衆議院

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第4号 平成25年2月12日(火曜日)

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平成二十五年二月十二日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 山本 有二君

   理事 伊藤 達也君 理事 岩屋  毅君

   理事 遠藤 利明君 理事 小此木八郎君

   理事 萩生田光一君 理事 馳   浩君

   理事 長妻  昭君 理事 山田  宏君

   理事 石田 祝稔君

      あかま二郎君    秋元  司君

      井野 俊郎君    伊藤信太郎君

      今村 雅弘君   うえの賢一郎君

      衛藤征士郎君    大塚  拓君

      大西 英男君    大野敬太郎君

      奥野 信亮君    勝沼 栄明君

      門  博文君    金子 一義君

      金子 恵美君    小泉進次郎君

      小林 鷹之君    塩崎 恭久君

      関  芳弘君    武村 展英君

      渡海紀三朗君    中山 泰秀君

      西川 公也君    西銘恒三郎君

      野田  毅君    原田 義昭君

      比嘉奈津美君    船田  元君

      細田 健一君    牧島かれん君

      牧原 秀樹君    宮川 典子君

      宮路 和明君    務台 俊介君

      村井 英樹君    保岡 興治君

      山田 賢司君    山本 幸三君

      若宮 健嗣君    大西 健介君

      岸本 周平君    後藤 祐一君

      玉木雄一郎君    辻元 清美君

      原口 一博君    前原 誠司君

      石原慎太郎君    坂本祐之輔君

      重徳 和彦君    中田  宏君

      中山 成彬君    東国原英夫君

      村岡 敏英君    浮島 智子君

      佐藤 英道君    高木美智代君

      浅尾慶一郎君    井出 庸生君

      柿沢 未途君    佐藤 正夫君

      笠井  亮君    高橋千鶴子君

      玉城デニー君    村上 史好君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   総務大臣

   国務大臣

   (地方分権改革担当)   新藤 義孝君

   法務大臣         谷垣 禎一君

   外務大臣         岸田 文雄君

   厚生労働大臣       田村 憲久君

   農林水産大臣       林  芳正君

   経済産業大臣       茂木 敏充君

   国土交通大臣       太田 昭宏君

   環境大臣         石原 伸晃君

   防衛大臣         小野寺五典君

   国務大臣

   (復興大臣)       根本  匠君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当) 山本 一太君

   国務大臣

   (男女共同参画担当)   森 まさこ君

   国務大臣

   (社会保障・税一体改革担当)           甘利  明君

   国務大臣

   (行政改革担当)     稲田 朋美君

   財務副大臣        山口 俊一君

   環境副大臣

   兼内閣府副大臣      井上 信治君

   厚生労働大臣政務官  とかしきなおみ君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    山本 庸幸君

   政府特別補佐人

   (人事院総裁)      原  恒雄君

   政府参考人

   (原子力規制委員会委員長)            田中 俊一君

   政府参考人

   (原子力規制庁次長)   森本 英香君

   参考人

   (日本銀行総裁)     白川 方明君

   参考人

   (東京電力株式会社代表執行役社長)        廣瀬 直己君

   予算委員会専門員     石崎 貴俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月十二日

 辞任         補欠選任

  うえの賢一郎君    武村 展英君

  小池百合子君     細田 健一君

  塩崎 恭久君     宮川 典子君

  関  芳弘君     山田 賢司君

  中山 泰秀君     牧島かれん君

  西川 公也君     勝沼 栄明君

  西銘恒三郎君     小泉進次郎君

  岸本 周平君     後藤 祐一君

  玉木雄一郎君     大西 健介君

  坂本祐之輔君     石原慎太郎君

  重徳 和彦君     村岡 敏英君

  浮島 智子君     高木美智代君

  柿沢 未途君     浅尾慶一郎君

  佐藤 正夫君     井出 庸生君

  宮本 岳志君     笠井  亮君

  村上 史好君     玉城デニー君

同日

 辞任         補欠選任

  勝沼 栄明君     門  博文君

  小泉進次郎君     西銘恒三郎君

  武村 展英君     うえの賢一郎君

  細田 健一君     務台 俊介君

  牧島かれん君     大野敬太郎君

  宮川 典子君     村井 英樹君

  山田 賢司君     関  芳弘君

  大西 健介君     玉木雄一郎君

  後藤 祐一君     岸本 周平君

  石原慎太郎君     坂本祐之輔君

  村岡 敏英君     重徳 和彦君

  高木美智代君     浮島 智子君

  浅尾慶一郎君     柿沢 未途君

  井出 庸生君     佐藤 正夫君

  笠井  亮君     高橋千鶴子君

  玉城デニー君     村上 史好君

同日

 辞任         補欠選任

  大野敬太郎君     中山 泰秀君

  門  博文君     金子 恵美君

  務台 俊介君     比嘉奈津美君

  村井 英樹君     井野 俊郎君

  高橋千鶴子君     笠井  亮君

同日

 辞任         補欠選任

  井野 俊郎君     小林 鷹之君

  金子 恵美君     西川 公也君

  比嘉奈津美君     大西 英男君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 英男君     小池百合子君

  小林 鷹之君     塩崎 恭久君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 平成二十四年度一般会計補正予算(第1号)

 平成二十四年度特別会計補正予算(特第1号)

 平成二十四年度政府関係機関補正予算(機第1号)


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     ――――◇―――――

山本委員長 これより会議を開きます。

 平成二十四年度一般会計補正予算(第1号)、平成二十四年度特別会計補正予算(特第1号)、平成二十四年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、参考人として東京電力株式会社代表執行役社長廣瀬直己君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として原子力規制委員会委員長田中俊一君、原子力規制庁次長森本英香君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山本委員長 本日は、安倍内閣の政治姿勢等についての集中審議を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小泉進次郎君。

小泉(進)委員 おはようございます。自由民主党の小泉進次郎でございます。

 きょうは、私にとっては与党として初めての質問の機会をいただきまして、本当にありがとうございます。

 今、私は自民党の青年局長という任にありますが、安倍総理も元青年局長であり、麻生副総理も元青年局長であります。

 今、私たちの青年局では、毎月十一日に福島県、宮城県、岩手県、この被災三県を回る活動をやっておりますが、きのうも、福島県の警戒区域内、そしてその後は福島市内で避難生活をしている方々との意見交換もさせていただきました。

 きょうは、五十分間、質問の時間をいただいておりますので、復興の問題が一つ、そして社会保障が一つ、そして三つ目がTPP、この三つについて質問をさせていただきたいと思いますが、まずは復興の問題をやらせていただきます。

 きのうも自民党の青年局の仲間たちと警戒区域の中に入りました。私にとっては去年の六月以来の警戒区域の中の視察でありましたが、改めて、二〇一一年三月十一日のあのときのままとまっている状況を見て、またそこから戻って、福島市内で避難生活をしている方々の思いに触れ、福島県民の皆さんが失ったものの大きさと、私たちが本当の復興に向けてやらなければいけない、その責任の重さに改めて触れることができました。

 安倍政権というのは、原発事故以来、また東日本大震災以来、初めての自民党政権であります。そのスタートに、改めて、かつての自民党政権時代、間違った安全神話のもとに原発を推進してきたその責任を、私は免れることはできないと考えています。おわびと反省から改めて始めるべきじゃないでしょうか。総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 昨年十二月の十六日、総選挙によって、我が党、公明党が過半数を得たわけでありますが、ちょうどこの日が、収束宣言をしてからの一年目に当たる日でございました。

 私も、総理に就任して直ちに、最初の訪問地として迷うことなく福島を選びました。そして、そこでお目にかかった人々、ずっとふるさとから離れて困難な生活を強いられ、そしてなかなか帰れるめどが立っていない、そういう不安の中で生活をしている方々から、いろいろなお話を伺いました。

 その中で、改めて我々は、政権与党として原子力政策を推進してきた、そして、それはやはり安全神話の中においての、安全神話に陥った原子力推進政策であった、このことは深刻に反省しなければならないと思います。改めて、このことによって深刻な事故が起こって、多くの方々に大変な被害を与えている、おわびを申し上げたいと思います。

 そして、この事実は、私たちは今後もずっと背負っていかなければいけない事実であります。そのためにも、そこから生まれる責任感によって、一日も早く廃炉、除染、そして、多くの方々がふるさとに帰れるように政策を進めていくことが私たちの使命だろう、改めてそう思っているところでございます。

小泉(進)委員 残念ながら、廃炉までの時間の道のりは長いと思います。すぐに廃炉まで持っていけるか。一日も早くその日を迎えるために、除染、そして与党の一員として安倍政権をしっかりと後押しをしてまいりますが、安倍政権の皆様方の世代で、どうか、除染そして廃炉への道筋をしっかりとつけていただきたい。そして、私たちの青年世代で、廃炉まで、しっかりと最後まで見届ける責任を果たしていきたいと思います。

 そういったことも踏まえて、まずは福島のこと。きょうは、福島出身でいいますと、復興大臣の根本大臣、そして森大臣も福島県選出であります。

 まず森大臣に伺いますが、きのうの福島市内で開催をした私たち自民党の青年局の一周年の報告会、これには復興大臣そして森大臣も御出席いただきましたが、その席に出席をしていただいた福島市内のリンゴ農家の阿部さんの訴え、私は忘れることができません。七百本のリンゴの木を一本一本、高圧洗浄機で除染をして、ようやく実った大きなリンゴをきのう届けていただきました。しかし、現状はまだ厳しく、風評被害もまだおさまってはおらず、震災前、原発事故前の収入は半減状態がずっと続いています。

 そういったことを考えたとき、改めて、食の風評被害をどういう形で払拭していくか。大臣の責任であると思いますが、具体的な取り組みを教えていただきたいと思います。

森国務大臣 小泉議員、昨日、福島県に自民党青年局で来ていただいて、ありがとうございます。

 ちょうど一年前の昨日でしたね。小泉議員が福島に来ていただいて、そして、今御紹介のあったリンゴ農家の阿部さんのリンゴの木を、小泉議員と私で一緒に高圧洗浄機で除染をしました。

 福島県は今も、食品の風評被害、厳しいものがあります。実は、直後は応援、支援がありましたが、実際問題、ことし非常に厳しい状況にあります。昨日も阿部さんが、利益は半分、コストは七、八割、赤字ですとおっしゃっていました。

 そのような中で、安倍内閣、大臣就任時の総理の指示書で、食品に関する風評被害の担当を、私、消費者大臣に任命をしていただきました。食品の風評被害の担当を明確化したということ、これは非常に意義深い前進だと思っています。

 私の担当する消費者庁では、補正予算に六十・二億円、これを積み増しまして、食品と放射能との関係、これを消費者の皆さんにしっかり理解をしていただく、福島県のものでも、福島県の近隣地域のものでも、市場に出回っているものは安全です、検査をしたものは安全ですということを消費者の方々に理解をしていただくリスクコミュニケーションの増進のための予算をつけたところです。

 また、私の就任直後に、こういった食品と放射能に関する消費者理解の増進チームというチームを立ち上げまして、現在、現場の意見を聴取しているところでございまして、四月には意識調査や生産者を含めたヒアリングの結果を取りまとめまして、消費者理解のための効果的な施策を、関係省庁や関係自治体、これが大事なんですけれども、地域の皆様と連携しながら進めてまいりたいと思っているところです。

 また、当所管の国民生活センターと共同で、放射性物質の検査機器を、福島県内でいえば百五十三台貸与しておりまして、こちらの方の活用もしていただいているところです。

小泉(進)委員 ありがとうございます。

 きのう、大臣からは、就任されてから初めて大臣の名刺を頂戴しましたけれども、大臣としての担当、これが、私が今まで見たことのない担当の名前でありました。女性活力・子育て支援担当、こういった名前の担当での就任大臣というのは初めてだと伺いました。

 今、福島県では、やはりお子さんを持つお母さんの不安が非常に大きいと聞いておりますが、こういった部分も子育て担当大臣としての役割があると思いますが、こちらについての取り組みはいかがですか。

森国務大臣 肩書について聞いていただいて、ありがとうございました。

 これは総理の強い思い入れがございまして、女性活力を生かして経済成長と復興をなし遂げていこうということ、それから、子育てについても、少子化問題をもっと前向きに、若い方々に子育ての喜びを実感していただく、また子育て世代を含めた全ての世代の方々に子育ての大切さを認識していただこう、そういう思いの中でつけられた初めての肩書でございます。

 福島県を初めとする放射能に苦しむ地域では、子育てに不安を抱えるお母さん、お父さん、またはステークホルダーの皆様の、非常に深刻な状況がございます。福島県に残って子育てするのも、福島県から県外に避難して子育てするのも、どちらもつらい、悩みの中での子育てでございます。

 そのような中で、今回の補正予算におきまして、厚生労働大臣、田村大臣と協議をいたしまして、安心こども基金を積み増しまして、例えば、屋内遊戯場の中で思い切って子供たちを遊ばせることができるように、そのような施策に使えるような基金を積み増しまして、その認識もしっかりと自治体の方にしていただけるような指示を出したところでございます。

小泉(進)委員 今言った屋内遊戯場の整備など安心こども基金を積み増したという報告がありましたけれども、与野党合意でつくった子ども・被災者支援法の基本方針というのがなかなかまだ定まっていかないという報道もあります。ぜひ、これからそれを具体化して、与野党合意なんですから、前に進めていただきたいと思います。

 きのう、福島市内の仮設住宅にお住まいの皆さんから直接お声を聞いた声の一つが、一体いつ仮設住宅から出られるのかと。この声というのは、福島県に限らず、宮城県、岩手県でも非常に強いものがあります。

 今、自民党では、復興加速化本部という本部ができて、その本部長を大島理森先生がやっておりますが、私もその本部の中に一員として入り、三度目の正月は希望を持てるようにお過ごしいただかなきゃいけない、そのためにはとにかくまずは住宅だ、そういった思いで、与党として安倍政権の復興施策を全力で後押ししなきゃいけないと思っています。

 いつ復興住宅に移れるのか、この見通しを示すことが、まず今、来月で二年になる、そういった長期間、仮設住宅にお住まいの皆様に対する希望のスタートじゃないですか。復興大臣、いかがですか。

根本国務大臣 お答えいたします。

 小泉委員、今もいろいろお話ありましたように、小泉議員、そして自民党の若手の皆さん、毎月十一日に被災地を訪ねていただいて、そして被災地の声を直接聞いてこられました。私は政治家として非常に大事な姿勢だと思います。我々も政治の責任としてしっかり取り組んでいきたいと思います。

 今、小泉委員からお話ありましたように、私も被災地に何度も足を運んでおります。総理も直接行かれて声を聞かれました、一番声を聞くのは、住宅再建を早く、一日も早く戻りたい。実は、住宅再建は、その意味では非常に私は重要な課題だと思います。今、住宅再建の現状がどうなっているのか、まずその点からお話をしたいと思います。

 災害公営住宅、いわゆる復興住宅、昨年の十月末までは九百四十八戸の工事着工件数でした。そして、二十五年一月末現在で千九百三十八戸の工事に着手をしております。さらに約四千戸が設計中であります。ここに来て本格的な工事着工の時期を迎えております。

 ただ、仮設住宅にお住まいの方は、情報がない、見えない、町が立ち上がっているその姿が見えない。ですから、いつ自分たちは戻れるんだろうか、そういう不安、不満を私も感じております。大事なのは、総理からも、復興住宅の加速、これは私も直接指示を受けました。ですから、今我々がやっているのは、どんどん着工がふえていますが、これをどう仮設住宅の皆様に伝えるか。

 今我々が考えておりますのは、市町村ごとに、しかも市町村の各地区ごとに、いつ復興住宅が建ち上がるか、具体的な工程表、いわゆる見える形でお示しをしたいと思っております。やはりそこに希望の光が見えるわけですから、ぜひ具体的にわかるように、着工の時期、完成の時期を含めてお示しをしていきたいと思います。

小泉(進)委員 今の復興大臣の答弁ですと、地区ごとに復興住宅が、工事着手から建設、また入居まで、こういった流れを具体的に、今仮設にお住まいの皆さんにしっかりと届くように、伝わるように具体化していく、見える化をしていく、そういうことですから、一日も早くそういった説明、また形にして、今仮設住宅にお住まいの皆さんに届けていただきたいと思います。

 一方で、復興住宅の建設、これに向けてはさまざまな問題があるのも事実です。マンパワーの不足、そして資材の不足、土地の権利の調整の難航、こういった問題が山積していて、それら一つ一つの問題は、きょう要求大臣として御出席をいただいています谷垣法務大臣、そして太田国交大臣、また新藤総務大臣、多くの所管大臣の皆さんに出席いただきましたが、それぞれの省庁で、この復興住宅の着工や、また新しい被災地のまちづくりに向けて、どのような課題があるからなかなか前に進まないのか、簡単に御紹介いただきたいと思います。

谷垣国務大臣 今、小泉さんから、現地に行かれてなかなか進まない状況を見てこられた、その観点からのお話がございました。

 私の所管で申しますと、復興住宅を建てるとか、あるいは潰れてしまった町をもう一回立て直すにしても、土地の権利関係を明確にしておかないと、誰と話をしていいかもわからない。しかし、実際、津波でさらわれてしまって生きておられるかどうかわからないと、権利者が特定できない。あるいは、お亡くなりになったことははっきりしていても、相続ができていない、相続人が誰なのかわからない。あるいは、これは被災地には限りませんが、相続の協議が、遺産分割の協議が行われていないで何代もたっている事例なんかになりますと、相続人は、ある程度推定できるにしても、膨大な数に上がってしまって、全国至るところに住んでおられると、なかなかそれが進まないということがございます。これをはっきりさせませんと、物事の処理が進まない。

 民法に財産管理制度がございます。不在者の財産管理、あるいは相続財産管理。これは、家庭裁判所が自治体と相談しながら、それを管理する人を選定して、そして今のような土地の権利関係を確定していくということが必要でございます。

 したがいまして、法務省としては、最高裁判所の事務総局にいろいろなそういう情報を提供したり、また、実際のところ、管理人をお願いするとしても、弁護士やあるいは司法書士といったような方々にお願いする場合が多いんだろうと思います。そういう方々にいろいろ協力を要請したり、精力的にやらなければならない課題がたくさんございまして、権利関係を明確にして今の物事の処理を進めていく、さらに力を尽くしたいと思っております。

太田国務大臣 なぜこれほど復興がおくれているか。全体的には、私も認識し、現場に行きますと、幹線道路を初めとするそうしたものについてはかなり進んできている。しかし、二つ、まちづくりということと、住宅がおくれている。

 町は、まさに、被害があってなかなかそこに建設がされていない、計画があってもなかなかうまくいかない、こういう状況が全体的な状況だろうと思います。

 今、法務大臣から話がありましたように、その一つは、権利関係という、土地の収用問題です。これが、今までは、反対している人に対して強制収用をかけるというようなことが、土地収用というとすぐ頭に浮かぶんですが、現在のところはそうではなくて、県では今まで想像を絶するような極めて大量の人に、一人一人権利関係を確認しながらという、そして土地収用委員会にかけるというようなことがなかなか難しい。

 法的なことは今法務大臣からお話がありましたが、私どもとしては、そこの運用面において、この収用に至る過程の中で、書類が多いとかいろいろな手続が山ほどあります。この隘路を脱するということが極めて大事で、そうした面では、運用面での迅速化ということを図りたい。

 そのためには、今、釜石で具体的に作業が進んでおりまして、一つモデルをつくろうと。モデルをつくったならば、そこでこういうことをやればいいんだということがわかって迅速化されるということで、今取り組んでいるところです。

 もう一つは、お話しになりましたように、資材が不足している、人が不足しているということです。資材の不足と人の不足の中で、なかなか入札が不調になっているというようなこともあったりします。

 例えば、生コンが不足している。地域において、何が不足しているかということは違うんですね。それぞれの状況等、復興には何が必要か、何が隘路になっているかというものは違うんですが、この資材、例えば生コンということについていえば、例えば仙台の南の方には砂とか砂利という骨材が不足している、そこには船で持ってくるようにして、広域から持ってきて、そこにヤードをつくるというようなことを直ちにやらなくてはいけないとか、さまざまなそうしたことがありまして、公共的にプラントをつくるとかいうことも含めて、しっかり生コン不足等に対応したいというふうに思っております。

 各県で、これも協議会をつくったり、地元の業者を含めて、県そして国交省を初めとして、そうしたところがリードをして、会議体を持ったりしてその調整をするということになっておりますので、そこに持ち込んで、よく調整をして、ここの地域では何が不足しているのか、資材でもちょっとずつ違いがありますから、そういう対策をしているところですので、ぜひとも御理解をいただきたいというふうに思っています。

 それから、人の面が非常に多くて、職人さん、あるいは技術者、技能者がいないというようなことになっているということも大きな問題となっておりまして、そういう点ではしっかり、ロットを大きくして、技術士というのが配置される基準があったりいたしますけれども、そうしたことをきちっと両方ともできるというようなことをやったり、あるいは、地元でJVをしっかりつくるということで調整したりというようなことも含めまして、これも地域で協議体をつくったりするということでやっておりますので、徐々にこれは進んでくるというふうに思っています。

 いずれにしましても、今委員が言っておりました人の不足、そして資材の不足、そしてまた土地収用の問題、この三つは非常に大事な問題でありますので、政府を挙げて全力を挙げていきたいというふうに思っています。

新藤国務大臣 被災自治体のマンパワー不足、これが極めて深刻な状態になっているということであります。

 それは、何十年もかけてつくってきた町が一瞬にして壊れたわけです。これを復興しなくてはいけない。予算ベースにおいても、私も過日、福島県へ行ってまいりましたが、福島の自治体でも三倍から五倍の需要がある。それから、宮城県などでは十倍から十五倍、このような業務量を抱えているという状態があります。そして、職員自体も被災しました。にもかかわらず、皆さん、自分の家をおいても仕事をして、そして残業までして徹夜で、今でもそうです、徹夜状態が続いている。

 こういうことでありまして、この自治体のマンパワーをどうやって支援するか、補充するかということが重要な課題、仕事を進めていく上でのまず最低限のやらなきゃいけないことなわけです。

 実際には、まず、全国市長会それから町村会などに協力を得まして、総務省として、被災自治体への職員派遣をお願いいたしました。これまでで延べ八万人を超える人たちが支援に入っています。一日単位でいうと大体千六百人前後、今でも入っているわけであります。ですから、これは、できる限りのことをやっているし、また、全国の自治体が大変協力いただいているが、いかんせん絶対量として足りない、こういうことであります。

 二十五年度については、今、千三百八十人の人材確保の要請があるんです。それに対して、現状で、自治体からの派遣可能人数が四百三十人、それから、自治体で任期つきの採用として臨時の職員を採用しよう、これが約二百五十人。ですから、今、大体七百人弱の方々の手当てが、めどが見えている。なので、半分ぐらいはめどがついていますから、あとの半分をどうやって埋めていくかということになります。

 これはきょう、いい質問をいただいたと思いますが、このテレビをごらんいただいている自治体の皆さん、ぜひそういった観点から、厳しい状況、また、それぞれの自治体も仕事を抱えていますから簡単ではないんですが、全国に呼びかけていきたい。

 私たちとしては、それにあわせて、被災地の市町村で働く意欲のあるOBの皆さんに、どうですか、働いていただけませんか、こういうリストを新しくつくろうと。リストをつくって、その上でそれを被災自治体に提供したい、こういうこともやろうと思っていますし、復興庁と連携いたしまして、この自治体の職員採用について、広報をもっと充実しなきゃいけない。我々総務省としてできる限りの支援をしていきたい、このように思っています。

小泉(進)委員 それぞれの御説明、ありがとうございました。

 確かに、そういった諸課題に対する取り組みをやっているのはわかるんですが、恐らく、今テレビで見ている被災地の皆さんは、それだけ問題点もわかっていて、それだけ整理されているんだったら、もうとにかく早く結果を出してくれ、そういった声が一番だと思います。

 改めて、それぞれの課題を前に進めていく過程においては、しっかりと、仮設住宅にお住まいのお一人お一人まで、進捗状況や取り組みの状況がわかるような広報また発信をしっかりとしていただきたいと思います。

 私も、今まで毎月歩いてきて、取り組んでいることなんだけれどもちゃんと伝わっていないことが多くあることをよく実感しています。発信の面、改めて強化していただきたい。

 そして、この復興の問題、最後に総理、ぜひ、安倍内閣の最重要の課題の一つがこの復興の加速です。なぜ復興の加速が必要なのかといえば、被災地、これからのまちづくりを担う若い人たちがどんどん町から出ていっています。早く町を再建しないと、早く復興を加速しないと、いざ復興した後に、それを担う若い世代が町に残っていないという現状になりかねない。そういった危機感を持って加速を実現していただきたいと思いますが、最後に、総理の被災地の復興の加速へ向けての決意を述べていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今日までなかなか復興が進んでこなかった理由の一つが、やはり省庁の縦割りがあったと思います。特に除染においては、環境省、復興庁、両方にまたがっていた。これを一本化いたしました。根本大臣のもとで除染を行っていく。

 そして同時に、現場主義。どうしても今まで、東京にわざわざ陳情に行かなければいけない、各省庁に分かれているから幾つもの省庁にたらい回しにされていて、なかなか物事が前に進んでいかないという中において、省庁の縦割りを排して復興庁に一元化をしていくということと、そして、二本社体制、福島の復興総局をつくり、スタートさせました。前事務次官がそこにいて、そこで多くのことを決めることができるようにいたしました。

 除染のスピードも上げながら、そして、やはり先ほど来議論があるように、なかなか住宅ができない。先般、土曜日に岩手そして宮城に参りまして、仮設住宅の方々から同じようなお話を伺いました。全然先が見えないじゃないか、そういう切実な声でありました。しかし、実際はずっと買収交渉も進んできて、いよいよ整地に入っていますが、なかなかそれは、そういう仮設住宅では見えない。特に、ずっと買収の調整をしているときには、もっともっと見えないということだったんだろう、こう思います。

 根本大臣とそこに伺いまして、これからは、そういう意味において、工程表をしっかりと皆さんにお示ししていく。今どの辺にいますよ、どこに入ったらいよいよ移ることができますよということをお示ししていきたいと思います。

 そしてまた、先ほど関連の三大臣からお話がありましたが、さまざまな課題もあります。あるところでは、工事の申請をして十三カ月間もかかった。平時であれば、慎重な審査というのも必要でしょう。でも、今、工事スタートまで十三カ月間は余りにも長いですね。これは短縮させていこうということを、我々はその場で決定いたしました。

 さらに、掘れば埋蔵文化財等が出てきて、どうするか。農地の転用の問題等もあります。そういう問題については、もっともっと私たちは加速化させていきたいと思います。

 多くの地域で、だんだん地域の首長さんたちの工夫を生かしながら進んでいるところもあります。そういううまくいっているところを、どんどんいろいろなところに、なかなか進んでいないところにも取り入れていくという方法もあるんだろう。

 年内に、本当に目に見える形で、どんどん進んでいるな、私たちはいつぐらいまでにちゃんとこの仮設を出て移ることができるな、そう思ってもらえるように、全力を尽くしてまいります。

小泉(進)委員 ありがとうございます。

 総理がこの前、岩手、宮城に行ったときに、陸前高田にも行ったと思いますが、私も先月、一月十一日に陸前高田、大船渡に行ってまいりましたが、やはり首長さんは大変苦労していますよ。中には、現地の首長という立場だからこそ踏み込みにくいさまざまな問題があります。どうか、そういった現地で頑張っている首長さんの背中を押すような政府の取り組みを期待しています。

 きょう二つ目の質問に行きたいと思います。

 田村厚労大臣に御出席をいただいておりますが、私が野党のとき、去年の三月の六日の予算委員会で、野田総理そして岡田副総理、また当時の小宮山厚労大臣に質問させていただいた問題が、七十歳から七十四歳の方の医療費の窓口負担を本来どおりに戻すべきだという問題です。そのときの、当時の総理、副総理、厚労大臣の答えは、みんな、そのとおりだなんです。やりたいなんです。だけれども、なぜ進まないのかというと、党の反対だと言うんです。

 私はこの問題、野党のときから本来どおりに戻すべきだと訴えてまいりましたから、与党になっても同じことを伝えなきゃ意味がありませんので、改めて大臣に、この問題についてやらせていただきます。

 七十歳から七十四歳の方々の医療費の窓口負担は、特例で今一割です。本来であれば二割なんです、法律どおりにいけば。だけれども、一割に据え置くために、毎年二千億円もの巨額の財源を、補正予算という形で毎年入れているのが現状です。

 今テレビを見ている七十歳から七十四歳の方々は、この問題は関係ありません。これからの方々が問題があるんです。

 そのことを考えたときに、二千億円という税金の使い道が、二割の負担に戻さずに一割に据え置くために二千億円を毎年使うことと、それとも、二千億円あればさまざまなことができますよ、これは後ほど具体的に触れますが。そういった説明を果たせば、私は国民の理解を得られると思う。そういった方向性でやってほしいと思いました。

 大臣、今の現状はどうお考えですか。

田村国務大臣 今、委員から、この窓口負担、七十歳から七十四歳の方々の部分でありますけれども、本則に戻すべきではないか、これは二割負担という話であります。

 今、特例で一割負担を続けておりますが、党の中でも、委員のように、そういう御意見を言われる方々がたくさんおられるということも理解をいたしております。社会保障審議会の中でもそういう御議論はあったんです。世代間の公平ということを考えれば、それは二割にするのが当たり前じゃないか、こういう御意見もある。

 しかし一方で、やはり、本来特例で一割になる、そういう期待をしていながら二割という話になれば、あれ、一割だと思っていたのになと思われる、そういう七十歳から七十四歳、特に七十歳になられる方でありますけれども、こういう方々もおられる。そういう心配もあるんですね。

 ですから、いろいろな議論がある中で、実は今回の補正予算、非常にスピード感を持って、しかも短期間でこれを決定しなきゃいけないということでございました。でありますから、とりあえず当面の間、これを一割負担のままにいたしております。

 これから、低所得者の方々に対する対策等々もしっかりと考えながら、しかし、そちらもまた財源の要る話でありますから大変なんですけれども、とにかく、委員のおっしゃられるとおり、早くこれは二割、原則に戻すべきだ。必ず戻しますから、早くそのような形に戻すべきだということで努力してまいりたいというふうに思います。

小泉(進)委員 必ず戻すという答弁でしたので、必ず戻していただきたいと思います。

 私も、今までいろいろ質問を野党時代にやりましたけれども、必ずというのは政治の世界では必ずしも必ずじゃないというのを経験していますので、ぜひ自民党はそうじゃないようにお願いしたいと思います。

 三つ目にあるTPPの問題もそうなんですが、七十歳から七十四歳の医療費の窓口負担についても、私は誤解があると思います。それは、よく七十歳から七十四歳の方々の負担を一割から二割に引き上げと言いますが、これは引き上げじゃないんですよね。今三割負担の方が、一割になるか、それとも二割の負担になるか、引き下げなんですよ。そういったところからしっかり説明して、もう社会保障をこのままというわけにいきませんよ。財政再建だってしなきゃいけない。予算だって、これからどんどん膨張させるわけにはいきませんよ。その中で、切り込むべきところ、まさに聖域なくやっていただきたいと思います。

 ちなみに、この二千億円、一割据え置きのために使っているこの二千億という額の規模感、例えば、今、待機児童の問題等ありますが、保育所の受け入れ児童数を、仮に一万人増加させるために必要な費用がどれぐらいと積算されているかというと、約二百三十億円。ほぼ十分の一ですよ。

 この問題をとっても、単純にどっちがいいかじゃないですけれども、一割据え置きに使う二千億円の税金の使われ方という納得感と、これからの子供たち、子育ての皆さんに待機児童解消のために使いますという使う措置と、それぞれ賛否両論あるけれども、どっちがいいですか、そういう説明をしたら、私は、きっと理解が得られるんじゃないかな、そんなふうにも思っています。

 若者の就職支援だって同じです。今、地域若者サポートステーションというのがありますけれども、このサポートステーションは現在百十六カ所。しかし、もしもこれをもっとふやしてやろうと思っても、余りお金はかからないんですよ。例えば、今進路が決まっていない方々をちゃんと進路が決まるように千人ふやそう、千人ですよ、その千人ふやすために必要な費用は幾らかというと、一・四億円ですよ。二千億円と、千人の進路を決めるのに一・四億円。

 今、待機児童の問題とこの若者の雇用の問題、それだけじゃありません。iPSの山中教授、有名になりましたが、今回文科省は十年間で一千百億円の支援と言いましたけれども、十年間で一千百億円ですよ。七十歳から七十四歳の一割据え置きは、単年度、一年間で二千億円ですよ。

 こういったあらゆること、何事も、やれば必ず批判も伴います。だけれども、与党というのはそういうものだと思いますから、むしろそれを前向きな説明に変えて、大臣の答弁のように、必ずこれをやっていただきたいと思います。

 改めて、必ずということでよろしいですか、大臣。

田村国務大臣 今委員おっしゃられましたとおり、個々人で見れば、決して負担が上がるという話ではありません。七十歳になって三割から一割になるのか、窓口負担が二割なのかということでありますから、下がるという意味ではおっしゃるとおりでありまして、確かに、高齢者、だんだんお年を召されてくると、一人当たりの医療費の負担額はふえてまいります。しかし、そこは、七十歳から七十四歳、七十五歳以上、かなり違うんですね。七十歳から七十四歳は年間五十五万ぐらいです。七十五歳以上は八十八万以上。そう考えると、本来の二割という窓口負担はやはり意味があるわけであります。

 一方で、今、地域若者サポートステーションでありますとか子育て対策、大変PRいただきました。こういう前向きなものにしっかりとお金を使っていくということは必要なことであります。

 もちろん、今、補正予算でやっている一時的なものと恒常的に使うものとは若干その予算立てが違うわけでありますが、しかし、お金という意味では色はついていないわけでありますから、必ず本則二割負担に戻すということ、これをしっかりと念頭に置きながら実行してまいりたいと思いますので、もう少しばかり、いろいろな意味での調整、お時間をいただければというふうに思います。

小泉(進)委員 三つ目の質問に行きます。

 TPPの問題ですが、これはよく賛否両論、党内でも割れているといいますし、民主党の時代も与党の中でも割れていた、そういう問題でありますが、私は、速やかに交渉参加すべきだと思っています。

 これは日本がどうあるべきかということにもかかわると思うんですが、私は、日本というのは、与えられたルールのもとで最大限パフォーマンスを高めることは物すごく得意だと思います。だけれども、自分たちでそのルールをつくるという発想が今まで足りなかった。このTPPというのも、この東アジア太平洋、この地域をどういうルールのもとに繁栄と安定に導いていくのか、それを考えたときに、私は、日本を、つくられたルールの中でうまく生きる日本から、ルールをつくる日本へと変えなきゃいけないと思っている。

 そういったことを考えたとき、総理は来週訪米するそうですから、この交渉参加というのは政権の判断ですよ。最後の批准は国会ですよ。だけれども、これは総理の判断だと思いますから、速やかな判断をすることが、この問題で賛成をしている人も反対をしている人も、いざ総理が交渉参加を決めれば、私は、必ず賛成側、反対派、一つになれると思っています。なぜなら、交渉が始まれば、交渉のテーブルに着けば、その交渉の中で最大限の日本の国益をかち取ろう、これは賛成側、反対側、共有している思いだからです。

 総理は、この問題をどう考えておられますか。

安倍内閣総理大臣 私は、自由な貿易環境、これは日本にとって明らかに国益である、このように考えております。ですから、第一次安倍内閣において、EPA、FTAを積極的に進めてまいりました。特にオーストラリアとのFTAについては、党内にも多くの反対があったわけでありますが、交渉をスタートさせました。まだ残念ながら批准に至っていないのは、残念なことであります。

 このTPPについては、大変志の高い、マルチの、環太平洋の経済のいわば共同体をつくっていくわけでありますが、その中において、自民党はさきの選挙で、聖域なき関税撤廃を前提条件とする以上、交渉には参加をしない、これは公約で約束をしていることでありますから、これをたがえては民主党と同じになってしまう、これをたがえるわけには私たちはいかないと思っています。

 その中で、来週予定されている日米首脳会談において、今までずっと事前協議を行っています。その事前協議の中でさまざまな感触も得ていますよ。でも、その中において、私は日本の代表として、米側のトップのオバマ大統領との間の首脳会談において、この我々の約束を、国民との約束をたがえることにはならないという感触を得ることができるかどうかが重要な点であります。その感触を得ることができた後に、さまざまな影響等を考えて、参加するかどうかという最終的な判断を私はしたい、このように思っております。

小泉(進)委員 その感触がもしもつかめたら、私は、即断即決でいいと思っています。その答弁は求めません、私の考えですから。そういうふうに思っていますので、私は、与党の側で、TPP交渉に参加すべきという立場で総理の決断を期待したい、そういった思いであります。

 一方、自民党の公約でもありますが、聖域なき関税撤廃を前提にする限り反対だと。私は、聖域なき関税撤廃ということ、これも一部誤解があるなと思うんです。今、十一カ国が交渉のテーブルに着いていますね。仮に、これが聖域がないとしたら、何のための交渉なんですか。それぞれ各国が守るべき聖域をつくり上げようと思っている場だから、交渉をするんじゃないですか。

 もしも、本当に聖域がないというものがどういうものか考えると、TPPの枠組みという紙がアメリカ側から各国に示されて、これがのめるかのめないかですと。仮にそういうものだとしたら、私は、聖域なきというものなんだろうな、それはきついなと思いますよ。

 だけれども、交渉の参加で、今交渉をやっているということは、これはみんな聖域をつくろうと言っているんじゃないですか。だから、この聖域なき関税撤廃という前提でという、これも非常に大きな誤解を生んでいるのかな、そういうふうに私は思っています。

 もう質疑時間が終了したということですが、私は、来週の訪米、またその後も、総理がTPPの中で日本が最大限とれるものをかち取ろうと前向きに進めていただけることを期待しています。

 自民党の今までのことを考えれば、日米同盟の基軸で戦後ずっとやってきて、自由貿易の確立をしてきて、この地域を平和と安定に、また、経済発展をなし遂げました。そういったことを考えると、これからの自民党というのは、自分たちから主導的にこの地域のルールづくりに参加していこう、そういった自民党のあり方をぜひ模索していただきたい、そんな思いを最後に申し上げて、本日の質問とさせていただきます。

 五十分間、ありがとうございました。

山本委員長 これにて小泉君の質疑は終了いたしました。

 次に、高木美智代君。

高木(美)委員 公明党の高木美智代でございます。

 本日は、安倍政権の政治姿勢についてということで、当面する諸課題につきまして質問をさせていただきます。

 まず初めに、レーダー照射問題についてでございます。

 去る十九日と三十日、東シナ海におきまして、中国海軍フリゲート艦による火器管制レーダー照射という極めて重大な事案が発生をいたしました。これは戦闘行為に入る直前の事態であり、国連憲章にも抵触するおそれのある行為で、極めて遺憾と言わざるを得ません。

 まず、防衛大臣にお伺いいたします。

 報道によりますと、小野寺防衛大臣は、国会の答弁で、火器管制レーダーの照射は国連憲章上の武力の威嚇に当たる行為だとの認識を示したとのことですが、真意をお伺いしたいと思います。

小野寺国務大臣 お答えいたします。

 二月七日、衆議院予算委員会において、質疑に際して、私から、火器管制レーダーの照射が武力による威嚇に当たるのではないか検討すべきである旨、答弁をいたしました。

 これは、一般に、火器管制レーダーの照射が、国際法上、国連憲章で禁じられている武力の行使や武力の威嚇に相当するか否かという論点があり得るとの考えを述べたものであります。この論点については、その行為が行われた全般的な背景、その行為の主体の目的や意図がどのようなものであったか、その行為の対象がそれをいかに認識したかということを総合的に判断する必要があると考えております。

高木(美)委員 断定ではなく、そうした論点、また総合的な背景から検討をしていくべきだという、そのような見解であられたということでよろしいのでしょうか。

 特に、二回のうち、三十日の海上自衛艦の護衛艦「ゆうだち」に対するレーダー照射は、ちょうど我が党の山口那津男代表が訪中しまして、習近平共産党総書記と会談をし、日中関係改善に向けて首脳同士が話し合いによって解決していくという、その道筋で合意したという直後のことです。私も強い衝撃を受けました。同時にまた、行っていなければどうなっていたかということも懸念をするわけで、推察をするわけでございます。

 今回の事件をめぐりましても、すぐに自衛隊の部隊行動基準の見直しを主張する意見がありますが、憲法で否定する交戦権の行使につながるおそれもあり、慎重であるべきではないかと考えます。

 まず、重要なことは、今回のような不測の事態が起きることがないよう、一日も早く両国間で海上連絡メカニズムを構築する必要があります。中国は、昨年六月、年内運用開始で合意していたにもかかわらず、協議を中断したままとなっております。早急に協議再開を呼びかける必要があると思います。

 また、あわせまして、東シナ海の海上の安全確保のために、日中間だけではなくて、懸念を示している米国等も含め、それも加わったマルチでのホットラインや連絡体制の構築が急務と思っております。

 岸田外務大臣、また小野寺防衛大臣の見解を求めます。

岸田国務大臣 まず、御指摘の海上連絡メカニズムにつきましては、日中の防衛当局間で早期の運営開始を目指しているところですが、外務省としましても、防衛当局間のこうした協議の進展を期待しておりますし、しっかり支援をしていかなければいけないと思っています。

 そして、同様のメカニズムとしましては、二〇一一年に日中高級事務レベル海洋協議、こうした取り組みがあります。これは立ち上がっておりますが、その後、動いておりません。

 こうしたメカニズムも使わなければいけないと思いますし、また、今、日中のみならず、米国も加えたという御指摘もございました。米国ということを考えますときに、例えば、米国そして中国も参加いたします東アジア首脳会議、こうした枠組みを活用するなど、紛争の平和的解決、航行の自由、さらには国連海洋法条約を初めとする国際法規の遵守、こうした基本的なルールの重要性につきまして、地域ですとか国際社会がしっかり共有していく、こうした雰囲気をつくっていくことが重要だと考えております。

小野寺国務大臣 先生御指摘の海上連絡メカニズムにつきましては、昨年六月に、日中防衛当局で、目的を、相互理解及び相互信頼を増進し、防衛協力を強化するとともに、不測の衝突を回避し、海空域における不測の事態が軍事衝突あるいは政治問題に発展することを防止すること、この目的で、年次会合、専門家会議、ホットラインを結ぶこと、そして艦艇、航空機間の直接交信ができることで合意をいたしました。

 防衛省としましては、近年の東シナ海における中国の活動の急速な活発化を踏まえ、海上連絡メカニズムの早期の運用開始が大変重要だと思っております。

 このような観点から、とまっておりますこの協議につきまして、ハイレベルで確認し、運用を開始すべく、日本側から累次の機会に働きかけておりまして、直近では、今月七日に北京で防衛駐在官から中国国防部に、八日に外務次官から在中国大使に申し入れを行っております。事務方を含め、協議を実施するにはまだまだ至っておりませんが、いずれにしても、早期の運用開始、これが大変重要だと思っております。

 また、御指摘があります多国間でありますが、アジア太平洋地域の安全保障環境の一層の安定化のために、日米同盟も相まちまして、二国間、多国間の安全保障協力のネットワーク、これが大事だと思っております。

 このため、例えば、拡大ASEAN国防相会議、これはADMMプラスといいますが、これを通じて海上安全保障に関する議論を積極的にしてまいり、多国間の協力を構築していきたいと思っております。

高木(美)委員 今、御答弁をいただきました。

 威嚇には威嚇をとおっしゃる方がいらっしゃいます。しかしながら、それでは余りに危険な衝突を生みかねない。あくまでも、対話の扉を開く日中首脳会談の実現に向け、あらゆる努力をすべきだと考えております。

 世界の平和と日本の国益と両面から判断できてこそ、私は真の政治家ではないかと思っております。安倍総理の日中の関係改善に向けました御見解につきまして、質問をさせていただきます。

安倍内閣総理大臣 先般の委員会でもお答えをいたしましたが、日本の外交姿勢というのは、礼儀正しく、物腰は物静か。しかし、これからは、国益を侵された場合はしっかり言うべきことは言っていくということでありますが、当然、我々は、礼儀正しく物静かであります。威嚇に対して威嚇ということは、はなから考えていないわけでございます。

 問題は、ああしたレーダー照射、極めて挑発的、危険な行為ですから、そこから偶発的な事態に進展しないように、先ほど委員が指摘されたように、両国の当局間でちゃんと連絡できるように、そうした関係をつくっていくことが極めて重要であろう、このように思います。かつて、冷戦時代のソビエト、米国でもできていたわけでありますから、日本と中国でできないわけはないわけであります。こういう状況になっても、日本はつくりたいということを先方に申し上げておりますし、ドアは常に開いています。

 ですから、何とか中国側が戦略的互恵関係の原点に戻っていただいて、何か課題があっても、問題があっても、あるいは問題があるからこそ、全ての窓口において、さまざまな窓口において対話を続けていくということが重要ではないか、このように思います。

 そういう意味におきましては、先般、山口代表が訪中をされて習近平総書記と会談をされた。その中において、ハイレベルの首脳の対話が必要であるということを認識された。これは極めて私は重要であろう、このように思います。

 こうした方向に向けて、どこかの段階でハイレベルあるいは首脳間の対話が実現されるように我々も努力をしていきたい、このように考えております。

高木(美)委員 次に、中小企業支援につきまして伺います。

 安倍総理は、就任以来、中小企業を視察されました。また、物づくりの中小企業の若手経営者の方たちとも交流があると伺っております。

 日本の中小企業につきましてどのような認識をお持ちか、まず伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 この五年間、地元の皆さんだけではなくて、全国の中小企業、小規模の物づくりの方々と交流する機会を得たんです。大変みんな元気がよくて意欲的なんです。しかし、かといって、新卒の人たちが自分たちの工場にはなかなか就職しようとしないという中で、一生懸命工夫をしているんですね。随分、工場はきれいにしているし、事務所なんかは本当にしゃれた雰囲気にしている。でも、それでもなかなか来ないけれども、頑張っていきたいなという意欲は失わないし、大企業にはできないことをやろうとしています。

 そういう人たちが元気を出していくことが日本の底力になっていきますし、日本の経済をまさに底辺で、基盤で支えていただいているんだろうな、このように思います。特に地方はそうだと思います。そういう人たちも、長引くデフレと円高の中で苦しみながら一生懸命頑張っているわけでありますが、安倍政権としては、そういう方々の活力を引き出していくことを中心的な課題にしていきたいと思います。

 今回の補正予算におきましては、ものづくり補助金を復活させまして、これによって、一万社の物づくりの中小企業、小規模事業者の試作開発や設備投資などを支援していくことにいたしております。

高木(美)委員 我が党も、中小企業の活力なくして日本の活力はないという姿勢で、今日までずっと一貫して中小企業支援に取り組んでまいりました。また、私は、前回の安倍政権のときに経済産業大臣政務官を務めさせていただきまして、そのときからさらに強く中小企業の支援に取り組ませていただいております。

 今回、自公政権が発足をいたしまして、ロケットスタートで経済は上向きの兆しを見せ始めております。町中の気分も明るさを取り戻し始めております。しかし、あくまでもそれは全体としてということであって、中小企業を初め弱いところには今、細心の注意を払い、この上昇の流れから置き去りにされることのないように政策運営が大事だと思っております。

 中小企業は、景気の厳しさの痛みを真っ先に受ける、そして、よくなったときの恩恵はまた最後に受ける、こういう特質があります。特にこれからは年度末倒産が起こりやすい時期でもありますので、事業規模に応じた対策、支援を十分に講じる必要があると思います。

 中でも、金融円滑化法につきましては、本年三月の期限を目前に、地域の中小また小規模事業者から日々不安が高まっており、延長を望む声も多く寄せられております。

 まず、金融円滑化法の利用実績につきまして、金額のボリュームに応じた事業者数のデータにつきまして、金融担当大臣にお伺いいたします。

麻生国務大臣 今、高木先生のお尋ねの、借入金額の規模に応じた事業者数のデータというお話でしたけれども、これは金融円滑化法上、個々の金融機関に対して、いわゆる小規模事業者に対する対応というのを御心配いただいてのことだと思いますが、今、小規模事業者は、小さな金融、信金とか信組ということになりますけれども、取引先に対して貸し付け条件の変更というようなことを行われる場合に関しては、その実行率がほかの業種と同様に九割を超えるという水準であることを今現在見ますと、円滑化法は借り手の規模の大小にかかわらず実行されているということになってくるんだと思っております。

 さらに、信用組合とか信用金庫に対して、業界として、その業界ごとに、円滑化法の期限が到来した後も、いわゆる貸し付け条件の変更や経営者の改善支援にきめ細かく対応していくように各信用組合なり信用金庫の中においてきちんと申し合わせができておりますし、また、私どもも直接、信金、信組の理事長等に対して、政府としてきちんと取り組むように申し込んでおります。

 そういった対応はできておりますので、一応のものができ上がりつつあると思っておりますが、さらに細かく対応していかねばならぬと思っております。

高木(美)委員 大臣、今御答弁いただきましたが、利用実績について、どういう規模の事業者が、また、それは恐らく、借入額を見れば規模が大体推察できると思います。このトータルの中で、利用実績で、金額のボリュームに応じた事業者数のデータは、私は金融庁からも、また中小企業庁からも、これはないというお返事をいただいております。

 それではやはり政策を打つときに、果たして今、大きな話題になっている金融円滑化法の延長について、延長しないという御姿勢をもう既に大臣は御就任のときから示していらっしゃいますが、もう一度、私はこうした詳細な実態のデータに基づいて判断をしていただくべきと考えておりまして、その意味から、ぜひともこの調査を要求させていただきたいと思います。

 そうしませんと、この金融円滑化法自体の政策の効果がどうだったのかという、ここの最終的な見きわめというのもできませんし、また、正確な実態把握に基づいた再検討ができるという、そういう柔軟性がやはりこの安倍政権にはあっていいのではないか。弱者にもきちんとどこまでも気配りをしていくという、そこが必要なのではないか。

 今、金融機関の御見解、そしてまた現場の声、そこは随分乖離があるような、そこのところでずっと不安の声も消えない。また、果たしてそれで踏み切っていいのかどうか。私たちも与党として責任が持ち切れないという事態がありまして、まず、この補正予算が上がるころまでに、できればこの調査をぜひともしていただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 高木先生御存じのように、事業者の場合は、いわゆる、この金融機関、すなわち、この信用組合とだけ取引しているのではなくて、各信金とか信組とか、ほかにも地銀とか、いろいろなところと取引を行っております。

 したがいまして、お尋ねのありました借入金額の規模に応じて業者のデータということになりますと、これは名寄せを全部せないかぬということになります、そうしないと今のやつはできませんから。したがいまして、金融機関にとっては、これはえらい膨大な作業をさせられることになります。

 したがって、今お尋ねがあっておりますような、網羅的なデータをつくれということに関しましては、ちょっとそれはなかなか難しいだろうなとは思っておりますが、いずれにしても、この対応が一番問題なところだと思っておりますので、その対応につきましては、私ども、きめ細かく対応していかねばならぬと思っております。

高木(美)委員 名寄せまでしなくとも、大体そこの金融機関でどういうボリュームかということが調査できれば、私はあらあらの感触はつかめると思います。

 大臣、私がこういうふうに申し上げるのはなぜかといいますと、やはりそうした中小企業、先ほど総理から、この中小企業の活力が日本の再生の鍵だというお話がありました。こうした点を考えましても、この実態把握、恐らく今、皆さんは感覚で、何となくこういう感じだろう、利用数は三十万から四十万社、これから事業再生が必要な企業は五、六万社。これも、データはありますか、ありません、やはり感触なわけです。それではやはり適切な政策を打つことはできない。サンプリングで構いませんので、ぜひともその点を検討をお願いしたいと思います。

 私がなぜこう申し上げるかといいますと、ちょっとこの中小企業の、これはもう皆様、見なれたパネルかと思います。中小企業の規模別、業種別分布についてです。トータルで、日本の四百二十一万社の企業のうち、九九・七%が中小企業、そして八七%は小規模企業という状況です。今、この中小企業、四百二十万社と言われていますが、これもリーマン・ショック等があり、最近では四百万社を割っているとも言われております。このように、八七%が小規模企業。これは、製造業では従業員数で二十人以下という規定です。約九割が小規模企業。

 このように、我が国の中小企業のほとんど、この薄いクリーム色のところがそうですが、ほとんどが規模の小さい企業です。かといって、利益の計上はというと、資本金二千万以下の企業では、平成二十二年度は、七割から八割の企業が欠損法人、こういう状況でした。売り上げも小さく、利幅も小さい。世界的な景気変動など外的ショックであっという間に売り上げが減る、資金繰り難であっという間に倒産に追い込まれかねない。したがって、自分たちの経営努力ではいかんともしがたい部分というのもここにはあるわけです。

 金融円滑化法がこの年度末で失効した場合、その後の中小企業、とりわけ小規模企業、個人事業主対策が十分なのかどうか、その点につきまして、まず大臣、簡潔に答弁をお願いいたします。

麻生国務大臣 金融円滑化法についていろいろ御心配いただいておるところでありますけれども、これに関して、今現在、再延長するという考えは私ども持っておりません。

 ただ、円滑化法の到来した後、どのような形になるか。これは今年の四月以降ということになりますが、いずれにしても、貸し付け条件の変更とか、また円滑な資金供給をとめちゃうとかいうようなことにならないように、信用金庫とか中小の金融機関に対して、きちんと資金供給をしていってもらいますよという話は、金融庁として、きちんと各信金・信組に対して既に何度となく申し込みをいたしております。

 ただ、他方、債務者の置かれております事情も、同じ小企業、中小企業の中にあってもうこれは千差万別、四百何十万社あるんですから当然のことなんですが、こういった事業者に対して、個別に、一律というわけにはなかなかいかないのであって、どうしても霞が関におりますと、現場に行ったことがない人が多いので、なかなかその現場の状態がわからぬのは事実ですけれども、現地が一番詳しく知っているところでもありますので、ぜひそういったところに関して、我々としては、きちんと内容を細かく注意しながらやらないと、一律にやることはだめということだけはきちんと申し上げているところでもあります。

高木(美)委員 大臣、金融機関と中小事業者との間に乖離があるという話を先ほど申し上げました。

 次のパネルをごらんいただきたいと思います。

 これは、今の事業再生、経営改善支援の現状、ここからさらにまた強化を今したところでございますが、この金融円滑化法を利用する事業者は、今三十万から四十万社。特に事業再生が必要な事業者は、五万から六万社。したがって、この五万、六万社が、当然、資金繰りも入れました。また、さまざまなセーフティーネット貸し付けとか借りかえ保証による十兆円規模の資金繰り支援も、今回、中小企業庁予算等々に入っております。入っておりますが、この五、六万社、この数字もはっきりしない。

 そしてまた、例えばここの一番左側の、企業再生支援機構による支援、これは売り上げ二十億円程度以上ですから、かなり大きな、JALを初めとする二十八社、これを今回バージョンアップして地域経済活性化支援機構に変えていく、それが今回、改正案を出される予定です。全国規模に展開をする。

 また、真ん中の、再生支援協議会による支援、これも売り上げ三億円から二十億円程度、これも補正予算に四十一億円計上して強化をします。

 また、認定支援機関による経営改善計画策定支援、経営改善計画を出すと不良債権扱いされない、これは承知をしております。この補助する対象は二万社、総額三百万円までの費用の三分の二補助ですから、上限百万円までは自分で負担してくださいねという話になっています。そこも補正予算に四百五億円計上をいたしました。

 しかしながら、計画策定支援、ここのところが、どういうところが対象かというと、恐らく地方銀行で数億円規模のところ、信用金庫になりますと五千万円規模、また信用組合になりますと三千万円規模、そうしますと、この下の一千万から二千万規模、そこのいわゆる小規模事業者、町場の企業が残るわけです。ここをどうするか。

 ところが、先般、NHKの報道では、返済条件の緩和以外に金融機関から受けた支援は特にない、こう答えた企業が全体の五〇%なんです。恐らく、小規模企業のほとんどは一番金融機関から遠い。そしてまた、事業の内容についてほとんど理解してもらっていない、こう答えたところが多いわけです。そういう人たちが不安の声を寄せているわけです。

 したがって、企業の数も多いですから、中小企業を金融庁だけでは目配りするといっても限界があります。ぜひ政府を挙げて、関係団体、そして自治体も巻き込んで、きめ細かな再生を支援する体制を整備していただきたいと思います。それが一つです。

 しかしながら、こういう大枠の支援の機構はつくりました、つくりましたが、これらが本当に動き出すまでには、どうしても半年ぐらいかかるわけです。現実に、企業再生支援機構、四月に決まって、本当に稼働したのは九月、十月です。このタイムラグを考えますと、私は、その間、金融円滑化法の延長を含めたきめ細かな対応が必要ではないか、大臣はやらないとおっしゃっていますが、もう一度、実態調査に基づいて、半年間延長するという政治判断があってもいいのではないかと思います。

 総理、このような議論をお聞きになりまして、どのようにお考えでしょうか。

麻生国務大臣 今おっしゃられましたように、まずは、中小企業といってもピンからキリまで。小さなものでは貸し金対象が何百万円以下のところもあれば、億のものもございますので、おっしゃるように、その小さなところに対する配慮が問題で、その人数がかなり、社数からいったら二万とか三万社ぐらいということになろうと思いますが、そういったところに対しては、政府の側からいくと、一番目が届いていないのではないかという御質問だと思いますが、全くおっしゃるとおりで、どうしても大きな方から目が行くのは、ある程度やむを得ぬところではあるんです。

 問題は、小さなところの内容の中でも、たかだか二十人ぐらいの企業で物すごい内容のところもあれば物すごく厳しいところもあるというのも、それもまた御存じのとおりなので、私どもとしては、そういったところに手が抜けていないようにするためには、これは金融庁が直接やるにはとても無理な話なので、要は、それと直接取引をしておられます金融機関、いわゆる信金とか信組とか、そういったところに対して、一番細かいところに目が行くようにという点に対しましては私ども心して指導しているつもりですが、今後とも、御指摘を受けて、きちんとしてまいりたいと思っております。

高木(美)委員 再度検討を求めたいと思います。

 最後に、復興支援につきまして伺いたいと思います。

 公明党は、被災三県の県担当の国会議員を決めておりまして、私は福島県を担当させていただき、通い続けて一年半になるところです。

 今回、総理の主導で福島復興再生総局という一元化する組織ができ上がり、これからそこにどのように魂を入れていくのか、実効性を上げていくのかという点が大きな焦点かと思っております。

 一方で、岩手、宮城の地域につきましては、高台移転が大きな課題だと思います。これは、農地法の転用許可がおりないために、受けられずに進まなかった経緯があります。

 これについては、一月七日の政府・与党連絡会議で我が党の井上幹事長がこの件を取り上げ、結果、結論を出す政権でなければならない、このように発言をいたしまして、それに対して総理は、すぐに結論を出すと応じたと聞いております。

 幹事長発言に対するその後の対応につきまして、農水大臣から報告を求めます。

林国務大臣 お答え申し上げます。

 東日本大震災の被災地におきまして、高台への集団移転事業を進める際に、市町村が移転元の農地を買い取るには、農地法の、取得後の利用計画を定める必要があって、土地の利用計画の策定に非常にお時間がかかるということで、買い取りが進まない状況があったということでございます。

 これに関して、地元の実情を踏まえまして、今委員から御指摘がありましたように、一月七日の政府・与党連絡会議でも、御党の井上幹事長からも強い要請がございました。また、私も実は被災地を訪問いたしまして、これは一月十三日でございますが、規制を緩和してほしいという御要請を地元の首長さんから直接いただいたところでございます。

 これを踏まえまして、二月四日に関係省令を改正いたしました。東日本大震災の被災市町村は農地法の許可なく農地を取得することができるというふうに措置をいたしまして、具体的な利用計画を明示することが難しい場合でも、農地を買い取れるようにいたしました。

 この措置の施行後、担当職員を現地に派遣いたしまして説明を行っているところでございまして、今後とも、集団移転が円滑に進むように支援してまいりたいと思っております。

 以上です。

高木(美)委員 これは、我が党も一昨年の七月にこのことを、農地法の改正等につきましてずっと要請をしてきました。宅地と農地と一体となった施策がなければ、改正がなければ前に進まないということを言ってまいりまして、一年半ずっと動かなかった課題です。これが今回、そのような形で、政府・与党の協力によりまして一気に動いた、このことは、私は、一つの大きな結論であるな、功績であるなというふうに思っております。

 これからも、こうした一つ一つの課題に対しまして早急に結論を出すという姿勢で取り組んでいただきたいと思います。

 総理もすぐに結論を出すとおっしゃったわけですが、総理、もし何かコメントがありましたらどうぞ。

安倍内閣総理大臣 復興を加速させていくためには、一つ一つの課題を具体的に処理していくことが極めて重要であろう、このように思います。

 そして、大切なことは、現場も役所もやる気になるということが重要ではないのかな。幸い、だんだんやる気になってきました。今までなかなか答えを出せなかったところもちゃんと答えを出すようになってきた。さらに復興を加速させていきたいと思います。

高木(美)委員 私は、八日金曜日に、井上幹事長と御一緒に、双葉町の方たちが避難されている埼玉県加須市の旧騎西高校に伺いました。これは最後の避難所と思っております。いまだに避難生活をしていらっしゃる。震災直後は千四百人、私も今回三度目でしたが、今は百五十人。賠償、住宅などのさまざまな課題に苦しんでいらっしゃいます。これをこのまま放置するわけにはいきません。

 ぜひ、政府がきちっと乗り出して支援をすべきではないか、さまざまな課題に対する解決の方途を示すべきではないかと考えます。根本大臣の御所見を伺いたいと思います。

根本国務大臣 委員のおっしゃられるとおりだと思います。

 今回の震災の避難所におられる方々、これは、仮設住宅あるいは借り上げ住宅、公営住宅、こういうものを用意することで、順次、避難所からお移りいただきました。ただ、御指摘の双葉町の、加須市に設置している一カ所だけが、残念ながらとどまっておられます。

 これは、いろいろな、さまざまな事情でとどまっているものと思われますが、やはり我々、何としてでも、この双葉町を含めて、避難指示が出された十二市町村、この復興再生をいかにスピーディーに進めるか、これが私は一番大きな課題だと思います。

 例えば、今回の補正予算そして新年度の予算で、帰還支援、あるいは、避難指示が出されたところのセイタカアワダチソウが伸びて荒廃している、こういうものの荒廃の抑制と帰還支援の加速のために、地域の希望復活応援事業というものを設けました。これは、帰還支援のために、介護施設がない、あるいは商店がない、こういうものはしっかりと地域で応援していこう、こういう予算も講じましたが、先生のおっしゃるとおり、さまざまな具体的な課題、問題がありますから、これにきめ細かに応えていく、これが我々復興庁の責任だと思います。

 福島県については、福島再生総局、今まで、復興庁、環境再生事務所、そしてオフサイトセンター、これが分立していましたが、これを集約一元化して、現場で即断即決できる体制、あるいは今、復興庁の職員も市町村に赴いていろいろな課題、問題を吸い上げておりますので、しっかりとした体制で一つ一つ問題を具体的に解決していきたいと思います。

高木(美)委員 時間になりましたので、以上で終了いたします。ありがとうございました。

山本委員長 これにて高木君の質疑は終了いたしました。

 次に、後藤祐一君。

後藤(祐)委員 民主党の後藤祐一でございます。

 まず最初に、いわゆるアベノミクスについてお伺いをしたいと思いますが、私は、この短期の円安、株高という今の状況については率直に評価をしたいと思いますが、これが持続的、継続的なものになるか、こういう観点から質問をまずしていきたいと思います。

 まず、二月七日の予算委員会、我が党の前原議員の質問に対して、安倍総理は、「人口の減少とデフレを結びつけて考える人がいますが、私はその考え方はとりません。」という答弁をされました。デフレは貨幣現象であるという答弁をされましたが、デフレというのはデフレギャップによって起きる、これはないということなんでしょうか。あるいは、人口減少がデフレギャップを生んでいるわけじゃないというのでしょうか。

 まず、デフレギャップがデフレの原因ではないのかどうか、これについて御見解を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 もちろん、デフレギャップを解消していくことも、我々、今回の経済財政政策の中で重要視をしております。つまり、デフレギャップを解消していく上において、我々は、補正予算を組んで有効需要をつくったわけであります。

 そして、今、人口減少についてお話がございました。人口減少はもちろん経済を成長させていく上においてマイナスの要因ではございますが、多くの国々で、人口減少している国々の中においてデフレに陥っている国はないわけであります。

 ですから、日本は、人口減少ということを理由に、ずっとデフレから脱却できないことはやむを得ないという議論がなされていましたが、それは違うというところで、今回、我々は、思い切った金融緩和を行うべきだ、そしてそれによって、まず第一段階として為替そして株価に影響が出てきているということではないかと思います。

後藤(祐)委員 質問にちゃんと答えていないと思うんですね。

 つまり、物価上昇に対して、物価が上がらないということについてデフレギャップがどういう影響を与えているのかということを聞いているのであって、もちろん、実質経済成長を実現するために、成長力を強めるためにこのデフレギャップを埋めていく補正予算が大事だ、これはわかるんですけれども、純粋に一本目の矢の議論をさせてください。

 物価上昇させるため、デフレ脱却するためにデフレギャップを埋めることは効果がないとお考えですか。もう一度お願いします。

安倍内閣総理大臣 議論として、まず、金融政策において二%の物価安定目標に到達をすることは可能であるというふうに私は申し上げております。事実、その方向に向かって日本銀行としても判断をされたわけであって、その上において、私は、デフレというのは貨幣現象である、こういうことを申し上げたわけであります。

 その中において、日銀は中央銀行としての対策をちゃんとやっていただきたい、こういうことでありまして、共同文書において、最終的に、政府と日本銀行との緊密な協議の上の中において、日本銀行は、自主的に二%という目標を設定したわけであります。

 一方、確かにデフレギャップがあるのは事実であります。しかし、その中で、このデフレギャップをいわば財政出動によって埋めなくても、貨幣現象でありますから、それは十分に可能性はあるということは申し上げておきたいと思います。

後藤(祐)委員 ということは、二%の物価上昇を達成するために政府の責任は全くないということでよろしいでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今まさに、後藤さんは議論のための議論を展開しておられます。そういう議論をずっとしてきて、ずっと日本はデフレだったんですね。ですが、そういう議論の中に陥らずに、我々は、ここで思い切った金融緩和を行って、日本銀行においてしっかりと金融緩和、大胆な金融緩和をやって、そして、まさにこれは貨幣現象なんですから、二%といういわば物価安定目標に向かって中央銀行としてのやるべきことはちゃんとやっていただきたい、このように申し上げているわけであります。

後藤(祐)委員 我々も、物価上昇のために日銀が果たす役割というのは大きいと思っておりますし、それが重要だと思いますし、ここまでやったことについて何ら否定するものではありませんが、政府の役割が全くないということになりますと、これは違います。

 ここに少し人口構成についての表を出させていただきましたけれども、働く世代というのはこれから減っていくわけです。どうやったって減っていくわけです。ですから、日本全体の需要というのはどうやったって減っていく可能性が高い中で、このデフレギャップをどう埋めていくかということが、長い目で見たときのデフレを解消していく構造要因としてやはり我々は率直にこれを受けとめて、政府としては、こういったことに対策を打ちながら、例えば女性が社会進出を図る、子供が生まれるように何らかの対策をしていく。日銀の金融政策は当然やっていただきながら、こういったものと組み合わせてやっていくことが大事だというのが我々の見解なんです。

 そもそも三本の矢というのは、一本目、二本目、三本目、別々にしちゃうと折れちゃうよというのが毛利元就さんの教えだったんじゃないんですか。我々は、一、二、三本を一体でやっていこう、人口構成についても立ち向かってやっていこうという姿勢でやってきたんです。ところが、今の安倍総理の御発言というのは、一本目の矢は勝手にやってくれ、物価上昇については日銀が勝手にやってくれ、我々は知らないということをおっしゃっておられるわけです。

 日銀総裁、お伺いしたいと思いますが、少し違和感を感じませんか。つまり、物価上昇率について政府は一切責任をとらないという安倍総理の見解についての日銀総裁としての御見解をお聞かせください。

白川参考人 お答えいたします。

 まず、二%の物価目標からちょっと御説明させていただきます。

 日本銀行は、今後、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取り組みの進展に伴い、持続可能な物価安定と整合的な物価上昇率が高まっていくというふうに認識しまして、そうした認識に立ちました上で、持続的な物価安定の目標を二%といたしました。したがいまして、今後、幅広い主体によります成長力の強化が進展していくにつれまして、現実の物価上昇率は高まり、そのもとで家計や企業のいわゆる予想物価上昇率も上昇していくというふうに考えられます。

 この点、今回の共同声明では、政府も、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた取り組みを強力に推進することを明らかにしております。今回の共同声明では、日本銀行は日本銀行として強力な金融緩和政策を行っていく、政府も強力な、競争力と成長力の強化に向けた取り組みを行っていくということでございます。

 そういうもとで民間の取り組みが進展していけば、いわば政府と日本銀行と民間の取り組みがプラスの好循環を生んでいく。私どもとしては、そうしたメカニズムが働くことを強く期待し、また想定をしております。

後藤(祐)委員 やはり幅広い主体という言葉に重きがあると思うんですね、日銀の考え方としては。三本の矢でいこうというのが日銀、一本の矢でいこうというのが安倍総理の考え方。非常に食い違いがあるのではないかなというふうに思います。

 さて、デフレギャップを埋めるということが物価上昇、デフレ脱却にはつながらないというお考えでいきますと、この先、長期で見た場合どうなっていくか。確かに、名目的な、金融政策によって物価は上がるかもしれません。確かに上がるでしょう。ですが、このままやっていくと、物価だけが上がって給料が上がらない、つまり実質賃金の切り下げになってしまうのではないかということが世の中でも大変懸念されております。

 これについて、例えば一年後、二年後を見た場合に、仮に物価が上がって賃金が上がらない状況になった場合に、安倍総理、どんな責任をとられますか。

安倍内閣総理大臣 そもそも、三本の矢ということを言い出したのは私ですよ。あなたじゃないですよ。私が三本の矢ということを言い出したのであって、これは日本銀行でもないんですよ。私が総裁選を通じて三本の矢ということを申し上げて、そしてまさに、金融政策によってまず二%の物価安定目標を掲げてください、そして大胆な金融緩和をやってくださいねと。

 そして、今おっしゃったデフレギャップの問題があります。ただ、先ほど山本幸三議員がやじとして指摘をしたように、アメリカはもっとデフレギャップは大きいわけです。しかし、デフレに陥ったままではないんです。

 ただ、私は、だからそれをどうこう言うということではなくて、金融緩和とともにやはり有効需要をさらにつくっていく。ただ単にいわば二%の安定目標を達成すればいいということではなくて、同時に、実質成長も含めて力強く経済を成長させていく必要があります。

 さらには、先ほど貨幣現象というお話をいたしました。金融政策によってデフレから脱却することができたとしても、地方まで、隅々まで日本が元気に活力を持って成長していくということにはなかなかならない。さらには、雇用や賃金にそれが反映されるまでには相当時間がかかる場合があるから、そのいわば時差をなるべく短くしていく。

 地域まで、隅々までそうした恩恵を波及させていくためには、やはり財政政策が必要なんですよ。

 財政政策をしていくことによって、あまねく地域に、ちゃんと、給与も上がっていくし雇用もふえていく、活力が出てきたね、こういう実感を持っていただくために財政政策を行う。そして、そうした現象が起きてくるまでの時間を短くする。そのための財政政策であります。

 しかし、財政政策、何回も何回もこういう思い切った財政政策をやるわけにはいきませんから、あとはやはり、もう一本の、三本目の矢である成長戦略もしっかりと打っていく。

 この三本の矢を同時に射込んでいく。今おっしゃっていただいたように、三本の矢は折れない。私のところは山口県でありますから、子供のころから言われていたことでありますが、そうした形でしっかりとこの三本の矢を同時に前に進めていくことによって日本を力強く成長させていくということと同時に、今委員が質問されましたように、問題は、賃金に反映させていく、そして雇用をふやしていくということであります。

 順番としては、まず、大胆な金融緩和を行いました。そして、これから予算が通っていくわけでありますが、その中において、為替は是正され、そして株価が上がっています。

 為替が是正されたことによって、きのうも日経新聞に出ていましたね、千数百社の平均で相当の為替差益が出ています。大幅な利益が出てきた。そして同時に、株価が上がったことによって企業のバランスシートが大幅に改善されました。これは、貸し出し余力、投資をしていく力が出てきたということなんですね。

 その中において、企業がだんだん業績が上がってくる中において、そしてそれは賃金という形で従業員に利益が出てくる。さらには、投資を行い、そして雇用が出てくる。

 これまで時間がかかる場合もありますけれども、しかし、なるべく早くそういう恩恵に国民みんながあずかることができるように、先般から経営者の皆さんに対してお願いをしているところでございますが、きょうのお昼に、経済界の皆様にお集まりをいただきまして、何とか、賃上げあるいは一時金において、経済をよくしていく、そして多くの国民がこの景気の変化を実感できるように協力をしていただきたいということをお願いしよう、こう考えているところでございます。

    〔委員長退席、小此木委員長代理着席〕

後藤(祐)委員 賃上げには多分時間がかかると思うんですよ。つまり、本音は、ことしの四月から六月のGDPで消費税を上げるかどうかを決定するわけです。来年の四月に上げるかどうかを、ことしの秋に決める。その基準が、ことしの四月から六月のGDPで決まる。だから、この四―六のGDPが非常に気になる。それと、七月の参議院選挙が気になる。だから、とりあえず日銀に金融政策でとにかくやらせて、短期は物価上昇させて、その先は余り責任を負っておられない、そのように感じられます。

 実際に、補正予算も含めて政府の政策が長期的な賃上げにつながって、賃上げになれば、それがまた物価上昇につながるはずなんです。そこのところも先ほど総理は否定されちゃっておられるんですよ、最初の方の質問で。

 つまり、安倍総理のマクロ経済に対する考え方というのは大変私は疑問だというふうにあえて申し上げさせていただきたいと思います。

 さて、次の質問に行きたいと思います。

 TPPでございますが、TPPについては先ほど小泉進次郎さんからもお話がありましたけれども、三本の矢の中で、TPPが成就するかどうかについては極めて重要なことだというふうに考えますが、これは重要なものだと考えてよろしいですか、総理。

安倍内閣総理大臣 先ほど私が賃金が上昇しないことを前提にしたかのごとく答弁したという今指摘がありましたが、それは全く間違いですよ。

 賃金が上昇して、消費がふえて、いわば極めて経済はいい循環の中に入っていくというのが私の基本的な考え方であります。だからこそ、経営者の皆さんに、賃金を上げてくださいと。

 賃金を上げてくださいというのは、私たちの政治的な要望だけではなくて、皆さんにとってもそれは明らかにプラスになっていきますよ、そしてそれが、あるべき、いわば二%というインフレターゲットに向かって進んでいく経済の姿ですよということを申し上げようと思っているわけでありまして、私が全く言っていないことをまるで言ったことのように批判されても、本当に困るわけであります。

 そして、TPPについて申し上げれば、自由な貿易環境は日本にとって国益だろう、このように思います。アジア太平洋地域の成長力を日本に取り込んでいくことが日本の成長につながっていくんだろう、こう考えております。

 同時に、経済交渉でありますから、結果として国益を守ることができるかどうか、私は、これが全てであろう、このように思っています。結果、国益を守れない経済交渉というのは、結果は失敗なんですよ。大切なことは、結果、守ることができるかどうかということではないか。

 その中において、私たちは、聖域なき関税撤廃を前提条件とする以上、交渉には参加できないということを申し上げているわけであります。

後藤(祐)委員 三本の矢の中でTPPが極めて重要なものであるという認識だと理解させていただきたいと思います。

 今ここに、先日原口議員が用意したパネルをそのまま使わせていただいております。ことしTPPに関して起きるであろうスケジュールが書いてありますが、遅くともことし中には妥結を目指すということになっている。

 また一方で、交渉入りするためには、アメリカの議会との関係で九十日ルールというものがあり、かつ、その前にアメリカと実質的な、交渉入りできるかどうかについての議論をしなきゃいけない。

 そういうことを考えますと、今月の二十一日にもオバマ大統領との首脳会談が予定されておりますけれども、これから後、それほど時間がないと思うんです。

 逆に言うと、このオバマ大統領との会談の中で、聖域なき関税撤廃についての感触、先ほど小泉議員もおっしゃっておりましたけれども、これで好感触を得られたら、その場で、あるいはその直後、交渉入りを決断すべきだと思いますが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 首脳会談を行い、聖域なき関税撤廃ではないということを私自身が確信を持てるかどうか、これがまずポイントですね。

 そしてそれから、もうその場で、ではすぐ参加かといえば、そんなことはなくて、それは、聖域なき関税撤廃ではないという感触を得た上において、そして、さまざまな影響等々も分析をする必要があります。その上において、私が判断をする、交渉参加するかどうかについては私が判断する、こういうことであります。

後藤(祐)委員 失礼しました。日銀総裁、先ほどの議論まででございますので、もうお帰りいただいて結構でございます。大変失礼しました。

 TPPの話に戻りますが、逆に、感触が得られなかった場合、聖域なき関税撤廃はやはり前提である、少なくとも交渉に入ってからでないとその議論はできないよということになった場合は、これはもう断念されるということですか。

 つまり、この議論をずるずる引きずっていって、遅くなってから交渉入りするというのは、大変国益を害すると思うんです。

 私も、聖域なき関税撤廃はよくないと思います。きちっとそこの国益を守った上で、得るものは得、失わないようにするものは失わない。これは、それほど思いは違わないと思うんです。でも、先ほど小泉議員もあったように、交渉に入らないとなかなかそこは議論にならないと思うんです。

 やはり念頭にあるのは参議院選挙だと思うんです。参議院選挙の後に交渉入りというタイミングになってしまうと、このスケジュールを見ますと、明らかに国益を害してしまう。もうでき上がったルールに乗っかるだけというのでは、とれないわけです、聖域なき関税撤廃を除くということが。

 参議院選挙の後に交渉入りすることはないということでよろしいですか、総理。

安倍内閣総理大臣 スケジュールについては、今まだ決めているわけではないというか、来週、これからオバマ大統領と会って会談を行うわけでありまして、その中で、先ほども申し上げましたように、聖域なき関税撤廃が交渉の前提条件かどうかということについて確認をいたします。そして、その感触を得た上において、参加するかどうかという判断はいたします。

 しかし、これは相手国もあることでありまして、今我々がどういうスタンスでいるかということも含めて、いわば、既に、事実上、事前交渉と言ってもいいんでしょうけれども、事実上の交渉の一部だというふうに考えていただいてもいいんだろうというふうに思います。

 いつ、どこで、どういう判断をするかということについては、今ここで申し上げることは、我々の手のうちを全て相手側にさらすことになりますので、ここでそういうことについては発言は控えさせていただきたいと思いますが、今ここで申し上げられることは、首脳会談において、聖域なき関税撤廃かどうかという感触を得ることができるかどうか、これがこの会談におけるTPPについては最大の課題であろう、このように考えております。

    〔小此木委員長代理退席、委員長着席〕

後藤(祐)委員 これについて、政府の統一見解というものをはっきりされたいということを我々申し上げてまいりました。原口議員も先週申し上げましたが、これについて、安倍総理の答弁では、我が党としての公約としては、聖域なき関税撤廃、なければ交渉に参加しない、これはもうわかっているんです。政府としての見解がどうなのかということについての統一見解を出してほしいということを理事会でも求めておるわけでございますけれども、政府としての見解、早急に出していただけますか。

安倍内閣総理大臣 それでは、政府としての見解は出させていただきたいと思います。

後藤(祐)委員 いつまでに出されますか。

安倍内閣総理大臣 それでは、政府として統一見解ができたところで提出をさせていただきたいと思います。

後藤(祐)委員 それでは、近いうちに出すというのと同じじゃないですか。いつなんですか。いつなのか、はっきりしてください。補正予算を通すより前に出すということでよろしいですか。きょうじゅうに出していただけますか。

安倍内閣総理大臣 統一見解でありますから、これは政府全体としての考え方を取りまとめなければなりません。先ほど申し上げましたように、今そのことについて急に問われたわけでございますから、これから判断をさせていただきたいと思います。

後藤(祐)委員 これは、先週から理事会で求めていることでありますから、急に言ったことではございません。きょうじゅうに出していただくということをここで確約していただけないでしょうか。

山本委員長 後藤祐一君、委員長から申し上げます。

 かねてから、理事会で、政府見解についての資料を出すようにというように委員会から内閣に求めております。したがって、それについては、内閣で事務方が検討中であるというように聞いております。先ほどの総理の御答弁もありましたので、きょうじゅうにそのことを取りまとめて委員会に提出するように委員長として計らいます。

後藤(祐)委員 委員長の英断に感謝したいと思います。

 それでは、残り時間も短くなりましたが、議員定数削減についてお伺いしたいと思います。

 議員定数削減については、今週日曜日のNHK「日曜討論」で鴨下自民党国対委員長が、合意をするところまではこの国会でするかもしれないけれども、法律を通すところまではこの国会ではできないかもしれないという趣旨のことをおっしゃっておられましたが、これは、あの十一月十四日の、当時の野田総理と安倍自民党総裁との一対一の党首討論において約束したことではないんですか。

 この国会において議員定数削減法案を成立させるところまでやるということについて、総理の御見解をいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 先般の、昨年の党首討論において、議員定数の削減とそして選挙制度の改革について議論をしていくという約束をいたしました。

 しかし、その際、私は申し上げたんですが、自民党と公明党だけ、自民党と民主党だけではなくて、これは小さな党も入れて、民主主義の土俵をつくっていくんですから、そこでちゃんと協議しましょうねと。そして、衆議院の選挙を経れば新しい勢力も出てくるかもしれませんから、事実、維新の会という大きな勢力もできました、そういう方々と国会において結論を出していくべきものであろうと思います。

 私は、自民党の総裁でもありますから、積極的に取りまとめを行うように努力をすべしという指示を党に対していたしております。

後藤(祐)委員 昨年の党首討論のときにこう言っているんです、当時の安倍総裁は。「来年の通常国会において、私たちは既に、私たちの選挙公約において、定数の削減と選挙制度の改正を行っていく、こう約束をしています。今この場で、そのことをしっかりとやっていく、約束しますよ。」と言っているんです。

 やっていくのに時間がかかりますよね。ということは、もうそろそろ、この二月中ぐらいにも自民党の案ができ、あるいは自民党、公明党での合意ができ、三月にも各党で相談するというぐらいのタイミングでないと間に合わないんじゃないですか。自民党、公明党案はいつ出てくるんですか。

安倍内閣総理大臣 今、私は、行政の長、総理大臣という立場です、自民党の総裁でもありますけれどもね。しかし、これはまさに院の構成にかかわることですから、国会でやるべきことなんですよ、基本的に。各党間で話し合っていくことなんですね。基本的に我が党の場合は、私は総裁ではありますが、総理大臣として、行政府の長としてここにおりますから、幹事長を中心に取りまとめを行っているところであります。

後藤(祐)委員 約束しますよという言葉はその程度の重さなんですか。自民党総裁としての、党のトップとしての御発言をもう一度お願いします。

安倍内閣総理大臣 今の段階では、私は、まずこの補正予算とそして予算を通すことに全力を挙げなければいけないんですよ、これは国民生活に直結しますから。同時に、党においてそういう作業をするように指示をしているということであります。

後藤(祐)委員 国民の皆様に、来年の四月の一日から消費税を五%から八%に上げることをお願いするんです。その前提がこの議員定数の削減と公務員給与の引き下げだったんです。これは三党の合意でもあるわけです。ここでこの議員定数削減をやらずして、消費税をお願いできるんですか。ことしの秋に決定するんですよね。その前に議員定数削減法案を通しておかないと、まただまされたということになりますよ。

 きょうは総務大臣にも来ていただいておりますけれども、この公務員の給与については、我々も大変苦しい思いをしました。そして、このままいくと、今の七・八%引き下げの状態が、来年四月一日、もとに戻ります。これをどうするのか。

 我々は、労働協約締結権を回復して、労使で交渉をした上で、この先どうするかを考える。据え置きかもしれない、もとに戻すかもしれない、下げるかもしれない、いろいろな選択肢があり得る。それは交渉でしか決まらないと思うんです。ところが、自民党は、人事院勧告に従ってやると公約に書いてある。ということは、自動的に、七・八%かどうかは知りませんよ、七・数%、来年四月一日に上がるということになると思いますが、総務大臣、どうお考えですか。

新藤国務大臣 平成二十六年度以降の国家公務員の給与のあり方については、人事院勧告等も含めて国政全般の観点から総合的に判断しなくてはいけない、こういうことだと思います。そして、前政権によって出されました国家公務員制度改革関連四法案、これは廃案になっております。したがいまして、それらも含めて全般的な議論をしなければいけない、こういうことだと思います。

後藤(祐)委員 答弁になっていないんですが。

 では、この国会には労働協約締結権を回復する法案は出されないということですかということと、労働協約締結権を回復する法案を出さないということは自動的に人事院勧告になるということですから、どうやったって、七・八かどうかはともかく、七・数%上がることになるということについては、それでよろしいんですか。

新藤国務大臣 まず、前国会で廃案になりました法案を出すつもりはございません。

 それから、自動的になるかというのは、それは何も措置をしなければ当然もとに戻るわけでありますが、それらも含めて総合的に判断しなくてはいけない、議論しなくてはいけない、このように思っているわけです。

後藤(祐)委員 新藤大臣、実は、小泉政権の末期に行革推進法案というのが通っているんです。これはどんな法案か御存じですか。その主な柱を述べてください。

 正確な法案名は、簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法案です。

稲田国務大臣 今お尋ねの平成十八年の行革推進法については、総人件費の削減、そして特別会計の改革などが書き込まれていると思います。

後藤(祐)委員 そのとおりなんです。総人件費について二つの目標が書いてあるんです。それは定員の純減五%、これはやってきたんです。もう一つあるんです。総人件費を平成十七年から平成二十七年の間にGDP比で半減するという目標が法律に書いてあるんです。

 これとの関係で、まず給与をどうするかというこの問題と、国全体の定員をどうするかという問題が両方あるんです。だから我々は、採用の数を絞って、例えば、来年度は平成二十一年度に比べて五六%採用を減らすという大変苦しい決断をしたんですが、その次の年度に対して、自民党は、採用の数をふやす、少なくとも減らす割合を小さくするという方向性を示されておられますが、この行革推進法の約束をどうやって満たすつもりなんですか。給与はもとへ戻ってしまう、そして人数はふやす、行革後ろ向き内閣じゃないですか。

 総理がおられないんですが、ここで総理に聞こうと思ったんですが、トイレに行かれているようでございますので、総務大臣、どうお考えですか。

稲田国務大臣 今の後藤委員のお尋ねですけれども、安倍内閣におきましても、行革推進にかける思いは前政権とは全く変わることがなく、大胆に進めてまいりたいと思います。

 その意味におきまして、今委員がお尋ねの七・八%の人件費の削減の問題でありますけれども、これにつきましては、労働協約締結権、労働基本権については、国家公務員改革基本法の十二条におきまして、「政府は、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示し、その理解のもとに、国民に開かれた自律的労使関係制度を措置するものとする。」と規定されておりまして、これについてはさまざまな議論がございます。また、人事院勧告の措置と異なる措置をすることにつきましても、最高裁の判決がございます。さまざまな論点について検討し、国家の将来の将来像を踏まえつつ検討してまいりたいと思います。

後藤(祐)委員 いや、行革後ろ向きなんですよ。例えば、独立行政法人を約四割減らす法案を我々は前の国会で出していました。ところが、この通常国会で出てこない。あるいは、特別会計をなくす法案を我々は出していました。昔の道路特会、社会資本整備特別会計を廃止する法案を出していました。この国会で出てこない。公務員制度改革法案もこの国会で出てこない。こういった行政改革関連の法案が全部お蔵入りしているんですよ。どこが行政改革推進内閣なんですか。

 あと、なくなった法案で非常に残念なものもあるんです。例えば障害者差別禁止法、これはずっと準備をしてきて、この通常国会に我々は出そうとしてきたんです。そして、公明党の公約の中にもこれは入っておられる。ところが、この国会、提出予定法案の中では検討中になっている。これについて、最後、国土交通大臣の見解を伺いたいと思います。

太田国務大臣 私が所管ではないのでなんですが、これについては今検討中であるということを聞いております。

後藤(祐)委員 時間なので、最後に、安倍内閣の経済対策についての集中審議を求めたいと思います。委員長、理事会で協議を願います。

山本委員長 後刻、理事会で協議いたします。

後藤(祐)委員 終わります。ありがとうございました。

山本委員長 この際、辻元清美君から関連質疑の申し出があります。後藤君の持ち時間の範囲内でこれを許します。辻元清美君。

辻元委員 民主党の辻元清美です。

 私は、きょうは、東電による国会事故調査委員会の調査妨害があったのではないかと言われている問題について質問をしたいと思います。

 まず、総理にお伺いします。

 総理は、午前中の御答弁の中で、原発の事故のことを問われまして、自民党自身、安全神話に陥っていた、そして、この過ちはずっと背負っていかなければならないというように御答弁されました。その観点から見ましても、この福島第一原発事故の原因について新しい疑念やそしてさらに証言など出てきた場合は、引き続き、しっかりと政府としても事故の原因究明をしていくべき立場であると理解しますが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 事故の原因究明等については、当然、厳正になされなければならないと考えております。

辻元委員 それでは、きょうは東京電力の廣瀬社長に参考人でお越しいただいておりますので、廣瀬社長に質問をいたしたいと思います。

 今回、この問題、単に東電の担当者が説明を間違えたという問題だけではなく、それだけでしたらこんな大きな問題にならないと思います。各社、社説にも書きましたし、その背後、どういうところに大きな問題があるから、今このように東電に、虚偽の説明をしたのではないかということを強く言われているのか、その背後にある問題意識をお聞きしたいと思います。いかがですか。

廣瀬参考人 東京電力の廣瀬でございます。

 まず、昨日で私どもの事故からちょうど一年十一カ月、間もなく二年を迎えることになります。この間、引き続き皆様に大変御迷惑をおかけしておりますことを、改めまして、この場をおかりしておわび申し上げます。本当に申しわけございませんでした。

 今御質問がありました今回の間違った説明に対する背後の要因ということ、これは、今私ども、まずしっかり調査をしていかなければいけないというふうに思っておりまして、できれば社外の専門の方も入れて、しっかりとした検証を得たいということでさせていただいております。

 一方、私ども、新生東電として、この間、原子力の事故があって以来、いろいろな改革をこれからしていかなければいけないということで、そうした取り組みも今させていただいているところでございます。

 そうしたものをあわせて、そうした悪かった点についてはしっかり直していかなければいけないというふうに考えておるところでございます。

辻元委員 ちょっと私の質問と趣旨の違う御答弁だったと私は思います。

 この背後の問題には、二つの大きな問題があると思います。

 一つは、国会の事故調査委員会という非常に重い調査の妨害があったのではないかという点が一点目です。

 国会の事故調査委員会は、このように言われております。日本及びその政府が国民からの信頼、世界からの信頼を取り戻すために、東京電力あるいは政府という事故の当事者や関係者から独立した調査を、国家の三権の一つである国会のもとで行うために設置されたということなんです。この調査を妨害した可能性があるということで、これが一つ目の問題点です。

 そしてもう一つは、地震か津波かということが、皆さん、当時も大きく関心を呼んでおりました。今回の事故は地震の影響か津波の影響かという点にかかわる調査だったわけです。といいますのも、東電は、みずから調査いたしましたが、地震の影響はないという報告書を出しました。そして、政府は、中に入っての調査はせずに、東電のヒアリングで、これも地震の影響はないという報告になっております。

 そこで、国会事故調は、現場の労働者のヒアリングの中で、地震直後に水漏れがあった、これが非常用復水器の水漏れではないかということで、国会事故調としては、当事者の政府や東電ではなく、みずから、これはおっしゃっていましたけれども、被曝も覚悟して自分たちも中に入らなければいけないということで、東電に調査の要請をしたということなんです。

 ですから、これは国会事故調への妨害ということだけではなくて、今後の安全基準、これは地震の影響があったら安全基準が変わってきます、そして、さらには再稼働の問題にもつながる大きな問題を含んでいるという認識を社長はお持ちですか、どうですか。

廣瀬参考人 お答えいたします。

 まず、一つ目の調査妨害ということに関しまして、私ども、今、説明をした人間を含めまして、まさに調査を行っているところでございます。

 その過程で、本人が、全く間違った認識のもと、誤った説明をしてしまったということが判明してきております。この点に関しましては、本当にまことに申しわけなく思っております。と同時に、なお一層背後については調査をしなければいけないというふうに考えておりまして、引き続き調査をしっかりやってまいる所存でございます。

 それに加えて、二番目の御指摘のもっと大きな原因につきましては、おっしゃるとおり、その点は大事な問題だというふうに思っております。

 したがいまして、今後、改めて現場の調査をしていただくために、私ども、引き続き現場は非常に危険な状況にありますので、放射線の防護であるとか、それから、歩くルートについても、私どものできる限りの知見を活用していただいて、そうしたことに役立てていただきたい。そのために、私どもとしては最大限の御協力をしていく所存でございます。

辻元委員 今、再調査をする場合の協力ということをはっきりおっしゃったと私は認識いたしました。

 これはまた後で質問いたしますが、それでは、ちょっと事実関係を簡単に聞いていきたいと思います。

 一枚目のパネルをお願いします。

 実は、皆さん、これを見ていただきたいと思います。これは光が入っていますね、現場に。総理も見ていただきたいんですが、光が入っております。これを真っ暗だと説明したわけです。さらに、後で説明いたしますが、照明がついておりましたので、この状態よりもかなり明るいんですが、中は真っ暗で危ないという説明だったということなんですね。

 それでは、次のパネルをお願いいたします。

 真っ暗ではなかったわけです。時系列でいきますと、一番下を見ていただきたいんですけれども、これが、二〇一二年、昨年の二月二十八日に、東電が国会事故調に、「虚偽説明」と書いてありますが、真っ暗だという説明をして、それが主原因で国会事故調は調査を断念したと言われております。

 一番上を見てください。当時、覚えていらっしゃると思いますが、福島第一原発にカバーがかかりました。カバーがかかったから真っ暗だという説明だったんですが、カバーがかかっても、実は自然光を一〇%から一六%通していた。そしてさらに、一つ下の、十月二十八日には照明が使用可能になっていたというのが事実なんです。

 さてそこで、担当だった当時の玉井俊光企画部部長、私はちょっと経歴を見せていただきますと、福島第一原発のこの一号機でも働いてこられました。そして、さらに柏崎刈羽原発の技術統括部長もされてきて、原子力の技術者のプロであると思うんですけれども、それでよろしいですか。

 ですから、重い国会事故調という担当の窓口として、いろいろなことを事故調の担当者から聞かれたときに、ああ、あれはそこに聞けばいいとか、あれはここに問い合わせればいいとか、または自分で技術的なことも答えられる人を担当窓口としてつけたと理解していますが、それでいいでしょうか。

廣瀬参考人 お答えいたします。

 説明を行いました御指摘の玉井は、おっしゃるとおりに、平成元年に入社をいたしまして、大学の専門は電気でございますが、入社以降は原子力発電所に、柏崎それから福島第一、御指摘のとおり、勤務しております。

 専門は、計装といいまして、温度であるとか圧力であるとか、そうしたものをチェックする機械のメンテが中心でございましたが、おっしゃるとおり、ある意味原子力の専門家として、今回、国会事故調の事務局との調整の担当を任せておりました。

辻元委員 そういう方が、既に照明もついている現場の調査に行きたいと言ったときに、現場は一体どういう状態になっているのかということも調べずに、真っ暗ですよというような説明を果たしてするんでしょうか。

 次のパネルをお願いします。

 こういうものが出てまいりました。これは、東京電力みずからが、事故が起こった三カ月後に、一号機のカバーをかける中の設備図というのをおつくりになりまして、そして、経産省からのこのときの指示はこうでした。作業環境への影響を配慮するようにと。中で作業ができるようにしっかりと設備を整えるようにということで、照明もついていますよね。これは、事故の三カ月後に、こういうものをつくるということを決めているわけです。

 そしてさらに、東京電力、カバー建屋の設備の設置についてというので、事故が起こった年の六月ですけれども、「季節により作業エリア毎に必要に応じてスポットクーラー等を設置することにより対応します。」となっているわけですね。

 ですから、中で将来作業をする、中に入ったときに中のものがよく見えるようにかなり明るい照明もつけ、そして、作業しやすいようにスポットクーラーなどもつけますよと、東京電力みずからが事故後三カ月のときにこれを出し、そして事故から半年ちょっとで、十月にこのとおりのものを建て、そしてその四カ月後に、国会事故調が調査に入りたいと言っているのに、真っ暗ですという説明をしたわけですね。そしてさらに、その人は技術畑の方で、しっかりした人をつけなきゃということでおつけになったんじゃないですか。

 廣瀬社長、私、これは何回見てもおかしいと思うんです。ですから、やはり意図的に、中に入れたくない、もしも入ったら、東電は地震の影響がないと言っているのに、新しい調査の結果、別の結果が出てきたらどうしようとか、それは東電としては考えると思いますよ。どう考えても、その企画部部長が、ずっとこうやって東電みずからがやっていることを全く知らずに真っ暗ですよと説明するということは、理解できません。いかがですか。

廣瀬参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、本人は、そもそも原子力の建屋、建物は、これは全体のイメージだと話しておりますけれども、暗いものだと全く決めつけております。したがって、最初から、原子力の建屋の中は暗いものだという思い込みのもと、説明をしているということでございます。

 さらに、十月十四日に建屋カバーが完成して、先生の資料にありますように、二十八日に照明ができたということを事前に調査せずに、思い込みのまま説明をしたというふうに申しております。

 これにつきましては、なお一層調査をしなければいけないと思っておりますし、今後、第三者の方も入れてやってまいりたいというふうに考えております。

辻元委員 そうしたら、もう一つお伺いしたいんですが、先ほどの御答弁で、この人は調査の窓口であるというようにおっしゃいました。

 去年、二月の二十八日に、国会事故調は調査に行きたいと。事故から一年はたっておりません。調査に入りたいと。その依頼は、二月の二十八日より以前にしているわけですよ、東電の方に。そうしたら、普通は窓口の人がちょこちょこっと検討して答えるような案件ではないですね、これは。普通、一号機の建屋の中に外部の人間を入れるというだけでも、これはかなりハイレベルの判断が要ると思いませんか、皆さん。違いますか。

 そしてさらに、調査をするということになれば、その調査の結果によっては、自分たちがみずから調査した結果と違う結果が出ることも考えられるわけです。ですから、この企画部部長が一人で、思い込みで間違えて答えを出したという話ではないんじゃないですか。

 どのレベルでこの国会事故調の調査について検討したか。東京電力の中でしっかり、国会事故調から調査の依頼が来たから、どうしよう、どうしよう、どうしようと検討したはずなんです。それはどこでやったんですか。

廣瀬参考人 お答え申し上げます。

 本人は、国会事故調の事務局から説明をというふうに求められて以降、専ら、もちろん暗さは当初から思い込みがございましたせいもあると思いますけれども、放射線のレベルであるとか、それから、どのぐらい中が瓦れきでどうなっているのかといったようなことを第一原子力発電所の者に確認しております。本人は第一原子力発電所には事故以降入っておりませんので、全ては聴取したということでございます。

 それから、その段階で、先ほどの繰り返しになりますが、十四日にカバーが完成していたこと、あるいは照明がついていたということの確認をしていなかったということ、これについてはまことに申しわけないことだと思っております。

 さらに、その他の上司の関与という御質問でございますけれども、本人は、この二十八日に出向いたときに、実際、三月の五日、六日に現地を調査していただくことになっておったわけですが、そこのいわゆる段取りといいますか、ロジであるとかそれから必要な準備であるとか、そうしたものについての説明をするものだ、そういう業務だという認識のもと、上司には全く相談をせずに、本人がそこで調査したものを説明しに向かっております。

辻元委員 という御答弁、社長みずからしていいんでしょうか。

 東京電力というのは、国会事故調からの調査依頼をしっかりと検討もせず、担当窓口だけに任せていたという御認識ですか。そしてさらには、その担当窓口の方が、東電みずからが建屋をつくっているということも知らないような人が、今まで、例えば柏崎刈羽の技術統括部長というような、原発の責任あるお仕事を任せてこられたんですか。

 そこをはっきりお答えいただきたいのは、この人の一存でやったという御答弁をされていいんですか、ここで、東京電力として。国会事故調の、それはもう本当に自分たちも被曝するかもしれないけれども、東電と政府だけに任せて、当事者ではあかんということで、事故調が行くということで。国民ですよ、この事故調というのは。国民の代表が行くと言っていることを、担当者だけで、いや、暗いだろう、間違えましたと。それが東京電力の、私たちの、国民の事故調査に対する姿勢だったという認識でいいんですか。

廣瀬参考人 お答えいたします。

 ただいま、事実関係で、上司に説明をせずに行ったということを申し上げました。今後、そうしたことがあっていいかどうかも含めまして、しっかりするとともに、まずはとにかく現地を見ていただくために、私どもとして最大限の協力をしていかなければいけないというふうに今思っておるところでございます。

辻元委員 これは皆さん、国会として重大な問題だと思いませんか。東京電力の、私、信頼回復してほしいと思って今質問しているんですよ。今まで、ひび割れを何年間も隠していたとか、それも福島第一原発の一号機でですよ、そういうこともあったんですよ。同じじゃないですか、それは。

 そして、今、調査、調査とおっしゃっていますけれども、外部の専門家も入れてということですけれども、私は、これははっきりと独立した中立の調査機関を設けて、そして東京電力、さらには国会事故調の委員も、両方のヒアリングを、中立な独立した調査機関を東京電力が依頼して、完全に独立した機関で調査をさせるべきだと思いますが、いかがですか。

廣瀬参考人 お答えいたします。

 先ほど来申し上げておりますとおり、私ども、内部の単独の調査だけでなく、外部の専門家の方の検証を受けたいというふうに考えております。

辻元委員 それはしっかりと国会事故調へのヒアリングもするべきだと思います。

 これは委員長、私、委員長もそうだと思いますが、そんな窓口だけで対応していたというのは考えられないと思います。こういう、外部の人を入れる、そして調査を受けるかどうかは、廣瀬社長にお伺いしますけれども、廣瀬さん、社長ですよね、そうしたら、国会事故調が調査に入る、そして建屋の中に外部の人を入れる、そしてさらには、自分たちの調査結果がそれによって変わるかもしれないという重大決断を、廣瀬社長は、社長までその決裁を仰がずにやっていい案件だと思っていらっしゃいますか。どうですか。

廣瀬参考人 お答えいたします。

 昨年の二月の段階で、国会事故調の事務局との対応ということで私どもの玉井が行っておりますので、私、振り返って、その段階でどこまで上げていけばよかったのかということについては、なおちょっと考慮の必要があると思います。

 というのは、現状、まだ、玉井がどの段階でそうした決定がされるのか等々についてどこまで認識していたのかということについて、改めて調査させていただきたいと思っています。

辻元委員 廣瀬さんが、今、社長でいらっしゃって、こういうような問題を自分の決裁まで仰がずに、今だったらですよ、もしも東電の調査と国会事故調の調査が違ったとしたら、社長だったら、誰が入れたんだ、いつ決めたんだと普通言うでしょう。ですから、廣瀬さん、社長として、現時点で、こういうような案件だったら、自分まで決裁を上げる事案であるとあなたがお考えかということを聞いています。いかがですか。

廣瀬参考人 お答えいたします。

 国会事故調の調査に関しましては、私ども、最大限の協力体制で臨むというのが姿勢でございますので、当然ながら、そうしたことでないようなことになってはいけないというふうに思っておりますので、当然、社長が関与すべきものだと思っております。

辻元委員 今、社長が関与すべき問題だとおっしゃいました。

 ということは、この前も同じように、社長や会長まで決裁が上がっていたんじゃないかというように私は思いますが、その点についても調査をしっかりされますか。

廣瀬参考人 お答えいたします。

 まさに、先ほどの繰り返しになりますが、そうしたところもしっかり調査していかなければいけないというふうに思っております。

辻元委員 委員長、この企画部部長本人と、それから、調査を申し出た事故調の当該委員を参考人に来ていただきまして、引き続き、詳しく当事者のお話を伺いたいと思いますので、御検討をお願いしたいと思います。

山本委員長 後刻、理事会で検討いたします。

辻元委員 そして、一点、規制委員会委員長にきょうお越しいただいておりますが、いらっしゃいますでしょうか。

 今、このように疑念を持たれております。そして、今、東電しか中に入って事件の調査をしておりません。その東電みずからが、今御答弁いただいているような調子なんですよ。

 委員長にお伺いしたいんですが、原子力規制委員会は、設置法の四条の十で、調査の権限も持っております。国民が、これは、ひょっとしたら地震の影響もあったんじゃないか、それを調査されたくないから調査妨害したんじゃないかという疑念が湧いていることは事実なんですよ。ですから、規制委員会として、今後、そして、できれば事故調の委員なんかにも協力を得ながら、この一号機について調査をすることを検討するということはいかがでしょう。

田中政府参考人 田中でございます。

 今の、国会事故調査委員会と東京電力の関係については、私ども当事者じゃありませんので何も申し上げることはございませんけれども、私どもは、幾つかの事故調を拝見しまして、きょうも御指摘がありましたように、いろいろな判断の違い、原因についての判断の違いがございますので、それについては予断を持たずに、科学的にきちっとそれを解明する。そのことを今後の安全規制に生かすと同時に、国際的にも恥ずかしくないような事故調査をきちっとしていきたい。

 ただ、今現在、実際、そこの議論になっておりますところは非常に放射線量が高いところでございますので、そういったことを踏まえながら、できるだけ速やかに調査に取り組んでいきたいと思います。

辻元委員 調査に取り組んでいただけるということで、引き続き、参考人を呼んで、これは福島の皆さんが一番原因を知りたいと思うんです。東電の現場で命がけで働いた人たちもいらっしゃるわけです。その人たちの名誉のためにも、しっかり原因を究明していただきたいと思います。

 きょうは二十五分しかいただいておりませんので、これは引き続いて究明を続けてまいりたいと思います。委員長、よろしくお願いいたします。

 終わります。

山本委員長 この際、大西健介君から関連質疑の申し出があります。後藤君の持ち時間の範囲内でこれを許します。大西健介君。

大西(健)委員 民主党の大西健介でございます。

 先週の本委員会におきましては、維新の会から地方の首長経験者の皆さんが質問に立たれて、そして、首長ファイブということで注目を浴びましたけれども、我々民主党は、サバイバーファイブということで、この予算委員会、論戦に臨んでまいりたいと思います。

 サバイバーファイブというのは何かと申しますと、私とともに三年前の選挙で同期で当選した仲間、百四十三人いました。その中で、さきの総選挙で残ったのは、私を含めて五人です。きょうは、その中の後藤祐一代議士が質問に立ちました。そして、私がこれから質問させていただきます。隣には奥野代議士がいます。多くの涙をのんだ仲間の分のその思いも背負って、しっかりと論戦をさせていただきたいというふうに思います。

 きょうの集中審議、安倍内閣の政治姿勢などということでございますけれども、先週の委員会で前原委員から、このテーマについては本当は質問をしたくないんだけれども、しかし触れざるを得ないということで、徳田国土交通政務官の辞任について質問をされました。私も、この問題についてまず質問させていただきたいというふうに思っております。

 官房長官の御答弁の中で、一身上の都合であるということであったので理由について本人に聴取をした、しかし相手方との関係で詳しくは言えないということだった、こういうような答弁がありました。

 ただ、私、これを聞いてちょっと納得がいかないのは、予算委員会が始まろうというこの大事な時期に、そして、安倍内閣が順調な滑り出しを見せている、かつ、総理自身が最も重要だと言われている復興を担当しているその政務官の辞任について、一身上の都合ということだけで、詳しい理由をお聞きにならないでこの辞任をお認めになったというのは、私は不可解な気がいたします。

 総理自身にぜひ御確認をさせていただきたいんですけれども、一身上の都合ということで、詳しい事情をお聞きにならずにこの辞任をお認めになったのか、それとも、詳しい事情をある程度お聞きになった上でこの辞任をお認めになったのか、どちらなのか、お答えをいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 徳田大臣政務官の辞任は大変残念な出来事でありました。

 徳田大臣政務官から菅官房長官が事情について聞き取った結果、一身上の都合により辞職をするということを認めるということで決定をいたしました。

大西(健)委員 今の御答弁は、一身上の都合ということだったので詳しい話は聞いていないということだというふうに思いますけれども、やはり私は、それはおかしいんじゃないかと。

 つまり、先ほども申し上げたように、復興が一番大事だ、その復興を担当されている徳田政務官、本来、問題がなければ続けてもらえばいいんです。やはり、事情を知っていて、これはまずいと思ったから、言葉は悪いですけれども、予算委員会の本格的な審議が始まる前に臭い物にふたをしようというような形で収拾を図ったんじゃないかと思われても私はいたし方がない部分があるのではないかなというふうに思います。

 二月十四日の週刊新潮が発売になり、その中で、徳田氏が未成年者に多量の酒を飲ませて酩酊をさせて、抵抗できない状態にして姦淫をしたという記事が出ました。徳田氏は、この件で平成十九年に損害賠償の訴えを起こされています。ただ、一緒にお酒を飲んだこと、そして性的関係を結んだことは認めましたけれども、ただ、未成年とは知らなかった、また、お酒を勧めたという事実もないし、性的関係についても合意の上だと主張して、最終的には和解をしています。

 ただ、今申し上げました週刊誌の記事を読んで、我が党の女性議員の中からも、そのおぞましい内容について本当に怒りの声が上がっています。

 そこで、安倍内閣の男女共同参画の担当大臣、そして女性の閣僚でもいらっしゃいます、また弁護士でもいらっしゃいます森大臣に、今の週刊誌の報道の内容について、私が簡単に申し上げましたけれども、お聞きになって、率直な御感想をお聞きしたいと思います。

森国務大臣 大西健介委員からの御質問にお答えをいたします。

 徳田元政務官の辞任に関する事情については、私は承知しておりません。また、週刊誌の記事に対する感想というものも申し上げる場ではないと思います。

大西(健)委員 今やじで細野さんがどうのこうのという話がありましたけれども、全然質が違うんですよ。これはもう準強姦みたいな話ですよ。

 しかも、この週刊誌の報道について全く知らないなんということは私はないと思うんです。これだけ話題になっていて、聞かれることも、私はきょう通告もしているんです。なのに、それに対して感想を言われないということ自体が、私は、男女共同参画の担当大臣として、今テレビでごらんになっている女性の多くの皆さんががっかりされたんじゃないかなというふうに思います。

 そして、安倍総理は女性の閣僚やあるいは党幹部を積極的に登用なさっておられますけれども、今の森大臣はお答えになっていただけませんでした。しかし、私は改めて、この内容はもう、今私も申し上げましたし、直接お読みになっていなくてもお耳に入っていると思います。安倍総理に再度、これに対する御感想と、そしてみずからの任命責任についてお聞きをいたしたいというふうに思います。

安倍内閣総理大臣 まず、議員は週刊誌に書かれたことが事実としてお話をされておられますが、事実かどうか確認されたんですかということを私はお伺いしたいと思っているんです。これは予算委員会ですから、ここで大切な時間を使って議論するということは、やはり事実に基づいて議論することであって、週刊誌にはいろいろな記事が出ますよ。全くそれはいいかげんな記事だって私は多いと思いますよ。

 そして、この問題については、官房長官が本人に当たったところ、相手方との関係においてこれはしゃべれないことになっているということでありました。その上において、自分は職を辞させてもらいたいということであって、我々はそれを了としたところでございます。

大西(健)委員 今、週刊誌の記事が事実なのかどうなのかと。事実じゃなくて問題なかったらやめさせる必要ないんですよ。

 あるいは、馳さんが、徳田さんに聞いたのかということを言われましたけれども、では、徳田さんにここに来てもらって、この予算委員会で参考人質疑をしたらいいんじゃないでしょうか。ぜひ委員長にそのことをお願い申し上げたいというふうに思います。

 そして、この問題について、私、もう一つお聞きしたいことがあります。

 徳田毅政務官の父であり、そして元衆議院議員である徳田虎雄氏が理事長を務める一般社団法人の徳洲会、また医療法人の徳洲会から成ります徳洲会グループ、全国で六十七の病院を傘下に置く日本最大の医療グループです。そこで働く人々は約二万七千人というふうに言われております。徳田毅氏も、政務官就任前には医療法人徳洲会の常務理事をお務めになっておりました。

 この徳洲会グループの中には、公益性が高い病院ということで、例えば固定資産税や法人税が減免をされている、そういう社会医療法人というのも含まれております。この社会医療法人については、そういった税制の優遇措置を受ける前提として、例えば役員については同族性を排除するとか、あるいは役員報酬についてはその基準を明確にするとかといったことが求められているんです。

 ただ、徳洲会グループについては、徳田ファミリーへの報酬の支払いが多額であることや、あるいは、徳田虎雄氏が代表を務めていた政党、自由連合、ここに無担保で百二億円もの融資をして、そして七十一億円が焦げついている、利子まで合わせると七十七億円の債務超過に陥って、この自由連合の清算手続そのものが宙に浮いてしまっている、こういった報道もなされており、徳田ファミリーによる病院の経営の私物化ということが指摘をされているんです。

 皆さんのお手元に新聞記事をお配りさせていただいております。産経新聞の記事ですけれども、先ほどの徳田政務官の辞任の引き金になったこの事件の和解金一千万円のうち八百万円は徳洲会が用立てたという記事なんです。これも事実だとしたらということですけれども、まさに税制優遇等を受けている公益性が高い病院の運営主体としては、私はいささか問題があるんじゃないか。

 そこで、田村厚生労働大臣に来ていただいておりますので、これは一般論としてで結構です。一般論としてで結構ですので、まさにこういう公益性が高いということで税制優遇措置等を受けている、そういう病院の経営が私物化をされているというようなことがあった場合には、これはどういう問題があるんでしょうか。

田村国務大臣 委員から一般論でという御質問がございましたので、一般論でお答えいたしますけれども、社会医療法人等々公益性の高い法人が不正経理をしたとするならば、それは、言うなれば認定の取り消し等も行われる可能性は十分にあります。

大西(健)委員 まさにそこは、新聞の報道が事実かどうかというところにかかわっているわけです。

 ですから、私は、先ほども申し上げましたけれども、馳委員からは本人に聞いたのかという話がありましたから、本人に来てもらって、この話、しっかりと実態解明をすべきじゃないかというふうに思いますので、委員長、ぜひ徳田毅代議士のこの委員会への参考人招致をお願いしたいというふうに思います。

山本委員長 理事会で取り計らいます。

大西(健)委員 次の問題に移りたいというふうに思います。

 先ほども申し上げましたように、安倍総理は、経済の再生、そして外交、安保とともに復興が最優先課題だというふうに申されてきました。その復興に関して、私は看過できない報道があったというふうに思っています。それは、東京電力福島第一原発の周辺での除染作業、剥ぎ取った土やあるいは草木、そういうもの、それから除染に使用した水が周辺の川に捨てられている、そういう手抜き除染が横行しているんだという報道がありました。

 除染の枠組み、これは民主党政権で定められたものです。しかし、私がここで問題にしたいのは、その手抜き除染だという指摘があったことに対してどんな調査が行われたのか、その調査の内容についてここで問題にさせていただきたいというふうに思っています。

 フリップをお願いいたします。

 ここでは、まず朝日新聞の記事で指摘をされたこと、それに対してゼネコンがどういう報告を環境省に行ったのか、そしてさらに、それに対して紙上で朝日新聞は反論をしています。また、一番最後の欄には、環境省が定めたガイドライン、関係するガイドライン等を書かせていただいています。

 まず上段、これは田村市というところでの事例ですけれども、作業員が落ち葉を何度も足で蹴り出して川へ流している、こういうふうな報道がありました。これに対してゼネコンはどう回答しているかというと、そういう事実はなかったんだと。そして、その朝日新聞が掲載した写真というのは、川に落ちそうになった熊手をとりに行ったところの写真なんだと言っています。

 ただ、朝日新聞はさらにそれに反論しているんです。その作業が終わるまで記者はずっとそこで最後まで見ていた、だけれども、熊手が滑り落ちるというような、そういう場面はなかったし、そして、そこの状況というのは、斜面は、草木でうっそうと覆われていて、熊手が滑り落ちるような、そういうようなところではないというふうに言っているんですね。まさに、全く食い違っているんです。

 それから、下の楢葉町の事例です。これは、朝日新聞は、ベランダを高圧洗浄機で洗浄している、洗い流している、そういう写真を載せました。これに対しても、ゼネコンは何と答えているかというと、ベランダはやりました、だけれども屋根はやっていませんということを明言しているんです。

 でも、実は、朝日新聞が紙面に載せたその写真以外に動画というのがあって、その動画の中では、屋根を高圧洗浄している、そういう様子がちゃんと映っているんですよ。ですから、これも完全に食い違っているんです。

 ですから、何か悪いことをした人に、おまえ、やっただろうと言って、いや、やっていませんと。相手がやっていませんと言っているから、やっていないと思います、これは私は調査じゃないというふうに思うんですよね。

 だから、ゼネコンの言っていることをうのみにしているだけじゃ、ある意味、ちゃんとした実態解明は私は進まないというふうに思います。

 石原環境大臣、この調査のやり方でいい、十分だというふうに思っておられるんでしょうか。

石原国務大臣 大西委員にお答えいたしたいと思います。

 除染は、委員も現場を歩かれて御承知のことだと思いますけれども、県民の皆さん方にとりまして、一日も早くふるさとに戻りたい、こういう思いで、今御議論のあったようなことが決してあってはならないことだと思います。

 日付がいつかは存じませんけれども、現在でも、雪が降っているところは除染はしておりませんけれども、数百の現場が動いております。また、雪が降っていないところには、この数百がさらに広がった現場で除染作業が行われております。

 そして、その除染作業に従事されている方々の八割から九割が地元の福島県民の方々であります。私は、これが委員の御指摘のとおり百数十の場所でもし起こっているとしたら、絶対に許してはいけない。しかし、たった一つ、たった二つ、これもあってはいけないことですけれども、真面目に同胞の帰宅のために努力をしている作業員の方々もいらっしゃいますので、一つ一つ調べていかなければならない。今も調査を続行させていただいております。

 前段の今お話がありました件につきましても、私どもも調査をさせていただいたと記憶しております。しかし、残念ながら、新聞社の見解、ゼネコンの見解、私どもの調査の結果、言われたような事実を確認するには至っていないというのが現状の点でございます。

 もし、どういう調査をして、どういう聞き取りをやってどうかというようなことを委員がお聞きになりたいのでありましたら、きょうは個々のケースの御質問の通知がございませんでしたので、たまたま私がちょっと記憶に残っておりましたので今お話をさせていただきましたが、調査に当たった方から、今御指摘のあったように、どっちに信憑性があるのかということを聞いていただければと思っております。

 重ね重ね、やはりこういうことのないように、また、やっていらっしゃる方々も福島の方だということをしっかりと受けとめて、事に当たらせていただきたいと考えております。

大西(健)委員 まさに大臣言われるとおりで、やっておられる方は地元の方が多いんです。真面目にやっておられる方が、本当にこんなことが起こっていたら、その人たちまで迷惑をこうむるし、またその中には、ちゃんと危険手当が出ていないとかというような問題もあるわけです、ピンはねをされているとか。

 今、馳委員が横から一生懸命言っていただいていますけれども、これは本当に、単に契約違反、ガイドラインに違反しているというだけではなくて、放射性物質による環境汚染への対処に関する特別措置法が禁じている廃棄物の投棄、これは違反すると五年以下の懲役または一千万円の罰金、こういう法律に触れる可能性もあることなんです。

 井上環境副大臣は、捜査機関ではないので捜査手法の点で限界がある、時間的制約もあり不十分なのも事実だと、記者会見で、この調査は不十分だと認められているんです。

 ですから、私は、こうやって食い違いがある以上、しかも、この除染作業というのは、たくさんの税金が費やされている国家的なプロジェクトなんです。ですから、その税金が適切に使われているかどうかというのは、まさにこの国会において、予算委員会においてしっかりとチェックをしていかなければならない問題だというふうに思います。

 もしこういう食い違いがほかにもあるんであったらば、これは、関係者にこの国会にも来てもらって確認をしっかりとっていく、そのことによって真面目にやっている人たちの名誉を回復することにも私はつながっていくというふうに思いますので、これからも、先ほどもしっかり調査をこれからもやっていくというお答えがありましたけれども、ぜひしっかりと調査をしていただきたいというふうに思います。

 それでは、次に移らせていただきたいと思います。

 安倍政権の強力な金融緩和によって、今、円安、株高が進行しております。私は、これは安倍総理の強いリーダーシップに対して高い評価をしなければならないというふうに思っております。私の地元は自動車産業が盛んな地域ですけれども、先ほどもお話にありましたけれども、この円安、きょうは九十四円ぐらいということですけれども、このおかげで業績の見通しの大幅な改善が進んでいるんです。このこと自体は本当にすばらしいことだというふうに思います。

 ただ、気をつけなきゃいけないのは、例えば、私の地元の自動車部品関連の大手の経営者の方も、こんなふうに言っているんです。円安は歓迎すべきことだけれども、だからといって、では、国外で売るものを国外でつくっていくというこれまでの方針が、円安になったからといって変わらないよというふうに言っておられる。

 それからもう一つは、昨年は四年ぶりに新車販売五百万台を回復しました。しかし、これは民主党政権がやったエコカー補助金の効果であります。来年は消費税が上がってきます。消費税率が上がるときに自動車取得税と重量税が存続したままだと、経産省の試算では新車販売が百三十三万台落ち込むんだということを経産省は言っておられます。ですから、私も先頭に立って、これまで、消費税引き上げ時までに自動車取得税、重量税を撤廃すべきだということを申し上げてきました。

 さて、そこで、今回の政府・与党の税制改正における車体課税の取り扱いについて質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まずは、自動車取得税です。

 自動車取得税については、消費税率が一〇%に引き上がるときにこれは廃止をするんだという方向性を決めていただきました。これはオーケーなんです。

 ただ、問題は、皆さんのお手元に資料、記事を配らせていただきましたけれども、左上の方の読売新聞一月二十五日という記事でありますけれども、この記事を読むと何が書いてあるかというと、我が党の松本税調会長に対して与党の税調幹部が、自動車取得税を廃止して地方財政に影響を与える部分については、影響を与えないように自動車税が増税することもあり得るという説明をしたということが書いてあるんです。

 私、これを見てびっくりしました。経産省の自動車課長に来てもらって、自動車税が上がるなんということがあるんですかということを聞いたら、自動車課長は、絶対にそんなことありませんとおっしゃっていました。それはそうですよ。自動車取得税をなくしてユーザー負担がなくなるのかと喜んだら、いや、地方税の自動車税は上がるんだという話であったら、これは全くユーザー負担の軽減にはつながらないというふうに思います。

 上司である経済産業大臣、自動車税が上がるなんということはないというのは、経産省としてもそういうお考えでよろしいでしょうか。

茂木国務大臣 大西委員から御質問いただきました。

 まず、エコカー補助金、事実関係から申し上げますと、自民党政権、麻生内閣において導入いたしました。それを民主党政権においても継続していただいた、こういう制度だということを、御地元ですからよく御理解だと思いますけれども、改めて説明をさせていただきます。

 その上で、今回の税制改正におきましては、取得税を二段階で廃止していく、そして自動車重量税については一層のグリーン化を進める、こういうことを与党の大綱で決めていただいております。

 例えば、取得税を二段階で廃止する、八%の段階でどうするのか、さらには、重量税につきまして具体的にどうグリーン化していくか、今後の検討課題だ、こんなふうに考えております。

大西(健)委員 今、経産大臣は全く私の質問に答えられていないんです。私が聞いているのは自動車税なんですね、地方税である自動車税。

 では、地方税を所管している総務大臣にお伺いいたします。

 取得税を廃止して地方の財源が減るからといって、自動車税を上げるということはないですよね。ないということをぜひ、テレビをごらんになっている国民の皆さんに断言していただきたいと思います。

新藤国務大臣 二十五年度の与党の税制改正において、自動車取得税について、安定的な財源を確保して地方財政への影響に対する適切な補填措置を講じることを前提に、地方団体の意見、そうしたものを踏まえながら抜本的な改革を行う、そして具体的な結論は平成二十六年度の税制改正で得る、このようになっているわけであります。

 その線に沿って、また、今後のことにつきましては、党の税調、そういったものも含めまして、政府全体で考えていきたい、このように思います。

大西(健)委員 いや、今のも全然はぐらかされていると思うんですよ。自動車取得税と重量税の話をしているのに、あの大綱の中には自動車税という言葉がいきなり出てくるんですよ。

 ですから、一体この自動車税を上げる可能性があるのかないのか、そのことを明確にお答えいただきたいと思います。

新藤国務大臣 自動車の車体関連の税につきましては、地方税財源の確保、それから税制のグリーン化、こういったものを踏まえながら、党の議論も踏まえて政府全体としても対応していきたい、このように思います。

大西(健)委員 何度聞いてもお答えにならないんだなということがよくわかりました。本当はもうちょっと詰めたいところなんですけれども、時間もありますので、自動車重量税について次に聞いていきたいというふうに思います。

 自動車重量税については、大綱の中では、「エコカー減税制度の基本構造を恒久化する。」というふうにあります。ただし、消費税率が八%段階では、「燃費性能等に応じて軽減する等の措置を講ずる。」となっています。これは私は、自動車重量税という構造そのものは存続をさせるけれども、八%消費税段階でエコカー減税を深掘りして何らかの軽減措置をやるということだというふうに理解をしております。ただ、問題はその規模なんですよ。

 先ほども言いましたけれども、取得税は廃止になる。ただ、自動車取得税は二千億円なんです。自動車重量税は七千億円なんです。重量税の方がずっと多い。しかも、例えばトヨタのプリウスという車があります、ハイブリッドカー。あれは、エコカー減税で、取得税は今もゼロなんです。今もゼロになっているんです。重量税については一回目車検は軽減されていますけれども、では、例えば二回目車検についても重量税を軽減するとか新たな軽減措置を講じないと、これはユーザー負担の軽減にならないんです。もう今も取得税はゼロなわけですから。

 ですから、とにかく重要なのは、何を言いたいかというのは、まさに、取得税は下げるけれども自動車税が上がるとか、あるいは全体として十分なユーザー負担の軽減ができなければ、結局は車が売れなくなるんです。そこが一番問題なんです。取得税、重量税を存続させれば百三十三万台売れなくなると言っているわけですから。

 ですから、一定規模のユーザー負担を、しっかり自動車重量税を軽減して、そして国内新車販売が落ち込むようなことがないように、国内の販売を下支えして雇用を守っていくんだという、その強い決意というのをしっかりこの場でお聞かせいただきたいというふうに思うんです。

 この部分については本当に玉虫色の文章になっていて、経済産業省が言っていることと財務省が言っていることが食い違っているんです。ただ、これは私は食い違っていちゃいけないと思うんです。まさに国内の雇用を守っていくためには、しっかりと国内販売を下支えする、そのために十分なユーザー負担軽減をやるんだということを、ぜひ財務大臣からお答えをいただきたいというふうに思います。

茂木国務大臣 自動車産業は日本にとって基幹産業であります。輸出十四兆円を稼ぎ出す、まさに稼ぎ頭であります。そしてまた、製造業の総出荷額の二割を占める。雇用のお話がありました。関連産業を含めると五百四十五万人の雇用を支える。この国内の生産でありますけれども、ピーク時は千三百五十万台、これが、一番新しい二〇一一年の数字では八百四十万台まで落ちてきております。

 そして、税の関係でありますけれども、委員も御案内のとおり、九種類、全体でいいますと八兆円もの複雑な税がかかっております。これは、比較の仕方にもよりますけれども、アメリカの五十倍、こういうふうにも言われるわけでありまして、簡素化、グリーン化を含めて、ユーザーにとって過重な負担にならないようにしっかり見直しをしていくということが必要だと思っております。

麻生国務大臣 自動車重量税のお話だと思います。

 自動車重量税については、おっしゃるとおり、おたくはたしか安城だと思ったから、あの辺は多いから、当然いろいろ自動車関連の話にお詳しいんだと思いますが、負担軽減を図らないかぬというのは、これはもう前々から言っておるのは御存じのとおりなんです。

 その一方で、おっしゃるように、何せ二千億と七千億というのは大分違いますからね。その意味で、これにかわる安定財源をどうやって確保するんですかというのが一点。それから、いわゆるこれは地方に回ってきますので、地方財政についてその分はどうするんですかというのがもう一点。

 そしてもう一つは、これを一律にやると、先ほど言われたように、エコカーというのは既にもうチャラになっている、減税になっている部分がありますので、それはいいんですが、いわゆる外車、ベンツ等々も一律減税になっちゃうということになってはどうするんですかというようなことを、いろいろ議論が、党の税調の中でいろいろありました。

 そういった中で、今回の与党税制大綱では、重量税については存続した上で、一層これはグリーン化というのを、おっしゃったように進めなければいけませんので、それについては見直しを行うという方向性を示されたのがあの文章と御理解いただければと思います。

大西(健)委員 経産大臣からは力強い御答弁があったというふうに私は思います。

 まさにそうなんです。日本の物づくりの屋台骨を支えている自動車産業、関連まで含めると、全労働人口の約一割ぐらいがこの自動車関係で働かれている。まさに雇用を守るために、先ほども言いましたけれども、円安になっても、国外で販売するものはやはり国外でつくるんですよ。ですから、国内で販売するもの、この下支えをしっかりしないと国内の雇用が守れなくなっていく。

 そのことについては、今、麻生財務大臣からも、私は、やはりそれなりに重量税も、存続はさせるけれども軽減を図っていかなきゃいけないという思いは感じられたというふうに思っております。

 ぜひその方向で、経産大臣、財務大臣、しっかりとやっていただきたいというふうに思います。

 実は、重量税については、もう一つ大きな問題があります。それは、道路特定財源の復活という話でありますけれども、私の持ち時間というのは午後の時間にかかっておりますので、ちょっと、切りがありますので、ここで一旦切らせていただいて、この道路特定財源の復活については午後からの時間でお伺いをさせていただきたいと思います。

山本委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時十分開議

山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 本日、北朝鮮の核実験があり、安全保障会議を開会いたしました。その関係で、本委員会は一時開会の予定を一時十分といたしました。

 それでは、質疑を続行いたします。大西健介君。

大西(健)委員 民主党の大西健介でございます。

 午前中に引き続いて質疑を続けたいと思いますが、その前に、十一時五十七分、気象庁は、北朝鮮において人工的な揺れを観測したと。核実験が行われた可能性があるということで、官房長官の記者会見に続いて、先ほどは四十五分から安全保障会議が行われたというふうに聞いておりますけれども、まず、この北朝鮮の核実験に関する情報について、現状わかっている情報と、そして、当然のことながら我が国として北朝鮮に強い抗議をすべきだというふうに思いますが、総理からこの件について一言いただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 本日十一時五十九分ごろ、気象庁が北朝鮮付近を震源とする自然地震ではない可能性のある地震波を観測いたしました。本件地震は、過去の事例を踏まえますと、北朝鮮による核実験の実施に伴い発生した可能性があると考えております。

 本件地震波の報告を受けまして、十二時十一分、関係省庁幹部を官邸に緊急参集させるとともに、北朝鮮関連情勢に関する情報連絡室を、北朝鮮による核実験実施情報に関する官邸対策室に改組いたしました。

 また、十二時四十五分ごろから安保会議を開催いたしまして、対応を協議いたしました。安保会議におきまして、私から、北朝鮮の今後の動向等に関し、情報収集、分析の徹底を期すこと、そして、核実験に伴う放射性物質の影響を把握するため、関係各国と連携しモニタリング体制を強化すること、そして、国際社会と連携をさらに進めるとともに、北朝鮮に対し、独自の制裁を含め、諸懸案の解決のために有効なあらゆる手段を用いて対応すること、不測の事態にも備えるなど、国民の安全、安心の確保に万全を期すことを指示いたしました。

大西(健)委員 総理から明確な指示を出していただいているということでありますけれども、今後、刻一刻とこの動向についても変化してくると思いますので、ぜひ、今総理から指示していただいているように、情報収集に努めていただいて、分析をお願いしたいというふうに思います。また、適宜適切に国民に情報開示もお願いをしたいと思います。

 それから、今後の推移によっては、この予算委員会で北朝鮮問題に関する集中審議、これもお願いをしたいと思いますので、委員長、お取り計らいをよろしくお願いいたします。

 それでは午後の、質疑の続きを行いたいと思いますけれども、自動車重量税の話をしてまいりました。

 自動車重量税については、本会議においても何度も道路特定財源の復活ではないかという指摘があり、そして総理からは、いや、そうじゃないんだ、一般財源なんだという答弁が繰り返されております。

 先ほどお配りをした新聞記事、もう一つの記事を見ていただきたいんですが、朝日新聞の記事です。

 「重量税「道路に使う」 野田・自民税調会長」と。この委員会にも税調会長は御出席をされておりますけれども、野田税調会長は、一旦、党内の批判を受けて、一般財源だというふうに訂正をしましたけれども、二月一日のBSの番組の収録で、この記事によりますと、「「言葉遊びで一般財源のほうが通りがいいなら結構」と述べた。そのうえで「一般財源のままなら「どうして重量税は車の重量に応じて払うのか」となり、「それならやめてしまえ」ということになりかねない」と語り、道路の維持・補修に使うべきだとの考えを示した。」と書いてあります。

 まさに総理の言っていることと違うんです。この野田税調会長の言われていることによれば、これはやはり道路に使うんじゃないですか。

 私は、ある意味、野田税調会長の方が正直だし、筋も通っていると思いますよ。重量税を存続させる以上は、ユーザーに負担してもらう理由が必要になるんです。必要になるから、これは道路の補修に使うんだということを野田税調会長は言われております。

 一体どちらなのか。まさに野田税調会長が言われているように、言葉遊びのごまかしの答弁を繰り返すんじゃなくて、堂々と、これは道路に使うんだと言われたらいかがなんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 従来から何回か答弁をしておりますように、道路特定財源を復活するものでは全くございません。

大西(健)委員 これは本当に、野田税調会長が言われるように、私は言葉遊びだと思うんですね。まさにこの記事に書いてあるとおりで、野田税調会長は、一般財源の方が通りがいいならそれでもいいけれども実際にはこれは道路に使うんだとはっきりおっしゃっている。ここはやはり私は、全然今までの自民党と変わっていないというふうに思うんです。

 自民党は変わったと安倍総理は常々おっしゃっていますけれども、私は変わっていないというふうに思います。例えば、世襲もそうですし、公共事業ばらまきの予算もそうですし、そして政治とお金の問題についても私は変わっていないというふうに思います。

 その政治とお金の問題について、最後、質問をさせていただきたいと思います。

 フリップをごらんください。

 これは、麻生財務大臣、先ほど重量税について温かい答弁をいただいたので少し心苦しいんですけれども、麻生財務大臣の政治資金管理団体、素淮会の平成二十一年から二十三年の収支報告書の中から、特定の支払い先についてこれを書き抜いたものであります。

 有限会社オフィス雀部とか株式会社真友社というのがあります。有限会社オフィス雀部、三年間で八百六十万五千円の支払いがあります。ただ、この名称だけを見たら何の会社かさっぱりわからないんですけれども、皆さんのお手元には、オフィス雀部へ支払いをしたそのものだけを抜き書きしたものもお配りをさせていただいております。例えば、平成二十三年の九月二十五日、一回の支払いで百八十二万五千円、これは東日本の大震災が起こった後のことであります。

 このオフィス雀部というのはどういう会社か、麻生大臣、お答えをいただきたいと思います。

麻生国務大臣 いわゆるスナックを経営していると思います。

大西(健)委員 ここに抜粋をしているのは、今お答えがありましたけれども、全て六本木や銀座のクラブやスナックのもので、わかっているものだけで、ここで合計しただけで約一千四百万円ということになります。

 素淮会の三年間の収支報告書の中で、いわゆる飲み食いに使っているお金、合計すると六百回を超えていて、約一億円ということになります。

 もちろん私は、その中にはこういったクラブ以外にも高級店が並んでおりますけれども、高級店に行くなということは言っていません。それは、元総理です、SPもついています、しかるべきところで会合を持たれるのは当然だというふうに私は思います。

 ただ、銀座のクラブの支払い、六本木のクラブの支払い、これは政治資金じゃなくてポケットマネーでやられる方がいいんじゃないかというふうに思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 私の政治資金管理団体のことだと存じますが、少なくとも、政治資金規正法にのっとりまして適正に運営されている、処理されていると思っております。

大西(健)委員 まさに、政治資金の処理として違法だということを言っているんじゃないんです。また、どこに飲みに行こうが、これは自由だということも、私はあえて申し上げます。

 しかし、政治資金の使途として、さすがに、国民の理解を得られるというふうに皆さんお思いなんですかね、今やじを飛ばしている皆さんも。首相在任中にあれだけ高級クラブ通いが批判をされたのに、何にも変わっていないんですよ。

 安倍総理の収支報告書も私は見せていただきました。安倍総理の収支報告書には、少なくともクラブとか、そういうものは載っておりません。

 先ほども申し上げましたけれども、この三年間には、東日本の大震災もありました。そして、これから、国のお財布を預かる大臣として、麻生大臣は、まさに国民に消費税の引き上げをお願いしなきゃいけない立場であると思います。そういう意味で、私は、これは国民の理解が得られる政治資金の使途ではないというふうに思います。そのことを最後に申し述べて、質問を終わります。

山本委員長 これにて後藤君、辻元君、大西君の質疑は終了いたしました。

 次に、石原慎太郎君。

石原(慎)委員 浦島太郎のように十八年ぶりに国会に戻ってまいりました、暴走老人の石原であります。

 私、この名称を非常に気に入っていまして、みずから愛称にしているんですけれども、せっかくの名づけ親の田中真紀子さんが落選されて、彼女の言葉によると老婆の休日だそうでありますが、これはまたうまいなと思って、大変残念でありますけれども。

 これからいたします質問は、質問でもありますし、言ってみれば、この年になった私の、国民の皆さんへの遺言のつもりでもあります。

 私がこの年になってこの挙に出た一番強いゆえんは、実は、昨年の十月ごろですか、靖国神社でお聞きした、九十を超されたある戦争未亡人のつくった歌なんです。

 この方は二十前後で結婚されて、子供さんももうけられた。しかし、御主人がすぐ戦死をされ、そのお子さんも恐らくお父さんの顔を見ていないんでしょうがね。その後、連れ合いの両親の面倒を見て、子供も結婚し、恐らく孫もでき、ひ孫もできたかもしれませんが、その方が九十を超して、今の日本を眺めて、こういう歌をつくられた。

  かくまでも醜き国になりたれば捧げし人のただに惜しまる

 これは、私、本当に強い共感を持ってこの歌を聞いたんですが、国民の多くは、残念ながら我欲に走っている。

 去年ですか、おととしですか、東京に端を発して幾つか事例があったようですけれども、東京の場合には、四十年も前に亡くなったお父さんを葬式もせずに隠してミイラにして、しかも数十年間その年金を詐取していた。このケースがあちこちで頻発して、政府は、どういうつもりか知りませんが、その数を公表しませんでしたが、こういう我欲が氾濫している。しかも、政治家は、そういうのにこびて、ポピュリズムに走っている。

 こういった国のありさまを外国が眺めて軽蔑し、もはや、うらやむ、そのようなことはなくて、とにかく日本そのものが侮蔑の対象になっている。好きなことをされて、好きなことを言われている。なかんずく、北朝鮮には、物証も含めて数十人、いや、二百人近いですか、人が拉致されて、中には殺されている。これを取り戻すこともできない。

 こういった国の実態を眺めて、この戦争未亡人が、あの戦のために死んだ自分の御主人というものを、自分の青春を想起しながら、とにかく、ただに惜しむという心情を吐露されたのは、私は、うべなるかなという気がしてならないんですね。

 さて、総理が総裁選に出られる前、ある人の仲立ちで一晩会食いたしましたが、そのとき、私、いろいろなことをあなたにお聞きして確かめました。非常に心強い思いをして、期待しておりました。

 まず、この国を今日の混乱あるいは退廃に導いた一つの大きな大きな原因である現行の憲法についてお聞きしたいと思います。

 人間の社会に存在するいろいろな規範というものは、結局は、人工的なものはあるでしょうけれども、人間の歴史の原理というものがこれを規制して、それにのっとっていると思いますね。

 戦争の勝利者が敗戦国を統治するために強引につくった即製の基本法というものが、国に敗れ統治されていた国が独立した後、数十年にわたって存続しているという事例を私は歴史の中で見たことがない。

 もし、ちなみに、日本という独立国の主権者たる、つまり最高指導者の総理大臣が、この歴史の原理にのっとって、かつて勝者がつくって一方的に押しつけた憲法というものを認めない、これは廃棄するということを宣言したときに、これを阻む法律的見解というのは果たしてあるんでしょうか。

 そういうものを含めて、あなたが今、日本の憲法についていかにお考えかをお聞きしたい。

安倍内閣総理大臣 確かに、今、石原先生がおっしゃったように、現行憲法は、昭和二十一年に、日本がまだ占領時代にある中においてマッカーサー試案がつくられ、そしてマッカーサー試案が、毎日新聞によってスクープをされるわけでありますが、このスクープを見たマッカーサーが怒り狂い、もうこれは日本に任せておくわけにはいかないということで、ホイットニーに命じて、そして、ホイットニーが二月の四日に民政局の次長であるケーディスに命じて、二月の四日だったんですが、二月の十二日までにつくれと言って、ほぼ八日間、一週間ちょっとでつくり上げた。それが現憲法の原案であったわけでございますが、それが現在の現行憲法のもとである、このように認識をしております。

石原(慎)委員 ですから、その憲法を、今の日本の最高指導者であるあなたがこれを廃棄すると仮に言われたときに、これを法的に阻害する根拠というのは実際はないんですよ、どこにも。

 それに加えて、最近、北朝鮮はいよいよ核の開発に着手しています。地震も起こして、そういうのが検証されましたが。

 かつて、自民党の政調会長をしていた、私の盟友だった中川一郎の息子さんの中川昭一君が、日本もそろそろ核のシミュレーションぐらいしたらいいんじゃないかと言ったら、慌てて、あのときのアメリカの政権の国務長官、ライスが飛んできて、これを慰撫したという事実がありました。

 しかし、こういった非常に厄介な状況というのが日本の周りでどんどん進展している中で、私たちは、憲法の破棄なり改正というものを含めて、この国をもっと自分自身で守る、守り切るという基本的な法的な体制というのをつくる必要があるんじゃないかと思う。

 日本人がなぜか非常に好きなトインビーの「歴史の研究」という本の中に有名な文句がありますけれども、いかなる大国も衰亡し、滅亡もする、しかし、国が衰弱する要因は幾つもあって、これは自覚できる、そしてその対処もできる可逆的なものだ、ただ、一番厄介な大国の衰亡あるいは滅亡につながる要因は何かというと、自分で自分のことを決められなかった国は速やかに滅びるといって、国の防衛を傭兵に任せたローマ帝国の滅亡を挙げています。

 私は、これを、総理初め国会議員、国民の皆さんに思い直してもらいたい。ちょっと耳の痛いことになるかもしれませんね。

 今では神格化されているかつての名総理だった吉田茂総理、この側近中の側近であった白洲次郎さんから私はおもしろいことを聞きました。私は割と年早く世間に出ていたものですから、当時は文壇というのがありまして、その文壇の催し物、ゴルフの会などで、小林秀雄さんと非常に仲がよかった白洲次郎の奥さんの正子さんの縁で白洲さんも出てこられて、一緒にプレーをしながらいろいろな話をしましたら、白洲さんが、吉田先生は立派だった、しかし、一つ大きな間違いをした、それは、サンフランシスコ条約が締結されたときに何であの憲法を廃棄しなかったのか、こう言っていました。私は、それを今になって思い起こすんです。

 麻生さん、副総理として大事なポジションにいらっしゃるけれども、これは、あなたは安倍さんと一緒にこの問題について考えてもらいたい。

 ちなみに、おもしろいお話をしますと、私の盟友、盟友というか非常に親しい友人であった村松剛という文学者がいました。これは亡き三島由紀夫さんとの共通の親友でしたけれども、彼が、トロントの、カナダの大学に交換教授に行って帰ってくる途中にニューヨークに寄って、ニューヨーク・タイムズの日本とドイツが降伏したその日のエディトリアル、社説をコピーして持ってきてくれた。それを読みました。

 非常に対照的でおもしろかったのは、日本より数カ月前に降伏したドイツについては、この国は民族は非常に優秀だけれども、ナチスによって道を間違った、我々は、彼らが速やかに立派な国をつくるため、あらゆる手だてを講じ協力しようと書いてある。日本の場合にはちょっと違う。物すごい大きなナマズの化け物みたいな怪物がひっくり返っていて、その大きなあんぐりあいた口の中に、ヘルメットをかぶったGI、アメリカ兵が何人か入って、やっとこで牙を抜いている。そして、その論説に、この化け物は倒れはした、この醜く危険な化け物は倒れはしたが、まだ生きている、我々は世界のために、アメリカ自身のために、徹底してこの化け物を解体しなくちゃいけないということで、とにかくあの憲法というのはでき上がったんです。私たちはこれをやはり銘記する必要があると思う。

 この二つの論説の違いの根底にあるのは、はっきり申しますけれども、近世というものを支配してきた白人のエゴイズムといいましょうか、人種差別による非常に大きな偏見だと思います。

 日本人が割と好きなトインビーは、日本の近代化というのは世界の歴史の中の奇跡だと、ばかなことを言った。日本人はこれを喜んだ。しかし、これは何をもってするかというと、トインビーの日本の近世というものに対する不認識というか無知にほかならない。

 江戸という成熟した期間があったからこそ、日本の近代化は唯一、有色人種でできたのでありまして、江戸の時代には何が起こったかといったら、私が苦手だった高等数学でいうと、微分積分というのは関孝和という人が江戸で発明した。私は文献を読みましたら、算用数字じゃない、漢字で書いてあって非常に読みにくいんですが、それから五十年おくれてドイツはライプニッツが微分積分を考えた。さらに、ニュートンがそれより三十年おくれて、つまり、関に比べて八十年もおくれて、とにかく微分積分を考えた。

 経済でいうと、抽象経済、先物買いとかデリバティブとか、為替なんというものを考えたのはイギリス人と思われているが、とんでもない。はるかに先に江戸の堂島の要するに商人が、とにかくこういう抽象経済を始めたんです。

 そういった、とにかく日本の近世の成熟というものをトインビーも知らなかった。外国人も知らずに、有色人種の日本人が列強に対比できる近代国家をつくったとは、白人のおごりからすれば、いまいましくて許せないことなんでしょう。そういう認識に立って、ニューヨーク・タイムズの論説というのは日本とドイツの降伏を比較しているわけです。これは、私から言わせると本当に笑止千万で僣越至極の話でありますけれども、そういう流れの中で日本の憲法ができた。

 この憲法、議員の諸君も精読した人はいるんでしょうか。憲法、憲法と言うけれども。あの前文の醜さ、何ですか、あれは一体。例えば、ここに「この憲法を確定する。」日本語で言えば、普通、法律を決めるというのは制定ですよ。それから、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、」恐怖と欠乏から免れ、ちょっとおかしな日本語だね。助詞の常套からいえば、これは恐怖と欠乏を免がれなんです。

 日本語の助詞、間投詞というのは非常に大事でして、これ一つ間違うと、全然その作品の印象、文章の印象も違ってくるんですけれども、これを全く無視した、日本語の体をなしていない、英文和訳とすれば七十点もいかないような、こういう文章でつづられた憲法が、実はいまだにとにかく破棄も廃棄もされずに、非常に、これが醸し出した、吉本隆明の言葉じゃないけれども、絶対平和という一種の共同幻想というもので日本をだめにしてきたんです。

 どうかひとつ、総理、それを考えて、この憲法をできるだけ早期に、大幅に変えて、日本人のものにしていただきたい。そのためには、私は挙げての、いかなる協力もします。

 それで、一つ伺いますけれども、第一条の、天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であると書いてありますが、この象徴の具体的意味というのはどういうことなんでしょうか。どう解釈されますか。

安倍内閣総理大臣 象徴というのは、いわば、日本国において、権力を持つ存在ではなくて、まさに日本の長き歴史と伝統と、そして文化と日本国民を象徴する存在であるというふうに私は理解をしております。

石原(慎)委員 大まか、まさに正しいと思いますね。これは決して政治的な権力、権威というものの象徴じゃないんです。

 もっと具体的に言いますと、天皇は、現今の世界の中で唯一のプリーストキングですね。プリーストキングという意味は、神道という、これは果たして宗教かどうかわかりませんが、神道の大司祭なんです。

 神道は、私は普通の宗教とは違うと思いますよ。これは言ってみると、カントが言った、理性を超えた人間の非常に崇高な属性、感性というか情念といいましょうか、そういったもののとにかく結晶であります、神道というのは。

 ですから、熱心なカトリック教徒の曽野綾子さんが、伊勢神宮に行って、まざまざこれが日本だということを自覚したとエッセイに書いてありました。私もつき合って何日か同行したことがありますけれども、日本にやってきたアンドレ・マルローは、三重県ですか、那智の新宮に行ったときに、あの鳥居をくぐってから、ちょっと待ってくれとバックするんですな。それで、なるほど、この宮の神体はあの滝だなと言って、鳥居の中に滝をおさめて感心する。

 つまり、何か人間の国境を越えた感性というものが要するに神道という形で結晶しているわけで、私は、その神道の大祭司たる天皇は、そういう意味での、つまり日本の感性、それがもたらした文化というものの象徴であって、決して政治の象徴じゃないと思いますね。

 それで、それに付随したことでありますけれども、総理は、ことし靖国神社に参拝されますか、されませんか。私は、してもしなくてもいいと思っているんだけれども。

安倍内閣総理大臣 靖国参拝について、私はいたずらに外交的、政治的問題にしようとは思っておりません。ですから、私が靖国神社に参拝する、しないということについては、申し上げないということにしております。

 一方、国のリーダーがその国のために命をかけた英霊に対して尊崇の念を表する、これは当然のことであろう、そのようにも思っております。

石原(慎)委員 なかなか、聞いていてよくわからないような、わかるような難しいお答えですけれども、私は行かなくていいと思いますよ。これは、あなたが行くと結局政治問題になる。

 ならば、そのかわりに、国民を代表して、あなたが一つのことをお願いしてもらいたい。それは、ぜひ国民を代表した総理大臣として、ことしは天皇陛下に靖国神社に参拝していただきたい。

 これは決して政治的行為じゃありませんよ、文化的行為だ。宗教的な問題でもない。さっき言ったみたいに、神道という人間の情念の結晶の、その代表者である、象徴である天皇陛下が、戦争で亡くなった人を悼んでお参りをされるということは、これは祭司として当然のことで、これに異議を唱える国はないと思うし、天皇がそういう行動をとられることで、あの戦争を肯定することにも否定することにもならない。

 あの戦争に対する評価について言えば、日本人はいまだに、一方的に、ニュルンベルクなどと同じように、戦勝国が敗者を裁いただけの東京裁判の史観にとらわれているようですけれども、しかし、その後、マッカーサーはアメリカの議会で、今から考えてみたら、あの戦争はやはり日本にとって自衛の戦争だったと証言しているじゃないですか。

 私が、若いころ、高碕達之助さんの紹介で会うことのできたエジプトの二代目の大統領ナセルも、それから、その後しばらくして会ったインドネシアのスカルノ大統領も同じことを言いました。我々が独立を果たせたのは、第三次世界大戦に勝ったおかげだと。第三次世界大戦というのは何ですかと聞いたら、独立戦争だ、それができたのは日本のおかげだと。私は、その言葉は今でも重く受けとめていますし、あれによって、やはり世界が変わり、国連に、有色人種の国が独立して一票を投じるような資格を得たんじゃないんですか。

 ですから、この靖国参拝が政治的に解釈されて、あの戦争というものの価値観というものにひっかかってくるならば、これはとにかくやめたらいい。やられる必要はない。そのかわり、神道の祭司である天皇陛下に、国民を代表して、ぜひぜひ、とにかく靖国参拝していただきたいということをあなたからひとつ陛下に奏上して、お願いしていただきたい。いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 陛下の御親拝について私が云々する立場ではございません。

 しかし、今、石原議員がおっしゃったように、国のために命をささげた人たちに対する敬意の表し方は、本来政治的なものではないわけであって、そして、ジョージタウン大学のケビン・ドーク学部長、彼はカソリックでありますが、彼が論文に書いておりました。アメリカにおいて、南軍も、そして北軍の兵士もともに埋葬されている、そこに、もし大統領が参拝をしたからといって、決してそれは南軍の、例えば奴隷制度を維持するという考え方に賛成するものではなく、ただただ国のために命をかけた人々に対する敬意の表明でしかない、そのように論文を書いていましたが、私も、そのとおりだろうな、こんなように思っております。

石原(慎)委員 次に、日本とシナの間の紛争の種になっている尖閣についてお伺いしたいんです。

 ついでに申しますと、シナという言葉は、日本人が使うとひんしゅくを買うようですけれども、これはおかしいんですね。中国、シナの政府のコメントを発信しているインターネットのサイトを開きますと、そのアプローチのイニシャルはsina.comですよ。シナですよ。

 これは、何で日本人がシナと言い、仄聞するとこれは孫文がつくった言葉らしいけれども、チャイナという言葉があり、シーヌというフランス語があって、チヌというスペイン語があって、キヌはドイツ語ですか。中国というのは、あなたのお膝元の山口県とか岡山県とか広島県のことを言うんです。シナはシナでいいじゃないですか。まあ、それはどうでもいいが。

 それで、尖閣を日本は実効支配していると。言葉は勇ましいこの実効支配というもののさらに具体的な実態というのは何なんですか。

安倍内閣総理大臣 尖閣諸島は、歴史的にも法的にも我が国の固有の領土でございますが、日本が今、有効に支配をしております。

 この有効に支配をしているということについて言えば、いわば我が国の領海、尖閣から十二海里は我が国の領海になるわけでありますが、この領海においては、我が国の海上保安庁の船がこの海を管理しているわけであります。また、その接続水域についても管理をしているということであります。

石原(慎)委員 かつて、トウショウヘイが日本に来ましたときに、誰かの呼びかけでか、この尖閣の問題を持ち出した。トウショウヘイは、非常に厄介な問題なので棚上げにしましょうと言って、日本の特に外務省は喜んで、相好を崩して、そうしましょう、そうしますということで今日に至ってきた。

 でも、私たち青嵐会は、これに非常に反発しまして、拠金して、あのとき関西の冒険部の学生たちに頼んで、あそこにちゃちな灯台をつくった。これは、バッテリーにポールを立てて、その先に電球をぶら下げて傘をつけたようなただの明かりでしたが、それでも、それを頼りに避難して風待ちしていた漁船に次の日学生たちが非常に感謝されて、学生たちは非常に感動して、私たち、国家というもの、民族というものを感じましたと報告してきたんです。

 その後、みんなは右翼と蔑称しているようですけれども、青年社という右翼団体が、政治団体があそこに行って、かつて古賀さんがかつおぶしの工場をつくるためにつくった水路があるんですが、水路は船が一杯入るだけの本当に細い水路で、そこのたもとのところに立派な灯台をつくってくれた。これは、そのための苦労で一人、青年社の沖縄の支部長が疲労死するような、犠牲になってやってくれたんだ。私は非常にそれを多としたんですけれども、これは国家にとっていいことですか、悪いこと、迷惑なことですか。

安倍内閣総理大臣 その灯台がつくられたのはかなり昔の話でございますが、しかし、灯台ができたことによって、その近くを通る人たちが大変それは有益であるというふうに話をしているということは聞いたことがございます。

石原(慎)委員 それで、私は、非常にその苦労を多としまして、たまたま運輸大臣もしていたことがありますので、古巣の運輸省の水路部に行って、これを正式にチャートに、海図に記載してもらいたい、そのために不備な点があったら直させるから行って見てくれと言ったら、三点指摘されまして、その後、要するに、灯台としてチャートに、海図に記載するために必要条件というのを満たしてくれた、お金をさらに出して。

 水路部がこれで結構ですと言うので海図に記載しようとしたら、おかしなことに、外務省から待ったがかかった。何が待ったがかかったか。時期尚早という待ったがかかった。

 時期尚早と言って、正式な灯台を正式に海図に載せないことが実効支配と言えるんですか、どうなんですか。

安倍内閣総理大臣 海図に載っていないかどうか、私もちょっとつまびらかに承知をしていないわけでありますが、そうした事実があるかどうかということは確認をしてみたいと思います。

石原(慎)委員 そこで、それから二十年たちまして、私の息子がたまたま国交大臣をしているときに、彼に厳命しました。いかなる責任においても、あそこの灯台が日本製であり、日本国がつくったということを示すためのプレートを張れと言ったら、外務省と交渉したのかもしれませんが、国交省はあそこに、日本国、保安庁の水路部というんですか、これをつくるというプレートを張りまして、そのコピーも今ありますけれども、我々はこれは当然の措置だと思いますね。

 いずれにしろ、私は、今、日本がやっていること、これは本当に実効支配とはとても言えないと思います。

 その灯台について、私、横田の問題で後でお話ししますけれども、国防総省に行って、あれは副長官でしたか、ウォルフォビッツに会ったときに、たまたま、日本の外務省がだらしないのでこういうことなんだと言ったら、彼は、私はちっちゃな船を自分でもやりますけれども、石原さん、きちんとした発光物が海図に記載されていなかったらこれは非常に危険じゃないですかと言って、逆に同情されましたよ。

 とにかく、そういう実態が二十年続いて、やっとあれが正式に記載されたけれども、しかし、いかにも場所がよくないですね。

 これは、かつてかつおぶし工場があったところにアプローチのためにつくられた灯台であって、あの周りは非常に暗礁が多いので危険な水域で、海流も速いので、私は、できればあの魚釣島の一番大きな島の頂上に、周囲八方から見える灯台をつくるべきだと思います。

 これは何も日本の漁民のためじゃなしに、あそこを航行する全世界の要するに航行者のために非常にメリットになることだと思いますけれども、ぜひそれをやってもらいたいと思うし、たまたま、とにかく、私が、なかなからちが明かないので東京都であれを買おうということを言い出したら、たちまち拠金が集まって、今でも基金としてとにかく積んでありますし、これはぜひ安倍内閣で、あのお金を有効に使って国民の期待に応えてもらいたい。そのためには、まず、やはり最初にあそこに、一番見えるところに灯台をつくるべきだと思いますよ。

 ということを、私の知らないうちに買われちゃったと思うけれども、かつての要するに民主党の野田政権のときに、野田前総理がこのことについて話したいと言うから、そのとき私もだまされていたと思うんです、とっくに国は札びらでほっぺたをたたいて持ち主からあの島を買い取っていたと思うんだけれども、つまびらかにしませんが。さしで話をしますと妙に尾ひれはひれがつくので、私の仲間の園田議員が野田さんとも交友関係があるというので、彼に頼んで立ち会ってもらいました。

 そのときに私は幾つかの条件というか要望をしたんですが、園田さんが、私は石原さんが行ったらあそこに軍隊を置けなんということを言い出すんじゃないかとはらはらしたけれども、野田さん、これぐらいの要望なら聞いたらいいじゃないですかと言ったんです。

 それは、まず灯台をつくるということ。

 それから、日本のあそこで操業している石垣の漁民というのは、小さな小さな船なんですよ、せいぜい乗員が二人か三人の。あそこにやってくるシナや香港や台湾の船は、乗員が二、三十人乗っている大きな大きな船なんです。あそこにしけが来ますと、私もヨット乗りですからよくあるんですけれども、シーアンカーを流して風に向かって微速前進してヒーブツーするんです。麻生さんの弟さんはヨット乗りで遭難して亡くなったけれども、ヒーブツーするんです。

 ところが、動力のついている漁船でヒーブツーしても、石垣の漁船は小さな小さな、せいぜい乗員二、三人の船ですから、一晩、二晩風待ちしていると燃料が尽きて帰れなくなっちゃうんですよ。シナや香港や台湾の船は三十人ぐらい乗っている船ですから、一晩、二晩風待ちしても何でもない。しかも、あそこは太平洋を循環している黒潮が湧き上がってくる非常に豊穣な漁場で、高級魚がとれて絶好の漁場なんです。だから、彼らがやってきて乱獲をする。日本の船が流したはえ縄を切って、あるいはそのはえ縄の獲物まで盗んで、そういうことをしているんです。

 ですから、とにかく、日本の非常に零細な漁民があそこまで出かけていって、嵐が来たときに二、三日風待ちできるように、港とは言いませんよ、せいぜいこの部屋の半分ぐらいでもいい、船が何隻かそこに泊まって、岸からもやいをとって一晩、二晩過ごせるような船だまりをつくってくれと言ったんですけれども、野田君は、いやと言って、渋面、渋難な面持ちで、まずそれはステップ・バイ・ステップでしょうと言う。

 ステップ・バイ・ステップの最初のステップは何かなと聞いたら、燃料がないところだから、エネルギーのないところだから、太陽パネルを持っていくと。太陽パネルを持っていって電気を起こしたって、灯台をつくらなかったら意味ないじゃないですか。それで、わけのわからない会合が終わった。そのうちに国が買い取っちゃって今のていたらくです。

 あれは、むしろ東京が買い取っていたら、東京と石垣市が一緒になって仕事をしたら、沖縄の県知事は余り僕に好意を持っていないみたいで何かいい返事をしなかったけれども、とにかく、沖縄県とでも組んで、石垣とも組んであそこで事業を始めたら、シナは地方の自治体がやり出したことにどんな文句をつけたんですかね。国対国の問題にしちゃったから、何かいろいろいちゃもんをつけて変な関係になっちゃったけれども、むしろ東京が買って、沖縄と石垣と一緒に仕事をした方がよかったんじゃないかという気がします。まあ、これは今から言っても愚痴にしかなりませんけれども。

 灯台というのは大きな意味があるんですよ。かつて、北方四島の問題がごたごたしたとき、社会党のばかな議員がモスクワに行って何を言ったかといったら、貝殻島というのは非常に危険なところなので、灯台をつくってもらったら安全に操業できると。ロシアもすぐつくった、ちゃちな灯台を。それから、灯台をつくったからうちの領土だということで、貝殻島から納沙布岬の間に国境線を引かれて、あそこが国境になっちゃった。

 こういう意味合いを灯台が持つということをひとつ銘記して、総理、最低限、実効支配を具体的に表現するためには、これはやはり、あそこを通航する全国民のために灯台をつくっていただきたい。これを熱願いたします。これはお答えは要りません。

 次に、今非常にとげとげしている日本とシナの間の関係、特に軍事に関する問題についてお聞きしたいんですが、この問題、シナが非常に挑発的で、嫌がらせをしている。日本は我慢しながら応えている。国民の意見は、みんな共通して、冷静に毅然として対応してほしい。冷静というのはどういうことですか。

安倍内閣総理大臣 冷静というのは、正常な判断力を備えながら対応していく態度ではないのかなと思いますけれども。

石原(慎)委員 そうですね。

 冷静な判断力、いろいろありますが、事大きな紛争、軍事行動につながる、そういう条件についても冷静に情報をとって判断することが私は政府の責任だと思いますし、同時に、これはやはり、それが毅然とした態度を導くために一番必要なすべだと思いますよ。

 私も、この問題について非常に関心があるから、いろいろなヒアリングをしました。防衛省の内局、文官の言っていることは全部だめ。甘いというか、何を言っているかさっぱりわからない。

 私が何人か聞いた、現職の自衛官、あるいは、つい最近まで責任のある地位で訓練もし、訓練の指導もしてきた、そういう軍人の、現職あるいはごく近いOBの話を聞かれると、違う判断ができてくると私は思いますね。

 それは、内局の判断なんというのは、大体が、彼らは全然飛行機にも乗ったことがない、船にも乗ったことがない、訓練もしたことがない。その連中がペーパーの上でなぞって、あなたにどんな報告をするか知らないけれども、こんなものは、要するに、一旦緩急のときの毅然たる態度を導くための情報にはなり得ない。これをどうかひとつ胸にしまって、これからいろいろな判断をせざるを得ない時期が来るでしょう。そのためにもぜひ、現役のとは言いません、ごく最近のOBでも結構なので、その人たちの意見も聞いてもらいたい。

 というのは、彼らは、実際に自分で戦闘機に乗って、あるいはほかの国の戦闘機にも乗って、そういう体験をしている。ドッグファイトの経験もある。そのときに、彼我の練習量がどれだけ違うか、どれだけ飛行機の性能が違うかを知っているんですよ。

 例えば、シナが今非常に誇示している、ロシアからもらったスホーイ、スホーイ20ですか幾つですか、あの戦闘機の性能というのは、ロシアがインドに渡したのとシナに渡したのは、大分性能が違うんですよ。ロシア人は何か非常にシナ人が嫌いで、シナにはろくな戦闘機を与えていない。こういったものの性能の格差というもの。

 しかも、日本が使っているF15の改良型、これは中曽根さんのときに、次期支援戦闘機のすばらしいものをつくろうということをアメリカが妨害して、泣く泣く日本はおりた。そのかわりに、共同改良をして特殊なF15を日本とアメリカは持っているんだけれども、要するに、この性能とシナやインドがもらった戦闘機の性能の格差というのは、これは銘記しておいた方がいい。

 それから、仮にですよ、仮に仮に仮にだけれども、尖閣をめぐる軍事紛争が起こったときに、あの島をシナが占領して何になるんですか。これはちょうど、日本が無謀に出かけて占領したガダルカナルと同じことになるんだ。ロジスティックに、あの島はもたない。兵たんが続かない。そんな海上輸送能力は持たない。

 シナの海軍の実力というのは、みんな、何か知らぬけれども、過大評価というか幻想に惑わされて、丹羽なんというばかな大使とか、どこかの野党か与党か知らぬ政党が行って、ぺこぺこ向こうに何か言って頭をなでられて帰ってきたけれども、私は、やはりもうちょっと冷静にこういう現実を把握して物を言ってもらいたい。

 あのわけのわからぬ航空母艦、あれは、ロシアが持て余してスクラップで売りに出して、十五億円で買ったんだ、シナが。それで、動かそうと思ったらエンジンが動かないから文句を言ったら、ロシアの古い巡洋艦のエンジン二つを持ってきてくっつけたけれども、よく動かない。航空母艦が十六ノットでしか走れなかったら飛行機は発着できませんよ。

 何とかという総理大臣だか主席だか知らぬ人間が、今度、代がかわったみたいだけれども、あそこに水兵を並べて、赤と白のユニホームで二百人並べて閲兵して、えらい写真を見せて、それは、東南アジアの小さな国はアイヤーと言うかもしらぬけれども、世界じゅうの物笑いなんだ。あんなもので海上の覇権なんかできっこない。まして日本の海上自衛隊、海軍の対潜能力というのは世界一ですからね。

 私は、その限りで、彼らが尖閣周辺の紛争に関して制空権、制海権を持てることは絶対ない。ただ、これから先はわかりませんよ。

 中国も、シナも膨大な経済国になった。しかし、面積が広い、需要も大きい、こういったものを補給するため、エネルギー一つだけじゃなしに、資材もそうですが、ロジスティックの海上シーレーンというのは彼らは今の状態で保持できますか。できっこない。できっこないことを知っていながら、ばかな挑発をしている。

 だったら、そういうものも含めて、日本は毅然とした態度をとったらいい。毅然とした態度は何かといったら、パチンと鯉口を切ることですよ。刀を抜くのはばかなの。しかし、昔の侍と同じように、寄らば切るぞと、パチンと鯉口を切ったらいいんだ。そのぐらいの決心はしないと、国民が冷静に毅然としてという、政府に対する要望には私はとても応え切れないと思いますが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 私に対する印象は、常に鯉口を切っているような印象を与えているというところがあるかもしれませんが。

 しかし、大切なことは、この尖閣について言えば、我が国の固有の領土であり、そしてこれは交渉の対象でもありません。断固として、我が国は、我が国の固有の領土、領海そして領空は守っていくという決意を示していくことであろう。万が一にも、これは実効支配を揺るがすことができるかもしれないと相手国に思わせることがあってはならない、このように思います。

 その観点から、来年度予算につきましては、約十一年ぶりに防衛予算をふやしました。そして、兵員については約二十年ぶりに実増させたわけでございまして、また、海上保安庁においてもそうであります。しっかりと、相手につけ込むすきを与えないように備えを確かなものにしていきたい、このように思います。

石原(慎)委員 しかし、さりながら、日本の防衛体制も非常に大きな欠陥があるんですね。

 これはミサイルの問題ですが、日本のミサイルに対する迎撃のミサイルの数と、相手が持っている数はかなり違う。一度に二、三十発のミサイルを撃ち込まれたら、半分ぐらいは撃ち落とすけれども、その半分はなかなか途中で抑止して撃ち落としできない。これはやはり深刻に考えていただきたい。

 ただ、ミサイルが飛んできても、搭載されているウオーヘッドというのは普通の爆弾ですから、例えば、北朝鮮にしろシナにしろ、ミサイルが仮に飛んできてこの国会に当たっても、この国会議事堂が全壊するような破壊力はないんですよ。ただの爆弾と同じなんです。とにかく、それはそれで大きな引き金になって、それによって核戦争が誘発されるようなことはあり得ないし、あってはならないし、そこまでシナも愚かじゃないと思いますが。

 そういう点で、私は、日本とアメリカの防衛関係というのはもっときちっとする必要があるし、大体、日本がどんどんどんどん孤立している軍事行動の中で、集団自衛権なんていうのは当然これはやはり表示して、実行すべきだと私は思います。じゃないと、結局、日本は孤立するだけで、周りからも疎まれて、荒神山の戦いじゃないけれども、ひとりだけ逃げちゃって、要するに、刀の刃こぼれもなかった神戸長吉みたいになりますぞ。

 私も、かつて都知事をしているときに、北朝鮮のノドンができたんですか、それで、そのための防衛態勢で東京にも防衛ミサイル、エア・ツー・エアの、地対空のミサイルを配備すると。結構だ。一番目につくところに置くべきだ。まず大事なことは皇居を守ることだから、私はそう思っています。しかし、防衛庁は、できるだけ目立たないようにします、日比谷公園に置かせてくれと。ばかなことを言うなと言ったんです。置くなら皇居の前の広場に置けと。国民が意識して、やはり危機感を持つためにも、どうして広場に置かないで、日比谷公園みたいにうっそうとした森の中に置く必要があるんだと言ったら、それはうやむやになりましたが。

 とにかく、ミサイルの整備も含めて、向こう十年間は、まず、私たちは通常兵器での戦闘でシナに劣ることはないというのは、これは日本の専門家、現役の軍人あるいはアメリカのDIA、さらには一番情報を持っているイスラエルのモサドといった連中たちに聞いても、その評価は変わらないんですよ。

 ただ、十年たったらどうなるかわかりません。そのためにも、防衛費というのは大幅に増加させる必要がある。

 あの三木武夫というばかな総理大臣がいました。大嫌いだよ、あんなやつは。あれが、何を勘違いしてか、武器の輸出を禁止する原則をつくった。それから、何の根拠か知らぬけれども、総予算の一%以内に防衛費をとどめる。こんな論拠のないセンチメントに駆られて、こういうものが国是らしきものとしてまかり通っている現実というのは、私は世界に例がないと思いますよ。これを、毅然じゃない、当然変えることが、私は、安倍内閣の総理、副総理の責任だと思いますな。

 それで、もう一つ。日本は新しい、すばらしい技術を持っているんです。

 ノーベル賞というのは当てにならない賞ですけれども、非常に政治的なものがあってね。だって、そうじゃないですか。オバマは、世界の核兵器をなくしましょう、イエス・ウイ・キャンと言って、三カ月後にあいつらは新しい核兵器のシミュレーションをやっているんですよ。

 だから、佐藤さんが領土を取り戻して平和賞をもらう、これは当然のことだと思うけれども、その他この他、かなり紛らわしいものもあるんです。一番いいかげんなのは経済学賞ですかね。アメリカの経済学者でノーベル経済学賞をもらったやつがつくった会社で、潰れたのが五つか六つありますからね。

 ただ、中で、自然科学の分野でのノーベル賞は非常に信憑性がある。そして、うれしいことに、二十一世紀に入って、日本人がとった自然科学分野でのノーベル賞の数はヨーロッパに匹敵するんです、全ヨーロッパに。これは日本の大きな国力ですよ。

 しかも、ノーベル賞の対象にならないけれども、すばらしい技術を改良してどんどんやっている人がある。例えば、小さな工場が寄せ合ってつくった「はやぶさ」、あれは、とにかく四十億キロ飛んで帰って、数年おくれでそれをアウトソーシングで戻して戻ってきた。こんな技術を持っている国が世界にありますか。

 こういったものを活用して何ができるかというと、アメリカが考え出したコンベンショナル・ストライク・ミサイルという戦略兵器がある。これは一旦宇宙に消えちゃうんだ、それで正確なGPSで戻ってくる。例えば、二千キロ離れたターゲットでも、この水差しに爆弾を当てようと思ったら当たるぐらいの精度がある。ただ、このGPSのシステムは全部アメリカ依存ですから、日本は日本なりのものをつくる必要があるけれども。

 これはどういうものかというと、アメリカンフットボールで混戦になったときに、何とかポイントしたいというときに、あるメンバーが後ろにいるクオーターバックにとんでもないバックパスを出す、そのボールをとったクオーターバックは、とんでもないロングスローで、前を走っているフォワードがとってタッチダウンする、これに似ているんですよ。

 それをできる基地というのはどこにあるかといったら、日本で唯一、南鳥島。これはぜひ、余り暇もないだろうけれども、誰か閣僚に行かせたらいい。これは、自衛隊が今あそこに駐在していますが、島が小さ過ぎてランウエーが足りないから、やはりジェットの着く滑走路が要るでしょう、大きな船の着く港が要る。それであそこを整備したら、格好の発進地になる。

 これは、本気で政府が、核弾頭を積まずに済むんですけれども、しかし、非常に大事な要衝をヒットできる、必殺仕置人のあれじゃないけれども、完全にピンポイントでとどめを打つことができる、そういう兵器なんですよ。アメリカも着手し出した。一番進んだポテンシャルを持っているのは日本なんです。

 私、この話を聞いて思い出したのは、かつて、リビアのカダフィが血迷って核兵器を持つと言い出した。みんな反対したけれども、狂犬狂犬と言われた人間だから何をやるかわからぬので、アメリカは何をやったかといったら、イギリスにある空軍基地から発進して、数機の編隊で、あのときはフランスに相談したら、フランスが嫌がって領空の上を飛ばさなかったので、ジブラルタル海峡を迂回してリビアに行った。それで、当時のGPSの精度ですから知れているんですけれども、カダフィの居住区を八つか六つのメッシュに区切って、その一つ一つを徹底的に爆撃したんですよ。そのメッシュの一つにカダフィの最愛の第三夫人がいた。その子供は二人ともそれで爆死した。それでカダフィは卒然として核兵器の保有をやめた。こういう事例があるんですね。

 ですから、寄らば切るぞというもの、すばらしい、人が持っていない刀というのは、まず持たなくちゃいけない。この開発は、核の保有と違ってひんしゅくを買わない。日本の先端の技術を結集すればできることですから。これはやはりぜひぜひ考えていただきたい。本当に考えていただきたい。いかがですか。いや、防衛大臣はそんなの知らないよ、なりたてで。もっと大きなことだから。君、やるならやれよ、本当に。

麻生国務大臣 そんなに詳しいわけではありませんけれども、その経緯、「はやぶさ」の内容をそこそこ知っているもので、お二方に比べて知っている程度だと思っていただいて、余り過剰期待されると困るんですが。

 今言われたのは、これは、極めて優秀な機械、優秀な技術、あれが帰ってきたときには、一番最初に日本にその内容を詳しく説明を求めてきたのはアメリカの陸軍省、事実です。

石原(慎)委員 ということなんですよね。

 だから、それをむざむざアメリカに渡すこともないし、アメリカのお墨つきでつくる必要はない、日本のイニシアチブでつくったらいい。それは、アメリカに対する日本からの力にもなるんだ。

 それに絡めての話でありますけれども、日本にありますアメリカの基地の一つに、横田の基地があります。

 これは、私が代議士のころからこれを何とかしようと思って、土井さんが社会党の委員長のときからアプローチしている。社会党も、東京のど真ん中にこんな基地があるのは知らない。国対委員長の村山のトンちゃん、それで仲よくなったんです。おまえら、そんなことを知らずに基地反対なんてちゃんちゃらおかしいと言ったら、どこにあるんですか、東京の真ん中、東京にそんな基地があるんですか、行ってみろと言って、彼は行ったんだ、篤実に。いや、でかい基地ですな、あれは返還で、市長の選挙をやる、手をつなぎますと。今の社会党では、基地を取り巻くように人は集まらないぞ、せいぜい三百人で門を塞ぐぐらいだなと言ったら、果たせるかな、そのていたらくだったんですがね。

 総理、これをちょっと見てください。(模型を示す)

山本委員長 中継でわかるように。

石原(慎)委員 この黒いのは、かつてのアメリカの空域だった。それで、東京から西、大阪、福岡、ソウルに行く路線というのは一車線往復しか飛べなかった。正面衝突の事故が起こりそうになって、一人、乗務員が死にました、急上昇、急降下で。それで文句を言ったら、やっと彼らはこれをあけてくれたんですがね。ですから、二車線往復ぐらいになった。しかし、これは予備地を入れたら四千メートルの滑走路なんですよ。つくろうとしたら二本できるんです。しかも、これは全然使わせないんです。

 森君が総理大臣のときに、日韓両方でワールドカップがありました。そのときに、要するにCIQの検査なしで、日本と韓国がお客も選手もCIQ抜きで、横田を使って、これを使おうじゃないかと。向こうも、金浦の空港ができた、仁川があいているから、非常に喜んで、やろうと思ったら、何とアメちゃんが、その期間に突然、このほとんど使っていない滑走路が向こう五十年間対応できるように舗装工事を始めろと言って、日本の国費でこれをリカバーしたんですよ。こんなことがまかり通っているんだ。

 とにかく、日本の飛行機がヨーロッパから帰ってくるでしょう、この上は通れないんだ。一回どっち側か太平洋へ出て戻ってこないと成田や羽田に着けないんですよ。こんなばかなことがいまだにまかり通っている国というのはあるんですかね。

 それで、この返還のために私は代議士のころにやってきましたが、金丸何がしが自民党を仕切っているときに、これを問題にしてくれと言ったら、わかったと言うけれども、なぜか知らないけれども、時期尚早とそのうちに打ち切られちゃった。

 知事になってからやり出した。いまだに遅々として進まない。このために毎年日米で行ったり来たりでシンポジウムをやっていますが、アメリカ側は非常にこれに対して同情的で、ただ、空軍だけは自分の持ち物だから渡したくないけれどもね。

 去年、前の日本部長ジアラ、これは一生懸命やってくれている、前の日本全体の総司令官のフォールという大将も含めて、引退しましたが、彼も来てくれて、確かにこれは余計だということで、とにかく考えようじゃないかというシンポジウムに来てくれたら、外務省のばかが何を言ったか。北米局長がシンポジウムの前の日に、ジアラとフォール大将を呼びつけて、横田の問題は日本国家イシューじゃない、小泉のときはそれを問題にしたかもしれない、今は問題にならない、だから、あなた方は物を考えて発言しろと圧力をかけたんだ。シンポジウムの後に二人が私のところに来まして、こんなことを北米局長に言われましたと。

 しかも、今までは毎年このシンポジウムに日本側からも外務省、国交省それから防衛省の代表が出ていたのに、そのときだけ外務省は来なかった。何で来ないんだと言ったら、一地方の行事に国が参加する必要はないと言うんだ。私は、外務省の前原君の大臣室に着いて、まあ前原君はまだなりたての外務大臣で知らないんだろうけれども、北米局長を面罵しましたよ。きさまはどこの役人なんだ、おまえはどこの国の役人だと言ったら、のうのうと二人とも日本ですと。日本人だったら、この問題を知っていたら、せめてシンポジウムに下っ端でも役人を送るね。

 これを、論拠もなしに、もはや国家のイシューじゃないようなことをどうして北米局なんかが言えるんですか。こういう外務省の体質を、外務大臣、考えて、やはりあなた、変えてもらいたい、本当に。ああ、外務大臣じゃないのか、失礼した。

 これについては言いたいことがいっぱいあるんだ。腹が立ってしようがないんだ。

 それで、アメリカの公文書を見ますと、日本にあるアメリカの空軍基地で非常にフェータルに、致命的に大事な空港は三つしかない。三沢、それからなぜか岩国、それから嘉手納ですと。これはただのロジスティックベースで、一番使われたのは、ベトナム戦争のときに、向こうで戦死したGIの死体を持ってきて、つなぎ合わせて、それを送り返すその作業場だった。その話を大江健三郎君が「死者の奢り」というおもしろい小説に書いていますけれども。それしか使ったことがないんですよ。

 今、せいぜい何機かの輸送機とヘリコプターがやっているだけで、ほとんど使われていない。その一つの証拠に、こちらのメーンオフィスから、向こう側に管制塔がある、普通、行ったり来たりするでしょう。滑走路を横切るわけにはいかないから、滑走路の末端だけれども、そこに普通だったら地下道をつくって向こうへ抜けていくのに、いまだに青、赤の信号でやっているくらいののんびりした使用密度しかないんですよ。この空港をとにかく使いませんと、国交大臣もブリーフィングを受けて御存じだろうけれども、あと五年で日本の国際線はパンクしますよ。そうすると、国力の衰退につながるんだ。

 私は、トム・ドナヒューというアメリカの商工会議所の会頭がいるんですけれども、友達で、彼は依然として共和党の支持者で、今度は絶対にオバマが負けるから、そうなったら、おれはあなたに協力して横田をとにかくやろうと言っていたけれども、オバマが再選しちゃったので、ドナヒューはどうするかわかりません。

 彼が、商工会議所の会頭として、石原、一番言いたいのは、とにかくビジネスジェットをもっと簡単に入れてくれ、大きなビジネスが日本にはたくさんある、むしろシナ以上にある、どこの国もそう思っている、技術も日本はたくさんある、いろいろなもので日本に私たちは関心を持っているんだけれども、大きなビジネストークに行こうと思っても、ビジネス機が飛べない、二カ月前に申請しなきゃいけない、こんなややこしい国があるかと。まさにそうです。

 だから、太田さん、せめてビジネスジェットの発着だけは共同使用したらいいんですよ。それで、これに乗ってくる連中はかなり裕福だから、あそこから、ちょっと値段は高いけれども、ヘリコプターで都心に来たらいい。そのために、とにかく共同使用。本題はこれは返還されるべきものだけれども、共同使用のその最初のステップとしても、何とかとにかくビジネスジェットだけ優先的に入れる。

 これは、本当の空港にしますと、電車をつけたり、あそこの非常に混み合う、何号線ですか、道路の拡幅をしなければならない、インフラの整備が必要なんですけれども、いずれにしろ、まずビジネスジェットを入れてこれが非常に頻繁に利用されるようになれば、この空港の存在価値というのはもっと大きくなっていきます。

 いずれにしろ、総理、あと五年で日本はパンクするんです。だから、私も知事になって危機感があったので、今どこに行っちゃったかわからない、亀井静香が自民党の政調会長のときに、どこにいるんだ、あいつは。(発言する者あり)緑の党、何ですか。聞いたことないな。彼とやって、国交省を恫喝して、とにかく四本目の滑走路をつくらせたんですよ。これは非常に早くできた。

 ただ、一年ぐらい予想以上におくれたのは、やはり利権で、工法が、メガフロートと埋め立て式、半分埋め立て、半分桟橋。結局、半分桟橋になった。これも、多摩川の中に桟橋がかかるなんということは、国交省ができないで建設省だったら絶対やられなかったことができるようになった。これは内閣の再編成のおかげなんだ。

 いずれにしろ、そこまでしてやったんですけれども、それでもなおとにかく需要に追いつかない。今、三十数カ国でしょう、日本に乗り入れを希望している外国は。

 これは、話が長くなったけれども、総理、国運というものを将来考えたら、あなたが督励して、要するに各省連帯で横田の再利用、共同利用というものを取りつけてください。お願いします。

安倍内閣総理大臣 横田基地は在日米軍司令部が置かれていて、今委員が指摘されたように、有事の際に兵たん機能を果たすということで、なかなか、返還あるいは軍民共有ということにおいて、アメリカ側が、はい、わかりましたということにはなっていないわけであります。

 しかし、小泉政権時代に、当事の石原知事から、私が官房副長官だったときに、これをぜひ交渉を始めてもらいたいということを言われまして、そのときに、小泉・ブッシュ首脳会談、クロフォードで行われた首脳会談に私は陪席をしておりましたが、紙を出しまして、そして、小泉総理からブッシュ大統領に、日本側の考え方としての軍民共有等についてのお話が先方に出されたわけでございますが、残念ながら、今日まで成果が出ていないということであります。

 確かに、おっしゃられるような課題がたくさんあるということを頭に入れながら、米国側も受け入れられる形で何があるかということを考えていきたいと思っております。

太田国務大臣 今、軍民共用の御答弁がありましたが、空域のさらなる返還ということについては、さらに調整をしていきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。

石原(慎)委員 さらに、基地の問題について申し上げますと、今、アメリカが非常に難渋している第七艦隊の航空母艦の艦載機の離発着の問題ですけれども、NLP、ナイト・ランディング・プラクティス、これはかつては三宅島にやろうということだったんです。私の選挙区でもあったんですよ。当時の政調会長の藤尾が、青嵐会の仲間ですが、あの人も剛直な人だったけれども、ややちょっと権柄ずくで、政調会長はすごく偉いんだと自分で言って回るぐらいのおもしろい人だったんだけれども、三宅島へ行っても威張りまして、つくってやるみたいな言い方をするから島民が反発して、結局、島民の投票結果は僅差で負けたんですよ。

 三宅島といったら、十何年ごとに噴火を繰り返して、非常に厄介な島なんですけれども、今も本当に疲弊していますが、かつての噴火でできた溶岩の台地があって、これを活用したら簡単に滑走路ができるんです。しかも、航空母艦みたいに、周りは海だから。

 それで、私、知事になったばかりのときに、三宅も災害で島民が避難するような事態があったんですが、そのときに、当時のベーカーというアメリカの大使、昔から知っていて仲がよかったので、彼をヘリコプターに乗っけて、招待して、ピクニックを兼ねて行って、これ、どうだと言ったら、ベーカーが喜んで、これはもう絶好じゃないか、何でできないんだろうかと言うから、それは君らの次第、日本の政府の次第でと。

 私、今度村長もかわりましたので、前の村長にも話しましたが、場所を選べば、全然、とにかく騒音の被害も何もない地形があるんですよ。これはぜひ考え直していただきたい。

 というのは、日米にとってとてもいいことなんです。今、岩国へNLPの艦載機を持っていって云々としているけれども、あんな遠いところへ、要するに、艦載機の整備の要員というのは全部日本人ですから、この連中はあんな田舎へ行きたくない、それから、家族もみんな厚木の周りに住んでいて、行きたくない。横須賀に基地を置くんだったら、あそこから飛んでいってNLPを三宅でやれば、燃料も食わない。今、硫黄島でやっているんでしょう。こんなばかな支出は必要ないと思うので、これはやはり、もう一回私も努力しますが、島のためにもなるし、アメリカにも好ましいこと。何で岩国になんて固執しているのか、私わからないんですが。

 これはぜひ御一考いただきたい。

安倍内閣総理大臣 詳細については防衛大臣が答弁いたしますが、岩国においては空母艦載機五十九機を厚木から受け入れることにしているんですが、これは、米軍再編全体の中で、各地域がそれぞれ沖縄の負担を軽減するという中において、ぐるっと回っていく中において、岩国基地が、厚木からの空母艦載機五十九機と、あと普天間の空中給油機を十二機受け入れることになっております。

 しかし、もちろん、地域としては、NLPはやってもらっては絶対困るという強い要請がございます。その中において、現在、硫黄島において暫定的に行われているものをどうするかということについては、考えて、検討していく必要があるだろうと思っております。

小野寺国務大臣 岩国への移転については、今総理が申し述べたとおりでございます。

 NLPにつきましては、今、防衛省としましては、馬毛島を中心にさまざま調査を行っている、そのような状況にあります。

石原(慎)委員 ですから、至近の距離にある三宅島が噴火で疲弊して、なかなか立ち上がり切れずにいるんですよ。その救済にもなりますし、要するに、役人が決めたことをなかなか役人は変えたがらないけれども、それはやはり政治家のリーダーシップで、もうちょっとフレキシブルに物を考えるような、そういう指導をしてくださいよ。

 私は、閣僚をやるたびに同じことを言われたんだ、国が国がと。新大臣は役人がお嫌いでしょうけれども一生懸命やりますからと言うから、私は嫌いじゃないと言った。お好きですか、好きなわけない。何ですかと言うから、軽蔑しているだけだと。発想力がないんだから。しかし、これは無理ないんだね。

 とにかく、最近では総理大臣が一年ごとにかわる。あなたは頑張ってください、長生きして。とにかく、閣僚なんか一年しかかわらない。役人からしたら、どうせかわる政治家に大臣面されて何ができるかと。彼らは自分たちの取り柄は何かというと、コンティニュイティーとコンシステンシー、継続性と一貫性。この変化の時代に継続性、一貫性でやられたら、国の行政なんて硬直して進むわけないですよ。

 そういう点で、三宅島の窮状を見て三宅島の地ならしもしましたし、とにかく、これはもう一回提案するということをアメリカ側にも話していただきたい。

 それから、繰り返し申しますけれども、今度ワシントンにいらしたときに、小泉君がやったみたいに、やはりこの横田の共同使用、やるなら返還を、ナショナルイシューとして総理の責任でもう一回登録していただきたい。それじゃないと、外務省のばかはおずおずおずおずするだけで、国務省に気を使って、何にもこの問題については手を染めようとしない。本当に情けない役所になっちゃった。

 次の問題になりますが、これまた日本の国家官僚の硬直を象徴する一つの大事な案件でありますけれども、日本の国家の会計制度について私は非常に懸念を持っているんですよ。

 日本の会計制度というのは、明治十二年から十八年までは、明治の先覚者の福沢諭吉の提唱で、一種の複式簿記だったんです。

 ところが、明治二十年になって、岩倉具視の視察団がヨーロッパに行きまして、まあフランスとかいろいろな国に行ったんでしょうけれども、最後にドイツに行った。ドイツを強引に統合したビスマルクに会って、ドイツは近代化に確かに出おくれをとった、しかし今では成功しつつある、後発して先進国を目指す国家にとって何が必要かといったら、国民によらせろ、知らしちゃいけないと。民にはとにかくよらしむべし、知らしむべからずということを言われて、そうかということで、一番見えにくい単式簿記が明治会計法となって採用された。以後、全然変わっていない。

 大福帳と同じでして、こんなばかな会計制度をやっている国は、見回してみると、北朝鮮とパプアニューギニア、フィリピン。マレーシアは最近までそうだったけれども、変えましたな。

 とにかく、そのせいでこの国には健全なバランスシートがないんです。財務諸表もないんです。私は、国会に公認会計士の資格を持つ人、これに詳しいのは何人いるか知りませんがね。大蔵省の出身じゃだめよ、これは大蔵省の出先でしかないんだから。

 都議会にいるときに、都議会に東村君という非常に優秀な公認会計士出身の議員がいまして、この人がとってもよくわかってくれて、周りを説得してくれたんです。自民党も説得された。それで、やっと発生主義、複式簿記にした。これは、ちょうどそのときたまたま、私と同年齢の中地さんという日本公認会計士協会の会長がいまして、彼に、とにかくこの国はバランスシートがない、財務諸表もないんだ、新しい公会計制度をつくってくださいと言ったら、彼が最初に非常に機能するバランスシート、おもしろいバランスシートの方式をつくって、それをベースにして、要するに発生主義、複式簿記にしたんです。

 同時に、これは法律で決めたんですか、私は詳しく知りませんけれども、政府は、いつのころか知らぬけれども、地方自治体に外部監査を入れろと言っているんでしょう。結構ですな。外部監査を入れると、公認会計士が非常にいろいろなことを指摘して、小さな無駄、大きな無駄がわかってきて、実に東京都は財政再建のための大きなよすがになりました。

 国は何で外部監査を入れないんですか、財務大臣。

麻生国務大臣 幾つかお断り等申し上げておきたいと思いますが、国の予算と決算につきましては、これは御存じのように、現金主義と言われるものが採用されておりますのは御存じのとおりです。

 問題は、それから後が、ちょっともう少しいろいろ調べていただくとわかったんだと思いますが、発生主義、いわゆる複式簿記を含めて発生主義というのは、いろいろな意味から、確実性、客観性、透明性というのは即は出ませんから、あっちの場合は。複式簿記で借方、貸方がわからぬ人にはあれを見ても何の意味だかわかりませんので、そういった意味では、我々としては、方法としては、いわゆるストックとフローの両面から、はっきりわかりやすくしてあるのはこっちの方だと思っているんですが、少なくとも、今言われたような複式簿記、発生主義につきましては、今既に、平成十五年から、東京都は平成十八年からしておられるんだと思いますが、平成十五年から国の財政についても、参考情報としていわゆる財務諸表という書類を、財務書類を作成してこれに取り組んでいるというのが事実でありまして、私も見ましたけれども、確かにそういうものができております。これをやっておりますのが一つ。

 もう一点は、海外について見てみましたけれども、海外につきましても、同様に、これと同じようなやり方をしておりますのは、少なくとも予算につきましては、日本、アメリカ、フランス、ドイツ、いずれも現金主義。そして、決算につきましては、いわゆる議決の対象として、現金主義、現金主義、現金主義、いずれも現金主義なんですが、財務諸表というものは、間違いなく作成しておりますのは日本、アメリカ、イギリス、フランスで、ドイツだけが作成していない、財務諸表ですら。というのが、私どもの調べた平成二十五年度におけます情報です。

石原(慎)委員 それは大分違いますな、実態と。

 知事時代に、何で国はきちっと発生主義、複式簿記にしないんですかという問い合わせをしましたら、こういう文書が返ってきた。財務省では、国の財政活動についてより一層国民の理解を促進するため、平成十五年度決算分、平成十七年九月公表より、毎年、発生主義、複式簿記といった企業会計の考え方及び手法を参考として国の財務書類を作成して、公表しているところである。

 この財務書類というのを見せてください。下さいよ、資料として。いいですか。その上でまた具体的な議論をしましょう。

 いずれにしろ、FIAC、フィアックが、会計処理に関する世界組織でありますけれども、これが二〇〇〇年にエジンバラで最新の会計制度を決定しましたが、当然、日本もこの新会計制度にすべきだけれども、していませんね。なぜですか、これは。

麻生国務大臣 調べて御返答申し上げます。

石原(慎)委員 単式簿記がすなわち現金主義だとも言い切れませんけれども、とにかく税金だけの管理では事は済まないのでして、会計制度のしっかりしているものならどこが使っても、民間だろうと政府だろうと自治体だろうと結果は同じだと思いますが、その新会計制度をいまだに使わないことが問題で、怠慢というか、疑問と言わざるを得ない。

 イギリスでは一九九四年から発生主義を採用して、以来、イギリスの国会議員というのはみんな簿記の勉強を始めているそうですよ。イギリスは二年ごとに複数年度の予算をつくっていますけれども。

 とにかく、この国の会計制度では、金を使って売り上げを伸ばすという発想がない。損益計算書には税収が載っていないので、収益を上げるための税金の使い方という発想が欠けていて、本当に歯がゆい。

 それで、国が依然として世界でプリベーリングな会計制度を採用していないことを経団連が知らないんだね。おかしな話だ。豊田章一郎にその話をしたら、そんなばかなと彼は言うんですよ。あのトヨタだったら当たり前のことだ、企業にとってみたら。

 それから、前の会長の御手洗さん、あの人に私はゴルフクラブで会ったんです。そのときに、もう一人、何か後で聞いたら、尊大なやろうだったけれども、どこかの銀行の頭取がいて、もう一人、前の日銀の総裁の福井さんがいらした。それで私が、あなたがしっかりして国の会計制度に文句言いなさいよと言ったら、そんなばかなと御手洗さんが言う、そんなことあり得ませんよと。その銀行の頭取なる人物も、傲然としてそんなばかなことはないと言ったら、あの温厚な福井さんが最後に、いや、皆さん、実は石原さんのおっしゃるとおりなんです、国はいまだに単式簿記なんですよと言ったら、二人が絶句したんです。今の何とかというおもしろい顔をした経団連の会長がいますが、あの人も、名前何て言ったっけ。(発言する者あり)米倉さん。米倉さんにも言ったら、この人も知らなかったね。

 これはおっかない話で、経済団体の雄たちが、まあ、いろいろな形で関係のある国の会計制度というものがこんなにずさんなものかということを知らずにいた。

 私、あなたから資料を提出するのをお願いしましたけれども、それをベースにして、この次またこの問題についてもうちょっと精査を、専門家を交えた、うちの党にも公認会計士がいるそうですし、できたら、総理、この問題について特別委員会をつくって専門的な協議をして日本の会計制度を合理化しないと、この国はもちませんよ、役人天国で。どうですか。

安倍内閣総理大臣 この単式簿記、複式簿記の問題については、ただいま財務大臣から答弁をいたしましたように、平成十五年から国としては財務書類、東京都でいう財務諸表を出しているというふうに私は承知をしておりますが、いずれにせよ、委員会において、他の委員会もございますから、議論をしていただけたら、このように思います。

石原(慎)委員 次いで財務大臣にお伺いしますけれども、円高の理由というのはいろいろあるでしょう、これは日本にとっても非常に貿易関係の人には困ったものでしたが。これは、私はこれなりのいわれがあると思うんですよ。

 とにかく、この国は、合わせて九百三十八兆ですか、一千兆に近い債務を抱えている。地方の分が二百兆ぐらいですか。ただ、金がだぶついているんですな。それで、個人の金融資産というのは、株とか現金とか、たんす預金もそうだし、掛け捨てでない保険とか年金も含めて、まあ年金はぎりぎり使うんでしょうけれども、でも千五百十五兆もある。

 このだぶつきを見れば、しかも、国債はほとんど銀行が買い、国民が買っているので、国のポケットから左のポケットに移るだけの話で、これを見れば、やはり、世界で通貨のマーケットをやっている連中たちが日本の円に期待するというのは無理からぬ話じゃないかという気がするんですね。これは日本にとって迷惑な話ですけれども。

 この間、ある新聞のトップリーダー、うるさい人ですが、この人からおもしろい話を聞いたのは、日銀はちゃんとつかんでいるそうですね。それはそうでしょうね。十円銅貨を何万枚、何億枚出したとか、一万円札を何枚出したか、あるいは、小渕君のときにやった二千円札を何枚出したか知っているわけですね。それで、いまだに旧一万円札、聖徳太子がどこかで二千億眠っていると。中には火事で焼けたものもあるかもしれませんが。

 ある人が、そろそろ、ちょっと時間もたち過ぎたし、何となく後ろめたいし、使いにくいから、百六十億、とにかく税理士に頼んで新円にかえてほしい、福沢諭吉にかえてほしいと。ある人は三百億頼むと言ったそうですよ。そうしたら、税理士が、この蓄財はもう既に何だろうと時効にはなっているけれども、これはちょっとやはり額が額だけに問題になるかもしれませんと言ったら、じゃ、やめたと言ったんだ。

 二千億全部がどこかに眠っているか知りませんが、これは一つの事例でして、とにかくこのだぶついているお金の使い方が見つからない。何で使い切れないんですか、これ。

麻生国務大臣 まず最初に、個人金融資産、ほぼ一千五百十兆、正しい数字だと存じます。

 その中で、現預金が約八百兆を超えていると思います。そのお金が、ほとんど金利がつかない状況にあるにもかかわらず、金庫並びに貯金にたまっておるという状態が続いております。

 これは、今これだけ不景気といいながら、金利がつかないにもかかわらず、さらに現預金、金融資産はふえておりますので、そういった意味では、今でもまださらにふえ続けているという状況にあります。

 これがありますので、傍ら、御存じのように、政府が金をこれから借りておるわけですけれども、政府は、銀行経由もしくは郵便貯金経由で国債というものを売るわけですけれども、政府の借金がたまり、こちら側に個人の預金がたまる、貸方、借方でいえばそういうことになるんですが、その状況にあります。

 今、政府として、この二十年間、九二年から土地の暴落が始まっておりますので、一九九二年から今日まで約二十年間にわたって土地が暴落をし、また、株はその前の一九八九年から暴落しましたので、当時は三万八千九百十五円、これが最高値だったと記憶しますが、それが一時七千何百円、八百円まで落ちました。そういった意味では、国民の資産という名の動産が四分の三、土地も、百坪、百万円が十五万円ですから、八五%ぐらい土地という名の不動産も暴落という、デフレーションによる不況というのを、石原先生、多分戦後初めて、戦後というのは、昭和二十年、六十七年間で初めて、我々はデフレーションによる不況というのを世界で初めて経験しているんだと存じます。ほかの国でデフレーションの不況はありませんから。全てインフレの不況しかありませんので。

 はっきり言って、日本銀行も大蔵省も政府も何も全部、学者を含めて、デフレ対策というのをやった経験者はゼロですから、したがって、デフレというものを勉強しようと思えば、デフレは歴史に学ぶ以外に方法がなかったんだと存じます。

 多分、デフレを最近でやったのは、一番直近では、一九三〇年の高橋是清大蔵大臣、多分あのころは犬養毅内閣、斎藤実内閣のころだと存じますが、そのころにやった以外はないんです。

 したがって、少なくとも過去二十年間、その対策は非常に遅々として、何となくやってみたり、やらなかったりという状態が続いていたんだと思いますが、三年間の民主党の政権のあれを見て、そのまた前に続いた自民党の十七年間も見て、いろいろな経験を積んだ結果、今回、安倍内閣において、金融の緩和と財政の柔軟な出動とそして成長戦略、この三つを同時にやる。これを高橋是清のときもやっておりますけれども、これと同じことをやるという決意をしてここに進んでいるんです。

 これで初めて、今、寝ている金を動かさぬとどうにもならぬ、そこが一番の問題なのであって、それをどうやって動かすかというのは、個人が消費をするか、もしくは民間が設備投資をするかしない限りはこれは動きませんので、そこをどうやって動かすかという刺激策が今後我々としては最大の課題になるだろうと思いますが、まずは金融の緩和からスタートし、それにあわせて財政を出動させ、そして今、こういった形の予算をお願いしておりますけれども、プラス企業のいわゆる成長戦略というものが加わって、それで初めて消費が加わってくるんだというように思っておりますので、少しタイムラグがあるとは存じますけれども、その方向で事は動かしていかねばならぬと思っております。

石原(慎)委員 金融の緩和といっても、日銀にたくさん金を刷らせて、それで結局銀行に国債を買わせて抱えさせているんじゃ全く意味ないですわね。やはり、例えば設備投資の減税とかその他この他で、アクティブに経済が動くようにやってくださいよ。

 高橋是清の話が出ましたが、実は、あのときの大蔵の事務次官というのは賀屋興宣先生だった。私は賀屋さんに私淑した一人ですけれども、あれは初めて統制経済をやったんですね、戦争の近いこともありましたけれども。そういったものが私は今日どういう意味合いを持つかわかりませんが、とにかく、あなたのおっしゃるとおり、デフレの不況というのは未曽有のことでして、これはなかなか本当に克服するのは難しいと思いますけれども、頑張っていただきたい。

 もう一つお聞きしますが、要するに、国と地方が抱えている債務の総額が、九百四十八兆ですか、千兆近いものがある。

 しかし、債務、借金でも、返す必要のない借金もあるわけですね。それから、財産になるものもあり得るわけです。この九百八十六兆ですかという債務の中にもかなりこれがあると思うんですが、これに見合う資産の取得原価、この時価での一覧表があったら、ぜひ参考に出していただきたいので、よろしくお願いします。

麻生国務大臣 一つだけ、先ほどの複式簿記の話ではありませんけれども、政府が持っている場合、いろいろなものを負債ではなくて資産に計上するわけですが、その資産の中に、例えば税金を取れる権利、徴税権、お金を刷れる印刷権、造幣権というものを幾らで評価するかというのは、これはなかなかできないところなので、そこらのところが多分、各国皆、最終的に複式簿記というものを予算のときに計上することはできないということになっておられるんだと、これはイギリスから聞いた話ですので、ほかのところはもうちょっと調べてみないとわかりませんけれども、そういったことなんだと私は思っております。

 ただ、今言われたように、道路やら富士山やら、国有地は一体幾らで計算できるのかと言われると、ちょっとなかなか簡単にはいかないところだろうとは思いますけれども、一応のものみたいなものをかつてつくった経緯がたしかあったと思いますので、今それが現存しておりましたら、御提出いたします。

石原(慎)委員 いずれにしろ、また繰り返しになりますけれども、会計制度というものをもうちょっと合理化して、せめて企業並みに能率的なものにしませんと、これはアベノミクスのバリアになりますよ。

 だから、総理、アベノミクスを成功させるために、会計制度というものをやはり一新させる必要があると私は思います。

 民主党のマニフェストを読んでいますと、マニフェストの八に、会計制度を変えますと、税金の使途がはっきりわかるということで、国民の納得を得られるとありますが、民主党も、余りいいことをしなかったけれども、いいことだけは言っているので、これはひとつ心にとめてお考えいただきたい。

 最後に、担当の大臣は要らないと言ったんですけれども、これは総理に一つの政治家の哲学として御記憶いただきたいんだけれども、私は、代議士のころ、四十年近く前に東京のよみうりホールで、ブラックホールを見つけたホーキングという天才的な宇宙学者の講演を聞きました。彼はそのとき、筋ジストロフィーにかかって、もう声も出なくて、コンピューターを腕で打って人造語で話していましたけれども、彼は、この間のロンドン・パラリンピックでもそういう形でメッセージを出して、非常に喝采を浴びたそうです。

 そのときに、まあまあの話でしたが、質問が許されまして、ある宇宙物理学か宇宙専門の学者の一人が、この宇宙に地球並みの文明を持った星が幾つぐらいあると思いますかと言ったら、ホーキングは言下にツーミリオンと言った。私はびっくりした。太陽系宇宙だけじゃないですよ、全宇宙で。

 そうしたら、ある人がまた手を挙げて、それだけたくさん文明の進んだ星があるのに、何で我々はハリウッドのくだらない映画じゃなしに実際の宇宙船とか宇宙人にこの地球で出会うことがないんでしょうかと言ったら、ホーキングが、いや、それは違う、せめて地球並みの文明を持ったら、そういうプラネット、惑星は非常に自然の循環が悪くなって、宇宙時間でいうと瞬間的に生命が消滅すると言ったんです。

 私はびっくりしまして、ホーキングは、神様ではありませんが、一応天才ですから。私は、挙手しまして、あなたの言う宇宙時間の瞬間的というのは地球時間でどれぐらいですかと言ったら、百年と言いましたな。あれから四十年たっちゃった。彼の予言が正しいとするなら、あと六十年しか、地球は、あなた方はもたない。

 私、この問題というのは、人間というのはみんな欲望で、欲望の象徴というのは経済、経済の象徴は金ですから、金、金、金でうつつを抜かしているけれども、ヨーロッパの経済が不振だとかアメリカがどうだとか日本がどうのこうの言っていますが、過去のG8でこの環境問題を余り深刻に討論したことはないんですね。少なくとも過去の三年間、G8が終わった後、政府のスポークスマンに記者たちが、メディアが、環境問題について討論しましたか、進歩はありましたかと言ったら、いや、余りしなかったが、でも半歩は前進したというのが三年間続きました。三年で半歩前進じゃ、これはいかにも遅過ぎるんですよ。

 NASAのハンセンという非常に優秀な主任教授がいますけれども、彼が、北極海の氷はあと二十年たったら解けるというのが、あれからもう七年たちましたな。あと十三、四年たつと、どんどんどんどん氷が解けて、北極海というのは航路になるかもしれないんだが、しかし、その結果、ヒマラヤの氷も解け、私も数年前に久しぶりに行ってみた、フランスのローヌ氷河を歩く展望台がある、行ってみたら氷河なんか見えないんですよ。地元の専門家に聞いたら、これから百キロぐらい上がっていかなかったら氷河なんか見えない、全部解けて洪水になって流れちゃったと。ヒマラヤの氷も解けている。

 そして、その水はどんどんオーシャン、太平洋、大西洋に注がれて、地球の自転で遠心力がかかりますから、一番どこに振れるかといったら、赤道の直下の島々というのがどんどん埋没しているんです。

 私は非常に興味があるので、知事の時代に、ツバルという、あれは標高が一番高いところはわずか五メートルしかない。アメリカがつくった人工の飛行場がある。それが半分もう水没して、海水の中では主食のタロイモがつくれない。彼らは何をしているかといったら、半分腐ったみたいな、めったにオーストラリア人は食わない、オーストラリアの肉の脂身の多いものをもらって食っていますが、どんどん健康を害して、行ってみたら、年寄りは、その日その日を何とか、要するに朗らかに過ごすつもりですかね、みんなマリファナを吸っていましたな。あれは本当に、ある意味で明るい地獄だと私は思った。

 こういう事態がどんどん進んで、今あちこちに異常気象がある。ニューヨークでもハリケーンが来たり豪雪が降ったり、ワシントンで雪が降ったり、日本でもそうですが、これは当然のことで、異常気象じゃないんですよ、通常気象なんです。

 これを阻止するために日本はいろいろなことをすべきだと思うし、あなたもこれからG8へいらっしゃってどんな主張をされるか知らないけれども、せめて日本の最高指導者が世界全体に新しい危機感を、正当な危機感を抱かせるためにもスピーチをしてもらいたいんです。

 東京は、各国各市、世界に先んじてC40というのに入りまして、企業にも、責任を持ってキャップ・アンド・トレードの条例をつくってやらせていますけれども、こんなものは本当に爪に火をともすみたいな話ですよ。

 ただ、私、昔ある飲み屋で飲んでいたら、昔友人だった開高健の書いた色紙が飾ってあった。焼き鳥の煙で真っ黄色になっていたけれども、いい文句で、なるほどなと思った。それは、あす地球が滅びるとも、君はきょうリンゴの木を植える。たとえあす地球が滅びるとも、君はきょうリンゴの木を植える。開高にしてはいい言葉だなと思って、これは実は調べてみたら、ポーランドの詩人ゲオルグの、この人もマルチン・ルターに非常に影響を受けて、その言葉を考えた詩人ですけれども、たとえ地球があす滅びるとも、君はきょうリンゴの木を植える。

 これは、私たちの愛する子孫に対する責任のささやかな履行だと思うんですが、ぜひ総理、G8でそういう哲学を披露しながら、経済の復興も結構、デフレの克服も結構だけれども、私たちの子孫の生命というものを担保するために、やはりもうちょっと違う意識を持って全体が動かないとだめだぞという警告を発してくださいよ。それをぜひお願いします。

安倍内閣総理大臣 二〇〇七年のハイリゲンダム・サミット、私が出席をしたサミットにおいては、CO2削減が大きなテーマになりました。

 その際、二〇五〇年までに排出量を半減する、そうした大きな目標で一致することができたわけでございますが、ことし開かれるサミットにおいても、当然、環境は大きなテーマになるのであろう、このように思っております。その際、日本は、CO2削減あるいは省エネについては高い技術力を持っているわけでありますから、日本こそリードしていくべきだろう、このように思っております。

 安倍政権としても、環境問題は極めて重視をしております。だからこそ石原伸晃議員を環境大臣に任命したところでございますが、政府一丸となって取り組んでまいりたい、このように思っております。

石原(慎)委員 ありがとうございました。

 時間が余りましたが、これで終わります。どうもありがとうございました。

山本委員長 これにて石原君の質疑は終了いたしました。

 次に、浅尾慶一郎君。

浅尾委員 みんなの党の浅尾慶一郎です。

 本日、北朝鮮の核実験の話がございました。どうも、先ほど北朝鮮が第三回目の地下核実験に成功したという発表もしたようであります。そのことについて、これは質問通告をしておりませんが、きょう外務大臣にも御答弁をいただくように別の件で出席の要請をしておりますので、もう外務大臣が来られていれば、その質問からさせていただきたいと思いますが……

山本委員長 外務大臣は来ていないか。

浅尾委員 では、総理大臣に伺いたいと思います。

 私は、この北朝鮮の核実験について、我が国の対応としてやるべきことというのはいろいろあると思いますけれども、そもそも、我が国が持っている外交のカードをつくっていくということも必要だろう。外交のカードと安全保障のカードと両方つくる必要性がある。

 まず、外交のカードについて申し上げますと、これはみんなの党の公約にも入っておりますが、自民党の公約においても、北朝鮮の拉致も含めた人権侵害について国連の調査委員会をつくるということを掲げております。

 たまたま、ことしの三月に国連の人権委員会の設置の総会があるということでありますので、ぜひ、総理の決意として、それは外交のカードとしても、カードというのは、国際社会がいろいろな形で圧力をかけているという意味でのカードとして、自民党も公約に掲げておりましたこの人権委員会設置に向けて、総理の決意を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 まず初めに、十四時三十九分に朝鮮中央通信が、我々の国防科学部門は二〇一三年二月十二日、北部地下核実験場で第三回地下核実験を成功裏に行ったと発表いたしました。これは、たび重なる国連の安保理決議に反するものでありまして、まことに遺憾で、強く抗議をいたします。

 そして、今、浅尾議員の質問でございますが、人権委員会の設置については我々も進めていきたい、このように考えております。

浅尾委員 今回、この人権委員会は、どうもシリアそしてリビアについては設置されたということがあるわけでありますけれども、ぜひ北朝鮮についても、外交のカードとしてこれをやっていただきたい。

 もう一つ、安全保障のカードについては、これは、実際に言っていくことと、それから行うこととのいろいろな考え方があるだろうと思いますが、当然できる確認として、鳩山一郎内閣のときの政府の憲法解釈、これは民主党政権においても引き継がれておりましたけれども、いわゆる座して死を待つ論ではなくて、他国がミサイルを発するということがわかっている場合には、その基地を我が国が攻撃するということは我が国の憲法九条の解釈においても許されるというのがその当時の内閣の解釈でありまして、当然それはその後も引き継がれておりますけれども、これは当然のことだと思いますけれども、確認の上で、安倍政権においてもそれを引き継ぐということをぜひ。

安倍内閣総理大臣 いわゆる敵基地攻撃と憲法との関係についてでございますが、政府は従来から、法理上の問題としては、他に手段がないと認められるものに限り、敵の誘導弾等の基地を攻撃することは憲法が認める自衛の範囲内に含まれるとの考えを示しています。一方、現実の自衛隊の装備のあり方としては、敵基地攻撃を目的とした装備体系の保有は考えていない旨も従来から述べてきております。

 現時点においては、敵基地攻撃能力を保有することは考えてはおりませんが、しかし、憲法上はそれは許されるということであります。

浅尾委員 これも、きょうはテレビが入っておりますから、明確に御答弁いただくとプラスマイナスいろいろあると思いますので、意見だけを申し上げておきたいと思いますけれども、法律あるいは憲法の解釈として、その能力を持っている、しかしそれを、現時点においては装備を持つことを考えないと言い切ることか、それとも、他に手段がない場合は引き続きそのことを検討すると言うのは、かなり、当該北朝鮮に対する我が国の対応としてもメッセージになりますし、あるいは、強い関係当事国の一つになります中国に対するメッセージにもなるだろうというふうに思います。

 先ほど石原維新の会代表はコンベンショナル・ストライク・ミサイルの話をされておりましたけれども、現実的には、我が国のつくっている潜水艦は、既にあるトマホークも含めて、いつでも装備することは能力的には可能だということだと思います。それをするかどうかというのはまた大きな問題でありますけれども、そういったことが一〇〇%ノーだと言うのと九九%ノーだと言うのとでは、そのこと自体で意味合いが違うだろうということを指摘し、もし何か御答弁いただくことがあれば。

安倍内閣総理大臣 自民党においてもさまざまな議論がなされており、この打撃力、我が国固有の打撃力を、米軍に打撃力を全て頼るのではなくて、我が国の打撃力も持つべきであるという議論はずっとなされてきております。

 先ほど私が述べました政府の見解は、まさに現時点での、今の考えを述べさせていただいたわけでございまして、今後、国際情勢はどんどん変化をしていくわけでありますから、国民の生命と財産を守るために何をすべきかということについての観点からは常にさまざまな検討を行っていくべきだ、このように思います。

    〔委員長退席、小此木委員長代理着席〕

浅尾委員 それでは、この問題を終えたいと思いますけれども、ぜひ論理的に、感情的ではなくて論理的に、何が今おっしゃった生命財産を守るための可能性、可能性という言葉はよくないですね、蓋然性を高めることになるかという議論をしていただくようにお願いしたいと思います。

 それでは、本来の、補正予算の審議でありますので、今回の補正予算についてお話をさせていただきたいと思いますが、今回の補正予算、規模については、私どもも、今の景気を支えるためにはこの規模が必要だろうというふうに考えております。しかしながら、中身についてはいろいろと議論があるところだろうというふうに思っておりまして、修正動議を出す予定にさせていただいております。

 今、パネル、そして多分お配りをする配付資料もあろうかと思いますが、パネルないしは配付資料をごらんいただければと思いますが、まず、今回の補正予算で私どもがぜひお願いしたいのは、被災地の復興を第一に考えた場合には、予算の執行権限を被災地に渡していくという形の被災地特別交付金、つまりは、国がどういう工事をするかということを決めるのではなくて、主として言えば、岩手、宮城、福島の三県にそのお金を渡していくということをやったらいいのではないか、復興財源の繰り越しをするぐらいであれば、その部分を被災地特別交付金ということで、その使途を現地に任せたらどうかというふうに考えておりますが、その点についての御意見を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 このたび復興庁というのが現地に、そこに行くというのは、その一環と御理解いただければよろしいんだと存じます。いずれにしても、事を急いでおるという、この二年弱の間、余り動いていないという実情につきましては、いろいろ日々報道されているところでもありますので、そういった意味では、現地にということで、今回、福島にそういったものができることになっているのはその一環と御理解いただいて、かなりの権限はそこに渡ることになっていくんだと理解しております。

浅尾委員 かなりの権限が渡るという言い方はもちろんあると思いますが、現地の、仮に福島県なり宮城県、岩手県にそのままお渡しをするというのとはまた別の話なんだろうというふうに思いますので、時間が余りありませんけれども、衆議院の採決までに御検討いただくようにお願いしたいと思います。

 そして、今回の補正予算の中で常に議論がなされておりますのは、公共事業の中で補修と新規とがどれぐらいの割合なんだろうかと。つまりは、例えば高速道路の上板をかえるということであれば、用地取得が入っておりませんから、ほとんどそれは真水で、誰かの人件費になるか、その板をつくった人の結果として人件費になる。用地取得が入りますと、どうしてもその分だけお金が回る。土地を売られた方がそのお金を全額丸々その年度で使う、あるいは翌年までに使うというのはなかなか考えられないので、そういう意味で、公共事業の補修費と新規事業の比率をお出しいただきたいと我が党の柿沢委員も質問させていただいたと思いますが、まだこれはわからないという理解でよろしいですか。

麻生国務大臣 平成二十四年度の補正予算の中で公共事業が占める額は二・四兆円ということで計上させていただいております。

 そのうち、御指摘になっておりました補修費に相当する部分、例えばトンネルの補修とか橋梁の補修とか道路の補修とかいろいろございますが、いわゆる社会資本の老朽化に充てる分が〇・六兆ということになっておりますので、残り一・八兆ということになりますから、したがいまして、比率からいきますと、一対三という比率になろうかと存じます。

浅尾委員 今申し上げたような理由で、新規のものの経済効果についてはいろいろな議論があるのではないかなというふうに思っておりますので、ここはぜひ、例えばということで私どもの考え方を申し上げさせていただきたいというふうに思いますが、この新規公共事業を、仮に、今回入っております中で一兆三千億円ぐらいを減らして、その分をほかの方に回していきましょうというようなことで考えております。

 あわせて、今回、官民ファンドというのも大分つくられました。この官民ファンドで、結果として、今ちょっと余り元気がないんだけれども、言葉は悪いかもしれないけれども、ぎりぎり生きている会社をさらに生き長らえさせるというよりは、むしろ新たな投資にお金を回してもらった方が新規の雇用にもつながるんじゃないか。別の言い方をすると、言葉がいいのかどうかわかりませんが、よく言われているのは、会社が多く生まれて多く退出していく多産多死の方が少産少死よりも経済の活力になるんじゃないかというふうに思っております。

 そういう意味で、金融担当大臣も兼務されております麻生財務大臣に一つ御提案をさせていただいて、これは元企業の経営者であった立場からも賛成していただけるんじゃないかと思いますが、財務会計上は、余りパフォーマンスが悪いというか収益が上がっていない会社については、株価が落ちれば減損処理をしなきゃいかぬ、公開企業だと特にそうですね、ということになっております。しかし、税務会計は、減損処理したものを損金として認めないということになって、ここにギャップがあるんですが、せっかくそのお金を使うんだったら、むしろ財務と税務の合体をして、財務会計上減損処理をするようなものは税務会計においても減損処理をする、その原資に、特に今回の官民ファンドのお金なんかを使ったらどうかという御提案をさせていただきます。

 提案をさせていただきながら、あと三日の間に判断しろとか二日の間に判断しろというのはなかなか難しいでしょうけれども、ぜひ前向きに判断していただきたいと思います。

    〔小此木委員長代理退席、委員長着席〕

麻生国務大臣 浅尾先生御存じのとおり、昔からある一つの考え方ではあるんですけれども、これは弊害やら何やらいろいろありますので一概に申せませんが、何といっても、本人の意思、経営者の意思、また、それに対する株主等々の意思等々も踏まえないと、なかなか一概には言えないところなので、今のは御意見として拝聴させていただきます。

浅尾委員 一応、御存じだと思いますが、申し上げておきますと、財務会計上は強制的に償却というか減損処理をさせられるわけでありまして、そういう考え方を政府が、それがいい考え方だと追認するのが、税務会計が財務会計に追いつくということなので、ぜひそれを御検討いただければというふうに思います。そうすることによって筋肉質の産業界をつくっていくということが、結果としてアベノミクスの三本目の矢の成長戦略につながるというふうに私どもとしては考えておりますということを申し上げておきたいと思います。

 次に、これは額が本当に小さいので、ぜひやっていただいたらいいということを御提案させていただきたいと思いますが、額の問題ではない話でありますけれども、アルジェリアにおきまして、残念ながら多くの邦人の方が亡くなりました。

 今の我が国の法制度を見ますと、犯罪被害者支援法というものもありますし、あるいは労働災害に対する法律もございますけれども、このどちらでいっても、労災という形で今回の方が適用になるのかなと思って調べたら、テロは適用外だ。それから、犯罪被害者の場合は、これはいわゆる犯罪捜査ができないということなので、海外のこういう事案については適用されないということなんですけれども、残念ながらお亡くなりになった方を、国として、テロも含めて、国内での犯罪であれば救済できる、相手に資力がないということであれば。しかし、海外においては救済できないというのは、やはり私は、事案から見た場合の公平性において、おかしいんじゃないかなというふうに思っております。

 ちなみに、今、犯罪被害者給付金の裁定額でいうと、国内分で大体年間二十億ぐらいですから、これはあっちゃいけないことでありますけれども、海外のものを入れたところで、国内との比較でいえばかなり少ないので、そういう法改正を我が党としても提案させていただきたいと思います。

 その法改正を提案してからの話になるかもしれませんが、少なくともその考え方についてどういうふうに思われるか、お答えいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 犯罪被害者の経済的支援については、私は、極めて重要な課題だ、このように思っております。

 現在、第二次犯罪被害者等基本計画に基づいて、有識者等による検討会において、犯罪被害給付制度の拡充及び新たな補償制度の創設に関する検討会を行っているところでございますが、今回の事案も踏まえまして、法形式をどういうふうにしていくかということは検討課題ではありますが、前向きにぜひ検討していきたい、こう考えております。

浅尾委員 ぜひそれは前向きにお願いしたいと思います。

 次に、今回、TPPも含めて、筋肉質の強い農業を目指していくべきだろうというふうに思っておりまして、木材ポイントというような制度も入っておりますけれども、その木材ポイントということを使うよりは、むしろ農地の規模集約に対する支援策を入れていったらいいのではないかということを私どもの修正案の中には用意しております。

 これを用意するに当たって、では、私どものはどういう考え方かという案だけを申し上げさせていただきたいと思いますが、農地を仮に売却した場合には、譲渡益の課税ということも発生すると思いますし、あるいは、農地を売却した元本が、将来的に当然、使わなければ相続の対象になる。このいずれも非課税にするということをすれば、かなり思い切った集約になるんじゃないか。

 ちなみに、現状の農地だけの年間の相続税額を財務省に調べて教えていただいたら、大体一千億ということなので、今申し上げたようなことを、思い切った、専業で一生懸命やろうという方を育てる、しかし、その方が買いやすくするために、売り手に対しての支援策として御検討いただけるとありがたいということを申し上げたいと思いますが、その点についてのお考えを伺いたいと思います。

麻生国務大臣 浅尾先生のところはちょっと都会なので現実的に余りよく、とは思いますが、私のように都会も地方もいろいろあるところの選挙区からいいますと、今言われた話で一番難しいのは、やはり遺産なんですよ。

 みんなよく農地を、例えば私が年をとって後継ぎがいないというところに、岩屋さんが来て貸せと言ってきたとしますよ。そうすると、貸したらとられる、岩屋だからとるんじゃありませんよ、例えが悪いかな。では、今枝だったらとられるんじゃないかなと思うわけです。

 どうしてそういうことになるかといいますと、これは、戦後、農地解放があったときに、地主は全部農地はとられたんですよ。とった方はよく覚えています。だから、自分も貸したらとられるかもしれないというのは、六十年前、七十年前の記憶ですから、みんな結構おありなんですよ。これはもう、年寄りに聞いたら皆同じことを言われますから。

 ですから、私は、これは随分調べたので、結構これだけは詳しくなったので先に今手を挙げさせていただいたんですが、目的は、本来は農地の集約を目指しておられるわけでしょう。そうすると、農地の集約をやられるんだったら、むしろ県が、浅尾さん、あなた後継ぎおらぬのやから、神奈川県に貸しないと言うわけですよ。そうすると、神奈川県が借りるわけです。神奈川県が岩屋さんに貸す。ここが媒介すると、何となく、市はちょっとだけれども、県ならちょっと信用がある。市会議員をばかにするわけじゃありませんけれども、これは誰に聞いても同じことを言うから僕は例として例えているだけであって、国会議員だったら信用があるとか全然わかりませんから。ただ、県は信用がある。県会議員があるかないかは全然関係なく、県に信用がある。僕は、これはもう自分で何十人も当たった結果、その結論に達しているんですけれども。

 ぜひ、その意味で、そういった方々は県を媒介させるというやり方の方が、今のものは現実的じゃないかなという感じだけはしております。

浅尾委員 私が申し上げたのは、貸すんじゃなくて売っていただく。売っていただいた場合には、譲渡益も課税しないし、相続税もそこは、売った金額が、例えば一千万なら一千万で売れましたといったら、一千万については相続税も免除するぐらいの思い切った施策が、その売る先が県であれ誰であれ、あった方がいいのではないかという趣旨でございます。

 予算に関して、この予算のお金の使い道、補正予算とはちょっと直接、今回のということではありませんが、大変遺憾だというふうにお答えいただけると思いますが、偽装除染という形のものが出てまいりました。

 この偽装除染について、まず、環境大臣お出ましいただいておりますので、どういう認識を持っておられるか、遺憾だということなんだと思いますけれども、その認識について伺いたいと思います。

石原国務大臣 浅尾委員にお答えいたします。

 午前中の審議でもこの問題が取り上げられ、私としても遺憾でありますし、何と申しましても、被災地の方々にとりまして、この除染なくしてふるさとで生活することができないということでありますので、そのような事案が、一つ、二つ、数にかかわらず、そういうことのないように今指導を徹底強化させていただいているところでございます。

浅尾委員 ちなみに、この偽装除染を最初に環境大臣が知ったのは、いつ、どういう経緯でしょうか。

石原国務大臣 偽装除染という言葉は今委員の口から初めてお聞きしたのでございまして、私は、適切でない除染が行われているのではないかというような報道がなされているということを一月四日に秘書官を通じて聞かせていただきました。

 それに対しまして、私の指示は、それが一つなのか二つなのか、あるいは面的に行われているのか。今、冬でございますので、除染の箇所は減っております。しかし、それでも数百カ所行われております。これが、雪が解けますと、またその場所もふえてくる。そして、これを実際に行ってくださっている方々の全てがそのようなことをやっているとは私は到底思えない。と申しますのも、大多数の方が、本当に福島県出身の方が、御自身の町で、御自身の村でそういう仕事に従事をしてくださっている。

 ですから、徹底的な事実関係の確認と、いつから新年の除染がスタートするんだということで、翌週の月曜日からであるということでございますので、では、管理、元請が行っているわけでありますけれども、発注者である環境省としての管理を徹底するように、そういう指示を出させていただきました。

浅尾委員 お役所は一月四日が仕事始めでありまして、当然、大臣がおっしゃったように遺憾だということであれば、大臣の年頭の訓示でもそういう話をされたのかなと思ったら、どうも一月四日は登庁されておられないということでありまして、その日はどこにいらしたのか、お答えいただきたいと思います。

石原国務大臣 一月四日は新聞でその事実を確認いたしました。そして、そのときに、いつ事実確認をして、どれだけのことの情報収集が一体いつできるのかということを聞きましたところ、日曜日であるならば、ある程度のものを集めることが可能である、一堂に会することができるということでございますので、その日はそういう指示を出させていただいたところでございます。

浅尾委員 どこにいらして、その指示を出されたんでしょうか。

石原国務大臣 一月四日は登庁しておりません。家庭から御連絡をさせていただいたところでございます。

浅尾委員 御自宅から連絡をされたということでございますね。

 要するに、一月四日の仕事始めでありますけれども、いろいろな御事情でお休みになられるというようなこともあろうかと思いますが、あえて、御自宅にいられたけれども、登庁するほどのものではないという理解をされたということですか。

石原国務大臣 何度もお話をさせていただいておりますが、事実関係の確認にどれだけの時間がかかるのかということを秘書官を通じて原局と話をいたしました。その事実、あるいは、他に同じようなことが行われているのか、それともそうでないのか、また、担当者が、そのときはたまたま副大臣も政務官も東京にいないということでありますので、そうであるならば、一堂に会す、一体いつがいいのか、そして、新年の除染が一月七日からスタートをする、それまでに的確な情報、そしてそれに対する対策をしっかりと組めるようにというような指示を出させていただいたわけでございます。

浅尾委員 ということは、仕事始めの日に環境省には当然、年頭の訓示は誰かがされるわけでありますが、どなたが仕事始めの訓示をされたんでしょうか。

石原国務大臣 一同への年頭訓示、これがどういうものか、委員の御指摘はわかりませんけれども、幹部職員が一堂に会したのは一月七日でございます。

浅尾委員 それぞれの役所の一般的な訓示の日というのは多分そろっているんだろうというふうに私は思います。

 それで、委員長にお願いしますが、過去の環境省の、今申し上げております年頭のトップが挨拶をした日の時系列の資料をお出しいただきたいと思います。

山本委員長 後刻、理事会で協議をさせていただきます。

浅尾委員 それでは、次の質問に移らせていただきたいと思いますが、きょうは日本銀行の総裁にもお出ましをいただいております。

 白川総裁にお伺いをさせていただきたいと思いますけれども、日銀は、民主党政権のときは、物価変動目標ということを使っておったかどうかは別として、一%という数字でありました。これを今回二%に引き上げをされましたけれども、このことは、日銀の判断において、さきの総選挙はどういう比重を占めていたのかを伺いたいと思います。

白川参考人 お答えいたします。

 日本銀行は昨年、中長期的な物価安定のめどというものを発表いたしました。議員御存じのとおり、これは、二%以下のプラスの領域で、当面は一%を目指すということを申し上げました。

 そう申し上げた上で、今後、成長力強化に向けた取り組みが進展していきますと、この一%がだんだんに上がっていくということを、二に上がっていくということを申し上げておったところでございます。それで、十月末に、民主党政権のもとで、共通理解という文書を発表いたしました。

 その時点と、それから一月の間にどういうふうな変化が起きたかということでございます。

 この間、世界の金融市場では、欧州の債務問題について、最悪のシナリオが後退するということで、あるいは、米国においても、特にこの十二月から一月にかけてそうでございますけれども、いわゆる財政の崖がとりあえず回避されるという見通しが立ってまいりました。

 そういうもとで、国際的に投資家がリスクをとれるというふうになってまいりまして、従来は安全通貨であった円に対する需要がありましたけれども、それが、相対的に円買い需要が減ってくるという形で、円安方向の動き、あるいはそのもとでの株価の上昇ということも起きてまいりました。

 一方、国際経済、海外経済自体も持ち直しの可能性が少しずつ高まってくるということでございます。

 そういうもとで、日本銀行の経済、物価の見通しも、これは十月対比上振れということになってまいりました。数字で申し上げますと、二〇一四年度は、これは消費税を除くベースで、プラス〇・九%でございます。

 したがいまして、だんだん一%をうかがうという領域になってまいりましたので、それでは、この一%を超えた世界において、日本銀行はどういうふうに行動をしていくのかということを示していく必要があるというふうに判断いたしました。

 その上で、私どもとしては、幅広い主体による競争力、成長力の強化に向けた取り組みが進展していくという認識に立ちまして、この二という数字を出したところでございます。この二という数字を出すことによって、物価が下振れするあるいは上振れする、これをともに防いでいく、いわゆるアンカー効果といいますか、物価安定化効果、そうしたものも期待できるというふうに判断しました。

浅尾委員 随分長くお答えいただいたんですが、私の質問は簡単で、その判断をするに当たって、さきの総選挙は、一%でも比重の中に入っていたのか、全く入っていないのかということです。

白川参考人 私どもは、さまざまな御意見にいつも謙虚に耳を傾けております。もちろん選挙の結果もそうでございますし、それからさまざまなエコノミストの議論も含めまして、これは丹念に点検しております。

 そうしたことを踏まえて、先ほど少し長く申し上げて恐縮でございましたけれども、その上で、私どもとして判断を行ったということでございます。

浅尾委員 なぜこういうことを伺うかというと、今の日本銀行法のもとでおきますと、理念という言葉を使っておられる部分もありますし、目的という言葉を使っている部分もあると思いますけれども、いずれにしても、物価変動目標は日本銀行が決めるという解釈になっています。

 ちょっと細かい話でいいますと、今度、総裁は御退任をされますけれども、別に人の財布にどうこうするつもりは全くないんですが、退職金の規定を調べたら、要するに、ある金額が決まって、ゼロから二の間の業績を日銀の審議委員会が決めるということなんですが、目標も自分で決めて、手段も自分で決めている中で、業績評価というのはちょっとどうかなというふうに思うものですから、それは御自分で。

 要するに、選挙は確かに、今の法律を読めば、日銀がそれを受けて決めたとはなかなか言えないことだと思いますけれども、そういうことがやはり、民主主義の世の中、国民の判断が必ずしも常に一〇〇%正しいかどうかという問題は別として、そういう問題点があるんだということを、退職金の話は例として申し上げさせていただきたいというふうに思います。

 そのことを踏まえて、今の法律は、政府として、物価変動目標、今、白川総裁は、それはいろいろな声をということを言いましたけれども、私は、選挙を経て、仮に、逆に、選挙の結果がかなり大きな比重を占めましたといったら、これはまた日銀の今の法律のもとでの独立性において、かなり答弁としておかしな答弁になっちゃうなと思っていて、白川総裁はさすがに答弁はうまいなというふうに思って聞いておったわけであります。

 政府は、この物価変動目標を、少なくとも、みんなの党の案は、これは政府の責任において決めて、手段は日銀がそれを実現するという案でありますけれども、自民党が自民党の財政部門会議ですかで決めた案は、政府と日銀で共有するというような案を決められているというふうに聞いておりますが、そういうふうにした方が、むしろ責任の所在がより明確になるんじゃないか。

 つまり、今の法律のままでいうと、何党であれ、物価変動目標をこういうふうに変えますよということだけでは変えられないということになってまいりますので、そのことについての政府の考え方を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今回は、政府と日本銀行で共同文書を発出いたしまして、その中において、政府と日本銀行が緊密に協議をした結果、二%という物価安定目標、これは日本銀行が決めたわけでございます。

 また、他方、我々は、この二%の目標達成とは別に、さまざまな改革努力をしていく、あるいは財政の規律を守っていく等々のことを実行していくわけでございますが、今、浅尾委員がおっしゃった問題意識、これは、自由民主党の多くの議員もそうした問題意識を持っているのは事実でございます。

 つまり、いわば手段と目標、この政策的な目標については政府が決めて、そして手段については日本銀行。政策的な目標を決めたことについては、政府は選挙において国民に対して責任をとっていくということになるわけでありますし、日本銀行は政府に対して約束したことを手段でもって実行できるかどうか、そういう明確な責任が明らかになるわけでございます。

 いずれにせよ、自民党の中におきましても日銀法の改正について議論もしておりますし、御党ともさまざまな協議をしていると思います。現時点ですぐに変えるということは私も考えておりませんが、大切なことは、私は、まず結果を出していくことが求められているんだろう、このように考えております。

浅尾委員 時間も限られているので、次の項目に移らせていただきたいと思います。

 私どもは、積極的に、今までの質疑でもそう思っていただければと思いますが、具体的な提案をしていただいて、賛否はいろいろあると思いますけれども、こういうふうにしたらいいという提案をさせていただきたいと思います。

 その一つが歳入庁ということなんですが、歳入庁というのは、基本的には、公的保険の徴収については、今の国税庁と、日本年金機構の徴収部門の機能だけを一元化しようというのが我々の案であります。

 まず、そもそも論の、今の年金についての考え方について伺ってまいりたいというふうに思います。

 一つは、今の年金、例えば国民年金一つをとらせていただきますと、御負担いただく保険料よりは多く年金は支給されます。

 しかし、御案内のとおり、これは保険料と同額税金が入っているので、では税金は誰が払っているかといったら、国民がひとしく、ひとしくというのは、額が等しくじゃなくて、国民全員が払っているというのが税金だということを考えると、大体、私も含めてでありますけれども、五十三歳以下の方は、払った保険料プラス御自身が払っている税金を勘案したら、その額ほど戻ってこない仕組みになっています。

 これは二〇一〇年の計算なのでちょっと変わっているかもしれませんが、二〇一〇年生まれのゼロ歳児、その当時でいうと大体七四%しか戻ってこないという仕組みになっています。これは保険料プラス税金でありますから、保険料だけだったら、繰り返しになりますけれども、それより多くもらえますが、しかし、税金は誰が払っているかといったら、みんなで払っているということを考えると、七四%。

 つまりは、これは、なおかつ保険料の場合は所得税から控除されるので、収入が多い人になると控除される分を戻すといっぱい戻ってくるとか、いろいろな難しい計算もありますけれども、そういうのを捨象すると、保険料プラス税金ほどは戻ってこない。

 ということは、これは厚生年金についても、企業主負担を入れれば同じなんですけれども、逆に言えば、そういう、特に厚生年金の報酬比例というのは税金が入っていませんから、企業の分を入れれば、払った保険料ほどは戻ってこないということを考えると、これは、国民の意識からすると、税金のようなものだ、払ったほど戻ってこない。税金を払った以上に戻ってくる場合もあるかもしれませんが、税金のようなものだというふうに思われているんですね。一方で、徴収が余り進んでいないというのもみんな知っている。

 だから、徴収だけについて言えば、国税の方がはるかに今の日本年金機構の徴収部門よりも効率よくお金が集められるので、そういうものをつくっていったらどうかというふうに思いますが、そのことの考え方について御意見があれば伺いたいと思います。

    〔委員長退席、小此木委員長代理着席〕

甘利国務大臣 厚生年金であるとか健康保険の未徴収者が社会問題化しておりまして、この問題をどうやってより効率よく徴収率を上げるか、いろいろ議員から御指摘を今までもいただいてまいりました。

 当面の知恵として、これも御指摘が今までもあったと思います、法務省の法人登記簿情報の活用ということで、これを使って徴収率を上げていこうということ、これも御指摘をいただいた知恵を使わせていただいているところでございます。

 それからもっと進んで、歳入庁について、これは、税を徴収するシステムを使って徴収すればもう間違いなくというお話でございます。

 もちろん各党内にいろいろ、賛否両論ございまして、こういう点がある、ああいう点があるという議論はございます。ございますけれども、かつての三党合意に基づいての御指摘の点についての検討をするということで、これは、もちろんするしないも含めて検討していく体制を、内閣官房副長官を座長とします関係省庁の政務官による検討チーム、これを今週中にも立ち上げて、そこで検討してもらう予定にしております。

浅尾委員 実は、私から見ると、保険料というのはさまざまな、いろいろな意見があるからそうでないという意見もあるかもしれませんが、不公平が現に存在をしております。

 例えば、今の健康保険も、あるいは厚生年金も、それぞれ、月収に上限を定めて、上限を超える部分については払わなくていいよという仕組みになっています。先ほど申し上げましたように、労使合算したら、厚生年金も払った分ほどは戻ってこない仕組みになっているということなので、それに上限があるということは、その分だけ得するということなんだろうと思います。

 ちなみに上限を申し上げますと、厚生年金は六十二万円、ボーナスは別途、一応百五十万ということになっています。健康保険は百二十一万というのが上限で、ボーナスはたしか百八十万というのが上限なんですが、世の中には、百五十万や百八十万をはるかに超えるボーナスを得ておられる方もいらっしゃるし、あるいは月給も、今申し上げた金額をはるかに超える収入を得ておられる方も、多くはいないと思いますけれどもいらっしゃるのも厳然とした事実であります。こういったものの、歳入庁をつくるに当たって、徴収を簡素化するという意味でいえば、上限を取り外すということも一つの考え方だろうというふうに思います。

 歳入庁をつくるつくらないかの答弁は、今、甘利大臣からいただきましたので、上限を取り払うことについての考え方、哲学、どういうふうに思われるか、伺いたいと思います。

田村国務大臣 浅尾委員から御質問いただきましたが、まずその前に、先ほどの国民年金の考え方なんですけれども、税まで入れるかどうか、つまり、自分が払った分にという、保険料がわりですね。

 多分、もらう方からしてみれば、保険料として納付したものに対して幾ら給付があるかという話でございますので、税まで幾ら払ったかというのは多分、年金をもらうために自分が幾ら税を払ったかというのはわからないわけですよね。ですから、ここはカウントされるのはどうなのかというふうに我々は思っておりまして、そう思うと、先ほどのお話でいきますと、大体一・五倍ぐらい、今ゼロ歳の子供でももらえるということでございます。

 何よりも、長生きのリスクでありますとか、それから物価が上がったり所得が上がっていくリスクというものを今のこの方式というものは一応リスクヘッジしている部分でございますので、そういう基本的な考え方がある。

 積立方式は、一方で私もそういう考え方もあるなというふうに思いますが、これはまた一方で、移行期間に二重払いの保険料が生まれるだとか移行期間が四十年ぐらいかかるのではないかとかいろいろな問題があるということがあるので、それだけは申し上げておきたいと思います。

 それで、今のお話なんですけれども、これも、例えば健康保険の場合は、病気になったときの現物給付ですよね。ですから、保険料を多く払ったからといって給付がふえるわけではない。一方で、年金の場合は、やはり保険料を多く払えばその分だけもらえる年金もふやそうというような、そういう制度設計になっています。

 ですから、年金の場合のことを考えると、その制度設計をどう考えるかによって、あくまでもこれは税でありません、年金財政にかかわる余裕というものをつくるのかどうか。

 一方で、健康保険の場合は、これはもう全く保険料と給付とが連動しておりませんから、所得の再配分みたいなものを保険料でやるということを考えるべきなのか、それとも税でやるべきなのか、ここはいろいろな議論があろうと思います。

浅尾委員 これはちょっと、時間が余りないので、しっかりと今度、歳入庁も含めて議論させていただきたいと思います。

 最後になると思いますが、もう一つ、我々は、公務員の人件費について、これを改正する法案というのも用意をしております。きょう人事院の総裁にお越しいただいていると思いますが、私が一番その中の、法案の中にも書き込んでおりますが、今の国家公務員の昇給の仕組み、これは非常におかしいなと。

 要は、どういうことかというと、五段階の評価をする、そこまではどなたも文句はないと思います。五段階の評価をして、一番高い人は通常の人の倍昇給する。二番目のランクの人は一・五倍だ。Cランク、三番目が通常どおり。Dランクは通常の〇・五倍。Eランクは昇給しない、一年たつと定期昇給ですね、定期昇給に値しない。ここまでは私も、その制度設計自体は反対をしておりません。

 問題は、Aに何%割り振る、Bに何%割り振るということなんですが、Aには全体の五%、Bには全体の二〇%、Cには五〇%なら正規分布になるんですが、C以下は決めていないので、結果としてCに七二%割り振られているというのが今の実情だというふうに理解しております。

 したがって、上がる方は二五%自動的に、毎年毎年、普通の人より上がる人がいる。下がる方が三%しかいないというのは、私は設計上おかしいなというふうに思っておりまして、今申し上げたことがそのとおりの状況であるのかどうかを、人事院総裁にはイエス、ノーだけで答えていただいて、そうだとしたら、それを今の政権の皆さんがどう思われるかということをお答えいただきたいと思います。

    〔小此木委員長代理退席、委員長着席〕

原政府特別補佐人 お答えをいたします。

 御質問はイエスかノーかということでございますが、昨年も同趣旨の御質問をいただきまして、お答えをさせていただきました。

 制度としては、ただいま御説明があり、また現状も御指摘のような形になっていることは事実でございます。

浅尾委員 今のことを聞かれて、安倍総理は公務員制度改革にも御熱心だというふうに伺っております。

 私、一つだけ具体例で申し上げます。ことしのお正月に、ある地域の方とお話をして、これは地方公務員になりますけれども、昨年の総選挙に際して、休日出勤をすると、大体その人は三万円ぐらいもらえる。地域間の給与の格差というのは物すごく大きくなっていて、これが怨嗟のもとにもなっているということもあります。

 その高くなっている理由が、今申し上げた、一つが昇給制度だということも含めて、総理の公務員制度改革に関してのお考えを伺って、終えたいと思います。

安倍内閣総理大臣 いずれにせよ、公務員制度改革については、我々もしっかりと改革の信念を持って進んでいきたいと思いますが、いわば、しっかりと仕事をした人が正しく評価される、この評価が極めて重要なポイントなんだろうな、このように考えております。

 そういう観点からも、もし変えていく必要があるのであれば、我々は勇気を持って変えていきたい、このように思っております。

浅尾委員 終わります。

山本委員長 これにて浅尾君の質疑は終了いたしました。

 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 東日本大震災と原発事故から間もなく二年がたとうとしています。総理は、復興は安倍政権の最優先課題と述べ、福島復興再生総局の設置や予算の枠を大幅にふやすとしています。

 日本共産党は、震災の直後から、復興は被災者が主役だ、暮らしとなりわいの再建が大前提と主張をしてまいりました。どんなに建物や道路が立派に立ち並んでも、そこに住む人々が戻ってこなければ、あるいは生き生きと暮らすことができなければ、本物の復興とは呼べないと思うからです。

 総理は、この認識を共有してくださるでしょうか。

安倍内閣総理大臣 私も議員と同じ認識でございます。

高橋(千)委員 ありがとうございます。認識は共有された、個々の問題でいろいろ違いがあるのかなと思うんですが。

 そこで、まず伺いたいのは、最も身近で切実な、被災者への医療や介護の減免制度について質問いたします。

 先日、宮城県の復興共同センター代表らが、秋葉副大臣に一万四千名以上の仮設住宅の被災者の署名を提出しました。

 震災から一年間は全額国の補助で減免をされておりましたけれども、昨年九月にこれが打ち切られました。現在は、被災した市町村が国保の枠組みの中で一部負担をして減免を続けており、国の支援がなかったら、年度末、つまり三月で打ち切られるのではないかと不安の声が上がっているわけです。

 宮城民医連の介護事業所が行った聞き取りでは、先立つお金がないので心配だ、医療、介護の減免がなくなったら大変、どこにもすがりようがない、年金からしか払えないので生活費を抑えてサービスは継続する、御飯を食べなければよい。御飯を食べなければよい、こういうつらい声が寄せられています。

 田村厚労大臣、被災者が医療、介護の減免を受けられるように、全額国庫補助をやるべきではありませんか。

田村国務大臣 高橋委員の御質問でございますが、今お話ございましたとおり、全額の補助というもの、これは国民健康保険それから介護保険等の窓口負担、それから保険料の部分でございますけれども、昨年の九月でこの制度が終わりまして、現行は、保険者が減免をするというふうに判断された場合には、その十分の八を特別調整交付金で財政措置をする、こういうような状況になっております。

 そもそも、これは前政権下でこのような御決定をされたわけなんですけれども、どういう理由であったかというと、今までは、例えば阪神・淡路大震災の場合は一年間という話でありましたが、今回は、この保険料等々の基準というのは前年の所得で決まるという部分がございまして、被災の後、収入が大幅に減っておられるということで、その所得を確定できるのが九月であったということで、九月からは前年の、言うなれば減られた所得、被災に遭われた後の所得で判断ができるということで、このような対応をしたということでございます。

高橋(千)委員 残念ながら、民主党時代に聞いた答弁と全く同じであるということであります。

 まず、中身に入る前に一つ確認をしておきたいんですけれども、福島の原発事故の避難区域については今までどおり全額補助を継続するということを聞いておりますけれども、一口に避難区域と言っても、解除をされたところとか準備区域など複雑になっておりますので、これは今まで減免対象だったところは同じであるということでよろしいでしょうか。

田村国務大臣 既に指定が解除されている旧緊急時避難準備区域も含めて、これは全額国が財政支援するということでございます。

高橋(千)委員 まず、そこは確認をさせていただきました。

 それで、話を戻すわけですけれども、実際どのくらいこの制度が活用されているか、聞いてみました。

 例えば、宮城県では、国保と後期高齢者、合わせて二十五万二千人が減免を受けていらっしゃいます。合わせて減免額は二百八十四億五千万円です。これに介護がプラスされます。同じように、岩手県の実績をもらいましたけれども、合計すると延べ人数で四十九万九千人、約五十万人がこの減免制度に助けられていたわけですね。それを今は国ではなく自治体が一部負担という形でやっている。合計額は四百十七億円以上になります。

 大臣はこのような状況を御存じだったでしょうか。

田村国務大臣 要は、それぞれの自治体といいますか保険者で対応いただくという御判断をしていただければ、今も言いましたとおり、八割、十分の八、これは財政措置をするという話でございますので、そういう形で御対応をいただいておるものと承知しております。

高橋(千)委員 きょう問題にしたいのは、その保険者、つまり市町村ですよね。市町村がもうこれ以上は大変だと言っているということなんです。さっきも、被災の状況によって所得が減少すればそれに反映するよと言いましたけれども、結局、それだって、自治体の負担で減免するしかないわけですよね。それがどういうふうにあらわれているか。

 例えば、最大の津波被災地であり、三万人以上が避難生活を送っている石巻市、既に国保財政は十四億円の赤字です。三カ月で基金も底をつきます。どうなるかというと、それは保険料を値上げしなきゃいけなくなっちゃうわけですよね。でも、被災者の現状がわかっているから、市長は、何とか保険料を上げたくない、だから国に補助してほしいと訴えているんです。

 あるいは、国保加入世帯の実に五割強が減免世帯だという陸前高田市、これは医療費が震災前より一割以上ふえました。市の国保財政を強く圧迫しています。もう自治体の努力も限界なんですね。

 総理に聞きたいんです。今言ったのは、被害が大きい自治体、被害が大きければ大きいほど、当然、支援をしなければならないものがふえますので、自治体の負担がふえる。不合理じゃありませんか。

田村国務大臣 いろいろな御意見があるのを、私もよくお聞きをいたしております。

 ただ、十分の八は、これは特別調整交付金で対応することになっておりますので、減免したものの財政負担を全て保険者という話ではないということは御理解をいただきたいと思います。

高橋(千)委員 ですから、その二割がもう対応できなくて、また保険料を値上げしなくちゃいけないと言っているということ、それを言いたいんです。

 総理が就任して真っ先にやったことは、復興を加速させるということで、復興予算を、十九兆円と言われていたものを二十五兆円に拡大するということではなかったでしょうか。被災地が予算を心配しなくていいようにまず枠を広げました、そのようにおっしゃっていたと思うんです。でも、結局、被災自治体を苦しめているんです。二十五兆円に比べたら、今言った四百数十億とかそういうお金はわずかな予算じゃありませんか。それを言いたいんです。

 昨年、石巻の仮設住宅で懇談したときに、みんな遠慮しているからかわりに言うと言って、被災者を支援している男性が手を挙げました。みんなが思っていることは、義援金はもう一回来ないのか、手持ちの金がない、そうおっしゃったら、一斉に拍手が起きました。また、集いが終わった後、つえをついた高齢の女性からは、私は全てを諦めています、そう言われたのが忘れられません。これが被災者の本音なんです。

 先ほど、認識は共有すると総理はおっしゃいました。四月からも安心して医療、介護が受けられる、これだけでも、国がメッセージを出すことで、被災者を元気づけます。総理が決断すべきではありませんか。

安倍内閣総理大臣 今まで厚労大臣が答弁をさせていただいたわけでありますが、その中でも、私ども、十分の八は国が支援をするわけでありまして、今後とも、国、地方が力を合わせて被災者を支援していきたい、このように考えております。

高橋(千)委員 非常に残念に思います。

 総理がせっかく枠を広げたのに、なぜその中で踏み込むことができないんでしょうか。自治体の八割は公費で見ていますと言いましたけれども、やはり制度の枠の中だから、さっきも言ったように、弱い人だけが集まる国保の中で、どんどんどんどん、被災して痛手を負った人たちが集まってきているわけですから、財政が厳しくなっているんです。もうそんなことは十分承知だと思うんですね。

 今、国保の法定減免という制度がありますよね。そもそも、所得に応じて減免するということを法律で決めています。その額が、既に震災前、全国ベースで三百億円以上ふえています。ところが、この減免制度、法律で決めておきながら、その負担は県と市町村で分け合うんですね。国が出しているわけじゃないんですよ。公費公費というと何か国が頑張っているように聞こえますが、県と市町村に、主に市町村に頑張らせているんですね。

 そのこともちゃんと踏まえて検討してくださる、一言言っていただけますか。

田村国務大臣 今のは法定減免のお話ですか。(高橋(千)委員「もっとこれが激しくなるという意味で」と呼ぶ)

 ですから、特別調整交付金は、基本的には国のお金でございますから、それで対応をさせていただいている。

 そして、重ねて申し上げますけれども、福島第一原発事故に伴う避難指示、これが出たエリアに関しましては、既に指定が解除されているところも含めて、全額国が財政支援をして、要するに減免を続けていくということでございまして、そこはしっかりと今までどおりの対応を維持していくということでございます。

高橋(千)委員 諦めることはできません。しかし、次の課題がありますから、質問を移します。

 もう一度言いますけれども、今、国保が本当に厳しくなっているというのは全国的な状況なんだという意味で、今、法定減免の話をいたしました。ですから、国保の枠の中で何とかやっていますよと言っていけば市町村がパンクすると言っているんです。被災が大きければ大きいほど、その自治体に負担をかける。被災地の負担をかけないために予算をふやしたのに、結局、そこで被災地に負担をかけているじゃないかということを指摘いたしましたので、重ねて検討をお願いしたい。ここは要望にとどめて、次の機会にまた続きをやりたいと思います。

 福島の復興の問題について入りたいと思います。

 私は、この間、原発事故を風化させないと叫び続けてきました。それは、どこに行っても、自分たちは忘れられているのではないか、見捨てられたのではないかという声をあちこちで聞くからなんです。

 総理は、なぜそういう声が出ると思いますか。

安倍内閣総理大臣 福島、宮城、そして岩手、それぞれ被災したわけでありますが、特に福島の場合は、除染の問題があって、遅々として復興が進まない、そして、仮設住宅で困難な生活を強いられている人の比率が他の被災地よりも高いということによるものだと思います。

山本委員長 高橋千鶴子君に申し上げます。

 欧州議会の皆さんがお越しでございます。

    ―――――――――――――

山本委員長 議事の途中ではございますけれども、ただいま日本・EU議員会議欧州議会代表団ファン・バーレン団長御一行が傍聴にお見えになっております。この際、御紹介を申し上げます。

    〔起立、拍手〕

 どうもありがとうございました。

    ―――――――――――――

山本委員長 それでは、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 高橋千鶴子です。

 総理みずから、復興が進まない、困難を抱えているとおっしゃいました。そのことと、実際に日々被災者の皆さんが接している情報、あるいは周りの方から受ける言葉、もう終わったことであるかのように言われたり、さまざまに傷ついている、そのことを指摘したかったのであります。

 本当は幾らでも言いたいことがあるんですけれども、限られた時間ですので、簡潔に話していきたいと思います。

 これが今の福島県の状況であります。(パネルを示す)国は、これまで何度か避難に関する区域を見直してきました。今は、厳重に立ち入りが制限されている警戒区域、原発のサイトのマークをつけておきましたので、その間近なところは当然立入禁止区域になっているわけですが、五年以上帰ることができない帰還困難区域、あるいは、順次避難を解除していく居住制限区域、避難指示解除準備区域、非常にわかりにくい表現なんですけれども、一定の放射線量を目安として三つの区域を設定して、それを決めている川内村や田村市のような、そういうところもあります。見ていただければわかるように、飛び地もあります。一つの自治体の中にいろいろな区域が混在しているという大変複雑な状況であります。

 この地図は実は双葉地方が中心になっておりまして、実際に避難している方は、全県から十五万七千人くらいに及んでいるわけですね。ですから、福島の皆さんは、誰もがこの区域あるいは線引きに翻弄されてきたと言えるのではないでしょうか。

 避難している人もそうでない人も全てが原発事故の被害者、こういう立場に立つことがまず福島の復興再生を目指す出発点だと思いますが、総理の認識を伺います。

安倍内閣総理大臣 いずれにしても、今、被災され、そして避難生活を余儀なくされている方々が、将来、もとの生活に戻れるようにしていく、いわば未来を見通せるようにしていくことが我々の仕事であろう、このように考えております。

高橋(千)委員 聞かれたことに答えていないと思うんです。

 見通せるようにしていく、本当にそのとおりですが、今私が述べたことは、ずっと自分自身が何度も言い続けてきたことなんですけれども、ただし、我が党だけが言っていることではありません。

 被災四県の要望書が平成二十五年の一月十五日に出ていますけれども、その中で、「避難先がプレハブ仮設住宅か借上げ仮設住宅か、県内か県外か、自主避難か否かなどは問わず、同様の支援措置を受けられるよう配慮するとともに、」云々ということで、被災自治体及び避難者を受け入れている自治体の取り組みを支援してほしいという要望が出されています。

 ですから、ここは、自主避難か否かなどは問わないということをみんなが要望していることなんです。そこは、もちろんそうだということでよろしいでしょうか。

安倍内閣総理大臣 御質問は、では自主的避難者の方々についての賠償等でございましょうか。

高橋(千)委員 まだ賠償の話をしておりません。

 要するに、福島県民であることに、県内に住んでいる人あるいは県外に住んでいる人ということで差別をしない、あるいは、避難区域、先ほど言いましたように、区域が大変複雑になっています。そして変わっています。そうした中で、自主的避難と呼ばれている方もいらっしゃいます。そういうことに今は差別をしないんだ、そこがまず出発点で、そこから支援は始まっていくんだということなんです。

安倍内閣総理大臣 そういうさまざまな意見が根本大臣のところにも寄せられています。自主的な避難なのかそうでないのか、あるいは県外なのかそうでないのかということも含めて、その中でどう対応していくべきかということについて今検討しているところであります。

高橋(千)委員 踏まえていただくというふうに受けとめたいと思うんですね。

 線引きをしないでほしい、これが本当に、私たちが繰り返し述べてきたことであり、最大の鍵かなというふうに思っています。

 それで、具体的に述べていきたいと思うんですけれども、山形県の米沢市、ここは、避難者支援センターおいで、これを市が開設しています。それで、各種情報の提供や避難者の交流支援を行って、運営は避難している方自身が行っております。米沢市の避難者は、ピーク時は約四千人いましたが、今でも三千人近い方が避難をしているということでありました。

 そこで、山形県全体でいいますと、全国の避難者、一番多いんですね。一万人くらいが避難をしているわけですが、その山形県全体のアンケート調査がございます。

 資料の二枚目につけているんですけれども、これを見ましても、避難の理由ということで、避難指示があった、これは二一・七%です。あと、家屋が倒壊という方もいらっしゃいます。放射線の影響が心配なためという方が六五・六%。ですから、言ってしまえば、この方たちが、七割強ですよね、自主的避難、いわゆるそういうふうに呼ばれている方たちなんです。

 でも、下を見ていただきたいんですね。避難者の七割が住民票を移さずにいます。もちろん、その前の年は八割を超えていました。ですから、少しは減ったけれども、しかし、まだ七割は移していないんですね。

 実は、これには載っていないんですが、就職の状況も調べたものがございます。次のページにちょっとあるんですけれども、就職を探している方も、正規ではなくて、パートですとか臨時を探しているというんです。その理由が、先行き不明で就職に踏み切れない。つまり、定職についてしまうということが、そこにずっといるということを意味しますよね。だから、そこまで踏み切れていない、福島とつながっていたい、そういう思いなんです。そこを本当に受けとめていただきたい。勝手に避難しているなどということは決して言わないでいただきたいと思うんです。

 米沢の支援センターは、来年三月までは開くことが決まっています。しかし、もし三年で借り上げ住宅などの補助が打ち切られると、センターも廃止しますと言っているんですね。そうすると、その避難者のよりどころもなくなってしまう、これは大変なことだということが言いたいわけです。

 そこで、田村厚労大臣にもう一度伺いますが、借り上げ民間賃貸住宅など、みなし仮設住宅と呼ばれるところの期限延長は大変切実な願いであります。安定した住まいが確保できるまでは延長すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

 一つは、避難を指定されている区域で、要するに帰還までまだ、三年どころか五年、六年かかるというところは当然だと思いますが、それが一つと、いわゆる今言ったような自主的と言われる避難をしている方たちもやはりこれは延長するべきだと思いますが、いかがでしょうか。

田村国務大臣 仮設住宅の提供期間というのは、御承知のとおり、原則二年ということであります。

 今回、いろいろな状況を勘案して、また一年延長をということでございますから、二十五年度末までは一年延長ということになろうと思います。

 その後に関しましても、当然のごとく、今委員がお話しされましたとおり、どこかに戻れるような状況でない限りは、やはり、どこにも行く場所がないわけでございますので、これは復興庁の方と協議をしながら前向きに検討してまいりたいと思います。

 あわせて、今、自主避難をされた方々に対してどうなんだというお話でございましたけれども、これも同じような扱いの中で検討ができるのではないかというふうに思っておりまして、これに関しましても復興庁と協議をしながら前向きに進めてまいりたいと思います。

高橋(千)委員 少し希望が見える答弁だったかと思います。

 これは本当に、津波被災地も含めて、大変皆さんが心配をされておられますので。私は、仮設住宅にずっといた方がいいとは絶対思っていないんですよ。だけれども、先ほど言ったように、住まいが安定するまでは、それはつながなきゃいけませんから、これは本当にお願いをしたいと思います。

 そこで、根本大臣、大変お待たせをいたしました。

 福島県の復興公営住宅、まだ五百戸なんですね。全然足りません。それはやはり、今言ったような区域による特別の難しさというのも当然あるかと思います。だから、思い切って進めるということが一つです。それと同時に、やはり柔軟な対応が必要ではないか。例えば住みかえですとか、そういうことも含めて、復興大臣として、ぜひイニシアチブを発揮してもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。

根本国務大臣 委員から、復興公営住宅を思い切ってやるべきだと思います、私もそのとおりだと思います。

 今回の補正予算あるいは二十五年度当初予算におきまして、我々、帰還支援のための予算、そして長期避難者の方のための支援、その中心的な政策として復興公営住宅を、受け入れている市町村、自治体でつくっていただいて、復興公営住宅をつくると、関連する道路あるいは学校、いろいろな行政需要が新たに出てまいりますから、そこの生活関連施設の整備もしっかりやってもらおうということで、生活拠点形成のための新たな予算措置を講じたところであります。

 しっかりとこの予算を活用していただいて、先生のおっしゃるような目的に沿うように支援してまいりたいと思います。

高橋(千)委員 ここはしっかりとお願いをしたいと思います。

 そこで、今お話の中にあった、長期避難区域の方たちが帰っていくための条件づくり、環境づくりという問題に入りたいと思うんですが、浪江町、避難指示解除の見込み時期が、帰還困難区域は六年後、また、その他の区域は五年後とされています。それまでの間は、立ち入り可能な区域もできるわけです。

 ただ、浪江町は、場所によっては目の前に福島第一原発がすぐ見えるところもあるそうです。穏やかな気持ちではいられませんよね。五年と決めたといっても、もし、五年たって除染ですとかインフラですとか、それがほとんど変わっていなかったら、五年来たから帰れ、そう簡単にはいかないと思うんですね。

 そこで、町では、解除見込み時期を了承するに当たって、六項目の附帯事項を国に示しました。私、これは大変参考になると思うんです。浪江町の例ですけれども、全体として共有すべきではないかと思うんです。

 例えば、医療や介護、福祉などの生活関連サービスが人々が暮らしを営むことができる水準であること、長期避難を強いられる住民に対しては、損害賠償のみならず、損害賠償だけで解決しない、政府としての生活再建策を講じることなどを指摘していることは、非常に重要だと思います。

 そこで、私がきょう取り上げたいのは、空間線量率の低減についてです。

 放射線量については、生活実態に即した現地におけるモニタリング及び土壌モニタリング結果を踏まえることと述べています。

 モニタリングとよく言うんですが、詳細なデータもあるんですが、地表一メートルと決まっているんですね。そうすると、子供たちの背丈の低さとか遊ぶ環境とかという意味では全然足りない、そういうことを、一メートルだけと決めないでくれと言っています。それから、目安、目標は、追加被曝線量は年一ミリシーベルト以下を目指してほしい、そう述べていますが、環境大臣、この点ではいかがでしょうか。

石原国務大臣 これはもう委員御承知のことだと思いますが、放射線を測定するときのガイドラインなるものを文科省等々で決めて、地表一メートルとする、また、委員御指摘のとおり、小学生等々の背の小さい子供さんたちがいるようなところは五十センチにするというふうに作成されているものだと承知をしております。

高橋(千)委員 ですから、それを見直してくれと言っているんです。

 今、浪江の話をしましたけれども、もう皆さん十分御存じだと思うんですね。初期のころの、放射能のデータがわからなかったために、よかれと思って避難した場所、津島地区、これが、もといた場所よりも線量が高かった、そういう思いをした人たちなんですね。

 それだけではなくて、本当に情報がわからない中でずっと外にいた、そういう悔しい思いをした人たちが、二十ミリシーベルトは下がったからいいよとか、資料の四枚目につけていますけれども、長期的に一ミリシーベルトを目指すからいいよ、それはないんじゃないかと。五年を待つということ自体が大変な思いなんですね。だけれども、五年待ったけれども、ちょっと下がっただけですよ、あるいは長期ですよ、本当にそれでいいか。そこにもう少し踏み込むものがあってもいいんじゃないかと思いますが、大臣、いかがですか。

石原国務大臣 線量が低下しませんと、そこで暮らされた方々はもとに戻れません。さらに、インフラの整備や、今委員がお話しになりましたように、私も行ってまいりましたけれども、ある程度線量が低いところでも、実は、福島第一原発のサイトから大変近いところもございます。

 そういう方々の地元のアンケートをお聞きいたしますと、幾ら線量が下がっても自分は戻りたくない、こういうふうにお答えになる方が、調査にもよりますけれども、五割から七割もいらっしゃる。そういう方々の気持ちを考えたときに、これから二十四年、二十五年と、この線量の低減というものに全力で努めていかなければならないというふうに感じているところでございます。

高橋(千)委員 早く帰すために基準を緩めたり、あるいは帰らなければ支援を打ち切るということがあってはならないということを、重ねて指摘したいと思うんです。

 全ての線引き、私がさっきからこだわっているその元凶は、やはり二〇一一年十二月十六日の収束宣言にあるんですね。なぜ私たちがここにこだわっているか、資料の最後のページを見ていただきたいと思うんです。

 二〇一一年の十二月二十六日、原子力災害対策本部が、ステップ2の完了を受けて避難区域の見直しをしています。原子力発電所の安全性が確認された、だから区域の見直しをする環境が整ったと宣言をしているんですね。そして、翌年の三月十六日には、今度は、原子力損害賠償紛争審査会、賠償の指針づくりをしている審査会が、「政府による避難区域等の見直し等に係る損害について」ということで、政府が収束宣言をしたので避難の賠償の範囲も見直しをしますということを言いました。そして、その翌月には東京電力のプレスリリースです、「避難指示区域の見直しに伴う賠償の検討状況について」。

 こうして見ていただければ、収束宣言に私たちがなぜこだわるか。ここが全ての出発点で、賠償やいろいろなことに結びついているんですね。

 総理は、これまで何度か答弁をされているとおり、原発事故は収束とは言えないとおっしゃっています。そうであれば、やはり、ここを撤回しなければ、ここをちゃんと振り出しに戻って検討しなければならないと思いますが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 就任後、福島県を訪問いたしまして、ふるさとから離れて困難な生活を強いられている方々からお話を伺う中においては、前政権時代に出された収束宣言、いわば収束したという状況ではない、こういう認識を私は持っております。

高橋(千)委員 認識は持っているとおっしゃいました。でも、その宣言がこの線引きに結びついているということは認識していただきましたか。

安倍内閣総理大臣 今申し上げましたように、福島の方々の気持ちとしては、とても収束したという状況ではない、つまり、やはり収束というのは、しっかりと生活をしていく上において、ちゃんと将来が見えてきたという段階でなければ収束をしたとは言えないんだろう、このように考えております。

高橋(千)委員 民主党政権時代に行った収束宣言ですから、これは思い切って撤回をすべきです。そして、それがどれほど被災者を苦しめているのかという認識をしてほしいということを申し述べさせていただきました。

 根本大臣が福島県出身であり、復興大臣そして福島復興再生総括本部長になられました。根本大臣の小選挙区の立候補のときの公報を見ますと、脱原発と書いていらっしゃいますね。自民党さんの福島支部の配られたリーフには「脱原発」と大きく書かれていらっしゃいます。そして、「県内の原発十基すべて廃炉を実現します。」と書いています。

 ですから、これは言っただけというのであれば、民主党と同じなんです。そうじゃないということを示していただきたい。約束は守ると言っていただけますか。

根本国務大臣 私も福島県にずっとおりましたから、三・一一以降、さまざまな皆さんの意見を聞いてきました。農業で風評被害に苦しむ皆さん、そして小さな子供を持つ母親の皆さん、さまざまな意見を私は聞いてまいりました。

 福島県民の感情としては、あれだけの過酷な事故が起こったわけですから、私も、将来、要は自然エネルギーや再生可能エネルギーを思い切って、研究開発も含めてやって、原発の依存度を減らしていく、長期的に日本はやはり脱原発を、原発に依存しない社会を目指すべきだと思います。

 しかし、やはり責任ある脱原発も必要ですから、そのためには、前提として、再生可能エネルギー、自然エネルギーに思い切った投資をしてだんだん原発依存の比率を下げていく、私は、これが必要だと思っております。

高橋(千)委員 続きをまたやりたいと思います。

 終わります。

山本委員長 これにて高橋君の質疑は終了いたしました。

 次に、玉城デニー君。

玉城委員 生活の党の玉城デニーでございます。

 きょうは、安倍総理を初め、それから山本大臣にも御質問をさせていただければと思います。

 まず、きょうの北朝鮮の核実験について、それから拉致問題も含めて、やはり総理を初めこの内閣には冷静かつ毅然とした対応をぜひお願いを申し上げたいというふうに思います。

 さて、まず冒頭ですが、実は、総理、日曜日に浦添市で市長選挙がございました、沖縄県の浦添市で。そこで、三人の候補者が出まして、お一方は現職の候補者、もうお一方は、自民党、民主党、社民党、沖縄社会大衆党が推薦をする候補者、そしてもうお一方は、無所属で、元NPOの理事をなさっていた四十五歳の新人候補。この三人の中で当選したのが、元NPOの理事をなさっていた新人、四十五歳の候補者でした。

 この候補者は、リニューアル浦添、つまり、新しいアプローチをして、市民目線でこの浦添市をしっかり立て直していきたいということを選挙公約に掲げました。そして同時に、あとお一方、別の候補者も掲げていたんですが、米軍の那覇軍港の移設地先である浦添市の西海岸を埋め立てる計画は見直す、市民目線でしっかりこれからはその開発のプログラムを立てていくということで、やはり基地と経済はリンクさせない、一緒にしないということを明確に選挙公約で掲げて当選をいたしました。そのことを総理にはまず御報告をさせていただきたいと思います。

 さて、総理は、今月二日に沖縄を訪問なされ、いろいろ視察、それから沖縄県知事との会談、懇談等を行っていらっしゃると思います。山本大臣も、それに先立って、先月の十一、十二、二十二、二十三と二度にわたって、総理も御一緒のときには三度ですね、沖縄に足を運んでいただきました。

 まず、安倍総理に、沖縄を訪問しての感想、それから知事と会談をなさっての御意見などを伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 沖縄を訪問いたしまして、まず、この三年数カ月の間に国と沖縄の信頼関係が失われたわけであります、この信頼関係の再構築からスタートしよう、私はそう考えたわけでございまして、まず仲井真知事とお目にかかって、二人でゆっくり食事もいたしました。沖縄を発展させていくために何をすべきかということについても、じっくりとお話をしたところでございます。

 今回、予算におきまして、第二滑走路について予算をつけました。七年間ではなくて五年十カ月。そして、それはまさにアジアの玄関である沖縄の可能性をさらに高めていくものだろう、このように期待をしております。

 また、沖縄の科学技術大学院大学も訪問したわけでございます。初めて訪問したのでございますが、大変すばらしい施設であり、また教授陣も世界のトップレベルの教授陣であり、そして新たに新入生を迎えて、新入生の方々も、これは本当に、例えばハーバードに行こうか、イエールに行こうか、そういう中においてこの大学院を選んだという方もおられた。まさにここから新たな未来が始まるな、こんなようにも思ったわけでございます。率直な話もいたしました。

 また、普天間飛行場も視察をしてまいりましたが、これは初めてではございませんが、改めて、普天間飛行場の固定化は絶対にあってはならない、一日も早くこれは移転させなければいけない、こんなように思った次第でございます。

 と同時に、沖縄におきまして、自衛隊あるいは海上保安庁、警察等を激励に参ったわけでございますが、日本の海、領土、領海を守るために前線で大変苦労されている方々と話をさせていただいたわけでございますが、改めて、この美しい海と領土、領海、また領空を守っていかなければいけない、こういう決意を新たにしたところでございます。

 今後とも、沖縄県民の皆様の声に耳を傾けながら、しっかりと振興を進めていくという中において信頼関係を構築していきたい、こう思っているところでございます。

玉城委員 では、同じように山本大臣にもお願いいたします。

山本国務大臣 私が沖縄担当大臣に就任したときに、安倍総理からは、あなたは沖縄担当大臣、沖縄振興担当なので、できるだけ頻繁に沖縄に行ってほしい、そして沖縄県民の方々に寄り添う形で仕事をしてほしい、こういう御指示をいただいて、就任一カ月で三回沖縄に足を運んで、仲井真知事とも、先般の予算委員会でも申し上げましたけれども、六回お目にかかりました。

 そういう意味でいうと、私なりに、私も、総理がおっしゃったような、信頼関係をもう一度きちっと再構築するために努力をさせていただいていると思っています。

 初めて平和祈念公園を訪れて、国立戦没者墓苑で献花をして、その後、平和の礎を訪れて、亡くなられた方の名前が刻まれた石碑が波形に建っていたので、案内していただいた県の関係者の方にどうしてですかと聞いたら、あそこから平和の心を波のように世界に広げるという趣旨なんだということを伺って、改めて、沖縄の方々の平和に対する強い思いを感じました。

 それから、平和の礎の向こうに平和の火があって、その向こうに本当にきれいな海があって、左に平和祈念資料館があるんですけれども、その本当にきれいな景色の中に崖があって、案内してくださった方から沖縄戦であの崖から大勢の方が身を投げたというのを伺って、やはり沖縄の歴史の重みと痛みみたいなものも感じました。

 それから、先生は御存じだと思うんですけれども、閣僚としては初めて久高島に行きまして、ここはアマミキヨという国建ての神がおり立った沖縄開闢の地で、島民の方々は本当に温かく迎えてくださったんですが、そこも少し歩き回って、沖縄の神秘的なエネルギーというか、ちょっと魂の一端を感じたような気がいたしました。

 ほかにもいろいろ、国際物流拠点を見たり、今総理のおっしゃった科学技術大学院大学を見たりしましたけれども、沖縄の歴史の重みとか沖縄の置かれている状況と同時に、やはり大きな可能性、沖縄の持つ大きな可能性も感じて、最初の訪問から戻ってまいりました。

玉城委員 ありがとうございます。

 まさに総理がおっしゃったように、沖縄はこれからアジアに向けてどんどん発展していく地域であるということは、これはもう地政的にも御承知のことだと思います。

 ですから、これからはこういう振興計画が基地問題と絶対にリンクしないということをぜひ明言していただきたいと思いますが、いかがでしょう。

安倍内閣総理大臣 今まで特措法という形で、沖縄の社会的、地理的、歴史的な事情を考慮しながら支援をしてきたところでございます。それはそれとして、今後もこの特措法を通じて支援をしていくわけでありますが、他方、私は前々から申し上げておりますが、まさに沖縄はアジアの中心であります。ここから上海やフィリピン、それぞれ極めて近い距離にあるわけでございまして、その中におきましては、アジア・ゲートウエーとしての役割が期待されるわけであります。

 ですから、第二滑走路ということも、これは別に沖縄の米軍基地とはかかわりなく、この沖縄の可能性を生かしていくことは、日本にとってはもちろんプラスになるわけであります。そしてまた、そういう観点から科学技術大学院大学も設置をしているわけでもありまして、そうした可能性をこれから国としてどんどん沖縄の方々とともに引き出していきたい、こう考えております。

玉城委員 ありがとうございます。

 ややもすると、沖縄の、来年度予算も内定はしておりますので、これはまた別に本予算で議論させていただきたいと思いますが、この予算が満額で獲得したとか、あるいはスムーズにいったということは、これはやはりどこかで普天間とリンクしているのではないかという思いがずっとあるものですから、それはないと今総理がおっしゃったことを県民はしっかり信じて、それを私たちも、振興は振興、しかし、基地の問題はまたこれは安全保障の問題、日本全体で本来なら見なければいけないという安全保障の問題のことを、しっかり私たちは政府に対して追及していきたいというふうに思います。

 さて、山本大臣、ありがとうございます。実は、大臣がおっしゃったように、沖縄は歴史の中で祈りをささげてきた、その歴史が生活に今でも根強く残っています。

 十日は実は中国の春節でありましたけれども、沖縄は旧正月でした。太陽太陰歴の旧正月で、例えば糸満市ですとか、特に漁村や農村では今でも旧暦の正月を大切にしています。そして、毎月の旧暦の一日と十五日には、お仏壇や火の神様に家族の健康にささげたり、あるいは御先祖様に、元気でやっていますよというお茶をささげたりします。

 その敬けんな気持ちは、実は久高島を初めとして沖縄県内各地に今でもしっかりと根づいているというところから、これからも足しげく沖縄に通っていただきたいと思います。今度は私が、一般の、官僚の方々が案内しない、ちゃんと県民の皆さんと膝を交える会合にもぜひ参加をしていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。(発言する者あり)いいですね。泡盛も酌み交わしていただきたいと思います。

 さて、一括交付金について少しお話を伺いたいと思います。

 新藤大臣、一括交付金は、二十四年度から沖縄で実施をされ、県の担当の方に聞きますと、ほぼ、最初は戸惑いはあったものの、いい形で進んできているという、その手応えを感じているようであります。しかし、まだいわゆる交付要綱などで縛りがかかっているので、私は、交付要綱をもっと縛りを解いていくことによって本当の地方分権、地域主権になるのではないかなと思うんですが、そのことについて大臣からの見解をお伺いしたいと思います。

新藤国務大臣 沖縄に対する振興交付金、これは、沖縄からの御要望を最大限に尊重して、ハードに加えてソフト事業、こういったものも対象とした独自制度にもなっております。

 そして、沖縄の振興という目的でもちろん設置されたものでありまして、御指摘の点を踏まえて、より改善点があればそれは研究してまいりたい、このように思います。

玉城委員 ありがとうございます。

 やはり、使いやすい交付金をつくり、地方が自分たちでしっかり計画と予算を立てる、この地方分権の流れは私は絶対にとめてはいけないと思うんですね。

 しかし、いわゆる戦略交付金は廃止をして、また考え直すと。それは使い勝手が悪いからもう一回立て直してみようじゃないかというふうなこともお考えのようですが、沖縄のケースはパイロットケースとしてこれからも全国にあまねく広がっていくような、そういう制度として、沖縄もしっかり頑張りますので、ぜひ御支援をいただきたいなというふうに思います。

 その件に関して、山本大臣からもお願いします。

山本国務大臣 先生御存じのとおり、先ほどちょっと予算の話がありましたけれども、二十四年度の補正予算は三百七十三億円、二十五年度の当初予算は総額で三千一億円。特に、先生の今おっしゃった沖縄振興の交付金については、ソフトが八百三億円、これは現状維持で、ハードは八百十億円、これは三十九億円ふえているんですけれども、沖縄県側の御要望に最大限応える形で計上させていただきました。

 今先生おっしゃったように、これも初めての試みなんですけれども、昨年の改正沖縄振興法でできた制度なんですが、私は、このソフトとハードの仕組みは非常に沖縄振興には意味があるというふうに思っています。

 さっき、要綱の話が出ました。もちろん、交付金ですからきちっと条件があるんですが、これは沖縄県、市町村の自主性を最大限に尊重する形で、私たちの内閣府の事務局もいろいろな意味で前向きに議論をして、いろいろな提案をしながら進めてきたということですが、非常に、特にソフトの交付金は使途が広いと思うんですね。これも先生には釈迦に説法なんですけれども、例えば、産業振興のための施設整備にも使える。那覇港のガントリークレーンとか、あるいは中城湾の賃貸工場とかいうのもつくりましたし、あるいは子育て支援もあるし、離島振興もあるし、人材育成もあるということで、私はこれは非常にいい仕組みだと思っています。

 ただ、一年目ですから、今までのプロジェクトを、きのうも実は先生から質問いただけるということで相当詳細に読んできたんですけれども、一つ一つをよく見て、もうちょっと効率的にできるものはまた進化をさせていけばいいと思いますが、ソフトとハードで沖縄の振興をサポートする。自立を助け、将来的には、さっき申し上げたとおり、総理もおっしゃっていましたけれども、日本経済のフロントランナーになってもらうために、私は担当大臣としてこの仕組みを評価していますし、ぜひこれを、沖縄県側と相談しながら、あくまでも沖縄県側、市町村側の自主的な判断に従って進化をさせていきたい、そう考えております。

玉城委員 ありがとうございます。まさに、沖縄でできることを全国に広げていく、そういうことをぜひしっかり捉えていただきたいなというふうに思います。

 さて、私は民主党に在籍をしていたときから、この振興計画については絶対に政争の具にしない、与野党一緒にやると。例えば子育てにしても介護にしても、本当に人が生きるものに関しては一緒にやっていきましょうということを訴えてまいりました。

 さて、きょうは委員のお手元に建白書の資料を配付させていただいていると思います。

 この建白書、実は、せんだって一月の二十八日に、沖縄県の四十一市町村長、四十一議会及び県知事、それからお手元にありますとおり、沖縄県議会、市長会会長、商工連合会会長、連合沖縄、労働組合ですね、そして県婦人連合会会長を初め多くの皆さんの署名をしっかりとそろえて、総理にこの建白書をお渡しいたしました。

 こういうふうに、一都道府県で全ての市町村長、そして議会の決議をもってこの建白書を政府に届けるという大きな意味をぜひ総理には受け取っていただきたい、そのことを伺いたいんですが、この建白書、全文ではなく一部御紹介をさせていただきたいと思います。

 復帰四十年目の沖縄で、米軍はいまだ占領地でもあるかのごとく傍若無人に振る舞っている。国民主権国家日本のあり方が問われている。

  安倍晋三内閣総理大臣殿。

  沖縄の実情を今一度見つめて戴きたい。沖縄県民総意の米軍基地からの「負担軽減」を実行して戴きたい。

ということで、

  以下、オスプレイ配備に反対する沖縄県民大会実行委員会、沖縄県議会、沖縄県市町村関係四団体、市町村、市町村議会の連名において建白書を提出致します。

 一、オスプレイの配備を直ちに撤回すること。及び今年七月までに配備されるとしている十二機の配備を中止すること。また嘉手納基地への特殊作戦用垂直離着陸輸送機CV22オスプレイの配備計画を直ちに撤回すること。

 二、米軍普天間基地を閉鎖・撤去し、県内移設を断念すること。

ということでございます。

 実は、復帰措置に関する建議書というのが、昭和四十六年に、沖縄国会と言われておりますその国会で議論されていたときに渡せなかった建議書が、幻の建議書があるんです。

 その建議書は何かといいますと、本土復帰に際して沖縄県の声を日本政府と返還協定批准国会、沖縄国会に手渡すために作成された建議書で、五万五千字、百三十二ページにわたってつくられておりました。しかし、十一月十七日に、それが実は手渡せなかったのは、自民党の強行採決によって委員会で採決され、そして、結果的には建議書を手渡す前に全てもう水の泡となってしまったという幻の建議書でございます。

 その建議書は、沖縄の公文書館のアーカイブでどなたでも見ることができますので、ぜひごらんもいただきたいと思いますが、この一文も私は少し紹介をさせていただきたいと思います。

 後の県知事になるんですが、当時は主席と言っておりました、屋良朝苗主席はこのように言っております。

 軍事占領支配からの脱却、憲法で保障される日本国民としての諸権利の回復、そして沖縄県民としての自主主体性の確立、これらが私たち県民にとって全面復帰の持っている内容です、もっと簡単明瞭に言いますと、人間性の回復を願望しているのです、極めて当然な願望であり要求なんですという建議書だったんですね。

 しかし、それが渡せなかった。核抜き本土並みということをうたって、恐らく、核の疑惑があった岩国を初めとする、沖縄県の米軍基地も、全てそれが復帰とともに全部撤去されるだろうというふうなこともあったにもかかわらず、ついぞその建議書は渡されず、この建白書の中で、オスプレイの配備反対と普天間の県外移設という、本当にシンプルなんですが、全市町村長、全議会議長の連名をもって総理のもとへと上がってこられたわけです。

 この思いをぜひ総理から伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 先般、建白書については私自身が受け取らせていただきました。大変厳しい声があるということも私も認識をしたわけでございまして、今後、今お話のあった普天間の移設を含む米軍再編については、これは日米合意にのっとって、米軍の抑止力を維持しながら沖縄の負担ができる限り縮小するように進めていきたい、こう思っているわけであります。

 いずれにせよ、沖縄に多くの米軍基地が集中をしているというこの状況を何とかしていかなければならないという思いについては同じではないか、このように思います。

玉城委員 国土の〇・六%に七四%の米軍の専用施設が集中しているということは、総理、御承知だと思います。

 しかし他方、では、この海兵隊の基地を新たに沖縄につくらないと抑止力が保てないのかということに関しては、これはさまざま議論があるところです。

 前の防衛大臣森本さんは、防衛大臣を離任される前に、必ずしも沖縄に置く必要はないけれども、政治的には適地であるということをおっしゃっています。また、それ以前には、西日本のどこかにあればいいんだというふうな類いの発言もなさっているわけですね。

 つまり、沖縄に新しい基地をつくってほしくないという県民の思いと、そして現実的に沖縄になくても抑止力は欠けない、そういうことがあるにもかかわらず、沖縄だ、沖縄だということを言い続けているのは実は日本側であるということを私は確信しているわけですね。

 どうやって確信しているかというと、実は、私も昨年の二月にアメリカに訪米をさせていただきました。そして、ダニエル・イノウエ上院議員、ジム・ウェッブ上院議員を初め、クリストファー・ジョンストン国防省東アジア部長、カリン・ラング国務省日本副部長、ケント・カルダー東アジア研究センター所長、マイク・モチヅキ・ジョージ・ワシントン大学教授など、二十一名の上院、下院、政府関係、それからシンクタンクの方々と意見交換をさせていただきました。そこに、いわゆるキャンプ・シュワブを抱える名護市の稲嶺市長も一緒に行って、名護市のこのキャンプ・シュワブの場所がどんなすばらしい場所であるか、こんなところにアメリカだったら基地がつくれるのかということも含めて、非公式ですが、意見交換をさせていただきました。

 ですから、私が今述べますことは、非公式ですけれども、向こうから聞いた話だということで、総理に御報告をしたいと思います。

 韓国、日本、フィリピン、ベトナムからもアメリカのプレゼンスが必要と言われている。確かに、沖縄には長く駐留し過ぎているかもしれない。また、日米の同盟関係は東アジアの維持のために非常に重要である。しかし、沖縄の全体の負担はもう少し和らげていかねばならないと思う。また、運用関係、作戦関係部隊のローテーションもグアムへ移す。これは、アメリカの軍が太平洋でやらなければならないことに非常にうまく合っていると思う。また、私たちは民主主義国家である。人々が享受できる自由を守るのも二国間の総合的な利益である。

 また、ここが一番重要だと思います。

 二〇〇六年の日米両政府の合意は重要である。しかしながら、それ以降の戦略的様相は、中国の軍事能力と活動の増加、北朝鮮の不確定要因が高まってきている。さらに、南シナ海の問題など大きな変化があることなどから、日米政府が戦略的視点での再編を見直すことが必要になってきている。それによっては、海兵隊は沖縄にそれほど必要ではなく、抑止力についても、新たな飛行場をつくらなくても十分に保つことができるという可能性は非常にあると思う。

 こういう意見がアメリカにはあるんですね。

 最後に一つ紹介します。

 日米は同盟国であり、敵国同士ではない。米国の基地が沖縄に余りにも集中し過ぎていて、それを何とか日本やアジアのほかの地域に移していかねばならないということは理にかなっている。同盟関係を現在のような不平等のもとに築くことには賛成できない。辺野古がだめなら、どこかほかを探さねばならない。そのための努力がいろいろ行われている。米国内でも、普天間を閉鎖しなければならないことを理解している人たちはたくさんいると思う。

 私は、訪米して、直接会って、この話を聞かせていただきました。もちろん、沖縄県内には辺野古推進の方々もいらっしゃるかもしれません。しかし、今必要なのは、十七年間動かない普天間を、辺野古に辺野古にと言っても絶対に動かないという現実を見ることです。浦添市民は、リニューアルさせるために新しいプランを立てたいという本当に清新な方を市長に選びました。これが今の県民の思いなんです。

 ですから、この建白書に込められている全ての市町村長、議会の思いというものは、もはや後に戻らない。そのことは、自民党沖縄県連の会長、それから公明党の沖縄県本部の会長、委員長とおっしゃるんでしょうか、このお二方も明確に言っておられます。ということは、自民党沖縄県連、公明党県本も、県民と同じ立場で県外を主張するということを言っているわけですね。

 これが、あの建議書を渡せなかった思いがそのまま残っている沖縄だということについて、総理の見解を伺います。

安倍内閣総理大臣 今、米側の意見として御紹介をいただいたんですが、しかし、アメリカ側が今おっしゃったような考え方で統一された政府の見解であれば、それはさまざまな交渉をしていく上においても余り問題というか課題はほとんどないんだろうと思うんですが、残念ながら、そうではないんですね。

 こういう基地の問題についてもそうなんですが、これは相手があることですから、ですから、民主党の公約において、最低でも県外、これは国内で決めて解決できる問題では残念ながらないわけであって、交渉の中で、我々はどう結果を出していくかということについてさまざまなことを考えた中において、最終的には辺野古ということが決まって進めてきたわけであります。

 しかし、この三年数カ月の間に信頼関係が損なわれた中において、そう簡単にそれがすぐにもとに戻るとは私も思っておりませんが、そういう意味におきまして、簡単に今ここで、だからここだということにはならないわけであります。ただ、普天間飛行場を固定化させてはならないということと、一日も早く普天間をどこかに移設させるということについては、これは恐らく玉城議員と同じ考えであろう、こう思うわけでございまして、問題は、その後、どう抑止力を維持しながらこの普天間の代替基地を定めていくかということであろう、このように思います。

玉城委員 さきの十二月の衆議院選挙では、四人の民主党の議員の方々も当選され、その議員の方々は県内移設には反対です。そのことはしっかりとやはり……(発言する者あり)自民党です。失礼いたしました。自民党の皆さんは反対です。ぜひそれはしっかりその声を聞いて、党内でも国防部会でかなりいろいろ御意見があったと思いますが、安全保障は沖縄だけが担う問題ではないんですね。

 しかも、私たちが言っている、沖縄県民側が言っている県外、国外というのは、県外に移すということになった場合、国民の皆さんでぜひ安全保障について考えていただきたい、いつまで沖縄なんですかということを考えていただきたい、そうすればそこからプランは出てくるでしょうということだと思います。

 しかし、政治的に沖縄に置いておこうというのは、どこかに移そうとしたら反対運動が起きるから無理なんだというんですけれども、沖縄は既にもう目覚めた、後には戻らない、これは翁長那覇市長の言葉です。翁長那覇市長は、かつて自民党県連の幹事長もなさいました。そして、支援してくださっている方々は、自民党や公明党の議員の方々が大勢を占めていらっしゃいます。しかし、もはや保革の関係はないんですね。県民は、その思いでしっかり、政府は新しいプラン、アプローチをアメリカに申し入れなくてはこの問題は絶対に解決しないというふうに考えています。

 安倍総理は、来週ですか、アメリカに訪米なさって、オバマ大統領といろいろと意見交換をなさるかもしれません。しかし、そのときに、では沖縄の現状はどうなんですかというふうなことを、まあオバマさんは聞かないかもしれないんですが、オバマさんに、実はこうなんですと。ですから私たちは、それが決まってから十七年たっても動かないのであれば新しいアプローチを考える必要がありますね、それがこれからのグローバルな、世界を見た、よく総理がおっしゃる、俯瞰的にマクロに見た、地球全体を見た、アジア全体を見た方向性にかなうのではないんですかということになると思うんです。

 そのことについてしっかりと、オバマ大統領にもきちんと沖縄の現状を伝えていただきたい、そういうふうに思いますが、いかがでしょう。

安倍内閣総理大臣 大統領との首脳会談においては、経済、政治、安全保障について話をするわけでありますが、当然、この首脳会談において、我が国は我が国の国益を守るため日米の関係を強化していく、そういう首脳会談にしていきたいと考えております。

玉城委員 国を支えているのは主権者たる国民です。沖縄県民も国民であるというふうに思いますが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 それはもちろんそうであります。

玉城委員 ありがとうございます。

 ですから、私たちは、その主権者の声をしっかりと聞き届けて国会でそれを議論するというふうなことを大切にして、では、どういう解決策を私たちは探らなければいけないか。相手があることだからこそ、きちんとそれを議論する。それは、御党においても、私たちも、国会の中においても、そして各地域においても、ぜひ、全国から代議士として送っていただいている議員の皆さんにもお願いをしたいということであります。

 さて、もう時間もほとんどないんですが、防衛大臣、せんだって、その建議書を携えた代表団の方々に、自民党は辺野古移設が方針であるというふうなことをおっしゃったらしいんですが、そのことについて大変落胆といいますか、これは自民党の問題ではないのではないでしょうかと。要するに国民、国全体の問題であり、ひいては、安全保障というものに政党の考え方ということは関係ないのではないかという不安があるんですね。

 そこは私は、助け船として、自民党という発言ではないというふうに思うんですけれども、国民として、沖縄県民の意見として、その意見に防衛大臣としてどのように答えていただけますか。

小野寺国務大臣 先般も、建白書ということで、たくさんの自治体を代表する、沖縄を代表する皆さんが防衛省の大臣室の方に来られました。私の方としては、防衛省でございますので、政府の方針ということでお話をさせていただきました。

 特に私どもとしては、今回、沖縄については、やはり地政学的なことを考えて、抑止力の維持ということ、これを御説明させていただき、そしてなお、オスプレイの問題も含めて、沖縄の皆様のさまざまな強い懸念、このことについては真摯に受けとめさせていただき、防衛省としてできる、例えば三百十八件、今回さまざま、オスプレイの日米合同委員会の違反事項ではないかというような御指摘がございました。それについては、一つ一つしっかりと精査するように、対応させていただくように指示を出させていただきましたし、これからも、さまざまな御懸念については一つ一つ払拭をさせていただきたい、そのように思っております。

玉城委員 合同委員会での違反事項も、もう目視をしているだけでいっぱいあるわけですから、見ている人たちがいっぱいいる、ということは、県民は常に不安が頭の上を飛んでいるということを現実にぜひ受けとめていただきたいと思います。

小野寺国務大臣 私も、防衛大臣になる前、沖縄北方の衆議院の委員長をさせていただきました。そのとき、現地に入りまして、民家に泊まって、夕方、どうもオスプレイらしい音を聞き、住民の方がどのような不安なことを感じているか、それを自分でも体験してまいりました。

 さまざま、これからもこういう声を聞かせていただきまして、少しでも負担軽減に努力をしていきたいと思います。

玉城委員 最後に、日本語といいますか、きちんとレトリックをはっきりさせておきたいんですが、普天間の固定化は避けなければならない、しかし沖縄の負担は軽減する、この二つがひっくり返ってはいけないと思うんですね。

 まず、その負担軽減をするところから普天間の移設という話が起こりました。しかし、その移設先を同じ沖縄に移すのであれば、負担のスライドでしかないというのが県民の意見であり、この四十一市町村長の意見なんですね。ですから、県内に新しい基地をつくらないこと、これこそが負担軽減なんだということなんですね。

 ですから、総理、そのことを間違えない方がいいと思います。負担軽減は、沖縄の人がいるところに、もうこの基地は危ないから、人がいないところに移すということが負担軽減ではないんです。実質的な負担軽減は、その基地を別に移す、つまり県外に移す。暫定で国外に行くか、あるいはアメリカに移すか、アメリカがこれから展開しようとしているオーストラリアに移すか、それはこれからのアメリカの協議に任せばいいことなんですが、日本国の判断としては、もう沖縄県内に新しい基地はつくらないこと、これが本当の負担軽減だというふうに思いますが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 米軍再編は、いわば沖縄の負担軽減とそして米軍の抑止力の維持、これが柱でございます。そして、米軍再編は、普天間の移設だけではありません。さまざまな施設をぐっと動かしていくわけですよ。

 例えば、先ほど議論になりました岩国の基地には、普天間から十二機、空中給油機が来るんですよ。これは負担の軽減ですよね、どう考えても。そして、例えば厚木から五十九機、空母艦載機が来るんですが、これは大きな全体的な、日本全体の再編の中で、岩国の市民はそう考えているんですね。厚木の負担の軽減ということではなくて、沖縄の負担の軽減になるという目的に資するという考え方において、これを受け入れているんですね。

 ですから、ここだけではなくて、さらに嘉手納以南の用地の返還を一日も早く進めていくということも含めて、全体として軽減は進めていきたい、このように考えております。

玉城委員 ありがとうございました。

 これからもまたしっかりと議論していきたいと思います。ありがとうございました。

山本委員長 これにて玉城君の質疑は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三分散会


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