衆議院

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第17号 平成25年4月1日(月曜日)

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平成二十五年四月一日(月曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 山本 有二君

   理事 伊藤 達也君 理事 岩屋  毅君

   理事 遠藤 利明君 理事 小此木八郎君

   理事 西銘恒三郎君 理事 萩生田光一君

   理事 長妻  昭君 理事 山田  宏君

   理事 石田 祝稔君

      あかま二郎君    伊藤信太郎君

      今村 雅弘君   うえの賢一郎君

      衛藤征士郎君    大塚 高司君

      大塚  拓君    奥野 信亮君

      勝沼 栄明君    金子 一義君

      小池百合子君    関  芳弘君

      武部  新君    武村 展英君

      津島  淳君    辻  清人君

      渡海紀三朗君    豊田真由子君

      中川 俊直君    中山 展宏君

      西川 公也君    野田  毅君

      原田 義昭君    福田 達夫君

      藤井比早之君    藤原  崇君

      牧原 秀樹君    宮路 和明君

      保岡 興治君    山本 幸三君

      若宮 健嗣君    岸本 周平君

      後藤 祐一君    玉木雄一郎君

      辻元 清美君    中根 康浩君

      原口 一博君    前原 誠司君

      坂本祐之輔君    重徳 和彦君

      新原 秀人君    杉田 水脈君

      中田  宏君    中山 成彬君

      東国原英夫君    三木 圭恵君

      浮島 智子君    佐藤 英道君

      井出 庸生君    柿沢 未途君

      佐藤 正夫君    三谷 英弘君

      山内 康一君    宮本 岳志君

      村上 史好君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   総務大臣         新藤 義孝君

   法務大臣         谷垣 禎一君

   文部科学大臣       下村 博文君

   厚生労働大臣       田村 憲久君

   経済産業大臣       茂木 敏充君

   国土交通大臣       太田 昭宏君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (復興大臣)       根本  匠君

   国務大臣

   (情報通信技術(IT)政策担当)         山本 一太君

   国務大臣

   (経済再生担当)

   (経済財政政策担当)   甘利  明君

   国務大臣         稲田 朋美君

   財務副大臣        山口 俊一君

   外務大臣政務官      あべ 俊子君

   政府参考人

   (内閣府規制改革推進室長)            滝本 純生君

   参考人

   (再就職等監視委員会委員長)           羽柴  駿君

   予算委員会専門員     石崎 貴俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月一日

 辞任         補欠選任

  あかま二郎君     石川 昭政君

  秋元  司君     辻  清人君

  伊藤信太郎君     津島  淳君

  今村 雅弘君     橋本 英教君

  大塚 高司君     坂本 剛二君

  塩崎 恭久君     中川 俊直君

  中山 泰秀君     武部  新君

  西川 公也君     勝沼 栄明君

  船田  元君     豊田真由子君

  牧原 秀樹君     武村 展英君

  玉木雄一郎君     中根 康浩君

  前原 誠司君     後藤 祐一君

  坂本祐之輔君     新原 秀人君

  重徳 和彦君     三木 圭恵君

  東国原英夫君     杉田 水脈君

  柿沢 未途君     山内 康一君

  佐藤 正夫君     井出 庸生君

同日

 辞任         補欠選任

  石川 昭政君     あかま二郎君

  勝沼 栄明君     西川 公也君

  坂本 剛二君     大塚 高司君

  武部  新君     福田 達夫君

  武村 展英君     牧原 秀樹君

  津島  淳君     中山 展宏君

  辻  清人君     藤井比早之君

  豊田真由子君     船田  元君

  中川 俊直君     藤原  崇君

  橋本 英教君     今村 雅弘君

  後藤 祐一君     前原 誠司君

  中根 康浩君     玉木雄一郎君

  新原 秀人君     坂本祐之輔君

  杉田 水脈君     東国原英夫君

  三木 圭恵君     重徳 和彦君

  井出 庸生君     佐藤 正夫君

  山内 康一君     三谷 英弘君

同日

 辞任         補欠選任

  中山 展宏君     伊藤信太郎君

  福田 達夫君     中山 泰秀君

  藤井比早之君     秋元  司君

  藤原  崇君     塩崎 恭久君

  三谷 英弘君     柿沢 未途君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 平成二十五年度一般会計予算

 平成二十五年度特別会計予算

 平成二十五年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

山本委員長 これより会議を開きます。

 平成二十五年度一般会計予算、平成二十五年度特別会計予算、平成二十五年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般的質疑を行います。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、参考人として再就職等監視委員会委員長羽柴駿君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として内閣府規制改革推進室長滝本純生君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。後藤祐一君。

後藤(祐)委員 民主党の後藤祐一でございます。

 まず、アベノミクスと物価の関係についてお尋ねをしたいと思いますが、二月の消費者物価指数、CPIが先日発表になりました。対前年比でマイナス〇・七と大変下がった結果になっておるんですが、中には上がったものもあって、電気代がプラス三・五%、ガソリンがプラス八・一%と、ある意味でアベノミクスの最初の効果である円安、もちろんいい面もあるんですが、悪い面も出てきているというふうにも言えると思います。

 これは甘利大臣にお伺いしたいと思いますけれども、物価上昇の中には、今申し上げたような円安による物価上昇、これは悪い物価上昇だと思います。それに対して、企業の収益が増加して、賃金が上がって、そして消費がふえて、それで需要がふえて価格が上がるというよい物価上昇、これもあると思います。

 まず、この悪い物価上昇とよい物価上昇があるんだということと、目先にあらわれる物価上昇は悪い物価上昇であって、最終的にはアベノミクスが目指すのはよい物価上昇であるんだということ、そして、それはどの辺で切りかわってくるのかということについて聞きたいと思うんです。

 きょうは四月一日です。来年の四月一日は消費税が五から八に上がる日なんですが、そのころになりますと、もし、今の水準が余り変わらないとするならば、円安による物価上昇は対前年比では消えてくるはずですから、来年の四月一日こそこれがはっきりしてくるころではないかというふうに思っておるんでございますけれども、アベノミクスの物価との関係について、甘利大臣に伺いたいと思います。

甘利国務大臣 御指摘のとおり、いい物価上昇とそれから余り好ましくない物価上昇、存在をいたします。

 当面、円安の国内的にはありがたくない影響というのが物価にはね返ってまいります。小麦の政府売り渡し価格であるとか石油製品、あるいは石油や天然ガスを燃料としている電気代、これが上がってくる。これはいいか悪いかでいえば、好ましくない物価上昇になっていきます。

 アベノミクスの三本目の矢、経済成長戦略がしっかり回っていって、民需主導の景気回復路線に入っていく過程で生産が上がり、賃金上昇にはね返ってくる、そして、それが物価の上昇を吸収できるだけの力になっていく、そういうことを期待しているわけであります。需要と供給の関係で、物価が適切な値にわずかずつ上がってくる、循環になってくるにはタイムラグがありますから、できるだけ早くそこに持っていきたいと思います。

 消費税引き上げ前には、各種指標で消費税引き上げが適切かどうか、それはことしの秋に、半年前でありますから、判断する。その時点で、景気がいい方に向かっているということが総合的に判断できるように、政策投入を全力でしていきたいというふうに思っております。

後藤(祐)委員 いま一つはっきりしないところがあったんですが、アベノミクスはよい物価上昇を目的としているのであって、円安を中心とする悪い物価上昇で二%達成したというようなことはないということでよろしいですか。

甘利国務大臣 日銀の主たる責任として、二%の物価安定目標を目指します。それに向けて経済がきちんとついてくるように実体経済を引き上げていくのが政府の責任であります。

 為替の効果というのは、円安は輸出にはプラスに働きますけれども、輸入には物価の上昇にはね返ってまいります。そういう悪い影響を吸収できる経済が健全な成長軌道に入っていくように、全力を投ずるのが政府の責任だと思っております。

後藤(祐)委員 はっきり答えていないのがちょっと残念ですが、来年、悪い物価上昇で二%を達成したとならないように、私も希望したいと思います。

 さて、物価が上昇しますと大変こたえるのは、年金でお暮らしになられている方々でございます。特に、年金については当面下がることが決まっているのでございますけれども、そういった意味で、年金は下がって物価が上がるという状況になりかねません。

 麻生財務大臣にお伺いしますが、年金のこれから下がる予定、いつ、どういう形で下がることになっているんでしょうか。

麻生国務大臣 これは、今の段階でこの日から幾らということを申し上げる段階にはないんですが、少なくとも、今言われましたように……(発言する者あり)決まっているんですけれども、今はちょっと別の話をしようと思ったので、済みません。

 決まっているんですが、物価が上昇していくに当たって、おっしゃるように、世の中は何となく景気がいい話になっていますが、実際に見て、CPIとかコアコアCPIはいずれも極めて厳しい黒の三角を出してきているというのが実態でありますので、その意味では、与える影響は極めて大きいということは、我々もそう思っております。

 したがって、年金というものを今後考えていくに当たっては、それまでに当たって、今度は物価が、全体として所得も収入も上がって、いわゆるいい意味でのインフレ、いい方でのインフレになって、基本的に経済を押し上げ、法人税を引き上げ、結果的に全体としてのGDPを引き上げる形によって、そういった形の政府収入がふえる形というのに持っていかないとなかなか難しいというのははっきりしているんだと思っております。

後藤(祐)委員 秘書官、今教えないでほしいんですが、実は決まっているんです、既に。二十五年度の年金がどれだけいつ下がるか、決まっているんです。御存じありませんか。

麻生国務大臣 過日の三党協議会において、そのように話が決められておるのは知っております。

後藤(祐)委員 何月に何%下がるんでしょうか。もう決まっています、これは。

麻生国務大臣 済みません、何月に何%まで、ちょっと記憶にありません。

後藤(祐)委員 ことしの十月ぐらいに、消費税を上げるかどうかを決めるという大変大事なことがあるんです。そして、物価が上がってくるかもしれない中で、年金が下がることが、ことしの十月に一%下がることはもう決まっているんです。これは過去の物価スライド分が反映されていないものを反映しようということで、ことしの十月、下げることはもう決まっています。そして、二十六年四月にはさらにマイナス一%、二十七年四月にはさらにマイナス〇・五%、この先の方は若干変わる可能性があるかもしれませんが、少なくとも二十五年度はもう決まっているんです。

 こういった基本的なことも御存じなく、消費税の話をするとか物価上昇の話をするとかというのはいかがなものかなということを申し上げたいというふうに思います。

 アベノミクスと物価の話はこの辺で終わりにしたいと思いますので、甘利大臣、こちらまでで結構でございます。

 続きまして、選挙制度についてお伺いしたいと思います。

 これについては、まず過去の経緯を確認したいと思うんですが、〇増五減案について、実は、この配付資料にもございますけれども、民主党はむしろ、これを切り離して先にやろうではないかということをかつて提案しておりました。配付資料にありますけれども、二〇一一年の三月に最高裁の判決が出て、その後、協議会を開始して、二〇一一年十月二十五日、第三回協議会において、民主党の樽床座長より、格差是正を先行するということを提案させていただいたんです。つまり、〇増五減だけでも先にやろうじゃないかという話はむしろ民主党から先に提案させていただいたんだということを、改めて与党の皆様中心に御確認をいただきたいというふうに思います。

 ただ、これがなかなかまとまらなくて、二〇一二年の一月に第九回協議会で、この二段階論がなかなか御理解いただけないので、これを我々としては撤回させていただいて、三点セットで出す、つまり、〇増五減と八十削減と抜本改革、連用制ですね、こういったものをセットにして出したということ、これは改めて確認いただきたいということ。

 あと、その後、自民党は、〇増五減だけにすべきだというふうに、後で御意見を変えました。

 この自民党の案というのが、二〇一二年七月二十七日に提出されたんですが、何と、御自分の出された〇増五減案を、委員会に付託することを反対されたんですね、自民党自身が。これは前代未聞の事項と言われました。私はそのとき倫選特の委員でございましたが、過去、こういった非常におかしな歴史があったということを、特に当選一回の方々はよく勉強いただいて、このことを御議論いただきたいということを冒頭申し上げたいと思います。

 その上で、今、一人別枠方式がどうなるかということについて大きな議論になっておりますが、この三月十八日の福岡高裁判決と三月二十六日の広島高裁岡山支部判決、今、配付資料で、大きな紙にして配付させていただきました。

 この福岡高裁判決では、ちょっと読み上げます。「一人別枠方式を廃止してはいるが、従前の定数配分を基本的に維持した上、選挙区間の人口の最大較差が二倍未満となるよう必要最小限の改定をするにとどめようとするものであって、その内容は、平成二十三年大法廷判決の趣旨に照らすと、十分なものといえないことは明らかである。」このように、一人別枠方式が事実上残っているというような判決がなされています。

 同じく、三月二十六日の広島高裁岡山支部判決においては、緊急是正法、いわゆる〇増五減法は、「都道府県単位で最小選挙区数を二としており、平成二十三年大法廷判決が違憲であると判断した一人別枠方式による定数配分を基礎としたものにすぎず、投票価値の較差是正のための立法措置を行ったとはいいがたい。」このように判決がなされています。

 我々は、昨年十一月のときに、あのころは解散がいつあるかわからないという状況でしたし、衆議院の任期も残り数カ月という状況でございました。ですから、〇増五減であっても法律は通すべきだと、与党としての責任で賛成をさせていただきました。

 ですが、もう既に解散が行われて新しい任期に入り、そして、二つの高裁でこのような判決が出ている。状況が変わりました。

 この国会で、この〇増五減を反映した区割り審の公職選挙法、これが恐らく提出されるんだと思います。報道によれば、四月十二日にも提出されるというふうに言われておりますけれども、これは、もう既に、それを出したとしても、一人別枠方式は残っているというふうにまた判示されてしまう可能性が高いんです。しかも、既にそういう判決が出されていることを知りながら、それを改正しないで解散するというのは極めて違憲性が高く、今度は本当に無効判決が出る可能性が高いと思います。

 これについて、新藤大臣、どのようにお考えでしょうか。

新藤国務大臣 これは、今委員がいろいろな経緯を御説明いただきました。そのような経緯の結果、最終的に主要政党が合意をして、この今回の区割り法が決まったわけであります。そして、画定審議会が設置されて、それに基づいて、非常に熱心な議論の上に現状の区割りが勧告された。私どもとすれば、法律にのっとって出された勧告に従って早急に適切な措置を講じたい、このように思っています。

 そして、今委員がおっしゃった、福岡と岡山の判決のものは確かにそのように書いてあります。しかし一方で、東京においては、これが、憲法が要求している投票価値の平等にかかわったものに是正していくことが期待できる、このような判決もございます。

 したがって、いろいろな司法の判断が分かれている中で、我々とすれば、まずは第一に、決められたものからしっかりとやっていかなくてはならない、これは憲法の要請に基づくものである、私はそのように考えております。

後藤(祐)委員 昨年十一月と今とでは、緊急性が違うんです。

 そして、もう一つ申し上げたいのは、実は、今回の〇増五減で区割り審で出たものは、一・九九八倍というものです。これは二〇一〇年の国勢調査の結果に基づく人口はそうなっているということです。今、二〇一三年です。今、どうなっていると思いますか。

 けさの産経新聞、これは、直接私が人口統計を調べたわけではないのですが、少なくとも、人口上位十選挙区のうち八選挙区で、既にことし一月の時点で格差二倍以上になっているという試算がなされています。これは、各市役所がきちんとした人口の統計をそろえてくれば、はっきりすることだと思います。

 一・九九八倍が、三年たって二倍を超えていないと考える方が不自然です。この二倍を超えている次の衆議院選挙、いつあるかはわかりません、きょうは残念ながら安倍総理はおられませんし、わかりませんが、今の段階で二倍を超えている可能性があると思いませんか。総務大臣、どう思いますか。

新藤国務大臣 これは、現状においてどうではなくて、法律に従って、今回の区割りは、国勢調査によって、その人口をもとにやる。しかも、その対象選挙区はここであるというようなこと、それから行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行うこと、これは法律で定められた要件であります。それに基づいてやっているのであります。

 ちなみにこれは、大正十四年から、衆議院議員選挙法、一貫して国勢調査人口を使っている。それから、小選挙区になってからの、今回三回目でありますが、これも全て国勢調査人口を使っているということで、これは、法律上の安定性を保つ意味でも、私は、これに沿って、しかも、法律の要請としてこのようなことがございましたから、それに沿って我々はやっておる、こういうことでございます。

後藤(祐)委員 一・九九八ですよ。しかも、今度解散された後、訴訟が起こされたならば、それはその時点での人口でなされるわけです、訴訟が。もう明らかに超えていることがわかっている中で、要するに、解散したら違憲訴訟を起こされることが明確にわかっているんじゃないんですか。それは、過去の手続と同じでやればいいということではないんじゃないですか。

 しかも、今回の高裁判決二つもあるわけです。今、判決がこれだけそろった中で、少し踏みとどまって、〇増五減の正当性が若干失われてきているという反省をすべきときではないでしょうか。

 我々はそう考えて、〇増五減ではやはり足りないと。今、解散が終わってからまだ数カ月しかたっていないわけですから、じっくりと、我々は具体的な案をもう今週、出させていただく予定でございます。三十、五十で、小選挙区で三十減らして比例五十減らすという、むしろ、大政党も苦しい、小政党も少し苦しい、そして定数も減らしていくという、皆さんのバランスのとれたところを提案させていただいております。

 ぜひここは、〇増五減にこだわって突っ走るのではなくて、一回立ちどまって考えていただきたいんです。

 官房長官、二月十二日の予算委員会で、私は、この選挙制度の話、安倍総理とやらせていただきました。そのときに、安倍総理はこういうふうに答えているんです。

 「自民党と公明党だけ、自民党と民主党だけではなくて、これは小さな党も入れて、民主主義の土俵をつくっていくんですから、そこでちゃんと協議しましょうねと。そして、衆議院の選挙を経れば新しい勢力も出てくるかもしれませんから、事実、維新の会という大きな勢力もできました、そういう方々と国会において結論を出していくべきものであろうと思います。」と安倍総理は答弁しています。

 そのとおりです。そのとおりなんです。〇増五減を、この後、四月十二日か何かに出されて、衆議院は自民、公明で通ってしまいます。参議院はわかりません。ですが、なぜかこの区割り審が三月中に出て、六十日ルールが間に合ってしまうタイミングなんですね。意図的とはあえて申しませんよ。ですが、官房長官、笑っていらっしゃるので意図的なのかもしれませんが、六十日ルールで戻ってきて、衆議院で三分の二可決するということはない、このことをこの場ではっきり明言していただきたいと思います、官房長官に。

菅国務大臣 私が答える立場じゃないというふうに思います。

 ただ、〇増五減については、委員もよく御承知のとおり、三党で合意したことです。いずれにしろ、決めたことを一つ一つ、やはり国会の中で決定していくということは、信頼を得る意味では大事なことじゃないでしょうか。

 そして、私たちとすれば、〇増五減だけで終わることは毛頭考えていませんから、このことも党首討論の中で合意をしました。定数削減もやろうということで、与党案も既にまとまっております。

 委員の方でも、今、提出されるということでありましたので、そういう中で、各党会派の中で抜本的見直しというものをぜひやっていただきたいというふうに思います。

後藤(祐)委員 それは安倍総理の答弁と矛盾しますね。やはり、中小政党もしっかりと議論した上で結論を出そうとおっしゃっているんですから、そこに立ち戻って、もう一度丁寧な議論をしていただけないでしょうか。答弁は結構です。

 そして、一つ確認したいと思いますが、今の御答弁は、〇増五減をまず通させてくださいというお話でした。その後、定数削減ですとか抜本改革をやったらどうかというお話でした。

 ということは、その間に解散を打つことはありませんね。つまり、〇増五減をやって、通して、次の話はやらないで解散を打ってしまったら、今の話では通らないわけです。そうなんです、間に合っちゃう可能性があるんですよ。三月二十八日に区割り審が出たということは、六十日ルールをやると、六月に法律が通っちゃって、ことしの夏の参議院とのダブル選挙ができてしまう可能性があるんです。

 でも、今の官房長官の答弁は、きちんとその先の定数是正と抜本改革もやると言っているのは、解散の後の可能性もあるということですか。それとも、その間に解散することはないということですか。

菅国務大臣 解散権は、委員御承知のとおり、総理の特権事項でありますから、これについて私が言及することは差し控えさせていただきたいと思います。

 ただ、やはり公党間で約束したこと、〇増五減、そして区割り審が方向性を出したわけですから、粛々と、そのことについては国会に提出するのが政府の役割だというふうに思っています。

 そして、維新の皆さんを初め、解散後に新たな議席を得た党も出てきたわけですから、それぞれ各党会派の中でこの抜本改革をぜひ進めていただきたい。与党としてはそれに向けての案も決定をしたわけでありますから、それぞれの各党会派が持ち寄る中で抜本的改革を行っていくというのが、国民に対しての、この判決を受けて、それぞれの各党会派の役割ではないかなというふうに思います。

後藤(祐)委員 ぜひ国民に、これはよく見ていただきながら、憲法違反であることが明らかで、二倍を超えているのが明らかな中で〇増五減をやってしまうのがいいのか、あるいは、もう少しクリエーティブな案をぜひ野党の皆様方でまとめさせていただいて、与党の皆様の、また間をとるでもいいと思うんです。そういったクリエーティブな、建設的な話し合いを進めていきたいということを申し上げたいと思います。

 一つ、事務的に総務大臣に確認したいと思います。

 仮に、六十日ルールを使うかどうかわかりませんが、六月のどこかで、この〇増五減を実現する公職選挙法が成立したとします。過去の例によれば、成立した後、一カ月の期間が必要になりますね、国民の皆様に周知するために。ところが、それを周知した後、仮に衆議院を解散したいというようなことがあった場合には、参議院の同日に間に合わなくなっちゃうんですね。ですから、法律が成立した後、まず解散を打って、その後、一カ月の周知期間が来て、施行になるということは可能なんでしょうか。わかりませんか。よろしいですか。

新藤国務大臣 今、テクニカルな話をいただいているわけでありますが、まず、これから法律を成立させるわけであります。その後に運用をどうしていくかというのは、その時点で考えていかなきゃいけないことだというふうに思います。

 今の状態で今の仮定は、ちょっと余りにもいろいろなことが、不確定要素、変動要素があり過ぎて、今の状態ではまだお答えできかねるところではないか、このように思います。

後藤(祐)委員 これは政治的な問題ではなくて、法律的な、純粋な法律論なんですね。恐らくこれは可能なんじゃないかなと思うんですが、本当に、どうですか。これは政治論ではなくて、法律が成立していて、施行までに周知期間が必要だといったときに、途中で解散しちゃうとその効果がなくなっちゃうなんということがあり得るんですか。通常、ないと思うんですね。ですから、それは可能だと私は思っているんです。

 可能ではありませんか。これは純粋な法律論なんです。いかがですか。答えられるはずです。これは事務方にも言ってありますよ。

新藤国務大臣 法律論とおっしゃいますが、しかし、その手続をどのように運営していくかということは、そのときのいろいろな状況を勘案した上でやっていかなきゃいけないと思います。ですから、手続として可能であるか、可能かもしれませんが、やらないかもしれないし、そのときの判断というのは、その状況がどのような状況かということを総合的に、やはり行政といえどもやらなきゃいけない。

 手続としては、今委員がおっしゃるような、そういうやり方もあるのかもしれません。ただ、私は、そういうことはまだ研究しておりません。

後藤(祐)委員 研究ではなくて、これは法律の基本的な知識の問題だと思いますがね。行政手続法ですとか、いろいろと大事な法律も持っていらっしゃるんですから、しっかりしてください。

 さて、次の、天下りの話に行きたいと思います。

 官民人材交流センターによるあっせんについて、この前質問しましたけれども、最後、ちょっと時間が少なくて、途中になりました。そして、そのときに稲田大臣は、民主党政権下で行っていない、すなわち、官民人材交流センターによるあっせんは行っていないという、その方針と同じ方針で臨んでまいりますという御答弁をされました。これは正確に言うと、そのとき正確ではなかったんですが、組織の改廃等により離職せざるを得ない場合を除き、行わないということですが、これも確認させていただきました。今、答弁は必要ありません、内閣委員会で聞きました。

 ですが、これは、今の政務三役はそうかもしれませんよ。でも、政務三役がかわったら、一体どこで担保するんですか。つまり、我々のころは、総理がきちんと閣議で発言して、それが文字で残っていて、それに基づいてやっていたんです。ですが、この官民人材交流センターによるあっせんは行わないということは、私が聞いて初めて、答弁で我々は知り得るところとなったんです。もし大臣がかわったら、例えば参議院選挙の後なんか、大臣がいろいろかわったりもしますよね。大臣がかわったら、その約束はほごですか。

 これを正式に、閣議決定が一番いいんですが、せめて民主党政権のときと同じように、総理大臣が閣議で発言するですとか、形が残るようなもので、政務三役によるあっせんによる再就職は、官民人材交流センターの先ほどの例外的なもの以外はやらないということを形式的に決めるべきだと思いますが、いかがでしょうか、稲田大臣。

稲田国務大臣 先日、予算委員会それから内閣委員会で、官民人材交流センターによるあっせんは行わないという民主党政権下の方針を自民党下でも引き継ぐこと、そして、その中に、政務三役によるあっせんも行わないということも引き継ぐということは答弁をいたしました。

 以上でございます。

後藤(祐)委員 ということは、形式行為は答弁以上には行わないということですね。そうすると、大臣がかわった場合、政務三役がかわった場合には、その後は、その都度どうなるかわからないということですね。

稲田国務大臣 今申し上げたことは、官民人材交流センターのセンター長を兼務する内閣官房長官として決めた方針でございますので、総理発言等により再確認する必要はないと思います。

後藤(祐)委員 その決めた方針というのは、外部的に明らかになっているんですか。私は見たことはありませんし、どこにも公表されていないと思います。何か形式行為として決めたんですか。

稲田国務大臣 形式的行為として決めたかどうかという質問の趣旨がわかりませんが、官民人材交流センターのセンター長を兼務する内閣官房長官として決めた方針でございますので、総理発言等により再確認する必要はないと思っております。

後藤(祐)委員 こうやって、せっかく決めたことが、時の流れとともに、人がかわるとともに、ルールはなくなってしまうんです。それが役所の、政治家の籠絡の仕方なんです。官房長官ならわかると思いますけれども。

 官房長官、これはぜひ形式的に決めてはどうですかということを、この前も申し上げましたが、ぜひやった方がいいと思いますよ。

 さて、もう時間が少なくなってきたので、再就職関係、もう一つやりたいと思います。

 再就職支援会社による再就職の支援、これは悪いことではありません。民主党政権のときも、二十五年度はやろうということで予定をしてまいりました。どうしても上の方の世代の方が残ってしまうものを、再就職支援会社に、どこか再就職する先を探していただけませんかとやって、問題ないところに行っていただくことは、私はむしろどんどんやるべきだというふうに思います。

 ただ、問題があるところに行ってもらっては困ります。再就職する予定の方が関係するような仕事、これに絡むような会社を紹介されてしまっては困ります。我が政権がもし続いていれば、そこに関して厳しい規制を基準としてつくる用意を、そんな議論をしていました。

 ところが、これについて内閣委員会で稲田大臣に確認したところ、いわゆる現職の公務員の求職活動規制、これは国家公務員法百六条の三でございます。この現職の公務員の求職活動規制で求職活動をしてはいけない会社だけは、再就職支援会社は紹介しちゃいけませんよというような御答弁であった。

 それだけだと甘いんじゃないんですか。例えば、鉄道局長がANAだとかJALだとか行けちゃう、こういったことが、局長レベルなんかになると、省全体に影響が及ぶんですよ。

 実際、昔あった人事院の事前承認というルールのころは、局長レベル以上なんかは、省全体で、そうやって、関係あるところには行っちゃいけないというルールでやっていたんです、昔は。ですから、この再就職支援会社による支援の協力というのは、せめて昔の人事院承認の時代ぐらいの厳しさでもってやらないと、裏下りとまた言われてしまうんじゃありませんか。

 この百六条の三の基準以上の基準をつくらないのかどうか、改めて伺います。

稲田国務大臣 先日、内閣委員会で、このことについては委員ともるる議論をしたと思います。そのとき私が、国公法第百六条の三が基準になるというふうに答弁をいたしましたが、それは、民間の再就職支援会社を活用した再就職支援を実施するに当たっては、同条に定められた利害関係企業等に対する在職中の求職活動規制を遵守する必要があるという趣旨でございます。

 また、この百六条の三を具体化するものとして、政令でもるる定められているところと承知をいたしております。

後藤(祐)委員 やはり、やらないんですね。これは大変な問題になってしまうんです。

 この再就職支援会社による再就職、私は、真っ白なものにしたい。それで、たくさんの方に行っていただいていいんです。予算も確保されているんです。そうしないと回らないんですよ。ところが、何か微妙なところに行ってしまったりして、例えば、さっきみたいなものが発生したらどうするんですか。鉄道局長がANAとかJALとかに行っちゃうようなところを紹介されたらどうするんですか。それを法律上認めちゃうんですよ。

 ぜひ、私はこれをグレーなものにしないで、白いものとして運用できるような基準をつくるよう、改めて官房長官に申し上げておきたいと、この前も申し上げましたが、思います。

 それで、最後に、時間が短くなってまいりましたけれども、この前、残念ながら、初めてのあっせん禁止違反行為が発生してしまいました。国土交通省の前次官の方があっせんをしたという認定が、再就職等監視委員会によってなされました。大変残念なことでございます。

 これは我が政権のときに発生していたことでもあり、それについて細かく、ああすればいい、こうすればいいということを申し上げることはいたしませんが、二度と起こしてはなりません。二度起きないようにするために、ぜひ、これは厳しく、単なる周知徹底ではなくて、例えばこういうことをやっちゃいけないんですよというのを、かなり細かく周知徹底しなきゃいけないと思うんですね。

 こういった、二度と起きないようにするための国土交通大臣の姿勢を問いたいと思います。

太田国務大臣 まさに、二度とこういうことがないようにということで、どこまで、どういうことで情報聴取等が許されるのか許されないかというようなことについて、今回監視委員会が明確にこれはいけませんよということを示したということを、私は真摯に受けとめなくてはならないというふうに思っています。

 ですから、委員おっしゃるように、何がどういうふうにだめであるということを今回監視委員会が指摘したのかということを、しっかり周知徹底して、私は、二度とこういうものが起きないようにというふうに、強い意思を持って臨みたいと思っています。

後藤(祐)委員 そうなんです。

 実は、先週の段階で事務方から聞いたときは、もともとあるルールをもう一回流しましたみたいな周知徹底だったんですね。それは当たり前のルールしか書いていなくて、それを読んでもわからないんです。そうでなくて、今回、この人に対して何月何日にこういうふうに言った、この言葉が違法だったんだというところまで公表されているんです、再就職等監視委員会から。それを周知すれば、ああ、これは言っちゃいけないんだな、こういうことはやっちゃいけないんだなということはわかるんです。

 ぜひ丁寧な周知を、これはほかの大臣も同じことだと思いますので、改めて政府全体で徹底をされたいということを、これは官房長官にお願いをしておきたいと思います。

 時間なのでもう終わりますが、この問題の本質は公益法人問題なんです。

 この前も、公益法人改革について、我々の政権のころ用意した、ここまでのパッケージを具体的にやられたらいかがですか、ほかのやり方でもいいですけれども、公益法人について、特に、関係の深い、補助金や規制が強い公益法人に対しては、例えば公募制にするですとか、新たなことをやったらどうですかと聞いたところ、新たなことをやるつもりはないような答弁がありましたけれども、稲田大臣、改めて、この事件が起きたことを踏まえて、公益法人改革を厳しく進める具体的な案をここで述べてください。

稲田国務大臣 公益法人改革についても、内閣委員会で、委員が示された、議員立法として提出された法案の内容について議論をいたしました。

 公益法人についても、一定の政府との関連があるものについての透明性を図っていくというその方針は、我が安倍政権下でも継続をしていくというふうに考えております。

後藤(祐)委員 もともとやっていることを引き続きやると答弁しただけなんですよ。これでは全く期待できないですね。残念ながら、期待できないということが確認されました。

 ぜひ、委員長、行政改革、統治機構あるいは選挙制度、こういったことについての集中審議を求めたいと思います。

山本委員長 後日、理事会で検討させていただきます。

後藤(祐)委員 時間になりましたので、終わります。

 ありがとうございました。

山本委員長 これにて後藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、中根康浩君。

中根(康)委員 民主党の中根康浩でございます。

 通告をいたしました順番を少し変えまして、二番の、解雇の金銭解決制度について、田村厚労大臣を中心に議論を進めてまいりたいと思います。

 三月の二十八日の予算委員会で、民主党の山井議員の質問に対して、解雇の金銭解決は安倍政権としてはやらないというふうにおっしゃられました。金銭解決制度を明確に全面否定した安倍総理の答弁、これは間違いなく見識のある答弁であったと私は思っております。

 もし、このようなサラリーマンいじめのようなことをやるということであれば、将来不安を大きく来すということで、山井議員は、そのとき、アベノリスクという表現をされておられましたけれども、受け皿をつくる前に首切り法案をつくる、制度をつくるということであれば、これはアベコベミクスということになってしまいますので、こういう見識のない政策はやらないと、はっきりと御答弁をされたわけであります。

 資料一というものをお手元に用意させていただいておりますが、この資料の中で、上の四角の中にありますこの上の方は、もう田村大臣も明確に答弁されておられますように、世界じゅうでやっている国はないと。これをやるはずはない、世界じゅうでやっている国がないものを日本で真っ先にやるはずはないというのは当然のことであります。

 問題は、下の方、「ドイツなどの」と書いてある方でございますが、そのドイツの例が下に例示をされておるわけでございますけれども、つまりは、事後にお金を払って解雇を行うことができるようにする、このドイツの例のようなものを指して、ここを山井議員は質問の対象として取り上げて、安倍総理からの、やらないという答弁をいただいたということでございます。

 規制改革会議あるいは産業競争力会議では、解雇補償金制度、これは資料の二の右上の方に、ちょっと印がついておりませんので見にくいかもしれませんが、解雇補償金制度の創設ということで、これは規制改革会議の方で議論されている。

 あるいは、資料三になりますけれども、長谷川さんの資料の中で、四角の中に書いてあります。「再就職支援金、最終的な金銭解決を含め、解雇の手続きを労働契約法で明確に規定する」、こういうふうに産業競争力会議では提案をされている。

 あるいは、資料四にありますように、規制改革会議の座長が慶応大学の鶴さんである。鶴さんというのは、この解雇の金銭解決を積極的に導入しようとされておられる方。

 こういうように、政府の会議ではこのような金銭解決制度というものが議論をされてはいるけれども、二十八日の予算委員会での安倍総理の答弁は、やらない、上も下も、事前も事後もやらないという答弁でよろしかったですよね。大臣に確認をいたします。

田村国務大臣 しっかり答えなきゃいけませんので、ちょっと長目になるのはお許しください。

 まず、あの当時のたしか山井議員の議論は、解雇法制において金銭解決なるものをやるのかどうかという御質問だったというふうに思います。

 そもそも、事後というのは、これは、解雇無効という判断が下った後に、この後、金銭でどういうふうな形で契約を解消するかということでありますから、私は、解雇ではないというふうに思うんです。これは、契約を解消するための一つの条件整備だということであります。

 今、ドイツの例がありました。イタリアもそうなんですが、この二国が主にやっておりますが、これも基本的には、申し立ては、要するに従業員の方、雇用されている者が申し立てするのが前提。他の国はそれしか認めていません。

 ただ、ドイツとイタリアに関して言いますれば、その両者の関係、雇い主と雇われている者の関係が、裁判が起こる前から継続して、例えば、雇われている方、雇用者がずっと企業に対して社会通念上不相応な非難等々をやっていた、このような場合に関しては、これは、解雇が無効でももとのような関係にはならないであろうということを前提に、企業側もこの申し立てができるという限定的な要件になっているわけであります。

 基本的には、労働者、雇用されている者を守るという前提に立っておる中での解決方法としてこの金銭解決があるということは、御理解いただきたいと思います。ですから、解雇というよりかは、契約を解除するときの一つの方法論だというふうに御理解ください。

 今の問題に戻りますが、それぞれの会議でいろいろな議論があるのは、それはそれぞれの有識者の方々のお考えでありますから、それを我々が無視、否定するものではございません。

 しかし、この間総理がおっしゃられたのは、解雇法制上の金銭解決という話でございますから、この前段の部分、つまり、解雇するのに、金を渡すからやめてくれというのは、それは一切考えていないということであろうと思います。

 ですから、その後段の部分に関して総理がどのようにお考えであるのか。あの文脈から見ると、私自身は、どのようにおっしゃられておるのかまだ理解いたしていないわけでありまして、それはまた総理にお聞きをいただくべきことなのかなというふうに思います。

中根(康)委員 田村大臣の見解はよくわかりました。よくわかります。二十八日の山井議員との議論でも、田村大臣は恐らくそういう趣旨の御答弁をされておられたと思いますが、安倍総理は違ったような気がします。

 山井議員は、この資料一の、いわば事前も事後も含めて質問をしたし、世界じゅうで行われていないものを日本でやるとかやらないとか、やるはずがないという前提で質問をしておられました。

 つまりは、山井議員が質問していたのは、この資料一の上の箱の中の下の方、いわゆるドイツの例で挙げられているようなものですよね。これに対して安倍総理に対して質問をして、安倍総理は、三回あるいは四回、これは数え方にもよりますけれども、明確に、やらないと。

 解雇を自由化しようなんてことは全く考えていないとはっきり申し上げておきたいと思いますよ、ここで答弁していることが安倍内閣の基本方針であります、解雇を自由化しようなんてことは考えていない、金銭解決については、そうではないということは先ほど申し上げたとおりであります、これが私の答弁であります、金銭によって解決していく、解雇していく、自由化していくという考えはないということをはっきりと申し上げておきたいと、再三にわたって明確に否定をされておられるわけであります。

 もう一度繰り返します。

 山井議員が質問したのは、事後の方、これに対して質問したわけでありまして、それに対して安倍総理は、三度も四度も明確に否定している。これは、安倍総理と田村大臣との見解が食い違うということになりませんか。

田村国務大臣 今の文面、金銭による解雇はしないというふうに総理は言われていますよね。ですから、私は、解雇というものは事前しかあり得ないわけでありまして、解雇無効となったものを、金銭で労働契約解消を、これを解決するというのは、労働者も納得した上でということが前提になりますから、これは解雇じゃないという認識でございます。

 ですから、そこで書かれている、金銭で解雇はしないと言われているのは、前段のことを言われておるというふうに私は思うのでありまして、後段の部分について総理がどうお考えかは、この場面ではお答えになられていなかったのではないのかなということを、そのときのやりとりを私がお聞きして感じたことであります。

中根(康)委員 改めて確認をいたしますが、田村大臣と総理は、このことについて、二十八日の予算委員会の山井議員の質問以降、この答弁の内容についての打ち合わせといいますか、考え方の整理はされたことはありますか。今、感じておるとかあるいは推察とか、そういう感じで受けとめさせていただきましたが、いかがでしょうか。

田村国務大臣 総理も大変お忙しゅうございまして、週末、日本におられなかったということもあるんですが、いずれにいたしましても、そのときの質問が、解雇、解雇ということを山井委員もおっしゃられておられました。でありますから、解雇というのと、労働契約を解消するための、お互い双方が理解をしながらの解決方法とは違うわけでございまして、論点がどうもミックスされていて、うまくまとまっておられなかったというふうに思いますので、そういう意味で、総理はそうやってお答えになられたのではないのかなというふうに思いますけれども。

中根(康)委員 山井議員の質問は、決して混同されていなかったし、明快なものであった、明快なものに対して安倍総理が明快に答弁をされたという当たり前の受けとめ方を我々はしておるのでありますが、きょうは田村大臣は、どうもそうではなかった、あるいは総理の答弁のあり方を修正されておられるのかというようにも受けとめられるわけであります。

 いずれにいたしましても、いわゆるホワイトカラーエグゼンプション、これを導入する、働くだけ働かせて残業はつけない、それで不満を言ったら金銭解決で首を切ってしまう、こういう、サラリーマンにとっては大変つらい世の中が訪れようとしている。こういう議論に対して、田村大臣と安倍総理が打ち合わせというか考え方の整理をしていないということであれば、それはモンゴルに行ってお忙しいこととは思いますけれども、少なくとも、電話などで何か考え方をお互いに整理しておくということは必要なことではないでしょうか。

田村国務大臣 先ほど来私が言っていることを委員は理解していただきながらおっしゃっておられるんだと思いますが、首を切るという話ではないんです。

 いいですか。裁判で解雇無効だと言われた案件を、その後、お互いに労使ともに理解をした上で解決する方法に、会社で働き続けるという方法もあるでありましょう、それから、金銭で対応する方法もあるでありましょう。そういう方法の中で、金銭で解決する方法を、例えば世界の潮流は、それでも労働者の方からの申し立てですよ。これを首切りだと言われると、お金を払って首切りじゃなくて、御本人が申請して、お金をもらって、労働契約、こんな会社とはもう解除したいとおっしゃっている話でありますから、これをなぜ首切り法案だとおっしゃられるのかが私は理解できません。

中根(康)委員 いずれにいたしましても、安倍総理の考え方を改めて確認しなければ、今、田村大臣がおっしゃったことと安倍総理の、あのときは私どもは全面否定をしていただいたと思っておりますが、この答弁との食い違いがあるのかないのか、総理と田村大臣との間で。本来、この時間までに確認をしてきていただきたかったわけですけれども、改めて確認をする必要があります。

 必ず、この後また予算委員会の議論で、必要な時間、必要な議論が行われていくと思いますけれども、本来、この時間までに整理をしてきていただくのがこの予算委員会の議論の趣旨であったわけでありますので、委員長、安倍総理と田村大臣との考え方を整理したものを、書面にまとめたものをこの委員会に御提出いただけるように理事会でお諮りをいただけないでしょうか。

山本委員長 ちょっとその前に、田村大臣のそのことに対する答弁を求めていただけませんか。そこにいるんだから。総理との調整は、田村大臣がここで約束するかどうか。我々が委員会として……(中根(康)委員「いや、そうじゃなくて。田村大臣の御見解はわかりました。わかった上で」と呼ぶ)

 ちょっと待って。中根君、この委員会で申し上げても、田村大臣にその意思がなかったらどうにもならぬのですから。だから、田村大臣にまずは求めてください。(発言する者あり)

 田村さん、では、もう一回答弁して。中根さん、ちょっと待って。田村さん、答弁して。きちんと答弁して。

田村国務大臣 私が申し上げてきたのは、事実を申し上げてきた。つまり、世界はどういう状況か、この金銭解決に対する例をこの間は申し上げたお話でございます。

 私は、もちろん、労働者の雇用を守るというのが私の役割でございますので、今、例えば規制改革会議、規制改革会議といいますか、よく産業競争力会議でこの御議論を私はお聞きしたんですが、そういうところで、私は労働者を守る立場からいろいろな意見は言わせていただいておりますし、世界の状況は……(発言する者あり)ちょっと、長妻筆頭理事、静かにしてもらえませんか。中根委員が私に文句をおっしゃられるならいいですけれども、静かにしてください。

 ですから、私は、そういう意味で、そこではいろいろなことを申し上げます。

山本委員長 不規則発言を禁止します。

田村国務大臣 そこでいろいろな議論がある中で、総理がそれをどう判断するかは、それは総理の一つ考え方でありますから、総理がお出になられるときに総理にお聞きをいただければ、それが一番わかりやすいんだと思います。

山本委員長 ちょっと待って。田村大臣、先日の、二十八日の総理答弁はお聞きになっていたでしょう。

田村国務大臣 聞いていました。

山本委員長 それと田村大臣のおっしゃっていることは矛盾するんですか、しないんですか。

田村国務大臣 私が聞く限り、金銭解雇というような、解雇のために金銭解決を使うというような趣旨で山井委員はおっしゃっておられました。これは私も議事録を読みましたけれども、そういうふうに書いてありました。

 ということになれば、事後であっても解雇を金銭でやれるというような、そのような表現であったというふうに私は思っておりますので、そのようなことはできないと。

山本委員長 ちょっと待って。大臣、二十八日に総理が答弁した議事録にあなたの考え方を照らし合わせて、矛盾するかどうかについての書面は出せますか、委員会に。

田村国務大臣 わかりました。どこが矛盾しているのかということを……

山本委員長 矛盾しているかどうか、まず結論を書いて、矛盾しないならしない、するならする。

田村国務大臣 はい、わかりました。では、それをお出しさせていただくということでよろしゅうございますか。

山本委員長 はい、そういうことで。

中根(康)委員 大変適切なお裁きをありがとうございます。

 つまりは、総理がやらないと言ったことの中に事前も事後も両方とも含まれるのか、あるいは、どちらかだけを指しておっしゃった、田村大臣の御答弁のようなことを指しておっしゃったのか、そこをはっきりさせてほしい。総理がきちんと、論点がどこにあるかというものを、我々が問題視しているものがどこにあるかということを十分把握して御答弁をされたかどうかということを確認したいということで今質問をさせていただいておるわけでございますので、委員長のおっしゃるとおり、大変な名裁きでございますので、ぜひここに資料をお出しいただいた上で、改めて議論をさせていただきたいと思います。

 それでは、次の論点に移ります。

 三番の、生活扶助費の削減について、これもまた田村大臣を中心に議論をしてまいりたいと思います。

 生活扶助費六百七十億円の削減のうち、物価下落反映分が約八六%の五百八十億円。生保の切り下げが、最賃や住民税非課税限度額や就学援助や保育料、介護保険料あるいは障害福祉サービスの上限、こういったものに影響するのではないかという議論がこれまでも再三にわたって展開をされておるわけでありますが、できる限り影響がないように対応すると閣議了解したということでございます。

 しかし、これまでの答弁では、まだ具体的なことは、何をできる限りするかということは決まっておりませんし、あるいは、平成二十六年度の税制改正を待たなければならないということで、今の時点では、どのような影響に対してどのように対応していくかということは、はっきりしていない。あるいは、今まで利用できていた人がこれまでどおり利用できるかどうか、自治体によるんですけれども、自治体に対してもこれはお願いベースでしかない、こういうことになっておるわけでございます。

 そういった多くのまだ解決をされていない、明確な答えが出ていないこの生保基準の史上最大の切り下げということでございますが、その生活扶助基準を決める指標は消費支出であるのか物価水準であるのかということなんですけれども、社会保障審議会の基準部会では、物価を考慮に入れるということは議論をされていなかったのではないか、政府が突然物価を持ち出したのではないかという疑問を持たざるを得ません。

 そもそも、自民党の生保一〇%切り下げという選挙における公約につじつまを合わせるように、突然物価というものを材料として持ち出したのではないかということ。しかし、これはタイミングとしても余りよくなかった。これからアベノミクスと言われるもので物価はどんどん政策的に引き上げられていくということの中において、デフレを考慮した政策が行われているということでございます。

 こういうさまざまな問題点があるわけなんですが、仮に物価下落を反映することを、了とはいたしませんけれども、了としたとしても、資料六にありますように、〇八年、平成二十年は、ある意味、特殊な年だったと言われております。原油高などで物価がかなりはね上がっておるわけでありまして、この〇八年、平成二十年と比較をするのは不適当ではないかとも思っております。

 そのことも含めて、〇八年から二〇一一年までの間に、物価の下落は、消費者物価指数でマイナス二・三五%、ところが、生活扶助相当の消費者物価指数ではマイナス四・七八%ということになって、生活扶助相当の消費者物価指数の方が物価は倍以上下落をしているということになっております。こちらの方を採用しているから、大幅な生活扶助の切り下げという結論が導き出されてしまうわけであります。

 この生活扶助相当消費者物価指数の、一般の方と比べての大幅な低下というものが反映されたのはなぜかということでいえば、これは電気製品というものが大きく寄与しているわけであります。

 生活保護世帯が電気製品を長もちさせて、持っていたとしても、それを長もちさせて使っている、大事に使っている、新品を買うお金がない、買わないということであったとするならば、生活保護世帯の方々にとっては、自分とは関係のないデフレということの中で生活扶助費が大幅に切り下げられてしまうということになってしまうわけであります。

 資料七と八というところも御参照いただきたいと思いますけれども、ごらんのとおり、物価については、食料とか住居とか光熱水費というものについては、横ばいか、むしろ上がっているぐらいなんです。ところが、電気製品が含まれている家具・家事用品であるとかあるいは教養娯楽費であるとかというところについて言えば、大幅に下落をしているわけであります。

 つまりは、少し飛びますけれども、ついでに資料の十一、十二もごらんをいただきたいと思いますけれども、これは時間がありませんので簡単に申し上げますが、御参照いただいてすぐにわかるように、物価下落は電気製品が押し下げたものであるということ、それは教養娯楽費や家具・家事の中に入っていることからも明らかであるということ。光熱水費はむしろ上がっている、生活必需品は上がっているということ。

 申しわけありません、資料十もついでにごらんをいただきたいと思いますが、このグラフでもわかりますように、低所得者の方が物価の下落の恩恵は小さい、高所得者の方が物価下落の恩恵を大きくこうむっているということになります。

 五百八十億円削減するのに採用した根拠の生活扶助相当物価水準は、一般の物価水準より大幅に低下している。本来は生活保護利用者の家計に占める電気製品のウエートが低いはずなのに、一般世帯以上に大きくした結果導き出されているのが、この五百八十億円のデフレ分削減ということにつながっているのではないかと、こういったデータ、資料から読み取れるわけでありますけれども、大臣、御見解はいかがでしょうか。

田村国務大臣 まとめて四、五問ぐらい御質問いただいたのかなということで、ちょっと答弁が長くなることをお許しください。

 まず……(発言する者あり)いや、長いといったって、質問をいっぱい一回で言われているんだから、仕方がないでしょう。

 まず、恣意的に、自民党の公約に合わせて非常に高い数字を適正化幅で出したのではないかという話でございました。

 物価というものに一つ水準を今回合わせて四・七八という数字を出しましたが、これを、今まで使っておりました民間最終消費支出で、同じ期間ということで、今までの手法でやりますと、実は五・三%マイナスなんですよ。ですから、そういう意味からしますと、四・七八という数字を恣意的に高目に出したということではありません。

 ちなみに、物価を使ったとして、平成十六年から二十三年まで、つまり改定前ですよね、十六年から二十年までやっていませんから、これをずっと使いますと、物価でいうと何とマイナス六・四%なんですよ。これを使ってもよかったという議論もあるんです。でも使いませんでした。それはなぜかというと、やはりこれだと余りにもマイナス幅が大きいからでありまして、そういう意味で、やはり二十年以降ということで、この物価というものを使って四・七八というものを今回採用したわけでございます。

 何を言いたいかといいますと、もっと大幅に削減したいということで恣意的な数字を探せばほかにもあったということでございますから、そんなことではないということは御理解をいただきたいということでございます。

 それから、今言われた電化製品の話がございました。これは、まず、そもそも一般の消費者物価指数と違うのはなぜかというと、医療扶助で保険医療はお金を払わなくていいですよね。住宅も住宅扶助があります。教育も授業料等々はかからないわけでありますから、こういうものを入れたって仕方がない、払わないものを入れるべきではありませんから、そこでそういうものを除外しました。除外した結果、当然、全体のメニュー数が少なくなります、要するに品目数が。品目数が少なくなった中での割合を考えれば、ちょっと一般の家庭よりも高目の数字が出てきておるわけであります。

 ただ一方で、先ほど来言っております生活扶助や教育扶助や住宅扶助、こういうもの全体で三兆八千億ぐらい今ありますよね。こういうものから、今回の引き下げ分、六・五%と言われておりますけれども、引き下げ分がありますよね、こういうもの全体で見ますと、大体二・三%なんですよ、削減幅が。

 ということは、これは意図的にやったわけではありませんけれども、今回の物価下落分の二・三五とほぼ同じものが出てくるわけでありまして、実際問題、全体を見れば、大体、一般の消費者物価と同じような削減額に生活保護全体では費用としてはなっているということでありますから、まあ、大体適当なところの数字が出てきたのではないのかなというふうに思います。

中根(康)委員 大体といいますか、結果的に何となくそういう数字が出てきたということであるというふうな御答弁だったんですけれども、改めて、私が今質問したような疑問を解消していただくためにも、生活保護世帯における消費支出の実態調査というものは恐らく今まで、正確にといいますか、行われたことはないと思いますが、この実態調査というものを厚生労働省として実施していただくというお考えはありませんか。

田村国務大臣 生活保護世帯というのがいいかどうか。そもそも、我々は、一般の低所得者との均衡ということを考えて、今回、適正化を果たしたわけでありますから、生活保護世帯だけを抜き取ってその消費実態を調査するのがいいのかどうかというのは、若干疑問はあります。

 それともう一つ、実はこれは、昭和二十一年に決めた生活保護の費用、金額、ここを基準に置いて、その後、いろいろな指標によって相対的にいじってきているんですね。ですから、今、そもそもこの生活保護の基準自体が憲法二十五条に適応した実態の数字かどうかということは、これはわからないんです。以前につくった基準からいろいろな指標を使って動かしてきていますから。

 となれば、今のようなお話があれば、本来、国民にとって健康的で文化的な最低限度の生活を営むための生活扶助や住宅扶助や教育扶助、こういうものはどれぐらいなのかということの絶対基準をつくる、これをしないことにはこの問題は解決しないと思います。

 しかし、これは厚生労働省だけでやるのはなかなか難しい。私が言う話じゃありませんが、国会全体でいろいろな議論をしていただく中で、この基準がどういうものかをある程度お考えいただくというのも一つなのではないのかなと、これは私の感想でありますけれども、申し上げたいと思います。

中根(康)委員 大臣の答弁は理解できないわけではないわけでありますが、しかし、絶対的な基準というものがつくられていないとするならば、あるいは昭和二十年からさまざまな変遷を繰り返して今の制度があってということであるならば、改めて思うのは、定かでないといいますか、絶対的なものでないところにあえてデフレだけを反映させる、しかも、それがずっと今まで行われていたのならいいんですけれども、今回初めてデフレを反映させて大幅に削減をするということは、むしろ、間違ったところにさらに間違いを上塗りしていくというか、そういうようなことになるのではないか、ゆがみにゆがみを重ねるのではないかというような気がいたします。これは申し上げておくだけにいたしますけれども。

 次に、もう時間がありませんので、成年後見制度の裁判のことについて申し上げます。

 新藤総務大臣が、立法措置は時間がかかる、あるいは、全国の地方選挙の混乱の回避のために控訴をしたというようなことをおっしゃっておられますけれども、これは、総務省の、あるいは役所の事務的なことが国民の大切な投票権というものよりも優先をされるということになるんですか。間違っていませんか、これは。

新藤国務大臣 私が申し上げたのは二点であります。

 まず一点の、現場における混乱。

 これにつきましては、今回の違憲判決だけが確定をする、控訴しなければ確定する、そうした場合には、この原告の方の次の国政選挙における投票権が認められる、こういうことになるわけでありますが、この方の地方選挙には影響は出ません。それから、十三万人いると思われる成年後見の制度の対象になっている方々、その中の、またそこで御希望いただいている方がいらっしゃると思うんですが、そういう方々の部分については何もさわっていないわけであります。

 しかし、一度この方のものがそういう形で確定いたしますと、四月だけでも百九十三の選挙が、満了を迎えておやりになることになります。そうすると、そこに、では自分も投票できるのではないのか、どうして自分は投票できないのか、そういったことで投票所に行かれる方もいらっしゃるでしょうし、それから、では私を認めてくれという裁判、そういったものもたくさん出てくるかもしれません。そういったことの混乱がまずあるということであります。

 それからもう一つ、時間がかかるのは、総務省の事務の検討が時間がかかるのではございません。

 この問題は、民主主義の根幹である選挙の基本的なルールに関することであります。したがって、それはやはり国会、各党での議論というもの、国会での議論が必要であって、それを今始めようという兆しが見えております。しかし、それはなかなか簡単に、すぐにできるわけではない、一定の時間が見込まれる。そうすると、法律の空白を置かず、また、現場の混乱を招かないようにしながら、そして必要な検討は行っていただきたい、また、私どもの方は、そういった方針が出れば適切に対処してまいります、こういうお答えをさせていただいたところでございます。

中根(康)委員 新藤大臣からは丁重に御説明をいただいたような気がいたしますけれども、しかし、その答弁の内容は、国民の、有権者の投票権という極めて重要な権利を尊重するというよりも、役所の事務手続の方を優先する、時間稼ぎをしようとしているという答弁に聞こえるということを改めてお訴え申し上げまして、もう時間が来ましたので、用意していた質問が十分できませんでしたけれども、ここで終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

山本委員長 これにて中根君の質疑は終了いたしました。

 次に、新原秀人君。

新原委員 初めまして、日本維新の会の新原秀人でございます。

 先週土曜日、日本維新の会、結党大会が行われ、綱領、そして活動方針も決定しまして、一丸となって日本の未来に向かって闘ってまいりたいと思います。

 本日は、兵庫県総支部から三人、それぞれの観点から質問をさせていただきたいと思います。

 まず、私からは、インフレ目標二%ということで、先日、我が党の東国原議員も質問させてもらいましたけれども、日銀自身はインフレ二%を、特に岩田副総裁などは、自分の職を賭してこの二%を実現すると言われております。先日の質問で、政府に責任はないのかという質問をさせていただきましたけれども、そこまでは言わなくても、日銀が向かっている方向をやはり援護し、力を合わせてそういった政策を打ってまいらなければならないと思いますけれども、まず、麻生大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。

麻生国務大臣 今御質問がありました件は、これは共同声明において、日本銀行としては、多分、私の知っている範囲では、物価目標をきちんと決めて、二%にやりますということをやった例は過去にないと記憶をいたしております。

 加えて、インフレターゲットというものは、高い、物すごい高いインフレを低く抑えて、これまでに抑えますというインフレターゲットというのは世界を見ますとございますが、マイナスの、デフレーションということは今マイナスですから、それをインフレにして二%にしますということを決めた例は過去にない、世界にないんだ、私の知っている範囲ではそういうことになろうと思います。

 いずれにいたしましても、日本銀行が共同声明できちっと物価目標を定めたというのは、責任としては一義的には日本銀行にある、これははっきりしていると存じます。

 ただ、これまで過去を見ましても、日本銀行が幾らマネーサプライを、いわゆる銀行までにしか行きませんものですから、そこの点でいきますと、日本銀行が幾らお金を刷っても、市中銀行で金がとまって、市中銀行から先へ、マネタリーベースでそこにとまって、それから先の、いわゆる経済用語で言うマネーサプライにはならないというのは、過去十数年間の実験ではっきりしておりますので、実験というか、我々がやった例ではっきりしております。したがって、その部分に関しては、日本銀行だけに責任を負わせても、それは過去、もうできなかったんだから。

 したがって、我々としては、財政のいわゆる機動的な出動と、そしてもう一点は経済の成長、この二つが合わないと、ただ物価だけ上がって、あとのというのは、これは全く、先ほどどなたか使っておられた、悪いインフレ目標になりかねぬという点を我々としては大いに危惧して、基本的に二本目の矢、三本目の矢というのが最も大事だろう、我々としてはそのように考えております。

新原委員 ありがとうございます。

 政府も、インフレ目標、先ほどの質問にもありましたけれども、よいインフレを、二%ということを実現して、できる限りのことはやっていくというふうな方針を確認いたしました。

 そういった中で、先ほど後藤議員からも、年金の下がる話になっていましたけれども、上がらなければ、物価だけが上がっていけば、いわゆる民間の給料、それから年金等について、結局、物価だけ上がって、国民はどんどん、しんどい、つまり、何か物価が上がることがよくないことだというふうに錯覚といいますか認識されると思うんですよね。

 だから、そういった意味で、安倍総理も、民間企業に給料を上げてくれということで訴えてまいりましたし、やはり実際にそういったことをしていかなければならないと思います。

 そういった中で、三月二十八日の予算委員会のこの場で、我々の岩永議員の質問に対して田村大臣が、皆さんのお給料がちゃんと上がっていく、そういった社会をつくるというふうにおっしゃっていましたので、どういったことを厚労省としまして、麻生大臣と厚労省のお立場から、どういったことを政策としてやっていけばいいと思いますか。

麻生国務大臣 これは後で田村大臣の方から御説明があると思いますけれども、先ほど民主党の方の質問でしたけれども、二十五年一%、二十六年一%、二十七年〇・五、これは正確じゃないので、そこでちょっと正確じゃないのが入っていますので、正確じゃないと申し上げざるを得ませんでしたので、ちょっと申し上げたとおりなんですが。

 そういったような形になっていくと、言われたように、お金だけざぶざぶ出てきて、仮にそれでインフレになったとしますよ。なかなかさようにいくほど簡単な話じゃないと思いますけれども、仮になったとした場合においては、少なくとも企業の売り上げもしくは収益、雇用者、被雇用者の収益がしかるべく上がる、それに合わせて売り値単価も上がる等々、全部が回っていかないと、今言われたようなことになりませんので、私どもとしては、二番目と三番目のところに、一本目の矢は日本銀行かもしれませんが、二番目、三番目としては、政府としてその部分にかなりの力を入れていかないと達成はなかなかできないと思っております。

田村国務大臣 一つは、金利との関係もあると思います。デフレの場合は、実質金利はどうしても高どまりをしてまいりますから、そういう意味からしますと、インフレ期待、期待インフレ率が上がってまいりますと、実質金利が下がってくる。すると、投資収益率との兼ね合いで、投資した方がもうかるだろう、利益が出るだろうというように思えば投資に回るわけでありまして、そうなってくれば、お金が回り出して、それが所得にも反映するだろう、これは一般的な経済論の話であります。

 一方で、我が省が具体的にどういうことを考えておるかといいますと、今回も保育士の皆様方に関しては、足らないんですけれども、これは運営費という一つの国の補助金の世界で上限が決まっておるものでありますから、保育士の方々の給与を上げることはできないということでありまして、補正予算でそのような形に対して対応するようなことを今回させていただきました。

 それから、これはもう委員御承知のとおり、介護で働く方々、介護職の方々に関しましても、これは麻生政権のときにやり始めたことでありますけれども、処遇改善をしようじゃないかということで、給料を上げていくということをやっておるわけであります。あと、物価が上がる等々、賃金が上がる等々ということを勘案すれば、これに対して、例えば診療報酬、介護報酬というものも、こういうものを反映させながら引き上げていくということにもなろうというふうに思いますので、そういうこと全体をもちまして所得全体を上げていくということを考えてまいりたいというふうに思っています。

新原委員 ありがとうございます。

 私の資料一に、消費者物価指数の中に換算される項目がずっと並んでいます。まさにその中に診療報酬、介護報酬も含まれているわけですね。あくまで、医療費全体がずっと上がっているから医療費がふえているように思っていますけれども、実際、医療費の中における物価というのは、診療報酬、つまり単価を上げなければ皆さんの給料は上がっていかないということなんです。

 だから、そういった意味で、積極的にやられるということでしたら、もちろんいわゆるインフレの物価指数を勘案しながらですけれども、やはり考えていかなければならないということですね。それでなければ、こういった医療業界、そして介護業界がブレーキになってしまうというふうに思っています。

 そういった中で、この医療、介護の現場で、つまり診療報酬、そして介護報酬で食べている業種というのは非常にたくさんある。お医者さんや歯医者さんやそして看護師さん、そんなのだけじゃないんですよね。放射線技師、そして介護福祉士、医療でいう受付の事務の人もそれで食べているわけなんです。

 つまり、言うてみたら、今、医療現場で働く労働者というのを資料の二に私は出していますけれども、いろいろな業界が雇用者が減っていく中、医療、福祉業界だけは、ずっとこのように伸びているわけです。つまり、この業界の人のことを考えていかなければ、物価をどんどん上げたとしても、診療報酬にいかなければ、この人たちの給料は上がらない。つまり、これは社会主義経済、つまり政府の内閣に診療報酬を決める権限があるんです。つまり、これは、もし内閣がやる気になれば、積極的にできる経済政策なんです。しかも、雇用もふえる。

 こういったことをやはり厚生労働省は財務省に訴えて、そういった意味での診療報酬という意味もあるんだよということを訴えていくべきだと思いますけれども、田村大臣。

田村国務大臣 診療報酬、介護報酬、それぞれ、先ほども申し上げましたけれども、物価でありますとか賃金でありますとか、それから医療経済実態調査、さらには薬価、また医療の資材、そういう資材費等々の変動、こういうようなものも踏まえて決定をするわけでありまして、中医協でありますとか社会保障審議会の介護給付費部会等々で議論をなされるわけでございます。先生がおっしゃられている意味も含めて、御議論をいただいた上で御決定いただけるものだと期待いたしております。

新原委員 ありがとうございます。まさに実態を見ていかなければならないんですけれども、そういった考えがあるということも財務省は理解していただきたいと僕は思います。

 そういった中で、診療報酬について過去を見ますと、高度経済成長期は一〇%近く改定率があった。今やもうゼロ、いわゆるゼロからマイナスという形。これはデフレ経済だと仕方がない。しかし、医療の現場では、そういった中で……(発言する者あり)済みません、新人なので。申しわけない。そういった意味で鑑みながら、そういった分野についてやはり変えていかなければならない、それが政府のできる経済対策の一つでもあると私は思っています。

 そういった意味の中で、例えば、今、高齢者社会ということで、年金については、先ほどちょっと下がるという話でしたけれども、今、物価スライドよりも二%上なので、そういった意味で下がるということなんです。年金も、実際、物価が上がれば上がっていくんですよ、法律で。

 だから、そういったことをもっともっと一般の方々、年金受給者に言っていかないと、物価が上がったらちゃんと上げますよということを訴えていかなければ、先日から、近所の老人クラブとかを回っていると、年金が下がって物価が上がったら僕らの生活はどうなるんやというふうに言われています。だから、そういったことをもっと政府は、物価が上がったらこういうことは上がるということをやはり……(発言する者あり)いやいや、今の状況では、二%が、いわゆる物価スライドで、今、受給の方が上がっているから下げるということでしょう。だけれども、実際、今後、本当に物価が上がっていくと上がるんですよ、そういった安心感も持たせていかなければ、景気というのは気分の問題なので、結局、使わない。年金を使わない。つまり、それではだめなんです。

 だから、そういったことを、今回は、もともと二%上だったから下げる、その後はやはり政府が二%上げるために年金を上げていくんだということをもっともっと訴えていかなければ、本当に国民の方々は心配になっている。だから、そういったことをもっと訴えていくべきだと思いますけれども、麻生大臣。

田村国務大臣 おっしゃるとおりでございまして、物価が二%上がれば特例水準の部分も二年で本来解消するんですが、これは三年で解消するんですけれども、あわせて二%上がれば、マクロ経済調整分ものみ込んで上がりますから、そういう意味では年金は上がっていくということでございますので、そういうことはしっかりと我々もPRしていかなきゃならぬな、このように思っております。

麻生国務大臣 私の方に御指名をいただきましたけれども、私の方はむしろ下げたいというのが私の財務省の立場ですので、むしろあちらに伺った方がよろしいかと思って。

新原委員 まさに、世界に先駆けて高齢化が進んでいる日本なので、何か考え方が、ピンチ、ピンチと思っていますけれども、これをチャンスと、ピンチのときこそチャンスがあります。

 民主党さんはコンクリートから人へということでしたけれども、私は、コンクリートも人も大事だと。だから、産業構造自体が、先ほど表で見ていただきましたけれども、いわゆる医療、福祉の雇用がこれだけふえてきている。つまり、この産業構造、この業界を活用して景気を上げていくという考え方も必要だということを私は思っていますので、もっとそういったことを厚労省の立場として訴えてもらいたいと思う。

 その辺、何かありましたら。

田村国務大臣 この厚生労働分野も、経済成長に資する部分がいっぱいあるんですね。例えば、iPS細胞で言われているような再生医療。なかなか、再生医療自体は日本は進んでいなかった分野でありますけれども、iPSで爆発的にこれが進んでいく可能性があるというふうに思います。ましてや、そのiPS細胞等々を培養するといいますかつくる、いろいろな医療機械等々、こういうものが、今開発の最中でありますけれども、世界に普及すれば、これは大変な産業に育つ。

 もちろん、安全性ということ、これだけは何としても担保しなきゃならぬ話でありますけれども、こういう分野、大きな部分、薬もそうであります。それから、介護ロボットでありますとか、またアシストスーツのようなもの、こういう分野もございます。いろいろな期待されている部分がございますので、安全を担保しつつ、そういう分野の成長というものを、我々も一生懸命努力をしてお手伝いしてまいりたいというふうに思っております。

新原委員 ありがとうございます。

 私が申したかったことは、結局、何か社会保障がお荷物というような形でずっと言われてきている。ピンチだと言われている。しかし、そこで雇用も生まれ、うまく使えば、ここは、経済界、つまり、社会主義であるから、政府が何らかの形、逆に言ったら、積極的にやろうと思えばできる、そういった経済界です。

 つまり、そういったことをやはり今後とも、人も大事にしていただいて、そういった高齢化社会における、この世界で初めてというこういった高齢化社会の日本の、世界に向けての発信を今後していってもらいたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

山本委員長 これにて新原君の質疑は終了いたしました。

 次に、杉田水脈君。

杉田委員 よろしくお願いいたします。日本維新の会の杉田水脈です。

 予算委員会で初めての質問の機会をいただきました。

 きょうは、地方の自立と国の役割の観点から、東日本大震災の復興、そしていわゆる従軍慰安婦問題の二点について、政府の考え方をお聞きしたいと思います。

 平成七年、阪神・淡路大震災の発生時、私は、被災した自治体の職員でした。壊滅状態の町、助けを求める人々、本当に悲惨な光景が目の前に広がっていました。それからの復旧復興の道のりは、首長以下、行政に携わる者が全く経験したことのないことの連続でした。よく前例踏襲主義、横並び主義と言われる公務員ですが、このときは、踏襲する前例がありません、お手本にする事例もありません、全部自分たちで判断をして行動していかなければなりませんでした。

 そのときに、我々自治体職員が何を基準に判断をしたかというと、目の前にいる被災者の人たちにとって何が一番必要か、何が一番いいことか、それが判断基準となりました。時には利害が対立することもあり、住民同士の合意形成がとても難しい状況もありましたが、一つ一つ乗り越えてきました。

 さて、単純に、阪神・淡路大震災と今回の東日本大震災、比較することはできないと思います。ですが、多少なりとも、阪神・淡路大震災の経験、教訓が生かされたはずです。が、復興の取り組みのスピード感が大きく異なると言われています。

 なぜ、阪神・淡路大震災と東日本大震災の復興のスピード感に差が出るのか、その原因はどこにあるとお考えでしょうか。復興大臣にお聞きします。

根本国務大臣 阪神大震災と東日本大震災の違い。まず、災害の違いでいうと、阪神大震災は、これは杉田委員が一番詳しいんですが、都市型の地震、東日本大震災は未曽有の災害と言われました。特に津波被害、これは非常に広域にわたるんですね。私もずっと被災地を回っていますけれども、三陸沿岸全部やられた。極めて広域にわたっている。そして、福島県の場合は、初めての原子力発電所事故による災害。復旧に当たっても、それぞれ、津波被災地、それから福島県、困難な条件にある。私は、これが一番大きな違いかなと思います。

 例えば、阪神大震災の方は、住宅再建についても、現地再建を中心に市街地の再生ができましたよね。これに対して東日本大震災、これは、例えば、高台移転を伴う、あるいは現地のかさ上げを伴う、市街地や集落の抜本的改造が必要。とにかく、津波でやられたところは、例えば区画整理事業、あるいは防災集団移転促進事業、その地域の大改造ともいうべき取り組みが必要なので、私は、そこが大きな違い、そして、その現場の状況に即した的確な対応をしていかなければならないと思います。

杉田委員 被害の大きさが大きく異なるということは、十分に私も承知をしております。が、阪神・淡路大震災の際は、応急処置が三日、そして復旧が三カ月、それ以降は復興へとステージが変化してまいりました。先日私も福島県を視察してまいりましたが、東日本大震災の現場は、二年が経過しても、まだ復旧の域を脱していません。被害の差を勘案してもなお、東日本の復興の歩みは遅いと感じます。

 その原因は一体どこにあるのか。

 当時、西宮市や宝塚市、芦屋市といった阪神間の都市、非常に被害の大きかった都市ですけれども、そこは地方交付税の不交付団体でありました。ある意味、都市経営を自立して行っていくことができていました。国からの押しつけではなくて、市民にとって何が必要か、みずからが考えて行政を行っていました。震災復興についても、自治体の自主判断で復興を進める必要がありましたし、また自治体同士の相互扶助も機能していました。

 一方の今回の東日本大震災、多くの被災自治体、とりわけ東京電力福島第一原発の立地自治体は、前の自民党政権時代の国策で原子力発電施設が押しつけられ、そのかわりに電源三法交付金といういわゆる迷惑料を何百億円も垂れ流してきました。それにより、国への依存体質を生んでしまいました。これは、自治体が悪いと言っているわけではなく、こうした自治体の自主性を国が骨抜きにしたも同然の結果ではないでしょうか。

 国からの交付金や補助金というような、地方自治体をコントロール下に置く思想の先には、希望や展望は見えてきません。何かといえば、国の責任においてと、お上が出てくる。これまでの統治の仕組みの上に乗っているだけでは、非常時に未来展望が開けないのです。長年の中央集権の弊害がこの震災復興で一気に噴き出た感があるのですが、政府はどのように捉えていらっしゃいますか。

根本国務大臣 災害からの復旧復興、これは、やはり私は現場が大事だと思うんですね。復興の主役は当然自治体であり、住民であります。ですから、被災自治体がみずからの意思で復興の計画を立てて実行していく、これが望ましい、これは当然だと思います。

 ですから、阪神大震災と東日本大震災の違い、不交付団体であったという話がありましたが、例えば津波被災地がどういう状況になっているか。これは、小規模な自治体が多いんですね。あるいは、大槌町のように役場自体が流されちゃった、そんな自治体がある。ですから、復興事業を進める上で、市町村が主役、住民が主役、これは当然だと思いますが、では、市町村だけで立ち上がっていけるか。

 私も被災自治体を随分訪問しております。話を聞くと、財源あるいは人材、ノウハウが不足している、特に自治体の職員が不足している。あるいは、初めての事業をやらなければいけない。土地収用だって区画整理だって、大規模な事業の経験がなかなかありません。ですから、国や民間が支援していく必要がある。我々も、押しつけているわけではありません。現場主義でやっております。現場の声を吸い上げて、被災自治体の具体的な要望をお伺いして、財政や人材の面から支援をしております。

 我々復興庁は、現場主義に立って、現場の皆さんの声を吸い上げて復興を後押ししていく、復興を加速していく。今おくれているという話がありました。確かにおくれていると思います。ですから、復興を加速しなければならないと思ってやっております。

杉田委員 ありがとうございます。

 今回の復興で必要なキーワードは自立というところにあるということは、復興大臣も私どもも共通しているというふうに思います。我々日本維新の会が言う自立というのは、自分で決めるということです。より現場に近いところでみずからが決めること、言葉は悪いですが、国がお金をばらまいて一から十まで面倒を見るという復興ではなくて、地域がみずから考え、みずから決める復興へと方向を定めなくてはならない。それが、復興を、スピードを進める大きな鍵だというふうに我々は考えています。

 もう一つ、被災地となった東北地方は、震災前から人口減少や過疎化、それに伴うコミュニティーの崩壊という国の課題の先進地でした。人が減り、コミュニティーの力が弱くなっているところに、あの震災が起きました。そして、原発事故のために多くの住民が故郷を離れざるを得なかった。避難解除になっても、医療機関や商店などが再開できず、生活がままならない状況です。

 多くの被災者の方々は、この場所にこのまま住み続けられるのだろうかという迷いを感じています。地域によっては、ここがまた阪神・淡路大震災とは私は全然違うところだと思うんですが、予想に反して、復興住宅の申し込みに人が集まらない、合同の就職説明会を三十社が行っても、会場には三十名程度しか集まらない、そんな状況が今の東北の姿です。希望や展望を見出せない人々が多いということではないでしょうか。

 まだまだこういった課題がたくさんありますが、安倍政権は、民主党からこの震災対応のバトンを引き継ぐに当たって、何を変え、何を継続していくのか。

 私としましては、やはり、前の政権のときに震災が起こったときに、前菅首相が全部国の責任でと言ってしまったところに、地方の自立を阻害している部分があるのではないかと考えておりますが、ここのところを、自民党、安倍政権はどう引き継ぎ、また何を変えていくのか、御質問したいと思います。

根本国務大臣 今抱えている現状と課題、これは、委員がおっしゃられたような状況だと思います。

 我々が何をやってきたか。私がこの三カ月取り組んできたこと、とにかく復興施策を総点検する、そして再構築する。何が問題か、何が課題か、これをしっかりと見きわめる。

 もう一つは現場主義。それぞれの地域で抱える問題点が違います。今委員がおっしゃられたことも、それはそれぞれの市町村で違います。ですから、現場主義に立つ、被災者に寄り添う、被災地に寄り添う。現場現場に私は解があると思っておりますので、その現場の声を吸い上げて、我々が施策に生かしていく。

 そしてもう一つは、復興計画も市町村が主体ですから、国は、市町村の自立、自助、それを後押ししていく。そのために、縦割りの弊害、いろいろ言われました。ですから、復興庁の司令塔機能を強化する。

 安倍内閣は、全ての閣僚が復興大臣というつもりでやってもらいたい、そして、復興庁に一元化して、横串を刺して大きく動かしてほしい。復興加速、これが安倍内閣の最重要課題の一つ。経済の再生と危機管理。ですから、我々、司令塔機能の強化と、現場主義と、そして復興加速ですから、今お願いしている当初予算でも、新たな加速策を盛り込みました。

 大事なのは、具体的な課題を一つ一つ解決していくことですから、私は、我々がやれることは、市町村の支援のために、最大限、目いっぱいやっていきたいと思います。

杉田委員 今の大臣の答弁にもありましたが、それぞれの自治体の事情によって今の復興のスピードや状況がかなり異なっていると思います。民間企業やNPOなどが自治体と連携して復興のコーディネーター的役割を担っている地域があり、まさに民の力で自立した復興を行っているところがあります。一方では、住民同士の熟議もないまま、もとよりさらに高い防潮堤を築き、津波に備えようとしているようなところもあります。

 今の安倍政権の考え方は、私は、町の復興だと思っています。でも、必要なのは、町の復興ではなくて、暮らしの復興、人の復興ではないかと思います。幾ら立派な防潮堤を築いたとしても、完全に安全、安心な暮らしは生まれません。そこに住む人々が、みずからの意思で、自然災害に対応する暮らしをつくる、それが、未来につながる暮らしの復興、人の復興ではないかと思います。そんな人間の強靱化こそ、あすの日本を創造するのだと強く感じていますが、復興大臣、どのように考えられますか。

根本国務大臣 杉田委員のおっしゃるとおりだと思います。

 我々、今、例えば津波被災地、住宅の再建が一番大きい課題だと思います。とにかく住宅を再建する。そして、産業を再生する、なりわいを再生する。ですから、当然、基盤の整備、ハードの整備も、まちづくりですから必要だと思いますが、暮らしの復興、人の復興、そして心の復興も大事だと思います。

 その意味では、ハード、ソフト両面の対応が必要で、今、例えば、被災されている皆さんの心のケアやコミュニティー支援もあわせてやっておりますが、単なる防潮堤ということではなくて、私は、ハード、ソフト、総合的な取り組みが必要だと思いますが、大事なのは、住んでおられる住民の皆さんが、そして地域の皆さんが、要は、この復興のまちづくりに参加して、そして新しい町、新しいコミュニティーをつくり上げることだと思います。

杉田委員 どうもありがとうございました。

 時間がありませんので、二点目の方に移りたいと思います。

 いわゆる従軍慰安婦の問題について質問したいと思います。

 私がこの問題を重要視するようになったのは、昨年の夏にアメリカ視察に参加をしたことがきっかけです。そのときに、リチャード・L・アーミテージ氏、マイケル・J・グリーン氏、シーラ・A・スミス氏といった知日派、親日派の著名人の方々とお話をさせていただく機会に恵まれました。

 彼らが口をそろえて言ったのは、これからは、中国の脅威に対して日本、アメリカ、韓国、同じ民主主義国家が協力していかなければならない、なのに、なぜ日本と韓国はそんなに仲が悪いのかということです。そして、一様に、従軍慰安婦問題をその原因として挙げました。

 それまで私は、いわゆる従軍慰安婦問題は、日本では一部の左翼の人だけが騒いでいる、そんな問題だと思っていました。なのに、なぜアメリカでこんなに問題視されているのか、とても心にひっかかったまま帰国をしました。

 このように、アメリカで、いえ、アメリカだけではなく世界各国で、いわゆる従軍慰安婦問題が日本に不利益な形で広がりを見せていることは、先月八日、我が党の中山成彬議員が予算委員会の質問の中で詳しく触れていらっしゃいました。

 世界各国の動きの中で、この問題に関する日本の広報活動については、内閣府の平成二十五年度予算、新規事業で五億円が計上されています。内容は「我が国企業の国際的な経済活動の積極的な展開など日本の国益の増進に資するよう、アジアを含め、欧米等各国における対日理解・好感度を向上させる広報を実施する。」とあります。

 比較の問題ですから、特に欧米で活動が盛んである韓国、中国が日本と同様の予算を年間どれぐらいかけているのか、お聞きしたいと思います。官房長官、お願いいたします。

菅国務大臣 中国の広報予算の全体像というのは発表されておりませんので、我が国としては、明らかにされていないということで、ここは、正直なところ、わかりません。

 また、韓国におきましては、韓国外交通商部全体として約二億四千万、その中で慰安婦問題に対して、韓国政府の詳細な広報予算というのは明らかにされていません。

 いずれにしろ、我が国としては、在外公館を通じて、各国における慰安婦問題をめぐる動向について、しかるべく今、情報収集というのを行っておりまして、国際広報についても、官邸で司令塔となって戦略的に行う必要があるんだろう、そういう思いの中で、今委員から御指摘されましたように、五億円を、従来は外務省と内閣府別々でありましたけれども、一つに統一したところであります。

杉田委員 他国の動向を探るというのは必須の視点だと思いますので、今後もいろいろなところをきっちり調査して、そして日本の予算をしっかり組んで取り組むべきだと思います。

 きょうは、海外のことはちょっとここでおいておきまして、国内での広がりについて質問をさせていただきたいと思います。これは大変ゆゆしき問題だと思います。

 ここに、日本軍従軍慰安婦問題に対して、政府の誠実な対応を求める意見書というのがあります。これは、平成二十年三月二十五日、私の選挙区でもあります宝塚市の市議会で可決され、二十八日に政府に提出された意見書です。

 ここには、驚くべき内容が書かれています。意見書の内容は、お手元の資料をごらんいただければと思います。一部読み上げさせていただきます。

 「日本軍「慰安婦」問題に対して、政府の誠実な対応を求める意見書」「二〇〇七年七月三十日、アメリカ下院議会は全会一致で、「日本軍が女性を強制的に性奴隷にした」ことを「公式に認め」「謝罪する」よう日本政府に求める決議を採択しました。 当時の安倍晋三首相は七月三十一日、この決議採択を「残念なことだ」と評し、生存する犠牲者に日本政府は公式謝罪しないことを強くほのめかしました。 これは、一九九三年の河野洋平官房長官の談話と矛盾する態度です。」省略します。「政府においては、一九九三年の河野洋平官房長官の談話の上、さらに日本軍「慰安婦」問題の真相究明を行い、被害者の尊厳回復に努め誠実な対応をされるよう求めます。」というふうにあります。

 ここにいらっしゃる大臣の皆様や、こちらの自民党の先生方で、この意見書に賛成される方はいらっしゃいますか。民主党の方は、一部賛成される方もいらっしゃるかもしれません。普通に考えて、こんな意見書が採択されること自体あり得ないことです。が、宝塚の市議会では、賛成二十五、反対一で可決されました。賛成した議員の中には、自民党や民主党の公認で当選された方々もいます。反対したのは、改革派の無所属の若手市議だけです。

 宝塚市は、社民党の元衆議院議員の方が市長を務めています。保守系の市長が二人連続、汚職で逮捕されました。任期を全うできずに終わってしまった。そこで選ばれたのが今の市長です。

 地方議会には国会と違って与党、野党という関係が本来ないわけですが、実態としては、自分のやりたいことを実現するために首長与党になろうとする、そういう傾向があります。そのために、所属政党の主義主張と関係なく行動してしまう。この意見書の採択に自民党の議員が全員賛成したというのがその結果です。そういった意味で、地方議会は非常に左傾化しやすい、本当に危ない状態です。

 全国市議会議長会の調べによると、平成二十年四月から二十五年三月までに、全国の市区議会から、従軍慰安婦に関する意見書は二十七件出ています。このような状態を放置しておくと、日本は地方からおかしな状態に陥っていきます。先ほど申し上げたように、地方の自立は必要ですが、一本柱の大きな方向性は国が示す、それが国と地方の役割分担だと私は思います。

 このような状況を政府としてどのように認識されているのか、また、いわゆる従軍慰安婦問題にどのように対処しようとしているのか、曖昧にせずに、毅然とした態度で日本の立場を示さない限り、国と地方の立ち位置がばらばらになりかねないと思います。

 安倍政権の考え方をお聞きします。

菅国務大臣 安倍政権の立場でありますけれども、何回となく、この場でも繰り返しをさせていただいています。

 これまでの歴史の中にあって多くの戦争があり、その中で女性の人権が侵害された、このことについて、二十一世紀こそ人権侵害のない世紀にしなけりゃならない、日本としてもそのためには全力で尽くしていかなきゃならないということであります。

 さらに、この慰安婦問題については、筆舌に尽くしがたいつらい思いをされた方々のことを思い非常に心が痛む、この点については歴代総理と安倍総理も変わっていません。

 さらに、総理自身が述べられておりますけれども、安倍内閣としては、この問題を政治問題、外交問題化させるべきではない。前回の安倍内閣においてこの問題について閣議決定をしたという経過を踏まえて、内外の歴史学者、有識者の手により、さまざまな問題について現在研究が行われる中であって、この問題についても、学術的観点からさらなる検討を重ねる必要があるだろう。このことが安倍政権としての基本的な考え方であります。

杉田委員 今官房長官がおっしゃったように、二〇〇七年、第一次の安倍内閣のときには、政府として閣議決定をしています。また、昨年来、安倍総理は、いろいろな場面で、河野談話によって不名誉を背負っていると、かなり強いトーンで見直しを求める方向性を打ち出しておられました。

 ところが、最近になって、先ほど官房長官もおっしゃったとおり、政治、外交問題にはしない、見直しの話は官房長官が言ったものなので、総理である自分が答えるべきではないなどと大幅にトーンダウンをしてしまっています。国民の誰もが、一体日本はどんなスタンスなのかと首をかしげているはずです。

 今、利権団体や新左翼、反日活動団体が、地方では自治基本条例という名をかりて外国人参政権等を地方から進めようとしています。政府が強い立場を示さなければ、こういった地方のおかしな状態がどんどん広がっていくと思います。一時しのぎの、責任逃れの曖昧な言い方ではなくて、総理初め政府が毅然として一貫とした態度を貫いていかない限り、国の外からは韓国、中国、そして中からは左翼思想を持つ人たちの圧力がどんどん強まってまいります。

 最後に、どのような毅然とした態度でこれに立ち向かっていかれるのか、もう一度、時間が来ておりますが、官房長官にお尋ねしたいと思います。

山本委員長 内閣官房長官。手短に。

菅国務大臣 安倍政権の立場は今申し上げたとおりでありまして、政治問題、外交問題にしないと言ったことに尽きるものであります。

杉田委員 ありがとうございました。

 時間もなくなりましたので、これで終了させていただきます。

 この問題につきましては、また機会がありましたら、さまざまな角度から質問をさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

山本委員長 これにて杉田君の質疑は終了いたしました。

 次に、三木圭恵君。

三木委員 私は、平沼赳夫代表代行がたちあがれ日本を結党したときに入党いたしまして、参議院選挙に出馬をして、落選して、二年半浪人生活をしておりました。その後、太陽の党と日本維新の会が合流いたしまして、今、日本維新の会の議員としてここに立たせていただいております。それまでは、兵庫県の三田市というところで市議会議員を務めておりました。

 新人ではございますけれども、地方議員出身者としての視点と、また、二人の子供を子育てしてまいりましたので、母親としての視点から、道徳教育の問題について質問をさせていただきたいと思います。

 下村大臣は、さまざまな場面で、日本の保守を代表する、日本の伝統と文化をこよなく愛する政治家である、そのように認識させていただいております。このような場で質問させていただくことを大変光栄に思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 まず初めに、いじめの問題の本質的な解決に向けて、心と体の調和のとれた人間の育成に取り組む観点から、道徳教育の抜本的な充実を図るとともに、新たな枠組みにより教科化されたいということが教育再生実行会議の方から提言をされまして、それを下村大臣の方でお受けになって、このたび、道徳の懇談会、懇話会も設置されるということで、道徳の教科化に向けて邁進されているということで、非常に私としては喜ばしい限りのことであると思っております。

 その中で、今、日本の教育現場の中で道徳の時間というものがどういう時間に充てられているか、そういった実態も大臣の方はよく把握して、道徳の教科化というものを実行しなければならないとお思いになって、この道徳の教科化が進められることであると私は思っております。

 その中で、私の子供が通う小学校の校長先生が、いじめに対して子供たちに話をしたことがございました。それを保護者として聞いていたことがあったんですけれども、まず、子供たちに三つの勇気を持ちなさいというお話を校長先生がされました。一つ目は、いじめを見たらそれをとめる勇気、その勇気がなければ、そのいじめに加わらない勇気、その二つ目の勇気もなければ、三つ目の勇気というのは、おうちに帰って保護者に相談する、もしくは学校の先生に相談する、そういった勇気を持ちなさい、そういったお話だったんですね。

 私は、この話を聞いていて非常に、大丈夫かな、日本の道徳観念というか、規律というか、そういったものが大丈夫かなということが心配になったわけでございます。道徳の価値観というものは、人によってそれぞれ違うものだとは思いますけれども、普遍的に、世界の中でこれはやはり守っていかなければいけないという価値観であるとか規範性であるとかというのは、やはりあると思うんですね。

 この道徳の教科化に関して、いじめの問題とリンクをさせて道徳の教科化ということが提言されているわけですが、大臣は、どこまで踏み込んで子供たちに道徳の価値観というものを教えようと思っていらっしゃるのか、その判断というか、決意というか、そういったものをお聞かせいただきたいと思います。

下村国務大臣 同じ価値観と危機意識を持っておられるのではないかと思って御質問をお聞きしました。ありがとうございます。

 道徳の教科化は、教育再生実行会議の第一次提言の中で出されているものでございます。これは、今委員が御指摘になりましたが、いじめ問題で、いじめについては、加害者にも、被害者にも、また傍観者にもならない。そのために今やるべきことを、目の前で子供がいじめで悩んだり苦しんだり、あるいは自殺をしようと思っている子供もたくさんいるかもしれない、その子供を一日も早く救うということが必要でありますし、そのためのあらゆる手だてをしていこうと。

 国会においては、今後、いじめ防止対策基本法等、議員立法でぜひ出していただければと思っておりますし、文部科学省も全力で御支援申し上げたいと思っております。

 その上で、いじめに関連して、道徳教育の教科化というのが教育再生実行会議で提言をされまして、これを受けて、文部科学省の方では、道徳教育の充実に関する懇談会を立ち上げることにいたしました。

 いじめ問題の根本的な解決のためには、子供一人一人に規範意識や自己肯定感、社会性、思いやりの心など、豊かな人間性を育むことが重要であり、そのために、道徳教育の充実はさらに必要であるというふうに思います。

 道徳教育を進めるに当たっては、家庭や地域との連携のもと、さまざまな体験活動等も含め、学校教育全体を通じて、児童生徒がみずから道徳性を育み、よりよく生きようとする力を育てることが必要であり、その際、特に基本的な生活習慣や規範意識を身につけ、人間として、してはならないことをしないようにすることなどの留意点が必要であるというふうに思います。

 委員が御指摘のように、特定の国家の価値観を押しつけるということではなくて、これは、国境を越えて、そして歴史を超えて、人が人として生きるための規範意識というのがやはりあるというふうに思います。そういう社会の中でよりよくお互いに生きていくための規範意識をきちっと道徳教育の中で育成する。

 そのために、まず、文部科学省では、心のノートを全小中学生へ配付することをさきの補正予算で、国会で決めていただきました。ことしの七月に配付されることになるかと思いますが、これと、地域、それぞれの自治体で副教材等をつくっていただいているところもあります。

 こういう地域の特色ある道徳教育の取り組みなどを支援し、そしてこれから、道徳教育の充実を図る懇談会で、心のノートの全面改訂を含めて、よりよく子供たちに、人が人として生きる道、こういうものを道徳教育の中で教えていくことがさらに必要であるというふうに考えております。

三木委員 大臣、ありがとうございます。

 後々の質問の御答弁まで今全部まとめていただいたような御答弁だったわけですけれども、私の道徳に対する、規範性に対する考え方を少しお話しさせていただきたいと思います。

 道徳というもの、それから人権教育というもの、これはひとつ対極にあるものだと私は実は思っております。

 どちらもバランスよく教えなければならないと思うんですけれども、道徳教育というものは、ある意味、規範性を大切にする、また公の精神を大切にする、公のために尽くしていく、そういった精神であると私は思っております。ある意味、自分のことを少し我慢しても人のために尽くしていく、他がためにすることが自分の喜びになって、自分の確立、自分がここにいるんだ、いてもいいんだという意識につながっていく、そういった大切なものであると私は思っております。

 また、逆に人権の方は、人権教育もこれは大切な教育だとは思うんですけれども、自分の権利を守っていく、自分がこういうことをされたら嫌だとか、自分はこういうことをしてもらう権利がある、そういった教育であると私は思っております。

 その中で、今、道徳の時間が教科化をされていないことによって、その内容が道徳に偏っているのか人権に偏っているのか、それを精査する方法が今まで私たちの手になかったことが一番の問題であるというふうに私の方では考えておりますし、恐らく大臣もそのようにお考えなのではないかなと。

 道徳の時間が教科化されていないことによって、道徳の時間に何を教えているのかがはっきりわからない、そういったことが問題なんじゃないかなというふうに認識をしているんですけれども、大臣は、道徳の時間というものと人権教育というもののバランスについて、どのようにお考えでしょうか。

下村国務大臣 御指摘のように、道徳教育と人権教育が必ずしも相対するものではないというふうに思います。人権教育を行うことによって、いじめを防御するということにつながる部分もあると思いますから、人権教育について、どういう切り口で、どんなふうに教えるのかというような、その切り口の問題もあるというふうに思います。

 基本的人権の尊重というのは、これは憲法でも保障されていることでありますし、それは我が国でも大変に大切にしていかなければならないことであるというふうに思いますし、それと道徳というのは必ずしも対決する概念ということではなくて、それぞれ組み合わせる中で、一人一人の自尊意識と、そして、一人一人を大切にしながら、お互いに思いやりを持って、そして高め合う、そういう視点から整合性がある教育を行うべきであるというふうに思います。

三木委員 バランスよく、人権教育と道徳教育というものは行われなければならないんだという御答弁だったと思います。

 確かに、私も、道徳の時間というものの中に人権教育も入れて、自尊感情を大切にしたりとか、女の子の場合だったら、されたら嫌なことというのははっきり拒否をしましょうであるとか、性差の問題とか、そういった問題もある程度は教えていかなければいけないと思っております。

 ただ、今の学校現場の現状の中で、そういった人権教育と道徳教育のバランスが崩れているがゆえに、今のいじめ問題であるとか、日本の中でいろいろな精神的なものが原因となっている問題というのが多発してきている、そのように思っているからこそ、今後、道徳というのは教科化されることが必要である、そのように教育再生実行会議でも提言されているのではないか。

 大臣もそのようにお考えなのではないかと思うのですが、その点の認識について、もう一度お答えいただけますでしょうか。

下村国務大臣 道徳は、自民党政権のときには、心のノートという冊子が用意されていました。民主党政権になって、これが、ダウンロードして教員が使うようにということで、配れなくなったんですね。結果的に、そのことによって、道徳で何を教えたらいいかということについては教師の判断に任せられる部分が多々ありましたから、そのことによって、今委員が危惧されるようなことも教えている学校現場があったのであろうということの中で質問されているのかなというふうにお聞きしました。

 我々としては、政権奪還をして、二十四年度の補正予算でこの心のノートを復活し、全ての小中学生に配付することにいたしましたが、印刷等で、実際配付されるのはことしの七月からということになります。

 ただ、その心のノートだけでも十二分な教材ではないと思っておりますので、来年四月からは全面改訂をする中で、例えば、これについては、実際、道徳の充実を考える懇談会で議論をしていただくことになってはいますけれども、全面改訂の一つとして、例えば、偉人というのは、歴史を超えて、あるいは国境を越えて、人が人として生きる道筋として参考になる、最初から成功している人生ではなくて、いろいろな苦難の中で、それを乗り越えて物事をなし遂げた、だからこそ偉人と言われるんでしょうし、これは特定の国家の価値観をそこに押しつけるということではなくて、例えばそういうエピソードをいろいろと入れることによって、子供たちに生きる勇気なり、自分も頑張ろうという気持ちなりを提供するという意味で、道徳の教科化という中で、いかに子供たちに、よりよい教材等をどう配付するかということについて、今後、懇談会で議論していただきながら、学校現場でより有効な道徳の時間が活用できるようなバックアップをしてまいりたいと思います。

三木委員 心のノートというのは、私も何度も子供のところにあるのを読ませていただいて、大変すばらしい教材であるとは思います。ただ、それが本当に授業で使われているかどうかというのは確かめようがなくて、実際に私は子育てをしてきて、子供がどんな教材を持って帰ってきたかというのを全部知っているので、実際には道徳の時間というのは心のノートというのは使われていないんだなというのは、実感として、私の地域ではそういうことであったということで、持っております。

 今回、教科化されることによって、心のノート、道徳の教科書というものをつくるということのお考えについては、大臣の方はどのようにお考えなんでしょうか。

下村国務大臣 道徳の教科化というのが結構誤解がありましてね。教科というのは評価をするものだ、道徳で評価をするというのはいかがなものか、学校で通信簿があって、一と五が七%ある、道徳によって本当に一とか五を七%つけるということはいかがなものかという議論があります。これはそのとおりだというふうに思いますし、なかなか、それぞれの道徳の先生がまた専門でいるわけではありませんから、そのように絶対評価なり、相対評価も含めてですけれども、そういうこととしてなじむ教科とは私も思わない部分がございます。

 ですから、ほかの教科と同じようにそういう評価をするということについて、必ずしも同じように考える必要はないというふうに思いますし、それから、教科化として、専門の先生が要るかどうか。それから、今委員御指摘のように、教科書があるかどうか、これも教科化の基準なんですね。

 専門の先生については、今後どうするかということについてはその懇談会で議論をしてもらうにしても、免許を持っているわけではありませんから、本当に養成するとしたら相当先の話になるわけで、しかし、今、現実問題として、免許があろうがなかろうが、やはり学校現場で教えるということは必要ですから、専門の先生、免許を持つ先生を導入するかどうかは今後の議論。

 それから、教科化については、これもどういう形で教科書として位置づけるかについては今後の議論になってまいります。ただ、先ほど申し上げましたように、来年四月からは、とりあえず心のノートというのは既に配付されますから、それを全面改訂する中で、より望ましい教材としてまずは学校現場に提供する中で、教科書としてどうあるべきかということについては議論を、国民的な議論も含めて、していただきながら、最終的に決定をしていきたいと思っています。

三木委員 済みません、非常に丁寧にお答えいただいたんですけれども、私が聞きたいのは、教科化されているものに関しては教科書がございます、今のこの現時点で。ですので、教科は教科書を使わなければならないという取り決めが、法律があるわけでございます。

 ただ、今後教科化される教科については、教科書を作成しなければならないという法令はないわけです。なので、この道徳の教科化について、道徳で教科書をつくられるのかどうかということを大臣にお伺いしたいわけです。

 なぜかといいますと、先ほど私がるる述べておりますことは、道徳の教科書をまずきっちりとつくって、全国で一律、その道徳の教科書を使って、子供たちに道徳の規範意識というものを一律に教えることが必要である。今、日本はそういった状態まで来てしまっているんだということを、非常に危険な意識として、危機感を私は持っておりますので。

 その中で、評価云々のお話もございました。ただし、私は、道徳の内容そのものが評価されるものではないと思います、子供の心の問題ですので。

 ただ、学校の中でどのように道徳を教えていて、例えば、それが本当にきっちりと教科書を使った内容になっているのかどうかを確認するための評価というのはあり得ると思うんですね。例えば、感想文を書かせるとか、その子供の道徳の授業の態度を見てどう思うかとか、学校の先生の主観によるところになるかもしれませんが、評価をすることもできると思うんです。

 だから、道徳を教科化するに当たって、私は、必ず検定教科書をつくっていただきたい、そのように思ってこの質問をしているんですけれども、大臣はその点についてはどのようにお考えでしょうか。

下村国務大臣 おっしゃっている検定教科書というのが、最初のお話では国定教科書的なイメージでちょっととれるんですけれども、今は検定教科書は、それぞれ民間教科書会社が参入して、その中で、検定合格した教科書をそれぞれの教育委員会が採択するという形をとっております。

 この中で、ほかの教科と同じように、そういう検定教科書として教科書を採択するという考え方もあれば、もともと道徳については、国定教科書みたいな形で国がきちっと決めるというような議論もあります。また、実際、検定教科書の場合、教科書検定のストライクゾーンは相当広いですから、果たして今委員がおっしゃったような教科書がどの程度できるのかどうかという問題点もあります。既に地方自治体でも、副教材として、相当いい、レベルの高い、道徳としてふさわしい教科書を使っている自治体も結構あるんですね。

 そのことも含めて、子供たちにとって実態的にどんな教材が望ましいかということについては、これは懇談会の中で議論していただきながら、最終的に、また国民的議論も含めて決定をしていきたいと思います。

三木委員 大臣、ありがとうございます。

 では、道徳に関しては、国定の教科書というものも視野に入れているということでよろしいんでしょうか。

下村国務大臣 いや、視野に入れているということじゃなくて、そういうふうな国定教科書の国もありますから、そういうことを主張している方々もおられます。国定教科書、検定教科書、あるいは、そもそもそういう形の教科書はつくらない、副読本のような形で教材として用意するという考え方もいろいろある中で、今後、懇談会の中で、どういう教科書、教材が望ましいか議論していく中で決定をしていきたいということでございます。

三木委員 わかりました。

 では、済みません、もう一度、しつこいようですけれども、大臣の私見はいかが……(発言する者あり)大臣に私見はなければ、大臣の教科書についてのお考えはいかがですか。

下村国務大臣 これは予算委員会ですので、私見はございません。

 文部科学大臣という立場でいえば、道徳において、子供たちが、より、そのことによって、その時間によって、子供たちの自尊意識と、そして、ルールや社会のマナー、規範意識を含めて学ぶ場として、知徳体の、特に徳の部分が醸成されるような空間、時間をぜひつくっていきたいと思います。

三木委員 ありがとうございます。

 時間も迫ってまいりましたので、最後、大臣に一つ要望を、私の方からお願いをして、私の質問を閉じさせていただきたいと思います。

 私は常々、日本の中で一番人権が侵害されているのは、北朝鮮に拉致された被害者の方々であるというふうに思っております。北朝鮮に拉致されていまだに帰ることができない方々、例えば、十三歳のときに北朝鮮に拉致をされた横田めぐみさんであるとか、有本恵子さんであるとか、さまざまな方々がいまだに日本に帰ることができません。

 そして、政府は、日本の国民に拉致の問題を広く啓発して、日本国民の世論を形成していく義務があるというふうに法令で定められていると思うんですけれども、道徳教育の中に人権教育というものも入ってくるのであれば、アニメの「めぐみ」という非常によいビデオがあると思うんですね。

 北朝鮮に拉致されていった人が、自分と同じような中学生の女の子が、無理に袋に詰められて、船の底に入れられて、お母さん、お父さんとも会えずに、そういう非常につらい経験をしている、今は大人になっているけれども、まだ帰ってきていらっしゃらないんだというようなことを、学校教育の中でもぜひ教えていただきたいんですね。

 もう横田さん御夫妻も御高齢になってこられております。一番心配されているのは、日本の中でこういった世論が風化されていくんじゃないか、自分の子供たちが忘れられていくんじゃないか、そういったことも非常に御心配されていると思うんですね。

 ただ、学校現場の中では、学校にこのアニメ「めぐみ」をお配りはしていると思うんですけれども、全然活用されている実態がないので、やはり子供たちというのは、この今の現実というのを学校で教えられることがほとんどないんです。

 やはり私は、道徳の時間や総合の学習の時間の中で、今は道徳の教科化ということで人権教育という問題を取り扱っておりますので、その中で、ぜひこの問題を日本の子供たちに教えて、拉致被害者の方々、そして家族の方々に心を寄せていくような教育も実現させていっていただきたい、そのように要望をいたしまして……(下村国務大臣「答弁はよろしいですか」と呼ぶ)答弁いただけますか。ありがとうございます。

下村国務大臣 時間もオーバーしているでしょうから、短く。

 これは、七月に改めて、教育委員会を通じて、ぜひ徹底的に、このアニメの「めぐみ」については学校で使っていただきたいということを通知いたしました。しっかり対応いたします。

三木委員 大臣、ありがとうございます。

 ぜひ、道徳の推進、日本の子供たちの未来のために、すばらしい子供たちがこのまま日本で育っていってくれることを希望いたしまして、私も日本維新の会として頑張ってまいります、どうぞ大臣も、これから私もいろいろ質問させていただくと思いますけれども、よろしくお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

山本委員長 これにて三木君の質疑は終了いたしました。

 次に、井出庸生君。

井出委員 みんなの党、信州長野県の井出庸生です。

 きょうは、法務行政について、谷垣法務大臣にお伺いをいたします。

 私個人の思いで恐縮ですが、この三年間、谷垣大臣が野党自民党の総裁として、自民党にとって苦しい時期を、その運営を守ってこられたことに、私は政治を志す人間として、非常に尊敬というか、そういう思いで、そのときテレビを拝見させていただいてまいりました。きょうは、こうして質問させていただいて、本当にありがとうございます。

 早速質問に入らせていただきますが、国民生活の安全、安心を支える法務行政というのは、安定性、安心感が求められる、言いかえれば継続性だと思いますが、このことは大臣も所信の中で触れられていると思います。

 そうした中で、さきの民主党政権の中で、継続が求められている法務行政でも幾つかの変化が出てきた。きょうは、そうした変化を、民主党政権の一時的なものだった、そう言って片づけてしまうのか、そうではなくて、それを継続的に、よきものはよきとして取り組んでいくのか、そういう観点で、この三年、本格実施のあった裁判員制度、そして取り調べの可視化、また、触れられれば死刑制度に関することも少しお伺いしたいと思います。

 まず、裁判員制度の運用なんですが、裁判員制度、来月の二十一日で制度開始から丸四年になります。法律では、三年たった、つまり昨年の段階から、必要があれば見直しのための検討を行うとありまして、法務省の中で検討会が立ち上がって、例えば大震災のときに裁判員をどうするか、そういった非常時の対応、また、裁判員選任の過程で被害者の保護をもう少しきちっと明文化した方がいいんじゃないか、そうした議論がなされていることは聞いております。

 しかし、私は、この三年間、もうすぐ四年になりますが、裁判員制度を見ていて、裁判員への負担、特に、実際、公判が百日に及んだケースもありました。制度開始直後は、三日、四日、長くても一週間で裁判は決着する、そういった前提があったかと思います。それともう一つは、死刑の可能性のある裁判ですね。死刑という判断を、裁判員、市民の方にその責任の一端を負わせるということは、制度前から議論もありましたが、実際、そういった判決も出ております。

 この裁判員の負担について、今、大臣のお考えをまずお伺いします。

谷垣国務大臣 井出委員から大変理解ある言葉をいただいて、うれしく思っています。こうしてあなたとまたいろいろ国会で議論できることを大変喜んでおります。どうぞよろしくお願いいたします。

 それで、今、裁判員制度の件ですが、その前に、こういう法務の問題、政権交代があったけれども継続すべきものは継続するという趣旨のお考えがありましたね。私も、それは全くそうだと思います。

 もちろん、法務の分野でも、今までの議論を見てみますと、やはり党によって相当考え方の違い、ある意味ではイデオロギー的対決があるような分野もありました。しかし、また他面、一党一派で決めるようなことよりも、もう少し長い間の経験、長い間の議論を生かすべきだという分野もたくさんあります。ですから、政権交代をしても、受け継ぐべきものは私は受け継いでいかなければいけないと思っております。

 そこで、裁判員制度ですが、今おっしゃったように、施行されまして三年半、もうじき四年になるというところですね。私は、全体の評価として見れば、これは関係者のいろいろな御努力もあったと思います、順調に動き出したなと。当初のいろいろな懸念もありましたけれども、今のところうまくいっていると思います。

 そして、今、裁判員の負担ということをおっしゃいました。これについては、今、裁判員制度に関する検討会というのを設けていただいて、そこで議論をしていただいているわけですね。その中では、今おっしゃったような裁判員の負担がどうなっているのか、そういうことを少しよく見て整理をしていこう、あるいは改善する点があれば改善しようということで議論をしていただいております。

 ただ、私は、その有識者の方々に今議論をお願いしている立場でございますので、余り先走って私としての考え方を申し上げるのは、今は控えるべきかなと思っております。そこで充実した審議をして、よい結論を出していただきたいと思っております。

井出委員 検討会の方でいろいろ議論がされているのは私も聞いてはおりますが、特に裁判員の負担に係る部分というのは、これからの制度の定着、制度のあり方を決める本当に本質的な部分だと思いますので、本当に徹底的にそこの部分の議論が尽くされることを私も望みたいと思います。

 次に、取り調べの可視化、捜査過程の録音、録画について伺いたいのですが、これは、実は私、民主党政権と自民党政権で違いが出るのではないかと危惧をしております。

 それはなぜかと申しますと、民主党は、二〇〇九年のマニフェストに、取り調べの可視化というものを予算づけして盛り込んでいる。ただ、残念ながら、さきの総選挙においては、自民党のマニフェストを見る限り、そういった記載はちょっと見られなかった。

 今、社会全般を見渡しても、少しこの問題が、報道というか問題提起、この問題について少なくなってきているというところも心配がありまして、きょう質問をさせていただくのですが、取り調べの可視化の方は、検察の捜査だけを見れば、特捜部、特刑部の独自事件、また、被疑者がちょっとコミュニケーションに不安な面があって、そういった人の取り調べは可視化していこう、そういったものについては九割以上の可視化がこれまで試行的にされてきた。ただ、取り調べの全面録画、録音については、半数まで届いていない、四割程度の実績だということを聞いております。

 この録音、録画の問題は、事件全体を言えば、ほとんど、まず、その初動捜査を担っている警察が本来率先してやらなければいけないところですが、大阪の特捜部の事件もありました。まず検察の方でこの可視化に引き続き積極的な取り組みを私は求めたいのですが、大臣の御所見をお願いいたします。

谷垣国務大臣 私、十年前に国家公安委員長をしておりまして、そのときも、可視化というものは必要じゃないかという議論が、特に弁護士会を中心としてありました。しかし、その当時は、警察もあるいは検察も極めてリラクタントだったと思いますね。そういうことをしてしまうと、結局、取り調べがうまくいかなくなって、必要なものも起訴ができなくなり、治安が悪くなるんじゃないかということを心配しておりました。

 十年たって、今度法務省に来てみますと、大分雰囲気は変わってきているというふうに思います。今、井出先生御懸念でございますが、やはり、現場の検事の中に、なるほど、可視化をするということはプラスの面も評価すべき面もあるという意見が、昔に比べますと随分ふえているなと思います。

 それで、今、法制審議会の中で、新時代の刑事司法制度特別部会というのを設けて議論をしていただいているわけですね。これも私は諮問する立場で、答申をお待ちしているわけですので、余り指図がましいことを今は控えるべきだと思っておりますが、この可視化の問題は、やはりバランスも必要だと思います。かつて、非常に否定的な見解は、それで取り調べがうまくいかなくなるんじゃないか、国民の治安や安全に対する信頼に応えることができなくなるんじゃないかという心配をしていたので、もちろんそういうことも十分考慮に入れながら、全体のバランスをとってやっていかなきゃいけないんだと思います。

 いろいろ試行もいたしまして、そのメリットも現場の検事も感じているところがございますから、バランスのとれた議論をしていってほしい、このように思っております。

井出委員 今、バランスのとれた議論をということで、私が考えていたよりは前向きなお話をいただけたかなと思うんです。

 今大臣がおっしゃられたように、可視化を続けてきた結果、捜査する側にとってもメリットが出ている。特に、全面的な録音、録画をすることで、供述が変遷をしたときに、その変遷の過程もしっかりと明らかになっている。これは捜査側にとっても一つメリットだ。また、調書、紙には書けない被疑者の供述の様子、態度が映像に残ることによって、その供述の信用性が第三者からも判断しやすいといったことが出てきております。

 私も、もともと、昔報道におったときに、いろいろ事件捜査をやっていまして、そのときは、捜査側の声もよくわかると、若干慎重な思いもあったんですが、今、試行を続けてきて、また、厚生省の村木さんの事件ですとか、今まだ現在進行中ですが、パソコンの遠隔操作で誤認逮捕がかなり出てしまった、ああいった事件が起こるのを見ていれば、可視化の流れというのは、やはりもうこれは全面的に進めていくべきだと思っておりますが、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 この可視化の議論は、やはり裁判員制度と非常に大きく関係があったんだと思うんですね。

 調書の信用性、こういったものが争われた場合に、どういう取り調べをしたか、今まではプロの間の議論でやってきたわけですが、そこに、そういうプロではない市民感覚を取り入れるという場合に、では、この調書が信用できるのかどうか、証明力はあるのかどうか、それは、きちっと可視化をして、映像を撮っておけば、裁判員の方々にも、すぐ、その信用力があるかないかというのはわかる、こういう面はやはり非常にあると思うんですね。だから、今の議論は、裁判員の対象事件を中心にしてどうするかという議論が進んでおります。

 それで、井出先生も御承知のように、この特別部会の中でも、一方で、そういったものには原則として可視化をするんだという議論と、それから、捜査員の判断に任せるという二つの考え方、これは決してこれで固定しているわけじゃありません。いろいろな意見がありましたし、可視化に対する懸念もあったので、一応そういう二つの意見を中間的にまとめて、その上で、これからどうしていくかということを議論していただくわけです。

 ですから、全面的にということをさっきちょっとおっしゃいましたね。まず裁判員、それから今、現実に検察の試行では、裁判員対象の事件だけでは必ずしもなく、広げているわけですが、そういったあたりも十分よく議論していただいて、適切な結論を出していきたいと思っております。

井出委員 今おっしゃられた、原則としてやっていくのか、捜査する側の裁量でやっていくのかというのは、今まさに論点であって、これまでもそうした論点はあったかと思うんです。

 繰り返しになりますが、これまでの試行した結果を法務省の方で分析したものを見れば、やはりこれは前向きに、全面的に、原則という流れになっていくべきだと私は考えておりますが、もう一度、そのあたり、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 先ほど申し上げたように、ちょっとくどい言い方になるかもしれませんが、基本構想の中に二通りの中間報告というような形で二通りのまとめになって、その上で議論をしていただくわけですが、これをもって何らかの制度の採否や内容を確定するという段階ではまだありません。それまでの議論を中間的に取りまとめて、これから制度設計の指針としていこうということですから、そこはいろいろな議論をこれからしていただく。

 井出委員は、もっと進めるべきだというお立場から言っておられます。今、私は、その二様の取りまとめで議論をしていただく、それ以上踏み込んで、どっちか選べというのは、諮問している立場としては、ちょっと今の段階では控えるべきだと思っております。

井出委員 この可視化の議論は、今、試行ということでずっと拡大してきておりますが、一体いつをめどに結論を出していくのか。この試行の文字がとれて実際の実施になるかというところのめどを、もしありましたら、教えてください。

谷垣国務大臣 これは、やはり審議会の審議経過もありますので、今、私が決め打ちで申し上げることはまだできない段階です。そこはちょっと御了承いただきたいと思います。

井出委員 次に、死刑制度に関することを伺いたかったのですが、ちょっと時間の都合もありますので、指摘だけにとどめさせていただきます。

 民主党政権のときに、死刑場の公開をしたということがありました。死刑制度に対する賛否をきょうお伺いするつもりもございませんでしたし、お伺いはいたしませんが、私は、刑場の公開というのは、死刑制度のあり方を議論する一つの材料にはなったのかなと思っております。そういう意味で、刑場の公開にかかわらず、これからも死刑制度の議論に資するような情報の提供を法務省としてもお願いしていきたいと思います。

 きょう、私が法務行政についてお話をさせていただいたのは、最初に申し上げましたとおり、政権交代があったときに、前の政権がやっていたことだから全部だめなんだ、それが、政権がかわって、また全部だめなんだということをやっていたら、いつまでたっても何もよくならないだろうと。

 今回、自民党が政権を取り戻して、安倍総理大臣が経済対策などるる注目政策をやっておりますが、私は、ぜひ、野党としての自民党三年間、恐らく一番苦しい時期で一番有権者の声を聞いてこられた総裁としての谷垣さんに、そのときの反省を、聞いてきた声を党内で生かしていただきたいと思うのですが、一言決意をお願いいたします。

谷垣国務大臣 全国各地を回って、自民党を再生させようと思って、いろいろな方の御意見を聞いてまいりました。私は、それはよかったと思っています。それを評価していただくのは大変ありがたいと思っております。その上で、政権交代が起こったからといって全部ひっくり返すようなことをやっていたら、混乱ばかり生まれます。やはり、民主党政権がやったことでもプラスだなということがあったら、それは引き継いでいくのは私は当然のことだと思っております。

 ただ、死刑の面は、私はやはり、受刑者の心理、非常に、死刑判決を受けたことで、心理的には極めて動揺しやすい環境に置かれていると思います。そういう死刑の判決を受けた方々の心理もよく考えながら、情報の公開も、全部しないというわけではありませんが、よく考えながらやっていく必要がある、私はそういう考え方をしております。そういう考え方に立って、今後、行政を進めてまいりたいと思っております。

井出委員 ありがとうございます。

 ぜひ、法務行政にかかわらず、この三年間、総裁を全うされてきたその御経験を、これからの自民党政権に生かしていただきたい。私は、野党の立場で、自民党政権にしっかり物を申してまいりたいと思います。

 きょうはありがとうございました。

山本委員長 これにて井出君の質疑は終了いたしました。

 次に、三谷英弘君。

三谷委員 みんなの党の三谷英弘です。

 昨年十二月に総選挙で初めて当選させていただきまして、本日、この予算委員会におきまして初めて質問をさせていただきます。

 まず、麻生大臣、偶然ですけれども、先日、国会見学中の私の後援会の皆さんに握手でねぎらっていただきまして、本当にありがとうございました。本当に皆さん喜んでおりました。まずもってお礼を申し上げたいと思います。

 財務大臣に、まずお伺いをいたします。

 質問通告の順番をちょっと変えさせていただきまして、決算の問題を伺います。

 今、国の決算が、平成二十一年度分から三年分、承認されておりません。この三年分たまっているという状況について、決算の意義というものは改めて言うことでもありませんけれども、この状態について、まず麻生財務大臣の認識、見解を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 これは三谷先生言われるまでもなく、会社をやっていたら予算より決算というぐらい決算というものは極めて大事なものと思っておりますし、事実、国会でも、参議院では決算というのを衆議院よりはかなり重要視しておられるような傾向をこの数年感じております。ただ、何となく衆議院の方は予算の方がどうしても先行してきているというのがこれまでの経緯だったと存じます。

 今、三年分たまっておるということになっておりますけれども、決算の審議というのは、次の年度の予算を執行するに当たって、この決算を見て、ちゃんとやっていないじゃないかとか、いろいろな御指摘がいっぱいできるところなのであって、それに基づいてやらねばならぬということで、私どもとしては、この決算というものは今後の予算編成に反映させる大事なものなんだという意識は同じであります。

 今御指摘がありましたように、二十一年、二年、三年の三年度分の決算が今審議がまだ行われていて、二十一年度が終わって二十二年が今審議中かな、それから参議院の方は二十二年まで既に終わったぐらいになっていると思いますけれども、いずれにしても、こういったものにつきましては、次年度の予算に反映できるように、きちんと、なるべく早く決算の審議が行われてしかるべきものだ、我々もそう思っております。

三谷委員 ありがとうございます。

 この決算の意義というところでございますけれども、過去三年分、決算がたまっているという状況、まずは決算行政監視委員会の所掌だと考えておりますけれども、実は、この三年間の委員会の委員長はいずれも自民党という形になります。その三年間の委員長の中に、今こちらにいらっしゃいます新藤総務大臣がいらっしゃいますけれども、この状況について一言いただければと思います。

新藤国務大臣 私は、平成二十三年の一月から二十四年の十月と、一年九カ月間、決算行政監視委員長を務めさせていただきました。私が委員長になったときは、二十年度の決算も終わっていなかったんです。ですから、それをとにかく早くに処理しようと。

 今、財務大臣からもお話ございましたが、決算というのは、過去に行った行政をチェックして、それを予算に反映させる。あわせて、行政監視事務というのは、今行われている事務事業をチェックして、直近の予算要求に反映させる。こういう極めて重要な使命を持っている。これが滞っているのはゆゆしきことでありまして、私としては最大限の審議促進を図ったわけなのであります。

 今現状では、三年分といいますが、二一と二二は一括審査の最中でありまして、もう既に審議に入っておりますから、審議日程さえとれれば終わるんです。

 ところが、なぜできないかというと、私、委員長として本当にじくじたる思いがありましたが、結局、他の委員会が法案審査を優先する。決算の場合は、大臣にたくさん入っていただかなきゃならない場合があります。財務大臣はマストです。したがって、国会運営の都合でいろいろな委員会が開かれなかった。特に大事だった復興予算の適正化に係る問題などは、これは九月の頭に問題点を指摘して、委員会を開こうじゃないかと。実際に開いたのが十月の末ですから。そういうふうに、本当に残念ながら、前政権時代、この決算委員会は極めて開催することが難しい、こういう状況がありました。

 しかし、これはとにかく国会側の運営の問題でありますから、ぜひ、私とすれば速やかな審査を期待しておりますし、この審査結果をきちんと予算に反映させる、やはりこれもPDCAサイクルの一環なんです。そういう位置づけを私はこの行政監視委員会には大いに期待をしておりますし、自分とすれば、ルールをつくりました。決算審査と行政監視事務という二つの審査事務をどうやって進めていくかというマニュアルをつくりまして、また、そのように実践をしてまいりました。ぜひ、今新しい委員長になられて、積極的な委員会運営が図られることを期待しております。

三谷委員 非常に前向きなお言葉をいただきまして、本当にありがとうございます。

 この問題につきましては、政治への信頼というものを回復していくという観点から、与野党問わず、しっかりと取り組んでいかなければならない問題ではないかというふうに考えております。

 それでは、衆議院の選挙制度について、ちょっと伺ってまいります。

 私は、以前から弁護士といたしまして、今、御存じでしょうか、一人一票実現国民会議、これを率いております升永弁護士と同じ法律事務所に所属しております。その関係から、喫緊の課題でございます衆議院制度における定数不均衡、いわゆる一人一票の問題について、新藤総務大臣に御見解を伺いたいと思っております。

 問題の一つ目といたしまして、〇増五減、この緊急是正法について、先日、新しい選挙区割り案が発表されました。残念ながら、これは全くもってでたらめと言うほかはございません。

 この新しい区割り案では、もう既に本日の議論の中でも後藤委員から出ていたかと思います、最大格差が一・九九八倍というふうにされてはおりますけれども、本日の産経新聞にも載っておりました、実際に速報値ではかってみると既に二倍を超えている、そういう選挙区が八つもあるというような状況です。

 たとえ今回の選挙区割り案に基づいて改正したとしても、違憲の状態から違憲の状態に移すだけだということで、全くもって意味がないんじゃないかというふうにまずは考えられるわけです。

 それからもう一点。従来から、投票価値の差というのは、どうしても地方の声をしっかりと反映していかなければいけないというような観点から差があるんだというような説明もされていた、そういうふうな説明をされる政治家の方もいらっしゃいますけれども、実際、この新しい選挙区割りを見ていただきたいと思います。

 発表された数値によりますと、例えば、札幌市中央区を含みます北海道一区というのは、わずか一人につき〇・五〇四票、ほぼ二倍近い差がある。千歳市や石狩市を含む北海道五区については、一人〇・五二二票、これもほぼ二倍近い。その差が既にあるわけです。

 地方でもこういう大きな差をつけられている選挙区が多数を占めている、そのような選挙区割り案にしていくということについて、これで前回の最高裁の要請を満たしたものと考えているか、御見解をお伺いしたいと思います。

新藤国務大臣 この一票の格差の是正問題、これは国家にとっての基本的な課題だ、民主主義の根幹をなすものでありますから、これをしっかりと制度をつくっていくというのは国会の責務である、このように思いますし、私どもは、総務省として、その法律を預かる者として、これが適正に厳正に執行されていく、こういうことを推進していく、そういう役目だというふうに思っています。

 今度の〇増五減の緊急是正法というのは、これは、最高裁の大法廷判決を受けて、その上で各党各会派による議論を経て、そして、最高裁からの御要請もありました、一人別枠方式を廃止し、選挙区間の人口格差を二倍未満とするために立法府において講じられた立法措置であります。

 これは、国会の中で主要会派が議論をし、そして成立をした、そういう法律であります。ですから、それに基づいて区割り審の勧告が出て、それを我々は、そこは粛々と、しかも速やかにこの事態に対して対処していきたい、このように思っています。

 選挙自体のさらなる問題意識があることについては、これは、それこそまさにこの国会において各党間でしっかりと議論していただきたい、このように考えています。

三谷委員 残念ながら、今の答弁を聞いていても、司法の危機感に対して十分に応えようという姿勢が見られないというふうに言わざるを得ません。

 今回、十六件の一連の訴訟というものがありまして、その中の全て、違憲または違憲状態にあると。その中の二件は、違憲、無効だというような判断にまで至っているわけです。

 その無効判断の一つ、広島高裁岡山支部の判決の中にはこう書いてあります。国民一人一人が平等の権利でもって国会議員を選出するからこそ、国民の多数意見と国会議員の多数意見が合致するんだ、だからこそ、国民主権を実質的に保護することが可能になるということになります。

 つまり、一人〇・五票を認めればいいということでも一人〇・六票を認めればいいということでもない、国民主権というものを本当の意味でしっかりと実施していくためには一人一票を実現しなければならないというふうに考えておりますけれども、この見解は岡山支部の判断でもございます。この見解について、政府としてどのようにお考えでしょうか。

新藤国務大臣 これは先ほども御質問がありました。そういった消極的な評価といいますか、今回の判決について、札幌高裁、福岡高裁、それから広島高裁、こういったところではいろいろと厳しい御意見が出されております。

 一方で、東京高裁においては、今回のものが、憲法が要求している投票価値の平等にかなったものに是正していくことが期待できる、こういうことも書かれているわけでありまして、いろいろな評価があるということであります。だからこそ、それは今後、最高裁においてさらなる審理がされる、このように思います。

 いずれにしても、我々としては、しっかりと、できることを一つ一つやっていく。みんなの党も御賛成をいただきました。民主党も賛成をされました。みんなで決めて、その法律に基づいて、従って今この手続を進めている、このことであります。これをまず一つ一つやりながら、さらにもう一回申し上げますけれども、いろいろな御意見がある、それは国会の議論が行われなければならなくて、それは国会の責務である。私は大いに議論が進むことを期待しております。

三谷委員 残念ながら、本当に、この今の状況が変わった、事情がもう既に変更しているというところについての認識がどうしても足りないのではないかというふうに言わざるを得ません。

 この一連の高裁判決というものが下される前に、私は政権に対して質問主意書を提出いたしました。どういう中身かといいますと、仮にこの衆議院の選挙無効判決が出た場合に、どのように対応するのかという内容でございました。それに対して、この回答というのは、一文、仮定の質問には答えられない、これだけでした。

 本当に残念だったんです。テロや震災、こういうものが起きたときにどのように政府として対応していくのかというのは、全て仮定の質問に対して、これは大きな問題だからこそしっかりと答えていく、当たり前のことなんです。仮定の質問だから答えられないというのは、これは余りにも司法府の判断というのをないがしろにする、そういうような判断ではないかというふうに考えております。

 今後、最高裁において仮に無効判決が出たというような場合に、そのときに備えて法整備を行う等の対応策をこれから検討する、その予定がございますでしょうか。

新藤国務大臣 これは、委員がそういう問題意識を持たれているんだから、それをぜひ国会でどんどんとやるべきではないでしょうか。この選挙制度は国家の基幹にかかわることですよ。ですから、そのために国民の代表たる国会議員がいて、そこで御議論をいただいてまいりました。ですから、そういう問題に対してやはり議論を早く進めていくべきだ、私もそのように思います。

 その上で、政府は、そういった国会のしっかりとした方針が出されたものに、粛々とやっていく。そして、今、いろいろなテロや何かが起きた場合の想定と、今回のように、そもそも議論をきちんと国会でやっていただかなきゃならない、こういう問題についての対応が違ってくるのは当然で、仮定の問題について我々はお答えできないわけであります。

三谷委員 現在の見解については承知をいたしました。この問題については、引き続きいろいろと伺っていきたいと思っています。

 続きまして、特許庁における情報システムの開発の失敗の問題についてお伺いいたしたいと思います。

 先日、私の経済産業委員会での質疑の中で、特許庁の新システムの開発が失敗し、この新システムのカットオーバーというのが十年近くおくれたというようなことがございます。このことによって、相当の損害が日本全体に生じているというようなことが明らかになりました。

 もうこの質疑では時間がもったいないので、内容を簡単に御説明させていただきますと、具体的には、本来削減できていた、そのようなはずの特許庁内の経費が年間で百億円近く、これが削減できなくなった。これは、十年分おくれれば、百掛ける十で一千億円、目に見える損害として生じているわけです。

 それだけではありません。この新システムがカットオーバーされないということによって、特許を使っていくということの、残念ながら、システムが原因で、新しい特許制度というものの改正がおくれているというような状況も実はございます。こういう日本の知的財産戦略全体に影響が出ているという状況でございます。

 この点について、甘利経済再生担当大臣にお伺いします。日本の経済再生戦略の中で、産業投資立国を一つの柱に挙げていらっしゃいますけれども、その中で、知的財産の位置づけをどのように考えていらっしゃいますでしょうか。

甘利国務大臣 知財戦略というのは、日本のみならず、これはアメリカも非常に、プロパテント政策ということで政策の柱として掲げています。日本としても、知的財産戦略ということを政府の中の柱の一本に据えて取り組んでいっています。

 やはり、先進国がどうしてもこの分野でアドバンテージを持っていないとおくれをとる、極めて重要なところだというふうに思っております。

三谷委員 今の、この新システムの開発というものが失敗した、その当時、平成十八年十二月一日、この時点の経済産業大臣は甘利大臣ということでよろしかったでしょうか。また、その当時の総理大臣は安倍総理大臣ということでよろしかったでしょうか。

甘利国務大臣 私も、経産大臣当時に、このシステムに関して何か指示を出したという記憶がないものですから、調べさせました。

 私の先々代の時代にプランが持ち上がって、それから、私の前大臣のときに入札の細かい具体的な指示が出て、公告が出て、私が就任して一月後にそれが実施されたという経緯でございます。就任後一月後に入札が実施された。そのときの総理大臣は安倍総理です。

三谷委員 ぜひとも、甘利経済再生担当大臣、そして安倍総理大臣は、この問題については他人事ではないという意識で臨んでいただきたいと思います。ぜひとも、過去の失敗から学んで、今後に生かしていただきたいというふうに考えております。

 それでは、山本一太大臣に伺いたいと思います。

 このITのシステム発注というものを行っていく際に、落札業者を決定するというこの検討事項は、価格点と技術点の二つから成っているというふうに伺っておりますけれども、この二つの関係というのはどのようになっておりますでしょうか。

山本国務大臣 IT政策担当大臣として御答弁を申し上げます。

 先生御存じのとおり、入札制度の中で、最低価格落札方式と総合評価落札方式というのがありまして、特に加算点を考えた総合評価落札方式については、技術点が一、それから価格点が一、そういう形で評価をさせていただいていると思います。

三谷委員 その一対一の評価の中で、今回の落札、何が問題であったかというと、物すごく技術点が低かったんです。それに対して価格も非常に安かったということで、それをあわせて見ると、価格が安いからこそ落札できたというような状況がございます。これはまさしく一対一というようなシステムだったからこそ、今回の一千億円、そしてもっとそれを上回る日本の損害というものが生じてしまった。これは、はっきり言えば、安物買いの銭失いというふうに言わざるを得ないというふうに考えております。

 ぜひとも、その問題、この落札方式について、今後の見直しを行っていく予定はございませんでしょうか。

山本国務大臣 三谷委員の御指摘については、私も同じ問題意識を持っております。

 いずれにせよ、この特許庁の情報システム調達プロジェクトがうまくいかなかった原因は、やはり今おっしゃったような入札制度の問題もあって、つまり、こういう大規模な全面的なシステム刷新、これをやるのに必要な技術力とかあるいはプロジェクト管理能力のなかった業者を安値で応札をさせてしまった、ここに問題があると思いますので、今、政府の中でワーキングチームをつくっていますから、今の問題点もしっかり検証して、本当に技術点一、価格点一でいいのかということについても、しっかり見直せるように検討を進めたいと思います。

三谷委員 時間となりました。

 これからマイナンバー法案の審議が行われていきます。それに伴う新しいシステムというものが発注されると思いますので、前倒しでその議論をぜひとも進めていただきたいと思います。

 これで質疑を終わります。ありがとうございました。

山本委員長 これにて三谷君の質疑は終了いたしました。

 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 きょうは教育予算についてお伺いをいたします。

 まず、質疑冒頭に一つ確認をしておきたいことがございます。

 私は、去る三月二十七日、文部科学委員会での質疑で、概算要求時には入っていた教職員の定数改善計画が、その後、財務省との折衝で削られてしまったことを文部科学大臣にただしました。

 この問題をめぐって、ことしの予算折衝で財務、文科両省間で取り交わされたのが、資料一におつけをした確認の文書であります。この確認文書の三項目めには、「今後の少子化の進展や国・地方の財政状況等を勘案し、」とあるわけですけれども、先日の文科委員会の場で、下村文科大臣は、「項目としては財政状況等も入っておりますが、これは確認的に記載したということで、これについては、麻生財務大臣との話の中で、私は、拘束されないというふうに認識をしたい」、こう私に答弁をいたしました。

 そこで、麻生財務大臣に確認するんですが、この三項目め、「国・地方の財政状況等を勘案し、」という文言は、下村大臣のおっしゃるとおり、拘束をされない、適当な文言、こういう理解でよろしいですか。

麻生国務大臣 適当な表現かという表現がもう適当なのでちょっと問題なんですけれども、適当かと言われますと、これは教育の質の向上につながる教職員のことですから、金目だけの話ではなかなか縛れないのではないかという見解を私どもは持っておりましたので、これは、財務省としては、当然、払えないということになるのでは話になりませんから、きちんとしてこういうものは勘案をしていただかないと、とても、できるものもできなくなりますから、やりたくてもやれないことがありますので、そういうことをある程度考えておいていただかないといけません、書いていただきますよと。

 ただし、問題点としては、教育の質の向上というのは、学生の数が減って先生の数が多くなればそれだけで教育の質が上がるなんて、そんな簡単なものじゃないのはよく御存じのとおりなので、その点もよく考えて、今後とも、いろいろな意味で話をしていきましょうという話をさせていただいたのは事実です。

宮本委員 そうしますと、やはりこれは書き込んだだけのことがあって、これに拘束をされるという話になるわけですね。

 何かありますか、文科大臣。

下村国務大臣 これは、宮本先生、前提条件をちゃんと話をしていただいて、それから麻生財務大臣に聞いていただかないと、フェアではないというふうに思います。

 そもそも、これは義務教育法の改正の中で、少人数学級の推進についての議論の中の御質問だったわけですね。

 これについては、お手元に資料を配付していただいているわけですが、この二項のところに、「今後の少人数学級の推進については、習熟度別指導等とあわせ、文部科学省において、その効果について平成二十五年度全国学力・学習状況調査等を活用し十分な検証を行いつつ、教職員の人事管理を含めた教職員定数の在り方全般について検討する。」と。今御指摘のところは三のところですね。「「二」の検討を見つつ、今後の少子化の進展や国・地方の財政状況等を勘案し、」この中に入ってきているわけですね。

 我々としては、教職員定数のあり方というのは、最初に財源で左右されるということではなくて、まずは習熟度別指導者についての、増減をしたけれども、実際、二十五年度の全国学力・学習状況調査の結果を活用し、財務省と一緒に検討する。その中で、結果的に、やはり少人数学級がそれだけ学習効果あるいは教育上の効果があるということを踏まえた中で、その中でさらに国、地方の財政状況を勘案しつつというのがあるのであって、最初から、財政状況があるから少人数については一切だめということでなくて、まずは学力それから学習状況の結果を踏まえてということですから、これは何ら問題ない話だと思います。

宮本委員 それは、やりとりのいきさつでいえば、そのときのやりとりは、私が、二〇一一年三月の民主党政権下で出された義務標準法改正のときに、民主党、自民党、公明党三党で、附則にあった「国及び地方の財政の状況その他の事情を勘案しつつ、」という文言をわざわざ、当時、下村さんは自民党の筆頭でしたが、これを削って、そして、財政の状況にかかわらず、やはり義務教育国庫負担金については国がきちっと責任を持つべきだという趣旨で我々は削ったのだとおっしゃった。その下村さんが大臣になって結んだ文書に全く同じこういう文言が出ているから、これは二年前の言葉と違いますねというやりとりをやったわけですよ。

 だから、拘束されないんだったら、もとから入れなきゃいいじゃないですか、そう言うんだったら。

 まあ、いいですよ。それはまた文部科学委員会で議論しましょう。とにかく財務省の答弁はそういうことだということですね。

 やはりこの問題は、それはそのとおりです、しっかり教育の側面から見ていくということで、引き続き、少人数学級の推進は財政状況にかかわらず進めるべきだということを申し上げておきたいというふうに思います。

 さて、去る三月の二十九日、国会内で、子どもの貧困対策法制定を目指す院内集会というものが開かれました。自民党を初め、全ての党が参加をいたしました。その後、代表が下村大臣にお会いして、直接要請したと聞いております。この問題は大臣も取り組んでこられた問題であります。

 大臣は三月一日の記者会見で、記者に問われて、議員立法が望ましいが、政府の方で協力できる部分については最大限協力をしていきたい、文部科学省の立場でいえば、教育的なハンディキャップが貧困によってマイナスにならないような、そういうフォローアップは当然していく必要がある、こう述べられました。

 この立場、間違いございませんね。

下村国務大臣 御指摘のように、私も、高校、大学と、交通遺児育英会、そして今の学生支援機構、日本育英会の奨学金を、当時は給付型奨学金もございました、これを借りたりあるいは給付を受けることによって、高校、大学に進学できたと思っております。今、給付型奨学金はもうございません。

 そういう中で、当時以上にやはり貧困の連鎖が深刻な問題としてあるというふうに思っておりますので、子供の貧困対策という観点から、子供の教育を受ける機会が妨げられることがないように教育費の負担軽減を図っていくということは、これは極めて重要なことであるというふうに思います。

 ことしの二十五年度の予算案においても、幼稚園就園奨励費補助の充実や義務教育段階の就学援助の実施、大学等奨学金事業及び授業料減免の充実等を通じて家庭の教育費負担の軽減に努めているところでありますが、当然、まだまだ十分ではないわけでございまして、全ての意志ある者がその能力に応じて安心して学ぶことができるよう、これからも教育費軽減について、その努力に向けて全力で対応してまいりたいと思っています。

宮本委員 そういうことを考える上で、やはり大学を考えると、世界に比して余りにも高学費の現実があると思うんですね。

 今や、大学などの高等教育まで段階的に無償にしていこうというのが世界の流れになっておりまして、大臣御存じのように、国際人権A規約十三条二項(b)及び(c)、中等教育、高等教育の漸進的無償化条項、日本は一九七九年の条約批准以来、三十三年間にわたって留保してきたわけでありますけれども、昨年の九月の十一日に、ついに留保撤回を国連に通告いたしました。

 これによって我が国は、無償教育の漸進的な導入というこの条文に拘束されることになるわけですけれども、これは大臣、政権がかわっても遵守するという立場に違いないですね。

下村国務大臣 これは当然の話でありまして、我々はさらに、私的負担、教育費の軽減に向けて対応してまいりたいと思っています。

宮本委員 では、どのようにして子供や学生の学びを支えるのか。その具体的な中身として極めて重要なのが奨学金制度だと思うんです。

 下村大臣の時代には、先ほどお話あったように、日本学生支援機構の前身、日本育英会は給付型の奨学金を持っておりました。大臣が受けられたのも給付型、返済の必要がない奨学金だったと思います。今はありませんよね。

 無利子であろうが、あるいは所得連動型というようなものをつくろうが、貸与である限りは借金は借金なんですよ、給付でなければ。日本学生支援機構の奨学金というのは全て借金になります。利子があろうがなかろうが、返さなきゃならない。諸外国では、奨学金というものは返済の必要のないものを奨学金と呼ぶわけでありまして、日本の奨学金制度はもはや学資ローンというにふさわしいものになっていると思うんですね。

 この予算案で、麻生財務大臣は予算説明で、文教及び科学振興費として、奨学金等の就学支援の施策を推進する、こう述べられました。では、前年度に比してどれくらい充実させたのか。奨学金には有利子と無利子がありますけれども、それぞれ分けて、どれぐらい充実させたか、答えていただけますか。

麻生国務大臣 平成二十五年度の予算のことだと存じます。人員のベースで見ますと、無利子奨学金につきましては、対前年度二万七千人増の四十二万六千人、有利子奨学金につきましては、六万一千人増となる百一万七千人であります。

 これをいわゆる金額ベース、事業費ベースで言わせていただければ、二千九百十二億円になっておりますので、対前年度比百四十四億円、それから、有利子奨学金の方は九千七十億でありますので、こちらの方は対前年度比五百七十四億円となっております。

 この無利子奨学金の政府の貸与金が減少しておりまして、奨学金が充実しているのではないのではないかと多分言われたいんだと思うんですね。(宮本委員「言いますよ」と呼ぶ)時間がもったいないと思いますので、先にお答えしておきます。

 無利子奨学金は、過去の貸与者の返還金と政府の貸付金を両方原資にしていますので、二十五年度におきましては、返還金が多く見られることから、政府の貸付金が減少しておるということになっております。

 いずれにしても、この支援という政策の目的から、どれだけ学生に貸与できるかというところが非常に重要なところであって、その財源の内訳であります政府貸付金が減少しているから問題であるというような御指摘は、ちょっと違うんじゃないかという感じがいたします。

宮本委員 聞いていないことまで答えていただきまして。有利子の方がやはり多いんですね、今年度の予算でも。

 この間、奨学金貸与の規模というのは確かに拡大されてきたんです。特に、一九九九年、平成十一年に自民党、公明党が新しい奨学金の制度の創設に合意して以来、その多くは有利子の奨学金の規模が拡大されてきたわけです。

 その推移は、きょうの資料の二枚目につけてありますから、見ていただいたらよくわかりますよ。白い部分、無利子奨学金はずっと横ばいで、この網がけの部分がずっとふえてきたというのが実態なんですね。

 無利子は、今回、二万七千人増でも四十二万六千人。利子つき奨学金は百一万、百万を超える。七割以上は利子つき奨学金なんですね。

 一九八四年に日本育英会法を改正して有利子枠を創設した際の国会の附帯決議には、育英奨学事業は、無利子貸与制度を根幹としてその充実改善に努めるとともに、有利子貸与制度は、その補完措置とし、財政が好転した場合には廃止等を含めて検討する、こうされていたはずですね。

 文科大臣、そもそも、奨学金というものは無利子こそ根幹なんじゃないですか。

下村国務大臣 おっしゃるとおりだというふうに思います。

宮本委員 結局、今年度の無利子奨学金の拡大というものも、先ほど財務大臣の答弁にあったとおり、政府からの貸し付けは減らして、そして、返還金の拡大で行っているというのが現状です。

 資料の三つ目に、この間の推移をつけておきました。左側が政府の貸付金。これは、二〇〇〇年度前後には一千億円を出ていたものが、今はもう減ってしまって、七百五十七億円というのが今度の予算案であります。そして、黒い方は返還金です。要するに、奨学金を回収して、そのお金を貸している。だから、構成は、返還金がどんどんふえてきたということですよね。

 貸付金を六億円減らしているわけですから、去年に比べても。これで、返還金がふえているから拡充したと言えるというのが先ほどの御答弁の趣旨ですか。

麻生国務大臣 財政事情の厳しい中で、返済をしていただける方に関しましては、ぜひ、今後、自分たちの後輩もこういった形でいろいろな奨学金が受けられるような制度を維持していくという気持ちは、奨学金を受けられた下村先生に限らず、いろいろ後輩のことを考え、現状のことを考えると、そういった意味で、できる限りという形で、今たしか三百万円で切ったというような記憶がありますけれども、三百万円ぐらい以上の所得のある方になられた段階からというお話をさせていただいていると記憶をします。

宮本委員 なるほど、日本学生支援機構の奨学金を受給する学生数は年々ふえてきたわけです。

 それで、大内裕和中京大学国際教養学部教授の調査によると、国立大学でも、鹿屋体育大学や福岡教育大、岩手大学では全学生の六割、私の通っておりました和歌山大学で四二・八%、大阪大学で四割の学生が、これは有利子も含めて受給をしているわけです。私学でも、私の地元大阪の摂南大学や千里金蘭大学で全学生の五割以上、大阪青山大学、帝塚山学院大学、大阪経済大学で四五%を超えております。

 しかし、これは、とても手放しでよいことだと言えないんですね。なぜならば、それらは全て、何百万円、ひどい場合には一千万を超える借金なんですよ。しかも、その大半を、有利子枠の拡大と、今大臣おっしゃった返還金の回収強化で進めてきた。ここに今問題が生じているわけです。

 先日、日弁連が全国一斉奨学金返済問題ホットラインというのをやりましたが、就職先がなく、返済の見通しがないなど、全国で一日で四百五十三件の相談が寄せられたと報告をされております。既に、低所得者層ほど、奨学金を返せるかどうか不安なのでもう借りたくないという考えが広がりつつあります。

 本来、低所得の人を助けるための制度である奨学金が、ローン返済への不安から使えないというようなことになれば、全く本末転倒の結果になると思うんですが、文部科学大臣、そうお感じになりますね。

下村国務大臣 そういう問題点はあるというふうに思います。

 そういう意味で、今度の平成二十五年度の予算案において、無利子奨学金を充実する、平成二十四年度から導入した所得連動返済型の無利子奨学金制度を充実させ、所得掌握が容易になる社会保障・税番号制度への移行を前提に、卒業後に一定の年収を超えた時点で一定額を返済する現行制度から、卒業後の年収に応じた額を返済する柔軟な制度へ改善するための準備、また、各大学が実施する授業料減免等への支援の充実など、これは給付型ですね、教育費の負担の軽減に努めております。

 さらに、高校においては、給付型奨学金、これはぜひ導入を考えたいと思っております。高校授業料無償化の見直しの中で、所得制限等を設けることにしております。それを財源として、平成二十六年度以降については、低所得者層あるいは公私間格差を是正するための給付型奨学金の導入を検討していきたいと考えているところでございます。

宮本委員 高校の給付制奨学金、結構でありますが、高校無償化を見直す、その財源でやるというのは全く反対です。これは、そういう財源をきちっと別につくってやるべきだということは申し上げておきたいんです。

 所得連動返済型奨学金、これは民主党政権がつくったものですけれども、最初の概算要求では、これを在学生全員に広げようという概算要求だったんですが、その部分についてもあなた方は削ってしまったわけですよ。

 そして、今、やはりそういう不安が広がる最も重要な問題は、非情な取り立てをしているということです。

 昨日、東京で、奨学金問題対策全国会議という団体の設立集会が開催されて、私も参加をいたしました。そこでは、当事者から生々しい事例が報告されました。

 例えば、大学時代に第一種、第二種奨学金を毎月五万円ずつ、総計約四百万円借りたが、就職氷河期に大学を卒業。卒業後半年はフリーター、その後は契約社員で低収入のため返済が困難、五年ほど延滞を繰り返したため、延滞金が四十万円程度まで膨らんでしまった。三十代の女性。

 高校、大学時代に、第一種、第二種合わせて四百五十万円利用。卒業後は正社員として就職したが、過労のためうつ病にかかり、自己都合退職。現在は実家に戻りパートで働いているが、月十万円程度の収入しかない。親もほとんど収入がない。卒業後から利用していた五年の猶予の期限が切れたが、返せる見込みがない。弁護士から自己破産を勧められている。

 こういう話が次々出るわけですよ。

 この人たちは決して怠けているわけでも悪意があるわけでもないのに、日本学生支援機構から厳しい返還金の取り立てを受けております。下村大臣、これで奨学金と呼ぶような教育的な制度と言えると思いますか。いかがですか。

下村国務大臣 御指摘のように、今、日本学生支援機構の奨学金制度は貸与でございまして、貸与しているわけですから、学生から返還金は求める。この返還金が次の学生への奨学金の原資になっているわけでございまして、返還できる方からしっかりと返還してもらう、これはある意味で当然の話だというふうに思います。

 このため、返還できるにもかかわらず返還しない者に対しては、延滞金の付加、個人信用保証協会への登録、それから支払い督促申し立てなどの法的措置の実施などにより、返還を促しているというところも一方でございます。こうした取り組みは民間等の事例を参考にした中で設定していることでありますし、また、あらかじめ本人に対して通知をするなどしており、強引な回収を行っているということにはならないというふうに思います。

 ただ一方で、御指摘があったように、経済的理由やあるいは病気等によって返還が困難な方に対しては、返還猶予制度それから減額返還制度を適用する、また、今御指摘の、疾病等によって仕事ができないために返還が無理だという場合には猶予期間も認められているということで、より柔軟に、現実の中で対応するように努力をしてまいります。

宮本委員 返せる人から返してもらってというんですけれども、実際には、返せない人からも、また、本来なら返す必要のない人からも非情な取り立てをしているというのが実態なんですよ。そうやって取り立てた返還金で奨学金の貸与規模がふえているだけであって、だから政府からの貸付金が減っているんじゃないですか。これはひどいやり方だと私は言わざるを得ないと思うんですね。

 昨日、お母さんが語った東京の女子学生の事例を紹介したい。

 娘さんは、二〇一〇年に、理科の先生になりたいと私立の理系大学に入学しました。初年度納入金は二百万円程度だったといいます。非常に優秀な学生で、一回生前期の成績は二番。後期もその調子なら、大学から給付の奨学金を受けられると大学から言われるほどでした。日本学生支援機構の無利子奨学金を月五万四千円、一年間なので六十四万八千円受給いたしました。

 二〇一一年一月五日に自宅で突然心肺停止、救急病院で何とか一命を取りとめたが、上下半身とも全く動かず、蘇生後脳症と診断をされました。やむなく胃瘻で栄養をとり、気管支切開も行っております。身体障害者一級の手帳も交付されました。やむなく一回生で大学を退学したところ、退学直後の二〇一一年五月から、日本学生支援機構から返還請求があり、御両親は五月から十二月まで月々三千円、ボーナス月一万八千円、合計六万円を返還したというんです。

 しかし、この年に娘さんの医療費だけで百万円以上かかった。お父さんの収入も減った。機構に状況を説明しても、本来は返還免除が当然の事例なのに、あなたは借りたんでしょうと言われ、減額返還か返還猶予か、どちらかの願いを出すように言われた。医師の診断書と障害者手帳一級のコピーを添えて送ったけれども、誤って減額返還の書類を送ったため、ことし一月末に機構は減額の通知を送ってきた。弁護士に相談して免除を申し出たが、改めて猶予願を出せ、何回も返済猶予を繰り返した後でないと免除はできない、機構の医師は、回復の見込みがあるからすぐには免除できないと言っている。

 こういう事例が生々しく語られたんですね。

 精神もしくは身体の障害により返還ができなくなったときには、返還免除は当然のはずです。それを、何も知らずに親が払えば六万円を受け取る、免除願もあれこれ理由をつけて受け付けない、こんなやり方がありますか。

 昨日の集会では、日本学生支援機構は借金奴隷化推進機構だ、そういう声まで上がっておりました。大臣、本当にこんなことでいいんですか。

下村国務大臣 今の事例がそのとおりということであれば、それはやはり深刻に受けとめなければいけないことであるというふうに思います。

 その方だけでなく、個々の状況把握にきちっと努め、対応する。そして、経済的理由や今のような事例等によって返還が困難な者に対してよりきめ細かな対応をしていくことによって、これはただのローン会社じゃないわけですから、柔軟な対応については、今後、それぞれの事例等をよく把握しながら適切に判断していくということについて検討させていただきたいと思います。

宮本委員 多重債務にならないように安易な借金はするなと、金融庁は消費者教育を大学で行っております。きょうの資料の四につけたのは、これは金融庁がつくった資料なんですね。「安易に借金をしてはいけません」「社会にはばたこうとしている皆さんに」、こういうものであります。

 ところが、同時に、教育現場では、進学や学業継続のために日本学生支援機構の奨学金を勧めております。資料五には、下村大臣御出身の早稲田大学学生部の広報をつけておきました。「奨学金制度を徹底活用しよう!」、こうあります。

 私は、今や、日本学生支援機構の奨学金も、金融庁が警鐘を乱打するようなローンやクレジットと何の違いもない、そういう取り立てが現に行われているということを言わなければなりません。

 例えば、年収三百万未満の場合、五年は猶予を認めるといいますが、既に法的措置、裁判に訴えられた場合には一切認めないなどと言っております。サラ金ですら延滞利息の減額を認めるのに、支援機構は延滞金を一切減額しないなど、サラ金以上に悪質だという声が上がっています。今回、この奨学金問題対策会議を立ち上げた弁護士さんたちは、これまでクレジット、サラ金問題に取り組んできた弁護士さんたちなんですよ。文科大臣、学生たちがやがてこんなところに追い詰められる借金制度を、奨学金と称して学生の半分近くに借りさせておいてよいのか。文部科学大臣としての見解をお伺いしたいと思います。

下村国務大臣 御指摘については、もっともな部分がたくさんございます。

 一方で、モラルハザードにならないような形で、そして、真に困窮されている方に対して適切な対応を学生支援機構としても考える時期に来ているのではないかというふうに思いますし、それも踏まえて、より学生が借りやすい条件について、さらにしっかり検討させていただきたいと思います。

宮本委員 先ほどの女子学生のお母さんは、若者がこんな借金を背負っていて日本に未来はあるのかと語っておられました。月額十二万円の利子つき奨学金を大学四年間借りたら、返済総額は利子も含めて七百七十五万円ですよ。

 社会に羽ばたく若者に、その初日からそんな借金を背負わせている国に未来があるか。直ちに給付制奨学金を導入すること、少なくとも有利子奨学金を本来の根幹にふさわしく無利子にすること、そして返済猶予の五年という期限を取り払うことを強く求めて、私の質問を終わります。

山本委員長 これにて宮本君の質疑は終了いたしました。

 次に、村上史好君。

村上(史)委員 生活の党の村上史好でございます。

 きょうは四月一日、新年度のスタートでございます。それぞれが気持ちを新たにスタートをしていると思います。

 この間、安倍内閣は、何度もこの委員会でも言われておりますけれども、円安、株高ということで、企業のバランスシートがよくなる、また企業の資産はふえていく、そういういいムードということは政権の一つの色として私は認めたいと思いますけれども、一方、国民の側から見れば、この円安が、当然輸入価格が上がっていくということで、物価高につながり、きょうからもうメリケン粉やあるいは食用油など、さまざまな形で国民生活にじわりと影響を与えてきている、そういう状況だと思います。

 そういう中で、政権発足後三カ月以上が経過をいたしました。いわゆるハネムーン期間が終わったということになると思います。そういう面で、今後、これまでのムード先行から、いよいよ政策の中身、また具体的な方策や結果が問われる時期に入ってきた、そのように私は考えておりますけれども、この点について、甘利大臣にお伺いをしたいと思います。

 御認識と、そして今後の展開についてのお考えをお示しください。

甘利国務大臣 安倍内閣は、三本の矢で日本経済の再生に取り組んでおるわけであります。

 まず最初に、デフレ状況を脱することが喫緊の課題。それは、先般もちょっと車に例えてお話をしましたけれども、アクセルを踏んで、踏んでいるときには加速するけれども、ちょっとアクセルの足を緩めると減速をする、何度やっても同じ現象が起きる。結局、気がついたことは、サイドブレーキが目いっぱい引いてあった。これがデフレであった。サイドブレーキを外して、経済効果がリニアに車体の加速につながっていくような手当てをしなければならないということで、まず日銀との物価安定目標の共同声明をしたわけであります。

 これは、日銀が二年以内にその物価目標を達成するということを新総裁が宣言されている。これで、市況はというか、雰囲気はかなり変わってきている。御指摘のとおり、世の中の状況は好転しつつあります。

 ただ、正直、御指摘のとおり、これからが正念場だと思っております。これからは何をするかというと、実体経済をそれに伴って引き上げていかなければならない。数字の上で物価だけ上がっていって実体経済がついていかなかった、つまり、産業の生産が拡大をし、賃金が上がるということがついていかなかったとしたら、単なるインフレにしかすぎないわけでありますから、これからが正念場だというふうに思っております。

 そこで、成長戦略の具体的な弾出しを今練っているところでありまして、もう一部、総理の競争力会議等での発信がありますけれども、規制緩和を含めて弾出しができるものは発信をしていく、それを具体的に閣議決定して法案化して今国会に提出をするという作業にかかっていきたいと思っております。

村上(史)委員 今、国民の姿というのは、ちょっと例えてみれば、ウナギのかば焼きを焼くおいしいにおいを嗅いでいる。いつそのかば焼きが食べられるのかというのが国民の今の姿かと思います。本当に安倍政権はおいしいかば焼きを食べさせてくれるのかどうか、そのことがやはり今後問われるわけでございます。

 そういう意味で、きょうは、一つの試算をもとにいたしまして、本当にアベノミクスが国民の期待に応えるものなのかどうか議論をさせていただきたいと思います。

 今、お手元に配らせていただいた資料、若干説明をさせていただきたいと思いますけれども、表をお配りいたしております。「平成二十五年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算」というものを財務省の方から出していただきました。

 この根拠といいますか仮定の設定は、名目成長率が三%で消費者物価が二%を達成されたという仮定の上で機械的に設定をしたということで、これが全てというわけではありませんけれども、大方、安倍政権の目指す経済政策に沿っているということで、これを参考にさせていただきたいと思います。

 あわせて、一枚紙の棒グラフの方でございますが、これは、消費税が国税収入に占める割合を経年にまとめていただいているものでありまして、平成九年、これが五%に引き上げられた年でございます。その後、いわゆるデフレが始まったとも言われておりますし、自殺者が毎年三万人という大変不幸な状況のスタートであったということでもあります。

 その間、消費税は、景気に左右されずに、およそ十兆円ぐらいをずっと計上されて、全体の国税収入から見れば、比率はどんどん上がっているというのが、このデフレ下での状況だという認識のもとに、質問をさせていただきたいと思います。

 まず、消費税を一〇%に引き上げられる二十八年度の税収、この表によりますと五十八・九兆円となっておりますけれども、この中で、消費税の額と税収に占める割合についてお答えをいただきたいと思います。

山口副大臣 後年度試算についてお尋ねがございました。

 お答えをさせていただきますが、これは、後年度試算における各年度の税収につきましては、二十五年度予算における一般会計の税収をもとにいたしまして、名目成長率と税収弾性値、これは一・一でありますが、これを用いて機械的に実は延伸をして算出しておりまして、税目ごとの内訳は存在しておりません。

 同時に、先生、一番アベノミクスの見通しとして役に立つ資料というお話でありましたが、かなり機械的にやっておりまして、むしろ、内閣府の出されておるものの方が若干そこら辺を組み込んでおるのではないかと思います。

 いずれにしても、せっかくの御質問でございますので、あえて、二十五年度予算におけます消費税収をもとに、二十八年度までの経済成長を勘案するなど一定の仮定を置いて計算をいたしますと、二十八年度における消費税収は二十二・八兆円、これが一般会計税収に占める割合は三九%程度でございます。

 同時に、この増収分というふうなお話もございました。

 消費税率引き上げに伴う増収分についても、二十八年度までに国分の消費税率、地方の方にも地方消費税で渡しておりますので、国分の消費税率が現行の四%から七・八%、三・八%引き上げられるということを踏まえて同じような試算をいたしますと、十一・一兆円程度になるというふうなことでございます。

村上(史)委員 今、数字が挙がりました。

 私は、消費税の視点から今後の見通しについて質疑をしたいと思って、あえてこれをお聞きしたわけでございます。

 今言われましたように、消費税二十二・八兆円、先ほど申し上げましたように、恐らくこれは景気に関係なく上がってくる、正確な、より近い数字だと思います。そういう中で、消費税への依存率といいますか、それが三九%にも達するということで、結局、二十五年度から二十八年度に増額になる十五・八兆円分のうち、十一・一兆円が消費税の増税による増額だということがはっきりしてまいります。

 増額分の割合は、七割でございます。大変な消費税の依存体制だと思います。財務省が増税を急がれるのも、そういうことなのかなということを感じます。

 いずれにしましても、国税収入は、所得税と法人税、そして間接税である消費税、揮発油税あるいは酒税などを合算したものでございますので、これほど消費税の部分が多いということは、いわゆる所得税あるいは法人税が伸び悩むということに一方でなると思います。そのことは、結局、国民の所得が伸びてこない、また企業の収入が上がっていかないということで、所得税、法人税の伸びが極めて低いということを言わざるを得ません。そういう意味においては、国民サイドから立てば、負担がふえていく一方で、決して収入はふえないのではないか、景気が好転しないのではないか、そういう懸念も十分あると思います。

 そういう面で、本当にアベノミクスはかば焼きを食べさせてくれるのかどうか、この問題についてはやはりちょっと懐疑的な見方をせざるを得ないな、そういうふうに思いますけれども、麻生財務大臣の御見解をお尋ねします。

麻生国務大臣 景気回復するに伴いまして、今言われた消費税の比率が高くなる、これは御本人の所得が伸びないという前提で話をしておられるんだと思いますが、それは一概にそうとは言えないのであって、所得がふえても、ここの部分でいけば法人税が伸びないということは十分にありますので、そういった意味では、法人税が上がらないからイコールクリーンということにはならない。相関関係がそれほどはっきりしているわけではない。所得税の場合は、もちろん上がれば、なりますので、そこのところは関係があることははっきりしております。

 ただ、全体として、経済が伸びていくのに伴いまして、それに伴ってインフレが出てみたり、それが何%なのか、またいろいろ意見の分かれるところだと思いますけれども、景気自体が成長するに従って、物価も上昇し、所得も上昇し、法人の売り上げもふえというような形で好転していくような、好循環になるようにしていくために、第二、第三のいわゆる矢が必要なのであって、一番目の矢の、少なくとも金融を緩和しない限りはもうはなから動きませんので、そこのところは間違いなく、今度、日本銀行との間で合意ができておりますので、問題は二番目、三番目が、今、二番目もほぼその方向で動き始めておりますけれども、問題は、それを受けて三番目の矢が動き始めるためには、民間の企業経営者が設備投資をするとか労働分配率を上げるとか、そういった機運にならないと、マーケットとかそういったものの機運が出てこない限りは経済全体が上がっていかないので、今御懸念のような状況になりかねぬということなのであって、そこのところが、甘利大臣、我々、最も注意深くやらねばならぬと思っております。

村上(史)委員 もちろん、そういう機運になるということも大事ではありますけれども、我々も地元に帰りましたら、株高でもうかっている企業はあるやろうけれども我々のところまでは全然だなという声は真摯に受けとめていただかないとだめだと思いますし、そのために、また国民は期待をしている部分もございますので、その点は十分御配慮をいただいて、今後の景気対策、経済対策に臨んでいただきたいと思います。

 今言われましたように、三本の矢、成長戦略、これは前倒しで一部やることはあるけれども、六月、七月、八月時点で何とか表に出せるのではないかとは聞いておりますけれども、今後のアベノミクスの方向性を示すためにも、この経済成長を取り込んだ試算というものを出す必要があるのではないか、そのように思いますけれども、甘利大臣の御見解をお尋ねします。

甘利国務大臣 これは、財政の中長期見通しに対して織り込んだプランを内閣府が出すべきだという御質問ですね。それは考えております。

 骨太方針で大まかな方向を出します。それから、さらにもうちょっと精査して、具体的に落とし込んだ財政再建プランというのを出していくことを考えております。

 その際には、成長戦略でどういうふうに税収が伸びていくかということも可能な限り織り込ませたいというふうに考えております。

村上(史)委員 時期的にはお答えは無理でしょうか。

甘利国務大臣 骨太方針は年央を目途に出したいと思います。そして成長戦略も、それとずれがないように一応のまとめをしたいと思います。

 それらが出そろった時点で、それらの見通しを落とし込んだものができると思いますから、骨太方針からそう長いタイムラグはなく出せればというふうに思っています。

村上(史)委員 ありがとうございました。

 それでは、肝心かなめの成長戦略について、特にエネルギー政策という視点から質問をさせていただきたいと思います。

 安倍総理は、民主党政権の革新的エネルギー・環境戦略をゼロベースで見直し、責任あるエネルギー政策を構築すると述べておられます。また、原発の新増設についても、新しい技術の開発、安全基準の設定を見きわめていく必要があるということで、いわゆる、原発は稼働をさせていくという基本的な方針は述べておられますけれども、この成長戦略、まさにその基本はエネルギーの問題だと思います。

 そういう面で、エネルギー基本計画の見直しについて今どのような議論をなされているのか、まずお尋ねをいたします。

茂木国務大臣 エネルギー政策につきましては、いかなる事情があっても、電力需給の安定確保、これが大前提だ、このように考えております。

 そのもとで、今後のエネルギー政策、民主党政権の方で出されました、二〇三〇年代原発ゼロを目指す、これは具体的な根拠はないわけであります、これをゼロベースで見直していきたい、このように考えております。

 そして原発につきましては、あの三・一一の東日本大震災、そして福島第一の事故を受けまして、いかなる事情よりも安全性を重視する、そしてその安全性については、独立した原子力規制委員会においてその判断を行うということになっております。

 今後のエネルギー政策でありますが、まず、調達であったりとか発電の部門で申し上げますと、再生可能エネルギー、こういったものの最大限の導入を目指していきたいと考えております。同時に、当面原発が動かない、こういう状況の中にありまして、石炭火力、そしてLNG火力含め、高効率の火力発電、こういったことも重点を置いていかなければいけないと思っております。そういった中で、エネルギーの発電の多様化、そして調達の多角化というのを図っていきたいと思っております。

 一方、消費のサイド、需要のサイドなんですが、これまでの電力政策、エネルギー政策というのは、ともすると需要というのはシュアなんだ、もう決まっている、それに応じて発電側を積み上げる、供給側を積み上げる、こういう議論が中心でありましたが、最近、ディマンドレスポンスといいまして、今後電力システムの改革も行っていきますが、そういった中で、多様な使用メニューであったりとか多様な料金帯のメニュー、例えば、夏の日中のピーク時には料金を高くするかわりに、違う時間帯であったりとか夜の時間帯、こういった時間帯には思い切って料金を下げる、こういうことも進めていかなければいけないと思っています。

 実際、国内の四カ所で実証実験を行っておりまして、北九州の例でいきますと、こういった新しい料金体系、これによりまして、ピーク時の需要は二割削減されています。そして、消費者、家計にとっても、電力料がその月は三割安くなる。画期的な結果が出ているんです。別に、エープリルフールだから言っているんじゃないです。これは、ちゃんと実証実験でこういったことも行われております。

 そういった改革の中心をなしますのが電力システム改革だと思っておりまして、こういったものも踏まえながら、今、総合エネルギー調査会の総合部会におきまして、この検討、実際に基本計画の検討をスタートしておりまして、年内をめどに結論を出したい、このように考えております。

村上(史)委員 今の御答弁の中で、原発ゼロの根拠はないとおっしゃいましたけれども、私はそういうことはないと思っております。いずれその機会は、今度の集中審議等でも我が党の同僚議員がお話をすると思いますけれども、そう簡単にあの福島の事故を、もう少し我々は謙虚に受けとめて、そしてエネルギー政策というものを根本的に見直していくという基本的な物の考え方がやはり必要だと思います。政権交代したからもうゼロベースで見直すんだという、ああいう結論は余りにも早過ぎるのではないか、そういう気がいたします。

 今回は成長戦略ということでございますので、その点についてはこれ以上踏み込みませんけれども、少なくとも、代替エネルギー政策として再生可能エネルギーあるいは新しいエネルギー源を供給し、そして、自前でもできるそういうエネルギーを発掘していくということも、今後、大きな政策課題だと思います。

 私は、成長分野としてのエネルギー政策の大転換ということを主張したいんですけれども、今、民間の調査、再生可能エネルギーの市場規模というのは、日本でも二兆円から三兆円、全世界的に見ても四十兆円から五十兆円の市場規模があるだろうと言われております。

 そういう意味において、今後、成長戦略としての再生可能エネルギーを初め、エネルギー政策の大転換の方向性を大臣にお聞きしたいと思います。

茂木国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたが、決して、政権交代したからエネルギー政策を見直すわけではないんです。エネルギーについては、安定供給、これをきちんと保っていかなきゃならない。そこの中で、前政権において出されたこのエネルギーのミックスというものが必ずしもしっかりした根拠はないということでありまして、根拠を持ってきちんとしたエネルギーの政策、責任を持って進めていきたい、こういう点からお話を申し上げたところであります。

 エネルギーを成長分野にしていきたい、御指摘の再生可能エネルギー等々も含めて進めていくわけでありますけれども、例えば、再生可能エネルギーを進めていくということになりますと、蓄電池の技術、これが極めて重要になってまいります。

 分散型電源ということもありますし、御案内のとおり、この再生可能エネルギー、特に太陽光であったりとか風力、これは天候に影響されるわけです。日が照っているか照っていないか、風が吹いているか吹いていないかという中で、どれだけの供給を安定させていくかということを考えると、蓄電池の技術を基本的に併設させていくということが必要だと思っておりまして、それも、発電側に置くのではなくて、変電側にこれからは大型のものを置いていく、こんなことを考えております。

 蓄電池の市場、今、世界市場で大体一兆円です。どちらかといいますと、スマートフォンであったりとかそういったものに使われている。恐らく、タブレット型に応用されることによって、これが今後、二〇二〇年ぐらいで一・五兆円には広がっていくと思います。

 ただ、より大きな伸びがありますのは、一つは、今申し上げた電力の系統用に使うこと、それからもう一つは、自動車用ということで、電気自動車、それからハイブリッド、プラグインハイブリッド、さらには住宅、ビル用、こういったことで、恐らくこちらの方の市場は二十兆円ぐらいに広がっていくのではないかなと思っております。

 この技術につきましては、日本は世界最先端であります。ただ、コスト面の課題であったりとか、まだ性能面の課題、こういったものもあるわけでありまして、この市場を大きく開発していくという意味からも、蓄電池の技術、こういったことは極めて重要だ、そんなふうに考えております。

 それから、若干先ほど申し上げましたが、エネルギーのスマートなマネジメント、これも技術であり、またシステムでもあります。スマートメーターを取りつけたり、さまざまなコンピューターと連動させることによりまして、スマートに省エネを行っていく。今までの我慢の省エネではなくて、本当に必要なときに必要な量が使えるようなスマートなマネジメントシステムを進める。

 これは、エネルギー制約を克服する、こういうことを基本に考えておりますけれども、そのプロセスの中で生まれてくるさまざまな技術であったりとか事業、そういったものも今後は成長戦略に生かしていきたい、こんなふうに考えております。

村上(史)委員 今の答弁で、私も同意するところがございます。

 やはり大きな政策転換をする中で、また新たな産業、新たな雇用、新たな市場というものが開拓されるものだと思います。そのためにも、やはり大胆な取り組みといいますか、今までの延長線上ではないという中で、新しいエネルギー政策をきっちりと成長戦略に組み入れていくということが大変重要だと思いますし、これからも国民のためにそういう方向で全力を尽くしていただきたいなとお願いをいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

山本委員長 これにて村上君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明二日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三分散会


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