衆議院

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第12号 平成25年3月12日(火曜日)

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平成二十五年三月十二日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 山本 有二君

   理事 伊藤 達也君 理事 岩屋  毅君

   理事 遠藤 利明君 理事 小此木八郎君

   理事 西銘恒三郎君 理事 萩生田光一君

   理事 長妻  昭君 理事 山田  宏君

   理事 石田 祝稔君

      あかま二郎君    秋元  司君

      安藤  裕君    井野 俊郎君

      伊藤信太郎君    石川 昭政君

      今村 雅弘君    うえの賢一郎君

      衛藤征士郎君    小倉 將信君

      大塚 高司君    大塚  拓君

      大西 英男君    奥野 信亮君

      勝沼 栄明君    金子 一義君

      菅家 一郎君    小池百合子君

      國場幸之助君    関  芳弘君

      辻  清人君    渡海紀三朗君

      中山 泰秀君    永岡 桂子君

      野田  毅君    原田 義昭君

      藤井比早之君    船田  元君

      牧原 秀樹君    宮路 和明君

      武藤 貴也君    村井 英樹君

      八木 哲也君    保岡 興治君

      山田 賢司君    山田 美樹君

      山本 幸三君    若宮 健嗣君

      奥野総一郎君    岸本 周平君

      後藤 祐一君    田嶋  要君

      玉木雄一郎君    辻元 清美君

      原口 一博君    前原 誠司君

      伊東 信久君    小熊 慎司君

      坂本祐之輔君    重徳 和彦君

      中田  宏君    中山 成彬君

      東国原英夫君    宮沢 隆仁君

      村岡 敏英君    浮島 智子君

      佐藤 英道君    遠山 清彦君

      濱村  進君    井坂 信彦君

      大熊 利昭君    柿沢 未途君

      佐藤 正夫君    杉本かずみ君

      中島 克仁君    赤嶺 政賢君

      塩川 鉄也君    宮本 岳志君

      小宮山泰子君    村上 史好君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   総務大臣

   国務大臣

   (地方分権改革担当)   新藤 義孝君

   法務大臣         谷垣 禎一君

   外務大臣         岸田 文雄君

   文部科学大臣       下村 博文君

   厚生労働大臣       田村 憲久君

   農林水産大臣       林  芳正君

   経済産業大臣

   国務大臣

   (原子力損害賠償支援機構担当)          茂木 敏充君

   国土交通大臣       太田 昭宏君

   環境大臣

   国務大臣

   (原子力防災担当)    石原 伸晃君

   防衛大臣         小野寺五典君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (復興大臣)       根本  匠君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当)       古屋 圭司君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)

   (情報通信技術(IT)政策担当)         山本 一太君

   国務大臣

   (消費者及び食品安全担当)

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)   森 まさこ君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   甘利  明君

   国務大臣

   (行政改革担当)

   (公務員制度改革担当)

   (規制改革担当)     稲田 朋美君

   財務副大臣        山口 俊一君

   環境副大臣

   兼内閣府副大臣      井上 信治君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    山本 庸幸君

   政府特別補佐人

   (原子力規制委員会委員長)           田中 俊一君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房総括審議官)          前川  守君

   予算委員会専門員     石崎 貴俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十二日

 辞任         補欠選任

  うえの賢一郎君    藤井比早之君

  大塚 高司君     武藤 貴也君

  金子 一義君     永岡 桂子君

  小池百合子君     山田 美樹君

  塩崎 恭久君     村井 英樹君

  中山 泰秀君     山田 賢司君

  西川 公也君     八木 哲也君

  岸本 周平君     奥野総一郎君

  辻元 清美君     後藤 祐一君

  原口 一博君     田嶋  要君

  坂本祐之輔君     村岡 敏英君

  重徳 和彦君     宮沢 隆仁君

  東国原英夫君     伊東 信久君

  浮島 智子君     濱村  進君

  佐藤 英道君     遠山 清彦君

  柿沢 未途君     中島 克仁君

  佐藤 正夫君     大熊 利昭君

  宮本 岳志君     塩川 鉄也君

  村上 史好君     小宮山泰子君

同日

 辞任         補欠選任

  永岡 桂子君     金子 一義君

  藤井比早之君     大西 英男君

  武藤 貴也君     大塚 高司君

  村井 英樹君     安藤  裕君

  八木 哲也君     井野 俊郎君

  山田 賢司君     中山 泰秀君

  山田 美樹君     石川 昭政君

  奥野総一郎君     岸本 周平君

  後藤 祐一君     辻元 清美君

  田嶋  要君     原口 一博君

  伊東 信久君     東国原英夫君

  宮沢 隆仁君     重徳 和彦君

  村岡 敏英君     小熊 慎司君

  遠山 清彦君     佐藤 英道君

  濱村  進君     浮島 智子君

  大熊 利昭君     井坂 信彦君

  中島 克仁君     柿沢 未途君

  塩川 鉄也君     赤嶺 政賢君

  小宮山泰子君     村上 史好君

同日

 辞任         補欠選任

  安藤  裕君     辻  清人君

  井野 俊郎君     小倉 將信君

  石川 昭政君     小池百合子君

  大西 英男君     うえの賢一郎君

  小熊 慎司君     坂本祐之輔君

  井坂 信彦君     杉本かずみ君

  赤嶺 政賢君     宮本 岳志君

同日

 辞任         補欠選任

  小倉 將信君     勝沼 栄明君

  辻  清人君     國場幸之助君

  杉本かずみ君     佐藤 正夫君

同日

 辞任         補欠選任

  勝沼 栄明君     西川 公也君

  國場幸之助君     菅家 一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  菅家 一郎君     塩崎 恭久君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成二十五年度一般会計予算

 平成二十五年度特別会計予算

 平成二十五年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

山本委員長 これより会議を開きます。

 平成二十五年度一般会計予算、平成二十五年度特別会計予算、平成二十五年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。村岡敏英君。

村岡委員 おはようございます。秋田県出身、日本維新の会の村岡敏英でございます。

 まずは、東北出身ということで、昨日、東北大震災二周年を迎えました。本当に、御不幸に見舞われ、お亡くなりになられた方には御冥福をお祈りいたします。そして、被災をしていまだ苦しんでいる方々に、国会議員全員で必ずや早い復興を、このように思っております。

 特に、私は東北人でありますので、全国の多くのボランティアの人たちに我々は助けてもらっています。このことを感謝するとともに、東北は忍耐強く粘り強い人間だと思っておりますので、皆さんの大きな温情のもと、御協力のもと、頑張っていくことを申し上げたい、このように思っております。

 本題に入る前に、私も、この政治の世界で秘書を長くやっておりました。郷土の大先輩であり、そして公私ともにお世話になっている菅官房長官に最初にお聞きいたしたい、このように思っております。

 菅官房長官は、我が秋田県で小中を卒業し、湯沢高校を卒業してから集団就職でこの都会に来て、そして、都会の中で地方議員そして国会議員、まさに都会と地方を知っているということで、我が郷土では尊敬の、そして本当に誉れでございます。

 先週日曜日、官房長官の出身地である湯沢市で、私はある会合に出席しました。七百人ぐらいの聴衆でありましたが、私が立っても拍手は普通どおりでしたが、大臣のビデオのメッセージで、ふるさとへのメッセージがありました。もう大拍手でありました。尊敬の念と、秋田弁で言うと、えがったな、えがったな、立派なったな、立派なったな、このように皆さん喜んでおりました。そして、涙ぐむ人までいるということで、もう拝んでビデオを見ている人もおりました。

 そういう意味では、都会と地方をしっかりとわかっている菅官房長官に、今、現状は経済、確かに株高そして円安と、調子のいいわけですけれども、地方はなかなか実感がありません。地方のふるさと再生ということに、総務大臣当時もふるさと納税という新しい取り組みをされました。改革派の旗手だ、こう思っております。

 我々日本維新の会も、地方分権そして道州制と、ふるさと再生を願い、そしてこの政党を立ち上げております。ぜひとも、菅官房長官のふるさと再生についての思いをお聞きしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

菅国務大臣 私のことをいろいろお褒めいただきまして、感謝を申し上げます。

 私も村岡委員と同じ秋田県出身であります。私は、高校まで秋田で育てていただいて、東京へ出てきて、今、横浜で活動をしたりしておるわけでありますけれども、安倍政権の第一次内閣で総務大臣を務めさせていただきました。当時、安倍総理の施政方針演説、地方の活力なくして国の活力なし、これが安倍政権の基本でありまして、第二次安倍内閣においても、まさにこのことを私たちは実現すべく、今全力で取り組んでいるところであります。

 そういう中で、地方が元気がない、ここ数年来いろいろ言われていますけれども、しかし、どこに行っても、地方にはそれぞれの特色、そして人材がいると思っています。そうした地方の魅力を生かし、特色のあるまちづくりを行っていく、そうしたことができるようにするのが政治の役割だというふうに思っております。

 私は、かつて総務大臣当時、頑張る地方応援プログラム、地方のそうした魅力を糧に、何とか地域の活性化につながらないか。あるいは、ふるさと納税も創設をさせていただきました。自分がふるさとと思えるところに一定の寄附をすることができる仕組みであります。二千円の、ある意味では会費ですけれども、それを支払えば、住民税、所得税の一定割合をどこにでも寄附することができる。

 地方は何といっても財源が大変ですから、そうした財源をしっかりと国として、地方に何らかの形で、地方がみずからの考え、そしてみずからの責任において物事を進めていく、そうした地方ができれば、それは日本全国、元気になる、こういうふうにもつながってくるだろうというふうに思います。

 あの東日本大震災において、多くの日本の皆さんが、被災地を中心に、全国からさまざまな義援金が届けられ、あるいはボランティアの皆さんが集中をされる。「絆」という言葉が一昨年の漢字になりましたけれども、まさに日本全国きずなを持って、お互いに活力のあるこの国をつくっていこうというのが、まさに地方、国一体だというふうに思います。安倍政権はまさにそのことを何としても実現をしたい。

 安倍内閣で、車座ふるさとトークというのも総理の指示で始めました。大臣、政務官、副大臣、そうした政府の関係者が、二十人ぐらいの中で、地方のある意味で生の声、心の叫びというものを聞いて、そのことを政治に反映していきたい、そう思っております。

 ぜひ委員もふるさとのために頑張っていただきたいと思いますし、この国家のために、全員でふるさと、地方というものを大事にしながら、日本が元気になるように努めていきたいと思います。

村岡委員 官房長官、ありがとうございました。ふるさとを思う共通の思い、そして地方が再生しないとこの国の底力ができないという思いは共通している、このように思っております。

 官房長官、記者会見でしょうから、どうぞ、大丈夫です。私も官房長官秘書官をやっていましたので、いかに記者会見が大事かということはわかっております。私はもう質問いたしませんので、どうぞ。

 そして、安倍総理大臣にお聞きしたいと思います。

 私は、秘書を十六年やっておりました。その間、この予算委員会では大きな思い出があるのが、新進党の予算委員会占拠という、二十一日間、この国会に、私も自民党の国対委員長室に泊まっておりました。何というばからしい国会をやっているんだろうと思いながら、秘書をやっておりました。また、PKO法案のときには牛歩戦術、十三時間、あの国会の本会議場でやっている。まさに国会というのはどんなところなんだと。国民の信頼を失い、そして政治が最低、こう言われた時代でありました。

 しかし、そこからは、九年ぶりに国会に帰ってきますと、違うような気がいたしております。やはり政権交代があったということで、お互いの緊張感と、議論はしっかりする場になってきたな、こう思っております。

 安倍総理大臣の三本の矢、すばらしいネーミングで、思い切った、この日本の新しい方向性を出すということの中、先ほど申しましたように、株高そして円安と、日本が新しい方向性に向いていく、その気持ちが国民の中にも芽生えている、こう思っております。

 しかし、その中で、これが実質的になるかどうか。多分、いろいろなネーミングというのは政治にとって大切だとは思います。十五カ月予算、ただ、言いかえれば一年三カ月予算であります。三本の矢というものも、自民党がなかなかうまくいかなかった時代、よく言われた言葉が、政官財の癒着と言われました。これが一緒のように戻るようであれば、その政官財の中で利益を三等分するというような政治ではいけない。ここには民も地方もしっかり入っていかなければならない。

 この経済の対策が、安倍総理大臣として、これからどういう波及効果を国にもたらし、地方にももたらすという御意見、また目標を持っているのか、お聞かせ願いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 この十数年間、ずっと日本はデフレの中に沈んでいたわけでありまして、国民の所得は五十兆円吹っ飛んでしまった中において、特に、やはり地方においては、行き過ぎた円高もあります。

 朝早く起きて一生懸命頑張って、汗を流して、知恵を出して、出しても、自分のつくったものはすぐれているにもかかわらず、競争力を失って、売れない。結果として工場を閉じざるを得ない経営者、そして、そこで働いている従業員、皆さん大変苦しい思いだったんだろうと思います。一生懸命朝早く起きて田を耕してすばらしいものをつくったとしても、なかなか価格が思うように上がっていかないどころか、下がっていくという状況がございました。

 まず、これを変えていくために、思い切った金融緩和を行い、デフレから脱却して、二%の緩やかな安定的な物価安定目標に向かって進んでいく。それから同時に、今委員が御指摘になったように、大切なことは、地方にいてもそうした温かい風を受けることができるようにしていくということは大変重要なことなんだろう、このように思います。

 そこで、我々は、機動的な財政政策において、先般、大型の補正予算を組みました。これは、地方まで、隅々までこの三本の矢の政策が行き渡るようにするためのものであると言ってもいいでしょうし、あるいはまた、この経済政策、経済財政運営が地方にも早くいい形でいくように、つまり、雇用や賃金に影響が出てくる、この期間を短くしていくという効果も、我々はあわせ持っているんだろうと思います。

 まず、国が需要をつくっていく中において、民間の経営者の方々も、ああ、これはだんだん物価が上がっていくな、今のうちに設備投資をしていこうと思うかもしれない。消費者の方々も、今のうちに買っておいた方がいいだろうと思うかもしれないという中において、だんだんいい景気の循環に入っていくんですが、そのスピードを速めていく中において、かつ、これは地方にもそうしたいい影響が及んでいくように、今我々は全力を尽くしているわけであります。

 そして、三本目の矢でありますが、元気で長生きできる長寿社会をつくっていくという、あるべき社会像を設定していく中において、医療技術や介護技術、看護技術あるいは再生医療等々を含めて、そうした分野にしっかりと国家支援も投入されていくという中において、そこで新たな技術も生まれ、そして、国民は健康を取り戻し、かつ富を生み出していくという中において、そうした拠点が、例えば東北において医療の拠点をつくろうということも、我々の基本的な方向の一つでございます。

 そういう芽が出てくることによって、それは希望になっていくのではないだろうか、こんなように思うところでございます。

 先般、あるテレビのニュースで報道しておりましたが、この為替の変化によって、タマネギの価格がずっと、中国の輸入のタマネギよりも日本の農家が一生懸命つくったタマネギの方が残念ながら高くなっていたのでありますが、十数年ぶりにこれが逆転したんですね。日本のタマネギの方がとうとう安くなったわけでありまして、頑張った人が報われる、そういう社会に近づいているな、こんなことを実感しているところでございます。

村岡委員 総理、ありがとうございます。

 補正予算は、我が日本維新の会は賛成をいたしました、これもしっかりと、もちろん国全体の経済成長、そして地方にも行き渡るように、行政側の執行の方もぜひよろしくお願いしたい、このように思っております。

 予算委員会もずっと聞いておりまして、安倍総理大臣にはオーラを感じるような形で、私も、先ほど秘書をやっていたと言いましたが、安倍総理大臣はもちろん年上で大先輩ですけれども、一期目、御当選されたとき、私は秘書で、オーラのある先生が誕生したな、こう思っていた思い出があります。

 そして、今の勢いというのは、自民党政権が強いときというのは人材豊富であります。よく言われるように、三角大福であったり、それから麻垣康三というネーミングがあったり、今回はさしずめ麻林伸充というような形で、総理候補が四人も安倍総理のもとにいるという、なかなか、野党が一つ一つの質問をしても、全てをうまく逃げられているような感じで大変心配しているんですが、いいことだらけならいいんですが、私も長く自民党におりましたので、自民党のよさも悪さもわかっているつもりであります。

 そういう意味では、今後、自民党がどのような実際の予算執行をしていくかというのは、きっちりと厳しく、野党の目として見ていかなければならない、こう思っております。

 そして、先週、我々の松浪議員が安倍総理大臣に提案いたしました。安倍総理大臣の所信表明、衆参別々にやっているのは、総理は忙しくて、これは大変じゃないかと。

 そして、アメリカの例がいいわけじゃないですけれども、アメリカの大統領の一般教書というのは、大統領が出て、それぞれ両院が出て、あそこは大統領ですから、三権の長まで全部出て、軍人のトップまで出てということをやっておりますけれども、日本はせめて、総理大臣が忙しいわけですから、両院で総理のお話を聞くというような実質国会に変えることが大切なのではないか、こう思っております。

 そしてまた、さらには、今自民党の中で検討されています定数削減であります。

 我々は、思い切って五割、こう言っております。それは、五割ではできないという自民党の人がいます。でも、両院の一院制も目指しながらということで、もちろん憲法改正もかかわりますけれども、しっかりとみずからの身を削るという覚悟を示さなければならない。

 そういう意味では、総理がいろいろ予算委員会でも答えておりますけれども、もう一度、この定数削減というのは、自公民で合意したあの解散があったと思います。あの解散は、代表質問を聞いていますと、安倍総理大臣がかち得た解散だそうですけれども、そういう意味では、しっかりと、合意の部分の、みずからの身を削る、定数削減、選挙制度改革というものにどのような決意をお持ちか、お聞かせ願えればと思います。

安倍内閣総理大臣 昨年の国会における党首討論において、私と当時の野田総理が合意をいたしまして、そして定数削減という方向が決まったわけであります。その中において、昨年の国会において、まず〇増五減が成立をいたしました。違憲状態をなくしていこうということでございます。現在、区割り審において、鋭意この法案作成に向けて作業が進んでいるところでございます。

 同時にまた、定数削減については、我が党の石破幹事長が、テレビにおいて、今月の半ばまでに与党案をまとめるという発言をいたしました。当然、幹事長の発言ですから、与党の発言としては極めて重い。その責任感の中で今取りまとめを行っているところでございますが、我々といたしましては、私たちの提案を多くの政党会派に受け入れていただきまして法案の成立を目指していきたい、このように考えております。

村岡委員 全ての政策は、国会議員がしっかりと自分の身を削るという覚悟があるかどうか、ここを国民は見ていると思いますので、ぜひとも総理が先頭に立ってやっていただきたい、こういうふうに思っております。

 それでは、私はきょうTPP関連についてお話ししたいということで、本題に入らせていただきます。

 私は、先ほど言ったように、出身は秋田県です。農業県であります。しかしながら、TPPの自由貿易というのは大切だということで、選挙前から、TPPには参加して、きちっと外交交渉の中で国益を守る、そして、農業に関しては、農業の対策をしなければならない、TPPがあろうがなかろうが、結局は今の農業では衰退してしまう、その覚悟を持って選挙をやってまいりました。

 農協集会に行きますと、他党の方はみんなTPP断固阻止という鉢巻きをして決意表明をしておりましたが、私はひとり、しないで、非難を浴びながら選挙をやってまいりました。そういう意味の中で、参加するというのは我々は賛成です、自民党にはTPPに対する、しっかりと説明責任はあると思っております。

 昨日、安倍総理大臣が沖縄の問題の中で、私も、辺野古に移すときの官房長官秘書官でした。沖縄にも何度も行きました。やっと普天間のあの苦しみから、沖縄の人には御迷惑をかけるけれども、辺野古に決まったということの中で、市長選や、そして知事にも御理解を得て、辺野古で大体決まりかけていたときに、ひっくり返してしまいました。それは本当に信頼を失うことです。

 それと同じように、自民党のほとんどの議員の方々がTPP断固阻止のように受け取られかねない選挙運動をやっていたわけですから、その部分に関しては、安倍総理大臣、どのように思っていらっしゃるでしょうか。

安倍内閣総理大臣 自民党の公約は、聖域なき関税撤廃を前提条件とする以上、交渉参加には反対するということであります。これが公約でありますが、一方、選挙において、議員おのおのが自分の信条において自分の考えを吐露する、これは選挙でもあることでありますし、その中において、我が党の中において、公約としてはこれが公約でありますが、立場で、TPPには根っこから反対という方がおられます。

 我が党は、先般の選挙において、そういうことを主張することは禁止はしていませんでした。まだその段階では参加するかしないかは決めていなかったわけでありますから、そこでは当然、自由な議論がなされるんだろうな、こういうことでございました。その中において、それぞれの議員が選挙において自分の考えを述べるということは、それは当然あってしかるべきなんだろう。

 そして、今後、参加するかしないかにおいて、しっかりと我々も、でき得る限りの情報というものは共有しながら議論をする、そして、議論をして決めた以上はみんなでまとまっていく。それは、村岡委員も御承知のように、自民党の、いわばある種、いい面でもあるわけでありますから、その段階ではみんなが同じ方向を向いて進んでいくのが正しい方向だろう、こんなように思います。

 私も、村岡委員と同じように、十年ぐらい、おやじの秘書を務めておりました。そして当選をしたときには、村岡兼造先生ははるか大先輩でございまして、国対の兵隊として働いていたのでございますが、当時、ガット・ウルグアイ・ラウンドでいよいよ米のミニマムアクセスが認められるというときにおいては、私も断固反対をいたしまして、国会の前でいわば泊まり込みストライキというのを何人かで、寝袋でもってやったことがございます。そのときには、断固として守ると。

 しかし、残念ながらこうした行動では守ることができないんだなということは身をもって私も経験したところでございまして、それよりも、やはり実際に地に足のついた政策でもってしっかりと農家を守っていくことが正しい道なんだな、こんなことを学んだこともございました。

村岡委員 ありがとうございます。

 自民党のいい文化といえばいい文化なんですが、果たしてそうなのかなという疑問があります。いいところでもあり、悪いところでもあり、選挙中はそれぞれが勝ってこなきゃいけないという論理の中で、それぞれの、農業県であったりいろいろな分野の部分でやらなきゃいけない。でも、それが果たして、農業者の方にはしっかりとしたメッセージになっているかというと、甚だそこは疑問であります。

 それはなぜかというと、今、農業者は国の農政に対して信頼をなくしています。それは例えば、これまで減反政策の中、転作作物も、これをつくれと言って最初は八万円ついていたものが五万円になったり、今度はこれをつくれと言ったり、いろいろ変わっていきます。また、経営安定化策の中で、大規模農業をやれと言っていたのに、大規模農業から戸別所得補償になる。

 そして、我が秋田県は、この前、農水大臣にはお話ししましたが、八郎潟の干拓ということで、大潟村があります。国策の中で大規模な干拓をして、米の増量、増産をということで、全国から入植者を集めて、大規模な機械を使い、農業を行ってまいりました。結果、需給のバランスが崩れて、その大潟村ももちろん減反ですが、そこで守らない人がいるために、従来の秋田県の農民は大変苦労をいたして、減反の負担も強いられました。

 そのような歴史の中、今、このTPPの参加、自民党は、ほとんどの人は多分、農協集会で、私が見ている限り、命がけで阻止する、政治生命をかけると言った人がほとんどだと思います。その部分はしっかりと、決してそれが悪いと言っているわけじゃない、農家の人と真剣に向き合わなきゃいけない、それが政治だ、こう思っております。

 そこで、ちょっとお聞きいたします。それぞれの方が農業政治連盟から推薦を受けているかどうか、何人かの方にお聞きしたいと思います。

 まずは、稲田大臣、農業政治連盟からは御推薦を受けているでしょうか。

稲田国務大臣 昨年の衆議院選挙において、福井県の農政連から推薦は受けております。

村岡委員 わかりました。

 それでは、谷垣法務大臣、受けているでしょうか。

谷垣国務大臣 私も推薦いただいておりました。

村岡委員 大変恐縮でございます、太田国土交通大臣、お願いします。

太田国務大臣 都市農業という観点で、御支援はいただいております。

村岡委員 ありがとうございます。

 何人もお聞きするのは大変恐縮で、自民党の国会議員、公明党の国会議員の方々は、全体で百八十二名の方が推薦を受けております。そして、百七十三名の方が当選いたしております。決してこれを責めているわけではありません。

 しかし、全国農業者農政運動組織連盟の山田俊臣会長が、このようなコメントを当選者に対して、農業者の、農政運動ジャーナルというところに談話を発表いたしております。正確に読むためにこれを読ませていただきます。

 「農業・農村を取り巻く農政課題は山積しており、とりわけ、TPP交渉への参加は、わが国の農業・農村の将来に壊滅的な打撃を与え、長い歴史と文化の上に培われた日本社会そのものを崩壊させかねない極めて重要な課題であり、TPP交渉には絶対に参加しないとの姿勢を貫いていただきたいと存じます。」これは農業者の思いであります。

 そして、そのときに、私もここはわかりませんが、それぞれの、今質問した大臣の方々は政策協定を個人的に結んでいるとお聞きいたしております。

 その一文の例を読みますと、TPP交渉について、TPP交渉が目指す例外なき関税撤廃は、我が国農業を壊滅に導くもので、また、TPPを進めようとする規制制度等の統一は、食品表示、検疫、公共、医療、保険等、食と暮らし、命を守る我が国の制度を改悪させることになるから、TPP交渉への参加は行わない。これが一文。

 それともう一つは、規制制度改革等について、東日本大震災を契機に、地域の共同の取り組みの重要性が再認識されるとともに、ここは飛ばします、農村社会の実態などを積極的に評価するとともに、JAの独禁法除外を維持し、金融部門の分離や農地制度のさらなる規制緩和などを行うことなく、これらの制度等を継続し、充実を図る。これがまず二つの文であります。そこで、平成、十二月何日、衆議院議員、何々県何々選挙区、候補者名で、判こを押してやるようになっております。

 やはり、こういう個人個人まで政策協定を結んだら、それは農家の人たちは信じますよ。そこの責任はやはりきちんと持たなきゃいけないんじゃないか。

 自民党は自由でいいです。それぞれの個人がしっかりと、政策協定を結んで、責任を持てるならいいです。しかし、やはり政党であります。よさであり、悪さであるところが、ここが農政の中で、自民党が今、しっかりと立て直して農業を成長産業にするというときに、自民党の総裁であり、総理大臣でありますから、この点は踏まえて、ぜひとも農業者と向き合って、農業の成長を信頼してもらって頑張らなきゃいけないと思いますが、どう思うでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今、村岡委員がおっしゃったように、農家の皆さんとしっかりと向き合っていく、これがやはり基本なんだろうと私も思っております。

 我が党の候補者あるいは議員は、地区地区において小さな集会を積み重ねて当選を果たしているわけでありますが、その際、農家の方々とも膝を交えて話を伺って、この人たちの生活を守り、農業の未来を手に入れるためには何が必要かということを真摯に考え、そして、農家の方々にも率直に、自分の考え、そして国際情勢も含めて、未来について、どうなっていくかということ、どう対応していくかということを語るのは当然の責務だろう、このように思います。

村岡委員 大変、自民党の方々も膝を交えてということもやっていらっしゃると思いますけれども、幸い私は、幸いじゃないですね、残念ながら三回落選して九年間浪人でありましたから、一軒一軒、全部行きました。その自民党の人たちの思いを総理は一まとめにして、それぞれが地域で頑張っていると言うんですが、やはり大政党というのは、なかなか声が伝わりにくいんです。

 現職の国会議員のパーティーやいろいろな団体がやっている新年会や何かに行きますと、私は浪人ですから一番後ろにいます。そうすると、国会議員の悪口を結構みんな言っているんです。ところが、では、来たらちゃんと言えばいいじゃないですか、わかった、言うと言いながら、来た途端に、何と先生、来てくれたということで、みんな握手するんですよ。その現実が、当選し続けている人はなかなかわからないんです。林大臣は、この前、同級生がいるからおわかりになるということで、そういう場合もあるでしょうけれども。

 だから、本当に向き合うというのは、農林大臣は今回農業者に、もちろんですけれども、例えば経済産業大臣であったり太田国土交通大臣であったり、やはり本当に大臣が飛び込んでいって、農業は我々は交渉参加だと言っていますけれども、しっかりと農業者と向き合い、農業の成長のために頑張るつもりです。

 やはりそこのところは、大政党であるからこそ、真剣にそれぞれの人たちと出会う覚悟をお持ちかどうか。そこをぜひ総理から、総理大臣はなかなか行くことはできません。これは各閣僚、副大臣の方、政務官。TPP交渉参加は今週中にされると聞いています。それからが新しいスタートであり、農業の成長のときだと思っておりますので、参加された場合にはぜひとも、閣僚の方や副大臣の方や政務官、そして自民党の議員がどんどん地域に乗り込んで、この説明をしながら、地域の人と向き合いながらということをぜひ御指示願えれば、こう思っていますが、どうでしょうか。

安倍内閣総理大臣 現在、安倍内閣としては、車座ふるさとトークというのを、やはり東北出身の木村太郎議員、補佐官が主導して進めて、スタートしておりますが、今委員が御指摘になった点は大変重要な点なんだろうと、私もお伺いをしておりまして、そう思いました。

 大きな政策判断をしたときにおいては、そしてそれが生活に大きな影響を及ぼしていくという政策においては、しっかりとそうした取り組み、できれば大集会ではなくて、皆さんが率直に意見を言いやすい、そういう規模の機会をつくっていくことも考えていきたいと思います。

村岡委員 今ちょっとやじで、遅きに失したというのがありましたが、その感は否めないことですけれども、でも、私も四回目にして当選ですから、遅きに失したと言われちゃいけないので、これは、今からやることが大切だ、全ては今からのスタートだと思っておりますので、安倍総理大臣の御決意を聞いたので、そこはぜひ頑張っていただきたい、こう思っております。

 そして、TPP全般となると、やはり農水大臣にお聞きしなければなりません。

 農水大臣は、まず所管の大臣であり、これまで私も、農水委員会でお聞きしたり、また、この予算委員会の一般質疑でお聞きしました。いよいよ来ると思うんですが、農業者との向き合い方、そして、TPPに参加したということを言いにくければ、農業対策をどのように考えていくのか、御所見をお願いいたしたいと思います。

林国務大臣 今先生からお話がありましたが、総理が、なるべく早期にということだと思いますけれども、御判断をされるということでございますので、まだ仮定の段階でございます。

 それから、もし仮定ということでお許しいただければ、交渉参加になったといたしましても、例えば何らかの対策を打つということは、では逆にその分野は譲るのか、こういうような懸念が出てくるやもしれずということでございますから、先ほど委員が最初の方でおっしゃった、これは入ろうと入るまいと、今の日本の農業は岐路に立っている。

 岐路に立っているということは、潜在的な可能性を引き出せば物すごく大きな可能性があるということでありますから、このこととは別に、攻めの農林水産業本部というのを、私を本部長にして立ち上げて、需要サイドと供給サイド、それをつなぐところを一体的にやっていこうというふうに、既に取り組みを始めたところでございますので、これをやはり精力的にやっていくということがまずは肝要であるというふうに考えております。

村岡委員 林大臣も、やはり総理大臣候補の一人として、非常に御慎重なお答えであります。

 しかし、これは、どの分野が入るからだめだとか、この分野が疑われるとか、そういうものじゃないと思うんです。もう目の前に、参加するでしょうし、そして農業者はしっかり説明を聞きたいんです。交渉事の中身を聞きたいわけじゃなく、どのような姿勢で取り組むのかと。これがなければ、やはり先ほど言ったように、後で説明し始めても大変大きな禍根を残す、こう思っております。

 そういう部分では、入る前からしっかりと、どのような対策をとってやるのかということを農家の方々に、そして、日本の農業は農家を守るだけではありません、日本の食料の安全、そのためにも、ぜひとも早く、スピードアップしてそれを説明しなければならない、こういうふうに思っております。

 そして、改めて、安倍総理大臣にお伺いいたします。

 我々日本維新の会は、定数是正は、我々も身を削る覚悟ですから、賛成であります。ぜひともそれを進めていただく。また、TPP交渉参加も、しっかりとこれは自由貿易を守りながら、日本が成長へ向かうために必要なことだ。そして、農業はしっかり対策をとっていく。この部分はしっかりと御協力をしていきたい、こう思っております。

 そのためには、先ほど申したように、党内の、農協から推薦を受けられた方がたくさんいると思います。その人たちは、一人一人、政策協定を結んでいるでしょうから、一人一人、自分の県の農協にやはり御説明に伺わなきゃいけない。そして、農業をしっかり成長させていくんだ、こういう真摯な態度がなければならない、こう思っています。

 今までは、ややもすれば、もう決まっちゃったから、もういいや。そして、農協の全国の幹部たちに何人かの幹部が会ってお茶を濁して、それぞれ、自民党の国会議員というのは重い立場であります、一人一人が行かずに、全体の中でなし崩し的にする、これはもう信頼を受けません。しっかりと一人一人、受けた方々は、ぜひとも説明に行ってください。済みません、さっき三人だけ言いましたけれども、まだまだたくさんおります。たまたま私の目に、ここにあったのを読み上げただけで、申しわけございません。それぞれの方々が、ぜひともその部分は説明していただきたいと思います。

 そして、きょう質問通告していた中で、小野寺大臣にお願いしたいと思うんですが、やはり私もテレビで見ていて、震災復興に大変御努力をしておられました。今は防衛大臣ですから外れるかもしれませんが、この東北の農業というのは震災でも傷ついております。大臣として、政治家として、この農業の取り組み、地域の復興にどのように思われるか、ぜひともよろしくお願いします。

小野寺国務大臣 村岡先生初め秋田の皆様には、今回、震災復興に大変な御尽力をいただきました。

 もしかして村岡先生は御存じないかもしれませんが、震災の三日後だったと思います、お兄様の兼幸元JC会頭が、実は気仙沼にジープで来られました。たくさん野菜を積んできていただいて、そして、たまたま瓦れきの中を歩いている私はばったりお会いして、そこで本当に、御支援してきていただいているんだなということを改めて感謝しております。お帰りになりましたら、どうぞお伝えいただければと思っております。

 実は、今回、所管ではありませんが、被災地の議員の一人として、やはり農地が相当被災を受けておりまして、それだけではなくて、農家の皆さんが本当に打ちひしがれている、その現状をつぶさに見ております。また、福島第一原発の放射能の風評被害、あるいは実被害等も実は広がっております。こういうことに今の政権は一生懸命取り組んでいただいております。

 今回、このTPPの問題については、私も選挙のときに、さまざま地元でお話をさせていただきました。一応、やはり最終的には、公約の中では、例外なき関税撤廃を前提とするTPPには反対ということでお話をさせていただいて、公約にも党の公約をそのまま載せていただいておりますが、まだまだその公約だけでは不十分なところもありますので、今後、交渉の経緯を見ながら、私も、自身、農村地域でありますし、先生とは選挙区がつながっております。その皆さんには、しっかり私も説明をしていく責任があると思っております。

村岡委員 ありがとうございます。ぜひとも、防衛大臣ではありますけれども、東北の政治家として頑張っていただきたい、こう思っております。

 そこで、安倍総理大臣にお聞きします。

 今、このように私もTPPのことをお話ししましたけれども、多分、全ての政策がそうなんです。

 自民党政権に復帰して大変喜んでいる方が全国におられると思います。これは、余りにも民主党が、総理大臣のトップが、失政をしてしまったというか、信頼を失ってしまった、その結果、安定感を自民党には求めております。ただ、それは、あの衆議院選挙を見ても、投票率は一〇%以上下がり、比例は一千万票も減って、そして自民党の比例票は、前回惨敗したときと同じぐらいの数字であります。

 その中で、我々日本維新の会は、一千二百万票。前回の選挙はゼロ票です、もちろん党がないから。それが一千二百万票に上がってきた。それは何かというと、今、この国の政治に対して不信があるという不確かなものだけじゃなく、新しい流れをつくりたいという気持ちが国民にはあると思っております。

 我々の松浪議員も御質問させていただきました。道州制、やはり、統治機構を変えていくことによって、この国の活力をもう一回立ち上がらせよう、そこの部分は我々の党の根幹であります。

 統治機構の改革というのは、憲法改正という大きな問題があります。憲法第九十六条、まずは改正できるようにして、安倍総理もおっしゃいました、国民の気持ちで、我々の手で憲法をつくれるんだ、できるんだという気持ちを持っていかなければならない。我々も、もちろんそのつもりでこの党をつくり上げ、これから御党とも戦わなきゃいけない参議院選挙に向かっていきます。

 それはそれとしながら、この憲法改正、そして道州制に移行していく、こういう流れがやはりこの国にとって必要かどうか、もう一度、安倍総理大臣にお聞きしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 さきの衆議院選挙において投票率が下がったということは、三年三カ月、民主党政権によって政治そのものに対する信頼が失われたということなんだろうと思います。それは、我々自由民主党も含めた既成政党への不信でもあったわけでございますから、いわば既成政党以外の政党である維新の党が千二百万票をとられたということは、まさに、比例選の結果においては、第二党は維新の党である。これはやはり大きな結果なんだろう。それはつまり、政治を変えてくれ、日本を変えてくれという希望を皆さんに託したんだろう、私もそのように思います。

 その中において、九十六条を変えていく。これはいわば、憲法に対して国民の皆さんが自分の意思表示をする機会を、事実上ずっと奪われていたんですね。たった三分の一をちょっと超える国会議員がそんなものは変えられないよと言えば、国民は自分の意思を、賛成にしろ反対にしろ、意思表明をしようと思っても、その手段すら行使できなかった。しかし、それを変えていこうという皆さんの意思に対して、多くの国民の皆さんは拍手を送ったんだろうと思います。

 そして、道州制について言えば、これは、国と地方のあり方を抜本的に変えていくことになりますし、権限を移譲していく上においても大変大きな受け皿ができます。州や道という大きな一つの地域の集合体ができることによって、その地域には新しい集合体を中心とするインフラが生まれるわけでありますし、そして、そこは、国を経由せずに、海外とも直接いろいろな、さまざまな交流や経済活動が展開されるというダイナミックな大きな変化にもつながっていく。これはぜひやってもらいたいという思いが、それまで一票もとっていなかった、政党がなかった政党、皆さんに託した思いなんだろうと思いますし、その点においては我が党も同じであります。

 既成政党ではありますが、我々はそうしたものをもう一度見直しをしていこうという勇気を持つ政党であります。だからこそ、御党と同じように、我が党には第一党という地位を与えていただいたんだろうな、こんなように考えております。

村岡委員 ありがとうございます。

 我々日本維新の会は、これまでの野党とは違って、是々非々でしっかりと、補正予算に賛成するということは、これは重大な決意であります。野党でこれまで予算に賛成するということはできないというか、やらない党が、本来であれば是々非々といいながら、是で非非非というような感じの党が多かったと思います。そこはしません。しっかりと、国民のため、そして新しい日本をつくるためには御協力をしていきたい、こう思っております。

 話をもとに戻します。

 先ほどのTPP、参加の方向だとは思います。しかし、農水大臣にも前にも申し上げました。農業地帯そして農業県というのには、成長産業にたえられるだけの人材ももちろんいます。その分野と、社会的な政策の中で守らなきゃいけない地域もあります。それは、例えば、中山間地域であったり、本当に高齢者の人がいる地域は、これから外国に物を売れといったって、これは難しい話であります。

 やはりその二つの側面というと、イギリスの農業というのは、農林省と環境省と一緒になって、攻めの農業のところはしっかりと農林省側の方でやる、そして環境を守るということは環境省の方でやる。そういう区分けをしながら、日本の農業は成長させていかなきゃいけない。

 一緒くたに一兆円目指しますといって、どうやって一兆円売るんですか。今は四千億、五千億で、一兆円、目標だけは立派でいいわけでありますが、どのような具体策で輸出増を考えているのか。

 そしてまた、日本のブランド化といっても、全国全部ブランドになったら同じレベルになって、ブランドでも何でもありません。いろいろ、この農業の具体的な成長戦略というのをどのようにお考えになっているのか。

 これは総理ではなく、農林大臣によろしくお願いいたします。

林国務大臣 お答えいたします。

 まず、輸出のお話でございます。

 今、委員が御指摘になられましたように、大体五千億前後で輸出額が推移をしておったわけですが、ここ数年、ちょっと、円高それから原発事故の影響等で減少しております。

 二月十八日に、実は、産業競争力会議でも私の方から説明をさせていただきまして、民間の、会議の有識者議員の皆様とも大きな方向性は一致したのでございますが、具体的には、輸出証明書の発給というのが事故以降、非常に大事になってきておりますので、国で一元的にやろう、地方の御負担を軽くするためにこういうことを、細かいことですが、やろうということ。

 それから、ジェトロとの連携強化を通じて、輸出しようとする事業者の育成とか、海外見本市への出展、それから国内外、中と外の両方で商談会をやる、こういうことを、地道な話でございますが、総合的にサポートをしていこうということ。

 それから、もう少しマクロで、日本食そのものをやはり発信する必要があるだろう。実は、二月から三月十九日にパリで、初めての試みですが、日本食文化週間というのをやりまして、外国の方にやはり日本食を発信していく、こういうことが大事ではないかな、こういうふうに思っておりまして、細かい話もちょっと織り込みましたけれども、具体策を講じておるところでございます。

村岡委員 農林水産大臣に聞きました。

 もうお一方、茂木経済産業大臣。

 当然、TPPは経済産業省が進めていかれると思いますが、その中で、やはり経済界もしっかりと日本の農業を守るということの中でいろいろな対策を試みていると思いますが、今後とも、経済産業大臣にはぜひその取り組みをしてもらいたいと思っているんですけれども、どのようなことを思っているんでしょうか。

茂木国務大臣 村岡先生から御質問いただきました。

 お父様の村岡兼造元官房長官、私も大変お世話になりまして、運輸大臣、そして自民党の総務会長をお務めになり、たしか住専国会のときは国対委員長で、私も副委員長で、いろいろ御指導いただきました。非常に丁寧に仕事を進められる方で、その一方で、一度物事を決めたら曲げない、そういう姿勢を敏英先生も引き継がれているんだな、今までの議論を聞いて、そんな思いを持ったところであります。

 経済産業省としても、当然、TPPについては、工業品の問題はありますが、農業についても、農商工連携を初め、さまざまな取り組みをしていきたいと思っております。そして、クール・ジャパン、日本の食文化であったりとか、さまざまなもの、地域のものを海外展開していく、アジアに展開していく、こういったことも、ことしから積極的に進めようと思っております。そこの中では、本当に商品力の高い農業と中核をなしていく、こんなふうに考えております。

村岡委員 ありがとうございます。

 その輸出をふやすということの中で、ぜひ農林大臣にも、やはり今現在、例えばお米を中国という十三億人以上の市場に輸出しようといったときに、富裕層の方がいて、日本の高級な、おいしい、安全なお米を求めているということで、よく話をされます。

 しかしながら、現実、中国は、日本のお米は消毒しなきゃいけない、薫蒸という過程を経なければ輸入をしない、こういうふうな形で、日本には一、二カ所しかその施設がない。もし中国に売るとすれば、まあ外交交渉の中で、日本の米は消毒しなきゃいけないなんてことはないと思いますので、そこはしなければいけませんが、中国がそれをしなければいけないということであれば、そういう設備を整えなければ、とても、幾ら中国で買う人がいるといったって、これは売れないわけであります。そういう設備をしなきゃいけない。

 そしてまた、中国側に、あの広い国土であります、日本ももちろんお米は収穫すれば低温倉庫に入れます、やはり低温倉庫なんかがあるかないかということも、輸出の拠点になるわけであります。中国であったり、インドであったり、インドネシアであったり、タイであったり、タイは、もちろんお米はつくっていますが、高級な米を買う人がいます、そういうときに、そういう低温倉庫がなければ、せっかくの日本のおいしい米が劣化して、何だ、日本の米は思ったほどおいしくないじゃないかと。やはり輸出を心がけるといったら、ここはしっかりやらなければならない。

 それから、経済産業省の茂木大臣のところの農商工連携というのも、ぜひとも、これは経団連の方々が中心にTPPは必ずやってくれと言っているわけですから、もう少し、日本の食を守るというところにしっかりと取り組んでいただきたい、こういうふうに思っております。

 そこで、農林大臣、私の提案のこの輸出の整備というところで、もう時間があれなので、短くお答え願えれば、こう思います。

林国務大臣 基本的には先生おっしゃるとおりだというふうに思います。

 手続の話をさっき少ししましたけれども、相手の国との手続をどうするかというところをクリアしていくということと、それから、ビジネスが大きくなってきたときに、どういう施設が要るか、それをどうサポートしていくか。

 私も、もともと社会人のスタートは商社でございましたので、その需要のボリュームに応じていろいろな策は必要になってくると思いますので、まずは、どれぐらいのものが出ていくかというものをそれぞれの作物に応じてきめ細かく、先ほども申し上げましたが、サポート体制を組んで、施策がそういうふうに必要になってくるぐらいのボリュームに早くなるように、努力をしてまいりたいというふうに思います。

村岡委員 茂木経済産業大臣にもよろしくお願いします。

茂木国務大臣 平成二十年度から農商工等連携促進法が施行されることになりまして、中小企業者と農林漁業者が共同して行う新商品開発に対して補助金であったりとか低利の融資の制度を設けたわけでありますが、平成二十三年度から、これに加えまして、先端技術を活用した農業システムの実証支援、こういったところも行っているところでありまして、今後とも、日本の農業の高い商品力であったりとか、多様な成長の可能性に着目して、しっかりした支援策をとっていきたいと思っております。

村岡委員 両大臣のお話を聞いて、ぜひ安倍総理大臣、お二人にもこのTPP参加の過程で、農業政策というのは農林水産省だけでできるものじゃない、また、経済産業省との協力だけでできるものじゃない。内閣一致して、農業者に対して、または日本の食を守ることに対して、もう一度決意をお聞きしたい、こういうふうに思います。

安倍内閣総理大臣 農業は国の基であります。この農業、農家、農地をしっかりと守っていくということは、安倍政権の基本的な姿勢であります。これは、TPPいかんにかかわらず、未来に向かってその方向で進んでいかなければならないと思います。

 そこで、今、村岡委員の御指摘は、それは単に農水省だけではないでしょう、私も全くそのように思います。いわば農商工連携、六次産業としての農業の可能性については、これはまさに我々内閣を挙げて取り組んでいくべき課題なんだろうと思います。食育については、これはまさに文部科学省であり、環境ということにおいては環境省であるわけでありますし、衛生ということについては厚生労働省もかかわってくるでしょう。そして、産業という切り口では、まさに経済産業省ということなんだろうと思います。

 そこで、最初に村岡委員が御指摘をされたように、輸出というのであればもっといろいろなことを考えなければいけない、まさに私はそのとおりなんだろうと思うんです。

 第一次安倍政権で一兆円という目標を掲げた。これは目標ということだけではなくて、そういう道もあるんだよ、今までやってきたんですかと、農水省においても、例えば農協の皆さんにおいても。

 これはやはりみんなで真剣に考えていこうじゃないか、考えていくことから私は新しい可能性も生まれてくるんだろうと。もちろん、それはそう簡単なことではありませんが、今おっしゃったようなことをきっちりとやはり我々も国を挙げて取り組んでいきたい、このように思っております。

村岡委員 ぜひとも総理、その覚悟の中でお願いしたいと思います。

 今、現在の時間、実は、秋田県の農協が集まりまして大反対集会をやっています。そして、その後からは、全国が集まって大反対集会があると思います。自民党の議員の方々は行かれるのかどうかわかりませんが、私は、行っても袋だたきに遭いますから行かないというわけじゃなくて、この質問があったので行けませんでした。

 ただ、やはり政治というのは、いい方向性だと思うときにはしっかりとした覚悟を持つことが必要だ、こう思っております。そのためにはしっかりとした理論立てもしなきゃいけない、そして気持ちの問題もある。そこはぜひ、TPPにはもう参加するんでしょうから、その準備をし始めていただきたい、このように思っております。

 我々維新の会は、決してぶれない、覚悟を持って政治に取り組む。そして、我々、新人三十六人、全員合わせて五十四名ですけれども、定数削減、誰一人、国会議員に固執していません。自分たちの身が削られようとも、国の方向性がしっかりと向かうところならば、我々は国会議員である必要はありません。その覚悟のもとにしっかりとこの政党を持っていく。

 そして、橋下代表も述べておりました。この定数削減、我々、残念ながらまだ新しい政党で、比例復活という制度の中で国会議員という機会をいただきました。しかし、そんな地位には固執してはいない。しっかりと自分たちの政策を通すために、この政党が立ち上がりました。

 自民党の皆さん、大政党であり、与党として過半数を大きく上回っています。我々は是々非々でありますが、非のところにはしっかりと切り込んでまいります。そして、皆さんとともにやれるところには、日本のためにしっかり頑張ります。

 この国を新しい形に変え、統治機構を変え、そして、この国がもう一度世界に誇りのある国にするために、我々日本維新の会も頑張ってまいりますので、ぜひ、安倍総理を初め、自民党の皆さん、公明党の皆さん、与党の皆さんも、是々非々でありますけれども、ともに頑張っていきたい、このように思っております。

 一時間でありましたので、大変短い時間ではありました。私もまだ新人でありますので、大変緊張の中で質問をさせていただきましたけれども、これからも皆さんに御質問させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

山本委員長 これにて村岡君の質疑は終了いたしました。

 次に、伊東信久君。

伊東(信)委員 おはようございます。日本維新の会、伊東信久です。

 私は、大阪の枚方市、交野市が存在する大阪十一区からの選出でございます。大阪十一区では、過去五回の選挙で、労働組合の強い支援があったと言われている方が当選されておられましたが、さきの衆議院選挙ではこの選挙区で私が選出され、今この場で質疑をさせていただいている次第でございます。

 それまでは、医療法人の理事長という立場でございまして、椎間板ヘルニアのレーザー治療という先進医療を専門としておりました。聞きなれない言葉だと思うんですけれども、PLDD、パーキュテイニアス・レーザー・ディスク・ディコンプレッションというレーザー手術を専門としておりまして、その中には、こちらにいらっしゃいます安倍首相を初め、関係閣僚各位の御友人、知人の方もたくさん施術させていただいております。

 第三党、第三極として、日本維新の会は、自覚を持って、補正予算に対する質疑でも、今回の総予算に対する基本質疑でも、我が党の議員が申し述べさせていただいておりますとおり、野党だからといって、いたずらに、何でもかんでも反対するのではなく、政策に対しての是々非々で判断させていただいておる次第でございます。

 この際、我が党の特徴として、各分野の専門家集団というのがあります。さきの補正予算では首長ファイブというのが登場いたしましたが、今回、私もそうですけれども、医師免許を有する四人、ドクターフォーのうち、私、伊東信久と、この後質疑されます宮沢先生との二人が、安倍内閣に対する、社会保障制度について、その取り組みを御質問させていただきたいと思います。

 さて、平成二十五年度の一般会計予算案の中でも、社会保障関係費は二十八兆九千三百九十七億円でありまして、そのうち年金は十兆四千二百七十九億円、医療費は十兆五千五百八十七億円、双方合わせて社会保障関係費の七二・五%を占めます。まさに、高齢化社会の問題点を浮き彫りにしているのではないかと思います。

 少子高齢化と言われますけれども、少子と高齢化というのは医学的にも社会的にもリンクしてはおらず、高齢化社会に関しての問題点、特に、医療費は十兆五千五百八十七億円もの公費をつぎ込んでいるのでありますけれども、医療費というのは、今さらなんですけれども、自助、共助、公助という三つの部分に分けられておりまして、この公助である国の負担が十兆を超えている現在、このままではもつわけがないというのは、恐らく皆さんも共通の認識でありましょうし、医療従事者の間でも共通な認識だと思うんです。これが持続可能なシステムになるためには、早急なる改革が求められるわけですけれども、それをいつやるか。それはやはり今でしょうということで、これから順番に質問に移らせていただきます。

 さっきの基本質疑で、我が日本維新の会の村岡先生がTPPと農業の関係について掘り下げて質問されたわけですけれども、私は、TPPと国民皆保険について、まずは質問させていただきます。

 TPPがあろうがなかろうが、農業はこのままではもたないと村岡先生はおっしゃっていましたけれども、国民皆保険も同じだと思います。TPPがあろうがなかろうが、国民皆保険はこのままでは危機的状況というか、もう壊滅を待つばかりではないかというのが私の認識です。

 TPPへの参加というのは、市場開放へのアクセスが前提となっておる。国民皆保険に対して、今までの基本質疑に対する総理の答弁でも、先般の日米首脳会談でも、両国とも二国間貿易のセンシティビティーが存在することを確認しまして、アメリカは公的医療保険のシステムの変更を要求しておらず、議論に上がっていないということでした。

 先般、アメリカの総領事館のブリーフィングで直接私が質問したときも、アメリカは、公的医療保険については要求をしていないとおっしゃっていたわけなんですけれども、先般の、二月二十七日の定例会見において、日本医師会は、まず第一に、知的財産分野において薬価や医療技術、第二に、金融サービスにおける私的医療保険の拡大、第三に、投資分野における株式会社の参入の三つが対象になれば、国民皆保険の崩壊につながると表明しております。

 私は医師免許を有しているのでありますが、TPPの参加に関して、国益にかなうのであれば積極的に支援したいという日本維新の会としての方針とぶれはございません。しかしながら、日本医師会がですよ、維新の会じゃなくて、日本医師会がここまで反対をする理由はどこにあるのか。単に、ちょっと言葉は悪いですけれども、理解していないのか、それとも理解していないふりをしているのか、このあたりに関して、ちょっと総理の見解を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 日本医師会の皆様にも御説明を申し上げてきているところでございますが、TPPについては、これまで得られた情報においては、公的医療保険制度のあり方そのもの等についてはTPP協定交渉において議論の対象になっていないというふうに我々は承知をしております。

 しかし、同時に、日本医師会としては、この公的医療保険制度を守って、そして、患者の皆さん、国民の健康に責任を持つという立場にありますから、重い責任を背負っている立場にあって、それを揺るがすことがあってはならない、公的医療保険制度が揺るがされてはならないんだということにおいて、しっかりと声を上げておこう、こういうことなんだろう、このように思っております。

 今のところ、このTPP交渉においては、公的医療保険制度のあり方そのものについては議論の対象にはなっておりませんし、かつ、安倍内閣において、国民皆保険制度を揺るがすことは断じてしないということは、はっきりと申し上げておきたいと思います。

伊東(信)委員 総理、ありがとうございます。

 しかしながら、かたくなに日本医師会は反対しているのでありますが、その一つの理由として、TPP参加で危惧されるのが、アメリカの製薬企業が参入することによって、知的財産権を理由として、ジェネリック、つまり後発医薬品、これを認めないおそれがある。そうなった場合、先般、生活保護法の一部を改正する法案の医療扶助の適正化という二つの項目の中で、医師が、ジェネリック、後発医薬品の使用を認めている場合は、医療機関が受給者に対してそのジェネリックの使用を促すこととするとなっておるんですけれども、医療費において、公的支援を受ける生活保護受給者にとって、この知的財産権、つまりジェネリックの医薬品を認めないということになれば、かなり影響を受ける可能性があると思うんですけれども、厚生労働大臣、いかがでしょうか。

田村国務大臣 アメリカの製薬メーカーが政府を通じていろいろなことを求めてきておるというのはあります、これはTPPのみならずの話なんですけれども。

 その中で、一つは、日本の国の薬価制度をもうちょっとオープンにしてわかりやすくしてもらわないと困るという話でございますが、実は、日本の薬価制度、先生御承知のとおり、非常にオープンなんですね。一応、審議会の中で、しっかりとオープンな形の場で議論をされ、当事者もその中で意見が言えるという形でございますから、そういう意味では、その点に関しては、よくよく事情を説明すればわかっていただけると思います。

 一方で、知的財産権の件というのは、確かにそういう要求もあるわけでありますが、これは日本も一定期間守っておりますから、そういう意味では、そこでは方向性は一緒でございますので、これも、よくよく説明していけば御理解をいただけるものだというふうに思っております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 先ほどの村岡先生の、これから農協に対する話し合いというか、農家の方に関してのきちっとした説明というのもありましたけれども、医師に対して、医療に対してきちっとした深い説明というのを、今後も、政府には、安倍内閣にはお願いしたいと思う次第なんです。

 ただ、今まで、アンタッチャブルというか、聖域というわけではないですけれども、医療というのは果たしてサービスとして捉えてはいけないのか、資本主義社会においてお金をいただいているわけですから、いわゆる商品、物販のように流通として考えてはいけないかということについて、混合診療に関して今から御質問させていただきます。

 国民皆保険制度というのは、戦後において、いわゆる結核などの感染症の対策として非常に貢献しておりました。しかしながら、現在、高齢化社会の中で、慢性疾患、悪性腫瘍とかがんとか生活習慣病とかが蔓延しておりまして、この国民皆保険制度自体と日本の医療制度に関してのずれがやはり生じてきているように私には思われます。

 公的給付を受ける人がふえれば医療費がふえるわけですね。つまり、これが高齢化社会の問題でありまして、そして、アベノミクスの中にもございますけれども、成長戦略、その中に今、先進医療がありますけれども、この先進医療が増加すれば公的医療負担がふえるというのは至極当たり前の話でございます。しかし、十兆円の公的負担の仕組みを変えなければ、一方では、国民皆保険制度が崩壊するのも当たり前であります。

 先ほど申し上げさせていただいたように、この制度をどこかで変えるターニングポイントというか機会をつくらなければ、医療機関自体も、自分自身の首を絞めることになると思います。

 現在、混合診療という言葉は、政治的な用語においても医療的な用語に関してもございませんけれども、存在はしていないんですけれども、なぜだか非常に一般的な言葉となっておりまして、この混合診療というのは、いわゆる保険の併用療法における評価療養というのがあるんですけれども、その七種類と、選定療養の十種類があります。これの拡大ということでビルドアップしていくということも大事なんですけれども、ただ、この保険併用療法がふえたからといって、私は、混合診療によって国民皆保険が縮小されることにはならないと思うんですね。

 その方が公的医療制度を強固なものにしていくことにつながると思うんですけれども、厚生労働省が認めないのか、日本医師会が認めないのか。この混合診療を認めないのは、いわゆる保険診療と保険外診療を併用するというのがそもそもいけないことなのか。もしくは、そうすることによって、保険外が、自由診療が、自由競争につながることというのは、他の産業の概念からすると、そんなに悪いことなのか。もしくは、日本医師会、維新の会じゃないですよ、医師会が懸念しているように、安全性の問題なのか。

 医師会の方の、維新の会じゃないですよ、しつこいようですけれども、医師会の有する権限のあり方を含めて、政府の見解を求めたいと思います。

田村国務大臣 混合診療という言葉は、我々厚生労働省は余り使っておりません。いわゆる混合診療という言い方をあえてしているんですが、今委員おっしゃられたとおり、保険外の医療と保険の医療と併用しようということで、大まかに、アメニティー部分の選定療養と、高度な部分をやる評価療養みたいなものがあるわけですね。評価療養の中に、先進医療でありますとか治験でありますとかいろいろな種類があるんですが、何を入れて何を入れないかというのは、検討会で随時やっています。これはもう毎月やっているような、来ればやっているような、そういう話なんですが、基準が幾つかあるんですね。

 一つは、やはり一般化するもの。つまり、この公的医療保険というものは、これは共助が色濃いものでありますから、みんなが使うということが前提なんですね。ですから、例えば、絶対安くならない、大金持ちだけを対象にしているようなものが仮にあるとすれば、それは一般化を目的にしないものでありますから、来ても、保険とはなじまない。そんなお金持ちは、保険を使わずに、ほかの部分も自費でやってくださいという話なんです。

 ところが、非常に高いですけれども、将来一般化しよう、値段が下がってくるということで一般化しようというようなものに関しましては、先進医療の中でこれを見て、その後、安全性はもちろん見なきゃいけません。

 それから、やはり費用対効果ですよね。そのときは費用対効果、高くても、将来安くなっていく可能性があれば、その間はそこにずっと置いておいて状況を見ていくという話でありまして、ある意味、今委員がおっしゃられたものは、安全性と効果がとりあえずちゃんと確認ができれば、この先進医療という範囲に入ってくる。

 その上で、今度は費用対効果というものを何年か置きに検証していくということでございますので、初めに申し上げました、将来に向かって一般化を目指すような高度な医療であるならば、これは今、保険外の医療も併用してできるようになっておりますから、大体、委員がおっしゃられたことは現状でできるというふうに我々は理解しております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 ただ、その場合、今、厚生労働大臣がおっしゃったのは、先進医療Aと先進医療Bというのがあるということなんですけれども、例えば、私がやっているPLDDという治療技術というのは、先進医療の認可をとるためには、整形外科専門医を三人と、それを擁する医療機関が必要だということになっています。でも、実際は脳神経外科の専門医も利用しているわけで、専門医制度というのも今期また見直そうということなんですけれども、にもかかわらず、臨床例は二年間で十例とか二十例とか、割とハードルが低いんですね。

 このことに関して、私の立場で言うと、先進医療、混合診療という言葉が適切かどうかわかりませんけれども、推進する立場ですから、ハードルが低いのは構わないんですけれども、どうも偏りと、安全性と、もしくは、その選定委員に関してけちをつける気はございませんけれども、この辺のチェックに関して、いわゆる政府の取り組みとして、気持ちはあるんだけれども、ちょっとまだ深い取り組みをしていないような気がします。

 特にPMDA、医薬品医療機器総合機構において、ドラッグラグを解消する場合、この辺のことに関しては、先般、我が党の日本維新の会の松浪議員が、大阪の方でPMDA―WESTをつくったらどうかということも提言させていただいたんですけれども、このPMDAと先進医療の技術の審査委員会の方と連携がとれていなかったら、せっかく新しい技術ができても、また時間がかかるわけですよね。

 つまり、すぐに新しい技術が世の中に出てこない、これが国民の皆さんに対しての利益にならないということで、この連携に関して、先進医療を市場へ供給することができない壁となっていることに対して、また厚生労働大臣になると思いますけれども、ちょっと見解をお伺いいたしたい。

田村国務大臣 非常に詳細な部分は、委員の方が専門家でございますから、お詳しいということを前提でお話しいたします。

 混合診療という言い方は余りしないんですが、いわゆる混合診療というものを認めるとしても、そういう言い方がいいのかどうかわかりませんが、やはり基準が必要ですよ、何でもオーケーというわけにはいかないので。そこはやはり安全性という部分があるというふうに思います。

 一方で、安全性が緩い方がよりいろいろなものが使えるじゃないかというのは、これはやはり専門家のいろいろな御判断なので、私が直接具体的に物を申すわけにはいきません。ただ、そこは、時代の流れでありますとか科学技術の進展に伴って一定のルールというのは変わるべきものだというふうに思っておりますので、延々と今のルールがずっと続くというわけではございませんから、そこは、これからいろいろな状況を勘案しながら、変わっていくものであろうと思います。

 PMDAとの言うなれば連携というものは、ちょっと私も頭の中で、どこまでこれをつなげた方がいいのかというのは、あちらの方はあちらの方で一応薬事承認を受けるものでありますから、そういう意味からいたしますと、こちらはその前のもの、もちろん受けているものもあるんですよ、受けた上でまだ保険収載されていないものもあるわけでありますけれども、受けていないものに関しては、それは全く同じものであるならばもう薬事承認は要らないわけであります。

 ですから、そういう意味からすると、連携はある程度考えなきゃいけないかもわかりませんが、同じ基準というのはやはりちょっと行き過ぎなのであろう、そうすると、余計使いにくくなりますから。

 一定の制約を緩めた中で、安全性を保ちながら、効果もある程度推測しながら、この先進医療の中で使えていけるような、そんな配慮、努力をしてまいりたい、このように思っております。

伊東(信)委員 安全性と有効性、この両立というのは、本当に、非常に難しい問題でありますけれども、ぜひとも、今の御回答ではかなり前向きに考えていただいているということですので、よろしくお願いいたします。

 さて、市場という話であれば、アベノミクスの三つの重点分野の中に、民間投資を喚起する成長戦略が含まれておりまして、成長市場として、再生医療、創薬に積極的に乗り出すということを表明されました。その中でも、iPS細胞は創薬の中でも特殊な存在であるにもかかわらず、新しい法案によって、予算の方がかなりたくさん投じられております。

 私、神戸大学のラグビー部において山中先生と先輩、後輩の仲でありまして、大学院においても同じ実験宿舎で実験もしておりました。先般、二月二十八日に山中教授が衆参両議院の議長に表彰していただいた際の発言でありますけれども、山中教授というのはあくまでも研究者でございます、研究と実用に向けた取り組みというのは、これは山中先生からの受け売りなんですけれども、言うなれば、ラグビーとアメリカンフットボールぐらいの違いがある。似ているけれども、異なるものである。アメリカであれば、CEOという存在がいわゆる研究者の上にいましてマネジメントをしてくれるわけなんですけれども、それが、いわゆる予算において援助していただけるのは非常にありがたい、だけれども、成長戦略として見るのでしたら、いわゆるCEO的な存在をもっと強化してほしいというのが山中先生の御要望だったんですね。

 成長戦略の責任者である、CEOである安倍総理は、山中先生の、この議院内、議会内で発言をされたんですけれども、まず、この発言というのを把握はされているのか、そして、この発言されている意味というのをどの程度御理解いただいているかというのをちょっとお答えいただければと思います。

安倍内閣総理大臣 山中先生がそういう発言をされたということは知っております。

 その上において、iPS細胞等を用いた再生医療の研究は、豊かな社会を切り開いていく科学技術のイノベーションである、このように私も認識をしております。

 このため、千百億円程度の支援を今後十年間続けることについて政府がコミットすることによって、研究者等の確保を含めて、切れ目なく研究に専念できる環境を整備することにしたわけでございますが、研究の推進に当たっては、iPS細胞研究の中核研究拠点に加えて、疾患や組織別に再生医療の実現を目指す複数の研究拠点に対して研究支援を行うこととしております。

 あわせて、全体のマネジメントについては、内閣官房健康・医療戦略室による総合調整のもとで、文部科学省において、その研究の内容や進捗状況を随時評価して、予算の必要性、有効性等を精査していくこととしています。

 無駄を排除しながら、関係府省が一体となって、実用化につながる成果をしっかりと生み出していきたい、こう考えております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 iPS細胞に関しては、私も国民の皆さんも、政府も信用していきたいし、大いなる期待を抱くところなんですけれども、iPSという名前に乗じて、iPSを初めとして再生医療とか、iPSを初めとしてという言葉が何かちょっと乱立しているような気も否めないんです。

 iPS細胞に予算が集中することによって組織が大きくなる、そうすると、大きな組織の維持でお金がかかるということで、ディセントラリゼーション、分散ということで、そういったことも政府の見解としてはいかがなものかということをお聞きしようと思ったんですけれども、安倍首相の今の発言の中で、幾つか分散してつくっていただけるということで、このことは理解いたしました。

 しかしながら、いわゆる箱物にお金を使うのか、研究者として、研究の箱物に関してお金をいただくのはありがたいという、まことにちょっと身勝手な意見なんですけれども、人件費にお金を使うのかということなんです。

 実際、研究機関は、大学であれば教授と事務員しかいないんですね。いわゆる研究員というのは、科研費、科学研究費とかそういったところで賄われるところが多いんですけれども、このようなことと、また、もう一個矛盾するんですけれども、研究員のポストは五年間の有期雇用になっているんですね。

 ところが、山中先生が、ノーベル賞は過去のことである、あしたはどうなるかわからないと。当初の研究テーマというのを維持するのが難しいわけです。

 今回の十年プロジェクトで研究員を雇用する場合、今の新たな労働契約法の下では、通算五年を超える有期雇用は無期雇用に転換しなければいけないというわけです。その場合、研究の成果と雇用とが矛盾するわけです。

 話が戻りますけれども、にもかかわらず、教授と事務員しかいなくて、予算が研究費として与えられて分散するというところに問題があるのではないかという御指摘があるんですけれども、これは文部科学大臣にお願いしたいんです。

下村国務大臣 お答えいたします。

 委員も、今お話がありましたが、山中先生と同じ研究室でお仕事をされたことがあるということで、よく御承知のことというふうに思います。

 また、今総理からお話ございましたが、このiPS細胞の安全化、標準化に関する研究等を行う中核拠点がございますが、それ以外に、さまざまな疾患や組織別に、責任を持って再生医療の実現を目指す複数の研究拠点も同時につくって支援をするということでございます。

 そして、今回については、特に山中教授から、五年間ということでは、例えば京都大学のiPS細胞研究所だけで全体で二百名近くの職員がいるんですが、そのうち八十名強が知的財産専門家の研究支援ということですね。こういう方々は、五年間では有為な人材を確保するのはなかなか難しいということもあって、また、継続的な予算をきちっと組むことによってきちっとした研究ができるようにということで、十年間で一千百億という形をとりました。

 ただ、御指摘の点があるというふうに思います。そういう意味で、研究の内容や進捗状況について、プログラムディレクター等の専門家の意見を踏まえながら、随時厳しく評価することによりまして、無駄を排除し、実用化につながるように、同時に、しっかりとフォローアップしながら、その成果を生むように対応してまいりたいと思います。

田村国務大臣 私のところにも山中教授にお越しをいただきまして、今の労働契約法、昨年改正したんですけれども、この問題提起をいただきました。

 もともとは労働者に安定的な雇用をということで、その方が意欲も湧いてまいりますし、能力も蓄積できるということで、五年を超える有期雇用に関しては、五年を超える契約のときに無期に変わる、そういう法律に変えたんです。

 ただ、研究というのはある意味プロジェクトで、何年間において研究をやって、そこに対して予算が来るわけですね。例えば科研費にしてもそうでありましょう。すると、その後、例えば十年で終わって、プロジェクトは終わっているけれども、もうお金は来ないけれども、継続雇用をしなきゃいけない。雇い主はどこだ、例えば大学であるという話になれば、プロジェクトは消えたけれども、雇い主はいるわけですね。これは、もう次の資金は来ないのに、継続して雇い続けられないじゃないかという御意見。

 それから、もともと研究者の方々も、次のところに行きたいという気持ちと、安定した生活をしたいという気持ちと、非常に複雑に絡み合うところもございまして、こういうようなものは、多分、今回の研究だけじゃなくて、主に科学技術の研究にはいろいろな部分であるんだと思いますので、そこは文科省といろいろと相談をさせていただきながら、かなうような体制といいますか、そういうような形態がとれないかどうか、ちょっと検討して、早急に答えを出してまいりたいというふうに思っています。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 私は、大阪市立大学というところで山中先生と一緒だったんですけれども、研究室というのがなくて、使い古された教室の中で研究していたわけですが、それが最終的にはノーベル賞になった。何が言いたいかというと、本当に日本と海外との研究環境の違いがここにございまして、いわゆるポスドクというんですけれども、研究者の、いわゆる投資みたいなものですかね、その労働条件というのが近い将来の日本の成長につながればと思いまして、提言させていただきました。

 時間も大分なくなってきましたけれども、私が提言したいのは、医療自体を変えることによって、医療費自体のことを聖域としないで、何とか通常の流通と同じような考えができないかということなんですね。

 最後にお聞きしたいのは、医療費に係る負担の軽減を考えた場合、国民皆保険制度が崩壊しても困るけれども、医療も崩壊しては困る。今現在、国民皆保険制度に消費税が含まれていないということは、国民も多くは認識をしておりません。消費税がかけられないわけですけれども、医療機関は、いわゆる中間に、医療機器とか設備投資に五%の消費税がかかっていまして、これが八パー、一〇パーになると、逆に、これは医療機関が切迫して、潰れてしまうおそれがあります。

 日本医師会の方は、解決策として、低減税率で、極端にゼロ%税率などと言っていますけれども、これはどうか。自民党さんからして、国民の同意を得られるのはかなりハードルが高いかもしれませんけれども、医療もサービスという私の今までの提言どおりそれを理解していただき、国民の皆さんから消費税の負担をいただくというのもどうかという考えもあるんですね。

 この問題について、あくまでも国民皆保険制度のシステムを守るのか、それとも、今申し上げたようなことも含めて、ほかに名案があるのかということを、厚生労働大臣にお願いします。

田村国務大臣 消費税が上がることとの連動でどう考えるんだというような御質問だというふうに思います。

 今までも、導入時、それから改定時に、一応は見てきたという話になっています、一・五三%ぐらいだったと思いますけれども。しかし、どこに入っているかわからないというようなお怒りのお言葉を医療関係者の方々からは随時いただいております。

 今回のことに関しては、まず、特に高額の医療機器等々に関しては負担が重いものでありますから、これに対してどうするんだということを含めて、今いろいろと検討を審議会の方でしていただいております。

 あわせて、ちょうど診療報酬改定の時期と重なりますので、診療報酬で見られるところは見た方がいいんじゃないかという御議論もありまして、これは随時検討会の方で議論をさせていただきたいと思っています。

 あわせて、では、いよいよ一〇%になるときにどうするんだということに関しましては、税制全般を考えた上で、どういうふうな手当てをしていくか、これは、これから与党を含めていろいろな御議論をいただく中で、我々も一定の方向性を示してまいりたいなというふうに思っております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 本当に、医療に関しては今までアンタッチャブルな部分もございまして、いろいろ聞きたいこともございましたけれども、時間となりましたので、ぜひとも、医療制度、医療改革に関して、今しかございませんので、よろしくお願いしますということで、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

山本委員長 これにて伊東君の質疑は終了いたしました。

 次に、宮沢隆仁君。

宮沢(隆)委員 初めまして。日本維新の会、宮沢隆仁であります。

 まずは、東日本大震災の犠牲者の皆様に哀悼の意を表明したいと思います。

 まず、簡単に自己紹介をさせていただきます。

 私は、三十年間、脳神経外科医として大学病院を中心に勤務しておりました。実は、私は高杉晋作の大ファンであります。安倍総理と同年齢の新人議員ではありますが、最も国民の意識に近い国会議員の一人として質問をさせていただきます。

 まず、私が政治の世界に入って一番感じたのは、政治家の先生方は全体に元気で、非常に若く見えます。実は、長寿社会を自立しながら有意義に過ごす秘訣を、政治家の皆様が自然に身につけているように思います。

 では、最初の質問です。

 資料一にありますように、長野県は男女ともに長寿日本一であるという結果が報道されました。

 安倍総理に伺います。これは、なぜだと思われますでしょうか。頭に浮かんだお答えで結構です。

安倍内閣総理大臣 今、国会議員は割と実年齢よりも若いという御指摘がありましたが、私もよく、直接会うと、若いですねと言われることが多いわけでございます。

 そこで、長野県の方は、平均寿命もそうなんですが、一人当たりの医療費の支出においても、日本では最も少ない県であるということを承知しております。例えば、県民一人当たりの保健師さんの数は結構多いんだというふうに伺っておりまして、健康指導を随分入念にやっておられる。特に、高齢者に対して、訪問して、食生活あるいは行動においてのさまざまな指導をしておられることが、結果として、予防にもつながり、加齢によるさまざまな障害を防ぐことにつながっているのではないか。

 同時に、長野県の方は、大変真面目に物事を論理立てて考えられる中において、入院をするよりも、できるだけ家で療養した方がいいという考え方も多いというふうに伺っております。

 そうした県民のさまざまな対応の結果として健康寿命が長くなっているのではないか、このように推察をしております。

宮沢(隆)委員 ありがとうございました。ほぼ完璧なお答えでした。

 すなわち、脳外科医の立場で申しますと、常に物事を深く考えて脳を使っていますと、心身ともに健康と若々しさを保つことができるのだと思います。これは、私が患者さんから得た教訓であります。つまり、一生仕事あるいは勉強しながら脳を使い続けていればいいのだと思います。これこそが、安倍総理、そして我が党代表橋下徹大阪市長が、自立の秘訣であり、政治家として、医師として、私が国民に最も訴えたいことであります。

 ここで、私が、昨年十二月の衆議院選挙におきまして、長野県民の方々と接しながら頭に浮かんだ言葉を披露いたします。考動志民という言葉であります。これは、私の造語です。孔子とか、そういう偉い方々の言葉ではありません。すなわち、深く考えた上で決断し、素早く的確に行動し、志を持って前向きに生きる民ということです。

 県民の自立を促すために、この言葉を地元において普及させていきたいと私は考えておりますが、僣越ながら、ぜひ全国の皆様にもこの言葉を伝えたいとも考えております。

 安倍総理、この考動志民という言葉、どのような感想をお持ちでしょうか。

安倍内閣総理大臣 きょう初めてこの言葉を私も知ることとなったわけでありますが、考えて動く、そして志を持った市民、国民という意味なんだろうと思いますが、これはお世辞ではなくて、本当にいい言葉だな、こんなように思いました。こういう考え方でもって国民みんなが行動していくことはとても大切なんだなと。

 改めて、きょうはこういう言葉を教えていただきまして、私も、これは機会があるごとに拳々服膺していきたい、このように思っております。

宮沢(隆)委員 過分なお言葉をいただき、ありがとうございます。非常にうれしいです。

 こんな哲学的議論を吹っかけてしまって申しわけないんですが、ちょっと前まで国民であった議員の一人として思うのは、今の日本人に足りないのは、人生観とか死生観を含めた哲学的議論なのではないかと思っておりました。ぜひ、政治家の皆さん一人一人の哲学を国民に語っていただいて、日本を正しい方向に導いていただきたいと思います。

 では、いよいよ医療関係の質問をさせていただきます。

 質問の前に、私の医系議員としての基本スタンスを明確にしておきたいと思います。

 私は、医師生活のほとんどを大学病院で過ごしてきましたので、外科系臨床医と研究者、両方の側面を持っております。正式に医師会会員になったことはありません。また、このたびの選挙で、医師会から政治献金は一切受けておりません。

 したがって、これからの議員生活の間に、特定の医療系団体及び厚生労働省にも偏った肩入れをしないよう、公平にバランスよく配慮し、真に国民のために働く政治家でありたいと思っております。同時に、医師や看護師が疲弊し、医療界を去っていくようではやはり医療崩壊が進みますので、一生懸命働く医療従事者の味方でありたいと思っております。

 次の質問です。

 現在、医師不足が深刻と言われておりますが、原因としてさまざまな要素が含まれています。どのような要素が含まれているとお考えでしょうか。厚生労働大臣、お願いいたします。

田村国務大臣 まず、絶対数が足らないという議論があります。よく、OECD諸国と比べて、加重平均で大体一千名当たり二・七人、日本は二・二人という話ですから、絶対数が足りないという話もあるんですが、それだけではなくて、例えば地域の偏在、日本の国でかなり地域の偏在がございます。ちょっと見てみますと、京都府が十万人当たり二百八十六・二人に対して、一番少ない埼玉が百四十二・六人、これは倍ぐらい離れている。

 さらに申し上げれば、診療科の偏在、これも大問題。小児科でありますとか産婦人科、救急、こういうものに対してなかなかお医者様がうまく配置できていないという問題があります。

 さらに言いますと、やはり女性医師が、昨今は、試験に受かってこられる、国家資格を取られる方が大変多いんですけれども、どうしても、出産やいろいろな問題で医療現場からリタイアされて、なかなか帰ってきていただけないという問題。

 さまざまな問題がありますので、これに関して、地域の医師不足に対して対策を今文部科学省と立てておりまして、例えば、地域医療再生基金を使ったりでありますとか、それから、地域医療支援センター、こういうものを利用していただいて適正配分をしていく。さらには、そもそも、大学の医学部の定員枠に地域枠というものを設けて、地域枠というものを設けた中で地元に残ってもらう、こういうこともしていく必要があるのではないかということでありまして、総合的な対策が必要であろうというふうに思っております。

宮沢(隆)委員 ありがとうございました。これもほぼ完璧なお答えだったと思います。

 御返答の中で地域医療支援センターという話が出てきましたが、これは二〇一一年にスタートして、運営費として平成二十四年度に七億三千万円がつき、平成二十五年度は九億六千万円が予算案として提出されています。

 この組織は本当に機能して成果が上がっているのでしょうか。厚生労働大臣、よろしくお願いします。

田村国務大臣 二十四年度で、今お話しいただきましたとおり七・三億円という話でございまして、全国二十県に設置をいただきました。七百二十三名が、二十四年の十一月末まで、このセンターを利用してあっせんや派遣を行っておるということでございます。

 ちなみに、二十五年度はさらにこれをふやしていって、全体で三十カ所にしていきたいというふうに思っておりますが、最終的には四十七都道府県全てこれを設置いただく中におきまして、あっせんや派遣という形で、必要なところに医師が行き渡るようにということで応援をしてまいりたいというふうに思っております。

宮沢(隆)委員 今のセンターを含めて、厚生労働省は医師不足問題を解決するためにさまざまな施策を練っていると思いますが、今後、それぞれの施策の成果をきちんと検証し、公表していただきたいと思います。

 それから、きょうは時間の関係で省きましたが、自民党内には今、東北地方の被災地に医学部を新設しようという動きがあるようですが、医学部新設を考える前にまずしなければいけない施策が山ほどあります。医学部新設については慎重に検討していただきたいと思います。

 次に、七十から七十四歳高齢者の医療費窓口負担一割据え置きについてお尋ねします。資料三に詳しくあります。

 詳細は省きますが、結論として、毎年約二千億円の公費を投入し、今年度までの累計は一兆円に上っております。現役世代の保険料負担がどんどんふえております。

 この問題は決して小さな問題ではありません。税・社会保障一体改革の中にある、社会保障のあり方を高齢者偏重から若い世代の方を見て全世代対応型に変えていくという方針に反していると思います。

 では、質問です。

 過去の予算委員会において御党の小泉進次郎議員が、七十から七十四歳医療費窓口負担を即刻一割から二割に戻すよう強く提言しておりました。厚生労働大臣としては、この事実をどのようにお考えでしょうか。よろしくお願いします。

田村国務大臣 この場で私と小泉委員とのやりとりであったわけでありますけれども、与党内にも、世代間の公平という意味からして、これは本則は二割負担となっておりますので、本則に早く戻すべきではないかという御意見があるのは十分に承知をいたしております。

 一方で、高齢者の負担が、負担がふえるというか、実際は七十になった時点で三割から二割に下がるわけでありますから、それが一割に下がるか二割に下がるかという下がり方の問題なんですけれども、とはいいながら、一割の負担でおさまると予測をしていたものが二割負担になるということ自体に対して、やはり高齢者の生活というものの設計を考えていかなければならない、早急にこれを判断するのはなかなか厳しいのではないかという慎重な御意見があるのも事実。だから、意見としては両方あるのは事実であります。

 ただ、やはり本則は二割負担というふうになっておりますので、これは二割に戻すことが原則であるというのが私の認識であります。

 ただ、一方で、低所得者に対するきめ細かな対応をしなければならないことも事実でございまして、ここのバランス、これにも財源がかかりますので、それもしっかりと財源のめどをつけながら対応していかなきゃならないということもございます。

 たまたま今回は補正予算が非常に緊急な補正予算でございまして、なかなか、これを決定する期間というものとのタイムラグがございましたものでありますから、スタートは一割のままという話でございますが、これはまたこれから議論をさせていただいて、できる限り早い段階で結論を得てまいりたいというふうに思っております。

 申し上げれば、なかなかすぐにはというのは、事務的な市町村の対応もございますので、すぐにこれを二割に戻すということはできないわけでございますから、周知期間というのも要るわけでございまして、そこも含めて御理解をいただければというふうに思います。

宮沢(隆)委員 どうもありがとうございました。

 そのできるだけ早くというタイミングが非常に気になるところですが、私は、小泉議員の主張は全く正しいと思っております。ある意味、小泉議員の世代の、若者世代の悲痛な叫びであると思います。

 しかも、今後の消費税引き上げとのタイミングが重なったりしますと、ますます先延ばしということで、引き上げは難しくなるのではないかと思いますので、これは早急に考えていただきたいと思います。

 この後は、安倍総理と厚生労働大臣にお尋ねします。

 この問題は引き続きなんですが、さらに重要なのは、民主党政権、今回の自公政権で一割負担を二割負担に戻せない理由として、選挙が控えているからという報道が盛んになされています。このようなお考えは自民党の中にあるのでしょうか。よろしくお願いします。

田村国務大臣 選挙というのは参議院選挙のことでございますかね。ことしの七月ですか、予定されていますが、いずれにいたしましても、今も申し上げましたけれども、事務手続を考えますと、なかなか七月までに引き上げを行うというのは難しいわけであります。これは物理的な問題でございますので、そういう意味からいたしますと、その問題とは一切関係しないというふうに御理解をいただいて結構だと思います。

宮沢(隆)委員 私が昨年の選挙で高齢者のお話を伺った限りでは、現役世代を苦しめてまで自分たちの負担を軽減したいと考えている高齢者は決して多くはないと思います。選挙での高齢者の票をとれないのではないかというような心配は全く無用と思います。どうか、参議院選挙後といわず、できるだけ早く、窓口負担を一割に据え置く特例措置を廃止していただきたいと思います。

 そして、この高齢者医療費の負担増に踏み切るかどうかは、新政権に社会保障の立て直しに本気で取り組む覚悟があるか否かの試金石になると思います。TPPと同様、本気で速やかに決断し、取り組んでいただきたいと思います。そうでないと、まず選挙ありきの古い自民党体質が国民に見透かされ、自民党支持率を一気に落とすことになるのではないかと心配しております。結果として、我々日本維新の会が票をいただくことになるかもしれません。

 最後の質問です。

 私は医師ですので、大病を患った結果、人生観が変わり、達観し、すぐれた人格者になった患者さんをたくさん見てきました。安倍総理がかつておっしゃった、命をかけて日本を再生する覚悟が本物であることは、これは私、医者から見ると、すぐわかります。

 安倍総理、大病を患った後に復活されたリーダーの一人として、このような見方をどのようにお感じになりますでしょうか。

安倍内閣総理大臣 ただいま宮沢議員にそういう見立てをしていただいて、大変勇気づけられる思いでございました。

 私がまだ中学生ぐらいのころ、私の祖父の岸信介が、人間というのは、一回刑務所に入るか、あるいは一回大病をしなければ、人間が大きくならない、こう言っていたんですね。

 幸い、私は刑務所には入ってはいないんですが、しかし、潰瘍性大腸炎という難病によって、長期間入院したことはあったんです。六年前に、結局一年間で総理の職を辞する、しかも突然という形でございましたから、国民の皆様に大きな御迷惑をおかけした。この挫折によって、私は、やはりもう一度、国のために尽くすとはどういうことだということを深く考える時間が与えられたな、このように思います。

 今、宮沢議員にまさに勇気づけていただきましたので、さらに一層、自民党に対する信任が下がらないように頑張ってまいりたい、このように思っております。

宮沢(隆)委員 総理大臣というのは本当に激務だなというのが、ここへ来てよくわかりました。ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 以上、野党という立場での質問でしたが、結果として我々は、日本が再生してほしい、それだけですので、私及び日本維新の会は、与党の足を引っ張ることを目的にはしません。松野議員や松浪議員が先週述べましたように、是々非々で対応していく所存です。

 ただし、従来の自民党政治のように、支持団体などの意向に沿い過ぎて日本を間違った方向に導きそうな政策に対しては、我々、団体に依存しない日本維新の会としては容赦なく反論していきますので、御承知おきください。

 以上、終わらせていただきます。拙い一年生議員の質問に答えていただき、まことにありがとうございました。

山本委員長 これにて宮沢君の質疑は終了いたしました。

 次に、大熊利昭君。

大熊委員 私も一年生議員でございます。初めまして、大熊利昭と申します。東京の下町出身でございます。

 ただいまの宮沢先生の哲学的な議論の後で、リアリスティックな議論を、ぜひ建設的にさせていただければというふうに考えておりますので、よろしくお願いを申し上げます。

 まず最初に、私の経歴からしても何でいじめ問題なのかということかもしれませんが、ぜひ、総理、文科大臣にお伺いしたいと思います。

 いじめ問題なんですけれども、やはり、私としては、これは単に子供の社会だけの問題じゃなくて、大人の、日本社会全体、これが子供の社会にミラーのように、一部縮小されて映し出されているような側面があるんじゃないかな。

 それはどういうことかと申しますと、私も日本生まれ、日本育ちでございますが、ややもしますと、日本社会というのは、画一性、同質性を求めるような閉鎖性があるのではないか。麻生大臣、うなずいていらっしゃいますが。

 例えば、私の母親は、昭和十年、戦前の台湾、台北生まれでございまして、生まれてから十歳まで台湾の地で、台中、台南と戦火を逃げ惑って、終戦の後にアメリカの貨物船で日本に、広島に帰ってきたわけでございます。

 台北では、台北小学校というところ、寿小学校というところなんですが、台湾の人も、現地の人も、それから私の母親のような日本人も、仲よく、いじめというのはなくやっていたところ、内地に戻ってきて、ある関東地方の小学校でございますが、途端にいじめを受けた。これは、ほかの寿小学校の友達、今もう八十近い年齢でございますが、結構そういう人が多い、全員が全員ということじゃないんでしょうが。

 つまりは、外地で生まれて、言葉も多少違うんでしょうね、そういうちょっと変わっている人をいじめる、そういう同質性から漏れた人たちに対する攻撃というんでしょうか、最近は陰湿化しているようなところもあるみたいなんですが、そういうところが、やはり本質的な問題の、一部、規範意識、道徳というのもあるのかもしれませんが、私が申し上げたような観点もあるのではないかと思うんですが、総理のお考えをぜひお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今委員の御指摘は、日本のある種の同一性、そして同一性を求める風土に起因するいじめもあるのではないかという御指摘なんだろうと思います。

 これは、そうだとは一概には言えないんだろうと思いますが、いじめにはいろいろな要素もあると思います。いじめが行われているのは日本だけではありませんし、欧米でもそういう問題は発生するわけであります。

 確かに、これは、学校だけではなくて、社会においても、また国会の中においてもそういうことがあるかもしれませんが、いずれにせよ、お互いに違いや多様性を認め合うという寛容の気持ち、そして、そういうことはしてはいけないんだという行動規範と道徳律を子供のときからしっかりと教えていくことも、いじめを防止することにつながっていくのではないだろうか、こんなように思います。

大熊委員 いろいろな側面があるということだろうと思います。

 やや具体論の、文部科学大臣も御存じの、通信制、インターネットを使った高校のルネサンス高校という非常に特徴的な学校があると思うんですけれども、ここは、いろいろな事情があって全日制のところに行けない生徒さんが通っていらっしゃる。年間何日か、スクーリングということで生徒さんが集まって授業等を受けるわけなんですが、ほとんどはインターネットを通じた通信制の学校で、しかも株式会社がやっている、こういう変わった学校でございます。

 しかも、生徒さんは、役者さんになりたい、美容師さんになりたい、これもやや変わったというか個性的な人たちが集まっていらっしゃる。逆にこういうところでは全くいじめがない。道徳、規範意識という教育をされておられるのかもしれませんが、むしろ、個性、特色を引き出す、こういう教育をして、ここに全くいじめがない。

 こういう部分について、事実だろうと思うんですが、文科大臣、どのようにお考えになられるのか、一言お願いいたします。

下村国務大臣 お答えいたします。

 私もルネサンス高校はよく存じ上げております。

 既存の学校に行けない不登校児や、あるいはいじめ等に遭って学校に行けない子供たちのある意味では受け皿として、通信制高校として位置づけられている。なかなか設置基準が学校法人として厳しい中で、株式会社として行っている。そのことによって、たくさんの子供を救済している部分というのもあるというふうに思います。

 ただ、そういう形態ですから、そもそも、既存の学校と比べて、子供たち同士が一緒に活動する時間というのがほとんどない、なきに等しいわけですね。ですから、必然的に、いじめに遭うような濃い人間関係の環境の普通の高校と、それから通信制の、スクーリングが年に数日しかないというところの違いがあると思いますから、一概に比べることもできないと思いますし、また、それによって、いじめが学校の教育によってなされるようになったということも言えないのではないかというふうに思います。

 今御指摘がありましたが、道徳教育をすることによっていじめ教育につながるというふうに我々は思っておりまして、つまり、道徳をすることによって逆にいじめがふえるということではなくて、道徳というのは、人が人としてつき合う、社会としての規範意識、ルール、人間関係ですね、これは、国境を越えて、それから歴史を超えて、やはり人が生きるための基本的なルールというのを子供たちにきちっと教える必要があると思うんですね。

 これを学ぶことによって、逆に、人に対するいじめはやめようとか、あるいは、もしいじめられている子供がいたら助けてあげようとか、こういうことにもなってくることであって、逆に、いじめを少しでもなくしていくために、そういう道徳をきちっと教えるということは必要なことであるというふうに考えております。

大熊委員 私も、もちろん、規範意識、道徳教育は必要だというふうには思っているんですが、冒頭のとおり、これを、表現がどうか、過剰にやり過ぎますと、画一性を追い求め過ぎるような懸念が逆に出てくるのではないか。そこを、何か極大値的な、ほどほどのところがあるのではないかという問題提起でございまして、これは、この場で、では、私がすばらしい提案をして日本全国からいじめがなくなりましたというような、そういうことでは決してございませんで、一つのオルタナティブといいますか、別の見方があるんじゃないかということでお話を申し上げた次第でございます。

 それでは、次に行かせていただきまして、二番、次の質問でございます。

 これもちょっと重たい話でございますが、戦後直後の昭和二十年十一月に、当時の幣原内閣によりまして、戦争調査会というのが正式な日本政府の内閣の機関として設置をされたわけでございます。日本は当時、GHQの施政下でございますので、GHQの意向というのが強く働き、結局、大蔵省の予算措置がとられそうになったものの、GHQの解散命令を受けて解散、こういうことで、残念ながら、活動は余りできなかった。ただ、分科会を幾つかつくって、相当の当時の元軍人さんだとか哲学者だとか経済学者だとか政治家だとかを集めて、議論の緒についたというふうには、国会図書館の調査局の資料で確認をさせていただいているところでございます。

 次の時代に進むのであれば、前の時代をきっちりと検証し、総括をするということが私は大事なんじゃないかなと思っておりまして、今般の原発事故におきましても、国の、政府あるいは国会の事故調査委員会ということでやっていらっしゃるように、時間は六十数年たっておりますが、そうした検証、総括を政府としてやっていく必要はどうなんだろうか、これも問題提起でございますが、総理、いかがでございましょうか。

安倍内閣総理大臣 今委員が御指摘になった戦争調査会については、国立国会図書館の調査局が作成したレポートによれば、昭和二十年十一月に幣原内閣において設置をされて、翌年三月末から約五カ月間にわたって実質的な活動を行っていたが、しかし、対日理事会によってその存在について否定的な意見が出されたことを受けて、九月末に廃止をされた、こういうことでございます。そのため、報告書が作成、公表される段階には至らず、内定した調査方針と調査項目も一般には公表されなかったということであります。

 さきの大戦においての総括というのは、日本人自身の手によることではなくて、東京裁判という、いわば連合国側が勝者の判断によってその断罪がなされたということなんだろう、このように思うわけであります。

 あのときに、ではなぜ対日理事会がこの研究をやめさせようとしたかといえば、今委員が御指摘になったように、軍人等々も含まれているということに対しての懸念を持ったということと、大体、方針としては二つあって、考え方が二つあって、一つは、戦争遂行の上において、どうして負けてしまったのかという、いわば作戦、戦略、戦術等についての分析をするというアプローチと、もう一点は、ではなぜ開戦に至ったのかということにおいて、それはとめることができたのではないかという考え方。

 後者の方に力点が置かれていたわけでございますが、同時に、そこに力点が置かれる中において、中でいろいろな議論があったというふうに承知をしております。いわば、敗戦ということから、ではなぜ戦争が始まってしまったのかという議論をするのはおかしいではないかというのは内部でも議論があったわけでありますが、国際情勢の中での開戦に至る過程ということにおいて、いわば、恐らく連合国に対してある種都合の悪い考え方についても議論がなされるのではないかということにおいて、そうした議論を封殺されたということではなかったのかな、こんなように思うところでございます。

 いずれにせよ、こうした歴史に対する評価等については、専門家や歴史家にまさに任せるべき問題ではないかというのが私の考えであります。

大熊委員 これはどう思われるか。歴史家、専門家というよりも、国策としてやったことについては、原発もそうですが、やはり国としての総括、検証が必要なのではないかと思うんですが、この点はいかがでございましょうか。

安倍内閣総理大臣 例えば、戦争遂行の上において戦術、戦略はどうだったかという検証は国においてもしかしたら可能かもしれません。しかし、それに至る、いわば世界史的な動きの中において、どうして開戦に至ったかという分析においては、これは関係する国々も多いわけでございまして、政府そのものがそうした検証、研究を行い、あるいは意見を述べていくということは、外交問題に発展をしていくという可能性もあるわけであります。

 外交問題、政治問題になるということを考えながらそうした検証を行うことは、別の観点、本来ファクトに基づく観点をゆがめていく危険性もあるのではないだろうか、私はこう思うわけでありまして、それはやはり専門家が専門家のアカデミックな、純粋な立場として、自分が信じるファクトを求め、そしてその上において検証するべきではないのかな、こんなように思います。

大熊委員 残念ながら、政府としてはちょっと難しいというようなお話かと思いますが、この問題は、時間もなくなってきましたので、次に参りまして、ちょっとリアリスティックな話にさせていただきます。

 攻めの農業についてということでございますが、先般の安倍総理の施政方針演説の中でも、「そのためにも、攻めの農業政策が必要です。日本は瑞穂の国です。息をのむほど美しい棚田の風景や伝統ある文化。若者たちが、こうした美しいふるさとを守り、未来に希望を持てる強い農業をつくってまいります。」こういう演説がございましたが、この中でちょっとあれっというふうに私が思ったのは、強い農業、それから攻めの農業、そしてまた棚田を守る。棚田というのは中山間地の農業でございます。しかも、そこを守る。この関係について、ちょっと整理ができなかったので、ぜひお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

安倍内閣総理大臣 今委員が例として挙げられた田の機能こそまさに農業の多面性なんだろう、このように思います。

 産業という分野があります。お米をつくってお米を売る。同時に、田は水を涵養するわけでありまして、同時に、まさに地域を守っていく、そして環境保全をしていくという役割を担っているわけでございます。そして、そういう機能を失うことは、地域の崩壊、あるいは環境においても大きなダメージにもつながっていくんだろう、このように思うわけでございます。

 そこで、産業という側面で、コストにおいても、いわば生産性、競争力においてもしっかりと対応できるという観点からは、これはちゃんと攻めていきましょう。そして、日本の農産品はおいしいですし安全ですから、これは世界にもっともっと乗り出していくべきではないかということであります。

 ただ、それは、生産性あるいは産業という側面だけでは切り取ることはできないという側面があるんだろうという考え方の中において、ただ守るということだけではないですよ。先ほど申し上げました棚田についても、私の地元においても、棚田を観光資源として活用しようということで積極的な取り組みもありますし、あるいは、棚田を都市部に住む人たちに持っていただいて、そこで棚田で米をつくるということはどういうことかということを子供たちに体験してもらったり、いろいろなこともやっています。

 棚田においては、棚田で生産性を求めたって、これはそう簡単にはいかない話であります。ただ、棚田には、生産性だけでは切り分けることができないすばらしい価値、これは私は宝と言ってもいいと思いますけれども、そういう側面もあるんだなということを申し上げたわけであります。

大熊委員 今、総理の整理されたお話、これですと、なるほどと思います。最初の施政方針演説ですと、同じ文で書いてありますので、これはちょっとごっちゃになっていてわからなかったわけでございますが、いろいろな側面があると。いわゆる効率的な産業という側面以外の、私も、観光資源として守るとか、そういうことであればいいのかもしれないなというふうに思ったところでございます。

 ちなみに、私の知り合いの農業技術を研究している方によると、棚田を維持するというのは、通常の水田の十倍以上、コスト、労力がかかるということで、ちょっとでも木が生えてくると、根っこが張ると、すぐ水が漏れてしまう、これはとても産業には不向きなものだ、こういうふうな指摘をいただいております。

 具体的に、次に参らせていただきますと、株式会社による農業参入なんですけれども、これまでのいろいろなところでの答弁でも、リースの方がいいんだ、リースは自由化されていて、原状復帰が容易だからリースがいいんだ、こういうお話がございます、土地所有ではなくて。まず、この辺について、農水大臣の方に確認をさせていただきたいと思います。

林国務大臣 お答えいたします。

 株式会社の農業参入につきましては、今委員からもお話がありましたが、平成二十一年の農地法改正で、リース方式を完全に自由化しております。その結果、法改正前の約五倍のペースで参入が進んでおりまして、改正後三年間で千七十一法人が参入しております。

 一方で、この平成二十一年の農地法改正前に参入した四百三十六法人のうちで七十九法人が既に撤退をしておりまして、こういったケースのように、企業が参入後定着しないという懸念もございまして、リース方式による参入を進めてきております。

 これも御指摘があったとおりでありますが、所有権の取得でやった場合、今申し上げたように、撤退、耕作放棄といった場合に、原状回復ということからしますと、リース契約の場合は契約を解除して原状回復ができるということですが、所有権を取得した場合にはこうしたことがなかなか難しいということで、今のような制度になっているということでございます。

大熊委員 ただ、それだけで思考停止になるというのはどうかなと思うんですよね。

 例えば、きのう農水省の事務方の皆さんとも打ち合わせでお話ししましたが、バイバックつきの譲渡にするとか、あるいは、仮に、取得後、耕作ができない、その会社が立ち行かなくなる、あるいはその会社のほかの事業で行き詰まってしまうという場合は、容易にその会社そのものなり土地を譲渡する仕組みをつくるとか、そういった工夫の余地というのは十分あるのではないかと思うんです。

 これが全くないというのをあらかじめ立証されるというのは、これはちょっと奇異に感じるんですが、何か工夫というのはできないんでしょうか。

林国務大臣 今、バイバック、買い戻しにつきましてのお尋ねがございましたが、例えば、農地の売買契約に、耕作放棄された場合は買い戻すという買い戻し特約というのを契約に記載する方法は考えられるだろう、こういうふうに思います。

 この場合に、これは当たり前のことなのでございますが、農地を売り渡した農家がその売却代金を受け取るわけですが、これを既に何らかのほかの用途にお使いになっている場合は、買い戻し特約は、当然ながらその売買金額をもとへ戻すということですから、なかなか難しいという実態的な制約ということと、もう一つは、この買い戻し特約が、民法の五百八十条の規定で、十年を超えられないというふうになっておりまして、こういうことからもなかなか難しいのではないか、こういうふうに思っております。

大熊委員 例えば、私、今伺いまして、では、そういうバイバック、最初に土地を売った農家の方がお金を使っちゃって買い戻せないよということであれば、例えばペナルティー的な条項をつけて、買い戻しの金額を大幅に下げるということだって考えられるわけです。あるいは、土地そのものの価値というのは何かといえば、そこから生み出す、簡単に言うとキャッシュフローですから、耕作放棄地であれば、キャッシュフローを生み出さないわけですから土地の価値はゼロですから、あるいは各種所有に係る税金というのを考えればマイナスですから、これはただで戻すということだって考え得るわけでございます。

 いずれにしても、この工夫が、なぜ工夫がと申し上げているかというと、安倍内閣では攻めの農業というふうに言っておられるわけですから、攻めるということは、それは一〇〇%、何の問題もない政策というのはほとんどないと思います。やはり攻めるということであれば、それなりのリスクを覚悟しなければならない、そのために工夫をしなければならないんだろうと思うんですね。

 例えばWBCでいえば、九回のツーアウトから盗塁をするという作戦は非常にリスクがあるわけですよ、タッチアウトになったら試合終了ですから。それをあえてやる。でも、それを法律的に事前にあらかじめ阻止しておくというのは、これは攻めの姿勢じゃなくて守りの姿勢なんじゃないかな、そんなふうに思うわけでございますが、いかがでしょうか。

林国務大臣 一つは、法律上のことでございますが、先ほど申し上げました五百八十条は買い戻しの期間でございますが、その前の五百七十九条に、「不動産の売主は、売買契約と同時にした買戻しの特約により、買主が支払った代金及び契約の費用を返還して、」こういうのが原則になっておるということが一つございます。

 それから、実際に今おっしゃっておられることのニーズがあるかということも大事なことだと思っておりまして、いろいろな方にアンケートをとった中では、一般企業が農地の所有権を取得することについては、一般法人も含めて、二十一年農地法改正で賃貸借による農地の権利取得が可能なので、所有権取得を認めなくても農業経営が十分可能というのが過半の回答であるということで、現行はこのリース方式が今大分ふえておりますので、これでやっていこうというのが考え方の基本であります。

大熊委員 現行、まあまあリースはうまくいっているというのは承知しておりますが、もっとうまくいくような、そういう可能性を秘めているんじゃないかと思います。

 最後に、ちょっと時間がなくなってきましたが、きょうは野球、オランダと対戦ですが、オランダの農業というのは非常に強いですよね、九州と同じぐらいの面積でアメリカに次ぐ世界第二の輸出大国ですから。では、オランダで農地所有は禁止なんですか、リースだけなんですかということですね。これを最後にちょっと、公務員改革に行きたいので、その前に。

 オランダでは、食品産業と農業がリンクしているわけですね、垂直的に。食品産業がやっている農業、これはリースだけでやっているんですか。これを最後にちょっと。

林国務大臣 ちょっと、オランダのケースについては、あらかじめお知らせをいただいていなかったものですから手元に資料がございませんので、別途調べて御報告をさせていただきます。

大熊委員 よろしくお願いいたします。

 続きまして、あと五分しかないということで、公務員改革に急ぎ行かせていただきますが、公務員改革についての基本的な総理のお考えをちょっと手短に、済みません、よろしくお願いいたします。

安倍内閣総理大臣 国家公務員制度改革の重要性については、国家公務員制度改革基本法が成立した当時と今の私の考え、全く変わっていないわけでございますが、行政や公務員制度のあり方については、これまでの改革の成果に加えて、国際的な大競争時代への変化を捉えて改革を進めていく必要があると考えています。

 これまでに国家公務員制度改革基本法に基づいて提出されました法律に対してさまざまな議論があったことも踏まえまして、基本法の広範な改革事項について総合的に総括、検証を行った上で真の改革を進めていきたい、これが改革についての基本的な姿勢であります。

大熊委員 それでは、公務員改革大臣にお伺いしたいんですけれども、今の総理のお話、要は、公務員改革の基本法によって進めるのか、自民党さんの公約ですと基本法を踏まえてとなっておりまして、微妙に違っているわけでございますが、基本法プラス今総理の言われた、これまでの成果プラス大競争時代のという、要は、基本法を超える、あるいは変化させて、そういう意味なんでしょうか、それとも基本法でということなんでしょうか。よろしくお願いします。

稲田国務大臣 国家公務員改革基本法案、これは、第一次安倍内閣において、戦後レジームからの脱却の中核であるということで、御党の代表である渡辺代表が熱意を持って取り組まれて、平成二十年に基本法が成立をいたしました。その一条に書かれている、まさしく憲法十五条の全体の奉仕者である公務員が、みずからの能力を高めつつ、国民の立場に立って、責任と自覚、誇りを持って職務に邁進する、これが私は国家公務員改革の基本であると考えておりまして、基本は二十年成立の基本法であると認識をいたしております。

大熊委員 では、基本法により行う、そういう理解で、基本法を忠実に実行するんだ、かつて甘利大臣がやっておられた、そういうことでよろしいんでしょうか。

稲田国務大臣 先ほど総理が答弁された国際競争力時代に適合するというのも、まさしく一条の目的に沿った改革だと認識をいたしております。

 安倍内閣の改革は、改革のための改革ではなくて、その目的に従った改革ということでありまして、私は、二十年の公務員改革基本法の一条がその核であると認識をいたしております。

大熊委員 ありがとうございました。

 ちょっと時間もございませんので、次にTPPなんですが、試算の方はこれからということだと思うんですが、試算の前に、数字、試算というのはいろいろ前提によって変わってくるわけでございますから、基本的に、わかりやすくメリット、デメリットをちょっと簡単にお話しいただければと思います。

菅国務大臣 まず、自由貿易を推進していくというのは、これは我が国の対外通商政策の柱であります。そういう中にあって、力強い経済成長を遂げているアジア太平洋地域、この活力を取り込んでいくということは、日本にとって極めて大きなメリットがあるというふうに思います。

 しかし、それぞれの国には守らなきゃならないものが必ずあるというふうに思います。例えば、日本でいいますと農業ですね。食料を供給して、そしてふるさとを守り、また国土を守る。こうした農業を守れるかどうかという指摘もあるわけでありますから、そうしたこと、仮に交渉に参画をするということであっても、やはり農業の重要な役割は維持できるようにしていかなきゃならないというふうにも思っていますし、いずれにしろ、こうした点がメリット、デメリットになるんじゃないかなと思います。

大熊委員 ありがとうございました。

 済みません、私の持ち時間は終了ということなんですが、最後に、手短に、日銀による金融緩和の手段としての外債購入ということなんですけれども、これについて……

山本委員長 大熊君、予定の時間が終了しましたので、また次の機会に。

大熊委員 失礼いたしました。

 それでは、終わらせていただきます。ありがとうございました。

山本委員長 これにて大熊君の質疑は終了いたしました。

 次に、中島克仁君。

中島委員 みんなの党の中島克仁です。

 まず、私の五年前に他界いたしました亡き父は、自民党の元参議院議員中島真人でございます。父は、在職中、内閣府副大臣、決算委員長、そして、介護保険の創設にも携わらせていただきました。安倍総理初め、きょう御出席の議員の方々に、父が生前大変お世話になったことと思います。父が生前賜りました御厚情に対しまして、改めてお礼申し上げたいと思います。ありがとうございました。

 私は、父とは全く違う道を歩んでまいりました。医師となり十九年、そして、当初は外科医として十年修練を積み、その後は、ふるさと山梨県北杜市で、在宅医療を中心とする地域医療に従事をしてまいりまして、年間に千件以上の往診、そして、年間に百人近い方の最期に携わらせていただいておりました。

 地域医療の現場で広がってしまった医療格差、そして、地域の実情にそぐわない医療福祉制度、そのことをこの肌で感じ、その是正のために政治の道を志す決意をいたしました。そして、昨年末、地域主権を訴えるみんなの党からその是正のため立候補いたしまして、初当選を果たすことができました。まだ当選間もない私がこの場に立てること、御支援くださった支援者の方々に本当に感謝をしているところでございます。

 現在も、週末には診療所に戻って、外来診療を続けております。そんな地域医療の現場を経験する私といたしまして、現在の医療の諸問題、それについての御質問をさせていただきたいと思います。

 私のふるさとであります山梨県北杜市は、八ケ岳南麓の自然豊かな土地柄でございます。その北杜市を初め、日本全国の多くの地域で、特に医療資源が乏しい地域においては、医師不足は深刻な問題でございます。

 日本の人口千人当たりの医師数は二・二人、OECD各国の中、三十四カ国中、下から六番目でございます。平均に照らし合わせますと、単純に約十三万人不足している、そんな数字も出ております。私のふるさと北杜市においては、人口千人当たり〇・五人、最低でもあと百人足りない、そんな現状でございます。

 この医師不足は、大分以前より言われていることではございます。きょう質問の方々、医師の方も多かったので、繰り返しになるかもしれません。その現状、そして、解決の糸口さえ見つからない地域の医師不足を改めてどうお考えになられるか、厚生労働大臣に御質問いたします。

田村国務大臣 御質問ありがとうございます。

 中島真人先生は、たしか厚生部会長も自民党でお務めをいただいたというふうに思います。大変お世話になりました。本当に先生が御当選されたことを喜んでおられるというふうに思います。どうかこれからいろいろな意味で御活躍をいただきますように、心からお祈りを申し上げたいと思います。

 先ほども宮沢委員から御質問をいただきまして、幾つかポイントを申し上げました。

 今言われたとおり、絶対数が足らないというような御議論もあります。それから、地域でかなり偏在がある。京都が二百八十六人、十万人当たりでありますけれども、それに対して埼玉は百四十二人ということでありますから、倍ぐらい差がある。この問題もあります。

 それから、診療科。小児科、産科、さらには救急でありますとか、いっとき麻酔科もそうでありましたけれども、そういうところの適正な配置がなされていないという問題。

 それと、やはり女性の医師が、今もう三割以上、四割近くですか、国家試験を受かってこられるんですけれども、にもかかわらず、一旦出産等々でリタイアされると、なかなか現場に戻ってこられないというような現状もございます。

 そういう問題、いろいろあるわけでありますから、総合的に対策を組んでいかなきゃならぬわけでありまして、文科省と連携しまして、地域の医師確保対策二〇一二というものを取りまとめさせていただいております。これにのっとって、しっかりと対応を進めてまいりたいというふうに思っております。

中島委員 ありがとうございます。

 大臣おっしゃるとおりという部分もございます。単純に医師が足りないというよりは、必要な場所に医師がいない、偏在と言える状態だと思われます。この偏在を加速させたのが、平成十六年に導入されました新臨床研修医制度だというふうにも考えております。

 この制度は、従来の努力義務から必修化する形で始められました。平成二十一年にはその課題に対して見直しがされましたが、大学病院の派遣機能、そして地域における医師不足、研修医が都市部に集中してしまうなどの問題は全く解決されていないのが現状だと思います。

 その結果、地方からさらに過疎な地域において、医師不足はますます深刻な状態であります。私の地元、私、自分以外の公立病院にも、内科医が不在になって三年放置された病院に、毎週一回、外来のお手伝いに行ってまいりました。

 医師偏在を加速させました新臨床研修医制度の見直しについて、現在どういった状況であるのか、御説明をいただきたいと思います。

田村国務大臣 十六年度に導入した臨床研修制度自体がいろいろな問題を含んでおったという認識はございますが、一方で、それぞれの医師の能力向上という意味では、意味があったというふうに思います。例えば、スーパーローテーションというようなものを取り入れて幅広い医療知識を持っていただくというような部分、こういう部分は非常に意味のあった部分だというふうに思います。

 一方で、いわゆる医局というものの、医師の配置をする、配分をするといいますか、そういう機能が弱まったのも事実でございまして、よく、地域の医療機関から地域の大学医学部が人を引き揚げたなんというような、そんなお話も当時いただきました。医師は労働者なのか、それとも医者という職務なのかというような御議論も当時あったような記憶がございます。

 しかし一方で、やはり医師の皆様方の勤務というもの、労働環境というものも改善していかなきゃいけないということもございまして、そういう意味で、これはやはり適正な配置というものを考え直さなきゃいけないということでございまして、二十二年度より、改めて、臨床研修に関して適正な配置、県の中で枠をつくりまして、それを進めております。

 ちなみに、この新しいといいますか、臨床研修に問題があると今御指摘をいただきましたが、この制度導入前は、大体、都道府県を見ていきますと、都市部六都府県、こういうところは五一%ぐらい行っていたんですね、臨床研修に。それ以外が四九。これが、実は、二十二年度から導入しまして、適正な配置の中で若干変わってまいりまして、大体、都市の方に四七ぐらい、地方の方に五三ぐらいになってまいりましたので、そういう意味では、かなりこれが直ってきておるという事実がございます。

 改めて、二十五年度でありますけれども、全体の臨床研修の見直しということでございますので、これで方向性を示した上で、スタートは平成二十七年度から、新たな臨床研修制度の中で、やはり適正な医師の配置というものを考えながら、各県ごとに一定の枠をつくって臨床研修を進めてまいるという中において、医師の偏在というものに対応してまいりたいというふうに思っております。

中島委員 いろいろな取り組みをされていることは私自身も認識をしております。

 先日、私、臨床研修医制度の評価に関する医道審議会を傍聴させていただきました。傍聴させていただいただけでしたので、意見を述べる場はなかったんですが、委員の方々からさまざまな御意見がある中で、やはり、制度自体は医師を育てるという意味でいい制度ではあるんだけれども、結果的に、地域によって、今大臣おっしゃられたように、いい地域も出てきてはいるんですが、私のふるさとのように、全く解決できていない、そういう格差がどんどん広がっているという中で、即効性のある解決策は見出されていないように私自身は感じたところです。

 今大臣おっしゃったように、医師をつくり出すというのは、研修医制度だけではなくて、文科省、管轄は違いますが、医学部教育、そして医師会も関係しております生涯学習教育、その辺がしっかりと連携性を保って、統括的に考えなければならないことだと考えております。

 本当に日常的な問題でございます。医療というものは国民生活の基盤でもございます。やはり、制度で招いたものであれば、制度で何とかしてもらわなければならない。そういったことを、これだけ広がった医療地域間格差を解消するため、総理に指導力を持っていただけるための御決意をお聞きしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 国民が安心できる社会を実現するためには、各地域での医師の確保を初めとする医療提供体制の整備は重要な課題である、こう考えております。

 このため、もう既に厚生労働大臣からも答弁させていただいておりますが、医学部入学定員の増加、地域医療の再生等を通じた地方自治体の医師確保対策への支援、そして、地域ごとの研修医の募集定員の設定方法のあり方を含む臨床研修制度の適切な見直しを進める。そういった対応をしていくことによって、総合的な取り組みを推進していかなければならない、このように考えております。

 地域において安心できる医療体制を整えていくということは、まさに国民皆保険制度を根底から支えていくことにもつながっていくわけでありまして、今言ったような取り組みを行うことによって、安心できる医療体制をしっかりと確保していきたいと考えております。

中島委員 ありがとうございます。

 先ほども言ったように、本当に毎日毎日の生活に密着した問題でございます。私の患者さんからも、先日、同じ税金を払って、同じような保険料を払っているにもかかわらず、どうしてこんなに差が出てしまうのかということを言われた次第です。一刻も早く改善できますよう、指導力を発揮していただきたいと考えております。

 次に、ことし一月に、埼玉県久喜市で、呼吸困難で救急搬送された男性が、二十五病院から計三十六回にわたって受け入れを断られ、通報約二時間後に搬送先が決まって間もなく死亡するということが報道をされました。お手元の資料は三月六日の産経新聞の記事です。救急隊員が二十五病院に照会しましたが、ベッドが満床、そして処置困難などの理由を受け、受け入れを断られたそうです。

 救急車のたらい回しの問題も、以前より繰り返し起こっている問題です。繰り返されている原因は何だとお考えになるでしょうか。厚生労働大臣、お願いいたします。

田村国務大臣 こういうことが起こったことは本当に遺憾なことでございまして、残念なことであります。

 埼玉で起こったということでありますが、先ほども申し上げましたが、やはり、埼玉県というのは医師の数が全国で十万人当たり一番少ないという結果が出てきておりますから、そういう影響もあるのであろうと思いますが、二十一年に消防法改正をする中において、こういう救急搬送に関しての実施基準というものをつくったわけでございます。

 そういう意味では、医療機関リスト等々もおつくりをいただいているんですけれども、問題は、その後の手順等々を示しているところは十六県ぐらいしかないというようなお話もお聞きいたしておりますし、全体として、非常にいい例では奈良県ですとか佐賀県でありますとか、そういうところは、ICTを使って、iPadなんかを使って、どこに今空きベッドがあるか、そういうようなことをやられている自治体もあるんですね。ですから、そういうことをさらに各自治体でお進めをいただきながら、何としてもこういうような問題が起こらないように、これは総務省とも協力をしながら対応をしてまいりたいというふうに思っています。

中島委員 今回の受け入れを断らざるを得なかった理由が、ベッドの満床、対応困難ということで、私自身、地域医療に携わっておりまして、救急医療においても、さまざまな地域、それぞれ事情があるとは思うんですが、多くの自治体で、やはり救急医療の中心を担っているのは公立病院ということになると思います。

 ただ、その自治体病院、公立病院の経営は依然として厳しい状況であります。医師不足も重なって、診療科また病棟の閉鎖、依然として大きな問題を抱えている自治体病院は全国でも数多くあります。

 それで、公立病院の経営改善を目的とした公立病院改革ガイドラインが以前から示されておりますが、この内容の一つに、継続して三年間、ベッド稼働率が七〇%未満となっている病院について、病床数の削減または診療所への見直し、そういったものが含まれております。結果、ベッド稼働率を上げ、外来収入に依存する経営を余儀なくされる公立病院の現状は、救急車のたらい回し、また、外来の待ち時間の長さなど患者さんの不安や、医療従事者の過重労働など、悪循環につながっていると考えられます。

 私も、つい三カ月ほど前、私の受け持ち患者さんが駅で倒れられました。私のところに電話があって、すぐ駆けつけて、これはもう救急車を呼ばないとということで救急搬送を頼みました。結果、八病院、計十二回にわたって受け入れを断られました。これもやはり同じ理由で、ベッドがいっぱいという理由、もしくは医師不足のため対応が困難、そういうことを言われました。

 週に一度行っている公立病院の外来では、外来収入に依存するため、月に一回、何度も来てもらうというような体質は依然として続いておりまして、患者さんを二時間、三時間待たせることは日常的、いつもまず最初の言葉はごめんなさいです。

 そういう中で、今の医療、特に地域における医療は成り立っている。この地域の実情を考慮しない経営の効率化は、医療ニーズに応えられないばかりか、病院機能の萎縮を招いていると私自身思っております。

 地方公共団体の財政の健全化に関する法律に伴い、地方公共団体が経営する病院事業は、財政運営全体の観点から、一層の健全経営が求められると書かれております。このような救急車のたらい回しなどの問題の一因ともなっている、自治体病院の今のあり方でございます。ここに書いている病院の健全経営とは一体何を示すのか、総務大臣にお聞きしたいと思います。

新藤国務大臣 まず、中島委員のお父さんには私もお世話になりました、同じ政策研究グループにおりましたから。とても人柄のよい方でございましたから、本当に今、お話しできなくなったことは残念だというふうに思います。また、遺志を継いで委員が立派な活躍ができることを私も願っている、このように思います。

 その上で、今の話でありますが、まず、このようなたらい回し、あってはならないことであり、極めて残念であります。このようなことのないようにしっかりとした措置をしなくてはいけない、このように思いますし、お亡くなりになりました方には御冥福をお祈りしたい、このように思います。

 その上で、公立病院の改革は、経営の効率化ですとか、それから病院の再編、ネットワークの構築、こういったものもありますが、あくまで、もともとの狙いは良質の医療を継続していく、これが重要だと私は思っております。

 そして、そういう意味で、公立病院においては、仮に病床数を削減するなどの医療機能の縮小があったとしても、他の医療機関との連携、こういったものも行いまして、地域全体で必要な医療体制を整えなきゃいけないということです。

 総務省といたしましては、この公立病院の改革を進めながら、過疎地や、産科、小児科、そして今の救急医療、こういった不採算部門につきましては、地方交付税措置、これを拡充しております。

 ですから、我々としてもできる限り、病院の健全経営と良質な医療の提供、こういったものが両立できるようにまたさらに支援をしてまいりたい、このように思っております。

中島委員 全国各地、それぞれ診ている患者さんの内容は異なります。地域の実情に配慮した、患者さんの立場から見た経営の健全化、公立病院のあり方を目指していただきたいと思います。

 ちょっと時間も迫ってまいりまして、次に、私の専門でございます在宅医療についての質問をさせていただきます。

 在宅医療は、国民のニーズ、社会背景も考えながら国全体も推し進めているところでございますが、私は十年前から在宅医療に取り組み、広い範囲を飛び回っております。ただ、地域によってはかなり広い範囲をカバーしなければいけない。

 そこで、非常に大事になるのが訪問看護ステーションの存在です。

 在宅医療を円滑に進めるためには、訪問看護ステーションの充実が必要と考えております。国も、在宅医療のかなめとしての訪問看護の役割について認識をされており、ゴールドプランにおいては目標数を設定しております。しかし、現実にはその六割程度しか達成をされておりません。

 これも一つ実は質問しようかと思ったんですが、時間の都合でそのまま続けます。

 私は、その目標設定に届かない理由、ここを人員基準だと考えております。これは私だけではなくて、在宅医療にかかわる全ての方が、人員基準、常勤換算で二・五人、それを満たすのは、医療資源が乏しい地域において非常に高いハードルになっていると考えています。そして、資料にもございますように、その人員基準が満たせず、閉鎖、休止するステーションが年間百五十もあると言われております。

 被災地東北においては、被災地特例ということで、その基準、一人開業、一人でも訪問看護ステーションをできるという特例措置が行われておったわけですが、先週の金曜日、その一人開業訪問看護ステーションについて、給付費分科会で、被災地特例の延長、そして人員基準の見直しの是非についての議論がされました。結果、被災地特例は延長になったものの、人員基準については見直しの必要はないという結果が出されました。

 既存の訪問看護ステーションの人員基準の見直しは必要なしとされた根拠、また二・五人を基準とした根拠を、改めて、済みません、時間ですので簡潔によろしくお願いいたします。

田村国務大臣 必要に応じて、被災地に関しては、二自治体が継続をされたいということでございました。

 言われるとおり、議論の中では多数が、一人というのは、これは十分に安全性、それから三百六十五日、二十四時間、本当に対応できるのかという部分から、やはり疑問を感じると。しかし、やりたいと言われるところ、それは言われるとおり、看護師等々の数が足らないということでもございましたので、その二自治体は継続をするということになりました。

 今も申し上げましたとおり、実は、では、訪問看護ステーションに勤務されておられる看護師の数が減っているかというと、ふえているんですね。それから、受けられる患者の方々もふえているんですよ。ということは、全体としては膨らんでいるんです。

 ところが、なぜ二・五人という基準でやめていくかというのは、それは、一つは人員基準という言われ方もあるかもわかりませんが、やはり二十四時間、三百六十五日、なかなか対応できない。

 今、実際問題、一つの訪問看護ステーション当たりの看護師の人数は四・七人までふえてまいりました。そういうことを考えれば、専門の看護師の皆様方といろいろなお話をするんですけれども、やはり最低五人ぐらいはいないと、十分に安定して安全で、三百六十五日、サービスが提供できるような訪問看護ステーションにはできないよというようなお声もございまして、さまざまな専門的な見地から、今は二・五。

 これがこれからさらに上がっていく可能性はあると思いますけれども、逆に、一人というようなことになりますと、本当に十分なサービスが提供できるのかということを考えましても、我々としてはそれをよしとしていないというわけでございまして、その点は御理解をいただきますようお願いいたします。

中島委員 私も医師でございます。外来では何百人もの患者さん、そして訪問診療においては七十人、八十人の患者さんを一人で診ておりました。

 ちょっと時間の関係もございます。とにかく、この問題は、二・五人と一人、どっちがいいかという問題ではなくて、一人でもやってもいいではないですか、やはりそういうことを問うている問題だと思います。

 みんなの党は、この問題、アジェンダにも組み込んでおります。訪問看護ステーションの一人開業を認めるなどの規制緩和を推進する。そして、むしろ、予算をかけ、要するにお金をかけるよりも、規制緩和をして最大限地域の活力を見出す、そういうところに、これからの時代、日本のあり方があるのではないかというふうに考えております。

 最後になります。このような地域の活力を見出すための規制緩和、これからの時代のキーワードとなると私は思っております。この件について、総理の前向きな発言を期待しながら、規制緩和についてお考えを聞かせていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 規制緩和については、安全を守るという観点からはしっかりと対応していく必要はあるんだろうと思いますが、同時に、今委員の指摘をされた患者さんの利便性等々を含めながら、やるべき規制緩和はしっかりと取り組んでいきたいと思っております。

中島委員 ありがとうございました。

山本委員長 これにて中島君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 きょうは、オスプレイを含む米軍機の低空飛行訓練問題についてお尋ねをいたします。

 オスプレイは、昨年十月以降、沖縄で、県民の声を無視して横暴勝手な飛行訓練を繰り返してまいりました。加えて、先週の三月の六日から八日にかけて、岩国基地を拠点に、本土のオレンジルートでの訓練を行いました。高知県や愛媛県上空を飛行し、高知市内の市街地で夜間飛行訓練を行ったという市民からの情報もありました。沖縄でも本土でも、オスプレイを含め、米軍機の低空飛行訓練について、住民、自治体から厳しい批判の声、危惧の声が寄せられております。

 資料をお配りしましたが、一枚目にありますように、これは米軍の方でつくりました環境レビューに掲載をされている地図であります。ここでは、航法経路、ナビゲーションルートということで、六つのルートが挙げられております。四国から和歌山県にかけて線が引かれているのがオレンジルートであります。

 そこで、お尋ねいたしますが、過去、米軍機の低空飛行訓練が幾つもの事故を引き起こしました。このオレンジルートに相当するような高知県や奈良県において、過去、米軍機がどのような事故を引き起こしたか、この点について説明いただけますか。

小野寺国務大臣 御指摘ありますオレンジルートにつきましては、米側が作成した環境レビューの中に記載されている飛行経路であるとは承知しておりますが、具体的な飛行経路等については、米軍の運用にかかわる事項であり、承知しておりません。

 その上で、御質問がありました高知県、この事案でございますが、平成六年に、高知県早明浦ダムに米海軍の空母艦載機が墜落するという事故が発生しております。

 いずれにしても、防衛省としては、米側の航空機の運用に関して、安全面に最大限の配慮を行ってまいります。

 今、御質問の中では、高知県ということでよろしいんでしょうか。(塩川委員「奈良県も」と呼ぶ)はい。奈良県につきましては、昭和六十二年及び平成三年に、奈良県十津川村において、材木運搬用のワイヤロープが切断される事故が起きております。

塩川委員 今御説明ありましたように、奈良の十津川村で二回にわたって林業用のワイヤが米軍機によって切断される事故も起こりましたし、一九九四年には、高知県の大川村の早明浦ダムに墜落事故も起こりました。さらに、九九年の一月には、FA18が高知沖に墜落をする、こういう事故も起こっているところであります。

 いわば事故が相次いできているのが実態であります。住民の安全に責任を負う地方自治体から心配の声が上がるのは当然であります。

 そこで、総理にお尋ねいたします。

 これまで、米軍機の低空飛行訓練は、そのルート下の住民に多大な被害をもたらしてまいりました。墜落事故の危険性や爆音による騒音被害も重大であります。ガラスが割れるとか、土蔵が崩壊をするとか、こういった物的被害も起こっております。そこに墜落事故を繰り返す欠陥機のオスプレイがやってくる。不安の声が上がるのは当然であります。

 さらに、今、自治体が運用する防災ヘリ、ドクターヘリもどんどんふえているところで、今現在、三十四道府県、四十機のドクターヘリが運用されております。例えば、今年度から導入した山形県は、自治体ヘリ等の運航の安全を確保すること、飛行ルートを初め、訓練の具体的内容を事前に関係自治体へ連絡することなどを国に要請しています。

 総理にお尋ねしますが、このような被害、危険性を生み出す米軍機の低空飛行への自治体、住民の懸念にどう対応されるのか、ぜひお答えください。

安倍内閣総理大臣 在日米軍は、委員御承知のとおり、日米安保条約にのっとって我が国に駐留をしているわけでございますが、第五条において、米軍は日本に対する防衛義務を負っております。そして、六条において、極東の平和と安定のために日本に駐留をしている、こういうことになっているわけでございますが、その中において、在日米軍は、訓練を通じてパイロットの技能の維持及び向上を図っていく、そのことによって即応態勢を維持していくわけでございまして、こうした訓練は不可欠な要素であります。日米安保条約の目的達成のために極めて重要であるというふうに認識をしております。

 もとより、米軍は、全く自由に飛行訓練を行ってよいわけではなく、我が国の公共の安全に妥当な考慮を払って活動すべきものであることは言うまでもございません。政府としても、従来から米側に対して、安全確保に万全を期するよう申し入れを行ってきております。米軍も、安全面に最大限の配慮を払うとともに、地域住民に与える影響を最小限にとどめるよう努力している旨、明らかにしております。

 そして、オスプレイに関しましては、その配備は我が国の安全保障にとって大変大きな意味がありますが、その運用に際しては、地元の皆様の生活への最大限の配慮が大前提であることは言うまでもございません。今後とも、日米合同委員会合意等について丁寧に御説明をしていくとともに、この合意の適切な実施について、米側との間で必要な協議を行っていく考えであります。

塩川委員 今、総理から御答弁ありましたが、米軍が我が国の公共の安全に妥当な考慮を払う、このことについても求めていくということでありますけれども、また、住民生活への最大限の配慮を払うということもおっしゃいましたが、本当にそうなっているのか。住民の危惧の声が広がり、自治体としての独自の取り組みもふえているところであります。

 私の事務所が調べたところ、オスプレイを含む米軍機の低空飛行に関して、ルートがわからないわけですから、住民の皆さんあるいは市町村から目撃情報の収集を行っている、こういう都道府県というのが現在二十三県にも及びます。つまり、四十七都道府県のうち半数に至っている。ここに、住民の皆さんと自治体の危惧の思いがあらわれていることが見てとれるわけであります。

 きょうは、先ほど指摘もしました被害、危険性のうち、米軍機の低空飛行による、米軍とヘリや小型機など民間機との衝突事故の危険性の問題について質問をしたいと思っております。

 ドクターヘリや防災ヘリの運用に関する心配の声を高知県で聞いてまいりました。

 資料の二枚目をごらんいただきますと、高知県が作成をいたしました、高知の県北の嶺北地域、ちょうど東西に吉野川が流れているこの谷合いの地域に多くの方が住まわれておられます。この嶺北地域において、ここが米軍機の低空飛行訓練ルートになっているということが、多くの証言でもリアルになってきているところです。

 この高知県作成の地図を見ていただきますと、現物は大きいものなので、ちょっと縮小していますから読み取りにくいところがあるんですけれども、右から左へ点線で囲まれた部分があります。この帯状のところが、米軍機の低空飛行訓練の推測をしているルートに当たります。その枠の中、点線の中で、黒い線の囲みがあるところが、人口の密集地、人が住んでおられる場所に当たります。

 それから、下から上に向いて二本の白い矢印がありますけれども、これは、高知市内などからこの嶺北地域にドクターヘリや防災ヘリを飛ばす、そういうときに進入する経路になっているわけですね。吉野川沿いの谷筋に入ったら、今度は東か西か、いずれにせよ、この黒い小さな丸で挙げられているようなヘリの離着陸場、ここを使用することになります。

 一昨年の十一月に、この嶺北地域にあります本山町の本山町立病院で、県の防災ヘリを活用した入院患者の避難訓練を実施しておりました。これは、防災ヘリが上がったり下がったりした。その直後に、岩国基地所属のFA18戦闘攻撃機が三機も低空でこの病院の上空を通過したということで、あわやという事態だったということ、関係者の方も大変強く憤りの声を上げておられます。

 本山町の今西町長は、中山間地では防災ヘリやドクターヘリは住民の命を守るために必要なもので、米軍機の低空飛行訓練は危険、訓練は絶対許さないと述べておられます。

 この西の方に当たります大川村では、米軍機が墜落をした早明浦ダムがあります。その大川村の和田村長は、事故から十九年になるけれども、いまだに心配は消えない、住民の命を預かる立場として反対をしていく、このように述べております。

 そこで、防衛大臣にお尋ねしますが、このような、高知県あるいは本山町など高知県内の自治体から出されている、米軍機の低空飛行に伴うような自治体のヘリ運用に係る懸念について、自治体のヘリ運用に係る心配について、国としてはどのように対応しておられるんですか。

小野寺国務大臣 自治体からの懸念、これについては私どもも承知をしております。

 私どもとしては、日米合同委員会ほかさまざまな機会を捉えて、このようなことについて米側に、しっかり配慮を行うように、特に公共の安全に妥当な配慮を払ってしっかり活動していただきたい、そのような申し入れを随時行っております。

塩川委員 いや、公共の安全に適当な配慮を払うとかいう一般的な話ではなくて、自治体のヘリ運用に関して、日本政府として、例えば、ヘリポートのところは避けるとか、あるいはこういった嶺北地域そのものを飛ばないようにしてほしい、こういう内容について、米側に対して具体的な申し入れということはされないんですか。

小野寺国務大臣 これは、この地域ということを限ったわけではなく、やはり米側がさまざまな飛行訓練を行う場合、今回のオスプレイの事案でも御指摘がございましたが、こういうことを含めて、私どもとしては、公共の安全に妥当な配慮を図って活動していただきたいということを、米側に、日米合同委員会その他の場を捉えて要請をさせていただいております。

塩川委員 ですから、公共の安全に妥当な配慮を払うということを要請するというだけで、具体的な要請などしていないわけですよ。これでは、自治体の心配、懸念の声に応えることはできません。

 資料の五枚目をちょっと見ていただくと、これは、その前の三枚目、四枚目も含めて、今回のオスプレイの本土での訓練について防衛省が発出をした通知文書と、それに参考につけたルートの地図であります。

 ここで見ますと、この配付資料の五枚目の左側に、一のところでも書いてありますが、イエロールートにおいて低空飛行訓練を実施するとか、オレンジルートにおいても低空飛行訓練を実施する、こういう趣旨について書かれているわけです。

 そこで、お尋ねをいたしますが、イエロールートやオレンジルートを初めとして、環境レビューで例示をされている六つのルートというのは、ここで言う低空飛行訓練ルートに当たるということでよろしいですか。

小野寺国務大臣 きょう添付していただいているこの資料を含めて、ここに書かれている環境レビューというのは、あくまでも米側が環境レビューということで出されている内容ですので、私どもとしてそれを認めているわけではございません。

塩川委員 いやいや、では、米軍がどう言っているかということでもいいですけれども、米軍の説明をここに書いているわけですよね。米軍は、当初はイエロールートで低空飛行訓練を実施する、それを変更してオレンジルートで低空飛行訓練を実施すると言っているわけですから、米側にとってみれば、オレンジルートやイエロールートは低空飛行訓練を行うルートだということになりますよね。

小野寺国務大臣 これは、あくまでも米側からの我が省への通報ということで、三月六日から八日の間、三機のMV22が沖縄から岩国飛行場に飛来し、九州地方、その中で、具体的にこの環境レビューのイエロールートということで指定がございました。

 ですから、我が省としましては、これを関係自治体にお伝えするという中で、いわゆるこの環境レビューの中のイエロールートということで米側から通報がありましたということをそのままお伝えしているというわけで、これが、先ほど先生がおっしゃったような、我が省として認めているということではありませんで、あくまでも米側からこのような通報があったということであります。

塩川委員 米側から当初はイエロールートで低空飛行訓練を実施します、その後、今度は米側からオレンジルートで低空飛行訓練を実施します、そういう通知を受けたということは事実ですね。

小野寺国務大臣 おっしゃるとおりです。

塩川委員 ですから、環境レビューで例示をされているイエロー、オレンジ、加えてパープルやブルーやピンク、グリーンという六つのルートというのは、米側にとってみれば低空飛行訓練を行うルートだということを米側としてはここで明らかにしたということになります。加えて言うならば、米海兵隊は、中国地方にもブラウンルートというのがありますよということも、そういう存在も認めているということはつけ加えておくものであります。

 そこで、重ねてお尋ねしますが、オレンジルートを初めとして米軍機が低空飛行訓練を行うこのルート、低空飛行訓練のルートがどこを通るのかということは、日本政府として承知をしておられるんですか。

小野寺国務大臣 米側から今回通報が来たのは、イエロールートあるいはオレンジルートという、いわゆる米側の環境レビューのラインを指して米側から通報があったということでありまして、私どもとして、米側が出している環境レビューについて、どこの自治体がその対象になるかということは把握をしておりません。

塩川委員 このルートがどこを飛ぶのかということについては把握をしていないということですけれども、それでは自治体の皆さんの不安の声にそもそも応えることができないじゃないですか。ドクターヘリや防災ヘリを運用するときに、要するに、避けるのでも、いつ、どこを飛ぶのかということがわからなければ、それもできないじゃないかという声が上がっているということであります。

 そこで、国土交通大臣にお尋ねいたしますが、日本の航空法で定めるフライトプラン、ここのフライトプランには経路、ルートを書くことになっているわけですが、このフライトプランについては米軍機も提出義務があると承知していますが、それでよろしいですか。

太田国務大臣 米軍機につきましても、航空法第九十七条及び日米地位協定の実施に伴う航空法の特例に関する法律に基づいて、飛行する場合には、国土交通大臣に対して飛行計画の通報が必要となります。

塩川委員 ですから、日本政府に通報があるフライトプランによって、米軍機がどこに飛ぶかということは承知しているはずなんですよ。どこだかわからない、把握していないというんじゃなくて、こういうフライトプランによって、米軍機がどこに飛ぶかということは日本政府に通報されているんです。

 ですから、自治体が不安の声を上げているんだったら、米側に対してきちっと説明を求めると同時に、こういって既に通報されているフライトプランも含めて、ルートをしっかりと示すということは十分にできるんじゃありませんか。その点、いかがですか。

小野寺国務大臣 今回、我が省に通報があったのは、あくまでも米側が発表している環境レビューのイエロールートあるいはオレンジルートということであって、その環境レビューの中に、どこの自治体の上を飛ぶということが書かれておるわけではございません。

塩川委員 太田大臣、フライトプランにルート、経路を書いてあるんですよ。それを公にするということを行えば、自治体側が求めておられる、少なくともルートを明らかにしてもらいたい、そういう声に応えることができるんじゃないですか。

太田国務大臣 飛行ルートの開示につきましては、個々の米軍機の行動に関する軍事事項であり、米国との信頼関係が損なわれるおそれがあることから、明らかにすることは差し控えているという状況にあります。管制業務として使うということです。

塩川委員 いや、米国との信頼関係よりも、国民、住民との信頼関係が損なわれる大問題なんだということこそ問われなくちゃならない。

 そもそも、こういった米軍機について、ヘリやあるいはセスナ機などの小型機は時速二百キロぐらいで飛行します、これに対して、米軍機は大変速い速度で飛ぶ。例えば、早明浦ダムに墜落をしたA6イントルーダーなどは、墜落時は時速八百キロだったとされております。米側の報告書に書かれている中身であります。

 そういう点でも、非常に高速で飛ぶ戦闘機がまさに生活の場を脅かしている。そういう中で、住民生活に被害をもたらすだけではなくて、ドクターヘリや防災ヘリなど自治体が運用するヘリについても大きな障害となる危険性をはらむものとなる。こういった事態であるにもかかわらず、自治体の求めに対しても、事前に承知している米軍機の飛行ルートさえ公表しない。これでは、国民の安全を守ることはできないということになるのではないでしょうか。

 そもそも、こういうルートを明らかにするだけで済む話ではありません。

 日米安保条約と地位協定に基づいて、日本政府は、米軍の使用に供するため、施設・区域を提供しております。

 小野寺防衛大臣にお尋ねしますが、一九九九年一月の日米合同委員会の合意、「在日米軍による低空飛行訓練について」には、「低空飛行訓練を実施する区域」とあります。この低空飛行訓練を実施する区域とは、日米安保条約と地位協定に基づいて日本政府が提供した施設・区域に当たるんでしょうか。

岸田国務大臣 一般に、日米地位協定は、低空飛行訓練を含め、実弾射撃を伴わない飛行訓練について、在日米軍の使用に供している施設・区域の上空に限って行うことを想定しているわけではなく、在日米軍は、施設・区域でない場所の上空において飛行訓練を行うことが認められております。

 そして、御指摘の日米合同委員会の合意において記述があります「低空飛行訓練を実施する区域」についても、日米地位協定上の在日米軍施設・区域に限られるものではないと解しております。

 ただ、一方で、米軍は全く自由に飛行訓練を行ってよいというわけではありません。我が国の公共の安全に妥当な考慮を払って活動すべきものであるということは、言うまでもございません。

 御指摘の日米合同委員会合意についても、米軍機における低空飛行訓練が日米安保条約の目的達成のために不可欠な訓練であるとの前提に立ちつつ、安全性を最大限確保する、また、地元住民に与える影響を最小限にとどめる、こうした観点から合意されたものであります。

塩川委員 要するに、施設・区域でない場所も含めて認められているという話になっています。つまり、米軍機の低空飛行訓練については、地理的な限定そのものがないということになるんじゃありませんか。

 総理にお尋ねします。

 一九九九年一月の日米合同委員会合意には、戦闘即応態勢を維持するために必要とされる技能の一つである低空飛行訓練は、軍事訓練としております。環境レビューでも、低空飛行訓練ルートを指す航法経路、ナビゲーションルートでの訓練は、戦闘任務での進入、脱出を成功させるために行うと記述をしております。

 つまり、低空飛行訓練でやっているということは、国民生活、住民生活のその頭の上で戦闘訓練を行っている。これはおかしいんじゃないかという声が出るのは当然のことだと思います。

 お尋ねしますが、日本の空全体が、米軍の軍事訓練が可能となるような、そういう場となっていることを異常だとは思いませんか。

安倍内閣総理大臣 在日米軍の存在は、まず第一に、我が国の国民の生命、領土、領海を守るためであります。いわば米側に対して日本防衛義務が課せられている、これが安保条約の第五条でございますが、同時に、第六条におきまして、極東の平和と安定を維持する、しかし、そのために日本の施設等を使うということになっているわけでございます。

 日本の領土、領海、そして国民の命を守るためには戦力を維持していく必要があるわけでありますし、その維持している戦力によって、抑止力をきかせ、極東の平和と安定を守っていくという中におきましては、先ほど御説明をしたとおり、在日米軍が訓練を通じてパイロットの技能の維持向上を図っていくことによって、その戦力は維持をされていくわけであります。

 もちろん、同時に、公共の安全に妥当な配慮を行って活動していただくということは当然でございますし、今後とも安全確保について万全を期していくように申し入れを行ってきているところでございます。

塩川委員 公共の安全に妥当な配慮といっても、具体的な要請もしていないわけですよ、一般論の言葉を繰り返すだけということで。

 結局、今の米軍の訓練空域については、地位協定等により米軍が使用している空域については、航空機の飛行が認められない制限空域とか、あるいは警告空域などといった飛行規制空域が設定をされています。このことは国土交通省航空局が発行する航空路誌にも掲載をされ、民間の航空機などにそういった情報を提供するという仕組みになっているわけであります。

 また、米軍が、実弾射撃訓練などを伴わない訓練についてはどこでも飛べるんだということを岸田大臣は答弁していましたけれども、しかし、その伴わないような訓練であっても、米軍は自衛隊の訓練空域を使って実際にはやっているわけですよね。自衛隊訓練空域を使用して、島根県西部上空や群馬県前橋上空などで海兵隊機や空母艦載機の飛行訓練を実施していますが、その自衛隊訓練空域は、民間機が飛行できないような飛行規制空域になっています。その旨、航空路誌にも掲載をされています。

 お尋ねしますが、この制限空域、自衛隊訓練空域というのは、米軍機と民間機が使用する空域を分離するという形になっていますけれども、米軍機の低空飛行訓練ルートについては、それすらない。米軍が勝手に空域を設定して飛び回っている。異常だと思いませんか。

小野寺国務大臣 先ほど委員が何度か御指摘されております日米合同委員会合意、平成十一年一月十四日の中でも、この低空飛行訓練のところでありましては、在日米軍の航空機は、原子力エネルギー施設や民間空港などの場所を安全かつ実際的な形で回避し、人口密集地や公共の安全に係る建造物、学校、病院等に妥当な配慮を払うということで合意をされておりますので、これをこれからもしっかり守っていただくように、我が省としては要請をしていきます。

塩川委員 公共の安全に妥当な配慮を払うというのを念仏のように繰り返すだけでは住民の生活は守れない、このことを強く言います。

 沖縄の制限空域では、漁民の漁業権が侵害されています。自衛隊訓練空域を使った米軍の訓練は、甚大な爆音被害を生んでいます。

 そもそも、これらの空域は、米軍機が好き勝手に使えるように民間航空機を排除するための仕組みであり、このような米軍の特権的な空域の使用こそなくすべきです。ましてや、何らの地理的制限もなく、米軍機と民間機の空域分離もない低空飛行訓練ルートを使用した米軍の軍事訓練は、きっぱりと中止すべきであり、オスプレイの配備、訓練は、沖縄でも本土でも中止せよ。

 外国では、例えばドイツなどでは、米軍が低空飛行訓練を行う場合は、ドイツ国内法を前提に米独間で個別の協定を結ぶなど、当然のようにやっている。こういうことすらない、今の異常なアメリカ言いなりの仕組みそのものが問われているということを強く求めて、質問を終わります。

山本委員長 これにて塩川君の質疑は終了いたしました。

 次に、小宮山泰子君。

小宮山委員 生活の党の小宮山泰子でございます。

 今、この時間も、日比谷の野外音楽堂では、国益を守れないTPP交渉参加断固反対の緊急集会が行われております。私たちは、TPPに反対をしております。FTAやそのほかの方法があるにもかかわらず、メリットの見られないこのやり方、このTPPに入るメリットは日本にはないと考えております。

 TPPは、農業分野にとどまらず、知的所有権や医療分野、保険など、さまざまな分野に深刻な影響が及ぶことは明らかでもあります。政府の方も、これからまたお出しになられるそうですけれども、今までの中で、参加しないデメリットでは、八十万人の雇用が失われるという説明もございましたが、よくよく聞いてみれば、では参加したときに日本の雇用はふえるのかといったら、そういう指標は国際的にも出していないので、ないという回答でありました。

 そういう意味では、殊さら参加をあおるようなことを今までされていたのではないか。この点は、やはり、日本が安全を、そして、医療保険やさまざまな問題をきちんと日本独自で今まで培ってきたもの、これも大切にすること、ここをまずしっかり押さえていっていただきたいと思っております。

 さて、グローバル化される中では、そうはいいましても、生き残るためには、ほかにはない、この国の特徴あるものをきちんとほかの国でも売り込むということ、そして、地域で生まれたものは、農産物だけではなく、文化やさまざまな制度を生かす、それを多くの方が親しんでいただき、購入していただくということは大変必要なことだとも思っております。

 その中で、十五カ月予算という考え方の中で、農水省の補正予算では、輸出拡大及び日本食・食文化発信緊急対策事業が計上されております、七億一千六百万。また、二十五年度予算にも、農林水産物の輸出対策、これが十七億ほど。そして、日本の食を広げるプロジェクト、三十九億ほど、関連した項目がございます。

 昨今、日本食というのは、昨今といっても、この数年来、大変ブームでもあり、また健康にもいいということで、日本国内もそうですが、大変見直されている点もあるかと思います。この点に関しましては、また、国内におきましても、食への理解や親しみを得るということは、アニメやさまざまなサブカルチャーなども大変注目はされておりますけれども、日本の理解を深めるという意味では大変重要な分野かと思っております。

 そして、国内においては、今まで、農業といえば地産地消ということを言っておりましたが、農業の方々とお話をしていましたら、地産地消ではなく、やはりその地域に来て消費をしてほしい、食べてもらいたいということで、地産地食で、さらに理解と消費を拡大させてほしいという言葉もいただいてまいりました。

 農産物単独ではなく、食文化という大きな面に広げていくことが、日本の海外発信、また輸出促進に努めることにもつながるんだと考えております。そして、これは極めて有効なことだと思っておりますが、文化政策とあわせてというもの、そういったことでは、日本は売り込みは今までうまくなかったのかなということも考えております。

 海外への輸出や展開、情報発信となる、また、おのずと経済産業省や外務省などさまざまな取り組みで、単独で縦割りで捉えがちだったものをどういうふうに今後やっていくのか、まず農水省の御見解を伺いたいと思います。

林国務大臣 お答え申し上げます。

 今委員からお話がありましたように、農林水産物と食品を輸出するということにとって、食文化を発信するということが大変に大事である、日本食がいかにすばらしいか、これを世界に普及してもらって、海外の需要の拡大につなげていくということは大変に大事であると考えております。

 そういった意味で、先ほどの午前中の答弁でもお話ししたように、二月からパリにおいて食文化週間というのを、外務省それから経産省、観光庁等と協力しながらやっておるところでございます。

 また、サブカルチャーというお話がございましたが、三月五日にジェトロの方で調査をしていただきまして、これは、中国、香港、台湾、韓国、米国、フランス、イタリアのそれぞれの皆さんにアンケートをとっておりますが、外国の料理で何が食べたいですかと聞きますと、アメリカを除いては日本料理が一位ということでございます。

 非常におもしろかったのは、アジアや米国でラーメンというのが非常に支持をされている。これは、ラーメン専門店の増加がブームを後押ししているということで、中国でも、ラーメンというのは日本食である、こういうようなイメージになっている。

 それから、これもおもしろいんですが、欧州ではカレーライスというのが非常にはやっている。これは、アニメでカレーを食べているシーンというのが、これは日本のアニメなんですが、欧州で放映されることによって、カレーを食べるというのが人気になっているということでございますので、今までの御三家と言われた、おすし、てんぷら、それから焼き鳥ということにとどまらずに、多面的な発信をしていく必要があると考えております。

小宮山委員 大臣、後で質問もいたしますけれども、正直、経産省とかから見ると、農水省は結構、予算を全体にかわいくおとりになっているような気がいたしますが、この予算づけで、実際、政策目標としてはどのぐらい考えていらっしゃるのか。

 農水省の予算としては、二十三年度は政策目標四千五百十一億円、三十二年度に一兆円の水準ということでありますけれども、あわせて考えると、もう少し大きいことを目指せるのではないか。それは、世界の食の産業というのは、二〇二〇年になれば大体六百八十兆円に拡大するという試算もございました。

 そういう意味においては、もっと目標を高く持ってもいいのではないかと思いますが、この点、大臣としてはどうお考えになるか、お聞かせください。

林国務大臣 これは、麻生財務大臣にもお願いして予算を拡大していただきまして、ますます大きな目標を持ちたいと思っておりますが、とりあえず倍増という計画でやっていこうと。

 今委員が御指摘ございましたように、二〇二〇年には、これはATカーニー社の推計ですが、世界の食市場が三倍程度になっていく、全体というか、中国、インド、ここが三倍になっていく、全体も三百四十から六百八十、二倍でございます。

 さらに申し上げますと、さっき統計のお話をしましたが、二位、三位、四位というのは、大体フランス、イタリア、中華料理、こういうところなんでございますが、そういうところの食料とか農産物の輸出に比べますと、まだ我が国の農産物、食品の輸出は非常に小さいということでございます。人気の割には売れていないということでございますから、まだまだポテンシャルはあると考えておりますので、しっかりと取り組んでまいりたいと思います。

小宮山委員 大臣、日本の農業は、特に、残留農薬も含めまして大変厳しいつくり方をして、いい食品を国内でも提供していただいていると思います。そういうことも含めまして、ぜひ、一兆円と言わず三兆円ぐらいを目指す、その気概で頑張っていただきたいと思っております。自民党側からも拍手をありがとうございます。

 さて、総理の施政方針演説の中で、健康的な日本食は世界でブームを巻き起こしていますというくだりがございます。その中で、攻めの農業が必要だということも訴えていらっしゃるんですが、このことで、私自身、聞きながら、ちょっと気がかりなのは、いい製品をつくる、それはやはり農薬をしないという分、非常に手間もかかる、当然コストも上がっていくものになります。だからこそ、高い値段で、海外にも攻めの農業で売ることが可能になっていく、これをやはり進めるということも当然必要なことだと思います。

 高収入を得られる農作物をさらに支援するというだけではなくて、もしかすると、これは、一面、高価な作物を買えない方々が出てきて、大量生産された安価な作物、場合によったら、現在でも安価な輸入された海外の食料品、残留農薬だったり、輸送されてくるときの駆除やさまざまなこと、また、遺伝子組み換えの問題、いろいろ、安い食べ物というものにはそれなりの理由があるとも言われております。

 これから消費増税など家計を圧迫する中で、健康的な食べ物を、いいものを日本国内で提供するという意味においては、この言葉の、攻めの農業だけではいけない。日常の生活をする上で、国民が、日本国内でもきちんと、安く、手ごろに、いい食物を買える、食べ物を入手ができる、その環境を整えなければならないんだと思っております。

 この点に関しまして、総理、施政方針演説の、攻めのものだけではなく、国民の健康を守る、そして庶民の生活を守る、そのための農業のあり方というものについて、御見解をお聞かせいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今、委員の御指摘のように、日本の農家でできた農作物は極めて質が高いと言ってもいいと思うんです。よく、農業は生産性が低いと言う人がいますが、しかし、できたものは間違いなく、安全で安心できるものをつくっております。

 ただ、もちろん、完全に有機、無農薬でいく場合、これは大変なコストがかかるのは事実ですね。ですから、その中でそれをいかに安価に提供していくかということについては、これからさまざまな工夫も大切なんだろうな、こう思うわけでありますが、どうか消費者の皆さんも、ぜひ、この日本の農家が生み出しているすぐれた野菜、なぜ高いかということにも目を向けていただき、安いだけではなくて、やはりある程度コストがかかるということも御理解をいただき、日本の食材を手にとっていただきたい、こんなようにも思うところでございます。

小宮山委員 消費者は十分、日本の製品を欲しいと思うし、その努力というものを知っていると思います。

 しかし、家計が、生活が、日常がそれを許さないんです。やはり安いものを買わざるを得ない、そういう方々がたくさんいる。そこをしっかりと御理解いただきたいと思います。これが、私どもがTPPに反対をしている、その一因でもあります。

 遺伝子組み換えや残留農薬、さまざまなものがございます。ぜひ、この点に関しましても、いま一度お考え直しをいただき、現実を見ていただきたいと思います。

 さて、続きまして、私、大学院に行ったときのテーマが、文化経済学をさせていただきました。文化というものが経済につながるんだと。また、今回の内閣におきましては、麻生大臣もいらっしゃいますし、クール・ジャパンというものが大変強く前面に押し出されているかと思います。

 クール・ジャパンとして日本文化を売り込むためにも、本予算では、五百億円のファンドを立てるということになっています。日本というのは、バブル崩壊後、失われた二十年、長期デフレ不況下で経済成長が見られないという、停滞期と表現されますけれども、そうした見方をされるとともに、今日、日本が世界の中で魅力的な国であると言われているのは、長い文化、そういったものが認められている、そして、日本人の気質、そういった文化の中、生活の中で育まれたものというものが大変評価を上げているものだとも思っております。

 政府として、五百億円ものファンドをする根拠、そして目指す市場規模というものを明確にしていただきたい。そうでなければ、先ほどから、農水の予算を引き合いに出しては悪いんですけれども、この文化を売り込むというときに、数十億という単位に対して、五百億円、どんと積むわけです。これがどうなっていくのか、ちゃんとリターンを迎えるものなのか、ぜひそのあたりをお聞かせいただきたいと思います。

 クリエーティブ産業の市場というのは、アジア新興国を中心に九百兆円にも伸びるとも言われておりますし、そういった中で日本はどのぐらいを目指していくのか、そして、今回のこのファンドをすることによってどれだけリターンをするのか、そのあたりの試算をぜひお聞かせいただきたいと思います。

茂木国務大臣 委員御指摘の、ファッションにしても、それからコンテンツにしても、さらには食文化にしても、国際化していくんだと思います。

 林大臣が先ほど答弁されたように、中国でもラーメンは日本食と。逆に、おすしの軍艦巻きのイクラ、これはロシア語なんですね。意外なところでグローバル化というのは進んでいる。

 そこで、市場規模ということでありますが、民間コンサルタントの試算によりますと、コンテンツ、食、ファッション、この市場につきましては、新興国を中心に急拡大をしておりまして、二〇〇九年の数字、これが一番新しい数字なんですが、四百六十四兆円。これが、二〇二〇年には、委員御指摘のように、その二倍、九百兆円以上になる。

 しかしながら、日本企業のこれらに関する海外売り上げ、これは市場全体の〇・五%、二・三兆円にしかすぎないというところであります。コンテンツにつきましても、国内市場、日本は十二兆円、アメリカが三十二兆円で世界一でありますが、日本は二番なんです。ところが、輸出比率で見ると、アメリカが一七%あるのに対して、日本は五%。この五%を一〇%に伸ばすだけで、大体、市場として一兆円ぐらい大きくなっていく、こんなふうに考えております。

 どうやっていくかということでありますけれども、三段階でこのクール・ジャパン、クールですから、格好いいですね、これの展開をしていきたいと考えております。第一段階は、日本の魅力を発信することによって、海外において日本ブームを創出していく、これが第一段階です。次の段階は、現地で関連商品等を販売する、これが第二段階です。そして第三段階は、そういった日本の食であったりとかファッションであったりとか、日本の魅力に接していただいた方を今度は日本に呼び込むといった形で消費を喚起するということで考えております。

 このまず第一段階の、日本のよさを発信する、これに関しましては、補正予算におきまして、アニメなどのコンテンツ、日本語では向こうはわかりませんから、それを翻訳したり、さまざまな番組の枠を買う、こういう発信のために、総務省と合わせて百七十億円の予算を計上させていただきました。

 そして、第二段階の、具体的に商品化して向こうで販売をしていく、これがまさに、委員が御指摘いただきましたクール・ジャパンの推進機構の創設のための新法という形でありまして、ここは産投特会の方から五百億円、これを出資するということになっております。

 また、第三段階の、日本に呼び込む、これは、第一段階、第二段階を経ながら、観光庁とも連携をしながら、ビジット・ジャパン等々も進めていきたい、こんなふうに考えているところであります。

 市場規模としては相当大きい。これをきちんとプロセスを踏みながら大きな市場に育てていく、事業に育てていく、こういったことにしっかりと取り組んでいきたいと思っております。

小宮山委員 これもぜひお願いです。

 今、せっかくいい方向だとは思いますので、クール・ジャパンという英語名ではなく、ほかの国で、格好いい何とかという日本語が使われるぐらい売り込みをしていただきたいと思いますが、そのためには、やはり日本の最前線基地といいますと、何といっても外務省の大使館ではないかと思います。大使館、領事館など、在外公館はなかなか、過去には、ワインばかり買うというような、そんなような報道もたくさんございまして、今は大分、酒サムライさんと御一緒になり、日本酒を用意するなど、また努力はしていらっしゃるとは思います。

 なお一層の日本文化への理解だけでなく、日本文化にも精通する、そういった大使館員であっていただきたいと思いますし、またこれが、先ほどからありますけれども、日本の文化の世界での売り込みに寄与するものだと思っております。

 この点に関しまして、外務省の御見解をお聞かせください。

岸田国務大臣 諸外国における対日理解を促進し、我が国に対する良好なイメージを増進する観点から、この広報文化外交に積極的に取り組むことは大変重要だと認識をしております。

 日本文化につきましては、御指摘のように、在外公館を最前線の発信拠点として活用し、古典、伝統文化、食文化、さらにはポップカルチャーに至るまで、幅広い魅力の紹介と浸透に努めている次第ですが、具体的には、伝統文化の紹介事業として、伝統工芸、生け花の展示、さらには、伝統芸能、武道のデモンストレーション、日本の食文化の紹介、日本酒の紹介、さらには俳句コンクールとか日本語弁論大会、こうした事業を在外公館において展開している、こうした状況にあります。

 引き続き、関係省庁はもちろんですが、国際交流基金等との連携を通じながら、文化を含む我が国の魅力や価値の発信を通じた、諸外国における対日理解の促進にしっかり努めていきたいと考えております。

小宮山委員 大臣、これもやはり、残念ながら、今の日本におきましては、日本の文化に接するということが非常に日常から離れていってしまっているんだと思います。後ほど質問の中にありますけれども、私自身が木造住宅等、そういったものにこだわるのも、この点でもございます。

 私どもが視察等で在外の大使館などへ行ったときに、日本のものでない、他国のアジア的な置物が平気で飾ってあったりとか、日本食というものになってみても、ちょっと半端な日本食だなというものが出てきたり、大変……(発言する者あり)仕分けの前に行きましたので。

 仕分けするからだと自民党側からありましたが、仕分けの前に行ったときに痛感したものでありますから、実感でもございますが、やはり私ども日本人が日本の文化をきちんと日常で生かしていないのではないか。

 その一つには、やはり母国語である日本語、政府の方では、主権回復の日、閣議決定もされたということでありますし、戦争をやっていたということを知らない若者もふえる、また、日本語が理解できないことを楽しむような番組など、さまざまなことがあります。言語というものは、自国を理解し、そして他国を理解する上でも、まず一番の基本となるものだと思っております。

 「声に出して読みたい日本語」など、また、江戸時代の寺子屋であれば、今、私たちは、書道の展示を見てぱっと読める方は本当に少ないかと思います、一つの仮名で幾つもの文字があり、それをきちんと読めていた。そういう意味では、教育というものは、日本の文化を醸成するものとしては大変重要かと思います。

 この点に関しまして、また、私、山本委員長にも大変頑張っていただくことになりますが、日本・アイルランド議員連盟を再度立ち上げるに際しまして、やはり母国語と英語と両方をきちんと学んでいるんだという大使館のお話を聞きまして、非常に感銘も受けました。

 世界では、母国語と、そして世界の共通の言葉、両方をきちんと学ぶ、まずはやはり母国語であるという、その誇り高き言葉を聞くときに、日本はこの基本的なところをないがしろにしているのではないかという思いがあります。

 ぜひ、この点に関して文科大臣にお聞かせいただきたいと思います。

下村国務大臣 お答えいたします。

 真の国際人になるためには真の日本人が求められると思いますし、真の日本人という意味では、日本語、国語がきちっとできるということが必要であるというふうに思います。

 国語は、実生活においても、各教科などの学習の基本として重要なものであり、新しい学習指導要領において、言葉を通じて的確に理解し、論理的に思考し表現する能力、お互いの立場や考えを尊重して伝え合う能力の育成や、我が国の言語文化を通じた感性や情緒の涵養などを重視しているところでございます。

 具体的には、小中学校を通じて、今、国語の授業は平成十四年から少なくなってしまっておりましたが、これを、国語科の授業時間数をふやす、また古典に関する指導を重視する、そして国語教育の充実を図ってまいりたいと思います。

 ただ、残念ながら、小宮山委員が小中学生のときと比べると、まだまだやはり国語の時間は、ふやしても当時よりは少ないという状況でございますので、今後、土曜授業の復活等も検討しなければならないのではないかと考えております。

 今後、さらに、子供たちの思考力、判断力、表現力等を育む観点から、国語科だけでなく全ての教育活動において、説明、論述、討論などの言語活動の充実を図ってまいりたいと思います。

 文部科学省としては、新学習指導要領に基づき、国語教育の充実を通じて、国語に対する関心や認識を深め、国語を尊重する態度を育ててまいりたいと思います。

小宮山委員 ぜひ、大臣、育てていただきたいと思います。

 さて、質問はちょっと順番を変えますけれども、先ほどちょっと触れましたけれども、きょうは衣食住というテーマで私は質問させていただいております。

 日本の家屋の中で大変特徴的なのは、やはり床の間なのかと思っています。何もない空間ではありますが、掛け軸をかけることによって、家訓であったり、また季節の言葉であったり、花を生けることによってまた違う意味がある。また、慶事であったり、葬儀のことであったり、さまざまなものに、何もない空間が、創意工夫で使われる。この部分というものは、日本人の非常に豊かな感性を育てたものの一つだと思っております。

 そういった観点でいいますと、現在、残念ながら、家の中に、畳の部屋、ましてや床の間すらない家が大半になってきているのではないかと懸念をしております。

 この点では、木造住宅に関してちょっと伺いますけれども、今回、国交省におきましては、三階建ての木造校舎ができるほどの実験もされていらっしゃいます。また、伝統的構法、ことしは二十年に一度の伊勢神宮の遷宮もあります。こうやって技術を伝承するということを、日本は古来から知恵として行ってきてまいりました。しかし、残念ながら、伝統的建築というものは、建築基準法など、また関東大震災の延焼から離れるために、認められてこないというような現実もあります。

 この点の申請に関しまして、伝統的構法に関しまして、今後、国交省として推進をしていかれるのか、この点に関して簡潔にお願いいたします。

太田国務大臣 小宮山先生には、この件については大変御指摘をいただき、御協力いただいております。ありがとうございます。

 伝統的構法ということでの木造建築物、これはなかなか構造計算が、精緻が要求される。石の上に柱を立てるとかさまざまなものがあって、横からの入力に対してレスポンスが、計算が難しいというような、いろいろなことがございます。

 これらを、簡易な設計法が求められているということで、精緻な構造計算を要しない設計法の開発について、平成二十年度以降、学識者あるいは実務者によって検討委員会が行われていて、進んでおります。この検討成果を活用しながら、伝統的構法の木造建築物が円滑に建築されるよう努めてまいりたいと思います。いい結論を出せるようにというふうに思います。

小宮山委員 ぜひお願いいたします。今ならまだ技術者を残すことも可能だと思っております。しっくいや、先ほど、石場建ての構法のことがございますし、また、建築の確認申請や構造計算適合性判断の円滑化のために、ぜひ頑張っていただきたいと思っております。

 最後、ぜひ総理にお伺いしたいと思います。

 先ほどから、日本文化と醸成のこと、また、美しい日本と前回の総理のときには大きくおっしゃっていらっしゃいました。これを実際にするには、やはり日本というものが芯がなければならない、その文化というものをしっかりと守らなければならないんだと思います。

 今後、産業としての文化を活用していくならば、まず、日本できちんと生き続けている文化というもの、特に着物など、日本の民族衣装をここの国会議員でも自分で着つけられる人がどれだけいるんでしょうか。本当に、このことを思うと悲しくもなります。

 しっかりとこの点に関しまして、うちの地元では、商工会議所を中心として、実行委員会で、毎月十八日が着物の日となっておりますけれども、国会でも、やはりこういった、きちんと、もっと文化を見える形で醸成する、そのためにも努力もいただきたいと思います。

 ぜひ、日本文化のため、そのことに関して、総理の御見解、御決意がありましたら、お聞かせください。

安倍内閣総理大臣 第一次安倍政権で教育基本法を変えました。あのとき、教育の目標、目的、これをきっちりと書き込んだんですね。これが古い教育基本法との大きな違いでございますが、そこに日本の文化と伝統を尊重するということをしっかりと書き込んだわけでございます。

 そのことによって、学校教育の場において、伝統や文化において、きっちりと子供たちに伝えていく、継承していくということが、教育基本法上、可能になったわけでございまして、新しくできた教科書、小学校の教科書の中には、幾つか、この方向を酌み取って、教科書の中に書き込んでいるものもございます。

 また、我々もさまざまな場を通して、日本の文化と伝統、このすばらしさを世界にも発信していきたいし、また、しっかりとそれを確認しながら次の世代に継承していきたい、このように思っております。

小宮山委員 学校現場とかでは、結局のところ、そうはいっても、ヒップホップとかそういうものを踊るようなことにもなっております。ぜひ、民謡であったり民舞であったり能であったり狂言であったり、さまざまな日本文化を涵養する方法はあるかと思います。それをもっと本格的にさらに入れていただくこともあわせて、重ねてお願いいたしまして、質問といたします。

 ありがとうございました。

山本委員長 これにて小宮山君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして基本的質疑は終了いたしました。

 午後二時十五分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後二時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時十五分開議

山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 これより安倍内閣の政治姿勢等についての集中審議を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岩屋毅君。

岩屋委員 自民党の岩屋です。よろしくお願いいたします。

 昨日は、東日本大震災から二年目の追悼式典でございました。遺族の方々のお言葉を聞いておりまして、本当に心が震えた式典でございました。私ども、一日も早い復興に向かって、誓いを新たにさせていただきたいというふうに思います。

 復興につきましては、明日、この予算委員会、七時間のテレビ入り審議が行われます。詳細な議論はそこに譲ることといたしまして、きょうのテーマは安倍内閣の政治姿勢についてでございます。

 私は、ずばりそのことを総理にお伺いしたいと思いますが、その前に、まず、今回の総選挙、全国的に投票率が非常に低かったわけでございます。総理は、なぜ投票率が低かったとお考えでしょうか。

安倍内閣総理大臣 三年数カ月前に、政権交代が行われたわけであります。あのときには、政権交代によって大きく大きく政治は変わるんだ、政治だけではなくて社会も大きく変化する、これはいい方に変化する、このようにマスコミ、メディアもはやし立てたわけであります。

 しかし、現実は全くそうならなかった。さまざまな約束が選挙を通してなされたわけであります。マニフェストということで、さまざまな約束を決めた。しかし、その多くは実行されなかったわけでありまして、それに対して、国民は政治に対する信頼を失った。もう政治に一票を託しても意味がないんじゃないかという結果であったんだろうと思います。これは民主党だけの問題ではなくて、既成政党全体に対する不信感となった。結果において、大きく投票率の低下につながってしまった。これは大変残念であります。

 だからこそ、私たちは、私たちの掲げた政権公約については、できることしか書かない、これを訴えたわけでありまして、私たちは結果を出していくことによって国民の信頼を回復したい、こう決意をしております。

岩屋委員 私も、選挙区では勝たせていただきましたが、その前の選挙で小選挙区で敗れたときよりも約一万票、得票を減らしての当選でございました。それだけ投票率も低かったわけですけれども。

 暮れの選挙で人々が忙しかったということもあったでしょう。しかし、私は、それ以上に、根深い政治不信というものがそこにあったというふうに思います。総理のおっしゃった前段についてももちろん理解をいたしますが、むしろ後段の、既成政党全体に向かって、自民党も含めて、決められない政治に対する国民の怨嗟の声があった。私は、そのことを、安倍政権、安倍自民党はしっかり踏まえていかなければいけないのではないかなと思うんですね。

 失敬だけれども、民主党さんも頑張ったと思います。けれども、総じて力量不足ということは否めなかったと思いますね。

 一方、半世紀にわたって政権を担当してきた自民党が野党になったときに、果たして本当に適切な振る舞いができていたであろうか。私は、反省すべき点も多々あったと思います。

 したがって、本当に、これから安倍政権、謙虚で、丁寧に国政の運営を進めていく、そのことによって国民の皆さんの政治に対する信頼を回復していく、これが必要なのではないか、こう思うんですけれども、いま一度、総理のお気持ちを聞かせていただければと思います。

安倍内閣総理大臣 失われた信頼を回復する、これは容易なことではないんだろうと思います。だからこそ、我々自由民主党は、昨年、総選挙においても、野党だからという気安さで政策はつくりませんでした。真剣に、国民に、これだったら責任を持って実行できるというものを集めて政権公約としたところであります。

 そして、政権運営に当たっては、まさに今、岩屋委員がおっしゃったように、謙虚に、誠実に、結果を一つ一つ積み上げていくことによって、政治全体への信頼を回復していかなければならないと思っております。

 そして、今まさに、経済政策においては三本の矢を放ち、そして経済において実績を出していく、これが一番目の目標だろう、最初の私たちの責任ではないかな、このように決意をしております。

岩屋委員 国民が求めているのは、まさに決める政治だと思います。勝って勝ち誇らず、負けて負け惜しみを言わず、真摯に議論を重ねて、決めるべきときにしっかりと事を決する、こういう政治を、ぜひお互い、心がけていきたいものだと思います。

 予算について一点伺いたいと思います。防衛予算です。

 F35という我が国の次期主力戦闘機、平成二十五年度予算の中では、関連予算が千三百三十九億円、かなりの額を積んでいるわけでございます。第五世代のステルス性を持った戦闘機を配備するというのは、日本の空の守りを固めるという意味で不可欠だと私どもは考えております。

 このF35の生産にも参加をするということになりました。私は、民主党政権が武器輸出三原則を緩和されたというのは高く評価をしたいと思います。調達コストをできるだけ下げる、技術力で追いつけるようにする、それから、国内の防衛産業をしっかり維持するという意味で必要だと私どもも考えておりましたが、それが民主党の政権下で実現をいたしました。

 しかし、F35というのは、今度、国際共同部品管理システムというのを採用するわけですね。各国がつくった部品を一元的に管理して、プールして、そこからユーザー国に部品を出していくという仕組みが採用されるようになりました。そうなると、緩めていただいた三原則でもなかなか間尺に合わなくなってきている。

 官房長官は、さきに、このF35の共同生産については例外化をするんだという談話を発表されました。妥当な判断だと思いますが、そうなると、ユーザー国の中には、紛争当事国になる可能性があるイスラエルなどという国も含まれているわけですね。この点については国民にしっかり説明をする必要があるんじゃないかと思いますが、官房長官はどういう御説明をなされますでしょうか。

菅国務大臣 今、岩屋委員からお話がありましたように、いわゆる部品ですよね、初めて世界規模で部品等を融通し合う、いわゆるALGSという新しいシステムによって部品が融通されるわけですね。

 そういう中にあって、まず、この部品は、アメリカ政府が一元的に責任を持って管理する、さらに、国連憲章の目的と原則に従うF35ユーザー国に対するものに限定をする、そういう大前提です。

 そして、問題のイスラエルでありますけれども、イスラエルは、我が国がこの製造に参画をすると表明する一年前に、既に製造参画を決めているわけであります。ですから、この枠組みの中で、他のユーザー国から部品が供給される。我が国が参画してもしなくても、ここはイスラエルには全く変わりがないことであります。さらに、製造した部品がイスラエルに行ったからといって、イスラエルをめぐる情勢は全く変わらない。

 この新しいシステム、そういう中で、私たちは官房長官談話というものをあえて出させていただいたということです。

岩屋委員 日本独自の武器の技術が、我が国独自の判断で第三国に供与されるわけではないということだと思います。

 ただ、総理、これから国際共同開発、生産というものが主流になっていく、それから部品の共同管理というやり方も、それが主流になっていくとするならば、一回一回例外化していくと、むしろ例外の方が多くなって、原則の意味がなくなるというおそれもあると思います。だから、三原則についてはさらに検討を加えて見直す必要があるんじゃないかな、こう思うんですけれども、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 この三原則においては、もともと、佐藤総理時代の国会答弁の三原則があったわけであります。これは、紛争当事国あるいはそのおそれのある国々、そして共産主義圏、そして国連によって制裁、これがもともとの三原則であって、三木内閣のときの三木総理の答弁によって全部だめですよということにしてしまったということであります。

 そして、今回のF35において、随分これは閣内で議論をいたしました。どうしようかということでありますが、まさにF35が第五世代のゆえんは、ステルス性が高いですから、相手からなかなかレーダーによって捕捉されにくい。レーダーによって捕捉されにくいということは、もし世代の劣る戦闘機と戦闘になった場合は、相手に見つからずに相手の戦闘機を撃墜することができるわけであります。そして、今、彼我の差を大きくすることによって抑止力がぐんとききますから、結果として、その地域の平和と安定はしっかりと守られ、一発の弾丸も撃つ必要がなくなる。彼我の差が大きくなれば大きくなるほど、結局、全く武力を行使しなくて済むという結果になるわけでありまして、その意味においては極めて大切な、いわばF35ということになるんだろうと思います。

 しかし、現在は、委員が御指摘になったように、世界でこういう形で生産をしていきます。この仕組みの中に入らなければ、我々は事実上F35をそういう仕組みの中で比較的安く購入するという道を放棄しなければならないということは、日本の国民の生命と財産に責任を持って防衛をしっかりとやっていくことができなくなっていくということでもあります。

 そこで、今回はこういう形で判断をしたわけでありますが、紛争当事国となるおそれがある、今イスラエルの例が挙がりましたが、では、果たして米国はどうなんだ、どの国も、おそれということになったら、世界の情勢がこうなってくると、それを全部排除できるのかどうかという根本的な問題についても、私たちは現実と向き合って真面目に検討していく必要があろう、このように思います。

岩屋委員 時間がなくなったので、防衛大臣、済みません、最後の質問をさせていただきたいと思います。

 先般、集団的自衛権について総理とちょっとやりとりさせていただきました。慎重に議論しようというお考えで、全く同感です。一方、とあるテレビ番組で総理が集団安全保障についても言及されたということで、昨日議論にもなりました。ただ、私は非常に大事な視点だと思うんですね。

 確かに、総理おっしゃるように、国連軍というのは正直リアリティーが余りない。しかし、東アジアの緊張関係が将来的に解けていったときに、やはりアジア全体に安全保障の屋根をかけていくというときもやってくるんではないか、そういうことも視野に入れて、これから集団的自衛権の問題についても議論をしていくべきではないか、私はこう思っているんですけれども、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 集団安全保障については、これはまさに国際社会みんなで地球全体の平和や安定を守っていこう、PKO等も行われています。そしてまた、時には有志による部隊が形成されるということもあります。

 その中で、日本はどういう役割を担っていくのか、お金だけ出していていいのかという課題にも直面するわけであって、しかし、そこはやはり将来の課題として、そういう状況において私たちは私たちの中でできる責任を果たしていくべきではないかというのが私の考え方であります。

 その中において、現在の憲法の中においては憲法の許される範囲内で、そして、憲法を改正するというときにも、自由民主党は既に、岩屋委員も中心になって改正にも取り組んでこられたわけでありますが、それについても、そういう考え方を含めて、自民党の憲法改正草案の中に込められている、このように思っております。

岩屋委員 おっしゃるとおり、安倍政権がこれから打ち出していく安保政策、防衛政策、単に目先のパワーポリティクスとしての対抗策ということではなくて、あくまでもアジア全体の平和と安定に資するものをしっかりやっていくんだという形で進めていただくようにお願いして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

山本委員長 これにて岩屋君の質疑は終了いたしました。

 次に、遠山清彦君。

遠山委員 公明党の遠山清彦でございます。

 安倍政権発足後、初めて予算委員会で質問させていただきます。どうかよろしくお願いいたします。

 まずは、安倍総理、また閣僚の皆さん、御就任おめでとうございます。

 私は、政治に安定を取り戻し、そしてまた景気回復の環境というものを迅速に整えてきた安倍内閣に対する内外の評価というものは非常に高い、このように思っております。

 この背景には、私は、まやかしの、言葉遊びのような政治主導ではなくて、やはり政治決定の仕組みを制度化して、そして予見可能性を高めつつ国家国民のために仕事をこなしていくという私ども政府・与党の姿勢に対して大きな評価があり、また、それが基盤となってこのような状況になっていると思います。

 しかし、私が申すまでもなく、政治というのは一寸先は闇でございますし、また、国際社会の中には不安定要素が非常に多いという状況でございますので、不測の事態がいつ起こるかわからないという意味では、私ども政権与党がしっかりとした緊張感を持って、そして、丁寧に、説明責任を果たしつつ事に当たっていくべきだということを総理と確認させていただきたいと思います。

 公明党は、私もしっかりと安倍政権を支えてまいりたいと思います。時々文句を言うことがあるかもしれませんが、よろしくお願いいたします。

 さて、持ち時間十五分でございますので、簡潔な御答弁をお願いしたいと思いますが、まず、けさ閣議決定されました四月二十八日の主権回復の日式典について伺います。

 私は、現在、公明党沖縄方面議長をさせていただいておりまして、先週末も沖縄におりました。総理御承知のとおり、この式典については、沖縄県民の中から強い反発が出ております。昨日も西銘恒三郎委員がやりとりをされたようでございますけれども、この理由としては、やはり沖縄の本土復帰は戦後二十七年後であり、一九五二年、昭和二十七年にサンフランシスコ講和条約が発効した時点からも、約二十年間、沖縄は本土復帰がおくれたということが背景にございます。

 そして、総理、きょう私が強調したいのは、この二十年間、おくれて本土に復帰するまでの間に、ずっと、今日まで問題になっておりました沖縄の広大な米軍基地が、強制的に、地元では銃剣とブルドーザーによって整備をされたということでございます。

 総理、私は、きょう、一点確認をさせていただきたいのと、一点御提案をさせていただきたい、このように思っております。

 まず確認でございますが、この主権回復の日の式典の際に、沖縄を初め、奄美諸島、小笠原諸島、それらの地域が当時まだ米国統治下に置かれていたという歴史的事実を十分に踏まえて、特に沖縄については、先ほど申し上げましたように、今も続く基地の過重負担の軽減の実現に対する総理の具体的な決意というものを示していただきたい。これが一点目の確認でございます。

 二点目につきましては、総理も御出席になったことがあるかと思いますが、毎年六月二十三日、沖縄慰霊の日でございます。この日は、沖縄県糸満市の平和の礎という場所で、沖縄全戦没者慰霊祭という式典が開催をされるわけでございます。ぜひ、安倍総理、本年のこの式典に沖縄で参加をしていただきまして、沖縄の現地に行って沖縄県民に寄り添うという姿勢を強固に示していただきたいと思いますが、御答弁をお願いいたします。

安倍内閣総理大臣 もう既に説明をしておりますが、もう一度、四月の二十八日、この式典の意義についても繰り返させていただきます。

 政府としては、サンフランシスコ平和条約が発効してから六十年の節目を記念して、我が国による国際社会の平和と繁栄への責任ある貢献の意義を確認するとともに、これまでの経験と教訓を生かし、我が国の未来を切り開いていく決意を確固としたものとするために、本年の四月二十八日に政府主催で記念式典を挙行することといたしました。

 もちろん、この式典に当たっては、奄美、小笠原、沖縄が戦後の一定期間、我が国の施政権の外に置かれたという苦難の歴史を忘れてはならないということは当然のことでございます。

 まずは、日本がこのサンフランシスコ平和条約にのっとって、残念ながら、本当に残念ながら、沖縄、奄美、小笠原については施政権の日本への返還はできなかったのでありますが、その道への一歩を踏み出そうという思いの中で、大変そういう地域の皆様には申しわけないとの思いの中で、まずこのサンフランシスコ平和条約を発効させることによって独立を、主権を回復したわけでありますが、当然、そのときに、その段階では、沖縄を初めそういう地域は主権を回復できなかった。これは本当にじくじたる思いであった。その思いも我々は共有しなければならない、こう思っているわけであります。

 戦後の一定期間、我が国の施政権の外に置かれたという苦難の歴史をまず忘れてはならない。そして、苦難を耐え抜かれた先人の心情に思いをいたし、沖縄の方々の抱える基地負担の軽減に取り組むとともに、奄美、小笠原、沖縄を含めた我が国の未来を切り開いていくという決意を新たにしていくことが重要であろう、このように考えております。

 この四月の二十八日の記念式典についても、私自身も、また山本一太担当大臣も、沖縄の皆さんに説明を尽くしていきたいと考えているところでございます。

 そして、もう一点でございますが、沖縄戦没者追悼式でございますが、戦没者のみたまを慰めるとともに、世界の恒久平和を願う沖縄の心を発信する目的で、毎年、沖縄県が六月の二十三日に実施しているものでございまして、六年前、私も総理大臣として出席をしたところでございます。

 ことしのこの式典につきましては、参列をしていくという方向で調整をしていきたい、このように考えております。

遠山委員 総理、ぜひ出席をお願いいたします。

 そして一つだけ。総理、沖縄に観光客として若者がたくさん来られるんです。総理は主権回復の意義を若い国民の皆さんに周知をするということで主権回復の式典をされるというのはわかります。しかし、今沖縄に来ている若い人たちは、何で沖縄にこんなにたくさん広大な米軍基地があるかわからないんです。それは、主権回復を日本が果たしてから二十年の間に整備されてしまった。その事実も若い方々は知りませんから、それはしっかりと政府として発信をしていっていただきたい、このようにお願いを申し上げます。

 次に、太田国土交通大臣に伺います。

 私、この四年間、政策論として国交省に改善を要望してまいりました、いわゆる自動車整備点検制度の問題について伺いたいと思います。

 道路運送車両法が平成七年に改正されまして、車検制度について、いわゆる前検査後整備という新制度が導入をされました。これは一言で言えば、車を先に車検を通して、後で車の整備をしてくださいよという制度でございます。

 ところが、一部の自動車ユーザーと代行業者及び未認証工場に問題がありまして、本来実施すべき整備を怠る実態というものが指摘されてまいりました。また、自家用自動車につきましては、定期点検を怠る実態も指摘されて久しいわけでございますが、なかなか改善が見られなかったわけでございます。

 これらの問題について、太田国土交通大臣になりまして新たな改善策に対する期待が非常に関係者から多いわけでございますが、これから国交省がどういう改善策をされていくか、お答えをいただきたいと思います。

太田国務大臣 かねてから、大事な問題だということで、御指摘を遠山委員にはいただいております。

 自動車の安全確保を図る上で、点検整備の確実な実施は最も大事だという認識をしております。このため、道路運送車両法においては、ユーザーに対して点検整備の実施を義務づけているという状況にあります。しかし、御指摘のあったとおり、車検代行業者や未認証工場などの問題があります。必ずしも点検整備が行われていないという状況があると認識をしております。

 このような状況を打開するため、改善するためには、まず、ユーザーに対して点検整備の重要性についての周知をする、そして、点検整備を促すための環境整備を行わなくてはならない、こう思っています。

 具体的に申し上げます。点検整備の確実な実施について指導を徹底するとともに、点検整備の実施状況や指導の履歴を車検証に記載する、こうした措置をとりたい、このように思っております。

 また、国の認証を受けずに分解整備を行う工場への対策も重要である、こう認識をしています。具体的には、このような工場を特定するために、車検代行業者に車検を依頼したユーザーに点検整備の実施状況を確認するはがきを送付する、そして、未認証行為につながる情報の収集や立入検査を行ってまいりたい、このように思います。

 以上の新たな対策を、可能なものから平成二十五年度より実施することとして、点検整備の確実な実施を図ってまいりたいと決意をしております。

遠山委員 大臣、大変ありがとうございます。

 これは非常に画期的な改善策でございまして、今まで車検証には、その車検証の車がどこの工場で整備されたかという記載がなかったわけでございますが、今大臣がおっしゃった、これは平成七年以来の最大の抜本改革、改善策を提示していただいたというふうに思っております。

 自動車整備業界というのは、大臣御承知のとおり、自動車関係諸税の徴税事務をボランティアで、無償でやっていただいている団体でございますし、法律の第一条でも、この業界の健全な発展が路上における自動車の安全性確保に不可欠であるというふうな、公共性の高いところでございますので、ぜひ今大臣がおっしゃった方向できちんと点検整備が行われる仕組みに改善をしていただきたいということを、感謝とともに申し上げたいと思います。ありがとうございました。

 最後になりますが、田村厚労大臣、御足労いただきまして、ありがとうございます。

 きのうも、総理とともに私も式典に出席をさせていただきました。三・一一から二周年の追悼式典が行われたわけでございますが、この東北の復興関連で、災害弔慰金につきまして、一部のマスコミ報道によりますと、被災三県において、震災関連死、これは震災が起こった後に亡くなられた方々に対する弔慰金の厳格な審査が行われており、申請者の約二〇%が不認定となっていると報道されております。

 東北の被災地における災害弔慰金の負担は、現在、事実上一〇〇%国費で充当されておりまして、また、この弔慰金の本来の趣旨はお見舞金ということでありますから、どこまでも御遺族を支援するという立場に立って、柔軟な運用をお願いしたいと思いますが、大臣から一言御答弁いただきたいと思います。

田村国務大臣 委員も御承知のとおり、災害弔慰金、自然災害等々でお亡くなりになられた御家族、御遺族の皆様方に市町村から支給をされるものであります。

 今言われたとおり、この東日本大震災に関しまして、国費ということでございますが、基本的に、審査会で有識者、弁護士やお医者様が判断をいただくわけでございます。二年たってくると非常に難しいという部分はあろうかと思いますけれども、これは適切に運用いただかなければならないわけでありまして、もちろん、していただいているという認識はありますが、もしそうでないとすれば、そこは適切に対応いただくように指導をしてまいりたいというふうに思っておりますので、また具体的に何かございましたら、御指導いただきますようにお願いいたします。

遠山委員 終わります。

山本委員長 これにて遠山君の質疑は終了いたしました。

 次に、長妻昭君。

長妻委員 民主党の長妻昭でございます。

 本日は、質問の時間をいただきまして、ありがとうございます。総理中心に質問をいたしますので、端的にお答えをいただきますようお願いを申し上げます。

 まず、いわゆるアベノミクスでございますけれども、この政策の最終到達点、最終目標というのはどういうものなのか、端的に教えていただければと思います。

安倍内閣総理大臣 最終目標は、日本の景気が上昇して、そして国民の給与が上がっていく、緩やかにずっと大体上がっていくという中において力強く経済が成長していく、こういう状況をつくっていきたい、こう思っているところでございます。

 先般、委員も勤めておられた日経新聞にも出ていたんですが、景気ウオッチャーの調査においては、株高を背景に小売の売り上げがふえ、円安でメーカーの受注が改善したという声が相次いだということでございまして、このウオッチャーの判断においては、二月の段階で、現状では五三・二ポイント、これは六年十カ月ぶりの高水準でございますし、先行きについては五七・七ポイント、これは過去最高のポイントになってきております。

 あと、課題は、これからしっかりと実需が出てきて、そして収入がふえていく、そういう方向に向けて、しっかりと政策、三本の矢を前に進めていきたい、このように思っております。

長妻委員 総理が冒頭おっしゃった、給料を上げていくということが一つの最終到達点、これは私も同感です。経済政策の最終目標は、お給料を上げる、そして雇用を拡大する。と同時に、やはりGDPにあらわれない価値、子育てとか家事とか地域活動、これは数字に全くあらわれませんけれども、こういうものを豊かにしていくというのも不可欠なところでございます。

 私どもも、三年三カ月政権を担当させていただいて、雇用を拡大、賃金を上げる、この目標に向かっていろいろな取り組みをしてまいりました。一つ申し上げたいのは、我々が政権についたときの失業率が五・四%、そして、政権を去る直前の失業率が四・三%。こういうことで、大幅に改善をしてきたという自負はありますが、道半ばでございました。

 安倍内閣の経済政策、私の理解では、上を引っ張り上げて、トリクルダウン効果というらしいんですが、おこぼれが下の方に落ちていく、そして全体を豊かにしていく。ある意味では、格差が拡大をしていく傾向にもあるのではないか。

 我々は、人への投資である格差是正策などを通して、下支えをして内需を拡大していく、そういうような形で経済を再生していく。

 こういうようなことで、金融緩和にしても、初めて日銀と私どもの政権が一%の物価上昇のめどという文書も結ばせていただき、そして、成長戦略ということで、我々の政権のときには、ライフ、グリーン、農林漁業、そして中小企業対策、四本の柱を進めていくということで、自然エネルギーとかナノテクノロジー、あるいはiPS細胞を中心とした医療技術、医療・環境技術立国を目指す。これは、今やられている三本目の矢と重なる部分がありますので、ここは推進をしていただきたいというふうにも思っているところであります。

 そして、我々の政策は、公共事業については現政権のような大盤振る舞いはせずに、財政規律を守りながら経済運営をする。こういうような形で、失業率、私はGDPよりも失業率という指標が非常に重要だというふうに考えておりますので、このような対策をとってきたところです。

 そして、安倍総理にもう一点お伺いしたいところは、アベノミクスを進めていったときに、格差は今よりも拡大をしていく方向になるのか、そうでないのか、ここら辺はどういうふうにお考えでいらっしゃいますか。

安倍内閣総理大臣 まず、今の経済政策を進めていくことは、国民の収入をふやしていく、これは、これしかないという道と言ってもいいんだろうと思います。つまり、今までのようにだらだらとデフレを続けていたのでは、既に五十兆円の国民の収入が失われているわけでありますから、まず取り戻すことから始めなければならないということであります。

 当然、その中において、頑張る人が報われる社会でありますから、大きな富をつくり出す人も出てくるかもしれませんが、基本的には、景気が上昇していくことにおいて生産性も上がっていく中において、三本の矢を打っていくことによって、例えば最低賃金が上がっていくことにもつながっていくわけであります。

 ですから、我々としては、日本人としていわば許容できる範囲内に格差がおさまるようによく見ていきたい、こう思っております。

 例えば、株価が上がっていく。これは、株を持っている人だけが利益が上がるかといえば、例えば年金の運用においても、安倍政権ができて、五兆円、運用益が出たんですね。消費税二%分ですよ、株価の上昇によって。あるいはまた、JT、たばこ産業の株を売却する。これは、被災地の再建に役立てるためにJT、たばこ産業の株を売却しますが、最近の株価の上昇によって、当初、民主党政権時代に見込まれていた五千億円から、九千七百億円、つまり四千七百億円も、皆さん、被災地のために使えるようになったんですよ。

 つまり、株価の上昇というのは、単に株を持っている特定の人が利益を得るのではなくて、広く、多くの方々に均てんすることも可能になっていくんだろうと思います。

 同時に、それによって資産効果が出てきますから、先ほども日経新聞の記事から街角景気ウオッチャーの話をさせていただきましたが、お金を使ってみようかなと思う人がお金を使っていけば、小売店の利益も上がっていく、小規模事業者の収入もふえていくということにもつながっていくことを期待したい、このように思っております。

長妻委員 格差については拡大をするのかしないのか、ちょっと明確なお答えがなかったんですが、当然、年金の運用で、株価が上がればその分年金の運用利回りが上がりますから、収益は上がりますが、ただ、下がればまたもとのもくあみということで、持続可能かどうかというのが大きなポイントだと思っております。

 格差拡大については、ちょっと総理の御意見をお伺いしたいんですが、小泉内閣では、小泉総理は、格差拡大ということは悪いことではないというような趣旨の御発言もされておられましたけれども、格差を拡大するということについて、これはやむを得ないと考えるのか、あるいは、格差を是正するというのは国の重要な仕事の一つと考えるのか、どちらのお立場でございますか。

安倍内閣総理大臣 安倍政権においては、いわば分配だけを考えて縮小均衡していくという考え方はとりません。我々は、経済を成長させて、プラスアルファの富をつくっていく、そのことによって国民みんなの収入をふやしていくという政策をとるわけであります。

 その中において、能力のある人がみずみずしくその能力を生かしていく、世界の中で能力を生かしていくことによって、頑張って稼いでもらいます。当然、その中で、税金もたくさん払っていただきますし、社会保険料も払っていただく。それがあってこその社会保障制度なんだろうと思います。

 当然、日本という社会は、みんなで朝早く起きて田を耕して、水を分かち合って、収穫をともに喜ぶという社会ですから、日本というのは、ある許容できる格差の範囲というものもあるんだろうと思います。と同時に、その格差が固定しない、何度でもみんなチャンスがある、チャレンジできるチャンスがあるということが大切なのであって、一生懸命頑張った人も頑張らなかった人もほとんど同じですよという社会は、決して私はいい社会だとは思わないということは申し上げておきたいと思います。

長妻委員 これは二律背反じゃないと思うんですね。例えば、分配か成長か、どちらですか、こういう立論をされる方がいらっしゃるんですが、それは、何にも成長しないで、パイがなくて分配というのはナンセンスであります。これはそのとおりだと思います。

 我々も、成長を求めていくということは当然ですけれども、格差が拡大しないように成長させていく、これこそが経済成長のむしろ基盤をつくる。

 格差を拡大させないということは、これは、リチャード・ウィルキンソンというイギリスの社会疫学者が有名ですけれども、格差が拡大すると、これは資料も入れておりますが、お子さんの学力が下がっていく。あるいは、格差が拡大する社会においては、富裕層も精神疾患がふえる、あるいは犯罪がふえていく、そして社会が不安定になるということで、格差を一定程度に抑えるということは人への投資でもあって、社会の活力と経済成長のむしろ基盤をつくっていくという考え方も、これもきちっと堅持をしないといけない。

 我々の政権は、そういう格差是正策をいろいろとってきたつもりです。求職者支援制度、今までは失業者の方にお金を差し上げるだけでありましたけれども、職業訓練も同時に差し上げたり、あるいは子ども手当、中学生にも今も支給を月一万円されておりますし、あるいは高校の無償化。こういう、人への投資、格差の是正策というのも経済成長の基盤をつくるというお考えもぜひ持っていただきたいということをお願い申し上げます。

 そして、私が気になりましたのは、総理の施政方針演説、私も読ませていただきましたけれども、年金という言葉が全く出てこないところでございまして、私は、本当に年金制度というのは大変重要な、社会保障というか、国民生活の中核を占めるものであるというふうにも思っております。

 総理にお伺いしたいんですけれども、年金制度については、国家百年の計に立ったときに、今の制度を微修正でいくのか。我々は抜本改革というのを申し上げておりますけれども、制度をどういうふうにするのかという総理のお考え。抜本的に改革していくのか、今の制度のまま微修正でいくのか、どういうお考えをお持ちか、お伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 年金制度においては、現在の年金制度の安定性については、御党の野田総理も、質疑において、これは安定性が確保されているというふうにおっしゃっています。岡田副総理もそうであります。

 そのことを前提に申し上げたいと思うわけでありますが、累次にわたる改正によって、委員も御承知のように、マクロ経済スライドを導入して、そして給付と負担のバランスに対して給付に一定の水準の抑制がかかるような、そういう仕組みを導入しているわけであります。

 それにのっとって、デフレ下にあってはデフレにスライドしていくわけでありますが、インフレ下においても〇・九%までは抑制されるということにおいて、給付において給付と負担のバランスをとるような、そういう仕組みをつくっていることによって基本的には安定性は確保されていると言ってもいいんだろうと思います。

 しかし同時に、低年金者、低所得者に対する対応も必要なんだろうと思いますし、そして、被用者年金の統合ということについても進めていくということなんだろうと思いますが、そういう必要な改革を行っていくことによって年金制度に対するさらなる信頼を高めていきたい、このように思っております。

長妻委員 残念ながら、被用者年金一元化も法律が通っておりまして、抜本改革とはほど遠いと思っております。

 国家百年の計に立ったときに、今の年金制度、受給額の格差が大変、低年金と高い年金をもらっている方々の格差や、あるいは無年金者が非常に多い。自営業の年金であったはずの国民年金が、今は非正規の方の年金になって、不安定雇用年金の様相を呈している。あるいは、転職するたびに、自営業から例えば公務員、公務員から自営業、あるいはサラリーマンから自営業とか、年金がかわってしまうというようなこともあって、やはりここで、国家百年の計に立てば、抜本改革をしなきゃいけないというふうに思っております。

 これは三党協議も国民会議もありますので、ぜひ、そういう議論を進めていただきたいというふうにも思います。

 そして、今格差の話を申し上げましたけれども、一つ、我々、大きく心配をしていることがあります。低所得者の方の対策が削減をされて、日本国の低所得者の方が大きく負担増になるのではないかという懸念を持っておりますので、それについて質問をさせていただきたいと思います。

 これは、主な高齢者政策ということで、生活保護の基準が引き下がると、これまでの前例としては、個人住民税の非課税ラインが下がる。

 この個人住民税については、非課税か課税かの所得ラインについては、これは総務省の文章でもありますけれども、個人住民税の非課税限度額については生活保護基準を勘案して設定をする、こういうことになっております。常識的に考えると、生活保護の基準がことし八月に戦後最大の下げ幅として下がるときに、地方税の最低ラインも下がる。

 そうすると、今まで地方税を払っておられなかった低所得者の方が払うようになると同時に、個人住民税が非課税の方に対する優遇策というのもかなりたくさんあるんですが、これは主な三つだけピックアップしましたけれども、例えば介護保険料、これは国の基準額ですけれども、地方税非課税の方は三千七百二十九円が、課税になると六千二百十五円に一カ月の保険料がなる。今、非課税でこの三千七百二十九円のラインにいらっしゃる方が一千七百二十七万人も大きくいらっしゃる。

 特定入所者介護サービス費、これは特養とか老健に入っておられる方の一カ月の負担でありますけれども、非課税の方は三万円ですけれども、これが課税になると五万二千円。今、三万円の非課税の枠になっている方が八十九万人おられる。これが、非課税のラインが下がると課税になって、この八十九万人の中の何人かは高いラインになっていく、低所得者にもかかわらずですね。

 もう一つは、高額介護サービス費利用者負担ということで、いろいろな介護を受けても日本では上限が決まっておりまして、一カ月二万四千六百円ということでありますが、これは非課税の方々ですけれども、課税になると三万七千二百円。非課税のラインに入っている方が八十五万人ということで、非常に心配をしているところであります。

 総務大臣にお伺いしますけれども、今回、八月に、二・二%という戦後最大の、生活保護基準が下がりますが、これは地方税も勘案して決めるわけでありますので、地方税については、生活保護基準というのが地方税最低ラインを考える一番大きいファクターになるというふうに考えてよろしいんですか。

新藤国務大臣 個人住民税の非課税限度額、これは確かに、非課税限度額を定める際の参酌する基準として、生活扶助額、これが設定されている、勘案されていることはございます。

 しかし、現実の作業といたしましては、これはまず最初に国民の皆さんに不安のないように申し上げなきゃいけないんですが、二十五年度の影響はございませんということですね。二十五年度の生活保護の基準が見直しされるのは、二十五年の八月以降でわかってくるわけでありますから、それを踏まえて二十六年度の税制改正が行われて、そこで、税制改正論議の中で、また与党の税調の中で、この住民税の非課税限度額の数字を幾らにするか、これは税調の中で議論をされる。その中で、それを踏まえて我々としては措置をしていく、こういうことになるわけでございます。

長妻委員 勘案するというお話がありましたが、今おっしゃったように、八月から生活保護基準が大幅に下がるときに、これは来年度ではなくて、来年の四月からの課税最低ラインが変わる可能性がある、つまり、ことしの年末に議論をする、こういうお話だったと思います。

 私も、いろいろな専門家の方に、学者さんあるいは官僚の方にも綿密にお話をお伺いしましたけれども、やはり、これだけ生活扶助基準が下がれば、それはもう下げざるを得ないと。幾ら政治の力で何かがあったとしても、税は理屈ということなので、それはそういう方向になるだろうという話も聞いておりますので、大臣からも、そうは連動させないというお話はなかなかできないと思うんですよね。

 もう一つ、心配なところ。日本は、子供の貧困率、相対的貧困率、格差というのが大変大きい国です。

 日本は、これは専門家の中では驚きを持って迎えられた数字があるのが、所得再分配をした後に、先進国で唯一日本だけが子供の格差が広がる、相対的貧困率が高くなる。

 普通は、所得再分配する、社会保険料を払ったり税金を払うと、格差が縮まるんですね。お年寄りは縮まりますが、日本の場合は、お子さんの格差、お子さんの世帯の格差はむしろ拡大する。つまり、いろいろな社会保険料や税金がかなり高齢者偏重型になっているということもあり、そして、一人親の相対的貧困率、格差は、先進国、OECD三十カ国で一番高い、こういう問題があります。その中で、お子さんに関しても、今と同じようなメカニズムで心配があるわけでございます。

 つまり、生活保護基準を前提に決めている、生活保護受給者じゃない方々の低所得者のお子さんの対策も、あなたは低所得者だというふうに認定された方が、ことしの八月から生活保護基準が下がると、生活保護じゃないんだけれども、低所得者の定義も下がりますから、あなたはきょうから低所得者じゃありませんからこれは受けられませんと。こういうような懸念が非常に広がっていて、格差が拡大をするということがあってはならないと私は思っております。

 例えば就学援助という、私の地元では公立中学校のお子さんの三割もの方が受けておられる低所得者対策、これは現行でいうと、給食費や修学旅行などの実費が全額出ます。ところが、対象から外れると、なしになる。今、この対象の方が、全国で百四十二万人もお子さんがいらっしゃる。

 そして、高等学校等就学支援金というのは、一カ月、さっきは年額ですね、これは月額でありますけれども、民主党がやった高校無償化政策に伴って、私立学校も補助を出すようにいたしました。一万九千八百円の補助が毎月出ておりますけれども、これが対象から外れると一万四千八百五十円ということで、減る。

 幼稚園就園奨励費補助、これも年額であります、公立は二万円。私立だとかなり大きい金額、これは基準額でありますけれども、年間十九万六千二百円出る。これも減る。

 これは補助ですね。補助額が御家庭に出るということであります。

 そして、自己負担でいうと、保育料、現行の制度で住民税が非課税の場合は一カ月九千円、これが非課税から外れると一万九千五百円。これは三歳未満の方です。三歳以上であると、六千円から一万六千五百円。いずれも約一万円増額になるということで、これは私立だけが集計されておりますが、私立保育所に入っている方だけで今優遇を受けている方が約十八万人。公立はもっといらっしゃるだろうということであります。

 これについて、私、文科大臣に二月七日に質問をしたときに、文科大臣は胸を張って、この制度、四つ、これについては対象は現状のまま維持すると。生活保護基準が下がっても、ここの基準は一切変えないで、この対象者は現状のまま維持します、こういうふうに明言されたんですが、これは本当ですか。

下村国務大臣 お答えいたします。

 まず、子供の貧困化の問題は、これは貧困率がさらに高まるようなことがあってはならないというふうに思いますし、御党では山井議員が、子供の貧困化対策防止法等、議員立法でお考えになっている。これについては、自民党でもこれに対応して議員立法の準備をすることによって、貧困がさらに連鎖しない、それが子供の教育環境を悪化させないような対応をするように、自民党としても努力をさせていただきたいと思います。

 そして、今回の文部科学省の関係では、影響が生じ得る就学支援については、これは影響が出ないようにしてまいりたいと思います。既に、平成二十五年度の予算案においては、従来ベースの事業実施に必要な予算措置をしているわけでございます。

 その上で、国の仕組みを手当てする必要があるものについては、基準見直しの時期が八月であることを踏まえ、影響が生じないよう適切な措置を講じることとしております。また、準要保護者に対する就学支援など、これは地方自治体が実施する事業でございますね。この各自治体に対しては、国の取り組みを説明の上、その趣旨を理解していただくよう依頼をすることとしております。それだけの財源は、二十五年度、用意をしてあるということでございます。

 そして、高校無償化の問題が出ましたが、これは、我々は、民主党政権における高校授業料無償化は抜本的に見直しますが、しかし、廃止をするということでなく、継続をします。

 我々としては、さらに、低所得者により厚い手当てをしていきたい、それから、公私間格差を是正をしていく、こういう観点から、これは実際の実行は平成二十六年度以降になりますが、今まで以上に、生活保護が切り下げになったとしても、高校授業料無償化については、二十六年度以降、より手厚い対応をするように今準備をしているところでございます。

長妻委員 今にわかに出た話でありまして、生活保護で下がった分を補填する拡充であれば、同じということだと思います。

 前回の答弁では、基本的には下げさせない、減らさない、現状のまま維持するというふうに断言されましたけれども、できるだけ頑張るというような答弁になったのは、これは、実際、地方自治体なんですね、例えばこの就学援助をやっている事業主体は。ですから、国から補助金は出ていないんですよ。そういう意味では、国がああしろこうしろと言うのはなかなか難しい。

 地方自治体も、多くの方にお話を聞くと、それは独自にやらせていただくというところもありますので、私は、八月以降あるいは来年度、再来年度以降、こういう形が現実のものになってくる可能性が高いというふうに思っておりますので、格差是正策、ぜひお考えいただきたい。

 そして、もう一つは生活保護本体の話でありますけれども、今回、戦後最大の引き下げということで、特にお子さんを持っておられる世帯が、生活扶助でいうと最大一〇%、三年間で下がる。

 生活保護は、七人に一人がお子さんなんですね。そして、貧困の連鎖ということで、四人に一人のお子さんが、生活保護を受けていても、大人になっても生活保護から抜けられない。貧困の連鎖が起こっております。我々の政権でこれを何とか是正しようということで、母子加算を復活したり、児童扶養手当を父子にも出したり、いろいろな手だてをいたしましたけれども、それが非常に手薄になっているのではないかという、大変危惧を持っています。

 もちろん、生活保護は、不正は犯罪ですから、徹底的に取り締まるということで我々のときに強化をして、この告発件数もふえているはずであります。また、全国の銀行協会とも連動して、口座を、お一人の方を申し上げれば全国の銀行の口座が調べられる体制も我々のときに構築をいたしました。不正はもちろん徹底的に摘発しなきゃいけないんですが、ごっちゃにして、全部が全部何かおかしいような議論というのは、私は大変危険だと思っているところであります。

 今、生活保護の自殺者の方の率を調べましたら、私、驚きました。平成二十三年の率が最新なんですが、十万人当たり、生活保護の方の自殺者が五十八人。生活保護じゃないというか、生活保護も含む日本国全体でいうと二十四人ということで、自殺率が倍でございまして、これは本当に注意深く、我々、憲法二十五条、国家の礎の大きな一つだと思っております。

 その意味で、私、自民党のやり方というのは非常に乱暴だと。我々も、生活保護を見直すなとは言いません。我々も見直しを検討しておりましたが、これほど一律に一〇%、最大で下げていくということ。

 これは、例えば属性を見ていただきますと、生活保護の方、高齢者世帯が四三%なんですね。母子世帯が七・四%。障害者の方は一一%。もちろん、一般御家庭よりも比率は高い。傷病者が一九・一%。うつも多いです。その他の世帯というのは一八・五%ということで、その他は若者かというと、全員がそうじゃないんです。

 これは世帯主の話ですので、世帯主が現役の方で、例えばこの中には一割ぐらいは六十五以上の方もその他世帯でいらっしゃるわけでありますので、それぞれきめ細かくその中身を見て、そして見直すという議論、そしてほかの制度へ波及しないという議論、これが私は非常に重要だというふうに感じているんですが、総理、今までの議論を聞いていてどういう御感想をお持ちか、ぜひ一言お願いいたします。

田村国務大臣 今、子供の世帯の話が出ました、生活保護で。

 これは御理解いただきたいんですが、そもそも、生活保護の見直しは前政権下で進めてまいりました。しかし一方で、四・八%、物価下落分が大きいというお話がございましたが、今、子供の世帯では一〇%下がるというお話がありました。四・八%、物価部分でありますが、それ以上に、五・二%は、民主党政権下から進めてまいりましたゆがみの調整でかかってくるんです。ですから、我々の政権が、一〇%、子供の世帯を狙い撃ち、引き下げ幅を大きくしたようなイメージでありますけれども、そうではないということは御理解をいただきたいと思います。

 その上で、それぞれの分野に関しては、もう御承知だと思いますけれども、高齢者の方々は、今回、ゆがみの調整でそれほど下がらない。それから、障害者の方々は、障害者の加算が生活保護にはございます。子供たちには、当然のごとく、教育扶助等々、いろいろな制度がございますので、そういうもので対応させていただくということでございます。

安倍内閣総理大臣 基本的に、生活保護は、生活を普通にしていて、しかし、不幸にして生活あるいは仕事の基盤を失う場合がありますから、あるいは病気をしたということもあるでしょうし、そのときに、しっかり文化的な生活を保障する。まさにこれは委員が御指摘になったように憲法で保障されているわけでありますから、当然、この生活保護制度、しっかりとしたものにしていかなければなりません。

 同時に、国民的な支持、これは国民から集める税金で給付をするわけでありますから、国民的な支持も必要ですから、不適切な給付があってはならない、これは当然のことなんだろうと思います。

 その中で、ただいま厚生労働大臣が答弁したように、今回の是正はゆがみを適正化するということであって、まず削減ありきでは全くないし、財政的な要件からそういうことを行ったわけではなくて、あくまでもゆがみを適正化していこうということであって、その中においても、子供たちやお年寄り、また障害者の方々については、しっかりと目配りをしているということでございます。

長妻委員 どうしても人への投資が非常に手薄になって、コンクリート、公共事業、十五カ月予算でいいますと七・七兆円の公共事業で、我々のときの一・五倍ぐらい。公共事業については、先進国の中でも今でも高い方なんですね。どんどん下がってきておりますけれども、これがまた先進国の中で高どまりをする。

 そして、もう一点、プライマリーバランスでありますけれども、これについても、新しい試算では国際公約が果たせないのではないか。下の赤いところまで落ち込んでおります、安倍政権で。これについても懸念をしておりますので、引き続きの審議を要求して、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

山本委員長 これにて長妻君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

山本委員長 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房総括審議官前川守君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山本委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 日本維新の会の小熊慎司でございます。

 東日本大震災、そして東電の原発事故災害から、昨日で二年が経過をしました。昨年、私は地元福島県の追悼式に出席をし、昨日は政府が主催する追悼式典に出席をさせていただきました。

 その際、各党代表の献花が行われていたわけでありますけれども、日本維新の会は、石原、橋下両代表が公務等のため出席できず、松野頼久国会議員団幹事長が、党としての、党を代表しての献花をさせてほしいと申し入れをさせていただいたにもかかわらず断られたということとなっております。

 この式典に出席したさまざまな方々から、私も含めて、日本維新の会はこの大震災に対して真摯に向き合わないのかと、さまざまな御批判の声も頂戴しているところでありますけれども、我が党は決してそういうところではありません。

 総理も、就任後初めて、視察先に福島県を選んでいただきましたけれども、我々も、総選挙後、国会議員団としての最初の視察を福島県で行い、そしてその後、不肖私が日本維新の会の復興推進本部長として復興推進本部を立ち上げたところであり、しっかりとこの復興に関しては、また犠牲になられた方々に関しては真摯に向き合っているところでありますけれども、こうした政府の対応により我々のその真意が伝わっていないというのが昨日の出来事でありました。

 内閣府準備室の役人の見解では、党代表でなくてはならないといったかたくなな姿勢によってこのような事態になったことは、党として大変遺憾なことでございます。国民の皆さんの思いを受けて国民の皆さんの税金で式を運営する国家公務員たるもの、肩書にこだわらず公党の代表が全員献花できるように配慮をしていただくことが、今後、しゃくし定規な姿勢ではなくて、そうした弾力的な対応をすることが必要であるというふうに考えます。

 そこで、役人の性質にも大変精通しておられ、私自身も個人的に大変御尊敬を申し上げ、同じ東北人として親和性を持っている菅官房長官に、この件に関して御見解を求めます。

菅国務大臣 きのうも私、式に出席をしておりまして、維新の会の代表者の方の献花がなかったことを実はけげんに思っていました。きょう、質問通告を受けまして、事務方から説明を受けました。余りにも代表または準じる方にこだわり過ぎて柔軟性に欠ける対応であったというふうに思います。責任は全て私でありますので、維新の皆さんに大変不快な思いをさせたことをおわびを申し上げたいと思います。

 現に、私、玄関で、松野幹事長、小沢国対委員長にもお会いをさせていただきました。また、多くの維新の皆さんも出席をされておりました。

 今後そうしたことがないように、私ども、これからの式典に十分気をつけて対応させていただきたいと思いますので、御理解を賜りたいと思います。

小熊委員 官房長官の真摯なる御答弁に感謝を申し上げますとともに、しっかりと、これは政局にするわけにもいかないですし、政策の話でもありませんので、あえて我が党の立場を、この際、官房長官の言葉を通じて、改めて姿勢を表明させていただきますということを冒頭述べ、また感謝も述べて、質問に移りたいと思います。

 本日は、総理の政治姿勢ということであります。

 決められない政治から決める政治、決められる政治へということは大変重要なことでもありますし、この震災以降、もう二年がたった、まだ二年しかたっていない、いろいろな思いがある中で、政治の果たすべき役割というのは山積をしております。震災の案件だけではなくて、これから日本の発展に向けてはさまざま解決しなければいけない課題があるところでありますので、決められない政治から決められる政治、そうした視点に立って、以下、質問をさせていただきます。

 総理自身も、全閣僚に、全員が復興担当大臣だという意識で任に当たってくれ、そうした旗頭のもとで対応しておりますけれども、やはり、東日本大震災そして東電による原発事故の収束、克服なしには、日本の発展はありません。

 この原子力災害の中におきまして、さまざまな被害をこうむっているところでありますけれども、私の地元は会津であります。直接的な被害があったと言える地域ではありませんが、風評被害で大変苦しんでいる地域であります。

 そうしたさなか、ことしは、民間放送の「白虎隊」という七時間ドラマに始まり、そしてまた、国民の皆さんの多くに視聴していただいております、総理も見ておるかどうかわかりませんけれども、NHKの大河ドラマ「八重の桜」で、こうしたことをきっかけに、もう一度再びふるさとの輝きを取り戻そうと、地元の皆さんも勇気づけられているところであります。この会津の話が、戊辰戦争から明治時代の苦難の道、これがまさに復興につながるということで、NHKも「八重の桜」を決定していただいたのではないかなというふうに私自身は推測するところであります。

 長州の総理、私も、会津でありながら日本維新の会でありますけれども、こうしたきっかけのもとに風評被害を払拭していこうというところであります。今、努力はしているところではありますけれども、例えば、観光客の入り込み数は、戻りつつある数字もありますけれども、教育旅行なんかは戻っていないという現状もまた現実であります。

 そこで、最近、これはまだ一般的な概念化はされていませんけれども、こうした放射線に対する、原発事故に対する対応としては、国民の皆さん、また広く世界にも、リスクコミュニケーションといったものをどう構築していくかということが今、国内で盛んに議論をされているところであります。

 まず、この風評被害対策ということで、具体的に、リスクコミュニケーションをどう国内でしっかりと構築していくのかということをお聞きいたします。

森国務大臣 小熊委員と同じ福島県でございまして、きのうは本当に、お互いに胸の詰まる一日だったと思います。

 風評被害が非常に厳しい中で、安倍内閣になりまして、初めて、食品の風評被害の担当ということを仰せつかりました。これは大変大きなことだと思っております。

 そして、就任直後に、消費者庁内に、食品と放射能に関する消費者理解増進チームを立ち上げまして、三月十一日、昨日、それまでこのチームで現場の意見を把握してきた調査の結果を発表いたしました。消費者の意識調査でございます。同チームにおきましては、さらに事業者、生産者の調査も行いまして、四月に調査結果を取りまとめると同時に、風評被害のための効果的な施策を発表する予定でございます。

 きのう発表した結果がお手元にあるかどうかわかりませんが、小熊委員も含めた、私ども福島県民が日ごろ感じている目に見えない厳しい風評被害が数字になってあらわれた結果になっております。

 例えば、食品中の放射性物質の基準値上限の食品を食べ続けても十分に安全なレベルだというふうに思っている方が非常に少ない、全体の三割にとどまっているなどの結果が出てまいりましたので、しっかりとその統計を踏まえた上で施策を講じてまいりたいと思います。

小熊委員 再度、消費者担当大臣にお聞きしたいと思いますけれども、こうした実態をしっかり把握するということの中で、森大臣も福島県、復興担当大臣、根本大臣も同じ福島県ということで、二人の大臣が福島県から輩出されたということは、党派を超えて、本当に心強いところであります。

 この二年間の中で、森大臣も現場に行って感じられている、また、全国あちこちに行って風評被害の実態は感じられているというふうには思いますけれども、この間、県内各市町村においても、また県においても、独自に風評被害対策ということで取り組んできたわけであります。そもそも、この原発事故というのは東電、国の責任において負っていかなければいけないんですけれども、こうした風評被害対策は、これまで地元自治体が担ってきたというのも事実であります。

 そこで、新年度の中で、全額国が負担をして風評被害対策の新事業を行っていくということでございますけれども、具体的に幾つかその辺を御説明いただきたいと思っています。

根本国務大臣 小熊委員おっしゃるように、風評被害対策、リスクコミュニケーションを含めて、しっかりやっていかなければいけないと思います。

 私も、三・一一以降、地元にいましたから、それはよくわかります。あのときの風評被害、通常、風評被害というのは、観光、農産物、食品加工、これが典型的にやられるんですね。それが、あのときは工業製品まで広がった。ですから、福島県の場合には、風評被害対策は最優先でやらないと、福島県全体が縮んでいってしまうという思いで私もやってまいりました。

 風評被害対策については、やはりまず、除染をして放射線量が下がっていっていますから、しっかり、その放射線量がどの程度かをアピールしていく。もう一つは、食品については、農産物は、福島県の農産物、きちんと検査していますから、流通しているのは安全なわけですね。だから、こういうものもどんどんアピールしていかなければなりません。そして、観光については、どんどん東北に来てもらう観光キャンペーン、こういうことが必要なんです。

 今お尋ねの予算の関係では、平成二十四年度補正予算は、東北地域における旅行需要創出事業が二億円、これは観光庁でやります。さらに、農産物等の風評被害対策が十三億円、福島県に基金で積みます。これは実は、福島県あるいは地元の市町村から、農産物のさまざまな、例えばブランド化、風評被害対策をやりたい、こういう要請があったので、十三億円、これは福島県に基金で積みます。

 それから、二十五年度予算案では、農産物等消費応援事業、これは、「食べて応援しよう!」キャンペーンが一億円。東北地域観光復興対策事業が二億円、東北観光博の仕組みを踏まえた滞在交流型観光の実施に対する支援を行う。さらに、福島県における観光関連復興支援事業四億円。こういうものを対策として講じております。

 それぞれ、所管省庁でもしっかり取り組んでいただいております。

小熊委員 地元自治体だけではなくて、地元の経済人たちがさまざまな協議会をつくって、そこで、自費で他県に出かけていって、さまざまな取り組みをしているというところもありますから、そうしたきめ細かなPR活動に対してもしっかりと気配りをして、使い勝手のいい予算となりますよう、指摘をさせていただきます。

 昨年、震災から一周年たったときに、福島県のスローガンが「がんばろう ふくしま!」から「ふくしまから はじめよう。」ということに変わったんですね。非常にいいスローガンだというふうに思っています。福島からさまざまな情報発信をしていく、しっかりとした、適正な放射線量も含めて、実態も含めてやっていくということも、これは今大臣がおっしゃったとおり、やっているんですね。しっかり数字も出して、大丈夫なものだけが市場に出ている。にもかかわらず、なかなか売れない。観光客も来ない。

 ということであれば、やはり福島県内の努力よりも、県外に対して、全国に対して、どうリスクコミュニケーションを構築していくのかということとあわせて、大臣も、先月の地元紙にもいい指摘をされているんですけれども、インタビューに答えて、「食品も含めそれぞれの数字の持つ意味を分かりやすく説明する必要がある。」これはリスクコミュニケーションの一つだと思います。「医療機関のX線検査や航空機での海外旅行で受ける線量をはじめ、世界各地に線量の高いエリアが存在することなどを客観的に示すことが安心確保につながると思う」、これは私は非常にいい視点だというふうに思っています。

 今、福島県が絶対的な評価として安全な数字を出しているけれども、これが信頼をされない。事ここに至っては、ある意味、視点を変えて、相対評価といった視点が必要だというふうに思っています。

 福島県外の農産物がどうなのか、日本に入ってきている世界の農産物がどうなのか、大臣がおっしゃるとおり、さまざまなところの空間線量がどうなのか。そうしたものを比較してやらないと、福島県内のものは安全ですと言っても、数字がなかなか上がらないというのは、これは数字に信頼がない、政治に信頼がないというところに起因しているというふうには思います。

 復興大臣でも消費者担当大臣でもどちらでも結構ですから、こうした相対的な評価のもとでの比較、情報の出し方、国民への理解の浸透の仕方といったものの取り組みはどうお考えか、お聞かせください。

森国務大臣 お答えします。

 まさに県外の方に数字の意味を理解してもらうことが大切だと心得ております。その意味で、先ほど御説明しました消費者理解増進チームにおきまして、各地で説明会を開催することとしております。また、今回のこの調査結果を踏まえまして、また、補正予算でつけました地方消費者行政活性化基金、この中で、各自治体にお渡しした基金の中から、食品と放射能の理解の増進について、まさに福島県外の地方自治体の方で取り組んでいただくという仕組みになっております。

 さらに、当初予算で私の方で要求しておりますのは、そういった福島県外の地方自治体が、理解の増進、また相対評価による理解の増進に取り組んでいただける場合には、裏負担のない形にするなどのインセンティブを設けまして、小熊委員の今の指摘も生かしながら、相対的な比較の中で正確な理解をしていただくということに取り組んでいきたいと思います。

 いずれにせよ、この風評被害との闘いは長期にわたると思いますので、風化との闘いもしながら、しっかりと取り組んでまいりたいと思います。

小熊委員 真意が伝わっていないので残念なんですけれども、では。

根本国務大臣 私も、小熊委員の今の指摘に本当に同感なんですね。リスクコミュニケーション、これが何よりも大事だと思いますが、そのベースになるのは、例えば、百ミリシーベルト以上になれば、がんの確率が〇・五%上がる。しかし、百ミリシーベルト未満では、結局どういう要因でがんになったかというのが、有意の数字が出ないものですから、百ミリシーベルト未満は科学的にまだ十分に解明されていないということで、実は今そういう状況になっているんですね。

 私も、小熊委員と一緒に考えていきたいと思いますが、客観的に比較する基準を示さないと、みんな不安になっちゃうわけですよ。

 一番典型的なのが、東京―ニューヨークを往復したら〇・二ミリシーベルト浴びる、CTを浴びたら七ミリシーベルトですから、人間ドックに入れば相当浴びるわけですね。私が直接聞いたのは、救命救急のお医者さん。私は年間二十ミリシーベルト以上浴びているんですよ、こういうことをおっしゃる。ですから、やはり客観的な数値は私はお示しした方がいいと思うんですね。

 それと、世界でも十ミリシーベルトの地域もあります。しかし、がんの確率が上がったとは言われておりません。

 ですから、大事なのは、何も比較する基準なく絶対的な数値だけ言われたって、みんなそれぞれです。ですから、私は、客観的な数値をお示しして、これがリスクコミュニケーションの一番大きな部分ではないかと思います。

 それから、食品については、これは本当に、福島県の農産物は、米だって全量、全袋検査しています。安全なものしか出ていない。ですから、少なくとも福島県の農産物は全部検査していますから、これは安心なんですね。あと、ほかの県でも、例えば給食で検査している地域もありますよ。

 ですから、大事なのは、食品の基準は非常にきちんと決められている、そして検査もされている、これは、今消費者担当大臣がおっしゃられたように、そちらのサイドからもどんどんアピールしてもらう。リスクコミュニケーションは、私も、各省庁横断的に、やはりきちんと政府として、今のようなお話を含めながら提示していく、これが大事だと思います。

小熊委員 今後の取り組み、注視していきたいと思いますけれども、簡単に言うと、福島県のトマトとほかの県でつくったトマトをはかってみたらほぼ同じじゃないかということを示さない限り、これはゼロなんてないわけですから。

 でも、ゼロに思っている人も国民の中に多くいますし、もう国内のものは福島由来でだめだという間違った考え方のもとに海外のものを買っている人もいるんですけれども、海外の方が、百ベクレルじゃなくてもっと高い基準でやっている国もあるわけです。

 国内の他県のものとの比較ができるように、同じもので、同じ細かに線量が出る機械で比べることによって、福島県のものと自分の地元のものとそんなに変わりがないんだという比較の仕方をしていかなければ、一般の方々というのは、なかなか、やはり心理的に避けてしまうんじゃないかなというのが現実としてあります。

 そうした同農産物で国内または国外のものを、これは全袋検査するわけには、全国のことは技術的にできないでしょうから、一定程度の量であっても、これを北海道から沖縄までやっていくことによって、これはある意味、そこで出ちゃうとその地域の風評被害につながるかもしれませんけれども、実際そのぐらいやらないと、私は、福島県の風評被害というのはなくならないし、誤解は解けないというふうに思っています。

 いつまでたっても、福島県のものが安全だから買ってくださいなんというキャッチコピーではなくて、以前のように、おいしいから、いいものだから買ってください、買いましょうと言えるような体制をつくらない限り、そこにゴールはないというふうに思っていますので、そうしたことの検討もひとつよろしくお願いいたします。

 次に移ります。

 我が党の藤井孝男議員による代表質問の中でも質問させていただきましたけれども、再度、日本維新の会としては、原発の政策については、脱原発依存を掲げております。さはさりながら、生活、経済のために安定的な電力供給は必要であることは言うまでもありません。そのためには、新しい需給体制の構築、そして、現実的に、当面は、原発の安全基準、安全確認体制、使用済み核燃料、責任の所在に関するルールを厳格に、適正に定めることが重要であるということも訴えさせていただいております。

 さらに、中長期的には、段階的に原発依存から脱却し、最終的に脱原発を達成することが望ましいというふうに考えます。戦略的に、創造的に原発依存から撤退していくプランを描いていくことが責任ある政治の姿勢だというふうに思います。

 そこで、再度、この質問に関して総理にお答えをいただきたいというふうに思います。

 こうした観点の答弁の中で、本会議場では、責任あるエネルギー政策をやっていくんだ、再稼働はあらゆる事態を想定した新基準のもとで判断をしていきますという答弁がありましたけれども、再度総理の答弁を求めたいと思います。

安倍内閣総理大臣 再稼働についての質問でありますが、現在、原子力規制委員会において、東京電力福島第一原子力発電所の事故を踏まえた新しい安全基準の策定が進められています。原発の安全性は原子力規制委員会の専門的な判断に委ね、そして新しい基準を満たさない限り原発の再稼働は認めない、これが原則であります。

 一方、新たな基準へ適合すると認められた場合には、その判断を尊重し、再稼働を進めていく考えであります。

 新しい安全基準は本年の七月の十八日までに施行されることになっておりまして、施行後、順次、個別の原発について審査されていくものというふうに認識をしております。

小熊委員 今、一定の枠組み、スキームが示されましたけれども、この考え方、方向性は、今現在福島県内にある冷温停止中の東京電力の福島第一原発の五号機、六号機、また停止中の東京電力福島第二原発の四基の原発にもこの考え方を当てはめるという考え方でありますか。

茂木国務大臣 新しい安全基準、今総理の方からも答弁させていただいたように、七月の十八日までには公布、施行という予定であります。

 それで、安全委員会におきまして、どの原発を優先的に、まずは安全性をチェックしていくか、これも含めて安全委員会の方でお調べをいただくということになってきますが、少なくとも、既に事故を起こしてこれから廃炉にしていく一号機から四号機について安全性の確認、こういう話にはなりません。

 恐らく全体のスケジュールの中で、規制委員会の方で、再稼働の可能性がある、そういうところを中心に安全性のチェックをスタートすると思っております。

小熊委員 わかりやすく言ってください。

 ということは、だから、五号機、六号機、あと東電の福島第二はその対象に入っているということですね。

茂木国務大臣 小熊委員もよく御案内だと思いますけれども、原発、これは現在稼働していないものにつきましても安全性の確認ということは必要になってくる。そして、動かさなくても防護措置をとるということは必要になってくると考えております。

小熊委員 では、地元の根本復興大臣に聞きます。

 福島県は、これは全て廃炉を、第二原発も含めて求めておりますし、福島県議会でも一昨年決議をされました。ことしに入ってからの地元紙での県民アンケートでも、七割を超える全基廃炉の県民の声が上がっていますけれども、根本大臣は、こうした県内の事情を勘案して、原発の再稼働、県内の再稼働に対してどういうお考えか、お聞かせください。

根本国務大臣 政府としての見解は、今、担当の茂木大臣が御答弁申し上げたとおりであります。

 私も、福島県、あれだけの過酷事故ですから、さまざまな思いもありますし、福島県民の皆様も本当にいろいろな思いをされておられます。福島県内の原発の問題については、その福島県の皆様のさまざまな思いを受けとめて、そしてそれを踏まえた議論が行われることを期待しております。

小熊委員 期待するではなくて、我々が、政治が決断していく、決める政治ですから。期待ではなくて、大臣、どうですか。現場主義、また被災者に寄り添うということをさまざまな場で根本大臣は発しておりますけれども、これだけの県民の意思というものを、期待しておりますではなくて。

 これは福島県も、技術的にどうかということではなくて、これから再生可能エネルギーで、環境で、汚染されてしまった福島県を復興させるには、逆に、環境最先端の地域としてやっていくんだということで、今さまざまな取り組みをしているわけですよ。精神論かもしれませんけれども、そういった観点から、もし第二原発が動かせたとしてもこれは廃炉だ、そういう観点から福島県は要請しているわけですよ。それを、役人答弁みたいなことでは認められませんよ。

 もう一度お願いします。

茂木国務大臣 福島県内の原子力発電所につきまして、一昨年の十月に福島県議会におきまして、福島第一そして第二原発の廃炉を求める請願を採択された。そしてまた、一昨年の十二月に福島県が、国及び原子力発電事業者に対して、県内の原子力発電所については全て廃炉とすることを求める旨を示した復興計画を決定、公表しております。

 これまでにない大事故を経験し、いまだに十六万人の被災者の皆さんが避難生活を余儀なくされている、こういう現状を考えれば、このような請願であったり計画がなされる、十分理解できるところであります。

 今後の原子力発電所の取り扱いにつきましては、先ほども申し上げましたように、原子力安全委員会におきまして、専門的、独立的な立場から安全性を判断する、こういうことになっておりますが、原子炉の設置者であります東京電力におきましても、この規制委員会の判断、福島県や福島県議会の要望、そして立地市町村も含めた地元の皆さんのさまざまな要望、意見、こういった状況、さらには東電自体の経営状況を総合的に勘案して、適切に判断するものだ、こんなふうに考えております。

小熊委員 これは、あしたもありますから、引き続きやりますけれども、決められる政治と言っているんですから、それだったら、これは技術的にとか原子力委員会の話ではなくて、県民は、精神的な意味で廃炉としてくれと言っているんですよ。

 であれば、正直に、そういう意見もあるけれども、科学的に技術的に判断しますと言い切ればいいじゃないですか。逃げちゃだめですよ。はっきりと、動かす対象にもなっています、県民の皆さん、理解してくださいと言えばいいんじゃないですか。

 私は、それは認めがたいと思いますけれども、そうした政府の姿勢をしっかりと示す、ごまかさない、それが決める政治につながるんじゃないんですか。

 そういうことがなければ、さらに政治が信頼を失って、風評被害や、世界に対する日本の信頼の失墜につながるんですよ。しっかりとそこを受けとめていただきたいと思います。

 あしたも引き続きやります。

 以上で終わります。ありがとうございます。

山本委員長 これにて小熊君の質疑は終了いたしました。

 次に、杉本かずみ君。

杉本委員 みんなの党の杉本かずみであります。

 きょうは、集中審議ということで、冒頭、私の尊敬する岩屋代議士から、決める政治というお話がございました。今も決める政治という質疑がございましたが、私はあえて、きょうは北方領土の関連の問題で、一つ、総理に決めていただけないかなと思う質問をさせていただきますので、ぜひお願いしたいと思います。

 早速質問に入りますが、まず初めに、今話になりました、原子力規制委員会の新ルールが七月十八日にスタートするという前段にあって、今、活断層の判断基準が十三万年ないし十二万年から四十万年に幅を広げるという提案が原子力規制委員会からなされるように、これは一月二十九日の報道で聞いておりますが、国際標準あるいは米国基準を考えますと、この点については百八十万年が一般的であるというお話を聞いております。

 対象期間を広げていただいたことは安心に近づくとは思いますが、この日本が何ゆえに国際基準や米国基準と離れた状況にあるのか、規制委員長の御判断の論拠を伺いたいと思います。お願いします。

田中政府特別補佐人 お答えします。

 今御指摘のアメリカ等の活断層の定義は、三万五千年前に一度動いたもの、あるいは五十万年前以降に複数回動いているものというふうに決められています。

 アメリカの東部の方の場合には、ほとんど地震等がありませんので、二百六十万年以前の古い地層から成っているということで、そういうことを踏まえて百八十万年前ということになっています。

 一方、我が国の場合は、地震国でありまして、非常に地盤の活動が活発でありまして、大体、最終氷河期が終わった十二、三万年前以降に動いているところについては活断層、今回の新しい基準でも活断層です。それで、その上に、その十二、三万年前以降に動いたかどうか確認できないときには、四十万年前と今回させていただいています。

 これは、今、我が国、日本列島にかかっているストレス、応力、地盤のプレートテクトニクスの力が四十万年ぐらい前からほとんど変わっていないということですので、そういうことで、四十万年前までさかのぼればいいだろうということで、四十万年前になっています。

 国際基準ですが、IAEAの方で示しているのは、先ほど申し上げました、いわゆるアメリカの東部のようにほとんど地盤活動がないようなところについては、百万年、数百万年を考えてください、日本のように活発にこういった地盤活動のあるところは、数万年ないしは十万年というところで考えてくださいと。もう少しわかりやすく言いますと、日本は、百万年以上、二百万年も動かない地盤というのはほとんどないということを意味しているということでございます。

杉本委員 委員長、ありがとうございました。

 最後のお言葉が極めて重たいと思っております。日本の地盤は決して古い地盤ではない、この地盤の上に我が国の原子力発電所が存在している、こういう点を各級議員に御認識をいただきたいと思っております。また、国民の皆様にも、そういったリスクの上に我々は生活しているということを御認識いただきたいと思います。

 次に、この原発の問題で、テロ対策という点で、防衛大臣並びに総理から御見解をいただければと思っております。

 福島の第一原発の四号機、この使用済み核燃料プールのいわゆる基盤が非常に緩んで危ないというような議論がございました。

 我が国には五十基前後の原子力発電所がございます。使用済み核燃料プール、保管されている場所、ここが極めて危険な原子力の発生源、放射線の発生源というわけでありますが、この防衛について、さきの政権も、安倍政権が始まって私は本当に期待しておりますが、この防衛問題について、これは防衛じゃないんだ、民間の電力会社がやっていることで、民間のいわゆる警備会社に任せておけばいい、あるいは、あえて言えば警察に、あるいは海上保安庁に任せればいいんだというような、官僚の、きのうも電話レクでございましたが、聞こえてまいりました。本当にそれで我が国の安全が守れるのでしょうか。

 そういった点から、既存の原発の使用済み核燃料プール、これに対するテロ対策、場合によっては、迷彩服を着た自衛隊の方々、東日本大震災で大いなる理解をいただいた方々にきちっと警備をしていただいて、まさかに備えなければならないということだと私は思っておりますので、この点について、テロ対策、あるいは、ここまで言いたくはありませんが、ミサイル防衛対策、こういった点も含めて、我が国の安全保障、安倍総理の最も得意とする分野だと私は認識しておりますので、決める政治、お願いしたいと思います。いかがでしょうか。

小野寺国務大臣 大変重要な指摘、ありがとうございます。

 テロあるいはミサイル事案については、防衛省、政府一体としてさまざま情報収集を行っております。そして、いろいろな事態に備えて、これまでも自衛隊は、警察、海上保安庁と共同訓練で今まで対応を詰めております。

 これは前政権でも対応していただいておりますが、平成二十四年六月には、警察と、伊方原発において、我が国自衛隊と、実際の原子力発電所を舞台とした共同訓練を実施しておりますし、また、海上保安庁とは、これも昨年十月ですが、若狭湾において、初めて、原発テロへの対処に関する共同訓練ということをとらせていただいております。

 ミサイル防衛に関しましては、さまざまな情報を集約して対応してまいりますが、万が一の場合には、例えば、自衛隊法七十八条に規定する治安出動、あるいは七十六条による防衛出動、こういうさまざまなことを想定しながら、しっかりと対応してまいりたいと思っております。

杉本委員 訓練というのはわかったんですけれども、もう警備をしたらいかがでしょうか、こう申し上げているんですが、総理の御見解を伺います。

安倍内閣総理大臣 まさに委員が御指摘になったように、原子力発電所の安全性を確保する上で、テロなどに対応することが極めて重要である、その必要性については認識をしております。

 具体的な対策としては、今般の事故において、原子炉以外にも安全上重要な施設が存在することがわかったことを踏まえて、事業者に、不審者による破壊や侵入を防止する措置の強化を求めるとともに、IAEAの最新の勧告を踏まえた警備の強化を求めたところでありますが、第一義的には、今防衛大臣が答弁をしたように、警察が二十四時間、銃器対策部隊による警備を今行っているところでございまして、万が一のときには治安出動等で対応していきたい、このように思います。

 また、委員の御指摘になった問題意識は念頭に置きながら安全に万全を尽くしていきたい、このように思います。

杉本委員 次に、安全保障と並んで外交の問題が重要だと思います。

 安倍総理は、このゴールデンウイークにかけて、ロシア並びに中東に行っていただけるというふうに聞いております。

 そこでなんですが、もう既に安倍総理御案内で、森元総理あるいは鈴木宗男元衆議院議員から提案を受けていらっしゃるかと拝察いたしますけれども、一九八九年の九月十九日付で、海部内閣が始まって一カ月余りのときでございますが、我が国国民の北方領土入域問題に関する閣議了解といったことがなされまして、当時はソ連でございますが、出入国手続をソ連のルールに従って行わないと北方領土に入れないということの中で、「政府は、国民に対し、北方領土問題の解決までの間、このような北方領土への入域を行わないよう要請することとする。」こういう閣議了解がなされまして、そんな中で、一時中断もされましたが、ビザなし交流という形で、私も三年ほど前に国後、色丹島へ行かせていただきました。多少の入国手続的なものはありましたけれども、ビザというようなものはありませんでした。

 その両方を勘案していただいて、ビザを取得するというと外国の地域に行くということで、これはおかしな話で、我が国固有の領土じゃないですかということでありますので、一方で、墓参団が受けているような若干の提出書類といったものは万やむを得ないかなという感じもしております。

 そんな意味で、安倍総理がプーチン大統領に会われる前に、北方領土が聖域であって、我が国国民が余り、いや、全く入ってはならぬ、お墓参り以外は入ってはならぬですよという状況を続けていることが本当にいいのかなと思っております。実際に、韓国の国会議員が北方領土に入ったり、あるいは中国の労務者が仕事をしているやにも聞いております。私が行った限りは、ロシア人の方ばかりであって、我が国の領土なのかなと思う部分が大変大きくございました。

 そんな意味から、人的交流を進めていただくということが、北方領土問題の段階的返還論を私は進めたいと思っておりますが、そこに至る前の我が国からのメッセージとして、総理が行かれる前に、この閣議了解を少し改めて、もう少し我が国国民が、ビザではなくて多少の手続があっても我が国固有の領土に入れるようにしていただいて、ロシアの国民の皆さんと日本国民がもっと交流ができるような方策に打って出るべきであり、メッセージを発するタイミングではないかと拝察しておりますが、総理の御見解を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 なかなか思い切った御提案ではございますが、しかし、我が国国民がロシアの出入国手続に従うなどして北方領土に入域する行為は、北方四島に対するロシアの管轄権を前提とする行為であって、我が国の基本的な立場と相入れないわけでございます。

 ここがやはり大切な点であって、いわば、我々もロシアとの関係をもっと前進させたいと思っておりますし、日本とロシアとの関係というのは非常に可能性を秘めている、そういう二国間関係だと思っております。

 その中において、私は、ことしの前半にはロシアを訪問してプーチン大統領と首脳会談を行いたいと考えておりますし、先般は、森元総理が訪ロをして、プーチン大統領とまさに膝を交えて相当さまざまな議論をしたということでございまして、私も報告を受けております。

 その際、ロシア側からも、関係をもっと前進させたいというメッセージも来ておりますし、私もそういうメッセージを発したいと思いますが、それは、こういう方法によらずに日本の考え方を示していきたいな、このように思っております。

杉本委員 御答弁ありがとうございます。

 なかなか踏み込んでというのは、我が国の立場ということをおっしゃられましたので、わかるところがございます。まして、入り口論と出口論という議論がこのロシア問題にはありまして、入り口で余り前広にというのも問題があるかと思います。ただ、やはり人的交流というのは極めて重要でありますので、むしろプーチン大統領に会われたときに、そこで踏み込んで始めるというような検討も賜れればありがたく存じます。

 次に、もう時間がなくなってきたんですが、一票の格差の問題に移りたいと思います。

 この六日に東京高裁、そして七日に札幌高裁で、さきの衆議院選挙についての判決がございました。その中で、札幌高裁では、〇増五減について、必要最小限の改定にとどめようとしたものにすぎず、一票の価値の平等を求めた最高裁判決に沿った改正と質的に異なるというコメントがございました。

 あえてちょっと英国の歴史にさかのぼっていきたいんですが、十九世紀の英国の哲学者ジョン・スチュアート・ミルは、賢明さと知識量が卓越した人に複数の投票権を与えることが正義だと提案するというようなことがあったわけでありますが、この最高裁の判決とジョン・スチュアート・ミルの意見というのはまるで違っているんです。衆議院にせよ参議院にせよ、我が国の今の一票の重さという点で見ますと、ジョン・スチュアート・ミルではありませんが、根拠なく票の格差が生じてしまっているというのが現状かと思います。

 そして、今、今月中に与党案をまとめられるというように、午前中あるいは午後だったか、総理の御答弁がございましたけれども、その議論をされているのも、〇増五減プラス比例の一部定数削減、そしてまた少数、中小政党に配慮したものということなのですが、答えとしては、ちょっとここにあえて書かせていただきましたけれども、一対二の範囲に何とかとどめるという答えでしかなくて、最高裁が違憲と言った、一対一の、本当に一人一票の平等感というものについては、残念ながら、与党案で検討されているようには聞こえてまいりません。

 細田さんのお話もあるのかもしれませんし、総理もいろいろ本当にお忙しくて任せざるを得ない部分もあると思いますが、総裁としてというよりもお一人の政治家として、一票の重さをどうお考えになって、無理して与党案でまとめるのではなくて、抜本的な改革をお願いしたいと思っています。

 私どもみんなの党の一人一票比例代表制法案ということで、法案提出をさせていただいておりますが、基本的にはもう一人一票なんです、民主主義国家ではそれが本来の姿です。定数についても、衆議院四百八十名を、百八十人思い切って削って三百人にします。ただし、全て比例代表制で、いわゆる無駄な一票が存在しない形にしたい。

 また一方で、ビューティーコンテストで有名な芸能人の方が当選して、一生懸命こつこつ一軒ずつ回っている人が当選できない、それでは困るので、各ブロック別の票を全国集計して、ブロック別に議席を配分していくというような法案を提出させていただいております。

 そんな提案も含めて、抜本改革への総理の思い、殊に、一票、一対一原則ということについて総理はどうお考えか、教えていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 まず、我が党としては、この違憲状態は一日も早く解消していかなければならない、こう考えております。この違憲状態を解消するために、昨年、〇増五減、我が党の案でありますが、これを成立せしめたところでございます。同時に、来年、消費税を引き上げていく上において、国会も身を切るべきだという中において、定数削減案を今与党において議論しているわけでありまして、これは、いわば二つの目標のものを合体させていくということになるかもしれないということで、御議論をいただいているわけでございます。

 そこで、まず、一票の格差の是正につきましてでありますが、国民が主権を行使する上で最も基本的な権利である選挙権にかかわる極めて重要な問題であると思います。

 この問題に関して、最高裁判所は、平成二十三年三月、いわゆる区割り審議会設置法において、衆議院の小選挙区について、選挙区間の人口の最大格差が二倍未満になるように区割りをすることが基本とされていることを、投票価値の平等に配慮した合理的な基準を定めたものであると判示していると承知をしております。

 昨年の十一月には、各党各会派による御議論を経て、今申し上げましたように、〇増五減の緊急是正法が成立をしたわけであります。そして、現在、この法律に基づきまして、選挙区画定審議会において衆議院小選挙区の区割り見直しの審議が進められておりまして、政府としては、勧告がなされ次第速やかに法制上の措置を講じて、一票の格差是正に取り組んでいかなければならない、こう考えております。

杉本委員 時間が参りましたので終わりますが、済みません、通告していた大臣の方々、御迷惑をかけました。申しわけございませんでした。

 ありがとうございました。

山本委員長 これにて杉本君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 米軍普天間基地について、総理に質問をいたします。

 総理は、二月の日米首脳会談で、普天間基地の移設を早期に進めていくことを確認いたしました。名護市辺野古沿岸部の埋め立てへの承認を求める申請書を、今月末にも沖縄県に提出する方針と伝えられております。

 一月末には、沖縄の全四十一市町村、議会の代表らが上京いたしまして、オスプレイの撤回と普天間基地の閉鎖、撤去、県内移設断念を求める建白書を総理に手渡したばかりであります。県民の意思を一顧だにせず、基地を押しつける姿勢を明確にしたものであり、断じて容認できるものではありません。

 総理に伺いますけれども、日米両政府が普天間基地の返還に合意したのは一九九六年四月のことでありました。いまだに返還が実現しない原因がどこにあるとお考えですか。

安倍内閣総理大臣 これは橋本政権によって決定したわけでございますが、自来ずっと、地元の皆様の御理解を得るべく努力を積み重ねてきたわけでございます。そして、実際問題、政権が交代する前の段階におきましてはさまざまな手続が進み始めていたところでございまして、その後、最低でも県外という、まさに鳩山総理の発言によって、政府に対する、国に対する沖縄の皆様の信頼が一気に失われてしまったことは極めて残念なことであります。

 いずれにせよ、自民党政権時代には、極めてこれは丁寧な形で一つ一つ信頼を積み重ねながら、建設に向けて一歩一歩前進をしていた、このように思います。

赤嶺委員 それは、総理、自民党の思い違いだと言わざるを得ません。

 普天間基地の返還がいまだに実現しないのは、それにかわる新たな基地の建設が条件とされたからにほかなりません。米軍の占領下で強権的に住民の土地を奪って基地が形成された沖縄で、新たな基地の建設など受け入れるはずがないではありませんか。だから、自民党政権のもとでも、民主党政権のもとでも、返還は一向に実現しませんでした。

 自民党政権のもとでは、最初は海上ヘリポートですよ。その次は軍民共用空港案、そしてL字形案、V字案へと、何度日米合意を変更しても、基地はできなかったではありませんか。

 総理は、このような経過をどのように認識していらっしゃるんですか。

小野寺国務大臣 普天間の移設先につきましては、現在の安全保障環境のもと、在沖海兵隊を含む在日米軍全体のプレゼンスを低下させることができないということ、東アジア各地域に対して距離的に近いといった沖縄の地理的優位、陸上部隊、航空部隊等を統合した組織構造を有し、機動性、即応性を備える米海兵隊の特性、そして普天間飛行場の危険性を一刻も早く除去する必要性などを総合的に勘案しまして、辺野古に移設せざるを得ないという結論に至り、日米間でも累次確認をしてきております。

 そして、さまざまな工法の変化、さまざまな案、これは日米合意の中でさまざま今まで検討してき、そして、なるべく地元に負担が来ないように、地元の意見も配慮しながら現在の案にまとまったと私ども理解をしております。

赤嶺委員 防衛大臣、よく御承知のように、海上ヘリポート案というのはリーフのずっと向こうですよ。今のV字形案というのは陸上ですよ。何で、海の向こうの案が陸地に寄って負担の軽減なんですか。くるくるくるくる合意案が変わってきたのは、どんな案を出しても、たらい回しは受け入れない、こういう県民の思いがあったからなんですよ。総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 私が政府においてかかわりましたのはV字案のときでございまして、官房長官のときでございました。このときには、V字案はまさに最終的な決定として、これをもって、沖縄の皆様の御理解をいただこうという決定をしたわけでございます。

 そして、その後、私は総理に就任をいたしました。その間、官房長官、そして総理時代に、名護の市長選挙もございましたし、沖縄の県知事選挙もございました。その際には、私たちは、国として、国の安全保障について責任を持つ立場から、普天間の移設先として辺野古をお願いします、このV字形案でお願いしますといって選挙を戦い、そして、その段階においては、市長選挙においても知事選挙においても多数を得て選挙に勝利を得ることができたわけでございます。

 その中において、我々は環境アセス等のそうした手続を淡々と進めていた、こういうことでございます。

赤嶺委員 総理も経過をよく認識しておられないようです。

 何度も何度も戦われた名護の市長選挙で、たとえ自民党が推した候補者が勝利したときでも、決して辺野古の新基地建設が市民の信任を得られたわけではないという発言を繰り返してきたんですよ。そして今は、陸にも海にも基地はつくらないという市長が誕生して、推進をしていた知事までも、これは反対せざるを得ない、県内基地のたらい回しでは絶対に県民は受け入れられないと。

 それは、民主党政権であろうと自民党政権であろうと同じですよ。県民の基地の苦しみを理解できないようなやり方は断じて認められない、こういうことを申し上げておきたいと思います。

 次に、政府は、本日の閣議で、来月二十八日に政府主催で主権回復を記念する式典を開催することを決めました。四月二十八日というのは、一九五二年、サンフランシスコ講和条約が発効した日であります。敗戦でアメリカの占領下に置かれた日本はこの日をもって主権を回復したと、自民党の皆さんは国民運動を展開してこられた方々もいらっしゃいました。

 そこで、外務大臣に伺いますが、この条約によって、奄美、沖縄、小笠原はどのような取り扱いとされたのか、その点を説明していただけますか。簡潔にお願いします。

岸田国務大臣 サンフランシスコ平和条約第三条におきましては、御指摘の、奄美、小笠原及び沖縄等を「合衆国を唯一の施政権者とする信託統治制度の下におくこととする国際連合に対する合衆国のいかなる提案にも同意する。」と規定するとともに、「このような提案が行われ且つ可決されるまで、合衆国は、領水を含むこれらの諸島の領域及び住民に対して、行政、立法及び司法上の権力の全部及び一部を行使する権利を有するものとする。」と規定しております。

 これらの諸島につきましては、同三条のもとで、我が国は領有権を放棄しない状況で米国が施政権を行使していたということでございます。

 なお、この信託統治の提案は結局行われずに、その後、奄美諸島につきましては一九五三年、小笠原諸島については一九六八年、沖縄県につきましては一九七二年に返還が行われております。

赤嶺委員 沖縄は、サンフランシスコ講和条約によって、アメリカの信託統治領に置かれようとして、それが提案されるまでは永久にアメリカが施政権を握るという状態に置かれていたわけです。

 その間、沖縄は、日本本土から切り離されて、米軍の土地強奪やあるいは人権侵害、まさに、今のような広大な基地というのは、サンフランシスコ講和条約があったから、ああいう人権侵害を含む広大な基地建設ができたわけであります。

 これが何で主権回復の日になるんですか、総理。

安倍内閣総理大臣 この四月の二十八日は、まさにサンフランシスコ講和条約が発効した年であります、あのときも、この講和について反対をする人たちがいたわけでありました。いわば、当時のソビエト連邦は反対をしていたわけでございますが、日本は、その中において、まずは占領政策を終えなければ主権を回復できない。

 確かに、今、赤嶺委員が指摘されたように、沖縄そして奄美、小笠原については、これは残念ながら一緒に施政権を回復することはできなかったのでありますが、しかし、それは、それを認めなければ、その後もずっと占領下が丸ごと続いていくということになるわけであります。まずは何とか我々は占領下から主権を回復して、その後、沖縄についても、小笠原についても、奄美についても、何とか日本に返ってこられるように、交渉力を持って米国と交渉するということでありました。

 その後、総理になった佐藤栄作も、政治生命をかけて、この沖縄返還にかけたわけでありまして、沖縄の返還なくして日本の戦後は終わらないとの考えであった。それは、私もそういう思いであります。

 だからこそ、この四月の二十八日は、そうした意味において、沖縄返還、あるいは奄美、小笠原に向けてのまずは第一歩をしるしたということではないか、このように思うわけであります。

赤嶺委員 佐藤総理が沖縄に来られたのは一九六五年ですよ。そのときに、沖縄の返還なくして戦後は終わらないと言ったんですよ。つまり、一九五二年四月二十八日では終わっていないという認識を佐藤総理は示したんですよ。何でか。あなた方は、一歩一歩進むと言うけれども、沖縄を見捨てたじゃないですか。政府は何もしませんでしたよ。

 だから、四月二十八日は屈辱の日だということで、県民は祖国復帰を目指して戦い抜いてきたわけですよ。その屈辱の日を、何で沖縄県民が主権回復の日だといって受け入れなきゃいけないんですか。そんなの理不尽じゃないですか。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 まさに、今、佐藤内閣が取り組んだことについて私は申し上げたわけでありますが、沖縄の返還なくして戦後は終わらないとの思いで、一丸となって沖縄返還のために努力をしたわけであります。

 そして、それは五二年に、まさに、見捨てたということではなくて、まずは主権を回復しなければ、そのまま占領軍が日本にずらっといて、そしてそのまま占領政府があって、全く我々は主権を回復していないという状況がずっとその後も続いていくことになるわけであります。まずは独立を回復しなければ、独立国として米国と交渉することもかなわなかったという状況にあったんだろう、このように思うわけであります。

 その中において、まさに苦渋の判断であったのだろうと思いますよ、五二年の段階においては。しかし、あのときの判断があり、そして、その後に、いわば沖縄の復帰ということにつながっていったんだろう、このように思うわけでありますが、当然、沖縄の方々の思いに我々は寄り添っていかなければいけないと思いますし、そのときの苦しい思い、その後の歴史に対しましても、私たちは思いを寄せなければならない。

 そういう中におきまして、一日も早い負担の軽減、基地の返還。先ほど普天間の返還について話をされたわけでありますが、同時に、我々は、嘉手納以南、キャンプ・キンザーも含めて、嘉手納以南の返還は全く進んでいないわけでありますから、これを何とか進めていこう、このスケジュールも明らかにしていきたい、こう決意をしているところでございます。

赤嶺委員 沖縄県民に思いを寄せるというなら、そんな、四月二十八日、屈辱の日を主権回復の日と決めるようなことを改める。そこから始めるべきだということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

山本委員長 これにて赤嶺君の質疑は終了いたしました。

 次に、小宮山泰子君。

小宮山委員 生活の党の小宮山泰子でございます。

 私自身、本日は、女性の生き方、それについての質疑をさせていただきたいと思います。

 私自身の考えといたしましては、自立した個人が多様な選択肢と公正なルールのもとでみずからの生き方を創造的かつ自由に追求できる、創造的自由主義の理念をベースに、女性の活躍を期待しているものでもあります。

 さて、女性には、出産をしたり、また働いたり、さまざまなステージがあります。

 先般、青木議員の代表質問が我が党からありましたけれども、政府は、三歳から五歳を軸に、幼児教育の無償化の実現に向けた協議会を設置する、そのときに、課題である待機児童の対象年齢は、ゼロ歳から二歳がその八割を超えており、政策優先順位は待機児童問題の解決が先であるということを伝えさせていただきました。

 これに対し、総理におきましては、待機児童の解消に向けて全力で取り組むこと、また、関係省庁の連携のもと、子ども・子育て支援制度との関係、財政確保の観点等を踏まえ、検討を行ってまいりますとおっしゃっております。

 具体的にはどのようなことか、お聞かせいただければと思います。

田村国務大臣 待機児童の解消、大変重要なことでございます。

 もちろん、質も確保しながら受け入れ児童数をふやしていかなきゃならないということでございまして、今年度も五万四千人分の受け入れ児童数ということで、これをふやしてきておるわけでありますが、来年度予算におきましては、約七万人、さらに枠をふやしていくということで、四千六百十一億円、これに予算立てをさせていただいております。

 施設をつくるのも大事なんですが、保育士自体の確保も重要でございますので、補正予算の方で、その部分に合わせた予算獲得をさせていただいたわけであります。

 全体として、昨年の八月に子育て三法を成立させていただきました、その中にも書いてある新しい制度に向かって準備をすると同時に、その間も、決して何もしなくていいというわけではございませんから、しっかり対応してまいりたいというふうに思っております。

 何よりも、待機児童というものを正確に把握しませんと、各自治体がまず待機児童がどれだけいるかということを正確に把握しませんと、なかなか解消ができないということでございまして、現行では、ゼロ、一、二歳に関して、今いるお子さん方の四四%、このお子さん方が保育が必要な方々であろうということでございまして、この方々をしっかりと保育に行けるような形で順序立てて整備をしていくということで進めておるような次第でございます。

小宮山委員 また、被災地におきましてもこの問題は大変重要です。特に、福島など、自主避難をされている方々は、二重の生活であったり、苦しい生活環境にあります。働きに出なければ子供を育てられない。しかし、実際には、さまざまな補助からは、自主的なものだから排除される形にもなってしまう。NPOなどさまざまな、避難地域ごとに違うかもしれませんが、この点に関しましても、ぜひ早急な支援をしていただきたい。

 また、内閣におきまして、女性が輝く日本ということをおっしゃっております。そのためにも、やはり保育ができないということは、また社会復帰などもおくれていく。そういう意味では、自立してみずから生き方を選ぶというところからはますます離れていってしまいますので、この点もぜひ御協力をいただければと思います。

 この点、何かございますか。

森国務大臣 お答えいたします。

 小宮山委員御指摘のように、待機児童の問題も被災地の子育てにもかかわってまいりますものですから、政府におきまして、被災地子ども・子育て懇談会というものを設置いたしまして、御指摘のありました母子避難の問題でありますとか、さまざまな問題に取り組んでいくように準備しているところでございます。

 また、先ほど、待機児童、ゼロ、一、二歳とおっしゃいましたけれども、ゼロ歳から預けなければ働き続けられないという環境自体が問題であると思います。

 政府におきましては、若者・女性活躍推進フォーラムの中で、当事者である女性を初めとした関係者のお話を伺って、ゼロ、一、二歳のときには保育をしっかり家庭でしながら、その後、職場に復帰する道もあわせて確保できるように検討を進めているところでございます。

小宮山委員 森大臣、今のとちょっと関連なんです。検討をしていてはどんどん子供が育ってしまいますので、いつぐらいをめどに出すお考えなのか、ちょっとお聞かせいただけないでしょうか。

森国務大臣 この若者・女性フォーラム、精力的に開催しておりまして、既に一度開催したんですけれども、産業競争力……(小宮山委員「被災地」と呼ぶ)被災地子ども・子育て会議の方でございますでしょうか。

 この会議は、今月中に、遅くても四月初めを目途に設置をしたいと思っておりまして、本体の子ども・子育て会議の方に意見を出せる形で進めてまいりたいと思っております。

小宮山委員 いつまでというのがちょっとお聞きできなかったんですけれども、早くしていただかなければ、きのうで東日本大震災、二年がたちました。本当に大変な中で子育てをしていただいている、その人たちのためにも、早急に結論を出していただきたいと思います。

 さて、総理の施政方針演説では、女性が輝く日本ということで、「仕事で活躍している女性も、家庭に専念している女性も、全ての女性が、その生き方に自信と誇りを持ち、輝けるような国づくりを進めます。」と明言されていらっしゃいます。

 これは、働いているのが、働ける環境というのも当然必要でしょうし、また、家庭を守るというのも重要かと思います。政府として、また総理として個人的な思いもあるかと思います。女性の社会での活躍を起こすメリット、そして、なぜこの女性が輝く日本ということをお考えになったのか、いま一度、具体的な将来像みたいなものがございましたら、ぜひお聞かせいただけないでしょうか。

森国務大臣 総理から指示がありますのは、女性が活躍すれば、今、M字カーブの生産年齢人口のところが上がる、それから、家計の出費の主導権を握っている女性の意見で消費が増大をする。または、新しい発想によるイノベーションを促していくなどの経済成長にも影響が大きいのではないかということを言われております。

安倍内閣総理大臣 基本として、まず、これが経済にメリットがあるという以前に、日本という社会を誰にとってもチャンスのある社会にしていきたい、これが基本方針なんです。

 女性であろうと、高齢者であろうと、障害があろうと、いろいろな価値が多様化していますが、いろいろな価値観を持つ人たちにとってもチャンスのある社会にしていきたい、こう考えているわけであります。

 その中において、女性は大体男性と同じ数いるわけでありますから、この女性の能力を十二分に活用できていないのが現実でございますから、その中において、まず、国として、制度的なもの等も含めて、しっかりと対応していきたい。それは、法的なものもあるでしょうし、また今までの慣習等も変えていく必要もあるんだろうな、このように思います。

 具体的には、今、森大臣が指摘をしたように、出産をした後再び仕事に戻れるように、その間も働き続けながら子育てをしたいと思う人もいるかもしれませんが、やはりゼロ歳、一歳、二歳の間はしっかりとお子さんを抱き締めながら子育てに専念したいという人もいるでしょう、でも、その後また再び仕事に戻れるようにしていくということは、極めて、女性が多様な働き方の中において自己実現をしていく道を確保していく上で大切なことではないか、このように思っております。

小宮山委員 多様な働き方の中で生き生きとする中においては、また、社会の中で、平成元年から平成二十三年に、約三倍ちょっとですけれども、民間企業の部長クラスはふえました。ただ、そうはいってもたった五%です、日本の場合は。

 やはり、これから女性が輝く中においては、森大臣は家庭の中では相当握っていると言いますけれども、社会の中でも決定権をきちんと握る場というものに女性が入らなければならないんだというふうに思っております。

 その中で、関係するんですけれども、やはり働き方は、もちろん管理職となる方もいる、議員となる方もいる、この比率は、残念ながら女性の衆議院議員はかなり率は減ってしまいました。しかし、いろいろな働きの中において、最近ちょっと言われなくなったのが、ワークシェアリングの問題です。子育てと、または場合によっては勉学と、さまざまな形で働くこのワークシェアリングがなぜ進まなかったのか、また、この点に関して今後どうするのか、お聞かせいただければと思います。

田村国務大臣 委員がおっしゃっておられるのは、多様就業型のワークシェアリングの話だというふうに思います。北欧型といいますかオランダ型といいますか、一ずつ働くのではなくて、〇・七と〇・八みたいな形で一・五を二人で、そのかわり、その時間をそれぞれが子育て等々に、家事等々に手当てするというような、そういう働き方だと思うんですが、一つは、日本はやはり、どちらかが一でもう一方の方が〇・五みたいな、そういう働き方が同じワークシェアリングでも多いのかなという、これは慣行なんですかね。そういうような流れの中で、ヨーロッパ型とはちょっと違っているというのが前提にあるんだと思います。

 とはいえども、平成十四年に政労使でそれぞれ、このワークシェアリングに対して一応合意をしました。その中で、しっかりとそういうような短時間の正規労働というものを認めていこうということでございまして、二十三年の十月の時点で、これは大体二〇・五%の企業が、短時間の正社員というようなものを選択で選んでいいですよというような方向でありますが、これは平成三十二年に向かって、二九%ぐらい、ぜひとも、目標値を今据えながら、しっかりと助成等々の制度も含めて対応をさせていただいておるというような次第であります。

小宮山委員 大変気の長い政策だなと思いますが。

 最近、お一人様という言葉がよくあります。社会学者の上野千鶴子教授の「おひとりさまの老後」という本でブレークをしたものであります。男性では五人に一人、女性では四人に一人以上が六十五歳以上の高齢者となり、七十五歳以上では六割を女性が占めると。また、単身者というものにおいて、死ぬときはひとりというきっぱりとした態度というものが大変受けたものでありますが、そうはいっても、ひとりで暮らす肩身の狭さや生きづらさを少なからず感じ続けている多くのシングル女性たちが、上野氏の生きざまに共感したのではないかと言われているものであります。

 そういう意味では、新しい生き方というものもあると思います。済みません、時間がないものですから、ここの点もぜひ今後ともお考えいただくことをお願いいたしたいと思います。

 さて、大変ショッキングなニュースが先日入りました。それは、三月十日に、「配偶者間暴力、被災地で深刻 福島で六割超 児童虐待も過去最高を記録」という記事が目に入りました。

 なかなか、密室で、つらい中でもあります。この増加をとめなければなりません。一番身近なところは、もちろん政府も、そして地域の県もNPOも力を入れておりますけれども、何かあったとき、飛び出したときに、お金を持たずも、電話があればかけられるのはやはり警察だと思います。

 この点に関しまして、なかなか暴力の問題、場合によっては経済的に追い込まれる問題、そういった家庭間の間について、警察とまたそういった被害者を助けるセンターとの協力体制についてお聞かせいただきたいと思います。

古屋国務大臣 DV、ドメスティック・バイオレンスの問題ですよね。これはやはり、被害者も加害者も身内ですので、なかなか相談しづらいというところがあると思うんですけれども、ことしの二月に、全国警察に指示しまして、いわば支援、意思を決定するための手続の仕組みを応援しましょう、それはあくまでも被害者の立場に立って対応してくださいということで、私からも徹底をさせていただきました。

 例えば、住民票をとる制限をしたりとか、あるいは、相談するときに、やはり男性の警察官がいいのか、女性の警察官がいいのかということもありますよね。だから、それはもうあらかじめ聞いて、どちらがいいかということもしっかり対応していく。

 それから、やはりNPOだとか、そういったいろいろな関係の団体がありますので、そういうところにもしっかり連携をとって、被害者の方が相談しやすいような環境をつくり上げていく。

 確かに、新聞にもありましたように、被災地、特に福島県なんかは五〇%以上ふえているんですね。だから、そういったようなこともしっかり我々配慮しながら、この対応を徹底していきたいというふうに思っております。

小宮山委員 ぜひ、女性にかわりましょうかとか、そういった働きかけも含めて、きちんと、女性や、また男性かもしれませんが、DV被害から救われることを、対応していただくことをお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

山本委員長 これにて小宮山君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明十三日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時四十六分散会


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