてこの社会保障の中期プログラムを見ると、国民の皆さんは、ともすれば、もしかしたらこれが実現すれば社会保障のサービスが今よりも充実するんじゃないかというふうに思われるんじゃないかと思うんです。でも、私は、少なくとも、この中期プログラムのスキームというか中身を見る限り、これ以上充実するというふうには書かれていないような気がするんですね。

 すなわち、社会保障費のうちの公費負担分の借金部分を別の安定的な財源に置きかえるということを言っているにすぎませんから、今よりも社会保障関係のサービスが充実するということとは、これは全く議論は別のものだというふうに思うわけです。この辺、財務大臣、いかがですか。

 すなわち、今回のこの中期プログラムが実現すれば、社会保障がもっと今よりも充実、拡充するということを必ずしも言っているものではないということを確認したいんですよ。

与謝野国務大臣 手元に原文がないので記憶の限りお答えしますけれども、まず、高齢化社会が参りますので社会保障費が自然にふえる、それに対応しなきゃいけないという部分、それから、現在の社会保障制度、中福祉と言われながら、現在の中福祉さえほころびが来ている、そういう思想、それからもう一つは、やはり社会保障の機能強化を図るということも書いてありますので、先生の言われたことにプラス、ちゃんときちんとしたことも書いてあるのではないかと私は思っております。

逢坂委員 財務大臣のおっしゃる話も、私もわからなくもありません。

 国民にとってつらい政策というものを実現していくときに、どうやって御納得をいただくか、どうやって説得をしていくか、説明をするかという点において、やはり社会保障というものを柱に据えるということは、あってはならないことだというふうには思えませんが、でも、ともすれば社会保障という分野を隠れみのに、しているかしていないかは議論がいろいろありますけれども、隠れみのにするかのようなやり方で国民に、これをやれば生活がよくなりますよみたいな、幻想までは振りまいてはいないというふうに私は思うのですが、でも、ともすればそう受け取られがちな議論のやり方というのは、私は、やはり避けるべきではないかと。

 もっと国の予算全体を見据えて、虚心坦懐に真正面から、例えば教育も福祉も公共事業も産業振興も全部含めた中で、財源が本当に足りているのか足りていないのかという議論をやはりやるべきではないかなということを申し上げて、終わりにさせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございます。

衛藤委員長 これにて逢坂誠二君の質疑は終了いたしました。

 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。

 きょうは、私は、日系ブラジル人などの定住外国人の現状について質問をさせていただきます。

 三十万人を超える日系ブラジル人など定住外国人の失業問題が深刻であります。きょうのニュースでも、群馬県大泉町の調査で、五人に二人が仕事がない、十二月から雇いどめとなっている、こんなことも報道されておりました。主に製造業の職場で働いてきた定住外国人の労働者は真っ先に解雇をされ、教育費が負担できずに、子供たちの就学も困難になっております。

 そこで、舛添厚生労働大臣に伺いますが、定住外国人労働者の解雇や雇いどめの状況、また、雇用形態として派遣や期間社員など非正規雇用が多い、こういう状況をどのように把握しておられるのか、お聞かせください。

舛添国務大臣 委員御承知のように、大変厳しい経済状況、雇用失業情勢の中で、太田とか松本、浜松、大垣、そういう外国の方々がたくさん来られるハローワーク、これは、数字をとってみますと、昨年十月から十二月にかけて五千五百三十人が職を求めている。これはその地域だけですから全体の統計がありませんけれども、そこだけ見ても、前年比で六倍だということであります。

 それで、昨年十二月に、各都道府県の労働局、ハローワークに対して、非正規労働者のこの雇用問題の中に外国人労働者がどれだけ含まれているか、これを調べなさいということで報告させたんですけれども、一月までに報告があったものを集計すると、年度末までの半年間で五千六百人という大きな数字になっております。

 日本語が完全にできないとか、それから、日本の習慣に不案内であるとか、職務経験が不十分とか、いろいろな理由があると思います。しかしながら、これは、ハローワークを中心に通訳を配置するとか相談センターを開いておりますし、定住外国人の方々は、日本の正規とか派遣の方々と同じような手当てをきちんと打つようにし、とりわけ日本語能力の向上を含めた職業訓練、こういうこともやるようにして、万全を期して定住外国人の方々に対する支援を行いたいと思っております。

塩川委員 求人が昨年の六倍になっているとか、五千六百人の雇いどめの状況というお話がありましたが、これは、深刻な地域ではあれ、一部のハローワークでの調査であります。全体はどうなっているのかということについてだれもわからない、政府はそういう実態を把握していない、これが現状であります。

 例えば、浜松市が三、四年に一回、南米系外国人の生活・就労実態調査報告書というのをまとめております。その中では、就労形態は、正社員が八・九%に対して、派遣や請負が七六・四%、八割に上る。また業種別には、自動車を初めとした製造業従事が八三・三%で、ほとんどを占めている。さらには、住まいが会社の社宅や会社契約のアパートという人が四七%、半分に上る。まさにワーキングプア、ホームレス状態に置かれる、そういう実態というのが浜松市の実態調査だけをとってもうかがわれる。

 そういう点で、政府として、全国でこういう定住外国人の生活・就労実態調査をきちっとやってもらいたい、実態調査を行っていただきたい、この点についてお答えください。

舛添国務大臣 これは、先ほど申し上げましたように、全国の都道府県労働局、ハローワークを通じて今報告を上げさせているところであります。

 今、ブラジルの方々が昨年十月末で九万九千百七十九人、ペルー人が一万五千三百十七人ということで、その中に失業者や自営業者を含んだ労働力人口が十七万二千人ということで、例えば浜松について言うと、今数字を挙げられましたけれども、さまざまな断片的な数字が上がっています。全体像をいかにしてつかむかということで、今後検討し、さらに今ハローワークからの報告を上げながら集計しているところでございますので、まとまってお知らせすることができる状況になれば、またお知らせしたいと思っております。

塩川委員 まずは、具体的な実態調査をしっかりとやっていただきたいと思います。

 仕事と同時に住まいも失うというような深刻な現状があるわけで、浜松市に限らず、全国共通した特徴である製造業を中心とした非正規切りが定住外国人を直撃しているわけです。

 そこで、そもそもにさかのぼって、森法務大臣に伺います。

 今日、多数の日系ブラジル人、ペルー人など、日本で暮らし、就労するようになったそのきっかけ、理由は何だったのか、その点についてお聞かせいただけますか。

森国務大臣 きっかけということとはちょっとずれるかもしれませんけれども、御承知のとおり、平成元年の出入国管理及び難民認定法の改正において、外国人労働者を含む外国人の受け入れ範囲を明確にするために、在留資格制度の整備等を行いました。

 しかしながら、いわゆる日系二世、三世の方につきましては、日本に親類の方も多いなど、日本人の子孫として特別な関係にあることなどから、当該法改正以前から受け入れていたものであり、当該法改正により初めて受け入れを認めることとしたものではありませんので、当該法改正が直接的にそのきっかけと言えるかどうかについては、ちょっと私は必ずしも明確ではないと思います。

 しかしながら、確かにこの時期を境にいたしまして日系人労働者が急増しておりますが、その背景には、当時の経済情勢等、さまざまな要因があったと思います。(発言する者あり)

衛藤委員長 諸君、静粛にしてください。質疑が聞き取れませんので、静粛にお願いします。

森国務大臣 当該法改正により日系人の受け入れが明確になったことも、その原因の一つであろうかというふうに受けとめております。

塩川委員 八九年の入管法の改正で、日系外国人の身分、地位に基づく在留資格を明確化した、これが一つのきっかけとして、この時期を境に増加をしているということになっているわけであります。

 そこで、当時の審議はどうだったのか拝見をした際に、八九年十二月七日の参議院の法務委員会での入管法改正案の審議ですが、当時の労働省の監督課長が答弁の中で、労働者派遣を行うことが禁止されている自動車部品の製造事業において、組み立てとか塗装あるいは検査等の業務にブラジル人等の日系人を派遣して就労させていたという事業主を派遣法違反で摘発したという事例もある等、いわば八九年の入管法改正以前から、日系ブラジル人が当時はまだ禁止されていた自動車産業への派遣労働者として働いていたという事実を報告しております。

 ですから、定住者という就労可能な在留資格を与えられることになれば、派遣や請負などの企業側にとって都合のいい働かされ方が拡大することは、入管法の改正当時から十分予測できたことであります。

 森大臣に伺いますが、それなのにまともな手だてをとらなかったことが今日の深刻な定住外国人の実態を生み出すことになったのではありませんか。お答えください。

森国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたけれども、いわゆるブラジル人などの日系二世、三世の方につきましては、当該法改正以前から受け入れていたものであって、当該法改正によって初めて受け入れを認めたものではありませんので、委員御指摘の点については、必ずしも直接的な因果関係があるというふうには思っておりません。

塩川委員 法務省の入国管理局が編集協力をしております「国際人流」、こういう雑誌がございます。法務省の方なら御存じだと思いますけれども。その九〇年七月号の中で「在留日系ブラジル人等の稼働状況等に関する実態調査」というのが取り上げられております。これはだれが実態調査をしているかというと、法務省の入国管理局であります。

 その中では、この調査そのものは入管法の改正が施行された九〇年六月の直前の八九年の十一月に行われたものですけれども、雇用先、請負先についてということで、雇用先企業のほとんどは請負業を事業の一つとしている、また、請負先企業は、自動車部品等の製造業者など、いわゆる大企業からの下請業者が多い。つまり、自動車産業の請負労働者として当時からも多くの定住外国人の方が働いていたということを法務省の調査で指摘しています。

 また、雇用の形態についても、その多数が契約社員またはその類似の形態の契約等を行っているということで、正社員ではない非正規雇用に置かれているということを指摘しております。

 ですから、定住者という就労可能な在留資格を与えることになれば、派遣や請負など、いつでも使い捨てにされるような就労形態が拡大をすることは、入管法改正当時のこの法務省の実態調査でもわかっていたことであります。

 こういった背景に、当時、人手不足ということで、大企業の要求で受け入れの拡大をしてきた。結局、大企業の要求で受け入れを拡大してきたことが今日の事態を生み出すことになったのではありませんか。改めてお聞かせください。

森国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、当時の経済情勢等が背景にあって、確かに入管法の改正の前後でもってふえているわけでございますけれども、それがすべてそのゆえをもってそうなったんじゃなくて、当時の経済情勢があったこと、労働市場の需給関係があったということもやはり申し添えなければならないというふうに私は思っております。

塩川委員 この実態調査で請負先企業の動向ということも指摘をしておりまして、「近年わが国における内需拡大が進み常々これらの労働に従事する労働力が不足する状況下で、勤勉に稼働する日系ブラジル人に対する請負先である製造業者からの需要は依然として根強いものがあり、これを求める傾向は今後も続くものと思われる。」

 つまり、大手製造業が定住外国人の求人を強く要求しているということがこの入管法改正の契機となったということははっきりしているんじゃありませんか。その点をわきに置いて何らのまともな対策をとらなかったことが今日の事態を生み出した。

 当時から、企業側は、必要なときに雇用し要らなくなったら切り捨てるという、使い捨て労働者として日系ブラジル人らを受け入れてきましたけれども、加えて、この間、外国人労働者問題では、技能研修生、実習生の制度の劣悪な労働条件や無権利の問題も大きく取り上げられているときであります。こういう事態を放置してきた政府の無策と受け入れ企業の責任が厳しく問われていることを指摘するものであります。

 そこで、雇用労働問題について舛添大臣に伺います。

 具体的な実態を指摘したいと思います。

 静岡県のある会社、A社とした場合に、このA社におきましては、日本人の方は期間社員ということで、雇用契約期間は六カ月間、勤め上げれば満期慰労金も出る。一方、日系ブラジル人の方は同じ有期雇用であってもアルバイト、こういう立場に置かれて、雇用契約期間も二カ月での短期の更新であり、満期慰労金も出ない、こういう実態がある。こんな形で五年も十年も働く中で、不当な扱いが継続をしているということもありました。

 また、静岡県のB社、C社におきましては、この間、派遣のブラジル人を解雇して、そのかわりにベトナム人の研修生、インドネシア人の研修生を受け入れるようなことも行われている。

 さらには、私がお聞きした埼玉県のD社の労働者の方は、ここで解雇される。製造業の現場で何年も働いてきた外国人労働者の方が解雇されているわけですが、その方は、以前から請負会社、派遣会社、こういう経緯をたどって、しかし、いずれもいわゆる派遣先、発注者の指揮命令下にあった。偽装請負、違法派遣という形で、いわば派遣期間制限の実態があるという事例も存在をしております。

 このような形で労働条件の切り下げ競争が行われているわけです。

 そこで舛添大臣に伺いますが、このように、外国人であるがゆえの差別的な扱いを受けている。これにとどまらず、加えて、派遣法の改悪など労働法制の規制緩和が外国人労働者の解雇や労働条件の悪化に拍車をかけているのではないのか。そういう認識は、いかがですか。

舛添国務大臣 委員御承知のように、例えば労働基準法第三条には、「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。」ということを書いておりますし、労働者派遣法についても同様の定めがあります。したがって、国籍のみを理由として差別的取り扱いをしてはいけない、これは法令違反になります。

 ただ、個々のケースについて、労働者と使っている人たちがどういう理由で例えばその期間を二月にしたのか三月にしたのか。個々のケースは総合的に勘案して状況を判断しないといけないというふうに思いますが、国籍のみということを理由として差別をしちゃいけないということは明言しておきたいと思います。

塩川委員 ですから、同じ期間契約社員であっても、期間社員とアルバイトという待遇の違いを設けているということにおいて不当な差別的扱いが行われているという実態があるわけです。

 そういう意味でも、日系ブラジル人を研修生に切りかえるというところで見ても、研修生、実習生そのものが今劣悪な労働条件のもとに置かれている。いわばそういう形で労働条件の切り下げ競争が行われているその理由として、今御指摘のように、外国人であるがゆえの差別は認められないのは当然であります。

 これに加えて、派遣法の改悪などの、この間の労働法制の規制緩和がこれら外国人労働者の深刻な就労実態を生み出しているのではないのか。この点については、大臣はどのように受けとめておられますか。

舛添国務大臣 労働者の派遣、これがある意味で雇用調整として使われてきている。それはもうそのとおりでありますし、非正規、有期雇用、こういう方々、そして派遣の方々、それが劣悪な条件で働かされてはならないということで、きちんと労働関係諸法令を厳格に守らせるという指導を今後ともやっていきたいと思います。

 恐らく、委員の問題意識というのはよくわかりますけれども、個々のケースについて、このケースはどうかどうかということをやはりきちんと分析し、理由について明確に言わないと、ただ一般的に背景がこうだからということだけでは言いがたいと思いますので、これは、全国の労働基準局、ハローワークを通じて徹底的に指導しております。先ほど私が申し上げた、法令違反ですよということも申し渡しておりますし、それで、各ハローワークから細かい事例について上げさせておりますので、そういう中で、今言ったようなケース、そして委員が問題を持っていらっしゃるようなケースについて、法令違反があれば厳格に取り締まりたいと思っております。

塩川委員 実態をどれだけ把握しているのかという全国の実態調査もない中で……(舛添国務大臣「今やっているじゃないですか」と呼ぶ)全国の実態調査もない中で、そういう問題についてやはり徹底的に行えということを改めて強く要求するものであります。

 雇用確保の指導監督を行うことは当然のこと、私どもは派遣法の抜本改正を要求しております。同時に、大企業による下請企業への買いたたきなどの下請いじめの実態もありますから、こういった不当な優越的地位の濫用などについても是正をさせて、しかるべく労働者の権利保護を図っていくという対策が求められているわけです。

 入管法の改正や、実習生、研修生制度、そして派遣法の改悪など、労働法制の規制緩和が外国人労働者を二重三重に劣悪な労働環境に追い込んできた。そういった事態を放置して、日本全体の労働条件の改善はあり得ません。政府の責任と、安上がりの労働者として活用してきた大企業の責任を厳しく問うものであります。

 そこで、この定住外国人にかかわって、もう一点、教育の問題がございます。塩谷大臣にお聞きしたいと思います。

 ある埼玉県在住の日系ブラジル人の方のお話を伺いました。この間の景気悪化を口実に解雇された方であります。日本に来たのは八九年、先ほどの入管法改正のとき。最初は本人のみでしたけれども、半年後に妻と当時二歳の子供を呼んだそうです。なぜ日本に来たのかというきっかけは、両親から、日本はいいところだ、親戚が多くいるので大丈夫と聞かされ、出稼ぎも日本がいいと勧められた。当初、二、三年で帰ろうと思っていたが、妻が日本にいたいと言う。また、今子供は四人になって、一番上以外は日本で生まれている。日本語のみだ。そのため、子供も日本にいたいと言っている。このように、二十年近くたって、日本に定住する外国人がふえている中で今の大失業に襲われております。

 ブラジル人学校、ペルー人学校のほとんどは、私塾扱いのために自治体からの助成金もありません。授業料に消費税が課せられ、通学定期券も認められていない。学校運営費のほぼ一〇〇%を保護者からの授業料に負っているため、授業料が高額となります。教材費や給食費、スクール代などを合わせて月四万円から六万円にも上ると言われております。

 そこで塩谷大臣に伺いますが、このような日系人の子供の不就学、就学をしていない状況、不就学が増加をしている、そういう実態はどのように把握をされておられますか。

塩谷国務大臣 お答え申し上げます。

 厳しい景気後退に伴って、ブラジル人学校へ通う子供、あるいは公立学校へ通う子供、いるわけですが、不就学の全体の数については、今現在、いわゆる学校へどのぐらい通っているかということですね、その数は現在把握をしている最中でございますが、ただ、今御質問の不就学といいますか、全く初めから学校へ行っていない人の数というのは、これは届け出がありませんので、我々としては今把握をしておりません。

 そういった、学校へ行けなくなった、授業料を払えなくなった子供に対しては、授業料減免あるいは助成を実施する自治体に対して、総務省において特別交付税による支援をする予定でございまして、これは二十一年度の予算で、今審議中でございますが、二十年度実施も含めた形で二十一年度予算で計上しているところでございます。

塩川委員 全体の状況を把握されておられないということで、そのこと自身が重大だと言えます。

 大臣の地元の浜松市の調査でも、年度当初千人以上いた児童生徒が四百人近く減少しているということでした。一方で、公立学校への編入がふえているわけではない。愛知県は県内のブラジル人学校十六校に緊急実態調査をことし一月に行いまして、義務教育年齢の在籍生徒数の減少率は、昨年五月とことし一月で比較をしますと四一%減少している。

 失業保険の給付が切れるこの三月、四月ぐらいに、経済困難を理由に不就学急増の第二波が来ると言われております。もちろん帰国する方もいらっしゃるでしょうけれども、そもそも、失業によって学費の負担ができなくなっているという深刻な実態が広がっているということが今大きく問われているところです。

 そこで、ブラジル人学校関係者から政府に要望書が提出をされております。その中の要望項目を紹介したいと思うんですが、外国人学校に在籍する子供に対して公立学校の就学援助制度と同様の就学援助を行ってもらいたい、また、外国人学校に通う子供に通学費用、通学定期が適用されませんので、こういう通学費用の支援を行ってもらいたい、さらには、外国人学校の授業料に課される消費税負担、これをどうにかしてもらいたい。

 以上三点について、文部科学省としてはこの要望をどう受けとめ、どう対応されようとお考えでしょうか。

塩谷国務大臣 先ほどの、学校に通えなくなった子供の数についてですが、ちょうどブラジル人学校の年度が十二月に終わって、そして新しい日本の学校が始まるのが四月なものですから、多分そこら辺の人数の把握が今できないということで、多くの方々にはできれば公立学校の方へ移っていただきたい、我々としてはそういうふうに考えておりますが、そういうことで、どれだけやめて、そして新しく日本の学校へ入るかということが現時点ではちょっと把握していないということで、これはしっかりとまた把握してまいりたいと思います。

 それから、今の要望の点について、先ほども申し上げました授業料の軽減につきましては、日本人と同じような形で、就学援助という形で特別交付税で措置をするということでございまして、ただ、通学費につきましては、基本的には鉄道会社の判断でやっていただいていることでございますが、これについては、私どもから会社の方へその要望に対してできるだけというお願いはしていきたいと思っております。

 基本的には、専修学校に対して通学のいわゆる割引をしているということでございますので、そういう点についても拡大をしていただくようなお願いをしていると同時に、やはり各学校に対して、各種学校化への促進、ここら辺を、最後の要望、消費税のことも含めて、各種学校化への促進をしていくということで今努力をしているところでございます。

塩川委員 もともと深刻な実態がある中でのブラジル人学校の経営難でありますから、そもそも、文科省として、この位置づけの問題が問われるんだと思います。

 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、A規約では、「この規約の締約国は、教育についてのすべての者の権利を認める。」としております。そして、〇一年九月の経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会の最終見解では、締約国が少数者の民族学校を公式に認め、それにより、これらの学校が補助金その他の財政的援助を受けられるようにすることを勧告するとあります。

 ですから、政府としてこの勧告をしっかり受けとめて、ブラジル人学校等に支援を行うべきだ、このことこそ政府の課題ではありませんか。

塩谷国務大臣 現在、我が国においては、外国人学校等、各国のいろいろな学校がありますが、一応我が国としては、やはり基本として各種学校等の認可を得たところに対して援助するということで、ただ、個人的には、先ほど申し上げましたように就学支援等の支援はしてまいりたいという考え方で、今後、先ほど来外国人に対する御質問があるわけでございますが、我が国として、基本的に外国人に対してどういうふうな対策をとっていくかという将来的な一つの大きな枠組みと、一方で緊急的な問題にどう対処するかということ、この両面で対応していく必要があると考えております。

塩川委員 政府の責任で解決することを強く求めて、質問を終わります。

衛藤委員長 これにて塩川鉄也君の質疑は終了いたしました。

 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社民党の照屋寛徳です。

 きょうは、海軍病院問題について、外務大臣と防衛大臣にお尋ねをいたします。

 SACOの最終報告で、キャンプ桑江の返還条件として、海軍病院のキャンプ瑞慶覧への移設が掲げられております。ところが、どのような経緯で日米両政府が海軍病院移設予定地として宜野湾市地域を選定したのか、明らかにされておりません。

 いかなる検討、交渉過程を経て海軍病院移設先が選定されたのかをお尋ねいたします。

中曽根国務大臣 一九九六年だったと思いますが、SACO最終報告では、沖縄県民の負担を軽減するために、沖縄県における米軍の施設・区域を整理、縮小、統合する、そういう方策についてこれは取りまとめたものでございますが、このSACO最終報告に盛り込まれました措置の取りまとめに当たりましては、米軍の能力とかあるいは即応性などを維持し、かつ移設先が関連する部隊また施設から余り離れてはならないなど、そういう事情を考慮いたしまして移転先を決定したという経緯がございます。

 このような経緯を踏まえまして、SACO最終報告におきましては、キャンプ桑江にあります海軍病院をキャンプ瑞慶覧に移設することで日米で一致をしたということでございます。

照屋委員 大臣、私が聞いているのは、キャンプ瑞慶覧に移設をするというのはSACOの最終報告で決まったのは私も承知をしているんです。なぜキャンプ瑞慶覧の、しかも由緒ある沖縄の大事な普天間宮の地域か。これはどうして決まったんでしょうか。

中曽根国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたけれども、この移転先の決定につきましては、米軍の能力とか即応性、そういうものを維持して、また、その移転先が関連する部隊、施設から余り離れてはならない、そういうような事情を考慮されまして移転先を決定した、そういうことでございます。

照屋委員 大臣、SACO最終報告では、海軍病院がキャンプ瑞慶覧に移設をされ、キャンプ桑江内の残余の施設がキャンプ瑞慶覧または沖縄県の他の米軍の施設及び区域に移設された後に、平成十九年度までを目途に、キャンプ桑江の大部分、九十九ヘクタールを返還するとあります。

 ところが、もう平成十九年度はとっくに過ぎてしまった。SACOで定められた移設地域は、新たな日米合意がなされたんでしょうか。

中曽根国務大臣 この海軍病院の移設につきましては、SACO最終報告に盛り込まれまして、先ほどからお話ししているとおりですが、また、平成十八年五月のロードマップにおきましても、SACO最終報告の着実な実施の重要性を強調しておりまして、今後とも、その実施を着実に進めていく考えでございます。

 なお、この海軍病院の移設は、SACO最終報告の中で、キャンプ桑江の大部分を返還するための前提として盛り込まれた措置でございますけれども、委員御承知のとおり、ロードマップにおきましては、キャンプ桑江の全面返還が日米間で合意をされまして、キャンプ桑江を含む嘉手納以南の統合それから土地の返還、そういうものが、普天間飛行場の移設、返還、また、在沖縄海兵隊のグアム移転に続いて実現するということになったわけでございます。

 キャンプ桑江を含む嘉手納以南の統合及び土地の返還につきましては、普天間飛行場の移設、返還、そして、海兵隊のグアム移転に続いて実現する旨がロードマップに規定をされております。

照屋委員 次は防衛大臣にお尋ねしますが、私は、海軍病院移設にかかわる国と宜野湾市の合意について、二〇〇〇年当時の比嘉前宜野湾市長が、移設予定地である普天間宮周辺の再開発事業などを条件に、海軍病院移設を受け入れ表明したと承知をしております。

 この場合の、普天間飛行場周辺事業の具体的な事業内容、予算規模、事業の実施状況はどうなっておるんでしょうか。

浜田国務大臣 普天間宮周辺の再開発事業につきましては、海軍病院の移設に関連しまして、平成十二年に、宜野湾市長から那覇防衛施設局長に対しまして、普天間神宮周辺一帯の市街地と海軍病院との調和がとれる景観形成を図るためにも、市街地整備事業に対し支援をしていただきたい旨要望を受けたものと承知をしております。

 防衛省といたしましては、この要望を踏まえまして、米軍人等との交流を目的とした普天間飛行場周辺まちづくり構想策定支援事業として、宜野湾市に対しまして、平成十四年度以降、当該事業の基本構想、基本計画に係る経費の助成を行ったところであります。補助額は一千六百万円でございます。

 このような中、宜野湾市においては、市街地整備事業の実現に向けまして、現在、基本計画について、米軍人等との交流という当省の補助目的に合致するよう、さらなる検討を行っているものと承知をしているところでございます。

 当省としては、今後、宜野湾市から当省の補助目的に合致するような事業を内容とする基本計画等が示されれば、事業の実施に向けて努力してまいりたいと思っているところでございます。

照屋委員 防衛大臣、比嘉前市長が辞任をされて後、伊波宜野湾市長が二〇〇三年に海軍病院の当該地域への移設反対を公約に掲げて初当選して以来、今日まで一貫して、当該地域は困る、反対だ、こういう主張をしております。

 これに対して防衛省は、行政の継続性とそれから普天間宮周辺再開発事業を理由に同病院の移設を推進しようとしておりますが、比嘉前市長との間で合意書は交わされたんでしょうか。あるいは、受け入れ表明は市議会の承認を得たと国の方では理解をされておるんでしょうか。どっちですか。

浜田国務大臣 SACO最終報告に盛り込まれました住宅統合及びキャンプ桑江の返還に伴う海軍病院の移設につきましては、平成十二年七月十四日、那覇防衛施設局長から宜野湾市長へ文書で依頼したことであります。これは前市長でございます。

 同月十八日に、同市長から局長にあてまして、住宅建設及び海軍病院の移設、整備については、当市としては事情やむを得ないと思料しますが、当該施設整備等の実施に当たっては、返還後の跡地利用の支援及び地元の要望事項について特段の配慮をお願いいたします旨の回答を公文書でいただいたところでございます。

 海軍病院の移設は、キャンプ桑江の返還のために必要な措置でもありますし、キャンプ瑞慶覧内の普天間地区に移設することについて、宜野湾市議会の承認については承知をしておりませんが、前宜野湾市長から公文書をもって了承、了解をいただき、進めてきているところであります。

 いずれにいたしましても、海軍病院の移設はSACO最終報告に盛り込まれたキャンプ桑江の返還のために必要な措置であるというふうに考えておりますので、当省としては事業を進めてまいりたいと思っているところでございます。

照屋委員 これは、浜田大臣、比嘉前市長は確かに公文書で受け入れ表明をされたでしょう。ところが、任期半ばでやめられて、その後、市長選挙で伊波現市長が当選をした。その選挙では、当該地域への海軍病院の移設の是非が争われた。その結果、伊波市長が当選をした。

 やはり、その重み、市民の意思というのはいま一度防衛省としても理解をする必要がある、私はこのように思います。もちろん浜田大臣が就任をされる前のことですが、改めて精査をしてほしいと思いますが、どうでしょうか。

浜田国務大臣 当然これは、私どももその経緯を十二分に承知しておりますので、今の伊波市長にもいろいろな形でお願いをしているところでもございますし、我々とすれば、今まで進めてきた計画等もあるわけでありますので、そこは御理解をいただけるように今後努力してまいりたいというふうに思っておるところであります。

照屋委員 さて、外務大臣それから防衛大臣、私も社民党もパッケージ論に基づく米軍再編には反対であり、辺野古への新基地建設は断じて認められません。また、県民世論無視の、在沖米海兵隊にかかわるグアム移転協定の締結を強行した政府の姿勢にも県民は強い怒りを覚えております。

 さて、両大臣、SACO最終報告に基づく移設計画については、二〇〇六年五月の日米合意、いわゆるロードマップで、再評価が必要となる可能性について明記をされております。また、御承知のように、ロードマップでは、沖縄の海兵隊八千人、その家族九千人がグアムに移転し、嘉手納以南の基地返還が明記をされております。

 SACOの見直しを示唆したロードマップに基づいて海兵隊の多くが沖縄を去っていくのに、なぜキャンプ瑞慶覧に海軍病院を移設する必要があるのか。なぜ基地が全面的に返還される嘉手納以南に新たな米軍施設をつくるのか。両大臣にお尋ねをいたします。

中曽根国務大臣 ロードマップにおきましては、現在海軍病院の所在するキャンプ桑江については全面返還が、そして、その移転先でありますキャンプ瑞慶覧につきましては、部分返還及び残りの施設とインフラの可能な限りの統合と記述されているわけでありまして、そういうところから、海軍病院をキャンプ桑江からキャンプ瑞慶覧に移設するということでございます。

浜田国務大臣 先生の御指摘、今また外務大臣からお話がありましたとおりに、我々とすれば、最終報告によって、この移設というものが必要な措置であるというふうに考えておりまして、その中で我々もその事業を進めておるところでありますけれども、移設後の海軍病院については、今後、米軍再編によって医療対象である米軍人、家族等が減少したとしても、引き続き相当数の米軍人軍属、家族が沖縄に存在するものでありますので、所要の規模の病院は必要というふうに我々としては考えているところであります。

照屋委員 浜田大臣、ロードマップで、海兵隊八千人がグアムへ移る、その家族九千人も移る。しかも、その移転費用は国民の税金で負担をする。そういう中で、八千人、家族九千人が移ればほとんど海兵隊はいなくなるのに、今さらここに病院をつくる必要が果たしてあるんでしょうかと私は言わざるを得ません。

 それで、関連して浜田大臣に聞きますが、これまで海軍病院移設関連の設計、建設工事が多数発注され、契約を結んでおるようです。例えば平成十八年度、造成、建築など五件の工事で八十一億円の契約高となっております。ところが、その五件のうち三件は進捗率がゼロ%、一件はわずかに一・五%。しかも、工期は来月、三月三十一日なんです。こんな契約の発注の仕方は、私は非常におかしいと思う。

 平成十九年度は、何件の工事、契約高が発注されたんでしょうか。

枡田政府参考人 お答えいたします。

 平成十九年度契約につきましては、平成十九年度瑞慶覧病院新設空調工事など十四件、契約総額は約百十六億円でございます。

照屋委員 平成十九年度、十四件の契約、契約高百十六億円が発注されて、その十四件のうち、十三件は進捗率はゼロ%なんです。残りの一件はわずかに四・五%の進捗率。入札からほぼ一年が経過。こんな契約のあり方はないでしょう。

 この契約済みの工事について、平成十八年度、十九年度含めて、完成できると思いますか。完成できない場合の債務不履行責任は国が負うんですか、業者が負うんですか。

枡田政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの、工期内に完成しない場合の取り扱いにつきましては、請負業者の責めに帰すことができない事由によりまして工期内に工事を完成させることができない、こういったような場合につきましては、請負業者の請求によりまして、発注者、国でございます、発注者と請負者が協議を行い、工期延長等の手続を行うこととなっております。

照屋委員 私が聞いているのは、平成十八年度の五件の工事も十九年度の十四件の工事も、これは常識的に見て工期内に完成することは不可能なんです。なぜこういうふうな契約のあり方をとったのか。

 業者はいろいろな準備をして、経費をかけて、工事をやる意思がある。ところが、国の都合で、事情で工事が着工できない。これは、請負契約上も発注者の責任ではありませんか。

枡田政府参考人 お答えいたします。

 先ほどお答えしましたように、現在、埋蔵文化財発掘調査を行っています。その関係で、現場での工事に着手できないといったような状況でございます。したがいまして、本件のようなケースにつきましては、請負者の責めに帰すことができない事由ということでございますので、工期については、今後、発注者と請負業者が協議して、工期延期等の手続をとることになると考えております。

照屋委員 今ありましたように、当該地域は、琉球王朝時代から非常に由緒のある地域なんです。琉球王朝時代に普天満宮を中心に集落が形成された。このような場所に海軍病院をつくるということは、市長だけではなくて、市民あるいは沖縄県民にとっても、到底認めるわけにはいかぬ。そのほかの地域でつくればいいんじゃないか、つくる必要があるならば。ただし、私はないと思いますよ。さっき言ったように、グアムへ移っていくんだから。

 それで、聞きたいのは、なぜ予定地全域の文化財発掘調査も終わらないうちに工事を発注したりするんでしょうか。

長岡政府参考人 平成十八年度に契約した工事につきましては、契約手続後に、当該地域で実施をいたしました試掘調査を行いまして、その結果、当初の予想を上回る広範囲に文化財が確認されたところでございます。そういったことから、建設工事を一時中止して発掘調査をしようということでございます。平成十九年度につきましても、文化財調査に係る民間の専門員等の活用等を得まして、沖縄県等と調整をした上で契約をいたしましたけれども、なかなか発掘調査に時間を要しますので、十九年度についても一時中止することにいたしました。

 工事の実施につきましては、文化財の調査につきまして沖縄県等と調整を行って進めたところでございます。それで、埋蔵文化財の調査を終えたところから、現場の引き渡しを受けるといいますか、終わったところから逐次工事に着手をしたいと思っているところでございます。

照屋委員 埋蔵文化財の試掘調査、本格的な発掘調査というのは、移設予定地域全体で総合的にやるべきであって、ちょこちょこっとやって、済んだところからやろうというようなことじゃ、やはり先人が残した文化を否定する。このようなことがあってはいかないと私は思う。予定地域の文化財発掘調査を全部済ませてからやればいいんじゃないか。

 もう一度お願いします。

長岡政府参考人 そういうお考えもあろうかと思いますけれども、私どもとしては、十八年度から契約をさせていただいて、文化財の発掘調査を行わせていただいております。

 先生御承知のように、県の方との相談をさせていただきまして、結構広範囲にやらせていただいておりますので、貴重な文化財につきましては最大限尊重をして、そういうことに支障のないように工事を進めさせていただきたいと思っておるところでございます。

照屋委員 何かちっとも答弁になっていない。ちょっと防衛省、しっかりしてよ。先人の残した遺産、文化を否定して、どうしてこの国が将来に向かって歩んでいけますか。できないでしょう。

 大臣、アメリカにおいては、国防総省の域外活動にも直接適用される連邦法として、国家歴史保存法が存在します。この法律では、連邦政府に対して、何らかの行為をなす場合には歴史的遺産の保全に注意を払うことを義務づけておることを大臣は承知しておるでしょうか。

中曽根国務大臣 承知しております。

照屋委員 防衛省の職員も、大臣に見習って、米国の国家歴史保存法ぐらい勉強しなさい。勉強すれば、そんな埋蔵文化財、歴史的な遺産を無視して工事発注なんかできるはずない。

 最後に、外務大臣、昨年十月三十日に国連自由権規約人権委員会が締約国である日本政府に対して行った勧告の中に、沖縄県民の権利として、その文化及び土地の権利を守る措置を実施しなければならない、こういうふうな勧告があったことを御承知でしょうか。

衛藤委員長 大臣、時間が来ておりますので、簡潔に御答弁をお願いいたします。

中曽根国務大臣 まず、先ほどの米国の国家歴史保存法について、ちょっと誤解があるといけませんので、もう一度答弁させていただきます。

 この国家歴史保存法が、米国の域外における米国国防省の活動に対してどういうような効果を持っているか、そういうことにつきましては、日本政府としては責任を持ってお答えする立場にはないわけでございます。

 いずれにしましても、御指摘の海軍病院のキャンプ瑞慶覧への移設事業は、我が国、つまり防衛省、我が国が実施をしているものでありまして、本件移設工事の実施に当たりましては、文化財保護法など我が国の法令に従って適切に対応することといたしております。

 実際、この建設予定地におきましては、沖縄県が実施した文化財試掘調査の結果、埋蔵文化財が確認されましたことから、我が国文化財保護法の手続にのっとって、沖縄県などの協力を得て、埋蔵文化財の発掘調査が進められているところと承知をいたしております。

 なお、お尋ねの国連自由権規約委員会勧告についてでございますが、これは御指摘のとおり、昨年の自由権規約委員会による我が国政府報告に対する最終見解の中には、御指摘のような記述が含まれております。

 アイヌの人々につきましては、御承知のとおり、昨年の六月六日の衆参両院におけるアイヌ民族を先住民族とすることを求める決議、これの採択を受けまして、アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会を開催し、これまで四回の会合が開催をされております。政府といたしましては、こうした有識者会議での議論を踏まえつつ、引き続き関係省庁間で十分検討の上、適切に対処していきたいと考えております。

 なお、琉球、沖縄の人々につきましては、我が国に対する審査の際には、本件につきまして委員から明示的な質問がございませんでした。この委員会からの勧告としては初めて記述されたものでございます。

 いずれにいたしましても、沖縄に関しましては、沖縄振興計画に基づいて、伝承されてきた文化財所産の保存、活用及び地域における文化の振興に取り組みが行われていると承知をいたしております。

照屋委員 終わります。

衛藤委員長 これにて照屋寛徳君の質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

衛藤委員長 この際、御報告いたします。

 昨年十一月十八日、議長より本委員会に送付され、十一月二十一日、調査局長に命じました議員中川正春君外百十二名からの決算及び平成二十一年度予算に関する予備的調査につきまして、本日、ここに報告書が提出されました。

 なお、報告書につきましては、私から議長に対し、直ちにその写しを提出いたしました。

 次回は、明二十六日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時六分散会


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