衆議院

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第2号 平成25年2月7日(木曜日)

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平成二十五年二月七日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 山本 有二君

   理事 伊藤 達也君 理事 岩屋  毅君

   理事 遠藤 利明君 理事 小此木八郎君

   理事 萩生田光一君 理事 馳   浩君

   理事 長妻  昭君 理事 山田  宏君

   理事 石田 祝稔君

      あかま二郎君    秋元  司君

      伊藤信太郎君    池田 佳隆君

      石崎  徹君    石破  茂君

      今村 雅弘君   うえの賢一郎君

      衛藤征士郎君    大串 正樹君

      大塚  拓君    奥野 信亮君

      加藤 寛治君    門  博文君

      門山 宏哲君    金子 一義君

      菅家 一郎君    小池百合子君

      小島 敏文君    小林 茂樹君

      小林 鷹之君    塩崎 恭久君

      関  芳弘君    高木 宏壽君

      武部  新君    渡海紀三朗君

      中川 郁子君    中山 泰秀君

      西銘恒三郎君    野田  毅君

      原田 義昭君    船田  元君

      牧原 秀樹君    宮内 秀樹君

      宮路 和明君    保岡 興治君

      山田 美樹君    山本 幸三君

      若宮 健嗣君    大串 博志君

      大西 健介君    奥野総一郎君

      岸本 周平君    後藤 祐一君

      玉木雄一郎君    辻元 清美君

      寺島 義幸君    原口 一博君

      前原 誠司君    坂本祐之輔君

      重徳 和彦君    中田  宏君

      中山 成彬君    東国原英夫君

      石井 啓一君    浮島 智子君

      輿水 恵一君    佐藤 英道君

      柿沢 未途君    佐藤 正夫君

      宮本 岳志君    村上 史好君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   総務大臣

   国務大臣

   (地方分権改革担当)   新藤 義孝君

   法務大臣         谷垣 禎一君

   外務大臣         岸田 文雄君

   文部科学大臣       下村 博文君

   厚生労働大臣       田村 憲久君

   農林水産大臣       林  芳正君

   経済産業大臣

   国務大臣

   (原子力損害賠償支援機構担当)          茂木 敏充君

   国土交通大臣       太田 昭宏君

   環境大臣

   国務大臣

   (原子力防災担当)    石原 伸晃君

   防衛大臣         小野寺五典君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (復興大臣)       根本  匠君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当)       古屋 圭司君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)     山本 一太君

   国務大臣

   (消費者及び食品安全担当)

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)   森 まさこ君

   国務大臣

   (社会保障・税一体改革担当)

   (経済再生担当)

   (経済財政政策担当)   甘利  明君

   国務大臣

   (行政改革担当)

   (公務員制度改革担当)        

   (規制改革担当)     稲田 朋美君

   財務副大臣        山口 俊一君

   厚生労働副大臣      桝屋 敬悟君

   経済産業副大臣

   兼内閣府副大臣      赤羽 一嘉君

   防衛副大臣        江渡 聡徳君

   防衛大臣政務官      左藤  章君

   防衛大臣政務官      佐藤 正久君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    山本 庸幸君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長)            杉山 晋輔君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   石井 正文君

   政府参考人

   (原子力規制庁次長)   森本 英香君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  黒江 哲郎君

   参考人

   (日本銀行総裁)     白川 方明君

   予算委員会専門員     石崎 貴俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月七日

 辞任         補欠選任

  うえの賢一郎君    石崎  徹君

  奥野 信亮君     小林 茂樹君

  小池百合子君     大串 正樹君

  塩崎 恭久君     宮内 秀樹君

  中山 泰秀君     門  博文君

  西川 公也君     高木 宏壽君

  西銘恒三郎君     石破  茂君

  船田  元君     門山 宏哲君

  牧原 秀樹君     加藤 寛治君

  宮路 和明君     池田 佳隆君

  若宮 健嗣君     菅家 一郎君

  岸本 周平君     大西 健介君

  辻元 清美君     後藤 祐一君

  原口 一博君     大串 博志君

  浮島 智子君     石井 啓一君

  佐藤 英道君     輿水 恵一君

同日

 辞任         補欠選任

  池田 佳隆君     宮路 和明君

  石崎  徹君     うえの賢一郎君

  石破  茂君     西銘恒三郎君

  大串 正樹君     山田 美樹君

  加藤 寛治君     牧原 秀樹君

  門  博文君     小島 敏文君

  門山 宏哲君     船田  元君

  菅家 一郎君     若宮 健嗣君

  小林 茂樹君     奥野 信亮君

  高木 宏壽君     中川 郁子君

  宮内 秀樹君     小林 鷹之君

  大串 博志君     寺島 義幸君

  大西 健介君     奥野総一郎君

  後藤 祐一君     辻元 清美君

  石井 啓一君     浮島 智子君

  輿水 恵一君     佐藤 英道君

同日

 辞任         補欠選任

  小島 敏文君     中山 泰秀君

  小林 鷹之君     塩崎 恭久君

  中川 郁子君     武部  新君

  山田 美樹君     小池百合子君

  奥野総一郎君     岸本 周平君

  寺島 義幸君     原口 一博君

同日

 辞任         補欠選任

  武部  新君     西川 公也君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成二十四年度一般会計補正予算(第1号)

 平成二十四年度特別会計補正予算(特第1号)

 平成二十四年度政府関係機関補正予算(機第1号)


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     ――――◇―――――

山本委員長 これより会議を開きます。

 平成二十四年度一般会計補正予算(第1号)、平成二十四年度特別会計補正予算(特第1号)、平成二十四年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑に入ります。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として外務省アジア大洋州局長杉山晋輔君、外務省国際法局長石井正文君、原子力規制庁次長森本英香君、防衛省運用企画局長黒江哲郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石破茂君。

石破委員 おはようございます。

 我が党は、昨年の暮れに行われました総選挙において、また国民の皆様方から御信任をいただき、公明党の皆さん方とともに政権を担当させていただくことになりました。本当にありがたいことだと思っております。

 ここ何回か、大量に新しい議員が当選し、圧倒的な議席をとる、次の選挙でそれはひっくり返って、圧倒的にとったところが惨敗をし、惨敗をしたところが数をふやす、そういうことが続いてまいりました。何でこんなことが起こるのだろうかと思っております。

 総裁のもとで、私どもは総選挙を一丸となって戦いました。おかげさまで圧倒的な議席をいただきました。しかし、あのときに、自民党本部で開票の状況を見ながら、緊張感というのが張り詰めていたことを私はよく覚えております。

 今回の選挙において、私どもは、実は小選挙区では得票率を四%ふやしただけです。比例区においては二%ふやしただけなのであります。総理がよくおっしゃいますように、これは自民党に対する信頼が全面的に戻ってきたものではない、私はそのように考えております。

 先回の選挙において示された国民の民意について、総理のお考えを承りたいと存じます。

安倍内閣総理大臣 確かに、石破幹事長のおっしゃるとおりでありまして、あの日、投票日、十二月十六日に党本部において、総裁である私と石破幹事長、同じ部屋で開票結果を待っていたわけでありますが、事前の予想等が入ってくる中において、我々、肌身で感じている状況とは少し違う、これは余りにも当選の数が多いというところに我々は驚いたわけでございます。

 そこで、そのときに我々は既に心配を始めたわけでありますが、七月の参議院選挙で勝たなければ、決して安定的な政権運営もできないし、我々が目指すべき政策を遂行していくことも難しい。つまり、この選挙において、この結果に浮かれることによって、参議院選挙でまた逆の同じことが起こるのではないか、こんな感じを石破幹事長と共有したことを思い出すわけであります。

 そして、その段階から、我々は何をなすべきか。つまり、自民党が本当に頼りになる政党である、頼んだことはしっかりと結果として出していく、そしてしっかりとした信念を持ち、未来にビジョンを示すことができる政党だということを示していくことによって、再び信頼をかち得ていく。一つ一つそういう信頼をかち得ていかなければ、次の参議院選挙は逆の結果になっていくのではないかな、こう我々は考えたわけであります。

 その中におきまして、石破幹事長におかれては、党をさらに改革していく。新たに当選した皆さん、新しい皆さんは自民党の未来だろうと私は思います。有為な人材がたくさん含まれている。そういう皆さんがしっかりと自由民主党の中で、新しい血が導入されたわけでありますから、それぞれの場で能力を発揮していく、その姿を見ていただくことによって、今までとは違うなということになっていくことを期待したいと思います。

 政府におきましては、とにかく喫緊の課題である経済の再生に結果を出していく、そのことに全力を傾けていきたい、このように思っております。

石破委員 まさしく総理のおっしゃるとおりなのであって、なぜこういう現象が起こるのかといえば、これは小選挙区比例代表並立制の特性によるものが大きいんだろうと思っております。四割ぐらいの得票で七割ぐらいの議席をいただく。この七割がとれたということに錯覚を起こして、多くの支持が得られたように思ってしまう、そういうようなことがあってはならないのだと思っております。

 私どもは、総理のもとで、総理が示される政策、それを政府と一緒になって丁寧に国民の皆様方に御説明をしなければならないと思っています。あわせて、あらゆる政策について、野党の皆様方にもそれぞれ丁寧に御説明をし、御理解をいただく。そのことが何よりも肝要なのであって、とった議席数に錯覚を起こしてはならない、そのことをよく自重自戒をいたしておるところであります。

 他方、安倍内閣というのは支持率が極めて高い。政権発足後一月以上たちましたが、七割近い支持を得ております。私のところにも、安倍さん頑張っているよね、そういうようなメールが多く寄せられて、本当にありがたいことだというふうに思っておるところでございます。

 この安倍内閣、自由民主党の歴史の中で初めて、一度おやめになった方が再び自民党総裁になったというのは初めてのことであったと記憶をいたしております。

 総理がある総合雑誌に書かれた「新しい国へ」というものがあります。それを私は何度も拝読をいたしました。総理は、その中で、前回総理を退かれてから、今後何をすべきか、どのように心がけるべきか、ずっとノートに書いてこられたというふうに記しておられます。

 総理は、この五年間、いろいろなことをお考えになり、そして、挫折を経験した人間だからこそ、この国を立て直さなければならない、そういう強い決意で総理に御就任になったというふうに理解をいたしております。

 この五年間の総理の思い、そしてまた、その思いのもとで新たな内閣をつくられた、その御決意を承りたいと存じます。

安倍内閣総理大臣 二〇〇六年に私が総理に就任したとき、私は、それまで、森政権、小泉政権の官房副長官を務め、その後幹事長に抜てきをされ、その後幹事長代理に降格をし、そしてその後官房長官、さらには、圧倒的な支持をいただいて自由民主党の総裁に就任をいたしました。

 ある意味においては、私自身、あれよあれよという間に総裁、総理になったということでありました。そして、私の理念、政策を一気に進めていくことができるのではないかという、ある意味気負った、ある意味少し傲慢であったと、今から考えれば、そう思うわけであります。

 しかし、それはなかなかそううまくはいかなかったのであります。一年で、健康のためとはいえ、突然総理の職を辞することになり、国民の皆様に本当に大きな御迷惑をおかけいたしました。そして、その際、マスコミを通じて日本じゅうから厳しい御批判もいただいたわけでありました。

 私の気持ちとしては、まさに私の自信と誇りは粉々に砕け散ったわけでありまして、その砕け散った誇りや自信をまずは拾い集めていくことも必要だったわけであります。これは自分自身だけではできない作業でありまして、多くの方々が、まだ安倍さん、いけるよ、あなたしかないであろう、こう言っていただく、私の家族も含めて。そういう助けなしには、私はここに今立っていることは全くできなかったと思います。果たして自分にこれから政治家として仕事を続けていく資格があるのかどうか、そもそも受け入れられることができるかどうかということであります。

 と同時に、今幹事長がおっしゃったように、私がノートに書きとめた、それは、なぜ一年で終わってしまったのか、そのことについて、人間というのは愚痴にもなりますから、余りそれはお見せできるような代物ではないところもたくさんありますが、自分自身の、やはりこれは問題点を見詰め直す機会にもなったのだろうな、このように思いました。

 そして、その結果として、我が党は政権を失いました。それはまさに、私が一年でやめたことによって自由民主党のガバナンスに対する疑問が生じ、その結果、我々はとうとう政権を失うところになってしまったということでありまして、私も本当に責任を痛感いたしました。

 前々回の総選挙においては、私自身としては、この選挙において地域でもし圧倒的な御支援をいただくことができないのであれば、もう総理を私は経験をしていますから、この一期で私は引退しようという決意で選挙運動を展開いたしました。

 しかし、おかげさまで、山口県の四区の方々は、対民主党ということにおいては第一位の得票率を私に与えてくれました。その中において新たな使命を得たと私は思ったわけでありまして、それは、政権奪還に向けて一兵卒として戦えということでありました。

 その中において、三年三カ月の間に、大震災もあった、そしてその震災の復興は遅々として進まない。また、領土、領海が危うい状況になっている、この状況を放っておいていいのかどうか。経済も極めて厳しい状況に、デフレの中に沈んだままだ。今こそ、一回やめた人間がもう一度トップに立つ、これはほとんど難しいチャレンジではありますし、また、多くの非難を身に受けるという覚悟も必要だったわけでありますが、あえて、今このときに身を挺してこの危機に当たらなければ政治家として資格がない、こういう思いで総裁選に立候補し、そして今、ここに立っているわけであります。

 私の使命は明らかでありまして、今、この厳しい状況、経済を再生していく。頑張った人が、汗を流した人が報われるという真っ当な社会を取り戻していくことが、そこから始めていくことが私に課せられた使命だろうな、このように思います。

 前回の反省として、謙虚に、丁寧に、慎重に、時に大胆にやっていきたい、このように思っております。

石破委員 私は、今、安倍内閣が日本国にあるということは、それは、天がこの日本に対して安倍内閣を与えたもうたのだというふうに思っております。総理がおっしゃいます天命というのは、そういうことだと思っております。

 私は、総裁選で安倍総理と戦いました。安倍総理が当選をなさいました。そのときに、これは天命なのだ、日本国は今、安倍晋三という人を必要としているのだ、そうであれば、私自身、いかなる立場であれ、これを全力で支えなければいけない、そのように決意をいたしたことでありました。

 私ども自由民主党として必要なのは、自民党が全身全霊で国家国民のために奉仕をしている、その姿勢なのだろうと思っております。総理・総裁から一人一人の議員に至るまで、あるいは一人一人の党員の方々に至るまで、自由民主党というのは、全身全霊で、おのれを捨てて国家国民のために奉仕をしている、その姿勢なのだろうと思っております。そのために、私ども、全力を挙げて、政府・与党一体となってこの国のために尽くしてまいりたい、このように決意をいたしておるところでございます。

 総理がおっしゃいます危機突破ということであります。

 これは、私ども自由民主党皆が共有をしておることでありますが、この国はまさしく有事ともいうべき危機に直面していると思っております。経済がそう、外交がそう、安全保障がそう、社会保障がそう、農業、農村がそうであります。

 私どもは恐らく、二十年ぐらい前に一度だけ世界一の夢の国をつくったと思っているのです。世界で一番平和で、世界で一番治安がよくて、世界で一番長生きで、国際競争力第一位。一人当たりのGDP第三位。そして、望めば職があり、エネルギーはふんだんに使え、そして望めば教育も医療も受けられる。そういう世界一の夢の国を一度だけつくったのだと思っております。

 本来は、そのときからいろいろな構造を変えていかなければならなかったはずだと思います。

 なぜ、そのような国がつくれたのかというのは、私は、二つの前提条件があったのだろうと思います。

 一つは、冷戦構造であります。

 アメリカとソビエト、東側と西側、それが全く同じ力で対峙をしていた。バランス・オブ・パワーというのがこの地域において確保されていた。私どもは、基盤的防衛力整備構想という構想のもとに、日本が防衛力を整備しなければ、そこに空白が生じ、かえって力の不安定を招くことになる、だから独立国として必要最小限の防衛力を整備するという、何か、わかったようなわからないような構想でありますが、それは、この地域においてバランスが保たれていたということだと思います。

 もう一つは、高度経済成長であります。そして、少子高齢化と逆の現象がずっと続いていたということだと思います。

 その構造は崩れ去った。だとするならば、新しい国のあり方というものをそのときから模索をしていかなければいけなかったが、私どもの反省として、そういう問題を幾つか先送りをしてきたのではないかと思っております。そういう先送りしてきた課題に全て応える、それが安倍内閣の使命であると私は認識をしております。

 総理がお考えの危機というのは、主にどのようなものでありましょうか。

安倍内閣総理大臣 まず最優先で取り組んでおりますのは経済の危機でありまして、この十五年間ずっとデフレ経済が続いている中において、物の値段よりも収入の方が下がってしまう、そのことによって人々は将来に夢が持てないという社会になってしまった。毎年毎年、物が上がっていかない、収入が上がっていかないわけでありますから、当然、何かに投資をしよう、新しい事業を展開しよう、そういう精神が失われてしまうわけでありまして、ここはデフレの怖さであります。

 ですから、この危機を突破するためには、この十五年間こびりついたデフレマインドを打破していく必要がある。だからこそ、今回、思い切った金融政策、大胆な金融政策と機動的な財政政策、そして民間投資を喚起する成長戦略という三本の矢でこれを突破していく。もう既に一本、二本の矢は放たれたわけでありまして、いよいよ三本目に至ったと思っています。

 そして、もう一つの危機は、これは安全保障と言ってもいいんだろうと思います。

 かつては冷戦構造ががちっとあって、ソビエト連邦とそして米国、この二つの大国がありました。その中で日本は基本的には、独自の政策、戦略ということではなくて、この枠の中で何とか日本を守っていけばいいということの中にあった。しかし、それには相当の努力と懊悩もあったんだろうとは思いますが、しかし、今その中において、中国がどんどん軍事力を増強している、北朝鮮は近々核実験をするかもしれないという状況があります。そして、中東でも緊張状態が続いている中において、アメリカが全てコントロールするということではないし、そもそもその冷戦構造は今存在をしていないということにあります。

 そこで、いわば、その中においてアジアの平和と安定を守るためには、日本がそれ相応の責任を持たなければ、日本の領土、領海、領空も守ることができないし、この地域の平和と安定を維持することができない、そういう状況に直面をしていると言ってもいいんだろうと思います。

 先般、私は、ベトナムとタイとインドネシア、ずっと回ってまいりました。ベトナムにおいてもインドネシアにおいても、やはり、この地域のパワーバランスが崩れるということについて懸念を持っていると言ってもいいと思います。そのパワーバランスを埋めるために、日本が強い防衛力を手に入れて、その安全保障上の責任を果たしていくことについては歓迎をしているということをはっきり申し上げていいんだろうと思います。

 つまり、それぐらい日本には一つの責任が出てきたと言ってもいいと思います。だからこそ、来年度の予算において久々に防衛費を増強する、また海上保安庁の予算も増強していくことになりました。こうした危機を突破していく。

 そしてまた、もう一つは、教育の危機と言っておりますが、教育においては、学力が低下をしている問題、そして昨今の、いじめによって子供たちが命を落とす、体罰の問題、規範意識の問題、こうした危機を突破していく必要があるだろうと、教育再生実行会議を立ち上げました。

 こういうさまざまな危機に対して、安倍政権において結論を出していきたい。つまり、結論を出していくということにおいても、基本的には、そういう会議を開いて、報告が出るまで何もやらないということではなくて、矢継ぎ早に、その途中であってもどんどんどんどん対策を打っていく、そういう対応をしていきたいと考えております。

石破委員 まさしくその政治姿勢こそが求められているんだと思います。

 議論をするとか検討するとか言いますが、結論を出し、実際に実績を示していかなければなりません。よく、この予算委員会、私も野党のときに何度も質疑に立ちました。政府のお答えは、議論します、検討します。それで終わってしまったわけですね。私どもは、それに対して、きちんとした結論を出し、国民の皆様方に実感していただくということが必要だと思っております。

 経済政策につきましては、後ほど同僚議員がお尋ねをいたしますが、今総理がおっしゃいますように、一本目の矢、二本目の矢というのが放たれました。

 いろいろな懸念を言う人もありましたが、まさしく論より証拠というのはこういうことであって、きのうの株価は、リーマン・ショック後、最高の値をつけたということであります。そして、円も、過剰な円高水準を脱しつつあるということもまた事実であります。一本目、二本目の矢というものは、国民の期待を集め、そして実際に成果を上げつつあります。

 この予算の審議であります。私どもは、総理がおっしゃいますように、この補正予算を一日も早く国民の皆様方にお届けをしなければならない、そのように思っております。早期成立のために全力を尽くしてまいりたいと思います。

 懸念の中で言われますのは、公共事業偏重ではないかという考え方であります。

 しかし、私はそうは思いません。無駄な公共事業の定義というのは一体何なのかということであります。それは、納税者の皆様方に説明できないことはやってはならないということであって、一つ一つの事業について、なぜこれが必要なのかということをきちんきちんと御説明をするということなのでありましょう。

 それは、一つは、ミッシングリンクの解消なのでありましょう。そしてまた、不可避と言われるいろいろな災害に対して、強い国土をつくっていくということなのでありましょう。今お金をかけておけば、被害は最小限で済む。しかし、それを怠ることによって、将来大きな被害が生じて、その何倍ものお金を必要とする。それは、多くの人命を失うものであります。今投資をしておかねばならないもの、それは必ずあるはずなのであります。

 財政規律をどう考えるかということでありますが、二%の目標というものを定めました。二%という数字、それは、それを超えるようなことがあればきちんと抑制していきますよ、裏返せばそういう意味を持っているものだと思います。財政規律もきちんと確保していくということが必要なのでありましょう。そして、無駄な事業だと言われないようにきちんと説明をしていかねばならないということだと思っております。

 ハイパーインフレが起こらないように細心の配慮もしていかなければなりません。財政規律というものに配意をしていかねばなりません。

 しかし、今の状況は何なのかといえば、ここ十数年間、顧みたときに、雇用者の所得というのは減っているんですね、明らかに減っている。二割ぐらい減っている。企業の収益がどれだけふえたかといえば、六割ぐらいふえている。これは数字で見れば事実なのであります。

 景気がいいというのはどういうことなのかといえば、それは、きちんとお金が回っていくということなのでありましょう。どうやって雇用者の、国民の所得を増大させていくか、どうやって企業の内部留保を設備投資に回していくか、それがまさしく三本目の矢の主眼とするところであろうと思っております。

 一本目の矢、二本目の矢は大きな成功をおさめつつありますが、経済が回っていくために、個人の所得をふやしていかねばならぬ、企業の内部留保が設備投資に回っていくようにしなければならぬ。それで日本の経済の再生というのは初めて本格的な軌道に乗るのだと思っております。

 いかにして所得をふやすか、いかにして設備投資にお金を回すか。と同時に、総理も下関であります、私も鳥取であります、そういう地方の疲弊、地方の活力というものをどのように取り戻していくか。今回のいろいろな経済政策が、一部の人たち、一部の地域、一部の企業、それを潤すだけのものであってはならないし、総理はそのようなことはみじんも考えておらない、そのように私は考えております。

 どのようにして、個人、地方、そして企業の設備投資を促進していくか、抽象的なお考えでも結構ですが、お示しをいただければありがたいと存じます。

安倍内閣総理大臣 経済を成長していく中において、いかに地域で頑張っておられる方々にその恩恵が届くかどうか、これが極めて私は重要ポイントなんだろう、このように思います。

 二%の物価安定目標を、日本銀行との間で、日本銀行が最終的に自主的に決めたわけでありますが、そもそも私たちが主張していたのは二%でもありました。

 これは、やはりデフレからまず脱却をしなければいけない。デフレから脱却をしなければ税収もふえていかないし、最終的に個人の所得もふえていくことがない。つまり、デフレから脱却をしていかなければ財政再建はできないし、人々にとって、だんだん収入がふえていくな、そういう夢のある社会をつくることができない。ですから、まずデフレを脱却するために、二%という物価安定目標を持ちました。

 もちろん、物価安定目標ですから、石破議員がおっしゃったように、これを超えていけば抑制をしていくんですから、どんどんどんどんこれが二%から離れていくということは起こりません。このための中央銀行ですから、ちゃんと仕事をやっていただければいいんだろうと思います。

 その中で、我々は、同時に、三本の矢を放っていくということにおいて機動的な財政政策を展開していきます。

 機動的な財政政策の中においては、多くは、防災、減災のための公共事業もありますし、あるいは、地域を活性化させていくための、地域の競争力を上げていくためのいわば投資もあるわけであります。地域が競争力を持って、例えば幹事長の地元の鳥取県も、私の山口県の山陰側、私は山陰側でありますから、いわば日本海側と世界、中国、朝鮮半島、ロシア、こういうところに世界が広がっていっているわけでありますが、こういうところの交流をダイレクトに、それから、鳥取からロシア、下関から釜山、こういう可能性を追求していく。

 そのためにはやはりインフラがなければそもそも追求もできないわけでありまして、無駄な公共事業をやろうという考えは毛頭ありませんが、しかし、そのためのインフラ整備は必要でしょうし、同時に、いわばハードだけではだめなんであって、このハードプラス、そのハードをつくることによって、どのように使っていくか、そして、どのように付加価値をその施設につけて、そしてそこに人を呼んで、それがどのように展開されていくか、そういうことも、ソフトも含めた支援がやはり私は必要なんだろうな、こんなように思います。

 今度の予算は、まさに、このように地域の活性化と富の創出を目指すものであろうと思います。

 今回の予算におきましては、地域を活性化させる、そして国民の安心、さらには富を創出する、そうした幾つかのターゲットを設けてまいるわけでありまして、成長戦略の策定に当たっては、あるべき社会像を設ける。特定の産業ではなくて、あるべき社会像をつくる。それは、健康に長生きできる社会の構築、そしてクリーンかつ経済的なエネルギーの実現などであります。その上において、戦略目標に向けて、コア技術への研究開発集中投資、そして規制改革、さらには関連投資の促進などの政策支援を一気通貫で投入していくというロードマップを策定していかなければならない、こう思っています。

 税制上におきましても、できる限り企業が新たな投資をするよう促すインセンティブを与える税制等で工夫をしておりますし、そして利益を上げた企業が、やはり社員の給与を上げていこう、社員の人材に投資をしていこうということになれば法人税等で減免をしていくという、新しいそうした仕組みもつくっているわけであります。

 要は、大切なことは、経営者の気持ちも変わって、これからはだんだん時代がインフレに移っていく、投資をするなら今だ、今のうちに投資をしていこう、そして今のうちに設備をつくると同時に、まさにいい回転にしていくためにも社員に還元をする、それがさらにいい循環になっていく、そういう認識を持っていただくことが極めて重大ではないのかなと思います。

 私も、近々経営者の皆様とお目にかかって、そうしたこともお願いをさせていただきたいな、こういうふうに思っております。

石破委員 今のことに関連して、担当大臣に承りたいと思います。

 太田大臣、私どもは国土強靱化と申しております。公明党さんは防災・減災ニューディールというふうにおっしゃっておられます。今そのために投資をすることは絶対に必要なことであるということを、多くの国民に御理解をいただかなければなりません。その点についてどのようにお考えかということについて承ります。

太田国務大臣 先ほどから危機ということについて石破幹事長からも総理からも話があって、経済、外交、そうしたことについての危機ということについてお話をいただきました。

 私は、この日本という国が極めて脆弱な国土であるという、そして、昨今、一週間に一回ぐらい大きな地震を感ずるというような、ある意味では地震の活動期というものに今あって、しかも一昨年、三・一一、大変な東日本大震災の復興いまだという状況にあると。

 そして、その上に、昭和三十九年、東京オリンピックがありましたが、あのころにつくられた、いわゆる高度成長時代の高速道路を初めとして、道路、さまざまなものが今まさに経年劣化というものを起こし、原因はまだ十分ではありませんけれども、笹子トンネル等の事故というようなこともある。そうしたことの、今新しい公共事業のときを迎えたと私は思うんです。

 昔の公共事業に戻るということではなくて、昭和三十年前後には産業基盤整備ということに力を入れた公共事業の時代があった、そして五十年ごろには生活基盤整備ということに力を入れて、下水道や住宅ということに力を入れる時代もあった。今、新しい第三のステージが生まれ、そこに、本当に底が抜けるような不安感と危機感を日本国民が持っているということを背景にして、防災、減災、そして老朽化対策というものをメーンストリームにして対策を打っていくという、新しい価値軸のもとでこの公共事業というものを考えていかなくてはならないということがあると思います。

 私は、そこの防災・減災ニューディール、あるいはまた老朽化対策、そして自由民主党の言う国土強靱化、内容自体はしっかり詰めていかなくてはならないし、融合を図っていかなくてはならないと思うんですが、今、非常に脆弱な国土の上に我が国は立っているということを、未来の方たちに対して、しっかりした国土をつくり、そしてしっかりした構造物をつくり、未来にお渡しをしなくてはならないという責務が今私はあるというふうに思っています。

 そういう意味で、ばらまき等ということがよく言われるわけですが、中身をよく吟味して、そうした趣旨に乗っかって、そして地域の方々に納得していただける、あれが不安だ、これが不安だということにしっかりと手を打っていける、こういう新しいステージの中の公共事業を生み出していくというのが私たちの責務である、私はこのように思っています。

石破委員 これからの成長戦略についてですが、規制緩和というのは極めて重要なことだと思っております。そのために、これからの成長分野として、医療とか福祉とか、そういう分野が注目をされております。では、その分野において規制緩和をどのように進めていくのかということであります。

 例えば、薬事法の改正というものを今政府はお考えであるというふうに報ぜられておりますが、厚生労働大臣、これについてのお考えを承れますか。

田村国務大臣 ただいま委員から御質問をいただきましたが、経済成長という意味で、成長分野ですね、医療というものも大変大きな期待をいただいておるわけであります。その中で、医薬品もそうでありますし、医療機器、それから最近は再生医療製品、こういうものも大変期待をいただいておるわけであります。

 医療機器に関しましては、非常に種類が多いんですね。そういう特性を踏まえてこれを審査していくわけでありますけれども、なかなか速度が遅い、なかなか承認されないというような心配をいただいております。

 そこで、今まで、リスクによって、PMDA、医薬品医療機器総合機構というところで審査をするわけでありますけれども、その中で比較的標準化されてきたものに対しては、これから、今も比較的リスクの低い部分に関してはやっているんです、第三者承認制度、こちらの方に移していこうということでございまして、そうなりますと、先ほど言いましたPMDAの余力といいますか、審査機能が強化されるわけですね、その分だけ。そこで新しいものをどんどんどんどん承認できるような、そんな体制を組んでいこうと。

 それからもう一つは、再生医療製品に関しましては、その特性上、品質が均一ではありません、それぞれのものによって違うわけでありますから。そこで、これについても、条件つきといいますか特別な条件で、また、期限をつけて、早期に承認できるような制度にしていけば、これは、日本の国民の皆様方の健康だけではなくて、世界の皆様方の健康に資する、その上で、世界に向かって成長する分野でもあるということでございます。

 そのような点を検討いたしておりまして、できればこの国会中に法案を提出させていただきたいなと目指して、今、鋭意検討をしておる最中でございます。

石破委員 復興大臣にお尋ねをいたします。

 安倍内閣がやらねばならないもう一つの重要な課題は、おくれている被災地の復興であります。私も何度も現場に行きましたが、復興庁というのは一体何のためにあるんだと。本来、これはワンストップで全てのことが迅速に片づく、これは厚生労働省、これは農林水産省、これはどことかというようなことで、あちらこちらへ陳情に回るのではない。復興庁というものがワンストップで迅速に的確に問題に対処していくのだということでできたはずなんですが、どうも話を聞くとそうでもないらしいということがございます。

 被災地の復興なくして日本の再生はありません。この復興の取り組みについて、内閣としてどのように取り組んでいかれますか。

根本国務大臣 今、委員が御指摘されたとおりだと思います。

 とにかく、安倍内閣は、復興をスピードアップする、加速する、この思いで取り組んでおります。

 今お話がありましたように、私もこの一カ月間集中的に取り組んできたこと、三点ございます。一つは、委員がおっしゃられる復興庁の司令塔機能の強化。そしてもう一つは、財源フレームの見直し。これは五カ年で十九兆円ですが、これを、被災地の皆様に将来不安がないように、五カ年で二十五兆円、その財源フレームを見直しました。そして、新たな復興加速策。この三点に集中的に取り組んでまいりました。

 今お話しの、復興庁の機能強化、ワンストップ、これは本当にそのとおりでありまして、これからの復興庁は、現場主義に徹して、現場の皆様の意見を吸い上げて、そしてこれを具体的な施策に実現していく、各省庁の縦割りを排して横串を入れていく、この体制強化に努めてまいりました。

 具体的に言えば、宮城復興局、岩手復興局、これの体制を強化いたします。とりわけ福島については、実は福島の場合は、現場が、復興庁、環境省の環境再生事務所、そして区域の見直しを行うオフサイトセンター、この三つに分立をしておりました。ここで、いろいろな縦割りの弊害、現場の声が吸い上がらないということもありました。ですから、ここは福島復興再生総局に機能を一元化、集約する、この体制を固めました。

 そして、現場で即断即決できるように、当然、私は担当大臣ですからその役割は果たします、官僚のトップクラスを常駐させて、そこで即断即決していく、この体制を固めました。復興庁の方でも、現場で、制度間の問題、解決できない問題、これは復興庁の場で、私が中心になって各省庁の局長と、直接指揮できる仕組みも整えました。そして、関係閣僚の皆様も、総理の指示で、全てが復興大臣という思いを共有してやるようにということで、大変内閣全体としての体制が整いました。

 私は、現場主義に徹して、しっかりと司令塔機能を強化して、私が先頭に立って頑張っていきたいと思います。

石破委員 もう一つ、内閣の課題は沖縄であります。

 沖縄との信頼関係をいかに回復するかということが極めて重要であって、私は、この場で何度も民主党政権の総理に、沖縄を訪問してくださいということをお願いいたしました。しかし、行事に参加する以外は沖縄を訪れられることはなかったと記憶をいたしております。

 総理は先般、沖縄を御訪問になりました。沖縄との信頼を回復する、そのことは着実に成果をおさめつつあると思います。

 まず、何といっても、信頼を回復するところから始めなければ何にも進みません。普天間の固定化というこのワーストの事態を回避するために、いろいろな方策がありますが、まず信頼の回復が第一だと思っております。

 その点において、山本大臣にお尋ねをいたしますが、沖縄に対して、今回の補正予算、あるいは編成が終わりました本予算において、どのようなことをお考えでいらっしゃいますか。

山本国務大臣 お答えいたします。

 沖縄担当大臣になって一カ月たちますが、この間、三回沖縄を訪問いたしまして、仲井真知事とは六回お目にかかりました。

 総理の強い御意思もありまして、沖縄県側の御要望に最大限応える形で、沖縄振興予算の総額は三千一億円を二十五年度の予算案で確保させていただきました。

 さらに、那覇空港第二滑走路。これは実は石破幹事長の後押しもいただきましたけれども、これも初年度百三十億円つけさせていただいて、さらには、沖縄側から強い要望のあった工期の問題も、当初の七年から実質五年十カ月ということで短縮をさせていただきました。

 それから、昨年の改正沖縄振興法でつくられた沖縄振興のための交付金、これも、ソフトが八百三億円、ハードが八百十億円ということで、四十億円近く伸ばしたということで、そういう意味では満額回答になったと思っております。

 これはやはり、もう一度申し上げますが、安倍総理の強い御意思があったということで、沖縄振興に対する安倍内閣の姿勢は伝えられたと。すなわち、安倍総理の、まず信頼回復から始める、信頼の再構築から始める、そういう強い意思は私はわかっていただけたのではないかというふうに思います。

石破委員 次に、対米関係について承りたいと思います。

 TPPについていろいろな議論がありますが、私どもが総選挙において国民の皆様方に公約をいたしましたのは、例外なき関税撤廃を前提とするTPPには反対するということを申してまいりました。このことはいささかも変えてはならないと思っております。このことについての総理のお考えをひとつ承りたい。

 もう一つは、農林水産大臣に承りますが、我が国の農業というのは、実は世界一のポテンシャルを持っていると思っているのですね。私も農林水産大臣を務めましたが、農業というのは気温と土と水と光の産業である。それは、全てにおいて我が国は最も恵まれていると言っていい。水産業でもそうです。世界第六位の排他的経済水域を有し、そして、水の量、体積でいうと、何と日本は世界第二位の海洋国家という言い方もできるわけですね。ほかの国は木を切り過ぎて困っているのだが、日本の場合には木を切らな過ぎで困っているということでございます。これをいかにして成長させるかということは、極めて重要なことだ。

 自給率という概念がありますが、私は、むしろ重要なのは自給力なんだろうと思っております。いかにして農地を確保し、いかにして農業者の所得を確保し、そしていかにしてインフラをきちんと維持するか、それを数値においてきちんと実現をする、結果として自給率は高まる、私はそういう論理であるべきだと思っています。

 あちらこちらを回ってみて、本当に、大臣の御地元も、私もそうですが、農村部の疲弊というのは物すごいものがあります。では、この農村をどうやってマネジメントしていくかということは、今のままでいいとは思っておりません。JAであるとか土地改良区であるとか、あるいは農業委員会であるとか、まだ残っているそのようなものをフルに活用して新たな農村というものをつくっていかねばならない。

 産業政策と社会政策は峻別していかなければならないのであって、これから先の日本の成長分野の一つとして第一次産業はきちんと位置づけられるべきであり、そのために、安倍内閣として、地方、農村、漁村、山村、それは再生していくんだという明確なメッセージを示すことが必要であると思っております。

 総理並びに農林水産大臣の御見解を承ります。

安倍内閣総理大臣 私への御質問は、TPP参加についての考え方でありました。

 今、幹事長がお話しになったように、自由民主党の公約は、例外なき関税撤廃を前提条件とする以上、交渉参加には反対である。これはまさにそのとおりでありまして、我々は公約したことを守らなければならない、このように思っています。

 要は、ですから、ポイントとしては、交渉する上において、例外なき関税撤廃なのかどうか、そこが確認されなければならない、このように思っております。

林国務大臣 お答えいたします。

 今、石破先生おっしゃいましたように、農林水産業というのは非常に潜在的な力を持っておるというふうに私も認識をしておるところでございます。

 海の広さについて、面積では世界六位であるということは私も承知しておりましたが、体積が二位であるというのは今初めて気づかせていただきまして、なるほど、そう立体的に考えなければならないなというふうに思ったところでございます。

 この潜在的な力、例えば、世界のいろいろな旅行者を中心とした皆さんにアンケートをとりますと、一番食べたい料理はフランス料理、二番目がイタリア料理、何と三番目は、中華料理ではなくて、日本料理だそうでございます。

 そういうところも考えますと、需要面でも非常に大きな潜在力がある、こういうふうに思っておりますので、そういう大きな夢、目標を持ちながら、足元で生産現場のニーズ、需要サイドのニーズというものを敏感に酌み取りながら、それを結びつけていくというところが非常に大事になってくる、こういうふうに思っておるところでございます。

 そういった意味で、攻めの農林水産業ということを総理からも御指示を受けておりまして、補正、そして次の本予算でも、その施策のための予算を確保させていただいた、こういうふうに思っておりますので、生産基盤の整備とか新規就農者の確保等々、これは主にサプライサイドの話でございますが、そういうことに注力するとともに、需要サイド、先ほど言いました輸出ですとか六次産業化といったものにもきちっと取り組んでまいる必要があると思っております。

 このことがばらばらに行われてはなりませんので、一本横串を通すという意味で、省内に、一月二十九日に、私を本部長といたします攻めの農林水産業本部というものを立ち上げて、一緒になって横串で一体的な取り組みをやってまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。

石破委員 残り時間、安全保障について承ります。

 たび重なる領空侵犯、たび重なる領海侵犯、そして昨日明らかになりましたレーダー照射、いろいろなことが起こっております。

 私は、どの国も自分の国益しか考えていないと言っては言い過ぎかもしれませんが、それを最優先に考えているということは間違いない事実であると思っております。

 中国は中国の明確な国益があって、それはガス田あるいは中国の歴史的な認識もあるでしょう。しかし、それと同時に、軍事的な意図というものを決して等閑視をしてはならないのだと思っております。

 第一列島線、第二列島線というものがあって、その中においてアメリカを近づけない、接近拒否という考え方があって、そのためには尖閣というものは重要な位置を持つものだと思っております。そして、南シナ海を聖域化するというのは、かつてソビエトがオホーツク海を聖域化した、その考え方と極めて似ている考え方だと思っております。つまり、南シナ海に潜水艦を潜らせる、そこからいつアメリカに向けてミサイルが飛んでいくかわからない。そのために、あの海域の支配というものを確立しなければならぬ。そして、隣接する東シナ海、それを押さえるために尖閣は極めて重要だという見方もできるのだと私は思っております。

 あのロックオン事案でありますが、このことについて、どのようにして時間的経緯をたどったのかということが一つ。

 二番目は、あの行為というものをどう考えるかです。国際法的にどう見るかです。つまり、レーダー照射がなされたということは、それをどのように捉えたらいいのかということであって、一説には、もうそれは反撃をしてもよいのだ、それは国際法的には許されるのだという考え方があります。この場合に、私どもは、どのような法制でどのように対応するかということをきちんと明確にしておかなければなりません。

 では、これをもってして、自衛権行使の三要件、すなわち、我が国に対する急迫不正の武力攻撃に着手があった、そして、ほかにとるべき手段がない、必要最小限というふうに評価すべきなのか。それとも、武器等防護の規定でどこまでできるのかということをきちんと詰めて、政府として認識を共有する必要があると思っております。

 もう一つは、アルジェリアの事件であります。

 我が国が今できるのは、法制上、邦人輸送しかできません。空港あるいは港湾、そこにおいて輸送の安全が確保されているときでなければ行けないということになっています。

 では、輸送の安全というのは何ですかといえば、管制でありますとか、その他の空港、港湾の機能が正常に機能しているということであって、そういう状況に自衛隊機が行く、自衛隊の艦船が行くということは、それは、安全なんだけれども、経営上の理由で、あるいは労働政策上行けないという場合ぐらいの話なのであって、あえて自衛隊の船や飛行機が行くということにはならないのではないか。どのようにしてこの邦人救出というのを可能にするかということについて、政府部内で御検討が進んでいることだと思っております。

 もう一つは、情報収集であります。

 アルジェリアの件において情報が錯綜した。それは、我が国としてあれ以上の対処はできなかったと私は思っております。自民党としても公明党としても、たびたび会議を開き、いろいろな認識を共有してまいりました。

 しかしながら、前の安倍内閣のときに検討された日本版NSCというもの、それは、私どもは、パワープロジェクション能力、外へ出ていく、そういう能力を有しておりません。さればこそ、情報の能力というのは高くなければいけないのだと思っております。そのためには、情報のサイクル、どのような情報を集めるか、そして、集まった情報の中で精査をして、どれが有用なものだと判断するか、その分析を行い、評価を行い、そういう情報サイクルを政府の中で確立をしていかねばなりません。

 防衛省並びに総理の御見解を承りたいと存じます。

小野寺国務大臣 たくさんの御指摘をいただきました。

 まず、今回の中国艦船によりますレーダー事案に関しましては、これは私ども、総理の御指示をいただきまして、御承認をいただきまして、今回公表させていただきました。それは、今回かなり、これは衝突に相当する、危険な事案に至る可能性があるということがございました。

 そして、今御質問ありましたように、しっかりとした体制、この場合にはどのような国際法上の適用になるのかということを、今、中でしっかり検討するべきだと思っております。特に、国連憲章上、これはやはり武力による威嚇に当たるのではないかということで、その先、その対応についてはさらに検討することだと思っておりますが、何より大切なのは、今後このような事案が起きないように、海上のこのような安全のメカニズムというのを日中間で協議する、この窓口も片方で必要だと思っております。

 また、これから恐らく邦人救出の問題につきましては与党そして省内で検討することになりますが、少なくても、現在の中でできないことについて何が問題かということはしっかり精査をすることでありますし、また、輸送の安全ということに関しては、これはどこまで我が省の能力としてやれるか、そこもしっかり考えていきたいと思っております。

 情報収集につきましては、これは政府全体で当たることだと思いますので、しっかり我が省として対応させていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま議員から、国家としての情報収集と、そしてそれを分析する機関としてのNSC、日本版NSCについてのお話がございました。

 何が問題であるかといえば、今、内閣においては、内閣情報官がいて、そしてその下に情報収集、分析をする機関がございます。一方、内閣情報会議、官房長官が主宰する会議があって、内調だけではなくて、公安調査庁等々が集まって会議をする会議体はあります。別途、安全保障会議があるわけでありますが。しかし、大切なことは、情報を収集する各部署がとってきたものを集めて、全体を見ながらそれを分析して、どういう状況が起こっているかという判断を総理なり官房長官に分析をして上げていく、そういう機関があるかどうかといえば、残念ながら、ないという状況になっています。

 また、例えば私の秘書官についても、防衛省から、そして警察から来ています。北朝鮮をめぐる事案でも、それぞれ別々に、海保であれば警察から上がってきますが、空から来れば、空ですから防衛省から来るということになります。もちろん、お互いに連絡はしておりますが、しかし、まさに横串をかけたところでの分析能力ということについては、これは日本は今劣っているのではないかということは言わざるを得ないのだろうと思います。

 そこで、日本版NSCを早急にやはり設立をして、そして、それがあることによって、例えば、既にある法律として武力攻撃事態対処法がございますよね、この武力攻撃事態対処法の中で、果たしてこれはおそれなのか、それを超えているのかということを判断していく上においても、NSCに集まった情報と分析力で、分析をしていくということも大切なのではないか。専門委員会というのを立ち上げることになっていますが、これは、常にずっと見ている人物でなければならないのだろう、それなりの予算と人員を投入したものでなければならないのだろうな、私はそう思っております。

 そして、その中において、例えばこのNSCから日本の各情報機関に、政策的に、こういう情報を集めてくれという発注がなされるという、どの国もやっている普通のことが初めてできるようになる。つまり、いわば注文を出す側と注文を受ける側という形で、情報の正しい発注と、そして収集と伝達と分析、そしてさらには総理あるいは官房長官への助言、報告、そういうことになっていくのではないだろうか。

 これは法的ではなくて閣議決定でやったらどうかという考え方もありますが、やはりベストとしては、ちゃんと法律でもって、法律的な裏づけでもって動かしていくのが一番いいのではないか、このように思っております。

石破委員 防衛省においては、佐藤政務官、自衛官出身であります。邦人救出あるいは情報収集のあり方について、私どもはきちんとした答えを出すということが必要だと思っております。

 そこにおいて重要なことは、本当にぎりぎり、極限まで考えるということなのですね。領空侵犯対処は何ができるのか、領海侵犯対処は何ができるのか。その場において自衛官に迷いが生じるようなことがあってはならないのです。

 先ほどお尋ねをしましたが、では、今回のレーダー照射事案についてどの法制で対応できるのかということは、きちんと認識を統一しなければなりません。我が方にすきがあるからつけ込まれるんだとするならば、そのすき間を埋めるということが政府の任務であります。

 安倍内閣におかれましては、どうぞそのような方針で、日本国、この危機を突破するために全力で取り組まれたいし、私ども、全力を挙げてそれをお支えしたいと思います。

 ありがとうございました。

山本委員長 次に、前原誠司君。

前原委員 民主党の前原です。

 第二次安倍政権になって初めての予算委員会でありまして、まず、安倍総理には、二回目の総理大臣に御就任されたことをお喜び申し上げたいと思います。当選が同期で、昔の議員会館は隣同士でありまして、先ほどの石破幹事長の話によれば、総理になられるというのは天命でありましょうから、ぜひ、その点においては頑張っていただきたい。我々も、是々非々で、国益に資する形で議論をさせていただきたいというふうに思います。

 今、石破幹事長と総理の議論を聞いていまして、一つだけ、私も建設的な提案をさせていただきたいと思います。

 レーダー照射の話でありますけれども、私は、二つポイントがあると思います。

 一つは、自衛隊の持っている内規、ROEというもの、これをしっかりとやはり見直すことが必要であるということ。

 もう一つは、陸でありますと警察がいます。海でありますと海保がいます。つまりは、海と陸においては警察機能というのがあるんですね。ただ、空においてはそれがありません。いきなり航空自衛隊が出てくるということになります。しかも、対領空侵犯措置ということについて、入ってくるまでそれが対応できないという問題もある。つまりは、法的なすき間というのがあります。

 ROE、それから、この法的なすき間を埋めるために領域警備法のようなもの、特に空においては、今申し上げたように、いきなりいわゆる自衛隊が出ていくという形になっているところが今の法制度の問題の一つかなと私は思いますので、この二つをぜひ御検討いただきたいと思いますが、総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 今、前原議員から、ROEについてしっかりと定めておくべきだという御指摘がございました。ROE、ルール・オブ・エンゲージメントですね、交戦規定なるものをつくっておくべきだと。一般の国際社会においては国際法があって、その国際法の中において武器の使用が認められていることはやりますよ、でも一方、同時に、自分の国ではその中でこういう厳しい交戦規定をつくっていきますよ、相手がこういう武器を使ったときにはこういう対応をしなさいということだろうと思います。

 今の自衛隊の中においても、基本的に、もう前原議員御承知のように、既にROEができている、このように思うわけでありますが、こうした尖閣でのさまざまな事案がございますし、特にまた空においては極めて短時間に、瞬時に判断をしなければ、領空を侵犯されて、そしてそこから出ていってしまうということにもなるわけでありますから、その点については、今後とも、そういう検討、新しい事態にどう対応していくか、そして、それが決してエスカレートしないようにしていく、と同時に、私たちの領空は断固として守るんだよという意思を示す、こういうバランスに配慮しながら、そうしたものを定めていくということ、また運用していくということが大切ではないのかなと思います。

 詳細については、防衛大臣から答弁させます。

小野寺国務大臣 前原委員は大変この分野にお詳しいことをよく存じ上げております。そしてまた、ROEにつきましては、作戦上の問題もございますので、私どもも、今の御趣旨を踏まえて、しっかり中で対応していきたいと思います。

前原委員 内規ですので、中身について議論するということは適切ではないと思います。そういう意味においては私も詳しく申し上げませんが、このROEをしっかり見直すということが大事であると同時に、二つ目のポイント、先ほど、空は直接警察活動がないということの中で、領域警備法のようなものが新たに必要ではないかと申し上げましたが、それはいかがですか。

小野寺国務大臣 対領空に関しては防衛省が担当させていただいております。この際の担当の仕方というのは、警察行動という形で対応させていただいておりますので、私ども、その範囲を守ってやっていきたいと思っております。

 また、諸外国のさまざまな例を見ましても、一義的にはそれぞれの各軍が行っている場合もございますが、日本のさまざまな状況を考えて、内部で議論をしていきたいと思っております。

前原委員 それでは、質問に入りたいと思います。

 一つ目は、余りこれは質問したくないテーマでありますけれども、触れざるを得ません。徳田毅議員のことでございます。

 国交大臣政務官を辞任されました。辞表には一身上の都合というものが書かれていたわけでありますけれども、菅官房長官の記者会見では、女性問題ということを言及されておりました。

 きのう発売された週刊誌の中身を見ました。この事実、これが事実だとすればですね、裏をとったわけではありません、週刊誌を読んで、その前提でということでありますけれども、準強姦罪で告訴をされて、そして一千万円で和解と。これで政務官をやめるだけで済みますかね。こういう問題であれば、議員辞職まで当たるような問題ではないですか。

 これはまだ報道ベースでありますので、自民党総裁として、このことをしっかりと調べられて、そして国民に明らかにする、その上で、我々としてはまた対応を考えていかなくてはいけませんが、いかがですか。

菅国務大臣 私、本人から電話で事情を聞きました。そのときに、会見で申し上げたんですけれども、一身上の都合であり、内閣に迷惑をかけるからという話であったんです。それで、内容について私、本人に聴取をしました。本人は、相手との関係で明らかにすることができないことになっている、そういうことでありましたので、とにかく、内閣として全体を考えて、政務官は辞任してもらった方がいいだろうという形で、本人が辞任をしたということであります。

前原委員 まだ報道ベースでありますので、ただ、これが事実とすれば、先ほど私が申し上げたとおり、政務官を辞任して済む話かということになります。しっかりとこれからも精査をしていただき、けじめをつけていただかないと、我々、また国会の場で、徳田さんに来ていただいて参考人としてお話を伺わなくてはいけないということになりますので、まず、しっかりそこは自民党として対応していただきたいということを申し上げておきたいと思います。

 さて、今まで総理が御発言をされたことについて、いろいろとこれからお話を聞いていきたいというふうに思います。

 まず、いわゆる従軍慰安婦の問題であります。

 私、先般、一月三十一日の衆議院の本会議で、共産党の志位委員長の質問に対して答えられた安倍総理の答弁、非常に奇異に感じました。

 どういうものであったかということでありますけれども、志位委員長が、河野談話、従軍慰安婦に関する質問をされたわけでありますけれども、それに対して安倍総理は、いわゆる河野談話は当時の官房長官によって表明されたものであり、総理である私からこれ以上申し上げることは差し控え、官房長官による対応が適当であると考えます。むちゃくちゃおかしい答弁なんですよ。

 つまり、誰が談話を出したかということで、官房長官が談話を出したわけであって、菅さんがこの問題に対してずっと関心を持たれていたという記憶は全くありません。菅さんのいろいろな議事録を読ませていただいたって、官房長官がこの問題に関心を持っておられたということはない。総理である安倍総理が、御自身が、このことはまさにみずからの政治信念としてやってこられた問題ではないですか。

 したがって、このことを聞かれたら、談話を出したのは官房長官だから官房長官に答えさせるということではなくて、御自身が答えられることが当たり前のことではないですか。

安倍内閣総理大臣 いわゆる河野官房長官談話でありますが、この官房長官談話は閣議決定されたものではなく、当時の河野官房長官が、官房長官の談話として出されたものであります。

 この談話については、とかく、日本と韓国の外交問題に発展をしていくことにつながっていくわけであります。そこで、私としては、また政府としては、この問題についていたずらに外交問題、政治問題にするべきではない、こう考えております。

 その観点から、官房長官の談話でありますので、安倍政権においては菅官房長官がこの問題についてはお話をさせていただく、お答えをするということを決めたところであります。

前原委員 今までの総理の発言をちょっと御紹介しましょうか。今の答弁は国民に対して全く説得力のないものだということがわかると思います。ある意味では、これは政治家安倍晋三という方がライフワークで取り組んできているテーマなんですよ。

 平成九年五月二十七日、総理を二回やられているお方が決算委員会の分科会でこのことをやられている。一年生のときだと思います。主張は一貫しているんですよ、今まで、総理のおっしゃっていることについては。それは申し上げます。

 例えば、この五月二十七日の決算委員会の分科会でいうと、いわゆる従軍慰安婦の強制性について質問されているんですね。

 河野談話の前提となっているものが、いわゆる十六人の慰安婦の方々の聞き取りになっている、あるいはほかの方々の証言になっているけれども、そのほかの方々の証言がうそであった、でっち上げであったということをまさにおっしゃった上で、この河野談話はそういったものを前提としているので見直すべきだということをおっしゃっているんです。そのとおりですよね、今まで総理がおっしゃってきたことは。

 それで、予算委員にもおられますけれども、辻元清美代議士が質問主意書を出されている。

 先ほどの河野談話というのは閣議決定されていません、おっしゃるとおり。閣議決定されていませんけれども、辻元さんの質問主意書に対する政府答弁、これは閣議決定ですね。これについては、河野官房長官談話に関連して、政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示す記述は見当たらなかったということを書いてあるわけです。これは閣議決定されている。

 この二つをもって、後でまた聞きますけれども、政治問題化、外交問題化するとおっしゃっているのであれば、これは自己矛盾になるわけでありますけれども、総理は、一回目の総理をやめられて、そしてその後もこの問題については何度も何度も発言されているんです。

 去年の五月十二日、産経新聞の「単刀直言」というインタビュー。かつて自民党は歴代政府の政府答弁や法解釈などをずっと引きずってきたが、政権復帰したらそんなしがらみを捨てて再スタートできる。もう村山談話や河野談話に縛られることもない。これは大きいですよ。これは総理がおっしゃっているんです。去年の五月ですよ。

 これは一議員であったということを酌量したとしても、次以降は自民党の総裁選挙のときにおっしゃっている。申し上げましょうか。

 去年の九月十二日、自民党総裁選挙立候補表明。強制性があったという誤解を解くべく、新たな談話を出す必要があると御自身がおっしゃっている。菅さんがおっしゃっているんじゃない、御自身が総裁選挙でおっしゃっている。総裁になれば政権交代で総理になる、そういう心構えで総裁選挙に出た総理がおっしゃっている、御自身が。

 そして、討論会、九月十六日。河野洋平官房長官談話によって、強制的に軍が家に入り込み女性を人さらいのように連れていって慰安婦にしたという不名誉を日本は背負っている、安倍政権のときに強制性はなかったという閣議決定をしたが、多くの人たちは知らない、河野談話を修正したことをもう一度確定する必要がある、孫の代までこの不名誉を背負わせるわけにはいかない。総裁選挙の討論会でおっしゃっている。これは御自身の発言ですよね。

安倍内閣総理大臣 ただいま前原議員が紹介された発言は全て私の発言であります。そして、今の立場として、私は日本国の総理大臣であります。私の発言そのものが、事実とは別の観点から政治問題化、外交問題化をしていくということも当然配慮していくべきだろうと思います。それが国家を担う者の責任なんだろうと私は思います。

 一方、歴史において、事実、ファクトというものがあります。ファクトについては、これはやはり学者がしっかりと検討していくものであろう、こう申し上げているわけであります。

 そして、その中におきまして、例として挙げられました、辻元議員の質問主意書に対して当時の安倍内閣において閣議決定をしたものについては、裏づけとなるものはなかったということであります。いわば強制連行の裏づけとなるものはなかった。でも、残念ながら、この閣議決定をしたこと自体を多くの方々は御存じないんだろう、このように思います。

 ですから、そのことも踏まえて、いわば歴史家がこれを踏まえてどう判断をしていくかということは、私は必要なことではないだろうか、こう思うわけであります。

 しかし、それを総理大臣である私自身がこれ以上踏み込んでいくことは、外交問題、政治問題に発展をしていくだろう。だからこそ、官房長官が、もう既に記者会見等で述べておりますが、歴史家、専門家等の話を聞いてみよう、こういうことであります。私は、これが常識的なとるべき道であろう、このように考えております。

前原委員 幾つかおかしな点がありますね。

 総理は、一度総理をやられた方なんですよ。総理をやった重みの中で、自分の御発言というものがどういう外交問題、政治問題化するということはわかられた上で総理をやられたんでしょう。そういう意味においては、総理をやられた方というのは、安倍さん、一度やられた方が言っている言葉というのは、今の答弁では通用しませんよ。だって、あなたは総理をやられたんだから。

 そして、この間の総裁選挙で、まさに、自分が総理になって、日本国の総理大臣に再びなるんだという思いの中で発言をされていることなんですよ。発言をして、総理になったら、総理になったから外交問題、政治問題になるからやめますというのは、自己矛盾じゃないですか。そうじゃないですか。

 しかも、言ってみれば、この発言というものが外交問題、政治問題化するということをみずから認めているようなものじゃないですか。一回総理をやって重みを知っている方が、総裁選挙でこのことについて言及して、ここまで言っているんですよ、孫の代までこの不名誉を背負わせるわけにはいかないということを総裁選挙のときにおっしゃっているんですよ。それで総理になったんじゃないですか。総理になったら政治問題化、外交問題化する、そんなことをわからずに、あなたは総裁選挙のときに発言したということになりますよ。

安倍内閣総理大臣 大分私の意図をねじ曲げて御発言をされているんだと思いますよ。

 整理をいたしますと、まずは、さきの第一次安倍内閣のときにおいて、質問主意書に対して答弁書を出しています。これは安倍内閣として閣議決定したものですね。つまりそれは、強制連行を示す証拠はなかったということです。つまり、人さらいのように、人の家に入っていってさらってきて、いわば慰安婦にしてしまったということは、それを示すものはなかったということを明らかにしたわけであります。

 しかし、それまでは、そうだったと言われていたわけですよ。そうだったと言われていたものを、それを示す証拠はなかったということを、安倍内閣においてこれは明らかにしたんです。しかし、それはなかなか、多くの人たちはその認識を共有していませんね。

 ただ、もちろん、私が言おうとしていることは、二十世紀というのは多くの女性が人権を侵害された時代でありました。日本においてもそうだったと思いますよ。二十一世紀はそういう時代にしないという決意を持って、我々は今政治の場にいるわけであります。女性の人権がしっかりと守られる世紀にしていきたい、これは不動の信念で前に進んでいきたいと思っています。

 そのことはまず申し上げなければいけないし、そしてまた、慰安婦の方々が非常に苦しい状況に置かれていたことも事実であります。心からそういう方々に対してお見舞いを申し上げたいと思う、この気持ちにおいては歴代の内閣と変わりはない。しかし、今の事実については、そうではない、それを証明するものはなかったということをはっきりと示したわけであります。

 そして、私がずっと言い続けてきたことは、これは違うという事実があるのであれば、それはある程度アカデミックな世界においてもちゃんと議論をしてもらいたいということであります。

 しかし、今、私が総理大臣として正面からこの問題について、先ほど申し上げましたような言いぶりになることによって、結果として外交問題になっていくんですよ。ずっとそうだったじゃないですか。それはとるべき道ではなくて、これは私は何もやらないとかそういうことではなくて、官房長官において、安倍内閣の官房長官ですよ、安倍内閣の官房長官において、どう対応していくかということについて検討していくということ。官房長官が勝手にやるわけではないですから、私のもとで官房長官が対応していく。これは総理大臣の口から発信するべきことではなくて官房長官から発信すべきものだという仕分けを、この安倍政権においては行ったということであります。

前原委員 ねじ曲げていないんですよ。先ほどから申し上げているように、総理の主張はずっと一貫しているんですよ、このことについては。

 つまりは、河野談話の前提となったものについての、その強制性、広義、狭義の議論がありましたけれども、狭義のという意味においては、それは証拠がなかったと。そして、辻元議員の質問主意書にお答えになって、そういう軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接、記述は見当たらなかったと閣議決定したんだ、だから、総裁選挙のときにも、みずからが、そういう事実を知らない方が多いから新たな談話を出す必要があるんだということの中でこの議論になっているんでしょう。

 だから、そのことを私は、その前提で談話をつくる、先ほど少し違った答弁をされました。安倍内閣の考え方として、いわゆる談話を出すのは菅さんであって、安倍総理の、安倍内閣の考え方を踏まえたものなんだ、その前提は、今まで主張されたように、今までの河野談話、そして辻元議員に対する閣議決定、これを踏まえたものということで、あとは学者に議論してくれという前提でいいんですね。

山本委員長 菅内閣官房長官。(前原委員「いやいや、違う。ちょっと待ってよ。総理大臣に聞いているんですから、いいです。委員長、それはおかしい」と呼ぶ)

 一回、菅さんにお話をいただいて、それから内閣総理大臣にお伺いします。(前原委員「おかしいですよ」と呼ぶ)だめです、だめです。菅さんがまず発言いたします。(前原委員「短くしてください」と呼ぶ)精緻に、精緻に、精緻に議論を尽くしたいということですから、だめです。

菅国務大臣 委員長の指示に従ってお答えをさせていただきたいと思います。

 今も議論がありました。前回の安倍内閣でこの問題について閣議決定をした。そうした経緯も踏まえて、内外の有識者だとか歴史学者、そうした人たちが今研究をしているわけでありますから、これは当然、学術的観点からもさらなる検討を重ねていく必要があるだろう、これが今の私たち安倍内閣の立場であります。

安倍内閣総理大臣 今、官房長官が答えたとおりでありまして、それが私の考え方でもあるということであります。

前原委員 確認します。

 河野談話プラス閣議決定というものを踏まえた談話ということを指示されているということでいいですね。それを、学識経験者も踏まえて、新たな談話をということでいいですね。

安倍内閣総理大臣 それが談話という形がいいのかどうかということも含めて、まずは学識経験者の方々からいろいろなお話を伺わなければならないということです。

 つまり、河野談話がありました。そして、この河野談話に対して安倍政権のときの閣議決定がありました。これをあわせたものとしてどう考えていくかということについて、有識者の方々のまずはお話を伺っていくということになっていきます。

前原委員 先ほど申し上げましたように、繰り返しになりますけれども、自民党総裁選挙で、政権交代がかなり確実視されている総裁選挙でおっしゃっていることについてですから、そこは、もし確信犯で信念を持ってやってこられたのであれば、堂々と私は答弁されるべきだと思いますよ。そのことだけ申し上げておきます。

 もう二つ、総理の発言についてお聞きをしたいと思います。

 靖国神社への参拝の問題であります。

 二度目の総理になられて、靖国神社に参拝されるおつもりはおありですか。

安倍内閣総理大臣 私の基本的な考え方として、国のために命をささげた英霊に対して国のリーダーが尊崇の念を表する、これは当然のことだろうと思いますし、各国のリーダーが行っていることだろう、こう思っています。その中で、前回の第一次安倍内閣において参拝できなかったことは、私自身は痛恨のきわみだった、このように思っております。

 そして、今後、では、いつするのか、しないのかということについては、これは従来から申し上げているのでありますが、今の段階で行く、行かないということは差し控えたいと思います。

前原委員 今も繰り返し言われましたけれども、痛恨のきわみという言い方をされましたね。

 そして、これは平成二十三年十一月の産経新聞のインタビューですけれども、同じことをおっしゃった。首相在任中に靖国神社に参拝しなかったことについて、それ以来、首相の参拝が途絶えたことで禍根を残してしまった、春の例大祭か夏に参拝すべきであったということを二十三年の十一月のインタビューでおっしゃっている。

 それからもう一つ、これはまた総裁選挙のときです。御自身がまた総裁になって総理になるという前提で臨まれた総裁選挙の御発言。紹介します。前回の首相在任中、靖国神社に参拝できなかったことは痛恨のきわみだ、国のリーダーが国のために命をかけた英霊に尊崇の念をあらわすことに外国からクレームをつけられるいわれはない、明確にこうおっしゃっている。

 このことに、考え方に変わりはありませんか。

安倍内閣総理大臣 その考え方に変わりはございません。

前原委員 私の立場だけ申し上げておきますと、中曽根総理のときの後藤田官房長官、ここが取りまとめられたライン、これは私は極めて現実的なラインだろうというふうに思います。

 と同時に、政教分離の問題がありますけれども、A級戦犯が合祀をされる前については総理のみならず天皇陛下もお参りをされていたということを考えれば、こういった環境を整えるということは、お互い、本当に国のことを思って亡くなられた方、まさに総理がおっしゃったように英霊の皆さん方に尊崇の念を持って、そして、あのときは天皇主権ですから、天皇陛下を思い、国を思い、家族を思い、亡くなった方々に対して、我々はしっかりお参りできるような環境を整えておく。

 これも、外交問題を考えた上で整えるということは大事なことですので、この点についてはいろいろな知恵を、先ほど申し上げたA級戦犯の分祀、遷座、こういったことも含めて、やはりお互いがこれは整えていかなくてはいけない問題だと思いますので、そのことだけは申し上げておきたい。そのラインで私は申し上げているということを申し上げたいと思います。

 それからもう一つ、御発言をされたことについて伺います。

 総理、平成二十四年の十一月十三日にダライ・ラマ法王に会っておられますね。そのときにどういう発言を、これは自民党総裁になられた後ですね、どういう発言をされたか覚えておられますか。

 いや、覚えていないんだったら覚えていないで結構ですよ。覚えていますか。

山本委員長 ちょっと待ってください。

 やはり質問をきちっとまとめて、一問一答形式ですから、委員長の許可を得て、それでやりとりしてください。一問一答ですから。

 もう一度、前原君。(前原委員「いや、一問一答でやっているじゃないですか」と呼ぶ)いや、それは場外でやっている。

安倍内閣総理大臣 詳細には覚えておりません。(発言する者あり)

山本委員長 委員長に発言を求めて。

前原委員 こういう発言をされているんです。人権が弾圧されている現状を変えていくために全力を尽くしていくことを誓う、こうおっしゃっているわけです。これはチベット自治区での民主化運動に触れておっしゃっています。

 これは御自身の発言ですね。総理、お答えください。

安倍内閣総理大臣 今の発言をしたことは覚えております。

前原委員 では、チベット自治区での民主化運動に対して、人権が弾圧されている現状を変えていくために全力を尽くしていくということを誓う、全力を尽くすとは何をされるんですか。

安倍内閣総理大臣 残念ながら日中間の首脳レベルの対話がございませんが、そうした機会を捉えて発言をしていく、あるいはまた国際場裏において発信をしていくということだと思います。

前原委員 わかりました。

 それでは、次に、アベノミクスについて議論をさせていただきたいと思います。

 三本の矢ということを安倍総理はおっしゃっております。大胆な金融緩和、機動的な財政出動、そして民間の資金を活用した成長戦略。

 私は、主にこの二つ、大胆な金融緩和、そして民間の資金を使った成長戦略、これについては大賛成です。成長戦略の中身は、これから恐らく経済財政諮問会議で御議論されると思います。

 その前提で、一つお願いがあります。

 これから政権交代が行われていくかどうか、よくわかりません。ただ、一九八〇年代にイギリス病というのがありました。総理も御存じだと思います。保守党と労働党が政権交代を繰り返し、お互いやってきたことをスクラップ・アンド・ビルド。停滞の象徴、前に進まない、こういうことでありました。

 確かに、前の政権を否定して政権についたということになれば、まずは否定してかかりたいという気持ちはわからなくはありません。

 ただ、我々も日本再生戦略という考え方をまとめております。環境・エネルギー、ライフイノベーション、そして一次産業の六次産業化を中心とした日本再生戦略をまとめました。これは、経済財政諮問会議に入っていただいているある委員の方にもアドバイスをいただいてつくったものです。そういう意味では、プラットホームというかベースは共有しているんですね。

 ぜひ、いいものは採用して、そしてその分、時間短縮をしていただくことによって、英国病の言ってみれば負の経験をしっかり学んで、政権交代があっても、しっかりと前の政権のいいものは受け継いでやっていくということでぜひ取り組んでいただきたいと思いますが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 今、経済は危機的な状況ですから、効果がある政策はどんどん取り入れていきたいと思います。それがたとえ白い猫であったとしても黒い猫であったとしても、ネズミをとる猫はいい猫だ。広い度量でもって、民主党政権時代につくられた成長戦略であったとしても、結果を出すものであれば、それは場合によってはそのまま活用させていただきたいと思っております。

前原委員 さて、総理はたびたび日銀法の改正に言及されていますね。日銀法の改正、どこをどう改正すべきだと総理はお考えでしょうか。

安倍内閣総理大臣 我が党においては、そこに座っている山本幸三議員を中心に、日銀法の改正の勉強会がありました。私も一員として末席に座っていたわけであります。

 そこで、日銀法、世界の中央銀行と比べて、やはり、日本以外の多くの国々が採用している中央銀行と政府、あるいは中央銀行と国民との関係に戻していく必要があるのではないだろうか、長引くデフレの中で、私もそういう問題意識を持ちました。一つは、インフレターゲット。もう一つは、雇用に対しても責任を持っていただくということであります。

 詳細については私はそれほどつまびらかではないのでございますが、今の段階で日本銀行側がそういう認識を、日銀法を改正したわけではありませんが、そういう認識を持ち始めたということはよかったなとは思っております。

前原委員 白川総裁、お越しをいただいていると思いますが、今の安倍総裁の、日銀法改正の必要性のポイントをおっしゃいましたが、これについて、総裁としての考え方を述べていただきたいと思います。

白川参考人 お答えいたします。

 まず最初のインフレーションターゲティングの件でございます。

 日本銀行法においては、金融政策の運営の理念を、物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資するというふうに明確に定めております。そうした理念のもとで、我々は金融政策の運営を行ってきております。

 インフレーションターゲティングということ、これは諸外国でもそうでございますけれども、これを採用している国、あるいは採用していない国、いずれにおいても、いわゆる柔軟な物価安定目標政策であるという点については今、収れんしてきていると思います。日本銀行も、この政策をどういうふうな名前で呼ぶかは別にしまして、そういう柔軟な物価安定目標ということを意識して政策を行ってまいりました。今後とも、そうした政策理念でもってやっていくということでございます。

 日銀法の改正それ自体について私がコメントするということは、これは国会でお決めになることでございますけれども、ただ、中央銀行の独立性、あるいは中央銀行の金融政策運営の理念ということについては、日本を含めて世界的に今、収れんしているというふうに思っております。

 それから、雇用の安定ということでございます。

 先ほど、物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資するということを申し上げました。これは、日本銀行は、物価の安定、それから別途また法律に定めていますけれども、金融システムの安定、こうしたことに全力を尽くすことを通じて経済の環境の安定化が図られ、そのもとで雇用も最大化をしていくという理解でございます。

 そういう意味で、日本銀行は、雇用あるいは景気ということについても、これは決して無視しているわけではございません。あくまでも最終的な目的は、物価の安定を通じて日本銀行は経済の安定に貢献していくんだ、そういう思いで行っております。

前原委員 今の日銀法に書いてある物価の安定というものと総理のおっしゃっているインフレターゲットとは恐らく違うと思うんですね。

 それと、雇用のことについては、FEDがそういうことを明確に書いてあるということを恐らく一つの参考にされているのではないかというふうに思います。

 さらに議論を進めていきたいと思います。

 それを前提に進めたいと思いますが、私は、野田政権、民主党政権の末期に経済財政担当の大臣をさせていただきまして、三回連続、日銀の政策決定会合に出させていただきました。そのときの議論と、今の日銀の言ってみれば発信、発言というのは相当乖離がある、違和感があるということは言わざるを得ません。

 そのポイントを幾つか申し上げたいと思いますけれども、もともと佐藤さん、木内さんという審議委員、このお二人が、我々、去年の二月十四日でしたか、二%以下のプラスの領域、当面一%めど、こういういわゆる物価目標というものを定めて、そのときには円が一時期八十四円まで下がったということがありました。英語でゴールと書いてあったということによってそういう効果が生まれたということであります、さまざまな要因はございましたけれども。

 しかし、その中でも、総裁は一貫して、このお二人の審議委員が一%にどうやって具体的に近づけていくかということをもう少し詳細に詰めるべきではないかということについても、この一%到達というものが困難だという前提で、この議論というものを封印されていたんではないですか。それにもかかわらず、二%というものを急に受け入れるということは、どういった考え方がベースになっているんですか。

白川参考人 お答えいたします。

 昨年二月に、日本銀行は、中長期の物価安定のめどというものを発表いたしまして、前原議員が決定会合に出席された時点では、このめどが生きておりました。

 このめどにおきましては、日本銀行の考えます物価の安定というのは、今先生がおっしゃったように、二%以下のプラスの領域で当面は一を目指すというふうに申し上げました。その上で、これは決定会合での議論でもそうでございましたし、その後もたびたび申し上げていますけれども、幅広い主体による成長力強化の努力、これが実を結んでいけば、この一がだんだんに、徐々に上がっていくんだということも重ねて申し上げてまいりました。

 その後、十月以降ということでございますけれども、日本銀行の物価の見通し、これが少しずつ、二〇一四年にかけて上がってくるということでございます。

 その背景でございますけれども、一つは、国際金融市場においてリスク回避姿勢というのがかなり後退してまいりました。これは、欧州債務問題で極端なリスクというものが消えてきて、その結果、安全資産である円買い需要というものも減ってくる。したがって、それは円高是正要因として働くということにもなってまいりました。

 あるいは米国においても、足元、フィスカルクリフ、財政の崖が回避される、もろもろありまして、リスク回避姿勢が後退をしてくる、そうしたこともありまして、今、世界の金融市場で価格形成が、もう一回見直しが進んでおります。そういう流れの中で、円高是正も今進んでいるということでございます。

 それから、国際経済自体も回復の見通しというのが、秋の時点に比べますと高まってきています。そういう中で、日本銀行の経済の見通し、それから物価の見通しも少し上がってきている。

 特に物価については、従来は、上振れ、下振れの中で、下振れの方を我々は気にしていましたけれども、今回の見通しでは下振れのリスクと上振れのリスクがバランスをしてくる、それから数字も少しずつ上がってきている。そうなりますと、我々がかねて申し上げていました、当面一、しかし最終的な二ということの関係について、これは日本銀行として、中央銀行として説明する必要があるというふうに感じました。

 そういう意味で、今回、成長力あるいは競争力の強化に向けた取り組み、こうしたものが進められていく、そういう認識に立ちまして、我々はこの二という数字を出しました。そういう意味で、日本銀行としては、一という世界と、それからかねて申し上げていた二の間、この間の関係について、これはやはり説明をしていく必要があるということでございます。

 そういう意味で、日本銀行の金融政策の基本的な運営理念、これ自体は国会でお定めになった日銀法で定められておりまして、そういう意味で、十月と今回で、何か金融政策の運営の仕方、これについての基本的な理念を変えたということではなくて、これはあくまでも法律に規定されたとおり、我々としては行っているということでございます。

前原委員 正直に、白川総裁、お答えいただきたいんですが、今回の一月の政策決定会合で二%という共同文書をまとめるに当たって、政策委員の方々に、日銀法の改正を阻止するためにはこれをのまざるを得ないということを言い解いて、そして説得してこれを進められたという話もありますが、これは事実ですか。

白川参考人 そうした事実はございません。私は、日本銀行の総裁に就任して以来、国会で定めた金融政策運営の理念、もう一回申し上げますけれども、物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資する、その一点に照らして行動してきているつもりでございます。

前原委員 では、もう一つ聞きましょう。

 山口副総裁もおっしゃっているんですけれども、二〇一四年の見通し、CPIですね、〇・九になる、だから一が見えてきたんだ、だから二なんだという話なんですが、白川総裁はずっとこういう言い方をされていますよね、バブル期を含む一九八〇年代後半でさえ物価上昇率の平均は一・三%だった、なかなか難しいのではないかと。

 そして同時に、ESPフォーキャスト、エコノミスト四十人あるいは機関の平均というものは、二〇一四年、日銀は〇・九ですけれども、ESPフォーキャストの見通しは〇・三四なんですね。全然違う。つまりは、この二%というものをのまざるを得ないということの中で、日銀の政策決定会合の中央値が高くなっているのではないか、過大に見積もっているのではないか。

 そしてまた同時に、御自身も今までは、バブルのときでさえ平均が一・三でできないということをおっしゃっていたことについて、どう整合性を持ってお答えされますか。

白川参考人 お答えいたします。

 今、前原議員がおっしゃったように、日本のバブル期、一九八〇年代の後半、これが消費者物価上昇率で前年比一・三%でございます。それから、一九八五年から二〇一一年までの平均、これが〇・五%であったというふうに記憶しております。こういう数字を前提にしますと、いきなり二というのは、これはかなり達成が難しいのではないかという御趣旨の御質問だというふうに受けとめました。

 私自身、先生がおっしゃったように、物価の上昇率を高めていくというときには経済全体のバランスをしっかり考えていく必要があるということは、今回の発表後も繰り返し申し上げております。

 成長力の強化、これがやはり鍵を握っております。過去の実績を前提にしますと、確かに、成長力強化に向けては相当の努力を必要とするということは事実でございますけれども、しかし、だからといって、これを非現実的といって諦めるのではなくて、そうした方向に向けていろいろな主体が努力をしていくということは大事だというふうに思っています。

 多分、先生の問題意識は、もしそうした取り組みが進展しない中で日本銀行の金融緩和だけが行われた場合に、経済にさまざまなリスクあるいはひずみが生まれるんじゃないか、そういう問題意識かというふうに思います。

 もちろん、私どもはそういう問題意識は、中央銀行である以上、当然持っております。海外で行われているいわゆるインフレーションターゲティング、柔軟な物価目標政策も、まさにそうしたふうな運営が行われております。

 今回の共同声明におきましても、成長力、見通しやリスク要因について十分な点検を行った上で金融政策を行っていくということが、これははっきりうたわれております。

 したがいまして、日本銀行としては、繰り返しになりますけれども、成長力強化に向けた努力、これはこれでやっていくということ、これは大事なことでございますし、その上で、日本銀行としてできることはしっかりやっていくという思いでございます。

前原委員 総理、今の答弁を聞いておられたと思うんですが、経済財政諮問会議の中で、二%のCPI、物価安定上昇目標、これについては日銀に責任を持ってもらうという発言をされていますよね。ということは、今総裁がお答えをされたことは、さまざまなものを組み合わせてという話でありまして、日銀だけではとても無理ですよということをおっしゃっていたんだと思います。

 経済財政諮問会議において、総理は、二%上昇については日銀に責任を持ってもらうということは、これは明確におっしゃっていますよね。今のこととの違いはあるんですか、ないんですか。

安倍内閣総理大臣 安倍政権の経済財政政策運営については、従来から申し上げておりますように、三本の矢なんですね。大胆な金融政策と機動的な財政政策と、そして民間企業の投資を喚起する成長戦略、この三本を同時に放っていくということであります。

 他方、二%の物価安定目標については、先般の共同声明にもありますように、日本銀行が日本銀行の責任として、二%、できるだけ早い時期にそれを実現するということをお約束していただいた、こう私は理解をしております。

前原委員 おっしゃっていることが違うわけです。

 日銀に二%のいわゆるCPI、物価安定上昇目標をお願いするということを、総理は今も明確におっしゃった。しかし、白川総裁は、金融緩和だけでは無理だと。

 私は、白川総裁のおっしゃっていることの方がより現実に近いんだろうと思うんです。つまりは、どういうことかというと、経済にマジックはないと思うんです。

 金融緩和は必要で、それは、先ほど石破幹事長がおっしゃっていたように、また、白川総裁が先ほど世界の状況というものをお話しされましたけれども、しかし、やはりこれは総理御自身が強い金融緩和に対する決意を持っておられたから後押しをしたんですよ、円安とか株高というのは。そういう意味では、現段階における結果というものは、私は総理のリーダーシップだと思いますよ。それは率直に私は認めなきゃいけないと思います。

 ただ、それをこれから進めていくときの問題点、副作用というものもしっかりわかった上で議論しなくてはいけないのではないかということを申し上げているわけです。そういう意味では、経済にマジックはないということの中で、副作用ということもしっかりわかってやらなくてはいけないと思うんですね。

 その副作用というものは一体何なのかといえば、先般、本会議で岸本周平さんが、財政演説に対してすばらしい質問をしておりました。

 つまりは、物価上昇のために無制限の金融緩和をやった場合に、長期金利が上がる可能性がある。長期金利が上がれば、国債が下がる可能性がある。国債が下がれば、金融機関が国債を持っていて、その資産が目減りをする。目減りをすれば、いわゆる自己資本比率が低下をする。低下をすれば、貸し出し余力がなくなる。低下をすれば、さらに下がって損をするのを避けるために売却をする。そうすると、さらに国債価格が低下をする。それについては、国債をまた日銀が買うということになると、無制限に金融緩和、そして国債を買うということになると規律がきかなくなる、こういう問題点があると思うんですね。

 そういうものをしっかりとわかった上で、我々はその副作用というものをわかった上でやらなくてはいけないということの中で、その行き過ぎというものについては、やはり我々も、我々というか政府がしっかりと理解をした上で、この問題については私は対応してもらわなくてはいけないと思います。

 その上で心配なのは、安倍総理の発言が変わっているんですね。十一月十九日には、消費者物価上昇を二、三%とおっしゃっていたんですよ。それに対して白川さんは、三%なんか無理だということで反発されているわけですね。その後、きょうの答弁も含めて二%になって、この間のいわゆる日銀と政府の間の取り交わし文書も二%ということになった。

 つまりは、総理は定見なく、とにかく物価を上げればいいと。十一月十九日には、二から三%という物価上昇率をおっしゃっている。何の根拠でこれをおっしゃったんですか。それで今、何で二%ということに変えて、先ほどの答弁では、二%を超えたら今度は抑制しなきゃいけないんだという話をされている。短期間でこの違いはどうやって出てきたんですか。本当に副作用についての御認識があるんですか。

安倍内閣総理大臣 日本が十四、五年にわたってデフレを続けている。世界では、こうしたずっと続いているデフレを単に金融政策、財政政策で乗り越える、ほとんどの国はできていないんですね。かつて米国は、あの大恐慌の後、デフレから最終的に脱却できたのは、戦争によって脱却できたわけですね。その前にニューディール政策をスタートしましたが、デフレからはなかなか脱却できなかったのは事実なんです。

 今我々は、そうした世界史的にも先例のないデフレ脱却に取り組まなければならないという中において、思い切ったマインドの転換が必要なんですね。その中において、例えばスティグリッツもクルーグマンも、三%、四%という、例示として出していました。私も何人かのエコノミストと話をした中において、つまりショックを与える意味においても三%、四%という数字を出すべきであろう、つまり一%、二%という最初の出だしの数字だけでは意思そのものが、国家としての意思そのものが疑われるんだろう、こういう話でありましたから、むしろ私としては、その中において、選挙等を通じては強目の数字を申し上げたわけであります。

 しかし、政治は最終的に多くの人たちの同意を得なければいけません。また、日本銀行の了解を得なければいけないわけでありまして、言うだけになってはいけないわけであって、結果を出すのが我々政治家の仕事ですから、そこは、結果を出すということにおいては二%という数字だろう。

 つまり、政治は可能性の芸術ですから、結果を出していくということにおいて二%というところに収れんさせたわけでありまして、事実そのことによって、日本銀行もほぼ、二名の方は反対されましたが、多くの方々が賛成して、この二%のターゲットということにはっきりとなって、日本銀行自体がコミットしたわけですからね。コミットして、四半期ごとにそれは経済財政諮問会議においてどうなっているのかということをフォローアップできるような、全く新しい次元の仕組みができ上がった、このように私は理解をしております。

前原委員 先ほどお話をしたことに戻りますけれども、やはり今回の日銀の政策決定の変更というものは、よく言えば総理のリーダーシップ、悪く言えば政治の圧力、こういったものによって私は変わったんだろうと思いますし、いかに白川総裁が御答弁をされても、マーケットはそう見てしまっている。それは、私は、長い目で見たら、日本国あるいは円の信認というものに対して、決していい話ではないと思うんですね。

 つまりは、日銀の独立性というものを先ほどお話しさせていただきましたけれども、日銀の独立性というものをしっかり踏まえた中で、しかし、政府との協調の中で、金融だけではない、経済の構造転換、そしてまた体質転換、成長力強化、そういったものを組み合わせながらしっかりやっていく。

 もちろん、インパクトを与えるために高目に言うというのは、ちょっと私、これはどうかと思います。これはちょっと精査させていただいて、また質問したいと思います。これが本当にいい答弁だったのかどうなのか。

 ただ、やはり……(発言する者あり)質問はいい質問でしたけれども、答弁がいい答弁だったかどうかはわかりませんので、その点についてはしっかりと検証して、また私は、長い予算委員会でありますので、この点については、大事な点でありますので、議論していきたいと思います。

 さっき、デフレ脱却とおっしゃいましたね。ちょっとこの表を見ていただきたいんです。

 これはなかなかショッキングなグラフなんですね。鎌倉時代からずっと日本の人口がどういうふうに推移をしていたかというグラフなんです。

 これは国交省がまとめてくれたものでありますけれども、鎌倉幕府ができたときは七百五十七万人、江戸幕府ができたときは千二百二十七万人、明治維新が三千三百万人、終戦のときは約七千二百万人、そして二〇〇四年十二月をピークに人口が減ってきている。

 つまりは、有史以来、絶対数の多い少ないはあっても、ずっと人口はふえてきたんです、日本は。そして、さまざまな問題については、この人口がふえ経済が成長するということの中で解消してきた。

 しかし、今大きな問題は人口減少なんですね。このグラフを見ていただくと、高位推計で見ても二一〇〇年には今の人口の約半分になる、低位推計になると三千七百七十万人ぐらいになる、こういうことが言われているわけです。

 となると、機動的な財政出動ということを総理もおっしゃっておりますが、今さえよければいい、借金をして今の景気を刺激する、そして、ちょっときょうは時間が足りませんので公共事業については次の機会に委ねたいと思いますけれども、公共事業だ。必要性は、理屈をつければそれはあるかもしれない。しかし、この人口が減っていくということの、日本のまさに根本的な構造問題を解決しなければ、デフレというのはずっと続くんじゃないですか。供給過剰。だって、お店の数は変わらない、だけれども人口は減る、マーケットは減る。牛丼屋さんで安売り競争になる、いろいろな業種の中で安売り競争をしなきゃいけない、国内のマーケットが減っているから。

 そういう意味においては、このデフレ脱却という意味は、単に金融緩和で日銀のお尻をたたく、あるいは今さえよければいいということで借金をして財政出動をするではなくて、この構造問題を解決することが一番大きなデフレ脱却のポイントだと思われませんか。

安倍内閣総理大臣 人口の減少とデフレを結びつけて考える人がいますが、私はその考え方はとりません。デフレは貨幣現象ですから。つまり、金融政策においてそれは変えていくことができるわけであって、世界じゅうに人口が減少している国はたくさんありますけれども、その中でデフレに陥っている国はほとんどないんですから。

前原委員 他の国と比較することはできないでしょう。何がありますか、日本には。今のは非常に軽い答弁ですよ。私は今の総理の答弁、びっくりしましたよ。

 確かに、ある制約要因がなければ、人口が減っていくことについては悪いことではないんですよ。例えば、人口密集というのがなくなるとか、そういうことはあるかもしれないけれども、日本には何がありますか、ほかの国と大きな違いは。それをわかっていなくて総理が今おっしゃっているんだったら大きな間違いですよ。莫大な財政赤字をどうするんですか。人口が減っていくということは、その方々一人当たりの負担が徐々に徐々にふえるということじゃないですか。

 そして、先ほど貨幣の問題とおっしゃった。ということは、やはり総理の本心というのは見えましたよね、とにかくお札を刷って貨幣を薄めて、そして人口減少でも対応すればいいということをおっしゃったのではないんですか。

 そういう意味においては、莫大な財政赤字があり、そして人口減少社会になってきている中で、私は、この構造問題を解決しない限りは今の日本のデフレは脱却できない。そこは違うとおっしゃるなら、これはもう時間が来ましたので、また議論させていただきたいと思いますけれども、大事なことをおっしゃったということを私はテークノートして、十一時になりましたので、また議論させていただきます。

 私の質問を終わります。

山本委員長 この際、伊藤達也君から関連質疑の申し出があります。石破君の持ち時間の範囲内でこれを許します。伊藤達也君。

伊藤(達)委員 石破幹事長に続いて質問させていただきます、自民党の伊藤達也でございます。

 三年四カ月の浪人生活を経て、安倍総理にこの予算委員会で質問させていただくというのは、私にとりまして大変感無量のところがございます。

 総理は、第一次安倍内閣の後、いろいろな御批判を受けとめながら全国を歩き、そして現場のいろいろな意見を受けとめながら、傷ついた人たちの痛み、こうしたことを理解できる政治家として、この国をどうしたらいいのかと徹底的に悩み抜いて、その中で再び政権を担うという重責を果たされようとしているわけであります。

 私も、落選をして、自分の地元だけではなくて、全国の中小企業の現場あるいは地域を歩いてまいりました。先ほども議論の中でありましたけれども、被災地の方々からは、役所の縦割りの中で復興がなかなか進んでいかない、そうした声も聞いてまいりましたし、また、円高、デフレ不況の中で地域が本当に疲弊をしている、地域の中で本当はあるべき商店やあるいは企業が消えてしまった、そういう姿も見てまいりました。

 そして、私自身、実は、浪人中は大学で教員をしながら若い方々とも向き合ってきましたけれども、今、若い方々の失業率、何と八%を超えているんですね。この状況を何としても打開していかなければいけない、そんな思いの中でこの場に戻ってきたわけであります。だからこそ、総理と危機意識というものをしっかり共有して、日本を再生していくために全力で取り組んでいきたいというふうに思っております。

 そうした中で、安倍政権の最優先課題は経済再生だというふうに位置づけました。そして、総理が基本方針を明確にして、第一の矢、第二の矢、これを放つことによって、もう既にこの効果が出てきているわけであります。先ほど来からも指摘がありましたように、行き過ぎた円高というものが是正をされて、そして株価が上昇をしている。私の地元に戻ってみても、ことしになって、皆さんの表情というのは本当に明るくなってきたなということを実感いたしております。期待が先行しているのではないか、そんな声もありますけれども、その期待を現実に変えていく、そのために政策を果敢に実行していくことが極めて重要であります。

 しかしながら、テレビを見ていると、安倍政権の経済対策に対して、いわゆるアベノミクスに対して、誤解に基づく発言というものも多く見られるな、そうだとするならば、限られた時間でありますけれども、アベノミクスをめぐる誤解を解くということをテーマとして、総理を中心としてぜひ議論をさせていただいて、国民の皆様方の理解を深める、そういう予算委員会の質疑をさせていただきたいと思いますので、どうかよろしくお願い申し上げたいと思います。

 まず第一の誤解は、アベノミクスあるいは金融政策というものは中小企業の経営あるいはそこで働く人たちの給与には関係ないんだという誤解であります。

 この誤解の背景の中には、金融政策を実行しても、雇用がふえたり給与がふえたり、そういうことにはつながっていかないのではないか、特に中小企業はそうだ、そういう批判にもつながっているのではないかと思います。

 私自身は、実は、家内と小さな飲食店を経営させていただきながら、国会に挑戦をさせていただきました。今も家内が小さな店を守っております。だからこそ、政治家になって、中小企業政策については特に問題意識を持って取り組んでまいりました。また、金融担当の大臣を経験させていただきましたので、中小企業の経営者の方々とお話をさせていただくと、やはり資金繰りのことが話題になるんですよね。今振り返ってみると、日本銀行の金融政策を転換した後、中小企業の方々とお話をすると、資金繰りが厳しくなった、経営が厳しくなった、そんな声を多く聞いてきたな、そんな実感があるところであります。

 そうした中から、私も、この三年四カ月、本当に円高、デフレ不況で苦しんでいる中小企業の姿を見てきましたから、金融政策と中小企業の経営あるいはそこで働く人たちの関係、こうしたものをしっかり見てみよう、あるいは、そういうことについて問題意識を持っている研究者の方々あるいは研究機関の方々とも議論をしてまいりました。

 そこで、実はフリップをつくらせていただいたところでございます。

 このフリップは、いわゆる時間外手当を初めとした残業代と、そして、中小企業から見た金融機関の貸し出し態度の推移、それが日本銀行の政策転換によってどういう影響を与えたのかということをあらわしたグラフであります。

 赤の実線というのは時間外手当を初めとした残業代の推移、そして、青の実線というのが中小企業から見た金融機関の貸し出し態度の推移であります。そして下の青の囲みが、いわゆる金融緩和の政策を導入するなど、金融緩和の方向に向けて日本銀行の政策を転換したそのタイミング、上の黄色の囲みというのは、逆に金融を引き締める、金融緩和の政策の導入を解除するなど、金融緩和から金融引き締めの方に金融政策を転換したその時期を記載したものであります。

 これを見ていただければおわかりのとおり、金融緩和に向けて金融政策のあり方というものを変えてみると、実は残業代というのは上がっていくんですね。そして、中小企業から見ると、資金繰りが楽になっていくというのがわかります。

 一方で、逆に金融が引き締めの方に日本銀行の政策の判断が変わっていくと、中小企業から見ると、資金繰りが非常に厳しくなって、そして、そこで働く人たちの残業代が低下をしていくという、その傾向が見てとれるわけであります。

 テレビを見ていると、いや、企業にとって日本銀行の金融政策というのは関係ないよ、特に、給与の面について見ると日本銀行の政策というのは関係ないよ、こんな論調が見られるわけでありますが、これは大企業の論理であって、中小企業にとってみると、あるいはそこで働く人たちにとってみると、金融政策というのはまさにストレートできいてくるわけであります。

 私は、こうした認識の中で、総理が、大胆な金融緩和をしていかなければいけない、そういう基本方針というものを定められたのではないかというふうに思っておりますけれども、総理のお考えをまずお伺いさせていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま議員が御指摘になられたこの金融政策の大胆な変更なんですが、思い切った金融緩和を行うとどういうことが起こるかということで、例えば、極端な円の暴落とかあるいはまた国債の暴落が起こる、そういういわばリスクだけをどんどんどんどん積み上げていくことによって、そしてまたそれは日本銀行の独立性を侵すことになるのではないかという中において、たじろいできた十五年間だったんですよ。たじろいできた結果、誰もリスクをとらずに、政策というのは必ず批判されます、しかし、その批判を恐れていたのでは何も変わらないんです。だからこそ、この十五年間ずっとデフレが続いてきた。

 これはもういいかげんに限度を超えているんですよ。頑張ったって報われないし、汗を流したって、中小企業もそうですよね、一生懸命いいものをつくったって、しかし、為替によって競争力を失っているんですから。とうとう、多くの地方の零細企業が町工場を閉めざるを得ない状況になってきた。これはやはりおかしい。

 だからこそ、先般の総選挙においては、珍しく、金融政策と経済政策が選挙の論点になったんだろうと私は思いますよ。

 そこで、今回は、たじろいでいたこの状況を、私たちは、みんなでリスクをとって金融緩和をする、大胆な金融緩和をして、そして二%という物価安定目標をつくるということを決めました。

 そのことによって、まずは期待感が出ます。その期待感が一番早く作用するのが、これは為替とそして株価であります。為替が来て株価が来る。そして、この為替の変化によって輸出企業は競争力を回復します。

 同時に、株価が上がっていきますから、多くの企業は株を所有しています、担保価値は上がります。そして、多くの人々も株を持っていますから、やはりそうなってくれば財布の中身が厚くなってくるということで、気分が変わり、期待値が出てくる。そこで初めてインフレ期待が生まれてくると言われています。今は〇・七%ぐらいになってきている。ですから、これを大切にしていくことが、やはり経済においては重要なんですね。

 その上において、いよいよ企業は設備投資をして、収益体質が上がってきますから、だんだん賃金に波及をしていくということなんだろうと思います。ただ、同時に、やはりそのスピードを速くしていくためにも、我々は機動的な財政出動を行って、政府が有効需要をつくっているということになります。

 そこで、今、中小企業のお話をされました。テレビ等でいろいろな評論家がいろいろなことを言っていますよ、中小企業は大変と。しかし、中小企業経営者本人じゃないんですから。大体言っているのは評論家ですよ。今まで、円高によって、いよいよ三人、四人リストラしなければいけない、たくさんありますよ。

 先般、私は福島に行ったときに、福島に新たに企業がやってくればいろいろな優遇措置をとる。しかし、彼は立派な人物で、もちろんそれもあるけれども、福島で自分も貢献したいということで、八王子の企業なんですが、新たに福島に企業をつくった。それは輸出型なんですが、彼は私にこう言っていましたね。安倍さん、もし、もうちょっと円が安くなったら、もう一本ラインをつくって五人雇いますよと彼は言っていました。今のラインはそれを超えていますから、もう十人ぐらい雇っていただけたのではないかなと思います。

 そのようになっていくことによって、日本は外需は十数%ですから、もちろん小さいですよ。でも、外需そのもの、輸出企業の周りにはたくさん裾野の広い企業があるわけでありますから、必ずこれはいい影響が出ていくはずです。

 申し上げましたように、株式市場が上がっていくことによって、国民の皆さんの大切な年金の一部は株式市場で運用しています、既にこの数カ月で大きな運用益が出ているはずですよ。これはとても大切なことなんですね。そうやって上がっていくことを前提に年金というのは設計をされています。基本的には、年金は、デフレ下では、まさにマイナススライドしていかざるを得ないという状況になっていきますから、つまり、プラスにスライドをしていくことができるような、いわば年金の本来の設計どおりの経済に戻していく必要がある。そのためには、デフレを脱却しなければだめなんですね。

 もう無理だ、人口が減少していくから、デフレからは脱却できないんだという考え方そのものを変えていく。だからこそ、我々は大胆な金融緩和策、大胆な金融経済政策をとった。大胆であるからこそ、当然たくさんの批判は覚悟の上であります。我々はそうした批判、結果で判断されるわけでありますから、来るべき選挙でまた御判断をいただきたいということであります。

伊藤(達)委員 今総理から非常にいいお話をいただいたというふうに思います。

 総理はやはりいろいろな方とお会いになられていますよね。現場の苦しみというものをよく承知されていて、そして、円高、デフレ不況を克服していく、日本の危機の本質、そのことを十分認識しながら、総理が決断をして大胆な政策というものを実行していく。そのことによって、中小企業も含めて、多くの国民の方々の期待というものはやはり高まってきているわけですね。ですから、必ずこの期待を現実のものにしていかなければなりません。

 特に、中小企業の場合には、ぎりぎりの資金繰りあるいは収益構造の中で経営をしておりますから、日本銀行の政策転換には敏感に反応していくわけであります。つまり、多くの中小企業というものは銀行から融資を受けて、つまり借金をしているわけですよね。金融政策によって実質金利が下がっていけば、財政的な負担というものは軽減をする。先ほど総理がお話しになられたように、その負担が軽減をされれば、それが設備投資に回り、雇用に回っていくわけであります。

 また、取引先の企業が輸出関係の産業であれば、あるいは輸入品と競争する産業にかかわる中小企業であれば、金融政策によって円安になれば、取引先企業からどんどんどんどん発注が来る。あるいは、競争環境が改善することによって仕事が忙しくなって、そしてそのことで、時間外手当を上げていこう、あるいはパートをたくさん雇っていこう、そういう動きが始まっていく。だから、中小企業の面から見ても金融政策が極めて重要だということを、総理の今のお話からも十分国民の皆様方は理解をいただいたのではないかと思います。

 そして次に、二番目の誤解について、これも総理と議論をさせていただきたいと思います。

 それは、これも先ほど議論が出ておりましたが、物価目標二%で食料やエネルギー価格が上がるだけだということです。

 これは、今の議論の中で相当部分、この誤解を解消することはできたというふうに思います。そもそも物価というものは、例えると、経済の基礎体温と言えるというふうに思います。物価がマイナスになれば、人間に例えると、これは低体温症に陥ってしまう。だから、この状況を一日も早く克服していかなければいけないわけですね。逆に、物価がどんどんどんどん上がっていくと、これは熱病に侵された状況になっていくわけでありますから、こういう状況には絶対してはいけないということになります。

 そうすると、地元で物価の話をしていると、必ず、食料品の価格でありますとかあるいはガソリン代、こうした議論になっていきます。実は、この食料とかエネルギーというのは、天候でありますとか戦争でありますとか、そういう要因によって価格の変動が激しい。したがって、この価格の激しい部分を除いて、今、日本の経済の基礎体温がどうなっているのかということをしっかり見ていかないと、日本の経済の実態というものを見誤ることになってしまいます。

 そこで、政府の場合には、食料とエネルギー、この部分を除いた形の中で物価というものを判断してまいります。また、日本銀行の場合には、エネルギーを含む価格、ベースというものが予測能力が非常に高いという認識を示されているわけであります。これはちょっと専門的な議論になりましたけれども、体温計が二つあって、そのどちらの体温計を見て処方箋を描いたらいいのか。そのことが、過去、実は大きな議論になったんですね。

 そこで、次のパネルというものを見ていただきたいと思います。

 特に、日本銀行は、二〇〇六年から二〇〇七年にかけて金融政策の転換を図りました。このグラフを見ていただきますと、この赤の点線というのが、日本銀行の体温計で見た物価の変動のグラフであります。そして、下の青の実線というものは、これは政府の体温計で見た物価の推移をあらわしたものであります。二つの体温計で違うんですね。日本銀行の体温計で見ると、平熱に上がりつつあるかなというふうに判断ができるわけでありますけれども、政府の体温計で見ると、まだ低体温症のままであるというふうに判断ができるわけであります。

 政府と日本銀行が共同声明を出して、そして二%の物価目標を採用したわけでありますから、そろそろこの体温計をやはり一つにして、そしてベースになる重要な指標というものを統一しながら、さまざまな、経済は複雑でありますから、いろいろな指標を見て総合的に判断していくということが、私は非常に重要であろうと。

 また、第三回の経済財政諮問会議ですか、この点についても、民間議員の方と日本銀行の総裁と議論になったというふうに承知もいたしております。

 私は、体温計を一つにしていくことが非常に重要だというふうに思いますが、担当の甘利大臣、非常に恐縮でございますけれども、甘利大臣のお考えをお伺いしたいというふうに思います。

甘利国務大臣 それぞれの役目があることは事実だと思います。つまり、リアルタイム、体感温度でどう変化しているかということと、それから、政府として指標を出していく際には、それをもとに、財政にどう反映していくか、予算をどう組んでいくか等々のバックボーンになることが考えられます。

 それぞれの出す指標の、何のためにこれを使うかということ等々の役割分担も考えながら、いろいろ誤解のないようにはしていきたいというふうに思っております。

伊藤(達)委員 配付資料の一を総理も見ていただきたいというふうに思います。

 二〇〇六年の三月に量的緩和を解除いたしました。そのときに、政府の月例報告では、まだ、依然緩やかなデフレ状況にあると認識をしているんですね。一方で、日本銀行の場合には、消費者物価がプラスに転じて、そしてそのプラス幅が拡大をしてきた、だから量的緩和を解除する条件が整ったんだという判断。ここにやはり大きな判断の違いが出ていたわけであります。

 総理は当時、官房長官でいらっしゃいましたので、このときのことはよく覚えておられるんだと思います。

 昨年の十一月だったですか、イエール大学の浜田先生と総理が対談をされて、その様子がウエブの中でも公開をされておるわけでありますが、このときのことについて言及をされているわけであります。

 その中では、総理から見ると、やはり日本銀行の金融緩和のタイミングというのはちょっと早過ぎたのではないか、そういう認識を示されているわけでありますが、総理は今でも日本銀行の判断というのは早過ぎたというふうに認識されているかどうか、お話をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 あのときは小泉政権で、私は官房長官でございました。当時の福井総裁ともお話をする機会があったわけでありますが、政府としては、少し判断は早過ぎるのではないか、こう申し上げてきました。しかし、最後は日本銀行の独自の判断で、ああいう御決断をされた。今から思えば、やはり早過ぎたんだろうと私は思います。

伊藤(達)委員 今総理から、早過ぎたというお話がございました。

 そうすると、日本銀行総裁の条件として、総理は、同じ考え方を共有される方ということを重ねて発言されておられるわけであります。そうだとするならば、この二〇〇六年の量的緩和の解除がやはり早過ぎたということであれば、そうした認識を共有するということも、これは日本銀行総裁の条件の中に入ってくるというふうに思いますが、総理のお考えはいかがでございますか。

安倍内閣総理大臣 もしあのときに二%という物価安定目標があれば、解除することはなかったんだろうと思いますね。しかし、それがなかったものですから、いわば、デフレギャップが大体埋まってきましたねという認識に至ってしまったんだろうなと思います。

 そういう意味においては、私、何回も申し上げておりますように、今度の人事においては、私と大体認識を同じくする方に、そしてデフレから脱却をしていくという確固たる決意と能力のある人に就任をしていただきたいと思っております。

伊藤(達)委員 前回の総裁人事は、不幸なことに、総裁が二十日間も空席になってしまいました。これが、人の好き嫌いであるとか出身であるとか、あるいは政局というものがもし焦点だったとするならば、同じことを絶対に繰り返すべきではないというふうに思います。

 安倍政権では、今総理が少しお話しになられたように、今後の金融政策はどうあるべきなのか、あるいは政府と日本銀行が建設的で前向きな関係を築くためにはどうしていかなければいけないのか、そして日本銀行が日本経済の中でどういう責任や役割を果たしていかなければいけないのか、そのことをちゃんと問題提起して、人事については検討されておられます。

 そうした観点の中から、日本銀行の正副総裁の人事を決めていくに当たって、もう一度総理のお考えをお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今回は、日本銀行総裁と副総裁お二方の任期が来ます。その中において、三人一度に、政府として判断をして、国会の承認をいただくことになるわけでありますが、まさに金融政策においては大転換、新しい次元の金融政策を行っていくことによってデフレを脱却していくという大方針が決まりました。この大方針を十分理解していただきながら、かつ、国際社会にちゃんと説明をしていく必要があるんですね。

 国際社会においては、日本がやっている金融政策について、一部には、為替介入と同じことをやっているのではないか、そういう懸念もあります。大体、多くの方々からは新たな挑戦という好意的な評価がありますし、甘利大臣、茂木大臣が行ったダボスでも大変大きな評価があったというふうに聞いておりますが、しかし、そういう意味において、国際社会にどんどん発信できる能力というのも極めて重要ではないのかな、このように思います。

 そういう意味において、確固たる意思を持って、そうした考え方を共有する、能力のある人を選んでいきたい、このように思っております。

伊藤(達)委員 今総理からお話をいただいたように、ぜひベストの人事というものを考えていただいて、そして国会の皆様方の同意をいただきたいというふうに思います。

 次に、第三の誤解であります。これは当委員会でも今議論になりました。バブル期でも物価上昇率はゼロ%台だから二%の目標は無理ではないか、この誤解について議論を進めていきたいというふうに思います。

 この議論の背景は、先ほども指摘されたように、やはり日本銀行の関係者の発言の中にあるのではないかと思います。一九八七年そして八八年はいずれもゼロ%台の物価上昇率、あるいは、バブル期の一九八〇年代後半でも消費者物価指数の前年比は平均で一・三%、一九八五年から二〇一一年までの消費者物価指数は平均で〇・五%、こう述べておられるわけでありますけれども、ちょっとこの発言の仕方というのは、私はミスリードをしている部分があるのではないかなということを、先ほどの議論を聞きながらやはり感じたところはございました。

 そこで、甘利大臣に三点お伺いをさせていただきたいと思います。

 まず、事実関係として、第一に、八七年そして八八年、いずれも、エネルギー価格を抜いた物価はどれぐらいの水準であったのかということ。そして第二に、八九年から九二年にかけて、エネルギー価格を抜いたものとエネルギー価格を含めたもの、両方の指標で物価がどれぐらいであったのかということ。そして第三点、これが大きな論点になりますけれども、バブル期でも物価上昇率はゼロ%台であったのかなかったのか。その点について、大臣から御答弁を賜りたいと思います。

甘利国務大臣 一九八七年から八八年の食料及びエネルギーを除く総合、いわゆるコアコアでありますが、これは、前年比一・五%それから一・一%で、プラスであります。

 それから、一九八九年から九二年につきましては、いわゆるコアコアは、それぞれ、年を追って申し上げますと、前年比二・五%、二・六%、二・六%、二・五%でありました。もちろんプラスであります。また、同じ時期の生鮮食品を除く場合、いわゆるコアでありますけれども、前年比プラス二・四%、プラス二・七%、プラス二・九%、プラス二・二%でありました。

 あとは何でしたか。(伊藤(達)委員「ゼロ%台なのか、そうでないのか」と呼ぶ)ではないということです。

伊藤(達)委員 今、大臣からもお答えをいただきました。

 大変恐縮でございますけれども、配付資料の二に、今の数字をグラフに落としたものがございます。これは、重ねて大臣から御答弁をいただいたのは、極めて重要で、先ほどもここが重要な論点になりましたので、あえて確認をさせていただきました。これを見ていただければわかるように、ゼロ%台ではないんですね。やはり、こういう誤解の中で議論をしていくということは、健全な政策の議論にはつながっていかないのではないかというふうに思います。

 こうした物価観に対する誤解はほかの議論の中でもあります。

 例えば、中国から安い商品が入ってくるから、だから日本はデフレなんだ、しかし、中国の商品を受け入れている国というのはたくさんあるわけですから、そうした国はなぜデフレにならないんだという話になります。また、総理が先ほど重ねて指摘をされていたように、人口が減少するからデフレなんだ。日本と同じような形で人口減少している国でデフレに陥っている国はないわけでありまして、そのことをちゃんと押さえた上で、経済再生の議論をしっかりやっていかなければいけないというふうに思います。

 要するに、市場の中に物がたくさん出れば、物の価格というものは落ちていきます。お金がたくさん出れば、お金の価値が落ちていく。この原理を認められるかどうかということなんです。そして、金融政策というものは物価を安定させていくに当たって極めて重要だ、そういうことをちゃんと認識できるかどうか、このことが非常に重要な点だというふうに思います。

 そうしたことを押さえた上で、物価目標を二%に設定した。これは、日銀の独立性というものを軽視したものではなくて、無理な目標ではなくて、本当に適切な目標なんだ、その目標を採用したんだ。このことについて、担当大臣の甘利大臣、もう一度御説明をいただくことができればというふうに思います。

甘利国務大臣 総理からもたびたび答弁がありますとおり、我々の日本経済にとって最大の課題は、十数年間にわたるデフレからなかなか脱却ができない。そこで、大胆な金融政策を中心に、機動的な財政政策、そして民間投資を喚起するような魅力的な成長戦略、この三本の矢で、この問題、いわば根雪のように滞ってしまって除去することができないことを、決意を持って除去していくということであります。そうした先に日本経済が健全な健康体を取り戻してくる、こういう方針に従って今回のアベノミクスができ上がったということでございます。

伊藤(達)委員 次に、第四の誤解、ハイパーインフレが起きるのではないか、これも国会の中で議論になっている点であります。

 意外に、専門家の中でこうした認識を持っている人というのはおられるんですよね。それで、ハイパーインフレを主張される方に、ハイパーインフレというのはどんな状況ですかと聞いてみると、具体的な答えはなかなか聞いたことがないですよね、田村大臣うなずいておられますけれども。そうした状況がなかなか想像できない。

 そこで、このハイパーインフレについては、いろいろな定義が実はあります。その中で有名なのが、資料の三を見ていただきたいと思いますが、経済学者でケーガンという方がおられるのでありますが、ケーガンという方が定義をいたしております。

 その定義の中身は何かというと、月率で五〇%の物価上昇、つまり、年率に直すと一万三〇〇〇%の物価上昇、これをハイパーインフレというふうに定義いたしているわけであります。この定義にはまる典型的な例としてよく言われるのが、第一次大戦後のドイツ、あるいは、最近の例でいうとジンバブエということであります。こんな状況が誕生するというふうには、普通は考えられないですよね。

 一方で、もう一つ別の定義で、国際会計基準でハイパーインフレというものを定義いたしております。三年の累積のインフレ率で一〇〇%と定義をいたしておりまして、この定義を考えてみると、第二次大戦後の日本がこのケースに当てはまるのではないかというふうに見られているわけであります。しかし、これも、現実に起きるというふうには、普通の感覚でいえば考えられないわけであります。

 先ほども総理も少しお答えをいただきましたが、物価目標二%というものがあるわけでありますから、それを超えるインフレに対しては歯どめをかけるわけになります。それを超えていけば、当然、金融を引き締めるなど金融政策を適切に行うことによってハイパーインフレというものを防いでいくということになるわけでありますが、依然ハイパーインフレに対しての懸念というものがありますので、総理、大変恐縮でありますけれども、重ねてこの懸念に対して、総理の言葉で払拭をしていただくことができればと思います。

安倍内閣総理大臣 今議員が御指摘のハイパーインフレでありますが、インフレターゲットを設ければハイパーインフレの道を進んでいくんだ、こういうおどかしが随分なされていますし、今でもしたり顔をしてコメントをテレビで述べている人たちがいますが、これは全く間違いと言ってもいいと思います。

 インフレ目標を設定した国で、例えば、この十年間の間にハイパーインフレに陥った国はないのでありまして、これは当たり前でありまして、インフレ目標というのは、どんどんどんどんインフレにするという目標ではなくて、二%の目標を超えていくという状況になれば引き締めを行っていく、つまり適切にコントロールしていくんですね。さまざまなそれに向かっての副作用等にも十分に目くばせをしながら、そうした金融政策を行っていく。できなければ中央銀行が存在する意味がないわけですから、それができるからこその中央銀行と言ってもいいんだろう、このように思います。

 例えば、日本やドイツの例でありますが、日本やドイツは両方とも敗戦後であって、生産機能が全て失われているんですね。工場は爆裂して全然ない。商品をつくれない中において貨幣を刷っていけば、誰が考えたってとんでもないインフレになっていくわけでありまして、日本のように工業国であって供給力をしっかりと持っている国においてはまずそんなことはあり得ないと言ってもいいだろうと思います。

 エール大学の浜田教授が言っていましたけれども、ハイパーインフレ、国債の暴落もそうなんですが、ということを恐れて、例えばゴルフでいえば、グリーンに乗せなきゃいけない、グリーンに乗せなきゃいけないのに、そのグリーンの後ろに崖があるかのような妄想にとらわれて、今入っているところがバンカーであるにもかかわらず、まずはグリーンに乗せなければいけないのに、その後ろに崖があると思って、何とバンカーの中でパターばかり打っているから、結局グリーンに乗ることができない。今持つのはサンドウエッジ。我々はまさにサンドウエッジを持ったということではないかと思います。

伊藤(達)委員 非常にわかりやすくハイパーインフレに対する懸念というものを払拭していただいたのではないかというふうに思います。

 それでは、最後の誤解であります、通貨安競争というものを起こすのではないか、この誤解について議論をさせていただきたいと思います。

 この点は麻生大臣に御答弁を賜りたいというふうに思いますが、ドイツを初めとして、通貨安競争に対する懸念が示されたという報道が日本でされておりました。甘利大臣そして茂木大臣、ダボス会議に行かれて、いわゆるアベノミクスに対しての関心が非常に高い、そして評価も高かったということだったというふうに思います。

 私は、経済大国第三位の日本がデフレから脱却をして、そして成長力を取り戻すということは世界の利益にもかなうことだ。IMFの対日審査、去年行われた対日審査の中でも、一層の金融緩和が必要だ、こういう指摘も受けているわけであります。

 麻生大臣は、G20財務大臣会合にこれから出席をされるわけでありますので、こうした懸念に対して、麻生大臣からぜひ払拭をしていただきたいと思います。

麻生国務大臣 今、通貨安とか円安誘導という話をしているのはドイツだけでしょう。ほかのところはないと思っていますね。

 IMFがきのう来ていましたけれども、その気は全くありませんし、今我々としても、基本的には、デフレ不況からの脱却をするため金融緩和政策をやるというのが、結果として円安になってみたり、結果として株高になったりしているのは本来の目的とは違う話なのであって、我々は明らかに通貨安競争を目的としてやっているわけではない。ここだけははっきりさせておきたいと思います。

伊藤(達)委員 今の総理を中心とした答弁の中で、少なくともアベノミクスをめぐる五つの誤解については十分これを解くことができたというふうに思っております。

 物価目標を採用することによって、日本銀行は、この二%を達成する、速やかに達成をしていく責任が明確になりました。そして、その道筋をしっかり明らかにしていかなければなりません。

 一方で、政府も二つ、私はやらなければいけないことがあると思います。

 一つは、やはり財政を健全化して、その道筋を総理のリーダーシップでしっかり示していくということ。

 そして二つ目は、やはり成長ですよね。日本銀行も、今、日本の潜在成長力というのは〇・五%ぐらいしかないというふうに見ております。これを大きく引き上げていく。そのために、三本の矢を真ん中に真っすぐ射とめていかなければなりません。

 そのために、規制緩和であるとか、あるいは若い人たちや女性や意欲のある高齢者の方々、そういう方々が積極的に労働市場に参加できるような環境をつくっていく。あるいは減税、さまざまな政策というものを総動員して日本の成長力を高めていく。そのための大きなリーダーシップを発揮していただくことを期待して、また、そうした政策を支えていくことをお誓い申し上げて、私の質問にかえさせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

山本委員長 この際、遠藤利明君から関連質疑の申し出があります。石破君の持ち時間の範囲内でこれを許します。遠藤利明君。

遠藤(利)委員 きょうは、こうして安倍総理に、私は、教育を通じていろいろな議論をさせていただきたいと思います。

 先ほど来、経済の話、いろいろありました。先ほど総理は、批判を恐れずという話でありました。地方を回っておりまして、いや、元気が出てきたね、そういう話を聞きます。ぜひ、これからも批判を恐れずに、存分に政策を推し進めていただきたいと思っております。

 さて、教育の問題。実は、経済再生とともに教育再生、安倍内閣の大きなかなめの政策であります。

 しかし、その話に入る前に、大変残念な事件も幾つかありました。とりわけ、スポーツ界における暴力事件。

 昨年、私もロンドンに行ってきまして、史上最多三十八個というメダル、そして、その後の銀座でのあの大パレード。国民が、スポーツはすばらしいものだ、まさにそんな思いをしたやさき、あの女子柔道ナショナルチームの暴力事件。大変遺憾であります。

 もともとスポーツは、友情を育んだり、その原点にはフェアプレー、こういうものがあって成り立つわけでありますが、どうも日本のスポーツ界、指導者至上主義だったり、あるいは先輩への絶対服従を求めたり、そして、場合によっては選手になるためにいろいろなことを我慢する、そんな体質もまだまだあるのではないだろうかと思います。まさに今回の事件は、そうしたことの、今のスポーツ界を取り巻く大きな古い体質のきわみだ、私はそんな思いをしております。

 本来、おととしになりますが、私どもが提案をいたしまして、スポーツ基本法という法律をつくらせていただきました。そのスポーツ基本法の中に、国がスポーツを振興する責務がある、しかし同時に、スポーツ団体は、そのためには、運営の透明性を高めたり、あるいはスポーツに関する紛争について迅速かつ適正な解決に努めるものとする、わざわざこう書き込んだんです。書き込んだんですが、今度の柔道連盟やあるいはスポーツ団体の対応を見てみますと、とてもとてもそんな努力をしていると思えない。そんな現状だと思っております。

 こうしたことを踏まえて、二月一日、私たちスポーツ議員連盟の役員が集まって、JOCやあるいは柔道連盟、しっかりやってくれと。そして、調査をまずしっかりやってもらい、その対応をしっかりしてくださいということと同時に、やはり選手の皆さんが安心して相談できる、そんなシステムも必要だなというふうなことで、スポーツ振興センターに、ヒアリングしたり、あるいは調査をしたり、あるいはまた罰則の審議をする第三者組織をつくったらどうか、こんなことを提案し、つくろうという決議をさせていただきました。

 オリンピックの評価委員が来る間もないこの二月中にも、この問題について、スポーツ議員連盟が中心となって、そして、議員立法として国会に提案をさせていただきたいと思っております。

 しかし、それにしても、第一義的に、まずはスポーツ団体の努力が必要だと思っております。過度にスポーツに政治が介入するのは決して好ましいことではない。あのモスクワ・オリンピックの問題があります。ですから、私たちも過度に介入するつもりもありません。しかし、国としてしっかり支援をいたしますから、そのためには、スポーツ団体、選手の皆さんも、そうした努力をしっかりやっていただきたいということであります。

 例えば、スポーツ仲裁機構というものがありますが、自動受諾条項、これは、仲裁機構に申し込むときに、団体と選手と両方が合意しないと今は持ち込めない仕組みなんです。この応諾義務は、まだ五〇%も達していない。むしろ、主要な団体が入っていないんですよね。

 ですから、こういうことを含めて、文部科学大臣、ぜひ、このスポーツ団体に対してしっかりとした取り組みをしていただきたい。そして、まさにオリンピックムーブメント、日本という国がそうしたフェアプレーの精神のもとでしっかりと国際社会の中で貢献する、そんな日本だということをぜひあらわすような取り組みをしていただきたいと思いますが、大臣の見解をお願いいたします。

下村国務大臣 お答えいたします。

 今回、スポーツ指導において暴力を行使する事案が明るみに出たことは大変遺憾でありまして、私の方からJOCの竹田会長に対して、四点についてお願いいたしました。

 まず一つは、遠藤委員が御指摘のように、これはJOCが主体的に調査し対応していただきたいというのが一点でございます。そして二つ目には、同様に、他の競技、柔道だけでなく、ほかの競技全てにおいても、JOCとしても調査をしていただきたい。そして三つ目には、再発防止策を早急に検討していただきたい。臭い物にふたをするということではなくて、国民の皆さんにもわかる形で明らかに、これは国内外含めてきちっと対応していただきたい。そして四つ目には、そのためにも、オリンピック、パラリンピック招致に影響が出ないように迅速に対応していただきたいということをお願い申し上げました。

 そしてさらに、二月の五日に文部科学大臣メッセージを発しました。これは、スポーツ指導から暴力を一掃するという基本原則にのっとって、新しい時代にふさわしいスポーツの指導法が確立されるよう、先ほども御指摘がございましたが、スポーツ指導者に対する暴力根絶に対する指導の徹底、それから、選手が中立的な第三者に相談できる仕組みの整備についてこのメッセージの中でも発言をさせていただきましたが、今御指摘のように、スポーツ議員連盟の先生方の御指導をいただきながら、スポーツ界と連携して全力で取り組んでまいりたいというふうに思います。

 そして、あわせて、スポーツ仲裁自動受諾条項の採択でございますが、四七%という御指摘がございました。直近の平成二十五年一月時点では五四・一%に上がりましたので、着実に上がっていることは事実でございますが、文部科学省として改めて、昨年三月に策定したスポーツ基本計画においても、統括団体及び競技団体並びにアスリートのスポーツの仲裁、調停に関する理解増進、仲裁人、調停人等スポーツ仲裁にかかわる専門的人材の育成に取り組むというふうにしております。

 今後も、日本スポーツ振興センター、JOC、日本スポーツ仲裁機構と連携しつつ、スポーツ仲裁に関する自動受諾条項の採択の促進を含め、スポーツ紛争の迅速かつ適正な解決に向けた体制整備に取り組んでまいります。

遠藤(利)委員 選手は、大会に出たいというときにはやはり弱いものです。どうしても指導者の言うことを我慢してしまう。たしか水泳はそうだったと思いますが、オリンピックの大会の前の順番で全部決めてしまいます。しかし、その選考基準なんかも本当は問題があるのかと私は思っているんです。

 どちらにしても、そうしたスポーツ界の体制をしっかり改める。その上で、二〇二〇年に東京オリンピック、パラリンピックを招致して、日本人みんなが快く夢を共有できる、そんな仕組みをつくるためにも、ぜひ大臣のさらなる御努力をお願いしますし、また、私たちも、先ほど申し上げましたように、今月中にも超党派の皆さんにお願いをして、そして議員立法で法案を整備していきますので、どうか、文科省あるいはJOCを通じて、この体制を整えていただきたいと思っております。

 もう一つ、残念なことがあります。それは、昨年の滋賀県における、いじめによる、みずから命を絶った事件、そして大阪の桜宮高校の事件。体罰あるいはいじめ、体罰というよりこれはもう暴行の話ですが、そうしたいろいろな学校の中での子供に対する安心、安全の問題もあります。

 これは、教育再生会議、一月二十四日に安倍総理大臣のもとでスタートした会議の中でも、冒頭から、いじめの問題の議論をスタートさせていただきました。

 党内でも、昨年、教育再生実行本部をつくり、これは当時、下村大臣が本部長でありましたが、その中でも、馳議員を中心にして、いじめ防止の法律の検討もいたしました。これも早急に、党の教育再生実行本部として、馳先生を中心にして、これも超党派の議員の皆さんにお願いをして、議員立法として提案をしていきたいと思っております。

 最近、いじめが陰湿になってきたということ、それからもう一つは、被害者が加害者になったり、加害者が被害者になったり、なかなかはっきりしないということもあります。ただ、どうも、学校の校長先生や教育委員会の顔が見えないんです。本来でしたら、学校の経営者である校長が前面に出てこうした問題に取り組まなきゃならない。そういう形がなかなか見えてこない。これは、学校の校長の権限の問題もあると思います。そして同時に、できるだけこういうものを隠しておこうという体質もあると思います。

 ですから、こうした問題については、学校あるいは社会全体が取り組んでいかなきゃならない。そんな意味で、大臣に、子供の安心、安全の確保についてこれからどう取り組んでいくか、見解をお伺いしたいと思います。

下村国務大臣 お答えいたします。

 昨日も、大臣室に、大津の市長が第三者調査委員会の報告を持ってまいりました。今、遠藤先生からも御指摘のように、大津の痛ましい自殺ということがございましたが、実際にこれが起きたのは一昨年の十月、しかし、これがわかったのが昨年の七月でございます。学校やあるいは大津の教育委員会で十分対応できていないということの中で、文部科学省がアドバイスをし、第三者委員会をつくって、そして調査した結果を、昨日、報告として文部科学省に持ってきてもらった。

 余りにも遅い。学校現場の、あるいは当該教育委員会の当事者能力が問われる。こういう深刻な問題でございます。

 しかし、今、いじめによって悩んだり苦しんだり、そういう子供が、全国でも、今現在でもたくさんいるというふうに思います。その子供たちを、机上の空論だけでなく、小田原評定ばかりしているのではなく、すぐ対応するところはすぐ対応する、そして抜本的な改革をしていくということが問われるのではないかというふうに思います。

 改めて、いじめ問題については、いじめは絶対に許さない、そういう意識を日本全体で共有することが必要であるというふうに思いますし、子供を、加害者にも被害者にも、そして傍観者にもしない、そういう教育を実現していくことが必要であると思います。

 今回の補正予算の中にも、道徳教育の充実など今すぐできる対策を断行する、そのこととともに、スクールカウンセラーやあるいはスクールソーシャルワーカーの配置拡充を含め教育相談体制の充実を行うことによって、総合的ないじめ対策にすぐ取り組んでいく予定でございます。

 また、あわせて、御指摘がございましたが、自民党の政権公約の中にもありますが、いじめ防止対策基本法、これは各党でもそれぞれ法制化に向けた対策が提案されておられますので、即効性という意味で、ぜひ今国会に、議員立法で検討していただけるということでございますので、教育再生実行会議の中で今月中にそれに資する提言を取りまとめて、ぜひ提起をさせていただきたいと思いますので、国会の方でよろしく御議論をしていただきながら対応していただければと思います。

遠藤(利)委員 今、いろいろ対策のお話を伺いました。

 ただ、教育の目標は、いろいろあると思いますが、社会に出て、誇りを持って、強く、たくましく生きる子供を育てる、それが一番シンプルな教育の目標だと私は思っています。

 ですから、こうしたいじめがあったときの対処も大事なんですが、同時に、学校教育の中で、まずは、強く、たくましく生きられる、そういう人間をつくっていく、これが一つ大事。これは、曽野綾子先生が今週の週刊現代でそうしたことをおっしゃっているんです。

 もう一つは、リーダーがいないというんです。昔、餓鬼大将というのがいましたけれども、もめごとがあったときに、おまえ、やめろよと。ところが、今は、そんなことを言うと、この人もまたいじめられちゃうんですよね。ですから、やはりリーダー教育というのが私は必要なんだと思うんです。

 ですから、大臣、事件があったときの、事件をオープンにして、そして対処する、これは大事ですが、教育として、リーダーをつくっていく、あるいは強く、たくましく生きる子供をつくっていく、ぜひ、そちらの方をより重点的にお考えいただきたいと思います。

 時間もありませんので、要望だけ申し上げさせていただきます。

 午後にまたがりますのでちょっと質問をしにくいのですが、今申し上げました、やはり日本人としての誇りを持ちたいと。ただ、私たちは、学校教育の中でずっと教え込まれてきたのが、日本は小さな島国ですよ、資源のない国ですよ、こう言われてきました。総理、本当にそうでしょうか。

安倍内閣総理大臣 確かに、天然資源はほとんど恵まれていない国であろうと思います。ただ、日本は、天然資源は恵まれていませんが、人材、特に教育に力を入れてきた国であって、それによって日本の今日の地位はあるんだろうなと思います。

 ウィンストン・チャーチルの言葉に、楽観主義者は全ての困難の中にチャンスを見つける、こう言っています。日本には確かに資源はない、また債務残高もたくさんあるという中において、ここ一番に日本人は強いという能力を発揮しなければいけないんですけれども、やはり全ては人材なんだろう、私はこう思っております。

 だからこそ、安倍政権におきましては、最重要政策課題の一つとして教育再生を挙げております。教育再生、今度は実行本部、前回は教育再生会議だったんですが、会議でできた成果物がたくさんありますが、今度はいよいよそれを実行していくということに力点を置いて、それをまさに進めていきたい。そのことによって、日本は世界でも最も大切な資源を持った国になっていくのではないかと思います。

遠藤(利)委員 実は、ここに地図を出しましたが、先ほど我が党の石破幹事長から話がありましたように、国土面積は確かに六十一番目です。しかし、海洋面積を入れると世界で六番目の、体積は二位という話がありましたが、そうした、小さな島国じゃなくて、まさに大きな海洋国家ですよ。そういう認識でいいんだと思うんです。

 そして、その海底には、レアアースとかレアメタルとか、そうした資源が多分無尽蔵に眠っているんでしょう。ただ、まだまだ日本はこうした目の前にある海への取り組みがおくれてきたんだろうと私は思います。

 今回、海底の調査船なんかの予算もつきましたが、こうした海洋資源への取り組み、どういうふうな形で今されようとしているのか。そして、総理として、海洋国家日本に対して、どういうふうな戦略でこれから取り組んでいかれるのか、お伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 確かに、今、遠藤議員が御指摘のように、人材、そして、プラス海洋国家として、海の底にはたくさんの可能性、エネルギーが眠っていると思います。可能性がありますが、まだそれを実現できていない。ですから、今こそこのフロンティアに挑戦する必要があるだろう、このように思います。

 そこで、この可能性を引き出していく上において、広大な排他的経済水域等の管轄海域においては、石油、天然ガス、メタンハイドレートや海底熱水鉱床などを含め、海洋エネルギーや鉱物資源の存在が確認されています。将来の国産資源として大きな可能性がある、我々はこう認識をしています。

 現在、海洋国家として日本が今後取り組んでいくべき道筋を明らかにすべく、政府部内において新たな海洋基本計画の策定の準備作業を進めておりまして、日本経済の再生につなげていくためにも、海洋資源を十二分に活用すべく、その開発利用を戦略的に進めていくための方策を明確に示していく考えであります。

遠藤(利)委員 時間が来ましたので、また午後一時から質問をさせていただきます。

 ありがとうございました。

山本委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。遠藤利明君。

遠藤(利)委員 午前中に引き続いて質問させていただきます。

 先ほど、この地図を皆さんに見ていただきました。文部大臣、質問いたしませんが、日本という国は、小さな島国、小さな島国、こう言っているうちに、何か気分はずんずん萎縮してしまったような気がするんです。しかし、この地図を見ますと、これだけの大きな面積、台湾のすぐそばまで日本の海だ。

 考えてみると、これは、中国とそして日本とアメリカ、世界経済の一位と二位と三位が一帯にいるんですよね。まさに世界最大のパワーのあるところですよ。そういう内容をやはり教育でぜひもっと子供たちに教えていただきたいなと思います。

 同時に、先日、iPS細胞で山中教授がノーベル賞を受賞されました。あれも何か聞きますと、大阪大学ですか、岸本さんという前の学長が、選考の過程で、どうもこれは余り物になりそうかどうかわからぬ、しかし、何かとんがっておもしろそうだといってこれを採用した。

 どうも日本の研究というのは、大学の学閥なのか、閉鎖的な中でどうしてもより無難な無難な形で選ばれるので、二割アップ、三割アップはなるのかもしれないんです、しかし、世界をリードする技術というのは、それじゃなかなか出てこない。千三つとは言いませんけれども、そのぐらいの確率で出てきたっていいんですよ。ですから、目ききをしっかりする、それも、とんがったものを大事にしていく、こんなことの選考をぜひ考えていただきたい。

 もう一枚出していただきますが、「投資すべき科学技術の例」とここに書きました。いっぱいあります。さっきの京都大学でやっているiPS細胞もそうですし、東京工業大学ではレアアースなどの希少元素を用いない代替材料、また、科学技術振興機構では次世代の蓄電池、そして物質・材料研究機構では国土強靱化に資する材料開発、そして放医研、重粒子線がん治療の高度化。実は、私の地元も今回、がん治療の重粒子線を導入するんですが、こうした技術。

 まだまだあるんですよね。石炭火力なんて、我々、正直言うと古いと思っていたんですが、超超臨界圧の石炭火力なんて世界最高水準ですよ。そして、私、この前聞いてびっくりしたのは、サバからマグロをつくる技術をやっているんですね。実は、マグロはサバ科なんです。知りませんでした。しかし、成長のスピードが違うので、これは倫理上どうのこうのという議論はあります。しかし、そんな技術を日本はいっぱい持っているんです。

 ですから、むしろ、そうしたとんがった技術を何とかして科学技術の中で生かしていただきたい。これは山本大臣の管轄かもしれませんが、ぜひ御検討をいただきたいと思います。

 さて、教育再生、まさに安倍内閣の大きな柱の一つであります。これまでも、臨教審とかいろいろな形で、教育改革国民会議、安倍総理になってからの教育再生会議等、いろいろな議論がありました。

 総理、戦後教育、日本の教育というのは、今でも世界最高水準です。自信を持っていいんです。ただ、やはり中国やあるいは韓国やシンガポール、どんどん追いついてきているなと。何か停滞している感じがします。その原因は何だと思われますか。

安倍内閣総理大臣 大変難しい質問ではございますが、六年前に教育基本法を改正いたしました。この改正教育基本法において、目的をしっかりと書いたんですね。教育の目標を書きました。教育の目的と目標を書き込んでいきました。

 この教育の目標、目的の中には、例えば道徳心を培っていくということを書いた。これは古い教育基本法には書いていなかったことであります。そして、日本の文化と伝統を尊重しということも書き込んだ。これも書いていなかったことですね。そして郷土愛、愛国心を書いたのであります。

 それはつまり、子供たちに、君は何者なんだということをしっかりと教えていくということであります。戦後の教育の問題点があったとすれば、それがすぽっと実は抜け落ちていたということにもあるのではないかと思います。

 そして、教育の目標、目的ではありませんが、教育においては第一義的に家庭が責任を持つ。この家庭の意味、家族の価値ということも古い教育基本法にはなかったことであります。

 人間の教育というのは、家庭教育があって、学校教育があって、さらに社会教育、人生ずうっとつながっていくわけでありますが、新しい教育基本法には、学校教育と社会教育はあるんですが、肝心の家庭教育が抜け落ちてきたという問題点もあるんだろう、こう思います。

 その中において、日本は、学力においてはかなり最高水準を確保することができたと思います。ただ、数年また学力が低下をしているのではないか、こう言われております。これは、悉皆調査をちゃんとして、自民党政権時代にはしっかりと行ったあの悉皆調査、学力調査、体力調査等々をちゃんとやっていけば、私は、短期間のうちにまた最高水準になるんだろうと思います。

 もう一点は、やはり、ある意味、道徳心の問題もあります。

 そしてまた、日本の子供たちとアメリカの子供たちと中国の子供たちの意識調査において、子供たち自身に自信がないんですね。これが一つの特徴なんだろうと思います。

 今、遠藤議員がおっしゃったように、日本にはこんなに資源があるんだ、海洋資源もあるんだ、こういうのも自信につながっていくことなんだろうなと思いますが、そもそも、学校現場において先生から自分の国をおとしめられていたら、自信はつかないんですよ。自分の国のアイデンティティーを汚されていたら私は自信がつかないんだろうな、こう思います。ですから、そこからしっかりと始めていく。

 誇りを持つということは、傲慢になることではないんですね。誇りを持つということは、例えば、海外に出かけていって困っている人を見かけたら、そういう人を助けてあげることができる誇りある日本人になりたいと思う真の国際人になっていく、そういう教育をしっかりと行っていく。そういう点がやはり私は欠けていたのではないかと思います。

 と同時に、最初に遠藤さんがおっしゃっていた、いわば出るくいは打たれるというところもあったのも事実ですから、出るくいをどんどん伸ばしていくという教育も大切ではないのかなと思います。

 また、今私が申し上げているのは初等教育、当時初等教育でございますが、高等教育においては、これは徹底的に国際化を図っていくということではないだろうか。余りにも内向き過ぎる、大学が。象牙の塔にみんなこもってしまっている。これを、この象牙の塔をコンと、コンじゃ割れないかもしれませんけれども、ガシャンと割って、徹底的な国際化を図っていくことによって、子供たちが青年になっていく中において世界に伍していく人材に育っていくのではないかな、こう期待をしている次第であります。

 要は、すばらしいものが今まとまってきていますから、これを実行する決断力と実行力が我々政治家に求められているんだろうと思います。

遠藤(利)委員 今まさに実行力という話がありました。実は、教育行政で一番難しいのは何だろう、絶対の真実がないということだと思います。

 この前、ボーイング787がいろいろな、事故までいきませんでしたが故障があったときに、バッテリーがどうのこうのと。これは専門家の話ですから、なるほどと我々は思います。

 しかし、学校の現場でこういうことがありましたよ、こういう方法がいいですよといったときに、百人いたら百人の教育方法があるんです。これは全部、間違いじゃないんです。それでやってきていますから、自分はうまくいっているんです。ただしかし、じゃ、それがいいかと。そうすると、最後、さっき総理大臣がおっしゃったように、まさに覚悟して実行することなんです。

 いろいろな問題点、誇りを持てる教育。確かに、今の日本の教科書を見ると、これじゃ自信を持てないよねと。

 また、今、総理からもう一つ大きな指摘がありました。結果の平等を求め過ぎたということだと思います。

 実は、昨年、総理と一緒に、アジアの子供たちの学校ということでミャンマーに行ったんですが、その途中、シンガポールに寄ったんです。そのシンガポールの科学技術庁長官、前の文部省の事務次官でしたが、その方にこういうことを言われました。戦後、私たちは日本の教育制度をモデルにして頑張ってきました、しかし今、日本の教育制度は魅力も関心も全くありません、参考になりません、結果の平等の教育なんてあり得ないんですと。教育大国日本と思って、自信を持って話をしていたんですが、実は大変ショックを受けました。

 戦後、日本の教育、よく、おててつないで一等賞だとか、それから、頑張りました、まあまあ頑張っていますとか、みんなを大事にする教育、集団として大事にする教育。これはやはり、戦後、衣食住と同じで、まずみんな同じように戦後の復興で一緒に進みましょうよ、これはよかったと思うんです。

 しかし、例えば着るものだって、昔は、継ぎはぎだろうが、ただ暖かければいいと。しかし、今はデザインだとかそういうことを考えますよね。それから食べるものだって、何でもいいやというのが、今はカロリーがどうの味わいがどうの。住むうちだって、夜露をしのぐから、やはり住みやすさと。

 教育も変わらなきゃならないんです。マスの教育、皆同じようなペースの教育じゃなくて、一人一人能力が違うんです。よく学校の先生方に能力が違うと言うと、いや、そんなことはない、みんな努力すれば大丈夫だと言います。絶対あり得ないんです。

 私、ラグビーをやっていましたからよくわかります。幾ら努力しても、私、百メーター十三秒幾つだったんです。それで、カンガルーのスパイクを履けと先生に言われて、十二秒八ぐらいまでになりました。しかし、私の友達は、普通にズックで走って十一秒台で走るんです。幾らやっても超えられないんです。

 人間の能力というのは、それぞれみんな違うはずです。ましてや成長過程が違います。四年生で変声期になる子供もあれば中学校二年ぐらい、あるいは背が伸びる伸びないも違います。これを同じシステムでずっと七十年間やってきているんです。ですから、伸びたい子供も伸びられない。あるいは、掛け算なかなか苦労してわからないんだよと言いながらも中学校に行って高校に行っちゃう。学校がおもしろくないのは当たり前ですよ。

 ですから、改めて今、日本の教育制度、私は飛び級があってもいいし、あるいは本当は留年があってもいいと思うんです。留年が嫌なら進級してから学び直しでもいいと思いますが、そうした個人のそれぞれの子供の成長スピードに合わせた、あるいは能力に合わせた、そういうふうな複線型の教育システムに変えていかないと。ましてや子供は減ってくるんです。今まで以上に一人一人の子供の知識、能力そして体力含めて強くなければ、日本という国を守っていけないんです。

 そういう意味では、私は、やはり六・三・三・四制の見直しをしなきゃならない、まずそうした結果の平等から個人個人の能力を生かした教育にすべきだと思いますが、文部科学大臣の見解をいただきたいと思います。

下村国務大臣 お答えいたします。

 シンガポールの例を出されましたが、私も、サッチャー改革に教育を学ぶということでイギリスに行ったときに、サッチャーさんが一番参考にしたのは日本の教育改革、制度でありまして、一九八〇年ぐらいまでの日本の教育改革、教育制度というのは大変うまくいっていた。それは、当時の高度経済成長を支える人材育成、近代工業化社会を支える人材育成。ですから、短期間にいかに処理能力を発揮するかとか、暗記とか記憶とかいうのが中心でしたが、しかし、もう時代はその次の時代に移ってきた中で、一人一人のクリエーティブな、あるいは人間的な感性を養う教育に大きく転換したにもかかわらず、日本の教育制度あるいは教育はそこまでいっていないというところが問題点であるというふうに思います。

 そういう意味で、御指摘のように、画一、均一的な、みんなが同じであればいいという教育から、一人一人の潜在能力をいかに発揮し、それを引き出していくような教育にしていかなければ、それぞれの人たちの日本における幸福感、あるいは社会におけるやりがいというのが生まれてこない。そういう教育制度に変えていくということが、これから我が国における一番大切なテーマであるというふうに思います。

 その中で、今御指摘がありましたように、六・三・三・四制のあり方についても、より柔軟な発想の中で、それぞれの発達段階に応じて、それぞれの能力、関心をいかに最大引き出すような教育システムにしていくかということについては、大変重要なテーマであると思いますし、教育再生実行会議の中できちっとした議論をしながら、法制度につながる部分については中央教育審議会等に諮問する中で、早く国会に法案として出せるような諸整備について対応していきたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。

遠藤(利)委員 その会議は、子供を見ていない。何か先生のための教育制度みたいで、例えば、ICTをもっとやれと言っても、先生が使えないからと。英語教育をやれと言っても、現場の先生がまだ英語がそこまで到達していないと。本当に一番のユーザーである子供を見ていないんですよね。

 ですから、そういう意味で、もっと文部科学省の行政も、先生のための行政じゃなくて子供たちにとってだったら、例えば英語がしっかりできない先生がいたら、ちょっと研修してもらおう、差しかえましょうよとあっていいはずなんです。どうしても組織を守ってしまう。

 そういう点、ぜひ大臣、そうした改革をやはり着実にやっていただきたいなということの一つとして、まだまだこの制度疲労、この学制改革もそうです。私は、六・三・三・四制から、子供の成長を見れば、四・四・四とか、場合によっては、幼児教育の一年間を義務教育みたいにして五・四・四とか。大体、中学、高校で三年、三年で試験するのは大変なんですよ。四年、四年の方がはるかにいいと思います。ですから、私は、五・四・四という制度はあると思いますよ。

 そうしたことも含めて、これから私たちも党の中で、教育再生実行本部、今、大臣の後、本部長を仰せつかりましたので、そうした点もしっかり議論をしていきますし、また、政府の中でも、そうした問題をぜひ再生会議の中で議論をしていただきたい。

 そしてまた、もう一つ大事なのは、学校の先生です。

 教師、教員、教諭などといろいろあります。どっちが正しいなんてわかりません。主幹、主任、わからないんです。もうちょっとシンプルに、私は教員というよりも教師という言葉が好きですが、やはり教師が尊敬される、そのためには、例えば、大学を卒業時に一年間インターンシップをやって、そしてそれから本番の先生になりますよ、こんなことも必要ですし、あるいは、学校の現場の変な平等主義が、実は、さっきのいじめのような事件をうまく解決できていないんです。やはり管理職としての統治能力が必要です。だったら、管理職に資格を付与するということだって私はあると思うんです。こういうこともぜひ御検討いただきたいと思います。

 時間もありませんから、最後に、総理。

 今、教育にかける思い、決意、その改革の思い。そしてもう一つ、先ほどの、柔道のとき大変残念な思いをしたんですが、しかし、二〇二〇年、東京オリンピック、パラリンピックの招致。被災された皆さん方に世界多くの国々から大変な御支援をいただきました。それを糧に、私たち、私も山形ですから同じ被災県の一人だと思っておりますが、みんな力を合わせまして頑張りましょうと。そうすると、二〇二〇年が決まった瞬間に世界が日本を見るんです。それを糧にしてまた私たちが頑張れるんです。

 そんな意味で、この東京オリンピック、パラリンピックの招致、九月七日にブエノスアイレスで決定をいたします。今回のいじめの問題、かなり大きなダメージかと思いますが、しかし、逆にそれを乗り越えて、そして国民の皆さんが夢を共有できる、そんなオリンピックにしたいと思いますので、その招致にかける思い、あわせて総理大臣から最後にお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 さきの東京オリンピック、私もよく覚えておりますが、恐らく、あのとき生きていた日本人はみんな記憶があるんだろうと思いますね。

 自衛隊機が五輪を空に描いたんですが、私は兄と二人で屋根に上ってその五輪を見たのを覚えていますし、もちろん、あのバレーの決勝も見ました。本当に日本が一つになったという、そんな経験を持つということは幸せだったなと思いますね。

 それと同時に、オリンピック招致が決まってオリンピックが開会されるまで、あの道のりというのは、日本が高度経済成長に突入していく、そういう時代と軌を一にしているんですね。オリンピック招致ができた、この自信のもとに日本はまた頑張るんですね。

 その意味においても、一昨年、東日本大震災を我々が経験して、このつらい状況から復興していこう、この思いを一つにしていくためにも、新しい目標を持つためにも、ぜひオリンピック招致を成功させたい、こう思っています。

 今まさに、我々も成長していこうという入り口に差しかかったところでございます。さきの東京オリンピック招致をしたのは、ちょうど岸信介内閣でございました。ぜひ今度は私が招致を成功させたいと頑張っておりますので、どうぞ皆さん、一緒に頑張ってまいりましょう。

遠藤(利)委員 時間が来ましたのでこれで終わりにしますが、ぜひ、みんなで夢を持って、そして、少し自虐的になったり、あるいは縮んでいますから、前向きにみんなで力を合わせて頑張っていこうということを最後に総理にお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

山本委員長 これにて石破君、伊藤君、遠藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、石井啓一君。

石井委員 公明党の石井啓一でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず私は、今議題になっております今年度の補正予算の内容から質問をさせていただきたいと思いますが、日本経済の再生に向けた政策の第一弾として、今年度の補正予算が編成され、提出をされました。景気の底割れを防止しまして持続的な経済成長につなげていく予算でありますし、また、私どもの提案も相当盛り込まれておりまして、評価をしているところでございます。

 まず、この補正予算のポイントを御紹介いたしまして、関連事項を質問いたします。

 まず、大きな内容ですが、政府は、補正予算三重点分野ということで、復興・防災対策と、成長による富の創出と、暮らしの安心・地域活性化、三つの分野に説明されていますが、私ども、成長による富の創出の中で、特に中小企業の分野は特出しをして、四分野できょうは御説明、御紹介をいたしたいと思っております。

 復興・防災対策、まず復興関係でございますが、大震災からの復興の加速のために、この補正予算、震災復興特別交付税の積み増しが行われております。これは代表的な事例でありますけれども、防災集団移転促進事業の対象とならない、単独で移転されるような方について、各自治体の復興基金で支援をしているわけですが、その復興基金を積み増すために、特別交付税の積み増しという予算が盛り込まれております。

 また、福島の再生ということでは、営農再開を支援するために農地の保全などをしっかりやっておく、あるいは避難住民の方の帰還促進の支援の予算、さらには福島県環境創造センターの設立、これは放射性の廃棄物あるいは土壌等の処理、処分の研究開発等を行う研究施設ですけれども、こういったさまざまな対策が盛り込まれております。

 まず、総理にお伺いをいたしたいと思いますけれども、この大震災からの復興の加速と福島の再生の促進に向けました総理のお考えをまず伺わせていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 震災からの復旧復興は、安倍内閣において最重要課題であります。

 私は、就任をいたしまして直ちに、復興に関する体制や取り組みの検証、そして見直しを行うように、根本復興大臣に指示をしたわけであります。

 その指示を受けて、一月の二十九日に開催した復興推進会議において、五年間、十九兆円の復興予算に関するフレームを、見直しをいたしまして、二十五兆円にいたしました。これは、被災地に足を運んだ際、十九兆円という天井があるままでは不安だという声がありました。この不安を払拭するということで、そのいわば天井を破って、六兆円、フレームを変えたということであります。

 そして、復興大臣をトップとするいわゆる福島、東京二本社体制の実現を図るために、福島復興再生総局の設置を行いました。被災地の方々からも、縦割りで、いろいろな役所に行ってもたらい回しされてしまう、一々東京に足を運ばなきゃいけないのは大変だ、自分たちと同じ目線に立って物を考えてもらえないかということでございましたから、この福島復興総局をつくって、事務レベルのトップをそこに置いて、そこに行けばトップがいるんですから、そこで判断ができる。一々東京に足を運ぶ必要はない。そして、縦割りを排して、ここで一本化して決めていくということになりました。復興の加速化の具体化を推進してまいります。

 また、これにあわせて、平成二十四年度補正予算案や平成二十五年度当初予算案においても、津波被災地域の自治体が住まいの再建に資する施策を通じて住民の定着を図るための震災復興特別交付税の増額、そして福島県における営農再開等に向けた支援、そして避難解除区域の住民帰還促進のための事業の創設といった、復興の加速化に向けてきめ細かく、また機動的に対応するための必要な予算を計上いたしました。

 今後とも、常に施策の点検を怠らずに、現場主義に立った迅速な対応を進めてまいります。そして、福島の復興、大震災からの被災地の復興、そしてまた福島の再生に全力で取り組んでまいります。

石井委員 総理には、まず早々に被災地も視察をしていただいて、予算やあるいは役所の体制等、矢継ぎ早に手を打っていただいておりまして、感謝を申し上げたいと思います。私ども与党も、しっかりとこの政権の姿勢を支えて、目に見えるように復興、福島の再生が進むように頑張っていきたいと思っております。

 ところで、復興を加速するために幾つか、現場からいろいろな御要望といいますか課題が挙げられておりまして、確認をいたしたいと思います。

 まず最初に大きな課題になりますのが、生コンクリートなどの建設資材や人手の不足ということでございます。これは本会議の代表質問でも確認をさせていただいたのでありますが、復興のための工事を進捗させる大きな障害となっております。加えて、後ほど申し上げますけれども、今回の補正予算の中で公共事業が増額をされておりますので、全国的にも資材不足とか人手不足、こういう問題が生じるのではないかという懸念がございます。

 そこで、復興計画を進めるために、また全国でこの補正予算の早期執行を図るために、必要な資材や人手の確保についての対策を、これは国交大臣にお伺いをいたしたいと思います。

太田国務大臣 おっしゃるように、なぜ復興が、二度目の冬を迎えるというような状況のままおくれているのか。幾つかの隘路がある、ボトルネックがある。そこを打破しなければ復興が進まない。かなり煮詰まってきていると思います。

 その中に、今ありましたように、人の不足、そして生コンの不足等が指摘をされています。

 この生コンの不足ということについては、骨材が非常に大事ですから、その地域だけでは調達できないということもありまして、広域な連携をとって骨材を入れることができるようにする、あるいはプラント施設をつくっていく、こうしたことを今鋭意、推進方をやっているところです。

 人の不足ということについては、いろいろな意味での人の不足があるんですが、職人さんがいないとかいうこともいろいろあるんですが、発注側からいきますと、ロットを大きくして受注できるようにしていく。そしてまた、そこで、大きさによって技術士の配置基準が決まっているというような従来型のものを突破できるものがあるのではないかということで、技能者、技術者、これらの有効的な、効率的な利用方法というのを推進していくというようなことも含めまして、生コン、また人、物の不足というものについてしっかり補っていかなくてはならないというふうに思っています。

 極めて急所だと思っておりまして、大きな支援をしていかなくては打開できないと思っております。

石井委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 もう一つ、復興にかかわる課題で指摘をいたしたいと思いますが、復興事業に伴う用地取得の課題がございます。

 土地の権利関係で、土地の名義人が既に亡くなっているにもかかわらず、相続に伴う名義人の変更が行われていない、例えば、もう何代も前の方の名義のままになっているというようなケースも多くございまして、相続人が多数に及ぶ上に、相続人の中には、所在が不明な方だとか、あるいは海外にいらっしゃる方だとか、当事者の合意を得るのが困難な事例が数多くございます。

 また、任意取得が困難な土地の早期取得のために土地収用の制度がございますけれども、この事業認定の手続の簡素化、迅速化をしてほしいという要望がございます。

 復興事業に伴う用地取得が円滑に進むように、私は何らかの特別措置を講じるべきではないかというふうに考えていますが、この点について、法務大臣、国交大臣、復興大臣にそれぞれお伺いしたいと思います。

根本国務大臣 今委員御指摘のように、土地取得に関して、あるいは土地収用法の運用に関して、さまざまな課題が指摘されております。

 復興事業に伴う用地取得の円滑化、これは私もいろいろな問題を聞いてまいりました。一つは、所有者の所在確認を行うのに職員が不足している。先生からお話があった所有者、相続人が不明の場合に、民法上の制度で財産管理人制度があるんですが、財産管理人制度の手続がうまく進むか、こういう問題点も指摘されております。それから、土地収用法の問題、事業認定に時間がかかるのではないか。さまざまな問題、課題が指摘されております。

 今我々がやっているのは、やはり被災自治体からの相談に一元的に応える、これが必要だろう。現場で即応できる体制として、今、復興局と法務局、地方整備局、この構成メンバーから成る連絡会を設けて、問題の解決に向けた検討を詰めております。

 具体的に言えば、財産管理人制度。これは、これから活用の増加が見込まれますから、法務省、最高裁判所の協力を得なければなりません。管理人を確保するために、法務省、最高裁判所の協力を得ながら、地元の弁護士会、司法書士会、この団体や、家庭裁判所、前広に今相談を実施しております。

 土地収用手続については、国交省において、事業を緊急に施行していく必要があることを踏まえて、個別事業に即して、審査の簡素化あるいは自治体へのきめ細かなノウハウの提供、これに取り組んでいくこととしております。

 これが私は大事だと思うんですが、用地取得に関して、具体的な問題の解決を実地に検討する。岩手県釜石市の防潮堤事業を対象に、今関係者が集まってモデルケースをやっております。このモデルケースをやる中で具体的な課題が出てきますから、この具体的な課題にどう運用上の措置を改善していくか。このモデルケースを進めることによって具体的な問題、課題、解決策が出てきますから、これを一般的な制度として適用していく。実は今、これを精力的に進めております。

 現行制度をまず最大限に活用したい。その上で、制度上の課題が明らかになった場合には、その改善方策も検討していきたいと思います。大事なのはまさに現場主義で、現場の中に鍵がありますから、具体的な問題、課題、一つ一つ具体的な解決策を示していきたいと思います。

太田国務大臣 今の答弁で尽きていると思いますが、法的な措置については、法的な特例措置というものを考えなくてはいけない局面かと思います。

 運用面において、できることは直ちにやる。手続の簡素化、そうしたことを始めて、やるとともに、今お話がありましたように、釜石で防潮堤をつくるということで今モデル事業をやろうとしていますから、これらの知見を得て、さらにこれを促進したい、このように思っています。

谷垣国務大臣 法務省としましても、石井先生の問題意識は全く共有しております。

 復興大臣から包括的な御答弁がございましたけれども、民法上の権利者がはっきりしない場合の、あるいは相続人がはっきりしない場合の取り扱い等がございますので、これは家庭裁判所と自治体がよく緊密に協力していただくことが必要でございます。

 したがいまして、法務省としましても、最高裁判所の事務総局に情報を提供したり、あるいはいろいろな協力要請をするなど、今後も工夫してまいりたいと思っております。

石井委員 とにかく現場が困らないように、先ほど根本大臣は現場主義とおっしゃっていただきましたけれども、よろしくお願いしたいと思います。

 続いて、全国的な防災対策の方ですが、パネルをごらんいただきまして、今回の補正では、相当、防災、減災の取り組みが強化をされています。さまざまな社会インフラの総点検をまずしっかりと実施する。また、老朽化対策あるいは耐震対策等、事前の地震対策あるいは風水害対策等々やりますけれども、特に防災・安全交付金というのを創設しまして、地方自治体が今言ったような総点検とか老朽化対策をしっかりとできるように工夫している。これは非常に大きな政策だと思っております。

 さらには、私ども、かつてから促進をしてきました学校やあるいは医療施設、社会福祉施設の耐震化の促進。公立の小中学校は、この補正予算によりまして、全国で耐震化率が九三%まで上がる、こういうふうに伺っておりまして、こういった点は評価をいたしたいと思います。

 その上で、今後の課題でございますけれども、点検なんですが、実はこの点検のやり方だとか頻度というのは、今、それぞれの施設の管理者に委ねられているんですね。ですから、全国的な基準化がなされていないという課題がございます。それと、点検の手法や頻度、これをきちんと基準化していく、また計画的に実施をしていく、こういったことが重要でございます。

 さらには、私どもは予防保全ということを重要視しております。これは、老朽化が激しくなる前に、事前に早目に修繕等を行うことによりまして、その施設が長寿命化できる。これによってトータルのコストが縮減できる。こういう予防保全型の維持管理、アセットマネジメントというふうに言うようですけれども、これをぜひ本格的な導入を図っていただきたい、こういうふうに思います。

 さらには、ソフト対策として、今回の防災・安全交付金の中にはいろいろなソフト対策もできるようになっていますが、防災教育、防災訓練などのソフト対策の充実。三・一一の大震災でも、釜石の奇跡というのがNHKでも取り上げられましたが、事前の防災教育、防災訓練が徹底されていたため、小中学生、ほとんど津波で命を落とす方がいなかった、こういう事例もございます。非常に重要なことだと思います。

 また、私ども提案しているんですが、防災対策にぜひ災害弱者やあるいは女性の視点を盛り込んでいただきたい。

 こういった観点から、これから私どもが主張をいたします防災・減災ニューディールというのはそういうことを盛り込んだ政策でありますけれども、これをぜひ反映していただきたいと思っております。

 国交大臣と防災担当大臣の御答弁をお願いします。

太田国務大臣 全てにわたりまして、まず点検、調査というものが正確に行われなくては対応ができないということについては全く同じ考えで、社会インフラの点検ということについて、おっしゃるように、きちっとした、こういうマニュアルでいきなさいというようなものが徹底されていない。あるいはまた、市町村におきましてはなかなか、それがあったとしても、受け取る側というのは人数が少ないですから、一人で何でもやらなくちゃいけないというようなことにもなる。というような、まずシステムの問題とマニュアルの問題ということについては、もう一度考えてしっかり徹底したい、このように思っています。

 また、点検方法ということで、よく聞く話ですが、今の時代でもこうやってたたいているだけなのかという、打音ということがあるんですが、これは実は非常に有効なことなんです。目視、打音、そのほかに機械を使ってのそうしたものの開発をもっとしていかなくてはいけないというふうに思っています。さまざまな、エックス線を使ったりあるいは磁気を使ったりというような研究開発を今鋭意、急いでいるところでございます。

 そうしたこととともに、調査した履歴がしっかり積み重なるということが意外に建造物にはないわけで、そこの履歴をしっかりする。そのためには、センサーを先に埋め込んでおくというようなことが、そして、時間軸の中でそれが点検できるというようなことも含めて、しっかり対策をしていかなくてはいけない。

 いずれにしても、そうしたもろもろ御指摘いただいたようなことについて、なかなか進んでいなかったという今の現状をしっかり踏まえて、前に進めるようにしたい、このように思っております。

古屋国務大臣 石井委員にお答えさせていただきます。

 石井委員の方からは、今、国土交通大臣から御指摘のありました、いわゆるハード面での対策以外に、ソフト面の対策ということだと思うんですけれども、それは、自主防災組織をしっかり育成しろ、これが一点。それから二つ目は、やはり防災教育とか防災訓練が必要ですよ。それからもう一点は、いわば女性の視点とか要援護者、要するに弱者の皆さんに対する配慮はどうなのか。この三点だと私は思います。

 まず最初の、いわゆる自主防災組織の育成については、消防庁がいわゆるガイドラインをつくっておりまして、各自治体にももう既に配付をいたしておりますので、そのガイドラインをしっかり活用していただくということとともに、やはり特に市町村単位、都道府県もそうですけれども、むしろ市町村単位でいわば連絡協議会を設置して、そういったガイドラインのノウハウがみんなで共有できるような体制をつくっていくということが大切だというふうに思っております。

 二つ目の防災教育、防災訓練ですけれども、これは、昨年、災対法が改正されまして、いわば先人の皆さんの知恵だとか防災のノウハウ、こういったものをしっかり伝承していきなさいという住民の義務も示されましたし、また、防災教育の実施に当たっては、関係機関がしっかり連携していきなさいよという努力義務規定も記されたところでございますので、しっかりそれで対応していっていただきたいというふうに思います。

 また、政府としては、やはりいろいろな団体とか関係者がいらっしゃいますので、そういった方々が有機的に連携をしてこの訓練の充実に努めていくということが大切であって、我々もそういう視点でお手伝いをしていきたいと思っております。

 そして、三つ目の女性の視点あるいはいわば要援護者の視点。特に女性の視点については、昨年、災対法を改正いたしまして、従来は、行政職の方が地方防災会議のメンバーに充て職のように入っていたんですね。これは余り機能しませんので、やはり女性の方だとかあるいは学識経験者の皆さんとか、こういった方が弾力的に入れるように制度を改正いたしましたので、ぜひこういった改正を積極的に活用していただきたいなというふうに思っております。

 また、災害時の要援護者に対する検討会をもう既に設置いたしておりまして、そこで検討を始めておりますので、こういったガイドラインも速やかにつくり上げて、こういったいわば弱者、要援護者に対する支援の充実をしていきたいと思っております。

 いずれにしても、こういったソフト、ハード両面の減災、防災対策を講じていくということは極めて重要でございますから、しっかり政府としても取り組んでいきたいと思っております。

 以上です。

石井委員 ありがとうございます。

 この補正の中では、成長戦略として、例えば、円高、エネルギー制約対策のための先端設備への投資促進、研究開発、イノベーションの促進、また、京都大学の山中先生、iPS細胞を活用した再生医療研究の促進等々、持続的な成長につながる施策も多く盛り込まれているところでございます。

 それから、補正予算のポイントの三点目ですが、中小企業の再生・活性化の施策も相当充実しています。

 これも代表事例でございますが、今回、ものづくり中小企業の試作開発への支援補助、これは一千七億円ついていますね。それから、商店街、ハード、ソフト、まちづくり事業あるいは活性化事業ということで三百億円。あるいは、資金繰り支援ということで、借りかえ保証、五兆円の事業額、また、新たに経営支援型のセーフティーネット貸し付け、これも五兆円設けます。また、経営改善計画の策定を求められている中小企業があります。そういったところの策定支援等々、非常に多彩な施策が盛り込まれているわけですが、これらの施策が有効に活用されるように、ぜひ、制度を使う中小企業や小規模企業の事業者の目線に沿って、制度のわかりやすいPR、それから手続の簡素化、迅速化を図っていただきたいと思います。

 経産大臣、御答弁をお願いします。

茂木国務大臣 国会きっての政策通の石井政調会長の方から、中小企業の再生、活性化について御質問いただきました。

 今回の補正予算案、経済産業省の関連、一兆二千億を計上しております。これは、平成二十一年度のリーマン以降の補正、そして震災対策としての平成二十三年度の補正に次ぎます過去最大規模のものであります。そして、この一兆二千億のうち、まさに石井委員が特出しをしていただきました中小企業対策、小規模事業者対策、これが約半分の五千四百億を占める、こういう形になっております。

 これからは、まさに利用してもらう人にわかりやすい制度としていかに広報していくか、こういうことが大切だと思っておりまして、例えば、中小企業、そしてまた小規模事業者だけではなくて、これまでの四千七百になります、商工会であったり商工会議所を通じた支援機関からの広報、さらには、これから五千四百の認定支援機関をつくってまいります、そういったところを通じた広報もやってまいりますし、また、新しいPRの方法、例えばメールマガジンを使ったりホームページを使ったり、そういった手法も活用していきたいと思っております。

 それから、手続の簡素化、これが御指摘のように極めて重要でありまして、例えば、指摘をしていただきました中小企業のものづくりの支援、今回、全国の一万社を対象に一千億円の予算を計上しまして、そういった、技術は持っているんだけれどもものづくりの試作品がつくれない、こういう会社を支援しようと思っておりますけれども、平成二十一年度のものづくり支援金のときは、申請書類が大体、一点につき十五ページ必要でした。今回は数ページに絞るといったことで、この点でも改善をしてまいりたいと思っております。

石井委員 よろしくお願いいたします。

 そのほか、今回の補正では、暮らしの安心・地域活性化ということで、地域の元気臨時交付金、これは今回の補正の、特に公共事業の地方負担ですね、地方負担の平均八割はこれでカバーするということ。あるいは、農林水産業の基盤整備の充実、また通学路の安全対策の強化。

 また、雇用もいろいろ工夫されていまして、従来の雇用促進事業で、新たに起業支援型の地域雇用創造事業。これはどういうものかといいますと、民間企業やNPOに事業を委託して、失業者を一年以内雇用するといったもので、正規雇用として継続雇用した場合は一人三十万円の支給を行う。

 あるいは、若者の育成支援ということでは、非正規の若者に実践的な職業訓練を実施した場合、月額十五万円を支給する。その方を引き続き正規雇用した場合、一年間定着すれば五十万円、さらに二年後、定着すれば五十万円を奨励金として支給するということで、かなり大胆な雇用対策も盛り込まれております。

 また、地域医療再生基金の拡充や安心こども基金の拡充、また、七十歳から七十四歳の医療費の窓口負担の一割据え置きも、今回の中で措置をされました。

 この負担の見直しにつきましては、これは、世代間の公平や高齢者に与える影響等について、低所得者対策等とあわせて検討するということになっておりますが、私どもは、低所得者対策として、高額療養費の見直しもぜひ行うべきであるというふうに考えております。

 それでは、ちょっと質問をかえまして、次に、経済再生政策についてお伺いをいたしたいと思います。

 安倍政権におきましては、大胆な金融緩和、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の三本の矢を一体的に強力に実行することにより、長引く円高、デフレ不況から脱却をし、雇用や所得を拡大させ、強い日本経済の再生を目指す、これは巷間、アベノミクスと言われているようでありますが、そういう政策をとられておりますが、まず、金融政策でございます。

 今、パネルでお示ししましたのは、一月の二十二日に政府、日銀の出された共同声明のポイントを私の方でまとめてみました。

 まず第一に、デフレからの早期脱却と持続的な経済成長に向け、政府及び日本銀行の政策連携を強化し、一体となって取り組む。政府と日銀が一体となって取り組むということが第一です。

 二番目に、今度は日本銀行の役割として、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で二%とする、これをできるだけ早期に実現することを目指すというふうにしております。

 三点目に、今度は政府の方の役割として、機動的なマクロ経済政策運営に努めるとともに、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた取り組みを具体化し、これを強力に推進する、また、持続可能な財政構造を確立するための取り組みを着実に推進する。

 そして、これらの取り組みを経済財政諮問会議で定期的に検証を行う。

 こういう声明の構成になっております。

 したがいまして、この政府、日銀の今回の取り組みというのは、日銀だけが責任を負うというものではなくて、政府と日銀の双方が目的達成への責任を負っている、こういうふうに理解しておりますが、この点について総理に確認をしたいと思います。

 あわせて、物価安定の目標について、今回、政府と日銀が共有をいたしましたけれども、これで日銀の独立性が何か侵されているのではないかというような指摘もございます。

 しかし、この共同声明でも明らかなように、物価安定の目標二%を達成する手法については、これは日銀に委ねられております。私は、日銀の独立性のポイントというのはこの金融手法の独立性ということでありまして、十分に日銀の独立性は担保されているというふうに思っていますが、この点については日銀総裁に確認をいたしたいと思います。

 まず、総理からお願いいたします。

安倍内閣総理大臣 まず、この共同声明の意義、意味でございますが、二%の物価安定目標に向かって、なるべく早期に実現をするというふうに書かれております。これは日本銀行において責任を持って実現をしていただくということであります。

 しかし同時に、物価上昇は実体経済の成長を伴って安定的に実現をしていくことが望ましいわけであります。その中におきまして、機動的なマクロ経済政策運営に政府として努めていくとともに、成長力、競争力の強化の取り組みを実行することとしています。

 また、財政運営に関する信認を確保するために、持続可能な財政構造を確立するための取り組みを着実に推進することとしております。

 つまり、我々政府は政府として、今申し上げましたように、実体経済の成長を伴った安定的な成長を確保するために我々はこういうことをやっていきますよと。つまり、二%の成長につきましては日本銀行が大胆な金融政策でもって実行してくださいね、しかし、その際、今申し上げましたように、実体経済の安定的な成長を確保していくという意味において我々はこういうことをしていきますよということを、私たちの責任において書き込んでいった、そういうものであります。

 政府と日本銀行がそれぞれの責任において共同声明に盛り込まれた内容を実行することによって、デフレからの脱却と持続的な経済成長の実現を目指すことにしたということでございます。

白川参考人 お答えいたします。

 独立性に関する御質問でございますけれども、日本銀行としましては、日本経済が現在置かれている状況に照らしまして、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」という日本銀行法に定めました理念のもとで日本銀行の使命を果たしていくためには、政府との連携強化が必要であるというふうに判断いたしました。

 金融政策運営の独立性でございますけれども、これは日本銀行法の第三条第一項におきまして、「日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない。」というふうに明確に規定されております。

 そのもとで作成されました今回の共同声明は、日本銀行は日本銀行として、政府は政府として、お互いの役割を明確に認識して取り組むことを示したものでありまして、独立性は十分に担保されているというふうに思います。日本銀行としましては、物価安定の目標をできるだけ早期に実現することを目指しまして、みずからの判断と責任において金融政策を行っていくということでございます。

 それから、この共同声明には、持続可能な物価の安定の実現を目指していることや、金融政策の効果波及には相応の時間を要することを踏まえまして、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検することなど、金融政策運営の柔軟性を確保することの重要性についても明記をされております。この点でも、日本銀行の独立性にしっかりと配慮がなされたものというふうに理解しております。

石井委員 ところで、今回の補正では、経済対策として建設国債五・二兆円が追加発行されておりまして、国債増発に対する批判や懸念がございます。短期的に財政政策で景気を下支えするとともに、中期的には、民需主導の経済成長を実現し、財政健全化も図らなければなりません。

 そこで、短期的な財政政策を中期的な民需主導の経済成長へとつなげる道筋、さらには経済再生と財政健全化の両立を実現する道筋、これを示すことが私は重要だというふうに考えていますが、政府の取り組みについて財務大臣から御答弁をお願いします。

麻生国務大臣 石井先生、最も大事なところだと存じます。

 日本銀行がお金を仮に印刷したとしても、そのお金は銀行の当座預金に入る。その当座預金から先に、企業からの実需がない限りは、金がいわゆる民間に散ることはありません、そこにいるだけですから。したがって、今回の政策の三本の柱のうちのいわゆる金融の緩和プラス、残り二つのところがそこをサポートするところであります。

 財政としては、当面、補正予算等々で、GDPを伸ばす三本の柱の一つが御存じのように政府支出でございます。残りの民需、民間のいわゆる需要というか設備投資、それからいわゆる個人消費、この三つが大体GDPの三本の柱ですけれども、その残り二つが動きませんので、まずは政府支出からということでこの政府支出と、先ほど申し上げました二つ、合わせて三つ一緒にいかないと今回のあれがつながらぬということでございますので、今回、やはりつなげていく一番大事なところは、主に経産省がやられます、次の仕事につながっていく部分、次の成長産業につなげていく部分を一番きっちりつなげていかねばならぬ、そういうぐあいに私どもも理解をいたしております。

石井委員 では、最後に総理、外交、安保を一問だけ。中国の問題です。

 一昨日、中国艦船のレーダー照射の事案が公表されまして、大変残念な事態でありますけれども、こういった状況だからこそ、私は政治的対話がますます重要になってきているというふうに思っております。

 先日訪中をいたしまして、山口代表に私も同行いたしました。習近平総書記とも会談をいたしましたけれども、習総書記も、両国のハイレベルでの指導者の交流という提案を大変に重視し、真剣に検討していきたい、こういう表明をいたしました。

 政府・与党として対話を重ね、首脳会談を目指していただきたいと思いますが、総理、最後に御答弁をお願いします。

安倍内閣総理大臣 先般、山口代表が訪中をされまして、習近平氏と会談を行いました。こうした交流こそが戦略的互恵関係のあるべき姿だろうと私は思っております。

 先般のレーダー照射のような、ああいうことは、国境を接している中において、ある種の緊張感が高まっていれば起こり得る、もちろん極めて遺憾な出来事ではありますよ、しかし、そういうことがあったとしても対話の窓口は閉ざさない、これが一番大切な点であって、そういう意味においては中国こそ戦略的互恵関係の原点に立ち戻っていただきたい、このように思います。

石井委員 それでは、時間が参りましたので、以上で終わります。ありがとうございました。

山本委員長 これにて石井君の質疑は終了いたしました。

 この際、原口一博君から関連質疑の申し出があります。前原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。原口一博君。

原口委員 民主党の原口一博でございます。

 安倍総理、まず御就任のお祝いを申し上げたいと思います。

 そして、拉致の問題について、いろいろな御指導をいただいてきました。何回か日朝協議をする中で、私たちはそこで歯ぎしりするような思いもいたしました。そのときにも安倍総理と一緒でありました。自分が総理であったらという思いをあのときもなさったと思います。また再び、つらい時期を経て総理になられました。総理としてやれることを全力で頑張っていただきたいと思いますし、故郷の高杉晋作さんがつくられた奇兵隊、雷電のごとく改革を前に進めていただきたい、このことをお願い申し上げ、幾つか喫緊の課題について総理に伺いたいと思います。

 まず、北朝鮮です。

 核実験をやるというような報道があります。しかも、今回の核実験は、これまでのプルトニウム型の核実験とは違い、別の爆弾を使うのではないか、あるいは単なる核実験に終わらないのではないか、こういう懸念を私たちは報道でもって、あるいはさまざまなチャンネルでもって認識をしています。

 まず、総理に伺いたいと思います。

 北朝鮮が行おうとしているこの核実験、これがどのようなもので、何カ所で行われるというふうに想定しているのか、その情報は持っているのか持っていないのか。まず基本的な御認識を伺いたいのと、そして、日朝平壌宣言、総理が小泉総理と一緒に行かれた、もし核実験が行われるとすると、明らかな日朝平壌宣言違反である、私はそのように思います。総理の基本的な御認識をまず問いたいというふうに思います。

安倍内閣総理大臣 まず、北朝鮮が核実験に言及をしていることは極めて遺憾であります。核実験は、累次の安保理決議や、今議員が御指摘されたように、日朝平壌宣言、また六者共同声明に違反をするわけでありまして、我が国は北朝鮮に対して、これらを誠実かつ完全に実施し、核実験を行わないことを強く求めているところであります。

 また、御承知のように、日本と北朝鮮との関係においては、先般、ミサイルの発射を行いました。これも国連決議に反するものでございますし、何といっても、今議員がおっしゃったように、十三歳の少女を含む多くの日本人を拉致した国でもあるわけであります。

 そうしたことも踏まえ、もし今度核実験を行うようなことがあれば、我が国独自の制裁を含め、対抗策、対応策を考えていかなければならない、こう考えています。

 そこで、北朝鮮の核実験に関する動向について、政府としては重大な関心を持っているわけでございますが、現在、情報収集、情報分析を行っています。ただし、具体的な情報の内容や分析につきましては、インテリジェンスにかかわることでございますので、事柄の性格上、今ここで申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。

原口委員 私たちも政権を経験して、私自身も安保会議のメンバーでしたから、言えないことがある、そのとおりだと思います。しかし、北朝鮮が確実に核の技術を積み増している、このことは、大きな懸念として共有をしていかなきゃいけないというふうに思います。

 また、一昨日の中国海軍艦艇による海上自衛隊護衛艦への火器管制レーダー照射についても質問をしたいと思います。

 ただ単に与党を追及するというのではなくて、私たちも三年三カ月政権を持たせていただきました。その反省として、やはり総理にいかに情報を上げるか、そして総理をいかに守るか、官邸の機能をどう強化するか、これがとても大事だと思います。

 そこで、防衛大臣、事実については事務方からで結構でございますので。

 私は、これは、中国の長年の政策が一九九〇年代になって大きく変わったと思います。それまでは、ブラウンウオーターネービーといって、沿岸を警備する。しかし、それが、逆に言うとブルーウオーターネービーに変わってくる。

 海洋についての大きな関心を持ち、そしてそれを、午前中も第一列島線、第二列島線の議論がありましたけれども、広げていくことが中国の国家としての威信を強め、国益だということを、一九九二年ですか、領海法を制定して、そこから明確な意思を持ってやってきているんだということをまず押さえることが大事だと思います。

 そこで、防衛大臣に伺います。

 ここにパネルを持ってまいりましたけれども、二日前の事案はこの二隻が起こしたものというふうに考えます。

 また、総理、私たちは、一刻も早くインターネット選挙をやらせていただきたいと超党派でやってきました。きょう、こういう質疑もインターネットでごらんになれるように、公式フェイスブックにこの資料、皆さんのお手元にあるものは上げておりますので、これをごらんの国民の皆さんもそこをごらんいただきたいと思います。

 このフリゲート艦の性能、ジェーン年鑑からとったのが二ページ目です。これは大変な性能です。

 そこで、防衛省に伺います。

 この照射の疑いがある事案、この行為は一体どういう行為であったのか。つまり、中には、これは模擬攻撃だということを言う人もいます。実際にこれだけの、これは大砲だけじゃないですね、ごらんになると魚雷も持っているわけです。何が我が国艦船に向いていたのか、向いていなかったのか、そしてこの行為をどのように分析しているのか、まず防衛大臣から伺いたいと思います。

小野寺国務大臣 お答えいたします。

 今回、このような、火器を使用するに当たってのレーダーの照射が行われたということ、それは把握をしております。その際に、例えば砲のようなものが艦船に向けられていたかというと、私どもの目視においては、砲のようなものが向けられていたということではないんだと思っております。

 ただ、このような事案というのは極めて特異的な事案ということになりますので、万が一のことがないように、これは厳しく、私ども、外交ルートを通じて抗議をしていく、そのような案件だと思っております。

原口委員 砲は向いていなかったと。

 これはたしか、小野寺大臣それから前原さんとも一緒にかつて中南海を訪れたことがあります。旧ソ連でもやらないような日本海の測量を中国がやっていることを、中南海で、あのときは朱鎔基首相だったと思います、そういうことをやめてくれということを申し上げました。そうすると、当時のやりとり、相手があることですから詳しく言いませんけれども、中国政府はそれを知らないというふうに言いました。つまり、勝手にやっているという判断でした。

 今回、一体どっちなのか。今回も、報道官の今までの会見を見てみると、知らぬということを言っているわけです。しかし、照射をするというのは、もうまさにこれは攻撃行為そのものととられても仕方がない。

 この予算委員会で派遣されて、イラクへ参りました。当時はサダム・フセインの時代でしたけれども、サダムの政権が、米軍が飛行禁止区域を通っているときに同じような照射をしていますと、米軍はそれに対して爆撃で返していました。

 私たちは、先ほど総理がROEの基準の見直しについて触れられましたけれども、この問題をどう捉えるかというのは極めて重要です。しかし、同時に冷静な対応も必要であります。

 そこで、外務省、今般の中国艦艇による公海上の火器管制レーダー照射、国際法上の評価、これをどう考えておられるのか。

 これは、国連憲章そして日中平和友好条約、この観点からしても、もし攻撃行為だとすると、看過できない行為である、国際法上も大問題であるというふうに私は考えますが、法制上の見解を求めます。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 一般に、火器管制レーダーの照射行為が、国際法上、国連憲章で禁じられている武力の行使や武力による威嚇に相当するかという論点はあり得ると思っております。小野寺防衛大臣も、武力による威嚇に当たるのではないか、検討すべきであると午前中述べられております。

 その際の検討には、その行為が行われた全般的背景、その行為の主体の目的や意図がどのようなものであったのか、その行為の対象がそれをいかに認識したかといったことを総合的に判断する必要があると考えております。

 現在、日本側からの抗議を踏まえまして、中国側において、事実関係を確認する旨の反応があったところでございます。

 御質問の点については、その中国側の事実関係確認の結果も踏まえて検討を行う必要があると考えております。

原口委員 総理に伺います。

 ここまでの議論を聞かれて、私はやはり、対話を非常に重要視すべきだという考え方はわかりますけれども、しかし、明確な国際法違反に対しては、それをきっちりただしていくということも大事だと思います。

 もちろん、日中友好の井戸を掘った人たち、その両方をこれは傷つける行為で、決して許せるものではないというふうに思いますが、かかる中国側の挑発行為につき、総理はどのような認識をされ、そしてどのように対応されようとしているのか、お尋ねをしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今回の中国のとったレーダー照射という行為は、極めて特異であり、そしてまた極めて危険な行為であります。偶発的な、エスカレートにもつながるという危険性を持っている行為でありますから、我々は、中国側に対して、政府としての遺憾の意を表明し、そして強く抗議をしているわけでございます。

 今、原口議員から、対話の関係ということをおっしゃられたわけでありますが、だからこそ、ある意味では対話を行い、その場で高いレベルで抗議すべき点はしっかりと抗議をしていく、そして今後、こうしたことが起こらないようにしていくことが重要でありますから、こうしたことの防止を直接訴えることができるということが極めて望ましいのではないか、こう考えるところでございます。

 中国側の今までの外交のやり方としては、いわば、一点関係が悪化をすると全てがとまっていくという姿勢をとっていくんですね。それは間違っているんですよ。何か問題が起こるからこそ、対話は続けるべきであろう。そして、国際社会のルールは、基本的に、これは全く国際社会のルール違反ですから、国際社会のルールはきっちりとお互いが守っていくということが正しい道ではないか、このように思います。

原口委員 総理と私も同じ認識を持っています。やはり一番大事なのは対話であって、ミニマックス、最もゆゆしき武力衝突をいかに避けるか。そのためには、ホットラインを再開し、そして両国の高いレベルでもって冷静な対応をしていくということがとても大事だと思います。

 さて、まだこの時系列については国会で明らかになっていません。

 これは、一月十九日、護衛艦搭載のヘリコプターのレーダー照射の事案、それから、小野寺大臣の会見を見てみると、一月三十日の護衛艦そのものに対する事案、この二つでございます。

 そこで、これも事務方で結構ですから、一月十九日の事案は、防衛省運用企画局からいつ外務省に第一報を入れたのか、そして外務大臣並びに防衛大臣にこれを伝えたのはいつなのか、それぞれ、防衛省それから外務省。あわせて、安倍総理にいつその御報告をされたのか。言うまでもなく、自衛隊の最高指揮官は総理であります。総理にかかる情報がどれぐらいのタイミングで入っていたかというのは、これは誰が政権をとってみてもチェックをしておかなきゃいけないところであります。

 まず、十九日の事案について、両省に事実関係を尋ねます。

黒江政府参考人 お答えいたします。

 一月十九日の事案につきましては、レーダー照射の疑いがある事案が発生しましたのは、同日の十七時ごろでございます。この後、同日の二十時ごろ、当省運用企画局より、防衛大臣及び総理大臣に対しまして、それぞれの秘書官を通じて、そうしたレーダー照射の疑いがある事案が発生したということを一報として申し上げたところでございます。

 また、御指摘ございました外務省に対する通報につきましては、その後、翌日でございますけれども、一月二十日の十一時ごろ、同じように当省の運用企画局より外務省に通報いたしたというところでございます。

 この間につきましては、我々、一報をつかんだ後、この情報の信憑性といったものについて作業をしてまいりまして、その作業の度合いに応じまして、そのような通報を行ったというところでございます。

杉山政府参考人 ただいまの御質問について、外務省の方からお答えいたします。

 ただいま防衛省の黒江局長が御答弁を申し上げたとおり、十九日の事案について、外務省が防衛省運用企画局から報告、連絡を受けたのは、二十日の十一時ごろであったというふうに承知しております。

原口委員 私は、これでもやはり若干のディレーがあるというふうに言わざるを得ない。今後こういうことをしないように。私も国務大臣でしたから、危機的な事態は一番最初に報告をするようにということを自分の省には申し上げていました。

 一月三十日の事案です。

 まさにこの二つの艦船が、模擬的とはいえ、ほとんど攻撃と同じものを我が国艦船に対してしかけただろう事案について、防衛大臣がこの一月三十日の事案の報告を受けたのはいつですか。

小野寺国務大臣 二月の五日です。

原口委員 私は、総理、これは大変問題だと思います。というのは、先ほど総理が答弁をされたように、もう今は外交ルートを通じてしっかりと中国政府に対して日本国の意思を伝えておられます。しかし、その意思を伝えようにも、防衛大臣が、これは六日かかっていますよね、こんな状況では伝えようがない。

 また、この場所はどこですか。この場所について教えてください。後でちょっと質問しますが、私たちは、我が国固有の領土である尖閣、これは新藤大臣とも一緒に主権三法というのを、ここにいらっしゃる岩屋さんと共同座長をさせていただいて、超党派の議連でつくらせていただきました。その一部は、野田政権において、法改正がもう一部取り入れられました。ぜひ安倍政権でもやっていただきたいと思うんですが、尖閣についてもさまざまなチャレンジがある中で、この報告がおくれるというのは、ある意味、致命的だというふうに言わざるを得ません。

 小野寺大臣、おくれた理由を何と防衛省から聞いておられますか。

小野寺国務大臣 少し経緯について説明をさせていただければと思います。

 実は、一月十九日、疑わしい事案があったということで、私、そしてこの後総理の秘書官にも報告があり、その詳細の分析を行うような状況でありました。実は、事この問題は、国際的に抗議をするということになりますと大変重要な問題になります。ですから、しっかり証拠というものを私どもは手にする必要がある、そういう思いで対応させていただきました。

 この時点では、実は、ヘリコプターでの警報でありますので、証拠というものがしっかりと国際的にも表明できるような内容になるかどうかということで、不安なこともございました。

 その後、私ども、特に私の方から運用局長の方には、今回、しっかりとした明確な違反ということが確認されたということをもって私どもとして対応したいというお話をさせていただきました。

 そのことから、今回、運用局長は、この事案が発生した後、これは証拠として間違いないという確信が出るまで精査をした上で報告が来たんだと思っております。

 いずれにしても、今回の案件というのは極めて特異的なものでありますし、また、こちらから国際的にこのような問題があると中国に抗議をするに当たっては、これはどの国が見ても間違いないという明々白々な資料を私どもとしては持つ必要がある、そのような慎重な対応をさせていただきました。

原口委員 総理、私は、小野寺さんとは随分長い、松下政経塾でも一緒ですから、今の答弁はやはり叱らないといかぬと思いますよ。実際に、政府の中で情報を共有し大臣が知ることと、外に公表し抗議をすること、これは全く別物ですよ。最高指揮官が六日も知らない、ましてや、そのつかさである小野寺防衛大臣が知らないということはあってはならないんですよ。私はそのように思います。分析に時間がかかった、それはかかるでしょう。しかし、その分析にかかる時間とこの間の不測の事態が起きるその危機管理と比較考量したら、本当に危機管理できているんですかと言わざるを得ないんです。

 いや、もうこれ以上、相手国につけ込まれたくないから事詳しくは言いませんけれども、私は、総理が防衛大臣から報告を受けてすぐ公表される、これは正しいと思います。そして、これほどのことを起こしたことに対してしっかりと抗議をする、これも正しいと思います。しかし、正しくないのは、小野寺さん、あなたのところです。あなたのところの皆さんは、あなたにすぐ上げなきゃいけなかった。しかも、十九日の事案が起きたその後ですから、二回目ですから、それを上げないこと自体をあなたは責めなければいけないんです。

 さて、場所を教えてください。どこで起きましたか。

小野寺国務大臣 御指摘のことにつきましては、しっかりこれからも対応していきたいと思いますし、何より大切なのは、本当にこのような事案が間違いなく起きたかという証拠を私どもが持つことだと思っております。

 さて、場所についてですが、これは、現時点でもさまざま私ども現場で運用させていただいております。原口委員も御存じのとおり、これは部隊の運用上さまざま問題がありますが、ぎりぎりの線でお話をさせていただきますと、東シナ海の公海上、日中中間線の日本側ということになります。

原口委員 日本側で起きているわけですね。

 総理、こういう情報を出すときには、もう国際的な情報戦に入っています。ですから、場所も含めてディテールを、相手が日本よりディテールを言ってきたときには、逆に、我が方が何か不都合なことがあって隠したんではないかというふうに言われるんです。

 私たちの政権のときにも、中国漁船の衝突事案がありました。あの対応を私たちは今もう一回振り返らなきゃいけないと思っています。

 そこで総理に伺いますが、今の防衛省に、総理としてもちゃんとおっしゃいましたか、ちゃんと情報を自分に上げるようにと。最高指揮官は小野寺さんじゃないんですよ。安倍総理なんです。安倍総理が外交や安全保障やさまざまなところをつかさどる最高責任者なんです。なぜ自分に上げないんだということを強くおっしゃるべきだというふうに思いますし、今回も、運用がどうのこうの、場所がどうのこうのと今言いましたけれども、小野寺さんがその中で、今ある中で厳しい答弁をしているというのは評価しますよ。しかし、もう相手に場所がわかっているじゃないですか。だって、レーダー照射までしているわけですよ。グーグルアースか何かで見ればわかりますよ。どこに日本の艦船がいたか、隠さなくていいことまで隠し、出さなきゃいけないことを出さない。

 私は、この間の防衛省と外務省の、かつてですよ、かつては、ああ、防衛省にこれを言ってしまうと情報が流れるから外務省は言わない、逆に、外務省に言ってしまうと、ああ、あの人たちはチャイナスクールか何か知らないけれども、また抑えにかかるから言わないという長い間の省庁間のあつれきがありました。今どうなっているか知りません。しかし、そのあつれきが結果として国益を壊しているんですよ。どこの政権を責めているんじゃないんですよ。だからこそ、総理に上げなきゃいけないんですよ。総理に上げて、最高責任者の御判断を仰がなきゃいけないんですよ。

 総理、どのように思われますか。

安倍内閣総理大臣 十九日の事案については、直ちに防衛大臣、そして私のところに上がってきたわけであります。しかし、結果として、これが中国側のレーダー照射であるということが認識できなかったということになってしまった。このことがあったものですから、事務方は三十日の事案についてより慎重になってしまって、防衛大臣、そして私のところに上がってくるのが遅くなったということだと思います。そこは、事務方の気持ちはわかるわけでありますが、基本的には、発生した時点で、それが中国側のものかどうかの確認は別として、まだ未確認ということで今後は私のところに、もちろん防衛大臣のところに上がってくるようにいたします。

 と同時に、中国側も、こういう事案においては、国際社会においてある種の宣伝戦的な要素があることも事実であろう。そういう観点は日本の外交、安全保障において欠落していた観点だ、このように思いますので、ある情報については、ただ単に秘密主義に陥るのではなくて、日本の立場を強固にするもの、あるいは中国がこういう問題行動をとっているよということについては、むしろ我々は積極的に公表していくべきではないか、このように考えております。

原口委員 総理から前向きの御答弁をいただきました。

 委員長、このテレビ入りの会議の中では、私も、非常に自制的に言わなければいけない、我が国益を守るために、ただしたくてもただせないところがございます。

 ですから、予算委員会の委員長あるいは理事の皆さんでこの問題についてのひとつ閉じた質疑、要するに秘密会も含めたそういう質疑が必要だということを私は御提案申し上げたいし、御検討をいただきたいというふうに思います。

山本委員長 理事会で協議いたします。

原口委員 ありがとうございます。

 さて、次の二ページの資料をごらんください。今総理がお話しになりましたように、我が国近海などにおける中国の海洋活動の例、これほど多くのものがございます。

 これが、偶発的に何か一部の軍が先導してやっているものなのか、いや、それとも戦略的に国家としてやっているものなのか、この違いはとても大きいと思うんです。私は、法律を読み、そしてさまざまなこの間の行動を見ると、戦略的にやってきている。

 三ページをごらんになってください。中国の主な海洋法執行機関でございます。いわゆる五つの竜と言われるものです。

 海警から海監に至るまで、このどれかが出てきて、そして、領土主権についての、みずからが争いがあると思ったところに公船を入れて、その公船がそこにい続けたり、あるいは出たり入ったりすることを既成事実化して、領土問題はないにもかかわらず、領土問題があるかのように振る舞っていく。私はここを一番警戒しなければならないというふうに思います。

 自民党さんが、自民党マニフェストのJ―ファイルの中で、無人島化政策を改める、尖閣も含めてでしょう、これまでの無人島政策を改めるとされたのは、私は、一定の議論、そして評価が与えられるべきだというふうに思っています。

 そこで、総理に伺いますが、そもそも、どうして無人島化政策をこれまで続けてきたのか。私たちの政権の中でも、まだ島に名前がついていないものがございました。そのことについても、さまざまな、EEZや日本の海における権益の基点となるものですから、名前をつけさせていただきました。なぜ無人島政策を続けてきたというふうに思われているでしょうか。

安倍内閣総理大臣 これは自民党時代、また、民主党政権時代にも引き継がれたのでありますが、尖閣諸島については、従来より、平穏かつ安定的な維持管理のため、原則として政府関係者を除き何人も上陸を認めないとの方針をとってきたわけであります。

 いずれにせよ、尖閣諸島は我が国固有の領土であり、自国の領域を守るとの断固たる意思を持ってこれは適切に取り組んでいく必要がある、このように思います。

原口委員 そうですね、今総理がお話しになったように、ある意味、係争のあるところは先送りをして、そして両国の利害の対立するところについては曖昧にしておこうという戦略だったのかもわかりません。私には、それの真意がまだつかめないでいます。

 そこで、これは外務大臣で結構です。

 日中漁業協定。こじれたときにはやはり合意に戻れという外交の鉄則があります。合意は拘束するからです。

 日中漁業協定及び当該協定の六条の(b)について、いわゆる私たちが尖閣諸島、我が国領土の尖閣諸島というものに値する海域が書かれています。この海域については、そのそれぞれの相手国の漁船が活動するについては自国の法令を適用しないというふうに書かれています。この六条の(b)、小渕書簡と言われるものです。小渕総理が外務大臣のときに出されて、そして中国からも同じものが返ってきています。

 この書簡の認識、私も当初間違っていました。民主党の代表選挙で、この書簡について、これは棚上げしたものではないかということを議論したわけです。しかし、よくよく読んでみると、我が国の固有の領土である尖閣は外れているんですね。外しているんです。ですから、この日中漁業協定そして小渕書簡において、我が国の主権を棚上げしたり、あるいはそこを放棄したりするものではない、私はそのように今読んでいます。

 外務大臣に、この基本認識を伺いたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘の日中漁業協定ですが、この適用される水域、御指摘のように、これは日中両国の排他的経済水域でありまして、我が国固有の領土である尖閣諸島周辺も含め、我が国の領海はそもそもこの協定水域に含まれてはおりません。

 したがって、日中漁業協定及び御指摘のこの書簡でありますが、我が国の領土、領海の主張を棚上げしたり、あるいは我が国の領土、領海に対する主権を放棄する、こういったものでは全くない、こうした認識でおります。

原口委員 正しい認識を国会の議事録に残していただいて、ありがとうございます。私もそのとおりだと思います。

 そこで、これも自民党さんの選挙公約にあるJ―ファイルですけれども、尖閣諸島における公務員の常駐が明記されています。

 日本語は、私たちも民主党のときに、おまえたちはこんなマニフェストを言ったのに違っているじゃないかというのをさんざん言われました。もうそこに立ち返りたくありません。そんなことを言っても、私たちも今反省をしなきゃいけないし、総理が冒頭おっしゃったように、自分が総務大臣になったら、総理大臣になったら、自民党政権でできなかったこんなことをやろう、あんなことをやろうと思っていました。そういう自負がなければ、国会議員もやれないし、大臣もやれません。しかし、それに自制や恐れやあるいは謙虚さというものがなくなったときに、私たちは、今の状態を生んでしまったんだ。今、民主党は、ある意味、存亡の危機にあります。しかし、そのことをやはり反省をし、出直したいと思うから、こういう質問をしているわけです。

 尖閣諸島における公務員の常駐です。

 新藤大臣、一緒に法律をつくらせていただいて、これは超党派で、大臣がまだ一代議士のときです。私は、常駐しないで無人島化政策を改める手はないというふうに考えるんですが、国務大臣としての新藤大臣の御見解を伺いたいと思います。

新藤国務大臣 御質問ありがとうございます。

 この尖閣諸島は、我が国固有の領土であります。したがって、これを、自国の領土をしっかり守っていく、そしてまたその領土の周辺を有効活用していく、これは国家として当然のことであるというふうに思っています。

 その意味で、このJ―ファイルに書いてございますのは、まず、私たちの目的は、島及び海域の安定的な維持管理をしよう、それについては、これまでの無人島政策を改めて、有人利用、島と海の有効利用を図ったらどうかということを提案しております。そして、その方策の一つとして、今いろいろな方策が考えられるということでありまして、それをいつ政策的に実行するかは、これは、この地域の状況を考えながら、政権が適切に対処していくものであるというふうに思っています。

原口委員 私は、公務員の常駐化というものが、総理が答弁されたように、選択肢の一つだったのかというのを伺って、非常に意外な思いをしました。公務員が常駐しないで、ほかの民間人がどうやって行かれるのか。

 実際に、私も尖閣に三回、これは飛行機の上からですけれども、この中にいらっしゃる皆さんと一緒に行かせていただきました。(発言する者あり)そうなんです、港もないし。本来は、石垣島から百三十キロですから、私たちがチャーターしたセスナ機でも二十分で行くんですよ。漁船でも、あの豊穣の海に五時間で行きます。

 しかし、石垣を初め沖縄の経済が厳しいために、漁船を運用するにも油代を節約しなきゃいけないというさまざまな理由で、八時間かけて行っても、港もなければ、そして逆に言うと、他国の船から脅かされるおそれもあって、石垣、八重山の人たちは長い間忍従に苦しんでおられます。

 私は、先ほど雷電のごとくと申しましたけれども、それを変えるのは総理の御決断だし、責任ではないかというふうに思うんですが、安倍総理、ぜひ、私たちは今、無人国境離島の管理法、それから先買いの法律ですね、さまざまな安全保障上大事なところを他国に買われないように、その用地を買える法律を超党派で議論して、私たち民主党の中でも、国土交通部門を中心に検討しています。そして、離島の振興法、領海法の改正。この三つです。

 総理として、このようなことについてどのように対応されるのか、選択肢の一つということをずっと言い続けられるのか、その辺についてお尋ねをしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 J―ファイルにおいては、公務員の常駐の検討という書き方をしているわけであります。

 そこで、先般、私は国会答弁において、公務員の常駐も選択肢の一つである、このようにお答えをいたしました。では、実際に公務員をどういう状況で常駐させるのかということについては、これはまさに戦略的な観点から考えていくことであろうと思います。この島の実効支配をより強めていく、維持管理をしていく、あるいは全体的な外交、安全保障状況を勘案しながらということも含めて、それは選択肢の一つとして考えていかなければならない、このように思います。

 かつての自民党においては、それは選択肢の一つでもなかったわけであります。今は選択肢の一つにはなっている、こういうことで理解をいただきたいと思います。

原口委員 マニフェストでこう書いた、ああ書いたということをもうここで言い募る気はありません。むしろ、そんなことを国会で言うよりも、一致して主権を守るということの方がよほど大事だと私は思っています。

 そこで、時間も迫ってきましたので、TPPについてお尋ねをします。

 このTPP協定交渉に関するスケジュール、私たちの政権では、事前交渉をやっていました。事前交渉というのは、閣僚の皆さんはよくおわかりのとおり、いろいろな国と毎日のようにやっているわけです。ですから、何も取り立てたものではない。

 まず、このTPP協定交渉に関するスケジュールですけれども、こういう交渉のスケジュール、つまり、この一番下のところをごらんになってください。二〇一三年十月、これはAPECですね、または二〇一三年中に参加国は妥結の目標を掲げている。つまり、もうお尻が決まってきているというふうに考えます。

 このスケジュールでよろしいかどうか。どなたに伺えばいいでしょうか。外務大臣、よろしくお願いします。

岸田国務大臣 TPP交渉につきましては、昨年十二月、ニュージーランド・オークランドで十五回目の交渉会合が開催されております。そして、その場でも、ニュージーランドの発表によりますと、二〇一三年中の交渉妥結を可能とする基礎の形成に向けて進展を図ることが目標とされたとされています。

 一方、昨年十一月ですが、ASEAN関連首脳会合におきましても、TPP交渉参加七カ国の首脳らによる会合におきまして、二〇一三年中の交渉妥結を目指すとされております。

 こうしたスケジュールが今想定されております。

 なお、次回は、三月四日から十三日の日程で、シンガポールで交渉会合が開催される予定となっております。

原口委員 ここに私が挙げたスケジュールが、ことしというか、TPPの最終段階に向けたスケジュールだという御答弁と認識をいたします。

 我が政権でも、自民党さんが言ったように、情報開示をしっかりやって、国民の皆さんに、交渉参加の是非や、あるいはその先にある参加の是非を幅広く議論していただきましょうということを申し上げてきました。私たちは、まだ事前協議の段階ですから、そこの情報の開示については課題があったというのは率直に認めます。

 さて一方、自公政権になってもう一カ月以上が過ぎました。今、年内の決着を目指しているということでございますが、このおおよそ決まっているスケジュールの中で、私たちはいつまでに何をすればいいのか、そのことについて伺いたいと思います。

 参院選挙の影響を考えて交渉参加表明を延ばすべきという声も根強くあると私は聞いていますけれども、安倍総理はそのような先送りについては否定されているというふうに認識をしていますが、その認識でよろしいでしょうか。

安倍内閣総理大臣 参議院選挙があるから、その前に我々は態度を決めないということはございません。

原口委員 つまり、選挙の日程というのはTPPの交渉参加の表明について何の影響もない、それは私は大きな見識だと思います。

 さて、そこで、今度の日米首脳会談までに結論をお出しになるのか、総理に伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 現在のところ、民主党政権時代も含めて事前交渉でどういう交渉が行われてきたか、つい直近まで行われています。そうした状況をよく検証しながら、あるいはまた、TPPにもし参加をしていくということになれば、その結果さまざまな、これは交渉結果によりますけれども、ということも含めてさまざまな影響が出てまいります。この影響について、各省庁においてもう一度精査しているところであります。

 この判断によって態度を決めていくということなんですが、しかし、日米首脳会談までに参加するかどうかということを言わなきゃいけないということではないと思っております。

原口委員 これは相手があることですから、私も、この場で総理に、日米首脳会談までにそういう表明をしてくださいと言っているんじゃないんですよ。むしろ私は、慎重に考える会の超党派の副会長でしたから、ISD条項についても、これは党を代表しての意見じゃないですよ、党の中には経済連携PTという形で、しっかりとした政府に対しての方針があります。

 その方針なんですが、では、いつまでに政府として結論を出すのか。次の資料をごらんになってください。

 さっき馳理事が、九十日ルールもあるよとおっしゃいました。そのとおりなんです。ここに挙げているペーパーがその九十日ルールです。九十日ルールというのは、これは外務省の北米第二課からとったものですけれども、九十日というのは最低限の日にちであって、この三段目をごらんになってください。

 「TPP協定交渉に新たな国が加わる際にも、TPA法の手続を踏襲し、新規交渉参加国との交渉開始の少なくとも九十日前に議会に交渉開始の意図を通知し、」少なくともなんです、そして「議会との協議を行っている。」総理、その下をごらんくださると、「九十日間というのはあくまで公式の協議期間であり、実際にはその前に、米国政府は議会から実質的な是認を非公式に得ておく必要がある。」

 すると、ごらんになっている皆さん、交渉参加するかどうかというのはかなり早目の段階で意思表示をしなければ、これは私の意見ですけれども、ルールにおける競争は最初からやるべきで、自由貿易を標榜する、そのことを誰も否定しません。しかし、そのルールメークを自分たちが主導でできるかできないかというのが民主党の中での大きな論点でした。もちろん、ISD条項や平成の不平等条約や国家の主権という問題があるというのは、ここではもう改めて言うまでもないことです。

 そこで、総理に、では、いつまでに結論をお出しになるのか。

 そして、このルールを鑑みると、五月をごらんになってください、今回表明したとしても、五月から交渉参加のテーブルに着くというと、既に交渉会合というのはあと一回か二回なんですね。その中で、この少ない回数で最大限の国益が確保できるような交渉ができるのかということが一つの大きな論点になると思います。

 そこで、私は、自民党さんが、聖域なき関税撤廃を前提とする限り交渉参加はしない、これの方針は、安倍内閣もこの方針を踏襲すると御質疑がありましたから、そのことについては伺いませんが、菅官房長官は、我が政権の基本方針は踏襲しないというふうにおっしゃっています。ということは、現政権での基本方針というのは一体何ですか。教えてください。

菅国務大臣 政権交代が行われました。そういう中で、民主党政権の基本方針、これは一般論として、当然新しい政権の中で考えていくべき重要な課題だというふうに私どもは思っております。

 私たちの基本的な考え方は、自由貿易の推進というのは対外通商の政策の柱である、これが基本でありますし、今委員から話がありましたけれども、聖域なき関税撤廃がなければ、交渉に参加しないということは私ども党としての公約です。そしてもう一点、公明党との連立政権の合意の中で、国益にかなう最善の道を選択する。ここがいわゆる私たち安倍政権の基本方針であります。

 いずれにしろ、先ほど総理が申し上げましたけれども、現在の協議の内容だとか、あるいは参加をした場合のさまざまな影響、そうしたものの情報をしっかりと精査、分析した上で、国益にかなう最善の道を選択するというのが基本的な考え方です。

原口委員 いや、官房長官、そこだけ伺っていると、我が政権の基本方針と全然変わらないじゃないですか。わざわざ、前の政権の方針は踏襲しないと言う必要はないじゃないですか。

 ぜひ、委員長にお願いしたいのは、この政権の基本方針、私はそれを見たことないんですよ。TPP交渉参加に対する基本方針をこの委員会に出していただけませんか。

 というのは、聖域なき関税撤廃というのがどういうことなのかというのを政府統一見解を求めたいと思っても、経産省には経産省、農水省には農水省の言い分があって、この統一見解をつくるというのはとても難しいことだと私は思うからです。聖域なき関税撤廃ということが、交渉参加の可否のいわゆる判断基準にされている。そのマニフェストです。そして、今、安倍総理がおっしゃったように、その党のマニフェストをこの政権も方針とする。

 では、聖域なき関税撤廃というのは何ですか、総理。

安倍内閣総理大臣 聖域なき関税撤廃というのは、全ての関税撤廃を前提条件とするということなんですね。これは党として、公約として決定をしました。自民党にもさまざまな議論があったんですが、ある意味、英知を結集した形でここになった、こういう言いぶりになったということで御理解をいただきたいと思います。

原口委員 党の中をまとめる英知、随分苦労された文章だと私は思いますよ。しかし、実際にそれを判断するときは曖昧なままではできないから伺っているわけです。

 ということは、全ての関税撤廃ということは、そうでない場合は参加できる、交渉参加に踏み切る、逆読みもできるわけですね。

 段階的関税撤廃、つまり、農水大臣に伺いたいんですが、日本の農産品の中には、例えば十年かけて完全撤廃を段階的にやりますよといったときに、十年かけてやられても、とてももたない農産品というのはありますよね。そういったものはこの中には入らない、つまり聖域なんだというふうに考えてよろしいですか。

林国務大臣 今、原口委員おっしゃったように、段階的な関税削減期間が認められたとしても、原則全ての品目の関税が撤廃されているという仮定に立ちますと、農林水産業へは甚大な影響が出るということは変わりないというふうに思っております。

 今まであるEPAの中でも、農林水産物で約八百四十品目について、除外であるとか再協議であるとか、関税撤廃することなく対応してきているというのが事実でございますので、先ほど総理がおっしゃられましたように、聖域なき関税撤廃、全てゼロということになれば、これは大きな影響が出るというふうに考えております。

原口委員 もう質疑時間が来ましたのでこれで終わりにしますが、ぜひ、聖域なき関税撤廃ということについての公式見解をこの委員会に出していただきたい。

 そして、きょうは地域主権改革について触れることができませんでしたけれども、第一次安倍内閣の改革姿勢を私たちは随分引き継いでやったところもあります。一括交付金、これをなくすなんてとんでもないことです。出先を改革せずして道州制なんか絶対できません。改革をまた競えるように私たちも頑張っていくことをお誓い申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 誠実な答弁、ありがとうございました。

山本委員長 この際、辻元清美君から関連質疑の申し出があります。前原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。辻元清美君。

辻元委員 本日、私は、原発・エネルギー政策を中心に安倍総理に質問させていただきたいと思います。

 その前に、きょう午前中からずっと委員会がございまして、総理が率直に、前回、総理を辞任されたということで挫折を味わったというお話をされました。実は私も、総理は私より一期というか当選が早いんですけれども、議員辞職を経験いたしまして、政治的には大きな挫折を味わいました。そんなときに自分の未熟さとかそれから傲慢さというものをやはり思い知るというのが、同じような体験をされたのかなと思いながら聞いておりました。

 ただ、その中で、人の痛み、自分も助けてもらうけれども人の痛みをわかれるかどうか、挫折が克服できるかどうか、かかっていると思います。そんな中で、今回の再登板ということですので、ぜひ、弱い立場の人たちに寄り添った、そんな政策をしていただきたいと思います。

 といいますのも、先ほどから経済財政の議論がございます。確かに株価は上がっているんです。しかし、例えば、年金だけで暮らしているおひとり暮らしの方とか、シングルマザーでしんどい思いをされている方とか、そして何よりも被災地の皆さんとか、株価は上がっているんだけれども、変な言い方ですけれども、何かお金持ちの間でお金が回っていて、自分たちのところにしっかり回ってくるのかしらと不安を抱いている人もたくさんいると思うんですね。

 ですから、ぜひ、そういう意味では、弱い立場に立っている人たちに寄り添っていただきたいなと、まず一言申し上げておきたいと思います。

 きょうは原発・エネルギーの政策なんですけれども、そういう意味でも、福島で今被災して苦しんでいる人たちがやはり納得できる原発・エネルギー政策を私たちは目指すということは大事だと思います。

 ヨーロッパなどの国では、エネルギーの政策というのは、単に経済政策という側面だけではなく、倫理委員会のようなものをつくりまして、宗教家やさまざまな各界の人たちが、どういう原発やエネルギーのあり方がいいかということを多角的に検討するということもなされております。ですから私は、日本でもそういう取り組みがあってもいいのではないかなと思っています。

 そんな中で、まず総理にお伺いをいたします。

 先ほど、人間として挫折から学ばれたということについて一言申し上げましたけれども、この原子力をめぐる問題は、やはり過ちから学ぶということが一番今私たちに求められていることだと思います。

 そこで、総理にまずお伺いしたいんですけれども、この原発をめぐりましては、国策として戦後進められてきたと思います。私は、戦前の国策の誤りは、負けるはずがないと突っ込んでいった戦争だったと思います。これが最大のものだと思います。そして、戦後の最大の国策の誤りは、この原子力推進政策だったのではないかなと考えておりますが、総理はいかがですか。

安倍内閣総理大臣 福島第一原発の事故について、そして、それによって多くの方々が困難な生活を強いられていることにつきましては、戦後、自由民主党が政権の中にあって原子力政策を推進してきた、そして安全神話に寄りかかって推進をしてきたことについては、我々は深刻に反省をしなければならない、このように思っております。自由民主党総裁としても、被災者の方々に心からおわびを申し上げたい、このように思います。

 原発の安全性については、国会事故調や政府事故調からも指摘されておりますとおり、複合災害という視点が欠如していたこと、規制組織の独立性が十分でなく、いわゆる安全神話に陥ってしまった点、政府として深く反省しなければなりません。

 こうした反省を踏まえて、昨年九月に原子力規制委員会が新たに設置をされ、原子力安全規制の抜本的な見直しが進められているところであります。事故の検証も踏まえまして、あらゆる事態を想定した原子力発電所の安全に関する新基準について現在検討しています。

 妥協することなく、たゆまぬ安全性、信頼性の向上を目指してまいります。そして、安全規制、安全文化をつくっていく、そのために全力を挙げてまいる決意でございます。

辻元委員 今、自民党総裁としてというお話がございました。やはり私たちも政権を担いましたので、そして長く国会におりますので、責任があると思います。ただ一方、やはり自民党が戦後長年政権を担っていたということは否定できません。ですから、そういう観点から、特に前回の安倍政権での原子力政策について、一、二、点検させていただきたいと思います。

 まず最初に、前回の安倍政権の折の経済産業大臣、原発・エネルギーを担当されていたのは、今の甘利大臣でよろしいでしょうか。

甘利国務大臣 経済産業大臣並びに内閣府の原子力安全担当大臣が担当していたと承知しております。

辻元委員 実は、前回の安倍政権のときに、地震と津波、今回、福島第一原発の事故の大きな要因になりました、この件に関して重大な指摘がなされていたんです。

 これは本会議でも指摘がございましたが、共産党の吉井英勝議員が質問主意書で、まさしく今回の事故、津波やそして地震による全電源喪失による冷却装置の停止ということがあるんじゃないか、これに対して政府としてきちんと対応しているのかということが指摘されておりました。このときの政府の、これは甘利さんが所管のときだったわけですけれども、地震、津波等の自然災害への対応を含めた原子炉の安全性については、経済産業省が精査し、そして、そのような事態が生じないよう万全の体制であるという御答弁だったんですね。

 これは率直にお伺いしたいんです。やはり過去の反省というのは大事ですから、どういう点検をされて、こういう万全だという答弁をされたんでしょうか。

甘利国務大臣 当時の、二〇〇六年十二月ですね、日本共産党の吉井英勝議員の質問主意書が政府宛てに出て、これは関係省庁が事務的に詰めて、関係大臣が確認をしてお返しをするという文書です。

 これを精査していただきたいんですが、どういうことが書いてあるかというと、つまり、津波が起きて、津波は押し波と引き波がある、引き波が起きたときには二次冷却水の取水口よりも水位が下に下がっちゃう、そうすると冷却水の摂取ができなくなりますねという話がまず前段にあります。これが、引き波はずっと固定したものじゃなくてまたもとへ戻りますから、水はとれるから冷却はできるわけでありますけれども。

 そこで、「津波の引き波で水位が下がるけれども一応冷却水が得られる水位は確保できたとしても、」ここで津波の話は一旦終わるわけであります。次に、地震で送電鉄塔の倒壊や損壊事故で外部電源が得られない状態が生まれ、つまり、津波の影響はなかったとしても、地震で外部電源がなくなりとここに書いてあるわけですね。

 それから先がもう一つあります。「内部電源も」、つまり非常用電源のことですね、「内部電源もフォルクスマルク原発のようにディーゼル発電機もバッテリーも働かなくなった時、」これは、「フォルクスマルク原発のように」というのは何をいうかというと、人為的ミスが重なって非常用電源がとまっちゃったことをいいます。

 そういうときに、すなわち、津波や地震による、津波は取水の件ですね、地震による送電鉄塔の倒壊といった自然災害による被害と、フォルクスマルク原発のような人為的ミス、これが二重、三重に重なったケースについてということでの質問主意書なんです。

 回答としては、「御指摘のような事態が」、つまり、自然災害に加えて人為的ミスが二重、三重に重なった場合に全部の電源がなくなる危険性があるじゃないかという指摘ですね、そういう「事態が生じないように安全の確保に万全を期している」という答弁、これがなされたわけであります。

 もちろん、総理から答弁がありましたように、安全神話に陥ってしまった点を政府としては深く反省をしなければならない、そして、新しい体制で万全を期すということでございます。

辻元委員 今、長く答弁をいただいたんですけれども、随分前から、これは何回も地震や津波の指摘はありました。そんな中で、今まで経産省の中でも、安全だという報告書を書くというのを電力会社に丸投げをして、電力会社に理由を書かせて経産省が政府の報告書にしていた、こういうことも明らかになっているわけです。

 私は今なぜ甘利大臣にお聞きしているかといいますと、甘利大臣は、自民党の中のエネルギー政策のさまざまな責任者もされてきまして、原発を推進してこられた、それは私も存じ上げておりますし、リーダーシップをとってこられましたので、私、ちょっと本音でお聞きしたかったんです。

 やはり、自民党政権になられて、そちらに座られて、私たちのとき事故が起こったんですよ、その前ずっと仕切ってこられた自民党の方々が、今までずっと原発安全神話の中に自民党はその大きな一角を占めていたと言っても間違いじゃないと思います、そういう方々があの事故をどう受けとめていらっしゃるのか、これは初めて質問できるわけです。ですから甘利さんにお聞きしたんです。

 地震とか津波の対策、今までなぜこれはされてこなかったのか。いかがでしょうか、ずっと携わってこられて、御自身で。安全神話と言われている中で、これは何でそういうふうなしがらみみたいなものができたのかお聞きをするのがいいと思って、答弁を求めたわけです。

甘利国務大臣 しがらみ云々という話はないと思いますし、それが事故対策、事故対応を怠ったということではないと思いますけれども、想定が確かに甘かったということだと思います。

 そういう意味で、安全神話に陥って、万全の上にも万全を期するということに手が届かなかったという点は反省をしなければならないと思っております。

辻元委員 しがらみの話はなかったとおっしゃるんですけれども、私たちは政権を二〇〇九年に皆さんからバトンタッチされて担いました。そのときもずっと、これももう既に明らかになっていることですけれども、電力関係の会社から、自民党はたくさんの関係者から献金をもらっていた。これがゆがめられていないのかというようなことも、この間ずっと指摘されてきたわけですね。

 例えば、二〇〇九年の政治資金団体、国民政治協会本部の個人献金の七二・五%が東京電力などの電力九社の当時の役員やOB。そして、当時の役員の九二・八%の方が献金されているわけです。この間の政権交代のときですよ。ずっとそういうことが続いてきて、これが電力の会社との関係をひずめるというか、してきたんじゃないか、ゆがめるということも指摘されてきたわけですね。

 ですから、そういうことも含めて、原子力村と言われますけれども、自民党自身がどうだったのかということをきちんと検証していくということは、後で議論しますけれども、今後の原発をめぐる政策のスタート、出発点だと私は思っています。

 次にお伺いしたいんですけれども、そんな中で、今回、原子力規制庁の不祥事がまた発覚したこと……(発言する者あり)けしからぬと横からおっしゃっていますけれども、実際に、これは一週間ほど前の話です。

 今、活断層の問題が非常に注目を浴びております。どこの原発にどの活断層があるのかしら、電力会社も、戦々恐々と言ったら悪いですけれども、自分のところはどうだろうと。

 それで、日本原電の敦賀の原発をめぐって、原子力規制庁の職員が、実際に原子力規制委員会が報告書を発表する前に事業者にその報告書を漏えいしていたというようなことが、つい先日、発覚をいたしました。これは、こんなことを言ったら申しわけないですけれども、私たちもこの規制を厳しくしようとやってきたんです、自民党政権に戻った途端にこういうことが起こっているんですよ。これは物すごく厳しくやってもらわないと困ると思います。

 まず、事実関係を確認したいと思いますけれども、事業者側に、規制庁の審議官、名雪前審議官が渡した。私は、この委員会にその当事者に来てもらって、どういうことで事業者側にこの報告書を漏えいしたのかということを聞きたいと。ところが、政府は、当事者は出せませんというお返事でした。

 そしてさらに、日本原電、事業者側ですね。この人たちから働きかけられたのかどうか、当事者にこの場に来ていただいて、これは非常に重要です、原子力村がまた復活したのかなというふうに多くの人が感じた案件です。ですから、来ていただいて質疑をしようと言った。これは、残念ながら、自民党さんの同意が得られませんでした。

 こんなことでは、自民党政権に戻った途端に、不祥事を起こした官僚をかばい、そして事業者をかばっているのかと思われかねないんですよ。そういうことが、きのう、おととい、起こっているわけです。どうしてこの審議官を出せないんでしょうか。

 きょうは次長が来てくださっていますか。

森本政府参考人 お答え申し上げます。

 今回、事業者との関係で不適切な行為があったということが認められたために、原子力規制庁幹部、先ほどの審議官でございますが、二月一日付で、内規に基づく最も重い訓告処分とするということとともに、文部科学省に出向、いわゆる更迭ということをさせていただいてございます。

 その不適切な行為の概要でございますけれども……(辻元委員「違う、なぜ出せないかということを聞いているんです。それだけ答えて」と呼ぶ)はい。

 それにつきましては……

山本委員長 辻元君。(辻元委員「済みません」と呼ぶ)

 答弁してください。

森本政府参考人 恐縮でございます。

 現在、その元審議官は原子力規制庁の職員ではございません。

辻元委員 原子力規制庁にいらっしゃったんですけれども、二十三日に発覚して、二月一日までの間に、原子力規制庁はノーリターンルールでほかに異動させないということで来ているのに、文科省に帰って、規制庁にいないから答弁できない。これは、原子力村の復活と言われても仕方がないんじゃないですか。

 私たち、言うたら申しわけないですが、民主党のとき、ぴりぴりしていましたよ。なぜかというたら、私らが与党だもの、割と厳しかったですよ。もと一緒に原子力政策を推進してきた、そういう人たちが政権をとった途端にこの態度ですか。

 総理、どうします。私は、この審議官と日本原電をしっかり呼んで、ここで事実関係を明らかにしないと問題だと思います。

山本委員長 辻元君に申し上げます、委員長として。

 理事会で、参考人として招致するかどうか、この協議を継続しておりまして、その結論はいまだ出ておりません。なおこれからも協議する予定でございます。ただ、辻元君の質問の時間に招致できなかったということでございますので、以後、協議は継続しているということを御承知ください。

辻元委員 原電の人たちを呼ぼうということについては、これは自民党さんが拒否されて調わなかったと聞いております。

 委員長に申し上げます。引き続き協議をしていただいて、この補正予算の審議中に当事者を呼んでいただき、事実を明らかにしたいと思いますので、御協議をお願いします。

山本委員長 後刻、理事会にて協議いたします。

辻元委員 これは、皆さん、ちょっとしいんとされていますけれども、大きな問題ですよ。政権交代したということで原子力政策がひずめられたら困ると私は思っております。

 では次に、エネルギーの政策がどうなっているか、点検をしていきたいと思います。

 まず、各党のエネルギーの政策についてお聞きしたいと思います。

 まず、公明党の太田大臣にお伺いをいたします。

 お手元に、公明党の政策集、ポリシー二〇一二というのをお配りいたしました。これを見ていただきますと、「原発ゼロの日本へ」とございます。この中でアンダーラインが引いてあるところを見てください。「新規着工は認めず」ということですが、太田大臣、これでよろしいですか。

太田国務大臣 公明党がそうしたマニフェストを出しているということは承知しています。

辻元委員 ですから、この新規着工は認めずという御主張は変えていないという理解でよろしいですか。

太田国務大臣 公明党がそうした主張をしているということについては、当然存じております。

辻元委員 御自身はいかがでしょう。

太田国務大臣 私は、自公連立政権ということで、十二月二十五日の連立政権合意の中の全ての項目、そしてエネルギー政策についてもそこに書かれてございます。その上に乗っかって、私は今、国土交通大臣として位置づけられている、こういうふうに自覚しております。

辻元委員 確かに、政権に入られたらそういう姿勢になるということはわかりますが、引き続きちょっと点検してまいりたいと思います。

 私、すごく公明党の政策はいいと思うんですよ。

 これを見ていただきますと、「発電用原子炉四十年運転制限」、これも既に法律にも書かれております、これを守っていこう。そして、この後を見ていただきましたら、「二〇三〇年までに現在の約三分の二の原子炉の運転停止・廃炉開始」と書いてございます。

 ちょっと別の資料もお配りをいたしておりますが、四十年で原発の運転がとまっていくと、二〇三〇年には三分の二が廃炉開始になる。これは公明党の御主張です。そして、約四十年後に全ての原子炉の運転停止、廃炉になるよりもかなり速いスピードで原発ゼロに達する可能性が強いと。その根拠として、二〇三〇年までに従来の原子力発電による発電量に匹敵する三〇%を再生可能エネルギーにしよう、そして原発ゼロに向けて万全の体制をとっていくと。そして、上には、一年でも五年でも十年でも早く、可能な限り早く原発ゼロと言っています。

 この御主張は、自然に減っていく、しかし、それを前倒しにしてできるだけ早く、自然エネルギーなどで頑張って、公明党の主張ですよ、原発をゼロにしていこう、それでよろしいんですね。

太田国務大臣 公明党の主張はそういうことだということです。

辻元委員 これは民主党の主張とほぼ同じなんですよ。

 民主党も、二〇三〇年までに自然エネルギーを約三割にしよう、そして、書きぶりはちょっと違いますよ、二〇三〇年代に原発ゼロを可能とするよう、要するに、四十年だけれども二〇三〇年には可能とするよう、あらゆる政策資源を投入しようと。

 総理にお聞きしたいと思うんですが、民主党の主張は、どこかで無責任だというようなお話もされていたように思うんですけれども、今見ていただくように、公明党とほぼ同じなんですよ。今ちょっとお聞きになっていて、公明党の政策とそして民主党の政策の違いがあれば、明確におっしゃっていただけますか。

安倍内閣総理大臣 私は、民主党の原子力政策と公明党の原子力政策の違いを述べる立場にはありません。

 自由民主党の、また政府としての原子力政策について、ここでしゃべる機会があればお話をさせていただきたいと思いますが、よろしいですか。

辻元委員 なぜかといいますと、民主党政権で決めた原子力政策を変更するとおっしゃっているからなんですよ。そして、それは無責任であると総理がみずからおっしゃったので。公明党さんは連立政権の中に入っていらっしゃるわけですよ。連立協議があって、さまざまな議論をするでしょう。しかし、それは公明党の政策が無責任だと言っていることに等しいんですよ。

 ですから、総理に、みずからがそういう御発言をされたので、変更したいとおっしゃるから私は申し上げているわけです。

安倍内閣総理大臣 無責任なのは民主党なのであって、公明党ではないということをはっきりさせておきたいと思います。

 そもそも、民主党は、二〇二〇年までに二五%CO2を削減する、こう約束をしておりながら、それでは、どうやって三〇年に原発をゼロにするのかということについても答えを出していないわけであります。

辻元委員 今、私の質問に明確にお答えいただいておりません。

 公明党さんも、二〇三〇年に自然エネルギーを三〇%にする。自然エネルギーにしていくということは、これはCO2対策になるわけです。あわせてやっていこうという、同じような御主張をされているわけですね。

 そうしたら、さらに説明をしたいと思うんです。

 もう一度、資料「既設の全原子力発電所の「未来」について」というのをごらんいただきたいと思うんですが、これは、赤で記してあるのは、福島で既に廃炉決定された原発、それから、福島県内に設置されている原発で、県民感情からして事実上やはり動かすのは難しいのではないかというのが赤です。ピンクは、活断層が存在する可能性が高い原発です。黄色は、引き続き活断層の疑いがあるので精査されている原発です。そして、茶色は、古いので今回の設置基準に合わせて見直すということになれば、ほぼ十五基ぐらいが報道等でも言われておりますけれども、コストの面から、古い原発で、今からいろいろな基準を満たすためにするよりも廃炉になる可能性もあるんじゃないかと言われている原発なんです。

 これは、現時点での原発の状況をあらわしております。見ていただきましたように、もういっぱい色がついているわけです。これが今の原発の現状なんですよ。

 私たちが二〇三〇年代にと申し上げたのは、こういう現状を鑑みてなんですね。そして、二〇三〇年代というのは二〇三九年です。二〇三九年になったら、この四十年、法律で定められている基準でいえば、原発は何基になりますか、茂木大臣。

茂木国務大臣 辻元委員にお答えいたします。

 大変いい資料を御用意いただきました。ただ、この色塗り、いろいろな報道等をベースにしながらお書きいただいているのかと思うんですけれども、機械的計算で申し上げますと、福島の第一も含め、五十四基の原子炉のうち、二〇三九年時点で運転開始から四十年以上が経過するものは四十九基ということでありますから、残りは五基という形になります。

 ただ、これは機械的な計算でありまして、原子炉等規制法におけます四十年運転制の具体的な運用につきましては、新たに国会で決めて立ち上げることになりました原子力規制委員会において現在検討中でありますので、実際に残存基数がどれくらいになるか、これは現時点ではまだ決まっていないということであります。

辻元委員 今長々、何基ですかとお聞きしただけなんですけれども、五基なんですよ。この五基も、見ていただきましたらわかるように、これは原子力規制委員会に出していただいた資料をもとにつくっておりますので、見ていただきましたら、色がついているものもございまして、色がついていないのは二基なんです。

 私たちが二〇三〇年代に原発ゼロを目指そうというのは、二〇三〇年代になったら、法律で定められている四十年であれば五基になる。だから、前倒しで、自然エネルギーを頑張ってできるんじゃないか、目指そうじゃないかという意味なんですね。

 これは何も非現実的なことではございません。もしも皆さんが、いや、四十年、原発はなっているけれども、六十年動かしたろうとか、それから、少したてば原発に対する国民の感情も変わるから、もうちょっと原発をあちこち建てられるのと違うかなと思っていたら別ですよ。しかし、今の現状から見たら、こういう現状なんですね。ですから、私は、民主党で二〇三〇年代にゼロを目指そうというのは何も非現実的なことではないと思っております。むしろ、現実を直視して私たちは議論いたしました。

 そんな中で自民党はどうかといいますと、十年かけてこれから検討すると言っておるわけです、十年かけて。それの方が私にとっては非現実的に見えるんですね。こう書いてあります、自民党の政策には。「責任の持てるエネルギー戦略の確立に向け、判断の先送りは避けつつ、遅くとも十年以内に」。遅くとも十年以内に、判断の先送りは避けつつと。十年もかけるのは先送りと言うんじゃないかと私は思いますよ。

 それで、さらに先ほどから規制庁の問題もまた出てきているわけですね。

 そうであるならば、何か、最初の話です、安全神話とか原子力村とか、そういう話があって、長年自民党でずっと推進してこられた、大きな問題を抱えていることはみんな知っていることです。そしてまた規制庁も、規制庁のその当事者すらこの委員会になかなか来ていただけない。そして、十年かけて今からやるんだと。私は、それが責任ある態度だとは思えません。

 さて、そこでお伺いしたいんですが、そのためには自然エネルギーを伸ばしていかなきゃいけない。これは自民党も合意していると思いますね。この自然エネルギーを伸ばしていくために大事なのは、制度を変えていく、規制改革ですよ。

 一つは、固定価格買い取り制度は私たちが実現をいたしました。もう一つ、発送電分離、自由化をしていく、これが大事だと思いますが、茂木大臣にお伺いします。この分だけ答弁してくださいね、今まで以前のはしなくていいので。発送電分離はどういうスケジュールでやられるんですか。

茂木国務大臣 お答えしたいことがあるんですけれども、発送電分離に関連しての部分だけで。

 我が党としては、まず、政権公約でも、これから三年以内に省エネそして再生可能エネルギーの最大限の拡大を図る、これを最初のラインに書いてございます。

 その上で、発送電分離も含めました電力システムの改革についてでありますけれども、大きく改革の方向、やらなきゃならないことが三つございます。その一つが、電力自由化の推進であります。そして二つ目が、御指摘をいただいた送配電部門の中立化、さらに言えば独立化、これを進めるということであります。そして三つ目に、広域系統運用の拡大ということであります。

 そこの中で私は、今、改革は大胆に、そしてスケジュールは現実的に、こういったことを基本に二月中にも一定の方向性をお示ししたい、こんなふうに考えております。

辻元委員 一定の方向性というのは、今国会に発送電の分離について実現をする法律を提出すると理解していいんでしょうか。

 といいますのも、これは今までもずっと議論がなされてきたテーマなんです。

 前の自民党政権のときどうだったかというと、発送電分離については、原子力の推進の弊害になるという可能性があるので実現にはネガティブだというような御答弁をしている大臣もいるんです。誰とは申し上げませんが、ここに座っていらっしゃる方のお一人です。(発言する者あり)誰だと聞くけれども、名誉のために言わないことにしましょう。茂木さんは御存じだと思いますよ。

 そしてさらに、自民党の公約を見ますと、三年間全力で自然エネルギーの推進をやりますと言っている。報道を見ますと、今回、附則に書いて、四年後ぐらいに実現というような報道もあるわけですよ。そうしたら、四年後に発送電分離で、三年間全力とは言わないんです。三年間全力で自然エネルギーを推進していくといったら、もうさっさと発送電分離をやって、そして頑張ろうと。つじつまが合わないじゃないですか。絵に描いた餅になりますよ。

 いかがですか。その三年間の自民党の公約と整合性がとれる、それは今国会で実現をする、もう実現できるという法案を出すおつもりはありますか。

茂木国務大臣 我が党として、三年間、再生可能エネルギーの最大限の導入を図っていく、このための手法はたくさんございます。例えば固定価格買い取り制度、こういったものを続けていくということもあります。

 そして、再生可能エネルギーですから、基本的には発電部門にかかわってまいります。その部分に関する自由化をしっかりと進めていかなければいけない、そんなふうに思っております。

 さらには、そういった再生可能エネルギーでの発電ということになりますと、分散型電源、こういうことになってまいりますので、送電網の整備等々も今までと違った形のものを含めて進めていかなきゃならない、そんなふうに思っております。

 そして、電力システムの改革、これは基本的にはパッケージです。ただ、順番があります、いろいろなものについて。今回、電事法の改正、国会に提出をしたいと思っております。全体の絵姿は示させていただきます。

辻元委員 全体の絵姿を示させていただきますということなんですけれども、先ほどから申し上げておりますように、三年間、再生可能エネルギーと自民党はおっしゃっています。そして、その後、それを入れてか、十年かけて原発・エネルギーの政策をじっくり考えるんだと言っているわけですよ。

 特に、再生可能エネルギーの分野というのは、物すごい速いスピードで競争があります。

 実際に、太陽光について言いますと、この太陽光は日本はトップレベルだったんです。一九九四、五年ごろ、これは細川政権のときでした、力を入れ始めて、補助金もつけたんですよ。

 ところが、これまた安倍政権が関係してくるんですけれども、小泉政権から安倍政権に移るときに補助金を打ち切ったんですね。実際に国会の中でも、私もそのときいましたので、これはもうちょっと力を入れようじゃないかと言っても、その必要はないというのが安倍政権の姿勢だったんですよ。そこで大きく競争力がそがれて、日本のトップレベルの企業が転げ落ちるようにだあっと落ちていったということが実際にあったわけですね。

 三年だ、十年だと言っている間合いは日本の、これは甘利大臣にもお聞きしたいと思います。経済再生担当大臣ですね。大臣は発送電分離に賛成ですか。

甘利国務大臣 やるべきだと思うことは何でもやってくださいということを申し上げています。

 ただ、シミュレーションをしっかりしてくださいと。一回やって失敗してもとへ戻すということになると国民的コストがかかりますから、ここはきちっとやった方がいい。というのは、分離をしている例を見て、必ずうまくいっているというぐあいにいかない、かえってコストが高くなってくるということも事実としてありますから、しっかり検証してくださいと申し上げています。

 自由化で、今おっしゃるように新エネをどんどん導入しています。今の化石燃料等の電力コストは十円前後だと思います、キロワットアワー当たり。四十二円の電気、あるいは風力だと二十数円ですね、地熱もそうです。つまり、十円台のコストのものにかわって二十円から四十円のものをどんどん導入していって、コストが下がるとは思えません。

 ですから、国民負担も考えてシミュレーションをしっかりして、片方はよかったけれども、国民負担がべらぼうになったというふうにならないように、その結果もう一回やり直そうということになると莫大なコストがかかりますから、改革はどんどん進めてください、しかし、しっかりシミュレーションをして、こんなはずじゃなかったということがないようにしましょうということを申し上げております。

辻元委員 今、確かに、問題点を検証するのはそれは大事なんですよ。それはもうさんざんやってきたと思います。実行するかどうかなんです。

 特に、福島の第一原発の事故を経験した私たちですよ。エネルギーをどうしていくかというのは、最初に申し上げました経済や産業政策だけではない、今地域でさまざまな取り組みが始まっていることは皆さん御承知のとおりですね。

 例えば鶏ふん発電というのが始まっています。これは九州の事例ですけれども、養鶏をされている方が鶏のふんを使って、そしてそのガスから発電をしていく。養鶏は物すごく電気がかかる、電気代がえらい高い。しかし、自分たちの今まで捨てていたふんを使って電気を起こし、そして余ったものを売電していく、これを東北に持っていくことができないかという試みをされている方々もいらっしゃいます。

 御承知のように、風力はポテンシャルがありますよね。着床式と、今、浮体式と言われていますが、この着床式の風力だけで日本は約三億キロワット。これは、今稼働している原発と火力発電所を全部合わせたぐらいのポテンシャルがあるとも、これは政府が試算しておりますけれども出ております。

 それ以外にも、潮で発電しよう。潮力、潮の流れですね。それから、地熱もこれは日本がトップレベルの技術を持っているということです。

 そうすると、これをいかに生かしていくか、そのための規制をどう改革していくのかというのが私たち政治の役割じゃないですか。

 ですから、今、甘利大臣が御指摘したようなさまざまな問題は、十年前から甘利大臣は指摘されていますよ。同じことです。同じ答弁をされているんですよ。大臣時代、ずっと経産大臣をされていたですね。この十年、何をしてきたんですか。

 というのは、ほんまにそうです、余り答弁を紹介したくないですよ。先ほど申し上げましたけれども、原子力との関係でネガティブな答弁も甘利大臣もされていますよ。

 ですから、この十年間点検をしてきたと。私たち、政権を引き継いで、これは頑張ってやっていこうじゃないかということで、まとめる方向性まで出したんです。ですから、茂木大臣、今国会でみんなでやりましょうよ。いかがですか。

茂木国務大臣 甘利経済再生担当大臣も同じだと思いますが、安倍政権においては改革は実行します。この電力システム改革についてもやるんです。

 ただ、あしたからすぐに発送電分離にはなりません、先生も御案内のとおり。例えば、さまざまなルール設定があります。行為規制もしなきゃなりません。そしてシステム開発もしなきゃなりません。それに必要最低限の時間をかけた上で、準備がありますから、そこで確実に実行する。ただ、先ほど申し上げたように、全体の絵姿、こういったものはこの国会にお示しをしたい、こんなふうに思っております。

辻元委員 おっしゃることはわかります、大きなシステムを変えることですから。ただ、私たちが先ほどから何回も申し上げていますように、あの事故を経験した私たちがどういう社会や国の形をこれからつくっていくのか。

 私は、例えば産業に与える影響や雇用に与える影響、これも民主党内でも議論いたしました。しかし、自然エネルギーの投資、これを促進していくことは、日本の新しい産業をつくっていく上では物すごく大事だと前からも指摘しているし、特に今そう思うんですね。そのときに、投資家から見たら、原発もどうなるかわからない、また原発依存に戻るのかしらという疑念があっては、なかなか投資が入らないわけです。この発送電分離も含めて、きちんと自由化もして、その方向で政治の意思を示すということが、市場も敏感に反応して、それならやりましょうと。

 ですから、私たちは、民主党内でこれは激論があったんですよ。二〇三〇年代ゼロに対して、反対もありました。しかし、政治の意思をきちんと示すことこそ政治の責任じゃないか、それは新しい国の形をつくるビジョンを示すことと同時に、自然エネルギーなど新しい産業の投資を促す意味でも、政治の意思を示すべきだということで決定したんです。

 総理にお伺いしたいんですけれども、十年かけてベストミックスをというようにおっしゃっているわけですけれども、原発は、原発賛成、反対にかかわりなく、先ほどお示ししましたように、廃炉時代に入りますよ、日本はこれからは。新規にどこかに建てて原発に頼ろうというのは、私は無理だと思うし、間違っていると思います。ですから、廃炉時代になったときに私たちが一刻も早く新しいエネルギーにシフトしていく、その羅針盤を変えていくのが今だと思うんです。ですから、私たちは二〇三〇年代にゼロを目指そうということを決めたわけです。

 私は、十年かけてベストミックスをこれから模索していくんだという自民党の政策では、今までと同じ先送りに見えてなりません。いかがですか、総理。

安倍内閣総理大臣 辻元委員、また民主党の政策と我が党との違いは、まず、低廉なエネルギー、そして安定的なエネルギーの供給があって初めて経済を維持することができます。それがあって初めて投資が行われ、海外からも投資が行われるわけであって、それなしには、残念ながら、製造業は日本の地で物をつくっていくという意思すら失ってしまうんですよ。だからこそ私たちは、責任を持って、確実に、今申し上げた低廉で安定的なエネルギーは代替的なものを、これは大丈夫ですねということがあって初めて代替としてそれは入れかえていくという考え方であります。

 だからこそ、三年間において徹底的に国家資源を投入して新しい再生可能エネルギーを見出していきます。そこでイノベーションが起こってくれば、もっと原発依存度は低減していくだろう、こう思いますよ。その上においてベストミックスを我々はつくっていく、そういう考え方であります。

辻元委員 確かに、総理がおっしゃる低廉なエネルギーというのは今までずっと言われてきたんです。私も、それは必要な一つの考慮材料であると思います。しかし、私たちはそれ以上に大きな変革期を迎えているんじゃないかということを申し上げたかったんです。

 原発にしても、一たび事故が起こったら、今、いまだ十五万人の方が苦しんでいますよ。内部被曝、心配していますよ。そして、莫大な風評被害も含めて、除染の費用も幾らかかるかわからないという中にいる日本だからこそ、はっきり羅針盤を切りかえることを政治の意思で示す方が、私は、日本はいい意味で成長していくし、私たち自身が国会の責任においてそれは考えなきゃいけないことだと思います。

 先ほどの、参考人として呼んでいただくことは御検討いただくということをお願い申し上げまして、質問を終わります。

山本委員長 この際、長妻昭君から関連質疑の申し出があります。前原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。長妻昭君。

長妻委員 民主党の長妻昭でございます。

 久しぶりの野党の質問でございますが、よろしくお願いをいたします。

 まず、今国会で、安倍内閣が目指す社会と民主党が目指す社会、これは方向性が違いますので、その違いをじっくり議論していきたいと思っておりまして、きょうはそのまず第一弾として、具体的事例をもってその違いを明らかにしていきたいと思います。

 まず、低所得者の方々に対する対策についてでございますが、まず安倍総理に概括的な質問をさせていただきますけれども、低所得者の方々にこれから新たな負担を求めていくということ、これは望ましいとお考えになるかならないか、お答えいただければと思います。

安倍内閣総理大臣 一般論として申し上げれば、社会保障制度には、所得の再配分という機能があります。全体では低所得者には負担を上回る受益が行く、こういうふうに考えられているわけでありまして、少子高齢化が進展する中で、給付と負担のバランスを図りながら、そうした制度を持続可能なものにしていくことが大切であろう、このように思います。

 給付があるところには、必ず誰かが負担するわけであります。負担する側が納得できることによって初めて、給付と負担のバランスは維持されることになって、そしてそれは持続可能なものになるわけであります。給付が、どんどんどんどん給付をふやす、負担側がどんどんどんどん負担がふえてきた段階で、そのシステムは崩壊をするわけでありますから、そこをいかに政治が調整をしていくかということが極めて重要ではないのか、このように思います。

長妻委員 我々の政権でも想定していない、新たな、低所得者の方々に対する大きな負担がことしの八月から起こる可能性があるということなので、これについて質問させていただきたいと思います。

 まず、生活保護の基準が三年間かけて切り下げられるということが決定をいたしました。この生活保護の基準というのは、今二百十四万人の方々が生活保護を受給されておられますけれども、その方々だけの基準ではなくて、国家として、日本国として、最低限の生活レベルはこの金額ですよと、最低限の生活ラインを示す具体的金額が、生活扶助の、生活保護の基準でありまして、それが下がるということが決定されて、八月から下がるわけですが、そうすると、実は、生活保護を受給されている方以外の低所得者の方々に対する優遇策や負担軽減策も、全て影響する可能性が出てくる。

 なぜならば、低所得対策の定義は、生活保護を受けていない方でも、所得が生活保護の基準以下とか、あるいは基準の一・五倍とか、それを基準にして国家が低所得対策をしている。こういう非常に大きな問題に波及しかねない。

 政府はその深刻な問題を理解されていたのかどうかというのが非常に疑問なわけでございますけれども、今、生活保護以外の方々、低所得の方々に対してその影響が波及する可能性のある制度の数というのは大体幾つぐらいと認識されておられますでしょうか。

田村国務大臣 まず、今回の生活保護基準、生活扶助基準の見直しでありますけれども、基本的には、我々自民党政権になる前から、民主党政権のときから議論を、社会保障制度審議会、基準部会というところでお始めをいただいてきたということは、委員も御了解のことであろうというふうに思います。その結果を踏まえて、このたびこの基準の適正化というものを図らせていただくという一つの流れであります。そこは御理解ください。

 ということはどういうことかといいますと、今委員がおっしゃられました、いろいろなものに確かに影響が出てくるというお話でございますが、例えば住民税の非課税の限度額、こういうものも、生活保護、この中の、生活扶助基準だけじゃないものもあるんですが、そういうものを一つ指標にして、いろいろと入れかえるわけです。ですから、それによって変わるか変わらないか、機械的に変わるものもあれば、変わらないものもあります。

 ですから、その点に関しては、多岐にわたりますので、現在それを把握しておりませんが、いずれにいたしましても、先般、閣僚懇談会で、そういうものにできる限り影響を及ぼさないようにするように努力しよう、そういう申し合わせを各閣僚としたわけであります。

長妻委員 私は、今の答弁は驚くべき答弁だと思うんですね。影響する制度の数、どの制度が影響するのか把握していない、ただ、できる限り影響がないようにする。これは無責任じゃないですか。我々はこんな無責任なことはしませんよ、我々が政権をとっていれば。

 私は今の答弁、これは非常に多くの国民の皆さんが、特に低所得の方が直撃を受ける話ですので、政府に確認をしました。一番初めに、私が一月に聞いたときには、おおむね十四の制度に影響するというような資料をいただきましたけれども、きのうの段階で、実は三十ぐらいではないかと。そして、また新たに実は、数が多いので今これを全部読み上げるわけにはいきませんけれども、これに加えて、新たにきのう来ましたのが、養護老人ホームの入所措置、これも抜けていましたと。あるいは結核児童療育給付事業、あるいは要保護世帯向け不動産担保生活資金とか、介護福祉士等修学資金貸付事業とか、これはここに書いておりませんけれども、続々と、わかりました、抜けていましたというのが来ているところであります。

 もう既に生活保護基準は下げるということが予算で確定をしたと認識をしておりますけれども、その確定をする前に、さっぱり、どういう生活保護以外の低所得の方が負担増になるか、影響もわからず、制度の数すら把握していないので、よくそういう決断ができたというふうに私は思うわけで、非常に憤りを感じているところでございます。

 であれば、例えば、今、田村大臣がおっしゃられたように、個人住民税非課税世帯というのは、これは生活保護の基準に連動している、関係しているわけですね、国会答弁でもあります。ですから、生活保護基準の切り下げで、それに付随する制度も影響を受けますが、個人住民税非課税世帯に対する優遇策もまたたくさんあるんです。これもまた影響を受ける。この個人住民税の非課税世帯についての税制は、ことしの末、年末に決まるということで、二段階というか、非常に影響が大きいわけであります。

 では、聞きますが、生活保護以外の低所得者の方で負担増になる方々、八月以降、おおむね何万人なのか、何十万人なのか、何百万人なのか、何千万人なのか、その桁数ぐらいもわからないんですか。

田村国務大臣 委員、方向性は、私、民主党も同じだったと思っているんです。

 それはなぜかといいますと、民主党の中の事業仕分け等々で、やはり生活保護基準が高いんではないか、こういう議論が御党の中でもされておられた。我々自民党も、生活保護基準が高いんではないか、そういう意見もあったわけです。その中で今、こういうような、御党のときにやられておった審議会においての結論を得て、我々はそれを実行する段に来ているわけなんです。であれば、そのまま返る話でありまして、皆様方も把握できていたんですかという話になるんです。

 そこで、我々は、影響を与えないように、なるべく、できる限り影響が出ないように措置をしようということを閣僚懇談会で一応申し合わせをしたわけでありますから、そういうような御心配のないように努力をするということであります。

長妻委員 生活保護基準部会というのがあります。これは、我々の政権のときにも、その基準部会でいろいろな資料を御議論いただきました。ただ、生活保護基準を下げるという結論、決断はまだ我々はしておりませんでした、民主党の中にもいろいろな議論があって。しかし、今回は生活扶助の本体部分で一〇%削減、こういう結論が自民党政権で出て、それが、今の答弁でいえば、ほかへの影響もほとんど考えずに突っ走ってしまったということだと思っております。

 これは再度お伺いしますけれども、何万人ぐらい、つまり何百万人ぐらい、私は、我々の政権であれば、その影響度がわからないうちに、しかも生活扶助基準最大一〇%カット、こういうような乱暴なことは決してしないと思っております。その影響度がさっぱり、何万人の生活保護受給以外の方々に影響が出るのかわからないうちにこういう決断をして、もう決まってしまう、予算をカットするということは、非常にこれは問題だと思うんですが、これは安倍総理、何万人程度なのか、影響度ですね、その人数というのはぜひ調査をいただけないでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今この段階ではつまびらかに申し上げられませんが、我々は、生活保護世帯以外にも影響が出るということはわかっておりました。ですから、全ての省庁に対して、この影響が出ないように対策を打つようにという指示を、閣僚懇談会においてしたところであります。そこで、今、各省庁が努力をしながら、影響が出る人たちについて把握をしている最中でございますから、今の段階では申し上げられないということであります。

長妻委員 であれば、政府が今出してきている制度の中で、お子さんが対象の制度、例えば就学援助、これは今現在、公立小学校全体の一五%もの方が受けておられます、百五十七万人。うち生活保護の方は十五万人ですから、生活保護以外の低所得の方が百四十二万人受けておられて、学用品などを補助する制度、これも影響が出るわけです。

 こういうお子さんを対象としている低所得者向けの制度、私立小中高授業料免除とか大学授業料等免除とか、生活保護以外の低所得世帯への援助、たくさんありますけれども、その制度対象のお子さんの総計、大体何人ぐらいでいらっしゃいますか。

下村国務大臣 お答えいたします。

 その「低所得者が負担増の可能性」の資料でございますね。この中で、今御指摘がございました文部科学省、子供の関係でいうと、就学援助、特別支援教育就学奨励費、幼稚園就園奨励費補助、高等学校等就学支援金制度、また、真ん中辺ですが、災害共済給付掛金、そして、下の方でありますけれども、可能性のある制度の例ですね、大学授業料減免、高等学校奨学金、私立小中高等学校授業料減免。これらについては、今回の生活保護に影響しないように、現状の状況で対応するように政府として決めさせていただいております。(長妻委員「制度対象人数を」と呼ぶ)ですから、対象は現状のまま維持しますから、あえて数を数える必要はありません。

長妻委員 これは、お伺いすると、わかったのは、例えば就学援助は、さっき申し上げましたが、百四十万人。まあ何人が対象になるかわからない。ただ、今おっしゃられたのは、これは安倍総理もことしの一月に参議院の本会議で答弁されておられて、できる限りその影響が及ばないような対応を鋭意検討しています、こういうことなんですね。

 ところが、これは国だけがやっている制度じゃないんですよね。国だけがやっている制度も一部あります。国民年金保険料の免除の制度、申請免除、これは国だけがやっているから、やろうと思えばできるかもしれない。しかし、地方に補助金を出して基本的には地方の財源でやっているもの、しかも、国が補助金を出している事業なら、まあ、それも地方との事業でありますけれども、国が補助金を出していない地方単独の福祉事業もたくさんあって、私もいろいろな首長さんとお話をしますと、これはどういうふうにするんだろうと。国にお願いされても、どういう判断をすれば、国から補助金が直接ないものもいろいろある。

 あるいは、大学については、調べますと、大学が単独で、つまり大学独自で取り組んでいる低所得に対する授業料減免とか、そういうものもあるわけで、これはあくまでもお願いベースになるということなんです。

 これは、では、お願いをしても、漏れるところも出てくる、当然、これはまだまだ広がると思いますけれども、それはお願いをするということで、あとは頑張ってほしい、こういうことになるわけでありますか。

安倍内閣総理大臣 今回は、まず生活保護の生活扶助を適正化する。今までずっとデフレも続いてきました、そういうことも勘案しながら適正化をする。適正化をしなくていいということではないわけでありまして、先ほど田村大臣からも答弁したように、御党の時代から議論を積み重ねてきた中において結論が出て、我々はそれを実行していくわけであります。

 しかし、その際に、さまざまな影響がなるべく生活保護世帯以外に及ばないようにする、これは当然のことであります。今その作業を行っている。しかし、先般の国会においての答弁で一〇〇%ということが言えなかったのは、それは、我々国だけではなくて地方公共団体がやっているところについてはしばらく時間がかかる、こういうことであります。

長妻委員 そしてもう一つ、最賃ですね、最低賃金というのが日本国にはありまして、これは各都道府県ごとに決まっている最低賃金、時給であらわしておりますけれども、これは基本的に生活保護基準に関係するということでありまして、平成十九年に法律改正があって、生活扶助基準を下回らない額にする、こういうことになって、今下回っているのが六都道府県あるんですね。

 そうすると、生活保護基準が下がると、この下回っている県が下回らなくなる。つまり、生活扶助基準の方が下がるので、最低賃金が変わらなくてもそれが上に上がってしまうように見えるということで、これはちょっとシミュレーションしていただきまして、配付資料の二ページ目以降にいろいろなケースが書いてありますけれども、これは、では最低賃金についても影響が出ないようにする、こういうことなんですか。

田村国務大臣 まず、このシミュレーションをした図なんですが、正直言いまして、最低賃金も毎年変わります、生活保護の金額も毎年変わる可能性がある金額なんですね。ですから、両方とも変数にもかかわらず、それを三年後、五年後シミュレーションしろというのは、これはほとんど不可能な話でございました。しかし、長妻委員がどうしても一定の条件でつくれと言われたのでつくったものでございまして、これに対して我が省といたしましては一切保証ができない、そういうような数字であるということは御理解をください。

 その上で、最低賃金は、御承知のとおり、生活保護に直接関係するわけではございませんでして、労働者の生計費でありますとか労働者の賃金でありますとか企業の賃金の支払い能力、これが基本的に影響する部分ですね、三要素。その中でも、労働者の生計費はこの生活保護基準を一応参照するということでございます。でありますから、最低賃金は生活保護よりかは上回る方がいい、これは当たり前の話でありまして、それで一生懸命、それに追いつくように各地域で頑張っていただいておるわけであります。

 結果的に、だからといって、最低賃金が下がったり、上がり鈍るなどということがまず起こるとは私は思っておりませんし、そもそも安倍内閣においては所得をふやすということが政策の一番でありますから、そのようなことが起こらないように我々としてもしっかり努力してまいる、そういうことであります。

長妻委員 今御答弁がないんですけれども、つまり、大臣もよく御存じだと思うんですね。平成十九年、最低賃金法九条が改正になったんです。改正で新たに入った条文が、「労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとする。」こういう条文になったんですね。

 このときに、当時の舛添厚労大臣が、この条文の趣旨は何ですかということを問われて、平成十九年十一月に国会で答弁されているのは、今回の最賃法の趣旨は生活保護を下回らないようにしましょうということでありますと明確に答弁をされておられるわけで、そういう意味では連動しているんですね。連動する考え方なんですよ。

 そうすると、では、今回は、生活保護の基準は下がるけれども、最賃にはその下がった部分というのは影響しないようにする、こっちの方も影響しないようにするということでよろしいんですか。

田村国務大臣 ですから、生活保護を下回っている最低賃金、それに関しては、なるべく早くそれに追いつくように努力をいただくという話でありますし、それを超えている部分に関しては、それは別に生活保護に足が引っ張られるというような問題でもないということであります。

長妻委員 田村大臣、影響の重大さをちょっと認識されていないんじゃないかな。だって、平成十九年の法改正は、国会でさんざん議論して、最賃は生活扶助基準を下回らないようにしよう、そういうことで改正したわけでありまして、今、全然お答えが、影響が出ないということを言っていただかないわけでありますけれども、そうしますと、最賃については心配するな、生活扶助基準が変わろうとも、これはもともと影響がないんだという趣旨の答弁。それ以前の低所得者対策については、これは総理もおっしゃられたように、極力影響が出ないようにする。

 つまり、生活保護以外の低所得者対策については、生活扶助基準が下がっても、従来の生活扶助基準、生活保護基準を基準として低所得者対策はやります、こういうことなんですね、今のお話というのは。これは、逆に今度は、では、ダブルスタンダードというふうに、この意味づけをどう考えるのかという話が出てこざるを得ないんですよ。

 というのは、さっき冒頭申し上げましたように、生活保護の基準というのは、これを下げると、生活保護を受けておられる二百十四万人の方だけじゃなくて、お国の、日本国としての、憲法二十五条も含めて、低所得の、最低の生活のラインということになるわけですよ。

 ところが、そのラインは従来のままにします、生活保護を受けていない方は従来のままの最低ラインは変わりませんけれども、生活保護の方だけはその生活保護の基準が下がります、こういうことになるわけですよね。

 この哲学というのはどういうふうに説明するんですか。総理に聞きます。

安倍内閣総理大臣 今、最賃と生活保護について、改正の趣旨というのは、最低賃金が生活保護給付と逆転しないようにしようということだけなんですね。それ以外ではリンクするということはないと言ってもいいと思います。

 最低賃金法、これができたのが一九六〇年、これは岸内閣のときにできたんですが、それ以来、大体ずっと一円刻み、二円刻みでしか上がらなかったんですよ。唯一、十円以上上がったときがあります。それは、自慢ではないんですが、第一次安倍政権のときなんです。

 なぜそれが可能であったかといえば、これは、デフレ状況が極めて、いわばインフレに近づいたんですね。デフレから脱却はできませんでしたが、インフレに近づき、経済が成長したからなんですよ。株も上がりましたけれどもね。それによって、最低賃金を上げることができる状況に持っていくことができたんですね。

 だからこそ、最低賃金こそ、つまり、経済の状況をよくして、景気をよくして、生産性を上げて、収益を上げて、そしてそれを従業員にしっかりと給付していくことによって、最低賃金を上げていくことができるというふうに思います。

長妻委員 いや、私が聞いたのは、生活保護の基準を下げると、お国の最低生活の基準も、本当は同じなんですよ。ところが、生活保護以外の低所得者の方々に対する最低生活や低所得の基準は従来の、下げる前の生活保護の基準にとどめます、しかし、生活保護の方々だけは下げた基準で運営しますというのは、どういう哲学に基づいて、どういうふうに説明がつくんですか、こういうことを聞いているんです。

田村国務大臣 まず、御党も自民党も、やはり生活保護の基準が高いんではないかという議論があったということは御理解をいただけると思います。

 例えば、一級地の一、東京二十三区ですけれども、四人家族、四十一歳のお父さん、お母さんで、小中学生の子供、これは月々二十八・二万円なんですよね、生活扶助、それから住宅扶助、教育扶助を入れまして。これは、年収ベースでいいますと四百二十三万円なんですよ。

 ですから、これはちょっと高過ぎるんじゃないかという御意見がそれぞれにあったのも事実です。ただ、それはそれでまた後で議論をやりますけれども、要するに、同じような所得層で頑張っておられる、つまり自立されておられる方々もおられて、そこを考えたときに、生活保護はやはり若干下げなきゃならぬね、適正化しようねという話がある。

 でも、一方で、それと同じようにほかの方々に影響が出てはならないということになるので、だから、そこには影響が出ないようにちゃんと手当てをしましょうということを閣僚懇談会で申し合わせを……(長妻委員「ダブルスタンダードになるんですよ」と呼ぶ)いや、ダブルスタンダードじゃありません、生活保護ではないんですから、その方々は。低所得者、そういう範疇には入られるかもわかりませんけれども、生活保護ではないんです。それを一緒にすること自体がおかしいんじゃないでしょうか。

 なぜならば、それぞれの制度は、それぞれの目的そして趣旨、さらには実態があって、そのもとで基準をつくるんですよね。たまたま今までは生活保護を一つの指標として、そのままじゃありませんよ、それを加工して使っているものもあります。その一つの指標だったということでありますから、そこはダブルスタンダードではないというふうに思います。

長妻委員 これもちょっと奇妙な答弁なんですよね。

 なぜかというと、生活保護の基準は、いいんですよ、下げたということですよね、自民党政権で下げて、しかし、最低基準、最低生活のラインは、これは生活保護以外の方は今のままにとどめる、こういうことですよね。

 ただ、とどめるとしたら、それは、では、いつ見直すんですか。ずっと見直さないわけですか、これは。では何年間、激変緩和措置で、一年、二年とどめるのかどうか、このことを聞いているんですが、明確な答弁がないので、そこが非常に不可解なんですよ。そう思われませんか。

 低所得者の方々に対する最低生活のライン、低所得の定義は、変えない前の生活保護の基準をずっと続けます、ところが、生活保護だけは下げても、それはずっとリンクしませんなんて、これはおかしな話だと思いますので、これについてはまた明確に答弁をいただかないと審議が進まないと思っておりますので、ぜひ明確に御答弁いただきたいと思います。

田村国務大臣 もう一度御説明いたしますが、そもそも、それぞれの制度は最低限度の生活の方々を対象にしているわけじゃないんです。それぞれの制度の趣旨、目的に沿った方々、実態も踏まえて、そういう方々に対していろいろな制度があるわけです。ですから、生活保護、生活扶助と同じ金額を対象にしていないところもいっぱいありますよ、制度は。それの一・二倍だとか一・五倍とかやっているわけですよ。それはなぜかというと、たまたま生活保護の水準を一つの指標にしてきたんです。

 ところが、実は今回のこの制度の見直しというのは、今までの標準世帯というものがなくなっているんです、生活保護の中で。ゆがみを直している部分がありますから、今までは標準世帯があって、それにプラスして、何人いるからこういうふうな基準になるよというやり方だったんですが、今回はそのゆがみを直したんです。それは第一・十分位という下から一〇%ぐらいの世帯の、要するに、その世帯数だとか地域だとか、それから年齢だとか、そういうもののばらつきを当てはめてそれぞれに相対的に合わせているものですから、そもそも生活保護の基準もなくなっているんですよ。

 ですから、そういういろいろな制度の指標に非常になりづらくなっていますから、これからは、それぞれの制度が新たな指標も含めてお考えになる可能性が高いんじゃないかと我々は思っています。

長妻委員 これは田村大臣もおわかりになっておられると思うんですが、生活扶助基準そのものを基準としている制度もあるわけですよね。あるいは一・五倍というのもあります。しかも、地方税の非課税世帯は生活扶助基準を一つの基準にしているわけですよ。ですから、今の答弁は、一・五倍とかそういう倍率を掛けているものもあるし、そうでないものもあるわけで、倍率を掛けているものでも、生活扶助基準を下げれば、それは下がる可能性があるわけですよ。ですから、そういうことを聞いているんです。

 生活保護本体の話に入りますけれども、不正受給、これは犯罪です。生活保護、不正が二万五千件、平成二十二年にありまして、警察に告発されているのが五十二件なんですね。これは非常に少ないということで、我々の政権のときに刑事告発を強化せよということで指示をして、その対策をとっているところでもありますし、あるいは生活保護受給者の方が向精神薬の横流しをする、こういうこともありまして、レセプトを厳重にチェックするということもいたしました。あるいは、金融機関に対して、今、金融機関の団体とも連携して、照会をすると全国の生活保護の方々の口座をチェックできる、こういう仕組みも入れました。

 我々も、生活保護の不正受給は徹底して取り締まらなきゃいけない、受けるべき人がそういう目で見られて大変お困りになるケースもあるわけで、これは我々も全力でやらなきゃいけないと思っているんです。

 ただ、当然受けるべき方はきちっとやはり受けていかなきゃいけない。というのは、生活保護というのは最後のセーフティーネットですので、この生活保護にほころびがあると、次は死が待っているということになりかねない。大変重要な、社会保障と安全保障、二つの保障が国家の礎だといいますけれども、その社会保障の中核をなす、日本国民に生まれた方は、基本的にどういう境遇になっても、必ず国が最後は、どなたでも、努力をしても努力をしても本当に大変な境遇になっても、文化的で最低限度の生活をどなたにでも必ず保障します、こういう国家の存立にかかわる大変重要な制度だと私は思っているところです。

 これについて、非常に拙速に最大一〇%下げというのがすぐ決まってしまったというふうに私は感じておりまして、我々民主党政権も、一円も変えないと言うつもりはありません。それぞれの状況を見てきちっとデータを集めて、さっきの影響度も集めて、そして議論していく、党内にもいろいろな議論があって慎重に議論をしていく、そして見直すということで結論をまだ出していなかったところが、自民党の公約、重点政策二〇一二に、給付水準の原則一割カットというのがマニフェストにあって、こんな一割をすぐに計算もなしにできるのかと思っていましたら、実際には一割すぱっと現実には下がった、三年かけてということですが。

 これは安倍総理にお伺いするんですが、この自民党の公約の給付水準の原則一割カットというのは、なぜ一割という公約を出されたんですか。

田村国務大臣 先ほどもお話をさせていただきましたけれども、それぞれにやはり生活保護の矛盾というものは感じていたんだと思います。不正は当然だめですから、我々も、不正対策、さらにこれを強めていきます、強化をしてまいります。また、今受けられていない方々、本来受けるべき方々が受けられていない、こういう方々がちゃんと生活保護にアクセスできる、これもやらなきゃなりません。

 しかし一方で、受けておられる方々の基準、水準がどうかというのは別の問題でありますから、先ほども言いましたけれども、長妻先生の選挙区で、今ほど言いました御生活をされている方々が二十八万二千円というような、先ほどの四人家族ですよね、こういう実例を見て、やはり高いんじゃないかという御意見もあった。

 自民党は、その中を見ていただくとわかりますとおり、ただ単に一割と言っているんじゃないんです。勤労者の所得でありますとか物価だとか、いろいろなものを勘案して一割だという話を公約の中に入れたんですね。物価、それから、そこに書いてあります勤労者の所得。あと、年金も書いてあったと思いますね。そういうものを勘案して一〇%ということを一つの目安にしたわけであります。

 しかし、実際は六・五%ですから。我々、長妻先生が大臣をやっておられた後ですけれども、民主党政権の中で、先ほど言われた社会保障審議会の生活保護基準部会、ここにおいて議論をいただいた答えと、それから物価の下落、これは消費者物価の下落、しかもこれは、生活保護の方々に特化した品物で出した、そういうものでありますから、それとあわせて六・五%。

 ということは、一〇%という自民党の公約よりも少なくなっちゃったんです。これは、自民党の公約も、働く方々の所得だとか物価だとか勘案していますから、それをちゃんと入れてみたらこういう数字になったわけでありまして、決して一〇%ありきで今回引き下げをやったわけではないということは御理解をいただきたいというふうに思います。

長妻委員 一割は、物価とか勤労所得などなどという話ですよね、今の話だと。

 現実には三年で二つの種類の下げがあるわけですね。いわゆるゆがみと役所の方が言われているものが三年で九十億、そしてデフレ関係、物価下落で五百八十億、三年間ということなんです。

 まず、一般の第一・十分位ということで、所得の低い、生活保護を受けておられない方々、生活保護の方も入っているんですけれども、そういう方々の消費支出と生活保護の方を比べているわけであります、金額を。これは、我々も、この金額を比べよというふうに指示いたしました。そしてデータが出てきたわけですが、ただ、それをそのまま短絡的に比較していいのかどうかという問題も精査されているのかどうかということなんですね。

 例えば、母子家庭と、生活保護を受けている母子家庭の方々、この双方を調べますと、生活保護を受けている母子家庭の方も四六・四%は働いておられるわけです。DVの被害経験がある方が、一般の母子世帯が三三・二%、生活保護を受けている母子世帯が六八・一%ということで、非常に高い。ただしこれは、同じ基準で比べられないということなので、この米印は、一般母子世帯は二十以上に限定はしておりますけれども。そして、六歳以上の子供の健康状態について、よい、まあよいという方が、一般母子世帯では五八・七%、生活保護を受けておられる母子世帯ではそれより低く四三・三%。通院中のお母さんが、一般母子世帯が二八・四%、生活保護の母子世帯が六三・六%。

 そして、症状を抱えた方々の割合の比較、これは、あらかじめ役所が既に調査をしたデータがありまして、これを見ていただきますと、一般の方々で有訴者、これも基準が若干違うんですけれども、有訴者というのは何らかの症状のある者の割合、そして、生活保護受給者については障害または傷病を抱える者の割合、こちらの方が重いということなんですけれども、二十歳から五十九歳まで見ていただきますと、一般の方と生活保護の方を比べると、倍多いわけですね、この数字で、症状を抱えた方々が。

 こういう特性の違いがあるわけでありまして、そういう意味では、障害者の方々の比率も非常に高い、傷病者の方の比率も一般の方よりも高いわけでありまして、高齢化も高いわけで、そういうところを単純に一般の世帯と比較する、これも重要だと思いますが、では、一般の方々で例えば障害者の世帯とかあるいは傷病者の世帯、こういうものも丁寧に比較する、そういう必要もあったのではないのかということも感じております。

 そして、他国との比較なんですけれども、これについては、いろいろな生活保護に似た制度は先進国でございますけれども、この制度の比較というのは難しいんですが、役所につくっていただいた六ページの資料で見ますと、この資料でも、日本の生活保護、人口当たりの保護率が一・六%、ほかの国よりも低い。ドイツはもっと低いように出ております。

 私が調べた学者の先生のデータでは、日本の生活保護の保護率、人口当たりの保護率や、GDPに占める金額というのが、イギリス、フランス、ドイツの半分以下というようなデータもありますので、これは適切に見直さなければならないというふうに思っているところであります。

 そしてもう一点、デフレの件なんですけれども、これも、物価が下がったということで、下げるわけであります、四・七%ということでありますけれども。例えば冬季加算、冬、ストーブを使ったり燃料代がかさむので、その冬季加算も四・七%、これまで三年間下がった分を下げるということなんです。ただ、灯油は今円安で値上がりしている、値上がりのトレンドにあるということで、こういうものも一律やるというのはいかがなものかというふうに思っているところであります。

 私の質問は、今デフレで、三年間かけて下げるということになりましたけれども、インフレになったとき、いわゆるアベノミクスは、インフレ二%ということで、できるだけ早くということを言われておりますけれども、では、インフレになったらその分は生活保護は上がるというふうに考えてよろしいんですか。

田村国務大臣 どれが質問かよくわからなくなっちゃったんですが。

 まず、今回の生活保護基準の見直しというのは、これはゆがみを直したということが根本にあるということは御理解をください。ですから、実は、いろいろな意味でたまりが今までもあったのも事実です。本来は下げなきゃならなかったのを下げてこなかったという、そういうような歴史もある中において、今回、物価下落分をこの中に入れさせていただいた。

 ちなみに、本来この生活保護費というのは、民間最終消費支出、これが一つの基準で、ふえたり下がったりというようなことをするわけであります。ということは、物価が上がれば、普通は民間最終消費支出はふえるはずですから、であるならば、それはふえる方向に動くということでございまして、必ずしも上がるというふうに機械的には連動しておりませんが、しかし、これは大きな基準でありますから、そのような方向に動くであろうというふうに思われます。

長妻委員 ちょっと事前に閣僚の皆さんに、これは安倍総理が帰ってきてからがいいとは思いますが、まず、安倍総理以外の方にお尋ねをいたします、これは事前に申し上げていることですので。

 閣僚の皆さんの中で、生活保護を受給されている方、直接その御本人の話を聞いたという経験のある方というのはどのくらいいらっしゃいますか。もし経験のある方は手を挙げていただければと思います。

山本委員長 長妻君に申し上げます。

 予算委員会の質疑は一問一答でございまして、どの大臣か御指定いただければ、その大臣を指名いたします。

長妻委員 それでは、田村大臣。

田村国務大臣 それは、私も政治活動をやっておりますので、地元をいろいろと回っている中でお伺いしたこともございますし、いろいろなお話もお聞かせをいただきました。先般は新宿区の社会福祉事務所も訪れさせていただいて、いろいろなお声もお聞かせをいただいておるという状況でございます。

長妻委員 私が言いたいのは、これは単純に低所得の方と生活保護の方を比較して、それで、こっちが多い、この基準がこうだというような議論というのは短絡的ではないか。もうちょっと同じ属性の方々を、一般の低所得の方と生活保護の方を比べて、もっと丁寧にやはり検証して、そして下げるのであれば下げる。ただ一律ということではなくて、めり張りをつけて下げていく。例えば、ひとり暮らしのお年寄りの生活保護の方は非常に、一般の低所得の方よりも大変だというようなデータもあるやに聞いておりますので、そういうことをぜひ心がけていただきたい。何よりも、生活保護の方のみならず、低所得の方に、八月から負担増になるような、そういうことがあってはならないというふうにも思っているところであります。

 そしてもう一つが、貧困の連鎖ということで、生活保護を受けておられる方、四人に一人が、大人になっても生活保護から抜けられない、こういう現状がありまして、これは、三党合意でつくった社会保障制度改革推進法、この法律の中にもこういう条文を入れさせていただいております。生活保護を受けている世帯に属する子供が成人になった後に、再び保護を受けることを余儀なくされることを防止するための支援の拡充を図る、こういうこともきちっと入れさせていただいております。

 これについて、支援策について説明いただければと思います。

田村国務大臣 今も、生活保護家庭には、民主党で復活をされました母子加算というものもございます。それから、我々自公政権のときには学習支援費という制度もつくりました。さらには、今、学習支援ということで、それぞれ低所得者の家庭の方々のお子さんに勉強を学んでもらえるような、塾ではありませんけれども、そのような応援をするようなものも広がってきておりますし、これも応援をしてまいりたいというふうに思っております。

 とにかく、それはおっしゃられますとおり、貧困の連鎖があってはならぬというふうに我々も思っておりますので、これから真剣にその部分に関しては取り組んでまいりたいと思っています。

長妻委員 これはぜひよろしくお願いをしたいと思います。

 いずれにしましても、この話というのは、私は非常に大きい影響が出てくる話だと思います。私の受けた印象は、本当にまだ生煮えだと思いますよ。低所得者、どれだけ広がりがあるのか、どういう対策をするのか、口で言って本当にその対策がとられるのかどうか。こういうことをしっかりとぜひ真剣に取り組んでいただきたいというふうにも思います。これは引き続き我々、議論をしていきたいと思います。

 もう一つは、消えた年金問題なんですね、安倍総理とも予算委員会で質疑をさせていただきましたが。

 これは私も驚きましたのが、この消えた年金問題を進めていく年金記録回復委員会というのが突如廃止になった。これは、年金記録、一生懸命取り組んで、今現在一千三百万人の方の記録が戻って、一・六兆円のお金が戻って、来年度中には紙台帳全件照合が終了します、皆さんが予算を削らなければ。六億枚の紙台帳、七千九百万人分の紙台帳を発掘しまして、それがもう来年度中に全部終わるということになっております。

 五千万件の中で二千八百万件は判明をしているところで、平成二十二年四月から以降でいうと、一千万円以上年金が戻った方が八百六十七人おられるということで、まだまだ難易度が高いものも残っておりまして、この年金記録回復委員会を突如廃止するというのはどういうことですか。

田村国務大臣 これは委員も御記憶あられると思いますが、この委員会が法的根拠のない中でつくられ、またいろいろな問題もあったということでございまして、法的根拠をちゃんとつくるべきだと我々は主張してまいりました。

 そこで、一旦これを改組しまして、法的根拠のある、そのような形で再開をさせていただくということであります。

長妻委員 これで質問を終わりますけれども、これは安倍総理がおっしゃった、最後の人に至るまで徹底的にチェックして全てにお支払いする、こういうふうに言われているわけですので、これは絶対に手を緩めないでやっていただきたいということ。

 そして、目指すべき社会、あるいは生活保護や社会保障、格差に対する考え方、いろいろ我々も議論をしたいと思っておりますので、安倍内閣の政治姿勢ということで集中審議も委員長に求めたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

山本委員長 後刻、理事会で取り計らいます。

長妻委員 ありがとうございました。

山本委員長 この際、玉木雄一郎君から関連質疑の申し出があります。前原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。玉木雄一郎君。

玉木委員 民主党の玉木雄一郎です。

 きょうは、質問の機会をいただきまして、委員長、理事の皆様にまず感謝を申し上げたいと思います。

 安倍総理にお聞きをしたいと思います。

 きょう、六時間半審議を聞いておりまして、大変印象的なお話がありました。バンカーショットの話です。パターでバンカーの中で打っていてもなかなか脱出できない、サンドウエッジが必要だと。私、ゴルフが下手なもので、時々あえてパターを使って出すことがあるんですけれども、やはり、きちんと乗るためにはサンドウエッジが必要だと思います。その話の中で総理がおっしゃっていた、リスクをとって果敢に挑戦していくことが大事だ、そのとおりだと思います。

 私は気が弱いので、どうしてもグリーンの向こうのバンカーが気になってしようがありません。今、アベノミクスと言われて、三つの大きな柱で政策を進めておりますけれども、私も、金融政策、成長戦略、賛成であります。ただ、我々が今気にしなければいけないのは、バンカーと言っていいでしょう、財政規律です。

 もし我が国が今これだけ多額の債務を抱えていなければ、多分、そのバンカーを気にせず、思いっ切りサンドウエッジで打てばいいんだと思います。しかし、グリーンの奥に今大きなバンカーが口をあけていて、崖があって、そしてそこにボールが落ちてしまうかもしれない、そんなリスクに直面しています。

 きょう、ずっと議論を聞いていて私が一つ違和感を感じたのは、この時期に、大量の国債の発行を伴う財政政策と、そして大幅な金融緩和を行うこの政策をあわせてやっていることに対するある種の危機感やためらいといったものを、残念ながら、私は安倍総理から感じることができませんでした。

 昭和五十年、大平大蔵大臣が赤字国債を発行した際に、昭和五十年代の前半までには何とかこれを返したいといって苦悩されたという話を聞いたことがあります。あれからもう三十八年、四十年弱がたちますけれども、我々はこの間、国債を大量に発行すること、それが累増していくことに対して、余りにもなれ過ぎたんじゃないでしょうか。そのことから生まれるリスクに対してもっと敏感に、そして、いろいろな経済学者の説明はありますけれども、借金は借金です、後世代に負担を残していることのある種のためらいや恥じらいを常に政策にかかわっている我々は忘れてはならないと私は思っています。

 そこで、総理にお聞きします。

 この時期に大量の国債の発行を伴う大規模な補正予算を編成したこと、その意義と目的、そして、十兆円を超える規模としたことの理由を説明してください。

安倍内閣総理大臣 まず、このデフレの十五年間、ずっとためらい続けてきたんですね。確かに累積債務はあります。我々も当然、財政規律をしっかりと確保していく、そしてプライマリーバランスを黒字化していくという目標を既に出しています。かつて、平成十四年にもその目標を立てて、残念ながら、リーマン・ショックで、その目標に届くことはできませんでした。

 しかし、財政規律を注視するがゆえに、来年度予算については、民主党の時代には税収と公債費は逆転をしていて、公債費が多かったんですが、我々は、公債費よりも税収の方を多くしたわけであります。プライマリーバランスについても、前政権、野田政権のときにはマイナス二十五兆円だったものを、二十三兆円、約二兆円改善しています。そういう努力をしっかりとしていきながら、日本という国に対しての信認は確保しているわけであります。

 そこで、この十兆円についてでありますけれども、十兆円という規模ありきではなくて、復興・防災対策、成長による富の創出、暮らしの安心・地域活性化を重点三分野として必要な予算額を積み上げた結果、国費で約十兆円となったものであります。そして、この規模はデフレ不況からの脱却に資するものである、このように考えています。

玉木委員 今、総理から大切な答弁を一ついただきました。財政規律を考える際に、民主党政権とは違って、国債発行を上回る税収を二十五年度当初予算で達成しているという話がありましたけれども、私は、この財政規律を考える際に、いつも二つの目で見るんですね。それは、常に当初予算ベースで考えます。そして、予算ベースで考えます。どういうことかというと、補正を入れて考えない、決算ベースで考えないということです。

 当初予算ベースで考えていること、予算ベースで考えていることをやっていれば、私は、実は、いつまでたっても財政規律は達成できないと思っているんです。

 ちょっと一枚フリップをごらんいただきたいと思います。

 我々も悩みました。ばらまきだと批判され続け、反省もしました。二〇〇九年のマニフェストには過大なものがあったことは確かです。そんな中で、何とか財政規律を保ち、国債の発行に頼らないで、予算の組み替えの中で政策ができないかということを苦悩し続けてきました。

 ここにあるのは決算ベースの数字です、二十三年度までは。今、ここまでしか数字が出ていません。これを見ていただくとわかるんですが、今総理がおっしゃった、三年連続で民主党政権が、税収を国債発行が上回る当初予算の編成をしたのは、そのとおりであります。しかし、決算ベースで見ていただきますと、民主党が組んだ二回目の予算です、二十三年度の予算の決算ベースで見ると、実は既に税収が国債を上回る状態を達成しています。四捨五入している微妙な差なんですが、四十二・八三兆円と四十二・八〇兆円なんですが、大変微妙な数字です。ただ、予算を編成した時点では、実はこれは大きく税収が下回っています。

 何を申し上げたいかというと、何とかかんとか苦労して、二十二年度、二十三年度、予算編成をし、成長戦略を講じ、財政の正常化に努めてきたのが、一方でこの間の営みだったんです。そう思えないという批判もあるかもしれません。でも、実際これを見ていただくとわかるんですが、二十一年度、これは民主党政権も補正にかかわっていますので、全て我々の政権のせいではありませんが、大変多額の国債を発行しています。税収はそれを大きく下回っています。しかし、二十二年度、二十三年度と平常を取り戻しつつあり、そして、二十四年度でまた何とか税収が上回るかな、まだ決算が出ていませんけれども、いけるかなと思ったら、二十四年度の大型補正が乗ったということであります。

 私は、自民党が悪いとか民主党がいいとかということを言うつもりは全くありませんが、財政再建を着実に進めていくことをどの政権であろうとやらない限り、本当の意味での成長の基盤がつくれないと思っているんです。

 きょうお聞きをしたいのは、二十四年度補正予算についてでありますが、岸本周平議員からも本会議でこの質問が出ましたが、私も予算編成にかかわった経験があります。補正予算は常に財政規律が弱まる傾向にあります。主計局が各省庁とやるときに、当初予算の編成のときはたたきまくります。でも、補正になった途端、同じ人が随分緩やかにお金を出してくれるんですね、査定してくれるんです。そんなことをしてきた結果、私は、日本の財政は緩んできたのではないかというふうに思います。

 そこで、財務大臣にお聞きしたいと思います。

 我々がもう一つ今忘れてはならないのは、我々は、お金が足りないといって、福祉のお金が足りないといって増税を決め、来年から国民の皆さんに消費税の増税をお願いする立場であります。三党合意をしましたから、私もその責任を感じています。そんな中で、今多くの人が感じている素朴な疑問は、お金がないのに何でこんなに借金をして大盤振る舞いができるんだ、これが国民の皆さんの素朴な疑問なんだと思っています。

 査定の責任を負っている財務大臣にお聞きしたいと思いますが、今回の補正予算、真に必要で、緊急で、そして経済成長に資する、そんな予算で構成されていると自信を持って言えますか、大臣。

麻生国務大臣 基本的には、補正予算の方が本予算より緩む傾向があるというのは、それは甚だ緊急性を要する場合が多いので、そういったことになり得る傾向はあると思いますよ。いよいよ困ってどうしようもないから補正予算を組まねばならぬからというときには、かなりせっぱ詰まっていますから、そういった意味では、概算を積んで決めて何とかというような手間をかける時間がないから、物理的にもそういうことになる傾向があるんだと思っております。

 それで、今、今回の補正予算の話をいただきましたけれども、基本的には、今回の補正予算というものは、我々は、今回この補正予算を組まなければ、何といっても、予算編成は大幅にスタートからしておくれていますから、普通十二月の二十八日にはでき上がる政府原案がことしは十二月の二十八日からスタートですから、常識的には三カ月のところを一カ月で一月末に仕上げているという形になりましたけれども、それでも日程的には暫定を組まざるを得ないということになっているんだ、そういった状況もあります。

 加えて、昨年度から、足元が極めて緩んだ状況で経済は動いてきていて、経済の指標は、九月、十月、十一月、いずれも極めて弱かった指標になっておりました。したがって、我々としては、今度の年明け一―三月は極めて厳しいことになるだろうなと思っていましたから、補正はきっちり組まないと日本の経済は完全に中折れすると思っておりましたので、我々は、これはどうしても必要。

 加えて、地方がかなり疲弊している、私はそう思っておりましたので、地方に即効的にお金が散るものというものは、これは何といっても、笹子トンネルというような甚だ悲惨な例がありますけれども、ああいう例は明らかにメンテナンスの手を抜いたからでしょう。公共工事を、十四兆五千億あったものが四兆六千億まで減ったんですから、十兆円減らしているんですよ。それは、いい悪いの話をしているんじゃありません。明らかに公共工事は悪だったんだから、そういうイメージにしたでしょう。民主党がされたんですよ。忘れないでくださいね。

 したがって、そういったものをきちんとやらないと、さらに人が亡くなったから、後というのでは遅いのであって、きちんとするようなことを考えて、我々は確実に出るようなものからスタートさせておると思っております。

玉木委員 我々も、命にかかわる公共事業を否定したことはありません。笹子トンネルは、あれはNEXCOのトンネルですから、私は、公共事業をするにしても、どういうお金を使うのかは、別途考えるべきです。

 これは、ここに石原大臣がいらっしゃいますけれども、道路公団を民営化しました。国から五千億入れるのをやめて、自分のお金で、料金収入で回していこうというのが民営化の精神ですね。そうすると、実は、そういったメンテナンスのコスト、維持管理費も、本来であれば料金収入から出してくる。もしそれが必要だったら、永久有料、そういったことも考えて、会社方式の中で処理していくのが、笹子トンネルを考えるときのソリューションだと私は思っています。

 ですから、笹子トンネルがあるからといって、一般会計の公共事業を単にふやすのは、私は説明が飛び過ぎていると思っています。

 もう一つ言います。

 今、麻生財務大臣から、緊急なものを盛り込んだという話がありました。私はそのとおりだと思います。緊急のものがちゃんと入っていて、これがしっかり景気を下支えするのは否定しません。ただ、そうではなくて、本来二十五年度の当初予算に計上されているのが、たまたま政権がかわって補正予算の枠ができたから、そこにやれといってどんどんどんどん前倒しで補正に計上しているのがあるのが問題なのではないかと申し上げているんです。

 具体例を申し上げます。

 これは、アジア太平洋地域と北米地域の青少年交流という事業です。これを見ていただくとわかるんですけれども、民主党政権時代の二十五年度の当初予算のときには、六十六億円で合計一万四千七百人の北米とかアジアの中学生、高校生を日本に招聘する、それによって知日派、親日派をつくろう、いい事業だと思いますよ、ということで予算要求がされていたんですね。

 これは全く多分同じです。この同じ事業が、名前は変わるんです。JENESYS二・〇になるんですね。これはアジア地域のことを指すんですが、JENESYS二・〇及び北米地域との青少年交流と名前は変わって、ポイントはここです、目的です。緊急経済対策なので、単なる親日派、知日派をつくるでは多分説明ができなかったんじゃないでしょうか。経済効果を最大限発揮できるプログラムとして衣がえして、予算を見てください、百五十億にふえて要求して、ついています。

 外務大臣、この青少年交流プログラムを緊急経済対策として緊急に補正計上しなければいけない理由を教えてください。

岸田国務大臣 本件事業につきましては、この事業の経済効果に着目して補正予算に計上したということです。

 具体的には、この事業を実施することによって、この事業に計上しました予算の約八割が日本国内で消費される、こういった事業の中身になっています。また、この事業によって招聘される方々の国内における消費等の経済効果、ここにも着目をしています。また、この事業を実施することによって、さまざまな効果が期待されます。例えば観光等によって、こうした訪日外国人の増加等による経済効果、こうした点にも着目をしています。

 こうした点に着目をしてこの補正予算に計上したわけですが、この資料にあります、二十五年度、前の政権において計上していた事業との比較について御指摘がありました。前の政権において本予算に概算要求していた事業との比較においては、まず金額の大きさ、指摘がありました。

 この経済効果という部分があると思いますが、中身におきましても、観光庁とか、それから地方自治体の連携、これは前の政権の事業にはなかった部分であります。こうした事業を通じて、国内における日本企業の視察あるいは先進技術に関する視察、こういったものを盛り込む、より経済効果を大きくするということで事業の中身を膨らませています。

 こうした点に着目して補正予算に計上した、こういったことでございます。

玉木委員 きょうテレビをごらんの皆さんもたくさんいらっしゃると思うんですが、アメリカやアジアの子供たちを、中学生、高校生を日本に招聘するプログラムが経済対策なんですかね。私は説明はわかります、でも、やはり苦しいですよ。苦しい。

 しかも、もう今二月ですね。この補正予算が成立したら今月末、どんなに早く執行しても三月ですね。四月から始まる新年度と、一カ月早めてこの招聘プログラムを実施する意義は本当にあるんでしょうか。いや、答弁はいいです。

 要は、私が申し上げたいのは、次に行きますけれども、本当に緊急なものをやったらいいんです。ただ、繰り返し申し上げます、我々は、お金がないといって、増税を国民に今お願いしているんです。そして、一定の財政規模をアベノミクスの一環としてやることも理解できます、デフレギャップを埋めなきゃいけないから。だからこそ、増税をお願いしている立場として、その中身については、より一層高い説明責任が求められている緊張感を我々政治家が持たない限り、財政は破産しますよ。私は、その緊張感がなければ、最終的な中長期的アベノミクスは成功しないと思っているんです。

 我々も反省しています。そのことを正面から捉えて三年間やってきたんです。

 下村大臣にも一件お聞きをしたかったんですが、ちょっと時間がなくなってしまうので……(下村国務大臣「答えます。大切だから」と呼ぶ)では、もう一つ。短くお願いします。

 心のノートという文科省の事業があります。私も中学一年生の息子がいるので、道徳教育は極めて大事だと思っています。私はむしろ、道徳の授業はきちんと教科として位置づけてもいいとぐらい思っているんです。

 ただ、今回補正予算で計上されているこの心のノート、こういう道徳の副読本があるんですね。これは、実は、民主党政権の事業仕分けで、これを全国の小中学生にその数分、配っていたんです、そうしたら、教室の隅で山積みになっていて十分活用されていないというような指摘もあって、これをPDFファイルで今ウエブ版で載せて、必要なときに応じてダウンロードして使えるように、そういう見直しが行われました。

 実は、二〇〇八年、自民党内の無駄撲滅プロジェクトチームというところでも同様の指摘がされて、一定の見直し提言がなされています。

 これが今回の補正で、また紙で配ることが復活したんですね。このことの、これを補正で緊急経済対策として計上していることの意味を手短にお願いします。

下村国務大臣 これは、御指摘のように、今まで、自公政権のときには、道徳の教材として使われていたものです。しかし、民主党政権になって、残念ながら道徳予算がカットされて、これは実際は使われなくなってしまったわけです。

 現在、いじめ等が行われている中で、子供たちに、心のノートを含めた、きちっとした道徳教育、心のあり方、これを教えていくことは大変重要なことだと思います。

 しかし、これが、冊子が今、中断したために、二十五年度の予算を計上しても間に合わないんです。早くやっても、九月以降でないと間に合わない。ですから、これは緊急を要することだと思いましたので、今回の補正予算に入れて、できるだけ早く学校で使うことによって、きちっとした道徳教育をぜひやっていただきたい。

 使われていないというのは、それは教育の問題だと思いますよ。それを無駄だからというのではなくて、もっと使われるような学校教育のあり方を考えるべきだというふうに思います。

玉木委員 こういう答弁になると思うんです。

 大臣、アンケートをとると、九割の学校で心のノートが使われていると言われているんですね。でも、実は、そのうちの四分の一は、もう既にウエブからダウンロードして使っています。ですから、この予算が、本を配る予算がなくなっても、実は心のノートを使った授業は行われているんです。ですから、そこはまさに学校の先生のやり方だと思うんですね。

 そして、急いでやる必要があるんだったら、まさに補正でやるのもわかるんですが、今からやって、印刷して、こん包して、送って、届いたら絶対四月を越えますよね。そうすると、新学期が始まる四月の時点でどの道徳教材を使うかは、学校の先生は三月とか二月に決めないと間に合わないんです。いずれにしても間に合わないんだったら、私は、堂々と二十五年度当初予算で要求すればいい、そのことを申し上げているんです。

 ですから、補正は、いろいろな意味のからくりの集団になってしまうんです。ですから、本当に緊急性のあることを補正に入れるのはいいんですね。でも、先ほど申し上げたように、本来、二十五年度の当初で計上されるものが、補正の枠があいたからといってがさっと来る、この仕組みそのものを変えない限り、財政の規律は緩んだままになってしまうということを心配しているんです。

 そこで、この大規模な予算を組むときに、きょう、ここにお座りの方で、どなたが歳出を抑制するその役割を担っているんでしょうか。本来であれば財務大臣ですね。でも、アベノミクス、積極的な財政そして金融緩和といったら、それは政策として一定のボリュームを財務大臣自身としても確保したい、私はそれは当然だと思うんです。そうすると、歳出を削減していく、あるいは優先順位の低い事業をやめていくというインセンティブを持っている大臣がいなくなってしまうんです。

 私が注目しているのは、稲田大臣、行革の出番なんです。私は稲田大臣に期待しているんですよ。私、考えも非常に賛同できるところもあるし、当選三回で、本当に頑張っていただきたいと思うんです。行革大臣は出世の登竜門ですからね。ぜひ、ここで成果を上げて、私は稲田大臣に本当に頑張ってもらいたい。私もずっと行革をライフワークにしてきているから、ぜひ頑張っていただきたい。

 その上でお聞きをしたいと思うのは、行革についての方向性です。今、補正予算の編成の話をしました。今この審議をしています。この二十四年度補正予算を編成するに当たって、稲田大臣、行革大臣として調整をしたり働きかけをした、何かありますか。

稲田国務大臣 初めて予算委員会で答弁をいたします。今、玉木委員から、エールというか励ましもいただきました。

 私も、本当に、増税をするに当たって、行政改革、行政の無駄を徹底的に排除して、不必要なものは排除をするということは非常に重要な取り組みだと思っております。ただ単に削るだけではなくて、やはり真に必要なものは残しながら削っていくということも重要であるかなと思います。

 この行政改革というのは、本当に、先人のずっと積み重ねがあり、それは、自民党が与党の時代も、また民主党政権の時代も積み上げられたもの、そのよき伝統を守りながら新しいものを創造していく、真の改革を進めていきたいと思っております。

 私は行政改革担当大臣として、例えば民主党政権で行われていた行政事業レビュー、それは、透明性、外部性、公開性、そして各府省が全事業について自分の事業を見直して、そして不要なものは次の予算に反映していく取り組みであるというふうに認識をいたしております。

 行政改革推進本部も一月二十九日に立ち上げ、その下に行政改革推進会議も設置をいたしまして、行政事業レビューについては、その検証とまた改善の方法などを検討しながら、実施に反映をしてまいりたいと思っております。

玉木委員 ぜひ頑張っていただきたいと思うんです。行革村の一人としては、稲田大臣、ぜひ頑張ってくださいね。

 行政事業レビューはぜひ残していただきたいと思うんです。民主党の仕分けは皆さんは嫌いだと思いますから、あれはもう、もしやめるならやめてもいいと思うんですが、行政事業レビューと、それのもとになる……(発言する者あり)聞いてください、行政レビューシートというのがあるんですよ。これは、五千を超える国の税金が入っている事業を一定の形式でまとめて、全部整理してあるんです。そうすると何が便利か。

 例えば、下村大臣、さっき言った、民主党がなくした心のノートの本じゃない事業ですね、道徳の総合支援事業、あれは二十三年度の執行率は七四%なんです。四分の一使い残しているんですよ、本を配らなくても。そういうところがなぜわかるかというと、この行政レビューシートの同じところに不用率や執行率が出てくるので、そこだけばあっと見てみると、執行率の低いもの、不用が立っているものを見つけやすいんですね。

 ですから、こういういいものは、もちろん多少変えてもらってもいいんですが、ぜひ残してもらいたいと思います。

 もう一つ、ぜひ引き継ぎも兼ねてお願いしたいのは、特別会計の改革です。これは、特別会計の仕分けをやって、私、全ての特別会計を見ました。そしてそれを一年間かけて法律に書き込んで、閣法で特別会計改革法案を出したんです。でも、ねじれ国会もあって、一度も審議をしていただけず、解散になって廃案になっています。

 一つ、特に、これは総理にもお聞きをしたいんですが、道路特定財源、例の自動車重量税は、与党の税制大綱の中で特定財源のような書きぶりがあるんですけれども、あれは特定財源に戻るんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 特定財源を復活させることはありません。

玉木委員 今、ひょっとしたら戻るんじゃないか。私は、安倍総理は改革派だと思っているので、ぜひ頑張っていただきたいんですよ。

 その上で、これは、余計な疑惑をかけられない明確な方法が一つあるんです。それは、特定財源を管理する財布である特会をなくすことなんです。旧道路特会や空整特会が一緒になった社会資本整備事業特会というのがあります。これは、我々がつくった閣法の法案の中では、社会資本整備特会は廃止になっています。二十四年度末までに廃止の予定の閣法を出したんですが、成立していません。

 稲田大臣、社会資本整備特会の廃止を含む特別会計改革法案をぜひこの国会で成立させてほしいんですよ。我々は協力をします。議員立法で出してもいいと思っています。もう完成して、一回各省合い議も済んだものがあるんですね。ですから、ぜひこの社会資本整備特会の廃止を含む特会改革について、稲田大臣の御見解を教えてください。

稲田国務大臣 この特別会計改革についても、平成十八年の行政改革推進法、そして十九年の特別会計に関する法律に基づいて改革を進めております。また、今委員が御指摘になったように、民主党政権下でその法案を出されて廃案になっていることも承知をいたしております。

 また、先ほど総理が答弁なさったように、自動車重量税が道路特定財源ではない、一般財源であるということは承知をいたしておりますし、そのとおりだと思っております。

 その上で、社会資本整備特別会計を含む特別会計の改革についても取り組んでまいりたいと思っております。

玉木委員 古い自民党に戻っているのではないということを証明する最もいい方法だと思うんですね、社会資本整備事業特会を廃止することは。ですから、ぜひこれは進めていただきたいというふうに思っているんです。

 古い仕組みを改めて、新しい時代に対応するように物事を変えていくのが行政改革です。このことは不断の努力を積み重ねないと、次々と古いものがどんどんどんどん新しく生まれてくるんです。このことをぜひ、私は稲田大臣が中心になって内閣を率いるぐらいでやっていただきたいし、それを安倍総理、行政改革、そして議員定数の削減を含む政治改革も含めて、改革を前に前に進める、その改革安倍晋三をぜひ見せていただきたいんです。我々は、それだったら堂々と協力をしたいと思いますので、ぜひ最後に、安倍総理の行政改革にかける思いを聞かせてください。

安倍内閣総理大臣 安倍内閣としては、行政改革を極めて重要視しております。だからこそ稲田朋美大臣を任命し、我々、全力で取り組んでまいりますことをここにお誓い申し上げます。

玉木委員 終わります。

山本委員長 この際、岸本周平君から関連質疑の申し出があります。前原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。岸本周平君。

岸本委員 民主党の岸本周平です。

 一昨日の代表質問の続きを一問一答の形式でさせていただきたいと存じます。

 午前中も前原委員から、金融政策の出口戦略について指摘がありました。これは本当に、私は、本当にアベノミクスは現在までに効果を上げていますので、代表質問でも申し上げたように、評価はいたします。しかし、この出口戦略が非常に難しい。それと、これは後ほどまた谷垣大臣にも聞きたいんですけれども、本当に今、財政規律が守られているのか、これは本当に厳しい局面に来ていると思うんですね。

 例えば、日本銀行は現在でも相当国債のファイナンスをしているんですよ、実は。日銀が余り仕事しない、仕事しないという声も多かったですけれども、これは、政治家が自分たちのやるべきことをやらずに日銀に責任をかぶせていたところもあるんです。

 例えば、基金による資産の買い入れがございます。これは三年目になっています。基金による資産の買い入れはこれまでに既に約四十兆円、そして、長期国債や国庫短期証券でも三十兆円を超えております。ことしの目標は、長期国債で二十兆円、国庫短期証券でも十五兆円の積み増しを目指しているわけであります。これまでのいろいろなところでの議論は、この基金の買い入れの量を議論してきたわけであります。

 総理は午前中、日本のこれまでのデフレは主に貨幣現象で説明できるということをおっしゃいました。そういう部分もありますけれども、そういう御認識を持たれたことについての総理の金融システムの基礎的な御認識をお伺いしたいと思います。

 今、日銀は基金によって長期国債を買い入れしているということを申し上げましたが、実は、日銀はこれまでも、基金とは全く関係なく、定期的に長期の国債を買い入れてきております。これは、大体毎月幾らぐらい買い入れていて、そもそもどういう理由で日銀が定期的に長期の国債を購入しているのか、基礎的な金融システムですので、総理の御認識をお伺いしたいと思います。御存じですか、金額。

麻生国務大臣 あらかじめ御質問を伺っていませんでしたので、今のその数字を掌握しておりません。

岸本委員 あらかじめ質問通告をするほどの問題ではございません。日本の総理であり財務大臣であれば、このような基礎的な金融システムもわからずに物価上昇二%にした方がいいとかという議論をするのはいささか乱暴だと思います。山本幸三先輩は御存じだと思いますけれども。

 つまり、毎月、日銀は一・八兆円、約二兆円の長期国債を定期的に買っております。年間で二十一・六兆円。これは、二〇〇九年三月までは毎月一・四兆円で、年間は十六・八兆円でありました。

 なぜこういうことをするかといいますと、当たり前ですが、経済が成長しますと、当然、通貨の発行高がふえてまいります。通貨の発行高というのは日本銀行券です。日本銀行券は、日本銀行からすると負債になります。負債がふえていきますから、当然、バランスシートを守るためには資産である国債を買わなければいけない、こういうことなんです。だから、経済が成長する国では、定期的に中央銀行は国債を買って資金を供給するんです。逆に言うと、経済を成長させるために資金を供給するものですから、ある意味、これを成長マネーと呼ぶ場合もあります。

 そうなりますと、ことしだけでも二十二兆円買うんです。長期国債だけでも二十兆円買うんです。ということは、ことしの新規国債の発行高はほぼ全額、日本銀行がファイナンスしているんです、既に。これは去年もそうなんです。よろしいですか。私たちは、今そういう国債のファイナンスがされている中で、例えば今、馳先生がおっしゃいましたが、では、この十年間、日本の経済は成長しているんでしょうか。名目はマイナスです。実は、成長マネーは必要なかったんです。だけれども、これは金融緩和の目的でやり続けていたということであります。

 総理は、昨年、建設国債を直接日銀に引き受けさせるという発言を一回なさいました。大変批判がありましたので撤回されましたけれども、今言いましたように、マーケットからとはいえ、日本銀行は膨大な財政ファイナンスを行っているのであります。このこと自体、財政規律を大きく損なっていると考えております。

 それともう一つ、午前中の前原委員の続きでありますけれども、一九九五年以降、生産人口は減っております。二〇一一年までで約七%、約一割ですね。二〇一〇年代も毎年一%ずつ生産年齢人口は減り続けます。これも約一割であります。例えば、一人当たりの生産性が一から一・五というのが大体の今エコノミストの相場観でありますけれども、一方で、毎年一%ずつ生産年齢人口が減っていくわけでありますから、どう頑張っても、日本の生産性の向上は全体でゼロから〇・五ということになるわけであります。これでは、幾ら金融緩和を行ったり財政をばらまいても、なかなか経済の成長は見込めない。

 ただ、後でもう一度申し上げますが、人口動態の変化だけでもないんです、デフレの原因は。貨幣現象もあるでしょう、人口動態もあるでしょう、そして非ケインズ効果というものがあるんです。

 甘利大臣、御担当ですから、非ケインズ効果について国民の皆さんに簡単に御説明ください。

甘利国務大臣 例えば、財政が悪化している国にあって、財政再建を徹底的にやると、将来への不安が少なくなって金利が下がる、そうすると設備投資がふえる、資産効果等で消費もふえる。つまり、財政再建を通じて景気が回復するという論であります。

岸本委員 今の御説明で大体当たっているんですけれども、基本的なことを申し上げますと、ケインズ効果というのは時間の概念がないんです。それで、新古典の経済学だと時間の概念が出てきます、フォワードルッキングな。そこの差なんです。

 もうちょっとかみ砕いて言いますと、一つは、まさに社会保障の将来が非常に不安だ、本当に年金をもらえるんだろうか、こういうような不安があるものですから、今の現役世代が消費を抑える、貯蓄に回す、そのことでどうしても経済が浮上しない、それはある意味、非ケインズ効果の説明になるわけでありますが、それで、社会保障と税の一体改革を民自公の三党合意で行ったんです。このことによって、社会保障と税の一体改革ができれば国民の皆さんも安心して消費をされるだろうということが、非ケインズ効果の一つとして、これは三党合意で、増税はするんだけれども、まさにそういう一つの成果として我々は議論したわけであります。

 もう一つ、逆から言いますと、財政赤字が民間の貯蓄を取り崩す、食ってしまう、食い潰す、こういうことも非ケインズ効果として説明ができます。つまり、財政赤字がふえ過ぎて、民間の資本蓄積を阻害してきたんです。

 二〇〇九年以降、実は、民間の純貯蓄よりも財政赤字の方が大きくなりましたものですから、ついに私たちの国は国民純貯蓄ゼロになりました。戦後、営々として私たちの先輩たちが国民の富を蓄積してきたんです。二〇〇九年にできなくなってしまっているんです。

 それからもう一つ、同じことの裏表ですけれども、ほぼ軌を一にして、二〇〇八年度ですけれども、いわゆる民間の総固定資本形成、簡単に言えば設備投資と思ってください、それが固定資本減耗を下回りました。減価償却と思ってください。つまり、減価償却の方が投資よりも大きい会社なんです。したがって、純資本ストックも、二〇〇八年度以降、減少しています。

 ですから、これで経済が成長するのは非常に難しいわけです。そこで、成長戦略が大事という、アベノミクスの三本の矢の三本目。これは、野田内閣でも日本再生戦略として、だからこそ、経済成長、頑張ろうじゃないかと。

 これは先ほど来の議論にも出ていましたけれども、経済を成長させるのは、財政は単なる所得の前借りです、金融緩和は需要の前借りです。ですから、これだけでは生産性は上がりません。おっしゃったとおりです。閣僚の皆さん、御認識されています。

 そこで、規制改革しかないんです。歯を食いしばって規制改革をして、民間部門にイノベーションをしてもらう以外、生産性は上がりません。ですから、TPPも受け入れるしかないんです、私たちの国は。

 先ほど御議論がありました。私は、二十五年間、官僚として自民党政権と一緒に働いてきましたから、自民党はしたたかな政党なことはよくわかっています。必ずTPPはやられると思います。それはまさに、聖域なき関税撤廃を前提としたものはやらないということは、聖域ある関税撤廃にするからやりますということをおっしゃっているに違いない。我々も応援しますよ。ぜひTPPに前向きに取り組んで、日本全体の生産性を上げようじゃありませんか。

 そのためにも、まず財政赤字を減らさなければならないわけであります。

 銀行が、これはとても難しいんですけれども、例えば、これまでデフレで資金需要がなかったものですから、貸出先がなくて、まあ国債でも買っておくかという部分もあったと思います。一方で、日本銀行がこれだけ完璧な国債ファイナンスをしていますから、国債のマーケットは銀行から見るとすごい魅力的なんです、安心ですから。そうすると、銀行がみずから企業を開拓し、産業を開拓して、リスクをとって貸し出しをするよりも、安全、安心で確実に利益の出る国債を買っていたがために成長分野にお金が回らなかったということもあり得るわけであります。

 そういうことについては、本当にこれから真摯に予算委員会を通じて議論をしていきたいと思います。

 そこで、御質問いたします。

 物価上昇が二%の世界を目指されています。我々も応援します。そのときに、物価が二%になった世界で国債の金利は何%ぐらいなのか、どのように想定されているのか、総理の御見解をお伺いいたしたいと思います。

麻生国務大臣 二十五年度の予算の金利の話を聞いておられるんだと思いますが、足元の金利、いわゆる十年債の国債の金利はおおむね一%ぐらいで推移しているということも御存じのとおりなので、したがいまして、大体これまで、平成十年度以降ですと、年間でその変動が起きる場合は最高でも〇・八%という過去の経緯がありますので、一%プラス〇・八%で合計一・八%というのを想定いたしておるのが今の私どものあれです。

 ただ、御存じのように、長期金利というのは簡単にそれだけで決まるわけじゃなくて、物価上昇とか短期金利とか、あとは政府の債務の残高とか、いろいろなものがありますので、物価との関係だけで一律に論ずることはちょっと困難なんですが、いずれにしても、今言われたように、私どもとしては、足元の金利が一%ぐらいというか、この三年間の平均ですけれども、したがいまして、それプラス〇・八で計算いたしております。

岸本委員 足元はわかっておるんですが、物価が今低いんですね。二%になった世界で国債金利は何%ぐらいとお考えかという質問だったんですが。

 これは、今おっしゃったように、きのう、きょうですと十年物でも〇・七%台です。大変安定しています。それでいきますと、仮にゼロ近辺の物価で〇・七だとすると、物価が直ではないとおっしゃいまして、それはそうなんですが、仮に引き伸ばせば二・七%。つまり、三%ぐらいの金利になるだろう。これはマーケットもそう見ています。

 ただ、リスクプレミアムが日本にはありませんので、ひょっとして、財政規律の問題とか出口戦略が非常に難しいということから、三年後か四年後に物価が二%になったときに、リスクプレミアムが乗れば三を超えていくこともあるだろうということであります。

 今は本当にマーケットが株高の債券高なんですね。これは、リーマン・ショックの後、欧米の銀行が本当にお金をじゃぶじゃぶ出したときに起きましたし、日本でも過去起きたことはあります、バブルのときに。しかし、中長期的に株が高くて債券が高いということは続きません。そうなりますと、株が上がった方がいいとしたときには、債券は値段が下がります。つまり、金利が上がっていくわけです。この前も言いましたように、アベノミクスがうまくいって物価が上がっていけば、必ず金利もつれて上がっていく。

 これは野田内閣時代に出した試算ですけれども、仮に金利が一%上がりますと、国債の利払い費は一年目に一兆円上がります。二年目に約二・四兆円、三年目に約四兆円上がります。簡単な計算です、残高がわかっていますから。これが二%上がりますと、大体倍ですけれども、一年目で二兆円、二年目で五兆円、三年目で八・三兆円ということになります。

 これは案外相当なスピードで実は金利の利払いがふえていくわけでありますが、本当に金利が二%、三%となっていったときに、予算が、国債費が組めますか、麻生大臣。

麻生国務大臣 それは、その状況によって税収やらいろいろなものも変わっていきますから、はなから全然とれないだろうというようなことはないのであって、そういった今のような前提で、確定の状況でなかなか答弁をいたしかねますが、いずれにいたしましても、そのときは経済も常識的に伸びているというのを考えないといかぬと思います。

岸本委員 全くそのとおりでありまして、例えば、後年度の歳出歳入の負担の予測を必ず毎年財務省は出します。麻生大臣も、今度の当初予算の予算委員会の審議のときに出されると思います。そこで推計します。あるいは、経済財政の中長期試算というものを必ずどの内閣も出してきました。

 官僚はどうするかというと、利払いがばっとふえていきますから、当然、バラ色の経済成長を書きまして、バラ色の経済成長で税収がばっと上がって、フレームは守られる。どう計算しても、そういうものしか出さないんです。

 これは、基本的には政府はそういうものですし、政治家は、自戒を込めて言えば、やはりできるだけ国民の皆さんに短期的には喜んでいただきたいと思うものですから、どうしても財政規律が緩むんですよ。だから、日本以外の先進国では、そういう政治家のさがを含めて、政府のそういう傾向を法律で縛るんです。これが財政責任法なんです。

 例えば、イギリスが二〇一一年に予算責任法及び会計検査法というのを出しています。これはどういうことかというと、政府は予算の前提である中長期の見通しを含めて経済成長率を甘く甘くするものですから、あのイギリスでもうまく財政再建ができなかったんです。だから、財務省とは別に、二〇一〇年に独立の予算責任局をつくったんです。それを法定化したんです。ここが独立の委員会として、経済成長をバラ色に見ないように、だって、財政再建するためには経済見通しは保守的に厳しく見積もった方がいいに決まっているわけですよ。そういう委員会をつくっているんです。

 ここで、ぜひお伺いしたいと思います。

 谷垣法務大臣、私は谷垣財務大臣に課長としてお仕えし、本当に財政規律をお守りになる姿に感銘を受け、尊敬申し上げております。そして、自民党もすばらしい。野党のときに財政責任法を出しているんです。そのときの最高責任者は谷垣大臣であります。

 谷垣大臣、私の気持ちはわかっていただけると思うんですけれども、財政規律を守るための財政責任法、どういうお気持ちで出されたのか。今でも、政権をとられても、やるべきだとお思いですか。お答えください。

谷垣国務大臣 その任にあらざれば事を論ぜずというのが私のモットーでございますが、若干過去に関与していたこともございますので、その限りでお答えをしたいと思います。

 自民党の中で、財政規律を守らなければならないという議論は長いいろいろな議論がございまして、最近の議論でいえば、平成二十一年度税制改正の附則百四条というのもその議論でございました。それから、今お触れいただきました税と社会保障の一体改革、私どもが三党合意という形で賛成をしたのも、そのような気持ちが背後にございます。

 そして、今お触れいただいた財政健全化責任法というのも、私が総裁のときに議員立法として出しまして、何度も経緯がありますが、実は、そこにおられる林芳正農水大臣が提出者でございました。

 これは、十年かけて、政策経費はそのときいただく税収で賄える姿に持っていこう、つまり、プライマリーバランスを確保しようということを中核にしていろいろ書いたものでございますが、私は、やはりこういう気持ちをしっかり前に進めていくということは必要ではないかと思っております。

 そして、安倍政権におきましても、経済財政諮問会議で、どのような手法で財政規律を図っていくか議論していこうということになっておりますので、私はそれに期待しているものでございます。

岸本委員 ありがとうございます。

 法務大臣ではあられましたけれども、本当に今の自民党内閣で財政規律を最も大切にされている政治家と思ったものですから、一政治家として御質問をさせていただきました。

 それで、あと二つだけ御質問をさせていただきます。

 一つは、今言いましたように、経済財政の中長期試算というのは、その内閣の立ち位置、姿勢を示すためのとても大事なものであります。これは、昨年の野田内閣では一月二十四日に発表して予算審議に供しておりますが、甘利大臣、安倍内閣の経済財政の中長期試算はいつお出しになるんでしょうか。

甘利国務大臣 過去、毎年定期的に出されておりますが、ただ、若干時間があいているときは基本要件が変わっているときですよね。政権交代されたときには少し間があいたと思います。今回もそういう状況でありますから、それを勘案して、適切な時期に検討したいと思っております。

岸本委員 適正な時期というのはいつごろなんでしょうか。

 といいますのは、これも代表質問で申し上げましたが、安倍総理は、財政規律を極めて重要であると認識されており、プライマリーバランスの黒字化を目指すと何度も明言されておられ、来年度予算編成について、日本経済再生と中長期的に持続可能な財政措置の双方を実現していく道筋を検討していくと明快におっしゃっておられますので、できるだけ早く、もちろん政権交代してできるだけ早くそれは出していただかないと困ります。参議院選挙の後ということでは困ります。

 具体的な時期をできる限りおっしゃってください。

甘利国務大臣 短期は景気刺激、中長期は財政再建という路線を出させていただいております。

 そして、これは、まず諮問会議で骨太の方針というのはこれからも出していきたい、いこうと考えております。そこであらあらの方向を示す。そして、さらに具体的に、より具体化したものを多少のタイムラグを置いて出す。

 それは、いろいろな要素があります。骨太を目途に、それから成長戦略もその時期近くに上がってまいります。それらを勘案して経済財政の姿を描いていかなければならない。そのぐらいのタイムラグはいただきたいと思っております。

岸本委員 それでは、できるだけ早目にお出しをいただきたいと思います。

 最後に、これも代表質問で申し上げました。また、今、玉木委員も、いい補正予算もあるんですけれども、どうしても補正予算について費用対効果がきちんとわからない。今、経済効果があるあるということを例えば岸田外務大臣はおっしゃいましたけれども、そうおっしゃるのであれば、安倍総理がおっしゃったように、費用対効果を見て予算を計上されているはずですから、ガラス張りの予算編成だと総理もおっしゃっているわけですから、ぜひこの予算委員会に補正予算の各事業の費用対効果分析の成果、数字を出していただきたいと思いますが、財務大臣、いかがですか。

麻生国務大臣 総理の、たしか本会議の答弁だったと思いますが、費用と効果の比率を今後見えるようにしていくことは重要、そういうぐあいに答えられた答弁の話をしておられるんだと思います。

 いずれにいたしましても、補正予算の事業を含めまして、緊急経済対策の施策につきまして、執行状況それから事業の状況等々をフォローアップして、政府を挙げてしっかり取り組んでいかねばならぬと思っておりますが、今回の補正事業の選定に当たりましては、これは経済効果だけではなく、いわゆる復興の加速化や防災の観点、また、あるいは国民生活の安心の確保などを勘案して行ったものでありますので、一律に費用と効果の比較に基づいて選定しているものではないというのはもうお気づきのとおりだと思っております。一律に定量的な費用対効果に基づいて予算を策定したわけではないからであります。

 したがって、一つ一つの事業について費用対効果を定量的に予測をお示しすることは困難であると思っております。

岸本委員 もちろん、防災関係はそうかもしれませんが、経済効果があるからとあれだけ答弁された以上、できるものについては定量的な費用対効果分析をお出しいただくように、委員長、理事会で御協議をお願いいたします。

山本委員長 後刻、理事会で協議いたします。

岸本委員 それでは、私の質問はこれで終わります。今後ともよろしくお願い申し上げます。

山本委員長 これにて前原君、原口君、辻元君、長妻君、玉木君、岸本君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明八日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十分散会


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