衆議院

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第7号 平成23年2月7日(月曜日)

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平成二十三年二月七日(月曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 中井  洽君

   理事 泉  健太君 理事 城井  崇君

   理事 武正 公一君 理事 手塚 仁雄君

   理事 中川 正春君 理事 若泉 征三君

   理事 塩崎 恭久君 理事 武部  勤君

   理事 富田 茂之君

      相原 史乃君    網屋 信介君

      井戸まさえ君    石毛えい子君

      稲見 哲男君    打越あかし君

      生方 幸夫君    小川 淳也君

      大串 博志君    金森  正君

      川越 孝洋君    川村秀三郎君

      木内 孝胤君    吉良 州司君

      櫛渕 万里君    郡  和子君

      佐々木隆博君   斎藤やすのり君

      阪口 直人君    城島 光力君

      白石 洋一君    瑞慶覧長敏君

      高井 美穂君    高松 和夫君

      高邑  勉君    竹田 光明君

      中後  淳君    津村 啓介君

      中根 康浩君    藤田 憲彦君

      本多 平直君    三谷 光男君

      水野 智彦君    宮島 大典君

      村越 祐民君    山岡 達丸君

      山口 和之君    山口  壯君

      山崎 摩耶君    湯原 俊二君

      渡部 恒三君    小里 泰弘君

      小野寺五典君    金子 一義君

      金田 勝年君    小泉進次郎君

      佐田玄一郎君    齋藤  健君

      菅原 一秀君    橘 慶一郎君

      野田  毅君    馳   浩君

      山本 幸三君    竹内  譲君

      遠山 清彦君    笠井  亮君

      塩川 鉄也君    高橋千鶴子君

      阿部 知子君    重野 安正君

      山内 康一君    下地 幹郎君

    …………………………………

   総務大臣         片山 善博君

   外務大臣         前原 誠司君

   財務大臣         野田 佳彦君

   文部科学大臣       高木 義明君

   厚生労働大臣       細川 律夫君

   経済産業大臣       海江田万里君

   国土交通大臣       大畠 章宏君

   国務大臣

   (防災担当)       松本  龍君

   防衛大臣         北澤 俊美君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     枝野 幸男君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 中野 寛成君

   国務大臣

   (行政刷新担当)     蓮   舫君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)

   (少子化対策担当)

   (社会保障・税一体改革担当)           与謝野 馨君

   国務大臣

   (国家戦略担当)     玄葉光一郎君

   内閣官房副長官      福山 哲郎君

   財務副大臣        五十嵐文彦君

   財務副大臣        櫻井  充君

   厚生労働副大臣      小宮山洋子君

   防衛副大臣        小川 勝也君

   外務大臣政務官      菊田真紀子君

   外務大臣政務官      山花 郁夫君

   財務大臣政務官      吉田  泉君

   財務大臣政務官      尾立 源幸君

   厚生労働大臣政務官    小林 正夫君

   防衛大臣政務官      松本 大輔君

   防衛大臣政務官      広田  一君

   予算委員会専門員     春日  昇君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月七日

 辞任         補欠選任

  石毛えい子君     櫛渕 万里君

  打越あかし君     湯原 俊二君

  川村秀三郎君     川越 孝洋君

  吉良 州司君     白石 洋一君

  郡  和子君     斎藤やすのり君

  佐々木隆博君     山岡 達丸君

  城島 光力君     中後  淳君

  高井 美穂君     木内 孝胤君

  津村 啓介君     藤田 憲彦君

  仲野 博子君     山崎 摩耶君

  渡部 恒三君     山口 和之君

  齋藤  健君     橘 慶一郎君

  馳   浩君     小野寺五典君

  遠山 清彦君     竹内  譲君

  笠井  亮君     塩川 鉄也君

  阿部 知子君     重野 安正君

同日

 辞任         補欠選任

  川越 孝洋君     川村秀三郎君

  木内 孝胤君     高井 美穂君

  櫛渕 万里君     石毛えい子君

  斎藤やすのり君    郡  和子君

  白石 洋一君     吉良 州司君

  中後  淳君     網屋 信介君

  藤田 憲彦君     津村 啓介君

  山岡 達丸君     瑞慶覧長敏君

  山口 和之君     渡部 恒三君

  山崎 摩耶君     高松 和夫君

  湯原 俊二君     井戸まさえ君

  小野寺五典君     馳   浩君

  橘 慶一郎君     齋藤  健君

  竹内  譲君     遠山 清彦君

  塩川 鉄也君     高橋千鶴子君

  重野 安正君     阿部 知子君

同日

 辞任         補欠選任

  網屋 信介君     城島 光力君

  井戸まさえ君     阪口 直人君

  瑞慶覧長敏君     佐々木隆博君

  高松 和夫君     相原 史乃君

  高橋千鶴子君     笠井  亮君

同日

 辞任         補欠選任

  相原 史乃君     仲野 博子君

  阪口 直人君     打越あかし君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 委員派遣承認申請に関する件

 平成二十三年度一般会計予算

 平成二十三年度特別会計予算

 平成二十三年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

中井委員長 これより会議を開きます。

 平成二十三年度一般会計予算、平成二十三年度特別会計予算、平成二十三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般的質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小川淳也君。

小川委員 おはようございます。民主党の小川淳也でございます。

 今週も元気に参りたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 まず、昨日は、愛知県の選挙結果、既存の政党にとっては大変厳しいものでございました。一度謙虚に受けとめて、この国会審議にもしっかりと心して臨んでまいりたいと思います。

 玄葉大臣は大変お忙しいとお聞きしております。まず冒頭お聞きをいたします。

 我が党のマニフェストの修正について、どういう基本理念で、どういう基本的なお考えで臨まれるか、まず冒頭お聞きしたいと思います。

玄葉国務大臣 マニフェストにつきましては、まずは、衆議院任期の折り返し地点がことしの九月に参ります。したがって、すべてにおける検証が必要だということでございます。

 同時に、社会保障分野につきましては与野党協議を呼びかけているわけでありますので、これらについては、特に社会保障分野は四月までに見直し作業を党の方で基本的には終えたい、そういう基本的な考え方、スケジュールで進んでいるところでございます。

小川委員 私自身も、政策調査会の役員として、玄葉大臣を全力でお支えする立場にございます。それを前提に、これ以上ない公の場ですので、あえてお願い申し上げたい点が三点ございます。

 一つは、任期の折り返しに差しかかったということ自体は、国民から見れば余り関係がありません、私たちの党の都合でありまして、いずれにしても、私たちは、どう修正するにせよ、あのとき掲げたこのマニフェストの責任から逃れることはできません。四年間この責任を負い続けて政治に取り組んでいくという責任意識を、ぜひ政策調査会で共有したいということが一つ。

 そして、仮に修正するとすれば、当初に提案したとき以上の説明責任が求められる、そのことを一度心したい。このことが二つ。

 そして最後に手続でございますが、玄葉大臣、できるだけ全国へ政調の役員そして関係閣僚の皆さんが出かけていって、全国の皆さんの声を精いっぱい聞いて、オープンミーティング、タウンミーティングを精力的に開催した上でという手続を大事にしていただきたいと思いますが、その点、いかがですか。

玄葉国務大臣 小川さんがおっしゃることはよくわかりますし、そのとおりだというふうに思います。

 したがって、マニフェストについてしっかり検証して、見直すべき点についてはしっかりと説明をしていく。しかも、党内でも、もっと言えば全国的に、参議院選挙のマニフェストの見直しのときもそうさせていただきましたけれども、それぞれの支部などでもしっかり議論をしていただく。そして、国民の皆さんとの対話というものをしていく。透明で丁寧なプロセスでやっていかないといけないのではないかというふうに考えておりますので、そういったことを心してマニフェストの検証作業に取り組んでいきたいというふうに考えております。

小川委員 ありがとうございました。

 とにかく、その私たちの責任は大きいわけでございまして、それをしょったまま、現実に合わせて修正していくという大変厳しい作業にともに突き進んでまいりたいと思います。

 加えて、ちょっと私、内容的にどうしても心配していることがございます。

 私どもは、精力的に、予算の組み替え、マニフェストの修正、財政再建、公務員の人件費改革、議員定数を含めた国会改革、それぞれいい議論が進んでいると思います。しかし、それを全体に統合して総合化する、全体として一つのトータルなパッケージにしていく力が依然不足している。そのことを強く感じておりまして、大臣、ちょっと私の持論、提案、少し、一分お聞きいただきたいと思います。

 私たちは、もともと予算を一割組み替えると主張してきました。しかし、そのとき、野党時代は、天下りだの特殊法人だの、国民生活にほとんど影響しないことをモグラたたきのようにやれば簡単に二十兆出てくるかのような幻想を振りまいた、このことは率直に謝罪すべきだと思います。しかし、今の財政状態、そして将来に向かうためには、この一割の歳出組み替えは、依然として放棄できない非常に大きな務めだと思います。

 その上で、一割組み替えれば二十兆円の財源が出てくる。半分の十兆円でマニフェストを修正した上で半分実行し、残りの十兆円で仮に借金を減らすことができれば、これで税収五十兆円時代にもし戻れば、一気にプライマリーバランスは黒字化する、それぐらいのインパクトがあります。

 これは国民生活に多大な影響を及ぼします。場合によっては、年金の高額部分のカット、失業給付の支給停止、子ども手当の大幅な所得制限、さまざまな国民生活に影響を及ぼしながらしかできない改革です。これを理解していただくために、国家機構の社員たる国家公務員の人件費の二割削減、これはそこへ位置づけるべきだと思います。国民生活に影響を与えるこの一割の歳出組み替えを理解いただくために、国家機構の社員たる人件費を二割削減する。

 そして、ここが大事なんですが、国家機構の社員たる公務員に二割の痛みを押しつけるなら、理解をいただくなら、国家の役員たる国会議員、閣僚、総理を含めて、最低三割、国会経費をトータルで削減していく取り組み、この全体の統合された取り組みを一括法で、パッケージとして国民に提示する。これぐらい力強い取り組みが必要だと思いますが、いかがですか。

玄葉国務大臣 ただいまの小川さんの御指摘、ごもっともだというふうに思います。ですから、マニフェストを最終的に検証して見直しをする、どうしてもできないことが明確になったときには謝罪をする。そして同時に、全体パッケージとしてこれからどうするか。優先順位をどういうふうにつけていくのか。財源は、約束した財源をどの程度まで、どこまできちっと捻出をして何に具体的に使ったのか。

 税収は、もともと見積もっていた税収とどのくらい、実際九兆、最終的には、二・六兆プラスアルファで税収が上がりましたので、九兆マイナス二・六兆だと思いますが、そういう事情も含めて、すべてわかりやすく明らかにするということが大事だし、私は、社会保障と税の一体改革のときもそうでありますけれども、今おっしゃったように、景気の動向のみならず、政治家そして役人が身を切るということは絶対に必要不可欠なことであるというふうに考えております。

小川委員 力強い御決意をお聞きしました。とにかく、玄葉大臣を全力でお支えし、国民の期待にこたえたい、その一念で頑張りたいと思います。

 大臣、お忙しいとお聞きしておりますので、どうぞ御退室ください。

 松本防災大臣、連日大変お疲れさまでございます。週末に一部避難勧告が解除されたとはいえ、大変緊迫した状態が続いているとお聞きしております。

 そこで、地元で大変頑張っておられます皆吉衆議院議員、もちろん自由民主党には小里委員、本当に精力的に取り組んでおられると思います。こういう現場から上がってきた声を三つお伝えしますので、御理解をいただいた上で御答弁をいただきたい。

 一つは、灰を取り除く清掃車が決定的に不足しているということが上がってきております。二つ、ふもとの高原町の牛、種牛含めてでありますが、人は避難できるが牛を避難させる場所がない、こういう悩みが上がってきております。最後に、霧島連山は温泉の大変有名な場所でありますが、風評被害含めて観光客が減っている。こういったことを総合的に支援する必要があると思いますが、大臣、いかがですか。

松本国務大臣 お答えいたします。

 二十六日の発災から二十九日に宮崎、鹿児島それぞれ行ってまいりました。今おっしゃるとおり、宮崎の都城の地域では本当に灰がすごいということで、牛の世話もできない、鶏の世話もできないという状況がございました。また、霧島の方では風評被害があって、なかなかそれはつらいんだという話も聞きました。小里委員も一緒に参られたところであります。

 それを今一生懸命頑張っておりますけれども、いずれにしても、それぞれ、鹿児島の方では霧島、牧園、また宮崎では都城、高原町等々、きょう朝、チームを派遣いたしまして実情を聞いているところであります。そういう意味では、現場の声をしっかり酌み上げていきながらやってまいりたいと思います。

 きのう、五百十三世帯の避難が少し解除されたようでありますけれども、その辺の事情も含めて、これから取り組んでまいりたいというふうに思います。

小川委員 松本大臣、もう一点お聞きします。

 過去の火山災害、噴火災害を見ますと、平成六年、雲仙・普賢岳の災害については激甚災害指定がなされました。平成十三年は北海道の有珠山、平成十五年には三宅島の噴火、以上激甚災害の指定をもって強力に支援しているケースがございます。

 今回の新燃岳については、いまだそこまでの被害状況にはないというふうにお聞きしておりますが、今後の噴火、さらには降雨による土石流、もちろんないのが一番いいわけですが、万一の事態に備えて、激甚災害指定を含めた強力な支援体制を想定しておく必要があろうかと思います。

 この点、中井予算委員長は、前防災担当大臣として、指定要件を緩和されるなど大変精力的なお取り組みをなされたというふうにお聞きをしております。この点も踏まえて、松本大臣、今の点、いかがですか。

松本国務大臣 お答えいたします。

 今おっしゃったとおり、平成六年の雲仙岳、そして平成十三年の有珠山、平成十五年に三宅島の火山災害がまさに激甚指定ということになりました。

 しかし、これらは火砕流とか土石流が起こって道路や河川に大きな被害があって、その災害復旧事業費が指定基準を超えたために局地激甚災害に指定をされたところであります。けさチームを派遣いたしましたけれども、今まだそういう状況にはありません。

 今、降灰事業につきましては、活火山法第十一条で除去をしていくという支援法もありますし、災害復旧事業でやるという方法もあります。あらゆる手だてを講じてやっていきたいというふうに思っておりますし、いずれにしましても、被害状況をしっかり見ていきながら、これから各省庁連携をして一丸となって取り組んでまいりたいと思いますので、よろしくお願いします。

小川委員 重ねて連日のお取り組みに敬意を表しますと同時に、今後、あらゆる可能性を視野に置いて、想定してお取り組みをいただきたいと思います。

 松本大臣、お忙しいでしょうから、どうぞ御退室ください。ありがとうございました。

 続いて、政権交代なくしてはなかなか成らなかった幾つかの成果を個別にお聞きしたいと思います。

 まず、海江田大臣にお尋ねします。

 今般、初めて本年度の予算案に離島向けのガソリン税負担の軽減対策が盛り込まれたとお聞きしておりますが、その趣旨について、意味についてお尋ねします。

海江田国務大臣 小川委員にお答えをいたします。

 御指摘のように、離島におきましては流通コストなどが高いことから、ガソリンの小売価格が、今大体平均をしまして、リッター当たり二十円ぐらい高くなっております。

 このため、SS等が島民にガソリンを販売する際に、特に離島と本土の流通のコストの差分を補助するということで実質的に小売価格が下がるように支援策を創設したところであります。

 経産省としましては、これは石油情報センターが価格を調査しております。モニタリングをしております。このモニタリングを見ながら適切に行っていきたい、そのように考えております。

小川委員 私ども、きょうは後ろにおります打越委員を含めて、離島議連としては、これは悲願でありました。離島政策PTとしても悲願でありました。

 その心なんですが、先ほど大臣御説明になられたとおり、手元に、去年十二月のデータです。

 ガソリンが、全国平均はリッター当たり百三十円。しかし、一番高い小笠原、二百六十二円、リッター当たりですね。これは、もちろんさっきおっしゃった輸送コストで、今般お聞きしたところによりますと、人口規模や輸送形態に合わせて、一番小さくてリッター七円、次はリッター十円、最大はリッター十五円減税される。これは本当にありがたいことだと思います。

 本来、離島振興を担当しておられる大畠大臣、ぜひ、ここも申しわけありませんが、ちょっと持論を一分だけ。

 かつて、日本の離島振興策は、ほとんど公共事業の補助率のかさ上げでした。ピークは平成十二年の一千七百億。本年度予算ではわずか四百億ちょっとです。しかし、私は、これはやむを得ないと思います。これ以上離島に公共事業を供給しても、離島が栄えるとはとても思えない。

 これからヨーロッパの地中海の一部離島では、本土で二〇%の消費税を二%にし、大幅に航路助成を行う。国土が連続している、海も、航路も道路だ、これは離島の方がよく言う言葉です。私も、小豆島や直島、豊島、たくさんの離島を抱えていますが、こういうことで、要するに、公共事業中心から減税と航路助成へという大きな流れを九〇年代中盤からとっています。今回は画期的なその第一歩を踏み出した。

 そして、折しも、私自身、国土審議会離島振興分科会の分科会長として、再来年の離島振興法の十年ぶりの抜本改正に向けた議論をリードさせていただきたい。これには、武部先生、大変経験豊かなお立場から参画をいただいておりまして、ぜひとも党派を超えてお力添えいただきたい。

 大畠大臣、離島振興に責任を持たれる立場で、申し上げた、公共事業中心から減税と航路助成へ、この大きな価値観の転換についてどうお考えになるか、お感じになるか、お聞かせいただきたいと思います。

大畠国務大臣 小川議員の御質問にお答えを申し上げたいと思います。

 離島にお住まいの方々の生活というものを考えて、真剣な提言をいただきました。

 先ほど海江田大臣の方から、ガソリンに関する今回の民主党政権としての一つの考え方が提示されたわけでありますが、私の方からは、離島航路あるいはそういうことに関して御報告を申し上げさせていただきたいと思います。

 確かに、小川議員からお話がありましたように、従来の離島対策というのは、離島振興法第七条による事業にかかわる支援というのがありました。海岸の高潮対策、侵食対策、あるいは道路、港湾、空港、それから水道、廃棄物対策、こういうものに対して内地と離島では補助率を変える、こういうことで支援をしてまいったところであります。これはこれとして大事なものだと私は思います。

 ただし、御指摘のように、これからどういう形で特に離島航路などの支援をしていくかということでありますけれども、平成二十二年度予算は地域公共交通機関にかかわる予算として二百十五億円でありましたが、九十億円ふやしまして三百五億円を計上しておりますし、また、離島航路助成にかかわる予算として、平成二十二年度当初予算は四十八億円でございましたが、これに十二億円を足して六十億円とさせていただきました。

 今後とも、議員から御指摘ありましたように、税制問題については、公平、透明、納得という税制の原則に照らしながらも、税全体の方向性について議論を行うことが必要だと思います。

 いずれにしても、国土交通省といたしましても、離島にお住まいの方々が安心して生活ができるように、離島振興施策について十分検討してまいりたいと考えているところであります。

小川委員 力強い御答弁、ありがとうございました。

 ちなみに、日本はまさに海洋国家でありまして、島の数は六千八百余り、人が住んでいる島が四百余り、かつてそこに九十万人の人が暮らしていました。現在四十万人、半減しています。高齢化率は、全国平均が二〇%、離島に限って言えば三〇%。これは人ごとではありません。恐らく、日本全体がこれから先、今の離島か、それ以上に厳しい状況を迎える。そこで、一国二制度は不公平だとか何だとか言う人たちがいますが、同じ条件で生きろということが本当に公平なのか、こういった根本哲学の転換も含めて、ぜひこの離島行政、議論をさせていただきたいと思います。

 海江田大臣、どうぞ、お忙しいでしょうから。ありがとうございました。

 それでは、大畠大臣にもう一点お聞きします。

 地域振興に関連して、現在、高速道路の料金体系の見直しを精力的に進めておられる。その中で一つ、本四架橋、私自身も選挙区が香川でございまして、二点お尋ねしたいと思います。

 ちなみに、今、高速道路、いろいろな割引制度がございますが、それを捨象して、一キロ走るのに全国の皆さんは平均で二十四円払っています。建設費が大きかった関門海峡、一キロ六十四円払っています。全長二十二キロにわたります最長のトンネル、中央道の恵那山トンネル、一キロ三十九円払っています。瀬戸大橋でありますが、全長十三キロ、料金はかつて六千円、現在四千円。現在ではじいても、架橋部分に限って言えば一キロ三百円払っているということがございます。

 そこで二点。一つは、きょうあす直ちには無理だと思いますが、四国四百万島民の希望からすれば、これは国家プロジェクトでつくった橋ですから、全国の皆さんと同じように、一キロ二十四円、距離に応じた一体的な料金を望んでいます。その気持ちを御理解いただけるかどうかが一つ。

 もう一つは、そうはいっても、料金をまけるために地元自治体に出資を頼み続けてきました。かつては、料金を引き下げるために必要な額の半分は地元自治体負担、最初の十年。次の十年は三分の一が地元負担。これからもう次の十年を議論する必要があります。私のお願いとしては、最初の十年が二分の一、次が三分の一であれば、今度は四分の一を含めて、国家プロジェクトですから、少しずつ地元負担は下げてやっていただきたい。

 この二点、大畠大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

大畠国務大臣 本四架橋の料金等々について御質問をいただきました。

 現在、この本四高速を含めて、全体的な料金について検討しているところでありますが、御指摘のように、将来というものを考えながら料金制度というものは決めなければならないと思います。

 現在、高速道路の有効活用あるいは渋滞緩和、交通需要の調整、地域振興などの観点から、財政状況や地方の御指摘の地域の自治体の皆さんの御意見も踏まえて、できるだけ利用しやすいものとなるように、検討を進めているところであります。

 特に、御指摘の本四高速の料金割引につきましては、これまでに、地域の方々の御意見も賜りながら、調整会議を二回開催してきているところでありますが、まだ意見の一致を見ていないところであります。

 しかし、ここについては、御指摘を踏まえて真剣に話し合いをしておりますので、地方の求める高速道路料金全国一律制度を視野に入れつつ、御指摘の点を踏まえて、今後の割引のあり方についてしっかりと検討をしてまいりたいと考えているところであります。

小川委員 ありがとうございました。現時点においては精いっぱいの御答弁をいただいたと思います。深く感謝を申し上げます。

 また同時に、フェリー対策も含めて、本当に課題は山積しています。あれもこれもという時代ではありませんが、冷静に議論をぜひさせていただきたいと思います。

 大畠大臣、どうぞ御退室をいただきますように。

 片山総務大臣、大変お待たせをいたしました。

 私自身、かつて自治省で勤務をさせていただいて、係長をしておりましたときに、大臣は隣の課の課長でいらっしゃいました。当時から大変毅然としておられ、非常にバランスのいい御判断をされ、また周囲に対してもすばらしい説得力がある。当時、ともに勤務しておりました部署は、今の日本たばこビル、JTビルの十三階でございまして、毎日深夜三時、四時までの勤務でしたから運動不足で、時たま私は階段で十三階まで上がっていました。だれにも会うことはないんですが、大臣は御記憶にないと思うんですが、大臣にだけはたまにすれ違っていたんですね、階段で。私は上る方で、大臣はおりる方なんですけれども。そういう意味では、非常に自己管理の行き届いたすばらしい先輩だなと。ちょっと物思いにふけっておられるなというのを、正直、隣の課で感じていたら、鳥取県知事選挙に出馬されたということで、非常に思い入れの深い先輩であります。

 前置きはおきまして、大臣、御着任されて半年たちました。御着任されて、政権交代なかりせば起きようのなかった変化、また進むはずのなかった改革が、各論です、個別です、新聞やテレビの一面トップを飾るような話ではない、しかし着実に進んでいることを感じられたんじゃないかと思います。

 実例を、ちょっと二、三。

 まず、大臣もお詳しい税に関して言えば、地方税の非課税等特別措置、いわゆる租税特別措置は、かつて三百ありました。これは政策税制であると同時に、裏からいえば大変な不公平税制の象徴。私自身、政務官として仕事を一年させていただき、これを半減させるぞという目標を立て、初年度は三百のうち百個期限が来ましたから、半分に減らして五十にしました。次年度も五十に減らし、現在、総数は、かつて三百あったものが百九十六、二百を切った状態にあります。

 財政。交付税特会の借り入れ、事業仕分けでも問題になりました。隠れ借金と言われた三十三兆円の負債、毎年法律改正して、ことしはやはり返しません、来年以降返しますと、できもしない、ありもしない法律改正を繰り返してきた。野党時代、じくじたる思いでした。今回、初めて、わずか一千億です、両手を挙げて褒められたものじゃない、三十三兆円返すためには三百三十年かかる、しかし、それでも武士の一分です、借りたものは返す、一千億の償還に私もこだわりました。大臣の御決断で実現した。

 そして直轄負担金。香川県議会でも問題になりました。二千億あったものが、一兆円余りから二千億の維持管理費、去年、ことしで廃止しています。

 こういったもの総体をとらえられて、大臣、着任早々どうお感じになったか、また今後どう進めていかれるか、決意も含めてお聞きしたいと思います。

片山国務大臣 小川議員にお答えをいたします。

 前段で昔のこともありましたけれども、私も階段でお会いしたのを覚えております。私はおりるだけではなくて上がりもしておりましたので、つけ加えておきます。

 政権交代がありまして、私はその一年後にこの内閣に加えていただくことになりましたけれども、以前、政権交代前の時代に、私も長い間役所でいわゆる官僚をやっておりました。そのときの経験とか記憶からいいますと、やはりこの政権交代によって随分変わったことは多いというのが実感であります。

 例えば、先般も議論になりましたけれども、一括交付金などというのは、従来でありましたら、本当にちょぼちょぼっとしたことはできたかもしれません。しかし、五千億なり、翌年の計画では一兆円というものが、いろいろこれから制度を進化させなければいけないということは当然でありますけれども、とりあえずそれぐらいの規模のものが自由度をぐんと増す、そういうことができるというのはやはり政権交代した成果だろうと私は率直に思います。

 それから、今、小川議員がおっしゃいました税制、地方税制でありますとかそれから地方交付税の問題にしましても、従来からやっていたことに新しい観点を加えて、これが大きく地域主権改革といいますか、自治体の自由度を増すとか、それから、今までの抱えていた課題に大きなメスを入れるという、その第一歩、着手をしたということは、これはやはり政権交代の一つの効果だろうと思います。

 税制でいいますと、先ほど小川議員がおっしゃったように、数多くの特例を、やはりこれはいろいろな観点から見直そうということでありまして、税は簡素、公平、中立という基本的な原則はありますけれども、簡素化という面でもそうでありますし、それから課税の公平という観点からも、租税特別措置、特例措置は見直さなきゃいけないということで、この二年間、今、これから地方税法の改正案を審議していただきますけれども、それを含めて、二年度間で、かなりやはり整理合理化できると思います。

 加えて私は、この際、税制についても、分権型の税制といいますか地域主権改革型の税制にしたいということで、これは一気にはできませんけれども、政府の税制調査会の中に一つの問題を提起いたしまして、これから議論をしたいと思っております。こんなことも政権交代のもとでできたのではないかと思います。

小川委員 ありがとうございました。

 改めて国民の皆様にも申し上げたいわけですが、政権交代なかりせば決して起きようのなかった変化、決して実現しなかった成果は、個別具体に、各論で、小さな果実がたくさん生まれています。しかし、私たちは、それを統合し、総合化し、大きな力にすることに失敗している。そこはこれからの本当に大きな課題だと思いますが、ぜひ、果実が一方にあることも強調したいと思います。

 加えて、自治法の改正についてお伺いします。

 議員定数の規制撤廃、これも名古屋で大きな変動がございますが、これは、ボランティア議員から少数精鋭のプロフェッショナルまで、いろいろな議員がいていいじゃないかということの意思表示でありますし、会期制を廃して通年制にする、国会に先んじた取り組みであります。それから、阿久根市の混乱、反省がございました。議会の招集権、議長に与えていいじゃないか。住民投票の導入、それから、副知事や副市長を含めた人事権の勝手な専決を許さない、こういったさまざまな改革が進められようとしています。大いにエールを送り、激励を申し上げたいと思いますが、二点だけちょっとお尋ねさせてください。

 まず、住民投票の対象は、今総務省でまとめておられる案、対象は公共事業だけでいいのか、これが一つ。

 もう一つは、長と議会は常に連携をしつつも牽制し合う関係にあるでしょう。そのとき、最も議会の干渉を受けてしかるべきなのは議案、条例案、その次は予算案、最も議会の干渉から守られるべきは恐らく人事権だと思います。今回、総務省の考えとしては、副市長や副知事、議会の議決がなければ任命が全くできないという案になっていますが、私の考えとしては、阿久根のように議会にかけもせず専決するというのは論外です、議決を前置した上で、否決をされればみずから任命できるというのが一番ほどよい改正案ではないかという気がしております。

 この二点、片山大臣のお考えを簡潔にお答えいただきたいと思います。

片山国務大臣 お答えをします。

 住民投票については、私はかねがね、我が国の間接民主制を基本とする地方自治制の中に、それを補完する意味で、例外的といいますか、特別の場合に住民が直接意思表明をする機会があってもいいのではないかというのが持論でありまして、これを今回実現したいと思っておりますが、考え方として、幅広く住民投票の対象にするということ、これも考え方としてはあると思いますけれども、余りこれまでやっていない政策なものですから、一歩一歩で小さく始めるということも一つの具体的なやり方ではないかと思って、今回は、大規模な公の施設を設置する、これの是非について住民投票制度を設けることができる、こういう仕組みを法案の中に盛り込んでおります。ぜひこれは御議論を法案審議の段階でやっていただければと思っております。

 それから、人事権の問題につきましては、これは小川議員のおっしゃったような意見もあると思います。長の仕事をだれに補助させるかということでありますから、長の思ったとおりの人にさせたいということがあると思いますが、トップは選挙で選び、それに準ずるような人、例えばアメリカでいいますと、大統領に対して副大統領、これは選挙のときに、大統領と副大統領はセットで、ランニングメイツということで、一緒に投票を受けるわけでありまして、そういう意味では、どこまでを公選職ないしそれに準じたことにするかという選択の問題だろうと思います。

 我が国では、副知事、副市長、こういう職種については、選挙にかえて議会の同意を得る、こういう仕組みにしているわけで、これは大いに政策をめぐって議論があってしかるべき課題だろうと思います。

小川委員 ありがとうございました。その点はまたぜひ総務委員会で議論をさせていただきたいと思います。

 ただ、この間、地域主権改革、武正先生のもとで党でも議論をしてまいりましたが、一方で、自治体の側にも覚悟を求めたいと思うことが多々ございました。例えば、直轄負担金の業務委託費を廃止したときに、知事会の側は補助金についている事務費は残してくれと言ってきたんですね。私は、けしからぬと言いました。直轄負担金の中から事務費的なものを除くんだから、もらえる補助金からも事務費は除くべきだ、知事会を説得し直してきてくれと私は突き返しました。

 それから、今回、ハローワークの議論もさんざんいろいろとありました。世の中では後退感を持って受けとめられて、大変残念に思っていますが、しかし、雇用保険の事務を法定受託事務として移管するなら、生活保護同様に、地方負担の議論をしなければモラルハザードに対する心配は取りぬぐえません。自治事務として移管するならば、雇用保険財政主体そのものを、国保や介護保険同様、自治体に移管するのが筋であります。しかし、今回の言い方は、自治体の側でありますが、権限と財源は欲しい、責任は要らない、そう聞こえるようなものが多々ありました。こういうものとはむしろ、自治体の側に向かって闘いながら、この地域主権改革は進めていかなければならないと思います。

 そこで、きのうの愛知県もそうですが、大阪では大阪都構想、九州では九州行政機構、これは、私自身、将来の道州制に向けて、経済産業政策を一手にブロックでやっていくという意味においては非常に期待できる運動だと思っていますが、関西広域連合はまだしも、大阪都構想、私自身、ちょっと若干違和感を感じたりします。むしろ、大阪市が一層制で、その地域の都市行政を一手に担うということの方が自然じゃないかと。イギリスなんかそうです。バーミンガムのような巨大都市は一層制、その他の田舎は二層制。

 大臣、この点、お答えにくい面もあるかと思いますが、大阪都構想、率直にどう感じておられるか。

片山国務大臣 大阪都構想、それから最近では中京都構想とか新潟都構想とか出ておりますけれども、これは、一つの大都市行政、それから大都市とそれを包含する広域行政体との関係をどう整理するかという問題提起だろうと思います。

 問題提起の一つは、大都市の区域では二重行政になっている、これをどうするかということだろうと思います。もともと、政令指定都市と言われるものがスタートしたときには特別市構想でありまして、昭和二十年代でありますけれども、そのときには、小川議員がおっしゃったように、府県から独立させてしまうという、大阪市は大阪府からは別のものになるんだ、こういう構想であったわけでありますが、これが当時の都府県の反対によって今のような政令指定都市構想になっているわけで、生い立ちから二重行政の面については少し問題を含んでいるということであります。

 これを解消するために、この際、大阪府と大阪市を合併させてしまおうというのが、一つの大阪都構想であります。これは今、東京都に原型があるわけでありますけれども、実は、東京都の都区ができたのは昭和十八年でありまして、このときは、いかに戦争をスムーズに遂行させるかという、戦時遂行体制の中でできたわけでありまして、いわば自治の否定なわけであります。これが現在の都の一番のオリジンでありまして、これが果たして本当に、民主主義とか地域主権改革とか地方自治とか、そういうときにいいのかどうかというのは、よくよく考える必要があるだろうと思います。

 それを考えれば、小川議員のおっしゃったように、これは法律改正はもちろん要りますけれども、府と市をもっと分離するという、それで市を、一層制がいいのか、その市の中でさらに基礎的自治体をある程度つくるという考え方も含めて、そういう応用も含めて、この際、改めて大都市の行政の仕組みというものを考えてみる必要があると私は思っております。

小川委員 ありがとうございました。

 まだまだこれは先の長い議論が必要かと思います。

 あわせて、政権交代ならではのもう一つの成果、統一地方選挙が間もなくでありますが、やはり地方議会議員年金制度。四年前、この改正で二十年大丈夫だと当時の竹中総務大臣が明言をされ、四年後に破綻が明らかとなりました。そして、このままほっておけば、来年六月、資金は枯渇し、支給は滞ることになります。政府内でも、また党側でも精力的に議論をし、今回、廃止を前提に議論させていただくということになりました。これも一つの英断であり決断だったかと思います。

 この点、きょうは時間の関係で問題提起にとどめますが、自民党さんを初めとした野党からは、事実上、内々に、共済へ加盟させてはどうかといった提案もいただいておりますし、これも謙虚に耳を傾けたいと思っております。

 あわせて、万に一つ、三月、四月、いろいろなことが言われておりますが、関連法の成立がおくれた場合、総務省にも試算いただきましたが、間違いなく六月に資金ショートを起こすということでありまして、内容の議論と同時に、この問題一つをとっても、非常に緊迫した時期を迎えるということでございます。

 きょうは、もうお尋ねにかえて大臣の強力なリーダーシップをお願い申し上げまして、片山大臣への御質問を終わらせていただきます。どうぞ御退室をいただきますよう。

 それでは最後に、年金、財政問題、議論をさせていただきたいと思います。

 細川大臣、大変お待たせして申しわけございません。

 ちょっと本題に入る前に、先ほどの離島振興と絡むんですが、委員長のお許しをいただいてお配りさせていただきました資料の一ページをごらんいただきたいんですが、これは済生丸という診療船でございまして、瀬戸内海海域をずっと巡回して、診療所や病院のない離島の患者さんへのニーズにこたえておられます。

 そこで、年金問題について多くの問題、悩みを抱えておられるお年寄りもいらっしゃるわけですが、このたび、瀬戸内の社会保険労務士会から、この済生丸、実はこれは民間の医療法人の船なんですが、厚労省の支援を得て運航しています、同乗をして、離島のお年寄りの年金相談に、ぜひそのニーズにこたえたいという要望がございます。具体的にもしそういう相談があったら、前向きに積極的に御相談に応じていただければありがたいんですが、細川大臣、いかがですか。

細川国務大臣 島の人たちにとっては、なかなかそういうことを相談できる専門家もいないだろうというふうに思いますので、それはぜひ検討はしていきたいと思います。

 私としたら、そういう船で、年金だけではなくて法律相談とかいろいろな相談ができれば、島の人にとっては大変助かるのではないかというふうに思います。

小川委員 温かい御答弁ありがとうございました。

 さて、細川大臣、本当は、三号被保険者の問題、これもちょっと議論させていただきたかったんですが、いろいろな兼ね合いでちょっとお尋ね申し上げたいと思います。

 与謝野大臣、大変お待たせをして申しわけございません。

 野党時代から闊達に御議論をさせていただき、大臣の御見識には深く敬意を表する人間の一人でございます。あえて、いろいろな批判を覚悟の上で、この時点で火中のクリを拾われた。その識見なり胆力に対しても深く敬意を表したいと思います。

 これから四月にかけて、社会保障の抜本改革を案を取りまとめられるという大変困難な作業に取り組まれるということで、きょうこの場で言えることと言えないこと、いろいろあると思いますが、社会保障を議論するに当たって根本的な議論だけ押さえさせていただきたいと思いますので、現時点での与謝野大臣のお考えを、ちょっと骨太なところでお聞かせいただきたい。

 視点は三つです。これから先の年金は、賦課方式か積立方式か、これが一つ。もう一つは、税方式か保険料方式か、これが一つ。最後に、働き方のいかんにかかわらず一元化すべきか、それとも分立やむなしか。

 以上三点について、与謝野大臣の基本的な御認識、お考えをお聞きしたいと思います。

与謝野国務大臣 まず第一点は、賦課方式を選択せざるを得ないと思います。

 第二点の税か保険料という議論は、実は、だれが負担するかという観点から考えますと、両方とも国民が負担をする。ですから、税か保険料かというのは、公平性とか制度の効率的な運用とか、別の観点から考えなきゃいけないことだと思っております。

 最後の一元論については、考え方としてはわかるところがありますが、一元化に伴うメリット、効能、こういうことが十分説明されていないうらみがあります。それからもう一つは、明らかな一元化したときの技術的な難しさというのがあります。それから、制度の移行期間がかなり時間がかかる、そういう問題があります。しかし、私は、それでも議論に値する考え方であると思っております。

 その議論に値するための最低条件は何かといいますと、社会保障制度の番号制が導入され、それが定着した時点では、一元化の議論は十分可能な議論として議論し得るのではないかと私個人は思っております。

小川委員 大変御見識の高い御答弁をいただきまして、ありがとうございました。

 賦課方式か積立方式か。積立方式というのは、結局、個人口座と一緒ですから、給付は確定拠出にならざるを得ません。これは、ひいては民営化も含めた、民間でもできることでありまして、公的年金としてやっていく以上、当然、賦課方式ということであろうかと思います。

 二点目の、税方式か保険料方式か。与謝野大臣、大変意味のある御答弁をいただいたと思いますが、これはだれが負担するかの問題だという御答弁をいただきました。

 ちょっと、お手元にお配りさせていただいた資料をごらんいただきたいんですが、資料の二ページでございます。だれが負担をし、あるいはだれに負担をさせ、どう給付を実現していくかと考えたときに、これは、とりもなおさず、ひとえに人口構成とかかわる、人口構造とかかわるというのが私自身の仮説であります。

 二ページは、現在、二〇一〇年の人口構造であります。ひょうたん形をしていますが、上の出っ張りはいわゆる団塊世代、下の出っ張りは団塊ジュニア世代、私どもの世代であります。これは現在の人口構成です。

 もう一枚おめくりをいただいて、資料の三ページでありますが、これは、今から四十年後、二〇五〇年前後の人口構成であります。まさに逆三角形に近い形になっている。だれに負担をさせるかという切り口で考えたときに、もはや現役世代に負担をさせるということがこの図を見て可能かどうかという着想を一番にすべきだろうということになります。

 参考までに、もう一枚おめくりいただきたいんですが、四ページ、これはまさに今の日本の社会保障制度がほぼその原型を完成させた一九六〇年代前半の人口構成でありまして、国民皆年金が始まった六一年ごろであります。まさにきれいな正三角形をしておりまして、当時、会社の定年は五十五歳、年金支給は五十五歳から、若年世代の保険料負担はわずかに三%という時代に今の制度はできたわけです。

 そして、これがこれから四十年かけて体の形が余りにも変わり行くこの日本で耐えられるかどうか。間違いなく、答えは耐えられないだと思います。

 もう一つ興味深い資料、五ページでありますが、日本が求めている二〇一〇年現在における社会保障構造の抜本改革に向けた道筋は、ここにすべて描かれていると私は思います。

 この表をよく、注意深くごらんいただきたいんですが、先ほどごらんいただいた正三角形時代、一九六〇年、人口構成は先ほどごらんいただいた正三角形、高齢化率は五%、このとき、今の社会保障構造の原型ができました。そして、それから五十年、二〇一〇年、人口構成はひょうたん形に変形していますが、若年世代の負担を三%から最大で一八%まで引き上げることによって、何とかやりくりしてきたのがこの五十年でした。

 そして、ここから先、あえて四十年と示しています。二〇五〇年に、先ほどごらんいただいた人口構成、ピラミッドはきれいに逆三角形になったその二〇五〇年、人口構成は逆三角形、高齢化率は左の数字のとおり四〇%に到達し、なおかつそれが、二一〇〇年まで五十年間、ほぼそれで固定するということであります。

 そうすると、今、日本に求められている社会保障の抜本改革とは何か、もっと具体的に定義する必要がある。つまり、これは、二〇一〇年から二〇五〇年にかけて、高齢化率二〇%の時代から四〇%に到達するその激変期を、若年世代に負担を負わせてきた社会保障構造を、高齢世代から赤ん坊世代まで、全世代でできるだけ薄く広く負担を分かち合いながら、最低限必要な医療、年金、介護の費用を捻出していく、二〇五〇年をターゲットにした負担の構造改革だ、あるいは規模の構造改革だというふうに定義をして具体の議論をすべきだと思うわけですが、大臣、今の点、いかがですか。

与謝野国務大臣 先生の議論を私なりに集約しますと、一つは持続可能性の問題、一つは世代間公平の問題、この二つに先生の議論は集約できると思いますが、まさにそのとおりであると思っております。

小川委員 ありがとうございました。

 細川大臣もぜひ持ち帰って研究いただきたいんですが、今、自民党さんからありがたいお声がけをいただいたんですけれども、今、百年安心プランというのがありますね。あれは運用利回り四%で設定しています。国民年金に関して言えば、未納率を四割から二割に改善するという前提になっている。しかも、これは、ここが最大の問題なんですが、年金財政収支しか見ていないんですね。最大で基金は、積立金は五百兆まで膨らむ。しかも、この二〇五〇年にです。

 私、極論すれば、二〇五〇年に積立金は枯渇したっていいんです、その時点で消費税による負担にするものに変えることができれば。まさに人口構造の激変をにらみ、この四十年を集中改革期間と位置づけ、何のためにどういう正確な手だてを打つかという議論をすべき今局面にある。

 年金財政収支だけ考えると、細川大臣、こういう問題が起きます。掛金を納めない人には年金を払わなくていいから、年金財政は大丈夫だと言う人がいる。大間違いです。今、生活保護世帯は大量にふえていますが、半分は無年金のお年寄りです。

 つまり、負担の構造の仕方として、いかに全員を漏らさず、能力に応じて負担をしていただき、そしてターゲットは二〇五〇年。このときまでに積立金を取り崩したっていい。四十年で百二十兆取り崩すなら、毎年三兆取り崩せます。そういうことも含めて抜本的な議論をしてほしい、それが政権交代に対する大きな期待だったと思います。

 そして、与謝野大臣は、あらゆる批判を覚悟の上で、あえてその火中のクリを拾われた。最も本質的で、強くて、そして優しい、温かい議論をぜひお願いしたいと思います。

 そして最後に、野田財務大臣、本当に連日そこにお座りになられて、質問が一つ来るか二つ来るか程度の中、本当に忍耐強く連日の御審議、お疲れさまでございます。

 大臣は、今回の予算、御自身で自己評価、自己採点、どの程度しておられるか。そして、私は正直、気になる借金の問題、これを考えれば、大臣の御苦心は多としながらも非常に課題の多い予算であることも事実だと思いますが、その点。そしてあわせて、率直に、この借金体質はあと何年持ちこたえられるか、お答えいただきたいと思います。

野田国務大臣 答弁の機会をちょうだいしまして、ありがとうございます。

 予算の評価ですけれども、今回の九十二兆四千百十六億円は、いろいろな環境の中で私はベストの予算をつくったと思っています。三段構えの経済対策の一環としてのその特色と、それから、三・六兆円の安定財源を確保しながらマニフェストの主要事項を着実に実施していくということと、冒頭、地方の問題も触れられておりましたけれども、四年連続地方交付税交付金は増額になるし、地方一般財源総額も、今進行中の平成二十二年度が過去最大規模ですが、それに約一千億円プラスしており、一括交付金もつくったという意味で地方にも最大限配慮しているという意味、加えて、歳出の大枠そして国債発行額、当初の目標どおりクリアをしたという意味で、いろいろな条件の中ではベストのものをつくったというふうに思っております。

 その中でも、厳しい状況はもうあえて言うまでもないと思いますけれども、私どもが政権を引き継いだときがリーマン・ショックの直後であって、あのとき、決算ベースでいうと税収が四十兆に落ち込んで、そして国債発行を約五十三兆だったと思います。借金と税収との差が十四兆ぐらいあったと思います。平成二十二年度はその差を七兆にまで縮めました。二十三年度の予算については、それを三兆まで縮めてまいりましたけれども、いずれにしても、国債の方が税収より多いという異常事態が続いているというその厳しさは、常に認識していかなければいけないと思います。

 最後に、何年もつかというお話がございました。これは、持続可能な財政にしなければいけない、何年ももたなければいけない、そういう意味で財政運営戦略をまとめさせていただきましたので、着実にその道筋をたどっていきたいというふうに思います。

小川委員 ありがとうございました。

 ちなみに、数字だけ御紹介したいと思いますが、現在、政府の負債総額、一千兆円を上回りました。家計にもたらされております貯蓄は一千四百兆余り。しかし、住宅ローンは四百兆ありますから、ネットで一千兆。

 そうすると、いろいろな仮説の立て方はあるでしょうが、ほぼ国家の負債と国民の資産が見合うところまで来ている。国内消化率九五%を高らかにうたう人たちもいますが、これは裏を返せば、国内の富の総量を負債は超えられないということの裏返しでもあります。そういう意味でも緊張感を持つ必要があります。

 最後に、与謝野大臣、先ほどの年金改革なんですが、粗い試算をしますと、今総額で約八十兆です、社会保障の給付費が。高齢化率が倍になれば、ざっと百五十兆から百六十。単純計算ですよ、人口の増減とか経済成長率はちょっと捨象します。そうすると、八十兆の負担増をどこかに求めなきゃいけない。

 消費税を二五%にしても五十兆しか出てきません。ということは、もっと具体的に言えば、二〇五〇年までに消費税を二五%にし、なおかつ社会保障給付費を二割減らす、これが今、日本に求められている社会保障構造改革の将来的なマクロの抜本的な姿だろうと思います。

 このことも申し上げ、重ねてになりますが、民主党政権は本当に成果はたくさん上げています。上げていますが、大きなところ、本質的なところ、高いところでまだまだ課題が多い。閣僚の皆様の日々の激務、精励に本当に心から敬意を申し上げ、また、それを全力でお支えすることを改めてお誓い申し上げ、質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

中井委員長 これにて小川君の質疑は終了いたしました。

 次に、吉良州司君。

吉良委員 おはようございます。民主党の吉良州司でございます。

 きょうは、前原大臣、それから海江田大臣、玄葉大臣、そして北澤大臣、また野田大臣に対して質問を行わせていただきます。与党質問でございますので、一方では激励し、エールを送らせていただきながら、また一方で諸課題について問題意識を共有させていただきたい、このように思っています。

 まず、外交でございます。今地元を歩いておりますと、どういう声を聞くのか。それは、もう政党間の争いなんかどうでもいい、国を何とかしてくれ、その声が実は充満しております。私も、政党間の足の引っ張り合い、これは特に、それぞれが与党も野党も経験した今、なくす国会にしなければいけない、国家運営にしなければならない、このように思っているところであります。

 そういう中で、前原外務大臣は党派を超えた外交を推進している、そういう姿勢を前面に出しておられる、私はこのように見ております。一つには、ことし一月一日に、今まさに飛ぶ鳥をも落とす勢いのブラジルにおいて、ルーラ大統領からジルマ大統領へと政権移譲が行われ、大統領就任式が行われました。この就任式に、菅総理、仙谷官房長官、そして前原大臣は、麻生太郎元総理を特派大使として派遣することを決定し、お願いをしました。また、麻生太郎元総理も快く引き受けていただきました。

 また一方で、十日の前原大臣のロシア訪問を前にして、先週、森元総理のところに足を運び、いろいろとアドバイスを受けてきた、このように聞いております。

 このような動きは、まさに外交、安全保障には民主党もない、自民党もない、あるのは国家、国益だけだ、このような姿勢のあらわれだ、このように思っておるところであります。

 考えてみれば、民主党には志ある議員がおり、そして能力もあると思っておりますけれども、残念ながら政権運営の経験は少ない、これはいかんともしがたい事実であります。そのような中で、長年政権の座にあった自民党、その中で、国家として首相経験者、外相経験者が貴重な経験を積み、そして人脈を構築していった。これは、一政党である自民党の人脈、また資産というよりも、国家としての貴重な外交資産だ、このように思っております。

 そういう私自身の認識がある中で、前原大臣が、繰り返しますけれども、麻生元総理を特派大使として派遣され、また、森元総理にアドバイスを受けられた、このような姿勢に対して大変高く評価しておりまして、敬意を表する次第であります。また同時に、これを快諾いただいた麻生元総理、そして森元総理の高い見識に対しても心から敬意を表する次第であります。

 私自身は今申し上げたような問題意識を持っておりますけれども、前原大臣も同じような認識を持っておられるのではないか、このように思っておりますが、今言った麻生特派大使の決定、そして森元総理のもとを訪ねられた前原大臣の真意と、私が今申し上げた見解についての所見をお聞きできればと思います。

前原国務大臣 今、吉良委員がおっしゃったように、外交や安全保障は、私は、政党、党派あるいは政権交代でころころ変わっていたら大変だという思いを野党時代からずっと持っておりました。そういう意味で、自民、民主、公明三党で超党派での安全保障の議員連盟も代表世話人でやってまいりましたし、そういう感覚で与党でもおります。そういう意味では、今までの政権を担っていたのは自民党を中心とする連立政権でありましたので、その経験を伺うということは、私は大変重要なことだろうというふうに思っております。

 麻生元総理については、はっきり申し上げますと、ブラジル政府から、大統領就任式典に来てもらう際のステータスみたいな話がございまして、総理か外相かあるいは元総理経験者、こういうようなオファーがございました。その中で、吉良委員からもアドバイスをいただいて、吉良さんは商社のときに中南米でずっと活躍をされていたわけでありますけれども、麻生元総理が、今、日伯の議員連盟の会長をされております。そして、前のルーラ大統領と非常に懇意にされているという話も、吉良委員からもアドバイスを受けて、そしてお話をしましたところ、まさに麻生元総理も、外交、安全保障に党はないということで御快諾をいただきました。

 森元総理につきましても、私、今こういう立場につかせていただいて、過去の日ソ、日ロの領土交渉をすべてつぶさにフォローアップをいたしましたけれども、余り詳しくは申し上げられませんが、かなり惜しいところまでいった総理のお一人であったと思いますし、今もなお現実にロシアの首相として力を持っているプーチン首相とは、十六回会われてお話をされているということでございまして、お話を伺ってまいりまして、非常に示唆に富んだアドバイスをいただきました。

 いずれにいたしましても、政党、党派のために外交、安全保障、国益につながる話をやっているわけではなくて、まさにオール・ジャパンとして、どうすれば日本が元気を取り戻して尊厳のある国家として外交、安全保障を実現できるのかということで、アドバイスを受けられる方については、関係なく、私はいろいろな方からお話をこれからも承ってまいりたい、そう考えております。

吉良委員 本当に同じような認識をお持ちであるということを再確認させていただき、安心をしました。

 自民党、また公明党の議員の先生方にも、今申し上げましたように、まさに国家として蓄積した貴重な外交資産をお持ちでありますので、今後ともぜひ協力をいただくように私からもお願いをしておきたいというふうに思っております。

 さて、前原大臣、外交演説の中でも、経済外交の重要性ということを強調しておられました。私もその認識を全く共有しております。前原大臣は、その外交演説の中で、身の丈以上の外交を行うことは困難であるという現実を踏まえ、経済外交を戦略的に展開し、我が国の土台である経済を強化することは、我が国の総合的な外交力を高めるという認識、方針を示されました。私も全く同感であります。

 力強い経済外交を推進して日本の経済を再生する、国力を回復する、そしてその回復した国力で総合的な力強い外交を展開する、こういう前向きスパイラルというものをぜひ推進していただきたいというふうに思っております。

 その上で、いま一度、前原大臣が経済外交を中核に据えるその哲学についてと、その中でまた特に力を入れる具体的な方針、方策について、簡潔に説明いただければと思います。

前原国務大臣 この仕事につかせていただいて五カ月弱になりますけれども、改めて感じますのは、先ほど、ブラジルの話を吉良委員からしていただきましたけれども、これから伸びていく、さっき飛ぶ鳥を落とす勢いという言い方をされましたけれども、そういった国の熱気みたいなものを非常に強く感じますし、今の国力の大きさではなくて、どれだけこれから伸びるであろうかといった国が基本的に発言力をどんどん大きくしていっているという現実を私はつぶさに感ずるわけであります。

 その中で、日本の外交について今いろいろと注文やあるいは叱責があるのも事実でありますし、その原因に、例えば普天間の迷走あるいは尖閣の船長の帰し方について、国民の批判があることは事実であります。しかし、だからといって、日本の外交の失敗、あるいは今の状況がすべて民主党にあるとは私は思っておりません。これは、責任逃れをするために言っているのではなくて、建設的な意見を言うために申し上げているわけです。

 というのは、海外の国は、こういう見方をしているわけですね。日本は人口がこれから減っていきますね、そして少子高齢化が進んでいく中で本当に持続可能なのか、莫大な借金があるけれどもあれをどうしていくつもりなのかという我々国民が感じている不安を、海外の方々はつぶさに見て、日本の国はこれからどうなるのかということを言ってみれば不安視している面が私は多々あるというふうに思っています。そういう中で、外交を幾ら口で力強くやると言ったって、こういった日本の抱える諸問題を解決せずして本当の外交というものを力強くやれるかというと、やれないわけですね。

 となると、一番根本にやるべきなのは、人口減少、少子高齢化あるいは莫大な財政赤字という日本の制約要因をどう解消していくために、あらゆる政策をとって日本の経済を成長させていくのか。そして、その一つとして、外交もしっかりとそのお手伝いをすべきではないか。だからこそ、経済外交を置く。経済外交をすることによって、日本の国の持続可能性というものが高まり、そして国力が生まれれば、それをまた外交資源に持っていけるわけでありますし、そういう意味でのやはり日本の国力を上げる努力をしなきゃいけない。そうしないと、どんな細かな外交をやろうと思ってもなかなかできないし、日本に対する期待も高まってこない、そういう問題意識を持っております。

 だからこそ、インフラ輸出、より自由な貿易、インバウンド観光、そして多角的な資源外交、食料外交、エネルギー外交という経済外交を全般的に行う中で日本の経済を元気にしていく。そして、元気にすることによって、海外から一目も二目も、まだまだ日本はディクラインだけではなくて成長可能なんだというところで、日本の発言が現実味を帯びてくる。そういう形にしていきたいということで、今、経済外交を中心にやらせていただいております。

吉良委員 またしても安心をいたしました。

 私も、外務大臣政務官として外務省に一年働かせていただきました。日本外交として、いわゆる国際益と国益、このバランスをとった外交が極めて重要でありますけれども、私は、今、前原大臣がおっしゃったように、今いろいろな意味で国内の力が落ちかねない、この状況にあって、今はひたすら現実と向き合い、かつ国益と向き合い、多少国益を重視した外交、すなわち経済外交を推し進めることは大変重要なことだというふうに思っております。

 そういうことをお話しするにつけ思い出すのが、前原大臣と二〇〇九年の三月に東南アジア、ベトナム、シンガポールそしてインドネシアと一緒に行かせてもらった際、中曽根康弘元総理の外交四原則というものを確認し、共鳴したことがございます。

 中曽根康弘元総理は、外交について四原則を掲げていました。一つは、力以上のことをしない。二番目が、ギャンブルをしない。三番目は、世界の潮流を客観的に分析する。そして四番目が、外交と内政を混合しない。

 この四原則、前原大臣と共鳴したものでありますけれども、特に、力以上のことはしない、だからこそ力をつけるという一番目のこと、そして党派を超えた外交。そういう意味でも、外交と内政を混合しない。けれども、内政を力強く支援する外交をやるんだと。このような方針に対して改めて敬意を表して、私も、今民主党の外交部門の座長をやっている立場から全面的に支援をさせていただきたい、このように思っております。

 さて、その経済外交でありますけれども、きょうからオーストラリアとのEPAの二国間交渉が再開をされました。このオーストラリアに限らず、今、二国間のEPA、FTA交渉というのが真っ盛り。一方、マルチのWTOのドーハ・ラウンド交渉、そしてAPEC、さらには、今大臣御指摘されましたけれども、成長戦略の一環としてのインフラ輸出戦略、そしてTPPの情報収集のための交渉推進、このような本当に多様な交渉を外務省の方で行っているところだというふうに思っています。

 また、これに加えて、先ほども指摘がありましたけれども、外務省としても、食料安全保障についての外務省としての研究を行い、交渉を進めていく、そして経済産業省やJOGMECと一緒になって資源エネルギーの安定確保についての外交も推進している。

 このようなまさに多岐にわたる交渉というのは膨大な実務を伴います。そういう意味で私が実は心配しておりますのは、経済局を中心として、また、今言った二国間、多国間に関係する地域局の皆さんがまさに深夜残業の連続、そして休日出勤の連続、圧倒的なマンパワー不足に苦しんでいるのではないかと心配をしているところであります。

 そういう中にあって、まさに前原外交の中核である経済外交を推進するに当たって、この経済外交の推進体制の強化というのはまさに待ったなしの課題だというふうに思っておりますけれども、今、外務省の中でこの推進体制強化についてどのような議論がなされ、手を打とうとされているのか。前原大臣の見解をお伺いしたいと思います。

前原国務大臣 我々は、この四年間で公務員の人件費を二割削減するということで国民にお約束をしているわけであります。その中にあっても、それはもちろん、この役所はもっと減らせるとか、この役所はむしろ増強しなきゃいけないとか、そういうことはあると思いますけれども、今外務省をお預かりしている者として、余り外務省だけ特別扱いをしてふやしてほしいというようなことは、私は基本的にそれは言うまいという思いでおります。

 といいますのも、やはり、まず省内の協力体制というものをつくった上で、本当に足りないのかどうなのかということを我々は見きわめる必要があると思っておりまして、今省内で経済外交推進本部というものを私が本部長でつくりまして、そしてまた経済局を中心に、例えば経済協力とか、あるいは地域局にも協力してもらって、いかに経済外交を推進するかということを、言ってみれば省内の縦割りを見直す中で資源投入を行っている。

 それと同時に、海外の大使館のメンバーにも協力いただこうと。例えばインバウンド観光だったら、大使館というのは、どんどん日本に海外の観光客を連れてくるような、言ってみれば出先機関にすべきだと思いますし、また、インフラのさまざまな情報収集についても在外公館を利用する。そのために、いわゆる在外公館に……(発言する者あり)インフラパッケージ専門官、前副大臣にお答えをいただきましたけれども、そういったものを設けて、我々としては、今あるもので有効的に縦割りの弊害を排除して、経済外交の推進体制に今努力をしているということでございます。

吉良委員 ありがとうございます。

 外務省だけ定員増の要求をしないと。国交大臣時代、率先垂範といいますか、公共事業を減らす等、痛みを伴う内容を大臣みずからリーダーシップを発揮しておられた前原大臣らしい答弁だというふうに思っています。

 一方で、公務員改革を掲げる民主党として、一省庁だけに偏る、また甘くするようなことはあってはいけないと思いますけれども、ただ、これはもう政権全体、政府全体として、やはり人員のめり張りをつけた改革を行うべきだというふうに思っておりますし、こういった経済外交については、民間としても大変な関心を示していると思いますので、民間の人に研修、また勉強の機会を、与えると言うと上から目線のようですけれども、与えながら、外務省の仕事を手伝ってもらう。また、省内だけではなく、こういう経済外交に関係の深い、経済産業省であるとか農林水産省であるとか、そういうところからの省庁応援についても、今後、政権全体として考えていくべきではないかと私は思っております。

 いずれにしても、マンパワー不足が前原大臣が掲げる経済外交を停滞させることのないよう、万全の強化体制をつくっていただきたい、このことを申しておきたいと思います。

 続きまして、TPPについて、玄葉大臣、そして前原大臣にお尋ねをいたします。

 まず、このTPP推進の参加の是非につきましては、党内でけんけんがくがくの議論が行われました。玄葉大臣は、一方では党の政調会長として、そして一方では国家戦略担当大臣として、まさにこのかけ橋をやりながらの党内意見集約、大変な御苦労をされたというふうに思っています。そのことに対しては敬意を表したいというふうに思っております。

 私も、その議論に深く参加する中で、当然といえば当然のことなんですけれども、一つ安心をしたのは、党内、農業がどうでもいいというのは当然ながらだれもいない。農業、農民、農村を守りながら、それでも国を開いて国富を増大していく、このことについてはコンセンサスが得られたということであります。

 ただ、その中で、慎重論が多かったのは、国を開くことについての異存はない。けれども、国を開きながら、参加することありきで農業を守るのではなくて、まずは農業、農民、農村の保護先にありきで、それが確認できた後に参加交渉をすべきだ、こういう意見も数多く出されました。それがゆえに、最終的には、参加交渉というところまでは踏み込まずに、参加というか情報収集のための交渉をする、こういうことに落ちついたわけであります。

 このことは私自身も理解をするのでありますが、実は、私自身も、国会議員になるまで商社に勤めておりまして、いろいろな国際的な契約交渉というのをやってまいりました。また、その契約に結びつけるまでの間にいろいろな交渉もやってまいりました。この経験からして、参加をするつもりなんだ、自分は契約をしたいんだ、そういう前提で交渉しないと、まず本当に貴重な情報が得られない、また迫力もない。情報収集だけで、相手がいろいろな、百ある情報を百全部出してくれると私の経験からは思えないんですね。

 こういうことが成り立つのは、ある場合だけであります。それは、こちらの立場が圧倒的に強い、すなわち、相手が契約してくれなければ困る、このTPPでいえば、日本が参加してくれなければ困る、だから、参加をするではなくても、情報収集だけでもぜひぜひ接点を持ってくれ、こういうことなんだろうと思うんですね。

 そういう中にあって、玄葉大臣は、今TPPの参加を表明している国々にとって、日本というのは絶対に参加をしてもらわなければならない国なのか、それとも、参加したいならいいですよ、どうぞこの条件をのんで参加してください、こういうことなのか、どういう見解をお持ちか、述べていただけますか。

玄葉国務大臣 まず、吉良委員からの大局的な観点からの御意見、そしてお気持ち、よくわかります。

 ただ、昨年十一月の段階での結論は、ハイレベルEPAについてまず先行させるというか、そのことについては決意をするということでありました。ただ、これはもう改めて申し上げるまでもありませんけれども、日豪も含めてハイレベルEPAについて政府全体として決意したというのは、これまでの歴史上、非常に大きなことであることはまず押さえておかなければならないし、私は、菅政権の大きな成果だというふうに考えております。

 今の御質問は、TPPについて、どういう立場で今交渉に向き合う、協議に向き合っているのかということでありますけれども、やはり政府としては、現状与えられた状況の中で精いっぱいの情報収集をし、協議を重ねていくということしか現段階では申し上げることはできません。ただ、さまざまな分析や検討は少しずつ、その情報収集や協議の中で出てきた情報の中でやることができるようになってきているというふうに思います。

 現実に、例えば、これまでも出されてきておりますけれども、TPPというのは原則例外なしだけれども、先般、外務大臣から答弁がありましたように、一方、やはり除外というものを認めるべきだというふうに主張する国もあるとか、あるいは、関税だけではなくて、実は非関税の分野というのがどうも日本にとっては非常に大きなメリットもありそうだ。

 例えば、我々はどこの国とは言いませんけれども、外国の部品を現地の工場をつくったときに必ず使わなきゃいけないという規則があったり、模造品、模倣品あるいは海賊版というのが相当出回ったりしています。あるいは、今ロイヤリティーの上限が決められたりしているわけですけれども、では、仮にそういったものがTPPというルールの中で撤廃をされたら日本にとってどのくらいメリットがあるんだろうかとか、あるいは中小企業にとったって、仮に輸出入のフォーマットがアジア太平洋地域の中で統一をされたら日本にとってどうなるんだろうかとか、かなりこれまでよりも幅広く分析、検討ができるような状況になっています。

 そういったことを踏まえながら、六月に菅総理が判断をされる。しかも、国民の皆さんの理解の深まりのぐあい、そして同時に、農業についても、言うまでもないことですけれども、攻めの農業の対策をしっかり講じながら、さらには、国民全体で農業を支える、そういう仕組みを構築しながら、最終的に判断をするということが適当なのではないかというふうに考えています。

吉良委員 ありがとうございます。

 私自身も、玄葉大臣の立場を追い詰めるつもりも全然なくて、党内で決めたこと、そして政府で決めたことを忠実にやっていくというその立場は支持させていただきます。

 ただ、私自身、一点申し上げたいのは、考え方として、情報収集でいいんですけれども、一歩踏み込んで、現場に対しては、留保条件つきの参加交渉というような立場を交渉に、現場に立ち会う人たちには与えてあげないと、ある意味では手足を縛ったまま走れというようなことにもなりかねないんですね。

 先ほど私が民間経験を申し上げましたけれども、やはり現場で実際に交渉する立場の人たちが一番伸び伸びやれる環境をいかにつくっていくかということを、我々国会議員として、また政府の高い立場の人が考えていかなければならないのではないかというふうに思っています。

 これに加えて、今どういうことが起こっているかといいますと、特にTPPに絡んで交渉の現状がどうなっているかということを、個々の国会議員が外務省の職員を一々呼び出してヒアリングをしているんです。

 国民から選ばれた国民の代表たる国会議員が現状把握して正確な判断をする、これは非常に重要なことであります。ただ一方で、さっき言った、膨大な仕事が外務省の中にありながら、一方で社内営業に汗を流さざるを得ない、そこに七割、八割の精力を使わざるを得ない。こういうことが重なっていくと、よく会社というのは倒産するものなんです。そういう意味では、我々は、いかに現場が対外営業に、対外交渉に専念できるか、そのような環境をつくっていくことが大変重要だというふうに思っています。

 そういう中で、繰り返しますけれども、情報収集という政府が決めた方針は多としますけれども、現場に対しては、いつでも、最後、条件が合わなければ撤退するんだ、そういう留保条件つきの参加交渉、そういう位置づけで頑張れということをぜひ玄葉大臣の方からも指揮願いたい、このように思っております。

 あと一点、TPPについてなんですけれども、TPPの参加の是非につきましては、とかく、先ほど言いました、農業が大丈夫か、農業以外のサービス産業は大丈夫か、このような議論になりがちなんですけれども、私は、TPPに参加することというのは、経済安全保障はもちろんですけれども、いわゆる安全保障、そして日本全体の収益構造、このことについては、リーマン・ショックの前でありますけれども、二〇〇七年でいうと、実は日本は、貿易収支上の黒字が十二兆円、そして配当等を中心とした所得収支の黒字が十六兆円。私たちが小中学校で学んだときは、日本は貿易立国、貿易立国ということで学びましたけれども、今や実は投資による所得収支が多い国になりつつある。

 そういう中で、TPPというのは、貿易かつ投資による富をより増大させるという意味を持っている。そういう意味での日本全体の収益構造の変化、そしてもう一つは、世界秩序への主体的関与という意味合いもあろうかというふうに思っています。

 前原大臣が、先日のこの予算委員会の答弁で、TPPというのは、将来的にはAPECの経済的な連携であるFTAAP、このFTAAPの枠組みをつくっていく一つの核になるという趣旨の発言をされたというふうに思っています。そういう意味で、世界経済秩序を新たにつくっていく、主体的に日本が関与していく、この意味合いも実はTPP参加にあるというふうに思っています。

 私が今申し上げた安全保障上、そして日本の収益構造上、そして世界的な経済秩序に主体的に関与していく、この三点から、もっともっとTPPの参加意義を強調すべきではないかと思っておりますけれども、前原大臣の見解をお聞きしたいと思います。

前原国務大臣 御意見は、私、かなり共通をしておりまして、先ほど答弁の中で、日本は人口減少だということを申し上げました。二〇〇四年からどんどんどんどん人口減少、しかも、今は緩やかな減少ですけれども、このまま放置しておけば相当激しい人口減少になっていきまして、日本だけをマーケットに考えると経済活動は収縮をしていくということになります。

 他方で、世界に目を転じれば、現在は七十億人ぐらいの人口ですけれども、あと四十年たてば約九十億人ということで、二十億人がふえていくということになります。特に成長の中心となるのはアジアでありまして、インフラ需要だけで、アジアは向こう十年間、八兆ドルと言われるインフラ需要があります。例えば、水ビジネス、それから発電あるいは高速道路、高速鉄道といった輸送、こういったものに対して、しっかりと我々は目を向けていくということが大事であろうと。

 先ほど委員がおっしゃった中で、いわゆる所得の収支、これをどう高めていくような構造にしていき、それを日本に還元し、そして税収あるいは日本の雇用につなげるかという観点も必要だと思います。そういう意味での、より自由な貿易体制で、それがやりやすいような環境をつくっていくという意味においてのマルチの仕組みということは非常に大事だと思います。

 あとは、日中関係一つとりましても、例えば尖閣の問題でぎくしゃくしたということでありますけれども、中国から見ても、日本からの輸入が輸入国のナンバーワン、そして輸出はアメリカに次いで日本への輸出がナンバーツー、日本からすると、輸入も輸出も中国がナンバーワンなんですね。ということになると、経済的な相互依存関係が強まれば強まるほど、また、そういうものが二国間ではなくてマルチになればなるほど、古典的な意味での争いというのはしにくくなるような状況になるということになります。

 そういう意味での、先ほど委員がおっしゃった安全保障面から見ても、この自由な経済体制で相互依存体制をきっちりつくっていくということは、これはまた大事なことではないかというふうに思っておりまして、それがTPPなのか、あるいはASEANも固まりを二〇一五年に持つということで、ASEANプラス3、ASEANプラス6、こういうものも動いているわけでありますし、私、日中韓のFTAも研究段階から実施の段階へとまた向かっていかなくてはいけないという意味で、TPPもその一つでありますけれども、あらゆる可能性でさまざまな取り組みを通じて日本の富を増大させ、そして、物の行き来をしっかり行う中での、広い意味での安全保障体制を築き上げていくということは、委員御指摘のとおり、極めて大事なことだと考えております。

吉良委員 ありがとうございます。

 私がこのTPPについて最後に申し上げたいのは、先ほど世界経済秩序構築に当たって主体的に関与するという言い方をしましたけれども、TPP参加国はAPECの中にすべて含まれております。そういう意味で、まさに今世界の成長センターであるアジア、そして環太平洋地域、この地域がまさに今後の世界の経済秩序をつくっていく、その際に、FTAAPが将来の連携の最終ゴールとせば、このTPP参加国というのは、国連でいえば安全保障常任理事国、すなわち今後の経済上のルールメーキングをしていく立場になる、そういう枠組みなんだろうというふうに思っています。その意味で、私は、こういう世界経済秩序に対する主体的関与というふうに申し上げたのであります。

 先ほど来、前原大臣が強調していますとおり、人口減少等、また財政的な制約を掲げる中で、私たちが今後札束外交をしていくわけにはいかないわけですね。より高い価値、理念を掲げ、そしてルールメーキングの段階から積極的にかかわっていく。ヨーロッパのイギリスだフランスだがやっているように、少ないコストながら非常に重要な価値を掲げることによって世界のルールづくりに積極的に関与していく。そのためにも、このTPPという枠組みが極めて重要だということを指摘させていただきたいと思います。

 玄葉大臣、ありがとうございました。

 海江田大臣、お待たせをいたしました。続いては、インフラパッケージ輸出、またはインフラ海外展開ということに焦点を当てて少し議論をさせていただきたいというふうに思っております。

 まず、ちょっと嫌な質問かもしれませんけれども、UAEの原子力発電所商談、これは国を挙げて、負けた負けた、トップセールスが足りなかったという言われ方をよくします。また一方で、ベトナム原子力商談、これは、とれたとれた、受注した、こういう言い方がされます。海江田大臣は、UAEの原子力商談、これは負けたという認識をお持ちなのか。そして、ベトナム原子力商談について、受注した、とれたという御認識をお持ちなのか、まずお伺いしたいと思います。

海江田国務大臣 吉良委員にお答えをいたします。

 私は、インフラシステム輸出というのは、もちろん商談をとる、とらないということも大変大きな要素でございますけれども、やはり現地の人々にとってよりよい生活を保障するために私どもはそのインフラを輸出するんだという考え方でございます。

 もちろん、相手の国に押しつけることはできません、相手の国が決めることでありますが、私どもはやはり私どもの、例えば原子力のインフラにしましても、安全性ということでいえば私は世界で最高水準だという思いでおりますから、その意味では、この私どものインフラシステムを採用してくださることが本当の意味でその国民にとって幸せなことなんだという観点から輸出を推し進めているところでございますので、あとは現地の人たちがどういう選択をするかで、一つ一つについて勝った負けたということは私は余り念頭に置いていないということをお答えしておきます。

吉良委員 ありがとうございます。

 まず、UAEについては、私も、最終的に韓国とUAEの間でどういう契約内容になったか、詳細までは存じ上げません。しかし、六十年にわたるオペレーション上の保証を要求し、韓国がそれをのんだというふうには聞いております。

 私は何が申し上げたいかといいますと、今、政府が旗を振りながらインフラ海外展開を推し進めようとしています。これは大変いいことだというふうに思っています。ただ、その最前線に立つ民間からしてみると、金額も莫大な金額になる、そしてリスクも、これまで経験したことのない質、量、また長期にわたるリスクが想定されるわけであります。

 こういう中で、ただ一時的なプラントの輸出部分がとれたからといって、残りの六十年にもわたってその運営リスクを負う、何かリスクがあったら最初のプラント輸出の何倍、何十倍という損失を食らってしまう、こういうようなことがあってはならないというふうに思っているんです。

 日本においてもまだ原子力は六十年稼働しておりません。四十年たって、五十年たって一体どういうふうになるのかまだわかっていない。そういう意味で、私は、個人的な見解でありますけれども、UAEの原子力商談、六十年のオペレーションリスクを要求されたのであれば、これはあえて受けなかったことが日本にとって正解であったんだろう、このように思っております。

 吹雪の中、何年も苦労して、頂上直前まで行きながら勇気ある撤退をする。それは、頂上にアタックすることによってやはり大きなリスクを背負う。悔しいけれども、そこで勇気ある撤退をする。これは大変重要なことなんです。そういう意味で、私は、このUAEについて、あえてとりにいかなかった日本企業、また一部米国企業の良識に対して深く敬意を表するものであります。

 インフラ輸出に限りませんけれども、こういう新たなフロンティアに挑戦する場合というのは、一番いいのは、限りなく一番に近い二番か三番ぐらいで先頭を走る人たちの失敗に学ぶ。(発言する者あり)いや、そうなんですよ。自分が一番最初に勢いよく行けといって行ったはいいけれども、返り血を浴びてもう再起不能のようになってしまったら、こんな失敗をしていいのかということで、次に頑張っていこうという世論が形成されないんです。そういう意味では、私は、このUAEの日本企業撤退、大変見識ある対応だったというふうに思っております。

 そのことをまず申し上げたいのと、一方、ベトナムについては、これまた受注したとかとれたとか日本じゅう騒いでおります。けれども、では金額は幾らなのか、では加圧型なのか沸騰型なのか、この型も決まっておりません。こういう中で、受注とか、とれたとか、これはあり得ないわけなんですね。そういう意味では、まさに日本をパートナーとしたい、条件が折り合えば日本にお願いをしたい、いわば優先交渉権をベトナムから与えてもらったんだというふうに了解をしております。

 しかし、まだこの型も決まっていない、金額も決まっていない中で、日本をパートナーとしたい、日本に優先交渉権を与えたいと。これは、我が政権が総力を挙げて展開をしてきたトップ外交のまさに成果だというふうに思っています。ここでは、慎重に、かつ、さっき言った、民間に過度のリスクを負わせ続けることなく、しっかりと国とそして民間のリスク分担をしながら確実に受注に結びつけていく、このことが必要だというふうに思っております。

 ちょっと私の演説のようで恐縮でありますけれども、その上で一点、これも、この予算委員会の場であえて私の方で主張させていただいて大臣と共有させていただきたいのは、実はこのインフラ商談というのは、輸出、輸出からだんだん事業へ、事業投資へという流れができているということであります。残念ながら、新聞各紙も、やれ高速鉄道にしても原子力にしても水にしても、輸出、輸出、輸出というふうになっておりますけれども、世界の潮流は事業投資へというふうに変わってきております。

 そういう意味で、これも経産大臣、そしてまた外務大臣にもお聞きしたいんですけれども、政府内で、このインフラ海外展開は、輸出ももちろん残っているけれども、輸出からどんどん事業型へと変化していっている、こういう認識、そしてその認識に基づく具体的な政府支援策を考えておられるのかどうなのか、その辺についてお聞きしたいと思います。

海江田国務大臣 吉良委員にお答えをいたします。

 これは、昨年の九月でございますが、パッケージ型インフラ海外展開関係大臣会合が生まれました。ここでいろいろな議論をしているわけでございますが、特に、今委員御指摘のような、やはり事業全体をしっかりと政府も後押ししていくべきではないだろうかということで、昨年の十二月にこの大臣会合で、やはりそうした事業、これは息の長いことでありますから、それを支援していくために幾つかの新しい改善点を盛り込んだところであります。

 もうこれは委員が一番よく御存じのことでございますが、改めて御紹介をいたしますと、やはりJBICの機能の強化が第一点、二番目がJICAの海外投融資の年度内の再開、それから三番目が私ども経産省に関係してまいりますNEXIによる貿易保険の強化でございます。

 具体的に申し上げれば、今の民間融資に対する付保率、これが九五%程度になっていますから、一〇〇%にしよう。それから、当然為替のリスクも出てまいりますから、これまではドルとユーロだけでございましたけれども、これを広げて現地の通貨などにも対応できるようという形で改善をするということでございます。

 こういう具体策を講じるということをこの関係閣僚会議で決めたということは、私は、とりもなおさず、まさに単なる輸出から事業全体として政府がバックアップしていこうという認識に達したということでございます。

前原国務大臣 委員おっしゃったことは身をもって今感じているところであります。

 例えば、国交大臣のときからやってきた高速鉄道の海外展開ということも、正直申し上げて日本はかなりおくれております。

 なぜおくれているかといいますと、コンサルから会社をつくって、そして地方政府も含めてきめ細かく相談をしながら、例えば高速鉄道計画への、さまざまな問題へのアドバイスまでコンサル会社がやって、そのコンサルとつながっている商社あるいは鉄道会社が事業をその延長線上でとりに行くというようなことをもうヨーロッパの会社なんかはしっかりやっているわけですね。どの地域とは申し上げませんけれども、そういう意味において言えば、私は、日本の高速鉄道の受注というのは、ある地域においてもう完全に出おくれているという気がいたしました。

 これも今、日本も鉄道のコンサル会社をつくって、そしておくればせながらそれをやろうとしておりますけれども、まさに委員が御指摘のように、まずは単なる輸出から、そういう事業案件形成からきめ細かくコミットメントしておいて、そしてその流れで仕事をとっていくという形にしないと、これからも仕事はなかなかとれないのではないかと思います。

 あるいは、これも釈迦に説法だと思いますが、例えば上下水道なんかを東南アジアの国々に輸出しようと思ったら、どうマネジメントするかというそのノウハウを教えてあげないと、ただ単に工事だけとりましたというのではだめなんですよね。ですから、その維持管理、そして何かがあったときの対応方法、これも含めて、やはりしっかりと技術も含めて移転をするという信頼感を持たないと、日本はいいものがありますよということだけではなかなか採用していただけない。

 そういう意味では、先ほど海江田経産大臣がおっしゃった、ファイナンスやあるいは貿易保険などのセーフティーネットあるいはバックアップ体制プラス案件形成から、事業形成からきめ細かに対応し、その延長線上でしっかり仕事をとり、その後をマネジメントで日本が仕事をしていくという観点が必要で、それがまさにウイン・ウインの関係を築く根本ではないか、そう思っております。

吉良委員 ありがとうございます。

 もう少し突っ込んだ議論もしたかったのでありますが、ちょっと時間配分の関係で、また個別の委員会で話をさせていただきたいと思いますが、このインフラの最後の部分で二点だけ、またこの場であえて申し上げたいと思います。

 それは、一つは、今両大臣からもお話がございましたけれども、輸出から事業というのはどう違うかというと、極端な話をしますと、今、前原大臣から話がございましたけれども、例えば鉄道案件は、JR東海というのは、もちろん新幹線という列車の技術、大変高いものがありますけれども、国際的に一番競争力があるのはその運行システムそのもの、そこに一番大きな競争力があるわけです。ですから、求める国からしてみると、そこが一番欲しい。ですから、極端に言うと、仮に事業権入札があったときに、JR東海がその事業権を受注しました。そして、では機器をどこにするか。本来なら日本の企業のあの新幹線を採用したい、もちろんだ。けれども、仮の話ですけれども、日本の機器の値段が一〇〇でヨーロッパのTGVが半分だったりしたときに、TGVを採用しながら、その運行システムの強みで事業益を最大化する、これが実は輸出から事業へという違いなんです。

 そして、さっきTPPのところでも話をしましたように、日本は今や貿易収支よりも所得収支の方が大きいんです。したがって、仮に輸出がなくても、日本企業が投資をする、そして事業益が上がる、その事業益は配当として日本に還流されてきて税収として納められる。そういう意味では、私たちの国として、輸出に必ずしもこだわらず、輸出の伴う事業投資が一番いいけれども、事業投資だけであったとしても全面的にバックアップしていく、そして税収として回収させてもらう、この発想が重要だというふうに思っています。

 それに加えて、もう一点だけ。

 これはまた、細かくは先ほど言いました個別委員会で話をしますけれども、政府が事業を後押しするときに問題になるのが、例えばNEXIの保険制度を充実させる。リスクが何も起こらなかったときはその民間企業の利益になる。ところが、リスクが具現化するとそれがNEXIまたは国民負担になってしまう。この調整、バランスをどうとるかなんです。

 その中で一つ重要なことは、劣後融資という手法がございます。よく専門用語でメザニンローンという言い方をしますけれども、出資にも近いけれども、口出しをしない出資ともとれるローンです。要は、劣後ローンと言うぐらいですから、何かプロジェクトがポシャって資産を売却したときに、足りなければごめんね、そういうローンであります。しかし、金利は高くとれる、リスクが高いから。リスクが具現化しないときには、金利を高く設定することによって国民に還流させてもらう、還元する。そして、リスクが起こったときは、そのかわりに国民全体で負担をしていく。こういう発想が必要だということを申し上げておきたいと思います。

 さて、北澤大臣、大変お待たせをして失礼いたしました。もう時間が限られて大変恐縮であります。

 昨年暮れに策定されました防衛大綱、私自身も党の外交・安全保障調査会で提言をまとめた立場でもありますので、またそのことも取り入れていただきながら、大変すばらしい防衛大綱ができたというふうに思っております。特に北澤防衛大臣が、この世界的なパワーバランス、世界の力関係が変化する中において東アジアの安全保障環境が大きく変化をしている、そこに置かれた日本の安全保障、大きな転換期を迎えている、その中で、政権交代後初代の防衛大臣としてリーダーシップを発揮され、この環境変化に対応した防衛大綱ではないかと私自身は思っております。敬意を表しております。

 北澤防衛大臣が一体何に力点を置き、何を考え、この防衛大綱を策定されたのか、そのことについてお聞きしたいと思います。

北澤国務大臣 お答え申し上げます。

 今お話のありましたように、政権交代ができて初めての、そしてまた、政権交代という大きな変化の中で一年の猶予をいただいて六年ぶりに大綱の見直しを行ったということでありまして、これは我が国を取り巻く、先ほどもお話のありましたような厳しい安全保障環境の中で我が国の防衛の方針を示すには、皆さん方の御協力をいただいてしっかりしたものが打ち出せたのではないか。

 その間に、吉良委員におかれましては、党のお立場で提言もまとめていただき、また閣僚間の政治レベルの協議にも陪席をいただいて適切な御助言や御主張をなさったことに大変感謝をいたしております。

 時間もないようでありますから端的に申し上げますが、新しい大綱は、安全保障の基本方針として、我が国自身の努力、同盟国との協力、それから国際社会における多層的な安全保障協力を掲げて、その問題に各種課題を提示して、その中で新たな防衛構想を取りまとめて、その中で特に南西重視ということを打ち出したことは、私は一定の評価をしていただいてもいいんじゃないかと。それから、全体の中で動的防衛力という新しい概念をつくり上げていただいたということは、大変画期的なことだと。

 時間の関係もありますので長くお話はできませんけれども、この動的防衛力の概念と、それから、私はこれからも政権交代はあると思うんです。そういう中で、外交もそうでありますけれども国防も、政権交代が行われたから大きく変わってしまったということではいけないので、私は、歴史的に初めての政権交代の中で、防衛構想が従来の政権からどういう連動性を持っているか、そしてまた、どんな変化をもたらしたかということをはっきりさせるべきだと。

 そういう意味で、〇七大綱は、基盤的防衛力構想ということで、いわゆる我が国の抑止。それから、その後深化をさせて、一六大綱でこれに対する対処を重心にした大綱であったというふうに思います。そして、この一六大綱で提示された問題点として浮き上がってきたのは、私は今回の運用だというふうに思っております。

 この運用に力点を置いて動的防衛力という概念をつくり上げたわけでありまして、これの実務面でのことについては、もう御案内だと思いますが、防衛力の実効的向上のための構造改革に向けて、防衛省内に構造改革委員会をつくり、そしてまた、人的構成に対する検討もその中で進めていくということで御協力をいただきながら、私は、新政権としては、安全保障理念、そしてまた防衛構想というものはしっかり打ち立てられたのではないかというふうに考えておる次第であります。

吉良委員 ありがとうございました。

中井委員長 これにて吉良君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

中井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。小野寺五典君。

小野寺委員 自由民主党の小野寺五典です。連日御苦労さまです。

 まず、冒頭、本日は北方領土の日ということになります。午前中の質疑で実はこの問題に触れられていないということで、事務所の方に、ぜひ触れてほしいという御意見もございました。

 北方領土の返還、これは旧島民ならず日本人全体の悲願ということになりますが、気がかりになる報道が一つございました。お手元に配付の資料がございますが、民主党の鳩山由紀夫前首相、五日に北海道根室で講演をされまして、「北方領土交渉について「四島を同時に返せというアプローチであれば、今のような現実の中で未来永劫平行線のままだ」」「その上で「二島にプラスアルファという考え方で、」というお話をされました。

 二島返還ということ、もしくは二島先行ということにとられるような、そういう発言だと思いますが、外務大臣にお伺いします。この考えというのは、まさか日本政府が今までの主張を変えた方向に行っているわけではないと思いますが、この発言に対して、大臣の御感想あるいは御意見をお伺いしたいと思います。

前原国務大臣 私も、先ほど九段会館の北方領土返還運動全国大会に出席をさせていただきまして、また決意表明もさせていただきました。

 この問題というのは、四島が日本の固有の領土であることは紛れもない事実でございまして、この四島の帰属を確定して、そしていまだ結ばれていないロシアとの間で平和条約を結ぶというのは、これは前政権も現政権も変わらない基本的な考え方でございます。

 あくまでも鳩山議員としての個人のお考えでございまして、政府の考え方では全くないと思っております。元総理が余りこういった日本の主権を、主権というか、日本の考え方と異なる考え方を、個人的意見であれおっしゃるのは、私は控えていただきたい、そう思っております。

小野寺委員 おっしゃるとおりでありまして、前総理ということにもなります。このような間違ったメッセージがロシアに伝わるということは、決していいことではないと思っております。

 その上でお伺いしたいんですが、今週末、外務大臣はロシアを訪問されると伺っております。当然、この北方領土の問題についてのさまざま議論になると思いますが、現在の見通しの中で、どうしても、この問題に対して責任を持つのはみずから北方領土を訪問したメドベージェフ大統領あるいはプーチン首相だと思いますが、この会談についての見通しについて教えていただきたいと思います。

前原国務大臣 まず申し上げたいのは、これは先ほど吉良委員の質問にもお答えをいたしましたけれども、森元総理に私はお話を伺ってまいりました。十六回プーチン首相と会われてお話をされたということで、そのときも森元総理もおっしゃっておりましたけれども、領土問題というものを解決するというのは、これは首脳の問題でございまして、外相会談というのは首脳会談に向けてのやはり地ならしをしっかりやっていくということが大事なポイントだと考えております。

 したがいまして、領土問題につきましては、日本側の原理原則というものを歴史的な過程も踏まえてしっかりとやはり相手側に伝え続ける努力というのがまず必要でございますし、それをしっかり行うとともに、他方で、やはり、戦略環境というのは大きく異なっているわけでございますので、いかに日ロ関係というものを発展させる中で信頼関係を強化して領土問題の解決につなげていくのかということが私に課せられた使命だと考えておりまして、そのことをラブロフ外相あるいは他の方々とのお話の中でしっかりと貫いてまいりたいと考えております。

小野寺委員 今のお話で、大統領、首相との恐らく会見ではないということだと受けとめましたが、私どもが心配しているのは、菅総理は心配だから、菅総理では首脳会談をされても恐らくまたメモを見て発言をされるだけで心配だから、ぜひ外務大臣に今回は大統領とお会いをしていただき、しっかりとした日本の主張を伝えていただきたい、そういう思いで今質問をさせていただきました。

 さて、一つ、違うテーマでありますが、警察庁による国際テロの関連情報がネットに流出した事件、このことについてお伺いをしたいと思っています。

 これは、実はネットに流出した資料を手元に持っておりますが、これを見ますと、本当に各職員、あるいは情報提供者、あるいは疑いを持たれる外国人、その方の顔写真、氏名、家族構成、住所、携帯あるいは車の番号、全部書いてある。これがネットに流出されました。

 そして、この事件の後、警視庁はこれを認めましたが、警察庁はこれを認めましたが、そこで、例えば日本の職員に関しては、これは安全性がありますから、住所を変え、携帯を変えさせ、車を変えさせる、こういう政府としての対応をされたと伺っています。

 では、逆に、日本が流出させてしまった外国人に対して、外国の方はもしかしたら全く自分の意図しないところで情報を流され、そこには家族関係もあり、住所も書かれ、車の番号、携帯番号、全部あるんです。このことに対しての手当て、ケアというのは行っているかどうか、お伺いしたいと思います。

中野国務大臣 お答えをいたします。

 該当されて名前が出ている方が約千名ぐらいいらっしゃると聞いておりますが、もちろん、中には亡くなられた方もいらっしゃれば、外国へ行っておられる方もいらっしゃいますし、いろいろな方がいらっしゃいます。

 でき得る限りそのすべての人に、わかり得る限りすべての人にお会いをし、身の危険はないか、どのような御迷惑をこうむっているか、何か身辺警護の御要望があるか等々について逐一御相談をし、お聞きをしたりいたしている、今そのことに全力を挙げているというのが現状でございます。

小野寺委員 今お話がありましたが、千名の方の、これは携帯も変えていただき、住所も変えていただき、場合によっては車も変えていただき、これは実は莫大な費用もかかる、そのような事案だと思います。

 もっと言えば、このような情報流出をするような日本に対して、さまざまな情報が集まってこない。日本の安全保障にもかかわる大きな問題ですので、ぜひこの外国人の方を含めたケアをしっかりしていただきたいのと、二度とこのようなことがないように努めていただきたい、そのように思っております。

 さて、防衛大臣にお伺いをいたします。

 さまざま問題になっております、例の次官通達の問題です。このことについて、ちょっと今までの状況をはしょってお話をさせていただきます。

 まず、事の発端は、七月二十七日、これは入間基地で起きた納涼祭で民主党の松崎議員が隊員とトラブルを起こしました。そして、十一月三日、この入間基地のイベントで航友会の会長が菅内閣をぶっつぶせという発言をして、この発言を聞いた民主党の松崎議員が、入間基地司令に対して翌日私の事務所に来るようにという指示を出しました。翌日四日、防衛省の文書課長、官房長、次官、政務三役が集まって、この松崎議員の申し出に対して協議を行った。そして、その日の午後、入間基地の司令と文書課長が国会の議員会館の松崎議員の事務所を訪れた。そして、その後、この対応について安住副大臣主導で通達を作成し、十一月の十日、防衛大臣が承認をし発令をした。現在、文書課長のもとには、この報告書が一月末で百件以上上がっているという一連の流れがありますが、この流れでよろしいでしょうか。

北澤国務大臣 今、小野寺委員が言われました大きな流れはそのとおりでありますが、ただ、松崎議員が司令を呼んで、その結果、政務三役初め防衛省の中で通達について議論をしたということではないわけでありまして、これは、何か一日違っておりまして、松崎議員のところへ行ったのは十一月の四日昼ごろと私の報告は出ておりますが、そのことと次官通達を議論したということとの関連性はないというふうに私は理解をいたしております。

小野寺委員 その中で、一部生々しい報道がなされました。

 この通達、この航友会の会長の発言に対して対応策を考えろという省内の中で、さすがにこれはやり過ぎだということを考え、この問題については慎重に対応すべきだということをおっしゃったと報道されている、きょうは広田政務官、おいでだと思います。広田政務官にお伺いしたいと思いますが、この通達を決める段階でかかわられたかということ、そして、この報道にあるように、慎重な意見を述べられたかということをお伺いしたいと思います。

広田大臣政務官 御答弁申し上げます。

 まず、報道の事実関係につきましては、あのような具体的なやりとりを安住前防衛副大臣とやったという認識はございません。結論として、私たちは、政務三役が一堂に、十一月十日に今回の通達は発出すべきだ、そういうふうな結論を出したということでございます。

小野寺委員 広田政務官、私は良識のある方だなと今この報道を見て思ったんですが、広田政務官も、この次官通達は間違いない、そうお考えになりますか。

広田大臣政務官 御答弁申し上げます。

 こういった次官通達のみならず、さまざまな政策というものを考える際には、過程とか、いろいろな協議をします。そういうふうなことも含めて、結果として、私たち政務三役は、今回の隊員の政治的中立性を確保するための通達を出す、こういった結論に至ったわけでございます。その過程において、どういったやりとり等々につきましては、この場で具体的に申し上げることが適当だというふうには思っておりませんし、やはり自分たちは、結果として、あのような通達を出すべきだということで、政務三役が責任を持って今回発出させていただいたというところでございます。

小野寺委員 外務大臣にお伺いをいたします。

 このような次官通達、内容については、政治的中立を保てということ。ただ、かなり、報告を義務づけるとか、あるいは民間の方との交流を妨げるとか、そういう指摘も出ております。

 この通達について、外務大臣はどのようにお考えでしょうか。

前原国務大臣 防衛大臣、また政務官がるる述べておられますように、これについては適切なものであるという認識を持っております。

小野寺委員 文部科学大臣にお伺いいたします。

 文部科学大臣も、この通達については、これは適正だというふうにお考えでしょうか。

高木国務大臣 そのように思っております。

小野寺委員 私は、防衛省の今回の問題、この通達で驚いたのは、通達の理由として、防衛省・自衛隊としては、かかる事案が二度と起きないように、かかる事案というのは、入間基地でこの会の会長さんが菅内閣をぶっつぶせと言った、この事案が二度と起きないようにということでこの次官通達を出されました。

 私は、このような一つの事案でもしこのような通達を出されるのであれば、文科大臣にお伺いしたいんですが、例えば文部科学省所管、あるいは北教組の問題、さまざまな多くの問題が起きております。小林千代美議員の問題、今回は上告をあきらめて、連座制も適用。これは御本人が、ですから、このようなことを認めたということになります。ここまで公務員の中立性を阻害された事案が発生しているということは、今大臣がおっしゃったように、そのような、日教組を含めて、この北教組の問題に対して同じような通達を出されるお考えがあるかどうか、お伺いしたいと思います。

高木国務大臣 教職公務員としては、法律を守ることは当然でございますが、そのようなことについては、今考えておりません。

小野寺委員 なぜ自衛隊の隊員に対して出すことについては、これは認める、適正だというふうにお考えになって、なぜ教育公務員の問題に関しては、これは出すつもりがないのか。実際に起きている事案としたら、むしろよほど深刻、刑事事件まで発達している問題ではないかと思うんです。

 再度お伺いいたします。この次官通達、これが適正だというのであれば、私はむしろ文部科学省自体出していただきたいと思いますが、そのようなお考えはあるでしょうか。

高木国務大臣 いわゆる任命権者、設置権者の北海道あるいは札幌市教育委員会で対応しておりますので、今、そのようなことで私は考えてはおりません。

小野寺委員 教育公務員に関しては、これは国の方が人件費の負担もしております。ですから、言ってみれば準国家公務員の立場ではないかと私どもは思っております。今のような、何か現場に投げつける。今のお話をずっと伺うと、なぜこのような次官通達が防衛省だけで起きたのか。

 国家公安委員長、お伺いします。

 警察の場、私どもさまざま、例えば警察友の会の場で民間の方の発言を聞きますと、今の政権に対しての厳しい指摘を相当数の方がお話をされます。このことが現場の警察官に多大な影響を及ぼすということになれば、当然、このような通達を警察でも考える必要があると思うんですが、いかがでしょうか。

中野国務大臣 お答えいたします。

 具体的な御指摘をいただいているわけではございませんで、一つの仮定のお話かと思います。

 ただ、似たようなケースがそれぞれ起こっているような報道を聞くことはありますので、それは的確にそれぞれの都道府県警察において、日本の場合は地方警察になっておりますから、的確に処理をされるものというふうに判断をいたしております。

 また、総合的に私どもが判断をする事例にはお会いをいたしておりません。

小野寺委員 ぜひ、私どももこれからそのような発言があったらすぐ大臣のところにお話ししますので、これはやはり菅政権に対して厳しい発言だということであれば、同じような通達を出すべきのお考えではないかとむしろ思います。

 というのは、なぜこういうお話をしているかというと、異常なんですよ。防衛省が異常なんです。

 ちょっと大臣にお伺いしますが、かかる事案、この一つのケースをもって、このような次官の通達を過去出されたことはありますか。

北澤国務大臣 これと同様のことでの通達は出しておりません。

小野寺委員 確認しましたが、このような個別事案の内容で実は次官通達まで出すことはないというふうに私ども聞いております。大変異常な事案ということをぜひ指摘をしておきたい。また、この問題は多分、これから国会の方でさらに審議をされると思います。

 もう一点、お伺いをしたいことがございます。

 これは、自衛隊に自衛隊情報保全隊という、このような隊があると、私、今回報道で初めて知ったんですが、そのような隊があることは事実でしょうか。

北澤国務大臣 現存しております。

小野寺委員 現存している。何か、クニマスみたいな話なんですが。

 では、ここでありますように、これも一部報道でありますが、この情報保全隊というのが昨年十一月下旬に部内会合を開き、そして、十一月十日に発せられた事務次官のこの通達に基づいて、保全隊の監視対象として具体的に名前を挙げて、佐藤参議院議員、元航空幕僚長の田母神俊雄さん、そして陸上自衛隊の特殊部隊の初代群長を務められた荒谷卓さんの動向というふうに伺っておりますが、この方々の分析を行う、そして、この方々の講演や会合に潜入監視をさせ、現職自衛官の参加の有無を含めて調査を行った、こういう報道がありますが、これは事実でしょうか。

北澤国務大臣 それは一部報道、産経新聞に載せられた記事だと思いますが、私は、あれを見まして、世の中に、火のないところに煙は出ないというのは承知をしておりますが、かけらもないところから捏造されたような記事が出るということ自体に私は非常にびっくりしておるんです。今の十一月の会議、そんなものもありません。それから、潜入したとか監視したとか、そういうこともありません。

 ただ、この保全隊の性格上、隊員を守るという意味でさまざまな活動はいたしております。これを一々、だれを対象にしたとかということを公表すれば、それは隊の使命そのものを根底から覆すことになるわけでありまして、しかし、国会で議員として国民の負託を受けておる二人の委員の場合は、自民党の部会等で説明を求められましたので、このお二方については、対象外である、対象にはしておらないと。

 それから、今、宇都さんのことも言われました。宇都さんと佐藤さんのことを言われました。(小野寺委員「佐藤しか言っていないので」と呼ぶ)そうですか。(小野寺委員「宇都さんもそうなんですか、宇都さんもそうだったんですか」と呼ぶ)いやいや、それは自民党の部会の中で出ておりまして。今、宇都さんと言いませんでしたか。(小野寺委員「言いませんでした」と呼ぶ)ああ、そうですか。

 では、わかりやすく申し上げましょう、わかりやすく。

 宇都さんの場合も、部会で防衛省に質問がございました。これは、宇都さんの場合は、場所と日時を特定していただきましたので、調査をいたしましたところ、報告が上がってきて、この場合は保全隊員が参加をしていたことは間違いありません。(小野寺委員「間違いありません」と呼ぶ)ありません。ただし、その経緯を聞きましたら、宇都さんの講演会の主催者から、当該の隊員に対して、こういう会合があるから出席したらどうかという案内があったそうであります。しかも、その主催者は、当該隊員のお仲人でもありますし、自衛隊のOBでもあるわけでありますから、そういうことから、休日であるということで出席をされたと。

 したがいまして、佐藤議員のことについても、日時やそれを特定していただければ、事実関係はわかります。

 なお、この宇都さんの会合へ出た隊員は、今申し上げたような経緯の中で出席しました。そのことが新聞報道で潜入監視、こういうふうに報じられると、本人の意図それから主催者のOBの方の意図とは大きく離れておるのではないかというふうに思います。

小野寺委員 今、宇都さんの話は私は初めて聞いたんですが、宇都さんのところに潜入、まあ、参加された保全隊員は、この方々は、今大臣がおっしゃった、次官が出したこの次官の通達、ここにありますように、「部外行事への隊員の参加に係る対応」、ここにひっかからないんですか。答弁を求めます。

北澤国務大臣 これはよく通達を読んでいただくとおわかりですが、隊外ですからね、そこへ招待されて、あいさつあるいは紹介をされる者、こういうふうになっておりますから、そういうことには該当いたしません。

小野寺委員 ちょっと不思議なのは、私どもが現場で声を聞くと、今、さまざまな自衛隊の、このような会に招待をされた場合には、当然、招待をして、どういう会の性質か、どういう発言をするかというのを事前に報告しないといけないんだということが徹底されるということなんですが、今回の宇都さんの保全隊についてはそのようなことを行われたんでしょうか。

北澤国務大臣 ただいまも申し上げましたように、その会の趣旨について云々ということは、招待をされて、あいさつをし、あるいは紹介をされるという場合に限ってのことでありますので、そういうことのない一般参加の場合はその対象とは全くなっておりません。

小野寺委員 何かお話を聞いていると、実際にこの保安隊の方が実は会合に出ている、それは招待されたとかそういうお話なんですが。

 では、田母神さん、荒谷さん、この方に関しては、これは保全隊の隊員がその会合に行ったりあるいは監視をしたりしていることはないと言えるんでしょうか。

北澤国務大臣 それについても、先ほど申し上げましたように、佐藤委員、宇都委員の場合は、出身OBであり、そしてまた国民から選ばれた人であるということで個別にこのことを申し上げましたが、あと一般人の人たちが対象になっているかなっていないかとか、そこへ出席をするとかしないとか、そういうことを申し上げれば隊の本来の使命から外れるわけでありまして、なお、その使命を全うすることもできなくなりますので、その辺については十分な御理解をいただきたいと思います。

小野寺委員 何か、国会議員だけは対象にしたかしないかは言うけれども、一般の広い国民に関しては、それは、したかもしないかも言えないというふうにとらえたんですが、これは国民に対して、むしろ侮辱するようなお話になりませんか。

 もう一度お伺いします。

 田母神さん、荒谷さんに関しては、これは対象にされているんですか、されていないんですか。

北澤国務大臣 ただいまも申し上げましたように、一般の方々について一々、対象にしているとかしていないとか言ったらこの隊の使命が全うされないわけでありますから、そこは十分御理解をいただきたいというふうに思います。

小野寺委員 それではもう一つお伺いしますが、このような一般の方を含めて、特に一般の方です。保安隊というのはもともと自衛官のためにある組織ですが、今お話しされたように、一般の方、今回このように報道されております。田母神さん、荒谷さん、こういう方を監視対象にされたということに関して、もし憤りがあるのであれば、そういう報道についてはけしからぬということ、そして、このような活動自体、これを大臣は適切だと思いますか、適切だと思われませんか。

北澤国務大臣 今のお話ですと、田母神さんたちを対象にしているという前提での御質問でしょうか。(小野寺委員「いえ、違います。保安隊がもしこういう活動をしているということが報道されること自体」と呼ぶ)

 保安隊の任務は、もう御存じだと思いますけれども、隊員を保護するためにやっておるわけでありまして、外部の諜報活動をするなどという話ではなくて、これは、自民党政権時代でありますけれども、各、陸海空にそれぞれあったものを統一して保全隊という大きな組織にしたわけであります。

 これが、報道には、いかにも何か防衛大臣が直接秘密警察をやるように指示できるような、北澤俊美防衛大臣直轄諜報部隊などというふうに名前まで書いてありまして、私の性格上どうも誤解されているのかなというふうにも思ったんですが、全くそうではなくて、一つには、オウム真理教が、隊の中にその信者がおって、これが活動したということについて非常に大きな問題意識を持って、保全隊の統一的なものに前政権でおつくりをいただいたということでありますので、あくまでもこれは、外部からの自衛隊員に対するさまざまな働きかけ等について隊員を守るということが主であるということを、ぜひまた御理解いただきたいと思います。

小野寺委員 今、直轄ではないようなお話をされましたが、これは防衛省からいただいた資料です。この資料を見ますと、この組織図を見ると、防衛大臣の直轄に自衛隊の情報保全隊ということになっていますので、組織上は、これは大臣直轄なんですよ。

 もう一つお伺いしたいのは、これは直轄ですから、大臣の指揮で、大臣の指示で動くことになっているんです。ですから、今回、このようなさまざまな活動をしているということの報告は当然大臣に入っているはずなんですが、大臣、情報は緊密にこの保全隊からとられていますか。

北澤国務大臣 これは、自衛隊の組織上、私の直轄になっております。しかし、方面隊も私の直轄なんです。すべてそうなっておるんです。

 その間に、御案内だと思いますが、自衛隊法に基づきまして、統合幕僚長を通じてこの指揮は行う、こういうふうになっております。したがって、何か事案があったときも、上から指揮するのも統幕長を通じて指揮をします。上がってきた報告も、それぞれの部署を通して統幕長に上がって、統幕長が、必要があれば私に報告をする。

 したがって、わかりやすく申し上げると、私がこの一年四カ月、大臣を拝命しておりまして、この件についての報告は一件もありませんでした。

小野寺委員 一件も上がっていないというお話ですので、逆に心配になります。

 このような情報活動を行う、これは千人以上の規模の隊だと伺っています。そこの情報活動を行っている皆さんを、大臣、一度もまだ報告を受けていないということは、政治主導という観点から見て大変危険じゃないか。私、シビリアンコントロールの観点から、むしろそちらの方が心配だと思うんですが、指揮監督、あるいはどのような活動をしているか、そこまで関与されていないというのは私は異常じゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

北澤国務大臣 これは、自衛隊はシビリアンコントロールが非常に徹底しておりまして、私は非常によく機能しておるというふうに思います。

 それで、今回の事案がありましたから、統幕長に、どの程度のものが上がってきているのか、少し聞きました。統幕長も、私のところへ来るのもそのうちの非常に少ない部分が上がってきています、しかし、私の判断で、防衛大臣に時間をとって報告するほどの事案はないということで、中身も少し教えてもらいましたが、全く問題はないと。

 これはどういうことかといいますと、要するに、自衛隊に対して、先ほどオウム真理教の話をしましたが、もう一つにはイージス艦の秘密漏えい、こういうようなことに対して隊員を守る、隊を守る、そういう趣旨でこの保全隊が組織されておりますので、幸いそういう事案がなかったということであります。

小野寺委員 ちょっと大臣、おかしいんじゃないですか。だって今、この一年四カ月、報告は上がっていないと言いましたね。情報保全隊のこの活動、佐藤正久さんや宇都さんや田母神さん、荒谷さん、こういう方を調査していない、対象になっているかなっていないかわからない、そういういろいろなお話をされました。

 では、報告が上がっていないのに、何でわかるんですか。自分がその報告を聞いていないのに、何でわかるんですか。これはおかしいじゃないですか。

北澤国務大臣 だから冒頭言いましたでしょう。火のないところに煙は出ないという話が、火の粉もないところから煙が出た記事について、びっくりして、この記事は一体どうなっているのか、実際にこんなことはあるのかということで私が自衛隊の方へ問い合わせたところ、今申し上げたようなことになったわけであります。

小野寺委員 ということは、この保全隊、情報機関に関して、防衛大臣は一年四カ月の間、この報道が出るまでは一度もその内容について報告も受けていなければ、そして、この報道が出て初めて、この報道はそうなのかと聞いて、そんなことはないという答弁をうのみにされて、今、国会で答弁されているということでよろしいんでしょうか。

北澤国務大臣 今の御質問を聞いておりますと、最後に、うのみにしてと、こう言われますと、普通、うのみということになると、何のしんしゃくもせず不用意に報告を聞いている、こういうふうにとられがちでありますが、私は、これは極めて重大なことで、たとえある一紙であっても、こういうものを連続して四日間も報道して、いかにも自衛隊の内部に秘密、そしてまた秘密警察的な動きがあるというようなことを国民の一部に対してでも宣伝されるということは、自衛隊にとっては極めて迷惑な話でありますので、そういう意味では非常に神経質に対応いたしました。

小野寺委員 本当にこの保全隊の役割をきちっとやっていただくことは、私どもも大事だと思います。ただ、今、大臣は報告を受けていた、それは、何もない、火のないところだということだとお話をされましたが、もし仮に、この問題で、保全隊が今お話しになったような方を含めた活動を目的と違って行っていたということが判明された場合には、大臣としての責任をとられるおつもりはありますか。

北澤国務大臣 どこから出た煙かもわからぬのに、一々責任をとるなんということをここで申し上げるということは、むしろ職務に怠慢だというふうに思います。

 私は、全精力を注いで、この防衛関係に、そしてまた防衛大臣の職務を務めております。したがって、客観的にどう見てもおかしな報道であってみても、今まさに小野寺委員も御心配の上で御質問いただいているんだと思いますが、自衛隊の中にわずかなことでもそういう懸念があるようなことがあってはいけないということで、真摯に今回は対応をして全容を把握したわけであります。

 もう一つ申し上げますが、全国に一千七名の隊員がおります。これは、各部隊に全部配属されておるわけでありまして、そこから上がってくる情報は、先ほど申し上げましたように、幕の方は最終的に統幕長に、それからまた各部隊ごとには陸海空の幕長に、それから局の方へは調査課長を中心にして報告を受けておるという、私も今回精査しましたけれども、非常にきちんとした制度、それは、前政権でありますけれども、浜田大臣のときに再編成をしていただいたというふうに思っております。

小野寺委員 この問題は、恐らく参議院でも大きな議論になると思います。

 次に、駐留経費の問題について質問をしたいと思います。

 在日米軍駐留経費負担特別協定というのがございます。これは、日本にありますアメリカ軍の基地の水光熱費、あるいは基地職員の給料、施設整備、さまざまなことの負担を日本が行うということでずっと協定を結んできたんですが、まず、外務大臣それから防衛大臣にお伺いをいたします。

 三年前、これは当時政権が違いましたが、この協定が第六次特別協定ということで上程をされたとき、この協定に賛成されたか反対されたか、お伺いをしたいと思います。

前原国務大臣 反対しております。

北澤国務大臣 外務大臣の答弁と同じであります。

小野寺委員 前回は反対をされ、今回は逆に法案提出側ということで来られました。

 一体なぜ、このような協定、今回態度が急に変わったのか、その変わった理由について、それぞれお伺いしたいと思います。

前原国務大臣 まず、三年前でありますけれども、さまざまな議論が党内でございました。ただ、このホスト・ネーション・サポート自体が不必要かという議論は、我々はした覚えはありません。中身の問題として、我々としては、問題があるのではないかという議論をした中で、最終的には反対という結論に至ったわけでございまして、我々は、この日米安保条約におきまして、五条、六条、それで六条の基地の提供、施設・区域の提供、そしてそれに基づく特別協定ということで、HNSそのものの必要性について否定をして反対をしたわけではございません。

小野寺委員 防衛大臣にもお伺いしますが、今非常に苦しい答弁だと思いますが、前回は反対をされました。今回賛成する理由は何ですか。

北澤国務大臣 私も外交防衛委員長を参議院でしていまして、その議論には参加をしておりました。そのときは、娯楽性の高いところの従業員の給料を払っておるとか、あるいはまた、まだ実施はされておりませんけれども、グアムの米軍の住居、隊員の住居の平米数であるとか、あるいは単価が非常に高いのではないかというような議論が盛んに行われて、その結果として反対をいたしました。

小野寺委員 防衛大臣にお伺いしますが、では今回、グアム移転の住居が高いということ、あるいは、今お話しされましたさまざまな、娯楽性の高い職員の問題、こういうことが解決されたから賛成に回ったということでしょうか。

北澤国務大臣 娯楽性の高い職員については、四百三十名減員するということで、そのかわり、総額で同額を担保してありますから、その分は、米側の強い要請もあって、環境に優しいFIPの方へそれを転用するということであります。

 なお、住居については、これは私もグアムへ行きまして、海兵隊といいますか、軍に対するアメリカと日本の文化の違いといいますか、国民の受けとめ方の違いを大きく感じてきました。まず、グアムの気象状況というのが一つあったことと、それからもう一つは、海兵隊は、この住居から世界のあらゆる紛争へ出ていく兵士が二度と帰ってこない確率の非常に高い部隊である。そういうことからアメリカ国民の強い尊敬の念に支えられて、米国では、海兵隊や軍の施設については我々が想像できないほどの大きな敬意の念を払って処遇をしておるということを強く感じました。

小野寺委員 ちょっと防衛大臣に御指摘をしたいのは、今発言の中で、海兵隊がここから出ていくと帰ってくる可能性が極めて低いというお話をされました。ちょっと間違ったとらえ方をされると大変だと思いますので、そこは私も違う意味だということで受けとめておきたいと思っております。

 さて、その中で、ちょっとお伺いしたいのは、今、前という話、前に反対したときと比べて、結局、よく見てみたら、よく話を聞き、グアムに行き現実を見たら、これはやはり三年前に反対したことは間違いだった、そういうことだと受けとめましたが、それでよろしいでしょうか。

北澤国務大臣 お答えする前に、今の、米軍の兵士が帰ってくる率が非常に多いということを申し上げたのは、象徴的に申し上げたわけで、私も少し……(小野寺委員「帰ってくる確率、可能性が低いということですか」と呼ぶ)低いということを申し上げました。それは訂正させていただきたいと思いますが、間違いなく兵士が戦場で倒れるということについての、アメリカ人の軍人に対する考え方をちょっと象徴的に申し上げたいというふうに思ったわけであります。

 そこで、今申し上げましたように、娯楽性の高いものについて四百三十名の減員をした、そういう修正を図った上で今回合意しておるわけでありまして、一方で、米軍の兵士の官舎については、ただいま私が申し上げたような誤解もあったのではないかというか、認識の不足があったのではないかというふうに、これは私の個人的な感覚でありますけれども、そういうふうに感じております。

小野寺委員 素直に、グアムについては認識の違いがあったということでお認めになりましたが、お配りした資料の三ページ目をちょっとごらんください。

 これは、三年前、衆議院の外務委員会で、当時野党だった民主党が、この協定に反対をした理由ということで述べられた内容でございます。いろいろ述べてあるんですが、主な論点、下線が引いてあるところ、これ二点を読みます。

 まず一つは、我が国の負担割合が七五%、ドイツは三三、韓国は四〇、日本は突出している、これが一つの理由。もう一つ、その下に線を引いてありますが、日米地位協定の改定が必要にもかかわらず、政府は運用改善に固執している。この二点が実は反対した、どうも文脈を見ると、それが理由であります。

 外務大臣にお伺いします。

 日米地位協定の改定の議論、これが現実に、政権交代以後行われた事実はございますか。

前原国務大臣 済みません、今の質問の意図が十分わからなかったんですが、政権交代後にこの議論をしたかどうかということでございますか。(小野寺委員「ええ、地位協定がまず変わったかどうか。それから、政権交代後にこの協定についての議論をしたかどうか」と呼ぶ)

 地位協定の見直しについては、まず、私も累次申し上げておりますように、事故、事件、そして騒音、そして環境、こういった問題の運用改善というものをしっかり求めていくという議論をしております。(小野寺委員「運用改善ですよね」と呼ぶ)運用改善です。

小野寺委員 大臣、もう一度読んでいただきたいんですが、当時、野党の民主党の皆さんが反対した理由は、これは代表しての反対です。日米地位協定の改定が必要にもかかわらず、政府は運用改善に固執している。

 大臣にもう一回お伺いします。

 私が地位協定課に確認をしたら、政権交代以後、地位協定の議論を日米でしたことはない、これが事実だということです。そして、今大臣がおっしゃったように、運用改善に固執しているというお話ですが、同じことじゃないですか。

 何が変わって、三年前は反対で今回は賛成なのか、その変わった理由をお聞かせください。

前原国務大臣 これは、下線以外のところも全部読んでいただきたいんですね。反対理由というのは……(小野寺委員「いや、それは全部読みました。下線理由は、理由になっていないのがほとんどなので」と呼ぶ)ただ、下線理由だけでおっしゃっているということでありますので。

 下線部以外のところでは、先ほど私や防衛大臣から申し上げましたように、娯楽性の高いものについての見直しについてもちゃんと下線部の次には出されているわけですよね。

 あと、私が申し上げたように、ホスト・ネーション・サポート自体が不必要だということは一切書いていないはずですよ。我々は、これについては必要であるということと同時に、今の戦略環境に合わせて考えた場合、中身の組みかえはするけれども、そういう必要性に基づいて今回のホスト・ネーション・サポートの中身を出させていただいているということでございます。

小野寺委員 私、全然答弁になっていないと思うんですよ。

 娯楽性のことと書いてありますが、これは、労務協約を変えなければ日本側から正せない枠組みも放置されてあります、こういうばくっとした話だし、それ以外のことについても、これはグアムへの移転の話で、実際、これをよく読んでください。反対した理由は、私何度も読んだんですが、この二つなんですよ。

 そして、この反対した理由、これは党を代表してですよ。この反対した理由に関して、何も変わっていない。日本の負担は突出している。地位協定の見直しは、その議論すら行われていない。

 認めてください、三年前は間違いだったと。よく内容を見たら、よく考えたら、この条約は大切だったということを。(発言する者あり)

 今こちらから、節約がないという話がありましたが、もっとひどいのは、私どものときには、この地位協定の負担金、日本が出すお金というのは、毎年毎年の予算で決めていました。今回の協定では、五年間このレベルを維持する。減らさないし、維持する。基地がなくなると言われているのに、減らさないで五年間維持する。逆じゃないですか、私たちがやってきたことと。もっとひどくなっていますよ。

 何でこういう協定を、三年前と何が変わったのか教えてください。

前原国務大臣 ひどくなったという御指摘は全く当たらないと思います。それと同時に、三年前が間違っていたということは全くございません。

 さっき申し上げたように、小野寺委員が配られたこの資料の一番最後から三つ目のパラグラフと、それから最後から二つ目のパラグラフを見ていただいたらおわかりいただけますように、本協定を手始めに、分担すべき費用負担のあり方を見直すべきだということを書いてある。それと同時に、本協定には反対をします、ただし、健全な日米同盟維持のために、必要な経費の負担のあり方については、明確な支出根拠に基づき行う原則を確立すべきであり、あわせて、政府は、日本人云々ということが書いてあるわけでございまして、この文章からもわかりますように、ホスト・ネーション・サポート自体が要らないなんということは、我々は三年前に一切言っておりません。

 もう一つ、先ほどおっしゃった地位協定の見直しについては、提案をしておりません。

 これはしかし、我々としては、地位協定の見直しも含めて、まずはやれることをやっていこうということで、私も沖縄に行きまして、前の四軍調整官に対して、自民党時代に結ばれたいわゆる平成八年の普天間の合同委員会の合意についても、遵守されていないじゃないかということを申し上げましたし、ルース大使にも申し上げておりますし、そういったところからまず始めるということで、地位協定改定ということは、我々としては、別に旗をおろしたわけではありません。

小野寺委員 全然理解できないお話だと思っています。

 それは、本筋では大事だと言っておきながら、協定には実際反対しているじゃないですか。そして、反対理由が、日本の負担が突出している、日米の地位協定の改定が行われていない。私も、これで国会で議論をされてきたのをずっと見ております。

 ですから、謙虚に、やはり政権をとってみて、この日米関係が大事だということを感じて、むしろ、私どもは三年前の考え方は間違っておりました、日本の負担はしっかりすべきだ、地位協定だって簡単にいかない、運用をまず見直すべきだ、そういう謙虚な答弁を期待します。

 もう一度お願いいたします。

前原国務大臣 自分の考えを押しつけないでいただきたいと思いますね。

 私は日米関係の重要性というものを、私は今まで、日米関係の重要性というのは、野党のときから何度も何度もこの予算委員会でも言っているはずです。したがって、日米関係が大事でないなんて民主党が言った覚えは全くありませんよ。

 しかし、三年前については、この中身についておかしいんじゃないかということで、具体的な、この娯楽性の高い問題とか労務費とかの問題を取り上げて、我々は総合的に判断をして反対したのであって、別に三年前のこの問題が間違っていたなんということは全く思っておりません。(小野寺委員「答弁になっていませんよ」と呼ぶ)

中井委員長 小野寺君に申し上げます。どこが答弁になっていないのか聞いてください。どこがなっていないのか聞いてくださいよ。聞いて説明してください。説明してください。(小野寺委員「聞いています、何度も同じことを」と呼ぶ)十分な議論になっていると思います。

 満足する、満足しないはそれぞれにあると思いますが、どこが御質問に答えていないかを具体的に言ってください。小野寺君。

 どこが具体的に質問に答えていないかを言ってください。(小野寺委員「考えを押しつけるなと、ここに書いてある話をしているわけですから」と呼ぶ)いや、謝りなさい、いや、謝る必要はないという議論はあります。質問を続けてください。小野寺君。

 答弁がちゃんと出るように質問してください。ちゃんと質問を続けてください。(発言する者あり)

 再度質疑者に申し上げますが、十分質問をされて、十分答弁を僕はしていると思っています。ただ、三年前のやつを謝れ、謝らないというところは違いがあってもいいんじゃないですか、それをやっているんだから。(発言する者あり)

 質疑を続けてください。小野寺君、質疑を続けてください。

 前原さん、先ほど押しつけたという言葉について説明してください。

前原国務大臣 押しつけるなということを申し上げた理由を、では、申し上げます。

 今、もう議事録を精査したらわかると思いますけれども、小野寺議員は、三年前にこの日米安保の重要性をわかっていなかった、それを謝りなさいということをおっしゃったんですよ。それについては、違います、我々は日米安保の重要性はちゃんとわかっていました、中身について我々は異論を申し上げて反対をしたんですと言ったので、それについて謝れということについて、押しつけないでくださいということを申し上げたんです。

小野寺委員 熟議ということなのであえてお話をさせていただきますが、私が聞きたいのは、今回、負担の割合が日本は下がっておりません。そして地位協定の改定がなされておりません。この二つの大きな理由が何も変わっていないのに、急に、今まで反対な考え方が賛成に変わるということの理由がわからない。それは考え方が変わったのか、それを教えていただきたい、そういうふうにお伺いをいたしました。

前原国務大臣 大きく言って二つございます。

 一つは、使い方の中身を変えたということでございます。

 もう一つは、戦略環境の変化というのは、小野寺委員は私のカウンターパートナーで次の内閣の外務大臣でいらっしゃるのでおわかりだと思いますが、北朝鮮やあるいは周りの国々の軍事力増強の程度を見ていて、大変厳しい状況にある。その中で、もちろん我々も、財政的な制約の中でしっかりと防衛大綱も見直す中で、自前の防衛力の整備、これはしっかりやっていかなくてはいけませんけれども、日米安保というものをしっかり強化していかなくてはいけないという大局の中に立って、こういった判断をしたわけでございます。

小野寺委員 もう一つお伺いしますと、今回のこの経費の水準というのは、千八百八十一億円を維持する、これは五年間ということになります。五年間となりますと、これは平成二十三年から二十七年ということになります。

 私が不思議なのは、これはもう既に日米合意で、普天間を含めて基地の軽減ということが約束をされておりますが、普通であれば、この基地負担、水光熱費や従業員の給与というのは基地が沖縄からなくなれば減っていくものだと思いますが、五年間これを維持するということをあえて約束したということは、五年間、基地の負担、沖縄の負担軽減は行われないということの裏返しなんでしょうか。お伺いします。

前原国務大臣 防衛大臣が必要であれば御答弁をされるというふうに思いますけれども、我々としては、二〇一四年の目標は変えておりません。

小野寺委員 防衛大臣にお伺いします。

 二〇一四年ということになりますと、あと三年ということになります。今から必要なのは、仮にI字案、V字案の2プラス2の合意がなされ、そしてその後に沖縄県知事の公有水面埋め立ての許可がございますが、その前に、例えば漁業補償の問題があります。漁業補償は、今回、工事、工事以外の保全水域、そしてその先の影響を受ける水域、相当広い漁業被害も出ます。

 また、ちょっとお伺いしますが、この建設にかかる工事の期間。例えば関空であれば、島をつくるのに四年、上屋をつくるのに三年、七年かかりました。あと三年で、二〇一四年までに、この普天間の危険性除去のための、V字案なのかI字案なのかを決め、そしてそこに普天間の基地の移転ができるということを今でもお考えでしょうか。

北澤国務大臣 今の外務大臣の答弁でよろしいわけですが、一つ補足するとすれば、提供施設・区域の返還や在日米軍人数の減少などによって、光熱水費等が今おっしゃられたとおり減少が見込まれる、これについては、本協定の往復書簡、外務大臣とルース大使との間の往復書簡の規定によって調整するというふうに安全弁が図られております。

 さて、そこで二〇一四年の問題でありますけれども、これは五月二十八日の日米の合意によって、二〇一四年を目途として双方で合意をしておるわけでありますから、ただいまのところ、それに向けて誠心誠意努力をしていくということです。

小野寺委員 常識からいって、もし新しい案が出た場合には環境アセスが必要だ、そして現行案でも、これは、漁業に対しての補償の交渉をとらなければならない、大変な数です。そして、それで初めて埋め立てが可能。そして、埋め立ての工事には恐らく、関空の事例では六、七年は最低かかるんではないか。これを見たら、二〇一四年は恐らく無理だな、普通はそういう常識的な感覚を持つと思います。

 そして、今回の協定が五年間レベルを維持するというのは、五年間は普天間の危険性が除去されないんだな。そして、その背景の中で、例えば外務大臣は、普天間第二小学校を移転した方がいいんじゃないか。むしろ、基地の移転ではなくて、基地の周辺にある小学校や民家を移転して、普天間の飛行場を固定化する、私はそのような方向に行っているとしか見えない。そういう心配がございます。

 言い切りで恐縮ですが、時間となりました。ぜひ、この沖縄の負担軽減につきましてはしっかり認めていただくことと、それから、私は、どう見てもやはりこの日米地位協定の問題は、三年前の発言、考え方というのが考えてみたら違っていたということをしっかりお考えいただきまして、認めるところは認めながら、日米関係の拡充に努めていただきたい、そう思っております。

 終わります。

中井委員長 これにて小野寺君の質疑は終了いたしました。

 次に、小泉進次郎君。

小泉(進)委員 自由民主党の小泉進次郎です。

 きょうは、質問の時間を一時間いただきまして、ありがとうございます。そして、多くの大臣、また副大臣にもお見えいただきまして、本当にありがとうございます。

 まず、確認をさせていただきますが、玄葉大臣、二月の三日の予算委員会、大串先生とのやりとりがありましたが、四月の社会保障改革の基本方針に合わせて、マニフェストの社会保障分野も事実上検証を四月に終える、これで間違いありませんか。

玄葉国務大臣 基本的にそういうことで結構です。

小泉(進)委員 簡潔にお答えいただいてありがとうございます。

 それでは、社会保障分野ですから、年金からまず触れたいと思いますが、二月の二日、これは公明党の石井先生の質疑だったと思いますが、そのときに、マニフェストでうたった年金の案、つまり最低保障年金七万円、消費税で全額やる、これが実は財源の試算がしていなかった、こういうことがわかりました。これは枝野官房長官もそういうふうに答えられていますね。

 それで、私もこれはびっくりしたんですが、民主党の中でもびっくりした方がいます。それが財務副大臣の櫻井さんでありますが、櫻井財務副大臣は、財務省のホームページでも載っていましたけれども、二月の三日の記者会見、こちらの方のホームページから印刷をしました。こういうふうに発言をされています。「昨日の委員会でアバウトな数字すら出せなかったので、私は正直驚いています。」

 櫻井財務副大臣、びっくりしましたか。

櫻井副大臣 小泉委員にお答え申し上げます。

 きょうは自民党の若きエースと議論ができるということを本当に幸せに思っておりますが、私は党内で相当な議論をしていたことを知っておりました。ですから、年金の試算というのはかなり難しいのは委員御存じのとおりだと思います。要するに、高齢化の割合、それから所得の問題であるとか、さまざまなことをずっと議論してきていて、ただ、私は、あるモデルケースとして数字を持っていたんではないのか、そう感じておりましたので、ああいう答弁があったことについて、正直驚いたと申し上げたところでございます。

小泉(進)委員 そして、櫻井財務副大臣は続けて、こういうふうにも記者会見で述べております。「あの当時、マニフェストを作った人達がもう少しきちんと説明してもらいたいというのが偽らざる気持ちです。これはこのことに限ったことではなくて、マニフェストに対して相当な批判があるわけですが、あれはあの当時、正直申し上げればごく一部の方々が中心になって作られたのであって、我々情報をほとんど与えられないまま議論が進んでいっているわけであって、出来ればその方々がちゃんと出てきて説明をすべきではないのかなと、私はそう思います。」

 櫻井財務副大臣がこうおっしゃっていますのでお聞きをしますが、まずは蓮舫大臣。蓮舫大臣は、政権交代前のネクストキャビネットの年金担当副大臣でおられました。そして、マニフェスト検討準備委員会のメンバーでもありました。それでいながら、なぜ年金改革の財源を示せなかったんですか。

蓮舫国務大臣 お答えいたします。

 マニフェストの政策をつくるのは政調会長室でございますので、今御指摘いただいた当時の私の肩書で、数字を詳しく持って当時検討したわけではございません。

小泉(進)委員 そのマニフェスト検討準備委員会でつくったのはマニフェストの下地ですよね、それは間違いありませんね。

蓮舫国務大臣 申しわけございません。正確な答弁をさせていただきたいと思いますので、当時のマニフェスト検討準備委員会で、どういう会合を持って、どういうふうなメンバーが出て、私がどの会合に出て、どんな議論をしたのか、これはいま一度ちょっとちゃんと見させていただかないと、ここで当時の記憶をたどってまた違うことを言ってしまった場合にはせっかくいただいた質問の時間を無駄にしますので、これはもう一度、もしできればもう少し細かく質問していただければと思います。

小泉(進)委員 それでは質問をかえますが、このマニフェスト検討準備委員会で年金の財源が出なかった、これは間違いありませんね。年金の所要額です。税方式で、税で最低保障年金をやる、これに幾らかかるか、その案が出なかった。

蓮舫国務大臣 当時の民主党の中で、さまざまな議論はさせていただきました。これは、厚生労働部門会議等で積み上げたものを、マニフェスト検討準備委員会並びに政調室においてさまざまな議論をさせていただいておりましたが、我々がまずは、一階部分が所得比例年金でございます、その上に最低保障年金を上乗せていく、七万円に足りない方たちはそこに乗せていくという議論をしたときに、では、果たして年収が一体どこでこの所得比例年金に上乗せでこの最低保障年金が乗るのか、あるいは、どこぐらいの年収でそれが全くかからなくなるのかという議論はさせていただきましたが、具体的に年収が幾らかというのをそこで詰めた記憶はございません。

小泉(進)委員 つまり、この年金案の創設に幾らかかるかは議論がなかったということじゃないですか。つまり、財源の裏打ちがないマニフェストだった、そういうことですね。

蓮舫国務大臣 できるだけ丁寧に御答弁をさせていただきたいと思っておりますが、当時のマニフェスト検討準備委員会のメンバー、一体何人いたのか、どういうメンバーだったか。私はその中のメンバーの一人でしたから、一人として議論をさせていただいておりましたので、今、全く何の準備もないままに、小泉委員の頭の中では御準備はあるんでしょうけれども、もう少し丁寧に質問をしていただけると大変ありがたいと思います。

小泉(進)委員 蓮舫大臣がマニフェスト検討準備委員会のメンバーまで言えということですが、本来、それは皆さんわかっているんですから、なぜそれさえ皆さんから言えないんですか。

 ここに一応ありますけれども、マニフェスト検討準備委員会。直嶋さんも出ていましたね。長妻さん、福山さん、大塚さん、細野さん、尾立さん、鈴木さん、西村さん、中川正春さん、そして蓮舫さん、このメンバーがマニフェスト検討準備委員会のメンバーです。

 そして、このマニフェスト検討準備委員会でマニフェストの下地をつくる議論を重ねたんですよ。それは間違いありません。そうですよね。マニフェストの下地をつくったのはこの準備委員会である、間違いありませんね。

蓮舫国務大臣 それはそのとおりです。

小泉(進)委員 この西村智奈美さんも、自分のメルマガでこう言っているんですね。「「マニフェスト検討準備委員会」の一員として、」その後、途中がありますけれども、「その下地は委員会で議論し作成しています。」「すでに十回以上は会議が開催され、ほぼ毎日二時間以上の議論を行っています。 党のマニフェスト検討準備は、たいへん重いけれど、たいへん充実した仕事です。政権選択総選挙が目前という中で、これまで民主党が主張してきた政策の優先順位を定め、その財源をどう捻出し、どう実現するかという具体策を決めるための、大胆かつ緻密な議論だからです。」

 緻密な議論で、なぜ民主党の出した年金案の所要額が出せないんですか。

枝野国務大臣 私がお答えをすべき立場なのかよくわからないところもあるんですが、私の過去の知見の中から申し上げますと、マニフェストの準備委員会で検討することと、そこで書くべき内容について詳細を精緻に検討する、例えば部門会議であるとかプロジェクトチームであるとかワーキンググループであるとかの議論とは、これは別のものでございます。

 ちなみに、我が党の年金改革案については、若干途中で部分的な修正はございますが、これはたしか九三年ぐらいからの積み重ねの議論の中で、〇九年にはある時点としての御提起をさせていただいたということでございまして、その中では、私が試算をしていないという答えをしたという御指摘をいただきましたが、済みません、言葉はどう使ったか記憶がございませんが、全くそのシミュレーションをしていないということではなくて、具体的に今ここで申し上げられるような、それは、あらゆる変数を、ある仮定を置いて、その上でお示しをしなければ一定の数字は出てきません。

 民主党の年金改革案は、御承知のとおり、四十年間かけて移行していくというのを基本にしておりまして、つまり、新たに二十で納め始めた人が六十歳を超えて六十五歳で受け取るときに初めて満額を受け取るという構造でございますので、いずれにしても、四十年後にどれぐらいの財源がかかるのかということで、その時点までの出生率であるとか経済成長率であるとか、トータルで、もちろんさまざまな仮定計算は積み重ねの中でしてきておりますが、それについて確定的なことを、これでありますということを申し上げられるような状況ではないと申し上げたので、仮定計算をしていることはございます。

小泉(進)委員 枝野官房長官、マニフェストに書いたのは、最低保障年金を消費税でやるということですよ。それに幾らかかるかの計算もないんですか。

枝野国務大臣 ですから、民主党のマニフェスト案の七万円の最低保障年金というのは、七万円の最低保障年金を満額で受け取られる方は、少なくともマニフェストのときにお示しした民主党の案は、これから保険料を新たに納め始める世代の方が、四十年間フルで所得比例年金を、もちろん所得がなければゼロ円ですが、四十年間納めた方が六十五歳から受け取るときに七万円の最低保障年金ということをお約束しているので、四十年後に幾らかかるのか。もちろん、その途中で、例えば今四十歳の人だと二十年間は新しい制度で保険料を納めますから、それに対応する部分は最低保障年金ということになりますから、当然その部分のところも途中から発生をしていきますが、制度全体として、一種の完成形は四十年後でございますので、それについて今の段階で確定的な何%と言うことはかえって誤解を与えるだろうという議論が、済みません、〇九年の時点は私も直接関与しておりませんが、少なくとも、〇五年とかそういう時点の段階でそういう議論があったということを私の知見としてお伝え申し上げます。

小泉(進)委員 無責任きわまりないじゃないですか。〇五年はかかわったけれども、〇九年はかかわっていない。それで、マニフェストに書いたこと、所要額が幾らかかり、財源はここから持ってきますよ、これを示すのがマニフェストですよね。それを示していない。所要額も財源もないマニフェストじゃないですか。

枝野国務大臣 繰り返し申し上げたいと思いますが、例えばマニフェストの中で、例えばこの四年間の途中でスタートをして、その時点で財源がかかるということについては、その財源をお示ししています。

 ただ、マニフェストの中には、この四年間で実施をして、そのときに財源がかかるという項目だけではなくて、まさに年金という話については、この四年間で制度構築をして、しかし、その制度構築、年金はまさに一生をかけて納めていただくものですから、制度が変わったから急に新しい制度に変わるということを私どもは従来申し上げてきていませんので、実際にその財源がフルでかかるのは四十年後ですから、その四十年後について、そこについては消費税を財源にしてという方向性をお示ししましたが、では、確定的に幾らかかるのかというのは、もちろん仮定計算に基づいてはできます。だけれども、例えばその間のインフレ率とかあるいは成長率とか、逆に今後四十年間の出生率とかということを、全部これは仮定の計算で置かないといけない話でありますので、そこのところは一般的なマニフェストとは種類が違うということは御理解をいただきたいと思います。(発言する者あり)

中井委員長 時間をとめて。

    〔速記中止〕

中井委員長 速記を起こして。

 それでは、小泉君、質疑を続けてください。(発言する者あり)小泉君。小泉君。

小泉(進)委員 この前の質疑で、公明党の石井さんはこういうふうに聞いたんです。「最低保障年金を全額税でやると言っていますけれども、この税は幾らになるんですか。」こういうふうなのが公明党の石井議員の質問です。そして枝野さんは、「これからまさに国民的な合意を、」と言いました。

 しかし、国民的な合意は、マニフェストに書いたものを国民が支持し、それが国民的合意じゃないですか。マニフェストに書いて、皆さん勝ちました。しかし、書いたこの内容に対してこれから国民的な合意を得るというのは、私は逆の順序だと思いますよ。

 そして、ちょっと待ってください。その後に、中井委員長は枝野さんにこう言ったんですよ。「枝野さん、数字がわからないならわからないで、理由をきちっと言ってください。数字が出せるんなら数字を出してください。」これは、その場で委員長は官房長官に言いました。そしてその後、枝野官房長官は、「これから国民的な合意をどうしたら得られるのかという観点で議論を詰めて、四月までにはお示しをすることになるというふうに思っております。」こういうふうに述べました。

 そしてその後、菅総理がその議論を引き取って、菅総理が何を言ったかというと、率直に申し上げて、まだ具体的な数字をこれまでに固めてはおりませんでした、ですから、そういう点では、数字の面ではまだ確定した案にはなっていません。これが菅総理の発言です。

 つまり、マニフェストに書いてある項目が数字の面では固まっていない案というのは、マニフェストの破綻じゃないですか。これは違うんですか。

福山内閣官房副長官 小泉委員にお答えします。

 私は、小泉委員が御指摘をいただいたように、マニフェストの準備委員会のメンバーでございました。

 マニフェストをごらんいただければおわかりのように、工程表というのがありまして、年金のところには「新たな制度の決定」というのがありまして、法案作成それから関連法案の成立という制度設計というのが平成二十四年度と二十五年度になっております。

 先ほど小泉委員が御指摘をいただいた我々の最低保障年金というのは、御案内のように、最低保障年金の支給の範囲、それから移行期間をどのぐらいにするのか、それから今後の財政的な問題も含めて、そういったことを国民合意の上で、一体どこからどこまでの所得の方ならば最低保障年金はなくてもいいのかどうか、もしくは最低保障年金はどういう状況で必要なのかどうかということを総合的に勘案した中で、もちろん財政的な制約もありますので、そういった面も含めて、我々は、最低保障年金七万円、そして一元化をしていく、そういったことはお約束をしましたけれども、逆に言うと、それ以外の制度設計については、国民の御負担をお願いしなければいけない点もかんがみて、制度設計を二年間かけてしっかりと議論していくというのが我々のマニフェストのお約束でございます。

小泉(進)委員 つまり、民主党が言う最低保障年金七万円、これを、幾ら財源がかかるのか、所要額は幾らか、これを決めるのはこれからだということですね。

福山内閣官房副長官 例えばです、七万円だとして、例えば今の六十五歳以上の人口があって、そこに七万円掛け算して全員にお渡しするということになれば、所要の金額はすぐ出てきます。

 しかしながら、先ほど申し上げたように、一体どういう所得の方からが本当に最低保障年金が必要なのか、これからの少子高齢化の社会構造の変化、そして高齢化社会の医療費の増大も含めて、どういった形が必要なのかということを、我々は年金以外も含めて総合的に勘案して、国民の合意のもとに我々としては一元化をした最低保障年金七万円を創設させていただきたい、その制度設計をしたいということでお約束をさせていただいたところでございます。

小泉(進)委員 福山官房副長官が言っているのは、全く具体論のないマニフェストだということじゃないですか。かけ声だけじゃないですか。最低保障年金七万円、これは言ったけれども、どうやって実現するかわからないということじゃないですか。違いますか。

枝野国務大臣 繰り返しになるかもしれませんが、御理解をいただきたいと思うんですが、マニフェストにも、福山副長官から申し上げましたとおり、工程表の中に、二十四年度「制度設計」、二十五年度「新たな制度の決定」ということで、制度設計の詳細はまさに政権をとらせていただいた四年間の中で行うということをマニフェストの中に明示をさせていただいている。その上で、いずれにしても、最低保障年金の七万円、そして一元化された所得比例年金というその骨格部分については国民の皆さんにお約束をさせていただき、その上で、制度設計の詳細は政権をとらせていただいた四年間で詰める、このことはきちっとマニフェストを読んでいただければ書いてあるということを御理解いただければ思います。

小泉(進)委員 ざっくりしたことだけ言っているだけじゃないですか。口先だけですよ、そんなの。最低保障年金七万円、年金は一元化、これぐらい大きなものだったら、別にどの政党だって言えるじゃないですか。それを具体論を書いて言わなかったら、どうやって実現するかわからないでしょう。

 つまり、民主党がマニフェスト、マニフェストと言って、マニフェスト総選挙となった。でも、そのマニフェストはなぜ信頼性を持たれるのかといえば、財源が示されて、その工程表が示されているからでしょう。

 今、内閣官房参与をやっている峰崎さん、この峰崎さんだって、財源がないものはマニフェストとは言えないと言っていますよ。そして、櫻井財務副大臣は、十六・八兆円の前提が崩れていると言っていますよ。

 財務副大臣、そうですよね。

櫻井副大臣 ちょっと済みません。この間の場面で私が十六・八兆円のことについて申し上げているかどうか、確認させていただきたいんですが……(小泉(進)委員「これは二月の三日じゃないです」と呼ぶ)二月の三日ではありませんね。

 これは、私がいつ、どこの場面でそのようなことを言ったのか、ちょっと確認をさせていただきたいんですが。

小泉(進)委員 これは、十二月の十九日の日経新聞に名前で載っております。

櫻井副大臣 小泉委員に御答弁いたしますが、済みません、ちょっとどういうことでそのような発言をしたのかが記憶にありませんが、ただ、正直申し上げて、本当にここまで進んできて出るのであろうかということは、正直申し上げて感じている一人でございます。

 ですから、このまま果たして本当に、我々が皆様にお約束したことすべてが現実的にできるのかどうか、こういったことについてそろそろ検討しなければいけないのではないのかというふうに私は思いました。

 済みません。私は、これは別に政府の中に入っているからとか与党だからという立場で申し上げていることではなくて、我々はやはり、自分たちがやってきたことで違っていたと思えば、そこで修正をしなければ、道を変えていかなければいけないということは、これは……(発言する者あり)済みません、ちょっといいでしょうか。これまでのことだけではなくて、そう感じてきていたことです。

 済みません、ちょっとだけ、もう一つだけ根拠を言わせていただければ、私は内科の医者です。私ら、医療現場で自分たちが治療方針を決めてやっていったけれども、そこで間違っていると思ったときにも、そのまま強情にやっていったら、患者さんのぐあいはよくなるどころか悪くなっていくわけですよ。

 ですから、そういう観点に立ってみれば、やはり自分自身、やってみて、これはやってみなきゃわからないことはいっぱいあるわけです。例えば、商工中金の民営化とて、やってみたけれども、皆さんでやはりおかしいから戻そうじゃないかとか、タクシーの規制緩和の問題だって、これだっておかしいからとめようじゃないか、そうやっていろいろ社会の中で変えてきたということはあるわけですよね。

 ですから、そういう意味で、私は、必要であったとすればそこのところで見直すことをやるべきではないのか、そういうふうに申し上げたつもりでございます。

小泉(進)委員 非常に真摯な御答弁をありがとうございます。

 枝野官房長官、今の櫻井財務副大臣の、十六・八兆円、これはちょっと不安がある、本当にできるのかな、そういった実現可能性に対する疑問に対して、官房長官自身はどういう感覚を持っていますか。

枝野国務大臣 この一年半余りでございますが、マニフェストで示した主要項目を実現するべく、そのための財源捻出に向けて最大限の努力をしてまいりました。その結果として、実は今改めて精査をさせているところでございますが、財源の捻出という意味では、実は十兆円前後あるいは超えるぐらいの財源を捻出しております。

 しかしながら、まさにマニフェストをつくって選挙を戦った時点と、それは御批判をされるとすれば、例えば税収の見積もりとかあるいは経済の見通しについて、想定とは違ったという御批判は甘んじて受けなければいけないかなというふうに思いますが、マニフェストの主要項目以外の政策を実現するために、さまざまなところで財源を捻出した部分のお金を回してきています。例えば経済対策であるとかあるいは地方交付税交付金の増額であるとかというところに回してきております。

 その結果として、財源は捻出できたけれども、マニフェストの主要項目実行に回せたという金額については、先日来出てきているお金で、これは当初の工程表よりもおくれていることは間違いございませんが、しかしながら、国民の皆さんにお約束をした責任として、一方では、もちろん見直すべきところはしっかりと見直すことも国民の皆さんへの責任であると同時に、できることについては最大限の努力をして実現に向けていくという役割も持っていると思っておりますので、私の立場では、まだ残り二年以上の任期がございます、さらに財源を捻出する努力をして、その財源捻出によってマニフェストで示された主要項目の実現に向けて最大限の努力をしていくことが責任だと思っております。

小泉(進)委員 よく、工程表どおりに進んでいないという答弁に対して拍手ができるか、わかりませんね。今の財務副大臣の真摯な答弁の後に、私は官房長官からも同じように真摯な答弁があると期待をしていましたよ。しかし、今の答弁は、工程表どおりには進んでいないけれども頑張っています、こんな強弁をしていて国民は理解すると思いますか。工程表どおりに、おくれていることは官房長官はお認めになるんですから、まずはそこに対して、国民に対して謝罪はありませんか。

枝野国務大臣 それは、その都度その都度、残念ながら工程表どおりにいっていない部分については、そのときの担当の責任の閣僚等からしっかりと御説明を申し上げて、そのことについておわびすべきことはおわびを申し上げてきております。

 改めまして、私どもとしては、政権交代の選挙の折に、しっかりとこの財源を捻出してマニフェストでお約束をした主要項目を実現できるという考えでさせていただきましたし、またそのこと自体は間違っていなかったというふうに思っておりますが、その後の社会状況の変化等にしっかりとこれまた政府として対応していく中で、残念ながら部分的にはお約束どおりの工程表のスピードで進んでいない点があることについては率直におわびを申し上げながら、しかし、間違いなく政治の方向が大きく変わり始めている、マニフェストでお示しをした方向に変わり始めていることも確かでございますので、さらに私ども、残り二年半の期間をかけてマニフェストでお約束をしたことを最大限実現すべく努力をしてまいりたいと決意をいたしております。

小泉(進)委員 おわびは各大臣がその都度その都度説明をしながらやっていくということですが、それでは、細川厚労大臣、子ども手当、これだって明確なマニフェスト違反ですよ。

 このことに対して、今、いろいろな地方自治体から、国の負担でやってくれ、地方に負担をさせるんじゃない、こういう声が上がっていますね。これも民主党のマニフェスト違反だからですよ。全額国庫でやると言った、これをやらなかった、この結果ですよ。

 細川厚労大臣、マニフェスト違反だから地方が反発の声を上げている、この認識はありますね。

細川国務大臣 子ども手当につきましては、二十二年度、初年度は一万三千円というマニフェストのお約束でございます。そして、二十三年度から二万六千円ということになっております。

 その二万六千円というのを、今度、二十三年度予算では、これは財政的な問題もありまして、どうしても満額というわけにはいけないので、一万三千円にプラスして、三歳未満についてはプラス七千円ということにさせていただいております。そういう意味では、マニフェストどおりいっていないということについては、それは私は大変申しわけなく思っております。

 地方負担につきましては、これは二十三年度予算について決める前に、地方六団体の皆さん方ともお話もいたしましたし、また、私自身は、地方六団体の代表の方、また個人にもお会いをしまして、国の立場のことについては申し上げて、負担をしていただきたい、こういうことを申し上げてまいりました。

 そしてまた、地方の方からも、この子ども手当についてはいろいろな要望もございました。そういう御要望については、できるだけ子ども手当の法案にしっかりしなければいけないということで、海外に住んでいる子供については支給しない、あるいは施設についての子供には支給する。それで、特に要望がありましたのは、保育料、そして給食費、こういうのを……(小泉(進)委員「大臣、短くお願いします」と呼ぶ)はい、済みません。こういうものを子ども手当の方からぜひ徴収できるように、納付できるように、こういう強い要望もございましたので、そういうことも含めまして今度の法案に入れさせていただいたところでございます。

 そういう意味で、私どもとしては地方の意見も十分に聞いてきました、こういうことを申し上げたいと思います。

小泉(進)委員 御丁寧な御答弁ですが、質問に答えていただければと思います。

 今、大臣の答弁の中で、地方の声は聞いているとありましたね、地方の声は聞いている。

 それでは、これは総務大臣だと思いますけれども、地方財政審議会、これには意見を聴取しましたか。

片山国務大臣 一定の場合に地方財政審議会の意見を聞くということが地方財政法に書いてありまして、その所定の手続は踏んでおります。

小泉(進)委員 いつ地方財政審議会に意見聴取をしましたか。

片山国務大臣 これは、法案を閣議決定する前に意見を聞くということになっておりまして、正確には一月になってからでありますけれども、地方財政審議会の意見を聞いております。

小泉(進)委員 一月のいつですか。

片山国務大臣 具体的には、一月の十二日に一度審議会を開いておりまして、意見を聞いております。それから、一月の二十六日にもう一度意見交換をしております。

小泉(進)委員 総務大臣、ここは正確にお願いします。

 意見聴取なのか、今、最後、意見交換と言いましたけれども、法律に書いてあるのは意見聴取です。これはどちらですか。

片山国務大臣 これは意見を聞くということでありますので、審議会を開いて、この問題を取り上げて意見を聞いたということであります。

小泉(進)委員 それでは、その地方財政審議会の意見聴取、これで聞いた内容は、子ども手当についてどう思いますかという意見聴取か、それとも、子ども手当法案について聞いたのか、どちらかお答えください。

片山国務大臣 これは、どんな意見が出てきたのかということを御紹介いたしますと、一月の十二日に……

中井委員長 大臣、何について聞いたかということですから。(小泉(進)委員「子ども手当なのか子ども手当法案なのか」と呼ぶ)

片山国務大臣 はい。これは、子ども手当の制度でありますとか、その費用負担を説明した上で意見を聞いております。

小泉(進)委員 大臣は私の質問に答えていません。最後、私はその制度とかのことを聞いたんじゃないんです。子ども手当のことについて漠然と意見を聴取なり交換なりをしたのか、それとも、二十三年度の子ども手当法案について意見聴取を行ったのか、どちらかと聞いているんです。

片山国務大臣 具体的には法案について意見を聴取しております。

小泉(進)委員 法案に対してどんな意見が出ましたか。

片山国務大臣 これは二十二年度、二十三年度……(小泉(進)委員「二十三年度」と呼ぶ)二十三年度の子ども手当は、失礼、先ほど私が申し上げましたのは、二十二年度についての日にちでありまして……(小泉(進)委員「委員長、委員長」と呼ぶ)ちょっと待ってください。先ほど日にちを申し上げましたのは、二十二年度分についての日にちを申し上げたんです。今回は、二十三年度分については一月の十八日であります。

中井委員長 一月十八日。それは法案についてですか。

片山国務大臣 それは法案について意見を求めまして、これについて出てきました意見は、二十三年度の子ども手当は、地方財政審議会の意見にもかかわらず、地方負担が残ることに残念という意見がありました。それから、二十四年度以降の住民税の増収は、直接子ども手当に充てるのではなく、他の補助金の一般財源化に活用すべきという意見もありました。

小泉(進)委員 今の地方財政審議会の意見聴取内容、これは文書で出してください。出せますか。

片山国務大臣 これは審議会の議事録ということになりますので、それをお出ししたいと思います。

中井委員長 いつまでに出せますか。

片山国務大臣 それはもうオープンになっておりますから、すぐにでも出します。

中井委員長 それでは、ちょっと委員に配ってください。総務省、いいですか。

小泉(進)委員 今、地方財政審議会で意見をちゃんと聞いたと言いましたが、総務大臣はこの前の委員会の答弁で、この子ども手当を、一階部分というか児童手当部分、これを引き続き地方の負担にすることは合理性を欠くものではない、そういうふうに御答弁をなさいました。私は、大臣のその認識が間違っていると思います。なぜなら、民主党の子ども手当は、児童手当と子ども手当と目的も違うと言っていたんです、これは長妻さんが。

 つまり、今回の二十三年度法案、この中に第四章というのがあって、第四章に「児童手当法との関係」と書いてあります。これを法案の中に盛り込んでいること自体が、当初、民主党が主張していた子ども手当と全く逆なんですよ。その認識はありませんか、総務大臣。

片山国務大臣 これは具体的に申しますと、全体を子供手当として仕組んで、ただし、児童手当についての財源負担、これは国費と地方費とそれから事業主が払っておりますけれども、この財源の部分についての規定を適用する、こういう方式になっていると思います。

小泉(進)委員 いや、大臣は質問に答えていません。私の質問にもう一度答えてください。この一階部分が児童手当になっていて、引き続きその部分は地方に負担をさせるということは、民主党が当初言っていたことと違いますね。

片山国務大臣 例えば、民主党のマニフェストにそこまで詳しいことは書いておりません。ですから、この問題は、子ども手当を具体化するときの一つの応用問題だろうと思います。

小泉(進)委員 総務大臣の答弁は不誠実ですよ。

 マニフェストに書いていないというのは、何を書いていないからいいじゃないかと言っているんですか。児童手当法案の一階建ての部分は地方に継続的に負担をさせるということはマニフェストに書いていない、つまり、そこまで具体的に書いていないから今回の形でもいいじゃないかと言っているんですか。

片山国務大臣 私は、これは前回もお答えしたと思いますが、どういうふうに整理するかという整理の仕方の問題だと思います。

 案としては、例えば、児童手当を全部やめてしまって、なくしてしまって、全部子ども手当というやり方もあったと思います。それはあったと思います。では、そのときにどうなるかといいますと、例えば、児童手当で今まで支払っていた地方負担分がありますから、それがなくなってしまいます。そうしますと、その分を、従来地方財政で措置をしておりましたから、それを国庫との間で調整しなきゃいけない。結局は、もとのもくあみといいますか、同じことになるわけであります。そういう道行きももちろんないわけじゃありませんでしたけれども、結果はそういうことになるわけです。

 それよりも、とりあえずは二十二年度、二十三年度、ちょっと暫定的でありますけれども、今のようなやり方も、それはあり得るんです。それを、二十四年度以降、今度、住民税の方の増収もぐっと恒常化してきますので、その段階までにきちっと恒常的な措置をするということも、私はこれは一つの選択肢だろうと思います。

小泉(進)委員 総務大臣は全く認識が違いますよ。最初に、案として、児童手当をすっぱり廃止してやるという選択肢もあったと言いました。しかし、それは選択肢じゃなくて、皆さんが、民主党が国民とした約束なんですよ。

 そして、総務大臣、民主党はかつて子ども手当法案というのを第百七十国会に提出しているんですよ。それで、その提出した法案の附則の第二条にこういうふうに書いているんです。これは民主党の法案ですよ。「児童手当法は、廃止する。」どうですか。

片山国務大臣 ですから、マニフェストを実現するという場合に、その四年間でそういうことも今後あり得るかもしれません。それは選択だろうと思います。

 ただし、その場合には、地方との間で財源の調整をしなきゃいけません。その点をぜひ理解していただきたいんです。といいますのは、四千億円浮いてきますから、それを国庫との間で調整しなきゃいけないんです。ですから、これを今後の問題として、検討課題の一つだろうと思います。(発言する者あり)

中井委員長 質疑でやってください。小泉さん、質疑の中で問題点を十分指摘してください。

小泉(進)委員 総務大臣、総務大臣は、もしも児童手当を廃止したら、その後に出てくる財源調整が大変だと言いましたね。それは、この前の答弁でも、約四千億、これぐらいが生まれてくるから、それが財源調整が大変だと。しかし、大変なのはもともとわかっているじゃないですか。その大変なことをわかっていることを民主党はやると言ったんじゃないですか。それは、官房長官、違うんですか。

枝野国務大臣 民主党が野党時代にそういった法案をお出ししたということは、御確認をされているんでしょうから確かなんだろうというふうに思いますが、もちろん、いろいろな状況状況で、経済状況や政治状況が変わればそれぞれの政党の政策が変化をしていくのは、それは小泉委員も御承知のとおりだと思います。

 その上で、マニフェストでお示しをするときには、それまで国会で主張をしてきていること、国会で野党として議員立法で提案してきたこと、そうしたことなども踏まえた中で、国民の皆さんにどういった形でお約束するかということで整理をして、そして、お約束をした中身については、今のような児童手当を廃止するという中身はマニフェストには入っていないというふうに認識をいたしております。

 ただ、あえて申し上げますが、地方の皆さんの御意見も踏まえた上で進めなければいけませんので、この間、地方の皆さんの御意見も踏まえながら、地方の負担を将来的にはゼロにできないだろうかという方向に向けた努力も進めているということは申し添えておきたいというふうに思っております。

小泉(進)委員 官房長官の今の答弁は、すりかえ答弁ですよ。全く答えていない。

 今回の二十三年度法案、子ども手当、これは、もともとこの法案に児童手当法との関係を書いている時点でマニフェスト違反を自白しているんですよ。本来だったら、一階部分だって、一階、二階もなかったはずですよ。全額国庫負担でやると言ったでしょう。長妻さんも言った。鳩山前総理だって、これは全額国庫でやると言ったんですよ。当時、大臣として入閣していたんですから、枝野さん、それはもうわかるでしょう。

枝野国務大臣 マニフェスト違反ということの議論を今されているというふうに思います。

 マニフェストについて、どうお約束をしたかといえば、先ほど申しましたとおり、もちろん、野党時代にいろいろな政策、例えば民主党も政権をいただくまで十数年あります。政治状況、経済状況、いろいろなものの変化の中で、当然、特に経済や社会状況に合わせて政策が変わってきております。そういったものを全部、選挙のときに、この時点でお約束できることはこういうことですということでお約束をしたのがマニフェストの中身であって、マニフェスト違反と言われますと、マニフェストでお約束をしていることはどういうことなのかということで、先ほど来のお話になります。

 その上で、政権をとらせていただいた後で、今、できるだけ地方負担がない形に早く持っていった方が望ましいとは私も思っております。ですから、そういう方向性について、その時点の関係閣僚が申し上げたということは間違いございませんし、そちらに向かって努力をいたしておりますが、マニフェスト違反という議論になると、それはちょっと違うということを申し上げております。

小泉(進)委員 全然違くないですよ。マニフェスト違反となるとそれは違う。それが違いますよ。これはマニフェスト違反ですよ。(発言する者あり)

中井委員長 静かに。

小泉(進)委員 今回の、二十三年度の子ども手当法案、この法案は明らかにマニフェスト違反ですよ。地方負担をするともともと皆さんは考えていましたか。これは違いますよ。あくまでも二十二年度は暫定的と言ったじゃないですか。公明党が参加したのは、あれはあくまでも暫定的だから賛成したんですよ。それを、ことしも、二十三年度だって単年度法案ですよ。

 では、何で単年度なんですか。

枝野国務大臣 まさに、先ほど来申し上げておりますとおり、できるだけ地方の負担がない形で、全額国費でやるような方向に持っていくのが望ましいということを、マニフェストのお約束とは別に、私どもの政権としては考えておりますので、したがって、暫定的に昨年もお願いをしたし、ことしも、これを固定化するのではなくて、二十三年度はこれでお願いをしたいけれども、できるだけ近い将来に地方の負担分がないような形に持っていくべく努力をしてまいりたいということを申し上げているわけであります。

小泉(進)委員 ひどい答弁ですね。ひどい答弁ですよ。

 官房長官、笑っている場合じゃないですよ。これは、簡単に言えば、なぜ地方負担にさせたか、児童手当を残したか。一言で言えば、財源がないからじゃないですか。それは認めてくださいよ。

片山国務大臣 それは違うと思います。

 といいますのは、例えば、児童手当をなくしますと地方負担が四千億減ります。それをそのまま自治体の余剰財源といいますか、余裕にするという考え方は、当初から私はなかったと思います。それは、国庫との間で何らかの調整が必要だと思います。そうしますと、振り返って、例えば、その分、交付税が減るとか、そういう調整が行われるわけでありまして、そういう意味では、財源は回り回って同じになると思います。

 なお、委員長、先ほど、地方財政審議会の議事録の件でありますけれども、精査をしまして、あす御提出をさせていただきます。

小泉(進)委員 さっき出すと答弁して、なぜ今出せないんですか。

片山国務大臣 内容をきちっと整理して、あす提出させていただきます。

小泉(進)委員 先ほど総務大臣は、既に議事録だからインターネット上でもオープンにされていると言ったじゃないですか。

片山国務大臣 内容はありますけれども、正確を期すために少し時間をいただきたいと思います。

中井委員長 この提出については、この後、夕刻の理事会で協議をいたします。(発言する者あり)

 速記をとめて。

    〔速記中止〕

中井委員長 それでは、速記を起こしてください。

 片山総務大臣から、もう一度、説明をいたさせます。

片山国務大臣 先ほど、議事録ができているという認識は、私の誤りでありました。おわびを申し上げます。

 審議会で法案につきまして説明をいたしまして、それに対して審議会の委員から意見が出て、それは先ほど私が御紹介したとおりでありまして、そのことを記した議事要旨というものを整理しまして、御本人たちの確認も必要でありますので、それをした上で、当委員会に提出をしたいと思います。

中井委員長 いつまでに。

片山国務大臣 これは、あす提出をしたいと思います。

中井委員長 あしたまでに提出。

小泉(進)委員 もう一度、念のために。

 その地方財政審議会委員のそれぞれに確認をして、その結果、これは全員の御了解ですか。それで、その上であした発表するということでよろしいですか。

片山国務大臣 これは該当の部分を発言した方に確認をするということが中心になりますけれども、その前後がどれほどあるのか、ちょっと私も今把握しておりませんので、少なくともその該当の部分を本人に確認した上ということで、それであす提出をしたいと思います。

小泉(進)委員 地方財政審議会の委員のうち、三人ですか、三人は地方からの方だと思いますが、その地方からの声として、もう既に意見聴取をされたと思いますので、どういった意見が出たか、代表的なもの、もしも二十一年、二十二年と違うものがあったら教えてください。

片山国務大臣 地方財政審議会で、会長が神野先生と言われる方で、私もその方からどういう内容であったかということは概略を伺ったのでありますけれども、その際に一番強調されておりましたのは、子ども手当につきましては、国との間で財源調整をすっきりして、できれば、さっき言いましたように、児童手当をなくして、それで全部子ども手当にすべきだ。ただし、その場合には、国費が別の面でいろいろ地方に出ていますから、それとの間で財源調整をしなきゃいけない。これをした上でという前提条件でありまして、これは一つの理屈だろうと思います。一つの理想論だろうと思います。

 それができればそれにこしたことはありませんけれども、それができないので、二十二年度も二十三年度も、多少複雑でありますけれども、地方に事実上、実質的には迷惑をかけない、財源的には迷惑をかけない、そういう仕組みをとっているということであります。

小泉(進)委員 今の総務大臣の答弁の最後に、子ども手当をやるのに児童手当法を廃止するのは理想論であるけれどもと言いましたが、その理想論を唱えていたのが民主党ですよ。それをやると言っていたんですから、理想論だからちょっと財源調整も国と地方で難しい、そういうふうな考えでいるとしたら、それは総務大臣は、民主党が当初、毎月二万六千円、中学生以下の皆さんに一律配る、しかもやるのは全額国庫負担、これはできないと言っていることに等しいですよ。違いますか。

枝野国務大臣 繰り返し申し上げますが、マニフェストでお約束をしたのは子ども手当の支給についてでございまして、その財源については、マニフェストの段階ではその支給についてお約束をしているということであって、その前の段階で議員立法でいろいろな案は出してきた経緯はありますが、まさに国民とのお約束なので、きちっと整理をして、財源のいろいろなことについては調整が必要だということで、そのことについては細かくはお約束をしなかった。

 そして、政権をとらせていただいて以降、これは現時点でも、できるだけ早く地方の負担分がない形で整理がつくことが望ましいですが、これはまさに、いろいろな制度改革が制度改革をした途端に施行されるわけではなくて、制度改革が実際に施行されるのは翌年以降などということも踏まえながら調整をしていきませんと、これは地方にもさまざまな混乱を生じることもございますので、今、段階的に理想の方向に向かっているということでございまして、このことは国民の皆さんに対するお約束違反とは当たらないというふうに私は思っております。

小泉(進)委員 もう何を言っても言いわけにしか聞こえないんですよ。せっかく皆さんが勇気を出して、四月の社会保障の改革の基本方針に、マニフェストの社会保障の項目は同時に検証を終えると言ったんですから、真摯に、実現性が低いものは、そういうふうなお答えはできないんですか。

 それに、マニフェスト、これは財源があれば子ども手当の上積みも可能かもしれません。そして、本来もっと財源は見つけるはずでしたね。皆さんは控除から手当へという考えで、理念でやられました。しかし、控除から手当の理念どおりでやるべきだったら、なぜ今回、配偶者控除を廃止しないんですか。そのことについてまず答えてください。

野田国務大臣 控除から手当へという流れは、この基本的な考え方は変わっておりません。

 ということで、今進行中の二十二年度については、扶養控除、そして特定扶養控除の見直しを行いました。二十三年度の税制改正大綱においては、給与所得控除、そして成年扶養控除、こういう控除の見直しを随時やってきています。配偶者控除については、明確に二十三年度改正に、大綱に書いてあります、引き続き検討すると。

 控除から手当というのは四年間でやることですから、順番はいろいろあるかもしれませんが、その議題としては残っているということでございます。

小泉(進)委員 それでは、配偶者控除を全廃したときに生まれる財源は幾らですか。

野田国務大臣 正確な数値はちょっと覚えていませんが、一・数兆だと思います。

小泉(進)委員 大体一・一兆円ぐらいだと思いますが、その一・一兆円を足して本当に五・三兆円になりますか、全部、満額。

野田国務大臣 五・三兆とは何の数字でしょうか。

小泉(進)委員 あれだけマニフェストに五・三兆円と書いているのに、五・三という数字を聞いてすぐに子ども手当の満額に必要な所要額と気づかないんですか。

 私は、配偶者控除の一・一兆を足したって本当にその五・三兆円に行くんですかと言っているんです。

枝野国務大臣 マニフェストの全体構造のことですから私からお答え申し上げますが、そのことだけで五・何兆にするというような話をしているのではなくて、そのことなども含めてトータルとして財源を捻出するということを申し上げてきています。

 そして、先ほど申しましたとおり、私たち、この間に十兆円を超える財源捻出をしてきておりますが、国民とのお約束と同時に、目の前の経済であるとか地方の疲弊ということなどにも対応せざるを得ないという中で、捻出した財源の中で、すべてをマニフェストに充当してきているわけではありません。そのことは繰り返し、ぜひとも御理解をいただきたいと思います。

 そしてさらに、税の控除のことも含めて、さらに残り二度の予算編成の機会がございますので、さらに財源を捻出するべく最大限の努力をしていって、ぜひマニフェストでお約束をした項目を実施したいというふうに思っておりますが、その中でこれまでの折り返し点までの検証を、これはまた率直に行っていくということを申し上げているわけでございます。

小泉(進)委員 私は別に配偶者控除の廃止ですべて積み上がると思っていませんよ。

 それに、皆さんの説明は、扶養控除、所得税の控除、そして配偶者控除等で合わせて財源を生んで、そして児童手当も廃止をして約一兆、そしてさらに無駄遣いを削減して、積み上げて十六・八兆円分の五・三兆円、これを子ども手当に満額で充てる、これは皆さんがやった約束ですよ。

 それで、私は今、皆さんのこの税制改正の中でも予算編成の中でも、もうマニフェストの二万六千円を何とかつくろうとして控除をいじるのはやめませんかということを言っているんですよ。そういう声は、野党だけじゃない、民主党の中だってあるんですよ。

 これは、細野さんが今首相補佐官をやっていますが、細野さんが十二月の十三日のブログにこうやって書いています。「今年の予算の策定が終わったら、我々のマニフェストのあり方も検証する必要があると思います。子供手当二万六千円の満額支給に帳尻を合わせるべく、控除の仕組みをいじるのはもはや限界です。事業仕訳も一段落し、税収の落ち込みも顕著になる中、子供手当のあり方をもう一度検証する必要があります。私は、自治体や地域の共同体に、子育てのあり方を委ねるべきではないかと考えるようになっています。」こういう声が、もう時間ですから財務大臣の御答弁は要りません。

 この控除をいじるのはもうやめないかという声、これはさっきの櫻井財務副大臣の声も含めて、民主党の中でさえ真摯な意見があるんですから、そういった意見を踏まえた上でやっていただきたいと思いますが、きょうの一時間でわかったことは、いかに菅政権が有言実行じゃないか、そしてマニフェストだって事実上もう破綻している、これが明確にわかった一時間だと思います。

 きょうは本当にありがとうございました。

中井委員長 野田君から数値の件についての話がありますから、答弁を許します。

野田国務大臣 最後の御発言は大事なことなので、これはきちっと受けとめなければと思いますが、子ども手当の財源確保のために控除の見直しをやっているわけではございません。控除から手当へという一つの考え方と、もう一つは、所得の個人課税というのが再分配機能が落ちてきているとか財源調達機能が落ちているという意味での、そういう見直しもあわせてずっとやってきているということであります。

 あえて一つ言わせていただけるならば、我々は、いろいろこの理念は大事にしながら、安定財源を確保しながら着実に実施をしていきたいというふうに思っています。これは不変の姿勢であるということはぜひ御理解をいただきたいというふうに思いますし、あえて言うならば、あの〇五年の自民党のマニフェストの中では幼児教育の無償化がありました。二〇〇九年も同じマニフェストを掲げました。四年間何もやっていませんでした。それと比べれば私どもは着実に実施をしていると思います。

小泉(進)委員 与謝野さん、済みませんでした。お呼びしておきながら済みません。ありがとうございました。

中井委員長 これにて小泉君の質疑は終了いたしました。

 次に、竹内譲君。

竹内委員 公明党の竹内譲でございます。

 私の方からは、まず最初に、児童養護施設等への支援につきまして質問をさせていただきたいと思います。

 最近、各地の児童養護施設などに、漫画「タイガーマスク」の主人公の伊達直人さんを名乗る人物から贈り物が届けられる現象が相次ぎまして、昨年末から全国の児童養護施設や児童相談所に届いた寄附というのは、一月中旬で既に千件以上となっていると聞いております。こうしたタイガーマスク現象によりまして、児童養護施設への社会の関心が集まっており、そこで暮らす子供たちの生活環境の向上が期待されているというふうに思います。

 児童養護施設の対象児というのは、皆様御承知だと思いますが、一つには、父母が死亡または行方不明となっている児童、二番目には、父母などから虐待を受けている児童、三つ目には、父母が養育を放棄している児童等でございまして、現在、全国で五百七十五カ所、三万五百九十四人が入所されています。児童養護施設への支援は、このような名もなき民間の皆様の善意にゆだねるだけではなくて、これこそ政治の責任でしっかりと行うべき仕事だと考えております。

 実は、自公政権の時代におきましても、里親手当の倍増であるとか、ファミリーホームの創設であるとか、それから自立援助ホームの拡充、さらには、中学生になったら学習塾費とか部活動費、また幼稚園費の創設など、そういう対策も講じてきたわけでございます。

 私も、改めて先日、地元の京都の児童養護施設、乳児院を視察してまいりました。やはり、親と死別したり、あるいは親から捨てられたり、それから虐待を受けたりして、親の庇護を受けられない子供ほど不幸な子供はないというふうに痛感をいたしました。これこそ、総理が言う世の不条理そのものではないかというふうに思ったくらいでございます。

 視察した児童養護施設に入っている子供のうち、半数近くは親からの虐待を受けていました。その心の傷はとてつもなく深刻なものでございます。ある児童は、父親からの虐待によりまして、その父親を大変憎んでいて、いつか大きくなったらリベンジしてやると言っているそうであります。リベンジということはどういうことかというと、体が大きくなって強くなれば必ず仕返ししてやるというふうに言っているんですね。大変悲しいことであります。

 また、次に多いのは、親の養育不能でございました。いわゆるネグレクトというものでございまして、親の状況としては母子家庭の方が多くて、その半数以上が未婚の母となっていました。

 ゼロ歳から小学校就学前までの子供を養護する乳児院というのもまたあるわけでございます。こちらの方も訪問いたしましたが、生まれて間もなく、産院から、病院から直接入所する子供が非常に多いということに驚いたわけでございます。まさに、産み捨てのような状態であるわけであります。そのほかにも、両親からの虐待が理由のケースも相当ありましたし、また、年末には一時的に保護委託が急増するという現状でございます。

 赤ちゃんの場合は、感染症のリスクもあるため、養護には大変な苦労が伴います。また、夜間には、二人の職員さんが一睡もすることなく、十五分置きに見て回らなければならない、こういう実情でございます。さらに、看護師の方々の職員の確保も困難な状況が続いているということでございました。

 さらに加えて、最近では障害等のある児童も増加しておりまして、私も現に、全盲の三歳児の方にもお会いをいたしました。本当に胸が痛む思いであったわけでございます。

 そこで、最初に、厚生労働大臣にこのような現状を踏まえて御質問したいわけでございます。

 児童養護施設では、二十四時間三百六十五日、子供たちの生活を支えるために、いわば労働基準法の遵守さえ難しい状況で養育を行っている。また、現在、児童養護施設はどこも経済的に厳しい運営のところが多くて、他の事業収入を子供たちの生活費に充当している施設もあるというふうに伺っております。

 そのためにも、まずはやはり、ここは抜本的改革に取り組んで児童養護施設の人員配置を早急に拡充すべきであると考えます。特に緊急を要するのは、直接養育職員、すなわち保育士、児童指導員の配置基準を抜本的に改善する必要があると痛感をいたしました。

 現行の職員配置基準というのは、学童以上の子供、就学以上の子供は六人に一人の職員であります。六対一でございます。六対一と言いながら、二十四時間三百六十五日、子供の生活はあるわけでありますから、実際には十五、六人の子供を職員一人で見ているというふうなことであって、大変もう現場は激務でございまして、本当に子供一人一人への丁寧なかかわりが困難になっているというものでございます。

 なおかつ、現在の基準は昭和五十一年に定められたものでありまして、三十五年間据え置いたままだったんですね。私どもも、本当に時代の要請に合わせる必要があるんじゃないかということを改めて痛感した次第でございます。

 その意味で、まずは思い切って本当にもう財源を見直して、子供三人に職員一人ぐらいに改善をすることが急務であるというふうに思っています。

 それから、乳児院につきましても、いろいろあるんですが、現行の二歳未満では子供一人に対して職員一・七人というふうなことなんですが、先ほども申し上げましたように、赤ちゃんの場合は本当に二十四時間目が離せません。そういう意味では、一対一、すなわち、赤ちゃんの場合は赤ちゃん一人に職員一人というふうに改善すべきであるというふうにまず痛感をした次第でございます。

 その意味で、これまでの経緯を踏まえまして厚生労働大臣にこの点を強く要望したいと思いますが、厚生労働大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

細川国務大臣 竹内委員の方から、個別的に大変恵まれない事例も出されました。本当に、悪い環境といいますか環境に恵まれない子供たちに対しては、やはり一般の家庭の子供たちと同じようなスタートラインに立てるように、公的な責任、これはしっかり充実をさせていかなければいけないというふうに思っております。

 そこで、施設のいろいろな条件が整っていないということで、委員の方から御指摘がございました。私どもの方としては、この一月二十八日、児童養護施設等の社会的養護の課題に対する検討委員会、こういうものを立ち上げまして、早急にそれらの問題を検討していこう、こういうことで今始めたところでございます。

 そこで、まずは予算を伴わなくてやれること、これらをまずやるということで、職員の配置については、家庭支援専門相談員や個別対応職員などの配置をすること、これを義務化すること、それから、児童一人当たりに対しての居室面積を、これまでの三・三平米以上から小学生以上を四・九五平米以上に引き上げる、それから一室当たりの居室定員も現行の十五人以下から四人以下に引き下げる、これらを提案をいたしまして検討させておりまして、これは予算措置を必要としないものでありますから、これは早急にやっていきたいというふうに思っております。

 それから、御指摘もありましたように、児童指導員等の六人に一人というような配置については、これは余りにも職員が忙しいのではないか、十分な指導もできないというようなことで、この基準を、四対一とか五対一とか、もっと十分なものにすべきだという御意見はごもっともだというふうに思います。

 したがって、これも検討をさせていきたいと思いますが、ただ、これを義務化いたしますと予算もかかる、こういうようなことでございますから、それについては、ちょうど子ども・子育ての検討をいたしているところでございますから、それらと一緒に検討させていただいて、委員が御指摘のような形に持っていければというふうに思っておりますので、御理解いただきたいと思います。

竹内委員 児童養護施設等の総予算は八百億ちょっとでございまして、徐々にはふえてきているわけでございますけれども、しかし、先ほどからお話がありました、例えば子ども手当であれば、総額五兆三千億円というのは巨大な額であります。そういう額からすれば本当にわずかな額でございまして、いろいろ知恵を使えば、本当に最も不幸な子供たちに最も予算を早急に回すということがやはり必要であるというふうに私は思いますので、ぜひともこの辺、この点につきまして真摯な、また早急な検討をお願いしたいというふうに思います。

 それから、居住空間の充実それから里親制度の充実もやっていくということでございますけれども、私があと申し上げたいのは、大学進学それから就職活動への支援ということをちょっと申し上げておきたいと思うんですね。

 実は、東京大学の教育学研究科が親の収入と高校卒業後の進路を調査したところ、親の収入が一千万円以上の世帯の子供の四年制大学への進学率は六二・三%でありますが、四百万円以下の世帯では三一・四%にすぎず、進学率には経済的要因が非常に大きく影響していることが調査で判明しております。児童養護施設の子供の大学などへの進学率、大学、短大、高等専門学校高等課程への進学率というのは一三%程度でございまして、この四百万円以下の世帯の三一・四%と比べても非常に低いことが明らかであります。やはり、何らかの経済的支援が必要ではないかというふうに思うんですね。

 実際に大学の受験料というのは、センター試験が一万八千円ですか。二次試験が国公立の場合一万七千円。私立大学の場合は受験料三万五千円。そのほかに交通費や宿泊費も大変かかる。ある民間の調査によりますと、大学受験費用は、自宅通学者が平均十九万一千五百円で、自宅外通学者では平均二十三万七千六百円となっております。そのような意味で、高校までの児童養護施設の子供たちの生活費はある程度出されているわけでありますが、大学受験のための交通費や宿泊費などは措置されているのでしょうか。

細川国務大臣 竹内委員の御指摘のとおり、児童養護施設に入所の方の大学進学率が一般の家庭と比べて非常に劣っている、低い、こういうことがございます。

 これらの児童に対しての支援につきましては、施設を退所したり、あるいは就職または大学等に進学する場合には、就職仕度費あるいは大学進学等自立生活仕度費ということで七万七千円、保護者から支援の見込みがない場合には二十一万四千五百十円を支給いたしておりまして、これまでも毎年支給額を二千円ずつ引き上げてきておりまして、また来年度も引き上げるということにいたしております。

 また、施設を退所いたしましてアパート等の賃借の場合には、身元保証人を確保できるように、平成十九年度から身元保証人確保対策事業というのを補助事業として実施をいたしておりまして、その利用の推進も図っているところでございます。

 さらに、施設を退所した子供等に対して住居の提供あるいは就業・生活相談を行う自立援助ホーム、これも昨年一月に閣議決定した子ども・子育てビジョンにおきまして、平成二十六年度の目標値百六十カ所と設定をいたしまして、今後とも、退所した子供たちの自立支援のための必要な取り組みを進めていきたいというふうに考えております。

竹内委員 実質的には、大学受験のためのそういう措置費というのはほとんどないんですよね。ただ、一般の健常者でも、普通の方々でも就職活動も大変でございまして、今後、大学受験、それから就職支度費もあわせて拡充をしていただきたいというふうに思います。

 実は、熊本県では知事さんが、生活保護世帯の子供が大学へ進学する場合はその夢を実現できるように、生活費として月々三万八千二百九十円を貸し付ける「夢」応援資金貸付制度というのをつくっておられます。それからまた、生活保護世帯の子供を熊本県立大学に毎年二人ずつ入試枠を提供する「くまもと夢実現」推薦入試も行っていると伺っております。

 菅総理は、世の不条理をなくすんだ、これが自分の政治哲学だというふうにおっしゃっているわけでありますから、やはり最小不幸社会を掲げる以上は、本当に最も苦しんでいる方々に応援できるような予算組みにしてもらいたい、それこそ私は正義だというふうに思うんですね。このことをまず最初に強く求めておきたいと思います。

 引き続きまして、経済問題につきまして、主に与謝野大臣に率直な御意見をお伺いしたいというふうに思っております。

 菅総理は、第一の道、第二の道、第三の道とおっしゃっていまして、第一の道は公共事業中心の経済政策だった、これは失敗したと。それからまた、第二の道、すなわち行き過ぎた市場原理主義に基づいて供給サイドに偏った生産性重視の経済政策、これも誤っていたとおっしゃっています。

 しかし、私は、ちょっとこれはやや単純過ぎるんではないかなというふうに思っています。やや、官僚や大企業を懲らしめるために使う勧善懲悪的図式という感じがするわけであります。

 そこで、菅総理の第三の道というのは、簡単に言えば、需要サイドに立脚した消費者重視の経済政策なんだろうというふうに思うんですね。典型的には、消費増税を行って、その財源を医療、年金、介護などの社会保障に充てれば持続的成長が可能という考え方でございます。

 まず、与謝野大臣は、この三つの道につきましてどのように認識されておられますか。

与謝野国務大臣 日本の経済は、直観的にこうだろうというものと大分違っておりまして、外需すなわち輸出に依存している部分は一五%しかございません。内需が八五%というのが日本の経済の実態でございます。

 それで、リーマン・ショックの後、私どもは何とか有効需要をふやそうということで、相当幅広い点検、自民党、公明党でやったわけですけれども、なかなか需要というものはない。結局、たどり着いたところが、医療あるいは介護等の今まで考えなかった分野には需要があると。ただし、そういう需要は眠っていて、実際に需要として出てこない。ですから、菅総理が言われている、一たんお金をお預かりして、それを医療や介護の分野に使えば、それは有効需要として発現させることはできるというのは、一つの考え方として大変重要であると思っております。

竹内委員 そこで、民主党さんの経済政策というものを、予算案の中でどういうふうになっているかということをやはり考えてみる必要があると思うんですね。

 そうすると、今お話がありましたように、需要サイドに立脚した政策ということになってくると、子ども手当というのは、典型的な需要サイドに立脚したディマンドサイドの、いわゆるサプライサイドではなくて、そういう経済政策だと思うんですね。ところが、今回その予算案でされたことは、法人減税をされた。本来のこの二〇〇九年のマニフェストからすると、やはり子ども手当を中心とした需要サイドの経済政策を非常に強調されていたわけでありますから、そのときのマニフェストを拝見しても、法人減税というのは本当に隅の方に少し書いてあるだけであって、むしろ、ここは民主党の経済政策を貫徹するならば、第三の道をもっと貫徹しないといけないんじゃないかと。それが今回の予算で、実は中途半端に第二の道を採用している。しかも、財源が足りないために租特をまた増税したりして、実質的には二・三%程度の減税にしかなっていなくて、非常に中途半端な予算になってしまったんじゃないかと。

 つまり、サプライサイドともディマンドサイドとも、どっちつかずの予算になったために、経済効果が余り出てこないというふうに私どもは思えるんですが、与謝野大臣の認識はいかがでしょうか。

与謝野国務大臣 経済効果がどうかという議論は、過去、子ども手当を含めて三回行われております。一つは地域振興券のときです。一体どれほど有効需要が発生したのか。次の議論は、定額給付金のときにどれほどの経済効果があるのか。今回も、子ども手当ということにどれほど経済効果があるか。これはなかなか定量的に申し上げられませんけれども、やはり国民に購買力を配布すれば、それはそれだけの効果があったというふうに私は判断しております。

竹内委員 どのぐらいの経済効果が出たかというのはまだ検証されていないと思うんですね。子ども手当の乗数効果についてもさきの国会で話題になりましたけれども、結局それは明確にはならなかった、こういうことであります。

 それでは、長期的な話で、民主党の新成長戦略というのがあります。与謝野大臣、もう頭の中に入っておられますので、あえてきょうはペーパーを配っておりませんが、皆さんよく御存じだと思うので、私の手元には私は持っておりますが、この新成長戦略でございます。

 名目成長率三%、実質成長率二%を上回る成長を目指す、こういうことであります。そのために七つの戦略分野があって、「「グリーン・イノベーション」、「ライフ・イノベーション」、「アジア経済」、「観光・地域」を成長分野に掲げ、これらを支える基盤として「科学・技術・情報通信」、「雇用・人材」、「金融」に関する戦略を実施する。」とされておるところであります。

 具体的にも、菅総理は、この中で、「これら七つの戦略分野の具体策を盛り込んだ「新成長戦略」では、官民を挙げて「強い経済」の実現を図り、二〇二〇年度までの年平均で、名目三%、実質二%を上回る経済成長を目指す。」と述べておられるわけであります。

 具体的に、そこで出てくる需要というのは、環境、グリーンイノベーションで五十兆円、雇用創造百四十万人。健康、ライフイノベーションで五十兆円、二百八十四万人。アジア、十二兆円、雇用創造十九万人。観光で十一兆円、雇用創造五十六万人、こういうふうに書かれているわけであります。これを見ると、恐らく、こういうさまざまな施策の積み上げによって、例えば環境であれば、五十兆円の需要創造、百四十万人が出てくると。同様に、そのほかの健康、アジア、観光についても、具体的な施策の積み上げによって、二〇二〇年には、平均、実質成長率二%、名目三%が達成される、こういうふうに見えるわけですよね、国民に対しても。

 ところが、これを私、よくよく検証してみたんですね。そうすると、話は全く逆でありまして、例えば環境分野であれば、二〇一一年度以降の実質成長、十年間二%成長とあらかじめ決めて、仮定して、それを達成するために逆算したところ、環境分野で五十兆円、百四十万人が出てくる、こういう話なんですよね。つまり、個別の具体的戦略、施策があって、その経済効果を積み上げた結果こういう数字になったわけではない。

 それからまた、観光につきましても、初めに、訪日外国人が二千五百万人が達成されたならばという強い仮定を置いて、逆算して、そこから、その需要が十一兆円、雇用が五十六万人創造されるというのがこの話なんですね。成長戦略なんですよね。

 おまけに、もっと言えば、この健康、ライフイノベーションについても、私、よくよく調べてみたら、何と、自公政権時代の社会保障国民会議でのシミュレーションをベースにしてこの二〇二〇年の需要五十兆円、雇用二百八十四万人を算出したものであって、これは全然イノベーションじゃないのじゃないのか。これだったら、本当に絵にかいたもちにすぎない、こういうふうに思うんですよね。

 だから、何のためにこれだったら政権交代したのか、政治主導で新しいイノベーションを起こすと言ったのかわからないと思うんですが、与謝野大臣の御意見を伺いたいと思います。

与謝野国務大臣 成長戦略というのは、私も何度も携わったことがありますけれども、大体だれが書いても同じようなことになります。

 しかし、やはり一番大事なことは、今、日本の経済が中国、韓国、その他の国々に負けそうだというその意識が大事であって、ただ作文をつくれば日本の経済が成長するというものではない。ですから、意外に、日本人のやる気とか新しい分野への挑戦意欲とか、それから学生の勉学態度とか、そういうものがやはり基礎的な体力として大事になってくると思います。

 それから、TPPも、反対意見はたくさんありますけれども、やはり、日本の交易条件が差別されていない交易条件であるということを確保することも、日本の成長を確保する上で大事なことだと思っております。

 もう一つは、イノベーションということが書いてございますけれども、やはり本来の成長というのは、非常に努力が必要なんですけれども、新しい製品、新しいサービス、そういう創造的な分野でのイノベーション、これしか私は日本の経済がこれから生きていく道はないんだろう、そのように思っております。

竹内委員 与謝野大臣はよく御承知だということで私は聞いておるわけでございますが、だれが書いても同じという意味であれば、何のために政権交代したのか、国民が何を期待したのか、これでは、自公政権と一緒だというのであれば、意味がないと思うんですよね。

 しかし、自公政権の最後の時代に、与謝野大臣ともども、実は私どもの斉藤環境大臣がその当時就任をしておりまして、エコポイント制度というのを発案したわけであります。これはユニークなものでありまして、実は、その効果について、最近、大阪大学のフェローで、現在内閣府の経済社会研究所の所長の小野先生が、実は独自に経済効果を試算されているんですね。きょうはあえて表にはしておりませんけれども、こういう試算をきちんと出されています。

 実はこれは先生のあれをまとめたものですが、エコポイント、エコカー減税等の経済効果ということで、財政資金は、エコポイントで千七百億、エコカー補助金で四千百三十億、エコカー減税で千二十億、合計六千八百五十億円を投入した。それに対して税収は、消費税で二千五百億出てくる、それから所得税で三千五百億出てくる、法人税で二千四百億出てくる、合計八千四百億は出てくる。

 つまり、これは小野先生の独自の試算ですが、財政資金六千八百五十億円に対して、税収は八千四百億円上がるんだ。しかも、その他の効果として、六十万人分の仕事を創造している、そして従来のトレンドよりも五兆円の売り上げ増になっている。それから、そのほかにも副次的な効果として、地方の名産品の購入などがいろいろあって、非常にこれはよかったということを、実は今の政権の小野所長さんが証明をしていただいているわけですね。自公政権でやったことにもいいことがあったんだ、こういうことをおっしゃっているわけであります。

 要因としては、もちろん先食い需要ということもありましたけれども、環境という新たな機能に需要をつけたということを評価しているわけですね。結論として小野先生がおっしゃるのは、エコポイントは縮小ではなく、逆に範囲を広げよというのが先生の御主張なんですね。

 ところが、今回の予算を拝見したところ、その具体策がないんですよね。例えば、地球温暖化対策税というのを新たに設けて、平年度で約二千四百億円税金を取るとされておるわけでありますが、これを単に一般財源に入れるだけでは意味がないんじゃないか。こういうすばらしいブレーンを抱えておられながら、その意見を参考にせずに、これをそのまま見過ごしている。

 むしろ、この省エネ等のエコポイントを小野先生のおっしゃるように拡充、拡大したらどうか、こういう財源を使って、こういうふうに思うんですが、与謝野大臣の御意見はいかがでしょうか。

与謝野国務大臣 あの当時は、一五%ありました外需が、一遍に半分になりました。一五%ですから、外需は大体七十五兆ぐらいあったものが、一遍に三十兆以上落ちたということで、これは経済全体にも大変なことだし、雇用の問題もあるということで、皆さんでいろいろ工夫してエコポイントと。

 これは、単に企業を援助するのではなくて、同時に、環境問題に一定の成果を上げるという副次的な効果もあるということで、余り国会でも御批判を浴びなかった政策ですが、日本の経済を活性化するためにこのような政策というのは、今ほかの分野であるかといえば、実はなかなか見つからないというのが現状でございます。

竹内委員 私、小野先生のいろいろな書物も、実はよく拝読いたしました。総理が、そういう第三の道や、一に雇用、二に雇用、三に雇用とおっしゃっているのは、そういう背景があるんだということもよくわかりました。

 ところが、小野先生がおっしゃっているのは、政府の金を使って、そしてまず雇用をつくれとおっしゃっているんですね。単に金をばらまくだけじゃだめだ、その間に雇用をふやすようにすれば、必然的に需要が拡大して、経済成長につながると。この雇用の創出ということをおっしゃっているにもかかわらず、これを予算でよくよく見ても、雇用を創出するというよりは守っているにすぎないという感じがします。

 採用したら一人当たり二十万円税額控除するとかというのがありますけれども、これはやはりまだまだ防御的ですよね。本当に雇用を創出するという意味では、総理がおっしゃっていることを踏まえると、実は民主党のマニフェストをそのまま実行すればいいんですよ。それをやっていないから問題だと思うんですね。

 例えば、介護の従事者の給与を四万円引き上げると。ところが、自公政権のときはこれを何とか、一万五千円プラス一万円で、二万五千円ぐらいまで上げた。ところが、あと、どうしてこれを四万円まで上げないのか。ここに予算をつければ、そこに潜在需要が掘り起こされて雇用が生まれるじゃないですか。それをなぜやらないのかということが不思議でならないんですよ。だから、総理が言っていることとやっていることが違うんじゃないか。もっとよく考えられた方がいいと思うんですね、予算案をつくるときに。

 与謝野大臣、民主党の雇用政策についてどのように思われますか。

与謝野国務大臣 介護に従事されている方は、働くことの負担に比して報酬が少ないと私も思っております。民主党の言っておられる政策はいい政策ですが、財源がないということであると思います。

竹内委員 ですから、子ども手当等、やはりもうちょっとよく考え直す必要があるんだろうと私は思うんですね。あれだけ介護とおっしゃっているんですから、その施設が足りないんだから、保育施設も足りないんだから、そこを建設するように配分すれば、そこに必然的に雇用は生まれて、需要が生まれてくるわけでありますから、ここは、実は予算案は、我々としてはなかなかうまくいっていないなという感じがいたします。

 先ほども話がありました子ども手当の話に参りますが、与謝野大臣は、この子ども手当の基本的政策はどのような点にあるとお考えでしょうか。

与謝野国務大臣 一言で言えば、子育てを応援する、そして、子育てを支援することによって少子化対策にもつながるというのが基本思想だと思っております。

竹内委員 与謝野大臣も内閣に入られると随分発言が変わったというふうに思うんですけれども、以前の御発言を拝見させていただきましたが、自民党時代は、これは少子化対策なのか、これは余り効果がないとおっしゃっていますし、それから、景気浮揚策なのかそれとも福祉経済政策なのか、非常にあいまいであるというふうにおっしゃっているんですよね。

 その上で、今、これは少子化対策と、つまり出生率が上がるというふうにお考えですか。

与謝野国務大臣 子育てを容易にすることによって少子化対策にも効果はあるだろうと申し上げたわけです。

竹内委員 出生率は上がりますか、それで。

与謝野国務大臣 出生率というのは、何も経済的条件だけで決まるわけではなくて、その世帯その世帯の人生観、物の考え方によって決まるわけですから、多分、子育てが容易になれば少子化対策にも貢献するであろうと私は思っておりますけれども、はい、これだけ少子化対策に効果がありますということを断言的に申し上げられないと思っております。

竹内委員 では、経済効果はいかがですか。貯蓄率がかなり高いようでございますけれども、そこの点につきましてはどのようにお考えでしょうか。

与謝野国務大臣 高額の所得を持っておられる方の消費が伸びるなどという予想はつきませんけれども、子育て世代のほとんどの方がぎりぎりのところで生活をされておりますので、それは、子育てに必要な経費、これの支出に充てられるということは容易に想像できることだと思っております。

竹内委員 厚労省の調査では、昨年十二月に出ていますが、大体半分ぐらいが貯蓄に回している、こういう調査が出ておりまして、これはもう、大臣も経済財政のプロでありますから、貯蓄にこのぐらい回ると経済効果がかなり減少するということはすぐわかるわけでありますから、その辺、なかなか従来のお話とは違うなというふうに承った次第であります。

 あと、先ほどもちょっとありましたが、櫻井副大臣に来ていただいておるんですが、年金に関しまして情報をほとんど与えられなかったというお話を伺いました。子ども手当の根拠につきましては、情報を事前に十分いただかれていたんでしょうか。

櫻井副大臣 議論の過程については、済みません、十分承知はしておりません。ただ、どういう意図で、どうしてこういう政策が必要であるかということについては、これはみんなで共有しているものだというふうに思っております。

 これまで、これは公明党の皆さんもおっしゃっていたことですが、子供に対する予算の額が少ない、そういったものをふやすべきではないのか、それからもう一つは、社会全体として子育てを応援していくという、こういった理念については、恐らく皆さん賛同してくださっていると思っています。ですから、そういうためにこの子ども手当が必要であるということについては承知をしていたところでございます。

竹内委員 ではお伺いしますが、二〇〇二年当時、民主党さんは一万六千円だとおっしゃっていたんですね。この根拠はどういうものだったんでしょうか。

櫻井副大臣 済みません、そのときにそういった会合に私は参加しておりませんので、その根拠については存じ上げません。

竹内委員 そうすると、櫻井副大臣は御存じないと。では、野田大臣は御存じですか。

野田国務大臣 月額一万六千円の積算根拠ということ。

 想像ですが、直接かかわっておりませんけれども、扶養控除と配偶者控除を倒した分を多分計算したのではないかなと。その線だと、その辺の数字が出てくるのではないかと思います。

竹内委員 ちょっと、ここを内閣としてきちんとした根拠を出していただけませんか。野田大臣、いかがですか。

野田国務大臣 あとは、若干うろ覚えなんですけれども、いろいろなアンケート調査をやって、それぞれの世代、子育てにどれぐらいお金が、例えば被服費だとか食費だとかがかかるとか、そういうことをやりながら積み上げた一万六千円だったかなと、だんだん、少し思い出してきました。

竹内委員 いや、ここはうろ覚えだったら困りますので。大事な予算審議にかかわる話ですので、これはきちんとした一万六千円の積算根拠をまず出していただきたいと思います。

中井委員長 理事会で協議して、あしたには出させるようにいたします。

竹内委員 その上で、私どもも調べましたところ、二〇〇七年一月の衆議院本会議で、当時の民主党代表である小沢代表が、突如、六兆円規模、二万六千円を表明されたんですね。このことは事実であります。

 そうすると、なぜ一万六千円から突如二万六千円に一万円上がったのか、この理由を教えてください。

野田国務大臣 一万六千円から二万六千円に事実として上乗せになったことは事実ですが、その背景はちょっと存じ上げておりません。

竹内委員 これは重大な問題ですよ、本当に。

 やはり二万六千円とあれだけおっしゃったわけでありますから、実はその積算根拠がわからないということで今財務大臣がおっしゃっているんですが、内閣の重要閣僚ですから、これでは、これはちょっと審議を続けられないと思うんですね。

中井委員長 二万六千円は、当時、小沢代表が言われたことですから、その当時の民主党の執行部に聞かないと、野田君はわからないんだと僕は思います。

野田国務大臣 事前の御通告があれば、多分調べる余裕があったんですが、当時かかわりがなかった分、責任ある御答弁は現時点ではできないということです。

竹内委員 これは、やはり二万六千円というのは、二〇〇九年の選挙のときから大変な、もう国民みんな知っているわけでありまして、その根拠が、今この期に及んで、この予算、大事な審議に当たって、二万六千円の根拠がわからないということでは、これは重大な問題じゃないでしょうか。これをしっかり出していただかないと、ちょっと審議を続けられないんですけれども。

中井委員長 ただいまのお話は、先ほどのことと一緒で、理事会で協議して、あした政府側からきちっとした根拠数値を提出いただきます。

竹内委員 ここは非常に重要な問題でございまして、菅総理も、先日、予算委員会で、一部に過大な見積もりがあったということをおっしゃっているわけでありまして、ここは、野田財務大臣としては、一体どこが過大な見積もりであったと推測されるのか。総理はここにおられませんけれども、予算を預かる財務大臣ですから、どこが過大な見積もりだったのか、いかがでしょうか。

野田国務大臣 個別にどこが過大かというよりも、一つ一つお約束したことを、安定した財源を確保しながらやっていくということがなかなか大変であるということは実感しています。

竹内委員 本当に大事な予算委員会の場におきまして、重大なことがやはり判明したと思うんですね。二万六千円の根拠が担当閣僚がすぐにわからないという問題、それからまた、過大な見積もりがある、その過大な見積もりについてもよくわからないということでありますから、これは大変深刻な問題だというふうに思います。

 このことだけを申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。

中井委員長 これにて竹内君の質疑は終了いたしました。

 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正です。

 与えられた時間、二十分という時間でありますので、通告をしております質問事項全部に行き着くかどうか自信がありません。そのときはひとつお許しをいただきたいと思いますが、答弁については、ひとつ要領よく、簡潔に答弁をお願いいたします。

 大きく分けまして、税全般について、それから今後の税制改革について、それから今後の税制改正に向けた考え方、こういうふうに大きく分類できると思うんですが、そういう順序に沿って質問をいたします。

 まず、八九年と〇九年の民間給与の比較について伺います。

 昨年九月に国税庁が〇九年の民間給与の実態調査の結果を発表しました。その結果は本当に驚くべきものでありました。平均給与が四百六万円で、二十年前の八九年の四百二万円と同水準にまで低下している、これが民間給与の実態調査の結果でございます。

 そこで、八九年と〇九年の一年を通じて勤務した納税者の給与総額と所得税総額をどのように把握しているか、まずそれを聞きたい。

野田国務大臣 重野委員の御指摘の、国税庁で実施している民間給与実態統計調査によりますと、一年を通じて勤務した給与所得者のうち、源泉徴収により所得税を納税している者に係る給与総額、八九年分が百四十七兆三千六百四十三億円でございます。〇九年分が百六十五兆四千五百九十五億円となっています。これらに係る所得税額は、八九年分が八兆四千四百二十六億円、〇九年分が七兆一千二百四十億円となっています。

重野委員 私がよくわからないのは、八九年、給与総額百四十七兆で八兆四千億、〇九年、百六十五兆、ふえているのでありますが、所得税総額は七兆、こういうふうに減っているわけですね。それはどういうことでそういうことになるのかという点が一点わからない。

 三位一体改革で税率が三ポイントふえた所得の高い階層でも、なお所得税は減っているんですね。こういうことというのは、僕の計算ではふえればふえるんじゃないかと思うんですが、ふえても減っているというのは一体どういう仕掛けがあるのか、これを説明してくれませんか。

野田国務大臣 八九年と〇九年を比べまして、給与総額は十八兆円増加しています。これは納税者も増加をしています。一方で、委員御指摘のように、所得税の総額は約一・三兆円減少をしているということですが、その理由は、一つは、九五年に税率構造の大幅なフラット化が行われるとともに、九九年には最高税率の引き下げがなされまして、累進構造の緩和が進展してきているということが一つです。

 それからもう一つは、委員御指摘のように、〇四年度以降には所得税から個人住民税への税源移譲が行われているということなど、累次の減税を含む制度改正を行っていることが主な要因と思われます。

重野委員 制度改正によってそうなったという結論ですね。

 そこで、ちょっと具体的に聞きますけれども、八九年と〇九年を比較して、仮に課税所得が三百万円の人と二千万円の人の所得税と住民税を合わせた負担はどのようになっているかということが一つです。国税と地方税では控除額などの違いはありますけれども、大ざっぱに言えばどのようになっているのか、そのあたりを説明していただけませんか。

野田国務大臣 課税所得が三百万の場合と二千万の場合ですね。(重野委員「二千万」と呼ぶ)はい、わかりました。

 課税所得三百万円については、所得税と個人住民税の合計額を申し上げれば、八九年が約五十四万円になります。〇九年が約五十万円でございます。

 もう一つの課税所得二千万円についてでありますけれども、同じく所得税と個人住民税の合計額、八九年が約八百七十九万円、〇九年が約七百二十万円でございまして、高所得者の方が税負担が低下をしていますが、これは、さっき申し上げたとおり、累次の改正による累進の緩和によるものでございます。

重野委員 先ほどから私が説明していることに対する答弁で一貫しているのは、低い部分と高い部分というふうに区分けをすると、高い部分のいわゆる緩和というのか減少策というのか、それが端的にあらわれている。例えば減税率という率があったとしますと、これも明らかに、低い三百万円の方々が減税率が六・九%、そうすると二千万円の方の減税率が一一%、こういうふうに計算上出てくるんですね。

 こういう傾向というものは、それが一体納税者にどのような税に対する思いをもたらすかというふうな部分というのは、どういうふうに課税をする側は考えておられますか。

野田国務大臣 これは、今までの傾向としてはそういうことがございました。だからこそ、個人の所得課税というのが、所得再分配機能を低下させてきているということは、要は格差が広がってくる一つの要因になっているというふうに思います。

 だから、私どもの政権における税制改正の一つの理念は、所得再分配機能を立て直しをしていこうという考え方。だから、控除から手当へであるとか、税率も含めて見直しをしていこうということでございます。加えて財源調達機能も落ちている、そういう認識のもとで税制改革をやっていこうということでございます。

重野委員 ちょっと視点を変えて、次の質問をします。

 諸外国、具体的に米英独仏としましょう。その給与所得控除の上限、これは我が国に比較をしてどういう傾向にあるか、それを教えてもらえませんか。

野田国務大臣 給与所得者が適用可能な概算控除の上限ということで、ことしの一月現在においてですが、アメリカは一万一千六百ドルということで、日本円にして約九十五万円でございます。ドイツは九百二十ユーロで、日本円にして約十万円。フランスは一万四千百五十七ユーロということで、約百五十九万円。イギリスについては、こういう概算控除制度は設けられていません。

重野委員 そこで、今回、我が国が給与所得控除、上限を設定するわけですね。これは私は一歩前進ではないかというふうに受けとめておりますが、それにしても、今大臣が言いましたように、欧米と比較したときに、この二百四十五万という我が国の上限、これは随分突出しているというふうな感じがするんですね。

 そういう思いに立って、では、所得控除の上限を一千五百万にしたという、この因果関係とどういう関係があってそういう結論に至るのか、その点について教えてくれませんか。

野田国務大臣 今回の給与所得控除の見直しについては、一つの視点は、給与所得者の必要経費が収入の増加に見合って必ずしも増加することではないということが一つの傾向としてあるということと、先ほども申し上げたとおり、格差の是正、所得再分配機能の強化という観点からの税制改正でございます。

 そこで、給与水準について一千五百万円としたところに委員の御質問の趣旨があったと思いますけれども、これは給与所得者の平均給与とか、あるいは平均役員報酬を参考としました。具体的には、平成二十年において、資本金一億円以上の株式会社の平均役員報酬が千二百六万円であること等を踏まえ、それを相当に上回る金額として千五百万円、控除額二百五十万円の上限を設けたということでございます。

重野委員 先ほど私は、欧米のいわゆる上限の質問をしました。アメリカで九十五万、ドイツが十万、フランスが百五十九万、こういう数字でありました。そこに比較をしまして、今回のこの改正はどういうふうに評価をしたらいいのかという質問をしたんですが、まずその点について聞きたいということが一つ。

 それから次に、与謝野大臣、野田大臣、どちらにも聞きたいんですが、この一千五百万という最高税率の問題に関連して、与謝野大臣は麻生政権の時代に記者会見でこのように申しているんですね。税収を確保するということに重点が置かれているのではなくて、シンボリックな意味で所得税の再分配効果というものをあらわすためというふうに答えておられました。さらに記者から、税収確保の上では消費税が不可欠ということかとの追加質問に、税収自体に大きな期待を抱いていただいても困る、それでも全体のいわゆる税に対する公平感とかそういうものに対してシンボルとしての効果があると答えているんですね。

 今回のこの給与所得控除の上限設定は、シンボリックな意味と考えているのかという点ですね。どういうふうに考えておられますか。これについては野田大臣も、同趣旨の質問をしますので、それでよろしく答弁をお願いします。

与謝野国務大臣 日本の所得税は、従来は累進税率の傾きが非常にきつかった。世界の中で所得税のフラット化が進んでいく中で、国税、地方税合わせて五〇%という時代に入ったわけですけれども、やはり所得税というのは所得再分配を行う場合のいわば入り口のような税制でございまして、そういう意味では、最高税率五〇というのは、公平感という意味では少し物足りないのではないかと私は思っておりました。

 最高税率が適用される方というのは非常に数少ないわけですから、最高税率を上げたからといって収入がどんとふえるわけではないんですが、やはり所得再分配ということの象徴的な意味は持たせなければならないと思っておりました。

野田国務大臣 まず最初の欧米との比較の話ですけれども、これはそれぞれ制度が一様ではございませんで、例えばアメリカなどは全部、上限というよりも、どの所得層の人たちも定額である。定額と上限と両方とっているところとか、いろいろな国があるので、ちょっと一様な比較はできないというふうに思います。

 給与所得控除の上限設定をシンボリックかどうかという意味の次のお問い合わせについては、これは先ほども申し上げているとおり、給与所得の水準が上がるからといって、それに伴って必要な経費が上がるというわけではないということと、それから、さっき申し上げたとおり、所得再分配機能が低下をしてきていること、それを回復しようという趣旨での一連のさまざまな控除見直しの中で、今回は給与所得控除の改正をしようということでございます。

重野委員 日本では、最高税率である四〇%の税率がかかるのは一千八百万円超の課税所得からですね。

 そこで、イギリス、ドイツ、フランスで四〇%の税率がかかるのは、幾らから四〇%の税率がかかるのでしょうか、野田大臣。

野田国務大臣 イギリスにおいては課税所得が三万七千四百ポンド、日本円にして四百九十万円超より四〇%の税率が適用されます。フランスについては、同じく日本円でいうと、七百九十三万円超より四一%の税率が適用されます。ドイツにおいては五百九十二万円超より四二%の税率が適用されます。大体、水準ではそういうことでございます。

重野委員 次に、与謝野大臣に消費税率の引き上げ問題について聞きます。

 大臣は、消費税引き上げが現在の日本経済にどのような影響を与えると考えておられるか。また、あわせて、二〇〇六年、二〇〇七年に恒久的減税が廃止されました。九七年の消費税増税と比較しますと、経済に与えた影響は大きく異なります。個人消費は九七年は大きく落ち込みました。〇七年、つまり恒久的減税が廃止された年なんですが、その年は個人消費はほぼ変わらない水準で拡大を続けた、こういう実績があるわけです。

 そこで、同じ規模の増税の場合、消費税か所得税か、どちらがより経済に与える悪影響を少なくできるのか、その点についてお聞かせください。

与謝野国務大臣 今三点御質問があったかと思いますが、一つは、平成九年、十年の景気後退を消費税の増税に求める方がおられますけれども、私は実は違うと思っておりまして、やはりこれはその前の年の経済がよ過ぎたという反動もありましたし、それからアジアの通貨危機もあり、一番決定的だったのは、九年の十一月の三洋証券、山一証券、それから北海道拓殖銀行の破綻だと思っております。

 というのは、経済指標が悪化するのはその翌月の十二月からでございまして、医療費が上がったから、消費税が増税が決まったからというところに理由を求める方がおられますけれども、私はそうではないんじゃないかと思っております。

 それから、消費税、所得税、減税、増税の場合、経済に対してどういうインパクトがあるかという御趣旨だと思いますけれども、この問題については三月末までにすべての知見を集めて発表することになっておりますので、それまで学問的な知見はお待ちをいただければ、そのように思っております。

 それから、消費税を上げるということは、やはり直接税から間接税へというのは先進国の一つの大きな流れでありまして、特に社会保障制度がアメリカよりもヨーロッパに似ている日本にとりましては、付加価値税的な消費税というものが重要な役割を果たすということは、私は当然のことであろうと思っております。

中井委員長 重野さん、時間が来ていますので、まとめに入ってください。

重野委員 はい。

 今の与謝野大臣の主張は与謝野大臣の主張として聞きますけれども、消費税のアップというものが消費性向に全く無関係であるがごとき印象を与える発言というのは、僕はちょっと違っているんじゃないかなと思います。

 この政権がスタートしたときには我々は政権与党におりまして、後に沖縄問題で離脱するわけですけれども、その中で消費税の据え置きというのは、当時の連立政権協議の中で、税率の引き上げは行わない、こういうふうに明確にうたっておりますので、そのことはしっかり念頭に置いて議論をしていかなければいけないな、このように思っています。

 以上で終わります。

中井委員長 これにて重野君の質疑は終了いたしました。

 次に、山内康一君。

山内委員 みんなの党の山内康一です。

 最初に、高木文部科学大臣にお尋ねします。

 民主党のマニフェストにおいては、「教員の資質向上のため、教員免許制度を抜本的に見直す。教員の養成課程は六年制(修士)とし、養成と研修の充実を図る。」とされております。それに関連してだと思うんですが、つい先日、一月三十一日に、中央教育審議会の教員の資質能力向上特別部会というところで報告書が出ました。その中教審の部会の中でも、教員を六年制の修士にするかどうか、いろいろな意見があるようです。賛否両論あるようです。

 私は、教員養成を六年化してしまうと、教員の質を上げるという本来の意図とは逆の結果、つまり、むしろ教員の質の低下につながってしまうおそれがあるのではないかと思っております。六年間大学に行かないと学校の先生になれないということは、学生の側、あるいは高校三年生で大学の受験を考える側からすると、非常にコストとリスクが大きいわけです。

 コストというのは、四年よりも六年行く方が学費もかかりますし、生活費、あるいは二年間働けないわけですから給料ももらえない、あるいは、リスクということでいうと、六年間大学教育を受けたからといって必ずしも学校の先生になれるとは限らないわけですね。そうすると、六年間も時間と授業料をかけても学校の先生になれるかどうか、ある意味でわからない。もしかすると、ロースクールを出たけれども弁護士になれない人が今いっぱいいて問題になっていますけれども、同じようなことを教員養成の世界で招いてしまうおそれがあるんじゃないかと思います。

 そういった意味では、教員の資格を六年制、修士号を必須にするというのは非常に危険もあるんじゃないかなというふうに思いますが、大臣のお考えをお尋ねします。

高木国務大臣 山内委員にお答えをいたします。

 御指摘の点につきましては、中央教育審議会においては教員の資質向上方策の総合的な検討が今進められております。先日、一月末に審議経過報告が取りまとめられました。

 この報告では、まず第一に、現在、学部四年が基本である教員養成については、さらに一年から二年程度、修士レベルの課程での学修を要する制度とすることを今後検討する。二つ目には、この場合、当面は、学士課程修了者に基礎的な資格を付与して、教員として採用された後に、必要な課程等を修了すれば、修士レベルの資格取得を可能とすることも検討する。これは御指摘のようなことでありますが、委員の御指摘の制度についても今後検討をすることにいたしております。また、修士レベル化については、教員志願者の減少というおそれもございまして、こういうことが特に指摘をされております。

 まずは、中央教育審議会、中教審において、このような懸念も含めて、具体的な検討について進めてまいる所存でございます。

山内委員 ぜひ慎重に進めていただきたいと思います。

 それでは二番目の、職業教育、職業訓練についてお尋ねします。

 最初に、厚生労働省にお聞きします。

 企業が終身雇用を前提としたころであれば、正社員をOJTで育成するということに相当期待できたわけですけれども、これだけ非正規の雇用がふえていくと、なかなか企業の人材育成にも頼れないというのが現実になってきております。

 職業訓練に対する公的な支援というのは、日本は先進国の中で非常に少ない部類ですけれども、今後ふやしていかなくてはいけない。そのときに、雇用・能力開発機構のような公的な職業訓練施設だけでは十分ではないと思いますし、必ずしも効率的でもないと思いますので、職業訓練の民間開放、企業だけではなくて、NPOなども含めて民間にもっと任せる、そういう職業訓練の仕組みをつくる必要があると思いますが、厚生労働省の御見解をお聞きします。

小宮山副大臣 職業訓練の実施につきましては、これまでも、可能なものはできるだけ民間に委託するという考え方でやってきております。特に、介護、福祉、医療、子育て、情報通信などといった成長分野を中心に、民間の教育訓練機関などを活用した職業訓練を実施してきています。

 例えば二十三年度は、民間の委託訓練という形で、二十一万五千人中十七万人を民間に委託したいと考えておりますし、緊急人材育成支援事業の受講者、これは二十六万人のうち、NPO法人におよそ七百コースを委託しております。

 今後も、国として訓練カリキュラムや指導ノウハウを提供して支援を行いながら、民間の教育訓練機関などを活用した職業訓練をさらに進めていきたいと考えています。

山内委員 もう既に民間でも、大分委託しているということですけれども、今のやり方もいいんですけれども、ぜひ検討していただきたいと思っておりますのが、職業訓練分野に限ったバウチャー制度みたいなものをできるんじゃないかなと。

 私は大学院でバウチャー制度をちょっと研究していたことがあるんですけれども、バウチャー制度というのは、質の向上には役に立ったり立たなかったり、ケース・バイ・ケースです。ただ、量を拡大させるということに関しては大体うまくいくというか、有益であるということを私は思っております。

 そういった意味では、今、日本で教育や職業訓練の分野でいうと、別に小学校、中学校は量をふやす必要はありませんが、保育や職業訓練という分野では量自体をふやさなくてはいけない。そういった意味では、もっと自由に、バウチャー制度みたいなものを導入して、ユーザーの立場で、ユーザーが自分で選べるようにしていく。通信教育でもNPOでも資格の学校でも何でもいいと思うんですけれども、余り役所で細かくガイドラインとか細かな指導をやって、このテキストを使うと職業訓練何とか金がもらえるけれども、使わないとだめですよとか、余りにも細かい規定がたくさんあるので、ぜひユーザーがもっと自由に使えるような、そういうバウチャー制度を導入したらどうかと思いますが、その点について厚労省にお尋ねします。

小宮山副大臣 職業訓練バウチャーにつきましても、地方自治体で導入、実施をされた例があります。青森県、茨城県、栃木県、群馬県、岐阜県そして兵庫県の神戸市で実施をいたしましたが、廃止をした自治体が実は多くて、現在もやっているのは茨城県と栃木県だけなんです。といいますのは、就職率などが必ずしも高くない、実績がなかなか上げられていないということが言われておりますので、導入にはやはり慎重にいろいろな検討をしていくことが必要だと思っております。

 なお、現在の制度でも、無料の職業訓練を実施し、訓練期間中の生活支援を行う緊急人材育成支援事業では多様な訓練コースを設定しておりまして、今後も、これを恒久的な制度としたいと考えていますので、いろいろな工夫をしながら、有効な訓練が受けられるように、その中には、おっしゃったようなバウチャーについても、なぜ就職率が上がらないのかを含めまして、その原因を調べながら多様なやり方を工夫していきたい、そういうふうに思っております。

山内委員 失礼にならないように気をつけて言うと、選択肢の広い地域ほどバウチャーは有効で、選択肢が限られる地域は若干効果に限界があるのかなという気はいたしておりますが、なるべく自由度を高める、そういう制度を国としてもぜひ引き続き御検討していただきたいと思います。

 次に、職業教育に関して、ちょっと通告していた内容と違うので、高木文科大臣には、質問というよりお願いということで一言申し上げたいと思うんです。

 日本は、どうも職業高校というものの評価が非常に低いように思うんですね。例えば、同じぐらいの学力の高校生で、普通科の高校と職業高校に行っている高校生がいるとして、卒業後のフォローアップ調査をやると、職業高校を出た人の方がニートやフリーターになる率が低いということが言われております。恐らく職業高校の方が社会との接点が多かったり、あるいは勉強している内容が非常に社会に出た後どう役に立つかイメージがしやすい。

 そういった意味では、もう少し職業高校、位置づけを重視していくとか、あるいは今あるコースの内容をもっと改善していくとか、カリキュラムの内容をもっとニーズに合わせて柔軟なものに変えていく。いずれにしても、普通高校を悪いとは言いませんけれども、職業高校の価値というのをもっと評価してもいいんじゃないかなと思っておりまして、そういったところでも国としても何らかの取り組みをしていただきたいと思います。

 通告していませんが、もしよろしければお答えいただきたいと思います。

高木国務大臣 御指摘のように、工業高校、商業高校あるいは農業高校、これらの専門高校は、これまで中堅技術者あるいは事務職員などの養成に大きな役割を果たしてきたことは事実でございます。

 ただ一方で、世の中相当変わりまして、職業も多様化しております。昨年春の専門高校の卒業者を見てみますと、就職率が四六%、大学や専門学校への進学率が四八%となっておりまして、進路も大きく変わっております。

 しかし、御指摘のことは、まさに問題解決型の職業力向上というのが、今これは高校のみならず大学にも問われておるところでございまして、産業界からも非常に求められておる。したがって、私どもとしましては、将来のスペシャリストを育成するまさに基礎、基本を身につける場として、一つには、長期インターンシップの実践的教育を充実しなきゃならぬ。また、教員への実務経験者の配置も重要じゃないか。特に、団塊の世代の退職に伴いまして、こういった方の技術、知識、これを高校生に教授するということも考えております。また、地域産業との連携も大事でございまして、そういった教育プログラムについても、これからもどんどん開発していきたいと思っております。

山内委員 職業教育をやる高校、これまで工業とか農業とかの方が多いですけれども、例えばサービス業、理容でも調理でもいいと思うんですけれども、そういう多様なニーズに合わせてできるような専門高校をぜひ充実させていただきたいと思います。

 次に、三番の、大学への社会人入学の推奨というか促進ということについてお尋ねします。

 日本では、大学に入学する学生のうち、二十五歳以上の割合というのがわずか二%です。ところが、OECDの平均だと二一%。しかも、日本の場合、二%の内訳が、通信制が多いので、社会人、一たん高校を出た後、社会に出て、それから大学に入学する、そういう人というのが非常に少ないんですけれども、もっとふやす余地があるし、ふやすべきではないかと私は思います。

 一たん社会に出て、それから大学に入り直した方がモチベーションも高いと思いますし、社会で得た経験をほかの学生と共有できる、そういうメリットもあると思うんですね。

 それから、低所得の家庭の子供向けに大学の奨学金を出す、これも必要なことですけれども、一方で、もし本当に経済的理由で大学に行けない人がいれば、一たん社会に出て学費をある程度ためて、それからもう一回大学に戻れるような、そういうルートをもっと広くしていくというか、そういう選択肢も社会的に認知されるようになっていけば、社会的な流動性を増していくというか、経済的な理由で大学をあきらめざるを得ない人が減るんじゃないかなというふうに思っているんですね。

 ですから、ペーパーテストだけだと、どうしても高卒ですぐ受験する人の方が有利になってしまいますけれども、社会経験をもっと評価して大学に入学させるとか、あるいは、一たん社会に出て社会的に価値のある仕事をやっていた人を大学で優遇するとか、そういう制度があってもいいんではないかと思うんですね。

 そういう意味では、例えばですけれども、自衛隊に任期つき自衛官というのがあります。高校を出た後、二年とか三年自衛隊に勤めて、任期つきですからそれから二年、三年で退官される自衛官の方、こういう人に、例えば優先的に大学進学の奨学金を出すとか、あるいは、どこかでボランティア活動をやっていたり介護や障害者福祉の仕事をやっていた、そういう人に対して優先的に大学の奨学金を出してあげるとか、そういう制度をつくっていくと、社会人の大学の入学がふえていくんじゃないかと思うんですね。

 そういった制度について、大臣のお考えをお聞きします。

高木国務大臣 社会人の受け入れをもっと大学が進めていくべきではないかという御意見もお伺いいたしました。

 例えば、今、私どもとしましては、奨学金についても、学ぶ意欲とそして能力のある学生が経済的な理由で学業を断念することがないようにという奨学金事業も積極的に取り組んでおります。

 さらに、平成二十三年度の予算案におきましても、対前年度七百二十六億円増の一兆七百八十億円の事業費で八万八千人増の百二十七万二千人に奨学金を貸与できるように充実をお願いしているところでございまして、社会人の受け入れについて、これからも奨学金の充実も含めて努力をしてまいりたいと思っております。

山内委員 奨学金というと、大体、学業が優秀であることとか親の所得とか、そういう所得と学力だけで選んでいますけれども、ぜひこれから、一つの基準として、社会的に価値のあることをやってきた、あるいはこれからやろうとする人には奨学金を出しやすくするとか、そういう工夫も国としてあってもいいんじゃないかなと思いますので、ぜひ御検討をお願いしたいと思います。

 続きまして、留学生の受け入れについて御質問します。

 留学生の受け入れ先というと、中国の留学生が非常に多いわけです。もちろん、隣国中国の留学生にたくさん来ていただけるのはいいこと、すばらしいことだと思いますけれども、シェアを見ると中国人の留学生が圧倒的です。私費の留学生は別に構わないというか、私費の留学生はもっとふえていただいてもいいと思うんですが、国費留学生に占める中国人の留学生の割合が非常に高いですね。

 今約二千人の中国の国費留学生がいます。日本の税金で留学してもらっている中国人の留学生が二千人いる。そこに四十一億円の税金が投入されております。中国人の留学生は優秀なので、そういう奨学金を取れる人も非常に多いんだと思うんですけれども、ある一国だけに二千人、そして四十一億円の枠を割り振ってしまうと、ほかの国がどうしても少なくなってしまいます。

 例えば、中国に四十億かけるんだったら、せめて半分の二十億でも、アフリカとか南アジアとか中南米とか経済的に恵まれていない国もたくさんあるわけですから、そういう国にもうちょっと割り振ってもいいんではないかなと思うんですね。

 今や経済大国、日本よりもGDPが大きくなってしまった、そういう国だけにそんなに多額のお金を割り振っていいものだろうかというふうに思いますが、それについて大臣のお考えをお聞きします。

高木国務大臣 委員はJICAにもお勤めになられて、国際社会の中での留学生については大変深い御見識があると承知をいたしております。

 御指摘のとおり、いわゆる留学生受け入れ総数の中での中国からの受け入れというのは多いんです。これは、地域的なものとかあるいは文化的なものが考えられております。

 私どもとしましては、奨学金事業の根幹をなす国費留学、いわゆる国費による留学生は、特定の国に偏らないように地域を考慮した受け入れを行っております。また、我が国においても、アフリカや南アジアからの留学生が少ないわけですが、それを解消するために、今、現地に大学の情報発信拠点を設けて受け入れの拡大を図っておるところでございます。

 今後とも、さまざまな文化の背景を持った優秀な留学生を受け入れるということは大変国益にもかなうことでございますから、御指摘を踏まえて努力をしてまいりたいと思います。

山内委員 地域的な偏りをある程度配慮された上での結果だと思いますが、例えば学力だけで選ぶと、中国人の留学生というのは非常に有利なんですね。漢字文化圏なので日本語になじみやすい。その点、漢字文化圏じゃない国の留学生の方が言葉のハンディキャップも大きい。そういう点も含めると、純粋に学力だけで選んだりするとどうしてもアフリカとか南アジアの国は不利になりますので、そういう外交的配慮も踏まえて、もっと途上国の学生にも枠を広げていただきたいなというふうに思います。

 時間が終了しましたので、以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

中井委員長 これにて山内君の質疑は終了いたしました。

 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 きょうは、最初に、地デジの問題について質問をいたします。

 毎日毎日、テレビでは、ことし七月二十四日にテレビのアナログ放送が終了するというコマーシャルを大々的に行っております。一方、国民からは、批判や不安の声も上がっております。今のテレビで十分に間に合っているとか、テレビ画面での嫌がらせがひどいとか、使えるテレビをごみにするのはおかしいなどの声が上がっているわけであります。また、ビル陰の共聴施設など、関係者の協議や調整が調わずに、間に合わないんじゃないか、こういう意見も寄せられているところであります。このままではテレビが見られなくなる、テレビ難民が生まれるという懸念があるにもかかわらず、片山大臣は、アナログ停波延期は考えていないとおっしゃっておられます。

 そこで、まず片山大臣に確認でお聞かせいただきたいんですが、地上波テレビ放送というのは、基幹的な放送として重要な役割を持っているわけです。アナログ放送の停波を決めたあの二〇〇一年の電波法の改正の審議の際にも、当時、片山虎之助総務大臣でございましたが、地上波放送は基幹的な放送メディア、国民にとって最も身近で必要不可欠な情報入手手段、アナログからデジタルに移行しても、ユニバーサルサービスとしての性格、あるいは災害時等のライフラインとしての性格はしっかりと残していかなければならないと答弁しております。

 そこで、お尋ねしますが、地上波テレビ放送はユニバーサルサービスであり、また災害時等のライフライン、そういう立場に変わりはないか、お尋ねいたします。

片山国務大臣 塩川議員にお答えをいたします。

 今おっしゃったとおりでありまして、地上テレビ放送といいますのは、国民にとって最も身近で必要不可欠な情報入手手段でありますし、災害時などにおけるライフラインとしての性格も持っておりますので、最も基幹的な放送メディアだと私も思います。であればこそ、これを地上デジタルに移行するということについて、十年間という移行期間を法律で確保して、今日まで鋭意その準備をしてきたということだろうと思います。

塩川委員 ユニバーサルサービスであり、災害時等のライフライン、基幹的な放送としての役割というお話がございました。だからこそ十年間の移行期間で今進めているところですという話です。お話にありましたように、なくてはならないのが地上波テレビ放送でありますが、しかしながら、受信者側、視聴者側の地デジ対応の現実がどうなっているのか、本当に間に合うのか、こういう声が上がっているわけであります。

 何点か確認でお聞きしたいわけですが、一つは、最も早く地デジ放送が開始をされて、受信者側の準備期間が長かったのが首都圏であります。東京都の場合でお聞きしますが、東京都の戸建ての住宅、また集合住宅、これは集合住宅の施設数において、現状の地デジの対応状況は何%になっているのか、その点についてお聞かせください。

片山国務大臣 お尋ねのありました東京都の戸建て住宅の場合での地デジ対応率でありますが、これは、NHKが把握している数値によりますと、平成二十二年十二月末で七九%と伺っております。

 それから、東京都の集合住宅の地デジ対応率につきましては、施設数で見ると、同月末、昨年の十二月末で八三・一%、世帯数では九〇・一%というふうに伺っております。

塩川委員 二〇〇三年から地デジの放送が開始をされた首都圏ですけれども、いまだに戸建て住宅、集合住宅ともに八割しか対応していない。つまり、二割が対応できていないわけであります。首都圏の場合は特に、アンテナをVHFからUHFに切りかえなくちゃいけない。これについて、現状は実際には進んでいない。

 あと七カ月しかないのに、十二月末の時点で二割が対応できていない。世帯数でいっても、六十万世帯が残されているわけですし、東京に加えて、千葉、神奈川、埼玉の一都三県で見ましたら、百十万世帯以上が地デジに未対応というのが十二月末の現状であります。

 加えて、全国的にもおくれがあるわけですが、例えば沖縄の先島諸島、宮古島あるいは八重山、石垣の状況というのも、例えば宮古島市及び宮古郡は六五%です。石垣市は六九・七%。三分の一がまだ地デジに対応できていないという極めて重大な事態で、要するに、困難な場所が大きく残されているというのが実態であります。地域的なアンバランスがここにあるわけです。

 二つ目にお聞きしたいのが、低所得者世帯の現状であります。

 総務省が浸透度調査を行っておりますが、年収が二百万円未満の世帯の地デジ普及率はどうなっておりますでしょうか。

片山国務大臣 昨年九月時点でありますが、お触れになられました浸透度調査、地上デジタルテレビ放送に関する浸透度調査結果によりますと、年収二百万円未満の世帯における受信機の普及率は八〇・三%ということに調査結果はなっております。

塩川委員 ここでも八〇・三%という形で、二割の方が対応できていないわけであります。

 政府は低所得者世帯への支援策を行っておりますけれども、このメニューについて簡単に御説明いただけますか。

片山国務大臣 低所得世帯への支援というのがありまして、これは、カテゴリーでいいますと、一つはNHKの受信料全額免除世帯への支援、それから市町村民税非課税世帯への支援と、それぞれありまして、前者の方でいいますと、簡易なチューナーの無償給付、訪問設置、それからアンテナの工事等、これは必要な場合でありますけれども、これの支援をすることになっておりますし、非課税世帯への支援については、チューナーの無償給付と電話によるサポートということになっております。

塩川委員 今お話がありましたように、NHKの受信料全額免除世帯、中心は生活保護の世帯であります。これは、アナログテレビを前提として、チューナーをつけることと、アンテナの切りかえが必要な場合にはその費用も出しましょうねという形で全額費用負担を行う。

 しかし、市町村民税の非課税世帯に支援を拡大しました。でも、その支援というのは、今お話しのように、チューナーだけなんです。アンテナの切りかえはないんですよ。首都圏のようにアンテナをVHFからUHFに切りかえなくちゃいけないのに、市町村民税非課税世帯への支援では、チューナーだけぽんと渡されて、あとは自前でやってくださいということで、どうしてこういう世帯の人が対応が可能なのか。

 こういう点でも低所得者世帯が大きく残されているにもかかわらず、今の政府の支援策が極めて実態にそぐわない現状となっている、全く実態とかみ合っていないということが言えるわけです。

 もう一点お聞きしたいのが、高齢者世帯でございます。年をとってくると新しい機器に対応するのもなかなか大変であります。

 厚生労働省の国民生活基礎調査によりますと、八十歳以上の単身世帯の方が百万世帯あるそうです。また、世帯主が八十歳以上のそういう世帯も百五十万、合計二百五十万の八十歳以上の世帯主の方を中心とした世帯というのがあるわけです。

 そこで、片山大臣にお尋ねしますが、先ほど答弁をされました総務省の地デジの普及状況の調査、浸透度調査というのは、この八十歳以上の世帯の調査というのはあるんでしょうか。

片山国務大臣 この調査においては、八十歳以上という区分は設けておりません。

塩川委員 ですから、二百五十万も世帯のある八十歳以上の方に対して、今総務省、政府が普及状況の実態すら把握をしていないということであります。

 実際、一生懸命、マンションの管理組合の理事長さんなどが丁寧に一軒一軒回って、地デジに切りかえる必要があるんですよ、こんな話をされますけれども、御年配の方にすると、白黒からカラーの切りかえのイメージがありますから、うちは大丈夫だ、今のテレビでも映るから、こういうことで、地デジへの切りかえというのはぴんとこない。本当に丁寧に説明しないと、この切りかえというのは進まない。もちろん所得の関係もありますから、負担の関係でなかなかできないという方も残されているのに、八十歳以上の世帯の状況について把握もしていないというのが政府の現状ということであります。

 ですから、私たち、今のお話、御答弁いただいたのを見ても、現状は深刻で、ことし七月のアナログ停止の時点で本当にテレビ難民を出さないと言えるのか、テレビ難民を出さないと断言できるんでしょうか。大臣、お答えください。

片山国務大臣 今後残された期間を全力を尽くして、できる限り問題を解消していくという方針でありまして、必要な予算も先般の補正予算でも計上しましたし、今回の予算案にも計上しているところであります。

 幾つか御指摘ありましたが、例えば高齢者世帯でありますと、地デジサポーターによる戸別訪問を徹底するとか、それから相談会、説明会をさらにきめ細かく行うことでありますとか、地デジボランティアによる声かけとか念押しをするとか、相談コーナーをさらに拡充するとか、こんなことをやりたいと思っております。

 それで、先ほども申しましたけれども、この問題については十年間、法律で移行の期日を決めて、今日まで相当の労力と予算を費やしてやってきたわけであります。それから、さらに、この地デジへの移行によりまして節減できる周波数といいますか電波の域がありますから、それについては、携帯電話とかその他今日の社会にとって必要な、そういう利用に供するということにもうなっております。さらに、仮にアナログを延期するということになりますと、それに対して追加的な費用も放送事業者等には当然生じるわけであります。

 そんなことを考えますと、予定どおり、これは七月二十四日ということで移行することが私は妥当だと思っております。

塩川委員 それは余りにも冷たいんじゃないでしょうか。

 お年寄りや低所得者世帯、あるいは首都圏だって、切りかえるのにこれだけのおくれがあるわけですから。十年は十年で、今まで努力してきたというのはわかりますよ。でも、間に合わないとなったら、おくらせればいいじゃないですか。

 そもそも、二〇〇一年の電波法改正によって十年以内にアナログ放送の終了ということを決定したわけです。

 そこでお尋ねしますが、この二〇〇一年の法改正時の議論において、二〇一一年までのいわば十年間を超えない範囲でアナログ放送の停波を決めた。これが二〇〇一年の電波法の改正だったわけですけれども、なぜ十年以内でアナログ放送をとめますと決めたのか、その根拠は何だったのかをお聞かせいただきたい。

片山国務大臣 当時、平成十三年、二〇〇一年の電波法の改正でありますけれども、このときに幾つか議論が国会でも行われておりまして、それを拾ってみますと、例えば、周波数割り当て計画等の公示の日から起算して十年を超えない範囲内で周波数の使用の期限を定めると規定したわけでありますけれども、例えば、これは関係者が明確な目標期限を定めることによりまして、関係者が協力をして取り組んで、買いかえ等の移行が促進されるという意味があるということでありますとか、それから、これは衆議院の総務委員会で平成十三年に当時の総務副大臣が答弁をされておりますけれども、「テレビの買いかえサイクル、いわゆる八年から十年と考えられておりますが、これらを勘案しても、十年あれば無理ない形で十分に導入が可能であろう、」などという説明が当時国会でなされております。

塩川委員 今御答弁ありましたように、十年前の議論のときには、目標期限を定めることで買いかえを促進するんだ、それはあると思いますよ。しかし、間に合わない場合については延ばせばいいじゃないか。それを拒否する理由にはなりませんね。

 視聴者の側のテレビの買いかえサイクルが八年から十年だ、この八年から十年も、今ではもっと長いんじゃないかと言われているわけですけれども、仮に八年から十年、例えば十年だとした場合に、そもそも、地デジの放送が開始されたのは早くて、首都圏や名古屋や関西など、三大都市圏で二〇〇三年からですよ。二〇〇三年から十年間だったら二〇一三年じゃないですか。さらに言えば、全国の県庁所在地に地デジの放送が開始されたのは二〇〇六年ですよ。その二〇〇六年から十年だったら二〇一六年じゃないですか。

 なぜ二〇一一年なのか。理屈が立たないんじゃないですか。二〇一一年で打ち切る理由にはならないんじゃないですか、視聴者の方が、受信者の側が対応できていないんですから。十年で区切るというのに全く根拠がないということを言っているんじゃありませんか。

片山国務大臣 今、私が総務大臣になって急に打ち切ろうなんという、そういう政策を出したわけではないんです。

 今議員がおっしゃったようなそういう議論も踏まえた上で、ことしの七月二十四日、すなわち、この方針を決めてから十年ということで区切りをつけよう、そういう法律改正をしたんだと思います。

塩川委員 十年前の議論のときもそうですけれども、今お話ししたように、打ち切るという根拠がないんですよ。延ばしてはいけないという根拠にはなりません。

 ですから、十年前の電波法改正のときに、我が党は、機械的に打ち切るべきじゃない、一定の条件が伴わない場合には延期するという修正案まで出した。残念ながら否決をされたために、この法改正に反対をいたしました。当時の法改正が、機械的に十年以内で打ち切るとやったこと自身が間違いだったわけですから、これを改めることこそ必要じゃありませんか。今、全国市長会もアナログ放送の停止の延期を提言しています。受信環境の整備が整うまでの間、アナログ放送の停波期限を延期することを検討するなど適切な対策を講じること、これが地方の声、現場の声であります。

 テレビ難民をつくらないために、受信者側の地デジ対応のためにも、アナログ放送の停止を先延ばししたらどうでしょうか。なぜ延期すると言えないんですか。

片山国務大臣 先ほど申しましたけれども、一つは、残っている世帯などについては、この残された期間に最善の努力を加えることによって、それをできる限り解消するということが一つであります。

 それからもう一つは、この十年という期限を定めて、もう社会全体がずっとそれで動いてきているわけです。例えば機材、アナログ放送の機材というものがもう調達しにくくなるということでありますとか、それから、先ほど言いましたように、あいた周波数の域というものを別途、今日的なニーズのために使う、そういうこともあるわけであります。

 それから、一種の公平感といいましょうか、この十年で移行するということで、その法的確信というものを持って、それにきちっと対応された方が大半なわけであります。そういうことからしますと、例えば、アナログ放送をまだ継続するということになりますと、企業でありますとか、いろいろなところで社会的なコストが当然ふえてまいります。そういうものを、では、みんなで負担するということになりましたら、正直者といいますか、ちゃんと対応してきた人もコスト増になってしまう、こういう不公平感もあります。

 最後に申しますと、どうしても残ったところには衛星放送で暫定的に、これは中央から発信する電波になりますけれども、衛星放送でもってテレビの受信はできる、こういう措置も施しておりますので、私は、今日まで進めてきたこの十年の計画というものは、計画どおり進めるべきものだと考えております。

塩川委員 延ばすとコストの問題を言っていましたけれども、先ほどの答弁でも放送事業者のコストがかかると言いました。確かにそうかもしれません。でも、NHKも出していますけれども、延期によって一年間でどれだけコストがかかるんですかといったら、六十億円の答弁ですよ。NHKの受信料収入は六千億円ですよ。六千億円のたった一%じゃないですか。テレビ難民が生まれる、テレビが見られなくなるかもしれない、そういう世帯を生まないために全力を尽くすために、延期という選択肢というのは当然あってしかるべきであります。そもそも、多大な負担を視聴者、国民に押しつけておきながら、放送事業者のコストが大変だから延期はできませんという理屈は国民には通らないんじゃありませんか。

 また、この間で新たなサービスの問題もある。例えば携帯の話もありましたけれども、それは新サービスの提供もあるかもしれません。それ自身を否定するものではありません。しかし、今あるテレビが見られなくなる、そういう明確なサービスの後退をほうっておいて新たなサービスもないものじゃありませんか。これが国民の声であります。

 最後に、結局、地デジの電波が届かない、見られないような世帯については衛星放送だというお話をされました。大臣もよく御存じのように、衛星放送というのは東京のキー局の放送ですよ。ですから、全国、北海道だろうが九州・長崎、沖縄だろうが、どこでも映るのは、地元の地上波のテレビ放送、ローカルの放送ではなくて東京のキー局の放送なんです。ですから、災害情報も流れなければ、地元のローカルのニュースも流れなければ、さらには政見放送だって流れないんですよ。こういったことについて懸念の声が上がっている。

 例えば、沖縄の琉球新報などでは「地デジ一部未整備 災害情報不足に不安」、こういう声というのが上がっている。国の政策で「選挙速報やお年寄りが楽しみにしている民謡番組も見られなくなる」、こういう声とか、「衛星放送でも沖縄の天気予報が見られると言うが不十分だ。」つまり、東京の番組で沖縄のニュースをやるだけですから、沖縄の番組ではないんですよね。「地元放送局と同じように、台風の進路や被害がリアルタイムで分からなければ意味がない。国は安全に対する意識が足りないのでは」。

 冒頭確認しましたけれども、この地上波テレビ放送というのは基幹的な放送だ、ユニバーサルサービスであり、災害時等のライフラインだ、こう言っていたものが、衛星放送ではそれを果たせないんですよ。衛星放送なんかにするんじゃなくて、地上波のテレビ放送できちんと届ける、そのためにこそ延期をすべきじゃありませんか。

 頑張って頑張って、結果として間に合うかもしれない、私は間に合わないと思うけれども。しかし、間に合わないかもしれないということを前提にして、延期という選択肢そのものも持たないんですか。延期という選択肢そのものを考えないんですか。大臣、いかがですか。

片山国務大臣 先ほど申しましたけれども、衛星放送というのは最後の補完の措置でありまして、あくまでもこれは暫定的な措置でありますから、もちろん、それぞれ地元の放送が見られるように地上デジタルに移行する、これが必要であります。

 したがって、残された期間、本当に全力を尽くして、できる限り問題を解消するように努力をするというのは今の私どもの責務だろうと思います。

塩川委員 延期ということについて一言も言えないという話であります。海外では延期するのが当たり前ですよ。イギリスだってアメリカだってやっているわけですから、何で日本でできないのか。

 十年前にどんな議論があったのか。先ほど片山大臣の話にもありましたけれども、当時、小坂副大臣が、電波の有効利用の観点から、ぜひとも終了時期を早めてでも、国民全体の総合的な電波利用サービスの向上に資するのではないかとなって、政策的に終了時期を決めて、そこへ向けて政策誘導していく方がよろしいとなった。つまり、新たな電波利用のために、テレビの引っ越しを早く済ませてしまうというものだったわけであります。

 実際に、テレビの引っ越し後の跡地を使うのは、携帯電話事業者などの大手企業であります。今国会に出る電波法の改正だって、携帯事業者のために、プラチナバンドをあけるために携帯事業者が引っ越し代まで出しますよ、こんな法案まで出している。それに先んじて国民に負担をさせてテレビの周波数帯をあけさせたというのがこの十年だったわけですから、そういう点でも、私は、理不尽だ、筋が通らない、大企業のもうけを優先してテレビ難民をつくり出すのは許されない、支援策の拡充とともにアナログ停波は延期をすべきだ、このことを重ねて申し上げるものであります。

 残りの時間で、官房機密費についてお尋ねをいたします。

 私は、この間、内閣官房報償費、いわゆる官房機密費について取り上げてまいりました。民主党は、野党時代に機密費の透明化法案を出しておりますし、さきの総選挙でのマニフェストで、税金の使い道をすべて明らかにして国民のチェックを受ける、決算に関する情報公開を徹底すると掲げて政権についたわけであります。

 そこで、まず枝野官房長官にお尋ねをいたします。

 私は、この間、ずっと内閣官房長官取り扱いの内閣官房報償費、いわゆる官房機密費の支出の状況についてお尋ねをしてまいりました。昨年の十一月まではお聞きをしているわけですが、毎月一億円ずつの支出がずっと今年度は続いておりますが、十二月以降の支出について、引き出した方と日付及び金額を教えていただけますか。

枝野国務大臣 お答えをいたします。

 昨年の十一月二十二日の分までが質問主意書等でお答えをさせていただいている分かと思います。

 その後、十二月二十日に、仙谷前官房長官のもとで一億円が請求をされております。そして、本年一月二十一日、私のもとで同じく一億円が請求をされております。

塩川委員 今年度で十一億円、一昨年の政権交代以降三億六千万円、ですから十四億円余りが支出をされているわけであります。

 私は、麻生政権の末期、政権交代が確定をした二〇〇九年八月の総選挙直後の九月冒頭に河村建夫官房長官が官房機密費二億五千万円を引き出した、このことを国会の中でも明らかにいたしました。その際に、平野博文官房長官は、引き継いだときに金庫の中に幾ら残っていましたかという質問に対して、金庫の中には全くございませんでしたと答弁をされました。これが、平野元官房長官が明らかにした情報公開の一つだったわけであります。

 そこで、枝野官房長官にもお尋ねしますが、平野官房長官と同じように、前任者から引き継いだ際に金庫の中に幾ら残っていたのか、仙谷長官から引き継いだときに金庫には幾ら残っていたのか、お尋ねをいたします。

枝野国務大臣 私といたしましても、内閣官房報償費については、その機能を維持しつつ、どのように透明性を高めていくことができるのか検討してまいりたいと思っておりますが、ただいまのお尋ねについては、具体の執行状況についてでございますので、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

塩川委員 民主党政権の元官房長官は答弁をしたのに、同じ民主党政権の枝野官房長官は答弁もできない。全く後退をしていることがはっきりと鮮明になっているということが明らかであります。

 二〇〇二年の通常国会のときにもこの機密費の問題がありました。そのときの予算委員会の理事が枝野さんで、そのときにも、新聞報道によりますと、官房機密費について、大きな疑念が出ており、政府は情報を開示して国民に十分な理解を得る必要があると情報公開を求めていたにもかかわらず、明確に後退をしたわけであります。

 この点について、時間の関係もありますから、一点、与謝野大臣に伺います。与謝野大臣は、短期間ではございましたが、安倍政権のときの官房長官をお務めでございました。その際に、前任者が塩崎氏でございましたが、塩崎氏から官房長官を引き継いだ際に、金庫の中は幾ら残っておられたのか、お尋ねをいたします。

与謝野国務大臣 昔のことですし、確たる数字を申し上げるほどの記憶はございません。

中井委員長 塩川君、質疑時間が来ましたから、まとめに入ってください。

塩川委員 はい。

 元官房副長官で自民党の議員だった鈴木宗男元議員は、官房機密費について、内閣がかわる際には金庫に残っていた官房機密費を空にして引き渡すというのが慣例になっていたと証言をしております。この自民党政権時代の慣例を引き継ぐことにしたのではないのか、こういう疑念がぬぐえないような枝野官房長官の答弁だった。民主党の自民党化と言われても仕方がないんじゃありませんか。

 最後に一言。

中井委員長 もう時間がない。

 これにて塩川君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

中井委員長 この際、委員派遣承認申請に関する件についてお諮りいたします。

 三案審査の参考に資するため、来る十四日月曜日北海道に、来る十三日日曜日から十四日月曜日までの二日間福井県に、それぞれ委員を派遣いたしたいと存じます。

 つきましては、議長に対し、委員派遣承認申請をしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 なお、派遣委員の人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、明八日午前九時から委員会を開会し、集中審議を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十四分散会


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