衆議院

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第7号 平成24年2月10日(金曜日)

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平成二十四年二月十日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 中井  洽君

   理事 笹木 竜三君 理事 武正 公一君

   理事 西村智奈美君 理事 鉢呂 吉雄君

   理事 若井 康彦君 理事 若泉 征三君

   理事 石破  茂君 理事 小池百合子君

   理事 高木 陽介君

      石関 貴史君    石山 敬貴君

      磯谷香代子君    今井 雅人君

      打越あかし君    江端 貴子君

      大西 健介君    金森  正君

      神山 洋介君    木内 孝胤君

      岸本 周平君    櫛渕 万里君

      近藤 和也君    佐々木隆博君

      瑞慶覧長敏君    玉木雄一郎君

      中根 康浩君    中林美恵子君

      長尾  敬君    仁木 博文君

      橋本 博明君    花咲 宏基君

      藤田 憲彦君    馬淵 澄夫君

      水野 智彦君    村越 祐民君

      室井 秀子君    山岡 達丸君

      山崎  誠君    山田 良司君

      湯原 俊二君    渡部 恒三君

      あべ 俊子君    赤澤 亮正君

      伊東 良孝君    小里 泰弘君

      金子 一義君    金田 勝年君

      鴨下 一郎君    小泉進次郎君

      佐田玄一郎君    菅原 一秀君

      橘 慶一郎君    徳田  毅君

      西村 康稔君    野田  毅君

      馳   浩君    茂木 敏充君

      山本 幸三君    稲津  久君

      佐藤 茂樹君    斉藤 鉄夫君

      東  順治君    笠井  亮君

      志位 和夫君    内山  晃君

      阿部 知子君    浅尾慶一郎君

      山内 康一君    中島 正純君

      石川 知裕君   松木けんこう君

    …………………………………

   内閣総理大臣       野田 佳彦君

   国務大臣

   (社会保障・税一体改革担当)

   (「新しい公共」担当)

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)

   (行政刷新担当)     岡田 克也君

   総務大臣

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (地域主権推進担当)   川端 達夫君

   法務大臣         小川 敏夫君

   外務大臣         玄葉光一郎君

   財務大臣         安住  淳君

   文部科学大臣       平野 博文君

   厚生労働大臣       小宮山洋子君

   農林水産大臣       鹿野 道彦君

   経済産業大臣

   国務大臣

   (原子力損害賠償支援機構担当)          枝野 幸男君

   国土交通大臣       前田 武志君

   環境大臣

   国務大臣

   (原発事故の収束及び再発防止担当)

   (原子力行政担当)    細野 豪志君

   防衛大臣         田中 直紀君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     藤村  修君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (消費者及び食品安全担当)            松原  仁君

   国務大臣

   (金融担当)       自見庄三郎君

   国務大臣

   (国家戦略担当)

   (経済財政政策担当)

   (科学技術政策担当)   古川 元久君

   国務大臣

   (復興大臣)

   (東日本大震災復興対策担当)

   (防災担当)       平野 達男君

   財務副大臣        五十嵐文彦君

   防衛副大臣        渡辺  周君

   内閣府大臣政務官

   兼復興大臣政務官     大串 博志君

   財務大臣政務官      三谷 光男君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    山本 庸幸君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  榮畑  潤君

   参考人

   (日本銀行総裁)     白川 方明君

   予算委員会専門員     春日  昇君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月十日

 辞任         補欠選任

  打越あかし君     藤田 憲彦君

  櫛渕 万里君     瑞慶覧長敏君

  佐々木隆博君     石山 敬貴君

  中根 康浩君     磯谷香代子君

  馬淵 澄夫君     木内 孝胤君

  山崎  誠君     神山 洋介君

  伊東 良孝君     菅原 一秀君

  小里 泰弘君     茂木 敏充君

  橘 慶一郎君     徳田  毅君

  高木 陽介君     佐藤 茂樹君

  東  順治君     斉藤 鉄夫君

  笠井  亮君     志位 和夫君

  山内 康一君     浅尾慶一郎君

  松木けんこう君    石川 知裕君

同日

 辞任         補欠選任

  石山 敬貴君     佐々木隆博君

  磯谷香代子君     水野 智彦君

  神山 洋介君     山崎  誠君

  木内 孝胤君     中林美恵子君

  瑞慶覧長敏君     櫛渕 万里君

  藤田 憲彦君     打越あかし君

  菅原 一秀君     西村 康稔君

  徳田  毅君     橘 慶一郎君

  茂木 敏充君     鴨下 一郎君

  佐藤 茂樹君     高木 陽介君

  斉藤 鉄夫君     稲津  久君

  志位 和夫君     笠井  亮君

  浅尾慶一郎君     山内 康一君

  石川 知裕君     松木けんこう君

同日

 辞任         補欠選任

  中林美恵子君     長尾  敬君

  水野 智彦君     中根 康浩君

  鴨下 一郎君     小里 泰弘君

  西村 康稔君     あべ 俊子君

  稲津  久君     東  順治君

同日

 辞任         補欠選任

  中根 康浩君     杉本かずみ君

  長尾  敬君     馬淵 澄夫君

  あべ 俊子君     小泉進次郎君

同日

 辞任         補欠選任

  小泉進次郎君     伊東 良孝君

同日

 理事高木陽介君同日委員辞任につき、その補欠として高木陽介君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成二十四年度一般会計予算

 平成二十四年度特別会計予算

 平成二十四年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

中井委員長 これより会議を開きます。

 平成二十四年度一般会計予算、平成二十四年度特別会計予算、平成二十四年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑を行います。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省年金局長榮畑潤君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

中井委員長 昨日の石原伸晃君の質疑に関連し、茂木敏充君から質疑の申し出があります。石原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。茂木敏充君。

茂木委員 おはようございます。自由民主党の茂木敏充です。

 平成二十四年度予算に関して質問させていただきます。

 私は、平成二十四年度予算案、大きく五つの問題点があると思っております。きょうはこの五つの問題点に関連して、自由民主党だったらこうする、そういった対案、そして提案も含めて議論させていただきたい、こんなふうに思っております。

 早速、図の一をごらんください。平成二十四年度予算の五つの問題点です。

 まず、マニフェスト。平成二十四年度は、子ども手当を所得制限のついた児童手当に逆戻り。高速道路の無料化も予算計上はしない。その一方で、八ツ場ダムは中止から一転して本体工事の着工へと、まさにマニフェスト総崩れであります。

 そして、社会保障制度。最低保障年金は実施しない、後期高齢者医療制度の廃止は先送り。そして、七十歳から七十四歳の医療費の窓口負担二割も先送り。先送り予算、問題先送り以外の何物でもありません。

 そして三番目に、財政規律は一体守られたのか。政府は、一般会計の九十・三兆円など、中期財政フレームの大枠を守ったと言いますけれども、年金の国庫負担の財源二分の一については、交付国債による隠れ借金ができる。そして復興特会に、例えば全国防災、こういった事業をつけかえる。こういったことで、実態は九十六・七兆円、過去最大であります。そして、国債比率は四九%、過去最悪であります。いわば歳出削減の粉飾予算、さらに言えば財政規律の偽装予算だ、こんなふうにも言われております。

 そして四番目に、復興事業はどうか。復興集中期間五年間、これで十九兆円の事業を予定しておりましたが、平成二十四年、二年目で既に事業費が十八兆円、もう財源が枯渇寸前であります。復興計画膨張予算、復興計画の破綻が明らかになりつつある予算だ、こんなふうに考えております。

 そして、最後に経済対策であります、五番目。現下のデフレ、超円高によって、パナソニック、ソニー、シャープ、大手の製造業、三月期の決算、全て赤字であります。日本経済が深刻なダメージを受けているのに、何ら有効な対策を打っていない。まさに、円高そしてデフレ無策予算であります。

 きょうはこれら五つの問題点を中心に議論をしていきたい、こんなふうに思っております。

 まず、マニフェストであります。

 ガソリンの暫定税率の撤廃、これは一年目から撤回ということになりました。そして、後期高齢者医療制度の廃止も、天下りの撤廃も、国家公務員の総人件費二割削減も、全く実施をされていない。マニフェスト施策は既に風前のともしびであった。ついに、平成二十四年度予算では、民主党マニフェストの一番の目玉でありました子ども手当も、制度的には所得制限のついた自公政権時代の児童手当に逆戻りであります。高速道路無料化、予算計上は見送り。まさにマニフェスト総崩れ。

 しかも、コンクリートから人へと言いながら、図の二をごらんください、子供に対する手当では、二十三年度の予算二・二兆円に対して、二十四年度は一・三兆円と半減。半額支給であった初年度の一・七兆円と比べても下回っているわけであります。その一方で、八ツ場ダムについては本体工事の着工、そして東京外環道路の建設再開など、大型公共事業は復活しております。人からコンクリートへ逆流しているんですよ。

 総理、いかがですか。

岡田国務大臣 委員の今のお話を聞いて、私は非常に残念な思いであります。

 例えば、子ども手当。これは、我々としてはもっと予算をふやしたいという強い思いはありましたし、今もございます。しかし、それでは法案を認めないという自由民主党の主張に基づいて、お互い幹事長間で協議をして、そういう中でお互い合意をして、今の子ども手当というか児童手当の改正法、これに変えたわけでございます。

 私は、委員にお聞きしたいんですけれども……(発言する者あり)ちょっと静かにして。委員にお聞きしたいんですけれども、お互い政党同士誠意を尽くして合意したことを、合意したら今度はマニフェスト違反だと言ってなじる、そういうやり方がフェアかどうか、ぜひお聞きしたいと思います。

茂木委員 岡田副総理、そういうお話をされると思いました。

 三党合意、誠実に履行されたでしょうか。確かに合意をいたしました。その上で、子ども手当についても、これは児童手当に制度的には戻ったんですよ。ところが、名称については、勝手に民主党の方が子どものための手当と決める。高校無償化の問題そして戸別所得補償の問題、政策効果を検証して見直しをする、それが三党合意なんですよ。ところが、三党合意を守らずに、協議も途中で予算を出したのは皆さんの方じゃないですか。誠意がないのは今の政府だと私は思っております。

 そこで、ではお聞きをいたします。

 財務大臣、子ども手当を自分たちはやりたかったと。では、二万六千円全額支給したとして、四十四兆円の枠におさまりましたか、お答えください。財務大臣に聞いています。

岡田国務大臣 まず、子ども手当については、児童手当法の改正でやる、これは決まったことで、我々もそういう前提で考えております。

 各党間、特に三党間で議論をして、そして二つだけ合意できないことがあったんですね。そのうちの一つが名前です。名前については、これからお互い協議して決めようということにいたしました。ですから、今でも我々、別に、協議をして名前を決めることに全くやぶさかではありません。予算を出すまでにまとまらなかったことは残念です。しかし、まとまらなかったことについて、我々だけに責任があるというふうには私は考えておりません。

 子ども手当については、ぜひお願いしたいんですが、名称の点とそれから年少扶養控除の扱い、この二つ以外は合意しているわけで、そういう意味では八合目、九合目まで三党で合意しているんですよ。ぜひ協議して、残りを早く決めて、子ども手当あるいは児童手当、どちらでもいいんですが、それを待っている子供を持つ若い夫婦が安心して、ことしは幾ら入ってくるんだということをきちっと確認できるように、ぜひ御協力をいただきたいというふうに思っております。

安住国務大臣 おはようございます。

 半額支給で二・七、もしマニフェストどおりだとすれば五・五兆の歳出が予定されておりましたので、四十四兆の枠でおさまるかと言われると、非常に厳しいということは事実でございます。

茂木委員 四十四兆の枠でおさまらなかったんですよ。こちら岸には二万六千円の子ども手当がある、しかし、それでは四十四兆の川を渡れない、我々の、所得制限をつけるべきだ、児童手当に戻るべきだ、まさにこれは渡りに船だったんだと思います。

 基本的に、十六・八兆の財源を無駄の削減と予算の組み替えで捻出して、増税なしに全ての政策を実行すると四年間のプログラムを書いた、この構造自体に私は問題があったんだと思いますよ。

 マニフェストがいかに実行できていないか、数字で見てみましょう。図の三をごらんください。

 マニフェストの実施率、毎年下がっているんですよ。平成二十四年度はついに二〇%という数字であります。そして、実施額自体も、二十三年度と比べても減っているわけであります。初年度が四十四点、二年度が二十九点、三年度は二十点、どう考えても落第じゃないですか。

 マニフェストはどう見ても破綻していると思いますけれども、いかがですか。

岡田国務大臣 この数字は一定の前提に基づいて計算されたものでありますが、例えばこの大震災、東日本大震災の影響というものをどう考えるか。委員も御指摘になった高速無料化をやめるということ、これについては一つの判断をしているわけです、それよりはやはり被災地のために使うべきであると。この大震災のためにそういった形でマニフェストから財源を出したものもございます。そういうものを勘案することがない数字であるというふうに考えております。

茂木委員 東日本大震災の影響、こういうようなお話をされますけれども、それで減額した分は〇・四兆ですから。きちんと数字をつかまえた上で、できていないことはできていないと素直に認められたらいい、私はこんなふうに思っております。

 そして、問題も全て先送りをするんですよ。例えば消費税の増税の時期、引き上げの時期でありますけれども、もともとは二〇一三年の十月に八%、一五年の四月に一〇%、これが原案であったと思います。結局、それが、民主党の圧力もあったんだと思いますけれども、二〇一四年の四月に八%、そして二〇一五年の十月に一〇%と先延ばしになったわけであります。

 総理は、財政再建は待ったなしの状況だ、こういうことを言いながら、なぜ、引き上げ時期、先延ばしをされたんですか。総理、お答えください。

野田内閣総理大臣 去年まとめました一体改革の成案で、段階的に二〇一〇年代半ばまでに国、地方を合わせて消費税率を一〇%に引き上げていくという方針の中で、その具体化で素案をまとめました。

 御指摘のとおり、その二段階というところが、最初が二〇一四年の四月、そして次に二〇一五年の八月という形で素案をまとめさせていただきましたけれども、その二〇一四年四月にした理由についてのお尋ねだと思います。

 一つは、前回の選挙において負託をされた政権担当期間中、任期中には引き上げないということの整合性の話と、それからもう一つは、二〇一四年にいわゆる団塊の世代が全て支えられる側に入ってくる、それが二〇一四年です。そういうことなども、党内からのいろいろな御意見を踏まえて総合的に勘案をして、二〇一四年四月という決定をさせていただきました。

茂木委員 二〇一五年の十月だと思います。時期を間違えられましたけれども、それは構いません。

 二〇一四年の四月だと、結局、選挙より後の時期になるという話でありますけれども、二〇一三年の十月、二〇一三年、つまり来年の十月でも選挙の後になると思うんですよ。別に、もともとの政府原案でも、やるのは、任期満了は八月なんですから、十月というのは決して選挙より前の時期にはならない。理由にはならないんだと思うんですね。

 問題は、それ以上に、半年先延ばしをして、本当にそれで二〇一〇年代半ばのプライマリーバランスの赤字の半減ができるか、こういう問題でありまして、この政府案、半年先延ばしをすることによりまして、二〇一三年度で三・八兆、そして二〇一五年度で二・五兆の税収が不足をして、目標が達成できないんだと私は思います。

 一月の二十四日に内閣府が発表いたしました経済財政の中長期の展望でも、二〇一五年度のプライマリーバランス、財政赤字は対GDP比で三・三%、十六・八兆となっており、半減目標には達しておりません。政府は中期財政フレームで二〇一四年の数字しか示していないわけでありまして、肝心の二〇一五年の数字、ここでも公表しておりません。恐らく、六月には出す、こういうお話をされるんだと思いますけれども、財政再建の目標を達成できるかどうかこの時点ではわからない、しかし増税の時期と率だけ先に決めさせてくれ、これは私、余りにも無責任だと思うんですね。

 税制改革の法案の閣議決定前に、二〇一五年の歳出削減額も含めた財政運営のフレーム、お出しいただかないと議論できない、こんなふうに思うんですけれども、いかがですか。

古川国務大臣 議員おっしゃいましたが、二〇一五年の基礎的財政収支赤字については、慎重な経済前提のもとで、今御指摘がございましたように、対GDP比半減目標の達成は、現時点においては厳しいものになっているのは事実でございます。

 しかし、私どもは、財政健全化に向けてただ歳入措置を講ずる、増税だけ行うというわけじゃなくて、これは総理がいつもよく申し上げておりますように、歳出削減努力をし、そしてまた経済を成長させる、やはりその三つを組み合わせた形で財政の健全化を目指していくということでございます。

 したがいまして、私どもは今、新成長戦略、これを実現するということも目指しております。成長力を高めることによって増収を図り、同時にまた歳出削減努力も行って、その上で、二〇一五年度の対GDP比赤字半減の目標の実現に向けて努力をしてまいりたいというふうに思っております。

茂木委員 古川大臣、私が質問したことをそのままなぞっても答えにならないんですよ。ちゃんと私も、歳出削減額も含めてと、そういう話をしているんです。

 聞いているのは、まさに総理がおっしゃったように、この税制改正によって二〇一〇年代半ばにプライマリーバランスの赤字を半減していく、では、その議論をするんだったら、二〇一五年の財政見通しがどうなるか、このベースがなかったら議論できないじゃないですか、六月ではなくて三月に出してください、こういう話をしているんですから、それにお答えください。

古川国務大臣 中期財政フレームの見直しというのは、これまでも六月にやってきております。したがいまして、そのときには出してまいりたいというふうに思っております。年央までには出すということになっておりますので、そこに向けてきちんと準備をしてまいりたいというふうに思っております。

茂木委員 何度も人が聞いたことを繰り返さないでください。

 もともと、六月、年央に出す予定なんでしょう。ただ、それでは遅いんじゃないですか、きちんとした議論をするために三月に出したらどうですかということを聞いているんですから、人の質問をなぞった答弁をしないで、答えてください。

野田内閣総理大臣 基本的には、いわゆる財政健全化戦略にまとめております二〇一五年にプライマリーバランスの赤字を半減する、これは目標は堅持をしております。

 その上で、ちょっと消費税の引き上げがおくれる分の御心配をいただいておりますけれども、財政収支への影響を平年度化すればその半減目標を満たした数値とはなっていますので、一応姿としては見えています。

 それを具体的に裏づけるお話のお尋ねでございますけれども、これは、歳入の部分と、大臣が答弁したように、成長に資する施策を打っていくこととか、歳出削減を含めて毎年年央に中期財政フレームをまとめる。おっしゃるとおり、今は二〇一四年までの向こう三年間でありますけれども、これはいつもどおり、ローテーションどおりに、さっき六月という時期指定でおっしゃっていますが、ことし八月だったものですから、いわゆる年央にまさに二〇一五年までの見通しは明確に打ち出していきたいと思いますので、ぜひその点は御理解をいただきたいというふうに思います。

茂木委員 政府のスケジュール感を私はわかっているつもりなんですよ。ただ、ことしはいつもの年と違う。まさにこの消費税の議論、税制改革の議論、そして税と社会保障の一体改革の議論をしなきゃならない。そうなると、それに必要な資料、それに必要なデータをベースにしっかりした議論をしたい、だから早くお出しください、こういう話を差し上げているわけであります。

 年金の方も一緒なんです。最低保障年金の試算の問題、これについてもなかなかお出しをいただけない。きょうどうにか出るという話でありますけれども、最初は非公開。それから、新しい人口推計に基づいて再計算する。二転三転して、きょうようやく公表することになったわけであります。

 これは国会の場で、自民党もそうです、公明党もそうです、何度も何度も指摘をさせていただいたからようやく出るようになったんじゃないか。民主党でも、見ていたのは本当に一部の幹部会のメンバー、こんなふうにも言われております。恐らく与野党協議でやっていたら、協議のメンバーだけね、こういったことで、結局、表に出ることはなかったんじゃないかな、私はこんなふうに思っております。

 そこで、どうしてお出しにならないのか、公表に後ろ向きだったのか。それは最低保障年金にかかわる不都合な真実というのがあるからだと思うんですよ。

 図の四をごらんください。グラフは政府・与党がきょう公表する予定の最低保障年金の試算と同じものであります。所得比例年金プラス最低保障年金の支給範囲の違いで四つのケースを試算しているわけですね。

 まず、最初の不都合な真実。これは、ケースの一、二、三については、大半のサラリーマン世帯で現行制度、基礎年金プラス厚生年金より支給額がかえって減ってしまうということであります。

 次の真実は、支給範囲を最も広げるケースの四でも、年収の四百二十万以上、普通の家庭ですよ、これで支給額が減ってしまう。しかも、この場合、最終的な消費税負担が税率にして七・一%にもなるということです。

 恐らく、このケース四が民主党の基本モデルだったんだと思います。ところが、余りにも大きな財源が必要だ、こういうことで、ケース一、二、三も試算してみた。しかし、ケース一、二、三を試算してみると、支給額が大半のサラリーマン世帯で減ってしまう。

 サラリーマン世帯だけじゃないんです。三つ目の不都合な真実は、国民年金の加入者にとっても、所得比例年金、図の赤字のラインでありますけれども、保険料率が一五%、これへの移行によりまして、保険料が今の大体月額一万五千円から、平均年収四百万円でも年にすると六十万円、つまり、月にすると一・五万円から五万円にはね上がってしまうということであります。

 そして四つ目の不都合な真実。では、この保険料アップを緩和するために赤いラインの所得比例年金の保険料を引き下げる、ラインの傾きを減らす、こういうことをすると、最低保障年金の国庫負担分、つまり消費税率にして、先ほどの七・一%以上に加速度的に税率の負担が上がっていく、こういうことであります。

 年金の試算を公表できなかったのは、こういった不都合な真実が表に出て、マニフェストの見通しの甘さがここでも、最低保障年金でも露呈するからだったんだと私は思っております。

 これまでの国会答弁を聞いていますと、この最低保障年金の試算について、これは民主党の調査会のごく一部の限られたメンバーで検討しただけなんだ、政府・与党の正式な試算ではない、何か、これをベースに議論することはちょっと危険だ、そんなことでも言いたいようなんですけれども、それではお聞きしたいと思います。政府・与党は、この試算を検討した上で、税と社会保障の一体改革の素案に、所得比例年金と最低保障年金の組み合わせによる新年金制度の創設、こういったことを盛り込んだのではないんでしょうか。それとも、それ以外の数字的根拠があるのなら、それをお示しください。

岡田国務大臣 まず、委員、先ほど、一旦は非公表を決めたというふうに言われましたが、そういうことはございません。我々はこの数字について、非常に一部の報道が先走った、つまり、すぐに何か七%上げるというようなことが言われておりましたので、一体改革の話がどこかに飛んでしまいかねない、そういうことで当面見合わせるということを決めたわけで、私の頭の中では、まあ一週間ぐらい冷やして、そこから公表だなということは当然考えていたわけでございます。

 そこで、中身については、正式に党の方で数字を明らかにした上で自民党にも説明があると思いますので、それを踏まえて議論した方がいい。現時点ではまだ、私、何か申し上げるつもりはございませんが、一つだけ申し上げると、いろいろ言われました、ケース一、一番少ないケースですら追加必要財源二十三・四兆円で、消費税換算二・三%であると。ただ、今の制度を前提にして考えても、同じように、二〇七五年度の追加費用は、実はケース一の二十三・四兆円よりもたくさん要るんです。そういうことだけ一つ指摘しておきます。細かいことは、具体的なことは各党間でやっていただきたいというふうに思っております。

 御質問にお答えしますと、この数字は、もちろん、私幹事長でしたが、私も承知しないもので、かつ、今回の一体改革に当たって、何か数字、この数字あるいはほかの数字を計算して、そして一体改革の中に年金の抜本改革についての考え方を書いたということではございません。

茂木委員 何の数字的な根拠、具体的な検討もなしに、素案にこういった最低保障年金七万円、ただ単にマニフェストで約束しちゃったから、何の根拠もなしに盛り込むというのは、私は無責任だと思います。国民の皆さんも、税と社会保障の一体改革の素案、これだけを見ても、ちょっと信じられないな、こういう思いを持たれる方、多いんだと思います。議論を深めるためにも、きちんとしたデータが私は必要なんだと思うんです。そういう観点から申し上げております。

 誰もが、先ほど数字で示しましたけれども、民主党のマニフェスト、できるとは思っていません。私は、この年金の一元化、そして最低保障年金七万円についても、正直に実施できないと認めて、将来課題の一つぐらいに置かれた方がいいんじゃないかな、素案から外された方がいいと思います。やはり被用者年金の一元化のもとで制度改革を進める、これが現実的なんだと思います。年金制度についての現実的な議論のスタートラインだと思うんですけれども、総理、いかがでしょうか。

岡田国務大臣 我々の一体改革の中では年金制度の抜本改革について触れております。しかし、そのことと、今回の具体的財源を伴う社会保障・税の一体改革、そしてその中の年金の具体的な改善点、これは一応切り分けて考えているということでございます。

茂木委員 岡田副総理、根拠のないこと、きちんと検討していないことは素案から外された方がいい、そして現実的な議論を始めましょうと言っているんですから、いかがですか。

岡田国務大臣 この素案の中でもはっきり、「新しい年金制度の創設までには、一定の時間を要する。」というふうに書いてあるわけであります。そういう意味では、きちっと分けて考えているということであります。

 ぜひ委員にお願いしたいのは、以前、年金制度等社会保障制度の改革に関する衆参両院の合同委員会というのをつくって議論したことがございました。あの中で、社会保障全般ですが、まずは年金ということで議論したわけでございます。

 当時の与党であった自由民主党や公明党は、今の年金制度を改善することでやっていくという路線。我々は、それではやはりこれからの大きな変化の中で、つまり、従来の年金制度が前提に置いていた、厚生年金であれば、基本的に夫婦の中の一方が働いて、そして働く先も同じ勤め先でやっていくという厚生年金のモデル、それが時代にだんだん合わなくなってきている。夫婦共働き、そして仕事もよくかわる、そういう時代の変化に合わなくなってきている。国民年金についても、基本的には資産のある自営業者が対象。しかし、今、自営業者でそれだけゆとりのある人はそう多くはない。しかも、国民年金に加入しておられる方の半分以上は、自営業者ではなくて、非正規で働いておられる方々だ。そういう中で無年金者もたくさん出てきている現状。

 そういう問題があるということは、これは委員もお認めいただけると思うんですが、そういうものに対応していくためには今の年金制度の延長では無理があるんじゃないかということで、新しい年金制度、抜本改革を提案させていただいているわけでございます。

 ですから、どちらがいいかというのは、これは議論のあるところだと思います。我々には我々のいろいろな欠点があるということも承知をしております。そういうことを、国民の年金制度というのは政権がかわったからといってころころ変えるわけにはいきませんので、各党間でしっかりと、どちらがいいのかということを議論していく、そういう時期なのではないか。本当は二〇〇五年がそうだったんですけれども、もうあれから随分時間もたってしまいましたが、今からでも遅くないので、ぜひそういう議論はお願いしたいというふうに思っております。

茂木委員 被用者年金の一元化の改革の中でも、もちろん無年金対策とか、そういったことはしっかり進めております。それはやらなくちゃならない。そこの中で、私はやはり、先ほども示したように、年金の一元化、どう考えても財源的には無理があると思っております。ただ、それを比較して議論をしたいということだったら、きちんとしたデータ、きちんとした資料を出してほしいということなのであります。

 そこで、新人口推計に基づきます最低保障年金の再計算、お出しをいただけるということですけれども、こちらの再計算、新しい試算の方はいつお出しいただけますか。

小宮山国務大臣 新しい人口推計に基づく試算については、まずはいつどのように行うかについては、今新しい年金制度を検討されている民主党の方で御判断をされるものだと思っています。

 今厚生労働省も関係議員といろいろお話をしていますけれども、まだお尋ねの件について何か確定しているということではございません。

茂木委員 依頼があった場合、どれくらいの作業期間がかかりますか、小宮山大臣。

小宮山国務大臣 それは新しい人口推計だけにするのか足元の財政の状況も加えてやるのかによっても違うと思いますけれども、一カ月か、あるいは財政計算のやり方によりますけれども二カ月以内ということだというふうに思います。

茂木委員 前回、去年の三月末、三十日に今の年金の試算を出されていると思うんですけれども、そのとき、発注されたのはいつですか。発注側の、当時、古川大臣が調査会の副会長でした。発注した側でも発注を受けた側でも結構ですけれども、お答えください。

古川国務大臣 担当大臣ではありませんけれども、いつ発注していつできたかという、ちょっと記憶にはございません、申しわけありませんが。

茂木委員 まず、小宮山大臣の認識、間違っています。

 ずっと答弁の中で、何かその前提条件の置き方、例えば物価の上昇率を一%、それから賃金の上昇率二・五%、さらには運用利回り四・一%、この前提は勝手に民主党が決めたんじゃないんです。民主党の幹部の人、それと厚労省の年金局、しっかり相談をして決めています。

 そして、その前提を置く作業から始まって、二月の末から始まり、三月には出ているんですよ。一カ月あれば出るんですから、今回も新試算、一カ月で出していただきたいと思いますけれども、いかがですか。

小宮山国務大臣 それはやはり、今新しい年金制度を民主党の方で考えておいでになりますので、そちらからのそういうオーダーを受けましたら、可能な限り早く計算をしてやりたいというふうに思っています。

茂木委員 小宮山大臣、もう少し責任感を持ってください。これは民主党がやっていると。年金制度は厚労省が考えるんでしょう、違いますか。厚労省は年金制度を考えないんですか。

小宮山国務大臣 素案に盛り込みました最低保障年金と所得比例の年金でやるとか、基本的な考え方については、これは政府・与党で決めたものでございますので、それは素案に盛り込ませていただいています。ただ、試算をする際には、前の試算もそうですけれども、どういう仮定を置いてやるのか。前回のときも、二分二乗にするとかみなし運用利回りを使うとか、幾つかの前提を置いて計算をさせていただいたものを出しています。

 ですから、それをどう置くかによって、これはまず民主党のマニフェストで約束をしたことなので、党の方が先に計算をされて、それで幾つかのケースを出されましたら、それを受けとめて厚労省の方で検討したいというふうに思っています。

中井委員長 小宮山厚労大臣に申し上げますが、党のマニフェストで約束したことをもとにと言いますが、先ほどの岡田君の答弁はちょっと違うような気がする。全国民的要望の中で超党派でやりましょうという呼びかけですから、余り民主党のマニフェストと言うと、初めからすれ違い、閣内不一致になると私は思います。少し答弁を工夫してください。

小宮山国務大臣 昨日も申し上げましたように、岡田副総理、担当大臣もおっしゃったように、基本的に何を大事にして考えるかということが、民主党の考えていることと、それから自公政権で考えられてきたことと違うと思いますので、そのことについてはしっかりと超党派で協議をすればというふうに思います。

 ただ、試算については、今私どもは民主党の方が主体的にされるというふうに考えていますので、それでやっていきたいというふうに考えています。

茂木委員 逃げないでくださいよ。

 総理、答弁を聞いていると、何か都合悪くなると、やれ三党合意があったからと他人のせいにする。そして、試算をしっかりつくって議論をしましょうと言っているのに、早くやりましょうと言っているのに、いや、これは民主党だ。違うじゃないですか。政府・与党で一体で案をまとめるんだ、私はそんなふうに思います。ぜひ逃げずにしっかりした議論をしていきたい、こんなふうに思っています。

 そこで、消費増税によって社会保障がどうなっていくか、簡単に具体的に聞いていきたいと思います。

 税と社会保障の一体改革の素案には、残念ながら何も書いていないんですね。二〇一四年の四月に八%に、税収がアップする。何の財源にこれが充てられるのか。また、二〇一五年、一〇%にアップする。何の財源に充てられるのか。岡田副総理、簡潔にお答えください。

岡田国務大臣 五%、二〇一五年に上がるということの内訳として、一%は制度を改善して充実させるために充てる。残りの四%は今の制度を前提に、それを維持していくために充てる。

 例えば、国民年金の二分の一国庫負担、この財源というのはきちんとは決まっていない、それに優先的に充てる。それから、毎年毎年社会保障費はふえてまいります。一兆円強ふえていく。一年目一兆円であっても、三年目は三兆円、五年目は五兆円ということになります。そういうことにも充てる。その他、高齢化に伴ってふえていく、そういったものの充実を中心に四%を充てていくということでございます。

茂木委員 いわゆる社会保障の新たな充実といいますか、そちらに充てられるのは一%だ、こういうお話を今いただいたところでありますけれども、民主党の二〇〇九年のマニフェスト、これを見てみますと、年金の一体改革、それから子ども手当、これを除いても、社会保障の充実でたしか三・五兆円以上の予算措置といいますか費用がかかる、こういうことになっていたと思います。

 それでは、小宮山大臣、後期高齢者医療制度の廃止、これで八千五百億かかると思います。それから介護労働者の賃金、月額四万円にする、これで八千億円かかると思います。こういった項目はやるんですか、やらないんですか。やるとしたらいつからやるんですか。

小宮山国務大臣 介護のことにつきましては、これまでもやっていた形から、介護報酬に盛り込む形でやろうとしています。今は、一万五千円と前からの九千円で二万四千円です。それを四万円になるべく近づけるようにこれから努力をしていきたいというふうに思っています。

 ただ、マニフェストでお約束した期間にできないということについては、これはマニフェストの検証の中でも財政の見通しなどが甘かった点もあると申し上げているので、できないところはしっかりとおわびをして、どういうスケジュールでやるかということを御説明していきたいというふうに思っています。

 それから、後期高齢者の方につきましても、これは報告で出された方向で今やろうということで、この国会に法案を提出させていただくように、今党の方でも検討をしているというふうに承知をしています。

茂木委員 一方で税率の方は決めていく。そして、これから詰める部分もありますけれども、内容の方、今聞いていると何にも詰まっていないんですよ、社会保障の方。内容については何にも決まっていないということであります。

 民主党をレストランに例えてみると、二年半前の夏に、民主党のレストランは全家庭にチラシ、マニフェストというのを配ったんですね。このチラシを見ると、すごい社会保障のメニュー、料理のメニューが破格の値段で書いてあったわけですよ。いいなと思って、二年半前、レストランが、ようやく政権交代、オープンすることになった。それで、国民、お客さんはレストランに行く。そうすると、チラシに書いてあった、マニフェストに書いてあった料理、何にも準備ができていない、いつやるかもわからない、そういう状態ですよ。その一方で、料金、税金だけは、マニフェストには書いてないのに、先払いで増額になります。こんなことで誰も納得をしないんだ、私はそんなふうに思います。

 例えば最低保障年金七万円も、多くのお年寄りの皆さんは、民主党政権になったらすぐにいただける、こういうふうに思っていたと思いますよ。少なくとも、マニフェストは四年間で実行するもの、こういうふうに言ってきたわけですから、細かいところまで読めばということではなくて、やはりわかるようにきちんと説明するのが政治の責任だと私は思います。

 それで、総理、マニフェストは四年間で実行するもの、こういうことですけれども、年金の一元化のように、将来やること、こういうことを四年間のうちに決めることもマニフェストの実行なんですか。いかがですか。

野田内閣総理大臣 政権担当期間中に法案をつくり、予算化をし、そして実行していく部分もあると思います。

 ただ、長期にわたる制度設計にかかわるものは、その期間中に法案をつくり、そこまで仕上げて実施は後とか、それはタイムラグが出てくるものもあるというふうに思います。

茂木委員 将来やることを決めるのもマニフェストの実行になる、こういう総理の御答弁だったと思います。

 それでは、消費税はどうですか。消費税はマニフェストでは約束しておりません。しかし、総理は、決めるだけだったらばマニフェスト違反にならない、実行は選挙の後なんだからマニフェスト違反ではない。一元化は、決めただけでマニフェストの実行、そして消費税は、決めても実行しないからマニフェストの違反にはならない。イギリスで生まれたマニフェストのルールを勝手に使い分けないでくださいよ。

 一元化を決めることしかしない、もしくは消費税を決めることをした、どちらかがマニフェスト違反なんですよ。どっちがマニフェスト違反なんですか。

岡田国務大臣 ちょっと、委員のお話は論理の飛躍があるというふうに思います。

 つまり、マニフェストに書いてあることと書いてないことを同じように扱っておられますが、消費税の引き上げは確かにマニフェストには書いてございません。書いてないことを決めたらそれがマニフェスト違反である、そういう前提に立っての御質問だと思います。私は、そういう前提には立つべきではないと思っています。

茂木委員 私は、総理が答弁されたこと、決める、しかし将来に実行する、これもマニフェストの実行だとおっしゃるから、では、ないことを決めてしまう、これも違反になるんじゃないですか、こういうお話を申し上げたんです。よくかみしめていただければ結構だと思います。

 生活保護の問題について少し聞きたいと思います。

 税と社会保障の一体改革について、財源の捻出も重要でありますけれども、社会保障の供給体制、これは私は、もっともっと効率化していかなければならないんじゃないかな、歳出を削減する努力が必要だと思っております。

 年金、医療、介護、社会保障の改革は待ったなしであります。そんな中で、図の五をごらんください。この数年最も増加が著しいのが生活保護費で、既に三兆円を突破しております。政権交代以降、この三年間で二五%以上も膨らんでいるわけであります。

 この生活保護、二つの特徴があります。

 図の六を続けてごらんください。図の六のように、地域別のばらつき、これが非常に大きいことが一つの特徴であります。

 都道府県別でいいますと、最も多い大阪府、これは三・三五%、百人に三人。これに対して、最も少ない富山県、これは〇・三一%、千人に三人であります。十倍の格差があります。大阪市に至っては二十人に一人が生活保護。現状、こういった状態であります。

 そして、もう一つの特徴は、この十年間、高齢者や障害者以外の働ける世代での生活保護者がぐっとふえてきている、こういうことであります。現状、この稼働年齢層、二十から六十四歳での生活保護受給者、これは図七のように八十一万人に達しているわけであります。そして、この八十一万人の稼働年齢層の中で、若干なりとも働いている人が十四万人、全く働いていない人が六十六万人であります。

 小宮山厚労大臣、この二十から六十四歳の稼働年齢層での生活保護受給者の就労支援プログラム、現状、そして来年度予算、どうなっていますか。

小宮山国務大臣 委員御指摘の二十から六十四歳までの稼働年齢にある生活保護受給者、これはおよそ八十一万人います。

 その中で、未就労の方が六十六万人。この六十六万人のうち、福祉事務所が就労支援の対象と判断した方が二十八万人です。その中で、手厚い就労のための支援を行う就労支援プログラムに参加した人がおよそ七万人。福祉事務所のケースワーカーによる助言等を受けた人はおよそ十六万人でした。

 この就労支援プログラム、稼働年齢にある生活保護受給者だけが参加しているわけではありませんけれども、平成二十二年度は、就労や増収によっておよそ七十億円の財政効果が生まれているというふうに承知をしております。来年度もしっかりと予算をつけて、なるべく、働ける方は当然働いていただく。

 そして、生活保護に長くいるほど働けなくなってしまうので、それは前にも御答弁申し上げましたけれども、支援の戦略というものを秋をめどにしっかりつくりまして、これは、諸外国でやっているようなNPO、社会的事業をしている人たちの協力も得て、パーソナルサポートという形でしっかりと寄り添って就労に結びつけていく、そういう努力を最大限していきたいと思っています。

茂木委員 今御答弁のように、現在、七万人に対しまして就労支援プログラム、七十億円の財政効果が出ております。来年度もしっかりやっていくという話ですけれども、小宮山大臣、来年度の予算は減っているんですよ。ちょっと秘書官と打ち合わせしないでしっかり聞いてください。来年度の予算、減っているんです。やはりこれを、この七万人だけじゃなくて、少なくとも働ける二十七万、二十八万にも拡大していく。この人たちが生活保護から抜け出して自立できるようになる、自分で稼げるようになれば、最大五千億円の効果が出てくる、このように見込まれております。

 どうですか。全員を就労支援プログラムに参加させる。予算でいえば百六十億ですよ。百六十億でできるんですよ。やったらいかがですか。何で予算を減らすんですか。

小宮山国務大臣 これはいろいろな形で、都道府県に基金をつくったりという形でやっておりまして、現在、全体的に財政状況が厳しい中でも可能な限りの予算は獲得をしてやっているというふうに考えております。

茂木委員 わかっていないですね。きちんと自分の所掌はやってくださいよ。四十億から二十四億に減っているんです。ふやすべきだと私は思います。そしてこの二十七万、二十八万人には必ず就労支援プログラムに参加してもらう。さらには、就労が困難な方の中でも、私は、職種によって、また短時間の仕事だったらできる、こういう人もふえてくると思います。そういったことをカバーすべきだ、こんなふうに考えております。

 それからもう一つ、生活保護で問題なのは医療費です。生活保護受給者への医療扶助、これが全体の生活保護費の半分を占める、こういう形になっているわけでありますけれども、後発医薬品、ジェネリックの使用の促進、それから電子レセプトの活用によりますレセプトの徹底的なチェック、そして向精神薬の重複処方への指導体制の強化、どう取り組んでいきますか。

小宮山国務大臣 それは、委員が持っていらっしゃる問題意識、私どももしっかり持っております。

 今もう先に委員の方がおっしゃいましたけれども、電子レセプトによって適正でない受給をしている方をしっかりとチェックするということ。それから後発医薬品についても、これはずっと取り組みがおくれておりますので、今回新しいロードマップをつくって強力に進めたいと思っていますし、これはなるべく情報を提供して、後発医薬品に切りかえられるように現場の方もしっかりと指導していきたいと思っておりますので、この医療費が少しでも削減できるように努めていきたいというふうに考えています。

茂木委員 電子レセプトのやり方についてもいろいろな問題が今あります。細かいことは申し上げません。ただやっているじゃ進まないんですよ。現状を見てください。

 例えば、生活保護専門の病院がバスを出して患者を迎えているんですよ。そして、患者の中では、幾つもの病院を回って向精神薬をもらって、それをネット上で販売している。こんなことをやっていたら、幾ら医療費があったって足りないですよ。私は、やはりジェネリックの使用、原則ジェネリックにすべきだと思います。そして、原則、働ける可能性のある二十から六十四歳の人は働いてもらう、そのための就労支援プログラムを用意して働けるような環境をつくる、こういうことが必要なんだと思います。

 民主党の政策は公助から入るから費用が一方的にかさんでいくんですよ。我々自民党は、まず基本は自助なんだ、そのための環境を整える、その上に共助があり、公助がある。我々が政権をとったらそういう方向に変えさせていただきます。生活保護も徹底的に変えていきたい、こんなふうに思っております。

 財政規律の話に議論を進めたい、こんなふうに思っております。財務大臣、余り嫌な顔をしないでください、簡単な問題から入りますから。

 平成二十四年度の予算で、昨年六月に決められた、国債費を除く一般歳出と新規国債発行額を前年度以下に抑える、こういう中期財政フレームの大枠、これは維持されたと財務大臣はお考えですか。

安住国務大臣 維持されたと思っております。

茂木委員 そのようにお答えいただくと思いました。そして、次の質問がどうなるかもよくおわかりだと思います。

 年金二分の一の財源、これは交付国債によって賄う。言ってみると飛ばしであったりとかツケ回し、こんな言葉も言われているわけでありますが、交付国債の発行、これは過去にも極めて特殊なケースであります。

 基本的には多年度にまたがる支払いの枠をとるということで、例えば、かつて戦没者の遺族弔慰金、これは支払いの約束手形十年分、二百万円につきまして、年二回、一回十万円、こういった形で分けるクーポン形式でありました。それから、最近では、これは当初予算ではなくて補正でありますけれども、金融危機の際に設定した公的資金枠、こういう支出の全体像がはっきりしない場合に特別に発行した、こんなふうに私は理解をしております。

 交付国債で年金財源の確保、どうもおかしいんじゃないかなと思います。なぜ、この二・六兆円、交付国債でやられたのか。もう一回簡潔にお答えください。

安住国務大臣 御指摘のとおり、交付国債はこれまで、戦後の歴史から見ても、今先生が御指摘のような経緯をたどってまいりました。最近では東電に対して、昨年、法律を認めていただいて交付国債を発行しましたが、今回は、率直に申し上げて、今まで三年間、二分の一の二・六兆について何とか麻生政権以来やりくりはしてまいりましたけれども、復興の関係で、そうした意味での一般歳出に剰余金等を充てるということになって、やはりフレームを考えた場合に、これを守るのは非常に厳しい状況でありました。

 同時に、この差額分については、消費税一%分を充てようということで、それは自公政権下でも御指摘がありましたけれども、我が党としてもその考え方に、いわば賛同するというか同じような考え方で、恒久財源を確保するために、この制度を今回使わせていただいて賄うというふうな基本的な考え方に立ったわけでございます。

茂木委員 よく答弁がわからない部分があるのですが、今の大臣の答弁ですと、もともとのこの国庫負担分三分の一、では、これはどうして交付国債でおやりになっていなかったのですか。

安住国務大臣 もともとの三六・五ですか。(茂木委員「三分の一の部分」と呼ぶ)それは以前から、交付国債を充当してやっているのではなくて、きちっと賄っていたからであります。

茂木委員 安住大臣、先ほどの答弁を聞くと、この二分の一の引き上げ分二・六兆ではなくて、もともとの三分の一の分の国庫負担、では、これはなぜ交付国債でこれまでおやりになっていなかったんですかということを聞いているんです。

安住国務大臣 交付国債を発行しなくてもやってこられたからであるということでございます。

茂木委員 やりくりできていると。ところが、やりくりできていない部分がたくさん今あるんじゃないですか。だから、今、消費税の増税の話をしている。

 基礎年金、それから老人医療、介護の国庫負担、本来消費税で賄うべきなのに賄えていない財源、これは七兆円以上あるわけでありまして、今回の政府の説明でも、後代への負担のツケ回しの軽減、こういったことで七兆円を充てることにしているわけであります。先ほどの説明だと、この七兆円も交付国債でやる、これが正しいんじゃないですか。

安住国務大臣 交付国債を発行するというのは、あらかじめ財源を確定して、それをベースに一時的に資金を都合して、それを返していくという制度であります。率直に申し上げて、それが恒常化をした場合は、やはりそれは、いわば財政上、健全性を疑われるという御主張だと思いますので、それについて大きな、今までのお金についても交付国債でということは我々としての選択肢ではとりません。

 ですから、今回も、率直に申し上げて、交付国債でやることは非常にいい選択だとは私も思ってはおらないんです。これは大変申しわけなくは思います。しかし、この二分の一の制度を維持しなければ現行の国民年金制度の維持というのはやはり厳しいということは、茂木先生の時代からこれはずっとそういう認識で来ましたので、今回こういう方法を使わせていただいたということです。

茂木委員 交付国債は決していい方法ではない、率直にお認めいただいたわけでありますけれども、借金が隠れるだけなんですね。

 実態を見てみると、図の八をごらんください、平成二十四年度の予算、中期財政フレームの大枠を守ったと言いながら、この交付国債、そしてまた復興特会へのつけかえ、こういった形で、予算の実態は九十六・七兆円、過去最大であります。国債費を除く一般歳出、真ん中の部分でありますけれども、これも七十一兆円をはるかに上回る。そして新規国債、国債の発行額も四十四兆円をオーバーしているわけであります。過去最悪の財政状況になっているんだと私は思います。

 やはり、こんな偽装を続けていたら、幾ら財務大臣が中期財政フレームの大枠を守ったと言っても、いつかギリシャと同じようにマーケットや格付会社から厳しい批判が来るんじゃないかな、私はそういうふうに思います。

 中期財政フレームの組み直し、そして財政健全化に必要な財源がどれくらいなのか、正直に提示をされた方がいい、隠さずに、これだけ本当は必要なんだ、そういうものを出された方がいいと私は思うんですけれども、いかがですか。

安住国務大臣 御指摘のような見方もあるかもわかりませんが、予算総額の九十六・七兆円は、政調会長からも御指摘をいただいた特別会計で復興に充てるお金をまず引く、それから、今また御批判もありましたけれども交付国債分、これを除けば九十・三兆であるということなんですね。

 これを財政支出が非常に大きくなっているからけしからぬという御意見もありますが、しかし、復興に関係する公共はやはりどうしても必要なことであるということは御認識いただけると思います。ですから、それは会計上やむを得ない不測の事態でございますので、そこでの支出というものはぜひお認めをいただきたいというふうに思っております。

茂木委員 復興に必要な事業、私もそれはあると思うんです。ただ、冒頭指摘したように、集中復興期間、五年間で十九兆円、これが二年目でもう十八兆円いっているわけですね。そうなると、集中期間、あと残り三年間の平均、一年は三千億ですよ。そして残りの五年間が八千億。逆転するんですよ。阪神・淡路のときを見ても、緩やかに減っていくんです、実際は。ところが、三年目、四年目、五年目は、もう復興の予算はないですよ。復興計画、私は見直しをすべきだ。自民党だったら必ず見直しをして、それによって復興のスピードアップを図っていきたい。

 さらに言うと、コンクリートから人へ、こういう空虚なスローガンでは、やはり国民の安心、安全は守れないんだと思います。首都直下型地震、この可能性もこれから四年で七〇%という東大の地震研の試算もあるわけであります。では、首都機能をどうバックアップしていくか、この体制の強化の問題。そして、一旦災害があったらば、やはり自衛隊、レスキュー隊がすぐにでも救援に入れる、そのためには交通網を整備しなくちゃならないんですよ。そして安否確認。こういうことになったら、災害に強い情報通信網、こういったものもつくっていかなきゃならない。

 我々はこれから、こういった強い日本列島、国民生活を守れるような強くてしなやかな日本列島をつくるための国土強靱化基本法といったものを提案したい、こんなふうに思っておりますので、ぜひ総理の前向きな対応をお願いしたい、こう思っているところであります。

 円高の問題、デフレの問題に入っていきたい、こんなふうに私は思っております。金融大臣、円高の問題です。起きてください。

 デフレ、超円高によりまして、日本経済が今深刻なダメージを受けております。図の十一をごらんください。

 図の十一のように、家電メーカー初め日本の主要製造業の三月決算、これは残念ながら軒並み赤字であります。もちろん、産業の空洞化は十年前、二十年前も言われていました。しかし、ここに来て、その産業の空洞化の質が変わりつつあります。

 どう変わっているか。今までは、労働コストの問題で組み立て工場が海外に出ていく。しかし最近は、基幹の部品メーカーが海外に流出してしまう、それに伴って日本の虎の子の基幹技術まで海外に出ていってしまう、こういった状態であります。これをどうにか防いでいかなきゃならない。

 そんな中で、平成二十四年度の予算がどうなっているかということであります。

 日本再生重点化枠、こういうものを設けたようでありますけれども、どうも、見てみると、省庁別の細かい施策の羅列で、パッケージとしてのデフレ、円高対策が用意されているようには思えません。例えば、防衛省の艦艇、航空機、車両の燃料費、隊員の糧食費、八十一億円、外務省のアフガニスタン支援、七十三億円、これが日本再生重点化枠、こういうのに入っている。

 田中大臣、なぜこれで日本再生重点化枠なんですか。

田中国務大臣 防衛省といたしましては、我が国の防衛体制の整備をしていくことによりまして、我が国の平和と安定、そしてまた周辺諸国との平和と安定を確保していくということでございまして、その必要なものにつきまして要望をしてきたところでございます。

茂木委員 なぜ日本再生重点化枠に入れるかとお聞きしたんですけれども、全くそのお答えにはなっていない。余り詳しく聞いても時間の無駄だと思います。

 単刀直入に総理に聞きます。

 今回の予算の中で、円高、デフレ対策の一番の目玉は何ですか。お答えください。総理が丸投げということでしたら、誰か下の方がお答えいただいても結構です。

古川国務大臣 茂木議員もわかっていらっしゃっておっしゃっているんだと思うんですが、重点化枠、もちろん……(茂木委員「違う違う。聞いたことに答えてよ。そんなこと聞いていないんだから」と呼ぶ)ちょっと説明させてください。(茂木委員「だめだよ、ちゃんと聞かれたことに答えてよ」と呼ぶ)需給ギャップの解消に向けて、例えば、今お話があった企業なんかの……(茂木委員「一番の目玉は何だと聞いているんだから」と呼ぶ)一番、一つや二つじゃないんですよ。

 立地補助金など初め、円高への総合的な対応策の中でも、これは先ほど、しなやかな、強靱なというお話がありましたけれども、日本経済はやはりオンリーワンの企業を育てるような、そういう体質、強靱な経済構造をつくっていかなければいけない。為替市場の変動に左右されないような、そうした経済構造をつくっていかなければいけないということで、立地補助金を初めとして、技術のある、そうした企業などの創業やあるいは工場の立地、そういったものをサポートするさまざまな施策というものを盛り込んでおります。

茂木委員 長々とお答えいただきましたけれども、全くお答えになっていないと思います。

 立地補助金の話をされました。治療薬と鎮痛剤の違いがわからないんだと思います。立地補助金は、あくまでも鎮痛剤です。円高、デフレの治療薬ではないんですよ。根本的なことがおわかりになっていないようですね。

 基本的なことからいきましょう。では、安住大臣、デフレの国の通貨とインフレの国の通貨、通貨価値は、ほかの条件が一定だとしたらどうなっていきますか。図の十二をごらんいただいても結構です。

安住国務大臣 日本は、この十年間、ずっと物価上昇率は基本的にはマイナスで推移をしております。ですから、日本の為替は、ほかの国に対して相対的に、ここに書いてあるような、対ドル九・一、対ユーロ一五・七、そういう傾向を示していることは事実でございます。

茂木委員 デフレの国の通貨、これは上がっていきます。だから、やはり円高対策とデフレ対策、これは一緒にやっていかなくちゃいけない、こんなふうに私は思っております。

 そこで、円高、デフレ対策でありますけれども、デフレからの脱却、現在の需給ギャップを埋める、こういった財政政策も必要ですけれども、金融政策の大胆な転換、これが私は必要不可欠なんだと思います。よく日銀との連携強化、こういうお話をされますけれども、デフレは少しも解消されていない。

 そこで、財務大臣、現在の日銀のゼロ金利政策と国債のオペ買い入れの増額、これはどうしてデフレ解消にきかないんだと思いますか。

安住国務大臣 日銀は量的緩和を含めて、この十年間でかなり資金供給をしてきた、きょうは白川総裁はお見えになっていないかもしれませんけれども、ということは数字的には出ておると思います。

 ただ、もう一方の統計として、例えば市中の銀行の貸し付け量、それからマネタリーベースで見ると、九九年ぐらいを一〇〇としたときの伸び率が、ほかの国に比べれば統計的にはやはり少ないというふうなこともありますので、自民党政権下から財政出動等はいろいろやってきましたけれども、やはりそれだけでデフレをなかなか解消できないということは事実でございます。

 金融緩和について、量的なものも含めて、今、日銀も努力はしていると思いますけれども、やはり適時適切な対応というものは必要になってくるだろうというふうに思います。

茂木委員 財務大臣、やはり私、今の日銀のやり方じゃだめだと思います。

 例えば、ゼロ金利政策、これをとっても、今、円高が進む、そして経済のグローバル化が進む、こういった中で、日本企業、国内で超低金利で調達した資金、これを国内の設備投資じゃなくて海外展開に使う、こういう水漏れが起こっているわけであります。

 それからもう一つの、日銀の国債のオペ買い入れの増額、確かにそれをやっています。しかしその一方で、国債の償還に伴います借換国債の引き受け、これは、ことしでいいますと、日銀に戻ってくるのは三十兆なんですけれども、引き受けているのは十二兆なんですよ。引き受けが足りな過ぎるんです。不十分なんです。

 日銀が勝手に、国債管理政策とは一線を画す、こういう自分のつくった勝手なルールで、いわばアクセルとブレーキを同時に踏んでいるんですよ。こんなことではやはりデフレの解消はできない、私はこんなふうに思っています。日銀との連携強化、口でこう言っても、具体策がなければだめなんですよ。インフレ期待は生まれないし、企業の借り控え、これもそのままだと思います。

 では、どうするかということです。具体的に提案をさせていただきます。

 まず、早急に政府、日銀のアコード、協定によって、物価目標、いわゆるインフレターゲットを導入して、さらに、借換国債の引き受けの拡大など国債管理政策に日銀が協調する形で一段の金融緩和を行っていく、こういうことであります。これによって、二年から三年で確実にデフレから脱却をしていく。

 そして、出口戦略でありますけれども、長期的な金利の正常化に向けた穏やかな利上げ、これについては基本的にマーケット主導とする。デフレからの脱却が明確にならない限り、日銀に通貨安定の番人のような振る舞いは絶対にさせない。こういう思い切った金融政策の転換によって、インフレ期待の醸成というものが、穏やかな金利上昇、金利正常化に先行して起こってくる。これによってマーケットで過剰な円高が是正をされていくんだ、私はそんなふうに思っております。

 今の説明を総理それから財務大臣、おわかりいただけましたか。提案を受け入れていただけますか。私は、明確な答弁があったら、為替介入以上の効果があると思います。日銀が動かないんだったら、日銀法を改正すればいいんですよ。もし違う案があるということだったら、具体的な案をお示しください。

安住国務大臣 アコードについては、この委員会が始まってから再三御指摘いただいています。これも与党、野党問わず、やはり金融緩和をもう少し日銀にやってもらう、しかし、日銀がそういうことができないときに政府が主導でやる。

 ただ、今、少なくとも事実でいえば、世界の中で、例えばインフレターゲットの問題も、これはイギリスは導入しております。この間、私もオズボーン蔵相ともお話をしました。なかなかそう思うほどうまくいっていないというようなことも、問題点を何点か指摘されたりしております。それからカナダは、政策決定に関して、いわば政府と中央銀行が一緒になってやっていたりして。

 つまり、日銀の専管事項としての金融政策の上に政府の意思をきちっと乗せろという御指摘だと思いますが、そういうこともありますが、法律の改正によらずに、総理もやはりことしから、かなり日銀との意見交換をしっかりやって、共通の認識をできるだけ持つように、会合の場をふやしたりやっていくということはおっしゃっておられるので、その方向でやっていきたいと思っております。

 ただし、法律の改正までは、先生、なかなかちょっと厳しいのではないかというふうに思っております。

野田内閣総理大臣 円高、デフレ対策、この危機感については、委員と問題意識は共有いたしますし、政府でやるべきこと、そして一方で、専ら金融政策を担当する日銀がやること、これは役割分担はあると思いますが、危機感を共有する、問題意識を共有するための作業として、アコードまではいかなくても、これまで一般的に連携連携と言ってきましたが、より膝突き合わせての、表向きの議論だけではなくて、そういう議論をこれからどんどんやっていきたいということは日銀総裁とも一致をしています。その頻度も高めながら、日本銀行がまさに適時果断に金融政策ができるように緊密な交換をしていきたいというふうに思います。

茂木委員 デフレになって何年になるんでしょうか。そして今の円高になっている。そして、そこの中で日本企業は本当に悲鳴を上げているんですよ。この問題、今やらなくちゃいけないんです。日銀に任せちゃだめなんです。何度話し合いをやってもだめなんです。やはりきちんと政治のリーダーシップでやっていく、こういったことを強く求めたい、こんなふうに思っております。

 きょうは、平成二十四年度予算につきまして、五つの問題点を中心に、自民党だったらこうする、こういった対案も含めて議論をさせていただきました。

 もう一度最初の図をごらんください。平成二十四年度予算の五つの問題点であります。

 マニフェスト、これは明らかに総崩れであります。

 そして、社会保障改革、これは最低保障年金、幾ら先延ばしをしても私は無理なんだと思います。撤回して、もっと現実的な年金制度のあり方をお互いに議論した方がいい、こういうことを強く申し上げたいと思っております。

 そして、財政規律の問題、これは先ほどもお話しした交付国債の問題もあります。なぜ交付国債なのか。これは、しようがないから、こういう話だったと思います。やはり私は、素直に、この日本財政の姿、どこまで深刻なのかときちんと示した上で議論していく、こういったことが必要だ、こんなふうに思っております。

 そして、四つ目の復興事業につきましても、もう十八兆使っているんですから、来年からできないんですよ。総理は寄り添うとおっしゃる。被災者の皆さんと寄り添うとおっしゃる。それだったら、復興計画をきちんと変えて、本当に被災地の皆さんが安心できるような計画につくり直していく、我々はそうしていきたい、そんなふうに思っております。

 そして、円高、デフレ対策であります。もう日銀に任せていても円高、デフレは解消されない、そのことを断言しておきます。政治のリーダーシップ、これがまさに求められているんだと思います。財務大臣、総理大臣、我々だったら、日銀法を改正してでも、絶対にデフレ、円高から脱却しますよ。

 そういったことを今日本は進めなければ、消費税にも進んでいけない、こういうことを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

野田内閣総理大臣 その図の一ですけれども、まず、マニフェストの総崩れというのは、それは見方はいろいろあると思います。だけれども、去年中間検証したように、政策項目百八十のうち七割以上はもう着手をしてきていることもあるということでございますので、これは見方が違う。

 問題先送りをする政治と決別したいというのが私どもの政治であるということ、これは問題認識、一致しています。

 粉飾はありません。交付国債というのは一つのルールであります。交付国債を使うということは、それは消費税という将来の償還財源があって、それをもって歳出を行うということで、粉飾でも何でもないし、しかもマーケットの信用という意味は、これは市場に発注するわけじゃありません。そういうルールに基づいて、苦労はしています、でも粉飾ではありません。そのことは明確に申し上げたいと思います。

 復興計画は、少なくとも十九兆円と言ってきました、少なくとも。当然、実態に合わせて、進捗状況を見て財源を確保して、まさに責任を持って復興を果たしていきたいというふうに思います。

茂木委員 総理、今掲げさせていただいた五つの問題点、私が勝手につけたんじゃないんです。それぞれマスコミであったりとか専門誌であったり、そこで言われていることを引用させていただきました。そういう指摘があるんだ、こういったこともぜひ頭に入れていただきたい。

 その上で、議論しましょうよ。ただ、議論する上にはいろいろな資料が必要なので、出せるデータはどんどん出してください、我々幾らでも議論しますから。それをお願いしまして、私の質問を終わらせていただきます。

中井委員長 この際、西村康稔君から関連質疑の申し出があります。石原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。西村康稔君。

西村(康)委員 自民党の西村康稔でございます。

 今の茂木委員に引き続きまして、経済政策、特に円高、デフレ対策を中心に、ぜひ建設的な議論をしたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 野田総理は、増税には非常に熱心で、与野党協議も呼びかけられておられます。しかし、増税だけで財政再建できるわけじゃない、これはもうわかっておられると思いますし、ここに、資料の一にありますけれども、当たり前のことです。

 やはり経済成長によって増収をしていく。その中で特に一番大事なのは、やはりデフレ、円高を脱却するということですね。成長戦略も必要です。金融政策だけで全部ができるとは思っていません。さまざまな成長戦略、産業構造の改革も必要でしょう。いろいろなことをやる中で増収をしていく。それに加えて、歳出削減、これももう何度も今議論をされています。その上で、足らない分は国民の皆さんに増税をお願いしなきゃいけない、こういうことだと思うんですね。それによって、財政再建をやりつつ、それが経済の安定につながれば成長にもつながる。この好循環をどうやってつくり出していくかということだと思います。

 まず最初に、このデフレ、円高対策の円高についてお伺いをしたいと思います。

 安住大臣にお伺いをします。

 もう何度も財務金融委員会でも議論をさせていただいていますが、資料の二を見ていただいて、これは昨年の秋に介入をされた、そのときにちょうど財務金融委員会でも質問をさせていただきました。大臣は、ここにあるように、必要があれば断固たる措置をとる、そして納得がいくまで介入をさせていただくということを言われました。

 一日目に八兆円ほどの大きな介入をされました。その後も水面下で何日か続けられたことはわかりましたけれども、五日で終えられました。これで大臣は納得をされたわけですか。

 その後、円は七十六円にもなり、今は七十七円台ぐらいですけれども、きょうはまだ見ていませんが、大臣は納得いくまですると言われたわけです。これで納得されたんですか、大臣。

安住国務大臣 お答えします。

 為替介入する時点というのは、西村先生の表で一番上、七十五・六三円の時点で、私としては、これは介入をしないと日本経済にとって大きな危機的な状況が及ぶということで介入を指示いたしました。

 七十八円二十銭のところでやめたので、そこの時点で納得をしたのかという話でございますけれども、私としては、三円近く値を戻して、この間の七十五円という危機的な状況を、一応、年末までの間で見ますと、それから二カ月間、七十七円台、八円台で推移をしましたので、やはり一定の効果というものはあったというふうに思っております。

西村(康)委員 私は非常に期待をいたしました。私は単独介入でもやるべきだと思いますし、大臣もそのときの答弁でその覚悟も示されました。今、七十五円で介入する、七十八円でやめたと言われると、これでまたマーケットへ影響しますから、余りそこにこだわられると困ってしまうんですけれども、ぜひ単独でも大胆に介入、これで納得されずにやっていただきたい、これは私からのエールであります。

 その決意をもう一度聞かせていただいていいですか。

安住国務大臣 財務金融委員会でも西村先生には、積極介入をとにかく日本の経済のためにやるようにという御指示はいただいておりますので、私も、協調してできれば、世界経済の中で、今のこの円高、為替への日本の立場というものをしっかり説明して、やはり協調して介入してもらうような努力というのはやらないといけないと思います。

 しかし、それでもなかなか今の世界の状況の中ですぐにそうはならないわけでありますので、その場合は、やはり我が国の判断で、私の判断で、必要であれば断固たる措置はとらせていただくというふうに思っております。(発言する者あり)

中井委員長 静粛に願います。そこの傍聴席、静粛に願います。

西村(康)委員 違うんですよ。協調が難しいということを今、暗に言われたんだと思いますけれども、協調しなくていいですよ。できたらいいですよ。できたらいいですけれども、今何で円高なんですか。欧州が債務危機、アメリカのサブプライムローンでしょう、その影響が残っているわけでしょう。今、日本は欧米の尻拭いをしているわけですよ。堂々と主張したらいいじゃないですか、堂々と日本は大変なんだと。

 三枚目をちょっと見ていただいていいですか。

 これも、きのうも連日議論されています。二〇一〇年の後半、八十八円台から、一年間で十円円高になったわけですね。各社公表されています。それぞれが大赤字でありまして、利益を出しているところも、前年から比べると大幅に減らしている。

 私の地元の兵庫県でも、パナソニックは何千億円出した工場がもう使えない。どうも一ドル八十八円、九十円ぐらいを想定していたんでしょう。こんな七十七円、八円の水準では全然やっていけない。NECだったと思いますが、一万人削減をする。

 この水準が続けば、本当に日本経済は空洞化して、企業はいなくなって、雇用は失われていくわけです。何でそうなっているか。欧州の失敗であり、アメリカの失敗なわけでしょう。堂々と主張して、日本は単独でもやると何で言わないんですか。

安住国務大臣 ですから、日本も単独でやっております。一日で八兆円も使っているのは戦後最高額ですから。

 それは私も西村先生と危機感は同じでございます。というのは、尻拭いという言葉が適切かどうかわかりませんが、今の為替レートは我が国の経済の実態を反映していないということを私どもはずっと申し上げているわけです。それと同時に、水準もさることながら、やはり投機筋が思惑的な動き、投機的な動きで為替を変動させているようなときには、私はちゅうちょなく介入すると申し上げておりますので、今後もその姿勢でやっていきます。

 ですから、単独介入は全く辞さずにやります。

西村(康)委員 その姿勢で、私はエールを送っていますので、最初に、納得いくまでやられるという姿勢にまさにエールを送りたいんです。堂々とやったらいいんですよ、説明したらいいんです。これは、今まさに単独でもやられると言われましたので、納得いくまでぜひやっていただきたいと思います。

 もう一点、お伺いしますね。ことしの二十四年度予算で、為替の介入枠を幾らに設定しておられるのか、幾ら介入できるのか、その枠について教えていただければと思います。

安住国務大臣 四次補正までの時点で百九十五兆円にふやしております。

 お尋ねをちょっと私なりに解釈して申し上げると、FBの発行残高等は先月の末時点で百二十六兆でございます。ですから、引きますと、発行枠の最大の額は六十九兆ということになると思います。

西村(康)委員 七十兆円近い介入の枠があるということですね。私は、もっと枠をつくっていいんじゃないかとも思っていますけれども、これはまた必要があればどこかで、その部分の補正なりなんなり組んでもいいと思いますが、ぜひ、繰り返しますけれども、納得いくまで単独でも介入をしていただきたい。この水準では日本経済は非常に大変、雇用も失われるし、地方経済は本当に疲弊していますので、ぜひ頑張っていただければと思います。

 ただ、何も介入だけで全部終わらせようということを言っているわけではありませんし、介入はあくまで時間稼ぎでしかない、抜本的な対策が必要だ、これが先ほど茂木委員の言われた抜本的なデフレ対策。それまでの時間稼ぎ、変な動きがあったときにはもちろんとめなきゃいけないし、そういう意味での介入を申し上げたわけです。

 それで、その抜本的な対策、何をやっていくのか。もちろんデフレ対策であります。

 野田総理にお伺いします。今、日本経済はデフレであるという認識を持っておられますか。

野田内閣総理大臣 もちろん持っております。

 一昨年の暮れに、あえて、ここ二十年来ずっとデフレは続いていますが、最初はデフレ宣言したけれども、その後どうなったか、むにゃむにゃしていました。改めて、一昨年の暮れに、デフレ宣言を民主党を中心とする政権で行いました。

 したがって、デフレ、それはまだ克服できない、できていないというふうに認識をしています。

西村(康)委員 総理は、そのとき財務副大臣であられたんだと思います。そのときも何度か質問をさせていただいた記憶があります。

 財務大臣になられて、今総理まで上り詰められた。二年間、まさにこのデフレ対策の中心的な、責任を果たさなきゃいけない立場におられたわけですけれども、二年前に、二〇〇九年の十一月、当時の菅副総理がデフレ宣言をされた。それから二年間、ずっとデフレなわけであります。

 総理の立場はより強くなっている、少なくともこの二年間。この間、総理、責任を感じられませんか。デフレが続いて、もう多くの皆さんはわかっておられると思いますけれども、物価が安くなる、売り上げが減る、給料は減る、住宅ローンは重くのしかかってくる、それで円高ですから雇用の心配もある。もう日本経済は本当に大変な状況なわけです。総理にその危機感はありますか、責任を感じておられますか。

野田内閣総理大臣 私の内閣が発足をしたときに、やらなければいけない三つの命題を申し上げました。それは、震災からの復興と原発との戦いと経済の再生。経済の再生ということは、円高、デフレ、こういう問題を克服していくという意味でございます。当然のことながら、内閣として危機感を持ってこの問題に対応していきたいと思います。

 というのも、一昨年の暮れにデフレ宣言をして、四半期ごとの成長というのは確保できるようになったんです、しばらく。そして、物価においても改善面が見られました。しかし、東日本大震災等々のいろいろな状況も起こりました。そういう危機がある中でも、やはり経済の再生、こういう危機があるからこそ、復興のためにもやはり日本経済再生だと思っておりますので、これからも全力で取り組んでいきたいというふうに思います。

西村(康)委員 私は、野田内閣、この危機感、特に地方経済の疲弊しているこの厳しさ、これをわかっておられないんじゃないかと思うんですね。本当に、空洞化をして雇用が失われて給料が減っていっている、住宅ローンに苦しんでいる人が物すごくふえていますよ。なぜ二年間このデフレを放置しているんですか。日銀もそれなりにやっていると言いますけれども、全然効果が出ていないわけですよ。結果が出ていないわけですよ。

 そこで伺いますけれども、政府は物価に対してどういう目標を持っているのか。これは古川大臣になるんだと思いますが、五番目の紙を出していただきますと、先ほど茂木委員との間で議論があった一つだと思いますが、内閣府が中長期の経済的な試算を、財政試算も含めて、しておられます。その中で物価上昇率の試算もあります。

 先ほど古川さんは、慎重シナリオと成長戦略シナリオと言及をされて、慎重シナリオではなくて成長戦略を目指すんだというお話をされました。政府は、これによると、慎重シナリオというのがこの下側でありまして、一・一%ぐらいの物価上昇率ですけれども、これを目指すわけではないわけですね。古川さん、何を目指されるのか、ちょっとお答えいただけますか。

古川国務大臣 日本銀行においても、従来から、CPI上昇率で見て二%以下のプラス、中心は一%程度とする物価安定の理解というものを示しておりますが、政府は、この物価上昇率で見て二%以下、緩やかな物価上昇、インフレを目指すということについては、これは政府も日銀も認識が一致をしているというふうに考えております。したがいまして、その範囲の緩やかな物価上昇、インフレが実現をするような政策を打っていく。

 先ほどから、何も打っていないというお話がありましたが、この二年間、相当積極財政をやっているわけなんですね。財政が非常に厳しい状況でありますけれども、そういう中でも、需給ギャップを少しでも埋めていくという視点から、かなり思い切った積極的な財政政策も打っている。したがいまして、日銀の方でも金融緩和政策をとっているわけでありますけれども、財政、金融両面から、今申し上げたような二%程度の緩やかなインフレの達成に向けて全力を向けて、今後とも行ってまいりたいというふうに考えております。

西村(康)委員 幾つか言われましたけれども、積極的な財政というのは、単にばらまきをやっているだけじゃないですか。それを議論しているわけですよ、我々は。現実的な、戻ってくれと、それを議論しているわけです。

 確かに、東日本大震災がありますから、これは復興需要が出ますよ。これを活用しない手はないですよ。これを日本全体の経済活性化に、できることなら新しいモデル的な事業をやっていただきたいですよ。これはいいです。

 今、最後に言われましたが、緩やかに二%までの物価上昇を目指す、これが目標なんですね。つまり、慎重シナリオと成長シナリオ、両方示されていますけれども、当然のことだと思いますが、成長シナリオ、これを目指していく。これは二〇年度までの平均が一・七%の物価上昇を目指すということでありますけれども、いみじくも、最後に言われた、緩やかに二%までの物価上昇を目指していくということが、恐らく、はっきりとはどこにも書かれていませんけれども、政府としての考えなんだろうと思います。

 他方、日銀はどうか。きょうは総裁にお越しをいただいております。

 日銀の物価目標、これはよくわからないんですが、六番の資料を見ていただきますと、目標という言葉は使われない。これは日銀からいただいた資料に書いてあったことを抜粋いたしました。「中長期的な物価安定の理解」、これは何ですか、理解というのは。バーナンキ議長は先般、長期的な目標ということで、ゴールという言葉を使われて、これが二%ということを言われました。

 二つの点についてお伺いしたいと思いますが、一つは、物価安定の理解、こんなわかりにくい言葉で、何を目指しているのかわからない、目標なのか目標でないのか。それから、一%、今政府は緩やかに二%ぐらいを目指していくということを言われました。これはそごがあるんじゃないですか。総裁、いかがですか。

白川参考人 お答えいたします。

 まず、日本銀行として、デフレからの脱却、これは大変重要な課題というふうに認識しております。

 その上で、御質問の点でございます。

 日本銀行の金融政策の目的は、これは日銀法ではっきりと、物価安定を通じて国民経済の健全な発展というふうに書いております。

 したがいまして、物価の安定ということにつきまして、私どもは、これは二%以下のプラスで、中心は一%程度であるということを明確にした上で、この状況が展望できるまで、現在の包括的な緩和政策のもとでのゼロ金利政策、これを続けていくということをはっきり約束しております。したがいまして、こういう状況を実現するために我々は金融政策を行っているということでございます。

 それから、FRBの使っている言葉、これはロンガー・ラン・ゴールでございます。日本銀行は中長期的な物価安定の理解、ECBは定義という言葉を使っております。それから、BOEはターゲットという言葉を使っております。

 四つの中央銀行、いずれも、言葉は違っておりますけれども、しかし思うところは同じでございまして、物価安定を目指して、物価安定のもとでの持続的経済成長、これを目指して行っているということでございます。

西村(康)委員 思うところが同じなら、目標と言ってくださいよ。何で、この何かわからない、物価安定の理解みたいな言葉を使うんですか。

 総理、お伺いしたいと思いますけれども、今総裁が言われましたけれども、よくわからない、目標なのか目標でないのか。一%、どこが一緒なのかもよくわかりません。古川さんは、今、緩やかな二%を目指すと言われた。

 総理は、日銀と政府が連携をよくとればいい、きのうから、きょうも同じような答弁を言われています、よく話をすればいいと。しかし、何を目指していくのかはっきりしていないじゃないですか。ここは政府、一致していないじゃないですか。

 総理、単に連携とか、こんなときはもう過ぎたんです。これでは結果が出ないんです。今、相当思い切ったことをやらないと、日本経済、もう本当に厳しい状況なんです。

 総理、総理は財務大臣も経験されてこられた。日銀との距離感、日銀の独立性、これは私も尊重したいと思います。これもよくわかっておられると思います。しかし、政府と日銀が単に話をするだけではもう進まないんですよ。総理、いかがですか。

野田内閣総理大臣 もちろん、単に話をするだけじゃだめだと思います。公式の会議だけで顔を合わせてということではなくて、まさに膝を突き合わせて問題意識を深く共有するということが大事であります。そういうことをこれからどんどんやっていこうということは、総裁とも合意をしております。その上で、だからこれは、政府と日銀の問題意識はそごがないと思います。

 言葉遣いの話がさっきからありました、「中長期的な物価安定の理解」。だけれども、二%以下のプラスの領域で、中心は一%ということをしっかり視野に置きながら、そのための金融政策を日銀が打っている。我々も当然、さっきちょっと二%と言いましたけれども、これからの目標、一%台の後半のところでいわゆる新成長戦略を組んでおりますが、そういうことを念頭に置きながら、その実現のために努力をしていきたいというふうに思います。

西村(康)委員 決意が感じられないんですね、覚悟が。この成長戦略シナリオ、これでいいかどうかは別として、少なくとも物価上昇率は一・七%ぐらいにしよう、二%、緩やかにしていこうと言われたのなら、その決意で、覚悟でやってくださいよ。

 日銀は違うことを言っているじゃないですか、真ん中辺は一%ですと。しかも、物価安定の理解みたいな曖昧なことを言っているんですよ。政府がしっかりと目標を決めて、これは日銀法を改正しなきゃいけませんが、目標を決めて、それを日銀に指示する。あるいは、きのう前原さんが提案されました、アコードを結ぶ。まあ、アコードという言葉はいろいろ誤解も、政府の財政が厳しいのを日銀が買い支えるといった誤解もありますけれども、協定、目標をしっかり共有する。

 今、明らかに二つのことで、一つは、目標が両方とも曖昧なんですよ。公式の場以外でも話をすると言いながら、目標設定が曖昧なんです。さらに、それを絶対にやってやる、二%のインフレ率、やってやるという決意がないじゃないですか。それをやるために、私は、日銀法の改正をぜひやるべきだ、先ほど茂木政調会長が提案したとおりであります。

 きのう、前原さんもいみじくも同じような提案をされた。これを超党派でやろうじゃありませんか。総理、いかがですか。両方の政調会長が同じような提案をしているんですよ。両党でできるじゃないですか。まず、デフレ、円高対策を一緒にやろうじゃありませんか、総理。いかがですか。

 これは、総理に政治的な判断をお伺いしたいです。

中井委員長 その前に、政府と日銀の間に微妙なずれがあるという点を御指摘なさっておりますから、抽象論ではなしに具体的に、安住財務大臣と日銀総裁からお答えいただきます。

安住国務大臣 二%近傍を目指すという成長については、決してそごはないと思います。(西村(康)委員「物価上昇」と呼ぶ)

 CPIを長く統計的に見ますと、九五年からもうマイナスに転じて、一時的に、小泉構造改革の後の上昇で一%ちょっとに振れたときはありますけれども。

 ということは、やはり先生、そういう金融緩和の話は私も再三御指導いただいておりますけれども、我が国の根本的な人口減少と需要の伸び悩みをどういうふうに考えるか。それで、財政出動については、積極果敢にそれはやる。

 一方、それにあわせて、金融政策についても、日銀に対して果断な決断を我々としても求めておりますので、そうした意味でのいわば方向性を合わせていく対応ということで、日銀としても、そこにお示しをいただいているような考え方をまとめておられますから、決してそごはないというふうに総理が御答弁になったのと私は認識は一緒でございます。

白川参考人 お答えいたします。

 日本銀行は、再三申し上げますとおり、日銀法に定められている精神に従いまして、物価安定を通じて国民経済の健全な発展に資するということで邁進しております。

 それから、政府との間で認識の差があるというふうには思っておりません。先ほど来、総理から御答弁ございましたとおり、政府と日銀と、さまざまな場で意見交換も行っておりますし、それから、先般、官邸で総理と意見交換の場を持たせていただきました。その際にも、これから頻度を高めてまた意見交換を行っていきたいというふうに思っておりまして、認識の差があるというふうには思っておりません。

 しっかりこの問題に取り組んでいきたいというふうに思っております。

中井委員長 白川総裁、あなたは一%中心とおっしゃるし、政府は二%と言う。間に差があるじゃないかとおっしゃっておるんですから、それに対して具体的に答えてください。

白川参考人 日本銀行が現在、金融政策のめどとしています物価上昇率、これは二%以下で一%程度が中心だ。中心は一%でございます。これは……

中井委員長 二%で一%が中心というのは、どういう意味。

白川参考人 といいますのは、少し技術的な話になって恐縮でございますけれども、例えば英国の場合でいきますと、これも例えば二%プラスマイナス一%、これは幅を持っております。したがって、いろいろな中央銀行の対応がございます。ピンポイントで示せるケースもありますし、それから幅で示せるケースもございます。

 ただ、いずれにせよ、我々が目指している状況は、先ほど申し上げたような状況、つまり二%以下で中心一%、これを目指して今政策をやっております。

野田内閣総理大臣 デフレに陥ってから本当に相当長期の期間になってまいりました。これまでの政権でも格闘されてきたけれども、乗り越えることができませんでした。私どもも、政権を預かってから二年半になって、残念ながら、まだ抜け切れていません。

 その意味で、超党派で意見交換をしながら知恵を出していこうという御提起は、私も賛同いたします。

西村(康)委員 ありがとうございます。

 前向きな御答弁と受けとめさせていただきますが、念のため申し上げますけれども、資料の八に、政府が目標を決めて日銀に指示をするというパターンと、協定を結ぶというパターンと、両方、これは各国やっています。

 このようなことを念頭に置きながら、我々、消費税から逃げるつもりはありませんから、我々はもう一〇%を公約しているわけですから、私は政調事務局長でこれをまとめたわけですから、これは、しっかりと民主党内をまとめて案を出していただければ、我々は議論から逃げません。

 しかし、それだけではだめなんですよ。それだけでは財政再建もできないし、日本経済はよくならない。今一番最初にやらなきゃいけないのは、このデフレ、円高対策なんです。

 だからこそ、日銀法の改正を視野に入れつつ、これをやることを考えながら、ぜひ、これは両政調会長、同じような提案をされているわけですから、政調会長同士でやる、そう理解してよろしいですか。総理、いかがですか。

野田内閣総理大臣 私どもの今の政府の立場は、日銀としっかりと緊密に連携をしながら、問題意識を共有しながら、それぞれ機動的な対策を講じるという姿勢でありますけれども、超党派の中で円高対策、デフレ対策の議論をしていただくことは大いに結構だというふうに思っております。

西村(康)委員 消費税だけ超党派で協議しよう、増税だけやろう、そうじゃなくて、今、全体的な経済政策が大事なんでしょう。最初に申し上げたとおりです。

 だから、このデフレ対策をまず超党派でやろうじゃありませんか。この厳しい日本経済、デフレ、円高から脱却させましょうよ。

 総理、もう一回お伺いしますが、これは超党派でやりましょうね。

野田内閣総理大臣 まさに国難ともいうべき状況を打開するために、今経済のお話もありました、財政の話もあります、社会保障もあります、そういう問題について胸襟を開いて議論するということは、私は大いに結構だというふうに思います。国会だけではなく、まさに政党間の協議も大いにやっていただければというふうに思います。

西村(康)委員 前向きな答弁と受けとめさせていただいて、ぜひ、自民党からしっかりした案を提案させていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 時間が大分たちましたので、イランの情勢についても幾つか、石油、エネルギーの情勢もお伺いをしたかったんですが、ちょっとホルムズ海峡の情勢についてお伺いをしたいと思います。

 これは玄葉大臣にお答えいただいたらいいと思うんですが、ワシントン・ポストに、イスラエルによる対イラン攻撃が四月―六月になされる可能性は高いと考えている、パネッタ国防長官がそう考えているという記事が報道されました。

 その後、パネッタ長官はノーコメントを通されているようでありますけれども、万が一ホルムズ海峡が封鎖される、あるいはそういう交戦状態になる、イスラエル、イラン、そうすると当然アメリカも交戦することになるんだと思いますが、こうした状況について、万が一のことについてアメリカといろいろな話をされていますか。言えないこともあると思いますが、言える範囲でお答えをいただければと思います。

玄葉国務大臣 西村委員おっしゃるとおり、イスラエルの立場は、外に表明をしている立場として、あらゆるオプションを排除しない、こういうふうに言っている、そういう立場表明があるというふうに承知をしています。

 ホルムズ海峡が封鎖をされるというふうになると、日本の場合は、これも御承知のとおり、日本に来る原油の八五%はホルムズ海峡を通過している、LNGはたしか二割弱だったのではないかというふうに思います。したがって、この問題について、アメリカだけではなくて、国際社会全体で深刻な懸念を共有しています。

 米国との連携は極めて大事でありますので、まずは効果的な制裁というものを行う。そのために、一つは能動的に動く、効果的な制裁たり得るためにどうするかということです。もう一つは、独自のイランに対する働きかけは、どこかのタイミング、適切なタイミングで行っていく。両面から能動的な動きというものが日本政府に求められているというふうに考えて行動しております。

西村(康)委員 いろいろなオプションを排除しない、さまざまなオプションを排除しないということでありますので、万が一そういう状況になるということも考えられるわけでありますけれども、万が一交戦になり、ホルムズ海峡が封鎖をされるというふうなとき、日本の自衛隊は一体何ができるのか。

 これは防衛大臣、自衛隊が何をできるのか、お伺いしたいと思います。

田中国務大臣 この素案につきましては、防衛省としましては、今のところ、対応について、具体的に検討しておる内容ではございません。

 そしてまた、今議員が御指摘のように、私は、外交努力でこの問題は対処をしていくということが政府の大前提であるというふうに認識をいたしておりますし、今の我が自衛隊の法案の中では、このことについては、対処をするというような手段は持っておらないということでございます。

西村(康)委員 ちょっと答弁がよくわからないんですが、自衛隊が対処する手段は持っておられないということですけれども、掃海艇は過去に派遣をしているわけですね。余り細かい事実関係だけを聞くつもりはありませんが、いざというとき、先ほど玄葉大臣が答えられたように、日本の石油の八割はあそこを通ってくるわけです、ホルムズ海峡、ペルシャ湾から来るわけです。それがとまったときに日本が何もしないということは、あり得ないんだと思うんですね。

 そのときに、自衛隊は法的に何もやれることがない、それは違うと思いますね。どの法律に基づいて何ができるのか、しっかりお答えいただきたいと思います、大臣。

渡辺副大臣 掃海艇が派遣されたのは湾岸戦争の後、ただ、戦争が終結をしていました。ですから、機雷の除去ということを、これはたしか、あのときは海上警備行動で行ったと認識をしています。あの後、法案ができるまでの間の検討段階では、たしかいろいろな議論がされていたと思います。ちょっとそこのところは今正確に、二十年前の話でございますので少し失念しておりますけれども。

 今、現状、イランが例えば機雷を敷設して、ここでホルムズ海峡を封鎖した場合に、我が国の艦船が、例えば自衛隊が行ってこれを除去できるかといったら、現行の法律ではできないということでございます。集団的自衛権に抵触するおそれがある。ですので、これがもしイランではなくて、戦争が、軍事的な緊張が終結したところで、そこで不明の機雷を掃海艇が除去しに行くことはできますけれども、もしここでホルムズ海峡を封鎖することによって、今、現行、自衛艦が行くことは、これは大変ハードルの高い話だと理解をしております。

西村(康)委員 平成三年時点では、自衛隊法九十九条に基づいて、まさにおっしゃった掃海艇を派遣して機雷の除去をやったようでありますけれども、これは、きょうは余り時間がありませんし、ぜひ整理をして、何ができるかということはお示しをいただきたいと思います。

 委員長、お取り計らい、お願いします。

中井委員長 承りまして、理事会でも協議の上、政府に申し入れをいたします。

西村(康)委員 その上で、これは玄葉大臣でいいんでしょうか、周辺事態法、これが使えるのか使えないのか。

玄葉国務大臣 周辺事態法は、基本的に、御存じのように、あれは事態の性質に着目した概念でありますから、どこどこの国ということは言えません。ただし、もう過去の答弁でありましたように、いわゆる地球の裏側、その中で、中東を含めて想定していないということがこれまでの政府の答弁だったというふうに思います。今、ホルムズ海峡というお話だったと思いますので、そういうことを申し上げます。

西村(康)委員 確かにこれは自民党政権時代でも、アフガン情勢、イラク情勢について何ができるかというようなことも検討しました。そのときには、確かに、日本の安全保障にどの程度影響があるかという観点から、これは無理じゃないかという答弁は自民党時代もやっております。

 ただ、ホルムズ海峡、今まさに言われたように、日本が輸入する八〇%の石油があそこを通ってくる。これは日本の安全保障に重大な影響を与える事態だと思うんですね。

 ですから、きょうは答弁は結構ですけれども、周辺事態法が使えるのか使えないのか、これもぜひ検討をしていただきたい。私は、周辺事態法、万が一アメリカ軍が出て後方支援なりをやる必要が出てきた場合は検討すべきだというふうに思いますので、これも検討をお願いしたいと思います。

 委員長、取り計らいを。

中井委員長 理事会で協議して、合意の上で、政府に申し入れます。

西村(康)委員 その上で、総理にお伺いをいたしますけれども、もし自衛隊法九十九条の掃海艇派遣も使えない、周辺事態法も使えないとなった場合に、仮にイランで何かがあり、ホルムズ海峡で何かがあった場合、日本の安全保障には相当重大な影響がある。このとき、日本は何もしないのか。またイラン特措法なるものをつくらないと間に合わない。新しい法律をつくって、新たな枠組みで自衛隊を何らかの形で派遣する。毎回同じことをやるわけですね。アフガンで起こったらやる、イランで起こったらやる。

 先般、石破委員の方から御質問をされ、一般法をちゃんとつくっておくべきだ。総理は煮え切らない御答弁でありましたけれども、総理の補佐官である長島昭久補佐官、私は超党派で安全保障の議員連盟をやっています、そこでは恒久法、一般法をつくろうということで意見がまとまっています。総理の補佐官ですよ、安全保障担当の補佐官だと伺っています。

 総理、毎回毎回特別措置法をつくる、そんな時間はないわけです。今回もし急に何かが起こったとき、また法律をつくらなきゃいけない。ぜひ一般的な法律をつくるべきだと思いますが、総理、改めてお伺いします。いかがですか。

野田内閣総理大臣 まずは、イランの問題について何よりもやらなきゃいけないのは、国際社会と協調しながらどういうことができるか。対話と圧力、今は、圧力では国際社会と協調してやっているものもあります。日本独自の働きかけの対話もやっていかなければいけない。こうしたまさに外交的、平和的な努力によって問題解決に向かっていくというのが基本中の基本です。

 一方で、先ほどの議論にもあったとおり、ホルムズ海峡というのは日本にとって大変重要なところであって、エネルギー源はそこに頼っているというところを考えたときに、何か起こったときの想定というのはやはりやらなければいけないと思います。それは、まさに戦闘状態のときはいろいろな限界があるかもしれません。その前にできること、あるいはその後にできることを含めて、何ができるかということの議論は、これは当然やっておかなければいけないと思います。

 その上で、なお、特別措置法は云々とか一般法をどうのという議論までの段階ではまだないと私は思いますが、ただ、一般法の議論は、超党派でいろいろな議論があることも私もよく承知をしています。そういう議論自体を進めるということは、私は全然問題はないというふうに思います。

西村(康)委員 また外交、安全保障の集中審議もありますし、石破委員もまた立たれる機会があると思いますので、そちらに譲りたいと思いますけれども、今の答弁は、この間の答弁よりかはちょっと前向きになっておられたんじゃないかと認識をいたしましたので、引き続き、また長島補佐官初め民主党の皆さんとも案をまとめるべく努力をしたいと思います。

 私は、毎回毎回つくるよりは、やはり一般的な法律を常に、いつでもできる用意をしておくべきだというふうに思いますので、そのことを申し上げたいと思いますし、何も、武力を使うことを前提に常にやるわけじゃありませんので、外交力というのが一番大事で、戦わずして全て解決していくのが何より大事であります。しかし、民主党の外交力には心配があるから、あえてこういうことも申し上げているわけであります。

 最後に、もう時間がなくなりましたけれども、TPPの話を少しさせていただいてと思います。

 私は、TPPは基本的に賛成の立場で、アジア太平洋の繁栄のためには、新しい貿易や投資のルールをつくって、あるいは知的財産のルールをつくる、それをASEANやAPECの場で広げていく、中国やロシアにもそうしたルールを守ってもらう、これが大事な一つのプラットホームになるというふうに理解をしております。

 しかし、日本の農業のことを考えたり、あるいは医療、医療はもう大丈夫だということを発表されましたけれども、当初は、日本の医療保険、皆保険制度が崩壊するんじゃないか、崩壊させられるんじゃないかとか言われていました。農業についても、何も丸裸になって、全部関税を直ちにゼロとしろ、こんなことができるわけがありません。

 いろいろなセンシティブな品目があるということを、これは私は前にも総理にどこかの委員会で申し上げましたけれども、最初にオバマ大統領に会ったときに、日本はセンシティブな品目があるということはぜひ言うべきだったということを申し上げましたけれども、先般、アメリカに行って、USTRやホワイトハウスにも私からそういう話もしておきました。

 それで、あえて一つ、二つだけ、もう時間がありませんので最後にしたいと思いますけれども、アメリカは、オーストラリアと結んでいるFTAについては、二国間でFTAを結んでいますね、砂糖や一部の酪農製品は例外品目としているんです。アメリカの主張は、もうこれは再交渉しない、そのままにするんだということを言っています。

 つまり、アメリカは、自分のところのセンシティブな砂糖や一部の酪農製品はもう例外品目扱いだ、しかし、後から入ってくる日本は例外品目なしですよ、こんなことを言っているわけですね。これは猛反論しました、そんな不公平な取り扱いがあるかと。この点、アメリカは自分の思うようにやろうとしている。これはもう徹底的に、まさに交渉で、外交力、まあ、そこまで言う話でもありませんけれども、やらなきゃいけません。

 それから、基本的に、米韓FTAをベースにいろいろ考えていることがよくわかりました。

 アメリカの自動車業界は、韓国に対して、一社当たり二・五万台の枠というか数値目標というか、アメリカで検査をすれば、もう韓国で検査なしにそのまま輸出できるような仕組みを入れている。しかし、日本は、こんなもの受け入れられない、数値目標みたいなものは受け入れられないということも申し上げてきました。

 このあたりの交渉、きのう幾つか発表されていますけれども、アメリカは自分たちは例外扱いするけれども日本はなし、こんなこともあり得ないし、日本は数値目標みたいなことは受け入れられないし、こうした方針はきっちりと守っていただきたい。丸裸になってやる、アメリカの言うとおりしますというこの姿勢は、絶対にこれは受け入れられませんので、このことは玄葉大臣がいいですか、お答えをいただければと思います。

玄葉国務大臣 野田政権の外交、着実に、結果重視で成果を上げますので、そのことをまず申し上げたいと思います。

 その上で、今のTPPの話でございますけれども、今回も、包括的経済連携の基本方針に基づいて、作業、こちらの対応をしていくということを言いました。それは、すなわち、センサティブ品目に配慮をしながら、しかし、全品目テーブルにのせます。おっしゃったとおり、問題は交渉の中で、今のような、かち取るべきものをかち取っていくということが大切です。

 米韓が確かに私も参考になるというふうに思いますし、どうもアメリカは参考にしているということも間違いありません。九千から九千五百タリフラインがありますけれども、例えば一%の除外を認めるということは九十だ、米とその調製品で大体三十四のタリフラインですから、そういったことも含めて。

 おっしゃるとおり、例えば自動車で数値目標、私はあり得ないと思います。私自身はあり得ないと思います。そういうことをやらないために、まさにこういった高いレベルの経済連携というものが行われている。

 現在、米国との関係では、まだ米国自身が何を要求してくるかということについて整理できていません。ただ、先ほどおっしゃっていただきましたけれども、公的医療保険制度、これはもう要求しません。それと単純労働者の問題、これも一切要求しません。ここはもう、はっきり米国側から表明があったということでございます。

 ですから、そういう意味で、今、西村委員が言っていただいたような立場で臨んでいきたいというふうに考えております。

西村(康)委員 もう時間が来ましたので最後にしますが、これまでの交渉、さまざまな二年間の外交の姿勢を見てきて、心配だから申し上げているわけでありまして、ぜひ、日本の国益、日本の主張をしっかりとしていただきたいと思います。

 それから、今回、一人大臣がふえるということで、実は私、いろいろ期待をしました。総理は、消費税重視でありますから、岡田副総理の負担を軽くするということでいろいろ考えられたんだと思いますが、私は、古川さん頑張っておられますけれども、いろいろ兼任をしておられる、科学技術とか宇宙とか。先ほど申し上げたように、今、経済財政全体を考えて、日本の経済をどうするか、財政再建を含めどうするかということを考えなきゃいけない。これは、私は、古川さんを専任にする、もっと軽くしてあげる、そういう考えもあったと思います。

 あるいは、TPPについても、どこが司令塔でやっているのか。いつも各省ばらばらな試算を持ってきて、調整していませんということでありますので、私は、そういう司令塔、税だけじゃなくて、今大事なTPPであったり、あるいは、最も大事なのはデフレ、円高対策でありますから、そこの司令塔を大事にするということで期待を申し上げたんですが、残念ながら、そんなふうになっていないようであります。

 いずれにしても、きょう、超党派で幾つか申し上げました。何とか政治が前に進むように、我々も提案をしていきたいと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。きょうはありがとうございました。

中井委員長 この際、鴨下一郎君から関連質疑の申し出があります。石原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。鴨下一郎君。

鴨下委員 きょうは年金の話であります。

 今国民の皆さんは、年金の話、幾つかの局面といいますかディメンションがあって、なかなか理解しにくい話になっておりまして、一つは、今動いている現行制度、岡田副総理はそれを旧制度と言っているけれども、まだ旧制度じゃないんですね。現行制度であります。立派に動いている現行制度。

 それから、民主党がかねてからおっしゃっている、いわば全額税方式、こういうようなことである、私はそれをこれから民主党案といいます。

 それからもう一つは、今、素案に書かれている話で、現行制度を少し手直しして修正していこう、こういうようなことをやっている。私は、これは修正の現行制度、あるいは修正の賦課方式、こういうふうに位置づけたいと思います。

 そうすると、今、三つの制度についてきょうは議論をしたいと思っていますけれども、まず総理大臣にお伺いしますが、現行制度がぼろぼろだという話を、鳩山さんなんかはもう何回も何回も言っていて、国会の場でも現行制度はぼろぼろだと言っていたんですけれども、御認識として、この現行制度はぼろぼろなんですか。

野田内閣総理大臣 それぞれの政治家でちょっと表現の仕方はいろいろあるかもしれませんが、まさに年金は国民の老後の暮らしを支える大変重要な柱であるということであります。しかし、一方で改善すべき点もいろいろある。そういう意味で、そういう御指摘をされたというふうに思います。

鴨下委員 今のですと、現行制度を是認した上で、足らざるところはきちんとする。それはまことに正当な理論であります。ですから、それだったら我々はきちんと議論に応じられるんだけれども、最初に、現行制度はぼろぼろだ、これはもう終わっている、破綻している、こういうようなことを言われると、そうすると、実際には、総理もよくわかっていると思うけれども、一億人の人がかかわっている制度であります。例えば現役世代でいうと、約六千万人の方が毎月毎月きちんと保険料を納めてくださっている。加えて、約四千万人の人が給付を受けている。こういう制度なんですよ。こういう制度を、頭から、この制度はぼろぼろだ、もうこの制度は破綻している、こういうふうに言われちゃうと、もう議論にならなくなっちゃう。

 だから、民主党案は、それを頭からひっくり返して、もう一度新規に立て直そう、こういうような論拠だったんだろうと思うけれども、岡田副総理、そういう認識がもしあるんだったら、ちょっと改めないと我々と議論がしにくくなる。

 岡田副総理の見解を聞きたいと思います。

岡田国務大臣 国民の中に広く年金不信があるということは事実だと思うんですね。それは、以前は五年ごとに改定してきた、するごとに保険料が上がり、そして支給開始年齢も先送りになった、そういう中で、残念ながら、広く年金不信があることは間違いない。

 なぜそういうふうになるかといえば、やはりそれは人口構造の変化が私は最大のものであるというふうに思います。将来の少子化というのは、ある程度もっと早く見通せたはずですけれども、なかなかそれが制度に反映されてこなかった。もちろん、長生き、寿命が延びたということは、これはうれしい誤算であります。うれしい誤算ですが、これも年金制度に影響している。

 そういう中で、これは与党、野党ということではなくて、共通の問題だと思いますが、私も、自民党時代にも年金制度の五年ごとの改正に厚生委員として参加をしたことがありますし、野党になってから参加をしたこともあります。具体的に最後の詰めの段階になると、どうしても、いろいろな御要望がありますから、甘くなってしまう。より先を見通して厳しいというよりは、甘い案に落ちついてしまうということがあったというふうに思います。

 やはりここは厳格にといいますか、事態の変化というものを捉えて年金制度に手を加えていかなければいけない、それがまず前提です。

 その上で、我々は、この急激な人口構造の変化の中で、今の年金制度の手直しでは限界があるんじゃないかというふうに思って抜本改革を御提案させていただいております。

 ただ、その中で、委員御指摘のように、今の年金制度がぼろぼろだとか破綻しているとか、そういう言い方は生産的ではなかったし、もしそういうふうに私が言ったとしたら、それは申しわけなかったというふうに思っております。

 本当に今の年金制度の手直しでつないでいくことが可能なのか、それとも根本的に変えていかなきゃいけないのか、そういうことも含めてぜひ各党間で御議論いただき、どっちの結論になろうとも、それは各党合意の上で、いや、やはり今の年金制度で変えていく方がより弊害が少ないんだ、それは可能なんだということになれば、そういう選択肢だってある。逆に、我々の抜本改革でないとやはり無理があるというのなら、それにも賛同していただきたい。

 そういうことで、ぜひ御協議いただければというふうに思っております。

鴨下委員 今、副総理の話は、極めて我々に歩み寄ってきたなと思って。現行制度を全面否定するというところからマニフェストは立論されているので、これはなかなか歩み寄れないんですよ。

 それはなぜかというと、ぼろぼろだと言われたら、保険料を納めている六千万人の人たちはせつない気分になるし、それから、給付を受けている四千万人の人たちは、あっ、これはもしかすると、俺たちの老後はどうなっちゃうんだ、俺たちの老後がぼろぼろになっちゃうんじゃないか、こういうふうに不安をあおるような話は、今、岡田さんおっしゃったように、生産的ではない。

 だから、私は、今の現行制度は、足らざるところは確かにあります、そういうようなものをきちんと修正して、そして、みんなが将来的に安心できるような制度にしていくというのが政治の役目だと思って、きょうは極めて冷静に議論をしたいというふうに思っているんです。

 そして、加えて、今、岡田さんが、五年ごとにいろいろと保険料率を上げたりそれから給付をカットしたり、こういうようなことをしてきたから、この制度は持続可能じゃないんじゃないかとお話しになったけれども、そうじゃないんですよ。五年ごとに再計算をして持続可能にしていくための工夫をしていくのが、これが再計算の本旨でありますから、だから、それをきちんと考えつつ、これからやっていかないといけない。

 それからもう一つ、岡田さんは、今、人口構造の変化がある、この人口構造の変化に対して対応していく。もちろんそうです。だから、我々は、受給されている人たちにはお気の毒だけれども、経済の状況によっては、マクロ経済スライドというようなことで年金の給与をカットする、それから、最高の料率を一八・三%まで引き上げて、現役世代にも協力をいただく、こういうようなさまざまなことを工夫して、持続可能にするためにどうしたらいいか、こういうようなことをやってきたわけでありますから、これに対して、民主党案は、いや、これは不合理性があるから全部ひっくり返すという話になると、なかなかうまくいかない。

 そこで、まず一つお伺いしたいのは、民主党がかねてから、もうずっと七、八年前から提案している民主党案の年金の基本理念というのは一体どこにあるのかということを教えていただきたい。

 私がちょっと直観的に感ずるのは、割合と高所得の人から無年金、低年金の人にいわば所得の移転をするというようなことでならしておこう、こういうようなことなのかなと思っているんだけれども、そのことについて、岡田さんのお考えがあれば。

岡田国務大臣 年金制度の基本は、私は老後の生活保障というふうに思います。それが基本理念であるということです。

 ただ、現状を見ると、所得の少ない方で、国民年金に加入しておられない、あるいは、加入されても保険料はわずかしか払えていないという方がたくさんいらっしゃる。やはりそこに光を当てなければいけない。所得の多い方は、ある意味では公的年金がなくても自分でやっていける、そういう人もいらっしゃるわけです、そうたくさんいるとは思いませんが。そして多くの、年金が十分に受け取れない、そういう人たちが一方でいる。やはりそこに光を当てて、しっかりと、最低限の年金は受け取れる、そういう制度にしたいというのが私たちの考え方です。

 結果的には所得の多い方の公的年金の給付を削って、そして所得の少ない方に行くという、最低保障年金と比例年金をあわせるとそういう結果になっているかもしれませんが、問題意識としては、やはり所得の少ない方の年金給付をしっかりと確立するというところにあると思います。

鴨下委員 ただ、皆さんの方式も賦課方式に準ずるやり方をとるんでしょうから、そうすると、年金の保険料を払っている人たちで、それなりに所得に応じて高額で払っている人たちからある意味で召し上げて、そして低所得の人たちに還元していく、こういうような話というのは、賦課方式からいうと空洞化しやすいんですよ。本人たちは、自立している人たちは、場合によると自分で積み立てした方が、あるいは民間保険でやっていった方がいいという人たちが一抜け、二抜けしていくと、この制度そのものの持続可能性という意味ではなかなか難しいところが出てくる。

 だから、賦課方式をおとりになって、そして低年金の人たちにいろいろと手厚くしていくという話になると、年金の枠組みの中だけでそれをやると自己矛盾が出てくる。そのことについては、私は十分に配慮していかないとなかなか難しいことになってくるんじゃないかというふうに心配しています。まあ、それはそれでいいけれども。

 ただ、きょう、私は一部の報道で聞いたんですけれども、民主党の考え方として、最低保障機能をつけるために、低年金の人たち、あるいは無年金の人たちも含めてなのかわからないけれども、対象五百万人ぐらいの人に五千円から一万円の給付の上乗せをしよう、こういうようなことを考えているという話を報道で聞いたんだけれども、民主党の中にそういう議論というのはあるんですか。

小宮山国務大臣 それは、今委員御指摘のように、委員がおっしゃるその民主党案へ移行するには大変時間がかかりますので、現在の制度の中でどう改正していくかという中で、低年金の方々に、今五千円とおっしゃいましたけれども、六千円をベースに支給をする。それにあわせて、免除期間の部分が三分の二になっているものを二分の一にすることによって、人によっては一万円以内、それを乗せていくという考え方は今議論をしております。

鴨下委員 今、民主党の中での議論としてやや成案に近いものが結論づけられた、こういう話をきのうかきょうの報道で聞いたんだけれども、これは大臣が関与しているんですか。大臣というか、厚労省が関与しているんですか。

小宮山国務大臣 これは厚生労働省の方でも、今、年金部会を含めて御議論をいただいていて、厚生労働省としてもそのことは一緒に話し合ってやらせていただいています。

 ただ、先ほど委員がおっしゃった高所得の人の方から移すのかといいますと、それは税の部分について言っているので、所得比例の部分は所得に応じてやりますので、税と保険料の部分を私どもは分けて考えているということを御理解いただければと思います。

鴨下委員 最初に言ったように、それは現行制度を修正するための税を入れるという話でしょう。それは民主党案のいわば最低保障年金とは別の次元の話ですね。そのことにどういう税を、どういう財源でどのくらい入れるんですか。

小宮山国務大臣 それは、今の修正ではありますけれども、先ほど申し上げた民主党案の税のところを低所得者に厚くしていく部分と、これは考え方としては通じるものがあると考えています。

鴨下委員 それは通じるとか通じないとかじゃなくて、税を入れる話というのは、どの税をどういうふうに入れるんですか。

 そして、これはさっき私たちが言った、現行制度を修正する上で最低保障機能を高めていくという話の脈絡なんだろうというのは類推はできるんだけれども、具体的に言うと、それはどういう税をどのくらい入れるんですか。五%の上げる税を見込んで入れるんですか、それとも交付国債を財源とするんですか。

小宮山国務大臣 これは、今考えているのは、今の制度を改善する、修正する部分として、税を入れている部分に限って言っているわけですので、税を入れている部分の、今基礎年金の半分は税になっていますよね、そこの税の部分を高所得者の方はちょっと一時御遠慮いただいて、そうしたものなどを財源に加えて税の部分で低所得者の方に厚くしよう、そういう考え方でございます。

鴨下委員 岡田副総理はこのことについてどう思いますか。

岡田国務大臣 まだ厚労省あるいは党で検討されているものですので、私がコメントすることは控えたいと思いますが、ただ、ちょっと私がさっき言ったことで誤解されている部分があるかもしれないので申し上げますが、高所得者の年金を削って低所得者の充実に充てるというのは結果論でありまして、我々がやろうとしていることは、最低保障年金を高所得者には払わないということなんですね。そして、今はそこが基礎年金、国民年金ということで高所得者にも税金が半分入っていますよね、その分がなくなるというふうに基本的にはお考えいただきたいと思います。

鴨下委員 それは、今、岡田さんが言っているのは民主党案の話でしょう。だけれども、小宮山さんが言っているのは、現行制度の修正のところでそういうような話をおっしゃっているので、徐々に、それが何十年かかかって収れんしていくのかもわからないけれども、今言っている話というのは、たちまちこの国会に諮る話なんでしょう。

 全然わからない。そういう話をどうして、厚労省を含めて民主党でまとめたという話の報道があったけれども、今大臣はあたかもそれを是認するように答弁なさったけれども、本当にそうなの。

小宮山国務大臣 それは、先ほど申し上げたように、税の部分について高所得者の方から低所得者の方に一部移動させるという、これは税負担の部分について考えていますので、これは将来の民主党案と同じような考え方に基づいて、今、党でも御議論いただいていますし、年金部会の方でも、これはキャッチボールをしながら考えていまして、こういう考え方で法案を出させていただきたいと思っています。

鴨下委員 税の部分というのは、今、岡田さんがお話しになったように、高所得の人たちの基礎年金を削って上乗せするという話なんですか。そんな制度設計の話を誰がどこでやっているの。

小宮山国務大臣 それは民主党と厚生労働省の年金部会の方でやっております。

 ただ、高所得者の方から回す分だけでもちろん低所得者の分を全部賄えるわけではございませんので、今回、一%の、機能を充実する部分で年金に充てる〇・六兆円、そこの財源も使わせていただくという形でやりたいと考えています。

鴨下委員 それはいつからやるという話ですか。しかも、ここにいる総理大臣だとか副総理だとか、何か余り理解していないような話だけれども、小宮山大臣独断でやっているんですか。どういうデュープロセスを踏んでやっているのかというのをちょっと説明してくださいよ。

小宮山国務大臣 これは社会保障と税の一体改革の中にきちんと書き込んでいるものでございます。これは、法案を提出させていただいて、その施行をすると定めるところからやらせていただきたいと思っています。

鴨下委員 だから、その財源と、それから時期、あの素案の中に書き込んであるわけですね、そういう話は。

 そうすると、それはいつからやる話で、交付国債だとか何かと関連性はどうなっているんですか。

小宮山国務大臣 それは、消費税が一〇%に上がったところからやらせていただきます。このことと交付国債は関係ございません。

鴨下委員 一〇%に上がるときというのは一五年ということ、そのときにやるんですか。それでは、その法案はこの国会には出さない。

小宮山国務大臣 このことも、今回、消費税法案を出すときと合わせて出させていただく厚生年金の部分の改正案の中に盛り込ませていただきます。

鴨下委員 ということは、これは消費税上げの法案と同時に厚生年金の改正法案の中に出てくるという話なんですか。通るんですか、そういう話で。

 私は最低保障機能を高めていくということに異論があるわけじゃないけれども、それについては、国民の、さっき申し上げたけれども、いわば年金を払っている人たちというステークホルダーがいて、そして年金を受給している人たちがいて、そのバランスの中でやるんですよ。だから、みんなが納得しないと年金制度というのは動かない。

 それを、例えば皆さんは、先ほど私は岡田副総理に聞いたんだけれども、今回のといいますか、基本的に民主党の年金制度というのは所得の再配分なんですね、高い方から低い方へならすということなんですねと言ったら、それは是認なさった。だけれども、今回の話というのはそれを前倒ししてやろうという話。

 私が言っているのは、自分で言っているのでもわからなくなっちゃうんだけれども、現行制度と、民主党案の最低保障年金と、それから素案に書いてある現行制度を手直ししていこうという話において言えば、小宮山大臣が言っているのは、現行制度を手直しする中で、もう既に最低保障機能としては、今言ったように六千円だとか一万円上乗せという話を結論づけてこの六月に諮ろう、こういうふうにしているということでいいんですね。

小宮山国務大臣 先ほど申し上げたように、あくまでこれは税の部分です。税の部分については今委員がおっしゃったとおりです。ただ、所得比例年金は、これは所得に比例して払っていただく形になっていますので、保険料と税の負担にかかわる部分を分けて考えているということは御理解いただきたいと思います。

鴨下委員 いや、それは大臣、混同している。民主党案について私聞いているわけじゃないんだよ。現行制度の修正について話を聞いているんですから、そのことについて、別に報酬比例部分がどうしたとか、そんな話じゃないですよ。基礎年金の中で、もう基礎年金そのものをいじって、高額の受給をされている人たちからは削って低年金の人に上乗せするという話をこの六月の法案で出すんですかという話を聞いているんです。

岡田国務大臣 この社会保障・税一体改革の素案ですね、その中にそういうことも書いてあるわけでございます。

 まず一つは最低保障機能の強化ということで、「年金制度の最低保障機能の強化を図り、高齢者等の生活の安定を図るため、以下の改革を行う。」一つが低所得者への加算。「低所得者に重点を置いた、老齢基礎年金額に対する一定の加算を行う。」

 もう一つが高所得者の年金給付の見直し。「高所得者の老齢基礎年金について、その一部(国庫負担相当額まで)を調整する制度を創設する。」この法案は、「平成二十四年通常国会への法案提出に向けて検討する。」

 そういう素案に沿った考え方でございます。

鴨下委員 もしそういうようなことで中央突破されようとするんだったら、今、民主党案、最低保障年金、税方式、これをやる必要ないんじゃないんですか。最低保障機能を今言ったような形でなさるんだったら、低年金、無年金対策は現行制度の修正で大体事足りる。

 我々も、それに最低保障機能をつけていくというのについてはいろいろと工夫をする必要があると思っているし、それを年金の枠の中、年金の世界の中でやるんじゃなくて、最低保障機能は福祉的要素もあるから、別途財源を探してやるという考えもあるし、年金の中での再配分でやるかどうかという話もあるけれども、言っていることがわかりますか。

 だから、そういうような意味でいうと、現行制度を修正するというところでもし最低保障機能がきちんと、今お話しになったようなことを各ステークホルダーに納得させられれば一つの考えでありますよ。だから、そういうふうにやるんだったら、そういうようなことを提案なさったらいいし、それに対して、では、それを進めながら、なおかつ現行の制度、一億人かかわっている制度を全部ひっくり返して、新しい制度を四十年後に立ち上げるという根拠は一体何なんですか。

岡田国務大臣 委員は非常にいい御議論を提起していただいていると思います。だから、この協議が必要なんです。

 ですから、現行制度で税の部分に限って、所得の多い方には少し御遠慮いただいて、それをもって低所得者の方の年金に使っていく、これで十分な対策になればそれはいいわけですが、それでは必ずしも十分にならないということで、我々は、所得比例年金ということを創設する形で、より抜本的な改革が必要であるということを説明しているわけです。

 ただ、いずれにしても、そういうことも含めて、しっかり各党間で御協議いただければというふうに思っております。

鴨下委員 今、各党間で審議をしているんですよ。それで、ここが一番、国民に向かっても審議をする場としてふさわしいと私は思っている。それは、総理も座っているし、財務大臣も座っているし、厚労大臣もいるし、各党の議員もいるし、テレビの中継もされているし、こういうようなところで議論する、これ以上の協議の場というのはありますか。ですから、私はここで具体的に話をしているんです。現行の年金制度に少し最低保障機能を、今の御提案は一つの提案だけれども、こういうものを入れて、そして無年金、低年金対策をきちんとする、それから加えて、未納、未加入の問題だとか何かについてもここの議論の中でやればいい。

 そうすると、岡田さんがおっしゃっていたかどうかは知らないけれども、民主党案というのは単純に言うと、無年金、低年金の問題、それから未納、未加入の問題があるじゃないか、だから、この制度を全部根っこから見直して、新しい制度をつくった方がいいじゃないかというのがそもそもの立論なんですよ。

 だけれども、それには、年金制度というのはずっと昭和三十六年から続いていて、ワンクールで大体七十年から八十年かかる。四十年納めて、その人が年金を受け取り始めてから亡くなるまでで七十年かかって、そして、年金を払い始めるまでの二十まで勉強して、働き始める。そうすると、全体で、一つのワンクールとして七十年から九十年かかる制度なんですよ。医療だとか介護というのは単年度だから、ことし不合理があれば来年ぱっと変えれば、それはそれで一つの整合がとれるんだけれども、年金というのは九十年で一回りしてワンクールなんです。

 だから、それを、まだ五十年、六十年しかたっていない制度をもう一度根こそぎ変えてやるという話というのは、一億人の人たちを不安に巻き込むんですよ。

 それで、小宮山大臣、今、未納、未加入の人たちというのは、例えば二年間、年金保険料を払っていない人たちというのはどのくらいいらっしゃいますか。

小宮山国務大臣 今、未納者は三百二十一万人、未加入者は九万人と推計されます。

鴨下委員 大体三百万人ぐらいの人たちが未納、未加入、二年以上年金を払っていない人たち。そうすると、一億人かかわっている制度で、三百万人の人たちのために制度を全部ひっくり返す話というのは効率的ではないし、多くの人たちの理解を得るために物すごいエネルギーがかかる。

 加えて、岡田さんは、制度の移行に約四十年ぐらいかかるという話をおっしゃっているけれども、四十年かけたときに、私たちが今現在、未納、未加入、低年金、無年金の対応をしなければいけないということはわかるけれども、四十年先にそれが実現するということが、本当にこの制度を変える必然性になるんですか。

 そういうような意味においては、私は、修正して、例えば現行制度の足らざるところ、残念ながら我々もそれについては十分に対応できていなかったことを皆さんからわあわあ言われて、そして反省もし、なおかつ修正した賦課方式というのを提案して、それが結果的に今の素案そのものなんですよ。

 だから、それは坂口大臣のころからずっと問題意識を持って、それで百年安心と言ったら皆さん冷ややかに笑ったけれども、年金制度というのは九十年で一つのワンクールなんですよ。だから、一人の人が生まれて亡くなるまでのこの一生をきちんとフォローする制度にするということが重要で、それが半分、五十歳になったときにぽっきり折れて、また別の制度になるというのは、これはいたずらに不安をあおるだけ。

 だから、私は、ここは三党協議あるいは与野党協議の場だと思っているから、きちんとした真面目な議論をしたいと思っているんですけれども、現行制度、足らざるところはありました。それをきちんとこれから修正していくというのが、皆さんが提案されている素案です。そして、それを今度はやっていこうじゃないか、そのために、例えば二分の一の財源として、交付国債はいただけないけれども、公費負担をふやしていこう、まことに結構なことだと思う。

 それから、あとは、例えば最低保障機能を高めていく上で、これは公費で入れるのか年金の中で再配分するのかというのは本当に難しいところなんです、議論として。そういうような最低保障機能を高めていくというのは、低年金の人たちの救済にはなるけれども、実際には、真面目に納めていた人、あるいは一生懸命四十年間納め切った人、こういうような人にとってみると、モラルハザードになる可能性がある、払わなくてもそこそこもらえると思えば。だから、そういうことを踏まえて制度というのはつくっていくんですよ。

 ですから、私は、岡田さんにきょう強く申し上げたいのは、もうそろそろ旗をおろしたらいかがですか。そして、今の素案に書かれている、現行制度を修正して足らざるところを補っていって、一億人がかかわっているこの制度を十全のものにするために、我々と一緒に議論しましょうよ。そして、今こうして議論しているんです。

 このことを、岡田さん、そろそろもう意地張らないで旗をおろしましょうよ。

岡田国務大臣 いろいろと興味深い話をありがとうございました。

 本当に、この人口構造の変化というものを乗り越える、中立的な制度をつくろうとすれば、それは積立方式にまでいかないと無理なんだろうと思います。実は、我々、私とそれから野田先生初め自民党の先生方で年金制度の抜本改革を議論したときに、そういった制度を提案したこともございます。しかし、これはより簡単ではない、より難しさがございます。過去債務という問題もある、それをどう処理していくかということがある。

 したがって、我々の制度も完全に積み立てに移行しているわけではなくて、そういう意味で、人口構造の変化にやはり影響は受ける部分があって、そこはやや割り切れないところがあることも事実です。

 ただ、やはり、これだけの人口構造の変化の中で、それを少しでも乗り越えていく、そういう制度をつくる必要があるというのは私たちの根本にある問題意識で、委員は、年金というのは長く続くものだから途中で変えることは不安をあおる、そういうふうにおっしゃいますが、そういう見方もあるけれども、しかし、やはり変えられるときに思い切って変えるべきだ、そういう見方もできると思います。まさしくスウェーデンではそういう形で、超党派で議論をして年金制度を変えたというふうに私は思っているわけです。

 ですから、そういうことも含めて、各党間で協議させていただければというふうに申し上げているわけです。

鴨下委員 ここで議論しているんですよ、岡田さん。これが一番いい議論だと思っています。

 そして、私は、今こうして真面目にお互いに議論をしているということは、聞いていらっしゃる国民の皆さん一人一人全てがステークホルダーですから、そういう人たちが、ああ、厚生年金どうなっちゃうんだろうか、厚生年金の保険料どうなっちゃうんだろうか、自分は三万円しか国民年金をもらっていないけれども上乗せしてもらえるんだろうかと、みんなはらはらどきどきして、国民全員が当事者なんです。

 ですから、そういうような意味でいうと、ここで真面目に我々がこうきちんと議論をするということが、国民の皆さんにも安心を与えることになるし、それから、余り、あれはだめだ、これはだめだという議論はもうお互いにやめましょうという話になったから。いや、だって、できない制度を掲げて、そしてこっちに向かっていきますといったって、もう無理なんだから。

 では、具体的に聞きますよ。最低保障年金は一体いつになったら満額もらえる人はもらえるんですか。今三万円、二万円の人は、小宮山さんが言ったように、今のを修正して最低保障機能をつけるという話になると、一五年ぐらいからはもらえる可能性が出てくるわけでしょう。だけれども、岡田さんが言っているような最低保障年金というのは、あなたたちの制度、民主党案が成立して、そして四十年たたないともらえないと皆さんで言っているじゃないですか。だから、最低保障年金がいつもらえるのかというのをきちんと国民の皆さんに説明してくださいよ。

小宮山国務大臣 それはおっしゃるとおり四十年後です。それは、マニフェストの段階でそういう説明ができていなかったことは申しわけないし、これからわかりやすくしたいと思います。

 きょうは本当にいい議論をしていただいていると思っています。ただ、今のを修正すればよいというお考えの中には、例えば、今、国民年金については未納者がたくさんいますよね。こういう中で、国民年金を払っている方々も六割が非正規の方とか無収入の方になってきている中で、今のままの国民年金制度でやっていけるのかどうか。

 このことについては、私どものは、確かに大きく変えるのは大変ですけれども、全ての人が同じ年金制度に入り、同じ保険料を払えば同じ給付があるというような公平な形にしたいというふうに考えている。そのことは、今の修正の中でどうなるのかとか、これから新しく年金を掛けてそこに入っていこうとする若い人たちにとって何が一番公平公正で納得いくものなのか。これは世代間の公平とか世代内の公平とかいろいろあると思いますけれども、今のままでいくと、どうしても、三号の問題とかいろいろなことも出てくるわけです。

 そうしたことも含めてぜひ議論をしたいということと、もう一点、先ほど、今のを修正すれば税の部分の公平はいいんじゃないかというお話がありましたけれども、今の基礎年金の場合は税で入れているのは半分ですから、そこの部分でやっても、私どもというか民主党案で言っている最低保障年金、この税でやる部分はそこの全体の話ですので、そこはやはり倍の違いがありますから、こうしたことについても、どちらがいいのかということは議論をさせていただければと思います。

鴨下委員 今、一号について六割がパート、アルバイトを含めた非正規の方々だという話がありましたけれども、それについてだって政府としていろいろとやっているじゃないですか。例えば、四十時間のうちの二十時間までの人は厚生年金に入ってもらうとか、こういうふうに是正しているでしょう。ですから、そういうようなことをやってきちんと真面目に対応すれば、無年金、低年金だけでなくて、未納、未加入のところもきちんとできるというふうに思っています。

 ただ、先ほど大臣がおっしゃったように、例えば四十分の二十時間だけ働いた人たちが厚生年金に入るということが、雇用だとかなんか含めて、あるいは特に外食産業なんかの経営者の皆さんはかえって雇用を失うんだという話があるから、こういうようなことについては、では本当に、四十分の二十時間働くということで厚生年金適用した方がいいのかどうか、こういうことを真面目に議論しましょうよと言っているんですよ。

 大臣、どう思いますか。四十分の二十時間働いて厚生年金に加入する、これは厚生省のプランでしょう。ですから、そういうようなことについての評価をしてください。

小宮山国務大臣 ぜひこういう点も議論をさせていただきたいと思います。

 それで、私どもはやはり、非正規の皆さん、短時間労働者の皆さんになるべく均等な待遇をしていくということでは、今回二十時間ということを提起させていただいています。特に、外食産業を初めパートの方を多く使っていらっしゃる業界の皆さんの声も伺っています。

 そういう意味で、もちろん、これは一度にやるのは無理だということはわかっておりますので、段階的にやっていきたい。それで、いろいろ負担がふえる事業主の皆さん、あるいはこれは保険の方もやりますので保険者の皆さん、そういうところについては、例えば国民年金のところの税の部分がそこは浮いてくることになりますので、そうしたことも使ってしっかりとその補強もしていきたい、そんなことも考えているところでございます。

 ただ、方向性としては、やはりこれからパートの方たちも安定して長く働いてもらえるということは、長期的に見れば、これから労働力が足りなくなる中で、事業主の皆様にとってもプラスになる点もあるかと考えています。これはあくまで経過的に、段階を追ってやっていこうというふうに考えています。

鴨下委員 その話をしていたらちょっと思い出したんですけれども、交付国債を発行する根拠法というのはどういうふうになっていますか。

小宮山国務大臣 これはきのうもこの委員会で申し上げましたけれども、きょう閣議決定をいたしました国民年金法等の一部を改正する法律案の中で、二分の一と三六・五%の差額を国庫負担する、この負担は交付国債の発行、交付によって行うということで、そこに運用収入相当額として政令で定める額をのせるということ、こういうことなどを盛り込ませていただきました。

 ただ、これもきのう議論をしていただいたように、この償還に係る事項は、消費税を財源としていますので、消費税の法案を提出することとあわせて別に法律で定めるとしておりますので、これは厚生年金の方の改正の中に入れさせていただきたい、そういう構成になっております。

鴨下委員 そうすると、国民年金法の改正案というのは、これは予算関連だから、いつ提出するんですか。

小宮山国務大臣 これは二十四年度の、今御審議いただいているものとかかわりがございますので、きょう閣議決定をいたしましたので、閣議決定後すぐ提出をいたします。

 そして、償還の部分というのは、これは二十六年度から始めますので、今回の予算関連法案ということではございません。

鴨下委員 償還だとか何かの話はまた厚生労働委員会で話をさせていただきたいと思いますけれども、厚生省はよく財務省のそういう提案を承諾したなというふうに思っていて、本来は、消費税が上がらなければ交付国債は実現しないわけでありますから、そうすると、もしかしてこれが二年、三年ずれて、政治がだらしなくて決断ができなくなったら、そのときはどこからお金が出ていくんですか。

小宮山国務大臣 基礎年金を恒久的な財源で二分の一しっかり手当てしようということは、自公政権のときから御主張いただいていたことでございますので、消費税の法案の審議に応じていただけるものと思っております。

鴨下委員 いや、だから、消費税の論議に応じるという、だって野党の責任にする話じゃないじゃないですか。むしろ、あなたは年金を守るのが仕事だから、年金を守るのに、消費税を上げるために年金を人質に差し出すような、こういうようなやり方はよくないと言っているんですよ。

 だから、その交付国債なんというのを承諾するんじゃなくて、別途の財源をきちんと用意しろという話を、先ほどからの議論の中でも、今までもいわゆる埋蔵金だとか何かを工面して工面してやってきたわけだけれども、我々だって、二分の一の財源については、これは間接税というようなことについて自分たちだって責任を感じていますから、そこについてはきちんとやろうと思っているけれども、交付国債というのは、悪いけれども、筋が悪い。そして、それが実現しなかったときには、最終的には積立金が取り崩されていくんです。

 それで、私たちは、十六年改正のときに百年安心という話をしました。そのときには、最後は、我々の団塊の世代が、みんなが天国に行ったときに、やっと日本の社会保障の胸突き八丁の峠を少し越えられるんです。それは二〇二五年から二〇五〇年ぐらい。そのときに、この百四十兆とも百三十兆ともいう積立金は全部からからに使い果たしてぎりぎりしのぐというのがあの計算なんだから。

 そうすると、それを前倒しで、十兆、二十兆、もし前倒しで使ってしまったら、あとの人たちはどうするんですか。だって、年金をもらえなくなっちゃうじゃないですか。あなたはそういう責任を持っているんだよ。

 だから、消費税が上がらなければ交付国債で自分たちは賄っていきますなんて、そんな軽々な約束を財務省としちゃいけませんよ。

 財務大臣。

安住国務大臣 そういう御指摘もあるということで、小宮山厚労大臣とは一週間にわたって激しい激論を予算編成時に交わしました。

 しかし、これは単年度、二十四年ということでやりまして、その先どうなるんだという御質問でございますが、やはりそこでまた改めてお話し合いをさせていただきますが、これは交付国債で国が責任を持ってやるわけですから、私は穴は絶対にあかせない。

 あかせないためにも、先生も御指摘のように、消費税をぜひ引き上げていただいて、一日も早くこれを充当させていただければと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。

鴨下委員 年金を真面目に払っている人たちのそういう善意を人質にとって消費税上げみたいな話というのは、余りにも政治的に過ぎる。ですから、真面目にきちんと説明してくださいよ。

 それで、私たちは、今言っているように、民主党案というのは、さらにそれに加えて七・一%ぐらいプラスアルファで消費税を上げないと成り立たない制度らしいけれども、でも、少なくとも、現行制度を修正していくと素案に書かれている制度でさえも、今言ったように、二分の一の部分は、これは一%入れなければいけないし、加えて、最低保障機能だとか低年金、無年金対策だとか、こういうことも含めて言うと、さらに一%ぐらいは必要だと、さっき小宮山さんは、一%とは言わなかったけれども、あるボリュームの金額が必要だという話をなさっている。そういうようなことでしのぎ切ればいいじゃないですか。そして、それは、今の現状の制度が、足らないところを埋めるというような意味においては、もうそれで成り立つんだから、みんな巻き込まないでくださいよ、真面目にやっている人たちを。

 そういうようなことを、今の年金制度はもうだめだとか年金制度の将来が不安だとかと言っているけれども、岡田さんに聞きますけれども、民主党案の中で、例えば一元化だとか最低保障年金だとか所得比例年金、こういうのをやったら人口の高齢化あるいは人口減少社会に対応できるんですか。

 これは別の次元の話でしょう。だって、あなたたちだって税方式プラス報酬比例の賦課方式をとるわけだから。人口が減ろうが減るまいがこれは関係ない制度で、もっと別の次元で税を入れるとか、そういうようなことの工夫は必要かもわからないけれども、年金そのものの制度の持続可能性という意味においては現行制度と何ら概念は変わらないんですよ。だから、人口が減るとか高齢化ということについては同じプレッシャーを受けるんです、皆さんの制度も。

 そのことについての評価をください。

岡田国務大臣 まず一点申し上げなきゃいけないことは、今の一%、一%で現行制度でいけるという委員のお話ですが、それは違います。

 我々、間もなく発表される、我々というか民主党の中の試算ですけれども、それを見ても、現行制度でも、やはり三ポイントぐらい上げないと五十年後にはやっていけない、そういう結果になっておりますので……(鴨下委員「三ポイントだったらいいじゃない、七ポイントより」と呼ぶ)いや、七というのは一番厚いものですね、最低保障年金の厚いもので三と七の違いということでございます。いろいろなバリエーションがそこにあるというふうに思います。

 それから、先ほども言いましたように、我々も積立方式ではありませんので、そういう意味では、人口構造の変化について何らかの調整が必要になります。現行案でマクロ経済スライドを入れておられますが、それに似たものが必要になるということは否定はいたしません。しかし、その程度は少なくて済むんじゃないかというふうに考えているわけでございます。

 最後に、鴨下委員、何といいますか、先ほど小宮山大臣との間のやりとりを聞いておりまして、やはり、三分の一の国庫負担を二分の一に上げたときにきちんと財源を手当てしておけばこういう問題にならないわけですから、そこを、埋蔵金取り崩しとかいろいろなことで毎年毎年つないできたということもあるわけですから、そのこともぜひお考えいただいて、ここはお互い知恵を出していくしかないというふうに思っております。

鴨下委員 拍手する場合じゃないですよ。

 それは我々も責任の一端をきちんと感じているわけですから、そういう建設的な議論についてはそれは大いに結構だろうというふうに思っておりますし、二分の一について我々も、例えば前回の参議院選挙のマニフェストの中に、充当するための消費税、こういうようなことはきちんとうたって選挙をやっておりますので、堂々たる議論にたえると思います。

 最後に、いわゆる民主党案をつくっていく上では、所得の把握は一円からきちんとしないといけない、あるいは徴収もかなり厳密にしなければいけない、こういうようなことで、皆さんはこの制度と同時に歳入庁をつくろうという話をおっしゃっていますけれども、この歳入庁の案は、この二十五年の民主党案が出てくるときに、同時にこういうような制度設計についてのお考えは示すつもりはありますか。それは岡田さんとそれから安住財務大臣に伺います。

岡田国務大臣 歳入庁については、私のもとで検討チームをつくりまして議論を始めるということにしておりますので、精力的に議論していきたいと思います。

 ただ、より重要なことは番号制なんですね。番号制が入らないと、歳入庁をつくっただけでは、これは所得の捕捉が正確にはできませんので、まず番号制、これは今国会にこういう法案を提出させていただくことにしておりますが、ぜひこれをしっかり御議論いただいて、番号制の導入について決めていただきたい。あわせて、歳入庁についても検討していきたいというふうに考えております。

中井委員長 時間超過していますが、安住財務大臣。

安住国務大臣 メリット、デメリットがあると思いますので、いろいろなものをテーブルにのせて議論をしていただきたいと思っております。

鴨下委員 終わります。

中井委員長 この際、安住財務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。安住財務大臣。

安住国務大臣 先ほど、茂木政調会長との議論の中で、マネーサプライと述べるべきところをマネタリーベースと言ってしまいましたので、おわびして訂正をさせていただきます。申しわけございませんでした。

中井委員長 これにて石原君、加藤君、赤澤君、稲田君、茂木君、西村君、鴨下君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

中井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。斉藤鉄夫君。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫です。

 来年度予算案の審議に入るわけですけれども、その前に、被爆地広島の議員として、広島、長崎の思いを率直に総理にぶつけたいと思います。

 二〇〇九年四月五日、オバマ大統領の核兵器なき世界を目指したプラハ演説、それから、二〇一〇年、五年ごとに開かれますNPT、核不拡散条約再検討会議、二〇一〇年の再検討会議では、初めてその最終文書の中に、核兵器禁止条約に触れて、核兵器廃絶に向けての努力の確認という文章が入りました。

 しかしながら、この核兵器禁止条約については、日本は国連総会でずっと棄権を続けております。広島、長崎両市によって提唱された平和市長会議、世界の五千百以上の都市が参加しておりますけれども、この平和市長会議でも、核兵器禁止条約の締結に向けた交渉を始めるべきだ、このように提言しているところでございます。

 総理、唯一の被爆国として、この日本が核兵器なき世界へ向けてイニシアチブをとっていく、そのために核兵器禁止条約の交渉に向けて行動を開始するということをぜひ行うべきだと思いますけれども、総理のお考えをお聞きします。

野田内閣総理大臣 斉藤さん御指摘のとおり、我が国は唯一の被爆国でございますし、斉藤さんは地元が広島ということでございますので、大変思いの強いテーマだというふうに思います。

 核兵器のない世界を目指して日本は先頭に立っていくべきだというふうに私も思っておりますし、これまでも、国連総会において核軍縮決議案を提出し、核兵器のない世界の実現に向けた国際的な機運をつくることに大きく貢献してきたというふうに思います。

 問題は、今御提起のあった核兵器禁止条約についての対応でございますが、現時点で、核兵器国を含む多くの国が受け入れておらず、こうした国際約束の作成のための交渉を開始できる状況にはないということで、残念ながら現状はそういう形になっているということでございますが、いずれにしても、核兵器のない世界を目指してリーダーシップを、あるいはイニシアチブをとっていきたいというふうに考えております。

斉藤(鉄)委員 国連の採決でも、反対しているのは核兵器保有国を中心とする少数国、百二十を超える国が賛成している。そういう中で、唯一の被爆国の日本がその先頭に立たなくてはいけない、このように思いますので、ある意味で、政府の方針転換をこれからぜひ議論していただきたいと思います。

 先ほど申し上げましたNPT再検討会議、核不拡散条約再検討会議、次は二〇一五年に開かれます。この二〇一五年というのは、被爆七十周年に当たります。

 昨年八月六日の平和宣言で、広島市長は、この被爆七十周年に開かれるNPT再検討会議について、「すべての核保有国には、核兵器廃絶に向けた取組を強力に進めてほしいのです。そのため、世界の為政者たちが広島の地に集い核不拡散体制を議論するための国際会議の開催を目指します。」このように高らかに宣言をいたしました。

 二〇一五年のNPT再検討会議を広島、長崎に招致できないか。それが非常に難しいということであれば、この再検討会議に合わせて、核廃絶サミット、各国の首脳が広島、長崎への訪問を通じて核のない世界への潮流を確かなものにすることができないか。広島、長崎での核廃絶サミットの開催に、政府もこの広島市長の決意をバックアップして努力してほしい、このように考えますが、政府の見解を伺います。

玄葉国務大臣 まず、斉藤委員には、いつも核軍縮、核廃絶に向けて積極的な御提言をいただいて、敬意を表したいというふうに思います。

 先ほど、まず核兵器禁止条約の話、政策転換をということでございました。理念は完全に共有をしていることはもう言うまでもありません。ただ、アプローチを、やはり現実、つまりは、我が国が拡大抑止、日米安保を堅持して、いわばその抑止力というものを持っているということを踏まえながら現実的なアプローチをとるということで、御存じのNPDIであるとかそういったところで我々が主導している。

 二〇一〇年のNPT検討会議も、二〇〇五年は、これまた御存じのとおり、決裂して文書をつくれないという状況だったのに、岡田副総理、外相でありましたけれども、イニシアチブを発揮して、よい会議だったと思うんですね。ですから、そういったさまざまな場で主導したいというふうに考えております。

 今お尋ねの、広島市長が平和宣言において述べられた点、これは斉藤委員からもたびたび言及がございまして、私も真剣に受けとめております。

 ただ、NPTの場合は、一カ月間その場にいて、ニューヨークかジュネーブということでもう決まっています。なかなかこれを動かすというのは簡単ではないので、それにかわる何かができないかということを私の頭の中では、斉藤委員の御提案もあり、考えていることがあります。ただ、それはまだ申し上げられる段階になく、いろいろな働きかけを今行っている最中だということで今回は御理解をいただければというふうに思います。

 引き続き、核軍縮、核廃絶に向けてリーダーシップを発揮できるように、全力を尽くしたいというふうに考えております。

斉藤(鉄)委員 民主党のマニフェストにも、NPT再検討会議において主導的な役割を果たすとございます。広島市に全て任せるのではなく、政府としてしっかり取り組んでほしいと思います。

 次に、本題でございます来年度予算案について議論をしたいと思います。

 来年度予算案については、いろいろな評価がございます。ばらまき型だ、ビジョンがない、粉飾型だ、いろいろあるわけですけれども、それを総合して一言で言えば、マニフェスト崩壊予算だ、このように思います。

 では、パネルを。

 子ども手当、高速道路無料化、ガソリン暫定税率廃止、八ツ場ダム、そのほかにも、後期高齢者医療制度、天下り廃止、公務員人件費二割削減、企業・団体献金禁止などなど、一々もう取り上げることはいたしません。

 そして、いや、この程度はマニフェスト崩壊ではないという声もありますし、きのうは予算案審議で、与党の方から大変高い、七〇%でしたか、着手しているんだという声もございましたけれども、このマニフェスト崩壊の根本は、最も根底にあるのは、予算の組み替えで十六・八兆円の財源を捻出するというマニフェストが実行できなかった点ではないかと思います。

 捻出できなかったからこれらのマニフェストが実行できなかったということであれば、それはそれで理解できるんですけれども、実は、いろいろ調べておりますと不思議なことが起きております。財源を捻出できなかった、だからマニフェストが実行できなかった割には、予算の額が少しおかしいんです。

 これは、ちょっと説明をさせていただきますと、自公政権時代、二〇〇一年から二〇〇九年、そして政権交代があって、今回三回目の予算です。この予算歳出総額、決算ベースで並べております。つまり、当初予算プラス補正予算ということでございます。二〇〇九年につきましては、いわゆるリーマン・ショックの経済対策がございました。この点だけは除いてございます。

 二〇一〇年以降、民主党が組んだ予算につきましては、補正予算も加えておりますが、いわゆる震災対応は加えておりません。したがいまして、二〇一一年については第二次補正まででございます。そして、二〇一二年については、よく粉飾型だと言われているゆえんのところの、あの基礎年金二・六兆円を交付国債にしている分、これは過去は全て予算の中に入っておりますから、その二・六兆円はこの中に含まれているわけでございます。

 これで見ますと、自公政権時代、二〇〇一年から二〇〇八年、歳出の平均が八十三・六兆円でございます。しかし、民主党政権になって組まれた三つの予算、これを平均すると九十四・三兆円、十・七兆円歳出がふえているということになります。マニフェストは実行されていないのに、歳出は十兆円超ふえている。

 財務大臣、これは何でふえているんですか。

安住国務大臣 これは平成十三年度から二十年度になりますね、先生。自公政権下では、決算ベースでは、我が方ので言いますと八十三・七兆円、そして、民主党政権になってからは、平成二十二年度から二十四年度、一般会計歳出で、ただし二十三年度は第四次補正も含むと、九十二・一兆。ですから、差は確かに、増額八・四兆円となりますが、この増加の主要なものは、まず、国債費が三・五兆ふえた、さらに、社会保障関係費が七・二兆ふえております。あとは、機械的に生じる増として、二十一年度の揮発油税収のうち、社会資本整備特別会計直入分を一般会計経理にしたということで、機械的に七千億円ほどふえています。

 ただ、それを全部足しましたが、マイナスの部分もございます。公共事業関係費についてはマイナス三・四兆と大幅な削減を実施しておりますので、それを差し引きしますと、先ほど私が申し上げましたように、八・四兆円の増加ということになります。

斉藤(鉄)委員 私、これは財務省からもらった図で自分で計算したものですから、多少数字が違いますけれども、先ほどの財務省の民主党政権の三年間の数字には、多分先ほどの二・六兆が入っていないんだと思います。建前上そうしたんでしょう。そういうことを考えれば、大体十兆円超の歳出増になっております。そのことはお認めになりました。

 十兆円ふえているんですが、この右の図の方に、借金返済、いわゆる国債費と言われるもの、これが三兆円ふえておりますので、ここは差し引いて考えなきゃいけないんだろう。そうすると、実質的な歳出増は、十・七からこの三兆円を引くと、大体八兆円程度となります。

 マニフェストでは、無駄を削減してやると言っていたんです。だから、マニフェストが全て実行されたとしても、この歳出の増はなかったはずでございます。しかし、現実にはそのマニフェストが、先ほど申し上げたように実行されないにもかかわらず、八兆円程度水膨れしている。

 この八兆円というのは、いわゆる収入の面から考えても、ちょうど八兆円ぐらいになります。

 よく、何でこんなに国債発行がふえたんだ、我々自公政権時代は三十兆円と言っていたのが、今は四十四兆円がベースになっている、なぜふえたんだと言ったときに、いや、税収が落ち込んだんだ、こういうふうな答弁が返ってきたわけですが、税収減は、この右側の表の真ん中にございますけれども、大体五兆円減ぐらいでございます。借金がふえた分からこの税収分が減ると、これもちょうど八兆円程度になります。つまり、収入から見ても八兆円ぐらい水膨れしている、支出から見ても八兆円ぐらい水膨れをしているわけです。これは水膨れではないと先ほどおっしゃいましたけれども、ほとんど説明になっていないと思います。

 この水膨れ分は、収入は、税収は減ったけれども、それ以上の国債発行で賄った。つまり、この水膨れ分は国債発行で賄ったということを、財務大臣、お認めになりますね。

安住国務大臣 国債発行を除いた部分で、今先生、八兆水膨れという御指摘ですけれども、水膨れというふうには私ども思っておりませんが、いわゆる社会保障関係経費がほぼこれに見合う分だけ、自動的にこれは毎年一兆ずつふえておりまして、これは自公政権下から自然増でふえてきた額でございます。ですから、それをもって水膨れというのは私は当たらないというふうに思います。

斉藤(鉄)委員 先ほどの説明では、この八兆、全く数字が足りませんでした。社会保障費とおっしゃいますけれども、大体、社会保障費の伸びは一年一兆ぐらいです。とても八兆を説明できません。

 また、自公政権時代の九年間を見ていただければわかりますが、当然この期間も社会保障費は伸びていたわけですけれども、それを、非常に我々は努力をして、歳出増にならないように努力をしてきた。しかし、突然、民主党政権になって、八兆も水膨れをした。そして、その八という数字に対して合理的な説明ができない。

 これは、私は、その分財政規律が緩んで、ゆるゆるの予算編成になっている、来年度予算案もその延長線上の予算案だ、このように断ぜざるを得ないわけですけれども、財務大臣、いかがですか。

安住国務大臣 それこそ、今問題になっている、交付国債の御批判がありましたけれども、この二分の一分の充当分等を含めて、これはふえております。ですから、トータルで社会保障費はやはりふえていて、ベースで、先生、つまり、十三年から二十年までのアベレージと民主党が政権をとってからのアベレージを比較しているわけで、私は、別に急に八兆円上がったということを指摘しているわけではないわけです。その中には社会保障関係費も含まれております。

 シェープアップをした部分でいえば、公共事業は、自公政権下に比べれば、全予算の中のそれこそ二〇%近く削減等はしておりますから、私はその批判は当たらないと思っております。

斉藤(鉄)委員 この八兆円、歳出の面から見ても八という数字が出てきます。収入の面から見ても八という数字が出てきます。

 片一方、いわゆる基礎的財政収支対象経費、これはその年のいわゆる政策経費にどれだけ使ったかというお金ですけれども、これは、自公政権時代、大体六十兆円台の下の方です。大体平均すると六十三兆円程度。しかしながら、民主党になると七十一兆円台。これもちょうど八兆円上がっているんです。これは、先ほどの安住財務大臣の説明では説明がつかない。数字はぴったり。社会保障費の伸び、それからいろいろおっしゃいましたけれども、そういうことでは説明がつかない。

 その部分、現実には一つ一つの予算が、当初民主党政権はシーリングをかけませんでした。そういうこともあって、いわば官僚が思うがままのゆるゆるの予算を組んでしまった。それが三年間続いている、こういうふうに思いますけれども、いかがですか。

安住国務大臣 最初にぼんとはね上がっているところは、麻生政権下でリーマン・ショックが起きたときではないでしょうか。やはり、そういう中で極端に税収が落ちて、それを支えるための大規模な公共事業等を前政権下でもおやりになって、その後の経済が沈んだ中で税収がどうしても伸び悩んでしまったということが背景にあることだけは御説明させていただきたいと思います。

斉藤(鉄)委員 リーマン・ショックで公共投資をしたというのは事実です。しかし、その分を差し引くために、民主党政権下では、三十兆円近い震災対応、このものについてはカウントをここにしておりません。そういう意味では、自公政権時代の財政運営と民主党の財政運営の実力を比較したものだ、それに近いものだと私は思っております。

 無駄を排して予算を捻出するどころか、一年間八兆円も何に使っているかわからない。各省ゆるゆるの水膨れ予算。これで、八兆円というのはちょうど消費税五%分ですよ。こういう予算を組んでおいて消費税を上げてくれと言われても、結局このゆるゆるを、財政規律が緩んだところに使われるのではないか、このように国民は心配しているわけですけれども、この点について、総理、いかがでしょうか。

野田内閣総理大臣 今のグラフで一番特徴的なのは、二〇〇九年なんですよね。これはやはり、リーマン・ショックの直後でありました。このときに政権交代が起こったんですけれども、状況が大きく変わったというのは、税収の見込みを四十六兆と見込んでいたものが三十兆円台の後半、九兆円落ち込むと言われた財政状況になりました。そのときに私どもは政権を引き継ぐ形になったんです。

 ということは、平成二十一年の、まさに二〇〇九年の決算ベースから財政状況は大きく変わりました。それは昭和二十一年と同じ状況であって、税収よりも借金に頼る財政運営になったというのがこの瞬間なんです。平成二十一年なんです。

 だから、そのときに新たに、九兆円税収が落ち込んだ分、後の補正で国債を発行しました。その結果、国債は五十兆円を超えたんですよね。でも、それはしようがなかったんです、まさに税収の落ち込みがあったから。その前に、平成二十一年のベースでは四十兆円台の借金を、自民党・公明党政権、当初予算、補正予算で組まざるを得なかったんです、もう既に四十数兆円。プラスして、九兆円落ち込んだ分、五十兆円台になりました。だから、ベースはもう既に、四十兆円台の借金というのは平成二十一年に起こっております。

 その後、税収はだんだん上がってきて、ようやく四十四兆円の借金に見合うところまで今財政を回復させているというのが我々の努力であって、さっきの八兆円も、まずは、さっき財務大臣が説明しましたけれども、大きく三・五兆円、国債費です。これは、過去のツケがたまってきた分、だんだん後の支払いはふえていきますから、ふえてきます。

 もう一つは、やはり社会保障なんですね。これは、自然増もあったけれども、基礎年金の国庫負担を二分の一にした影響というのがまさに我々が政権をとってから出てきているわけでございますので、そういうのは、別に八兆円無駄で膨らましているということは全くありません。

斉藤(鉄)委員 先ほど国債費のことをおっしゃいましたけれども、国債費はこの計算の中に入っております。それから、税収が九兆円落ち込んだということも、この税収減の中に、これは三年に平均しての数字になりますけれども、入っている。そのことは、先ほど申し上げましたプライマリーバランス対象経費のことからも裏づけされるということです。この図を見ていただければ明らかにわかるように、財政規律、一番大きな原因はシーリングをしなかったということだと思うんですけれども、そういう部分がここに出ている、このように思います。

 次に、社会保障と税の一体改革について質問をさせていただきます。

 政権交代以来ほとんど語られることのなかった、ずっと民主党が主張してきた民主党の年金抜本改革案というもの、これは全ての年金を一元化し、全ての人に最低保障年金月七万円を支給するというものですが、この案が、今回の社会保障・税の一体改革の素案に突如出てまいりました。それも財源を全く明らかにせずでございます。

 昨年の六月に出てきた税、社会保障の一体改革、成案と言われるものですが、あの中には一行出てきただけでございましたけれども、これは、皆さん、民主党はほぼ諦められているんだろうというような表現ぶりでございましたが、今回、素案の中に突然出てまいりました。

 この抜本改革案、民主党の改革案について、総理また副総理は、いろいろなところで、非常に将来、先の話なので、一体改革の消費税と混同するな、この趣旨の発言をされております。だったら、なぜ同じ一体改革の素案にその年金改革案が消費税と一緒に提案されているのか。

 また、同じ素案の中に書いていながら、消費税と民主党の抜本改革案とは別の話だから別々に考えてくれという趣旨の発言もされております。別の話だから区別して考えてくれとするのではなく、別の話ならきちんと、今回の税制改革による財源だけでは成り立たない案だ、だから一体改革素案から切り離すということが筋ではないでしょうか。

 そういう意味で、この民主党の年金抜本改革案、今回の素案から撤回されたらどうでしょうか。

岡田国務大臣 お答えする前に、先ほどの議論を聞いていまして、ちょっと違うというふうに私は思うんですね。社会保障費の伸びのところです。

 これは、毎年毎年一兆円ずつふえていくということは委員もお認めいただいていると思います。ですから、平成十三年度から二十年度の平均値、もう一方は二十二年度から二十四年度の平均値、そこに毎年毎年一兆円ずつふえていくわけですから、その部分は毎年ふえていくということを織り込んで平均値を出しているわけですから、委員のおっしゃったようなことにはならないということは申し上げておきたいと思います。

 それから、御質問にお答えするとすると、まさしく委員も言われたように、もともとのものには一行しか書いていなかったから諦めたのか、そういう見方が出ては困るので、我々は年金の抜本改革については真剣にこれをやっていかなくてはいけないと思っているということで、書き方は確かに工夫いたしまして、「新しい年金制度の創設までには、一定の時間を要する。」ということをきちんと断った上で書かせていただいたということでございます。

斉藤(鉄)委員 先ほどの、前の議論に戻る時間がもうないんですが、今の岡田副総理がおっしゃったこと、それは違います。

 我々の、八年間のときには八で割っています。民主党政権になっては三で割っています。そのことで相殺されているということでございます。(岡田国務大臣「いや、ベースが上がっているんですよ」と呼ぶ)いえ、そうではないと思います。現に、今の図で見ていただければ、その間、我々の方は歳出総額は上がっていなかったわけですから、そのことにあらわれていると思います。

 ちょっと話を社会保障と税の一体改革に戻したいと思いますけれども、この一元化、最低保障年金、民主党の案は、二〇〇三年、既に九年たっているわけです。しかし、具体案は一向に示されない。その間、現行の年金制度について、すぐ破綻をすると民主党の皆さんはずっとおっしゃってきました。総理も副総理もそういう発言をされております。今それを紹介する時間はもうありませんので紹介いたしませんけれども、一昨日の毎日新聞の社説にも、「「年金はすでに破綻している」と国民の危機感をあおり、新年金制度で選挙を利してきたのが民主党だ。」と、大新聞の社説にも堂々と書いてあるわけでございます。

 今回の素案、年金改革案は、皆さんの素案を見ますと、その中身は、我々がこれまで提案してきた現行制度の改革案そのものなんですね。つまり、素案の中に改革案を示した、それは我々がこれまで提案してきた現行制度を前提とした改革案である。というものを堂々と載せておきながら、今まで破綻する、すると言ってきたのにその改革案を堂々と載せながら、しかし、抜本改革案についてもその素案の中に載せている。これでは、いわゆる誠実な態度で野党に提案をしているというふうにはとても見えないわけでございます。

 そういう意味で、素案の中からいわゆる抜本改革案、これは後でその抜本改革案なるものがいかに非現実的かというお話をさせていただきたいと思いますけれども、これを撤回すれば、我々と皆さんの素案の中に書いてあるその案とはほぼ同じベースに立てるわけです。そのベースに立って真摯に議論をする。撤回されれば、あすにでも協議は始まると思います。総理、いかがでしょうか。

岡田国務大臣 まず、我々の素案の中で、確かに、公明党の御主張というものは真摯に検討させていただき、同じような中身の部分がございます。最低保障機能の充実とか受給資格期間の短縮とか、そういったことについては恐らく同じ方向性ではないかというふうに思っております。

 いろいろな考え方を当然参考にさせていただきながら、別にそれは公明党さんだけではなくて、各党あるいはいろいろなシンクタンクその他の提言を参考にさせていただきながら我々は素案をつくり上げたわけですが、当然、御党の御主張というのもその中に入っているということでございます。

 そのことと我々の抜本改革案を取り下げろというのは別の話でありまして、午前中の鴨下委員との議論でも、私は、ぜひそういう前提は全部なくして、どっちはだめだとかどっちはいいとか、そういうことを言っていたらこれは議論できませんので、確かに過去において、現行案を改善するという当時の与党、自民党、公明党の案に対して、私たちあるいは私、厳しく言い過ぎたことは事実であります。そこは大変申しわけなかったと思います。

 しかし、他方で、せっかく協議をするといっても、何か、自分たちの案でなければだめだ、民主党の案は取り下げろと言われてしまうと、これは協議になりませんので、そこはお互いに前提なしで、胸襟を開いて、国民の立場に立ってどういう案が一番いいのかということをしっかりと議論してみる。スウェーデンはまさしくそういうことが行われ、途中で政権交代があっても議論は継続し、そしてとうとういい改革案をつくり上げたわけですから、我々も、日本の政治というものはそれだけの力があるんだということを国民にぜひ知っていただくためにも、御協力をお願いしたいと思います。

斉藤(鉄)委員 私たちは、昨年、新しい福祉社会ビジョン、これからの年金、医療、介護を充実させていくためにこういう努力を財政的な努力も含めてしていかなきゃいけないということを提案させていただきました。そのときに、民主党さんは全然相手にしなかったわけでございます。

 現在の制度は破綻をしているということを言いながら、しかし、今回出てきた抜本改革案の素案、全く具体性がありません。出てきた数字は二つだけ。一つは、保険料は一五%ですという一五という数字、それから一月七万円という七という数字、これだけを出してきて、片一方で現行制度をベースにしている。我々も現行制度が万全とは思っていません。今後、いろいろな改革をして補強をし、機能強化していかなきゃいけない。しかし、それをすれば長期にわたって安定をしている。我々はこれまでの検討結果から自信を持ってそれが言えるわけです。

 そういう今までの積み重ねを全く否定しておきながら、片一方で、いわばある意味で実現不可能ではないかと言われるもの、それを、与野党協議の場で消すなら消してくれというのは、余りに不誠実に過ぎるのではないか。これまでのことをしっかり反省して、撤回した上で、その素案に皆さん方が出している現行制度の改正案をベースにした改革案を我々と一緒に協議するということであれば、あすにでも協議が始まる、このように思います。

岡田国務大臣 私は、ぜひ協議をしていただきたいものですから、かなり謙虚に申し上げておりますが、今の年金制度で本当に大丈夫かということについては、もちろんいろいろな改善を加えてもたせるということもあるいは可能かもしれませんが、しかし、これだけ人口が減っていく中で、問題が非常に出てくることも間違いないわけであります。

 ですから、今の年金制度を何とか改善しながらやりくりしていく道と、それから、思い切って変えてみるという制度と、私は選択肢は二つ現にあると思います。どちらかがだめだということではないというふうに思っております。ですから、その双方について、ぜひテーブルの上にのっけて協議をしていただきたいということを申し上げているわけでございます。

斉藤(鉄)委員 それでは、具体的に、民主党の年金改革案がいかに今の我々が出している案と同列に論じるのが難しいか、非現実的かという話をさせていただきたいと思います。

 ここに三つ、大きな問題点を挙げさせてもらいました。

 一つは、最低保障年金の創設に伴う巨額の財源確保は困難なのではないか。試算するまでもなく、ちょっと鉛筆をなめて計算するだけでかなり巨額の財源確保が必要になります。しかし、将来の少子高齢化社会を考えたときに、消費税を投入するのは年金だけではありません。医療、介護、特に介護の伸びが非常に大きいと言われております。そういうことを考えれば、年金に投入できる消費税、これは限られてくる。このことからも、この最低保障年金というのは非現実的と言わざるを得ません。

 それから二点目。大幅増税に加え、年金額も低下する、さらに、自営業者などは保険料が急増するということも言われているわけでございます。多くの世帯で年金額が低下する可能性が大きい。いろいろ試算の中では、きょう正式には発表されるそうですが、もう既に報道等で流れておりますので私も勉強させてもらいましたが、給付が一番手厚いケースでも満額支給は平均年収二百六十万円まででございます、最低保障年金ですね。したがって、生涯給与平均四百万円以上の方は給付減になるということがございます。大幅増税に加えて、給付が減になる。

 それから、大きな問題点として、事業主負担のない自営業者などの保険料は大幅に上昇する。保険料率一五%ということですから、年収四百万円の方の保険料は六十万円ということになりまして、月額五万円ということになるわけでございます。

 そして、ここで一つ大きな問題点は、同じ保険料であれば同じ給付ということでございますが、所得比例年金のところ、サラリーマンは半分を事業主が払う、いわゆる自営業の人はその分も自分で払う。となりますと、サラリーマンの方の二倍の保険料を払わなくてはいけないけれども、給付は同じということになって、その原則が崩れてくるのではないか等々、実は九年前から、皆さんおっしゃっていたころから我々は指摘してきたわけですけれども、一切その具体案は出てこなかったわけです。

 このことについて、厚労大臣、何か反論があれば。

中井委員長 それでは、厚労大臣、四点ありますから、気をつけて答弁してください。

小宮山国務大臣 ちょっとどれが四点だか、あれなんですけれども、ただ、きょう党の方で発表される試算につきましては、これは二分二乗でやっておりますので、そのことが前提であるということ。

 それからあと、このままの制度でいっても、やはり二〇七五年のころにはかなり今の消費税ではできないということがございますので、今回も試算の仕方によって、どれだけ多くの税金が必要かということは試算次第で、このままの制度でいっても、それはある程度は必要だということが一点ございます。

 それで、そもそも、今、私どもというか民主党が今回のこの抜本改革の案を出しているのは、午前中も議論させていただきましたけれども、無年金とか低年金をどうするのかということと、自公政権でずっと続けてこられたものが今定着をしていて安定しているという、いろいろなメリット、デメリットがございますので、そこのところは、今の制度を改正しながら、抜本的に考えて、これから新しくこれに加入する世代にとってどちらが公平かという話をしていく必要があるのではないか、そのように思っているところです。

岡田国務大臣 ちょっと重なりますけれども、まず、1の、最低保障年金の創設に伴う巨額の財源確保は困難ではないかと。これは委員は、一七・一%、つまり、一〇%に上げた後、試算値の一番最低保障年金が厚いケースの七・一というのを取り上げておられると思いますが、これは四つのケースがあるわけであります。最低保障年金をどのぐらいの規模でやるかということは、これはこれから議論していただきたいというふうに思っております。

 かつ、今の年金制度でいっても、ここで言っております五十年後には、それはやはり消費税を三%ぐらい上げないと年金だけでやっていけないという試算値になっているわけで、そういう意味では、差は七じゃなくて、今との差は最高でも四だということでございます。

 もちろん、それでもなおかつ、介護とか医療もあるので四もたくさんは割けないという議論はあるかと思いますが、それはまさしく議論していただくべき点だというふうに思っています。

 それから、もう一つ見逃せないのは、今の延長でいきますと、生活保護費というのは一体どのぐらいふえるのかという視点も重要だと思います。既にこの委員会でも、生活保護費が非常にふえているということは取り上げられておりますが、若い人の中には、どうせ年金の保険料を払ったってどうなるかわからないから、いざとなれば生活保護でもらえばいいんだ、そういう極端な議論すらあるわけで、だんだん若い世代が保険料を負担しなくなっているということもございます。

 生活保護で見るのなら、それはやはり税金ですから、年金という閉じられた体系の中では、それは別の財源かもしれませんが、しかし、そういった所得の少ない方々をどうカバーするか、そういう中では、やはり生活保護にかかわる税収、それをむしろ取り込んで年金制度の中でやっていくという考え方は当然成り立ち得る、私はそういうことだと思っております。

 それから、2のところでいろいろおっしゃいましたが、まず、ちょっと誤解を招きやすいのは、年収二百六十万とか四百万というふうに言われました。二百六十万、四百万というのは、これは一人当たりですから、夫婦であれば、これは五百二十万とか八百万の話で、そんなに所得の少ない方で最低保障年金が打ち切られるということではないんですね。その辺は、試算値が出たところで説明がありますから、それをごらんいただきたいと思います。

 最後に、自営業者について、非常に負担が高いのではないか、その割にはもらう額がというお話があったかと思いますが、確かに、今と比べれば、所得の多い自営業者の方の保険料はふえます。だけれども、もらうのは今の国民年金の額ではございません。所得比例年金に応じて今よりも多くの年金額を受け取るわけで、そこは、所得の多い人は保険料もふえるが年金額もふえる、こういうことでございます。

斉藤(鉄)委員 今の御説明でまだよく理解できませんけれども、基本的に、この最低保障年金はあるところで打ち切るわけですから、それ以上の人は給付減になるというところについてのお答えはなかったかと思います。

 それから、自営業者の問題は、所得捕捉の問題もこれあり、大変難しい問題だと思います。ちょっと時間がありませんので、それだけ言っておきます。

 三点目、移行期間に四十年で、満額七万円の支給は四十年先だと午前中、大臣がお答えになっておりました。そういう意味では、早期の無年金、低年金対策だという説明もありましたけれども、その説明はうそだったということになります。そして、この間、新旧の制度が混在して、大変複雑な状況になってしまう。

 年金制度というのは、少なくとも今の制度は四十年以上積み重ねてきたものでございます。その積み重ねの上に、もちろん万全ではありませんけれども、二〇〇四年改革でやったような諸改革を重ねることによって、私は、長期にわたって安定なものを築き上げる、その方が国民の皆さんにとっても安心だと。そして、そのための議論を、総理、まさにこの税と社会保障の一体改革でしようとされている。

 我々も、ぜひ議論しなければいけないと思っている。しかし、先ほど申し上げたような理由で、この民主党の抜本改革の案、この案をいつまでもお持ちであれば、これはなかなかその議論にならない。だから、ぜひ、その旗をおろしてあすからでも協議しましょうよ。総理、決断してください。

野田内閣総理大臣 現状の年金制度に相当改善の余地がある、本当に国民の皆様に安心していただくためには工夫が必要だという認識は同じだと思うんですね。それを変えていくために、例えば、私たちは新しい年金制度をつくっていきたいという路線、ゴールをまずつくっていく。一方で、現実をしっかり踏まえて改善していこうという路線。私は、これは手法の違いだと思うんです。演繹的手法と帰納的手法があるように、私はそこで議論しながら折り合うところもあると思うんですね。

 例えば、私たちは、新しい年金制度では最低保障年金というのを打ち出しています。それは、低年金、無年金がなくなって、老後をちゃんと暮らしていける見通しをつくるために私は必要だと思います。それは、最低保障機能という現実対応から始まる部分と整合的であります。

 それから、年金制度の一元化を言っています。これは国民年金も入っています。これは、だから一応ゴールです。ゴールからくる道筋の中で、被用者年金から議論していきましょうと。

 現実を変えていく路線とゴールから見ながら対応していく路線、私は、折り合うところは十分あると思いますので、ぜひ与野党協議をお願いしたいと思います。

斉藤(鉄)委員 こういう議論をすること自体も大切です。集中審議をぜひ行うべきだ、このように思います。

中井委員長 理事会で協議をいたします。

斉藤(鉄)委員 先ほど、八兆円は消費税五%、このように言いましたけれども、三%ということに訂正したいと思います。それから、このフリップですけれども、一月の保険料が約五億円となっておりますけれども、これは五万円の間違いでございます。このことだけ、ちょっと申し上げておきます。

 総理、決断していただけませんでしたけれども、我々はそういうつもりでおりますので、ぜひ物事を前に進めるために御決断をいただきたい、そのことを申し上げておきます。

 では、次に環境・エネルギー政策でございます。

 大震災があり、また経済がこういう状況だから、地球温暖化対策についてはなかなか難しくなったという考え方が広がっているようですけれども、しかしながら、世界の大きな流れから、日本がそこから、少し日本だけは許してほしいということは国際社会では通らない、こういう状況でございます。

 二酸化炭素排出抑制、温暖化対策、日本は一生懸命やっていかなきゃいけないと思いますが、その鍵は、省エネ、再生可能エネルギーの拡大、そして化石燃料発電の効率化にあると思いますが、そのことについてはまた議論を改めたい、このように思います。

 昨年十二月の南アフリカ・ダーバンで行われたCOP17、ここである意味では大きな進展があった、国際社会の中に進展があったということでございます。

 この図に書かせていただきましたけれども、二〇二〇年からアメリカ、中国も入った全ての国を対象とした新たな法的枠組み、法的枠組みですから、中国やアメリカに対してもきちんと法的根拠のある義務づけがされます。そういう新しい枠組みをつくろうというふうに合意したというのは、世界の非常に大きな変化だと思います。

 ところが、これはいいんですけれども、その二〇二〇年に至るまで、京都議定書の第二約束期間、ここに日本は入らないという立場を明確にしております。私は入るべきだと。その理由は後で申し述べますけれども、なぜ入らないというふうに決めたんでしょうか。

細野国務大臣 COP17の会合に行く前には関係閣僚で相当の調整をいたしまして、日本としては、できるだけ早い段階で全ての主要排出国が入る枠組みが必要だ、そのことを考えれば、京都議定書の第二約束期間というものについては日本は参加をしないという方針を決めて、それで会議に臨んだものでございます。

 私どもは、二〇二〇年よりも前にこの枠組みを発足させたいということをダーバンでは主張したわけでありますけれども、そこは各国さまざまな主張がありました。その中で、最終的には、ダーバンの中では二〇二〇年ということで決まったということでございます。

 ただ、私はまだ、大きな前進だというふうには思っていますが、実は楽観はしていません。というのは、これから、さまざまな国々がそれぞれの国内の事情も抱える中で、二〇二〇年、どうなのかという議論になりかねないと考えております。そのことを考えたときに、これは非常に難しい一つの判断になってくるんですが、京都議定書の第二約束期間に多くの国が入る、そしてそれが先進国中心だということになれば、では、その枠組みでいいじゃないかという議論がまた出てきかねないんですね。逆に言うならば、これまでも何度もそういう議論で先進国と途上国の間の溝が埋まらずに来ました。

 ですから、そこは我々としては、これまで同様、この全ての国が参加をする二〇二〇年の枠組みをしっかりつくっていく、そういう方向で貢献をしていくことが最も大きな役割ではないかというふうに思っております。

 ただし、強調しなければならないのは、第二約束期間には参加をいたしませんが、我が国は努力をさらに加速していかなければならないということであります。特に、第一約束期間については義務が課されておりますから、今極めて厳しい環境ですが、これは達成をしなければならないというふうに思っております。

 そして、第一約束期間が終わった後ということに関しても、今、斉藤委員の方から御説明がありましたけれども、再生可能エネルギー、これはおくれをとりましたのでやらなければなりません。さらには、省エネをやらなければなりません。そのほかあらゆる努力をして、我が国としての努力を積み重ねるということは極めて重要であるということをあわせて申し上げたいというふうに思います。

斉藤(鉄)委員 私は、二つの理由で入るべきだ、このように思います。まだ間に合います。

 一つの理由は、この二〇二〇年から始まる全ての国を対象とした新たな法的枠組み、この中に日本の国益をかけた仕組みづくりをするべきだということでございます。

 例えば、EUは第二約束期間に残りました。今、アメリカと話をしながら、この中に、今まではCDM、ある一つの事業所で例えば効率のいい発電所をつくったら、そこで削減した分は自分の国の削減分になるというようなシステムがありますが、これをより広域に、例えばセメント業界全体でそういうことをしたらそれが我が国の削減量につながるとか、また、天然ガスを使った発電所をつくったらそういうものが自分たちの国の分になるとか、そういう新しいルールづくりを一生懸命やっているわけです。日本はそのルールづくりに入れないということです。

 そういう意味では、二〇二〇年から先、将来にわたる世界の枠組みをつくるそのときに、そのルールづくりに入れない国益の損失というのは非常に大きいのではないか。

 もう一つは、やはり震災を経て、我々は新しい低炭素社会へ向けて、技術開発等、社会の仕組みも変えていかなきゃいけない。そういうときに、今第二約束期間に入らないということは、その分縛りがなくなるということですから、産業界も前の産業構造が温存されてしまう、このようなことにもなりかねません。

 総理、そういうことも考えて、もう一度考え直す気はありませんか。

中井委員長 細野環境大臣。もう一度答えてもらいます。

細野国務大臣 簡潔に御答弁申し上げます。

 まず、CDMなんですけれども、そうした京都議定書の枠組み自体に関しては、日本としてはさらに貢献をしていきたいというふうに思っておりまして、ダーバンの会議でもそのことを主張いたしました。そして、その主張は通っておりますので、そうした議論には日本は当然参加できるし、そういったものも活用して国際的なさまざまな貢献をこれからもしていく、そういうことであります。

 そしてもう一つは、斉藤委員が御指摘をされたのは極めて重要でありまして、この京都議定書の第二約束期間に入っている、入っていないにかかわらず、日本がそれこそ自国で最大限の努力をしなければならないことは、もう紛れもない事実でありますし、さらには、国際的な貢献も含めて大きな責任を我が国が担っているという自覚を持って進むべきだと考えております。

中井委員長 野田内閣総理大臣。簡単に。

野田内閣総理大臣 今の細野大臣の答弁に尽きていると思いますけれども、第二約束期間に入らなかったら国際的なルールメーキングからおくれるということは必ずしもないというふうに私は思います。

 第一約束期間よりも第二約束期間に入っている国は少なくなる可能性があります。むしろ、その後の実効性ある枠組みの中にどう主導権を発揮するかですが、自主的な努力とともに、あるいはこれは二国間で議論することもいっぱいあると思います。そういうことを踏まえて、ルールメーキングを含めて日本がイニシアチブをとっていくというマインドは常に持っていきたいというふうに思います。

斉藤(鉄)委員 二国間での取り決めがそのルールの中に入ってくるようにするためには、ルールづくりに入っていないとだめなんです。このことについて、我々の意見を申し述べましたので、ぜひ考慮していただきたい、このように思います。

 最後に、議員の定数削減について質問をさせていただきます。

 我々は、議員の定数削減を行わなければならないと思っております。しかし、これが消費税増税の免罪符になってはいけない、これは立て分けて考えなきゃいけない、このように思います。社会全体がスリム化していく中で、人口減少の中で、議員も、身を切る改革、大幅な定数削減が必要になると思います。

 定数削減をすれば、それは直接的には国民の声がその分届かなくなるということも言えるわけです。民意が反映されなくなる可能性があるということです。したがって、定数削減をするのであれば、民意の反映に支障を来さない、より民意を反映する仕組みを織り込みながら定数削減をしなくてはいけないということでございます。

 この図は、前回の衆議院選挙でございます。ブルーの数字が比例区の各党の得票率でございます。有権者の方は、こういう形で各政党を支持されました。しかし、実際得た議席占有率はこの赤でございまして、やはり大政党は得票率よりも大きな議席を持つ、小政党は、例えば我が党公明党は得票率の三分の一程度の議席ということになります。

 今回民主党が出している大幅な定数削減案は、比例区から八十削減する。ということであれば、この得票率と議席占有率の乖離をいよいよ拡大させる、民意の反映をより狭める改革ということになるわけでございます。そういう意味では、先ほど申し上げました、より民意を反映する仕組みを組み込みながら定数削減をしなくてはいけないという基本的考え方から反する、このように思います。

 政権選択と民意の反映、この両方を求めて現在の並立制ができたわけですけれども、この考え方を維持しつつ、与野党の合意が得られる、そして、定数の削減、民意の反映、そして小選挙区の一票の格差是正、これらは一体で改革しなくてはいけない、このように思うわけですけれども、この三つを一体で行うべきということにつきまして、総理の民主党代表としてのお考えを伺いたいと思います。

野田内閣総理大臣 まずは、違憲とされている一票の格差の是正、これを何としてもやり遂げないと、しかも区割りの審議会を機能させるには一定の期限がありますから、そのための結論を出さなきゃいけないのと同時に、定数削減もやらなければいけないと思います。それは御党も積極的な姿勢を示されていることは評価をしたいというふうに思います。

 その上で、どういう形の定数削減かだと思います。これは、御党の案は承知しています。私どもも今提案をしています。各党から御提起がありますが、これは各党で精力的に御協議をいただいて、成案を早急にまとめていただければありがたいというふうに思います。

斉藤(鉄)委員 同僚議員に時間を譲ります。

中井委員長 この際、佐藤茂樹君から関連質疑の申し出があります。斉藤君の持ち時間の範囲内でこれを許します。佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。

 本日は、公明党も推進してまいりました復興庁が発足をした日でもございます。我々も引き続き東日本大震災からの復旧復興に力を入れていかなければならないのは当然といたしまして、次の震災に対する備えも極めて大事でございます。

 先日、私も直接お伺いしましたけれども、東京大学地震研究所の平田先生のお話によりますと、首都直下型地震が、マグニチュード七クラスですけれども、四年以内に起こる確率は七〇%である、そういう試算も出されました。こういう首都直下型地震、また西の方の三連動地震、東海、東南海、南海、こういう地震に対してやはりしっかりとした備えをしていかなければいけない。

 また、私どもは、そういう考え方から、公明党として、防災・減災ニューディールと銘打って、デフレ対策としての需要拡大と、そして全国的な防災、減災のための社会基盤整備というものを組み合わせた対策を打つべきである、そのように先日発表したところでございます。

 私ども公明党は、国民と日本の国土を守り、安心、安全な社会基盤を再構築するために、全国における防災・減災対策を緊急かつ集中的に講じるべきである、そのように考えているわけでございます。

 この防災・減災ニューディールの目的というのは三つございまして、一つは内需拡大、もう一つは持続可能な社会の実現、そして三つ目が社会の防災機能の強化ということでございます。

 そういう観点から、きょうは、具体的に特に、具体策として五つ挙げさせていただきましたけれども、社会インフラの老朽化対策、学校など地域防災拠点の耐震化と防災機能強化、三つ目がハザードマップの作成の加速化、四つ目が都市機能のバックアップ体制強化、五つ目が次世代通信網を活用した防災・減災対策の強化ということをうたっているわけでございます。

 その中で、特にこの具体策の一番目と二番目について、きょうは政府の考え方をお伺いしておきたいと思います。

 まず、老朽化が進む社会インフラの対策でございますけれども、全国の社会インフラの多くというのは、高度成長期に集中的に整備されたために、老朽化が極めて進んでいるわけでございます。今後、急増する老朽化施設の維持や更新というのが大きな課題となってきております。

 道路や橋梁、上下水道、さらには河川、港湾など、老朽化が進み、更新時期が近づいている社会インフラについて、私どもは、思い切った維持更新のための集中投資を行うべきである、そのように考えております。また、電気、ガス、水道、通信などのそういうライフラインの共同溝化、無電柱化を促進して、都市の防災機能の向上を図るべきである、そのように我々は考えておりますけれども、国土交通大臣の見解をまず求めたいと思います。

前田国務大臣 お答えいたします。

 佐藤議員の御指摘の考え、まさしく私どもも共有をしております。

 といいながらも、国土交通省、今までは、御指摘のように、高度成長時代あるいは日米構造協議等、バブルに至るあのころに集中的な公共投資をやったわけでございますが、どうしても建設側に傾きがちであったというところは否めません。率直にお認めをいたしております。

 しかも、最近、社会資本の維持管理及び更新に関する行政評価・監視の結果の勧告も受けておりまして、今、省内で早速それに基づいて、台帳の整備の徹底であるとか、やり始めたところでございます。

 加えて、私、大臣に就任以来、持続可能な国づくりをやろうということで、それは低炭素・循環型社会だ、こう言っているわけでございますが、政策官による横断的なプロジェクトチームをこしらえまして、まさしく佐藤委員が御指摘のような維持管理の時代、これは、人口構造もどんどん変わっていくし、地域の社会構造、人口構造が変わっていく、それに合ったような社会インフラに再編成していく、そして、それは長寿命化、あるいは、物によってはいわゆるアセットマネジメントというような考え方で、民間の知恵も資本も、あるいは一緒になってやっていくというようなことも可能な手法も考えていこう、このように考えております。

佐藤(茂)委員 今、国土交通大臣から前向きな御答弁をいただきました。

 民主党さんが衆議院選のときに掲げられたコンクリートから人へ、これは極めて極端化した、単純化したスローガンだと思いますけれども、人のためになるコンクリートもあるんだ、そういう維持管理もしていかないといけないんだ、そういう方向で微修正は大いにやっていただきたい、そのように思います。

 二点目に、二本柱の、学校など地域防災拠点の耐震化と防災機能強化ということでございますが、私どもは、地域の安全、安心のために、いざとなったら防災の拠点となる、そういう施設というものの耐震化、また防災機能の強化というものはどんどん進めていくべきである、そういう考え方でございます。

 特にきょうは、学校施設の耐震化及び防災機能の強化について伺いたいと思います。

 学校施設というのは、今回の東日本大震災においても、ピーク時に六百二十二校が地域住民の避難に大きく貢献したわけですね、避難所として。その一方で、幾つかの課題も指摘されました。避難所となった学校では、電気や水の確保、備蓄の食料や毛布の不足、暖房設備の不足、通信の途絶で陸の孤島となった、そういうさまざまなケースが指摘されたわけでございます。

 これらの教訓を踏まえて、国の方でも、国立教育政策研究所文教施設研究センターが実態調査を行われました。それを取りまとめておられますけれども、私ども公明党も、大阪府本部で、私が代表をしておりますが、「わが街の防災」総点検運動という名称で、府下四十三市町村の千百六十九校に対して、学校施設の防災機能の総点検運動というものを行ったわけでございます。

 その結果を簡単にさっと御紹介いたしますが、我々の調査と国の調査の違いは何かというと、国のそのセンターの調査というのは、調査票を送付して、それを書類として返してもらった、そういう取りまとめなんですが、我が党のやった調査というのは、地方議員さんと党員さんの代表が一校一校学校をしっかりと訪問して、どこに何があるかということを自分の目でしっかりと見て、調査票に記入して、そして取りまとめていただいた、そういう非常に足を運んでやったというところが違うんだということをぜひ御理解いただきたいと思うわけでございます。

 調査結果でございますけれども、具体的に、内容を全てやっていると時間がありませんので、大阪の数字というのは大体全国レベルです。いいのもいっぱいありますが、大体平均ぐらいだと見ておいていただいたらいいかと思います。

 きょうは、藤村官房長官も平野文部科学大臣も大阪の方でいらっしゃいますけれども、自家発電設備の有無、これは、青があり、赤がなしという比率でございます。一三・六%しか自家発電設備というのは設置されておりません。災害発生時の電力供給がストップした場合に重要な設備であるにもかかわらず、こういう状況でございます。

 さらに、電力というのは当然、停電ということが考えられるんですけれども、太陽光パネルの設置の有無、さらに、それを動かすための蓄電池の有無、そういうものを見ましたときに、さらに数字が低くなっておりまして、太陽光パネルの設置の有無というのは、ありは一一・九八%。さらに、蓄電池。今回でもあったんですが、太陽光パネルは設置されているんだけれども、停電したがゆえに機能しない、そういうことがあったんですね。それで、蓄電池はどうなのかということを見たときに、二・九九%しか蓄電池というのは設置されていない。これは、災害のときに極めて重要な施設になるにもかかわらず、こういうデータでございます。

 次に、やはり長期間にわたって避難された皆さんが生活していく上で欠かせない水回りのことですね。

 水確保の方法の有無、これについては、二八・八三%がありである。さらに、トイレでございますが、断水時には、下水道に直結するマンホールトイレというのが非常に有効であるということは言われているんですけれども、いざそういう設備があるところはどうなのかというと、六・六七%である、そういうデータが出ているわけでございます。

 さらに、学校施設内における防災倉庫、備蓄倉庫の有無というのを調べましたところ、大阪は数字がよくて、防災倉庫は五一・一五%、備蓄倉庫については五八・〇八%があり。全国的には三五・二%ぐらい、センターの調査だとそう出ているわけでございますが、こういう数字でございます。

 さらに、学校施設内における災害時要援護者の避難に備えた場所の有無。これは、今回も若干あったということなんですが、障害者が避難場所に受け入れられなかったり、避難所生活に困難が生じたりする例があるわけでございますが、そういう施設があるのかどうかということを見ましたときに、ありというものについては三二・五一%、そういう結果が出ているわけでございます。

 今回のこの総点検運動で、学校の防災機能の不十分さというのが数値で浮き彫りになりました。やはり災害を想定した学校施設の強化というのはほとんど行われてこなかったということが明らかになってきたわけでございます。

 今回の震災を踏まえて、学校が災害時に子供たちや地域住民の応急避難場所という重要な役割を果たすことができるように、今後の学校施設の整備に当たっては、教育機能のみならず、あらかじめ避難場所として必要な諸機能を備えておく、防災拠点としての学校という、大きな発想の転換が必要ではないかと私は考えるわけでございます。

 その発想の転換に基づいた学校施設の防災機能の充実化に予算を充て、力を入れるべきである、そのように考えますが、文部科学大臣の見解を伺いたいと思います。

平野(博)国務大臣 私の選挙区も大阪でございまして、大阪のことも含めて、綿密にお調べをいただきまして、ありがとうございます。

 先生御指摘のとおり、私も全くごもっともだ、こういうふうに考えております。

 といいますのも、今回の東日本大震災でも、学校の施設が子供の命を大きく守っている、こういうことと同時に、多くの施設が避難所になっている、これも現実の姿でございます。

 したがいまして、文部科学省としても、学校は地域のコミュニティーの拠点である、こういう発想でもって、これから、今先生御指摘の安全性の確保や防災機能の強化に向けて、具体的に検証して進めてまいりたい。

 特に、先生御指摘のところの資料も、もう少し詳しいものをいただければ、我が省が調べておるものよりもさらに詳しいと思っておりますので、そのことを含めて、しっかりやらせていただきたいと思っております。

佐藤(茂)委員 ぜひ、全調査を提供して、それをたたき台にして進めていただければありがたいと思います。

 ただ、今年度予算でも、文科省、努力していただいて、学校施設の防災機能強化のための補助制度の創設などもしていただいているんですね。ただ、これは、あとは自由にやりなさい、そういう感じなんですね、自治体の自主性に任せる。

 しかし、学校の耐震化も、我が党も含めて本当に国を挙げて推進してきたがゆえに、昨年度四月では八〇・三%、昨年の累次にわたる補正予算と今度の新しい新年度予算で九〇%ぐらいですか、ここまでいったわけでございます。ですから、国を挙げて、やはりきちっとした目標を持って推進していくということが何よりも私は大事なんだろうと。

 学校の耐震化も、平成二十七年までのなるべく早い時期に完了させるんだという目標を持って今進めておられます。この耐震化の次は、防災機能の強化というものについても、やはり目標をしっかりと定めて、例えば学校施設の防災機能の強化三年プランとか、そういう何カ年かにわたる計画や工程表、こういうものをしっかりとつくって、集中的、計画的に学校施設の防災機能の強化というものはやるべきではないかと思いますが、文部科学大臣、再度御答弁いただきたいと思います。

中井委員長 文科大臣、去年の四次補正や今度の予算に学校の太陽光パネルの設置が盛られていますから、数字をきちっと挙げて答弁してください。

平野(博)国務大臣 委員長からのわざわざの御指摘でございますから。

 当然、特に、先ほども御指摘ございましたが、学校における太陽光パネル等々も含めてしっかりやろう、ただし、今御指摘ありましたように、蓄電池機能がやはり欠けておるものですから、そのことも踏まえてやらせていただきたいと思います。

 特に、目標を持て、こういうことでございますが、先生からいえば目標になっているかどうかわかりませんが、整備に対する基本方針がありますから、今先生の御指摘も踏まえた、耐震については二十七年度までとかいう目標をつけておりますが、防災についてもそういう考え方で具現化をしてまいりたい、かように思っております。

中井委員長 何だ、結局、数字は言わぬのか。

佐藤(茂)委員 いや、委員長、もう数字はこっちもわかっておりますから、結構でございます。

 今、前向きな答弁をいただきましたので、これは子供たちと地域の皆さんの命、また避難生活にかかわることですから、ぜひ精力的に進めていただきたいと思うわけでございます。

 以上、防災・減災ニューディールという考え方の具体策二本ぐらいを、きょう、時間の関係で取り上げて質問いたしましたけれども、総理、私は、昨年十二月二十四日に政府でまとめられた日本再生の基本戦略というものを全部読ませていただきました。その中には、東日本大震災からの復旧復興という観点は非常に強かったんですけれども、しかし、防災で日本をどうするというような観点はちょっと弱かったんですね。

 ですから、我が党が、防災・減災ニューディールと銘打って、デフレ対策としての需要拡大と、全国的な防災・減災のための社会基盤整備を組み合わせた、そういう対策をすべきであるという提言をしておりますので、ぜひ参考にしていただいて、できれば災害に強いまちづくりの工程表などもしっかりとつくって、計画的かつ大胆な集中投資を行うべきである、そのように考えますが、総理の見解を伺っておきたいと思います。

野田内閣総理大臣 大変、現場に足を運んでの御提起をいただきまして、本当にありがとうございました。

 その上で、防災という観点からの日本再生という視点ですね。日本再生戦略、基本方針は暮れにまとめましたけれども、年央までに日本再生戦略をまとめますので、先ほどの御提案も真摯に受けとめて検討させていただきたいというふうに思います。

佐藤(茂)委員 次に、米軍再編の問題についてお聞きをしたいと思います。

 今回、二月八日に米軍再編見直しを発表されたわけでございますけれども、私どもは幾つかの懸念を持っております。その最大の懸念は、今までの、二〇〇六年の再編の枠組みそのものを変えようとして、結果的に、もともとこの米軍再編の問題の出発点であった普天間の危険性除去、普天間基地の移設が頓挫して固定化する危険が出てきているという点では、私は極めておかしいことである、そのように考えているんですね。

 今までの、この米軍の普天間飛行場の移設と、在沖縄海兵隊のグアム移転と、嘉手納以南の六施設の返還というパッケージを切り離すということですから、今まで政府の進めてきた普天間飛行場基地移設の政府の戦略が、一言で言うと崩れ去った、そういうことではないかと思うんですね。

 要するに、パッケージのときには、海兵隊のグアム移転による負担軽減という、ある意味でいったらてこがあって、それで普天間移設というものを考えた、普天間移設のてことしてそういうものを考えておったんですけれども、それが今回、先行して外れてしまうわけです。

 ですから、この切り離しが普天間基地の置き去りを招き、結果として固定化を許してしまうことになるのではないか、そういう懸念があって、そういうことになっては絶対ならない、そういうふうに我々は考えているわけでございます。

 総理も、一番最後の参議院の予算委員会で、普天間固定化の懸念を承知しているので、そういうことがないように政府として全力で協議を進めたい、そういうように述べられましたけれども、しかし、今までのパッケージを外してしまったんですから、普天間基地移設のてこがなくなってしまったわけです。

 具体的に、どういう新たな戦略で、普天間基地固定化を回避して、普天間基地を移設されるお考えなのか、ぜひ野田総理の考え方をお聞きしたいと思います。

玄葉国務大臣 まず、佐藤委員がおっしゃったとおり、〇六年のロードマップ、パッケージになっておりました。それで、パッケージを外すという判断をしているわけです。ただ、基本的な構成要素は変わりません。進め方が変わっていくということです。

 今、てこという話がございました。果たして、これは民主党政権の反省も含めて申し上げますけれども、今現状のこの膠着状態はてこたり得るんだろうかということを直視しないといけないというふうに私は思います。そういう中で判断をしていく、そうなったときに、私は、沖縄の負担軽減というものを先行させていく、そして信頼関係を構築していく。

 普天間の固定化除去は大変大切なテーマで、一刻も早くその危険性を除去しなければなりません。どうやっていくのか。これは、丁寧な説明の一言に尽きるんですが、同時に、いかに危険であるか、そして、いわゆる沖縄の地理的な、戦略的な重要性、沖縄に残る海兵隊一万人の有するいわゆる抑止力、この問題についての説明を丁寧に、理解を求めながらやっていく。やはりこれは強行する話ではないと思うんですね。

 ですから、今の膠着状況を打開していく、前へ進めていく、結果として十五年進まなかったわけですから。ですから、前に進めていくためにこういう判断を……(発言する者あり)いや、民主党政権始まってからの反省も含めて申し上げているんですけれども、こういう判断をしているということでございます。

佐藤(茂)委員 私は、このままいくと、これは沖縄にも国民にもある不安だと思うんですが、先ほど申し上げました、普天間の基地が固定化されるんじゃないのか。具体的には、アメリカにとっては、グアムが強化されていく、やはりそういう移転をどんどん進めていく、そうすると、普天間はもう日本の国内問題だ。海兵隊移転でアメリカ政府が普天間問題解決の意欲を失うのではないのか、やはりそういう懸念や不安もあるわけですね。

 具体的に、これは外務大臣ではなくて、ぜひ防衛大臣にお聞きをしたいのは、一月末に韓国で開かれた日米韓の防衛当局による高官協議の際、アメリカ政府高官は、普天間の固定化はやむを得ないとの認識を示していた、そういう複数の報道があるんですけれども、普天間固定化やむなしとの、本当にそういう報道だとこれは大変なことでございます。

 要するに、もしアメリカ側の政府高官のそのような発言を聞かれていながら今回の再編見直しに臨まれていたとしたら、結局、その高官の発言にあらわれているようなアメリカの考え方を是認して見直し協議をとり行って、今回共同の報道発表に臨んだということで、許されるものではないと思うんですが、まず防衛大臣に、そういう事実があったのかどうか、お聞きしたいと思います。

田中国務大臣 米側から普天間飛行場の固定化はやむを得ない旨の考えが伝えられたのかとの御質問でございますが、これまでに、米側から普天間飛行場の固定化はやむを得ないとの認識が日本側に伝達されたとの事実は一切ありません。御指摘の韓国でのことにおきましても、防衛省、事務方は出席をいたしておりますが、確認をいたしました。一切ございません。

 普天間飛行場の危険性が除去されないまま固定化することは、絶対に避けなければならないと考えております。

 日米両政府は、普天間飛行場を辺野古に移設するとの方針が引き続き最善だと考えており、この方針に変わりはございません。政府としては、引き続き、固定化することがないよう全力で取り組んでいくところでございます。

佐藤(茂)委員 防衛大臣が出てきていただいたので、もう一つ関連してお聞きしたいんですが、もう一つ、我々の懸念は、嘉手納以南の六施設の返還、これがどうなるのか、そういうことです。

 先ほど外務大臣も、先行して沖縄の負担を軽減するんだと。しかし、ロードマップの八千人から約四千七百人に減るということで、逆に施設の必要性が残る可能性もはらむんじゃないのか、そのように我々は考えるんですね。普天間以外の五施設が全て返還される保証はないんじゃないですか。本当に全て返還できると言い切れるのかどうか。

玄葉国務大臣 これは佐藤委員御存じのとおり、実際は、可能なところから実施をしていくということだと思います。

 それと、人数が減るだろう、こういう話でありますけれども、佐藤委員が防衛省におられたころだと思いますけれども、結局、沖縄に残る海兵隊が一万人であるということは、あのとき八千人という意味は、あのとき一万八千人だったのではないかと思われます。

 つまりは、専門家でいらっしゃるから御存じのように、月によって海兵隊の数というのは変わったりしますね。ですから、人数が減るからといって、沖縄に残留する海兵隊の数が変わるわけではなくて、基本的に一万人という、基本的にとあくまでつけますが、海外に移転をする海兵隊の数というのは、基本的には今までの数字。ただ、グアムに行く数というのは、おっしゃるとおり、そういうことも十分あり得るだろう。

 ただ、部隊の構成も人数も、今、そういう意味で、見直し作業を日米でこれからまさに、今も既に非公式には行ってきましたけれども、公式に行っていくということでございます。

佐藤(茂)委員 だから、玄葉大臣、長々と答えられましたけれども、要するに、普天間以外の五施設について全て返還されるのかどうか、そういうことについて簡潔に答えてください。

玄葉国務大臣 嘉手納以南の土地の返還について、切り離して、可能なところから実現していきます。ですから、基本的には、普天間の辺野古への移設が進む、進まないとの関係も部分的に出てくると思います。つまりは、それは部隊の問題でですね。ですから、そういったところから、私は、申し上げ方として、可能なところからできる限り早期に土地の返還を実現していく、そういう言い方をしているわけです。

佐藤(茂)委員 もう時間がありませんので、もう一つお聞きしますけれども、今回の意思決定のプロセスというのは極めて場当たり的だというように私は思っているんですね。共同の報道発表、共同の声明ではなくて、格下げの、そういう形で発表された。審議官級会議だけで、そういう形にした。抜本的な再編の見直しをするにもかかわらずそうさせた。

 我々が政権にいたときというのは、三段階で議論してきたんですよ。日米の共通の戦略目標、そしてそれに基づく役割、任務の分担、そういうものをしっかりと議論し、そして米軍また自衛隊の協力も含めて、どういう兵力構成にするのか、再編をした。今、その三つ目のところを、パズルのようにいろいろいじりましょうという議論を余りにも簡単にやり過ぎておるのではないのか。

 私は、もう一回、外務大臣、あと防衛大臣、このお二人、また向こうの当局も含めて、きちっと閣僚級が議論をして、2プラス2を重ねて、今申し上げました共通の戦略目標、任務、役割の分担、さらにその上で、この再編をどういう形にするのかという議論をきちっと練り上げて、ああいうものは見直しだという形で発表すべきだ、それが余りにも場当たり的だ、そのように思いますが、今後そういう予定はありますか。

玄葉国務大臣 御指摘というか、おっしゃる意味はわかるんですけれども、ただ、御存じのように、二〇一一年に2プラス2があって、そこでも共通戦略目標というのがまず既にあるわけですね。どんどん更新していっているわけです。

 今おっしゃった役割、任務、能力、これはまさにRMC、いろいろな将来シナリオあるいは現下のシナリオに基づいて自衛隊や米軍の役割分担などを検討していく、そういうことと在日米軍の再編、米軍の再編というのはまさに相互で行っていくわけでありまして、共通戦略目標は基本的にあるんです、もう既に二〇一一年分があるわけです。

 そういったことを踏まえながら、現在もこういった議論を非公式に行ってきた。見える、見えないはあったかもしれません。ですから、今回の共同発表を受けて、また今度は公式な形でそういった議論をしっかり行って、おっしゃるように、RMCの問題も含めて、より今回のことで、そういった日米同盟の具体的な深化ということに確実につながっていくものと私は確信しています。

佐藤(茂)委員 共通の戦略目標は、アメリカの前のQDRに基づいた戦略目標なんです。今回、新国防戦略ができたんだから、もう一回見直すべきなんですよ。そういうこともせずにやっているから言っているんです。これはまた次回にさせていただきます。

 最後に、総理、きのうも沖縄県知事に会われたそうなんですが、今後、数カ月あるいは数週間でこれを進めていかれるということなんですけれども、やはり大事なことは、沖縄の頭越しではなくて、地元の意向を踏まえた協議を日米両政府として進めていくべきである、私はそのように思いますが、総理、そういうやり方をされていくのかどうか、決意を聞かせていただきたいと思います。

野田内閣総理大臣 抑止力を維持しながら沖縄の早期負担軽減を行っていくという形、これはパッケージを外すことになりました。今後の具体的な協議に当たっては、沖縄県知事含めて沖縄県の御要望等をよく踏まえながら、そして会談をしたり交渉したりするならば、その都度沖縄にも御相談をしながら進めていきたいというふうに考えております。

佐藤(茂)委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

中井委員長 この際、稲津久君から関連質疑の申し出があります。斉藤君の持ち時間の範囲内でこれを許します。稲津久君。

稲津委員 公明党の稲津久でございます。

 私からは、大要三点について質問させていただきたいと思います。

 一つはTPPに関連して、それからもう一つは再生可能エネルギー、とりわけ風力発電についてお伺いしたい。三点目は、新時代の石炭火力発電についてということで伺わせていただきたいと思います。

 まず初めに、TPPのことについて伺っていきたいと思いますけれども、これは総理にぜひお伺いしたいと思います。

 七日からワシントンで日米両政府の初の事前協議が始まりまして、その協議の状況を踏まえて、総理としてはどのような成果があったと受けとめておられるか、お伺いしたいと思います。

野田内閣総理大臣 七日に米国との協議がございました。

 我が国からは、TPP協定交渉参加に向けた関係国との協議に関する体制の構築、そして包括的経済連携に関する基本方針、これはおととしの十一月に閣議決定したものでございます、その説明をさせていただきました。また、TPP交渉参加に向けたその他の国との協議についての説明をいたしました。

 アメリカからは、米国国内における検討状況に関しまして、パブリックコメントなどで提出された意見のうち、例示的に農業、自動車、保険・急送便、分野横断的事項の四分野について紹介がございましたが、アメリカ政府としては、現在、これらの意見の評価、分析を行っているところであるという説明を受けております。

 まだ、スタートした、お互いの説明から始まったところですが、あえて成果というならば、これまで御懸念があった公的医療保険制度の廃止であるとか、あるいは単純労働者の移動の受け入れをアメリカが他のTPP交渉参加国に要求していることはないという説明がございましたので、この点についての御懸念は払拭することができたのではないかというふうに思います。

稲津委員 そこで、一つ具体的にお伺いしたいのは、この日米政府の初の事前協議において、我が国政府は全ての品目を交渉対象とする、このように基本方針を説明されておりますけれども、もう一方では、センシティブ品目、いわゆる重要品目については触れたのか、触れなかったのか。この点についてお伺いしたいと思います。

古川国務大臣 お答えいたします。

 協議の中で日本側から申し上げたのは、こういう言い方です。仮にTPP交渉に参加する場合には、一昨年十一月に取りまとめた包括的経済連携に関する基本方針に基づき、センシティブ品目について配慮を行いつつ、全ての品目を自由化交渉の対象とし、交渉を通じて、高いレベルの経済連携を目指す、そういう説明をいたしました。

 同時に、全ての品目を自由化交渉の対象とした場合にどのような自由化が求められるのかしっかりと理解する必要があるので、ぜひ情報を提供してもらいたい、そのように述べた次第でございます。

稲津委員 そうすると、はっきり聞きますけれども、触れたんですか、触れていなかったんですか。明確にちょっと答えていただけますか。

古川国務大臣 今申し上げましたけれども、センシティブ品目に配慮しつつ、全ての品目を交渉の対象にするということを申し述べたということでございます。

稲津委員 要するに、今聞いていると、よくわからないんですね、触れたのか、触れていないのか。はっきり言うと、そこまで聞きませんけれども、触れなかったのかということを言わざるを得ないわけです。

 今回は局長レベルの協議から始まったわけですけれども、今後は、二十一日、二十二日については実務者レベルになるわけですね。そうすると、ここではどのような協議になるのか、センシティブ品目に触れるのか、触れないのか。このことについてお答えいただけますか。

古川国務大臣 これはまだ、先ほど総理から申し上げましたけれども、向こう、アメリカ側からも、今の、アメリカの方がまずパブリックコメントをやった、その内容を整理して評価、分析を行っている、そういう話でございました。ですから、そうしたものも踏まえて、アメリカ側からも、次回のときにはそうしたものの評価、分析を踏まえての御意見があるんじゃないかと思います。

 こちらの方として、関心事項について、そして基本的な立場についてさきの協議で申し上げたわけでございまして、次回の協議のところでは、そこら辺についてのアメリカからの何らかの反応があるんじゃないかというふうに考えております。

稲津委員 重要品目については触れずに全ての品目を交渉対象にする、こういうことを考えていると。見方を変えれば、参加しますということを表明しているような、そういう意思を表明したと受けとめられてもいたし方ない部分もあるんじゃないか。

 私は、ここで一つ言わせていただきますけれども、ベトナム、ブルネイ、ペルー、チリ、この協議の結果の報告書を見ましたけれども、ここで、センシティブ品目については扱いは合意していない、最終的には交渉次第ということで、事実上不明確なわけですよ。

 この報告書の中でも、ここは非常に大事なことなんですけれども、交渉参加に向けた協議を行っている国のオブザーバー参加は認めない、交渉条文案は交渉参加国以外は共有しないと。要するに、すなわち日本は条文案さえ見せてもらえないことになる、こういうことになりませんか。

 今回のアメリカとの協議から、アメリカの通商代表部は声明で、日本は幅広い分野で交渉する準備があると強調した、こう述べられた。これは、先ほどもお話ししましたけれども、見方によると、日本がTPPに参加する意思がある、こういうことを表明したということにならないか。私は、こういう状況の中で事前協議というのは一体どういう意味を持つのか、このことを甚だ疑問に思っております。

 昨年の十一月のAPECのTPP交渉会合では、ブロードアウトラインズに合意をしているわけです。これをアメリカ大使館は大枠の合意だ、こう訳しましたけれども、日本は、大まかな輪郭、こうしている。これは、日本側の訳からすると、交渉に参加していろいろとやりようがあるように受けとめられますけれども、本当にそうなのかどうかということです。

 大枠合意には、交渉グループは全てのグループで条文案を作成した、幾つかの分野では条文案はほとんど完成している、こう書いてあるわけです。大枠合意からすると、日本は、既に作成されている条文を、先ほども言いましたが、見ることもできないことになる。こういう状況の中で、一体、事前協議というのは何の意味をなすのか。

 私は、拙速な交渉参加に向けての関係国との協議というのは、この時点で、日本の外交のバランスをある意味で崩していないかどうか、ここを非常に疑問なしとは言えないわけです。これはぜひ総理にお答えいただきたいと思います。どう思っていらっしゃるか。

玄葉国務大臣 稲津委員、条文案がないじゃないか、こうおっしゃいましたけれども、これは関係国で、条文案、テキストは出さないということで既に合意をしています。我々もそのことを前提に、オブザーバー参加も認めないということでありますので、したがって、しっかり情報収集する、それでそれを出すという形であります。

 それと、基本的には、これは事前協議云々も大事なんですが、事前協議はやはり参加国の同意を得ないとそもそも交渉へ入れませんので、そういった協議の問題も一つある。情報収集もある。そして、仮に交渉に入ったときに、まさに先ほど心配をされていた、私も福島県の出身なので、いろいろな問題、恐らく心配を共有する部分、実は内心あるんです。そういう中で、センサティブ品目について、本来は、交渉でやはりかち取るべきものはかち取り、守るべきは守るというのが私は経済連携協定であるというふうに思います。

稲津委員 私が言っているのは、交渉でかち取るものをかち取るというのではなくて、既にスタートのところで、全部の品目は交渉に出しますよ、そしてもう一方では、センシティブについてはどこでどうなるかわからないという状況、そこでいろいろな情報を収集したからといって、本当にそういうような態勢で、交渉事で事が済むんですかということを申し上げているんです。このことは恐らくこれ以上議論しても行ったり来たりになりますので、この程度で終わりますけれども、ぜひそのことを留意していただきたいということを強く申し上げたいと思います。

 次に質問を移りますけれども、ここで改めて、昨年の十一月の十一日、ホノルルのAPECの首脳会議に先立つ前日の総理の記者会見の内容について触れておきたいと思うんです。

 この会見の中で総理はこうおっしゃいました。TPP交渉参加に向けて、関係国との協議に入ることにいたしました。TPPについては、大きなメリットとともに、数多くの懸念が指摘されていることは十二分に認識しています。私は日本国という国を心から愛しています。世界に誇る日本の医療制度、日本の伝統文化、美しい農村、そうしたものは断固守り抜く。国益の視点に立って、TPPについての結論を得ていく。

 このように自信を持ってお話をされた、こう見ております。そのときに、私は、この総理の発言の中で非常に気になることがありました。いつかは必ず総理にこのことは直接お伺いしたい、こう思ってまいりました。

 したがって、まず、ぜひ総理にお答えいただきたいと思うんですけれども、総理が断固守ると言っていた医療制度や農村、ここでは恐らく農業ということを指していると思いますけれども、これは、日本が参加国から高い関税あるいは障壁、これを指摘されて、ある意味では責められる要素の高いところでもあるかもしれない。まず、総理は、どのような思いで日本の医療制度、日本の伝統文化、美しい農村を守るとおっしゃられたのか、このことについてお伺いしたいと思います。

野田内閣総理大臣 まず、我が国の農業でいえば、農業という直接、一つの産業がありますけれども、裾野の広い産業であるということと、それから、食料の安定供給という大変重要な機能を果たしているということ、それから、国土の保全という意味においてもまさに多面的な機能を有しているということでは、一言で言うと、農は国のもとなりという意識を持っているということであります。それをしっかり、これはTPPの交渉参加するしないにしても、いずれにしても、この農はもとなりということはしっかりと堅持しながら、農業の再生を果たしていかなければいけないという認識でございます。

 いずれにしても、例えば担い手不足であるとか、いろいろな課題が出てきています。そういうものを乗り越えて、しっかり農業再生をやる。一方で、TPPの場合は、相手国がどういう要求をしてくるか、まさにこれからであります。

 でも、農業については懸念が持たれていました。医療についてもそうでありました。そういうことを踏まえて、十一月の何日でしたか、APECに行く直前にそういう記者会見をさせていただいた。

 医療については、もう懸念は基本的にはなくなってきた。これは、これからセンシティブ品目の扱いでありますけれども、そういう懸念を一つ一つ消していって、この間記者会見で言ったことを守っていきたいというふうに思っております。

稲津委員 美しい農村を守るということで、私は、総理はこのことについては少し情緒的にお話をされるのかと思いましたら、むしろ具体的に、日本の農業の再生という言葉を使われて今御答弁なされました。これは私も意を同じくするところでありまして、大変思いのある御答弁をいただいたと思います。

 ただ、その上で申し上げたいことなんですけれども、では、農業を守る、再生していくというのは、具体的にどういうことをしたらいいのかということなんです。

 私は、大きく分けて二つあると思っているんです。一つは、農家の経営安定対策、これをしっかりやっていくということ。もう一つは、農村あるいは農業の環境を整えていくということ。もっと具体的に言うと、例えば、農地をどういうふうに整備していくのか、守っていくのか。ある意味では、これは農業の車の両輪みたいなことに通ずると思うんです。

 その農家の経営安定対策、ここは戸別所得補償制度等でやっていきましょうということで、これは、私は何も、全て反対するという意味ではございません。ただ、もう一方の、では農業の環境、いわゆる特に農地の問題についてどう整備、維持していくのか、ここについて甚だ、私は、今の民主党政権のやり方というのは、懸念を持っています。

 これは農業農村整備の対策予算についてなんです。平成二十一年から二十二年、二十三年とあります。ここに、農業農村整備事業、二十一年度五千七百七十二億円、補正も含めると五千九百二十二億円、これは自公政権のときにつくった予算。これも実は、この以前のところから大分縮減してきた。この平成二十一年から比較してみると、例えば二十三年を見ても、この農業農村整備事業は二千百二十九億円、そして補正も全部含めていきますと三千八百十三億円。何と六四・四%ですよ、ここまで縮減しているという現実。

 私は、その意味で、先ほど申し上げましたけれども、農家の経営安定対策と、もう一方の、この農地の保存整備、いわゆる暗渠などの排水対策や、あるいは客土を盛っての土地改良事業、こうした農業農村の基盤整備事業というのは欠かせない事業です。ですから、こういう状況の中で、総理、果たして美しい農村を守るということが具体的に言えているんですか。言えていないじゃないですか。そのことを申し上げたいと思いますけれども、御意見ありましたら。

鹿野国務大臣 確かに、今先生おっしゃるとおり、政権交代によりまして、政策の転換から、大きく予算の形も変わりました。実質的に、農林水産省の省内の枠内で戸別所得補償政策というものを導入した。こういう新たな政策を導入することによって、まさしくこのような、今先生から御指摘のような予算編成になったわけであります。

 しかし、その後、いろいろ地域の方々の御要望ということもございまして、二十三年におきましては、前年に比べますと、この農村整備事業というものは一一三%、そして、二十四年度におきましても一一二%ということで、農林水産省の予算は前年に比べてマイナス予算の中でも、この農業農村整備事業というものをこれからも着実に展開していかなきゃならない、このようなことから、予算をこの二十四年度におきましても計上させていただいたところでございます。

稲津委員 ちょっと北海道の状況を、非常にわかりやすい例でございますので、お示しさせていただきたいと思います。

 これは、北海道の農業農村整備対策予算、国費の推移です。平成二十一年を見てください。この年に、直轄と補助を合わせて約一千億ぐらいですよ。これも、十五年から見ると随分縮減してきている。もうこれ以上は難しいですよ、削減できないですよということでとまった。その後、見てくださいよ、平成二十二年、二十三年。特に二十二年は民主党政権になってからの予算ですけれども、これは直轄と補助を合わせて、ごらんのとおり六百十四億。そしてその後、さまざまな全国からの苦情、要望が出て、そして補正予算を組んだ、こういう状況ですよ。北海道もこのような状況になった。そして、平成二十三年度もこのような状況。

 したがって、これは繰り返しになって恐縮ですけれども、果たして、総理のおっしゃった、美しい農村を守る、そして農業再生ということは、具体的に、今申し上げましたことを、二つ例を挙げさせていただきましたけれども、決してそうなっていない。

 今後、農業、農村を守っていくという視点に立つのであれば、この点はぜひ総理によく理解していただいて、そして、このことについて、総理の思いをしっかり予算に反映させていただきたい、私はこのことを強く申し上げておきたいというふうに思います。

 それでは、次の質問に移らせていただきます。

 次は、再生可能エネルギー等の質問ですけれども、公明党として、過日、総合経済対策に関する緊急提言というものを発表させていただきました。そして、八日に官房長官に申し入れをさせていただきまして、そのときには時間をいただきましてありがとうございました。その中の一つの柱が、エネルギーの多様化と分散化、そして再生可能エネルギーの導入の促進ということでございます。

 まず、再生可能エネルギー、特に風力発電について質問させていただきたいと思います。

 これは、風力発電のポテンシャル、潜在力、あるいはその可能性ということで示した資料でございますけれども、ここにはいわゆる固定価格買い取り制度の買い取り単価とそれから買い取りの期間によって、全部で四つのシナリオですけれども、大きく分けて二つのシナリオ、一番とシナリオ二番。

 これを見ていただいたらわかりますけれども、例えば北海道の状況が非常にわかりやすいので、お示しをさせていただきたいと思いますけれども、一番下のところに、シナリオ一―一でやった場合、北海道は設備容量は八百三万キロワット。シナリオ一―三で見たときにでも、北海道は六千二百四十三万キロワット。こういうことで、いわゆる風力発電の容量というのは私たちが想像している以上に非常にポテンシャルが大きい。特に、北海道、東北、九州については、このシナリオ一と二で見たときに、それぞれ、例えば四対三対二ぐらいで、北海道、東北、九州というのは非常にポテンシャルが高いということがわかると思います。

 そこで、では、このポテンシャルをどのように生かしていくのかということについて若干触れさせていただきたいと思いますけれども、例えば北海道の西名寄系統というのがあるんですけれども、これは稚内、宗谷管内から留萌管内、そして上川管内もこの地域ですけれども、ここでは、風力発電を含めた再生可能エネルギーの容量が約二一%あるというんです。では、そのうち実際にどのくらいニーズがあるかというと一六%。その差五%というのは、残念ながら、これは発電を抑えているという状況でございます。特に留萌管内の苫前町については、これは風力発電が大体四十基ぐらいありますけれども、この町での電気の風力発電の自給率は五三〇%と言われています。それだけの、ポテンシャルどころか、もう実際にそういう状況になっているんです。

 ここで問題があるんです。それは何かというと、実は、このポテンシャルが幾ら高い地域であったとしても、風力発電の装置をふやしたとしても、送電網につなげることが十分じゃないということなんです。

 そこで、こういった送電網の整備について、国として何らかの支援をしていく必要がないのかどうか。私は、ぜひ必要があると思っているんです。再生可能エネルギーをこれから大量に導入しようとしていくのであれば、これは必須の課題になると思うんですけれども、この点について、経産大臣の所見を伺いたいと思います。

枝野国務大臣 御指摘のとおり、風力発電というのは大変なポテンシャルがあるというふうに思っております。ただ、風力発電に適した場所が必ずしも日本全国ではない。ある特定の地域、そのうちの一つ、一番大きいのはある意味では北海道だと思います。なおかつ、その適した地域は一般的に送電網の弱いところが多いという状況でございますので、そのポテンシャルを最大限生かすためには、送電網の強化は欠かせない。

 原則として、こうした送電網は事業者が設備をつくるものでございますが、今、風力発電の成長を促さなければならない状況、それから特定の地域に送電網の弱いところが偏っているという状況、こういうことを踏まえた中では、早期にこれを整備する観点から、一定の政策誘導手段をとる必要があるという判断をいたしまして、その具体的な制度設計を指示しているところでございます。

稲津委員 今大臣から非常に前向きな御答弁をいただいて、これはぜひ期待をしたいと思います。

 これは我が国の地域間連系線の現状なんです。

 もう一つの課題というのは、それぞれの電力会社の連系線、地域間連系線、これが実は非常に偏っているということ。特に、北海道と東北については六十万キロワットしかない。今、これは東北電力、北海道電力、東京電力で、三社いろいろな協議をして、実験をしてやっているんですけれども、これを九十万キロワットにしようという話もあります。

 先ほど申し上げましたような、風力発電のポテンシャルをさらに高めていこうとしたら、今大臣が前向きな御答弁をいただいた送電網の整備とあわせて、この地域間連系線の整備もぜひやっていただきたい。この点についてどうでしょうか。

枝野国務大臣 御指摘のとおり、この地域間連系線の強化というのは大変重要な課題であると思っております。

 その中で、北海道―本州間の連系線については、御指摘のとおり、今の六十万キロワットを三十万キロワット増強する、これをできるだけ早期に実現する、まずはこれをスタートさせます。

 それと同時に、全国規模での連系線の強化については、今、総合資源エネルギー調査会総合部会の電力システム改革専門委員会のもとに、これは技術的にも何かいろいろ複雑なことがあるようでございますので、地域間連系線等の強化に関するマスタープラン研究会を設けたところでございます。全体として、エネルギー基本計画をこの夏をめどにつくっておりますが、それに合わせてこの具体的なマスタープランもお示しをできるように、議論を急がせるように指示をいたします。

稲津委員 これも大変前向きな御答弁をいただきまして、あわせて期待をしたいと思います。

 最後になりますけれども、新時代の石炭火力発電についてお伺いしたいと思います。

 実は、日本の国民の皆さんの中には、炭鉱は全部閉山した、こう思っている方も数多くいらっしゃると思うんですけれども、厳密に言うと、今、日本には八つの炭鉱がまだ現存しています。釧路のコールマイン、そして、残り七つは空知管内、露天掘りでございます。

 この七つの炭鉱が実際に石炭を生産しているわけですけれども、しかし、石炭の火力発電の全体の九九%は、海外からの輸入炭に頼っています。残り一%が、この北海道の空知における石炭。北海道の空知管内には、奈井江、そして砂川の火力発電所がありまして、ここは、自前の石炭を使って、海外炭も一部入っていますけれども、発電をしています。そういう地域が日本の中にあるということをまずお示しさせていただきたいと思ったんです。

 あわせて、ここの発電所では、灰じん、いわゆる石炭の粉が出ないような、あるいは燃焼した後の粉も九九%以上出ないような、そういう装置をつけてやっています。

 そこで、一つお話をさせていただいたんですけれども、ただ、もう一方で、ではCO2、温暖化ガス……

中井委員長 稲津さん、時間が来ましたので、まとめに入ってください。

稲津委員 わかりました。

 そこで、今、日本が大変高い技術を持っているクリーンコールエネルギー、ゼロエミッション、こういったことをしっかりさらに研究開発して今後の発電所に生かしていく、あるいは、海外にその技術を移転していく、輸出していく、この考えについてお示しください。

中井委員長 枝野経産大臣。時間が過ぎていますから。

枝野国務大臣 粉じんやCO2などについて、かなり技術によって抑えることがもうできていますが、さらにこれを強化して、十分に活用してまいりたいと思っております。

中井委員長 これにて斉藤君、佐藤君、稲津君の質疑は終了いたしました。

 次に、志位和夫君。

志位委員 私は、日本共産党を代表して、野田総理に質問いたします。

 政府が二〇一五年までに消費税を一〇%に増税する方針を決めたことに対して、国民の中からごうごうたる批判が起こっております。きょうは、この問題に絞って、幾つかの角度から問題点を究明するとともに、我が党の立場を明らかにしたいと思います。

 まず、政府は、社会保障と税の一体改革というわけですが、今度の方針で社会保障はどうなるのかという問題です。

 総理に伺います。

 消費税が五%から一〇%に引き上げられますと、約十三・五兆円の増税となります。そのうち、新たな社会保障の充実のために充てられるお金は幾らになりますか。金額、お答えください。総理。

岡田国務大臣 事実関係でございますので。

 五%の中で、二・七兆円程度、消費税収に換算しますと一%程度が社会保障の充実のため、残りは、社会保障制度をいわば守るために、社会保障制度の安定化に向けることにしております。

志位委員 五%の消費税増税のうち、社会保障の充実に使われるのは二・七兆円、わずか一%というお話でありました。残り四%分は、既存の社会保障費の財源と消費税が置きかわるだけで、新たな社会保障の充実には使われないということになります。その上で、一%分を社会保障の充実に充てるといいますが、実態はどうかという問題です。

 政府の一体改革の素案を見ますと、社会保障にはたくさんの切り捨てのメニューが並んでいるではないか。

 例えば、物価が下がったことを理由に、年金の連続削減が計画されております。まず、昨年の物価下落分として、ことし六月から〇・三%の年金を削減する。さらに、物価スライド特例分の二・五%について、二〇一二年度から一四年度の三年間で解消、すなわち削減する計画が実行されようとしております。

 政府に確認しておきたいと思います。

 昨年の物価下落分として削減される〇・三%分というのは、総額どれだけになりますか。さらに、物価スライド特例分として解消が予定されている二・五%は、支給額ベースでは総額どれだけになりますか。厚生省。

榮畑政府参考人 昨年の消費者物価の〇・三%下がったことに伴います年金の〇・三%下がることにつきまして、年金の給付総額としては約〇・二兆円でございます。

 それからまた、特例水準と本来水準の乖離の二・五%分につきましては約一・三兆円程度というふうに、これは単純に機械的に計算した結果でございますが、そういうふうになるところでございます。

志位委員 〇・二兆円プラス一・三兆円。ですから、物価が下がったことを理由にした年金給付額の減少は、合わせて約一兆五千億円ということになります。

 加えて、一体改革素案を見ますと、マクロ経済スライドの適用についても検討すると明記されております。これが適用されれば、〇・九%の年金削減になってまいります。物価マイナススライドとマクロ経済スライドを合わせて約二兆円の年金削減ということになります。

 ちょっとパネルをごらんください。

 社会保障の切り捨てはそれだけにとどまりません。子ども手当の減額で四千四百億円、七十歳から七十四歳の医療費の窓口負担の一割から二割への引き上げで一千九百億円、介護保険の軽度の方の利用料の一割から二割への引き上げで八百億円。当面の削減だけで、年金削減と合わせて二・七兆円となります。

 さらに、一体改革素案には、年金支給開始年齢の引き上げの検討を行うとしています。これが実施された場合、その犠牲になるのは現在四十歳代以下の働き盛りの世代であります。六十八歳まで支給開始年齢が引き上げられたら年金削減は総額で約六兆円、七十歳まで引き上げられたら年金削減は総額で約十兆円に及びます。現在の高齢世代にも、将来の高齢世代、つまり現在の働き盛りの世代にも切り捨てを進める計画になっております。

 総理に伺いたい。

 仮にあなた方の言うように二・七兆円が充実に充てられたとしても、それをはるかに上回る社会保障の大幅切り下げが計画されている。税と社会保障の一体改革といいますけれども、この改革によって社会保障全体の水準が引き上がるわけではないということは明瞭だと思いますが、このことをお認めになりますか。今度は総理、お答えください。

小宮山国務大臣 御提示いただいた数字がいろいろなものがまざっていますので、先に私の方からちょっと事実関係を申し上げたいと思います。

 充実の二・七兆円、これは公費負担ベースです。削減は基本的に給付費全体をベースにしていますので、この比較のベースが一致していないということです。二・〇兆円は年金の給付減、そして八百億円というのは介護利用料でございます。

 それから、現時点で全く決定していない項目、今後の検討項目なども含められた試算であること。この介護利用料の八百億円、それから年金支給開始年齢引き上げの六兆円あるいは十兆円、これは今後の検討項目で、今回は全く決定をしておりません。

 それから、私どもがやっているのは、世代間の公平とか保険料負担の軽減に資するものということなので、単純に充実というだけではなくて、これから後世にツケを回さない、どういう公平な制度でやっているか、いろいろ勘案しながらやっているということを御理解いただきたいと思います。

志位委員 公費ベースと給付ベースで一致していないと言うんですけれども、充実に充てられる二・七兆円というのは、ほとんど公費ベースと給付ベースで変わりませんよ。

 それで、これはまだ決まっているわけじゃないんだ、検討中なんだというふうにおっしゃられましたけれども、全てがあなた方が決めた一体改革素案に実施をするあるいは実施を検討する、こう書いてあるわけですよ。一つでもやらないと言えるものはないでしょう。

 今度、総理に伺います。

 私が聞いたのは、こういうことになりますと社会保障水準全体が引き上がるとは言えない、この事実をしっかり認めてほしいということなんです。今度は総理です。

岡田国務大臣 今言われた中で、まず年金の物価スライド、これは既に制度としてあるもの、残念ながら最近それがきちんと運用されてこなかったということであります。

 年金は、物価が上がればそれに応じて上がる。今度の消費税五%上げるというときにも、それに応じて年金の給付額は上げるということも織り込んでいるわけでございます。下がったときには下げる。そして、その下げるべきものが下がっていなかったので、今回きちんと下げるということであって、上げるときには、物価が上がったときには上げる。物価が下がったときには上げないということでは、これは次の世代にみんな負担をかぶせるだけでございます。そういう意味で、これはルールに基づいてやっているということでございます。

 それから、先ほど、充実の方は、これは確かに公費負担ベースでございます。我々が言いたかったのは、充実は公費負担ベースであるにもかかわらず削減は給付費全体をベースにしていて、同じ二・七兆円だからという、そういう議論は成り立たないんじゃないかということを申し上げているわけです。

志位委員 給付ベースで下げられても税金で取られても同じなんですよ。公費ベースであったとしても、これが給付でどれだけ膨らむかという計算を持っていないでしょう。ほとんど変わらないですよ。

 それで、私、これだけ聞いても、一体改革によって社会保障の全体の水準が引き上がる、そう誰も答えられなかった。ここが非常に重大な点だと思うんです。

 私、これが家計に具体的にどういうふうに影響を及ぼすか、次に見ていきたいと思うんですね。年金で生活されている高齢者世帯がどうなるかです。

 これは、東京都の葛飾区在住の七十五歳以上の夫婦世帯、年金が二人合わせて月額十八万円の場合がどうなるか、試算をしてみました。数字は全て年間ベースのものです。政府の計画が実行されますと、ことしから文字どおり連続的な負担増が家計を襲うことになってまいります。

 パネルを見ていただきたいんですが、ことし六月に年金減額で〇・六万円の実質負担増、十月に医療、介護保険料値上げで一・六万円の負担増、十二月に年金減額で一・九万円の実質負担増、一三年の六月に年金減額で実質一・七万円の負担増、一四年の四月に消費税率三%引き上げで四・八万円の負担増、六月に年金減額で実質一・七万円の負担増、一五年六月に年金減額で実質一・九万円の負担増、そして十月には消費税率二%の引き上げで三・二万円の負担増で、合計十七・五万円の実質負担増ですよ。丸々一カ月分の年金が消えてしまうことになる。

 今度は総理、答えてください。社会保障を持続可能なものにすると言うけれども、家計は持続可能にならないじゃないですか。どうですか。

野田内閣総理大臣 これは、グラフを見ると、一応、年金減額という一言で書いているんですけれども、例えば一二年六月の〇・三%というのは、これは物価が〇・三%減った分の、年金法の規定に基づく引き下げであります。そして、その後の十二月から一四年六月までの年金減額と書いてあるのは、これは特例水準の解消のための措置ということです。

 ということは、いわゆる減額という一言じゃなくて、本来もらうべきものはどれぐらいなのかという額があって、それについて加算をされてきた分についての調整を行うということでございますので、いわゆる一体改革で何かを減らして削減をしていくということとは違うというふうに御理解いただきたいと思います。

岡田国務大臣 今総理の言われたことはそのとおりでございますが、それに加えて、消費税率が三%引き上げられる、二%引き上げられる、それによって負担がふえる、これは消費税の負担を言っておられると思いますね。しかし、年金の額は、消費税を入れることで物価が上がればその分は上がるわけですから、その分はカウントしていないわけですよ。その分を除くと、ある意味では、消費税が上がって物価が上がった分、年金受給者の方は給付がふえるわけで、働く世代はそういうことはないんですね。

 ですから、それはどちらをより重視するかという問題でもあるわけで、私は、年金世代の方の方が消費税引き上げの効果はより和らげられている、それがいいかどうかは別にして、事実としてはそういうことだと思います。

志位委員 調整だと言うんですけれども、下がるのは事実なんですよ。

 それで、物価が下がったら引き下げるのはルールだということをおっしゃったわけですけれども、今の日本の年金給付の水準というのは、基礎年金だけの方が平均月五万円にも満たない、極めて低いものです。にもかかわらず、政府の計画というのは、そうした極めて少額の年金まで一律に削減するものになっている。

 消費税が上がれば年金減額がとまるようなことを言ったけれども、年金減額の仕掛けというのは、賃金だって上がらなかったらとまらないんですよ。そして、その賃金は過去三年分にわたって上がらなかったらとまらないんです。

 それで、物価が下がったからと言いますけれども、消費者物価が下がっている主な原因というのは、パソコンとかテレビなどの値下がりによるもので、食料品というのはほとんど下がっていませんよ。水光熱費や医療費は逆に上がっている。そして、高齢者世帯に一番つらいのは医療、介護などの社会保険料の連続値上げですけれども、こういうものは消費者物価の計算にカウントされないんです。ですから、年金世帯の日常生活で考えたら、生活費の負担が減っているわけではないんですよ。

 昨年、物価が下がったことを理由に、あなた方は〇・四%の年金削減を強行しましたが、これに対して多くの高齢者、特に、少ない年金額でようやく生計を立てておられる高齢者から激しい怒りの声が寄せられました。共通した怒りの声は、少ない年金をこれ以上削られたら生きていけない、物価が下がったと言うが、日常生活では下がっていないという訴えであります。

 七十五歳の女性からの訴え、こういうものがありました。一生懸命働き、保険料を掛け続けてきた年金。しかし、月四万七千円と低い金額です。簡単に、しかも強引に引き下げられては生活できません。私は主婦です。物価が下がったと言われるが、下がっていません。日々の生活で実感しています。

 六十三歳の男性からはこういう訴えです。建設業に従事し、国民年金を一生懸命掛けてきましたが、とても生活できる金額ではありません。冬は酷寒の中、家に帰っても電気代を節約し、風呂も灯油の値上がりで我慢しています。そこにもって〇・四%ものカットとは何事ですか。

 灯油は、皆さん、今幾らか御存じか。今、一缶千七百円台ですよ。この十年間で一・九倍に値上がりしている。

 高齢者の生活実態に照らしたら、昨年行った〇・四%の年金削減でもたくさんの悲痛な声が寄せられている。これ以上の削減というのは文字どおり生存権を奪うものであって、私は、無慈悲な年金削減政策はやめるべきだということを総理に求めたいと思います。今度は総理、お答えください。

野田内閣総理大臣 いわゆる物価による調整の話、あるいはこれまでの加算の調整というのは、今まで特例的にいただいていた方については、それは確かに減額ですから、その分生活が厳しくなるという声が上がることは、それはよくわかります。だから、一遍にじゃなくて三年間という期間を置いて調整していこうということ。

 そうじゃないと、そのことによって、やはり一兆円ほどのお金が余計に出るんですね。それは誰が負担をするかというと、これはやはり将来の世代なんです。

 そういうことも考えないと、一部の人たちの声はよくわかります、わかりますけれども、全世代でどう対応するかという視点も必要ではないんでしょうか。

志位委員 三年間かけてと言われたけれども、逆に、年金が月々減っていくと、こんな心細いことはないですよ。それから、将来世代のためだと言われた。しかし、その将来世代に対しては年金支給開始年齢の引き上げを検討しているじゃないですか。(野田内閣総理大臣「決めていないですよ」と呼ぶ)決めていないと言われるけれども、検討課題に入っているじゃないですか。

 大体、民主党が二〇〇九年の総選挙のマニフェストで、この問題何と言っていたのか。ここにはっきり書いてありますが、公的年金制度に対する国民の信頼を回復する、年金給付の水準を高める、これが約束なんですよ。今の年金の水準は低過ぎる、これを高めましょう、こう言ってあなた方は選挙で訴え、公約して、政権をとったんですよ。ところが、政権についたら、年金削減、当たり前のような顔をして、これまでの仕掛けがあるからと言って続けるというのは、これは許されるものではありません。

 私は、一言加えて言いますと、政府がおっしゃられる二・七兆円の社会保障の充実の中にも、国民にとって毒になるものが幾つも含まれているということも言っておきたいと思います。

 例えば、政府が充実の目玉にしている子ども・子育ての新システム、これは二・七兆円の中に入っていますが、これは児童福祉法を改定し、市町村の保育実施義務をなくすというものであって、これをやりましたら、保護者は自力で保育所を探し、直接契約をしなければならなくなる、待機児童解消も進まないということで、保育団体から大きな反対の声が起こっている大改悪であります。

 社会保障がよくなるのだったら増税は仕方がないと思っておられる方もいると思います。しかし、今政府が進めようとしている一体改革とは、子育て世代にも、働き盛り世代にも、高齢者にも社会保障の切り捨てを押しつけながら消費税の大増税を押しつけるというものであって、それが正体であって、このような一体改悪は国民は絶対に理解するものではないということを強調しておきたいと思います。

 次に進みます。

 政府は、消費税の大増税を、先ほどから社会保障の安定財源を確保するためと言うわけですが、果たしてそうなるかという問題です。

 この言葉を聞きますと、私、一九九七年に消費税を五%に増税した際に、当時の橋本首相とこの場で論戦したことを思い出します。橋本首相が私たちとの論戦の中で同じ言葉を述べたことを思い出す。あのとき、橋本首相は、消費税の増税について、高齢社会の財源としてすぐれており、高齢社会にとって不可欠の税制と述べて、これを強行しました。これをやれば高齢化社会を支える安定財源を確保できると言って、増税を進めました。

 しかし、その結果、財源は確保されたか、税収がどうなったか。次のパネルをごらんください。

 これは、消費税を五%に増税する前の年の一九九六年度と、直近の二〇一〇年度との国と地方の税収の比較であります。確かに、消費税収は七・六兆円から十二・七兆円にしっかりとふえています。しかし、税収の総額は、九十・三兆円から七十六・二兆円に十四兆円も減りました。一九九六年度の税収をベースにしますと、消費税増税後の十四年間で、何と八十四兆円も累積で税収が減っております。

 消費税収は確かにふえた。しかし、国と地方の税収は大きく落ち込んだ。総理、なぜこういうことになったと思いますか。

中井委員長 一番最初に、小宮山洋子君、保育の問題は。(志位委員「総理ですよ」と呼ぶ)いいえ、着席してください。(発言する者あり)言いっ放しはだめです。

小宮山国務大臣 御指名でございますので。

 先ほどの二・七兆円の充実の中で、子供のことも切り捨てられるとおっしゃいましたけれども、子ども・子育て新システムの中では、子育て支援をしっかり充実するようにいたします。

 その中で、実施主体である市町村を中心として、児童福祉法と子ども・子育て支援法の二つの法案に、全ての子供の健やかな育ちを重層的に保障する、これまでより全ての子供に行き渡るものをしっかりと法定いたします。

 全ての市町村による計画的な学校教育、保育の基盤整備をして、確実な給付の保障を図っていくということ。児童福祉法で、保育を必要とする全ての子供に対する保育を確保するための措置を講じ、周辺施設とか事業者との連携、調整を図る全体的な責務を市町村に課します。そして、虐待事例とか特別な支援が必要な子供に対する利用の勧奨、入所の創設、こういうことで保育の利用保障を全体的に下支えするようにしておりますし、幼保一体化のほかに小さな小規模の保育なども充実をし、多様な保育の環境を充実することによって、子育て支援を充実する政策をしっかりと盛り込んでおりますので、御理解いただきたいと思います。

安住国務大臣 まず、委員長、所得税と住民税については、これはフラット化を進めて減税をしていることは事実でありますから、それは何か、税収が減ったことは余り怒られることではなくて、むしろ中間層に対する配慮というのはしっかりやってきたと思います。

 法人税も、時代の中でやはり国際競争力をつけなければならないという観点で、さまざまな意味で税率を下げてきたりしておりますから、相対的には、少子高齢化の中で、先ほど総理もお話ありましたけれども、やはり全世代型で税収というものの安定を図るために、消費税の比率というのが高まってくるというのはやむを得ないことだと思っております。

志位委員 まず、子ども・子育て新システムについて、市町村の責務を課していると言いましたけれども、まさにその市町村が保育の義務を行うということ、その義務規定を外したものが今度の法案になっているわけですよ。ですから、例えば、親が直接保育所探しをやって見つけられない場合、あっせんをするとしても、足らない場合は結局それは解消されないわけです。そういうまさに責任放棄が今度の法案だということを言っておきたいと思います。

 この問題に移りますけれども、今財務大臣から話があったけれども、フラット化と言いました。これは結局、金持ち減税をやったということですよね。それから法人税、これが減ったのは、大企業減税をやったということです。それに加えてこれだけ落ちているというのは、やはりこの十四年間に日本の経済が長期にわたって低迷あるいは後退を続けてきた、そのことが税収のこれだけの悪化をもたらしたということは、これもお認めになりますね。その一言でいいです。

安住国務大臣 はい。ただ、一言多いと怒られるかもしれませんけれども、一〇%を五%に税率を下げていますから、いわゆる所得の低い方に対しても配慮しているということはぜひわかっていただきたいと思います。

志位委員 反論されませんでしたから、景気の悪化ということは認めたということですね。

安住国務大臣 地方への税源移譲もありますし、それから、確かに、景気の低迷というのはバブル崩壊後あったことは事実でございます。

志位委員 ようやくその答えを言いましたけれども、結局、消費税を増税しても、経済が悪くなれば全体の税収は減るんです。

 それでは、今消費税を大増税したら日本経済はどうなるか。これは、総務省の家計調査による平均的勤労者世帯の可処分所得と消費支出のこの二十年間の推移であります。可処分所得というのは、世帯全体の収入から税や社会保険料を差し引いた手取りの額です。

 折れ線グラフのピークになっているのは一九九七年でありますが、この年に、橋本内閣によって、消費税五%への増税など九兆円の負担増が強行された。この時期は、景気は回復しかけていたわけですね。可処分所得も五百二十九万円から五百九十六万円に伸び続けていました。消費支出も、ジグザグがありますけれども伸びていた。にもかかわらず、それを上回る負担増によって家計の底が抜け、消費が冷え込み、景気はどん底に落ち込んだというのがこのときだと思います。

 総理に伺います。

 この大増税が大失政だったということは、総理も野党時代に厳しく批判しておられる問題です。ここに議事録を持ってまいりましたけれども、二〇〇五年の二月二十八日、財務金融委員会でのあなたの質疑ですが、相手は谷垣財務大臣です。

 何とおっしゃっているかといいますと、一挙に増税路線に政府がシフトした後の惨たんたる日本の経済の状況を私も肌を通じて感じたと。イギリスのタイムズに出た論文をちょっと読み上げたいと言ってそれを読み上げて、橋本政権によって行われたこの増税政策は、最も愚かで、最も無意味で、破壊的な経済政策と言われることになろう、こう言って、あなた自身の言葉として、「まさに、国民経済に与えた影響を含めると、それぐらい厳しい総括が必要だったろうと私は思います。」これは正しいことを言われていると思うんです。

 この認識、すなわち、橋本内閣による大増税が景気を壊す大失政だったという認識は今も変わりないですね。これは野田さんです。

野田内閣総理大臣 ちょうど、消費税を引き上げる時期、引き上げた後に、いわゆるアジア通貨危機だとか金融システムの問題で、金融破綻、いろいろありました、山一とか。そういうことも含めて、タイミングとしては極めて悪いタイミングに一緒にやってしまったということだと思います。

 その意味では、事前にそれを想像できないものもありますけれども、今回この引き上げの中でお願いしていることは、経済条件の好転、それまでには、激変があるときには停止をするとかを含めてですが、事後のことはこれはなかなかわかりませんけれども、橋本さんがやったときには、消費税を上げる前には駆け込み需要がありました。その後に、またしばらく需要が回復しつつありました。その後に、いわゆるアジア通貨危機とか、あるいは国内における金融破綻等々が重なって、結果的にはそういう厳しい状況になったというふうに思います。

志位委員 重なってということをおっしゃいましたけれども、消費税の増税が大不況の引き金を引いたということはお認めになったんだと思うんですね。

 それで、あのときの論戦を思い出しますが、この大増税で大不況になった九八年の四月に私はこの場で橋本さんと論戦をやりまして、橋本さんも、やはり消費税の増税が一つの原因だったということは否定しませんということで誤りを認めましたからね、これは歴史的に決着がついている問題であります。今回の増税は、それと比べてもはるかに破壊的な経済政策になる。

 パネルをもう一度ごらんいただきたいんですが、九七年は、可処分所得が伸びるもとでもそれを上回る負担増によって家計の底が抜けたわけです。今回は、ただでさえ長期にわたって可処分所得が減り続けているわけですよ。

 九七年から二〇一一年までの十四年間で、可処分所得は五百九十六万円から五百四万円に、九十二万円も落ち込んでいる。並行して、消費支出は四百二十九万円から三百七十万円へと、五十九万円も落ち込んでおります。そこに巨大負担増がかぶさる。二〇一五年までにどれだけの国民負担増となるか。消費税増税で十三・五兆円、年金給付の削減、子ども手当の削減、年少扶養控除の廃止、復興増税、年金、医療、介護の保険料の引き上げなどで、総額で二十兆円を超える負担増となります。平均的な勤労者世帯の家計で計算いたしますと、二十五・五万円の実質負担増ということになってまいります。日本経済の六割を占めるのは家計消費です。

 これは総理に伺いますが、ただでさえ所得も消費も長期にわたって落ち込んでいるんですよ。そこにさらに二十五・五万円もの実質所得を平均のサラリーマン家庭で奪ったら、これは消費がますます冷え込み、景気が一層悪化することは明瞭ではないか、火を見るよりも明らかではないかと考えますが、いかがでしょうか、総理。

岡田国務大臣 確かに所得は減っておりますので、一方で厳しい状況がございます。しかし他方で、国民が今一番何を不安に思っているか、何が消費を妨げているかといえば、やはり将来に対する不安、つまり、将来、一体自分たちの生活はどうなるんだろうか、あるいは社会保障制度はどうなるんだろうか、そういう不安が大きいと思います。

 今回消費税を引き上げてそういったところの手当てをきちんとする、もちろんそれで全部満たされるわけではありませんが、しかし、かなりの部分を手当てするということで、将来に向かって安心感が増し、そしてそのことが消費の増につながって、やがては所得の増につながっていく、そういう道筋も当然考えられるわけでございます。

志位委員 今度の一体改革で安心の社会保障ができるからということなんですけれども、それは最初にやったじゃないですか。社会保障をトータルで見たら、充実とあなた方が言っていることを、二・七兆円を認めたとしても、それよりも削減額が多いじゃないですか。それを、全体として水準を上げると言えなかったじゃないですか。ですから、そんなことで景気がよくなるなんて見通しを持ってこれに突っ込んだら大変なことになると私は言っておかなければなりません。

 消費税一〇%がいかに破壊的な経済政策か、具体的にただしていきたい。雇用の七割を支え、日本経済を牽引する中小企業はどうなるかという問題です。

 中小企業、中小業者にとって消費税の一番の苦しみとは何か、それは消費税が転嫁できないことです。中小企業は、仕入れ価格には容赦なく消費税が上乗せされますが、多くの場合、販売価格には消費税を上乗せできません。

 昨年、中小企業四団体、日本商工会議所、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会、全国商店街振興組合連合会、この四団体が中小企業における消費税の転嫁にかかわる実態調査というのを行っておられます。その結果を見ますと、消費税五%の現在でも多くの中小企業が消費税を転嫁できないと答えておられますけれども、消費税が引き上げられた場合にはそれが一層深刻になると答えています。

 これをごらんください。これは「消費税が引き上げられた場合、販売価格に転嫁できるか」という設問への回答であります。一番下の売上高二億円の中小企業でも、五〇%が転嫁できないと答えております。一番上に掲げております売上高一千万円から一千五百万円の小規模企業では、何と七一%の方が転嫁できないと答えておられます。

 これは総理に基本的認識を伺いたい。転嫁できない場合に、税務署に納める消費税というのはどこから出すんですか。

安住国務大臣 このアンケート調査については、後で経産大臣の方からもし必要であれば御説明いただければと思います。

 転嫁については、結局、いわゆる弱い立場の事業者が不利益をこうむるということをおっしゃっているんだと思いますが、そういうことがないようにやはりしっかりやっていく。怒られるかもしれませんが、安心して消費税を払っていただく仕組みづくりというのは必要だと思います。

 いわゆる独禁法や下請法において禁止をしている優越的地位を濫用して、例えば、そういうふうに下請会社等に対して、そうしたいわば転嫁をしないで自分のところで負担をせざるを得ない状況にさせないようなガイドラインをつくって、今回は厳しい対応をしていきたいというふうに思っております。

志位委員 どこから負担するのかと聞いたんです。

 今度は総理。転嫁できない場合はどうするんですか。転嫁できる環境をつくると言うけれども、消費税が創設されてから二十三年間、ずっと転嫁できないで苦しめられ続けてきたのが中小企業なんですよ。これを倍にしたら、どうやって転嫁できるような状況ができるというのか。転嫁できない場合はどうするのか聞いているんです。総理、今度はお答えください。総理。(発言する者あり)

安住国務大臣 いやいや、答えられないというか、やはり税の適正な執行ですから、独禁法等を利用して、しっかりとそれは安心して転嫁をしていただくように我々としては努めたいと思います。

志位委員 それでは、実態を少しお聞きください。

 私は先日、東京で中小企業を営む方々に集まっていただき、話を伺いました。工業部品の加工業、お豆腐製造販売、パン製造販売、リゾートマンション管理、お弁当の製造販売、レストラン営業を営む方々であります。業種はさまざまですが、そろって次の二点を訴えられました。

 第一に、消費税という税金は利益にかかる税金ではない、売り上げにかかる税金だということです。つまり、利益はほとんどなくても、赤字であっても、消費税を払わなければならない。転嫁できなくても転嫁したものとみなして払わなければならない。余りに過酷な税金だという訴えであります。

 第二は、今消費税が増税されればさらに景気が悪くなる。いよいよ利益が出なくなる。いよいよ仕事がなくなる。このデフレ下で販売価格に転嫁する、つまり消費増税分を上乗せすることなど到底できない。にもかかわらず、払う消費税は二倍になる。もう商売は成り立たないという訴えであります。

 文京区で創業百年を迎える老舗の豆腐製造販売店の店主さんからは、こういう訴えがありました。若い店主さんが御両親と二人の従業員とともに懸命に店を切り盛りされています。昨年一年間の売上高は二千九百万円、約百万円の赤字となりました。にもかかわらず、消費税の納税額は四十一万円に上ります。赤字を補填しながら消費税を払うために、家族の保険を解約せざるを得なかった。両親への給料は支払えていない。消費税が一〇%になったら二倍の八十万円を支払わなければならない。しかし、日本経済のデフレが続く中で、主力商品の木綿豆腐や絹豆腐、油揚げに増税分を転嫁することは非常に難しい。とても転嫁は考えられない。こういう訴えです。

 もうお一方は、大田区で工業部品加工の町工場を営む社長さんの訴えです。社長さんと従業員一人、息子さん、パート、四人の経営です。昨年一年間の売上高は六千三百万円、約百六十万円の赤字になりました。にもかかわらず、消費税の納税額は九十一・四万円になる。どうしているかとお聞きしましたところ、社長さんが自分の給与を充て無収入になりながら、さらに預金を取り崩して何とか赤字を補填し、消費税を払っているというんですね。

 元請の大手メーカーとの関係では、消費税を下請の単価に上乗せできるどころか、逆に、消費税を口実に下請単価が切り下げられてきた。一九八九年の消費税導入のときには、小売価格への転嫁を避けたい大手メーカーによって、増税分の三%の下請単価の値下げを強要された。消費税が五%に上がったら、さらに下請単価の値下げを迫られた。消費税を転嫁どころか、下請単価が一層切り下げられてきた。

 こういう状況にかかわらず、売り上げに応じて消費税の納税が迫られる。一〇%に増税されたら、景気はいよいよ悪くなり、いよいよ仕事がなくなる。今でさえ廃業が相次いでいるのに、東京から町工場がなくなってしまうとの訴えであります。

 総理、雇用の七割を支える中小企業の七三%は赤字なんですよ。一生懸命利益を上げようとして頑張っているわけですけれども、赤字なんです。黒字の企業も、利益はごくわずかです。今でも多くの中小企業は消費税を転嫁できず、身銭を切って払うしかありません。身銭を切るというのは、保険を解約し、なけなしの預金をおろし、両親や自分の給料を犠牲にして消費税を納めるということですよ。人件費だけは何とか守ろうとしたけれども、泣く泣く削らざるを得なくなったという話もたくさん伺いました。

 これが実態なんです。これらは決して特別な事例じゃありません。圧倒的多数の中小企業が置かれた実態です。

 総理に伺いたいんですが、こういう現状のもとで大増税をかぶせて、日本経済を支える中小企業が持ちこたえられるとお思いでしょうか。

枝野国務大臣 御指摘のような中小企業を取り巻く厳しい状況、これは、消費税のいかんにかかわらず、現状において、必要なコストすら価格に乗せられずに下請等の仕事をさせられる。こういった企業取引のアンバランスというか不公正な状況が解決されなければ、いずれにしても中小企業の経営を圧迫することになっていくというふうに思っております。

 下請代金支払遅延等防止法などのこうしたことを防ぐ法律がありますが、公正取引委員会は大変いろいろな仕事を抱えていますけれども、今最優先で取り組んでもらわなきゃならないのは、この下請代金支払遅延等防止法によってしっかりと中小企業、下請企業等、取引の中で不公正な取引を余儀なくされないよう大変厳しく、しかも、極端に言えば、公正取引委員会の持っているエネルギーを全てそこに注いでもいいぐらいの、そもそも消費税いかんにかかわらずという状況であるというふうに思っておりまして、これは公正取引委員会に対して強く求めてまいります。

 また、価格の転嫁等をしっかりと行って、中小企業等がみずからかぶることがなくて済むように、今回決定しました政府・与党一体の素案においてもそのための取り組みの具体的な内容を既に提示しているところでございまして、こうしたことを徹底していくことによって、中小企業の皆さんが転嫁できないという状況を防いでまいりたいと思っております。

志位委員 下請に対する大手メーカーのいわば下請いじめの問題は、私、二年前にこの国会で取り上げました。しかし、ほとんど是正されないわけですよ。是正例が一件とか、下請切りについては是正例が一つもない。無法状態がずっと続いているんです。

 ですから、この問題は、しっかりやると言ったけれども、しっかりやらなきゃならないけれども、その問題をやったとしても転嫁できない実態があるんですよ。そこに消費税の大増税をやって持ちこたえられるかどうか聞いたんです。総理、答えてください。今度は総理。

野田内閣総理大臣 今の御指摘の、特にこういう調査結果というのはしっかり受けとめなきゃいけないと思います。

 消費税を引き上げる際というか、今の五%でもこれをきちっと転嫁できるようにするということは大事なことだというふうに思います。五%だろうが一〇%だろうが、円滑にきちっと転嫁できるようなそういう仕組みと努力をしていくということを、政府を挙げてやっていかなければいけないと思います。

 なぜならば、こうした消費税は百数十カ国、世界でやっています。日本の五%というのは、世界の中で一番率は低いんです。三カ国ぐらいしかありません。その中でもきちっと転嫁できないとするなら、これは問題なんです。消費税そのものよりも、転嫁できなくなっているいろいろな文化を含めての仕組み、それは直していかなければいけないというふうに思います。

志位委員 円滑な転嫁のための取り組みだと言いましたけれども、そういうことをずっと言い続けて二十三年間、転嫁できないという事実があるんです。そして、この問題について、景気にどういう影響を与えるかについて聞いたのに、それについては答えがない。それに対する認識がないまま増税に突っ込んだら、もっとひどいことに、橋本さんの二の舞になっていきますよ。

 この問題については、石沢義文全国商工会連合会会長は、毎日新聞のインタビューで次のように述べておられます。「(消費税)五%分もの負担がしわ寄せされれば、中小企業の利益は吹き飛ぶ。廃業が増え、国や地方の税収も逆に減るのではないか。中小事業主は消防団や祭りなど地域活動の担い手でもあり、地域の崩壊すら招きかねないと懸念している。」

 あるいは、全国中小企業団体中央会は、消費が冷え込み、雇用の七割を担う中小企業に大きな負担がのしかかり、景気回復の動きをとめる、安易に消費税を引き上げないこととの態度表明をしています。

 日本チェーンストア協会も、さらなる消費の低迷や景気の低迷を招く、安易に増税に走ることに反対する。これはみんな、中小企業団体そろって、政治的立場の違いを超えて、そういうことになるということを懸念しているということをしっかり受けとめていただきたい。

 私は、世界経済危機のもとで、もはや外需頼みの経済成長は不可能だと考えます。日本経済を健全な成長の軌道に乗せようとすれば、外需頼みから内需主導の経済成長へと転換を図らなければならない。内需主導というときに頼みの綱となるのは、内需の六割を占める家計消費、そして雇用の七割を支える中小企業です。家計消費と中小企業、この二つが頼みの綱なんです。消費税の大増税は、その両方に破壊的な影響を与えることになる。

 私は、日本経済を破綻に追い込み、結局はそれは財政破綻もひどくすると思います。日本共産党は、暮らしも、経済も、財政も壊す消費税大増税には断固反対だということを申し添えておきたいと思います。

 それでは、どうやって社会保障充実と財政危機打開を進めるか。

 日本共産党は先日、社会保障充実と財政危機打開のための提言を発表いたしまして、政治の根本姿勢を変えれば、消費税に頼ることなしに展望が開けてくることをまとめてお示しいたしました。

 そこで提案した財源論は、まず無駄遣いを一掃する。そして、増税をするならまず富裕層と大企業にこそ応分の負担をということであります。八ツ場ダムに象徴される浪費型の巨大開発、原発推進予算、米軍への思いやり予算など軍事費、そして三百二十億円の政党助成金など、無駄遣いを聖域なく一掃するとともに、富裕層、大企業優遇の不公正税制を正し、応分の負担を求める。

 さらに、次の段階で、社会保障を抜本的に拡充するための財源は、国民全体で、力に応じて支える。すなわち、累進課税を強化する所得税の税制改革を行う。

 これらの改革によって、消費税に頼らなくても十八兆円から二十一兆円の財源をつくることができ、社会保障の充実と財政危機打開の道が開かれるという提言ですが、総理に我が党の提言をお渡ししたいと思いますが、委員長、よろしいでしょうか。

中井委員長 どうぞ。理事会で既に了解いたしております。

志位委員 政府として真剣に検討していただきたいと思います。

 きょうは、私たちの提言にかかわって、二つの点に絞って、残りの時間、聞きたいと思います。

 一つは、富裕層への課税の問題です。

 パネルをごらんください。これは、国税庁の申告納税者の統計から、申告所得階層別の所得税負担率をグラフにしたものです。

 驚くべきことに、所得が一億円を超えますと、逆に負担率が下がってしまいます。これは、所得税の最高税率が引き下げられた上に、証券取引や土地取引による所得は分離課税とされ、税率が低くなっているからであります。特に証券優遇税制、株の取引や配当にかかる税金が、本来二〇%のところを一〇%に減税され続けている。証券税制というのは欧米では大体三〇%です。日本の一〇%というのは、余りに異常きわまる低い水準というほかないものです。

 それなのに、総理は、税率一〇%という証券優遇税制を二年間延長することを決めました。二年間延長で約一兆円のばらまきですよ。私が代表質問で、なぜ延長したのかとただしますと、総理は景気回復に万全を期すためだと答弁されました。

 総理に伺いたい。

 証券優遇税制を延長することが景気とどうして関係するんですか。景気とは全く無関係じゃないですか。これは総理、自分の答弁ですから、答えてください。

野田内閣総理大臣 いわゆる景気への影響の言及をさせていただきましたけれども、証券・金融業界がしっかりとこういう景気の中で機能するように、そして、そのマーケットが機能するように、そういう意味で申し上げましたが、御指摘のこの水準、いわゆる所得税負担率というのは、そういう傾向があるというふうに私も思います。

 したがって、経済金融情勢が急変しない限りにおきましては、平成二十六年の一月から着実に本則税率に戻したい、二〇%に戻す、そういうことにしたいというふうに考えております。

志位委員 戻す戻すと言いながら、何度も延長され続けてきたのが証券優遇税制なんですね。今、どうして景気と関係するのか、全くお答えになれないじゃないですか。

 ここに、世界で最も有名な投資家と言われ、私たち富裕層に課税強化をと訴えておられるウォーレン・バフェット氏がニューヨーク・タイムズで述べている文章を持ってまいりました。そこで彼はこう言っております。私は六十年も投資家たちと仕事をしてきたが、一九七六年、七七年にキャピタルゲインの税率が三九・九%だったときでさえ、税率を理由として投資から遠ざかる人を見たことはない。六十年間、一人も見たことない。人々はもうけるために投資する。税が投資を怖がらせることはなかった。

 私は株をやっていませんけれども、税率と投資は関係ないと、この投資の一番の専門家が言っているわけですね。証券優遇税制というのは景気とは何の関係もない。こんなところに一兆円もばらまくというのは本当に許されないことであって、今からでもすぐ二〇%の本則に戻すとともに、高額の株取引、配当は欧米並みの三〇%にすることを私たちは求めるものです。

 それから、政府が進めようとしている所得税の最高税率の五%、これをやったとしても、この赤の折れ線グラフぐらいにしかならないんですよ。焼け石に水なんです。ですから、私たちは、所得税、住民税は最高税率を九八年の水準六五%に、そして相続税は七〇%に戻すべきだ。さらに、高額の株や不動産など資産に課税する富裕税、相続税対象額で五億円を超える資産に対して一%から三%の累進課税を行うことを新たに提案したいと思いますので、検討をお願いしたいと思っております。

 その上で、もう一点。

 政府が消費税大増税を打ち出す一方で、なぜ来年度から法人税を一・四兆円も減税するのか。今、中小企業は七三%が赤字ですから、法人税減額分の大部分は大企業への恩恵となります。

 この問題、私が本会議でただしたのに対して、総理は、雇用や国内投資の拡大を図る観点から実施するというふうにお答えになりました。しかし、どうして法人税の引き下げが雇用や国内投資につながるのか、端的にお答え願いたい、総理。

安住国務大臣 まず、今六段階である所得税につきましては、委員長からも御指摘がありましたけれども、これは五%、最高税率を四〇から四五に引き上げるということで、やはり少し累進性をもう一回考えようということで今やっております。

 それから、証券優遇税制については、総理も明確にお話がありましたけれども、これは二十六年で今の一〇%は見直す、つまり本則に戻すということを我が党としては基本方針に盛っております。

 中小企業のことをずっと先ほどから委員長はおっしゃっていましたが、実は大企業の法人税率の引き下げと同時に、中小企業の法人税率も引き下げております。ですから、これは大企業を優先だという言葉は私は当たらないと思うんです。

 同時に、働いている月給取りの皆さん、サラリーマンの皆さんは、中小企業でも大企業でも、本当にそういう点では区別なくというか、やはり企業体というものが存在して初めてお給料をいただいたりボーナスをいただく、そういう構図ですから、日本は何か大きな資本家がいて、その人たちの利得のために企業があるというふうな企業の方がむしろ少なくて、サラリーマンがみんなで頑張って日本の企業というのは支えていますので、そういう点では、減税をするというのは、国際社会の中での競争力ということが一番大きな問題であったということでございます。

野田内閣総理大臣 今般の法人税の実効税率の引き下げというのは、さまざまな御要請もありました。要請というのは、企業の国際競争力を考えたとき、やはりグローバルなスタンダードから見ればもっと下げてもいいのではないかという観点で、その意味では産業の空洞化に歯どめをかけるという観点がありました、あるいは外国からの企業に入ってもらおうという観点もありました。

 そうして、今委員が御指摘があったとおり、私どもとしては、設備投資であるとか雇用吸収に資する、キャッシュフローがふえるという分、法人が投資やあるいは雇用につなげていくという可能性に大いに期待をしているところでございます。

志位委員 まず、中小企業にもというふうにおっしゃられましたけれども、多くは赤字なんですよ、七三%が。ですから、法人税の減税の恩恵にまず浴さないわけですね、中小企業の多くは。そして、利益のある中小企業でも、平均の利益率というのは非常に薄いです。ですから、この法人税減税という問題は本当に大企業を主に優遇する措置だということを言っておきたい。

 その上で、私が聞いたのは、総理、何で法人税を減税すると雇用や国内投資につながるのかということを聞いたんですよ。それに対するお答えがない。

 一つ見ていただきたいんですけれども、これは経済産業省が国内企業を対象に行っている海外事業活動基本調査です。企業の投資決定のポイント、すなわち企業が投資先を決定する場合に何を考慮するかについての調査結果です。

 これを見ていただきたいんですが、第一位は、断トツで、現地の製品需要が旺盛または今後見込まれる、六八・一%です。税制融資等の優遇措置があると答えたのは六番目、わずかに一〇・六%ですよ。つまり、企業が投資先を選ぶ場合に何よりも重視するのは、そこに需要があるかどうかなんです。需要があるところに投資するんですよ。税金の問題というのは、ごくわずかの要因でしかない。

 このときに消費税増税をやったらどうなるか。ただでさえ落ち込んでいる内需をさらに落ち込ませる。それは、国内投資をさらに減らし、産業空洞化、雇用減をさらに深刻にし、それが一層の内需の落ち込みにつながります。そういう内需減少と産業空洞化の悪循環の引き金を引くのが、消費税の大増税だ。それと一体に大企業の減税をやったところで、雇用にも国内投資の拡大にもつながりません。

 大企業減税には一かけらの道理もありません。私は、大企業への新たな減税のばらまきは中止し、研究開発減税、連結納税制度など、大企業向け優遇税制を見直すことを強く求めます。

 これで終わりにしますが、政治の姿勢を変えれば、消費税に頼らなくても、社会保障拡充と財政再建の道は開かれる。消費税大増税でなく、まず無駄遣いを聖域なく一掃する、そして増税というならまず富裕層と大企業に応分の負担を、これこそが問題解決の道であることを主張し、私の質問を終わります。

中井委員長 これにて志位君の質疑は終了いたしました。

 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 冒頭、予告をしておりませんが、委員長にお願い兼、小宮山厚生労働大臣に伺います。

 午前中の最後の鴨下委員との質疑を聞いておりまして、今、基礎的な暮らしにも事欠くようないわゆる低年金の皆さんに、何とか暮らしが成り立つように政府としても方策を考えたい、ただ、その場合に、少しゆとりのある方の既存の年金から、何か、足りない方々に移転するやの検討を今しているような御発言でありました。

 私は、それをテレビで聞いておられると、やはり年金制度というのは、国民が納得して、今までの制度から次に変わるときもそうですけれども、今あるものを動かすときというのは、極めて慎重に、なおかつ国民の声を聞いて納得と合意でやらないと、政権が政権の中だけで論じて、法案を出すのはもちろん政府の役割ですけれども、やはり国民に向けたきちんとしたメッセージがないと、おかしくなってしまう。納得されないと続かないと思うんです。

 そこで、小宮山大臣には、先ほど民主党内でそうした案を検討しておられるようにおっしゃいましたが、私は、それは当然、こうしたみんなの議論の場、政党間協議というよりも、やはりきちんと委員会等々でお考えを示されて、大きく言えば、保険料方式なのか税なのかというのもすごく重要なテーマです。それを国民に説明した上での選択でないと過ちが起こると思いますので、小宮山大臣には必ずこういう場面できちんと御説明をしていただきたい。

 なおかつ、委員長には、集中審議等で、大臣は極めて重要なことをおっしゃったと思うんですね、これが国民にオープンな場で伝わるような機会を設けていただきたいと思いますが、まず、大臣、いかがでしょう。

小宮山国務大臣 それは委員がおっしゃるとおり、国民の皆様に御理解いただかないと制度の変更というのはできないと思っています。

 ですから、これから法案も提出させていただきますので、しっかりと議論をし、御理解いただく場を設けたいと思いますし、今、政府の方でも、今回の改革のキャラバンを組んで、全国でもいろいろお話をするようにしたいと思っておりますので、説明は丁寧にさせていただきたいと思います。

 ちょっと、午前中に説明が少し足りなかったとすれば、基礎年金の税で入れている部分で、一定の年収以上の方には徐々にそこを一時とめさせていただくというようなことを申し上げたんですが、基本的には、二・七兆円の中から財源のかなりの部分は出します。ただ、それだけではなかなか十分にできないので、一部そういう形で御負担をいただきたいということを考えていますので、それは丁寧に御説明をして、御理解をいただきたいと思っています。

中井委員長 私にお尋ねでございましたので。

 理事会でもう既に議題にも上がっておりますので、これから集中審議の日程等、十分詰めていきたいと思っています。

 それから、きょう、何かこの間から問題になりました、民主党の一年ぐらい前の資料について、きょう初めて党内で配って、説明があったやに聞いております。これから、こういう資料についても、岡田担当大臣に督促をいたしまして、積極的に提出をさせていただく、こういうことをしていきたいと考えていますので、岡田さんから一言、約束をもらいます。

岡田国務大臣 私もまだ聞いている段階ですが、党としてこれは正式にオーソライズしたものではございませんが、御指摘の資料について、きょう公表すると聞いております。その後、各党にも、党の方で説明もするやに聞いておりますので、当然この委員会にも、そういった性格のものとして提出をさせていただきたいと思います。

阿部委員 国民にとって一番迷惑なのは、何がどこで論じられているかということが見えないで、そしてまた、きょうの御質疑で一番思いましたのは、小宮山大臣のきょうの御説明は、去年までのことでは全く触れておられなかった部分なんですね。それが突然出てくる。あるいは、今の岡田さんのお話も、政府内ですら十分に共有していない情報だというお話でありましたので、そうやっててんでんばらばらに言われても、国民は理解できるどころか本当にもう不信になってまいりますから、これは政権としてぜひお気をつけいただきたい。

 何度も申しますが、こういう場でしっかりと、例えば図式をして、さっき、五%上げた中で、もう既に、今少し余裕のある年金の方から足りない年金の方に移行するやの言い方ですが、これはもう重大事ですから、きちんとそういうものを具体的に示して、論議をしていただきたいと思います。

 では、本来の質問に移らせていただきます。

 私はきょう、昨年の十二月十六日、野田総理が福島原発の収束宣言というものをなさいましたが、いや、これは収束という言葉に似つかわしいのかなと思うことがここのところずっと続いております。

 お手元のパネルを見ていただきますと、一番何が起こったのかわからない二号炉というものの温度が上がってまいりました。水を上から下からかけて冷やしているだけですから、上がってきたから水をふやしました。

 あるいはまた、周辺に放出する放射能の量をはかりますと、去年の十二月とことしの一月で〇・一億ベクレル・パー・アワーと、上がってまいりました、去年の集計は〇・六、一カ月、ことしは〇・七と。そうすると、それが原子炉から出てきているものであるのかないのかは、実は検証はされません、外から上がっているなということはわかりますが。あるいは、福島市でも時折高い放射能が測定されるとか。

 さらには、この間、最も深刻なのは、寒い冬ですので、さまざまな配管、管が凍結して漏れが起こる、あるいはタンクの漏れが起こる。この三つを書いてございます。

 そうすると、十分に安定的に冷やせているのかな、放射能はばらまかれていないのかな、このままずっと冷やし続ければ、その水は漏れて海に行くんじゃないかなと。

 これは、いずれも、決して収束宣言として、私は、今一生懸命働いて、冷やして、頑張ってくださっている皆さんの御苦労は本当に多とします。ありがたいとも思います。御自身が被曝の犠牲を背負いながらやってくださっていることに感謝はしています。でも、これをもって収束宣言とされるには、やはりちょっと言葉が走り過ぎていると思います。

 例えば、チェルノブイリでは、石棺、石に埋めるまでに七カ月、ここで、収束宣言などはしませんでしたけれども、一応冷温停止状態。スリーマイルにおいては、循環系で冷やし始めて一カ月、この水をとめたとき、九カ月目に冷温停止という宣言に一応なっております。

 今まだ我が国は、水はかけっ放し、かけなきゃ冷えない。その水はどこに行くのか。一番深刻な海の問題をこの次やりますが、私は、収束宣言というのを前のめって言うよりも、みんなの努力は多としながら、総理は時のリーダーですから、今起きていることにも目配りしながら、同時にやっていくというふうに言われた方がいいのではないでしょうか。いかがでしょう、総理に。

中井委員長 まず最初に、事実確認をいたします。原発事故の収束及び再発防止担当大臣細野豪志君。

細野国務大臣 さまざまな面で、依然として御心配をおかけしているということに関しては、特に福島の皆さん、さらには心配されている国民の皆さんにおわびをしなければならないというふうに思っております。

 ただ一方で、今回の原発事故そのものがどういった事象だったのか、そして何をもって事故そのもののオンサイトについては収束をしたのかということについては、若干御説明をさせていただきたいというふうに思っております。

 今回の事故は、原子炉そのものに対してのさまざまな制御がなかなかできないところまで一度いって、例えば、例として挙げていただいた原子炉の温度であれば、はるかに高い温度で、なかなかそれが下がらないところからスタートをいたしました。さらには、放射性物質の放出というのも、〇・一上がったということでお話をいただきましたけれども、ピークのときと比べると千三百万分の一まで下がっておるんです。ですから、そういう状態の中で、それこそ冷却機能がとまって、もう再び避難をしていただく必要がないということで、事故としては収束をしたということを申し上げたんです。

 ただ、廃炉まで三十年、四十年かかります。できるだけトラブルは少なくしていきたいというふうに思っておりますが、小さなトラブルはこれからも起こる可能性があります。それにしっかり対応し得るような体制が整ったということで、廃炉に向かって、今、現場も努力をしているし、政府としても取り組んでいるということでございます。

阿部委員 再び周辺住民が避難しなくていいような状態であることを私も何よりも願っています。今私の、よく聞いていただけたらいいと思うんですけれども、水をかけなきゃとめていられない。この水が海に出続けているわけです、行き場がない。もちろん、きれいに浄化もいたします。浄化はしているのも知っています。だけれども、やはり漏れているのではないかということは、これからの検証なんです。そこは、細野さん、この次に私が紹介することで、きちんと受けとめていただきたい。

 これは、東京湾の汚染であります。皆さんは、東京湾というと福島と遠いじゃないの、一体何のこととおっしゃるかもしれませんが、東京湾の荒川と江戸川の河口の部分で、海の底にたまった汚泥の部分というか海の土の部分で、A、B、C、D、四点はかってございますが、下に小さなグラフで、大体四百ベクレル・パー・キログラムというものがここに積もっております。

 細野さん、四百ベクレル・パー・キログラムというのはどのあたりで計測されている値と同じかというと、福島の原発の二十キロあたりの海の土であります。二十キロ圏内は、例えばカレイにすると四千八百ベクレルとか、非常に高いです。でも、既にこの二十キロ圏内の外の部分でも十分高いです。三百八十ベクレルくらいの、海の土、泥の濃度です。それと同じものが東京湾にも見られるということなんですね。

 それで、海にどのくらいの放出があるかは、実は、海の、原発のすぐ近くのサイトは東京電力、そのちょっと外は文部科学省がやっておられたんですけれども、今日までここまで詳しいデータがわかりませんでした。

 私は、何も、東京湾に来たのが、すぐ、今漏れ出た原発からのものであるとは言ってはいません。だけれども、絶えずじわじわ少しずつでも出続ければ、今回の事故の特徴は、非常に細かい粒子が散り、それが動き、いろいろなところで問題を起こすということで、これは関東圏というか首都圏に来た、川のものが集まったものであります。そうなると、今回の事故が極めて深刻であらねばならないのは、細かい粒子が飛散していて、それが、持続的でもじわじわでも、たくさんの量、一挙に出なかったとしても、集積していくということを考えねばならないんです。

 私は、その意味で、文部科学大臣にお伺いいたしますが、これからますますモニタリングの体制、湖もそうです、底にたまります。それから海も、例えば銚子沖でも高い日と低い日があって、それは下の土が舞うからです。そういうものを丹念に追っていかないと、果たして本当に放出がどのように軽減されていくのかわからないのです。

 大きな放出がないことは望みますし、そうあってほしいです。と同時に、もしかして、じわりじわりと放出し続ける、あるいは出たものが動いて、そこで例えば食品に入る。先ほど私が申しましたカレイとかあるいは底魚、底に生きる魚たちはみんな高くなってきております。極めて厳密なモニタリング体制が必要と思いますが、今後、細野さんの原子力規制庁にモニタリングは移るようです。どのように今までを総括されてバトンタッチしますか。

平野(博)国務大臣 阿部先生の御質問にお答えをいたします。

 御指摘の点につきましては、今までそれぞれの役所におきまして、それぞれの得意分野においてのモニタリングということはやってきたところでございますし、また、細野大臣のもとにそれぞれの役所が寄りまして、モニタリング調整会議、すなわち、できるだけ情報を一元化して対応しよう、こういうことで今日まで進めてきたところでございます。

 しかし、先生御指摘あるようなことも含めて、これからは総合モニタリング計画ということで、よりきめ細かな調査、モニタリングをしていかなきゃならない、こういうことで、各自治体とも十分連携をとって、これから環境省の細野大臣の方に司令塔を一元化しながらきめ細かく進めていきたい、こういうことでございます。

細野国務大臣 これは世界に対しても説明する責任がありますので、きっちり御説明をしたいと思いまして出てまいりました。

 まず一つは、現在の外部に出ている放射性物質の問題なんですけれども、限界的な出ている量ということでいうならば、例えば敷地境界で一ミリシーベルト・パー・年をかなり大きく下回っておりますので、そういった意味では、外部の放出という意味では極めて限定されるようになっています。

 私にとりましては、去年の四月ごろ、海に放射性物質を含んだ水が流れ出てしまったというのは本当に痛恨の記憶でございまして、それ以来、とにかく水の問題というものに対してはこだわってまいりました。したがって、先ほど平野大臣が御紹介いただきましたけれども、五月ごろからさまざまなモニタリング調整会議をやって、閣僚になりましてから調整会議ということで正式な会議を続けてまいりました。

 御指摘のとおり、過去に出た、三月から四月にかけて出た放射性物質が今いろいろな挙動をしておりまして、思わぬところにたまっているというのがどうもありそうであります。ですから、そこも含めて、この調整会議でもう一度網を広げて、水はもちろんですが、海底や湖底にもそういうものがあるかもしれない、場合によってはいろいろなところに影響を及ぼす可能性がありますから、そこはしっかりとモニタリングをやって、国民の皆さんに全ての情報をお知らせしたいというふうに思います。

 ただ、現在、海に垂れ流しているとか、空中にそれこそ放射性物質が拡散をされているという状況ではないということは、ぜひ御理解をいただきたいと思います。

阿部委員 それは量と程度の問題というのもあると思います。何度も私も、大量に出ているわけではないと申しました。また、このものの動態というのは、これから先、濃縮したりしてさまざまに影響を及ぼします。だから、私は、収束宣言と言うべきではないことのたちだと言っているんです。ばんと爆発する、それだけが問題ではないのだということですね。

 一生懸命冷やしている側から見れば、言いたいお気持ちはよくわかります。しかし、暮らしの側、国民の側、命の側、環境の側からすれば、これから今の汚染よりさらに上がると言われています。二年から二年半後にはもっと集積したり、たまりやすいところでは上がるんです。それが植物系に来るんです。そういうことを抱えて国民は暮らすんです。そこのひだの差、心のひだの差を受けとめないと、収束宣言と言われても響かないんです。今一生懸命頑張っているという皆さんは認めます。だけれども、何を伝えるべきかということにおいて、そんな宣言をしている場合じゃないと私が冒頭申し上げました。

 次ですけれども、これは枝野さんにお伺いいたしたいですが、せんだって、参議院での私どもの吉田忠智の質問において、いわゆる災害対策本部でなぜそのときの議事録をとっていなかったのかということをお尋ねし、実は、防災本部のマニュアルには、メモをとることというのが書いてあるんですね、当たり前過ぎるほど当たり前ですけれども。枝野さんは、マニュアルに書いてあることを御存じだったか。そして、私がそのマニュアルを読むと、ここにも御紹介しましたが、総括班のところのマニュアルに、災害のときの議事録をとると出ているんですね。

 あともう一つ、時間がないので一緒にやりますが、SPEEDIについても、放射線班というところが文部科学省からのデータを受けるとマニュアルに書いてあるんですね。放射能を文科省が幾らSPEEDIではかったって、文科省は送りましたと言っているけれども、住民には届かなかったんですよ。もし彼らがマニュアルどおりにやれば、事は違っていたはずであります。

 枝野さんにはぜひ、これはメンバーは誰かというのもわかっているんです、名前も私は聞きました。あなたがやらねばならないことは、その一人一人に、なぜメモをとらなかったの、どうしてなのということを確認していただきたい。その同じ人たちが今でもメンバーなんですよ。今また起これば同じになるかもしれません。

 SPEEDIの問題でもそうですけれども、このSPEEDIの担当者になられた方は、かつては総括班におられて、今、何と、大飯原発の再稼働の原子力安全をつかさどる人なんですね。枝野さんが、きちんとその担当の役人の一人一人にどうしたことかと聞いていただいて、組織体制を見直さないと、とてもとても安心、安全どころでないと思いますが、いかがでしょう。

枝野国務大臣 まず、議事概要をとっていなかった件についてでございます。

 御指摘のとおり、マニュアルに議事概要等についての記載があります。それについて、にもかかわらず、議事概要を正式にはつくっていなかったということは、大変申しわけなく思っております。

 当時の担当者からも話を聞きましたが、御承知のとおり、今回の事故が、オフサイトセンターが機能しないなど、マニュアルで想定していた規模を大きく超えたものでありまして、そうしたことの中でこうした確認がしっかりと行われなかったという話は聞いているところでございます。

 これについては、私自身、その図のとおり、経済産業大臣としてはその当時違いますので、この議事録の問題のラインではありませんが、官房長官でございましたので、直接のラインではないにしても若干のかかわりがあるという立場でございますので、むしろ岡田副総理のもとで、今回の議事内容の記録が未作成であった事案について、原因を分析し、再発防止を検討されると承知をしておりますので、これを踏まえて対応をしてまいりたいというふうに思っております。

 一方、SPEEDIにつきましても、経済産業省としては、当時の放射線班の担当者を含め関係者から話を聞き、その原因解明を公表してきているところでございます。これについては、私、多分議事録以上に当事者でもございますので、むしろ、私がさらに調査をするというよりも、政府の事故調もございますし、国会の事故調でも恐らく調査をされるというふうに思いますので、そうしたことの中で、より詳細な原因の分析をしていただくのが適切ではないかと思っております。

阿部委員 今の枝野さんの認識で、一つきっと勘違いがあると思うんですけれども、災害対策本部の中に、オフサイトセンター担当とこの総括班とあるんですね。私が今問題にしたのは、総括班で議事録をとる。だから、オフサイトセンターがないからとか云々じゃなくて、総括班は総括班でとらねばいけないということなのです。

 こうしたことが起こる都度、では、後から見直しの検証委員会ですと。もちろん、それはやるなとは言いませんよ。沖縄の防衛局長の問題もそうですよ。訓令を出しておいて、訓令でやったのに議事録もないんですから。みんなおかしなことばかりですよ。でも、やはりその役所の元締め、すなわち政治家の経済産業担当大臣が、みずから自分の部下をきちんとチェックして、自分の意を伝え、本当に国民のためにやってもらうようにしなければ、いつもいつも、よそ任せ、外任せでは、こんな部門は私はやり切れない。

 同じ人がまた、さっき言いました大飯原発の中で安全担当なんですよ。私は、その個人を批判するつもりで言っているのではないのです。そういう構造をとっているんです。非常に微妙な組織の問題なんだと思いますね。今だってこの総括班は同じ人たちですよ、あのときメモをとれなかった人たち。自分ですよ。同じ体制ですよ。

 枝野さん、おとといかな、うちの党首との、福島とのやりとりで言いましたね。今再稼働云々じゃなくても、動いている原発があるということは、いつだって事故はあり得るんですよ。そのときの、今の体制も含めて、あなたはコントロールしなきゃいけないお立場なのであります、同じ人が同じように続いているのだから。

 このことを私はぜひ枝野さんにお願いをしたいと思いますし、安易な再稼働の前に組織体制を見直していただきたい。そのために事故調もやっているわけだし、黒川さんも言っていましたよね、事故調の報告を待たない前に勝手に内閣で、政権で次の仕組みを決めたり、おかしいじゃないかと。本当に国民は、それでは納得できないと思います。

枝野国務大臣 まさに最後のお尋ねともかかわりますが、原子力発電所は、稼働している稼働していないにかかわらず、大変ハイレベルの安全性を常に維持していかなければならないという状況にあります。それについて、原子力規制庁が発足するまでの間は、原子力安全・保安院において責任を持ってやっていかなきゃならない。

 それに当たって、少なくとも三・一一以前のいろいろな対応について、さまざまな問題が御指摘をされている。御批判を受けているのは、そもそも資源エネルギー庁と一緒であることを含めて御批判をいただいている。

 そのことは、組織を大きく変えるということで対応すると同時に、三・一一以降の、今の議事録の問題も含めて、もちろん問題が少なからずあったということもしっかりと踏まえて、ただ、そうしたことの中で、しっかりと安全性を確認する、確保するという役割について、特に三・一一の反省をしっかりと踏まえて仕事をしている。

 あるいは、それが実際に、意識だけではなくて、中身も含めてなっているのかということについては、規制庁ができるまで私の責任でございますので、そうした意味では、今御指摘をいただいた役職にあった者も含めて、しっかりと意識が変わっているのかどうか、そして、それに応じてきちっとした仕事をしているのかどうか、これは私の責任でしっかりと対応させてまいります。

阿部委員 では、最後の質問をお願いいたします。

 今回こうした事故が起きまして、原子力関係予算と、そして国民の多くが願っている、もっと安心で安全な、そして地域で自分たちが決めていけるエネルギーの選び方、すなわち再生可能エネルギーについて、今回の予算がどのような形になっているかを見てみました。

 原子力関係予算として言われているものは毎年四千億少々で、これはほぼ変わらず、プラス除染などの措置が加わっているために、こちらは結果的に倍増しております。一方、再生可能エネルギー関係は、これは項目だけですけれども、太陽光発電、風力、地熱云々、全部合わせて八百三十二。ただ、ここには拾い切れていないものがありますから、もう少し幅はあると思います。

 私は、この数値の差を見ても、さっき枝野さんは、北海道で風力をもっとふやすために配電網、送電の仕組みの中に何らかの補助のようなこともおっしゃいました。それも重要です。でも、もっと大胆に投資を呼び込むような、そしてもちろんお金も予算もつけるようなことのために、ぜひ、再生可能エネルギーの同意人事、去年から行き詰まっております。同意人事、政府にあっては早急にお出しいただきたい。出し直していただきたい。もう二月です。七月からやれません。いかがですか。

枝野国務大臣 委員のことにつきましては、できるだけ早く提示をできるように努力をしているところでございます。ぜひ、提示がされましたら、速やかに国会で対応していただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

阿部委員 もう一問ありますが、時間ですので終わらせていただきます。ありがとうございました。

中井委員長 これにて阿部さんの質疑は終了いたしました。

 次に、浅尾慶一郎君。

浅尾委員 みんなの党の浅尾慶一郎です。

 きょうは、きょうもと言った方がいいかもしれません、社会保障の問題について中心的にお話をさせていただきたいというふうに思いますが、たまたまきょう発売の月刊誌の文芸春秋に、私が書きました、年金制度改革あるいは社会保障改革によって、消費税増税と匹敵する、あるいはそれ以上の財源が出てくるという論文をお載せいたしました。ぜひ総理にも、年金とか医療、特に保険の部分というのは非常に複雑になっておりますので、大変お忙しいと思いますが、今そのコピーをお配りさせていただいておりますので、お時間のあるときに、そちらの方もお読みいただけると大変ありがたいというふうに思います。

 そのことを申し上げさせていただきまして、まずは、歳入庁をつくったら、これはいろいろな試算が出てくると思いますが、あらあら十二、三兆のお金ができますよということをこの間、提言させていただきました。それに対して、岡田副総理の答弁、あるいはその後のテレビでのコメントを見ておりますと、答弁ではこういうふうに言っておられます、「現実にどれだけ中小企業でそれにたえ得る企業があるのだろうか、そういうこともあわせ考えていかないと、机上の計算だけになってしまうのかな、」と。

 これは、実は先般の委員会でも申し上げましたけれども、法治国家としてはいかがなものか。つまりは、国民年金についてもさまざま未納の問題がありますが、これは、政府の立場からいえば、払ってください、企業の未加入に対しては加入してくださいということを呼びかけるべき立場でありまして、それが、払えないというのであれば、別途制度をつくるというのがあるべき立場だということだと思います。

 まず総理に、憲法が定めます法のもとの平等と、それから、現在多くの企業が、実際の法人数に対しては恐らく、恐らくというか間違いなく過半数、恐らく三分の二ぐらいが厚生年金に未加入であるという事実に基づいて、法のもとの平等と歳入庁の構想についてどういうふうに考えておられるか、総理に伺いたいと思います。

岡田国務大臣 前回、委員とはこの問題を議論させていただきました。

 いろいろな前提、仮定に立ってやっておられる話で、その後、私も少し調べさせていただいて、全体で十二兆円、厚生年金保険料、健康保険の保険料合わせて、それが未収だという委員の御指摘ですが、私は、それは相当過剰に計算されている、過大に計算されているというふうに考えております。そこのところを少し議論させていただきたいというふうに思っています。

浅尾委員 前回も申し上げましたが、私の試算は衆議院の調査室にやっていただいております。ですので、政府は政府として、こっちは立法府として、立法府の調査室にお願いした数字で十二兆ぐらいの数字が出てきておりますから、そういうふうにおっしゃるのであれば、政府が前提を置いて数字を出していただきたいと思います。まず、そのことを伺いたいと思います。

岡田国務大臣 委員の御指摘は、結局、国税庁の民間給与所得者五千三百八十八万人、これに対して厚生年金の被保険者三千四百二十五万人、二千万人少ないという前提に立って、これは統計上の数字でありますが、これらの方々が国民年金ではなくて厚生年金に被保険者として加入すれば、それだけで六兆円出てくる、こういう計算でございました。

 しかし、私、あのときにも少し申し上げたんですが、ではその差の人々ということですが、それが全部厚生年金に加入すべき人なんですかということを申し上げました。それはそうではないわけで、例えば、今議論になっていますが、週の労働時間が三十時間未満の短時間労働者、これは厚生年金に加入する義務はない。今、それを二十時間とかいろいろな議論を政府の中でもしておりますが、現時点で見ればそういうことであります。

 それから、従業員五人未満の個人事業主に対しては、そこで雇用される労働者の方も加入する必要はない。同じく、五人以上であっても、個人事業主の場合の厚生年金の適用除外業種、つまり、宿泊業でありますとか飲食サービス業、これだけで百十万人ぐらいいるというふうに言われていますが、ここも除外されるということでございます。

 ですから、人数のところだけでもそれだけの問題がありますので、単純にその二つの統計の間の差があるから、それが全て厚生年金に加入すべき人だということには無理があるというふうに思います。

浅尾委員 ですから、今、岡田さんが言われたことは私どももちゃんと計算しています。パート労働者の分を除去した数字というのもここに持っています。それは衆議院の調査室にやっていただきました。ですから、ここで細かい数字の議論をするというよりは、そういうふうにおっしゃるのであれば、政府の方で試算してくださいということを申し上げております。

 間違いない事実として申し上げれば、厚生年金を所管しております日本年金機構は、全国に加入すべき法人数が幾らあるか、いまだに数さえ持っていない。法人の数として国税庁が持っている数は、二百七十三万。厚生年金を所管している日本年金機構が持っている数というのは、百七十五万事業所。この間も申し上げましたけれども、事業所というのは支店その他もダブルカウントになりますから、八十万法人ぐらいしか加入していないんでしょうということになります。

 今るるおっしゃった数字というのを全部引いても、一番多く引いた段階で、対象となる人数で四千六百七十八万人ぐらいはいるだろう。それに対して、厚生年金の被保険者というのは三千四百六十四万人います。そこに標準報酬月額と、あるいは若干の、一カ月ぐらいのボーナスをつけていくと、さっき申し上げたような数字になります。

 ここでこういう議論をしても、見ておられる国民の方はおわかりにならないと思いますから、早急に、この試算は衆議院の調査室が出した試算ですから、後ほどよろしければお渡ししますから、政府の方でちゃんとした、試算に対しては試算で返していただきたいということを申し上げたいと思います。

 数字は答えなくて結構ですから、そういうおつもりがあるかどうか、お願いしたいと思います。

岡田国務大臣 試算に試算をもって返すというよりは、その試算についての問題点をきちんと指摘して、それが過大であるということを申し上げているわけです。

 ほかにも、先ほど言われた標準報酬月額も三十万、これは年収に直すと恐らく四百万以上ということで、かなり多い。つまり、短時間労働者の方がかなり入っていることを見ると、こんなに大きくはないはずだということも容易に考えられるわけで、あと、私立学校の教職員とか郵政会社の職員も含まれていないということですから、そういうことで、かなり過大に計算しておられるというふうに思います。

浅尾委員 繰り返しになりますけれども、先ほど申し上げたように、もともとの法人数に大きな差がある。法人数の差があるんだったら、法人数を持っていないのであるから、それに基づいて試算をしていただいたらどうですかということでありますし、あえて申し上げるとするならば、国民健康保険は国費負担五割ですよ、協会けんぽは一六・八%。その投入の税金の差もある。

 そういったようなこともあるので、ちゃんと試算をされたらいいのではないかということを申し上げて、その覚悟があるかどうかを伺ってもなかなか、では、あるというのなら、お答えください。

岡田国務大臣 もう一つ、これは私はよくわからないので教えていただきたいんですが、それをやれば消費税を上げなくて済む、こういうお話ですよね。

 ただ、もし議員のおっしゃることが全て過大でないとしても、それは厚生年金にとってのプラスあるいは健保にとってのプラスであって、そのことが直ちに国税ベースでのプラスにはならないわけであります。ですから、厚生年金は改善するかもしれない。あるいは、健保は改善するかもしれない。しかし、そのことが国費ベースで改善するということには必ずしもならないわけで、そういう意味でも、だから消費税を上げなくていいということには全くならないということは申し上げておきたいと思います。

浅尾委員 それは、お金に実は色がないわけでありまして、社会保障というのは保険料と税金で賄っているわけですから、保険料がふえることによって……(岡田国務大臣「違う」と呼ぶ)そういうことですよ。賦課方式ですからそういうわけでありまして、保険料と税金で賄っているのが今の年金の賦課方式ですから、保険料収入がふえるということは、その分、投入する税金額は少なくなるということです。

岡田国務大臣 それは少しむちゃな議論ではないでしょうか。つまり、健保以外に国保もあるわけです。ですから、健保は助かったとしても、国保はそれは関係ないわけですね。

 しかも、例えば、先ほどの年金の方も、厚生年金の収支はそれで改善するかもしれませんが、ほかの年金にとっては関係ないわけですから。だから、それで全部税金が助かるとは。つまり、厚生年金は、我々が言っているように年金が完全に一元化されて、厚生年金も共済年金も国民年金も一つであるということであれば、委員のおっしゃるようなことはあるいは成り立つかもしれませんが、制度が違うわけですから、一つにとって収支が改善したことが国税ベースでよくなるということではない。

浅尾委員 まず、健康保険について申し上げますと、国民健康保険は、五割は税金が投入されております。協会けんぽは一六・八%ですから、協会けんぽの方がふえるということは、国保に投入される税金の量がその分だけ減るという計算にもなります。

 それから、年金の方について言えば、まさに今徴収されていないことによって、まず賦課方式ということでいえば、きょう入ってくる、あるいはことし入ってくる年金の保険料がことし出ていくという方式ですから、年金に入ってくる量がふえるということは、その限りにおいては財政が改善するというのは間違いない話です。

岡田国務大臣 これは、年金が違うわけです、厚生年金、共済年金、国民年金。ですから、厚生年金にとって確かに加入者がふえるかもしれません。しかし、それはやがて支払いもふえるわけです。

 いずれにしろ、短期的には厚生年金にとってはプラス、でも共済年金や国民年金にとってどこが収入増になるんですか。共済年金や国民年金にとって、厚生年金の加入者がふえるということがどうしてプラスになるんですか。税金がどうして少なくていいんですか。

浅尾委員 共済年金は、もちろんそれは関係ありません。

 しかしながら、国民年金の収入増になるかどうかということについては、繰り返しになりますけれども、厚生年金の収入増というのがそのまま年金会計の中で反映されますし、加えて申し上げますと、そもそも国民年金の未納率というのが四一%あるのが、その分でかなり改善されるということは間違いなく言える話です。国民年金が、今、未納が四一%ですよね。ですから、一定の割合で未納の人が厚生年金に加入することによっては、国民年金の未納もそれで改善されるということが申し上げられると思います。

岡田国務大臣 これもよくわからない議論で、要するに、国民年金の未納率というのは、国民年金に加入すべき人で入っていないという概念ですから、国民年金に加入しておられる人か、あるいは加入しておられない人かはわかりませんが、そういう人たちが厚生年金に移って加入したからといって、そのことが未納率に何か影響を及ぼすことではないと思います。

浅尾委員 議論が平行線ですけれども、例えば国民年金が一番わかりやすいと思います。

 百人いらしたら、五十九人の方しか現在払っていない、四十一人の方は払っていないという状況でありますが、この四十一人、払っていない方のうちの一部が厚生年金に移行すれば、自動的に払う、それは基礎年金分も払うということですから、国民年金についても財政が好転するということは間違いなく言えます。

岡田国務大臣 ですから、委員のおっしゃる、本来厚生年金に加入すべき人というのは今どうなっているか。つまり、国民年金に加入していないと今委員おっしゃいましたが、国民年金にも加入していないのか、あるいは国民年金に加入しているのかというのはあると思うんですね。

 私が承知している限りは、委員のこの計算のもとでは、国民年金に加入しているということで、国民年金は減収になるという試算をしておられるわけですから、この資料の中では全員国民年金に加入しておられるという前提を置いておられて、今のお話は国民年金に加入しておられないということですから、そこは一貫していないんじゃないですか。

浅尾委員 今おっしゃっておられるのは、最初の一番大きな数のときの数字のことをおっしゃっておられると思いますが、その後、衆議院の調査室で幾つか詳細に微修正をさせていただいております。その中では、国民年金の未納の部分も入れて調整をしております。

 ここでいっぱい時間を使って議論をしても、まず間違いない事実として、未加入法人があるということですから、ぜひ政府の方で、数字には数字で調べてお答えいただきたいということを申し上げて、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 もう一点、先般、予算委員会で申し上げたのは、被用者年金の一元化について、追加費用と、そして共済年金と厚生年金が持っている積立金の差ということで、二十兆円ぐらい共済年金の方が積立金の額が多いということを申し上げさせていただきました。二十兆九千億円、共済年金の方が積立金が多いということを申し上げさせていただきましたが、私は、先般、何でこの積立金が多くなっているのかということで、共済年金には厚生年金にはない追加費用というものがあるんだということを指摘させていただきました。

 もう一枚の方の図を見ていただければ、追加費用の額がいかに巨額なものかというのがわかると思います。追加費用の額は、平成十八年度で国家公務員共済で四千五百六十九億円、平成十九年度で国家公務員共済相当で四千二百九十四億円という形で入っておりますし、地方公務員の方は、追加費用が大体一兆円内外で推移していますということです。

 私が非常に疑問に思っておりますのは、実はこの追加費用が、どういう計算式で計算が成り立っているのかということを再三再四、事務方に伺うんですが、私が納得できるお答えをいただいていないんです。

 私の理解を先に申し上げますと、昭和三十四年までは国家公務員の方は恩給制度というものがありました。恩給の対象というのはいわゆる官吏ということで、雇傭人というのは対象の外だというような説明を受けました。昭和三十七年まで地方公務員の方には恩給という制度がありまして、これも同じように、吏員という官吏に匹敵するような人が対象で、その他の人はそうでないというような説明でありました。

 まず、そもそも昭和三十四年というのは何年前ですか、昭和三十七年というのは何年前ですか。五十年とか五十三年前ですよね。今民主党が言っておられます年金制度の一体改革には四十年かかる。四十年かかったらまともになりますということをおっしゃっているんですが、五十年たっても毎年一兆数千億円入れるというのは、どういうことなんですかね。これはどう考えてもなかなか、毎年ですよ、単年度じゃなくて毎年入っている。五十年、五十三年前の制度で何でこんなに入るんですか。

安住国務大臣 浅尾さんは昭和三十九年の生まれですよね。私は昭和三十七年で、私どもが生まれるはるか以前の、日本の戦後からの、歴史でいえば恩給制度があった。

 浅尾さん御指摘のとおり、私も実は指摘を受けて初めてわかったんですが、実は、官吏と雇傭人という職種が分かれていた。この職種はどういうふうになっているかというと、官吏については、事務官、技官、書記、教官、技師、それから特定郵便局長。これに対して雇傭人というのがいて、これは一般事務、それから補助、電話交換手、運転手、それからボイラー技士、例えば国有林野でいえば木を伐採する人や育苗手、そういう現業部門の人たちはそういうふうになっていた。

 私の理解が間違っていればですが、私が聞いた範囲でいえば、その方々というのは、昭和三十四年の恩給までの間というのは、みずから旧国共済をつくっておられたわけですね。それで、その方々に対するいわば手当てというのは、恩給と格差があった。その格差を埋めないといけない。それにさらに、恩給の部分が三十四年に国共済に切りかわりましたから、その恩給の分については、やはりそこは国として支払った方がよかろうということで、その部分を追加費用としてずっと払ってきて、次に総務大臣からお話があると思いますけれども、今は数はかなり減ってはきました。

 しかし、この追加費用は、国家公務員でいえば、ピーク時で、平成のたしか最初のころ、六年のころですか、六千億円ぐらいになって、だんだん下がってきて今三千億円ぐらいになっていますけれども、これは、特別会計に今所属している方と、それから一般会計で払っている方々の費用ということになりますので、これを国費で充当せざるを得ない。これは制度的な問題だと思います。

中井委員長 安住さん、平成二十一年から二十二年にふえているのはどうして。ずっと減ってきているというけれども、ふえとるよ。ちょっとそれだけ答弁させて。

安住国務大臣 被用者年金一元化法の影響でございます。

川端国務大臣 幾つか御質問があったんですが、御説明申し上げなければいけません。

 今の委員長の部分は、被用者年金一元化法の中で、そういう追加費用も、一円も払っていない恩給という制度は、やはり受給者の負担の公平性ということで、下げようという法律で一旦下げることになったんですが、廃案になりましたので、もとに戻ったということでの費用です。

 それで、追加費用は、先ほどありましたけれども、昭和三十七年より前の人は恩給でした。ですから、一円も払わずに恩給をもらっていた。だから、三十七年までにおやめになった方はそのまま恩給法で恩給をもらっておられますが、三十七年より前に役人になられたけれども、それより後まで続けておやめになった方は、三十七年以降は共済の掛金を払ってもらう。それまでは恩給ですから、その恩給分は年金の費用の仕組みの中に追加して払うという制度になっているのであって、何か、今もらっている人に追加的に余分に支給するためにしているものではないということが一点。

 昭和三十七年の時点というと、多分、昭和十九年の人が十八歳で入られた人が、七、八年前に六十歳になってやめておられます。この方はまだ七十歳になっておられない方ですから、受給者はたくさんおられます。しかし、だんだん減ってきています。そして、亡くなられたら遺族に対しての支給もあります。

 そういう意味で、ピークは地方公務員の場合は一兆六千億ぐらいありましたけれども、一兆円ぐらいになって、あと三十年か四十年たったらほとんどゼロになるという制度上の費用であります。

 以上です。

浅尾委員 いろいろ御説明いただいているんですけれども、今、この数字の規模を申し上げます。

 普通の厚生年金というのは、こういう追加費用はありません。したがって、給料から一万円天引きされると一万円を負担して、それが現在の受給者のところに行くというのが賦課方式の厚生年金の制度であります。

 ところが、大体四割ぐらいですね、一万円天引きされると国ないし地方自治体が一万円負担するのとはさらに別に八千円入っている。ですから、普通の厚生年金は二万円で回しているところを二万八千円で回しているというのがこの規模でありまして、これだけの財源がなぜ発生するのか。

 もっと言うと、これは総支給額に対して大体三割ぐらいなんですよ。さっきの御説明で、昭和三十七年、三十四年の前に入られた方というのはいらっしゃいますよ。いらっしゃいますが、退職までの期間の総支給月数分の恩給期間の月数、これがなきゃ積算できないはずなんですが、この数字を出してくれと言っても、一度も出てこないんですよ。出せますか。

安住国務大臣 追加費用者の数については、私の方で、調べるようにということで言いました。

 基本的には、まず数を申し上げますと、今の共済年金受給者百十四万人のうち、追加費用対象者はまだ五十七万人おられます。国の官吏が三十八万、雇傭者が約四万から五万、それから郵便局の官吏が九万、雇傭人が六万。

 それで、今、額の話をなかなか出してこないと。しかし、これは計算がなかなか大変なんです。私も、これは時間をかけてもとにかく出すようにということで今指示をしておりますので、出てきたら必ずお示しします。

浅尾委員 今、半分ぐらいは恩給期間のときに就職をされたということをおっしゃっておられるんですが、しかし、就職している期間のうちの三分の一ぐらいが実は恩給期間で、三分の二がそれを経過した後の方というのは、一体何年に生まれたお幾つぐらいの方かなというふうに計算すると、国だと八十九歳、地方公務員だと八十五歳になるんですよ。八十五歳の方が大体その半分ぐらいいらっしゃるというのは、多分、統計上おかしいんじゃないかということと、一番申し上げたいのは、では、そもそもどういう計算で毎年毎年の予算を組んでいるんですか。

 要するに、積み上げなんでしょう。恩給期間のある人の、その恩給期間分を毎年出している、積み上げをしないでどうやって出しているのかという数字を出していただかないと、これは別に小さい数字じゃないですよ。民間だったら、これだけの積み立て不足があったら破綻していますよ、毎年一兆何千億円も追加で払える企業なんかあるはずがないわけですから。

 ですから、その根拠を出してくださいということを申し上げています。

安住国務大臣 まず、この追加費用の推移の中で、この図の、AプラスBの、割るAと書いてありますね。そこは、浅尾さん、このBというのは保険料収入だけということに限っているんでしょう。でも、本当はこれは運用の積立金とか運用収入とかを入れると二九%じゃないんじゃないですか。だからそれを、例えば保険料収入だけでやっているわけじゃないので、我々としてはそんなに高い比率だというふうには認識していません。

川端国務大臣 地共済に関しましては、共済年金の総受給者は二百七十四万人、うち追加費用の対象者数は百三十六万人です。そして、この受給者に対しては、年金受給者となるとき、いわゆる裁定時に、過去の加入期間、それと同時に三十七年以前の期間に対応して年金額と追加費用額を計算しております。年金額と追加費用を把握して総額を決めることで、予算、年金給付の通常の業務に対応できるために、受給者の加入期間、恩給期間等の集計は行っていない。これは必要性がないから行っておりません。

 これを計算するには、加入期間、恩給期間等を集計するために、集計システムはそうなっておりませんので、これの計算を行い確認する必要があるということと同時に、このシステムを例えば入札でするとかいうことになりますと、一カ月プラス一カ月、二カ月以上はかかると思いますが、この委員会の御指摘でもありますので、システム変更に要する時間、費用を含めて一度共済組合と相談してみたいと思っています。

浅尾委員 いずれにしても、とても大きな金額なんです、国と地方を合わせて一兆数千億というのは。しかも毎年ですから。その結果が、先ほど申し上げました、積立金の超過額の二十兆にも反映されているわけでありまして、過去の運用云々というお話をされると思いますが、その過去の運用云々があるんだったら別に追加費用は要らないわけなので、ですから、二十兆幾らというだけの追加の積立金超過額は、この間申し上げたように、それを共済組合の方で、言葉は悪いですけれども、いわば山分けをするという形ではなくて、全てを統合して、厚生年金と一緒に統合した積立金にするべきだということを指摘させていただきたいと思います。

川端国務大臣 先ほど申し上げましたように、個々人の裁定時に恩給部分と共済部分を分けて計算して手当てをするということで、その総費用は二年後に精算をしておりますので、この追加費用が何か余って積立金に回っているという仕組みでは一切ございませんので、あえて申し上げておきたいと思います。

浅尾委員 繰り返しになりますけれども、では、民間でもしこういう積み立て不足があったときにこういうことができますかというと、できる会社はありませんよ。それから、この間、枝野大臣、東電の企業年金を減額するということをおっしゃいました。いろいろなことがあったときにそういうことをやるわけですから、国としても身を切る改革があるというのであれば、確かに制度上は、積み立てていなかったからこの分出すということなのかもしれませんが、大きなお金だから、これはいろいろな身を切る改革の中で使っていかれたらどうですかということを伺っているのであって、今の議論を聞いて、もし総理の方でお答えいただけるのであれば、ぜひお答えいただきたいと思います。

安住国務大臣 やはり恩給制度そのものに対する考え方の違いかもしれません。ですから、昭和三十四年前の人たちに、そんなこと、もう払う必要ないんだという意見であれば、追加費用は要らないと思いますけれども、世の中そうはなかなかいかないんじゃないかと私は思います。ですから、なだらかに山が下がっていくように人が減れば、これはだんだん解消されていくと思います。

野田内閣総理大臣 財務大臣、総務大臣の御答弁のとおりで、追加費用をほかに使うという形は難しいのではないかというふうに思います。

浅尾委員 時間が来たから終えますけれども、そうであれば、東京電力とかの企業年金に対しても、それは別というような発言はできないんじゃないか。私としては、身を切る改革、しかも民間だったらできないことをやっているんだったら、そこを示すべきだということを申し上げて、質問を終えたいと思います。

中井委員長 これにて浅尾君の質疑は終了いたしました。

 次に、内山晃君。

内山委員 新党きづなの内山晃でございます。

 本日、質疑時間を延長いたしまして、三十分の質問時間をいただきました。中井委員長を初め、与野両筆頭初め、各位、理事の皆さんには大変感謝を申し上げます。ありがとうございます。

 野田総理、きょうも野党として質問させていただきますので、どうかひとつよろしくお願いを申し上げます。

 日本は今、戦後最大の国難に面しています。震災、そして原発事故、デフレ経済、円高、少子高齢化等、やらなければならない問題が山積をしております。

 総理、今なぜ消費増税なのか、不退転の決意なのか、私には実は理解ができません。順番が違うんじゃないか、こう思うんです。今、最優先で行わなければならないことは震災復興であり、放射能汚染対策、まさに命を守る政治ではないのかと思うんです。

 総理はなぜ消費増税を行うと決めた、心の中の動機を教えていただきたいんです。

野田内閣総理大臣 御指摘の半分は当たっているんです。復興をやらなければいけない、原発事故との戦いはある、日本経済の再生が必要だ、これは内閣をスタートしたときから申し上げています。ことしもそのために全力を尽くしていきたいと思います。

 一方で、こういう当面の危機、この国難を乗り越えていかなければなりませんけれども、社会保障を持続可能なものにしていく、これは待ったなしの状況になってきました。

 きょうも一日、議論がありましたけれども、基礎年金の国庫負担二分の一を実現するために、ここ三年間、本当に苦労してきました。そして自然増もずっと続いている。そして国民のまさに暮らしを守るのが社会保障ですから、それを支えるためにきちっとした安定財源を確保しなければいけないという状況は、ずうっと放ってきたんですけれども、だんだん借金はたまってきている、自然増はふえてくる、そして欧州のソブリンリスクのような問題もある、いろいろな問題を総合的に考えると、もはや先送りできない。それは私は共通認識として持っていただきたいというふうに思います。

 消費税増税とだけおっしゃっていますけれども、社会保障の改革とあわせて税の一体改革をやるということであります。加えて、行政改革や政治改革や経済再生という包括的に一緒にともに取り組んでいかなければいけないテーマもあるということで、消費税増税だけ特出しするというのは私はおかしいというふうに思います。

内山委員 いや、特出しで聞いたわけではありませんで、増税をした動機そのものを聞きたかったわけで、よくわかりました。

 本日は、放射能物質の除染や原発事故の対応につきまして、被災者の生活が一番という立場からお尋ねをしたいと思います。

 本日、復興庁が立ち上がりました。今後、文部科学省や環境省にございます原子力課や放射線担当部署との役割分担や関係、こういったものはどうなるのか。ワンストップ行政、よりよい機能活動、機能的に活動できるのか、お尋ねをしたいと思います。

平野(達)国務大臣 きょうから復興庁がスタートいたしました。国会では、復興庁の設置に向けまして、野党の皆様方からもさまざまな積極的な御提案を受けまして、その提案を受けた形で本日の復興庁の設置に至っております。改めて、皆様方の後押しに感謝を申し上げたいというふうに思います。

 そしてまた私の役割も、東日本大震災復興対策担当大臣という役割を解かれまして、復興大臣という極めてシンプルな名前になりました。引き続きよろしくお願いを申し上げたいというふうに思います。

中井委員長 いや、国会ではまだ、宮中で認証されていないから、だめだよ。

平野(達)国務大臣 失礼いたしました。大変先走ってしまいました。総理からは任命をいただいたということでございます。失礼いたしました。

 それから、御質問でございますけれども、復興庁では、津波、地震というこれまでの復旧復興の後押しに加えまして、これから福島の再生ということが大きな仕事になってくるというふうに思います。

 この福島の再生につきましては、これは二つに分けて考える必要があると思います。

 一つは、何といっても、福島のみならず、他の県にも及んでいる話でありますけれども、風評被害、健康対策、こういったことに対する政策を総合的にやっていく必要があるということでございます。

 それからもう一つは、冷温停止状態というのが達成されました。ここから警戒区域の見直しが始まりますと、十万人と言われる避難者の帰還ということが大きなテーマになってまいります。ここには、除染、賠償、雇用、それからインフラの復旧、さまざまな政策をパッケージとして、縦割りではなくて、これを総合的に出していく必要がございます。

 こういった部分、特に福島県に関しての国の役割は非常に重いというふうに考えておりまして、その総合調整機能、むしろ復興庁が率先してそれを引っ張っていく、そういう役割を復興庁に求められているというふうに思っておりまして、縦割りの排除というのはもちろんでありますが、総合的にやっていく、そういう政策の遂行の先頭に立つ必要があるというふうに思っております。その旨、野田大臣からも指示を受けておる次第であります。

中井委員長 平野さん、失礼、君はなっておるんだそうだ。済みません。横滑りか、あれでなっているので、認証式はないんだそうです。

 ただ、内閣に申し上げますが、国会や私ども委員会へ全然届け出がありません。復興庁がきょうできるという届けはありましたけれども、平野さんがおなりになって、名前を訂正くださいとか、そういう話は一切ありませんから、手続をきちっとするように注意をいたしておきます。

内山委員 もう一度、平野大臣に確認をいたしますが、既存の文科省や環境省との、原子力、放射能部署との連携というのはどういう形になりますか。

平野(達)国務大臣 津波の地震でも、例えば海岸の復旧というのは国土交通省がやります。学校の復旧は文部科学省がやります。そういった各省の政策を束ねる形で、復興庁が津波、地震地域の復旧の後押しをやってまいります。

 福島県の原子力災害についても、例えば除染、これは細野大臣が先頭に立って、環境省が一生懸命取り組んでおられます。賠償の問題については、今、平野文部科学大臣を先頭に文科省が取り組まれておりますし、モニタリングも今の段階ではそうです。そういった施策の総合化、それから調整、こういったものを復興庁が担うということでありまして、ある意味においては、各省の主体的な取り組みを総合的にやっていく。

 先ほど申し上げたのは、特に福島は国の責任が重い分だけ復興庁の役割ももっと重い、そういう認識で取り組まなくちゃならないんだ、そういう趣旨で申し上げたつもりでございます。

内山委員 よくわかりました。

 それでは、福島県の森林の除染につきましてお尋ねをしたいと思います。

 福島県の森林は県全体七割がある、こう言われておりまして、第一原発から放出されました放射性物質が大量に森林に舞いおりていることになります。専門家チームが文科省から研究費を受けて、計画的避難地域の三カ所の森林で土壌の汚染や大気中の放射線量を調査した結果、土壌のセシウム134と137の汚染度の割合は、広葉樹林が一平方メートル当たり七十一万ベクレル、杉の若齢林、若い杉で四十七万ベクレル、壮齢林、ややいった古い杉で九十一万ベクレルとの報道がございます。

 まだ浸透していく前に落ち葉を除染すれば、そのセシウムの九割を除去できると今言われておりますけれども、広大な森林面積を考えますと、これは一番効率のいい方法は伐採だ、森林ごと伐採をしていく方法が一番いいだろうと言われています。伐採した後に植栽をする、そういう政策をいち早く政府が立てるべきだとも提案をしておりますけれども、二十四年度の予算を見ますと、森林域における放射性物質流出抑制対策費に約八億円、森林における除染等実証事業費に四億六千万円しか計上しておりませんで、福島の森林放射能除染対策というのは、これは大変な面積でありますから、一体どのように考えられるのか、まず細野大臣にお尋ねをしたいと思います。

細野国務大臣 内山委員御指摘のとおり、森林の除染というのは一番難しい、しかも、恐らく大変な時間と労力がかかるであろう課題であるというふうに認識しております。

 現段階では、率直に申し上げますと、まず人の生活に近いところを優先してやろう、そういう方針でございます。例えば国が直接やっております除染特別地域におきましては、住宅の近隣の二十メートルの森林の除染を最優先にするということで、既に取り組んでいるところでございます。

 ただ、当然、山は高いところから、森は深いところから流れてくる可能性があるわけですので、そもそも山全体、森全体をどのような形で下げていくのかということについては、今農林水産省で主体的にやっていただいておりまして、そこと連携をしながら取り組むということでございます。

 こちらも鹿野大臣の方から恐らく御答弁があるというふうに思いますが、もう一つの方法は、そもそも森の間伐をする中で、それを有効活用したバイオマスの発電についても林野庁を中心に取り組んでいただいておりますので、環境省としてもそれを一緒にやっていくという姿勢でおります。

内山委員 さらに問題なのは、伐採後の汚染された樹木、木、枝、葉、こういったところの処分が、やはり大変な量だと思います。政府としては、この森林汚染の除染に対してどう取り組んでいくか、処分方法も含めて鹿野大臣にお尋ねをしたいと思います。

鹿野国務大臣 基本的に、今先生が触れられた、木をまず伐採したらどうか、こういうようなことでありますけれども、そういう森林の施業、いわゆる間伐等々を行ったときに、放射性の物質が拡散するのをどうやって防止するかということをまず技術的に研究開発していかなきゃならない、そういうようなことで、今、実証試験等々をやっているところなんです。

 四月くらいをめどにして、そういう結果、実態の状況というものを環境省の方に提示させていただきたい。そして、その後におきまして、この伐採等々の取り組みというものについて環境省とともに連携をとりながらやっていきたい、こう思っております。

内山委員 処分方法の提案としまして、せっかく伐採するんですから、その木材を火力発電所のエネルギーに使われたらいいんじゃないかなと思います。そして、燃料として燃やした後の放射性物質はセラミックフィルター等で吸引できるというような方法もあると聞いておりますので、ぜひそういったところの新しい技術を活用していただきたいな、こう思います。

 それから、被災地の雇用促進について小宮山大臣にお尋ねをしたいと思うんですが、瓦れきの撤去や復興作業、被災地では膨大な作業、仕事が発生していると思うんですね。しかし、ミスマッチもあるんだろうと思います。なかなかやはり、単価が合わないとか入札不調とかということで、働きたくても働けない、こういう仮の住まいのところで本当に苦しんでいる方が多いのではなかろうかと思います。

 昔、炭鉱離職者なんかの場合、失業対策なんというのがありましたけれども、こういう失業対策として、いっとき国が直接雇用して復興作業に従事させる、こんな政策をやられたらどうか。一部都道府県ではやっているということも聞いていますけれども、実態はどうなっているか、大臣の答弁を求めます。

小宮山国務大臣 委員がおっしゃるとおり、被災地の復興、そして自立して生きていくためには、何としても仕事をつくり出して、それをお一人お一人に結びつけなきゃいけないということで、今努力をしているところでございます。

 今おっしゃったように、震災当初は、何でも仕事になるようにということで、県に基金を積んで、それによって県や市町村が直接雇っていろいろな仕事をしてもらっていました。現在は、三次補正の中で、復興に向けた本格的な仕事ということで、産業政策と一体になって、例えば、先日現地へ行ったときも、中小企業のグループ補助金で仕組みをつくり、そこに厚労省の、人への助成金を使って雇用していただくというのが非常に機能をしているとか、あるいは、高齢者から若者への技術の伝承、女性、障害者といったような働きにくい方へのプログラムも、市町村が中心になって、基金は県に積みますけれども、やるような形にして、それを、NPOの方などの協力も得て、何とか結びつけるように努力をしています。

 ただ、現状として、まだミスマッチもあって、お一人お一人に結びついていないので、ハローワークでも、十人ずつぐらいの担当者制にして、一つ雇用が来ると三人、四人の方に当たって、何とか結びつけようと今努力をしているところでございます。

内山委員 完全失業率も高どまりしているところでありますから、ぜひとも、被災地に雇用という形で作業できるような人たちを向けていただけるように、さらに努力をしていただきたいと思います。

 次に、土地の買い上げについて質問いたします。

 総理は、高放射線量が原因で長期間にわたり帰宅が困難になる住民について、警戒区域や計画的避難区域の区分を見直した上で、土地の買い上げや借り上げも含め、自治体と協議したいと記者会見で述べておられます。帰宅困難の期間をどのくらいと想定されているのか、総理にお尋ねをしたいと思います。

枝野国務大臣 これについては、まさに除染を最大限やっていくということの中で、どれぐらいならお待ちをいただけるのか。

 一つの線として五年という線を出しておりますが、地元の自治体の皆さん、場合によっては、地元の個々の住民の皆さんともきちっとコミュニケーションし、なおかつ、帰る場合の支援のパッケージあるいは帰れない場合の支援のパッケージ、こうしたことまで全部御相談をした上で、なおかつ、東電からの賠償の問題も全部セットにして、こういうことでどうでしょうかということをお示ししたいと思っておりまして、その調整には入っておりますが、現時点で、一律で何年ということを、何か機械的に線を引くというつもりはございません。

内山委員 チェルノブイリでも二十五年も入ることができないというようなエリアもありますから、これはかなり、未来永劫に住むことができない地域が必ず出てくると思うんですね。こういったところをやはり早目にきちっと買い上げてあげて、新しい生活の場を提供するのが国の責務ではないかなと思うんです。

 東電のスキームと国という形で、本来、一義的には東電がやらなければならないんだと思いますけれども、やはり、東電がやらない場合には国がやらなければならないと思うんですけれども、国の支援について、総理、いかがでございましょうか。

枝野国務大臣 もし、ずっと帰られない、戻るのを諦めます、買い上げてくださいという場合については、一義的には確かに東京電力だと思います、賠償の範囲として。

 ただ、それだけで足りるのかという問題もございますし、また、実は、東京電力の所有になってしまうのでは嫌だという心情的な問題もあったりすると思っていますので、そのことについては、いずれにしろ、戻れない場合の支援のパッケージとして、これは平野復興大臣ともしっかりと御相談をしながら、賠償ともしっかりと連携させながら、御相談をしながら、お示しをできるだけ早くしていきたいと思います。

内山委員 東電は四月中に土地、建物、家具についての賠償基準を示すというふうに聞いておりますけれども、土地の買い上げについても、政府はどのくらいの面積を予定しているのか。それによって大変な国費がかかると思うんです。また、買い上げに際して、東電とのスキームをどういうふうな関連で持っていくのか、これは非常に難しいと思うんですけれども、まず面積と東電との協議についてお尋ねをします。

枝野国務大臣 先ほど来お答え申し上げているこの状況の中で、今の段階で面積がどれぐらいになるかということを残念ながら申し上げられる段階ではありません。

 ただ、戻れない、そして関係者の皆さんもそのことはやむを得ないということについては、しっかりと、どこが買うかという問題もあります、これも、東電なのか国なのかそれ以外なのか、いろいろなこともありますので、そのあたりのところを調整して、今、東電の賠償の一つの線が四月というお話がございましたが、できるだけ早くパッケージとしてお示しできるようにしたいと思います。

内山委員 今度は、警戒区域に残されました自動車の損害賠償を東電は、まず三千台、賠償額は三十億円になる、こういうニュースがございました。東電の個人資産への賠償は初めてのケースでありまして、バイク、建設重機、農機械などは対象外になっている。

 なぜバイクが後回しなのか。バイクというのは有効な移動手段で、車より高いものもございますから、これはちょっと私は理解できないんですけれども、こういう準備が整い次第、対象外の賠償も取り組むとの東電のプレスリリースがございます。高い放射線を浴びた後に、実は当該地域から移動した車両、また既に売却して所有者がかわった車両については触れていません。

 放射能に汚染された自動車を知らず知らずに使用している人がいるんじゃなかろうかと思うんです。そういう人たちの健康被害というのがこれから発生するんじゃないかなと心配をしているんですけれども、こういう汚染されて賠償されていない、そして全く普通の中古車、それを知らない人が乗っているような車に対して、何らかの規制をかけて売買するような方法をしなければならないんだろうと思うんですけれども、その対応についてお尋ねします。

枝野国務大臣 御指摘のとおり、原発に近い地域から持ち出された車等が流通等をされたり使用されたりした場合、高放射線量の場合、可能性があるということで、これについては、今、最大限、可能な範囲で追いかけています。

 今のところ、原子力発電所のサイトの中にあった車について、その一部については高い放射線量を示しているというものが出ておりますが、それ以外のものについては、出るときに水をかけて除染をしたりとかということが基本的にはなされてきておりますので、今のところ出ておりませんが、できるだけ、最大限追いかけていって、そういったもので高放射線の影響が出ないようにということについての努力はしたいと思っています。

内山委員 私も昨年末、総務大臣政務官として仙台の方に行きまして、中古自動車の処分について、本来ですとロシアに輸出するという業者が、線量が高くて輸出できない、こういう件を聞きました。ですから、やはりそういう車というのはかなりあるんじゃなかろうかなと思いますので、しっかりと管理をしていただきたいなと思います。

 それから、先ほどの、住居に適さない面積はどのくらいかということで、まだ把握していないということでありますけれども、実は私、相当の期間、広大な面積が発生するだろうと思っておりまして、その跡地利用の提案として、総理、聞いていただきたいんですけれども、メガソーラー発電基地をつくったらどうかな、こう提案をしたいと思うんです。

 送電網のインフラも福島第一原発のものも使えますし、広大な、耕作放棄地といいますか、土地もあくわけでありますから、こういうメガソーラー基地をつくれば、仮に、試算で、電気事業連合会の資料によりますと、十四万キロワットのメガソーラー発電の年間発電量は約四万軒の家庭の電気使用量に相当し、七万トンのCO2の削減をすることができる、貢献する、こういう資料があります。この十四万キロのメガソーラーをつくるには甲子園球場の二百七十倍の土地が必要だ、今の汚染地域でいえば、この程度は小さい方ではなかろうかなと思います。

 住居に適さない、長期間になる場所があれば、ぜひとも跡地の有効利用として活用したらどうかなと思うんですけれども、安住大臣、現場ですので、いかがですか。所見を。

枝野国務大臣 今回の原因が原子力発電ということでもあります。メガソーラーとかバイオマス発電ということについては、長期にわたって住めないかもしれないという地域にとどまらず、福島の復興に当たっての一つの大きなポイント、新・再生可能エネルギーというのはポイントだと思っております。

 そうしたことの中で、長期住めない土地があるならば、特にメガソーラー、広大な土地が必要だということで、大変貴重な御提言だというふうに受けとめさせていただきます。

 ただ、先ほどのお話のとおり、やはり被災者、今被害を受けていらっしゃる皆さんの心情あるいは地域としての復興の計画、こうしたものと全てパッケージでやりませんと、私の方あるいは国の方でこうするんだといって、被害を受けている皆さんの心情と異なっていたのでは、これはやはりよくないと思っておりますので、貴重な提言としてまずは受けとめさせていただくということでお許しいただければと思います。

安住国務大臣 内山さん、私も、やはり使えなくなった土地をどういうふうに使うかということでいうと、御指摘のようなお話があったり、例えば水力を利用したり、いろいろなことを今地元でも考えております。

 ですから、そういう点でいえば、今、枝野大臣がおっしゃったように、いろいろな可能性を探って、死んだ土地を生き返らせるというか、そういういわば逆転の発想でやれるような知恵と工夫を出していきたいというふうに思っております。

内山委員 もちろん、被災者からの土地、家、そういった購入価格は、賠償ということで当然償いをつけて買うべきでありますから、ちゃんと移転したところに建てられるような価格で買うべきだと、それは思います。

 さらには、あいている土地の有効利用ですけれども、いきなりメガソーラーをつくるといっても費用がない、こんな話が出るかなと思ったんですけれども、実際、私は、震災復興のための無利子非課税国債なんかの活用をした方がいいんじゃないか。こういうものでしっかり日本の再生を図る。そして、福島に大きなメガソーラーの基地ができれば、ソーラーパネルや蓄電池やコンバーター、そういった周辺機器の単価が下がって、全国にソーラー発電が普及すると思うんですね。

 ぜひともここは政府が一環となって、内需拡大、そしてデフレ経済の解消、円高の阻止というところにもつながっていくんじゃないかと思いますが、いかがですか、どなたか。

枝野国務大臣 メガソーラーの普及には、確かに、がんと一気に投資をすることによって量産効果が上がって値段も下がる、そのことによって、例えば個人の御家庭などでも使っていただけるような可能性が出てくるなど、そういった視点でこの問題に取り組むことが重要だというふうに思っています。

 それが、福島のあの被害を受けられた地域でお願いをするのか、それとも、できるだけ民間の活力を使う形で促していくのか。少なくとも後者については今努力をしているところでございまして、御指摘も踏まえながら、今後、さらにいいやり方を進めてまいりたいと思っております。

内山委員 時間がなくなりましたので少し急ぎますが、ホットスポット対策についてお尋ねをしたいと思います。

 文科省の航空機を使いましたモニタリング測定によりますと、栃木、群馬の北部、茨城南西部、千葉県北西部がホットスポットになっております。スポットと言いますと狭い範囲と思われますが、ホットエリアと言った方がいいと思います。これだけ地図に鮮明に色で分かれますと、当該地域に住んでおられる方は大変不安になります。乳幼児を抱えている方、そしてお子さんを抱えている方なんかが、引っ越ししなければなんと考えている方もたくさんいらっしゃいます。

 環境省はガイドラインをつくりましたけれども、モニタリングの強化も含め、政府のホットエリア対策について、風評被害を防ぐ意味から、放射能除染対策の必要性の有無も考え、きめ細かく放射線を測定するようにエリアモニターを増設すべきだと思いますけれども、担当大臣の御意見を伺います。

細野国務大臣 まず、今御指摘をいただいた地域なんですけれども、年間の線量が一ミリシーベルト以上の地域につきましては、国会で御審議いただいて通していただきました放射性物質汚染対処特措法がございますので、それに基づいて自治体に除染実施計画を策定していただき、除染をやっていただき、国がそれをしっかり後押しする、そういう体制になっております。

 その除染をする際に、当然モニタリングが非常に重要になってまいりますので、そこは我々環境省も最大限一緒にやっていきたいというふうに思っておりますし、また、文科省の方でもいろいろとやっていただいておりますので、我々国と自治体が協力をしながら、しっかりモニタリングをした上で除染を実施するということで取り組んでまいります。

内山委員 時間が参りましたので、これで終わります。

中井委員長 これにて内山君の質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

中井委員長 この際、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。この際、その補欠選任を行いたいと存じますが、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中井委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に高木陽介君を指名いたします。

 次回は、来る十三日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十分散会


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