衆議院

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第7号 平成22年11月9日(火曜日)

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平成二十二年十一月九日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 中井  洽君

   理事 岡島 一正君 理事 川内 博史君

   理事 城井  崇君 理事 小林 興起君

   理事 武正 公一君 理事 中川 正春君

   理事 塩崎 恭久君 理事 武部  勤君

   理事 富田 茂之君

      阿知波吉信君    井戸まさえ君

      石田 三示君    石田 芳弘君

      打越あかし君    小野塚勝俊君

      金森  正君    金子 健一君

      川島智太郎君   菊池長右ェ門君

      黒田  雄君    小山 展弘君

      阪口 直人君    高井 崇志君

      高野  守君    高邑  勉君

      竹田 光明君    橘  秀徳君

      玉城デニー君    津島 恭一君

      豊田潤多郎君    長島 一由君

      早川久美子君    福田 昭夫君

      藤田 大助君    水野 智彦君

      皆吉 稲生君    森本 哲生君

      山口 和之君    山口  壯君

      山田 良司君    湯原 俊二君

      横粂 勝仁君    渡部 恒三君

      赤澤 亮正君    小里 泰弘君

      金子 一義君    金田 勝年君

      小泉進次郎君    佐田玄一郎君

      齋藤  健君    菅原 一秀君

      高市 早苗君    野田  毅君

      馳   浩君    町村 信孝君

      山本 幸三君    石井 啓一君

      佐藤 茂樹君    遠山 清彦君

      笠井  亮君    高橋千鶴子君

      阿部 知子君    柿澤 未途君

      山内 康一君    下地 幹郎君

    …………………………………

   内閣総理大臣       菅  直人君

   総務大臣

   国務大臣

   (地域主権推進担当)

   (地域活性化担当)    片山 善博君

   法務大臣         柳田  稔君

   外務大臣         前原 誠司君

   財務大臣         野田 佳彦君

   文部科学大臣       高木 義明君

   厚生労働大臣       細川 律夫君

   農林水産大臣       鹿野 道彦君

   経済産業大臣       大畠 章宏君

   国土交通大臣

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当) 馬淵 澄夫君

   環境大臣

   国務大臣

   (防災担当)       松本  龍君

   防衛大臣         北澤 俊美君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     仙谷 由人君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (消費者及び食品安全担当)

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)   岡崎トミ子君

   国務大臣

   (金融担当)       自見庄三郎君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)

   (科学技術政策担当)   海江田万里君

   国務大臣

   (「新しい公共」担当)  玄葉光一郎君

   国務大臣

   (行政刷新担当)     蓮   舫君

   内閣官房副長官      古川 元久君

   外務副大臣        松本 剛明君

   財務副大臣        五十嵐文彦君

   厚生労働副大臣      小宮山洋子君

   農林水産副大臣      篠原  孝君

   農林水産副大臣      筒井 信隆君

   経済産業副大臣      松下 忠洋君

   外務大臣政務官      山花 郁夫君

   財務大臣政務官      吉田  泉君

   財務大臣政務官      尾立 源幸君

   厚生労働大臣政務官    岡本 充功君

   経済産業大臣政務官    田嶋  要君

   防衛大臣政務官      松本 大輔君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    西村 泰彦君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    西川 克行君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    鈴木 久泰君

   参考人

   (日本銀行副総裁)    山口 広秀君

   予算委員会専門員     春日  昇君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月九日

 辞任         補欠選任

  糸川 正晃君     小野塚勝俊君

  打越あかし君     皆吉 稲生君

  金森  正君     藤田 大助君

  高邑  勉君     石田 三示君

  橘  秀徳君     高井 崇志君

  津島 恭一君     菊池長右ェ門君

  早川久美子君     横粂 勝仁君

  渡部 恒三君     山口 和之君

  小里 泰弘君     高市 早苗君

  馳   浩君     町村 信孝君

  遠山 清彦君     石井 啓一君

  富田 茂之君     佐藤 茂樹君

  笠井  亮君     高橋千鶴子君

  山内 康一君     柿澤 未途君

同日

 辞任         補欠選任

  石田 三示君     井戸まさえ君

  小野塚勝俊君     糸川 正晃君

  菊池長右ェ門君    津島 恭一君

  高井 崇志君     橘  秀徳君

  藤田 大助君     金森  正君

  皆吉 稲生君     打越あかし君

  山口 和之君     渡部 恒三君

  横粂 勝仁君     早川久美子君

  高市 早苗君     小里 泰弘君

  町村 信孝君     赤澤 亮正君

  石井 啓一君     遠山 清彦君

  佐藤 茂樹君     富田 茂之君

  高橋千鶴子君     笠井  亮君

  柿澤 未途君     山内 康一君

同日

 辞任         補欠選任

  井戸まさえ君     阪口 直人君

  赤澤 亮正君     馳   浩君

同日

 辞任         補欠選任

  阪口 直人君     高邑  勉君

同日

 理事富田茂之君同日委員辞任につき、その補欠として富田茂之君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成二十二年度一般会計補正予算(第1号)

 平成二十二年度特別会計補正予算(特第1号)

 平成二十二年度政府関係機関補正予算(機第1号)


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     ――――◇―――――

中井委員長 これより会議を開きます。

 平成二十二年度一般会計補正予算(第1号)、平成二十二年度特別会計補正予算(特第1号)、平成二十二年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑を行います。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として警察庁警備局長西村泰彦君、法務省刑事局長西川克行君、海上保安庁長官鈴木久泰君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

中井委員長 この際、政府から発言を求められておりますので、これを許します。海上保安庁長官鈴木久泰君。

鈴木政府参考人 海上保安庁長官の鈴木でございます。

 私どもの行いました中国漁船衝突事件のインターネット映像の調査につきまして、御報告いたします。

 まず、十一月五日未明にこの流出を私どもが察知してから、直ちに私も含め関係幹部、登庁いたしまして対応に当たりました。その日の朝の沖縄第一便、六時二十五分の便で担当二名を派遣したのを初め、八名の担当官を現地へ派遣いたしまして、土日も返上し、深夜まで鋭意調査を行いました。

 その結果、判明した事実といたしましては、インターネットに流れた映像は、石垣海上保安部が那覇地検からの要請により、事件当時に撮影した映像から必要な部分を編集し、那覇地検に提出した映像とほぼ同一の映像でありまして、その編集した映像は検察当局と海上保安庁において保管されていたことがわかりました。

 CDで保管しておったわけでありますけれども、これの保管状況、あるいはそれに関連するパソコン等の取り扱い状況等について徹底的に調査を行いましたが、現在までのところ、不正アクセス等の問題となる事実は確認できておりません。

 特に、パソコンのデータの解析というのには大変膨大な作業を要しますので、私どもの内部的な調査ではもうこれは限界であるということを判断いたしまして、昨日十一時ごろ、被疑者不詳のまま、国家公務員法違反、不正アクセス禁止法違反等の容疑で、警視庁及び東京地検に対し、海上保安庁本庁から私の名前で告発をさせていただきました。

 今後は、真相究明のため、捜査に海上保安庁として全面協力をして進めてまいるということとしております。

 以上でございます。

    ―――――――――――――

中井委員長 昨日の石破茂君の質疑に関連し、町村信孝君から質疑の申し出があります。石破君の持ち時間の範囲内でこれを許します。町村信孝君。

町村委員 自由民主党の町村でございます。

 十月二十四日の補欠選挙を経てまた戻ってくることができましたので、ひとつよろしくどうぞお願いをいたします。(拍手)

 委員長からも拍手をいただいて、大変恐縮をいたします。本当に、全国各地の同志の皆さん方の支援のありがたさというものをしみじみと感じております。

 先般、十一月四日の本会議の答弁で、菅総理は、補選の結果は一つの民意のあらわれである、こういう御答弁を伊吹議員の質問に対してお答えになっておられますけれども、どういう民意のあらわれというふうに受けとめておられるか、率直な感想をお聞かせいただきたい。

菅内閣総理大臣 まずは、補欠選挙での当選おめでとうございます。我が党は若い公認候補を立てて戦ったわけでありますが、党としては残念ながら、我が党の公認候補は落選をするという結果となりました。この選挙の結果は一つの民意のあらわれだと私も思っております。

 どういう民意かという御指摘でありますが、いろいろな要素があったと思います。いろいろな要素の中には、もちろんいろいろ御指摘をいただいている政治と金の問題等もありますし、また、それ以外の現状もあると思います。また、もちろん、町村議員は大変長年の政治活動をその地域でやっておられた。そういう知名度の高さに対して我が党の候補者がまだそうした知名度が不十分であったとか、そういったことももちろんすべてが重なり合ってこういう結果が生まれたというか、北海道五区の皆さんが判断をされた、このように認識をいたしております。

町村委員 まず、政治と金の話を総理からも今御答弁がありました。

 私は、すべての街頭演説あるいは個人演説会で、この政治とお金の話を真っ先にいたしました。これは、そもそも何で補欠選挙になったかというと、民主党の陣営のまさに悪質な選挙違反の結果、議員辞職という事態になったわけでございます。六月に札幌高裁でこの判決がありまして、何と言っているかというと、要するに、労働組合の活動が大規模、悪質、常習的な犯行である、ここまではっきり判決で言っているんですね。

 これは、私は、まさに民主党の体質そのものに由来する部分ではないか、こう思うのでありますけれども、こうした判決を踏まえて、総理として、いかなる改善というか反省というか、どういう対応をこれで考えられますか。労働組合と民主党の癒着の問題、これはいろいろな新聞の社説等々にも最近非常に書かれております。労働組合の意見によって政策がゆがめられているという意見すら相当出されているんですけれども、その辺について総理はどうお考えでしょうか。

菅内閣総理大臣 今回の補欠選挙が、我が党小林議員の選挙違反によって辞任をしたことに伴って行われた補欠選挙であることは、もちろんよく承知をいたしております。そういった中で、この北教組の選挙をめぐる一連の問題、裁判としてもそういった事案が認められることは大変遺憾であったと思っております。また、連合北海道も、さきの小林元議員の辞職を受け、改めて事件に関して遺憾の意を表明し、連合組織として法令遵守の徹底を図りたい、このように表明していると承知をいたしております。法令違反に対して厳しく対処することは当然のことであります。

 その上で申し上げれば、いろいろな団体がいろいろな形で政党や候補者を支持したり応援することは、これは与野党含めてよくあるわけでありまして、それらの団体が法令の認める範囲内で御支援をしていただくことは、政党、候補者としては当然大変ありがたいことだ、このように認識をいたしております。

町村委員 ただ、悪質で、大規模で、長年やってきた常習的犯行であると言われているんですよ。長年やってきているんです。そういう体質そのものにみずからメスを入れるということを民主党はなさらないで、法令の範囲で活動する、そんなのは当たり前のことで、そうした民主党の体質そのものが今問われているんだという認識をしっかり持っていただきたい。

 昨今の小沢一郎氏への対応、党内の処分もできない。あるいは、この一年にわたって民主党ぐるみで小沢氏をかばってきたじゃないですか、現実に。私は、予算の野党筆頭理事として、一年間求め続けてきたんです。すべて民主党の陣営によってブロックされているんですよ。だから、これは民主党ぐるみの、まさに隠している、疑惑隠しをやっているんだ、そういう認識を民主党の皆さん方もやはり持ってもらわないといけないし、代表もそのことをしっかりそういう認識を持たなければ、この政治とお金の問題の根源的な解決にならないんですよ。そのことを私は強く申し上げたい。

 また、総理本人の指導力の発揮、きのうたくさんの議員が指摘をしましたけれども、相変わらず岡田さん任せ。このこともまた、岡田さんの陰に隠れてまた逃げている菅総理という印象だけを国民に与えているということが、私は、総理大臣が非常に今存在感が薄いと言われるゆえんであるということをあえて御指摘申し上げたい。

 そして、私はもう一つ、すべて秘書の責任にするというこのやり方、小沢さんもそう、鳩山さんもそうですよね。全部秘書の責任にする。今回、公明党が議員立法で、秘書の責任は議員の責任であるという議員立法を提出しております。私も賛成だし、自民党も賛成だし、まあ民主党も多分賛成をしておられる。これはぜひこの国会で成立をすべき法律だ、こう私は考えておるわけであります。

 その際に、私は、仮にこの法律がありとしたときに、当然のことながら、小沢さん、鳩山さんは秘書の監督不十分ということで議員本人に罰則が適用されるものである、こう考えますけれども、総理も同じ考えでしょうね。

菅内閣総理大臣 まず、我が党が例えば小沢議員のことについて何も対応していないという趣旨のことを言われました。

 しかし、九月に行われた代表選挙で私はクリーンでオープンな政治ということを申し上げて、党の中で多数の皆さんから支持を得て再選をさせていただきました。野党の皆さんはそれが理由であったということをよく言われているわけで、もちろん代表選挙もいろいろな要素がありますから、いろいろな主張の中で、あるいはいろいろな経緯の中で再選をいただいたわけでありますけれども、少なくとも、我が党としてそういう姿勢を私が主張したことを多くの人が支持されたということ、これは明らかなことでありまして、一切そういうことが行われていないという指摘は、私は、必ずしも当たっていないということを国民の皆さんの前で明確に申し上げておきたいと思います。

 そして、国会に関連することについて、私が信頼をして幹事長にお願いした岡田幹事長に、今、小沢さんのことについても、しっかりと御本人の意向を聞きながら対応していただいているわけでありまして……(町村委員「岡田さんのことは聞いていないよ」と呼ぶ)何もしていないという指摘に対してお答えをいたしているところであります。

 今御指摘のありました、公明党が主張されている政治資金規正法の改正案については、私どもも、その内容について大変傾聴に値するものが入っていると思っております。ただ、これはしっかり議論をいたしませんと、結果として過大な影響を及ぼすこともあるので、しっかり議論をするべきだ、このように思っております。

 今、町村議員から言われたのは、遡及適用という意味でおっしゃったのかなとも思いますが……(町村委員「違う、適用の遡及じゃない」と呼ぶ)そうでないんですか。遡及適用でないとすると、どういう意味で言われたのかちょっと私には理解できませんが、遡及適用というのは、一般的には刑法についてはなかなか難しいのではないか、このように思っております。

町村委員 遡及適用なんて、そんなばかなことを言っているんじゃなくて、仮にこの法律がありとしたときに、当然これが適用されることになるんでしょうねということを申し上げているのであって、仮に法律ができているという前提でお考えくださいと言ったんです。

 こうやって、みずからがクリーンでオープンなことを代表選挙で言って、それで選ばれたから民主党がクリーンでオープンだなんて、今だれもそんなことは思っていないんですよ。まことにダーティーで、すべて一年間にわたって小沢さんを隠し続けて、こういう政党であるということは、いいです、国民がもうすべてわかっておりますから。そのことをしっかりと総理みずから認識をして、みずからのことをしっかり振り返って、民主党に今批判が向いているんですから、だったら小沢さんを、この委員会で直ちに証人喚問の決議をしようじゃありませんか。

 委員長、そのことをぜひお取り計らいいただきたいのであります。

中井委員長 引き続き理事会で協議いたします。

町村委員 もう一つ、私が補欠選挙で訴え続けたのは、本当に私たちは民主党がいい政策を実行しようというときには賛成をする、しかし、基本的な政策で誤った政策があるときには、それを正していくのが我らの役目であると。

 例えばどういう面で今過ちがあるか。外交その他いっぱいありますが、まず、地元を歩いていて皆さんが言うことは、とにかく景気が悪過ぎるということです。これはひとり北海道だけではない。菅さんのいる東京では余りお感じにならないかもしれない、あるいは野田財務大臣の千葉でもお感じにならないかもしれませんけれども、大体、この間参議院選挙で一人区で勝ったようなところはみんなそうです、非常に景気が悪い。

 この実感をどうも持っておられないから、私は、今回の補正予算にしてもいろいろな面で大変な手おくれなり対策の間違いがあるんじゃないか、こう思うんです。私はいろいろな方々と話して、本当に、町村さん、もう来年この工場に来てもらっても多分ないだろうな、そういう悲痛な声ばかりなんですよ。

 例えば北海道は、いい悪いは別にしてやはり公共事業関連、それから観光と農業、もちろんほかにもあるけれども、この三本柱なんですね。公共事業、どうでしょうか。予算で一八%削った。これは、菅総理の言葉、先般の答弁をかりると、これはまさに改革の第一歩として評価をしている、このように胸を張って言われた。しかし、地元はそんなものじゃないんですよ。予算を一八%削れば、発注額で大体四割削られる。土地改良なんかは五割も削られた。これでどうやって北海道の経済がよくなるんですか、どうやって北海道の雇用が守られますか。私は、この面で本当に認識がされていない。

 コンクリートから人へと言うんでしょう。しかし、最近だれも、コンクリートから人と民主党の皆さんも言わなくなったね。これは一体どういうことなのか。

 私は、そうやって公共事業を二十二年度予算で大きく削ったことへの反省というものが本当に何もないのかどうか、まずそのことを総理に伺いたい。

菅内閣総理大臣 私は、現在の日本の経済の状況がなかなか成長軌道には乗り切れないでいて、リーマン・ショック以降持ち直しはしてきているものの、現在足踏み状況にあるというのが、これは海江田大臣がいつも表明されていることであります。

 ただ、そのことと、今一八%をカットしたことを指摘されました。町村さんも、私と余り違わないぐらい長く議員をされ、特に長い間政権の中におられたわけでありまして、それでは、日本の成長がこの二十年間とまった中で、何度となくいろいろな景気対策をやられてきたじゃないですか。一時的にそれはカンフル的な効果があったかもしれないけれども、結果としては、財政赤字を積み増した割には、残念ながら、この二十年間、成長は事実上とまってきているわけです。そういう根本的なことをどうしたらいいかということを私は今回の所信表明でも申し上げているんです。

 新成長戦略という、本格的な成長への路線へ乗せるためにいかにするかということで、五つの方向性を出したわけであります。それがグリーンイノベーションであり、あるいはライフイノベーションであります。

 そして、公共事業について、本当に必要なものは、私は当然、今でもしっかりと行うべきだと思います。しかし、八〇年代から行われた公共事業の中で、確かにお金が流れるという意味での短期的な効果はあったけれども、それがその後の経済成長につながらない、あるいはほとんどつながらなかったものが、例えば本州四国の三本の橋とか、例えば地方空港の中でもほとんど効果のなかったものもあるわけでありまして、そういう根本的な見直しを政権交代の中で行ったわけであります。それが公共事業の一八%のカットという形であらわれたわけでありまして、まさにそのことを、私は、国民の皆さんは確かに目の前のことで厳しいところもあるけれども、とにかくこれからの日本を成長軌道に乗せられるかどうかで、ぜひ町村さんにもちゃんとした対案を出してみていただきたいと思います。

町村委員 質問に端的に答えていただきたい。長広舌過ぎます。

 まず、私たちは、昨年の五月、補正予算を組みました。それをごらんください。これは、私が実質的な取りまとめ責任者をやったから、中身をだれよりも知っております。それと、今皆さん方が言っている新成長戦略、どこが違いますか。新成長戦略といったって、何一つ新ではないんです。何一つ新ではないんです。いいですか。

 ただし、いろいろなことをやらなきゃいけないのはわかります。しかし、残念ながら、菅総理、あなたは今庶民の声が全然耳に入っていないということもよくわかりました。現実に困って、倒産しようかとしている、そういう人たちが今ちまたに、みんな心配している、何とかしてくれという声があることを全く無視して、新成長戦略を理解している国民が今どれだけいますか。百人に一人もいませんよ。何にも心に響いていないんですよ、あなた方の声は。そのことをまずしっかりと申し上げたい。

 国土交通大臣に伺います。

 北海道は、先ほど申し上げたように大変な公共事業の削減です。来年度、よもや一割カットという、政府の大方針か何か知りませんけれども、そういう機械的なことはやらないでしょうね。そして同時に、北海道いじめともいうべき北海道局の廃止であるとか北海道特例の廃止とか、こういうことはやらないでしょうね。明確にお答えください。

馬淵国務大臣 北海道の予算ということでございますが、予算編成に関しましては、十二月末までの予算編成過程の中で議論させていただきたいと思っております。

 そして、今委員の御指摘の北海道は大変厳しい状況ということでございますが、これも昨年、平成二十一年十一月十七日の閣議報告で予算重点方針に定めました。その中で、「公共事業・ハコモノに偏重した予算の使い方を根底から見直す。」ということに変えております。さらに、この補正予算でも、閣議決定にて新成長戦略の前倒しということで、今回、生活の安心への寄与という観点から五百四十六億計上しているということでございまして、私どもとしては、北海道に対しても必要な社会資本整備は行うと考えております。

 なお、御指摘の北海道特例でございますが、これに関しましては、北海道開発法一条に定めてある目的、資源の総合的な開発を推進することが国の施策として重要であるという、この方針を私どもしっかりと堅持をして、本州よりも高い国庫補助負担率というものが認められているということも十分に勘案しながら、食料自給、こうした供給力の強化、これも北海道特例の極めて重要な要素であるということを認識しておりますので、引き続き特例は維持をする必要がある、このように考えております。

町村委員 ぜひ国交大臣に頑張っていただきたいと思います。

 そしてもう一つ、国交大臣、北海道は、さっき言ったように観光も非常に大きな要素なんですね。北海道新幹線、あるいは福井方面の新幹線、長崎の新幹線、ここだけ残っているわけですね。私どもが政権にいたときは、一昨年の十二月に、札幌延伸を含めて、福井の敦賀延伸を含め、長崎延伸を含めて認可をおろす予定にしていたけれども、政権がかわったからこれが全部とまっちゃったわけです。

 この年末の予算編成の中で、国交大臣、これは北海道の、そして各地域の振興のために新幹線が必要であるという御判断の上、この年末の予算編成期でこれについて正式な認可をおろす、そういうことをぜひ頑張って実現していただきたい。

馬淵国務大臣 整備新幹線につきましては、北海道のみならず、未着工区間に関しましては、北陸あるいは九州長崎ルートもございます。これら未着工の三線区に関しましては課題を一つ一つ解決していく必要がある、このように考えておりまして、その詳細な検討を行っていく、我々は今こうした取り組みを行っております。

 着工に当たっては、基本的な条件をまず満足していくということが重要であると考えておりまして、これは五点挙げております。いわゆる財源の見通し、収支の採算性、そして投資効果、またJRさんの同意、さらには並行在来線の経営分離についての自治体の同意とございます。

 こうした観点から、まずは、私どもとしては、これはことし八月二十七日に整備新幹線問題検討会議において方針を確認いたしました。整備効果が有効に発現し得るよう、全線の具体的な将来像を踏まえて検討するということでございますので、この五条件を満足するという状況において着工というものを確認してまいりたいと思っております。

 北海道は、先生御指摘のように、我々としても、観光地として大変高いポテンシャルを有していると考えております。その北海道を、今後、新成長戦略の中でいかに有効にその潜在的なポテンシャルを発現させていくかということについては、徹底した議論を行ってまいりたいというふうに考えております。

町村委員 今のところ、北海道新幹線は函館どまりなんですけれどもね。まさに経済的な効果等を含めれば、これは札幌まで延ばさなきゃ意味がないということは大臣ならすぐおわかりのとおりだろうと思いますので、ぜひ、札幌延伸、あるいは敦賀、長崎、こうしたものについてもしっかりお取り組みをいただきたいと思います。

 そして、もう一つの柱の農業。これは後ほど赤澤委員の方からTPPの話で言われると思うけれども、菅総理は雇用が大切だと言った。農業の関係で、北海道だけをとっても二兆円の被害が出ると言われているんです。これで一体どうやって北海道の農業が守れるのか、日本の農業が守れるのか、そこから雇用が減っていっていいのか、こうしたことについてもっと真剣な議論をしていただきたい。私どもはちなみに、TPPに重大な疑問を持っているということを申し上げておきます。

 そしてもう一つ、私は、先ほど申したように、麻生内閣時代の景気対策を取りまとめて、物すごくいい効果が二つだけあったと思って、抜群の効果があったというのがエコポイントと地域活性化交付金なんです。これは非常に各自治体、特に地域活性化交付金は喜ばれた。一兆円について、もうちょっと金額があればなという声をたくさん聞きました。ですから、今回自由民主党が、きのう石破政調会長が言われたように、これを一兆五千億要求すべきである、これが自治体の声です。

 地域商品券みたいなこととか、学校でパソコンを買ったり、地デジ対応のテレビを買ったり、ちょっとした修理をやったり、全部地場の中堅・中小企業に発注されるんです。これを皆さん方はわずか三千五百しか計上していないんですね。これは私は、本当に地域のニーズというものを皆さん方が把握していないから、こうしたシャビーな姿の今回の補正予算しか出てこないと思うんです。どうぞひとつ、財源は一兆円、私は国債を発行していいと思っていますよ。当たり前です、必要なんですから。

 どうでしょうか、この地域活性化交付金三千五百億、ではどういう根拠で三千五百にしたのか、そしてこれでは余りにも小さ過ぎると思わないか、この点について野田大臣、お答えください。

野田国務大臣 地域活性化交付金は確かに三千五百億円です。加えて、地方交付税一兆三千億円、二十二年度内に交付できるものは三千億円です。今回の補正予算に伴う地方負担は大体六千億円でございますので、相応の規模の地方に対する支援はできていると思いますし、地方という言葉はついていませんけれども、今回の補正の中身は、全国的に需要や雇用創出効果のある事業を精選しているつもりでございますので、全体的に地方にも貢献できると確信しています。

町村委員 予算が地方に回るなんというのは当たり前のことであって、そんな当たり前のことを余り偉そうに言わない方がいいと思いますよ。

 裏負担分が、それは交付税では行くかもしれない。そうではなくて、この活性化交付金というのは、裏負担ではなくて、地域が単独で独自に使えるからみんな喜んでいるんですよ。そこのところを残念ながら野田大臣はわかっておられないので、私は、今回の民主党のこの補正予算の案の非常に不十分な点の一点がまずそこにあると思います。

 それから、地域の問題で申し上げると、もう一つ、八ツ場ダム。私はびっくりしましたね、何日か前の新聞を見て。前原大臣のもとで副大臣を務めておられたのが今の国土交通大臣であります。前原大臣、今回の国土交通大臣の八ツ場ダム建設中止の白紙撤回、どういうふうにお考えですか。

前原国務大臣 一年間国土交通大臣をやらせていただきまして、八ツ場ダムを含めて、ダムによる、ダムありきの河川の整備の見直しを行ってまいりまして、まだ結論が出ていない中で、しかし新たな座標軸、治水の効率的なあり方あるいは他の代替手段というものを馬淵副大臣とともにまとめてまいりまして、今その評価軸がようやくできるようになってきております。

 その意味においては、馬淵大臣が、私がまだやり遂げていないことを引き継いで御苦労いただいていると思いますし、また、予断なく検証する中で新たな治水の座標軸をしっかり決めて、八ツ場も含めた他のダムについての検証、そしてそれに対する個別の河川の整備計画をしっかりまとめてもらえるものと期待をしております。

町村委員 ここにもまたマニフェストのいいかげんさがあらわれているんですよ。マニフェストの目玉じゃないですか、八ツ場ダム建設中止は。それをあなたは明確に、私はこの予算委員会で前原大臣に伺いました、これは絶対建設しないんだと明確に言い切った。いろいろな理由を挙げられた、それを全部白紙撤回したんですから。

 しかも、馬淵さんは総理と相談されましたか、官房長官と相談されましたか、していないそうじゃないですか。いかにこれが軽いものであるか。マニフェストは、最近はうその代名詞になっているんですよ。だれも、マニフェストなんていっても、へえ、そんなもんという感じですから、まあその程度のもんなんでしょうけれども。

 どうですか、馬淵大臣、総理と御相談されましたか。

馬淵国務大臣 先ほど前原大臣が説明されたように、私どもとしては、できるだけダムに頼らない治水のあり方というもの、ダムありきではないということをしっかりと我々は一年間議論をし、その評価軸を定めて、一切の予断を持たずに再検証するということを決めたわけであります。

 そして、この過程については、当然ながら、官房長官、総理官邸にも御報告を申し上げ、先日私が現地に参りまして、今後、一切の予断を持たずに検証を行うという旨をお伝えしてきたところでございます。

町村委員 要するに、閣内ではろくな相談もしないでやっているということがこれでよくわかるわけですね。マニフェストというのはその程度の軽い軽いものだということを、今みずから馬淵大臣が告白をされました。わかりました。要するに、地域のことなどはこれっぱかしも考えていないということもよくわかったわけであります。

 次のテーマに移らせていただきます。日米関係と防衛大綱、そしてインテリジェンスの話であります。

 私は、この間の十一月四日の総理の本会議の答弁を聞いて、耳を疑いました。米国との関係は非常にしっかりとした関係で推移していると。これには私は、こんなことを思っている人は菅総理だけですね。あるいは、前原さんと一部の民主党議員だけです。国際的な人はすべて、今、日米関係は最悪だと思っている。

 先日、ワシントンの友人から電話がかかってきまして、今の日本の外交は脳死状態だと言うんですよ。私、話していてよく意味がわからなかった。脳死状態だと。出先に対して、官邸なり、もちろん外務大臣から的確な指示は来ない。意見、情報を上げても反応がない。そして、お互いに信頼関係がない、出先とヘッドクオーターとの間で。これを脳死だと言う。本当にそうなんですよ。そのようにアメリカからは見えているんですね。

 私は、日米関係が極めて順調であるという認識をまず総理、改めてもらわないと、この後の展開が出てこないんですよ。本当に日米関係はいいと総理は思っておられるんですか。どうですか。いやいや、総理の本会議答弁ですから、総理の御答弁を伺います。外務大臣には聞いておりません。総理の本会議答弁ですから、総理から御答弁ください。

菅内閣総理大臣 私は六月に総理に就任して、カナダのトロントにおいて最初のオバマ大統領との党首会談を行い、その後、ニューヨークに出かけて二度目の党首会談を行い、その間にも電話等でも会談を行いました。そして、私が申し上げたのは、日米同盟というものを我が国の外交の中軸に据えてそれを深化させていこうと。もちろん、五月二十八日の普天間の日米合意も踏まえて、同時に、できるだけの沖縄県民の負担の軽減ということも申し上げました。

 そういった会談を通して、私は、オバマ大統領との信頼関係がしっかりと積み上がってきて、少なくとも私のいろいろな直接、間接の中では、日米において次第と、まあ一時期、普天間の問題で若干の揺らぎがあったかもしれませんけれども、それについては安定した関係になり、さらに、せんだって、これはぜひ外務大臣にもお聞きいただきたいと思いますが、外務大臣もクリントン国務長官としっかりした議論をしていただきまして、そういう意味で、私は、町村さんの情報は、多分限られた情報のもとでおっしゃっているのではないかな、このように感じております。

町村委員 ちょっとあきれて私は物が言えない。それは、会談をしたり電話をしたり、だからいい関係だ、何の証明にもなっていないんですよ。

 まず、それでは総理、着任して五カ月、この普天間問題を解決するために、あなたは総理大臣としてどういう努力をされましたか。どういう努力を総理大臣としてされましたか、お答えください。いかなる努力をされましたか。

菅内閣総理大臣 これは町村さんもよく御承知のように、普天間の問題は、橋本内閣の折に普天間の危険性の除去ということで日米が合意して、そして昨年の政権交代までたしか十三年間、いろいろ努力をされてきたことは私もよく承知をしておりますけれども、残念ながら、普天間の危険性の除去という、いわゆる移転というところまでは立ち至っておりませんでした。そして、その後、鳩山政権のもとで、県外、国外ということをいろいろと模索をされたわけでありますけれども、結果として、県外、国内という形が鳩山政権のもとでは実現できず、五月の二十八日の日米合意となったことは御承知のとおりであります。

 そこで、私は、政権を担当するに当たっては、まずこの五月の二十八日の日米合意をしっかり踏まえるというところからスタートしなければ、それまでのややいろいろと揺らいだ問題をまず原点に戻さなければいけないというのが私の最初の位置づけでありました。(発言する者あり)いや、今答えているんですから、ちゃんと順序を追って。順序を追って答えているんですから、余り理事の皆さんが、質疑をするのに邪魔になるようなやじはちょっと控えていただくとありがたいと思っています。

 そして、最初に申し上げましたように、六月の就任をした直後のカナダのサミットにおいて、まずそうした五月の二十八日の合意を含めて、それを踏まえた形でやっていく、あるいは日米同盟をしっかりと基軸に据えるということを、新しい総理として、大統領と話をするのは総理としては私は初めてでありましたから、そのことをまずしっかりと伝えたところであります。

 そして、二度目のときには、日米同盟の深化というものについては三本の柱でいこうと、一本はもちろん安全保障、次は経済、そして次は文化と人材交流、こういう形で日米深化を深めていこうということでやってまいりました。

 そして、普天間に関して言いますと、率直に申し上げて、その後、八月において実務者の会議を日米間で開きました。私は、それ以前、ややもすれば外務省、防衛省、多少ばらばらな形での日米の交渉がありましたので、官邸を軸にして、この日米の交渉については必ず官邸からも担当者が出るという形に変えまして、その間の作業を進行させていただきました。

 また、軽減措置については、グアムに対して約半数の海兵隊が移転する計画がありますし、また嘉手納以南の基地の返還の問題もありますし、北部における演習場の返還の問題もあります。そういった問題についてしっかりと把握をして、それをいかにしてできれば早目に実現するかということを、しっかりと現在取り組んでいるところであります。

町村委員 全く質問に答えずに、関係のないことばかり言っている。あなたは沖縄に対してこの五カ月間何をやったんですかと聞いているんです。あなたは、沖縄に一回儀礼的な式典に行ったきり、あと何にもやってないじゃないですか、沖縄に対して。

 まず、沖縄県民、そして日本国民に、鳩山時代以来、皆さん方にうそを言ったということを謝る。これはきのう棚橋君も言いました。まずおわびをし、毎週のように沖縄に総理みずから足を運んで、自民党の時代にはそれをやっていたんです、総理が行ったり、幹事長が行ったり、外務大臣が行ったり。そして私は、官房長官時代に毎月のように表裏含めて知事と会いましたよ、仲井真さんと。そしてその後もずっと連絡をとってきて、そして、まとまっていなかったと言うけれども違うんですよ。政権交代直前に、もう既に、あとは微修正をすれば、沖縄もいい、日本政府もいい、アメリカもいいというところまで全部合意ができていたんです。だから沖縄は、環境アセスの意見書というものを政府に十月に出したじゃありませんか。(発言する者あり)こういう、何も事実を知らない人がこういうことを言うからいけないんです。

 委員長、私は、だんだん時間がなくなってきたから申し上げますけれども、このこと一つとっても、まことにこの委員会での議論の時間が足りないんです。これから予算委員会で、この外交、安保、あるいはセキュリティーの問題等、この補正予算の採決前にぜひ十分な審議時間をとるように、委員長、ひとつ十分な御配慮をいただきたい。いかがでしょうか。

中井委員長 理事会で引き続き協議をいたしているところです。

町村委員 要するに、沖縄県民に対してまことに不誠実な対応しかしてこなかった菅総理のこの五カ月の歩み、そしてその前の数カ月の鳩山前総理の歩み、これによってこの普天間問題はどうやって解決するか、その糸口すら今見えない。糸口をつくるのは、菅総理、あなた御自身の努力しかないんです。いいですか、その御努力しかないんです。そのことをもっと腹に据えてやらなければ、日米関係という日本の対外関係の基礎が崩れたままで、今どんどん悪くなっているんですよ。悪くなっていないと言う、認識を持てない前原さんも前原さんなら、民主党も民主党です。

 最後に、もう一つ、インテリジェンスの話。

 私は、官房長官は今退席されたが、きのうの官房長官の発言は一つの大きな進歩だと思います。かつて左翼系弁護士として鳴らした仙谷さんが、いざ権力の座に立つとここまで理解が深まったのかということで、ある意味では、やはり与野党逆転していいこともたまにはあるんだな、こう私は思いましたよ。私は、ぜひ、市民派出身かどうかわかりませんが、菅総理にもそのことをしっかりと認識をしてもらいたいし、同時に、今の日本のインテリジェンスの問題で、随分進歩してきた点もあるけれども、まだまだの点もあるんです。どういう点が今の日本のインテリジェンスの体制の中で不十分であると総理御自身が認識をしておられるのか、それを伺いたい。

中井委員長 古川君から具体的なことをまず答弁させます。古川官房副長官。

 ただ、あと総理の答弁もありまして、時間がありませんから、簡潔に。

古川内閣官房副長官 お答えいたします。

 先ほど町村委員からもお話がありましたように、従来から政府を挙げて情報保全の徹底には取り組んできたところでございますが、現在、我が国の秘密保全に関する法令について申し上げますと、例えば、国家公務員法の守秘義務規定に関する罰則が軽く、抑止力が必ずしも十分でないなどの問題を抱えているというふうに考えております。

 したがって、秘密保全に関する法制度のあり方について結論を得るよう早急に検討を進めていくことが必要だというふうに考えておりますし、また、IT化が進んでおります現在、とりわけ機密性の高い情報を取り扱う政府機関や部署におきまして、機密情報へのアクセスの記録化、文書、データの持ち出し等の制限、データを保存する際の暗号化等、高度なネットワーク社会における情報保全システムにおきまして必要と考えられる措置を徹底し、情報保全の万全を図っていくことが必要とも考えております。

 政府といたしましては、今後とも情報保全の徹底に最優先に取り組んでまいりたいと思いますので、ぜひ御協力をお願い申し上げます。

中井委員長 菅直人内閣総理大臣。三十秒で終わってください。

菅内閣総理大臣 私は、情報というものはいろいろな要素があると思いますが、総合化する機能が、率直に申し上げてなかなかまだできていない。それぞれの部署にはある程度の情報があるわけですけれども、それをきちっと総合化して、そして的確に、迅速に判断するというところにおいて、まだ必ずしも十分な体制がとれていない、こういう感想を持っております。

町村委員 まことに残念ながら、その程度の認識かなと思って、いささか残念な思いがしております。この問題ももっと徹底して議論をしなければいけません。

 例えば、今、情報化する機能と言った。それならば、内閣情報会議あるいは内閣合同情報会議、最近開いていますか。どうですか。

古川内閣官房副長官 委員御承知のように、お尋ねの内閣情報会議や合同情報会議につきましては、情報コミュニティー、各省庁が収集した情報につきまして、これを集約して、総合的な評価、分析を行ってございますので、具体的な開催状況や議題等につきましては、それを明らかにすること自体が今後の情報収集活動に支障を及ぼすおそれがございますので、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

町村委員 もう終わります。

 とにかく、時間が余りにも不足しております。しっかりとした審議がこの予算委員会でできるように委員長及び各理事の皆様方にお願いをして、質問を終わります。ありがとうございました。

中井委員長 この際、高市早苗君から関連質疑の申し出があります。石破君の持ち時間の範囲内でこれを許します。高市早苗さん。

高市委員 自由民主党の高市早苗でございます。よろしくお願いいたします。

 先週末、土曜日、日曜日、選挙区奈良県に戻りました。どこへ行っても政治の話で持ち切り。尖閣のビデオ流出の話、それからTPP、これも、余りよくも調べないうちに、情報不足のままぶち上げて本当に大丈夫なんだろうか、そういう話、それからもう一つは、朝鮮学校への高等学校無償化、この適用について怒っていらっしゃる方も随分おられました。

 TPPにつきましては、この後、我が党の赤澤委員が質問されますので、そのほかの話について幾つか質問をいたします。

 まず、朝鮮学校を高等学校無償化の対象とするということで、先週の金曜日に文部科学大臣がその審査基準を公表されました。教育内容は問わないというものでした。この部分について、私の地元でも怒っていらっしゃった方が随分おられました。民主党の方では、民主党議員の事務所にも随分文句の電話がかかっているようで、何ですか、この問題の言いわけマニュアルを配付されたようでございます。

 これは菅総理に伺いたいんですけれども、朝鮮学校の教育内容についてさまざまな問題があるということは、この予算委員会でもるる提起されてまいりました。菅総理大臣は、朝鮮学校の教育内容について具体的にどういったところが問題だとお考えか、お答えください。

高木国務大臣 高市委員にお答えをいたします。

 御指摘の点について、私の権限、判断において、去る十一月五日に、指定に関する基準、手続を決定させていただきました。今後、朝鮮学校を指定するかどうか、審査を行って決めることになろうかと思っております。

 そもそも、この朝鮮学校の採用につきましては、多くの国民の意見があることは承知をしております。私どもは、検討委員会を設けて、八月三十日にその報告を受けたところでございます。この報告を受けて、国会での議論あるいは民主党内の議論、これを踏まえて、総合的に私が決定させていただきました。

 具体的に教育内容について問わないのはなぜか、こういうことでございました。あくまでも受給権者は生徒でありまして、生徒の学びを保障するということが重要なテーマでございます。

 第一に、既に四月三十日に指定した外国人学校についても、本国政府や国際的な評価機関の認定という制度的、客観的な基準により指定したことでございます。第二に、専修学校高等課程に係る設置基準においても、各教科等に関する具体的な教育内容について基準を設けていないこと。第三に、私立である専修学校、各種学校の自主性を尊重するために、私立学校法の第六十四条の趣旨を尊重すべきとの指摘等があるから、私たちはこのように決めたのでございます。

 ただし、指定に際しては、留意すべき事項として、多くの指摘もございますので、我々は、具体的な教育内容について懸念される事態がある場合には各学校に伝えて改善を促す、このことに力を注いでいきたい、このように思っております。

 以上です。

高市委員 委員長、私は、朝鮮学校で行われている教育内容のどこが問題か、具体的にお答えくださいと総理に伺いました。今のは何ですか。私は別に基準のことを聞いてはいません。

 教育内容についてどこが具体的に問題か、この予算委員会で柳田大臣が答弁されましたよ、具体的な事例を挙げて。総理もおられたはずです。総理、お答えください。

菅内閣総理大臣 朝鮮人学校の教育内容について、いろいろな指摘があることは承知をいたしております。

 それは、我が国のいわゆる認定されている教科書ではない教科書を使っておられるところもありますし、その中身において、例えば、いろいろ歴史的な問題でも違う認識が述べられていて、そういうものが教育の中身に入っているなど、そういう問題点の指摘があることはよく承知をしております。

高市委員 総理は、この予算委員会に出られても、ほかの大臣の答弁をよくお聞きじゃなかったということがよくわかりました。

 柳田大臣の御答弁では、大韓航空機爆破事件の例を挙げられました。朝鮮学校の教科書には、朝鮮学校で教えているのは、大韓航空機爆破事件、これは韓国のでっち上げだ、それから、日本人が被害に遭っている拉致問題、これについても、日本当局がこれを極大化している、こういうことなんですね。明らかに日本の国益に合いません。

 私は、きょうはほかの質問もしたいので、あとは、自民党の文部科学委員、たくさんの方がこの問題を研究されていますから、きょうは詳細までは突っ込みませんけれども、ただ、やはり総理の認識というのが私は問題だと思っているんです。

 福祉とは違うんですね。日本の国というのは、日本に住んでおられる外国人にも随分手厚く福祉をしていますよ。日本国民の納税者の理解と協力を得て、外国人もそれを支えているかもしれないけれども、十分に福祉をしている。それは、二月にも前総理大臣にも私は言いました。

 例えば、東京都区内で外国人が標準世帯、つまり標準三人世帯の外国人家庭が生活保護を申請したら幾ら受けられるか。月額約十六万七千円ですよ、生活扶助基準額が。それから、例えば母子家庭、お母さんと幼児二人、こういったおうちで申請をされますと約十八万三千円です。そしてまた、日本で難民認定を受けられた外国人一家がいらっしゃるとしますね。これは、御夫婦とそれからお子さん二人ということだと大体二十一万七千円、月額ですよ。それで医療費なども実費支給されています。だから、そういった形で、日本というのは日本に来られて住んでいらっしゃる外国人の人権というものも十分に守っている。

 ただ、福祉と教育は違う。教育というのは、やはり未来を担う子供たち、これをどういう人材として育てるのか、そのために何を教えていったらいいのか、こういった、ある意味では日本の国策でもあります。

 私はきょう、文部科学大臣に求めたいと思います。先週の金曜日に発表された審査基準、もう一回よく検討して撤回をしていただきたいこと、それから、仮にも朝鮮学校を認定するのであれば、教育内容の是正、それから配ったお金、これは生徒個人に行くと言いますけれども、まずは学校に支払われます。これは本当にちゃんと授業料に使われているのかどうか、ここのチェックを徹底する、こういったことも含めて審査基準の見直しをお願い申し上げ、総理に対しては、やはり、拉致被害者の御家族の皆さんがどんな思いで国会で語られ、この問題に反対してこられたか、その思いにもぜひとも心を寄せていただきたい、そのことをお願いして、次の質問に移らせていただきます。

 さて、さっき町村委員の方から、経済について、日本の成長についての話もございました。科学技術の話に移りたいと思います。

 何かこのところ暗いです。総理がおっしゃる最小不幸社会、この言葉も暗いです。何か夢を持てないです。それからまた、もう一つは、去年の事業仕分けのときに、何で一番じゃなきゃいけないのか、二番じゃだめなんですか、こういう御発言に対しても、何かおかしいな、こんなふうに思ってまいりました。

 民主党が盛り上げた格差社会ブームで、格差、格差、とにかく格差をなくそう、それはある意味では大事なことかもしれない。日本国憲法が保障している、健康で文化的な最低限の生活を国民に保障する、そのナショナルミニマムとしての福祉は必要かもしれない。だけれども、大事なのは、さっき申し上げました教育にしても、それから産業にしても、出るくいも伸ばしていく、こういうことだと思うんですね。

 特に科学技術、これは非常に大事です。平成十八年、安倍内閣が発足したとき、私は科学技術政策担当大臣でもございましたが、あの内閣でだけ設置されたイノベーション担当大臣でもありました。あの年には、中国が何と二〇二〇年までの長期のプラン、科学技術を振興するためのプランを発表した。日本の場合、なかなかそういった長期プランがなかったので、イノベーション25、二〇二五年までの技術革新戦略、技術革新の成果を国民に広げていくためにはどういう制度改正をしたらいいか、そういった長期戦略をつくりました。何とか日本を元気にしよう。それで、福祉をちゃんとやるためには富を生み出す部分がやはり必要なんだ、そんな思いでございました。

 日本の科学技術政策というのは、科学技術基本法のもとで、五年ごとの科学技術基本計画によって振興をされております。ちょうど今、総理をトップといたします総合科学技術会議が、来年度からの五年間をターゲットにした第四期の科学技術基本計画の策定作業、このための検討に入っております。それに向けた答申案が出ていますね。ちょうどきのうまでパブリックコメントに付されていましたので、私も拝読をいたしました。イノベーションという基本をきちっと押さえた上で推進政策を盛り込んでいただいている、ここは高く評価をさせていただきます。

 ただ、非常に肝心な、最も重要な政府の研究開発投資、この目標の数字がペンディングになっているんですね。つまり、対GDP比何%というところがペンディング、真っ白の状態になっております。これは、さっき新成長戦略の話もありました。あれだって鳴り物入りで、実は、政府内では、政府の研究開発投資の目標については対GDP比一%というのをちゃんと書こう、そうなっていたのに、財務省のえらい抵抗でだめになったという話も聞きまして、何が政治主導だ、そんなふうにがっかりしたんです。

 海江田大臣、きょう来てくださっています。担当者でもあられますので、ちゃんとこの第四期の科学技術基本計画には第三期を超える野心的な目標を盛り込んでいただけるか。非常に財政状況は厳しいですよ。自民党でも、やりたいと目標を掲げてもできなかったことも確かにたくさんあります。それでも野心的な目標を世界に向けてきちっと示す、それがまた日本の研究者、そしてまた産業界、こういったところも元気にしていく、志を持っていただく大切な問題だと思いますので、野心的な数値、これについてどう考えておられるか伺います。

海江田国務大臣 高市委員にお答えをいたします。

 私も、高市議員が、十八年ですか、安倍内閣で私と同じ内閣府特命担当大臣、科学技術担当ということで御活躍をしていた様子はつぶさに拝見をしておりました。そうした高市委員の意思もしっかりと酌んで、私も、やはり科学技術というのは我が国の、本当に唯一のとも言えるだろうと思いますが、資源だと思っておりますので、これを充実発展させて、そして資金的な裏づけをしっかりしたものにさせていきたいとまず考えております。

 その中で、まさに今、高市委員御指摘のありましたように、今年度の末までに私どもの政府研究開発投資の目標についてはっきりとした数値を出そうというところで、今まさに議論をしているところでございます。

 第三期まではおっしゃるように、これは書きっぷりといたしましては、平成十八年度より二十二年度までの政府研究開発投資の総額を二十五兆円とする、そしてその二十五兆円を、注としまして、これはGDPの一%という書きっぷりでございました。ところが、実際にそのとき見込みました成長率が少し落ちておりますので、残念ながら、この第三期の末で二十五兆円というところには少し届かないかなというところが現状でございますから、そういった第三期の書きぶりも踏まえながら、しっかりとした方向性を出していきたい。

 それから、あと一つだけつけ加えますと、私どもの新成長戦略でございます。この中では、二〇二〇年までに官民を合わせた研究開発投資を四%以上にする、これは官だけじゃありませんで民間も含めた数字でございますが、こういう数値を書いてございます。

高市委員 日本の研究開発投資は、やはり民間に負っているところが多いんですね。今回の答申案でも、官民合わせて四%というのはもう既に書いてあるけれども、そこにもペンディングマークがついております。

 とにかく、理系総理ということ、これも鳴り物入りだったと思いますので、菅総理にも総合科学技術会議を仕切っておられるお立場から、ぜひともしっかりとこの科学技術予算については取り組んでいただきたい、これを希望申し上げます。

 それでは、一番やりたかった質問なんですが、尖閣事件の話に移らせていただきます。

 九月七日に事件が発生してから、いろいろなことがございました。九月の三十日、これは国会がまだ閉会中だったんですが、この予算委員会、閉会中審査をされていましたね。そのときに、民主党の長島委員がこうおっしゃいました。この事件で問われているのは国家の意思だ、その国家の意思を体現できるのはまさに政府だということをおっしゃいました。私もそのとおりだと思いました。

 今回の事件では、この国家の意思というものをしっかりと体現できなかった、菅内閣はできなかったことから、中国を増長させる、中国の覇権主義に悩んでいるアジアの国々を落胆させる、そして国際社会における日本の名誉が損なわれた、あげくには法治国家としての秩序まで失われた、私はこれを残念に思っています。

 国家の意思、日本が示すべきだった国家の意思というのは、尖閣諸島というのは日本国固有の領土である、だからこそ日本の管轄権の範囲内なんですね。ここで発生した事件については、毅然と国内法を執行する、執行するということが肝心なんですね。これだったと思います。大変残念に思っております。

 きのう、石破政調会長が随分詳しく質問をされました。その中で、さまざま委員がこの問題に触れた中で、中国に請求するお金の話が出ていましたね。これは、仙谷官房長官、今はいらっしゃいませんけれども、官房長官が、海上保安庁の船の損傷、これに対しては原状回復を中国に求めるということを記者会見で九月におっしゃっています。それを果たして請求したのかどうかという質問が出ました。馬淵国交大臣は、まだ今、損傷については見積もり中で金額も出ていないので請求の段階じゃないというようにお答えになっていたと思います。

 せっかくですから馬淵大臣に、これは通告してございますので伺いますが、あのときは、海上保安庁の船の損傷だけじゃないんですね。「みずき」の手すりが折れた、「よなくに」の手すりが折れた、またヘリの甲板下、そこが損傷している、さまざま海保の方から私も損傷の状況は伺っています。

 ただ、船長が出国するときに、空港で中国のチャーター機に給油をしております。このときの給油は日本の負担で行ったと思うんですが、まず、これで幾らかかったか。

 それから、石垣空港、きのうも指摘がありましたけれども、夜中は使えない。ところが、あのときは特例的に夜中も空港を開いた。たくさんの空港職員が残業もされたと思います。残業代の合計は幾らだったか。

 以上二点について、金額とともに、既に請求をされているのかどうかもお答えください。

馬淵国務大臣 お答えいたします。

 まず、石垣空港における給油の問題であります。

 チャーター機が石垣空港に到着いたしまして、燃料の補給業務を行っております。これは、民間の業者が行っておるものでございまして、国が直接関与しておりません。しかしながら、入金があったということの報告を受けております。

 そして、二点目でございますが、時間外に中国政府のチャーター機が石垣空港に参ったということであります。そこにおける空港管理者に超過勤務等が発生するのではないかということでありましたが、今般の超過勤務も含めて、これは外交ルートにおける便宜供与ということでございまして、この便宜供与につきましては、今までも、このような形の場合は、空港使用にかかわる超過勤務等、これについては国土交通省、沖縄県が負担をしておりまして、これにつきまして今後も同様の取り扱いをする、こういう予定になっております。

高市委員 ありがとうございました。

 これは総理に伺いたいんですけれども、空港職員の残業代、これも便宜供与で、残念ながら日本国民の負担になってしまうということですけれども、官房長官がちゃんと言明された海保の船の修理代、これは、APECで中国の首脳にも会われると思うんですけれども、ちゃんと日本国として請求されるんですね。それだけ確認させてください。総理、お願いします。

菅内閣総理大臣 損傷を受けた巡視船の原状回復の取り扱いについては、今後、関係省庁間の協議により適切に対応されるものと承知しております。

高市委員 とにかく総理の意思を聞きたいんですね。内閣のトップであります菅総理の御意思を聞きたい。それを、メモを読み上げるような答弁をなさるというのは大変残念です。だって、官房長官がすると言われたんですから、するんだったらする、しないんだったらしないということです。

 官房長官、お願いします。戻ってこられたので官房長官で結構です。

仙谷国務大臣 一般に、中国側に請求する、せよというふうなことを皆さんはおっしゃるわけですが、厳密に言いますと、これは民間の船でありますから、民間の漁船の持ち主とか漁船の船長に請求をするということに法律上はなることをまず御承知おきいただきたいと思います。

高市委員 では、民間の漁船の船長に御請求をいただくということで伺っておきます。それでよろしいですね。

仙谷国務大臣 どういう手続になるか、検討を続けたいと存じます。

高市委員 いやいや、官房長官のあの記者会見の記録も私は読ませていただいております、報道も読ませていただいております。九月に官房長官御自身が中国側に請求する、原状回復を求めるとおっしゃったので、それで伺っていたわけなんでございますけれども、民間、船長に対して請求をしていただけるということです。

 船長をとっとと国外に出しちゃったのでいろいろ困っているんですね。国外に被疑者が出ちゃったら公訴時効を停止しますね。三年間の公訴時効も停止します。だから、いつでも起訴できるといったらできるんですけれども、それでも、恐らく締め切りのないことというのは、だらだらと国民が忘れるまで、下手したら未済のまま放置をされるんじゃないか、そういう不安もありますし、仮に起訴できたとしても、第一審の公判に被疑者が出てこないといったらこれは開けないんでしょうから、何ということだろうと思っていますので、せいぜい、海上保安庁の船の損傷をちゃんとカバーしてくださるその中国人船長を日本にお呼びになって、お金もしっかり受け取って、しっかりと裁判を受けていただけるように御対応をお願いしたいと思います。

 きのう、この予算委員会で、私が提出しました質問主意書の答弁内容について石破政調会長が随分詰めてくださいました。あのことを私はまだ納得いたしておりませんので、少し聞かせてください。

 那覇地検のインタビューのとき、あれは、私は記者会見のとき大変ショックでした。今後の日中関係なんということを船長釈放の理由にしていた、そんなことがあっていいんだろうか、それがまず大変ショックでした。だって、釈放されて中国に帰国した船長は、またあの海域で漁業をするということをおっしゃっている。再犯の可能性がある。日中関係に配慮してということになりますと、仮にあの船長がもう一度同じ海域で同じ犯罪行為を犯したとしても、無罪放免、下手したら逮捕もできないんじゃないか、そういう不安も感じました。そこで私があの質問主意書を出したんです。

 間違っちゃいけないのでちょっと読みますけれども、私が十月五日の質問主意書でただしましたのは、そもそも検察官には今後の日中関係などという外交にかかわる政治的判断を行う権限や責任があるのかということでした。

 十月十九日に閣議決定されて戻ってきました答弁書には、刑事訴訟法の起訴便宜主義というのを引きながら、これもようわからぬのですけれども、まだ起訴の段階じゃないというのになぜ起訴便宜主義と思ったんですけれども、答弁書によると、釈放するというようなことも含めて含まれるそうでございます。この起訴便宜主義を引きながら、「検察官は、法と証拠に基づき、被疑者の身柄拘束を含む刑事事件の処分を判断するに当たって、当該処分をし、又はしないことによる国際関係への影響等についても、犯罪後の情況として考慮することができる」と。

 この答弁には驚きました。これは閣議決定された答弁書ですけれども、菅内閣総理大臣のお名前で私のところに返ってきましたので総理に伺います。

 私が一番驚いたのは、この答弁書に、検察官には国際関係への影響についても判断する権限があるということが明記されたということ、ここが一番驚きました。

 きのうも紹介がございましたけれども、日本国憲法第七十三条、これは、外交問題の処理、これを政府の仕事といたしております。総理が代表を務めておられます民主党の長島委員もこの委員会でおっしゃっていましたね。「外交問題というのは、法執行機関である検察の手に負えるような問題ではない、」「外交には国民の生命財産がかかっている、」「検察ができることは、せいぜい国内法秩序を守ること。」これは民主党の長島委員がおっしゃいました。

 今回の答弁書によって、これからの日本国では、検察官が国際関係への影響を判断しながら法執行の有無ということを決定する、できるというルールに変わってしまった、そうなってしまった、そう考えてよろしいんですね。本当にいいんですね。総理にお願いいたします。

中井委員長 最初に法務省西川刑事局長、そして内閣総理大臣が答えます。(高市委員「いや、刑事局長が自分が総理だと思っていらっしゃるんだったらいいですけれども、総理にお願いしたいと思います」と呼ぶ)

 西川刑事局長。

西川政府参考人 まず、質問主意書にそのような記載をしたというのは事実でございまして、法務省の方で起案をさせていただいておりますので、私の方からまずお答えを申し上げます。

 まず、釈放の判断に当たってということでございますけれども、これについては、法律上何らかの制約が設けられているというものではございません。したがって、先ほど刑訴法二百四十八条が引かれておりますが、刑事訴訟法二百四十八条は、当然のことながら、起訴、不起訴の判断に当たって考慮すべき諸事情、こういうことが記載されているということでございます。ただ、これは、釈放の判断においても当然考慮することが可能であるだろう、こういうことでございます。その中には犯罪後の情況というのがございまして、これには、社会一般の状況の変化や起訴、不起訴等の処分が社会に与える影響が含まれているものというふうに考えられるということでございます。

 今回は、日中関係等もこのような事情として、ほかの事情とあわせて総合的に考慮したというふうに判断をしたということでございます。

中井委員長 いいですか、総理は。

高市委員 もう結構です。総理が手を挙げていらっしゃらないので結構です。ありがとうございます。

 では、つまり、この日本国ではこれから検察官が外交問題を判断して被疑者の取り扱いを決められるということになったと。(発言する者あり)前からそうだったというやじも飛んでおりますけれども、これまではそういう対応をしてこなかったということでございます。

 そうなりますと、いろいろ難しい問題が出てきますよ。外交問題、外交関係の判断、これは検察でやるというのは大変難しいことです。

 例えば、この委員会でも一部紹介されたことがありますけれども、これまで、日本国の領海内で漁業をした韓国漁船に対しては非常に厳しい法執行がなされています。今回は、公務執行妨害ということですから、これで裁判になって向こうが全面的に悪いということになったとしても、罰則は三年以下の懲役もしくは五十万円以下の罰金です。でも、韓国漁船に関しては、これよりも罰則が厳しい外国人漁業規制法で取り締まり、また裁判もなされておりますよね。

 この外国人漁業規制法というのは、日本国の領海内、本邦の領海内で外国人は漁業をしちゃいけないということで、違反者には三年以下の懲役もしくは四百万円以下の罰金、もしくはその併科、両方を科すということで、公務執行妨害よりははるかに罪が重いわけでございます。そしてまた、日本国の領海内で漁をしちゃいけないということで、向こうの漁船が日本国の領海に入ってきた、この点をきっちりと強調している、そういう対応ですね。

 平成十年、長崎県の沖で漁業をしていた韓国漁船、これは、領海内で漁業をしていましたので、海上保安官が追っかけて、向こうの船に乗り込もうとしたら、向こうの乗組員が乾電池なんかを投げつけた、それで海上保安官が負傷したという事案でございました。このときも、船長は外国人漁業規制法で逮捕をされ、そして乾電池を投げた乗組員、これは公務執行妨害ということでございました。これも、地裁ですぐに、その同じ年のうちに判決が出まして、懲役二年六カ月以下、これは執行猶予になりましたけれども、罰金百五十万ということでございました。

 その前の年、平成九年にも、福井県沖などで、要は二カ所で、島根県沖でも発生をいたしました韓国漁船による事件があります。このときも、外国人漁業規制法違反ということで、それぞれ、島根県の方は罰金百二十万、懲役六カ月、執行猶予になっています。福井県の方は罰金百万。

 ところが、今回は、中国、そのまま出しちゃった、裁判も開けるかどうかわからない。こうなって、なおかつ国際関係をこれから判断するということになりますと、言い方をかえると、韓国については、日本にとって外交的価値が軽いのかという話になっちゃう。もしも韓国政府が今回の中国のようにひどい圧力をかけてきた、場合によっては、韓国で日本人が拘束されたままになっているとか、何か日本にとって大事なものを韓国が輸出しないとか、そういう圧力を韓国政府がかけたら、これからは、韓国漁船が日本の国内に入ってきて漁をやっても、この外国人漁業規制法、これで裁かれることはない、こんなに重い法執行はない、こういうことにもなりかねないんですね。

 本当に、外交関係、これを判断基準に検察がしていくということを、この場でこれだけオーソライズしちゃっていいんでしょうか。総理に伺います。

仙谷国務大臣 刑事事件の処理は、当然のことながら、事案ごと、ケース・バイ・ケースに検察官が処分をいわば独任官庁としてするということが原則であります。

 そして、先ほどから、今後の日中関係を考慮いたしますとというこの部分を、むしろこれだけで判断したかのような議論を高市議員がされておるわけでありますが、この那覇地検の文章をよくお読みいただければ、本件の場合には、「他方、「みずき」に現実に発生した損傷は、直ちに航行に支障が生じる程度のものではなく、また、幸い「みずき」乗組員が負傷するなどの被害の発生もありませんでした。また、被疑者は、トロール漁船の一船長で、本件は、海上保安庁の巡視船「みずき」の追跡を免れるため咄嗟にとった行為と認められ、計画性等は認められず、かつ、被疑者には、わが国における前科等もないなどの事情も認められます。」と。「加えて、」というところに「日中関係を考慮いたしますと、」という部分が出てくるわけでございまして、こういう一要素として、刑事訴訟法二百四十七条を類推しながら、検察官が釈放、身柄についての処分を行ったということでございますので、あくまでも一要素ということでございます。

高市委員 本当に、わかりました、あくまでも一要素ということも、五つの理由があったということも。その五つの理由が、船長釈放の前に官邸にも伝えられ、そしてまた法務大臣にも伝えられていたということも、私は質問主意書で答弁を受け取っておりますので、すべて理解をしております。

 そんな五つの理由を聞いた上で、釈放、結構じゃないかということで、結局、法務大臣はわかりましたと答えただけ。答弁書によると、何ら異議を唱えなかったと。こんな、外交関係なんてことを例示した、一つの要素にしたばかばかしい釈放理由を報告されて、わかりましたと言って何も異議を唱えない、そんな方が日本の法務大臣である、大変残念です。

 私は、法律というのは、本当に、被疑者の国籍ですとか外交関係の軽重に関係なく、きっちりと執行されて初めて日本の秩序というのは守られる、法治国家としての体面も保たれる、こう思っておりますので、今の答弁も大変残念です。

 きのう、塩崎委員に対して、仙谷官房長官がかなり切れたように声を荒げた場面がございました。これはたしか、指揮権が発動されるべきだったという話を塩崎委員がされたときのことでございます。こんな重大なことを個人的意見で言うのか、自民党全体の意見になっていないことを言うなみたいな、そういうことでかなりきついことを言われたんですよ。こんな重大なことを個人の意見で言うな。

 それだったら、民主党政権にも私は言わせていただきます。普天間、何ですか、あれ。

 私だって、自民党政権のときには沖縄担当大臣でしたよ。さっき町村委員もおっしゃいましたけれども、何度も沖縄に入った、沖縄の方々が東京に出てこられて何度も議論を進めた。確かに、平成八年からスタートした長い長い長い長い工程でしたけれども、それでも、本当にガラス細工をつくるように一生懸命配慮をしながら、さまざまな政策を打ちながら、ようやく、地元、移設先予定地の名護市でも市長も了解してくださり、そしてまた、県の方でもやむなしと。ベストな選択じゃないかもしれないけれども、やはり日本国全体の安全保障を考えたら負担もやむなしといったことで形ができてきて、そして、さまざまな手続が進んでおりました。

 つまり、政権交代さえなければ、まずことしの秋に着工して、四年後には移設そのものが完了していたであろうことを、一からぶち壊した。あのとき、もうばらばらだったですよ、言ったことが。

 だって、総理本人は、国外か県外かとおっしゃっている。社民党から閣僚に入られている方は、絶対に国外だ。あのとき岡田外務大臣は、嘉手納に統合とおっしゃっていましたね。北澤防衛大臣、防衛大臣はかわっていませんけれども、防衛大臣の方は、やはり今の予定地しかないんじゃないか。ばらばらだったんですよ。その結果、もう普天間問題はどうしようもないところに来てしまって、日米同盟の結束というのもやはり緩んできて、あげくが、中国に足元を見られてこのていたらくなんですね。だから、仙谷長官の切れ方というのもおかしい。

 それから、はっきり言わせてもらいますと、私だって、私自身も、何で指揮権を発動しなかったのか、むしろ発動すべきだったと思っていますよ。柳田大臣はされないという判断だったのかもしれないけれども、それでも、総理御自身が、事件発生後に、日本の国内法に基づいて厳正に対処する、こうおっしゃったんですよ。そうすると、菅内閣の閣僚である柳田大臣は、その総理の御意向を受けて、日本の国内法に従って厳正に対処しなきゃだめじゃないですか。それを検察庁法に従って検事総長に指揮されるべきだったと私も思っております。こういったことについて、本当に残念に思っております。

 それからもう一つ、私に返ってきた答弁書で、これはと思ったものがありました。漁業者の安全確保について、私、質問主意書を出しました。事件が発生した後、特に中国人船長が釈放された後に、沖縄県の与那国町の漁業協同組合の組合長さんが、ちゃんと領有権を主張してほしかったのに、日本は尖閣諸島をあきらめたのと同じ、中国側に拿捕されるかもしれないと思うと近くに漁に行けない、こう語っておられた新聞記事を読みました。

 ちょうどあのころ、中国人船長が釈放された後にも、中国の外交部が釣魚島、つまり魚釣島ですが、釣魚島とその附属島は古くから中国の領土であり、中国は争うことができない主権を有する、こういう声明を発表している。

 だから、中国政府が、事件発生直後も、それから船長が釈放された後も改めて領有権をアピールした。こうなると、この水域で日本漁船が拿捕される、そういう可能性も強くなっているんじゃないかな、そういう心配をしたから、私は質問主意書に、今後、日本領海内で日本の漁船や漁業者が行う合法的な漁についても、中国当局はあそこを中国の領海だと思っているんですからね、中国領海内における違法操業、こういうふうにみなされて妨害行為を受けたり拿捕される、そういう可能性があると考えるが、内閣の認識を伺う、こう問いました。

 そうすると答弁書には、「お尋ねのような可能性があるとは考えていない。」こう書いてあるんですね。

 本当にそうですか。本当に、尖閣諸島海域で漁をする日本の漁船に全く不安はないと言い切れるんですか。そう思い込んでいるとしたら、私は、政府の危機管理能力、安全保障というもの、そして国民の安全を守るという意思、こういう考え方について随分問題があると思うんですが、総理、どうですか。総理のお名前での答弁書です。総理、一回ぐらいまともに答えてください。

鹿野国務大臣 沖縄の人たちを初めとする漁業者の方々が、今回のことにつきまして不安感をお持ちになっておる、沖縄の県議会においても決議がなされた等々、承知をいたしております。

 そのようなことから、水産庁といたしましても、尖閣諸島周辺に常時一隻を派遣してしっかりと監視をする、そして、今後、これからも海上保安庁と連携をとりながら万全の策を講じてまいりたい、こう思っております。

高市委員 何にしても、全くないと考える、こういう考え方が、民主党内閣の危機管理の甘さ、外交そして防衛に国民が強い不安を感じている、そういうことにつながっているんだと思います。

 最後に伺います。

 文部科学大臣と外務大臣、それから防衛大臣のお三方、お一言ずつで結構です。私は、この期に及んで、外国人参政権などというものは絶対反対だと考えておりますけれども、お三方それぞれ、賛成か反対か、おっしゃってください。

中井委員長 持ち時間は既に経過をしていますので、三大臣、一言ずつ、賛成か反対かだけ答えてください。

 高木文部科学大臣、一言だけです。

高木国務大臣 私は賛成です。

前原国務大臣 慎重に検討すべきだと思います。

北澤国務大臣 前回もお答えしましたが、立場上、コメントは差し控えさせていただきます。

高市委員 前回の予算委員会では、防衛大臣は賛成だと答弁されました。そしてまた、安全保障上の懸念はないということも答弁されましたよ。議事録をもう一度読んでいただきたいと思います。

 とにかく、今回のこの尖閣問題を受けて、例えば、文部科学大臣は賛成だとおっしゃいます。民主党がこれまでに出した外国人参政権付与法案を読みますと、教育委員の解職請求権も入っているんですよ。そうすると、教科書の記述内容、学校現場での教え方、こういったことを理由にして外国人が、例えば中国人、韓国人が解職請求を発動することもあり得るんですね。

 それから、安全保障。安全保障だって大きな影響がありますよ。今回、地方選挙といったって、名護の市長選挙で何が起きたか。名護の市議会議員選挙で何が起きたか。そして、今月、沖縄県の知事選挙ですよ。全部反対派が勝っちゃったら、普天間の移設なんてできませんよ。

 そういうことで、大臣、余りにもおかしいですよ。防衛大臣、答弁を変えるというのはおかしい。前回は、安全保障上の問題、懸念もないとあなたはお答えになりました。

 以上、私、申し上げまして、もしも反論があるんだったらおっしゃっていただいた後、皆さん、議事録と照らし合わせてください。二月九日の予算委員会の議事録と照らし合わせてください。

中井委員長 時間は経過していますが、この際、北澤俊美防衛大臣。

北澤国務大臣 前回の答弁を、議事録を読んでいただきたいと思います。

高市委員 同じことをおっしゃっています。では、委員の皆さん、全員、読んでください。

 ありがとうございました。質問を終わります。

中井委員長 この際、赤澤亮正君から関連質疑の申し出があります。石破君の持ち時間の範囲内でこれを許します。赤澤亮正君。

赤澤委員 自由民主党の赤澤亮正です。

 質問の時間をいただき、ありがとうございます。

 菅総理、十月一日の所信表明においてTPPへの参加を検討すると表明された時点で、完全に準備不足であったということをお認めになりますか。

菅内閣総理大臣 私がTPP等への参加を検討すると。検討するということでありますから、私は、まさに検討すべき段階にあるということで、そのこと自体が準備不足とは全く考えておりません。

赤澤委員 私は、所信で表明されるには余りに準備不足であったと思っています。

 けさ、閣議決定が行われたと承知しています。十一月六日土曜日の閣僚委員会で決定された包括的経済連携に関する基本方針、略してEPAの基本方針と呼びます。「TPP協定については、その情報収集を進めながら対応していく必要があり、国内の環境整備を早急に進めるとともに、関係国との協議を開始する。」要するに、所信表明の際はもちろん、現在でさえ情報収集が足りていない、国内の環境整備ができていない、関係国との協議を開始していない、こう言っているんです。基本方針のTPPに関するすべての文言が、菅総理、あなたが所信表明で参加を検討すると言ったときに全く準備不足であることを示していると思います。

 菅総理、EPAの基本方針は、十月一日の所信表明でのTPPへの参加を検討するという発言を撤回したようにも読めるんです。関係国との協議とは情報収集のための協議であるとも読めます。国内の環境整備が進むまでTPPへの参加の検討には入らないというようにも読めます。

 二問目の質問は、この基本方針はTPPへの参加を検討するという発言を撤回するものですか。

玄葉国務大臣 まず、菅総理の所信表明、参加の検討、こういうふうに確かにおっしゃいました。

 ただ、参加するに当たっては、まず検討があって、その上で協議があって、そして本格交渉があって、そして参加に至るというふうに思っていまして、そういう意味では、これから協議に入るということでございます。つまりは検討から協議に入る。

 では、その協議、あるいは情報収集というのは一体何なんだというお尋ねだと思いますけれども……(赤澤委員「尋ねていません、済みませんが。撤回したのかと聞いているんです」と呼ぶ)それは、こちらから御説明いたしますと……

中井委員長 玄葉さん、撤回したかどうかだけ。

玄葉国務大臣 ですから、検討から協議に入っている、そういうことでございます。

赤澤委員 私は、この所信表明、余りに準備不足、一たび撤回する選択肢は十分あると思うんですけれども、総理に聞いているんです。このEPAの基本方針では、関係国との協議、情報収集のための協議であって、国内の環境整備が進むまでTPPへの参加の検討には入らないとも読めるんですよ。撤回したものではないんですか。

菅内閣総理大臣 今、玄葉大臣から説明がありましたように、検討、さらには協議、さらにはそれが進んで交渉ということになりますので、検討して、そしていろいろな条件について協議をする。全く撤回するということにはならないんじゃないでしょうか、当然のこととして。

赤澤委員 それでは伺います。

 撤回しないということは、EPAの基本方針はTPPへの参加を検討することを表明したものだと理解していいですね。

玄葉国務大臣 一言で申し上げると、交渉参加を表明するものではありません。

 先ほども申し上げましたけれども、検討して協議があって、その協議というのは、だから説明しようとしたんですけれども、協議というのは、まさに各国の、全体の進捗状況であるとか、我が国に対する見方であるとか、そういったものを情報収集しながら各国と個別に相談をする、その上で判断をして本格交渉に入るかどうか決めていく、こういうことでございます。

赤澤委員 TPPへの参加を表明するものではない、はっきりとした答弁がありました。それから、TPPへの参加を検討する交渉に入るかどうかをこれから決めていく、こういうお話でありました。現時点で、私は、今の政府の答弁を聞いていても、参加を検討するのかどうかはっきりとはわからないという感じをいたします。

 そして、TPPの交渉に新規に参加するには、現在交渉に参加している九カ国との合意が必要です。つまり、参加するためでなくて交渉に参加するにも九カ国の合意が必要です。特定のセクターの自由化をあらかじめ除外した形の交渉参加は認められない、こういうことですね。非常に広範ですよ。関税撤廃のみならず非関税障壁として、郵政の見直し問題、金融、保険、医薬品、公共事業の入札、医師、弁護士、会計士、看護師、介護福祉士等の労働市場の開放、こういったもの全部俎上にのってきます。農業に限らず極めて広範な、国益に密接にかかわるということです。

 TPPに関して言えば、菅総理、仙谷長官、前原大臣の開国三銃士と私は呼んでいますけれども、この方たちは別として、鹿野農水大臣は当初から消極的ですね。

 十月二十二日の記者会見においても、TPPへの参加に積極的な前原外相の考え方に自分は立たないと発言されました。

 さらに、私、大変印象的だったのは、農水委員会で二十六日に私が質問しました。菅総理のTPPへの参加検討の所信表明に賛成ですかと。つまり、所信表明は閣議決定しているんでしょう。鹿野大臣は署名もされているんですよ。その所信表明に賛成ですかと尋ねたら、鹿野大臣の回答は、最後まで、政府内で検討中ということでした。みずから署名して閣議決定したはずの総理の所信表明に賛成かどうかは、ただいま政府内で検討中という答弁に終始をされたんです。

 菅総理、あなたのリーダーシップがさっぱり見えないんですよ。TPPについて、閣内不一致、学級崩壊状態ではないですか。

鹿野国務大臣 赤澤議員とは農水委員会でも議論しましたけれども、総理が所信で言われたのは、TPPに対して参加を検討でありますから、検討するということは、これは当然必要なことじゃないでしょうか。これはもちろん、どういう協定なのか、どういう交渉なのか、当然それはきちっと情報収集しなきゃいかぬし、国民に対しても、そういうようなことをやはり判断してもらう材料も提供しなきゃならぬわけですから、検討するというふうなことは、これは当然のことだと思います。

赤澤委員 私は、農水委員会ではっきりと、総理が参加を検討することを表明されたのに賛成ですかと聞いたのに、あなたは三回終始したんですよ、政府内で今検討中ということですと。私の質問をちゃんと聞いておられたはずだ。予算委員会用に答弁を変えられたのかもしれませんけれども。

 では、聞いていきます。TPPの交渉に参加している九カ国に既に要望は打診されたんですか。どういう要望を突きつけられるか、あなたはわかっておられるんですか。それなしに私は参加の検討なんか表明できないと思いますよ。

鹿野国務大臣 表明できないからこそ、どういうような交渉になってくるのかというようなことでありますから、検討するというふうなことは、そういう各国の考え方がどうであるか等々、これをしっかりと受けとめなきゃならないというふうなことであります。

赤澤委員 今の話を聞いても、参加検討を表明するにも、余りに準備が足りていない。各国からどんな要求を打診されるのかもわかっていないんですよ。

 そして、細川大臣。関税以外にも、ASEAN諸国等、我が国に対し、自然人の受け入れについて要望があります。TPPの交渉に参加しているベトナムも、我が国に対し、看護師、介護福祉士の受け入れを要望しています。ベトナムの合意がなければTPPの交渉に参加できないんですよ。当然のことながら、TPPの交渉への参加のために我が国が満たさなければならないベトナムの要望について、既にベトナムに打診済みですね。

玄葉国務大臣 先ほど赤澤委員から、ほかの九カ国に打診をしたのかという話がありますが、まさにそういうことを協議というふうなこの局面で行っていくということです。

 ですから、先ほど申し上げましたけれども、全体の進捗状況とか、クリアすべき条件は何なのか、おっしゃるとおり、実は、相手国が認めてくれなければ交渉すら入れないんです。ですから、まさにこの局面はそういう時期であるという総合的な判断をしたということでありまして、明確に交渉参加を表明するとか、そういう段階ではない、そういう我々の認識でございます。

赤澤委員 玄葉大臣、あなたは細川大臣じゃないんだから、私が細川大臣を指名したときに出てこないでください。細川大臣、お答えください。

細川国務大臣 EPAの関係で、看護師それから介護福祉士、これについては、今インドネシア、フィリピンではやっておりますけれども、まだベトナムについては交渉中、こういうことであります。

赤澤委員 要するに、ありとあらゆる国益、農業以外もいっぱいかかわるけれども、何一つ打診していないんです。どんな要求を突きつけられるかもわからない段階で自分たちは参加を検討するんだと言っていることがいかに無責任か、よく考えていただきたいと思います。

 次に、菅総理にお尋ねをいたします。

 TPPに参加して、もし労働力の移動の自由化を行うとすれば、自動車や薄型テレビの輸出企業の売り上げが伸びたとしても、安い外国の労働力の流入によって国内の労働者の賃金が下がりかねません。企業優遇、庶民いじめのおそれがあります。

 加えて、この影響試算を見ていただきたいんですけれども、この試算が正しいとすれば、TPPへの参加をやると、農業では三百四十万人失われる。逆に、経産省の試算では、参加しなければ八十万人失われる。差し引きすれば、TPPに参加すると、どうも雇用は二百六十万人減る。政府の試算を総合するとそう読めるんですよ。

 菅総理は雇用、雇用、雇用と叫んでおられますけれども、試算の結果に基づけば、雇用が減るかもしれない、あるいは、今働いている方たちの給料が減るかもしれない。この辺は何かおっしゃっている政策と矛盾していませんか。

玄葉国務大臣 まず、人の移動でありますけれども、これはまさに赤澤委員がおっしゃったような、我々がつくった成長戦略、そういったものと整合性を図りながら、例えば看護師にしても介護士にしても、レベルも含めてどういう受け入れがいいのかというのを、私のもとにこれから検討グループをつくって、六月までにまとめたいというふうに考えております。

赤澤委員 全くお答えにはなっていないと思うんですね。

 では、イエス、ノーだけでいいです。大畠大臣にも伺います。

 TPPの交渉に参加している九カ国に既に要望は打診をされましたか。

大畠国務大臣 情報を収集するということですから、これから入るわけであります。

赤澤委員 大変率直なお答えで、いいと思います。

 一国の総理がTPPへの参加を検討すると言う前に、どんな要望を九カ国から突きつけられるか、全く打診もしていないということですよ。これは本当に準備不足の感を否めません。

 TPPへの参加の前段階として、まずTPPの交渉への参加を認められる必要があります。そのためには九カ国が合意しないといけない。その要望を現時点でも全く打診していません。

 ましてや、今をさかのぼること一カ月前、総理が所信表明で、TPPへの参加を検討すると。その時点では何にも情報はないんですよ。そういう時点で表明されたことについて、準備不足であったこと、菅総理、なおお認めにはなりませんか。

菅内閣総理大臣 経済の自由化の問題については、私はこの国会で冒頭申し上げました。二十年間の日本のいろいろな経済的な停滞の一つの大きな要素だと認識をしておりました。

 そういう意味で、インドとのEPA、あるいは、まだ検討中でありますが、中国、韓国、日本とのEPAの一つの研究等々、あるいは今度のAPECで議論をしますアジア太平洋地域のFTAAPの構築、こういうこととTPPは、きょう閣議決定したものを読んでいただいても極めて関連性を持っているわけでありまして、そういうことを含めてTPPの検討を行うことは、私は当然やらなければならないという考えで所信表明に申し上げたわけです。

赤澤委員 ろくに九カ国から要望が何が来るかわからないで、よく申し上げられたものだと私は思います。

 繰り返しますけれども、TPPへの参加そのものでなくて、交渉に参加するためにも九カ国の打診は必要なんです。まだやっていません。国会の審議は始まったばかりですよ。今後、何回も集中審議をして問題点を明らかにしていく必要があるんです。この問題についてはもっともっと審議に時間をかける必要があることは言うまでもないということを指摘しておきたいと思います。

 少なくとも、このTPPに限ったことでないかもしれませんが、菅内閣は閣内不一致、そしてまた党内は全くの不統一、私は菅総理のリーダーシップの欠如が明らかであるというふうに思っています。周到な準備もなしに、入念な検討もなしに、国を開くという文言によってTPPへの参加の検討に突き進むのは玉砕型の外交だと私は断言をしておきます。

 私は、準備不足で参加を検討するというような大失敗は交渉上も大きなマイナスになっていると思っています。「航空交渉の教訓」という資料をごらんいただきたいと思います。パネルも用意しました。

 私は、日米航空交渉を初めとする航空交渉の現場にいたことがあります。交渉事を通して多くの教訓を得ましたけれども、その一つがこれです。

 特に三番目を見ていただきたいんです。要するに、交渉をまとめたがっていると思われると吹っかけられるんですよ。吹っかけられないようにするために、交渉をまとめたがっていると思われないように、あるいは、まとめなきゃいけないような政治的な立場に自分を置かないように、そういうふうにしていくことが絶対に大事なことなんです。非常に下世話な表現ですけれども、交渉を行う者が肝に銘じておかなければならない鉄則です。

 菅総理、あなたの犯した大失敗、すなわち、ろくな準備もしないでTPPへの参加検討を表明したことは、今の教訓に照らしても非常に大きなマイナスだと思いませんか。

玄葉国務大臣 赤澤委員、まず、私たちは基本方針を閣議決定したんです。閣議決定したということは、閣内不一致じゃありません。これは閣内統一されているんです。しかも、党でも考え方をまとめたんです。

 大変失礼ながら、私は、自民党も考え方をまとめていただきたいんです。やはり、本来、なぜTPPという議論が出てきたかということはぜひ考えていただきたい。

 つまりは、一種、今まで二国間EPAを進めるべきだったのに進められなかった、だから、どうしてもTPPというハイウエーに乗りなさいという議論になったんですね。本来、二国間EPAというのは、我々も二〇〇二年から、シンガポールから入りましたけれども、取り組みがおくれてきました。だからこういう議論になっていることはぜひわかっていただきたいというふうに思います。

赤澤委員 今、大変、偉そうにという言葉はいけないですけれども、基本方針を閣議決定したと言いました。

 後で検証しますけれども、中身は何を書いているかわからないことをいっぱい書いているんですよ。農業の分野でも、重要品目に配慮しながら、しかしながらすべての品目を自由化の対象にすると、意味不明なことが書いてあるんですよ。決めたことにならないですよ。玄葉さんは農業がわからないからあんなことを言っているんです。後でもう一回検証いたします。そのときになったらやりましょう。

 時間の関係で先に進みますけれども、この三つの原則を見てください。私は、前原大臣にも申し上げておきたいと思うんです。

 前原大臣が外国に向かって、協定に入るべきだ、政治的な先送りは許されない状況だ、TPPの扉は閉まりかけている。私は、これは党内あるいは閣内で言うことだと思います。外国にも聞こえる形で、大臣が言えば言うほど、外国は、当然のことながら、日本は政治的にもう入らざるを得ない、外務大臣が絶対入れと言っている、おれたちは吹っかけられると。今この瞬間にも、日本に突きつける要求、上積み作業をやっていると思いますよ。こんな稚拙な外交のやり方はないと思いますよ。

 だからこそ、何カ月も準備をして、そしてサウンドをして、二国間で、静かな環境で要望をよく聞き出して、要望が積み上がらないように注意して、これならいけるということをおおよそとってから参加の検討を打ち出すんですよ。それが外交のやり方ですよ。前原大臣、間違えていませんか。

前原国務大臣 先ほどの航空交渉の話については、実態からおっしゃっていることですので、一つの参考にさせていただきたいと思います。

 いずれにしても、今回のTPPの協議というものについては、まだ、マレーシアを含めて九カ国がこれからどのような形にするかということについて決めていくわけです。つまりは、参加をある程度意思表示しなければ情報収集できませんよね。いろいろな国がどういう考え方で、それぞれの国益に従ってもちろんこれは入ってくるわけですから、その条件や、あるいは、自分たちはどのように交渉しようかというところを、とにかく九カ国で話し合っていく、あるいはバイで話し合っていく。しかし、その意思表明をしなかったら情報をとれないじゃないですか。そして、日本の参加条件というのは整わないじゃないですか。

 そういう意味では、今回の閣議決定というものは私は一歩前進だと思うし、そういうものを前提として外交を進めていく、それだけであります。

赤澤委員 なかなか御理解いただけないようですが、都内の講演で、協定に入るべきだ、そして、いろいろな機会に、TPPの扉は閉まりかけていると。あなたの発しているメッセージが、情報をとるためにということじゃないんですよ。我が国は入るんだ、外国から見れば、これは吹っかける大チャンスだというような外交の進め方をやっているんです。私は、ぜひそこは改めていただきたいと思います。

 それから、前原大臣、あなたは十月二十六日の記者会見でこういうことをおっしゃいました。日本、中国、カナダ、フィリピンの四カ国がTPP参加の意向を事務局から聴取される会がある、こう発言されました。これは外務省のホームページにも出ています。間違いのないところだと思います。それで、きょうの農業新聞をごらんになりましたか。何が書いてあるかというと、その事務レベルの協議には中国は参加をしないということが取材の結果わかったということです。

 私は、ここで一つ疑義が出てくるんですよ。それは何かというと、前原大臣の中国も参加をしますよという発言、それをきっかけに、マスコミは、中国も参加するなら韓国も参加するんだろう、ありとあらゆる国が参加するから日本はバスに乗りおくれるな、こういう論調になったんです。中国は参加しませんよ。そのことについて、確認はとれていますか。

前原国務大臣 関心があったという話は聞いております。結果的に参加しないというのは、今委員のおっしゃったとおりであります。

赤澤委員 それで、韓国についても今からお話をしますけれども、私は、TPPに入れば日本の国がすごくよくなるという印象を国民の皆さんに与えて、なおかつバスに乗りおくれるなという印象も、中国も韓国も参加するというような雰囲気をつくって、マスコミも味方につけて、何かで、これで政権を浮揚しよう、支持率を上げようとしているんじゃないかということを非常に危惧するんですよ。大変大きな国益がかかわっているんです。前提がどんどん崩れていっていますよ。バスに乗りおくれるなと言いながら、中国は準備会合に参加しません。韓国はどうでしょうか。

 菅総理に伺います。

 篠原副大臣が訪韓されました。先月の十一日、十二日だったかと思います。その結果を菅総理に報告されていると思いますけれども、そのポイントはどういうふうに理解されていますか。

菅内閣総理大臣 その前に、中国に関しては、きょうのいずれかの新聞に、たしか、大使が強い関心をTPPに示すというようなことが出ていたのを記憶いたしております。

 韓国に関して、篠原副大臣が出かけられて、私もいろいろとその話を伺いました。韓国は、日本よりも早くいろんな国とFTAを結んで、EUとも結び、アメリカとも結び、まだ発効はしておりませんが、そうした形が進んでおります。

 私が篠原さんからお聞きしたのは、篠原さんおられますけれども、韓国においては、そういうFTA等がどんどん進んでおりますので、必ずしも現時点でTPPに参加をする必要性を感じていないんではないかというような趣旨の話を伺いました。

赤澤委員 その最後のところが重要なんですよ。とにもかくにも、なぜか、中国も韓国もTPPに参加する、国内はそれでバスに乗りおくれるなという雰囲気になったんですよ。そのことは前原大臣の記者会見でも出された話なんですね。今、訪韓報告、私のものも、自分で聞いてきたことを入れていますけれども、韓国は、TPPは厳し過ぎるから、現時点で公式な立場として考えないと。

 すると、このTPPの議論というのは、ライバル韓国に負けるな、ライバル中国に負けるなといって盛り上がってきた話ではないですか。そこの理解についてぜひ伺いたいですし、しかも、それがなければ実態の利益が私はないと思っているんです。その辺についてお伺いをいたします。

前原国務大臣 私が申し上げたのは、九カ国、つまりは、中国とか韓国とか今おっしゃいましたけれども、そういった国、参加の意思を表明している国も他にもありますけれども、そういった国ではなくて、九カ国が今後、来年のアメリカのAPECに向かって非常に頻繁にこれから議論をしていくということを私は申し上げたわけであります。

 と同時に、今回は我々はAPECの議長国でありますけれども、これは今まで自民党政権も、ボゴール目標を含めて、これにコミットメントをされてきたわけですよ。二〇一五年にはFTAAPというものをつくっていく、つまりはAPECの域内での自由貿易をつくっていくというのは、共通の目的でしょう。

 どういうような道筋でいくのかというところを今我々は議論をしていく中で、その中にTPPがある。我々は、そのほかにも日中韓のFTAの話もやっているんですよ。さまざまなルートの中で、どうしてこの域内の自由化を進めていくのかということで、余り物事を決めつけて、自分の歴史観とか何か固まった史観の中で、前提にして物事をおっしゃらない方がいいと思います。

赤澤委員 そっくりそのままお返しをしたいと思うんですよ。

 要するに、韓国が、韓・EU・FTA、韓米FTA、これを結んだ。韓国について工業製品の関税が下がる、日本は下がらない、それが大変だという話が、最も現実的な理由として言われている話なんですよ。

 ところが、TPPの場にEUはいませんよ。ライバルである韓国は、慎重にやると言っているんです。中国も入ってこない。今のままでいったら、バスに乗りおくれるなといって飛び乗ったら、そこにアメリカしかいないんですよ。そういう大きな国、アメリカしかいないようなことになりかねない、あるいは豪州。それが本当に国益になるのかをよく考えていただきたい。

 例え話をすれば、登山をしようというのに何の準備もない、先ほど申し上げたように、登山の技術も拙劣だ、加えて、このTPPは、いわば交渉の中ではエベレストなんですよ。既に例えば富士山とかそういう山を登った韓国がそれでも敬遠するようなものに頭から突っ込んでいく理由が今あると私にはとても思えませんということを指摘しておきます。

 それで、農業の話をさせていただきたいと思います。

 総理は最小不幸社会の実現をうたわれましたけれども、今、全国の農家、特に米農家百八十万のほとんどは、今の政府の米政策などの大失政の上にTPPの大拙速を重ねるひどさに最大不幸を味わっていると思われませんか。

菅内閣総理大臣 現在、農業の状態が、御承知のように、就業者の平均年齢は六十五・八歳でありますし……(発言する者あり)何か武部さんは違う、違うと言われるんですが、私、事務方に確認しましたら、そういうことだということであります。

 そういうことを含めて、いかにして農政を立て直すかということの中で、政権交代後、戸別的所得補償という政策をまずは部分的に始めたわけであります。いろいろな状況が生まれていることは承知をしておりますけれども、私は、一つの大きな改革に一歩踏み出した、このように理解をいたしております。

赤澤委員 戸別所得補償、すべての農家の所得を補償しますと言いながら、米価が大幅に下がって、結果的に農家の所得は少しもふえない。耳ざわりのいい文句で農家を初め国民をいい気持ちにさせておいて後で欺くというのは、私は民主党のお決まりのパターンになっていると思います。

 戸別所得補償のモデル事業でもう既に大失敗が起きています。米価が大幅に下落をしている。なおかつ、今夏の猛暑の影響で、一等米よりも一俵千円安い二等米の割合が激増しています。ここから問題なのは、米価下落対策がない。変動部分の補てんしかないので、来年の三月まで金が払われずに、物入りの年越しができないと農家は嘆いているんですよ。その状況でTPPへの参加の検討の表明です。三十四年ぶりに二兆五千億円割れの農林水産予算を組んだ今の政府、農業の強化とは正反対のばらまきを繰り返しています。これでは農業は弱くなる一方だと思います。

 それで、菅総理、前原外務大臣の、GDP一・五%の農業が残りの九八・五%を犠牲にしている、この発言は支持されるんですか。

鹿野国務大臣 今委員からいろいろ言及されたわけでありますけれども、お米の米価は確かに今下がっております。そういうふうな意味で、年内に戸別所得補償制度の定額部分は支払いをしっかりとやるように、こういうふうな体制を今とっておるわけでありますし、また、来年三月までに変動部分、これについても支払いがなされるように、こういうようなことで、この戸別所得補償は農家の人たちの、特に米農家の方々に対してモデル事業としてやったわけでありますので、そういう一つの仕組みの中で行われておりますというようなことは、国民の皆様方に対しましても申し上げ、また委員にも御理解をいただきたいと思います。

中井委員長 鹿野農水大臣、後半部分、お答えになっていないと思いますが。赤澤君の質問の前半には答えているんですが、後半部分に答えていない、後半部分。

鹿野国務大臣 私は、前原大臣のその考え方というふうなものについては、一・五%の件ですか、これはよくいろいろと議論されていますけれども、例えばアメリカなんかは一・一%といいながら基本的に農業についていろいろ具体的な施策をやっておるわけでありまして、私としては、農業政策というふうなものについて非常に重要な位置づけをしていかなきゃならない、こういうふうな考え方であります。

赤澤委員 この包括的経済連携に関する基本方針、農業分野を見てください。私はこれを見て愕然としたんです。農業については、将来に向けてその持続的な存続が危ぶまれる状況にあると。これが閣議決定を経て出てきたことには、私はもう本当に驚愕をしています。

 日本の農業、弱いと思われているけれども、実は強いんです。日本の農業生産額は世界第何位で、先進国第何位か御存じですか。けさの閣議決定したときの記者会見でも、座して死を待つよりは打って出ろと仙谷長官おっしゃったけれども、農業生産額、世界何位で、先進国何位ですか。

仙谷国務大臣 突如御指名をいただきましたけれども、今数字は私記憶しておりません。

 ただ、先生、農業は強いと。私は、強い分野、農業でも強い部分は相当あると思いますけれども、特に私の地元を見ておりますと、従来から米のできにくい地域に限って大変工夫を重ねられて商品作物をつくられて、自立されて、一人当たり三百万から五百万ぐらい稼ぐ農家、つまり家族でいえば年収二千万、三千万稼ぐ農家、競争力のある農家というのは随分ございます。決して弱くないと思います。

 ただ問題は、全般に年齢構成がこういうふうになって、その方々も、つまり我々世代の、六十五です、我々世代の友達が一生懸命頑張っているんですけれども、息子たちが継いでくれない、息子がいない、農業の後継者がいないということだけは、彼らも大変悩み深い。つまり、何らかの別の形、つまり産業化を考えないと、農業はこのまま座して死を待つことになるというふうに私は考えております。

赤澤委員 今の認識は、私、全くおかしいと思うんです。

 とりあえず申し上げますが、日本の農業生産額は世界五位、先進国で二位です。それに貢献をしているのは、米だけは、これは大変厳しい中、土地利用型、米、麦、これは農地の制約が決定的なんです。EUは日本の平均経営面積の九倍の農地、米国は九十九倍、豪州千九百倍、こういうことです。米以外の野菜、果樹、畜産、酪農、これは売り上げの表を入れていますけれども、伸びています。担い手も若手です。

 要するに、強化できる部分は自公連立政権当時でも強化してきているんですよ。成果は上がっているんです。生産額は上がってきています。笑っている人たちは中身がわかっていない。米だけがこの問題があるから大変なんです。強化できる部分はしてきた。本当に強化が難しい部分が残っているんですよ。

 そのことも認識をしないで、農業全体が存続が危ぶまれる状況なんてことを閣議決定する。それ自体が、民主党は本当に農業を理解していない、農家をばかにしている問題だと私は大いに思うわけであります。

 その上で、先ほどの予告した話に行きます。

 鹿野大臣、このセンシティブ品目について配慮を行いつつ、すべての品目を自由化交渉対象とする、これは精神分裂じゃないですか。

 今まで、センシティブ品目について配慮を行う、これは、重要品目、米、麦、乳製品、牛肉は関税撤廃の例外とする、これが今までのセンシティブ品目について配慮を行うですよ。それが、「すべての品目を自由化交渉対象とし、」というのがけさ閣議決定されているんですよ。こんな意味不明な、わからないことを書かれて、それをもってこれは閣内不一致じゃないんだと言われても、私は納得できないです。

 今までの方針を百八十度変えて、関税撤廃の例外はもう認めないという交渉のやり方をやるんですか。そう書いてありますよ。

玄葉国務大臣 赤澤委員、この「センシティブ品目について配慮を行いつつ、」というのは、交渉に入った場合のことです。入るという決断をした場合のことです。当然配慮しなきゃいけないと思いますし、同時に、少なくともハイレベルのEPAやTPPは、一度俎上にのせるというのが基本的な原則です。

 ただ、先ほど赤澤委員は一つだけいいことをおっしゃったのは、韓国が各国とEPAを結んでいく、そのさまをおっしゃいましたね。確かに二国間EPAを進めていくというのは極めて大事なことなんです。

 今回の基本方針のもう一つの隠れた最大のポイントは、TPPというよりは、二国間のEPA、日韓を再開する、日豪を早期締結する、そういうことなんですね。まさにそこは、二国間、バイラテラルと包括的なものと戦略的に組み合わせて交渉していく、当然のことだと思いますし、交渉に当たっては足元を見られないようにするというのも当然のことだ、そういうふうに思います。

赤澤委員 口先ばかりで、全く言ったとおりになっていないのが私は問題だと思うんですよ。

 鹿野大臣に聞きます。

 今の説明で、当然、すべての品目、自由化の対象だと玄葉さんは言いましたよ。それで農水大臣は本当にいいんですね。今までの方針の百八十度転換ですよ。

鹿野国務大臣 これは、EPAや広域経済連携の方で、センシティブ品目について配慮を行いつつと。結局交渉ということですから、当然いろいろな交渉の仕方があるわけですね。

 それを戦略的にやっていくというふうなことを今、玄葉大臣から言われましたので、センシティブな品目について配慮を行いつつということですから、何も基本方針が今までと変わったというわけではございません。

赤澤委員 要は、どうなるかわからぬということですよ。閣議決定した、閣内不一致でないとか言いながら、要は、交渉次第でどうなるかわからぬと言っているだけの話なんですよ。それが無責任だと言っているんです。

 TPPの参加検討の所信表明の唐突さ、準備不足、説明不足、交渉術の拙劣さ、私は覆い隠しようがないと思います。国を開くとか、扉が閉じかけているなどという毎度おなじみの耳ざわりのいい文句で国民を欺いて、日本の農業の競争力にもほとんど理解がない、過去の貿易政策の誤りについての正しい認識もないまま、今の政府の農業分野における大失政の上塗りとして、大拙速でTPPの検討を進めようとしている。これでは、あるべき日本の農業の将来像は見えません。自動車や薄型テレビなどの輸出産業のみが利益を保証されるだけの玉砕型外交に日本が突っ走ろうとしていると私は思わざるを得ません。

 その点について、菅総理、一たび冷静になって、このTPPの参加の検討は撤回してほしいんですよ。その点について考えをお述べください。

菅内閣総理大臣 私は、今の玄葉大臣あるいは鹿野大臣、関係大臣との議論をお聞きいただいて、やはりTPPについて参加の検討を行うということが、おかしい発言があったとは全く思いません。

 先ほど赤澤さんは韓国のことをどう聞いたかと言われましたけれども、つまりは今我が国は全体として、この貿易の自由化の問題ではかつては日本も非常に、相対的には決しておくれていなかったわけですが、この十年、相対的に相当おくれてきた。それに対しては、自民党の中でも相当の危機感を持っておられる方があるわけですよ。先日もここで西村議員がかなり激しく、逆の方向から私にも質問をされました。

 そういうことを含めてきちっと検討して、そしてまさにバイラテラルないろいろな交渉事もあわせて、いろいろと、この場合は検討したり、あるいはもう既に交渉に入っているものもありますから、進めていくということも含めて、まさに国を開くということが、農業の再生とともに両立させるということが今や最も必要だ、私はこう考えています。

赤澤委員 どう実行できるのかもわからない大変空疎な所信の表明だと私は思うんですね。交渉について本当に全く準備が整っていない、技術もない。私は、本当にこの進め方で国益をおもちゃにしていただきたくないと強く思っています。

 最後、残されている時間で官房長官にお伺いをしたいと思います。国会の同意人事の話です。

 これは本当に、官房長官は過去、我が党の議員に質問の仕方が拙劣だとおっしゃったけれども、官房長官の人事管理こそ拙劣なんじゃないですか。その話をさせていただきたいと思います。

 これは、十月二十一日に国会に提示された同意人事です。国会の同意人事とは、衆参両院の本会議の同意を経て内閣や閣僚が任命する人事のことです。テレビをごらんになっている国民の皆様は必ずしもなじみがないかもしれませんけれども、衆参両院の同意が絶対的に必要とされるという意味で、法律や予算や条約などよりも厳格な手続、大事なものだということです。衆院による三分の二の再可決もできません。行政機関等のうち特に重要な、合議制をとる、そういう委員会などの委員長、委員等の任命要件とされているんです。この極めて重要な国会の同意人事、過去、民主党は政争の具にしてきました。日銀総裁の人事を覚えておられる方は多いと思います。

 そんな中で、二十一日に提示されたこの同意人事、すべて期限切れだったんですよ。委員会を見てもらえば、重要な委員会ばかりです。こういうものの委員、大事な任命だと思いますよ。それについて軒並み期限切れのものを出してきた、このことについて、仙谷官房長官は国会にきちっと謝罪すべきではないですか。

中井委員長 赤澤君に申し上げますが、質問時間を過ぎております。したがって、この答弁で終わりにいたします。

仙谷国務大臣 政府といたしましては、国会同意人事案件につきましては、任期を切らさずに任命できるように人事案を国会に提示することが基本と考えております。

 今国会に提示いたしました人事案件のうち、十月二十一日に提示いたしました人事案、五機関十一名はすべて任期切れのものでありますけれども、これは、本年六月の鳩山内閣の総辞職とその後の限られた国会の審議日程、人事案件という特殊性を勘案して、政府としてその時点で、つまり前々国会になりましょうか、この会期末に人事を明らかにして、しかし、それが日程が足りない、つまり、十日前には提示せよというお話といいましょうか約束もございますので、そういういろいろな諸条件を勘案しまして、政府としてやむを得ず提示を見送ったためでございまして、どうか御理解をいただきたいと思います。

 また、十月二十一日に提示できなかった任期切れの人事案件につきましても、十一月四日に提示した人事案件として国会に提出させていただいております。

 政府としては、今後、任期切れを起こすことなく、速やかに人事案を提示できるよう努めていきますので、現在提示している人事案については速やかに御同意いただけるようにお願いをいたしたいと存じます。

中井委員長 それでは、自民党さんから、齋藤君の時間を削って赤澤君に回すという申し出がございましたから、一問だけ認めます。

赤澤委員 この重大な不作為を起こした政府側が、今後の人事管理、組織管理のあり方について具体的な改善策もいまだに示していないのは、本当に不誠実なんですよ。

 仙谷長官、強く求めておきます。今回の問題を起こした責任者である政務三役を必ず処分するとともに、具体的な再発防止策を直ちに出してください。だらだらと、期限切れのものをその後第二弾、第三弾で出してくるようなふざけたまねはやめていただきたい。それは本当に拙劣なことです。

 そのことを強く申し上げて、質問を終わります。ありがとうございました。

中井委員長 この際、齋藤健君から関連質疑の申し出があります。石破君の持ち時間の範囲内でこれを許します。齋藤健君。

齋藤(健)委員 自由民主党の齋藤健です。

 本日は、当選一年二カ月の私にも、この国会の花形委員会であります予算委員会で、総理初め閣僚の皆さんに議論させていただく機会をつくっていただきまして、大変光栄に存じます。まず初めに、このような機会をお与えくださった同僚議員の皆さんに感謝申し上げたいと思います。

 質問に入る前に、一つだけお断りを申し上げたいと思いますが、私はあくまでも正論の質問にこだわって直球しか投げませんので、御答弁の方も簡潔に直球でお願いできればと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 それでは、早速具体的な質問に入っていきたいと思います。本日の私の質問は、地球温暖化対策と経済対策の二本立てであります。

 まずは地球温暖化対策であります。

 民主党政権は、昨年九月、就任したての鳩山総理が、突如、一九九〇年比で二〇二〇年までにCO2などの温室効果ガスを二五%削減をするという中期目標を国際約束とされました。御案内のように我が国は、現在、京都議定書に基づきまして、一九九〇年から二〇一〇年までに六%削減をするという目標、つまり、二十年間で六%削減をするという目標の達成に大変苦しんでいるところでありますが、この鳩山総理が提案した九〇年比で二五%削減目標というのは、〇五年から二〇二〇年の十五年間に引き直しますと、何と三〇%削減をするというものになります。

 二十年間で六%削減をすることに苦しんでいる国が、十五年間で三〇%削減をすることを目標に掲げよう、もう少し言いかえますと、これまで五年間では一・五%削減するというペースでやってきて、それで苦しんでいる国が、いきなり五年間で一〇%削減のペースに切りかえると世界に言っちゃったわけでありますから、当然のことながら、国民各層から、企業が海外へ出ていってしまうのではないか、雇用に対して大きな影響が出るのではないか、GDPにもかなり影響が出るのではないか、国民負担も大きなものになるのではないか、本当に大丈夫なのかという心配の声が上がりました。

 これらの真摯な心配を受けまして、私は、もう一年前になりますが、昨年十一月にこの衆議院予算委員会でこれらの点についてさまざまな質問をいたしましたが、結局、その時点では政府から答えられるものは何もなく、これからということでありました。つまり、前提条件つきとはいえ、条件が満たされれば十五年間で三〇%CO2等を削減しますよということを世界に約束しながら、国民に説明できるものは何もなかったんです。

 私の質問を聞いていたマスコミの方がこうつぶやかれたのが今でも鮮やかに印象に残っています。要するに、二五%削減をするという意気込みだけで、一枚めくると何もないんだなと。

 その後一年が経過をいたしました。菅総理にお尋ねいたします。

 企業が海外に出ていってしまうのではないか、雇用に対して大きな影響が出るのではないか、GDPは大丈夫か、国民負担は大丈夫か、こういった国民各層の真摯な心配に対して政府は説明責任を果たすべきだと思いますけれども、きょうは、この中から、CO2などの温室効果ガスを二五%削減する場合の我が国の雇用への影響について、雇用への影響に限ってで結構ですので、今この予算委員会の場で、国民の皆さんに対して、この国のリーダーとしての説明責任を果たしていただけませんでしょうか。

 雇用への影響はこうだと、できるだけ定量的にわかりやすく、この目標を盛り込んだ法案までこの国会に提出しているわけですから、わかりませんですとか検討中ですとかいうことはもうあり得ないと思っていますが、この質問は事前に通告をしてありますので、きちんとした総理の御見解を賜れればと思います。

松本国務大臣 先ほどの二〇二〇年二五%削減というのは、一九九〇年比でありますけれども、高い目標を掲げさせていただきました。

 実は、去年の選挙前に私も、マニフェストに書かれたときに、大丈夫かなと思いましたけれども、私は、当時の鳩山総理あるいは小沢前環境大臣のあの志は高かったというふうに思っておりますし、私も今、環境大臣としてしっかりこの問題に取り組んでいきたいというふうに思っております。

 実は、おととしの洞爺湖サミットで福田総理が、二〇五〇年までに五〇%削減、そして去年のラクイラ・サミットでも、二〇五〇年までに先進国全体としては八〇%という目標を支持したということがあって、やはり、そういう意味も含めて、この二五%は高い目標ではない、我々本当にやっていかなければならない目標だというふうに思っております。

 実は、私は一九五一年生まれですけれども、一九五一年から今までのエネルギー総量ということを考えますと、物すごいエネルギーを使っているということがある。したがって、そういう意味で、二五%目標をしっかり掲げてやっていきたいというふうに思っております。

 雇用の問題につきましては、グリーンイノベーション、さまざまあります。そういう意味では、新しい技術、新しい産業等々これからは生まれてくるということもありますので、さまざまなモデルがあると思いますけれども、そこに向かって頑張っていきたいというふうに思っております。

齋藤(健)委員 一年前に私が質問したときには、これから検討するということでありましたが、今私がこの場で国民の皆さんに、本当に心配をしている、皆さんを支援している組合の皆さんも含めて、一体どうなんだということについて説明の責任を果たしてほしいという質問に対して今の御答弁だったということは、大変残念に思いますが、それがこの政権の力量なのかなと思って、悲しい思いであります。

 我々の目の前には、今政府が提出した温暖化対策基本法案というものがあります。この法案は、前通常国会で廃案になったものと全く同じものをこの臨時国会に出してきたものです。この法案には二五%削減目標というものが盛り込まれているんです。にもかかわらず、今のような世界に笑われるような説明で国民の皆さんが納得すると思いますか。きちんとした、二五%の削減した場合の影響はこうだ、でも国民の皆さんやりましょう、そういう形をしっかりと示していただかなくては無責任だと私は思いますが、総理の見解をお伺いしたいと思います。

菅内閣総理大臣 私も、鳩山政権のもとでも副総理という立場でこの問題に取り組んでまいりました。

 例えば、東大の前の学長の小宮山先生は、私はお宅にもお邪魔しましたけれども、太陽パネルをつけたりヒートポンプを使ったり、そういうことをやれば、住宅やオフィスの分野、いわゆる広い意味での生活の分野で一一%に相当するCO2の削減は可能だということを、小宮山先生の考え方としては公にされております。

 そういったことも含めて、新成長戦略に位置づけられましたグリーンイノベーションによる環境・エネルギー大国戦略においては、環境分野を雇用を生み出す成長産業というふうに見ておりまして、二〇二〇年までに五十兆円を超える環境関連新規市場、さらには百四十万人の環境分野の新規雇用を想定いたしております。

齋藤(健)委員 総理のこの二五%削減の影響、雇用への影響、説明責任というのは今のようなものであるということ、よく承りました。

 時間がないので次に進ませていただきます。御判断は、テレビをごらんになっている国民の皆さんにゆだねたいと思います。

 COP16、もうすぐ開かれます。これもまた温暖化の、CO2削減の国際交渉が間もなく行われるわけでありますが、昨年十二月にもCOP15という形で国際交渉が行われましたが、その後、世界の情勢は大きく変わりました。アメリカでは、COP15におきまして、議会で法律が通れば二〇〇五年比約一七%削減をする、そういう提案をアメリカはしておりますが、中間選挙でこの法案が通る可能性はほぼゼロとなりました。つまり、アメリカの中期目標というものが存在しない状況に今なりつつあるわけであります。

 アメリカは世界のCO2の約二〇%を出しております。この国が、今目標すらなくなりつつある現状であります。また、中国はやる気がありません。そして、日本政府は中国を動かすだけの力量もありません。中国やアメリカが新しい合意に参加できそうもない状況がこの一年でどんどんと強まりました。

 そんな中で、今我々が大変心配しておりますのは、アメリカも中国も加わっておりません、今あります京都議定書、これを延長しよう、仮に暫定的なものでいいから延長しよう、そういう動きになることを私は大変懸念をしておりまして、ここで総理に確認をさせていただきたいのは、そういう京都議定書の延長、あるいは暫定延長であっても、中国やアメリカが加わらないような国際合意には乗らないということをここで明言していただきたいと思います。

 総理、お願いいたします。総理、お願いいたします。

松本国務大臣 大変重要な御指摘だと思います。

 今、京都議定書の問題を指摘されましたけれども、実は、一九九〇年から二〇〇七年まで、京都議定書に加盟しているところの全CO2の排出量が当時は四二%でありましたけれども、今二八%になっております。自分がこの間調べさせました。また逆に、中国と米国を合わせますと、九〇年は三四%でありましたけれども、今四一%になっています。

 そういう枠組みの中で世界全体のCO2を減らしていくという中では、京都議定書の第二約束期間を設定することは私は困難であるというふうに思いますし、そういう国際交渉の場でも、すべての主要国が参加する公平で実効性のある枠組みの構築ということをしっかり担保して交渉をしてまいりたいというふうに思っております。

齋藤(健)委員 総理にお願いいたします。

菅内閣総理大臣 私は、実は、一人当たり幾らCO2を出しているかということを常に念頭に置いてこの問題を考えております。

 アメリカが大体一人当たり二十トン、日本やドイツが一人当たり十トン、中国が四トン、インドはまだ二トン弱であります。これを二〇五〇年までに半分にする。今、世界平均は一人当たり四トンでありますから、二トンまで下げなければいけません。アメリカでいえば二十トンを二トンに、日本やドイツでいえば十トンを二トンに、そして中国も、今四トン近くですから、それを二トンに下げなければ全体を半分にすることはできません。

 私は、何年基準というのは非常にわかりにくいものですから、そういう一人当たりの基準ということで考えた方がいいのではないかということを個人的には従来から思っております。

 そういう中で、今お話のありましたことで申し上げれば、今九〇年比のことの指摘がありましたが……(齋藤(健)委員「京都議定書の延長問題」と呼ぶ)京都議定書をそのまま暫定的に延長するということは、これは我が国としては選択としてはあり得ない、それはとるべき道ではない、こう考えております。

齋藤(健)委員 よくわかりました。私どもが何でしつこく何回も聞くかというと、この政権は時々言うことが百八十度変わってしまうからです。総理、この話、私は篤と覚えておきますので、ぜひこの御方針、堅持をしていただきたいと強く申し上げておきたいと思います。

 次に、時間が余りないので、我々の経済対策に移らせていただきますけれども、私どもの経済対策、今回政府が出された補正予算と対比をしながら少し御説明をさせていただきたいと思います。ちょっと見えにくいかもしれませんが、資料を配ってありますので、よろしくお願いいたします。

 まず、そこにございますように、我々としては、比較して提示をしてあります。自民党、民主党というふうに左右に分けて比較してあります。虚心坦懐にこれを御説明しますので、熟考していただければ幸いであると思います。

 NHKの放送が十一時五十四分で切れるそうなので、まず我々の考えを一通り説明して、質問はそれからまとめて差し上げたいと思っております。

 まず、財源の方から、この真ん中が財源ですが、財源のところから御説明をいたします。

 まず、できればアップでお願いしたいんですけれども、政府の経済対策の財源の特徴です。政府の経済対策の財源の特徴ですが、一言で言えば、なけなしの将来財源を食いつぶしながら、一方でばらまきは続けるというものでございます。それに対して、自民党の財源案は、ばらまきを停止してわきを固めた対応をしよう、それでいても五兆円規模の対策はできるというものでございます。

 具体的に御説明をいたします。

 まず、民主党の財源の方をごらんいただければと思いますが、まず、本年度の予算の執行で不用となりました経費一兆四千億円、これを全額財源として使われております。特に、この中の一兆二千億円は、国債発行経費が思った以上にかからなかったなどによる不用額でありまして、これらは本質的にはなけなしの将来財源でありますが、それを使い切っております。二つ目。また今年度の景気動向は、きのうの日銀のお話にもありましたが、かなり不透明感が高まってきておりますが、早々とこの本年度の税収、まだまだ不確定な不安定なものである本年度の税収を二・二兆円も計上いたしております。繰り返しになりますが、しかもいわゆる四K、子ども手当、高速道路無料化、高校無償化、農家戸別補償制度、これらをやり続けながらそういうなけなしの財源を使う、そういう財源構成になっております。

 次に、自由民主党の財源でありますが、自民党の欄をごらんいただくとわかりますが、まず、本年度この四Kと言われる、我々の言い方ですが、ばらまき四K施策を本年度分停止するだけで五千億円の財源が捻出できます。そして、来年度この四Kばらまき施策を撤回すれば、事実上財源が出てまいります。それを実質上の担保といたしまして、当面は国債を発行させていただいて二兆七千二百億円調達いたしますが、これは、来年度ばらまきをやめることによって容易に確保できる金額でございます。それから、平成二十一年度の予算の剰余金八千百億円を使い、そして予備費の活用で九千二百億円、これはもっと早い段階で補正を出せば一緒に使えたわけでありますので我々の対策の中では含めておりますが、以上で五兆円規模の財源は十分に確保できるということであります。

 それに加えまして、国民の皆さんの財政赤字に対する心配というものは、この民主党のばらまき四K政策によって飛躍的に高まっております。補正予算でまたお金を使って大丈夫かと心配をしている人がふえてきていると思います。そういう心配、将来への不安があれば支出だってしません。景気もよくならない。だから、こういう補正予算を組むと同時に、将来の財政赤字にはこうやって取り組んでいくから大丈夫だという枠組みを一緒に提示するのが大事でありまして、財政健全化の枠組みをセットで提示しないと景気対策も効果が薄れてしまうのではないかということであります。だから我が党は、この臨時国会で財政健全化責任法案を提出して、審議をしませんかと申し上げているわけです。そういう理由であります。

 次に、対策の中身について御説明をいたします。

 確かに、フェアな言い方をしますと、今回の政府の補正予算案には我が党の対策がそれなりに盛り込まれていることは、それなりに評価をさせていただきます。しかし、幾つかの点で決定的な問題があろうかと思います。

 まず、民主党の対策の欄、一番下の右側の方でありますけれども、ごらんください。まず、対策の規模でありますが、政府の対策の中には、国税五税の決算で余ったお金、決算剰余金のうち、地方に交付をされます一兆三千億円を経済対策の中に含めておりますが、これは、対策を打とうが打つまいがもともと地方に配分されるべきものでありまして、対策の中にカウントするのはこそくのそしりを免れないのではないかと考えております。だから我々のにはカウントしておりませんし、政府の今回の補正予算による経済対策の規模は、これを差し引きますと実質三兆五千億円しかないということになります。

 また、二つ目の指摘でありますが、地域に冷たいということであります。先ほど同僚の町村議員からの質問もございましたが、民主党が地域が自由に使えるお金として交付をしようとしております地域活性化交付金、これは、趣旨は私は大変すばらしいものだと思っておりますが、でも、何で三千五百億円とこんなに少ないのでしょうか。市町村は全国で千七百二十七もあります。都道府県は四十七あります。そこに三千五百億円で、本当に景気浮揚効果が大きく期待されるのでしょうか。

 三つ目。民主党の対策の問題でありますが、米価下落へ対応する施策が含まれていないということです。戸別所得補償制度によって米価の下落は拍車がかかりました。現在準備されている予算では足りないのではないかと心配をされているわけで、きちんと対応すべきだと思います。

 これに対しまして、我が党の対策でありますが、左側であります。この地方が自由に使える交付金でありますが、一兆五千億円。民主党の三千五百億円に比較しまして、我が方は一兆五千億円を支出すべきだという考えであります。

 それから二つ目。「米価下落への対応、農業基盤整備強化」と書いてありますが、これは、米価下落に対応した緊急需給対策として五百億円、農業基盤整備に三千億円、合わせて三千五百億円を計上しているものであります。

 それから、最後に書いてあります「頑張る人を支援する総合的な雇用・就学支援」、ややわかりにくい表現になっておりますが、これは、女性、高齢者の就業機会・社会参画支援に一千億円、児童、学生のいる失業者世帯に対する緊急就学支援に一千億円というものであります。

 以上、概要を御説明させていただきました。たくさん議論をしなければいけないところがあると思いますが、質問に移らせていただきます。

 まず、菅総理に伺いますが、この自民党の財源につきまして、自民党の方が安心感があると思われませんか。

野田国務大臣 まず、このパネルを見て、これは齋藤さんらしくないなと。多分、これは自民党がつくったんだと思います。齋藤さん個人ではないと思うんですが、例えば基本理念で「雇用空洞化の危機。」、これは我々も共通認識であります。だから今回の補正予算でも雇用対策等含めているので、これは共通認識です。それで、企業を海外に追い出すような施策はもちろんやるべきではない、同じです。だからこれは、経済対策、あなたならどっちという聞き方をすることがおかしい。

 しかも、民主党の基本理念のところに「世界でも高すぎる法人税率四〇%」、これは我々が上げたわけじゃありません。この法人実効税率を今、政府税制調査会で議論して、実効税率を下げられるかどうか議論をしているわけです。だからこれは、あなたならどっちという聞き方はちょっとひどいんではないかなと。これは、どちらも問題を共有しているものもあるし、どっちもどっちのところもあるんじゃないかと思います。

 加えて、お尋ねは財源ですが、民主党の主要政策、マニフェスト部分をばらまきという一刀両断をされておりますけれども、昨年、子ども手当とか高校無償化とか含めて大体三・一兆円で効率的に実施をする、それに見合った財源は、いわゆる事業仕分けなどをやって、相当額、ほぼ同額財源をつくりました。二十三年度編成も、マニフェスト主要事項を実現するために、安定財源を見つけながら実現をしていくわけで、もし財源の制約があってどうしてもできない場合には、国民の皆様に御説明をし、御理解を得るということで、これはばらまきではありません。ここは全く見解の違いだということであります。

 その上で、国債の償還財源、これは不用額を使っています。あるいは、税収増分を使っています。これは今まで自民党もやってきたことであって、むしろ我々は、新規国債を発行しないで約五・一兆円規模の経済対策を講じるということは財政規律をしっかり考えた上で経済対策を考えているということは、ぜひ御理解をいただきたいと思います。

 これは水増しだという御指摘がありました、地方交付税を含んでいる分。地方交付税を入れた分と入れていない分を両方わかりやすく提示しています。偽装はしていません。していないということはぜひ御理解いただいて、その規模感というのは、もう既に委員も御指摘あったように、経済予備費九千二百億円使いました。ステップワン。その上で、国費だけにするか地方交付税を入れるか、考え方はあるかもしれませんが、私は、相当規模、規模感では自民党の案とほとんど同じではないか、そこは反論をさせていただきたいというふうに思います。

齋藤(健)委員 尊敬する野田大臣とはいい議論ができるなと思って、今うれしく思いました。

 幾つか反論させていただきたいと思いますが、まず空洞化についてでありますが、今この国は、一九八五年のプラザ合意、一九九五年の一ドル七十九円、それに次ぐ第三の空洞化の危機にあります。そして、最大の危機だと思います。

 私は、一九八五年に、プラザ合意のときに、その影響を緩和するための法案をつくる作業をしておりました。九五年の一ドル七十九円のときには、日米交渉に参画をいたしておりました。いずれも、過去二回の空洞化の危機のときには、私はそれを身をもって肌で感じてまいりました。

 しかし、今回の空洞化の危機は、前回二回の比ではありません。本当に、素材産業までがこの国内から海外へ出ようとしているんです。そして、それを後押しするような、ここに書いてありますような、製造業への派遣禁止、最低賃金千円、CO2は十五年で三〇%削減をしろ、法人税は四〇%で、五%下げるけれども、そんなものは財源を出せ、そして一ドル八十円の円高、これで国内で事業をする企業があるのかということを私は申し上げているんです。

 本当に厳しい危機です。例えば、日産のマーチは今度タイで生産をして、国内向けは全部タイから日本に輸出をするという決断をいたしました。タイは八年間法人税がただであります。そして、日本から輸入する部品も関税はただであります。今や世界は、優秀企業、優良企業を獲得する厳しい競争の時代に入っているんです。そういう認識が今の政府にあるのか。あったらなぜ、製造業への派遣とか最低賃金千円とか、これだけの政策を並べちゃうんですかということを言っているんです。

 一つ一つはそれなりの理由があったとしても、これだけ重なったら、企業は全部外へ出ていってしまいますよ。直ちにこれらの施策、特に最初の三つを停止すべきだと私は思いますが、総理のお考えを伺いたいと思います。

野田国務大臣 雇用の空洞化に対する危機感は、先ほど申し上げたとおり共通です。だから、雇用、雇用、雇用と言って、菅総理がそれをずっと主導されているということでございます。

 製造業への派遣禁止とか最低賃金はちょっと担当外でありますが、私の担当するところは、法人税と今委員の御指摘のあった円高の問題でございます。

 法人税については、先ほども政府税調で議論をしてというふうにお話をしましたけれども、これ以上海外に生産拠点を国内企業が移さないようにするために、そして国際競争力を持つためにはどうしたらいいか、そしてそれは雇用につながるのか投資につながるのか、あるいは海外から日本に立地するような環境整備ができるか、そういう観点から、法人実効税率の引き下げの観点を今議論しているということをまず一点申し上げたいと思います。

 円高対策については、今回のステップワン、ステップツー、ステップワンは経済予備費、ステップツーは補正予算、ステップスリーは当初予算、この三段構えの対策で対応をしていきたいというふうに思っていますが、一方、為替については、いつも申し上げていますが、必要なときには断固たる措置をとる、そういう基本姿勢のもとで頑張っていきたいというふうに思います。

齋藤(健)委員 私は、今国民の皆さんが感じていることは何なのかということを僣越ながら少しお話ししたいと思うんです。

 私は、皆さんが今まで言ってきたこととやってきたことに大きな乖離があるということに国民の皆さんは疑問を感じているんだと思うんですよ。普天間もそうでした。県外移設を格好よく打ち上げたけれども、結局、何の腹案もなかった。言っちゃったけれども、何も考えていなかった。沖縄の皆さんの感情と日米関係に消すことのできない大きな傷跡を残しただけでありました。

 八ツ場もそうです。やめると格好よく言っちゃったけれども、よく分析していなかった。やっとこれから考え直そうということになったそうでありますが、この問題は、地元の皆さんに消すことのできない傷を残しただけでした。何のプラスもない。マイナスだけ。

 尖閣もそうです。船長を逮捕し、国内法を適用すると格好よく言っちゃった。でも、中国が強硬に出てきたときにどうするかなんて考えてもいなかった。びっくりして船長を釈放しちゃった。そして全世界に笑われた。

 笑われただけじゃない。そういう日本の弱みを見て、ロシアのメドベージェフ大統領が、これはチャンスだと国後島を訪問した。内政のミスは政権がかわれば取り戻せますが、しかし、外交のミスは取り戻せない。戦後初めてロシアのトップが国後島を訪問したという事実は、我が党が政権を取り戻しても消えないんです。この責任を痛感し、どうするつもりなのか。本来ならば、夜も眠れないぐらい責任を痛感してもいいはずなのに、どうもそうは見えません。私はそこが許せない。

 参議院選挙の前、消費税一〇%もそうでした。格好よく言っちゃった。でも、何も考えていなかった。考えていなかったから、すぐに発言を修正。混乱させただけ。

 もはや古い話と言われるかもしれませんが、財源問題もそうだった。無駄を省き、予算を組み替えれば幾らでも財源は出てくる、格好よく言っちゃった。でも、国民の皆さん、財源は出てきたでしょうか。こういうのを口だけというのではありませんか。

 企業献金もそうです。やめると格好よく言っちゃったけれども、よく考えていなかった。やはり必要だ。

 鳩山前総理の引退宣言もそうですよ。一国の総理をやった人間は議員をやめるべきだ、自分はそれを実行すると格好よく言ったけれども、やはり続けるそうです。総理までやられた方の発言がこの軽さであります。

 私たちは、この政権にある人たちの発言の一体何を信じればいいのでしょうか。私は野田財務大臣は大好きですけれども、こういうことが背景にあって質問をさせていただいているわけであります。

 今、日本は本当に大きな危機にあると思いますよ。大変危険な状態だと思います。大きな手術をしなければ、この国の命を長らえることはできないと思います。そして、その手術をしなければならない医者の立場にある現政権の皆さんの言葉がそんなにころころ変わったのでは、患者はたまったものじゃないということを申し上げているわけであります。言葉はだれにでも言えるんです。素人だって言える。そうじゃないんです。ここに座っている皆さん方にこの大きな手術をする卓越した技量があるんですかということを我々は問うているんですよ。

 私だって、野党の一年生議員ではありますが、この国が危ないと思って、すべてをなげうってこの世界に入ったんです。ですが、何ですか、このていたらくは。尖閣もそうでした。国後もそうでした。全世界の笑い物じゃないですか。

 残念ながら、この国の今政権を担っている皆さんから、この国を一生懸命リードしていくという情熱、感じられません。そして、卓越した力量、それも感じられないんです。どんなにがんを治しますと格好いいことを言っても、それをできる力量がなければ意味がないんです。どんなに国民が第一の政策をやると言っても、その技量がなければ意味がないんです。

 今問われておりますのは、新しい政権ができて一年二カ月、言葉だけではなくて、本当にこの国を何とかする技量があるのかどうか、そういう卓越した技量があるのかどうかということを国民が疑問に思っているのではないでしょうか。この点について、総理の御見解を伺いたいと思います。

中井委員長 膨大な質問か意見でありますが、あと六分ありますから、菅総理、どうぞ。

菅内閣総理大臣 私は、齋藤さんが真正面からこの補正予算を議論していただいたことに、まずお礼を申し上げたいと思います。そして今、最後といいましょうか、話された問題の論点は、私も同じように思っております。

 つまり、まさにこの日本を立て直す技量がどこにあるのか、そして、この今の経済の現状が、何が原因でこの二十年間の経済の低迷があるのかという、まさに診断をした上で処方せんを書かなければなりません。

 私は昨年来、副総理のときから、新成長戦略の責任者として、これまでの二十年間の経済政策の失敗を第一の道、第二の道という言い方で言ってまいりました。この中でも、部分部分では共通の部分もありますけれども、今この中でやったら、では、かつて、先ほど一九八五年とか九五年の齋藤さんのまさに経産省、通産省におられた経験に基づいた話がありましたが、当時だって、自民党政権はいろんな経済政策をやりましたけれども、成長路線に戻らなかったじゃないですか。その原因がどこにあったかという分析が入った中身になっているかどうかが私には見えません。

 あえて簡単に申し上げれば、八〇年代からの公共事業は、残念ながら、一時的なカンフル剤にはなったけれども、一九六〇年代の新幹線のような経済効果はありませんでした。そして、小泉・竹中時代の問題は、まさにここに、第一に書いてありますけれども、つまりは、派遣業のような形で規制緩和をやったことが結果として何を生んだか。デフレ経済におけるデフレの促進をやったんですよ。ですから、格差が開いただけではなくて、経済全体が大きくならなかったじゃないですか。

 ですから、私たちは、この新成長経済基本政策は去年の十二月の三十日に発表しました。そして、ことしの六月に閣議決定をいたしました。この中でキーにしたのは、まさに雇用、成長です。

 つまり、雇用を増して失業率を下げるということは、賃金が、確かに私たちも最低賃金千円と書いてありますけれども、一番いいのは自然に上がることなんですよ。それは、失業率が下がれば雇用がタイトになりますから、上がってきます。そして、それで上がればデフレが解消に向かいます。そして、新たな雇用が生まれれば、そこにサービスとか生産とか、GDPが上がります。そして、何がしかの税収が所得から上がります。

 そういった形で、私たちは、雇用と成長というところから好循環で財政についても持ってきて、そして、介護とかあるいは子育ての問題をそういう新しい需要の分野という形でよりよくすれば、それによって福祉も増進するという、そういうトータルの絵を私たちは新成長戦略という形で皆さんにもお示ししているんです。それに沿って、まさにお示しになったこのことをずっと進めているわけであります。

 私は、もちろん個々にいろいろ反論はできますけれども、そういうトータルの絵がないまま、処方せんがないんですかと言いますけれども、では齋藤さん、自由民主党の処方せん、二十年間の低迷した経済を立て直す処方せんをきちんと私たちにもお示しいただければ、もっと建設的な議論ができると思いますから、よろしくお願いします。

齋藤(健)委員 菅直人内閣総理大臣閣下、私は悲しいですね。人のことは関係ないじゃないですか。危機の時代に権力の座に座った以上、やるべきことをやってくれ、そして言ったことをやってくれということを言っているだけであります。そして、それができなかったら去ってくれと言っているんです。

 今問われているのは言葉ではないんです。この一年二カ月の間に、皆さん方の言葉の信頼が揺らぐ出来事がたくさんあったということなんですよ。そして、皆さん方の技量が問われているということなんですよ。それに幾ら言葉を重ねたところで、その国民の皆さんの疑問は去らない。

 後は私は国民の皆さんの判断にゆだねたいと思いますが、自民党もこれからは大きく変わっていくということを申し上げて、質問を終わります。

中井委員長 これにて石破君、塩崎君、平沢君、棚橋君、町村君、高市君、赤澤君、齋藤君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

中井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。石井啓一君。

石井(啓)委員 公明党の石井啓一でございます。

 まず、政治と金の問題について質問いたしますけれども、十月十三日の予算委員会に続きまして、引き続きこの政治と金の問題を取り上げなければいけないというのは、私は極めて残念でございます。

 十月一日からこの臨時国会は始まりましたけれども、この間、公明党といたしましては、一貫して、民主党の小沢元代表に対しまして、政治と金の問題についてきちんと国会に出てきて説明をしていただきたい、こういうことを求めてきたわけでございます。あわせて、民主党の政党としての自浄能力の発揮も求めてきたわけでございますが、いまだ、この国会が開始して一カ月以上たつにもかかわらず、何の結論も出ておりません。極めて残念でございます。

 野党といたしましては、この補正予算の審議に応じる環境づくりを求めてきたわけでございますが、十一月二日に民主党の岡田幹事長は、与野党の幹事長会談で、民主党として今国会中に小沢さんが国会で説明することに努力する、こういう約束をされましたので、それに応じて補正審議に臨んだわけでございますけれども、岡田幹事長が四日に小沢さんとお会いした際に国会での説明を求められたようですけれども、小沢さんは拒否した、こういうふうに報じていらっしゃいます。

 岡田幹事長の約束は、これは政党としての民主党の約束として受け取ってもらって結構だということでございましたが、民主党としてこの約束をきちんと守れるのかどうか、まず総理にお伺いをいたしたいと思います。

菅内閣総理大臣 今、石井委員の方から経緯についてのお話がありました。

 岡田幹事長御本人と小沢さん本人と会った上で、再度会いたいということも言われております。そしてまた、役員会等でもいろいろ議論をいただいておりまして、役員会の中でも、何とか御本人の判断の中で国会で説明をされるのがいいのではないか、そういう意見が多くを占めているという報告も受けております。そういう役員会の全体の空気も含めて、もう一度、小沢議員本人と岡田幹事長、ぜひ会って話をしたいという、そういう趣旨の話までいただいております。

 私としては、岡田幹事長に幹事長をお願いして、ある意味党務の多くを任せているところでありますので、岡田さんが約束をして、ちゃんとそれが守れるようきちっと支えるのがある意味では党の代表としての役割であろう、このように考えております。

石井(啓)委員 小沢さんが国会で説明していただくということは、私どもがこの補正の審議に応じる条件でございました。

 そういたしますと、この補正の審議が終わると、小沢さんに対して説得をした、会う努力をした、そういう努力をしたという姿勢を示すだけで、後はほっぽらかしにするというようなことはまさかないとは思いますけれども、その点について確認いたしたいと思います。

菅内閣総理大臣 今申し上げましたように、岡田幹事長が、役員会の中でもこの議論をする中で、多くの皆さんが、やはりここは御本人にぜひ自分の判断として説明をしていただいた方がいいだろうということを受けて、そういった役員会の全体の意向といいましょうか、全体の空気といいましょうか、そういうものも踏まえて改めて小沢議員と会って話をしたい、そういう趣旨の話を聞いております。

 その中で、岡田幹事長として、どういう場面あるいはどういう時点で、どういうふうにするべきか、あるいはそういう要請をされるか。また、野党との話、今のお話のように、私が聞いているところでは今国会中という表現もあったようにもお聞きをいたしておりますけれども、どの時点でどういう形でという、与野党間の話し合い、あるいは野党の中でもいろいろな意見があるのかもしれません。そういうことも含めて、現在、岡田幹事長が野党の皆さんとの約束を守るべく鋭意努力をしていただいていますので、それを見守りながら、しかし同時に、岡田幹事長の約束が守れるようにきちんとフォローするのは私の役目であろう、このように考えております。

石井(啓)委員 総理は岡田幹事長の努力を見守っていくということでございますけれども、今国会中という期限が決められている以上、いつまでもこれを見守っていくわけにはいかないんですね。これはやはり、総理がみずから小沢さんをきちんと説得すべきなんじゃないでしょうか。どうでしょうか、総理。

菅内閣総理大臣 今申し上げたように、私がさきの代表選で改めて代表に選任をいただいた中で、岡田幹事長にぜひ幹事長をお願いしたいということで、天命だというような言葉もありましたが、岡田幹事長にお引き受けをいただきました。そういった意味で、私は岡田幹事長を大変信頼もいたしておりますし、また、岡田幹事長が判断し、あるいは約束をしたことについては、先ほど来申し上げていますように、やはりそれをきちんとフォローすることが私自身の責任であろうとも考えております。

 そういった意味で、もちろん最終的な責任者は党代表である私でありますから、そのことは十分認識しておりますけれども、いろいろな物事が動いている経緯の中でいえば、岡田幹事長にいま一層の御努力をお願いしている、その状況にあります。

石井(啓)委員 総理は幹事長をフォローするということですから、仮に岡田幹事長の説得がうまくいかなかった場合は、これはもう総理がみずから乗り出す、こういうことでよろしいんですね。

菅内閣総理大臣 そういったことも、岡田幹事長が努力をされた中で、また、あるいは他の役員の皆さんとも場合によったら相談する場面もあるかもしれませんが、見守っているというのは、まさに今、岡田幹事長がいろいろと党内も含めた意見を踏まえた行動をとっておられますので、そういうことを含めて、最終的に私が党の責任者であることは間違いないわけでありますから、岡田幹事長の方から何らかの最終的な判断を問われる場合には、そのときには私としての判断を申し上げなきゃいけない、そういう場面も来るかもしれません。

石井(啓)委員 来るかもしれませんというふうにおっしゃいましたけれども、今の状況は、やはり総理の判断、決断が求められているときなんですよ。そのことを申し上げたいと思うんです。

 十月十三日の予算委員会、これは、私の質問に対して総理は、場合によれば御本人の意向に沿わないでもこれをやらざるを得ないというときには党として判断をしていきたい、こういうふうに答弁をされているわけですね。民主党として今国会の小沢さんの国会招致を約束された以上、小沢さんが国会での説明を拒否したとしても、総理は民主党の代表として小沢さんの国会招致を決断される、こういうことでよろしいですね。

菅内閣総理大臣 今何度も申し上げましたけれども、最終的な責任者が私であることは間違いありません。

 物事を決めるときに、これは政策的なことでも、いろいろなことでもありますけれども、中には、それは余り党内の関係者に相談なく物事を決めるということもあるいは必要な場面も全くないとは申し上げませんが、一般的に言えば、きちっと相談をした中で物事を進めていくのが当然でありますので、先ほど来申し上げていますように、この問題では岡田幹事長に、党内の意見集約も含めていろいろ御努力をいただいておりますので、そういう中で、最終的な判断を代表の方で求められる、そういう場面があった場合にはそれは最終責任者として私が判断することになるだろう、こう申し上げたところです。

石井(啓)委員 何か同じ答弁を繰り返された感じがしますけれども、私は、総理の最終的な判断がもう求められている時期に来ているんじゃないか、こういうことを申し上げているわけです。残念ながら、この件に関して総理の毅然としたリーダーシップというのは見られない。ぜひこれはしっかりとやっていただきたい、こういうふうに思います。

 もう一つ、政治と金の問題につきましてですが、民主党が企業・団体献金の自粛を解禁した、こういう報道がございます。これは民主党としては、企業・団体献金を禁止する、全面禁止をする、こういうマニフェストを掲げているわけでありますから、このマニフェストに逆行することになるんじゃないでしょうか。総理、いかがですか。

菅内閣総理大臣 これも何度か申し上げておりますが、最終的に法律をつくって、これはもちろん法律ができた場合には、我が党も含め、他の党も含め、企業・団体献金を禁止すべきだ、その考え方は全く変わっておりません。

 その場合においてもある程度の経過措置が必要であろうということで、その間に個人献金の拡大を努力する、あるいは個人献金がよりしやすくなるような手だてを講じるというようなことも念頭に置いて、政治資金規正法を改正して、三年後に企業・団体献金を全面的に禁止する、このようにマニフェストにうたってあるところであります。

 そういった意味で、今回、確かに誤解を多少招いたかもしれませんけれども、この間、いろいろな企業、団体からの寄附の申し出があった中で、まだ個人献金がそう党としても多く集まっていない中で、政策的に左右されない、そういった意味でのものについては、一億円以上の政府との取引がある企業を除いて、この法案で盛り込んだ暫定的な扱いと同様の扱いをすることに戻したというべきなのか、そういう位置づけで、戻したということになっておりまして、本質的に、企業・団体献金を法律によって禁止するという、その考え方は全く変わっておりません。

石井(啓)委員 総理は、法律的に禁止するまでの間、経過期間というか猶予期間があるから、その間は企業・団体献金をもらってもマニフェストと矛盾しないんだ、そういう御説明だと思います。

 確かに、表向きは矛盾しないかもしれません。ただし、マニフェストでは全面禁止という方向を打ち出しているわけですから、今民主党がやっているのは、自粛していたのを解禁するということですから、全面禁止の方向とは全く違う方向のことをやっているわけです。

 ですから、私は、それはマニフェストに矛盾するんじゃないかというふうに聞いたわけではありません、マニフェストと逆のことをやっているんじゃないですかというふうに聞いたんです。マニフェストと逆行していることをやっている。これは確かですね。総理、いかがですか。

菅内閣総理大臣 これは、各党それぞれ資金の問題では長年苦労されてきたと思いますし、私自身も、自分の政治活動も含めて、資金を集めることには、今も含めて、できるだけ個人献金ということでお願いをしておりますが、それでも、多くのスタッフを抱えるには、必要なスタッフを抱えるには、なかなか苦労をするような状況にあります。

 そういった意味で、我が党も、御党は私はよくわかりませんけれども、大部分を政党助成金などもともとが税による資金に依存する形になっておりまして、そのこと自体も、本来なら、かなりの部分をそうではない民間の資金といいましょうか、そういうもので賄うことが望ましい、そういう考え方もあります。その中でさらに個人献金がより望ましいということでありまして、そういった判断の中で今回のような措置をとったわけであります。

 確かに、ある意味、見方によれば逆行しているということになるかもしれませんが、これは他の党の場合もどういうふうに考えられているかわかりませんが、税だけで賄われる党財政というのは必ずしも健全とは言えないのではないかということで、この法律に書かれた暫定措置の中身と同じものを、党として、まさにこの法律ができるまでの間、そうした考え方で一定の枠の中でいただくことを認めていこう、こういうふうにしたところであります。

石井(啓)委員 総理が他の党のことを云々する必要はないんですよ。民主党がみずからのマニフェストで企業・団体献金を全面禁止すると。他の党の事情なんかしんしゃくする必要はないんですよ。みずから約束したら、みずからきちんとやる。そうでなければ国民に信頼されません。今民主党がやったことは完全にマニフェストとは逆の方向のことをやっている、このように申し上げたいと思います。

 菅総理は自分の内閣を有言実行内閣とおっしゃっていますけれども、今指摘してきたように、政治と金の問題について、小沢さんの国会招致には及び腰でありますし、また、企業・団体献金についてもマニフェストと逆の方向をやっている。クリーンな政治を掲げて誕生した菅政権でありますけれども、言っていることとやっていることが全く逆です。だから、私は、菅内閣は有言実行内閣ではなく有言逆行内閣だ、こういうふうに申し上げたいと思います。

 それでは、補正予算について質問に移らせていただきます。

 まず、補正予算提出までの経緯をパネルにいたしました。お手元には資料が配付をされているところでございます。

 私どもは、既に八月三日、これは参議院選挙直後の臨時国会におきまして、この衆議院予算委員会で井上幹事長から補正予算、経済対策の必要性を指摘いたしました。これは、九月末にエコカー補助金が停止になるのを初めとしまして、景気を下支えしてきた各種経済効果がはがれ落ちる、こういうことが予測をされておりましたので、具体的な内容を含めて八月三日に経済対策の必要性を指摘しております。

 それから、八月に入りましてから円高、株安が進みましたので、九月の二日には、党といたしまして、円高対策・デフレ脱却へ向けた緊急経済対策、四兆円規模の緊急経済対策を発表しているところでございます。

 そして、九月九日には、五野党共同で、政府に対しまして緊急経済危機対策に関する申し入れ、補正予算の編成の申し入れをしたところでございます。

 それに対しまして、政府の方の対応は、九月の十日に、新成長戦略実現に向けた三段構えの経済対策、第一ステップが予備費の活用、第二ステップが補正予算、第三ステップが来年度の本予算、そういう三段構えの経済対策を発表されて、九月二十四日に予備費の活用について決定をいたしました。十月八日に緊急総合対策を決定して、ようやく十月二十九日に補正予算案を国会に提出した、こういう経緯でございます。

 私どもが八月三日に指摘をしてから、ようやく三カ月近くなってこの補正予算が国会に提出されてきた。総理は、この臨時国会最大の課題は補正予算だとおっしゃいましたけれども、十月一日に国会が始まってから一カ月近くたってようやく補正予算が国会に提出されてきた。これは余りにも遅過ぎる。何でもっと早く補正予算の編成を指示して国会に早期に提出をされなかったのか、このことをまず総理に伺いたいと思います。

菅内閣総理大臣 この「補正予算案提出までの経緯」という大変わかりやすい表を提示いただいております。

 おっしゃるように、内閣として、ここにはまだ入っておりませんが、八月末の段階に経済対策の基本方針を決定いたしました。そして、これに基づいて、九月の十日、これは五野党の皆さんがこうした経済対策をとるべきだという申し入れをいただいた翌日に、新成長戦略に向けた三段構えの経済対策をそうした皆さんの意向も私たちなりに受けとめて決定いたしたわけであります。

 そして、御承知のように、こうした経済対策の決定と、具体的に何にどれだけのお金をかけるかということは、そこにもう一つの作業が必要でありますので、そこで三段階の大きな流れを考え、つまりはステップワン、ステップツー、ステップスリーという考え方を九月十日のその段階で決めて、まずステップワンとして、九月の二十四日に、そこに書いてあります経済危機対応・地域活性化予備費を活用したわけであります。

 野党の皆さんの中には、このときに同時に補正予算を出せばよかったではないか、こういう意見があることは承知をしております。しかし、御承知のように、補正予算という形をとる場合には、当然のことながらある程度の審議の期間を予定しなければなりません。しかし、予備費の場合は既に本年度予算に含まれているわけですから、決めれば即実行できるわけでありまして、そういうスピーディーな実行を考えて、九月二十四日に、まずはステップワンとして予備費の活用を中心とした予算の執行を行う。そして、それから間もない十月の八日に円高、デフレ対策のための緊急総合対策を決め、そしてこれを補正予算の形に大車輪で作業を進めて、十月の二十九日に提出をさせていただいたわけであります。

 もちろん、ステップツーがこの補正予算でありますけれども、さらにはステップスリーとして来年度の予算編成を現在進めているところであります。

 このステップワン、ステップツー、ステップスリーで切れ目なく経済対策を打つと同時に、長期的な経済の成長軌道に持っていく。それに向けての対応でありまして、私は、遅過ぎたという御指摘は、この流れ全体として見ていただければ、それは当たらないのではないか、このように思っております。

石井(啓)委員 それは我々の認識と全く違います。この予備費と補正予算は一体のものとして早くやれば、規模も大きく、スピードも速く、よりインパクトのある経済対策ができたんですよ。そのためには、逆算していくと、八月中に補正予算の編成を指示していれば、九月末あるいは十月上旬にはこれはできていたんです。

 ところが、そのとき総理は何をやっていたか。代表選挙にかまけていたんじゃないですか。九月十四日の代表選挙にかまけていたから、このように補正予算の編成がおくれてきたということなんじゃないでしょうか。国民はもっと早くやってほしいんですよ、経済対策。そういうふうに願っていたわけです。

 ですから、国会に出すのがおくれましたから、今この補正予算が仮に成立したとしても、実際に現場にお金が回るのは、大半が年明けになっちゃうじゃないですか。年内の厳しいこの情勢をどうしてくれるんだ、こういう声があるわけですよ。そういう現場の厳しい状況、これを残念ながら今の民主党政権は全くわかっていない、このことは強く申し上げたいと思います。

 では、具体的な中身について申し上げたいと思いますけれども、フェアに申し上げますと、補正の中身には一部評価できる点もございます。

 例えば学校の耐震化、これは六月の予備費でもう既に八百億近い支出が決められておりますし、九月の予備費、また今回の補正でも盛り込まれております。これは私どもの自公政権時代から、この学校の耐震化については、子供の安全という意味、あるいは緊急時の防災拠点になる、こういったことからも党として進めてきたことでございますから、これが盛り込まれたということは評価してもいいと思うんですね。

 また、妊婦健診十四回の無償化、これも自公政権時代の補正予算に盛り込みまして、二十一年度、二十二年度と実施をされてきたわけでありますけれども、二十三年度以降の実施は未定でございました。今回の補正予算の中に、二十三年度単年度ではございますけれども、この妊婦健診十四回分の無償化が継続をした、このことは評価をしてもいいと思います。

 さらに、唯一予防が可能だと言われています子宮頸がんのワクチン接種、これが三回程度で五万円から六万円の費用がかかる、こう言われておりますので、私ども、公費助成を求めてきたところでありますけれども、これにつきましても、補正予算の中で、子宮頸がんワクチンに加えて肺炎球菌ワクチン、Hibワクチン、この三種のワクチンの公費助成が今年度、来年度、二カ年度盛り込まれた、このことも評価をいたしたいと思います。

 これらは、いずれも従来から公明党が強く提案また要望をしてきたものでございますから、補正予算に盛り込まれたことは評価をいたしたいと思います。

 その上で、妊婦健診十四回分の無償化、これを継続すること、それから、子宮頸がんワクチンなど三種のワクチンの接種の公費の助成、これは補正予算の期限後の二十四年度以降も恒久的に実施すべき施策というふうに考えますけれども、厚生労働大臣の御見解を伺います。

細川国務大臣 石井委員の方から、妊婦健診の問題、それから、子宮頸がんなどのワクチンの助成の問題について御質問をいただきました。

 委員が御指摘になりましたように、この妊婦健診の公費助成につきましては、これは今回の補正予算で基金を上積みいたしまして来年度も実施をする、こういうこと。それから、子宮頸がん、Hibワクチン、そしてもう一つの肺炎球菌のワクチンにつきましては、これはこの補正予算で新しく基金をつくりました。千八十五億円の基金をつくりまして、これで今年度と来年度、実施をする。これは御党からもいろいろと強い要請もあったところでございます。

 これは今回の補正予算で実施をしますが、今度は二十四年度からこれを恒久的なものということでの御要請もございましたけれども、これについては私どもとしてもいろいろ検討をしてまいりますけれども、いろいろ審議会での議論もさせていただきますけれども、私どもとしては積極的にこれに対しては対応をしてまいりたい、このように考えております。

石井(啓)委員 続いて、今、評価できる点を申し上げましたけれども、一方で問題点もたくさんございます。

 このパネルに示しましたのは、実は先週の金曜日、私ども党内でこの補正予算に関します討議を行いまして、そこで出されてきた主な補正予算案の問題点でございますけれども、まず、中小企業に冷たい補正予算になっている。これは、緊急保証制度が今年度中に打ち切られたり、あるいは中小企業金融円滑化法の延長についてもいまだ対応がわからない。

 二つ目に、地方に冷たい。午前中の審議でも自民党の委員から指摘がありましたけれども、地域活性化交付金、私ども一兆二千億円提案してございますが、三千五百億円にとどまっている。これは地域活性化には力不足だ。また、地域の活性化には観光振興というのも非常に重要ですけれども、これがわずかの予算にとどまっている。

 三つ目に、農家に冷たい。ことしは米価が物すごく下がっています。これは需給が緩んでいる、米余りの状況だからということでありますけれども、その需給調整のための米の三十万トン緊急買い入れを提案いたしましたけれども、全く対応されておりません。

 こういうふうに問題が多くあるわけでございますけれども、まず、農家に冷たいところから聞きます。

 今年度産のお米の九月の全銘柄平均の相対の取引価格、これは一俵六十キロ当たり一万三千四十円にとどまっております。これは昨年九月には一万五千百六十九円でしたから、二千百円以上の大幅な価格の下落になっています。JAの試算では五十万トンから六十万トンの需給ギャップ、すなわち米余りがある、こういうふうな試算がございます。農水省に事前に確認しましたら、四十万トン強ではないかというお話もございましたけれども、いずれにしましても、こういった米余りが価格下落の大きな要因と考えられるわけですね。

 政府は、実は戸別所得補償制度を導入する際、この戸別所得補償をやれば米の需給は引き締まるという説明をしていたんですよ。しかし、実際には過剰作付はやはり改まらない。結果として米余りが生じているわけです。

 そこで、需給ギャップ調整のために、私ども、三十万トンの米の緊急買い入れを提案したわけですが、全く対応されていません。過剰作付等による米の需給ギャップは、これは国の責任でやはり解消すべきではないでしょうか。農水大臣、いかがですか。

鹿野国務大臣 この所得補償制度を導入することによって過剰作付は約八千ヘクタールほど減少しているわけでありまして、これはまさしく、この制度そのものに参加をしていただくというふうな意味がそこにも示されているのではないかと思っております。

石井(啓)委員 いや、私はそういうことを聞いたんじゃなくて、政府は、政府の責任でこの米の需給ギャップを解消するための施策をとるべきじゃないかということを聞いているんです。

鹿野国務大臣 以前から御党からも、米を需給調整のために買い上げたらどうかというような、そういう考え方が示されてきたわけでありますけれども、基本的に今日の食糧法におきましては、お米の価格上昇のために買い入れるというふうな制度にはなっておらないわけでありまして、あくまでもお米が不足した場合に備蓄用として買い入れる、こういうふうなことになっているということは委員御承知のとおりであります。

 そして、私どもとしては、この戸別所得補償制度というものは、下落した場合には、下落への対応というふうなものも、その中に下落分として設定されているというふうなことで御理解をいただきたいと思います。

石井(啓)委員 政府は、米の備蓄方式そのものも今見直そうとしていますよね。来年度の概算要求では、いわゆる棚上げ備蓄方式ということで、毎年二十万トンずつ、従来は主食用として売っていた備蓄米を、今度は非主食用、飼料米等でこれを販売する、そして毎年二十万トンずつ買い入れるということで、棚上げ備蓄方式でやるということを来年度の概算要求でしているわけです。それであれば、今回の補正で前倒しでそれをやればよかったのではないでしょうか。

 ほかの役所では、後から確認しますけれども、来年度の概算要求で盛り込んでいる項目が相当あるんですよ、今回の補正で。あるんですから、何でやらなかったんですか。要求していることを今回の補正で入れればよかったんじゃないでしょうか。どうですか。

鹿野国務大臣 棚上げ備蓄に切りかえていくということにつきましては、平成二十三年度の概算要求で要求している、そのとおりでございます。

 今日の、二十二年におきましては、御承知のとおりに回転備蓄ということでございまして、もうこれは予算上執行されておるわけでございますので、来年、何としても棚上げ備蓄が予算が認められるようにしてまいりたい、こういうふうに考えております。

石井(啓)委員 いや、来年度の予算のことを言っているわけじゃないんです。今回の補正予算で盛り込まなければ間に合わないんですよ、来年度の予算に入れられても。

 だから、来年度の概算要求でも要求しているんだったら、なぜ今回前倒しでやらなかったのか、こういうことを申し上げているのであって、私は、ほかの役所が来年度の概算要求の事項を相当盛り込んでいるのと比べると、農水省は努力不足だ、農家に冷たい、こういうふうに申し上げざるを得ません。

 それから、二つ目に、地方に冷たいということですけれども、地域活性化交付金、私どもは一兆二千億円提案をいたしました。これは、地域がその実情に応じて自由に使える資金として一兆二千億円提案をしていたわけですね。自民党さんの提案では一兆五千億円ということのようでございますけれども。それが、わずか三千五百億円。これで全国の自治体の活性化に役立つというふうにお考えなんでしょうか。これは全く力不足じゃないでしょうか。担当大臣、いかがですか。

片山国務大臣 お答えをいたします。

 これは、幾らでなければいけないということもありませんし、一方では、多々ますます弁ずとかということもあるかもしれませんが、私は、みずから自治体を切り盛りしていた立場からいいますと、余り景気対策とかこの種の政策で自治体に過度の期待を抱かない方がいいと私は思っております。

 といいますのは、自治体はもう当初予算で必要な事業は計上しております。それで、今、年度中途で、さあといって仮に巨額の金が来たとしても、実は余りせっぱ詰まったものはないんです。もちろん、予算で切り詰められて積み残しているものもありますけれども、それもおのずから限度があります。

 今、大量の金が来ますと、さあ何かないか何かないかといって探して、結局、当初予算ではねられたようなもの、はしにも棒にもかからないようなものまでも持ってきて計上するということになって、財政を運営する者からしますと、非常に財政規律を紊乱させるということがあります。ですから、ほどほどということが私はいいのではないかと思います。

 三千五百億円でなきゃ絶対だめということはありませんけれども、全体の国の財政の状況とか見ながら、この程度で私はいいのではないかと思います。

石井(啓)委員 それは、大臣は上から目線だからそういうふうに思うんですよ。現場の人たちは、やはりもっと自由に使えるお金があれば、工夫して地域の活性化に利用できるわけですよ。三千五百億円で十分だなんて、とんでもないですよ。全く地方に冷たい予算だ、こういうふうに言わざるを得ません。

 それから、三番目ですけれども、中小企業に冷たい。

 これは緊急保証制度の打ち切りでありますけれども、リーマン・ショック後の中小企業の厳しい資金繰りを支えてきたのが緊急保証制度なんですよ。これが来年三月末で切れてしまうんですね。

 しかし、今後の経済情勢を考えてみた場合、円高は想像以上に進んでいます。デフレもまだまだ脱却できない。今、景気は足踏み状態ですけれども、先行きはもっと厳しい。こういう状況が続く中でこの緊急保証制度を打ち切ってしまったら、中小企業の資金繰りはどうなるんだ、これは実に大変な問題なんですよ。

 実は、私も十月十三日の予算委員会でこのことを指摘しました。しかし、そのときは、中断する、打ち切るというお話でございました。

 政府としては、この緊急保証制度のかわりに小口零細企業保証制度だとかセーフティーネット保証制度を用意している、こういうことのようですけれども、小口零細企業保証制度というのは、従業員二十人以下であり、なおかつ保証の残高が一千二百五十万円までなんですね。そういう縛りがあります。セーフティーネット保証も、今の緊急保証に比べると、対象業種も小さくなるでしょうし、あるいは売り上げの悪化の程度も限定されるということになりますと、やはり、今緊急保証で何とか対応している企業というのが、小口零細企業保証あるいはセーフティーネット保証では対応できなくなる。そういった企業は、保証制度を使うとすると普通保証になるわけですね。

 ところが、普通保証では、今、企業が借り入れた借入金の一〇〇%保証しません。八〇%しか保証しないんですね。残り二〇%は、何かあったら金融機関がそのリスクを負わざるを得ない。

 こういったことから、実は三年前の十月に普通保証制度を当時の自公政権で始めたところ、これが貸し渋りが大変だということで、大変な声が寄せられたわけです。当時はリーマン・ショック前ですから、今の景気よりもまだまだ相当景気がいい状況でさえ、普通保証が始まったらそういう貸し渋りの声が寄せられた。

 今、もっと悪い景気状況になって普通保証が始まったらどうなるのか、こういう心配を我々はしているわけですけれども、それに対する思いやりというのが全然感じられないんですよ。これは本当に中小企業に冷たい。このままだと、本当に厳しい貸し渋り、貸しはがしが起こりかねませんよ。このことは指摘をしておきます。

 また、同じく十月十三日、私、中小企業金融円滑化法の延長も提案しました。そのときは、私の提案だから検討するというような答弁がありましたけれども、その後、何か一向に具体的な動きはありません。ほったらかしにされている。

 こういうことを考えますと、本当にこれは中小企業に冷たい。円滑化法を延長するんだったら、何でこの臨時国会に法案を出さないのかということですよ。来年の三月末で切れるわけですからね。ですから、そういうふうに中小企業に冷たい予算になっている。

 この三つの問題点があるということは指摘をしておきたいと思います。

 さらに、補正予算の中身は今御指摘を申し上げましたけれども、今回の補正予算の評価としては、さらに、経済財政の課題に整合的な補正予算かどうかということも、実は重要な評価のポイントなんですよ。

 今、政府は、今後の我が国の経済財政の課題として二つ抱えています。一つは、いかにデフレを早期に脱却し、着実な経済成長をしていくかということ。二つ目には、中長期的に財政の健全化をいかに果たしていくか。この二つが大きな経済財政運営上の課題でございます。

 そして、デフレ脱却、経済成長に関しては、政府は六月十八日に新成長戦略を決定されました。また、財政健全化については、六月二十二日に財政運営戦略を決定いたしました。今回の補正予算は、この二つの戦略を政府が閣議決定した後に初めて編成した予算でございます。したがって、今回の補正が、この新成長戦略あるいは財政運営戦略のスタートに当たってふさわしい予算なのかどうか、これがやはり問われている、私はこういうふうに思うわけでございます。

 その上で、デフレ脱却、経済成長、そのことをお聞きしたいと思います。

 まず、新成長戦略の中で、デフレ脱却については、二〇一一年度中に消費者物価上昇率をプラスにするとともに、速やかに安定的な物価上昇を実現するというふうにされていますけれども、政府としてのデフレ脱却の目標というのはどうなっているのか、また政府として望ましい物価水準というのはどういうふうに考えていらっしゃるのか、これをまず確認いたします。

中井委員長 その前に、野田財務大臣から、地域活性化交付金のことについて補足答弁をいたします。野田財務大臣。

野田国務大臣 地方に冷たいという御指摘でございましたけれども、地域活性化交付金三千五百億円の規模というのは、総務大臣がお話しになったとおり、補正予算全体が、経済対策に資するかどうかを最優先に考えた中で、その三千五百億円の規模感をつくりました。

 ただし、地方についてはそれだけではなくて、地方交付税、これは一兆三千億円増ということでありますが、そのうちの三千億円は今年度に支給するということでございますので、合わせて六千億円を超える規模で地方の対策はできている。

 今回の補正予算をつくるに当たって、地方負担が約六千億円ですから、それ相応の規模になっているということは御理解をいただいた上で、今ちょうど財政健全化の話も出ました、財政運営戦略に基づいて、だからこそ、今回補正予算については新規国債を発行しないで五・一兆円規模の経済対策を講じた。そういう工夫をさせていただいた次第であります。

海江田国務大臣 石井委員にお答えをいたします。

 私どもは、石井委員もパネルに掲示をいただきましたけれども、新成長戦略で、二〇一一年度中には消費者物価上昇率をプラスにすることと、そしてその後ろに一段ございまして、速やかに安定的な物価上昇を実現し、デフレを終結させることを目指す、こういうふうにしてございます。

 お尋ねの、デフレの脱却がいつなのかということが明示していないじゃないかということでございますが、これにつきましては、「デフレ脱却の定義と判断について」ということで、平成十八年の三月十五日、参議院の予算委員会の理事会に私どもからその定義を出してございます。その定義は、デフレ脱却とは、物価が持続的に下落する状況を脱し、再びそうした状況に陥る見込みがないことという条件がございます。

 一番難しいのは、再びそうした状況に陥る見込みがないことということをある程度やはりデータで実証しなければいけませんわけでございますから、そのためには少し時間がかかるということでございます。

 ただ、いずれにしましても、私どもは、まず平成二十二年度中に物価を一%からの上昇にして、そしてそれを持続的に引き続き、そしてデフレ脱却という宣言を出したいというふうに思っております。

 それから、もう一つの物価目標でございますが、これは成長戦略の中に書いてございますが、二〇二〇年度までの平均で見た経済の姿として、名目が三%、実質二%でございますが、それに対応します物価につきましては、GDPのデフレーターで表示をしてございますが、一%程度の姿で安定的な上昇を目指すということにしてございます。

石井(啓)委員 海江田大臣、私が聞きましたのは、デフレ脱却の定義を聞いたわけじゃないんですよ。デフレ脱却の定義は、後から振り返って、いつがデフレ脱却したかを判定するための定義でしょう。私は、今回の戦略の中で、デフレ脱却の目標はいつなのかと聞いたんですよ。

 デフレ脱却の戦略をつくるのなら、いつごろ脱却するかという目標がなきゃいけないでしょう、政府として。その目標の時期はいつなんですかと聞いたんです。

海江田国務大臣 先ほどもお答えをいたしましたけれども、二〇一一年度中に物価をプラスにするわけです。それから、先ほど定義をお話ししました。あの定義をお聞きいただければわかると思いますが、それが一年以上続けば、これはもう当然のことながらデフレ脱却でございますから、その点を踏まえて発言をするならば、二〇一二年度中にということだろうと思います。

石井(啓)委員 はい、わかりました。

 それで、きょうは日銀副総裁にお越しいただいていますのでお聞きしますけれども、日銀は、十月五日に包括的な金融緩和策をおやりになりました。

 そこで、一つは実質ゼロ金利政策を行う。二つ目には、その実質ゼロ金利政策を物価の安定が展望できる状況になるまで継続する。三つ目には、国債のほか上場投資信託あるいは不動産投資信託、そういった多様な資産を購入する。こういうことで、私は、従来にない、異例の金融緩和に乗り出したという点で評価をいたしたいと思います。

 その上で、物価が安定するまでゼロ金利政策を続けるということは、日銀が事実上物価目標政策に踏み込んだ、こういうふうに受けとめております。

 ただ、もう一歩踏み出していただきたいと思いますのは、今政府からありました、二〇一二年度、デフレ脱却を目標とする、このデフレ脱却の目標時期をぜひ政府と共有して金融政策を進めていただきたい、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。

山口参考人 お答えいたします。

 私ども、物価の先行きの見通しにつきましては、先月末に出しました展望レポートにおきまして、二〇一一年度中には消費者物価の前年比がプラスの領域に入る、それから、二〇一二年度にかけてそのプラス幅を拡大していくという見通しを出しております。

 こうした私どもの物価に対する見通しにつきましては、基本的に政府のお考えと軌を一にするもの、このように理解しております。

 私どもとしては、以上のような見通しを踏まえて、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的な成長経路に復するよう最大限の努力を引き続き続けていきたい、かように思っております。

石井(啓)委員 それでは、今回の補正予算がデフレ脱却、財政健全化にふさわしいかどうかということでございますけれども、デフレの脱却と財政の健全化というのは、短期的には両立するのはなかなか難しいんですね。デフレ脱却というのは政府が財政支出をふやして需要をつくるということも求められますけれども、一方で、財政健全化というのは政府の支出というのは抑制傾向が求められるわけですから、ある意味で、短期的には相反する方向にならざるを得ない。

 これを両立するためにはどうしたらいいか。時期をずらして、まずデフレ脱却を最優先にやって、その次に財政健全化をやる、こういう考え方もございますけれども、政府は、財政健全化にこれから乗り出そう、同時期に両立を目指しているということですから、これをやろうとすると、当初予算は堅実な財政支出をする、ただし、補正予算については思い切った景気対策を行う、これがデフレ脱却と財政健全化を両立させるための道であるというふうに私は考えます。

 そういった目で今回の補正予算を見ますと、実は、せっかくの財源をフルに活用しておりません。

 まず、昨年度剰余金一・六兆円ありますけれども、今回の経済対策として活用しているのは、そのうちの半分の八千億円です。これは、今の財政法上そういうふうに決められているわけであります。しかし、かつても、この剰余金を全額使うために、財政法の特例措置の法律をつくって全額活用していく、そういう事例はございました。

 なぜ今回政府は剰余金の全額を経済対策として活用しなかったんでしょうか。まず確認します。

野田国務大臣 委員の御指摘のとおり、今回は剰余金の全額は使っておらずに、半分の八千億円を財源として入れております。

 それは、国債費等の不用額が生じたこと、あるいは税収増等があって、御党が御提示の規模感と遜色のない規模の経済対策をこれらの財源によって賄うことができたということに加えて、財政規律を守る観点から新規国債を発行せず、そういう意味で、国費レベルでは五・一兆円、地方交付税を除けとおっしゃるかもしれませんけれども、それでも、ステップワン、ステップツー、ステップスリー、総合的に見る中では、経済予備費の〇・九兆円も含めると、規模感においては遜色のない経済対策ができている。そういう観点から、財政法の法律に基づいて、半分は国債償還に戻すというルールに基づいて対応させていただきました。

石井(啓)委員 私どもは野党でございますので、政府のように今年度の税収の上振れ分を把握したり、あるいは国債費が不用になる分を把握したりすることはできませんでした。したがって、使える財源は全部使えるということで剰余金を全額使い、また、赤字国債は発行しないまでも、建設国債まで発行をするということで、ある意味で財源からの制約で規模が決まってきたという点がございます。

 私どもがこの二兆二千億円の税収の上振れや、あるいは国債費の不用額一兆四千億円、こういう財源がわかっていたならば、その財源も活用して、なおかつ剰余金も全額活用して規模を決めていたはずなんですよ。ですから、先ほど言いましたように、やはりデフレ脱却と財政健全化を両立するためには補正予算を思い切った規模にしなきゃいけないんですから、活用できる財源は活用しなきゃいけないんですよ。

 総理、この財政法の特例措置の法律を出さなかったというのは、このねじれ国会の中で法律を出すことをちゅうちょしたからなんじゃないんでしょうか。どうですか、総理。

菅内閣総理大臣 デフレの脱却と財政の健全化がやや矛盾するという御指摘であります。

 確かに、ある面ではそういう性格がありますけれども、実は両方を同時的に実現できる政策がないかということで、私たちが考えている、特に潜在需要の多いところで雇用を軸にして政策を打てば、例えば失業率が下がるということは、雇用がタイトになることによって賃金が上昇しやすくなってデフレ脱却につながる、そういう道筋があります。さらには、失業していた人が仕事につくことによってサービスを含めた生産が伸びて、さらには賃金に対して税が払われますから財政健全化にもつながる、このあたりを好循環で回していきたいというのが新成長戦略の基本的な考え方であります。そういう形を念頭に置きながら、今回の補正予算も、基本的にはそういった方向での矛盾がない形でつくり上げる考え方に沿ったものです。

 今言われました剰余金の問題、あるいは建設国債はいいのではないかと言われたり、あるいは補正の方は多少そういうことをやってもいいのではないか、確かにそういう考え方もあります。ただ、いずれにしても、建設国債であろうがあるいは補正予算のときだけの国債であろうとも、プライマリーバランスという目から見れば一年間では同じことになるわけでありますので、そういった意味では、今回の補正予算を国債発行なしで組んだというのは、財政健全化と両立するという考え方であります。

 また、この剰余金については、おっしゃるように全部使うという考え方もあるかもしれませんが、これにはもちろん法律が必要なことでありまして、今回は、そこまでの措置をとらなくてもある程度の、規模だけではなくて中身が重要だと思っておりますけれども、規模的にもある程度のものが生み出せたということでこうした予算を提案している、そういうふうに御理解をいただきたいと思います。

石井(啓)委員 私は、建設国債を発行しろと言っているわけではありません。国債を発行しなくても生み出せる剰余金の財源をなぜフルに活用しなかったのか、このことを指摘しているんです。

 時間がなくなりましたので、ちょっともう一つ指摘しておきますけれども、地方交付税ですね。一兆三千億円組み入れますけれども、今年度に交付する分は三千億円で、一兆円は来年度に繰り越しをしている。これも一兆三千億円という財源がありながら、今年度分、事実上、経済対策として使う分は三千億円にとどめてしまっているんですよ。これもせっかくの財源を利用していない。さっき野田大臣は五・一兆円と言ったけれども、そのうち一兆円は、繰越分も入っての一兆円でしょう。それを規模に含めるというのは、これはおかしな話。

 ですから、剰余金ですとか、あるいは地方交付税ですとか、せっかく国債を発行せずにも使える財源をフルに活用していない補正予算になっている。これで本当にデフレ脱却に真剣に取り組んでいるのか、こういうふうに私は申し上げたいと思います。

 もう一つ、時間がなくなってきましたので、財政健全化に関して申し上げますと、財政運営戦略に伴って、来年度概算要求されていますけれども、実は大変おかしな要求になっているんですね。各省一律に一割削減になっているので、防衛省だとか法務省だとか、人件費が多かったり、あるいは既存の契約が多い役所はとてもおかしな予算になっちゃっているんです。

 概算要求一割カット、九割にして、入らない分を特別枠、特別枠は政策コンテストでやると言っているんですけれども、例えば防衛省の在日米軍等駐留関連諸費、いわゆる思いやり予算が特別枠の方に入ってきたり、あるいは法務省の日本司法支援センター、いわゆる法テラス、この予算が特別枠の方に入ってきたり、大変おかしな予算に、概算要求の中身になっています。

 それで、時間がないのでもう確認しませんけれども、今回の補正予算の中には、実は、来年度の概算要求で要求したり、あるいは特別枠で要望したりするものが相当程度入っている。これは、とりもなおさず来年度の無理な概算要求のしわ寄せをこの補正予算に押しつけている、つじつま合わせのために利用されている、こういうふうなことも私は指摘をしておきたいと思っております。

 時間がなくなりましたのでこれで終わりますけれども、今申し上げましたように、いろいろな点での問題点がございますので、私どもも党内でしっかりとこれからも議論していきたいと思います。

 以上でかわります。

中井委員長 この際、佐藤茂樹君から関連質疑の申し出があります。石井君の持ち時間の範囲内でこれを許します。佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。

 きょうは、菅総理と議論させていただく時間を五十五分いただきました。ぜひ私は、今、石井委員から補正予算全般にわたって議論があったわけですが、菅総理と現下の問題にどう対応されるのかということについてじっくり議論させていただきたいと思います。仙谷官房長官にあらかじめ申し上げておきたいのは、私が指名したときには登壇していただいて結構ですから、それ以外は余りのこのことしゃしゃり出ないように、ぜひ申し上げておきたいと思います。

 先週末、ずっと各世論調査の支持率が出ているわけでございますけれども、やはり三〇%台前半という非常に厳しい国民の評価が出ているわけでございます。

 菅総理の政権ができてから五カ月ぐらいですけれども、先ほどもありましたけれども、有言実行内閣といううたい文句、看板とは裏腹に有言不実行、有言無実行であるということが国民にやはり伝わってきているのではないかなというように思うわけです。その背景には、菅総理の指導力不足、リーダーシップ不足というのがすべてにわたって国民の不信を買っているのではないのかな、私はそういう感をしているわけでございます。

 きょうは、その中の一つに、先ほど石井委員がさらっとやったんですけれども、一番大きな政治と金の問題があると思うわけでございます。

 その中で、この十月の二十六日に、民主党として、今までこの一月から通されてきた企業・団体献金の自粛というのを解禁されるということを決定されたわけでございますが、私は、これは本当に国民から見て大変な背信行為であるというように思うわけであります。

 現実に、きのうも民主党の若い議員さんが提示されておりましたけれども、共同通信の世論調査では、民主党の企業・団体献金再開の方針には六七・九%が問題がある、そういうように答えておられるわけです。約七〇%近い人が問題があるというように答えておられるわけでありまして、私は、本当にこれは率直な国民の意見ではないかと思うわけであります。

 特に、きょうはお手元に資料をお配りしましたけれども、菅総理が、先ほどの答弁でも、また先日の四日の本会議でも答弁されているのは、二〇〇九年のマニフェストにのっとった、そういう答弁でしかないわけであります。ことし菅総理が表紙になってつくられたマニフェストには、きょう、あえて資料で印刷してお配りしましたけれども、この二ページにきちっとそういうことが書いてあります。一つは、「個人献金促進の税制改正にあわせて、政治資金規正法を改正し、企業・団体による献金・パーティー券購入を禁止します。」と明確に言われている。二ページ目には「とことんクリーンな民主党へ。」と大変大きな見出しであります。「クリーンな政治の実現」ということで、内容には「企業団体献金の廃止」、明確にこの左肩に言われているわけであります。

 このマニフェストを読んだ人から見たら、十月二十六日の民主党の企業・団体献金の解禁というのは、まさにこれはうそをつかれた、そう思わざるを得ないんだと思うんですけれども、ことしのマニフェストとの矛盾について総理はどのように考えておられるのか、答弁いただきたいと思います。

菅内閣総理大臣 有言実行であるか有言不実行であるかということでありますけれども、私はまず、我が党がクリーンでオープンな政党でありたいし、あるべきだということを申し上げ、もちろん政治全体がそうあるべきだということも申し上げてきました。さきの代表選挙でもそのことを申し上げて、岡田幹事長にそういう方針で党の運営をやってもらいたいということを指示いたしました。

 そういった意味で、我が党の会計経理は大変透明度の高いものになって、そしてオープンな議論が自由闊達にできる、そういう政党になってきている。これは私が代表になる前とは明らかに違った状況でありまして、有言実行の第一の具体的な例を挙げていただいたと感謝を申し上げたいと思います。

 もちろん、今御指摘のあった企業・団体献金の件は、先ほども申し上げましたように、経緯やいろいろな判断が率直に言ってありました。私は、個人的には昔から、企業・団体献金よりは個人献金が望ましいということをずっと言ってきましたけれども、党のあり方として、個人献金が余り伸びない段階で、ほとんどの財源が政党助成金であっていいのかという議論はもともと党の中にあります、今でもあります。そういう中で、例えば、国から何百億という大きな仕事をもらっているような、いわゆるゼネコンといったようなところからの献金は、やはりこれは政治や政策をゆがめる可能性が高いので、そうではないものについては、暫定的には個人献金がふえるまでは認めてもいいのではないか。

 そういう考え方も含めて、我が党のマニフェストは、昨年につくったマニフェストがベースで、それに加えたり、若干の変更があるものもありますけれども、基本的には昨年の九月のマニフェストがベースになっております。

 その中で、企業・団体献金を法律で禁止して、すべての党がそれを受け取ることはできなくする。ただ、その場合には、三年程度の経過措置を設けて、その間は、一定程度は企業・団体献金を認めるけれども、逆に言えば、その期間を使って個人献金が拡大するようにそれぞれの各党が努力しよう、そういう仕組みの中で昨年のマニフェストができているわけであります。

 ことしになりまして、それも含めて自粛してきたことは事実でありますから、そういう点で、自粛を外して、一部限定的ではありますけれども受け取ることを認めようとしたことが逆行とか矛盾とかと言われることは、それはそれとして、確かに御指摘が当たっている部分もあるかもしれません。

 ただ、本質的なことを申し上げたのは、今申し上げたように、一〇〇%、一遍に個人献金になれない中で、そうした経過措置的なところは、ぜひそうした個人献金が拡大し、そして、あらゆる政党が企業・団体献金を受け取ることができなくするというルールが平等に決まった段階で、三年間の経過措置の後に実行したい、それが本当の真意でありますので、そういう真意もきちっとお伝えするのが私の役目だと思っております。

佐藤(茂)委員 だらだらと長い答弁をされましたけれども、要するに、企業・団体献金の自粛を今回解禁したことはことしのマニフェストに矛盾しないと。矛盾するのかしないのか、簡潔に答弁いただきたいと思います。

菅内閣総理大臣 ですから、ことしのマニフェストという参議院のマニフェストは、基本は去年九月のマニフェストをベースにして、それの中で特に追加的あるいは特徴的なものを申し上げたわけでありますので、ここで書いてある、法律をつくって企業・団体献金を廃止するというその基本方針は今も変わっておりません。そういう意味では間違っているということにはならない、そのように申し上げたいと思います。

佐藤(茂)委員 昨年は、鳩山さんの表紙のマニフェストには、今総理が答弁されたような三年間の経過措置等のことが確かに書いてありました。しかし、ことしは書いていないんですよ。書いていないものをつり下げて、そして選挙の票をいただいた。ここには、だれが読んでも、これはもう民主党は政治団体献金は、企業・団体献金は禁止するな、そういうことで入れた方もいらっしゃる。それが先ほどの世論調査の結果になっているんじゃないですか。そうすると、ことしのマニフェストは、マニフェスト詐欺で国民の票をとった、そういうことになるんじゃないですか、総理。

菅内閣総理大臣 今るる説明を申し上げましたように、昨年の九月のマニフェストで申し上げて、そういう法律も提出し、その場合には、法律が成立すれば三年間の経過措置があり、その経過措置の間は、一億円以上の国との取引のある企業からの献金はその間も受け取らない、そういうルールを去年の九月に申し上げ、そのこと自身を変えたわけではありません。

 確かにおっしゃるように、その中で、企業・団体献金を禁止するという原則的な方向を今回のマニフェストで特に言ったということで、そういう意味で、もし誤解を招いたとすればそれは申しわけなかったと思いますが、基本的なことについては去年の九月のマニフェストが我が党の党の方針であることは、それは決して後づけの理由ではありません。

佐藤(茂)委員 要するに、今はっきりしたのは、ことしの参議院選は、そういう三年間の経過措置づきの企業・団体献金の禁止であることを隠して、表現には一切出さずに、今回、民主党は参議院選挙を戦ったんだ、そういうことを菅総理は言われているわけであります。

 しかし、これはおかしいんだ。なぜおかしいのかというと、先ほど来言っているように、民主党の方針というのはこの一月に変わっているんですよ、具体的に。今ほかのことで有名になっているあの小沢幹事長が、これはもう極めて金権政治家の疑惑を持たれている方ですけれども、この方ですら、この一月には、企業・団体献金を自粛する、そういう高いレベルの政治規範を民主党内にきちっと打ち出されている。その中での民主党のマニフェストだから、当然、世間の人は、これはそのとおり、きちっと企業・団体献金の禁止というのはやるんだろう、そのように思われている。

 要するに、鳩山・小沢体制のときに比べて、菅・岡田体制というのは、その昔の小沢体制のときよりも、政治規範が、モラルが低くなったということじゃないですか、総理。御答弁いただきたいと思います。

菅内閣総理大臣 これですよね、資料は。この中に書いてある書き方をもうちょっと正確に読んでみますと、「個人献金促進の税制改正にあわせて、政治資金規正法を改正し、企業・団体による献金・パーティー券購入を禁止します。」と。つまり、「個人献金促進の税制改正にあわせて、政治資金規正法を改正し、」ということの中で「企業・団体による献金・パーティー券購入を禁止します。」こう書いてあるわけでありまして、私も余り何か抜け道のようなことを申し上げたくはないんですけれども、少なくとも、先ほど申し上げたように、党内の議論は、企業献金即悪だと言う人も中にはありますけれども、我が党は、もともとそういう立場まではとっておりません、しかし個人献金がより望ましいという立場はとっております。

 それと同時に、先ほど来、何度も申し上げていますように、それでは、個人献金が非常に少ない中で、すべてが、政党助成金が大部分という政党の運営も若干問題ではないかという問題意識も党内にかなり根強くありまして、そういう意味で、こういう条件は、別に言いわけというよりも、個人献金をもっともっとアメリカのようにインターネットやいろいろな形でたくさん集められるような国であるべきだ、それを実現しながら、同時に企業・団体献金は禁止しようということで、今読み上げさせていただきましたように、「個人献金促進の税制改正にあわせて、政治資金規正法を改正し、企業・団体による献金・パーティー券購入を禁止します。」ですから、この文章全体を読んでいただいたら、決して何かうそをついたとかそういうことにはならない。これは聞いていただいている方に判断をしていただくのが適切だと思います。

佐藤(茂)委員 私は、今の答弁を聞くたびに、菅政権というのは、小沢さんのやったことすら後退させようという、全く国民の期待から逆行するようなことしか考えていないということがますます明らかになってきていると思うわけであります。

 それで、今総理が読まれましたけれども、この「個人献金促進の税制改正にあわせて、」というのは、今まで何か努力されてきましたか。また、来年度、そうしたら、そういう税制改正を総理はやられるつもりなんですか。ちょっとお答えいただきたいと思います。

菅内閣総理大臣 例えば、これは全く同じものではありませんけれども、鳩山内閣の時代から新しい公共という形で、そうしたNPO団体等に対する寄附に対する控除をもっと大きくしようという議論もやっております。

 現在、党の税制調査会あるいは政府の税制調査会などで、こういったものも含め、あるいは党の政治改革本部でも、こういったものを含め議論をしていただいておりますので、私は、まだ日程までは決まっておりませんけれども、まさにここに書いてあるとおり、個人献金促進の税制改正は行うべきだと思っておりますので、その作業は進めさせたいと思っております。

佐藤(茂)委員 そうしたら、有言実行と言われるからには、それはぜひ来年度の税制改正に出してくださいよ。これは見ておきますよ。

 もう一つは、今るる言われましたけれども、もう一点、その三年間の経過措置で、最初の答弁でも言われましたが、この三年間は国や自治体と一件一億円以上の契約関係にある企業等の献金を禁止する、そういうことを言われているんです。

 その背景は、本会議でも言われているんですけれども、企業・団体献金によって政策が左右される、もしくはその疑いを招くことがあれば問題であり、金によって政治が、政策が左右されることがないことであります、こういうように本会議でも衆参の我が党の同僚委員の質問にも答えられている。

 一億円以上と一億円以下で何か違いがあるんですか。一億円以下でも、その献金によって政策や政治が左右されることだって十分あるじゃないですか。なぜこの契約額の多寡で、一億円以上、一億円以下で区切る意味があるんですか。総理、御答弁いただきたいと思います。

菅内閣総理大臣 今は少なくなったかと思いますけれども、かつて多くのゼネコンがそれぞれ有力とされた政治家や派閥に寄附をされていたことがありました。そういう件においては、それが箇所づけ等にかかわる、かかわらない、いろいろな議論がありました。そういった意味で、政治あるいは政策がストレートにそうした個別企業の献金によって左右される、これはかつてあったことでありますので、それは、基本的にそういうことはできなくしようというのが原則としてあるわけであります。

 その中で、もちろん、一億円なのか九千万なのか八千万なのかという、いろいろな考え方はありますけれども、例えば、小さく言えば、文房具も含めて、何百円、何千円という納入も十分あり得るわけでありまして、そういう点で、私の認識は、一億円といえばかなりの金額ですし、そういう公共事業と言われるようなものに多く見られるものであって、それよりも小さい部分についてはそうした大きな公共事業という範疇には入らないということで、一定の足切りを設けたのが一億円という水準であります。

佐藤(茂)委員 要するに、民主党は、政官業の癒着の温床になっているからこういうものは考え直さないといけないということも、去年でしたか、法案を提出したときにも言われておりました。そういうことから考えると、一億円以上であろうと一億円以下であろうと、税金をもらって公共事業をやって、それが政治家に還流するということでは全くパターンは一緒だ、そのように考えざるを得ないと思いますけれども、菅総理、それでも、一億円以下、一億円以上の区切りにこだわられるんですか。総理、答弁いただきたいと思います。

菅内閣総理大臣 政官業の温床になっているという言われ方は、もちろん私も民主党をつくる段階からのメンバーですので、果たしてそれに当たっているかといえば、例外的にそういう人がおられるかもしれませんけれども、ほとんどの人は、そういう政官業に絡んでお金を受け取っているどころか、それこそ本当にごく普通のうちに生まれて、それぞれ志を立てて、お金のない中でお金を仲間から集めて立候補して、幸いにして、民主党の資金、政党助成金も含めていろいろな資金の中で、それを的確に透明性高くそれぞれの活動費として配分する中で当選してきた人が大半と私は見ておりまして、実際に確かに所得番付でも高い方も例外的にはおられますけれども、一般的には、我が党が政官業の腐敗の温床だと言われるのは、私は、事実に当たってはいない、こういうふうに申し上げておきたいと思います。

佐藤(茂)委員 例外的とおっしゃるけれども、今現実にその例外がいらっしゃるじゃないですか、御党に。それが大変な疑惑になっているんです。まあ、これはいいんです。

 それで、要するに、一億円以上という区切りで、一億円未満の企業は実質的には禁止にならないんですね。これで大半の企業が対象にならないと考えられるのか、ほとんどやはり大半が対象になってしまう、そういうように考えておられるのか、そこはどういう判断をされているんですか。

菅内閣総理大臣 少なくともかなり大きな事業をしているゼネコン等は、対象というのはつまり一億円以上に入ると。数についてまでは私は承知をしておりませんが、そういう大きなところは、一億円以上というところで、外す方の範疇に入ると認識をしております。

佐藤(茂)委員 これは勘違いでありまして、たしか昨年だと思いますが、御党がこういう法案を委員会に提出されまして、当時、提出者の一人である長妻さんという方が答弁をされているんです。ある例を引かれまして、「平成二十年度に四国地方整備局が発注した工事については、」「契約をした企業数は総数が三百四十社でございますが、そのうち、一件一億円以上の契約をした企業の数は百四十三社ということで、約四二%というふうに承知をしております。」というふうに言っている。要するに、一億円以上でカットされるのは、数で言うと四割はカットされる、しかし六割は残るんですということを、長妻さんは昨年の倫選特ですけれども答弁されているんです。

 何らそんなもの、数の上では六割が残るんですよ。そういうままでいいんですか、総理。簡潔に答弁いただきたいと思います。

菅内閣総理大臣 先ほども申し上げましたが、政官業の癒着の温床と言われましたけれども、そういうことでいろいろ指摘を受けておられる方は、我が党にはそうたくさんおられるわけではないわけでありまして、まさに例外的であって、いわゆるゼネコンとか、スーパーゼネコンとか中堅ゼネコンとか、そういうふうに、ダム工事とかかなり大きな道路工事とかというものは、私はこの一億円以上に該当するだろうと。

 それは、そういう大きな事業ほど、もしそれが政治によって箇所づけ等が左右されるとすれば、大きな利益があるわけでありますから。逆に言えば、そういうことが、小さいところについてはそういういわば癒着が起きにくいわけであります。

 どこで線を引くのが適切かということはありますけれども、少なくとも、従来よく問題となったような大きなゼネコンあるいは中型ゼネコンなどは、この基準で十分排除されるものと私は理解しております。

佐藤(茂)委員 もう一点、もう三十分ぐらいたっているので、これでこの件は最後にしたいと思うんです。民主党案で、三年間の猶予を設けるというときの今の考え方で、私が一番問題だと思っているのは、この「企業等」という考え方です。要するに「契約関係にある企業等」。

 この規定では、会社そのほかの法人は一応規制されるんです。しかし、この平成二十一年の民主党案によりますと、労働組合、職員団体、政治団体は規制されない、三年間であっても自由に寄附できるんですよ。ましてや労働組合が国や自治体と契約するなんということはあり得ないから、はなからそういうところは対象外にするような法律になっている。こんな自分たちの都合のいい抜け穴だらけの暫定措置は、我々は認めるわけにいきません。御都合主義以外の何物でもないんじゃないですか。

 総理、それでもこういう経過措置が正しいんだ、そのようにお考えですか。答弁いただきたいと思います。

菅内閣総理大臣 私も、かつて、政治と金という考え方の中で、いわゆる企業による献金、あるいは労働組合による献金、あるいは他のいろいろな団体による献金、さらには個人の献金、本質的に何が差があるのかということを考えたことがあります。

 私なりの考え方でいえば、個人献金は、個人の参政権に、いわば一票入れる相手に、一票に加えて一万円のカンパをする、そういう個人の政治意識であろうと。

 企業の場合は、もともとが企業というのは一般的に言えば収益を目的とする組織でありますから、それは収益にプラスになることを一般的には目的として行動しますので、そういうものが、どうしても、献金したときにはその収益を念頭に置いての献金になりがちだということはあると思います。

 その間にあるいろいろな団体、必ずしも収益を目的とする団体ではない団体の場合にはどういうものがあるのか。例えば、女性の参政権をぜひ実現したいとかつて活動された方もありますし、今はもちろんもうありますから問題ありませんが。あるいは自然保護のための団体もあります。あるいは労働者の権利を守るための団体もあります。そういった意味で、私は、それぞれの団体の性格によって、多少、利益目的であるかそうでないかということは、性格は厳密にはかなり違っているだろう、こういうふうに思っております。

 そういった意味で、いろいろな基準はありますけれども、いわゆる一億円の国等との契約というのは、まさに利益、つまりは利益を目的としたそういう商業活動におけるいわば国とのつき合いでありますので、そういうところは除外すべきだろうと。それ以外については暫定的な間については認めてもいい、そういう考え方であります。

 ですから、私は、最終的には何度も申し上げていますように個人献金が最も望ましいと思っておりますが、さらに言えば、個人献金だって、場合によったら大金持ちの人は自分の何らかの利益のためにそれを使う人はあるかもしれませんので、基本的にはできるだけ個人ということであって、いわゆる利益目的の献金、それによって政治が左右されないという一つのけじめのつけ方をどの線で引くかということで、こういう基準を我が党としては設けている、このように理解をいただきたいと思います。

佐藤(茂)委員 これはこれで終わろうと思ったんですけれども、総理が変な答弁をされるので。

 それだったら、企業・団体献金の禁止じゃなくて企業献金の禁止でいいじゃないですか。企業の献金だけ禁止するという考え方ですよ、今の菅総理の答弁は。団体の献金をなぜ禁止する必要があるんですか。変な答弁せんといてください。

 ちょっと答弁いただきたいと思います。

菅内閣総理大臣 要らない答弁をしたかもしれませんが、ここに写真まで掲げて、私の二十七歳のころの活動の写真まで掲げられたものですから、当時そういう議論をした覚えがありまして、そういう中で、私のいろいろな議論やいろいろな論文を書いた覚えもあります。そういう中で、若干、当時考えたことを御披露申し上げたわけです。

 ですから、確かに、今民主党は企業・団体献金の禁止をやるということで公約をしてきているわけですから、それを変えるつもりはありませんけれども、そのあり方については、今佐藤さんが言われたような考え方もあるいはあり得るのかもしれません。ただ、今の民主党が言っていることは、最終的には企業・団体献金の全面禁止を実現したいと思っております。

佐藤(茂)委員 いや、私が言っているんじゃなくて、あなたが言っているんですよ。あなたが、企業献金だけはまずい、そういう話をされているんだ。だからおかしいんじゃないですかと言っている。我々は、すぐにでも企業・団体献金は全面禁止したらいいじゃないか、それが我々の考え方であるということだけ申し上げておきたいと思います。

 二点目に、私どもは、本当にとことんクリーンな政治をやるというメルクマールとしては、三つあると思っているんですよ。

 一つは、今話題になっている小沢さんを本当に説明責任を果たさすことができるのか、そういう自浄作用を民主党が発揮されるのかということが一点。

 今申し上げました企業・団体献金の禁止に踏み切れるのかということが二点。

 もう一つは、これは衆参で我々同僚委員が一貫して言っておりますけれども、政治資金規正法を改正して政治家の監督責任を強化するという、この法案の取り扱いですが、今まで菅総理も答弁のたびに、大変傾聴に値する内容になっているということは、前向きな答弁を何回も繰り返されているんですけれども、これぐらいぜひ総理のリーダーシップで、この法案に対する民主党の態度を時限を区切って、例えばことしの年末とかあるいは来年の年度末ぐらいまでには党としての態度を決めさせます、そういうことを言えないんですか、そういう努力をできないんですか。総理の見解を求めたいと思います。

菅内閣総理大臣 私は、皆さんが出されている法案は本当に十分に傾聴に値すると思っておりまして、ただ、この場でも申し上げたように、いわゆる、たしか、任命責任と監督責任をオアで結んで、その場合に罰則といいましょうかペナルティーが議員の資格の剥奪ということでありましたので、それは若干、私に近い法律に詳しい人に聞いたときに、果たしてそこまでの厳罰というものが本当に副作用を伴わないのかという御指摘もありましたので、そこはしっかり議論させていただいて、必要であれば、それを年内というのか年度内というのか、必ず、ちゃんとした議論をした上で、場合によってはこういう点とこういう点を少し変えていただければ賛成できる、そういうことも含めて、早速、もう既に議論も多少はしていただいていますが、我が党の中にある政治改革推進本部で検討させていただきたい。

 この場で私がいついつまでとは今すぐは申し上げませんが、今佐藤さんが言われたぐらいの期間、そんなに五年先とかじゃなくて、この国会とか次の通常国会のある時期までというところで、何らかの結論を出してお示しをしたいと思います。

佐藤(茂)委員 もう一つは、我々すべてに関係する国会改革のことで、さきの参議院選直後の臨時国会で、我々は公選法の特例を設けて、要するに歳費の一部を日割りに変更した際の差額を、新人議員、当選された方については国庫に自主返納できる、そういう形にしたんです。

 しかし、これはあくまでも暫定的な措置でございまして、やはり大事なのは、国会議員歳費法改正を早急に成立させて、働いた分に応じて国民の税金を使うということを基本にした、そういう歳費法にしなければいけないと思うんですね。

 要するに、働いていない分まで何か国会議員が月割りで歳費をもらっているというような、そういうことはやはりやめにして、地方議会も条例改正で日割り支給にどんどんどんどん変わってきているわけですから、国民感情からすれば、国会だけが例外である、そういうことを放置しておくわけにはいかないと思うんですが、この国会議員の歳費などを現行の月割りから日割り支給に改める法改正、我々は前臨時国会にもその法改正内容は党としても出しておりますけれども、この法改正についての総理の見解を伺いたいと思います。

菅内閣総理大臣 これは、基本的には既に各党の国対委員長が合意をされていると聞いておりますので、できるだけ早く作業を進めるよう、我が党でも、先ほどの党政治改革推進本部での議論が、基本的にはもうその方向で結論ができていると思いますので、その進め方について私の方から早く進めるようにという指示を出したいと思います。

佐藤(茂)委員 それでは、政治と金についてはこれぐらいにいたしまして、続いて尖閣ビデオ流出並びにテロ捜査資料流出の件について何点かお伺いしたいと思います。

 私はまず、尖閣ビデオ流出の件で今大変話題になっておりますが、その前に起こった、十月三十日に発覚したんですけれども、警視庁公安部で国際テロなどの捜査を担当する外事三課の内部資料と見られる書類がファイル共有ソフトを通じてインターネット上に流出している、このこともあわせて、今の国家体制というものをやはりきちっと論じていかなければいけないんだろうと思うんですね。

 この二件の国家にとって極めて機密性の高い情報の漏えいというのは、今の日本の政府の危機管理のずさんさと情報管理能力の欠如を露呈するものではないか、そういうふうに思うんです。一言で言うと、政府が内部から崩壊していっておるんじゃないのか、そういう不安を私は持たざるを得ないんです。

 本当に日本政府の情報管理はどうなっているんだ、たがが外れているんじゃないのか、そういう国民の声は、私のところにも、事務所にも電話をいただきました。総理は昨日、塩崎委員の質問におわびをされたんですけれども、おわびだけされておったのでは国民が極めて情けないわけでありまして、そういうおわびとともに、やはり情報管理体制の強化、危機管理体制の強化に向けての決意というものを持っておられるのなら、総理、ぜひ答弁いただきたいと思います。

菅内閣総理大臣 御指摘のように、今回の情報流出、さらにはテロ情報と言われるものの流出も言われ、広く言えば、さきのいわゆる捜査資料を偽造するといったような事件も含めて、私も率直に申し上げて、この国のそうした、ある意味で官僚組織というのか、それを含めて政治組織というのか、我々の責任ももちろんあるわけですが、そういうものが大変そういった点で問題を抱えて、問題が頻発しているということに強い危機感を覚えております。

 そういった意味で、今御指摘のあったように、情報の管理あるいはそういった危機管理に対して、どのようにすればしっかりした管理ができるか、これは官房長官もそういう問題意識を持っておられますので、官邸を中心にしてしっかりとこの問題に取り組み、それぞれの所掌に、どうすればこういうものが改善されるか、場合によっては外の専門家の皆さんの意見も含めて、しっかり聞いて、対応を考えていきたいと思っております。

佐藤(茂)委員 そこで、具体的に入っていきたいんですけれども、まずその前に、きょうは国土交通大臣、海上保安庁長官、来られておると思うんですが、今回の中国漁船事件での対処に当たって、海上保安庁職員の被害の状況、死傷者の状況について、まずお答えいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 今回の衝突事件につきまして、二度、私どもの巡視船が衝突されましたが、その際に死傷等は発生しておりません。また、その後、約二時間追いかけまして、最終的には巡視船「みずき」が当該漁船に強行接舷をし、六名の保安官が移乗して停船をさせましたが、この際も、きちっと移乗して停船をさせて、特段の抵抗はなかったと聞いております。

佐藤(茂)委員 それで、要するに、今、海上保安庁の職員というのは命がけであの海域を警備してくれているわけです。漁船、また不審船も含めて、非常に今頻繁に出てきているんです。十一管区内、あの地域を警備している、南西海域ですけれども、海上保安庁のこの件も含めて、この五年間の職員の死傷者状況というのはどのようになっていますか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 本年五月二十八日に、鹿児島海上保安部の巡視船「はやと」が当該海域で訓練中に、職員が頭部の打撲により全治一週間の負傷を負ったという事案を報告を受けております。尖閣海域で私どもの巡視船が警備しておりますが、一番つらいのは逃げ場がないというところでございまして、海が荒れても魚釣島の島陰で耐えるしかないというのが一番大変な状況だと聞いております。

佐藤(茂)委員 私は、一つは、彼らを守るわけでも何でもないんですが、そういう大変な状況で任務についておるということも我々政治家はやはり理解した上での判断をしないといけない。ただ、それと今回の情報漏えいとは全く別でございます。

 そこで、国土交通大臣、あるいは海上保安庁長官でもいいんですが、今、巷間、報道で聞いておりますと、石垣海上保安部の、今回のいわゆる尖閣ビデオの管理状況というものがだんだん明らかになってきたわけであります。要するに、結論から言うと、十月十八日ですか、馬淵国土交通大臣が指示を出されるまで、一言で言うと極めてずさんな情報管理状況だったのではないか、そういう疑いが持たれているんですけれども、これについて、どういう情報管理をされていたのか、答弁いただきたいと思います。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 私どもでは、部内通達によりまして、証拠品等の保存方法については、施錠可能な専用保管庫を定めて、必要時以外は常時施錠して保管する等の決めをしておりまして、当該石垣保安部においても、本件衝突事案に係る映像媒体等につきまして、封印して金庫に保管するなどの措置を講じておったと報告を受けております。

 十月十八日、馬淵大臣がさらに厳重に保管をするという指示をされまして、私どもとして、保管責任者を定めまして、石垣保安部は保安部長でありますが、さらに厳重な体制をしいたということでありまして、それ以前がずさんであったということではないと承知しております。

佐藤(茂)委員 そこで、最終的に、今捜査機関の方に手が移ってきたわけですが、これで、総理、何日かすれば恐らくこれは真相がはっきりしてくると思うんです。そのときに、結局、これからどうなるかわかりません、予断を持ったことを言っちゃいけないと思うんですけれども、しかし、ビデオ保管の最終責任者である国土交通大臣あるいは法務大臣の責任の所在について、事実関係が明らかになってからきちっとしたこの責任を問われる、総理、そういうおつもりはございますでしょうか。

菅内閣総理大臣 まずは、原因といいますか、今捜査当局に告発をしておりますので、その捜査の結果というのか、それを待ちたいと思います。

 その上で、そのことがどういうことであったのかが明確になった段階では、もちろん、該当する人そのものは、場合によれば国家公務員法違反ということになるでしょうから、それなりの処分ということもあり得ますし、また、監督責任としていろいろな立場の人の責任もあると思います。最終的には、それは、政府の責任ということでいえば、私自身にも、そうした管理の全体としての責任はある立場であります。

 いずれにしても、昨日ですか、この場でも申し上げましたが、大変、そうした管理不行き届きでこうしたことが起きたことに対しては、国民の皆さんに重ねておわびを申し上げたいと思います。

佐藤(茂)委員 それで、きのうの自民党さんの質問あるいは民主党さんの質問を受けて、きょう、官房長官の答弁が一面に、紙面に大きく出ておりまして、一気に法制の検討に入るのか、そういうような論調になっているんです。しかし、私は、これは余りにも前のめり過ぎるんじゃないのかなという懸念を持っておるわけです。

 それは、まず第一段階、今総理もお話しされましたけれども、真相究明、事実関係をはっきりさせて、原因がどこにあったのかという。こういう原因究明をして、第二段階としては、その原因に基づいた情報管理体制の再構築。要するに、今ネット社会ですから、そういうネットの時代に流出したときの怖さというものも今回思い知らされたわけですから、そういう対応も含めて、再発防止策をどうするのかという第二段階の検討。それで、第三段階としては、そのときに当然、現行法の不備、強化ということが議論になっていくかと思うんですけれども、その現行法の強化をしてもまだ足らない、対応できないということで、第四段階として、新しい法整備が必要だ。そういうきちっとした経過をたどることが私は大事じゃないのかなと。

 それが、きょうの新聞等では、官房長官の答弁の部分的なところを食らいつかれたと思うんですが、第四段階のことを先に打ち出されているような感じですけれども、そうじゃなくて、段階を踏んで、今回の件をきちっととらえて教訓として次の情報体制の強化に持っていくべきじゃないのかな、そのように思うんですが、官房長官の見解を伺いたいと思います。

仙谷国務大臣 今、佐藤議員の質問されたこと、基本的に同意いたします。

 余分なことですが、多分、この程度のことを申し上げれば、あしたの新聞ではどんと一番、第四段階のことを表に出してお書きになるかもわかりません。

 結局のところ、時間軸の問題と方向性の問題と、それから、真相、原因究明というのは、これはもう事実の問題ですけれども、それに基づいてどういう情報の管理体制を構築するのか、これはある程度の方向性を持っていないとできないだろうと。

 多分、やはりIT社会になかなか我々が追いつけない部分がある、あるいは、どうしても官僚機構というのはITのようなものが進んでも直ちにそれを変えていくというふうなことができないというようなこともあるのかなと思って、それが事態の進展にどう対応できるのか、それが法律とどう整合性があったり、そごが出てくるのかということを考えるということだろうと思います。

 したがって、佐藤議員がおっしゃるように、新しい法整備が必要になる場合もあり得るという前提で、そういう見通しのもとに事態に対処しなければいけない、このとおりだと思います。

 いずれにしても、情報保全のためのシステム、法制のあり方、これをスピーディーにやはり検討しなければいけないということは間違いがない、こういうふうに考えておりますので、今後とも御指導いただきますようにお願いをいたします。

佐藤(茂)委員 そこで、第三段階の現行法というものを見渡しましたときに、私の資料の三枚目に今回提示させてもらったんですけれども、これが、今、我が国現行法制における守秘義務等を一覧にしたらこういう形になるわけであります。

 要するに、ここを見てもらってもわかりますように、きのう官房長官も言われたんですけれども、現行法制における、国家公務員法における守秘義務の罰則というのは余りにも軽い。この国家公務員法等の罰則というのは、一年以下の懲役または五十万円以下の罰金。それに対して、次の段階はどこに行くかというと、防衛秘密。これは自衛隊法です。これは、防衛秘密を取り扱うことを業務とする者が情報漏えいした場合には五年以下の懲役、こういう形になっているんです。

 要するに、自衛隊の方を非常に厳しく取り締まっておいて、一般の国家公務員というのは情報漏えいしても非常に軽い、これはやはり余りにも差があるんじゃないのか、そのように思うんですが、官房長官、簡潔に御答弁いただきたいと思います。

仙谷国務大臣 今回の事案の場合は、もし海上保安庁から何らかの格好でどなたかが、だれがということを別にしますと、これは捜査情報といいましょうか、こんなものが外に出るということは通常はあり得ないという前提での情報でありますから、一般的な、国家公務員が職務上知ることのできた秘密を漏らしたというのとは、本来ちょっと違うはずなんですね。

 そういう観点からも考えなければならないとすれば、甚だゆゆしいことだと私は思っておりまして、この一年以下の懲役というのは、おっしゃるとおり、少々均衡を失して軽いかな、特に捜査情報を扱うような国家公務員においてをや、こういう感じがいたします。

佐藤(茂)委員 今、やはりこれからの検討の段階で、国家公務員の扱う情報でもさまざまな情報があると思うんですね。その種類を、情報の種類の内容によって、やはり防衛秘密に近いたぐいの、それだけの秘匿性の高い、機密性の高い情報というのも、当然、国家公務員というのは扱う場合があるわけでありまして、今回のようなそういう機密性の高い情報については、当然、防衛秘密並みの罰則を設けるべきだ、そのように考えますけれども、官房長官、簡潔に答弁いただきたいと思います。

仙谷国務大臣 佐藤議員お説のとおりであります。

 この種の問題、秘密とすべき事項をどういう範囲にするのか。どういう管理にするのか、これが二番目ですね。次は、罰則規定をどう設けてその秘密を守ろうとするのか。それは、罰則の場合には、守秘義務を負う者の範囲、それから処罰の対象とする行為、そして法定刑、この三つのバランスが一番問題だと考えております。

佐藤(茂)委員 全く違うテーマで、最後、TPPの問題で、総理、一問だけぜひお聞きしたいんですけれども、要は、きょう閣議決定されまして、一応、このEPAの基本方針というのは決定されたわけであります。要するに、これは本当に、有言実行内閣の看板がこれで先送りされたのかどうなのかという判断をきちっとしないといけない。

 ただ、問題は、私はそもそも、このTPPというのを総理が所信表明で述べられたことに唐突感がぬぐえないわけです。その一つの例として、きょう資料を提示しましたけれども、これは総理が閣議決定された六月の新成長戦略の工程表です。新成長戦略の文章の中にも、また工程表の中にも、ほかのことはいっぱいありますよ、例えばASEANプラス3とか、ASEANプラス6とか、日中韓FTAとか、日韓EPAとか、これからやらにゃいけないというEPAはいっぱい書いています。しかし、このTPPというものは新成長戦略の中には、この段階では考えなかった、そういうことだと思うんですけれども、総理、いかがですか。事実関係を御答弁いただきたいと思います。

菅内閣総理大臣 いよいよAPECが目の前に迫ってきておりますが、APECでは、FTAAPの実現のための道筋ということを、ある意味では全体の目標になっております。

 そういう中にあって、確かにTPPというのは、昨年オバマ大統領が日本で演説をされた折アメリカも触れられたとか、その前は、小さな四つの国がつくられたものでありましたから、それほど大きな注目を浴びておりませんでした。

 しかし、今申し上げたFTAAPを含めて、FTAあるいはEPA、いろいろな組み合わせはありますけれども、私は、今日本が、いろいろな意味で、こうした経済の自由化の大きなうねりに全体としては立ちおくれたと。そういう中にあって、この時点で、改めて開国という方向にかじを切らなければならない。しかし同時に、今、このまま放置すれば衰退を続けてしまう農業の再生も図らなければならない。この二つのことを、きょうの閣議で基本方針として決定させていただきました。

 そういった意味では、TPPというこの新しい枠組みは、私は、そうした経済の自由化を進めるある意味での黒船のような役を日本に対して与えたのではないだろうかと。実際には、いろいろな二国間のレベルの交渉なども既に進んでいるわけですから、それらを一方で加速させながら、農業の再生についても怠りのない体制を早急につくり上げていきたい、このように考えております。

佐藤(茂)委員 時間が参りました。

 きょうは、政治と金、情報管理の問題、またTPP、懸案山積みでございます。ぜひ、冒頭申し上げましたように、有言実行内閣と言われるなら、菅総理のリーダーシップをさらに発揮されることを期待いたしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

中井委員長 これにて石井君、佐藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 初めに、ちょっと今の続きになるかもしれませんけれども、TPP、環太平洋戦略的経済連携協定についてお伺いをいたします。

 舞台となるアジア太平洋地域は、世界の国内総生産、GDPの五四%、世界貿易の約半分を占めていると言います。ですから、先ほど話題にもなりました、けさの閣議決定、この基本方針によれば、「この地域の安定と繁栄は死活的な問題」、このように政府は位置づけているのだと思います。

 このアジア太平洋地域で、さまざまな国同士の貿易のルールづくりがやられてきました。その中でTPPとは、初めはシンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイという四カ国の小さな連携協定でありましたが、昨年のAPECで米国がこれに参加を表明した。これを契機に、オーストラリア、ベトナムなど九カ国の交渉となりました。

 十二日から横浜でAPEC、アジア太平洋経済協力フォーラムが始まりますが、既に宣言案にもTPPが盛り込まれていると報道されており、議長国としての日本の姿勢が問われるかと思います。

 本日閣議決定された基本方針は、「情報収集を進めながら対応していく必要があり、国内の環境整備を早急に進めるとともに、関係国との協議を開始する。」というものであります。私は、これは事実上の交渉参加宣言にもとれると思います。

 菅総理は、どのようにAPECで日本の態度を表明するおつもりでしょうか。

菅内閣総理大臣 直前の佐藤議員の御質問にも答えたところでありますけれども、私は、この十年ほどの流れを見ていて、かつてアジアの中では日本は圧倒的に大きな経済規模を持ち、ODAなどを含めて、ASEAN諸国や多くの国々をある意味でリードしている立場でありました。

 しかし、この十年ぐらい前から、そうした国々が大きな成長の軌道に乗って、そしてそれぞれの中で、より自由なマーケットを連携してつくっていこう、特にお隣の国の韓国などが積極的にそういう行動をとって、ある意味での効果を上げつつある中では、日本はそういう大きな世界のうねり、アジアのうねり、太平洋のうねりの中にやや立ちおくれてきている、このような認識を持っております。

 そういった中で、今回のAPECは、まさにアジア太平洋地域という世界のGDPの半分以上を占める、そういう大きなある意味での地域的な組織体でありますので、そういう中において、もともとAPECというのは、こうした自由貿易の促進、ボゴール宣言といったものを実現するということを目標にしてまいりましたので、我が国としてもそうした方向で、FTAAPの構築を目指すという基本的な立場に立って、同時に、こうしたTPPや各FTAあるいはEPA等の、より自由にしていくという、そういった方向についても、我が国としては積極的にいろいろな形で取り組む。

 このTPPについての表現は、今もおっしゃったように、関係国との協議に参加をするということでありますけれども、この精神をきちっと表明していきたい。その場合に、一方で、農業の再生ということをもう一つの柱として取り組むんだということもあわせて表明していきたい、このように考えております。

高橋(千)委員 先ほど来の答弁を聞いていますと、これまでは、例えば民主党の中でも、あるいは閣僚の中でも、このTPPに対してのいろいろな意見があったのだと思っているわけです。ところが、結局、交渉に参加をするという事実上の宣言ではないかと私はお話ししましたけれども、APECの中で、結局、TPPはあくまでも通過点にすぎない、アジア太平洋全体の自由貿易、あるいはその先のEUなども視野に入れた全体の自由貿易ということが念頭にあるんだということだったのではないか、このように受けとめました。

 そこで、世界百五十カ国以上が加盟するWTOでも、あるいはEPA、経済連携協定、FTA、自由貿易協定、二国間で結ぶ、こういうときでも、これまでは、互いの国での重要なもの、例えば日本でいう米のような重要なものに対してはやはり例外ということがあったわけです。これが、今回はそういうことが認められないということで、事実なのかということが一つと、事実であれば、参加を検討するということ自体が、これまでの交渉に日本が臨んできた態度、守るべきものは守るという態度そのものが転換になると思いますが、違いますか。

玄葉国務大臣 まず、高橋委員に申し上げたいのは、TPPに関しては、交渉参加前の段階の協議に入るということでございます。同時に、確かに高いレベルの経済連携を進めるということは一方で書いてございます。そのことは間違いないということでございます。

 その上で、高橋さん、どんなお話でしたか。(高橋(千)委員「農水大臣に通告していますので」と呼ぶ)

 TPPに関して例外品目が認められるかどうかということでありますけれども、そのことについては、結論から申し上げれば、明確にはなっておりません。

 ただ、事実関係で申し上げれば、例えば米豪FTAというのがございますけれども、米豪FTAの中では幾つかの例外品目が既にございます。例えば米豪のFTAの自由化率は九六%でございます。その米豪のFTAがそのままTPPのルールに持ち込まれる、そういう情報もかなり内容の濃い情報としてあるのも事実でございます。

鹿野国務大臣 私の承知している限りでは、TPPに関しましては、もちろん、二国間、九つの国、参加を表明している国といろいろな話し合いがなされていくわけでありますけれども、原則としては関税撤廃、すなわち、八〇%は即時撤廃、そして二〇%は十年内に撤廃、こういうふうな認識を持っているところであります。

高橋(千)委員 答弁漏れ。後の方の、守るべきものは守るというこれまでの交渉のルールを日本は転換したのですかということ。

鹿野国務大臣 先ほど玄葉大臣から申し上げましたとおりに、このTPPに参加をするというふうな表明をしているわけではありませんし、総理から言われたとおりに、これからFTAAP、こういうところの構築に向けて、このTPPに対してどういう姿勢をとっていくかというふうなことの検討、そして、いろいろとそういう検討という中で、参加をするその前の段階で、情報収集も含めて協議を始めるということでありますから、まだ決まったわけではありませんので、転換をするとかなんとかという次元の問題ではございません。

高橋(千)委員 鹿野農水大臣は、十月二十一日の新成長戦略実現会議の場で、「実質関税ゼロ国だということを宣言することと同様だ」というふうにおっしゃっております。物すごい衝撃があると。ですから、もう実質ゼロ国なんだということをわかって検討するということ自体が、もうこれまでの姿勢はないのだろうということを指摘せざるを得ないんです。これで押し問答になってもしようがないから、これは言っておきたいと思います。

 そこで、先ほど来、開国と農業の再生を両立させ、ともに実現する、このように述べられましたけれども、私は絶対にあり得ないと思います。東北の出身でございますので、おれの代で農業は終わりだという声を随分聞いてまいりました。ことしはとりわけ、米価の暴落が大きな問題になっております。

 岩手県のある地方議員さんが近所の農家から、おれはもう今から死ぬから、息子には借金を継がせられない、こう訴えられました。秋田では、農業で食べていけないから、若い人がどんどん都会へ出ていくと怒りをぶつけられました。それでも農家の皆さんは、政権交代し、民主党の戸別所得補償政策に期待をして、もう少しやってみよう、そう頑張っている農家もいるのではないでしょうか。

 こういう農家が、来年も農業を続けようと思えるでしょうか。まさか、戸別所得補償制度が農家の退職金になるなんてことはないと思いますが、いかがですか。

鹿野国務大臣 戸別所得補償制度というものは、御承知のとおりに、価格政策から所得政策に切りかえをするという大きな転換をもって、そして再生産につなげることができるように、こういうふうなことで私どもは導入をしたということでございます。

 一方、このTPPの問題については、重ねて申し上げますけれども、参加をするとかしないとか、まだ決めたわけではございません。そして同時に、これからFTAAP、新しいこのアジア太平洋の自由貿易をどうやって構築していくかということの中で、EPA等々を進める中で、当然、その高いレベルというふうなことが求められるとするならば、そこに国内対策が必要ですね、そういうふうなことならば財源等も必要になってきますねというようなことも盛り込んだ今回の基本方針でございまして、そういう中で、私どもは、しっかりとこの現状、今の農業者の現状、そして総理から言われる、農業、農村の振興と自給率向上というふうなものを両立すべく懸命に努力をしていきたい、こう思っておるところであります。

高橋(千)委員 国内対策とおっしゃいましたけれども、例えば日本とオーストラリアの経済連携協定が話題になった二〇〇七年に、経済財政諮問会議が、関税をゼロにした場合、食料自給率は幾らになるかという試算を農水省にさせたことがありました。それが食料自給率一二%という数字で、今改めてそれが言われていたりするわけですけれども、私は、二月の予算委員会でこのことを取り上げたわけなんです。

 当時、まだ自民党政権でありましたので、自民党政権が打ち出していた構造改革、いわゆる四ヘクタール以上などと言われたあの構造改革で、意欲と能力のある担い手農家に土地と支援策を集中するという改革をやれば、完全自由化になってもやっていけますかと聞きました。農水省は、経営規模を拡大し、稲作の生産コストを引き下げる、そうすると、大体現在の約六割、六十キロ当たり一万一千円という水準にまで引き下げたとしても、米国など諸外国の生産コストと比べれば、依然として大きな格差があると答えたわけです。

 つまり、三年たって、今、もう一万一千円を割るかという水準であります。これまでの政府の言う理想どおりに規模拡大を進めてきた大規模農家ほど、今、米価暴落の影響が直撃して、六百万、七百万の減収だと言っています。

 こういう中で、当時、九割の農家を切り捨てるじゃないかと批判をされた自民党の構造改革をやっても、関税ゼロでは無理だということを当時から農水省は言っていたんです。これ以上の国内対策、どうやれますか。

鹿野国務大臣 高橋先生御承知のとおりに、農業者戸別所得補償、これをまずモデル事業として、米農家を対象にして、これを二十二年度に推進をしているところでありまして、そして、その中身は、御承知のとおりに、定額給付、いわゆる岩盤をしっかりとやっていく、そして、お米が下落した場合には、そこには下落対策として、この変動の対応というふうなものもその中に盛り込まれているわけであります。そういう状況の中で、しっかりと再生産に向かってやっていただけるような政策をこれからも恒常的に進めていきたいと思っておるところでございます。

高橋(千)委員 今のお答えではとても対応にならないというのは、だれが聞いてもおわかりだと思うんですね。戸別所得補償対策があるから米をもっと安くしてもいいよということで、今の米価暴落に拍車をかけたんじゃないですか。これを一体何倍にすれば、どれだけ対象にすればこれが国内対策だと言えるんですか。九割切り捨てると批判されたってできないと言ったものが、できるはずないんだということを指摘したい。もう答弁は要らないです。

 次に行きたいと思うんです。

 私は、最大のかぎは、日本とアメリカの関係だと思うんですね。十月二十八日に、ハワイでのクリントン米国務長官の演説、二十一世紀の歴史はアジアが刻む、我々はこの地域での役割を減らすつもりはないというものでした。アメリカは、来年十一月、みずからが議長国となるAPECで交渉の妥結を目指しているといいます。まさにこの一年間がその熱い焦点になると思うんですが、だからこそ、経済界は乗りおくれるなと叫び、日本とアメリカ、日米同盟がその主導権を握るんだと言っているんです。でも、乗りおくれるなと言われて、乗ったバスがどこへ行くのか。

 これまでの日本とアメリカの農業貿易、対等ではなかった。専ら市場開放を迫られる関係だった。皆さんわかっているはずです。牛肉・オレンジに始まり、ミニマムアクセス米の半分はアメリカです。例えば、地元ですけれども、リンゴの輸入解禁をめぐって、日本の検疫は厳し過ぎるとアメリカがWTOに訴えて、結局、緩和を求められたということがありました。今、焦点となっているのは、BSEの輸入規制緩和問題であります。

 こういう力関係なわけですから、日本が攻めているものはないわけですよね。日本が、たとえ協議でも、交渉の枠組みに入るということは、自由貿易を盾に譲歩と規制緩和を迫られるだけではないのか、これは総理に伺います。

鹿野国務大臣 今、BSEの牛肉の問題がありましたけれども、基本的には、この牛肉、BSEの今後の対応については、これはあくまでも科学的知見に基づいて対応するというふうなことでございます。

高橋(千)委員 これ以上の答弁がないということですね。

 関税だけじゃないでしょう、例外なきというのは。結局、そういう基準の問題も安全の問題も、例外なきというところに持っていかれるんだ、そのときに日本が、攻める側ではなくて、攻められる側ばかりじゃないか、交渉に入ると決めなくても、協議に入るということ自体がそういうことなんだということを指摘したいと思います。

 ここは、あと、指摘で終わりたいと思うんですけれども、当時の〇七年の経済財政諮問会議のときに、経団連の御手洗会長は、経済がグローバルになることによって日本の国土が広くなるという表現をいたしました。

 私は、今回、農業だけではなくて、人、物、金、あらゆるものが例外なく取り払われるということで、本当に国の形が変わるような大きな意味を持っているんだろうと思うんです。そうして、世界で活躍する企業の利益が、では地域に還元されるんだろうか、雇用や中小企業、地域の経済を守る方に還元されるんだろうかということは、全然わからないわけですよ。輸出企業がTPPに入らなかったら損なわれる試算ばかり出てきているわけですね。そういう点でも、余りにも全体像が見えていないし、まだまだ影響が大きいということを指摘をしなければならない。TPP交渉には協議にも参加すべきではない。

 これは、もっとしゃべりたいことがあるんですけれども、ほかにも議題がございますので、きょうはここを要望にとどめて、集中審議などということをぜひやっていただきたいと思います。委員長に要望します。

中井委員長 御質問ですか、僕に。

高橋(千)委員 委員長に要望します。

中井委員長 そうですか。理事会で協議いたします。

 お怒りはよくわかりますが、どうぞ、お怒りとともに御質問をお願いします。

高橋(千)委員 質問してもきちんと答弁してくださらないので、きょうはそういう意味で申し上げます。(発言する者あり)いや、ちょっといいです。

 私は、きょうは社会保障について話したいことがあります。(発言する者あり)ちゃんと質問します。

 総理は、十月一日の所信表明の演説で、社会保障問題について次のように発言をいたしました。「一般論として、多少の負担をしても安心できる社会をつくっていくことを重視するのか、それとも、負担はできるだけ少なくして個人の自己責任に多くを任せるのか、大きく二つの選択があるわけです。私は、多少の負担を国民にお願いしても、安心できる社会を実現することが望ましい、」このようにおっしゃられました。

 私は大変どきっとしたわけですね。負担か自己責任かというのはなかなか選べないだろうと思ったわけですけれども、総理の言う「多少の負担」あるいは「安心できる社会」、どのようなことを言っているのでしょうか。

菅内閣総理大臣 現在、社会保障という分野は大変大きな分野でありまして、医療、介護、年金、そして保育を含めたそういった分野、さらには、広く言えば、雇用に関するいろいろな保険制度等も入っております。

 そういった社会の広い意味でのセーフティーネットといいましょうか、そういうものを含めてそれを充実させるにはそれなりの費用がかかるわけでありますから、その費用をどういう形で賄っていくのか。アメリカのように、社会的な医療保険制度、オバマ大統領が若干つくりましたけれども、大変それが少ない、個人に任されている社会もあり、また北欧のように、それを国がしっかりと税金等で賄っている国もありますので、そういうことを念頭に置いて申し上げました。

高橋(千)委員 それなりの費用のお話ばかりだったんですが、後段の「安心できる社会」というのは。

菅内閣総理大臣 これも、これまでの制度の中でももちろん、例えば病気になったときに保険制度があることで治療を受けられる、あるいは年をとって収入がなくなったときに年金で生活ができる、あるいは介護が必要になったときに介護を受けることができる、それらはすべて、広い意味での安心を構成するものだと思っております。

 ただ、あえて申し上げますと、これからの社会保障のあり方を考えるときに、そういうそれぞれの制度が縦割り的に存在するのがいいのか。私、今母親が八十九歳で幸い元気にしておりますけれども、場合によったら、生きている間は必ずこういう面倒は、それが社会であるか制度であるかわかりませんが、見るということを前提にして、これまでの年金と医療と介護をもっと総合的に考えるような制度があっていいのではないかとか、あるいは、今子供についても、いろいろと保育と幼稚園の幼保一元化の議論もいたしておりますけれども、そういったものを含めた安心できる社会、その中身もこれから大きく改革を進めていかなければ対応できないのではないかと思っております。

高橋(千)委員 昨年の政権交代で国民が期待したのは、もう小泉改革ではないということではなかったのかなと思うんですね。私たちは、福祉も自己責任、まさにそういう改革ではなかったかと思っているわけですが、壊されてきた社会保障、医療、介護、障害者、そうしたものが少しずつ修復されて、よりよい方向に向かうのではないか、そういう期待がやはり新政権に込められたのではないかというふうに思うんです。

 ですから、私はきょう、総理にあえてその安心の社会というのは何ですかと聞いたのは、負担の中身についてはいろいろな議論がございます。我々は、消費税増税反対というのは前から話しているわけですけれども、しかし、多くの国民の中には、それでも安心できる社会にするのであればとか、あるいは総理が経済大変だと言っているからという、本当にまじめな議論があるわけですね。そこにまずこたえるという姿勢があるのだろうかということが知りたいわけなんです。実際には、国民の期待が一つ一つ裏切られてきたのではないか、そう思うんです。

 そこで、一つ目に介護保険について伺うんですけれども、ことしで十年目なわけですので、見直しがされております。

 資料の一枚目をごらんください。

 これは、厚労省の社会保障審議会介護保険部会に出された資料でありますけれども、全部は読めませんのでアンダーラインを引いております。この見直しにかかわる主な論点についてということで、上から、線を引いているところだけ読みますけれども、例えば、今まで無料だったケアマネジャーの利用料を有料にするとか、重度の要介護者に給付を重点化する観点から、軽度者の利用者負担を引き上げる、同じく、生活援助サービスなど軽度者に対する給付を縮小する、被保険者範囲を四十歳未満の者に拡大することをどう考えるか、こうした論点があらかじめ示されております。

 つまり、負担をふやすということと、サービスの中身を減らす、範囲を減らす、こういうのが随分列記をされているわけですけれども、大臣もこうした見直しが必要だと思っているのでしょうか。

細川国務大臣 高橋委員にお答えをいたします。

 高齢化が急速に進んでおりまして、そういう中で介護が必要になったときには、十分な介護が受けられて安心して生活が送れるというように、そのためには介護の職員などの待遇の改善も必要ですし、また介護サービスの方も充実をしていかなければいけない、こういうふうに思っているところでございます。

 将来にわたって持続可能な介護保険制度を構築していくということが、特に高齢化が急速に進んできた今、これが大事だというふうに考えておりまして、今委員が御指摘ありましたように、この社会保障審議会の介護保険で議論をしていただいておるところでございます。

 いろいろと今資料で御指摘もいただきまして、それについて御議論をいただいているということで、これは、決まった方向ではなくて、今議論をいただいているというところでございます。

高橋(千)委員 その審議会に委員の方が、土井先生が出された資料をもとにパネルにしたわけですけれども、皆さんのお手元に同じものがございますけれども、一番上が、要介護三から五の方が百八十四万人で給付費四・二兆円ということで、その下に、要介護一、二、百六十一万人、要支援百二十三万人という形で、お金も書かれてありまして、ここを削ればこれだけのお金が浮くというのが計算しやすいようにできているわけです。

 その中で、この委員が提案をしたのは、ここの丸の部分ですけれども、要介護一から二、要支援の対象者への給付の中で、生活援助は給付費千六百億円程度というふうなことが言われております。

 しかも、けさの新聞によりますと、要支援の生活援助を保険から外すということも既に、自治体に任せてもいい、そういうふうなことが報道もされております。

 やはりこれは、厚労省が論点として出したわけですから、しかも、大臣は持続可能な云々とおっしゃったわけですから、こういうこともこれありとおっしゃっているのかなと。もう一回。

細川国務大臣 今委員が言われます軽度者に対する給付につきましては、これはいろいろな御意見が出ております。保険料負担が厳しい中で、給付の選択と集中を進めて重度者の方の対応にシフトしていくべきだ、こういう御意見もございます。しかし、一方で、生活の維持につながるサービスはきちっと確保しなければいけないというような御議論も出ておりまして、今そういう議論をこの審議会の方で継続をしているということでございます。

高橋(千)委員 ちょっと時間の関係で、一つ総理に伺うことにしていたんですけれども、飛ばします。今のところでとても大事な答弁がありましたので。

 重度者へシフトをしようという意見が出た一方、生活につながるサービスはやはり大事じゃないかという意見があったということなんですね。私は、賛否両論、さまざまな意見が審議会の中で出されているのは承知をしています。きょう聞きたいのは、大臣としてどうなのかという思いを聞きたいわけであります。

 それで、先ほどお話ししたように、介護保険はことしで十年なわけです。十年前施行されたときに、私どもは、保険あって介護なしの制度になるのではないか、このように反対をいたしました。ただ、当時、介護の社会化を叫んで、本当にその介護保険に期待をした方たちがやはりたくさんいたわけですよね。同時に、そういう方たちが今、今のままではだめだとおっしゃっているわけです。

 昨年の一月まで社会保障審議会介護給付費分科会委員を務めていた沖藤典子さんは、「介護保険は老いを守るか」という著書の中で、次のように介護保険が始まった当時の様子を紹介しています。

 その四月一日、Hさん、名前は全部イニシャルにしていますが、当時七十二歳はこう語った。ひとり暮らしですけれども、これで安心。一日でも長く我が家に住み続けられるよう家を改造します。やがて私のところにも、ホームヘルパーさんとかいろいろな職種の人が来てくれることになるんでしょうね。老後の不安がなくなって、この家で元気に生きていかれそう。

 Sさん六十二歳もまた、こう言った。これで、もし介護になっても嫁さんに気兼ねしなくてもいいですね。私の存在がだれかの束縛になるのは耐えられませんもの。

 山梨県のあるケアマネジャーの声も紹介しています。あのころ、家族介護や老老介護の大変さをさんざん見てきました。家族だから、嫁だからと言われて、介護する人もされる人も悲惨でした。どこの家にも年寄りがいる、でも長生きが喜べない、苦労の種だという話がたくさんありましたよ。新しいシステムの介護保険になれば、こんな状態から抜け出せると思いました。そのために自分たちの仕事があると本当に力がわきました。

 そういう当時の喜んでいた人たちの声なんです。本当に胸に詰まる思いがするんですけれども、この方たちの思いが報われたのかということなんです。老老介護や認知症同士の認認介護、介護を苦にした無理心中や殺人も後を絶ちません。介護のために仕事をやめる人は、年十四万人なんです。そういうときに、さらなるサービス抑制や負担増はあり得ないと思います。家族がまた介護を抱え込む、そういう十年前に後戻りさせてはならないと思います。

 大臣の気持ちで答えてください。

細川国務大臣 今、高橋委員から読まれましたそういう人たちの期待というのが、この介護保険制度の中に込められたというふうにも思います。しかし、先ほども申し上げましたように、急速な高齢化のもとで介護費用が大変かかる、そういうときに、介護サービスも充実をしなければいけないけれども、しかしまた費用も大変かかるわけですから、それをどういうふうに負担していただくかということで、今、審議会の方で議論をいただいております。

 今、高橋委員の方からお話をされましたような、そういう人たちの気持ちも、もちろんその審議会の方での議論の中で出てきていると思いますので、そういうことも含めまして審議会の方での議論を進め、集約の方に持っていってもらえるものと思っております。

高橋(千)委員 ふえ続ける高齢者と介護の需要、まあビジネスという見方もあるかと思います。また、それが政府の成長戦略なのではないかなと思うんです。二〇二〇年までに医療、介護分野で五十兆円の新規市場と二百八十四万人の雇用創出を見込んでおります。

 先ほどの生活援助の話ですけれども、例えば、保険外でサービスをやればいい、それを企業が受け持つ、その企業がケアマネジャーさんにお金を払って、そしてケアマネジャーさんがコーディネートをするというふうにやれば企業の市場も開かれるよねというような絵が経済産業省の産業構造ビジョンにかかれております。

 今、私たちが全国の事業所にやったアンケートの中でも、経済的な負担のために七割が利用を減らしている、我慢していると言っていますし、あるいは、介護保険で決められた給付の中では足りない、だけれども民間のサービスは受けるお金がないということを六割近くの人が答えて、我慢をしている状態であります。

 ですから、単純に外に出してしまって、市場が開拓されるよというふうにされては、そういう人たちが切り捨てられることになるわけです。この点、ちょっと通告しておりませんが、一言、大臣、お願いいたします。

細川国務大臣 ちょっと趣旨がわからないところがありますけれども、この介護分野はこれから経済的にも成長する分野だ、こういうふうに位置づけております。それは当然、介護を受ける方たちがこれから急速にふえてまいりますから、その人たちをお世話する人も当然ふえてまいりますし、そういう施設もこれまたたくさん建てていかなければいけないということにもなってまいりますから、そういうところで働く人たちがふえる。そして、介護に関するいろいろな仕事がふえているという意味で、その点での成長が期待される。こういうことで、そういうところでもまた、日本の成長戦略の中で大きな位置づけをされているというところでございます。

 そのことが別に個人の、本人だけの特に負担になるとか、あるいは介護の制度そのものから外に出すような、そういうことではございませんので、その点については誤解のなきようにお願いをしたいというふうに思います。

高橋(千)委員 今最後におっしゃったこと、外に出すということではないのだとおっしゃっていただきましたので、これは確認をさせていただきたいと思うんです。

 それで、先ほどお世話する側というお話がありましたけれども、片や介護の支え手の分野で人手不足である、片や失業者がふえている、だから、ここに訓練をしてもらって介護の分野で働いてもらえばちょうどよいじゃないかというだけでは、ちょっと困る。現場の方たちはそんな簡単な仕事ではないよとおっしゃっておりますし、心機一転、介護の現場で頑張ろうとした方がくじけるような現実がございます。

 Kさんという登録ヘルパーがいらっしゃるんですが、この方は建設業界で働いておりましたが、不況で職を失い、家族の生活もあるために、年齢ではもう再就職が難しくてヘルパーの仕事を始めました。こういう人がこれからふえるだろうというふうに多分成長戦略では描いているんだと思うんですけれども、ただ、事業所もKさんに配慮して、要するに、家族を支えるためにいっぱいお金を上げなくちゃいけないということで、週六日フル回転の番割りをつくりました。それでも、一月目いっぱい働いて、交通費込みで十五万円にしかならない。仕方なく、介護が入っていない月曜日は別のアルバイトをしているわけなんです。ですから、週七日休みなく働いて、実際、続けていけるだろうかという不安を抱えているわけですよね。

 なので、やはり介護は、人間の尊厳に触れる専門的な仕事なんだということをもっと位置づけて、ふさわしい処遇をするべきだと思いますが、いかがですか。

細川国務大臣 介護の仕事につかれて、余りにも仕事がきついということで離れられる方もたくさんおられるわけでございます。そのときに、仕事がきつい、しかも賃金が安いというような状況もございましたので、そこで、介護職員の待遇をしっかりと改善しなければいけないということで、介護職員の報酬、これは二十一年度の介護報酬のプラス三%改定、そしてまた介護職員の一人当たり平均一万五千円の賃金引き上げに相当する介護職員処遇改善交付金、これでたしか二万四千円ぐらいですかがプラスになって、改善もされたというところでございますけれども、しかし、まだまだそれだけでは十分ではないというふうに私は思っているところでございます。

 それから、今御紹介があった建設業の仕事から介護の仕事に転身をされるというか、かわられる、大変そういう方も多いわけでありますけれども、私どもとしましては、そういう方に職業能力をつけてもらう、専門的な技術を身につけていただくということで、職業訓練もしながら介護職員の仕事をしっかりやっていただけるような、そういう仕組みもいろいろと考えてやっているところでございます。

高橋(千)委員 交付金については評価がいろいろあるわけでありまして、効果が思ったほど広がっていないということもあります。ただ、それ以前にやはり恒常的なものにするべきではないかという指摘がございます。また、介護報酬そのものをきちんとふやして安心の制度にするべきだ、その際に、ふやしたら利用者負担にまたはね返ってくるのではだめだということで、公費負担をふやせという声が審議会の中でも出ていると思います。その点で、大臣の決意を伺いたい。

細川国務大臣 その点につきましては、先ほど申し上げました交付金が二十三年度末で終了する、こういうことにもなっておりますから、私どもとしましては、審議会でもいろいろ御議論もいただくというふうにも思いますけれども、今後、この処遇改善がしっかり進むということで検討を進めてまいりたいというふうに思っております。

高橋(千)委員 ぜひ重ねて要望したいと思います。

 次に、介護保険と大きく関係する後期高齢者医療制度について伺いたいと思います。

 新しい制度の仕組みについては、今回、全部はやる時間がないですので、負担の問題でちょっと伺いたいと思うんですね。

 二〇一三年に後期高齢者医療制度が廃止をされ、新しい制度の名前がないですので私が命名をしましたが、新後期高齢者医療制度になるわけです。枠組みが変わらないということなんですね。そこで議論をされているのは、七十歳以上の方の高齢者の窓口負担を一割から二割にする、倍にするというものであります。

 パネルと同じものを、手元に資料を加えておりますけれども、この窓口負担の問題ですね。十月二十五日の高齢者医療制度改革会議で、近藤克則委員が自身の共同研究をもとにして紹介している資料でございます。

 上の方が、過去一年に必要な受診を控えた高齢者の割合、下が所得なわけです。百五十万未満の方が一三・三%、三百万円以上の方が九・三%というように、所得の低い人がやはり受診を控える割合が高いねということを示しております。下の段は、これは年齢で分かれるわけです。七十歳以上になりますと一割負担になる、それまでは三割負担だと。そうすると、受診抑制の理由として、費用が高いからと言った人が、三割負担の人は三五・八%、七十歳以上で一割負担の人は二〇・一%、これもどっちも高いですけれども、しかし、窓口負担が安い方がやはり受診しやすいということはよくわかるのではないかと思います。

 秋田県の保険医協会の調査でも、この半年間の受診動向調査を見ますと、年齢に関係なく、経済的な理由で治療を中断または中止された方が四五%に上っているんです。レントゲンは撮らないでいいよ、検査はもうしなくていい、あるいは痛みだけとめて応急処置してください、そういうふうに患者さんが懐ぐあいを見て、最小限に治療を抑えているということがよくわかるんですね。

 その中に、こういう方がいらっしゃいます。七十歳になったら窓口負担が一割になるので、それまで検査は待ってほしい、そう言っている。そうすると、みんなわかっているわけですよ。七十歳になったら一割負担になる、待ち遠しい、待ち遠しいと言えばあれですけれども、少し楽になるなと思っているんですが、今回は、二〇一三年以降、新しい制度が始まれば、七十歳になった人から順々に二割負担になるということです。もう受診抑制ははっきりしているんですから、これ以上の負担増をすべきでないと思いますが、これは総理にちょっと伺いたいと思います。

細川国務大臣 病気になって治療を受けた場合の個人負担、本人負担がどうなるかということについては、高橋委員も御承知のように、これは年齢によって違っております。

 まず、就学前、学校に入る前は、これは二割であります。学校へ入って、それからずっと六十九歳まで、これは三割。そして、七十歳から七十四歳までは二割、七十五歳以上は一割、こういうことになっているわけですね。本来は、七十歳から七十四歳の方は二割、こういうことになっているわけなんですけれども、これを特例で毎年二千億円の予算措置によりまして一割負担に凍結をして、七十歳を境に三割から一割に下がる、こういうことを今措置しているわけでございます。

 そこで、今七十歳から七十四歳は一割でありますけれども、これまで三割負担をしていただいていた方に七十歳になったならば二割を負担していただくということを御提案させていただいておりまして、ふえるというのではなくて、三割から二割に減るということで御提案をさせていただいておりますけれども、ここは、いろいろと今審議会の中で御議論をいただいているというところでございます。

 いろいろそれぞれのお考えはあろうかと思いますから、これはもう審議会でいろいろと御議論を待つということでございます。

高橋(千)委員 今いろいろとおっしゃいましたけれども、まず、三割から二割に減るんだというお話は、確かにそのとおりですよ。でも、私が今言ったように、一割になるんだ、七十歳になったら一割になるんだとわかっていてみんなが検査を抑えたりしているのに、二割になるのかという話をしているんじゃないですか。

 それから、今は二割なんだけれども一割に抑えていますとおっしゃいましたけれども、それをやったのは自民党政権なわけで、そしてそれをやらせたのは、野党時代の民主党と我々が共同提案をして、後期高齢者医療制度を廃止せよ、それを国民が大きく支持をして、凍結までやはり何らかの見直しをしなくちゃいけないということで自民、公明が決断をした、そういう背景があったじゃないですか。それを何で打ち消すのかということなんです。

 今、大臣、二割負担は検討だとおっしゃいましたけれども、厚労省がさまざまな財政試算を出しています。その財政試算はすべて二割負担が織り込まれているということを言っておきます。ですから、もうほとんど既定の路線だということです。

 それで、このパネルは、お手元に資料もございます、厚労省が試算をした、新しい医療制度が始まってからどのくらい保険料が上がっていくかというパネルであります。二〇一三年から新制度が始まって、一五年、二〇二〇年、二〇二五年、それぞれどうなるか。見るとおわかりのように、大体三割増し、五割増しというふうになるわけです。

 厚労省は、この試算を三%の経済成長でやりました。賃金が三・五%上がったということで試算をしました。かなり無理があるなと思うんですよ。ただ、仮にそういう実態になったとしても、仮に賃金が伸びたとしても、下の方を見てください、基礎年金給付額は最大で二・二二%で、マイナスから出発しているでしょう。もうこれは、たとえ賃金が上がっても、年金というのはそれに比例して上がらないような仕組みにできているわけです。

 これでも負担増はやむを得ないのだろうか。年金が上がらないのに、取られる部分だけふえたらどうなっちゃうのか。

細川国務大臣 高齢者の保険料が、一三年度では七万、それから二五年度では九万五千に伸びる、こういう見込みが書かれているわけでありますけれども、高齢化の進展で医療費の増加が避けられない。そういう中で新たな制度をどのようなものにするかについても、高齢者の医療については、公費と、それから高齢者の保険料、それから現役世代の保険料による高齢者に対する支援、それから患者負担の組み合わせによって支えるしかないわけでございます。

 そこで、先般、制度改正に伴います財政への影響試算を提示させていただきましたけれども、新制度を仮に二〇二五年度まではそのまま続ければ、御指摘のような高齢者の保険料は増加するということで、一方、現役世代の保険料も同程度に増加をする、公費の方は、負担はそれ以上に負担をする、こういうことになっております。

 いずれにいたしましても、費用の負担のあり方については、その時々の医療費の動向、年金を含めた社会保険制度全体のあり方、そして社会経済情勢等を踏まえながら、先ほど申し上げましたように、公費と、それから高齢者の保険料、現役世代の保険料、そして患者負担がどうなるか、それぞれ適切な水準となっているかどうか、これは継続的に検証をしながら、必要に応じて見直していかなければならないというものであろうと思っております。

高橋(千)委員 今、必要に応じて見直していかなければならないと最後におっしゃいました。余り時間がないですので、そこら辺は、もう年金では間に合わないことははっきりしていますので、やはりちゃんと見ていただきたいと思うんです。

 そこで、このパネルは、厚労省がいろいろな試算をして、新しい制度になったときに、今おっしゃった、公費と、いわゆる税金の部分ですね。それで、現役世代の支援で支えるしかないのだとおっしゃった。そこの税金の部分がどうなっていくのかというのを書いた資料なんであります。

 それで、国と都道府県、市町村の関係は大体四対一対一の関係で、割合は今後も変わらないと言われています。そして、年を追うごとにこの負担がどうなるのか、見ていただきたいと思うんですが、市町村負担は、六百億、八百億、千億というふうに上がります。都道府県負担は、二百億、百億、大体こういう感じです。国負担は、実はマイナスなんですね。マイナス三百億、六百億、五百億。

 つまり、高齢化が進んで医療費はこんなに上がるといいながら、実は国の負担が下がるじゃないか。市町村に、一番財政力のないところに負担を押しつけている。そうしたら、国が真っ先の責任を果たしていないで国民と自治体に責任を押しつける、これはおかしい。これはいかがですか。

中井委員長 質問時間は終わっておりますので、細川さん、短く。

細川国務大臣 これはちょっと難しい問題で、簡単には……

中井委員長 そういうことを言わずに、ぷっと短く答えてください。

細川国務大臣 はい。

 これは、負担の割合が四対一対一、こういうことになっておりまして、その規模は国の方が物すごく大きくなっている。したがって、ふえる額も全然違うんです。規模が違うんです。国の方は全く多くなっておるということを考慮していただきたいと思います。

中井委員長 これにて高橋君の質疑は終了いたしました。

 この際、北澤防衛大臣から発言を求められておりますので、これを許します。北澤防衛大臣。

北澤国務大臣 本日午前中の高市早苗委員との質疑の中で、外国人参政権についての答弁で私の記憶違いの部分がありましたので、補足説明をして、おわびを申し上げます。

 外国人参政権付与の件につきましては、二月九日の委員会において、私の方から、賛成であり、また危険性はない、そういう旨の答弁をいたしました。高市委員から、大変残念でございますという御指摘もいただきました。

 その後、この件につきましては、二月十二日の記者会見で、防衛大臣としての立場上、この件についてコメントすべきではない旨の説明を申し上げました。

 三月の委員会において、高市委員から質問通告がございまして、私とすれば、この記者会見を受けて、コメントすべきではない旨答弁する予定でありましたが、時間の都合か、質問がございませんでした。したがって、答弁をする機会はなかったわけでありますが、そのことを思い違いをして、二度目の質問に答弁をしたというふうな記憶違いの中で先ほどの答弁をいたしました。

 本件については、改めて訂正をして、おわびを申し上げます。

中井委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党の阿部知子です。

 本日私にいただきましたお時間は、今の北澤防衛大臣の御答弁がございましたので、三十五分でやらせていただきます。

 まず冒頭、けさは、この委員会の冒頭で、海上保安庁長官から、被疑者はどなたかわからないが守秘義務違反容疑で告発をなさるというお話がございました。

 この問題は、そもそも、国民的に見ても、本来、一体この一連の出来事の責任をだれがとるべきなのか、本当に大きな疑問が生じていると思います。特に、現場で一生懸命、海難事故や、あるいはせんだっての奄美の大災害や、あるいは今般の中国漁船による領海侵犯などに命がけで闘って、そしてお仕事をしてくださっている海上保安庁の職員にとっては、今度は、あなたは被疑者かもしれないという形での事情聴取が始まるわけであります。

 もちろん、私は流出した事実を是としているわけではありませんが、現場と政治の間に大きな乖離ができたり、現場と海上保安庁長官との間に不信が生じたりすれば、これは当然現場の海上保安能力に大きな支障を来す。組織がうまくいかなくなるときは、必ず現場が軽視されたときであります。

 時間の関係で、総理に伺います。

 まず、総理は海上保安庁の職員に対してどんなメッセージを送っていただけますか。海上保安庁という組織は、昭和二十三年に、それこそ軍隊のない日本の中で、海の安全保障を守るという特別な、世界に先駆けた組織でありました。商船学校からたくさんの方を招いて、軍とは違う取り組みをやったわけです、その組織の歴史。もちろん、さっきから言うように、流出は是としません。しかし、今一万二千人の職員が、本当に日夜働いております。

 このことに対して、私は、例えば事情聴取云々ということは本当にせつないし、そういう立場に置かれる職員のことを思うと、ここは総理からきちんと政治の側のメッセージをしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

菅内閣総理大臣 海上保安庁の現場の皆さんが、尖閣諸島のことを含めて、日本の領海をしっかりと守るために日夜奮闘されている、そういうことを、私も、大変御苦労いただいているということを、心からお礼といいましょうか、感謝の意をあらわしたいと思います。そういった意味で、特に尖閣諸島に関しては、近年といいましょうか、大変いろいろな事案が多くなっている中で、まさに全国の中でも最も厳しい条件の中で頑張っていただいていると思っております。

 今般の情報流出が最終的にどういう形であったのかは、今、捜査当局に告発が出されて、今から捜査が進むわけですけれども、この情報流出と非常に御苦労いただいているということは、やはりきちんと区別して考えなければならないと思っております。情報流出については、これはこれとして、きちんとある結論が出た段階で、それに対してはそれに対するきちんとした対応が必要だ。このことがあるからといって、現場で頑張っておられる皆さんの御苦労が損なわれるような、そういうことになってはならないと強く思っております。

阿部委員 仙谷官房長官がおられませんので聞けませんけれども、処罰のお話ばかりでは本当に現場の士気は上がらないと私は思います。予算は一千八百億くらいでやっていて、船も老朽化したり、本当に人材でもっているような組織でありますから、ぜひ総理は、ユーチューブも見ていないとおっしゃいましたけれども、ごらんになっていただきたいです。お時間ないと思いますけれども、どういうふうにみんなが頑張ってやっていたかということも総理に知っていただきたいと私は思います。

 そして、委員長にはお願いがございますが、私は、さっき申しましたように、三十五分で限られた時間ですので、余の質疑、このことをもっとお聞きしたいですが、できませんので、また集中審議等のお取り計らいを理事会でよろしくお願い申し上げます。

中井委員長 理事会で協議いたします。

阿部委員 では、予告しました質問に行かせていただきます。

 十月の十八日から二十九日まで名古屋でCOP10が開催されまして、日本は議長国として一定の大きな役割を果たしたと思います。暗い話題が多い中のこの現政権においては、私は、このCOP10、松本環境大臣が本当にここで活躍をされて、後進国と先進国の間のやはり常に利害対立がありますから、それを調整しながら、一つの合意、生物多様性を世界を挙げて守るんだ、あるいは、低開発諸国からとっていったもので先進国だけがもうける構造はやめようとか、そういう大きな合意をできたのがCOP10、名古屋議定書という名前もできたくらいですから、京都議定書が温暖化問題であれば、名古屋議定書は生物多様性における世界のコンセンサスになったと思います。

 そこで、松本環境大臣にお伺いいたしますが、このCOP10では、加えてSATOYAMAイニシアチブというものを表明いたしました。

 ここに掲げてございますのは、名古屋の天白区平針というところにある里山であります。ため池のような水があって、木があって、メダカ、トンボ、シマヘビ、さまざまな生物がいて、子供たちがこの森でいろいろな経験をするという、名古屋という都市部にあっては極めて珍しい、市民の憩いの場でありました。

 ところが、COP10の開催のさなかに、ここにブルドーザーが入りまして、見るも無残な形にこの森は壊されてしまいました。トトロの森の宮崎駿さんが、この森を残そうというふうにお声もかけていただきましたけれども、何せ、都会にこういう地域が残っていて、持ち主が亡くなると、相続税の問題が出てきて、なかなか払い切れません。

 松本環境大臣、SATOYAMAイニシアチブを本当に世界に、そして我が国の中でやっていくために何が必要とお考えでしょうか。これから二年、議長としてお取り組みいただきたいので、私は熱い期待を込めてお伺いをいたします。

松本国務大臣 阿部委員にお答えいたします。

 その話は実はCOP10の最中にお聞きをしました。

 COP10のことは、先ほど言われましたように、先進国と途上国が本当に痛みを分かち合って、それぞれが譲歩し妥協して、人類の英知が結集したというふうに思っております。そういう意味では、SATOYAMAイニシアチブも、十月の十九日に五十一の国と機関で発足をいたしまして、利用に関する決議案も採択をされて、今推進をされているところであります。

 実は、COP10が終わった直後に記者会見がありまして、その話を聞きました。平針のお話でありますけれども、私も写真を見ましたけれども、やはり木が切られているということで心を痛めます。そういう意味では、そのときに思いましたけれども、今、やはり、里山とかあるいは都市の緑地とか、自然を保全するということがどれだけ大事かということも私たちは承知をしております。これも、市が都市計画法の開発許可を保留したというふうに話を聞きましたけれども、市もそういう思いがある。

 しかし、都市計画というもので、なかなかそういうことができないということもあって、ある意味では、このための、これらの自然の重要性もしっかり広く国民の理解を深めていかなければならないと思いますし、開発事業が行われる場合にあっては環境に著しい影響があってはならないと思っております。

 私どもも、地域の自治体の取り組みを支援するために、九月に関連法制度などの所管をする横のつながりも要ると思いまして、国土交通省、農林水産省、文部科学省の協力も得て里地里山保全活用行動計画を策定したところであります。

 この行動計画では、さまざまな主体による里地里山の保全活用の基本方針の進め方、国が実施する保全活用施策を示しており、今後は、これに基づいて、関係各省との緊密な連携を図りながら、全国の里地里山の保全と活用をあらゆる主体の参加による国民的な運動として推進してまいりたいというふうに思います。

阿部委員 今、松本環境大臣からは、環境省と農水省と文部科学省等も寄って集まって里山保全に力を入れていこうという御答弁でありましたが、私は、もう一つ、きょうは自見金融大臣にお願いがございます。

 実は、さっき申しましたが、この里山は、もともと個人の所有で、相続税が払えず、業者が十六銀行というところから融資を受けて買い取り、開発をしてしまいました。里山を守ろうというのが社会的な合意であれば、逆に、融資、お金を貸すということも、ある意味、そうした本来の社会が守ろうとするものを壊していこうというような者に融資をすべきではないだろうと私は思います。

 これは、国際的には赤道原則というのがあって、ジャングルを開発したりする者に融資をしないとか、JBIC、日本開発銀行も、きちんとそれが環境保全に役立つものに融資をするという環境原則があるわけです。ところが、日本においてはこれがないので、こういうことが現実に起こってしまう。どこかの銀行が融資しなければ、この場合は十六銀行ですけれども、個人で買えるお金ではないから、こういうことにはならない。

 もちろん、民民のことですから、過剰な介入ができないというのはわかっています。だけれども、国がどっちの方向にこの国を持っていくのか。本当に里山を守るんだ、壊すことはまかりならぬ、そういう融資のルールをつくっていただきたいと思いますが、自見金融大臣、お願いいたします。

自見国務大臣 阿部議員にお答えをいたします。

 今先生が言われましたように、赤道原則というのは、先生からも教えていただいたのでございますが、世界銀行グループが二〇〇三年に主要な欧米銀行と策定したもので、大規模な開発プロジェクトファイナンスを行う際に環境やら社会面での影響評価などをすることを求めたものです。

 実は、この赤道原則は、日本では、メガバンクでございます、みずほコーポレート銀行、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行の三行が社として採択をいたしていますけれども、今先生が言われました地方銀行にはなかなかまだそこまで行っていないということが現実のようでございます。

 これは、個々の金融関係でされている個別融資のことでございますから、先生も言われたように、基本的に、銀行というのは、銀行法によりまして免許業でございますが、公益性、公共性がございますが、私企業でもございますから、個別の融資に関することはコメントを差し控えたいと思います。

 一般論としては、まさに今世界の大きな金融の流れも、そういった環境にきちっと留意しなさいということが世界の大きな流れでございますから、金融機関による融資については、金融機関みずからが、もう御存じのように、借り手の資産、経営状態、資金の使途、使い方ですね、それから回収が可能かどうかということも総合的に勘案した上で、さらに社会的責任を踏まえてみずからの経営判断に基づいて適切に行われるものだ、こういうふうに思っております。

阿部委員 今、自見大臣がお答えくださいましたように、企業にも社会的責任があるわけです。社会を構成する大事な一員が企業であるからこそ、その企業が例えば里山の破壊には融資をしないような、いい方向への領導というのをいろいろな形でお願いしたいと思います。

 私が、きょう、冒頭この里山問題を取り上げたのは、この予算委員会を通じて、今、日本の景気は低迷しており、貧困の問題も拡大しており、菅総理もTPPへの加入などは何とかこの国を興そうと思っての御発言だとは理解しています。

 ただ、だがしかし、菅総理にもっとわかっていただきたいのは、今国民が求めているのは、自分たちの暮らし方、暮らしにおける価値観が何であるのか、もっと踏み込んだものなんだと思います。もちろん、お金がない、給与が少ない、苦しい、経営がつぶれる、これもこの補正予算を一刻も早く成立させて手を打たねばならないことと思いますが、結局、もっと考えれば、二十一世紀に何が大事で、どんなものを守りながら生きていきたいのかという大きな転換期に来ていると私は思います。

 そこにあって、菅総理は、例えば代表質問でもTPPの参加検討とおっしゃいましたが、ほとんどの国民が、それ何のこと、私たちどう変わるのと。ほとんどわかりません。さっき菅総理のお母様が八十九歳と伺いましたが、私の義理の母も八十七歳で、ねえねえ、知子さん、あのTPPというのは何かしらねと。全くわからないからですよ。でも、母の年代だったら、すごい食料危機も経験しているし、戦争のさなかも食べ物がなかったし、もしこれを母に、自給率がすごく低くなって、もしかして食料の問題困るかもよと言ったら、おばあちゃん、反対と言いますよね。それから、もっと日本ががばがば豊かになって、お金を稼いで、もっともうかりまっせの世界よと言ってもわかりませんね。母は今、そのことが大事か、もうちょっとこの国が、例えば子供がいじめられたり、親が子供を捨てちゃったりしない方がいいなと思っているかもしれないし。

 すなわち、菅総理には、国民に語る、私は、菅総理の言葉というのをこの間、実は、ややこしいTPPとか横文字は聞いたとしても、本音の言葉を聞いたことがないと思います。

 あわせて、もう一点問題があります。やはり、前のめりで、慎重に国益を見きわめる姿勢に欠けていると思います。

 菅総理に伺いますが、このたびオバマ大統領が中間選挙で敗北をなさいました。このことの与える影響は、私はこう分析します。オバマ大統領がいろいろな低所得者対策とか財政出動をするということがこれからなかなか難しいでしょう、ねじれですから。そして、先般、FRBがいわゆる金融緩和策、金融政策で四十九兆円余りを来年の六月までに市場に出すと。世界じゅう金余り。お金は行き場を求めて、石油に行くか、住宅に行くか、サブプライムローンですね、食料に行くか。極めて不安定な状況が懸念されます。

 アメリカとの関係は私は極めて慎重に見きわめなきゃいけないと思う一方、もう一つ、鳩山政権下に進めてきたいわゆる東アジア共同体で、日韓のFTAあるいは日中のFTAなど、こうしたものがどこで頓挫していて、どちらが、やはりあれこれはできないんですよ、はっきり言って、交渉というのは物すごいエネルギーをとりますから。

 菅総理は、日韓のFTAがどこで今とまっていて、そして東アジア共同体と言われていた自分たちの党の目標がどこに行き着いているのか、そしてなぜここでアメリカをも含む自由、関税取っ払い、全部に踏み込もうとするのか、総理の言葉でお答えください。

菅内閣総理大臣 阿部さんから、ある意味での生き方というのか、そういうことにまで、いわば原点にまで戻った御質問をいただきました。

 先ほど私の母親のことも言いましたが、この国会の近くを歩いていると必ず、イチョウの実が落ちていると持って帰ってたたいて夕食に出てくるわけですけれども、まさにそういう時代の生まれでありますので、何かもっと買えと言っても何も買わない、そういう世代であります。その世代がその世代として本当に頑張ってくれたおかげで、今日まで続いているとも考えます。

 また、先ほどのCOP10の件でも、私も出かけて一度あいさつをいたしまして、四十五億年前に生まれたこの地球が、四十億年前ぐらいに初めて生命体が生まれて、そして大変広がったわけでありますが、今、急激な勢いでそれが減少している。そのほとんどが、原因が人間にある。こういうことも考えますと、人間の活動の中で、それを大きく変えなきゃいけないのが、この多様性やあるいは環境問題だ、このように思っております。

 そういう中にあって、このTPPに今非常に象徴されることになりましたが、自由貿易というものをどう考えるべきかということを、私もAPECを前にして改めて考えてみました。経済学者的な言い方をかりますと、やはり貿易の自由化というのは、一般的には、マクロ経済的にはお互いにプラスになるというのでありますけれども、しかし実際には、もちろん強い国、弱い国、いろいろな国によっては、ある国の産業が完全につぶされてしまうというようなこともありますから、それが経済学者がマクロ的には最適値だと言ったからといって、それでいいとは思っておりません。

 ただ、この十年、二十年の日本社会のいろいろな意味での閉塞感、これはまさに阿部さん自身も、自殺の問題とかいろいろな問題で感じておられると思いますが、その原因の大きな一つの中に、やはり経済の低迷というものがあることは否めないと私は思っております。それをいろいろな形で脱皮しようとして、ある時期、小泉さんは竹中さんと一緒に、もっともっと企業の競争力をつければいいんだといって、例えば労働の自由化をどんどんやったわけですけれども、そのことがある意味で社会の格差を余計招いて、経済も発展しなかったということもあります。

 そういういろいろな要素を見てまいりまして、私は、今日の段階で、やはりアジア太平洋地域においての経済の連携を、日本が立ちおくれておりますので、それを基本的には開いていく、あるいはEUを含めて欧米との関係も開いていくことは、注意をしなければなりませんけれども、基本的な方向としては、日本社会をより安定的な社会にする上で必要なことだ、このように考えました。

 そういった意味で、アメリカとの関係等、あるいはこれは貿易だけではなくていろいろなルールづくりにも反映しますから、そこは確かに注意をしなければなりませんが、場合によっては、これを機に、そういうものを超えることによって、新しい日本の、より人間らしい生き方を生み出すようなルールづくりをアジア太平洋地域の中でもやる、思い切って踏み出すチャンスではないかとも一方では思っております。

阿部委員 私は、そうであれば、せめて韓国くらいの賢さがないと、今総理がおっしゃったことは実現不可能だと思いますね。

 韓国は、このたびTPPには自分たちは、もうさっき何人もおっしゃいましたから、ほかのEPA、他国とのEPA、EUとのEPAなどをやりながら、これは様子見をすると。やはり自分たちの守らねばならないものと、どこからどのように開くかの順番があるからなんだと思いますね。

 今ここで論議されているのは、非関税障壁。例えば、郵政問題もBSEもそうでしたが、輸入牛肉はどうなるんでしょう。郵政民営化、金融マネーが全部グローバル化して本当によかったかどうかを見直さなきゃいけないとさっき総理はおっしゃったわけですが、その非関税障壁も全部取っ払う。今は保護している。でも、総理、開く開くと言うけれども、農業の問題だって、高関税な品目というのは全体の一割くらいしかないですよ。そんなに開く開くと言うほど開かれていないわけじゃないですよ。あとは、順番と賢い影響評価だと思うんです。

 総理に伺いたいと思いますけれども、例えばアメリカでは、もう一九七〇年代から、こういう自由貿易をした場合に、農業だけでなく国内産業全体に、例えば生産工場が海外に行くとか、職種転換をしなきゃいけないということで、自由貿易支援プログラムというのをやっているんですよ。それは、雇用構造が変わるからですよ。貿易調整支援法という法律が一九七四年にできているくらいなんです。そういう手だて、手当てをしなければ次のステップに進んではいけないと、絶えず議会と大統領がせめぎ合ってきた歴史があるんですね。

 今回、国内の状況も把握していない。せいぜいみんな言うのは、農業と、労働だったら看護師さんの問題。でも、あれだけ自由貿易、自由貿易というアメリカだって、賢く構えて賢く点検していますよ。

 きょう時間がないので恐縮なので、これは宿題に投げますから、総理、私の言うアメリカの貿易調整支援法、しっかりと次回まで勉強していただきまして、また重ねて御答弁をいただきたいと思います。勝手に仕切って済みません。

 私は、きょうは医師の問題を取り上げたいので、残された時間、これをやらせていただこうと思います。

 前政権の終わりごろから医師不足ということが盛んに言われて、では、医学部定員をふやしましょうということになりまして、今皆さんにごらんいただくように、八千人を上回る定員にはなってきました。

 そもそも、一九七二年ごろも医師不足と言われまして、このときは一県一医科大学とか、一つの県に一つの医学部をつくってでも医者を養成しようという時代があって、一九八〇年代になったら、今度は医療費亡国論とか言われて、医者をつくると国は傾く、さあ、つくるなと。さんざっぱら二十何年やってきて、足りない、もう現場がもたないとなって、やっと増加にかじを切られた。

 これだけ見るといいかなと思いますけれども、そうじゃないんですね。

 ここにお示ししますのは、実は、地域医療を担うお医者さんが足りないから、地域医療枠というのでお医者さんをたくさん養成しましょうという計画にのっとって、地域医療枠がふやされてきた経緯であります。

 平成二十二年現在で千百七十一人。地域医療枠とは何かというと、大学に入学したときに、その地域から、お住まいの方からとる場合もあるし、卒業後その地域にお勤めいただくからということでお金を支援する、奨学金を出すというケースもありますが、現在千百七十一人、平成二十二年度、何と医学部の定員の八人に一人はこの地域医療枠というのでお入りなのであります。

 でも、高木文部科学大臣に伺いますが、この方たちを教育するのにどんなスタッフが補てんされたか、地域医療講座などはつくられたか、そこに専任の教官は置かれたかなどについて御答弁をお願いいたします。

高木国務大臣 阿部委員にお答えをいたします。

 まず冒頭、御指摘の地域医療に携わられておられる医師の皆さん方、関係者の皆さん方、日夜の御勤務にこの場をかりまして敬意を表したいと思っております。

 医師不足が本当に深刻化する中で、地域医療を担う医師の養成というのは極めて重要な政策課題だと認識をいたしております。

 御指摘のあった地域医療のいわゆる教育スタッフの充実については、地域枠による学生の確保とともに重要な政策課題であります。

 現在、大学における地域医療に携わる教員は千七十四人であります。今年度、国立大学では、入学定員の増員に伴い、運営交付金の中で、教員百十二人分及び非常勤講師六十三人分の予算を措置するなど、教育体制の充実を図ったところでございます。

 文部科学省といたしましては、地域医療に関する教育が充実するよう、引き続き、教育スタッフ、そしてまた教育設備、こういったものの充実に努めてまいりたい、このように思っております。

阿部委員 今の大臣の御答弁だと、何か地域医療を担う教官を百名余りふやしていただいたように聞こえますけれども、そうではありません。大学の教官全体でそれだけがふえただけであります。解剖にだって教師が必要です。全部に必要なんです、人のキャパをふやせば。本当に地域医療を地域医療講座としてきちんと備えているのは、七十九大学中十九、それも授業だけあるようなところもあります。専任の数はと聞いても、文科省はお調べになることができないくらいであります。

 今度の補正予算の中で、いわゆる地域医療に貢献していただくために、そうした地域医療講座を寄附講座としてつくることができるような取り組みが地域医療再生交付金というのででき上がりました。ところが、これは五年間の期限つきなんです。では、五年たったらその後はどうなるの。人を雇ったとします、そういう教員を、優秀な人材を、でも、五年たったらその後はどうなるかわからない、そういう段階であります。

 これは、ぜひ高木大臣にあっては、現状をもっと詳しくお調べいただいて、寄附講座は私は賛成します、だけれども、ずっとそれで、後がどうなるのというところが大変疑問でありますので、また次回、御質疑をしたいと思います。

 総務大臣に伺います。

 そうした一方で、一九七二年には自治医科大学というものができました。これは、先ほど言った、過疎とか、地域で本当に地域医療を担う人材を大学を挙げて育成しよう、大学丸ごと地域医療を担うという構想でありました。

 私は、今の政治よりもうんと大胆だったと思うし、実際には各自治体がお金を出してやっていただいたことですが、大臣も知事であられたことですし、この自治医科大学の役割、やはり、私は、人をふやすだけじゃない、質が大事だ、中身が大事だと思いますので、大臣がどうごらんになっているか、お願いいたします。

片山国務大臣 自治医科大学は今おっしゃったような経緯でできまして、今各道府県の地域医療に卒業生が活躍をしていただいております。

 私の経験で申しますと、鳥取県も非常に医師不足でありまして、この自治医科大学の卒業生に頼るところが多い。特徴としましては、特に僻地の医師不足のところで診療をしますので、まさに総合医といいますか、専門特化をしない医療というのを心がけておりまして、非常に優秀であります。県の方で試験をして自治医科大学に教育をお願いする、そういう形式をとっておりまして、もともとが優秀な上に、自治医科大学自体が非常に優秀な教育研修機能を持っておりますので、私など知事をやっておりましたときに、僻地医療の年限を終了した医師が県立病院の中核医としても活躍してもらう、そういう実態であります。

 中には、きょうの阿部議員の資料にも出ておりますけれども、私の記憶違いでなければ、ここに出ている梶井教授などは、実は鳥取県の医師だったんですけれども、引っこ抜かれて自治医科大学の中核的な教授になっております。

 いずれにしても、非常に重要で、これからも地域の医療を担う医師を輩出する拠点だと思います。

 それからもう一つ、余計なことかもしれませんが、地域枠というのは最近随分ふえておりまして、鳥取県も鳥取大学と協定を結びまして地域枠を一学年十数人確保しております。これはどうなるかわかりませんけれども、これも実は大変貴重な、草の根的にできた仕組みでありますけれども、ぜひ国の方でも、この地域枠というものを、おっしゃったような地域講座というようなものも含めて、総合医の研修体制も整えていただければ、県の方は金を出すだけなんですけれども、県の方との協力がうまくいくのではないかと考えております。

阿部委員 現場の御経験があるので、大変にいい御答弁をいただきました。

 最後に、菅総理にお願いいたします。

 今、片山総務大臣もおっしゃいましたが、この自治医科大学の設立の理念は、総合医をつくろうと。

 今、お医者さんに行っても、見ざる言わざる聞かざる、患者さんは見ない、何にも言ってくれない、言っていることも聞かないというようなお医者さんばかりふえたり、あるいは、あなたは肝臓じゃない、腎臓じゃない、心臓じゃない、では私はどうすればいいのと、患者さんはみんな戸惑っています。

 そこで、人間トータルに診る医師を育成する総合医というのを、機能をこういうふうに書いてございますが、こういうものの育成にやはり国は誠心誠意取り組むべきであると思いますが、菅総理、最後に一言お願いします。

菅内閣総理大臣 私は、家内の実家が医者のうちで、それを見ていますと、田舎の開業医は、結果的といいましょうか、総合医でありまして、今、私の義理の兄が病院の勤めから帰って一時期開業しておりましたが、そういう専門医的な中にいた人も、また地域に戻ると総合医的な機能を果たしておられる例も多いのではないかと思います。

 どういう形で総合医を育てるのかという、この点は阿部さんは専門的な経験をお持ちですので、特にどういう形があるのか、またいろいろ御示唆をいただければ、私も、まずは地域の中に総合医的な、つまり家庭医的な人がいて、そして、これはちょっとどうしても病院に送らなきゃいけないというときの判断がしっかりできるという、一次医療というんでしょうか、そこが非常に重要だということは私自身も思っておりますので、何かの形で努力することがあればまた御示唆いただきたいと思います。

阿部委員 この質問については、長崎大学の地域医療学講座の前田先生と島根大学の皆さんに御協力をいただきました。ありがとうございました。

 終わります。

中井委員長 これにて阿部君の質疑は終了いたしました。

 少し阿部さんに時間の御協力をいただきましたので、この際、細川厚労大臣から発言を求められておりますので、これを許します。細川厚労大臣。

細川国務大臣 この予算委員会の中で、子ども手当についての統一見解を委員会で出すように、委員長の方からこういう御指示がございました。

 そこで、二〇一〇年参議院マニフェストにおきます子ども手当に関する記述についての統一見解を私の方から申し上げます。

  「子ども手当」は本来現金給付を指すものである。

  一方、参院選マニフェストにおける「子ども手当に関する記述」は、子育てを社会全体で支援していこうという幅広い意味で記載しており、現金給付だけでなく、現物サービスを充実することも含むものである。

  これは、今後、子ども・子育て新システムを実現する中で、地方の裁量で現金給付と現物サービスの組み合わせを決められるようにすることを検討していることを踏まえたものである。

  なお、実際の制度を検討していく中で、子ども手当は現金給付のみを指すと整理されることも十分考えられるが、まずは、二十三年度、二十四年度においても、現物サービスの充実を含めて取扱いを検討したい。

以上でございます。

 ありがとうございました。

中井委員長 この統一見解につきましては、前回、自民党の田村議員からの質問に対して、私から次の委員会に提出を求めたものでありますが、なかなか難しく、きょうになりましたことをおわび申し上げ、私自身も一日おくれましたことを遺憾に思っているところでございます。

 質疑に入ります。

 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 まず、官房長官にお伺いをいたしたいと思います。

 仙谷官房長官は、今月一日の衆議院予算委員会、我が党の浅尾政調会長の質問にお答えになられております。民主党代表選挙の最中に、菅総理が人勧を上回る給与の引き下げを公約していたにもかかわらず、仙谷長官は連合の古賀会長と話して、そんなことはいたしませんと言っていたでしょう、こういう質問です。

 これに対して仙谷官房長官は、九月六日に会ったけれども何を言ったか覚えていない云々、こういうことを言って、その直後に、古賀会長と会ったのは九月二十七日で、代表選後である、こういうふうに事実上発言を訂正されておられます。要するに、民主党代表選挙の最中には、人勧の深掘りはやりませんよと連合の古賀会長に伝えたという事実はない、こういう趣旨の答弁だったというふうに思います。

 ところが、このパネルをちょっと見ていただきたいんですけれども、朝日新聞、九月十一日、「民主代表選を聞く」ということで、連合の古賀会長のインタビューが載っております。これを見ると、古賀会長は、赤線がついている部分ですけれども、「首相発言については、仙谷由人官房長官に「踏み込みすぎではないか」と伝えた。仙谷氏は「誤解を与えたかもしれないが、政府の立場は変わっていない」との見解だった。」こういうふうにインタビューに答えているんですよね。

 これは、まさに、民主党代表選挙の最中に、古賀会長に対して人勧の深掘りに関してはやりませんよと言っていることじゃないですか。どういうことなんですか。

仙谷国務大臣 私も今これを初めて読みましたが、これは、私と古賀さんが会ってこういう話をしたという記事になっていませんよね。例えば、電話でこういう話をしたかもわかりませんし、古賀さんが私が言ったことをそのままインタビューに書いたかどうか、古賀さんがインタビューで述べたことが活字にそのままなっているかどうか、私は保証できません。

 ただ、私の立場は、以前から申し上げているとおり、人事院勧告という代償措置を無視する、あるいはひっくり返すというふうな給与決定が、現行法制度上、そうそう簡単にできるとは思っていない、これはもう一貫して昨年から言っているとおりであります。

 したがって、この種の議論が行われるとすれば、そういう話題が出たとすれば、私が、政府の立場は変わっていないということを申し上げたということはあり得るということであります。

柿澤委員 電話だからいいとか、会っていないから事実に反する答弁でないとか、こういうことを言うというのは、これは言い逃れじゃないですか。菅総理が、人勧より引き下げる、こういう表で格好いいことを言っていながら、裏では仙谷長官が支持団体の連合のトップとお話をされて、結局、やりませんよというようなニュアンスのことを伝えて、裏では握っている。こういう不都合な事実を認めたくないから、その場しのぎのいいかげんな答弁を十一月一日に浅尾政調会長に対してしたんじゃないですか。

 仙谷官房長官の国会答弁は、既に数々問題になっているんですよ。新聞記事を確認する質問なんて聞いたことがない、質問者を罵倒しておきながら、その御自身が過去に新聞記事をベースに質問していたことがばれたり、政府参考人の古賀茂明さんに圧力をかけるような答弁をしたり、健忘症にかかったとか、質問者をいいかげんな人だと言ったり、その結果、先月二十五日の参議院予算委員会で、事実に反した答弁や不適切な表現をした答弁があったと仙谷官房長官は謝罪しているじゃないですか。十月二十五日に謝罪をして、事実に反する答弁があった。十一月一日、何日もたたない段階で事実に反する国会答弁を再びしていたとしたら、これはもう国会軽視どころではなく、官房長官の信を問うような事態になると思いますよ。

 この答弁については、ぜひ予算委員会理事会で、虚偽答弁であるかどうか、精査をしていただきたいと思います。委員長、よろしくお願いします。

中井委員長 この場で答弁をして、決着をしていただきますことをお願いします。

仙谷国務大臣 会ったかどうか、会って話したかどうかという質問でございましたので、私は会った記憶がないし、私は会っていないと。会ったとすれば、雇用戦略対話という公的な場で会っているということを申し上げただけです。

柿澤委員 これはぜひちゃんと精査してくださいよ、もともと今回が初めてじゃないんですから。こういう形で、まさにその場しのぎの答弁をされて、後々指摘をされて言い逃れをする。こういうことについて、もう一度ちゃんと精査をしてください。

中井委員長 申し上げますが、お気持ちはわかりますし、主張はわかりますが、予算委員会は、仙谷さんが何月何日にだれに会ったということを調査する委員会ではありません。

 この場で、会ったという日にち、あるいは明確な事実、そういったことを申し立てて質疑をされてください。

柿澤委員 残念な御対応だと思います。

 これによって、民主党代表選挙の最中に、菅総理が表で人勧深掘りと格好いいことを言いながら、裏では、仙谷さん、やりませんよと連合、公務員労働組合を安心させている。言っていることとやっていることが全然違う。言行不一致の実態が明らかになってしまったではありませんか。その事実は動かせないでしょう。

 当時、菅総理の人勧深掘り発言に官公労が反発をして、現に自治労の組織内参議院議員が次々に小沢さんの支持を決めているような情勢だったんですよ。だから、要するに、菅さんだって言っているだけでやりませんよと裏では言って、安心させようということじゃないですか。これでは二枚舌じゃないですか。こんな投票者を欺くような手法で菅さんが支持を得ていたとなると、菅総理が民主党代表に再選された正統性にも疑問符がついてしまうんじゃないですか。

 菅総理が人勧深掘りを公約していた民主党代表選挙の期間中に、一心同体のはずの官房長官が全く真逆のことを言っていたことについて、総理また官房長官の御見解をお願いいたします。

菅内閣総理大臣 私は若干、何か少し二つのことが混乱しているんじゃないかと思いますが、確かに、民主党代表選挙、私が総理大臣であり、仙谷さんが官房長官でありました。しかし、この選挙はあくまで民主党内の選挙でありまして、そういった意味では、総理と官房長官という立場はそのままでありますけれども、代表選そのもので、何かこう、総理と官房長官であるから云々ということではありません。極端に言えば、閣僚の中でもいろいろな立場の方がおられたわけでありますから、例えば内閣の不一致とか、そういった問題とはかかわりのない問題なので、そこは少し区別をして考えていただいた方がいいと思います。

 私が党の代表選挙でそういうことを申し上げたことは事実でありまして、そして、後ほど議論になるのかもしれませんが、一遍にはできませんでしたけれども、来年の通常国会に向けて、そうした公務員の給与について、交渉によって引き下げることが可能になるような、そういう法律を順次出していこう、そういう方向性は既に表明をいたしているところであります。

柿澤委員 菅総理、民主党代表選挙は今回は総理を選ぶ選挙です、こういうふうに戦ったのは菅総理その人じゃないですか。その一方で、閣僚にはいろいろな意見があると言って、仙谷さんには裏で連合の会長にやりませんという事実上の発言をさせておいて、結局やれないんじゃないですか。これはどういうことなんですか、本当に。こういう形の対応をされる、言っていることとやっていることが全く違う、非常に残念だというふうに思います。

 さて、尖閣衝突ビデオの問題ですけれども、これは二重の意味で国家の威信を傷つけたと思います。もともと、ビデオを最初から見せればよかったんですよ。それをしないで、中国の漁船の非は明々白々だと言われたビデオを見せずに隠す。そこまで中国に気を使わなければならないのかと世界じゅうに思わせた。

 ビデオの国会提出後も、仙谷長官の方から、極めて慎重な配慮を求める要請書、これも行政府と立法府の関係からいうとどうかと思いますが、こういうものまで出している。そうまでしても公開しない姿勢だったんですよ。それが結局漏れちゃった。自分の権限の及ばないところまでなるべく見せるなと抑えておきながら、自分のところから流出してしまった。情報管理もできないのかという話に今なっているわけじゃないですか。

 それで、中国から照会を受けて、今度はしかるべき説明を申し上げると仙谷さんはおっしゃいましたね。これはもう国家的赤っ恥ですよ。この件について、中国に一体これは何をどう説明するおつもりなんですか。仙谷長官、お答えください。

仙谷国務大臣 どういう文脈の中で私がそういうことを申し上げましたか。(柿澤委員「記者会見です」と呼ぶ)どの段階ですか。(柿澤委員「数日前です」と呼ぶ)ビデオに関してですか。(柿澤委員「流出ビデオの関係で、中国から照会を受けて」と呼ぶ)流出ビデオの関係でそんなこと言っていますか。(柿澤委員「言っています」と呼ぶ)いつの記者会見ですか。

中井委員長 ちょっと、柿澤さん、具体的な日にち、時間がわかるなら言ってやってくれませんか、記者会見の。

柿澤委員 報道されている中で、官房長官が記者会見で、事実解明が行われた段階で中国に対してしかるべく説明を申し上げたい、こういうふうにおっしゃっているというふうに複数社が報道しております。

仙谷国務大臣 最近でございますれば、記者会見の模様は全部テープで一般公開しておりますので、改めて確認をさせていただきます。

柿澤委員 いずれにしても、ビデオの公開をしない、そして公開をしないという対応をしておきながら結局は漏れてしまう、この二重のまさに国家的な威信の失墜、本当に悲しい限りです。

 今度は犯人捜しですか。これは恥の上塗り、三重の意味で国家の威信失墜になりますよ。海保の現場に責任を押しつけて、では、これで犯人らしき人が検挙されたらどうなりますか。その人は英雄になってしまいますよ。犯人捜しで政権の責任、事件そのものの徹底検証をおろそかにして、隠していたビデオまで足元から漏れてしまった責任、菅総理、仙谷官房長官の責任から目をそらそうというものなんじゃないですか、これは。

 そもそも、官邸にビデオがないというのが私は信じられません。官邸には危機管理センターが地下にあって、例えば海保巡視船の出動時にはリアルタイムで映像等の情報が送られてくるという話があるんです。官邸から漏れた可能性だってあるんじゃないですか。調べているんですか。福山官房副長官が、ないものはないと答弁していますけれども、これは本当にない、官邸から漏れた可能性はないというふうにここで明言しますね。

仙谷国務大臣 官邸にはビデオは存在しませんし、今、危機管理センターにその種のものが流れてくるとおっしゃったのは、そういう仕組みにはなっていないということであります。

 それから、先ほどおっしゃったことにお答えいたしますけれども、まずは、訴訟関係書類でこのビデオがあるとするならば、通常、警察やあるいは検察庁やそれに準ずる海上保安庁で、この種の書類、証拠、情報、こういうものが流れ出ていくということは私どもの常識からすると考えられない。そして、それが流出したことについては、政府全体としても、その内閣官房を預かる者としても遺憾に思いますし、責任もしかるべく考えます。

 しかし、今柿澤さんがおっしゃったように、もし逮捕されたらその人が英雄になる、そんな風潮があっては絶対にこの国はいけないわけであります。訴訟関係書類がもし故意に流されて、そのことを褒めそやし、あるいはそのことをいいかのごとくおっしゃるというのは、私は不本意であります。

柿澤委員 質問に答えていませんよ。質問に答えていませんよ。官邸から漏れた可能性はないとここで明言してください。

中井委員長 いや、柿澤さん、官邸にはビデオがないと答えているんです。

仙谷国務大臣 ありませんし、あり得ない。

柿澤委員 御答弁をいただきました。

 昨日、尖閣衝突ビデオを私も見せていただきました。六分五十秒のもので、四十四分のものでは当然ありません。これを見て、どうしてこのビデオを非公開としたか、全然わからないんですよ。中国漁船に非があることがはっきりわかるもので、本当に、これをどうして非公開にするのか。

 仙谷長官はこれをいろいろな配慮から公開はよくないと言ってきたけれども、国会提出され、携帯電話を取り上げられて限定公開されたこのビデオ、どこにどういうふうに公開できない内容が含まれているのか、どういう理由で公開できないのか、仙谷長官、はっきり答えていただきたいと思うんです。お願いします。

仙谷国務大臣 きのうからずっと申し上げておりますように、訴訟記録は原則として非公開なのであります。捜査というものは密行的に行われなければならないのであります。密行性があるのであります。その捜査の過程で、捜査が、公判段階に移った場合はともかく、事件にならない場合でも、捜査記録というのは公開してはならないことになっているのであります。

 だから、それを解除するために、国会の場合は特に、国会法百四条で国会が国政調査権を行使するという決定をすれば、公益上の理由が出てくるのであります。だから、皆さん方が、国会が百四条に基づいて決議をされたから、これは公益上の必要性がある。あと、相当性、相当の範囲はどの程度だろうかということを考えて国会に提出したのであります。今度は、それをどのように調べるかは、当然のことながら、その提出を受けた予算委員会なら予算委員会で協議のもとに、どういう調べ方をするかをお決めいただく。お決めいただくについて、私どもの要望としてはこういうことだという要望をつけた。

 私どもは、昔と違って、皆さん方は一般公開とか全面公開とかおっしゃるけれども、昔は、書類を公開するという時代であったらある程度のイメージはつかめます。だけれども、このような、この種のビデオあるいはDVD、それからCDですか、こういうものの公開というものが、電波に乗せることを前提として、あるいはユーチューブとかそういうことに載ることを前提として公開をするしないというのは、非常に私は難しい問題をはらんでいると考えております。

柿澤委員 るるお話をいただきましたけれども、きょうの読売新聞の夕刊で「尖閣ビデオ「厳秘」資料パチリ」、こういう記事が出ていて、仙谷長官から菅総理に対して一枚のメモが手渡されていると。これは、尖閣衝突ビデオ映像を一般公開した場合のメリット、デメリットを比較検討した資料だと。こういうものが読売新聞の記事に写真つきで掲載をされてしまっているんですよ。一般公開のデメリットについて、映像流出の犯人の量刑が下がるおそれがあるなどとしていると。

 こういうことで、映像を一般公開した場合に、どういうメリットがあって、どういうデメリットがあって、こういうことを比較検討している。もう公開をするかしないか、前提に立って、いろいろ厳秘の資料で考えておられるんじゃないですか。もう公開したらいいんじゃないんですか、ここまで来るんだったら、仙谷長官。

仙谷国務大臣 あらゆる場合を頭の中に入れて私的なメモをつくっているわけですが、あの辺からどうも望遠レンズ、拡大レンズで撮影をされたということのようでございます。

 そういう事態でありますから、これは私の私的メモとして私が私のスタッフに命じてつくらせて、私が私的にポケットに入れて持っているものでございます。

柿澤委員 撮影だか何だか知りませんけれども、もうここまで来ているんですから、そして、こういう形で、まさに四十四分のビデオの存在を国民も目で見て明らかになっているわけですから、それが海保から流出したものだと政府もお認めになられているんですから、公開されたらいいじゃないですか。何で公開できないんですか。

 要するに、中国に対してこのビデオは見せませんと約束しちゃっているんじゃないですか。だからこそ、見せるという形をとれない。そして結局、見せることによってAPECで首脳会談が行われないことを恐れている。こういう形で二重三重の失態を重ねて、結果として、中国の胡錦濤さんが菅総理に会ってくれるかくれないかが相手の外交カードになってしまっているじゃないですか。

 こういう状況を生み出したことについて、菅総理はどういうふうに考えておられるんですか。

菅内閣総理大臣 まず、私は他の委員の方にもお答えしましたけれども、この問題で、私自身も、少しこの捜査という問題と、いわゆるその捜査にかかわる資料になったものについて、どういうふうに私のようなというか、総理としての立場、あるいは大臣としてのそれぞれの立場が関与していいのかというのは、やはり一定のルールがあるのだということを私もそのときから感じておりました。

 つまり、先ほど仙谷官房長官も言われたように、実際に逮捕されて、そしてそれから検察に送られる中で、その資料が捜査資料となった段階で、一般的に捜査資料というものについては公表できない、そういうルールの中に入ってしまいますので、それを解除するために一定の手続をとったのが、その後の国会からの要請に対して検察が公的な公益性を認めて、国会に提出ということをされたわけです。

 現時点では、確かにそれが流出をしたわけでありますけれども、流出をしたから即それで公開をすべきとか、公開して構わないということになるのか。あくまで捜査資料であることは、そのことの状況は変わっていないわけでありますから、捜査資料であったものを、一定の手続のもとに、国会でまさに公開といいますか、限定された皆さんの前でお示しをしたわけですけれども、今回、こういう形になった段階で、もうユーチューブに載ったんだから、同じように手続抜きで公開していいというふうには一足飛びにはいかないものだ、私はこのように考えております。

柿澤委員 時間もなくなってきましたので、劉暁波さんのノーベル平和賞授賞式に、各国大使に中国から、出席しないでくれ、こういう書状が届いたという件についてお伺いをします。

 ノーベル平和賞を劉暁波さんが受賞された際には、菅総理は非常に及び腰のコメントを残されておられます、普遍的価値である人権についてノーベル賞委員会が評価したと受けとめると。受けとめる、そういう表現ですね。後々国会で散々答弁を求められて、釈放されることが望ましいということを繰り返しておられますけれども、これはあくまで願望であって、日本政府として釈放を求めるということを今もっておっしゃられていないわけです。アメリカやフランスまた台湾までも釈放を求める政府首脳のコメントを出している中で、その中で日本の対応は、日本は人権に鈍感な国だ、こういう印象を与えてしまうのではないかと思います。

 私たちみんなの党は、この劉暁波さんの釈放とノーベル平和賞授賞式出席を中国に求める国会決議を提案したいというふうに考えております。

 再度お伺いをいたしますが、劉暁波さん、そして奥さんの劉霞さんの釈放、解放とノーベル平和賞への出席を中国に対して求めるつもりがあるかどうか。

 もう一つ、あわせてお伺いをしますが、十二月十日にオスロで行われる劉暁波さんのノーベル平和賞授賞式に出席しないように求める公式書簡を中国大使館が日本や欧米の各国の大使に送りつけている、こういうことが報道されておりますが、書簡が送られているということは事実であるかどうか。そして、こうした書簡が送られている中で、ノルウェー日本大使は十二月十日の平和賞授賞式に出席をするのかどうか。このことをお伺いしたいと思います。

前原国務大臣 東京とノルウェーの外交ルートを通じまして、ノーベル平和賞の授賞式に日本政府関係者の出席を控えるよう求める旨の申し入れがあったことは事実でございます。

 今後、在ノルウェー日本大使の出席いかんについては適切に判断をしたいと思います。

菅内閣総理大臣 今、外務大臣のもとで検討をいただいているようでありますので、まずはそちらで検討いただきたい。私は、やはり平和賞というのは大変、ある意味で普遍的な価値を大事にした賞でありますので、そういう意味も含めて検討いただきたいと思っております。

 また、釈放云々については、まさに先ほど柿澤さんが紹介をいただきましたように、まさに拘束を解かれて釈放されることが望ましい、そのように今も考えております。

柿澤委員 そこには日本政府の意思が何もないじゃないですか。

 そして、ノーベル平和賞の授賞式に日本政府関係者が出ないでくれと中国から申し入れを受けて、それで、前原大臣、私は前原大臣に期待していましたが、御答弁に立たれて、適切に判断します、菅総理も、検討しますですか。これのどこが毅然としているんですか。こういうことを積み重ねていって、気がついたら、中国の胡錦濤さんに会ってもらえるか、もらえないかということが外交カードになってしまうような、こうした状況を生み出しているのではないかと思えてなりません。

 前原大臣、御答弁がありましたらどうぞ。

中井委員長 時間ですから、どうぞ、終わってください。

柿澤委員 はい。では、委員長の御指名でありますので……。では前原大臣、どうぞ。

中井委員長 では、もう答弁の後はなしね。

前原国務大臣 柿澤委員、一般論ですけれども、APECに参加をするかどうかというのは各国の意思なんですよ。APECで自由貿易とかあるいは域内の成長というものを議論するかどうかということはその国々が決めることであって、参加をしてもらう、もらわないということについて、我々はホストですからホストの役割はしますよ、だけれども、それの参加を決めるかどうかというのは、それぞれの国が国益に照らし合わせて考えるべきことであって、我々が判断することじゃないんです。

中井委員長 これにて柿澤君の質疑は終了いたしました。

 これをもちまして各会派一巡の基本的質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

中井委員長 この際、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。この際、その補欠選任を行いたいと存じますが、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中井委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に富田茂之君を指名いたします。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四分散会


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