衆議院

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第14号 平成23年2月18日(金曜日)

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平成二十三年二月十八日(金曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 中井  洽君

   理事 泉  健太君 理事 城井  崇君

   理事 武正 公一君 理事 手塚 仁雄君

   理事 中川 正春君 理事 若泉 征三君

   理事 塩崎 恭久君 理事 武部  勤君

   理事 富田 茂之君

      井戸まさえ君    石毛えい子君

      石津 政雄君    磯谷香代子君

      稲見 哲男君    打越あかし君

      生方 幸夫君    江端 貴子君

      小川 淳也君    大串 博志君

      岡本 英子君    加藤  学君

      笠原多見子君    金森  正君

      神山 洋介君    川村秀三郎君

      木村たけつか君    吉良 州司君

      工藤 仁美君    郡  和子君

      佐々木隆博君    菅川  洋君

      高井 美穂君    高邑  勉君

      竹田 光明君    津村 啓介君

      中根 康浩君    中林美恵子君

      仲野 博子君    浜本  宏君

      福田衣里子君    本多 平直君

      三谷 光男君    水野 智彦君

      宮島 大典君    村越 祐民君

      室井 秀子君    山口 和之君

      山口  壯君    渡部 恒三君

      あべ 俊子君    伊東 良孝君

      小里 泰弘君    小泉進次郎君

      佐田玄一郎君    齋藤  健君

      菅原 一秀君    橘 慶一郎君

      谷  公一君    永岡 桂子君

      野田  毅君    馳   浩君

      山本 幸三君    遠山 清彦君

      西  博義君    笠井  亮君

      塩川 鉄也君    阿部 知子君

      柿澤 未途君    山内 康一君

      下地 幹郎君    田中 康夫君

    …………………………………

   参考人

   (大阪府池田市長)

   (全国市長会社会文教委員長)           倉田  薫君

   参考人

   (神奈川県開成町長)   露木 順一君

   参考人

   (慶應義塾大学経済学部准教授)          井手 英策君

   参考人

   (千葉県市長会会長)

   (千葉県野田市長)    根本  崇君

   参考人

   (社団法人日本経済団体連合会専務理事)      久保田政一君

   参考人

   (早稲田大学政治経済学術院教授)         堀口 健治君

   参考人

   (日本生活協同組合連合会会長)          山下 俊史君

   参考人

   (横浜国立大学大学院教授)            萩原伸次郎君

   予算委員会専門員     春日  昇君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月十八日

 辞任         補欠選任

  稲見 哲男君     工藤 仁美君

  打越あかし君     菅川  洋君

  小川 淳也君     神山 洋介君

  川村秀三郎君     福田衣里子君

  佐々木隆博君     石津 政雄君

  城島 光力君     中林美恵子君

  高邑  勉君     加藤  学君

  津村 啓介君     井戸まさえ君

  仲野 博子君     江端 貴子君

  三谷 光男君     笠原多見子君

  水野 智彦君     山口 和之君

  村越 祐民君     浜本  宏君

  山口  壯君     木村たけつか君

  小里 泰弘君     あべ 俊子君

  金子 一義君     伊東 良孝君

  金田 勝年君     永岡 桂子君

  山本 幸三君     橘 慶一郎君

  遠山 清彦君     西  博義君

  笠井  亮君     塩川 鉄也君

  山内 康一君     柿澤 未途君

  下地 幹郎君     田中 康夫君

同日

 辞任         補欠選任

  井戸まさえ君     津村 啓介君

  石津 政雄君     岡本 英子君

  江端 貴子君     仲野 博子君

  加藤  学君     磯谷香代子君

  笠原多見子君     室井 秀子君

  神山 洋介君     小川 淳也君

  木村たけつか君    山口  壯君

  工藤 仁美君     稲見 哲男君

  菅川  洋君     打越あかし君

  中林美恵子君     城島 光力君

  浜本  宏君     村越 祐民君

  福田衣里子君     川村秀三郎君

  山口 和之君     水野 智彦君

  あべ 俊子君     谷  公一君

  伊東 良孝君     金子 一義君

  橘 慶一郎君     山本 幸三君

  永岡 桂子君     金田 勝年君

  西  博義君     遠山 清彦君

  塩川 鉄也君     笠井  亮君

  柿澤 未途君     山内 康一君

  田中 康夫君     下地 幹郎君

同日

 辞任         補欠選任

  磯谷香代子君     高邑  勉君

  岡本 英子君     佐々木隆博君

  室井 秀子君     三谷 光男君

  谷  公一君     小里 泰弘君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成二十三年度一般会計予算

 平成二十三年度特別会計予算

 平成二十三年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

中井委員長 これより会議を開きます。

 平成二十三年度一般会計予算、平成二十三年度特別会計予算、平成二十三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。

 三案審査のため、本日の午前は、地方自治全般、特に子ども手当、一括交付金について、参考人として、大阪府池田市長・全国市長会社会文教委員長倉田薫君、神奈川県開成町長露木順一君、慶應義塾大学経済学部准教授井手英策君、千葉県野田市長・千葉県市長会会長根本崇君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。委員会を代表して厚くお礼申し上げます。参考人各位には、平成二十三年度総予算について、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 それでは、議事の順序について御説明申し上げます。

 まず最初に、参考人各位から一人十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。委員の質疑時間は限られておりますので、お答えは、勝手ですが、できるだけ簡潔明瞭にお願いいたします。

 なお、念のため申し上げますが、発言の際はその都度委員長の許可を得ることとなっております。また、衆議院規則の規定により、参考人は委員に対して質疑することはできないこととなっておりますので、あらかじめ御了承おき願いたいと存じます。

 それでは、倉田参考人にお願いをいたします。

倉田参考人 全国市長会で社会文教委員会の委員長を仰せつかっております大阪府池田市長の倉田薫でございます。

 本日は、衆議院予算委員会の場で意見陳述の機会をお与えいただきましたことにまずお礼を申し上げたいと思います。

 私の方からは、子ども手当について、平成二十二年度の制度の発足まで、そして平成二十三年度の法案の取りまとめに至るまでの全国市長会としての取り組み、考え方を中心に述べさせていただきたいと思います。

 子ども手当は、今さら言うまでもありませんが、平成二十一年夏の衆議院総選挙において民主党のマニフェストの柱の一つとして掲げられたものであり、新しい政権のもと平成二十二年度からスタートしたものであります。

 全国市長会としては、制度発足に当たり、現金給付事業であり、その財源は、マニフェストの基本的考え方に基づいて基本的には全額国庫負担とすべきと主張をしてきております。旧の児童手当制度の折に地方や事業主が負担をしていた分については、当然その負担分は担っていただくべきという考え方が示されたわけでありますが、それは、地方団体と十分な協議をすることなく一方的に示された考え方でありまして、地方団体としては受け入れがたいという考えでありました。

 例えば、私が会長を務めております大阪府市長会では、子ども手当について地方負担を求められた場合は支給事務を行わないこともあり得る旨の決議を行っており、さらに近畿市長会でも同様の決議が行われ、全国市長会としては、これらの意向を受けて国と協議すべく備えておったわけであります。

 しかしながら、政府は、地方団体と十分な協議を行うことなく、法案を提案するに至ったのが平成二十二年度の経緯であります。

 平成二十二年、昨年でありますが、一月十三日、全国市長会の森会長は厚生労働省に赴き、当時の長妻厚生労働大臣に対し強く抗議を申し上げました。

 その抗議に臨む森会長の決意は、並の決意ではありませんでした。抗議をしているうちに、だんだんだんだん興奮状態が頂点をきわめまして、とうとう森会長はぷつんと切れちゃったわけです。切れるというのも、本当に脳内の血管が切れて、厚生労働省の幹部の方は御存じと思いますが、その場で倒れ込んでしまった。倒れたところが厚生労働省という、場所が場所であっただけに、早速医務官の対応をいただき、直ちに病院に運ばれて手当てされたので大事には至りませんでしたが、森会長としては、一カ月半の静養を余儀なくされたのであります。

 三途の川の一歩手前から生還をされた森会長は、私がこの子ども手当法案の最初の犠牲者だな、このように笑っておられましたが、これはまさに笑い事ではありません。基礎自治体としては、それほど真剣に、ある意味、命がけで国に対して物申し上げた一幕でありました。

 結果は、御承知のとおり、地方団体の意見を無視する形で平成二十二年度限りとする時限法案として成立し、子ども手当制度がスタートをすることになったわけであります。支給事務を行わない、そんなことは実際には対象市民に大変な御迷惑をおかけすることになるとの判断のもと、大阪の府内はもとより、全国の市長会としても、平成二十三年度以降の制度設計について、例えば、保育料や給食費の滞納に対する相殺の問題など幾つかの要望を申し上げ、やむなく事務を執行するに至りました。

 そこで、平成二十三年度の制度実施に向けた法案の審議がこれから行われようとしているわけでありますが、実は、平成二十三年度においても地方負担を求められたことに対して、全国市長会を初め、地方団体が決して了解をしたものではありませんということをまず申し上げておきたいと思います。

 平成二十三年度の法案提出に当たって、政府としては、前年度の市長会要望のうち滞納保育料の相殺等について可能にするとともに、平成二十四年度以降の制度設計については早い段階で国と地方の会議の場を設置する旨、五大臣合意という形で表明されておりますので、その国と地方の協議には今回は相当な覚悟で臨ませていただく所存でおります。

 全国の自治体の中では、平成二十三年度の予算編成に当たり、地方負担分を計上しないという自治体も出現してきていることは御承知のとおりであります。これとても、全額国庫負担を前提とするものの、子ども手当の支給事務は法律案どおり実施するという形になっております。これは、政府に対する抗議の姿勢は示すものの、現場での混乱はできる限り起こらないようにとの精いっぱいの思いであることも御理解をいただきたいと思います。

 ところで、制度の是非は別としまして、この際、二十三年度に向けて、もし予算関連法案としての子ども手当法案が三月中に成立しなかった場合という想定でのお話を申し上げたいと思います。

 仮定の話は本来必要のないことではありますが、子ども手当制度が全く新しい制度でないところに問題が内在いたしております。言うまでもなく、平成二十二年度にスタートした制度であり、平成二十三年度法案が通らなければ、三月末で平成二十二年度法案も期限切れ失効となり、旧児童手当制度が復活するという、いわば想定外の異常事態が起こる可能性があるのではと危惧しているからであります。仮にそのような事態に立ち至った場合、早速、基礎自治体としては、六月に二月、三月の子ども手当、そして同じく六月に四月、五月分の児童手当を支給しなければならないという義務を負うわけであります。

 御承知のとおり、児童手当制度は所得制限がありますので、四月、五月分の児童手当を支給するためには、その対象者を特定するために前々年度の所得を把握するという作業を行う必要が生じます。そのためには、まずはシステム改修、そしてそれ以前に、もう既に我々は子ども手当ということで予算を計上しているわけですから、いわば予算の組み替えという作業が必要になってまいります。全国すべての自治体でそのようなことが起こってくるわけであります。したがって、仮に日切れ失効となった場合の児童手当の六月支給は極めて困難であると申し上げざるを得ません。

 大阪府市長会では、昨日の定例会において、仮に子ども手当法案が成立しない状態に立ち至ったとき、大阪府市長会所属、大阪市を含める三十三市においては、児童手当の六月支給は不可能という結論に至りました。大阪府内の十の町村で構成されている町村長会においても、近く開催される定例会において同様の確認が行われると伺っております。

 その理由の第一は、システム改修に時間がかかるというものであります。第二は、前々年度の所得把握に時間を要するというものであります。その第三は、先ほども申し上げましたが、六月に二月、三月の子ども手当、四月、五月分の児童手当を支給するという複雑な事務執行が求められることになり、年度初めの忙しさも加わってスムーズに作業がはかどらないだろうということからであります。

 私は、法治国家において、立法府である国会の場で法律、制度が決定すれば、地方団体としてはその決定に従うべきは当然のことと思っております。がしかし、いかに国の決定事項に地方が従うべきは当然とは申しましても、物理的に不可能なものは不可能なわけであります。例えば、我々市町村においては、仮に上下水道使用料など使用料や手数料の値上げを実施するような場合、条例の改正案は、三月の当初予算、議会に提案をし、可決成立を見た上で、半年後の十月から実施をするというのが通例であります。すなわち、これは市民負担の増大を招くがゆえに、周知徹底期間を設けるからであります。

 本来、いただけるはずの子ども手当をいただけないという状況になるのなら、そのことに対する事前の周知徹底、PR期間が必要なのは当然ではないでしょうか。与野党のねじれがゆえに法律が成立しなかったので、今までの制度は失効し旧の制度に戻ってしまう、そんなことを国民である市民にどう理解していただいたらいいのでしょうか。そして、そのことに対する説明責任、本来は、国に、政府にあるはずなのに、実際には、結果として基礎自治体が矢面に立たされる。それが地方分権改革あるいは地域主権改革のあるべき姿なのでしょうか。余りにも無責任と言わざるを得ません。

 控除から手当へということで税法の改正を行い、財源を確保しておきながら、一方で日切れという現象が起こるなら、子供を持つ多くの世帯では、所得が逆転、減少することになります。国民の声は、与党も野党も、与党も与党なら野党も野党だとの批判の声になることは明らかであります。

 これ以上興奮しますと私が第二の犠牲者になりかねませんので、この辺でおかせていただいて、どうぞ、この子ども手当法案を御審議いただく衆参の先生方におかれましては、国民そして市民に対する影響が、あるいは基礎自治体における混乱ができる限り少ないような形でおまとめいただきたいというのが大多数、いや、恐らくすべての基礎自治体の願いであることを申し上げ、私の意見陳述とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)

中井委員長 ありがとうございました。

 次に、露木参考人にお願いいたします。

露木参考人 神奈川県の開成町という、神奈川県で一番小さな町なんですが、その町長を務めております露木と申します。よろしくお願いします。

 冒頭、委員長の方から忌憚のない御意見をということですので、忌憚のない意見を述べさせていただきます。

 お手元にメモを配付させていただきましたので、それに基づいてお話をさせていただきますが、冒頭、今、倉田市長さんが申し上げられた気持ちと全く同じです。もっと小さな町はしんどいわけですよね、もう本当にいいかげんにしてくださいと、だって方向が見定まらないわけですから、どうやってまちづくりの方向を打ち立てていったらいいのかと。頑張ってやろうと思ったら、どうなるかわからないの連発では、これはもう町がつくれないんですよね。こういう状況ですと、予算もろくに組めません。そういう状況だということをまずもって認識していただきたいなと思います。

 これでは、本当にまじめにまちづくりあるいは地域主権改革に取り組もうという多くの市町村長さんたちは嫌になっちゃって、ばかばかしくなってくるわけですね。ですから、そこのところはぜひ御配慮をいただきたいなというふうに思います。

 きょうは予算全般も含めてということなのでお話をさせていただきますけれども、民主党政権が誕生して、その政権の根幹は、消費税の増税はしませんよということだったはずです。

 私は、二〇〇七年の四月から二〇一〇年の三月まで内閣府の地方分権改革推進委員会の委員を務めさせていただきましたけれども、その最終段階で政権交代が行われまして、ちょうどそのときに地方の税財政論議を行っていたところなんです。税財政論議ですから、当然、消費税、地方消費税の問題を深掘りしたい、こう思っていたやさきに政権交代ですので、それについては事実上の封印。これも立派な方針です。であったので、それ以上は立ち入らずにやってきたはずなんですが、昨今、財源が足らないということで、今度は増税という路線を当たり前のごとく進むというのは、市町村長、国民からしても納得できないというのが当然のことではないかと思います。

 そういう場合は、やはり国民にちゃんと信を問うて、それであるべき姿を論じてもらって、衆参両院安定した状況を一日も早く取り戻してもらって、それで私たちがきちんと予見可能性のある地方行政が展開できるようにしていただきたいというのが二番目です。

 それで、朝令暮改の状況に対する対応については、先ほど倉田市長さんがコンピューターの問題について言われましたが、国会議員の先生方は、余りこの問題について御理解がないんじゃないかなというふうに思います。

 法律一本、変えられるのはいいんですが、変えるたびに、今、市町村行政は全部コンピューターなんですよ。だから、全部コンピューターを直さなきゃいけない。子ども手当もここでころりと変わると、また一から直さなきゃいけない。後期高齢者の問題のときなどは、私のような小さな町でも五千万もかかったんですよね。それが今度は突然廃止だなんといったら、これどうなるのというのは当たり前のことなんですよね。

 ですから、何をするにもそういうコンピューターのシステム改修とセットであって、それは決してばかにならない金額だということは、ぜひ国会議員の先生方もわかった上で議論を進めて、もし大きな制度改正をする場合は、予算にきちんとコンピューターの改修の予算も盛り込んで地方への配慮を示していただきたいというのが三点目であります。

 四点目、子ども手当については、倉田市長の御意見と基本的に私は同じですが、私は、こういう混乱状況になったら、子ども手当制度というのはもう破綻をしているというふうに思っております。ですから、一から出直して、もう一回、子ども手当及び子育て支援、そういった施策全般の中で、現金給付とサービス給付をどういう配分で割り振るのかというところを根幹からやり直すというのが最もとるべき施策だというふうに思っております。

 ただし、いきなりばっさり子ども手当がなくなると、先ほど倉田市長が申し上げたと同じ混乱が生ずるわけです。この点はやはり配慮して対応していただかないと、一番事務を行っている最前線の市町村はたまったものじゃないですから。その点だけはぜひお願いをしたいと思います。

 それで、当座の、当面の対策として、約束どおり、やはり全額国庫負担という大原則を堅持して、そして、場合によっては支給額を減らして、それでいっときの間しのいでいただいて、その間にきちんとした制度設計を改めて一からやり直してもらいたい、これが切なる要望でありますので、よろしくお願いをいたします。

 一括交付金については、中身がわからないのでお答えしようがありませんが、市町村側からすれば、自由度を上げていただくというのは大歓迎です。しかし、この手の国、地方の関係のお金のやりとりについては、やはり漸進性、ステップ・バイ・ステップ、余り一挙に手品のように変えないで、少しずつ変えていくという仕組みがどうしても必要だというふうに私は思っております。

 それはなぜかというと、どこの市町村も金がなくて大変なんですよ。そういう中で、もらえるはずのものがもらえなくなってきているという不安感というのは現場じゃないとわかりません。ですから、この手の一括交付金のような大きな制度改正をするときには、ステップ・バイ・ステップ、まずは省庁ごとに取りまとめる。それは本来あるべき姿からすれば望ましくないかもしれませんが、まず一歩出すということが非常に大切ではないかなというふうに思っております。

 最後になりますが、私は、町長になる前にNHKの政治部の記者を務めさせていただいておりまして、亡くなられた梶山静六、当時、自民党幹事長や国会対策委員長を務められました、きょうお見えの渡部恒三先生などもそのとき竹下派でいらっしゃったわけですけれども、梶山先生がもし今生きていたら、どういう国会運営をするんだろうか、あるいは現在の国会議員の皆さんにどういう叱咤激励を飛ばすんだろうかということを思わざるを得ないんですね。

 というのは、構想を打ち上げたりビジョンを打ち上げたりするのは、それは結構ですよ。でも、結果としてどういうふうに実現をするのかというプロセス、梶山先生は盛んに工程表、工程表と言われていましたけれども、それを緻密に組み立てた上で問うてもらわないと、最終的に被害を及ぼされるのは我々市町村の場合が非常に多いわけですよね。

 ですから、緻密なプロセスをきちんと盛り込んだ工程表とセットでビジョン、改革は進めていただきたいということを最後に切にお願いしまして、私の陳述とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

中井委員長 ありがとうございました。

 次に、井手参考人にお願いいたします。

井手参考人 慶應の井手でございます。

 本日は、このような機会をちょうだいいたしまして、心より御礼申し上げます。

 私の専門でございます財政学の見地から、以下四点ほどお話をさせていただきたいと思います。

 先ほど大変実務的なお話がございまして、私は、その意味ではやや一致しない点もあるかもしれませんが、理念でございますとかビジョンでありますとか、そういったことのお話をさせていただければと考えております。

 ややちょっと大上段な話から入りまして大変恐縮なのでございますけれども、財政学の観点から申しますと、財政の本質といいますのは、本来、家族が担ってきたような領域、この領域のニーズを社会全員で満たすことにございます。家族というのは、御存じのように、ともに悲しみ、そしてともに喜びを分かち合うような存在でございます。ラグビーではよくワン・フォー・オール、オール・フォー・ワンというふうに申し上げますけれども、財政学の観点からいいますと、家族あるいは財政というのはオール・フォー・オール、すべてがすべての人のために喜びも痛みも分かち合う、こういったものが財政の本質ではないかと考えております。

 では、その場合に、家族ないしは財政が担ってきた領域というのは一体何でしょうか。ややちょっと高尚過ぎる発言かもしれませんが、アリストテレスの「政治学」の中で大変興味深い言葉がございます。それは、財産を維持することではなく、人間の人間らしい暮らしを維持し改善することが家族の役割である、こういうふうにアリストテレスは申しております。人間の望ましい状態とは一体何でしょうか。それは、人々の生存そして生活が保障される社会ではないかと考えます。こういった状況を実現することこそが財政の役割ではないかと思うのでございます。

 憲法の二十五条をひもとくまでもございません、生存の保障というのは中央政府の役割でございます。これは、主に、生存を保障するという観点からは、現金による給付を行うのであり、弱者に対して再分配的な政策を行うということになろうかと思います。同時に、課税面でこれを見ますと、弱者への配慮が必要となってまいりますので、累進課税を中心とした税制になってくるかと存じます。

 他方、生活や暮らしの保障というのは、人々により身近な存在であるという意味でも、あるいは先進各国の状況を確認した上でも、これらは地方自治体の責任となることは言うまでもございません。生活を改善するための施策とは一体何か。それは対人社会サービスであり、所得が多い少ないということとは関係なしに、あらゆる住民に対してひとしくサービスを提供するということが求められてまいります。

 ですから、地方税の方も、国税とは異なりまして、累進制を設けるのではなく、あらゆる人に課税をする。これは負担分任原則というふうに我々は申しますけれども、クラブの会費と同様でみんなで負担をする、そのかわりサービスの受益はみんなに行き渡る、これが地方財政の論理となってまいります。このように考えますと、もし今の政権与党が生活が第一であるとおっしゃるのであれば、まさに地方財政の役割、地方自治の強化、この点を抜きに生活保障の実現はあり得ないと私は考えております。

 やや理論めいたことが続きましたが、以下、この点を踏まえまして、今回の予算に関する私の意見を申し述べさせていただきます。

 まずは、いわゆる一括交付金、地域自主戦略交付金についてでございます。

 理論的な観点から申しますと、現物給付は地方であり、現金給付は国であるという神野試案が示した画期的な方向性がやや後退したことに対しまして、私は少々残念な思いをいたしました。これが実現できましたら、一九一八年、政府が地方の財政に対して財源を保障するという初めての試みであります、義務教育費国庫負担金制度の成立以来の画期的な大改革になったのではないかと私は思っております。

 しかしながら、そうはいいましても、今年度の予算で、箇所づけを廃止することでありますとか、あるいは省庁の枠を超えた、省庁の枠を外すような、そういった成果が得られたことに対して、私は深く敬意を表したいと考えております。

 一層の改革を今後期待することとしまして、幾つか気になっている点を申し述べさせていただきます。

 アメリカの事例で考えますと、一括交付金、こういったものが制度化されるときには、必ず補助金の削減がセットで実施されております。裁量性が確保された結果として予算の効率的な執行ができ、そして補助金が結果として減額されるということは歓迎すべきかと思いますが、予算の削減を目的として、少なくとも総額を抑制するためだけに交付金化を行うというのであれば、それは大変な問題となってまいります。この点への配慮が必要かと存じます。

 また、そういった裁量性が高まるとしましても、自治体の方での縦割り行政の弊害をまずなくさないことには、幾ら交付金で裁量性が高まっても、このことがこれまでと同様の予算配分につながるかもしれないという懸念もございます。

 また、第三に、やや細かい話になってまいりますが、公共事業の場合は、執行残というものが大体一割程度出てまいります。この執行残に対して、各省庁の枠を超えて資金の流用ができるのであれば大変使い勝手が上がるかと思いますが、結局は限られた範囲の中で執行残を使うということになってまいりますと、交付金の裁量性は余り高いものになってまいりません。この点への配慮が今後必要になってくるかと存じます。

 今後、民主党の方向性から考えますと、社会保障も含めた交付金化というのが進んでまいるかもしれませんが、本来、社会保障の予算というのは、住民の監視が最も届きやすいものでございますので、交付金化をさらに超えて、税源移譲と権限委譲に結びついていくということが本来の筋であると私は思っております。

 続いて、子ども手当に関してでございます。

 いわゆるチャイルドベネフィットに関しましては、子供を持つ親への所得補償なのか、そうではなくて、子供の生存を保障するための手当なのかということの区別が極めて重要ではないかと私は考えております。国家が両親の所得状態によって子供の命の扱いを変えるということは決してあってはなりません。

 そのような観点から見ますと、近年、子ども手当に対する批判というのは大変多くございますが、あくまでも理念的な観点から申し上げますと、今回の改正は極めて望ましいものと私は考えております。少なくとも、先進国の中では例外的であった所得制限を撤廃したことは大きな前進であると私は考えております。

 こういった見方から申し上げますと、子ども手当は子供の生存保障というふうに位置づけるべきではないかと存じます。生存保障は、言うまでもなく国家の責任でございます。もしそうだとすれば、今年度予算において、子ども手当の部分に関して全額国庫負担というふうな決断をなさったことに対しては、非常に高く評価すべきことと思われます。しかしながら、可及的速やかに児童手当部分に関する地方負担に関しても国庫負担に移すことが必要ではないか、これは生存保障の観点から国家の責務として申し上げたいと思います。

 あと、やや学問的な観点とは外れて恐縮なんですが、自治体を調査していると、子ども手当の天引きが意外と評判が高いことに驚かされております。これは、やはり子供たちの関係改善に資する側面が強いということでございまして、そういった観点からは、こういった細やかな配慮が今後とも引き続きなされることを願っております。

 最後に、地方の税財源の拡充について二つほど意見を申し述べさせていただきたいと思います。

 一つは、今回、基礎的財政収支対象経費に七十一兆円の枠が設定されました。これは、財政再建に対する政府、財政当局の懸命な努力の結果と理解しておりますが、しかしながら、このような厳しい上限が策定されました結果、社会保障関係費一・三兆円部分の増分に対しまして、地方交付税とその他それぞれの経費で一・三兆円の減額をしなければならないということになってしまいました。今回、地方の立場から申し上げれば、地方交付税に対しまして、出口ベースの交付税は対前年度比で資金が確保されているわけでありますけれども、入り口ベースで拝見をいたしますと、実は交付税の額が減っております。

 今後の予算編成におきまして今回一番大きな問題だと私が考えておりますのは、交付税を減らせば減らすほど他の省庁の予算の減額分が少なくなるという構造が生み出されてしまったことであります。今後こういった対立が起きないように、少なくとも、交付税を減らせば各省庁の予算がふえるでありますとか、交付税は減らすけれども臨財債をふやすでありますとか、財政運営戦略にも掲げられておりますように、地方の一般財源総額の確保というのは大変重要な論点かと存じます。そのような対応を切に願いたいと思っております。

 最後に、地方消費税について一言だけ申し上げたいと思います。

 地方消費税と申しますと、一般的には、税収の偏在性の低さでありますとか安定度の高さということが指摘されますが、もう一点だけ、地方税の負担分任原則について申し述べさせていただきたいと思います。

 再分配を使命とします国家においては、消費税の逆進性が問題となります。そのために、軽減税率の適用でありますとか、あるいは税の還付ということが議論になってまいります。しかしながら、このことは、消費税の最大のメリットである、低い税率でたくさんの税金を取ることができるという多収性を損なうことになってしまいます。これに対しまして、地方税においては、みんなが負担をするというのは原則であり長所になってまいります。そういった観点から、広い課税ベース、低い税率で多額の税収を上げられる消費税本来のメリットを最も生かせるのは地方消費税ということです。

 無論、住民税を強化するという方向性もあります。これはスウェーデンにその典型例を見出すことができますが、県民一人当たりの住民税収で見て、スウェーデンは一・三倍の格差しかないのに対し、日本ではこれが三倍に達しております。こういった観点からは、税収の偏在度が低い地方消費税を薄く広く徴収するということがサービスを拡充する上で最も重要ではないかと考えます。とりわけ、国税において消費税を中心としているスウェーデンでは税収の半分以上が脱漏していることに対して配慮する必要があるのではないでしょうか。これは、低所得層への配慮をしなければいけない国家の財政の観点から考えれば当然のことでございます。

 以上が、今年度予算編成に対します私の意見でございます。関係各位の努力に対して再度敬意を表しますとともに、このような機会を与えていただいたことをまたお礼申し上げたいと思います。

 ありがとうございました。(拍手)

中井委員長 ありがとうございます。

 次に、根本参考人にお願いいたします。

根本参考人 野田の市長の根本でございます。

 本日は、この機会を与えていただきまして、ありがとうございます。御礼を申し上げたいと思います。

 まず、私、千葉県の市長会の会長をしております。先日、子ども手当につきまして、千葉県市長会といたしまして、全額国庫負担を求める声明というのを出しております。市長会の立場としてこの話をしませんとおしかりを受けてしまいますので、この話をまず最初にさせていただきたいと思っております。

 お手元に資料が行っておると思います。子ども手当の全額国庫負担を求める声明というものを千葉県市長会が出しておるものでございます。

 それをざっと見ていただきたいと思いますが、第二段落の三行目に「地方の意向を無視したもの」、五行目に「マニフェストに掲げた「地域主権」の実現とは相容れない行為であり、極めて遺憾である。」というふうに表明させていただいております。

 次の段落の四行目、「子ども手当のような全国一律の現金給付については、国が担当し全額を負担すべき」だと申し上げております。

 次の段落で、五大臣合意において地方財政の増収分を子ども手当への充当というような形で特定目的的に使うということに言及したことについて批判をしておりまして、最後の段落で、今後の国会審議等において、子ども手当支給費は全額国費で負担すべきという主張について、十分納得のいく議論がなされることを強く要望するものである、こういうふうに書かせていただいております。

 最後に行ったら随分丸くなってしまったという表現になっておりますが、三十六市の市長の意見をまとめましたので、こんな表現になっておるということでございます。

 これから私の個人的な見解を申し上げさせていただきたい、そういうふうに思います。マニフェスト違反とか、地方の意向を無視してというような主張はもう言い尽くされておりますので、私は申し上げるつもりはございません。

 まず、野田市の数字から申し上げておきたいと思いますが、野田市が子育て支援のために使っているお金というのがどのくらいかということを申し上げておきたいと思います。

 二十一年度の予算ベースで申しわけございませんが、これは子ども手当が入る前という意味で、これを申し上げたかったわけでございますが、予算ベースで約三十七・七億円、そのうち国費が、国の方の補助が約八億五千万、八・五億円、市費が十八・九億円弱。それに対して、今度は子ども手当、二十三年度の数字の予算で申し上げますと、約三十三億九千六百九十六万円、そのうち市費が三億三千九百四十六万円。平年度にしますと六十五億二千万円になる。こんな数字があるわけでございます。

 児童手当に対する地方負担というのは、交付税の制度からいけば、基準財政需要額に全額算入されますので、国がマニフェストどおりに子ども手当を全額国庫負担にしまして児童手当を廃止しても、また児童手当という形でやりましても、どちらにしましても、地方の持ち出しはないということになるわけでございまして、私は、この点で、地方負担について反対をしたいと言っているわけではございません。

 ただ、そうは申し上げましても、それでいいのかなといいますと、そうではないということを申し上げたい。

 少子化対策というのは、よく言われておりますように、子供を産み育てたい人がそうできる社会をつくること。そのためには、子育て家庭への経済的支援、保育所整備などの保育サービスの充実などの現物給付、働きながら子育てできる働き方の見直しなど、こういうものがバランスよく進められることが必要だということ、これはもう皆さん方、よく議論されているからよくおわかりだと思います。

 そんなところでいきますと、子ども手当の支給ということは、まさに現金給付だけを見れば先進国並みになると思います。ただ、極めてバランスが悪いというふうに私は思っております。財源がない中で子育て支援を充実させるのには、すべての子供を対象とする子ども手当でなくて、対象を絞って児童手当を充実させて、残りの財源を現物給付の充実、ワーク・ライフ・バランスの形成のための施策に充てるべきだというふうに私自身は思っております。

 野田市の保育所の例をちょっとごらんいただきたいと思います。

 こういう紙が先ほどの市長会の意見の後のところにあります。この資料をごらんいただきたいと思います。

 一番上の方を見ていただきますと、表があります。野田市の保育所の、これは公私立合わせてでございますが、運営費は、1の歳出総額の計のところを見ていただきますと、年間で二十二億八千万という数字が出ております。これに対しまして歳入が幾らあるかについてごらんいただきますと、六億一千万ということでございます。そうしますと、差し引きが十六億六千八百万、これが市の持ち出しになっておるという数字でございます。

 それに対しまして、交付税がどれだけ来ているかということ、計算どおりいけばということですが、八億七千万来ております。そうしますと、野田市として現金をどれだけ出しているかということになりますと、七億九千六百万、こういう数字が出てくるわけでございます。まさにこういう持ち出しがあるんだよということを考えていただきたいということでございます。

 これは公私立で異なります。参考として、一カ所当たりの経費として、六十人規模のところを書いてありますが、公立で三千三百万、私立で三千七百万、ランニングコストとして一年にこれだけのものを払わなくてはいけない、こんな形になっているわけです。

 実は、保育所の整備費というのは、安心こども基金等を活用すると、そんなに難しくありません。一時的な支出でございますので、来年度、私ども実は二園、百五十人規模になりますが、私立の保育所の整備をしますが、市の持ち出しは七千百五十万円、これだけでございます。

 さらに、土地がないじゃないかという話がありますが、逆に都市部の方が土地はあいているところがあるということです。何かといえば、私どもの方も、小規模スーパーの撤退してしまったところ、そういうところを活用していくという形にすれば、土地は割に簡単に出てくるということなんです。

 ということになると、問題はこのランニングコストなんだということで、自治体が保育所整備に対してしり込みをするのは、本音の話としては、建設費じゃなくてランニングコストなんだということをおわかりいただきたいということなんです。

 ですから、政府の方は、今回、次世代育成の交付金を改組しまして、地方が地域の実情に応じた子育て支援サービス、待機児童対策を新たに実施するための事業規模が一千億の交付金を創設するというふうに聞いておりますけれども、潜在的な待機児童の数と比べたら、これはこんな金ではとても足りないわけです。年少扶養控除が廃止されるから、その分地方税が増収になるでしょうということですが、それは、結局のところ交付税の中で収入額との差っ引きになってしまいますから、これはもうゼロになってしまう、ほとんど意味がないという話になってしまう。

 私が申し上げたいのは、この表の下の方にございますが、子ども手当というのを、国が出している分を縮小してもらいまして、それをまずは児童手当の拡充に充ててもらいたい。本当に困っている人にどれだけ入っていくのかという話にしてもらいたい。それから、さらに申し上げれば、今申し上げたランニングコスト、一園で約三千五百万かかります。これに充ててもらえるような形に変えてもらいたいということを申し上げたいと思っております。

 次に、もう一つ、地方交付税と臨時財政対策債という変わった話をさせていただきたいと思っております。これは今まで言いたくてしようがなかった話でございますので、きょう、ここで申し上げておきたいと思っております。

 皆さんには釈迦に説法だと思います。小泉改革の成果というのが出ております。国庫補助金の削減と引きかえに財源移譲が行われた、こういう話がありますが、そのときに、実は交付税が大幅に減らされてしまった。

 臨時財政対策債を含めて、具体的に言えば、もう一枚の紙をごらんいただきたいと思います。上の方に書いてあります。十五年と十九年をごらんいただきたいと思います。十五年にそこに書いてある数字の金額が出ておったんです。その数字が、二十三兆九千億出ていたものが十九年に十七兆八千億になってしまった。つまり、税源移譲については行って来いの話ができたんだけれども、交付税が減らされてしまった。この一般財源が削減されてしまったということが、私どもとしては非常に問題だと思っておるわけです。

 ただ、あの当時としては私も仕方がないと思いました、あれだけの厳しい状況の中ですから。ですから、我々も、それは甘んじて受けさせていただきましたし、そんな中で行政改革を一生懸命やってまいりました。

 具体的に申し上げれば、私ども、千三百六十人という職員が十年前におりました。今二百七十人、二〇%減らしております。地域手当というのが、当時は調整手当でした、一〇%というちょっと違反のものを払っていましたが、組合との交渉の中で、我々、血のにじむような話だったと思っておりますが、三%まで下げてきております。

 そういう形でサービスを落とさないようにやってきました。ただ、ことしの地方財政計画を見てください。社会保障費が大幅にふえたことで一般行政経費が大幅に伸びているということで、もうこの努力では賄い切れないという状況になっておるというのが今の状況だと思っております。

 ですから、この数字、もう一度表を見ていただきますと、二十二年度を見ていただきますと、二十三兆という十五年度の交付税総額が二十二年度には二十四兆ということで、一回減ったものがもとへ戻っちゃっている、こんな状況になっているんだということでございます。ことしもほとんど同じ水準になっておるということです。

 それで、今度は下の数字を見ていただきたいと思います。余り出したくない数字でしたが、出しました。というのは、数字を見ていただかないとわからないと思いますので、出させていただきました。野田市の実情です。ごく平均的な中規模の都市の実情としてごらんいただきたいと思います。

 臨時財政対策債と合併特例債を書いてあります。何で合併特例債を書いたかということですが、小泉改革で一般財源が減らされたときに、この減らされた分を補うために各都市で合併に走ってこの合併特例債を使ったんです。一般財源をそれで確保していったという経過があるわけです。だからこれも一緒に挙げさせていただきました。

 これを見ていただきますと、非常に大きな数字が積み上がってきてしまっております。私はこれを見て、私自身がもう既に高所恐怖症になっております。トータルの額、累計を見ていただきたいと思いますが、そこに臨時財政対策債と合併特例債の積み上げたものがあります。将来、交付税措置をされますよという話になっておりますが、それでは、今度は基準財政需要額の中に交付税算入されている今までの借金を見ていただきますと、基準財政需要額の中の、一番下の一番右端を見ていただきますと、六・四%にもなっちゃっておる。いずれ借金に対して借金をしていかなくちゃいけない、こんな話になってしまうんじゃないかというような状況だというふうに思っております。

 私が一番言いたいのは、無駄を省いて一生懸命頑張ってきました。しかし、社会保障費の伸びからいくと、もう限界が来ているという形になっているというふうに思っております。私としては、臨時財政対策債に頼らないような財源手当てというのが必要だというふうに思っておるわけでございます。だから、やれるものからやってもらいたい。子ども手当についても先ほどのような組み替えをするというような形の中で、臨時財政対策債がふえないような形もできてくるんだというふうに思っております。

 さらに、一括交付金について申し上げれば、財源があるのならば交付税の財源としてその充実に充てていただいた方がずっといいはずである。第二交付税をつくるのか、それとも補助金まがいのものでごまかすのかわかりませんけれども、そういうものをつくっても何の意味もない。私はそれは、その財源があるのなら交付税の財源の充実に充てていただきたいというふうに思っております。それでも多分不十分だと思います。それが税の議論だというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたしたいと思います。

 少し長くなりまして申しわけございませんでした。ありがとうございました。(拍手)

中井委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

中井委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。打越あかし君。

打越委員 きょうは、いろいろな御意見をお聞かせいただいてありがとうございました。

 それぞれの、四人のプロフィールを勉強させていただきましたが、本当に第一線でいろいろな形で活躍をされていることを承知させていただきました。

 実は、私も地方議会に十五年在籍をいたしまして、まさに今、根本市長さんからもおっしゃったように、地方の中で、三位一体改革あるいは合併へのさまざまな議論を十五年間一緒に加わって見てまいりました。当時は、本当にお金がないお金がないで、ぬれたぞうきんから乾いたぞうきんになって、乾いたぞうきんはどれだけ絞っても出てきませんよ、そういったことをいろいろ議論している時代もありました。

 そういう中、政権交代が行われて、昨年からことしにかけて、地方の財源、あるいは国、地方関係、いろいろな議論をされてきているわけでありますが、ざっと考えて、二十二年度からこちら、現場で一線に立っておられる三人の首長さん方に率直な感想をお聞きしたいんです。

 いわゆる地方財政のキャッシュフロー、いろいろな方々から、随分よくなったという意見や、将来を考えるとどうかなという方や、いろいろな意見があります。あるいは、直轄事業に対する負担金を昨年、ことしと約二千二百億円ぐらい廃止してまいりました。あるいは、地方交付税については、出口ベースですけれども昨年一兆円余り増額をし、ことしは、積み残し分の繰り越しもありますけれども、出口ベースでは五千億円ぐらいのアップだったという状況であります。さらに、補助金が一括交付金化されていく。

 いろいろな論点は残っているという御意見もありましたけれども、こういうトータルを見て、現場の第一線では、地方自治のリーダーとして、一体、実態はやりやすくなってきたのか。非常にいろいろな、自分たちの創意工夫ができるようになってきた、そういう声も随分聞くんですが、その辺の状況を三人の首長さんからお聞かせいただければと思います。

倉田参考人 ただいまの御質問にお答えを申し上げたいと思います。

 ある意味ではおっしゃるとおりです。平成二十二年の予算編成、そして平成二十三年の予算編成は、それまでと比べまして割とスムーズに編成できたと思っております。

 池田市は十万都市でありますが、平成二十一年度の決算は、おかげさまで八億一千万円の黒字を計上することができました。史上最高の黒字であります。これは、もとより、野田市長と同じように血のにじむような行財政改革をしてきたこともその原因でありますが、政府の地方財政対策の効果が出たものと思っております。

 ただ、将来が不安定です。私は今、子ども・子育て新システム検討会議の基本制度ワーキングチームに所属をいたしておりますが、財源の手当てのない、いろいろな夢のプランがどんどんと出てくるので、果たしてこの流れでスムーズにいくのかということが不安であるということを申し上げたいと思います。

 以上でございます。

露木参考人 私の方は今の倉田さんの御意見とちょっと違うんですが、国の方が余り頼りにならないので、自分で考えるようになったというのが大きな進歩だというふうに思います。

 小さな町は、どちらかというと各県の市町村課あるいは総務省、そういった形でひな形を示されてやるという形が多いんですが、わけがわからないので、自分たちで考えようということを呼びかけて財源捻出などに当たるようになったということであります。

 ただ、私の町の特殊な事情から申し上げますと、そういう交付税に頼らない税収構造をつくろうということで、先端企業の先進研究所を誘致していわゆる不交付団体になったわけですけれども、その後リーマン・ショックが起こりまして、奈落の底におっこっちゃって四苦八苦をしているのが今の現状なんですが、そこでも今申し上げているのは、こういったときこそ国を頼りにするんじゃなくて自分たちで考えようと。そういう中においては、先ほどから借金の話がいろいろ出ましたけれども、借金を余り恐れるな、金利は低い、こういったときこそ将来の税収増を見出せるものについては思い切って借金してでもやろうというのが、今の開成町の姿勢であります。

 以上です。

根本参考人 昨年度から今年度にかけての、予算を編成する中での実感を申し上げさせていただきたいと思っておりますが、今年度の予算編成についても楽でした。なぜ楽だったか申し上げます。補正予算があったからです。

 あの補正予算というのは何だったのかということを申し上げたいと思っております。

 私どもにも交付金が参りました。交付金の裏財源は、四五%は交付税措置しますよ、基準財政需要額に入れますよ、それからあとの五五%は単位費用で見ますよ、だから借金してやっちゃってくださいよという話になりました。ですから、私ども、数千万のお金を十倍近くに膨らませて使っております。見かけ上はそうなっております。

 でも、それは理念的によかったのかということになると、私は決してそうではないと思っております。昨年の補正予算で一兆円を交付税の財源としてことしに回しました。あれがあったからことしの交付税はふえただけであって、あれは本来だったらば別の予算に使うべきものであったんだろうな、それを、財源調整のために、今年度の予算をつくりやすくするためにごまかしたとしか私には思えない、そんなふうに思っておるところでございます。

 以上でございます。

打越委員 それぞれありがとうございました。

 井手先生、地方一括交付金、あるいは地方財源と国の財源のいろいろな今の移行期間でありますけれども、この議論を財政学の方から見るとどういうふうに評価されていますか。

井手参考人 質問にお答えいたします。

 従来の予算の使い方を見ていますと、例えば下水道の整備をするとして、それが各省の予算によって、どのような形で、公共でやるのか農集でやるのかというように、同じような目的を達するのに対して、さまざまな省庁の予算で、異なる予算で同じような事業をやっているという弊害がございました。

 今回のことに関しましては、一応、社会資本整備ということの限定があって、このこと自体は大変残念に思っておりますが、また今後改革があるものと考えておりますけれども、その中で、やはり自由に費目を流用できるようになったということは、財政民主主義というふうに我々は申し上げますけれども、人々のニーズを的確につかまえる、しかも少ないコストでそれを実現するという観点から考えれば、大変大きな前進だったのではないかというふうに考えております。

打越委員 最後の一問にしたいと思いますが、国と地方の関係というのは、かつて神奈川の長洲知事が地方の時代という話をされてからもう既に四十年。なかなか地方の時代は来ないという時代がありましたけれども、今、政府の中では、地域主権三法と言われる、国と地方をできるだけ対等にして、思い切った議論ができる場所をまずはしっかりつくっていこうという方向で進んでいるわけです。

 国と地方の、税財源や政策についても、あるいは交付金の、今回まだミシン目が残っているじゃないかというお話も一部ありますけれども、この国と地方の関係、議論について、それぞれの所感、あるいは今後求めていきたいことについて、それぞれお話をいただければと思います。

倉田参考人 国と地方の関係は、形の上ではよくなったと思っております。

 私は一昨年、国と地方の協議の場の法制化のワーキングチームに参加をさせていただいて、京都の山田知事さん等々と本当に熱心な議論をさせていただいて、感無量の思いがいたしました。でも、せっかく法案ができて提案されているのに通っていないというのが極めて情けない状況かなと思っております。やはり是々非々で、必要なものは必要なものとして成案を得てほしいというのが一点。

 二つ目は、実際に、国と地方の協議の場は法制化されておりませんがスタートをいたしておりますが、その協議の場が機能していない、これが子ども手当の地方負担の問題であろう、このように思っております。

露木参考人 私の場合、国、地方の関係で一番のポイントは、市町村、特に私たちのような小さな町村も、その意識を変えるといったところが一番の改革の根っこだというふうに思っています。だれかに頼んで待っていれば降ってくるというような思考を自分で改めて、自分たちの地域は自分たちでつくっていくんだという、意識を変えないと、建前上、国、地方の協議があっても、単なるおねだり合戦になっちゃうというような危惧を非常に強く持っております。

 あともう一点は、地方といっても都道府県と市町村、二つある。都道府県の知事さん方は華々しい方がたくさんいらっしゃいますけれども、現場の、地域に本当に根差して地べたにはった視点を持っておられるのかどうかというのが疑問に思うことも多々ありますので、地方側のあり方、都道府県と市町村とのあり方、そこを見直していかないと本当の意味の地域主権はできない、こういうふうに思っています。

井手参考人 戦後の日本の財政の歴史を考えました場合に、最も重要な勧告としてシャウプ勧告というのがございます。このシャウプ勧告の中で地方財政委員会というものが提案されまして、その中では、例えば基準財政需要、基準財政収入の算定を地方が行いますということですとか、さまざまな改革の提案がなされました。しかしながら、当時はまだ地方自治体の力が及ばずに、そういった先進的な画期的な改革案を受け入れることが結果的にはできませんでした。しかしながら、それから五十数年の時を経まして、今の地方自治体にはそれにこたえ得る十分な力が身につけられてきたのではないかというふうに考えております。

 今回の国と地方の協議の場に関しましては、これがいつ法制化されるか楽しみに心待ちにしているのでありますけれども、少なくとも、その五十数年前と比べて民主主義の成熟度がどれぐらい成熟したのかということが試される地点に来ているのではないかというふうに考えております。

根本参考人 先ほど私、資料をごらんいただいたときに、余り出したくない資料だけれども野田の実情をごらんくださいということでお見せいたしました。

 なぜそういうことをやっているかということですが、今、国と地方が議論をしているときに、上辺だけの議論しかしていないというのが実情だというふうに思っております。本音がわからないままの話でやっておる。このときに、どうしても、私が一番お願いしておきたいのは、やはり国の公務員なり地方の公務員、これの情報をいかにしてそれぞれ政治の場に携わっている人間に上げさせて、本音はどこにあるのかということをポイントにして議論をしていただきたいと思っております。今やっている議論というのは表でやっているだけであって、何も実態は変わらないようなことをきれいごとだけ言っているというふうにしか私には思えてならないということです。

 以上です。

打越委員 いろいろと地方で意見を聞いておりますと、自分なりのコンセプトや地方自治のあり方について非常に計画を持っている、夢を持っている首長さん方は、やはり財源や権限についてしっかりとこれを主張している。むしろ、ちょっとそこがあいまいな町長さんたちは、なるべく上の方で決めてくれた方がいい、そういう感覚を持っている方々もおられるようですが、最後に上辺のという御指摘もありましたけれども、本当の意味での国の役割、地方の役割、あるいはその役割分担や財源の分担、これからもしっかりと我々も議論していきたいと思います。

 きょうは、御協力ありがとうございました。

中井委員長 これにて打越君の質疑は終了いたしました。

 次に、伊東良孝君。

伊東委員 先ほど四名の皆様から貴重な御意見をいただきました。特に三名の自治体の首長さんには、日ごろから本当に住民の皆さんとともに大変御苦労されているということで、実は私も、地方議会十五、六年、市長を六年ほどさせていただいておりまして、二年前まで地方自治、そしてまた地方の立場でという、そんなお話をずっとさせていただいてきました。本当に、身につまされる思いとその御苦労がよくわかったところであります。

 さて、一括交付金の話あるいはまた子ども手当の話等々出ました。過日、十四日の日にこの予算委員会が、北海道・札幌と福井の方で地方の公聴会ということで、それぞれ御意見をいただく機会がありました。その議事録などを全部読み返してみたのでありますけれども、やはり北海道あるいは北陸の福井というのは、状況が、きょうお三方の皆様のいらっしゃるところとはまた違う、豪雪地帯であり、あるいはまた限界集落をたくさん抱え、さらにはまた、さらに厳しい人口減少あるいは雇用の場の喪失ということが切実な問題として皆様から述べられておりました。

 その地域から見ると、池田市は、私もお邪魔したことがありますけれども、伊丹空港のすぐお隣で、本当に大阪の近郊の町として発展されておりましたし、野田市もまた、千葉県の中で、農村地帯ではありますけれども、おしょうゆの有名なところでもありまして、我々にとってはうらやましいなと思うような町であったというふうに記憶しております。また神奈川も、小さな町とはいえ、露木町長さんには地方分権改革推進委員会の委員として御活躍であったと思います。

 さて、自治体にとって本当に厳しいお話が近年続いてまいりました。TPPもそうでありますし、もちろん子ども手当もそうでありますし、さらにはまた、民主党さんはマニフェストで、年金制度を変える、あるいは後期高齢者制度を廃止する、さらには消費税を上げる検討に入るというようなお話が出てまいりまして、これは先ほどから述べられているように、いずれも自治体及びその住民にとっては大きな、極めて重大な影響のある案件ばかりであります。

 私は、これらの自治体の関係者の皆様のお声の多くが、地方財政、さらにその財政状況、経済、雇用、子育て、あるいはまた教育、さらに、地方に行けば行くほど、医療やあるいは介護、福祉、教育というものに大きな問題点を抱えているということを聞かされているところでもございます。

 これらはいずれも、自治体だけでは解決のできない、国やあるいは都道府県が大きくかかわらなければ解決のおぼつかないような大問題ばかりであろうか、このように思う次第でもあります。

 国もいよいよ財政改革はここが正念場、さらにはまた、一通りの合併を終えたそれぞれの自治体が、これからが本当の意味での生き残りをかけた闘いが始まる、このように思うところでございまして、その自治体の将来方向、あるいは国の財政のあり方と地方の財政のあり方、ただいま御意見をお聞きしたところでありますけれども、改めて、一言で結構でございます、自治体の三首長さんの、国の財政のあり方と地方の財政のあり方についての基本的な御認識をまずお伺いしたいというふうに思います。

倉田参考人 大変難しい御質問であります。

 一つは、もう国に甘えてばかりはいられないというふうに思っております。したがって、市民の意識改革からスタートをして地方財政の改革をしていかなければならない、地方はそのような思いで、先ほどの野田市長さんと同じように、職員数の削減、職員の給料の削減、あるいはいろいろな意味の民間の力を活用しながら頑張っているところであります。

 したがって、国の方でも、市民、国民からの信頼をかち取れるような財政の将来展望をお示しいただければありがたいな、このように思っております。

露木参考人 私の方からは、今の倉田市長さんの話ともオーバーラップするところもありますけれども、大変だということがどうしても先に出ますけれども、私なんかは、運営をしていて、やれることはごまんとあるわけですよね。それを本当に全部やっているのかどうかというところを、すべての市町村、やれば幾らでもありますよ。ほんのちょっとした挑戦、ほんのちょっとした慣例破り、それをやるだけで、やれることはごまんとありますので、まずそこにチャレンジするということがイの一番の取り組むべき課題だと思います。

 もう一つ、国、地方の関係で申し上げますと、やはり消費税、特に地方関係でいいますと、地方消費税を中心とする税財政の体系にするのが望ましい方向だというふうに私は思っております。

 というのは、消費税というのは、その地域で消費されたところに税金がバックされてくる仕組みであるわけです。そういう仕組みをより充実させることによって、よい意味の地域間競争が促される。

 要するに、神奈川県なんか、必ずしも地方消費税の額は多くありません。というのは、ほとんどが大都市東京に吸い上げられてしまっている。そういうときに、消費税中心の体系になったときに、神奈川県としては、何としてでも地域内消費を起こそうという方向に投資を集中させるインセンティブが働く、こういうことが本来の意味の地域主権につながっていくというふうに思っておりますので、地方消費税という問題が今後大きな課題になるというふうに思っております。

根本参考人 財政の話ということになれば、国の財政破綻は目に見えておるわけでございまして、それを何とかしてもらわないといけないという話だと思っております。

 何かといえば、地方自治体も、先ほど言いましたように、交付税という形の中、補助金という形の中でそこにぶら下がっちゃっているわけですから、国が破綻すれば地方も破綻してしまうという話になるわけですから、そこの話をしっかり議論していただかないと困るということをまずは申し上げておきたいと思っております。

 ただ、それではおまえたち、交付税にばかり頼っているのかと言われてしまいますので、少しだけお話をしなくちゃいかぬと思いますが、新しい公共という言葉があります。

 今、政府で進められている新しい公共という言葉を、私はそのままいいというふうには思っておりません。今の新しい公共というのは、どちらかといいますと、役所がやっていたことを民間に任せていきたいという形の中の新しい公共のように思えてならない。

 私どもとしては、地方自治の中、まさに市町村単位でない、その下の単位での地域自治の形の中で、どういう形で仕事ができてくるか。そこの中へ、少しお金はかかってもいいから、ある程度のお金を入れていくことによってそれ以上の効果が上がってくる、こんな形にすることによって、今までの行政改革以上のプラスの効果を我々は上げていかなくちゃいけない、こんなふうに思っております。

 ただ、我々がやっていくことでは無理だということは、今御質問の中にもありましたように、いろいろな制度改革がこれから行われていきますが、その中で、どうしても社会保障関係のお金については、上がってきてしまう分をどうするかといったら税でやらなきゃしようがないという話になろうかというふうに思っております。

 以上です。

伊東委員 地方がこれから力をつけていく、もちろんそのアイデアも努力もあろうかと思います。

 そこで、新年度予算、鳴り物入りで盛り込まれました地域自主戦略交付金、いわゆる一括交付金について、それぞれ御意見をちょっとお聞きしたいのであります。

 これは、いわゆるひもつき補助金を段階的に廃止し、地域の自由裁量を拡大する交付金、こう位置づけられているわけでありますが、二十三年度、これは初年度ということで、五千百二十億円計上されたところであります。

 先ほど、井手先生ちょっとお話がありましたけれども、これが予算削減の方便であってはならない、こういうお話でありますが、実際は、平成二十二年度、この投資的公共経費二兆四千四百四十六億、これが、この一括交付金を含む同種の資金は、予算は二兆三千四百八十三億ということで、九百六十三億円の減額になっているわけであります。国から地方への補助金は、今年度で実は二十一兆円、このうち社会保障や義務教育を除くこの投資的経費は三兆三千億あります。

 二百二十一項目が一括化の対象となったのでありますが、結局、八省庁から九項目の五千百二十億にとどまったわけであります。さらに、ここから沖縄分三百二十一億、北海道分二百六十九億、離島分百三億、奄美分三十三億がこの五千百二十億から除外されます。そうなりますと、四千百二十四億が四十五都府県で配分される。しかし、これが、今予算審議をされている最中であっても、その明確なる配分の決定方法も決定時期も決定額もまだ示されていないというところになるわけであります。

 さらに、この中の九割が今年度は継続事業に充てられるということでありますから、実際、ひもがつかない自由な金というイメージでは全然ないわけでありまして、さらに、このわずかに残った一割のものもこの九事業の中から選択をしなければならない、こういうことに実はなるわけであります。

 まさに、一般的に、自治体も含めて、我々もそうでありましたけれども、ひもつき補助金を廃止して一括交付金だというものでありますから、もう少し自由度の高いもの、あるいはもう少し自治体にとって使い勝手のいいもの、こう思ったわけでありますけれども、今、都道府県議会、いよいよ議会が始まっておりますけれども、残念ながらこれについての論議は全くできないという状況にあるわけであります。

 また、本当に、これがちょっと私も驚いたんでありますが、一月四日、菅首相が伊勢神宮を参拝したときに、記者団に囲まれて、記者に、春の統一地方選挙に向け、五千億を超える一括交付金を実現した、各県が自主的に使うことのできる画期的なものだ、統一選で民主党の成果を伝えて、大きな支持をもらいたい、こういう発言をされて、これは産経新聞でありましたけれども、民主党の苦戦が予想される統一地方選対策であったのではないかな、こんなことが言われているわけであります。

 この実態を今多くの自治体の関係者は失望して見ていることだというふうに私は想像するのでありますけれども、千葉県の市長会の根本市長と池田市の倉田市長には、どのようにこれをごらんいただいているか、ちょっとお伺いしたいと思います。

根本参考人 今回の一括交付金は、まさに問題点として指摘された点があるわけです。

 私どもが一番心配しておりますのは、補助金削減の種に使われる、それから交付税削減の種に使われるというところが一番心配だということでございまして、これから県の方に今回は回ってまいります。来年は、今度は市町村だという話でございますので、県の方でどういうふうな動きになってくるか見てみないといけないと思っておりますけれども、今のままいけば、どちらかといえば補助金削減の種に使われてしまっているというふうな話になるのかなというふうに思っておりますので、そこら辺をこれからしっかり皆さん方に議論していただかないといけないだろうなというふうに思っております。

 以上でございます。

倉田参考人 民主党政権、本当にすばらしいマニフェストのもとに大勝されまして、国民から大きな期待があったことは事実であります。

 ただし、残念なのは、やはり言葉が先行してしまっている。だから、国民あるいは地方自治体からは非常に大きな期待を寄せているんですが、どうもその次の姿が見えない。野党の先生方にも、ぜひ、期待されていることについては一つ一つ形にしていただける御協力もいただいたらありがたいかなと思っておりますが、言葉倒れになって、最後は方便という言葉で済まされたらつまらないな、このように思っております。

伊東委員 時間が参りましたので、最後にさせていただきますけれども……

中井委員長 もう質問は。まとめていただきたい。

伊東委員 そうですか。わかりました。

 まさに今、倉田市長お話しのとおり、これは鳴り物入りで始めるんですけれども、その財源がなかなか、しっかり確保しない、あるいはまたその運用方法、さらにはまた意味づけというものがなかなかしっかりしない。これを来年一兆円に拡大するんだという話がありますけれども、果たしてどんなことになるかという思いが正直言ってしているところであります。

 ぜひ、地方の声をしっかりと上げていただいて、やはり国の政策にこれを反映する、そして国は常に地方のことを意識してやらなければならない、コンピューターの改修の話もシステム改修の話も含めて、私どももこれから力を入れて頑張ってまいりたい、このように思うところであります。

 四人の皆様、本当にきょうはありがとうございました。

中井委員長 これにて伊東君の質疑は終了いたしました。

 次に、富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之でございます。

 四人の参考人の皆さん、きょうは本当に貴重な御意見をありがとうございました。

 この予算委員会で、二月の三日、十日と子ども手当について集中的に質問をさせていただきました。子ども手当法案が出てくるわけですが、子ども手当について大きな問題があるなということがはっきりしてきました。

 民主党の皆さんは、もともと児童手当とは違うんだ、目的、性質も違って、新たに子ども手当をつくったんだというふうに言われたんですが、審議の中でこんな文書が出てきました。「子ども手当と児童手当は、子どもの育ちを支援するという面では、共通する面があるほか、いずれの制度も家庭に対する現金給付施策であり、児童手当のこれまでの実績を基礎としながら、子ども手当制度を構築してきたところである。」

 児童手当を拡充したものだということを、民主党の皆さん、民主党政権も認めてきてしまった。ここに一番大きな問題があると思いますし、二十二年度の子ども手当の支給に関する法律、そして今回二十三年度の法律が出てきているんですが、いずれも時限立法。恒久財源を手当てしたというふうに言われているんですが、残念ながら、まだそこまでいっていません。今回、地域活性化予備費の中から一千五百億もつなぎ資金で使っている。とても恒久財源とは言えない。ここに一番問題があると思うんですね。

 特に三人の市長さん、町長さんから、今後どうなるんだというところで御指摘ありましたけれども、ここをきちんとしない限り、この六月の支給に向けていろいろな混乱が出てくるのはやむを得ないことだと思います。

 今の国会の情勢を見ますと、私は、個人的な意見ですけれども、子ども手当法案は通らないと思います。そういった場合に、特に倉田市長と露木町長から混乱するというお話がありましたけれども、私、先日の委員会で、もう通らないんだから今から児童手当に戻す準備をしたらどうだという質問をしたんですね。

 特に倉田市長さんの方から、システム改修に時間がかかる、前々年度の所得把握に大変だ、また事務方としての事務の煩雑さがあるという三点、御指摘ありました。そのとおりだと思うんですが、通らない、通らなかったところから準備するんじゃなくて、今からそういう準備というものはできないものでしょうか。倉田市長と露木町長にちょっとお伺いしたいんですが。

倉田参考人 今から準備をしろとおっしゃれば、準備はいたします。

 ただ、それは余りにも国と地方の関係としてはおかしいのではないかなと。我々は、先ほど言いましたように、予算関連法案というものは、関連法案、いわゆる関連条例が先なんですね、地方自治体の場合。条例が通ってから予算措置をするわけで、今までの政府の仕組みが、自民党安定与党の中で動いてきたからなんでしょうか、セットメニューで同時施行になっているところの問題が大きいのではないかなと思っております。

 事前に準備しろとおっしゃるならしますが、それはやはり、この場で決めて我々に御指示をいただかないとできないことであります。

露木参考人 準備するかどうかは、まさに市町村側の自主的な判断で決めさせていただきますけれども、今既に、どんなに公明党さんのお立場からいって問題が余りにもあり過ぎる制度であっても、もう既にもらっている方がいらっしゃるわけですね。もらっていたものを突然ゼロにして果たして成り立つのかというところは当然あるわけですから、ソフトランディングを考えるのが、私、先ほど申し上げましたように、梶山静六先生の例を引いて言いました、激変緩和が政治なんですから、やはりステップ・バイ・ステップでソフトランディングを図るということに能力を集中させていただきたい、これが要望であります。

富田委員 しっかり受けとめて対処していきたいというふうに思います。

 野田の根本市長にも先ほど来厳しい御意見をいただいていますが、実は昨年のこの委員会でも子ども手当について質問しました。そのきっかけは、実は、根本市長が昨年の一月、御地元で行われた市政報告会に参加させていただきまして、子ども手当のあり方について市長の方が報告されたものをこの席で紹介させていただきました。

 手当は全額国費負担、現物給付については現場を一番わかっている地元の自治体に任せるべきだ、それぞれの自治体で何が必要かというのは全然違うんだから、国が一律のメニューでやるのはおかしいんじゃないかということを質問しましたら、当時の総務大臣、原口さんは、根本市長のおっしゃるとおりだ、来年度からはそういう設計をしたいと言ったんですね。でも、やらずに、また時限立法になってしまった。

 根本市長の政策発表を聞いて、私もその質問をするつもりになったんですが、残念ながら、こういう単年度のを続けている限りは、住民の皆さんも安心して受け取れませんし、首長の皆さんもどうなるんだと。先ほど露木さんが、方向性が全然決まらないとおっしゃっていましたけれども、そういうところは政府・与党として私はきちんとやるべきだと思うんです。

 やはり手当は全額国費負担、そして現物給付は現場でというのは、根本市長が先ほどずっと言っていただきましたけれども、その考えはほぼ首長さんたちの間で変わらないと思うんですが、そこはどうですか。

根本参考人 交付税の仕組みで少し混乱して、各首長さんがいろいろなことを言っている部分があるのかと思っておりますが、間違いなくこの部分だけは全額負担を国費でやっていただいて、今度は現物給付についての支援をしっかり充実していただきたい。この点がやはり一番大きなポイントになってくる。これは市町村がぜひともやらなくちゃいけない仕事だと思いますが、市町村だけではできないと思っておりますので、ぜひとも、そこら辺を皆さん方でよく考えていただければありがたいというふうに思っております。

富田委員 あと、国と地方の協議というお話も先ほど来皆さんからありました。私もこの委員会で質問したんですが、毎年暮れに地方財政審議会が意見を出しますよね。その意見の中で、子ども手当については国が全額負担して、現場は地方に任せろというのがずっと出てきているのに、その後に四大臣合意とか五大臣合意で今回も地方負担を求めるんだということを決めて、最終的に、地方財政法二十一条に基づいて地方の意見も聞きましたというふうに総務大臣とかが言われるんですね。

 ただ、この地方の意見を聞くというのが形骸化しちゃっているんじゃないか。本当に地方の皆さんの意見を聞いた上で、私は子ども手当法案で例えば地方負担を求めるなら求めるというふうにすべきだと思いますし、もともと、民主党の皆さんが子ども手当法ということで政権をとられる前に出していた法案では、児童手当法は廃止すると明確に書いてあったんですね。それを残したまま地方負担を求めるというのは、やはりちょっとやり方としておかしいんじゃないかというふうに私たちは考えています。

 その点について、今後、二十四年度以降の制度設計について地方と十分協議するというふうに言われているんですが、先ほど根本市長から形骸化しているという話もありましたし、国と地方の本当の協議のあり方ということについて、三人の首長さんから、どうあるべきだという御意見がもしありましたらぜひいただきたいと思います。

倉田参考人 まず、その前に、先生にお願いがございます。

 この子ども手当法案は通らないと思うと。まあそうおっしゃらずに、ソフトランディングができるような形でおまとめをいただければありがたいなと。これは、与野党問わず、必ず現場が大混乱を起こします。それをきょうはお願いに来たわけでありますから、御理解いただきたいと思います。

 それから、地方の意見を聞く。これは実は、二十三年度制度設計に当たって、私は全国市長会を代表して、地方六団体の声を細川大臣に聞いていただきました。二十二年度のときは、なかなかそういう場もありませんでした。聞いただけです。全額国庫負担でなければ地方は従いませんよ、こう申し上げたのに、ああそうかで終わって、結果、出てきた法案は去年と同じ。それは違うだろうと。

 そうすると、国と地方の協議の場は形骸化しています。この国と地方の協議の場の法制化のときの最大の問題は、地方側に拒否権があるかどうかです。これは大変な問題です。

 地方が拒否権を持つと、この場は要らなくなります。だから、そうではないわけで、ではどういうことかというと、国と地方が本当に胸襟を開いて制度設計の段階から組み立てていくわけですね。制度ができてから、さあ地方はどうだ、いや、これは承服できませんよ、では仕方がないよなといってそのまま出すのでは協議の場は要らないので、これから、国と地方のあり方というのは、本当に時間をかけて法案に至るまで詰める、それが本来の協議だ、このように思っております。

露木参考人 今回の子ども手当をめぐる国と地方の協議の場の一番のポイントは、財務省対策だというふうに思います。財務省を説得できるかどうかなんですよ。そこを政治の側ががつんと言って、これは全額国だというリーダーシップが発揮できない中で幾ら国、地方の協議と言っても、形骸化されるのは当たり前のことでありますので、そこの部分のところをまず見直していただきたい、こういうふうに思います。

根本参考人 実は私、市長会の会長になったのはこの二月一日なものですから、余り、国と地方の協議の場の中で市長会等がどういう議論をしているか、どういう資料が出されているかということを正確に存じ上げておりませんので、もしかしたら間違ったことを言うかもしれませんが、先ほどのシステムの問題にしましてもそうなんですが、それから私が、先ほどごらんいただきました、市の実情としての現物給付はこういう格好になっているんだよというお話をさせていただきました。そういう点について、本当に資料が出てきて、ではこれをどうしたらいいのかという議論をしないまま、地方負担がいいんだ、だめなんだという話をしているだけでは、余りいい話にはならないというふうに思っております。もうちょっと生産的に、ありのままの姿を見ていただいて、さらけ出した中で議論していただけるということが私は一番ありがたいのかなというふうに思っております。

 それから、これで成立しないときどうなのかこうなのかという話が先ほどありましたが、その点について私の感じを申し上げておきたいと思っておりますが、私自身は、そうだからこそ、やはり早目に方向性を出していただいて、そんな中での対応をするということが一番必要だというふうに思っております。

 子ども手当自体が、間に合わない、間に合わないといって大騒ぎしながら何とか間に合ったというのが去年の実情でございまして、どっちにしても、自治体は何とか対応するという努力はするつもりでございます。だけれども、方向性が明確でない限りそこの点が難しい、私はそう思っておりますので、そこら辺の方向性を早くつけていただきたいというふうに思っております。

 以上です。

富田委員 私も、児童手当の拡充という形であれば我が党も納得できると思うんですが、そのあたり、大幅な修正案が出てくるのか、これから法案の審議が始まりますので、その点、しっかり議論していきたいと思いますし、露木参考人がおっしゃっていただいた財務省対策というのは、そのとおりだと思います。私も財務副大臣を経験しておりますので、ここをしっかりやらないと。与党の皆さん、しっかり頑張っていただきたいなと思うんです。

 最後に、地方消費税、井手先生の方からお話がありました。地方消費税が大事だ、私もそう思うんですが、実はこの委員会の中で、社会保障と税の一体改革というのが今後問題になってくる、与謝野大臣が、地方消費税をふやしてくれという意見は私の耳には一切届いていないと言われたんですね。

 そうなると、多分、方向として地方消費税の拡充という形にはなかなかいかない。でも、露木町長のお話を聞いても、やはりそこが肝だというふうに思いますので、先生、今これから社会保障と税の一体改革の議論に行く中で、先ほどの先生の地方消費税の議論というのはすごく大事だと思うんですが、ぜひ政府側にもう一歩、御意見をいただければと思います。

井手参考人 本日お配りしました資料の後ろの方に参考資料というのをつけております。一番最初のページをごらんいただきますと、とても驚くべきデータがここにあらわれているんです。

 これは何かと申しますと、人間を信じられるかという質問に対して、日本人は先進国の中で最も人間を信じられないと答えているんですね。先ほど現物給付のお話というのがたびたび出ておりますけれども、実は、現物給付をあまねくすべての住民に提供している国ほど人々の信頼度が高いという分析がございます。

 このような観点から申し上げれば、地方の現物給付を拡充することはもう決定的に重要なんですね。これは財政赤字云々の問題じゃなく、社会の、人間の問題であります。そのときに、この現物給付を拡充する財源として何が最もふさわしいのかというのは、先進各国を見ればわかりますように、あらゆる人が低い税負担で負担をできるような税金なんです。なぜかといえば、これは、豊かな人も貧しい人もあらゆる人が税を負担する、豊かな人も貧しい人もあらゆる人がサービスを享受できる、そういう社会こそ信頼度の高い社会になっていくからであります。

 日本の場合、先ほど申し上げましたように、住民税の都道府県の格差が大変大きゅうございますので、その意味では、地方消費税を拡充することによってこういった社会をつくっていくことは極めて大事なことではないかと私は考えております。

 以上でございます。

富田委員 時間になりましたので、終わります。

 四人の先生方、本当にありがとうございました。

中井委員長 これにて富田君の質疑は終了いたしました。

 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 まず、きょうの四人の参考人の皆さんの貴重な御意見、ありがとうございます。順次お一方ずつ、お伺いさせていただきたいと思います。

 まず、倉田池田市長にお伺いいたします。

 平成の二十二年並びに二十三年度の子ども手当をめぐって、国と地方のさまざまな協議の現状もお教えいただきました。そして、本来は国庫負担であるべき部分に相変わらず地方の負担が残っているというのも、これも私も同様に問題であると思います。

 たしか去年の協議の場では、子ども手当のこれ以降の増額は現物給付ということに重きを置いて行っていくというお約束もあったかと思うんです。これも、実は今回の給付では、現物給付の拡充のための五百億というのは取り分けられておりますが、子ども手当全体三兆の膨大な中のほんのちょっとということで、私ども社民党では、むしろここの五百億を、現金給付の上乗せをするのではなくて、せめて去年の約束のように地方の現物給付に使えるお金にしてはどうか。

 実は、五百億のうち、新たなサービスができる額は八十億にしかすぎませんで、いろいろこれまでやっていたものをそこに入れ込んで五百億としているだけで、非常に見ばえは、五百億あるよというけれども中身は八十億という、膨らまし粉のような現物給付になっておるわけです。

 私どもの考えとして、ここを大幅にふやすことによって、例えば、今子供の貧困問題が大変問題になっておりますし、自治体で独自に給食費の支援に充てたり、もろもろの対策ができることと私どもは考えるわけです。保育園関連の充実もまたいいと思います。

 この点に関して、去年の約束どおり、さらにもし続けるのであれば、現物給付の充実に力点を置くべしというふうに私どもは考えますが、倉田市長はどうでしょうか。

倉田参考人 おっしゃるとおりでございまして、この制度を継続される場合は、やはり現金と現物ということを明確に分けながら財源の手当てをしていただくことが必要だと思っております。

 ただ、民主党さんの基本的な考え方で私も間違っていないと思っているのは、すべての子供たちを社会全体で支えるという、新しい子ども・子育ての新システムを構築されようとしているところについては理解をしております。

 そして、その作業に加わらせていただいておりますが、これは平成二十五年をスタートとして、実はこの段階で子ども・子育て新システムの法案が提案をされているはずでありました。民主党の皆さん方は会議が好きなもので、約十回、十回以上ですね、会議が行われておりますが、まとまらないんですよ。

 非常にまじめに意見を聞いていただくのはありがたいんですが、これはさっきの国と地方の協議の場と逆ですね、意見を聞き過ぎてしまうとなかなかまとまらない、この辺に問題が恐らく内在しているのではないかなと。早く子ども・子育ての新システムができますと、まさにその場面で現金と現物の方向性というのが示されてくるのではないかな、このように思っております。

阿部委員 私どもも、子ども手当を当初スタートさせた当時、与党におりましたし、きょうの井手先生のお話のように、所得制限なく子供の育ちを支援するものとして賛成もし、やってまいったわけであります。でも、問題は大きく残されていて、そこをどう改善するかという今の倉田市長のお話にも賛同いたします。

 その上で、しかし、子ども・子育て新システムの中の極めてグレーな部分は、実は、市町村が現金給付と現物給付を決められる、あるパイの中で、こっちの現金給付、こっちの現物給付を市町村が決められるとしてしまいますと、国が国庫負担でこれだけの給付をやるんですよと約束していたことも霧散しかねない。

 逆に、会議は踊る、されど結論は出ずということで、私は、子ども・子育て新システムをまずやるのであれば、少なくとも国は子供たちに一律に給付する額の責任を明確にした上で次に進まないと、こんなことを首長に投げられたらたまったものではないと思います。各御家庭の事情があって、うちは現金がいい、いや、うちは現物がいいとなって、中間で引き裂かれるのが首長というのは、余りにも私は混乱の要因だと思います。

 倉田市長として、やはり国による現金給付のきちんとした額の設定は必要であるとお考えでしょうか。(発言する者あり)私は、今こっちでそれが地域主権と言ったが、違うと思います。いろいろなことを、国のやるべき責任を明確にしないで地域にぶん投げたら、混乱のもとであると思います。御意見を伺います。

倉田参考人 お答え申し上げます。

 あくまで、現金給付は国、そして現物、サービス給付は地方がやるというのが基本原則で、新システムの会議の中でもそのような方向で進められていると思っておりますし、私はこの会議で地方が拒否権を発動させていただこうと思っております。地方の声を十分にお聞き願えないのなら、新しいシステムができても地方は協力できない、それぐらいの覚悟で臨ませていただいております。

阿部委員 明確な御意見をありがとうございます。

 次に、露木開成町長に伺います。

 開成町は、アジサイなどの観光でも露木さんが町長になられてから大変に頑張っておられて、先ほど来のお話でも、自治体がアイデアを持って臨めばいろいろなものが打開されると力強く伺いました。

 そこで、お伺いしたい点ですが、システム改修等々が大変に自治体に負担を及ぼしているということのお話もございました。先ほど私が倉田市長にもお尋ね申し上げましたが、社民党としては、実は、子ども手当の今年度の支給は、三歳前を上乗せするのではなくて、一万三千円で固定するというふうに考えております。伺いますと、もう自治体が三歳前二万円ということを準備しているから大変混乱が多いと。でも、十八歳まで見れば、新政権が発足したときに、子供に対してこれまで薄かったいろいろな給付を高校の無償化も含めて充実させて、トータルで見れば私は今までよりも子供に対する施策は前に進んだと思っておりますので、この二万円に上げないで一万三千円というところのシステムは大きに負担なものであるかどうか、私が現場がわかりませんので、露木町長にお伺いいたします。

露木参考人 まず最初に、私の町がアジサイの町だということを言っていただきまして、ありがとうございます。今、あじさい祭の前に、古民家でひな祭りをやっておりますので、どうぞおいでいただければと思います。

 今のお話なんですけれども、私、コンピューターメーカーじゃないので、具体的なことはわかりませんけれども、それほど金額はかからないと見ています、抜本的に見直すわけではないんですから。それでも数百万のオーダーはかかると思いますが。

 今、阿部先生の御提言のような趣旨を、私は冒頭の問題提起でさせていただいたんですよね。要するに、支給金額を下げて、すべて全額国庫負担にして、地方に財源を一回与えてみてくださいよと。それで、どういう施策を打つかというのをやはり信用して見ていただきたいということがありますので、二万円ではなくて一万三千円というのも有力な一案だというふうに思っています。

阿部委員 ありがとうございます。

 次に、井手参考人にお伺いいたします。

 地方消費税の重要性を御指摘いただきまして、実は社民党は、かつての社会党の自社さ政権時代に、三から五%の消費税の引き上げのときに、批判も多かったことでもありましたが、しかし、地方消費税を一%というところを、五のうち一を当初に確定した、いわゆる地方財源としての確立をしたという意味で、私は改革というのは前向きであったと思うわけです。

 それで、これから、各自治体間のさまざまなばらつきがある中で、先生のおっしゃるように、地方交付税に重きを置いたとしても、自治体間のばらつきを平準化していくための地方交付税交付金の役割というのは、私は今の日本の国土を見ていると依然として重要であると思いますが、そこについての先生の御意見をお願いいたします。

井手参考人 御指摘のとおりでありまして、私も交付税の役割は極めて重要だと考えております。

 ただ、一点だけ申し上げたいと思いますのは、地方消費税というのは、先ほど来申し上げておりますように、税収のばらつきが大変少のうございます。基本的には、税収をかさ上げするというイメージではないかと思います。これに対して交付税が加わり、既存の住民税、市町村であれば固定資産税が加わってくる。最後に、より豊かなサービスを出したいと思う自治体は住民税をさらにマージナルにいじっていけばいいわけでありますから、交付税と地方消費税による底上げというのがセットになるということが重要ではないかと私は思っております。

阿部委員 大変明確な御答弁をありがとうございます。

 最後に、野田市長に伺います。

 きょうは、保育所の運営交付金のことをお取り上げいただいて、大変心強く思いました。

 と申しますのは、私は小児科医なんですけれども、子供の施設をつくるところにかかるお金じゃなくて、運営していくためにかかるお金の方が、例えば一つの園で三千万円とおっしゃいましたが、大変に地方にとっては負担が大きいと思います。

 子供は、三つ子の魂百までとも申しますけれども、本当に手間暇かけて温かく育てられれば、この国の未来を担える子たちになると思いますが、この運営に関する、交付税交付金の中で一般財源化されましたけれども、これからの国の役割についてはどのようにお考えでしょうか。

根本参考人 私、先ほど子ども手当の施策のイメージ図の話でさせていただきましたが、実は一つには、先ほども申し上げたんですけれども、私自身は児童手当の拡充というのは絶対必要だと思っておるんです。なぜかといいますと、今の所得制限の話の中で言ったら、非常に高い金額の中で決まってきておるわけですけれども、金額的には一万円とかそういう数字になるわけです。

 今実際に働いている人の現場の中でいきますと、私どもは公契約条例というのをつくりましたけれども、その中でも時間八百三十円という単価を設定しています。時間八百三十円というのは、年収にすると二百万円以下になってしまうわけです。そういう人たちに対しては、もっとここの点は充実しなくちゃいかぬということで私は申し上げました。

 ですから、子ども手当のところを児童手当の拡充に持ってきてもらいたいということを申し上げながら、さらに私たちといたしましては子育て支援のために、先ほど、済みません、私はもしかしたら間違えて言っているかもしれません。平均的に言いますと、一園当たり年間三千五百万かかります。六十人規模です。ですから、そこのところにこの経費を当て込んでいく、この子ども手当分を当て込んでいただければ、私は十分そこら辺ができていくんじゃないかと。

 私、先ほどの質問に対して明確に申し上げませんでしたけれども、そういうところの修正がしっかりなされてくるということが必要なんじゃないかな、私はそんなふうに思っておるところでございまして、我々としては、何としても、ここら辺の我々が持ち出している分、これは一般財源化して交付税上は入っていますよというんですが、これだけ持ち出しているんだよというところをしっかり御理解いただきたいと思っております。

阿部委員 明確なデータでの御説明、そして公契約条例などの先進的なお取り組み、きょうの御提言、ぜひ生かしていきたいと思います。

 終わります。

中井委員長 これにて阿部君の質疑は終了いたしました。

 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 本日は、四人の参考人の皆様から貴重な御意見を賜り、ありがとうございます。

 最初に、井手参考人から御質問させていただきます。

 冒頭のお話の中でも、一括交付金化の点について、今後の課題ということで、交付金化に名をかりた予算削減とならないことということでの懸念のお話をしておられました。

 これは、例えば七十一兆円の大枠を決めた財政運営戦略の際にも、要するにある意味では国と地方と大枠を決めるという中で、地方財政どうなるのかという懸念の声があったわけですね。この財政運営戦略でも、「地方財政の安定的な運営」という部分に、「国は、地方財政の自主的かつ安定的な運営に配慮し、その自律性を損ない、又は地方公共団体に負担を転嫁するような施策を行ってはならない。」と。これは、地方財政法の二条をそのまま引用するような形で、国の地方財政への責任をきちんと置いたものであります。

 そういう点で、こういうのを踏まえて、一括交付金化が、ここでも述べているような、地方財政法二条の趣旨に反するようなものになりはしないのか、そういう懸念について一点お聞きしたいのと、今後、再来年度以降で市町村への一括交付金化が進められます。そういったときに、どうやってそういった、削られるようなことになりはしないかとチェックしていくのか、そういうことについてのお考えがあれば、ぜひお聞かせいただけないでしょうか。

井手参考人 ありがとうございます。

 一応、地方の財政を考える上で最も重要な視点は、一般財源主義ではないかと思います。そういう観点から申し上げますと、今回の地方財政対策の中では、別枠加算でありますとか、あるいは二十二年度からの繰越金等々で一般財源としては確保されております。このように考えれば、一応総額としては今年度はとりあえず確保されている。それは、先ほどお話があったように、交付金自体の額は多少減ることはあったとしても、地方財政対策全体で見ればうまくフォローされているわけです。問題は、こうした措置がこれ以降続くのか続かないのかということではないかと思います。

 先ほどの二つ目の質問に関連してまいりますが、結局は、きょうのいろいろな議論のすべてに関連することでありますが、限られた財源の中でパイの奪い合いをすれば、どこかにその問題のしわ寄せが来ることは明確なわけです。そういう観点からは、全体のパイをふやすという議論を他方でやりながら、そして、どこにどのような資金を配分するのかということを議論するのが大切ではないかと思います。そうしなければ、七十一兆円の枠というのは大変な問題を地方財政に与えるのではないかというふうに考えております。

塩川委員 ありがとうございます。

 次に、根本参考人にお尋ねいたします。

 先ほど、公契約条例のお話がございました。その点についてお尋ねしたいんですが、私どもも、国に公契約法を求め、また地方自治体でも公契約条例の実現ということで働きかけをしたところで、全国最初に公契約条例を制定した野田市ということが大きく知られるところでございました。

 私も、昨年の国会で原口大臣に、この野田市の条例の前文を引用いたしまして、国としてどうするのかという問いをいたしました。その際に、原口大臣の答弁は、国、地方広く検討して考えていきたい、こういう答弁にとどまったわけですけれども、この点で、根本参考人に、国に公契約法の整備を求めるということは、市長会でも訴えておられましたし、何よりもこの条例の前文にも書いておられた。国に整備を求めるというその趣旨について、ぜひこの機会にお聞かせいただけないでしょうか。

根本参考人 公契約条例の中で私どもが定めております単価というのを申し上げたいと思います。

 この単価というのが、これは公共工事の場合でございますが、二省単価の八割というものを使っております。二省単価自体が、この八割というのがどうしても出さざるを得ない数字になりました。

 何かといいますと、これは、平均的な労働者についての賃金としては幾らになるかということを言ったときには、二省単価の数字を使えなかったという話があります。最低賃金を我々は決めましたので、平均的な単価が二省単価であって、我々が決めたのは最低賃金を決めておりますので、どうしても二省単価を決められない。そうなりますと、適正な単価というのは、やはり国の方である程度オーソライズしたような単価を決めてもらいませんと、我々が二省単価の八割と決めてしまうと、次の年にはそれが負のスパイラルになってしまうということがありますので、我々としては、できたらこれはやはり国で決めていただかないといけない、そんなふうに考えております。

 ただ、もう一つ申し上げたいのは、今度は、公共の現場で働きます業務委託等で、もしくは指定管理等で働いている人の皆様方の賃金という形になったときには、この話については最賃法との議論を相当しっかりやらなくちゃいけないという話になろうかと思っております。なかなか国の方でそこら辺をできるかどうかわからないと私は思っておりますので、この部分については、やはり地方で積み上げていく実績の中で国が法律をつくっていただければありがたいと思っております。

 公共工事については、もう法案も幾つかの党がまとめたという形ででき上がっているということも聞いておるわけでございますので、ぜひともそこら辺を法律としてまとめていただければありがたい。いろいろな御意見はあろうかと思いますが、お願いしたいというふうに思っております。

塩川委員 今お話がありましたように、国のレベルでも、特に参議院の方で、公契約にかかわっては公共事業報酬確保法案というのが、一時出そうという話があったんですが、少し頓挫しておりまして、そういう点でも国側の努力というのを政府に対してもあわせて求めていきたいと思っております。

 その関連で、同じ地方自治体の長として、倉田参考人とそれから露木参考人についても、この公契約条例、また国に公契約法の整備を求める、この点についてのお考えをお聞かせいただけないでしょうか。

倉田参考人 この公契約というのは大変難しい問題でありまして、特に現下のように経済が極めて不況下にありますと、我々でも入札を一般競争入札といたしますと、すべて最低価格、くじ引きで決まるということが常になってきております。それできちっとした工事をしていただければいいんですが、下請、孫請の問題あるいは工事の中身の問題等々、かえって頭を痛める問題がございますので、一定のルールを各自治体においても構築する必要性があるのかなと思っております。

 そういった意味では、国がまず範を示していただければありがたい、このように思っております。

露木参考人 私の小さな町議会ですが、町議会でも同じような質問を受けております。

 それで、野田市が先駆的な事例をやられておりますが、同じ神奈川県でも川崎市さんが取り組んでおられますので、そこの先進的な事例をまず調査させてもらうというところを現段階の姿勢にさせていただいております。小さな町でどのレベルで設定するのかというようなことは、逆に権限とかが移ってきても非常に難しい問題もありますので、やはり政令市あたりの規模でどういう対応をされるのかというのを今既に調査を始めているところであります。

 以上です。

塩川委員 ありがとうございます。

 官製ワーキングプアをつくっていいのか、そういう問題意識がそもそもの出発点でございました。

 その関連で、今、片山大臣が指定管理者制度の運用改善の通知を年末に出しました。その中で片山大臣は、記者会見でも、指定管理者制度をコストカットのツールとして使ってきた嫌いがある、公共図書館とか、まして学校図書館なんかは指定管理になじまない、このように述べておられます。

 こういう片山大臣のコメントについて、自治体の長のお三方はどのように受けとめておられるのか。私自身は、指定管理者制度の抜本的な見直しが必要だと考えておりますが、その点についての御見解をお聞かせいただけないでしょうか。

倉田参考人 指定管理者制度については、池田市は早くから取り組んでいる先進市の一つだと思っております。もとよりコストカットのツールではなくて、まさに新しい公共の見本的な形で、民間のお力をおかりしながら行政運営をする、そのパートナーとして指定管理事業を使わせていただいております。

 そういった意味では、私は、図書館についても指定管理事業に合致すると思っております。単に人事異動の中で、図書館行政に十分熟知をしていない職員を配置することもあり得るわけであります。それよりも、図書館協議会等々で活躍をされている民間の、それだけの力があった団体があれば、そこにお渡しをしてお任せをした方がいいのかなと。ただ、残念ながら池田では、まだそういう団体が育っておりませんので、直営でさせていただいているということでございます。

露木参考人 指定管理者がなじむかどうかという問題は、当該地域における、今、倉田市長がおっしゃられたように、NPOの成長のぐあいとかそういったものをきめ細かに判断しながら考えていけばいい課題でありまして、総務大臣が一律的に、文化行政、図書館行政に熱い思いを持っていらっしゃるということはよくわかりますけれども、いいとか悪いとかと言うのは言い過ぎだ、こういうふうに思っています。

根本参考人 私自身、指定管理の話については、うちでも当然やっておりますが、ただ、ここで考えなくちゃいけないのは、例えて言えば、公民館というような話があります。公民館というのは、学習効率からいけば指定管理にした方が効率がいい。ただ、学習必要という言葉からいえば、どうしても、これは行政がかかわり、本来はもうけ仕事にはなりませんよというような仕事でありながら、これは公民館学習として必要だというものはやっていかなくちゃいけない。そういうものを判断できるという形になると、なかなか効率性を求められてしまう指定管理者では難しいという話があろうかと思っております。

 そういう意味においては、私自身は、大臣がおっしゃっているような話としての指定管理の問題点というのが当然あるわけでございますので、そこら辺はしっかりこれから議論していただかなくちゃいけないというふうに思っております。

 例えて言いますと、私どもは、では指定管理の運営でどうしているかということでございますが、私どもは、公契約条例の直接の適用対象ではございませんが、この指定管理のときの募集要項の中で条件をつけてしまっておりまして、同じような形での最低賃金をセットし、その最低賃金を外すような話であるならば、それは失格要件にしてしまうというような形でやっております。

 そんな形で、余りそこで官製ワーキングプアをつくっていくような形はつくりたくないというふうに思ってそんな形でやっておりますが、一つ非常に悩ましいのは、その業務に精通した市民のNPO法人があったときに、そういうところに指定管理をしてはいかぬよという話。当然安く上がりますよと出てくるわけでして、そのときに、その皆さん方、ボランティア的に経費を安く上げますといったときに、果たしてこの人たちを官製ワーキングプアという概念に入れてしまってアウトにしてしまっていいのかどうか。これが今、ちょっと私ども、我々が条例の施行をするに当たって悩みとして考えておるところでございます。

 以上でございます。

塩川委員 ありがとうございます。

 官製ワーキングプアをつくらないという点では、国と地方と、それぞれ努力を求めたいと思っております。

 地方自治全般ということでありますので、露木参考人に、講演の中でのお話、雑誌で拝見したんですけれども、二元代表制への問題、議会の役割の評価のことについてのお話がございました。「地域が地域の方向を自主的に決めていこうという場合に、議会は不可欠」「行政自身が住民の声を聞くことはいうまでもなく、議会が行政と違う立場から住民の声を町政に反映させようと努力する、こういう議会を抜きに地方分権・地域主権の時代はあり得ない」「特に小規模自治体では、議会を活性化する方向性で二元代表制をしっかりさせていくのが望ましい」「いまパフォーマンス型の手法で一気に議会を変えてしまおうということと、それが市民受けしてしまうという現象が散見されることを危惧していますが、これは勘違いではないでしょうか。」とおっしゃっておられます。

 今の幾つかの大きな地方団体において、そういう首長の姿勢についていろいろな意見もあるところですが、改めてその点についてのお考えをお聞かせいただけますか。

露木参考人 その読み上げられた内容は、どこで書いた話でしたかな……(塩川委員「小さくても輝く自治体フォーラム」と呼ぶ)はい、承知しました。

 確かに、私の方の町議会が非常に議会改革に熱心でありまして、通年議会とか議会基本条例とか等々、さまざまな取り組みをされている。そういったことを踏まえて、議会の活動を評価したい。それは、地域主権時代になって、地域のことは地域のことで決める時代になれば、首長が一人の目玉二つでやるよりは、議会が全体の目をレベルアップして、そちらの方がどちらかというと主導権をとって、そして自治体を運営していく方が、私は、時代に合った改革の方向だと基礎自治体においては思っておりますので、そういう形で申し述べました。

 今、例えば名古屋市とか、あるいは大阪府もそうであるかもしれませんけれども、そこはそこの地域のやり方で、府民あるいは市民の大多数がそういう方向でいいよというのは、その地域の言ってみれば判断であるわけです。恐らく、これから先、神奈川県は神奈川県、あるいは愛知県、大阪府、いろいろなやり方でいろいろな提案があって、言ってみれば群雄割拠みたいな時代になってきて、どういうやり方が一番地域主権の時代にそぐうのかということの、いい意味の競争が始まる、こういうふうに思っております。

 以上です。

塩川委員 ありがとうございました。

中井委員長 これにて塩川君の質疑は終了いたしました。

 次に、山内康一君。

山内委員 みんなの党の山内康一と申します。

 参考人の皆様におかれましては、大変お忙しいところお越しいただきまして、また貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございます。

 最初に、三人の自治体の長の皆様にお尋ねをしたいと思います。

 最初の質問ですが、非常に大ざっぱな、頭の体操のような質問をさせていただきたいと思いますが、もし、子ども手当を、今のような形ではなくて、子ども手当に相当する額を皆さんが自由に使い道を決められるとするならば、どのようにお使いになりますでしょうか。

 例えば、同じ手当を支給するにしても、第一子、第二子、第三子、金額を変えてもいいかもしれませんし、医療費でも保育園の手当でも、どんな目的でも自由に使えるとするならば、どういう制度設計を皆さんはされますでしょうか。

倉田参考人 御質問のようなシミュレーションは昨年いたしました。

 池田市は十万都市であります。昨年の予算で二十億、二十三年度になりますと約二十二億の必要性が生じます。二十億のお金があれば、池田では、中学校を卒業するまで医療費無料、保育所は無料、給食代は無料、義務教育の必要な経費はすべて無料にして、子供たちが笑顔で頑張れるようなことができるのではないかな、そういうことを本来、基礎自治体に任せていただいたらよかったのにな、そう思ったのが昨年の思いであります。

露木参考人 全額自由にというシミュレーションはしたことがなくて、今驚いたところであります。

 うちの町でも四億円程度なわけですね。小さな町で、四十数億円の財政規模で、四億。それが、言ってみれば全く地方の関与なしに中央がキャッシュディスペンサーの役割を今しちゃっているというようなところがあるわけですね。それが四億来たらとなりますと、私の町は、幸いにして子供の数がふえていて、一つ小学校が昨年四月、開校したばかりなんです。旧小学校との格差の問題で頭を痛めておりますので、とりあえずは施設整備資金に充てたい、こういうふうに思っております。

 その場合、すぐに、少なくとも今問題になっておりますエアコン等は当然設置をしたい、こういうふうに思っています。

根本参考人 総額からまず申し上げますと、私どもの場合でいいますと、先ほど数字を申し上げた形でございまして、二十三年度三十三億というのが総額でございます。御質問の趣旨がそのうちの市負担分が何ぼかという話なのか、ちょっとそこがはっきりしないものですからあれですが、両方ですか、全体ですね。(山内委員「はい」と呼ぶ)

 そうすると、三十三億という数字で申し上げますと、私自身は、先ほども申し上げた考えを持っております。まず、児童手当の拡充をしてほしいという話の中で制度改変をしていただきたい。さらに、それに加えて、先ほど言いました子育て支援の方に回せるようにしてもらいたい。それが一つです。最後に残った金は、残るかどうかわかりませんが、残るとすれば、私は、今、臨時財政対策債という借金体質の中でやっている、それを減らしていくという話をしてもらいたい。これが一番いいと思っております。

 以上です。

山内委員 大変興味深い御意見をありがとうございました。

 私個人というか、党としても、国と地方の協議の場を設けて充実させていく、このことも大事だと思いますが、むしろ、国に一々細かいことまで聞かずに、自由に自治体で決められるような制度をつくる方が本筋ではないかというふうに思っております。

 我が党は、どっちかというと、脱官僚ということを言って官僚バッシングの政党のようなイメージを持たれておりますが、地方分権、地方にもっと権限も予算も移していくということを重視しておりまして、先ほど、慶応大学の井手先生のお話で、地方消費税の重要性ということをおっしゃいました。偏在性が低いので地方自治体の財源としてふさわしい、全くそのとおりだと思います。

 これから、四人全員の方にお尋ねします。

 実は、我が党は、地方消費税というよりも、消費税全部を地方の財源にした方がいいんじゃないかと。税制全体を見直さないといけないんですけれども、地方税は、おっしゃったように偏在性が低い、それから、自分の地域で消費をすれば自分の地域の税収になるわけですから、よくたばこ税なんか、なるべく自分のところで買いましょうというキャンペーンをやられていますけれども、なるべく地元で消費しましょうというキャンペーンを自治体がやるようになる、そういった意味では、地域の活性化にもつながるかもしれません。

 そういう意味では、今、消費税を社会保障税にという議論が非常に多いんですけれども、消費税こそ、実は地方の財源にふさわしいのではないかというふうに考えております。

 仮にそういう制度ができたとしたら、それについてどのようにお考えでしょうか。四名の方にお聞きします。

倉田参考人 地方の財源を地方が自由に使えるようにお与えいただくのはありがたいわけですが、国の財政運営には限りがありますので、まず、その辺の方向性をお示しいただきたいという思いが切実な思いであります。

 その上で、地方分権改革の最終目標であります、お任せ民主主義から脱却をして、自分たちの町は自分たちでつくろう、そういう思いで頑張るために、これだけの額は地方に保障するよというのをお示しいただきたい。必要以上には要りません。我々は、決して甘えて何とかしてくれというのではなくて、自分たちのことは自分たちでしますが、最低限の財源が要りますので、それは消費税全部ではなくて結構ですから、地方消費税の拡充という形で財源の保障をしていただければありがたい、このように思っております。

露木参考人 消費税五%の全額、今後税率が上がったとして、それ全額を地方にという大胆な御提案ですけれども、現実論として、なかなかそれは困難だというふうに思います。やはり、地方消費税一%分を拡充していくという形の中で、今後議論を進めていっていただきたいというふうに思います。そうしないと、言ってみれば、失礼な言い方ですが、やや暴論に近いというような形になって、かえって税制論議全般を難しくさせる可能性が非常に高いというふうに思っております。

 私たちの方の地方消費税の方も、今まで、国税が上がれば自動的に地方消費税も上がるというような甘えは一切なくすべきだと思います。もし地方側も税率を上げるのならば、かくかくしかじか、こういったことに主に使うということであって税率を上げていくという説明責任を果たさないと、上げられるような国民感情ではない、こういうふうに思っています。

井手参考人 租税論の観点で申し上げますと、一つは、収入の安定性という先ほどの御指摘の点がありますが、もう一つ、課税自主権という問題があるわけですね。

 地方の目から見ると、確かに税収は安定いたします。しかしながら、国税の方に大変不安定な税目が集中いたしますので、これは今度は交付税の不安定化となって地方を直撃することになる。そこはバランスの問題が一つあろうかと思います。

 もう一つは、課税自主権の観点から申しましても、もし、ある自治体が他の自治体よりも消費税率を下げるなんということをやってしまえば、そうしたら、一気に経済活動というのは動いてしまうわけですね。その意味では、全体が、課税自主権を行使しない中で、等しい税率で上げていくしかないわけですから、分権や民主主義という観点からいいますと、余りにも極端に地方消費税を拡張するというのは少し難しいのではないか、私はそう考えております。

根本参考人 基本的には税の議論だということですから、地方消費税を地方に持ってきたときに、今度は逆に、それでは国の方に税源をどういうふうに移していくのかという議論になってしまいますので、そこはこれから議論していただかなくちゃいけない話だと思っております。

 ただ、私、申し上げておきたいのは、交付税の中にある二つの機能、財源保障機能と財政調整機能というこの二つの機能を果たしてどういうふうにこれから充実させていくのかという話をしていきませんと、地方消費税の長所はあると思いますけれども、それだけでは不十分な点が出てきてしまうだろうな、ですから、そこの点もしっかり議論していただきたいなというふうに思っております。

 以上です。

山内委員 税全体の中で消費税だけを取り出して議論するのはちょっと乱暴な質問ではありましたが、非常に貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。

 それと、最後の質問になろうかと思いますが、先ほどシステム改修のお話がありました。システム改修のことなので、倉田市長と露木町長にお尋ねします。

 実は、私も、独法の職員だったころにシステムの契約をちょこっと担当したことがありました。私自身は全然コンピューターに詳しくなくて、携帯電話の機能さえろくに使いこなせないような人間がコンピューターの契約をやらざるを得ない。恐らく、市役所でも町の役場でも、コンピューターに強い職員なんかなかなかいないと思うんですね。

 そういう中で、システムの改修なんかを各自治体がばらばらにやっていると、どうしてもコストも高くなるし、高いんだか安いんだかわからなくて、よくわからない、言い値で契約せざるを得ない。そういう状況があって、国の制度が変わるたびに各基礎自治体レベルでシステムだと、非常に無駄が多くて、高くついているんじゃないかなと。

 逆に、システム改修に関しては、むしろもうちょっと中央集権化して、中央の省庁がこういうモデルを使ったらいいですよとか、そういう関与がふえていった方がいい。実は、中央集権が必要な数少ない分野なのかなと思わなくはないんですけれども、そういったシステム改修について、どういう形で国が今のやり方を改めればよろしいでしょうか。

倉田参考人 まず、その都度その都度システム改修が必要なような制度改革はやめていただきたい。基本的に方向性を決めれば、少なくとも数年間はそういう流れが維持できるようなものをお示しいただくのが、地方が一番安定できることではないかなと思っております。

 システム改修のあり方については、おっしゃるとおりです。我々、金額わかりません。どうしてそんなにお金がかかるのかと、これは愚痴にならざるを得ないようなところで、そうしたら、もう契約の会社を全部かえてしまう、もっとお金がかかっちゃうということで、そういった点では、中央集権という言葉ではありませんけれども、一定の基準が示されたらありがたいと思っております。

露木参考人 システム改修については、今先生がおっしゃられたような懸念がありますので、神奈川県の方は、町村会、十四町村あるんですが、小さな町が被害を受けているわけで、お互い共同戦線を張ろうということで、システムの共同運用にこの十月から踏み切ろう、こういうふうに思っております。

 今はやりの、いわゆるクラウドコンピューティングのシステムを使いながら行いますので、これまでの、いわゆるハード事業がたくさんかかるというような、システムのセンターをつくらなきゃいけないとかというのはありませんので、かなり効率的な運用が期待できるというふうに思っております。

 あと、中央集権というお話がありましたけれども、クラウドというシステムができている今日は、どちらかというと、下の方、市町村の側からより水平のネットワークを自主的に広げて、それでシステムを安定化させるという努力、そういう柔構造の取り組みというのが今後の時代については非常に大切だというふうに思っております。

 以上です。

山内委員 今の露木町長のお話、大変おもしろいと思いました。神奈川の十四町村の集まり、そういう試みが全国で広がっていけばいいなと思うんですけれども、では、もっと市のレベルでも、幾つかの市で一緒に契約した方が安いとか、いろいろやり方があると思うんです。

 神奈川の町村以外でどういう事例があるかちょっとわかりませんけれども、そういうことをさらに発展させていくために、国はどういう関与ができるでしょうか。

露木参考人 せんだって、片山総務大臣に陳情したところでありますが、こういう先駆的な取り組みについては、できる限り財政的な助成を少ししていただきたい。

 要するに、旧システムから新システムに動かすときに、どうしても初期投資がかかる。私たちは一部事務組合をつくってこのシステムを動かすのですが、その初期投資のお金が足らないから借金しようとした。しかし、今、地方財政法の規定だと、借金がハード事業以外にはできないというような非常に不合理なところがありますので、そういったところの規制緩和を進めるなど側面から後押しをしていただければ、やはり自主的に市町村の側がやっていくというのが筋だというふうに思っています。

山内委員 大変貴重な御意見、ありがとうございました。

 以上で質問を終わります。

中井委員長 これにて山内君の質疑は終了いたしました。

 次に、田中康夫君。

田中(康)委員 与党統一会派、国民新党・新党日本の田中康夫でございます。(発言する者あり)ありがとうございます。かわいい子には旅をさせよということかと思いますが。

 皆様も御存じのように、私は、山国信州というところで知事を六年、最初の二年で中間テストを受けまして、その後、四年やりまして、既得権益を壊し過ぎだということで、山国から出ていきなさいと言われて、捨てる神あれば拾う神ありで、今、そちらに池田市長の倉田薫さんがいらっしゃいますが、お隣の尼崎というところの選出の議員でございます。

 私は、大阪の橋下徹知事の大阪都構想というものに関しては、基本的には、それをより具体的にするということで賛同いたしておりますが、橋下さんとは、いつもお話をするたびに一点違う点が大阪国際空港、伊丹空港の存続問題でございまして、私、尼崎の選出ですと、東京から飛行機一時間、車で二十分で自宅にも事務所にも行けるという形で、コンシューマーオリエンテッドな空港を活用するということは、恐らく倉田さんと意見が一致しているかというふうに思います。

 私は、ぜひきょうは、何か労使のベア交渉のような、アルゴリズムの、行って来いみたいな話を超えたところでお話ができればと思っております。

 地域主権、地方分権ということは、四百十二人内閣という巨大な民主党も提唱していることであります。恐らく、これはどなたも否定されないであろうというふうに私は思います。

 実は、御存じのように、例えば、アメリカも、日本にも中国にも物言いをいたします。中国もそうです。日本は非常に控え目なので余りしませんが、国際連合も各国に、主権国家である国家にも物言いはいたします。それは、文句言いではなくて、ともに切磋琢磨していこうということなのではなかろうかと思っております。

 究極な話をいたしますと、ぜひここをお聞きしたいんですが、地域主権、地方分権を究極してしまうと、では、国家というネーションステートが行うべきことは、パスポートの発行と管理以外はすべて地域がやるというお話になってしまうのではないかと思っているんですね。ここが、地域自治ということを行った人間の、私が非常にアンビバレントな気持ちを持つところでございます。

 そこで、一点お聞きいたしたいと思います。

 皆様も既に御存じのように、小中学校、公立の学校の学校図書購入費というものは、かつては補助金でございました。補助金は、ひもつきだということで大変評判がよろしくない。そこで、今から十五、六年ほど前に、いわゆる交付税化されたわけでございますね。

 これを私と、あと櫻井よしこさんが一緒に知事時代に調べたところ、全国の七五%の自治体で学校図書購入費、当時の文部省、今の文部科学省、そして大蔵省、今の財務省というものは、今でも生徒数であったり、各市町村の学校数、学級数というものに基づいて算定をしておりますが、七五%の自治体で学校図書購入費は減っている。そして、その減り方は大体八掛けになっているということであります。

 住民の方からすると、補助金は図書購入以外買えないわけですね。よい司書がいたり、よい父母がいるということは大事ですが、しかし交付税になりますと、住民からは、どこに使っているのか見えません。

 なぜ、この七五%の自治体が学校図書購入費という、皆様も恐らく、教育や福祉は大事だ、そしてこれを地方に任せてほしいとおっしゃっていると思います。他方でそのような現実があることをどのようにお考えか、四名の方から簡潔に御意見を伺えればと思います。

倉田参考人 大変難しい御質問であろうと思います。

 まず、一つの論点は、色つきのお金をどう担保するかということであります。例えば、子供色のお金、環境という色のついたお金。もう一つは、今の地域主権改革の流れで地方自治体の独自性に任せようという、両方の流れがあることは事実であります。そうすると、一つはナショナルミニマムといいますか、国が一定のやはり最低基準はお示しをいただくという必要性はやむなく出てくるのかなと思っております。

 学校図書の補助金の問題でありますが、限られた財源の中で優先順位を決めていくと、結局、そのような自治体においては学校図書に回るお金が後順位になったのかなと。でも、やはり図書館行政、図書行政というのは、その町の文化水準をあらわす水位だと思っておりますので、そのうちに、そのような首長さんは市民の手によって交代を余儀なくさせられるのではないかな、そのように思います。

露木参考人 私の町では、先ほどちょっと申し上げましたが、子供の数がふえて小学校がふえて、一〇〇%に、その残りの小学校一つをことしようやくできるというところで、基準をクリアするというところまで来ています。

 あと、田中先生の御質問の趣旨は、地方に任せたらかえっておかしくなっちゃうんじゃないか、それは信用できないというところも、一方で意見があることに対しての質問だと思いますが、今、倉田さんの話と重なりますけれども、そういうところを仮に教育費を削ってやったとしても、それで結果として議会も含めてどういう判断をするのかのやはりテストというか、考えていくのが、それこそが自治だということでありますので、これはやむを得ない途中経過だ、こういうふうに判断しています。

井手参考人 私たちは必ず、シャウプ勧告というのを、補助金論を論ずるときには参照することにしているんですが、そのシャウプ勧告の中では、唯一推奨されている補助金が奨励補助金というものでございます。これは、本当に地方にとって必要なものであれば、三年なら三年という時限の形で補助金を出せば、ある施策を奨励し、地方がそれを独自に実施するであろうという考えに基づいて推奨されております。

 本来、補助金を議論するときには、こういった補助金の形がベストでありますが、今の図書購入費に関して、果たして奨励補助金なのかと考えれば、私はそうではないというふうに考えております。

 もう一点、今、七五%の自治体でというお話がございましたが、このことも、基本的には交付税の基準財政需要が圧縮されていることの結果であって、これは特定補助金ではなかったからこういうふうな結果になったのかという話とは少し違うのかなというふうに私は理解しております。

 以上でございます。

根本参考人 まず一点、うちではどうなっているかという話から申し上げますと、基準財政需要額の算定額以上のもので図書購入はやっております。ただし、では、補助金にした方がいいのか交付税にした方がいいのかといったときの話ですが、ほかの自治体がどうかはわかりませんけれども、問題なのは、その図書を利用できるようなシステムができているかどうかということなんです。

 何かといいますと、司書が必要になってまいります。学校の図書館司書というのは、国の基準でいきますと、クラス数が、これこれ何クラス以上のところは張りつくよという話になってしまう。そうすると、それは子供さんたちにとってみれば、学校が大きかろうがちっちゃかろうが、やはり図書にどうなじむかということが必要になってくるわけでございます。そういうことのために本来はお金が使えるような形で交付税化したんだとすれば、これは一般財源化したんだとすれば、よろしいと思っております。

 ただそれが、結果としてお金がなくなっちゃったから減らすんだよという話に行ってしまってはいけない話だというふうに思っておりますので、学校図書としても、補助金化しておいた方がいいのか交付税化した方がいいのかということについては、両方の面があろうかと思っております。

 私どもの方では、そういうことで、少人数の学校についても、苦しいながらでございますが、市の方で学校図書の司書をつけていく、こんな形をやらせていただいているということです。

 以上です。

田中(康)委員 それぞれ大事な御指摘をいただいたと思うんですね。

 ただ、地域主権や地方分権というのは、地方というのは野方図でいいということではないと、きょうお越しの方は、多分その御認識をみんなお持ちだと思います。しかしながら、多くの住民が懸念を抱いていることは多分その点で、首長や議員、もちろんそれも国民が選んでいるかもしれませんが、投票率が五割をいかないような自治体もあるわけで、やはりそこに私はディシプリンをする必要があるんじゃないのかと。

 先ほどの学校図書購入費の話は、例えますと、補助金という言葉のあり方を、イメージも含めて実態を変える必要があるんじゃないかと思っております。ですから、例えますと、おまえはどうも歴史の勉強ができないな、補助金で山川の参考書を二千五百円で買ってこいと言ったら、何おやじ言っているんだ、今やもう総合的学習の時代なんだ、全人教育なんだと言って、補助金じゃなくて、おれの人格形成のために金を使わせろと言って、二千五百円を渡したら、それがほとんどラブホ代やカラオケ代に化けちゃっているというような形になって、地方公務員の人件費や箱物になったのでは、これは国民は浮かばれないわけでございます。

 その観点から、もう一点御質問させていただきますと、例えば川の問題。私は、社会的共通資本というのは何か。金融であったり教育であったり医療であったりの制度も社会的共通資本ですし、森や緑や川の水というのも、これは一部のいわゆる水利権者だけのものではない、これはもう地球全体の社会的共通資本でございます。

 ところが、河川管理者を、各地域に川が細切れになっている、一級河川と呼ばれるような川でも、長野県が管理しているところと新潟県が管理しているところと国土交通省が管理しているところがある。私は、この河川管理者という発想と、あるいは治水構築者、治水のグランドデザインはどのようなものを描くのか。つまり、ダムありきじゃなくて、今回、民主党の協力も得て、初めて日本の堤防の中に鋼矢板という鉄の板を入れる。本会議でも申し上げましたが、日本の堤防というのは、中が砂と砂利だけですので、液状化しております。アメリカを初めとする国は、鉄の板を入れることで堤防の決壊を防ぐ。

 恐らくこれは、河川局は、鉄の板を入れることは不純物を入れることだ、逆に言えば、鉄の板で補強を部分的にされてしまうとダムの必要性がうせてしまうという考えもあるいはあられたんじゃないかと思いますが、しかし、そうではなくて、やはり、コンシューマーオリエンテッドな、河川の治水構築者というようなものは、私はこれは国が行わなくてはいけないんじゃないかと思うんですね。そして、その中で、上下の、何か皆さんにお手伝いいただくような、アドプトプログラムというような形ではなくて、横のネットワークで、グランドデザインはきちんと国が、外交だけでなく、これは国民の安心、安全ですから、描いた上で、そして、それぞれの河川管理者がそこで行うという形が望ましいのではないかというふうにも思っているんですが、この点に関しても、ちょっと御見解をいただければと思います。

中井委員長 全員呼ばれますか。時間がちょっと。二人ぐらいにしていただいた方が。

田中(康)委員 そうですか。それでは、根本さんはいかがでございましょうか。野田で川が流れておりますので。

根本参考人 まず、治水の問題からいいますと、私は、これは河川管理者がしっかりやってもらわないといけない、今、河川治水者になるのかどうかわかりませんが、という気持ちを持っております。これは、ダムが要る要らないというよりも、私ども、利根川の方の最下流に住んでおります。その人間にとってみると、本当に安全なのかどうかということが必要だというふうに思っております。

 では、今度は河川管理についてはという話になったときでございますが、これも、実は私自身は、一体的に管理してもらいたいというふうに思っております。

 理由を申し上げたいと思っております。

 私ども、今、生物多様性という形の中で、いろいろな取り組みを野田市でやらせていただいております。田んぼをできるだけ生物がたくさんいるような形の田んぼにしていきたい。そんなことをやりながら、そのシンボルとして、できたらコウノトリを呼んできたいというような話までさせていただいているんですが、この話については、実は、重要なのは、それぞれの自治体の田んぼを整備するだけでは無理でございまして、流域としての河川について、その河川について生物多様性が確保できるような、そういう形でつくっていただきませんと、野田でコウノトリを放したから野田にすんでいるというわけじゃありません。周辺全体を含めて、その中で非常にいい生息環境ができてくるという形のためには、河川というのが極めて重要な役割を果たしてくると思っております。

 そのためには、今、我々は、国交省との話の中で、そこの中に生物多様性が保てるような形の整備という形、整備ではなくても、自然に戻してしまうという形ですね、そういう形のものをやらせていただいている。私は、そういう意味からいうと、これは一体管理をしていただく方がいいというふうに私自身は思っておるということでございます。

 以上です。

中井委員長 もう一人、だれかやりますか。(田中(康)委員「いや、いいです」と呼ぶ)いいですか。

田中(康)委員 いわゆる地域主権、地方分権というのがおねだりであってはいけない。片山善博総務大臣も、大臣になられてから割合発言が穏健になられて、私はちょっと切歯扼腕しておりますけれども、やはり片山さんがおっしゃったように、起債も、皆さんの責任において起債をする。自治体も国も破綻するかもしれないんですから、自治体も破綻することがあるかもしれないという中で、アメリカのような、税に関しても各州が決められるというような形で、企業の移転であったり人口の移転であったり、可処分所得がふえるということもあろうかと思います。

 いずれにしても、おねだりの地方分権ではない形の、インタラクティブな形をぜひ皆様と一緒に構築できればというふうに思っております。

 ありがとうございました。

中井委員長 これにて田中君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして午前の参考人に対する質疑は終了いたしました。

 参考人各位には、御多用中のところ、まことに真摯な御意見を賜り、まことにありがとうございました。委員会を代表して御礼申し上げます。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時三十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

中井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 三案審査のため、本日の午後は、TPPについて、参考人として、社団法人日本経済団体連合会専務理事久保田政一君、早稲田大学政治経済学術院教授堀口健治君、日本生活協同組合連合会会長山下俊史君、横浜国立大学大学院教授萩原伸次郎君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。参考人各位には、平成二十三年度総予算について、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 それでは、議事の順序について御説明申し上げます。

 まず最初に、参考人各位から一人十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。委員の質疑時間は限られておりますので、お答えはできるだけ簡単明瞭にお願いいたします。

 なお、念のため申し上げますが、発言の際はその都度委員長の許可をとることとなっております。また、衆議院規則の規定により、参考人は委員に対して質疑することはできないこととなっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、久保田参考人。

久保田参考人 経団連の久保田でございます。

 きょうは、TPPに対します経済界の考え方について説明する機会を与えていただきまして、大変感謝申し上げているところでございます。

 経団連では、経済連携協定、EPAと言っておりますけれども、この推進を、WTOを中心とする多角的自由貿易体制の維持強化と並ぶ貿易・投資自由化のための車の両輪というふうに考えて取り組んでいるところでございます。

 WTOのドーハ・ラウンドが長期化する中で、各国とも二国間あるいは多国間によるEPAのネットワークの拡大に力を入れておりまして、我が国が国際的な競争の中で不利な立場に置かれないためには、このEPAの一層の推進というのが急務というふうに考えております。

 しかしながら、これまでに我が国が署名、締結したEPAの相手国が我が国の貿易総額に占める割合はまだ一七%ということでございまして、自動車、エレクトロニクスといった基幹産業において、我が国企業と激しい競争を行っている韓国の場合には、貿易総額に占めるEPAの割合が三六%ということで、二〇%の差がついているということでございます。これは、韓国がアメリカ、EUとFTAを既に署名しているということもありまして、我が国も、これら主要貿易相手国との協定をできる限り早期に締結する必要があるというふうに考えているところでございます。

 他方、ASEANとの間で締結されたEPAを環太平洋へと拡大していくということが非常に重要というふうに考えていまして、昨年十一月の横浜でのAPEC首脳会議では、ASEANプラス3ということで、ASEANと日中韓、それからASEANプラス6、さらにインド、オーストラリア、ニュージーランドというものを加えたものと、それからTPPというのを基礎として、アジア太平洋自由貿易圏というものを最終的に追求していくということになったわけですけれども、この中で唯一交渉段階にありますのが、実現が近いと言われているTPPでございます。

 御承知のとおり、TPPは、シンガポール、それからニュージーランド、チリ、ブルネイの四カ国で、二〇〇六年に発効したEPAを基礎としておりまして、現在それにアメリカ、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアを加えて、九カ国で拡大交渉が行われているということでございます。関税だけでなくて、サービス貿易、投資、知的財産権、人の移動、規制の調和など、幅広い分野での合意が目指されているところでございます。

 経団連としましても、昨年六月に、このTPPに我が国も参加するように提言いたしました。菅総理が臨時国会でのTPP参加の方針を表明された十月にはさらに緊急提言を取りまとめて、さらに十一月には、きょうお手元にお配りしておりますように、日本商工会議所、経済同友会とともに、経済三団体でTPPへの参加を求める緊急集会を開催しているところでございます。

 昨年十一月には、政府におきましても、TPPについて、国内の環境整備を早急に進めるとともに、関係国との協議を開始するということを閣議決定されまして、先月には、六月を目途に交渉参加について結論を出すということにされているところでございます。経団連としては、この決定を高く評価するとともに、できる限り早期に交渉参加を決断していただきたいというふうに考えているところでございます。

 TPPは、現在の九カ国からさらに拡大して、将来はアジア太平洋諸国を広くカバーするアジア太平洋自由貿易圏に発展していく可能性を持った協定でございまして、新成長戦略の一環として二〇二〇年までにこの自由貿易圏の構築をすることが目標とされていることからも、これに我が国が参加しない選択肢はないものというふうに考えております。

 仮に参加しない選択をいたしますと、企業は生き残りをかけてTPP参加国に生産拠点の移転を加速することになるというふうに思っております。

 例えばエレクトロニクス業界では、企業のグローバルなサプライチェーンの中で基幹的な重要な部品を我が国でつくって、それを東南アジアにおいてあるいは東アジアで生産された部品と組み合わせて、そして完成品はアメリカへ輸出するというようなグローバルな水平分業が進んでおりますけれども、このうち、我が国で生産される基幹部品が製造原価のかなりの部分を占めておりますので、仮にTPPに我が国が参加しない場合には、関税引き下げのメリットが享受できないということでコスト競争力を失うということになっているところでございます。

 そういった中で、基幹部品の生産拠点までも日本からTPP参加国に移転せざるを得なくなるというおそれがありまして、これら基幹部品の生産を行う高い技術力が国外に移って、また、それによって国内の雇用が失われることは、貿易・投資立国、技術立国としてゆゆしき事態だというふうに考えております。

 また、国内需要が残念ながら縮小している中で、輸出などの対外取引の拡大を迫られている中小企業にとっても、例えばTPP諸国が通関手続を共通化、簡素化する場合、成長著しいアジアや大市場であるアメリカを含むTPP諸国との輸出入を円滑化できるといったメリットを享受することができなくなるわけでございます。

 本来であればもっと時間をかけて検討すべきという主張がございますけれども、残念ながら、このTPP交渉に参加するかしないかの判断をするための時間的な余裕が余りないというのが現状でございまして、米国初め他の八カ国も、本年十一月のハワイでのAPEC首脳会議までの合意を目指しているというふうに聞いておりまして、我が国としては、できるだけ早期に交渉に参加するということが重要だというふうに考えております。

 また、米国は、TPPを通じて二十一世紀型の新しいルールをつくるというふうに言っております。貿易・投資を阻害する要因として、製品の規格基準の違い、知的財産権の侵害、投資に際しての技術移転の強要など、関税以外の問題が重要性を増しているということを考えますと、こういったルールに早い段階から日本も参画していくということが非常に重要だと。一たんでき上がったルールを、後から参加して我が国の事情とか主張が反映されないルールを一方的に押しつけられるというよりは、むしろ、早期に参加して日本の主張をしていくということが必要だろうというふうに考えております。

 また、参加するには、参加すると手を挙げた後、各国の同意も時間がかかりますので、できるだけ早期にということで考えているところでございます。

 また、日本がそういったTPPに参加することによって、日中韓FTAなど中国を含む取り組み、あるいはEUや韓国のFTAの発効を七月に控えて焦眉の急となっているEUとのEPAの推進にも寄与するのではないかというふうに思っております。

 それから、農業改革の問題について申し上げたいと思います。

 私どもは、農業は、国民に食料を供給するとともに、地域の基幹産業として地域社会の維持に非常に重要な役割を果たしているというふうに考えております。一方、農業従事者の高齢化、後継者難などによりまして、将来に向けてその持続的な存続が危ぶまれる状況にあるということを大変懸念しているところでございます。

 経団連は、去る二月の十日に「力強い農業の実現に向けた提言」というのを取りまとめまして、今こそ農業の競争力強化と成長産業化を図るべく、あらゆる政策手段を総動員した改革を迅速かつ強力に推進していくべきだというふうに提案したところでございます。経団連としても、その実現に向けまして、農商工の連携の促進など、農業界の皆様と一体となった取り組みを進めていきたいというふうに考えているところでございます。

 TPPを初めEPA交渉においては、高いレベルの経済連携を目指しつつ、我が国の実情を踏まえた国境措置の取り扱いなどを確保していくべきだというふうに考えております。

 TPPに入ると即時完全自由化だといった誤った情報もありますけれども、TPP交渉においても、アメリカなどは既存の二国間FTAで確保した除外あるいは十年以上かけて段階的に関税を引き下げていくなどの措置の維持を目指しているというふうに聞いておりまして、我が国としても早期に交渉に参加して、国益に不可欠な有利な条件を追求していくべきだと。

 そして、そのような国内改革と国際交渉の進展を踏まえて、真に必要な国内対策は総合的にきちっと講じるということによりまして、国を挙げて経済連携の推進と国内農業の強化との両立を実現していくべきだというふうに考えております。

 以上申し上げました考え方に沿って農業改革の基本方針を早期に決定していただきたいというふうに考えておりまして、繰り返しになりますが、私どもも、農業と産業が一体となって国際競争力を強化するということに努めていきたいというふうに思っております。

 私からは以上です。どうもありがとうございました。(拍手)

中井委員長 ありがとうございました。

 次に、堀口参考人にお願いいたします。

堀口参考人 早稲田大学の堀口です。

 十分間、意見陳述をさせていただく前に、私、今まで茨城県の八千代町におりまして、この三日間、若い農業経営者と議論を重ねているところであります。途中、抜けてまいりました。

 八千代町は、茨城の中でも規模の大きい経営が多くて、後継者も多分一番多いところでありますけれども、大体百ヘクタールから百二十ヘクタールの延べ面積で、米、それから麦、大豆を二毛作でやっている最も生産性の高いところだと我々応援をし、その経験を全国に発信したいと思っておりますが、彼らはやはりこのTPPがどうなるかというのは一番関心のあるところで、もし関税がこの五年、十年の間に撤廃されるならば、彼らの工夫した麦、大豆のコストでも対抗できない。いわゆるお米についても、中国産短粒種が十分の一の値段で日本着で来るというものに対しては、やはり今のコストを一割あるいは二割下げてもとても耐え切れない。こういう点で、先生方の御審議をぜひ慎重にお願いしたいと思っています。

 彼らは、百二十ヘクタールをやるためには、隣のつくば市まで出かけて、トレーラーにコンバインを載せながら走り回っておりますので、百二十ヘクタールを確保するためには、農地をあちこちに借りることによって農地が分散をするスケールデメリットも発生をしておりますけれども、それを何とか交換耕作で、隣接地と交換しながら団地化をする、あるいは霞ケ浦用水から延々と水を引っ張ってきて、これを、十年、二十年の土地改良を基盤に、彼らは受益者負担をしているわけでありますけれども、こういう若い後継者が次の展開を担うためには、このTPPについては慎重なる御審議を私はお願いしたいというふうに思っております。

 それで、私の資料を中心に、簡潔に説明させていただきますけれども、このTPPの提起は、やはり極めて唐突な形で出てきた。今まで日本のFTA交渉は、関税を撤廃しない形で、約一割を除外品目にしながら、各国と交渉をして、重要な農産物を守ってきたわけであります。それが、すべての関税撤廃を原則とするTPP、その中に入るということは、今までの方針と根本的に異なるというふうに認識しています。

 本来力を入れるべきはWTOの枠組み、その中で重要品目と一般品目をいかに落着し、結論を出すかという方向、あるいはFTAを補完的なものとして関係国と結ぶ、あるいは、日本がASEAN諸国プラス3とかプラス6とかいう形で結んでいる、この方向をやはり重視しながら、一方で、食料の安全保障のために食料自給率を五〇%に二〇二〇年までに引き上げる、これと両立する貿易の枠組みもぜひお考えいただきたい。そこを地域の生産者あるいは加工に従事する人たちが注目しているところであります。

 日本は世界で最大の農産物輸入国であるわけでありますけれども、一方で、日本の農業を守らないかぬということで、御承知のとおり、二次関税を高くしてそれを守っているわけで、そういう意味では、一次関税、ほとんどがゼロでありますけれども、小麦、あるいはえさ用トウモロコシ、大豆等を世界でも大量に入れている。そういう中で、それ以上のものについては高関税で日本の農業を守る、こういう仕組みをしている。そういう意味で、日本は比較的早くから関税を下げてきた、そういう国でありますけれども、現在のFTAの交渉では、それが逆に日本側が切るカードが少ないというところも外交交渉を非常に難しくしているところだというふうには認識しております。

 WTOが認める輸入規制は、御承知のように、基本的には関税だけであります。一方で、輸出国側は、日本側が関心を持っておりますけれども、輸出規制ができる。そういう中で日本は、二〇〇八年に経験しましたけれども、いかにして自給率を高め、安全に農産物を輸入するか、こういうところをぜひとも進めたい。

 そういう意味で、所得補償というのは、自民党時代も含めて、ようやく日本はそれを定着化したわけでありますけれども、これをぜひ生かしながら、できるだけ早く農業構造を改善しながら進める、こういう形に整合する貿易の枠組みをぜひお願いしたいということで、私の話を終わらせていただきます。

 まだ時間は終わっていないですか。

中井委員長 どうぞ。まだございます。

堀口参考人 そうですか。今のベルが十分目かと思いまして、慌てましたけれども。

 後半のところを少し補足いたしますと、関税撤廃の影響を農水省は計算しております。計算のやり方はかなり正確に公開され、我々もそれをフォローしておりますけれども、計算の結果、農産物、これは対象を関税率一〇%以上あるいは国内生産十億円以上の十九品目に限った上で計算をしますと、関税を即座に撤廃をし、それから今を上回る所得補償等をしないという前提で計算すると、四兆一千億の生産減少で、結果として自給率が四〇%から一四%に落ちる。

 我々が話題にしている多面的な機能については、水田あるいは畑を失うことによって三兆七千億のマイナスになり、さらに、ここはぜひ注目いただきたいんですけれども、加工農産物についても、現在、小麦粉あるいは砂糖等は高い関税で守っております。ここのところも、農産物だけではなくて国内の加工業も減ることによって、結果的にGDP七兆九千億円の減少になり、アグリビジネスを含めて就業機会の減少が三百四十万人という数字を出している、そういう大きさになっております。

 例えば小麦粉でいえば、日本産がキロ百十三円に対して、その半額以下の四十五円で中国産の小麦粉が日本着で来るというものに対して、この差をすぐさま埋めるというのは全く不可能である。そういう意味で、小麦については、小麦粉のレベルで一%しか残らないという計算結果になる。ましてや、北海道のてん菜や、あるいは沖縄のサトウキビについては、砂糖は品質格差というのがなかなかないものですから、そういう意味では、約三分の一の外国の精糖が日本着で入ってくる。こういうものに対して、日本の農業はやはりそれに対抗する手を持たないということをぜひ御認識いただきたいというふうに思います。

 最後、所得補償政策でその差額分を埋めることができるのではないのか、アメリカやEUではそれをやっているのではないのか、そういう見解があろうかと思いますけれども、確かにアメリカ、EUは現在、国内の市場価格を少しずつ下げてきております。

 例えばEUについては、従来の各国が介入して国内価格を押し上げるという政策を長年とって、その結果、自給率が一〇〇%を超えるようなレベルに達しておりますけれども、これを漸次、介入価格を下げて、国際価格に少しずつ近づけていることは事実であります。

 その結果、その差額を、所得補償をEU全体で、共通財政で負担をしておりますけれども、そういう仕掛けが日本でもできるのではないのかという御意見があろうかと思いますが、現在の戸別所得補償の約八千億から九千億のレベルも、これもその差を補てんするわけでありますけれども、これはあくまでも、あるべき生産費と現在の国内市場価格との差額を補てんしているわけでありまして、これがさらに、極めて安い輸入農産物を、その差額を所得補償で補てんするという場合には極めて難しいし、ましてや日本は、四〇%の自給率を五〇%に引き上げるとすれば、その財政負担はとても想像できないくらいの大きさになる。そういう意味で、所得補償でこのダメージを吸収できるのではないのかということについては、極めて難しいというふうに思っております。

 そういう意味で、この非常に重要な問題をぜひとも慎重に検討いただきたいということをお願いして、私の陳述を終わります。

 どうもありがとうございました。(拍手)

中井委員長 ありがとうございました。

 次に、山下参考人にお願いいたします。

山下参考人 日本生協連会長の山下でございます。

 本日は、このような発言の機会をいただきましたこと、感謝を申し上げます。ありがとうございました。

 さて、全国の生協の概況でございますが、現在、地域購買生協に限って見ますと、組合員、全国で千八百万人ということでございます。これは世帯加入率ということで算定いたしますと約三五%ということで、三世帯に一世帯の割合での御加入をいただいているということになってございます。

 私どもが組合員に提供しておりますサービスあるいは事業といたしましては、宅配事業、店舗事業が中心でございます。別の連合会でやっております共済事業もございます。あるいは、これも別の連合会になりましたが、医療福祉事業についても組合員にサービス提供をしているということでございます。

 購買生協におけます組合員に提供しております商品としては、コープ商品ですとかあるいは産直活動などがよく知られているところでございます。また、こういった事業のあり方をめぐって、消費者活動も活発に行ってきているところでございます。

 本題のTPPについてでございますが、日本生協連といたしましては、賛成とも反対とも決めてはおりません。

 その理由と申しますか、背景認識について申し上げます。

 日本生協連は、全国約五百の生協から成ります緩やかな連帯組織という性格上、そういった立場に基づいて判断をしているということがございます。構成しております会員生協は、消費地の生協もあれば、生産地の生協もございます。あるいは、職域の生協もございます。それぞれ会員生協は、その組合員も含めて、その立場立場でさまざまな考え方があろうかというように受けとめているところでございます。多くの会員生協や組合員も、なおこのTPPについて賛否を決めかねているという状況ではないか、このように受けとめているところでございます。

 既に、このTPPの影響につきましては、異なる前提条件ということではございますが、経済産業省、内閣府あるいは農林水産省からそれぞれの試算が出されてございます。前提条件が異なりますということもあって、これを受けとめる千八百万組合員のところでは、これら試算データに基づいてどう考えるべきか、なお戸惑っているという現状ではないか、このように認識をしているところでございます。とはいえ、このTPP、大変重要な課題である、このように私どもも認識をしておりまして、それだけに、国民的な議論の必要性を痛感しているところでございます。

 今後の進め方に関しましては、ぜひ、TPPに伴う農林水産業や経済等への影響にかかわる基礎データや問題点を整理し、論点を明確にした上で国民的な議論を進めていただきたいし、私どもも参画をしてまいりたい、このように考えているところでございます。

 来週から、政府によります開国フォーラムも予定されているというように伺っておりまして、大事な議論の場として歓迎したいと考えております。そういった場を通じて提供されるであろうデータ、試算、資料等に基づいて、私どもも、日本生協連あるいは全国の生協として、これから組合員議論をぜひ組み立てていきたい、このように考えているところでございます。

 私どもは、この間、消費者の組織、事業といたしまして、食に対する消費者のニーズ、要請、願いを次の六つに整理をしてまいりました。その一、食の安全ということでございます。その二、品質の向上ということでございます。その三、納得できる価格ということでございます。その四、選択性の保障ということでございます。その五、安定供給ということでございます。その六、環境保全ということでございまして、これを消費者の食に対する重要な価値観、価値基準ということで私どもの組織や事業を組み立ててまいったところでございます。

 これを実現するために、生産者との協同も実現をしてまいりました。あるいは、産直を通して自給力向上にいささかなりとも貢献したいということで、産直活動を広げてまいりました。国産原材料によります食品の開発等も重視をしてまいりました。米の消費拡大についても、コープ商品として取り扱う、あるいは無洗米を普及するなどを含めて、消費拡大に貢献をしてきたところでございます。

 もとより、これらのことを含めて、農業の多面的な価値についても地域地域で重視するということで取り組んでまいりましたし、もう一方では、開かれた貿易体制の重視ということで、国際的な、安定的な、しかも、安全あるいはその品質は国内外を問わず担保されているという条件のもとで重視をし、取り組んでまいったところでございます。

 例えば、生協によりましては、農業生産法人を立ち上げて、JAの協力支援もいただき、農業に参入することを通してこういった活動を広げているといった例も生まれてきているところでございます。

 私どもは、消費者の願いとこのような食料自給力の向上とを両立させたいということで取り組んでまいりましたし、今後もそのようにしていきたいと考えております。消費者負担から必要な納税者負担へ軸足を移していくということも必要かと思いますし、もう一方で、自給力に加え、競争力も農業は兼ね備えていかなければいけない、このようにも考えているところでございます。

 これら両立課題につきましては、TPP参加、不参加にかかわらず、今後とも進めていく必要がある、このように考えているところでございます。

 最後に、いわゆる非関税障壁について申し上げます。

 非関税障壁が国特有の社会制度や経済構造などに拡大解釈されないよう配慮する必要があろうかと考えております。国民生活への影響を見きわめるとともに、消費者、国民にとって必要な制度や運用は後退することがないように配慮する必要があろうかと思っております。

 例えば、米国産牛肉のBSEに関する問題といたしましては、やはり国内外を問わず安全の担保が重要であるという立場で考えております。つまり、月齢緩和といった課題との関係では、やはり国内でこの間組み立ててまいっておりますリスクアナリシスのシステムに沿ったリスクアセスメントからきちんとした評価を組み立てていくということが求められるのではないか、このように考えているところでございます。

 以上申し上げまして、日本の全国の生協と日本生協連を代表しての意見として申し上げさせていただきました。

 以上、ありがとうございました。(拍手)

中井委員長 ありがとうございました。

 次に、萩原参考人にお願いいたします。

萩原参考人 ただいま御紹介いただきました横浜国立大学の萩原でございます。

 私の専門はアメリカの経済政策を研究しておりまして、今回のこのTPPというものが突如出てきた、それが日本に対してどういう意味があるのかという点をお話ししたいと思います。十分という限られた時間でございますので、手短にお話をさせていただきます。

 菅総理が、TPP参加が第三の開国である、平成の開国であるとおっしゃいました。私は、これは第三の構造改革というのが正しいネーミングであろうというふうに思っております。

 この第三の構造改革という意味はどういう意味かと申しますと、橋本総理がお始めになりました橋本改革、これは私は第一の構造改革と申します。第二が、小泉総理大臣がお始めになりました構造改革でありまして、これは大変有名でございますけれども、これが第二の構造改革。としますと、今回、どなたが総理大臣になるかはわかりませんが、どなたが総理大臣になられても、恐らくこの第三の構造改革というものが進むだろうということを思っております。

 それはなぜかと申しますと、その理由を申し上げます。

 TPPというのは、先ほど堀口先生がお話しになりました、農業に対して大変大きな影響を与える、これはだれしもが知っていることでございます。しかし、大きな問題は、サービスでございます。今日の貿易というのは、サービス貿易というのが大変大きな比率を占めてございまして、アメリカも、サービス貿易の自由化と。サービス貿易を自由にするには、人の移動、それから資本の移動というのが不可欠になります。ですから、必然的に、その国の規制その他の改革というものに手を突っ込みませんと、自由化というものができないということになります。

 そこで、一体今アメリカは何をこのTPPで考えているか。もちろん農業、これは堀口先生のお話でありましたので、時間の関係で省略させていただきますが、一つは、私は医療だと思います。

 これは、米国は、日本に対して医療の自由化というのを長年要求してまいりました。年次改革要望書というのは有名でございますけれども、このごろは外国貿易障壁報告書という、つまり、このごろの外国貿易というのはサービス貿易でございますので、物の貿易だけではございません。特に、医療という点に関して言いますと、アメリカが、非常に強く、医療サービス市場へ外国からのアクセスを制限しているのは問題である、利益追求型の病院を建設するように、そういう要求を出しているわけです。

 つまり、今日の日本の医療法人、つまり利益を追求しない、そういうシステムに対してアメリカは、利益を追求できる、そうした病院を追求せよ、こういうふうに申しておりますし、薬価の決め方も自由化すべきであると。つまり、今日の日本の保険制度を大きく変えよ、こういう要求を出してきている。これが私は、今度のTPPの中で大変重要な議論となるというふうに考えております。

 それから三番目でございますが、これは私は郵政であると思います。

 郵政の改革というのは、御承知のとおり、二〇〇五年に郵政の民営化法というのが通りまして、二〇一七年にゆうちょ銀行、かんぽ生命の民営化が終わるわけであります。それに対して、民主党政権になりまして、見直しをする、そういう話でございますが、もしTPPに入るということになりますと、アメリカは当然のこと、金融サービスの自由化という観点からしますと郵政の民営化というのは不可欠なものでありまして、それを具体的にどう行うのかという点に関して要求してくると思います。

 そういうことを考えますと、現在、民主党と一緒に国民新党、国民新党というのは、私の理解ですと、郵政民営化に反対する人たちが自民党から飛び出たというふうに理解しておりますけれども、そういう方たちが果たしてこういうTPPというものに参加するということにどう考えていらっしゃるのか、私は大変疑問に思っております。

 それから、要するに、ここでもう一つ重要なのは、日本政府が十一月九日の閣議決定で述べたことでございます。「経済連携交渉と国内対策の一体的実施」ということでございまして、これをきっかけに、日本の先ほど申し上げました構造改革というものを実行しようというふうに考えていることでございます。

 一つは、農業であります。これは、食と農林漁業の再生実現会議が六月までに結論を出すというふうに言っておりますけれども、つまり、現在の民主党政権の政策は、かつての自民党が考えていた農業の大規模化、集約化、これに尽きるのであります。それをするためにはどうするのかという今日の考えは、要するに農地法の改正という形で、いわば一般企業に農地の所有を認める、一般企業が農業生産法人の経営権を握れる、出資比率を緩める、そういう考えが恐らくこの再生実現会議の中で出てくる可能性がございます。これは、菅総理大臣がかねて主張をしておりました、農業の集約化になるなら私は何でもやるということをテレビで発言されておりまして、そのことが起こる可能性がございます。

 それから、このところで二番目に人の移動ということで、具体的に看護師、介護福祉士の海外からの人の移動、そういう点を書いております。

 つまり、この民主党の考え方といいますのはあの新成長戦略でございますが、昨年六月にできましたこの新成長戦略といいますのは、いわばその四月に経団連が発表されました経済成長戦略とほぼ同じでございます。ですから、ライフイノベーションにおける国家戦略プロジェクトというのが財界のプロジェクトにもございますし、この新成長戦略にもございます。

 ということは、アメリカのそうした医療の進出というものといわば一体化させる形でもって、現在、恐らく医療の市場化、自由化という方向に日本の政府それ自身が進んでいくという可能性が極めて高い。これは私は大変重要なポイントではないかというふうに思っております。

 したがいまして、まとめますと、第三の構造改革の基本は一体何かというと、私は三つございます。

 一つは、農業地域への大企業の参入ということでございます。つまり、大手商社あるいは総合商社の米の輸出、そして農産物の輸入、そういうものを一手に引き受け、農業のいわば市場経済化、大規模化というのを、これを機に一気に進めていく。

 二番目に、医療分野への企業の参入、医療法人の株式会社化。つまり、アメリカが主張しているそういう方向に日本も呼応して持っていく、こういうこと。

 そして三番目に、郵政民営化、これをいわば実現していく。つまり、見直しという形で本来展開されたはずの郵政民営化が、このTPPに参加することによって、一層、かつて小泉さんが考えられたようなあの民営化路線が、アメリカと日本の財界のいわば要求によって展開されていく。これは恐らく間違いございません。

 最後に申し上げます。

 なぜそうなったかと申しますと、橋本改革では、大規模小売店舗法というのが九八年に廃止されたんです。これで商業資本が地方に自由に出ることができました。九八年に金融ビッグバンで金融自由化が展開したんです。これで日本の金融は、アメリカ型のシステムに大きく展開するという形になっていきました。

 小泉構造改革ではどうでしょうか。二〇〇四年に製造業に派遣労働が許されました。現在、日本の三分の一の労働者が、派遣とは申しませんが、つまり非正規労働であります。こうした労働市場の極めて大きな、新自由主義的な改革と申しますが、それが行われた。そして、二〇〇五年に郵政の民営化であります。

 したがって、残っているのは農業と医療、そしてこの郵政の民営化を、二〇〇五年の小泉総理大臣が考えたあの路線で、いわば日米の麗しき共同戦略というものがここで実行される。私は、間違いないと思います。

 以上です。(拍手)

中井委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

中井委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。竹田光明君。

竹田委員 民主党の竹田光明です。

 久保田参考人、堀口参考人、山下参考人、萩原参考人の各位におかれましては、大変貴重な御意見をありがとうございました。

 菅総理は、所信表明で、第一の国づくりの理念は平成の開国であると述べておられます。開国の具体化には、貿易・投資の自由化、人材交流の円滑化から始まるとおっしゃっています。

 そこで、本日は、TPPに関して参考人の皆様にお聞きするためお集まりいただいたわけでございます。

 最初に、四人の参考人の方全員にお聞きします。

 日本は現在、長期的な少子高齢化、産業の空洞化、雇用の減少といったいわば危機に面しております。その一方で、経済連携が進む国際社会の中ではやや出おくれているのではないかとも言われております。

 日本経済の現状について皆様はどのような危機感をお持ちになっているでしょうか、そのことをお聞かせください。恐縮でございますが、簡潔にお願いいたします。

久保田参考人 今先生から御指摘がありましたように、私ども、少子高齢化それからグローバリゼーションの中で、日本の経済の停滞というのを非常に懸念しているところでございます。まだいまだに自律的な回復の道筋が見えていないというふうに思っておりまして、そういう意味では、私どもは新成長戦略の実現を早期にかつ着実にやっていただきたい。

 とりわけ、そういう中で、アジア太平洋諸国の活力をいかに取り込んでいくかということがキーだろうというふうに思っておりまして、そういった中でこのEPAあるいはTPPも検討すべきではないか、こう考えているところでございます。

堀口参考人 お答えします。

 方向としては、やはりWTOを中心にグローバル化を進めるというのが日本の基本的なスタンスではないかというふうに思っております。

 その場合に、各国の多様な農業を共存させるという原則のもとで、いかにお互いに譲り合うかという中で、もう一方、日本の農業あるいは日本の産業自体を強化するという政策を着実にとっていただくことが必要ではないのか。

 そういう意味で、日本は中国あるいはアジア等を中心に貿易なり関係を強めているわけですけれども、ここでの、ASEANプラス6なりそういう中で、農業の方でいえば共同備蓄構想などを提案しながらお互いに関係を強める。そういう意味で、日本は自給率が一〇〇%になることはあり得ないわけですから、そういう中で農業の相互依存というようなものもその中に入れ込んでいくということが必要だというふうに思っております。

山下参考人 高齢化社会の中でいわば長寿を豊かに全うできるように、私ども、ライフラインとしての充実あるいはネットワークの充実を一層図ってまいりたいと思っております。

 具体的には、例えば買い物弱者に対しては買い物バスを提供するとか、移動販売車でこちらから商品をお届けするとか、あるいは夕食宅配などのネットワークを広げるというようなことで、買い物弱者についても十分カバーできるようにしてまいりたいと思っています。

 そういったライフラインやネットワークをより稠密にしていくことで、いわばきずなを大事にしながら活力ある地域社会を支えてまいりたい、このように考えております。

萩原参考人 私は、現在の日本経済の最も大きな問題は、デフレ構造ということと格差構造、これであると思います。

 御承知のとおり、日本の名目GDPは九七年以降一つも成長してございません。アメリカその他先進諸国を見てみますと、非常に成長してございます。つまり、この名目GDPが成長しないというのが、例えば財政の危機の問題にも極めて大きな影響を与えておりますし、さまざまなところでいわば悪さをしている。

 その要因は一体何かといいますと、橋本、小泉、この両構造改革のもとで、供給重視、供給重視、規制緩和、そういう路線がとられてきた結果でございます。つまり、民主党が政権をとるときに、国民生活が第一だ、こういうふうにスローガンを掲げました。これは極めて立派なスローガンでございます。国民生活が第一ということは、需要をしっかりしなさいということです。供給をする前に需要。今、日本は極めて需要が足りないのであります。つまり、需要を喚起するということの政策をまず第一にやって、その後に供給の戦略というのがあるのでございます。

 これはアメリカでも、オバマは最初、きちんとそういう需要側面をやって、それでいわば中長期的な戦略に移っていったんです。日本はそれをやらなきゃならない。しかも民主党は、そういう政策を掲げたにもかかわらず、それを途中からちょっと、ちょっとじゃなくて大転換いたしまして、供給重視の政策に転換した。これはまさに国民に対する裏切りでございます。

 以上。

竹田委員 どうもありがとうございました。

 それでは、久保田参考人にお伺いいたします。TPPの具体的な影響について質問させていただきます。

 お隣の国韓国では、既にアメリカ、EUとFTAを締結しております。先ほど久保田参考人が御指摘されましたように、経済連携協定におきまして、日本企業が韓国よりも競争力で劣ってしまうのではないかと私も大変危惧しております。経団連として、日本がTPPに参加しない場合、輸出産業を初めとする産業全体、その中でも特に雇用の面でどういう影響が出てくるか、どうお考えになっているかをお聞かせください。

久保田参考人 今先生御指摘のありましたように、日本がTPPに参加しない場合のデメリットというのは非常に大きいものというふうに考えております。

 日本経済を一番リードしている基幹産業、自動車とか電機・電子でございますけれども、これは、自動車産業ですとすそ野の産業も含めまして約五百万人の雇用、それから電機・電子ですと百万人の雇用と言われておりまして、とりわけ、そういう中で高度な技術を有している部品の生産あるいは製品、自動車でいきますとハイブリッド車だとか、あるいは電機・電子でいきますと液晶テレビとか、そういった部分は今、日本でつくって、それで輸出をしていく。それから、もちろんグローバルなネットワークの中で、部分的にはアジアで部品を組み込んで最終的にはアメリカ等に輸出していく。こういうのが今の日本のリーディング産業の姿でございまして、これが日本経済をまさに牽引しているんだろうというふうに思っております。

 そういう中で、韓国からの対米あるいは対EUもそうですけれども、そういったものの関税がゼロになって、日本からの輸出についてはそのまま関税が残るということになりますと、自動車産業あるいは電機・電子産業が非常に大きな打撃をこうむるというふうに思っているところでございます。

竹田委員 ありがとうございました。

 経済協定のあるなしが私たちの生活に直接影響するということが確認できたと思います。経済協定であるTPPのルールが固まってしまう前の段階で、つまりルールづくりの段階から関与することが重要だと先ほど御指摘がありましたが、私もそれは極めて重要なことだと思っております。

 引き続き、久保田参考人にお聞きしますが、TPPの交渉で、二十四分野の作業部会があり、関税以外の分野でも交渉が行われております。関税以外の分野で日本が追求すべき利益にどういうものがあるとお考えでしょうか。

久保田参考人 今御指摘ございましたように、TPPは、大きく分けて、一つは関税の分野、それからもう一つはルールづくりの分野がございます。先ほど萩原先生からも御指摘がありましたように、物の自由化ということも重要ですけれども、むしろサービスの自由化あるいはルールの策定、そういうところに日本も入っていって、ルールづくりに最初から参加していくということが非常に重要だろうというふうに思っております。そういった意味では、規格とか基準の調和、あるいはいろいろなルールの提案、それから諸制度の提案をできる限り日本にとって有利な方向で交渉に臨んでいくということが今後非常に重要だろうというふうに思っております。

 具体的に申し上げますと、例えば我が国が強みを持っております環境分野等のビジネスについての規格基準を標準化するルール、模造品とか海賊版の取り締まりを強化するルール、それから、投資に際していろいろな条件をつけられるわけですけれども、そういったものを禁止するルールづくり、こういったことによって、これから日本が産業として強化していこうと思っている電子商取引あるいは知的財産権の問題とか、そういったところをきちっと保護していくということができるんだろうというふうに思っております。

竹田委員 どうもありがとうございました。

 次に、山下参考人にお聞きします。

 TPPには、例えば食の安全について懸念を示す方も大変多く、そういう声も大勢聞かれます。その中で、生協では、例えば二〇二〇年ビジョンの中で消費者の安全を守る重要性を掲げるなど、食の安全について取り組んでいらっしゃいます。

 実際のTPPの交渉で食の安全ルールなどを扱う衛生植物検疫の作業部会もあります。その交渉の中でのルールづくりを目指していると言われておりますが、日本の食の安全に対する知識や経験の蓄積、今後そのようなことをどういうふうに生かしていけるか、どういう場があるか、どのようにお考えでしょうか、お聞かせください。

山下参考人 お答えいたします。

 既に、WTOの中でこれら食品の安全確保を含むルールがこの間も枠組みをされてきていると理解をしております。具体的には、衛生植物検疫措置、SPS、あるいは貿易の技術的障害に関する協定、TBTなどでございまして、今後、これらの交渉もこれらの枠内で進められるべきであろうか、このように考えているところでございます。また、日本としてはこのような国際的な基準のレベルアップには今後も寄与していくべきでないか、このように考えているところでございます。

 日本での経験ということで申しますと、例えば保健所による行政の機能といいますのは、人の健康から食品の製造、流通にわたるまで幅広く機能を組み立てておられまして、この日常的な保健所機能に対しては、国民、消費者の信頼も極めて高いものがある、このように受けとめているところでございます。また、リスクアナリシスという仕組みを回すということで、リスク評価やこれに基づくリスク管理、あるいはリスクコミュニケーションといった経験も既に私どもは蓄積をしてまいっております。

 アジア太平洋地域においては、むしろ日本は、これらの分野についてはイニシアチブを発揮していけるのではないか、このように期待しているところでございます。

竹田委員 ありがとうございました。

 先ほど堀口参考人より、日本は世界で早目に関税を引き下げ、FTAを含む関税交渉ではカードに使える品目が少ない皮肉な状況を生み出している、そういうお話がございました。

 そこで、堀口参考人と久保田参考人のお二人にお聞きしたいんですが、TPPは現在九カ国で交渉が行われております。二国間のFTAとはやはり違った交渉、違った影響、メリットがあると思うんです。そういうことに関してはどうお考えでしょうか。久保田参考人と堀口参考人、よろしくお願いいたします。

久保田参考人 二国間の場合ですと、どうしても適用範囲がその二国間に限られるわけですけれども、TPPは今九カ国、さらにはアジア太平洋諸国に広く拡大していく可能性があるというふうに考えていまして、そういったときにその共通のルールの中に入っていくということが非常に重要であって、それは二国間ではとてもできない問題だな、そういう意味でTPPは非常に重要だというふうに考えております。

堀口参考人 TPPは、御承知のように、最初、小さな国がお互いに関税を撤廃する形のことをそう矛盾と感じない、そういう中でアメリカが加わり、オーストラリアが関税撤廃の方向でこの枠組みを使うというふうに私は見ております。そういう意味で、日本がここに入りたいというのをみずから言うこと自体がやはり日本の交渉のカードを弱くしている。日本のGDPの大きさ、あるいはアジアにおける大きさを考えれば、日本の持つ今までの仕組みをやはり主張すべきではないのか。

 アメリカにとっては、TPPはやはりWTO上の、例えばブラジルがWTOで委員会に提訴してアメリカは負けましたけれども、そういう国内補助金、あるいはバイオエタノール等も、これはエネルギーの安全保障ですけれども、片側で農産物のいわゆる補助金にも関係しているんですが、そういうWTOとは違うTPPに関税撤廃を求める、そういう交渉に日本が入りたい、入れてほしいと言うこと自体がやはり日本の姿勢を弱めるというふうに思っております。

竹田委員 短い時間でございましたが、参考人の皆様には大変貴重な御意見を賜り、まことにありがとうございました。

中井委員長 これにて竹田君の質疑は終了いたしました。

 次に、谷公一君。

谷委員 自由民主党の谷公一でございます。

 きょうは、大変お忙しいところ、四人の先生方に、貴重な、また示唆に富んだ御意見の開陳、ありがとうございました。

 私は兵庫県でございますけれども、農山村もあり、大阪のベッドタウンもあり、ですから、いろいろな方とこのTPPの問題についていろいろお話ししますと、先ほどの生協の山下さんの話ではないんですけれども、賛否を含めてさまざまな意見がございます。今意見をお聞かせいただいたそれぞれの方にまず、多くの方が、国民の方々といいますか、私もいろいろな意見を聞いておりますので、そういう素朴な疑問点も多いかと思いますけれども、それぞれお尋ねをしたいと思います。

 まず、久保田専務理事であります。

 経団連の立場は、早期参加を求める、明快であります。そうしたらば、一般の方々は、では経団連は日本の食料自給率向上をどう考えているんだろうかと。今カロリーベースで四〇%。五〇%という目標を国の方では我々の政権のときに掲げました。では、TPPに参加をしてもこれは両立する、両立させるべきだと考えているというふうに理解してよろしいのかどうか。

 きょうのペーパーの中では「農業の産業基盤強化との両立」、やや抽象的であります。具体的に、自給率は五〇%という目標と両立さすという考え方なのかどうか、専務理事のお考えをお尋ねしたいと思います。

久保田参考人 自給率の考え方、これは非常に重要だと思っております、カロリーベースでということで。

 ただ、これは、カロリーベースで、自給率の計算はそのときの食生活にもよりまして、例えば、お米の消費が減っている中で、逆に自給率は、カロリーベースのは減っていく、こういうこともあります。

 私どもは、基本的にそれは重視しておりますけれども、最終的には、いわゆる食料の自給力、食料安全保障という観点からは食料自給力というのをどういうふうに高めていくのか、これも非常に重視しなきゃいけない、そういうふうに考えております。

谷委員 そうしますと、食料自給率という数字にそうこだわるのではなくて、自給力、食料の自給力を高めることがより重要だ、そういうふうに御理解させていただいてよろしいですか。

久保田参考人 基本的にはそうだと思いますけれども、それは全く別の概念ではなくて、かなり近い、食料自給率の向上と自給力の向上というのは非常に近い概念だろうというふうに考えています。

 いずれにしましても、農業の国際競争力を強めていく、そのために経済界と農業界が一体となって日本全体として取り組んでいく、こういうことが重要だろうというのが私どもの主張でございます。

谷委員 堀口先生にお尋ねいたします。

 今、久保田専務理事の方から、農業の力を、競争力を高めていく必要があるという話がございました。私も、それは全くそのとおりであろうと思います。

 しかし、今さら堀口先生に私が言うまでもなく、日本の農業はさまざまです。平地もあれば中山間地もある、現実にはさまざまなそういう状況にある。

 それで、TPPを推進すべきだという一部の大規模農家の方の中でも、農政の考え方を、大規模で担い手にやろうという人と、そうでなくて、いわゆる兼業で、地域を、一反、二反から数反まで、そういう兼業農家との政策を、考え方を分けてやるべきではないか。それらをまとめて、今の政府の方は割と、反当たり一万五千円ということで、基本的にそれをベースに戸別所得補償という考えなんですけれども、分けてやらなければ今後の日本の農業の将来はないのではないかという意見を言われる方が少なからずあります。

 そういう意見も踏まえてといいますか、今後の日本の農業のあり方についての先生のお考えをお聞かせ願えればと思います。

堀口参考人 農業というのは、土地がくっついているものですから、なかなか簡単に改革が進まないというのは各国とも同じでありますけれども、特に日本の場合には、ヨーロッパなどと同じく古くから土地の分散というのがあるわけで、その中で各経営者は努力しながら農地を集団化し、それをたまさかうまくできたところはかなりコストを安くできる。そういう意味での土地改革を日本がやるならば、成田の問題も起きないであろうし、という意味での土地問題は、極めて偶然的な条件でしかない。

 そういう意味で、集落全体で一つの法人をつくるなり話し合いをしながら土地を集めていく、そういう構造を目指す。そういう意味で、民主党の戸別所得補償は、販売農家を全体に出すということ自体は、僕は考え方としてはいいのではないのかと。

 初めから規模を分けて、大規模なものだけ対象にするという形ではなくて、自民党の場合にも集落営農等は柔軟に取り入れておられますけれども、いわゆる今ある経営者が話し合いをしながら大規模化していく。この間、随分多くの農家がお互いに合併し合いながら大きくしていく。そういう仕掛けを支援する形で所得補償も柔軟に使えるように、今回の規模拡大加算も、僕はそれは有効に使えるのではないか、そういうことを期待しております。

 ただ、申し上げるならば、そこをうまくやったとしても、国際競争力があるモデルが一つあったとしても、それが工業のように全国に工場を展開できるような形で、農業の場合には国際的な競争力のある農場を幾らでもつくれるということには全くならなくて、既存の農家、土地利用者と話し合いながらやらざるを得ない。ここは時間もかかるし、大変な戦略も要る、そういうふうに思っております。

谷委員 それでは、また後でお二人の方には再度御質問させていただくかもわかりませんが、山下会長にお尋ねしたいと思います。

 先ほど御意見の中で、組合員もさまざまな考え方がある、なかなか一つにはまとまっていない、これからじっくり論点を明確にした上で国民的議論が必要だというふうにおっしゃいました。

 それはそのとおりだと思うんですけれども、冒頭お話しさせていただいた、TPPに参加、不参加、どちらにしても、将来、貿易の自由化というのはある程度は避けられないと思うんですけれども、そのことと食料自給率を向上さすことはどう理解したらよろしいんですかね。必ずそれは両立してもらわなければ困るということなのか、いや、自給率は向上しなくても、安全で安くておいしいものがしっかり手に入ればいいという方たちも組合員の中には相当おられるのか、ちょっとその辺についてお尋ねしたいと思います。

山下参考人 組合員の中には、やはり品質のよいもので、安全で顔が見える関係の国産のものを大事にしたいという気持ちもある一方で、とりわけ若い層には、やはり国の内外を問わず、一定のレベルの安全が担保されているのであれば安いものも欲しい、こういうニーズがあるのも現実でございます。

 ですから、私どもは、いわばそれを選んでいただけるように、提供できる組み立てができないものかというように考え続けてまいりました。

 今お尋ねの自給率についてでございますが、私は、その前提として、消費者の願いを実現しながら、自給力をつけ、それが結果として自給率で評価されるということにするのがベストだと思っております。

 その自給力の中身は、分解しますと、担い手、技術、農地なのではないか、こう考えております。ですから、産直活動を通して担い手を激励してまいりました。あるいは、JAにも御協力いただけるような場合には、生協みずから農業生産法人も立ち上げて、みずから担い手も買って出るというようなこともやってまいりました。そういうことを通して、少しでも耕作放棄地を有効活用できないかというようなことも考えてまいりました。あるいは、世代ごとの技術の伝承も大事にしたいということで、産直を支えていただいている生産者の皆さんとも協議を重ねてまいっているところでございます。

 こういった取り組みと、自由貿易体制を拡大していったときに予想される激変に対してどういうふうにソフトランディングをできるのかということでは、いろいろな切り口から試算値もいただきながら、我々は消費者に、この幅の選択で提供しますので、この幅で選んでいただく限りにおいては、農業についてもさらに私どもは自給力の向上のためにいささかなりとも支えることができますよということを提案し続けていくしかないんだ、こう思っております。

 一例で申し上げますと、消費者は国産だとばかり考えて食べている肉や卵などなども、実はえさが輸入されているものですから、自給率にはほとんど影響がない。では、そのときに、えさを国産に置きかえられないものか。例えば、えさ米といったことはどの程度貢献できるのかなどなど、ごく具体的な、身近なところで消費者に提供をしながら、消費者の願いの実現とその選択肢の幅の中で、なおかつ自給力の引き上げにつながるように、私どもとしても何とか組み立てられないものかと大変苦労をしているところでございます。

谷委員 最後になりましたけれども、一番明快でありました萩原先生にお尋ねいたします。

 第三の開国ではなくて第三の構造改革だと言われましたけれども、少し私の意見とも違うところもあるんですけれども、先生にお尋ねしたいのは、そうしたら、FTAですね、TPPはおいておいて。そういうことは余り評価しなくていい、我が国は取り組まなくていいのかどうか、その辺の先生のお考えをちょっとお聞かせ願いたいと思います。

萩原参考人 私は、鳩山さんが最初に国連で演説されたことを思い出すんですよ。何を演説されたと思いますか。要するに、アジアの人たちと個別に、つまりFTAですね、これは確かになかなか難しいんですよ、お互いの利害がいろいろありますので、だけれども、そういうのを地道に積み重ねる中で東アジアを重視したいというふうにおっしゃったんですね。これは、私は極めて感度のいい演説だったと思います。

 つまり、今は、私の立場にとっては非常に残念なんですが、アメリカは、世界経済からどちらかというと落ちているわけですよ。つまり、今需要というのはどこかといったら、東アジアなんですね。だから、東アジアの需要を取り込める国が勝つんですよ。そういうことを考えると、これはどうしたってやはり中国であるとかインドであるとかこういう諸国、いろいろ問題はありますよ、問題はあるんですけれども、しかし将来的にそういう国と仲よくしながら経済的な交流を強めていく。

 私は、国際貿易は必要なんですよ、必要ないと言っていないんです。だから、民主党は最初の、二〇〇九年の八月ですね、たしか政権をおとりになった、あのときに出したその精神に戻ってくださいよ。あの国際貿易の考え方というものは、私はあれはすばらしいと思いますね。そういう形で日本を活性化していただきたいというのが私の考えでございます。

谷委員 相変わらず明快な答弁をありがとうございました。

 ただ、萩原先生の御期待は残念ながらかなえられないのではないかということを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

中井委員長 これにて谷君の質疑は終了いたしました。

 次に、西博義君。

西委員 公明党の西博義でございます。

 四人の先生方、貴重な御意見をちょうだいいたしまして、心から感謝を申し上げます。

 まず初めに、四人の先生方それぞれに同じ質問にお答えいただきたいと思うんですが、菅総理は、六月にTPPに関して参加をするかどうかの決断をする、こういうふうにおっしゃっているんですが、きょうはさまざまなお立場から意見表明をいただきました。一たん、皆さん方に菅総理になっていただいて、いよいよ六月が来ました、そのときに、この判断を迫られたときに、最も重要な基準、物事の価値判断の基準というのは、皆さん方にとってそれぞれ何なのかということをまず初めにお伺いをしたいと思います。

久保田参考人 それは、やはり国民世論だと思います。国民の皆様の理解と支持が重要だと思っております。

堀口参考人 やはり大事な基準は、日本の国民経済がどう展開をするか、それも、特にアジアを中心に成長を遂げるかというのが大事な視点であるというふうに思っております。

山下参考人 総理としてという仮定ではございますけれども、私が仮にそうであれば、やはりその時点で、今の私を支えていただいている千八百万組合員のみならず、国民の皆さんに、TPPに参加するに当たっての明確な条件を提示できて、かつ、そのことについて、仮に国民投票をして信任をいただけるという確信を持てるかどうか、それが決断につながる最大のファクターではないか、こう私は考えます。

萩原参考人 お答えの仕方がなかなか難しいのでございますが、菅総理が六月に決断する、これは、要するに民主党に政権が行ったから彼は総理大臣である。そうであるからには、私はやはり国民に約束したという原点に返っていただきたい。私は、もう一度選挙をやってやり直していただきたいですね。自分の、TPPに入ったらこうなりますよという形でもって国民に言って、私は間違えました、ですから、私はその前のを変えたのでありますから、では、こういうことでやりますのでいかがでございましょうかと言って、もう一度国民の声を聞かないでずるずるずるずると行くのは、僕はやはりひきょうだと思います。

 以上です。

西委員 最後の萩原先生については、ちょっと私の前提を外れた、さらに上を行く御答弁でございましたけれども、承らせていただきました。

 それで今、期せずして多くの先生方が国民の声を聞く、国民の大勢が大事だと。私は、もうちょっと個別的なことを判断の材料にされるかと思ったのですが、大変重要なことをおっしゃられたように思います。

 今始まったばかりといえばそうなんですが、今現在も私自身は、なかなか政府として的確な判断材料を与えているとは言えない、なかなか見えにくい。もちろん、国際交渉のことですから、すべてがすべて明らかになるというわけではありませんけれども、いろいろな条件がありますね。項目にしても、二十三項目とかいうふうにおっしゃっています。九カ国、十カ国の国がそれぞれ交渉する。非常に多角的、しかも多面的な議論が必要だと思うんですが、その割には、今の状態というのは、我々自身が、私は皆さん方がこの状態できょうおいでいただいたことを本当に感謝するわけですが、わからないことが多い。

 先ほどのお話の中でもそういうふうにおっしゃられた方もいらっしゃいますし、私、ちょっと論文を拝見いたしますと、堀口先生も山下先生もそういう御感想を論文の中でも述べておられます。そのことについて、まず、堀口先生、御感想をお願いしたいと思います。

堀口参考人 多面的な側面があり、例えば日本医師会などが声明を出しておられますけれども、TPPにかかわるいろいろな中で、従来の路線がアメリカを中心に通るのか、それともそうではないのかというのは、我々関心を持って見るところでありますけれども、やはりこのTPP全体は、乗りおくれるなというふうに言われる方もあるんだけれども、僕は後ろに続いていないというふうに思っているんですね。日本とアメリカが相撲をとってしまうようなことになる。

 その場合に、条件としては、やはり裸で入ってこいということが先にあるんだから、そういう意味では、情報を集めるにしても、六月に早期に決断をしなきゃいかぬというようなふうに自分を置くべきではないというふうに思っております。

 そういう意味で、日本は、主張すべきものをTPPでも当然主張しなきゃいかぬし、同時に、他のFTAなりWTOなり、ここを粛々と進めるということが必要じゃないかというふうに思っております。

西委員 続いて、久保田参考人にお願いをいたします。

 この早期参加を求めるという声明の中にもあるんですが、まず、政府としてTPPを推進するということになりました、よって、その推進をしっかり支えていきたい、応援をしていきたいという趣旨だと思うんですが、実はいろいろな枠組みがあることは、もう御高承のとおりであります。

 そのTPPの条件がどうだということについては、例えば、先ほどの堀口先生は、関税撤廃ということが条件というふうに述べられて、TPPへの参加を検討されておられますし、久保田参考人は、必ずしもそうではないんだというような意味のお話もございました。例えばアメリカなんかはそうじゃないんじゃないかというふうなおっしゃり方をされましたけれども、そういう情報そのものが錯綜しているという面もあるんですが、私は、この最終的なアプローチを考えますと、例えばFTAAPに最終的には収れんしていくということは比較的皆さんが合意をされていると思うんですが、その道のりの中にいろいろな経路があってしかるべきであろう、こう思っています。今までの経緯もございます。二国間なり、さまざまな経緯があります。

 今回、かなり障壁の高いこのTPPということの参加を早くやってほしい、こういうお話でしたが、その辺のことも含めてTPPが最善だというふうに経団連の皆さんが思われているのか、そのことについて、もちろん製造業だけではなくて、サービス業だけではなくて、農業とか全体の国の仕組みの中でこういうふうにお考えになっているのかということをお伺いしたいと思います。

久保田参考人 今先生の御質問、最終ゴールはまさにFTAAPというAPECベースでの自由貿易地域を目指していく、二〇二〇年という一つの目標を置いていますけれども、私ども、まさにそのゴールに向かって進めていくべきだというふうに考えております。

 それで、通商交渉、きょうはTPPというお話でしたので、TPPについての御説明をさせていただきましたけれども、冒頭、私、申し上げましたように、まず、WTOとEPAは車の両輪というふうに考えていまして、まさにWTOドーハ・ラウンド、これはもう十年近くやっております。ことしが最後の機会ではないかと言われておりまして、私どもとしましても、まさにこのドーハ・ラウンドをことしじゅうにできれば決着してもらいたい、こういうふうに思っているところでございます。

 それから、まさにアジアを取り込むというか、アジアの活力を生かす、あるいはアジアとともに日本も成長するという観点から、ASEANプラス3ということで日中韓、それからプラス6ということでインド、先般インドの方は署名もいたしましたけれども、インド、オーストラリア、ニュージーランドという、そちらの、ある意味のマルチのEPA、これも非常に重要だと思っていまして、ぜひ進めていく。それとTPPとはあわせて進めていく。なぜかといえば、まさに、アジアのみならず、アジア太平洋諸国全体を、日本を含めた形でのより広いルールづくり、それから自由化というのが進められていきますので、そこに日本が乗りおくれるということは非常に問題だということ。

 私どもはまさに、マルチのWTO、それからバイ、あるいはプルーラルという形になるかと思いますけれども、ASEANプラス3、6、それからTPP、これを同時並行的に進めていって、最終的にはFTAAPに結びつけていく、こういうことが一番重要だろうと考えている次第でございます。

西委員 若干よく似た質問ですが、堀口参考人にお願いをしたいと思います。

 きょうお話しいただいた中で、一番目に、政策選択としては唐突なTPP、こういうふうにお話がありました。

 今、久保田参考人からお話をいただいたわけですが、必ずしも、それはそれでよろしいかとは思うんですが、このプロセス、最終的なFTAAPに向かってのプロセスそのものが、ハードルの高いところに行くということが、全体的な、例えばWTOなんかの今までの交渉の過程、二国間交渉の過程、こういう歩んできた道のりからすると、これはどうかなという部分も若干私は懸念を持っている一人でございまして、その辺についての、先生の考えられる今後の国際的な経済連携のプロセスについてお考えをお伺いしたいと思います。

堀口参考人 TPPは、多くの人が突然出てきたというふうに印象を受けられた、私もその一人でありますけれども、多分、政府の関係者もそうではなかったかと。

 TPPは、当初の四カ国から始まった中にアメリカ、オーストラリアが加わることによって、内容を、いわゆるアメリカ流の、関税撤廃をすべてに求めるというところに手段として使われるという側面が非常に強いというふうに思っております。

 そういう意味では、日本は、中国、韓国と組みながらASEANともFTAを結んでいくという路線とはもう全く違った角度で来ているわけで、TPPに日本がのめり込むということは、かえって中国なりASEANとの関係を、交渉をうまくしなくなる、促進剤にはむしろならないというふうに僕は思っております。

 多分、中国、韓国あるいは多くのASEANはこれに加わらないだろうし、それを冷ややかに見ているといいますか、ですから、本来なら、日本は従来の路線で、ASEANなり中国、韓国との交渉、あるいは当然EUとの交渉もありますけれども、ここを進めていく、その上でWTOでもしかるべき主張をする、この路線が大事だというふうに思っております。

西委員 時間が迫ってまいりました。最後に、萩原先生にお願いをしたいと思います。

 私は、きょうお話を伺って、どちらかというと、今までは、要するに、物の流れと農業と、これを比較考量してどうなのかという議論がややもするとずっと短絡的に続いてきたような気がします。たくさんの分野があって、それぞれに大変重要な課題を抱えているということをきょうははっきりと教えていただきました。

 そんな大きな流れの中で、先ほどとちょっと似た質問なんですけれども、今まで、ここまで日本が経済連携をやってきて、今回TPPに行くか、こういうことなんですが、経済連携という分野での次の一手として最善の一手は、先生が交渉をされるとしたらどういうプロセスを考えられるか、お聞きをしたいと思います。

萩原参考人 先ほど申し上げましたとおり、貿易というのは大変重要なものでございまして、基本的には国民の生活を豊かにする。これは間違いないわけであります。

 ところが、このTPPというのは、従来の貿易自由化のやり方とは異質なんでございます。つまり、要するにすべての関税を撤廃する、これは物だけじゃなくてサービスも含めて、そして人の交流、投資、あらゆるもの。ある意味でいうと、国を全く取っ払って、国境を取っ払って一つの国をつくる、そういう従来とは全く違った貿易のやり方であるということをまず認識すべきであると私は考えます。

 ですから、そこに日本とアメリカが入るということは、これは大体GDPでいうと九〇%を超えることになりますから、日米が全く自由なFTAを結ぶ、そういう路線になるわけです。果たして、そういうことをやることが日本にとって、国益と言いますけれども、国益というのは極めてあいまいな言葉でございまして、それぞれの立場によって違うわけです。はっきり言いまして、財界の方と農業の方と商業の方と、私は研究者ですからどっちでもいいんですけれども、要するに利害が違うわけでありますよ。

 だから、事実、どうなのかということを指し示して、その中で、やはりすべての人を、最小不幸社会というのが菅さんの言葉でありますから、それをどこに求めたらいいのかということを考えるのが私は政治の仕事じゃないかというふうに思っております。

 ですから、何が重要かとおっしゃいますと、とにかく、今現在展開されている、そして実際に乗ろうとしているTPPというのは、これはそんなに急ぐ必要はないと思います。私は、やはりアジアというものを重視する中で、地道な形でのFTA交渉を進めて、その中で、要するに貿易の自由化、つまり、食料というのは普通の工業とは違うんですよ。

 もしこれがなくなったらということは考えたくはないんですが、今の状況でいうと、そういうことが起こるわけですよ。例えば、今エジプトでああいう事件が起こりましたが、背景は何かといったら、食料の高騰ですよ。日本は今円高ですからそんなに影響はありませんけれども、そういうのが世界で非常に大きな問題になっている。そのときに、日本を食料自給率一三%に落としていいのか。つまり、このTPPに入るということはそういうことだということを自覚されることが私は大変重要だというふうに思います。

 以上でございます。

西委員 ありがとうございました。

中井委員長 これにて西君の質疑は終了いたしました。

 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 きょうは、久保田参考人、堀口参考人、山下参考人、そして萩原参考人、お忙しいところ、貴重な御意見ありがとうございました。

 もう既に各委員からも質問があったんですが、私は、まず萩原参考人に何点か伺いたいと思います。

 先ほど、TPPは第三の構造改革だということで、農業だけじゃなくてサービス貿易ということで非常に重大な問題だという話がございましたが、今TPPが出てきた背景の問題なんですけれども、アメリカの要求ということも強調されました。

 そこで、アメリカでいいますと、二〇〇八年の大統領選挙では、民主党がブッシュ大統領の進めるような自由貿易主義に対して批判をしながら、大変なことになるということでオバマ政権になった。ところが、今度、サマーズなどの自由貿易主義派を据えるということで、対外的にも自由貿易イズムというのを進めているということだと思うんですけれども、そういう中で出てきたTPPということについて、その背景にあるアメリカの通商政策の変化といいますか、なぜそういうことをアメリカは今やろうとしているのかということについて、端的に伺えないでしょうか。

萩原参考人 アメリカの貿易政策というのは、大きく言って三つございます。これは、要するに多角的に貿易交渉を進めていくという、現在はWTOのドーハ・ラウンドという形で、ちょっと今頓挫してございますが、そういう道、それと、要するに地域的な統合というもの、経済統合を進めていくという、そして、個別的に進めていくということであります。

 なぜ、アメリカがこのTPPというものに注目してきているのかというと、端的に言いますと、これは大変手詰まりになっている。今、アメリカは、リーマン・ショック以降、大変景気が落ち込みまして、それはなぜ落ち込んだのか。当然、その前のバブルですね。住宅バブルということでありましたが、余りにもアメリカの需要に各国がどんどん売る、そういう不均衡が非常に発生したということでその問題が起こったんだと。今度は、アメリカがいわば外国に製品を売っていく。もちろん、製品を売っていくといってもアメリカはもうサービス貿易でありますので、もちろん農業は強いですけれども、そういう方向に大きくオバマ政権はチェンジしてきております。もちろん、ブッシュ政権からそういう傾向はございましたけれども、とにかくそういう方向でいくんだということであります。

 ところが、これはドーハ・ラウンドが、リーマン・ショックの起こる年のたしか七月でありますけれども、結局、アメリカと中国とインドの利害が対立いたしまして、中国、インドは中小零細農を守る、そういう立場から、緊急セーフガードというものはやはり譲れないという立場ですし、アメリカは農業の補助金ですね、これは言われるけれどもなかなか切れない。そういうような関係でぶつかって、それが今現在うまくいっていないわけですね。

 それでは、地域的にはどうかと申しますと、NAFTAというのがございまして、これは一九九四年にクリントン政権のときにできたわけでありますが、カナダ、アメリカ、メキシコという形で、要するに自由貿易ですね。この自由貿易を展開する中で、メキシコなんかが農業がやはりやられちゃいまして、大変大きな被害を受けた。そこで結局、中南米ですね。さらに南にどんどんそういう統合を進めていこうというふうに考えていたんですが、最初はそういう交渉でもってやろうということだったんですが、二〇〇〇年になってきましてから中南米諸国でもって、やはりそれじゃだめだと。そういう方向ですと、みんなアメリカに富を吸い上げられてしまうという形で、中南米は中南米で集まって統合を進めて、その中で、もうドルと違う通貨でもって決済をやろうじゃないか、こういうような段階まで進んでいるわけです。

 つまり、アメリカが非常に世界経済の中でいわば追い込まれた。その中でどうやってアジアの市場に食い込むか。つまり、インド、中国とはかなり対立しておりますので、その中でこのTPPに目をつけて、恐らく日本ですと、日米安保条約第二条の経済条項というのがございますので、日本は簡単に抱き込める、こういうふうに見て、要するにアメリカが、ちょうど日本の政権もそういう方向にごろっと昨年の六月の新成長戦略で変わったもんですから、それでという状況になろうかと思います。

 以上です。

笠井委員 今の最後のところとつながるんですけれども、先ほどから唐突感というお話がありましたが、菅政権は昨年十月になって急に、第三の開国ということでこのTPPの参加問題を持ち出してきたわけですけれども、それは端的に、なぜだというふうに萩原参考人は思われるでしょうか。

萩原参考人 このTPPが非常に唐突であるというのは、確かに唐突でありますが、よく調べてみますと、新成長戦略の二十一の国家戦略プロジェクトの工程表の中に、アジア太平洋自由貿易圏の構築を通じた経済連携戦略というものが出ておりまして、実は、これは経団連がおつくりになったものなんですよ。これはこの四月に……(発言する者あり)いや、本当ですよ。見てください。経団連が四月に発表しているんです、新成長戦略を。これがほぼ一緒ですよ。

 ですから、それを要するにここで引き写して、もう六月の段階からこういう路線を、民主党は、だからころっと変わったわけであります。ですから、APECというものをきっかけにして、アメリカは当然来ますよ、アメリカはことしハワイでもってやりたいわけですよね。だから、そういう思惑が見事にドッキングする形で出てきた。ところが、そういう状況は国民は知りませんので、私も知りませんよ。それで調べてみたら、何、そうなの、こういう感じでございます。

 以上です。

笠井委員 唐突ではなかったということで今のお話があったわけですが、先ほどユーロの問題を特に強調されましたけれども、中小企業のお話ですね。先ほど久保田参考人から、中小企業にとってもTPPはいいんだというふうなことがあったんですが、萩原参考人は、中小企業にはこのTPPの影響というのは、何か特にお考えはいかがでしょうか。

萩原参考人 TPPというのは、先ほど申し上げたとおり、これはあらゆる分野の関税、それから非関税障壁を撤廃する、そういうものでございます。ですから、そういう点でいうと、これは農産物だけではなくて、海外からたくさんの、言ってみれば中小企業と競合する、そういう製品は恐らく入ってくることは間違いございません。

 もちろん、競争、いいじゃないのという形で言われるわけであります。ところが、競争というのも、それなりのルールがないとまずいんですよ。要するに、今、皆さん、日本のデフレというのは、あれは安売り競争ですよ。これが、あの規制改革ということを言われて十年、見事、一九九七年、あの橋本さんから始まった。ああいう中で、要するに、とにかく安ければいいんだ、安ければいいんだ、そういう形で世の中が来ているんです。それが日本を非常に停滞させている要因なんですね。

 ですから、これでやりますと、また、ある意味でいいますと、さまざまな製品の安売り競争が始まってくる。そういう状況の中で日本経済を、もちろん、そんなつぶれるわけはないんですけれども、そういう状況の中でどうやってそれを活性化させていくかという点に関して言うならば、大変難しい問題を、中小企業というのは企業の九九%を占めている、従業員は我が国民の大体七割ですよ。そういうことを考えれば、やはりこのTPPは、そういう点でいえば非常に深刻な影響を与えるということは明らかなことだと思います。

笠井委員 久保田参考人に伺いたいんですが、先ほど萩原参考人からは医療の分野という話がありました。それから、堀口参考人からも日本医師会の見解ということも紹介されて、私も見ましたけれども、あの中で、日本がTPP参加によって医療の安全と信頼性が揺らいで、国民皆保険制度の崩壊につながるんではないかという懸念、警鐘が鳴らされています。

 そこで、日本経団連の立場を伺いたいんですが、医療分野の国家資格、例えば医療免許、看護師免許、それから介護福祉士の免許について、資格の相互承認を推進する立場にお立ちになっているかどうか、また、いわゆる混合診療についてどのような立場をとっておられるか、お答えください。

久保田参考人 私どもは、できるだけ優秀な人材については交流を深めていくべきだということでございまして、まだ資格のところについて明確にはしておりませんが、基本的な考え方はそういう考え方です。ただ、単純労働者を日本に大いに入れていくべき、こういう立場ではございません。

 それから、混合診療のところにつきましては、私どもは、なるべく自由化度の高い医療の方向を目指していくべきだというふうに考えているところでございます。

笠井委員 堀口参考人に伺いたいと思いますが、先ほども若干ありましたが、特に、食料や穀物の高騰の問題があります。

 ことしに入って、気候変動の問題や、それから国際的な投機活動の影響もあって、食料、特に穀物価格が高騰しているということがあるわけですが、二〇〇八年に、穀物輸出国の輸出規制とか、あるいは穀物輸出価格の騰貴ということで、途上国や日本に大きな影響を与えたというのは記憶に新しいところであります。

 あの事態について日本としてどういう教訓を導き出すべきか、そして今、この食料高騰のもとでのTPPという問題についてどのようにお考えかというのが一点と、もう一つは、自国の食料供給を攪乱要因から守るために、やはり食料主権の確立というか、要するに、自国の食料供給は自国で安定的に守るという一種の食料安全保障の考えがあると思うんですけれども、堀口参考人の食料主権に対する考え方についても一言お願いしたいと思います。

堀口参考人 おっしゃるとおり、二〇〇八年と同じような状況が今生まれつつあるのは、一つは、そういういろいろな変動等を生じながら、生産がやはり落ちてきて、さらに備蓄が落ちる、そこに騰貴が加わる、そういうシナリオがまた短期に再発をしている、そういうふうに思っております。

 そういう意味では、二〇〇八年のときにも国際会議等で随分提案をしたんですが、今一部始まりましたけれども、アジアでのいわゆる共同備蓄というのを、各国が拠出し合って米を持ち合う。そうすることによって、IMF農業版だというふうに私は言っておりますけれども、日本は自給率を差し当たりは五〇%に置いて、さらにそれをどう引き上げるかは別として、やはり日本は多く食料を海外にも依存せざるを得ない、この状況は続くわけですね。そういう中で、安定的にあるいは価格が上がったときに、金の力で日本が買い取るというような形ではない仕組みを今の状態から提起をしておく。そういう仕掛けを貿易の中に入れておくべきではないかという意味で、共同備蓄というのはまだほんのわずかな量でありますけれども、一つ端緒がついた。

 あと、我々研究者が協力をして、国際的な情報をいかに正確に出すか。今のところ、国際的な情報はほとんどUSDA、アメリカのあれに依存していて、USDAは各大使館に農務官を派遣して置いていますけれども、それ以外の情報を我々は余り持っていないんですね。そういう意味では、みずからFAO初め情報を正確に出しながら投機的なものを排除する、そういう方向が一つではないか。

 それから、その上で、日本の食料資源、最大のものが、山林も含めてやはり土地だと思うんですね。ここをいかに有効に活用するかということが大事だと思います。

 この前は、早稲田の学生と一緒に、岩手県で分収造林で間伐をやりましたけれども、そこで間伐したCO2の削減分を早稲田大学の、東京都の規制に充ててよと、都外排出の規制を求めて、東京都はそれを認めてくれませんでしたけれども、いずれにしろ、山林も、間伐を五十数万ヘクタール日本は維持しないと京都議定書の三・六%は守れないわけですね。果たしてそこができているのかどうか。しかも、林業でいえば、切り捨て間伐という、当たり前のように言葉が使われているんですが、これは全くおかしな話ですね。

 農地の場合も、耕作放棄地が次々と出てくる。ここは、条件が悪いところから落ちてくる中で、なかなか担い手がそこを借りるなり買うなりということができない。ここら辺も、公的な処理も含めて、日本の資源を有効に使うという手だてを考えなきゃいかぬ。そういう意味で、いろいろな所得政策というのは非常に有効であるというふうに私は思っております。

笠井委員 時間が参りました。

 山下参考人には食の安全で一問と思ったんですけれども、またの機会によろしくお願いします。

 ありがとうございました。

中井委員長 これにて笠井君の質疑は終了いたしました。

 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 このたびは、このTPP問題に関しまして、委員長初め与野党の理事が集中審議というか参考人のお時間を設けていただいて、大変ありがとうございます。また、皆さんのお話も本当に参考になりました。

 と申しますのも、菅総理、唐突という言い方を皆さん指摘されますが、これは選挙戦の中でも余り触れられずというか、余りというかほとんど、全く触れられない中で、今、せんだっての所信表明でも一番目に出てまいりまして、国民から見えづらい、何を言っているんだろう、何がどうなるんだろうということを多くの国民が不安に思っているテーマだと私は思いますし、また国会議員の中でも理解の温度差等々もあると思いますから、こうしたチャンスを得て、もっと深く掘り下げて論議するということがまず第一かと思います。

 そこで、きょうお話を伺いました中で、お一方ずつ順次伺わせていただきますが、まず久保田参考人にお願いいたします。

 APECで、FTAAP、WTOやEPAを基軸に置いて、アジア太平洋州での広い自由貿易に向けた連携をつくっていこうということがおおむね合意されて、そこに至る道の中で、TPPやあるいは日中韓FTAやASEANプラス6、ASEANプラス3、一つの山に登るのにいろいろな道があるのではないかという御指摘をあの場でいただいたんだと思うんですね。

 ところが、これは、例えばTPPでもそうですが、あらゆる分野の制度改正を伴いますために、一つの政権として、あるいは政治として、一つ一つやっていくにも物すごくエネルギーが要りますし、全部一挙にと言われてもなかなか現実にはできないと思うんですね。そうなった場合には、何が一番効率的で、社会の安定や経済の発展や、もっと言えば、私どもの文化や歴史、風土となじむのかというものの優先順位をつけていかなければならないと思うんです。

 一方、経済界にあっては、では、TPPと、日中韓FTAと、ASEANプラス3、ASEANプラス6、この三つくらいでいいかと思うんですが、経済効果の試算をされたことがおありなのか。もちろん、いろいろな起こり得る制度変更の方の評価も必要ですが、まず、産業界、経済界としては、自分たちがこの国をリードして発展させていくということになれば、経済効果のほどをこの三つで比べてみたりされたことはおありなのかどうかをお願いいたします。

久保田参考人 今御質問いただいた点と、それから皆さんから御質問いただいた点で共通しているところが一つありまして、唐突感という話ですけれども、それは私も非常に理解できるところなんです。

 それで、一つは、時間が非常に限られている。これは、アメリカはことしの十一月にAPECを主催してそこで決着したい、こういうことをやっている。それから、情報が限られている。これは、いろいろ政府が関係国に情報収集に当たっていますけれども、やはり交渉に入らないとその中身がわからない。そこからくる不安感というか唐突感、これは国民一般が持っているところではないかなというふうに思って、そこは私どもも一部共有するところがございます。

 ただ、その背景は、要するに、日本以外の国はそれだけ速くスピードを持って動いているということだと思うんですね。そのスピードに日本がついていけるのかどうか。この世界の速いスピードについていけなければ、日本経済あるいは日本自体がますます孤立化していくんじゃないかというのが、私どもの一番の懸念なんです。

 そういう意味で、先生の御質問のプライオリティーというのもわかりますけれども、私どもとしては、まさにWTO、ASEANプラス3、6、日中韓も今共同研究が進んでいますけれども、そこから先に進んでいないという面があります。TPPの方はある意味、現実的に動いている交渉という意味ではTPPということで、私どもとしては、そこは優劣つけがたいということで、全部並行的にやっていくべきだと。

 それから、何かモデルを回して試算というのは、特に、今のところ私どもはしておりません。

阿部委員 今、久保田さんのお話でありましたが、実は、TPPの方は、入っていないし、情報もないし、動いているといっても本当に動いているのかどうかもわからないということで、これは日本にとっては大変難しい選択なんだと思います。

 そして、私は、特に業界、企業が進めて農業界が反対とか、そういうことではなくて、やはり国全体として考えるといった場合に、日本の経済界にとっても、我が国の経済発展を今制約しているいろいろな要因があると思います。関税もその一つであろう。あるいは、いわゆる為替レートの円高の問題。もう一つは、では、日本がどんな産業分野でどんな技術革新をもって伸びていくのか、ここが実は、一番本気で経済界に明確にしていただきたい部分です。

 政権交代、自公政権から民主党にありましたが、成長戦略と新成長戦略、この間で何か違うのか、新しいものが今生まれようとしているのか、そこについてはどうでしょうか。

久保田参考人 はい、ありがとうございます。

 私どもも、まさにそこに一番重点を置いて考えているところでございまして、基本的には、成長戦略それから新成長戦略をできる限り早期に完全に実施してもらいたい、こういうことだと思います。

 それから、今回改めてまたTPP、きょうこういう形で説明させていただくので、いろいろ調べますと、これから日本は、より技術の高い、あるいは資本集約的な産業を中心として日本経済を牽引していかなきゃいかぬ。そういう意味では、自動車でいけばハイブリッドだとか、あるいは電機・電子でいけば液晶テレビの重要な部品、これは今、日本でまさに製造されて輸出したり、部品は途中で輸出して、アジアでまた加工して、さらに最終消費地に持っていく、こういうことをやっております。

 やはり、貿易・投資、それから知的財産権、そういったもののルールの自由化、あるいは日本企業にとってより有利な形でのルールづくり、これが日本経済全体を引っ張っていく。そういう中で、産業対農業という対立じゃなくて、まさに産業も農業も一緒に一体となって日本経済全体の力をつけていく、競争力をつけていく。それに日本全体が取り組まなければ、本当に日本は世界からずれ落ちていく、そういう感覚あるいは危機感を我々は持っているところでございます。

阿部委員 今のお話はルールのスタンダード化でしたが、果たして、TPPの場合、アメリカンスタンダードでありますから、このことが我が国の社会に与える影響等々で、恐らく、萩原先生が第三の構造改革ではないかとおっしゃったことかと思います。私は、これは単に対立という構図をとるんじゃなくて、本当に真剣に論じてみないと、後悔先に立たずということになる懸念を抱いております。

 次に、堀口先生に伺います。

 堀口先生のお話を伺っておりますと、先ほど私がつけた優先順位の中で、特に、例えば、ASEANプラス3、6、あるいは日中韓FTAなどの我が国の置かれた地理的要件等々も加味して、そして歴史的要件も加味したものから、WTOとFTAを補助的に使いながらの、ある意味では自由な物の移動がいいのではないかというお話でした。

 そこの根拠をもう一度。さっき、いろいろな道があるけれども、こっちの道がいいよ、全部やれたら、もしかしていいのかもしれないけれども、恐らく破産しちゃう、ばらけてやっていけなくなると思いますから、やっぱり一つ一つ慎重にいかなきゃいけないと思いますが、堀口先生のおまとめの、東アジア共同体ということの具現としての日中韓FTAあるいはASEANプラス3を選ばれる理由をお願いいたします。

堀口参考人 TPPは、御承知のように、アメリカが後から加わって、それをアメリカ流に使おうという性格が非常に強くて、ここに加わるということは、オバマ政権が、共和党は金融の方が強いと思うんですけれども、何とか貿易で伸ばし、アメリカ経済を回復しながら次の選挙に備える、こういう戦略的な中でTPPが主張されている。そういう意味では、これに乗るということは、やはり中国との関係とかアジアとの関係でむしろ僕はマイナスになるというふうに思っております。

 これを、TPPに乗っかるのはアメリカ派で、東アジア共同体は中国派ですねなんていうふうに分ける方がおられるんですけれども、そうではなくて、まさにそこで日本が、ASEAN3なり6も、当然、アメリカあるいはオーストラリアをにらみながらその関係をつくるという、日本の主体的な努力が反映する、そういう分野だというふうに思いまして、ここは従来以上に増してその方向を強めるべきではないか、その結果がWTOにもつながるというふうには思っております。

阿部委員 私が先生のお話をほかでも読みながら理解しましたところは、やはり農地の面積を幾ら大規模化しても、日本の場合、限られている、制約がある。あるいは土地の制約もございますし、また兼業農家も多うございます。そうすると、自給率と、さっき自給力という話も出ましたが、そうした自給率といろいろな物の取引を本当に共存させていくために、アジアの国々との当初の道が開かれた方がよいのではないかと、私は先生のものを拝見して思いました。お時間がないので、私の勝手な理解を伝えさせていただきます。

 山下参考人には、私は特に、生協関係の皆さんは安全性ということが九割、十割大事なことだと思うのです。トレーサビリティーもそのような中で重要なテーマなのですが、実は、このTPPでアメリカと二十四項目のいろいろな情報収集をやっている中で、私が大変懸念したのは、遺伝子操作食品などの取り扱い。種の問題もありますし、こういうものがどこでチェックされるのかということをせんだって外務省に伺いましたら、これはSPSとおっしゃっていましたでしょうか、SPS、衛生植物検疫のところでかかるのだろうが、まだ一切そういうことは聞こえてこないと。

 遺伝子操作食品であるかどうかは、これは非常に代々にわたり後世に影響をすると思うのですね。安全性の観点から、そのあたりはどのように生協としてお考えであるのか。ヨーロッパなどは非常に厳密に厳しくしておりますし、はっきり申しまして、アメリカは多くの遺伝子操作食品の上に成り立つ国であります。ここについての御意見をお願いいたします。

山下参考人 SPSの枠組みでチェックされるのか、さらに今後の交渉事であるのかについて、私ども情報を持っておりません。

 ここまででいただいている情報の中で私が考えますのは、GMOあるいはノンGMOについて、少なくともリスクアセスメントということでは、最先端の科学的な知見に基づいて評価をされ、公表されるべきだろう、これが一つであります。それから、そのことに基づいてリスクコミュニケーション、つまり消費者に対しては情報を公開されるべきであり、三つ目に、私どもは、事業者としては、ノンGMOかGMOかということについては、任意の表示も含めて消費者に情報を開示しながら、消費者に選択をいただけるようにしてまいりたい。そのためにも、最先端の科学的な知見とリスクアセスメントを重視したい、このように考えております。

阿部委員 よいものや、そういう遺伝子操作しないものが大変高くなれば、手に入れられない層が出てまいります。そうした社会経済影響もあると思います。

 最後に、萩原先生には対米開国のお話をいただきまして、アメリカに対しての開国だという御指摘は、大変に身にしみてよく理解できました。ありがとうございます。

中井委員長 これにて阿部君の質疑は終了いたしました。

 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 きょうは、四人の参考人の皆さん、大変貴重なお話をありがとうございます。

 みんなの党は、統一地方選挙に向けて、農業アジェンダというのをつくりまして、農業政策の基本方針を明らかにしております。基本的な考え方ははっきりしておりまして、要は、減反政策を段階的に廃止する、そして米価を下げていくことによって、国内の需要を拡大するだけではなくて、輸出競争力を高めていく。こうした、価格支持政策から、直接支払いによる、財政負担による政策に変えていこう。一見、基本的には、民主党さんの農業政策の基本ラインに似通っている部分があるとも思うんですけれども、今後それを進めていく上での政策手段が異なっている、こういうふうに思っております。

 まず、山下参考人にお伺いをしたいというふうに思いますが、生協さんの皆さんですから、消費者の立場に非常に近い、そうした立場でお伺いをいたします。

 今まで、日本の農業保護というのは、基本的に、食管制度以来、米の値段を初めとする食料品の価格を高い価格に維持して、消費者にそれを負担してもらう、こういう形で農業保護を行ってきた。そうした農業政策のあり方についてどのようにこれまでお感じになられてきたか、これをお伺いしたいというふうに思います。

山下参考人 消費者のニーズには、品質もあれば安全もあり、かつ価格もあるということについては、申し上げたとおりでございます。

 私どもといたしましては、これまでの消費者負担について言えば、それが国際平準価格との比較という意味で、余りにも高過ぎるものについては、少なくとも、選択の余地がある程度に選択肢の対象に入れていくというようなことが必要なんではないか、あるいは、そのためには、財政投入ということも含めて、この分野には投入されてしかるべきではないか。

 消費者は、安全で品質がよくて納得できる価格であれば購入しますから、そういうフードチェーンをつくることで担い手を支え、自給力を引き上げ、自給率に結果するように支えることもできるはずであり、それをメーンストリームにしながらも、なお選択肢を求めている以上は、そのことにもこたえるということにかなうような政策の構築が必要である、こういうふうにかねてより考えてきてまいっております。

柿澤委員 農業保護の指標であるOECDのPSE、プロデューサー・サポート・エスティメートというものがありますが、これは消費者負担と納税者負担の部分から構成をされていて、その内訳は、関税により高い価格で農業を保護している消費者負担の部分は、八六年―八八年ぐらいから二〇〇六年にかけて、アメリカは三七%から一七%に下がっている。EUは八六%が四五%に下がっている。一方、日本は九〇%から八八%、ほとんど変わっていないわけです。

 まさに、関税により高い価格で農業を保護しているというこの構造は、日本は他国に比べて全く変わっていないわけですが、アメリカやEUは、この間、まさに価格から財政へと、直接支払いへと保護のあり方を転換してきているわけですけれども、日本はその転換がおくれている。

 このことについて、堀口先生はどのようにお考えになられているでしょうか。

堀口参考人 御指摘のとおり、日本は、価格支持、食管制度のところから所得補償に転換するのがやはり遅かったことは事実であります。自民党の水田・畑作経営所得安定対策も含め、ようやく所得政策が具体化し、民主党の戸別所得補償にもつながっている、こういうふうに考えております。

 ただ、先ほども申し上げましたけれども、アメリカとEUとの違いは、いわゆる内外のコスト格差が極めて大きいという中で、どこまで財政が許される範囲で所得補償をするかということと、もう一つ、アメリカ、EUの場合には、特にEUの場合は、従来、価格支持政策を介入価格でずっとやってきました。その時点で、自給率がずっと上がってきたわけですね。それで所得政策に移るときには、いわゆる自給率が一〇〇%の中で移れる。

 それに対して、日本はずっと下がってきて、四〇%のところから出発せざるを得ない。だとすると、所得補償の額そのものが極めて大きくなるし、さらに、自給率を上げるとなると余計に財政負担になる。ここを結果的には関税で、全部ではなくて、先ほど申し上げましたように、あるいは小麦等々も、無税で入れる部分と、それからそうでない日本の高関税の部分と分けながら、ミックスで政策を組まざるを得ない、こういう状態にあるというふうに私は認識しております。

柿澤委員 米の減反政策に代表されるように、供給量を人為的に、人工的に調整、減らして、それによって価格を維持しよう、こういう政策が行われてきたわけです。今おっしゃったような自給率の向上、また生産力の維持、こういう面からすると、まさに逆行する政策を今まで行われてきた。

 これについて、私たちは、この際、米の減反は段階的に廃止をする、そして、主業農家に農地を集約して、そこに直接支払いをして農業の構造改革を進める。それによって価格を下げて価格競争力を高めることによって、場合によっては供給量をふやし、そしてアジアへの輸出も行うことができる。アジアのマーケットは三十億人もいるわけですから、そしてそれが大方お米を食べる、そういう民族なわけですから、そうした形で供給量を、生産力を向上、拡大をしていく。

 そして、食料自給率、食料安全保障の面からいえば、そうした形でふだん輸出をしているものを、一朝事あらば国内の消費に充てていく、ふだんは輸出をしているものを有事の際には国内で消費をする、こういう形になれば、まさに食料安全保障が自由貿易のもとで成り立つ。こういう考え方をとるべきではないかと思いますが、もう一度、堀口参考人、お願いします。

堀口参考人 私は農業経済学を教えておりますけれども、いわゆる通常の価格の変化の場合、御承知のように、特に基礎的な農産物の場合には、少しでも供給が過剰になると値段が暴落をする、そういう暴騰と暴落、過剰と過少を繰り返す中で、各国とも長年、価格を安定化させる政策をずっと続けてきているわけですね。

 今、アメリカもEUもいわゆる生産調整はやっておりませんけれども、長らくそれを実施してきた。そういう中で、日本の場合にはまだまだ米の占める割合が大きいし、それに期待する生産者の供給が多いものですから、やはり私は、生産調整と組んで、ミックスの政策を当分は維持しなきゃならないであろう。

 ただ、現時点で多くの大規模な経営者、ここに今資源を集約してそれを支援するというのは私は賛成なんですけれども、その彼らがやはり現在では、先ほど御紹介しましたけれども、この後茨城の八千代に戻りますが、麦と大豆の二毛作を九州の佐賀のようにやっている、ここは現在の民主党の戸別所得補償政策の非常に効果の出ているところであります。これが多分自給率を大きく引き上げることに貢献するのではないか。

 減反を今すぐ僕は、今は減反はやっていないわけですけれども、農民が一万五千円もらうためには生産調整をしなきゃいかぬという仕掛けを維持しながら、他の必要な農産物を所得補償で応援し、それで農民が生産拡大していく、いわゆる一〇〇%転作のような、そういう大規模農家も出てきておりますので、こういう形で競争力を強めていくというふうに私は期待しております。

柿澤委員 来年度予算では、この戸別所得補償に八千億という額を投じていくことになるわけです。しかし、主業農家にもまた兼業農家にもひとしく所得補償を行う、こういう政策によって、結果として農業の大規模化そして集約化、意欲ある主業農家に農地が集約をされていく、こういうことになっていない。

 そして、今回、規模加算が行われていますけれども、この規模加算も極めて小さな農家にも出すということによって、今まで主業農家に貸し出されていた農地が逆に貸しはがしに遭って、そして、この所得補償を加算分も含めて受け取る、こういうことに使われてしまう。むしろ、逆効果になってしまうのではないか、こういう指摘も行われています。

 農業の体力を強める、こういう点で、予算の規模が取りざたをされる場合が多くありますが、しかし、予算をこれだけかけましたということで農業の体力が本当に高まるというものではないんだというふうに思います。

 そういう中で、関係省庁がいろいろレクチャー用の資料として示すものを見ると、例えば、日本より先にアメリカとFTAをまとめた韓国がこの十年間で総額九兆円の農業対策予算を投入した、こんなことが書かれていて、日本と韓国の農業産出規模を比較すると日本が三倍程度だから、要するに、それをあわせて想像していくと三十兆円ぐらいの農業予算がこの先TPP対策として必要ですよ、こういうことをレクチャー資料として示している。こういう、予算規模を膨らませても、合目的的な支出でなければ、金を使って、結局は、開国してみたら農業は壊滅ということになりかねないというふうに思います。

 その点、堀口参考人とまた久保田参考人にもお伺いをしたいと思います。

堀口参考人 大事な御指摘だと思います。

 農業政策に対するいろいろな財政の支出の仕方は、有効に使われているかどうかを検証する必要が僕は当然あると思います。

 韓国の場合も我々は調査をやっておりますが、残念ながら、韓国の場合には依然として自給率がぐいぐい下がってきております。そういう意味で、韓国はアメリカとの中で米は守ったわけですけれども、その他のものは基本的には廃棄した。そういう意味で、いわゆる五〇%の割合で貿易にGDPが依存する韓国と、人口が約一億二千万の、二倍を持つ日本の場合に、農業とそれから産業とのバランスをとるというのは、韓国の経験そのものは我々は学ぶにしても、それをそのままとるわけにはいかない。

 そういう意味で、お金の出し方の工夫も相当しなきゃいかぬ。僕は、集約的に使うということは非常に賛成であります。

久保田参考人 今、柿澤先生から御説明いただきましたみんなの党の政策につきましては、基本的な方向性は私どもと同じでございます。水際でとめるのではなくて、国内対策。当然、その前提としては、その間に農業の競争力を強めていく。そのために、国内的な財源措置が必要だということで、私どももそういう方向で進めていくべきだというふうに思っています。

 今、もちろん規模云々という話がございましたけれども、今回の予算の中でそういう規模加算というのが入ったことを我々は評価しておりますし、今回のTPPを契機に、農業の競争力をいかに強化するかという議論の中で、今先生がおっしゃられたような方向で農業改革が進んでいくべきだというふうに考えているところでございます。

柿澤委員 時間になりました。終わります。ありがとうございました。

中井委員長 これにて柿澤君の質疑は終了いたしました。

 次に、田中康夫君。

田中(康)委員 一昨日の予算委員会でも、日本は既に通商立国ですから開国済みでありまして、至らない点があれば改める改国を行うべきである、しかし猪突猛進であってはこれは国を壊す、壊す壊国であるということを申し述べました。独立国家日本を二十一世紀の米連邦化の従属へと画策する羊の皮をかぶったオオカミ、トロイの木馬がTPPではなかろうかと思っております。

 しかし、日米関係というのはとても大事なことなのでございまして、とするならば、夫婦も親子も恋人も、相方が歩むべき道を見失っているときには、前向きな助言をしてあげてこそ真のパートナーではなかろうかというふうに私は思っております。にもかかわらず、残念ながら、喜々として幇間役を務めているというようなのが現在のその日暮らし内閣でありまして、でありますから、国民新党・新党日本の亀井静香も静かでいられないということなわけでございます。

 さて、久保田さん、日本経済団体連合会、そして日本商工会議所、経済同友会の「TPP(環太平洋経済連携協定)交渉への早期参加を求める」という資料を御配付いただきました。

 ところが、久保田政一さん、私の英語が不得手なわけではないと思うんですが、インターネットで、アメリカの多国籍企業のグーグルでTPPという項目を検索で入れても、ほとんど出てこない。これは、国家がインターネットを統制している中国と同じような状況に、アメリカがブロック経済化で陥っているのであろうか。なぜ、TPPという単語が検索で英語では出てこないのでございましょうか、お教えください。

久保田参考人 残念ながら、存じ上げません。

田中(康)委員 皆様の傘下企業には多くのIT企業があると思いますので、ぜひ、お戻りになられたら大手町の新しい建物の中でごらんいただきたいと思うんです。

 といたしますと、韓国も中国も実はこれは環太平洋でございます。間に日本海や東シナ海が入っているからおれたちは太平洋じゃないなどと言うわけもなくて、これはAPECに参加しているわけでございます。台湾も、あるいはロシアも参加しているんですね。

 では、どうして、こんなにすばらしいと今、菅直人首相がおっしゃっているTPPに韓国も中国も無関心なのか。韓国や中国というのは、久保田さん、これは愚かなのでございましょうか、あるいは疎いのでございましょうか、これもお教えください。

久保田参考人 韓国は、既に韓米という二国間のFTA、これも署名していまして、あと議会の批准を待っているところでございます。韓国は、加えてEUともそういうものを結んでおりまして、夏にはもう発効するということで、そういう意味で韓国はアメリカとの、あるいはTPPという枠組みに今すぐ入る必要はない、こう考えているんだと思います。

 今後につきましては両論ありまして、韓国はいずれTPPに入ってくるという考え方と、いや、もうバイで、韓米というのでできているので入ってこない、両方あるので、そこはよくわかりません。

 私どもは、日米についてもFTAができればやりたいと実は思っておりました。ただ、問題は、アメリカがもう二国間のFTAには関心がないということで、TPPというフレームワークにアメリカが乗ってきたという中で、私どもとしてはTPPに乗っていくべきだというふうに思っております。

 中国については私ども真意はよくわかりませんが、中国の場合には、まずプライオリティーとしてはASEANプラス日中韓のフレームワークが重要なんだろうということで、それをまず目指していくという方向が当面の中国の政策なのではないかというふうに考えているところでございます。

田中(康)委員 今、久保田さんは大変に大事なことをおっしゃったと思うんですね。すなわち、韓国はアメリカ、あるいはインドやEUや、こうした国とFTAやEPAを結んでいる、日本もその形はあるべきだと。恐らくそれは、ドーハ・ラウンドという多国間のものがマルチ、サイマルテニアスにはいかないという中で、二国間というのでFTAやEPAが出てきたわけでございますよね。

 そうすると、日本の本来の政治の力があれば、あるいは、西高東低ならぬ、政治は低くて経済は高いと言われている政低経高が日本だというふうに大手町の方々が思っていらっしゃるならば、なぜ経済団体は日本の政府に対して、あるいは霞が関に対して、FTAやEPAをきめ細かく何でやらないんだと。何でやらなかったと言われると、逆に武部さんからおしかりを、その政権時代というので……(発言する者あり)そうですよね。

 前原さんのように、前の政権のせいにするような口先番長ではございませんので、先に話を進めますと、なぜ、経済団体はFTAやEPAということはおっしゃらずに、TPPという、ほかの国がどこも言わないことに走っていらっしゃるのでしょうか。

久保田参考人 先ほど御説明いたしましたけれども、経団連の通商政策、過去を見ていただきますと、まずWTOを推進すべきだということでやってまいりました。ただ、ドーハ・ラウンドがなかなか進まない、もう十年近くたっていますけれども、なかなか決着しないということで、諸外国がそういったことも要因となってバイあるいはマルチのFTAに重点を移しつつある。

 我々としては、まさにWTOもそうですし、ASEANプラス3やASEANプラス6、先般、インドと調印できましたことは、我々も歓迎の表明を会長から出しております。そういう形で、前々から、WTOもそうだし、ASEANプラス3やASEANプラス6もそうだし、それからTPPもすべてやってもらいたいということで提言しておりますけれども、現状、今のところは動いているのはTPPのみ、こういう状況でございます。

田中(康)委員 先ほど来、FTA、EPAだけでなくてTPPという、複線化ではなく複々線化の中央線にしなさいみたいなお話かと思うんですけれども、私は逆に、FTAというジョギングも、あるいはEPAというハーフマラソンも満足に出場した経験のない素人が、突如いきがってTPPというフルマラソンに出るといっても、これは心臓麻痺は不可避なわけでございまして、どんなにAEDの器械が小さな箱物行政で置いてあったとしても、倒れちゃうんじゃないかと思うんです。

 ですから、それだけ深いお考えを経済団体の方がお持ちならば、バスに乗りおくれるなTPPなのではなくて、今こそ韓国やほかの国に、悔しいけれども見習っていこうと何で行わないんだと。今おっしゃったように、一昨日のインドのEPAに関してもすばらしいとおっしゃった。では、なぜそれが対アメリカに対してだけは言えないのかという疑問を私は持っております。

 実は、皆様御存じのように、また前回も申し上げたように、TPP交渉参加九カ国に日本を加えた各国のGDPというものは、アメリカがその中の全体の七割くらい、日本が二〇%、オーストラリアが五%で、残りの七カ国で五%でございます。ですから、ここは大事なことは、アメリカが七割、日本が二割と、二国間だけでTPP交渉参加国のGDPの九割を占めてしまっているということです。ですから、TPPに入ると日本の貿易がよりすばらしい未来が来るというのは、私はそうではないんじゃないのかと。

 すなわち、実質的な輸出国はアメリカと日本しかない。シンガポールという国は、非常に金融で、そして親子で政権を担うという、自由主義圏の北朝鮮に似たような側面がございますけれども、そのほかの国は、最初に参加した国はみんな一次産品国だ。石油あるいはレアアース、レアメタル、あるいは酪農、畜産という一次産品国で、そのほかの二次産品等はみんな輸入する国だから、これはメリットがあらわれようかと思います。

 そして、アメリカはなぜこれに参加しようとしているかというと、私は恐らく、バラク・オバマ大統領自身が貿易黒字国がアメリカへの輸出に依存するのは不健全だと言明されているわけで、すなわち、ブラジルであったり、インドであったり、中国であったり、新しい経済の国が出てくる中でアメリカの覇権というものが失われつつあるときに、このTPPによって失地回復をしようと。しかし、そのときに、日本はパートナーであるわけですから、あるいは日本はアメリカとは夫婦関係だと言っているわけですから、なおのこと、この点に関して考え直すべきなのではないかというふうに思っております。

 久保田様ばかりやっていると大変に失礼かもしれませんので、では、堀口さんと萩原さんに、TPP交渉参加国の中に、アメリカ、オーストラリアも入れて、日本と利害が一致する国というのは果たしてあるのでございましょうか。シンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランド、ペルー、ベトナム、マレーシア、オーストラリア、アメリカという国の中に日本と利害が、交渉というのは、利害が一致する国は一緒に共闘がとれます。その点に関して、ちょっとお教えいただけますでしょうか。

堀口参考人 そういう観点で見てはおりませんでしたけれども、多分、二国間で交渉をする場合には、その九カ国の中にも十分可能性がある国はあると思います。アメリカとのFTAはどうするかというようなことは、極めて難しい交渉になるであろうと思います。

 ただ一方で、このTPPそのものに日本が大きく関与すること自体が、逆に、EUとのFTAなり、あるいは東アジアの関係をむしろマイナスにしてしまう、そういうサイド効果があるように僕は思います。

萩原参考人 日本と利害が一致するという意味でございますけれども、私は田中先生の御意見と一致いたしております。

 要するに、今までFTAという形で地道な、自主権を尊重しながら貿易を広げてきたこの路線、これをやはり追求するということが非常に重要なポイントだと思います。

 個別的な国に関して調べているわけではございませんけれども、それはやはり、その国その国の状況、そしてその中でどう自分たちの国のあり方、貿易で重要なのは、自分たちは自主権があるんですから、自分の国のあり方というものをきちんと押さえて、その中で貿易を進めていく、これが私は非常に重要だと思うんです。

 それに対して、このTPPというのは、田中先生と意見が一致すると思いますけれども、極めて乱暴なやり方で、一気にそれを全部自由という形にやるというのは、やはりやり方として大変まずいのではないかというふうに思っております。

 以上でございます。

田中(康)委員 恐らく、おっしゃるとおりで、アメリカと並んで日本だけが外需依存度が最も低いという形ですから、他の国が一次産品国でありますから、そしてアメリカは黒字国がアメリカへの輸出をふやすなと言っているわけでございますから、これは日本にとっては隘路ではないかと私は思っているんです。

 久保田さんに改めてお聞きしますが、TPPは、単に農業とかそういう話だけでなく、公共入札であったり、いわば、英語で表記していない小さな村の公共入札のホームページは非関税障壁だと言われるんじゃないかと私は思っているんです。電波というようなものに関しても、テレビも含めて、ルパート・マードックがたくさん入ってくるような非関税障壁化が行われるんじゃないかと思います。

 経団連としては、こうした電波というものも、外国の方々、外資の方々が入ってきて開かれることが、日本の記者クラブ制度を打破する黒船だというふうにお考えなのか、この辺も御見解をお聞かせください。

久保田参考人 私どもはそういうふうには思っておりません。

 ただ、現在のP4で行われているTPPの交渉を見ますと、そういった問題が今のところ話題になっているということではありませんし、バイの話は、当然、日米のいろいろな話というのは引き続き、このTPPとは並行しながらいろいろな経済対話が進められていく、そういう中でアメリカの要求というのはいろいろ引き続き出てくるんだろうと。それについては是々非々でやっていくべきだというふうに考えています。

 TPPの場合は、日米だけじゃなくてほかの国も入っていますので、そういう国全体としてまとめていけるルールづくりということですので、そういった観点からも、TPPにいろいろ懸念するところ、わかるところもありますけれども、過度な心配というか、そういうことは今の時点ではないのではないかというふうに考えております。

田中(康)委員 しかし、これは例外ないというふうに言明して始まったものでございますから、例外をつくってくださいといっても、つまり、真っ裸でまずは参加しなさいと言っているわけですから、フルマラソンに真っ裸で参加すると、それだけでわいせつ罪になるんじゃないかと私は懸念しているんですけれども。ですから、ちょっと今のは大変に楽観的で、そのようなお公家さんのような、公家の方がもっといろいろ画策したんじゃないかと思うので、ちょっと心配でございます。

 その点でいえば、逆に医療ツーリズムというのも、例えば、子供が肺炎をこじらせて、救急車でたらい回しになっているような医療崩壊が起きている国に、いや、海外の方の医療を見なくていいと言っているんじゃありません。国内の医療が崩壊しているときに、外国からもうかりそうな方が来るから、自分の息子を横に置いて、そっちの外国の金持ちの息子を診ようというのは、これは倒錯したボランティア精神でございまして、これこそ自虐史観になりかねないのではないかと私は思っております。

 いずれにいたしましても、TPPは、まさに羊の皮をかぶったオオカミである。その前に、原則に戻ってFTA、EPAを行うべきだと思いますし、また山下さんにおかれましても、広い議論をして国民的なと言っている間にこれはどんどん動いていってしまうわけでございますから、こういうことを言っていては、手続民主主義の市民運動家の敗北主義になってしまいます。菅さんや仙谷さんもそうではなく、内ゲバを起こしてでも勇猛果敢に戦おうと。それがすばらしいかどうかは、亀井静香は悩んでおりますが。

 やはり生協活動におかれても、皆さんに情報を提供してなどと言っている間に世の中は動いてしまいますので、この問題はまず五感で感じていただいて、やはりこれは日本の滅亡する壊国だという点で山下さんにも御意見をきちんと述べていただける勇気を期待し、また経団連の方々にも、聡明なる経済界のリーダーシップを国民のために、日本のために発揮していただけるようにお願いをいたしたいと思います。

 どうもありがとうございます。

中井委員長 これにて田中君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。

 参考人各位には、御多用のところ、まことにありがとうございます。大変有意義な御議論をさせていただいて、委員会を代表してお礼を申し上げます。(拍手)

 次回は、来る二十一日午前十時から委員会を開会し、集中審議を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時二十八分散会


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