衆議院

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第3号 平成24年2月1日(水曜日)

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平成二十四年二月一日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 中井  洽君

   理事 笹木 竜三君 理事 武正 公一君

   理事 西村智奈美君 理事 鉢呂 吉雄君

   理事 若井 康彦君 理事 若泉 征三君

   理事 石破  茂君 理事 小池百合子君

   理事 高木 陽介君

      石井登志郎君    石関 貴史君

      磯谷香代子君    今井 雅人君

      打越あかし君    江端 貴子君

      小原  舞君    大西 健介君

      大西 孝典君    逢坂 誠二君

      岡田 康裕君    金森  正君

      工藤 仁美君    櫛渕 万里君

      熊田 篤嗣君    桑原  功君

      小山 展弘君    近藤 和也君

      佐々木隆博君    斉藤  進君

      杉本かずみ君    仙谷 由人君

      玉置 公良君    中野 寛成君

      長尾  敬君    仁木 博文君

      萩原  仁君    橋本 博明君

      花咲 宏基君    浜本  宏君

      藤田 大助君    古本伸一郎君

      馬淵 澄夫君    向山 好一君

      村越 祐民君    室井 秀子君

      森本 和義君    柳田 和己君

      山岡 達丸君    山崎  誠君

      山田 良司君    渡部 恒三君

      赤澤 亮正君    伊東 良孝君

      小里 泰弘君    金子 一義君

      金田 勝年君    小泉進次郎君

      佐田玄一郎君    齋藤  健君

      田村 憲久君    橘 慶一郎君

      野田  毅君    馳   浩君

      山本 幸三君    石井 啓一君

      東  順治君    笠井  亮君

      塩川 鉄也君    内山  晃君

      斎藤やすのり君    阿部 知子君

      浅尾慶一郎君    山内 康一君

      中島 正純君   松木けんこう君

    …………………………………

   内閣総理大臣       野田 佳彦君

   国務大臣

   (行政改革担当)

   (社会保障・税一体改革担当)

   (「新しい公共」担当)

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)

   (行政刷新担当)     岡田 克也君

   総務大臣

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (地域主権推進担当)   川端 達夫君

   法務大臣         小川 敏夫君

   外務大臣         玄葉光一郎君

   財務大臣         安住  淳君

   文部科学大臣       平野 博文君

   厚生労働大臣       小宮山洋子君

   農林水産大臣       鹿野 道彦君

   経済産業大臣

   国務大臣

   (原子力損害賠償支援機構担当)          枝野 幸男君

   国土交通大臣       前田 武志君

   環境大臣

   国務大臣

   (原子力行政担当)    細野 豪志君

   防衛大臣         田中 直紀君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     藤村  修君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (消費者及び食品安全担当)

   (拉致問題担当)     松原  仁君

   国務大臣

   (金融担当)       自見庄三郎君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)

   (科学技術政策担当)   古川 元久君

   国務大臣

   (防災担当)       平野 達男君

   財務副大臣        五十嵐文彦君

   防衛副大臣        渡辺  周君

   内閣府大臣政務官     大串 博志君

   財務大臣政務官      三谷 光男君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    山本 庸幸君

   予算委員会専門員     春日  昇君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月一日

 辞任         補欠選任

  打越あかし君     熊田 篤嗣君

  江端 貴子君     仙谷 由人君

  逢坂 誠二君     磯谷香代子君

  金森  正君     桑原  功君

  岸本 周平君     小山 展弘君

  佐々木隆博君     藤田 大助君

  橋本 博明君     向山 好一君

  古本伸一郎君     森本 和義君

  馬淵 澄夫君     斉藤  進君

  室井 秀子君     浜本  宏君

  横山 北斗君     柳田 和己君

  伊東 良孝君     小泉進次郎君

  小里 泰弘君     齋藤  健君

  東  順治君     石井 啓一君

  笠井  亮君     塩川 鉄也君

  内山  晃君     斎藤やすのり君

  山内 康一君     浅尾慶一郎君

  下地 幹郎君     中島 正純君

同日

 辞任         補欠選任

  磯谷香代子君     杉本かずみ君

  熊田 篤嗣君     玉置 公良君

  桑原  功君     金森  正君

  小山 展弘君     岡田 康裕君

  斉藤  進君     櫛渕 万里君

  仙谷 由人君     江端 貴子君

  浜本  宏君     室井 秀子君

  藤田 大助君     萩原  仁君

  向山 好一君     橋本 博明君

  森本 和義君     古本伸一郎君

  柳田 和己君     横山 北斗君

  小泉進次郎君     田村 憲久君

  齋藤  健君     小里 泰弘君

  石井 啓一君     東  順治君

  塩川 鉄也君     笠井  亮君

  斎藤やすのり君    内山  晃君

  浅尾慶一郎君     山内 康一君

同日

 辞任         補欠選任

  岡田 康裕君     長尾  敬君

  櫛渕 万里君     馬淵 澄夫君

  杉本かずみ君     小原  舞君

  玉置 公良君     打越あかし君

  萩原  仁君     工藤 仁美君

  田村 憲久君     伊東 良孝君

同日

 辞任         補欠選任

  小原  舞君     石井登志郎君

  工藤 仁美君     佐々木隆博君

  長尾  敬君     大西 孝典君

同日

 辞任         補欠選任

  石井登志郎君     逢坂 誠二君

  大西 孝典君     岸本 周平君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成二十三年度一般会計補正予算(第4号)

 平成二十三年度特別会計補正予算(特第4号)


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     ――――◇―――――

中井委員長 これより会議を開きます。

 平成二十三年度一般会計補正予算(第4号)、平成二十三年度特別会計補正予算(特第4号)の両案を一括して議題とし、基本的質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。仙谷由人君。

仙谷委員 初めて与党として質問をさせていただきますので、ちょっとどぎまぎしておりますが、まずは、おはようございます。

 きょうは補正予算第四号の審議でございますが、この補正予算にしましても、あるいは本予算も含めて、今、日本がどういう状況に置かれているのか、この時代認識といいましょうか、あるいは状況の分析ということが、私は政治家にとって最も重要な事柄だろうと思っております。その中から、よく言われます覚悟であるとか、あるいは方針であるとか、そういうものが出てくる。

 野田総理が、昨年の十二月二十九日、民主党の社会保障と税一体改革調査会の総会に出てこられて、野田総理の集約で素案が決定をされたわけでありますが、そのときに、歴史的な使命をよく感じてといいましょうか、歴史的な使命を腹に入れてこの場に処する、こういう集約をしたいということで、その決意あるいは覚悟を表明されたわけでございます。私は、時代認識といいましょうか、そして、野田総理の歴史的な使命というものは、まことに当を得た決意あるいは方針表明であったと思います。

 そこで、まずは補正予算についてお伺いをするわけでありますが、補正予算というのは、東日本大震災の復旧復興のために、一次、二次、三次と大変大きな金額を積み上げてきたわけでありますが、さらに第四次補正予算というものを、この際、国民の皆さん方にお諮りをして決めていこう、こういうことをお考えになった。

 今、資料として平成二十三年度補正予算のポイントというのを提示してございますが、これは、いわば官邸の方といいましょうか、財務省と一体となっておつくりになった概略のペーパーだと思います。

 総理、義務的経費の追加、その他の経費、地方交付税交付金と書かれているわけでありますが、これは、概要、どういう点に腐心をされたのか、重点を置かれたのか、そういう点についてお伺いをしたいのでありますが、いかがでございますか。

野田内閣総理大臣 おはようございます。

 今、仙谷委員から御指摘をいただきました、今御審議をいただいている第四次補正予算のいわゆる中身のお話でございます。

 今般の四次補正予算については、追加財政需要を中心に措置しておりますけれども、今回の予算をつくった背景として、円高の進行と、それからタイの洪水による影響、さらには欧州債務危機など、我が国を取り巻く経済環境の動向に的確に対応することができるように、経済活性化や、あるいは将来に向けての安心、安全の確保に資する、概括的に申し上げるとそういう内容となっております。

 例えば、セーフティーネット貸し付けやセーフティーネット保証の強化などを図り、円高、タイ洪水等による経済環境の悪化リスクに備え、中小企業の資金繰りの円滑化に万全を期すこと、あるいは、エコカー補助金を再開して、円高で輸出が厳しい状態にある自動車産業の国内市場活性化、環境性能にすぐれた自動車の開発普及の促進を図る、また、高齢者医療制度の負担軽減措置、安心こども基金、子宮頸がん等ワクチン緊急接種の基金などの延長を図ることなど、経済活性化や将来に向けた安心、安全に資する施策を計上させていただいております。

 本補正予算と二十四年度予算の早期成立に努め、東日本大震災からの復旧復興を果たし、日本経済が再生するための地歩を固めてまいりたいと思っております。

仙谷委員 今総理から御答弁をいただきましたが、要するに、医療、子育て、福祉、従来進めてきた、そして、二十三年度、二十四年度の予算でも相当重点的にこの施策を推進させようとしたものに、さらに念を押すかのように国民の生活の安定と安心のために予算をつけた、さらに、先ほどおっしゃられましたけれども、環境対応車の普及促進というふうなこと、あるいは食と農の再生というようなことにもつけた、こういうことだろうと思います。

 総理の言葉でなかったわけでありますが、私は、中小企業の資金繰り支援、七千四百十三億円が改めてついておるというところも、これは円高対応といいましょうか、日本の中小企業のみならず大企業も利益をとっていくのがなかなか苦しいところへ来ている、日本の世界に誇る中小企業が資金繰りでおかしいことにならないように、さらに七千四百十三億円、資金繰り支援のためにつけたということだろうと思います。

 今のお話の中で、事態の変更に伴って出てまいっておりますことに、お触れにならなかった一つといいましょうか、現下の、ここ数日のことでございますけれども、この寒い寒い日本が、気温が寒くて、豪雪といいましょうか、私などは雪の怖さというのをほとんど知らないわけでございますが、大変な雪で、家屋のみならず町ぐるみ押し潰されそうになっているという状況がテレビで我々の前に報道をされております。

 この四次補正を組んだときには、こんな寒い冬になるということはほとんど予想されない、特に豪雪がこれほどになるとは予測をしていなかったわけでありますが、改めて、新聞報道等々を見ますと、除雪を含めて、あるいはそこで生活する人の支援、救援といいましょうか、そういうことを含めて、これは政治の重大な課題になっているというふうに思いますが、これについてはどのように対応しようというふうにお考えなのか、一言お聞かせ願いたいと存じます。

野田内閣総理大臣 今般の豪雪でお亡くなりになった方に心からお悔やみを申し上げ、また、被害に遭われている皆様にお見舞いを申し上げたいと思います。

 その上で、今御指摘のありました豪雪対策、これは四次補正には入っておりませんが、どうするかということであります。

 まず考えられますのは、二十三年度の予備費が二千八百億ほど残っておりますので、この残っている予備費の活用で除雪等を行うであるとか、あるいは三月に配分する特別交付税の活用なども念頭に置きながら、しっかりと豪雪対策を講じていきたいと考えております。

仙谷委員 東北地方、北陸もそうでありましょうが、あるいは長野県というところも、この豪雪で、いわば東日本大震災とダブルで被害を受けているような状況にもございます。

 地方自治体へ特別交付税、あるいはいろいろなやり方がおありになろうかと思いますけれども、豪雪対策といいましょうか、雪害を克服する、そういうものを、現地とよく協議をしていただいて、遺漏なきようにお努めを願いたいと、改めて念を押しておきたいと存じます。

 さらに、この補正予算のポイントという紙の注書きのところにこう書いてございます。「一般会計予算総則において、株式会社東日本大震災事業者再生支援機構法に基づき、株式会社東日本大震災事業者再生支援機構の借入れ又は社債に係る債務について、政府保証枠五千億円を設定。」改めて政府保証枠五千億円を設定して、事業再生をされようとする人、会社、これに対して支援をするということでございます。

 つまり、自立的再興といいましょうか、復興を支援するための保証枠をつくったということでございますが、これは、改めてこの四次補正で東日本大震災復興についての決意を示した、こういうことでございましょうか、財務大臣。

安住国務大臣 臨時国会で野党の皆さんからの御提案を受けて成立した機構に対する政府の枠として、五千億円を追加いたしました。

 この機構は、その前にも政府がつくったものもありますけれども、農林水産業や個別の個人事業者に対する、再生を図るためにこの資金も使っていただくということで新たに設置をした枠でございます。

仙谷委員 では、もう一つ財務大臣にお伺いしておきます。

 このポイントの注二でありますが、「為替市場のいかなる動向にも十分な余裕をもって機動的な対応を行いうるようにするため、特別会計予算総則において、外国為替資金特別会計の外国為替資金証券発行等限度額を、二十三年度補正予算における百六十五兆円から百九十五兆円へと引き上げる。」枠を三十兆円拡大するんだ、こういうことが書かれているわけでございます。

 これは、もちろん円高にも対応する、あるいはマーケットの乱暴な売りとか買いとか、非常に為替の相場を短期間で極度に振幅させるというふうな行為についても備えをするんだ、こういう意味だと理解をしておりますが、そういう理解でよろしいんでしょうか。

安住国務大臣 そのとおりでございます。

仙谷委員 ということで、今、日本を取り巻く状況も、いわば世界を取り巻く状況も、金融経済の世界が、ある種、緊張感を持って見る、あるいは政策的に対応をする必要がある時期だと思います。各国の金融財政あるいは経済の担当者は、いわば毎日背筋が寒くなるような緊張感を持って臨んでいる。

 特に、ヨーロッパの政府債務危機、国家債務危機と言われるものは、実態がだんだん見えてきますと、ヨーロッパの金融危機、銀行危機でもあるということがはっきりしてまいったと思います。

 これは、当然のことながら、ヨーロッパの銀行がいろいろなマーケットでドルをとって、これをアジア、中国、そしてラテンアメリカに貸し付けておる部分というのが、きょうは数字を持ってまいりませんでしたが、相当大きい。二十兆円とか三十兆円のオーダーで貸し付けておる。

 ところが、マーケットでとった資金というのはいつか返さなければなりませんので、というか、むしろ短期資金が多うございますので、これはみずからが返済を迫られる。ヨーロッパのユーロ市場では、なるべく貸し渋りをしないようにというお達しがECBから出たとか出ないとかという話がありますが、そうなると、他の地域、つまり、アジアやラテンアメリカに貸し込んだ資金あるいは投資した資金をどうしても回収しなければいけない。嫌らしい言い方をすると、貸し剥がしということになる可能性がございます。

 これがどのようにアジアのマーケットあるいは消費、貿易に影響するのか、アジアに影響するとすれば、アジアから日本に、いわばサプライチェーンのかなめの一つであります日本にどのように影響するのか、このことをしっかり実体経済の側からも見なければいけませんし、マーケット関係者が、いわゆるファンドがどのような手でみずからのもうけを稼ごうとするのか、つまり、売って売って、空売りで売りまくって清算をするというもうけ方にいつ出てくるのかこないのか、ここが今我々も緊張感を持って見ていかなければならないヨーロッパの金融財政危機と言われておるものの政策的な方から見た問題だと思います。

 この点について、財務大臣は国際会議あるいはいろいろな会議にも出られておると思いますので、この危機感、ヨーロッパの危機感、アメリカの危機感、あるいはアジアの危機感というものについての御認識を若干でも御披瀝いただければと思います。

安住国務大臣 インドネシアとかベトナム、タイを含めて、やはりヨーロッパの銀行がいわば貸し付けをしているケースというのが非常に多いわけでございますが、昨年から、今、仙谷先生から御指摘があったように、いわば資金を引き揚げるという傾向が少し見られておりますので、そうしたことにつきましては、G20等についても、我々としては大変懸念を表明しておりますし、さきのアジアの通貨危機も、よく考えてみれば、やはりタイのバーツでそうしたことが引き金になった。

 ですから、そういう点では、ヨーロッパでの銀行の資金の安定供給がないと世界に通貨危機が伝播していく可能性が十分あり得るということで、邦銀も含めて、またアメリカも、今御指摘ありませんでしたが、そうした意味ではアジアへの投資というものを、年末までの間で見ますと、やはり投資からいわば引き揚げに向かって少し動きつつあった傾向がありますので、そうしたものがアジアの経済の減速感にもつながっていた。

 そうしたことから、G20の中でもこの問題を主要な議題の一つにしまして、世界経済の維持のためにそうした引き揚げはできるだけしないようにということは、強く私の立場からも訴えております。

仙谷委員 野田総理が韓国へ行かれ、あるいは中国へ行かれて、為替のスワップ、融通のし合いをするんだ、あるいは、中国のドルが極度に流出するようなことがあり得るとすれば、それはお互いに協力をしようという、いわばそういう意味の協定を結ばれたということを私ども承知しておりますが、これは、ある種の予防的な準備として、まことに適切な両国間の約束であったというふうに思います。

 ちょっと反対の話から、反対というのは、日本がそれほど悪くないのではないかという話がアメリカ筋から出てまいりましたので、その話から入ります。

 私は、今から、ニューヨーク・タイムズのことしの一月六日に出されたコラムといいましょうか、論文といいましょうか論考がございまして、その中身をかいつまんで一覧表にしてみたわけであります。

 結論的に言いますと、さはさりながら、日本も大変大きな危機感を持ってここは臨まないと国を潰すことになるというぐらいの切迫した危機感を持って政策運営、実行に当たるべきだと思っておりますが、そのことを最終的に総理とも議論をしたいと思いますが、まずは、アメリカでこういう見方が最近出てきたということも国民の多くの皆さん方にも知っていただきたいなということを思いまして、これを取り上げるわけでございます。

 つまり、八九年といいますと、まさに日本が最初に消費税を導入した年であります。竹下内閣であります。バブルがまだはじける直前で、絶頂期といえば絶頂期。八五年のプラザ合意で大変円高が進んで、その円高対策のために、日本銀行をして大変大きな量的な緩和をさせた。それで、不動産バブルが一挙に高進した。時はまさに、不動産価格、庶民にとっては、これじゃ家が買えない、マンションが買えない、年収の何倍ぐらいに住宅価格を下げるべきだという議論が起こったときでございます。

 その八九年から昨年二〇一一年まで、九〇年から一〇年までというふうに考えますと約二十年間でございますが、アメリカは、従来は、失われた二十年、日本は失敗した、政策運営に失敗したというふうに、日本自身もそういうふうに言っていた、あるいは、アメリカ、ヨーロッパの金融経済あるいは財政筋はそういう評価をしてきたんだけれども、ちょっと待てよと。実は、失敗した、失敗したと言いながら、うまくやったのが日本ではないか、こういう議論がアメリカで出てきたということであります。

 それはなぜかというと、経常収支がこんなにこの二十年間でふえているではないか。それから、アメリカはこんなに経常収支が悪化して真っ赤っかの赤字国になっているのに、日本は堂々たる黒字国ではないか。資本の流入もほとんどないのに、つまり、中国は経常収支が日本の倍ぐらいあると言われておりますけれども、ただ、資本投資が、資本収入がやはり二千億ドルぐらいありますので、それを引くと日本よりも実は実体経済上の経常収支は少ないのではないか、こういう議論もあります。

 さらに、ドルと円の関係は、これは人為的な円高的施策を誰かがやっているという陰謀説もありますけれども、しかし、さはさりながら、円が強いというのはある種の国力だと見えないこともない。特にポンドとの関係は、我々は目もくらむようにポンドを見詰めてきた時期があったわけでありますし、ロンドンへ行って我々が宿泊すると、ポンド高であることもあって、何でこの程度のホテルでこんなに料金を払わなきゃいけないのかと大体毎回そう思うわけでありますが、ポンドは日本円に対して約半分になっている。

 それから、何よりも失業率がアメリカに比べて半分以下である。後でまた失業率の表を見せますけれども、そうなっておる。

 それから、アメリカ人が割と重視するのは、平均寿命がこんなに延びた。医療ケアが圧倒的にアメリカよりもいいんだ、医療サービスが、水準もあるいは実験的じゃなくて臨床的な先端医療行為も日本が圧倒的にいいんだ、そのためにこんなに平均寿命が延びているんだと。

 それから、我々ちょっと気がつかなかったんですが、インターネットの高速インターネットサービス、光通信ということでありましょうが、これが世界で上から五十番の都市を数えてみると、日本は何と三十八都市がその中に入っておる、アメリカはたった三都市しか高速インターネットサービスのできる都市がないんだ、こうおっしゃっています。

 それから、これは東京に限られたことに近いのかもわかりませんが、五百フィート以上のビル、百七十メートルぐらいということでありますから五、六十階建てのビルということでありましょうが、この二十年間で東京では八十一棟建った、だけれどもニューヨークは六十四棟だ、そういうことを言っておるわけであります。

 あるいは、食文化の世界でも、東京にはミシュランで三つ星が十六軒あるのに、本家本元のパリでは十軒だ、ニューヨークに至っては三軒ぐらいだ、こういういわば文化程度も圧倒的に日本が凌駕をしておるではないか、こういうことをニューヨーク・タイムズは言い出しているわけであります。

 私は、この失われた二十年というのは、別途の理由で、日本はある種の、バブル崩壊をソフトランディングさせた、させつつあるということで、一部の理論からいうと、もっと急激にメスを入れないからだらだらと沈んでいるんだという説もありますけれども、これをごらんになって、総理、どういうふうにお感じになりますでしょうか。

野田内閣総理大臣 一月六日の、今資料として提示をしていただいているニューヨーク・タイムズのコラム、数字を挙げて整理していただいておりますが、例えば長生きできること自体は悪くない、そういう意味での一定の評価をしてもらうことは決して悲観することはないという面もあると思います。

 ただ、若干ちょっと面映ゆい感じがいたしまして、たまたまニューヨーク・タイムズはこういう切り取り方をしていただきましたけれども、一方で、むしろ去年の夏のエコノミストの記事の方が私は鮮烈でした。

 それは、覚えていらっしゃると思いますが、表紙に着物姿のオバマと、それから同じく和服でかんざしをつけたメルケルがいて、何でそんな和式の格好をしているかというと、後ろに富士山があるんですね、欧州は債務危機、そしてアメリカもいわゆる債務上限問題で決断しないで先送りをする政治がテーマになっているときに、その象徴が日本だ、日本化するという言葉も出ていました。一方で、私はそちらの方に危機感を持っているんです。

 確かに、悲観をすることはありません。ただし、現状に甘んじようとすると、それはじり貧に陥る道だろう。きのうも、TPPを含むFTAAPの議論などもさせていただきましたけれども、そういうことも含めて、何もやらないリスクの方が今の日本は大きくなっていると私は思いますので、いいところは伸ばしながらも、やはり決断をして、課題を解決していくということを目指していくべきだろう。

 もう一つ、人間心理としてです。

 やはり、バブル崩壊後生まれた人たちは、我々は高度経済成長を知っているしバブルも知っている、そういう経験がない人たちは、きょうよりあしたがよくなるという思いを持てない状況がずっと続いているということも深刻ではないか。では、どういう夢があるかというと、きちっと正社員になって結婚をするということが夢になりつつあるという。

 そうではなくて、もっと大きな夢を描いて、日本のために頑張ろう、世界のために頑張ろうという人たちがふえる環境をつくるためにも、今はやらなければいけないことがたくさんあるのではないかなという思いを持っております。

 ただし、御指摘のとおり、悲観ばかりすることはない。それは現実にあるとは思いますが、でも、やらなければならないことはいっぱいあるということでございます。

仙谷委員 きょうは時間の関係でそこまで数字を持ってこなかったのでありますが、結論的に言えば、ここに書かれているような状態はそれほど悪くない、現象的に。

 どかんと奈落の底へ突き落とされるような状況を避けるために、この二十年間、資金循環とそのストックの方から見れば、何が起こっているかというと、私、いろいろな方と数字を調べてみますと、大ざっぱに言えば、国の借金がいわば八百兆ぐらいふえて、家計は多分二百兆ぐらい金融資産をふやして、企業は六百兆円ぐらい、借金財務から、今や無借金であるばかりか相当大きな、つまり、四、五百兆のキャッシュフローを持っている、こういう状況になっている。つまり、家計と民間の借金部分を国が全部肩がわった。

 これは、自民党政権が意識してなさったのか、あるいは当時の与野党が、やはりここは余り、極端な経済の落ち込みをさせることによって再浮上する、いわば、一九九八年の韓国というのはやむを得ずIMFに介入されてそういうことになったんだろうと思いますけれども、日本はやはりそういうのは避けようよ、もうちょっとなだらかにいこうよ、国が国家の信用でカバーできる部分は何とかそういうソフトランディング路線でいこうよというのが、ある種の国民合意であったのかなという気がします。

 そのかわり、国に、中央政府に一千兆円の借金がどっかりと、その肩にずっしりとのしかかったというのがこの二十年、そういう総括をしておくべきだと私は思います。

 だから、これからはその反対をやるんだということには必ずしもなりませんけれども、一つ一つの課題を、将来を見据えて、つまり、五年後、十年後どういう社会をつくるのかということを見据えて政策展開を確実にやっていくということが必要だと思います。

 そこで、私は今、ヨーロッパ、あるいは昨年は北アフリカから始まったわけでありますが、これを見ていて、やはり財政金融問題、そして雇用、とりわけ若者の雇用というのが全世界的な大テーマだな、こういうふうに考えるようになりました。政策の軸をここに置く。金融危機をどうやって大きなものに、国内経済あるいは国民生活に金融危機的な状況をつくり出さないように我が日本としてするのか、できるのか。

 それからもう一つは、多分、その産業的な裏側であると思いますが、雇用を何とか維持しなければならない。そうしないと、地域、国も危ういものになる、将来も危ういものになる、そういう思いにとらわれて、この間いろいろな議論をさせていただいたわけであります。

 そこで、次のパネルをお示ししますが、これは実は、金融危機とともに各国から流れてきた主要国の失業率及び若年失業率の表でございます。

 ごらんいただきますと、先進国は、ドイツを除いては、大体一〇%に近いところに失業率がいっております。日本は、大体その半分ということであります。

 それから、何よりもこの若年失業率、十五歳から二十五歳まででありますが、韓国は二十から二十四というふうになっておりますけれども、スペイン、ギリシャ、この大きさをごらんいただきますと、どういう世の中になるかというのは、これは想像がつきます。あるいは、イタリアの三〇%というのもなかなか厳しい数字であります。フランス、英国、米国も二〇%内外ということであります。

 そして、今、各国で高学歴の若い人たちの就職が非常に危ういものになっている。それが、ニューヨークのデモであったり、ヨーロッパ各地で行われている、我々にしっかりした職をよこせという動きにつながってきているんだろうと思います。

 日本は、現時点でこういう低い比率、若年の失業率も七・九%にとどまっていると言われておりますが、日本はなぜこういうふうに相対的にはいいところにおるのか、あなたはどう思うというふうに専門家に聞きますと、いや、仙谷さん、それは非正規とパラサイトでもたせているんですよ、こういう端的な答えが返ってきます。

 つまり、非正規の労働者と言われる方々が四割に達しようとしている。そして、我々世代の、親の、つまり団塊の世代の、あるいはもう一つ下の世代かもわかりませんが、そこでお父さん、お母さんと一緒に住んでいるから住居費が余りかからない生活で、したがって、若い方々の生活が何とか保たれている、非正規の収入でも何とかもたせているんだ、こういう答えが返ってまいりました。

 そうだとすると、現時点はいいけれども、将来はどうなるのか。特に、少々改善はされたようでありますが、未婚率、つまり、家庭を持てない、持たない方々がふえると、この日本の社会というのは大変危ういものになるなということを感じておるわけでございまして、そういう意味で、総理の、分厚い中間層を回復する、守る、あるいは、ここからこれをつくり上げていくというのは、私は、政策方向としては極めて正しい、そうでなければならない、こういうふうに考えているわけであります。

 これは少々私もそのことに頭を悩ましておるわけでありますが、ナローパスではあるかもわかりません。一つの出口はないわけじゃないとは思いますけれども、現時点ではなかなか容易ならざる、つまり、世界的な傾向がそうであるというのが、実は先進国においてはこれが容易ならざることであるというのを示していると思います。

 そこで、この資料をちょっと見ていただきたいと思うんですが、「所得金額階級別にみた世帯数の分布」というのがございます。これは約十五年間とってあるわけでありますが、これは実はずるずると低所得の方に世帯が移っている。年収二百万超から五百万ぐらいのところが従来よりも多くなっている。それで、中央値というのがちょうど真ん中の、つまり、百人おれば五十番目の人の所得でいえばその金額でありますが、平成七年から平成二十一年にかけて百十二万円落ちているわけですね。やはり年収で百十二万円、月に十万近く落ちているというのはなかなかつらい。

 多分これが、世代的な労働の担い手の変更を通じて、十年たったら、十年前に五十五歳だった人は一応は日本ではハッピーリタイアということになって、それまで五歳だった人が十五歳、あるいは十五歳だった人が二十五歳になって稼ぎをする、そういう構造でありますから、約十五年あいていますから、十五年間で百十万、これはなかなかつらい構造でございます。

 パネルにはしておりませんが、資料の中で、所得の五分位、二〇%ずつに輪切りをしたところでどのぐらい所得が落ちているか。これは、五分位まで全て、この十五年間で日本は落ちているわけですね。その落ち方が大体一四%から二〇%近くということですが、一番所得の落ちているのがこの第二分位ということになります。

 それから次に、「所得金額階級別にみた世帯数の変化」という表も出してございますが、これも、プラスになっている〇・〇から上のところというのは、要するにそういう世帯数がふえたということでございますが、二百万―三百万、三百万―四百万のところが四%とか二%とかふえて、それで五百万以上のところは世帯の数として減っているという表でございます。

 それから、金融資産の保有がこんなに変わってきて、貯蓄残高ゼロ世帯というのが大変ふえている。これは二〇一〇年には二二・三%にまでなっている。七二年、八七年には貯蓄の残高がゼロの世帯は三%台だったのが、今二二・三%が貯蓄が全くない。こういう中間層が剥がれ落ちそうになっているという状況でございます。

 これをごらんになって、総理の分厚い中間層を改めてこれからつくっていくんだというこの方針、どのような施策で展開をされようとしているのか、総理のお考えをお伺いしたいと存じます。

野田内閣総理大臣 幾つかの資料を拝見させていただきまして、御説明もいただきましたけれども、いわゆる中間層のところの重心がだんだん低いレベルの方に来ちゃっているということと、剥がれ落ちてくる人たちが出てきているという状況、そういう状況だと思います。

 その意味では、例えば、これまでも、いわゆる第二のセーフティーネットといった求職者支援制度とか、こういうものに我々は取り組んでまいりましたけれども、その種のまさに試みというものをもっと手厚くやっていかなければいけないということを、今の御説明をお聞きしながら改めて実感した次第であります。

 その中でも、前段の部分では若者の話もされておりました。特に、今、若者を初めとする日本の成長力を支える人材の育成をしていくことがまずは肝心だろうというふうに思います。このため、日本再生の基本戦略に示した、学校から職場への円滑な移行、雇用の拡大などを盛り込んだ若者の雇用に関する戦略をことし半ばまでに策定をしたいというふうに考えております。

 さらに、専修学校等民間教育訓練機関を活用した雇用創出が見込まれる介護、福祉サービスなどの分野での職業訓練の実施や、雇用のセーフティーネット、さっき申し上げた求職者支援制度の適切な運用などを通じて、若者を初めとした人材育成にまずは取り組んでいきたいというふうに考えております。

仙谷委員 パネルでは用意しなかったのでありますが、産業別の就業構造という資料をおつけしてあると思います。一九七〇年から八〇年、九〇年、二〇〇〇年、二〇〇九年と、どういうふうに変わってきたかということが一目でわかると思います。

 先ほど失業率の話をしましたが、一番右端に就業者数と書いてあるのをごらんいただきますと、一九九九年から、やはり就業者数というのはどうしても、二〇〇五年を境にして、現時点では減らざるを得ないというのが一つの問題。

 それからさらに、問題ではなくて、傾向として、これは黄色の線が電気、ガス、水道業ということでございますので、そこから右の方は、いわば第三次産業といいましょうか、あるいはサービス化された事業群、あるいはサービス化された事業で働く人々ということで、このサービス化部分での就労者、労働者というのが圧倒的にふえております。農林漁業、それから製造業、あるいは鉱業、そして建設業も減らざるを得ないというのが今の避けられない構造であります。

 先進国は大体こういう傾向になるわけでありますが、日本がまだこれに対応する政策が、特に九〇年代あるいは二〇〇〇年代に、意識的にこれに対応できる教育と労働市場政策がやや弱かった。そのために、現在も、さっき申し上げた非正規とパラサイトというものが多くなっている。あるいは、アントレプレナーの方の起業がそれほど伸びないということが言われているわけであります。

 ここで、今度の補正予算も含めて、あるいは予算の中で、専門学校、専修学校への助成というふうなものも行っているわけでありますが、日本はやはり、積極的労働市場政策といいましょうか、手に職を持ってもらうようなこういう教育、あるいは労働市場政策、あるいは職業再訓練というふうなものを、先ほど求職者支援事業の話が出ましたけれども、これを行わなければならないというふうに考えるのでありますが、どなたか、大臣、お答えいただきたいと存じます。

平野(博)国務大臣 仙谷議員のお問い合わせでございます。

 先ほど来、仙谷先生から、いろいろこの二十年来の状況、経過についてのお話をいただきました。

 そういう中にありまして、この多様化した時代に、しっかりした人材を送っていかなきゃならないということは最大の使命だと思いますし、また、それを受け入れる社会構造もしっかりつくっていかなきゃならない、こういう立場で、私ども、政権交代以降、やはり、未来への投資、さらには人への投資、こういう考え方で施策を遂行してきたことは仙谷先生も御案内のとおりだ、こういうふうに思っております。

 特に、私の今の所掌の立場で、文科省の立場でいいますと、仙谷先生からお示しの資料にもございますように、特に、人材さらには将来への投資、こういうことの観点で見ますと、文教関係の予算の増加率、さらには科学技術という将来の飯の種、こういう観点での予算を大幅にふやしてきたこともそのあらわれの一つだというふうに御理解をいただきたいと思います。

 マニフェストの方にも書かせていただきましたが、特に、私ども申し上げたいことは、高校授業料を無償化する、いわゆる人に投資していく中で、負担を軽減しながらでも人に投資をしていくんだ、こういう考え方、さらには奨学金の充実、さらには、より質の高い教育環境を整備する、こういうことで、三十五人学級の実現に向けて取り組んできたところであります。

 そういう中で、先ほど、いろいろな分野での、各種学校を含めて、多様化した社会に対応でき得る人材、こういうことで、このことについてもしっかりと受けとめていかなきゃならないと思いますし、文部科学省としては、今後とも、よりグローバル化していく社会の中に対応でき得る人材、これをどう発掘するかということと同時に、その大きな観点は、大学を大きく改革していくことによってこの社会に対応していきたい、こういうふうに考えているところでございます。よろしくお願いしたいと思います。

中井委員長 平野大臣に申し上げますが、科学技術を将来の飯の種というのは、ちょっと夢がないな。もうちょっと品のいい言葉を。また考えて直してください。

平野(博)国務大臣 失礼いたしました。ありがとうございます。

 将来の礎にしたいと思っております。

仙谷委員 今、教育の方からのお答えをいただいたわけでありますが、先ほどからお示ししているように、生産年齢人口が変わってきた。それから、若い世代の方が、どうも稼ぎ得る単価も落ちてきておるのではないか。それから、先進国における産業構造、就労構造が転換をしている、したがって、その中で世帯所得も低下ぎみに落ちておる。

 だからこそ、安心して働く、あるいは、安心して家庭を持って、子育てをしながら働ける環境というものが改めて構築をされなければならないというのが、今回の社会保障と税の一体改革、そこでの基本的な考え方、そしてそれは、急を要するといいましょうか、遅きに失している部分もある、こういうことだと思うんですが、厚生労働大臣、いかがでございますか。

小宮山国務大臣 仙谷委員がおっしゃるとおりで、おとといですか、発表いたしました人口推計でも、非常にこれからの人口構造が逆ピラミッド形になってしまう。

 そういう意味で、今回の社会保障改革の中でも、これまで高齢者三経費が社会保障と言われていたものを、子ども・子育てをしっかりと応援する。それから、先ほどからおっしゃっています若者の雇用、これは非常に焦点だと思っておりまして、今回、社会保障の中には、一人一人が働く権利ということで就労というところを初めて入れまして、その中で、女性、若者、職業訓練、これをしっかり力を入れていきたいというふうに考えています。

 先ほどお話ありまして、総理からもお答えがあったように、専修学校など民間のところもしっかり使って、これからの新しい成長産業である介護とか医療、環境、そうしたところの人材を育てていく。また、学校の中で、大学にジョブサポーターを派遣しまして、ちゃんと大学の教育と仕事が結びつくように、そのようなことも力を入れてやっていく。

 遅きに失したというお話もございましたが、私もそう思いますので、そこはこれからシフトをして、子供に対して高齢者の十九分の一しか予算を使っていない、こういう国は先進国に余りありませんので、子育て支援と若者の雇用、そうしたところはしっかり力を入れていきたいというふうに考えています。

仙谷委員 先進国にふさわしいといいましょうか、あるいは今の世界経済あるいは産業構造の転換に対応し得る良質な労働力を持った人材を育成していく、そのためにやはりこれから、文科省のみならず厚生労働省もまさに一体となって、子育てのところから始まり、そういう良質な労働力を持った若者になり、家庭を築き、お子さんを育てていただきながら安心して働く、これを一刻も早くつくらないといけない。

 これは長期的な課題のように見えるけれども、ちょっと手をつけるのが遅かった分だけ、社会保障という枠であろうが、社会政策という枠であろうが、経済政策という枠組みであろうが、教育政策という枠組みであろうが、まさにその辺は一体となって、連携ということよりも一体となってやっていただかなければならないと思っております。

 今後とも、そういう観点で、伝統的名門官庁である文科省も厚生労働省も、ともすれば縦割りの中で、いや、うちはこれだけやっているからいいんだみたいな話が時々出てくるわけでありますが、ここは、両大臣それから官邸含めて、大胆に政策展開できるようにしていただければと思っております。

 少々、日本の財政、近々の、ことしの財政についてお伺いをします。

 といいますのは、先般のニュースで、貿易収支がどうも昨年、赤になったのではないかということが報道をされておりますし、数字上、確認もしておるところでございます。

 今、ヨーロッパで国債が売られて金利が急上昇する、あるいはCDSと言われる国債の保証をする証券の保証料が大変急上昇するという国が、ギリシャ、イタリア、スペイン、ポルトガル、あるいはフランスまでもその影響が及びかねないというふうなところまで来ておるわけであります。

 よく見てみますと、財政の赤字とさらに経常収支の赤字になっておる国は狙われやすいというか、マーケットからというかそういうスペキュレーターから狙われて、ターゲットにされているようにも思われます。

 そこで、財務大臣にお伺いするわけでありますが、来年度、日本の財政の赤字、そして新しく発行する国債、新発債ですね、さらには財投債、借換債は幾ら発行することになっているのか、まずお答えをいただきたいと思います。

安住国務大臣 総額は百七十四兆を、市中消化を基本にやらせていただきます。特に借換債が百十二兆、これは過去に発行した国債の借りかえということになりますが、新規国債が四十四・二、復興債が新たに加わりましたので、これが二・七、財投債が十五・〇兆円ということになります。

仙谷委員 相当膨大な国債を発行しなければならないわけであります。つまり、予算上四十四・三兆円でしたか、国債発行ということが書かれるわけであります。

 国債の償還あるいは金利の支払いというのは、従来出した国債についても、当然のことながら、これは支払わなければならない。特に金利の支払いだけは待ってくれないというのが金融とかビジネスの世界の話であります。つまり、元本はちょっと待ってよというのがきかないわけではない。ただ、国際社会ではそれをやるとデフォルト国家になりますから、ますます金利が上がる、こういうことになろうかと思います。

 この金利問題というのは、実は余り皆さん、皆さん方というか、日ごろそんなに気にしないで生きておるわけでありますが、この長期債、基本は十年で払うことになっている国債でありますが、この長期債が最近一%内外、一・〇〇五とかそういうのがついておるというのは新聞紙上で毎日のように見えるわけでありますが、この国債がもし一%上昇すると、一%上昇しても二%でありますから、民事法定利率というのは日本の場合に五%、商事法定利率は六%でありますから、我々の時代の常識は、五%、六%の金利というのは別に高い金利ではなかった。今は、この間ずっと低金利で十五年、二十年暮らしております。

 ということは、利回りが悪いということで、投資をする先が少なくなってくる、あるいは、高齢者の預金を持っている世帯は利子収入が少ない、こういうことをも意味するわけでありますが、ただ、一%金利が上がったら利払い費が大体どのぐらいふえるのか、これの概算はどういうふうにしておりますか。

安住国務大臣 その年の利払いが仮に一%上がった場合は、その後年度から支払いがふえるということになりますので、今の、先ほどの例で言えば、二十五年度にもし一%であれば一兆ですが、その次の年に二・四兆、そのまた翌年に四・一兆増加を一%上がればしてしまうというふうな計算になります。

仙谷委員 これは、軽く二・四兆、四・何兆とおっしゃるけれども、その分はどうしても利払いをしなければいけないということになれば、これはどこか政策経費を削るか、今の財政フレーム全体、九十二、三兆の財政フレームを維持するとしても、削るか、あるいは財政フレームも大きくして、またまた利息の支払いのために借金をするか、どちらかしか方法がないわけですね。

 今言われたオーダー、二兆円とか四兆円とかという単位の金額で、政策経費、例えば社会保障費、あるいは公務員の人件費でも国会議員の歳費でもいいんですよ、どこかからその数兆円を持ってくるというのは、どういう意味をもたらすでしょうか。

安住国務大臣 例えば、二十五年で後年度一兆と申し上げましたけれども、予算規模でいうと、例えば二十七年度の四兆ちょっとという額は、公共事業費や防衛費も四兆円台ですから、その分が本当に飛ぶぐらいの大きな金でありまして、これを今、仙谷先生がおっしゃったように、一般歳出経費を削ってやるといっても、なかなかやはり大変だと思います。

 ということは、やはり金利が上がってくればどうしても、注意をしないと、雪だるま式にこれをまた国債を発行するような悪い循環になっていく可能性というのはあるので、そうならないようにやっていかなければならないということだと思います。

仙谷委員 今の状態、この金融問題、特に利払い費が、小さく言うと利払い費が一体全体どうなるのかというのは、ここは財政規律をしっかりと確立させる方向に動く、つまり、今の財政の構造から、もう少し借金が少ない、あるいは社会保障経費をしっかりと、全世代を包括保障できるような財源だけでもつくる、これが焦眉の課題だと思います。

 自民党の谷垣総裁も、焦眉の課題であると。焦眉というのは眉を焦がすほど急がれるわけでありますから、焦眉の課題であるというふうにおっしゃっていただいているので、私も「焦眉」という本を書いたことがあるぐらい、財政の規律の問題、それから、先ほどから申し上げておりますように、日本の産業構造をより知識集約型、高付加価値型に変えていく。サービス化させた、あるいはソフト化させる経済構造に変えていかざるを得ないとすれば、そのための教育、社会政策といいましょうか、社会保障政策が必要だ。

 それは焦眉の課題だということでありますから、総理、これはもう何が何でも、きょうはちょっと電力、エネルギー政策について聞く時間がなくなりましたけれども、この社会保障と税の一体改革、焦眉の課題として、これを何とか野党の皆さん方にもお願いして実現していく、それが、財政規律を確立し、今の世界的な金融、経済、財政危機から我が国をも、そしてアジアをも守る一つの大きな政策だと思いますが、いかがでございますか。

野田内閣総理大臣 昨年来、東日本大震災が発災した以降、第一次補正、第二次補正、第三次補正、それぞれ復旧復興型の予算を編成してまいりましたけれども、その際には、まさに被災地のために、国民のためにということで、与野党がまさに力を合わせて協力をし合いながら、そしてさまざまな御提起もいただきながら前進をさせてきたというふうに思います。

 同じように、今、仙谷委員御指摘のとおりの焦眉の課題についても、これは、国民のために、あるいは将来の国民のために避けて通れない、逃げられない問題でございますので、これもしっかり議論をしながら結論を出して、そして壁を乗り越えていく、そういう政治をぜひ進めていきたいと思いますし、野党の皆様の御協力も改めてお願いをしたいというふうに思います。

仙谷委員 総理の所信あるいはその他のスピーチ、メッセージの中に、決められない議会、決められない国会、決められない政治、ここから我々は熟議によって合意形成をしていくんだ、こういう決意があると思います。

 私は、自民党、公明党の皆さん方初め野党の皆さん方は、決して、この全世界的に広がる決められない政治、決められない議会を日本もそのままそういう混乱のもとにやっていっていいとは思っていらっしゃらないと思うんですね。

 国民も、世論調査なんかしますと、いろいろな支持率とかなんとかありますけれども、たった一つ変わらないのは、国会で与野党がよく議論をして合意形成してほしい、決めてほしい、このことだけは国民の変わらない声だと思います。

 解散を自己目的化して、解散すれば何とかなる、そんなものではありません。政策の方向性は、先ほど、日本が取り囲まれたいろいろな危機の中、確実な政策の軸を、つまり社会保障と金融対応ということを打ち立てる、そのための与野党の誠実な議論が必要だと考えておりますが、総理、いかがでございますか。

中井委員長 仙谷君、時間が来ましたので、答弁はこれにて終了させていただきます。

 これにて仙谷君の質疑は終了いたしました。

 次に、斎藤やすのり君。

斎藤(や)委員 新党きづな、斎藤やすのりでございます。

 本日は、委員長、理事の皆様、それから委員の皆様の御配慮によりまして、二十五分という貴重な時間をいただきまして、本当に感謝を申し上げます。貴重な時間ですので、早速質問をさせていただきます。

 今、仙谷先生が、日本の失敗という神話ということを資料で掲げられておりましたけれども、私は、どうでしょう、日本の失敗そのもの、この十年、日本の失敗だと思っているんです。国家経営として、私は失敗だと思っています。

 なぜならば、自殺者数が三万人もいます。それから、年収二百万円未満の方が一千万人を超えています。そのうちの約六割が将来を絶望視している。将来が不安だから結婚しない、少子高齢化が進んでしまう、もうこの段階で日本は失敗しているというふうに私は思わざるを得ません。

 それで、総理は先ほど、日本の未来のためにやらなければいけないことがある、決めなければいけないことがあるということをおっしゃっておりましたけれども、それが今、消費税増税とTPPなんでしょうか。それをまずお伺いしたいと思います。

野田内閣総理大臣 消費税増税という一言ではなくて、まさに社会保障と税の一体改革をやり遂げるということでございます。

 社会保障の議論は、先ほど来もございましたけれども、従来の、高齢者に三経費充てるだけではなくて、人口構造の急変の中で、支える人たちのこともきちっとケアをするという、人生前半の社会保障もしっかりやらなければいけない。そういう転換期にある中で、その安定した財源を確保しなければいけないということは避けて通れない、これは御認識いただけるかと思います。

 赤字国債で賄っていくというような、将来にツケを残すのではなくて、今を生きる世代で負担をし合いながら、安定した社会保障、あるいは維持強化していく、そういうものを考えていくときに、これはもう避けて通れないテーマである。社会保障に対する不安が、国民においては一番の大きな不安だと思います。その不安を取り除くということが何よりも大事であります。それにはどうしても財源が必要です。そのために公平な税制は何なのかという議論を今しているということ。

 それから、TPP含めて、我々は、FTAAP、アジア太平洋における自由貿易圏を目指していくという中で、TPPという道筋、今、交渉参加に向けて協議をしています。

 我が国は、戦後、自由貿易体制の中で最大の恩恵を受けてきた国の一つだと思います。こういう経験を踏まえながら、アジア太平洋諸国により開かれた体制をつくって貿易・投資のルールについて主導的な役割を果たしていくということは、我が国の国益にかなうと思います。

 もちろん、相手国が何を求めるか、あるいは課題も出てくるかもしれません。そういうものもきちっと国民に情報提供しながら、国益の視点に立って結論を得る、そういう方向で今私どもは取り組んでいるということでございます。

斎藤(や)委員 財政収支をよくしていく、それから経済を活性化していく、そのための手段としての消費増税とそれからTPPという話でございますけれども、私は民主党のTPPの議論にずっと参加しておりましたけれども、これはどう見ても行き過ぎたグローバリゼーションの象徴そのものだというふうに思わざるを得ませんでした。

 TPPで安いものがたくさん入ってくる、逆に、日本のものを買ってくれるような国は九カ国の中で米国ぐらいしかない、それぐらいGDPが低い国ばかりじゃないですか。米国の方は逆に今円高状況ですから、本当にTPPというのは日本国にとって国益になるのかというのは、私は大変今疑問に感じます。やはり今やらなければいけないのは、デフレ脱却、円高の脱却、それから行き過ぎたグローバリゼーションを是正するということ。

 私たちは、その行き過ぎたグローバリゼーションで格差が拡大した自民党政治をやはり何とか変えるために民主党政権ができたんだと思います。GDPじゃなくてGDH、グロス・ドメスティック・ハピネスを追っていこうということをボトムアップでやっていこうというのが、民主党政権の政権交代のできた一つの理由だったと思うんですけれども、どうもやはりまた逆の方向へ行っちゃっている。自民党のような政治に、またもとに戻っているような気がしてなりません。そこをもう一度考えていただければというふうに思います。

 今喫緊の課題というのは、私は復興だと思っております。今、大変、被災地は寒さに見舞われております。ここ数日、東北地方は猛烈な寒波に見舞われていまして、けさの気温が石巻はマイナス六度、気仙沼はマイナス九度。今ふぶいています。岩手の仮設住宅は、暖房を消して寝ますと部屋の中は氷点下十度まで下がります。何で暖房をつけないのやと言われるかもしれませんけれども、これは暖房費がかかるからです。生活費がもうきゅうきゅうとしているからです。

 私の地元、仙台の被災者の方が困っているのがお風呂です。追いだき機能がありません。仮設に住んでいる方がこんなことを言っていました。熱々のお湯を満タンにして、夫が入った後に私がすぐに入る。でも、私が入るころにはもうお尻が冷たくなっているんです。しようがないから、また熱湯をつぎます。結果、ガス料金がかさんで、自宅にいるときに比べて三倍のガス代になってしまう。だから、風呂は三、四日に一回しか入らないという人も多いんです。

 実は、追いだき機能のついている仮設住宅もあります。宮城県発注の仮設住宅、二万二千九十五戸のうち、あるメーカー担当の気仙沼、名取両市と亘理、山元、南三陸の三町の計七百八十二戸だけが追いだきができる機能があります。これは、実はついているところとついていないところがあって、今、不公平が生じております。

 災害救助法が定める仮設住宅の仕様には、確かに追いだき機能はつけなくてもいいようなことが書いてあるんですけれども、でも、実際は入っているところもある。やはり、あるところとないところがあるというのは不平等です。

 総理、何とか追いだき機能をつけていただけないでしょうか。それから、仮設住宅の仕様の見直しというものをするべきではないかと私は思うんですけれども、総理、どうでしょうか。

小宮山国務大臣 仮設住宅の中でそういう追いだき機能の声が非常に強いということは、斎藤委員と御一緒した仮設でのヒアリングでも私も承っております。そこは何とかということで、いろいろ検討させていただきました。

 今言われたように、各県が仕様を決めて仮設住宅を発注する。一気に短時間にたくさんのものをということで、特に仕様に盛り込まれていない追いだき機能がついていないところがほとんどなんですね。

 これから何とかできないかということを、全体、五万戸の仮設があるわけですが、検討いたしましたが、追いだき機能のあるものにするには、今ある風呂釜を全部取りかえないといけない。三十万ぐらいかかって、またそれを全部廃棄物にしなきゃいけないということもありまして、いろいろ調べたら、お湯を循環させるのか、保温機能を少し高めるものもあるというので、それも調べたんですが、小さな会社がつくっていて、数が全然足りない。

 そういうこともございまして、今回は、大変申しわけないんですが、お湯を注いで入っていただくしかないということになっています。

 おっしゃるように、寒冷地仕様のきちんとした仮設をつくる、これからの課題としてぜひそれは検討しなきゃいけないと考えています。

斎藤(や)委員 今まで被災者の方というのは都市ガスの方が多かったんですが、今、プロパンガスになっておるようですね。ですから、ガス代が高くなっているということもあります。三倍です。

 ですから、このあたりの寒冷地手当てというのも含めてぜひ考えていただきたいと思いますし、ユニットバスですから、全部交換できないというのはわかるんですけれども、一方で、電気で保温機能を持たせるものがあります。風呂の水の中に入れて加熱するというものです。そういうものも二万円台で流通しておりますので、ぜひそういうものの導入等、よろしくお願い申し上げます。

 さて、仮設住宅に行きますと、皆さん本当に口々に、将来の不安を口にします。もともと津波の被災地、沿岸部というのは、高齢化が進んでいる場所です。だから、仮設にいる方というのは、今、保険金と義援金と支援金で細々と生活している高齢者の方が多いんです。その高齢者の方は、もともと車を利用して近くの職場、パートなんかにも行っていたわけですけれども、結局、その車も流されてしまって、パートの仕事にも行けなくなった。もう本当に、あす、未来がわからないような絶望の中で、仮設住宅で暮らしている高齢者の方が多くいます。

 実は、私なんかが行きますと、皆さんお怒りになります。国会議員が行くとお叱りを受ける、そういうことがどうも多いようです。なぜならば、復旧も復興もおくれていて、それから皆さん、我慢に我慢を重ねてきた。それなのに、震災から一年もたっていないのに、消費増税の話をするなんてどういうことやということで、大変私お叱りを受けます。

 被災者の皆さん、生活していこうというモチベーションをこれからどんどんどんどん上げていかなければいけないのに、この生活が苦しい中で消費増税というのは、生きるモチベーションがやはりどうしても下がっちゃうんですよ。

 国民の皆さんは、もう御存じのとおり、消費増税というのは逆進性が強いというのはよくわかっていらっしゃると思います。低所得者の方ほど負担が多くなります。

 ちなみに、昨年六月の平均給与額は、一位が東京都で、月平均で四十万円です。二位が神奈川県で、三十六万円です。一方、宮城県は三十万円です。岩手県は二十五万円です。月で十五万円もの地域格差があるんです。高齢化が進んでいる沿岸部は、これよりももっと少ないです。一次産業従事者の方も多いわけですから、もっともっと少ないです。この消費税というのは、都会に住んでいる方以上に、被災地には大きな大きな負担になるということでございます。

 私たち新党きづなは、消費税を上げる前にやるべきことがある、税金を上げる前に、国会議員の歳費を削減、特権の見直しで国会にかかるコストを二割削減する、国家公務員の総人件費の二割カット、歳出改革、行財政改革、さらに税外収入の確保など歳入改革を実行する、もう目いっぱいやれることはやって、それで、増税はデフレ下ではやるべきではないということを掲げております。

 今は、先ほども言ったように、デフレの脱却と抜本的な円高対策というものが先だというふうに私は訴えております。被災地にとって、消費増税というのは、本当に死活問題なんです。ただでさえ生活が厳しいのに、野田総理がネバー、ネバー、ネバー、ネバーギブアップなんて言いながら消費税を上げるというのは、はっきり言いまして、被災者の傷に塩を塗り込むようなものだと思っています。

 仮に上げるにしても、被災地、低所得者への逆進性対策というのはどれぐらい考えておられるんでしょうか。上げる前に一人一万円を支給するという報道もございました。被災者や被災地、低所得者へのセーフティーネット、これを具体的にどう考えているのかというのをお伺いしたいと思います。

 ぜひ具体的に、被災者の方がたくさん見ていますので、よろしくお願い申し上げます。

安住国務大臣 一方で、社会保障費がもう非常に逼迫をしているという状況があるので、片方の局面だけを捉えてだめだという御意見もありますけれども、そうでない人もたくさんいます。私も沿岸部ですけれども、私は消費増税は必要だと思っていますから。だから、それは、全てあなたの言う立場の人ばかりが被災地にいないということだけは私は申し上げておきます。

 逆進性という問題は、よくも悪くも消費税は公平ですね。おもちゃ屋さんに行っても、子供さんにもこれは負担をお願いしたりですね。

 そういう点からいえば、この税を竹下総理が導入したときから、もっといえば、大平総理が唱えた一般消費税の時代から、公平性が、逆に負担率で考えれば、これはお金持ちの人は比較的負担が少なくなって、あなたのおっしゃるように、所得の低い方ほどその負担の割合がやはりどうしてもちょっとふえてしまうということですから、そういう点では、それに対する何らかの対応というものは必要だと思いますけれども、検討中でございます。

斎藤(や)委員 何らかの対応ということですけれども、今検討している事項でいいです。このまま、今の答弁だと、被災者の皆さんは本当に不安で不安で仕方がないと思います。

 もうちょっと踏み込んで、例えば給付つき税額控除の話なども出ているようですけれども、そのあたりも含めまして、ぜひ、制度の部分でわかる方がいらっしゃったら、ちょっと教えていただきたいんですけれども。

 今のままだと、検討中、何をやるのや、全然セーフティーネット対策がないじゃないかというふうにメッセージとして被災地の方に届いてしまいますので、ぜひ答弁、よろしくお願いします。

安住国務大臣 逆進性の対策は必要だと思いますけれども、今考えております。(発言する者あり)

中井委員長 申し上げます。申し上げますが、そこは委員席ではありません。私は委員のやじを規制したことは一度もありませんが、委員外の人が乱暴な言葉を発するのはお断りをいたします。

斎藤(や)委員 給付つき税額控除の話なども進んでいるようですけれども、これも、不正受給というものも非常に招きやすいです。それから、税と保険料の徴収漏れというのもなくさなくてはならないので、給付つき税額控除というのをもし導入するのであれば、これは歳入庁が私はもう欠かせないというふうに思っております。

 野田総理は、施政演説で歳入庁のことを質疑のところでおっしゃっておりましたけれども、本当に、これは歳入庁と国民番号制をセットにして、所得と税金、保険料のデータを一元化させないと、私は、この給付つき税額控除というものは進めることはできないというふうに思います。

 それから、そもそも消費税というのは、国民の生活にとって本当に大きな問題なんですよ。特に、はっきり言いまして、今言った低所得者の方、それから中小企業の方々、個人事業主の方々は一大事です、消費税を上げるのは。皆さん、本当に一大事だという認識はあるんでしょうか。本当に生活が大変になっちゃうんですよ。

 こういう一大事を決めるのなら、やはり国民に信を問うということをしなければいけません。私は、すぐに解散しろとは言っていないんです。でも、これは生活に非常にかかわることだから、国民の同意を持ってやらなければいけない。国民の合意なき国策というのは一番よくないと私は思います。そのあたり、野田総理、ぜひ答弁をお願いします。

安住国務大臣 給付つき税額控除というのは、所得税の控除に、給付、つまり現金給付をどういうふうにしていくかという制度設計が必要なんですね。それに対しては、やはり番号制度とかを導入して、本当に低所得者や、ある意味で給付をどういうふうな方々にするかという設計をしないといけないので、検討をしているということなんです。

 それに行くまでの間、例えば番号制度ができない間については、過去の例を見ると、五%に上げたときは臨時福祉交付金という形で約一千億円近いお金を出しまして、そのときの対象というのは、例えば障害者の方々とか福祉に関係をするような方々に対する給付をしたんです。

 ですから、私も、簡易なそうした制度というもので、今御指摘のあるような逆進性に対する緩和というものは、何らかのことは必要であろうということは十分認識をしておりますので、それはしっかりと対応はしていきたいということでございます。

斎藤(や)委員 ぜひ国民の不安を取り除くために、情報発信をもっと小まめに、そして無駄遣いなくやっていただきたいんです。

 私、一つ気になったのは、ちょっと済みません、これは通告はないんですけれども、先日、岡田副総理のキャラクターを前面に出しました税と社会保障の一体改革の新聞の全面広告が出ていましたけれども、あれは一体幾らぐらいかかったんでしょうか。済みません、ちょっと通告なしで申しわけないんですが。

岡田国務大臣 御通告いただいておりませんので、具体的金額はわかりません。御通告をいただければ、ちゃんと調べておきました。

藤村国務大臣 政府広報といたしまして約三億円をかけての広報でございました。

斎藤(や)委員 三億円の広報ということでございました。

 私は、そんな政府広告を出さなくても、野田総理がテレビメディアを使って出していけば全然発信になると思いますし、今、これから国民の負担をお願いしようというときに、やはり億円単位の広告費というのは非常に疑問だと思います。これはとり方だと思いますけれども、ぜひしっかり、お金をかけないように、無駄のないような情報発信というのもよろしくお願いいたします。

 ちょっと時間がないんですが、最後、TPPです。

 マニフェストにない国策、国民の合意なき国策の推進といえばTPPなんですけれども、調べれば調べるほど、私はTPPは悪魔の契約にしか見えません。

 そもそも、何でシャッター通りがふえたのか、非正規の社員がふえたのか、格差が広がっているのか。司法制度、建築基準法、それから会社法の改正、米国から突きつけられた要求をのんだことで、日本の秩序や町並みまでが全て変わってしまいました。

 日本が今突きつけられているTPPというのは、私は、米国の対日要求の総決算だというふうに思っています。狙いは、医療、農地、簡保、共済、こういう市場を開放しろと言ってきていると思います。

 一番私が怖いのが、実はISD条項でございます。国家対投資家の紛争条項でございますけれども、米国、カナダ、メキシコで構成されているNAFTAでは、このISDを使って米国がカナダやメキシコを提訴する例が非常に目立っております。

 例えば、メキシコが自国内で米国企業の有害廃棄物の埋め立ての許可を取り消したことがあった。米国企業はメキシコ政府を仲裁機関である紛争解決センターに訴えて、メキシコ政府は何と千六百七十万ドルの賠償を負わせられた。

 国が住民の安全や環境を守ろうとしても、他国の企業の利益が優先されるというのがこのISDでございます。つまり、投資協定のルールが国内法をほごにできるということでございます。

 TPPのこのISDのリスクに関して、野田総理はどれだけ重たく考えていらっしゃるのかというのをお聞きしたいと思います。

玄葉国務大臣 まず、このTPPは、マクロと、今おっしゃったようなミクロと、両方をしっかりと見ていかないと誤ってしまうということだと思います。きょうはとうとうと答弁をする時間がありませんから余り申し上げませんけれども、今一億二千八百万人の人口が、先般の統計だと二〇四八年に一億人を切るわけですよね。そういった中で、私たちは、次世代にどうやって豊かさを引き継ぐのかというマクロの視点と、そしてミクロで、今のISD条項なども含めて、しっかり両方見て判断をしていかないと誤ってしまうということを冒頭申し上げます。

 その上で、ISD条項というのは、もともと投資関連協定には含まれているものでございます。しかも、そこには例外というのがあって、例えば米韓、今話題になっていますけれども、米韓のFTAでも、例えば安全保障例外、信用秩序維持のための例外、公共の福祉のための例外等々が設けられています。

 さらに言えば、今御指摘のあったNAFTAは、年に一回ぐらいずつ確かにあるんです、インベスターとステートの争いが。ただ、まさにそういった濫訴の傾向があったものですから、今、例外や留保を設ける傾向が強まっているというふうに考えております。当然、TPP交渉の中では、まさにそういったことも含めてしっかりと議論して、これは逆に、日本が、海外に進出をしている企業のためにもなる条項なものですから、そういったことも含めて総合的に適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

斎藤(や)委員 ありがとうございます。

 ただ、NAFTAとかの例を見てみますと、企業が国内法の手続の放棄を求められている事例というのが非常に多いわけですけれども、米国が賠償金をもらった例は数あれど、逆に米国が敗訴したことはない、そういう例が非常に多いわけでございます。私はそこを一番問題にしております。

 これは、米韓FTAにもISD条項というのは入っていますし、米国の通商代表は、このTPPに関しては米韓のFTAと同レベルかさらにハイレベルになるということを非公式で伝えているという話でございますので、ここは本当に、日本、もしこれから事前協議を真剣にやるんだったら、米国のように数百人規模でチームをつくって、短期、中期、長期で何をやるのか、国民にやはり示さないといけないと思います。野田総理の発言からは、TPPで一体この国をどこの方向に持っていこうとしているのかというのは、さっぱりちょっと私からはわかりません。

 一言最後に、時間もないんですが、TPPでこの国をどこに持っていこうとしているのかというのを野田総理にお聞きしたいと思います。

中井委員長 斎藤君、時間が過ぎていますから、答弁はありません。

 これにて斎藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、小池百合子君。

小池委員 おはようございます。小池でございます。

 本日は、二十三年度の四次補正予算案について質疑をするところでございますが、まず最初に、昨日のこの予算委員会の場で議論となりました、宜野湾市の市長選挙に関して、防衛省が地域の沖縄防衛局長の名のもとに、もしくはその関係でメールを送って、市長選に介入をしたのではないかという問題について、本日朝の予算委員会の理事会におきまして防衛省からその報告を受けたところでございます。

 メールについては実在が確認をされたということなどなどございますが、そもそも、この件につきまして田中防衛大臣は御存じでありましたでしょうか、これらの指示を与えていたことに対して。

田中国務大臣 この問題につきましては、私は一切聞いておりません。

小池委員 それについて知らされていなかったということについて、私はそのことの方も問題ではないかと思うわけでありまして、それは勝手にやったということで理解してよろしいでしょうか、田中防衛大臣。

田中国務大臣 この問題につきましては、昨日、職員を二名、沖縄に出張させました。

 御存じのとおり、理事会で御報告を申し上げておると思いますが、この件につきましては、一月の四日に防衛局長が指示をしたという流れになっておりまして、それを受けて、最近、講話をしてきたということでございますので、その流れの中にありましては、私は関与をいたしておるところではございません。

 また、本省の方々も、このことについては寝耳に水の状況でございました。

小池委員 そうしますと、沖縄の防衛局長が独断でやった、このように理解するわけでございます。

 また一方で、この講話というものが公務中、勤務時間中に行われていたという点についても大きな問題ではないかと思うわけでございます。誰が誰に指示をしたのか、そしてどのような講話が行われて、何が問題であったのかということを明確にしなければならない。

 私ども自由民主党の沖縄県連は、本件につきまして極めて微妙な立場になるわけでございまして、その意味で、防衛省に対しまして重大な抗議を申し入れたところでございます。

 そして、この件につきましては、一体何が起こってどうなっていたのかということを明確にしなければなりませんので、真部沖縄防衛局長を国会に呼ぶと同時に、本件に関しての集中審議を要請したいと思います。

中井委員長 先ほども理事会で、御党を含めて、共産党さんを含めて御提起がございました。

 後刻、理事会で協議をいたします。

小池委員 そうすると、大臣は、私は知らなかった、本省の方も知らなかったという話で、これは結局、真部防衛局長のせいにして、そしてトカゲの尻尾切りというような形が見えるわけでございますけれども、これはそもそも防衛大臣の責任を問われるべきではないでしょうか。

藤村国務大臣 理事会でも御報告があったところであり、まだこれは今からも調査をしないといけないし、何が問題なのかということをはっきりさせていく必要があると思いますので、引き続き調査をさせていただきたいと思います。

小池委員 必ず本件については早急に、これから二月五日が告示でございますので、ぜひともその前に、この件については明確にしておかなければならない、このように思います。本件、よろしくお願いいたします。

 それでは、予算について参る前に、今、田中大臣にも何度か御答弁をいただいたわけでございますけれども、年がかわって、そうすると内閣もかわって、五人の新しい大臣がここに座られてということでございます。また、明日、別途新しい五人の閣僚に対して集中的に質疑の時間を設けていただいたわけでございますが、それでも、野田総理、政権発足後わずか四カ月の改造ということでございます。

 たしか、前の布陣については適材適所だ、こうおっしゃっていたわけでございます。適材適所だったら改造する必要はそもそもなかったんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。

野田内閣総理大臣 野田内閣の使命というのは、去年から引き続いて三つの柱、震災からの復旧復興、それから原発事故との戦い、日本経済の再生、これはことしもしっかりやり遂げていかなければなりません。加えて、社会保障と税の一体改革、先ほど来議論がございました。これとあわせて行政改革、政治改革等も包括的に進めていくという、これらの課題を解決していくために、いわゆるより最適な布陣にしていくということでございます。

小池委員 今、三つの項目をおっしゃったけれども、それは、政権が四カ月前にスタートしたときから同じテーマを抱えておられるのではないでしょうか。それで適材適所と言っておられたのではないかと思うわけであります。

 今回は最善最強ということでございますけれども、適材適所と最善最強、何が違うんですか。

野田内閣総理大臣 適材適所の上に、より万全の体制をしいたということであります。

小池委員 そもそも、防衛大臣はいつも、これで政権交代後三人目でございますけれども、全部参議院枠というか、参議院の方でございます。これは参議院枠として選ばれたんでしょうか。

野田内閣総理大臣 あくまでそれぞれの個人としての政治家の政治的経験とか蓄積を踏まえての判断で、何とか枠というとり方は考えておりませんでした。(発言する者あり)

小池委員 いろいろ今話が出ておりますけれども、輿石枠ではないかという話。

 逆に、私は、女性枠ということでいうならば、この野田改造内閣、小宮山さんお一人なんですね。今、成長戦略の一番最強の部分に女性の戦略がある。そして、国際的にさまざまな比較を行う際に、女性議員の比率であったり、女性の閣僚の比率であったり、そういったことを世界的に比較するわけであります。我が国は、非常に残念なことですけれども、これまで九十四位だったのが、ここへ来まして、九十八位に下がったばかりでございます。

 今回このように、女性に対して、施政方針演説でも、「社会のあらゆる場面に女性が参加し、その能力を発揮していただくことは、社会全体の多様性を高め、元気な日本を取り戻す重要な鍵」だというふうにおっしゃっているんですけれども、ふたをあけてみると、一番象徴的な分野でたったお一人の女性ということです。

 女性閣僚をもっと入れよう、人材はたくさんおられます、そういう余裕もなかったんですか。

野田内閣総理大臣 政務三役の中では、女性議員をたくさん配置しているということでございます。

小池委員 これから復興庁もできるわけでございますけれども、ぜひともそういったこともお考えになるべきではないかと思います。

 また、議員定数の削減であったり、歳費の問題、交付金の問題、政治のあり方が今問われている中で、ただただ人数を減らすというのではなくて、やはり各政党が、女性のパーティシペーションというか参画、議院、立法府としての参画をもっと真剣に考えなければ、この国のパラダイムシフトは起こらない、私はこのことをまず断言しておきたいと思います。

 さて、改造のタイミングでございますけれども、問題は、四次補正でも、それから今回この後に続きます本予算につきましても、ここに新しく五人の閣僚がおられるけれども、予算編成作業には直接はかかわっておられないということなのでございます。これからの審議をする際に、実際にかかわっておられなかった方々にお聞きをするというのは何かむなしいものを感じるわけでございまして、だからこそ、改造する際も、そういったことも責任のあらわれとして臨まれたのかどうか。野田総理、いかがでしょうか。

野田内閣総理大臣 確かに、昨年の暮れまでにつくったいわゆる予算編成に直接的にはかかわってはいませんけれども、今回の予算、党からもさまざまな要望をいただくとかを含めて、今、御自身の所掌を直接担当はしていませんが、幅広い意味での予算編成には、党の意見も吸い上げたりしておりますので、その意味での予算編成へのかかわりはそれぞれのお立場であったというふうに承知をしています。

小池委員 しかし、予算編成で、大臣としてそれを担当するというのと、党の一員として見るのでは、もう全く違います。全く違う。そういう中でこれから質問をさせていただくということについては、大変むなしいものを感じているということをまず申し上げておきたいし、そういった責任感の薄さであるというのが野田政権である、このように理解をしたいと思います。

 会期につきましてでありますけれども、課題に対してのスピード感というのが、私は、先ほどの一次補正、二次補正、三次補正という話を聞いていても、とにかく遅いというこの一言に尽きると思うわけでございます。

 昨年の十一月二十一日に、第三次の補正予算が成立をいたしております。三次補正で、自民党は、中小そして小規模事業者への資金繰りの支援、いわゆる二重ローンということの対策を、一兆円の予算の計上をすべきということを提案させていただいておりました。復興に加えて、円高などの足元の景気の下振れリスクを含めて提案をしたところですけれども、結局、六千五百億円のみの計上となっているわけでありまして、四次補正にようやく計上ということであります。

 そもそも、スピード感、欠如していますよ。この遅さは一体何なんだと。その責任に対して、野田総理はどうお考えになりますでしょうか。

枝野国務大臣 三次補正を編成して国会に御提起いただいた以降も、例えばタイの洪水の問題、あるいはヨーロッパの危機の問題、さまざまな状況が日々刻々と変化をしてきております。そうしたことの中で、特に三月の年度末に向けて、従来、三次補正までで用意していた金額では足りないのではないかという判断をいたしたものであります。

 これを速やかに御審議いただきまして通していただければ、三次補正までで積んであるお金で、これまでのところは資金に不足をしているという状況ではありません。したがいまして、適切な判断だったと思っております。

小池委員 二重ローンの問題にしましても、死活的な問題なんですね。そして、前のきづなの方がおっしゃっておられましたけれども、やはり、被災地においてもこの冬の寒さというものはまさにしんしんと身にしみるわけでございまして、そういったクールマインドとそしてウオームハートということがなかなか感じられない、そのことが信頼感の欠如ということに結局つながってきてしまっているのではないか、こう思います。

 ですから、三次補正にのせればよかったものをこの四次補正にのっけているということでありまして、これだけでももう二カ月おくれているわけでございます。

 十二月九日までの会期というのが先国会でございました。延長も可能だったはずなんですね。それをばたばたと閉じて、そして年明けに四次補正。この四次補正については、我が党の伊吹さんが提案をされたのにうまくぱっと乗っかられたといった、そんな印象を持っているわけであります。

 特に、被災地の復興というのはスピード感が必要だということを再三申し上げているわけであります。とにかく遅い、遅いの一言であります。そして、東日本の大震災からの復旧復興がこの内閣が取り組むべき最大かつ最優先の課題だと言っておられるんですけれども、その言やよしではありますけれども、実行については遅いという、この一言になると思います。

 なぜ、昨年の末、会期を延長してでも補正予算を出さなかったんですか、総理。

野田内閣総理大臣 補正予算も、誰かの提案でぱっと乗ったという話ではありません。積み上げた議論、追加財政需要を踏まえながら、いわゆるタイの洪水の対策、円高対策を含めて、あるいは将来の安心の部分等々の、やはり予算編成するには一定の精査も必要であります。そういう意味で、ことしに提出をしているということでございます。

小池委員 いや、私はまず、補正予算にしても、スピードが遅いと。であるならば、会期を延長して、年をまたいででも対応すべきではなかったんですかということをお聞きしているわけであります。

 そして、例えばインド洋の洋上給油の話がございましたよね。覚えていらっしゃいますか。皆さん、反対なさいました。インド洋のこの給油、新テロ特措法絡みで、あれは第百六十八国会でございますけれども、平成の十九年十二月十五日の会期でありましたが、それを翌年の一月十五日まで延長したんです。延長して法律を成立させたんです。それは、あの状況にありまして、テロの問題、そして国際的なそういった流れ、そういう中で、日本のあり方ということで、責任を持って会期を延長したわけでございます。

 震災復興も同じです。これも、とにかく最優先ということであるならば、なぜ年をまたいで国会を開いてでも補正予算を提出しなかったのか、この点を明確にお答えください。

野田内閣総理大臣 第一次、第二次は復旧を中心とした予算を組みました。三次で本格的な復興予算、十二兆円規模で組ませていただきました。その執行をしっかりしていくことが基本的には流れでありました。

 今回の四次補正は、二重ローンの出資のところを入れている部分だけであって、全体としては復興のための予算ではありません。経済対策や将来の安心あるいは安全のためのところに柱をつくって予算をつけているということでございますので、復興については基本的には三次補正予算までで内容的には今年度分の執行分については足りている。当然のことながら、二十四年度どうするかという議論をその後、年末にしていったということでございます。

小池委員 それでは補正予算の意味が違うんじゃないでしょうか。むしろ、そういった今おっしゃられた課題については当初予算にのせるべきであって、堂々とのせるべきであって、しかしながら、平成二十四年度の本予算の方にそれをのせてしまうと予算額が膨らんでしまうから、今のうちにこの第四次補正にのっけておいて、額を減らしていこうということなんじゃないんですか。極めてテクニカルな話を今回の四次補正に盛り込まれたのではないでしょうか。

安住国務大臣 先生、誤解のないように私申し上げますけれども、生活保護費とかそういうものの負担経費が一千三百億円とか、やはりいろいろ出てくるわけです、生活保護全体を含めてとかそれから地方交付税の足りない部分をやったり。トータルでいえば、今総理がおっしゃったように、震災復興関係の予算というのは三次補正でしっかり組みましたので、そのほかに、成立をした保証枠は五千億つけましたけれども、この第四次補正は、そういう点では、今年度中に必要な社会保障関係経費等の不足分等が中心で補われているということでございます。

小池委員 そうでしょうか。大いにここは見解の相違がございます。

 例えばエコカー減税というか、それについて、これはそもそも自民党政権からやってきて、それを反対なさったということでしばらくなかった。そしてまたこれを復活ということでありますが、これらは重量税の問題など、政策減税とあわせて堂々と当初の予算でやるべきではなかったんでしょうか。

枝野国務大臣 御指摘の点については、先ほども少し御答弁申し上げましたが、三次補正の編成後に、一つには、タイの洪水被害の状況が明確になってまいりまして、自動車産業を初めとして、日本の関連産業にとって大変大きな打撃になる。それから、ヨーロッパの財政危機の状況についても、これはいまだにまだ最終的にどうなっていくのかはっきりしないわけでありますが、その状況がより明らかになってきている。それから、円高についても状況がよりはっきりしてきているということの中で、特にことしの年度末、三月の年度末ということを控えて、そのときのことをしっかりと乗り切るということが重要である。そうした観点から、緊急な対策として補正予算で年度末前に対応する必要があるということを考えて、経産省の関連予算については予算要求をしたものでございます。

小池委員 今の同じ質問を、安住財務大臣。

安住国務大臣 今の経産大臣のお話は、ですから、私が申し上げた、ほかのその他の経費にもそういうものが盛り込まれているということでございます。

 ですから、二兆五千億円の内訳の中には、今経産大臣がおっしゃったようなお話もありますし、一方で、高齢者医療や子育て、福祉等の関係経費も含まれているということでございます。

小池委員 今、高齢者医療であるとか福祉など、これこそ当初予算でばしっと組んでやるべきなんですよ。つまり、四次補正という一つのとまり木のところにとにかくどんとのっけて、そして本予算の額を減らすという、そのような隠れみのに使ったのではないかということを指摘しているんですが、総理、いかがですか。

安住国務大臣 もともと予算を組むときに、これは自民党政権下でもずっと同じことをやってこられたと言ったら、国債の不用経費等、算出されるのは十二月でございますので、そうした中で年度内で捻出をして、赤字国債等を出さない範囲の中でこの予算は組むということになっておりますので、そういう中で組まれた予算だということは、ぜひ御理解いただきたいと思います。

小池委員 理解できません。

 そしてまた、補正予算については、主計局も財政の健全化という点で極めて厳しいはずなんですね。それをわざわざ補正予算のときに、こんなゆるゆるな補正予算にのっけておいて、とにかく次の当初予算の額を減らす、そういうことの見せかけのために主計局も一緒になってやっているというふうに思わざるを得ないんですが、安住大臣、違いますか。

安住国務大臣 そういう認識を持ってこの予算、第四次補正を編成した覚えはございません。

小池委員 いや、これまで予算編成に何度もあずかってきた多くの方々からすれば、そういった印象を持たざるを得ないんですよ。これは極めてテクニカルな話になっていて、そうやって、とにかく、次の増税国会といいましょうか、増税予算のためにそこに集中をするということが見え見えになっている。

 バックシートドライバーという言葉がありますけれども、その後ずっと、財務省のいろいろなテクニカルな、法律的な、そしてそういう、今申し上げました予算技術上の話、これをてんこ盛りにしたのが四次補正であり、次の平成二十四年度の本予算ではないか、このようなことを申し上げているわけであります。

 ですから、財務省主導とずっと言われてしまっている野田さんですが、この件については、どこまで御自分の主張を明確にされて、そしてネゴしてこられたんでしょうか。

野田内閣総理大臣 生活保護費云々に対する対応であるとか、あるいは国連分担金を急に対応しなければいけないという、追加財政需要によって補正をつくるということは今までもあったと思います。あるいはタイの洪水であるとか円高等、あるいは欧州の債務危機等々に対応して経済対策を行うという補正もあったはずであって、何かをごまかすための補正予算ではございません。(発言する者あり)

小池委員 今発言がありましたけれども、これまでは多く予備費などを活用してやってきたわけでありまして、いずれにしても、とにかく一番大きなスポットは、次なる増税ということ、これを確実にする、そこにとにかく一点集中であるということを我々は感じざるを得ないわけでございまして、そのことをわかってやっていらっしゃるのか、わかっておられないのかがわからないということでございます。

 さて、例の社会保障と税の一体改革について伺わせていただきます。

 こちらでございますけれども、社会保障と税の一体改革素案、こちらにございます。

 そして、一月六日に閣議報告というふうにあるんですが、そもそもこの素案は誰が閣議に報告したのでありましょうか。

古川国務大臣 当時私が担当大臣でございましたので、私が閣議で報告をさせていただきました。

小池委員 私がという個人名ではなくて、組織として何を代表して出されたんですか。政府・与党社会保障改革本部として出されたんですか、古川大臣。

古川国務大臣 まさにその本部で決定したものとして、担当大臣として閣議で報告をさせていただきました。

小池委員 その本部でございますが、それは民主党としての本部なのでありましょうか。

古川国務大臣 政府・与党一体の改革の本部でございます。

小池委員 それでは、党議決定をした上で、この本部の報告というか、この素案をまとめられた、こういう理解でよろしいんでしょうか。

古川国務大臣 政府・与党一体本部で決定したということでございます。

小池委員 ということは、党議決定はされておられない、もしくは、民主党というのは党議決定なる行為はなさらない党なんですか。

古川国務大臣 党の手続を経て、そして政府・与党の一体改革本部で決定をしたということでございます。

小池委員 それは党議決定をしたということでよろしいんでしょうか。党の手続を経てというのは、党議決定と同義語でございましょうか。

古川国務大臣 党議というのがどういう意味でおっしゃっているのか、ちょっとよくわかりませんが、我が党の党の手続、政調での議論、そしてまた幹部会での了解というものを得て、そして、政府・与党一体改革本部で決定をしたということでございます。

小池委員 ということは、党が決定をしたということで、そして、それは民主党の議員を拘束する力がある、このように理解してよろしいんでしょうか。

岡田国務大臣 ここは、一つは自民党と民主党の意思決定の仕方の違いというのはあると思います。つまり、自民党は総務会というものが存在しますが、民主党にはそういうものはございません。

 ただ、役員会においてきちんと決定をしておりますので、党として決めたということでございます。

小池委員 私もその自民党の総務会の会長でいたわけで、そこで党議を全て、ありとあらゆるものはそこにかかってきて、それで党として決めたということでその後の対応をしてきたわけでございます。

 どうも、意思決定をするというのは、これは党としての一番重要な肝の部分になるわけでございますが、であるならば、党の決定ということでいうと、この素案といいましょうか、民主党の中にこの税の問題について百人以上、百四十人ですか、署名が集まっていると聞いておりますけれども、この方々も党の決定に従っている、こういう認識でよろしいんでしょうか。

岡田国務大臣 いろいろな議論がございました。年末、たしか五日間ぐらい議論したと思います。私は全て参加をいたしました。長いときは八時間、九時間議論をいたしまして、最後は総理にも御同席いただいて、結論を出したわけでございます。

 いろいろな議論は出ましたが、政府・与党の文書として、それは本部として確認をしたところでございます。

小池委員 確認という言葉と決定は違うと思うんですが、確認イコール決定だと理解してよろしいんでしょうか。

岡田国務大臣 委員は自民党の意思決定の仕組みを念頭にいろいろ御質問になっていますが、各党はそれぞれ意思決定の仕方があります。我々であれば、党務に関することは常任幹事会で決定をする。それ以外のことは役員会でございます。政策については、政調を経て、最終的には役員会で重要なことは決定するという仕組みでございます。

 御質問にお答えすれば、本部において決定をいたしております。

小池委員 それでは、先ほど、与党としての決定ということでございますが、国民新党の自見大臣、これについては、この決定を納得しておられるということですね。

自見国務大臣 小池議員にお答えをいたします。

 社会保障・税一体改革でございますが、この構成員は、当然、民主党と国民新党の連立政権でございますから、国民新党からも下地幹郎幹事長、また亀井亜紀子国民新党政調会長が入っておられます。そういった中で、今、この素案については、本部で決定され、同日閣議報告されたものであるというふうに認識をいたしております。

小池委員 ということは、自見大臣は、野田内閣の一員として、この件については、素案について了承をされたということでよろしいんですね。

自見国務大臣 今申し上げましたように、社会保障・税一体改革素案について、我が党の代表として幹事長、政調会長が入っておられるわけでございます。そこで了承されたわけでございますから、私も当然、野田内閣の一員でございますから、そういったことを、きちっと政党人として、連立を組んだ信義があるわけでございますから、きちっと了承させていただいたということでございます。

小池委員 一方で、民主党の党大会において、暴風雨のときに帆を上げて、安全な運航ができることはないと、明らかに増税反対という意味を込めて亀井代表が言っておられたわけなんですが、これはどう理解していいんですか、自見大臣。

自見国務大臣 我々、野党における、私も参議院議員でございますが、民主党・新緑風会・国民新・日本という会派を一年半組ませていただきまして、当時野党でございましたが、そういった長い間の党と党との信頼関係がございます。

 亀井さんが民主党の大会に行って一々どういう挨拶をするとかこういう挨拶をするということはございませんけれども、我々は、もう御存じのように、小泉さんの、竹中さんとされた構造改革の本丸でございます郵政改革法案を、きちっと日本の文化、伝統に合ったように、やはり誰でもどこでも、三事業一体でやる、それが一番大事な党是でございますから、そういったことを含めてきちっと、友誼がございますから、一々党首がどういうふうな挨拶をされるか、そういったことは、党首と、私も副代表でございますが、信頼関係の中で生まれているものだというふうに思っております。

小池委員 党代表が増税は反対だと言い、そして連携を持っているという副代表が違うと。閣僚だからということなのでありましょうか。閣内不一致ではなくて、それじゃ党内不一致じゃないですか。

 では、次の課題で伺いたいんですけれども、この素案について、野田政権として、この素案をもとにしてこれから議論をする、そして野党にも協議を呼びかけるということを再三おっしゃってこられたですね。

 まず、堂々と閣議決定されたらいかがですか。

岡田国務大臣 ぜひ素案について御議論いただきたいと思います。

 閣議決定をするかどうかということは、これは議論の、協議の前提条件ではないはずだと思うんです。やはり我々としては、できるだけ野党の御意見も聞いていい案をつくり上げ、その上で閣議決定し、法案を提出したい、それを基本に考えているわけです。

 何か閣議決定があるまで協議ができないというのは、私にはどうしても、国民の立場に立った政治ということから考えると、理解に苦しむところでございます。

小池委員 責任ある政府として責任を持って閣議決定をして、そしてこの開かれた国会の場で議論をしていきましょう、それは早い方がいいですよということを申し上げているのであって、早く閣議決定を堂々とお出しになればいいんですよ。そのことを申し上げているんです。

 野田総理、いかがですか。

岡田国務大臣 今委員は、自見大臣に対しても御質問をされ、民主党の中での意思決定についていろいろお尋ねになりました。つまり、民主党としても与党としてもきちんと意思決定をして、そして出てきている素案であるということは今確認をされたはずでございます。

 そうであれば、それを閣議決定まで持っていくかどうかというのは、それは一つのやり方の問題であって、それがなければ協議できないというのは、私には理解に苦しむところでございます。

小池委員 それだけおっしゃるのであるならば、自信を持っておっしゃるのであるならば、閣議決定されたらいいじゃないですか。ここですよ。早く閣議決定すればいいんですよ。野田総理、お答えください。いや、総理です、総理、ここは総理。不退転なんでしょう。ここは総理がお答えになった方がいいです。

野田内閣総理大臣 先ほど来の議論を整理しますと、党としての意思決定は手続を踏んでやりました。そして、政府としても、これは閣議で報告をして、一丸となってこの素案を実現しようということになっているわけであります。

 その際に、我々が前から言っていたのは、大綱にするときには閣議決定をする、大綱を踏まえて法案にしていく、法案は年度末までに提出をするということであります。大綱をつくって閣議決定してしまって、余りに縛りの多いものにしてしまうよりは、きちっと与野党協議をして、野党の御意見も受け入れながらそれを法案化していきたいという思いがあるということでございます。

小池委員 余りにも縛りをしてしまってとおっしゃいますけれども、そもそもこれは、社会保障・税一体改革素案、平成二十四年一月六日閣議報告となっているわけでございます。ページ数にすれば五十ページということでございます。

 これは素案という話でございますが、余り決め過ぎてもと言うんだけれども、決めなさ過ぎているんですよ、これは。何かお節を頼んだらすかすかのが来たというのがありますけれども、まさに大枠もあるかどうかみたいな話で、余りにもこれは中が粗なんですね。素案のソは粗末の粗ではないかと思うぐらいなのであります。

 それでは、例えばこの中に検討という言葉、もうあちこちあります。何々を検討する、法案提出に向けて検討する、何とかに向けて検討すると、もう山ほど出てきているんですけれども、何カ所この検討という言葉が出てくるか、御存じですか。総理、副総理、それから小宮山大臣に伺います。今のお三方。

小宮山国務大臣 何カ所検討があるかは確認をしておりません。

 ただ、検討というのは、党の方で最終的な制度設計をこれからするものなどについても、これは年度末までに法案を出す、そのような作業をすることも含めて検討と書いてあるので、全部姿勢が曖昧なことが検討になっているわけではございません。

小池委員 それにしても、余りにも検討というのが多過ぎるんですよね。社会保障の部分で五十一カ所出てまいります。それから、その他の部分を含めますと八十一カ所ということでございまして、輿石幹事長自身も、これはあくまで素案で、全体像ではないというふうにおっしゃっております。だから、この議論に応じる前にまずこの素案なるものをもう少し中身をつけて、そしてその上で協議ということならわかるし、また、この全体像をまず出していただかなければいけません。

 それについて、先ほどから、法案については三月にお出しになる、いろいろ時期的なお話もございましたが、この全体像というのはいつお出しになるのか、予定はいかがですか。

岡田国務大臣 基本的には、その素案の中に全体像は示されているというふうに考えております。そこで、委員のおっしゃる全体像というのは一体どういうことを意味して聞いておられるのか、もう少し明確に言っていただいた方がいいと思います。

小池委員 それは、先ほどから検討という箇所が何カ所あるということを申し上げたように、余りにも検討ということばかりで、ブランクになり過ぎているわけであります。もう少し、もっと明確にその姿勢をはっきりしていただくということで全体像ということを申し上げています。

岡田国務大臣 確かに、検討を残しているものはございます。しかし、そういうことも含めて、ぜひ協議していただきたいんです。我々が全部固めてしまってから協議するよりは、そういったところを残して、そして一緒に御議論いただいて、いろいろ野党で御主張の点も我々は耳を傾け、そして変えるべきは変えていく、そういう姿勢でございますので、何かいつまでも、これができなきゃだめだ、あれができなきゃだめだということで協議を先送りするということではなくて、ぜひそこは国民の立場に立って、早く議論をお願いしたいというふうに思っております。

小池委員 違いますよ。政府・与党は皆さんであります。そして、それは責任を持って、これからの大きな社会保障と税の一体改革をそれこそネバーギブアップでやっていこうとおっしゃるのならば、もう少し責任感を見せていただきたいということであります。

 ですから、一日も早く、まず素案から全体像ということを示していただきたいというのですが、そのスケジュール感について、総理からもう一度聞かせてください。

野田内閣総理大臣 社会保障の全体像は、素案の中に明記しているということです。これは、間違いなくそういう立場で我々は主張してきましたし、法案を出します。

 検討というものがなくなれば全体像が見えるというお話なんでしょうか。ちょっとよくわかりません。私どもは、あくまでそういう議論も含めていい成案を得ていきたいんです。我々は、現時点で考え抜いた部分は素案でまとめました。あとは、与野党で、まさに国のためにどういう結論を出せるかという協議だと思います。閣議決定をすれば与野党協議をしていただけるんでしょうか。検討がなくなれば与野党協議していただけるんでしょうか。よくわかりません。

小池委員 まず、政府・与党として閣議決定をするならしていただきたい。そしてその後、法案を出すなら早く出していただきたい、このことを申し上げております。

岡田国務大臣 法案を出さないと協議しない、そういう意味ですか、今のお話は。それは大変残念なことだというふうに思います。

 それから、先ほどから検討の話、確かに社会保障のところに検討という言葉が多いんですが、その中には、この法律では、税・社会保障一体改革の法案ではなくて、やはりそれぞれの個別の各委員会で御議論いただく法案の中で決めていかなければいけないこともあるということであります。そういうことも含めて検討ということであって、そういうことが残っているからといって、この素案について議論ができないというのは、私はよく理解できないわけであります。

小池委員 しかし、政府・与党として、余りにも検討というのが多過ぎるんですよ。それをもっと詰めて、ちゃんと閣議決定をして、そして法案を出してください。そして、密室談合ではなくて、この国会でしっかりと議論をしましょう。密室談合だといって、これまでの我々の協議に反対ばかりしてきたのはあなたたちじゃないですか。

岡田国務大臣 最後のお話は、ちょっと私、理解できないんですね。

 つまり、昨年、私も幹事長をやっておりましたが、各党で震災復興を中心にさまざま御議論いただいて、そして、一緒になって法律を国会に出して通していったということを何度となく繰り返してきたというのが昨年の国会だったんではないでしょうか。つまり、やはりスピード感を求められます。

 それから、まずは全部閣議決定して固めてからとおっしゃいますが、今、我々は残念ながら参議院においては多数を持っておりません。したがって、法律は通らないんです。

 そういうことを考えれば、前広に議論をして、そして一緒になって法案化していくということがやはり必要なことだ、私はそう考えております。そのために、ぜひ御協力いただきたいと思います。

小池委員 それでは、まず、三月までに法案の準備をしていただくということで要請をいたします。そして、しっかりとした議論の上で進めていかなければならない、このように認識をいたしているところでございます。

 それでは、少し中の具体案について伺わせていただきたいんです。

 消費税の導入の時期でありますけれども、まあ増税でありますけれども、そもそもは、当初は来年の十月からスタートとされていたわけでございます。このように記憶しておりますけれども、素案の段階で、再来年の四月実施と先延ばしをされた、ここは明確に数字まで入っているわけでございますが、その理由は一体何なんでしょうか。

古川国務大臣 お答え申し上げますが、これは、マニフェストの中でも、任期中には消費税を引き上げないというふうに申し上げております。

 したがいまして、衆議院の任期が終わった後、その後にこれは、引き上げは、国民の皆様方の御判断を得て、その上で判断をするということで、一四年の四月になったということであります。

小池委員 その辺が、マニフェストなるもの、あちこちでこのマニフェストの破綻が出ているわけでありますけれども、この肝心かなめのところでも、マニフェストを破るわけにはいかないというお気持ちが働いたのではないかというふうに思うんです。

 でも、考えてもみてください。消費税の税率アップ、総理も、二〇一三年の十月に八パー、一五年の四月に一〇パーと、先のことだからマニフェスト違反にはならないんだという趣旨のことをおっしゃっていたんですが、これは詭弁でございます。妊娠と出産で考えてみてください。十月十日ということであるならば、生まれてきた子供の親は誰なのかということは明確になるわけでございまして、マニフェスト違反だというので先延ばしをするとか、そういうこそくなことは、私は、野田さんは堂々としているからいいと思っているんですよ。だったら、堂々を突き通したらいいじゃないですか。

 わざわざマニフェストに違反しないために先送りにしたんですか。これは総理、お答えください。

野田内閣総理大臣 ちょっと、妊娠、出産の例えはすっと落ちてこないので、よくわかりません。よくわかりませんけれども、我々は、二年半前の選挙のときには我々の政権担当期間中、任期中には消費税は引き上げない、これはマニフェストに記載はしていませんけれども、当時の代表が申し上げました。

 その後、いろいろ議論はすることはすることになりました。そして、議論をした末に、基本的には、お約束をしたように任期中には上げないけれども、でも、議論をして、これをやらなければいけないということは素案でまとめたわけですから、その実施時期については、その正確性を期すために、スタートを二〇一四年の四月にしたということであります。

小池委員 いや、要は、この消費税の増税について責任を持ってかかるのであるならば、それは、マニフェストのこともさることながら、そちらの増税云々を不退転でやられるというんでしょう。だったら、堂々ともとの案で進められればいいではないかということを申し上げたわけでございます。

 具体的に伺いますけれども、基礎年金の関係であります。

 素案では、最低保障年金の満額七万円、これは明記されているわけでございます。だから、このベースとなった試算といいますか、それを出すの出さないのという話についても議論があるわけでございますけれども、当然出すべきじゃないですか。岡田副総理が最初におっしゃっておられた提起は私は極めて適切だったと思うんですけれども、であるならば、その試算そのものをお出しになるべきじゃないんですか。公表しないんですか。

岡田国務大臣 まず、素案にどう書いてあるかということですが、素案の中には、我々の目指す年金の抜本改革についての基本的考え方が書いてございます。しかし、それは今回の消費税を一〇%に引き上げるということの外の話として書かせていただいておりまして、そこはきちっと書き分けているということでございます。

小池委員 外の話といっても、社会保障と税の一体改革、この中に書いておられるわけで、そのための試算があるわけでしょう。年金などというのは社会保障の一番大きな部分ですよ。やはり私は、国民の皆さんにまず全体像を知ってもらって、そして、こういう計算をして、社会保障はこうします、その中でもそれぞれの仕分け、医療はどうだ年金はどうだという形にして、その上で、国民の皆さん、これではこれからの日本は立ち行かないんだ、だからよろしくお願いしますというふうな展開をされるのが筋ではないかと思う。

 だからこそ、この試算を出すの出さないのということで今政府内で割れておられる、これは信頼感をそぐものですよ。これを公表するんですか、しないんですか。

岡田国務大臣 これは、総理もきのう御答弁されたかと思いますが、試算の性格ということをまず正確に知っていただきたいと思うわけですが、昨年、党の中で年金に携わっている担当の皆さんが、そういった計算を厚労省に対して依頼したということだと承知をしております。

 私、当時幹事長をやっていたんですが、そういう存在すら私は聞いておりませんし、中身の説明ももちろん受けておりません。その存在及び中身を知ったのは最近のことでございます。党として、当時、何らかの意思決定をその結果についてしたものでもございません。そういう性格のものでございます。

小池委員 それは、幹事長として情報ネットワーク、もう少し考えられた方がよろしかったのではないでしょうか。また、党として、これは肝心かなめの部分ですから、試算でもやはり知っておられるべきではなかったのかというふうに思います。

 では、その試算は公表されないというふうに理解してよろしいんですか。だって、今出回っていますよ、既に。

岡田国務大臣 それは、党でお決めになることで、政府からどうこう言う問題ではないと思います。

小池委員 だけれども、それは本当に政府と与党が一体ではないみたいな話で、一体改革の話を一体誰が出すんですかという話になるわけです。古川さん。

古川国務大臣 私は、その当時、党の調査会の副会長として、年金をどうするべきかということの議論をする前提として、役員の間でいろいろ頭の整理をしたい、そういうことで、そもそも議員が持っておられるのがどういうあれかわかりませんが、さまざまな設定を置いて、こういう計算をしたらどうなるのか一回出してきてみてくれといって、そういう形で数人の中で議論をした、その数字の入ったものが多分お手元にあるんじゃないかと思います。

 そういう意味では、我々は、昨年六月に一体改革の成案というのを決めました。この成案の中で、まずは二〇一五年までのところにやるべき社会保障の改革の姿、そしてそれを支える財政の姿、これを決めていった。それに基づいて年末の素案につながるわけなんでありますけれども、その二〇一五年ということで考えますと、新しい年金制度については、まだこれは、制度設計をして、そしてスタートする前段階になっていくだろう。ですから、その新しい年金制度の姿、具体的にはどういう、例えば二分二乗にするだとか保険料率をどうするかとか、そういうことを検討していく過程の中で、いろいろな数字を置いて考えてみようという中で、いろいろなものを出してきました。

 その場で見るだけ見て、もうこれでいいというので、我々自身もそれは手元にもありません。その場でいろいろな数字を出してあって、そして、まあ大体こういうものかということがわかって、それであの成案の中、そして今回の素案の中でも入っておりますけれども、民主党が考える新しい年金制度の姿、かなり具体的な姿になって、大枠を指し示していただいております。

 そういうものでございますので、そもそも試案というのにも私は値しないものだというふうに思っております。

小池委員 であるならば、それはむしろすっきり出されたらいかがでしょうか。そして、国民的な議論に向かっていくというそのたたき台にすればよろしいわけで、出すの出さないのということについて言うならば、何かユーチューブに出たのを出すの出さないのと言っているような、そのころを想起させてしまうわけでございます。

 いずれにしましても、社会保障と税についての法案としてお出しいただくようにお願いを申し上げたいということを改めて申し上げたいと存じます。

 さて、次に、二十四年度の予算につきまして、この補正予算の議決を経ました後に具体的に審議に入るわけですが、その前にちょっと幾つか伺っておきたいことがございますので、ここで質疑をさせていただきます。

 それは、基礎年金の国庫負担二分の一のうち、本来充てるべき国庫補助の二分の一に足りない二兆五千八百八十二億、これを本予算の方に計上しておられないんですね。そのとおりでいいのか、そしてその理由は何なのか、お答えいただけますでしょうか。

安住国務大臣 二分の一分をやるには、御指摘のように二・六兆足りません。そこで、その財源を、これまで三年間にわたりましていろいろ、いわゆる埋蔵金というか、さまざま工夫をしながら自民党政権下でもやってきましたけれども、今回、なかなか厳しい状況になりまして、今回は、そういう点では交付国債という新たな制度でこれを補うということにさせていただきました。

小池委員 その交付国債でございますけれども、そもそもどんな国債なのでありましょうか。それに金利はつくのですか、つかないのですか。

安住国務大臣 あらかじめ償還するお金を、財源というものを決めて、それから交付を最終的にはしていく。ですから、今回も、そういう点では、これは消費税というものを念頭にこの交付国債の発行をするということになります。

小池委員 要は、お父さんに大きな仕事が入って収入がふえたときにお払いしますよという約束手形みたいなもので、かつ、お答えいただけませんでしたが、金利はつかないというものでございますね。

 そして、お答えの中に、この四次補正、二十四年度の予算の提案理由の説明の中にも、「税制抜本改革により確保される財源を充てて償還される交付国債により、」とある。つまり、これは今後の増税、これが確実にならなければできない話で、これは増税の先取りで、そしてただの小切手をくるくると回す、そういう認識なんですが、間違っていますか。

安住国務大臣 また御批判があるかもしれませんけれども、恒久財源を確保して、そしてこれに償還をしていくというのは、前の政権下からずっと引き継いできたことでございます。

 三年間これをやりくりしながら、恒久財源がなかなか決まらないということでしたけれども、これは、例えば坂口厚労大臣、さらに例えば舛添厚労大臣のときからも答弁で、この二・六兆分というのは消費税一%を念頭にということでずっと来ましたので、私どもとしても、これが成立した上でこの部分を充てさせていただくという考えで、今回、交付国債ということにしました。

小池委員 当初予算で交付国債を活用した例というのはありますか。

安住国務大臣 古くは戦争の遺族関係の年金等の交付国債等がありました。それがたしか昭和二十年代に、一般会計かどうか、ちょっとそこは私わかりませんが、このところで言えば、昨年の東電のお金でこれを使わせていただいたり、過去そんなに多くありませんので、ほとんどないと思います。

小池委員 そうなんですよね。当初予算で交付国債を使うというのは、戦後のわずかな例しかございません。

 たまたま「昭和財政史」というのを調べてみますと、昭和二十三年の第二回の国会で、当時の福田赳夫政府委員の答弁にこんなことがあります。備考に本表のほか交付国債によるものが次のとおり書いてあるが、これは予算にはのっていないのでありますというふうに答えていて、何か実体のないものを交付国債として、当座しのぎで使うというニュアンスの漂った答弁にもなっていて、ですから、交付国債というのは本当に極めて、それも当初予算から本予算にのせるということは極めて異例なことでありまして、かつ、国民年金法を改正しなくちゃいけないんでしょう、そのためには。根拠になる法律が必要なんでしょう。

 国民年金法というのはどうなっていますでしょうか。小宮山大臣、お手元におありですか。

小宮山国務大臣 おっしゃるように、その際には国民年金法を改正いたします。特例水準をもとへ戻すのとあわせて提出をさせていただきたいと思います。

 先ほどちょっと、安住財務大臣、金利分がないと言われましたが、これはもとのお金プラス金利分も含めて返していただくことになっております。(小池委員「今の認識で、安住財務大臣」と呼ぶ)

中井委員長 では、安住財務大臣に答えさせます。

安住国務大臣 先ほどの追加答弁でございますが、一般会計の例はございます。戦没者等の遺族に対しての、これは昭和二十七年でございます。それから、IMF、世銀の国際機関に対する出資についても昭和二十七年。ですから、例はほとんどございませんが、この二点だけあるということです。(小池委員「いや、金利がつくということ」と呼ぶ)

 これは、市中に回るという意味での金利はございません、市中に回すわけではありませんから。そういう意味でございます。

小池委員 これは、市中には回らないけれども、年金基金を食うわけでございますよね。ということは、国民年金法の改正が通らなければ、根拠となるところが成立しなければ、この分は本予算で歳入欠陥になるんですよ。そのことを考えれば、堂々とまず予算にこの分を書き込んで、そしてお出しになっていた方がよろしいんじゃないですか。

 というのは、この増税云々の話に関連した、これからの法案作成、そしてまたそれの審議、採決という中で、御党の中にも反対の方々も多々おられるわけでありまして、これは成立するかどうかわからないというわけです。増税ができますよということを先取りした話ばかりをこの四次補正でてんこ盛りにして額を減らす、そして四次補正には、本当に確実かどうかわからないことについて、それを当てにした本予算にしているということで、極めて粉飾に近い。

 オリンパスはつけかえをやって大きな議論になったわけですよ、コンプライアンスの問題まで出て。それと同じことを政府はやっていいんですかという話になるんですが、どうでしょうか。

安住国務大臣 ちょっと、委員、オリンパスと交付国債は、少し比較としてはどうかと思います。

 一般会計の中で財源化をして何とかやれという御指摘も当然あったと思います。この何年間かは、ですから埋蔵金等を充ててやりくりをしてきたんです。しかし、恒久化ということが念頭にあって、二分の一にするということは、これは自公政権下の中での方針として、我々もそれを、正当性があるし、引き継いでおります。ですから、恒久化という意味からいえば、やはり消費税を充当するのが適当であろうというふうに考えて、今回この措置をとりました。

 これを一般財源にめり込ませるということになると、やはり、今度は国債費が四十四兆円で、率直に言えば、これはおさまるのは非常に厳しいというふうな状況でございましたので、こういう形をとらせていただいたということでございます。

小池委員 今みずからおっしゃったんですけれども、四十四兆円、これがもう超えてしまうということで、交付国債という、ある種、禁じ手というわけではないが、それを使うようになったということでありますし、それからあと、この予算の、六年ぶりに一般会計総額が前年度を下回ったと豪語しておられるんですけれども、国庫負担分の二兆六千億、基礎年金ですね、それから復興債三兆八千億、これは特別会計。これらを、阪神大震災のときもきちんと予算に計上したんですけれども、これを合わせますと九十六兆円になるんですよ。

 リーマン・ショックのあった麻生政権のとき、これは八十八兆円なんですね。それをはるかに八兆円超える予算であるのにもかかわらず、見かけのために四次補正にのせ、そして見かけのために四十四兆円を切り、見かけのために総額を減らすということをやっているわけで、先ほどオリンパス云々のお話がありましたけれども、しかしながら、粉飾ということを言うならば同じではないだろうか、こういうふうに思うわけでございます。お答えは結構であります。

 それで、一つ、早期に法案を作成、御提出をいただきたいという、社会保障と税の関係であります。そして、国会の場で、国民にわかる、国民とともに考える、そんな審議をしてまいりましょう。そのためにも、できるだけ早くお願いをいたします。

 それから、今も指摘をさせていただきました当初予算ですが、二十四年度予算ですが、これから審議に入りますので、今申し上げたことをよくよくお考えの上で対応していただきたい。その御準備を今からお願いしたいということでございます。

 いかがでしょうか。

安住国務大臣 お言葉でございますけれども、震災復興の三兆八千億を特別会計にせよというのは、これは自民党の御指摘をいただいてやった話でございます。特別会計に置けば、当然、これは直入を含めて横に置くわけですから、そして、そこは皆さんも合意をいただいて、税外収入や所得税、法人税の付加をお願いしてやったのに、これを一般会計にしておかないからいわば粉飾だという言い方は、先生、幾ら何でもこれは、私はちょっと、やはり納得しかねるということだけは申し上げておきます。

小池委員 いやいや、そもそも非常に税技術といいますか税法技術というか、そちらの方にばかり走っておられて、見かけをどうするかということにこだわり過ぎているということを指摘したわけであります。

 時間が迫ってまいりましたので、防衛問題について一言伺っておきたいと思っております。それから、東アジア情勢で、松原大臣、後で端的に伺わせていただきます。

 防衛大臣、今、アメリカがエアシーバトルという戦略をQDRにも掲載して、そして進めているわけですけれども、この戦略目標は何でしょうか。後ろからメモを渡さないで、答えていただきたい。

田中国務大臣 お答えをいたしますが、米国の新国防戦略の指針が先般出ました。その内容につきましては我が国も歓迎をいたしておりますが、これからのアジア太平洋地域の重視という中にありまして、いろいろと戦略が、相談があるものと思っておりますし、今言われたところのことにつきましては、私はそこまで今理解しておるところではございません。

小池委員 えっ。今、絶句しているんですけれども。

 今大臣は、エアシーバトルについて、例えば戦略目標とか、御存じないのでしょうか。これは極めて基本的な話なんです。日米間の同盟関係を深化していく、当然このことを御存じじゃなければ、どうやって日本の防衛を進めていくんですか。これはイロハのイなんですよ。

田中国務大臣 新国防戦略におきましては、運用面を強化されるということになってくるわけでありますが、我が国も動的防衛力を強化していくという考え方であります。

 各陸海空の補強をどういうふうにしていくか、こういうことはこれからの対応でございますが、全体の兵力につきましては、二面作戦からアジア太平洋の強化ということになりますので、その兵力につきましても、これから各陸海空の状況の話し合いは進めていかなければいけないと思っております。

小池委員 キーワードはばあっと入っているんですけれども、一番肝心なところでまだ御理解をされていないのではないでしょうか。というか、これは当然知るべきことであって、ましてや、エアシーバトルというふうに申し上げているので、陸海空じゃないんですよね。エアとシーなんですよ。

 これから、中国が今膨張する中で進めている、それに対応してどういうふうに日米で連携していきますか。同盟を深化していくということはずっとおっしゃっているわけでしょう。これは肝の部分なんですよ。それを存じませんがと言われたら、何を伺っていいのやら。これは当然の話でございます。

 では、ちょっと、北朝鮮情勢のことだけ伺わせていただきます。

 松原大臣、御就任おめでとうございます。拉致被害者家族の方々の信頼を受けて、ぜひともこの問題、特に金正日体制から大きく変わるという中において極めて重要かと思いますが、大臣は今、北朝鮮情勢をそもそもどのように分析されて、そのために拉致問題にどのように対応していこうとお考えになっているんでしょうか。

松原国務大臣 北朝鮮においては、金正日国防委員長の死去に伴い、大きく環境が変化をする可能性があると私は思っております。北朝鮮が今後国際社会の中で生きていこうとするならば、拉致問題の解決は必須であるというふうに認識をしております。

 私は、実効ある対話ということを総理もおっしゃっておられますが、実効ある対話を実現するためには、それに至るためのさまざまな対話と圧力が必要になってこようと思っておりますが、そのためには、多くの接触を排除しないで行うことが必要だろうというふうに思っております。そうした中を通して、この問題の解決のために頑張っていきたいと思っております。

小池委員 多くの接触ということは、これは委員長に聞くべきなんでしょうか。

 宋日昊大使との接触が言われておりますが、事実はいかがなんでしょうか。

中井委員長 ほかならぬ小池先生のことですから何でもお答えしたいのでありますが、予算委員会は私が答える場所ではありません。

 質疑をどうぞ御続行ください。

小池委員 ぜひこれも北朝鮮情勢が大きく変わっているという中で集中審議のテーマにしてまいりたい、このように思いますので、ぜひともこの点でも理事会において御検討をよろしくお願い申し上げます。

中井委員長 理事会で協議いたします。

小池委員 それから、北朝鮮情勢につきまして一言申し上げておきますと、ことしは北朝鮮にとりましても極めて重要な年であります。もちろん、昨年末に金正日体制から若き正恩にかわったということもありますが、二月十六日に金正日生誕七十周年、四月十五日、日成の生誕百周年、そして十月十日が労働党の建党六十七周年、年を越えて、四月二十五日には朝鮮人民軍の創建記念八十周年ということでございます。

 若き後継者がそこで非常にチャレンジングなことをするかもしれないという危険性と、もう一つは、御存じのように、北朝鮮では、このいろいろな周年行事のために、国を挙げてというか、国民は飢えているのにもかかわらず、平壌の一部で、これをある種、舞台のように大々的なパレードなどを仕掛けるわけですよ。

 そこで必要になるのがお金なんですよ、お金。お金はいろいろなところから、これまでもいろいろありますけれども、麻薬であるとか、にせ札、にせたばこなど、北朝鮮が関与したと言われている問題も多々ございます。

 そして、我が国は制裁もかけてきているわけですね、これまでも。お金の大部分、私はかつて朝銀の問題を国会でも取り上げました。中身は金融機関とは言えないような状況にあって、今大きく変わっているというか、その部分にメスを入れたところであります。

 要は、接点を複数持つところに必ず向こうが言ってくるのはお金の話なんですよ。特に、日本におられる方々の上納金を言ってくると思います。

 そこで松原大臣にお伺いしたいんですが、今制裁の対象になっている六、七名の在日の方で、そしてまた最高人民会議ですかの代議員をやっておられる方がおられるんですが、この再入国に対しての不許可。ちなみに、弔問団を送るか否かのときに、野田総理はそのことを不許可であるということで、万景峰号の話もそうであります。そして、向こうの報道では無知蒙昧とかといってめちゃくちゃ言われていましたけれども、あれは正しい判断だったと思います。

 先ほどから申し上げているような北朝鮮のこれからの事情を考えれば、在日の方からの上納金をもっとという話になってくる。そして、それに対して、その方々の、日本を離れて北京までいらしたら後はどこへ行くかわからないですけれども、しかしながら再入国の不許可ということ、これを徹底すべきだ、このように思うんですが、松原大臣の御見解をお聞かせください。

松原国務大臣 再入国禁止の話も含めての議論でありますが、基本的に私のスタンスとしては、こういった状況の中において、制裁圧力は時間軸とともに高まるというのが基本的な認識であります。

 ただし、その一方、この放送も北朝鮮の人も見ているでしょうから、あえて言わせてもらうならば、我々は、彼らが対話をするという意思を持つような材料も検討していく必要があろうかと思っております。

 基本的には、制裁はこれから高める方向を検討しながら、さまざまな接触を目指して、解決を目指すということであります。

小池委員 その接触の際に、今申し上げたような北朝鮮側からの要請には応えないようによろしくお願いを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

中井委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

中井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。

 この際、齋藤健君から関連質疑の申し出があります。小池君の持ち時間の範囲内でこれを許します。齋藤健君。

齋藤(健)委員 自由民主党の齋藤健でございます。

 本日は、一年生議員である私にこの予算委員会での質問の機会を与えていただきまして、まず御礼申し上げます。

 私は、常に申し上げていることなんですが、正論の直球しか投げませんので、揚げ足をとるようなことをしないといつもお誓いしながら御質問させていただいておりますので、御答弁の方も、簡潔で、直球で投げ返していただきますようお願い申し上げます。

 本日は、我が党あるいは私自身の考えも述べながら、政府・与党の考えを伺っていきたいと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。

 委員長も、御差配のほど、よろしくお願い申し上げます。

 まず初めに、震災関係会議の議事録が作成されていなかったという問題について質問させていただきたいと思います。

 政府の発表によりますと、震災関連会議十五のうち、十の会議で議事録が作成されておらず、しかも、原子力災害対策本部や緊急災害対策本部といった重要な会議については、議事の概要すら作成も保存もされていなかった。この件を最初に聞いたとき、そんなばかなと正直思いました。

 ところが、今また、きのう、きょうの報道によりますと、どうやら、阪神・淡路大震災のときの会議の議事録やあるいは中越地震の際の会議の議事録も、まだはっきりはしておりませんが、残っていないようだということであります。この問題は、後世にいかなるものをいかにして残していくかという、今を生きる政治家の歴史に対する責任感の問題として、私は、与野党を超えて、この際きちんと整理をしていかねばならない大問題であると考えております。

 こういう観点から、一つ一つ質問させていただきたいと思います。

 まず、確認なんですが、原子力災害対策本部や緊急災害対策本部といった極めて重要な会議を含めまして、十五の震災関連会議のうち、十もの会議で議事録を作成しなかったという件につきまして、その原因を今の時点でどのように考えておられるか、お伺いしたいと思います。

岡田国務大臣 恐らくそれぞれ理由はあるんだと思いますが、詳しくは、しっかり有識者の会議を開いて、そこで把握をしていきたいというふうに思っています。

 想像するに、非常に厳しい環境の中で、ついつい後回しになってしまったという部分があるのかなとは思いますが、委員も御指摘の、やはり法の趣旨からいっても、後世、事後的に、あのときの意思決定はどうだったのかということを評価するための、判断するための、そういう文書の保存ということでありますので、もう震災から随分時間もたっておりますし、そういう意味では、事後的につくることが認められているとはいえ、余りにも遅きに失した、そのことについては真摯な反省が必要であるというふうに考えております。

齋藤(健)委員 もう一つ確認でありますが、今、厳しい環境で後回しになったというお話でありましたが、幾ら厳しい環境であったとしても、とりあえず録音をしておいて、後で整理をするということはできたのではないかと思うんですが、録音もしていなかったんでしょうか。

岡田国務大臣 現時点で、それぞれの会議について個別に把握をしているわけではございません。しかし、基本的に録音はされていないというふうに受けとめております。それがなぜかというところについても、きちんと検証しなければならない点の一つでございます。

 今後どうするか、録音を義務づけるか、どの範囲でやるかというようなことも含めて、まず政府の中でしっかりとした議論を行わなければならないというふうに考えております。

齋藤(健)委員 きのうだったと思いますが、平野大臣の記者会見で、過去の災害関係会議の議事録もどうやら見つからないというお話をされていたと思いますけれども、その過去の災害関係会議の議事録の、今までのところ把握されている状況についてお伺いしたいと思います。

平野(達)国務大臣 自然災害が発生した際の非常災害対策本部等々の開催の事務局は、現在でいうところの内閣府の防災担当がずっとやっております。この防災担当部局に阪神・淡路大震災以降の議事録あるいは議事概要等々の状況について調べていただいたところ、作成されていないという調査結果の報告を受けております。

 なお、全ての、こういった大きな災害が起きた場合の災害対策本部等々があった場合には、官房長官あるいは防災担当大臣がその会議後にブリーフィングをしているという報告も受けております。

齋藤(健)委員 きのうの平野大臣の会見では、そういう緊急的な会議の場合、議事録をつくらないような慣行みたいなものがあったんじゃないかというお話をされておりました。私は、慣行と言えるものがあったかどうかも含めて、これから調査をしていただいて、その結果を待つしかないと思いますが、確かに我が党時代にも脇が甘いところがあったのかもしれません。

 ただ、民主党政権が誕生する直前、公文書等の管理に関する法律が成立をいたしました。そしてさらに、震災直後の四月にこの法律は施行されております。民主党政権の手で施行されたこの法律の第四条には、これまでになかった法律的な義務として、行政機関の職員に対して、経緯も含めた意思決定に至る過程を合理的に跡づけ、または検証することができるよう、文書を作成しなければならないとされております。まさに議事録がこれに相当するものだと思います。

 加えて、この法律を国会で審議する過程におきましては、文書管理と情報公開の徹底を当時の野党だった民主党が執拗に主張していた経緯を考えますと、今回二万人近い方々が亡くなり、あるいは行方不明となった、西暦八六九年以来、千年に一回と言われる歴史的大惨事に対する政府の会議の議事録がありませんでしたというのは、言うこととやることが全く違うという、いつもの御党の体質を思い起こさせるもので、何重にも責任重大であると言わざるを得ないと思います。

 しかも、民主党政権では、総理を除きまして大臣十七名、副大臣二十二名、政務官二十六名、合わせて六十五名も国会議員が政権に入っていて、きちんと議事録を残してと指示する者もいなければ、十カ月間もの間、議事録がないことに気づきもしなかったということは、自分が実行することを考えて真剣に物を言ったためしがないという証拠になるんじゃないでしょうか。六十五人もいて、自分たちが言ってきたことをやろうともしない、こういうのを口だけというのではありませんか。

 この点についての見解を伺いたいと思います。

岡田国務大臣 これはお答えになるかどうかわかりませんが、当時のこの法案の担当者は、私の前任、蓮舫議員であります。閣議で蓮舫大臣の方から、この法も施行されたので記録は残すようにと、この大震災に関してということではありませんが、法施行に伴ってそういった発言もしております。にもかかわらず残っていなかったわけですから、これは弁明にはなりませんが、事実として、そういうことは申し上げておきたいと思います。

齋藤(健)委員 あえてこれ以上申し上げません。

 加えて二点指摘したいと思いますが、まず第一点は、会議をつくり過ぎだと思います。事故直後の当時の政権は会議を乱発して、先ほど申し上げたように十五もあったということであります。さらに下部の会議も加えますと、恐らくもっと多かったんだろうと思います。なぜ会議をたくさんつくるのか。それは、私は、自分たちに自信がないからではないかと思います。不安だからだと思います。これも心配だ、あれも心配だとなって、その都度会議をつくっていくから多くなってしまって、そこに判断を丸投げする。

 同時に起こった現象というのは、皆さん覚えておられると思いますが、官僚が信用できないということで、使いこなせもしないのに、お友達の専門家を参与だ何だといってどんどん任命しましたが、このことも同じ根っこの話で、こういうことは全て、自分たちに自信がなく不安だから、やたらめったらこういうことをしたのではないか。

 こういった民主党政権の態度というのは、同じ危機時の対応として、九・一一のときのニューヨーク市のジュリアーニ市長の対応とは余りに違い過ぎます。

 ジュリアーニ氏は、事件後、毎朝七時に全局長を集めた会議を開きまして、そこで、きのうから起こった出来事を検証し、意見を出させ、なすべきことをその場で決定し、即座に実行に移す。各局の局長は政治家ではなくて官僚で、皆それなりの専門家だから、その場で判断ができて、その場で関係者間の調整も済んでしまいます。会議が終われば、その都度記者会見を開いて、何が決まったか、そして何を実行することになったかのブリーフが行われます。そして翌朝の会議では、実行したことの検証を行い、さらなる改善点を決定する、それを毎日繰り返しておりました。こういう危機対応体制をとるならば、会議を幾つもつくる必要はありません。

 一方、三・一一後の我が国の対応はどうだったでしょうか。

 仮に大臣を招集して会議を開いたところで、初めて大臣をやるような人たちばかりだから、その場では何も判断できません。私はかつて役所の仲間から、幾らアイデアを出しても、大臣が判断してくれないから進まないという嘆き節をどれほど聞いたことでしょうか。だから、ジュリアーニ氏のように大臣を集めた会議をつくっても意味がない。でも、不安だから、会議をたくさんつくって、十五も十六も、判断を委ねることになる。

 こうやって多くの会議がつくられて、震災対応はこの政権のもとでこれが原因でおくれた、こういうことは指摘できると思います。そして、あげくの果ては、さんざん文書管理と情報公開を言いながら、議事録すらとっていなかった。

 二つ目の指摘は、緊急事態であったにせよ、せめて録音ぐらいはしておくべきだったのではないかということであります。

 かつてアメリカの大学院に私が留学をしていたとき、こういう授業がありました。グラハム・アリソンというハーバード大学の大変有名な教授が、この方は政治の意思決定のあり方の専門家でありますが、学生が円形になって向かい合って、そこにカセットテープが置かれております。そこから流れてくるものというのは、キューバ危機のときに、ケネディ大統領とロバート・ケネディと、それからそのときの意思決定にかかわった人たちの、まさに現場で録音をした肉声でありました。そして、その肉声を聞きながら、このときのケネディ大統領のこの発言はどう評価されるべきか、それに対するロバート・ケネディは冷静でいい対応をしているじゃないか、そういうことを学生が議論する、そういう授業を受けたことがございました。

 こうやってアメリカでは、キューバ危機というのは一触即発の核戦争の危機でありました、大変大きな、それこそ緊急事態であったと思いますが、そういう事態においても、公開するかどうかは別にして、テープをきちんと残しているわけであります。

 キューバ危機は一九六二年のことで、五十年前のアメリカにできて日本にできないことはないと思います。確かに自民党時代にも録音が行われていなかったかもしれませんが、今回の不幸な出来事を契機として、会議の録音ということについても積極的に評価をしていくべきではないでしょうか。

 まず、きちんとした録音はする。しかし、それをそのまますぐに公開するのはいろいろ問題があるでしょう。それには二十年、三十年の期限をつけて公開をする。そしてそれに基づく議事録も、会議によっては、そのまま出せるもの、出せないもの、いろいろあるでしょう。そういうものは配慮しなくちゃいけないとしても、きちんとしたテープなり録音なりを残しておいた上で、その後の対応をどうするかということをこれからきちんとしていくことが私は大事じゃないかと思います。

 確かにいろいろ検討しなくてはならないことも多いと思いますが、一方で、政治家や公務員が歴史の検証というものを意識して仕事をするようになります。このことは大きな意識改革になるんじゃないでしょうか。

 ぜひこの機会に、後世の人たちに恥ずかしくないよう、官庁記録文化というものを一新すべく一大見直しを行ってはいかがかと思いますが、総理の見解を伺いたいと思います。

野田内閣総理大臣 まず、今回、震災関連でたくさんの会議、本部をつくりながら議事録をつくっていなかったという事実は、まさにそのとおりでございますので、これはまことに遺憾だというふうに思います。もちろん、阪神・淡路大震災のころからということでありましたが、特に公文書管理の法律ができてから我々は政権を預かっておりますので、より猛省をしなければいけないというふうに思います。

 委員の御指摘のとおり、特にこういう大きな災害があったときには歴史の教訓として記録に残さなければいけないというふうに思いますので、なぜこうなったのかという検証をちょっとしっかりさせていただいた上で、その上で、その改善方をしっかりとつくっていきたいというふうに思います。

 録音テープの問題提起がございました。一つのアイデアだと思うんですが、例えば、何人かが会いながら物事を決めていく会議というのは、そういうやり方もあるかもしれません。ただ、悩ましいのは、よく電話で、政治家同士がやりとりをして、すとんと物を決めることがありますね。そういうことも含めて、意思決定のプロセスの中で、どういう形で透明性を担保するかということ、あるいは記録の残し方ということは、総合的に考えさせていただきたいというふうに思います。

齋藤(健)委員 これは私は本当に大事な話だと思いますし、これからどの政党が政権をとろうとも、現在に生きる政治家が歴史に対してきちんとしたものを残していくということは、すぐ公にするかどうかは別にしまして、極めて大事なことだと思いますので、ぜひ、今の総理のお言葉の中で、今までのやり方を一新して、特にその際、アメリカなりヨーロッパなりでどのようなことが行われているかということをきちんと調べた上で、世界に遜色のない記録のとり方というものをつくり上げていっていただきたいと思います。

 次に進みます。

 一枚、写真を見ていただきたいと思います。

 これは、昨年の九月以来なんですけれども、千代田区霞が関の経済産業省の敷地の一部がこのような政治的活動のために占拠をされております。これを見ていただくと、立入禁止ですとか国有地とか書いてあると思いますが、しかも、昨年末にはぼや騒ぎまで起こっております。

 私は、政治的主張を目いっぱいやるという気持ちはわかるわけでありますし、政策的な議論は大いに闘わせたらいいと思いますが、国民の財産である公共施設の一角を特定の団体が無許可で占拠して、ぼやまで出しても許されるというのは、いささかやり過ぎなのではないでしょうか。この点についての経済産業大臣の見解を伺いたいと思います。

枝野国務大臣 お尋ねのテントは、昨年の九月十一日に設置をされたものでございます。当然無許可でございます。自来、日々繰り返し速やかな撤去を要請してきているところでございますが、特に、テント内でこんろの使用等、防火管理上も危険な状態にあり、現に、昨年十二月三十日、ガソリン式の発電機が火元と見られるぼやが発生をいたしました。このため、本年に入りまして、改めてテントの撤去と火気の使用禁止を文書で警告したところでございます。

 速やかに自主的に撤去することを望んでおりますが、いずれにしろ、御指摘のとおり、主張内容の是非にかかわらず、国有財産という国民共有のものでありますし、また危険な行為でもございますので、放置できないと認識をしております。

齋藤(健)委員 私は、政策的論争の中身に言及するつもりはありませんが、政治的な主張も大いにやったらいいと思いますが、だからといって何をやってもいいということにはならないという当たり前のことを申し上げて、次の質問に移ります、時間がありませんので。

 マニフェストにつきましてお伺いをいたしたいと思います。

 私は、国政のあり方としてのマニフェスト選挙、これのあり方について、あるいは政治家の言葉の責任のあり方、こういった観点からきょうは決着をしたいと思っていまして、真っ正面から議論を深めたいと思います。

 まず、私どもの考えからお話をしたいと思います。

 私は、マニフェスト選挙を戦って勝利した県知事のもとで仕事をしていたことがございます。つまり、約束したマニフェストを実行する側におりました。その経験を踏まえて申し上げますと、実際に行政を預かる立場になってみますと、突発的な災害を初めといたしまして、選挙のときに想定をしていなかったようなことがいろいろ起こりまして、これに対応していかなければならない、こういう現実に直面をいたします。

 つまり、マニフェスト選挙において問われなくてはいけないのは、マニフェストに書いてあることがきちんと実行されるかどうかということも大事で、それと同時に、実際には災害など不測の事態も起こるわけで、そういう不測の事態に対する対応能力があるのかどうか、つまり行政担当能力があるのかどうかも、実はマニフェストの中身と同時に、選挙のときに考慮されなくてはならないということなんです。

 アメリカの大統領選挙を見てみても、そうです。アメリカの大統領が、どういうときに自分は選挙をしますなんて、マニフェストに細かく書いてありません。その人に本当に核のボタンを預けられるかどうか、最後はその一点が非常に大事になってくるわけでありまして、マニフェスト選挙も同じだと私は思います。

 こういう考え方を申し上げた上で、野田総理のマニフェスト選挙についてのお考えを順次お伺いしていきたいと思います。

 私は、野田総理と同じ千葉県選出の国会議員で、しかも、長く存じ上げている方で、筋も曲げない、党は違うけれども大変期待をし、信頼をしていた方であります。そういうものがありましたので、私は知らなかったんですけれども、前回総選挙時の野田総理の演説を聞いて、正直ショックを受けました。なぜなら、この野田総理の有名な、ネットで流れているものでありますが、この演説内容が、鳩山元総理がやはり同じ選挙時に、普天間基地の移設先について最低でも県外と叫んだ話と、どうしても二重写しになってしまったからなんです。

 二〇〇九年の八月、野田総理は大阪十六区の応援に行ってこういう発言をされました。ネット上でブーメラン演説ということで大ヒットしている例の発言ですけれども、これからの議論の前提となります大事な発言なので、正確に引用させていただきたいと思います。

 政権公約、マニフェスト、ただいまボランティアの皆さんがただいま皆様にお配りをしています。衆議院では三回目の導入です。でも、わかっていない政党があります。マニフェストはイギリスで始まりました。ルールがあるんです。書いてあることは命がけで実行する、書いてないことはやらないんです。それがルールです。

 それからまた、書いてないことを平気でやる、これっておかしいと思いませんかとおっしゃり、さらには、書いてあったことは四年間何もやらないで、書いてないことは平気でやる、それはマニフェストを語る資格がないというふうにぜひ皆さん思っていただきたいと思いますとまでおっしゃっておりました。

 そのころ、私は、三年四カ月の浪人生活の末に迎えました大逆風の選挙でこういう訴えをしておりました。

 皆さん、私は自民党の候補者でありますが、民主党のマニフェストを読んでください。このマニフェストで本当にこの国の経営ができるかどうか、皆さんの目で確かめてください。私は絶対にできないと思います。子ども手当、二万六千円、それぞれ配ると言っております。お金持ちにまで、三人子供がいれば年間百万円、キャッシュで配られます。この国の税収は四十兆そこそこです。そのために五兆三千億円もの新たな予算をお金持ちにまでばらまく、そういう余裕はこの国にはない。

 私は、そういう演説をしながら、辛うじて生き残ってまいりました。

 質問に移ります。

 前回選挙時に、野田総理は、マニフェストに書いてないことはやらない、それがルールだと国民の皆さんに力強く訴えられたわけですが、ところで、皆さんのつくられたマニフェストに、消費税を上げる法案を国会に提出し、成立させると書いてありますでしょうか。

野田内閣総理大臣 結論から言うと、消費税についての言及はございません。

 今、マニフェストについての私の街頭演説について触れていただきました。

 マニフェストは、国民の皆様に、我々の政党は政権をとったらこういうことをやりたいんだとお示しをしていることでありますので、基本的には、それを実現するように全力を尽くすということが基本だというふうに思います。

 おっしゃるとおり、いわゆる現実政治でありますので、何か起こったときに、例えば今回も、リーマン・ショック後の経済の変化であるとか、あるいは今回の大震災とかを含めて、書いてないことでもやらなければいけないことというのは間違いなく出てまいります。それは、まさに危機管理能力であるとか統治能力が問われる場面であります。それについてはきちっとやっていかなければいけないということ。

 あるいは、状況状況によって、マニフェストには書いてないけれども、例えば地方交付税をふやさなければいけないとかという政策判断の積み重ねは、これまでもやってきたつもりです。

 マニフェストで書いたことは、基本的には、自分たちの理念にかかわることでありますし、魂にかかわることなので、全力で最後まで諦めずに実現を目指しながらも、一方で、現実政治への対応もするということが政権の基本だというふうに思っております。

齋藤(健)委員 我が党は、マニフェストに書いてないことはやらないとは言っていません。

 先ほど申し上げましたように、私は、マニフェストを約束して当選をした、実行する側におりましたので、マニフェストに書いてないことでもやらなくてはいけないことがたくさんある、マニフェスト選挙はそういうものだ、その対応能力もあわせて問われなくちゃならないと冒頭申し上げました。それが私どもの考えですが、野田総理はそうはおっしゃっていないんですね。

 マニフェストに書いてないことはやらない、それがルールだ、そういうふうにおっしゃっているのに、そしてそれを信じて投票をした人たちがたくさんいるというのが現実の中で、国民の生活が第一とみずからおっしゃっている政党であるにもかかわらず、消費税を倍にするという法案を成立させるという、国民生活に直結する最大の政治行為であるにもかかわらず、マニフェストに書いてない。そして、書いてないことはやらないというふうに訴えながら、それをやるということについて、総理はどうお考えになっているかということを伺いたいんです。

野田内閣総理大臣 街頭演説のときに意識をしたことは、例えば、御党の場合、これを言うとまた、ぎくしゃくしたくはないんです。だから余り言いませんが、多分、幼児教育の問題を無償化するとか書いていたけれども、取り組んだのか、取り組む姿勢もなかったじゃないかということ等を言いたかったんです。余り時間がないから個別のことまで言っていませんけれども。

 一方で、財政の問題、そして社会保障の持続可能性を探っていくということは、これは御党もよく御理解いただいていることだと思うんです。政権を預かりながら、ますますその緊要性というのが出てきているという中で、我々の任期中には上げないけれども、そのいわゆる一里塚になるような法案はまずつくっておくというところをやるということであって、マニフェスト等、書いていませんよ、確かに。書いてないから、逆に言うと任期中はやらないんですが、だけれども、その方向性はもう出しておかないと、待ったなしの状況に対応できないという危機感のもとから、今御説明をさせていただいているということであります。

齋藤(健)委員 総理がおっしゃるようなことは、私も同感なんです。ただ、総理はそうおっしゃっていないということなんです、選挙のときに。

 総理は、マニフェストに書いてないことはやらない、それがルールだとまで訴えた。ということは、あれはうそだったのかというふうに国民は思いますよ。その演説を聞いた人たちに対して、もう一度真意をお話ししてください。

野田内閣総理大臣 先ほどの、御党のことはもう言いません。我々の今の考え方ということの中においては、どうしてもこれはもう待ったなしの状況だ、それは社会保障を持続可能にしなければいけない。そして、その社会保障に充てるお金なんです、困ったとき、弱ったとき。それは、本当に今大事な局面において、しかも、これは余りもうだらだらと延ばせない状況の中で、私が言ったことはいろいろあります、それについての御批判は甘んじて受けますが、しかし、そのことも含めて皆さんに御理解をいただきたいというふうに思います。

齋藤(健)委員 あえてもう申し上げません。

 ところで、野田総理は当時、マニフェストはイギリスで始まりました、ルールがあるんですと訴えておられますが、そもそもイギリスに、マニフェストに書いてないことはやらないというルールはありますか。

野田内閣総理大臣 イギリスのそんなに詳しいルールはわかりません。ただ、少なくとも、イギリスのマニフェストは日本ほど細かくはないということは承知をしています。その方向で努力をされているんだろうとは思います。

齋藤(健)委員 私がお伺いをしたのは、もう繰り返しになって疲れちゃうんですが、マニフェストはイギリスで始まりました、ルールがあるんですと言って、イギリスのマニフェストのルールを解説しながら、書いてないことはやらないんです、それがルールなんですと皆さんに訴えていたので、単なる確認の問題として、イギリスに本当に、マニフェストに書いてないことはやらないというルールがあるんですかと。そうおっしゃっているのは総理なんですから、あるならある、ないならないとおっしゃっていただきたいと思うんです。

野田内閣総理大臣 従来の、我々が言っていた、我々といっても共有しているかどうかわかりませんが、公約というもの、選挙公約。これはよく、背中に張るばんそうこう、こう薬みたいに剥がれちゃうものだというようなことがありましたよね。それと違って、もっと思いを込めて、国民との約束という強い気持ちを持って打ち出したのがマニフェストである、だから、そういうあえて強調する言い方をしたということでございます。

齋藤(健)委員 イギリスにはそういうルールがあるのかないのかだけ御答弁ください。

野田内閣総理大臣 ルールという言い方が妥当かどうかわかりません。それは選挙演説で使っている言葉なので滑っているかもしれませんが、マインドとして、約束したことを守ろうとはしているだろう、そういう考えでやりました。

齋藤(健)委員 あえてこれ以上申し上げませんが、残念ながら、私が調べた範囲では、これは全て調べたわけではないですが、どうやらイギリスには、そういう野田総理がおっしゃるようなルールはございません。

 成熟した議会制民主主義国家であるイギリスは、これは私、本当に学ぶべきことがたくさんあると思いますが、ソールズベリー慣行というのがございます。それは、貴族院議員というものが選挙で選ばれていないものですから、与党が総選挙公約に掲げられた政策を実現するための法案を出した場合には、貴族院は否決をしてはいけない。なぜなら、貴族院議員は選挙で選ばれていないから。そういうルールはありますが、マニフェストに掲げられていない政策をやってはいけないというルールは、私が探したところ、ありません。

 イギリスにないルールをイギリスのルールだと訴えて、さらに、勝手に自分でつくったルールをまた自分で破る。二重に国民を愚弄しているようにしか私には思えないんですけれども、総理、もう一回、この点について、大阪十六区の皆さんに対してだと思って御説明いただけませんでしょうか。

野田内閣総理大臣 政権交代をして私たちが何をやりたいか、その強い思いをお訴えする手段がマニフェストでございました。そこで書かれている理念であるとか魂というのは、これはしっかりと守っていかなければいけないと思います。その強い思いをあらわすという言い方で、マニフェストの強調をしたわけであります。その思いは今も変わりません。

齋藤(健)委員 大阪十六区の皆さんだけじゃなくて、ネットで大ヒットしたときから、日本全国で、多くの方々がこの総理の発言を恐らく目にし、あるいはネットで聞いていると思います。私は、このマニフェスト選挙というものについて、信頼にかかわる大問題だと思うからこそお伺いしているわけです。

 最後に、もう一度野田総理に伺いますが、次もマニフェストを掲げて総選挙をするつもりがありますか。

野田内閣総理大臣 やはり選挙の際に、政権を次とったら、次は何をやりますよということは、当然のことながら訴えなければいけません。その意味では、マニフェストという考え方は生かしていきたいというふうに思います。

 ただし、この間の選挙のように、詳細に、細かく、数字も何でもかんでも挙げてという形にするか、ポイントを絞ったものにするか等々の工夫は必要だと思いますが、当然、国民の皆様に政策の判断材料を提供するのは、お互いの党にとって、これは役目だというふうに思います。

 もう一つ、ちょっと重ねて申し上げたいのは、マニフェストの問題もありますけれども、ケネディとかを含めて、大統領を選ぶ際に、そのリーダーが信任されるか、信用されるかどうかが最後の決め手だというふうにおっしゃっていました。私は、やはり全てそこにかかっていると思います。

 マニフェストの進捗状況等々の検証もしていかなければなりません。それは我々が選挙で訴える際にきちっとお伝えをするということはお約束したいと思います。何をやったのか、できなかったのか、実績を含めて、できなかったことも当然出てくると思います。その上で、さまざまな危機管理の対応であるとか、今、その後に起こった課題に対して適切に我々が対応したかどうかも含めて、トータルで審判を仰いでいくということが次の選挙だろうというふうに思います。

岡田国務大臣 齋藤さんは見識のある方なのであえて申し上げたいと思うんですが、確かに、二〇〇九年のマニフェスト、我々の中に、甘い見通しに基づいて書いた部分がある、そのことは、私が幹事長をしておりますときに、去年の夏に中間評価をして認めております。

 もちろん、それだけではなくて、その後の変化もいろいろありましたから、できていないものもあります。例えば高速道路の無料化などは、この大震災が起きたときに、やはり被災地のインフラの復興のために使うべきだということで、来年度予算には計上していないわけであります。

 あえて、ちょっとこの場をかりて一言申し上げると、マニフェスト選挙、私は非常に重要なことだというふうに思います。ただ、やや粗くなってしまったことは事実。

 私、二〇〇五年のときに代表で、小泉さんがおられますが、当時の小泉総理の郵政選挙を戦いました。あのときに、郵政民営化すれば、地方もよくなるし、そして経済もよくなる、外交ですらよくなる、こういうマニフェストを出されたんですね。そのことの是非を私は言うつもりはありませんが、これから新たな選挙を戦っていく上で、やはり国民の方を向いて、そして、よりきちんとしたマニフェストを出していく責任がお互いにある、そういうふうに思っています。

齋藤(健)委員 岡田副総理が、やはりきちんとしたマニフェストをこれからお互いに出して、それを日本の国政の前進につなげていかなくちゃいけないというお話については私は全く同感でありますが、私は物わかりが悪いのかもしれませんが、まだちょっと理解できないんですけれども、マニフェストに書いてあることを命がけでやる、書いてないことはやらないと言っておきながら、消費税の法案を出して成立させるということは書いてないわけですね。

 この書いてないことに対して、この前の発言に対しての関係が私もわからないし、恐らくテレビを見ている人もわからないと思います。あれは口が滑った、言い過ぎだと言ってくれればわかるんだけれども、そういうふうにあのときの演説はなっていない。私は頭が悪いのかもしれませんが、何度野田総理の話を聞いていてもわかりません。ただ、これ以上お話をしても、多分平行線だと思います。

 私が申し上げたいのは、あのときの総理の御発言、イギリスのルールだと言ってやられた発言について、実際はそうなっていないということについてきちんと説明をしないと、次の皆さんのマニフェストを信じる人はいないと思います。それだけ申し上げたいと思います。

 それから、TPPについて一言だけお話し申し上げたいと思いますが、私は、これについて大変怒りを感じているところであります。

 それは、私も日米交渉を実際にやってきた経験がありますが、交渉は本当に厳しいものになります。そして、そういう厳しい交渉をやるには、やはりこちら側にもそれなりの力量というものがなければ太刀打ちできない。本当に苦しい交渉でした。

 それで、私が大変気になっておりますのは、言葉尻を捉えると言われるかもしれませんが、実は重要な問題なんですけれども、御党の大変役職にある方が、TPPは交渉に参加をすべきだ、だけれども、気に入らなかったら離脱すればいいということをおっしゃいました。

 この離脱するという言葉は、交渉者が絶対に使ってはいけない言葉だと私は思います。なぜなら、離脱という言葉は、日本が悪者になってしまう表現なんです。この交渉を壊したのは日本だということをみずから言うようなものなんです。

 ですから、同じことを言うにも、合意が成立しないと言うべきなんです。合意が成立しないのは、みんなが悪いわけですから。そういう言葉遣い一つとっても、本当にこの厳しい交渉をやっていけるんだろうかと大変不安になりました。

 それからもう一つ、皆さん方は平成の開国という言葉を使われました。私は、この言葉を聞いたときに、やはりショックを受けました。どの国でも、自分は悪いところがない、おまえの国のこれが悪いんだと言って交渉に入ってくるのが世界の交渉の常識です。そういう厳しい交渉をこれから始めようとするときに、いや、私たちは閉鎖しているんですということを言いながら交渉に入っていくというのは、私にはちょっと信じられませんでした。

 どうせ言うなら、ヨーロッパは経済がこれから大変だ、アメリカも不透明だ、アジア太平洋が世界経済を引っ張っていかなくちゃだめじゃないか、そのためには通商、貿易を盛んにしなければならないじゃないか、日本が入らなきゃ困るだろう、入ってやろうかぐらいのスタンスで交渉に臨んでいかなければ、とてもじゃないけれども交渉にならないと私は大変心配になりました。

 つまり、TPPの交渉に入るか入らないか以前の問題として、大変不安を感じる皆さんの力量ないし発言であったと私は痛切に感じましたが、この点について、反論があれば手短におっしゃってください。

古川国務大臣 私は、平成の開国という言葉を菅総理が使ったときの官房副長官でございましたが、平成の開国というのは、別にTPPに交渉参加をすることが平成の開国と言っているわけじゃないんです。

 御存じのように、今の日本の直面している状況、人口が減少し始めている、世界でも類を見ないような超高齢化社会になっている。この中で、次の世代、成長力を維持し強化するためには、やはりアジアを中心とする世界の成長市場を取り込んでいく、そういう大きな戦略を描いていかなきゃいけない。ですから、高いレベルの経済連携を通じて日本にとって有利な交易の状況をつくっていこう、それが大きな意味での平成の開国なんですね。

 その中で、日本はアジア太平洋の自由貿易圏を、FTAAPを目指していこうと。その取り組みとして、TPPであり、ASEANプラス3、プラス6というのがあります。その中で、今、実際に動いているのはTPPなんですね。

 ですから、このTPPについて、現在、交渉参加に向けて関係国との協議に入っているところでありまして、平成の開国とTPPとか、非常に矮小に、そういうふうにつなげていただくのではなくて、もう少し大きな意味で、今、日本が直面している、この人口減少、高齢化の中でどうやってこれから日本人が生きていくのか、そしてどうやって経済成長していくのか、そういう大きな考え方の中で、ぜひ平成の開国という意味は捉えていただきたいと思います。

中井委員長 古川さん、もう一つ用語を説明せいと言ったよ、違うているって。撤退か。

古川国務大臣 今まさに、政府としてはTPP交渉参加に向けて関係国との協議に入っている段階でございますので、先ほどおっしゃられたような撤退とか、そのようなことを考えるということは全くございません。

齋藤(健)委員 今のお話を伺っても、平成の開国という言葉を使わなくてはいけないということは、よく私にはわかりませんでした。

 ただ、時間も限られておりますので、最後に、この二年五カ月の民主党政権の総括をさせていただきたいと思います。

 八ツ場ダムの廃止、あれは何だったんでしょうか。普天間基地の移転先は最低でも県外、あれは何だったんでしょうか。年間三十一万二千円の子ども手当、あれは何だったんでしょうか。十六兆八千億円の財源は幾らでも出てくる、あれは何だったんでしょうか。国内法を適用すると言って船長を釈放した、あれは何だったんでしょうか。平成二十四年度には高速道路を無料化する、あれは何だったんでしょうか。ガソリン税などの暫定税率を廃止し、二・五兆円の減税を実現します、あれは何だったんでしょうか。納めた保険料、受け取る年金額をいつでも確認できる年金手帳を全ての加入者に交付します、あれは何だったんでしょうか。総理をやった人間は議員をやめるべきだ、あれは何だったんでしょうか。

 つい最近でも、野党のときは文書管理、情報公開と叫び続けながら、与党になったら、未曽有の災害に直面しても、誰一人、議事録を残そうとしない。以前の叫びは、一体何だったんでしょうか、言ってみただけだったんでしょうか。

 マニフェストはイギリスで始まりました、ルールがあるんです、書いてあることは命がけで実行する、書いてないことはやらないんです、それがルールですと演説しながら、実際は、書いてあることは実行せず、書いてないことを命がけで実行する。あの夏の日の演説は、一体何だったんでしょうか。

 TPP交渉に臨むに当たっては国益を守り切る、これも言ってみただけなんでしょうか。実際は、不安な発言の連発。

 そして、きわめつけは、金正日総書記が亡くなり、北朝鮮情勢が不透明になっても、我が国の石油輸入の生命線であるホルムズ海峡が一触即発になっても、普天間問題が暗礁に乗り上げ、大事な日米関係が大きく傷ついても、防衛大臣に連続して素人大臣を任命。それだけでなく、よく見てみれば、失礼ながら、総理も、官房長官、外務大臣も、安全保障に関してさしたるバックグラウンドはありません。

 こんなことで、一朝有事の場合に本当に国民の生命財産を守れるのでしょうか。それでいて、この内閣を最善最強内閣、適材適所と言い切る、これも言ってみただけなんでしょうか。聞いているこちらの方が赤面を感じます。

 以上、この二年五カ月の民主党政権というものは、まず第一に、限度を超えた余りの言行不一致、第二に、余りの政権担当能力のなさと総括ができます。

 今、日本は大きな手術をしなければ命を長らえることができない患者と一緒なんです。税と社会保障改革もその手術の一環です。その手術をするお医者の立場にある皆さんがこんなていたらくでは、患者はたまったものではありません。私は、一度もメスを握ったことのない人たちに、これ以上、この愛する日本の命がかかった大手術を委ねるわけには断じていきません。

 皆さん方に、もしみずからを見詰める客観的な目とそして良心というものがあるのなら、直ちにメスを握るのをやめて、一旦国民の皆さんに政権を返上すべきだと思いますが、まだ少し時間が残っておりますので、反論があるならお願いします。

岡田国務大臣 今ずっと齋藤さんの議論を聞いていまして、随分いい議論をされているなと思っていたんですけれども、やはり最後はちょっと、余りにも上から目線で、いかがなものかなという感じがいたしました。

 先ほど、メスを持つ資格がないというふうに言われましたね。しかし、その病気、これだけの財政の状況、経済の状況、これについて、もちろん我々にも責任がある、しかし、その間、長く政権を担当されたのはどこだったのか、誰だったのかということもぜひ考えていただき、お互い謙虚になって、大事なことは、この国を何とかしなきゃいけない、国民の立場に立って前に進めなきゃいけないということですから、先ほどの社会保障・税一体改革の協議の点も含めて、ぜひお考えいただきたいと思います。

 よろしくお願いします。

野田内閣総理大臣 本当に直球が多い御質問でしたが、最後はやはり高目の直球ですね。

 いろいろと民主党の総括をされました。総括は我々もこれからしっかりしてまいります。マニフェストについても、この間、中間総括をしましたけれども、いろいろ我々ができなかったこと、今格闘していることを御指摘いただきました。それについては、これからも引き続き、結論を得るべく努力をしてまいります。

 だけれども、ぜひ、齋藤さんだから申し上げますよ、あなたは本当にいろいろなことがよくわかっておっしゃっている方だから申し上げますが、逆に言うと、こういう国難みたいな時期に、TPPについては齋藤さんは御意見があると思います、消費税についても御意見があると思います、解散を今言ってくるんだったら、TPPをどうするんだ、消費税をどうするんだ、エネルギーをどうするんだ、そういう立ち位置をお互いはっきりしながら議論しなければいけないんじゃないでしょうか。

齋藤(健)委員 岡田副総理がおっしゃったように、これまで自民党政権のもとでいろいろなおかしなことが起こって今日を招来したということはあろうかと思います。私はそこは責任があると思っていますし、それは我が党もこれから直していかなくちゃいけないと思っています。

 それから、総理からもお話がありましたけれども、我々も、私は政調で仕事をさせていただいておりますが、今、次の総選挙に向けて、今おっしゃったようなことについてまとめる作業をしております。ですから、一刻も早く皆さん方が国民の皆さんに政権を返上していただければ、直ちに我々の考えを示したマニフェストで選挙ができると思いますので、ぜひよろしくお願いをいたしたいと思います。

 終わります。

中井委員長 この際、田村憲久君から関連質疑の申し出があります。小池君の持ち時間の範囲内でこれを許します。田村憲久君。

田村(憲)委員 自由民主党の田村憲久でございます。

 野田総理とは四カ月ぶりですか、ここで議論をさせていただくのは。横には岡田副総理がこのたび御就任ということで、ついこの間までここで私の質問をやじられておられましたけれども、きょうはやじれませんので、ちょっと安心をしながら質問をさせていただきたいというふうに思います。

 きょう、こうやって議論できることを大変うれしく思っているんです。なぜかといいますと、よく与野党協議、社会保障と税の一体改革、やってくださいと皆様方はおっしゃられますが、先ほど来小池委員等々がおっしゃいますとおり、まずこれは談合になっちゃいます。なかなかオープンな議論にならない。その点、きょうはちゃんとした委員会の場でありますし、テレビが入っておりますので、これ、何を言った言わないということがはっきりと国民の皆さんにわかっていただけるんです。我々はこれを待っていたわけでありまして、社会保障と税の一体改革、どういうところに問題があるのか、しっかり議論を詰めさせていただいて、お互いによりよいものにしていければいいと思うんですよ、私は。だから、開かれた場所でやれるというのが一点。

 それからもう一つ、我々、密室の協議といいますか、三党協議というのをいろいろやってきましたけれども、信用できないことがいっぱいありまして、例えば子ども手当に関するいろいろな議論。合意書、出ましたよね。これも、合意書にのっとった案じゃないものがいきなりぼおんと出てきて、それも、実務者協議をこれからやろうというときに、最後通告で、これでもう決めましたから、だからもうこれでやってくださいみたいな話で出てきちゃっているんですよ。あの三党合意とは何だったんだろうと。三党合意では、ちゃんと、お互いの意見というものがあって、そこは協議しましょうよという話だったんですね。それで、実務者協議のときには、もう、ぼおんと、これでお願いしますと。これは信用できないな。

 それからもう一つ。実は、先般、前国会でありますけれども、厚生労働委員会、私、野党の責任者をさせていただいておりますけれども、ここで労働者派遣法という法律、これを三党で修正して委員会で通そうという話になったんですね。このときに、夜なべまでしましてね、委員会。本来は五時までという話だったんですが、夜なべまでした。

 なぜか。それは、次の日に本会議があって何としても通さなきゃならないから、衆議院の本会議で、だからお願いしますと民主党の国対からお願いをされまして、自民党の国対でそれを受けたんです。そこで笑っておられますけれども、平野大臣がそのときの国対委員長でございました。

 どうなったか。夜なべまでして、しかも、私がほとんど議員が答える分は答えたんです、質疑に対して。それでいて、突然、次の日の本会議では、これは採決しない、こんな話になっちゃったんですよ。結果的に、この修正部分は廃案で消えちゃいました。またこれをやろうと思えば、一からやらなきゃいけない。

 いや、現場は信頼関係あるんですよ。ところが、国会を取り仕切る国会対策委員会というところが全くもって信頼が置けないようなことをやっちゃいましてね、委員長、結果的にぼろぼろですよ。もう人間関係までおかしくなるぐらいの話になっちゃったんですね。

 まあ、我々は、国民の皆様方のために働きますから、人間関係なんということは言いませんけれども、しかし、そういう政党であるということは、内々の協議なんか信用できないという話になるんですよ。だから我々は、開かれた場できょうこうやって議論ができるのは大変ありがたいなというふうに思っております。

 冒頭、こういうような……(発言する者あり)

中井委員長 午前中も注意いたしましたが、そこの傍聴席で座っている議員さんは、やじらない。注意を守ってください。

田村(憲)委員 ありがとうございます。

 委員長は偉いですから、ちゃんと聞いてくださいよ。

 それで、質問に入りますけれども、例えば、今回、消費税、これに対する世論の状況は今どうかといいますと、消費税増税反対の方が圧倒的に多くなってまいりました。これは、各社の世論調査を見ましても、大体六割ぐらいが反対という話になってきています。ところが、野田内閣が誕生する前まではいい勝負だったんですよ。これが急激に反対が多くなってきている。

 これはなぜかというと、野田内閣になってから一遍に、消費税を上げることが現実味を帯びてまいりました。法案を出す、この国会に、こういう話になってきた。国民の気持ちはどういう気持ちか。これは私の推測でありますけれども、消費税をやはり上げなきゃならない、それは高齢化社会の中で社会保障を考えればいたし方がないという国民の覚悟みたいなものはあるんだと思うんです、半分ぐらいは。しかし、やはり、先ほど来話が出ていますけれども、マニフェストで書いてない。そして、総理が選挙のときに演説で、マニフェストというもの、これは、書いてあるものをやる、書いてないものはやらないんだと、ああいうものがネットで流れる。国民の皆さん、これ、見ていますからね。そうしたら、消費税、これはマニフェストに書いてないどころか、法案を出すことも書いてないんですね。

 上げるということはこの四年間ではやりません、それは五年後です、そうやって総理は詭弁をおっしゃられますけれども、しかし、法案は出すんですよ。ほかのものは、法案を出すものを書いてあるんですよ。ましてや消費税というのは、国民にとってみれば、これは義務権利の大変重要なものであります。そんな大きなものを増税するということを、法案を出すとマニフェストには書いてない。にもかかわらず、今回、急に法案を出します、こういう話になったから、おい、ちょっと待てよ、民主党はそんな話じゃなかったね。

 私、よくよく考えると、国民はあなたを選んでいないんです。鳩山由紀夫さんを二年半前に選んだんですね。あの方を選んだ。あの方は、実は、今も消費税は反対だというふうに伝えられているんですよ。すると、勝手にその後、民主党の中で二人総理大臣をかえちゃって、そして、今の総理大臣は消費税を上げると急に言い出した。まだ鳩山さんが上げると言ったんならば、国民も、信頼した人に裏切られたんだから、これは我々の見る目がなかったかなというふうに諦める方もおられるでしょう。しかし、そうじゃないんだということになれば、これは政治制度自体に問題があるんですよ。

 議院内閣制という問題。自分らが、この人を総理だと思って選んだ選挙。しかし、その後、勝手に総理大臣が党の事情でかわった。その人が全く違う政策を言い出した。だから、私はやはり、この消費税というような特に大きな問題は、前任者の総理と、特に選挙で選ばれた総理と、その後の適当にかわっていた総理と、適当と言うと怒られちゃうかもわかりませんが、意見が変わっちゃ困るんです。

 あなた方民主党は、本来、初めに決めたことを途中で変えちゃ困るわけでありまして、それが国民の皆さんの、消費税、いや、上げなきゃいけないのはわかっている、だけれども、背中を押してもらいたいけれども、この内閣には押してほしくないなという気持ちが今の世論調査の結果だと思うんですが、いかがですか。

野田内閣総理大臣 ちょっと多岐にわたる御指摘がありましたけれども、消費税についての国民の御理解が今得られていないという御指摘、これは数字としては、世論調査、そういう形で出てきています。

 私は、平時において、賛成、反対が拮抗していた、それは委員御指摘のとおり、社会保障をきちっと立て直して維持していく、そのためには消費税を引き上げて安定財源にすることは避けられないという気持ちを覚悟として持っている人が多い、私も背景にそうあると思います。

 現実問題として法案を出す、そして実行に移していくという段階において、やはりリアリティーが出てきている分、では、定数削減とか政治改革をやったのか、あるいは行政改革をきちっとやったのか、そういうものを総合判断しながら、待てよと今なっているんだろうと思います。

 したがって、行政改革や政治改革等もあわせて包括的に改革を進めていくということをしっかり国民の皆様に御説明をし、特にこれは社会保障に充てる安定財源でございますから、どういう社会保障をつくるのかということも含めて、きちっと御説明をしながら御理解を得ていくように頑張っていきたいというふうに思います。

 なお、鳩山さんと私が違うという話が出ましたけれども、鳩山さんは、総理になられた後、消費税についての議論をすることは封印をしていません。議論をした中で、しかも、最近のこういう状況の中で、待ったなしの状況になったから、この任期中には上げませんけれども、法案を出して、その方向性を決めるという政治判断をしたということも含めて、国民の皆様に御説明をしていきたいというふうに思います。

田村(憲)委員 議論をするのと法律を出すのは違います。全く違います。全く認識がおかしい。法律を出して、特に与党でありますから、政府・与党が法律を出すということは、それが通るということが前提であります。もちろん、今は参議院と衆議院のねじれがありますから、そう簡単には通りませんが。政府・与党が法律を出すというのは、それは成立することが前提でありますので、そういう意味では、あなた方は、議論を一歩踏み出して、いよいよ消費税を上げる段に入ったということでありますから、鳩山さんが言っていることとは全く違うということを指摘いたしたいというふうに思います。

 それで、今、無駄を省くだとか、そういうことを国民が見ておられるというようなお話がございました。一点は、国家公務員の総人件費二割削減というものを皆様は訴えられてきた。それもできておりません。

 その中で、今回、人勧、そしてそこからの深掘りということで、〇・二三、人勧をした上で、さらに七・八%の深掘りをしてもいいよというような判断を皆様方がしつつあるというお話を新聞等々で私は聞いておりますが、これで終わるわけでは当然ございませんよね。これですと八%ぐらいになります。しかも、これは二年間というような話を皆様方は言われておられますから、これは震災復興への財源ということでございますので、本来消費税とは関係のない話ですね。

 となれば、ここからさらにその後も、二割に向かって、これはいつまでにどういう計画でお進めになられるおつもりですか。

岡田国務大臣 まず、現在、先ほど言及された国家公務員の賃金の引き下げの議論につきましては、これはもう田村委員よく御存じのとおり、各党間で話をしているところでございます。その合意が早急にできることを期待しているということでございます。

 御指摘のように、しかしそれだけでは二割には到達しないということは事実で、総人件費をいかに抑制していくかということは非常に重要なことでございます。先般、行政改革実行本部をつくりまして、その中の主要議題の一つに総人件費の抑制ということを掲げております。そのためには定数を減らしていかなければいけないということになります。そういったことについて、しっかりとした議論を行っていきたいというふうに考えております。

 それから、二年間の限定つきの賃金の引き下げではないかということですが、その後のことは、またどうするかということはその時点での議論で、別に現在の七・八%引き下げたものがすぐ戻るか戻らないか、それはその時点での判断ということになるかと思います。

田村(憲)委員 何か戻るみたいな話が今出てきましたね。戻るか戻らないかはわからないというお話だということは、戻る可能性もあると。

 すると、二〇一四年の三月に戻って、四月から消費税が上がるなんという話になるんですよ。これ、そういうことでいいんですか。戻る可能性があるということでいいんですか。ないならないと言われた方がいいですよ。

岡田国務大臣 これは、二年間引き下げるということを与野党で話し合いをしていただいているわけでありますから、それ以上のことを私が言うことは避けたいというふうに考えております。

田村(憲)委員 これは、消費税を上げるという中において、やはり無駄を削減しなきゃいけない。これは総理もおっしゃっておられる話じゃないですか。その中に、この国家公務員の話も入ってきているわけでありますから、今、いや、内閣の思いとして、そのときに決めるけれども、決定はするけれども、思いとしてここで終わる話ではありません、当然それは継続、いや、さらに深掘りしていく話ですということをはっきり言われた方がいいんじゃないですか。言えないと、ああ、これはやはりいろいろな労働組合との絡みで言えないのかなというふうに思われちゃいますよ。

岡田国務大臣 我々としては、七・八%の引き下げについて、一旦は国会に法案も出して、早くこれを御審議いただきたいということを申し上げているわけです。それについて今与野党で話し合いをしていただいているわけで、ぜひ、ここのところをまず結論を出していただきたいというふうに思います。

 それより先の話は、それは与野党で議論するなら、議論することはそれはあるかもしれませんけれども、やはり、今政党間で議論していることについて、政府が何かその先のことも含めていろいろ言うということは避けるべきだと思います。

田村(憲)委員 消費税を上げようというのは、あなた方政府なんですよ。その政府が、国民の皆さんに理解を求めるために、今総理がおっしゃったとおり、こういうようないろいろな無駄というか、本来削減できるものを削減しましょう、これをやらないと国民の皆さんは納得しませんねという流れの中での今議論をしているのに、今の岡田副総理のお話ですと、何か党同士でやってくださいみたいな、そういう無責任な話というのは、政府の思いとして、じゃ、これからもう、一回やって二年たったらあとはやらないのかなというふうに思われちゃいますから、あなた方にとって損ですよということを私は言っているんです。まあいいです。

 消費税は、実は今回、一・五六%地方に渡すというような、そういうお話でございますよね。我々が説明を受けているのはそういう御説明です。

 地方に一・五六行くということは、当然、地方も同じようにいろいろな無駄を省いていただかなきゃいけない。削減できるものはしなきゃいけない。国家公務員の総人件費を減らすのであるならば、地方公務員の総人件費も、消費税との絡みでこれは削減する。そんなおつもりがあるんですか。

岡田国務大臣 まず、先ほどの委員の御発言で、政党間で協議していることが、私は非常に重要なことだと思うんですね。それを何か軽んじるような、そういうような言い方は、やはりお互い政党人として避けるべきだというふうに申し上げておきたいと思います。

 それから、地方のことについてお話がございました。

 基本的に、一つは、地方のことは地方が決めるという地方自治の考え方がございます。そこのところは十分に踏まえながら議論していかなければいけない点であるというふうに思っております。

田村(憲)委員 何かそれぞれ与野党の協議が言いわけに使われているみたいで、私はどうも納得できませんし、そういうおっしゃり方は、何か私はけんかを売られているみたいで、非常に不愉快な気持ちがいたします。余り、副総理のようなお立場の高い方が、一議員に対して、そういう言われ方はされない方がいいと思います。

 それと、この地方公務員の人件費も、実は地方の基準になる財政の需要額の中にカウントされている話でありますので、これは国家財政とも大きく絡んでくる問題なんですね。ですから私はこういう話をさせていただいておるので、当然、消費税で地方に行く分もあるのであるならば、国と同じように総人件費二割とは言いませんよ。地方は地方で適正化をするためのいろいろな努力をしてきております。でも、地方にも努力をいただくというのは当然あっていいべきであって、そういうものを政府は地方に対してお進めになっていくということが必要だと思いますので、そこは御勘案をいただきたいと思います。もう答弁はよろしいです。

 次に入らせていただきます。

 もう一点、消費税を上げるための議論、これは重要なところは、やはり経済、景気の問題。デフレを脱却しない限りは消費税は上げられないと私は思っています。

 なぜかといいますと、ここにあるコップが今百円で売られている。しかし、このコップが、消費税が一〇%に上がってもやはり百円でしか売れないというのが基本的にデフレというものの怖さであります。最終的に売るところは、強いところならば、そこが泣くわけじゃありません。納入業者が泣くという話になると思います。そうなれば、納入業者は、今、利益率が五%あるところは少ないですから、ばたばたばたばた倒れていく。結果的には不況が進むわけでありまして、こういうときにはなかなか消費税が上げられない。そこで、やはり景気というものを好転させるということが重要であるわけでありまして、それは野田さんも景気の好転というのを言われておられます。

 さあ、具体的に名目経済成長率でどれぐらいというふうに今お考えですか。

古川国務大臣 経済状況の好転を条件にしてというお話になっておりますけれども、やはり経済状況については、これは総合的にさまざまな要因を勘案して最終的に決めなければいけないと思っております。

 しかしながら、とにかく足元のところのデフレからの一日も早い脱却は、やはりこれは政府、そして日銀とも連携をして、しっかりやってまいりたいというふうに思っております。

田村(憲)委員 そこが全く見えてこないから、我々は心配なんです。

 実は、よく言われるんですが、この二十年間ぐらい、国民所得はふえておりません。大体三百五十兆円ぐらいでとまっちゃっている。国内総生産、GDPも、大体、名目四百七十兆円強ぐらいでとまっている。とまっているというか、それは浮き沈みはありますけれども、二十年前とほぼ同じ数字です。

 ということは、経済成長をしていない。していないから税収はどうなっているかというと、税収はふえていない、いや、減っているというのが現状。減っていますから、それは財政再建はできません。名目成長をしない限りは税収はふえませんから、幾ら消費税を上げたって、今も言いました、デフレのときに消費税を上げればデフレを加速させるだけですから、結果的には税収は伸びない。ここに大胆なメスを入れなきゃいけない。

 これは、我々自民党も悪かったんです。そのうちの十数年間は我々自民党が政権を持っていましたから、我々も反省しなきゃいけない。しかし、それをもとに、この間の党大会でも、我々は、とにかくデフレ脱却をして経済を成長させる、そんな戦略をつくるんだ、こうやって宣言をいたしました。

 でも、今、民主党は、消費税を上げる、上げると。それを言う前に、この円高を何とかするために全てのエネルギーを傾ける、デフレを何とかするために全てのエネルギーを傾ける、これが必要にもかかわらず、そこまで強く日銀に総理や財務大臣が物を申しておられるようには私は思わない。もっと日銀に対して物を言っていただいて、政府と日銀が一体となって、それこそ物価をもう少し上げながら名目で経済成長をさせる、そういう戦略を組まれたらどうですか。

古川国務大臣 委員おっしゃるように、日本経済は、この二十年にわたってほとんど名目では成長していないという状況にあるわけであります。ですから、ここを何とかしていかなければいけない。

 ですから、私どもも、一昨年、新成長戦略というものをつくって、先ほどの齋藤委員の御質問のときにもお話をしましたけれども、とにかく国内の要因は人口が減少して高齢化が進んでいる状況ですから、やはりこれはアジアの成長を取り込むような、そういう高いレベルの経済連携とかそういうこともやっていかなきゃいけない。

 そしてまた、国内のそういう状況の中で、この制約を逆に新たな成長のフロンティアにしていく、そうした視点から、我々は、ライフイノベーションとかグリーンイノベーション、まさにイノベーションを実現して、従来の延長線上の中で成長しようと思っても国内のマイナス要因が非常に大きいわけですから、やはりそれはさまざまなイノベーションを実現する、そのための環境づくりをしていかなきゃいけない。

 ですから、今回、総合特区のことも認定いたしました。こういう、地域を限って規制を緩和したり、あるいは税制上の優遇を与えたりしてイノベーションが起きやすいような環境をつくっていく、そういうようなこともスタートしています。

 そしてまた、昨年の末に、あの震災、原発事故を踏まえて、新成長戦略を再強化、加速するための日本再生のための基本戦略というものをつくりました。

 ここのもとでは、被災地の復興の過程、ここで新しい日本の経済モデルをつくっていくんだということで、これは齋藤議員からも、去年の秋、覚えていますけれども、復興特区は法人税を免税にしろという話がありました。五年間、法人税無税のものをつくりました。

 そうした政策も打ち、日銀との間も今まで以上に密に連絡をとりながら、日銀にもやってもらうことはやってもらいます、政府もきちんとやっていきますから、当然これからも、我々もやる、ですから、日銀についても、金融政策、やれることはあらゆることをやってもらいたいというふうに思っております。

田村(憲)委員 幾ら経済産業政策をやっても、金融財政政策をうまくやらないとデフレはとまりませんから。

 幾ら絵を描いたって、真っ黒なキャンバスに絵を描いても見えないんです。一回白にしなきゃいけない。そのためには、金融政策が非常に重要なんですよ。そこの視点が抜けている。もっと日銀に、量的緩和も含めて、とにかく今のデフレ、今成長マネーが足らないわけですから、それをふやすことを真剣に考えていかないとだめですよ。そこが抜けているということを指摘いたしたいと思います。

 それで、私、一番怖いのは、やはりまだ無駄の削減が十分じゃないんですよ。先ほどの国家公務員、地方公務員の総人件費の問題だけじゃありません。それはそれとして大きなお金ではありますけれども。

 一方で、例えば公益法人や独立行政法人、これは岡田さんがこれから手をつけられる、本部をつくって手をつけられるというようなことが新聞に出ておりましたけれども、これだって、もともと六・一兆円をここから出すというのがあなた方のマニフェストだったわけなんですね。そうでしょう。マニフェストにはそう書いてあった。これはできるんですか。

 岡田さん、六・一兆円、公益法人改革、ここに天下りがいっぱい行っている、この天下りを廃して無駄を省けば、公益法人や独立行政法人、こういうところから、補助金、いろいろなものが入っているけれども、そういうものを全て切れば六・一兆円出てくるとマニフェストに書いてありましたが、これは実現できるんですか、その会議で。

岡田国務大臣 マニフェストというと、二〇〇九年のマニフェストを言っておられると思いますが、その中で言っていることは、補助金ですね。これに対して、一定の割合でこれを削減するということで、公益法人とか独立行政法人についても言っておりますが、数字としては全体としてお示しをしている、そういうふうに記憶をしております。

 いずれにしても、今回、独法、特会の改革については閣議決定をいたしました。これから法案の形で出してまいります。その間でよく御議論いただきたいと思いますが、私は、かなりの削減が期待できると。

 しかし、他方で、独立行政法人について、例えばこの大災害の中で、国では直接できない、民間にもお任せできない、やはり独立行政法人に重要な役割を果たしてもらわなきゃいけない、そういう部分もあるわけでございまして、その辺の見きわめ、無駄なものと必要なものの見きわめというものはしっかりとやっていかなきゃいけませんので、ぜひ御協力いただきたいというふうに思っています。

田村(憲)委員 やはり六・一兆円というお約束は、どうもここでは出せるという自信はないようでございまして、かかるものはかかる、削減する部分は削減する、そういうようなお答えでしかなかった。マニフェストをつくったときのような鼻息の荒い状況ではないということはよく確認させていただきました。

 私、怖いんです。たしか、前任の菅総理がこういうことを私の質問に対してよく言われました。消費税を上げるときはどういうときですかと聞きましたら、逆立ちしても鼻血が出ないぐらいになったときと。逆立ちすると多分鼻血は出ないんだと思うんですけれどもね、頭の方へ回っちゃいますから。だけれども、このままにしますと、私、消費税を上げるということのために、逆立ちしたら鼻血じゃなくてシロアリがいっぱい出てきたみたいな状況になっちゃったら怖いと思いますよ、総理。

 無駄がまだいっぱいあるというあなた方の前提で、今までいろいろなことをやるという話だったんです。ところが、今までいろいろなことがやれると言っていたのが、お金が出ない、出ないから消費税を上げざるを得ない。この口実になっちゃっているんですね。

 だから、やると言ったからには、無駄は徹底的に省いてもらう、約束したことだけはちゃんとやっていただく、この必要があると思いますので、ぜひともシロアリが出ないように頑張っていただきたいというふうに思います。

 さて、社会保障の方の議論をさせていただきたいと思いますが、きのう、総理と副総理とそれから小宮山大臣にこれをお渡しさせていただきました。これは、午前中も議論しておりましたけれども、民主党が試算をしたと言われている民主党の年金案の試算の資料、イメージ版であります、暫定版。

 これはきのう通告をさせていただきまして、党と相談して、本当に党でやった本物であるかどうか、これを確かめさせてくださいと言っておるんですけれども、総理、これは本物でしたか。

小宮山国務大臣 厚生労働省では、昨年の前半に、党の方の社会保障と税抜本改革調査会の幹部から、その幹部の皆さんが、一定の前提、そして仮定を置いた上で、新年金制度の財政面の推移について試算をしてほしいという依頼がありましたので、いたしまして、その幹部に渡しました。

 きのうお送りいただきましたこの資料につきましては、出所が明らかになっていないので、厚生労働省が作成した資料そのものであるかどうかは確認できませんが、内容としては同じものでございます。

田村(憲)委員 そのものかどうかはわからないけれども、内容はそうだということですね。今、首を縦に振っていただきました。まさにこれは、内容は皆さんが試算をしたものだということでございます。(発言する者あり)いや、民主党が、党が命令をされて……(発言する者あり)では、誰ですか。誰が試算させたんですか。どうぞ。

小宮山国務大臣 民主党の調査会が検討する一つの材料として試算をしてほしいというので、これは、実務として厚労省が試算をしてお渡ししたものです。

田村(憲)委員 民主党の調査会というのは民主党じゃないんですか。私、初めて聞いた。自民党は、大体、調査会というのは自民党なんですよね。民主党の調査会というのは、民主党じゃなかったら何党ですか。国民新党ということですか。

岡田国務大臣 これは午前中も申し上げたんですが、民主党の調査会の中でそういったことを厚労省に依頼したというふうに私も聞いているんですが、当時は全く、そういうことは私、承知しておりません。幹事長をやっておりましたけれども、聞いておりませんし、それから、何か党としてこの結果について決定をしたとか、そういうことはございません。

 ですから、自民党の場合にもおありになると思いますが、党の中の機関の、御担当のところが依頼して、議論のためのデータとして計算をしてみたということで、党としてこれを認めたとか決定したとか、そういうことはございません。

田村(憲)委員 いや、だから、私はそんな、党として決定したなんて言ってないじゃないですか。皆さん、民主党が試算させた資料でしょうと私は言ったんですよ。だから、そうでしょう、民主党の調査会が試算をさせた資料がこれなんでしょう。

 だから、私の言ったとおりでよろしいんですよね。皆さんが試算をさせた資料ということでいいんですね。

岡田国務大臣 ですから、皆さんがというのはどういう意味かということです。

 それは、調査会がそういったことをしたということは聞いておりますが、民主党として正式に何か依頼をしたり、あるいは民主党として決めたというものではございません。

田村(憲)委員 もうこんなことで議論したくないんですが、民主党の調査会が試算させたということは、民主党の責任においてやっているんじゃないんですか。それは個々の議員の話なんですか、そうしたら。わざわざ民主党と入っているんですよ、これ。

 まあ、こんなくだらないことで議論をしていても仕方がないので、隠蔽をしたいんだというふうに思いますけれども、パネルをどうぞ。

 この中で、実は、最近新聞等々で言われているのがこの資料でございまして、この支給範囲4というところ、そして二〇七五年ですから大分先の話なんですけれども、ここが大体どれぐらい最低保障年金の財源がかかるか。規模を見ると六十一・三兆円、一一・二%消費税が必要だということでございまして、今が大体四・一%ですから、今よりも七・一%ぐらい消費税が必要だな、こういう話になっているんですよね。

 私、表に出された方がいいと思うんですよ、この試算。なぜかというと、表に出してちゃんと説明しないから、いろいろな問題が出てくるんでしょう。出されて説明をされるべきだと思います。国民の皆さんは今、大変不安になっていますよ。来年からでも消費税が上がる、そして、その消費税はいきなり七・一%になっちゃう、こんな心配をされているんです。だから、まず出された方が、そして説明をされた方がいいと私は思いますけれども、総理、いかがですか。

岡田国務大臣 先ほど言いましたように、これは党の調査会の幹部が依頼して出てきたものでありまして、党としても、この扱いをどうするかというのは議論されていないというふうに承知しています。やはり、我々がとか政府がということの話ではございませんので、出されてと言われても、政府としてそれに対してお答えする立場にはない。

 それから、私もこれは二週間ほど前に初めて目にしたものでございますが、先ほどの六十一・三兆円というのは、それは今から比べればおっしゃるようなことかもしれませんが、今の制度でも、この試算によれば、これが正しいかどうかは別にして、三十五・七兆円ということで、六・五%ということで、今の制度でも今のままの消費税では足りない、そういったことも示しているということは申し上げておきたいと思います。

田村(憲)委員 それでも四・七%は余計にかかるんですからね。そういうことでしょう。だから、それも含めてこの資料は書いてありますので、そういう意味では、国民の皆さんはわかっていただいたと思います。

 一方で、これもよく今マスメディアに出ている表でありますけれども、これを見ていただきますと、それだけ税金が必要になる。最低保障年金、余計に税金が必要になる。にもかかわらず、四百万超、新聞等々では四百二十万と書いてありますけれども、四百万超のところから上の赤いところがありますよね、ここは今の年金の水準よりも目減りになる。正確に言えば、それまでのところ、四百万超よりも下の所得層、ここは、黄色いところなんですが、今の年金制度よりももらい得だ、こういう話。

 ただ、先ほども言いましたとおり、今よりも消費税を四・数%余分につけたところ、入れてあるにもかかわらず、これだけ損得関係が明白に出てくる。しかも、四百万超から損をし出すわけでありますから、そういう意味からしますと、損というか、今よりも金額が少なくなるわけでありますから、そうなりますと、これは大変だねという話になるんですよ。これだけ消費税がまだ上乗せなのに、目減りするじゃないか、うちなんかはと。これが今、国民の皆さんが心配をされておられる、そういう話なんですね。

 四百万超以上でもらっている方々は結構おられると思います。そう考えると、この推計自体はやはり問題があるんじゃないか。今、きょうの新聞等々を見ますと、これまた新聞報道ですから本当かどうかわかりませんけれども、民主党の党の方で、新しい人口推計でこれを試算し直して、それを公表したらどうだなんというようなことが書かれておりましたけれども、そもそも皆さんの制度設計がわからないからこういう話になってくるんです。そして、出てきた試算がこういう話になってきますから、みんな不安なんですよ。

 さあ、もう来年には法案を出していただくんですよね。そろそろ制度設計ができ上がってきているんだと思うんですけれども、最低保障年金七万円、この七万円は、満額はいつからもらえるんですかね。誰に聞いたらいいんですか。

岡田国務大臣 一つ、ちょっと混乱を招きますので念のため申し上げておきますが、先ほど表で、支給範囲4というので御説明になりましたよね。ところが、今説明をしたグラフでは、これは4じゃなくて1なんです。だから、ちょっとこれは、どこから資料をとられたのかわかりませんが、4を言うべきなんですね。どこでそういうふうになったのかよくわかりませんが、申し上げておきたいと思います。

 それで、いろいろ御議論はあると思いますが、この計算の前提は、我々は子細を承知しておりませんので、このこと自身については申し上げませんが、ただ、我々は最低保障年金ということを申し上げているわけですね。最低保障年金ということは、それは一定の範囲まではかなりの年金がもらえる。七万円なのか、あるいはそれが下がるのかというのはケースによって違うんだと思いますが、しかし、現在の、無年金者や非常に少ない年金の額の方がたくさんいらっしゃる、そういう事態はなくなる、そういうメリットもありますので、単純に、どこから損する、得する、そういう議論だけで議論すべきことではないというふうに思います。もう少しトータルで議論していかなければいけないことだというふうに考えております。

田村(憲)委員 済みません、間違えておりました。確かに、おっしゃられるとおり、これは先ほどの4のところでございます。

 それから、これは正確に言うと二〇六五年度の表でございますので、今すぐにという話ではございませんから、それも御説明をさせていただき、さらに、二〇〇〇年生まれの方がもらえるという前提、だから、裁定をしたときの数字だというふうに、これは御説明を追加させていただきます。

 ただ、岡田副総理、私、そんなことを聞いていません。聞いたのは、最低保障年金を満額もらえるのは何年後からですか。もっと説明します。仮に、ずっと四十年間、収入がなくて保険料を払わなかった方、こういう方でももらえるはずですよね、最低保障年金は。こういう方が満額もらえる、七万円、それはいつですか、何年後ですか。

小宮山国務大臣 これは、制度設計によりますけれども、今考えられているものは四十年で移行すると考えていますので、そうなりますと、入ってから四十年。ですから、これは今、党で考えられていると聞いているのは、二十から六十五歳の間のうちの四十年入った人たちが受け取るので、満額受け取るというのは六十五歳になった後ですから、大分先の話になる、だから今の計算とは直接影響していないという御説明をさせていただいています。

田村(憲)委員 だから国民の皆さんが怒るんですよ。

 皆さん、前回の選挙のときには、もう、一年後でも二年後でも、今私がもらっている年金が七万円になるんだと思われている方がたくさんおられたんです。それは国民の皆さんに聞いてみてください。私、地元に帰って聞くと、私は自民党の田村さんへ入れたけれども、民主党政権になったんだから七万円になるのよね、私の国民年金はなんて言われている方が結構おられました。

 だから、四十年後にならないと最低保障年金は満額もらえないということが、ここではっきりとわかったということだけは確認をさせていただきたいと思います。

 ところが、七万円じゃないんですよ、実は。これを見てください。この表の赤いところ、年金月額何万円、十五、十。下に括弧で七万と書いてありますが、右に五万八千円と書いてある。実は、これは四十数年たつと五万八千円に目減りするんです。最低七万円と言っていましたが、これは賃金の上昇率だとかをちゃんと普通は掛けていくんですけれども、そこから年金の伸びる率をちょっとずつ減らしていくんですよ。

 ですから、結果的には賃金の上昇率分だけは上がらないんです。結果、賃金の水準に戻すと五万八千円なんですよ。ということは、七万円と言いながら、今の賃金水準からいったら七万円ではなくて、実は五万八千円しかもらえない最低保障年金だという話になるんですが、私の言ったことはそれで合っていますか。

小宮山国務大臣 それは、調査会の幹部の方から御依頼をいただいたときに、みなし運用利回りでこれを考えてということでしたので、今のマクロ経済スライドと似たような考え方でございますから、そうやっていくと、こういう形になるということです。

田村(憲)委員 あえて申し上げれば、民主党の調査会がいろいろと推計した、今回出てきたこの資料というのは、実は七万円の最低保障年金ではなかった。満額もらえるのは四十年後ですからね。その満額もらえるときには七万円の賃金価値はなかったということがこれで判明をいたしました。何かありますか、どうぞ。

古川国務大臣 私がその場にいました、幹部として。

 午前中も申し上げましたが、これは、あくまで我々の幹部の中で具体的な制度設計をしていく中で考えていく、それは、もう田村議員も御存じのように、既に昨年の成案の中にかなり具体例も書きました。民主党の新しい年金制度の大枠は、大体あれを見てくれたらわかります。あとは数字を決めていくという段階になっています。

 その中で、いろいろな仮定で出してみろという形で出てきたものの一つがそれであって、そもそも、その場でも、すぐ数人見て全部回収という形になっていますから、私ももう、覚えていまして、持っていませんが、あくまで、そこはいろいろな仮定の中で考えた話でございますから、私どもとしては、最低保障年金は、これは七万円ということは今でも変わっていないし、これからもそういう考え方でいくつもりであります。

 あくまで、それは、先ほど小宮山大臣も申し上げたように、一定の前提を置いて計算をして出してくるとそういう数字が出てきたというだけのものであって、それ以上のものでもそれ以下のものでもない。

 だから、先ほどから申し上げているように、それは調査会としての試算でもありませんし、あくまで幹部の一部の者の中での頭の整理のためにそういう資料をつくったということであります。

田村(憲)委員 古川大臣、私、正直言って、二、三年前に民主党がこの新しい民主党の最低保障年金案というものをつくったというんなら、やると言ったんなら、こんなことを言わないんですよ。あなた方は平成十六年に法案を出したんですよ。何年たっているんですか。全くもって試算も何もしない。やっと出てきた試算がこれだ。これじゃおかしいじゃないかと言ったら、いや、それは勝手にやったものだと。

 では、何でこの後、試算し直したものをいまだに出さないんですか。何年たっているんですか。無責任この上ないと思いますよ。何か答弁できることがあったら言ってくださいよ。

古川国務大臣 これは、田村議員は覚えていただいていないかもしれませんが、まさに年金国会のときに、私ども、年金改革法案を出しました。そこでどういうふうに書いてあるか。大きな枠組みのところは提案はしますが、しかし、具体的な制度設計は、国会の中に年金改革協議会をつくって、そこで決めていきましょうということを提案しているんですね。それ以来ずっと私どもは、新しい年金制度をつくるという合意ができれば、そこのテーブルの中で具体的な制度設計についてやっていきましょうということをずっと言ってきたんです。

 なぜかといえば、民主党の年金改革案というのは、これはスウェーデンで行った年金改革、これは、政権交代が途中であっても与野党が一緒のテーブルに着いて新しい年金制度をつくった、まさにそれに基づいて、それと同じような形の、日本において年金改革を行いたいという、これは御党のかつての津島雄二先生とか我が党にいた今井澄先生とか、そういう方々の思いも受けてやっているんですね。

 ですから、本当に私は、年金改革の議論が損得の議論になっているということは非常に残念だと思っています。大事なことは、年金制度が今の制度よりも公平なものになるかどうか。いいですか。今の制度をそのまま続けていったって、保険料を上げるか給付を下げるか税金を上げるか、そうしなきゃもたないんですから。そうじゃなくて、制度の形が今よりも公平かどうか、そういう視点でぜひ議論をしていただきたいと思います。

田村(憲)委員 あなた方が野党のときならそれでいいですよ。与党になって案も出さずに何を言っているんだ。普通は、こういう案があるから議論しましょうということでしょう。

 我々は当時、今の現行案を持っていた。そして、どこが悪いんだという議論をしようという話で、若干はやりましたよ、両院協議会も。ところが、あなた方は政権を握って、案も出さずにどうやって議論をやるんですか、できないじゃないか。だから、具体的なものを見せろ、見た上でやろうじゃないですかと言っているのに、出してこなきゃできないじゃないですか。

古川国務大臣 ですから、私どもは、野党時代、そうやって議論しましょうと。それは、御党が、新しい制度はだめだ、現行制度を前提にしか議論はならないということだったからです。だから、私どもは、新政権になって新しい年金制度の七原則というのも出しました。そこで、ぜひ野党の皆さんにも、新しい制度で、では、どういう考え方があるか議論しましょうということも言ってきました。しかし、それもなかなか皆さん方の納得をいただけない。だから、私どもとしては、それならばということで、今、党内でも来年に新しい年金制度の法案を出すべく準備をしている、そういう段階に、ちゃんとやっているわけであります。

田村(憲)委員 ですから、社会保障と税の一体改革といって、今の制度のままでいくのなら、例えば今回、物価スライド、今までたまった分二・五%、これを三年間かけて引き下げよう、そういう法案が出てくるとお聞きしていますけれども、皆さんでいけば、七万円まで本来最低保障年金は上がるんですから、そう考えれば、これは引き下げる必要ないんじゃないの、逆に七万円まで上げていかなきゃいけないんじゃないのという話に国民の皆さんは思っちゃうわけですよ。我々の制度でいくのならば、当然二・五%、これは引き下げなきゃいけない、今までの制度を維持するためですから。あなた方、変えると言っているのならば、この二・五%の引き下げさえ国民はおかしいじゃないかという話になる。

 だから、ちゃんと議論できるようなものをお出しにならない、それで、今この国会で、社会保障と税の一体改革なんて、本当に持続可能な社会保障制度を提示できるんですか。私はそうは思いませんよ。

 だって、後期高齢者医療制度をやめられるというふうに言われました。そして、新しい高齢者医療制度をつくるというふうに言われております。素案の中でもそういうようなことが書かれております。しかし、では、幾らそこで公費はふえるんですか。それをお答えいただきたい。

 そして、介護保険、これも持続可能ではありません。今回の改定で、保険料は、一号被保険者は五千円近くまで上がります。場所によっては、もう五千円を超えているところがある。私の地元でも、もう五千七、八百円まで上がるというふうな話を聞いております。次の三年後の改定ではもっと上がりますよ。これは持続可能じゃありませんよ。大体、五千円が限度であろうというような話だったんですよ。ならば、今の介護保険制度の制度設計をつくり直さなきゃいけない。

 例えば、公費負担五割というものをふやす。我々自民党は、こういうことも今考えております。場合によっては、嫌なことかもわかりませんけれども、被保険者、四十歳以上に今なっていますが、それを引き下げるといいますか、これが必要かもわからない。

 こういうものを出されて、公費がこれぐらいかかるから、だから消費税を一〇%、その次には何%だと今言われるのならば、我々もそれはそれで傾聴に値するかなと思いますけれども、全くそんなものはなしで、今までの延長線上でやって、それで、消費税、とりあえず腰だめで一〇%にさせてくださいなんと言ったら、国民は納得するわけないじゃないですか。

 さあ、今言ったような高齢者医療制度、介護保険制度の見直しで幾ら税が必要なのか、お答えくださいよ。

小宮山国務大臣 社会保障と税一体改革の素案では、高齢者医療制度改革会議の取りまとめなどを踏まえまして、高齢者医療制度の見直しを行うということにしています。具体的内容については、関係者の理解を得た上で、平成二十四年通常国会に後期高齢者医療廃止に向けた見直しのための法案を提出するとしています。

 この会議の取りまとめでは、公費の所要額は、平成二十五年度で七百億円、平成二十七年度で五百億円とされています。一千億円単位の大きな財源を要するものではないということです。

 費用や財源も含めまして、関係者の理解を得て法案が出せるように、今医療についてはやっております。

 介護につきましては、二〇二五年の介護保険料の具体的な平均額、これは試算を行っておりませんけれども、保険料財源の規模は、あらあらの試算では、二〇一一年度に対GDP比〇・七%であるのが、二〇二五年に一・二から一・四%程度となると見込んでおります。

田村(憲)委員 というようなことは試算には見込んでいない。だから、社会保障制度と税の一体改革といいながら、全くもって稚拙なものをこうやって素案として出されて、これでどうやってやるんですかというのが我々の気持ちであるということです。ぜひとも、ちゃんとしたものをつくってくださいよ。じゃなかったら、議論できませんから。こんないいかげんな素案では議論ができないということを最後に申し上げまして、私の質問は終了させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

中井委員長 これにて小池君、齋藤君、田村君の質疑は終了いたしました。

 次に、石井啓一君。

石井(啓)委員 公明党の石井啓一でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、大震災の復旧復興についてお伺いしたいと思いますが、昨年の東日本大震災と福島の原発事故で被災され、避難されている皆様に、改めて心からお見舞いを申し上げたいと存じます。

 昨年秋の臨時国会におきましては、本格的な復旧復興のための十二兆円に上る第三次補正予算と財源の確保法、また、復興の手法である復興特区法、復興の主体である復興庁設置法を成立させました。本年は、これら成立した予算、法律を速やかに執行し、復興の実を上げていくことが求められていると思います。政府の真剣な、また迅速な取り組みを求めますとともに、公明党としても、今後とも大震災の復旧復興に当たっては全力で取り組んでまいりますことを申し上げたいと存じます。

 さらに、政府としては、復旧復興の段階に応じて変化していく現地のさまざまな状況、要望について、自治体任せにしないで、みずから把握し、迅速に手を打ち、被災者に寄り添いながら復旧復興を進めていただきたいと思っています。

 そういった意味で何点か質問させていただきますが、まず、被災地での企業の再生、雇用の再生についてでございますが、これは大変深刻な問題になっております。被災した方々はなるべく安定的な仕事につきたい、こういうふうに希望されておりますが、求職は一時的な仕事が多く、いわゆるミスマッチを生じております。

 特に、被災地の主要産業である漁業、水産業の復活が望まれるわけでありますけれども、水産業については、地盤沈下によりまして工場の復旧復興が進まないという現実がございます。復興計画の早期策定とそれに基づく地盤かさ上げ等のインフラの整備、これが地元企業の復旧復興のためにも急がれると思いますので、この点について、どういう取り組みか、お伺いしたいと思います。

 また、雇用保険の受給が切れる方が出始めております。地元の企業が再建するまでの間、つなぎの雇用の創出、また職業訓練や生活支援を柔軟に行う、こういったことが求められると思いますので、あわせて対応をお伺いしたいと思います。

平野(達)国務大臣 今回の東日本大震災の大きな特徴は、津波、地震、そしてプラス地盤沈下が起こったことでございまして、この地盤沈下が、委員御指摘のように、復旧をちょっと難しいものにしております。

 地盤沈下地帯におけるかさ上げの措置、こういった制度も用意しておりますが、今、現地では、例えば水産施設の流通加工施設がある中に住宅があるといった地域がございまして、住宅は他のところに移転させる、残った地域で集約をさせる、こういった集約の合意形成に若干時間を要しています。こういったものが順次固まれば、こういったかさ上げもしっかりできますし、漁港の整備については計画どおりやって進めているということでございます。

鹿野国務大臣 重複しますけれども、今先生から言われた件は大変重要だと思っています。

 というのは、昨年の十二月に塩竈に参りましたときに、宮城県の漁業関係、水産関係の人たちが何を一番求めるか、かさ上げだ、かさ上げだ、もう強く求めておられました。

 そういう意味で、今、この漁港区域の水産加工関係の人と一体的な取り組みが必要だという中で、どうしてもかさ上げが必要でありますので、そういう中で復興計画というものを打ち立てる中におきまして、水産庁から直接人を派遣して、またこれからも派遣をしながら、早急に、この復旧復興に向けて、でき上がるように、これからも私どもは取り組んでいきたいと思っております。

小宮山国務大臣 今委員がおっしゃいました、雇用保険が切れた後の、つなぎ雇用から本当に働き続けられる雇用へつないでいくということが大変重要なことだというふうに思っております。

 失業給付の給付日数は、百二十日延長した後、非常に被害が大きかった沿岸部にさらに九十日延長いたしましたが、御承知のように、先月からそれが切れ始めておりまして、十日ほど前に私も釜石に行ってまいりました。

 そこでもいろいろな声を伺いましたが、大きくは、「日本はひとつ」しごとプロジェクトの中で産業と一体になってやる、あるいは、女性や障害をお持ちの方、御高齢な方のモデル事業などという形で基金を積んでやるんですけれども、確かに、おっしゃるようにミスマッチがございまして、中にはやはり、募集をかけても失業保険がある間は来ない、そういうことをおっしゃる工場の方もいらっしゃいました。

 でも、とにかく、仕事もない、失業手当も切れたということにならないように、今、ハローワークでは担当者制をとっておりまして、十人ぐらいを担当してきめ細かにやっている。そして、新たな雇用はなるべくそのハローワークに入れていただいて、どんなものでも複数の方に当たって、とにかく結びつけるようにしているところでございます。

 また、求職者支援法とかそれから職業訓練、これも積極的に活用をして、全体の復興計画のもとで工場の再建とかができないと本格的な雇用につながらないわけですが、当面はつなぎでもとにかく仕事に結びつけて、それをさらに働き続けられる雇用に結びつけられるように全力を挙げていきたいというふうに思います。

石井(啓)委員 被災地では、安定した雇用を求めて県外に移動される方ももう出てきておりますね。だから、企業は再建したけれども働き盛りの世代がいなくなっちゃったということでは、これは被災地の復興というのはできませんので、やはり早期に地元の企業の再建をお願いしたいと思いますし、また、それまで若干時間がかかりますから、やはり将来のビジョンを早く示してあげて、地元にとどまる意欲が持てるようにぜひこれはしていただきたいと思います。

 次に、福島の復興再生のための特別立法についてお伺いします。

 政府においても福島復興再生特別措置法を準備されているというふうに伺っておりますけれども、それは進めていただくとしまして、私どもは、それだけでは、今政府の進めておられる案だけでは現地の要望には応えられないというふうに考えています。

 これは今パネルでお示しをしましたが、昨年の夏から党内に福島特別立法プロジェクトチームを設置いたしました。現地での要望ヒアリングも含めまして、暮らしの安心と夢のある福島への早期復興・再生のための特別法を検討してまいりました。そして、一月二十四日にその骨子をまとめて発表したところであります。

 保健、医療などの抜本的拡充では、十八歳以下の子供たちの医療費の無料化、長期的な全県民健康調査の法定化、放射線被曝に起因する健康被害を生じた場合の保健、医療、福祉にわたる総合的な措置の実施。

 また、原子力事故災害からの早期復興に関しましては、中間貯蔵施設ですね、これの建設のための法的な措置を行う、また、中間貯蔵施設は最終処分場としない、このことも法定化する。

 また、権限、財源、執行体制の確保ということでは、さらなる規制緩和のために復興大臣に勧告権限を与える、あるいは、復興基金、復興交付金、原子力被害応急対策基金、こういったものを積み増す、あるいは弾力的運用を行う。

 こういう提言をさせていただいておりますので、これはぜひ政府には積極的に受けとめていただきたいと思います。

 特に、十八歳以下の子供たちの医療費無料化については、先日、平野大臣が佐藤知事の方に、これはなかなか難しいということで実施見送りを伝えたというふうに伺っております。国の新たな補助は困難ということではありますけれども、これは県として独自に進めるということでございますから、県が進める施策が継続して行えるように、これは何らかの支援を国として行っていただきたいと思います。

 総理、いかがでしょうか。

平野(達)国務大臣 福島復興再生特別措置法というふうに、私どもは今そういう名前で法律をつくろうと思っておりますけれども、この立案に当たりましては、福島県の要望を踏まえまして内容の検討を進めております。

 公明党さんにおかれましては、発災直後からさまざまな御提言をいただきまして、その多くはさまざまな施策に反映させていただきました。

 この福島の特別立法につきましても、今委員が御紹介ありましたように、御提案をいただいておりまして、この内容につきましても十分検討しまして、この特別措置法に反映できるものは反映させたいというふうに思っております。

 ただ、福島県における十八歳以下の医療費無料化につきましては、関係閣僚の間でも熟慮を重ねましたけれども、医療制度全体の根幹に影響を与えるなどの課題もあり、政府としては対応は困難であるという内容のことを、先般、佐藤知事にお伝えしました。

 これを受けまして、福島県は、福島県民健康管理基金の活用を含めて、子供の医療費無料化を前向きに検討すると伺っておりまして、このことについては先ほど委員からも御紹介があったとおりでございます。

 政府としましては、放射線被曝の低減や健康管理対策等を通じまして、引き続き、福島の将来を担う子供の健康について最大限の支援を行わなければならないというふうに考えております。

石井(啓)委員 福島県が健康管理基金を活用して十八歳無料化をやるということでありますけれども、やはり基金ですので、いつかは枯渇する可能性がある。その継続性というのが地元の皆さんには最大の懸念材料になっていますから、その点はぜひこれは知恵を出していただきたいんですよ。真っ正面から補助というのはなかなか難しいというのは、それは我々も理解できるんだけれども、何らかの側面からの支援というのは、私は知恵を出せば可能だと思うんです。

 総理も、一月八日に福島県へ行って佐藤知事から要請を受けたときに前向きなコメントをされていますから、総理も恐らく前向きのお気持ちがあると思いますので、これはぜひ政府でしっかりと知恵を出す、この工夫をしていただきたいと思うんですけれども、総理、この点はいかがですか。

野田内閣総理大臣 御指摘のとおり、福島へ行った際に、佐藤雄平知事ほかから御要望をいただきました。何か、その寸前には山口代表が行かれて同じような御要望をいただいたみたいでございますが。

 お気持ちは非常によくわかるんですが、先ほど平野大臣が御説明をしたとおり、ちょっと根幹にかかわる問題があって、こういう形で基金で県としてやっていただくことになりましたけれども、きちっとこれからもそれが続くように、最大限支援できるように知恵を出していきたいというふうに思います。

石井(啓)委員 これはぜひよろしくお願いいたします。

 それから、原子力関係について、議事録問題ですね。

 原子力災害対策本部の議事録が存在しないという、にわかには信じがたい事実が明らかになりましたけれども、今回の東京電力福島第一原子力発電所の事故は、全電源喪失という、かつてない未曽有の深刻な原発事故であったわけです。これに対処するに当たって政府がどのように意思決定をしたのか、この経過を残すということは、私は、政府の歴史的な検証に対する責任であり、やはり国際社会に対する責任だと思うんですね。

 我が党の山口代表が本会議の代表質問でこのことを指摘いたしましたけれども、総理の答弁は、震災直後の緊急事態にあったことや、記録を残すことの認識が不十分であったこと等のために、各本部の議事内容の一部または全部が文書で随時記録されていなかったことは事実であり、まことに遺憾、こういうふうに答弁されていますけれども、私は、民主党に、政策の意思決定過程の記録を残すことの重要さあるいは責任感というのが全く欠けているんじゃないか、余りにもずさんと言わざるを得ないわけです。

 福島の双葉町長は、議事録がないのは背信行為だ、こういうふうに批判されていますし、国会事故調査委員会の黒川委員長も、全く信じられない、理解不能だ、こういうふうに批判されています。

 改めて、総理の所感を伺います。

枝野国務大臣 原子力災害対策本部の議事を記した正式な記録がつくられていなかったことについては、原子力災害対策本部の事務局は経産省のもとの保安院が担っておりますので、大変申しわけなく思っております。当時、特に発災直後は大変緊急的な状況であったということはございましたが、それにしても、できるだけ早い段階で議事をきちっと整理して、意思決定のプロセスが明確にわかるような形で記録をすべきであったという御指摘は甘んじて受けなければいけないと思っております。

 できるだけ、当時の原子力災害対策本部は、本部員に限らず、各省の事務方も含めて相当多くの人数が出席をしておりまして、事務方等もたくさんメモをとっておられましたので、今、そうしたメモを最大限集めて、それから、議事の多くは、用意された資料を解説する、説明するということでございましたので、こうしたことについても最大限正確に回復できるよう作業を進めているところでございます。

 同時に、私、その当時、内閣官房長官でございました。議事要旨等については当然つくられているものという思い込みをしておりましたが、こうした重要なことでありますので、そうした思い込みをせずに確認やチェックをすべきであったという御批判は甘んじて受けたいというふうに思っております。大変申しわけございません。

石井(啓)委員 今回の事案は、報道機関が情報公開請求をして、それで、請求したけれどもない、議事録がないということが明らかになって、こういう問題がはっきりしたわけですね。

 したがって、仮に報道機関が情報公開請求をしていなかったならば、今でも公文書管理法違反の状態が続いていた可能性は強いわけですよ。その意思決定過程の文書をきちんと残すということをやっていなかったはずなんですね。

 だから、私は、これは後からそれをそろえればいいという問題じゃないと思いますよ。やはり今回の事案は、責任者の処分も含めて関係者の責任を厳しく問うべきだ、こういうふうに思いますけれども、総理、いかがですか。総理、お答えください。

岡田国務大臣 これは、私は、委員の御指摘はかなりの部分共有するところがございます。

 ただ、やはり事実関係をよく確認した上で事を進める必要があると思いますので、まずその作業をしっかりと進めていきたいというふうに考えております。

石井(啓)委員 文書を後からそろえればいいという問題ではありません。これはもう内閣、政府の姿勢の問題ですからね。このことを言っておきたいと思います。

 また、東京電力福島第一原発の事故による風評被害については、福島の周辺県においても厳しい状況が続いております。

 私の地元の茨城県におきましては、観光客数の激減に加えまして、新規の企業立地が大幅に減っております。昨年の立地件数は二十件でございましたけれども、五カ年平均の六十五件と比べますと、約三割に落ち込んでしまった。立地を予定していた企業もそれを先送りする、あるいは解約する、こういう事態がございました。

 そこで、福島の周辺県で要望いたしまして新たに設けられる企業立地促進補助制度について、十分な補助額を確保するとともに、県ごとの配分額を早急に提示していただきたいと思います。あわせて、風評の払拭に向けた国内外の企業に向けての情報発信や投資促進の取り組みを強化していただきたいと思います。総理、いかがでしょうか。

枝野国務大臣 お答え申し上げます。

 原子力発電所事故による被害は、もちろん一番大きいのは圧倒的に福島県でございますが、同時に、委員の御指摘ありました茨城県を初めとして、観光客数の激減や新規の企業立地が大幅に減っている等、さまざまな影響、被害を受けているところでございます。

 そして、その対応のために原子力災害周辺地域産業復興企業立地補助金制度を創設しようとするものでございまして、百四十億円という予算額でございますが、今後の立地の、蓋然性が高まる、影響の高い三県、茨城県、それから栃木県、宮城県、それぞれからさまざまヒアリングをした見込みの件数と分譲面積をもとに積算したものでございます。

 事柄の性質上、県ごとの割り当て金額ということになかなかしにくいわけでありますが、それぞれそうしたヒアリングに基づいておりますので、それぞれの状況に応じたお申し出といいますか、この補助金の申請というものが上がってくるものと期待をしております。

 また、それに当たっては、各県が御努力をそれぞれされるかと思いますが、同時に、関東の経済産業局においてしっかりと県と協力をして、特に、やはり金額的に三県の中でも圧倒的に茨城県は影響が大きいということは承知しておりますので、茨城県ともしっかりと連携をするように指示しているところでございます。

石井(啓)委員 この原発事故の風評被害につきましては、福島県に次いで茨城県が著しく深刻な影響を受けているという実態がございますので、そういう実態を踏まえて対処していただきたいと思っております。

 ところで、東日本大震災におきましては、支援物資で赤ちゃんの離乳食あるいは女性用の下着が不足をしていたりとか、あるいは、避難所に女性の着がえ、授乳スペースがないなどの事例がございました。

 公明党は、こういった教訓を踏まえまして、全国各地で既存の防災対策を見直すに当たりまして、女性の視点で既存の防災対策を見直すとともに、新たな対策を検討するということで、昨年八月に公明党女性防災会議というものを設置いたしまして、昨年の十月には、全国の女性地方議員と連携をいたしまして、女性の視点からの防災行政総点検を行いました。

 六百五十八の自治体にアンケート調査を行いましたけれども、その結果、地方防災会議の委員に女性がいないところが四四%、防災担当部局に女性職員がいないところが五一%、計画されている避難所の運営に女性の視点や子育てニーズを反映していないところが四七%という結果が明らかになっております。

 そこで、昨年の十一月二十四日に私ども提言を行いまして、これは官房長官に面談して手渡したところでございますが、今このパネルで、十一項目のうち冒頭の三項目を掲げておりますけれども、「国の中央防災会議に三割以上の女性委員の登用と、地方防災会議で女性委員を登用しやすくするための災害対策基本法の改正。」「女性の視点からの防災対策マニュアルを国が策定し、周知徹底を図る。」「緊急物資の備蓄を、女性、高齢者、障がい者の視点から見直し、自治体への予算措置を行う。」こういった項目を初めとして、十一の具体的な項目を提言しております。

 政府として、ぜひこれは積極的に受けとめていただきたいと思いますが、具体的な対応をお伺いします。

平野(達)国務大臣 防災対策あるいは災害対策における女性の視点の重要性、この点につきましても、特に公明党さんからはさまざまな観点からの御提案をいただいております。

 私どもも、今回の東日本大震災の対応の経験を踏まえまして、この女性の視点の重要性ということは痛切に感じております。御党からいただいた提言内容に関連する取り組みも、今進めさせていただいております。

 例えば、御党からは、女性の視点からの防災対策のマニュアル等の策定についての御提案をいただきました。政府では、東日本大震災の際の避難所の運営のあり方等についてこれからしっかりとした検証を行うことになっておりまして、この避難所における生活、特に女性の視点の重要性というのは、もう委員から御指摘があったとおりでございます。そこから得られた教訓をマニュアル化して、これをこれからの災害に役立てたいというふうに思っております。

 それから、防災会議に女性委員を積極的に登用するよう御提案をいただいておりますけれども、十月に中央防災会議のもとに設置した防災対策推進検討会議では、学識経験者十二名のうち四名が女性委員となっているということは御承知のとおりかと思います。

 それから、津波防災に関するワーキンググループ、これは、平成二十二年十二月の発足時点では委員十五名中二名が女性でございましたけれども、これを即見直しまして、今、十八名中六名に委員を入れかえております。六名の女性委員でございます。

 それから、地方防災会議の女性委員の登用につきましては、災害対策基本法十五条、それから第十六条の規定の仕方についてしっかり検討しまして、できるだけ学識経験者の枠を広げるというようなことを主体に検討を進めているということも御紹介をさせていただきたいと思います。

石井(啓)委員 徐々に政府としても御努力をされているようでありますから、これは引き続きよろしくお願いをいたしたいと思います。

 それでは続いて、テーマをかえまして、社会保障と税の一体改革についてお伺いをします。

 今、政府・与党から与野党協議ということで呼びかけがあるわけでございますけれども、私ども公明党としては、この与野党協議自体を否定しているものではございません。

 むしろ、一昨年の十二月、公明党独自の社会保障の中長期改革のビジョン、これは何回かこの委員会でもお示ししたんですが、新しい福祉社会ビジョンというのをつくりまして、これで私どもの考え方は公にしているところでございます。これをもとに、政府の方も早く社会保障改革の具体的な案を固めて、与野党協議をやりましょうと私どもの方から呼びかけてきているんです。

 ところが、このたびの政府・与党の社会保障改革の素案の内容でございますけれども、これは、私どもからすると、不十分であると言わざるを得ません。

 といいますのは、特に、従来民主党さんが主張されてきた全ての年金の一元化や、あるいは全額消費税で賄う最低保障年金の創設を柱とする年金改革案、民主党が言うところの年金の将来像ですね、これがほとんど具体化されておりません。具体化されているのは、最低保障年金が七万円だということと、比例部分が保険料が一五%、この二つの数字は出ているんだけれども、ほかに具体的に数字の裏づけがある中身はありません。

 年金の将来像がなければ、これは到底、社会保障の全体像を示しているとは言えないわけですよね。

 私どもは、政府・民主党が与野党協議を呼びかけるのであれば、まず政府・民主党自身が、今いろいろ話題になっています年金の試算はもちろんのこと、政府・民主党としての年金の改革案、年金の将来像を早期に示して、そして与野党協議の前提条件、環境条件を整えるべきだ、こういうふうに思っておるんです。これは総理、いかがですか。

野田内閣総理大臣 まずは社会保障の姿を示して、その上でそれを支える財源の話をしていこうという、その議論のプロセスは共有することができます。党内での議論で成案をつくり、そして素案に至る段階も、まずは社会保障でどういう分野を充実させていくのかとかあるいは効率化させていくのかという議論をしました。その上で、それを支える財源について議論をしたという経緯がございますので、議論のプロセスとしては、石井委員の御指摘のとおりだと思います。

 その上で、この素案の中で、中身が不十分というお話でございますけれども、新しい年金制度についての考え方については、これは明確に素案の中に入れているつもりでございます。その上で、二〇一五年までにそれに基づく法案を提出するということになっていますので、その中でいろいろなシミュレーションをしていかなければなりません。

 今若干触れられた試算は、これは先ほど来ずっと議論がありましたけれども、調査会の一部の幹部の人たちの頭の体操のときに使われた試算であって、党全体で共有しているわけではございませんので、これを出すことが、本当に議論に供するか、プラスになるかというと、私はそうではないというふうに思っております。

 いずれにしても、法案に向けて新しい年金制度の骨格を固めていく際には、新しい人口推計であるとかそういうものを含めてのきちっとした試算をお示ししながら議論をしていきたいと思いますが、そのことと、今の制度において最低保障機能を強化する等の年金の改革等をやってまいりますけれども、新しい年金制度を導入するとしても、移行期間が相当期間ございますので、我々が今、社会保障と税の一体改革でお訴えをしている二〇一五年までに、それによって追加の新しい財政需要が極端にふえるということはないというふうに思いますので、今回の社会保障と税の一体改革の議論に支障があるというふうには私は思っておりません。

石井(啓)委員 今総理がおっしゃったのは、二〇一五年の消費税の税率を決めるには支障がない、こういうことだと思いますけれども、それはあくまで消費税を決めるという観点からの認識なんですよ。

 社会保障、特に年金というのは、これは超長期の制度でありますから、将来像を固めた上で、当面、二〇一五年まで何をやっていくか、こういう議論が当然必要なわけで、二〇一五年まで、当面の話をまずことしやりましょう、来年になってから将来像の議論をしましょう、これは順序が逆なんですよ。まずは将来像の議論を早くやりましょう、その上で二〇一五年までの当面の対応を検討しましょう、こういうことを私どもはたび重ねて指摘しているわけです。ですから、当面の、二〇一五年までの議論をやればいい、これは私は非常に中途半端だと思うんです。

 このことは、実は、私どもはもう昨年の通常国会のときから言っているんですよ。民主党さんが社会保障の改革案をまとめるんなら、当然、今まで民主党さんが主張してきた年金の改革案というのは具体的な数字を伴ったものを出すんですねと、昨年の通常国会のころからもう何回も指摘しているわけです。それなのに、今回の一体改革の案の中で、なぜ年金の将来像だけ一年先送りしなきゃいけないんですか。やる気があるんだったら、今回の一体改革の中で出せたはずじゃないですか。この点、どうですか。

岡田国務大臣 石井委員の御指摘もよくわかりますけれども、ただ、年金の話は、これは非常に大きな話で、おっしゃるように長い時間もかかる話です。ですから、それも全部一つにしてしまって議論するのではなくて、やはり並行して議論できる問題だと思うんですね。

 将来的に、現行制度をもとにして、それにマクロ経済スライド、そういったものを入れ込んだ今の考え方でさらに進めていくのがいいのか、それとも、抜本的な、我々の言う最低保障年金と所得比例年金という形にしてやっていくのがいいのか、それぞれメリット、デメリットあると思います。

 我々、我々の案がバラ色だと言うつもりは全くありません。いろいろな問題もあります。しかし、無年金者、年金の非常に低い人がふえている中で、そこにどう手当てしていくのかというような観点も考え合わせて、我々はこの抜本改革の案を提案させていただいているわけです。どちらがいいかどうかということをこれはぜひ議論させていただきたいというふうに思います。

 ただ、それがないと今回の社会保障・税一体改革の議論ができないということではないはずで、ぜひ並行して議論していただければ大変ありがたいことだと私は思います。

石井(啓)委員 今、岡田副総理、並行して議論をしていただきたいと言ったけれども、まず年金の抜本改革と主張していたのは野党時代の民主党さんじゃないですか。

 後で質問しようと思いましたけれども、今回の一体改革の中でも、被用者年金の一元化、まず厚生年金と公務員の共済年金の一元化、あるいはパートさんの厚生年金の適用拡大、これを挙げていますけれども、これは実は、自公政権時代に出した案とほとんど一緒です。

 ところが、その当時、民主党さんは何をおっしゃっていたか。被用者年金の一元化は中途半端だ、全年金の一元化がまず必要なんだ、そっちが先なんだということで、我々の案を廃案に追い込んだんじゃないですか。並行して議論しようと、あなたたちはまず自分たちの年金改革を議論しようと野党時代に主張していたのに、何で与党になったらそういうふうに対応が変わるんですか。

岡田国務大臣 年金をめぐる問題は長い話で、いろいろありますね。今おっしゃったのは、二〇〇五年に、衆参にまたがる年金と社会保障問題に関する協議会、正確な名前は忘れましたが、そういったものを設けて議論したときのことを御指摘になっているのかと思います。

 私は、実はあのとき民主党の代表で、こういったものをぜひつくるべきだと、野党の立場でしたが与党の皆さんに働きかけて、この異例な組織を国会の中につくって、つまり衆参で一つの組織ですから、そして議論を始めたことを思い出します。あれからもう随分時間もたって、年金の制度の議論が進んでいないことを見ると、国民に対して本当に申しわけないことだというふうに思っております。

 しかし、あのときに、そういう議論する場をつくって議論を始めた。中身はなかなかかみ合わなかった議論でしたが、しかし、それを結局、あの郵政解散で解散したことによって、いろいろな与党提案の法案も一旦そこで終わってしまったわけですね。つまり、あの突然の解散というものが、そういう年金の議論という点から見ると大きな傷跡を残していることも間違いございません。

 そして、その後、余り議論が進まないまま今日まで来てしまったわけで、ぜひここは、もう一度、与党、野党、立場は変わりましたけれども、年金についての、将来世代のために持続可能な年金制度はどうあるべきかということを真摯に議論させていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

石井(啓)委員 私どもは、並行して議論じゃなくて、まず将来像の議論をやるべきだと申し上げているんですよ。公明党としては、年金の将来像としては、現行制度の改善で十分対応可能だと思っております。

 しかし、民主党さんは、野党時代、現行制度は破綻しているとまで言っていたんですよ、そして、抜本改革が必要だと。二〇〇三年の衆議院選挙から一貫して独自の改革案を御主張してきたはずじゃないですか。

 ですから、私どもは、社会保障の議論をするんだったら、では、そこの根本の問題をまず議論しましょうと。現行制度の改善が将来的にいいのか、あるいは民主党さんが言うところの年金改革案の方がいいのか、どちらが年金の将来像としてふさわしいのかちゃんと議論しましょう、こういうふうに言っているわけですよ。

 その議論に値する内容の案を示してください、こういうことをもう昨年から言っているんですよ。それなのにいまだに出てこない。そして、また来年に先送りをする。こんなことではとても信用できませんよ。社会保障の改革を議論するんだったら、まずこの議論をしてからにしましょうよ。どうですか、総理。

岡田国務大臣 我々、考え方としては明確にもう示しているわけですね。最低保障年金と所得比例年金というものについてお示しをしております。あとは数字がどうなるかということで、どういう前提を置くかでこれは異なってまいります。ですから、党の方でも一時、そういったことを一部の皆さんで試算もされたということでございます。

 そして、その試算の中でわかったことは、今の政府案、マクロ経済スライドを取り入れたとしても、やはり追加的な税源が必要になるということも明らかになった。ただし、額からいうと抜本改革の方が、最低保障年金、これは全額税でやりますから負担が多い、こういうことかと思います。

 そういうことも含めて、ぜひ真摯な議論をお願いできればというふうに思っております。

石井(啓)委員 考え方は示してあると言うんですけれども、考え方だけしか示されていないので議論ができないんですよ。

 だって、年金というのは、国民にとっては、どれだけ負担があるのか、これは保険料の負担、税の負担、そしてどれだけ年金を受けられるのか、このことが重要なんですよ。そのことの数字が明らかにならないで、どうやって議論しようというんですか。考え方だけじゃだめですよ。だから、その議論ができる具体的な数字を来年に示すというんだったら、そんな先送りをしないで、早く検討させて、この国会でも出させて、議論しようじゃありませんか。どうですか。

岡田国務大臣 これは、年金の世界だけの話では必ずしもないんですね。つまり、我々が何が問題かと指摘しているかといいますと、やはり、年金額が極めて少ない、あるいは無年金の方がたくさんいらっしゃる、そこをどういうふうに乗り越えていくのか、そういう問題の意識から最低保障年金というのは出てきているわけで、つまり、それは結局、今の制度では生活保護にその部分が行ったりするわけですよ。

 だから、そういうことも含めてトータルの財政負担がどうなのかという議論もしなければいけないので、単に年金制度のその計算を出せばそれで議論が済むということでも必ずしもない。もう少し大きな構えの議論が必要で、そういうことも含めてぜひ議論させていただきたいというふうに思っております。

石井(啓)委員 そういうことを議論していただいて結構ですよ。だから、それを先送りしないで早くやりましょうということを申し上げているんですよ。どうですか、早くやりませんか。

岡田国務大臣 議論はぜひしていただきたいと思います。ただ、それがなければ社会保障、税の一体改革が議論できないということになると、それは違うのじゃないかということを申し上げているわけです。

石井(啓)委員 これは堂々めぐりになっちゃうんだけれども、今、足元だけの対応の議論ではなくて、将来像を固めた上でこの二〇一五年までの議論をすべきだ、このことは、私は重ねて指摘をしておきたいと思います。

 ところで、では、民主党の年金改革案について質問いたします。

 これも何回かこの委員会で示しているパネルですけれども、現行制度が上の方にございます。国民年金、それから厚生年金、共済年金。基礎年金については保険料と税。この税については二分の一を負担するという改革をしようとしているということでございます。

 これに対して民主党案は、全ての年金制度を一元化し、所得の比例年金を設ける。この保険料は一五%というふうにこの一体改革案では書いていますね。最低保障年金、これを全額消費税で行う、そして七万円。ただ、ある一定の年収からこの最低保障年金は減額をし始め、このパネルでいうとAの年収のところから、そしてある年収に至るとこの最低保障年金はなくなる、これがBということになります。

 民主党の年金改革案で、この時点で既に幾つかの問題点を指摘ができるわけですね。

 まず、将来的な話でありますけれども、最低保障年金を全額消費税でやると言っておりますから、それに必要な消費税が多額に上るのではないかという課題がございます。

 また、最低保障年金は一定収入以上で減額を始めますから、中堅所得以上の方は現行制度の基礎年金部分がなくなりますので、民主党案は、中堅所得以上の方は将来もらえる年金額が減額になる、減るということが挙げられます。

 今、下に、これはもう報道されている試算でありますけれども、もう既に報道されているのでこれを出す出さないというのは意味のない議論だと思いますけれども、報道されている試算で見ますと、最低保障年金が減額を始めるのが、これは、かつて小沢さんが党首の時代に六百万円から減額を始めて一千二百万円まで支給をすると言っていたはずなんですが、どうも今回報道されている試算では、1の案では、二百六十万円から減額を始めて六百九十万円でゼロになる。これに要する費用は、二〇七五年で六十一・三兆円、一一・二%。今の、二〇一五年の時点で、基礎年金二分の一、税というのが四・一%に相当するので、差額の七・一%が、六十年後ではありますけれども、必要になるのではないかという指摘があります。

 それから、2、3、4の案は、最低保障年金は一定年収以上まで支給するという案だと思ったんですが、所得が上がると急に減る。最低保障年金のところが台形でなく三角形の形になって減っていくということで、これはもともと民主党さんが言っていたこととちょっと矛盾するんじゃないかと思いますけれども、最低保障年金が、所得がふえると一律に低減していって、六百九十万円でなくなる案が2案、3案が五百二十万円でなくなる案、4案が三百八十万円でなくなる案。

 いずれにいたしましても、先ほど指摘しましたように、この最低保障年金に要する消費税額は極めて大きいものになりますし、また、中堅所得以上、先ほどの田村議員の質問では四百万円を超えるところから、1案であっても四百万円を超えるところから受け取れる年金額は減る、こういう問題がある。

 さらには、この最低保障年金七万円、これを皆さん聞いて、ああ、七万円、今保険料を納めなくてももらえるなというふうに喜んだ方はたくさんいたかもしれませんけれども、民主党の案では、七万円満額もらえるのが四十年先、制度開始後四十年後ということのようでございますから、当面の無年金者、低年金者対策には役立たない、こういうことがございます。

 さらには、もう一つ。全ての年金制度を一元化すると言っておりますけれども、厚生年金、共済年金の場合は、事業主が半分保険料を負担いたします。先ほど、民主党の所得比例年金は保険料一五%ということでありましたが、その半分の七・五%を事業主が負担してくれて、働いている方の自己負担は七・五%なんです。ところが、国民年金に入っている方は、事業主に相当するのは自分自身ですから、自分自身以外に誰かが事業主負担をしてくれるわけではありません。事業主負担分も自分が負担しなきゃいけない。一五%丸々保険料を国民年金に入っていた方は負担しなきゃいけないということになる。すなわち、国民年金に入っていた方は、厚生年金、共済年金に入っていた方の二倍の保険料を払わないと同じ年金が受け取れない、こういう課題があるわけです。

 こういういろいろな課題がございますけれども、これらについて、私は、こういった課題を考えると、これはなかなか国民の皆さんには理解がいただけないんじゃないかと思いますけれども、総理、いかがですか。

岡田国務大臣 この中身はぜひ議論させていただきたいと思いますので、今それぞれについて細かくコメントすることは控えたいと思いますが、ですから、メリットとデメリットがございます。

 私は、最大のメリットは、今、無年金者あるいは非常に低い年金の額の方が、この制度を入れることで、それは完全にフルに動くのは四十年後ですが、それまでは両制度が並行していくわけですから、そういう意味では今よりはよくなるわけで、そういった、いわば所得の格差が広がる中で、所得の少ない方に光の当たる制度である、そこが最大のメリットだろうというふうに思っております。

 それから、一点だけ。今、二百六十万、六百九十万というふうに委員御指摘されたと思いますが、これは一人当たりですから。基本的に、夫婦の場合であればその倍、つまり五百二十万、それから、六百九十万というのは夫婦で一千万を超える所得ということになるわけで、それはかなり所得の多い方を想定しているということも御理解いただきたいと思います。

石井(啓)委員 いずれにいたしましても、この報道されている試算でもおわかりのとおり、最低保障年金を大きくしようとすれば、必要となる消費税は大きくなるんですよ。逆に、最低保障年金の範囲を小さくしようとすると、今度は年金の減る方がふえてしまう、こういうことなんですね。

 だから、メリット、デメリットとおっしゃいましたが、私はデメリットの方が大きいと。端的に言うと、民主党のこの案は、たくさん消費税を納めて、もらえる年金額が少なくなる案だ、こういうことなんですね。これでは、私は、民主党の年金改革案の実現性は低い、こういうふうに思いますけれども、総理、いかがですか。これは総理がお答えください。

野田内閣総理大臣 報道ベースで資料をつくられておりますけれども、資料についてはさっき扱いを申し上げたとおりです。したがって、そのことで精緻に議論を進めることが本当にプラスなのかどうかという、私はちょっと疑問を持ちながら今議論を聞いていました。

 というのは、最低保障年金のいわゆる支給に必要とする財源であるとか、あるいは中間所得層が割を食うとかというのも、それは、仮定の、前提の置き方によって全然変わってくるんです。ということを踏まえて、もっと精緻な議論を、これは大事な議論なので、していかなければいけないとは思いますけれども、今の議論の中で詰めていくということ自体は、私は余りプラスじゃないと思います。

 ただ、言えることは、先ほど副総理も申し上げましたけれども、仮に二百六十万といっても、これは夫婦合わせると五百万を超えるわけで、そうすると国民の半分以上が入るんですね。そういうことに対する対応をしようという考え方をとるのか、そうじゃないのかという議論は、今現実の、現制度の改善がいいのか、そうじゃない新しい制度がいいのかという議論は、それは大きな議論としてやっていくべきだろうというふうに思います。

 思いますけれども、重ねて申し上げますけれども、そのことと、今の基礎年金の国庫負担が足りなくて、交付国債についてもこの後御質問があるかもしれませんが、そういうやり方じゃなく、きちっと対応できるようにする、あるいは社会保障の自然増に対応する、あるいは現行制度の中でも、これは無年金、低年金に対する対策をしなければいけません。最低保障機能の強化をしなければなりません。そういう対策は早くやらなければいけないということでありますので、その議論と私はやはり同時並行でいいと思います。ぜひ、だから与野党協議をしていただきたいというふうに思います。

石井(啓)委員 この試算では精緻な議論ができないという御指摘ですが、我々は精緻な議論をしたいので、ちゃんとした試算を出してください、そうしたら。精緻な議論をするために、この試算が、いや、これは違うんだと言うんだったら、正式な試算を出してくださいよ。それで議論しましょうよ、こうやって。与野党協議なんて、この国会でこうやって議論していること自体が、これは与野党協議の一環じゃないですか。だから、この場できちんと議論できるよう、国民の皆さんの見ている前で議論ができるように、民主党として正式な試算をきちんと出すべきだ、このことは申し上げておきたいと思います。

 では、続いて、消費税の五%の使い道。これは説明を変えましたね。

 従来は、機能強化で三%、機能維持で一%、税率アップによる政府の支出増で一%、それで五%という説明だったんですよ。

 機能強化の中身が、制度改革に一%、これは二・七兆円、年金国庫負担二分の一に一%、高齢化による自然増に一%だと。

 機能維持というのは、これは今、社会保障の経費で赤字国債に依存している分、この国債を削減する、その分で一%を使う。

 税率アップによる政府の支出増というのは、大体二・三兆円程度だというふうに聞いておりました。

 それが今回の説明では、大きく、社会保障の充実に一%、社会保障の安定化に四%。

 社会保障の充実というのは制度改革による充実ですね、これが二・七兆円。

 社会保障の安定化に四%、これは十・八兆円ですが、その内訳は、年金国庫負担の二分の一、これが二・九兆円。

 それから、新しい言葉を使っていますね、後代への負担のツケ回しの軽減が七兆円だと。これは中身は、従来の説明は高齢化による自然増分と機能維持分。ところが、従来、これは二%にしていたんですけれども、七兆円、上回っています。これは後で説明します。

 それから、税率アップによる社会保障支出増ということで〇・八兆円としています。従来は、社会保障支出増でなく、政府の支出増として一%程度、二・三兆円必要だということだったんですね。この政府の支出増には、政府の調達、いわゆる公共事業ですとかあるいは防衛装備品も含めてだ。それを、それはいかがなものかということで、社会保障支出増だけに限定したようですね、〇・八兆円。

 その差額の一・五兆円程度は、後代への負担のツケ回しの軽減、すなわち赤字国債の削減にさらに回したということのようですが、何でこういうふうに使い道の説明が変わってくるんでしょうか。御説明いただきたいと思います。

岡田国務大臣 今、石井先生の方で大分御説明いただきました。

 結局、左の、従来のものの一番下の部分、税率アップによる政府の支出増一%、二・三兆円、これは社会保障以外のものも含まれかねない。つまり、税率をアップすれば物価が上がりますから、それで年金とか医療費がふえるというのはいいんですけれども、それ以外のものも含めて支出がアップする。そういうものも実はその中に含まれているということであると、増税分は全て社会保障費のために使いますという説明との整合性が問われるんじゃないかということで、よりわかりやすく御理解をいただくために今回の説明に変えたということでございます。

石井(啓)委員 今回の説明が変わった経緯を見ると、要は、消費税一〇%ありきで、後からその使い道の説明を考えているということなんですよ。そういうことでしょう。

 これは、社会保障と税の一体改革でも何でもないじゃないですか。社会保障は社会保障でやっている、税は税でもう一〇%先にありき、その説明をこの使い道で説明している。これは後づけの説明ですよ。だって、使い道を変えるということはそういうことでしょう。後づけの説明だ。だから、これは一体改革じゃなくて、もともと別々改革なんじゃないですか。

岡田国務大臣 従来と今回で、パーツが変わっているわけではないんですね。

 変わっているのは、先ほどの社会保障以外に使われる部分というのは確かにパーツとして変わっているんですが、あとはどういうふうにくくるかという問題で、社会保障の充実一%、従来は機能強化三%というふうにしていたのを分けて、そのうちの本当の意味の制度改革は一%分なので、左では制度改革一%と書いてありますが、これを社会保障の充実というふうに書いた。年金国庫負担二分の一とか高齢化による自然増というのは、既存の制度を前提にしてその経費を賄うための財源に充てるということでありますから、社会保障の安定化というところに持っていった方がわかりやすい、こういうことでございます。

石井(啓)委員 この税率アップによる政府の支出増を社会保障支出増に限定したと。だったら、その分税率を下げてもいいじゃないですか。何でそれを社会保障の方の赤字国債の削減の方に回すんですか。そこら辺がわからないんですよ。

 社会保障と税の一体改革といいながら、今回の説明ぶりでは、社会保障の充実に回すというのは全体の五%のうち一%しかないじゃないですか。年金国庫負担二分の一も合わせて、二・七兆と二・九兆だから五・六兆なんだよ。十三・五兆増税するうち、社会保障の充実とか年金国庫負担二分の一に回すのは五・六兆、あとの七・九兆は赤字国債の削減とか自然増分だとか支出増分に回しているわけでしょう。

 私は、何でもっと社会保障の充実に回さないのか、こういう問題意識を持っているんですよ。この赤字国債の削減に回すんじゃなくて、そういうことであれば、社会保障の充実に一・五兆円ぐらいさらに回す余地ができているわけでしょう。なぜそれをやらないのか。あるいは、それをやらないんだったら、税率を下げるということも考えていいんじゃないですか。一〇%にこだわることはないでしょう。九%でもいいでしょう。そういう議論をやらないから、一〇%ありきで使い道を決めているんじゃないか、こういうふうに言わざるを得ないわけですよ。

 今回の税制改革の中で、何で社会保障の充実に回す分が少ないんですか。総理、いかがですか。

岡田国務大臣 石井委員も十分おわかりいただいた上で言っておられると思うんですけれども、先ほどの、例えば高齢化による自然増、これは毎年一兆円強ふえていくわけですね。ですから、二年目には二兆円強、三年目には三兆円強、五年目には五兆円強ふえるということになるわけです。それを、いやいや、この消費税の増税で賄わなくて、例えば赤字国債で賄う、こういうことになるわけですね。私は、それよりは、やはりきちんとそれを増税の中で賄っていくということがこの社会保障制度の持続可能性のために必要なことであると。

 もちろん、充実にもっと使いたいのはやまやまであります。しかし、残念ながら、今のように財政が不安定な中で、社会保障制度の持続可能性というのはなかなか確保できませんので、先ほどの年金の国庫負担二分の一の部分についても、かなりいろいろなやりくりをしているということについては先ほど来御指摘もあるわけで、そういったことをきちっと安定したものにしていくために、残念ながら、四%分は使わざるを得なかったということでございます。

石井(啓)委員 いや、高齢化による自然増分の一%はそのままでいいんですよ。だけれども、赤字国債の削減分をふやしているわけでしょう。その分はなぜ社会保障の充実に回せないんですか。こういう問題提起なんですよ。

 というのは、では具体的に言いますと、今回、年金の特例水準二・五%を三カ年間かけて引き下げる、こういうふうになっていますね。何で、社会保障と税の一体改革をやろうというときに、そういう年金の給付が下がるんですか。国民の皆さんは、いやあ、社会保障は充実するかと思ったら年金下がるんだってよと。これでは何のための一体改革かわからないじゃないですか。そういう理解ができない。

 では、具体的に聞きますけれども、その特例水準の解消ということですが、本来の年金額より二・五%高い水準になっている。これはかつて、過去に物価が下がったときに据え置いたということが累積しているということですけれども、しかし、本来の特例水準の解消というのは、デフレを解消して緩やかな物価上昇、緩やかというのは一、二%程度ですけれども、その緩やかな物価上昇になったときに年金水準を据え置くことによってこの解消を図ろうとしていたわけです。すなわち、デフレ解消というのがこの特例水準解消のための手段だったわけですよ。

 だから、今回、政府が三年かけて特例水準の解消を給付の引き下げでやろうというのは、私は、デフレの解消を諦めたんじゃないのか、そういうふうに思わざるを得ないんですよね。三カ年程度で、先ほど言った二・五%の特例水準を解消できないような景気の状態、物価の状態では、到底消費税の引き上げをやるのは無理なんじゃないか、こうも思うんですよ。総理、いかがですか。

岡田国務大臣 ここは石井委員と私の考え方は違います。やはり、年金は、物価が上がればその分はスライドして上げる、逆に言うと、下がったときには下げる、これは基本だと思います。

 デフレ解消は非常に重要な課題ですが、だからといってそれで、物価が下がっているにもかかわらず年金の水準を下げないということになれば、それは後世その分負担になってくるわけで、やはりそこはきちっとルールどおりやっていくべきだというふうに考えております。

 現行制度でも、マクロ経済スライド、こういう制度があります。これは、結局、実質賃金が上がっても物価の上がった範囲でそれをおさめていこうというお考えかと思いますが、そういう考え方に立たれるのであれば、それはまさしく、やはり物価が下がったときには下げる、そういう考え方と、これは基本に流れるものは同じだと私は思いますので、ぜひそこはお認めをいただきたい。

 この現象は別に政権交代になって急に起きたわけではなくて、その前のことからも含めて、我々は、いろいろな御批判も覚悟してこれを進めているところでございますので、ぜひ御理解をいただきたいと思います。

石井(啓)委員 物価が下がったときに下がることは否定しないんですよ。ただ、物価の動向にかかわらず三年間かけて強制的に年金水準を下げるということが問題だというふうに言っているわけ。

 それで、政府の経済財政の中長期試算、これによりますと、消費者物価上昇率は、慎重シナリオですよ、慎重シナリオであっても、二〇一二年度〇・一%、二〇一三年度〇・五%、二〇一四年度は消費税引き上げに伴って三・一%を想定しているんですよ。政府のシナリオでも、二〇一二年度から一四年度までの三カ年間で累積で三・七%の物価上昇を想定しているわけですから、これは自然体で特例水準の解消は可能なんです。

 だから、先ほど申し上げましたように、社会保障と税の一体改革といいながら年金の水準を引き下げる、こういうことをやっているから国民には理解されない、こういうことを申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

中井委員長 これにて石井君の質疑は終了いたしました。

 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 きょうは、最初に被災者支援策について質問をいたします。

 今現在、三十四万人以上の避難者の方がいらっしゃる。長引く避難生活であります。仮設住宅などの寒さの問題、結露の問題、健康悪化が心配をされます。失業、無収入、収入が大幅に減る、こういう状況に置かれているのが被災者、被災地であります。そんなときに、医療、介護などの一部負担金、窓口払い、あるいは保険料といった負担の免除措置が行われてまいりましたが、この二月末で打ち切る計画となっておりました。

 寒さ対策もろくにやらないような仮設住宅をつくっただけではなくて、寒さが最も厳しくて、病気や健康悪化の一番心配な二月末に医療、介護の負担免除措置を打ち切るなどというのはとんでもないことであります。このことについてどうするつもりなのかについて、お答えください。

小宮山国務大臣 今おっしゃいました中で、一部負担金につきましては、医療保険、介護保険では、福島原発事故による警戒区域等の住民の一部負担金の免除措置への財政支援、これは一年間延長することにしています。また、警戒区域以外の地域でも、無職や高齢者の方が加入する国民健康保険、それから後期高齢者医療制度、また介護保険の一部負担金の免除措置の費用について、これは九月末まで延長することにしています。

 警戒区域等以外の地域につきましては、被用者保険も保険者判断で一部負担金の免除などの延長が可能で、中小企業の多くが加入する全国健康保険協会は九月末まで延長するというふうに承知をしています。

 それからまた、保険料につきましては、所得などの負担能力に応じて負担いただくのが原則ですが、無職や高齢者の方が加入する国民健康保険、そして後期高齢者医療制度、介護保険の保険料につきましては、減免措置への財政支援を警戒区域などは一年間、それ以外の地域については九月分まで延長することにしています。

 被用者保険では、震災により従業員に対する報酬の支払いに著しい支障が生じている事業所について、特措法で平成二十四年二月までの間、保険料の免除を行ってまいりました。被用者保険は、震災等の影響による賃金の変化を適切に反映した保険料を賦課する仕組みとしているので、保険料の免除措置については延長をしないことにしています。

 また、災害により直接に財産に相当な損失を受けたり、保険料の納付が困難な場合には、納付の猶予措置、これを設けている。

 このように、それぞれの仕組みの中で、低所得など困っていらっしゃる方のところ、あるいは警戒区域など地域で非常に負担の大きいところについては、延長する措置をとらせていただいています。

塩川委員 今述べたような延長の措置は当然であります。その背景には、被災地からの切実な要望があった。岩手、宮城、福島の県議会でも、昨年十月から十二月にかけて、このような医療費一部負担金の免除期間延長、これを求める意見書が採択をされ、免除措置を求める被災者の運動の広がりがありました。

 しかし、それでも免除措置の打ち切りの部分が残されております。例えば、被用者保険の保険料や、入院、入所時の食事療養費等、いわゆるホテルコストの免除は打ち切られます。

 特養に入所されている方のお話もお聞きしました。石巻市の被災者の方で六十代近い男性の方。お母さんが認知症で、被災前には一軒家の自宅で見ていたけれども、被災後には福祉避難所から特養ホームへと移ることになりました。隣のあくびも聞こえるような仮設住宅では介護は無理、今まで声をかけてくれた御近所の人もいない、こういう声を寄せております。

 このホテルコストを含めた月額の負担が約三万円にもなると言われています。免除期間を延長してほしいというのが率直な声であります。このようないわゆるホテルコストについても延長するというのは、被災地、被災者の現状を考えれば当然のことではありませんか。総理としてぜひ決断いただきたい。

小宮山国務大臣 入院時の食事療養費など、今ホテルコストとおっしゃった部分ですけれども、これについては、避難所にいらっしゃるときにはいろいろ配慮してきたんですが、もう避難所はほとんど閉鎖をされていて、皆さん仮設などに入っていらっしゃる。そことの公平性ということもありまして、二十四年三月以降の延長はしないという形にいたしました。

 そうした中で、今おっしゃったように、いろいろな事情で福祉の関係で援助が必要な場合には、そういった別の観点からまた御相談に乗れるような形がとれればいいというふうに思っています。

塩川委員 いや、公平性の観点とかという話じゃないんですよ。必要なのは、被災地において、負担能力を失っている被災者の方に新たな負担増を求めるような措置を行っていいのか、このことが問われているわけです。新たな負担を求めるのは、被災者の生活再建、ひいては被災地の復興の妨げとなる、このことを強く求めていくものであります。

 デイサービスの入所の方なども、ショートステイの利用も含めて、いわゆるホテルコストという部分がかかってくる。そういった方々も含めて、今まで負担がなかったものが新たな負担増になるということ、こういう免除措置の打ち切りはやめるよう強く求めておくものであります。

 あわせて、打ち切りという点でいいますと、失業手当の打ち切りの問題があります。

 被災地では、仕事を失い、いまだに職につけない人が多数残されています。ところが、職場の確保の見通しも立たない中で、失業手当が次々打ち切られております。この三月までに七千人を超え、九月末には全員が打ち切られる予定であります。

 総理は代表質問で、被災者が生活再建を進める上で最大の不安は働く場の確保と答弁をしました。まさにそのとおりであります。しかし、厚労省の調査によると、被災者で失業手当が切れた人のうち、半数は就職先が決まっていないとのことであります。一月二十日時点で、失業手当の延長の給付が終了した一千三十九人のうち、就職先が未定の人が五百十七人もいる、これが現状であります。

 総理にお尋ねしますが、これまで従事していた水産加工の仕事をしたくても工場が復旧をしていない、求人といえば復興関連の土木建設関係がほとんど、しかも短期間の非正規ばかり、これでは、就労に踏み出すことにちゅうちょするのは当然であります。職につけないまま失業手当を打ち切られた人を見捨てるのか、このことが問われている。失業手当の延長こそ考えるべきではありませんか。総理、お答えください。

小宮山国務大臣 先に私の方から。

 先ほどもお答えいたしましたけれども、雇用保険が切れた後、先ほど申し上げたように、今まで百二十日間延長したうち、非常に被災の大きかった沿岸部はさらに九十日延長してまいりました。

 ただ、雇用保険をずっと続けることがいいのかどうかということ。現実に、今ミスマッチがあって、なかなか雇用に結びつかないということはわかっておりますので、そういう意味で、先月、私も行って、実態を見てまいりました。

 ハローワークの方でも担当制を決めていろいろやっているということやら、いろいろ努力をしておりますが、その中で、私が、去年の六月に工場を再建した水産加工の会社に参りました。そうしたら、そこで一つ再開をし、また次、ことしに入って二つ目を再開するのに、皆さん職を探していらっしゃるであろうから、求人をすればすぐに集まると思ったら、雇用保険がある間は働かないとおっしゃる方が多い、現にそういう話も聞いてまいりました。

 全てがそうだとは申しません。でも、これからは仕事の方に力を入れることが一層重要だということで、何度も申し上げている「日本はひとつ」しごとプロジェクトのフェーズ3で、これは産業政策と一体になってやっている。それが効果的に働いているのは、釜石市でも、中小企業のグループ補助金。幾つかの会社が集まってハードをつくる、そこに雇用していただいたら私どもが雇用に対する奨励金をちゃんと出す、このような形が非常に機能しているという例もございます。

 ですから、もちろん、ミスマッチがなくなるようにきめ細かくやる。それから、求職をなるべく今ハローワークに集めるようにしていますし、就職の相談会なども行っています。そして、それでもすぐつけない方、ミスマッチの部分については、職業訓練とか求職者支援制度、そうしたものをしっかりと活用いたしまして、何とかこれからは失業手当ではなくて仕事に結びつける。

 復興の計画がきちんとできて、町の再建ができないと、どうしてもつなぎだということに対する不安を皆様持っていらっしゃるので、当面はつなぎでも、とにかくつないで、将来はきちんとした仕事につけるという、その工程表というかスケジュール感も持って皆様にお話をし、やっていきたい。これからは雇用に結びつける方に全力を挙げてやっていきたい、そのように考えています。

塩川委員 雇用に結びつける、雇用創出は当然のことであります。しかし、今の生活があるんですよ。今の生活において、自分にふさわしい仕事が見つけられないという人を放置していいのかということが問われているんですよ。余りにも、延長しようという話も出ない、冷たい仕打ちであります。

 きょうの朝日新聞の報道でもありましたけれども、現地の声として、会社員が会社員に、船乗りが船に戻りたいというのが当たり前だ。失業手当が切れれば、震災前と同じ仕事を求めて被災地を離れる人たちがふえてくる。そういうことがどんどん広がっていったら、肝心の被災地の復興のときに、その復興の担い手の人が失われるということじゃありませんか。こういうことにつながるような失業手当の打ち切り、この被災地において自分にふさわしい仕事を見つけて復興にも貢献をしたい、こういう被災者の思いに応えるのは、当面の失業給付の延長でこそ可能となるんじゃありませんか。

 総理、改めて、被災地の復興のためにも失業手当を延長すべきだ、このことに踏み出すべきだ、いかがですか。

野田内閣総理大臣 被災地の苦労されている被災者の皆さんのための生活再建で一番大事なことは、やはり働く場の確保である、その認識は共有をいたします。そのために、これまで、失業給付、特例で二百十日分延長してきたということでございましたけれども、この時期において、厚生労働大臣も現地に入って、さまざまな現場を見ての判断をされました。

 それは、一つには、やはりハローワーク等で、これから復興で出てくる仕事と、きっちりきめ細やかに、ミスマッチのない、そういうような情報提供をしていくということと、それから、御指摘もありましたけれども、水産加工業であるとか農業であるとかという、その地域の強みを生かしていくような、そういう産業振興としっかりと連動させていくということ、そういう政策をしっかりとりながら対応していきたいというふうに考えております。

塩川委員 余りにも現地の被災者の状況が見えていない発言。安定した仕事と収入を確保するために全力を挙げるのは当然のことと同時に、当面、少なくとも失業給付の延長を行うべきだ、このことを強く求めるものであります。

 次に、八ツ場ダムの問題について質問をいたします。

 我が党は、八ツ場ダムについて一貫して中止を求め、流域住民と力を合わせて取り組んでまいりました。八ツ場ダム建設に道理なし、このことを訴えてまいりました。

 利水について言えば、首都圏の人口は停滞、減少傾向になっているのに加えて、節水機器の普及によって給水の実績は減少傾向にあり、新規水源の開発の必要はありません。

 治水について言えば、八ツ場ダムの洪水調節機能は限定的であり、ダムをつくったとしても、その後、ダムに砂がたまっていく堆砂によって治水の機能は大きく低下、消失することも明らかであります。今、治水対策として行うべきことは、脆弱な堤防の強化対策や、ゲリラ豪雨による内水氾濫に対する排水機場などの再整備こそ急務。ここにこそ限られた予算を使うのであれば使う、こういうことこそ求められているということであります。

 さらには、地すべりなど災害誘発の危険性もあります。この点について、まともな検証、対策が行われておりません。極めてもろい火山性の地盤に建設される八ツ場ダムは地すべり被害を誘発する危険性がある、このことも指摘をされているところであります。

 このような八ツ場ダム中止を求める世論と運動の広がりに押されて、民主党も、二〇〇九年の総選挙で初めて八ツ場ダム中止を公約に掲げました。二〇〇九年総選挙民主党マニフェストでは、「ムダづかい、不要不急な事業を根絶する。」として、「八ツ場ダムは中止。時代に合わない国の大型直轄事業は全面的に見直す。」としておりました。それなのに野田総理は、政権交代直後の八ツ場ダム中止表明を覆し、事業継続との判断を行いました。

 総理、なぜ八ツ場ダム中止の立場を覆したんですか。

前田国務大臣 八ツ場ダムについては、四代の大臣のもとで、予断を排して、予断を持たずに検証を行ってまいりました。そういうスキームをつくったわけでございます。そして、昨年十二月、この検証の最終的な有識者委員会において、八ツ場継続妥当、そういう結果を得ました。それを前提に、いろいろな角度から、今委員が言われたような観点も含めまして熟慮を重ねた結果、事業継続との判断を持ったわけでございます。

 二、三申し上げますと、首都圏の治水安全度の確保というのは、特にこの首都圏の、利根川流域になるわけですが、非常に洪水に対して脆弱な特性を持っているものですから、ここは何とか安全度を高めたいということで、いろいろな見地から検討を行いました。しかし、八ツ場ダムにまさる即効性のある代替案が見つからなかった、見出せなかったというのも一つの大きな要因でございます。

 そしてまた、昭和二十二年のカスリーン台風のあの決壊で、たしか千数百人亡くなっているわけなんですけれども、首都圏がその後、本当に大きな人口、資産の集積があり、また、高度成長期に随分地下水をくみ上げて、地盤も相当沈下をしております、埼玉県から東京都にかけて。そういうこともあって、治水の安全度というのは必ずしも上がっておりません。

 そしてまた、流域一都五県の、それぞれの都県の安全に責任を持つ都道府県知事さん方が、こぞって八ツ場ダムの継続を御主張されておりました。

 そういったことも含めて、総合的に勘案して結論を出したわけでありまして、あくまでもこれは、官房長官裁定を踏まえて適切に対応する、こういうことになっております。

塩川委員 八ツ場ダムの推進の理由を述べておりましたけれども、一つだけ言っておけば、例えば治水問題について、国交省が試算をしたカスリーン台風における治水効果はどうか、この問題について、私の国会での質問に対し国土交通省は、カスリーン台風のような雨の降り方のときには八ツ場ダムの治水効果はありませんとはっきりと答弁しているんですよ。こういうでたらめなことを前提にした議論というのは、そもそも成り立たないということであります。

 今、前田大臣の答弁にもありましたように、予断を持たずに検証を行ってきた結果だというけれども、その検証の進め方自身が問題なのではないのか、このことを問いたい。

 予断を持たずに検証を行ってきた成果というのが、八ツ場ダム建設事業の検証に係る検討報告書であります。国土交通省関東地方整備局がまとめたものであります。

 この八ツ場ダムの検証を進めるに当たり、検討内容の認識を深めることを目的として、検討主体である国土交通省関東地方整備局と関係地方公共団体から成る検討の場が設置をされております。今、前田大臣がおっしゃったように、八ツ場ダムにかかわる一都五県の首長が参加をする検討の場が開かれ、その関係都県のダム担当の部長が出席をする幹事会が十回、この間、開催をされてきているわけであります。

 そこでお尋ねしますが、この報告書でも取り上げております検討の場、その円滑な運営を図るための幹事会、この幹事会が八ツ場ダム検証の実質的な検討の場となっているということは、報告書に見るとおり明らかだと思いますが、その点の確認をお願いします。

前田国務大臣 お答えいたします。

 検討の場には幹事会というのを置いております、事務局的に。そういったところが、この検討の場の、議論をする場の設定をやっているものというふうに承知をしております。

 それから、一点申し上げますと、先ほど委員は、国交省に八ツ場ダムにカスリーン台風と同じ雨が降ったときにどの程度の治水効果があるかということを問うたところ、余りないという答えだったというふうにおっしゃいました。

 それはあくまでも、あのカスリーン台風という、むしろ利根川の東北の方に降雨が集中的に降った、そのパターンで再現するとそういうことになるということであって、八ツ場ダムというのは、吾妻川流域という非常に大きな流域、七百平方キロに対してきくダムでありますから、降雨パターンがそちらの方に振れた場合には、また効果が全然違ってくる。平均すると、目標流量に対して大体千立米ぐらいの洪水調節効果がある、こう見積もられております。

塩川委員 いや、八ツ場ダムをつくる理由として、建設省、国交省がずっと言ってきたのがカスリーン台風の話なんですよ。そのカスリーン台風の場合にどうかということについてシミュレーションしたら、治水効果はありませんと言うんですから。こういうでたらめな説明で推進をしてきたという、そのこと自身が問われているんじゃありませんか。

 検討の場の規約におきましても、「検討の場における会議の円滑な運営を図るため幹事会を設置する。」とあります。

 関係する首長が参加をするこの検討の場というのは、実質一回しか開いていないんですよね。それに対して、幹事会は十回議論を重ねてきております。その中では、今後の議論の進め方についてとか、雨量データ及び流量データの点検の進め方とか、基本高水の検証の進め方とか、利水参画継続の意思及び開発量についてなど、幾つもの論点を挙げて議論を行ってきているわけであります。ですから、幹事会が八ツ場ダム検証の実質的な検討の場となっているわけであります。

 そこで、改めて大臣に確認しますが、幹事会を構成するのは一都五県の八ツ場ダムにかかわるような関係部長だと思いますが、いかがですか。

前田国務大臣 お答え申し上げます。

 構成員は、一都五県の、大体が企画部長、土木部長というようなペアになっております。東京都なんかは、そこに水道局長が入っております。合計十三、そして関東地方整備局の河川部長、十四人で構成されているというふうに承知をしております。

塩川委員 ダムにかかわる担当部長が出席している実務者の場、実質的な検討の場が幹事会となっているわけであります。

 国は、八ツ場ダムは治水、利水などの地方の要望に応えるものと説明してまいりました。幹事会の議事録を見ていきますと、例えば第一回幹事会の議事録を見ると、群馬県の県土整備部長は、完了が間近な段階になっているんです、そういうダム事業をこれから検証するのはどうもなじまないと述べ、検証そのものが不必要と言わんばかりの発言をしております。

 そこでお尋ねしますが、この幹事会のメンバーである群馬県の県土整備部長というのは、どこの出身の方だか御存じですか。

前田国務大臣 お答え申し上げます。

 群馬県の県土整備部長は、国土交通省からの出向者であります。

塩川委員 ですから、検討の場といって、地方の代表が誰かと思ったら、国交省からの出向者なんですよ。

 続けて聞きますけれども、こういった、検証が必要ないと言わんばかりの人物は、国交省からの出向者と確認しました。

 次に、茨城県の土木部長は、同じ第一回の幹事会で、なるべく早く結論を出して、速やかに対策を講じていただきたいと、八ツ場ダム推進の立場で発言をしています。この茨城県の土木部長は、どこの出身の方ですか。

前田国務大臣 茨城県の土木部長も、国土交通省の出向者でございます。

塩川委員 茨城県の土木部長も、国交省からの出向者です。地方の代表かと思ったら、そこにも結局は国交省の人間が行っているという話であります。

 加えて、茨城県の企画部長、この人も第一回の幹事会で、中止の方針を持ってこの検証作業に当たるのではなく、予断なく検証される点について確認したい、要するに、中止方針は前提にするなと推進の立場で発言をしています。この茨城県の企画部長は、どこの出身の方ですか。

前田国務大臣 茨城県の企画部長も、国土交通省の出身であります。

 ただし、これは検討の場の事務局を構成しているわけで、第一回のこの検討の場には、群馬県知事、埼玉県知事、千葉県知事、栃木県知事が出席して、むしろ、この議論を中心に検討を積み重ねてきたというふうに承知をしております。

塩川委員 検討の場というのは一回しかやっていないんですから、十回重ねている幹事会が実質的な検討の場となっている。この茨城県の企画部長も、国交省からの出向者であります。

 さらに、お尋ねします。

 第三回の幹事会の場で、千葉県の県土整備部長は、検証作業によってダム建設が明らかになった場合には、速やかに本体工事に着手して、早期に完成を図るよう強く申し述べたいと、ダム建設を督促する立場で発言をしております。この千葉県の県土整備部長は、どこの出身の方ですか。

前田国務大臣 千葉県の県土部長は、国土交通省の出向者でございます。

中井委員長 前田大臣、その幹事会十四人のうち何人国交省がいるのか言うた方が早いよ。それは塩川さんも質問の順番があるやろうが。国交省、わかるの。調べてください。(塩川委員「委員長」と呼ぶ)はい、どうぞ質問してください。

塩川委員 千葉県の県土整備部長も、国交省からの出向者であります。

 ちなみに、埼玉県の企画財政部長は、総務省からの出向でもあります。それぞれの担当の都県の課長クラスにも、国交省からの出向者というのがいるんです。

 要するに、幹事会を構成する関係一都五県のうち、三県の部長は国土交通省からの出向であり、総務省からの出向者も含めると、六都県のうち四県の部長が国からの出向者になっているわけであります。人数においても、幹事会全体の約四割が、政府からの、国からの出向者で構成をされています。

 総理、率直にお尋ねしますけれども、八ツ場ダム推進の立場の国交省の関係者ばかりが集まって、どうしてまともな検証につながるんですか。お答えください。

野田内閣総理大臣 ちょっと国交省の出向者が多いなという感じはありますが、それはそれとして、予断なく検証してほしいというふうに思います。

塩川委員 それはそれとしてというのはどういうことですか。

野田内閣総理大臣 四人の大臣のもとでしっかりと予断なく検証してきて、その結果を受けて、前田国土交通大臣が判断をしたというふうに思います。

塩川委員 予断なくじゃないんですよ。推進という予断のもとにやっているというのが、この幹事会の構成なんじゃないですかと聞いているんですよ。もう一回お答えください。

前田国務大臣 お答えいたします。

 先ほど、四名の出身について御質問がありました。その四名が国土交通省出身でございまして、全体で十三人ですか、おられますが、そのうちの四人が国土交通省ということでございます。

 それから、申し上げますが、そういうスキームで検証を重ねてきた、その結果について、有識者委員会で最終的にその検討のプロセス等に瑕疵はなかったということだけは確認をさせていただいた上で、あくまでも、最終的には、いろいろな観点から熟慮を重ねた上で、国土交通大臣において判断をさせていただいた、こういうことでございます。

塩川委員 検証の内容以前に検証の進め方が問題なんじゃないかということを聞いているんですよ。国土交通省の人間ばかりが集まって検証すれば、推進してきたという八ツ場ダム、ゴーサイン出そうという方向になるのは余りにも明らかじゃありませんか。こういう検証の場、検討の場を設定したこと自身が問われているんですよ。それを行ったのが民主党の内閣であります。このことが問われなければなりません。

 八ツ場ダム検証の検討主体が八ツ場ダムを推進してきた国交省であること自体が問題で、加えて、八ツ場ダム関係六都県のダム担当部長の多くが国交省からの出向者となれば、身内の検証ということでしかない、信頼度はゼロであります。ダム事業を担当する少なくない関係都県の部長や課長職が国交省の出向先になっているなど、結局、国交省を中心にしたような、いわゆる河川村みたいなものがダム見直しの障害となっているということが、こういうところにも見てとれるのではありませんか。

 このような関係都県と一体となった国交省中心の八ツ場ダム推進の仕組みに加えて取り上げたいのが、天下りの問題であります。

 国交省に要求した資料によれば、二〇〇四年度から二〇〇八年度までの八ツ場ダム関係の工事及び業務契約は四百七十億円に上ります。八ツ場ダム関係の工事及び業務契約をした企業や団体に、二〇〇四年度以降、国土交通省からの天下りが何人いるのかについてお答えください。

前田国務大臣 一千万円以上の八ツ場ダム関連の工事または業務について契約を行った百六十七法人のうち、四十六法人に国土交通省から延べ百四名が再就職をしております。

塩川委員 二〇〇四年以降の八年間で四十六法人、百四人の天下りが行われていたわけであります。この天下りを受け入れた四十六法人の八ツ場ダム関連の契約額も約百五十億円、これは二〇〇四年度から〇八年度にかけてでありますが、約百五十億円に上ります。

 私の調べでは、そのうち、八ツ場ダム検証の検討主体である関東地方整備局から、天下りは十六人に上っているということでありました。ここにもありますように、上から三段目のところにある社団法人関東建設弘済会には、関東地方整備局から七人の天下りがあり、受注額は四億八千万円に上ります。また、上から二番目にありますダム水源地環境整備センターにも、関東地方整備局から二人、受注額は五億一千万円に上っています。

 このダム水源地環境整備センターに天下った者の中には、栃木県の土木部河川課長に出向していた国土交通省の関東地方整備局の幹部も含まれている。こういうところにも、国と関係都県とを行ったり来たりして、結局は同じように八ツ場ダム関連の業務を受注している法人に天下っていくという構図になっているわけであります。ダム水源地環境整備センターには、国交省から全体では九人が天下っているという状況であります。

 ちなみに、関東建設弘済会というのは理事長と専務理事、それからダム水源地環境整備センターについては理事長職が五代続けて国交省からの天下りとなっている典型的な天下り法人であります。

 総理にお尋ねしますが、八ツ場ダムを必要としているのは、国民や県民ではなくて、こういった天下りを受け入れる受注企業や団体、天下りをしているような国交省OBだったんじゃありませんか。お答えください。

前田国務大臣 今御指摘のことなんでございますが、この弘済会も含めて、河川の八ツ場ダム関連の調査というのは極めて専門的な分野ですから、どうしてもこういう調査関係のところに集中しがちでございます。

 しかし、そういったところを含めて、検討の場でやってきたことについては、要するに、数値計算であったり今までの調査であったり、そういう今までやってきたことが瑕疵がないかということを調べた上で、その計画について、最終的には本省に設けられた有識者委員会において、その検討のプロセスに瑕疵がなかったかどうか、今委員が御懸念のようなところについて瑕疵がなかったかどうかというのをしっかり見ていただきまして、その結果、瑕疵がないというふうな報告を受けているところであります。

塩川委員 幹事会の構成メンバーが国交省の人間ばかりなんという検証はどこにもありませんよ。そんな議論なんてどこもやっていない。大体、そういう専門性という口実で天下りを容認してきたというのは、自公政権以来同じ理屈でありますよ。そもそも、天下り根絶と言っていたのは民主党だったのではありませんか。

 八ツ場ダムに関連しても、天下り法人の多くは、八ツ場ダム関連の調査業務とか測量業務を請け負っています。八ツ場ダムについては地すべり被害の危険性が指摘をされていますけれども、この事業継続の一つの鍵とも言える十七の地質調査業務のうち十二業務を天下り法人が受注しています。

 地質のほかにも、安全性の評価にかかわる代替地の実施設計とか、ダム本体修正設計といった業務が天下り法人に集中をしている。天下り法人がまとめた調査報告書の結論は、どれも事業や安全性を妥当としたものばかりであります。

 結局、八ツ場ダム推進の国交省からの天下り法人が八ツ場ダム推進のお墨つきを与える。これでまともな結論が出たと言えるのか。

 総理にお尋ねしますけれども、こういう天下りも返上して、幹事会の構成も見直して、しっかりとした検証をやり直す、それなしに八ツ場ダムは推進はしない、このことを言明できませんか。

中井委員長 岡田行政改革担当大臣。(塩川委員「委員長、総理に聞いているんですから」と呼ぶ)こういうのは改革でしょう。岡田君、答えてください。三十秒しかありません。

岡田国務大臣 天下りの問題については、政府としても、従来からその根絶に向けて取り組んでいるところでございます。その以前からということはあったかもしれませんが、今後ともしっかりと天下りの根絶に向けて取り組んでいきたいというふうに考えております。

中井委員長 野田内閣総理大臣。十秒ぐらいしかありませんから。

野田内閣総理大臣 関係自治体への出向であるとか受注企業への天下り状況等は御指摘のとおりだったんだろうと思いますが、加えて、専門家とか有識者の会議も経ながらの意思決定をしてきているというふうに思いますので、予断なくプロセスをたどってきたというふうに思いますし、国土交通大臣には、官房長官の裁定をしっかり踏まえた対応をしていただきたいというふうに思います。

塩川委員 天下りの根絶を公約に掲げていた民主党も、結局、自公政権の継承者となった、このことをはっきり示すものでした。

 企業・団体献金の禁止や天下りの根絶でダム利益共同体の解体を求めるとともに、まともな検証なしの八ツ場ダム推進の結論は許されない、八ツ場ダムのような無駄遣いを継続しながらの消費税増税などとんでもないということを述べて、質問を終わります。

中井委員長 これにて塩川君の質疑は終了いたしました。

 次に、阿部知子さん。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 私は、今回の予算が、冒頭、仙谷委員がお尋ねになったように、安心と安全の確保を主眼とするという観点から、果たして今我が国の国民の食の安全はどのような状態にあるのかということで、特にセシウム汚染との関連でお伺いをいたします。

 一枚目のパネル、総理もごらんいただきたいと思いますが、これは実は、昨年の七月の八日に、稲わらのセシウム汚染、その汚染した稲わらを食べた牛が汚染牛として発覚して以来、今日まで判明した四千六百二十六頭、どの牛が食べたか、その全体が四千六百二十六頭なわけですが、トレーサビリティーといって、牛はみんなイヤリングをしていますから、これによって、どこで生まれ、どこに行き、どこで解体され、どこで消費されたかがわかるというはずになっておるのですが、半年以上を経た今日、一体どこでどうなって今はどうなのかということがわずか三五%しか解明されておらないというものを都道府県別にお示ししたものであります。

 これは東京都以外の県を各県挙げてございますが、例えば宮城県では、この牛が汚染した稲わらを食べただろうと思われる二千百九頭のうち、実際に検査が済んだもの、フォローできたものは五百六十九頭で、割合にすると二七%くらいである、あとはどこでどうなったかわからない。以下同じでございます。全体を見れば、わずか三五%しか汚染牛の行方はわからないという状況です。

 厚生労働省に伺います。なぜ、トレーサビリティー法がありながらこういう結末であるのか。

小宮山国務大臣 昨年七月に、放射性セシウムに汚染された稲わらが供与された、また、その疑いがある牛の肉が流通したことが判明いたしまして、直ちに関係自治体を通じて、調査、検査、暫定規制値を超える牛肉の回収等の対応をとりました。

 調査に際しましては、関係自治体で個体識別番号をもとに、屠畜場から販売先に至る牛肉の流通状況を調査し、卸売業者や販売業者等でも、個体識別番号に該当する牛肉があった場合は速やかに保健所へ通報していただくなど、自治体や事業者挙げて、できる限りの対応はとってきました。

 ただ、トレーサビリティー法では、牛肉の流通先や消費状況というところを確認できるところまではいかないんです。その結果、対象となった十五道県四千六百二十六頭のうち、現在までに千六百三十二頭の肉が検査をされまして、そのうち百五頭の牛肉が暫定規制値を超過し、回収などの措置を講じましたが、調査の段階で既に消費されていた牛肉もあったことなどから、全ての牛肉を検査するには至っていません。

 なお、この事案の判明時点で、汚染稲わらの使用は中止をされ、宮城県、福島県、岩手県、栃木県で生産される牛の肉については、原子力災害対策本部から出荷制限が指示をされました。その後、八月十九日以降、各県からの申請に基づいて、順次出荷の制限の一部が解除されまして、各県の安全管理体制のもとに、解除後に出荷された牛肉の安全性が確保されているということでございます。

 それからまた、県の立入検査、四県ではこれをしておりまして、それが未実施の農家は全頭検査を実施しています。

 そうしたことなどから、実態として、全頭検査が必要なところでは行われているというふうに承知をしています。

阿部委員 今おっしゃったのは、トレーサビリティー法があっても追跡できなかった、逆に、出口のところで、肉になるところでなるべくやっているということですが、この全頭検査体制というのも、委員長の三重県などではやっておられる、あるいは東京都も充実しておられますが、これは非常に地域差があります。

 もちろん、牛の肉、高級ですから、冷凍などせずその場で食べられたということもあるかもしれません。しかし、全体において、小宮山さんもおっしゃいましたが、わずか三五%しか判明していないということは、国民側にとっては大きな不安の材料であります。

 私は、今の小宮山さんの御発言から、見直すべきものが何であるかというのが一切浮かんでこないので残念ですが、農水大臣に伺います。

 私は、これは農水省の対応も間違っていたと思います。

 実は、七月八日に判明いたしましてから、七月の二十六日の時点で、汚染が証明された牛を買い取りましょうという方針を、当初、農水省は出されました。

 となると、例えば自分のところの牛が汚染されているかどうか、全部自己負担で、後で返ってくるかもしれませんが、自分の手間暇で、負担して、はかって証明してからしか、これは買い取りにはなりません。

 この初動のおくれ。実は、全頭買い取りになさったのは八月五日であります。約一週間あります。その間にも消費されておりますでしょう。

 ここから学ぶべき教訓は、検査の手間暇を相手にかけて、そして問題があったら持ってきなさいといっても、その手間暇あるいは態勢、機械の整備などを考えれば、迅速に可能性のあるものを全量買い取るという姿勢を農水省が示さない限り、どこに行ったかわからない、埋もれてしまうということだと思いますが、いかがですか。

鹿野国務大臣 事実関係だけ、まず申させていただきます。

 この暫定規制値超過の原因究明というようなことにおきましては、いわゆる暫定規制値を超える放射性セシウムが検出されたということを受けまして、まず、飼養管理状況がどうであるかというようなことを調査するということに入りました。そして、汚染稲わらが給与されたおそれのある牛の情報を食肉流通団体に提供してまいりまして、流通しているところの肉の回収をする、そういう措置を講ずることをやりました。そして、今先生から御指摘のとおりに、七月二十六日からは、何とか汚染稲わら給与牛肉の実質買い入れ事業を実施することによって消費者の信頼を回復するというような措置を講じたところでございます。

 そして、本事業を開始するまでの間も、農林水産省は、厚生労働省と連携をとりながら、いわゆる対象牛肉の追跡なり回収、あるいは汚染稲わらの流通状況の調査に当たってきたというところでございます。

阿部委員 農水大臣の御答弁も、やはり結果を見て言っていただきたいんですね。私は、迅速に最初から、高いか低いか、相手がはかってから買い取るという手法をとらないで、もう農水省はこの可能性があるものは買い取りますよとおっしゃっていただいたら違ったであろうと。どんどん追えなくなるんです。

 同じ問題が、今、米でも起きております。次のパネルをお願いいたします。

 米は宝です。日本の主食であります。その米に起こったことに対しても、余りにも、私は、食の安全行政は危機感が足りないと思います。

 まず、三月十二日に一号炉が水素爆発して、次々と、三号炉、二号炉、四号炉と爆発していって、その飛び散ったセシウムは広く三百キロ圏に及ぶ、このことはもう今既に判明しておるわけですが、それを踏まえて、農水省にあっては、土壌の五千ベクレル以上のところは作付制限をするけれども、それ以下は恐らく一割しか吸い上げないからいいでしょうという、まずそういう基準をつくりました。

 お百姓さんたちは、一生懸命に自分の土地をはかって、大丈夫だろうと、つくりました。ところが、九月の二十三日に、二本松市で、そうやってつくった結果なんだけれども、土地も三千ベクレルだったんだけれども、予備調査で既に五百ベクレルを超す米が出てしまったということであります。

 このときに、では、予備調査を細かくしたりいろいろしたりして、サンプルをふやしてやりましょうとやって、また福島県は懸命にやって、知事はみずから安全宣言を出されたのが十月十二日です。これで福島の米は大丈夫だと思われたと思います。

 だけれども、以下、パネルで見ていただきますように、福島市、伊達市、福島市、二本松市、伊達市、伊達市、伊達市、何と今二十九町村から何らかの形で出てしまっています。

 はいつくばるように水田で一生懸命米をつくり、いい米を食べさせてあげたいとつくってこられた農家の思いを思えば、言うとおりやってきて、決められたとおりやってきて何でこうなるんだと、怒りと失望があると思います。

 私は、まず冒頭、農水大臣に、今検査中と伺います約三万六千個、もう少し現実少ない農家数を、田んぼを調べておられるということでありますが、その間にも時間が過ぎ、彼らの生活は不安におびえています。まず、国として謝罪をしていただきたい。

 なぜならば、国の基準どおり従って、一生懸命やったことの結果をまともに受けているのは農家の皆さんであります。これは、農水行政をつかさどる者の農民の皆さんへの基本姿勢です。それがなければ、私たちは、お米をつくっていただいてありがとうという国民の思いでこれからも米づくり農家を支えていかねば、今のTPP暴風には勝てません。人が人に感謝して、恵みに感謝して、いただくのが米であります。

 一点、謝罪と、そして先ほどの牛肉の教訓、小出しにして、相手がはかるのを待って、高いものを買い取りましょう、今度、四月から百ベクレル以上は国が買い取られるそうですが、そうではなくて、まず、この二十九市町村の、そこの汚染が指摘されたところの米は国が買い上げて、国の責任で検査をなさって、売れるものは売れる、流通に出してはいけないものは出さないという挙証責任の転換を行っていただきたい。

 そうでない限り、農家はいつまでも自分たちが証明しなきゃいけない。JAもそうです。今、県がはかるそうですが、私は本末転倒だと思います。県も農民も、実は責任はありません。

 もちろん、国だって、東電が起こした事故だと言ってしまえばそれだけですが、国には第一に、この国の農政を守る、農民を守る、消費者を守るという観点が私は根本だと思いますから、謝罪と買い取りについて農水大臣のお考えを伺います。

鹿野国務大臣 非常に重要な御指摘をいただきました。

 農林水産省が設計いたしました当初の調査が終了した後に、いわゆる暫定規制値を超える放射性セシウムが検出されたということに対しましては、これは先生から御指摘のとおりに、真摯に受けとめていかなきゃならない、このように思っておるところでございます。

 そういう中で、なぜこのような状況になったかということをまずしっかりと調査をしなきゃならない、このようなことから、福島県と連携をとりまして、いわゆる原因の究明というふうなものについても中間報告を公表させていただいたところでございます。

 そして、間もなく、福島県としても調査の実態が公表されるというふうなことも聞いておるところでございますので、それを受けて、さらにその後の原因究明というものを一体的な取り組みの中でやり、来年度の作付等々に対して、このようなことがないように今後しっかりと取り組んでいかなきゃならない、このことだけは申させていただきたいと思います。

阿部委員 原因究明も大事ですし、再発防止ももちろん、今農水大臣がおっしゃったように、大事です。でも、私がお願いしているのは、目の前の農家の皆さんにどんな支援の手、救済の手が差し伸べられるかです。米は、もう私より鹿野大臣が御承知のように、米農家にとって一年に一回の大事な現金収入のその大半のものであります。

 福島県、これは米どころでありました。そして、そのセシウムが低いことがわかるまで、あるいは原因がわかるまで、あるいは風評被害で売れない分は後ほど補填しましょうじゃだめなんですね。

 大事なのは、国が前面に出ることなんです。それによって初めて、来年も頑張れると思えるんですね。そこが政治の温かさだし、私は、今、きょうも聞いていて思いました。非常に民主党の皆さんは言葉は巧みだけれども、心の部分で伝わるものがなければ、国民は消費増税もしかりです、この農水の行政もしかりです。

 せんだって、福島の二本松の三保市長も、農水大臣のところに来られて陳情をなさったと思います。誇りをかけて米をつくってきた、どうしてその米がセシウムに汚染されていないことを自分たちが証明しなきゃ売れないんだと。これを私は挙証責任の転換と申しています。

 牛でもそうでした。先ほど言ったように、あるレベル以上のものを買い取るというのでは後手になるんです。

 農水大臣、もう一回お考えいただきたいです。いかがでしょう。

鹿野国務大臣 検査、調査体制というものが、私どもとしてはこれで十分だと思っておったのがそうでなかったということは、これは反省に立って、この原因究明というものに福島県と連携をして取り組ませていただき、そして、作付を来年度どうするかということにつきましては、当然、今おっしゃられた農業者の方々、そして各地域によっても考え方がいろいろございます、そういう実態というものを踏まえて、県と連携をとりながら今後早急に決めてまいりたい、こういう考え方でございます。

阿部委員 もう最後、もう一度申します。

 昨年十一月から全部を買い上げてくださいという声は、地域の声であります。よく聞いていただきたい。鹿野大臣ならわかるはずと思います。

 そして、国による検査体制の不備というものを次に問題にさせていただきたいと思います。

 これは今、私は牛肉と米などのお話をいたしましたが、実は、これから問題になってくるのは魚であります。日本は海洋国で、米が主食で、多くの海産物を食します。その海に、実は放射能は、陸に二割、海に八割広がってしまいました。

 これは、ある民間のグリーンピースというところが、さまざまな魚を九月から十一月にかけて測定したものであります。例えば、マダラが四十七・三ベクレル。不検出のものもあります。全部がそうじゃありません。ブリも、不検出のものもあるけれども、六十ベクレル。と申しますと、これは、今後、例えば子供の基準が四十とか設定されましたときは、当然、食すことのできないものである。

 今の日本の検査体制では、はかっている自治体、あるいは大手のスーパーははかれても、はかる資本力のないところ、人手のないところ、体制の整わないところははかれない。結局、消費者の不安で、生産者も、あるいは流通業者も、小売店も潰れてしまいかねない。

 私は、TPPに反対する理由もそうですが、大手のというか大きな資本力のひとり勝ちじゃなくて、この国は、野田総理が言うように、分厚い中間層、みんなで支える、消費は一番その原点であります。

 今、農水省と厚生労働省、食の安全において両省は、逆に言うと、各省間の縦割りで、本当に必要な測定体制というものを自治体任せにしていると思います。このことは、私は、きょうお二方おられますが、どちらとも決めかねるので、きょう私がお伝えしたこと、では、短くお願いします。

小宮山国務大臣 これまでも、自治体が厚労省が決めました基準に従って検査をしていることを、国の試験場なども使ってしっかりとそこのところは支援をし、また、簡易測定機器の導入を促進したりして支援をしてまいりました。

 今度四月から、おっしゃるように、これまでの安全の基準に安心も加えたいということで、五分の一の、年間一ミリシーベルトにいたします。そのためにはかなり精度の高い器材でやらないといけませんので、ゲルマニウム半導体検出器の導入の費用の一部を助成したり、あるいは検疫所また国立試験研究機関での検査の実施、このために必要な予算を二十四年度の予算の中に入れました。

 それからまた、放射性物質検査のためのガイドライン、また簡易測定機器の導入のための技術的な支援についても見直しをしています。

 ここは農水省、消費者庁とも連携をして、きちんとそれをはかって、安心できるようにしていきたいと思います。

阿部委員 今回組まれました四次補正、あるいは三次補正においても、まだまだ現実には足りておりません、金額もそういう機器も。

 小宮山大臣は厚労大臣ですから、私は、特に保育園のことを申し上げたいです。

 小さな子供を預かっております。保育園は空間線量の測定もおくれました。食品においても、学校給食が先んじています。きょうも厚労省に伺いましたが、ほとんど実態を把握しておられません。子供たちを守ろうという強い意思がなければ、起きたことについては、親御さんの抱える不安も含めて、守っていけません。ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 最後になりますが、文部科学省にお伺いいたします。

 実は、今、私がるる申し上げたような食品の汚染については、一九六三年から、日常食、日ごろ食べる食事を、陰膳方式といって、一食一人分余分につくって、それを集めて、どのくらいのセシウムやストロンチウムが含まれていたかを二〇〇八年までずっと計測しておりました。きっかけは、原水爆実験であります。第五福竜丸やムルロア環礁での被曝の問題がきっかけになり、我が国の文科省は、約十三項目、経年的に測定をしておりました。二〇〇八年にやめてしまいました。

 そして今回、食品汚染が心配されるので、京都大学と朝日新聞がはかられたのが端の方の赤い点であります。福島では一日平均四ベクレル、もう少し幅があります。福島以外の地域では〇・三五。では、この値は、一九六三年からの経年と比べると、那辺に、どこに位置するかというと、盛んに核実験がなされていたころと同じ、グラフにすると左端と同じ値であります。

 本来、文科省は、今この時点で、二〇〇八年にやめた検査を再開すべきです。今度、四月から厚労省が部分的にははかられます。この文科省の検査は全国やっておられます。私は、これが基準値とか安全値とか言わないで、きちんとデータの経緯と推移を見ていくこと、自治体間の違いを見ていくこと、後からそれが何であったかがわかります。今の基準値は我慢量と言われています、どのくらい我慢できると。でも、安全性や健康への問題は誰もまだ検証されておりません。

 文部科学大臣、ぜひ再開していただきたい。いかがでしょうか。

平野(博)国務大臣 お答えをいたします。

 阿部先生はよくお調べになっておられますので、ダブるところは大変申しわけなく思います。

 先ほど、文部科学省として、特に核実験の大気汚染におけるそういうデータ調査を実は一九五七年からやっておりました。加えて、その一環として、一九六三年から食についての部分を始めてきたところであります。二〇〇八年まで先生がおっしゃるとおりやってまいりましたけれども、時間の経過とともに、測定の結果の数値が非常に検出限界未満まで下がってきた、こういうことで二〇〇八年度をもって中止をした、こういうのが経過でございます。

 しかし一方、福島の原発事故に関しては、食の安全、安心から、まさに食品のモニタリングは非常に重要である。先ほど小宮山大臣の方からもお述べになりましたが、厚生労働省においては、日常的には放射性物質の調査をやっている。

 ただし、今先生御指摘の、全国にくまなく綿密にやれているかどうかということについては今後の課題としてございますけれども、文部科学省としては、特に子供の命を守る、こういう視点で、特に学校給食についてはダブルチェックをかけられるように今努めておるところでございますし、特に福島県におきましては、県内の各学校、給食センターにおきましては、しっかりとチェックをする仕組みをつくってまいりたい、かように思っています。

 加えて、先生、先ほど言われましたが、検出器の精度が、やはり非破壊でスピードを持った検出器の開発が望まれる、このことについても文科省としても考えなきゃならない、かように思っております。

 以上です。

阿部委員 済みません、一言だけ。

 同じ検査を、継続性が大事だから、再開していただきたいと思います。

 終わります。

中井委員長 これにて阿部さんの質疑は終了いたしました。

 次に、浅尾慶一郎君。

浅尾委員 私の方は、税と社会保障改革について、社会保障を中心に質問させていただきたいと思います。

 まず、先日の代表質問で、累次の御答弁でもありましたけれども、いわゆる年金の一元化をしても、答弁のところを読み上げますと、二〇一五年度の段階において、現行制度による場合と比較して大きな追加財源が必要になるものではないという趣旨の答弁を総理はされております。趣旨というか、まさに読み上げたらそういうことなんですが、私の理解では、年金制度を変更すると、例えば学生さんとか自営業者の奥さんとか、あるいは、収入はあるけれどもいろいろ経費を引いていくと、もちろん国民年金保険料も含めて、所得がないというような人は、こういう場合は保険方式から変わるということですけれども、一体どういう保険料を払うんですか。今の国民年金保険料というのはなくなるわけでしょう。ですから、どういう保険料を払うんですか。

小宮山国務大臣 それは、基礎年金ではなくて、所得比例の部分。そこは所得がなければ払わない。

 総理が御答弁された、そんなに大きな負担はないというのは、先ほど申し上げたように、全部移行するのは四十年後ですから、始まっても最初の一年は前のと併用いたしますので、ほんのわずかだという意味で、今回には余り影響がないと答弁をされたと思います。

浅尾委員 ちょっと私、よく理解できないんですね。

 つまり、今は保険料を、学生さんも、免除になっておられる方もいらっしゃいますけれども、自営業者の奥さんで働いていない方、収入がない方は払っておられます。そういう方たちは保険料を払わなくていいわけですね、基礎年金の。

 しかも、今の年金制度というのは賦課方式ですから、基本的にその年に入ってきた保険料を今の年金で分けている。そうすると、保険料収入が減るわけじゃないですか。保険料収入が減る分はどうやって負担するんですか。それがないにもかかわらず、どうして追加の財源が要らなくなるというふうにおっしゃれるのかなと。

 今、小宮山さんが御答弁されたのは、将来受給されるときの分がもともと保険料を払っている部分とどうか。その個々人ではそうですけれども、全体の年金のプールでいったら、移行した瞬間に保険料収入が減るんじゃないですか。

 減るか減らないか、それだけ御答弁ください。

小宮山国務大臣 それは、今具体的な制度設計を党の方でされていると承知していますが、どのように制度設計をするかによるのだと思います。

浅尾委員 ちょっとよくわからないですね。

 どのように制度設計されるかによるというんですけれども、では、保険料を払わなくていい人が出るんじゃないですか。出ないんですか。

小宮山国務大臣 今度、低い人の分は低くなりますが、高い人は高く払うので、全体としてそんなに負担が変わるというものではないというふうに考えます。

浅尾委員 なぜ高い人は高くなるんですか。

小宮山国務大臣 報酬比例年金というのは報酬に比例して払うわけですから、高い人は一層高くなり、低い人の分は低くなりますが、全体としてはそんなに変わらないというふうに、制度設計次第ではありますけれども、考えています。

浅尾委員 報酬比例年金は、報酬に比例して払う。ということは、例えば厚生年金、今、報酬比例になっていないですね。千九百九十二万円を超える報酬には保険料がかからないですね。それを変えるんですか。

小宮山国務大臣 今回は、国民年金も厚生年金も全部一緒にして、それで所得比例にいたしますので、ちょっと御質問の意味がよくわかりませんが。

浅尾委員 そんなに難しいことを言っているつもりはないんですよ。ですから、今、国民年金の少なくとも保険料を払っておられる方、いわゆる基礎年金部分については保険料が入らなくなるんじゃないですかと。そういう設計でしょう。基礎年金部分のうちで税でない部分、二分の一税でやるとしても、半分は税でないということになれば、簡単に言えば七兆五千億分の保険料が入ってこなくなるということじゃないですか。

 では、それ以外の部分はすぐ変わらないというんだったら、まず、減る部分がこれぐらいで、ふえる部分がこれぐらいでないと、この答弁にはならないはずなんです。制度設計をしていないので幾らになるかわからないというなら正しい答弁ですけれども、追加のものがないというふうに断じていることはおかしいんじゃないですかということですよ。

小宮山国務大臣 今、所得の高い方は頭打ちにしていますけれども、そこを頭打ちにするかどうかとか、そこが大差ないような形に制度設計をするのではないかというふうに考えております。制度設計次第です、そこは。

浅尾委員 ですから、私が申し上げているのは、代表質問で、野田総理の答弁を読み上げますよ。二〇一五年度の段階において、現行制度による場合と比較して大きな追加財源が必要になるものではないというふうに言っておられるので、制度設計によってはあるかもしれないといったら、この答弁自体がうそじゃないですか。

小宮山国務大臣 浅尾委員は、税でやる部分と保険料でやる部分をちょっと混同されているのではないかと思うんですが、そこは、税でやる部分は税ですので、保険料自体としては今私が申し上げたようなことになります。

浅尾委員 よくわからないんですね。だって、保険料を払わなくてよくなる人がいるのは認めておられるわけでしょう。国民年金の保険料の収入がなくなるわけじゃないですか。ですから、この分だけの保険料がなくなるといったら、どこかでふやさない限りはその分のお金がなくなるんじゃないですか。

 ですから、保険料を払わなくてよくなる方の保険料がどれぐらい減るかということを言わない限り、それでどこかでこれだけふえるということを言わない限り、こういう答弁にならないんじゃないですか。

 ですから、まず、大臣が混乱されていると思いますから、簡単に聞きます。保険料を払わなくていい人はいるんですか、いないんですか。制度変更した瞬間に払わなくてよくなる人がいるんですか、いないんですか。

小宮山国務大臣 それは、所得のない人は払わないわけですから、払わない人はいます。

 先ほど申し上げたように、今まで頭打ちにしている高額の部分の頭打ちをどうするか、所得に比例してずっと高い方が払うようにすれば、そこのところはちゃんと見合ってくるような制度設計をすればよいのだというふうに思います。

浅尾委員 ということは、例えば厚生年金の保険料、今、上限があるということを申し上げました。これは、試算で、厚生年金の保険料の上限を取っ払うと二兆一千億円ぐらいふえるんですよ、収入は。でも、それは、そういうことをやると決めたのかどうか。決めていないけれども、保険料を払わない人が出るけれども、ふえる方はどうなっているか決まっていないとなったら、この答弁にならないんじゃないですかと、すごく簡単なことを聞いているつもりなんですけれども。

 簡単なことを伺っているので、要するに、保険料を払わなくてよくなる人の分の単年度の収入はどこで補うかの積算はしたんですかという質問です。

小宮山国務大臣 これまで国民年金の保険料というのは定額ですが、今回、その国民年金の部分も所得に応じたところは所得比例になりますので、そういう意味で、私が言っていることで、制度設計次第でそういうふうになるようにするということは、そういう考え方だというふうに御理解いただきたいと思います。

浅尾委員 国民年金だけの世界で考えてみましょうか。

 そうすると、国民年金の中で定額で払っていられるということは、所得の低い方からすると、これは逆進的なんですよ、今の制度というのは。その国民年金の世界の方に、制度設計次第によっては今よりも多く負担していただくということで、ちゃんと計算をして今と変わらないということになっているのか、計算はしていないけれども何となくそういうふうに思ったのでこういう答えになっているのか、それをお答えいただきたい。

 仮に計算しているといったら、今まで払っていた方による、要するに定額の保険料を払わなくてよくなる部分による減収と、今定額のところが報酬比例になることによる増収額の数字を出してください。

小宮山国務大臣 それは、党の方でこれから設計をされますので、今、私の方で試算をして出すということではないというふうに思います。

浅尾委員 では、別の角度から聞きますよ。

 そうしたら、現行制度による場合と比較して大きな追加財源が必要になるものではないと思われるぐらいに言わないと、うそになるじゃないですか、計算していないんだから。

古川国務大臣 私は担当大臣じゃないんですが、この年金制度の、新制度の設計の一人でもありますから、ちょっと答弁させていただきます。

 これは浅尾議員もわかっていらっしゃると思いますけれども、まさに、今民主党の新制度で所得比例年金の保険料率を一五%に置いているというのは、現行制度で将来払わなければいけない給付の部分を、この一五%の保険料で置くと、大体これはマクロ的に言ってそこの部分でそれも賄えるだろう、そういうところから一五%という数字を今置かせていただいているところでございますので、浅尾議員は非常にミクロのところでおっしゃっていますけれども、年金財政全体で見れば、新制度と旧制度、これは一五%という程度に保険料率を置けば大体それは賄える、そういう私どもの考えで提案をさせていただいているということでございます。

浅尾委員 では、これは時間がなくなりますから委員長にお願いしますけれども、いわゆる現行制度で言われている基礎年金部分の保険料収入が、特に国民年金の定額の部分がなくなるわけですから、その試算と、そうでない、国民年金に加入している方の分の、ふえる部分の数字を出していただきたいと思います。

 それが出せないというのはこの答弁にならないと思いますので、そのことをお願いさせていただきたいと思います。

中井委員長 理事会で協議いたします。

浅尾委員 次の質問に移らせていただきたいと思いますが、一方で、民主党はマニフェストで、歳入庁をつくるということでありました。

 これも、マニフェスト二〇〇九では、年金保険料の問題に取り組むとの観点から、社会保険庁と国税庁を統合して歳入庁を創設するとしておりましたが、二〇一〇年一月に日本年金機構を設立し、同機構のもとで年金の信頼回復に取り組んできたところでありますということなので、この答弁だけを読みますと、社会保険庁ではできていなかったんだけれども、日本年金機構になった結果、徴収率が上がったというふうにとれるんですが、そういう事実はあるんですか。

小宮山国務大臣 国民年金保険料の納付率は、平成十八年度以降、低下傾向が続いています。日本年金機構発足後の平成二十二年度についても、前年度に比べると低下するなど、大変厳しい状況だと認識しています。

 そうした中ですけれども、低下幅は前年よりは縮小している。また、年金事務所単位で見ますと、およそ二割の事務所では前年より納付率が向上しているなど、その低下傾向に歯どめがかかりつつある、そういう兆しもあると思っています。

 今年度分については、直近の十一月末現在、対前年同月比でマイナス〇・二ポイントのところまで回復をしているというのが現状でございます。

浅尾委員 実は、この歳入庁というものの最大のメリットは、今パネルに出しましたけれども、国税庁というのは全国に一体どれぐらいの法人があるかという情報を全部持っているんです。なぜ持っているかというと、法務局に登記した情報が全て国税庁に行っているので、その情報を持っている。

 結果として、毎年、これは平成二十一年の数字ですけれども、二百七十三万一千七百六十八法人が赤字であっても申告している。赤字であっても申告しているということは、そこで働いている人の給与の源泉徴収についてはちゃんと納められていますよということなんです。ですから、給与についての所得税はちゃんと入ってきている。

 一方で、法人は全て厚生年金に加入をする義務があるんですが、昔の社会保険庁、今の日本年金機構はまだこの法人データというのは持っていません。持っていない結果、聞くと、大体どれぐらいの法人が加入しているんですかと言うと、答えはわからない。ただ、わかるのは、百七十五万事業所が加入していると。

 この事業所というのは、支店や工場も一事業所でカウントしますから、ですから、百七十五万事業所ということは、多分、八十万法人ぐらいしか厚生年金に加入していない。歳入庁をつくれば、二百七十三万一千七百六十八法人とこの八十万ぐらいの推計の法人数とが一発でわかるじゃないですか。しかも、それは私が言っているわけじゃなくて、民主党自身がマニフェストで約束したことだから、それはさっさと、税と社会保障の一体改革というんだったら、社会保険の保険料徴収の部分の改革の一丁目一番地だと思いますよ。

 なおかつ、どれぐらいの徴収漏れがあるかというのを推計してみました。推計してみると、民間の給与所得者というのが五千三百八十八万四千人、厚生年金の被保険者というのは三千四百二十四万八千人ということなんですが、これは、いろいろな計算式を置いていくと、年金の保険料だけで六兆六百七十五億円。健康保険も一緒ですから、大体十二兆円ぐらい毎年毎年の徴収漏れがあるということなので、まず、歳入庁をつくれば未加入の法人というのはすぐなくなると思いますが、すぐなくならないというんだったら、なぜなくならないのか、それをお答えいただきたいと思います。そのことについて、これは一体改革相に聞いた方がいいかもしれないですね。

岡田国務大臣 まず、歳入庁につきましては、我々は、社会保障・税一体改革の素案の中で、「歳入庁の創設による、税と社会保険料を徴収する体制の構築について直ちに本格的な作業に着手する。」というふうに整理をしております。したがって、歳入庁に関して検討を早急に開始したいというふうに考えているところであります。

 浅尾さんの御指摘は、渡辺議員が本会議でも述べられたところですが、非常におもしろい話だと思いました。ただ、逆に言いますと、その差額はお示しされた資料によりますと六兆円ぐらいということになるわけですが、六兆円がすぐ入ってくるのならいいんですが、現実にどれだけ中小企業でそれにたえ得る企業があるのだろうか、そういうこともあわせ考えていかないと、机上の計算だけになってしまうのかな、そういうふうに受けとめた次第です。

浅尾委員 今の岡田大臣の答弁は一つ問題があると私は思います。財政的にたえられるかどうかという話と、じゃ、法律違反を大臣として放置していいかどうかという話は、別の次元の話なんじゃないかなと。

 つまりは、加入する義務もありますし、今でも、日本年金機構は職権で加入を命じられるんですよ。加入を命じられるけれども、基本的にはやっていないことが相当多いので、それは、もしそうだとするならば、中小企業については保険料を減免するというようなことを政策的にやらないと、法治国家としてはおかしいということになりますが、その点はどう思われますか。

岡田国務大臣 今のお話で私がどこまで理解しているかですが、給与所得者が五千三百八十八万人いる、これは、厚生年金の対象になる正規の社員がこれだけいるということなんでしょうか。

浅尾委員 実は、会社が税務署に申告するときに、五百万円以上については、いわゆる個人の住民票のデータも含めて税務署に出します。五百万円以下の人については何人という人数を出しますが、それは月額報酬八万八千円以上の人ということになっています。そして、厚生年金の対象というのは九万八千円というのが標準報酬月額なので、じゃ、一万円の間に二千何百万人もいるかというような話もあります。

 もしそういうふうにおっしゃるんであれば、きょうはちょっと、これはかなり数字が入った話ですから、衆議院の調査室に詳細なものもつくってもらったものがあります、国民年金の未納率も入れて。結果としては、数字としては、十二兆というのは数字は変わりません。変わりませんので、ぜひ、検討するというんだったら、政府の側でも未加入の人を入れたらどうなるかという試算をやってみたらいいじゃないですか。

岡田国務大臣 なかなか計算どおりにはいかない部分はあると思いますが、私ども、御指摘としては非常に興味深い御指摘ですので、政府の方でも試算をしてみたいというふうに考えています。

浅尾委員 もう一点だけ指摘をさせていただきたいと思いますが、これは指摘だけで御答弁は結構ですけれども、歳入庁をつくったときに、実は、企業側は大変な行政サービスの向上になります。三カ所に納付していたのが一カ所になるということで、非常に書類も減るという面でメリットがあるということだけを指摘させていただいて、残り五分なので最後の質問に移らせていただきます。

 今度は被用者年金の一元化ということで申し上げたいんですが、この被用者年金の一元化に当たって、実は、民間と公務員の雇用者報酬、これは毎回予算委員会で出しています。今回二〇〇五年版に改修していますが、これを見ても、平均の倍以上なんですよ。雇用者報酬が公務員の方が全国平均の倍、これは政府が出している数字です。

 しかも、トレンドは、全国は下がっている、公務員の方は少し上がっている、まあ変わっていないというふうに言ってもいいかもしれません。この二〇〇五年版は、公務の世界にある非正規の人も全部含めた集計になっていますから、非常に正確な数字です。ですから、公務の中の正社員は、もう少し雇用者報酬としては多い。雇用者報酬として多い理由というのは、年収が多いということよりも、年金、退職金といったような、やめた後の福利厚生がいいということなんですが、この被用者年金の一元化に当たって、ちょっと質問させていただきたいんです。

 まず、経済産業大臣、東京電力の企業年金について、東電の置かれている社会的な状況を考えたら企業年金もカットするべきだというふうに記者会見でおっしゃっておられると思いますが、その事実に間違いありませんね。

枝野国務大臣 御指摘のとおり、まず、昨年の五月十三日の参議院予算委員会において、東京電力の当時の清水社長が、退職金、年金の問題については現時点では検討いたしておりませんという答弁がございまして、それについて、官房長官当時、記者会見で聞かれましたので、東電の置かれている社会的状況を理解されていないなと感じましたと申し上げました。

浅尾委員 それで、今回、消費税増税ということを野田政権としてはおっしゃる。そういう中にあって、民間と比べて倍の雇用者報酬というところに私はやはりメスを入れていくべきだろうと。我々としては、二割削減ということを言っております。

 その中で、一つ、被用者年金の一元化ということを考えた場合に、厚生年金が持っている単年度の支払い金に対する積立金というのは、大体四・二年分持っているんです。ですから、毎年毎年、きょう現在払われる金額の四・二倍ぐらい厚生年金は持っている。ところが、国家公務員共済六・六年とか地方公務員共済十・二年とかということで、積立金の額は公務員の方が多いんです。

 このこと自体も私は不思議なんですが、実は、公務員の方の共済年金の方が、厚生年金よりも保険料の料率が低いんです。保険料の料率が低い。料率が低いにもかかわらず積立金が何で多いんだろうなというふうに思ったんですが、実は、調べてみますと、厚生年金にはない制度が公務員の共済年金にあって、それは、厚生年金というのは労使折半です。ですから、月給から一万円引かれたとすると雇用主が一万円負担するというのが厚生年金の世界なんですが、共済年金は、一万円引かれると、国や地方自治体が一万円負担するのとは別に、さらに八千円、毎年毎年八千円ぐらいの追加費用というのが出ています。これは国、地方合わせると毎年一兆数千億円になるんですが、一兆数千億円の追加費用というのが別に出ています。それがあるから、積立金が厚生年金よりも多いということなんです。

 この積立金の超過分というのが二十一兆ぐらいあるんです。二十一兆あったら何ができるかというと、基礎年金の国庫負担三分の一から二分の一にするのにかかる費用というのが二兆五千億ですから、八年間は消費税を財源にしなくてもできるじゃないか。しかも、この出どころは税金ですよ。一対一で負担しているんだったら、私はこんなこと言いません。しかし、追加費用が入っていて積立金が多いんだったら、その二十兆は国庫負担増加分に充てたらいいんじゃないか。

 被用者年金の一元化に当たって、これから制度設計されるんですから、そういうことを考えられたらいかがでしょうか。

中井委員長 もう終わりの時間が来ていますから、最後に野田総理大臣。

野田内閣総理大臣 共済年金の積立金というのは、これは共済年金の支給に必要なものとして、御指摘のように、労使折半で積み立ててきたものでございます。

 被用者年金一元化に当たりましては、一元化後のいわゆる三階部分などは検討を要する点があると思いますけれども、御指摘の共済年金の積立金については、厚生年金の積立金に相当する部分とそれ以外の部分を一定のルールで仕分けることとなります。厚生年金の積立金相当部分以外の部分は、職域部分の過去期間給付などの財源に必要なものであり、共済年金以外の財源に回すような性格のものではないと承知をしています。

中井委員長 これにて浅尾君の質疑は終了いたしました。

 これをもちまして各会派一巡の基本的質疑は終了いたしました。

 次回は、明二日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十分散会


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