衆議院

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第25号 平成24年6月12日(火曜日)

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平成二十四年六月十二日(火曜日)

    午前八時五十九分開議

 出席委員

   委員長 中井  洽君

   理事 大谷 信盛君 理事 太田 和美君

   理事 金森  正君 理事 笹木 竜三君

   理事 細川 律夫君 理事 若井 康彦君

   理事 石破  茂君 理事 小池百合子君

   理事 高木 陽介君

      井戸まさえ君    石関 貴史君

      磯谷香代子君    稲見 哲男君

      今井 雅人君    打越あかし君

      小野塚勝俊君    大西 健介君

      柿沼 正明君    勝又恒一郎君

      川口  浩君    川口  博君

      川村秀三郎君    黄川田 徹君

      工藤 仁美君    櫛渕 万里君

      坂口 岳洋君    柴橋 正直君

      瑞慶覧長敏君    杉本かずみ君

      空本 誠喜君    平  智之君

      竹田 光明君    玉木 朝子君

      玉木雄一郎君    中屋 大介君

      仁木 博文君    橋本 博明君

      畑  浩治君    花咲 宏基君

      馬淵 澄夫君    牧  義夫君

      山岡 達丸君    山崎  誠君

      山田 良司君    山花 郁夫君

      渡部 恒三君    赤澤 亮正君

      伊東 良孝君    稲田 朋美君

      小里 泰弘君    金子 一義君

      金田 勝年君    北村 茂男君

      近藤三津枝君    佐田玄一郎君

      橘 慶一郎君    野田  毅君

      馳   浩君    平沢 勝栄君

      山本 幸三君    稲津  久君

      東  順治君    笠井  亮君

      内山  晃君    阿部 知子君

      柿澤 未途君    山内 康一君

      下地 幹郎君   松木けんこう君

    …………………………………

   内閣総理大臣       野田 佳彦君

   国務大臣

   (行政刷新担当)     岡田 克也君

   総務大臣

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (地域主権推進担当)   川端 達夫君

   法務大臣         滝   実君

   外務大臣         玄葉光一郎君

   財務大臣         安住  淳君

   文部科学大臣       平野 博文君

   厚生労働大臣

   国務大臣

   (少子化対策担当)    小宮山洋子君

   農林水産大臣       郡司  彰君

   経済産業大臣

   国務大臣

   (原子力損害賠償支援機構担当)          枝野 幸男君

   国土交通大臣       羽田雄一郎君

   環境大臣

   国務大臣

   (原発事故の収束及び再発防止担当)

   (原子力行政担当)    細野 豪志君

   防衛大臣         森本  敏君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     藤村  修君

   国務大臣

   (復興大臣)       平野 達男君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (消費者及び食品安全担当)            松原  仁君

   国務大臣

   (郵政民営化担当)

   (金融担当)       松下 忠洋君

   国務大臣

   (国家戦略担当)

   (経済財政政策担当)

   (科学技術政策担当)   古川 元久君

   国務大臣

   (防災担当)

   (「新しい公共」担当)

   (男女共同参画担当)   中川 正春君

   財務副大臣        五十嵐文彦君

   農林水産副大臣      岩本  司君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    山本 庸幸君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    西村 泰彦君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長)            杉山 晋輔君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         佐藤 一雄君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           高橋  博君

   政府参考人

   (農林水産省食料産業局長)            針原 寿朗君

   参考人

   (原子力委員会委員長)  近藤 駿介君

   参考人

   (原子力安全委員会委員長)            班目 春樹君

   予算委員会専門員     春日  昇君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十六日

 辞任         補欠選任

  鉢呂 吉雄君     細川 律夫君

同月二十七日

 辞任         補欠選任

  村越 祐民君     大谷 信盛君

六月五日

 辞任         補欠選任

  若泉 征三君     三日月大造君

同日

 辞任         補欠選任

  三日月大造君     若泉 征三君

同月六日

 辞任         補欠選任

  若泉 征三君     太田 和美君

同月十二日

 辞任         補欠選任

  打越あかし君     瑞慶覧長敏君

  江端 貴子君     磯谷香代子君

  岸本 周平君     小野塚勝俊君

  櫛渕 万里君     山花 郁夫君

  近藤 和也君     井戸まさえ君

  杉本かずみ君     坂口 岳洋君

  武正 公一君     柿沼 正明君

  仁木 博文君     川村秀三郎君

  牧  義夫君     空本 誠喜君

  室井 秀子君     川口  博君

  山岡 達丸君     稲見 哲男君

  山崎  誠君     工藤 仁美君

  山田 良司君     勝又恒一郎君

  湯原 俊二君     畑  浩治君

  小里 泰弘君     稲田 朋美君

  橘 慶一郎君     近藤三津枝君

  馳   浩君     平沢 勝栄君

  東  順治君     稲津  久君

  山内 康一君     柿澤 未途君

  中島 正純君     下地 幹郎君

同日

 辞任         補欠選任

  井戸まさえ君     玉木 朝子君

  磯谷香代子君     江端 貴子君

  稲見 哲男君     山岡 達丸君

  小野塚勝俊君     岸本 周平君

  柿沼 正明君     武正 公一君

  勝又恒一郎君     山田 良司君

  川口  博君     中屋 大介君

  川村秀三郎君     川口  浩君

  工藤 仁美君     山崎  誠君

  坂口 岳洋君     杉本かずみ君

  瑞慶覧長敏君     打越あかし君

  空本 誠喜君     平  智之君

  畑  浩治君     柴橋 正直君

  山花 郁夫君     櫛渕 万里君

  稲田 朋美君     北村 茂男君

  近藤三津枝君     橘 慶一郎君

  平沢 勝栄君     馳   浩君

  稲津  久君     東  順治君

  柿澤 未途君     山内 康一君

  下地 幹郎君     中島 正純君

同日

 辞任         補欠選任

  川口  浩君     仁木 博文君

  柴橋 正直君     竹田 光明君

  平  智之君     牧  義夫君

  玉木 朝子君     近藤 和也君

  中屋 大介君     室井 秀子君

  北村 茂男君     小里 泰弘君

同日

 辞任         補欠選任

  竹田 光明君     湯原 俊二君

同日

 理事鉢呂吉雄君四月二十六日委員辞任につき、その補欠として細川律夫君が理事に当選した。

同日

 理事村越祐民君四月二十七日委員辞任につき、その補欠として大谷信盛君が理事に当選した。

同日

 理事若泉征三君同月五日委員辞任につき、その補欠として太田和美君が理事に当選した。

同日

 理事武正公一君同日委員辞任につき、その補欠として金森正君が理事に当選した。

同日

 理事金森正君同日理事辞任につき、その補欠として武正公一君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の辞任及び補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 予算の実施状況に関する件


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     ――――◇―――――

中井委員長 これより会議を開きます。

 理事補欠選任の件についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が四名欠員となっております。この際、その補欠選任を行いたいと存じますが、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中井委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に

      大谷 信盛君   太田 和美さん

      金森  正君    細川 律夫君

を指名いたします。

     ――――◇―――――

中井委員長 予算の実施状況に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として原子力委員会委員長近藤駿介君、原子力安全委員会委員長班目春樹君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として警察庁警備局長西村泰彦君、外務省アジア大洋州局長杉山晋輔君、農林水産省大臣官房総括審議官佐藤一雄君、農林水産省消費・安全局長高橋博君、農林水産省食料産業局長針原寿朗君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

中井委員長 基本的質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山花郁夫君。

山花委員 おはようございます。民主党・無所属クラブの山花郁夫でございます。

 きょうは、予算の実施状況に関する件ということがテーマでございますので、まず冒頭、安住財務大臣にお伺いします。

 きょうが六月の十二日ということで、出納整理期間というのが六月締めと承知をいたしております。もう間もなくということになりますので、大体、そろそろ見通しが出てくるのかなと思っておりますが、当初予算の見積もりと比較して、実際の税収はどのようになっておりますでしょうか、お伺いします。現時点での見通しをお願いします。

安住国務大臣 おはようございます。

 年度全体の税収実績については、実は、毎年七月に五月分税収とあわせて公表をしております。

 現時点で判明している四月までの収納実績が順調だったことを踏まえますと、二十三年度全体の税収は補正後予算を、これは四十二兆になりますが、上回る可能性が出てきているのではないかとも考えております。

 しかし、五月分税収は実は年間で最もウエートが高くて、特に三月決算法人が多うございますから、その企業収益の動向が税収にどう反映されているのかを見きわめる必要がありますので、毎年、そういう点で、今の時点で確たることは申し上げられませんが、七月初めの公表ということにさせていただいております。

山花委員 今、上回る可能性があるというような見通しが述べられました。実感としては、町場に行くと余りないのかもしれませんけれども、企業収益は一定程度上がってきているのかなというような印象を持ちました。

 ところで、きょうは、この予算委員会は、野田改造内閣が発足をしたということに伴って開かれているわけでございますので、まず冒頭に、野田総理、今回の内閣改造の目的と申しましょうか意義についてどのようにお考えでしょうか。

野田内閣総理大臣 おはようございます。

 昨年の九月二日に野田内閣が発足をいたしまして、以来、震災からの復興と原発事故との戦い、日本経済の再生、この三つを最重要、最優先の課題として取り組んでまいりました。

 そして、この通常国会が始まる前に、一月でありますけれども、第一次改造内閣を組ませていただきまして、そうしたチームの中で、各党の御理解もいただいて、新年度、平成二十四年度の予算を成立させていただいたり、復興庁を立ち上げたり、郵政民営化関連法案を通していただいたり、国家公務員給与引き下げ等々の実現をすることができましたけれども、いよいよその通常国会、第二次改造内閣のときには、およそ二十日前でございましたが、こういう国会の後半に当たりまして、一体改革等々のさまざまな重要な懸案を推進するための環境整備として、内閣の機能を強化しなければいけないという判断のもとに第二次改造内閣をスタートさせていただいた次第であります。

山花委員 改造内閣でございますので、きょうは新任の大臣の方を中心に質疑をさせていただきたいと思っております。

 まず、森本防衛大臣にお伺いをいたします。

 今、総理からもお話がございましたけれども、第二次野田内閣ということで、実は、野田内閣が発足をいたしてから、森本大臣は三人目の防衛大臣ということになります。前任また前々任の一川防衛大臣、田中防衛大臣は、普天間飛行場の移設とか返還問題を初めといたします沖縄の米軍基地問題について、それぞれ一生懸命取り組んでこられたとは思うんですけれども、ただ、在任期間中に、残念ながら、必ずしも沖縄の県民の方々の信頼を得るというところまでは至らなかったのかなと率直に思います。

 森本大臣は多年にわたって沖縄の基地問題に携わってこられた専門家ではございますけれども、沖縄においては、専門家であるがゆえに、沖縄の方にちゃんと耳を傾けてくれるのだろうかというような懸念もあるのではないかと思っております。

 森本大臣は沖縄に対してどのような思いを持っておられるのか、率直に語っていただきたいと思います。

森本国務大臣 御案内のとおり、沖縄はさきの大戦の末期から大変苦難の道を歩んでこられ、その後米国の占領下にあって、我が国に本土復帰してからも、在日米軍のおよそ七四%が沖縄に集中するという状態の中で、大変困難で厳しい状態に置かれているということを私たちは大変深く受けとめております。

 一方、沖縄というものの現在置かれている戦略環境というのは東アジアの中で大変厳しい状態になっていて、九五年に少女暴行事件が起きてから、九七年に市街地の真ん中にある普天間飛行場をできるだけ早く日本側に返還するという約束を日米間で合意したわけでありますが、紆余曲折があって、なかなかその実現を見るに至っておりません。

 いかにして、沖縄の方々の思いというものを重く受けとめながら、一方で沖縄の地域全体の抑止力を高めつつ、沖縄の方々の深い深い思いを我々は受けとめて、できるだけ基地による負担を軽減し、普天間飛行場を一日も早く日本側に返還するためにどのような努力があり得るのかということについて、私は、その任期を通じてぜひとも一歩でも前に進めていきたい、このように考えている次第でございます。

 以上でございます。

山花委員 ぜひ、沖縄の県民の方々の理解を得て、基地問題に尽力していただきたいと思っております。

 続いて、海兵隊のMV22オスプレーの沖縄配備の問題に移りたいと思います。

 米国の国防省は、垂直の離発着が可能な最新の輸送機オスプレーを、ことしの後半から普天間飛行場に配置するということを表明いたしております。

 ただ、このオスプレーは、開発段階で何度も事故を起こしているということ、こういった経緯がありますので、その安全性については懸念を持つ人も大変多くございます。また、ことし四月、直近では、モロッコの訓練中に墜落事故が起きているということもあります。

 沖縄の方々は、このオスプレーの安全性について十分な説明を受けていないのではないかというようなことを感じておられると思いますし、また、先般、五月の記者会見で大臣が、モロッコの事故の原因の調査には時間がかかるということを発言されましたので、このことで沖縄の県民は、もしかすると日米の両政府が、オスプレーの安全性について確認がちゃんとできるかできないか、そのことに見切り発車で配備を強行するのではないかという懸念があると承知をいたしております。

 大臣は、このオスプレーの安全性についてどのような御認識をお持ちなのでしょうか。また、オスプレーの安全性について、私はきちんとした説明もなく沖縄に配備をするということがあってはいけないと思うんですけれども、今後どのように沖縄の方々に説明をしていかれるおつもりなのか、お答えいただきたいと思います。

森本国務大臣 今先生の御質問のオスプレーですが、アメリカがかような飛行機を設計しようとした理由は、もともと、回転翼というかヘリコプターの持っておる機能とそれから固定翼の飛行機の、二つの航空機としての揚力をつくるシステムを一つの飛行機の中で実現しようというかなり難しい技術開発を試み、幾多の困難を乗り越えて、幾つか開発途上で問題があったことは確かでございますが、乗り越えてこの問題の開発に成功し、今アメリカ側は、少なくとも必要な安全基準を満足するものだと考え、正式にアメリカ政府としてこの航空機の量産を決定し、部隊に配備しようとしているわけでございます。

 これは既に中東湾岸での戦場で使用されており、今のところ、オスプレーは一貫してアメリカ海兵隊全体を上回る安全性を示していると承知しております。

 先生御指摘のように、確かに四月の十一日、モロッコで事故が起きましたが、この事故については、航空飛行安全調査というのが行われて、この航空機の機体そのものが米軍が定める必要なマニュアルどおりに機能しており、少なくとも機体のふぐあいによってこの事故が起きたものではないという結果を我が方に通報してきておりますので、この航空機の開発の途上で一応安全性が確保され、今回の事故についても機体上のミスによって起きたものでないということについて我が方は確信をしております。

 もちろん、沖縄に配備するということですから、地元の方々に大変な心配とか懸念があるということは十分心得ております。これは、これから岩国を経由して沖縄に配備する際、どのようにこの安全性が確保できるのか、環境レビューの結果も含めて沖縄の方々に十分な説明を申し上げ、できるだけの理解をいただくよう、部隊としての配備を進めてまいりたい、このように考えております。

山花委員 今大臣から、岩国を経由してというお話がございましたけれども、一部報道によりますと、オスプレーは七月中にも普天間飛行場へ搬入されるということが既に報じられております。その際に、本土から運ばれてくるオスプレーの機体については、沖縄の那覇の中心部に位置する米軍那覇港湾施設に陸揚げする計画があるというふうに報じられておりまして、沖縄の地元紙などでは大変反発をしているところであります。

 今、岩国を経由してという話がございましたが、昨日、神風防衛政務官が岩国市と山口県を訪問して、このオスプレーについて、米軍の岩国飛行場の岸壁で陸揚げをして、岩国飛行場で試験飛行を行いたいという旨を申し入れたということであります。これは、もちろん、相手方のあることですので、相手方の了解が得られればということですけれども、他方、沖縄の側からすると、県民感情ということからすると、もし実現できれば、大変意味があることではないかと思います。

 そこで、岩国飛行場で試験飛行をするという理由は一体何なのかということと、また、神風政務官の申し入れに対して、岩国市の市長さんは回答を留保、そして山口県の知事はその時点では反対というような趣旨のことを言われたと伺っておりますけれども、今後、岩国とか山口県に対してどのような説明とか説得を行っていくおつもりなんでしょうか。

森本国務大臣 先生御指摘のように、岩国を経由してと申し上げたのは、普天間の飛行場にオスプレーを配備するというのは、アメリカの計画では、船で搬送をして、どこかに陸揚げをして、それから必要な準備を行い、若干の機体のテストを行って、それから沖縄に持っていくということなのですが、これを沖縄に直接持っていくことについては、やはり地元に非常に強い抵抗、反対、あるいは御心配があるということなので、したがって、今回は、岩国の飛行場の中に陸揚げする施設がありますので、そこで一旦陸揚げをして必要な準備を整えて、少し慣熟飛行をやって、それから順繰りに普天間飛行場に飛行して機体を動かすという計画にして、その全体の中でどうしても岩国飛行場に受け入れていただくという必要があるので、月曜日、政務官を現地岩国市と山口県に差し向けて御説明を申し上げたところです。

 回答は後日いただけるということになっておりますが、正直なところ、もろ手を挙げて賛成ということではありませんで、いろいろ市長及び県知事には御事情もあろうと思いますので、中で必要な調整を行う間、もし必要があるというのであれば、私が直接出向いていって説明することも検討したいと思っております。

 以上でございます。

山花委員 引き続きまして、沖縄の負担軽減の問題に移りたいと思います。

 嘉手納飛行場以南の米軍の施設・区域、六カ所ございますけれども、これについては、二〇〇六年の再編ロードマップによって返還が決まっておりました。これまで土地返還についての作業が具体化してきておりませんでしたけれども、ことし四月二十七日の日米2プラス2共同発表は、これまでの合意からすると一歩踏み込んだ形で、返還対象の土地を三つのカテゴリーに分けた上で、一つの土地については速やかに返還するというような、土地返還を早期、着実に進めることが可能な中身となっていると承知をいたしております。

 この日米両国が嘉手納以南の土地返還を進展させる合意をしたということは、目に見えての進展というのがこれまでなかなか進んでいない中で、目に見える負担軽減を早期に進めるという意味では非常によい決定ではないかと思っておりますが、この四月二十七日の2プラス2の共同発表を受けて、今後、嘉手納以南の土地返還をどのように進めていくおつもりでしょうか。

森本国務大臣 先生御指摘のように、2プラス2の合意の中で、そもそも嘉手納以南の土地の返還という問題を普天間飛行場の問題の進展と切り離して扱うということについて日米間で合意したことは御指摘のとおりであります。これはいわば、アメリカ側が沖縄の負担の軽減というものにも大変配慮して、この合意の内容について前向きに対応してくれた結果が出たんだろうと思って、我が方はそのことに一定の評価をしております。

 この土地の返還については、今先生の御指摘のように三つの分類、カテゴリーがあって、速やかに返還を実現するものと、今使用している施設の代替施設を探して施設の中に動かして、それから返還をするものと、それから、海兵隊を海外に移転して、移転した結果として起こる返還と、三つのカテゴリーがあるわけでございます。

 速やかに返還をするというものについては、この手続を現在進めております。それ以降の問題については、全体の統合計画を本年末までに日米間で協議して結論を見出し、できるだけ速やかにこれを明らかにしたい、このような手順で進んでおります。

山花委員 沖縄の問題についてでございますけれども、私も以前、外務大臣政務官をやっていたころには、沖縄の方々から陳情を受けることもあり、また抗議を受けるという立場に立ったこともございます。沖縄の基地問題というのは、メディア的には普天間飛行場の移設問題ということに焦点が当たりがちでありますけれども、オスプレーの安全性とか騒音の問題とかも沖縄で生活する方々にとっては本当に極めて深刻、また重大な問題でありますので、森本大臣には、これまでいろいろなお立場で培った知恵、経験があると思いますので、沖縄の方々の負担軽減のためにぜひ御尽力をお願い申し上げる次第でございます。

 さて、次に松下大臣、お立場が幾つかありますけれども、まず金融担当大臣として質問させていただきます。

 ギリシャの再選挙が六月十七日に迫ってきております。ギリシャが今後どういう対応をとるのかということが大変注目されるところでありますし、また、スペインやイタリアなど、ヨーロッパ全体がちょっと大丈夫なのかなというような雰囲気が出てきております。また、それとあわせて、米国での雇用情勢が余り芳しくないということも言われておりまして、日本経済にも影響があるのではないかという指摘がございます。

 先ほど財務大臣からは、税収については今のところ、堅調という言い方ではなかったですけれども、上振れぐらいの感じがあるのかなという所感がありました一方で、こうしたリスク要因というのもあります。これは金融担当大臣だけでできるものではありませんけれども、今回御就任されたということで、金融担当大臣として、こうした問題にどのように向き合われるのか、現状認識と、また所信も少し聞かせていただければと思います。

松下国務大臣 このたび、郵政民営化担当そして金融担当の国務大臣に任命されました。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 拝命するに当たりまして、総理から幾つかの御指示がございました。金融機能の安定確保に努めることと、国際金融関係の情勢、そういうものをしっかりと把握して、関係大臣と連携してしっかりと迅速な対応をせよということでございました。そういうことを踏まえてしっかり対応していきたい、そう考えておりますし、国内では、二重ローンの問題とかAIJの問題とか、いろいろ深刻な問題もございますので、的確に対応していきたい、そう思っています。

 その上で、お尋ねの件でございますけれども、確かに、御指摘のとおりに、ギリシャにおける再選挙、六月十七日、それから、スペインの財政金融問題、アメリカの雇用回復に対する不透明感等を背景にいたしまして、市場では、株価の下落やユーロ安、円高、そして欧州の周縁国債の利回り上昇などがありまして、リスク回避の動きが生じているという見方が多いわけであります。

 我が国の金融システムにつきましては、現在のところ、総体として健全であり、安定しているというふうに考えておりまして、金融庁は常日ごろから、モニタリングのデータをしっかり入手する、そしてストレステスト等の状況に関するヒアリング等を行いまして、金融機関が抱えるリスクの把握に努めているところでございます。

 いずれにしましても、金融担当大臣として、関係閣僚や日本銀行と連携しつつ、内外の情勢や市場の動向について高い関心を持って注視してまいりたいというふうに考えております。

山花委員 松下大臣は、金融担当大臣であるとともに郵政改革担当大臣でもございます。

 先日、郵政民営化法の一部改正というものが法律として成立をいたしました。これは、政府提出の法律ではなくて、与野党協議を経て議員立法でということになりまして、我々としては、一つはユニバーサルサービスを確保するということ、また分社化ロスをなくすということ、さらには経営の自由度を高める、これが肝だったのかなと思っているところでございますが、この与野党協議の論点の一つとして金融二社の新規業務の問題がございました。

 他の金融機関との対等な競争条件の確保という要請がある一方で、ユニバーサルサービスを提供するということがあります。このユニバーサルサービスというのは、いわばもうからない地域も出店していなければいけないわけでありますので、経営にとってはよしあしのところもあります。

 そういう前提で新しい民営化委員会も動き出しまして、そのあたりのバランスをとりながらこの新規業務については判断されることになろうかと思いますけれども、ゆうちょ銀行またかんぽ生命の新規業務への参入についてどのようにお考えでしょうか。

松下国務大臣 お尋ねの新規事業等に取り組む対応の仕方でございますけれども、まずその前提として、一定期間、民営化事業が地域の隅々にまで浸透して、郵政三事業の一体的な運営が過疎地やあるいは離島等の隅々にまで行き渡るようなユニバーサルサービスをしっかり徹底せよということでございました。

 その実態的な進め方を、地域の隅々にまで行き渡るように、つくられた地域の壁、郵便局の中にあった物理的な壁、そして見えない組織の縦割りによる壁、そういうものを取り払って一体的に新しい出発をすることが必要だというふうに考えています。そういうことを背景にして取り組んだ上で新しい事業に進んでいかなきゃいけない。

 その上で、今お尋ねの件でございますけれども、金融二社、確かに新規事業に取り組んでいくことが大事だと思っております。しかし、金融二社の株式の処分状況等をよく見なければいけないこと、もう一つは、金融二社と他の金融機関等との間の適正な競争関係等を阻害するおそれのないと認めるときに認可するということに法律でしっかりとうたわれております。ですから、金融二社から新規業務の認可申請があった場合には、改正された法律によりまして、郵政民営化委員会がありますので、その意見をしっかりと聞いた上で適時適切に判断していくということで進めてまいりたいと考えています。

山花委員 今お話がありました新規業務についてなんですけれども、この法律の審議の間、また成立した後もそうなんですけれども、特に米国の関係業界は、民間が求められる手続やルールを免除されるのではないかというようなことを言っているところもありますが、若干誤解があるのかなと思っていて、というのは、郵貯、簡保については一般の業法の規制がかかっていて、さらにその上乗せの部分について今回手をつけたということなんですけれども、何かあたかも業法のところが緩くなったと誤解されているような形での要請書というのを見ております。そこについては、国内的にもそうですけれども、対外的にも外務大臣もそのあたりはしっかりと説明していただければと思っております。これは要望でございます。

 ちょっと別件なんですけれども、今、外務省としては一つ条約を国会に承認を求めております。子の奪取の民事的側面に関するハーグ条約というものでありますが、先ほど、ちょっと過去の経歴で、昔、政務官をやっていましたという話をしましたが、これについてはちょっと誤解がある条約なのかなと思っております。

 反対される方々の中には、一つは、親権そのものを定めるのではないかという誤解をされていたりとか、あるいは、子供を連れて帰ってきています、もう三年、日本で生活しています、この条約に入ったら、これでまたアメリカで裁判をやらなきゃいけないんじゃないかとか、そもそも、条約が遡及しなかったりとかあるいは裁判の管轄を定める地域だけだということについても誤解がある条約なのかなと思っておりますけれども、このハーグ条約のそもそもの趣旨とか入る意義について、新任ではありませんけれども、外務大臣、お願いします。

玄葉国務大臣 まず、山花委員が最初におっしゃった郵政民営化法改正法について一言だけ申し上げれば、米国に、確かにおっしゃるように、この改正法の作成過程におきまして対等な競争条件の確保等が議論されて、かつ、附帯決議でその旨しっかり記してあるということも含めて、正しく理解が進むように、しっかりと説明をしていきたいというふうに思います。

 その上で、山花大臣政務官のときに特に御努力をされたこのハーグ条約、子供の立場というものが一番大切だということで、御尽力いただいていることに敬意を表しつつ、その意義ということでありますけれども、今、国際結婚というのが、二〇一〇年の数字が手元にございますけれども、約三万件、他方、離婚するケースが二万件ということで、今おっしゃったような、いわゆる子の連れ去りという問題が発生をしているというふうに承知をしています。

 これは、我が国に子供を連れ帰った、そういうケースのみならず、逆に、我が国から子を連れ去ったというケースもかなり出てきている、こういうことなんですね。ですから、子供の立場に立ってハーグ条約というのはつくられているということだと考えています。

 子の利益を保護するためにこの条約を締結すると、一つには、外国から子の返還を求めるための手続が迅速になる。そして、子の連れ去りの発生を未然に防止することが期待をされる。さらには、親子の面会交流の機会の確保に向けて支援を受けることが可能になる。あるいは、条約が未締結だという理由で、実は親が子供を連れて帰るということがなかなかできないというケースもあります。そういったことがなくなるということであります。

 おっしゃった、誤解があるのではないかというお話について申し上げれば、これは返還についていわゆる遡及適用はございません。そのことが一つであります。また、例えば一年が経過していたら、かつ、子供がその環境に適応しているということであれば、締約国は子の返還を命ずる義務を負わないということで、おっしゃるように、このハーグ条約についての正しい理解を広めていくために努力をしていきたいというふうに考えております。

山花委員 今大臣からもお話がございましたように、国内だけではなくて、在外邦人が不利益をこうむっているケースもございます。おばあちゃんに一目会わせたいんだけれどもということでの帰国が、日本がハーグ条約に入っていないからできないとか、あるいは、ある国では、そもそも親権を定める裁判で、日本がハーグ条約に入っていないということは不利益にしんしゃくするとはっきりと言っている国もありますので、いわば人権問題と言ってもよろしいかと思います。

 私は早期の締結とまた国内担保法の成立が望まれると思うんですけれども、最後に新任の法務大臣に、この問題についての所見、また所信があれば、ちょっとお聞かせいただければと思います。

滝国務大臣 ハーグ条約の趣旨につきましては、ただいま外務大臣から簡潔に、しかも十分な御説明があったと思います。

 担保法としては、やはり、取り戻しというか、それについての裁判手続を法務省としては用意しなければいけない、こういうことで法案に盛り込んでいるところでございます。

 基本的には、子供の利益のためというのが国内法でもまずは原則として立てているところでございますので、そんな立て方で法案ができ上がっているというふうに御理解をいただければと思っております。

 そして、今度の法案の中では、例えば子供を戻すのかあるいはとどめ置くのか、いずれにいたしましても、強制的に子供を連れ戻すとか、もとの国に戻すとかという問題が出てまいりますから、そういった点では、裁判の中でも強制力も与えなきゃいけない。それには、本来的には間接強制、罰金とか科料とかというような間接強制でございますけれども、それだけでも担保できませんので、新たに代替執行、強制返還だけじゃなくていろいろな、本人同士の間の、知人とかあるいは親しい人を代替人に立ててやるとか、そういうようなことも含めてこの法案では用意をしているというところでございます。

山花委員 時間が参りました。終わります。ありがとうございました。

中井委員長 この際、稲見哲男君から関連質疑の申し出があります。山花君の持ち時間の範囲内でこれを許します。稲見哲男君。

稲見委員 おはようございます。民主党・無所属クラブの稲見哲男でございます。

 質問の機会を与えていただきました皆さんに、心から感謝を申し上げます。

 私は、党震災対策本部の事務局次長として、福島県対策室長として、この十五カ月間、被災地に寄り添ってまいりました。そういう立場を踏まえて質問をさせていただきたいと思います。

 九日の土曜日に、党の代表の一人として、F1、福島第一原発の視察をする機会がございました。免震重要棟では高橋所長から丁寧な御説明をいただいて、安定化センターの職員の皆さんが必死の思いで働いておられる、このことを確認いたしましたけれども、一方で、取り返しのつかない事故によりまして、壮大なるゼロとは言いませんけれども、マイナスからゼロに向けて何と壮大なる作業が行われているのか、このことを強く実感いたしました。毎日三千人、年間で百万人の労働者の方々が、最終的には廃炉に向けての後始末に追われております。何かを新しく創造するためではなくであります。

 一方で、故郷を追われました十六万人の原発被災者の方たちだけではなくて二百万人の福島県民の方々が、将来の不安を抱きつつ政府の支援を渇望している、こういう状況でございます。

 まず、国土交通大臣にお尋ねをいたしたいと思います。

 高速道路の無料化につきまして、本年四月から新たに、被災者の方々の一時帰宅に着目をして、県内十五カ所のインターチェンジを出入りする車が無料になっております。その位置づけを十分理解しつつ、しかしながら、ばらばらになっている家族の面会にこれが大きな役割を果たしている。例えば、仕事の関係でやむを得なく仮設住宅やみなし仮設に住んでおられて、その上で、家族が避難をする山形とかあるいは新潟とか、また南下をして茨城とか埼玉とか東京の家族に会いに行かれる、こういうことにはまだまだ不公平感がございます。

 前田大臣のときに、英断で、四月の二十日に六カ所の拡大がございました。しかしながら、確かに東電の賠償費用には入っておりますけれども、現地の要望としては、東北自動車道の白河、矢吹、須賀川、それに磐越道の会津若松を除く県内、合わせますとあと八カ所あると思うんですが、何とかそこに拡大できないものか。前田前大臣から、羽田大臣に引き継ぎをしておいたよ、こういうふうなことでございましたので、新大臣の決意をお聞きしたいと思います。

羽田国務大臣 このたびの内閣改造によりまして、国土交通大臣そして海洋政策担当大臣を拝命させていただきました羽田雄一郎でございます。委員長初め、また理事の皆様、委員の皆様にも、今後ともよろしくお願い申し上げます。

 今、稲見委員からの御指摘でございます。発災以来、御努力をいただいておりますことに、心から敬意を表したいと思います。

 そういう中で、四月以降の東北地方の高速道路の無料開放は、原発事故による避難者の一時帰宅等の生活再建に向けた移動を支援する目的から、前田前大臣のときに二十一カ所のインターチェンジを対象として実施しております。この対象インターチェンジの拡大については、地方自治体等からも既に御要望をいただいておりまして、制度の趣旨を踏まえ、前向きに検討させていただいているところでございます。

稲見委員 事務方の方は、例えば宮城や岩手もあるからどう理屈が合うのか、こういうようなことをおっしゃいます。ただ、これは理屈の問題ではなくて政治家の決断の問題だということで、ぜひよろしくお願いをしたいと思います。

 次に、農林水産大臣にお伺いをいたします。

 除染について、環境省の再生事務所が中心になるというふうに思います。しかしながら、森林の除染であるとか田畑の、農地の除染については農水、林野のノウハウが大切だ、こういうふうに思っております。ぜひ十分な連携をお願いいたしたいと思います。

 例えば、飯舘村の仮置き場の着工。森林をどう一日も早く伐採して工事に着工していくのか、こういうふうな要望が非常に強くございます。この点について、ぜひ決意をお知らせいただきたいと思います。

 もう一つは、百ベクレルから五百ベクレルの農地について、作付の希望が非常に強い、こういうふうに地元からお聞きをいたしております。全量検査の体制が整いつつあると聞いておりますけれども、現地に足を運んで万全を期していただきたい、このように思います。

 大臣は早速先週も現地を訪問されたとお聞きをしましたけれども、放射能と戦う農家の方々、畜産業の方々あるいは漁業の皆さんに対して、ぜひ力強い決意をお願い申し上げたいと思います。

郡司国務大臣 新しく農林水産大臣を拝命いたしました郡司彰でございます。

 今、稲見先生から、長い間現地に入られてのお話を承らせていただきました。そして、九日の日にも、早速、宮城県そして福島県、被災地のわずかな部分でございますけれども、見させていただいたところでございます。

 そこで、先ほど御指摘のございました農地あるいは森林の除染の関係でございますけれども、これは、私ども農林水産省の中で、技術開発でありますとかあるいは実証実験等をやって、これまでも、その経過、結果を公表してきたところでございます。

 また、環境省との連携ということのお話がございましたけれども、先ほど言いました再生事務所の方に、今現在七十二名、全体では八十名の方々を、OBを含めまして派遣しておりまして、その連携については努めているところでもございます。

 また、仮置き場のことでございますけれども、仮仮置き場も含めて、これは飯舘村の方と話をいたしまして、国有林の使いやすいところ、それからまた、相当な量になるだろうということで、減容化、あるいは、そこに生えていた植物というようなものの別な用途の活用など、そういうことも含めて、今取り組ませていただいております。

 総じて、これから五百ベクレルまでのところでの作付を行う、こういうようなことが考えられているということでございますけれども、全袋検査を行うということについては、県内で百五十程度の機器を設けるなど、これからも県と相談をしながらやっていかなければいけないところがある。そのところについては、できる限りのことをやっていきたいなというふうに思っております。

 九日の日も、菅野村長ともお話をさせていただきました。本当に、議会の方も含めて、強い思いで、もう一度この村に戻って生活をするんだ、そういう決意を私どもも感じ取りましたので、それに沿うような形で、国を挙げて、総理のもとで取り組んでいきたいなというふうに思っているところでございます。

稲見委員 除染を通して未来への希望を与えること、その作業を通じて被災者の方々が現金収入を得て自立をしていくことが大切なんです。新大臣のリーダーシップに期待をいたします。ぜひよろしくお願いします。

 次に、厚生労働大臣にお伺いをいたします。

 地域支え合い事業として、仮設団地に建設をされました生活サポートセンターについてお聞きをいたします。

 昨年八月に、仮設に皆さんの移住が進む中で、阪神・淡路大震災の教訓から、関連死、孤独死や自殺者を出してはならない、こういう形で、党に仮設住宅等生活支援チームというのを立ち上げました。そして、第三次補正でさらに基金の積み増しをしていただく中で、現在、百カ所余りのサポート拠点が稼働しているのではないかというふうに思います。運営主体は恐らく六十団体ほどになるんでしょうか。

 政府のプロジェクトチームでも、十分サービス内容を検証したり、被災者のニーズに十分応えているかどうか把握をしておられるのか、お尋ねをしたいというふうに思います。

小宮山国務大臣 仮設住宅にお住まいの高齢者ですとか障害をお持ちの方の日常生活を支えるために、今委員がおっしゃいましたサポート拠点を設置しています。ここで、総合相談や見守り、デイサービス、配食サービス、地域交流サロン、また子供の放課後活動など、地域の実情に応じてさまざまな活動が行われています。現在は、岩手、宮城、福島の三県で九十三カ所が設置をされていまして、さらに十一カ所の設置が予定をされています。

 厚生労働省としましては、個々のサポート拠点の活動状況などの定期的な情報収集や現地の自治体などとの意見交換会の開催などによりまして、現地のニーズを含め、事業の実施状況の把握をしっかりと行っていますし、これからも力を入れていきたいと思っています。

稲見委員 サポート拠点は、建てたら終わりということじゃないと思うんです。私は、厚生労働省が音頭をとって、運営主体の責任者、六十団体ほどありますから、それが一堂に会して、そしてどういうサービス内容をされているのか、このことをいわば横串を刺すといいますか、そういう形で点検をしていただきたいと思っております。

 私も、いわゆる緊急雇用対策基金などがどう活用されているのかということを、仙台に皆さんに集まっていただいて、それをチェックしました。そうすると、進んでいるところとおくれているところがあって、おくれているところは、そのノウハウを持って、では頑張ろうというふうなことになるわけですね。

 だから、むしろ、先ほど申し上げた高齢者のデイサービスとか見守り、子供の遊び場、学びの場、雇用の相談、心のケア、あるいはDV、こういう被災者のニーズを掘り起こしていく、そしてそのサービスを高いところで平準化していく、こういうことについて、ぜひプロジェクトチームとしての検証をいただきたいと思いますし、党としても協力を、できるならばぜひ一緒にさせていただきたいと思います。

 その点、もう一度御答弁をお願いします。

小宮山国務大臣 サポート拠点の職員について、県が主に、県単位でお互いの情報交換や資質の向上のための研修が行われていますので、厚生労働省としても、こうした研修に協力できる団体ですとか好事例を紹介するなどの支援をしています。また、昨年十一月とことし二月に開催されました、サポート拠点を設置する市町村の職員などを対象とする復興支援の勉強会で、サポート拠点の取り組み内容などに関する情報の共有ですとか意見交換を行って、積極的な取り組みを促しています。

 そして、今委員がおっしゃいましたように、応急仮設住宅の居住環境等に関するプロジェクトチーム、これは、サポート拠点の活動状況ですとか課題について情報収集を行ったり、必要に応じて、今までこのプロジェクトチームはハード面中心に活動してきたんですけれども、このプロジェクトチームでも、こことも連携をしてまたサポート拠点の支援を進めていきたいと思いますし、今、稲見委員に言っていただきましたように、党ともぜひ連携をとりながら、ここは一番いい形で運用ができるようにということに努めていきたいと思っています。

稲見委員 次に、ちょっと福島の問題を外れまして、文科大臣に、私の課題認識といいますか、指摘だけをさせていただきたいと思います。

 十四日の午後に、インクルーシブ教育推進議連で、学校教育法施行令の改正に向けまして大きな院内集会を持つことにいたしております。先日、議連としての改正案をお持ちしましたときに、丁寧に大臣に対応をいただきまして、ありがとうございました。

 最大の論点は、障害の有無で分け隔てすることなく、ともに学ぶ視点から、第五条の一項一号、二号、これを抜本的に改正していく、そして、まずは地域の学校で受け入れるんだという形で、全ての小学生に就学通知を出す、こういうところから物事が始まらなければならない、こういうふうに私は考えております。

 そして、就学先の決定についても、十八条の二で家族あるいは専門家の意見を聴取するとなっておりますけれども、むしろ児童生徒本人あるいは保護者の意向が最大限尊重をされなければならない、このことが今回の改正の肝になると思います。

 文字どおり、障害者権利条約の批准のために障害者基本法の改正があり、そして総合支援法の改正があり、次は差別禁止法、そういう中での学校教育法の改正でありますから、ぜひその趣旨に沿ったこれからの作業をお願いしたいと思いますし、政務三役にもぜひ十四日の集会に参加をしていただきたいということで、既にお願いをしております。全国から集まる保護者の声に耳を傾けていただきたい。

 次に法務大臣、新任大臣に御質問しますので、課題指摘だけにさせていただきます。

 法務大臣、よろしくお願いします。

 七月九日に改正入管法と改正住民基本台帳法が施行されます。違法滞在、オーバーステイだけれども、真面目に働いてつつましく日本に定着をしておられる外国人の方がたくさんいらっしゃいます。在留特別許可でどのように問題解決を図るのか、戦後の大きな制度転換に当たって法務大臣の英断に期待をしたいというふうに思っております。事務レベルでの議論を積み上げておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。

 また、七〇年代に韓国に留学をして、スパイなどにでっち上げられて投獄された在日韓国人の皆さん、失意のもとに日本に短期滞在者として帰国をし、定住者、現在は永住者になっておりますけれども、物理的に期限内に帰国をできなかったという中で、いわゆる特別永住者の資格を失っております。韓国の真相究明委員会の調査で次々に真相が明らかになって、裁判で再審無罪になっております。特別永住への復活を求めておりますけれども、法的措置を含めて、今後いろいろな議論を進めていきたいと思います。

 ぜひ、滝大臣のこれからの決意をお聞かせ願いたいと思います。

滝国務大臣 今、稲見先生から二点にわたってお述べになりました。

 第一点につきましては、御案内のとおり、新しい入管法が七月九日からスタートする、こういうことでございまして、法務大臣としては、例えば不法滞在者についてはできるだけ縮減していく、これが基本方針でございますから、既に平成二十一年につくられたガイドラインに従って、いわば人道的な配慮を要する人たちについてはそんな趣旨でできるだけのことをやっていきたい、こういうふうに思っております。

 それから二番目の、韓国におけるいわば留学生が政治的な問題として日本に帰ってこられなくなった、したがって、当然再入国期限を過ぎているわけでございますから、こういう人たちについてはもとのような特別永住者として扱うわけにはいかない、これはもう原則でございます。しかし、それでも事情に応じてできるだけ在留許可をどうやってやっていくかということは、これからの課題として取り上げてまいりたいと思います。

 既に改正法の六十条でもそういう趣旨のことはうたっておりますので、その法律に従って対処してまいりたいと思っております。

稲見委員 ガイドラインの再改正と、それから、最後にありましたように、六十条でそういうことがこれまでありましたから、今後の無罪の判決に従ってぜひ善処をお願いしたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

中井委員長 この際、笹木竜三君から関連質疑の申し出があります。山花君の持ち時間の範囲内でこれを許します。笹木竜三君。

笹木委員 民主党・無所属クラブの笹木竜三です。質問を始めます。

 きょうは、日本のエネルギー、そして原子力発電について、ほぼそのことに集中して質問をしたいと思っております。

 昨年の三月十一日の大震災以降、いろいろなことが、今までされていなかった検討とかが新しくされているわけですが、私自身もいろいろなことにかかわってきました。

 例えば、ああした危機的な事故が起こった場合のリスクをめぐって国民とどうコミュニケーションしていくか、こういう問題。あるいは、およそどういう危険でも、あるいはどういう事故でも、想定しないものはないぐらい想定し切っておくことが大事だ。想定していなかったということのないようにする、そうしたことの重要性。いろいろな検討課題が出てきますし、今もそういうことは作業が続けられてもおります。

 その中で、日本のエネルギーの中期、長期の見通し、これも震災の後で大きく見直しがされているわけです。

 これは、資源エネルギー庁の資料、そしてその後、先週末ですか、先週末にはエネルギー・環境会議、そこでさらに絞り込みを行っていく、その表ですけれども、もともとの案は選択肢一、二、三、そして、数字の入っているものはこの一、二、三だけですが、選択肢の四として、これは数字は一切入っていませんが、市場の判断に委ねる、そういう選択肢もございます。

 ただ、そのエネルギー・環境会議においても、この数字の入ったものをもとにさらに議論を詰めていくという話ですし、私もこれに沿ってきょうはまずお聞きをしたいわけです。

 選択肢一、選択肢二、選択肢三とあります。

 まず、一については、原子力発電の比率、これをできるだけ早く、これは二〇三〇年を意識しているわけですが、できるだけ早く原子力発電の比率をゼロにする。あわせて、再生可能エネルギーを基軸とした電源構成にしていくんだ。再生可能エネルギーを基軸にする、三五%の割合にしていく。ほかのことはありますが、その二つについて言うとそういうことです。

 同じく選択肢の二について言いますと、再生可能エネルギーについては利用拡大を最大限に進める、これも意思を持って進める。原子力発電についてはどうか。依存度は低減させるんだ。二〇三〇年以降の電源構成は、その時点で成果を見きわめていろいろな検証もされるということでしょう。それで、本格的な議論を経て、二〇三〇年以降のものについてはその時点でまた議論をする、そういうふうになっている。原子力発電の比率は二〇三〇年で一五%。

 選択肢三は、原子力発電の比率が約二〇%から二五%、再生可能エネルギーの比率が約二五%から三〇%。

 こういう数字の入った一、二、三の選択肢があります。

 その中で、まず古川国家戦略担当大臣に質問したいわけですが、これは八月に最終の絞り込み案を決定していくということですが、どういうようなスケジュールで、どのような作業を経てやっていかれるのか、お聞かせいただけますか。

古川国務大臣 お答えいたします。

 今委員からお示しをいただいた原案は、これは総合資源エネルギー調査会においてまとめられたものでありますが、これまで、この総合資源エネルギー調査会であるとか、あるいは原子力委員会、また中央環境審議会におきまして、エネルギーミックス、そして原子力政策、地球温暖化対策に関する選択肢の原案に関する議論が行われてきております。

 こうしたものを受けまして、六月八日のエネルギー・環境会議において選択肢に関する中間的整理を取りまとめて、それに基づいて、それに従った形で、それぞれの調査会とか委員会、審議会において意見をまとめるようにという要望、要請をしたところであります。

 そうしたものを踏まえて、私どもとしては、エネルギー・環境会議としての選択肢を六月中のなるべく早い段階に取りまとめたいと思っています。その上で、七月から国民的議論を、このやり方については今検討しているところでございますが、そうした議論を開始していきたい。その上で、八月を目途といたしまして、革新的エネルギー・環境戦略をまとめていきたいというふうに考えております。

笹木委員 それで、八月にまとめていくということですが、この一、二、三、先ほど御紹介をしたとおり、例えば今現在の二〇一〇年度でいいますと、再生可能エネルギーは一一%。今新しくつくる計画じゃない、二〇一〇年度に決定した今までの計画でいいますと、二〇三〇年で二〇%にしようとしている。この下の二つの欄に比べると、選択肢一、二、三、どれも全てがかなり大幅に再生可能エネルギーの比率をふやしていく、これは共通をしていると思うわけです。

 その中で、こういう御意見もあります。これだけ大幅に再生可能エネルギーをふやしていくことが、例えば実際に経済や雇用の影響で大丈夫なのか、あるいは本当に可能なのか、そういう声ももちろんないことはありません。ただ、皆さん御存じのとおり、お隣の韓国では、グローバル・グリーン・グロースということで李明博大統領が、これからの世界経済を牽引していく大きな柱としてこの再生可能エネルギー、その産業、技術を柱にしていく、牽引力にしていく、こういうことで政策も決定し、今実行をしているわけです。

 我が国でも、この再生可能エネルギーの固定価格買い取り法案、これは別に震災が起こってから我が国が取り組んだということじゃありませんよね。マニフェストにも書き込んでおりました。これを政権交代したら必ずこの法律を実現する、再生可能エネルギーを飛躍的に増大させる、マニフェストにも書き込んでいたことですが、これが昨年に法律が成立しました。

 枝野経済産業大臣にお聞きしたいわけです。

 先ほど韓国の例も挙げました。そして、この七月からは実際に法律が実行されていきます。そんな中で、今、その促進のための取り組み状況、あるいは可能性も含めてお話をいただけたらと思います。

枝野国務大臣 御指摘のとおり、再生可能エネルギーにつきましては、七月一日に固定価格買い取り制度が施行されます。現在、ここに向けてさまざまな投資案件が検討されていると承知をしておりまして、今のところ、本年度だけでも二百五十万キロワット程度の再生可能エネルギーが導入されると見込まれております。現時点での大規模水力を除いた再生可能エネルギーが二千万キロワット弱でございますので、導入だけで一割ふえるということでございます。

 この制度がしっかり定着していくことがまず重要でありますが、同時に、立地に関する規制の見直し、これは行政刷新会議に主導権、リーダーシップをとっていただいて、各省にも御協力をいただいているところでございます。

 それから、研究開発支援。例えば福島の洋上で、海底に固定をするのではなくて、浮かせた形での大規模な洋上風力の実証も進めていくことを決めているところでございます。

 それから、再生可能エネルギー発電設備の設置に関しての税制優遇など、政策を総動員して、導入拡大に全力を挙げて取り組んでいるところでございます。

 例えば、こうしたことはエネルギー需給の国内の問題だけにとどまらず、再生可能エネルギーの拡大については世界じゅう各国が非常に積極的に取り組んでいるところでございまして、これを先進的に進めていくことは、近い将来の日本の、大きな外貨を稼ぐための産業になり得るという側面もございますので、しっかりと進めてまいりたいと思っております。

笹木委員 それはよくわかります。ぜひ促進策をどんどん充実していっていただきたいと思います。

 そこで、省エネについてお尋ねをしたいわけですが、羽田国土交通大臣にお聞きしたいわけです。

 これは、経産とか文科で昨年、節電のために、各家庭であったり各個人にメールで、例えばきょうの夕方に非常に電力の需給が窮屈になる、逼迫するということをお知らせする、それはモデル地区を幾つか決めてやったわけですが、それでかなり予想以上の、例えば二割以上とかの節電効果を上げている、そういう実証実験もありました。こういうことは個人の意識、家庭の意識に訴えてやったわけですが、あわせて地域全体とかあるいは町全体で省エネ、低炭素を図っていくということも大事だと思います。

 今、国交省で震災後の取り組みでどういうことをされているか、お答えいただきたいと思います。

羽田国務大臣 今、笹木委員から御指摘いただいたように、意識改革という中で、相当皆さんに意識を変えていただいたということでありますし、また、国土交通省は国内の二酸化炭素排出量の五割以上を占める民生、運輸部門を所管するということでありまして、ここが省エネを進めていかなければということを考えておりまして、東日本大震災を契機といたしまして、エネルギー需給の変化、地球環境問題を踏まえていくと、低炭素まちづくりは、高齢者、子育て世代の方々にとって、身近に病院また保育園などがあり、歩いて暮らせるようなコンパクトシティーをつくることでもあって、少子高齢化社会において非常に重要、こういうふうに考えております。

 こうした考えに立って、個々の建築物の低炭素化のみならず、町全体の低炭素化を図る新たな仕組みとして、都市の低炭素化の促進に関する法律案を今国会に提出させていただいているところであります。

 こうした取り組みを通じて、医療や介護、また職場、住宅が近接した都市機能を集約化していくようなコンパクトシティーの形成を目指して、低炭素まちづくりの実現を図っていきたいというふうに考えております。

笹木委員 よくわかりました。それもぜひ、国土の複軸化とか、震災に強い国土、これも非常に大事な対応ですが、こちらはさらに充実をしていただきたいと思っています。

 それで、ここで総理に認識というか決意をお伺いしたいわけですが、先ほど説明したように、一、二、三の選択肢とも再生可能エネルギーの比率を格段に高める、原子力発電所の原子力エネルギーの比率、中長期的にですが、その依存度を減らしていく、比率を減らしていく、これを意思を持って取り組んでいく。絞り込みはこれからですが、基本的にその方向は間違いないのかということを確認させていただきたいと思います。

 といいますのは、例えば、特に立地そのものの市であったり町であったり、原子力発電所が立地しているそのものの市とか郊外の町であったり、今後、原子力発電所が減ることはあってもふえることはないということで、いろいろな議論があります。雇用の問題とか経済の問題とか、いろいろあります。そんな中で、やはりこれから新しい産業の牽引力にもなるこの再生可能エネルギー、あるいは今言った省エネのまちづくり、こうしたことをそういった地域においてもむしろ率先的にやっていくことが大事だと私自身は思っているわけですが、先ほどの基本的な、意思を持ってやっていくということに間違いないか、確認をさせていただきたいと思います。

野田内閣総理大臣 中長期的にはやはり原発への依存度を極力下げていく、減らしていくということが基本的には望ましいというふうに思います。加えて、再生可能エネルギーがその分、逆にその比重を高めていって、これは当然のことながらエネルギー政策という観点もありますけれども、いわゆるグリーンイノベーションという成長戦略との絡みの中でもそうした姿勢が必要だろうというふうに思います。

 数字をどこに置くかということはまだ今中間的な整理の段階でありますが、国民の皆様にしっかり選択肢を提示して、国民的な議論を経た上で、先ほど担当大臣も答弁をしておりましたけれども、八月をめどに、国民の安心のできるエネルギーのベストミックスというものを打ち出していきたいというふうに考えております。

笹木委員 ぜひお願いしたいと思います。

 それで、次に、この間の六月八日の総理の記者会見、非常に自分の実感で国民に対してメッセージを発せられたと思っておりますが、その後で、何人かにブラックアウトというのは何だと聞かれたりしました。考えてみると、突発的な強制的な停電、これは今の若い人というのは余り経験がないんですよね。それがどれだけいろいろな事故を起こすかというのも、少しイメージが少ないのかもしれません。

 いずれにしても、突発的な停電ということで、病院であったり、あるいは輸送機関であったり、大変な問題が起こる、そのとおりだと思います。ただ、同時に聞かれるのは、約一五%不足する、この積算根拠は間違いがないのかということも、少なくない方に聞かれたりはしております。

 この積算根拠について、経産大臣、簡単で結構ですが、説明いただけますか。

枝野国務大臣 この夏の電力需給については、原発の再起動がなく、二〇一〇年並みの猛暑を想定し、定着した節電効果等についてはしっかり勘案した場合、全国でプラス〇・一%。しかし、火力発電などが故障することというのは必ず常にあり得ますので、予備率三%は最低限必要ということで、これを踏まえるとマイナス二・九%になります。特に関西電力は需給が厳しいということで、マイナス一四・九%、予備率三%を踏まえるとマイナス一七・九%となる見通しです。

 これについては、従来の電力会社と資源エネルギー庁で想定をするのではなくて、電力需給に関する検討会合及びエネルギー・環境会議のもとに第三者から成る需給検証委員会を設け、公開の場で、有識者の皆さん、産業界、自治体などの多様な関係者から意見聴取を行うなど、計六回、個別打ち合わせを含めれば約三十時間以上かけて客観的かつ精緻に検証を行ったものでございます。

笹木委員 今のお話のとおり、第三者も入れて、自治体とか専門家の方、いろいろな方にも検証をいただいた数字だということです。つまり、この可能性は大きい、少なくとも可能性は否定できない、だからそのことは避ける責任が政府にはあるということで総理が決断をされた。そのことでよく納得ができると思います。

 最後に、時間が余りないんですが、細野原子力担当大臣にお聞きをしたいわけです。

 あわせてよく聞かれる質問に、どうして早く規制庁、新しい原子力の規制の機関、組織を立ち上げないんだということを聞かれます。それで正式に安全をチェックしていったら一番いいのに、何でいつまでもだらだらと立ち上げない。

 この表を見ていただければわかるんですが、これはどちらがどうという話じゃありません。非常に国会は厳しい状況で、ことしの一月から六月八日までの閣法、政府提出の法案の成立率は二四・七%、一番下ですが、突出して低い成立。このいわゆる規制庁の法案もなかなか審議に入ることができなかった。今現在は、野党案も出していただいて、よりよいものを求めて協議が始まっているということですが、細野大臣に最後に確認をしたいわけです。

 この新たな規制の組織が設置をされて、そしてそこで、機能、いろいろな安全のチェックをしていく。暫定の安全基準、安全というのは永久に上乗せしていくわけですから、そういう意味でも暫定と言えると思うんですが、この新しい規制機関ができたときに改めて、三十項目の安全対策も含めて、新しい規制機関のもとで新安全チェックをしていく、もう一回整理を、検証をしていく、このことで間違いないですね。

細野国務大臣 今、笹木委員が御指摘をされましたとおり、新しい規制機関の発足は極めて緊急性が高い課題だというふうに思っておりまして、私どもも法案を出しておりますが、四月の二十日に自公案も出していただいておりますので、ぜひ早期に審議をして、早期成立を目指してまいりたいというふうに思っております。

 御指摘のとおり、今回、私どもが一年にわたる検討を経て定めました三十の項目も含めて、既存の基準が適切なものかどうかというのは、厳しく新しい規制機関で確認をするということになろうかというふうに思います。

笹木委員 質問を終わります。

中井委員長 これにて山花君、稲見君、笹木君の質疑は終了いたしました。

 次に、下地幹郎君。

下地委員 時間が短いので、すぐ質問に入らせていただきます。

 オスプレーの配置について外務大臣に答弁をお願いしたいんですけれども、沖縄には直接配備をしないで、本土の基地、岩国に、試験飛行を行って配備するというような考え方でよろしいですか。

玄葉国務大臣 第一義的には防衛省だと思いますけれども、今おっしゃった方向で調整をさせていただきたい、そう考えております。

下地委員 二月の九日に、大臣は私に答弁したときにも、この場所で、ちゃんと試乗をして、それから沖縄配備の検討がいいだろうという話をしたんですよね。それから、岩国が反対して、それで沖縄に直接配備という話になって、そうするとまた沖縄で大きな反対運動が出て、また今回、今の答弁どおり、岩国に一回行ってというようなことになっていると思うんです。

 森本大臣もいますけれども、とにかく、安全保障論というのはころころ変わっちゃいけないんですよね。これを配置するときに、とにかく沖縄の負担というものを軽減するために理解を得る。岩国に配置をしても十日間か十五日ですよ。沖縄は今のままだと普天間基地に十年、二十年配備しなきゃいけないわけです。そのときに、この十日間の中で信頼性を高めて、十年も二十年も配備するような沖縄に信頼性を高めてやっていく。これは私はあのときの答弁を聞いていてすばらしい配慮だなと思ったけれども、これでまた右往左往しているみたいに見えるので、こういうことがないようにしてもらいたい。

 結果的にはちゃんとやるわけだけれども、その過程がそう見られると評価が少なくなっちゃうんですよ。そのことを、ぜひ皆さん、注意してもらいたいなと思いますね。

玄葉国務大臣 今、下地委員がおっしゃったように、より安全、円滑に沖縄への配備を進めるという観点で、今回、港湾施設を含む飛行場がまさに岩国であるということで、この間、米側ともかなりの期間にわたって相談をしてきたし、必要な申し入れを行ってきたということについては、ぜひ御理解をいただきたい。

 岩国において陸揚げし、機体の整備をし、準備飛行をしということを、何とか今お願いをさせていただいているということでございますので、これは下地委員の御指摘、あるいはこれまでの御主張等々も踏まえながら、この間、慎重に進めてきた経緯がございます。

下地委員 ぜひそういうふうな方向でやっていただきたいと思います。

 それで、二つ目の質問ですけれども、総理、ちょっとこれ、私のペーパーを見ていただいていると思うんですけれども、このペーパーを見ておわかりだと思うんですけれども、なかなか国民から、消費税に対する理解が深まっていない、そういうふうな数字が出てくるんですけれども、これはなぜだと思いますか。

野田内閣総理大臣 いろいろな調査があると思うんですけれども、これは今は、賛成と、どちらかと言えば賛成だけです。一方で、反対がふえているものもあります。反対も減っていて、どちらとも言えないというのがふえているというのもありますので、世論、いろいろまちまちだと思いますが、本当に国会の動き、政党間の協議を、まさに注目していただいていると思います。

 その中で、より御理解をいただくために努力をしなければいけないのは、やはり何よりも、今回の消費税の引き上げというのは全て社会保障に充てるということであって、官の肥大化に使わない。社会保障に充てるということは、国民の皆様に還元をされるんだ、サービスとして還元されるんだということ。その意義ということと、加えて、今回、社会保障と税の一体改革でありますけれども、経済の成長も果たさなければいけないし、政治改革、行革、身を切る努力もあわせてやらなければいけない包括的な改革であるということ、その取り組みをしっかりやることの説明というものをやらなければいけないんだろうというふうに思います。

下地委員 六月の十日に県議選挙をやったんですよ。僕は一週間向こうにいて、大抵の話が、社会保障と税の一体改革の話をしますね。年金の話、どうしますか、介護の話、どうしますか、医療の話、今のまま水準を維持していかなきゃいけませんよね、子育て、どうしますかという話をして、消費税の話をして、財源の話をして、考えてみたいという人が多いんですよ。反対、絶対だめだというよりも、社会保障と税の一体改革という、こういうスキームはすばらしいね、もう一回論議してくれよという声が多いと思うんですよね。

 私は、そのことが大事だけれども、なぜそれが伸びないのかといったら、総理が今おっしゃったように、やらなければいけないことを採決前にやったらいかがかと思う。衆議院の定数削減の、八十人の削減を、何で法案も出さなくて、今の時点まで出さないのかとか、四法案、国家公務員法案とか行革法案とか、総理が意気込みを持ってやろうとしている法案があるじゃないですか、これが何でまだ出てこないのか、ちゃんと採決まで至っていないのか。そして、今の規制庁の話、これもまだできてない、こういうふうなことが最終的に理解がなかなか深まらない状況になっているんじゃないか。

 私は、その数字は、ただ単に消費税の論議ではなくて、やるべきことというものをやらなければいけない、そういう評価じゃないかなと思いますよ。

 だから、私、いつも言っているんですよ。ねじれ国会なんですよ。余り自民党と調整しちゃだめなんだよ。調整はしないで、民主党という政党はこういう考え方なんだというのを、衆議院では勝てるんだから、全部出せばいいんだよ。それで参議院に行って、自民党が否決するなら否決してみろと。そういう態度を示さないと、いつまでも調整して、ぐちゃぐちゃやっていたら、総理の支持率が上がらないんじゃないかと僕は思いますよ。

 だから、そういうふうなことを……(発言する者あり)党内調整じゃない。ねじれ国会が問題だと僕は思っているんです。

 それで、ぜひ総理にお願いしたいのは、この一つだけでも、この定数削減の八十削減は、総理、いつやるか。国民はそれを一番注目している。これをいつやるのか、そこのところだけはっきり、きょうテレビの前で国民におっしゃる、それが私は消費税に対する理解も深まることだと思いますよ。身を切る話という、今総理がおっしゃったこと、ちょっと具体的に総理、政治生命かけてやるとおっしゃっているんだから、それと同じようにこの削減の話、自民党が反対しようと、どんなことがあっても八十削減やるんだということでおっしゃってくださいよ。

野田内閣総理大臣 政治改革、行政改革、その取り組みをどこまでやるかということを多くの国民の皆様が注目をしているということを私も肌で感じています。

 行革については、各党の御理解もあって、国家公務員の給与削減等の一定の実績をつくることはできたと思います。これに満足することなく、独立行政法人改革とか特会改革とか、法案をつくっておりますので、御審議をいただいて成立を期していきたいと思います。

 一番の御指摘は定数削減でございますが、これは一票の格差の問題、違憲、違法という状態でありますので、これを一日も早く解消しなければなりません。あわせて、身を切る改革の象徴的なテーマが定数削減でございます。加えて、選挙制度改革もあわせて決着をつけるようにという御意見が各党との協議会の中では多く出てきています。

 今までは実務者レベルでの協議でございましたけれども、今は幹事長レベルの、政治判断を伴うところの段階に参りましたし、今週中に我が党の幹事長から提案をさせていただき、それに基づいて各党の合意ができるように、最終的な努力をしていきたいというふうに思います。

下地委員 私は政治は順番だと思うんですね。同じことをやるにしても、順番を間違えると理解が深まらないし、同じことをやったにしても、効果が上がらなくなる。

 私は、そういう意味では、今の、輿石幹事長が提案する、まあ総理の部下でありますから、しっかりとこの定数削減の話をまとめる。そして、調整だけをするんではなくて、民主党という政党の、野田政権の旗をしっかりと上げてやる、そういうふうなことの意思の強さを、消費税だけじゃなくて、こういうふうなところでも見せることが非常に大事だと思いますから、そのことをやっていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

中井委員長 これにて下地君の質疑は終了いたしました。

 次に、石破茂君。

石破委員 冒頭、去る六日に薨去されました寛仁親王殿下に対して、心から哀悼の誠をささげるものであります。

 つらい人、苦しい人の立場に立たれて、いろいろな現場に出向かれて、去る震災、大津波、原発事故の際も現場にお出かけになり、自衛官にもありがたいお言葉をおかけいただきました。

 国民の自衛官という催しがあって、自衛官で本当に国民のために働いている人たち、もちろんみんな働いているんですが、その中でも顕著な働きがあった人を表彰する某新聞社の行事があります。そこにも必ずお出かけをいただきました。本当にありがたい殿下であったというふうに思います。

 重ねて、御薨去に対し、哀悼の誠を冒頭ささげたいと存じます。

 内閣改造について総理に承ります。

 法案の成立率について先ほど笹木議員からお話がありました。二四・七ですね。これは学校の試験でいくと落第ですわな、間違いなく落第。四十点以下は不可ということになっている。歴代を見てもこのようなことはありません。

 何でこんなことになったのかということと改造の時期というのは、私は密接に関連するものだと思っております。

 防衛、国土交通、二大臣に対して参議院が問責を可決してもう二カ月、その間、全く動かなかった。総理の御認識は、国会の会期中にもかかわらず問責を出した野党が悪くて、かえないので審議に応じない野党がよくないので、これは野党の責任だ、こういう御認識ですか。

 これは答弁は副総理から要りませんが、私が新聞で見る限り、副総理がおっしゃったのは、何でこんな途中に出すんだ、けしからぬ。これは認識が完全に間違っていますよ。時期の問題ではありません、人の問題なんです。

 ほかの分野はいざ知らず、安全保障について造詣が深くない、そういう方に防衛大臣を続けさせていいわけがない。あるいは、特定の選挙に対して国土交通大臣の名前で支援を要請するなんぞということが許されるのであるならば、この国はもはや法治国家ではない、公職選挙法なんかあってなきがごとしである。そういう人が続けることがいいわけがないのであって、時期の問題ではない、人の問題なんです、これは。

 審議拒否している野党が悪いので、国会が空転し、このような法律成立率になっておる、そういう認識ですか、それとも、内閣改造はもっと早く行うべきであったという認識ですか。総理、どちらですか。

野田内閣総理大臣 私は、この国会の審議の中でも何回か答弁をさせていただきましたけれども、参議院という日本の一つのハウスの中で問責決議が可決をされたということは重く受けとめなければいけない。それは、そのことを踏まえて全ての閣僚が緊張感を持って仕事をする、特に問責を受けた閣僚については、今まで以上に緊張感を持って職責を果たすようにと指示をいたしました。

 受けたことについては反省しなければいけないと思いますし、反省をした中で、職責を果たせるかどうかということを模索させていただきました。問責を受けたことで開き直った発言をしたこともありませんし、それは反省を踏まえた発言をしたつもりでございます。

 ただし、改造を今回しましたけれども、御指摘いただいたような数字の問題も含めて、さまざまなやらなければいけないことを進めるために、そうした諸般の事情を考えたときに、ここはやはり内閣機能強化という形で改造しなければいけないという判断をしたということでございます。

石破委員 総理は、逃げないで真正面から答弁をされる方だと認識をしております。

 私がお尋ねをしたのは、そのような御認識をお尋ねしたのではありません。このようなことになったのは、やはり改造がおくれたからだ。私どもは、二閣僚が、ほかの分野はいざ知らず、この任にとどまることは適当ではないと判断をしたので、ほかの野党の方々とともに問責を可決したのです。にもかかわらず、二カ月近くも改造を行わなかった。結果として、法案の成立率はこのありさまである。その責任はどこにあるのですかとお尋ねしているんです。

野田内閣総理大臣 結果的には今現状そういう数字でありますけれども、私どもは、問責を受けたことに対して、厳しい反省のもとに職責を果たすという方針のもとで内閣は仕事をしてまいりました。

 その中で、問責を受けていない閣僚もたくさんいたわけでございますし、もちろん問責を受けた閣僚も含めてでありますが、大事な法案についてはできるだけ御審議をお願いしてきたわけであります。御審議をお願いしてきた中で、残念ながら十分に受けとめていただけなかったところはあったと思います。

 それはどっちが悪いかという話ではなくて、結果的には我々は進めていかなければいけない立場でございますので、そういうことも含めて総合的な判断をさせていただいたということであります。

石破委員 誰がいかなる責任を負うかということは、極めて大事なことだと私は思っています。どっちがいいとか悪いとか、そういう非難合戦をしているのではなくて、我々も心しなければならないことですが、みずからに非があればそれを率直に認めるということが、民主党が自民党に対してとか、自民党が民主党に対してではなくて、我々は誰に対して責任を負っているのだということです。国対的な議論とかいうやじを先ほどから言っている人がいますが、我々は誰に対して責任を負うのだということに常に謙虚であるべきだというふうに考えております。

 それでは、今回の改造について承ります。

 何人かの閣僚がおかわりになりました。防衛大臣、農林水産大臣は本当によくかわります。自民党時代もそうでした。これは防衛、農水に限ったことではありませんが、やはり、一つのことをやろうと思えば、相当長く在籍をしないとできません。これは、総理も閣僚をお務めでしたから、おわかりでしょう。

 つまり、役人の言ったとおりやっていればそれでいいんでしょうけれども、そうではない。何かを根底から変えていくということであれば、省内で大激論を行い、党内調整を行い、そして国会にかけ、そんなものは半年や一年でできるはずがない。

 猫の目農政とか言われるのもそうですよ。あるいは、外交、安全保障政策に軸がないと言われるのもそうですよ。しょっちゅう閣僚をかえるということは、結局何なのだ。我が国は、外交、安全保障政策、この場合は安全保障政策に特化しましょう、あるいは農業政策、林業政策、水産業政策、これに確固たる考えがないのだというふうに受けとめられかねないことであります。

 そのことについての反省は、総理、お持ちですか。

野田内閣総理大臣 これは、それぞれ政務三役が、一定期間、落ちついた環境の中で、政治主導のもとで、しっかりと職責を果たすということが望ましいというふうに思います。

 セクションによっては、担当によっては、ちょっと頻度が多くかわっているところもあるかもしれません。一方で、ただいま農水のお話も出ました。前任の鹿野先生は、菅内閣からの大臣であって、これはうちの内閣の中では一番長期でやってきた方。等々で、全て短期でかえているというわけではなくて、あくまでその都度の適材適所で判断をさせていただいております。

石破委員 それを参議院はそう判断しなかったということですね。そこはよく御認識をいただきたいと思います。

 つまり、ねじれは今に始まったことではございません。安倍内閣で参議院選挙をやって以来、ねじれは起こっております。自由民主党もいろいろな御批判をいただきました。私も、やめろと言われたことは何度もあります。しかし、問責ということにはならなかった。それは、多くの方々の御理解によるものなのかもしれない。ですけれども、問責を食らったということはどういうことなのかということに対する真摯な反省は、お互いに持つべきだというふうに私は考えておるところでございます。

 では、今回の改造について承ります。

 森本大臣、本当に私、十数年来、いろいろな御指導をいただき、議論もしてまいりました。言ってしまえば、自由民主党の理論的支柱でもあった方だと私は認識をいたしております。

 民間人として防衛の責めを負う国務大臣というのは二人目であることを御存じですか。二人目ですね。一人目は、初代保安庁長官木村篤太郎氏であります。

 よく世の中で、森本大臣が初めてだと言われますが、そうではない。防衛庁の前身である、警察予備隊は警察組織ですから、いわゆる国防の任を担うということで発足した保安庁、この初代木村長官は、国務大臣として、法務総裁から横滑りをされたということであります。しかし、防衛庁が発足する、二十九年七月一日だったと思いますが、その前に、奈良県から参議院に出馬をし、国会議員という職を得て、初代の防衛庁長官に就任をされたということです。

 シビリアンコントロールというのは国によっていろいろな考え方がありまして、これだけが正しいというものがあるわけではありません。この問題はずっと私も十数年来考え続けてきたことで、例えばアメリカ合衆国、民間人がたくさんなっています。むしろ民間人がなっていると言った方が正しいでしょう。しかし、それは、国民から選挙された大統領が指名をする、そして、上院で何度も何度も適正かどうかの公聴会が行われ、三分の二の承認があり大臣になるというのが合衆国です。

 イギリスでは、国会議員以外の大臣というのは存在をいたしません。そうですね。

 では、ロシアはどうなんだということを考えますと、私、今から十年前、防衛庁長官在任中にロシアに参りました。そのときの国防大臣は、今、大統領府長官をやっているセルゲイ・イワノフ氏でありました。彼と会談の後、ウオツカを飲みながら二人で話をしておった。石破、おまえは国会議員だな、それはいかぬのだと彼から言われたことを私は強烈に覚えている。つまり、国会議員である以上、党の利益とかそういうものを考えざるを得ないだろう、俺は違う、俺が忠誠を誓うのはたった二つだ、祖国ロシアと大統領プーチン。こういう考え方もある。いろいろな考え方があります。これが唯一絶対というものがあるわけではございません。

 我が憲法ができたときに自衛隊の存在というのは考えられなかったので、文民条項があるだけで、文民統制というものの規定はございません。その後、防衛二法というのができていろいろやってきたんだけれども、唯一憲法上根拠があるのは、国務大臣の過半数は国会議員でなければならないという憲法第六十八条です。

 この立法趣旨を総理はどのように考えておられますか。

野田内閣総理大臣 御指摘のとおり、憲法六十八条で、内閣総理大臣を含めて、国務大臣の半数以上は国会議員でなくてはいけないということになっています。

 これは直接、文民統制とのかかわりではないと思うんですけれども、ただ、文民統制とのかかわりで言うと、あえて言うと、防衛大臣だけが議席を持っていなきゃいけないということは、この憲法からは解釈できません。ということですので、私は憲法上の解釈は成り立つと思うんです。ほかの大臣は国会議員でなくてもいいというときに、防衛大臣だけは民間人じゃいけないという議論には、憲法からは解釈は結んでいかないと思うんです。

 そのことも踏まえて、後の、自衛隊法とかいろいろな運用の話が出てきますけれども、石破さん御指摘のとおり、保安庁の長官は木村篤太郎さんで、そして、その後バッジをつけまして初代の防衛庁長官になっていましたけれども、民間人で防衛の責任者になった民間人はいます。

 加えて、シビリアンコントロールを考えたときに、何よりも、防衛の予算もさまざまな法律も、この国会の中で議決をしなければ承認されないんですね。という意味で、制度的には、日本というのは、軍事よりも民主主義国家において政治が優先をするという原理は貫徹をされていると思いますので、私は、その意味からも、今回の人事に当たっては、ある意味迷いなく、疑念なく、まさにこれからの防衛、安全保障を担うべき人として森本新大臣を選任させていただいた次第であります。

石破委員 私は、森本大臣の人選に問題があると申し上げているわけではありません。憲法第六十八条の趣旨は何ですかということをお尋ねしたのであって、森本さんがだめだとかそんなことを言っているつもりはありません。

 六十八条に過半数と言ってあるのはどういう意味かといえば、教科書的には、議院内閣制の趣旨を徹底させるためだということです。むしろ本来は全員が国会議員であるべきである、しかしながら、国会議員にその人材が見つからない場合に、例外的に民間人を登用することを許容した規定である、これが教科書的解説であり、通説的見解です。つまり、先ほど、同じ議院内閣制をとるイギリスが、防衛大臣に限りません、何でみんな国会議員なんだろうかということを考えたときに、それは議院内閣制の本旨ということのはずです。

 そして、木村篤太郎さんを除いて、あるいは防衛庁長官、あるいは防衛大臣の政務三役が何で国会議員だったんだろうかということを私はずっと考えてきました。なぜそれでなければならなかったのだろう。憲法には何の規定もない。総理おっしゃるように、形式的には何の問題もありません。

 ですけれども、何で不文律的にそうだったのだろうかということを考えたときに、文民統制というからには、統制する主体と統制される客体が存在しますね。客体というのは事務次官、統幕長以下の自衛隊です。主体は誰というと、突き詰めれば国民なんですね。突き詰めれば国民。国会議員は、憲法によって国民全体の代表者であります。それはどういうことなのかというと、常にその正統性において国民から選挙されているということがある。

 総理おっしゃいますように、最高指揮官は内閣総理大臣です。しかし、そこは、内閣総理大臣個人というよりも、あの条文には内閣を代表してということになっています。ですから、ここは日本の防衛法制の一つの問題で、例えば、ある閣僚が私はそんなことには反対ですということになると、内閣としての意思決定はできないんですね、内閣を代表していますから。そうすると、迅速な意思決定ができるのかという根源的な問題はございますが、内閣を代表してということです。

 では、誰が指揮権を持っているか。つまり、こういう状況が起こった、北朝鮮からミサイルが飛ぶかもしれない、どこにどのイージスを出すか、どこにどのAWACSを飛ばすか、そういうことまで事細かに内閣全体が指揮権を行使するわけではありません。

 自衛官というのは何なのかといえば、事に臨んでは危険を顧みずと誓う、総理が一番御存じでしょう、この国でたった一つの集団です。みんな命をかけるんです。なぜ不文律的にそうであったかといえば、そこに正統性があるからであり、間違えれば選挙で議席を失うからです。

 今まで何人も防衛庁長官をやめました。でも、それは、飛行機がぶつかった、潜水艦がぶつかった、事故です。オペレーションに対して責任を負うということは今までありませんでした。誰がオペレーションに対して責任を負うかということはきちんと詰めなければいけないことだという問題意識を持っています。

 その上で、先ほど申し上げたように、余人をもってかえがたい、国会議員の中にいないということで森本大臣を任命されたということは、私は是といたします。しかし、そういう問題が根底にはあるのだ、知っている民間人の方が知らない国会議員よりもいい、そういう簡単な問題ではないのだという問題意識を私が持っていることだけ申し上げておきます。

 それでは、お尋ねをいたしましょう。森本大臣に承りたいと存じます。

 まず、沖縄の問題から参ります。

 私は、今までの議論の中で、自分に対する反省も込めて申し上げれば、軍事合理性というものがほとんど語られることがなかったというのが日本の防衛議論のすごく不幸なことであったと思っています。森本大臣のキーワードの一つは、私は、軍事的合理性と政治的要求の調和をいかに保つかということが森本大臣の一つのキーワードだと思っています。

 フルセットそろったとするならば、すなわち、ヘリ基地だけではなくて、そのほかの訓練場あるいは司令部、補給地、そういうものがフルセットそろったとするならば、絶対に沖縄でなければならないという軍事的合理性はないと以前論じておられました。

 私は、沖縄問題の本質は、日本が本来やるべきこと、日本ができることをアメリカにやらせていないか、本土でできることを沖縄に押しつけていないかということの議論を突き詰めることなしにただただ沖縄を説得しますとだけ言っても、それは絶対前に進まないと思っています。

 軍事的合理性ということを考えたときに、フルセットそろえば沖縄でなくてはならないという軍事的合理性はないというかつての見解について、森本大臣、どのようにお考えですか。

森本国務大臣 今日、日本の国の防衛というのは、東アジアの客観情勢の中で大変難しい課題をたくさん抱えており、私は先生の御指摘のように政治家あるいは衆参両院議員ではありませんが、自分が今まで人生の中で培ってきた知識をどのようにして国の防衛のために尽くせるのか、ただこの一念で総理大臣のお勧めを引き受けました。確かに、シビリアンコントロールという観点からいうといろいろな問題があると思いますが、政治が軍事に優先するというこのシステムを日本の政治制度の中で十分に確保できるというふうに私は考えております。

 今先生の御質問のフルセットでというのは海兵隊のことだと理解をしてお答え申し上げれば、確かに、海兵隊というものが日本にいて、日本を含む東アジアの抑止のために非常に重要な役割を果たしているということは、抑止の理論からして私は合理性があると思います。それがフルセットでなければならないのかということについても、本来海兵隊というのは、司令部、あるいは戦闘部隊、これを支える後方支援部隊、並びに飛行部隊がトータルとしてある地域に展開をし、それぞれの持っている機能が全体として有機的に機能して初めて海兵隊の持っている機能を十分に果たせることになるんだろうと思います。ばらばらにしたのでは海兵隊の機能は十分に機能しない。

 その意味において、あるところになければどうしても日本及び日本の周辺の抑止力にならないという考え方は、軍事的合理性は必ずしもないと思います。もし今どこかのところにそっくり海兵隊の機能全体が移転をして、それがその役割を果たすというのであれば、それはそういう方法もあるんだろうと思います。残念ながら、随分と長い間検討に検討を重ね、幾つかの候補地も探し、それがかなわなかったということであり、現在沖縄にある海兵隊がもともと日本の本土にあったことも御承知のとおりであり、本土にあったときに抑止力でなかったのかという問いかけをみずから問われれば、そんなことはなかったんだろうと思います。

 したがって、先生の御指摘にまともに答えるならば、日本及びその周辺にあるということが、日本の抑止のために海兵隊が最もその機能を果たす十分で必要な条件を果たしているということになるんだろうと思います。

石破委員 今大臣はシビリアンコントロールという観点からすれば問題があるとおっしゃいました。そのことをよく認識の上で大臣を引き受けられたということを、総理はよく認識していただきたいと思うのです、そこは。本当に悲壮な覚悟で引き受けられたんだと私は思います。だから、国会答弁が大丈夫だからとか、そんなつまらない話ではない。つまり、議員でないということはどういうことかといいますと、党内でどれだけの力を持ち得るかということなんですよ、党内でその大臣の発言が。これから先、沖縄問題あるいは日本とアメリカの役割分担の問題。

 先ほど来議論があるように、税と社会保障の一体改革の議論がまとまらないのは、野党のせいではありませんよ、党内がまとまらないからでしょう。党内で、反対、反対、大反対、増税の前にやるべきことがある、そういうのぼりをつくった人たちがいるそうですね。増税とともにやらねばならないことがあるのであって、増税の前にやるべきことがあると言ってずっといって、日本はこんな財政状態になったんじゃないですか。そんなことが許されていいのかということですよ。私たちは、だからこそ、麻生内閣のときに、二〇一一年度に税について、消費税も含む、そのようなことについての規定を所得税法の附則に書いた。そういうことです。

 党内がまとまらなくて、どうして安全保障政策が前に進められるかということなんです。党内をきちんとまとめてください。森本大臣が進められるいろいろな政策というものを本当に党でバックアップしなければ、何のために見識のある人を大臣にしたか、わけがわかりませんよ。

 そのことについて、消費税についてもこのありさまですからね、党内がまとまらなきゃ、何にも進むはずがないじゃないですか、安全保障政策が進むはずがないじゃないですか。森本大臣を国会無難答弁要員にしないでください。そのことは、日本の安全保障のみならず、日米安全保障条約というのは日米両国のためだけにあるものではありませんよ、極東の平和と安定、多くの国々がかかわっているのに、日本のことだけ考えて発言するからこんなことになるんです。党内をきちんとまとめる、そのことについての民主党を代表しての総理の見解を承ります。

野田内閣総理大臣 社会保障と税の一体改革の議論の進展で、私、野党の責任と言ったことは何もありません。当然、これはお互いが歩み寄っていくということが必要であります。その上で、まず与党内をまとめろという御指摘、これは真摯に受けとめたいと思います。結論を目指していく中でしっかりと党内の議論を集約して、そして野党の皆さんと向き合って真摯に協議をするというのは、これは基本中の基本だと思っておりますので、そのことを肝に銘じて事に当たっていきたいと思います。

 加えて、私は森本大臣を単に国会答弁用で起用したわけではございません。きちっとした、日米同盟を深化させ、この国を守るために何をすべきかということがよくわかっている方です。そのわかっている方を、この間もあえて政務三役を集めて、そのチームで大臣を支えるように改めて私からもお願い申し上げましたけれども、党内にも御理解いただけるように、当然、政治的には、物事を進めるためには政治家でないとわからない部分があります。そういうものは周りでサポートしていきながら、きちっと大臣が仕事ができる環境をつくっていきたいというふうに思います。

石破委員 もう一度、森本大臣に承ります。

 確認ですが、フルセットがそろっていれば、日本のどこかにいればいいのであって、必ずしも沖縄でなくてもいい、しかし、いろいろな条件を満たすのが沖縄であり辺野古しかないので、よって沖縄・辺野古にする、こういう認識でよろしいんですね。

森本国務大臣 先ほど申し上げたのは、まさに、海兵隊の持っている本質的な機能に立脚すれば、理屈上、そうだと思います。

 しかしながら、沖縄という地域の東アジアにおける戦略環境から考えれば、日本のどこでもと申し上げましたけれども、今の南西方面を中心とするあの地域の不安定な要因に極めて迅速に対応できる場所というのを考えると、私はおのずから地域に限界があるんだろうと思います。その点は御理解をいただきたいと思います。

石破委員 その上であえて承りますが、結局、前も議論したけれどもちっとも深まらなかったんですが、時間と距離の壁をどう考えるかということですよ。

 つまり、合衆国がエアシーバトルという構想を打ち出したのは、中国が第一列島線の内側を内海とし、第一列島線と第二列島線との間はほかのアクセスを拒否する、こういうような戦略に出ておりますから、それに対応するためにエアシーバトルという考え方が構想されたと私は理解をしている。

 だとすると、どこでもいいというお話にならなくて、今大臣は相当注意深くおっしゃったことはよくわかっておりますが、やはり沖縄でなければならないという話が出てくるのではないか。そして、代替施設の場所というのは、これまたどこでもいいという話にならなくて、結局、キャンプとの距離が三十キロ以内というのは必須の要件になってくるのではないかということについて、大臣、どうお考えですか。

森本国務大臣 アメリカの国防戦略というのは、常に国際安全保障環境を見直しながら常続不断に見直しを行い、戦略が柔軟に変更されているということは先生御承知のとおりであります。

 その中で、今御指摘のようなエアシーバトルという考え方は、確かにアメリカの一部の中で真剣に議論をされてきた考え方ではありますが、私の承知するところ、これがアメリカ国防省の正式な戦略的概念だというふうに採用されている段階には至っていないと思います。運用上の一つの構想として考え方があるということは、それはそのとおりですが、アメリカの国防省全体がエアシーバトルの考え方でアジア太平洋の戦略が組み込まれているとは理解しておりません。

 さて、この考え方と我が国の安全保障というのは、大きな関係といいますか影響力というのを受けるわけで、その意味で、南西方面を中心とする我が国の安全保障を考えた場合に、やはり、この千百キロ以上もの長い列島線を中心とする日本の防衛をどのようにこれから確実なものにしていくのかということは、我が国の安全保障と防衛の非常に重要な課題であるというふうに考えております。

 その意味で、海兵隊がアメリカ軍の持っている抑止の重要な機能の一つを果たしているということについても、そのように受けとめております。

石破委員 私は、何年も前から合衆国がフロム・ザ・シーという考え方を出していますね。フロム・ザ・シーという考え方とエアシーバトルという考え方は、恐らく一連のものだろうと理解をいたしております。

 つまり、中国の意図というものを考えないでアメリカが政策をつくるはずがないのであって、そのようないいかげんな国ではない。これはもう大臣が一番よく御案内のとおりで、だとするならば、エアシーバトルが合衆国の構想だとは認識していないということを私は初めて承りましたが、では、どうやってこれから先の日本と合衆国の役割を分担していくのかという議論をどう進めるのかということに突き当たるはずです。

 総理は先ほど、森本大臣をみんなで支えるようにと指示をなさった、党でも支えるようにとおっしゃったそうです。

 私が知る限り、私どもと一緒に森本大臣が考えてこられた日米の安全保障の深化のために必要な方策とは何なのかといえば、日米の役割分担を明確にするということ。例えば、基地の共同使用等々。つまり、お互いが使えばいいわけですね。そして、今米軍基地と言われているものも、管理権を自衛隊が持てば、そこの責任は日本国政府が負うわけですね。だとすれば、地位協定の部分的改定が必要になるはずです。外務大臣、そのはずですね。それをやること。

 そして、アジア諸国との協力を格段に向上させる。そのためには、周辺事態法の改正も必要でしょう、周辺事態法は合衆国だけが相手ですからね。周辺事態法の改正も必要だ。アジア諸国と共同してやっていこうとするならば、今みたいに、自衛隊の憲法の範囲内における活動において、その都度その都度特別措置法、その事態にしか対応できない、そのときしか対応できない時限法としての特措法によるのではなくて、一般法を定めるべきである。これも森本大臣の御持論です。

 そしてもう一つは、装備、運用面でしょう。何で自衛隊に海兵隊がなくていいんですか。島をこれだけ抱えている国で海兵隊がない国というのは、私は聞いたことがない。陸軍も海軍も空軍も、出るには時間がかかる。陸海空の機能をコンパクトに詰め込んで、迅速に行動する。それは、自国民を守ることもそうですよ、島嶼防衛もそうですよ。陸上自衛隊の相浦普通科連隊、これをさらに広げていく、ローテーションさせていく。水陸両用艦艇も必要でしょう。

 そういう装備がなければ、幾ら口先で言ったって仕方がない話で、そういう大臣の構想を、私は、自由民主党内におけるいろいろな議論をする間において、そうだというふうに支持をしてきました。そういうことをやらなければ、日米同盟を深化するといっても、ほとんど何の意味もない。

 そのことについて、総理、どのようにお考えですか。そして、内閣として、党として、全面的にバックアップされますか。

野田内閣総理大臣 日米同盟を深化させなければいけないという問題意識は、これは全く同じです。私は、昨年の三月十一日の東日本大震災発災のときの、米軍のトモダチ作戦のあの展開を見て、日米同盟というのは日本の外交、安保の基軸であるという思いをずっと持っておりましたけれども、それが揺るぎないものになりました。

 それを踏まえて、深化をさせるためにいろいろなアイデアがあると思います。一つとしては、先般の2プラス2で、テニアンも含めて共同訓練等の打ち出しをやりました。こういう努力をやっていくことが深化につながると思います。

 私は、森本大臣も、今の憲法の枠の中で日米同盟をどう深化させるかというアイデアはいろいろいっぱい持っていらっしゃると思います。そういうものが思い切って実現できるように、私も、周辺の整備をしながらお手伝いをしなければいけないと思いますし、緊密に連携をしながら対応していきたいというふうに思っております。

石破委員 私も防衛大臣を三年やりました。副長官も半年やりました。どれだけ物事を変えるということが大変なことなのかということは、身にしみてわかっているつもりです。例えて言えば、何のために防衛省改革をやらなければならないのかということについて、民主党政権ではほとんど議論が進んできていない。間違いなく進んでいない。

 森本大臣に承りましょう。田中大臣から防衛省改革についてどのような引き継ぎを受けられましたか。

森本国務大臣 前大臣から防衛省改革について私が説明を受けましたことは、御承知のとおり、二十一年度に実施された防衛省改革の中身として提言された防衛会議の法定化、あるいは防衛大臣補佐官の新設というのは、これはもう既に実施済みということでございますが、他方、その後の改革の中身として、中央組織の抜本的見直しというものについては、民主党政権として有識者懇談会を開催するなど、私もこの有識者懇談会のメンバーに入っておりましたが、改めて議論した結果、内局が省の意見集約を図る一方、大臣が内局と各幕、それぞれの専門性を生かした組織的意見を聞くことができる現在の仕組みは妥当だと判断しました。その上に立って、今日の防衛省の組織が今後とも防衛という機能を有効に発揮するよう引き続きいろいろな検討を行ってください、このような申し送りを受けたところでございます。

 以上でございます。

石破委員 珍しく答弁原稿を読まれましたね。

 いいですか。この本質は何ですか。防衛省改革の本質は何ですか。

 個の利益の総和は全体最適ではない。陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊、それがそれぞれ一番いいと思うものを足せば全体の最適になるかといえばそうではない。何のために統合運用という構想ができたか。一つのオペレーションを念頭に置きながら、陸海空はどういう役割を分担すべきかということで統合運用になったはずで、だとするならば、どのような飛行機を持ち、どのような船を持ち、どのような車両を持つかということも統合的にやらなければ、それは統合運用の実が上がらないではないかということで、キーワードは、個の利益の総和は全体の最適ならずということがキーワードだったはずです。

 今の大臣のお話を聞けば、田中大臣からは、今のままが一番いいという結論に達したという申し送りを受けたと。要するに、もうやらないという話ですね。そういうふうにおっしゃった。間違いないでしょう。そうおっしゃいましたよ、今のままが一番いい、今の組織を維持することが最適と判断したというふうにおっしゃいましたので。大臣もそういう御認識ですか。

森本国務大臣 答弁書を読まないようにお答えしようと思います。

 二十一年度以降の防衛省改革について、石破先生が主として取りまとめ、あるいは非常に重要な役割を果たされたことについては十分知っておりまして、私も有識者懇談会に呼ばれ、その旨十分な説明を受けました。この中で、今御指摘のように、特に、統幕の機能あるいは防衛力整備の一元化など幾つか重要な提言が行われていますが、私はこの中身を見て、当時、有識者懇談会のメンバーとして提言をしたときから、そもそも日本の防衛にとって一番重要なことは、つまり、一部の最適というものを総和する、トータルすると全体最適とは必ずしもならないという先生の御指摘はそれはそれとして、私の見るところ、トータルの総和をより有効に発揮させるためにまだまだやるべきことが多い。つまり、いわゆる総和というものが十分にその本来の目的を達するまでは至っていない。

 もっと具体的に申し上げると、例えば、我が国の自衛隊の統合運用というのはできるだけ強化すべきだと思います。その強化をするためにどのような方法があり得るのか。あるいは、防衛力整備の作業というものを一元化するために、あの提言が真に最善で、もうこれ以上の方法はない、つまり唯一無二の手段なのかということは、よく突き詰めて考えてみたいと思います。

 繰り返しになりますが、つまり、全体最適というものを念頭に入れ、それが最も日本の防衛に有効に発揮するように、しかもそれがシビリアンコントロールのもとで確実に機能するようにするためにはどのような手段があるのかということについては、改めて私自身が考えてみたい、こういうふうに考えているわけです。

石破委員 もう一つ申し上げましょう。

 これは答弁は要りませんが、この間、田中大臣とも議論したことですが、どうやって自衛官の若返りを図るかということは極めて重要な課題です。つまり、自衛官の平均年齢は三十五歳ですので、それが本当に過酷な有事に耐えられるか。損耗も当然計算をしなければならぬことです。

 どうやって若返りを図るかということについては、これは防衛省だけがやってもだめで、厚生労働省もそうです、国土交通省もそうです、農林水産省もそうです、政府を挙げて取り組んでいかないと、現場の自衛官たちは、幹部は充足しているんだけれども、曹士クラスは全く定数に足りていませんので、結局、負担が全部行くわけですよ。本当にそれで組織たり得るか。予備役のあり方、若年化の方向性、ぜひこれは専門家の大臣のもとで早急に実現をしていただきたい。そうでなければ防衛にならないと私は思っています。

 最後に、これは森本大臣に対して申し上げておきます。

 ベストという言い方はなさらないでください。辺野古がベストだという言い方、どこにもベストなぞというものはありません。普天間がワーストであるということがあるだけなんです。それはワースであって、辺野古に移設するというのはワースであって、それがベストという言い方がいかに地元の人たちの気持ちを傷つけるかということは御認識をいただきたい。私は、自分に対する反省として、そう思っております。

 もう一点は、沖縄を説得する。どうであれこうであれ、外国の基地が来るのを歓迎するところなんかありません、説得しようが何しようが。受益をしているのは日本全体なのです。北海道から九州に至るまで、我々がどれだけ沖縄の負担に思いをいたしているかということは、むしろ本土に対して説得すべきものであって、負担を負う沖縄に対して説得すべきものではありません。

 もう一つ、総理、何度も私は辺野古に行ってくださいとお願いしましたね。何度もしました。それは、一番翻弄されてきたのは誰ですかということなんです。どんなに苦しい決断を負って自分のところに来る辺野古というものを受け入れ、そしてまた、鳩山さんの発言によって翻弄され、一番悲しい思い、失望をしたのは辺野古の住民であって、そこをヘリコプターの上から視察するなんということはしないでください。それで人の心は打ちません。

 何で沖縄県会議員の選挙の結果はあんなだったのですか。民主党は一議席になりましたね。私たちは現状維持でした。どうして、一括交付金とかそういう多くの成果を仲井真知事が上げながらも、私は現地に行きましたよ、何て反応が冷たいのだろうと思いました。それは、人の心を打っていないからです。一番苦しんでいる人、悲しんでいる人のところへ総理みずから出向いて、鳩山さんが心ない発言をしたことによってさらに彼らを苦しめたことについて、民主党の総理大臣として、本当に現地に行って虚心坦懐にわびられ、信頼関係をつくる、そのことが第一じゃないですか。

 もう一回承ります。総理、機会を見て、早急に辺野古に行くべきだと私は思いますが、どうですか。

野田内閣総理大臣 沖縄に行って知事初め皆様にこれまでの曲折を踏まえておわびをしたりはしてまいりましたけれども、辺野古では直接、委員御指摘のとおり、またこれまで何回か御助言をいただいておりましたけれども、実現をしておりません。市長等とコミュニケーションをとることはございましたが、しっかり辺野古の地に入ってそうしたお話ができるような機会をなるべく早くつくりたいというふうに思います。

 なお、一括交付金とか振興のお話がございましたが、その問題とセットでやっているわけではもともとございませんで、それはあえて付言をさせていただきたいというふうに思います。

石破委員 総理、本質を見ましょうよ、物の本質を。なぜ一括交付金という、私は、それがあめだなんという、そういう失礼なことを言うつもりはありませんよ。ですけれども、沖縄発展への願いを込めて、我々も提案をし、やったものじゃありませんか。その知事与党に力を与えてくださいということがなぜ多くの支持を得なかったのか。

 そして、はっきり言えば、四年前は後期高齢者という言葉で民主党はお勝ちになったんですよ、県議会議員選挙。地元の県会議員に何の関係もない話でね。それが、四議席が一議席になったということはどういうことなのか。そこはよく御認識をいただきたい。

 沖縄の民主党が、森本大臣やめろと、罷免要求を出していますね。では、老朽化した機体を飛ばし続けていいのか。そんなことになりません。安全性を確認すれば、スピード二倍、搭載量三倍、航続距離四倍、このオスプレーがどれだけの役割を果たし、抑止力を強化するか。そして、そのことのリスクをどう低減するかということは、それは民主党として沖縄県連に、森本大臣の罷免を要求するようなことはやめよ、政府としてきちんと説明する、そうおっしゃるべきだと思いますが、どうですか。

野田内閣総理大臣 何よりも、大臣の真意をよく直接聞かないで罷免要求というやり方は、私は飛躍があるというふうに思っておりますので、そうした行動は慎むべきだと思います。

石破委員 また機会を見て議論させてください。

 外務大臣、丹羽大使の発言ですが、官房長官の御発言によれば、これは政府の立場とは異なるということを外務省として丹羽大使に注意をしたということですが、どこが異なるのですか。いつ、どのような注意をなさいましたか。

玄葉国務大臣 政府の見解とどこが違うのかということでございますが、やはり一つは、石原都知事の尖閣の、特に四島あるいは三島の購入の問題あるいは利活用の問題について、今政府としては、情報収集をしている、そういうコメントをしているわけでありますけれども、そのことについて予断を持ってインタビューに答えたということが一つございます。

 それと、あたかも領有権の問題が存在するかのごときといいますか、少なくともそういう誤解を与えるような発言となってしまった。もし政府の見解あるいは大使として発言をする場合は、そういったこともあわせて発言をすべきであったというふうに私としては考えましたので、そのことがわかった時点で、私の名前で注意をするように、そういうことを指示したということでございます。

石破委員 このことはぜひ、毅然たるという言葉は私、余り使いたくはないんだけれども、そういうような姿勢で臨まなければなりません。丹羽さんが本当に一流の経営者である、中国問題に造詣が深いということと領土の問題とは別のお話でございます。

 もう一つ外務大臣に承りますが、中国の一等書記官の問題です。

 このことは、国内法違反、外国人登録法違反であると同時に、明らかなウィーン条約違反であります。このことについては後ほど平沢議員あるいは稲田議員から質問をいたしますけれども、少なくとも、ウィーン条約に違反をし、我が国の国内法に違反をしている、そのことで立件もされている。それを中国外務省に対して抗議されたでしょう。だから中国は報道官が、この件については調査をするという話でした。いつまでに調査を完了するという話になっていますか。

 これは、尖閣の船長の問題みたいに、結局うやむや、いつの間にかわけわかりませんということにしてはいかぬことだと私は思っているんですね。尖閣の問題も、決着がついたのであるならば、私は決着のつけ方は大変な問題だと思っていますが、ビデオを公開すればいいんですよ。普通、漁船が保安庁の船に体当たりしますか。するわけないでしょう。九月に漁に来ますか。来るわけないでしょう。我が国の法秩序に対する明確なる挑戦であって、逮捕して、起訴して裁判にかける、当たり前のことですよ。それがかなわぬ今となっては、ビデオを公開するのは当たり前の話だと思いますがね、誰も何もおっしゃいませんけれども。

 この一等書記官の問題、私は相当に根が深い話だと思いますよ。公安調査庁、あるいは警察庁、あるいは外務省、この李春光なる人物がどういう者か知っていたのか、知っていないのか。総理がわざわざ行かれた、それは一体どういうことなのだということも考えたときに、これは相当に根の深い問題だと思っています。

 このことに対して、中国の調査の結果を早急につまびらかにするように、そしてきちんと日本政府に説明するように外務省として要請すべきだと思いますが、いかがですか。

玄葉国務大臣 もちろん、私自身、彼のことを全くわかりませんけれども、今おっしゃったように外国人登録法違反等々ありますけれども、他の刑罰法令に現時点で触れるという話は少なくとも聞いておりません。ただ、どこでどういうことがあったのかということについて、今、外務省の中でも時系列でずっと調べさせているところでございます。

 先ほどおっしゃっていただいたように、我々として必要な抗議は行って、同時に中国も調査を行うというふうにしていますので、そのことについて繰り返し求めていきたいというふうに考えております。

石破委員 このことはきちんと結論を見ませんとだめだと私は思いますよ。先ほど尖閣の例を出しましたが、いつの間にかうやむやになっちゃう、中国は絶対にそんなことしませんからね。私たちが一応抗議をした、そういうことで済むとは思わない。大臣もそんなことを思っておられるとは私は思わない。このことは、あえて言えば、しつこくきちんとやっていかないと。うやむやにしていい問題と私は思いません。

 最後に、原発の再稼働について承ります。

 動かすリスクというのは当然あります。ありますね。絶対神話に入ってはいけませんよ。絶対大丈夫なんぞということは世の中にない。そのことは昨年の三・一一でよく明らかになったことであって、動かすリスクはあります。

 テロに対してどうしますか、原発テロに対して。原発を警察が守っている、あるいはガードマンが守っている、そんな国は日本だけですよ、間違いなく。

 いろいろなリスクがある。地震、津波、老朽化、いろいろなリスクがあるでしょう。リスクはかくのごとしである、動かさないリスクはかくのごとしである。動かさないリスク、大なり、動かすリスク、だから動かすんだ。論理的にはそういう話でしょう。

 いかなるリスクがあり、いかにそれを極小化するかということをきちんと説明しないで、動かさなかったら大変なことになるなぞという話をしても、誰もそれは理解をしない。福井県知事なり町長なり、そういう方々が真摯な理解をしている、それはそうなのでしょうけれども、原発は大飯だけではありません。全ての問題がそうです。何事にも絶対ということはあり得ない。

 やる場合のリスク、やらない場合のリスク、それは何であり、どうやってそれを極小化するかということについての道筋を示さなければ、私はあらゆる政策は理解されないと思います。

 総理、原発についてどのように考えていらっしゃいますか。

野田内閣総理大臣 先般金曜日に記者会見をした趣旨は、私は、自分の軸となる考え方は、国民の生活を守るということで言いました。裏返しで言えば、リスクとどう立ち向かっていくか、どう直視していくかということであります。

 国民の生活を守るという意味での最初は、福島のような事故を二度と起こしてはいけないということであります。そのために、この一年にわたる専門家も入れた安全性のチェックをした。その中で判断基準をまとめて、そして、これはおっしゃるとおり、上限はありません、絶対安全というものはありませんが、今、暫定的ではありますが、これまでの知見の一番最大限、取り入れたものになっているということを御説明したつもりでございます。

 加えて、これから新たな知見が入ってくれば、それを生かしていくということをやっていかなければいけないし、そのためにも規制庁を早くつくらせていただければと思います。

 それからもう一つの話は、これは当然安全性をチェックするということは大前提でありますけれども、加えて、必要性の部分で、夏場の需給だけではなくて、エネルギーの安全保障であるとかあるいは経済や国民生活への影響等、需給ギャップが一五%あるときに、そういうところを考えたときにどうしたらいいかということの総合判断もさせていただいた、両方の意味のリスクを考えての判断をさせていただいたということでございます。

石破委員 時間が了しましたので、最後に申し上げておきます。

 何度も申し上げましたように、私たちは主権者たる国民の前に真摯であらねばなりません。民主党は、やらないと言った消費税をおやりになろうとしている。少なくとも国民は、上げる法案も出さないと思って投票したことは間違いない。私たちは、本来自民党、公明党の政権でやるべきことを民主党の政権と一緒になってやろうとしている。それは、時限性があり、喫緊を要するからだという認識を共有するからです。

 やらないと言ったことをやる、本来我々がやるべきだったことを他党とやる、だとするならば、国民の審判を仰ぐというのは、私は国会議員として当然持つべき姿勢だと思っております。何にも決められぬ政治、それを国民の手によってリセットを仰ぐということは、我々衆議院議員がともに持つべきものであって、党よりも国家の方が大切である、この当たり前のことを我々はよく認識したい。そのことを最後に申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

中井委員長 この際、馳浩君から関連質疑の申し出があります。石破君の持ち時間の範囲内でこれを許します。馳浩君。

馳委員 おはようございます。自由民主党の馳浩です。

 午前中は最後の質問者となりますので、よろしくお願いいたします。

 実は、石破委員が本来この後質問する予定であった問題、会期延長の問題についてから入りたいと存じますが、総理、かねて修正協議を求めておられました社会保障と税の一体改革関連七法案でありますが、実は今、同じ時間帯に別館で中央公聴会が行われております。私は、その委員会のメンバーではありますが、予算委員会のメンバーでもあり、きょうは予算委員会でテレビ入りの集中審議ということで、こちらにやってまいりました。午後はまた別館の方に参りまして、子ども・子育て新システムについての中央公聴会の公述人に対して御意見を賜りたいというふうに思っております。

 連日、総理がテレビに出て質問にお答えになる。あしたは参議院ですね。三日連続というのは異例じゃないですか。つまり、修正協議をお求めになられました。国会用語で言えば、これは合意が前提なんですよ。その認識で総理も間違いありませんね。

野田内閣総理大臣 待ったなしの課題であって、先ほど石破委員からもお話がございましたが、まさに国民のためのそういう決断をしなければいけないときだと思います。

 当然のことながら、お互いの党の立場、考え方はありますし、それぞれまとめてきたものは最善であるという考え方は持っていると思いますが、国民のためにどうやって成案を得ることができるかということを国民の皆さんはまさに注視していると思います。まさに決め切る政治を実現するために、修正の合意を目指すということは当然のことだと思っております。

馳委員 合意を前提に先週の金曜日から続いておりますが、政治生命をかける、待ったなしでやる、不退転でやる、乾坤一てきにという言葉もございましたが、今国会中にという言葉は何度も出ておりますが、今国会中に成案を得るというお言葉に間違いはございませんね。

野田内閣総理大臣 今国会中に成立を期していきたいというふうに思っております。

馳委員 国会で今国会中にということは、衆議院だけではありません、参議院でも成立をするということを意味いたしておりますが、参議院でも成立をする。今国会で成立を期すと今おっしゃいましたが、参議院でも成立を期すという言葉と同じ意味を持っているということでよろしいですね。

野田内閣総理大臣 修正協議が調い、合意をし、そして衆議院で多数をもって通過をさせていただき、成立というのは、参議院も含めて採決で御賛同いただく、多数決でまさに可決される、それが成立だというふうに思っております。

馳委員 実は、一連の今国会という発言の中で、ここまで明確に参議院でも成立を期すというふうにおっしゃったことは余り私も聞いたことがありませんでしたので、改めて申し上げます。

 会期の延長をまだ申し入れをいただいておりません。岸田国対委員長、我が党の委員長からも、どうしたんだろうなと。国会対策委員長をお務めになられたのは、野田総理、安住財務大臣、また、参議院で羽田雄一郎国土交通大臣も国対委員長をお務めになりました。私はもう十三年間国会対策をやっておりますので、大体わかっております。会期末の十日前には、与党の方から、これこれこういう事情で会期の延長をお願いしたいと申し入れをするのが慣例になっているんですね。きょうの今の段階で、国会の会期延長の申し入れはございません。

 言いますよ。報道もされておりますし、よく御存じの選挙制度改革、いわゆる一票の格差解消についてとか、公債特例法案、きょうも話題になっておりました、私も応援しておりますハーグ条約の問題、またイランのタンカー賠償契約の問題もございますね。マイナンバーの法案もありますし、安住大臣が非常に頑張っておられます年金交付国債の問題もございます。全部手つかず。原子力規制庁の問題もそうですよね。あと十日間で、スーパーマンでもない限り、マジックでも起きない限り成立しませんよ。

 会期の延長を申し入れてくださいよと野党が言うのもおかしいんですけれども、総理がそこまで政治生命をかけるとおっしゃっているから、私から申し上げたいと思います。会期の延長を申し入れてくださいよ。理由は今申し上げたとおりですよ。何で申し入れしないんですか。いかがでしょうか。

野田内閣総理大臣 一体改革だけではなく、今御指摘いただいたようなさまざまな重要な法案もあります。規制庁どうなるかとか、いろいろあります。見通しが立ちつつあるものと、まだ衆参をにらむとなかなか厳しいもの等々の精査はやはり必要だと思います。

 私も国対委員長を二回やりましたけれども、十日前に与党から延長のお話が来るという慣例のようなものは私はなかったと思います。なるべく早く……(発言する者あり)別にぬるい話じゃ全くありません。それぞれの見通しをよく精査するということが大事であって、今は、それぞれの法案のベストを尽くすこと、その段階ではないかと思います。

馳委員 私は、慣例は慣例で大体そういうものなのであって、十日以上前か一週間前かということはございますが、大体、与党が責任を持って、国家のために、国民のために必要な法案を通さなければいけないというときに、衆議院での審議、参議院での審議、定例日がございます。委員会運営を言えば、お経読みがあって、質疑があって、採決があってという手順があれば、物理的にどう考えても、先ほど私が申し上げたような、特に安住さん、公債特例法案が通らなかったらどうなるんですか。去年は、八月九日に岡田さんがめどをつけられました。何とか九月まではという話も財務省からございました。同じことをことしも繰り返すことはいけないと思いますよ。

 だから、私は野党ですが、元与党にいた国会対策を長くやっている人間としても、真摯に、やはり成立に向けて協力をし合うために、延長して頑張ろうじゃないかという申し入れをしてくださいよ。今の段階でまだないんですよ。延長の申し入れをしてください。でないと、参議院での成立を期すと総理は先ほどおっしゃいましたが、参議院での成立はできませんよ、社会保障と税の一体改革の関連七法案ですら。

 総理、延長の申し入れをしてください。

藤村国務大臣 延長のことは国会で相談をいただくということで、国対委員長と相談させていただきたいと思います。

馳委員 民主党の代表でありますし、ただ、総理という立場がございますから、ここで言えないのは私もわかっています。総理の今の表情には、早く延長してほしいな、早く申し入れをしてくれないかな、輿石さん何やっているんだろうな、城島さんと岸田さん、今ごろ話をしてくれているかなという、不安がよぎっておられます。

 官房長官、今ほど御答弁なさいましたように、修正協議、これは合意が前提なんですよ。これも踏まえて国会で十分審議をし、結論を得て実行する政治をするために、私はあえて実務的なことを今申し上げたわけであります。御理解ください。

 では、きょう本来の生活保護の問題について、今からちょっと事実確認と、また質問もさせていただきたいと思います。

 では、パネルを準備いたします。

 きょうは、テレビ中継とはいえNHKでありますので、民放のワイドショーがやるような個人名やそういうことを私は言いません。何でこうなったのかな、そして、ではどうしたらいいのかな、ここを、特に小宮山大臣とちょっと詰めた議論をさせていただきたいと思います。

 いわゆる関西の有名なプロダクションの芸人さんが、お母さんが生活保護を昨年から受けておられたんだそうです。先月、記者会見までされて、おわびというか事情説明をなさいました。その瞬間から、私はあれっと思ったんですね。いろいろ調査をしたのが、このマンションの写真です。

 ごらんいただいている左側の方、この左側のマンションの五階にお母さんはお住まいです。同じマンションは幾つもあって、実は、隣のマンションにはその芸人さんのお兄さんがお住まいなんですよ。いわゆる扶養義務を果たすお兄さんがお隣のマンションにお住まいなんですね。

 私もいいかげんなことを国会でしゃべっちゃいかぬなと思って、不動産登記情報というのも取り寄せて、確認をいたしました。平成十四年に、芸人さんはマンションを千五百万のローンでお買いになった。偉いですね、お母さんのために。このローンは、最初のローンはもうお返しになっているようでありますが、その三年後、お兄さんが隣のマンションを、これもちゃんと住宅ローンでお買いになっているんです。こちらの方、右側のマンションの十六階ですよ。それはそれで事実なんですよ。扶養義務を果たす方がお隣にお住まいであります。何とこの方、御長男は自衛官だそうですね。

 なぜ私がここまで言ってしまうかというと、家族そろってテレビに御出演なさっているんですよ、ことしの三月に。そして、かつては、このお母さん、今生活保護を受けておられるお母さんは、「おかんの塩こんぶ」という商品を発売していたんですよ。販売をされる。広告塔にまで御本人がなっておられたので、いわば、息子さんが芸人さんであるおかん、「おかんの塩こんぶ」ということで一般的にも知名度の高い方であり、そして今、このマンションにお住まいであり、隣には扶養義務者であるお兄さんもお住まいであるということ、この不動産登記情報で確認をできました。

 また、マンションをお母さんのために買ってあげた息子さん、芸人さんは、ローンの借りかえをして、最初は十万円で三十五年間、これを四年前に借りかえをして四十万円で十年間かな、借りかえをして早く、芸人さんですから、人気のあるうちに、収入のあるうちにちゃんとお返ししましょうということで頑張っておられるそうですが、ここまでが事実です。

 さあ、私が最初に感じた、あれっと思ったことを申し上げたいと思います。

 昨年、生活保護の申請をし、認定をされたときに、この事情を踏まえて認定されたのかどうか。そしてもう一つ、生活保護法に基づいて、これは違法ですか、違法ではないんですか。もう一度言いますよ、小宮山大臣。こういう状況で生活保護費を受給しておられるんです。違法ですか、違法ではありませんか。この二つ、お願いしたいと思います。

小宮山国務大臣 厚生労働省としましては、福祉事務所に問い合わせがあった個別のケースについては詳しく把握をしていないので、具体的なコメントは控えたいと思います。

 ただ、生活保護というのは、当然、利用できる資産ですとか能力、そのほかいろいろなものを活用することが前提ですので、例えば、保護を受給することを目的として意図的にその資産や収入を減少させた上で生活保護の支給を受けるということは認められないというふうに考えます。

馳委員 いや、こんなのが許されるんだったらば、私も息子名義のマンションに住んで生活保護をもらっちゃおうかなと、今、福祉事務所に問い合わせがいっぱいあるんだそうですよ。これは困ったなと思って、私はあえて、きょう、ちょっと品が悪いですけれども、こんなマンションの写真を事務所関係者にお願いして撮ってきてもらい、実は不動産登記情報も仕入れて、事実だったから、これはまずいなと思ったんですよ。

 小宮山大臣、今、お母さんは受給をしておられます。違法ですか、違法ではありませんか。もちろん、五月にもうとめられましたけれども、それは違法だったんですか、違法ではないんですか。

小宮山国務大臣 それは、今のマンションの写真なども含めて見れば、国民の方々もこれはおかしいじゃないかと思われるのは当然だと思います。

 ただ、生活保護法の場合、やはり家族との人間関係とか、このケースがというんじゃありませんが、例えばDVがあったりとか、いろいろ見られない状況などもあるために、その場合に、その方がそういう親族がいるからということで受けないことによって、一時いろいろなところであった孤立死とかがあってはならないので、そこのところはしっかりと精査をしなければいけないと考えています。

 ただ、明らかにこれは資産があるだろうと思われても、今、そこのところがきちんと対応できていない部分もありますので、これは、家庭裁判所に対する調停の申し立てを積極的に活用するために、マニュアルとかモデルケースを厚労省から自治体に対して示すことによって扶養義務の履行につなげるとか、あるいは、生活保護の法律の見直しをする中で、ここは明らかに資産があるだろうと思われる場合にですけれども、その人の方に扶養ができないという立証責任を課すような法改正ができないかということも今検討しているところでございます。

馳委員 いろいろ申されましたが、委員長、違法じゃないんですよ。違法じゃないんですよ、今のところ。受け取っておられたのは違法ではないんですよ。

 つまり、お母さん名義のマンションではないんですよ。息子のマンションに住んでおられるんですよ。息子さんはローンが、かつて十万だったけれども、今、四十万、大変だ。扶養義務者としていかがかな。では、隣にお兄ちゃんが住んでるやん。御長男は海上自衛隊の自衛官じゃないですか。ましてや、ことしの三月に一緒に家族そろってテレビに出ておられたんですよ。でも、違法ではないんですよ。そこが何なのかなというところが、やはりこれは、生活保護という制度に対して一般国民の皆さんがこれでいいのかなとクエスチョンマークを持っているところの入り口を私は申し上げているんですね。

 何度も言います。これは違法ではないんです、今。あえて具体的なことを言うと、ローンがあったら、大体残り三百万で、あと五年でローンが返し終わる、大体二万八千円ぐらいまでのローンだったら生活保護も大丈夫なんだけれども、それ以上はだめだよね、こういうふうな基準は、一応、内々的にはあるんだそうです。私も調べました。でも、どう考えても、これは抜け道なのかな、そういうふうに思わざるを得ないんですね。

 家庭裁判所の調停の話を大臣がなさいましたので、ではお伺いします。

 昨年、生活保護法第七十七条の二項に基づいて、家庭裁判所の調停は何件ございましたか。

小宮山国務大臣 今委員が御指摘の生活保護法第七十七条第二項の規定に基づく家庭裁判所への申し立ての件数につきましては、最高裁判所に確認をしたところ、把握している限りでは、昨年度はゼロ、制度創設以降二十四件という、制度創設以降も非常に少ないということがございます。

馳委員 さあ、ここからが、もう十年間、児童虐待防止法の改正などで、議員として、政治家同士として制度論をやりとりしてきた、小宮山さんと言った方がいいかもしれませんが、私との間の政治家としての議論を進めたいと思います。

 児童虐待防止法の問題は、もともとは児童福祉法の横出し、上乗せの法案だったんですよ。ただ、それでは、余りにも事案が凶悪で、信じられないような事件、事故が相次いだので、議員立法でやったんです。そのときに、たまたま私は自由民主党の代表者であり、小宮山さんは民主党の、当時野党でありましたけれども、対応をされて、小宮山さんの提案したことはほとんど法律として、また民法改正にまで至ったという経緯をまず申し上げた上で、小宮山大臣、個人の問題、プライバシー、家庭の問題、家族の問題に、どこまで行政が、福祉事務所が介入すべきなのかどうか。

 まず、この理念的な問題について、きょうの生活保護の一事例ではありますが、国民のクエスチョンマークに対してお答えいただきたいと思います。

小宮山国務大臣 児童虐待の議員立法の経緯も御説明をいただいて、ありがとうございます。本当に必要な法案については、議員同士が立法していくということも必要だと思います。

 生活保護についても、本当に必要な方にはしっかりと受け取ってもらうということをまず押さえるということが大事だと思うんですけれども、その上で、やはり国民の皆様の信頼を受けるということからしても、今の仕組みの中で足りないチェックの部分については、今、資産などについても銀行の本店で一括してできるようにするとか、さまざまな工夫をしていますけれども、まだそれについて足りないところについては、ぜひお知恵もいただきながら、今、審議会の方でもいろいろな、例えば年金と生活保護の水準の問題とか、最低賃金も含めてどうすると、今までは、制度ごとに目的が違いますから違って当然ですという答弁を私もしましたけれども、それではまずいということで、今そういう研究会も立ち上げてやっていますので、いろいろな面で、先日も茂木委員からの御指摘を総理も受けとめるというふうに言われましたので、ぜひ、御意見も伺いながら、適切な対応ができるように努力をしたいと思います。

馳委員 小宮山大臣、私、この間も委員会質問でちょっと申し上げたじゃないですか。もう長いつき合いだから言いますけれども、必ずすぐ最初に結論からおっしゃるんですよ。

 そうじゃなくて、私がきょう言っているのは、議論を積み重ねましょうということで、まず生活保護の申請が上がってくる、当然それに対する審査がある、最終的にはそれを認定して受給を決定するという三つの段階があるというのは、どう考えても当たり前ですよね。これを担当しているのはケースワーカーさんですよ。ケースワーカーさんが、受給者がふえている現状において、大変な負担を抱えておられるんですよ。とするならば、大臣おっしゃったように、必要な方には必要な受給をしなければいけませんので、だから、ここを何とか工夫できないかなというところで、私がきょう申し上げたいのは、民生委員さんなんですよ。

 全国の自治体の実例も含めて、生活保護の申請や審査、受給決定、決定した後の、もうこれで十分、大丈夫ですよね、いわゆる相談、見守り、こういうことも含めて、民生委員さんがかかわっている事例はあるんじゃないんですか。あるんですよ。

 大臣、例えばどこでしょう。どういうふうなかかわり方をしておられますか。ちょっと教えてください。

小宮山国務大臣 例えば札幌市では、生活保護の申請時に民生委員に意見書の記載を依頼したり、民生委員の協議会にケースワーカーが参加して意見交換をしたりしているということで、民生委員さんが積極的に関与している例は自治体であるというふうに承知をしていますので、そうした活用ももっと図っていく必要があると思います。

馳委員 ちょっとまた児童虐待のときの話に戻りますが、あのときには、通報があったら安全確認しなきゃだめだよね、最初は努力義務だったのを、小宮山さんが強くおっしゃるから、義務にしたじゃないですか。さらには、立入調査もできるようにしましょうね、立入調査違反には罰則もかけましょうねとなりました。

 さらに、施設に保護されている子供に対するストーカー行為、つきまとい行為は罰則にしましょうねということもやりましたよね。さらにさらに、我が国の法律で初めて親責任という概念を児童虐待防止法の第四条に書き込んだことにも小宮山さんは随分と努力をなさいました。

 そして、いよいよということで、これはどうしようもないということで臨検制度まで入れましたよね。憲法で言うところの住居不可侵、いやいや、子供を守るためには壁をぶち破ってでも入るんだ、福祉事務所の職員だけでは大変だから警察官の援助、同行も入れましょうねと。最終的には昨年の法改正で成りましたけれども、親権の一時制限、私は一部制限も入れたかったんですが、まずは、最長二年間ではありますけれども、親権の一時停止措置も入れました。

 これは、全部議員同士で話し合い、現場の声を聞いた上で、専門家の話も聞いた上で練り上げて、全会一致で決定した法案であり、措置であります。

 この生活保護の問題も、抜け道があったり、ずるしたりするような人がもしかしたらいるんじゃないのかなと、みんな疑って見ているんですよ。だから、まずは、この民生委員さんの取り組みに対して、またその民生委員さんの労に報いるためにも、ケースワーカーさんを支えてあげるための対応を、やはりこれはもう決定して、実行していく段階じゃないでしょうか。

 大臣、いかがでしょうか。

小宮山国務大臣 ケースワーカーの方に、先ほども申し上げたように、もっと協力をしてもらう仕組みをつくるということは私も必要だと思います。

 このため、厚生労働省でも、福祉事務所と民生委員の連携が図られるように、例えば、福祉事務所が必要に応じて民生委員に申請書に関する情報提供を求めて調査を行うことですとか、民生委員などの関係機関との連絡会議を福祉事務所が開催することなどについて、地方自治体に通知をしています。こういうような民生委員さんとの連携も通じまして、きめ細かなやり方をすることで国民の皆さんの信頼を得るということ、これは必要だと思います。

 ただ、前段のお話の、児童虐待防止法の議員立法のときは、子供の命を何としても救いたいということで、あらゆる、公権力も強制的に入ることも含めて、プライバシーの城であるチェーンカットをするかどうかということも、二回の法改正にまたがってやりました。

 ただ、この生活保護の問題というのは、生活保護を受けなければ命にかかわるかもしれない人を救わなければいけないという、何か、人の命ということからいうと虐待と逆のケースということもあるので、そこのところが、全く同じという形で論じることはできないのではないかと私は思いますので、その点だけは御理解をいただければと思います。

 ただ、国民に信頼を受けなければ、今、二百九万人も、そして多くのお金を使っていることなので、なるべく信頼をいただけるように、御指摘の最初のケースのような、明らかに皆さんがおかしいと思うケースをどうやったらチェックできるかということで、冒頭申し上げたような、結論が先で申しわけありませんけれども、時間があるかと思って必要なことを先に申し上げましたが、そういうこともしています。

 そうした中で、どうやったらいいかということは、病気の方や高齢な方や、最近は精神を病んでいらっしゃる方も大変受給者には多いということにも配慮をしながら、どうしたら信頼できる制度に生活保護ができるかということは、ぜひお知恵も拝借したいというふうに思います。

馳委員 総理、今年度で三兆七千億円でした。今後、二〇二五年、あと十五年後ぐらい、どうも五兆二千億円ぐらいまで今の状況だと膨らむぞという試算まで実は出てきておりまして、これはある部分、財政再建と、また国民としてのモラルという部分と、あるいは家族観、扶養義務というのは生活保護法第四条に規定されておりまして、最優先で、生活保護より前に扶養義務を果たしなさいよというふうになっておりますね。第七十七条で、費用負担ができる場合にはちゃんと返還しなさいよというふうに、仕組みはちゃんとなっているんですよ。だけれども、現状、先ほど申し上げたような実態なんですよ。

 将来の財政再建という観点も含めながら、国民としての意識、モラルの問題ということも考えながら、生活保護の、きょうはちょっと実務的な話ばかりしましたが、総理としてもぜひ、この問題は、国民としてやはり皆さん関心を持ち、問題点が多く、必要な人に本当に行き渡るようにしなけりゃいけませんよというメッセージを出していただきたいんですが、いかがですか。

野田内閣総理大臣 真に困窮している人のために私はやはり生活保護というのはあるんだろうと思います。そういう制度自体はやはり必要だと思います。

 ただ、先ほど馳委員が御指摘をいただいた事例は、たまたま有名な方の御家族の流れであるからいろいろなことがわかってまいりましたけれども、そういうことが氷山の一角なのか、そうじゃないのか、あるいは、こういう事例が次々と明らかになるにつれて、逆に、抜け道を利用しようとする動きがあるのかどうか、そういうこともよく注意しなければいけないだろうというふうに思いました。

 基本は、生活保護の裏づけとなっているのは国民の税金です。国民の税金によって賄っているということでありますので、真に困窮している人のためには必要な事業だと思いますが、そういうことに何となくつけ込む動きがあるならば、やはり不正受給対策等々、しっかりやらなければいけないし、何よりもやはり就労自立支援等々、これもやらなければいけないし、今話題になっている医療扶助の適正化、こういう問題の、生活保護全般の見直しをやらなければいけない。それから、生活保護とあわせて、生活困窮者対策をどうするかという議論も深めていかなければいけないということを、先ほど来の御議論を聞いていて強く感じた次第であります。

馳委員 総理からもちょっと言及いただきましたが、松原国家公安委員長、いわゆると私は言います、いわゆる生活保護ビジネス、もしかしたら暴力団の資金源になっているんじゃないのかな、こういう疑念があるんですよ。

 国家公安委員長として、警察として把握している生活保護にかかわる不正問題について、どこまで把握をしていて、そして摘発をしているのか、このことについての報告をいただきたいと思います。

松原国務大臣 生活保護費の不正受給が暴力団の資金源とならないよう、警察においては、暴力団員による不正受給の取り締まりを徹底するとともに、関係機関と連携しつつ、生活保護からの暴力団排除対策を推進しております。

 こうした積極的な取り締まりの結果、各都道府県警察の暴力団対策部門においては、昨年、合計三十六件、被害総額約五千九百万円に上る生活保護費の不正受給等事件を検挙したほか、関係機関との連携の結果、暴力団による生活保護が合計五百七十六件排除されたものと承知をいたしております。

 暴力団による生活保護費の不正受給を防止することは暴力団対策上有益であることから、引き続き、違法行為の取り締まりと暴力団排除を徹底するよう、警察庁を督励してまいる所存であります。

 以上であります。

馳委員 最後で申しわけありません。

 松原大臣、警察庁としてということは、多分よっぽどの悪質な事案であると思うんですが、日常対応しておられるケースワーカーあるいは福祉事務所の方々は、ある意味でいえば一般人の方です。今後とも、地元警察は、福祉事務所とも連携をとりながら、情報の共有をしながら、こういったことに対処いただきたいと思いますが、松原大臣、いかがでしょうか。

松原国務大臣 委員の御趣旨も含めて、今回、今申し上げましたが、これは全体の不正受給の今明らかになっているものの過半数が暴力団にかかわるものでありますので、そういったことを含め、委員のおっしゃったことも含めて進めていきたい、このように思っております。

馳委員 終わります。どうもありがとうございました。

中井委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

中井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。

 この際、稲田朋美さんから関連質疑の申し出があります。石破君の持ち時間の範囲内でこれを許します。稲田朋美さん。

稲田委員 自由民主党の稲田朋美です。

 六月六日、寛仁親王殿下が御薨去されました。謹んで心より哀悼の意を表します。

 総理、大飯原発の再稼働について、総理は国民の生活を守るために必要であるとおっしゃいました。福井県では、国策を担って、原子力政策を担って今までやってきましたが、原発事故以来、政府の対応のぶれや遅さで大混乱に陥っております。例えば、菅総理の突然の浜岡原発の停止、ストレステストの導入、脱原発宣言。また、原子炉の寿命について四十年と決めたかと思えば、六十年、そして四十年に戻す、再稼働についても一夜にしてその方向を転換されるなど、本当に翻弄されていると言っても過言ではないと思います。

 そんな中で、福井県、特に原発立地地の経済、雇用は大きな打撃を受けております。総理、国民の生活を守るとおっしゃるのであれば、その観点をそういった地元の経済、雇用についてもお示しいただくべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

野田内閣総理大臣 先週の金曜日に記者会見をさせていただきました。

 そのときに国民の生活を守るというお話をしましたけれども、二つの意味があって、一つは、二度と福島の事故のようなことは起こさない、そのために安全性のチェックをするということで、これは一年以上かかってさまざまな対策を講じてきたし、さまざまな知見も集めてまいりました。そのための判断基準をつくりまして、福島と同じような地震や津波が来ても炉心損傷に至らない、そういう意味での安全はきちっとチェックする。ただ、安全には上限がございませんので、これから新たな知見がまた入ってくるならば、また、規制庁がちゃんとできるならば、その上での基準はまたつくっていって対応しなければいけないと思います。

 もう一つは、やはり福井県が、原発立地県として、特に関西の消費地に向けて電力を安定して供給してきた、そして四十年間原発と向かい合ってきた、そのことについては常に敬意と感謝の気持ちを持たなければいけないと思っております。

 二つ目の国民生活を守るという意味で、エネルギーの安全保障であるとか、あるいは電力価格が高騰しないように、国民の経済、生活を守る、あるいは中小企業等々の経営等も勘案しながらの判断でございますが、その中には当然、福井県における国民生活、経済ということもよく勘案をしていく必要があるというふうに考えております。

稲田委員 これは福井県だけでなくて原発立地県全ての問題だと思います。そして、単に経済と雇用の問題だけでなくて、現地で原子力の安全性を担ってきた多くの企業があって、その技術が今、維持できなくなる、そんな危機にも陥っております。これは政府の責任として支援いただくことをお願いして、次の質問に移ります。

 TPPについてですけれども、郡司農水大臣、大臣は一貫してこのTPPについて反対の立場から発言をし、活動をし続けてこられました。民主党のTPPを慎重に考える会の副会長でもあられましたし、また、大臣になられてからも、TPPが国益に合致すると判断するのは難しい、また、来週からのG20までの参加の是非を判断するのは時期尚早であるというふうに述べておられます。

 農水大臣にお伺いをいたします。

 現時点で大臣のお考えは、TPP参加に賛成できない、そしてG20で参加表明すべきでないということでよろしいでしょうか。

郡司国務大臣 お答えをしたいと思います。

 まず、六月五日の会見というようなことだろうというふうに思っております。翌日の新聞を私も何紙か読ませていただきましたけれども、今のようにおとりいただいた新聞がございました。一方で、逆に、TPP容認かというような内容で書かれているものもございました。

 私が一貫して申し上げているのは、もう少し長い文章であったこともありますけれども、いずれにしましても、昨年の十一月まで党の方での議論というものもございました。その中で、そうしたことも参考にしながらだというふうに思いますけれども、政府の方でその時点での考え方というものをまとめて、当時のAPECの方に出向かれたというふうに思っております。

 その内容は、御存じのことだというふうに思いますけれども、参加交渉に向けて関係国との協議を行い、その情報の開示に努めて国民的な議論を行っていく、このようなことでございまして、私もそのことについては同じような考え方でございます。

 そして、ただ、農林水産大臣という立場からすれば、これまでの農林水産省の試算等で、関税がゼロということになれば、大変に厳しい国内的な予測がされております。それは、ただ単に対策を何も行わないという前提やら、あるいは全世界に対して関税がゼロとなる、そういうものでありましたけれども、何がしかの影響はあるだろうというようなことから、そのような形で物事を見てまいったことも事実でございます。

 しかし、今現在、申し上げましたように、最終的にメリットやデメリットや、あるいは懸念をする材料がこれまでの情報開示あるいは議論の中でどこまで払拭できるのかどうかということを議論しているところでございまして、最終的に総合的な国益の判断ということについて、その点の段階についてはこれからの問題だというふうに考えているところでございます。

稲田委員 大変わかりにくい御答弁なんですけれども、これからの判断だということは、現時点では、大臣は国益に合致するとは判断できないと明確に述べておられるわけですから、私は閣内不一致のような状況になっているのではないかというふうに思います。

 総理、このような状況のもとで、国論も二分をいたしておりますし、我が党から六項目の提言を出しております。このような状況のもとで、来週からのG20、TPP参加について踏み込んだ発言をすることを考えておられるんですか。

野田内閣総理大臣 まず、閣内不一致という御指摘がございましたけれども、今大臣が答弁をしたとおり、政府の方針どおり、TPP交渉参加に向けて今協議に入っているところでございますが、その協議で得られる関係国の考え方等々、しっかり情報収集に努めてそれを情報開示し、国民的な議論を行いながら、最終的には国益の観点から判断をするということを押さえた御発言でございますので、これは閣内は一致をしているというふうに御理解をいただきたいというふうに思います。

 その中で、G20で云々ということでございますが、まだ関係国と協議をしている最中でございますので、現時点で、いつまでに何を言うかということが今予断を持って言える状況ではございません。

稲田委員 私は、今の野田政権でTPPに踏み込む、TPPというのは非常にいろいろな角度から、単に農業だけの問題ではなくて、さまざまな論点があります。そんな中で一番懸念をいたしておりますのは、野田政権で一体何を守るのかというその判断基準が、国益というだけで具体性が全くないんです。我が党からは六項目の判断基準をお示しいたしておりますけれども、そういった具体的な基準が全くない中で、何を守るのか全く決めていない中でTPP交渉に参加していくということは、どんどん譲らされて、結局、国益を失うことになると思います。

 五月に総理はオバマ大統領とお会いになりましたけれども、大統領から、自動車、保険、牛肉と具体的な提案をされて、何の反論もせずに帰ってこられたわけですよね。総理は、APECの前に、美しい農村を守るだの、分厚い中間層に支えられた社会をつくるだのとおっしゃっていましたけれども、結局何の具体性もない。そして、何を守るのか決めていない段階で、G20でTPP参加に踏み込んだことを言われるとか、今、参加交渉をされるということは非常に問題であるということを私は指摘しておきたいと思います。

 総理、今回、問責二閣僚の更迭に加えて、私たちが不適格大臣として追及してきた小川法務大臣そして鹿野農水大臣を更迭されました。どうしてこの二人の大臣を交代させたんですか。

野田内閣総理大臣 今、更迭という言葉を使われましたけれども、私は更迭をしたという考えではございません。あくまで内閣の機能強化の一環で改造人事を行わせていただきました。

 それぞれ、例えば、今お名前が出ましたけれども、鹿野大臣におかれましては、菅内閣発足当初からずっと農水大臣を務められまして、大変安定的に職責を果たされてきたと思っておりますので、決して更迭ではございません。小川大臣におかれましても同様に、懸命に職責を果たすべく努力をされてきたというふうに思っております。

稲田委員 全く不誠実な答弁だと思いますね。

 小川大臣についても、予算委員会また法務委員会で、小川大臣の法外な弁護士着手金八千万、そしてその八千万を公正証書に巻いて、勝った原告からの強制執行を妨害するような行為をされていて、破産管財人も問題にしているということをちょうど追及しているさなかだったんです。

 鹿野農水大臣についても、きょう後ほど質問いたしますけれども、対中不正輸出事業そしてスパイ疑惑などさまざまな問題があって、そしてその追及を逃れるために総理が交代させたことは誰の目にも明らかなんです。それを機能強化というふうに言い逃れされていること自体、総理は非常に不誠実だと思います。

 また、法務大臣は、民主党政権になってから三年弱の間で何と七人目なんです。そして一月に不適格者として落第の烙印を押して、法務大臣、防衛大臣、平岡大臣そして一川大臣が交代されて、その後任者である小川法務大臣そして田中防衛大臣がまた不適任者ということで交代をする。次々と不適格者を大臣に据えては、また不適格な大臣に交代していく。これはまさしく総理の任命責任の問題だと私は思います。

 さて総理、小川法務大臣は、退任の記者会見で、検察内部の身内に対する捜査について指揮権を発動しようとしたけれども、総理にとめられたんだとおっしゃっております。なぜ法務大臣の指揮権発動をとめたんですか。

野田内閣総理大臣 たしか改造の前の週だったと思います。小川法務大臣から法務行政一般についての御報告がございまして、その中で、特に、国民の不信が残念ながら強まっている検察行政のあり方について、大変問題意識を持っていらっしゃるお話はございました。

 ただ、小川大臣から指揮権という言葉は出てきておりません。そのやりとりの中で、私自身は、一般論でありますけれども、きちっと会見であるとかあるいは国会での答弁の中で、まさに検察の自浄能力といいますか、そういうものをしっかりと伝えて、一般的な指揮監督という意味において襟を正すようなお話をさせていただいた記憶がありますが、明確に個別の事案についての指揮権の話というのを具体的に出された記憶はございません。会話全体が十分ですが、そのほかのまた法務にかかわる議論をさせていただいております。

稲田委員 それはおかしな話ですよね。小川法務大臣は、退任時に、そんな自分が発動もしなかった指揮権発動のことについて潔くなく、もう本当に長々と説明されているんですよ。総理からとめられた、残念だ、本来ならこういう検察内部の捜査が甘いとか処分が甘いということは検察庁法十四条の指揮権発動の典型のような事例だったのに、総理からとめられたんだと明確に述べておられるんです。

 ということは、大臣がうそをつかれたということですか。

野田内閣総理大臣 だから、会話自体はあったんです、検察行政全般に。ただ、指揮権に突っ込んだ話だという受けとめ方を私はしていません。だから、言い足りなかった部分、また次の週に会いたいと思ったのかもしれませんけれども、私の記憶では、指揮権のやりとりを打ち消したとか、とめたとかという認識では受けとめておりません。

稲田委員 水かけ論になるからこれ以上質問をいたしませんけれども、でも、今の総理のお話を伺いますと、まず、退任のときに、指揮権発動について、自分がしなかったこと云々をお話しになることも極めて不適切ですし、しかも、今の総理の話を前提にいたしますと、総理が言ってもいないこと、とめてもいないことをとめたとおっしゃった。これはまさしく、どちらがうそをつかれているのかわかりませんけれども、野田政権の、何というんでしょうか、非常に問題な点だと私は思いますし、この指揮権については、また法務委員会等でも議論をしてまいりたいと思います。

 さて、鹿野大臣そして筒井副大臣による対中農産物の不正輸出疑惑について質問をいたします。

 この問題は、私が二月の予算委員会でも質問をいたしました。また、今回、自民党の調査団の一員として、問題の北京の展示場にも視察に行って、また新たな事実が判明したところでございます。

 事案を簡単に説明させていただきます。

 日本側の首謀者は、鹿野前農水大臣、筒井農水副大臣、そして田中公男氏です。田中氏は、鹿野グループ、民主党衆議院議員の公設秘書で、鹿野大臣により現役の公設秘書のまま農水省の顧問に任命をされ、今は協議会の代表におさまっておられます。

 何をしたかといいますと、協議会を通して中国に輸出をすれば検疫は要らないんだ、また、展示場で展示品として販売するから検疫は要らないんだと虚偽の事実を宣伝して、農水省の全面バックアップを売り文句に会員から二億円以上のお金を集めたという詐欺的な事業をやったんです。そして、この事業を最初から主導していたのが、今スパイ疑惑の取り沙汰されている中国大使館の一等書記官、李春光だったのです。

 日本側は、この李春光の口車に乗せられてしまい、中国政府からは昨年の十二月に、たとえ展示物であっても特別扱いはしない、検疫は要るんだと農水省に通告してきていたにもかかわらず、李春光の検疫は要らないという証明書だけを頼りに、検疫なしでお米など農産物を輸出したんです。その結果、中国の質検総局により農産物は廃棄処分されるという事態になり、この詐欺的な不正輸出事業は頓挫いたしました。

 総理、この前代未聞の、農水省、政府を巻き込んだ不祥事を明らかにするため、本日、当委員会に参考人招致を求めていました。鹿野氏、筒井氏、田中氏、三名の参考人招致を求めておりました。ところが、理事会で拒否をされたんです。

 総理、当事者がいなくて事実解明はできないと思いますが、いかがですか。

中井委員長 総理が答弁するようなことではないと思いますが……(稲田委員「総理の見解をお伺いいたします」と呼ぶ)

 委員会の理事会では議論がございまして、民主党側からは、当日十分論議をして、参考人の招致が必要かどうか、それも判断させていただきたい、こういうことがあって、きょうは参考人なしでやるという流れになっております。総理がそれを知っているかどうかも全然僕らは知りません。

 したがって、今のことは、言われて、十分お説を、農水省や関係者と議論をしていただきたいと思います。

稲田委員 私は、当事者がいなくて、この問題をここで事実解明できると思いますかと総理の御意見を伺ったわけであります。

中井委員長 疑惑があるかどうかも含めて、この委員会で、あなたの質疑で、皆さんに納得させていただく、その結果、判断をするということではないでしょうか。

稲田委員 委員長がそうおっしゃるのなら、質問を変えます。

 今まで、この問題、衆参の予算委員会で質問をし、そして総理に対して、ぜひ政府で事実関係の調査をしてくださいとお願いしたんです。そうしたら、総理の御答弁は、この国会の質疑を通じて、当事者が質疑に答えて事実を明らかにしていくとおっしゃった。その当事者である鹿野大臣、そして筒井副大臣を結局交代させたのは総理なんですよ。国会での追及を逃れるために、この二人を交代させたとしか思えないんですよ。

 ですから、その点についての総理の御意向を聞いたわけであります。

中井委員長 承りました。

 それでは、野田内閣総理大臣に答弁をいたさせます。

野田内閣総理大臣 かつて、委員会で、政府として調査すべきではないかという御指摘をいただいた記憶はございます。

 そのときも申し上げましたけれども、当時の農水大臣、副大臣、私は、国会できちっと答弁をしていたと思っておりましたので、その必要はないと思っておりました。今も、その必要性については、これからの質疑によりますけれども、現時点ではございません。

 そういうことを踏まえて、きょうの理事会で、そういう理事間での御議論があったのではないかと推察をいたします。

稲田委員 それでは、郡司農水新大臣にお伺いをいたしますが、この件について鹿野前大臣から引き継ぎを受けられていますか。また、どのような内容で引き継ぎを受けられていますか。

郡司国務大臣 鹿野大臣から、この件についてという特別の引き継ぎはございませんでした。ただし、五月の三十日でございますけれども、前大臣のときにおきまして、この問題についての調査チームを立ち上げた、その中で調査をしているというようなことについては伺っております。

 また、鹿野大臣から、引き継ぎの際ではございませんでしたけれども、このようなことでお伝えしてくださいということを言われたことがございます。

 その内容は、中国だけではなくて、これから日本の農林漁業にとって輸出というものはきちんと考えてやっていかなければいけない問題である、そのことをまず大前提に取り組んできたのだということを訴えておられました。その中で、私自身がということでおっしゃっておりましたけれども、今言ったような思いの中でやってきた、そのことをきちんと引き継ぐような形で、これからも輸出の促進ということに意を尽くしていただきたい、こんなことを言われたということはございました。

稲田委員 大変無責任なことですね。総理も総理なら、前農水大臣も前農水大臣ですよ。

 総理、この問題が発覚して国会で追及されるから、その追及逃れにこのお二人を交代し、この委員会にもいない。こんなことで、総理がおっしゃっていた国会での事実解明ができるとはとても思えないんです。きちんと調査をしていただきたいと思います。

 松原国家公安委員長にお伺いをいたします。

 このスパイ疑惑の中国大使館一等書記官ですけれども、どのような犯罪の嫌疑で書類送検されたんですか。

松原国務大臣 お尋ねの件については、五月三十一日、警視庁が、在日中国大使館の一等書記官として本邦に滞在していた者を被疑者とする公正証書原本不実記載、同行使及び外国人登録法違反事件を東京地方検察庁に送致したところであります。

 被疑者は、過去に我が国に滞在していた際に外国人登録していたことを奇貨とし、外交官として赴任した後も、従前から所持していた外国人登録証明書を所持し続け、平成二十年四月に、都内の区役所において、真実は外交官として中国大使館に勤務しているのにこれを秘し、職業、勤務所などに係る内容が虚偽の確認申請を行い、外国人登録原票に不実の記載をさせるなどしたものであります。

 以上です。

稲田委員 国家公安委員長、報道によりますと、この中国大使館一等書記官は、人民解放軍総参謀部第二部に所属していたという報道がございますが、人民解放軍総参謀部第二部とは何をする部署ですか。

松原国務大臣 お尋ねの人民解放軍総参謀部第二部については、中国の情報機関の一つであり、我が国を含め海外における情報収集活動のほか、各種活動を行っているものと承知をいたしております。

稲田委員 玄葉外務大臣、この中国大使館一等書記官は、日本で違法な外国人登録証を使って銀行口座をつくり商業活動をしていたということなんですが、外交官が商業活動を接受国ですることは許されているんですか。

玄葉国務大臣 これはウィーン条約第四十二条だったと思いますけれども、四十二条に基づいて、そのようなことは禁止されて、そういうことは行ってはいけないということになっております。

稲田委員 総理、今の国家公安委員長の答弁、そして玄葉外務大臣の答弁を総合いたしますと、中国大使館一等書記官の李春光は、ウィーン条約に違反をして外交官にあるまじき行為をし、そしてまた、日本の国内法に違反をして書類送検をされ、かつて人民解放軍の諜報部に所属していた人物なんです。

 総理、李春光は中国のスパイとみなしていいんじゃないんですか。

松原国務大臣 人民解放軍総参謀部第二部がどのような部署かという質問に対して、一般論としてお答え申し上げたところであります。

中井委員長 松原君、ちょっと今のは、質問と答弁の中身が違うな。スパイかどうかというようなこと。

松原国務大臣 そのことは現在においては承知しておりません。あくまでも、先ほど申し上げたような外登法違反等で送致をしたものであります。

稲田委員 総理、この方は、この李春光は中国のスパイだというふうに認識していいんじゃないんですか。総理の見解をお伺いいたします。

野田内閣総理大臣 今問われているのは、外国人登録法、それから商業活動をやっていたということですからウィーン条約違反、現時点ではこのことまでがわかっているということでございますので、明確に諜報活動等々をやっていたかどうかは、それは背景、出身母体のことは御指摘のとおりだと思いますが、そこまで今断定できるというお話ではないというふうに思います。

稲田委員 新農水大臣は、農水省の機密書類がこの協議会に流れていたことを認めているんです。私は今のような、総理のような甘い答弁、そんな甘い考えだと、日本はスパイ天国になってしまうんじゃないかと思います。

 外務大臣、この件について中国に必要な抗議をしたと先ほど答弁されておりますけれども、謝罪を求めておられますか。

玄葉国務大臣 まず、先ほど国家公安委員長が答弁をしたように、外国人登録法違反と、たしか原本不実記載、同行使の容疑ということですか、そういうことで、現時点で他の刑罰法令に触れる事案は、まだ報告を少なくとも受けていないという状況です。

 とはいえ、帰国をしてしまったわけでありますから、そのことについて抗議をしておりますし、また、中国側としては、スパイであるということについては否定をしておりますけれども、調査をするということについては、中国側もしなければならないというふうに考えておりますから、先ほども石破先生にも申し上げましたけれども、繰り返しこのことについては抗議をし、申し入れをしていきたいというふうに考えております。

稲田委員 だから謝罪は求めていないということなんですよね。しかも、先ほどの答弁でも、必要な抗議をしていますとか、不明確なんです。

 やはり、外交、そして外務大臣は自分の国の立場をきちんと明確に相手国に伝えないと、私は国益を害すると思います。領土もそうです。歴史認識もそうなんです。

 例えば、中国の丹羽大使が、尖閣の購入に関して、日中関係に重大な危機を招くと、まさしく、日本の政府の立場とも違う、国益を損なう発言をなさいました。先ほど石破議員からの質問に答えて、注意したと。注意で済むんですか。この尖閣というのは、我が国政府が所有をし、そして、実効支配をすることによって領有の意思を諸外国に向けてきちんと明確にしなければならない。

 その意味におきましても、この中国大使の発言は見過ごすことができない。更迭すべきだと思いますが、外務大臣、いかがですか。

玄葉国務大臣 先ほど石破先生にも申し上げました点において、不適切な発言であったというふうに考えております。したがって、私の名前で注意を行ったということでございます。

 言うまでもなく、尖閣につきましては我が国固有の領土であります。歴史的にも国際法上も疑いはない。現に有効に我が国はそれを支配している。そして今、尖閣のうち、いわば四つは既に国有地でございます。残り四つはいわば国の賃貸借、こういうことになっているわけでありますけれども、その賃貸借の方の所有権の問題だということでありまして、そういう意味で、領有権の存在がまさにあるかのごとき発言を行ったということで、注意を行った。

 更迭すべきではないか、こういうお話でありますけれども、丹羽大使が深い反省の意を表しているということを私としては踏まえて、現時点でそのようなことは考えていないということでございます。

中井委員長 外務大臣、済みません。さっき、李春光のことで抗議をしたと御答弁なすったと思うんですが、稲田さんは、抗議もしていないと先ほど繰り返して言われたけれども……(稲田委員「いやいや」と呼ぶ)抗議はしたんだな。

玄葉国務大臣 はい。

稲田委員 ですから、そのような不明確なというか、弱腰の外交では全く通じないんですよ。領土問題というのは、摩擦なくして解決しないんです。そして、自国の立場を明確に発信しなければならない。

 尖閣は、もちろん国が所有することも大事ですけれども、実効支配もしなければならない。そして、この問題について日中関係に重大な危機を招くなどと言う中国大使を更迭しなければ、我が国の領有の意思の立場を中国に対して全く発信することができない、私はそのように思います。そんな姿勢では、領土も守れないし、第二、第三の李春光が日本で暗躍することになると思いますよ。

 さて、岩本副大臣、農水省の機密文書が協議会に流れていると新大臣も認めておられるわけですが、そもそもこの情報漏えいについて、誰の指示で調査チームが立ち上げられて、スケジュールを決めて、どんな調査をして、現時点でどうなっているのか、お答えください。

岩本副大臣 お答えをいたします。

 五月三十日に、鹿野前農林水産大臣の御指示で調査チームを設置いたしました。その後、郡司新大臣になりましても、引き続き調査をしてくれという御指示をいただきまして、現在調査中でございます。一日も早く正確な結果を御報告を申し上げたいと思います。

 現段階では、昨日まで、調査をしなければならない方が海外に行っていらっしゃって、昨日、御帰国されてすぐに調査チームで御本人とお会いしまして、調べさせていただいたところであります。

 また、さらに、今まで情報が漏れていたという四つの文書以外にももっとあるのではなかろうかと、徹底的に調べろと私も指示をしまして、その方に、事務所内にある全ての文書を、お手を煩わせないようにこちらで全部やりますからということで、お願いを昨日させていただいたところであります。

 そのところ、きょうではなくて、もう数日待っていただけないかという御返事があったものですから、その返事を現在待っている、これが現在の状況でございます。

 以上でございます。

稲田委員 そもそも、農水省の機密文書の情報漏えいについて、情報漏えいした疑いのある鹿野大臣のもとで調査チームを結成して調査を開始したこと自体が問題ですし、初めは四日に調査結果を出すと言っていたのに、いまだに調査結果が出ていないというのは、もうこれは農水省の恥の上塗りをやっているんです。

 総理、これは、農水省内部ではなくて、外部の調査チームをつくって早急に調査すべきだと思いますが、いかがですか。

野田内閣総理大臣 今、岩本副大臣からお話がありましたとおり、事実解明に向けて今取り組みをしているところでございますので、その状況をまずは見守りたいと思います。

稲田委員 ですから、内部の調査では私はだめだということを申し上げているんです。

 このスパイ疑惑以外に、一連の不正輸出は、もう一種の詐欺のような様相を呈しております。

 農水大臣、質問通告をいたしておりますので簡単にお答えいただきたいんですが、今、中国に日本からどれぐらいお米を輸出しているのか。震災前の二〇一〇年の数字をお答えください。また、薫蒸処理なしでお米を中国に輸出できますか。

郡司国務大臣 これまでの数量でございますけれども、昨年は、御存じの……(稲田委員「二〇一〇年を聞いています」と呼ぶ)二〇一〇年は九十六トンでございます。昨年ゼロ、そして二十四年、今は四月までで十四トンでございます。(稲田委員「薫蒸」と呼ぶ)

 薫蒸については、中国は薫蒸なしでは今のところ入らないというような現状でございます。

稲田委員 この薫蒸処理というのは、中国から、日本のお米にはカツオブシムシがついているので特別の殺虫処理をやらされているんです。その費用は、お米の値段の二〇%とも三〇%とも言われているんです。

 ところが、この協議会を通せば、この面倒な、費用のかかる薫蒸処理が要らないと言って多額の入会金と年会費を集め、さらに、展示場の売り上げの一%がマージンとして協議会に入ることになっていました。

 筒井副大臣は、この不正な輸出で、お米を当面二十万トン、将来的には百万トン輸出する、こんな夢物語を言ってお金集めをしたんです。今、震災前でも九十六トンなものを、二十万トン、百万トン、薫蒸処理なしで輸出できると言って会員からお金集めをしたんです。

 新潟の地元新聞である新潟日報によりますと、上越市の男性は、ことしに入り、筒井副大臣の東京事務所を訪れた際、協議会の代表に声をかけられ、協議会を通せば中国への米の輸出で必要な殺虫処理が免除されると誘われて、四月に会員になり、入会金と年会費二十五万円支払ったと言われているんです。筒井副大臣の事務所の中で立派な詐欺が行われたんですよ。

 農水大臣、こういう被害に遭った会員が全国で何人ぐらいいて、どれぐらいお金が集まって、今、残金はどれぐらいあるんですか。

岩本副大臣 それも含めまして、現在調査中でございます。

稲田委員 ですから、ここに筒井さん、鹿野さんを呼ばなきゃいけないんですよ。筒井さんは、そらで委員会で数字をおっしゃっていたんですよ。その方を呼ばないで事実解明できないんです。知っていらっしゃるんです、筒井さんは。何人集まって、幾らあって、中国にどれだけ払わなきゃいけないか、みんな知っているんですよ。

 では、農水大臣、お伺いをいたしますけれども、会費を振り込んだ会員らに金銭の返金を検討されているそうですけれども、何の根拠で、国民の税金を使って、この二億円以上の会費、返金するんですか。

郡司国務大臣 今、稲田委員からありましたような返金についての検討ということをしているということは、私は伺っておりませんし、しておりません。

 百社以上ということでございますが、今のところ四十九社が加盟をして、実際には三十社がお金を納めたというところまではわかっておりますけれども、今のことについて検討しているということはございません。

稲田委員 どうして、大臣、そんなうそをおっしゃるんですか。

 大臣は、新潟日報のインタビューを起こしたものがありますけれども、皆様方が農水省をよりどころとしていろいろな思いを寄せていたということがあるとすれば、そのところの検証をしっかりして、きちんとお返しするようにしたいとおっしゃっているじゃないですか。なぜ今さら、返金を検討していないとおっしゃっているんですか。お返しするようにしたいとおっしゃっているじゃありませんか。

郡司国務大臣 新潟で筒井副大臣がおっしゃったというようなことでございましょうか。(稲田委員「いや、大臣ですよ」と呼ぶ)

 いや、私は、その返還ということについて言及をしたということはないというふうに思っております。

稲田委員 これは記事にもなっていますし、インタビューメモがあるんですね。そこで、郡司大臣が、きちんとお返しできるようにしたいとおっしゃって……

中井委員長 いつのニュースですか。

稲田委員 六月六日ですね。

中井委員長 どこのニュースですか。

稲田委員 新潟日報です。

中井委員長 郡司農水大臣、インタビューを受けたの。

郡司国務大臣 個別のインタビューではなくて、六日でありますと、定例の会見があったときにその方がいらっしゃったのかもしれませんが、今言いましたように、基本的にはこの事業は民間のものでございまして、税金を払ってお支払いをするというような考え方は私どもでは持ち合わせておりませんし、そのような発言をした覚えはございません。

 ただ、今、どのようなことが、どのような何社で、どのぐらいの金額でということのお尋ねに対しては、調べた後で、現在がどうなっているかということについてはお答えをするというようなことは申し上げたというふうに私は自分では記憶をしております。

稲田委員 もう記事になっているわけですから、それがうそであれば、新聞の訂正をなさるべきだと思います。

 また、農水大臣、国会質疑の中で筒井副大臣は、中国に支払う金額は年間二億円だと。しかも五年契約。単純に計算すると、十億円になるんですね。中国側は、日本政府、農水省と契約したと思っているんです。

 一体、この十億円、誰が払うのか、また、中国に幾ら支払うことになっていて、現在債務不履行になっているのはどれぐらいあるのか、お答えください。

岩本副大臣 委員御指摘の点なんですけれども、農水省といたしましては、今まで、そういう民間団体に、補助金ですとか、そういう協会に一切出しておりませんし、今後ともそういうことをする考えはございません。

 ただ、先ほどの記事、それは間違いだと思いますけれども、それは訂正をきちっと農水省としてさせていただきます。

 というのは、農水省が支援しているからということで信じて協力金なり支払われた方々に対して、代表が返す必要ないという発言をされたのが記事になったんですね。それに対して、それはやはり、そういうお金を集めた方々に対して、責任を持って対応するのが協会、団体の役目であろうということを発言されたのがそういう記事になったんではなかろうかというふうに思っております。

中井委員長 副大臣、十億円の件は。

岩本副大臣 十億円の件に関しましても、私どもも調査中でございまして、先ほども申し上げましたけれども、その代表者が昨日まで海外に出張しておりまして、昨日帰国されて、私どもも接触をさせていただいて、調査をさせていただいているので、もうしばらくお時間をいただきたいと思います。そんなに長引かせてうやむやにしようなんて、これっぽっちも思っておりませんので。

稲田委員 筒井さんはよく御存じなんです。

 しかも、この後、平沢委員が質問しますけれども、鹿野大臣は保証までしているんです。十億円とも言われる多額の金額、そして債務不履行になって、これは日本政府の信用の失墜の問題だということを認識いただきたいし、もっと言うと、野田総理はこの展示館を視察されて、もっと早くオープンしてくれることを願っている、そして、日中首脳会談でも持ち出して、それを筒井副大臣は宣伝し、協議会も会員集めに総理の視察を最大限利用しているんです。総理も利用されているし、この不正な輸出疑惑に加担をされているんです。

 私は、その責任を総理はとられるべきだと思いますし、何よりも、この不正輸出自体が民主党の政権の本質だと私は思うんです。一言で言うと不道徳なんですよ。展示場で売れば検疫が要らないと。そして、二十万、百万トン、結局、政権交代したら、二十兆、四十兆と言って人々の関心を引いて、票集めをした。集めたのは票かお金かの違いだけなんですよ。

 こういう点を指摘させていただいて、私の質問を終わります。

中井委員長 この際、平沢勝栄君から関連質疑の申し出があります。石破君の持ち時間の範囲内でこれを許します。平沢勝栄君。

平沢委員 自由民主党の平沢勝栄でございます。

 引き続いて、総理を中心に聞かせていただきたいと思います。

 まず、総理にお聞きしたいんですけれども、総理は六月十八日からメキシコのG20に出席されるわけですけれども、その後にブラジルのリオで環境サミットが開かれるわけです。それで、ほとんどの国の首脳はそちらの方に行かれるわけでございますけれども、二十年前の一九九二年に同じリオで環境サミットが開かれたときに、先進国で出席していなかったのは日本とイタリアだけだったんです。日本は当時、宮沢総理でございまして、宮沢総理は、PKOの法案とか何かがあって行けなかった。そして、イタリアは首相が空席だったんです。だから行けなかったんです。

 総理は、メキシコの後、リオに行かれる御予定なんでしょうか、どうなんでしょうか。お答えください。

野田内閣総理大臣 G20は、これは国会の御理解をいただいて、メキシコですが、出席をさせていただきたいというふうに思います。世界経済の問題等の議論があります。

 リオ・プラス20も、これも大事な会議だとは思うんですが、ちょうど国会の会期末に当たってしまいますので、しかるべき人をしっかりと代表として送りたいというふうに考えております。

平沢委員 これは環境問題を世界じゅうで考える会議で、日本は環境に不熱心と思われることのないように、総理にはしっかり考えていただきたいなと思います。

 そこで、今の稲田議員の質問にも出ました丹羽中国大使の件でちょっとお聞きしたいと思うんです。

 丹羽中国大使が世界の権威あるファイナンシャル・タイムズにしゃべったことが個人的見解ということを政府は言っていますけれども、新聞のインタビューに応じて個人的見解なんということはあるはずないじゃないですか、家の中で奥さんにしゃべったというのなら個人的見解というのはわかりますけれども。

 誰ですか、これ、個人的見解なんて言っているのは。外務大臣なんですか、官房長官なんですか、誰なんですか、個人的見解と言っているのは。大使が外国の新聞のインタビューに応じて、これは個人的見解なんですか。もう一回答えてください。

藤村国務大臣 個人的見解を述べたと言ったのは、私の会見でありました。七日の午後の会見でございました。

 そのときに、私はまず、これは政府の見解と全く違うことを大使がおっしゃっているということで、私が大使に何かを確認した上で申し上げたわけではありませんが、それはしかし、大使の全く個人的なお考えを述べられたんだなというふうに受けとめました。

平沢委員 どう考えてもおかしいですよ。外国の新聞にやったら、これは日本政府の公式見解になってしまうんです。日本の公式見解と思われちゃうんです。それに対して、外務省の局長から注意、こんな処分がありますか。あり得ませんよ、これは。すぐに本国に呼んで、まずは事実を聞いて、その上でしっかりした処分をするというのが当たり前じゃないですか。今の政権、何を考えているんですか。しっかりしてくださいよ。

 そこで次に、今、稲田さんが言われた中国の農産物の関係をお聞きさせていただきたいと思いますけれども、私は、この問題、稲田さんも最後の方に言われていましたけれども、民主党政権の本質がよく出ている。二つあるんですよ、特徴は。

 一つは、できもしないことをできると言う。今度は、鹿野前農水大臣それから筒井前農水副大臣、検疫なしに中国に農産物を輸出する。これはできっこないんですよ。これをできる、できる、できると言って、みんな会員を集めて、金を集めて、そして送ろうとして、実際送って、向こうで廃棄処分になっているんです。できもしないことをできると言っている、これがまず特徴。

 もう一つの特徴は何かというと、政治主導と言っているんですよ。これだって政治主導でやったんですよ。鹿野農水大臣それから筒井農水副大臣、この二人が主導してやったんです。役人の方、きょう来ていますけれども、役人の方はちょっと気の毒だ。政治主導でやって、結局、事業は破綻した。そして、大きないろいろなツケを残しているんです、これから聞きますけれども。

 こんなできもしないことを言った。それで、総理もこれに加担している。そして、政治主導でやって破綻している。どう思われますか、総理。

野田内閣総理大臣 先ほど来、私が加担しているというお話がありますが……(平沢委員「それは後でやります、ちゃんと」と呼ぶ)それはやってもらわないと、その言葉を使われるとちょっと困りますので、それについてはお尋ねがあればお答えをしたいというふうに思いますが、私は、農水大臣、そして農水副大臣の思いは、震災の年でございましたので、風評被害等もございました。日本の農産品、食品等をできるだけ輸出したいという思いが根底にあったというふうに思っております。

 その事業というか、その思い自体は私は必要なことだと思っておりますので、その中で何かいろいろな行き違いがあったのかもしれませんが、その行き違いについては、お尋ねがあれば関係者がお答えをしたいというふうに思います。

平沢委員 思いはみんな一緒なんです。やり方がめちゃくちゃなんです。だから、これから質問しますので、よく聞いてください、総理。

 まず、この中国に農産物輸出の問題は、鹿野前農水大臣、筒井さん、それから民主党の衆議院議員の元公設秘書の田中さん、この方は農水省の顧問になっているんです。農水省の顧問になって、そしてその後、日本から農産物を輸出するという協議会をつくって、その協議会の代表におさまって、この三人が主役なんですけれども、そこに、先ほど来出てきている李春光という中国の、警視庁から出頭要請があったけれども急遽帰った、この四人が主役でこのプロジェクトは進められたんです。

 そこで、警察庁でいいですが、この李春光という元一等書記官、急遽中国に帰ってしまったこの一等書記官、先ほど人民解放軍の総参謀部出身とかという話がありましたけれども、日本での彼は何と言っていたかというと、河南大学出身と言っていたはずなんです。警察庁、これは知っていますか。

西村政府参考人 お尋ねの元中国大使館員につきましては、河南大学出身、あるいは人民解放軍外国語学院出身というように、対外的に経歴を使い分けていたということについて承知しております。

平沢委員 使い分けていたというより、日本では河南大学出身と言って、人民解放軍の出身ということを隠していたんですよ。おかしいでしょう、これは。これ一事とってもおかしな人物なんですよ。

 そして、この人物とずぶずぶの関係にあったのが鹿野さんであり、筒井さんであり、樋口民主党衆議院議員の秘書であった田中さんであり、そのほか多くの民主党議員がずぶずぶの関係にあったんです。

 枝野大臣、この李春光元一等書記官とは面識がありますか。事務所に出入りしていたことはありますか。

枝野国務大臣 何か報道が幾つかあることは承知しておりますが、もちろん、政治家をやっておりますから、不特定多数のたくさんの人が議員会館とか事務所とかいろいろなところへ来ていますから、その中にいたかどうかは存じ上げませんが、事務所で働いていたりとか、事務所で継続的なボランティアをしていたとか、そういった事実は全くありません。私自身、今回の報道が出るまで、こうした人物の顔と名前、存じ上げておりません。

平沢委員 では、週刊文春で、本多平直さんというのはあなたの政策秘書をしていた方でしょう、今首相補佐官をやっているでしょう、本多平直さんは何と言っているかというと、政経塾からの依頼で枝野事務所で面倒を見たのは事実ですと言っている。これは報道が間違っているんですか。

枝野国務大臣 少なくとも、私は全く承知をしておりません。

平沢委員 よくわからないんですけれども、枝野さんは知らないけれども、事務所は知っているということですか。だって、本多平直さんは言っているんですよ、そういうふうに。

枝野国務大臣 私自身、当時、その報道されている時期に該当する時期から継続して我が事務所におりますスタッフ全員に確認しましたら、顔、名前、承知をしていないということであります。

平沢委員 承知していないということは、いなかったということですか、それとも、いたけれども忘れちゃったということですか。

枝野国務大臣 先ほど申しましたとおり、可能性の問題としては、事務所とか、それからいろいろな各種行事には不特定多数のたくさんの方がいらっしゃいますから、そうした方の中にそうした方が入っていた可能性は否定しません。

 しかしながら、継続的に事務所に出入りをしていたというような方であれば、記憶、認識はあるはずでございますので、そうしたことはなかったと思います。

平沢委員 この李春光元一等書記官、いろいろなところに出入りしているんですけれども、民主党の議員の中には、ここに名刺のコピーがありますけれども、中国人を秘書にしている方もいるんですよ。それは、よっぽどバックグラウンドをしっかり調べないと、情報が全部出てしまいますよ。私たち国会議員の公設秘書は、日本国籍がなきゃだめなんです。ところが、私設秘書も公設秘書と同じような仕事をしているんです。情報は同じように接するんです。そこに中国人の秘書の方もいる方がいるんです。

 官房長官、今、機密保全法をつくると。機密保全法は大事だと私は思いますよ。機密保全法は大事だけれども、まず民主党の機密保全法をつくるのが先じゃないですか。どうですか、官房長官。

藤村国務大臣 まず、今御質問の中でちょっとおっしゃった、法律の明文にはないが、公設秘書である者は日本国籍がなければならないとされているというふうに聞いております。ただし、公設の政策秘書は、受験の資格の中に国籍条項があるということでございます。

 それから、今民主党の中にとおっしゃったので、これは党の話として受けとめたいと思います。

平沢委員 日本はスパイ天国と言われて、情報がどんどん出ているんですよ。やはりまずは政治家がしっかりしていないで、役所にお願いして、役人にお願いしてもしようがないじゃないですか。ですから、ここはしっかりしてもらいたいなと思います。

 そこで、次の農産物の輸出の問題に入りますけれども、農産物の輸出、これは、もう一回復習をさせていただきますと、日本から農産物を中国に輸出する。この図を見てください。輸出するに当たって、今、全農、JAは輸出していますけれども、米なんかについては、いわば薫蒸処理、カツオブシムシがついているとこれに対する殺虫処理とかを中国から要求されて、それを全部やって送っているんですよ。

 ですから、そういった検疫とか税関とかいろいろな面倒なことがあるけれども、そういうのを全部フリーパス、特別扱いして送ってあげますよ、そのためにはこの協議会に入ってくださいと。もちろん会費とか入会金は取りますよ。しかし、入ってくれれば、要するにそういったフリーパスで中国に輸出できますよ、こういうプロジェクトなんです。これは大変にいい試みですよ。

 しかし、全農、JAさんは、こんなことがあるはずない、こんなおいしい話があるはずないと。自分たちは薫蒸処理というのをちゃんとさせられて送っているのに、検疫も中国でちゃんと受けて送っているのに、こんなおいしい話があるはずないと言って、全農さんも誘われたけれども、全農さんは断っているんです。ところが、できもしないことを一生懸命やって、そして進めたわけです。

 そこで、次に出てくるのは、その過程で、これを進めるに当たって、まず筒井副大臣は覚書というのを結んでいるんですよ。

 この覚書というのは、ここに書いてありますけれども、日本の農産物等の中国への輸出拡大に当たっては、中国側の受け入れである中農集団が積極的に努めるということはいろいろ書いてあるんですけれども、最後に何と書いてあるかというと、日本国農林水産省と中国側は、「所掌及び利用可能な予算の範囲内で、本覚書に記された事項の早期実現のために相互に協力することを確認した。」こう書いてあるんです。副大臣が、中国の一企業、国営企業とはいえ一企業の代表とこんな文書を交わしているんです。

 外務省、こんな例はありますか。副大臣が外国の一企業とこんな文書を交わすなんという例はありますか。

杉山政府参考人 ただいまの委員の御指摘にお答えいたします。

 本件、筒井副大臣が署名された覚書、このような形で企業との間で副大臣あるいは行政機関の責任のある方がこういう形の覚書を結ぶという例は、全くないかどうかはわかりません、いろいろな形で文書をつくるということはあると思いますので、全部排除するということはできませんが、通常、一般的なものだというふうに外務省として考えているわけではございません。

平沢委員 ちょっとよくわからない答弁ですけれども、あり得ないでしょう、こんなことは。こんなことはあり得ないんですよ。

 問題なのは、次なんです。鹿野さんがこういう文書に署名しているんです。これに何と書いてありますか。

 この四の(二)を見てください。要するに、中国で日本の農産物を販売するための展示館を借りるということが前に書いてありますでしょう。五千平米のもの、そしてそれを、期間は五年から十年借りると書いてある。そして、四の(二)には、その下の方に、常設展示館を開設する経費、日本側が賃料を含め開設に伴う経費を負担することを基本とする、こういった趣旨のことがこの文書に書いてあるんです。

 そして、一番最後を見てください。「日本国農林水産省の役割について 日本国農林水産省は、所掌及び利用可能な予算の範囲内で、日本における農業団体、地方公共団体、民間企業等からなる「中国輸出促進協議会」の設立・活動を支援する。」と。その直後の七月にできるんですけれども、設立した協議会を、農林水産省が資金面でも支援すると。

 ということは、先ほどたしか岩本さん、資金面でのこういう民間団体への補助はあり得ないようなことを言っていましたけれども、ともかく、これを支援するということを約束しているんです。もう一回、外務省、こういうような、農林水産大臣という肩書を使って外国の一企業に対して、中国ならカウンターパートは農業部長ならわかりますよ。こんな外国の、国営企業とはいえ一企業ですよ、その代表に対して、自国の予算のことにまで言及したような約束をするという例はありますか。

杉山政府参考人 ただいま委員が御指摘になられました書簡、実は、外務省としてはつい最近まで存在を存じ上げておりませんでした。ただし、これをつい最近拝見いたしましたところ、通常外務省でつくるいわゆる国際約束、法的な拘束力のあるような文書という形にはなっていないと思います。

 中に書いてございますような、例えば賃料の支払い等についての農林水産大臣あるいは農林水産省としての政策の方針というものについては、私どもではわかりませんので、農水省に聞いていただきたいと思いますが、この文書については、通常の国際約束、法的な拘束力を伴う国際約束ということではないというふうに承知しております。

平沢委員 こういう文書を大臣が外国の一企業の代表に出すなんという例はありますか。(杉山政府参考人「このような」と呼ぶ)

中井委員長 外務省さん、僕が言ってから答えてください。

 杉山局長。

杉山政府参考人 失礼しました。

 こういう種類のものというのは、通常は作成することは余り例がないと思います。ただ、政府の一機関が個別に外国の企業との間で、例えば特定の物品等を購入する私契約を結ぶ、そういう形において文書をつくるということはあり得ると思いますが、こういう種類の文書というのは、私どもは通常は見たことがないと言っていいと思います。

 今まで過去に絶対例がないかというのは、ちょっと調べないと、断言はできないと思います。

平沢委員 先ほどの筒井副大臣の書面、そしてこの鹿野大臣署名入りの書面というか、頭に説明、括弧して声明と書いてありますけれども、これも極めて不可解きわまりない。

 農水省、これは資金的な、これから日本としてオブリゲーションというか、その負担は負うんでしょうか、負わないんでしょうか。

針原政府参考人 御説明いたします。

 今御指摘になった鹿野前大臣の声明は、その前に御指摘のあった前副大臣の覚書の作成を受けて、鹿野前大臣からも意思を明らかにしてほしいという先方、中農集団でございますが、その求めに応じて発出しております。

 ここに、今外務省からお答えしたとおり、経費については、あくまで民間事業体である協議会が負担することになっている、それで、農水省としては国会で承認された予算の範囲内で、あくまでも予算の条件を付してやるということになっておりますので、実は、これは外務省にはその当時の担当者は事前調整を行っておりません。それは、そういう性格のものだという前提で、法的拘束力もなく、また覚書の趣旨を少し進めただけということで、その当時の担当者が考えて、事前調整をやらなかったという経緯でございます。

平沢委員 農水省、そんなことを言っていますけれども、中国側がこういうふうに言っているんですよ。中国側は何と言ってきているかというと、中国側の受け入れは中農食品というところですよ。中農食品は、鹿野農水大臣がこの声明をもって約束くださいました、農水省は所掌及び利用可能な予算の範囲内で促進協議会の活動を支援する、ここに書いてあることです、との日本国農林水産省の役割は、一切の条件を付することなく鹿野農水大臣の指揮により完全実行されるものと信じています、こういうふうに中国側は言っているんですよ。

 農水省、もう一回答えてください。中国はそう言っているんですよ。だから、この文書は極めてそういう誤解を招きやすい。とんでもない文書に鹿野さんは無責任にも署名したということになりませんか。

針原政府参考人 この経費につきましてはあくまでも民間事業体が負担するもの、それで、農水省は利用可能な予算の範囲内、国会の議決を経た利用可能な予算の範囲内で御支援しましょうということでございますので、中国側は確かにそういうことを言っている可能性はありますが、私どもは中国側が現実にそう言っているということを耳にしたことはございません。そういうことで御理解いただきたいと思っております。

平沢委員 この文書の中に、向こうで借りる施設の賃料ということまで書いてあるんですよ。日本側が負担するということが書いてあるんですよ。こんなことはあり得ないことでしょう。だって、協議会がといったって、それを保証しているわけだから、これは。

 ですから、これはやはり農水大臣を本当は呼ばなきゃならない。役所はかわいそうだけれども、もう一回、役人の方。

針原政府参考人 今お示しの文書、四の(二)にございますように、日本側(中国輸出促進協議会(仮称))という民間団体が賃料を払う、こういうことでございます。

平沢委員 これは、これから徹底的にやりますけれども、ちょっとおかしいんですよ。

 では、次を出してください。

 まず、農水省に聞きたいんですけれども、農水省は、去年の十二月に中国に行って、もう絶対に中国は特別扱いは日本の農産物の中国への輸出についてはしないということを中国側が言っていることを確認したにもかかわらず、ことしの二月二十五日に農産物第一陣を中国に輸出しました。そうしたら中国側は、こんなものは我々は全然聞いていませんよということで、中国で検疫とか税関のいわば総元締めは質検総局というところですけれども、そこが指示してそれを廃棄処分にしたということなんですけれども、何で第一陣を送ったんですか。

高橋政府参考人 農林水産物の輸出検査につきましては、植物については植物防疫法……(平沢委員「そんなことはいいよ、何で送ったかを聞いている」と呼ぶ)はい。それで、法律に基づきまして、原則として、輸入国からの要請に基づいて、こちらの輸出国の方で検査をするということになっております。米の場合には薫蒸が必要になります。その際に、輸出国から不要であるという意思表示がなされた場合には、この場合には規制が必要ないということでございますので、薫蒸等については求めなかったということでございます。

 その具体的な中国側からの意思表示といたしまして、今回、二月の二十四日に税関に荷物が持ち込まれた際にこの中国側の大使館の一等書記官の文書が出されたものでございますので、不要と判断をいたしたところでございます。

平沢委員 今農水省が言ったのは、これなんです。これが、スパイとか言われている李春光が農林水産大臣に宛てた文書なんです。ここに何と書いてあるかというと、中国側は、出品される米及び粉ミルクの受け入れについて、北京の海関というのは税関ですね、北京検疫と協議し、了解を得ており、責任を持って受け入れますのでお送りください、こういう文書を書いている。

 この文書もおかしくないですか、農水省。一等書記官が大臣宛てに手紙を出すなんということは聞いたことないですよ。私も一等書記官を三十年以上前にやっていましたけれども、一等書記官というのはいっぱいいるんですよ。一等書記官が大臣にこんな手紙を出すなんということ自体からして、ほかにもいっぱいおかしい点はありますけれども、この手紙はおかしくないですか。しかも、農水省は中国に行って、こんなことは絶対受け入れられないということを何回も確認しているはずなんですよ。にもかかわらず、何でこのおかしな、李春光という中国に帰ってしまったこの男の言うことを信用して、すぐに第一陣の農産物を送ったんですか。

高橋政府参考人 本書簡につきましては、御指摘のとおり、通常の書式をとったものではございません、一等書記官の名義であること。それから、十二月の段階で、確かに、北京中央の質検総局に、三度ほどでございましたけれども、展示用であっても検疫が必要であるという確認はいたしております。

 ただ、今回の場合につきましては、個別特定の荷口の取り扱いであり、かつ、北京の、実際に通関、検疫を担当いたします北京海関、北京検疫の了解を得ているということが内容としてございました。したがいまして、現場の実際の通関当局が認めているということを大使館当局が認めたということでございまして、また、現に、この一便につきましては、実際、北京の段階で一度は通関、検疫をなされているということもございましたものでございますので、これについては輸出検疫を求めなかったことでございます。

平沢委員 中国でこの有権解釈をできるというか、最高の総元締めは、何度も言いますけれども、質検総局というところなんです。その質検総局に農水省は会っているんです、絶対に特別扱いはしませんよと。だから、全農、JAは、要するに、これに入りませんかといったって、そんな特別扱いするはずがない、自分のところはちゃんと検疫を要求されている、薫蒸処理を要求されている、こんな、特別にこちらだけが優遇されるはずがないということで断っているじゃないですか。にもかかわらず、この一等書記官のわけのわからない手紙、李春光の手紙が来たからというので、それに乗ってすぐに出すというのは、農水省として余りにも判断が甘くないですか。

高橋政府参考人 本件につきましては、確かに、三度ほど質検総局に確認をして、断られた事案ではございますけれども、先ほど申し上げましたように、個別特定の荷口について特別の取り扱いということで、既に、成田の税関当局に荷物が持ち込まれた段階におきまして、これについては、先ほど申し上げました現場の実際に検疫を行います北京の海関、北京の検疫当局が認めているということでございました。それを中国側として確認いただいたということで、こちらとしては、規制をかける、検疫をかける必要がないというふうに判断したものでございます。

平沢委員 質問をちゃんと聞いてくださいよ。質検総局が全権限を持っているんだから、その質検総局がだめだと言っているのに何で出したのかと聞いているわけで、まあいいですよ、役所の方に幾ら言ってもしようがない、これは。これは筒井副大臣とか鹿野大臣の指示でやったことだから、幾ら役所をやってもしようがないんです。

 最後に、ですから総理の問題。総理が何で私のところにこの話が来るんだというような顔をしておられますので、総理に私はお聞きします。

 総理は、昨年の十二月二十五日、日中首脳会談に行かれました。その前日に、急遽中国での展示館を視察されるということを決められました、それは筒井さんからの要請があって。そのときに、この展示館とか何かについてはどういう説明を受けられましたか。

 この輸出についてのいろいろな問題点、その時点で、十二月の時点でもう中国側は、特別扱いは一切しませんよ、しませんよということを十二月の初めに中国の大使館の方に質検総局から言ってきているんです。その後に、農水省の幹部が中国に飛んでいって、直接特別扱いはできないということを確かめているんです。にもかかわらず、総理を引っ張り出して、そして、総理に視察させてお墨つきを与えようとしたわけですよ。それに総理はまんまと乗って、十二月二十五日の視察のときに、十分間とはいえ、その場所に立ち寄っているんです。

 事前に、立ち寄ってくれと言われたときに、どういう説明を誰から受けられましたか。

野田内閣総理大臣 去年の十二月の細かいやりとりはちょっと正確には覚えていませんけれども、日本の農産物、食品の輸出を促進する一助になるような、そういう展示館の準備が進んでいるような一般的な御説明はいただいただろうと思います。それを踏まえて、ちょうど空港から首脳会談の会場に行く途中にある場所だったので、じゃ、立ち寄りましょうかということになったという記憶がございます。

平沢委員 いや、それを聞いているんじゃなくて、その十二月の総理が行かれる直前に、もう中国の日本の大使館の方に、税関とか検疫なんかを総括している質検総局から、日本の産品についての特別扱いは一切できませんよと。

 この展示館というのは、日本の産品をそこに持ち込むところなんです。特別扱いできるからそこに出してくださいということで、みんな会員を募っていたんです。そういう特別扱いは一切できませんよということが公電で来ているんです。そして、その後に慌てて農水省は幹部が中国に行っているんです。そして、何とか特別扱いできませんでしょうかと恐らく頼んだんでしょう、中国側は、一切できませんと言ったんです。

 その後に総理が登場されるんですけれども、総理は、その前の、質検総局が一切特別扱いできませんよと言ったことについては説明を受けられたかどうか聞いているんです。

野田内閣総理大臣 いや、少なくともそんな、特別扱いができる、できないという細かいやりとりは聞いておりません。

平沢委員 そこが一番のポイントなんですよ。その一番のポイントのところを説明を受けられないで、総理はその場所に行かれてしまったんです。ですから、その後、この輸出については、いろいろと結局利用されちゃっているんです、このプロジェクトに。

 総理は、この説明は誰から受けられましたか、行かれるに当たって。

野田内閣総理大臣 細かい背景は全部はわかりませんが、いわゆる農産物そして食品の輸出の一助になるような言い方は、多分、副大臣から聞いたのかもしれません。あるいは、打ち合わせの段階で、首脳会議での日程、スケジュール感を詰めているときに事務的に聞いたのかもしれません。ちょっと細かいことは覚えていません。

平沢委員 筒井さんは、急遽中国に一緒に行かれたんですけれども、これは総理の指示なんですか。

野田内閣総理大臣 いや、特に誰かを連れていこうという指示をした記憶はないと思います。

平沢委員 二十五日、中国に行かれて、それで十分間、そこの展示館、もう事実上破綻してしまうんですけれども、その展示館に立ち寄られて、その後、総理は温家宝総理と首脳会談に臨まれました。その首脳会談でこのプロジェクトについては話が出たんでしょうか、出なかったんでしょうか。

野田内閣総理大臣 首脳会談に行く場所の途中で十分間だけ立ち寄って、それも、中は見えません、建物を建てている途中だった。そこを十分で切り上げて行きまして、首脳会談の冒頭ぐらいに、こんなところを視察してきましたよと言った記憶はあります。ただ、個別のプロジェクトを詳細には理解しておりませんので、プロジェクト名としては言っていないとは思います。

平沢委員 外務省の資料にはこう書いてありますよ。野田総理から、北京到着後に日本産食品常設展示館に立ち寄ったことに触れつつ、日本の農産物の輸出促進について協力要請したと。ですから、これに触れたんですよ、総理は。もう一回。

野田内閣総理大臣 風評被害等があった中で、中国には輸出促進したいと思っていますし、もともとこれは事務的にそういう発言をしなければいけないのがありました。その前に立ち寄った場所がありましたので、こんなところに寄ってきましたということは言いました。ただ、それはストレートに何かのプロジェクトを理解してくれという話ではございません。

平沢委員 このプロジェクトは、全農だけじゃなくて、いろいろな方が何かやはりおかしいなということで警戒しているんですよ。

 ところが、総理が視察されましたね、そして首脳会談で話が出ましたね、そして、これは協議会のパンフレットなんかでもいろいろと、総理がそこを視察したということはやはり使われているんです。

 そして、一月十二日に、当時の筒井農水副大臣が記者会見をやっているんです。その記者会見で何と言っているかというと、野田総理と温家宝総理との首脳会談、初めて双方の総理の間でこのプロジェクトのいろいろな問題が確認された、そして、ある意味で総理間で、総理と総理の間で展示館事業発火が確認された、要するに、これがスタート点になったということを言っているんです。これは筒井副大臣が記者会見で言っているんです、一月十二日。

 ですから、総理が温家宝総理とお会いになられた、それがこのプロジェクトのスタート点になった、発火点になったということを筒井副大臣が言われているんです。それから、二月二十四日に、先ほどの中国一等書記官から手紙が来る。そして二十五日に、第一陣として粉ミルクと米と日本酒を中国側に持っていく。しかし、中国側は最終的に、こんなものは受け入れられないということで廃棄処分にする。

 総理の訪中は、少なくとも筒井副大臣は記者会見で発火点になったと言っているんですよ。これについて総理はどう思われますか。

野田内閣総理大臣 少なくとも、展示館をつくっている最中ですから、事業は進んでいるものとは思っていました。そういう意味で、日本の輸出拡大のためにそういう拠点になるんだなというイメージはございましたが、ただ、発火点という表現はちょっとわかりませんが、もう私が行く前から事業は進んでいるものだと思いましたし、温家宝首相との間に、この事業についてどうのこうのというやりとりはしていません。たまたまこういうところを視察してきましたという、話の枕に使ったぐらいで、それを詰めた議論は全くしていないということであります。

平沢委員 ただ、結果的に、総理の訪中がいろいろな形で使われちゃっていることは間違いないんですよ。そうしたら、総理はやはりいろいろと、総理なんですからね、一国の代表なんですから、行動するに当たっては慎重にも慎重でなければならないんです、利用されるようなことがあっては絶対にならないんです。

 その意味で、総理は、この訪中のときの総理の対応については、うかつだったと思われませんか、軽率だったと思われませんか。だって、結果的に、発火点になったと言っているんですから、このプロジェクトの。これは筒井さんが言っているんですから。では、筒井さんに聞いてください、記者会見でそう言っているんですから。

野田内閣総理大臣 うかつだったと言われても、このことがどういう問題なのかということの話は今進行中の話でございますし、あの時点で、一般論として日本の農産物輸出拡大をするということの方向性は正しいと思っていますので、それが民民間でどんな問題になっているか等々はわかりませんし、少なくとも、先ほど来、農水省の所掌と予算の範囲で応援をするということをやってきたということはだんだんわかってきましたが、それがどんな問題になって、私にどういう責任があるかという話は、まだ私の頭の中ではつながってまいりません。

平沢委員 総理、結局、総理はだまされちゃったんですよ。そして、何度も言いますけれども、全農、JAは、これはどうもおかしいということで距離を置いているんですよ。総理は距離を置かないで、そこにどっぷりつかっちゃったんですよ。その責任は大きいんですよ。だから、農水大臣、副大臣を更迭するだけじゃなくて、総理の責任だって当然あるんですよ。

 これは、この席に参考人として、鹿野前農水大臣、筒井農水副大臣、それから田中公男氏、そしてできれば樋口俊一衆議院議員、この四人をぜひ呼んでいただきますようお願いいたしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

中井委員長 理事会で協議します。

 なお、平沢さん、一つ。二十年前のリオのサミット、海部さんや、それから竹下さんや、中井洽も行っております。今回は、また総理が行かれないんなら、超党派で行く運動をひとつぜひ早急にまとめていただければ、大変結構だと思います。

 次に、稲津久君。

稲津委員 公明党の稲津久でございます。

 きょうは、大要、三点についてお伺いしたいと思いますけれども、一つはTPPについて、もう一つは人の命を守る防災、減災について、そして三点目にエネルギー政策についてということで、お伺いを順次してまいりたいと思いますが、最初に、私の方から、野田総理の政治姿勢について一言触れさせていただきたいと思います。

 忘れもしませんけれども、総理が、昨年の十月の就任後の所信表明演説、その中で、冒頭でこういうことをおっしゃられました。ちょっと読ませてもらいます。「東日本大震災からの復興に歩み始めた被災地で、改革に情熱を傾ける全国各地の農村や漁村で、歴史的な円高に立ち向かう中小企業の町で、そして欧州に発したあらしが吹き荒れる国際金融市場で、今、私たち政治家の覚悟と器量が問われています。」こう述べられまして、この政治家の器量と覚悟ということについては、当然、我々国会議員に対して総理の立場から呼びかけられたんだろう、私は、この総理の所信表明演説の冒頭を聞いて、そう思いました。

 それはまあいいんですけれども、では、野田総理の政治家としての覚悟と器量というのは、一体どこに、どういう形であるのかということを私は常々考えておりました。

 今回、この野田政権が出した法案百一本、これは継続審議も含めていますけれども、このうち成立したのが、現段階で二十三本。成立の率というのは二〇%前後ということでございます。これは、ほかにどなたかも指摘したかもしれませんけれども、いわゆる戦後の中でも最低ということで、二〇一〇年の五五%、これも実は大きく下回っている、こういうことです。

 総理がそういう思いでスタートなされていたにもかかわらず、現時点でこういう状況になっているということ、これは私は、やはり総理御自身の政治家としての覚悟と器量というのが、この法案の成立にも大きくあらわれていると思っています。

 今は、社会保障と税の一体改革に総理は政治生命をかけるとおっしゃって、どうもここの一点に絞られてきているような気がするんですけれども、私は、そうではないということをまず冒頭申し上げて、順次質問に入らせていただきたいと思います。

 まず初めに、TPPについてお伺いをしたいと思います。

 この問題は、JAを中心とした全国署名から始まって、現段階において、TPPストップだということで、農業のみならず、漁業あるいは労働、それから医療、さまざまな分野で全国的にその機運が高まっている、このように思っております。

 先般の四月の十八日の参議院の予算委員会で、総理の方からこういうお話がありました。国民の理解が進んでいないという状況の中で何でもかんでも進めるということはない、こういう発言をなされました。

 私は、国民の理解が進んでいないということは一体どこに総理は起因していると思っているかと思うんですけれども、結局、後ほど詳しくお伺いしますけれども、いまだに情報の開示が極めて不十分であるということ、そしてそのことが、結果として、国民の多くの皆様がこのTPPの参加については非常に不安を感じている、こういうことにつながってきているんだろう、こう思っているんです。

 よって、まず最初に、私の立場なり結論を申し上げたいと思うんですけれども、このような情報の開示がない中で、国民的合意のない中で、TPP参加の交渉入りというのはあり得ない。それから、よもや、この先、G20の前に参加交渉入りを表明したり、あるいはなし崩し的に手続を進めるようなことはあってはならない、私はこのことをまず冒頭強く申し上げておきたいというふうに思います。

 それでは、早速伺ってまいりますけれども、まずこれは、新しく農水大臣になられた郡司大臣にお伺いしたいと思いますけれども、先ほど稲田議員からも同様な質問がありました。重ねてのことになりますが、確認の意味も含めてお伺いします。

 五日の閣議後の記者会見で、TPP交渉について、全ての関税が撤廃されるということが国益になるという判断は難しい、こう述べられました。私はまことに正しい判断であるというふうに思います。

 改めて伺いますけれども、大臣はTPP参加は国益にならないという見解でよろしいかどうか、改めて伺います。

郡司国務大臣 先ほどもお答えをさせていただきましたが、会見そのものは、若干前後をする話もございました。

 私は、農林水産大臣ということでございますから、農林水産の関係でいえば、七年後に関税が撤廃をされるというのは相当厳しい条件であるなというようなことを認識しておりまして、そのことについては申し上げました。

 しかし、それとあわせまして、交渉の分野は二十一に及ぶというようなことでございますから、その全体のメリット、デメリットというものもこれから議論をしなければいけないだろう、その中で、最終的な国益というものを総理を初めとして政府の方で判断するという時期が来るやもしれない、そのことについて、その時点で改めて考えをいたすことも必要だというふうなことも申し上げたということでございます。

稲津委員 全然これはよくわからないんですよ。

 いろいろ新聞記事を見ますと、明確に大臣はお話しされていますよ。関税が撤廃されるということは、TPPは原則関税撤廃ですよね、非関税障壁の問題もありますよね。大臣は記者会見でこうおっしゃっていますよ。TPPは関税がまるっきりゼロとなるというもので、例外品目が認められないから、日本の農業は難しいものがある、こう答えているじゃないですか。

 関税の撤廃というのが本当にできるとお思いですか。それから、こういう非関税障壁、極めて困難なものがたくさんあると思いますけれども、どうなされる思いでおっしゃったのか。大臣、率直に、国益にかなわないものだ、こういう御趣旨で発表されたと思うんですけれども、もう一回確認します。どうぞ。

郡司国務大臣 先ほど申し上げたとおりでございます。

 私は、農林水産大臣として、関税を撤廃するということに関して、農林業に関しては大変厳しいものがあるというような話をしたということは、これはそのとおりでございます。

 しかし、それ以外の分野も含めて二十一の分野についてのメリット、デメリット、これから党も議論をこれはする。それから、懸念事項について、それがどのように払拭をされるのやされないやについても、これから議論をしていく。これからまだまだ情報の開示をきちんと行いながら、国民的な議論をする余地が残っているというふうなことについて申し上げたということでございます。

稲津委員 大臣、それは要するに、TPPの政府のこれまでの見解を、特に総理のおっしゃったことを踏まえての今の御発言だと思う。私は、実際にあの記者会見の中でこうお話ししたじゃないですかと申し上げているんですよ。

 先ほど、稲田議員の中では、マスコミの捉え方みたいな話をされました。記事の掲載によってこういうような見方もされると言っていましたけれども、では、大臣、私も細かいことを言うのは嫌ですけれども、ちょっと聞かせてもらいます。

 これは、農林水産大臣の農水省の記者会見の概要の中に、ちょっと抜粋させてもらいますけれども、大臣はこう発言していますよ、最終的なTPPが、その他の、例えばFTAAPとかですね、一番国益として上位に来るのかどうかということの判断だろうというふうに思っています。要するに、TPPが一番上位の判断かと。なかなか、今までの議論でいうと、そう簡単には、皆さん方がほかのものに対して上位に立つというまだ材料はちょっと少ないな、私はそういうふうに思っていますとおっしゃっているじゃないですか。

 要するに、トータルに考えたら、TPPについてはほかの経済連携よりも上位に立てない、こういうことをおっしゃったんじゃないですか。明確にちゃんと答えてくださいよ。

郡司国務大臣 今おっしゃったことについて、そのまま申し上げたことは間違いありません。そのことと先ほどのことが食い違っているという判断も、私自身の中ではしておらないつもりでございます。

稲津委員 大臣、これは大臣御自身のお考えの中に、このTPP参加ということが国益にかなわないな、そしていろいろな経済連携から比べると非常に難しいし、これはなかなかそう簡単にいかないということを率直に記者発表されたんじゃないですか。私は、そこについては、大臣のお考えというのは決して正しくないとは言いません。むしろ、そういう所見でお話しされたのは当然かなというふうに思っています。

 こういうことを考えていったときに、これから順次、これは総理にもお聞きしますけれども、私は、TPPが国益にかなうかどうかという問題について、まさにこれは、国論を二分とありましたけれども、場面によっては、二分どころか、九対一ぐらいで反対という方も大勢いらっしゃる。そういうことも踏まえて、本当にきちんとした会見なりあるいは答弁なりをしていただきたいと私は思っています。いや、答弁は結構です。次に移らせてもらいます。

 今度は総理にお伺いしたいと思いますけれども、総理、昨年の十一月の十一日、APECに行かれる前の記者会見の中でこういうお話をされましたね。TPP参加交渉に向けて関係国との事前協議入りについてということでお話しされました。その中で、これは今でも非常に鮮明に覚えていますし、総理も何回か答弁で使っていらっしゃいますけれども、関係各国との協議を開始し、さらなる情報収集に努め、十分な協議を経た上で、あくまでも国益の視点に立ってTPPの結論を得ていくと述べました。

 要約しますと、これは総理は何回もおっしゃっていますけれども、情報の収集、情報の開示、そして国民的な議論をしっかりやっていく、国会でしっかり議論していくということです、そして国益にかなうかどうか、この三つの視点について総理は何回かお話をされています。

 まず、この三つの基準をきょうは総理に具体的にお聞かせいただきたいと思うんです。

 まず、情報の収集及び開示について、情報収集がどの程度進んでいるのか、それから国民への情報開示が総理としてできているというふうにお思いかどうか、この点、明確にお答えください。

野田内閣総理大臣 交渉参加国、現在九カ国ございます。それぞれの国と協議を進めてまいりまして、ほぼ全て、一巡は終わったと思います。その一巡が終わった中で、それぞれの国が我が国に求めるもの等々、わかってきている部分については努めて情報開示をしているというふうに思います。

 それを踏まえて、国民的な議論でありますが、各種団体との意見交換でありますとか、あるいは都道府県への説明者の派遣、あるいは地域シンポジウムの参加等々で、本年二月以降だけで見ても八十回以上の意見交換は行ってまいりました。

 こうした議論という、あるいは提供をする場、あるいは皆さんの御意見をお伺いする場というものはどんどんと積極的につくっていきたいし、出ていきたいというふうに考えております。

稲津委員 私は、国民目線から見ると、とても情報の開示というのは十分でないというふうに思います。

 これは少し古い世論調査になりますけれども、TPPについて具体的な世論調査というのは、最近は賛否だけですので、少し古いものを引用させてもらいますけれども、朝日新聞が昨年の十一月に世論調査を行いましたら、TPPについての政府の情報提供は不十分だというのが実に八四%ありました。それから、北海道新聞も、政府は説明を余りしていない、全くしていないと合わせて、これも七九%という状況でございます。それから、新しいものでいいますと、これは産経新聞の五月二十二日ですけれども、TPP交渉への参加方針について評価するかしないか、評価二九%、評価しない五三・二%、こういう現状です。

 私は、こういうことを考えていったときに、本当に国民の皆さんに必要な情報を政府として開示、提供されているのかどうかということが、まず一つ問題ではないかなと思うんです。

 例えば、これはもう御存じですけれども、アメリカの通商代表部が二〇一一年の三月三十日に発表した、衛生植物検疫措置に関する二〇一一年の報告書、七項目の対日要求をされています。少し長いですけれども、引用させてもらいます。

 一つは、牛肉と牛製品についての規制緩和で、米国産牛肉の輸入を月齢二十カ月以下のものの制限を外せということ。それから、冷凍フライドポテトについては、大腸菌の存在を理由に断るな。さらに、食品添加物の規制を緩和せよ。米国産の牛など反すう動物のゼラチン解禁。収穫後の防カビ剤を認めよ。残留農薬の基準を緩和せよ。そして、米の検査の緩和。こういうことを七項目要求されているわけです。

 こういったことが果たして国民の皆さんに本当の意味できちんと情報が伝わっているのかどうか。私は、こういうことを考えると、政府が、情報の収集を行った上で、その提供にきちんと寄与してきているかどうかということを疑問に思います。

 次に、二点目の国民的な議論についてお伺いしたいと思いますけれども、TPPについて、国会での集中的な議論がほとんどなされていない。経済連携協定の中でも、原則関税撤廃それから非関税障壁の問題、TPPについてはさまざまな角度からいろいろな問題がある。このことを、我が党はさきの予算委員会等でも、国会内に特別委員会を設置して議論すべきだということを総理に申し上げてきました。

 改めて総理に伺いますけれども、ぜひ、国民的議論を本当にしっかりしていくのであれば、これは特別委員会の設置をするべきだと思いますが、総理、いかがですか。

中井委員長 古川国家戦略担当大臣。まず国民に対する説明の方を。

 国会の方は、総理に答弁してもらいます。

古川国務大臣 先ほど総理からも御答弁させていただきましたけれども、国民の皆様方に対するさまざまな情報提供、そして意見交換というものはこれまで行ってまいりました。

 例えば、地域シンポジウムなども全国九カ所で行いまして、先ほど委員からも御指摘があった、さまざまTPPに対して懸念として示されている、食の安全が脅かされるのではないかとか、医療保険制度が崩れるのではないかとか、そういうような個別の具体的な不安に対しても、私ども、今政府としてわかっていること、そしてきちんと対応していくことについては御説明をしてまいりました。

 そういった意味では、まだまだ不十分という御指摘はあるかもしれませんけれども、関係団体の皆様方とも情報交換、そして情報提供を行い、意見交換を行って、国民の皆様方への情報提供に努めております。

 引き続き、こうした情報提供、そして不安等に対してはわかっていることをきちんとお伝えする。そして、誤解がある部分についてはきちんと誤解を解いていく。例えば、医療保険などについては、これは議論になっておりませんし、そして議論するつもりもないということもアメリカ側も明確に言っているわけでございますから、そうしたことをきちんと伝えていく努力を引き続き続けてまいりたいというふうに考えております。

野田内閣総理大臣 国会の中では、私は、去年の臨時国会、この通常国会、各党からいろいろと御質問をいただいているという実感を持っていますし、きょうもこういう形で質疑をいただいています。予算委員会でも、衆参で集中審議もしていただいたと思います。なお特別委員会が必要だという御認識は、御提起としてはわかりますが、これはちょっと、国会の中で決めることなので、私がどうのこうのという話ではないというふうに思います。

稲津委員 例えば、今回、社会保障と税の一体改革については、本当に総理御自身の肝いりで御提言されましたけれども、国会の中でこの特別委員会が設置された。私は、TPPの問題についても、それに匹敵するほどの大きな問題だと思うんです。

 総理は、一国の総理大臣としてこの国を預かっている立場、そして与党民主党の党首でいらっしゃいます。そしてまさに、先ほど私が申し上げましたように、昨年の十一月の十一日には、APECに行かれる前にあのような御発言をなされて、この問題が始まった。あれから半年たっていますよ。ある意味で、総理がこの時点で、特別委員会の設置も含めて、さらに大いに国会で議論しようじゃないか、こう御発言なされば、私はそれは、この委員会設置に大きく踏み出すことになるだろうと思っているんです。そのことは指摘をさせていただきたいと思います。

 次に、国益についてです。

 何が国益なのか。TPP参加でどのような国益が図られるのか。総理はどう考えていらっしゃいますか。

野田内閣総理大臣 TPP交渉参加に向けてでございますので、交渉参加した暁のメリットというのは、世界の成長センターであるアジアの需要を取り込んでいく、そのためのルールメーキングに入っていくということは、これは大きな意義があるというふうに私は思っております。

 一方で、国益というのは、それはかなった場合だけではなくて、その交渉過程の中でいろいろ厳しい要求が出てくる可能性があります。そのときに、記者会見でも申し上げましたけれども、日本の美しい農村であるとか伝統文化であるとか国民の冠たる医療保険、皆保険の制度等々、守らなければいけないものもあります。攻めてとるものと守り抜くということの観点の中から、総合的に国益というのが判断をされるというふうに思います。

稲津委員 今総理から、アジアの成長を取り込む趣旨のお話がございました。これも、十一月の十一日の日に総理からその話が触れられました。

 総理、では、アジアの成長を取り込むということが具体的にどういうことなのか。これは、要するに、成長著しい中国ですとかあるいは韓国、そういった成長を取り込んでいきたい、こういう趣旨だと思うんです。それは私は間違っていないと思うんですけれども、事TPPに関しては、中国も韓国も、あるいはもう少し広げてインドについても、どういう状況ですか。中国、韓国はTPP入りするとおっしゃっていますか。そうじゃないじゃないですか。

 そして、もう少し私言わせていただくと、アジアの成長を取り込むというのは、これは二〇一一年の二月の、御案内かと思いますけれども、大統領に宛てたアメリカの財界の言葉ですね。TPPによってアジアの成長を取り込むことはアメリカの産業にとって死活的利益だ、こう強調されているということ。ですから、このことを私も認識すると、総理のおっしゃっているアジアの成長を取り込む云々というのは、これはアメリカの言葉ではないのかな、こう思ってしまうわけです。

 やはり、実際にTPPで国益を図るのは極めて難しいと思いますけれども、再度、繰り返しの質問になって申しわけないんですが、お答えいただきたいと思います。

枝野国務大臣 今、アジアの成長を取り込むということで、中国と韓国が主体であるかのような御指摘をいただきました。

 中国や韓国がどうでもいいと言うつもりはありません。しかしながら、韓国はもちろんですけれども、中国、韓国は、かなりの程度、経済成長を遂げております。むしろ、東南アジアを中心として、まさにこれから中間層が、十年ぐらい前の中国とか二十年ぐらい前の韓国のように爆発的にふえていくことが期待をされ、さらには、そうした地域のインフラ整備が大変おくれていて、日本に対する期待値が高い。そして、こういったところは、マーケットとしても、また国際分業としても非常に期待値が高い。

 こういったところの成長を、国際分業と我が国にとってのマーケットという意味から、あるいは投資先という観点から取り込んでいくということで、必ずしも中国や韓国がターゲットではないということを御理解いただければと思います。

稲津委員 しかし、現実に考えていったときに、この中国や韓国の成長を取り込まなければ、アジアの成長を取り込むというふうに言い切れるかどうかという問題が残ると思います。

 それで、実際に九カ国プラス日本ということになった場合に、もうこれも御案内ですけれども、GDP比でいうと大体九〇%が日本とアメリカですよ。だから、事実上、TPPというのは日本とアメリカのFTAにすぎないんじゃないか、こういう御指摘もあります。

 これも御案内かと思いますけれども、改めて確認の意味で紹介させてもらいますけれども、オバマ大統領が二〇〇九年の十一月十四日に東京に来られておっしゃったこと、アメリカはこれまで以上に輸出を重視する、それはアメリカにとって雇用戦略である、アメリカは幅広い加盟国と二十一世紀の貿易協定にふさわしい高いレベルの地域協定をつくることを目標にTPPに関与していく。そして、その翌年の二〇一〇年の一月二十七日の一般教書演説で、今夜我々は新しい目標を設定しよう、今後五年間で米国の輸出を二倍にする、それは米国の二百万人の雇用を支えることになるだろう、そして、アメリカにとってのTPPは輸出倍増戦略であり、アメリカの雇用回復戦略であると。

 こういうアメリカの基本的な戦略の上に、どうも日本の総理のおっしゃっているこのTPPの参加に向けての協議入りが図られていくというのであれば、これはとんでもないことではないか、私はそのように強く思っております。

 もう一回要約しますけれども、一つは、情報を収集し開示するとおっしゃったこと、国民的議論を高めていくということ、国益にかなうという判断をすること。考えてみたら、総理の十一月十一日のあの発言から今日に至る六カ月間の間に、これらのことが、国民の皆さんから見て、ああ大きく前進したな、一歩二歩でも前進したな、私はそういうふうには目には映らないと思っております。

 したがいまして、これは再度ですけれども、ぜひ集中的な議論を進めていきたい、このことを一つ提起させていただきたいと思います。

 次に移ります。

 次は、国民の命を守る防災、減災についてということでお話を申し上げたいと思います。

 昨年の東日本の大震災、そしていろいろと言われております直下型の地震ですとか、東海、東南海、南海、これらの地震、さらに大型台風、ゲリラ豪雨、竜巻等々、巨大自然災害が予測される中で、国民の命と財産を守る防災、減災、これこそまさに急務を要する課題である、こういう意見がたくさん寄せられております。

 この防災、減災の基本というのは、自助、共助、公助。自助と共助を支えるソフト事業、これも非常に大事です。後ほどまた触れさせていただきますけれども、それらの基盤になるのが、私はまず一つ公助が挙げられるだろうと。その公助は何かというと、具体的に申し上げますと、橋、道路、河川施設など、社会資本の多くが急速に老朽化して、防災力の低下が懸念をされるという現実があります。

 ここでちょっとパネルを出させていただいて説明をさせていただきたいと思いますけれども、これは国交省の資料に基づいて示させていただきましたが、建築後五十年以上経過する社会資本の割合ということで、橋それから高架道路、それから河川管理施設、これらは、二〇二九年、今から十七年後には何と全体の五〇%を超える状況です。下水道も二〇二九年には二二%、港湾岸壁についても四八%ということで、こういう、いわゆる建築後五十年以上経過する社会資本の実態というのがございます。

 一方で、リーマン・ショック以降、ヨーロッパの金融不安もありまして、景気はなかなか難しいところにある。経済の活性化も急務であるということで、総理も何回かこのことについては触れられている。

 この自助、共助を助けるソフト事業の基盤となるインフラ整備、このハード事業の整備に伴って防災力を高めていくと同時に、経済の活性化を図っていこうということで、我が党としては、防災そして減災のニューディール政策というのを発表させていただきました。

 まず、パネルで示した社会インフラ、いわゆるコンクリートの耐用年数について触れたいと思うんです。

 コンクリートの耐用年数については、今のところ、減価償却資産としての耐用年数、いわゆる税制の面でしか示されていないというのが現実です。実際にその建造物がどのくらいもつかという視点ではないということでございまして、一律五十年。まだまだ使える建物もありますし、あるいは逆に、五十年未満でも、すぐかけかえていかなきゃならない、そういうものもあると思います。

 そこで、実際の耐用年数をはかる手だてがないだろうかということです。何かの物差しをつくるべきではないかな、こういう考えもありますが、このことについての見解をお伺いしたいと思います。

羽田国務大臣 委員にお答えをさせていただきたいと思います。

 御党が掲げております防災・減災ニューディール、こういうお話の中で、我が国においては、戦後、高度成長期のときに集中的に整備した道路、河川、港湾などインフラが時間の経過とともに老朽化が進み、今後、五十年以上使用するインフラが一層増大していく、こういう認識を持っております。この中で、これまでのインフラ整備に当たっては、構造物として所要の目的が達成できるよう、例えばコンクリートの構造物ではコンクリートの品質を定める基準を作成するなど、各種基準を設けて、その品質の確保を図っているところであります。

 委員御指摘の耐用年数についてでありますけれども、河川や道路等において一律に定められているものではありませんけれども、今後、コンクリート構造物の劣化実態、また長寿命化のための技術開発の動向を踏まえた上で、構造物の耐用年数の議論を深めていく必要があるというふうに考えております。

稲津委員 もう一点お伺いをしたいのは、震度七の揺れ、津波、こういったものを想定して、行政が防災総点検を実施して、それを公表した上で、民間資金も活用して、国と地方合わせて今後十年間で例えば百兆円程度を集中的に防災、減災機能強化のための社会インフラ整備に投資をして、低迷する経済の活性化につなげたらどうかという考えですけれども、その上で、建築基準法における耐震基準では、大規模な地震とか災害が起きると、その都度、耐震基準を見直してきたという経過があります。また、港湾における岸壁、道路橋、河川の構築物、下水道の施設、これらにおける耐震基準についても、これまで見直しをかけてまいりました。

 確認しておきたいのが、これまでの建築基準法や岸壁、道路橋、河川の構築物、下水道施設において具体的にどのような見直しがされてきたのか、この点についてお示しいただきたいと思います。

羽田国務大臣 我が国の公共土木施設の耐震基準については、震度七を記録した平成七年の阪神・淡路大震災を契機といたしまして見直しを行っております。

 例えば、河川構造物や道路の橋等については、現在から将来にわたって考えられる最大級の強さを持つ地震動に対して、損傷が限定的で復旧が速やかにできる強度の確保などの耐震設計見直しを実施したところであります。

 基準改定を受け、今日まで、各施設ごとに耐震診断を行い、耐震対策を実施してきているところでありますけれども、首都直下や南海トラフの巨大地震などを想定した震度七クラスの揺れのエリアが拡大しているということを受けて、今後、耐震対策をより強力に推進していくところでございます。

稲津委員 今、震度七のお話がありましたけれども、このことについてお伺いしておきたいと思うんですが、いろいろな震災を経験していく中で、やはり今御答弁ありましたように、震度七ということに対してのもっと具体的な、これを前提とした耐震診断とか耐震化、こういうことが必要だと思います。

 というのは、震度六までのところはいろいろ見えているんですけれども、七からその上というのは、七でこれは全部まとまってしまっていますので、では、そこのところをどういうふうに具体的にしようかということが一つ課題だと思うんです。この点についても御答弁いただけますか。

羽田国務大臣 この耐震基準についてでありますけれども、特に建築基準法における耐震基準については、過去の地震被害を踏まえ随時見直しを行っており、昭和五十六年に新耐震基準の導入を行い、現在に至っております。新耐震基準では、阪神・淡路大震災や東日本大震災クラスの震度六強から七に達する程度の大地震に対して、倒壊や崩壊をせず、まず人の命を守るということとさせていただいております。

 この新耐震基準の施行前に建てられた既存の建築物については、耐震診断及び耐震改修を進めていくことが必要であるというふうに認識しており、地方公共団体を通じた補助及び税制上の措置に加え、住宅エコポイントの加算などの取り組みを積極的に進めてまいります。

稲津委員 その点はぜひよろしくお願いしたいと思います。

 自治体への補助とか税制のお話も出ました。これは少し、後にかかわることですので、関連して伺っておきたいと思いますけれども、一つここでお伺いしたいのは、では、国による基準はいろいろ制定していく中にあっても、もう一つは、それが具体的に現場で実効性を伴わなければいけないという問題があります。

 これは消防庁で毎年、公共施設の耐震化の進捗状況という調査を発表していますね。これを見ますと、例えば平成二十三年の十二月の報告書、この中で、耐震化率全体で、これは自治体の庁舎とか学校施設、福祉施設全部含めてですけれども、十八万棟ぐらいある、耐震化率は七五・七%ですか。ただ、耐震化率の高い県もあれば、耐震化率が六〇%、あるいは六〇%を切るようなところもありまして、ばらつきがあります。

 特に学校校舎などの耐震化は比較的進んできているんですけれども、一方で、自治体の庁舎については非常に低い傾向がありまして、自治体の財政状況もあったり、優先順位とかいろいろあると思いますから一概に言えませんけれども、こういうような傾向がある。

 今後、自治体所有の公共施設における耐震化をどう進めていくのか、こういうことが課題だと思いますけれども、特に、先ほどちょっと触れていただきましたけれども、国の財政支援が必要ではないか、このように思っておりますが、これはちょっと総務大臣にお伺いしたいと思います。

川端国務大臣 お答えいたします。

 委員御指摘のように、消防庁で調査を始めましてから、いわゆる地方公共団体が所有または管理している防災拠点となる公共施設等の耐震化率というのは、調査開始の十三年度の四八・九が、平成二十二年度末調査で、東北の岩手、宮城、福島を除くでありますが、七五・七と着実には伸びておりますが、ばらつきがあることは事実でございます。

 そういう中で、今までから、地方債としての起債充当率が九〇%、交付税措置率を二分の一という財政支援を行ってきましたけれども、地震による倒壊の危険性が高い庁舎及び避難所については、平成二十一年度から支援措置を拡充して、交付税率二分の一を三分の二というふうに格上げをいたしました。

 また、その後、東日本大震災が起こりました。そういう意味で、昨年十二月に創設しました緊急防災・減災事業、単独においては、臨時的な地方税制上の措置により確保される財源の範囲内ということでございますけれども、災害時に災害対策の拠点となる公共施設等の耐震化率についても対象としまして、さらなる支援措置ということで、起債充当率を一〇〇%、交付税措置率を七〇%というふうに格上げをいたしまして、手当てをいたしました。

 今後とも、地方公共団体の取り組みを支援してまいりたいというふうに思っております。

稲津委員 これもぜひ進めていただきたいと思います。

 実際に被災を受けた場合に災害対策本部がどこに置かれるかというと、これはおおむねその自治体の本庁舎に置かれる。しかし、本庁舎が一番耐震化ができていなくて、そこがやられてしまうと大変なことになるわけですから、ぜひそうした財政的な支援をしっかりやっていただきたいと思います。

 次は、現状の社会資本整備がどうなっているのかということについて、パネルを示させていただきながら御紹介したいと思います。

 これは維持管理費の推移ということで、平成の二十一年から二十四年までの間、直轄国道と直轄河川です。直轄国道を見てみますと、平成二十一年の時点で二千三百六十二億円ありました。これが、平成二十二年、民主党政権になってから、八八・四%まで落ち込んでしまいました。そして、その後もこのような状況です。直轄河川、これも同じように一割減です。

 こういう状況の中で、いや、一割減というのは仕方がないよというような見方があるかもしれませんが、例えば新しい施設や新しい公共建築物をつくるのであれば、それは少しやはり集中と選択で見ていこうという考え方があるかもしれない。しかし、これは、既存の道路とか河川等々のこういった施設等について維持管理ですから、一〇%削るというのは相当な痛手です。

 例えば北海道でいいますと、雪の降る地域、どこもそうですが、直轄国道の除雪費というのは維持管理費に当たるわけですね。これが一割カットで、どういうことが起きてきたのか。近年、確かに降雪量が多いのもありますけれども、もう一方では、この除排雪の予算を削ったことによって排雪が十分行き届かない、こういう現象があるのも事実でございます。このようなことが、時に大渋滞を起こしたり、あるいは救急車、消防自動車とかが中に入っていけない、災害現場に行けないということもあり得る。まさに国民の命を守るという観点から見ると、この一〇%カットというのは非常に厳しいものがあります。

 私は、こうした維持管理費について、国民の生命を守るという判断から立てば、ぜひこの一〇%削減したのを戻していただきたい、そういうことをぜひ御質問させていただきたいと思います。見解を伺います。

羽田国務大臣 御指摘、御質問にお答えをさせていただきます。

 社会資本の維持管理費については、平成二十一年度に実施された事業仕分けにより、直轄国道、直轄河川、直轄ダムの維持管理について一〇から二〇%程度の予算要求の縮減という結論を受けた中で、削減をさせていただいたところであります。

 これは、特定の公益法人への受注が多かったこと、また、道路の巡視、除草等の頻度が場所によってまちまちであったことなどを踏まえて、事業を見直すべきとの指摘を受け、維持管理基準の策定、入札契約方式の見直しなどを行い、事業の効率化を図ったものであり、これが国民の安心に直ちに問題をもたらすようなものであるというようなことは考えておりません。やはり人の命というものを一番に考えていく、こういうことだというふうに思っております。

 一方、今後、直轄国道の建設後五十年以上経過した橋梁の割合が、現在の一六%から、二十年後には六三%になるなど、社会資本の老朽化が予測されております。また、首都直下型地震、東海・東南海・南海地震などの発生も懸念されているところであります。したがって、定期的な巡視、点検の実施、長寿命化計画の策定、予防的な修繕の実施、耐震化など、戦略的な維持管理がより重要となってくると考えており、必要な予算が確保されるようしっかりと取り組んでいきたいというふうに思っております。

稲津委員 例えば、今ある既存の公共施設等が、きちんとした維持管理をしながら長寿命化していくことによって、最終的に全体の予算がこれで抑えられていくという考え方もあると思います。ですから、そういう視点に立って、きちんとこの維持管理費の予算を構築していただきたい、そのことを強く指摘させていただきたいと思います。

 次は、地方自治体における社会資本の維持管理についてということで申し上げたいと思いますけれども、実は総務省が、平成二十二年の十二月から二十三年の三月三十一日までの間に、全国の地方自治体に対して、今後増大する社会資本の維持管理そして更新需要に関する意識調査を行いました。

 まず、総務大臣にお伺いしたいんですけれども、この意識調査を行った目的と調査の結果の概要についてお伺いしたいと思います。

川端国務大臣 お答えいたします。

 まずは、社会資本の維持管理及び更新に関する行政評価・監視ということを行いました。

 この行政評価・監視は、港湾、空港、上下水道、それから河川等、先ほどから御議論あります公的な部分に関しての施設について、国民の安全、安心の確保、それからライフサイクルコストの縮減に向けた効果的、効率的な維持管理を推進する観点から、現状どうなっているかを調査させていただきました。

 その結果を踏まえまして、国交省と厚労省のそれぞれ大臣に対しまして、法令台帳等の整備の徹底、いわゆる台帳をきちっとしてください、それから施設の定期点検、補修の確実な実施をやってください、それから長寿命化計画の策定によるライフサイクルコストの縮減等を効率的にやってくださいという勧告をさせていただきました。

 現状そうなっていますよということと同時に、それを持っておられます地方自治体に対して、委員御指摘のような意識調査をやらせていただきました。こういう現状をどう思っておられますかということで、そういう目的でやらせていただきました。

 その結果、三つ意見が集約できました。

 一つは、維持管理・更新需要の増大が懸念される施設がある、これからどんどんふえていくということで懸念しているという地方公共団体は九六・五%に上りました。将来ふえていくという認識でございます。

 それから、社会資本の維持管理需要が増大することにより懸念される内容は、財政負担や住民負担の増大が八八・三%。要するに、これからどんどん整備がふえていくということが心配と同時に、それに対してお金が随分かかっていくということが心配だということでございます。

 最後に、三つ目に、それへはどういうことで対応する方策を考えられますかということに対しては、維持管理・更新費用に係る財源の確保が対策として望ましいとおっしゃったのが八九・九%という意識調査でございました。

稲津委員 そこで、今回のこの調査の結果で私が一つ気になったのが、社会資本の長寿命化の対策を自治体が行っていく中で、国がなすべき、やっていただきたい方策、支援、この中に注目しました。最も多かったのが財政的な支援の充実、それからもう一つ、ここが大事なんですけれども、技術的な支援、情報提供の充実、これがありました。

 自治体は大小さまざまありますので、いろいろな観点があるのかもしれませんけれども、技術支援、情報提供の充実、このことについて、やはり国としてしっかりこれを後押ししていくということが必要だと思います。この点についてどう対応されていくのか、これは国土交通大臣にお伺いしたいと思います。

羽田国務大臣 お答えをさせていただきます。

 社会資本の大部分は地方公共団体の管理する施設であるというふうに認識をしておりまして、地方公共団体の取り組みの推進が必要なことから、長寿命化計画にかかわる財政的支援のほかに、点検、診断、補修にかかわる技術開発や技術的な指針の策定、地方整備局等における講習会や技術的助言など、地方公共団体に対し適切に支援をしていきたいというふうに思っております。

稲津委員 ありがとうございました。

 今までどちらかというとハード事業のことをずっとお聞きしてきまして、今、一つソフトについての御答弁をいただいたんですけれども、もう一点だけ、これは防災担当大臣にお伺いしたいと思うんですけれども、ソフト事業のことなんです。

 実は二〇〇八年の十月に、陸上自衛隊の東北方面隊は、近い将来発生するとされる宮城県沖の地震について、岩手、宮城両県の二十二市町に東北六県の隊員約一万人、それから車両二千百台を動員しまして、陸上自衛隊の災害訓練では過去最大となる、みちのくALERT二〇〇八というのを行いました。これだけの規模の広域にわたる災害訓練というのは、今回の大震災で生かされたということは間違いないと思います。

 その上でお聞きしたいのは、大正十二年に起きた関東大震災が九月の一日だったということで、それにちなんで九月の一日が防災の日となっています。今回、三・一一、この未曽有の大震災から、この震災を風化させないためにも、例えば、三・一一を何らかの防災の日にしたらどうか、こういう考えが一つあって、このことに対する御意見とあわせて、今後、自衛隊、消防隊等を含めた巨大地震を想定した広域的な防災訓練等々をぜひ進めていくべきと思いますが、この点についての見解をお伺いしたいと思います。

中川国務大臣 いろいろ貴重な御指摘ありがとうございます。感謝を申し上げたいと思います。

 防災の日については、またさまざまに検討をしていきたいというふうに思います。

 同時に、御指摘あったように、訓練ということについても総合的に見直すということにしておりまして、実は具体的には、防災会議で総合防災訓練大綱というのを三月の二十九日に発表させていただいて、これもまだ見直していく過程にあるということなんですが、その中で、中身と規模についての再検討がありました。

 中身については、これまでのシナリオ型だけじゃなくて、新しい与件を与えて、そこで危機管理をしながら、何が足りなかったかというのを防災計画の中に含めて改定をしていく、そんな作業をしていこうじゃないかということが前提になっています。

 規模ということなんですが、これはまさに先ほど御指摘があったように、広域的にやっていくことが大切だということでありまして、具体的に実はアクションを起こしておりまして、首都直下型それから南海トラフについては、特に広域の協議会をつくるということで、もう既に、それぞれのトータルな地域での協議会はでき上がって、第一回をやり始めました。

 南海トラフは、それをさらに六つぐらいの協議会に分けて、これを訓練の母体にしていくと同時に、防災計画の広域の母体にもしていきたいということを考えておりまして、具体的なアクションをそんな形で起こしていきたいというふうに思っております。

稲津委員 防災、減災にわたるソフト、ハードの面からさまざま質問させていただいてまいりました。

 本当は、時間があれば、共助というところをもう少し詰めておきたかったんですけれども、例えば民間で防災士という、今こういう取り組みもありまして、このようなことも含めて、総合的な防災対策、減災対策を強く政府に求めておきたいと思います。

 最後に、エネルギー政策についてお伺いしたいと思います。

 総理にまずお伺いしたいんですが、総理は、大飯の原発の再稼働のことについて、最終的な判断の前の現時点での判断をなされました。この中で、いろいろ私なりに、もう少し、ここはどうなのかなという、例えば、再稼働の根拠が原子力安全・保安院の暫定的な安全基準によるのはどういうことなんだろうかとか、こういうこともありましたけれども、特に、中でも私がぜひ総理にお伺いしたかったのは、政府が掲げてきた脱原発依存について、さきの総理の記者会見の中では触れられなかった、この点について疑問が残るわけですけれども、なぜ触れることがなかったのか。この点についてお示しいただきたいと思います。

野田内閣総理大臣 原子力のいわゆる位置づけの問題を含めて、エネルギーのベストミックスにつきましては、この八月をめどにまとめていきたいと思っておりまして、基本的な考え方は、原発に極力依存をしない社会を目指していくということです。

 そういう方針のもとで、既に先週のエネルギー・環境会議において、中間取りまとめという段階でございますが、選択肢を提示させていただきました。そうした選択肢をしっかりと御提示しながら国民的な議論を行いまして、八月中には、まさに中長期のエネルギーのベストミックスをまとめていきたいと思っております。

 それと、この間の会見というのは、中長期の問題もありますが、当面の再稼働についてでございまして、その当面の再稼働を中心に、先般の記者会見はお話をさせていただいたということでございます。

稲津委員 私は、やはりこの記者会見のときに、ぜひ脱原発依存ということをもう少し詳しく触れていただきたかったと思うんです。

 それで、今大臣の方からエネルギーのベストミックスの話がありました。これは当然、新たなベストミックスというお考えで八月にまとめるということでございますけれども、このことは今総理から概要のお話を伺いましたのでいいとして、三・一一の原発事故から、今まであった、いわゆる現行のエネルギー計画を見直しをしていくということで、では、そのエネルギー基本計画の策定に向けた基本的な考え方と現状について、この点についてお伺いしたいと思います。

枝野国務大臣 エネルギー基本計画の見直しについては、総合資源エネルギー調査会基本問題委員会で議論を進めているところでございますが、過日、エネルギー・環境会議の方にその中間報告をいたしました。

 原発への依存度を最大限引き下げていく。そして、それとも連携をいたしますが、省エネを最大限進める。再生可能エネルギーの導入を最大限進めていく。一方で、CO2削減技術を重視する中で、できるだけクリーンに火力を使っていく。

 こうした基本的な方向についてはおおむね一致をしておりますが、では、いつごろまでにどれぐらい原発への依存度を引き下げていけるのかということについては、これは御承知のとおり、二〇三〇年までにゼロを目指すという考え方と、今、政府の方針として出しております、原則四十年廃炉を自然体でいった場合と大体おおむね一致する数字ですが、二〇三〇年で一五%程度まで引き下げる、もう一つ、引き下げるけれども、さまざまな要素を考えると二〇から二五%程度は維持するべきではないか。

 今、三つの選択肢が整理をされて、エネルギー・環境会議で、中央環境審議会等の議論も踏まえて、政府としても選択肢を、間もなく、六月中か七月上旬にはお示しをしたいと思っております。

稲津委員 そこで、当然、再生可能エネルギーに比重がかかってくるということが想像されるんですけれども、その再生可能エネルギーの導入促進ということで伺いたいんです。特に風力発電です。

 これは前にもお伺いしましたけれども、北海道は風力発電の宝庫とされておりまして、全国の大体六倍強、施設の数が二百六十基余り。特にそのうち、北部の留萌管内と宗谷管内では七割近くの百七十基余りが発電をしております。特に留萌管内では、苫前町の四十二基を初めとして、留萌市、小平町、羽幌町、遠別町、天塩町、宗谷管内の幌延町ということで、各町がほとんど風力発電の施設を持っているということで、まさに風力発電のメッカです。

 ただ、これも以前から確認させていただいていますけれども、残念ながら送電網の整備が非常に脆弱だということで、この点について以前大臣からも前向きな御答弁をいただきましたが、今後具体的にどうするのか、国の支援を含めてお伺いしたいと思います。

枝野国務大臣 三月四日の予算委員会の分科会でもお尋ねがございましてお答えをしておりますが、そのときにもお答え申しましたように、原則は電力事業者によって整備されるべきでありますが、今のような、風力に特に適した地域の送電網が脆弱である部分について、なかなか電力会社の経営努力では送電網を充実することは困難であるということで、今、実は、具体的に北海道電力や東北電力などと、現実の今の送電網がどうなっているか、そことの関係でどこをどう強化すれば風力発電の導入促進につながるのか、その場合のコストがどれぐらいかかって、電力事業者として単独で見れるのはどれぐらいなのかというような、かなり精緻な検討、議論をしているところでございまして、それを踏まえて、具体的にこういう支援を考えるということをいずれお出ししたい。できるだけ早くその調整を進めたいと思います。

稲津委員 非常に前向きな御答弁をいただきまして、ありがとうございました。ぜひ進めていただきたいと思います。

 時間があれば小水力の発電についてもお伺いしたかったんですけれども、これはまた別の機会にしたいと思います。農水省の試算では、全国で千地域ぐらいで小水力の発電のお話が出ています。特に農業用水路における小水力の発電、これは手続の簡素化もありますので、ぜひ前向きにまた御検討いただきたいと思います。

 以上で質問を終わります。

中井委員長 これにて稲津君の質疑は終了いたしました。

 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 野田総理は、今週、国民生活にかかわって二つの重大な決断をされようとしています。原発再稼働と消費税増税問題であります。

 いずれの問題も、多くの世論調査でいえば、国民の半数以上が反対、そしていずれも七割以上が急ぐ必要はない、あるいは今国会にこだわる必要はない、こういうふうに言っているものであります。総理は、決め切る政治というふうに言われましたが、こうした国民の声を無理やり押し切っていいのか、まさに総理の政治姿勢の根本が問われていると思います。

 そこで、まず、大飯原発三、四号機の再稼働問題であります。

 先週八日の記者会見で、総理は、この三、四号機は再起動すべきだというのが私の判断だというふうに表明をされました。その中で、総理は、福島のような事故は決して起こさないというふうに言われましたが、そもそも、日本の原発は安全、あるいは日本では過酷事故は起こり得ないという安全神話が福島事故を引き起こした。だから、原発については絶対に大丈夫とは言えないというのが最大の教訓だったと思うんですが、その点、総理はどういうふうに御認識でしょうか。

野田内閣総理大臣 今回の原発事故の大きな教訓というのは、やはり安全神話に浸っていたところがあったというふうに思いますし、想定外のことを想定し切れなかったということもあったというふうに思います。

 いろいろな教訓があると思いますけれども、先週の金曜日の記者会見におきましては、三月十一日の事故の発生以来取り組んできたさまざまな対策、あるいはIAEAであるとか、あるいは原子力安全委員会等々の専門的な知見等々を集めまして、現段階においては最大限知見と対策を集めた、その中での安全性の基準というものを私どもなりにまとめさせていただきました。

 その中で、福島のような津波、地震が起こったとしても炉心溶融には至らないという中での、その裕度も考えて判断をしたということでございまして、これは一連の、IAEAのレビューを受けたストレステスト、そして保安院の判断、安全委員会の確認というプロセスを経た中での最終的な判断という意味でお示しをさせていただいた次第であります。

 もちろん、安全性の確認に上限はありません。規制庁ができて、あるいは新しい知見ができて、それを踏まえた安全性のさらなるチェックということは不断に行っていかなければなりませんけれども、現段階においては、最大限これまでの知見や対策を取り入れたものと考えております。

笠井委員 現段階、そして最大限で最終的だというふうに言われましたが、総理は、今、福島を襲ったような地震、津波が起こっても事故は防止できるという対策と体制が整っている、これも記者会見で言われましたが、そもそも福島事故がなぜ起こったのかという原因についてはまだ解明し切れていないわけですね。

 政府事故調の最終報告もまだでありますし、国会事故調の方も調査中ということでありますが、なのに、現段階で最大限やって、最終的に対策と体制は整っているというふうに断定をされるのは、私は事故調の作業をないがしろにすることになるんじゃないかと思いますが、総理、これはいかがですか。

枝野国務大臣 政府の事故調査委員会は、最終報告は出ておりませんが、中間報告が出ております。また、保安院においては、外部の有識者を含めた公開の意見聴取会を行ってきております。参考かもしれませんが、民間の独立検証委員会の報告書も参照いたしましたが、いずれも、今回の事故がいわゆる過酷事故に至った原因は、津波の発生、津波によって水をかぶったことによるということで、地震による影響ではない、それによって過酷事故に至るような大きな損傷はなかったということについては、基本的に共通な理解が得られているというふうに考えているところであります。

 そして、こうした共通の理解を踏まえて、保安院そして安全委員会のチェック、IAEA等の御評価等も踏まえた対策をこの間進めてきたものでございます。

笠井委員 政府事故調の中間報告だって、地震についてはまだわからないことがあると言っているんですよ。そういう問題だってまだ残っている。

 しかも、総理の判断に対して、国会事故調査委員会の黒川委員長はどういうふうにおっしゃっているか。世界の先進国のあり方と全然違う方向に向かっているのではないか、日本の国家は一体どういうプロセスで何をしているのか、国家の信頼のメルトダウンがまだ起こっているのではないか、国会から委託された独立した調査の報告をしっかり見て、何で待たないでやるのか、このプロセスが私には理解できないと。

 我々国会がつくった事故調査委員会の委員長が、総理の判断に対してこういう厳しいことを言われているんですが、総理、どう思いますか、これは。

野田内閣総理大臣 原子力の安全規制において、私は空白はつくってはいけないというふうに考えております。これまで申し上げてきた、いわゆる事業者のストレステスト、加えて保安院、安全委員会のチェック、こういうプロセスを経た中での判断を、まさに安全性と必要性という上から判断をいたしました。

 その上で、これから御議論いただいている規制庁等が発足をした上では、さらにこの規制庁を中心に新たな基準というものをつくっていただければと思いますけれども、その間何もしないということではなくて、これまでの知見や対策を集めた中での、最大限の安全性のチェックということをしながら進めていくべきではないかと考えております。

笠井委員 国会の事故調の委員長がそういうふうに言われているので、総理、国会軽視と私は思いますよ。何でこういう状況で判断できるのかという問題があると思うんですよ。規制庁だって、今言われたみたいに、まだですからね。

 政府がとりあえず暫定の対策として指示した三十項目の安全対策というのがございますが、これにしても、よく言われます免震事務棟という問題やフィルターつきベントなどが設置されるのは三年先というものであります。

 こういう問題については、では、計画があるだけで、福島を襲ったような地震、津波が起こっても事故を防止できると言い切れるのか。それとも、そのことができるまでの三年間の間はそういう地震、津波が絶対起きないという知見でもあるんでしょうか。いかがですか。

枝野国務大臣 まず、免震棟の話でございますが、これについては、中央制御室、これは免震構造になっておりまして、そして、仮に過酷事故が炉で起こった場合でも、放射性物質が入ってくる等についてのフィルター措置などが十分とられている、こちらにおいて対応ができるということが評価をされた上で、しかし、さらなる安全性向上のために免震棟をつくるということを関西電力に求めたものでございます。

 それから、フィルターベントについてでございますが、これについては、福島のような炉の小さなタイプではありませんで、炉の大きなタイプでありますので、ベントの必要な状況まで至るには、仮に燃料棒が熱くなった場合であっても、時間の経過は飛躍的に大きく違います。そして、その間に冷却をするための三重四重の措置がとられておりますので、フィルターベントが必ずしも必要であるという状況ではありませんが、これも、不断の努力、不断の見直しを進めていくという福島の教訓を踏まえて、さらなる安全性についての信頼向上のために、それでもちゃんと計画を立てて実施をさせるということを関西電力に対して求めたものでございます。

笠井委員 今るる説明がありましたけれども、免震事務棟にかわるものというのは、中央制御室の隣にある会議室なんですよ。とりあえずそれを使おうという話ですよね。

 それで、フィルターベントも要らないというふうに言うけれども、要らないんだったら何で基準に入れるんですか。さらなる安全性と言うけれども、それは、安全にここまでということはないから、だから、万々が一いろいろなことがあるからこれをやる必要があると、少なくとも政府が暫定的に言ったわけですよね。それが残っているのに、大丈夫と何でなるのかという問題になります。それが必要ないと言うんだったら基準に入れなきゃいいわけで、おかしいと思うんですよ。それも満たしていなくて、なぜ、大丈夫、事故を防止できる対策と体制は整っていると言えるのか。よくも言えたものだと思います。

 私は、もう安全だから大丈夫じゃなくて、まだ未実施の対策があって事故の危険とリスクがあるけれども、それでもいいですか、こう聞くのが、総理の立場になればなるんだと思うんですけれども、最低限それぐらいやるべきだと私は思うんですけれども、そういう問題がある。

 それから、総理は、福島を襲ったような地震、津波というふうに言われましたけれども、肝心のこの大飯原発をどのような地震、津波が襲う危険があるのか、これは解明し尽くされていないんじゃないですか。福島の事故のときよりも大きな地震や津波というのが絶対に襲ってこないと断言できるのか。つまり、福島を襲ったような地震、津波についてはできるというふうに、百歩譲っても言われたんですけれども、しかし、それを超える地震、津波が絶対に襲ってこないと断言できるのか。これは、総理の判断として言われたので総理に伺いたいんですが、どうでしょうか。

中井委員長 地震予知はどこですか。地震予知は文科省、防災、どっちですか。

 中川防災担当大臣。(笠井委員「ちゃんと答えられるんですか。だって総理の判断でしょう」と呼ぶ)総理の判断のもとにはこういう人らの判断があるんだから。

中川国務大臣 専門家の委員会の中で、この予知というのはさまざまに議論をされておるわけであります。ああいうトラフ型の大規模地震というのは、あの地域、大飯の地域ではなかなか想定されないということを私は理解しておりますが、その他の分については、今さまざまに議論がなされているというふうに思っております。

笠井委員 いや、想定されないって、これはちょっとまたおかしいですよ。

 先ほど総理もおっしゃったのは、想定外という問題があってはならない、あらゆることを想定するんだと言われたんだけれども、今、想定されないという話をしたんですよね。しかも、この三・一一の東日本大震災があった後、この日本の地震、津波をめぐっての知見という問題では、さらに今見直しが始まって起こっているわけです。あの地震、津波によってこの日本列島全体の地殻が大きく変化したんじゃないかと、先日もNHKの番組で大きくやっていました。

 そして、そういう中で、先ほどありましたが、東海、東南海、南海、あるいは首都直下、三連動を初めとしてさまざまな可能性がある。大きくやはり今、日本列島は変わってきているんだということが問題になって、あらゆる想定をしなきゃいけないし、それはこれから検証して、研究して、知見を出していこうというのが地震学会や専門家たちの状況でしょう。

 それを、想定されないと今大臣は言われたんですけれども、そういう最新の知見こそ反映させなきゃいけないのに、あの大飯のところでは想定されないとは一体何ですか。

中川国務大臣 ちょっと言葉が足りなかったと思うんですが、トラフ型、一つの面として迫ってきて、それが沈みかけていくところへ向いてかぶさってきてもとに戻るという、大きな力が加わるようなトラフ型の構造にはあの地域はなっていない、こういうふうに理解をしておりまして、しかし、それを除外してでも、ほかの可能性、例えば断層ということを考えていくと、さまざまにあるということでありますので、その知見は、今、専門家の中で集めて分析をさらにしていくという過程の中にあります。

笠井委員 だから、ほら、途上なんですよ。分析の過程なんですよ。どういうことがあるかわからないんでしょう。だから、事故原因の究明もまだだし、安全対策も途上、地震、津波の研究も途上、規制機関もまだということで、それで、事故を防止できる対策と体制が整っているから大丈夫、こういう判断が何で出てくるのか。国民生活を守るどころか、国民の命と安全を危険にさらす最悪の判断だと私は言わなきゃいけないと思いますよ。総理の姿勢は、いわば、そういう意味では、事故があった後ですから、歴代の内閣の中でも最悪の形で安全神話を復活させる以外の何物でもない。

 総理は、万が一、ブラックアウト、突然の大停電が起こっちゃいけないということを言われるけれども、福島事故があって、この夏に原発が停止状態になる可能性があることは一年前からわかっていたことです。ちょうど一年前に、やらせメール事件を私ここで告発いたしました。たとえ原発が動いていなくても、いかにして電力を供給するのか、本腰入れて、企業や国民にも正面から問題提起して、当面の対策と再生可能エネルギー導入を進めてきたかが問われていると思うんです。

 天然ガスなどの火力の問題や自家発電の活用、電力融通、節電努力、どれだけ需要を減らして供給をふやすか、知恵もそういう中で出てくる。そういう努力こそすべきなんじゃないですか。総理、いかがですか。

枝野国務大臣 まず、先ほどの地震の件でございますが、原子力発電所ごとの再稼働問題を初めとする安全対策に当たっては、その原発にそれぞれ関係する可能性のある、例えば断層等についてはそれぞれ最新の知見を集めて対応しております。

 現に、大飯以外のところでは、新たな知見で連動の可能性があるということで、そのことの再調査をしているところでもございますが、大飯については、そういった新たな知見に基づいて再調査をするような断層の問題はないということで、従来の基準に基づいた対応で大丈夫であるということが専門家の皆さんによって御評価をいただいているところであります。

 それから、後段の御質問についてでございますが、この間、原子力発電所の再稼働の有無にかかわらず、電力供給の安定を図る見地から、節電についての安定、定着であるとか、それから、これは中長期に時間がかかることでありますけれども、さまざまな省エネ対策についてできるだけ前倒しで進めていく、さらには火力等の発電量の増強、これについては昨年からことしにかけてで一千万だったと思います、済みません、ちょっと単位が正確ではありませんが、一千万キロワットほどの供給量の積み増しも日本全体のベースでは行っておりまして、例えばガスタービン発電などの製造能力等から考えるとほぼ最大限に近い形で、この間、火力等の供給力の上積みは進めてきているところでございますが、万が一、ことしの夏が過去の統計上から見て最も暑かった夏のような猛暑である場合を考えると、電力供給量が不足をするというようなことの予想、これも第三者の皆さんを含めてオープンの場で議論いたしましたが、残念ながらそういう状況であるということでございます。

中井委員長 中川さんの答弁と今の枝野さんの地震に対する答弁は違うように思うがな。枝野大臣は、連動性の断層の地震はないと、大飯について。だけれども、中川さんは、これからだとさっき言われたがな。

中川国務大臣 これまでの知見があって、大飯については、断層も含めて再検証というのをして、その上で今回の結果が出されたというふうに理解をしております。

 さはさりながら、防災という見地からいけば、総合的に、この大飯の個々の問題だけではなくて、全て断層も含めて再検証をしていくということで、専門家の中でその議論が行われている、そういう意味であります。

笠井委員 委員長が指摘されたように、大臣の中でも違うんですよ。だから、そういう中で判断なんかできっこないんです、総理は。

 今、電力供給の話もそうですが、これも原発再稼働ということで、その可能性があるということでやっていると、本腰が入って、いろいろ探したり、みんな知恵が出てこないんですよ。関電だって、まだ努力が足りないと言われているんだから。では、大飯原発が再稼働として、トラブルでとまったらどうするんですか。それこそブラックアウトになりますよ。そういう問題だってあるわけです。

 私は、本当に国民の七割は、我慢する、とにかくいろいろ知恵を出そう、こんな危険な原発、このまま動かしていいのかと言っているわけですから、そういう立場で総理が判断をすべきだ、そして再稼働の判断はすべきでないというふうに思います。

 というのも、一年前の六月十一日ですが、原発さえなければと書き残して相馬市の酪農家の方がみずから命を絶った。ちょうど一年前です。先週の総理会見の翌日には、福島県の二本松市で、仮設住宅から車で一時間半かけて通院されていた原発事故避難者五人が交通事故で亡くなられました。遺族の方々も、ここでも、原発事故さえなければと無念の言葉を述べておられます。

 二度と再びあのような原発事故を起こさせてはならない。大飯原発の再稼働判断、方針の撤回をすべきだ、そして、今こそ原発ゼロの日本への政治決断を行うべきだということを強く求めていきたいと思います。

 次に、消費税にかかわってですが、まず伺いたいんですが、我が国における格差と貧困は深刻の度を増しております。

 今、貧困の問題は、ワーキングプア、働く貧困層を初めとして、国民のあらゆる層、世代に広がっている。年金暮らしなどで生活が苦しいという高齢者世帯は、厚労省の国民生活基礎調査でも、二〇一〇年には五一・五%にもなっております。そして、子供の貧困ということも重大であります。

 パネルをごらんいただきたいんですが、これは先月、五月二十九日にユニセフの報告書がまとめた先進三十五カ国の子供の貧困率であります。この順位であります。貧困ライン以下の所得しかない家庭のもとで暮らしている子供の割合を示したものであります。

 日本は何と一四・九%にふえて、ルーマニア、アメリカ、ラトビア、ブルガリア、スペイン、ギリシャ、イタリア、リトアニアに次いで、日本がワーストナインという高さであります。

 総理、こうした格差と貧困を解消するということは、我が国にとって国政上の重要課題だというふうに思いますが、基本的認識を伺いたいと思います。総理にお願いします。

野田内閣総理大臣 今、子供の貧困の指標をお示しいただきましたけれども、全体的に、お子様だけではなくて、やはり分厚い中間層が日本の原動力だったと思いますが、残念ながら、そこが今薄くなりつつあって、むしろ、下にこぼれて上がってこれないという人たちがふえてきているのではないか、そしてその格差が広がっているのではないか、そういう懸念を強く持たざるを得ない状況だと思いますので、貧困対策、格差対策ということは大変重要な課題だと思っております。

中井委員長 小宮山君、何かこの貧困率について意見ありますか。発言あるんですか。(笠井委員「いや、委員長、時間の関係ですからいいです、今言われましたから」と呼ぶ)

 都合のいいことだけ聞いて、いいといったってだめです。(笠井委員「いやいや、ちゃんとお答えいただいているんだから、総理に。都合いいも何も」と呼ぶ)いや、厚労大臣は専門家ですから。

笠井委員 では、その上に立って、基本的認識は共通だと思うんですが、消費税が一〇%に増税されたら一体どうなるか。

 消費税というのは、所得に対して逆進的というだけにとどまらず、買い物をすれば必ずかかる税金であります。つまり、生きている限り消費税がかかる。みずからに所得がない人も、被災者も、それから生活保護問題、いろいろ議論がありましたが、これは本当に大変なのに断られる人もある。そういう人も、あるいは家族の仕送りに頼っている人も、無慈悲に課税をされるわけです。

 今の税率五%でも、所得二百万円以下の人の消費税の負担は、負担率でいうと五・三%。これに対して、二千万以上の方は一・二%ということで、消費税というのは所得の少ない人に重くのしかかる最悪の不公平税制だ。そして、この消費税を大増税することは、こうした貧困層に対して追い打ちをかけて、格差と貧困の問題をますます深刻にするだけじゃないかと思うんですが、この点はいかがでしょうか。

岡田国務大臣 まず、委員は消費税の問題だけで論じておられますが、やはり私は、消費税で税収を得てそれを何に使うかということとセットで議論すべき話だと思います。

 つまり、我々は、これを社会保障のために使うということを申し上げているわけで、社会保障の方は、例えば医療にしてもあるいは介護にしても、所得の多い人、少ない人でサービスに差があるということはございません。基本的には同じサービスであります。

 ですから、消費税、これはもちろん累進的ではありませんが、消費の多い方には比例的に多くいただくわけですから、消費税を負担していただいて、そして社会保障に使うということは、それ自身が所得の格差是正の働きがあるということは委員もお認めいただけると思います。

 そのことに加えて、今回の改正の中で、国保とかあるいは介護保険の保険料について、所得の少ない方に対する減免措置とか、あるいは今回導入するに当たっての簡易な給付措置とか、そういったことを二段、三段に用意してありますので、所得の少ない方に過重な負担にならないように配慮されているということは申し上げておきたいと思います。

笠井委員 一体改革だから違うんだというふうに言われますけれども、では、一体改革で社会保障のためと言いながら、実際に国民の前にあらわれてやろうとしているのは何かといえば、医療にしたって年金にしたって介護にしたって子育てにしたって、削減メニューがずらりですよね。

 今後の大綱の中で言われているのも、年金の支給開始は六十八から七十歳に先延ばしするということであります。だから、国民の八割近くが、社会保障はこれでよくなると思わないと言っているわけです。子供に対してだって、子ども手当が児童手当になって減額されて、今月からは年少扶養控除が廃止になりました。そういう中で、収入の一カ月分が吹き飛ぶほどの重い負担が消費税でかかるというわけであります。

 なおかつ、副総理が言われたのは、その上で減免措置があり、消費税も低所得者対策があると言われるわけですが、しかし、そういうことを言うこと自体が、つまり、消費税そのものが低所得者にはなおかつ重くて、高所得者には軽い、根本的欠陥のある税制だということをお認めになったんだと思うんです。

 ところが、これまで消費税増税とセットでやってきたのは、富裕層に減税をしてきたということであったために、さらに不公平が広がっているわけです。負担能力に応じた税制の大改革こそ、今必要だと思います。

 安住大臣、私が三月に質問したときに、いやいやそうはいっても、最高税率を所得税は五%ほど上げるんですと言われて、対象は三万人で、それで税収増は四百億円とこの場で答えられました。証券優遇税制も、二年後にこれは本則に戻すということで、一〇%から二〇%に戻すというわけですが、この証券優遇税制の方は、戻して、税収増は幾らふえるわけですか。

安住国務大臣 一千ちょっとなんですよ。ちょっと待ってくださいね。一千三百ですね。いいですか。(笠井委員「それでいいです」と呼ぶ)消費税の話はいいですか。(笠井委員「その数字を聞いたんです」と呼ぶ)そうですか。

笠井委員 そうすると、一千ちょっとなんですよ、一千三百ですと。要するに、ちょっとなんですね。所得税の最高税率は、つまり、これを引き上げるということで四百億ですが、証券優遇税制の方は、これはつまり、金持ちの方にはもうちょっとちゃんとやってもらおうということでやるけれども、一千三百億。合わせても富裕層には合計一千七百億円の負担増ということですね。

 それに対して、それをやるから十三・五兆円の消費税増税は認めてくれという話で、私はこんな虫のいい話はないというふうに思うんです。

 世界を見ますと、アメリカでは、富裕層みずからが街頭に出て言っているんですよ。ニュースでもやっていました、タックスミーと言っているんです、富裕層が。タックスは税金、ミーは私、私に税金をもっと払わせてというふうにみずから言って、EU諸国でも、富裕層への課税強化に相次いで踏み出しているわけで、相変わらず金持ち優遇を残したままで消費税をさらに増税するというふうになれば、不公平がますます広がって格差が拡大するだけだ、私はこのことを言いたいと思います。

 では法人税はどうかということですが、政府は昨年秋の臨時国会で法人税率を引き下げる法案を成立させて、今年度から適用されます。当面三年間はほぼ同額の復興特別法人税を課すということで、減税相当分を震災復興財源に充てることになっているわけですが、それも三年限りということでありますから、つまり、消費税一〇%が実施される二〇一五年以降は、約五%の法人税減税だけが残るということになります。

 中小企業の七割が赤字で、黒字企業も利益はわずかですから、恩恵を受けるのは、中小企業じゃなくて、ほとんどが大企業ということになる。

 そうすると、庶民には消費税大増税で大企業には法人税減税ということになって、これまた格差是正に逆行するんじゃないかと思うんですが、これは総理、どうでしょうか。

安住国務大臣 いろいろ御指摘いただきましたけれども、まず、消費税と所得税や資産課税を先生は同列にお話ししましたが、私の認識は、消費税というのはやはり水平的な税なんですね。ですから、先生御指摘のように、これは一〇%なら同率でずっと皆さんにかかっていくわけですね。

 ですけれども、全世代でやはり御負担をお願いするということからいえば、消費税のそういう特性というのは、ある意味では、先生から見れば、そういう御負担が低所得者の方にかかると。だから、我々もそれは認識していますから、逆進性対策はやりますよと申し上げているんです。しかし、こうした広く、やはり全世代にお願いをしなきゃいけない部分がないと。

 先生が言っている話は垂直的な税の話ですよね、だから所得税でお金持ちからもっと取れという話かもしれません。しかし、累進率の話は、今、最高税率は四五で提案させていただいていますけれども、フラット化が問題だということであれば、私もそれは議論は十分やってもいいと思います。

 ただし、何度も実は特別委員会で申し上げていますけれども、五%、一〇%という、日本では、フラット化の中で税率が低いところに、所得税を納めている方の八〇%を超える方が入っているんですよ、先生。ですから、そういうことも、では直さなければならないということになりますから、高いところも問題を持っておられるんだったら、低いところも持っていただかないと、再配分機能が今問題になっているのは、課税部分が高いところだけでないということだけ私は申し上げたいと思います。

 それで、資産課税につきましては、相続税それから贈与税については、今見直しを始めておりまして、今回も、我が国では百人お亡くなりになった場合、課税は四人の方ですね。しかし、これを広げさせていただこうということで今やらせていただいておりますし、贈与税についても、お孫さんに対して贈与しやすいようにということで制度設計もいたしました。

 そういう意味では、高齢社会の中では、高齢者の中で資産というものを持っておられる方に対して、どういうふうに御負担をお願いするかというのは、私、今後議論があっていいと思います。しかし、復興のための所得税とか、いろいろな御負担をお願いしている中での今回の消費税のお願いでありますので、そういう点では、この所得税や資産課税のあり方というのは、私は、別途改めて、この水平的な税と垂直的な税のバランスを加味しながら考えなければならない課題だと思いますので、法人税の問題はありましたけれども、ここは見解の相違なので、そう申し上げさせていただきます。

笠井委員 いろいろ長々と言われましたけれども、消費税は全世代へ負担だと。先生から見れば低所得者に重いかもしれないがじゃないんですよ。国民から見て、低所得者から見て、そして全体としても重いんですよ。今そのことを言っているでしょう。しかも、逆進性があるということですよ。

 それから、所得税についても、これは累進にしていくというのは当然必要になってきます。しかし、所得の低い方で所得税を納める人について言えば、今体力が弱っているわけですよ。雇用の問題もある、低賃金もある、いろいろな問題があるから、そこは体力をつけてから、そういう段階で手をつけたらいいんですが、まずは、余って持っているところからちゃんと取ろうよという話でしょう。それが足りないんじゃないかという話をしているわけですよ。そこはやらなきゃという話じゃないんですか。

 そういうふうにしてやっていかなかったら、それはそんなことを言ったら、所得税も一律にかけてやる、低所得者にももっと上げるんだという話をしたって、それではできないという現状の中で、どうするかという議論をしているわけじゃないですか。

 そこで、私、時間もあれなので聞きますけれども、総理にこれは聞きたいんですが、ある国会議員が、二〇〇七年の二月二十五日のブログでこのように書いております。

 「小泉・安倍政権の六年間で年金課税の強化などにより国民の負担は、消費税率に換算すると三・五%に当たる九兆円も増えました。」しかも、〇七年一月からは所得税、六月からは住民税の定率減税が完全に廃止されます。さらに、税金だけではなく、年金保険料と介護保険料も同様に引き上げられます。「このように国民の負担が一層増大する傾向にある中で、税制改正に関わる所得税法等改正案が提出されました。その内容は五千五百億円余りの企業優遇の減税を行うというものです。ここ数年、企業収益は上昇する一方、雇用者の報酬は総じて減少傾向にあります。にもかかわらず、家計の増税を先行させ、企業減税を実施するという発想が理解できません。格差是正に逆行するのではないでしょうか。」当時安倍政権でしたが、この方はこう言っています。「まさに「あべこべ」内閣です。」と。

 誰のブログだったか、総理、これは御存じでしょうか。

野田内閣総理大臣 お尋ねをいただくということは、多分、また私ではないかと思います。

笠井委員 そのとおりで、この野田総理のブログ「かわら版」ということでこう言われているんですけれども、その中ではこうも書かれているんですよ。企業減税の一番の恩恵を受けるのは、「設備を多く持つ重厚長大の産業であり、成長分野のソフト産業や中小企業への恩恵は少ないとみられます。政策のスポットライトを当てるべき対象を見誤っているとしか言いようがありません。」と。私、同感で、全くそのとおりだと思うんですね。

 だけれども、そう書かれた総理が今されようとしていることは、消費税増税をまさにやる一方で、法人税率を引き下げること。そして、総理がかつて自民党を批判した、格差是正に逆行するあべこべ内閣の手法そのものじゃないかというふうに思うんですが、総理、これはいかがでしょうか。

野田内閣総理大臣 当時の問題意識としては、イザナギ景気を超える戦後最長の景気と言われながら、なかなか国民の生活実感が伴わない。しかも、御指摘があったとおり、雇用者の収入が減ってきているという状況において、当時、選挙の前でありましたけれども、だからこそ、子ども手当であるとか農家の戸別所得補償等々、直接手当を通じて、生活実感として、もっと豊かになってきつつある、平均な暮らしができるようになるという措置が必要ではないかという問題意識を背景にしながら、そのころの私は文章を書いていたというふうに思います。

 私は、そのころの問題意識としては、それは自分の実感を踏まえたものだと思いますが、今回は、これは社会保障を支えるために、もちろん、機能強化し、充実させるところもありますが、そのための安定財源は何がいいかという議論でございます。そのときに、先ほど御指摘をいただいている基幹税というのは、消費税と所得税と法人税です。基幹税の中で、では所得税を、今回、その充実と安定化のために十三・五兆必要ということですよね。それを消費税全て充てるということなんですが、では、十三・五兆ふやすのに、所得税は、今、税収、年間十三・五兆ですから、それを二倍にすればいいかという話では私はないと思います。

 私は、これは、負担においても給付においても、現役世代中心になっているものを変えていこうというときでございますので、所得税を二倍にすることはあり得ませんし、それはお金持ちだけだと四倍、五倍になるんでしょうか。そういう政策はあり得ないと思っております。

 加えて、法人税が、今、年間八・八兆でしょうか。かつてのようにはまだ入ってきていません。それを、では、社会保障の財源に充てるために十三・五兆ふやすことが本当に妥当でしょうか。産業の空洞化を呼んで、そして日本は沈み、そして雇用も図れないと思います。

 そういうことも考えると、やはり、社会保障、誰でもどこかでサービスを受けなければいけないものは全世代で対応するという支え合いの精神でいくならば、消費税が必要になるのではないか。そういう意味で、そのころと問題意識はやはり違うというふうに思います。

笠井委員 生活実感からいってもと言われましたが、今もう実態が、では、そう変わっているかといいますと、実感として国民はよくなっていると思っていませんよ。雇用者報酬だって上がらないわけだし、GDPの問題もそうです。成長のとまった国と言われている状況の中で、まさに、暮らしに打撃を与える消費税を増税するということが、経済をどん底に追いやって、そして景気を冷え込ますから、税収も減って、また借金がふえるという関係になるわけです。

 法人税だって、結局、減税分どこへ行ったかというと、内部留保に回っているというのが実態の数字で出ているわけでありまして、しかも、実際には、表面税率と比べて実際に払っている法人税というのはずっと少ないということがあって、だから、それで逃げてしまうとかという問題じゃないんです。需要が国内にないから、肝心なのは需要なんですよね、そういう問題をしっかりとやはり考えなきゃいけないというふうに思います。

 私は、そういう点でいうと、今こそ、消費税に頼らずに、社会保障を拡充する、財政危機も打開するという別の道を、消費税が格差と貧困をひどくするんだったら、それを徹底して探す。無駄を削るし、最初から応能負担で税金をちゃんとやる制度にするし、そして、賃下げやリストラをやめるということで国民の所得をふやす。そういう方向で日本経済を立て直す。そのことが、格差と貧困を解決する道にもなるということを強く言いたいと思います。

 日本共産党はそういう提言を出しておりますが、そういう点で、この消費税増税法案は、徹底審議の上、廃案にせよということを強く求めて、質問を終わります。

中井委員長 これにて笠井君の質疑は終了いたしました。

 次に、阿部知子さん。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 私は、本日、二十五分ですので、原発の再稼働と我が国の原子力政策についてお尋ねを申し上げます。

 六月の八日、総理が国民の皆様にということで表明された、再稼働が必要と思われる旨の会見は、正直言って、落胆もいたしましたし、大きな勘違いがおありなんじゃないかなと思いました。

 三つございます。順次お尋ねいたします。

 まず、先ほど来、笠井議員とのやりとりの中で、安全神話ということがございました。総理は、いろいろ、炉心損傷に至らないための、地震や津波が来てもそうならないための措置をしたから、これでとりあえずというか当面よしとしようというお話でした。

 でも、事故に至らないということをもって安全とすることが安全神話なんですね。多重防御とかいろいろなことがあるから大丈夫とすることが安全神話なんですね。

 私は、実は医療者です、医者です。医療の世界でも、昔、医療事故は起こらないものという前提で全て私たちは対応してきました。ところが、数多い医療事故と医療ミスの中で、起こり得るということも含めて対応していくべきであろう、これが医療界における大きな変化でありました。

 今、原子力行政も、起こり得る、そして、起こったら、どんな避難やどんな住民防御の仕組みがあるかということまで言わないと、国民を守るということにはならないんだと思います。

 総理がおっしゃったのは、何度も言いますが、炉心損傷に至らないための措置をした。しかし、原発を動かすものは、もちろん地震や津波も来るでしょうが、人間です。人為的な問題もあるでしょう。起こり得ることは多々あります。そうなった場合に、本当に住民を守れる体制が今ここで、あるとお思いなのかどうか、総理に一点お伺いいたします。

野田内閣総理大臣 私は、安全には上限はないと思います。絶対安全という言葉は成り立たないと思います。

 さはさりながら、三月十一日以降のさまざまな対策、そしてさまざまな専門家の御意見を取り入れた知見というものを合わせた中で、現段階においては安全性の一番高いレベルでのチェックをしてきた、そこで、炉心溶融には至らないという判断をしたということを申し上げたかったので、また新たな知見が出てくるならば、さらにそれを踏まえた基準というものをつくっていくべきだと思います。

 ついでに言うならば、医療だって過誤の可能性はあります、ミスの可能性はあると思いますが、それでも、患者さんに向かうときには、やらなければいけないこともあると思います。そういうことは、余り同じような話ではないかもしれませんが、御理解いただきたいと思います。

阿部委員 安全をどう高めていくかは日進月歩です。それでも事故が起きた場合に、現実にそこに住まう皆さんや環境をどう保護できるかということを、この東京電力福島第一事故を踏まえて、そこまで総理は提言されないと、国民は安心できません。

 後ほど福島県の双葉町長のお手紙を紹介したいと思います。本日、私は、本当は参考人としてお願いしたかったのですが、この場が場であるのでということで、委員長にも、また別途ということでお話をいただきましたので、手紙を代読したいと思います。

 その前に、もう一つ総理に申し上げたいのは、今回、もし電力不足が起きて計画停電になれば、例えば、人工呼吸器を使っている方が命を落とされるというふうに言いました。総理は、それは御自身はおどしとは気がついておられませんでしょうが、実は、患者さんにとってはそうなります。

 私ども医療者は、もし計画停電になっても、これが無計画な計画停電でなければ、東京電力の計画停電は極めて無計画な、ある日、あるんだかないんだかわからない計画停電を病院も含めてやったものでありました。その中で、透析をどうするか、外来をどうするか、呼吸器をどうするか、そういうことにも医療サイドは備えをしてまいりました。

 ですから、総理はそういうおつもりではないと思いますが、人工呼吸器の危機までおっしゃるということは、患者さんたちにとって大変不安を私はもたらすと思います。

 そして、井戸川町長のお手紙を紹介いたします。

 双葉町長 井戸川克隆

  この事故を境に私たちの生活は大きく変化してしまいました。役場機能が喪失することは計り知れないほど大きな負担です。

  私が町長を目指したのは、町が財政危機になっていたからです。必死になって再建に励みました。節約しました。運転手を使わない、給料を減額する、トイレットペーパーも自分で用意していました。可能なムダを排除してきました。

  町民、職員の皆さんの協力もあり改善してきたときに事故が起きました。平成十七年就任以来、東電・保安院には大きな事故を起こさないようにいつも話していました。返ってくる言葉はいつも「町長さん大丈夫です「止める・冷やす・閉じ込める」がしっかりしていますから」といわれてきました。しかし、事故は起きてしまいました。

  十二日に国からの避難指示を受けて町民に避難の指示をしなければならない気持ちは一言では言えないほど複雑でした。あれほど言ってきたのにという強い憤りと、いつ帰れるか分からないのに出す避難指示にどれほど恐ろしさを覚えていたかという事でした。

ここ以下、あと二枚ほどございますが、今この井戸川町長は、二百名余りの町民の皆さんと埼玉の加須におられます。

 まず、野田総理、私はきのう、総理の関係の方に、一体総理は何回くらい福島へいらしたんですかね、被災の皆さんにお会いになったかしらねということをお尋ねしました。

 ぜひ、私は、先ほど石破さんが、沖縄の辺野古問題でも沖縄に行くようにとおっしゃいましたが、この、いまだに帰ることのできない、ふるさとを離れて埼玉でお暮らしの皆さんにお会いになることをやっていただきたいと思います。町長にもその場で、あなたが呼びつけて会うのではなくて、これは人間の礼儀です、行っていただいて、会っていただきたい。いかがですか。

野田内閣総理大臣 被災地には、常に、チャンスがあれば行ける日程が組めないかということはずっと秘書官に申し上げております。それでも限界がございまして、今御指摘の加須には行っておりません。チャンスがあればぜひ行きたいというふうに思っております。

阿部委員 チャンスはつくるものなのです。

 何を言っているかというと、今回の総理の表明は、福島の皆さんには、切り捨てられた、国民の中に福島県民は入るんだろうかと思われたんですよ、総理。

 なぜならば、あなたの言葉の中には、福島の人々の気持ちはよくよくわかる、しかし、人々の暮らしを守るために再稼働をすると。よくよくわかる、しかし、守るためにと言われたら、よくよくわかって、帰る場所もなく、暮らしの未来も立たない人たちは、一体何を守られているんでしょうか。

 今ここにお示ししたのは、これから先、二十ミリシーベルト以下のところは順次除染を進めて帰れるだろうという政府の方針であります。私は、これ一つ見ても、例えばチェルノブイリでは、一九八六年の事故の後、一九九一年につくられたチェルノブイリ法では、せめて五ミリシーベルト以下のところに人々を住むようにいたしました。今の政府の出されるいろいろな文書がまたまたいつの日か二十ミリシーベルトに変わり、そこにいつになったら、二十ミリシーベルト以下なら帰れるかのような情報を出すべきではないと私は思います。

 総理に、きょうはこれを宿題といたしますから、ぜひ現地に行き、お声を聞き、もしも原子力が総理が思うように大切と思われるのであれば、そのことを受けとめる、特に被災地の皆さんの気持ちが大事です。

 きょうも、福島地検に、千三百二十四人ですか、提訴をなさいました。生活を奪われ、避難を指示されず、大変な被害をこうむったと。こういうことが一方でありながら再稼働というのは、私は、やはり総理の姿勢として誤っていると思います。

 引き続いて、枝野さんに伺います。

 私は、今総理にるる、総理の安全神話は続いているんじゃないのと伺いました。枝野さんも同じなんじゃないでしょうか。なぜなら、今回いろいろな基準をつくられましたが、その基準は一つ一つ日進月歩です。でも、やらねばいけないことは、事故が起きた場合の想定も含めた、避難の確保とかも含めたものです。

 この点について、どうでしょう。

枝野国務大臣 御指摘のとおり、いかに事故を起こさないか、起きた場合でも事故そのものを拡大させないかということの対策に加えて、事故がいわゆるシビアアクシデントになってしまった場合の原子力防災ということについても、当然、原子力発電の安全を守るという観点から、大変重要なことであると思っております。これについても、当然、ある一定水準で十分ということではなく、原子炉が起動しているか否かを問わず、全ての原子力発電所について、常により高い水準を目指して取り組むことが重要であるというふうに考えております。

 こうした観点から、この一年間、原子力安全・保安院、原子力安全委員会の御意見もいただき、さらにはIAEA等の国際機関ともしっかりと議論を進めていく中で、直ちにとらなければいけない対応については、この原子力防災の観点も含めて進めてきたところでございます。

 時間がかかりますがということについて、一定期間内ということについて残っておりますが、まさに先ほど申しましたとおりの観点で、ある基準で十分ということはありませんので、できることについては、さらなる安全性向上を高めるためにどんどん約束をして進めていく。ただ、最低限やらなければならないことについては、今回対応させていただいたと思っております。

阿部委員 私は、その最低限が住民側にとってなされていないと思います。

 これは、原子力安全委員会班目委員長、来ていただいていますが、三月二十二日に出された見直しです。原子炉の耐震性や炉自身の安全設計を見直すと同時に、私が今問題にしている防災指針、すなわち、事故が起きた後、どこへどう逃げるか、人々は守られるかということで、三月二十二日、おまとめがございます。ここには、今まで十キロ内とされていたさまざまな防災指針を、もっともっと広げていく必要があるという提言でございます。五キロはもう、事故が、放出していなくても即対応すること、そして、三十キロ、五十キロと。これは、五十キロにプルーム、放射性物質が飛んだという実態があるからです。

 班目委員長に伺います。こうした委員長たちのおまとめは今のこの再稼働を前に生かされているでしょうか、どうでしょう。

班目参考人 原子力安全委員会といたしましては、この防災指針の見直しにつきましては、関係行政機関に伝達し、速やかに実施するよう期待しているところでございます。

阿部委員 期待していても、なされていないんですね。委員長のお立場でそこを言いづらいと思いますから私があえて言いますが、期待しているということは、期待して、まだなされていないということなんですね。

 細野さんに伺いますが、今、環境委員会で、新たな原子力規制庁、審議のさなかです。私は、あの審議を聞いていて、最も欠けているのは、オンサイト、原子炉の中ではなくて、オフサイト対応です。防災指針もまだできておりません。オフサイトを誰が管理するか、このこともまだ決まっておりません。防災指針ができると、今度は自治体が計画をつくります。これもできておりません。

 おまけに、十キロ以内にある、例えば大飯のオフサイトセンター、事故が起きたとき対応するところ、ここは、御存じかと思いますが、海抜二メートル、海から百メートル。津波が来たらひとたまりもないところに第一のオフサイトセンターが置かれております。なぜ、こうした防災のための指針をきっちりつくり、自治体が計画をつくり、オフサイトセンターも、そんな危険な場所にあっては、もう一つをつくっておくから大丈夫じゃありません。女川で、同じようにオフサイトセンターがやられました。

 このことも含めて、あの地震、津波、事故、全て含めて本当の安全性を高めるべきだと思いますが、一体、オフサイトセンターを含めた炉の外は誰の責任で、そして、いつ指針がつくられて、いつ自治体は計画を出すのですか。それができていなくて、本当に住民が守られるとお思いですか。お願いします。

細野国務大臣 防災指針でございますが、先ほど班目委員長から答弁がありましたとおり、原子力安全委員会は、三月までということが従来前提でございましたので、非常に急ピッチでまとめましてつくった、そういうものでございます。

 それを受けまして、今回提出をしております政府案の中の原子力災害対策特別措置法に、これまで法的に位置づけられておりませんでした原子力災害対策指針を取りまとめることとしております。新しい規制組織が誕生した後に最も取り組まなければならないのが、この特にオフサイトについての指針、そしてそれを具体化した地方のそれぞれの計画ということになってこようかというふうに思います。

 そうした意味では、若干ちょっと前のところに戻りますが、今回、原子力安全委員会が三十キロと出しました。恐らく、これを出すというときに、従来であれば、そんなことをしたら自治体が大変なことになるので出さないのがいいのではないかというブレーキが何らかの形でかかったと思うんです。でも、今回は、それは当然かけるべきではないし、出すべきだというふうに私自身も感じましたので、そのまま原子力安全委員会で出しました。

 それは、新しい規制組織が誕生したら、すぐやります。ただ、今何もやっていないかといえば、そうではなくて、オフサイトセンターについては、優先順位をつけて、どういった形で対応するかも決めております。福井県は、実際に防災訓練もやりました。そして、その自治体にどういう連絡をするのかということについても、今、保安院が具体的なリストもつくって対応しています。

 私は今、保安院の直接の担当ではありませんが、どういう連絡体制をつくっているのかということも含めて、誰が担当するのかも含めて、全て確認をした上で、これならば少なくとも対応はできるだろうということで判断をしているということをぜひ御理解いただきたいと思います。

阿部委員 誰が責任を持って、その防災指針にのっとって、自治体の連絡や、あるいは沃素も配らなければいけません。そうしたことはまだ策定されていないじゃないですか。だって、法律はまだできていないじゃないですか。法律ができて、その後、指針ができて、自治体の計画ができるんですよ。なぜ、そんな住民を守れない体制の中で再稼働を強行されますか。そのことを私は冒頭から問題にしております。

 ここは、大飯の原発も含めて、福井県の原発の幾つかです。もし三十キロ、五十キロ圏と見直し圏が広がれば、すなわち、これらは全て影響を受けるところであります。滋賀県も京都府も、それゆえ自治体の首長が声を上げておられます。

 モニタリングポストの問題もSPEEDIの問題も、まだ解決しておりません。班目さんは鋭意指示は出しておるとおっしゃいますが、まだ文部科学省は滋賀県にSPEEDIの情報も出しておられません。そういう中での再稼働です。自治体の首長が不安に思うのは当然だと思います。国の対策が、怠りが、私は国民に大きな不安を与えていると思います。

 最後の問題に行かせていただきます。

 もう一つ、原子力行政においては大事な大綱、原子力大綱というものがございます。原子力基本法にのっとって、それをどのように考え、この国が原子力行政をやっていくかですが、この大綱の作成、二〇〇四年段階においても、今話題になっておりますような秘密会議、勉強会と称するような、表向きの有識者の会議とは別に、業者の方なども、あるいは官僚の皆さんも呼んだ勉強会があるのではないかと指摘をされました。

 きょうは近藤委員長に来ていただいておりますが、国民から見て、そういう秘密会が行われているという指摘は、極めて原子力行政に不信を抱かせるもととなると私は思います。委員長としての責任と、そして、今後の方針についてお話をいただきたいと思います。

近藤参考人 原子力委員会の運営に関する透明性、公正性の重要性についての私の認識と監督の至らなさにより、原子力行政に深い影響をもたらしていることを重く受けとめておりまして、深く反省しているところでございます。

 御質問のありました、現行の原子力政策大綱の作成準備期間中でございますから、二〇〇四年の六月ごろの話を問題提起されたと理解しますが、その会議は、私は二〇〇四年の一月から原子力委員をお引き受けいたしまして、それまで大学にいまして、大学にいますと、あらゆる関心事、興味が湧きますと、いろいろな人に集まっていただいて勉強するという会合をずっとやる、それが習慣になっておりましたので、原子力委員会に参りましてからも、勉強したいテーマがありますと、その種の会合を持ちました。ですから、その期間中にも、勉強のため、専門家に研究成果をお聞きしたり意見交換をするという会合は一再ならず持ってきたというふうに思っていますが、それはまさに私の勉強のためでございますので、メモをつくらないということで、現在まで持っていないわけでございます。

 ただ、今回の会議の運営等につきましては、最近の取り上げられている問題につきますと、私の理解としましては、会議の会務を総理する責任は座長にございますので、座長が会議に責任を持って提出した会議資料を公開の席できちんと議論し、そして審議し、結論に至ってという審議会としての意思決定過程は極めて透明かつ公正、公開されて行われてきたという理解をしているわけでございますが、その会議の資料を準備する過程におきまして、さまざまな方の御意見を伺うという会合を持ったということは事実でございまして、そこのところについて、透明性とか公正性とかいうことが重要だということの御指摘を受け、そういう観点から、瑕疵ありやということについて検証せいという御提言をいただきましたので、これにつきましては、細野大臣にお願いしましたところ、検証チームが設けられたと承知しております。

 原子力委員会としましては、この検証過程に全面的に協力してまいる所存であり、また、その検証結果を踏まえて、会議資料の準備、プロセスのあり方などについても見直して、この運営における透明性、公正性を確保していきたいと考えております。

阿部委員 原子力委員長はあくまで公人であります。そして、原子力委員会のメンバーを集めることも公務としてなさっているわけです。そこに官僚が行くことも事業者が行くことも、恐らく私的なものではありません、会社にも報告をなさるでしょう。そういうものの議事録もない体制で日本の原子力政策が決められるということは、国民から見れば本当に奇怪きわまりないです。原子力村なんじゃないかと思われます。

 細野さん、最後に一問お願いします。

 これを調査するのに、内々の調査ではなくて第三者委員会を設けるべきだと思います。内々で内輪で起きた不祥事を調べても、本当の姿は出てまいりません。

 公開性、透明性を旨とする細野大臣ですから、ぜひ第三者機関でやっていただきたい。いかがですか。

細野国務大臣 昨日、検証するチームを立ち上げました。

 その前提として、一点だけ阿部委員にぜひ御理解をいただきたいんですが、原子力委員会及び大綱を策定する会議には事業者は入っておりません。これは入れるべきでないというふうに思います、国としてつくりますから。ただ一方で、核燃サイクルの場合は、日本原燃という民間の会社がやっておりますから、どれぐらいのコストがかかるのか、どれぐらいの廃棄物がかかるのかというのは、政府側から、もしくは専門家側からだけでは見えなくて、どうしてもそれは民間の事業者の方から情報をとらなければならないという事情があることをぜひ御理解いただきたいんです。ですから、民間と接触をしていろいろ情報をとるのは、これはもう不可避なプロセスだということをぜひ御理解いただきたいと思います。

 その上で、先ほど委員長の答弁にありましたとおり、適切な運営でなかったというふうに考えますので、検証委員会を立ち上げました。身内ではありません。原子力委員会は独立した八条委員会ですので、内閣府のもとで、全く職務に関係ない人間がやります。副大臣がヘッドです。

 ただ、いろいろ皆さんから疑念を持たれることは本意ではありませんので、検討はできるだけ早くやりたいのでこのメンバーでやらせていただきますけれども、最終的に、できた段階で外部の皆さんに評価をしていただくなどのやり方については至急検討したいと思っております。

阿部委員 一言だけ。

 官僚の皆さんが出ていて業者がいなかったかどうかも実はわからないじゃないですか。なぜそんな決めつけるんですか。そういうことだから、外部の委員を入れないとだめだということです。

 終わります。

中井委員長 これにて阿部さんの質疑は終了いたしました。

 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 内閣の最重要課題であります税と社会保障の一体改革と称する消費税増税についてお伺いします。

 とうとう修正協議で消費税率一〇%への引き上げが合意されたそうであります。しかも、税と社会保障の一体改革といいながら、社会保障の方は棚上げ、撤回、先送り。何に使うのか決めないで、増税だけは民主党、自民党で一緒になって先に決めてしまおうというのだから、これを見て、社会保障云々は結局増税の隠れみのだったのか、国民の誰もがそう思っているはずだと思います。

 年金制度についてお伺いをいたします。

 皆さんは、自民党政権の年金制度の見直しで提示された百年安心プランについて、いわば絵そらごとだというふうに批判をし、また、年金制度の危機的状況を強調されてきたはずであります。税と社会保障の一体改革というなら、年金制度こそまず議論すべきであるのは、これは決まっていると思います。

 ところが、一体改革といいながら、本来増税とセットで提案されるべき新年金制度の法案が、そもそも提案もされず、最初から先送りになってしまった。あまつさえ、最近では、さんざんそうやって批判をされていた現行の年金制度を、今のままでも百年安心です、こういうふうに言い始めた。どうなっちゃっているのかと国民の皆さんは思うのではないでしょうか。

 そもそも、民主党政権が現行制度にかわる新たな年金制度を提案するに至った前提となる問題意識というのは一体何だったんですか。現行制度は不安なんですか、安心なんですか、どっちなんですか、お伺いします。

野田内閣総理大臣 冒頭、断定的にちょっとお話をされたことは事実と違いますので、そこからまず申し上げたいと思いますが、消費税だけを今協議をやって決めたという事実はありません。税は税の実務者で協議をやっておりますが、これはまだ議論のプロセスであります。

 加えて、社会保障改革についての協議も精力的に行っておりまして、お隣の細川筆頭がそれにかかわっております。社会保障を全部棚上げしてという議論は全くやっておりません。社会保障の中でどういう改革ができるかということを、今真摯な議論をやっているということでございますので、今の冒頭の御指摘は間違いなく間違っているということを御指摘したいというふうに思います。

 その上で、年金制度についてのお尋ねがございました。

 私どもの問題意識、新しい年金制度を提案しようとしたその背景というのは、被保険者のうち約四割がパート労働者などで占められており、不安定な雇用者に対する将来の年金保障が十分なものになっていないということ。それから、未納、未加入問題などもございますし、それが加速をしているという状況の中で、将来の無年金、低年金が増加する懸念がある。

 こういう課題がある中で、年金に対する国民の信頼が十分得られていない、必ずしも得られていないという問題意識の中から、社会保険方式としての所得比例年金を基本としながらも最低保障年金を補足的に給付するという新しい年金制度というもの、党のさまざまな議論の積み重ねの中で、それが集大成として出てきているということでございます。

柿澤委員 だったら、なぜ新しい年金制度をこの税と社会保障の一体改革で同時に提案されないのか、こういうふうにも思います。

 一枚パネルを出させていただきますが、現行制度の賦課方式の年金の問題点をわかりやすく示したものです。

 昔と今とを比べると、これは世代間の仕送りの制度でありますから、支え手である現役世代が減って受け取る側の高齢者世代がふえると、当然の成り行きとして財政運営が行き詰まってしまう。私は、年金制度の不安の根源はここにあるんだというふうに思っています。

 二枚目のパネルをごらんいただきます。これは、内閣府の経済社会総合研究所のディスカッションペーパーをもとに計算をしたものであります。厚生年金の世代別損得表。厚生年金の保険料の事業所負担分はカウントされています。

 かつては、現役世代が多くて保険料が潤沢に入ってきたので、負担に比べて手厚い給付が受け取れました。しかし、今やごらんのとおり、一九五五年生まれからはマイナス、私の世代の一九七〇年代の人はマイナス千七百四十万円、そして、将来世代は大幅な払い損になっている。

 これすら、運用利回り四・一%の平成二十一年財政検証、皆さんが粉飾決算まがいだと批判もされたような数字です。この数字が前提でありますから、将来世代の損得というのは、実はここに書いてあるよりももっと悪くなる可能性がある。社会保障全体で通していえば、孫は祖父より一億円損する、こういう試算もあるほどであります。

 今や、内閣府もこのような世代間格差の存在を認めるようになった。年金における受益と負担の世代間格差をどう考えているか、お伺いします。

岡田国務大臣 まず、働く世代と高齢世代の人口比が変わる、そういう中で賦課方式をとっておりますので、積立方式ではありませんので、若干の違いが出てくる、そういう意味においては、委員の御指摘、正しい部分がございます。ただ、そこでやはり考えておかなければならないことが幾つかあります。

 一つは、この委員の数字ですが、我々、基礎年金、国民年金には半分税が入っているということであります。したがって、払った保険料が払っただけ戻ってこないということはなく、それは税が入っている分だけ、カウントすればきちんと払った保険料以上のものが戻ってくるということが一つ。

 それからもう一つは、世代間の議論をするときに、いろいろな条件が変わっているということは考えなければならないと思います。例えば、委員やあるいは私の世代ともっと高齢の世代で、親に対してどれだけ介護するかとか世話をするかとか、そういう考え方は随分変わってきたと思うんです。今、年金保険料を受け取っておられる世代の人たちは、しっかりとそういったこともやってきたということであります。恐らく、我々の世代は大分変わってくる、委員の世代になればもっと変わるだろうというふうに思います。

 そして、そもそも今の日本があるのは誰のおかげかといえば、それは、今の高齢世代が頑張って高度成長期を形づくってきて、そして我々の所得が世界の中で、多少今滞留しているかもしれませんが、しかしかなり高いレベルまで来たということは、やはり我々の上の世代のその結果であって、そういうことをトータルで判断していかないと、損得の金額だけで年金制度を論じるというのは私は少し狭過ぎるのではないかというふうに思っております。

柿澤委員 国民年金に税が投入をされていて、そしてそれを勘案すれば払った分は返ってきている、こういうお話がありましたけれども、こういう形で負担と給付の関係が明確でないということが、現行の年金制度のやはり大きな問題点だというふうに思うんです。

 そこを、いわば税金の投入分をカウントしてまぶしてしまって、そして負担と給付、ある人はむしろ払い損だと言い、政府の側はいやいやそうではないと言う。こういう状況が、年金制度そのものに対する不安をもたらしている原因になっているのではありませんか。

 そして、世代間格差の問題について言えば、今回、消費税を年金財源として充てる、全世代から取る消費税という財源であるからこれは世代間格差の解消につながるんだ、こういう御答弁がよく出てまいります。

 しかし、増税による財源確保を行うと、基本的には、賦課方式のままでやれば、高齢世代は高福祉を享受し、現役世代にはさらに高負担がのしかかる、こういう高福祉・高負担となって、むしろ世代間格差は拡大をしてしまう。こういう賦課方式をとり続ける限り、この構造は変わらないというふうに思います。

 賦課方式の現行年金制度に内在するこういう問題点を若い世代の人たちは漠然と感じ取っている、それが年金不信の原因となって、国民年金の未納率四割、特に二十代の半数以上が保険料を支払わない、こういう状況になっているのではないでしょうか。ここに答えを示さないと、年金不信は解消しないと思います。

 人口構造の高齢化によって必然的に財政的に行き詰まる現行の賦課方式をやめて、自分が払った保険料が将来のみずからの年金として確実に返ってくる、負担と受益の関係が明確な積立方式の年金制度へと移行することが必要だ、こういう論者もおります。こうしたことについて、御見解をお願い申し上げます。

岡田国務大臣 委員御指摘の積立方式、平均寿命まで生きたとしたら全額返ってくる、それ以上長生きすればより返ってくるということになるんでしょうけれども、そういう積立方式は非常にシンプルでわかりやすい、そういうメリットはあると思います。ですから、ゼロベースで議論できるなら、そういう積立方式へと移行するということも非常に魅力的な提案だと思います。現に、私が自民党の野田先生などと超党派でつくった年金の抜本改革案の中では、そういうことも提案しております。

 ただ、最大の問題は、二重の負担の問題をどうカバーしていくかということであります。つまり、今、年金をこれから受け取るという方は、既に保険料の分は高齢者のために使われてしまっているわけですから、自分では積み立てていない、自分の払った保険料はもう高齢者のために使われているということで、そこですき間が生じる。それを二重の負担と言うわけですけれども、そこの部分をどこかから財源を持ってきて穴埋めしなければいけない。

 その額が、恐らく、基礎年金の部分はある程度税でやるという仮定に立っても、三百兆円から、まあ計算の仕方によれば五百五十兆円ぐらいかかるということであります。これは厚生年金だけです。共済年金は含まれておりません。

 そういった三百から五百超のお金をどこから持ってくるのかということについて、きちんとした答えがないままに積立方式に移行することはできないということだと思います。

柿澤委員 この間、自民党政権時代から、巨額の積み立て不足の二重の負担があるとか、積立方式はインフレに弱いとか、こういうことが言われてきました。結局、民主党政権になっても、同じ御答弁をいただく結果になったわけであります。しかし、積立方式への移行は可能であるということを提言しておられる方もいます。

 三枚目のパネルをごらんいただきます。

 これは、一橋大学の小黒一正准教授が提案している事前積立方式というものであります。これをわかりやすく説明したのがこのパネル。これは、百年単位で保険料の積み立てと取り崩しをしようというものでありまして、通期の保険料率は全世代共通としております。このグリーンの横のラインですね。現役時代は全世代共通の保険料を納め、受給世代となったらそれに見合った年金を受け取る。これによって、各世代の負担と受益は平準化をし、さらに、こちらの三角のグラフですけれども、前期で積み上がった積立金を後期で取り崩すことによって、年金の長期財政収支は必ず均衡する、こういう方式です。

 何よりも、年金不信の根源となっている受益と負担の世代間格差を平準化し、払った分だけもらえる形にしてあることがポイントであるかと思います。そして、積み立て不足による二重の負担、これは三百兆円から五百兆円、こういうお話をいただきましたけれども、これも、百年で平準化をして償還財源を確保するのであれば、年金制度をめぐるあらゆる議論に重くのしかかってきた過去の年金給付のいわば大盤振る舞いのツケ払い、これを最終的に清算することもできるようになるのであります。

 年金制度の改革をするというのであれば、このような年金不信の根源に対する答えを持った制度にしていかなければならない、このように思いますけれども、御見解をお願いいたします。

岡田国務大臣 私は、この表以外の知識がございませんのでわかりませんが、これは積立方式とどこが違うのか、このやり方ならなぜ過去債務が発生しないのかというのは、ちょっとこの表だけでは、私、理解できないんです。

小宮山国務大臣 個々の学者の方のお説を論評する立場にはありませんけれども、これを拝見する限り、実質的には、現行の賦課方式を基本として今行っているものと大して違いはないというふうに思います。

 これはやはり、人口ピラミッドが平均していればいいんですが、今のように高齢者が多いときに、そこの部分をどう賄うのかということがわかりませんし、積立方式に移行するためには、先ほど副総理も言われましたように、二重の負担になるということと、やはり全体を賄うのには七百兆近くの積立金をどう運用するのかということもございますので、これは今も、全体、百年後には積立金が一年分になるような形で、それも使いながら今やってきているので、今の方式と大差はないというふうに思います。

柿澤委員 今の方式と大差がない、こういうお話でありましたけれども、だとするならば、なおさら、私は、年金制度に対する国民の不信と不安を払拭するためには、こうした形で、みずからが払ったものがみずからに返ってくる、こういうわかりやすい、岡田副総理もおっしゃられた、シンプルな制度に移行していく、このことがやはり大事なのではないかと思います。

 また、先ほど二重の負担のお話もありましたけれども、先ほどこのグラフを使ってお話をしたとおり、百年間で平準をして、そして償還財源を確保する。こういうやり方をとっていけば、まさにこの年金制度の議論の全ての桎梏になっていた過去債務の解消ができるようになるわけですから、この点、ぜひ前向きに御検討いただきたいというふうに思うんです。

 私は、何もこの件について対立的に議論を行おうというわけではなくて、まさに世代間格差の問題を、皆さんも機会を捉えておっしゃられてきたわけですから、それを抜本的に解決する、そうした方式をぜひとっていただきたい、こういうふうに思っているところでございます。

 残りの時間で、残余の質問をさせていただきます。

 原発の再稼働の問題についてお伺いをいたします。

 法的な根拠のない稼働停止であるので法的な根拠のない形で再稼働の判断がなされるのもやむを得ないというのが、先日の枝野経産大臣の委員会での答弁でありました。しかし、国会事故調の提言を待たずに再稼働の判断をするというのは、国会事故調を設置した国会の全会一致の意思を軽んずるものではないかと思います。

 現に、国会事故調の黒川清委員長も、理解できない、国家の信頼へのメルトダウンが起きている、こういうふうにおっしゃられている。再稼働の政治判断を最大級の言葉で批判されているわけであります。

 先日の委員会で、自民党の議員からも、公明党の議員からも、新しい規制組織はつくる、新しい安全基準のもとに再稼働の判断をすべきであると、現時点での再稼働に反対の意思表示がなされております。民主党からも百人以上の議員が申し入れをされておられる、こう聞いております。国会事故調も軽視をし、また、主要会派の議員の意見も無視をする。国権の最高機関たる国会の意思をいかがに考えておられるんですか。お伺いをいたしたいと思います。

枝野国務大臣 私の過日の委員会の発言も、今の引用されたような中身ではなかったので、ここで明確に訂正をさせていただきたいと思います。

 私が申し上げたのは、原子力発電所は、三・一一の事故を受けて、動いているものはもちろんですが、とまっているものも含めて、では事故が起きました、事故の教訓を踏まえたさまざまな、例えば法改正とかが起きるまで、事故が起きないで待っていてくれるものではありません。その事故の教訓を踏まえて、できることから全てやっていく。

 そのことの中では、例えば法改正とか、例えば組織の改革とかというものは、残念ながら一定の時間がかかります。そうした中で、これはこういう経緯ですから事業者も当然受け入れてくれたものでありますけれども、さまざまなことは法律ではなくて行政指導で、例えば再稼働をとめたり、あるいは安全対策について求めてやってきたということでありまして、法律じゃなくやったんだから法律じゃなくあけていいんだという趣旨で申し上げたものではありません。それは明確に否定をしておきたいというふうに思います。

 それから、さまざまな原子力発電所の事故に対する調査は、さまざまな機関でやっていただいております。政府の事故調での中間報告や、それから保安院、これもみずからだけでやったのでは決して十分な信頼性はないと思っておりますが、外部の皆さんをお招きして公開の場などでの意見聴取会、あるいは民間事故調なども事故の検証を行い、事故の原因については基本的な共通理解は得られたというふうに思っております。

 そうしたことを踏まえ、なおかつ、IAEAや原子力安全委員会を含め、一年以上の時間をかけ、専門家による五十回以上にわたる公開の議論を通じて、対策や知見を積み重ねてきたところでございます。

 その上で、私が申し上げる立場ではないかもしれませんけれども、六月八日の国会事故調の黒川委員長の記者会見においては、再稼働の話は私がコメントする立場ではないということをおっしゃっておられるというふうに承知をしております。

柿澤委員 時間も来ておりますが、今のはお答えにはなっていないと私は思います。そして、前段のお話も、結局は、私が申し上げたことを、言い方をかえているだけです。

 こういう形で御答弁をされて国民の皆さんが納得されるとは到底思えない、このことを申し上げて質問を終わります。

中井委員長 これにて柿澤君の質疑は終了いたしました。

 次に、内山晃君。

内山委員 国民との約束を大切にする新党きづなの内山晃でございます。

 先ほど、平沢勝栄先生も質疑をされておりましたけれども、私も同じことを一点お尋ねしたいと思います。

 丹羽中国全権大使の外国紙インタビュー記事について、大使は、東京都の尖閣諸島購入計画について、実行されれば日中関係に重大な危機をもたらす、こう述べておられます。どこの国の大使かわからない発言で、日本の国益を失う重大で看過できない発言だと認識しておりまして、即刻首にすべきだと思いますが、総理大臣の見解をいただきたいと思います。

玄葉国務大臣 先ほど来から申し上げておりますように、私の方で判断します。

内山委員 それはどういうことですか。国民全体の、これはもう国益にかかわる問題じゃないですか。大臣の判断じゃない。

 総理大臣、答えてください。

玄葉国務大臣 丹羽大使は私の注意に対して心からのおわびの言葉を言っている、そのことについて私としてはしっかり受けとめている、そのことを踏まえて判断を現時点でしているということでございます。

内山委員 そんなことでは日本の国益は守れない。

 この丹羽大使の記事を読んだ中国の記者が、とても我が国のためにとってはいい記事だ、こう褒めたそうですよ。こんなばかな大使は即刻呼んで、首にしなきゃだめですよ。私たちの税金でこんな大使に給料を払うことなんかとても許されない、そう思います。

 しっかりと、総理、総理から一言。

野田内閣総理大臣 尖閣についての我が国の立場は明確であります。国際法、そして歴史的に見ても我が国固有の領土であって、そして有効に支配をしていますので、領有権という問題は存在をしません。我が国が領有していることについて、大使の発言は、こうした政府の解釈からすると、考えからすると、残念ながら不適切な発言だったというふうに思います。

 不適切な発言だったがゆえに、玄葉大臣名で注意をさせていただき、そのことについて深く反省をしているということでございますので、私は先ほどの大臣の答弁で結構だと思っております。

内山委員 総理もそういう考えなんですか。日本がどういう丹羽大使の処分をするかによって、強いメッセージが中国に出るじゃないですか。

 おかしいじゃないですか。商社の相談役か何かやって、まるで、商社の権益を優先し、日本の国益をないがしろにする。とても全権大使としては認められないですよ。こういうところからこそ変えなきゃだめなんじゃないんですか。もう一回考えてください。

野田内閣総理大臣 今の、商社の権益を優先しというのは意味がわかりません。私は、大使として仕事をされてきているというふうに思っております。

内山委員 御存じないなら申し上げますけれども、伊藤忠商事の相談役をやっておられた方ですよね。ですから、そういう部分も優先される政治を行っている、中国にそういう顔色を見てやっているわけじゃないですか。(発言する者あり)根拠。こんなことを言う方がどこにいますか。こんなことを言う大使がどこにいるんですか。

中井委員長 両方に注意申し上げます。勝手にののしり合いをしないように。質疑者も、大使たるものを非難する場合には、きちっと根拠のあることを言われるようにお願いいたします。

内山委員 根拠は十分ございます。根拠があるから、こういう言葉で言っているからこそ、やめさせなさいと言っているんですよ。そんな処分は甘過ぎるということです。

 ではもう一つ、もう時間がないので次のテーマに入りますけれども、二〇一四年四月、消費増税が実施されますと、消費増税そのものは、景気悪化要因となり、景気を減速する。景気にマイナスの政策を打つときには、必ずやはりプラスの政策を打たなければならないと思います。

 消費増税で約十三兆円の増税がある。しかし、野田内閣の資料を見ますと、簡素な給付約四千億円程度で、どの程度この景気減速をとめることができるのか、お答えいただきたいと思います。

古川国務大臣 これは野田内閣発足のときから総理が所信で述べておりますように、この内閣の最優先課題は、一日も早い震災からの復興、そして原発事故との戦い、さらには経済の再生であります。

 当然、経済再生に向けてしっかり成長戦略、これは内山議員も一緒になって二年前につくったわけであります。それを今実行しております。それを、昨年の震災とそして原発事故も踏まえて、日本再生のための基本戦略という形に再編強化して、さらにそれを今、日本再生戦略というふうにまとめて、しっかり実行していく。

 そうした成長戦略を社会保障・税一体改革と同時にきっちりとやっていく。そのことによって成長を進めていく、経済を回復軌道に乗せていく、そのことはしっかりやっていくということを改めて御確認いただきたいと思います。

内山委員 先日、野田総理に質疑をした際に、何もしないリスク、金利が一%上がれば企業も大変だ、こう答弁されております。総理は日本の債務不履行が懸念され金利が上がると主張されていたわけでありますけれども、私の知人の著名な経済学者の考えでは、日本が経済危機に陥る客観的な条件を満たしていないとしています。その理由は、巨額な経常収支黒字がある、一般政府は資産超過状態にある、この二点によって政府債務危機は起こらない、日本の長期金利は歴史的低水準で推移している、金利が突然はね上がるリスクは限定的だと。

 総理の答弁にありました、何もしないリスクで金利が上昇する仕組みをお聞かせいただきたい。

野田内閣総理大臣 今のお話は余りちょっと根拠のない、どういう学者の方かエコノミストの方かわかりませんが、経常収支だって、所得収支がずっと黒でもってきましたけれども、貿易収支は厳しくなっているという状況なので、それ一つをとってもちょっと全然認識が甘い方ではないかなというふうに思いますので、一つ一つ反論はしません。

 私は、待ったなしの状況であることは間違いなくて、ここで決断できなかったなら、私の立場でマーケットリスクを余り言うことは、言わないようにしなければいけないと思っていますが、市場が、国際社会がどういう目で日本を見ているかということは相当厳しく意識しながらやらなければいけないというふうに思います。

 それから、先ほどの話は、僕から余り蒸し返す話じゃありませんが、丹羽大使の発言に批判をする、我々のそれに対する姿勢について批判をする、それは構いません。それは御党の、あるいは内山さんの御意見として受けとめるし、真摯に受けとめなければいけないと思います。

 ただし、先ほどの発言の中では、商売みたいなことをやっているようなことをおっしゃっていました。それは根拠を挙げてください。根拠があるんだったら、それはまさに更迭に値します。責任を持った発言をしてほしいと思います。

内山委員 次に……(発言する者あり)別にそれは後で、いつでもいいでしょう。

 自民党の政治に嫌気を差して、今回、民主党の政治に多くを期待して政権交代ができたわけであります。その嫌気を差した自民党と一緒になって消費増税法案を強引に採決する。選挙のときに民主党を支持した国民に対し裏切り行為ではないですか、総理の答弁を求めたいと思います。

岡田国務大臣 先般、委員の御地元たる流山市でも対話集会を開かせていただきました。そのときにも申し上げたんですが、確かに、我々、マニフェストの中で任期中消費税を上げないというお約束をした。本当に多くの方に、決定も含めてやらないと思われた、そこは申しわけないというふうに申し上げた上で、しかし、我々はやはり与党としての責任がある。今の現状を見たときにこれは先送りできないことで、そこはいろいろな御批判はあるにしても、我々としてはしっかりと正面から受けとめて、やるべきことはやらなきゃいけないということを申し上げたところでございます。

中井委員長 これにて内山君の質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

中井委員長 この際、理事辞任の件についてお諮りいたします。

 理事金森正君から、理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。

 ただいまの理事辞任に伴う補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中井委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に武正公一君を指名いたします。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時一分散会


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