衆議院

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第2号 平成22年8月3日(火曜日)

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平成二十二年八月三日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 鹿野 道彦君

   理事 岡島 一正君 理事 城井  崇君

   理事 伴野  豊君 理事 樋高  剛君

   理事 松原  仁君 理事 山口  壯君

   理事 加藤 紘一君 理事 町村 信孝君

   理事 富田 茂之君

      今井 雅人君    打越あかし君

      江端 貴子君    小野塚勝俊君

      緒方林太郎君    大山 昌宏君

      岡本 充功君    奥野総一郎君

      加藤  学君    梶原 康弘君

      川島智太郎君    川村秀三郎君

      木内 孝胤君   木村たけつか君

      沓掛 哲男君    黒田  雄君

      小泉 俊明君    古賀 一成君

      近藤 和也君    鈴木 克昌君

      高邑  勉君    津島 恭一君

      豊田潤多郎君    中津川博郷君

      中林美恵子君    長島 一由君

      野田 国義君    橋本  勉君

      畑  浩治君    早川久美子君

      松木けんこう君    三谷 光男君

      森本 和義君    山田 良司君

      吉田 公一君    若泉 征三君

      渡部 恒三君    小里 泰弘君

      金子 一義君    北村 茂男君

      小池百合子君    下村 博文君

      菅  義偉君    菅原 一秀君

      田村 憲久君    橘 慶一郎君

      谷川 弥一君    谷畑  孝君

      野田  毅君    平沢 勝栄君

      山本 幸三君    井上 義久君

      大口 善徳君    斉藤 鉄夫君

      笠井  亮君    阿部 知子君

      江田 憲司君    山内 康一君

      下地 幹郎君

    …………………………………

   内閣総理大臣       菅  直人君

   総務大臣

   国務大臣

   (地域主権推進担当)   原口 一博君

   法務大臣         千葉 景子君

   外務大臣         岡田 克也君

   財務大臣         野田 佳彦君

   文部科学大臣

   国務大臣

   (科学技術政策担当)   川端 達夫君

   厚生労働大臣       長妻  昭君

   農林水産大臣       山田 正彦君

   経済産業大臣       直嶋 正行君

   国土交通大臣

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当) 前原 誠司君

   環境大臣         小沢 鋭仁君

   防衛大臣         北澤 俊美君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     仙谷 由人君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当)       中井  洽君

   国務大臣

   (金融担当)       自見庄三郎君

   国務大臣

   (消費者及び食品安全担当)

   (経済財政政策担当)   荒井  聰君

   国務大臣

   (「新しい公共」担当)

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)   玄葉光一郎君

   国務大臣

   (行政刷新担当)     蓮   舫君

   内閣官房副長官      古川 元久君

   内閣官房副長官      福山 哲郎君

   外務副大臣        武正 公一君

   財務副大臣        池田 元久君

   財務副大臣        峰崎 直樹君

   農林水産副大臣      篠原  孝君

   経済産業副大臣      松下 忠洋君

   防衛副大臣        榛葉賀津也君

   外務大臣政務官      吉良 州司君

   財務大臣政務官      大串 博志君

   財務大臣政務官      古本伸一郎君

   文部科学大臣政務官    高井 美穂君

   農林水産大臣政務官    佐々木隆博君

   経済産業大臣政務官    高橋 千秋君

   環境大臣政務官      大谷 信盛君

   予算委員会専門員     春日  昇君

    ―――――――――――――

委員の異動

八月三日

 辞任         補欠選任

  糸川 正晃君     加藤  学君

  古賀 一成君     野田 国義君

  鈴木 克昌君     大山 昌宏君

  吉田 公一君     中津川博郷君

  小里 泰弘君     北村 茂男君

  菅  義偉君     菅原 一秀君

  谷畑  孝君     橘 慶一郎君

  大口 善徳君     井上 義久君

  富田 茂之君     斉藤 鉄夫君

  山内 康一君     江田 憲司君

同日

 辞任         補欠選任

  大山 昌宏君     鈴木 克昌君

  加藤  学君     近藤 和也君

  中津川博郷君     吉田 公一君

  野田 国義君     古賀 一成君

  北村 茂男君     小里 泰弘君

  菅原 一秀君     菅  義偉君

  橘 慶一郎君     平沢 勝栄君

  井上 義久君     大口 善徳君

  斉藤 鉄夫君     富田 茂之君

  江田 憲司君     山内 康一君

同日

 辞任         補欠選任

  近藤 和也君     橋本  勉君

  平沢 勝栄君     谷畑  孝君

同日

 辞任         補欠選任

  橋本  勉君     早川久美子君

同日

 辞任         補欠選任

  早川久美子君     今井 雅人君

同日

 辞任         補欠選任

  今井 雅人君     川村秀三郎君

同日

 辞任         補欠選任

  川村秀三郎君     江端 貴子君

同日

 辞任         補欠選任

  江端 貴子君     木内 孝胤君

同日

 辞任         補欠選任

  木内 孝胤君     木村たけつか君

同日

 辞任         補欠選任

  木村たけつか君    高邑  勉君

同日

 辞任         補欠選任

  高邑  勉君     糸川 正晃君

同日

 理事富田茂之君同日委員辞任につき、その補欠として富田茂之君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 予算の実施状況に関する件


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     ――――◇―――――

鹿野委員長 これより会議を開きます。

 予算の実施状況に関する件について調査を進めます。

 基本的質疑を行います。

 この際、昨日の谷垣禎一君の質疑に関連し、田村憲久君から質疑の申し出があります。谷垣君の持ち時間の範囲内でこれを許します。田村憲久君。

田村(憲)委員 おはようございます。自由民主党の田村憲久でございます。

 菅総理になられて初めての予算委員会、ことしの二月でしたっけ、財務大臣のときに総理とはこの場で議論をさせていただいた、そんな覚えがありますが、総理になってからは初めてでございますが、ひとつよろしくお願いをいたしたいと思います。

 きのうもいろいろ質疑をこの席でお聞かせいただいておったんですけれども、消費税の議論を含めて、選挙でこれがいろいろな影響があったという言葉が総理からございました。唐突に消費税のことをぶち上げて、しかも、軽減税率やいろいろな話の中で誤解を招いた、今すぐにでも消費税を上げる、こんな誤解もあった、それが参議院選挙の敗因の一つである、こういうような分析であられたというふうに思うんですが、その後、では消費税をどうするんですかという話になると、与党の中でもいろいろ議論があるし、野党とも協議をしながらというようなお話であったと思います。ただ、財政再建に向かっては一歩も引かない、私は、要約して言いますとこういう話だったというふうに拝聴させていただいておるんです。

 では、そもそも消費税なんですけれども、期限がいつかというのも問題なんですが、上げるということでは、これは総理は一歩も引かない、消費税を上げずにこのままいけるとは思っておられないと思うんですが、消費税は基本的に上げるという認識をお持ちであるということでよろしゅうございますか。

菅内閣総理大臣 まず、昨日の質疑について、多くの皆さんからもっと元気よくやれと言われまして、決して元気がないわけではないんですが、大いに議論を活発にさせていただきたいと思っています。

 田村議員の方から、私が財務大臣当時にこの予算委員会でいろいろ質疑をしたことも触れていただきました。御承知のように、直前まで財務大臣をやっておりまして、一つはあのギリシャの問題などのG7の会議、これは電話会議を含めると十回近くありまして、ある場面では、東京のマーケットが開くまでに何らかの対応を決めなきゃいけないというような場面もありまして、七千五百億ユーロという支援の枠を決めた、そういったことも私の直接かかわってきた関係もありました。

 また、今、消費税についてもおっしゃいましたけれども、最近の国債の増大の中で特徴的なことは、かつては建設国債が中心に積み上がってきたわけですが、最近は赤字国債の比率が相当高まってきている。もう御承知のとおりでありますけれども、建設国債は一応道路とか何かをつくって残って、それが経済にも効果が確かにあった時期もあるわけですけれども、赤字国債部分というのはそうした投資的なものでない、わかりやすく言えば、社会保障の増大を赤字国債で毎年埋めてきている、そういう傾向に、私は、今の日本の財政、この二十年間、特になってきていると思っております。

 そういう中にあって、それでは税負担というものをどのような形で考えるべきか。例えば、所得税についても、この間フラット化が進んで、必ずしも、所得再配分機能が低下したということも言われております。消費税については五%ということでこの間続いているわけですけれども。そういうことを考えたときに、消費税も含めた税制全般の議論は必要だ、これは昨年の暮れの政府税調の大綱の中でもそのように申し上げておりますし、また今回のマニフェストにおいても、消費税も含めた議論を超党派でしようではないか、そういう提案をいたしたつもりでありましたけれども、あすにも消費税を上げるのではないかという誤解を招いたということがあったと思います。

 そういう意味で、今お話をされましたけれども、社会保障の問題と含めて税制全般、消費税も含めていかにあるべきかということを議論する必要は当然あると思っておりますし、そういった意味で、財政再建と同時に社会保障についても考えた中での消費税のあり方を、ぜひ、できれば超党派的な立場をも含めて御議論をいただきたい、こう思っております。

田村(憲)委員 これが民主党的体質なんですよね。

 例えば、今言われた赤字国債と建設国債、これは私は鳩山総理のときに鳩山総理とも議論させていただきましたよ。平成十二年から平成二十二年度まで、建設国債と赤字国債の累増額を見ますと、建設国債は三十六兆円しかふえていないんです。赤字国債が二百三十四兆円ふえた、これが財政悪化の主因ですよね。

 コンクリートから人へ、こうやって言ったのはあなた方でした。コンクリートから人にお金を政策転換すれば、何かお金が出てきて財政はよくなって、そして政策転換できるんだ、こんなことをおっしゃってきたけれども、この十年間、もう既にそれを我々はやっちゃったんですよ。やっちゃったんですよ。だから、建設国債はほとんどふえていないんです。赤字国債がふえているんです。だから、コンクリートから人へやっちゃったんですよ、我々が。

 にもかかわらず、それをやれば何か十六・八兆円出てくるような、そういう誤ったイメージを国民の皆さんに植えつけて、何か魔法があるんだ、打ち出の小づちがあるんだ、こういうことをあなた方はマニフェストでおっしゃって、そして政権をとって、今できなくて塗炭の苦しみでしょう。

 だから、消費税を上げると。あのとき菅さんは本音だったと私は思うんですよ。一〇%、自民党に抱きつきをされたのはちょっと我々も違和感がありましたけれども、しかし、総理が、与党の総理ですよ、それが選挙前に消費税を上げる、格好いいなと私は思ったんですね。

 ところが、何か選挙の途中、小沢さんやいろいろな方からいろいろなことを言われて、ふにゃふにゃふにゃとなっちゃった。今回、両院総会で、鳩山、小沢氏、この両氏が辞任でけじめをつけ、勇断を受けて臨んだ参議院選で多くの仲間を失ったことに責任を痛感している、こういうことをおっしゃられましたよね。おっしゃられました。

 でも、これはおかしいですよね。私は、菅さんが消費税を言われた、それが参議院選挙に敗れた一番の原因じゃないと思いますよ。やはり、その前にあった小沢さんや鳩山さんの問題、政治と金の問題、これがやはり決定的に民主党が国民の皆さんから信頼を失った原因ですよ。なのに、こんな配慮されたことを言われて。国民に向かって総理は物をおっしゃらなきゃいけない。世論といっても、国民世論ですよ。党内世論に向かって、なぜこんなものをおっしゃらなきゃいけないのか。私は、ちょっと今の菅さんは格好悪いと思いますよ、はっきり言って。ですから、この鳩山さんと小沢さんの問題はまだ終わったわけじゃないんです。

 きのう、うちの谷垣総裁が、証人喚問、関係者の証人喚問等々を要求いたしました。菅さんは何かお答えになったような、ならなかったような、そういうような話でございましたけれども、これは改めまして要求をさせていただきたいと思いますので、委員長、ぜひとも御協議をよろしくお願いいたします。

鹿野委員長 引き続き理事会で協議をいたします。

田村(憲)委員 そういうことで、私は、菅さんは党内に目配りされる必要はないと思います。菅さんは引きずりおろされることはありませんから。大丈夫ですよ、代表選挙があっても。だって、それはそうでしょう。あなたを引きずりおろすのは我々野党なんですよ、野党。だって、まだ一カ月や二カ月前ですよ。こちらの皆さんが選ばれた総理ですよ。それを代表選でかわりなさいなんて言えるはずないじゃないですか。三カ月しかたっていないんだ。これをかえちゃったら、一年間で三人総理大臣がかわっちゃうんですよ。我々が三年で三人かえて、いろいろなことを言われましたよ。一年で三人も総理大臣を民主党がかえられるわけがない。

 だから、胸を張って持論をおっしゃっていただきたい。消費税は上げる方向で早急に議論をする、場合によっては野党とも協議をしたいので、ぜひとも自民党さんにもひとつ御理解をいただきたいぐらいのことをここで言ってくださいよ。どうですか。

菅内閣総理大臣 先ほどの我が党の両院総会での発言は、やはり、仲間の皆さんに大変苦しい選挙戦を強いることになったという意味で申し上げたことであります。同時に、翌日の記者会見を含めて、私は、財政の再建、健全化については一歩も引かないということを国民の皆さんの前でも申し上げ、昨日の予算委員会でもそのことは申し上げました。そういう意味では、激励として受けとめたいと思います。

 その中で、まさにおっしゃったように、私も申し上げたように、この十年、二十年の財政構造の変化を見ていると、赤字国債の比率が非常に高くなっている。毎年、自然増だけでも社会保障費が一兆円以上の伸びを示しているものが、残念ながら、税収をふやすことによって賄い切れなくなって、それが赤字国債という形で財政の健全化をかなりゆがめてきている、このように思っております。

 そういった意味で、例えばIMFなどは、これは私が財務大臣の時代からでありますけれども、日本の消費税に対して……(発言する者あり)ちょっと静かにしてもらいたい。

鹿野委員長 総理、御答弁のほどを。

菅内閣総理大臣 はい。余り筆頭理事の方からやじを飛ばされるのは、ちょっといかがなものでしょう。(田村(憲)委員「時間を稼がないでください。どうぞ」と呼ぶ)はい。

 ですから、IMFなどの議論も聞いておりまして、私としては、消費税も含めて、社会保障に関する費用をどのような形で賄っていくのか、この議論は必要だと思っておりますので、それは、消費税に関して、それを引き上げることも含めての議論ということは当然だと思っております。

田村(憲)委員 消費税を引き上げるということも含めてですよね。消費税を引き上げるということも含めてね。それは、ぜひとも早く党内をまとめていただいて、野党に投げかけてください。我々が乗るかどうかはもちろん条件はありますけれども、協議をするかどうかというのは。だから、そのまず入り口に立っていただくためにも、党内をまずちゃんとまとめていただきたいというふうに要望したいと思います。

 これは、なぜこういう議論になるかというと、やはり予算を組めなくなってきちゃっているんじゃないかという心配があるんですよ。別に政府の心配を我々がする気もないんですけれども、必要もないんですが、しかし、やはり我々も国会議員ですから、ちゃんとした予算を組んでいただかないと日本の国は動いていきませんから。

 どういう理由からかといいますと、今回、概算要求基準の方針、この中で、全体の、今年度と比べて来年度、まず国債費、これは当然切れませんから、そういう意味では国債費は当然のように計上せざるを得ない。そして一方で、残った中で地方交付税、これも切れないでしょうと。さらには社会保障、義務的経費の部分、これは切れないでしょうと。そう引くと大体二十四兆円。これは一割のシーリング、シーリングと呼ぶかどうかは別として、一割それぞれの省庁に削減してくださいということでシーリングをかけて二・四兆円。この二・四兆円を何とか算出して、それで、この特別枠で、例えばマニフェストの実現を図ろう、それから成長戦略、この枠の予算を使おう、こういう話であったというふうに思うんですね。

 ところが一方で、このシーリングというものは、きのうも民主党の岡島議員から、こういうのはちょっと政治主導としてはおかしいんじゃないかという議論がございました。私は、真っ当な議論だなというふうに感じながら聞いておったんですけれども、これは岡島議員だけじゃないんですね。

 閣内でも、例えば前原大臣が、もう既に公共事業は、マニフェスト、去年のマニフェストに書いてあった一・三兆円財源を出すというのを一年でやっちゃったんだと。そのとおりですよ。これもこれで問題があるんですよ、実は。これは景気にはかなり影響が出ますからね。四年間でやるものを一年間でやっちゃったんだから。しかし、一応一・三兆円切った、だからもうこれ以上出せない、こういう発言がありました。山田農林大臣からも、そんなのは政治主導とそぐっていないじゃないか、こういう御議論があったと思います。

 これは改めて前原大臣と山田大臣にお聞きをします。今回のこの一割シーリングというもの、これに関してどういう御感想をお持ちですか。これは政治主導ですか。

前原国務大臣 この概算要求を決めるに当たりまして、一割一律カットとあわせて、さまざまな観点を勘案するという文言が骨格の中に盛り込まれております。つまりは、マニフェストを実行するに当たって、平成二十二年度予算を組むに当たってどれだけ貢献をしたのかといったところを勘案するという文言が入っておりますので、その点で了解をしたということでございます。

山田国務大臣 農林水産省といたしましても、公共事業等については、国土交通省と同じように一生懸命削減している部分はしておりますし、かつ、無駄を、ともあれ農水省の中でも今一生懸命削減をしておりますので、一〇%を一律に削減するというのは私ども反対でありますが、無駄を削減していって、そして、その中で戸別所得補償を初め思い切った政策に、特別枠とか、例えば今まで削った部分についても評価してもらい、さらにマニフェストの重要項目については配慮していただくということなので、単なる一律の一〇%削減じゃない、そう思っておりますので、ぜひめり張りのついた予算に仕上げさせていただきたいと思っているところです。

田村(憲)委員 今はそういうおつもりで言われているんでしょうが、思ったとおりには多分ならないんだと思うんですよね、なっていたのなら初めから十割出せばいいんですから。

 正直言いまして、切った三倍は要求できるとか、何かいろいろな話が飛び交っていましたけれども、二・四兆円しかないんですね、二・四兆円しか。一方で、四十四兆円、今年度と同じ国債発行で抑える、こういう話です。先ほども言いました、使えるお金は七十一兆円しかない。その中で、いろいろなことを勘案すると、一律削減で二・四兆円しか、言うなれば枠をつくってお金を移動できる、きのうの言い方でしますと、予算の組み替えみたいなものができないという話ですよ。そういうことですよね、総理。

 しかし、その二・四兆円の中身、パネルを見ていただくとわかると思うんですけれども、社会保障費の自然増分一・三兆円、これは当然増として認めますともう宣言されておられます。成長戦略が一兆円から二兆円ですよね。これは党の方は二兆円と言っている、しかし内閣では一兆円超という話でありました。この二つを足すともう二・四兆円ですよ。

 しかし一方で、基礎年金の国庫負担引き上げ、これは二・五兆円かかってくるんですよね。その後にも子ども手当引き上げ、これは後で聞きますけれども、もし満額だと三・二兆円必要になってくる。その他もろもろ、ほかにも戸別所得補償、これもきょう新聞にちらっと載っていましたけれども、広げる範囲を、どうやら初めに言っていたものよりもちょっと狭めなきゃいけない。高速道路の無料化も、実験をやりました、来年度にどれぐらい広げるのか、実験のあり方にも私、実は不満があるんですが、これもお金がかかりますよ。

 そう考えると、これはちらっと計算しただけでももう既に二・四兆円を超えているんですよ。これは予算を組めないですよね、総理。どうされるんですか。

野田国務大臣 田村委員の御質問にお答えをしたいと思いますけれども、まず、委員、前提として、今パネルを掲げられていますが、二・四兆円を前提にされています。確かに、歳出七十一兆の大枠の中で、地方交付税や社会保障を除いていくと二十四兆円、これは対象経費です。その一割を削減で九割要求していただくと、普通計算をすると二・四なんですが、これで定まるかどうかはわからないんです。それは各大臣の御努力によって、削減努力によってこの特別枠はふえます。

 さっき三倍要望の話をされていました。例えば八五%で要求した場合には、当然、九割カットの場合一割要望できるんですけれども、深掘りした五%分は三倍になります。すなわち、一〇%プラス五掛ける三%で、二五%の要望ができるということで、そうすることによって特別枠がふえます。だから、これは二・四では定まりません。

 加えて、要求段階での御努力だけではなく、予算編成過程で、事業仕分け等もまた引き続き行っていただきますので、そういうものを総合的にやっていくと、二・四では必ずしもないということが前提であって、おっしゃるとおり、社会保障費の自然増分はのみ込む形にはなります。

 だから、今回の表現としては、一兆円を相当程度超える額という形で特別枠を組もうとしていることでございまして、その配分については、まさにこれから数字が定まってからでありますけれども、マニフェスト事項であるとか、あるいはデフレ脱却、経済成長に特に資する事業、雇用拡大に資する事業、人材育成、国民生活の安定安全に資する事業、こういう観点から配分を行っていくということです。

 あと、ついでにですが、この配分の仕方は、最終的には総理主導でありますけれども、先ほど国交大臣や農水大臣にもお尋ねがありましたけれども、努力評価制度というのも取り入れる、これまでの削減努力とか規制緩和とか租税特別措置の見直しとか、そういう努力の評価をする制度も取り入れて配分をしていくということでございます。

田村(憲)委員 財務大臣から言われると、そういう話になるんだと思いますね。もっと削減してもらえる努力があるだろうと。

 各大臣で、一割以上うちは削減できますよという方がおられたら、手を挙げてください。原口大臣だけですね。原口大臣、期待いたしておりますけれども、ほかに一割以上はだれもいないですよ。これは無理ですね、はっきり言って。(発言する者あり)いや、意気込みのある人は原口大臣だけですもの。

 それはそうですよ。削減したって、それは戻るといったって、最後は、戻るのは政策コンテストでしょう。何か一般の国民の方を呼んで、そこで、これはどうですか、あれはどうですかというんだから、各大臣が胸を張ってこれを要求しますと言ったって、そこのコンテストでだめだと言われちゃったら、そもそも議題から外れちゃうんですよね。政治の責任放棄という話ですが、答弁は要りません。要りません。最後は総理が決めるという話ですけれどもね。それはきのう聞いていますけれども。そういうことをあなた方がおっしゃったんですから。まあ、いいです。

 とにかく、かなり難しい状況で予算を組まなきゃいけないということがわかっておりますので、具体的に入ります。

 我々、実は心配しておりますのは、きのうも谷垣総裁から話がありましたが、金がないからといって無理やり出すんじゃないかと。これが怖いんですよ。それは何かというと、埋蔵金というものですよね。きのう谷垣総裁の方から、今年度はかなり無理をして、外為特会だとか財融特会、こういうところから積立金だとか運用益をそのまま使っちゃった、そして何とか予算を組んだのが今年度予算でありました。

 では、来年度予算はどうなるか。

 この表の左側、二十二年度十・六兆円の税外収入。今私が言いましたとおり、財融特会から四・八兆円、外為特会から二・九兆円、その他〇・三兆円特会から出しています、それから納付金や返納金で二・六兆円。これがどれぐらいとれるか、来年度ですよ。

 財政投融資特会、これはもうほとんど積立金はありませんね、一千億ぐらいしか残っていない。これからは取り崩せないでありましょう。外為特会、これは実は先食いしちゃっているんですよね。言うなれば運用益を先食いしちゃって、今年度の予算に計上しちゃっているんですよね、三千五百億円。これはあり得ないことですけれども、予算が組めないから昨年度にやっちゃったんですよ、今年度予算を組むために。そうでしょう、財務大臣。しかも、もう債務超過。これは二月に菅財務大臣と私は議論しました。外為特会は債務超過。多分、一ドル当たり八十五、六円で計算すると、十兆円近い債務超過になっていると思いますね。これは当然使えない。こんなものを取り崩してもらっちゃ困る。きのうは年金の特別会計の積立金なんという話が出ましたが、これは取り崩しちゃうと何が起こるかというと、年金の長期計算が狂っちゃいますから、こんなものは取り崩せるわけがない。

 私はこういう認識なんですが、きのう御答弁をお聞きしますと、何か原則的には取り崩せませんよというような御答弁でした。ということは、例外的には取り崩せるというふうにも受けとめられるんですが、これは総理にお聞きした方がいいんでしょうか、今言ったこの三つの特会の積立金等々は、これは来年度予算を組むときには取り崩さないとここで言明してください。

野田国務大臣 税外収入についてのお尋ねでございますけれども、確かに平成二十二年度は十兆六千億円、これは過去最大の規模でございました。この税外収入、いわゆる埋蔵金というのは、平成二十一年度から、特に九・二兆円から大幅に国家財政の中で貢献をする形になっています。ただし、委員御指摘のように、自然体でいくならば財融特会あるいは外為特会含めて大分厳しくなっています。

 ただ、ちょっと一点だけ、少し反論はさせていただきたいんですが、外為特会の剰余金をもう二十二年度の編成で使っていると。でも、これは過去にもあったことでございまして、私どもの政権だけではないということだけは指摘をしておきたいというふうに思います。

 その上で、十兆六千億規模をつくるというのはなかなか困難でありますが、今、定まった数字をまだ言える段階ではございません。御指摘のような区分経理の趣旨を踏まえながら、特にマーケットにかかわるようなものについてはやはり慎重な検討が必要だというふうに理解をしています。

田村(憲)委員 改めてお聞きします。

 ですから、税外収入にいろいろなものがあると思います。その中で、少なくとも年金の積立金、それから外為特会の積立金、これは今債務超過ですからね、債務超過ですから。十兆円ですよ。大変なものですよ。マーケットに大変な影響が出ますから、これは取り崩さない。それから、もう財融特会は取り崩せませんからね、これはないんですから。もう一つ、国債整理基金特会、これもいまだかつて積立金を取り崩したことはないと思います。この四つは取り崩さないと、ここで言明してください。

野田国務大臣 特別会計十八については、今度の十月から行政刷新会議で聖域なき見直しを行うということですから、どんな議論もやってはいけないということではないと思います。

 ただし、委員の御指摘のとおり、国債整理基金も外為もマーケットにかかわるような問題でございますので、慎重な検討が必要ですし、年金については、年金制度の信頼に、根幹にかかわることだというふうには理解をしています。

田村(憲)委員 ということは、年金の取り崩しも含めて、議論をした中であり得るというふうに私は受けとめていいんですか。あり得るんですか、そうしたら。

野田国務大臣 取り崩すということは申し上げておりませんが、十八の特別会計のあり方についての議論はいろいろとあるんだろうというふうに思います。

田村(憲)委員 私は、取り崩すかどうかをお聞きしているんですよ、来年度の予算を組むのに。それをするのかしないのか、する可能性があるのなら、あると言ってくださいよ。

野田国務大臣 見直す議論を拘束するつもりは私はないと思います。

 ただし、現実的には対応できるものとできないものがあるということで御理解いただきたいと思います。

田村(憲)委員 では、総理、何だかよくわからないんですけれども、財務大臣は、常識的には取り崩さないけれども、議論は否定するものじゃないと。その議論を受けて最終的にあなたが決定しなきゃいけないんだから、取り崩すつもりはないと答えてくださいよ。とにかく、取り崩すんですか。可能性があるかないか、可能性も含めて、あるかないかだけ答えてくださいよ。

菅内閣総理大臣 財務大臣の方から答弁させていただいたことと私の考えは全く一致しております。

田村(憲)委員 はっきり言わないというのも民主党の特徴ですね。ごまかしちゃうんですよ、ふにゃふにゃふにゃふにゃ言って。ちゃんとこれは言明して、こんなのは当たり前、取り崩しませんというのが。ここではっきり、財務大臣、総理、お二方が言わないと、これは取り崩す可能性があるというふうに思われちゃいますよ。

 これは、こういうリスキーな発言をされちゃ困った話でありまして、絶対どんな議論があってもこれは取り崩さないと言われるのが、私は、責任者たるあなた方の発言として必要なものだというふうに思っていますが、もう一回だけ聞きますよ。取り崩す可能性もあるのかないのか、あるかないかで答えてください。

野田国務大臣 十八の特別会計の見直しというのは……(田村(憲)委員「そんなことは聞いていない」と呼ぶ)いやいや、これは大事なことです。聖域なき見直しをするということです。だから、例えば区分経理を変えるとか、ほかの保険と組み合わせるとか、いろいろなバリエーションの改革はあると思います。そういう議論を自由にやってもらうということですが、現実的に年金を取り崩すということは、これは基本的には年金制度の信頼にかかわることだということは先ほどから申し上げているとおりであります。

田村(憲)委員 取り崩さないと、ないと言ったというふうに一応理解はしますが、もしこれで今言った四つの積立金を取り崩すという話になれば、そのときには我々は、これは法律改正しなきゃいけない話になりますから、法律改正には賛成できないという話に当然なりますから、うそをついたという話になりますから、そこはちゃんと覚悟をした上でやっていただかなきゃいけないと思います。

 それでは、次の質問に移りますが、実は、こういうことをなぜ申し上げるかといいますと、そもそも、もうお金がない中で民主党のマニフェストが本当に実現できるのかというところに来ているんですよ。

 私、総理にお聞きしたいのは、去年のマニフェスト、そしてことしの参議院選挙のマニフェスト、これは基本的には変わっていないとおっしゃられるんですけれども、変わっているところと変わっていないところ、どこが変わったのか。変わっていないところは答える必要ないので、変わったところをここで明確に国民にお示しをいただかないと、皆さん、頭がこんがらがっていると思います。

 このマニフェストが衆議院選挙と今回の参議院選挙で変わった部分があるのなら、ここでまず国民の皆さんにそれをお知らせいただきたいというふうに思います。どう変わったんですか。

菅内閣総理大臣 基本的に、〇九年のマニフェストは、私たち、誠実に、できる限り、一応四年間の衆議院の任期の中で実現をしていきたいという基本的姿勢は変わっておりません。

 その中で、例えば暫定税率の問題などについては、初年度、実質的には税率をそのままにさせていただきました。これも、これから環境税の議論も行われる中で、最終的にマニフェストに掲げた方向にできるよう努力はしたい、こんなことも思っております。

 今回の参議院の選挙におけるマニフェストでは、一つの考え方を申し上げました。新成長戦略さらには財政運営戦略、こういった方向性について申し上げ、その実現を目指すということを申し上げたわけでありまして、ある意味では、昨年九月のマニフェストに加えた新しい課題の取り組みをお約束した、こういう位置づけだと私は理解をいたしております。

田村(憲)委員 今のお話ですと、マニフェストから変わったのはガソリン税の部分だけだという話であって、ほかのところは変わっていないという話だったと思うんですが、ちょっとパネルを見ていただきたいんですけれども、子ども手当のマニフェストというのは変わっているんですよ。

 子ども手当、二〇〇九年の衆議院選挙のときには、「子ども一人当たり年三十一万二千円(月額二万六千円)を中学卒業まで支給します。」これは満額は平成二十三年度以降という話だったと思います。それが、二〇一〇年の参議院選挙になりますと、「財源を確保しつつ、すでに支給している「子ども手当」を一万三千円から上積みします。」上積みしますと。その後、「上積み分については、地域の実情に応じて、現物サービスにも代えられるようにします。」と。こんなことは去年のマニフェストには書いてなかったんです。上積みというのは、これは幾ら上積みされるのかもよくわからない。

 これは変わっていないんですか。どっちが正しいんですか、上ですか、下ですか。どっちなんですか、総理。

長妻国務大臣 これについては、参議院のマニフェストでは、一万三千円を上乗せするということと、あと、昨年末の子ども手当をめぐる四大臣合意というのがございまして、これも再三国会でも答弁申し上げておりますけれども、ことしの平成二十三年度の予算要求の段階で、政府内で、どの程度の金額、そして現物と現金、この組み合わせについて決定をして、国民の皆様にきちっとその時点で説明を申し上げるということを申し上げているところであります。

田村(憲)委員 いや、私は、マニフェストが変わったのか変わっていないのかをお聞きいたしているので、そんな経緯を聞いているんじゃないんですよ。

 総理、これはマニフェストは変わっているんですか。つまり、一万三千円から二万六千円に、子ども手当を支給する、二十三年度からですよ、そういうふうに前のマニフェストに書いてあったんですよ。今回のマニフェストは、上積みはします、上積みは幾らかわからないけれども。それから、何か、残りなのか残りじゃないのか。つまり、全部で五兆四千億かかるというようなお話でしたよね。現金で幾ら上積みをして、残り現物給付の部分も五兆四千億全額使ってやるのかどうかわかりませんが、我々、どういうふうに理解していいのかわからないからお聞きしているんですけれども、これはマニフェストを変えたということなんですか。それとも変わっていないということなんですか。総理、どっちなんですか。

長妻国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたけれども、昨年の夏の衆議院選挙のマニフェストでは、初年度、これは平成二十二年度、今年度ですけれども、月額一万三千円をお支払いするということで、ことしの四月からそれをお支払いさせていただいているところであります。

 ただ、来年度に関しましては、この参議院のマニフェストでは、上積み部分を現金のみならず現物でも我々考えさせていただきたいと。まあ、これは財政の問題もございまして、そういうことをきちっとマニフェストでも申し上げ、そして、詳細については年末の予算編成で決定をして、これを国民の皆様にきちっと説明を申し上げる。

 日本は子供にかけるGDPの比率、予算が低い国でございますので、少しでも少子化の流れを変えるためにも、我々これに取り組んでいきたいというふうに考えております。

田村(憲)委員 長妻大臣、あなたは聞かれていないことに対してそうやってとうとうとしゃべられるから、自分の担当の省庁の若手の役人からも、傲慢だとかいろいろなことを言われるんですよ。ちゃんと聞いたことに答えてくださいよ。いいですか、そんなことを私聞いているんじゃないんですよ。

 では、総理、一万三千円から二万六千円に満額支給をするのかしないのか。これ、実は私、三月に鳩山総理にお聞きしたんです。そのときに、六月末までには結論を出します、中期財政フレームと同時にこれは結論を出します、こうやって御答弁いただいているんです。

 総理はかわりましたが、しかし大臣はかわっていないですよ、ずっと。ほとんど同じ大臣だ。これはどうですか。満額支給するんですか。一万三千円はどこになるんですか。これは、総理答えてくださいよ。総理じゃなきゃだめですよ。

菅内閣総理大臣 今読んでいただいた、まさにここに書いてあるとおり、月一万三千円から上積みをする、そしてその上積み分については、場合によっては、保育園等をより拡充する、そういう現物サービスでそれを充てることもあり得る、そういうことでありまして、この子ども手当について、最初に申し上げたことが一〇〇%そのままに実行されているとは申し上げませんけれども、しかし、基本的な方向性は変わっていない、このように認識をしております。

田村(憲)委員 基本的な方向性が変わったか変わっていないかというのは、それは国民の受けとめ方なんですよ。国民の皆さんが現金で二万六千円もらえると思って期待をしていたのに、一万三千円、しかも、残りは現物と言いながら、これはその残りの部分を全部使って現物給付をするのか、その一部分を使って現物給付をするのかわからないんです。

 つまり、五兆四千億円という予算をあなた方は予定していた。今お金がない。お金がない。経済政策は空きカンだとか、いろいろなことを言われていますけれども、私は総理にそういうことを言うつもりはありません。ただ、今、菅内閣の財布はすっからかんだというのは確かです。そんな中で、五兆四千億円ないから、それをちょっとごまかすために現物給付でお茶を濁そうというのならば、これは完全にマニフェスト違反ですよ。マニフェストが変わったということなんですよ。そこがどうなのかというのを私が今ここでお聞きしているので、これがどういうふうに変わったのかというのをちゃんとお答えくださいよ。私にじゃなくて、国民の皆さんに向かってお答えください。

菅内閣総理大臣 二週間ほど前、私、都心の事業所が運営している保育園に視察に行ってまいりました。その皆さんのお母さん方の声もお聞きをいたしました。(田村(憲)委員「そんなのはどうでもいいよ」と呼ぶ)国民の皆さんにということでありましたので、そのことを申し上げているんです。

 そして、その場でも、確かに職場に保育園があることは助かるけれども、本来なら、子供を職場まで連れてくるのではなくて、地域の中にもっと、多少残業しても、帰ってくるまで預かってもらえるような保育所があった方がよりありがたい、そういう意見もたくさんありました。

 そういったことで、先ほど申し上げましたように、月一万三千円に上乗せをするところについて、現物のサービスを拡大するということもかなり大きな国民の声だと思いますので、そのことも含めて検討するということをこれで申し上げているところです。

田村(憲)委員 時間が来たから終わりますけれども、子ども手当の現金給付と他の現物サービス、これはもともとは財源は別ですよということは、何遍も我々は、国会で長妻大臣も詰めてきた話なんですよ。

 ですから、我々は満額支給するのがいいとは言わない。それを反省して、満額支給する、金をばらまく、これがだめだと反省をしたのならば、これを反省した上で、もう満額はやめます、マニフェストに違反しますけれどもそれが我々の良識ですと国民にちゃんと宣言をしてから、ごまかさずにちゃんと政策変換をしていただかないと、これは我々としては納得がいきませんから、ぜひとも誠実に国民の皆さんに対応をお願いいたしたいと要望いたしまして、私の質問は終わります。

鹿野委員長 この際、平沢勝栄君から関連質疑の申し出があります。谷垣君の持ち時間の範囲内でこれを許します。平沢勝栄君。

平沢委員 自民党の平沢勝栄でございます。

 時間が限られていますので、端的に、聞かれたことだけ答えてください。

 まず総理にお聞きしたいと思いますけれども、平成十八年一月二十七日、総理は「朝まで生テレビ!」に出られました。私もそのとき出たんですけれども、そのとき総理は、こういうことを言っておられます。大宅壮一さんの一億総白痴化という言葉を引用されて、テレビの影響で一億総白痴化が進んでいる、だから郵政選挙で自民党が勝ったんだ、こういうふうに言われています。

 総理、その御認識は今も変わりませんか。お答えください。

菅内閣総理大臣 そのテレビ番組に出て、今、平沢議員から言われたような趣旨のことを私自身が発言した、そこは、細かい言葉は別として、記憶をいたしております。

 そのとき申し上げたのは、最近はテレポリティクスとかいろいろ言われておりますけれども、そうしたテレビの中でのいろいろな番組が非常に大きな影響を与える、私はどちらかというと活字で物を考える方なんですが、活字の場合は一度自分の中で読み込んでその中身を考えるわけですが、テレビの場合はストレートに結論がどんと入ってきますので、そういう影響が非常に強くなっているということについて、そういった表現で申し上げたんだ、そういう記憶をいたしております。

平沢委員 要するに、郵政総選挙は、一億総白痴化が進んだ結果として自民党が勝ったと。

 昨年の民主党が勝ったのは、一億総白痴化の結果なんですか。それはどうなんですか。

菅内閣総理大臣 今申し上げたように、あの郵政選挙と言われた、小泉総理が解散をされたときに、私の理解では、自民党の中でも国民の中でも、必ずしも当初は、郵政が最大の争点という理解はなかったわけですけれども、あの刺客騒動などを通して、何かすべてがそこに集約されるような選挙になったという意味では、そういった影響がそういう形で出たという趣旨のことを申し上げたわけです。

 昨年の選挙に関して、比較を私がするのは、そういう立場にはないと思いますが、一番大きな争点は、政権交代を了とするか否とするかという国民の判断であったと思います。そのことは、私は、郵政の場合の、特に刺客騒動などで本来の政治とは違うところでの判断が多かったのに比べると、政権交代をやるべきかどうかというのは、長い間、国民の中でも議論をされてきた問題でありますから、私は、若干意味合いが違うのではないか、こう思っております。

平沢委員 要するに、民主党が勝ったときは国民が賢明、自民党が勝ったときは国民が総白痴化だ、こういうことを言いたいのだろうと思いますけれども、時間の関係で、次に進みたいと思います。

 金賢姫の訪日問題についてお聞きしたいと思いますけれども、金賢姫が訪日してもいいんですよ。しかし、金賢姫というのは二つの側面を持っています。日本人の拉致被害者と接点があった、もう一つの側面は、百十五人を殺したテロリストという側面を持っているんです。日本の偽造旅券を行使したという、日本の国内法にも触れているわけです。

 同じような事件は一九八八年にイギリスでありました。スコットランドの上空で、パンナムがリビア人によって爆破されました。これだってカダフィの指示ですよ。去年、スコットランドは、そのリビア人を釈放してリビアに帰しました。アメリカはどう対応したですか。リビアで大歓迎を受けたんです。刑務所からリビアに犯人は帰りました。健康上の理由でスコットランドが釈放してリビアに帰ったら、アメリカは、オバマ大統領以下、烈火のごとく怒ったじゃないですか。そして、何と言ったんですか。テロリストに歓迎を受ける資格はないということを言ったんです。

 いいんですよ、会ったって。横田さんたち、苦しんでおられるんです。少しでも情報を欲しいんです。元気づけられる、情報を得られる、だから会われるのはいいんです。しかし、VIP待遇。これは世界が見ているんですよ、何なんですか。

 そこでお聞きします。

 これはどういう形で、日本の法令に触れている人間を入れたんですか。法務大臣。法務大臣。入国は法務大臣じゃないですか。

中井国務大臣 後ほど法務大臣もお答えをいたしますが、たくさんのおしかりと御指摘をいただきましたので、責任者として金賢姫氏をお招きした私からまずお答えをいたします。

 先生が、ファン・ジャンヨプ氏それから金賢姫氏を呼ぶのは反対である、こういうふうに私どもにお伝えいただいたことは承知をいたしております。しかし、お話ございましたように、横田さん御夫妻、飯塚さん御夫妻を含めて御家族の方々に直接生存情報というものをお伝えいただく、また国民全体も、今回の問題で改めて拉致問題を認識していただく、そういうために来日していただくことは必要だと考えて、対策本部の中でお決めをいただき、事務局長たる私で御招待を申し上げ、法務大臣に対しましては、私の方から、ぜひ入国に際して御配慮をお願いしたいと申し上げたところであります。

平沢委員 では聞きますが、中井大臣、金賢姫が入国したときに取り調べはしたんでしょうか。日本の偽造旅券を使った容疑があります。

中井国務大臣 平沢先生は警察御出身でいらっしゃるから御承知だと思いますが、こういうことに関して、取り調べたかしなかったか、あるいは取り調べているかいないか、余り言わないことになっておりますので、御容赦のほどをお願いいたします。

 また同時に、彼女が羽田へ着きました後、飛行機をおりるまで一時間余の時間の中で、いろいろな調査等も行われたのではないかと私は思っております。

平沢委員 私は呼んだことを反対しているんじゃないんです。鳩山別荘に泊める、ヘリコプターで遊覧させる、これはおかしいじゃないですかと、それを聞いているんです。

 では、いいです。ちょっと待ってください。

 韓国には被害者の家族の方がおられるんですよ。百十五人亡くなったわけですから、当然。韓国の被害者の家族の方は家族会をつくっています。家族会の方は、ことし韓国の外交通商省を訪れまして、金賢姫の訪日に反対する抗議書を渡しているんです。何て言っているか。地球上で最も凶悪なテロ犯を訪日させる理由はどこにあるのか、家族の心を、大韓航空機の被害者の家族の心ですよ、家族の心をこれ以上傷つけないでもらいたいと。そして、訪日してからも、自分たち、要するに韓国の被害者には全然会わないで、日本の拉致被害者の家族にだけ会う、これはおかしいじゃないか、許せないということを言っているんです。

 韓国の被害者家族のお気持ちはどう考えておられるのか、教えてください。

中井国務大臣 私もたびたび韓国を訪れておりますから、いろいろな韓国内の思い、承知をいたしているつもりであります。

 百十五人の方が亡くなられて、痛ましい、許されざる事件であったことは言うまでもありません。しかし、今、李明博大統領は、あえてそういう中でも、日本への彼女の来日を許可していただいたわけであります。百十五人の被害者の大半は、ヒュンダイ建設の従業員でございます。当時、ヒュンダイ建設の社長は李明博さんでありまして、一番つらい御決断を大統領はなさった、このように聞いております。

 そういう意味で、今回の特別の措置に、私どもは心から韓国政府に対して感謝を申し上げているところであります。

平沢委員 今、借りをつくったという話がありましたけれども、同僚の小野寺議員が最近韓国に行ったら、韓国では、韓国政府は日本政府に大きな貸しをつくったということも言っているそうです。

 私が言っているのは、訪日したことを言っているんじゃなくて、何でヘリコプター遊覧とかという特別待遇をする必要があったのかということを聞いているんです。全然答えていないんです、中井大臣は。何でヘリコプター遊覧なんですか、何で鳩山別荘なんですか。

中井国務大臣 先ほど御質問のときには、ヘリコプター遊覧、別荘けしからぬとはおっしゃったけれども、質問にはされていなかったので答えなかっただけのことでございます。

 今お尋ねでございますから。彼女を初め韓国側から、いろいろな条件、要求が出て、交渉に交渉を重ねました。私どもは、彼女を初め韓国側が、どこか一カ所でいいから観光旅行をさせてやってほしい、これは、彼女は永久にどこへも出られない、どこへも行けないということを考えると、私はある意味で、どこかでかなえてやりたいと考えて、軽井沢へ直行で行かせる、こういうことを考えました。

 そしてその中で、もし隠密にできるなら、鳩山別邸のあのきれいな庭を散歩することで済ませていただきたい、こう思ったところでありますが、どこから漏れたか、だれが漏らしたか知りませんが、羽田空港へ着いたらヘリコプターが七機待っておりまして、到底庭も歩けない。こういう中で、東京への輸送の安全、これを考えて、ヘリコプターを万々一用意いたしました。このヘリコプターに乗せて東京上空を飛べるかどうか、この安全についても最後まで韓国側と議論のあったところでございますが、私の責任において行ったところであります。

平沢委員 答弁が長過ぎて、今度はもうちょっと短くやってください。

 東京から長野の鳩山別荘に行ったでしょう。前総理の別荘に泊めるんですよ、世界が見ていますよ、テロリストでもあるわけですから。そして、警備が大変なんです。東京から長野まで運べば、途中の埼玉県警、それから群馬県警まで警察官を動員しなきゃならない、大変な警備なんです。ヘリコプターで飛ばせば、金賢姫のヘリコプターだけ飛ぶんじゃないんです。警視庁のヘリコプターも何機も飛んで警備しなきゃならないんです。大変なんですよ。そこまでしてやる必要があるのか。

 いや、横田さんと会ってもらうのはいいんですよ。警備というのは、じっとしておいてもらうのが一番いいんですよ、動いてもらうのが一番大変なんですよ。そういうことを大勢の警察官を動員してまでやる必要があったのかどうか、それも疑問だということを言います。(中井国務大臣「委員長」と呼ぶ)もういいです、答弁が長過ぎるから。

 それで、次に、外務大臣にお聞きしますけれども、この前ハノイで、ASEANの地域フォーラムが開かれました。そこで、北朝鮮の朴宜春外務大臣が出てきました。朴宜春外務大臣は、二年前にシンガポールで同じASEANの地域フォーラムがあったときも出てきたんです。二年ぶりに出てきた。それで、二年前のときは高村外務大臣でした。高村外務大臣がそのASEANの地域フォーラムにシンガポールで出たときに、朴宜春北朝鮮外務大臣と接触して、懸案を解決して、要するに、日朝関係を進めようと言ったらば、アイ・アグリーと言った。そうだ、そのとおり一緒にやりましょうということを言った、その人物なんです。その人物が今回ハノイに出てきたんです。

 その人物と一切個別の接触をしなかった、何ら話しかけもしなかった。それは、韓国の哨戒艦の問題があるから日米韓が連携しなきゃならない、それはわかりますよ。しかし、哨戒艦の問題が解決しない限り拉致の話は一切しちゃいけないというのもこれはおかしな話で、哨戒艦と拉致は別なんですから。

 何でこれはしなかったんですか。

岡田国務大臣 まず、二年前の状況ですけれども、確かにそういった接触もあり、そして、北朝鮮側は日本側に再調査の約束をその後しているわけですね。しかし、残念ながら、その再調査の約束は全く果たされていないわけであります。

 ですから、日本国政府としては、さまざまな機会をとらえて、拉致の問題についての再調査をきちんと果たすこと、そのときに、日本政府と北朝鮮との間で再調査をすればこういったことをするという約束ができていますから、まずその再調査をきちんと果たすこと、そのことは何度も伝えているわけであります。それに対して全く応答がない。そういう状況の中で、今、外相同士が会っても話は進まない、そういうふうに判断をしたところでございます。

 委員御指摘の哨戒艦の事件で、今、韓国とアメリカと日本が協力をして対応している、そういったこともその背景には、私が話をしなかった背景にはございます。

平沢委員 時間がないから次に進みますけれども、御家族の皆さんが望んでいるのは、一日も早い解決なんです。そのためには、北朝鮮と戦争するわけにいかないんだから話し合いをする以外にないんです。せっかく北朝鮮の外務大臣、前に話し合いをしましょうと言った外務大臣が出てきたんだから、そこで何ら接触がなかったというのは極めて残念だなと思います。

 そこで、次に進めさせていただきたいと思いますけれども、まず、パネルを出させていただきます。

 このパネルは、ことしの五月十一日、鳩山内閣のときに、佐藤勉衆議院議員の質問主意書に対する政府答弁書なんです。だから、ここにおられる閣僚の皆さんのほとんどは、この答弁書に署名しておられるんです。

 何と書いてあるか。

 日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派、いわゆる革マル派は、共産主義革命を起こすことを究極の目的としている極左暴力集団であり、これまでにも多数の刑事事件を引き起こしている。これは殺人事件を初めいろいろな事件を引き起こしています。革マル派は、将来の共産主義革命に備えるため、各界各層への浸透を図っており、全日本鉄道労働組合総連合会、JR総連及び東日本旅客鉄道労働組合内には、影響力を行使し得る立場に革マル派活動家が相当浸透していると認識している。

 要するに、JR総連とJR東労組の中に革マル派が相当浸透している、幹部のクラスに相当浸透しているということを皆さん方が認めているんです。その皆さん方が認めているこの組織から、参議院の候補者を公認で出した。ということは、革マルと皆さん方は関係ができてくる、深い関係ができてくるということになりませんか。この基準はどうなるんですか。

中井国務大臣 国家公安委員長として、この答弁書をつくった責任者の一人として、お答えを申し上げます。(平沢委員「いや、簡潔にお願いします」と呼ぶ)なかなか難しい問題ですから、そう簡単に、また先生含みがある質問が多いものですから、簡単にはいきません。

 このとおり、私どもは、JR総連、JR東労組と革マル派の関係については、革マル派が相当浸透していると認識しているのは事実でございます。こういう答弁を作成してまいりまして、私もいろいろ悩んだわけでございます。質問者は前の国家公安委員長でもございます。

 したがいまして、私は、このまま閣議にお出しをするという決心を固め、党にも伝えたわけでございます、こういう方向であると。そして閣議の席では、申し上げていいかどうか迷いますけれども、こういう答弁書でいいのかどうか、事実かどうかという御質問もありましたが、私はそのとおりであろう、このように答えたところでございます。

平沢委員 聞かないことをどんどん答えないでください。

 この組織の組織内候補者、今度、JR総連とJR東労働組合、そこの政策調査部長という幹部が民主党の公認で全国比例から出て当選しているんですよ。だから、革マルとの関係ができるんじゃないですか。

 総理、もう中井大臣はいいですよ、総理、これはおかしくないですか。そういう革マルが幹部に相当浸透しているという組織の代表、組織内候補を公認して民主党が出してくる、これはおかしくありませんかと聞いているんです。総理、答えてください。

菅内閣総理大臣 いろいろな労働団体、さらにはいろいろな各種の団体、そういうところから候補者が民主党から出たいということで、当時の執行部として判断されて公認をした、そういうふうに理解しております。

平沢委員 JR東労組は革マルが極めて浸透していると皆さん方が認めたんです。

 そして、これを見てください。第四十一回衆議院総選挙のときの、枝野幹事長と、ここにJR東労組支部の執行委員長と書いてありますけれども、この人は革マルの幹部と見られている人です。この人と、立候補に当たってこういう覚書を交わしているんです。

 この一の1を見てください。「わたしは、JR総連及びJR東労組」、皆さん方が革マル派が極めて浸透していると言っている、そこの組織「の掲げる綱領(活動方針)を理解し、連帯して活動します。」こう言っているんです。要するに、その意向どおり動くということじゃないですか。

 ちなみに、この労働組合から枝野幹事長は、四年間にわたって四百万ほどの資金提供も受けているんです。そして、この執行委員長はその後逮捕されたんです。そうしたら、二〇〇六年に、その逮捕は不当だ、冤罪だという集会が開かれて、そこに枝野幹事長は行かれて一時間ほど話もされているんです。

 どうなっているんですか。皆さん方が革マルが物すごく浸透しているというその労働組合の候補者を立てて、そして、幹事長はこういった形でその組合と覚書まで交わして選挙応援をもらっている。総理、これはどうなんですか。これは別に、ある程度知られていることなんですよ。この人は革マルですよ、革マルと言われている。それで、これは……(発言する者あり)いや、かなり知られたことなんですよ。今月号の新潮45を初めとした雑誌にも出ていることなんです。

 総理、どうお考えになられますか、党代表として。

菅内閣総理大臣 労働団体あるいは一般の各種団体と一般的な意味で政策協定や確認書を取り交わすということは、これは多分、自民党におかれてもあり得ることだと思っております。

 そういう意味で、ただ、そのことと、党の議員や候補者が御指摘のような団体と特別の関係があるということについては承知をいたしておりません。

平沢委員 特別、承知をしておりませんと言ったって、こんなことはもう周知の事実なんですよ。先ほど言いましたように、新潮45を初めとした公刊物にも出ているんですよ。そういう中で、こういう覚書も交わされている。一言で言えば、革マルと民主党、どういう関係なんですか。

 今、大相撲が何で問題になっているんですか。暴力団という反社会的集団といろいろな関係があるから大相撲は問題になっているんじゃないですか。民主党と革マルの関係はどうなっているんですか。この辺は党の代表として、総理、しっかりしてくださいよ。

 では次に、北海道教職員組合の問題について入らせていただきます。

 民主党はこういう組合の応援を受けている方が大勢おられるんですけれども、やめられましたけれども、小林千代美議員も北海道教職員組合の丸抱えの候補として国会に出てきたんです。この北海道教職員組合、北教組、これもとんでもない組織なんです。

 そして、教育公務員は政治的な中立が要請されている、法律で特に国家公務員並みの政治的中立が要請されているにもかかわらず、勤務時間中に組合活動をするわ、あるいはいろいろな政治活動をするわで、そしてその北教組の組織丸抱えの候補として送られてきたのが小林議員だったんです。

 教育公務員の政治的中立は、これは法で要請されているんです。政治的行為の制限に違反した場合に、残念ながら、今は罰則がないんです。だけれども、やはり罰則を設けるべきじゃないか。政治的行為の制限に教育公務員が、公立学校の先生が違反した場合には罰則を設けるべきではないかということで、今、自民党、みんなの党、議員立法で法案が出されていて継続になっているんですけれども、総理、この北教組の実態を見たら、このとんでもない組織の実態を見たら、前の鳩山総理は前国会でかなり前向きな答弁をされていましたけれども、この教育公務員の政治的行為の制限に違反した場合には罰則を設けるという教育公務員特例法の改正をやるべきだと思うけれども、総理はどうですか。

川端国務大臣 お答えいたします。

 御案内のとおり、教育公務員特例法は、その制定の際には罰則規定が設けられる予定でありましたが、参議院の議論の経過の中で、教育のことは教育現場に任せるべきだということで提起をされなかったのは御案内のとおりです。

 今、法律が議員立法で出されていることは承知しておりますが、私たちとしては、教育の中立性を確保する中で、どういうやり方でさらに確保できるかについて慎重な検討をしているところでございます。

平沢委員 慎重な検討じゃないんですよ。鳩山前総理はもっと前向きに答弁しておられたんですよ。まだ北教組をかばうんですか、こういう北教組を許そうとしているんですか。

 北教組というのはとんでもない集団で、君が代・日の丸に反対している、あるいは道徳教育に反対している、いじめの実態調査、これには協力しない、学習指導要領には従わない、とんでもない集団組織なんですよ。そして、例えば竹島について、北教組の討議資料を見ますとこういうふうに書いている、竹島は韓国の領土であると。歴史事実を冷静にひもとけば、韓国の主張が事実にのっとっていることが明らかである、こう言っている。

 歴史を何にも知らない、こんなとんでもない先生がいる組織が北教組ですよ。私の地元の葛飾区や江戸川区でこんな北教組の先生が来たら、住民がつまはじきしますよ。そんな組織から丸抱えで小林さんという民主党の衆議院議員は国会に送られてたんですよ。おかしくないですか。

 だから、こんな先生方が政治的行為をやるのを制限するのは当たり前じゃないですか。罰則がないからやりたい放題なんですよ。

 もう一回。では、総理、答えてください。やるべきじゃないですか。総理、答えてください。

川端国務大臣 北海道の教職員組合の幹部が逮捕された事件は極めて遺憾なことでありますが、今、北海道教育委員会を中心にして、今先生が言われるような法令違反があったのかなかったのか、そのことを、自民党の議員あるいは報道から、いろいろな指摘を含めて現在調査をし、きょう概要が議会に報告をされると伺っております。

 そういう中で、どういう事案が本当に法令違反、政治的中立を侵す法令違反があったのかどうかを今調べているところでありまして、それに対してどう対処するかということがこれから慎重に検討されるべきであるというふうに思っています。

 そして、今先生が言われました日の丸・君が代、道徳教育、竹島等々で、北海道教職員組合が討議資料等々でいろいろな指導をしているということは承知をしておりますけれども、教育現場において、道徳教育、日の丸・君が代あるいは竹島問題についてしっかりと教育していることが、私の責務として指導し、そして担保されていると承知をしております。

 以上です。

平沢委員 北海道教育委員会の指導に従わないようなとんでもない組織、北教組だからこそ、場合によっては罰則も設けなきゃならないんじゃないですかということを言っているんですけれども、今の文科大臣の答えは全然答弁になっていません。

 では、最後に総理にお聞きします。総理は、君が代・日の丸、賛成なんですか、反対なんですか。

菅内閣総理大臣 私は、日章旗、いわゆる日の丸が掲示されているところで、その前で国旗に対して敬意をできるだけあらわすようにいたしておりますし、また、いろいろな機会に君が代を歌う場面では、私自身も他の皆さんと一緒に起立をして斉唱いたしております。

平沢委員 時間が来たから終わりますけれども、では、総理に最後に一つ。

 二〇〇二年五月三十一日、ラジオ番組「ミッキー安川のずばり勝負」、この番組は、番組の冒頭、みんなが立って君が代を歌って、それから番組に入るんです。総理はそのとき出られました。そして、総理はそのときに、私は君が代を歌いたくないと言われました。(菅内閣総理大臣「そんなことは言わない。うそだ。うそです、それは」と呼ぶ)いや、それは調べたんです。(菅内閣総理大臣「調べてください。証拠を出してください、今の話は」と呼ぶ)いや、それはもうみんなから聞いています。それはそういうふうに言われています。(発言する者あり)ですから、皆さん、それはいろいろなところに出ているんです、これは。

 それで、皆さんから勧められて、そして立つことは立ったということを、それは言っていたのを、私はミッキーさんの御子息、それから当時そばにいられた方、みんなからも聞いているんです。(菅内閣総理大臣「違う」と呼ぶ)それは違いますか。これは違いますか、本当に。では、後で調べてまたやりましょう。

菅内閣総理大臣 こういう場でそこまで言われるんだったら、だれがどういう根拠で言ったか、あるいはそのテープでもいいですから、ちゃんと出してください。

 私が、自分の中で、その場面そのものを細かく覚えているわけではありませんが、私は、小学校、中学校の時代から、こういった場面で、特に国歌を斉唱しなかったとか、そういう態度をとったことはありません。ですから、一般的に皆さんが斉唱されるときに、私だけが座っている、あるいは斉唱しない、そういう行動をとるはずがないので、自分の中で。ですから、そこまで言われるのであれば、きちんと証拠を挙げていただきたい。

平沢委員 時間が来たから終わりますけれども、今のこの話は、ラジオ日本の関係者、そしてミッキー安川さんの御子息、皆さんから聞いた話だということを申し上げて、私の質問を終わります。

鹿野委員長 これにて谷垣君、石破君、柴山君、田村君、平沢君の質疑は終了いたしました。

 次に、井上義久君。

井上(義)委員 公明党の井上義久でございます。

 質問に入る前に、全国を襲った一連の集中豪雨により被災された皆様に心よりのお見舞いと、亡くなられた方に御冥福を心よりお祈り申し上げます。

 被災された方々の一日も早い生活再建、そして復興、また防災対策に政府は全力を挙げるようにまず要請したいと思います。今回の災害については、さまざま課題もございます。そのことについては、後ほど私どもの同僚議員が質問させていただく予定になっておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

 最初に私は、参議院選挙の結果をどう受けとめるかということについて伺いたいと思います。

 菅総理が、就任後の所信表明演説を受けた代表質問で、菅総理がかつて、やめざるを得なかった首相を支え切れなかった人にリーダーシップはない、これは菅総理のことを私は言っていると思いますけれども、政権が行き詰まったら衆議院を解散すればいい、このように発言されました。それを受けて私は、もしそうなら国民から新たな負託が必要なんじゃないかということで、解散・総選挙を求めたわけでございます。それに対して菅総理は、目の前に定期的に決まっている参議院の選挙があるわけだから、参議院選挙でしっかりとこれからの方向性をお示しして、国民に信を問うのがすべての政党にとって必要なことだというふうに答弁されました。いわゆる参議院で信を問う、こうおっしゃったわけです。

 ところが、この参議院選挙で菅総理が率いる民主党は大敗をいたしました。政治と金の問題、あるいは普天間をめぐる迷走、数々のマニフェスト違反、そういう十カ月間の民主党の政権運営に対して、国民はノーという判断を下した、いわゆるレッドカードを突きつけたわけです。

 さらに思い起こしますと、三年前の参議院選挙、与党敗北の後、民主党の皆さんは、やはり直近の民意が大事だということで政権交代を迫ったことがございました。

 そういうことであるにもかかわらず、菅総理は参議院選挙直後、敗北を受けて、続投を表明されました。さらに、九月の代表選挙で党内の信を問う、こういうふうにおっしゃったわけです。私は、国民の信より党内の信を優先するというのは極めておかしい、こういうふうに思いますし、なぜ今回はこの直近の民意を反映しなくていいというふうにお考えになったのか、まずお伺いしたいと思います。

菅内閣総理大臣 今回の参議院選挙で大きく議席を減らしまして、そういう意味では敗北をした、その責任は一番私にある、このように思っております。

 ただ、これは私が言うべきかどうかわかりませんが、例えば比例でいただいた票は我が党は第一党でありまして、第二党の自民党よりも相当多くの皆さんから支持をいただいたということも、これも客観的な事実であります。

 そういった中で、昨年の政権交代の意味を私なりにしっかり考えた中で、昨年、国民の皆さんが、政権交代をせよという大きな意思をあらわしていただいた、それに対して、確かにこの十カ月余りいろいろ試行錯誤もありましたけれども、進むべきことは次第に前進を始めている中で、この時点でそうした行動をとるべきではなくて、この形で政権を責任を持って運営させていただきたい、このように考えて申し上げたところであります。

井上(義)委員 確かに、民主党は比例代表について比較第一党であった、このことは認めます。ただ、民主党、国民新党の得票率は三三・二七%、それに対して野党の得票率は六六・七%あったわけで、もう民意は明らかだというふうに思います。

 そのことはさておいて、それから、昨日の予算委員会で、総理は、敗北の原因の一つとして、消費税に対する唐突な発言ということをおっしゃいました。確かに、消費税をめぐる総理の発言が二転三転をした、そのために有権者は大いに混乱した、こう思います。

 例えば、六月十七日の参議院選挙の公約発表会見では、二〇一〇年度内にあるべき税率や逆進性対策を含む消費税に関する改革案を取りまとめる、当面の税率は自民党が提案している一〇%を一つの参考にしたい、こうおっしゃいました。さらに、四日後の六月二十一日の会見では、自民党が提案している一〇%を参考にしたい、そのこと自体は公約と受けとめていただいて結構だ、こうおっしゃいました。

 ところが、この五日後の六月二十六日、カナダの同行記者に対して、消費税を含む税制改革の議論を呼びかけるところまでが私の提案ということで、一〇%公約が大幅に後退しました。さらに、消費税の使途ということについても、財政再建あるいは社会保障の財源、成長戦略の財源と、発言が二転三転しました。特に、私が致命的だったと思うのは、低所得者の負担軽減策となる消費税の還付、これについても、対象年収が二百万から四百万以下、一日で三回変わりました。くるくる変わる。

 確かに、唐突な消費税発言ということも一つの要因だったと思いますけれども、私は、やはり消費税ということについて全く煮詰められていなかった、本当にこの税制という重要な課題についてこんなにくるくる変わっていいのか、総理の税制の認識とか知識は本当に大丈夫なのか、こういう総理の資質について国民は非常に疑問を感じたというふうに思います。

 さらに、私が驚いたのは、参議院選挙後の民主党の両院総会で、総理は、参議院選挙期間中における消費税の発言を、不用意な発言だったというふうに陳謝されたんですね。

 不用意というのは、総理おわかりのように、準備がなかった、あるいは、うっかりと、こういう意味です。一国の総理が、しかも国民に信を問うと言って参議院選挙をやって、その折の発言が、しかも重要な税制、しかも消費税ということについて、不用意な発言だったと言って済まされて本当にいいのかなと。総理の信念というのが本当に不用意ということで済ますことのできる程度のものだったのか、そういうことについて非常に疑問を感じました。

 総理が不用意な発言というふうにおっしゃったその意味というのは、そもそも発言が間違っていたということなのか、それとも選挙の結果が敗北だったので間違いだったという総括になったのか、そのことについて明確にしていただきたい、こう思います。

菅内閣総理大臣 井上議員もいろいろな席でお聞きをしていただいたと思いますが、私は直前まで財務大臣を務めておりまして、その中でも、現在における日本の財政状況の厳しさについて私からも申し上げ、多くの委員の皆さんからも御議論いただきました。

 そういった中で、私は、我が政府の当時税制調査会長をやっておりまして、そのもとで専門家委員会をつくって、既に、消費税を含む、法人税や所得税も含む税制改正について、専門家の皆さんに議論をしてもらいたいということで議論を進めていただいておりました。

 また、選挙の直前には財政運営戦略を閣議決定して、二〇一五年までに現在のプライマリーバランスの赤字幅を半分に、二〇二〇年には黒字にする、そういった中期財政フレームも閣議決定という形で発表させていただき、それはもちろん現在も生きているわけであります。

 そういった意味で、私は、財政再建について努力をしなければならないという、その姿勢は全く変わっておりません。

 そういう中で、今、るる井上議員から私の当時の発言について言われましたけれども、そういった意味で、私は、今、多少の反省を込めて言えば、そうした政府税調等で議論をしていただいている中、また、党の方は政調会を復活することで議論をこれからしていただく中で議論すべきことについて、例示とはいえ、私がいろいろお話をしたことがより国民の皆さんにある意味での混乱を招いた、そういう点は反省をいたしております。

 しかし、いずれにしても、消費税を議論するときに、軽減税率やあるいは還付といったことを議論しなければならないことは、これは言うまでもないことでありまして、そういった意味で、不用意という言葉を私が使ったのは、まさに、本来政府税調等で議論していただいていてまだ結論が出ていないことを、例示とはいえ、そういう席で言ったことについては若干不用意だったかな、そういう趣旨でありまして、そういう議論が必要がないとかそういう議論をやめようとか、そんなことを言ったつもりは全くありません。

井上(義)委員 要するに、不用意だったという言葉で済まされる、その言葉の軽さということが私は非常に大きな問題だというふうに思います。一国の総理なんですから、国民に一たん言ったこと、特に選挙中の発言というのは、これは公約ですから、それが単なる不用意だったということで済まされるようなことではないということをまず指摘しておきたいと思います。

 それからもう一点、千葉法務大臣、留任をされました。参議院選挙で落選されたその直後に、千葉法務大臣は菅総理に辞意を伝えられたというふうに伺っています。それに対して総理は、行政の継続性という観点から継続していただくことが望ましいというふうに留任をさせられました。これは非常に理解に苦しむ判断と言わざるを得ません。

 落選というのは民意のあらわれでありまして、私は、現職の法務大臣の落選というのは、千葉大臣が行っていた法務行政全般を含めた国民の選択だというふうに考えるべきだ、このように思います。そういう方に死刑の執行だとかあるいは検察への指揮権などの権限を託すというのは、私は適格性に欠けると。議員でなくとも適任者であれば閣僚になれるというのとは、これは本質的に違うことだというふうに思います。

 新聞の声の欄に、神奈川県の有権者の投書が載っていました。その投書によりますと、「神奈川県の有権者が選挙でノーを突きつけた人物を留任させることに疑問を感じます。留任の理由として、民主党が九月に役員人事を控えていることなどがあるようですが、民意よりも党内事情などを優先させるのは納得がいきません。ねじれ国会となったことで、国会運営がどうなるかが注目されていますが、民意を国政に反映させ、国益を守るという政党の本来の役割を忘れないでほしい」、こういう投書でございまして、私は全くそのとおりだなというふうに思いました。

 加えて、参議院選挙で出馬しないで引退をされた総務副大臣あるいは財務副大臣、また総務政務官、これも留任をさせられたわけです。

 この投書にあったように、党内の事情で留任をさせた、すなわち、代表選挙まで人事はさわれない、そういう党内の事情を優先させたとしか思えないわけで、であるならば、この一連の人事というのは、私は、今のを見ますと、今の菅内閣というのは、党内の代表選挙が終わるまでは、言うなればモラトリアム内閣、政治空白、政権の空白そのものだ、これは国益にとっては極めて重大な問題だというふうに思いますけれども、総理はどのようにお考えですか。

菅内閣総理大臣 まず、千葉法務大臣のことに関して言えば、井上議員も認められるように、憲法では、過半数の閣僚は国会議員から、半数以下については民間の方を選任することも認められておりまして、そういう意味で、私は、適任である、千葉法務大臣は、民間人というか、議員でなくなられても、この分野に大変精通をされておりますし、適任であるということで、留任をお願いいたしました。

 私、過去の例すべては把握しておりませんが、一つ記憶があるのは、新自由クラブ、当時立候補された大来佐武郎先生が落選をされましたが、その後、多少の期間があいたかもしれませんが、外務大臣にたしか任命をされております。

 ですから、私は適任であるかないかということで判断をいたしたわけで、それ以外の理由はありません。

井上(義)委員 最初から適任であるということで民間人を任命するということと、総理が一たん適任だと判断されたとしても、民意を得られなかった、この事実は非常に重いわけで、やはり民意を反映するということは私たちの政治家の一番の基本だし、そのことによって、私は、先ほど指摘したように、政治空白が生じている、代表選挙までモラトリアム状態になっている、このことは国益を守るという観点で極めて重大な問題だということを指摘させていただいたわけです。

 もう一つ、私は、そのことに関連して、総理が六月十一日の所信表明演説でこういうふうにおっしゃったんですね。「これまで、日本において国家レベルの目標を掲げた改革が進まなかったのは、政治的リーダーシップの欠如に最大の原因があります。」こうおっしゃって、「国民の皆様にビジョンを示し、そして、国民の皆様が、よし、やってみろと私を信頼してくださるかどうかで、リーダーシップを持つことができるかどうかが決まります。」こうおっしゃったんですね。

 今回の参議院選挙の結果、国民は総理に対して、よし、やってみろというふうに信頼をしなかったんですよ。総理みずからの言葉に従っても、総理は今リーダーシップを発揮できない、こういう状況になっているわけです。

 そういうことから考えますと、九月の代表選挙で党内の信を問うと。私が先ほど申し上げたように、党内の信より国民の信が大事だ、政治空白をいつまでも続けるべきではない、そういう意味で、やはり総辞職をして新しい内閣をつくるか、あるいは解散して総選挙を行うのが筋だ、このように申し上げて、次の質問に移りたいと思います。

 政治と金の問題についてお伺いしたいと思います。

 報道によりますと、総理は七月十日の、いわゆる選挙中ですね、七月十日の福井県坂井市内での街頭演説で、政治と金とか、普天間のことで少し御心配をおかけしましたけれども、それもクリアをして、いよいよ本格的に時計の針を前に進めようというときのこの選挙だというふうに発言されました。

 普天間の問題については後ほど同僚議員が質問したいと思いますけれども、この政治と金について、クリアだ、こうおっしゃった。それでは、この鳩山前総理の問題、小沢前幹事長の問題、あるいは荒井国家戦略担当大臣の問題、私に言わせますと、何もクリアになっていません。

 例えば鳩山前総理。実母から毎月一千五百万、年間一億八千万、総額十二億円を超える資金提供、これは本当に知らなかったのか、あるいは資金の使途は何なのか。さらには、三月三日の予算委員会で約束をした関係書類の公表、今、全くほっかむりで、これも実現されておりません。

 あるいは、小沢前幹事長について言いますと、なぜ政治資金で不動産を次々と購入する必要があったのか。あるいは西松問題、西松建設あるいは水谷建設からの献金の疑惑、これも全く解明されておりません。

 さらに、荒井大臣について申し上げますと、七月二十日に政治資金収支報告書を訂正されたということですけれども、何をどう修正したのか。政治資金収支報告書を見ても、総額が出ているだけで、何が不適切な支出だったのか、その明細は全く明らかにはなっていません。

 きのうの予算委員会の総理の答弁で、このクリアという意味について、鳩山前総理、小沢前幹事長の辞任で一つのけじめがついたということをクリアとおっしゃったんだというふうにおっしゃっていますけれども、では、本当に総理は、この辞任で政治と金の問題は決着した、幕引きだ、こういうふうに考えていらっしゃるのか。もしそうだとしたら、これはとんでもない間違いで、私は、民主党の自浄能力、とてもクリーンな党とはほど遠いというふうに申し上げざるを得ない、こう思いますけれども、総理はどのようにお考えでしょうか。

菅内閣総理大臣 今、井上議員の方から昨日の私の答弁についてもお触れをいただきましたけれども、鳩山前総理、小沢前幹事長がその職を辞すという形で一つのけじめをつけられたこと、これは私は、政治家としては大きなけじめをとられた行動だというふうに思っておりまして、そういう意味で、クリアという言葉の、言葉として適切であったかどうかは別として、けじめとしては一つの大きなけじめであった、このように思っております。

 また、荒井大臣については、架空計上などはなかったという報告を受けておりますし、不適切なところについては修正の申告というかそういうことをしたということで、問題はない、こう認識をいたしております。

井上(義)委員 一定のけじめがついたと。そういうけじめのつけ方も私はあるだろうというふうに思います。

 それでは、先ほど申し上げたように、鳩山前総理、小沢前幹事長あるいは荒井国家戦略担当大臣、これらの方々をめぐる政治と金の問題、これはもうそれ自体決着がついた、もう幕引きだ、こういうふうにおっしゃりたい、こう考えていいですか。

菅内閣総理大臣 いろいろな場面があると思いますけれども、少なくとも政治家としての一つの大きなけじめをつけられた、そういうことは言える。すべてがそれで終わったと見るかどうかというのは、それは見方によりますから、私は、政治家として大きなけじめをつけられた、このように思っております。

井上(義)委員 国会における説明責任は全く果たされていません。もし本当に総理が、これで幕引きだ、こうおっしゃるなら、これはもう民主党の自浄能力そのものがないというふうに断言せざるを得ないと思います。

 私は、引き続き総理がきちっとリーダーシップを発揮して、国会における説明責任を果たすようにリーダーシップを発揮すべきであるということをまず申し上げておきたいというふうに思います。

 その上で、私どもは、秘書などの会計責任者が虚偽記載などの違法行為を行った場合、その監督責任のある政治家も公民権を停止して国会議員を辞する、そういう再発防止策をとるべきだ、行うべきだということで政治資金規正法の改正案を提出しています。

 最近、鳩山前総理、小沢前幹事長の政治と金の問題に関する三つの検察審査会で、いずれも、秘書がやったでは済まされない再発防止策を講ずるべきであるというふうに指摘しております。

 ここにありますけれども、総理御承知のように、検察審査会というのは、司法制度改革の中で、司法にも国民の良識をきちっと反映させる、こういうことでスタートした、極めて重要な機関だというふうに私は思いますけれども、例えば、二〇一〇年四月二十一日の鳩山前総理をめぐる偽装献金問題に関する議決では、「監督責任だけで会社の上司等が責任を取らされている世間一般の常識に合致していないので、本条項」、これは政治資金規正法の第二十五条二項なんですけれども、「は改正されるべきである」と指摘しています。それから、二〇一〇年の四月二十七日の小沢前幹事長をめぐる土地購入問題に関する議決では、「「秘書に任せていた」と言えば、政治家本人の責任は問われなくて良いのか」という指摘をしています。それからさらに、七月八日のやはり同じ土地購入をめぐる議決についても、「政治家自身が「公開された内容を知らなかった」などと言って責任を免れることを許さない制度を構築すべき」だというふうに言っています。

 私は、これが国民の常識だ、こう思いますけれども、総理はどうでしょうか。

菅内閣総理大臣 まず、検察審査会というものは一つの制度として重要な役割を担っておられますので、私の総理という立場で余りそのことに関して論評することが必ずしも適切でないこともあり得るという、その前提の中で申し上げれば、それぞれいろいろな意見が出されているのは、それぞれしっかりと私たちも受けとめて、いろいろな議論の中で参考にさせていただかなければならない、こう思っております。

井上(義)委員 私は、これが国民の本当の常識だというふうに思います。これにしっかり政治家がこたえなければいけないということで、私どもは前国会で政治資金規正法の改正案を提出しています。これは今継続になっています。

 いわゆる二十五条の二項、これは現行法では、そういう会計責任者等が政治資金規正法違反を犯した場合に、選任及び監督の両方についての過失がないと政治家は監督責任を問われません。選任及び監督両方について過失を証明するということは極めて難しいということで、これまで一度もこの条項が適用されたことはない。結局は、秘書が、秘書がということで全部逃れてしまっている。

 私どもは、それではやはりいけないということで、選任または監督のいずれかについて過失、すなわち監督責任を厳しく問う、監督について過失があれば、政治家の監督責任を問うて、そして政治家に罰金を科す。これが有罪になれば、政治家の公民権が停止され、失職をする、政治の世界から出ていっていただく、こういう改正案を提出しております。

 先ほどの検察審査会の議決とあわせて、私は、当然の国民の世論、これを実現すべきだ、こう思いますけれども、自民党さんもマニフェストで監督責任を強化すべきということをおっしゃっておりますから、民主党が賛成すればこれはすぐにでも成立できるんですよ。総理、どうでしょうか。

原口国務大臣 選任及び監督というこの条項、委員がおっしゃるように、政治家の監督責任、極めて重いものがございます。その一方で、政治資金規正法が持っている予期可能性、つまり、ざる法とよく言われますが、これは規正法、そこに書いてあるように、正しい方向に導くという法律なんですね。

 それが、例えば松原議員が献金を井上議員にされて、井上議員が私に献金をされたと。では、松原議員を書くのか、井上議員を書くのか。このことさえ、明示的には個別の事案に即してやらなきゃいけない。こういうものを残したままで選任及び監督という条項だけを変えてしまうと、政治家そのものが政治活動の自由を侵される危険性もある、こういった議論が国会であったわけでございまして、そういったものも踏まえながら、私たちは、各党各会派の御意見を踏まえて、監督の責任というのは一体どのように問われるべきか、これを議論していくべきだと考えています。

井上(義)委員 政治資金規正法改正は、これはもう議員立法、国会の中で議論する話で、総務大臣は関係ないんですよ。だから、総理はどういうふうに考えているのか、それを聞きたいんですよ。総理、どうなんですか。

菅内閣総理大臣 政治資金規正法について、我が党からも企業献金の禁止等の提案をさせていただいております。また、今、公明党を中心に、そうした法案を出されていることも承知をいたしております。

 今、総務大臣、大臣という立場であるなしを超えて、いろいろとその法案の内容について議論が行われているわけでありますので、私は、そうした議論、大いに活発にやっていただいて、その中で最終的な判断を党としてしなければならないときは党としてしていきたい、こう思っております。

井上(義)委員 今の答弁を聞いていますと、全くやる気が感じられない。結局、政治と金の問題も、先ほどの、クリアになったというふうに幕引きをしようとしているとしか考えられないわけで、それで本当に、菅総理自身がクリアな党にしたいということで代表になられたんじゃないですか。このくらいできなくて、私は、とてもクリアな党になったというふうには申し上げられないということで、これはもうぜひ実現をしたい、そのために民主党の皆さんもぜひ協力をしていただきたい、このことを申し上げておきたいと思います。

 次に、マニフェストについてお伺いをしたいと思います。

 民主党は、政権交代を実現した衆議院マニフェストから参議院マニフェストにおいて、主要な目玉項目の多くを変更されました。

 パネルを見ていただきたいんですけれども、これは衆議院選挙における民主党のマニフェストの工程表です。それによりますと、子ども手当を初めとしまして、ほとんどの施策というのは平成二十三年度から本格実施ということになっています。そのための主要な財源としては、二十二年度で七・一兆円、二十三年度で十二・六兆円、二十四年度で十三・二兆円、それから二十五年度で十三・二兆円、その他含めて十六・八兆円、こういう工程表が衆議院のときに発表されたわけです。

 これを確認した上で、次のパネル、このマニフェストが今回の参議院選挙でどう変わったかということを比較したもので、特に、民主党が目玉政策とおっしゃっていた子ども手当、農業の戸別所得補償、それから暫定税率の廃止、高速道路の無料化、この四つについて取り上げたものです。

 私はなぜこの問題を取り上げるかというと、これは一つは、民主党が政権交代を実現したときの国民との契約、約束、これが既に存在しているわけです。ところが、参議院選挙の際に主要政策を大きく変更されました。では、なぜ変更したのか、その理由が国民に全く示されていないというふうに思うからです。

 それからもう一つは、一方で、民主党の中でも混乱があるようですけれども、衆議院選のマニフェストは生きているんだというふうにおっしゃっている党幹部もいらっしゃるわけです。国民から見ると、一体どれが正しいのか。平成二十三年度予算が始まろうとしている中で、国民に対して、民主党の真のマニフェスト、本当のマニフェストはどれなのかということについて、最高責任者である総理が国民の前に明らかにする必要があるというふうに思いますし、それから、私ども公明党も、この衆参のねじれの中で、やはり国民生活を守る、国益を守るという観点で議論を尽くしたい、このように思っております。そういう中で合意ができれば、政策は一つ一つ前へ進むわけです。

 そのためにも、やはり民主党の考え方というものをここでもう一度確認をしておかなければいけないということで、この問題を取り上げさせていただいております。

 具体的にちょっと聞きますけれども、総理、この子ども手当は、二十二年度では、一年限りの制度として、しかも、児童手当を基礎として地方や企業の負担を残して、月額一万三千円で実施されています。公明党も、これは実質的に児童手当の拡充であるという認識で、本格的な制度設計に当たっては他の保育所等の子育て支援策との整合性を図るという修正を加えて賛成しました。

 先ほど工程表にありましたように、衆議院のマニフェストでは二十三年度から満額にするとなっています。しかし、参議院のマニフェストでは、ここにありますように、一万三千円で、上積み分は現物サービスにも使えるというふうになっておりまして、要するに、これは二万六千円はあきらめたということなのか、それとも二十三年度から満額で概算要求するのか、これについての具体的な考え方をまず説明していただきたいと思います。

菅内閣総理大臣 先ほど他の委員の方からの御質問にもお答えしたところでありますが、先日、保育所を視察する中でも、そうした地域の保育所をもっと拡充してほしい、そういった希望も強いということを改めて確認いたしました。

 そういった中で、今パネルでお示しになったように、衆議院の選挙、昨年の八月の選挙でのマニフェストについては、できる限りそのマニフェストの実現に向けてこれからも努力をする、全力を挙げるということは全く変わっておりません。

 具体的に、子ども手当については、初年度月一万三千円ということを実行したわけでありますが、ことしからについては、その一万三千円に上積みをしていきたい。その上積み分については、現金が適当なのか、あるいは現物サービス、いわゆる保育所の拡充が適当なのか、ある意味でそういった希望も、公明党の皆さんもそういう主張をされておりますが、私も、そういう主張があちらこちらから入っておりますので、それも十分念頭に置いて考えていきたい、決めていきたい、このように考えております。

井上(義)委員 結局、衆議院のマニフェストの工程表どおりにはならない、工程表を変更したというふうに今の答弁は受けとめておきたいと思います。

 それでは、農業の戸別所得補償ですけれども、衆議院のマニフェストでは、二十二年度はモデル事業で実施をして、二十三年度から一兆円の予算を確保して本格実施するということになっています。これは工程表です。

 他方、参議院のマニフェストではこうなっています。段階的に他の品目及び農業以外の分野に拡大するというふうにしておりまして、今年度の予算は、米の戸別所得補償モデル事業と水田利活用自給力向上事業、合わせて五千六百十八億円。一兆円にするには四千四百億円程度の上乗せが必要です。

 では、戸別所得補償は、二十三年度はどのくらいの予算で、どのような品目を段階実施するのか、その財源はどうするのかということについてお答えいただきたいと思います。総理。

鹿野委員長 山田農林水産大臣。(井上(義)委員「ちょっと待ってください。これは最重要な課題なんだから、総理に聞いているんですよ。あなたが概算要求したって、総理が認めなきゃどうしようもないんですよ。答える資格がないんですよ」と呼ぶ)

 山田農林水産大臣。

山田国務大臣 私の方から先にお答えいたします。

 農業戸別所得補償については、まさに私どもは今、畑作においても、麦、大豆においても戸別所得補償し、さらに漁業においてもという形で、本格実施に向けてそれなりの概算要求をきっちりとさせていただくつもりでおりますし、しっかりとマニフェストの実現に向けて頑張りたいと思っているところです。

井上(義)委員 では、山田さん、一兆円の概算要求、するんですね。はっきりしてください。

山田国務大臣 お答えいたします。

 一兆円になるかどうかは、これから農水省としても十分に、無駄、そういったものを削減した上でそれなりの要求をさせていただきたい、そう考えております。

井上(義)委員 これは工程表では一兆円と明確に書いてあるんですよ。それなりのというのはおかしいじゃないですか。それは工程表どおりにならないということをはっきりおっしゃっていることと同じですよ。もういいですよ。

 では次に、暫定税率の廃止について。

 暫定税率については、二十二年度から全廃というふうになっています。ところが、鳩山総理も最後までこだわっていらっしゃったようですけれども、小沢前幹事長のツルの一声で存続が決まった。これが今度は、参議院マニフェストでは、ガソリン税についての廃止には、もう記述がないんですね。それで、自動車重量税、自動車取得税は全体として負担を軽減すると。これは、ガソリン税の暫定税率の廃止はもうあきらめたというふうに理解してよろしいんでしょうか。総理、これは重要な課題ですから。

野田国務大臣 政府税調の会長でもありますので、私の方からお答えをさせていただきたいというふうに思います。

 委員御指摘のように、暫定税率については、熟慮を重ねた結果でありますけれども、現行の十年間の暫定税率は廃止をする、ただし、税率水準は維持することとなりました。これは、地球温暖化防止の観点であるとか、原油価格が現在安定している、そういうことを勘案しながらの判断でございます。

 平成二十二年度の税制改正大綱では、地球温暖化対策の税については、今回、当分の間として措置される税率の見直しも含め、平成二十三年度実施に向けた成案を得るべくさらに検討を進める、この方針に基づいて政府税調の中で議論をしていきたいと思います。

井上(義)委員 これは全くのごまかしです。国民は、ガソリンの暫定税率が下がる、ガソリンの値段が下がる、こういうふうにマニフェストを理解して皆さん投票したわけですよ。それは国民に対する裏切りですよ。明確ですよ。結局、これも工程どおりにいかないということがはっきりしたというふうに私は申し上げておきたいと思います。

 それから、高速道路の無料化ですけれども、これも、段階的に無料化をして平成二十四年度からは完全実施、いわゆる二十三年度末には完全実施というのが工程表です。ところが、これがただ単に、工程表から具体的な記述がなくなって、「段階的に原則無料」というふうになっています。

 これは、二十四年度当初から完全無料化するということはもうあきらめたというふうに理解していいのか、また二十三年度はどこまでやるのか。また、無料化の例外として、首都高、阪高以外の首都圏、大都市圏近郊の高速道路も例外にするというようなことが報道されていますけれども、その範囲はどうなるのか、それについて簡単にお答えください。

前原国務大臣 お尋ねの高速道路の無料化でございますが、マニフェストに書いてありますのは、社会実験を行いながら段階的に原則無料化をしていくということで、来年度も社会実験を継続させていただければと思っております。

 原則という意味におきましては、衆議院選挙の当初から申し上げておりましたのは、首都高速道路、阪神高速道路のように通行量の多いところについては、料金を無料にすればむしろ交通量がふえて、そして渋滞等で経済活動等に支障が生ずるということでございまして、他の大都市においてもそういったことが想定され得るということの中で、今段階的に社会実験をしているところでございますが、地方の道路だと思っていたところでもかなり渋滞が生じているところもございますので、そういったところを踏まえながら最終形を決めてまいりたいと考えております。

井上(義)委員 これも何か、最終的に無料化するのかどうか、はっきりしたお答えがありません。要するに、工程表はほとんどもう破綻をしていると言っても過言ではないというふうに思います。

 これまで見てきましたけれども、あれほど明確であった衆議院マニフェストが極めてあいまいになっています。マニフェストというのは、いつまで、どこまで実現するのか、やはり工程表が非常に大事なんですけれども、その工程表があいまいになってしまった。これではもうマニフェストと言えないではないか。私は、衆議院のマニフェストは破綻をしている、そういうふうに率直に認めるべきであるというふうに思います。

 それで、では、結局なぜ参議院のマニフェストで表現を変えざるを得なかったのかということは、二つ理由があると思うんです。

 一つは、政策自体が適切でなかったということと、もう一つは、財源が確保できなかった、この二点があると思うんですよ。政策の議論はまた別なところでやりたいと思いますけれども、財源が確保できなかったということが私は一番大きな理由だというふうに思っています。

 先ほど言いましたように、二十三年度から主要政策が完全実施というふうになっておりまして、ある意味、二十三年度予算というのが衆議院の民主党のマニフェストが実現できるかどうかの大きな試金石だというふうに思います。

 それで、これまでマニフェストの財源ということについて民主党はマニフェストでどういうふうに言ってきたかというと、二十五年度で予算の組み替えで九・一兆円捻出をするというふうにおっしゃってきたわけです。具体的な項目も出ています。その他、埋蔵金の活用だとか、あるいは租税特別措置の見直しなどで、二十五年度で合計十六・八兆円、これだけの財源を生み出してマニフェストを実現するんだというふうにおっしゃっていたわけなんです。

 ここまで明確に財源を生み出すということを明示されて、そして国民に約束をされた。ただ結局、予算の見直しで、これは二十二年度も、七兆円に対して、結果的には二・三兆円、その他一兆円加えて三・三兆円、完全に見出し得なかった。

 いろいろな委員会の中で、期間が短かったのでこの程度しかできなかったということを盛んに言いわけされているんですけれども、今回は十分時間があるわけですから、本来であれば、九・一兆円予算の組み替えで捻出できるはずだった。ところが結局、二十三年度以降も容易にこれが達成できない。達成できないから見直しせざるを得なかったというのが私は最大の要因であるというふうに理解をしております。

 結局、財源がいいかげんだった。財源がいいかげんだったということは、マニフェストがいいかげんだったということになるんですね、これは。要するに、財源が確保できるという自信、確信があれば、当然、衆議院のマニフェストを参議院で修正する必要はなかったというふうに思います。

 今、マニフェストに対して非常にその信頼性が問われていて、結局、何かマニフェストというのは詐欺だったんじゃないかということまで言われているわけで、私は、あの政権交代から一年もたたずに多くの変更がなされた、結果的にはまさに国民をだましたことになるんじゃないか、それは国民に明確に謝罪すべきだというふうに思います。

 そのことについて、総理、どのようにお考えでしょうか。

菅内閣総理大臣 昨年の八月の総選挙で掲げられたマニフェストについていろいろ分析をしていただきましたが、少なくとも、初年度として相当のところは前進していることも今の井上議員の説明の中でも明らかになった、このように思っております。

 確かに、二年目を迎える来年度の予算について大変いろいろ厳しい面があることは事実でありますけれども、しかし、基本的な考え方は、昨年のマニフェストについて、できる限り実行していくというその姿勢は変えない、しかし、どうしても実行できない理由がある場合には丁寧に国民の皆さんにその理由を説明して理解を求めていく、そういう姿勢で臨んでいきたい、こう考えております。

井上(義)委員 総予算の組み替えで財源は生み出せる、このようにおっしゃってきたわけですから、それができなかったということを明確に国民に謝罪すべきであるということを重ねて申し上げておきたいと思います。

 平成二十三年度の概算要求の組み替え基準について伺いたいと思いますけれども、中で特に、このマニフェストとも関連して、中期財政フレームによる歳出の大枠の範囲内、七十一兆円におさめる、国債発行は四十四兆円以下に最大限努力するということと、それから、新成長戦略やマニフェスト財源を確保するために、社会保障や地方交付税を除く経費について各省庁一律一〇%削減するということを方針として打ち出されております。

 実際に、一〇%削減をする、それで財源を生み出す、こういうふうにおっしゃっているんですけれども、結局、今回の組み替え基準に従いますと、確実な組み替え財源は二・三兆円、そのうち一・二五兆円は社会保障の自然増に充てられる。現時点は、特別枠として活用できるのは一兆円しか確保されていないわけです。しかも、特別枠はマニフェストだけじゃなくて、成長戦略や雇用、国民生活の安定、安全にも使われるようになっていて、言うなれば、要望は何でもありの争奪戦になっている。実質的に、このマニフェスト実現のためには、さらなる財源を見つけてこないといけないというのが現状だろうと思います。

 マニフェストの確保のための財源は、衆議院のマニフェストによりますと、平成二十三年度で十二・六兆円、先ほど申し上げたとおりです。二十二年度からおよそ十兆円近く上乗せしないといけないわけです。先ほど申し上げた主要なマニフェスト、これだけでも新たに、例えば子ども手当は三兆円、高速道路は一・二兆円、農業の戸別所得補償は〇・四兆円、約五兆円の財源を確保しなければいけないということになりますと、結果的には、二十二年度の子ども手当、農業の戸別所得補償あるいは高速道路の無料化などの追加財源を確保するということは相当厳しいということが、いわゆる組み替え基準で明らかになった。

 そういうことを考えますと、もう二十三年度予算というのは、私は、マニフェストを撤回しなければ事実上組めない、マニフェスト白旗宣言というふうに言わざるを得ない、こう思いますけれども、この点、どうでしょうか。

野田国務大臣 委員の御指摘で、いわゆる特別枠が二・三兆で、そこから自然増分を含むと残り一・一兆程度という御指摘がありましたけれども、先ほど田村委員とのやりとりでも御指摘をさせていただきましたとおり、単なる一割削減ではなくて、もっと深掘りをした場合には特別枠はもっと広がるし、加えて、要求段階だけではなくて、予算編成過程においても、行政刷新会議と連携をしながら、その枠はもっと拡大をしていきたいと思いますし、その中で、マニフェストであるとか、あるいは成長分野、雇用拡大分野等について配分をしていきたいというふうに思います。

 ということで御理解をいただきたいと思います。

井上(義)委員 私は、これから衆参ねじれの中でどうやって合意形成していくかということになると、やはり現状を率直に認めるということがなければ、なかなか議論が進まないと思いますよ。ですから、マニフェストについて明確に、変更するなら変更する。ただ、党内にいろいろな、衆議院のマニフェストは変更すべきじゃないという議論もあって、党内事情が優先して、非常にそれがあいまいになっているということについて、私は大変憂えております。そのことを率直に認めるところから議論が進むのではないかということで、今回この問題を取り上げましたので、ぜひ、そのことを頭に入れながら予算編成をしていただきたい、こう思います。

 最後になりますけれども、景気対策ということについてお伺いしたいというふうに思います。

 確かに、日本の経済は、足元においては、数字の上では穏やかに回復をしてきています。エコカーの補助金とかエコポイントなどの経済対策による消費の下支えがありました、また、中国を初めとするアジア向けの輸出の拡大があった、こういうことを要因としていますけれども、国内を見ると、依然としてデフレの状況が続いています。その結果、地方では、本当に地域を回りますと、もう仕事がないという声が渦巻いておりまして、極めて深刻です。それから、新卒者を初め、依然として雇用状況が厳しい。そういういわゆる統計にあらわれない中小企業の実態とか、あるいは地域の経済の実態、そういうところにしっかり目を向けて適切な対策をとることが必要じゃないか、私はこう思います。

 こうした中で、エコカーの補助金は九月末に切れますし、エコポイントは十二月末で終了する、あるいは住宅エコポイントも十二月末までの建築着工分で終了するということで、経済対策の効果というのは今後間違いなく減殺していくわけです。その結果、景気の踊り場に差しかかる可能性があるということで、やはりどう景気回復を軌道に乗せていくかということが重要な課題であるというふうに思います。それについて、やはり知恵を絞らなければいけないというふうに思います。

 そこで、私は、具体的な追加的経済対策ということについて何点か提案をさせていただきたい、こう思います。

 一つは、真に必要な社会資本整備の前倒しということです。

 特に、近年、ゲリラ豪雨が全国各地で多発をしています。災害対策というのは、ある意味で、もう新たな段階に入ったと言ってもいいわけでございまして、そういう対策を前倒しでしっかりやる。

 あるいは、学校の耐震化、これについても、公明党の提案で、経済危機対応・地域活性化予備費八百十八億円を活用して、二十二年度に地方自治体が計画をしている学校施設の耐震化、老朽化はすべて実施されることになりました。もちろん二十三年度もしっかり予算を組んでもらいたいと思いますけれども、緊急整備として、さらに前倒しをして、実施できるところから着手をしてはどうか。

 それから、これはまた後ほど同僚議員からも質問があるかと思いますけれども、圧倒的に不足している介護や保育施設の整備、こういうことも、雇用創出につながるもので、極めて重要だというふうに思います。

 それから、雇用対策ですけれども、実は新卒者の雇用対策。

 今春大学を卒業した学生の就職率は九一・八%と過去二番目の低さで、未就職者は三万一千人に上るわけです。さらに驚くべきことは、先日、読売新聞の独自調査で、今春の就職留年者、いわゆる就職ができないために留年をする人、これが七万九千人に上るという調査結果が出ていました。実に卒業予定者の七人に一人が就職のために留年をしているという実態があるわけです。

 この背景には、新卒一括採用という企業の採用形態が大きく影響して、どうしても、企業採用というのは卒業予定の大学四年生を選考の中心にするために、卒業してしまうと既卒者扱いになって不利になるということで、あえて留年をするということになるわけです。

 私ども公明党は、この問題を解決するために、いわゆる企業採用における新卒要件を卒業後三年間までは緩和すべきであるというふうに提案をしています。このことについて、政府を挙げて企業側に働きかけを行うとともに、必要な制度改革を早急に講じてもらいたい、こう思います。

 それから、訓練・生活支援給付ですけれども、これについても、現在、厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会でも検討されておりますけれども、この訓練・生活支援給付の恒久化というものをぜひやるべきだというふうに思いますし、直ちに恒久化できないということであれば、少なくとも延長すべきであるというふうに思います。

 それから、エコポイント制度なんですけれども、一つは地デジ対策ですね。完全移行まで一年切りました。この地デジ対策のために、例えば少なくとも地デジ対応テレビ、これについては来年七月まで完全移行を目指して一定期間延長してはどうか。それから、住宅版のエコポイントも、この十二月末着工分までということになっていますけれども、これを延長する。

 それから、中小企業対策で、中小企業の金融円滑化法、これが実は来年三月に切れます。これについては、中小企業からの申し込みに対して、貸し付け条件の変更などの実行率がおおむね九八%に達しています。非常に中小企業の皆さんから喜ばれておるわけで、これを延長してはどうかという提案でございます。

 その他さまざまあると思いますけれども、財源についても、経済危機対応・地域活性化予備費、これがまだあるわけです。先ほど申し上げましたように、学校耐震化で八百十九億円、それ以外はまだ支出されていません。これを活用する。

 それから、平成二十一年度の決算剰余金、これが大体一・六兆円ぐらいあります。これは法律では、半分は国債整理基金に入れる、半分は自由に使えるということになっているわけですから、この決算剰余金、少なくとも現状でも半分の八千億が使えるわけですから、これを財源にして、こういう追加的な景気対策というものをしっかり補正予算を含めて打つ。

 こういうメッセージをしっかり発していくということは、やはり現場の経済に、ある意味で方向性とか活力を与えるということになると思います。

 かなり広範ですので、総理、一括してこういうことについてお答えいただければと思います。

菅内閣総理大臣 景気の現状については、私どもも、一定の改善は見えているものの、特に雇用状況がまだまだ厳しい、あるいは海外の景気も必ずしも安定的な状況にないことから、こういった形での何らかの対応が必要かということは検討しなければならないという時期に来ていると思っております。

 そういう意味で、きょうは非常に具体的な、建設的な提案をいただきましたが、先ほどお話もありましたように、学校の耐震化については、御党の提案も受け入れる形で、かなり夏休み前の工事の前倒しなどを努力したところであります。

 それぞれ傾聴に値するテーマを掲げておられますし、また、財源についても具体的に提示をいただいておりますので、私たちとしても、そういったことも十分念頭に入れて議論をしてみたい、検討してみたい、このように考えております。

井上(義)委員 それでは、質問を終わります。

鹿野委員長 この際、斉藤鉄夫君から関連質疑の申し出があります。井上君の持ち時間の範囲内でこれを許します。斉藤鉄夫君。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。

 私は、まず最初に、国会議員の歳費日割り法案について質問をさせていただきます。

 今回の、参議院議員、新しく当選された方、また元職であられた方、この七月分については、二十六日からの任期、五日しかないのにもかかわらず、一カ月分の歳費及び文書交通滞在費が支給される。これは、民間の基準から考えても、また、地方議会でもほとんど日割り法案になっております。民間でも日割りになっております。これを日割りにすべきだということで、公明党はこれまで、この衆議院の予算委員会や、また山口代表も参議院の予算委員会等でこれを訴えてまいりました。そして、今国会の初日、七月三十日にこの法案を国会に提出したところでございます。

 この国会議員の歳費日割り法案、私は、何としても今国会で成立をさせて、国民の皆様に、我々国会議員が先頭に立って、まず隗より始めよでスタートしているんだということを示すべきだ、このように思いますけれども、民主党の方からは、例えば、枝野幹事長が、野党の間で整理がつくのであればやぶさかではないとか、これは七月二十六日の発言ですけれども、どうもいま一つ本気でないという雰囲気が伝わってきております。

 菅総理、これは民主党の代表として、民主党も先頭に立ってやるべきだ、このように指示を出していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

菅内閣総理大臣 おっしゃるとおり、月末の数日間で一カ月分の給与を得るというのは、社会の常識からすると通常あり得ない話でありますので、日割りにしていくということについて、我が党としても、今おっしゃったように、積極的に具体化し、実現できるように努力してほしいと私の方から幹事長にも指示をいたしております。

斉藤(鉄)委員 今国会で成立をさせたい、このように思いますけれども、今国会でという指示もぜひ出してほしいと思いますが、いかがでしょうか。

菅内閣総理大臣 御承知のことだと思いますが、既に支給されたものについてまず自主返納ということを可能にする、そういう法案と、それから、制度そのものとして日割りにするという法案の二つを実現しなければならない。これは各党間で御議論をいただいておりますが、決して消極的な意味で申し上げているのではなくて、まずは返納を可能にする法案をできればまさにこの国会で成立をさせ、日割りそのものの制度をつくるものについて、この国会で可能なのか。

 これは、九月であっても今後のことに当てはまるわけでありますから、そういったことを含めて、いずれにしても、できるだけ早い時期に成立するよう、私からも改めて指示をしたいと思っております。

斉藤(鉄)委員 では、よろしくお願いをいたします。ぜひ成立をさせたいと思います。

 次に、私は、天下りまたは公務員の退職管理の問題について質問をさせていただきます。

 民主党は、昨年の衆議院選挙のマニフェストで、一つは、天下りあっせんの全面禁止、役所が天下りのあっせんをすることはすべて禁止するということ、それから二番目に、したがって国家公務員が定年まで働ける環境づくりをするということ、そして三つ目に、国家公務員の総人件費二割を削減するというこの三つを衆議院選挙のマニフェストで約束をされましたけれども、この方針は今も変わっていないですね、総理。お答えください。これは大方針ですから総理に。

菅内閣総理大臣 変わっておりません。

斉藤(鉄)委員 ところが、この通常国会に出てきた国家公務員法の改正案、政府案は、この三つの約束が全くありませんでした。

 例えば天下りあっせんの全面禁止、これは表現が全くありません。それから、事前規制についても事後規制についても何らの文章がない。事前規制というのは、再就職を少なくとも退職後何年間やってはいけませんよというものを事前に規制する、これが事前規制。事後規制というのは、そういうあっせんやそういう事態があったとしたら後で罰則を設ける、これが事後規制ですけれども、この事前規制、事後規制、ともにございません。

 公明党は、その議論の中で、天下りあっせんの全面禁止、早期退職勧奨を法律で禁止する、それから、離職後五年間は関連の企業、独立行政法人、公益法人に再就職させない事前規制、それから、天下りをあっせんした場合は刑事罰を設ける事後規制、ともに公明党は提案をしておりますけれども、無視をされて強行採決されたわけでございます。

 先ほど総理がおっしゃったこの三つ、この方針は全く変わっていないのに、なぜこの国家公務員法の改正案の中に全くその記述がないのか。これは大きな後退ではないのか、このように思いますが、総理、いかがですか。

玄葉国務大臣 まず、天下りのあっせんは、既に年二千五百人、民主党政権になって禁止をしています。

 それと、再就職のいわばあっせん規制、再就職規制というのは、もう既に国家公務員法に定められております。今おっしゃったような話は百六条二、三、四と定められていて、それを当然我々は実現をしていくということでございます。

原口国務大臣 斉藤委員もう御案内のとおり、明示的なあっせんというよりも、例えば五代連続天下りポスト、これは現実的にはあっせんはないわけです。だけれども、もう目と目でわかり合えば天下りができるというように、天下りと疑われる事案が幾つもあったわけです。私たちはそれを今なくしています。

 それに加えて、きのうも御答弁させていただきましたが、これもあっせんの事案はないんです。だけれども、人質型天下りといって、検査する機関が検査される側に恒常的に再就職をしていたり、あるいは持参金天下りといって、そういうものに対して、厚労省もそうです、私たちの総務省もそうですけれども、そういう事案が認められた場合は契約を打ち切るということまでやっておるわけでございまして、ぜひ、私たちの検討内容、これもすべて明らかにしていきたいと思いますので、御協力をお願いしたいと思います。

斉藤(鉄)委員 今お二人の大臣からの答弁は、要するに、もう既に実行しているから改めて書かなくていいんだ、こういう御答弁だったかと思います。

 違います。現実に天下りは今起きております。そして、起きているどころか、前よりも実態はひどくなっている。こういうことをちょっとお話しさせていただきたいと思います。

 それでは、ちょっとパネルを。

 これは、この六月二十二日に閣議決定された退職管理に関する基本方針です。ここに書いてある文章は、その文章を直接ここに持ってきたわけではありません。この文章を読みますと、非常に難しい言葉で長々と書いてありますので、どういうふうに理解すればいいのか時間がかかるということで、私なりに解釈した、短い言葉をここに載せさせていただきました。

 まず一番目に、独立行政法人などへの現役公務員の天下りを容認。これまではOBだけだったわけですけれども、現役の公務員を天下りさせ、そのままそこに居続かせるということも可能にした。

 これを文章で、この基本方針について文章を読みますと、「「現在、公務員OBが役員に就任しているポスト」については、公募により後任者の選考を行うこととされているが、各大臣等の任命権の下、」、つまり各大臣が認めれば、「職員が役員出向する場合においては公募の対象とはしないことができるものとする。」

 つまり、一応そういう独立行政法人の役職については公募という原則を昨年九月に出されました。しかし、ここではそれをまた緩めて、公募しなくてもいいよ、現役の役人が行く場合は大臣の任命でできますよということをここに書いているわけでございます。

 それから、私もこれを読んでびっくりしたんですけれども、出たのが六月二十二日、解散の後、参議院選挙真っ盛り。みんなだれも気づかない。そういう中に、まさにある意味ではどさくさに紛れて出てきているような文章でございますけれども、その中に、専門スタッフ職を新設すると。

 これは、文章で読みますとまたわかりにくいんですけれども、「本省部長及び局長が属する職制上の段階と対応する、現在の専門スタッフ職よりも上位の職制上の段階を創設する。」そして、その給料については、「専門スタッフ職俸給表に上記の専門スタッフ職に対応した級を新設することについて、早急に検討し結論を得るよう、人事院に対し要請する。」

 つまり、独法に行けない人たち、独法に行かせるんだけれどもそれもできない人たちには、専門スタッフ職を設けて、これまでにない上位の職制上の段階をつくって、給料もそれに見合う高いものを人事院につくってもらうよう要請する、こういう内容なんです。とんでもない、このように思います。これなどは、まさしく国家公務員給与を総額二割削減するということに真っ向から反対する、真っ向から反するものだと思います。

 それから、各大臣のもと早期退職勧奨、肩たたきの容認。これは、先ほど総理も確認されました。肩たたきはもうしないんだ、こうおっしゃいましたけれども、この中には、希望退職制度の導入を行うと。その希望退職制度が導入されるまでの間ですけれども、「経過的な措置として、各大臣等の任命権の下、」、つまり大臣が認めれば、「組織活力の維持等のため特に必要があり、職員に退職勧奨を行う場合」もある、このように書いてあるわけでございます。

 この基本方針は、いずれも、先ほど総理がおっしゃった、この三方針は今でも生きておりますということに反するじゃないですか。総理、いかがですか。総理にお聞きしています。お答えください。

原口国務大臣 斉藤委員とも思われない御質問だと思います。私たちは、官を開くとやっているわけです。そして、肥大化した官を縮小させる。

 しかし、斉藤委員、現職の人たちの生首を切るわけにはいかないんです。それはできない。この肥大化した官をどのように縮小させていくか。今、「天下りを容認」とそこに書いてありますが、全く違います。これは現役出向なんです。今までは退職金を二重取りしているわけです。一回やめて、それからもう一回行って、そこでやめて、このわたりを私たちはこの予算委員会でも何回もおかしいじゃないかと指摘をしてきて、それを、もう現役が行くことによって退職金の二重取りをやめるというのがこの一番上のものであって、天下りの容認とは全く違いますので、御理解ください。

斉藤(鉄)委員 現役出向というのは、出向する、それでまた役所に戻ってくることもあり得るというのが、いわゆる民間で考える現役出向ですよ。

 ところが、今回の出向は、これはある新聞で紹介されておりましたけれども、またテレビでも報道されておりましたけれども、出向しろ、もう帰ってくるところはないよ、このような形。そして、その独法で引き続き、いわゆる公務員の定年が過ぎた後もそこにいることができる。このようなことでは、天下りを拡大したにすぎないじゃないですか。

 それと今、もともと民主党さんは、独立行政法人をなくす、このようにおっしゃっておりました。その独立行政法人をなくすということとこの退職管理基本方針と全く整合しないじゃないですか。

原口国務大臣 斉藤委員、よく御一緒にかつて行政改革をやってきましたから、私たちの意図もぜひ御理解ください。私たちは、独法も事業仕分けをして原則廃止する、委員がおっしゃるとおりです。そして、独法の事業仕分けにかかったところについては、この現役出向も今は控えてくださいということをやっているわけです。

 それは、一遍に独法、あるものをなくすことはできません。一遍に首を切って、そしてもうあなたはあしたから来ないでいいというふうにはできません。その間の経過措置だということを御理解ください。

斉藤(鉄)委員 であるならば、今、原口大臣がおっしゃったようなことをおっしゃるのであれば、なぜマニフェストにそのように書かないんですか。なぜマニフェストにそのように書かないんですか。段階的にこうする、そうではなくて、とにかく独立行政法人はなくします、退職時の天下りあっせんはなくします、そして公務員の給与は二割削減します、そのことがマニフェストには書いてあるわけですから、国民はそれを信じますよ。段階的にやります、ある程度は独立行政法人も残します、天下りもしたがってその間は残します、そうするのであれば、そういうふうに書かなきゃいけないじゃないですか。

原口国務大臣 委員、天下りを残すなんか一回もやっていないんですよ。だって、これは現役出向ですからね。

 そして、さらに言うと、私たちは、出先機関も原則廃止ということで、今、権限仕分けをして、そして今回、退職管理方針の中でも多くを、大変つらい思いをしました。新規の出先を中心にして採用も八割カットしているわけです。

 そして、今の一・一兆円、二割の削減について、総人件費の削減についても、仕事の仕分けをして、例えば、今、レガシーシステムというシステムについても、レガシーマップをつくりなさいということを言っています。各省がいろいろなシステムを、古いシステムを持っていることで、大変多くの仕事そのものの仕分けもしなきゃいけないんです。

 その中で、ぜひ、これは斉藤委員に私たちの二割削減の工程、これをお示ししますので。多くの予算編成の過程の中で、総務省、私の責任のところを、少なくとも皆さんにこういう素案を持っているということを表にして、野党の皆さんの御協力もいただきながら聖域なく改革を進めてまいりたいと思いますので、よろしく御協力をお願いします。

斉藤(鉄)委員 国家公務員法の改正の審議の中でも、我々は、その工程表を早く出しなさい、全体像がない中で一部分だけ議論していても大きなちゃんとした議論にならない、工程表を出してくださいと何度も言ったのに、結局出さなかったじゃないですか。

 それと、先ほど専門スタッフ職、これから上位の職制上の段階をつくり、そして、この中にはまた細かいことが書いてあるんですけれども、それに伴う、「専門スタッフ職について、年齢別人員構成の推移を見据えつつ計画的に職域の整備に努める。」

 この「職域の整備に努める。」、職域の整備というのは専門用語で新しい仕事をつくるということだそうです。新しい役職をつくるということだそうでございます。そして、先ほどの、それに見合う給与も人事院に考えてもらうと。これでどうやって二割削減ができるんですか。逆にふえるじゃないですか。この点についての工程表も全く示されていない。

 総理、もうここまで問題点を私、提示させていただきました。総理の基本的な考え方をお聞かせください。

原口国務大臣 斉藤委員、いいですか、総理がお答えになる前に。

 私たちは、公務員をバッシングすればそれでいいとは思っていないんですよ。専門の職があって、そして長い間知見を蓄えてきた人たち、その人たちも大事にしなきゃいけない。この間、シンガポールのリー・クアンユー総理ともお話をしました。シンガポールでは上級の職員トップ五百は二億円取っているわけですよ。

 何も、あのローマの終わりのように、まさにコロシアムの中に人間と動物を入れて、そして公務員をバッシングすればそれでいいとは私たちは決して考えていませんので、やりがいのある働き方、そして官を開くということで改革を進めてまいりたい、このように考えています。

斉藤(鉄)委員 総理、これまで問題提起してまいりました。この最初の三方針の確認を、総理、されました。そして、私は、しかし、現実に菅内閣がやろうとしていることは、それに逆行しているのではないかという問題提起をさせていただきました。総理の御見解を伺います。総理の御見解を伺います。もうここまで問題提起したわけですから。これまで各担当大臣に答えていただきました。総理が答えてください。

菅内閣総理大臣 先ほど総務大臣からも説明があったと思いますけれども、例えば、その最初の「現役公務員の天下りを容認」と書いてありますが、普通、天下りという私たちの認識は、ある程度の年齢になって役所をやめるときにどこかに天下るという考え方で、現役の公務員がそういったところに出向するというのとは私は性格が大きく違うと思います。

 つまり、やめた後、退職金をもらって、また次のところに行って何年か勤めて退職金をもらう、そういう形ではなくて現役の出向ですから、基本的には、何年間か働いた後に戻ってくる、あるいはそれが定年になれば、その段階でやめていく、そういうことでありますので、何か、天下り容認とそこに書かれても、それそのものの認識が違うということを先ほど来、総務大臣も申し上げているわけで、とてもそのことを認めるわけにはいきません。

斉藤(鉄)委員 総理、全然わかっていませんよ、総理の方が。

 前の、昔だったら天下っていく年齢で、この現役公務員として行くわけ、出向するという、これは昔の天下りと何が違うんですか。

 もう時間がありませんので、次の問題に移らせていただきます。

 豪雨対策です。今回の豪雨対策、大変な被害をもたらしました。私は、今回の政府の対応を見ておりまして、この豪雨対策に限らない、そのほかの分野でも、民主党政権が持っている基本的な欠陥といいましょうか、というものを痛感いたしました。

 一つは、危機管理能力のなさ、二番目が、現場の声を全く聞かない、そして三番目に、自公政権時代にやったことはとにかく否定するけれども、それにかわる新しいビジョンを示さない、この三つ。いろいろな分野でこれが言えるんですけれども、一つ、この災害対策分野でお話をさせていただきたいと思います。

 今回の集中豪雨、これまでにないトータルな雨量でしたし、また、局所的な集中豪雨ということもございました。七月三日に鹿児島県で女性の方、二名の方が死亡されたというところから今回の豪雨災害が始まったんですが、本当に物すごい雨が降り出したのは十四日の未明からでございます。西日本全体、物すごい雨が降り出しました。我が公明党は、この十四日に即日、西日本豪雨災害対策本部をつくって、すぐ国会議員を現地に派遣させました。

 ところが、総理が中井防災大臣に指示を出されたのは、それから三日近くたった七月十六日の、ですから二日半ですね、夕方の四時二十五分、そして、中井防災担当大臣が現地視察、これは広島ですけれども、七月十七日でございます。これは、十四日にあの大雨が降った段階で、防災担当大臣はすぐ現場に行って、いや、総理、こういう状況です、大変な状況で、すぐ対策本部等を立ててやらなきゃいけないというのが本当じゃないでしょうか。今回、全く対応が遅いということが一つ。

 それから、これは筋がちょっと違うかもしれませんけれども、庄原に行かれて、私はそのとき庄原を、下を、長靴を履いて泥の中を歩いていました。大臣はヘリコプターで上をぐるぐる回っただけ。あっ、あそこに中井大臣が来ているんだなと。しかし、あなたは、現場におりてきて被災者の声を聞くことはしなかった。そういう状況で、危機管理意識は全くない。

 それともう一つ忘れてはならないのは、参議院が今回全く動けなかった。参議院、前回の国会閉会時、どういう理由か知りませんけれども、本会議さえ開かない。本会議が開けないから、閉会中審査、閉会中審査というのはテレビを見ていらっしゃる方はわからないかもしれませんけれども、国会閉会中も一たん事があったときにはすぐ国会が動けるように、その手続のための本会議での審査でございます、この審査も結局できなかった。したがって、今回の豪雨対策について参議院は全く何もできていないんです。まあこれも、危機管理意識のなさ、このように思います。

 これは総理にお聞きします。今回、総理の指示が大変遅かった。その指示の遅さ、このことについて総理はどのようにお考えでしょうか。いや、防災担当大臣、総理にお聞きしているんです。

鹿野委員長 まず、事実関係ですから、防災担当大臣。

中井国務大臣 私は余り感情的になる男じゃありませんが、斉藤さんともあろう方が、お調べにもならないで何という非難中傷を、しかも災害という超党派で取り組んでいかなきゃならないことについておっしゃるのか、びっくりしています。

 申しわけないですが、十五日には政務官が鹿児島へ飛んでおります。十六日には原口さん、渡辺周総務省の副大臣が広島へ行っています。私は、その明くる日に飛びまして、呉、世羅に行かせていただこうと思ったら、御承知のように、今お話があった庄原が大変な被害。しかし、その庄原へ私が……(発言する者あり)どうして遅いんですか。どこが遅いんですか。斉藤さんは中国担当、比例じゃないですか。中国地方に住んでいらっしゃる。僕は東京におるんですから、そうならざるを得ない。

 広島へ入る前の日に、大変な災害。これはまことに申しわけないけれども、現地へ、大変な復旧作業に取り組まれているところを、私が自動車で延々とお邪魔するとどれだけの御迷惑をかけるか。こういうことを考えて、知事さんが私のところへお越しいただくのも庄原へお行きいただき、私は庄原を、ヘリコプターのコースを変更して上から全域見せていただいて、世羅も通らせていただき、そして呉へ行きました。

 もちろん、広島の空港におきまして、副知事さん、そして世羅の町長さん、議会の皆さんのお話を承りました。呉市においても十分お話を承り、その前後で総理から御連絡があって、岐阜へお入りになる、こういうみずからの決断を言われたので、お気をつけて行ってくださいと申し上げ、私は広島の報告を電話で申し上げました。この申し上げた直後に、知事さんからもお電話をいただきまして、庄原の状況等を詳しく聞かせていただきました。

 なおまた、過般、岐阜の知事さん、広島の知事さんが御上京いただきまして、御要望等をいただいたところでございます。

 全力を挙げて国としてお手伝いできることはお手伝いをしたい。ぜひ、各党派の皆さん方にも、感情論じゃなしに、被害をこうむっておられる人たちを助けるために、いろいろな規制があってなかなか難しい問題が山積していることは、斉藤議員も公明党の皆さんも御存じであります。それをクリアするには、議会のお力をかりなければなりません。きのう私は、自民党の谷垣総裁の御質問にも、あえて踏み込んでお答えを申し上げたところでございます。

 なお、何も従来の方法を変えないとおっしゃいましたが、過般の三陸沖を襲いましたチリ地震津波の被害、従来のやり方であったら二割ぐらいしか被害を補てんできなかったところを、九〇%以上補てんできる新しい政令をつくってお手伝いをいたしたところでございます。

 今回も、被災者生活再建支援制度を適用できないところをあえて適用して、倒壊した、全壊したおうちの六十数%をお助けする、こういう決定をけさいたしたところでございます。

斉藤(鉄)委員 先ほど、何も調べもせずに質問するな、このような言葉がありましたので反論しておきますけれども、私は、逐次、今、政府がどのような対応をされているか、そういう情報を得て、西日本豪雨災害対策本部、公明党の対策本部長として、今回、先ほど言ったことは事実でございます。

 そういう意味で、私は野党として、災害対応について、本当に間髪入れない緊急な危機管理が大切だということを言っているわけですから、それに対して、いや、おれたちは遅くなかったというようなことは、私は本当の大臣の答弁とは思いません。

 次に、今回、この庄原、農水大臣も行かれて、こんな災害は見たこともないとおっしゃったほど、非常に局所的な集中豪雨でございました。その中に庄原ダムというものが建設をされておりました。この庄原ダムは、いわゆる見直しの対象になっているダムでございます。ですから、今は周辺の生活関連の工事だけは進んでおりますけれども、本体工事はストップしている。本体というか、着手をされていないというものでございますけれども、この現場に行きまして、あのダムがあったら少なくとも私のこの家の被害は食いとめられたのではないかという声も聞いたところでございます。

 このダム事業を選定する考え方、もう時間がありませんので省略いたしますけれども、ここに一、二、三と書かせていただきましたけれども、科学的、技術的基準というものは全くありません。ある意味では非技術的な項目によってダム事業の見直しの基準がつくられているわけでございます。

 今回、見直しの対象になっている地域で被害が出た。これは庄原ダムだけには限らなくて、山口県の平瀬ダム、それから総理が行かれた岐阜県の八百津町の新丸山ダム、ここもまさに見直しの対象になっているところでございます。

 今回のダムの見直しと今回の災害、直接には結びつけられないかもしれませんけれども、総理の御感想はいかがでしょうか。

前原国務大臣 今、ダムの見直しをやっております背景というのは、委員も御承知のとおり、莫大な財政赤字をこの国が有し、また、少子高齢化が進んでいく中で社会保障費の自然増も多くなってきているという中で、今までの総花的な公共事業は見直していかなくてはいけないということで、治水についてもそのあり方を見直しているところでございます。

 したがって、ダムが絶対だめだと言っているのではなくて、ほかの代替機能があるのかないのかということを、今委員が示されている三つの基準で今行っているところでございます。

 例えば八ツ場ダムでありますと、これはカスリーン台風という一九四七年に起きた台風を一つの契機として、利根川の治水対策の一環として行われているものでありますけれども、これは政府が答弁書を自公時代に出しておりますけれども、仮にあのカスリーン台風の降り方でありますと、八ツ場ダムができていても洪水調整はできなかったというのは、これは政府の答弁なんですね。

 つまり、ゲリラ豪雨というのはどこに降るかわからないというところの中で、これはいみじくも委員がおっしゃったように、直接結びつくかどうかはわかりません。ただ、我々は、中間取りまとめということで、今、治水の新機軸をつくって、ダムによる治水をするのがいいのか、あるいは他の代替機能があるのかというものをしっかりと検証しながら、中止か継続かということを地元と相談しながら決めてまいりたいと考えております。

斉藤(鉄)委員 ダムに頼らない治水ということで見直しを行っているということでございますけれども、これは国交省からもらった資料をこちらでちょっと整理したものですが、局地的な大雨は最近増加傾向にある。上の青い図は、一時間降水量五十ミリ以上の年間発生回数です。これは十年置きにまとめておりますが、年々これがふえてきております。下は、いわゆる一時間降水量百ミリ、これはもうとてつもない局所的な豪雨でございますけれども、これも、一たんちょっとくぼんではおりますが、長い目、長期的に見れば増加傾向にある。特にこの十年間はふえてきているということでございます。

 こういう新しい災害といいましょうか集中豪雨、これは地球温暖化ということも関係しているのかもしれません。しかし、現実にこの新しいタイプの気象状況に対して、やはりダムに頼らない治水というのは格好はいいんですけれども、やはりそこを、今回も、このダムがもう少し早くできていればという現場の声も聞きました。その現場の声を聞かなさ過ぎるんじゃないでしょうか。

 その新しい基準が、ビジョンが、ダムに頼らない治水、その中にはダムもあるんだ、こうおっしゃいましたけれども、今、ある意味では空白期間です。いつまでも空白が続いていいとは限りません。いつ出てくるんですか。

前原国務大臣 中間取りまとめはもう発表して、今パブリックコメントをしているところでありまして、さまざまな方々からその評価軸についての御意見はいただいているところでございます。

 斉藤委員よくおわかりのように、ダムというのは山の上につくりますよね。では、その上流に集中豪雨が降ったらいいですよ。しかし、都市の集中豪雨の場合はダムが機能しないということもあるわけですよ。限られた予算の中で、我々、一八・三%公共事業費を減らしましたけれども、河川、治水対策は実は一%しか削っていないんですよ。つまりは、ダムによらない治水ということを我々はうたって、全体の総事業費をどう抑制するかということと、他にどういう代替案があるかということをもちろん打ち出してはいますけれども、二十二年度予算においても、この河川対策については予算をほとんど削っていないんです。一八%削った中で、河川は一%だけ。つまりは、堤防強化とかほかの対応策にしっかりやっていかなくてはいけない。

 つまりは、どこに降るかわからない対応策にどのように我々は全体として対応するかということも含めて、今委員が示された、これは国土交通省から出した資料でございますけれども、新たなゲリラ豪雨に対応するような治水対策というものを、限られた制約要因ではありますけれども、しっかりとやらせていただきたいと考えております。

斉藤(鉄)委員 私は、この豪雨対策でもそうですけれども、先ほども申し上げましたように、現場の声が届いていないのではないか。それからもう一つは、このダムもそうです、自公政権時代のことを否定して、そして、今のこのダムに頼らない治水についてもそうです、新しいビジョンが出てくるまでに期間がある。私は、その空白期間というのが日本にとって非常に大きな損失になるのではないか。

 わかりやすい例を言いますと、例えば景気対策。麻生政権がつくったあの第一次景気対策予算を皆さんは凍結されました。そして、五カ月の空白を生んで景気対策を出されましたけれども、この間、ある経済学者が、新聞を読んでおりましたら、あの空白がなかったら、今、日本は他のアジア諸国と同じようにデフレを脱却できていたかもしれない、このような経済学者の評価もあるわけでございまして、そういう意味では、新たなビジョンを早く出すべきだということを申し上げておきたいと思います。

 それから、口蹄疫対策、これも危機管理の問題でしたけれども、この危機管理の問題については省略をいたします。もう既にいろいろ取り上げられました。

 私は、現場の声、先日も、公明党の国会議員が、七月二十七日、現地に行って地元の声を聞いてまいりました。そして、大きく分けて二つ。一つは、基金を早くつくってほしいということでした。これは、我々公明党が先導してつくりました口蹄疫対策特別措置法、その二十三条に、これからの復興、現地は大変な状況にあります。これを復興させる、その復興の「措置に必要な費用に充てるための基金の設置その他の必要な措置を講ずるものとする。」このようにあるわけですけれども、なかなかその基金の設置が決まらない。これをぜひ早くつくってほしい、地元で使い勝手のいい基金をぜひつくってほしいという声がありましたが、山田大臣、どうですか。

山田国務大臣 お答えしたいと思いますが、先に一言だけ言わせていただきたいと思います。

 庄原の方は私も行ってまいりました。委員御承知のとおり、幅が三キロか何か、そして長さがたしか十キロ近い、その区間だけに集中的に、十分に四十ミリ以上の雨が降った。あんな中で、例えばそこに治水ダムがあったとしても、私が現地を見た限りでは、とてもそんなことでできたとは思えませんでした。

 それはともあれ、口蹄疫に対しては、私ども国としての危機管理はさせていただき、特措法に基づいて基金を設置し、そして、地域の振興のために宮崎県等の要望を聞きながらしっかり対応させていただきたい、そう考えております。

斉藤(鉄)委員 では大臣、もう一度確認です。基金は設置するんですね。

山田国務大臣 これから、基金の設置はいたします。中身等、時期等については、各省庁もそれぞれ関係がありますので、内閣と一体となって検討させていただきたい、そう考えております。

斉藤(鉄)委員 基金の設置を明言されました。

 次に、もう一つの声は、政府の窓口を一本化してほしい、一元化してほしいという声がありました。中央の対策本部、本部長は総理です、それから農水省にも対策本部がある、どこに行っていいのかわからない、こういう声を聞きましたけれども、総理、それは中央の対策本部長として窓口の一本化を指示していただけますか。

仙谷国務大臣 お答えいたします。

 口蹄疫対策については、内閣官房で口蹄疫対策本部を責任を持って行っておりますので、当然のことながら一本化されている、こういうふうに考えております。

斉藤(鉄)委員 現場の声は、一本化されていない、こういう声です。そのことをよく聞いていただいて対応していただきたい、このように思います。

 最後に、社会保障の問題に移らせていただきます。

 社会保障制度は国民生活の安心な生活の基本でございます。安心できる制度設計を国民に示す必要があると思います。菅総理は強い社会保障ということを掲げておられますけれども、その具体像が全く見えてきておりません。何に使うのかもわからないのに、唐突に消費税の増税だけを言い出されました。これでは国民は納得しないと思います。将来不安も解消されない、このように思います。

 私たちは、まず、年金、医療、介護、子育て支援などの社会保障のあるべき姿について議論し、その上で必要な財源、これは我々は消費税を含めた税制の抜本改革と表現しておりますけれども、この財源を含めた検討を急ぐべきだと。順番が逆だ、このように私は言いたいと思います。

 この社会保障制度の充実について、公明党は新しい福祉ということを提案させてもらいました。これは、少子高齢化などの経済社会構造の変化に対応した年金、医療、介護、これはある意味ではこれまでの社会保障の三つの大きな柱、根幹です。これに子育て支援を含めれば、四つの大きな柱。この四つの大きな柱の機能強化を行うとともに、新しい経済社会構造の変化に対応して、うつ病の精神疾患や児童虐待、DV、自殺や高齢者の孤独死などの現代社会が抱える新たな課題にも対応できる新しい福祉の再構築を提案しなくてはいけないということを、この参議院選挙を通じて提案させてもらいました。

 きょうは、もう時間がありませんので、その中でも介護の問題に絞って質問したいと思っておりますが、あと残り時間二、三分ですので、一つだけ総理にお伺いいたします。

 昨年、我々、全国三千人の公明党の議員で、十万人の方から声をいただいてそれを集計し、新・介護公明ビジョンというものを提案させてもらいました。そして、二月二十四日に鳩山前総理を山口代表が訪問して、この新・介護公明ビジョンを提言したところでございます。

 これに対して鳩山前総理は、公明党の介護ビジョンを高く評価しまして、大いに政府として参考にする、具体的な内容については早速厚生労働省などに検討を促したい、このように前向きに回答をいただいたところでございます。

 新・介護公明ビジョンの中では、十二の提言、そして六十四のいろいろな項目について我々は意見を述べているところでございますが、明らかになったのは、介護施設の不足、在宅支援体制の不足、介護労働力の不足、この三つの不足ということが定量的に明らかになった。これに対してどのように対応していくかということを、このビジョンとしてまとめました。

 総理、我々がまとめた公明党のこの介護公明ビジョン、鳩山総理は、これを大いに参考にしながら次の計画を立てていく、このようにおっしゃいましたけれども、総理の御感想と御決意をお聞きいたします。

菅内閣総理大臣 私もまだ詳しくは読んでおりませんけれども、ぜひ参考にさせていただきたいと思っております。

 今お話をされた点は、私たちも、例えば介護職員の処遇の改善とか、できれば二十四時間、地域において巡回する訪問介護サービス、さらには、そういうことを含めた地域包括システム、こういうものの必要性は非常に感じておりますし、また雇用という点からも介護には潜在的な需要がたくさんあるわけでありますので、そうした処遇改善によって、働く人もふえ、ある意味では経済の拡大にもつながっていく、もちろん社会保障の充実にもつながっていく、大変重要な分野だと思っております。

 そういったことで、ぜひ参考にさせていただきたいと思っております。

斉藤(鉄)委員 団塊の世代が七十五歳を超える二〇二五年以降がこの介護問題のピークと言われております。それに向けて今からどのような施策をとっていかなくてはならないのか。この三つの不足に対して政治がきちんと将来像を示すことが、安心して年をとっていただける社会をつくる根本になると思いますので、どうかよろしく対処方お願いをしたいと思います。

 以上、終わります。

鹿野委員長 これにて井上君、斉藤君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

鹿野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 総務省が発表した労働力調査によりますと、六月の完全失業率は五・三%に上昇をし、四カ月連続で悪化をいたしております。年齢別で見ますと、十五歳から二十四歳の失業率が一一・一%と、一九七〇年に年代別を公表して以来、最悪の数字であります。

 中小企業の危機、倒産もますます深刻であります。今こそ、そういう中で、国民の暮らし犠牲ではなくて暮らし最優先に切りかえることは待ったなしと。

 だからこそ参議院選挙で、暮らしにさらに打撃を与える消費税一〇%を総理が唐突に持ち出されたことに国民の厳しい審判が下ったんだと思います。

 総理は、国の財政は大変だ、こう言われますけれども、税金でいいますと、税金は取るべきところからきちんと取っているのかどうか、この点をまずただしたいと思います。

 この間、大企業の株主総会が開かれまして、有価証券報告書が提出されております。今回から一億円以上の報酬をもらっている役員については公開が義務づけられました。共同通信によれば、全体で約百七十社、約二百九十人が一億円を超える報酬を受け取っているということであります。

 そこで、このパネルをごらんいただきたいと思います。六月三十日までに明らかになった二百二十三人について見ますと、これら役員の年間の報酬額というのは、合計で三百五十六億円、株式配当所得は八十四億円になっております。

 歴代自民党政府のもとで所得税の最高税率が下げられて、そして証券優遇税制が実施をされて、こういう億万長者に対して減税の大盤振る舞いがされてきたわけであります。

 その結果、一九九八年時点の税率と比べてみますと、この二百二十三人で、合わせて五十二億八千万円、一人当たりにしますと平均で二千三百六十八万円もの減税となっております。

 こういうことを放置しないで、所得税の最高税率をもとに戻す、これは大きな、やはり税金のあり方として必要だと思うんですけれども、総理はいかがでしょうか。

菅内閣総理大臣 所得税について、この間フラット化が進んで、ある意味では高額の所得者の皆さんの負担が軽減されてきた、このことがある意味での所得再配分機能を弱めてきた、こういう認識は私も持っております。

 現在、政府税調の方で、所得税も含む専門者会議の議論をいただいておりますけれども、そういうこの間の変化、また今の御指摘なども含めて、所得税のあり方についても、政府税調、さらには党の方でも御議論いただいて、年末に向けての税制改正に当たっていきたい、こう考えております。

笠井委員 役員の年間報酬額、このパネルをごらんいただきたいんですが、上位五社で、企業トップとそれから従業員の給与の格差を見ますと、日産自動車は、トップが八億九千万円という報酬に対して従業員の平均給与が六百二十七万円、格差が何と百四十二倍にもなっております。以下、ソニーは九十五倍、大日本印刷は百二十二倍、そして、信越化学六十六倍、セガサミーが五十九倍ということで、これはすごい話ですね。

 こういう大企業のトップらには、さらに、株取引による所得への税率というのが、所得税、住民税合わせて二〇%から半分の一〇%に軽減されているために、減税の大盤振る舞いになっている。

 他方で、この大企業で働いている従業員、サラリーマンとか、あるいはもっと所得の低い一般庶民に対しては、この間、さんざん増税がされてきたわけであります。

 総理は、こういう不公平については一刻も早く正さなきゃいけない、こういう認識は当然お持ちでしょうね。

菅内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、所得税が、この十年余り最高税率が引き下げられて、そういった中で、かなり格差というのかそういうものが広がってきている。

 また、日本の企業は、一般的には、トップと一般の従業員の所得差が従来はそう大きくないと言われてきたのが、最近は、企業価値といったような考え方、つまりは、株価総額をこれだけ引き上げたんだから、それに貢献した経営者は、その株価総額の引き上げといったものを含めた判断で給料、報酬を受けてもいい、そういう、どちらかというと、かつての日本型の企業というのは、共同体のような感じで、働く人も経営者もサラリーマンで、一緒に働き、得たものを分かち合うというような感じが強かったわけですが、それが、ややアメリカ型というのか、そういう傾向になってきているという感じがいたしております。

 そういう中にあって、先ほども申し上げましたように、所得税のあり方については、もう少し再配分機能を強める、そういうことも念頭に入れて、年末までの税制改正に向けて議論を、政府税調を含む各方面でお願いをしたいと思っております。

笠井委員 最近は企業価値ということもあってという話もあったんですが、それにしてもここまで格差があるということについては、到底、やはり国民やそれから働いている従業員は認められないという話でありまして、こんなにぬれ手にアワの大金持ち減税の対極にあるのが消費税の増税であります。所得の低い人にほど重くのしかかる税金だ。

 リーマン・ショック以降、世界で見ますと、イギリスでは、四〇%だった所得税の最高税率がこの四月から五〇%に引き上げられました。アメリカのオバマ政権も、高額所得者と多国籍企業に向こう十年間で約百兆円の増税を求めて、それを国民生活などに回す税制改革を進めようとしております。

 税金の入り、歳入面を言うなら、特権的な不公平税制の一掃にこそ、聖域を設けずに直ちに取り組むべきだ。大企業や大金持ちへの不公平税制の一掃は、負担能力に応じた税負担という原則に立った税制改革の出発点になることを強調したいと思います。

 そこで、今度は税金の使い方、歳出面の話なんですけれども、文字どおり、無駄遣いの一掃ということで、聖域を設けずに取り組むことが必要だと思います。その中で、年間五兆円規模、民主党政権になって自公政権のときよりも結果としてはふえている軍事費というのも例外であってはならない。

 先月末から、いわゆる思いやり予算、在日米軍駐留経費の日本側負担についての日米交渉が始まっております。思いやり予算の根拠の一つとされる特別協定の期限が来年三月で切れるために、今後のあり方を協議しようということで始まったものでありますが、こういう協議のタイミングで、米側は、グレグソン国防次官補が去る七月二十七日にアメリカの議会の下院軍事委員会の公聴会で証言いたしました。ここにテキストを私は持ってきましたけれども、この中で、この次官補は、日本のタックスペイヤー、納税者の気持ちに配慮しながらということを言いながら、思いやり予算の増額まで公然と要求をしてきているわけであります。私、これはかつてないことだと思うんです、公然とそうやって言ってくると。

 北澤大臣、当然、こうした思いやり予算の増額要求に対しては、とんでもないとはっきり断って、抜本的に削り込むという姿勢でこの交渉に臨まれているし、臨まれるということでよろしいんでしょうか。

北澤国務大臣 主たる所管は、まず外務省がこれをやっておるわけでありまして、名指しで御指名をいただきましたので申し上げますが、厳しい財政状況の中で、国民に十分理解のいただけるということを前提にして交渉を今精力的に進める、こういうことであります。

笠井委員 国民に十分な理解ということは、つまり、思いやり予算をこれ以上増額するなんというのは到底あり得ないという立場で物を言っているんですか。そこはいかがですか。

北澤国務大臣 委員も御案内のように、衆参各委員会でも、娯楽性の伴うようなものについてはこれを是正すべきだというような議論が大変強く出ておりますので、そういう議論も踏まえて交渉をしていく、こういうことであります。

笠井委員 娯楽性という中身はまたあるんですけれども、こんなときに増額要求、これはだめだよ、幾ら何でもという姿勢で臨んでいらっしゃるかどうか。

 つまり、民主党は、前回、二〇〇八年の改定のときに、暫定的といいながら年々ふえているということで、分担すべき費用負担のあり方を見直すべきだということで、前回特別協定改定のときには民主党は反対をされたわけですよね。私も外務委員会で一緒に民主党の議員とその問題を議論しました、政府に対して。ですから、これはもう、負担増ということはとんでもない、受け入れられないという立場で確固として臨んでいるのかどうかということについて伺っているんですが、どうでしょうか。

北澤国務大臣 防衛省といたしましても、この経費負担については、重要性は十分考慮しつつも、国民の皆さん方に透明性を担保しながら、包括的な見直しをするということで交渉をいたしております。

笠井委員 重要性をあれしながら、包括的な見直しと言って結果としてふえちゃったら、また話を国民が理解しないわけですから、この問題、やはり問題だと思うんです。

 では、具体的に少しこの米軍に対する負担の問題に関連して聞きたいと思うんですけれども、ことし三月に、沖縄県の米軍嘉手納弾薬庫地区に十八ホールの米軍新ゴルフ場がオープンをいたしました。タイヨーゴルフクラブというものであります。

 パネルをごらんいただきたいんですけれども、このクラブハウスの入り口にはこういうプレートが掲げられております。横に書いてあるものを見やすく引用しておきましたけれども、こう書いてあります。「この施設は、受入国負担事業として日本政府が建設し、アメリカ合衆国に提供するものである。この施設が、日本国とアメリカ合衆国の友好、相互支援、協力の象徴となることを祈念し、ここに記す。」平成二十一年九月というプレートでございます。そして、このゴルフ場がこの三月一日にオープンをしたということだと思うんですけれども、これは、要は日本国民の税金でつくったということですよね。

 どういう経過でこの新ゴルフ場が建設をされて、面積はどれぐらいなのか。それから建設費用は幾らぐらいかかったのか。そして、アメリカのどの部隊のためにということでこれをつくられたんでしょうか。その一連についてお答えください。

北澤国務大臣 これにつきましては長い経緯がございまして、簡単に申し上げますと、このゴルフ場は、昭和六十三年四月に沖縄県から返還要望が出されました。平成二年六月の日米合同委員会において、沖縄における施設・区域の整理統合問題の解決のために、返還に向けて日米間で作業を進めることが確認されたわけでありまして、具体的には、平成八年三月二十八日の日米合同委員会において、同ゴルフ場を嘉手納弾薬庫地区へ移設するということを条件に返還が合意されました。この合意に基づいて、同地区へ移設整備事業、いわゆるリロケーションとして移設されたものであります。なお、これにより、米軍泡瀬ゴルフ場は、本年七月に返還をなされました。

 この中身については、民有地が四十・八ヘクタール、公有地が六ヘクタールということであります。

 なおまた、このタイヨークラブの面積その他について申し上げますが、全体面積は百七十・七ヘクタール。このうち、ゴルフ場としての機能を有するコース用地、ゴルフ場施設及び道路用地に係る面積は三十五・七ヘクタールであり、現在あります泡瀬ゴルフ場のこれに対する相当部分の面積は三十九ヘクタールということで、下回っております。

 なお、残りの百三十五ヘクタールは、自然保護のための緑地であるとか、あるいは災害防止のための調整池等を必要とする用地であります。

 それからまた、使用部隊は、特定の部隊のための使用に供されるものではないというふうに承知をいたしております。

 あわせて、当該施設の管理は、海兵隊のコミュニティーサービス部門によって行われているものと承知をいたしております。(笠井委員「経費は幾らかけているのか」と呼ぶ)

 事業経費は、平成四年から二十二年にかけて、百三十四億円であります。

笠井委員 いろいろ説明ありましたけれども、県中部にあった米軍泡瀬ゴルフ場四十七ヘクタール、これの返還、移設ということを理由にして、そして面積は、そのゴルフ場も合わせて、三・六倍の百七十ヘクタールに拡大されたわけですよ。

 そればかりじゃなくて、クラブハウスとかレストラン、カジノバーまで新設をされて、そして米軍関係者は、これを二十五ドルか三十五ドルで利用できる、二千五百円、三千円。そのために日本国民の税金が百三十四億円もつぎ込まれたということであります。

 米軍専用のゴルフ場というのは、これ以外にも全国十カ所もあります。東京にも、多摩にもあります。そして、神奈川県のキャンプ座間の米軍ゴルフ場では、これは私自身も国会、外務委員会で取り上げてきた経過がありますが、ゴルフボールが場外に飛び出す事故が相次いで、小学生がけがをしたことで大きな問題にもなったわけでありますが、他方で、そういう問題に対してはまともな対策もちゃんととってこなかったということであります。そして、新しいものを、移設という口実で三倍、四倍のものをつくってあげる。

 総理、特定の部隊じゃないけれども海兵隊が管理しているという話だったんですが、つまり、その海兵隊問題そのものが今沖縄で問題になっていることもあります。そして、まさにそんなときに、こんな米軍への至れり尽くせりが、国民にわかりやすいとか、納税者の理解を得られるとかいうふうにお思いになりますでしょうか。これは率直に総理の感想を伺いたいんですが。

菅内閣総理大臣 今初めて、笠井議員あるいは北澤大臣の方からお話を伺ったところです。

 もともとの、移設前のゴルフ場に対する地元の皆さんの返還要求、あるいはその価値とでもいいましょうか利用価値、そういうものがどの程度のものであったのか、そういったことまでは今のお話では必ずしもよくわかりませんでしたので、そういう移設が特別な形でメリットをプラスしたことになるのか、それとも、これまでのゴルフ場の返還による利益が地元の皆さんにとってより大きいのか、そういうことも含めての判断だと思います。

 いずれにしても、先ほど防衛大臣からお話がありましたように、我が国の納税者、国民の納得が得られるような形であることが必要だ、その認識は私も共有いたしております。

笠井委員 返還ということだったら、もうそれでおしまいにしちゃえばいいわけですよ、また新しくつくらなくたって。国民の税金で米軍のゴルフ場まで何でつくってやるのか。そんなことまでやるから、米軍はますます居心地がよくなっちゃう。

 米軍への思いやり予算でつくったものは、これ以外にもいっぱい、いろいろな施設だとかいろいろな問題があるわけで、例えば米軍の司令官住宅について言うと、寝室が四つある、浴室が三つもあるという豪華仕様だ、これはもう有名な話になっています。そして、それを含めて、三十年余りで米軍家族住宅建設に合計一万一千三百八十三戸、五千五百十億円も投じられている。映画館から体育館、プールなど、娯楽施設まで、思いやり予算ということで日本国民の税金でつくってきたわけであります。

 民主党政権が発足してから直後に、昨年秋ですが、我が党の志位委員長が、思いやり予算に切り込む意思はあるのかと質問したのに対して、当時の鳩山首相も、包括的な見直しが必要だと言われましたが、なぜこういう問題について抜本的な見直しがされないんでしょうか。総理、いかがですか。

岡田国務大臣 今の委員御指摘のゴルフ場の問題も、それだけとらえれば、日本人の税金で賄うべきなのかどうか、そういう声は当然上がると思います。

 ただ、先ほど北澤大臣から御説明いたしましたように、これは移転でありまして、移転をぜひ実現してもらいたいという地元の要望にこたえつつ、しかし今までのサービス水準というのがありますから、それを落とさない、変えないということであれば、こういうことにならざるを得なかったということだと思います。もちろん、米軍はもともと必要ないという前提に立てばいろいろな議論ができるわけですが、我々はそういう前提には立っておりません。

 今まさしく、ホスト・ネーション・サポート、思いやり予算という言葉は我々は使いません、ホスト・ネーション・サポートの内容についていろいろ協議を行っているところであります。絶対額の問題はともかくとして、やはり内容的に、納税者たる国民に説明ができるということは非常に重要なことだというふうに思っております。

笠井委員 今のを聞いていても、国民は納得しないと思いますよ。説明できるなんということにならない。

 大体、移設という話になりましたが、例えば、移設したって、昭和四十八年のときに大平外務大臣が答弁しているんですよ、移設するときには同じ規模でなきゃいけないと。三・六倍に広げちゃったわけでしょう、この問題。しかも、ではなぜゴルフ場まで持たなきゃいけないのかという話になるわけです。

 こういう申し上げ方をしてはなんですが、自民党の石破元防衛大臣でさえ、著書の中でこう言われています、何でこんなに払わなきゃいけないのかと。米軍は、光熱費を日本側が負担するので、夏には冷房をがんがんかけて熱かんのお酒を飲み、冬は暖房をきかせて冷たいビールを飲んでいるなどとやゆされますと。なので以前、アメリカに対して、余りにも非常識なものはやめてよと言いましたと。例えば、ゴルフ練習場のネットであるとか言っておいて、思いやり予算というのはもっと減らす余地がある、減らそうというふうに石破さんも言っていたんですね。

 今、岡田外務大臣は、我々は思いやり予算とは言わないと言いましたけれども、さんざん一緒に野党でやったときは、思いやり予算、けしからぬじゃないかといって、追及してきたんですよ。今度は名前がホスト・ネーション・サポートに変わったそうですけれども、もともと思いやり予算というのは、在日米軍地位協定では、日本側が負担する義務を負っていないのに、アメリカの財政悪化を理由にして、一九七八年に日本政府が始めたものであります。

 このパネルをごらんいただきたいんですけれども、当初六十二億円だった負担額がどんどん膨らみまして、二〇〇九年までに総額五兆六千億円もの金額が費やされてきました。アメリカ自身が、どの同盟国よりも気前がいい国だとさんざん言ってきたものであります。しかも、今年度の在日米軍のための日本側の負担というのは、思いやり予算と、それから一九九六年の沖縄に関する日米合意、SACO関連経費や米軍再編経費など、合わせますと実に合計三千三百七十億円。麻生自公政権のときよりも五百億円もふえて、史上最高になったわけですね。米兵一人当たりに換算しますと九百三十七万円になります。一千万円近い。

 こういう積み重ねが財政危機の原因の一つになってきたんだ。思いやり予算を始めてから三十年以上たって、我が国自身が深刻な財政危機にある中で、これ以上の思いやり負担を続ける理由も道理もないと思います。

 私は、抜本的見直しというなら、今こそ廃止だと、これを正面から決断するのが総理の仕事じゃないかと思うんですが、総理大臣、いかがですか。

岡田国務大臣 まず、数字の議論でありますが、先ほど、民主党政権になって最高になったというそのグラフでありますが、それは、皆さんの言う思いやり予算、我々で言うホスト・ネーション・サポートだけではなくて、米軍再編経費も含めて、その部分が膨らんでいるわけでありますから、別に思いやり予算が膨らんでいるわけではないということははっきりと申し上げておきたいというふうに思います。

笠井委員 ちゃんと説明しているんですから、米軍再編経費が入っていると。それを含めてという米軍に対する負担の推移ということで見たらこうなるでしょうと言っているんです。いろいろな名目をつけて足してきたんです。でも、結局、日本国民の税金で米軍のために負担しているという額なんですから、総理、やはりこれは廃止しかないんじゃないですか。総理大臣、いかがですか。

菅内閣総理大臣 まず、日米安保条約というものを結んでいて、そして、米軍基地をそのもとで日本に受け入れている。その費用分担として、基本的な原則があるわけですけれども、ある時期から、その費用分担の中で、いわゆる思いやり予算という形で追加的に我が国が負担をしてきている。こういった経緯の中で、先ほど来議論がありますように、我が国も財政的に大変苦しい中にもありますし、そういう点では納税者の理解が得られるという、このことが重要だということは重ねて申し上げておきたいと思います。

 ただ、そういう状況だからもう全部やめてしまえというのは、それは少し話が違うのではないかと。基本的な日米の同盟関係というものを基本としたときに、そういう中で判断されることであろう、このように思っております。

笠井委員 日米同盟、日米安保と言われましたけれども、思いやり予算というのは日米安保条約と日米地位協定にも法的根拠がない負担でありまして、安保があるから仕方がないという理屈は通用しない。しかも、日本の米軍駐留経費負担というのは、他のアメリカの同盟国二十六カ国の合計の全体を日本だけで上回るようなけた違いの突出ぶりで、これも石破さんがかつて言われました。日本の負担率は突出していて、同盟国全体の五〇%以上を占めているのですよと認めていたぐらいであります。

 今、世界各国は、財政危機への対策として、軍事費を聖域としないで削減に踏み出している。そして、アメリカだってそういう中で自国を減らすときに日本にふやせという話になってくるのを、到底受け入れられないという話になってきて、そんな仕組みそのものをもうやめるべきだというところに来ているんだということを私は強く申し上げておきたいと思います。

 中小企業予算は二千億足らずです。思いやり予算をなくせば、生活保護の老齢加算復活の九百億円も捻出できます。私は、思いやる相手が違うということを強く言いたいと思います。

 軍事費をめぐって、もう一つただしておきたいと思います。

 防衛省の技術研究本部では、ミサイルや戦闘機などの兵器の研究、開発、試験の実施に当たって、軍需企業から職員を受け入れていると思いますけれども、その目的は何でしょうか。

北澤国務大臣 技術研究本部では、試作品の性能確認試験を行う際に、試験装置の操作または計測など、当該試験の実施に必要な支援を受けることを目的として民間企業と技術支援契約を結んでおります。

笠井委員 今説明のあった軍需産業の職員を受け入れる技術支援契約、かつてはこれは労務借り上げ契約というふうに呼ばれていたものでありますけれども、防衛省の技術研究本部は、これまでに一体どれぐらいの企業から職員を受け入れてきたのか、過去五年間の契約企業数を述べていただきたいと思います。

北澤国務大臣 お答え申し上げます。

 過去五年間における契約企業数は、平成十七年六十一、十八年六十二、十九年五十五、二十年五十七、二十一年五十五であります。

笠井委員 ついでに、ことし六月末まではさらに今年度もあると思うんですが。ことし六月末までさらにあると、途中ですがね。

北澤国務大臣 二十二年度につきましては、六月末までではありますが、三十二となっております。

笠井委員 今ありました過去五年間を見ても、平均六十社から職員を受け入れてきたわけであります。

 防衛省が二〇〇二年度から試作に着手をして昨年度開発を完了した兵器、そういうたくさんの兵器をつくってきたわけですが、その中に、昨年度開発を完了した兵器に一〇式戦車というものがあります。これは当委員会で問題になってきた無駄の典型の一つと言われた九〇式戦車にかわる新型戦車で、開発に総額約四百八十四億円が投じられて、今年度の予算では十三両百二十四億円が計上されております。

 この新戦車の試作、生産を担当した企業、主な企業というか主企業で結構ですが、どの企業か。そして、その企業からも職員を受け入れてきたんでしょうか。いかがですか。

北澤国務大臣 この企業は三菱重工業株式会社であります。

笠井委員 この企業からも職員の受け入れをやっていましたか。

北澤国務大臣 受け入れております。

笠井委員 防衛省は、職員の受け入れに当たって、役務の対価ということで、仕事のかわりに払うということで企業側に日当を支払っているわけでありますが、二〇〇五年度からことし六月末までの、その払った総額は幾らになるでしょうか。

北澤国務大臣 十七年度から平成二十二年六月末までで、総額は二百六十七億円であります。

笠井委員 この間も二百六十七億円もの日当を企業側に支払ってきたとのことでありますが、一体何人の職員を受け入れて、そして、一人一日当たり平均幾らを支払っているということになりますか。

北澤国務大臣 これにつきましては、正確な数字がまだ出ておりません。

笠井委員 なぜ出ていないんでしょうか。

北澤国務大臣 御質問の通告の中にこれが入っておりませんでしたので、用意してありません。

笠井委員 通告いたしました。通告したら、数字がわからないとかという話だったんですよ。調べているとか数えているとか。通告しましたよ、私はちゃんと。先週からもうこれは言っていたんです。

 何人に何日、実際に払ったんですよね。幾ら使ったか聞いているので、わからないとか集計があるとかいろいろ言われたんですが、払った金額もなぜ答えられないのか。だって、何人の人を雇って幾らという話ですから。職員一人当たりの日当が、これは実際は、明らかになると国民の常識から見るとおよそ理解できない、高過ぎるという話になっているからじゃないんですか。

北澤国務大臣 何か誤解されているようでありますが、私どもは政権についてほぼ一年に近い歳月がたった。過去のことについて私たちが何か隠ぺいしようなんということは思うはずもないのでありまして、後ほど、きちんとした数字を申し上げます。

 それよりも、笠井委員の方から問題提起されていることについては、しっかり調査をしてありますので。

笠井委員 隠ぺいしているとかと私は言っているわけじゃないんです。

 ただ、新政権ができてもう一年近くになって、事業仕分けだ、これまでのものを洗い直すとか、ずっと言われてきたわけですよ。それを、私が質問すると言ったら、いや、どうなっているかわかりませんと言うから、私は非常に驚いたわけで。

 では、伺いましょう。

 旧防衛庁が二〇〇六年六月にまとめた文書、報告書があります。防衛施設庁入札談合等再発防止に係る抜本的対策報告書、平成十八年六月十六日ということで、検討会の報告書ですが、五十二ページでありますが、ここにこう書いてあります。今私が聞いた話ですが、「労務借上の契約金額(一人一日当たりの売り上げ平均十万円以上)」と。一人一日十万円以上、こう書いてある。検討会を防衛庁がやって。それはこの平成十八年当時ですよ。この報告書の中では、その契約金額、一人一日当たりの売り上げ平均十万円以上というふうに言った上で、これが高いとの批判を踏まえて見直す、ここまで書いてあるわけです。

 こう書いてありますね。

北澤国務大臣 はっきり記載されておるかどうか私は定かではありませんが、そういう方向性で報告をしているということは報告を受けております。

笠井委員 あるんです。

 それで、その当時で一人につき一日平均十万円もの高額な日当を支払っているということで、これは、一月分にしますと、一人月額二百万円以上という驚くべき金額になります。しかし、これはあくまでも平均額にすぎないわけであります。

 パネルをごらんいただきたいんですが、四枚目です。これは、今私が指摘した報告書を発表した翌年、二〇〇七年度の職員受け入れの状況をまとめたものであります。これは、当時ちゃんと役所の方から出されたものをまとめたものでありますけれども、契約金額の多い上位二十社だけでも、実に、三万三千四百九人の職員に対して、一人平均十万五千円の日当が支払われているというわけであります。

 そればかりか、この一位のダイセル化学工業でいいますと十六万七千円、日本電気も十五万円、ずっとありますが、石川島播磨重工業、ここも十三万円という形で破格の日当を支払っているということで、私、見直しと言ってから翌年のことですから、これはまだ名ばかりだ、逆に十万円が十六万円に増額しているというような実態もある、何でこんな高額になるのかなと。

 こうした実態は民主党も野党時代に問題視してきたはずであります。当然、仕分けというふうに言われてきた、いろいろ、もう一年近くになりますけれども、対象にしてしかるべき問題だと思うんですけれども、こういうことは、北澤大臣、では、この検討の素材に、民主党政権になってからやってこなかったと。私が質問すると申し上げて、先週資料を下さいと言って、慌てて調べ始めたけれどもまとまっていない、こういう実態だった、そういうことでしょうか。

北澤国務大臣 一見しますと、日当が十数万、こういうことで、それは一人の人に払うには高過ぎるというのは当然だというふうに思います。

 しかし、これは笠井委員も十分承知の上でこういう表をおつくりになっていると思いますが、これについては、給与のほかのあらゆるものが入っておりまして、そこの表の、たしか一番下でしたかな、財団法人の防衛技術協会、これは四万一千円で一番安いわけですが、ここは設備とかそういうものは一切ないんですね。そういうものを全部試算した上で、例えば、細かいことを言えば、給与のほかに福利厚生費だとか退職金、それから企業維持に必要な管理費だとかそういったもの、あるいはまた、頻繁に行ったり来たりする航空運賃も含む、そういうものを全部ひっくるめて日当、こういうことに表現されておりますので、この表について、一人の人の労力に対する対価だというふうに理解するのはちょっと、内容とは違うということを御承知おきいただきたいと思います。

笠井委員 これはちょっと、大臣、それはあれなんですよ。これは労力に対する対価というやり方をずっとしてきたんですよ。いろいろ言われましたけれども、だからといって、では一人について最高十六万円もの日当を払うなんということは到底理解できない話であります。

 技術研究本部が行う研究開発というのは確かに軍需産業に大きく依存している実態がありますけれども、それゆえに企業の側もみずからの職員の派遣を期待している。なぜかといいますと、開発した兵器が量産段階に移行する際に、その研究開発を担当した企業が当然選定されてくる。ここに官業のもたれ合いがあって癒着の構造がある。さきに紹介した一〇式戦車、陸上自衛隊、これを三菱重工業が担うのもそのためであります。

 旧防衛庁の先ほどの見直し報告には、企業側へ支払う日当が高額になるということを認めて、その理由について、当庁、防衛庁が予定価格算定のために行っている原価計算は、各企業が実施している原価計算の方法を基礎としているからだと書いているんです。つまり、日当の算出方法は企業側のデータを基礎とした言い値になっているということを報告書で認めているわけですね。

 それだけじゃなくて、この見直し報告は企業側との契約はすべて一般競争入札等に移行するとありますけれども、防衛省の提出資料によりますと、昨年四月からことし六月末までに契約上位二十社と競争入札を行ったのは、計六百七十一件中、わずか一割の七十一件、その他の九〇%はすべて競争入札なしの随意契約であります。

 結局、何も見直されていないということでありまして、私は、こんな実態を放置して何が仕分けなのかという問題になってくると思うんですけれども、これは総理、どういうふうにお考えでしょうか。感想はいかがですか。

北澤国務大臣 まず、防衛装備というものの特殊性というのを考慮しなきゃいけませんが、共産党の皆さんは防衛予算をなくせと言っていますから前提が違うわけでありますけれども、我々が今危惧しているのは、こういう形で、装備を担当する企業の生産基盤であるとか技術基盤であるとか、そういったものが非常に厳しくなってきているということをむしろ懸念しておるわけであります。そうかといって、それでは全部、全くの随意契約でやっているかということになれば、それはあくまでも公募をした上での随意契約。関連性がありますし、それから秘匿性もあるということで御理解をいただきたいと思います。

笠井委員 私たちは、防衛費をすぐなくせなんて言っていないんですよ。減らせと言っているんです。

 しかも、軍事費というのは、特殊だからといって、結局のところはそうやって聖域をつくってきたことがさまざまな癒着と腐敗を生んで、今日まで問題をつくってきたと、民主党だって野党のときに追及してきたんですよ。この問題について、特殊だからこういう額になるんだという理由を幾ら言ったって、それでは国民的に納得できないということになります。

 防衛省のことし四月の公表資料によれば、二〇〇九年度に防衛省から民間企業に六百四十六人が天下っております。一方で、その天下りを受け入れた企業からは、一日平均十万を超える日当を支払って、そして競争入札なし、いろいろございましたが、結局はなしということで随意契約になって、大量の職員を受け入れてやる、その上、開発したミサイルそれから戦車などの兵器が量産段階に移ったときには莫大な利益をもたらしてあげる、それも全部企業側の言い値になっている。企業にとって、こんなにおいしいシステムはないということになるじゃありませんか。

 こうやって軍事費がどんどん膨らんで借金をふやしてきた。仕分けというなら、こういう問題にこそ抜本的にメスを入れるべきだと思います。

 総理、答弁にお立ちにならないので、お立ちになれないのかと思うんですが、こういう問題をどうしてやらないんですか。

菅内閣総理大臣 防衛分野に限らず、いろいろな政府が調達するものについて、基本的には競争入札でいく、あるいは、そういうところに天下りとの関係で癒着が生じるようなことがないように、そういうことは、私は、分野を問わず、基本的な姿勢としてきちっとやっていかなければならないと思っております。

 その上で、今、防衛大臣からもお話がありましたように、この防衛の関連企業の問題は、やや内容的に他の分野と違う特色もあるいはあるのかなと思います。これは別の議論ではありますけれども、一般的に、こういった装備に関して、民間の企業が買うとか民間の個人が買うというものではない性格でもありますし、そういった中で、あるいは、一般の調達、極端に言えば鉛筆からパソコンからといったような調達とはやや異なる性格もそこにあるのかなと。

 そこまで私は詳細には承知をしておりませんが、そういうことも含めて、基本原則としては、どの分野でも透明性を図って効率化を図っていかなければならない、このように考えております。

笠井委員 では、一言だけですが、私、こうやって問題提起させていただきました。この問題についても政府としてきちっと調べる、調査して、見直しが必要なことはやるということはよろしいですね。

菅内閣総理大臣 既に防衛大臣の方から、先ほどの笠井議員の要求に対しては、出せるものはきちっと出すということも言われておりましたので、そういう形で、どういう中身になるか私は詳細にはわかりませんが、防衛省の方で対応されるものだ、また対応するように、このように申し上げております。

笠井委員 防衛省としてきちっと対応するように指示をするということであります。

 では、最後になりますけれども、そういう中で、今、雇用問題、民間の労働者の雇用の深刻さというのは一向に改善しておりません。

 本日、労働経済白書が公表されましたが、そこでも、年収百万円前後から二百万円台半ばの低収入層の割合が高まったのは、非正規雇用の増加が大きな要因だということを分析して、今後は、正規雇用化を進めて雇用の安定、拡大と格差是正をともに追求することが大切だと指摘しております。これは、対策待ったなしだというふうに思います。当然、総理もそういうことを共有されていると思うんです。

 そして、この問題でいいますと、雇用や子育て、国民、住民生活を支える公務員の現場も例外じゃない。防衛省が一日日当十六万円も払って職員を受け入れる一方で、同じ国や地方自治体で働いている非常勤職員は、官製ワーキングプアと言われるような極めて劣悪な状態のもとに働かされております。

 ことし六月二十九日の毎日新聞にこんな記事が紹介されております。「増える非正規職員」ということで、労働者の就職相談などを担っているハローワークの実態を取り上げたものであります。

 若干紹介します。いきなりこうあります。「「お前ら公務員はいいよな」。東日本の地方都市のハローワークで就職相談を担当する五十代の男性職員は、職が見つからずにいらいらしている求職者から罵声を浴びることが少なくない。身分が保障されていると邪推されているようだが、実は男性も一年契約の非正規職員だ。」この方は、大学卒業後に大手企業に就職しましたが、退職して、ハローワークに一年二カ月通った末に、実際、自分自身がハローワークの職を得たということでありまして、記事は続けてこうあります。「「誰も私が不安定な立場とは知らないでしょう」と男性は言う。月給は民間時代の六割程度、ボーナスも昇給もない。妻がパートで家計を助けるが「次の三月三十一日を乗り越えて、来年度も仕事があるのかという不安が尽きない」。」ということであります。そして、この方は、民間時代は社員のリストラが仕事だったけれども、人を職から切り離すのじゃなくて、結びつけたいということで今の仕事を選んで、そして、公務員の端くれという誇りを持って懸命に今の仕事に取り組んでいると。

 こういう非正規で働いているハローワークの方が全国で六割いる。そうすると、職業安定所なんですが、その職場自身が職業不安定所になっているという実態だと思うんです。

 こういう実態が総理の足元で起こっているということなんですけれども、どうお感じになっているか。こういう実態を放置していいと思っていらっしゃるかどうか。これは総理の感想と認識なので、一言、端的にお願いしたいんですが、いかがでしょうか。

長妻国務大臣 今御指摘いただいた案件でございますけれども、全国、ハローワークで働く皆さん、職員というのが約三万人。そして、今おっしゃられたように、約六割が非常勤職員ということで、一つは、総定員法という法律がございまして、国家公務員の定員を管理する、その定員削減、管理がございまして、その中で、我々としても、例えば企業で就職の担当あるいは人事の担当の方、ベテランの方を募集して、そして一定の期間、非常勤職員としてそこで仕事をしていただく、新卒者向けの新卒ジョブサポーター、あるいは、いろいろな住まいの、生活全般の相談をしていただくなどなど、そういう形でそこで働いていただいているということでありまして、処遇改善につきましても、一日当たりの賃金についてもこれは上げていくということで、平成二十二年度にもそういう努力をさせていただいているところでございまして、雇用環境が大変厳しい中、それを支える職員の皆様方も、今こういう現状でございますけれども、できる限りその職場の改善に努めていきたいというふうに考えております。

笠井委員 終わりますが、総定員法があるからということで現場のこういう人たちの実態を放置していいということにならない。実際に改善されていないんです。

 記事の最後、一言紹介して終わります。この紹介した男性が最後にこう言っています。「「一部の高級官僚と、大変な思いをしている現場を同じように批判されるのはつらい。展望がない単なる人減らしでは、ツケは国民に押し付けられる」とつぶやくように本音を吐露した。」と。これをしっかり受けとめてやはりやるべきだということを強く申し上げて、質問を終わります。

鹿野委員長 これにて笠井君の質疑は終了いたしました。

 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党の阿部知子です。

 菅総理には、六月に御就任になって、きょうが初めての質問をさせていただく機会を得ました。

 午前中から何人かの方がお取り上げでございますが、特に、菅総理は、就任に当たって、国民の生活が第一ということと、この日本を元気にしたいという二点をお述べになりました。

 では、第一問でありますが、果たして、その国民の生活が第一とおっしゃるときに、今、菅総理は、国民の生活はどうなっているとお思いでしょうか。国民の生活の現状についての認識を冒頭お伺いいたします。

菅内閣総理大臣 私が、国民の生活が第一、あるいは元気な日本を復活させようというときに、幾つかの側面があると思っております。

 一つは、この二十年間、日本の経済が低迷し、そういう中で財政も厳しく、また不安な社会保障の現状もあります。そういった大きな枠組みそのものが国民の生活に影を落としているということが一方であると思います。

 一方、もう少し個別的に見れば、先般来の議論でもありますように、特に雇用の面での厳しさが非常に強い。先ほど来の非正規雇用も含め、あるいは失業率がなかなか下がってこない、こういった問題もあります。

 また、さらにそれに関連して言えば、多くの人が、家庭から、あるいは職場から、あるいは地域から孤立化して、自殺者の多さもその一つのあらわれだと思いますが、貧困だけで自殺をする人はそう多くはないけれども、だれにも相談できない、そして貧困であるということが重なったときに、多くの人が人生に絶望する、そういったこともかなり広い範囲で存在している。

 このようなところを変えていくことが国民の生活が第一のまさに第一の目的だろう、このように思っております。

阿部委員 国民の生活の現状についてよく御認識であると思います。一言で言えば、底が抜けてしまったような不安感と孤立感が広く社会を覆っている中であります。

 そこで、今、菅総理は、社会保障も大変だ、経済財政、特に財政の赤字も大変である、あるいは人の縁がないのも大変であるとお述べになりました中で、特に雇用の問題を御指摘でありましたので、私も、その点について、二点目お伺いをいたしたいと思います。

 お手元にグラフがございます。ちょうどさっき菅総理がおっしゃった一九九〇年からの二十年をとった、これは失業率の推移でございます。昨年の七月に失業率がこの間の五・六%という最高値をつけたということでありますが、現下、失業率は五・三となっておりますが、これを年齢別に区分したのがこの図でございます。一九九〇年を左端、そして右端を二〇一〇年六月、これは瞬間値になりますが、ほかは年の値でございます。

 ここで、ぜひ菅総理によく見ていただきたいんですけれども、何と、十五歳から二十四歳の若年の失業率がこの二十年間で過去最高値を記録いたしました。いろいろな季節調整をして一一%を超えたというのは、この二十年間で最悪のことでございます。

 それだけではなくて、その次の年代、二十五から三十四、三十五から四十四、四十五から五十四、ちょうど中堅の働くところの失業率もアップしているという、いずれの年代にとっても極めて厳しい雇用情勢、要するに仕事がないという状況が広がっているというのがこの図でございます。

 次に、では、そういう失業率に対して、今度は、仕事がありますよ、そして求職すればその仕事につけますよ、有効求人倍率と申しますが、仕事を求めて得られるかどうかのお話であります。

 極端に言えば、失業率は高くてもすぐ仕事が得られてやっていけるのであれば、それはある種、動きのある職場情勢というふうに言えるかもしれませんが、これについても非常に悲惨な実態がございます。

 二枚目、おめくりいただきますと、ここは期間は短く、平成十八年から二十二年の四年をとりましたが、昔から言われておりますように、この有効求人倍率には地域差がございまして、沖縄とか北海道とか青森は常時下位に位置し、比較的この間よかった愛知とか群馬もリーマン・ショック以来どんと落ち込んで、今少し上がってはきておりますが、このグラフ、極端なカーブを描いていることにわかりますように、下の方にみんな、〇・四とか五に安定しております。逆に言うと、有効求人倍率というのはパートも含めたものですから、正社員に至っては〇・三を欠くような状態であります。

 失業率も若年については過去最高、有効求人倍率もみんな下の方に集積してくる、こういう事態を見て、菅総理として、これについてまず、一国の責任者として今何が必要とお考えでしょうか。この点をお伺いいたします。

菅内閣総理大臣 このグラフ、大変顕著に、平成二十年半ばから急激に、平均値も含めて落ちております。まさにリーマン・ショックが我が国の製造業を中心に非常に大きな悪影響を及ぼしたもので、それに対していろいろと政策を打ってきたわけですが、多少の改善は見られておりますが、まだ十分なところまでは全く達していないということがよくあらわれていると思います。

 そういう中で、やらなければならないことあるいはやってきたことは、幾つかあります。御承知のように、雇用調整金を使って、できるだけ会社から解雇されないようにといった、そういう措置もとりました。

 と同時に、やはり雇用の機会をいかにしたら拡大できるのか。私は、これは、雇用そのものという意味も当然ありますけれども、経済を拡大していくという意味からも、あるいはデフレを脱却するという上からも、雇用の拡大ということはまず最優先して置かれるべきことであろう、こう思っております。

 そうしますと、どういう分野に雇用の拡大の可能性があるのか。例えば、介護とか育児とかの分野は、需要が存在するけれども処遇が余りにも低過ぎて人が集まらない。こういう分野にはやはり予算的な手当ても含めて、優先をすることが必要ではないかと思っております。

 加えて、この間、新成長戦略というものの中で、既に効果が上がっていると言えるかもしれませんが、中国の観光客の皆さんに対するビザの条件の緩和といったようなことを含めて、やはりアジアの成長を取り込む、あるいはグリーンイノベーション、環境の問題で需要を喚起していく、あるいはライフイノベーションという分野で、介護だけではなく医療分野も含めて、積極的な開発を進めていく。

 いずれにしても、あらゆる分野の中で、雇用が拡大するということを、一つの大きな目標といいましょうか、大きな要素として政策をすべて展開する必要がある、このように考えております。

阿部委員 今の御認識も全く同感するものであります。かつて、去年の八月三十日の選挙の後、三党連立政権を発足させていただきまして、社民党もそのときは一翼におりました。緊急雇用対策本部をつくりまして、今、菅総理のおっしゃったようなさまざまな政策も打ってまいりました。そういう緊急対策と同時に、仕事を起こす、仕事をつくる、雇用をつくるということが今この政権の最大の眼目であるという御指摘で、力強く受けとめます。

 では、三枚目の資料をお開きいただきたいですが、雇用をつくると申しますと、私も医療分野ですが、医療や介護、子育て、福祉分野も一つ、それから海外の成長を取り込むも一つ、あともう一つは、グリーンイノベーションとかグリーンジョブとか緑関係の仕事、環境関連の仕事ということであると思います。

 お手元には、環境省が試算いたしました資料でありますが、例えば、これは二〇二〇年までとお考えいただいて結構ですが、温暖化対策を一生懸命やったらどれくらい雇用が生まれるかという試算であります。

 一番目が、再生可能エネルギー関連、太陽光パネルをつけたり、メーターであるスマートグリッドをつけたりすることで地域の仕事が起きる、雇用が起きる。これで市場も十一兆、雇用創出三十一万人。二番目が、次世代の自動車、これは電気自動車でも構いません。これで十八兆、そして雇用が四十一万人。三番目が、エコ住宅等々と言われるものや、あるいは機器をもっと環境に対して効率をよくするということで、十五兆円、四十九万人。締めて、新たな市場創出四十五兆、そして雇用創出百二十五万人であります。

 私は、先ほどお見せした一九九〇年代からの最悪の若年の失業率の高さ、そして、なべて有効求人倍率が低値ということを考えれば、これらの一つの道でも、非常に私たちにとって光であり、進むべき方向性だと思いますが、さて、この予測される百二十五万人の雇用創出は、ただただ待っていては生まれないのだと思います。

 菅総理が、かつて国家戦略室の担当であったときに、低炭素社会に向けて社会を大きくかじを切るとおっしゃって、そのためのさまざまな施策のパッケージ、環境税であるとか、固定価格で太陽光パネルの電力を買い取るとか、二酸化炭素の排出を排出権取引するとか、幾つか言われたと思います。この百二十五万人という目標に向けて、何をどのような行動計画でやっていくのか、これを今政治は明らかにして、国民に示して、そして一緒に元気になろうと言わないと、やはり本当には道筋が見えてこないと思います。

 菅総理には、この具体的な道筋、どこでどうお示しになるのかについてお伺いをいたします。

菅内閣総理大臣 先ほども申し上げました新成長戦略、これは政権におられたころはともに検討したわけでありますが、具体的に二十一の項目を掲げて、こういった分野を推進していこうと。この中には今指摘をされた環境分野も含まれているわけであります。

 これらのどの課題にどういう形でやっていけば雇用につながってくるのか。一つは、やはり民間がそうしたものに積極的に取り組むということが前提となるわけですが、そのときに、国として、場合によったら自治体も含めて、何がそれを妨げているのか、あるいはそれを促進するためにはどうすればいいのか、先ほどのビザの緩和も一つだと思っております。

 また、いよいよ予算編成が本格化するわけですが、そのときに、こういうところに予算をつけてもらえばこういった形で雇用がこの程度ふえてくる、そういったことも、これはまず各省庁にもこの新成長戦略を具体化するという責任を持っていただきますので、そういう観点からも提案をしていただき、それをトータルとして、内閣全体として、あるいは最終的には私が判断する部分もあるかと思いますが、雇用により役立ち、それが成長に役立つ、そういう一つの見方を優先順位の判断に入れて実現を図っていきたい、このように考えております。

阿部委員 今総理も御答弁でありますが、実は、各省庁にそれぞれ頑張ってくれよと投げても、これを調整していった先に未来が見えるわけではなくて、ここはリーダーシップが一番必要とされる分野なんだと思います。

 逆に、二〇二〇年までに二酸化炭素を二五%削減するということを鳩山前総理がおっしゃいました。その削減目標、例えば二〇一〇年までには何をして、そして産業分野では何をして、例えば環境税は導入してとか、まあ二〇一〇年環境税じゃ遅いと思いますけれども、固定価格で買い取ってとか、そのプログラミング、国家戦略が今私は必要なんだと思います。そして、それは新政権が発足以降、おくれにおくれているのだと思います。

 ぜひ菅総理が、国家戦略室から財務大臣になられ、そして現在は総理なのですから、総理のリーダーシップでこれをやっていただきたいし、具体的には、この間、国家戦略室は、総理直属ではあるが、シンクタンクのようなブレーンになってしまって、いいことではあるけれども、今度は実行力が要ります。考えたことを実行していくためにどんなやり方があり得るのか、私は非常に今懸念をしています。

 調整型に終わったら、あちらもこちらもそちらも聞かねばならないということで、ここに示されたような雇用創出も大きく後ろにずれ込みます。そうすると、今どこに行かれても、菅総理も選挙中あちこち行かれたと思いますが、とにかく仕事がないんだよという声ばかりであります。仕事があれば元気になれる、地域も維持していけるわけです。

 ぜひ、今度国家戦略室をもしもそういうシンクタンクというかブレーンストーミングのところになさるのであれば、実行部隊、実行力を持ったところはだれがどうなさるのか。予告していませんが、仙谷官房長官、ごめんなさい、実行はだれが責任を持って、これはブルドーザーのようにやらねばなりません。国家戦略室において、かつて、新成長戦略を実現するための大きなテーマであるこの環境関連の、特に低炭素社会に向けた施策の実行はだれが責任を持ち、また、どのめどで何をやるのかはどう提示していくのか、お考えをお聞かせください。

仙谷国務大臣 新成長戦略の中では例のグリーンイノベーションというものが一つの大きな柱になっておるわけでありますが、これをいわば執行段階においても一元的な体制をつくって、当然のことながら、総理の指示といいましょうか総理のリーダーシップのもとに、いろいろな各項目にわたるグリーンイノベーションとしての事業を立ち上げて起こしていっていただく。私どもは、これにファイナンスの面も含めてそれぞれの事業を自律的に、民間の方々が当然のことながら中心にやっていただく。

 ただ、海外においては、日本政府がやらなければならないことが多々ありましょうし、国内においても、外すべき規制は外し、そして、コンソーシアムを組まなければならない分野についてはコンソーシアムを組むお手伝いをし、そういう執行を一元的に掌握する部隊をつくらなければならない、こういうふうに考えております。

 早急に、これはもう参議院選挙も終わりましたので、そのことを組織的にも立ち上げていきたいと考えているところであります。

阿部委員 はっきり申しまして、この一年間はロスであったと思います。政権交代直後から、三党連立合意にあった低炭素社会に向けてとかじを切っていただきたかった。そして、次お伺いいたしますからちょっとお待ちください。手を挙げていただいてありがとうございます。

 例えば、制度をどう担保するか、さっき言った固定価格の買い取りはいつからやるのか、あるいは環境税はいつからやるのか、そして財務省からはどんな金を取ってくるのか。これは全部、執行、実行力の、本当に決断力の問題であります。

 先ほど野田財務大臣には、環境税については検討ということで、これは去年御一緒に税調でいたしましたから、でも、私は検討ではもう遅い、二十三年にはやった方がいい、やらねばならないと思うくらいであります。

 そこで、今お手を挙げていただきました小沢鋭仁環境大臣に、この環境税について環境省はプランもお出しであります。そして、一日も早く、例えばガソリンの暫定税率、今、宙ぶらりんになりました。これを環境税に置きかえるなり、本当にこの社会をグリーン化していくための税制を即刻始めるべきだと私は思いますが、いかがでしょう。

小沢国務大臣 環境税の前に、一年間ロスであった、こう阿部委員から言われましたので、そこは一言だけ反論をさせていただきたいと思います。

 まず二五%の目標を掲げ、そして社民党の皆さんたちともともに閣僚委員会をつくり、そして計画を立て、例えばことしの三月には、私の試案でありますけれどもロードマップを示し、今、中環審で着実に制度設計に入っている、こういう状況でございます。

 新成長戦略は先ほどおっしゃっていただいたとおりでございますので、何とぞ、そこは御理解のほどお願い申し上げたいと思います。

 環境税でございますが、昨年環境省は、約二兆円規模のガソリン税の部分も含むいわゆる炭素税の案をつくらせていただきました。

 それで結論から申し上げますと、昨年度は税制大綱において、平成二十三年度の実施に向けた成案を得るよう検討を行う、こういう書き方で昨年度は終わっております。

 これは、ただ単に二十三年度成案を得るということではなくて、二十三年度の実施という、実施という言葉が入っているところがこれまでの税制大綱と全く違うところでございまして、昨年、我々が議論をした中では、各界各層の皆さんとよく協議をして理解を得ながら、しかし、二十三年度の実施は確実に行う、そういう意味で、その実施というものを盛り込んだ税制大綱をつくらせていただいたと思っておりまして、それに向けて今私どもも用意しておりますし、最終的には党の税調、政府の税調で決まる話になると思いますが、着実に進んでいるということを御報告申し上げたいと思います。

阿部委員 今御答弁にありましたように、実施が大事です。やることが、進むことが、進めることが大事だと思います。

 次に、菅総理に伺います。

 もちろん、今の小沢環境大臣の御答弁を菅総理も同じ思いで聞いておられることと思いますが、次に、お手元にある資料を見ていただきたいのですが、実は、環境税あるいは地球温暖化対策関連諸税と呼ばれるものは、ここに挙げましたデンマーク、オランダ、イギリス、ドイツ、イタリアなど、このほかにも導入されている国は多うございますが、ここで私がこれらを持ってきた理由は、税収はいただいて一般財源なのだけれども、使い方は社会保険料負担の軽減に向けている、年金財源に向けたり。私は、この間の消費税論議で、何か消費税を上げて法人税を下げてと、こういうシーソーをやるよりも、実は今、多くの企業にとって社会保険料負担というのは非常に重いわけです。それが原因でまた非正規をしてしまう。本来は社会保険をつけた方がいいのにというところも出てきています。

 これからの検討課題ではあると思いますが、実施に向けてとおっしゃいましたので、菅総理には、これはいずれも、ドイツは年金の財源ですし、例えばイギリスは八割社会保険料負担軽減に使う、あるいは環境にいいことをしたところを減税するとか。税はめり張りなんだと思います。なぜなら、国民へのメッセージだからです。こういうことをやりたいからこういうふうにしようよと。

 私は、菅総理の消費税発言は、先ほど言った、底の抜けたような国民生活を前にして、ちょっとやるべきものの手順を間違えたと思いますが、それでも、もっとメッセージがあれば違ったのではないかなと思っている一人です。

 でも、私は今、消費税問題は、雇用や地域の疲弊、菅総理がおっしゃった貧困対策などを打って、国民の担税力、税金を払えるようにしてそちらはやっていただきたい。こちらは、ことしのこの夏の異常気象も含めて、公明党の斉藤さんのお取り上げになった豪雨も含めて、環境問題が待ったなしであるということから見れば、こういう使途も含めて環境税について私たちは賢く選択していくべきだと思いますが、菅総理のお考えを伺います。

野田国務大臣 阿部委員にお答えをしたいと思います。

 先ほど小沢環境大臣がお話をされたとおりであって、地球温暖化に対する税は二十三年度実施に向けて成案を得るというプロセスをこれからたどっていくことになりますが、それは主にこれから政府税調の中で議論をしていきます。

 その税調の議論の中で、今おっしゃったような、税の具体的な内容とか位置づけ、どういうところに使っていくのかを含めて、今後、各省からの要望等を踏まえつつ議論をしていきたいというふうに思います。

菅内閣総理大臣 今、二人の大臣からお話をいただきましたが、この環境税あるいは炭素税に関しての議論、二十三年度からの実施に向けてという税制大綱になっております。ただ、相当まだ議論がある分野だと思っています。環境大臣の方から非常に積極的な行動がありますし、それはそれで私も期待をしているんですが、一方、経済界からも、場合によってはそのことが経済活動に支障になるという強い意見もあります。

 そういった意味で、もちろん、そういうことを超えて物事を決めていかなければならないわけですが、同時に、そういった議論そのものはしっかりやった上で最終的に決めていくというプロセスをとらなければなりません。そういった意味で、これからいよいよ本格的な税制の議論に入っていきたいし、いただきたいと思っております。

阿部委員 実は、前政権のころから、この税制のグリーン化、環境税については意識はあったんだと思います。あとは政治がどこで踏み込むかです。せっかく小沢環境大臣、頑張って御答弁なのですから、ぜひ菅総理がここはリーダーシップをとって、総理であれば、御配慮が必要なのはわかります、国民全部を預かっておられますから。でも、私は、これは調整型ではなかなかいかない分野、だけれども、今踏み込まざるを得ない、もうぎりぎりなんだと思います。地球も、もうこれ以上耐えられない、そしてさっきの仕事も、そこが新しい分野であるとあれば、私は、ぜひここは菅総理のリーダーシップ、そのために総理がおられるんだと思いますから、重ねてよろしくお願いしたいと思います。

 では次に、児童虐待問題を取り上げさせていただきます。

 私どもがこうやって国会で論議しておりますさなかにも、幼子の命が次々と奪われていっております。お手元には、実は、児童虐待の集計をとり始めたのは一九九〇年、先ほどのちょうど失業率のグラフと一緒になってまいりますが、九〇年代からで、ことし、平成二十一年度データですけれども、これが最高値、児童相談所というところに子供の虐待で相談を受けた件数が四万四千二百十件。しかし、現実には、児童相談所以外にも市町村窓口というのがございまして、児童相談所は全国に二百二カ所、市町村窓口は千七百カ所くらいございます。児童相談所は大体県か政令市、それより小さいところは窓口になるわけですが、そこの千七百カ所余りの窓口を集計いたしますと、これが五万三千件以上、去年の、一年前です。ことしのがもうすぐ出ると思います。すなわち、合わせて十万件、もう突破していると思います、児童虐待の相談件数があり、虐待で死んでいく子の数は毎年百人を下りません。

 この数日、菅総理もお忙しい中でも報道を耳にされたと思いますが、三歳と一歳の桜子ちゃんと楓君という幼子二人が、二十三歳のお母さんが育児放棄されて、白骨で発見されるという悲しい事案がございました。

 私がこの二〇一〇年を報道ベースで拾っただけでも、お手元に資料でお配りさせていただきましたが、五件。実はもっとあります、丹念に拾えば。ただ、みんなが、ほう、そんなにひどいことが起こっているんだと思われて特に記事にたくさんなったというか、繰り返し報道されたものをここで五件選んでございます。

 私がことしの冒頭の予算委員会で取り上げた岡本海渡君という小学校一年生の坊やは、殴られて頭蓋内出血で亡くなったわけですが、この子の事例。

 あるいは、五歳の智樹君。この子も、実は五歳なのに、身長は八十五センチだし、体重は六・五キロ。五歳で六・五キロです。ふだんから食事を与えられない、背も伸びない。身体的な虐待もあったやもしれないが、餓死するまで放置される状態、衰弱死です。

 次の力人君、四歳。これは御両親が路上生活というかホームレスであったときに生まれたお子さんで、二歳くらいまで養護施設におられましたが、その後、親御さんが生活保護を受けたので親元に戻ったけれども、親子関係がうまくアタッチメントというか関係性が築けずに、この子も食事を与えられず、衰弱死であります。

 次に瑠奈ちゃん。この子は、未熟児で生まれて、健診は一回も受けることがなく、揺さぶり症候群といいます、子供をがさがさがさっと持って激しく振る、そのことで頭蓋内出血を起こして亡くなった事案。

 そして、最後が桜子ちゃんと楓君の事案であります。

 こう見ますと、先ほど菅総理が冒頭でおっしゃったように、今の社会は、単に貧困なだけじゃなくて、人間の心とか、寄る辺とか、関係性とか、大事なものとか、もうそこが危うくなっていると思います。

 そうしたことに対して、例えば、この二十三歳で放置したお母さんを責めれば子供たちが救われるかというと、そうではありません。私たちは、この子供たちを、政治として、課題として救っていくために何が必要かをきょうはお話をしたいと思います。

 まず冒頭、原口総務大臣に伺いますが、実は、二〇〇四年の児童虐待防止法の改正で、こうした虐待児に対しては市町村も同じように義務を負うということが決まりました。例えば、この桜子ちゃんと楓君のお母さんも、二十三歳ですが、離婚されるまでは、ブログを書いたり、子供の誕生を楽しみに待っていた。離婚届を出されて、その後は職を転々とされたのか、どこを転々とされたのか、住所の登録もないし、あるいは保育園等々に入る手だてもしていなかったし、あるいは児童手当、この子たちだったらもらえると思いますが、それも一切していません。

 今の行政の中で、例えば離婚は役所に届けに行きます。そのときに、もしも母子家庭になられたらこんなサービスもありますよとか、父子でもいいんです、お一人の親御さんでお子さんを育てねばならないときはこんなサービスがありますよのようなパンフでもいいし、アナウンスメントでもいいし、何でもいい。実は、高校時代とか二十前後というのはそういうことがわかりません。知らない。知らない結果、どこにもつながらない、エアポケット状態で子供たちが死んでいくわけです。ぜひ自治体の窓口のお取り組みを強めていただきたい。特に、そうしたほかの届け出業務の折に、子供さんを一人で育てる親御さんたちへのいろいろなサポートがあることをアナウンスしていただきたいが、いかがでしょう。

原口国務大臣 お答えいたします。

 本当にあってはならない事件で子供たちが命を落とす、あるいは、フローズンアイと申しまして、虐待を受けた子供たちはひとみが凍っています、動きません。こういったものを、あれは名古屋の祖父江さん、もう亡くなりましたけれども、CAPNAというNPO、その方々が国会に来られて、阿部委員と一緒に児童虐待防止法、これの提案者にならせていただきました。

 そこで私たちが立法の趣旨としてそこにうたったものは、国と地方が役割分担をするというのではなくて、児童虐待防止法は、すべての人がオーバーラップして、そして子供たちをより強く守る、これが児童虐待防止法の法の仕組みでございます。この仕組みに沿って、今委員がおっしゃるように、エアポケットというお言葉をなさいましたけれども、まさにカプセル化した中で、子供と向き合う中でこういう虐待が起きていますので、行政として丁寧に対応できるように、市町村にも技術的助言をしていきたい、このように考えています。

阿部委員 原口大臣は先ほど、公務員バッシングをするのではなくて、公務員が本当にいい公共サービスを出してくれるようにとおっしゃったと思います。日本の行政、福祉についても、すべて申請主義で、知らないと何も利用できません。そうではなくて、情報弱者になりがちな方に行政全体がサポートする仕組みをつくっていただきたい。

 ちなみに、児童虐待について市町村レベルで職員の研修をしているところは三割です。お金が足りません。あと、県の研修も半日程度です。これではとてもこういうサポートをする人材にはなれません。

 ごめんなさい、長妻大臣には予告してありましたが、時間の関係で次に行かせていただきます。

 最後に、山田農水大臣に伺います。

 この間の口蹄疫対策、いろいろな方から御質疑がございました。そして、基金の立ち上げ、東国原知事は三百億程度の基金の立ち上げをとおっしゃってございますが、まずこの口蹄疫問題、大臣は、連休明けからずっと現地で詰められて、御自身も畜産農家であったこともあり、非常に丹念に拾っていかれたと思います。そこでの教訓と今後の取り組み、特に、基金のことは伺いましたので、もう一つ、例えば被害のひどいところを震災特区のようになさるお考えについて御答弁をお願いいたします。

山田国務大臣 お答えいたします。

 今回、本当に、口蹄疫対策で、早期に発見して、写真判定でもやり、二十四時間以内に殺処分して七十二時間以内に埋却すればそんなに怖いものではないということがわかってまいりました。

 そして、確かに今回、あれだけの被害、二十九万頭の殺処分をしましたので、疲弊した農家等々についても大変な状況にあります。

 しかし、その中で、農家もですが、それに周りの環境、例えば削蹄師とか人工授精師とか、観光業者も含めていろいろな方々、そういったものに対して、さらにこれから先、きめ細かいいろいろな制度というか、いろいろな手当てを、必要なものをしていく必要があるだろうと。特区までは考えていませんが、基金の中の、これから先、宮崎県の要望も聞き、いろいろな形で官邸、各省庁一緒になって取り組んでいきたい、そう考えているところです。

阿部委員 原因の究明、感染ルートの究明と、そして今大臣がお答えいただきました生活再建のためのさまざまな手だて、現政権には鋭意邁進していただけることを重ねてお願い申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

鹿野委員長 これにて阿部君の質疑は終了いたしました。

 次に、江田憲司君。

江田(憲)委員 みんなの党の江田憲司でございます。

 総理並びに閣僚の皆さん、お疲れさまでございます。ラストバッターですので、よろしくお願いします。

 まず、みんなの党は、今国会に国会議員の歳費日割り法案を提出しております。午前中の総理の答弁をお聞きしておりますと、今回参議院に新人で当選された方、元職で復帰された方、この方々には自主返納させる、これは当然のことですから、あえて問いません。本体の国会議員の歳費の日割り、この本体部分の改正というのは、午前中聞いておりますと、なるべく早く成立をさせたいという御答弁でしたけれども、いつ成立をさせるという意味なんでしょうか、確認をしたいと思います。

菅内閣総理大臣 法案の質疑の現場はそれぞれ与野党国対でやっておられると思いますが、なるべく早くと申し上げたのは、この国会で可能であればこの国会、しかし、この国会で日程上難しいとなれば次期に開かれる一番早い国会、それを想定して申し上げました。

江田(憲)委員 わかりました。

 今国会に提出をいたしましたので、民主党さんは参院選のマニフェストでも日割りをしますと国民に約束をされたわけですから、ぜひ今国会、成立をさせていただきたい。民主党の皆様にも御支持をいただきたいとお願いをいたします。

 ちょっともう一回確認です、申しわけないです。

 遅くとも、どんなに遅くとも次の臨時国会、秋の国会では成立させるという意味で解してよろしゅうございますか。

菅内閣総理大臣 国会の議席の様子はよく御存じのとおりでありますので、我が党だけで法案を通すことは難しいわけですから、まさに与野党の多数の方が賛成できる状況になれば、我が党としては、できるだけ早い機会、ですから、この国会で無理ならば次期の最初の国会で通すように努力するよう私からもう既に指示をいたしております。

江田(憲)委員 総理の決意のほどは了解いたしました。

 それでは、同時に、我々みんなの党は、この国会に、国会議員の歳費月額三割カット、期末手当五割カットの法案も出しております。

 総理は、三十日の記者会見で国会議員の定数削減を打ち出されたようでございますけれども、もちろん定員削減も重要課題として取り組んでいかなければなりませんけれども、どんな会社でも、やはり、非常に苦境に陥って、本当に日本の国のように財政事情が厳しい中では、まず、会社ならば役員の賞与カット、給与カット、当たり前ですね。従業員の給与カットもしなきゃいかぬ。そういった中で、公務員の二割削減も必要ですけれども、その前提としては、やはり我々国会議員がその歳費を削減するというのは私ども当然だと思っているんですけれども、この法案に対する総理のお考えをお聞きしたいと思います。

菅内閣総理大臣 現在、閣僚は一〇%カットというものをかなり前から続けているわけですが、国会議員全体にわたる話については、私はやはり政党間できっちり議論していただくことが必要だろうと。私も、国民の皆さんにいろいろとそういったことをお願いする以上は、議員としても身を切る、そういうことの必要性は感じております。

 ただ、具体的にどの程度どうするかということについては、これはまさに議員の問題でありますので、議員間つまり政党間で御協議をいただきたい、こう思っております。

江田(憲)委員 おっしゃるように、まさに議員の問題ですよ。それを、菅総理は従前の例を乗り越えて、三十日には、定員削減、具体的に衆議院八十名減、参議院四十名減。私はこれは画期的だと思いますよ。よくおっしゃられたと私は大変評価しておりますよ。ですから、こんな国会議員を減らす減らさないという問題にも指示をされたわけですから、こんな国会の歳費の削減なんてもっとたやすいことですよ。もっとたやすいことですから、この場で、具体的に三割、五割まで私は申し上げません、国会議員の歳費も削減する、次の国会ではちゃんとやる、こういう御答弁をいただきたいと思います。

菅内閣総理大臣 定数について申し上げたのは、我が党のマニフェストに盛られたことについて、それを進めるように幹事長あるいは参議院の議員会長に指示をしたわけであります。

 今言われた歳費の問題については、私自身、先ほど申し上げましたように、国民の皆さんにいろいろな、ある意味での犠牲といいますか、そういうものをお願いする以上は、議員も率先してやらなければならないという意識は持っておりますが、まさにそういう問題については、これはやはり議員の立場で、各党で御議論いただくことが必要だろう、こう思っています。

江田(憲)委員 ちょっと、全く理解できませんね。

 定員削減というのは、まさに国会議員の身分そのものにかかわる問題ですから、本当に最重大案件。それに引きかえ、議員の歳費を削減するか否かなんというのはもっとたやすい問題だと思いますし、民主党さんのマニフェストで国会議員の経費を二割削減すると約束されているわけですから。いや、私は、割合をあえて総理から御答弁いただくつもりはないんですよ。国家公務員の人件費二割カットと言っているんですから、その前に国会議員の歳費も削減しましょうよ。当たり前ですから、ここで約束してください。

菅内閣総理大臣 ですから、先ほど来申し上げているように、私自身そういう一つの方向性は必要だという認識は申し上げました。その上で、私が約束をするという性格のものであるのか、やはり政党間で協議をいただくものであるのか。この問題は政党間で協議をいただくべきものであろう、そのことを申し上げているんです。

江田(憲)委員 定員削減は私から指示すると明言された総理にしては、非常に理解しがたい答弁ですけれども、国民の皆さんがごらんになっていると思いますから、それで御判断をいただきたいと思います。

 それでは、民主党のマニフェストそのものの、企業・団体献金の全面禁止、いつ提案されるんですか。

菅内閣総理大臣 企業献金の禁止ということについては、我が党としては、方針をそうすべきだということで決定をいたしております。この点についても、まさに各党の財政にかかわる問題でありますので、まずは与野党間において協議をいただいて、できれば、できるだけ多くの党の合意を得て法案を出して成立を図っていく、このようになることを期待いたしております。

江田(憲)委員 いつもそうなんですよ。だって、日割り法案だって、我々みんなの党や公明党が言い出す前に民主党がマニフェストに明示しているんですよ。みんなの党なんて、当たり前だからマニフェストに書いてないんですよ、こんな当然のことは。何で我々が音頭をとらないと、国政の場でこういう、本当にこんなことすらできない与党に、政権に、ほかに何ができるのかという目で見られているんですよ。ですから、政権与党の責任を果たしてくださいと私は申し上げているんですよ。ですから、まず提案をしていただかないと。一番大きい政党なんですから、皆さんが主導権を握っているわけですから、この日割り法案だってすぐに提案をしてほしかった。

 それから、国会議員の定数削減も、菅総理は参院選の後、提案をされましたね。私はよしとしておりますよ。でも、本来なら、昨年の夏約束されて政権交代されたんだから、すぐ次の国会で提案をされるべきでしょう。ですから私申し上げているんですよ。これはおかしいことを言っていますか。

 ですから、企業・団体献金の禁止も、昨年の夏約束されて、もう九カ月、十カ月たっているんですから、与党がやはり提案をするというのは、国民が期待しておられるんじゃないですか。

菅内閣総理大臣 みんなの党が誕生して、今回躍進をされて、皆さんも国民の皆さんにいろいろ約束をされているわけですから、参議院では法案提出権も獲得されたわけですから、どうか遠慮なく自分たちでも法案を出されればいい。何か、与党が出さなければ何も進まないというのは逆じゃないんですか。その逆のことを選挙で言われたんじゃないんですか。まさに、まず自分たちで出されることも国会の議論を促進する大きな一歩だと私は思いますが、いかがですか。

江田(憲)委員 盗人たけだけしいとはこういうことなんですよ。我々は現に日割り法案を出しているんですよ。現に日割り法案を出している党に向かって、何にも出していない、約束したことを何も出していない、そういう党がお出しになったらいいでしょうと。(発言する者あり)こんな消極的な姿勢こそが、民主党政権の支持率が急落している原因ですよ。

 だって、そうでしょう、約束したことをやらないから支持率が急落しているんですよ。単純なことなんですよ。言っていることもころころ変わるから政権への信任がなくなっているんだ。それだけのことですよ。それを、私は、政権与党の責任を果たしてくださいと、単にそれだけを言っているわけですよ。開き直られても困るんですよ。

 それでは、見ておられる国民の皆さんもよくおわかりになったと思いますから、言っていることがふらふらしているという例として、国家戦略局の問題を取り上げたいと思います。

 恐らく、これは私がこの週末のテレビ番組で、国家戦略局は修正を加えていただければ賛成しますよと申し上げたことに端を発するんだと思いますが、この午前中の総理の御答弁を聞いていると、また国家戦略局が復活をされて、次の秋の臨時国会に法案を提出されるとのことですが、それでよろしいですか。

菅内閣総理大臣 一言、前のことで申し上げておきますが、私も小さい政党に長くおりまして、いろいろな法案を出して、他の野党、他の与党の皆さんとも連携をして幾つかの法案を成立させたこともあります。ですから、そういう意味で出されればいいんじゃないですかと言ったわけで、何が盗人たけだけしいことでしょうか。当然のことを申し上げたと私は思っております。

 その上で、国家戦略室について、局に引き上げることを含む法案については現在衆議院で継続審議になっておりまして、まずはその審議をしかるべき国会で継続をさせていただきたい、このように思っております。

江田(憲)委員 それでは、今出されている国家戦略局の法案を、引き続き実現、成立を目指して努力されるという理解をさせていただきました。

 念のため確認をいたしますけれども、我々みんなの党は、国家戦略局賛成の前提としましては、まず、総理直属にしていただく、国家戦略局長そのものを大臣にして、閣僚にしていただく、それで、人事権をしっかり持って、国家戦略局の局員の人事権をしっかり持つ責任ある大臣が国家の基本方針を決めていただくというのが一つ。

 二つ目に、今、政府案は、国家戦略局長と国家戦略官でしたか、このお二人だけが政治家、議員任用ということになっておりますけれども、これは本当に重要な、官邸主導、政治主導のかなめの組織でございますので、ぜひ、もう少し国会議員や民間人を含めた外部任用をしていただく修正をしてほしい。

 そして三点目に、これが一番肝心かなめなんですけれども、やはり、私、個人的なことを申し上げて恐縮ですけれども、橋本政権で経済財政諮問会議を創設するときに、経済財政の財政の二文字を入れるのに大変苦労したんですよ。財務省の猛反対、経済諮問会議にしろ、しろと言われて、三度ぐらい橋本総理が事務局に突き返した結果、やっと入った、「予算編成の基本方針」という言葉ですね。

 とにかく、政治主導というのは、総理も御案内のように、人事と金を握る、これが組織管理の要諦ですからね。その人事の部分は内閣人事局、きょうは議論しません。そして、金を握る部分が、自民党政権下では経済財政諮問会議、そして民主党さんが目指されるのが国家戦略局。ですから、国家戦略局の今の所掌事務、これでいいんですよ。予算編成の基本方針の企画立案及び総合調整、これが一番肝中の肝でございますから、これはしっかり残した上での今度の継続審議の法案審議ということで、念のためでございます、確認させていただきたいと思います。

仙谷国務大臣 現在この衆議院で継続法案になっております政治主導確立法案でございますが、この法案は、国家戦略担当の官房副長官あるいは内閣総理大臣補佐官の増員、あるいは内閣政務参事等の設置、行政刷新会議や税制調査会の設置など、内閣の機能強化のための重要な内容を含んでいるわけであります。

 この法案を今回のこの国会でもぜひ継続審議としていただいて、本法案を基礎にして、各党において、まさに国家戦略の問題でございますので、御議論をいただきたいというふうに考えております。

 そこで、先ほどから江田議員の御提案、お話がございましたが、これは一度、江田さんも、内閣総理大臣首席でしたか、政務秘書官でしたか、官邸をよく知悉、御存じになっておるわけですから、今の江田議員の構想を、戦略局長を大臣にするという前提で、それは内閣府に置くのか、内閣官房の組織なのか、そして、総理直属といったときに、その基本方針についても、指示は、総理の、つまり直属機関として総理のいわば総合調整機能を、委任を受けるのか代行するのかというふうな、非常にややこしい、国家行政組織法、内閣法、内閣府設置法とかですね、私もまだ一〇〇%理解できているとは思いませんけれども、ここは肝の肝なのか、わざとこういうふうにわからない法制度になっておるのかよくわかりませんが、それもわからないぐらい複雑怪奇でございまして、ここの整理も含めて、一度、江田さんの方でその種の法案をつくって御提案をいただければ、私の方でも真剣に検討をさせていただきます。

 ただ、先ほど申し上げましたように、政務参事等々、民間からそういう有能なスタッフとしてそこの戦略室あるいは戦略局に来ていただく場合の、これは特別職、ある意味での特別職として雇い込まなければ、お願いしなければいけませんから、その枠が決定的に不足しているというのが、現在の戦略室を構成する場合も大変な悩みの種でありますので、そこは政治主導確立法案をひとつ成立させる方向でお考えいただきたい、そう考えております。

江田(憲)委員 我々は、秋の臨時国会に国家戦略局法案というものを出しますので、今、仙谷官房長官から真剣に検討するという御答弁をいただきましたので、ぜひ御協議をいただきたいというふうに思います。

 今の仙谷大臣の御発言で、私の私見を申し上げれば、経済財政諮問会議というのは調査審議機関ですから内閣府でよかったんですよ。しかし、国家戦略局というのは、れっきとした所掌事務を持つ、決定権を持つ、企画立案と総合調整を持ちますから、これは当然、内閣官房に置く。それから、総理大臣がトップです。ですから、総理大臣のリーダーシップを分担管理する、国家の基本方針というところで補佐する役割として位置づければいいと思いますけれども、またその議論はさせていただきたいと思います。

 きょうは時間がありませんから、ちょっとパネルを出していただきたいと思います。

 午前中の質疑でもございましたが、六月二十二日、参院選に突入する直前に退職管理基本方針というものが閣議決定をされまして、これは、視聴者の皆さんへもどういう制度かと申し上げますと、このパネルを見ていただくとおわかりのように、まあこれは反論があると思いますから後で反論してください。私からすれば、みんなの党からすれば、天下りの全面解禁だというような方針なんですね。

 まず、これは基本的に天下りは表向き禁止するということが前提になっております。定年まで官僚の人には勤め上げていただこうということが前提になっておりますから、ですから、定年までどうするかというと、まず、私が申し上げた、公的法人と書いてありますが、この現役出向。これは、独立行政法人であったり特殊法人であったり、JR各社であったり道路会社であったり日本郵政であったり、政府関係法人ですね、こういったところに今回拡大をされて現役出向が可能になった。これは局長クラス、部長クラスの幹部クラスでございます。定年間際の幹部クラスでございますね。

 それから、その下の人事交流というのは、今、人事院で検討されておりまして、その案文は私も今ここに持っておりますけれども、これは八月中旬を目指して今調整をされているようでございますが、今まで、癒着が生じるとか、行政権限の強い幹部クラスを民間に交流させちゃうと行政がゆがめられるだとか、そういった危険で禁止をしていた審議官、部長クラス、中二階と言っていますが、そのクラスを民間会社に大手を振って行かせよう、こういう検討を今しているわけですね。

 おまけに、最後に、高級窓際ポスト、これはわかりやすさのために私がちょっと変えましたけれども、正式に言うと専門職スタッフ、高位の専門職スタッフということで、これは何を隠そう、局長や審議官、本来ならば肩たたきでやめていただく、そして従来なら天下りさせていたそういった方々を、こういう窓際ポストをつくって、私が聞いているところによりますと、千四百万、千五百万円クラスの年収を与えて定年まで処遇をしようと。

 今、専門職スタッフというのはございます。この専門職スタッフというのは実は、総務課長とか、もうワンランク、ツーランク下の人たちが座る専門職スタッフでございまして、大体八百万から一千万クラスの専門職スタッフと言われております。

 こういう三つの対策を講じることによって、表向き天下りを禁止したと言いながら、実際は形を変えた天下りにしていこう、これが裏の意図でございます。

 そして、では定年後はどうするんだ、定年後は民主党政権は天下りを禁止すると言っている。ここがまた非常に巧妙なシステムができておりまして、結局、裏下りを容認する。要は、明示的な役所のあっせんが介在すると天下りになりますから、いや、役所はあっせんをいたしません、しかし、OBが呼び寄せる、官僚のOBのネットワークが後がまに呼び寄せる、こういった裏下りは実際上容認する。そういうことで、もうこれは完全に従前の天下りがすべて実質的にできるようにしているわけですね。

 私が変なことを言っているという誤解を受ける向きもありますので、例えば、私がこの予算委員会で、損保協会の副会長、これはもう十代以上、大蔵官僚が座っているんですよ。こんな十代以上、指定席のように同じ役所が座っているこの役人ですら、この春の予算委員会で調査すると政府は答弁したにもかかわらず、その後、単純に金融庁の担当官に聞きましたと、そうしたら、坂さんという日本郵政の副社長に座った人が、後がまとして元国税庁長官がいいんだと推薦をして、はい、それは人物、識見は確かなものですといって座ったというのが実情だという答弁もありました。

 これは、まさに裏下りなんですね。そして、民主党がマニフェストで約束しているように、こういった、まあ民主党さんは裏下りと言っていません、隠れた天下りは引き続き根絶するように努めてまいりますという記述もあります。こういった問題について、ぜひ、菅総理、反論があるのなら反論をしていただきたいと思います。

玄葉国務大臣 まず、民主党政権になって、先ほども申し上げましたけれども、天下りのあっせんをやめたんです、年二千五百人。これは、率直に申し上げて、民主党政権でなければできなかったことだというふうに思っています。そして、いわゆるわたり、こういうものも今や存在しないというふうに申し上げてもいいと思います。

 そこで、一緒に考えていただきたい、みんなの党も、自民党さんも、公明党さんも。こういった状況の中で、問題は出口ですね。出口をどうするか。つまりは、人事がある意味滞留するわけです。そういう中で、そういった人たちをどうするのかということであります。

 生首をばさっと切るのか、あるいは、例えば退職金をどんどん積み増して希望退職のようなものを募るのか、あるいは、その一環として、現役の人事交流を行っていく、これは決して天下りじゃありませんよ、現役の人事交流ですよ、そういったことを、定年まで働けるような環境に当然一定程度はしていかなきゃいけないだろう。そういう中で生まれているのが独立行政法人への現役出向ということだと思いますし、これは必ずしも、当然、能力がなければ役員でなくたっていい。

 また、あわせて申し上げれば、このことで不要な独法が温存されるということは絶対にありません。それは、蓮舫大臣のところで改めて独法、公益法人の抜本見直しをしておりますので、決して誤解のないようにしていただきたいというふうに思います。

 先ほどおっしゃった、いわゆる高級窓際という話も、まあ余りよい表現ではないと思いますけれども、この専門スタッフ職も、いわば出口をどうするのかという中で、私は、必ずしも高級の専門職にみんなが行く必要はないと思います。まさに、能力次第でそういうものを活用していくということだと思います。

 能力主義、成績主義を徹底させていく、効率的で質の高い行政サービスを実現していく、そういう公務員制度改革にしていきたいと思いますので、これは、みんなの党に限らず、何とか実現をしたいので、各党とも一緒に考えていただきたい、そう思います。

江田(憲)委員 天下りをなくしました、とんでもないですよ。鳩山政権下で、三月までに千二百人以上の役人が肩たたき、退職勧奨を受けて、二人しか拒否していないんですよ。では、あとの人は唯々諾々とやめていったんですか、そんなことあるわけないでしょう。これはちゃんと政府の答弁ですよ。千二百人以上の人が肩たたきを受けているんですよ。民主党が本来禁止すると言っていた肩たたきを受けて、二人しか拒否していないんですよ。それ以外が全部すごすごとやめていった、そんなことがもう本当に信じられるわけないじゃないですか。

 それから、国家公務員の人件費二割カット、これでどうなるんですか、人件費は。こんな窓際ポストをつくったら、かさばるんでしょう、やめさせないんですから。どれだけこれで人件費アップするんですか、二割削減はいつやるんですか、お答えください。

玄葉国務大臣 例えば、今まで、かつてだったらどうなっていたか。その審議官は、まさに独法に役員となって、OBとなって天下りするわけです。その結果どうなったか。車つき、秘書つき、部屋つき、そういう形で、いわゆる実質人件費はどんどん膨らんできましたよ。それをまさに、ある程度給料を抑制しながら、専門スタッフ職としてその能力に応じて頑張っていただく、それは当然あってもよい姿だ、そう思います。

江田(憲)委員 そんなこと聞いてないんですよ。要は、なぜ天下りを禁止しなければいけないか。それは、役人OBが天下って、癒着が生じて行政をゆがめる可能性がある。天下りをさせるために無駄な法人を維持する可能性がある。こんな、局長だ、部長だ、審議官が現役で天下ったら、出向したら、物すごい影響力ですよ。癒着はもっと拡大しますよ。もっと行政はゆがめられますよ。天下り以上にひどいことをやっているという認識をまず持っていただかなければいけませんよ。

 それから、私は、民主党が国家公務員の人件費二割カットを約束していないんだったら、こんなに厳しいこと言わないんですよ。どうぞやってください。自治労や国家公務員の労働組合に支援されている政党なんですから、どうぞ支持母体を勘案して、配意してやってください。工程表を示してほしいんですよ。これでまた、人件費二割減どころか、二割アップどころじゃないですよ、増なんですよ。どうやって国家公務員の人件費二割カットするのか。我々みんなの党は、もう法案も準備していますよ。とにかく労働基本権を公務員に早く付与してください。それで民間並みのリストラ、人員整理ができるようにしましょう。人を減らさなきゃだめなんですよ、こんな滞留させるんじゃなくて。

 そしてもう一つは、給与法を改正してください。今みたいな年功序列でどんどん上がる右肩上がりの給与体系じゃなくて、できのいい人には二倍、三倍給料上げてもいいんだけれども、できの悪い人には三分の一、四分の一給料を下げられる、総体的には給料を下げる、こういったのをいつやるんですか。答弁してください、いつやるのか。ぜひ工程表を示してください。

原口国務大臣 江田さんとはいろいろなところで議論をしてきましたから、虚心坦懐に。

 今回の新規採用抑制の方針によって、約三千人、新規採用を抑制しました。これをずっと平成三十七年度まで十五年継続すると、約千七百億円の人件費の減になるんですね。やはり、団塊の世代があるので、この世代の人たちの生首を切るわけにいかない。だから、退職金ということをやらないで、もう一回もとへ戻ってくるという中で、現役出向ということでやっているわけです。そして、一・一兆円をどのように削減するか。ことし一千四百億削減することができました。しかし、自然減だけではこれは賄えません。

 今、江田さんがおっしゃったように、給与体系を変える。それから、出先を、大体二十万人ぐらいいらっしゃいますけれども、この出先を原則廃止して地方へ移管する。それから、これは浅尾さんがよく私に質問をしてきているわけですけれども、共済制度そのものにもやはり踏み込む必要がある。そういったものをテーブルに出しますから、この給与法を改正するときには、ねじれた国会で野党の皆さんの御協力もいただかなければできませんので、ぜひ、そういう中でお知恵をいただければというふうに思います。

鹿野委員長 江田君に申し上げます。

 江田君の質問時間はもう既に来ておりますので、含んでください。

江田(憲)委員 もうこれで最後にしますから。

 今の制度があるから生首が切れないんですよ。しかし、皆さんがリストラ計画を立てたJALだって生首切るんでしょう。中小企業は、倒産したら退職金ももらえずに生首切られるんですよ。今財政事情が厳しいとおっしゃるんなら、早く生首が切れるような、リストラできるような法改正をしてくださいということ。

 それから、新規採用を抑制する、こんな、局長や部長クラスの年収の数分の一しかない人を幾ら減らしても、人件費はふえるんですよ。今、若手官僚は怨嗟の声が上がっていますから、何でこんな頭でっかちになるようないびつな組織構造にするんだと。どんどん若手が減って、頭でっかちのお年寄り官僚がふえて、こんな組織は機能しないんですから、ぜひ撤回していただくことを最後に求めまして、私の質問にさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

鹿野委員長 これにて江田君の質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

鹿野委員長 この際、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。この際、その補欠選任を行いたいと存じますが、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鹿野委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に富田茂之君を指名いたします。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五分散会


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