衆議院

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第8号 平成22年11月10日(水曜日)

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平成二十二年十一月十日(水曜日)

    午前十時三十二分開議

 出席委員

   委員長 中井  洽君

   理事 岡島 一正君 理事 川内 博史君

   理事 城井  崇君 理事 小林 興起君

   理事 武正 公一君 理事 中川 正春君

   理事 塩崎 恭久君 理事 武部  勤君

   理事 富田 茂之君

      阿知波吉信君    石田 三示君

      石田 芳弘君    糸川 正晃君

      打越あかし君    金森  正君

      金子 健一君    川島智太郎君

      櫛渕 万里君    黒田  雄君

      小林 正枝君    小室 寿明君

      小山 展弘君    柴橋 正直君

      瑞慶覧長敏君    高野  守君

      高橋 昭一君    高松 和夫君

      高邑  勉君    竹田 光明君

      橘  秀徳君    玉城デニー君

      津島 恭一君    豊田潤多郎君

      中島 政希君    長島 一由君

      橋本 博明君    早川久美子君

      福田 昭夫君    松岡 広隆君

      水野 智彦君    宮崎 岳志君

      森本 哲生君    山岡 達丸君

      山口 和之君    山口  壯君

      山田 良司君    湯原 俊二君

      渡部 恒三君    あべ 俊子君

      岩屋  毅君    小里 泰弘君

      金子 一義君    金田 勝年君

      小泉進次郎君    佐田玄一郎君

      齋藤  健君    菅原 一秀君

      橘 慶一郎君    徳田  毅君

      中谷  元君    長島 忠美君

      野田  毅君    馳   浩君

      山本 幸三君    遠山 清彦君

      笠井  亮君    穀田 恵二君

      阿部 知子君    山内 康一君

    …………………………………

   内閣総理大臣       菅  直人君

   総務大臣

   国務大臣

   (地域主権推進担当)   片山 善博君

   法務大臣         柳田  稔君

   財務大臣         野田 佳彦君

   文部科学大臣       高木 義明君

   厚生労働大臣       細川 律夫君

   農林水産大臣       鹿野 道彦君

   国土交通大臣       馬淵 澄夫君

   防衛大臣         北澤 俊美君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     仙谷 由人君

   国務大臣

   (少子化対策担当)    岡崎トミ子君

   国務大臣         自見庄三郎君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   海江田万里君

   国務大臣

   (国家戦略担当)     玄葉光一郎君

   国務大臣

   (行政刷新担当)     蓮   舫君

   内閣官房副長官      古川 元久君

   内閣府副大臣       平野 達男君

   総務副大臣        鈴木 克昌君

   法務副大臣        小川 敏夫君

   外務副大臣        伴野  豊君

   外務副大臣        松本 剛明君

   財務副大臣        五十嵐文彦君

   経済産業副大臣      松下 忠洋君

   財務大臣政務官      吉田  泉君

   財務大臣政務官      尾立 源幸君

   農林水産大臣政務官    田名部匡代君

   防衛大臣政務官      松本 大輔君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    西村 泰彦君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    西川 克行君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    鈴木 久泰君

   予算委員会専門員     春日  昇君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十日

 辞任         補欠選任

  糸川 正晃君     高松 和夫君

  打越あかし君     瑞慶覧長敏君

  小山 展弘君     小林 正枝君

  高邑  勉君     山岡 達丸君

  津島 恭一君     宮崎 岳志君

  早川久美子君     松岡 広隆君

  水野 智彦君     石田 三示君

  山口  壯君     櫛渕 万里君

  渡部 恒三君     山口 和之君

  小里 泰弘君     長島 忠美君

  齋藤  健君     橘 慶一郎君

  馳   浩君     岩屋  毅君

  笠井  亮君     穀田 恵二君

同日

 辞任         補欠選任

  石田 三示君     水野 智彦君

  櫛渕 万里君     柴橋 正直君

  小林 正枝君     小室 寿明君

  瑞慶覧長敏君     打越あかし君

  高松 和夫君     糸川 正晃君

  松岡 広隆君     早川久美子君

  宮崎 岳志君     津島 恭一君

  山岡 達丸君     橋本 博明君

  山口 和之君     渡部 恒三君

  岩屋  毅君     馳   浩君

  橘 慶一郎君     齋藤  健君

  長島 忠美君     中谷  元君

  穀田 恵二君     笠井  亮君

同日

 辞任         補欠選任

  小室 寿明君     中島 政希君

  柴橋 正直君     高橋 昭一君

  橋本 博明君     高邑  勉君

  中谷  元君     あべ 俊子君

同日

 辞任         補欠選任

  高橋 昭一君     山口  壯君

  中島 政希君     小山 展弘君

  あべ 俊子君     徳田  毅君

同日

 辞任         補欠選任

  徳田  毅君     小里 泰弘君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成二十二年度一般会計補正予算(第1号)

 平成二十二年度特別会計補正予算(特第1号)

 平成二十二年度政府関係機関補正予算(機第1号)


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     ――――◇―――――

中井委員長 これより会議を開きます。

 平成二十二年度一般会計補正予算(第1号)、平成二十二年度特別会計補正予算(特第1号)、平成二十二年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題といたします。

 本日は、外交、安保、経済、情報管理及び危機管理等についての集中審議を行います。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として警察庁警備局長西村泰彦君、法務省刑事局長西川克行君、海上保安庁長官鈴木久泰君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

中井委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡島一正君。

岡島委員 民主党・無所属クラブ岡島一正であります。

 きょうは、当初一時間の予定で質問を組み立てましたが、若干時間が縮まりますので、要求させていただきました大臣の方に質問できないことがあるかもしれません。よろしくお願いいたします。

 今、ちょうどこの時期、二十年ちょっとぐらい前ですか、私、アフガニスタンによく行きました。ナジブラ政権がつぶれて、ムジャヒディンが台頭し、混乱がまた始まった時期です。そのアフガニスタン、この時期に行くと、本当に風が冷たくて、朝晩寒くなります。

 そのアフガニスタンに今ISAFが展開していて、NATOなどを中心に展開し、またアメリカ軍も展開しているというところに、我が国の方もどういう貢献があるかということで、新聞報道などによれば、そちらに自衛隊の派遣を、どういうあり方が可能かということが検討されていて、もちろん武装部隊を送るわけにいきませんけれども、医官だとかあるいは看護する看護官とかというものを派遣するというふうなことを御検討されているという話も聞きますが、防衛大臣、どういう状況でしょうか。

北澤国務大臣 お答えを申し上げます。

 御案内のように、アフガニスタンの現状は、現在、同国政府への権限移譲が喫緊の課題になっておるわけでありまして、アフガニスタンにおけるNATO訓練ミッションの教官不足が非常な課題になっておるというふうに承知をいたしております。

 そういう中で、我々としても、どんな支援ができるかということを政府全体として協議するというようなことになれば、準備をしておかなきゃいかぬ、こういうことでありまして、防衛省・自衛隊とすれば、いかような支援ができるかということを昨年来検討してきているのが現状であります。

岡島委員 政府は、九日に、そうした貢献として、今申し上げたんですが、自衛隊の医務官とかあるいは看護官など、あるいはそうした現地の組織への資材の提供などを含めて、そういった形での貢献ということを検討されているという報道もありましたが、それについては具体的にどんな状況でしょうか。

北澤国務大臣 ただいまお話しになりました医官についてというお話でありますが、医官ということに特定してはおりませんけれども、そういうことも含めてさまざまな検討をしておりますし、また、その根拠となるべき法制についても検討をさせていただいております。

岡島委員 私は、自民党の石破さんや中谷さんみたいに自衛隊のことは詳しくありません。ただ、本当の戦場にずっといました。アフガニスタンにいても戦場にいました。その経験からいって、今、医務官も含めてというお話がありましたが、戦場というのはどこにあるかわからない、私の感覚は、戦場というのは生活の場なんです。バトルフィールドという言葉があっても、そんな場所はありません。その国全体が戦場です。というのが僕の見てきた国際紛争です。

 そういった意味で、医務官を含めてとなった場合に、安全の確保などはどういうふうに担保されるのか、教えてください。

北澤国務大臣 現在のところ、すべてにわたって何ら決定しておるわけではありませんが、例えば医務官が行くとかそういうようになった場合、当然、身の安全というものは第一義的に考えなきゃならぬことでありまして、この場合は相当慎重にやらなければいかぬ。それから、アフリカにおける経験、そういうものも、我々とすれば大きな知見になるだろうというふうに考えています。

岡島委員 この場合、法的な整備はどういった根拠でいくのかという問題があるだろうと思っています。防衛省の設置法が規定する職業訓練というのもあります。しかし、その場合でも、これはODAの大綱を見直すところもあるでしょう。また一方で、特措法で法案をつくって出すという方法もあるでしょう。防衛大臣は、どういった法整備のもとにいかれるお考えなのか、ぜひ教えてください。

北澤国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、きちんとした決定は全くないわけでありまして、政府全体から御指示があったときに、防衛省として迅速にこれに対応できるようにという準備でありまして、当然考えられますことは、一つは、アフリカ等の経験も生かして、自衛隊設置法に基づく派遣も可能であるかどうかということについても、いささかの検討はさせていただいております。

岡島委員 防衛省設置法の職業訓練などでもし出すということになると、身の安全をみずから確保する武装ということはできないと思います。

 そういった中で、私は、あのアフガニスタンで、食事中、隣のレストランに手りゅう弾を投げられたこともあったし、泊まっているホテルにロケット砲が入ったこともあったし、機銃掃射も受けました。戦場というのはどこにあるか、それは生活の場所です。

 そういった意味で、ぜひ、自衛官の安全、そして日本ができることの限界、それを含めて御検討いただけるようにお願いをして、大臣への質問は終わります。

 今、時間が若干また縮まりましたので……

中井委員長 岡島さん、北澤さんほか、質問せぬ大臣は帰してあげてください。

岡島委員 もちろんです。

 馬淵さんはいいだろうと思われます。そのぐらいですね。

中井委員長 いいですか。

 馬淵さんは帰っていいよ。

岡島委員 法務大臣は……

中井委員長 法務大臣もいい。

岡島委員 いや、馬淵さんは大丈夫だと思います。時間があったらいてください。済みません。

 ということで、時間がまた縮まりましたので、自衛隊の医官の話はそれでまたよろしくお願いいたします。

 あした十一日、沖縄県で沖縄県知事選挙が行われます。この知事選挙には、大きく有力な候補が二人出ていますが、現知事と宜野湾の市長だった方。問題は、二人とも、米軍の普天間基地問題から、米軍の県外移設ということを主張している方です。そういった中で、民主党と若干、今我々の目指している方向と、政府と乖離がありますので、普天間基地は一体どうなるんだろうかと沖縄の人たちは心配しています。

 そういった意味で、この選挙戦に絡んだ普天間基地の見通し、これも防衛大臣、よかったらお答えください。

北澤国務大臣 御心配いただくとおり、両候補とも県外ということを公約にしておるわけでありまして、どちらが勝つかということは、これは私どもの口の挟むところではないんですが、私どもとすれば、総理もたびたび申し上げておりますように、五月の日米の合意に基づいて、新たに選ばれた知事としっかり協議をしながら、誠心誠意御説明を申し上げて、沖縄の負担軽減に努力をしてまいりたい、このように思っています。

岡島委員 私は、たまたま沖縄にも五年間勤務しました。米軍の担当をしていました。多くの海兵隊の取材も、基地も全部入っています。

 その中で、グアムに海兵隊の移転をするということが決まっているわけです。このグアムについては、海兵隊をグアムのアンダーソン基地にも送ったり、あるいはフィネガヤン地区には司令部などを置くという状況ですが、グアムの方も受け入れが大変だという話がありますが、今のグアムの受け入れ体制の進捗状況はいかがでしょうか。

北澤国務大臣 お答え申し上げます。

 六日の日に安住副大臣をグアムへ派遣させまして、実情を調査させてまいりました。

 現在のところは、既に御案内かと思いますが、平成二十一年度の予算で三百四十六億円が成立をして、七月二十八日に米国政府へ資金を移転いたしました。この点については、設計事業の一部について、米側において事業者選定が終了したということを承知いたしております。

 さらに、二十二年度予算に四百六十八億円を計上しておりまして、これにつきましては、九月の二十三日に米国政府へ資金を移転いたしております。さらには、家族住宅やインフラにかかわるものについては、現在、その詳細な調整を図るために、日米で事務方の協議を継続いたしておるところであります。

岡島委員 この移転については、日本政府は、合意に基づいて二〇一四年を目途にということで、しっかり守るという方向で努力されております。一方で、アメリカ当局は、軍も含めて、二〇一七年ぐらいになるだろうということに言及はしています。大臣も御存じのとおりと思います。実際、二〇一四年、普天間の人たちのことを考えて努力されているのはわかりますが、二〇一七年に言及したアメリカ、そういった中で見通しはいかがでしょうか。

北澤国務大臣 今お話しになったとおりでありまして、ただ、これは、環境影響評価の最終案の中に、二〇一七年、二〇二一年、こういうふうに記述されておりましたけれども、最終的なRODの段階では、あくまでも一四年を目標にということで、一七年、二一年というのは消えておりますので、私どもとすれば、ロードマップに基づいて、二〇一四年を目標にして協議をしていく、こういう立場は変わらないというふうに承知しています。

岡島委員 もちろん、そのとおりに進むのがいいと思いますが。

 先般、安住副大臣が訪問した際に、これもニュースに出ておりました。読売の記事だったかな。副大臣が、来月中には、これは記事のとおり読みますが、インフラに対する日本側融資の計画をまとめて、そして、来年度予算には融資を計上したいという趣旨の発言をされておりました。

 米軍のインフラ整備に対しての予算、思いやり予算というのはありますけれども、そうじゃなくて、融資ということではどういった財政的措置をお考えなのか、教えてください。

北澤国務大臣 融資については、七・四億ドルをインフラ整備に融資をする、こういうことでありますが、現在のところ、先ほども申し上げました、安住副大臣が現地を見てきた。特に、電力、上水というのはそこそこいいと思いますけれども、下水の状況が非常に悪いようでありまして、これに現在の融資の枠の中で本当にできるのかという懸念は日米ともに思っておるところでありまして、もう少しこれを詰めていかないとなかなか協議が成立しないのではないかというようなことで、現在、先ほど来申し上げておりますように、協議を進行させております。

岡島委員 融資ということは、日本側の財源を使うということになりますので、野田財務大臣にも。

 融資ということになれば、財務省として、こういったことへの融資はどういった方法があるのか。あるいは、融資ということは返してもらうわけですから、どういう回収の見込みを見ているのか。そういう案があれば、教えてください。

野田国務大臣 防衛大臣もお答えになりましたけれども、二〇〇六年五月の日米ロードマップ合意によって、電力とか上下水道等のインフラ整備に七・四億ドル、融資等分担することになっています。

 それは、まさに今アメリカ当局と協議中ということですので、防衛省でお考えをまとめていただければ、二十三年度の予算編成に当たり、要求が出てきたときに適切に対応していきたいと思いますが、当然、お金を貸すわけですから、回収しなければなりませんが、これは、例えば電力を使ったとか上下水道を使ったという、その使用料を踏まえて回収していくということになると思います。

岡島委員 使用料から回収するということができれば本当にいいと思います。日本国内の米軍基地も、使用料で回収できればよろしいが、適用されれば一番いいんでしょうけれども。わかりました。

 次に、菅総理に一言お聞きしますが、アメリカは日本にとっての最大の同盟国ですが、時に大きな利害の対立があります。また、中国は日本にとって古くからの隣人であります。隣の隣人ですが、尖閣の領土問題のように、大きく中国側からのそうした衝突が、政治的にも含めてあります。そういった中で、こういうアメリカ、中国、双方ともに同盟国であったり隣人であるという環境の中で、菅総理の、地政学的なことも含めて、日本の安全保障のありようをどうお考えか、ビジョンをどうお持ちか、教えてください。

菅内閣総理大臣 おっしゃるように、中国と日本の関係、これは二千年あるいは三千年、四千年という長い歴史があり、まさに最も大きな隣国だ、このように考えております。同時に、現在の日本にとって考えますと、アメリカが我が国の、特に日米同盟が我が国の外交の基軸と認識しておりまして、この日米同盟を基軸として、同時に中国とも友好関係を維持発展させていく、戦略的互恵関係という言い方を日中の間ではいたしておりますけれども、そういう姿勢で臨んでいく、これが基本的な姿勢だと考えております。

岡島委員 そうした菅政権のもとで起きた尖閣の問題がありました。

 私は、ビデオを見る機会に恵まれましたので、見ましたが、この件でちょっと不思議に思ったこと、あるいは多くの人も、ユーチューブで見たものが同じかどうかはちょっと別にしても、同じような疑問があります。それは、あれは領海侵犯というんですかね、日本の領海内に入った、これだけでも罪だと思うんですね。ところが、今回は、公務執行妨害ということでの検挙となっているわけですね。

 ですから、ちょっと調べてみますと、時に、民主党政権が領海侵犯にちゃんと対応できなかったようなことを言われる方もいらっしゃいますが、過去十年ぐらいさかのぼってみますと、自民党政権時代からも、あの海域に、尖閣を含めて、八重山も含めてなんですが、領海侵犯という事態、事実は何度もありますが、一度もそれが領海侵犯として検挙された事実は、私が知る限り、十年ぐらいありません。これはどういうことなのか。

 私が知る限り、過去十年ぐらい続いているこの事態はどういうことなのかを一応総理にお伺いしたいと思います。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、当該海域において、過去に違法操業というようなことで逮捕した事案はございません。

 今回についても、違法操業の方ではなく公務執行妨害で逮捕したわけでありますが、これは、漁船が今回も三十隻ほど、多数操業しておりまして、それを捕まえるよりは、まず、退去命令をして領海から退去させるということをやっておりました。それを何隻かの巡視船で手分けしてやっておったわけでありますが、そのうち、今回の中国漁船が突然衝突してきた。これは公務執行妨害として見逃せないということで、逮捕に至ったということでございます。

岡島委員 私、実は、尖閣諸島、沖合まで行ったことがあります。NHK時代、石垣島から漁船で行きまして、途中、船を乗りかえるときに、相棒が、揺れた瞬間、船と船に頭を挟まれたりとか、大変危険な海域だということも知っています。

 尖閣に限らず、沖縄の与那国とか波照間とか、私がいた二十五年ぐらい前には、天候が荒れると、普通に、台湾漁船、僕が目撃したのは台湾漁船だけですが、日本の港というか入り江に入って台風が去るのを待つということを、特に手続なくやっていました。海上保安庁もそれを取り締まったりしていませんでした。

 というのは、明らかに友好関係があって、明らかにそれが領海侵犯という意図じゃなくて、そして、沖縄の方もそして台湾の方も、恐らく中国船もいたとは思われますが、僕は見ていません。いずれにしても、そういったお互いの信頼関係がある中で、領海侵犯というものを捕らえないということはあるという事実を見ています。

 そういった意味においては、海上保安庁長官にもう一度お伺いしますが、そういった、退避しているのを見ているというようなこと、安心していられる状況が今も続いているんでしょうか。それとも、今回の事件のような、明らかな領海侵犯や公務執行妨害に近い行為がふえているという事実はあるんでしょうか。海上保安庁長官、お願いします。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 今回のような、巡視船に衝突させるというような公務執行妨害事案は初めてであります。

 それから、違法操業の問題につきましては、私ども、引き続き、今巡視船を現場に増強して警備、取り締まりをしておりますので、最近は、あそこの当該海域で、領海内で違法操業しているというような外国漁船は把握しておりません。

岡島委員 わかりました。

 いずれにしましても、基本的には、私が見ていた友好や信頼があったときの状況に一刻も早く戻せるように、政府として皆さんと、私たちもみんなで取り組んでいきたいと思います。

 次の質問に移りますが、海江田大臣にお伺いします。

 海江田大臣が大臣になられる前、ことしの三月だったと思いますが、私も大臣と一緒に人づくり、物づくりの会を実はつくりました。日本の科学技術、先端技術、本当にノーベル賞を受賞する方が何で毎年こんなにいるんだろうと思うぐらい、非常に世界に誇るものだと思います。

 ところが、そうしたものは必ずしも今、財政的な環境など恵まれているのかどうかといった意味においては、非常に苦しいという声を多く聞きます。もちろん、行政刷新会議なり事業仕分けで、これはいかがなものかという指摘もあったこともあります。ただ、一方で、日本の国の戦後を支えたのは、やはり人づくりであり物づくりだったという事実もあります。

 そういった意味で、海江田大臣、こういった知的な基盤を維持していく、発展させるのにどういうことをお考えで、どういう施策をしていこうとお考えでしょうか。よろしくお願いします。

海江田国務大臣 岡島委員にお答えをいたします。

 今、岡島委員からも御指摘がありましたけれども、確かに私も大臣になる前に、人づくり、物づくりの議員連盟をつくって活動をしておりました。私、今回、菅改造内閣で内閣府特命大臣、経済財政がメーンだとは思っておりますが、同時に科学技術の政策の担当大臣も任命されましたので、その意味では、本当に天然資源も少ない、それから、これからますます人口が減少をしていきます、そういう社会の中で、改めて、優秀な人材をつくる、物づくりの技術をさらに磨いていくということは大切だというふうに思っております。

 六月に政府が取りまとめをしました新成長戦略の中でも、科学技術というのは日本の成長の中でプラットホームという位置づけをしております。そして、今実は私どもでは、来年度から第四期の科学技術基本計画がスタートをいたしますので、ここへ向けて、どういう中身にするのか、あるいは財政的な支援もどの程度にするのかということを検討しているところでございます。

 それから、先ほど御指摘のありました行政刷新会議の指摘、これにももちろんもっともなところも多々ございます。科学技術の研究だからといって税金の無駄遣いがあってはいけないところでございますから、そういう無駄は排す。しかし、やはり重点的に資金を配分していって、そして、本当に日本の成長の基盤である科学技術、そしてその基盤であります人材の育成ということに今後もしっかりと取り組んでいきたいと思っております。

岡島委員 人材育成という意味では、本当に幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、そういった学問の場もあります。特に大学は、文系、理系の融合だとか先端技術といったものの研究など、新しい発展を遂げなきゃならないし、それを支える仕組みも重要だと思います。

 元気な日本復活特別枠を含めた国立大学法人運営費交付金や私立大学の経営費の助成、そうしたものを含めて、できれば菅総理に、そうした物づくり日本、知的財産、菅総理もたしか理系の大学だと思われますが、支える意味で、財政も含めてどんな支援、取り組みをしていかれるか、お聞かせください。

菅内閣総理大臣 今、海江田担当大臣からもお話がありましたように、科学技術というのを新成長戦略の中では成長を支えるプラットホームと位置づけておりまして、そういった意味からも、短期的なことだけではなくて、やはり日本の産業を支え、日本の科学技術こそが日本という国をある意味で支えている、そういう認識のもとに対応していかなければならないと思っております。

 財政的ないろいろな制約はありますけれども、例えば、若いときの研究がその後にノーベル賞に値するものであったことがわかるような、そういうこともありますので、そういう若い研究者がしっかりと研究が続けられるように、そういった面も含めてしっかり財政的な手当ても考えていきたい、こう考えております。

岡島委員 よろしくお願いしたいと思います。

 理科の授業、私の地元では、京葉工業地帯があります。そこの技術、科学に対して非常に詳しい技術者の方が小学校に来て、発明クラブとかいって教えたりします。しかし、一方でそれは、理科系の実験、観察などを指導する小学校の教諭の先生が少ないという事実もあるようでして、そういったことを支える理科支援のあり方なども考えなきゃいけないと思いますが、もし、文部大臣、小学校の場などでのそういった知的財産の育成、どうぞお答えください。

高木国務大臣 岡島委員にお答えをいたします。

 子供たちが科学技術に興味、関心を持つことは非常に重要でございます。そういう意味で、平成十九年度から、小学校の理科授業における観察、実験活動、このための理科支援員の配置をしたところでございます。

 昨年の十一月に事業仕分けの評価をいただきましたが、かなりの多くの国民の方々からの要望が強いものですから、平成二十四年度までに理科支援員配置事業を着実に実施することといたしております。また、あわせて、理科教育自体の重要性は否定されておりませんので、理数教育にすぐれた指導力を持つ教員の養成に対する事業についても、引き続き予算の確保をして頑張ってまいりたいと思っております。

岡島委員 ぜひよろしくお願いします。

 もう一問できると思いますので、これは蓮舫大臣にお伺いします。

 これもニュースから拾いましたけれども、ことしの決算検査報告では、会計検査院が、二兆円とは言いませんが、一・八兆近いお金を、無駄を指摘したり剰余金を指摘したりして、発見したわけですね。そして、そういったお金を見つけてきた。これは会計検査以外にも、総務省の行政監察や財務省の予算執行調査などもあります。

 蓮舫大臣がずっとお取り組みになっている事業仕分け、とてもすばらしいと思います。一方で、既存の官僚組織の中にも、そういったものを真摯に向き合って行っている調査機関もあるわけですが、そういったところの結果、そうしたところの日常的な業務と事業仕分けが連携して、例えば、お忙しいですからしょっちゅうできないでしょうけれども、基本的に、彼らは一年間毎日やっているわけですね。事業仕分けは何カ月かに一回、四日、五日やるということじゃなくて、彼らは毎日やっている調査の結果を出してくる、状況がわかる。

 つまり、官僚機関といっても、そういったものと連携して、事業仕分けを彼らのデータをもとに、最終的に事業は要るのか要らないのか、お金が必要ないのか、そういう政治判断をしていく。官僚が出したデータも、一生懸命やっているところの信用できる、高いデータはちゃんと使っていく。そういった意味で、そういった機関との連携を含めた、一年じゅう事業仕分けみたいな、そういう体制があったっていいと思いますよ。

 一日三個、一日五つ、こうやって、国会をやっているのは一年間大体二百日ですか、一日五つやって千個ですよね。三千ある事業が三年間で終わるというぐらいの考えを私は勝手に持っているんですが、蓮舫大臣のお考えを聞きたいと思います。

蓮舫国務大臣 岡島委員御指摘のように、既存の行政内部の組織には、独立した会計検査院、あるいは財務省の予算執行調査、あるいは総務省の行政評価、さまざまな、税金の浪費を許してはいけないという目的で日々チェックをしている機関があることも事実でございますが、事業仕分けを去年やらせていただいて、これまでこうした既存の内部の機能が果たし得てこなかった事業というのも相当見つかっているんですね。

 ですから、今御指摘のように、行政刷新の立場、あるいはそれぞれの既存のさまざまな制度、組織のあり方の連携をより深めていく。一つだけあればいいということではなくて、二重、三重、四重に税金の浪費は絶対許してはいけないという国民の声を代弁するために、どうやって連携を深めることができるのかも含めて考えてまいりたいと思っています。

岡島委員 最後に、会計検査院が突然、一・八兆円も無駄なお金を見つけてくるということが起きたのも、民主党政権になって一年たって、そういったことができる官僚の風土が生まれたのだと思っています。ぜひこれからも頑張ってください。

 以上です。

中井委員長 これにて岡島一正君の質疑は終了いたしました。

 岡島君、次の岩屋君ともに、委員会運営のためにお時間を削除したことを委員長としてもおわびを申し上げ、お礼を申し上げます。

 岩屋毅君。

岩屋委員 自民党の岩屋です。影の防衛大臣でございまして、北澤大臣のカウンターパートでございます。よろしくお願いしたいと思います。

 ゆうべ言われたものですから必ずしも十分な通告ができておりませんが、余り細かいことは言いませんので、建設的な議論をしっかりやらせていただきたいと思っております。

 菅総理、私、二十年前に初当選したんですが、そのとき、政治改革の運動に没頭しました。目的は、やはり、選挙制度も変えて、やがては政権交代が起こる政治構造にしないとだめだ、万年与党、万年野党の政治では日本の政治は進化しない、そう思ってあの運動に没頭しました。当時総理はまだ社民連の代議士として活躍をしておられたと思います。

 政治改革が実現しました。したがって、政権交代というのはいつか起こるんだ、そうずっと私は思ってきました。昨年、残念ながら自民党は政権を失いましたが、これは、日本の政治全体にとって貴重な経験だと思います。民主党も今政権運営の苦しさを味わっている、我々自民党は野党の悲哀を味わいながら再起を期している。これは貴重な経験にしていかなくちゃいかぬと思うんですね。けれども、その貴重な経験というのをもう通り越して、もしかしたらこれは大失敗に終わるかもしれない、そういう危機感を最近持っているんです。

 その最大の理由は、この一年余の民主党外交の余りにも拙劣なあり方ですよ。たった一年ちょっとで、日本の外交環境、安全保障環境、音を立てて崩れてきていると言っても決して過言ではないと思います。私は、余りにも準備不足で不用意だったと思いますよ。

 鳩山政権ができた。最初は、あたかもアメリカを抜くような東アジア共同体なんという話をしていた。思いやり予算を事業仕分けにかけた。密約という問題をまた持ち出した。そして……(発言する者あり)いや、密約はいいことですよ。けれどもこれは、文書の公開基準を定めればいいという話であったと私は思うんですけれども、まあその問題は別にして、要は、同盟国に対して余りにもマイナスのメッセージばかりを与え過ぎた。普天間問題では迷走を繰り返してとうとうもとに戻ったが、アメリカの信頼も沖縄の信頼も揺らいだ。そして、この尖閣沖事件に対する対応ですね。柳腰と言った人がいましたけれども、私は腰砕けに終わったと思いますよ。さらにそこにメドベージェフ大統領の北方領土訪問が加わった。

 迷走、腰砕け、そして無策、これは民主党外交の三大失態だと言っていいんじゃないですか。結果として日本は外交敗北というような状況に陥ってしまった。私は、菅総理はこの間、副総理としてあるいは今は総理として、この外交失態に責任が重たいと思いますよ。

 さらに言えば、防衛計画の大綱もまだできていない。これは、先進国でこんな国ないですよ。今、北澤大臣のもとで一生懸命つくっておられるんでしょうが、本来つくりかえられるべきものが一年間ほったらかしにされた。国民の皆さんはそれを心配しているんですよ。石破政調会長も言った。国民がこれだけ外交安全保障を心配したことなんかないんですよ。それが支持率の低下にもつながっているんだと思いますよ。

 総理、この一年余の民主党外交全般を振り返って、じくじたる思いはありませんか、反省はありませんか。思いを聞かせてください。

菅内閣総理大臣 政権交代の意義を認められた中で、特にこの一年間の外交の点についての御指摘をいただきました。

 私は今の岩屋さんのお話、全面的に否定するつもりはありません。確かに、私が引き継いだ段階、もちろん副総理として内閣におりましたけれども、特に、普天間の問題に端を発した日米関係のやや不安定な状況というのは、私も政権を引き継いだときに、まずこの点はしっかりしなければならないと一番に考えたことであります。

 六月に政権を引き継いで、六月の末にトロントでオバマ大統領と初めての首脳会談をやった中で、五月二十八日の日米合意を踏まえてやっていく、日米同盟はまさに日本外交の基軸であるという、もともとその方針でいたわけでありますけれども、それを改めてしっかりと確認することをさせていただきました。

 その後、二度目の会談等も含めて、私は、日米関係に関してまず申し上げれば、一時期若干の不安定さがあったとは思いますけれども、今日においてはしっかりとした信頼関係、同盟関係が回復したと同時に、未来に向かってこの同盟の深化ということで話し合いが進む段階に来ていると思っております。

 その上で、中国との関係、ロシアとの関係の御指摘もいただきました。この尖閣の問題、まだ半ば渦中でありますけれども、先ほど海上保安庁の長官の答弁も伺いました、従来からこの地域でのいろいろな操業に対して追い返していたということであったわけでありますが、今回の、中国漁船が衝突をしてきた、ぶつかってきたという中でいろいろな対応があったわけであります。

 確かに、この問題について、対応について、百点満点とは申し上げません、しかしこの問題は、少なくとももう何年かたった後にぜひ検証してみていただきたいと思いますけれども、そうした中で、冷静に対処したということで、私は、歴史にたえる対応を現在もいたしている、このように思っております。

 まだいろいろありますけれども、今申し上げたように、すべてを否定するつもりはありませんけれども、しかし、日米関係を軸にして、あるいはASEANとの関係なども前に進んでおりますので、私は、十分にこれからの日本外交をしっかり進めていくことができる、このように考えております。

岩屋委員 私は、アメリカの方がむしろ心配をしてくれているんだと思いますよ。こんな日本外交のままだったらほっておけない、かなり自分たちが手助けをしなければなかなか日本の外交は安定しない、もしかしたらおかしな方向に行くかもしれない、同盟国としてむしろそういう心配をされているという状況ではないかなと思っております。

 いずれにしても総理、やはり外交、防衛だけは、これは政権交代があろうとも骨格は揺るがない、こういうことを我々はこれからの教訓にしていかなくちゃいかぬと思うんですよ。

 極端なことを言えば、内政は、失敗したら国民の皆さんに謝って変えればいい。だけれども、外交の失敗は、もう国の命運を決しますから、五十年、百年の国の命運を決する重要な問題ですから、ここはぜひ、総理になられてかなり軌道修正をされているんだと私は認識しておりますけれども、さらにリアリティーに立脚したしっかりした外交をやってください。

 個別の事案についてお聞きいたしますけれども、尖閣沖の領海侵犯事案ですね。

 これはもうずっと国会で議論が続いてきましたが、菅政権は総理以下、一貫して、あれは那覇地検が決めたことであって、その報告を聞いて了としただけだ、この説明に終始しておりますけれども、これからもそういう説明を続けるつもりですか。それが正しい姿勢だとお考えでしょうか。

柳田国務大臣 今回の件につきましては、予算委員会でも何回にもわたって説明をさせてもらっておりますけれども、検察当局において、法と証拠に基づいて適切に判断した、私はそういう報告を受けまして、わかりましたと申し上げました。指揮権の発動はいたしておりません。これが事実であります。

岩屋委員 その虚偽の説明に国民は怒っているわけですよ。国民はばかじゃないですよ。

 これは外交問題だということはみんなわかっているわけですよ。逮捕するのかしないのか、船長を勾留延長するのかしないのか、その前に船と船員を帰すのか帰さないのか、釈放するのかしないのか、関係省庁全部集まって官房長官のもとで協議しているでしょう。当然ですよ。それができていなかったら政府じゃないですよ。国民はみんなわかっているんですよ。それをなぜ虚偽の説明をし続けるんですか。そこに何のメリットがあるんですか。それが、総理がさっき言われた、したたかでしなやかで冷静な静かな外交なんですか。そういう意味ですか。私は違うと思いますよ。

 国民が選んだ国会議員、それが選んだ総理大臣。私の責任において決めたんだ、御批判は甘んじて受けるとなぜ言わないんですか。総理、これからもそう言い続けるんですか。

菅内閣総理大臣 この場でも何度か答弁申し上げましたが、率直に言って、私も、この事案が起きて、そして刑事的な手続に至った中で、どこまで、総理大臣という立場、あるいは政治という立場がその捜査に関するところに直接に何かを申し上げることが適切なのか、率直なところ、多少の戸惑いがありました。

 そういう中で、最終的に那覇地検が、これは法律の中で、個別の事案に関していろいろな裁量の余地といいましょうか、個別の事案に関して判断の余地があるという中で、外務省の担当者でしょうか、それからの話を聞いたことも含めて、まさに今法務大臣が答弁されたように、那覇地検としての判断として釈放ということになったわけであります。

 ですから私は、もちろんのことですが、外交全般を検察に任せるとか、判断すべてを検察に任せるという、そういうことを申し上げているわけではなくて、個別の事案について、例えば初犯であるとか計画性がないとかということに加えて、他の要素も判断の中に入れることもそういう法制の中で認められている中で地検が判断をされた、それについて、それを了といいましょうか、よしといいましょうか、としたということでありまして、私は、指摘されていることはわからないわけではありませんけれども、しかし、そういう捜査手続の部分については、捜査機関に基本的には第一義的にはお任せをすることが本来のあり方だろう、このように考えております。

岩屋委員 それが、やはり領土問題に対する認識がそもそも甘かったということだと思いますよ。

 あの海域にはもちろん領土問題はありません。これは政府の一貫した主張ですよね。ただ、中国が領有権を主張している以上は、外交問題が存在する海域ではあったわけですね。しからば、ああいう事件が起こったときには、これは直ちに外交問題に発展すると了解するのが普通ですよね。だから、政府が前面に立って対応しなければいけなかったんだと思うんですよ。

 そのうその説明を塗り固めるために、内閣はさきに、我が党の高市議員の質問主意書に対して、国際環境への影響も犯罪後の情況として検察において判断することができるという答弁書を出しておりますが、これは禍根を残すと思いますよ、こんなことを言っていたら。

 法務大臣、例えば、特定国と言いましょう、特定国の在日外国人が集団で犯罪行為を犯した、逮捕された、しかし、そのことがその特定国において政治問題化して、日本に圧力が加えられてきた、これは大変な事態になったという場合にも、検察において国際情勢を判断するということになるわけですか、この答弁書からすれば。

中井委員長 答弁する前に、岩屋議員にお願いをいたします。

 過般の理事会で、うそとかうそつきというのは言わないようにしようということになっていますので、岩屋さんから見てうそとか、自民党から見たらうそと思えるとか、何か工夫をひとつお願いいたします。

柳田国務大臣 これからも、法と証拠に基づいて検察当局が適切に判断するものと考えております。

岩屋委員 私から見ればうそですよね、それは。実際、この答弁書からすれば、そういう事態が起こった場合には、検察において国際情勢を判断してもよいという内閣の方針なんですよ。あり得ないですよ、これは。

 ある意味で政治というのは、これは誤解を招くかもしれませんが、法律とぎりぎりのところを行っているわけですね。だから、法律の中にも指揮権発動というのが日本の場合はしっかり組み込まれているわけですけれども、やはり、検察においてこんな判断がいつでもできるなんということを内閣が言ったらいかぬと思いますよ。禍根を残します。そのことは指摘をしておきたいと思います。

 それから、私は、十一月五日、六日に石垣島、与那国島に行ってまいりました。四日の朝にビデオが流出したというニュースが入ったものですから、朝四時に起きてそれを見て、飛行機に乗って石垣に飛んで、午前中に石垣海上保安部に着きました。午後に海上保安本庁から調査がやってくるというときでありました。「よなくに」、「みずき」という巡視船にも乗って、船体の傷跡を確認してまいりました。非常に生々しい傷跡でございまして、やはり海保職員の皆さん、身の危険を顧みず、しっかり頑張っていただいたんだなと心から私は敬意を表したところでありますが、国土交通大臣は事件後は現場に行かれましたか。

馬淵国務大臣 現場という質問でございましたが、那覇の十一管区本部に参りました。

岩屋委員 やはり、大臣が無理なら政務三役が現場に飛んでいって、それはもしかしたら本当に命にかかわるような事案だったわけですから、諸君、よく頑張ってくれたと、まず労をねぎらうというのが当たり前じゃないですか。

 今何か調査ばかりがされているみたいですけれども、まずはあの海域を守ってくれている海保の職員の皆さんに敬意を表すのが、あるいは労をねぎらうのがやはり監督者としての役割じゃないですか。

馬淵国務大臣 十一管区本部におきまして、これは那覇でございますが、巡視艇の乗組員また当該事案にかかわった者に対しまして、もちろん現場に出ている者もございますので、十一管区本部におきまして、激励と、そして諸君のとった行動、国内法にのっとった行動は適切に行われた、そして、私どもとしても、海上警備を行う者として諸君の行動は誇りに思っている、このように伝えております。

岩屋委員 そういうことをしっかりやらないと、士気が落ちますよ。今回の政府の対応、一生懸命頑張った海保、一生懸命頑張った検察、最後は検察のせいにして、自分たちは報告を受けただけだと。こういう対応をしていたら、検察の士気も海保の士気も落ちますよ。そこはやはり大臣、よく気をつけて、しっかりとフォローをしてもらいたいと思います。

 今、海上保安庁は刑事告発をしたということで捜査が始まっているようですが、そのとき、石垣海上保安部の部長さんは、海保からの流出ではないと私は信じたいと苦悩の表情で語っておられました。鈴木長官は会見で、苦悩の表情で刑事告発したことを発表しておられましたが、この段階で、流出したビデオは海保からのものだったというふうに考えておられるのでしょうか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 流出事案が発生した五日の早朝、第一便でまず担当官二名を現地に派遣し、さらに追加で六名、合計八名の担当を派遣いたしまして、土日も返上し、深夜まで調査を行いました。

 その結果、私どもが撮影した映像の中から那覇地検の要請を受けて当該部分を編集し、那覇地検に提出したビデオとほぼ同一内容であるということは確認されましたが、流出経路につきましては特定するに至りませんでしたので、しかも、コンピューターのデータ解析等は大変膨大な作業でありますので、私どもの内部調査では限界であるということで告発するに至りましたが、私どもの内部の犯行かどうかはまだ確定をしていないと認識しております。

岩屋委員 そうですよね。だから、流出したビデオは確かに海保が撮ったものと同一のものだろう、ここまではわかったということだと思いますが、私は、この流出事件が発生した後、ちょっと菅政権、あたかも海保いじめというか、政府がひた隠しにしていたものを流出させたのはけしからぬと、あたかも海保が犯人だと特定せんばかりの発言が官房長官初め主要閣僚からもあったと承知をしておりますが、それは非常によくないことだと思いますよ。

 けさのニュースで、何かグーグルのデータを検察が差し押さえしたんでしょうか、そこで、どうも神戸市内の漫画喫茶からこれが流出したようだというニュースです、これはあくまでも報道レベルですが、そのニュースに私も接しましたけれども、これは捜査してみないとわからないことであって、当然、海保の職員も捜査対象になるんでしょうけれども、何か……

中井委員長 岩屋さん、二人いますが、警察と検察がいますが、聞きますか。

岩屋委員 いいです、いいです。

 私が言いたいことは、なぜこういうことになったかと。間抜けな話ですよ。政府はひた隠しに隠しておって、予算委員長も御苦労されて、理事のみんなだけ見ろと。それは私も文句があるんですよ、では、予算委員会が国会を代表しているのか、外務委員会はどうなんだ、安保委員会はどうなんだ、国交はどうなんだと。それもおかしいなと思っておったんですが、何のことはない、インターネットで全面公開されてしまった。

 ここまで来たら、これは全面公開したらどうですか、総理。

柳田国務大臣 衆議院議長から要請が来まして、海保によって、七分ですか、報告をさせていただきました。

 そのときに、コメントとして、要望として私どもが出したのは、公判前にこうした捜査資料を出したことがないということは我々の立場で要望として出しました。

 なお、それと同時に、海上保安庁の方からも、海上警備・取り締まり活動の秘匿性への配慮をしてほしい、さらには関係者の名誉、人権への配慮も必要であるという要望を海保の方からいただきましたので、それを衆議院議長の方に我々の要望としてお出しをしたところでございますので、その辺の配慮をしていただきたいという要望は今でも我々は変わっていないつもりであります。

岩屋委員 いや、だから、もう配慮する必要はないんじゃないですか。捜査中の資料だというけれども、では、公判に持ち込まれる可能性はあるんですか。ゼロでしょう。官房長官自身が認めているわけでしょう。塩崎議員が起訴するのかしないのかというのには、答えもないわけでしょう。するつもりないわけでしょう。このままお蔵入りなんでしょう。

 全面公開されて、国民が見ている、世界も見ているわけでしょう。国会議員は六分五十秒ですか。何で全面公開しないんですか。もう一回答えてください。

仙谷国務大臣 前段の御質問を聞いていないのでちょっととんちんかんなお答えになるかもわかりませんが、割と簡単に全面公開、こういうふうにおっしゃるのでありますが、全面公開というのはどういうことを指しているのか私どもにはちょっとわかりかねる部分があるんですね。(岩屋委員「全編」と呼ぶ)全面というのは、三時間三十分のマスターテープがあります。これを、今度は公開の方法として、国政調査権の行使を、それとは関係なく、政府が例えば内閣のホームページに全部アップせよ、こういうお話なのか、あるいはDVDをつくって各テレビ局にお渡しせよという話なのか、あるいはこの予算委員会の中に三時間三十分を出してこいと。そうすると、その調べ方といいますか見方については、どの範囲でどのように見るかというか、法的用語で言えば、裁判用語で言えば検証でありますけれども、予算委員会であれば審査ということになりますね。

 全面公開と割と一般論で言われますけれども、どういうことをおっしゃっているのかがちょっと私どもにはわかりにくい。そして、訴訟に関する書類であることは間違いないわけですから、おのずから、全面公開というふうに言われましても、しかるべく制約はやはりあるということをまず申し上げなければいけないと思います。

岩屋委員 公開の方法なんていうのは、国民の皆さんにとって一番簡便な方法をとればいいんですよ。方法の問題じゃないんですよ。

 官房長官、ちょうどいいところに来てくれました。

 きのうも、柿澤議員ですか、質問したと思いますが、例の盗撮事件の話があります。

 盗撮そのものはどうでもいいんです。ただ、政府として、官房長官、その公開が是か非か、メリット、デメリットはどうか検討するのはそれは当然だと思います。当然だと思いますが、報道されているところによれば、公開することのデメリットは、犯人の量刑が下がるおそれがある、犯罪者を追認することになり、あしき前例となるという判断が示されていると報じられておりますが、事実ですか。

仙谷国務大臣 私的メモでございますので、そして、メディアで働く方々からいえばこれをしてスクープと言うんだろうと私は思っておりまして、ここで、それほどの望遠、拡大レンズをこんな狭いところでお使いになっているということを常々考えてなかった不用意さを、私は不明を恥じなければならないと思ってはおるのでありますが、そこに写された内容がどうのこうのということは、これは私の私的なものでございますので、ここで述べるつもりはありません。

 ただ、一般論としては、ある意味で、何分でございましたか、ユーチューブに載っている部分を、もう出ているんだからいいじゃないかというこの議論は、私は、国家の情報の保全とか、あるいは、そのことに対する国、政府の責任性の問題とかいうことから考えますと、そして、さらにもう一つの問題点は、現時点では、我々が告発をして、まさにこのものが犯罪を組成する物件になり得る可能性が大変大きいということであります。そのものを政府は政府として、それとほぼ同一のものを政府が現時点で、これはこういうものですよということで、皆さん方がおっしゃるように、例えば内閣のホームページに掲げるということは、私は、あり得ないし、あり得てはならない、こういうふうに考えております。

岩屋委員 官房長官がお見えになる前にちょっと議論をしていたんですけれども、今検察の捜査が開始されていますが、犯人というあえて言葉を使えば、必ずしも政府職員であるかどうかはまだわからないわけですね。もちろん、政府の職員であれば、国家公務員法の守秘義務違反で、これは罪は罪ですから、法に基づいて粛々と裁かれなければいかぬと私は思っておるんですけれども。

 その同じ盗撮されたというペーパーの……

中井委員長 岩屋さん、理事会で盗撮は撮影という形で御了解いただいて、長官も訂正を言いましたので、撮影というだけにしてください。

岩屋委員 まあ、撮影されたというそのペーパーによれば、官房長官、そのメリットの方としては、中国による日本非難を退けることができるというのがあったというふうに言われておりますが、私、この方が大事だと思いますよ。

 つまり、それによってやはり抑止というものができてくるというふうに思うわけですよ。この海域における中国のプレッシャーというのは、今後、強まることはあっても、なかなか弱まることはないと思いますよ。やはり映像という形でしっかりと今回の中国漁船の犯罪行為を内外にきちんと知らしめる、このことが抑止に私はつながると思うので、そのメリットの方に重きを置いていただいて、公開をするお考えはありませんか。

仙谷国務大臣 全く立場及び考えを異にすると思います。

岩屋委員 そういう気の使い方をする必要があるんですかね。

 私は、中国と日本、それぞれ大国ですよ、お互い引っ越しができない国ですよ、こういう問題だけで日中関係が崩れるような二国間関係であってはならぬと思いますよ。それは、多少緊張は高まると思いますよ。しかし、それをマネジメントするのが外交じゃないですか。菅総理は、国民一人一人が主体的に考えてほしい、そういう外交をやりたいと言ったわけでしょう。だから、真実を語ってくださいよ、真実を見せてくださいよ、国民を信じてくださいよ、もっと。全く言っていることとやっていることが違うじゃないですか。

 私のツイッターに非常にうまい文句を書いてくれた人がいました、菅内閣は有言実行内閣じゃなくて有言実行シナイカクだと。まさにそういうことになっているんじゃないですか。一時期の緊張関係を恐れずに、やはり真実を見せ、真実を語り、そういう外交に変えていくべきなんじゃないですか。総理、いかがでしょうか。

菅内閣総理大臣 いろいろな局面で、そうした緊張を覚悟して行動しなければいけないときが、一般的に言えば、当然あり得ると思っております。

 今回の今御指摘の点で、私、先ほども申し上げましたが、一つは、いろいろと捜査とかそういう手続の上に乗って今日まで来た中で、一方でこういう情報流出があったわけであります。もう表に出てしまったんだから政府として公開すればいいじゃないか、一般にはわかりやすい論理かもしれませんが、私は、やはりそこにはもう一つの区別が必要だと思っております。

 つまりは、この間、政府としてお出しをしたのは、その前に検察が、私は何条か条文まで覚えておりませんが、刑事訴訟法の何条かに基づいて例外的に公開を認めた、公開というか公にすることを認めた、それに基づいて内閣が、国会法で、いわゆる国会からの要請に対してそれを予算委員会の方にお出しをした、そういう手続になっております。

 ですから、私は、この状況が変化をした、客観的に変化をしたことはそのとおりでありますけれども、やはり公開されたから云々というよりも、場合によればどういう形でどういう手続をやるべきなのか、やるべきでないのか、そこはちょっと区別して考える必要があるし、先ほど官房長官の話もありましたように、この問題で告発をしている、つまり犯罪行為がこれによって行われている可能性が高いということでありますので、そういうことも勘案してどうすべきかを考えるべきだ、こう思っております。

岩屋委員 そうしたら、ビデオの話はちょっとおいておいて、もう少し大きな話をしたいと思うんですけれども、やはり今回の事案は、これからの日中外交を考え直してみるいい機会だと私は思うんです。

 もちろん、戦略的互恵関係というものは維持発展をさせていかなくちゃいかぬ、これは当然なんですが、ただ、一九七八年、トウショウヘイさんが来て棚上げ論を言った以降、これはもちろん国と国との約束ではありませんけれども、ありませんけれども、当時の自民党政権もやはりそこに配意をしながら外交をやってきたということも、これは紛れもない事実だったと思います。

 ところが、その安定的な状況をみずから壊してきたのは、我が方ではなくて、やはり中国の方だったわけですよ。国内法で領海法をつくる、海島保護法をつくる、尖閣は自分の領土だと言い出す、無人島は全部おれたちが守るんだと言い出す、漁船をどんどん送り込んでくる、軍艦を出す。そういうふうに、安定した状況を崩してきたのは中国だったことも事実なのであって、だとするならば、今回のような事案についてはやはり政府がきちんと主権の問題だとして向き合う、これが大事だと思うんですよ。

 これは幾ら友好関係を保っていこうといっても、ここだけはやはり譲ってはいけないことであって、だから、一刑事事件だ、一刑事事件だという説明に終始しておりますが、この海域におけるこの種の事案については、やはり主権の問題だとして政府がきちんと向き合うということが、これからの問題として大事だと思うんですけれども、総理、いかがでしょうか。

菅内閣総理大臣 私は、今の岩屋委員の言われたこと、お聞きしていてそれほど違和感はありません。

 つまりは、この尖閣の問題も、私の知る中でいえば、一九七〇年代に至るまでは何もそうしたことを主張していなかったのが、それ以降、海底の資源の問題等が明らかになるにつれて声高に主張が始まった。また一方で、経済発展の中で防衛費も増大し、そして海洋におけるそうした活動も非常に活発になってきた。まさにおっしゃるとおり、GDPも、日本の立場からいえばやや残念ではありますけれども、第二位の位置をかわる事態になりつつある、そういう非常に大きな背景の中でこのことが進んできているという御指摘だと思いますので、そういう意味では、我が国としてもそういう国とどのようにつき合っていくのか。そこは、先ほど冒頭におっしゃったアメリカとの関係とか、あるいは他の国々との関係も含め、同時に、しかしアメリカにとっても我が国にとっても、中国は経済の面で非常に相互依存関係を持っているわけですから、そういうものは大事にしながらやっていく。

 そういうことを、全体を考えて物事を進めなければならないという御指摘については、全般としては私も同感であります。

岩屋委員 石垣、与那国に行った私の感想は、与那国なんというのは、特に台湾が目の前で、晴れた日は壁のように台湾が見える。人口千六百人、漁業者は今三十人ぐらいに減ったと言っていましたが、私も船に乗りましたが、二・五メーター、三メーターぐらいのところを四・五トンぐらいの船で行くと、本当に、私も船酔いをしてしまいましたが、こんな荒海で頑張ってくれている人たちがいるから日本の領土、領海が守られているんだなという思いを強くしました。

 総理も、機会を見てできれば日本の西の果てまで行ってください。そして、やはり航空運賃も高いし、カジキをとっても運賃がかかるからなかなか採算に合わないしということで、特段の支援をしないと成り立っていかないなということを痛感してきました。ここは、国境離島振興法なんというアイデアもありますが、ぜひ国境の町をしっかりと守るということについて政権として取り組んでもらいたいということを申し上げておきたいと思います。

 目の前の話をします。

 APECで各国の首脳が見えますが、日中首脳会談はおやりになりますか。

菅内閣総理大臣 日中における首脳会談の予定について、現在の段階では決まっておりません。

岩屋委員 最近、どうも菅政権は十分間外交が得意みたいですね。立ち話が得意みたいですけれども、そういう中途半端な会談なら、私はやらなくていいと思いますよ。やはり、日中間にいろいろな問題がある、今回の問題もある。しっかりと向き合って、きちんとした日中首脳会談を行って、その中で言うべきことは言って、そしてまた友好関係を深めるというきっかけにする、こういう堂々としたものをやってもらいたい、こう思っておりますが、いかがでしょうか。

菅内閣総理大臣 おっしゃるとおりだと私も認識しています。

岩屋委員 そういう会談が実現するように期待をしておきたいと思います。

 それから、北方領土の問題もありますが、仙谷官房長官、日本とロシアはまだ戦争状態にあるんでしょうか。

仙谷国務大臣 日本とロシアにおきましては、一九五六年の日ソ共同宣言第一項において、法的な戦争状態は終了しているとされております。しかしながら、当時、日ソ間において領土問題に関して意見が一致しなかったために、平和条約の締結を将来に譲ることとしまして、日ソ共同宣言という形式で国際約束が締結されている、こういうふうに認識しております。

岩屋委員 長官も毎日いろいろなところで会見したり大変でしょうから、言い間違えたんだと思いますが、あたかもまだ日ロが戦争状態にあるかのような発言をされたというのは、内閣のかなめとしてはいかがなものかと思います。ぜひお気をつけいただきたいと思います。

 メドベージェフ大統領の北方領土訪問計画というのは、これは外務省レベルではかなり早い段階から察知していたのではないかと思います。例の対日戦勝記念法案、そういう名前ではなかったものの、事実上の対日戦勝記念法案、九月二日を記念日とするという法案が、七月二日にロシアの国会に出されて、スピード可決で七日に成立をしている。

 その前後からこれは要警戒態勢に入っておかなくちゃいけなかった。大統領自身も会見で行くんだということも言っていたはずで、ところが、日本国政府、菅政権には、もう直前まで、いや、それは現実的な計画ではないだろうみたいな誤った情報が上げられて、そして、誤った判断をしたあげくに、とうとう一線を踏み越えられた、こういうことだったと思うんですけれども、これは、この間の努力が足らなさ過ぎたんじゃないですか。十分な抗議、警告というのが足らなさ過ぎたんじゃないですか。それが今回のような事態を招いたんじゃないですか。これも外交失態じゃないですか。その点いかがでしょうか、総理。

伴野副大臣 岩屋委員にお答えさせていただきたいと思います。

 数度にわたり、機会あるごとに、総理も、また前原大臣は大使を呼び出して、危惧を強く伝えていた次第でございます。

中井委員長 いや、ちょっと今のは違うな。前々からわかっていたんじゃないかという話じゃないのかな。(岩屋委員「いやいや、いいです」と呼ぶ)いいですか。

 それでは、菅直人内閣総理大臣。

菅内閣総理大臣 今、幾つかの兆候といいましょうか、いろいろなことがあったことは私も一般的には、例えば中国との間での共同の、あれは声明でしたでしょうか、そういうものもあったということは認識をしております。そういう状況、あるいは、メドベージェフ大統領本人が出かけるといったような発言もあったことも承知をしております。それに対して、外務省を中心にきちっと、そういうことはやらないようにしてほしいということはしっかりと伝えた、このように私は報告を受けております。

 しかし、結果として、そうした我が国の強い意見に対して、それを無視する形で国後島を訪問されたことは、これは大変遺憾なことでありまして、その直後に在日のロシア大使を外務大臣が呼んで抗議をいたした、こういう経緯であります。

岩屋委員 だから、前原大臣が、ベールイさんですか、大使を呼んだのはもう直近だったんですよね。

 私が知り得ている範囲では、この対日戦勝記念日法案が可決された際に、当時の武正外務副大臣は、ロシア側が一定の配慮を行っている、一定の配慮というのは対日戦勝記念日法案という名前にはしなかったという意味だと思うんですが、一定の配慮を行っているなどと述べ、表立った抗議をしていない。わずかに外務省の参事官が駐日臨時大使に電話したにすぎない。私の知り得ている範囲ではですね。

 私は、やはりこの段階から抜かっていると思うんですね。明らかに国内法で北方領土は正当に我々が獲得をしたんだという法案ができたときに、やはりもうちょっとしっかりした抗議を行うべきだったと思うんですけれども、いかがですか。

伴野副大臣 岩屋委員にお答えしたいと思います。

 その件につきましては、さきの七月二日には、私どもの谷崎欧州局長から当時のベールイ在京大使にも悪影響を及ぼすことを伝えておりますし、また法改正の成立を受けまして、七月二十七日には、兼原欧州参事官がロシア臨時代理大使にも伝えております。さらには、政務レベルでは、先ほど来からお名前が出ております武正外務副大臣も、ロシア臨時代理大使初め外務次官等々にしっかりと申し入れをしたと承知しております。

岩屋委員 武正さん本人がここにおられました。もっといろいろなことをやったんだとおっしゃっておられました。それはそうでしょう。それは私も理解したいと思います。

 ただ、さらにハイレベルでやはりいろいろな動きが行われてしかるべきだったと思うんですよ。ハノイでもチャンスがあったと思うんですよ、総理。首脳に会うことも、外務大臣同士が会うことも、もう大統領は行くと明言していたわけですから、やはり事前にそういう接触を持つべきだったと思うんですけれども、なぜやらなかったんですか。

菅内閣総理大臣 ハノイにおいて、東アジア首脳会議に米ロの参加を認めるということで、全体会議が行われました。その場には、両国からは外務大臣、国務大臣の出席で、首脳の出席はありませんでした。その段階で、今御指摘があったようにそうした議論の場があり得たのかもしれませんけれども、私の出席の段階では、若干、ハノイにメドベージェフ大統領がおられた時期と私のいた時期が重なってはおりますけれども、そうした機会を、こちらも無理だということが事務方からありましたので、それほど強く求めなかった点は、あるいは御指摘の点が当たっているかもしれませんが、そうした機会を持つことができませんでした。

岩屋委員 これは取り返しのつかないような失態だったと思うんですけれども、でも、取り返していかなくちゃいかぬわけですよね。

 APECでの日ロ首脳会談についてはどうされますか。

菅内閣総理大臣 これも、バイの会談について、まだ決まってはおりません。

岩屋委員 これは、こういうことまでされて会う必要がないという意見もあるでしょう。しかし、私はやはり会談を求めるべきだと思います。そして、日本としての抗議もしっかりと言った上で、あなたは国内の視察のために行っただけでしょう、我々が今まで長い時間をかけてやってきたこの領土交渉というのはまた別のトラックですよね、その話し合いをしっかりこれからもやりましょうね、こういう話を総理からしっかりしていただく必要があるんじゃないでしょうか。そういう話にしてもらえますか。

菅内閣総理大臣 六月のG8のときに、メドベージェフ大統領と会談をカナダで行いました。その中では、この領土問題についてしっかりと首脳同士で話し合おう、そういう話し合いをいたしました。その意味では、APECの折に機会があればといいましょうか、機会をとるように努力して、今おっしゃったように、言うべきことは言う。

 しかし、この北方四島の問題は、御承知のように、長くて非常に深い経緯があるわけでありますので、まさに戦略的にどのような形でロシアに対して北方四島の我が国の主張を認めさせるか、そういうことに対して、まずはしっかりと議論の場を首脳同士でつくっていく、そのことは改めて申し入れたい、こう思っております。

岩屋委員 日中、日ロ、それを総理、ぜひやってくださいよ。我々も、国益を担って立つ内閣総理大臣は応援しますよ。当たり前ですよ、こんなことは。主権を担って立つ、国益を担って立つ内閣総理大臣は党派を超えて支援をいたしますから。本当に、私は、失点が多過ぎると思いますが、これは国家のためには取り返していかなくちゃいけないわけですから、しっかりやってください。

 もしそういうことがもうやれないということであれば、こんな外交が続いておれば、一日延びれば一日分の国益が失われていく、私はそう思いますので、早くかわってください。本当にこの一年で日本の外交、防衛は非常に脆弱なものになりつつあると思っております。ぜひ十分な反省をして、出直してください。できなければ、かわってください。そのことを強く申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

中井委員長 これにて岩屋君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

中井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、政府から発言を求められておりますので、これを許します。海上保安庁長官鈴木久泰君。

鈴木政府参考人 ビデオ映像流出事件の関係で緊急に御報告を申し上げます。

 私ども海上保安庁の第五管区海上保安本部神戸海上保安部所属の巡視艇乗組員が上司に対し、自分が映像記録を流出させた旨報告したということを聞きました。現在、神戸第二地方合同庁舎内において事情聴取を受けておるという報告を受けております。

 詳細につきましては、現在捜査当局が捜査中の事案でありますので、説明は、申しわけありませんが、差し控えさせていただきたいと思います。

    ―――――――――――――

中井委員長 中谷君。

中谷委員 この件についてまず質問させていただきますが、先ほど、ただいまの内容はお昼のNHKニュースで報道をされました。

 海上保安庁長官に伺いますが、あなたは、いつどのような形でこの報告を受けたんでしょうか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 私はずっとこの委員会に出席をしておりましたので、ただいま申し上げた点につきましては、昼休みの時間中にうちの幹部職員から報告を受けました。

中谷委員 それではお伺いしますが、報道では、この海上保安庁の職員がみずから上司に申し出たということでありますが、この保安庁の職員の最大の上司は国交大臣であり海上保安庁長官ですが、では、この上司というのは一体だれなのか、そして、海上保安庁長官は本当に全く知らなかったのか、この点について伺います。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 私どもの巡視艇の乗組員でありますので、上司というのはその船の船長に当たります。その船長に本人がそういう報告をしたという報告を、今日の朝、午前九時半ごろ、私は受けました。

中谷委員 朝九時半ごろ聞いたということですが、この予算委員会も開会をしておりました。同僚議員もこの問題については質問をしておりますが、この点についてあわせてお伺いしたいんですが、情報の集まる官邸、きょうは総理大臣、官房長官御出席ですが、お二人は、いつこの情報を知りましたか。

仙谷国務大臣 私も、昼休みにその旨の情報に接しました。

 ただ、今、中谷議員がおっしゃっている話も、つまり、海上保安庁長官がいつどのような事実を聞いたかということを聞いているのか、後から聞いた話だけれども、その告白をした巡視艇の船員がその上司に言ったのはいつか、そのことを海上保安庁の長官が聞いたのはいつか、こう分けて聞いていただかないと、何か混同しているように聞こえました。

菅内閣総理大臣 私も、この予算委員会に出席をしておりましたので、予算委員会が休憩になったときに秘書官から聞きました。

中谷委員 それでは海上保安庁に伺いますが、九時半に伺った、聞いたと今言われましたが、海上保安庁はだれから、いつ聞いたのか、それと、この職員は何時に船の船長にそういう事実を告げたのか、この点について伺います。

鈴木政府参考人 事実関係を申し上げます。

 私は、所管の第五管区海上保安本部長から、電話で、船内でそういう報告があったという報告だけを受けました。(発言する者あり)けさ九時三十分ごろだと承知しております。(発言する者あり)昼は、先ほど冒頭私が申し上げた、今事情聴取を受けておるという点について昼に報告を受けたと申し上げたわけであります。

 船内でそういうことがあったということは九時半に報告を受けましたが、当該巡視艇はまだ海の上におると聞いておりましたので、その後、私は十時からこの委員会に出席をしておりましたので、途中経過は多少は聞いておりましたが、正確にその後の事態は昼休みに幹部から報告を受けて、この一時の予算委員会の冒頭で報告申し上げたということでございます。

中谷委員 では、これは、そういう事実をいつ国民に知らせるつもりだったんでしょうか、政府は。

鈴木政府参考人 本件ビデオ流出事件につきましては、私どもが告発をいたしまして現在捜査当局で捜査中のものでありますので、詳しい事実については、これは捜査当局の了解のもとに発表すべき事案だと考えております。

 したがいまして、本委員会の冒頭で申し上げたところまでが、私がお話しできるところであります。

中谷委員 では、官房長官、この件について官房長官としてはいつお知りになったのか、もう一回伺います。

仙谷国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、昼休みでございます。

 そして、中谷さんのおっしゃる話を反復しますと、今の時点は、海保そのものが、被疑者になる可能性のある方と、さらに全体としてもその可能性のある立場であります。そこに国民に対するコメントを求めるのは無理でありますし、それは海保の立場としては、私は国民の皆さん方にそのことを言うべきではない。つまり、なぜかといいますと、捜査が始まっているからであります。

 国民の関心の強い事件においては、当然、捜査当局が要所要所においてしかるべきプレスリリースを行うというふうに私は理解しております。

中谷委員 警察も自衛隊もこの海上保安庁も、いわば捜査機関なんですよね。組織ですから、当然、下で起こったことは上に報告をする、その報告は官邸に上がる、これは当たり前のことでありまして、この者は上司に正直に言ったんですよ。その上司は正直に直ちに海保長官に伝えたということで、これはいわば組織の中の問題で、別に捜査当局に本人が供述したわけではありません。今の段階では、海保の組織の中で何が起こったかということを把握し、そして、その上司として当然国民にそれを明らかにする、また内部努力もしていくという、両方でやっております。

 そこで官房長官、この問題は、海保長官から直ちに官邸にその事実が報告されたと思いますが、それも上がっていないんですか。

仙谷国務大臣 海保は告発者の立場なんですね。そして、みずからの内部に被疑者を抱える可能性のある立場です。告発を受けた警察と検察が既に動き出しているという、こういう時点であります。つまり、刑事事件に、あるところから強制捜査に切りかわる可能性のある時点であります。その種の捜査に関する情報をいわゆる一般行政情報と同じように逐次上げてくるというのは、むしろ私はそうでない方がいいというふうに考えております。

中谷委員 それこそ隠ぺいですよ。国民は事実を知りたいし、この国会の場は、我々は国政調査権をもって、そういった問題に政府はしっかり正直に答えろということをしているわけでありまして、今そういう権限をもって私が質問しております。

 したがいまして、これは国政調査権での質問だと私は認識しておりますが、その点で伺いますが、では本人は、船長ですか、上司にいつどういう形で告白をしたんですか。

鈴木政府参考人 その詳しい時間について私は報告を受けておりませんし、余り詳細な説明は差し控えさせていただきます。

中谷委員 今の発言は、国民の皆さんもテレビを通じて知っているわけですから、やはり一刻も早く組織として、この事実がどうであったかということを国民の前に報告すべきだと思います。

 そこで国交大臣、これは人ごとではありません。海上保安庁を監督するのは国交大臣でございますが、大臣はこの報告をいつどのような形で伺いましたか。

馬淵国務大臣 事情聴取というのは、この予算委員会に出席しておりましたので、この昼休みに聞きました。

中谷委員 それはちょっとおかしいですよね。海上保安庁長官が九時半に知っています。なぜ、秘書官もたくさんいるのにその情報が上がってこないのか、全く解せません。

 それからもう一回保安庁長官に伺いますが、この職員はいつ上司に申し出をしたのか、もう一回お答えをいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 申しわけありませんが、まだ正確な時刻は報告を受けておりませんが、それほど前のことではないと思っております。(発言する者あり)

中井委員長 それでは中谷さん、もう一度御質問願います。

中谷委員 ここに民主党の参議院で使ったマニフェストがありますが、このマニフェストの中に情報公開、「外交文書を含めて行政情報の公開に積極的に取り組みます。」「国民の「知る権利」を明記します。」というふうに書かれていますが、これに基づいて我々は国会議員として国政調査でそれを解明したいし、また、国民も、いつどういう形でこの職員が上司に打ち明けたのか、そこを知りたいわけですが、この点、ぜひお答えください。

中井委員長 中谷さん、上司というのは船長ですか。(中谷委員「船長」と呼ぶ)

 鈴木さん、当人が船長にいつどこで告白したのか答えてください。

鈴木政府参考人 私が報告を受けたのは九時半でございましたが、この国会の対応でこちらへ飛んでまいりましたのでその詳しい事実は承知しておりませんが、全体としてこれは捜査機関が捜査中の案件でありますので、詳細な説明は控えさせていただきたいと思います。

中井委員長 海上保安庁、鈴木さん、委員長として申し上げますが、捜査中の案件で……(発言する者あり)ちょっと黙ってください。

 言えないことと言えることがあるというのはわかります。しかし、告白をいつ船長が受けたのかという時間ぐらいは、中身じゃないんですから、時間やその船の名前は何という船だとかぐらいは答えて僕は当たり前だと思いますが、海上保安庁、ちょっと用意してください。

 それは今資料で持っていますか、持っていませんか、答えてください。

鈴木政府参考人 済みません、本当に私はまだ報告を受けておりませんので、確認の上、また御報告させていただきます。

中井委員長 そうすると、中谷さん、どれとどれとが知りたいか、ちょっと言ってください。できることとできないことがありますから、幾つか言ってください。(発言する者あり)いや、ちょっと待ってください、質問になっていますから。

 それでは、ほかのことをやります。

中谷委員 この時点で伺いたいのは、上司に申し出をしたのはいつなのか。

 第二、それはどこの場所で、その上司に何と申し出をしたのか。

 それから、伺いたいのは、流出の時期、ビデオが流出した時期、これがいつなのか。

 そして、この職員はどういう手法でこの映像を入手したのか。

 この点については、海上保安庁長官が、研修用のビデオが云々されていましたけれども、研修用のビデオはつくっていないとおとといこの予算委員会で答弁をされましたが、研修用のビデオかどうか、この内容等についてとりあえず聞きたいわけでございます。

中井委員長 それでは、長官、今の中で答えられる資料をすぐ用意させてください。

 そして、あなたはここで、研修用ビデオというのが本当にないのかあるのか、もう一度答えて、今回の流出のものは研修用ビデオとかそんなことではないということについても返事を下さい。

鈴木政府参考人 私どもの石垣海上保安部が作成したビデオは、那覇地検からの要請により、捜査説明用に編集をして作成し、那覇地検に提出したものと承知しておりまして、研修用ということではございません。

中谷委員 とりあえず、きょうのところは、ではいつこの告白を受けたのか、この一点だけお伺いしたいと思います。

中井委員長 その時間もまだわからないんでしょう。今調べに行くんですね。十分ぐらいでわかりますか。

 警察はいますか。あなたは警備局長だから、刑事局長じゃないが、何か答えることはありますか、流出の時期とか、ビデオで。

西村政府参考人 お答え申し上げます。

 本件につきましては、現在、警視庁及び沖縄県警察において捜査中でございまして、捜査の中身につきましては、事柄の性質上、お答えを差し控えさせていただきます。

中谷委員 やはり、ここまで来ましたので……(発言する者あり)

中井委員長 お静かに願います。

中谷委員 まだ予算委員会も続きますので、後刻、まとまった感じでこの問題は聞きたいと思いますが……

中井委員長 いいですか、手を挙げていますが、鈴木さんにもう一遍。

中谷委員 はい、お願いします。

鈴木政府参考人 大変失礼いたしました。

 本人が朝九時ごろ巡視艇の船内において船長に報告をしたと今受けました。(発言する者あり)はい、そうでございます。巡視艇は哨戒中で、海の上におった……

中井委員長 何という名前ですか、巡視艇は。

鈴木政府参考人 名前につきましては、小さい巡視艇で乗組員が限られておりますので、申しわけありませんが、控えさせていただきます。

中谷委員 この事実は後刻またほかの議員からも問わさせていただきますが、私は、この動機についても、これから明らかになりますけれども、この職員がどうしてこのビデオを流出させたのかという理由も知りたいところでありますが、やはり私は、そもそもこのビデオはなぜ公開を最初にしなかったのかと。これは重要な、海上保安庁が逮捕をした正当性を証明するビデオであって、国民にも、諸外国にも、中国にも、こういうことがあったので逮捕しましたということが説明できる資料でございます。確かに、裁判という云々の理由はあるかもしれませんが、最初にすぐ出せば、これは容認されていました。外交的な理由、超法規的な判断、こういうこともあろうかと思います。

 それから、釈放した後、なぜ公開しないのか。これはやはり証拠物品ですから、改ざんされる理由とか紛失する理由はないんですね。官房長官が説明している理由は全く当てはまりません。もう犯人がこちらへ来て裁かれるということはないわけでありまして、これをいつまでも公開しないということに対して、私は、海上保安庁の職員としては、一生懸命命がけでやっているのに、これがやみに葬られるのかというような、本当に残念な思いがあったのかもしれないということは類推しますが、この点、なぜビデオを公開しなかったんでしょうか。

仙谷国務大臣 防衛大臣経験者の中谷先生でありますから、よくおわかりいただいていると思うんですが、この事件は、最初から刑事事件として出発をしております。訴訟に関する書類を、今、中谷先生が、なぜ最初から公開しなかったのかというのは、最初から、例えばDVDですか、あるいはCDですか、そういうものにしてテレビ局になぜ渡さなかったのか、あるいはユーチューブになぜ流さなかったのかという質問だとすれば、捜査が始まっているその証拠を、その種のメディア、媒体に流すことによって生じる影響というのははかり知れないわけでございまして、私どもは、少なくとも、国会の予算委員会の決議があったから限定的にここに提出をさせていただいた、こういうことに尽きます。

中谷委員 そもそも、これが外交機密というか、大問題になるという判断はされたかもしれませんが、現実にビデオが公開されて、国民が見、中国の当局も見、何か中国からクレームつきましたか。これを見ればわかるんですよ、なぜ逮捕したかと。海の世界の、海事に関する人は、よほど、海の事件の前例もあるし、正当性も証明できる。そういうことをしなかったということは、これは一つは判断ミスであります。

 それから、犯人を釈放したというのも、政治判断でしょう、超法規でしょう。これをしたのにもかかわらず、いまだにビデオを公開しない理由、私も地元の弁護士さんに聞きましたけれども、証拠品として改ざんとか消滅をするおそれがないものを出さないという理由はないよと法律家も言っております。この点は、やはり公開したらよかったというふうに思っております。

 そこで、関連してもう一問官房長官にお伺いしたいと思いますが、これは読売新聞のきのうの夕刊で、官房長官がその席で極秘の資料を見ていたという点について、マスコミサイドが普通の状態で撮影をした報道でありますが、これを見ますと、政府として映像を一般公開した場合の検討(尖閣ビデオ関連)、この中に、七分物とか、十一分物とか、四十四分物とか、このビデオを見たことがある人でないと分析できない内容になっております。これは政府の関係者がつくった資料ですか。

仙谷国務大臣 私的なメモでありますので、コメントは差し控えます。

中谷委員 これは厳秘と書いておりますが、こういった指定は、これは政府のやるものじゃないんですか。

仙谷国務大臣 私の私的なものでありますから、厳秘であります。

中谷委員 大事なビデオだと思っておられるわけでありますので、まさにこれは機密の検討でありますが、そもそもこの国会審議中にそういうものを取り出して見るということ自体、情報管理、官房長官自身も問題があるわけでありまして、これを盗撮とか、マスコミ批判をするというのは当てはまらないということを伺います。

 もう一点。先ほど紹介しましたが、民主党のマニフェストで、「行政情報の公開に積極的に取り組みます。情報公開法を改正し、国民の「知る権利」を明記します。」と盛んに書いております。一方で、官房長官は、情報公開について、保全の強化のための法律が必要だと言われましたが、そもそもこういう法律を強化するということ自体は、このマニフェストに矛盾することにならないんですか。

仙谷国務大臣 防衛大臣をそれこそ御経験なさった中谷先生ですから、すべてよくわかっていると思いますが、つまり、外交上の情報の中には、ある種、秘密にしなければならない、あるいは、ある期間は外に公開をしない、そういう情報もございますでしょう。防衛上の秘密も、防衛上の機密と称されるものもそうですし、防衛に関する情報の中には、ある日には、あるときには公開してもいいけれども、直ちには公開できないというふうなことがあるでしょう。これは、調達関係におきましても、あるいは、どのような武器をこれから我が国が装備していくのか、そういう装備の編成についてもそうでありましょう。何でもかんでも、請求されたらすべて直ちに情報というのを出さなければならないというふうなものではないと思います。

 そして、かつまた、捜査に関する情報というようなものは、これは国会であろうとも、請求されたら直ちにすべてを出さなければならない、そんなものではないと思います。

 一般の行政情報も、原則として公開をするわけでありますが、そこにはおのずと、手続というものがあったり、期間の制約というものがあったり、いろいろな段取り、手続というのは当然出てくるべきだと私は思っております。

 そして、今問題になっているのは、現に告発が行われて捜査が始まっているという段階での捜査情報をこの場に直ちに披瀝しないから、開示しないから、マニフェストに反している、こうおっしゃるわけでありますが、そんなことは全く違います。それは、情報の種類とか開示の時期とか開示の方法というふうなものが、当然それぞれケース・バイ・ケースで判断をされなければならない、私はこう思っております。

中谷委員 それでは伺いますが、官邸として、情報の保全については法律で強化するということで、法律を前提に検討する、提出するということでよろしいですか。

仙谷国務大臣 昨日、あるいは午前中もそのことはお答えをしたわけでありますが、つまり、一番我々が悩ましいのは、IT情報といいましょうか、IT関連の技術が格段に進歩したことによって、従来考えられておった情報の保全というものと違った趣といいましょうか、あるいはケースといいましょうか、今までの配慮とか、我々が情報保全というのはこういうふうにしなければならないんだというふうに考えていた常識的な事柄だけでは済まないことが出てきているのではないか、こういうことであります。あるいは、IT関連の技術の進歩におくれないようにするためにどうしたらいいのかというようなこともございます。

 そしてまた、これが漏出したときに持つ影響力というものも従来とは違っている。つまり、公務員の方々が例えば書類を持ち出してコピーしてだれかに渡すという話と、この種のIT情報がネット上を一瞬にして世界じゅうを駆けめぐるというふうなこのケースと、やはり相当影響力も違うんだろうというふうに考えています。

 そういうことをも専門的な観点からも考えて、現在の罰則というものが果たして適当なのか、適正なのかというような観点も含めて、あるいは、どういう場合をもって秘密の漏えいといいましょうか漏出というふうに我々が認定するのかというふうなことをも含めて、もう一度検討をする、見直してみなければいけない、そういうふうに今考えているところで、きょう総理の指示によって、早急に、専門家の方にもお集まりいただいて、あるいは役所の当該専門的な部署についている方々も集めて検討委員会を立ち上げろという指示でございますので、そういうふうにしたいと考えております。

中谷委員 何を秘にするかということは極めて大事な問題でありますので、情報の保全については、別の意味でしっかりやってもらいたいと思います。

 問題は、このビデオを早期に公開しなかった政治判断、これによって相当混迷し、国益を損したと思いますが、これに関連して、国民の皆さんにぜひ知ってもらいたいことがあります。ここにパネルがありますので、見ていただきたいと思います。お手元に資料でコピーを配付しております。

 これは、東シナ海の白樺という天然ガスの中国の採掘場になっていまして、今、日中で共同開発をしましょうということで、それではそれまで開発はやめましょうということでございます。これは我が党の新藤義孝議員が撮影をしまして、私も先日現場へ行きましてこのことを確認しましたが、驚きました。

 この右の下の、青い海に浮かぶものが現在の、我々が安全保障委員会で視察したときにあった現状でありますが、もうほぼ完成をしておりまして、下にドリルで穴をあけて、下から何か土のようなものがにじみ出ている写真もありますが、相当進んでおります。一方、左の上の写真は、二〇〇九年八月、去年の八月ですね。この一年間でこれほど工事が進みました。

 これは、私、現場へ行くまで全く知りませんでした。なぜ知らなかったかというと、政府が情報公開をしていなかったからでございます。一般の国民の皆さんも、これほどすごいガス田の施設ができているということについて恐らく認識が少ないと思いますが、よく見ますと、これは、上にヘリポートがあって、ヘリコプターがいつでも発着できるような、いわば軍事監視ポイントとも呼ぶべき施設でありまして、これが六カ所も七カ所も、次々とまだつくろうとしております。

 きのう、私、この質問に立つ前に外務省に電話をしまして、最新のこのガス田の写真があったらぜひ見てみたいので持ってきてくれないかと言いましたら、外務省は、それはお見せできませんと。そして、過去、政府がこのガス田を取り扱った写真を調べてみますと、一枚もありません。こんなことが政府として起こっている。そうしますと、国民の議論にもならないでしょう。

 中国がここまで虎視たんたんとガス田の開発を進めている事実を政府が積極的に公表しないこと自体が異常であると思いますが、この点について、何で写真を公表しないのか、政府の代表者に伺ってみます。

伴野副大臣 中谷委員にお答えさせていただきたいと思います。

 御指摘の白樺プラットホームの写真でございますが、政府が対外的に公表することは、政府の情報収集の内容等について明らかにすることになりまして、今後の情報収集や外交交渉等に支障を来すおそれがあることから、差し控えさせていただきたいと思います。

中谷委員 全く理解できません。この写真は我々の同僚が撮ったんですよ。そして、マスコミ、読売新聞も朝日新聞も、自分で飛行機で撮って映像を出していますが、政府にこの写真を見せてくださいと言っても、一枚も見せてくれない、国会議員にも見せてくれない。全く今のこの外交方針は隠ぺい体質がありますが、この点について、総理、どうあるべきだと思いますか。

菅内閣総理大臣 これは、中谷先生も本当に防衛大臣を務められておるわけでして、確かに、私も総理になってから、いろいろな情報あるいは場合によっては写真も、いろいろな形で今の私の立場ということで示されることがあります。しかし、それは、安全保障に関する問題の情報もあり、いろいろな種類の情報があります。

 ですから、政府として、どういった情報を積極的に出し、あるいはどういった情報は一定のルールのもとでしか出さないのかというのは、これは情報の種類によるわけでありまして、私、特許制度は多少詳しいんですが、特許なども、出願した書類は、もちろん当初は秘密でありますが、一年六カ月たてば公開制度というもので公開するというルールがあるもので、そうなっております。

 ですから、このガス田も、それは報道機関とか視察でその責任のもとでやられることと政府として調査したもの、どこで線を引いて、出していいのか、出していけないのか、やはりこれは一定のルールのもとに対応するというのが当然のことだ、こう思っております。

中谷委員 これを公開すると中国と何か問題になるんでしょうか。我が国の能力を知られてまずいところがあるんでしょうか。

 つまり、国民の知る権利と民主党も言っておりますが、この写真をもってこういう事実があるということを国民が知るということは、中国がここまで権益を拡大している事実を国民が受けとめるということで、国民にとっては必要な事実でありますので、よく御判断いただいて、外交上、安全保障上、必要な情報は進んで公開すべきだと思います。

 それでは、ちょっと横道にそれましたが、きょうの懸案は、我が国の安全保障について幾つか総理にお伺いしたいと思います。

 私は、防衛大学校で、戦術の失敗というものは後で頑張れば挽回できるけれども、戦略の失敗というものは後で努力しても回復できないよということを教わりました。

 この一年間、民主党の外交、安全保障政策を見ていますと、まず沖縄の米軍再編問題でつまずきまして、アメリカとの関係がぎくしゃくしてしまいました。私も、何人か友人がいますが、今の日米関係を大変憂慮しております。つまり、日米の安全保障の連携で気が緩むと、途端に我が国周辺でぞろぞろと妙なものが動き始めております。

 総理に伺います。これからの我が国の防衛、安全保障の戦略の柱となるものは何でしょうか。顔が見えるということが、我が国の戦略上、諸外国に対しても必要でありますが、日本の安全保障にとって総理は何が一番大事なことであるか認識しておりますか。

菅内閣総理大臣 御質問の趣旨にぴたっと合うのかどうかわかりませんが、私は、やはり安全保障ということを考える場合には、まさに、みずから自分たちの国を守る、そういう防衛力、そして日本においては、それに加えて、日米安全保障条約をベースにした日米の安全保障に関する同盟関係、この二つが基本となる考え方だ、こう思っております。

中谷委員 私が思っていることと一緒でございます。

 つまり、我が国の防衛は、みずから守るという努力と、そして、早稲田大学の斎藤佑樹投手ではありませんが、大切なものは仲間でありまして、まさに日米安全保障条約におけるアメリカ合衆国でございます。

 つまり、日本の安全保障にとって、いろいろと諸外国の国益、利益というものがありますが、本当に親身になってくれる国、国益が一致する国、ここと連携をしていくということが一番大事でありまして、日本政府としてのぶれない姿勢、腹構えこそ一番大事だと思います。

 まず、我が国の防衛について伺います。

 総理、子ども手当が実施されておりますが、これはいつまで続けるつもりでございますか。

野田国務大臣 現状では、月額一万三千円という形で子ども手当を創設し、支給しておりますが、引き続き、安定した財源を積み上げながら拡充をしていきたいというふうに思っております。

中谷委員 これは所得制限を設けずに今やっていまして、マニフェストで公約しているのは二万六千円、工程表によりますと五兆五千億円の財源が必要と書かれております。

 では、伺いますが、日本の防衛費、これは幾らでしょうか。答えは四兆七千九百億円でございます。この子ども手当が満額支給されますと、国防費よりも多くなってしまいます。一国の国防費より、いわゆる子ども手当というような政策が多い国というものは聞いたことがございません。

 これに加えて、今の一年間の社会保障関係費が二十七兆円、国債費が二十兆円、地方交付税の交付金が十七兆円、年々一兆円ずつ社会保障費が積み上がってきておりますが、この社会保障費の伸びは、翻って公共事業の予算の削減とか防衛費のしわ寄せという形で、圧縮、一律一〇%という形で来ておりますが、まさに日本の抱えている一番大きな問題は、年金、医療、介護といった社会保障費をどうするのか。

 総理も、参議院の直前には、やはり社会保障の財源のための消費税というものが本当は必要じゃないかということで取りまとめをされようといたしました。確かに、仕分けで無駄遣いの抑止はやっておりますが、これもせいぜい何百億円オーダーなんですね。ところが、年間一兆円以上の社会保障費がどんどんふえてしまいまして、結局、毎年、赤い字、私は赤い血と言いますが、赤字がだらだら流れている出血中でありまして、まず、この出血をとめないと日本経済は死んでしまいます。そして、子供や孫たちが大変な借金で困ってしまいます。

 このために、言いたいことは、総理に伺いますが、この現状に際しまして、社会保障費の財源確保、財政の健全化のための法案、そのための与野党の協議、党首会談の呼びかけ、これを一刻も早く行うことが国にとって大事なことでございますが、この点、総理のお考えを伺いたいと思います。

菅内閣総理大臣 防衛費との比較等については、またこれはいろいろと見方があると思いますが、その部分ではなくて、最後に質問されたことに今お答えをしておきたいと思います。

 私も、社会保障費が少子高齢化の進展に伴って、自然増という形でも年間一兆円伸びている、それに対して、残念ながら税収は必ずしも伸びていない、結果的にその伸びを赤字国債という形で埋めてきているのが現在の日本のこの十年二十年続いた財政構造になっている、そのように認識をしております。

 そこで、我が党としても現在、社会保障のあり方全般と同時に、それに係る費用について消費税も含む税制全般にわたってどのように考えていくのか、このための検討の会を党としても内閣としても立ち上げているところであります。

 そして、できれば、今、中谷さん御本人からもお話がありましたように、こういうテーマは大変大変大きな課題でありますので、なかなか一党だけではそれを政治的に担い切れないというところもありますので、ぜひ与野党で共通の土俵で協議をできないかということを私も機会のあるごとに申し上げております。

 そういった意味では、今、ある意味では大変前向きの御意見をいただきましたが、そういうことが可能であれば、しっかりと受けとめて、そういう場をつくる努力をいたしたいと思っております。

中谷委員 国家の安全保障というのはいわば国民に対する最大の福祉であって、金額的にこういった一兆円ずつふえておって、国防費が、防衛費がどんどん減っているという点について、周辺国で国防費、防衛費が減っているのは日本だけですよね。中国も毎年二けた以上の伸びが二十年続いて、その結果、今回の南西海域における騒動になっております。

 防衛大臣に伺いますが、今、防衛計画大綱が作成されていますけれども、九州南西海域の島嶼部、先島諸島、ここへ部隊の配置の必要性について、今の検討状況と防衛大臣のお考えを伺います。

北澤国務大臣 お答え申し上げます。

 既に御存じかと思いますが、私も与那国を視察してその必要性を痛感しておりますので、省内で検討させ、二十三年度の概算要求、三千万の調査費を計上いたしております。

中谷委員 この点については、ぜひ、財政的な理由であるよりも我が国の国防上の理由で、政府全体で検討していただきたいと思います。

 もう一つ大事なことは、総理、先ほど日米安保だと言われましたが、ことし安保五十年ということで、私、大事なことは共同宣言を出すことよりも、自民党時代から積み上げて継続してきたこの日米の信頼関係を維持することだと思います。

 そこで総理に伺いますが、この日米安保を堅持するために何が一番大事であるかということについて、総理の認識を伺います。

菅内閣総理大臣 オバマ大統領との二度目の首脳会談の折に、私の方からは、これは日米同盟という概念で申し上げましたけれども、日米同盟をさらに深化する上では三本の柱で考えたい、一つは安全保障、一つは経済、そして一つは文化や人の交流、こういうふうに申し上げ、オバマ大統領からもそれは自分も賛成だと、こういうことをいただきました。

 日米安全保障条約という概念の中で言うときに、今の御質問にどうお答えしていいのか、中谷さんほどの専門家ではありませんので少し戸惑っておりますけれども、やはりこの安全保障条約の構造は、我が国が一定のルールのもとで基地を提供し、またその後、それに対するある意味での、いろいろな財政的な意味を含めた協力も行っているわけでありまして、そういったことと、逆に言えば、そうした米軍が、安全保障条約に決められた中で、何か有事の場合には我が国を安全保障上の立場で支えてくれる、そういう関係を、安全保障改定五十年になりますけれども、そういった信頼関係を維持していくことが必要だ、こう考えております。

中谷委員 お話がありましたが、日米関係を維持することは簡単です。決められたことを実行すること、約束を守るということであります。日米安保条約で決められたことをアメリカも守るし、日本も守っていく。

 そこで、五月の二十八日に日米両政府は、普天間基地の移転先を辺野古周辺として、具体的な位置、工法などを八月末に設定して、最終結論は秋に想定する次回の2プラス2までと言われて、最終結論を出しました。現在、この約束、協議はどういうふうになっているでしょうか。

北澤国務大臣 お話のありましたとおりの状況で、今、事務方が再三にわたって協議をしながら詰めておるところであります。

中谷委員 もう今週には日米首脳会談があるんですよね。総理は、この日米合意というものをどう認識しているのか。位置、工法の最終結論、日米間の約束の実現、これについてどう考えているのか。つまり、総理の沖縄に対する認識と理解ということについて、我が国の防衛責任者といたしまして、沖縄に海兵隊の部隊並びにヘリの基地、こういうものは必要である、そういうふうに認識しておられますか。

菅内閣総理大臣 これは、私が総理大臣に就任して、こういった質問を何度かいただきました。

 私としては、現在、沖縄に存在する米軍の海兵隊、既に計画によって、順調にいけばグアムに半分程度移転は決まっておりますけれども、そういう計画も含めて、しかし沖縄にそうした海兵隊が予定でも半数は残ることになりますけれども、そういう存在は、現在の国際情勢等から、我が国の防衛力あるいは抑止力の点で必要である、このように認識をいたしております。

中谷委員 そうですね、日米で約束したことですから。

 では、総理に伺いますが、このヘリ移転、辺野古移設を約束したことを踏まえて、内閣のすべてをかけてこのヘリポートを辺野古に移転しなければならない。それを実現するためには、内閣として、何をするのが一番大事なことだと今認識しておられますか。

菅内閣総理大臣 御承知のように、私も総理に就任する時点で、その直前、鳩山内閣で決められました五月二十八日の日米合意、これを踏まえて、この実現のために努力する、同時に、沖縄の負担軽減のために一層の努力をするということを申し上げてまいりました。

 その中で、八月の時点で、辺野古における滑走路等のあり方の実務者の会議などもありました。また、APECの折には三度目の首脳会談も行うことになっております。そういう事態であることは、もちろん私も毎日のように頭に置いて考えております。

 ただ、同時に、この問題は、沖縄の県民の皆さんの理解がないままに、日米の合意がこうだからということだけで推し進めることができる問題かといえば、それはなかなか難しいわけでありますので、何とか沖縄の皆さんの理解を得る努力をしなければならない。

 この間、沖縄の振興にかかわる協議会を久方ぶりに開いて、仲井真知事にもお出ましをいただき、そういう中でいろいろと協議もいたしております。私も実はもっと沖縄に行きたいという個人的な思いはありましたけれども、いろいろな選挙などで、我が党の姿勢も、この沖縄の問題では、率直に申し上げて、五月二十八日の合意をしっかりやるということと、やはり沖縄の県民の声をもっと聞けということと、非常に難しい問題も抱えております。

 私は、知事選の様子にもよりますけれども、その後に、現在の普天間の危険性の除去ということと、また、予定どおり進めば嘉手納以南の基地の返還、さらには、従来からの予定で、北部の演習場の半分の返還等も計画としてあり、グアムの半数の移転もありますので、そういういわばプラスの面も相当程度あるというふうに思いますので、そういうことを含めて、しっかりと沖縄の皆さんの理解が得られるよう、全力を挙げて取り組みたい。これまではいろいろな調査や関係の人には動いていただいておりますが、現地に入る機会は、まだ一度しか入っておりませんが、今後は足を運んで努力をしたい、こう考えております。

中谷委員 驚きました。何という頼りのない発言でしょう。気迫もありません。信念もありません。日米安保五十年ですよ。当時、岸首相は暴漢に刺されてまでこの条約を締結して、国の責任を果たしたわけでございます。

 その点で、私は、沖縄の信頼をかち取るには政府の確固たる信念だと思います。そして、沖縄県知事との盟友というか信頼関係です。沖縄の県知事と、今、政府は一体どういう信頼関係にあるんでしょうか。まず信頼関係の構築でしょう。そして、現職の知事さんとやはり腹を割って、ともに国のためにお願いをするという意思で、心からお願いしなければなりません。

 総理は、今、沖縄の県知事選挙が済んでからというような趣旨を言われましたが、今沖縄で戦っているのは絶対反対の伊波候補と現職の何とかしたいという候補の戦いでございますが、民主党は、この日米間の合意をした責任がある上においては、この県知事選挙、どっちの候補を応援するのか、この点について自明であります。現職の知事さんと信頼関係を持って、何とか政府の思いを実現しなければならないわけでありますが、どっちの候補を応援するつもりですか、総理に伺います。

北澤国務大臣 私は、党の立場を代表する立場ではございませんが、沖縄との信頼関係ということについて申し上げます。

 今は、間もなく告示になるわけでありまして、今、現職の知事はどの政党の推薦も要らない、こういうことを言っております。ここに沖縄の苦悩があり、政府と沖縄との間の信頼関係の難しさがあるというふうに思っております。

 今お話しのように、仲井真知事がどういう立場にいるかということになれば、これは……(発言する者あり)

中井委員長 防衛大臣、公明党さんが推薦していると言っている。

北澤国務大臣 大変失礼いたしました。公明党さんは推薦をされております━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 我々は、そういう意味では、この選挙戦を静かに見て、そして県民が選んだ知事に対して誠心誠意、政府の……(発言する者あり)

中井委員長 御静粛に。

中谷委員 今の答弁でわかりますように、民主党のこの姿勢ですね、中途半端が一番いけません。アメリカも、あなたの、菅内閣の考え方、行動をじっと見ています。今の態度が、全く沖縄問題を進める気がないというふうに映っても仕方ないんです。メッセージが発せられています。こういう中で首脳会談が行われる。一体、オバマ大統領に総理は何と言うのか。

 この選挙で現職が勝つしかないんですよ。その点をしっかり踏まえて、国の安全保障をしっかり総理に担っていただくことをお願いいたしまして、質問を終わります。

 以上です。

中井委員長 これにて中谷君の質疑は終了いたしました。

 次に、菅原一秀君。

    〔委員長退席、川内委員長代理着席〕

菅原委員 自民党の菅原一秀でございます。

 私は、地元選挙区が東京の練馬区、菅総理のお隣でございまして、いわば隣組。その隣組の地元で朝二十年間も街頭活動をやってきましたが、街頭に立っておりますと、つい先日までは、保育園をふやしてほしい、あるいは特養が必要だと、いわば身近な問題が多かったんですね。ところが、昨今私のところに届く声は、日本がこのままじゃ危ない、この国はどうにかなってしまう、子供の未来が心配だ、そういう声が圧倒的にふえてきているんですね。

 昨年の政権交代、これはある意味では、当時私は、日本の政治史にとっては一つの必然であった、こう思ったわけです。ところが、一年二カ月たちまして、多くの国民の皆様がお感じになっていらっしゃるように、あれは必然ではなくて偶然であった、そういう思いに今駆られているわけであります。

 きょうから折しも、APECの閣僚会議が始まりました。ところが、菅政権、足元を見れば、円高、デフレ対策に静観、無為無策、そしてこの一連の尖閣の問題のまさに不作為、北方領土問題に関しても全く打つ手がない、そしてビデオの流出や公安情報の流出等、まさに次から次にこの政権において日本の国益を損なうような負の連鎖が続いてしまっていることは、私はまさにざんきにたえない。

 ですから、この政治、この民主党政権、一日も早く返上していただかなければいけない。そのことが昨今の菅内閣三〇%という支持率にもつながっている。これは多分、年末に、つるべ落としじゃありませんが、どんどん下がっていくのではないか、そう多くの国民が感じていらっしゃるのではないか。まさに政権担当能力がない、そういう国民の声がこういう数字にあらわれている。

 尖閣問題について質問をさせていただきます。

 一昨日、私も、予算委員会の一メンバーとして六分五十秒のビデオを見ました。このビデオを見て、改めて、何で、このビデオはもとより、三時間半のビデオを全国民に見せることができないのか、そう思ったわけです。

 まず冒頭、仙谷官房長官、六分五十秒に抄録をした。長いものを短いものにするということは、いわば肝を、そのポイントをそこにあらわすというのが当然だと思うんですが、そこには責任者として編集の作為はなかったんでしょうね。確認をしておきます。

仙谷国務大臣 今の御質問に端的にお答えするとすれば、那覇地検、海上保安庁が、刑事訴訟法四十七条のただし書きの「相当」と思われる、そういう範囲を抽出して、DVDを作成して国会に提出した、そういうふうに私どもは考えております。

菅原委員 毎度毎度の刑事訴訟法四十七条、これは後で聞きます。

 私が申し上げたのは、この三時間半のVTRを編集するということは、そこに編集者の意思はなかったんでしょうねと。あったら重大問題だから聞いているわけですよ。どうですか。

仙谷国務大臣 先般から申し上げているように、国会に捜査報告書を提出した前例がありますけれども、それと同じように相当の範囲と考えて、DVDを作成して国会に提出した、こういうことであります。

菅原委員 きょうは、海上保安庁長官がお見えであると思います。

 当初、船がぶつかったその日、DVDを編集してこれをマスコミ報道に流そう、そういう準備を進めていた、たまたまきょう読売新聞を見ましたら、そういう記事が書いていた。当初、海上保安庁は、DVDにおさめて一般に公開しようという準備を進めていたんじゃないですか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 私どもとしては、事件当日に政府内の関係者の視聴用に約五分のDVDを作成して、それを関係者で視聴しておりました。

菅原委員 記憶のある人もいらっしゃるかもしれませんが、九年前、平成十三年、奄美大島の沖合で北朝鮮の不審船がまさに銃撃戦に転じた。あのとき、海上保安庁、その事件の二日後に国民に公開したじゃないですか。何で今回公開しないんですか。公開しても当然だという感覚、間違っていますか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの北朝鮮の工作船事件につきましては、私どもの巡視船が船に当たらないような威嚇射撃をしておりましたところ、工作船側が突然発砲して、私どもの船橋等を撃ってまいりましたので、これを正当防衛射撃で撃ち返しました。そうしたところ、工作船は自爆をして沈没した、こういう事案であります。

 これにつきましては、その正当防衛射撃をした瞬間を私どもの保安官が間近で撮っておりましたので、これはぜひ公開しないと、正当防衛射撃の正当性がこの場合は大変重要な問題でありますので、これは、先生おっしゃるように、その直後に公開したということであります。

菅原委員 海上保安庁の要員が命がけで海で日本を守っている、それはよく理解をしております。しかし、あのときは、銃撃戦をやった、そのことを二日後に公開していながら、今回我が国が、海上保安庁の船が中国船にぶつけられて、そしてそれを出さないというのは、本末転倒、おかしいですよ。このことは聞いても多分限界がある。

 総理に聞きます。きょうのこの読売新聞の記事の中にある、いわゆる官邸サイドの意向が働いたから中止になった、この記事、どうとらえますか。

仙谷国務大臣 中止になったというのは何が中止になったんですか。

菅原委員 読売新聞の記事に、よく長官が野党時代に報道によればと言っていたことを用いれば、きょうの新聞に、官邸サイドから中止、いわばDVDを作成しようとしていた海上保安庁の、今回の事案に関して、事件のVTRをDVDにおさめようと準備を進めていた、そのことが官邸サイドの何らかの力で中止になった、そういう記事があるんですが、これは事実関係はどうなんですか、そう聞いているわけです。

仙谷国務大臣 全く承知しておりません。

菅原委員 都合が悪くなると、承知していないとか覚えていないとか、いろいろあります。

 そこで、今回のこの九月七日に起きた衝突事件、若干経緯をひもといてみますと、まず七日に事件が発生した。その後、船長を逮捕した。そして、二十五日の未明に処分保留で中国に帰した。その後に、九月の二十九日と三十日に民主党の細野豪志衆議院議員が中国に行っていらっしゃる。九月三十日には、この予算委員会でいわばビデオを公開すべき、いわゆるこの当委員会に提出すべきであるということを全会一致で決めたわけですよね。そのときに、同じ日に、フジタの四人、拘束されていた三人が無事に解放された。ところが、細野議員が帰ってきてそのまた翌日、十月一日にビデオの提出の取り扱いが官房長官に一任をされたわけですよ。その一任をされた後、今日に至るまで非公開になっている、こういう状況がまずあります。

 ところで、官房長官、一昨日、この予算委員会の答弁の中で、ユーチューブで流れた四十四分間ビデオは、専門家が見れば国家機密のところがある、こういう答弁をされました。具体的にどこが国家機密なのか。多分、こういう質問をすると、それは国家機密だから答えられない、こう言うんだと思いますが、どこが国家機密なんですか。

    〔川内委員長代理退席、委員長着席〕

仙谷国務大臣 多分、専門家、つまり海上の警備・取り締まり活動に従事する専門家等の目から見ると、追跡や規制や捕捉に係る一連の方法、あるいは証拠をとる採証用の資機材の種類やその取り扱いの方法等に関する情報、あるいは職務に従事している海上保安官を特定する情報、そういうものが、これは専門家が見ればわかる部分が大分あるわけでございまして、多分これは秘匿を要する情報ということになろうと思います。

菅原委員 その部分が長官が言われる国家機密であるとするならば、そこの部分だけ消して全面公開したらどうですか、テープを。どうですか。

仙谷国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、全面公開という趣旨が、もう少し皆さん方、限定的に指摘をしていただきたいと思うんです。

 三時間三十分のテープを全部国会に提出せよということなのか、国会で国会議員全員にそれを映写して見せろということなのか、さらに進んでマスコミ各社にお配りをせよということなのか、あるいはユーチューブに我々が投稿せよということなのか、あるいはホームページに我々がアップせよということなのか、何を指して全面公開と言っていらっしゃるのかよくわかりません。

菅原委員 わからないのは理解不足。今長官がおっしゃった三時間三十分のビデオの全面公開を初め、おっしゃったことをすべてやればいいんですよ。あるいは、やるかどうかを委員会あるいは国会で議論すればいいじゃないですか。何だかへ理屈ばかり言って。

 総理に聞きます。総理、いいですか。あなたは、塩崎委員のおとといの質問に対して、このビデオを見ていない、塩崎委員もたまげた、こう言っていたわけですけれども、これだけ大問題になって、日本の主権がどうなるかわからない大変厳しい状況になっている、APECもある。この期に及んで、いまだにこのビデオを見ていないというのは、国の最高責任者として失格じゃないですか。どう考えますか。忙しいんですか。

菅内閣総理大臣 先日もこの委員会でお答えしたと思いますけれども、国会に提出をされることになった日の朝、皆さんが見られたものと同じものを見ました。

 ユーチューブに載ったものそのものは見ておりませんが、そのものをベースにした報道での画像は数多く拝見しました。

菅原委員 総理も、朝早く起きて報道番組をごらんになるのはいいと思います。ただ、この委員会で取り上げられた四十四分のユーチューブに投稿された今般のビデオ、これは、長官は見ていらっしゃるの。だれも見ていないの。この閣僚で見ている人、手を挙げてください。二人。

 総理、あなたが見ないでこれはどうするんですか。いいですか。ここ数日の総理の予定を、総理の一日というのがありますね。十一月の五日、平河町のすし屋で夜八時から十一時、三時間、スタッフと食事。十一月七日、神楽坂の日本料理屋で側近議員と、これまた六時四十分から三時間食事。フランス料理でさえコースで二時間、一時間で四十四分のビデオを見るくらいの、そういう熱心さ、国に対する取り組みがあってしかるべきじゃないですか。どうですか。

菅内閣総理大臣 何か少し、私はこの御質問の趣旨がどういうところに向いているのかよくわからないんですが、冒頭といいましょうか、この事件が起きて最初のときにもそうした質問がありました。その段階では、私、見ておりませんでしたので、そのことを申し上げました。

 ただ、見ていないということと、その中身について承知していないということとは全く違います。当時の国交大臣と官房長官が見て、これは明らかに故意にぶつけたんだ、そういうことを私にきちんと報告がありましたので、私もそのお二人の報告を、信頼する大臣でありますから、そのことを私もそのとおりだという認識を持ったということも申し上げました。

 そして、今回においても、今申し上げたように、国会に提出をするということで、私がその日の朝に拝見をいたしました。

 これは、菅原さん、私もその都度いろいろ考えました。それで、多少、私の中でいろいろ考えたのは、一般の行政情報で、例えば私が厚生大臣のときに、これは出していいか悪いか厚生大臣として判断できるものと、今回の場合は捜査ということで、検察なり裁判所の手続が、早い段階からそういうことが絡んだわけであります。そういうときに、果たしてそういったルールを超えるというか、どういう形でそれに対応すべきかということは、私は、基本的には捜査に関することは捜査当局でまず一義的には対応すべきだろうと。

 そこで、先ほど申し上げたように、那覇地検が国会の要請にこたえて、いわゆる捜査に絡むものではあるけれども、例外的にそれを公にすることを認め、そして、たしか国会法の百四条ですか、それによって、内閣としてもそれを国会に出すことを認めるという段階で、内閣の責任者としてはきちんと拝見をいたしました。

菅原委員 全く為政者としての意識、希薄である、つくづくそう思いますね。

 九月の二十一日、中国の報道局の姜副局長、海上保安庁に対して、事故のビデオを最初から最後まで一部始終公開するよう求めてきているんですよ。あのときにその言質をとって公開しておけば、中国のさまざまな今回の事案が赤裸々になっていた。この時期をとらえて、何でこれを公開しなかったんですか。

仙谷国務大臣 正式に外交ルートを通じてそういう申し入れがあったというふうには聞いておりません。

松本副大臣 今官房長官がおっしゃったとおりでありますが、御指摘の報道官の発表というのは、私どもが承知をしている限りは、ビデオを公開する場合はいたずらに編集をするなというような趣旨での御発言であったというふうに理解をしております。

菅原委員 その前文は私も承知をしております。ただし、その後段で、このビデオを最初から最後まで一部始終公開するようと、向こうの会見の場で公に言っているわけですよ。この言葉をとらえて公開しておけば、今日のようにダッチロールしなくたって済んだんですよ。そもそもが間違っている。

 仙谷官房長官、よく、この話をするときに、刑事訴訟法四十七条、この話をされます。捜査が決着していないときにこの証拠をオープンにすることは、原則、あり得ない、こういう答弁を何度も繰り返してきました。今も、この点、同じですか。

仙谷国務大臣 捜査というのは密行性が保障されなければ成り立たないことは、菅原先生も御承知だろうと思います。つまり、捜査に関する書類は、公判廷以外では、原則として、他の何らかしかるべき手続がなければこれを公開することはあり得ないということであります。

菅原委員 今おっしゃった長官の答弁は、四十七条の、まあ文章に主従があるとするなら主の部分。ただし書きがあるのは御存じですね。ただし書きは、四十七条、公益上必要その他の事由があればというただし書きがある。

 我が国の海保の船がぶつけられた、このことが、公益上、何も我が国の国益を損なうものではないと長官は理解をしているんですか。この点についての見解をただしたい。

仙谷国務大臣 この「公益上の必要その他の事由があつて、」というくだりは、要するに、公開することあるいは公開禁止の規定を破ることに法益の権衡上意味がある、必要性があるという場合でありまして、それをある種、行政なら行政、あるいは検察官なら検察官が、勝手にと言うと語弊がありますけれども、恣意的に判断をするということもまた慎まなければならないことは当然のことであります。

菅原委員 今長官がおっしゃったのは、捜査当局の方々が厳に慎まなきゃいかぬ、我々は政治家ですよ。国民の利益を守り、生命財産を守っている。我が国の海保の船がぶつけられて、公益上の事由、必要性がないという認識を菅政権の総理も長官も持っているとするならば、これは大問題ですよ。おかしいですよ。

 もう一回ただします。

仙谷国務大臣 法律をよくごらんいただければわかると思うんですが、四十七条の判断をする主体は、これは訴訟関係書類の保管者、つまり検察庁ということになります。

 それから、もう一点、ちょっと菅原先生の今の議論で、私、気になりますのは、政治家といえども、あるいは総理大臣といえども、すべてオールマイティーではありません。法律に従って、そして判断をする、おのずから、権力行使についてはみずから謙抑的でなければならない、とりわけ行政権力、政治権力と刑事司法との関係というのは、これは非常にセンシティブであるということもまた御承知おきいただきたいと思います。

菅原委員 長官は、答弁、いろいろと個性があってよろしいかと思います。みずから、民主党外交を柳に例えられました。しかし、どんなにしなやかで、どんなに強い柳でも、強い風が吹けばぽきっと折れることがある。しかし、日本の外交の背骨は折らないでいただきたい、このことを強く申し上げておきたい。

 時間がもうあと数分となりました。子ども手当のことをお尋ねいたします。

 民主党のこのマニフェストというのは、まさに天下りは裏下りで、一年間で千五百五十人も天下りをさせている。企業・団体献金は、小沢さんが再開すると言うならわかるけれども、岡田さんが再開すると言うのもよくわからない。国家公務員の人件費も二割削減、これも結局、一・五%人勧にとどめてしまっている。そして年金制度も、最低保障年金を政権交代したら七万円出すと言っていた。後期高齢者医療制度も即刻やめると言っていた。やったのは、高校の無償化だけ。まさにこれは、マニフェストではなくて詐欺フェストですよ、本当にもう。

 そこで、この子ども手当、最後に申し上げたい。

 二万六千円と言ったのが、きのう細川大臣が突然出てこられて発言されました。あの答弁を聞いていると、二万六千円を来年、再来年もうやめる、ホールドアップというふうにとれます。あわせて、今回、この図にありますように、いわゆる給与所得者の平均給与額が四百五万、これが扶養控除が廃止になると、子供、三歳未満が二人いると、三万七千円マイナスになる。それから、来年さらに配偶者控除が廃止になると、九万一千五百円、これだけマイナスになる。

 子ども手当を出して、まさに負担、そしてまたマイナスの方が大きい、この現実について、どうお考えがありますか。

細川国務大臣 先ほど、私が突然出まして、子ども手当について、その定義などについて話があったというふうにお話がありましたけれども、あれは、委員長の方から、統一見解としてこの委員会で出せ、こういう御指名でありましたから、私はあそこで子ども手当について話をさせていただいたわけでありまして、突然、私が勝手にやったわけではございません。

 それで、子ども手当については、二万六千円、それは来年度からということで、二〇〇九年のマニフェストには書いております、ことしは一万三千円でありますけれども。それについて、先ほどの、七月の参議院選挙のときには、この一万三千円に上乗せをいたします、こういうことを書いてあります。

 そこで、私どもといたしましては、これからこの上乗せについてどのように上乗せをしていくのか、これについて、今、来年度の予算編成の過程でこれを決めていく、こういうことを以前から申し上げているところでございます。

中井委員長 菅原君、時間が来ていますから、これで終わってください。

菅原委員 はい。

 二〇〇九年マニフェストを、菅総理は代表選のときに、誠実に取り組むとおっしゃったばかり……

中井委員長 まとめてくださいよ、質問じゃなしに。まとめてくださいよ。

菅原委員 そして、玄葉戦略相は、参議院の一〇年のマニフェスト、これを修正、まあ二階建てにすると。つまり、〇九年のマニフェストに加えて、足りない部分は一〇年の参議院のマニフェストを二階建てにする、修正すると。総理の見解と違うんですよね。この点だけただしておきます。

中井委員長 いや、もうただす時間ありません。

菅原委員 では、次の質問でやらせていただきます。

 ありがとうございました。

中井委員長 これにて菅原君の質疑は終わりました。

 次に、小泉進次郎君。

小泉(進)委員 自由民主党の小泉進次郎です。

 きょうは、若輩者で新人の私に三十分の時間をいただきまして、ありがとうございます。

 時間も三十分しかありませんので、まず、海上保安庁長官に事実確認をさせていただきたいと思います。

 きょうの昼に、第五管区海上保安本部の職員が上司に、私がビデオを流出させた、そういう申し出があったというニュースが流れました。先ほどの答弁の中で明らかになった事実関係をもう一度確認したいんですが、朝の九時にその職員が上司、つまり船長に自分がやったと申し出た。そして、九時半に海上保安庁長官は職員が船長に申し出たという事実を知った。そして、昼にその職員が事情聴取を受けているという事実を長官は知った。この事実に間違いはありませんか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 御質問があったとおり、本日九時ごろ、巡視船の船上で船長に対してそういう報告がなされ、私に対しては九時半ごろ、第五管区海上保安本部長から報告があり、その後私はこの委員会に出席しておりましたので、昼休みの間に事情聴取が行われている旨報告を受けました。

小泉(進)委員 海上保安庁は、今回の告発に至るまで、内部調査をしたと伺っております。この内部調査で神戸の第五管区は入らなかったのでしょうか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 私どもは、流出を発見した五日の早朝から、第十一管区本部及び石垣海上保安部に本庁から八名の担当官を派遣いたしまして、そちらで調査を行っておりました。

小泉(進)委員 もう一度正確に確認したいんですが、神戸は内部調査をしていないということでよろしいですか。

鈴木政府参考人 失礼しました。

 神戸保安部は調査をしておりませんでした。

小泉(進)委員 調査をしていない神戸。神戸にこのビデオがある理由は何ですか。

鈴木政府参考人 それはただいま捜査中でありますので、お答えを差し控えさせていただきます。

小泉(進)委員 先ほどの答弁で、長官は研修用のビデオはないとおっしゃいました。研修用のビデオはないのかもしれません。勉強用、もしくは今後の参考になるためのビデオはあるんでしょうか。

鈴木政府参考人 石垣海上保安部で那覇地検に提出するためにつくったビデオはございましたが、その後は承知しておりません。

小泉(進)委員 では、そのビデオを神戸の第五管区海上保安本部の職員が見られる可能性があったということでよろしいですか。

鈴木政府参考人 そこのところも含めまして、今捜査中だと思っております。

小泉(進)委員 答えられる範囲に限界があると思いますが、きょう明らかになった事実としては、海上保安庁の第五管区の職員が、みずからが流出をさせたということを認めた、この事実に間違いはありません。

 つまり、この職員に対する上司、これは船長。船長の上司は長官。長官のまた上司は国交大臣。責任をどう考えておられますか。

馬淵国務大臣 現在、捜査中でございます。事情聴取が捜査当局によって行われていると。

 まずは、私どもは、この捜査を徹底すること、それに協力すること。捜査機関が今やっております。私どもはそれに協力すること。原因の徹底解明、これが私どもが国民の皆様方に示す責任であると考えております。

小泉(進)委員 国交大臣にもう一度お伺いしますが、職員がビデオを流出させたという事実は明らかになったわけです。そのことに対して、責任者である大臣としての答弁をお願いします。

馬淵国務大臣 報告を受けて、現在、捜査当局が事情聴取を行っているということです。

 その事実については、捜査が当然ながら一定程度進んで確認されなければ、それを認めることができないというふうに私は思っております。

 現時点においては、私どもの職員がそのようなことを行ったという事実も含めて捜査中である、そういう状況であると認識しております。

小泉(進)委員 最後にもう一度長官に確認をさせていただきたいと思いますが、研修用のビデオはないけれども、今回、内部調査が入らなかった神戸とか、そういうところの職員が見られる可能性があったビデオはあった、それで確認させていただいてよろしいですか。

鈴木政府参考人 石垣保安部で編集して那覇地検に提出したビデオはございましたが、それ以上のことは私どもも存じておりません。

小泉(進)委員 私は、今回のこの件を考えるにつけて、なぜもっと早く公開をしなかったのか。そもそもはそこなんです。

 総理大臣にお伺いをします。

 今回の、きょう、職員がみずからが流したというこの一報を受けて、もっと早く公開すればよかった、こう思いませんか。

菅内閣総理大臣 私は、何度も、お聞きになっていたと思いますが、今回の一連の経緯の中で、一般の行政情報の扱い、例えば、大臣が自分の判断で表に出してもいい、やめておこうということができるものと、今回のように、捜査が絡んで捜査上の資料という位置づけになったものをどう扱うのか。

 私も、総理という立場ではありますけれども、捜査に関連するものについて、個別案件にどこまでこうしろ、ああしろと言えるのかというのは、第一義的にはやはり捜査担当の捜査当局が判断すべきものだと思っております。

 そういう意味で、今回の情報の開示については、一定の手続のもとに地検が例外的な措置を認める形でこの委員会に出したわけであります。ですから、私は、そういった手続のもとでやられたことでありますから、必ずしも、そういう手続を無視する形で公開すべきであったとは思っておりません。

小泉(進)委員 最後のところだけ端的にお答えください。もっと早く公開すべきだとは思いましたか、思いませんでしたか。

菅内閣総理大臣 ただいまお答えしたとおりです。

小泉(進)委員 ただいまお答えしたとおりにお答えください。

菅内閣総理大臣 やはり一定の手続を抜きにして公開するということにはならなかったし、すべきではなかったと思っております。

小泉(進)委員 では、一定の手続を経ない形で公開すべきではなかったということ、つまり、今の今まで公開しない、その判断は正しかったという認識で構いませんか。

菅内閣総理大臣 やはり日本は法治国家でありますから、先ほど官房長官から、たとえ総理大臣といえどもというような言葉もありましたけれども、私は、先ほど申し上げましたように、大臣なり総理大臣が自由に判断できる種類のものなのか、捜査に関連したものであって捜査当局の判断を一義的に尊重すべきものなのか、そういうことを含めて、今申し上げましたように、一定の手続を抜きにして公開するということは、やはりそれはふさわしくなかったと考えております。

小泉(進)委員 それでは、公開していないメリットは何だと思いますか。

菅内閣総理大臣 メリットという言い方には、いろいろな種類があります。しかし、今申し上げたように、法律にのっとってやるべきことを法律にのっとらないでやるというのは、少なくとも、私の今の立場では、それ以上にメリットがあるから法律にのっとらなくてもやっていい、そういう議論にはなりません。

 ですから、私は、先ほどから申し上げていますように、捜査当局というものが関連して幾つかのそういう法律規定があった場合には、その法律にのっとって公開すべきということになって、公開されたものは現実に今回もあるわけですけれども、そういう形でない形で公開する、それは、メリット、デメリットというよりは、法律にのっとって行動するか、法律を無視して行動するかの差じゃないでしょうか。

小泉(進)委員 そのすりかえの議論はやめてください。メリット、デメリットは関係ないみたいなことを言いますが、きのう、仙谷官房長官が上から撮られた資料、メリット、デメリット、書いてあるじゃないですか。全然言っていることが違いますよ。

 しかも、またすりかえの議論で、法律をすっ飛ばして公開するなんということはどうかと言いますけれども、私は、法律に基づいて一般公開すべきだと言っているんですよ。全然、総理の答弁の認識のベースが違います。

 改めて伺いますが、きのう仙谷官房長官が総理大臣に委員会中に見せた厳秘の資料、個人的な私物のメモと言いましたが、そこにはメリット、デメリットと書いてあったんです。ですから、総理はそれを見ているんですよ。公開しないメリットは何ですか。

仙谷国務大臣 昨日、スクープをされたというんでしょうか、新聞紙上ででかでかと私の私的メモが出たわけですが、それとは関係なしに現時点でメリット、デメリット、こういうことを考えますと、私は、最大のデメリットは、犯罪組成物件を、その可能性のあるものを政府がみずから公開する、つまりお墨つきを与えるということになる、これはもう最大のデメリットになると思います。

小泉(進)委員 きのうの仙谷官房長官の読売新聞にスクープされた資料、その中で、公開しないメリット、これは、犯人の量刑が下がるおそれがある。犯人というのは、つまり、きょう、海上保安庁の職員、自分で上司に申し出た職員のことが今回のこの犯人に当たるわけですが、この方の量刑が下がるおそれがあることが一般公開をするデメリットだ、その認識に変わりありませんか。

仙谷国務大臣 そういうことも一つの要素に考えておかなければいけないことだと私は思います。

 ただ、今、どういう犯罪を想定しているのかわかりませんが、まだ、強制捜査が始まっているのかどうか、私は確認しておりませんが、事件の深さとか広さとか、そういうものについて、今の段階から予断を持ってあれやこれや私の方から申し述べることはできません。

小泉(進)委員 今私が言ったデメリット、それも一つあるという官房長官の答弁でした。

 それでは、公開しないデメリットをどう考えていますか。

仙谷国務大臣 いっとき情報公開というと、先ほどから私は、我が党のマニフェストについて、情報公開というのは非常に、ある種、情報の種類によってもこれは限定的、それから情報の種類や時期によっても情報を公開するかどうかは限定的、それから手続が必要なものもあればそうでないものもある、情報公開というのはそういうことだと思います。

 先ほどから総理もおっしゃっておりますように、行政情報といえば全部行政情報と言えないことはありませんけれども、その中には、外務もあれば、防衛もあれば、それから刑事事件の情報もあれば、行政訴訟の情報もあれば、いろいろな情報があると思います。それぞれがやはり別異の扱い、つまりレベルの違う扱いをされなければならないと思います。

 先般、我が党が政権交代をしてから、外務省関係の古い書類、古い情報を公開したということがありました。今まで自民党政権下では全部封ぜられたものを公開したということがありました。

 情報公開というのは、そういうふうに整理をして考えないと、一般的に、公開した方がメリットがある、デメリットがあるということにはならないと思います。

小泉(進)委員 私は、情報公開とか聞いていませんよ。デメリットは何ですかと聞いているんです。

 デメリットは何ですかといったときに、公開しないデメリット、これは言葉をかえると公開するメリットです。公開するメリット。これは、きのうの厳秘の資料の中に官房長官はこう書いていますよ。中国の日本批判を退けることができる。これは大きなメリットじゃないですか。このメリットは考慮に入れなかったということですか。

仙谷国務大臣 そのことだけを取り出して単純に比較するような話ではないと思います。

 だから、そういう点も一要素です。

 先ほど、デメリットは何ですかという話ですから、これだけの情報化社会ですから、特に報道機関、特に電波メディアを扱う報道機関にとっては、ある種、中長期的な国益問題よりも現時点でのこの種のものを流したいという、当然のことながらビジネス的な欲望がおありになるでしょうから、我々に対して批判的になる、そういうデメリットはあると私は考えております。

小泉(進)委員 きょう午前中の自民党の岩屋議員との質疑の中で、官房長官の答弁が一つありました。岩屋議員も、この中国の日本批判を退けることができるというメリットについて官房長官に質問しました。このメリットの方に重きを置いていただいて、公開をするお考えはありませんか、官房長官のお答え、全く立場及び考えを異にすると思いますと。

 つまり、中国の日本批判を退けることができるというメリットと、犯人の量刑が下がるかもしれないおそれというデメリット、これを勘案したときに、なぜ中国の日本批判を退けることができるというメリットを国益ととられないのか私はわからない。

仙谷国務大臣 これは官房長官というよりも、割と個人的な色彩が強いと思って考えていただければいいんですが、私どもは法廷で白黒をつけることだけを考えていいわけではないと思っています。

 さてそこで、先ほどの岩屋議員の質問にお答えしたときは、現時点でそういうふうに考えるとすればどうかと、そういう現時点での私の総合的な判断から、今小泉さんが読まれたような特典はあっても、それを上回る、つまり法廷で白黒つける立場じゃありませんから、それを上回るデメリットが大きいだろう、こういう判断を私としてはしているつもりであります。

小泉(進)委員 総理に聞きます。

 総理は、きのう官房長官から見せてもらった厳秘のメリット、デメリット、中国に対して、日本は悪くない、今回は中国に非がある、これをはっきり証明できることは国益以外の何物でもないじゃないですか。菅総理は、そういう考えはないんですか。

菅内閣総理大臣 何度も申し上げておりますが、私は、最初のこの事案が発生した折に、当時の国交大臣、そして官房長官から、これはわざとぶつけてきた、悪質であるということを聞きまして、その認識を共有化いたしました。今回の流出したビデオでそれがよりはっきりしたということは客観的には言えると思います。また、既に国会に提出されたものにおいても、その点がかなりはっきりわかっていると思います。

 そのことと、そういう資料が表に出たから政府として一定の手続を経ないで出すべきという考え方を先ほどは聞かれたと思ったものですから、私は、これは法律にものっとっての判断が必要だということを申し上げたんです。そうしたら、小泉議員は、いやいや、一定の手続をとればいいと言われましたから、それは一定の手続をとるには、まさに一定の手続が必要なので、この場合は、例えば、さきの地検に対して、この予算委員会の皆さんがこれは例外的に公にすべきだということを手続をとられた中で、最終的には地検もそういうことを判断し、その上で政府としても百四条に基づく形で提供いたしたわけであります。

 そういったことで……(発言する者あり)ちょっとやじをとめてもらえませんか、少し。

中井委員長 とめてもとまりませんから、気にせずにどうぞ。

菅内閣総理大臣 せっかく小泉さんとはまともにちゃんと議論しようと思っているんですが、余りにもやじの声が大きくて、ちょっと十分ではなかったかもしれませんが、そういった形で私は考えて行動をいたしております。

小泉(進)委員 本当にはっきりしない答弁なんですよ。

 そもそも、もっと早く公開していれば流出事件も起きなかったんですよ。そして、官房長官が言ったメリット、早く公開していれば、中国の日本非難だって、国際社会にそんな非難は当たらないと説得することができたじゃないですか。そのそもそもの部分なんです。今回、もっと早く公開していたら、こんなことにはならなかったんですよ。

 総理にお伺いしますが、きょう、海保の職員がみずから上司に名乗り出た、この時点で、責任は感じませんか。

菅内閣総理大臣 これも何度かこの場でも申し上げましたが、まず、海保が告発をする段階で、やはり、国家公務員からの情報流出の可能性が高いということを私も認識いたしましたので、そういう形で流出した、あるいは、犯人がだれであったとしても、本来は出るべきでない情報が、公の情報が流出したことについては大変遺憾だ、国民の皆さんに申しわけない、こういう思いについては明確にいたしました。

 ただ、先ほど言われたように、もっと早い時点ということを言われますけれども、事案が起きて、そう時間を置かないで逮捕状が請求され、逮捕がされて、事実上、捜査機関に一つの一義的な捜査の責任が移ったわけでありまして、あるいはその前のことを言われているのかもしれませんけれども、少なくとも、捜査段階に入った場合には一定の手続が必要になるということを何度も申し上げているところです。

小泉(進)委員 それでは、まだ捜査中ですが、この職員の申し出のとおり、海保の職員が流出をさせたものだった場合、責任の所在はどこにありますか。

菅内閣総理大臣 まず、二つの責任があるかと思います。

 一つは、やはり管理責任。これはもちろん、直接担当したいろいろな部局がありますけれども、それは、最終的には、内閣の責任者は私ですから、管理責任が不十分だったことについての最終的責任は私自身にも当然あろうと思っております。

 それから、犯人といいましょうか、流出した当事者が国家公務員であった場合には、もちろん本人自身の責任がその行為に対しては重いわけですけれども、そういうことを防げなかったという意味を含めて、やはり同じく、国家公務員を監督する立場にある、最終的には私、直接的にはそれぞれの部局にそれなりの責任がある、こう認識をいたしております。

小泉(進)委員 今、二つの責任を言っていただきました。管理責任と、直接的な、本人から、またその上司、それを管轄する大臣の責任。この二つを今、菅総理は言ったと思います。これは、どういう形で、ちゃんとけじめをつけてくれるんですか。

菅内閣総理大臣 今、捜査が進展したという言い方がいいのかどうかわかりませんが、本人の申し出があって、かなり捜査が進展していますけれども、まだ、いろいろなことが確定的になったわけではありません。責任の、ある意味での問題は、もう少しこの捜査の結果が、そう時間はかからないと思いますけれども、はっきりした段階で検討する、議論する必要があろう、こう思っております。

小泉(進)委員 そろそろ時間ですが、私は、今回の事件を通して、菅政権だけじゃないです、鳩山政権から始まっている民主党政権、外交に対する重みが全然ないんですよ。雇用、雇用、雇用、そして景気、景気、景気と。景気も大事、雇用も大事ですよ。しかし、平和な環境が築かれるからこそ、国民は安心して経済活動を営むことができるんじゃないですか。その外交に対する思いが全くないんですよ。

 ぜひ、この今回の流出事件、これを契機に、もう一度、外交の体制、そして情報管理、機密管理、この体制をしっかりと築いていただきたい。それを心から申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

中井委員長 これにて小泉君の質疑は終了いたしました。

 次に、遠山清彦君。

遠山委員 公明党の遠山清彦でございます。

 衆議院の予算委員会で質疑をさせていただくのはきょうが初めてでございまして、以前は参議院に七年おりましたけれども。

 きょうは、最初は紳士的に始めようと思っておりましたが、先ほど、午後の質疑、自民党の中谷議員と北澤防衛大臣のやりとりの中で、我が党にとりましては看過できない暴言がございました。防衛大臣、もうすぐこちらに来られるかと思いますが……

中井委員長 今、来ました。

遠山委員 はい、わかりました。

 先ほどの防衛大臣の発言、正確を期すために、速記部にお願いをして、いただきましたので、ちょっと引用させていただきます。

 防衛大臣、大臣は先ほど、沖縄の、あす告示の県知事選挙につきまして、現職の知事はどの政党の推薦も要らない、こういうことを言っておりますと発言をされました。

 私ども公明党は、十月二十一日の中央幹事会で、仲井真知事候補を推薦決定いたしまして、十月二十六日、沖縄県那覇市でその推薦状を手渡しております。手渡したのは私です。私が公明党の沖縄方面議長を今させていただいておりまして、私が直接、仲井真さんに手渡しました。そのことを大臣の御答弁の最中に、やじではございますが申し上げましたら、委員長のお計らいで大臣に注意喚起をしていただきました。

 ところが、その後、大臣、何とおっしゃったか。大変失礼いたしました、ここはいいでしょう。その後、公明党さんは推薦をされておりますが、今二大政党の中で自民党と民主党のことを申し上げたわけですと。では、自民党と民主党以外、政党じゃないんですか。

 大体……(発言する者あり)うるさい、黙ってろ。

 大臣が最初に言った発言、何と言ったか。どの政党の推薦も要らないと。公明党が推薦しているじゃないですか。仲井真さんから推薦依頼が来たんですよ。推薦したんですよ。大変失礼いたしましたと謝っているけれども、その後さらに失礼なことを言っているじゃないか。

 こういう発言を、防衛大臣、何となく言っちゃったと思いますよ。しかし、そこにわきの甘さがあるんですよ。

 大臣、撤回、訂正、謝罪してください。

北澤国務大臣 ただいま遠山議員から言われましたことはそのとおりでありまして、しかし、侮辱するとか無視するとか、そんな気持ちは全くないわけでありまして、沖縄の苦悩のお話を中谷議員と議論をいたしましたので、自民と民主のことに頭が集中したということでありまして、したがって、委員長から注意を喚起されましたので、即刻、大変失礼いたしました、こういうふうに陳謝をいたしました。

 この部分について、私の発言について、失礼があるとすれば、議事録から削除していただくなり、委員長を初め理事の皆さんにお任せをいたします。

遠山委員 大臣、謝罪していないよ。今の、一言も謝っていないじゃないですか。

 二大政党とさっき後ろからやじがあったけれども、そうじゃない。大臣の最初の発言は、どの政党の推薦も要らないと言っているんですよ。その後に、二大政党と言って、後から言い直したんだ。どの政党も要らないと言って、後から二大政党ということは、公明党だけじゃなくて、みんなの党も社民党さんも共産党も入っていないじゃないか、政党に。もう一回謝ってください。

北澤国務大臣 大変失礼な発言であったというふうに思っておりますので、心から陳謝いたします。

遠山委員 余りこの話ばかりしても、質問に行けませんから。

 しかし、総理、きのう公明党の石井政調会長は、政府提出の補正予算案の問題点の一つとして、地方に冷たい、こういうことを指摘を申し上げました。

 きょう私は、政策の中身も地方に冷たいけれども、民主党政権の政治姿勢そのものが地方に冷たいんじゃないか、そのことを具体的な事例を通して御指摘を申し上げたいと思っております。そして、猛省を促したい、こう思っております。

 公明党は、国会におきましては衆参四十人の小政党かもしれませんが、地方議員の数は三千名おります。失礼ながら、民主党さんより多いです。民主党さん、総務省の資料によりますと、民主党所属の地方議員の数は、昨年の十二月三十一日付で千五百三十四名であります。私ども公明党は三千八名抱えているわけでございます。だから、さっきの発言を許せないんですよ、防衛大臣。うちは倍持っているんですよ、地方議員。何が二大政党ですか。

 そして、この地方議員の方々というのは、私は本当に大事な方々だと思っております。国民生活に一番近い現場にいらっしゃる。私も、九年前、三十二歳で参議院初当選させていただきました。それから九年がたつわけでございますが、この間、地方議員の皆様から大変いろいろなことを教えられたわけでございます。よく問題は現場にあると言われるわけでございますが、その問題の解決の知恵も現場にある、私はこのように思っておりまして、地方議員の皆様の声を大事にすることは本当に大事だと思っております。

 そして、自治体の長であります市町村長あるいは都道府県知事と意見交換を常日ごろからすることも、我々国会議員にとっては大変重要な作業だと思っているわけでございます。恐らくこれは、与党民主党の議員の皆様も同じ認識に立たれていると思っております。

 このある意味当たり前のことを前提に総理に伺いたいんですが、資料をお手元に配らせていただきました。私は先週も沖縄に参りまして、土曜日、六日の朝、朝刊を沖縄で見まして愕然といたしました。お手元に出しました記事が地元の沖縄タイムス、琉球新報に載っていたわけでございます。

 政府が迷走に迷走を重ねて、そしてまた戻ってきて、辺野古にお願いしますとなったこの普天間問題、その辺野古を抱える名護市の市長と市議会の議長一行が、十一月四日早朝五時に名護市を出発して、市議会で全会一致ですよ、全会一致で議決をされた意見書を持って政府に申し入れに来たわけでございます。

 ところが、民主党、この記事がどこまで本当か知りませんけれども、この記事によれば、枝野さんが面会を阻止して、そして政務三役は一人も出てこない。初日は待ちぼうけで何もせず終わった、二日目になっても役人しか出てこないということで、この名護市の市長一行は、内閣府の役人一人に会って、怒りと失意のまま帰ってきた、こういう報道になっているわけでございます。

 琉球新報の記事の二段目の一番右側を見てください。「「地元沖縄の理解を得るため丁寧に説明する」と繰り返す政府や民主党だが、政府方針と異なる名護市の民意には向き合おうとしない。自公政権時に比べても、偏狭さが際立っている。」我々が言っているんじゃないですよ。マスコミがそういう評価をしているわけでございます。

 総理にまず伺います。これは首相官邸にも面会の申し入れをしたそうですけれども、何で政務三役はだれも会わなかったんですか。総理、説明してください。

仙谷国務大臣 改めて、十一月五日の私の午後十六時からの記者会見の記録をひっくり返しておったんですが、私も、記者が多分琉球新報の記者だったと思いますが、地元から市長が上京してきている段階でお会いになって、お話をまさに説明されるよい機会ではないかなと思うんですが、それに会わずに帰すということはいかがなものですかと聞かれまして、私自身は、当日、前日名護の方が東京においでになって面会を申し入れているということは全く伺っていませんでしたので、愕然といたしました。

 前日は多分、国会があって、一日じゅう国会に張りついていたという記憶でございますが、御指摘のとおり、当日の分については、政務三役にかわって担当事務局が受け取ったというふうに聞いておりまして、今後は、この対応の改善を図るように指示をしたいと思います。

 いずれにしても、沖縄の皆さんとは、知事さんを初め、できる限り政府としてお会いするように努めてきたつもりでございまして、今後は、内閣として、できる限り政務三役がお会いするよう努めたいと思っております。

中井委員長 遠山さん、防衛大臣のさっきの発言は削除でいいですね。理事会で協議しますか。

遠山委員 理事会で協議してください。

中井委員長 それでは、理事会で預かって、防衛大臣は帰します。

遠山委員 官房長官が知らなかったということが問題なんです。

 それで、新聞報道にもいろいろ理由が書いてありますけれども、政務三役はみんな忙しかったと。忙しかったといったって、首相官邸それから外務省それから防衛省、政務三役はたくさんいるじゃないですか。一人も会わなかったということは、そこに私は民主党の、政府の意図を感じざるを得ません。

 それで、今の官房長官の御答弁を聞かれてじくじたる思いになっているのは、私だけじゃないんです、野党の議員だけじゃないんです、与党の中にもいらっしゃる。きょう予算委員会でお座りの玉城デニーさん。

 総理、資料をお配りしていますよ。二枚目を見てください。ツイッターでつぶやいているんです。引用させていただきます。玉城議員のつぶやきですが、「名護市長や議長からの面談要請に事務方だけで対応させる政権と党幹事長室には同じ党の仲間であるはずなのに地元への配慮も誠意も全く感じられない。果たしてこれが「精一杯沖縄の理解を求める」姿勢だろうか。地元彼らが激怒するのも無理はない。」と民主党の議員が書いているじゃないですか。

 それから、もう一人、国民新党の下地幹郎さん、この人も沖縄県選出でしょう。この人もブログで、「沖縄の声を聞くつもりがあるのか!」と、びっくりマークつきでブログに出していますよ。前ははしょりますけれども、一番最後の方でこう言っています。「考え方が違うから、役人に話を聞かせるというのは、政治家にあってはならないことであります。政府としては、ちゃんと話を聞くということを実行しなければなりません。政務三役がしっかりと意見を聞くことが大事です。沖縄の声を聞くということを、有言実行していただきたい。」と。総理が言っている有言実行内閣がそうなっていない、政治姿勢としてなっていないということを、連立与党の議員が堂々とブログに書いているじゃないですか。

 総理、民主党が言う政治主導というのは、要するにこういうことですか。おれたち与党が決めたことには逆らうな、逆らうやつには会わない、これが民主党の政治主導の本質ですか。お答えください、総理。

菅内閣総理大臣 私もこの報道に接したときに、私自身、こういう経緯があったことを、その時点では、報道を見るまでは知らなかったものですから、これはどういうことなのかということを官邸の中でも聞きました。それで、今御指摘になったような経緯であったということがわかりまして、大変申しわけなく思っております。

 私自身、もちろん、いろいろ時間の制約があるのはお互いあるわけですが、沖縄の問題は、大変といいましょうか、最もと言ってもいいぐらい重要な課題であって、それは、意見が近い方であろうが違う方であろうが、できるだけお話を聞くべきだという認識を持っておりましたので、いろいろな判断のある意味での不適切からこういうことになったことを大変申しわけなく思っております。

 今後、今名前の挙がった、今そこにおられる、仲間でもあります玉城デニー議員に、名護の市議会に対して、今後は官邸に来ていただければ官邸としてもきちんとした対応をとりますからとお伝えをいただくようお願いをしたところであります。

遠山委員 玉城さん、よかったですね。

 しかし、野党の議員がこの予算委員会で取り上げなきゃそう言わないというのは、総理、問題ですよ。

 私、ちょっと冒頭から興奮して大変申しわけないんですが、三枚目の資料、これはもう参考までに、ちらっと見るだけでいいです。

 これは私がかかわったことなんですが、二〇〇八年に、沖縄の教科書検定で、集団自決の問題で軍の強制という記述が削除された。民主党の先生方もみんな、とんでもないと言っていましたよ、委員会で。そのときに、これを何とかしてくれという陳情団、要請団が上京してきました。私も、比例ブロックでありますけれども沖縄に事務所を置く議員として、これは誠実に対応しなきゃいけないということで、当時の政府の中には、政府の考え方と違うから政務は会わない方がいいという意見、ありましたよ。今と一緒ですよ。だけれども、お願いをして、文部科学省の池坊保子副大臣、また、首相官邸でも大野松茂当時官房副長官に会っていただいてお話を聞いていただくことができました。

 こういう、国家の権力の中枢にある側は、心広く謙虚さと誠実さを持って国民の声を聞く、政府の考え方と、与党の考え方と違っても、直接会って話を聞くという姿勢を私は持ってもらいたい。その点について、先ほど総理も大分しゅんとしてお話しになっていましたけれども、総理、一言だけで結構です、この場で、民主党の党首として、これからは、地方の議員や地方自治体の長やいろんな住民の方がやむにやまれぬ思いで要請に来たときには、政務が会う、あるいは党の執行部が会う、そういうことを基本方針とするということをこの場で明言していただきたいと思います。よろしくお願いします。

菅内閣総理大臣 いろいろと陳情について、党の方でも一定のルールを決めて、あるいは内閣の方でもそれに沿ったルールを決めているようでありますが、しかし、今おっしゃった本質の意味はまさにおっしゃるとおりでありますので、できるだけ誠実に、政務三役を含めて対応するようにしていきたいと思います。

遠山委員 よろしくお願いします。

 続きまして、政治主導の話題につきまして、先日、十月二十七日の内閣委員会で仙谷官房長官とは大分長々とやりとりをさせていただきましたので、きょうは菅総理の見解を賜りたいと思っております。

 政府が今、国会に出されております政治主導確立法案は多くの問題点があると私は思っておりまして、本年五月十三日の衆議院本会議でも幾つか指摘をさせていただきました。そのうち二つの問題につきまして、二つの問題というか一つの話題での問題なんですが、官房長官と先日やりとりをさせていただいたわけでございます。

 一つ目の問題というのは、この政治主導確立法案の中には、政務参事と政務調査官という新しいポストが新設をされております。職務の内容は、政治と行政の調整を行う等、政務三役を補佐する、こういうある意味抽象的な職務内容になっているわけでございますが、この両職の給与が、政務参事は月額七十二万六千円から八十五万円、政務調査官は月額三十七万六千円から六十二万一千円と規定をされておりまして、それは資料につけております。かなり高い俸給水準になっております。

 官房長官は、高い安いは人によって尺度の違いがあるけれども、その俸給に見合う仕事をするならば、別にそこは余り問題とする必要はない、こういう趣旨の答弁をされて、それはそうでしょう。

 しかし、私が問題だと思うのは、では、この政務参事と政務調査官の俸給表はどこから引っ張ってきたかといいますと、国家公務員一般職の任期付職員の俸給体系と全く一緒なんですね。

 お手元の資料を見ていただきたいんですが、資料の五番目でございますが、そこに、国家公務員一般職の任期付職員の採用と給与についての法律第三条、そのものをつけております。ちょっと読みますが、「任命権者は、高度の専門的な知識経験又は優れた識見を有する者をその者が有する当該高度の専門的な知識経験又は優れた識見を一定の期間活用して遂行することが特に必要とされる業務に従事させる場合には、人事院の承認を得て、選考により、」「採用することができる。」こういう法文になっているわけでございます。

 そこで、疑問なのは、この政治と行政の間を調整するという、ある意味あいまいな、つまり、その人がこの給与と職責に見合う力があるかどうかというのは、恐らく任命をする政治家の恣意的、主観的尺度で幾らでも上下できるという極めてあいまいな採用基準であるところのこのポストに、こういう、ちなみに総理、この任期付職員というのはどういう人が今政府で採用されているかというと、大体、弁護士とか公認会計士とか学者さんとか、そういう方々なんです。そういう人たちと同じような給与体系でこのポストを設けることが本当にいいのかどうか、私は国民から見てこれは疑念があると思いますが、総理、お答えください。

菅内閣総理大臣 政治主導法案について御質問いただいたことを私、大変うれしく思っております。というのは、これは党を超えて、それぞれ内閣を構成したときに、いわゆる官僚主導でなくて、どういう仕組みがあれば、質は高くしながらちゃんと内閣を運営できるかということにかかわるからであります。

 私、昨年、まだ政権交代前のイギリスに行って、議院内閣制ではありますけれども、イギリスのいろいろな、官邸のあり方などを調べてきました。若干、その後、政権がかわりましたから、イギリスも少し変化しておりますけれども、当時のイギリスでは、例えば大きく言って、ポリティカルアポインティーのいわゆるスペシャルアドバイザーという人たちがいろいろなところに配置をされておりました。特にポリシーユニットというところは、たしか十二人の官僚と十二人のそういうスペシャルアドバイザーで、直接総理に対して、シンクタンク機能というかアドバイザー機能をしっかりと果たす機能がありました。

 そういう幾つかの例を見てきて、率直に申し上げて、まさにここに書いてありますように、もともとのいわゆる公務員試験を通ってなった人と、それから選挙で当選してなった人以外に、ポリティカルアポインティー、つまり、政治任用のポストはたくさんあるわけですけれども、現在は国会法、たしか三十九条ですか、八条ですか、例えば御存じのように、官房長官の下には副長官がいます。副長官の下には副長官補がいます。これは完全なポリティカルアポインティーです。しかし、国会議員は残念ながらなれません。これは、国会法三十九条が、つまり、国会議員は公務員と兼任できない、ただ例外は、大臣とか副大臣はいいという、こういう規定の仕方です。

 ですから、幾らそういう能力がある人間を官房副長官補につけようと思っても、その三十九条の改正がなければできない。私は、これもぜひ改めて、法案を委員会の方で、党の方で出していただきたいということも指摘をしていますけれども、そういうことも含めて、今、なるべく後は短くしますが、そういう意味で、つまりは、政治的に任用できるそういった高度の政治的なスタッフをこういう形で書き込ませていただいたというふうに私は認識しております。

 そういう意味で、それにふさわしい人物であることはもちろん必要でありますけれども、それにまさにふさわしい能力を持った人であれば、こういった扱いをすることはそんなに問題はないのではないか、私はこう思っております。

遠山委員 総理は官房長官と同じ見解だとわかりましたが、二番目の問題は、では、だれをこの政務参事や政務調査官に採用するのかということなんですね。

 私は、五月の衆院本会議で、当時の鳩山総理にこの点をただしました。私の問題意識は、特に、与党民主党の政党の職員をこの各省庁の政務参事や政務調査官として採用して、国民の血税から一番大きいところで月額八十五万円という高い給与を払うというのは、これは政党による行政の私物化につながるんじゃないか、こういう問題意識で問いただしたわけでございます。

 お手元の次の資料にありますとおり、資料六にありますとおり、当時の鳩山総理はこう答弁をされました。「内閣政務参事等は、内閣官房長官等の国会議員任用職を直接補佐する重要な官職であることから、政務面に精通した民間の有識者、与党職員、さらには」議員秘書まで入れているんですね、「議員秘書等の登用を想定しておるところでございます。」その次が大事です。「その際、当然のことながら、給与の二重支給になることは行わないようにしております。すなわち、もし与党の職員を採用することになれば、言うまでもありません、非常勤ということでございます。非常勤でありますから、基本的な給与を払うことはありません。」こう、ある意味、明快に御答弁になった。

 私は、この答弁を聞きまして、ああ、なるほど、鳩山総理は、この政務参事や政務調査官というポストはつくる、常勤と非常勤いるけれども、与党の職員を採用するときは非常勤で採用するので、国民の血税を使って給与を払うことはないんだなというふうに理解をしたわけでございます。

 ところが、仙谷官房長官は、十月二十七日の内閣委員会でその答弁を変えました。ここに書いてあるとおりでございます。「もし、鳩山さんが、一般的に、党の職員を政務調査官にする場合にはすべて非常勤でしかあり得ないという意味のことを言っているとすれば、それは少々間違っておるわけでありまして、」と、まず鳩山総理が間違っているとおっしゃった。そしてその後、「常勤の政務調査官なり政務参事にするのであれば、」と御自分で前提を変えられているんですね。変えられている。「そういう位置づけにするのであれば、党の職員をやめていただかなければならない。」それは官房長官、官房長官の前提でいえば、それはこのとおりなんです。その後に、「常勤の政務参事や政務調査官にしてはならない、しないんだということをもし鳩山さんが言ったとすれば、それは勘違いであります。」と。

 だから、官房長官、これは二つ問題があるわけです。一つは、鳩山総理のこの答弁を読めば、もし与党の職員を採用するならば、言うまでもありません、つまり、当然に非常勤でありますと断定しているんですよ。ということは、与党の職員を、まあ議員秘書は入っていないんですけれども、だから議員秘書を常勤で雇うことは可能性として残る解釈ができる文章ですが、答弁ですが、与党の職員を採用する場合は当然に非常勤だと言っているんですから。だけれども、官房長官は、後ろの答弁もありますけれども、与党の職員も含めて常勤で雇うことがあり得る、常勤の場合には党の職員をやめて給与を払うということをおっしゃっている。

 官房長官は次に聞きます、釈明があるかもしれませんから。

 総理、総理は鳩山前総理と同じ見解ですか、それとも官房長官と同じですか。

仙谷国務大臣 資料六、先生がお出しになられた資料六であります。当然のことながら、この鳩山総理答弁の「すなわち、」からですが、すなわち、もし与党の職員をその地位を有したまま採用することになれば、言うまでもありません、非常勤ということであります、非常勤でありますから基本的な給与を支払うことはありません、これが鳩山総理の多分言いたかったことでありますし、この政治主導確保法案です。

 私がそのことをそういうふうに当時、当時というか二十二年の十月二十七日には、そういう表現ではありませんが、私が申し上げているのは、それと全く同じことであります。

 つまり、党の職員を政務参事にするけれども、党の職員を、その有したまま政務参事にするのであれば、それは非常勤の国家公務員です。現時点でも党から給与をもらっているとすれば、しておりますから、現在は政務参事、政務調査官ではありませんけれども、専門調査員という名前ですけれども、すべて非常勤で、なおかつ党の職員の身分を有しておる人については、すべて給与は辞退ということにいたしております。

 したがって、政務参事であろうが政務調査官であろうが、党の職員の身分を有したまま非常勤でこのポジションにつけた人については、恐らく基本的な給与を払うことはない。つまり、辞退をさせる。もっと言えば、給与の二重支給になるようなことは行わない、こういうことであります。

遠山委員 官房長官、二重支給になるようなことはしない、それは当たり前ですよ。わざわざ言っていただかなくてもいいんです。

 今の官房長官の御答弁、また問題は、私がここで資料に書いているのは、議事録に載っている鳩山総理の答弁なんですよ。そこに官房長官は勝手に、「もし与党の職員を」のところに、その地位を維持したままという言葉を入れて今解説になった。これは入っていないんですよ。鳩山前総理は言っていないんですよ。

 だから、官房長官は、内閣委員会の答弁では、鳩山総理は舌足らずだったと言っているんですね。その舌足らずだったというのと、今の、その舌足らずの部分を官房長官が勝手に補ったということは、それは符合する話なんです。

 ただ、私は官房長官に申し上げますが、鳩山総理は、これは答弁原稿を読んでいるんですよ、本会議場で。予算委員会で原稿なしでしゃべっている答弁じゃないんですよ。それは、一国の総理が、事前通告した本会議質問で答弁する原稿が不備があったということを認めているわけでしょう。そのこと自体、大問題だということを指摘させていただきます。

 それから、この政治主導確立法案は、ほかの問題点もあります。まだ国会で本格的に委員会で審議をされておりませんが、総理、政治主導を確立する、その方針はいいんですよ。しかしながら、今回の法案にはやはり疑義がいろいろある。そこをはっきりさせていただかないと、なかなか国民の理解は得られないということもあわせて指摘をさせていただきます。

 次の質問に移ります。

 片山大臣はおられますか、おられますね。

 先月中旬、公明党は、離島振興関係の複数のプロジェクトチームを傘下に置く離島振興対策本部というのを新たに設置いたしまして、不肖私が本部長に就任をいたしました。

 私も九州、奄美、沖縄の島々を、地元ですから回ってきているわけでございますが、片山大臣所掌の地域主権一括法による離島振興法の改正内容につきまして、懸念していることがございます。

 これも資料、最後の資料ですけれども、おつけしておりますが、資料七番を見ていただきますと、この地域主権一括法による離島振興法の改正で、法律第四条第一項、これは現在は離島を抱える都道府県に離島振興計画を策定することを義務づけているんですね。ところが、この政府の書類を見ますと、この義務づけを廃止して、取っ払って、できる規定にする、振興計画をつくることができるという表現にする、あるいは努力義務化する、つくるように努めなければならない、そういうふうに変えようとしているんですね。

 地方主権、私は反対じゃありません。地方主権にするということは、都道府県の裁量をより広げるということで、その一環でこういう話が出てきたんだと思います。しかし、片山大臣も恐らく御存じだと思いますが、離島というのは今どんどん人口が減少して少子高齢化が進んでおりまして、私は個人的には、今の日本の社会の中で構造的弱者とも言えるような地域になってしまっている。それを、そこの離島振興計画を、離島を抱える都道府県が、今みんなつくらなきゃいけないんですが、それを知事の判断で場合によってはつくらなくてもいいというような緩め方の改革をするというのは、私はこれは正しくないんじゃないかと思っているんです。

 今、民主党さんがおっしゃっている一括交付金化もそうでしょう。一括交付金で地方に渡すと言っていますけれども、社会保障とか教育は対象外にするわけでしょう。それはある意味、地方主権を尊重しながらも、やはり守らなきゃいけないところはあるということでやっておられる。

 私は先日、離島の自治体、市町村の代表の皆さんと意見交換をいたしましたが、ほぼ全員の方が、この改正、彼らから見たら改悪と言った方がいいでしょうね、には反対です。大臣、これは撤回されませんか。

片山国務大臣 お答えを申し上げます。

 この改正は、離島の振興が重要でないとかそういう意味は全くありません。これは他の分野も同じなんですけれども、自治体、特に都道府県にいろいろなことを義務づけております。

 都道府県は、いわば法律で義務づけられているから義務としてやる、そういうことが多いんですけれども、もうそろそろ義務ではなくて自分の意思で物事を決める、そのことの方が重要なのではないか。地域のことは地域に住む住民の皆さんが責任を持って決める、これが民主党の地域主権改革の本当の意味でありますから、その趣旨に沿った改正であります。

 私も自治体の長をやっておりましたけれども、この種の重要な行政分野、過疎地でありますとか僻地でありますとか、離島もそうでありますけれども、そういう分野に手抜きをする知事は多分いないと思います。ですから、重要なことであればあるほど、義務づけをしなくてもみずからの意思でこういう計画はつくられると思います。

 また、別途、国の方の政策として、離島は補助率のかさ上げなどをやっておりますけれども、そういうものを、かさ上げを適用するには離島振興計画をつくることが要件になりますので、そんなこともありますから、まず議員が御心配になるようなことはないと思います。

 万が一、万が一この重要なものを例えば多くの県が軽視するとかそういうことがありましたら、これからいずれモニタリングしますから、モニタリングをして、必要なまた手当てをしていけば私はいいと思います。

 とりあえず、不要なものもいっぱい実はあるのでありますけれども、これも含めて、これは不要ではありませんけれども、いろいろな計画なりなんなりを義務づけているということはやはり解除の方向にするということが地方分権とか地域主権改革では本来の道だと私は思っております。

遠山委員 大臣、絶対今おっしゃったとおり、離島を抱える自治体の長が、どんな方が長になるかわからないところがあるわけですから、あえて具体的な自治体の名前は言いませんけれども、ですから、離島は本当に大変な生活をしているんです。だから、その方々の思いや生活を守る、この点については、我々中央にいる政治家、国会議員は夢にも忘れちゃいけないということをあえて申し上げたいと思います。

 馬淵国土交通大臣、一言簡潔に、離島振興について、このことも踏まえて御決意を伺いたいと思います。

馬淵国務大臣 離島振興法を所管する立場で申し上げます。

 今日までも、離島に住まわれる皆様方の住民生活をしっかりと振興していくということで、ハード、ソフト両面においての振興策、施策をしてまいりました。今後も引き続きその方針を堅持し、しっかりと住民の皆様方に必要とされる、ニーズにこたえられる施策を提示してまいりたいというふうに考えております。

遠山委員 ありがとうございます。ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 それで大臣、具体的に一点だけ。

 私が、この二、三年で三十以上離島を回ってまいりましたが、いろいろな声を聞く中で、これは確かにというのが一つあります。それは、産婦人科が全くいない島で妊娠されて子供を産むという、女性の方々から、やはり島の外に出ていかないと妊婦健診も受けられない。それから出産のときも、島の外でされる方が大変多い。そうしますと、経済的、精神的な負担というのは、もう我々が想像できないぐらい大きいわけであります。普通の、東京にいる女性の方に聞いても、自分が島に住んでおって、そこに産婦人科がいなくて、あなた、そこで子供を産みますかと聞いたら、ほとんどの人はノーですね。

 そういう状況なんですけれども、国交大臣、国交大臣に聞くとあれですね。まあ、聞きましょう。日本には三百十の有人離島がありますが、そこで年間生まれている子供、赤ちゃんの数は何人で、それから、産婦人科医が常駐している離島は幾つか、お答えください。

馬淵国務大臣 端的にお答えいたします。

 三百十ある有人離島で、統計データのあります平成十七年度の出生数は五千三百一人、十八年度が五千五百十四人となっております。そして、三百十二の有人離島のうち、産婦人科のいる離島は全部で十七島でございます。

遠山委員 今お答えになったとおりなんですね。総理、答弁は要りませんけれども、よく覚えておいてください。三百十の離島が日本にあって、人が住んでいる。その中で産婦人科がいるのはたった十七なんです。物すごい少ないんですね。

 私は、きょう岡崎大臣に提案をしたいんですけれども、実は今、五千数百人の赤ちゃんが生まれていると。そこから、日本離島センターの出生数のデータ、その母親のデータをもとに私が雑駁に計算をしますと、大体、産婦人科がいない島で出産をされている方々というのは年間千六百人から千七百人ぐらいいらっしゃるわけです。これは公明党の離島振興策に入れますけれども、この妊婦の方々については、出産一時金等既にある支援とは別に、島外に出るときの交通費あるいは宿泊費等、上限五十万円以内で国が支援をする。だって、我々少子化対策をやっているんですから、与野党関係ないでしょう、それは。

 千六百人から千七百人に上限五十万円で毎年お金を支給しても、岡崎大臣、八億円以内なんですよ。我々、この予算委員会で子ども手当で与野党で火花を散らして話している単位、兆単位じゃないですか。三兆円だ、五兆円だでしょう。たった八億、まあ事務費等を入れても十億円以内で、毎年離島で大切な宝物の子供を産んでくださる妊婦さんが千六百人、七百人いらっしゃる、それを支援するような事業、プログラムを早急につくるべきだと私は思いますが、岡崎担当大臣、どうでしょうか。

岡崎国務大臣 遠山委員におかれましては、離島に関して、さまざまな観点からこれまでにも政策を提言し、御努力されておりますことに敬意を表したいと思います。

 そして、ただいまの御提案でございますけれども、今、離島におけます医療課題の解決に向けましては、各都道府県の今おっしゃっていた離島振興計画に基づいて、それぞれ例えば産婦人科に医療健診に行こうという場合には通院手当というようなものを出しているという自治体もあるわけですけれども、今、全くいないところについての御提案でございました。

 私どもでは、一月に子ども・子育てビジョンをつくりまして、その中で、大変重要な目指すべき社会への政策の四本柱の一つの中に「妊娠、出産、子育ての希望が実現できる社会」を位置づけております。そして、安心して妊娠あるいは出産できる、そういうことは大変大きな課題だというふうに考えておりまして、これからも、関係省庁とも連携をして、いろいろな政策については全力を尽くしてまいりたいと思っておりますが、今申し上げました「妊娠、出産、子育ての希望が実現できる社会」のところで、安心して妊娠、出産ができるようにするためには、妊婦健診や出産にかかわる経済的負担の軽減、こういうものもございました。今、そのプログラムにつきましてどのようにするかについては、いただいて、持ち帰って検討してまいりたいと思いますが……

中井委員長 いや、岡崎さん、それを離島の方に適用することを考えられているのかどうかというのを端的に言ってください。

岡崎国務大臣 今、離島のことについて、まだその検討のところまで入っておりませんけれども、ぜひ検討をさせていただきたいと思います。

遠山委員 大臣、決意はわかりましたけれども、本当に具体的にやってくださいよ。

 いろいろなやり方があるんです。例えば、一つ入れ知恵しますと、安心こども基金というのがあるじゃないですか。あそこから毎年十億円以内のお金を離島枠でとって、本当に離島に住所を置いて、住民票を置いて、まあ里帰りの方はちょっと除いていただいて、そういう方については支援するという形でもいいですから、とにかくやってください、これは。本当に、今までも、これは我々自公政権のときも反省点はあるんです。離島に行きますと、東京の方々は離島のことなんて何にも考えていない、こういう声が一番多いんですよ。これをぜひやってくださいね。

中井委員長 野田財務大臣。

遠山委員 いやいや、財務大臣はいいです。委員長、いいです、時間がないですから。

 最後に、海江田大臣と総理に同じテーマでまとめて伺いたいと思っております。

 総理は、最近は答弁をされる機会が余りないようでございますが、十月十二日の予算委員会等では、この日本の景気が今だんだん悪くなっているという状況の中で、しかし、お金があるところにはあるという事例として、企業の内部留保金が二百兆、手元資金、手元流動性が約六十兆、これは調べたら財務省の資料で五十七兆になっているわけですが、これがあると。このお金が、民間資金が使われるようにして雇用をふやしていくんだというようなお話が何度かありました。

 ただ、総理のこの御説明を私なりに精査すると、総理は最後は、例示として介護の分野とか医療の分野とか保育所の話になるんですね。冷静にこれを全部つなげて読みますと、民間企業の内部留保金二百兆円、手元資金五十七兆円が、いきなり介護とか医療とか社会保障の分野に大きく流入して雇用を生むということは考えづらいわけです、その間にはいろいろな総理なりのお話があって、はしょられたのかもしれませんが。

 そこで、まず海江田大臣にお伺いをしたいのは、今回政府が出されている補正予算の中で、この民間企業が持っているお金、特にフローに回しやすい手元資金五十七兆円をどうやって経済活性化に誘引をしていくか。これは民間資金ですから、政府が勝手に使うことはできません。今、景気が悪い中で、民間企業も安易な雇用拡大をして自分の財政基盤を傷つけたくないわけです、円高でもありますし、デフレも終わっていないわけですから。

 今回の補正予算案の中に、民間資金を日本の経済活性のために入れるどういう政策が入っているのか、端的に御説明をお願いします。

海江田国務大臣 遠山委員にお答えをいたします。

 今回のは補正予算でございますから限られておりますが、具体例を挙げますと、例えば三年間でCO2排出六%削減等地球温暖化対策に積極的に取り組もうとする中小・中堅企業の地球温暖化対策設備投資について、環境格付融資を行う金融機関を通じて二%の利子補給を三年行う、これは民間の資金の後押しでございます。

 それからもう一つは、企業等の研究開発等の拠点を国内に残し、新産業の創出を図るため、グリーン・ライフ分野における先端技術の実証研究、評価のための大規模な設備投資の一部を補助する。

 これはあくまでも補正予算でございますが、そういう形で、民間企業の手元流動性をしっかりと投資に回してくれるような後押しをするつもりでございます。

遠山委員 総理、最後に端的に、この民間資金がある、そういう状況の中でどうやって雇用拡大をしていくのか、その点について御見解をお願いします。

菅内閣総理大臣 実はきのうの夕方、国内投資促進円卓会議というのが財界、経済界を含めてありました。その中から、国内への投資を、現在が六十兆弱に少なくなっているのを五年後に八十兆強、十年後には百兆強に上げていきたい、こういう提案を経済界みずから出していただきました。

 その上で、幾つかの要望事項もありました。これは、低炭素産業に対する国内立地を促進する、今もプログラムがあるんですけれども、それを拡大してほしいとか、また、法人税についても、自分たちが国内で投資をできる、選べるようなことをやってほしいという話がありました。

 それから、先ほど、私の十二日の質疑の中で、私も読み直してみましたが、多少舌足らずなところがあったかもしれませんが、端的に私が申し上げたかったのは、潜在的需要があるけれども給料が安過ぎてそれがうまく引き出せていないところには、財政的なお金を投じても、結果として、それが雇用につながり、生産につながり、さらには雇用から税につながっていけばデフレの解決にもなるという好循環を起こしたいんだ、こういう趣旨で申したわけでありまして、単純に企業からのお金を持ってくるというのは、これはおっしゃるとおり、そういうことは無理なものですから、そういうことだということを申し上げておきたいと思います。

遠山委員 しっかり経済成長、景気対策をやってください。

 以上で終わります。

中井委員長 これにて遠山君の質疑は終了いたしました。

 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 菅総理に質問いたします。

 総理は、雇用、雇用、雇用と、雇用を中心にした経済対策を進めると所信演説で述べました。さらに、十一月四日の本会議では、経済が活性化する、そういう好循環を生む上でのキーが雇用であると発言しました。これは当然だと思います。

 一つは、雇用をつくること、二つは、現に進行している人減らしに歯どめをかけること、この二つが大事だと思いますが、この点での総理の見解をお伺いしたいと思います。

菅内閣総理大臣 雇用を通して経済を大きくしていくというのは、今、遠山議員の最後の質問にもお答えをしたところです。

 今、穀田さんの方から二つを言われました。その中で、私が言っているのは、雇用をつくっていくには三つの方法がある。一つは、まさに新たな雇用をつくること。一つは、外に出ていくような企業を、何とかとどまって雇用を守ること。そしてもう一つは、中小企業などが新卒者を欲しいと思っても、ミスマッチでなかなか得られない、そういう雇用をつなぐことだと思っております。

 今御指摘のありました、企業ができるだけ多くの雇用を維持するというのは、守ることにはつながりますが、それは、今申し上げたように、あるべき仕事を海外などに出るのを、できるだけ国内でとどまってもらえるような政策もやらなければならないということとの兼ね合いで申し上げております。

穀田委員 守ることが必要だということとふやすことが必要だということだと。

 現実はどうかという問題を見てみたいと思うんです。私は、雇用の現実は、雇用をふやすよりも減らしていく方が多いんじゃないかと見ています。リーマン・ショックが起こる前の〇八年九月とことしの九月の就業者数はどうなっているか、全体と製造業の推移を確認したいと思うんです。以下の数字で確かかどうかです。

 全体でいいますと、リーマン・ショックの前について言うならば六千三百六十五万人が、この間の九月でいうと六千二百八十六万人、七十九万人減っている。製造業でいうならば、一千百二十九万人から一千五十五万人へと七十四万人減っている。これは確かですね、総務省。

鈴木(克)副大臣 お答え申し上げます。

 今、穀田委員のおっしゃったのはいわゆる季節調整値でございますが、原数値でも大きな違いはございませんけれども、この二年間でいわゆる総就業者数は八十四万人減少しております。そして、製造業だけ見ても七十六万人減少しておる、大変な状況でございます。

 以上です。

穀田委員 減数は非常に多い、若干の違いはあるけれども、八十万人台が減っている。減らす方が多いから雇用者総数で見ると減っているということだと思うんです。

 では、大企業の側に雇う力がないのかといえば、そんなことはありません。九月決算が発表されています。今年度上半期決算で大企業は増収増益となり、利益水準は〇八年九月のリーマン・ショック前に戻る勢いだと報じています。各社の合計で見ると、経常利益も純利益も、リーマン・ショック前の〇八年上半期とほぼ同じ水準に回復しています。

 今述べたように、そして今総務副大臣から報告があったように、リーマン・ショック後、就業者数はまさに減少の一途をたどっていて、とりわけ製造業での減少が、就業者の減少の中で九割を占めていて、率が高いことは一目瞭然であります。結局のところ、大企業にとってみれば増収増益をやっているけれども、労働者、国民には仕事が回らず、雇用もされていない、そういうあらわれだと思います。

 そこで、雇用破壊の問題について少し議論をしたいと思うんです。

 結局、就業者、雇用者が減り続けている根底には、個々の企業による解雇、雇いどめ、退職募集など人員削減があります。まず一つは、人員削減の問題について聞きたいと思います。

 例えば、上場企業のうち主なもので、〇九年、希望・早期退職募集の数は百九十一社、二万二千九百五十人に上り、二〇一〇年上半期においても、退職募集企業は六十五社、一万六百八十七人に上っています。ここには更生手続中の日航は含まれていません。日航は、早期退職募集だけでも一次から三次まで実施し、既に五千人を超えて応募しています。千八百八十六人の契約・派遣社員の雇いどめも行われ、グループ全体で一万六千人にも上ります。ことし最大の人減らしです。

 こういう人減らしの実態を深刻だと思わないのか、これに歯どめをかけるべきだと思わないのか、これについて総理大臣の見解を聞きたいと思います。

馬淵国務大臣 まず私の方から、日本航空のお話が出ましたので、お答えさせていただきます。(発言する者あり)わかりました。短く、手短にということでございます。

 十一月九日、昨日、この早期退職ということでの募集に対しまして期限が切れたところでありますが、最終的にはこの応募状況を集計中だというふうに聞いております。

 日本航空は、この応募結果を分析した上で今後の対応を検討するとされておりまして、いずれにいたしましても、更生計画を、今、現時点で、計画案にのっとっての削減を進めているところでございますので、私どもとしては、日航自身の削減あるいは計画全体の誠実な実行というものを見守ってまいりたいというふうに考えております。

穀田委員 私は、日航の例をやったんじゃなくて、全体として人減らしの計画が随分出ている、こういう実態についてどう思っているかということを総理に聞きたかったわけです。

 今、日航の事態について出ましたから、では一言やりたいと思うんですが、今お話あったように、早期退職募集の三次募集が締め切られて、報道では、削減目標に足りなかったから今度は整理解雇するということまで報じられています。

 日経新聞によると、二次募集では、千五百人が目標だが、応募者は千五百二十人あったとしている。既に二次募集の時点で目標を上回っていたのに、三次募集したと。病気休暇で休んでいる人が退職募集に応じても数には入れないとも言われている。削減目標自身が極めていいかげんだということを示していると思います。その上、特定のパイロットや客室乗務員を乗務から外し退職を迫る、人権侵害の退職強要までやっている。やり方もひどい。だからパイロットが提訴までしているわけです。

 総理、総理は日航再建決定にも深くかかわっておられました。こういう人減らしを、政府が深くかかわる再建でやっていいのか、雇用、雇用と言う総理が不当、違法なやり方で真っ先に人減らし、雇用破壊をやらせていいのか、しかも整理解雇、強制解雇まで容認していいのか、このことが問われていると思います。今度は総理にお聞きします。

菅内閣総理大臣 個別に日航のことのお尋ねでありますが、今国交大臣からも状況の報告はいただきました。

 私も、今の職責につく前に一定の関与はいたしておりました。しかし、この再建計画そのものは、まさにこれは法的整理の後に管財人として参加された皆さんが、計画をされた中身を今実行されております。

 もちろん、一般的には、できるだけ雇用が守られることが好ましいというのはもちろんのことでありますけれども、一つの企業が、例えば株式も、いわば株をゼロにし、株主の負担もあり、そして融資をした銀行も債権放棄をし、そういう中で再建する上では、個々の企業としてやらなければならないこともあるわけでありまして、一般的な意味では雇用が守られることが好ましいわけですけれども、個別的な企業についてこうすべきだ、ああすべきだというのは、私の立場としては控えたいと思います。

穀田委員 個別の、しかも、一番人減らしをやっていることに対して、何にも言えないではだめですよ。だって、再建に深くかかわっている、しかも、そのことで日本の空の安全という問題も、そして公共的な乗り物の機関として発展させるという、そういう政府の責任があるわけですから、そういう見地はおよそけしからぬと私は思います。

 結局のところ、私は、人減らしを食いとめるための手だてを打たないということでは国民が納得しないし、ましてや整理解雇などやるべきでないということをはっきり言うべきだと思っています。

 もう一つ深刻な実態は、工場閉鎖、事業撤退です。

 各地で、地域の衰退を招くと、自治体からも存続要請が相次いでいます。ことしだけでも工場閉鎖が相次いでいます。工場閉鎖、縮小で問題なのは、地域経済の問題に直結するということであります。兵庫県では、創業から百年近い工場などが相次いで閉鎖、撤退しています。三菱重工神戸造船所の商船建造撤退、アサヒビール西宮工場、森永製菓塚口工場、雪印関西チーズ工場などの閉鎖が相次いでいます。

 今述べたのはほんの一部分にすぎません。リストラ、希望退職、そして、今述べたもう一つ深刻な実態である工場閉鎖、事業撤退の状況について、政府としてどのように掌握しているのか、また、閉鎖、撤退が地域経済にどのような影響を与えるのか、経産担当のところから報告していただきたいと思います。

中井委員長 松下経産……(細川国務大臣「数の方は私から」と呼ぶ)そう、それでは細川厚労大臣。(穀田委員「数なんて聞いていない」と呼ぶ)経産でしょう。(穀田委員「そう言っているじゃないか」と呼ぶ)

 松下君。

松下副大臣 御指摘のとおり、離職の状況については国としてもしっかり把握をしております。これは、再就職援助計画の作成を義務づけておる雇用対策法でしっかりと離職者の状況について把握しているということでございます。

 また、大規模な工場等が閉鎖された場合ですけれども、雇用の創出や消費の減退などを通じて地域経済全体に著しい影響を及ぼすおそれがあるということは、御指摘のとおりでございます。

 我々としても、我が鹿児島県でもそういう実態がございますけれども、仕事を失っている中小企業についても、全国の商工会や商工会議所等の相談窓口において対応をしっかりとやっているということでございまして……

中井委員長 経産省は工場の数を、統計は持っていないですか。

松下副大臣 統計は、工場統計調査において、従業員が十人以上の製造業の事業者数などを都道府県ごとに調査しておりまして、その変動を通じて廃業等の動向の把握をしております。

 以上でございます。

穀田委員 総理大臣、今述べたのでわかると思うんですよね。一定の統計というのはとっているんだけれども、実際に地域経済にどのような影響を与えているとか、それから、その中での就業というのがどれほど困難になっているかとかいうのを、およそ明確に把握していないということなんですよ。だから、結局話がリアルじゃないんですよ。どれほど大変か。

 皆さんにはお手元に資料をお配りしているから、このパネルを見てほしいんです。ことしになってから報道された主な大企業の工場閉鎖の事例です。

 私は、これほど多くの地域で閉鎖、撤退が行われているとは驚いたんですね。従業員のところについて言うならば、これは正社員が中心です。ですから、今経産から話がありましたけれども、この表にあらわれていない下請の雇用破壊、地元商店街の疲弊など、地域経済の死活問題になっているわけです。だから兵庫県も、今後、長い歴史のある工場の縮小や撤退を避けるために、対策を研究したいとか、新規に進出する企業の誘致だけでなく、既に進出している企業のバックアップが必要などと言って、模索しているほどであります。

 総理は、こうした雇用破壊を行う企業のリストラ策、つまり企業再構築についてどう感じ、どう考えているのか、述べていただきたいと思います。

松下副大臣 御指摘のとおりでございまして、大規模な工場等が閉鎖された場合には、先ほども申し上げましたけれども、雇用の喪失、それから消費が減退いたしますので、地域経済全体に大変大きな影響を及ぼしていることは間違いございません。

 鹿児島県の例で申し上げましても、出水の地域で一部上場の企業が撤退した後の雇用の問題、そして新しい事業の誘致、我々国会議員も挙げて、県も挙げていろいろ努力をしておりますけれども、なかなか思うようにいかないことが実態でございます。全力を挙げて努力してまいります。

 以上です。

穀田委員 努力は当然なんですけれども、どこに今肝心なポイントがあるかということが大事なんですね。

 リストラの動向は、大きく言って二つに分けることができると思います。一つは、破綻など業績悪化によるリストラ、二つは、円高対応や競争力強化のために集約化、コスト削減、海外移管という形があるんですね。その中で、とりわけ二つ目がふえているのが今日の特徴で、業績が上向きの中でも、競争力強化を理由に、より利益を高めるためのやり方をとっています。収益を上げるために、むしろ真っ先に率先して雇用調整をしている。つまり、人件費削減による固定費の圧縮、リストラ、首切りを進めることで収益を上げている傾向が多いと私は思っています。

 そこで、三菱重工の神戸造船所の例をとってみましょう。

 三菱重工が七月、神戸造船所での商船建造から撤退を表明して、手持ちの建造が終わる二〇一二年上半期で生産の打ち切りを表明しました。そして、防衛省向けの潜水艦の建造と原子力発電設備に特化するという。その言い分は、先行きの見通しがないということだと言われています。

 しかし、造船業の今後の見通しについてどう見ているのか、国交大臣。

馬淵国務大臣 造船業の今後の見通しでございます。

 我が国の造船業、二〇〇九年は新造船の建造量は過去最高を記録しておりますが、これは、建造までに一、二年という長いスパンがかかりますので、実はリーマン・ショック以前の受注であった。直近の受注量を見ますと、これは二〇〇八年秋以降、減少しております。極めて厳しい状況にある、このように考えております。

 ただ、一方で、今後ということで見れば、新興国の経済の急速な発展、また、それに伴う海上輸送量の増加などを考えますと、造船需要というものも回復していくということも考えております。

 そうした中、我々としても、IMOにおける国際ルール策定の主導など、造船業界においてもリーダーシップを発揮できるような環境の整備に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

穀田委員 造船業界の全体の動きというのは、成熟産業と言われています。しかし同時に、今後の見通しを見た場合にどうなのかといいますと、貿易と輸送がふえるわけですから、全体として成長産業だということも言われています。

 したがって、今、仕事がないんじゃなくて、あるけれども、長崎や下関でつくるから神戸ではつくらない、神戸では受注しないということが今の客観的な事実なんですよ。

 それで、神戸造船所は、一九〇五年に創業した百五年も続くしにせなんです。神戸の町にとっては貴重な存在です。

 神戸新聞で感想文コンクールというのがありまして、「世界の海でかつやくしてね、マヌーバー号」ということで、小学三年生が感想文を出しています。その中によりますと、「世界の海でかつやくしてね、マヌーバー号」という見出しで、神戸のこの会社は、あと二年でお船をつくるのをやめてしまうという記事が出ていました。この会社は百年ぐらい前からお船をつくっていて、きょうのマヌーバー号は千二百八十七番目になるそうです。一隻のお船は、この会社で千人くらい、小さな部品をつくる人も数えると、全員で三千人から四千人もの人がかかわっているそうですと書かれています。

 この小学生が書いているように、どれほどの労働者や下請に影響を及ぼすか明らかではありませんか。三菱重工に対して、神戸造船所の商船建造撤退のやり方を見直しすべきだということについて、政府として要請すべきではないでしょうか。

馬淵国務大臣 平成二十四年度に、上半期を目途に終了させるという神戸造船所でございますが、今大変厳しい状況であります経済環境の中で、各企業がそれぞれ生き残りをかけてさまざまな施策を打っているということでありまして、その意味では、個別企業が一定の経営方針をもとに、それこそみずからのリスクを抱えながら判断をしたということについては、政府がそこに何らかの関与を行うというのは適切ではないというふうに私自身は考えます。

 ただ、一方で、当然地域における影響というのは大変大きゅうございますので、これに対しては、私どもでは、神戸の運輸監理部におきまして、地域の経済における影響調査あるいは情報収集などを行うべく、相談窓口の設置ということも行っております。

 先生御指摘の雇用の問題に対する意識ということにおきましては、私ども、所管が違えども、こうした地域経済への一定の影響を及ぼす可能性のあるところに対しては、十分な配慮を行えるような相談窓口設置という施策を打っております。

穀田委員 私はおかしいと思うんですね。つまり、神戸造船所は原発や潜水艦に特化する、これについては政府を挙げて支援している。片や、地域経済が衰退するという事態に対しては知らぬ顔。これでいいのかということが問われるんです。きっちり物が言えないでどうしますかいな。

 地域では、地元の下請企業や商店街、労働者、市民などが、神戸の造船を残そうという連絡会まで結成し、雇用と地域経済を守ろうとして運動をしています。神戸市長でさえ、造船事業は神戸経済を長年にわたって支えてきた基幹産業であり、すそ野の広い産業として多くの中小企業の活性化や市民の雇用の確保にもつながっていること、進水式を初め、港神戸の象徴として多くの市民にも親しまれている事業所であるとして、引き続き神戸での操業を求めている状況であります。

 私は、今窓口を設けているというお話を聞きましたけれども、確かにありました、しかし現実は、例えば神戸市に対する相談、それからそちらに対する相談、そんな大したことないんですよ。それは、多くの方々が、どないしたらいいかと本当に悩んでいるという現状で、それこそ今の深刻な実態に対して、調査もし、かゆいところに手の届くような形で援助してあげるということについて、みんな期待していないからそういうことになっているんですよ。それぐらい事態が深刻だということについて思いを寄せなければならないと私は思っています。

 私は、大企業の工場閉鎖、撤退に対して、雇用と地域経済を守らせるルール、そして規制が必要だと思います。具体的には、会社側が事前にステークホルダー、住民、商店街、行政、これらに対して説明、相談を行うことの義務づけ、これらのことは最低限必要じゃないでしょうか。多大な迷惑をかけて長年根づいてきた地域における関係を、将来構想も含めてみんなつくっているときに、降ってわいた形でばっさり切っていく、こういうやり方に対して、きちんとした、最低限これぐらいの規制が必要じゃないでしょうか。

 総理大臣、いかがですか。

馬淵国務大臣 工場撤退のときの規制ということですので私の所管ではないかもしれませんが、今の造船のお話から、例えて言えば、ともに発展をしてきたわけですから、当然ながら地域への還元がなされてきたわけです。そして、その経営の中で一定程度還元をされながら地域の住民の方々の雇用も確保してきたわけですが、企業がみずからのステークホルダーに対してそのリスクをしっかりと提示しながら判断をしていくということについては、私は、企業の自由な経済成長の中での判断であるべきではないかというふうに考えます。

 一方で、我々は、政府で新成長戦略を掲げて、今後成長していく分野というものを提示し、また、さまざまな規制を撤廃し、あるいは国際標準をつくっていくという施策を提示しておりますので、その中で企業みずからが判断をしていただいて、そして新たな雇用の確保という展開を示していただくことが、この国の経済成長、そして雇用の確保という一つの手だてになるのではないか、私自身はそのように考えております。

穀田委員 私は、雇用と地域経済を発展させるためのルールが必要じゃないかと。それは、ある意味では、今お話あったが、規制が必要なんですよ。つまり、自分の勝手で突然出ていくなどということは許されない。それは、単に私が言っているだけじゃなくて、世界ではそういうことがルール化されているんですよ。だから私は、まず第一に、せめて事前説明と。しかも、そのステークホルダーというのを狭めるんじゃなくて、地域住民、商店街、そういったところともしっかり議論する。当たり前のことを言っているんですね。それが一つなんです。

 あわせて、最後ですから、では総理大臣に聞きますが、私はそれだけではだめだと思うんです。二つ目には、やはり、閉鎖や撤退を回避する努力義務を課す。第三に、やむなく閉鎖、撤退する場合については、雇用、地域経済への影響を最小限にする努力を行う。第四には、地域への社会的責任の放棄に対するペナルティー、例えば工場閉鎖に伴う地元産業の活性化のための資金拠出義務など、これらを提案したいと思っています。

 何らかのルールづくりが必要だと私は考えますが、総理のお考えはいかがですか。

菅内閣総理大臣 それぞれの町にとって、特に大きな企業の工場が撤退するということは大変大きなマイナスの影響があるわけでありまして、そういう点で、何らかの協議といったものがあるということは、一般的には好ましいことだと思います。

 そういう中で、三十人以上の労働者が離職を余儀なくされる事業規模の縮小を行う事業主に対しては、再就職援助計画の作成を義務づけておりまして、これは雇用対策法で義務づけております。また、同計画を公共職業安定所長に提出して、認定を受けなければならないことになっております。

 これらを通じて、離職の状況について把握をし、再就職の支援をするということだと思います。

 大規模な工場等が閉鎖された場合は、雇用の喪失や消費の減退を通じて地域経済に著しい影響を及ぼすおそれがありますので、こういったことも、先ほど松下副大臣からもありましたが、そうしたものを把握しながら、都道府県ごとにそうした動向を把握して対応を考えていくことが必要だと思います。

 いずれにいたしましても、やはり日本の経済そのものがこの二十年近く成長率が余り伸びないという基本がありまして、そういう点では、日本の経済そのものをもう一度成長軌道に乗せていくということが根本的な対策になろうかと思っております。

中井委員長 穀田君、質問時間が来ていますので、まとめに入ってください。

穀田委員 はい。

 成長軌道に乗せるためにも、やはり大企業に対して社会的に責任を果たさせるということが大事なんです。

 今私が提起したことは、何もやみくもに言っているんじゃないんですよ。社会が必要としているということが一つと、もう一つは、EUやフランスではやられている、世界的には共通のことなんだということなんです。したがって、私は、雇用を破壊する蛇口を閉めることと、大企業の身勝手ともいうべき人員削減、地域経済衰退にストップをかけるルールづくりが必要だということを改めて述べて、質問を終わります。

中井委員長 これにて穀田君の質疑は終了いたしました。

 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党の阿部知子です。

 本日は、私は、国とは何か、国益とはということでお伺いをいたします。

 まず海上保安庁長官にお伺いをいたしますが、きょうもまた、神戸の管区の海上保安庁職員がみずから船長に申し出て、自分がこのビデオ流出にかかわったということを言われたというお話でありました。私は、これもまた胸がふさがるような思いがいたします。本当に、どんな思いで彼が自分の上司にそれを言ったか。恐らく、仲間たちが事情聴取などをされていて、これ以上そういう状況が広がることを、彼としてもやはり申しわけないと思われたのではないかなと思うわけです。

 きょう、この段階で一つだけ確認をしておきたいのですが、私は、実は国会でも二回、六分五十秒のビデオを見せていただきましたし、ユーチューブも拝見して、ユーチューブを見たときは、これはOJTではありませんが、海上保安庁の巡視船の中で若い職員を教育している、角度のとり方とかを言っているようなところがあって、もしかして、その後報道された研修用というのは、そうだったのかもしれないと思ったんですね。

 海上保安庁の長官は否定されますが、さまざま、本当にこの段階で研修用のものはつくったのではないと言い切ることができるでしょうか。冒頭、一問、お願いいたします。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 先ほどもお答えいたしましたとおり、石垣海上保安部が那覇地検に捜査説明用に提出するために編集したものであります。

 ただ、あの中で、上司が部下に指導しているようなナレーションが入っておる部分があるかと思いますが、これは、ビデオにこうやってナレーションを入れるとわかりやすいというような、撮り方の指導をしておったと記憶しております。

阿部委員 では、今の段階で研修用のものはおつくりでないという御答弁でありましたので、そのように受けとめておきます。

 そして、一昨日、月曜日の石破委員と総理のやりとりの中で、これもまた大変懸念する御答弁がございました。簡単に言うと、今回の、船長を捕まえ、釈放したのは、海上保安庁と検察のおのおのの判断であるということで、そこに内閣の判断は、関与するような事案ではなかったと簡単にお答えになりました。

 私は、そう総理がもしお答えになるのであれば、例えば、前の福田政権で胡錦濤総理と日本が戦略的互恵関係、今総理もおっしゃいます、すごく大事な日中の基軸は引かれました。しかし、その中でも、二〇〇九年の七月あたりから、中国は、リーマン・ショックからいち早く回復しておりますので、国力もつけておりますし、自信もつけていて、それまでの外交方針が少し変わっていると分析されておりますが、当然です、国は生き物ですから。そうした中国側のいわゆるこの間のさまざまな変化、そういうものを見越した上でもなお、これは内閣が扱うようなマターではないというふうに判断されたのでしょうか。

 私は、やはり政治は、その時々の相手を見て、戦略的互恵を追求するために常に情報をとり、そして、その情報に基づいて内閣が判断していただきたいと思うのですが、今の質問にお答えいただきたいと思います。

菅内閣総理大臣 石破さんとの議論で、どの部分を取り上げてそういう趣旨だったというふうに言われているのか、私には必ずしも明確ではありませんが、私が常に申し上げているのは、この事案が発生した後、割と早い段階で、捜査という範疇に物事がなった中で、例えば逮捕状、さらには執行、あるいは勾留、あるいはその延長、こういうものについて、捜査当局が一義的には担当しているという認識を持ったものですから、そこに対して、もちろん、外交全般については当然ながら政治の仕事であり、そういう観点からいろいろな状況把握に努めましたけれども、決して、政府が一切関与する必要がないという趣旨のことを申し述べたつもりはありません。

阿部委員 総理には、私が時間がないので、石破さんへの御答弁を読み返すことはいたしませんが、簡単に言うと、おのおののつかさつかさでやっていただいてという事案だと考えておるということでありました。

 しかし、私はそうではなかったんだろうと思います。それは、中国とのよりよい関係を考えれば考えるほど、中国が経済的に強さを増し、また、海に向かって広がっているときに、どのように日本が対応すべきかというのは、本当に賢く対策しなければならなかった事案だと思うからであります。

 次の質問に移らせていただきます。

 きょう私が皆さんにお示しいたしますのは、実は、農水省の国際部にお願いいたしまして、この間の米や大豆や小麦、トウモロコシの価格の変動を一九七〇年代から一連のグラフにしていただいたものでございます。総理にもお手元にあるやと思いますから、ごらんいただきたいのです。

 実は、もちろん、穀物の価格ですから、不作とか干ばつとかで上下いたしますが、しかし、と同時に、全体的に二〇〇六年あたりから穀物価格というものが上昇してまいりまして、特に二〇〇七年と八年、これは欧州が大変に天候が悪うございました。このときの価格を見ていただければ、今までにない高値をいずれも示しております。昨今の、二〇一〇年の近々の十月でありますが、また米も大豆も小麦もトウモロコシも、いずれもこれは価格上昇機運にございます。もちろん、先ほどの最高値のところではございませんが。

 私がこういう図をお示しいたしますのは、実は、食料の安全保障は国家の国益だと思うからであります。この間のTPPのいろいろなやりとりの中で、私は総理に最低限お約束していただきたいんですが、やはり、食料自給率を高める、少しなりとも今より後退させない、そのことの前提がなければTPPには参加表明などはできないと。これは、食べ物はほかには代替がききません。石油などはバイオでもつくれる部分もあります。食料はどうやったって国の安全保障です。

 この図をごらんになって、私はこれは危機感を持ちました。今後輸入に頼る我が国、今の我が国も危機ですし、また、TPPをやると一四%に下がるという試算もある中ですから、総理として、国民に、絶対に自給率は落とさないというお約束をしていただきたいですが、いかがでしょう。

玄葉国務大臣 取りまとめ責任者として申し上げたいと思いますけれども、結論から申し上げれば、食料自給率の目標というのは、かなりこれはハードル高いんですけれども、目標として掲げ続けたいというふうに思っております。

 いつも申し上げますが、農業、農村の持続可能性は日本の懐の深さだというふうに思っております。今、御存じのように、二百六十万人の農業従事者、私が国会に出たころの半分です。農業所得はピーク時の半分です。これからどうするかということで、十年後、このままいったら恐らく百万人減るのではないか。

 しかし一方、よく総理がおっしゃいますけれども、例えば十倍の面積で十万人の若者が農業に参入をしていくためにはどうしたらいいかとか、そういったことも含めて、また、例えばEUは直接支払い七八%です。米国は三〇%です。日本は、実は二三%です。そういった農のセーフティーネットも含めて、さらに言えば、輸出も、成長産業化も、六次産業化も含めて、積極的に対応していきたいというふうに考えております。

阿部委員 国民が知りたいのは、たくさんの言葉ではなくて、絶対に自給率は落とさない、飢えさせることはないという政府の、総理の決意であります。

 私は、玄葉さんは政調会長ですし、いろいろなことをよく御存じなのは知っています。そして、対策もしていただきたい。だがしかし、国民に約束していただきたいのは、結果なんです。落とさないということなんです。私は、日本がこのままいった場合に、そしてここに投機マネーが入ったらどうなってくるのか。きのうもちょっと指摘しましたが、とても安穏としてはいられません。

 総理、再度伺います。自給率が下がるというようなことは断固あり得ないし、させないし、TPPと、EPAだってそうです、全部そうです。それらを含めて、この国の政策の未来にはない、こう断言できますか。

菅内閣総理大臣 阿部さんが言われている気持ちはよくわかりますし、私も同じ気持ちであります。

 ただ、私も、ある時期から農業政策について改めて見直してみた中で、決してその責任を他に押しつけるとか云々ではなくて、歴代内閣、もう少し上げよう上げようと、もちろん自民党政権の時代にも苦労されながら、結果として四〇%、今は四一ぐらいに戻ったでしょうか、長年下がってきた経緯があります。

 ですから、まずは、その下がってきた経緯は何なのか、そのことをしっかりとつかまないと、結果として、例えば、貿易自由化をやらなくても、今お話がありましたように、現在の農業従事者の平均年齢は六十五・八歳でありますし、これが十年後に、このままいけば農業人口はさらに少なくなっていくわけですから、そういった構造的な原因も含めて、できるだけ自給率を高めながら、地産地消で、安全な食べ物を国産で賄って、できれば質のいいものについては輸出もしていく。そういう活力ある農業の再生を目指して、結果として、まさに自給率も下がらない、こういう結果を生み出すよう全力を挙げたいと思っております。

阿部委員 EPA等々で、よその国でも、二国間で国を総理の言うように開くということはありますが、やはりそこで国にとって大事なものは開かないんですね。ここがずっと論議になっていて、今の総理のお話では、本当は国民は安心して、あしたの米びつ、あしたのパン、あしたのしょうゆ、みそ、食べることができないですよ。

 本当に、総理、ここだけは、食料自給率、安全保障は揺るがない、それから、国土、国民を守るための安全保障も揺るがない、そう言っていただかないと、百万の御説明よりも、国民が一つ知りたいことにぜひ答えていただきたいと私は思います。

 今の皆さんの御論議のために資料を添えましたが、例えば、日・タイや日韓のEPAでも、食物、センシティブなものを開いた場合の日本の国益と開かなかった場合の日本の国益と、日米でも日・EUでも比べてあります。いずれも、センシティブなもの、米とか砂糖とかいろいろあります。それを開かない方がEPAによって受ける日本の利潤が高いということであります。この問題は賢くやらないと、戦略的にやらないと、私は国を滅ぼすと思います。

 そしてもう一つ、通告してあって、先回も細川大臣にお待ちいただきましたので、肝炎の問題をやらせていただきます。

 肝炎は、いわゆるB型肝炎でございます。

 この問題は、実は私は小児科医でありまして、子供の予防接種にずっとかかわってきた関係から、予防接種を介して肝炎がうつるということは本当に医師としても痛恨の思いでありますし、子供たちの時期にウイルスを体に入れれば、免疫力が弱いから当然すみついてしまうわけですね。そういう形になって、札幌地裁から高裁に至る裁判が起こり、今、国は和解過程にあります。

 はてさて、国は、いつから注射で肝炎がうつるということを認識されたのかというのが一点。総理、二点続けてお願いします。

 そして、例えば一九六四年のデータをとりますと、子供たちの九割は予防接種をしているんです、受けているんですね、だって義務だったんですから。逃げることはできないんですよ、子供は。

 となると、これは注射針でうつるということを認識していたのはいつなのか。そして、私から見れば、ほとんどの子供がそれを受けている。となると、国の予防接種行政が国民に与えた一つの被害、過ちであったと私は思いますが、総理、いかがですか。総理にお願いします、後で細川さんにお願いしますから。

細川国務大臣 B型肝炎につきましては、今、裁判所で和解の協議をさせていただいているところでございます。国の方としては、誠意を持って解決をしていくということで取り組んでいるところでございます。

 そこで、B型肝炎の感染拡大の可能性をいつ認識したかということにつきましては、十八年、最高裁の判決が出ております。遅くとも昭和二十六年には予防接種によるB型肝炎ウイルスの感染の危険性について認識すべきであったというふうにされまして、昭和二十六年から五十八年間の間に、予防接種やツベルクリン反応検査を受けた、その当時の、裁判での五人の方に対して国が責任を認められた。こういうことで、十八年、最高裁判決ではそのような認定をされているところでございます。

阿部委員 予防接種法ができたのが昭和二十三年ですから、それからずっと同じ針あるいは筒で注射が行われてきた。しかし、国がこれを公式に認めたのは平成十八年だった。遅きに失するし、その間にさまざまな問題が派生しているわけです。

 そして、きょうここにお示しするのは、そうやって生じてしまったB型肝炎に、和解勧告にのっとって国は一体どれだけを補償しているか。亡くなると、この前話題になったC型肝炎が四千万円に比べて、B型は二千五百万。なぜ命に値段の差があるのか。

 あと、キャリアといって、ウイルスを体の中に持っているけれども今症状がない人は定期検査のみということになっています。

 しかし、ぜひお考えいただきたい。キャリアというのは、自分がウイルスを持っているために、人にうつすかもしれない、常にそういう思いを持っているわけです。就職の差別もあります。また、パートナーにそのことを伝えなきゃいけないという苦痛もあります。そう考えると、いつ何が自分に起こるのか、また人にうつしてしまうのかわからない状態で暮らしているわけです。

 私は、C型肝炎ではキャリアは千二百万、B型は政策対応というのは、余りにも、政策が起こした予防接種禍、被害なのに、本当にその人の人権や命を救っていないと思います。

 ちなみに、高裁では、慢性肝炎の方もキャリアの方も、慰謝としてまず五百万円を前提に積み重ねていくという判決であります。

 もう時間がないので恐縮ですが、さっきここで御相談でありましたので、細川大臣に御答弁を伺います。なぜ命に差があるんですか。

細川国務大臣 B型肝炎訴訟において、札幌地裁での国の方からの和解の金額を提案させていただいたところでございます。

 その際に、C型肝炎との違いがあるのではないか、このように指摘をされたわけでありますけれども、B型肝炎のウイルス感染については、因果関係について、C型肝炎と比べまして相当程度の不確実性があるということが一点でございます。それから、B型肝炎訴訟におきます確定判決が最高裁で出ておりまして、この判決で出された金額を水準というか基準にして私どもは提案をさせていただいているところでございます。

 それから、無症候キャリアについては一時金というか、金額が示されていないではないかということでございますけれども、これについては法律的に大変問題がありまして、除斥期間ですね、二十年経過をしていると法的に損害賠償請求権が消滅する、こういう問題がございます。それと、C型肝炎の無症候キャリアと比べまして、B型肝炎については相当程度、程度が低いというような、そういうこともあってこういう結論にさせていただいたところでございます。

阿部委員 ありがとうございます。

中井委員長 これにて阿部君の質疑は終了いたしました。

 次に、山内康一君。

山内委員 みんなの党の山内康一と申します。

 きょうは、予算削減の切り札として注目されてまいりました事業仕分けについて御質問をさせていただきます。

 私は、事業仕分けに特に恨みがあるわけではございません。むしろ、事業仕分けを民主党の皆さんが手がける前からかかわってきましたので、ある意味、事業仕分けに愛着がありますので、誤ったやり方をやられないように、それから、よりよい事業仕分けをやっていただきたいと心から思っております。そういう観点から、まず蓮舫大臣にお尋ねしたいと思います。

 きょうお手元にお配りしている仕分け人のリストがあります。グループAというグループの仕分け人のリストなんですけれども、大臣にこれをよくごらんいただきまして、感想を聞きたいと思うんです。

 このグループAというのは、例えば外務省の案件を仕分けするグループです。青年海外協力隊事業、あるいは国際機関への人材派遣、若い日本人を国際機関に送ろう、そういう予算を仕分けるのがこのAグループ二十二名です。

 この二十二名のグループの人、ある意味、ほとんど途上国援助とはかかわりのない人ばかりだと思うんですね。NGOメコン・ウォッチの事務局長をされていた松本さん、あるいは大野参議院議員は中東調査会、中東のことは御専門かもしれません。しかし、海外援助、国際協力の分野とは全然関係のない人が大半であるということが言えると思います。そういう人が事業仕分けをやっていいんでしょうか、悪いんでしょうか、その点について御所見を伺います。

蓮舫国務大臣 お答えをいたします。

 事業仕分けの民間評価者の決定の基準でございますが、行政刷新会議で決定した評価者選定の考え方に沿って人選をさせていただいております。

 予算の実際の使われ方など予算執行の現場に知見を有する者、あるいは行政全般、個別の行政分野のあり方等に識見を有する者、事業仕分けや行政事業レビューの公開プロセスの経験を有する者などの中から候補者を選定し、行政刷新会議で決定をしてきております。

 恐らく御指摘の趣旨は、実際の現場に詳しい方をもう少し入れた方がいいのではないか。この点に関しては、枝野前大臣の時代にも委員から同じような御指摘をいただいて、我々の中でも検討はさせていただいておりますが、いずれにせよ、専門家だけで固めてしまうと、外部の有識者の客観的な目でお金の使われ方が適正だったかどうなのかを評価するときに、必ずしも専門家だけの方がいいという考え方には私は立ってはいません。

山内委員 専門家だけでやれということは、私は言っておりません。前の枝野大臣のときにも同じ質問をしましたが、専門家とゼネラリストのバランスが大事じゃないか。例えば、二十二人いたら、半分ぐらいはせめて途上国援助のことを知っている人が議論に参加しないと、とんちんかんな議論になってしまうんじゃないか。正直言って、日本国内の例えば自治体の事業であればある程度想像はつくかもしれませんけれども、カンボジアの道路とかアフリカの学校建設とか、なかなか日本から想像できないようなところでやっている事業を市民感覚だけで判断してしまうと、なかなか難しいんじゃないか。

 例えば、半分ぐらいゼネラリスト、税理士さんとか大学の行政学、そういう一般的な専門性のある人と、半分ぐらいはその分野の専門家の意見を入れる、それも官僚じゃない専門家を入れていくことが大事じゃないかと思います。例えば途上国援助であれば、NGOであったり大学の先生であったり、民間企業の商社員でもいい、何でもいいんですけれども、そういう官庁じゃないスペシャリストの意見を聞くということも大事だと思うんですが、そういうバランスがちょっと欠けるのではないかな。

 議事録を見ると、やはりとんちんかんな意見をおっしゃっている方が多いんです。だれとは言いませんし、悪気はないと思います。ただ、余りにも現場を知らない人の意見に引っ張られている議論がある。そういう議事録を拝見していると、非常に危惧を持っております。その点について、どうお考えでしょうか。

蓮舫国務大臣 御指摘の点は、全くそのとおりである面もありますので、ぜひ真摯に受けとめさせていただきます。

山内委員 余り素直に答えられると困るんですけれども、ぜひ次から、仕分け人、だれが仕分けるか、人が大事だと思いますので、仕分け人の仕分けもきっちりやっていただきたいというふうに思います。

 次に、事業仕分けに向く事業、向かない事業があるんじゃないかなと私は思っています。事業仕分けもしょせんは道具ですから、オールマイティーということはないと思うんですね。向いている事業、向いていない事業、もしかしたら向いていない事業まで事業仕分けの手法で今ばっさばっさと、切っちゃいけない部分まで切っているんじゃないか、そんな感想を受けますが、その点、どうお考えでしょうか。

蓮舫国務大臣 事業仕分けは、これは山内委員も自民党時代に本当に前向きに熱心に取り組んできておられるので同じ考え方だと思いますが、財源を捻出するための手段ではなくて、その事業の目的、理念は否定はしていません。ただ、その理念を達成するための手段として適切なお金が使われているのかどうなのか、それを公開の場で、国民の皆様方に見える形で行わせていただいております。

 その部分では、向いている事業、向いていないという事業よりも、その途中経過の手段に着眼するわけですから、私は、そこをあえて分ける必要性はそんなにないのではないか。例えば、科学技術やあるいは外交においても、外交においては、会計検査院で在外公館のワインの問題等が指摘をされて国民の皆様方の関心が非常に高い、これは無駄ではないかという議論も巻き起こりました。その途中経過に着眼する部分においては、私は、あえて区分する必要性はそう高くはないと考えています。

山内委員 恐らく、この点では、これ以上質問しても平行線だと思いますね。

 私、個人的に思いますのは、事業仕分けというのはミクロの事業というか、例えば私は地方自治体の事業仕分けをやってまいりました。自治体でやっている事業仕分けというのは非常に効果的なんですね。市民がユーザーの目線で、例えばこの図書センターは余り使われていないとか、このバスは使い勝手が悪いとか、そういう市民の目線が非常に生かしやすい事業というのは事業仕分けに向いています。

 ところが、マクロの分析に事業仕分けを入れて市民感覚だけで切り込むと、どうしても、専門性が欠けているせいもあって、議論が煮詰まらなかったり、あるいは、たった一時間の短い時間で判断するにはちょっと内容が複雑過ぎる、そういうケースが多々見られます。

 例えば、民主党はコンクリートから人ということをおっしゃっていました。私は、国内ではかなり妥当な意見だと思います。しかし、発展途上国、まだまだ日本が……(発言する者あり)まあ、ちょっと国内もありますが、国内とは異なって、例えば戦後すぐ、四十年、五十年前の日本よりもさらに貧しいようなアフリカやアジアの最貧国では、まだまだ学校も足りないし、道路も足りないし、あるいは命を守るための水、水道、そういった点でコンクリートもまだまだ大事な国が、日本にもありますが、海外にはもっと多いわけです。

 ですから、日本国内と同じ発想で事業仕分けを海外でやると非常に誤った方向に向かうんじゃないか、そういう懸念を持ちました。その点について、どうお考えでしょうか。

蓮舫国務大臣 御指摘、全くそのとおりだと思っています。

 私たち、事業仕分けをして、特に海外の無償資金援助あるいは有償資金援助、その線引きというのが若干あいまいではないか。その部分では、そのラインをしっかりとして、ここは有償にする、ここは無償にする、そしてその国との外交関係も発展させていく。ただ、その際に、私たち、事業仕分けの中でもコメントとして付記をさせていただきましたけれども、何よりもハードが大事というよりも、そのハードが生命というところに、より人というところに重きを置いてぜひ事業の選定を行っていただきたいということは、これは何度も強調させていただいているところでございます。

山内委員 余り国内の延長線上で海外の事例を考えたり、あるいは、例えば非常に専門性が必要とされる領域まで市民感覚だけで切り込んでいくのは余りにも危険だなと思いますので、ぜひ再考していただきたいと思います。

 次に、これから行われる予定の再仕分けについてお尋ねします。

 再仕分けということですから、二度手間なわけですね。これは無駄じゃないでしょうか。

蓮舫国務大臣 一回で仕分けの評価結果が反映されれば、当然それにこしたことはない。ただ、やはり随分長いこと、これまでの予算のつけ方、予算の編成ではなくて、予算をつけて、前年度の予算が当然で、それをまた踏襲していく、こういう考え方がどうも今の予算の組み方の根底にはあると思うんです。

 そう考えると、我々が外部の目あるいは客観的な立場で中立的に評価をした結果を、素直になかなか受けとめられない考え方も実はあるのではないか。だからこそ、再仕分けという形で、もう一度省庁に、この事業がこの手段で本当に適切に行っていただけるのかどうなのかを考えていただくことも私たちは大事だと思っています。

山内委員 新聞報道によると、仕分けで廃止しろとか予算を減らせと言われた案件が、看板のかけかえ型あるいは焼け太り型、いろいろな形で復活させていると。霞が関の官僚機構は必死で事業仕分けの結果を覆そうとしているということがよくわかります。

 なぜこういうことが起きるのか。なぜそういう状況を、民主党の政治家の皆さん、政務三役あるいは閣僚の皆さん、とめることができないんでしょうか。

蓮舫国務大臣 確かに、国会でこういう御議論も、これまでもさせていただいておりました。私たちが野党時代にも、無駄という観点からはさまざまな事業を取り上げてまいりました。これは、自民党さんが政権におられたときにも政権内で努力もされてきました。あるいは会計検査院の御指摘もある、あるいは総務省の中の行政評価もある、あるいは財務省の中の査定、予算執行調査、さまざまに無駄を生まない、無駄をチェックする機関があるにもかかわらず、昨年、政権交代をさせていただいて事業仕分けを行ったところ、やはりまだ実は無駄があった、税金の浪費があった、国民の皆様方に情報を公開することによって驚くべき事実もありました。

 つまり、これらの既存の組織がうまく機能していなかったんじゃないか。できれば、ここがしっかりと機能をすれば、行政刷新という立場の事業仕分けというのは、そろそろ役割が違う形になるのではないかと考えています。

山内委員 再仕分けの案件とあわせて、内閣府の皆さんは通告物とおっしゃっていますが、各省に対して通告、勧告をする案件があると聞いています。手元にある資料によると、行政刷新会議名で各省に通告をしていく、そういう理解でよろしいんでしょうか。

蓮舫国務大臣 はい、そのとおりです。

山内委員 行政刷新会議の議長というのは菅総理であると思います。

 ちょっと通告をしなかったんですけれども、要は、行政刷新会議の会として各省に命令するのが総理大臣であれば、わざわざ行政刷新会議が勧告を出さなくても、菅総理が官邸に呼びつけて、おまえの省のこれをやれと言えば済むことじゃないんでしょうか。なぜそれができないんでしょうか。総理、通告していませんが、よろしければお答えいただけますでしょうか。

菅内閣総理大臣 行政刷新会議という会議体、これは民間の方にも参加をしていただいていまして、実際の仕分けにも多くの民間の方にも参加をしていただいています。そこで仕分けという形で上がってきたものを刷新会議の中で改めて報告を受けて、そこで必要なことをその会議の名前でいろいろと申し上げるわけであります。

 確かに、総理大臣という立場でいえば、各省庁に対して、各大臣に対してこうしろとか、こうすべきだということの指示を出すことももちろん一般的にはたくさんありますけれども、行政刷新会議という民間人も含まった会議の中でそうした作業をやり、そうした一つの方向性を出したものについては、一般の内閣の指示とかとは若干性格が私はやはり違うものだろうと。そういう意味では、その会議の議長名で出させていただいているということであります。

山内委員 正直言って、総理がやる気になって、やれと言えばやれるんだと思うんですね。それを役所が骨抜きにしている。こういう状況を考えると、政治的な意思があれば再仕分けも要らないんじゃないかというふうに思いますし、本当に、最初の事業仕分けで指摘されたことのかなりの部分は多くの国民が拍手喝采していたと思います。それが一年たってみて、ほとんど予算に、ほとんどとは言いませんが、予算に反映されていないものがまだまだたくさんある、こんなにたくさんある。これは政治的な意思の欠如ではないかと思いますし、やる気さえあればできることはたくさんあると思うんですけれども、そこが日本がなかなか財政再建が進まない理由ではないかなということを思いまして、ちょっと今のは質問じゃないんですけれども、時間がないので、最後の質問に行かせていただきます。

 事業仕分けというのは、本当は、ただ単なる歳出削減ではなくて、事業の見直し、制度の見直しのためにつくられたものだ、構想日本の加藤さんもそうおっしゃっています。

 そもそも、事業仕分けに参加した仕分け人の人はみんな知っていると思いますが、事業仕分けのシートには、国がやるべきか、都道府県がやるべきか、市町村でやるべきか、それを選ぶ欄があります。本当は一つ一つの事業を見直して、これは国がやるよりも県がやった方がいい、これは市町村の方がいい、そういうふうに、要るか要らないか、ゼロか百かという議論ではなくて、だれが主体になってやるべきか、国か、地方自治体なのか、NPOなのか。そういう意味では、地方分権を進める道具としても事業仕分けは想定されていたと思うんですが、そうなっていないんじゃないか、今実態は。この点について、蓮舫大臣、お答えください。

蓮舫国務大臣 質問に至るまでの前段の部分は、全面的に同じ意見でございます。

 実際に、事業仕分けというのは、その事業に着眼して、事業の必要性やあるいは効率性、効果というものを議論した後に、国がやるのか、都道府県がやるのか、あるいは地方自治体がやるのか、あるいは民間、NPOがやるのか、その事業の実施主体はどこがふさわしい、適当なのかというのも議論をさせていただいております。

 これまでの事業仕分け第一弾、第二弾、あるいは第三弾の前半を通じて、やはりこの観点から、国と地方の考え方、制度のあり方そのものにも相当いろいろな御意見をいただいております。

 その部分では、今、片山大臣のもとで、出先機関を初めとして、制度、組織のあり方はどうあるべきか、国と地方はどうあるべきかという議論を総務省の中でも進めていただいておりますので、ぜひここは連携をとって、地方主権のあり方を探っていく手段として仕分けの議論も活用させていただければと思っています。

山内委員 事業仕分けの現場では、恐らく、お金の問題ばかりじゃなくて、本当は国がやるよりも都道府県がやった方がいいとか、市町村がやった方がいいという意見を皆さん、仕分け人の人が言っていると思うんですね。その結果をきちんと反映させていけば、単にお金の、無駄な税金の使い道をなくすだけじゃなくて、地方への権限移譲、分権を進めていく非常に重要なツールになると思うんですね。

 本当は、もっと総務省なり地域主権担当大臣の片山大臣もコミットされて、一緒になってやっていただいた方がもっといい事業仕分けになると思うんですけれども、それについて片山大臣の御意見をお伺いします。

片山国務大臣 お答えをいたします。

 実は私も、現在、行政刷新会議のメンバーでありますし、かねて民間議員でもありました。したがって、行政刷新会議の作業にはずっと政権交代以来加わっております。

 実は、その幾つかは既にもう反映されたものもあります。おもしろいことに、自治体がやるべしといって仕分けをして、自治体がやろうとしたら、これは要らないんじゃないかというようなものもあるようでありまして、そういう意味では、単に自治体に押しつけるとか自治体に仕分けるだけじゃなくて、そこで自治体にとって本当に要るか要らないかの仕分けもできる、そういう面があると思います。

 それから、例えば下水道事業などは、自治体がやるべきだ、国の関与を減らすべきだ、こうなったんですけれども、第一段階として、今年度から国交省の方の社会資本整備交付金というものになりまして自由度がかなり膨らんでおりますが、これをさらにこのたびの一括交付金化の対象にしますと、本当に自治体の自由度がぐんと増す、こういうことになると思いますので、今そんなことも頭に入れながら作業をしているところであります。

山内委員 時間が参りましたので、最後に意見表明ということで。

 私も、この事業仕分け、まだ世間の注目を集める前からずっとかかわってきた者として、ぜひ誤った使い方をしていただきたくないなと。事業仕分けをやったけれども全然無駄な税金の使い道がなくなりませんでした、歳出削減できません、仕方ないから増税しましょう、そういう増税のアリバイづくりに使わないようにお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

中井委員長 これにて山内君の質疑は終了いたしました。

 次回は、来る十五日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二分散会


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