衆議院

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第18号 平成25年4月2日(火曜日)

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平成二十五年四月二日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 山本 有二君

   理事 伊藤 達也君 理事 岩屋  毅君

   理事 遠藤 利明君 理事 小此木八郎君

   理事 西銘恒三郎君 理事 萩生田光一君

   理事 長妻  昭君 理事 山田  宏君

   理事 石田 祝稔君

      あかま二郎君    青山 周平君

      赤枝 恒雄君    秋元  司君

      井野 俊郎君    伊藤信太郎君

      池田 道孝君    今村 雅弘君

      うえの賢一郎君    衛藤征士郎君

      小田原 潔君    大岡 敏孝君

      大塚 高司君    大塚  拓君

      大西 英男君    大野敬太郎君

      奥野 信亮君    金子 一義君

      小池百合子君    白石  徹君

      関  芳弘君    渡海紀三朗君

      西川 公也君    野田  毅君

      原田 義昭君    船田  元君

      船橋 利実君    堀井  学君

      前田 一男君    牧原 秀樹君

      宮崎 謙介君    宮澤 博行君

      宮路 和明君    保岡 興治君

      山田 賢司君    山本 幸三君

      湯川 一行君    若宮 健嗣君

      岸本 周平君    玉木雄一郎君

      辻元 清美君    寺島 義幸君

      原口 一博君    前原 誠司君

      今井 雅人君    小沢 鋭仁君

      河野 正美君    坂本祐之輔君

      桜内 文城君    重徳 和彦君

      中田  宏君    中山 成彬君

      東国原英夫君    村岡 敏英君

      百瀬 智之君    上田  勇君

      浮島 智子君    佐藤 英道君

      柿沢 未途君    佐藤 正夫君

      渡辺 喜美君    佐々木憲昭君

      宮本 岳志君    鈴木 克昌君

      村上 史好君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   文部科学大臣       下村 博文君

   厚生労働大臣       田村 憲久君

   農林水産大臣       林  芳正君

   経済産業大臣       茂木 敏充君

   国務大臣

   (経済再生担当)

   (経済財政政策担当)   甘利  明君

   国務大臣

   (公務員制度改革担当)  稲田 朋美君

   財務副大臣        山口 俊一君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   西川 正郎君

   政府参考人

   (総務省統計局長)    須江 雅彦君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   参考人

   (日本銀行副総裁)    岩田規久男君

   予算委員会専門員     石崎 貴俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二日

 辞任         補欠選任

  あかま二郎君     船橋 利実君

  奥野 信亮君     前田 一男君

  塩崎 恭久君     堀井  学君

  中山 泰秀君     宮崎 謙介君

  西川 公也君     井野 俊郎君

  牧原 秀樹君     赤枝 恒雄君

  保岡 興治君     湯川 一行君

  原口 一博君     寺島 義幸君

  坂本祐之輔君     小沢 鋭仁君

  重徳 和彦君     桜内 文城君

  中田  宏君     村岡 敏英君

  東国原英夫君     今井 雅人君

  佐藤 英道君     上田  勇君

  佐藤 正夫君     渡辺 喜美君

  宮本 岳志君     佐々木憲昭君

  村上 史好君     鈴木 克昌君

同日

 辞任         補欠選任

  赤枝 恒雄君     大西 英男君

  井野 俊郎君     大岡 敏孝君

  船橋 利実君     白石  徹君

  堀井  学君     池田 道孝君

  前田 一男君     宮澤 博行君

  宮崎 謙介君     山田 賢司君

  湯川 一行君     保岡 興治君

  寺島 義幸君     原口 一博君

  今井 雅人君     東国原英夫君

  小沢 鋭仁君     坂本祐之輔君

  桜内 文城君     重徳 和彦君

  村岡 敏英君     河野 正美君

  上田  勇君     佐藤 英道君

  渡辺 喜美君     佐藤 正夫君

  佐々木憲昭君     宮本 岳志君

  鈴木 克昌君     村上 史好君

同日

 辞任         補欠選任

  池田 道孝君     小田原 潔君

  大岡 敏孝君     西川 公也君

  大西 英男君     牧原 秀樹君

  白石  徹君     あかま二郎君

  宮澤 博行君     奥野 信亮君

  山田 賢司君     青山 周平君

  河野 正美君     百瀬 智之君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     大野敬太郎君

  小田原 潔君     塩崎 恭久君

  百瀬 智之君     中田  宏君

同日

 辞任         補欠選任

  大野敬太郎君     中山 泰秀君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成二十五年度一般会計予算

 平成二十五年度特別会計予算

 平成二十五年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

山本委員長 これより会議を開きます。

 平成二十五年度一般会計予算、平成二十五年度特別会計予算、平成二十五年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官西川正郎君、総務省統計局長須江雅彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山本委員長 本日は、金融・経済・財政等についての集中審議を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山本幸三君。

山本(幸)委員 自由民主党の山本幸三でございます。

 日ごろは後ろの方からやじばかり飛ばしておりましたけれども、きょうは最前列で質問席に立たせていただきました。委員長並びに理事の皆さん方の御理解に心から御礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。

 その上で、きょうは、アベノミクスについて、その本質、そしてまた誤解等を解くという作業をできればと思っております。

 まず、安倍総理、私は、あなたが総理大臣になられて本当によかったと思っております。それは、長年にわたるデフレというものからようやく脱却できる兆しが見えてきたからであります。

 GDPデフレーターで見ると一九九四年から、消費者物価指数で見ると九八年から、日本はデフレに陥っているわけでございますが、そのために多くの人が仕事を奪われました。あるいは、中小企業の倒産を免れませんでした。また、大企業は工場を海外に移し、地方経済が疲弊いたしました。円高が起こり、観光客も減り、まさに地方もどんどん悪くなっていったわけであります。

 住宅ローンを借りている人は実質負担がどんどん上がっていった、さらにまた、年金生活者は年金まで下がる、国民にそういう負担を強いてきたこのデフレ、安倍総理、これをあなたの決断で一気に脱却しようとしているわけであります。本当にありがたいことだ、まさに国家国民の救世主であると私は思っております。

 その意味で、安倍総理の経済政策、アベノミクス、この特徴というのは一体何なのか、これまでの政権の政策とどういうふうに違うのか。どう考えておられるか、お教えいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 金融政策について、山本幸三委員は十五年来、大胆な金融緩和を行うべきだとずっと主張されてこられました。党内においても、山本委員の御主張はどちらかといえば野党的な立場であったわけですが、私は総理をやめた後、どうやら山本先生の主張は正しいのではないか、そう思い始めまして、何回か山本先生からお話を伺ううちに、それは確信へと変わってきたところでございます。

 そこで、この十五年来こびりついたデフレマインドを変えるのはそう簡単なことではないわけでありまして、大きく違う点は、国民の皆様に、これはいよいよデフレから脱却できるのではないかと思っていただく、そういう政策を行うということであります。

 まずは、二%というインフレ目標をしっかりと定める。つまり、二%という目標に向かって、ある程度の期限内にそれを達成しますよ、そのために日本銀行は、あらゆる手段をとって、それに向かってプロとして達成していきますよということを、政府との間で、また国民との間で、明確に示していくということが根本的に違う点でありました。そして、成長を持続的に可能にしていくために、大胆な金融政策と成長戦略、この三つをあわせて今までと次元の違う政策を示していくことによって、国民の皆様がこれは変わっていくなと思い始めていただくに至っている、これが大きな違いであろう、このように思っております。

山本(幸)委員 全くおっしゃるとおりで、要するに、デフレを脱却するためには、国民の間に蔓延しているデフレ期待、デフレ予想というのを一掃しなきゃいけない。そのためには、まさに金融政策の転換が必要なんですね。それを、二%の物価安定目標政策という形ではっきりと示された。そのリーダーシップを安倍総理がとられたということでありまして、私は、まさに日本の歴史的な転換だと思います。

 問題は、この二%の物価安定目標というものをしっかりと実現していただかなければならないわけでありますが、それは日本銀行に責任を持ってやってもらわなきゃなりませんが、その責任を問うときに問題になるのが達成期限であります。

 達成期限がはっきりしていないと責任のとりようがない。今までの日本銀行というのは、目標も曖昧、期限も曖昧ということで逃げ回ってきておりました。これでは、国民の間のデフレ予想を払拭することができなかったわけですね。そのために、責任を問うために必要なものとして達成期限というのが非常に重要なんですけれども、この共同声明を読んでも、「できるだけ早期に」としか書いてない。

 これではちょっと物足りなく思うんですけれども、この間の白川総裁との交渉で、麻生財務大臣、甘利大臣ともども、期限をはっきりしろと迫ったんじゃないかと思いますけれども、白川総裁はどうしてこれを受け入れなかったのでありましょうか。

麻生国務大臣 先般の一月の二十二日でしたか、共同声明の取りまとめに当たりまして、言われましたように、いわゆるデフレマインドというものが固定化しておりますものを取り除くということが大事で、そのためには金融緩和が絶対、ここは皆、共通の御理解をいただいていたんだと思います。

 二%の物価目標というものに関しましては、これはいろいろ素案を何回かやりとりしている間の話ですが、中長期的にと書いてありましたので、この長期というのは問題になりませんということでお話をさせていただいて、次に出てきた文句はできるだけ早くだったので、これは、済みませんけれども、役所で書いてある前向きに検討しますと同じような意味じゃないですかと。これはとてもだめです、英文を見せていただけませんかと言って、英文を見せていただいたら、アズ・スーン・アズ・ポシブルじゃなくて、アット・ジ・アーリエスト・ポシブル・タイムと書いてありまして、これならというお話をさせていただいたのがその背景です。

 何年と言われても、これはなかなか、今二年というような感じになっておりますけれども、少なくともインフレ目標というものは、世界じゅうを見ましても、何十%に上がっていたインフレを三%に下げます、五%に下げますというインフレ目標というのはやられた国はありますけれども、いわゆるデフレーションですから、マイナスのものをプラスにして二%というようなものは過去に例が一つもありませんので、そういった意味ではなかなか難しい話だとは思いますけれども、インフレ目標として二%という目標を設定していただいておりますので、その意味では、アット・ジ・アーリエスト・ポシブル・タイム、これで我々としては納得をしたというのがその背景であります。

山本(幸)委員 ここに白川総裁が書いた教科書があります。恐らく、大学で教えるときに使われた教科書だと思いますけれども、「現代の金融政策」、ここにはちゃんと書いてあるんですよ。

 ここの五十五ページに、「金融政策はある程度の時間をかけると、物価上昇率の水準に影響を与えることができる。」それは、「一般的にはタイムラグは一年から二年くらいの長さであると考えられている。」と。そして、審議委員の宮尾龍蔵さんの実証研究を引いて、宮尾さんの実証研究では、影響というのは二年で全部出尽くすんだと書いてある。

 つまり、白川総裁は、自分の教科書では一年から二年と言っているんですよ。にもかかわらず、責任をとりたくないために、はっきりと年限を示さないんですよ。極めて不誠実だと私は思いますね。

 これは世界の常識なんです。だから、今度の新総裁、黒田総裁、岩田副総裁、二年と言っているんですよ。その二年が普通のものなのに、できるだけ早くですからね。二年以内というのは当然ですよ、それは。

 そこで、きょうは黒田新総裁に来ていただいておりますので、本当は、あした、あさってが金融政策決定会合ですから、ブラックアウトの時期で、本来、発言ができないというのが普通でありますし、本当だったらそれが終わった後にやるべきだったと思いますけれども、どうしてもきょうということで、来られる以上はお聞きしなければいけないので、やらせていただきます。

 黒田総裁、あなたは大きな使命と責任を担われたんですね。安倍総理から、二%という物価安定目標を何としても達成しなきゃいかぬと。これは大変なことですよ。

 そのためには、もうあなたは、責任をとらないとか保身を考えちゃいけない。これから、いろいろな批判も出るでしょう、誹謗中傷もされるでしょう。しかし、そんなことに一切耳を傾けてはいけないんですよ。命がけでやらなきゃいかぬ。それが総理から託された使命ですよ。そのためには、退路を断たなきゃ、こんなものは誰も信用しない。

 金融政策というのは、一番大事なのは、市場に、そして国民に、本当にやってくれるんだという信頼があって初めて、デフレ予想が緩やかなインフレ予想に変わり得るんですよ。だから、黒田総裁、あなたは、二年でやらなかったら責任をとる、岩田副総裁と同じように、責任をとる、はっきりそう言って臨んでもらわないと困りますけれども、いかがでしょうか。

黒田参考人 ただいま委員御指摘のとおり、多くの中央銀行は、物価安定目標達成のタイムスパンとして二年程度を考えております。私も、この二年程度というものを念頭に置いて、量的にも質的にも大胆な金融緩和を進めることによって、二%の物価安定目標を一日も早く実現するという決意でございます。

 もちろん、十五年続いたデフレから脱却するということは、委員も御指摘になりましたように、容易なことではございません。しかし、日本銀行の持っておる政策手段の全てを動員して、できることは何でもやるということで、強いコミットメントをし、それを市場に適切に伝えて期待を転換させるということも重要ですし、そういった期待を裏打ちする大胆な金融緩和政策をとっていく。

 二%の物価安定目標は、御指摘のように、既に一月の政策委員会で決定された事項でございますので、これは必ず実現しなければならないというふうに思っております。

山本(幸)委員 必ず二年で実現しなければならないと、決意を伺ったと理解いたしました。大変ありがたい。あなたに日本国民の運命はかかっているんですから、ぜひよろしくお願いしたいというふうに思います。

 そこで、金融政策、アベノミクスに対するいろいろな疑問とかがありますけれども、金融政策だけでデフレは脱却できないという議論を、日本銀行初め、あるいはその御用学者がいろいろやってきました。これに対する一番いい反論は、では、金融政策だけでデフレが脱却できないとしたら、一体どういうことが起こるのかというのを考えるのが一番いいんですよね。

 安倍総理、何が起こると思いますか。

安倍内閣総理大臣 この二年間、山本委員からいろいろと御指導いただいているんですが、こういう俗説的な反応に対しては、もし中央銀行が一切デフレ脱却に向けて効果を与えることができないということであれば、例えば、長期国債を日本銀行が市中からどんどんどんどん買っていったとしても、それはインフレにもならないということであれば、これは結果として財政ファイナンスをどんどんお願いできるということになってしまうわけでありまして、しかし、そんなことにはならないわけであります。

 ですから、まさに、そうならないということについて、デフレ、インフレは貨幣現象であるということを論理的にある意味証明していることになるんだろう、こう思うわけでありますし、今の我々の政策について批判をしている人は、自分の本の中で、中央銀行は残念ながらデフレ脱却に対してほとんどできることはないということを書きながら、一方、長期国債を買えばインフレになると書いているんですね。相矛盾することを同じ本の中に書いているということもありますから、その論理は私は間違っているんだろう、このように思います。

山本(幸)委員 全くおっしゃるとおりで、金融政策だけでデフレ脱却できないということを突き詰めていったら、日本は無税国家になることができるということを言っているんですよ。つまり、国債を買ってどんどんお金を出しても物価は上がらないと言っているんですから。そうであれば、市中にある国債を全部買い占めればいいんですよ、日本銀行が。それで国債の累積問題は一瞬にして解決します。そして、将来、増税をして国債を償還する必要がなくなる。日本は無税国家になるんですよ。だけれども、そんなことがありますか。あり得ない。必ずどこかの段階でインフレになるんですよ。

 だから、金融政策だけではデフレが脱却できないという質問者がこの後から出てきたら、その答えをしたらもう一発で終わりますから。

 そこで、貨幣現象ということなんですけれども、余り数式とか出したくないんだけれども、言葉だけで言っているとちょっとわかりにくいところも逆にあるので、一回出た数式を使って言いたいと思いますが、これは資料でお配りしていると思います。

 私が言いたいのは、全部じゃなくて、三番目のところが一番大事なところであります。

 一番目の、MVイコールPT、貨幣数量方程式、これは基本的な方程式ですが、これには短期的には成り立たないというケインジアンの批判もありますが、長期的にはケインジアンも名目賃金が調整されて成り立つと。だから、どの経済学の立場に立っても、長期的にはこの式は成り立つということで理解されています。その間の条件が長期的な間に落ちついてくるということですね。

 ところが、この式だけで考えているとよくわからない。よくわかるためには、変化率をとって、三の式にしないとよくわからない。

 その前に、一の普通の式だけで、名目GDPの比率で各国と比べて日本は金融が緩和していますよという議論を日本銀行が行って、それをいろいろな人がやっています。恐らく前原さんが同じようなことを後から言うんじゃないかと思いますけれども、しかし、それは余り意味がない。

 なぜ意味がないかというと、日本人は現金が好きなんですね。海外では現金なんか余り持ちません、危ないから。だから、日本ではもともと比率が高い。

 それから、分母の名目GDPというのは、日本は二十年前と同じだけれども、その間にアメリカは二・五倍、イギリスは二倍と変わっているわけで、その変わっているベースをもとに比べて日本の方が高いから金融緩和しているという議論をしたってしようがない。大事なのは、物価がちゃんと二%になっているかということが実現できるかどうかということであって、ほかの国のやり方を言ったってしようがない。

 そこで、三のところで、ここはちょっと問題なので議論をしたいんですが、要するに、デルタP、物価上昇率というのは、貨幣供給の増加率プラス貨幣流通速度の上昇率マイナス実質経済成長率です。こういう式になる。

 問題は、この一番最後のところの実質経済成長率というのは、マイナスの影響がある。よく、この予算委員会でも財務金融委員会でもいろいろな人が議論しました。デフレ脱却するためには実質経済成長率は高くなきゃいけないんだ、あるいは白川さんも、成長力強化が一番大事だと。逆ですよ、この式から見ると。

 つまり、そこでちょっと気になるのが、成長戦略との関係です。成長戦略、成長力強化というのは、生産性を高めて潜在成長力を上げるという政策です。それは供給力をふやすんですね。だけれども、需要が整わなければ、逆に需給ギャップが開いて、デフレ要因です。それがこの式で示してある。

 その意味では、第三の矢の成長戦略というのは、これはほかの点からも非常に大事なんだけれども、日本の長期的なあり方から考えて、成長をさせるというのは大事なんだけれども、金融政策という全面的なバックアップがなければ、逆にデフレ要因になるんです。このことが非常に大事なので、この点について、甘利大臣の御見解をお聞きしたいと思います。

甘利国務大臣 今の話をテレビで見ておられる人が、何人がこの話がわかるのかよくわかりませんが、私も専門家ではありませんけれども、それは前提条件があった場合だと思いますね。日銀がベースマネーをふやさない、マネーサプライをふやさない、つまり、金融で縛っている中においてそういうことが起きるとそうであるというふうな前提が必要だと思います。

 ただ、経済成長していく場合には、資金ニーズが必ず起きてきます。日銀としては、金融政策として当然、資金が潤沢に供給されるような対応をしなければいけないと思いますし、現実問題としてはそういう対応をしてくると思いますので、その限りにおいては、そういう事態は起こらない。

 だから、そういう意味では、確かに金融政策はとても大事だということは、委員のおっしゃるとおりだと思います。

山本(幸)委員 おっしゃるとおりで、金融政策がしっかり行われないと、成長戦略もきかないんです。

 それから、第二の矢の財政政策のところも実はそうなんですね。

 余り難しいことばかり言っていて叱られるので、もう自分で言っちゃいますが、マンデル・フレミング理論というのがありまして、変動相場制のもとでは、財政拡大をやると、国債を発行して金利が上昇しかかるので、為替レートが円高になって効果が出ないんです。これは自民党政権でずっと続けてきたことですよ。幾ら財政拡大をやっても、円高で相殺されて効果が出なくて、国債の発行高だけが積み上がっちゃった。

 金融政策がなきゃだめなんですよ。金融政策で金利を下げて……(発言する者あり)それは民主党も一緒ですが、私は、自民党もこれは反省しなきゃいけないと思っています。金融政策の役割がしっかりと並行して行われないと、財政政策はきかないんですね。

 これはぜひ、財務大臣、もうおわかりだと思いますけれども、御決意のほどを。

麻生国務大臣 ここでアービング・フィッシャーの名前を聞くとは、久しぶりで思い出しましたね。学生時代に聞いて以来聞いたことがなかったので、アービング・フィッシャーの名前は久しぶりで、マンデル・フレミングとか、随分習わせられました。もう五十年も前で忘れましたけれども。

 今言われたように、今回で一番目ですけれども、一番目の矢の日銀の金融政策に関しましては、金融を非常に緩和させますという、これは優先順位は多分一番であることははっきりしているんですが、緩めたからどうなるといえば、先ほど言われましたように、緩めたら、お金は間違いなく市中銀行までは行きます。マネタリーベースはふえる。しかし、問題は、市中銀行からお金を借りてくれる企業なり個人なりがいないと、マネタリーサプライはふえない。もう御存じのとおりです。このマネタリーサプライがふえない間は、間違いなく、物価が上がるとか、景気がよくなるとか、経済成長率が上がるということはあり得ない。はっきりしていると思います。

 したがって、これから先ふやしていくためには第二、第三の矢が大切なので、この三つを一緒にどんとやったのが今度のアベノミクスの一番大事な観点なんだ、私はそう理解をしております。

 したがいまして、今言われましたように、予想インフレ率という言葉がいろいろ使われますけれども、少なくともデフレが固定していると思われている状況では、人は、きょうよりあしたが安くなる、あしたよりあさってが安くなると思えば、物は買いませんし、設備には投資しません。あした高くなると思えば、今買った方がいいということになっていく。そういった気持ちの問題なのであって、これが行き過ぎると、インフレ率がぼおんと上がって、私がかつて住んでおりましたブラジルみたいなことになると、えらい、一〇〇〇%とか一二〇〇%みたいなことになり得るんですけれども、そういった状況ではない。

 少なくとも、今マイナスの状況をプラスまでには何としても持っていきませんと、財政というものを考えたときにおいて、GDPとの比率で、今、千兆対五百兆、簡単に一対二みたいになっておりますから、少なくともその比率をずっと変えていかないかぬというためには、GDPを伸ばすためにはこの二番目、三番目というものがきっちり作動しないと、今言われた問題、デフレからの脱却を含めて、デフレ不況からの脱却というものも達成し得ないと思いますので、この二つ、三つを一緒になってやっていくのが一番大事なものだと思っております。

山本(幸)委員 今財務大臣がおっしゃった最後のところの、予想インフレ率に影響を与えるというのは非常に大事なんですね。これが、金融政策のいわゆるレジーム転換、まさに、二%の物価目標を持って大胆な金融政策をやるというアベノミクスで、そこの予想インフレ率は変わるんですよ。

 それから、実際にまた変わるのは、マネタリーベースをふやすと、予想インフレ率というのは上がってきます。これは、物価連動国債との間の比率であるブレーク・イーブン・インタレストというのとマネタリーベースとを見ますと、きれいに上がってくるんですね。

 そこで初めて、人々が消費をしようという気になる、あるいは企業が投資をしようという気になるわけですね。将来の物価が上がると思えば、では、今買おうか、今つくった方がいいじゃないかということになるので、そこをつくり出すのが大事で、これがまさに金融政策のレジーム転換であり、マネタリーベースをふやして、大胆な金融政策をやってそれを変えていくんですね。これが非常に大事です。

 だから、当面は、おっしゃるとおり、余り貸し出しはふえないんですけれども、そこが動いていって、さっき見たところの貨幣の流通速度というのが上がってくることによって、徐々に経済が動き出す。

 この前、前原さんのお話を聞いていたら、予想インフレ率が上がっても、むしろ貯蓄に回して買わない人が出るんじゃないかという議論があると言っていましたけれども、私は、本当にそうだろうかと。だって、今貯蓄したら、一年後には二%目減りするんですよね。目減りして、一年待って高くなったものを買う人というのは、少なくとも合理的ではないですね。

 非合理的な人がいないとは思いませんけれども、大勢がそうとは私は思わないので、必ず、大胆な金融政策、レジーム転換で予想インフレ率が上がって、実際、去年の初めぐらいはマイナスだったんですけれども、今、一・四ぐらいに予想インフレ率は上がってきています。これを、消費税の影響があるから二から三ぐらいに上げていかないといけないので、そこがさっきの黒田総裁の決断で、何でもやるということで、やってもらうわけであります。

 問題は、そういうことをやっていくときに、やはり実体経済がよくならないといけない。おっしゃるとおりだと思います。失業率も減って、賃金も上がらなきゃいけない。

 物価だけ上がって賃金が上がらなければ問題だという議論がありますが、それは起こらないと思います。というのは、消費者物価の中身というのはほとんど賃金の塊ですから。だから、賃金が上がらないで物価が上がるということはあり得ないと思いますけれども、その心配はないと思うんだけれども、雇用とかについては問題がありますが、インフレ目標二%が達成できると、失業率というのは大体どれぐらいになるんでしょうか、厚労大臣。

田村国務大臣 山本先生とこうやって予算委員会でこういう議論ができるというのを、本当に感慨深く思っております。

 二十年ずっと、山本先生は、当初デフレの入り口だったと思うんですけれども、日銀総裁とこの議論を闘わせてこられた、議事録なんかで拝見をさせていただきましたけれども。

 なぜ自民党があの選挙で負けたんだ、いや、その前に自民党がなぜ支持率が上がらないんだという議論をよくしましたよね、本会議場で。当時、やはりデフレというものを退治しなきゃいけないと。国民の所得が上がらない、失業率が上がっている、こんな状況をどうやって是正するんだ、まさにデフレを脱却するしかないと言って、その選挙が終わった後に議員連盟を二人でつくって、そしてその後、安倍当時元総理に会長になっていただいて、今のアベノミクスがあるのであろうと私も思っております。

 そういう意味では、日本の国を救おうという熱い思いで啓蒙された山本議員に私は敬意を表するわけであります。

 今の御質問ですけれども、フィリップス・カーブ、日本の一九八〇年代で見ると、大体、物価上昇率二%で、二・五付近だと思います。ただ、今現状でそのフィリップス・カーブがどういうような状況になっているかは私はわかりませんけれども、一九八〇年代から九〇年代初頭にかけてはそのような数字であったというふうに認識いたしております。

山本(幸)委員 私も同じような感じで思っておりますが、ぜひそうなるようにしていかなきゃいかぬなというふうに思います。

 そのほかにアベノミクスに対する批判がいろいろありますが、要するに、さっきの数式がよくわかっていない人ばかりです。大きな批判というのは、財政ファイナンスで金利が高騰するんじゃないかという批判、あるいはハイパーインフレになるんじゃないかという批判があります。しかし、これは、物価安定目標政策とは何なのかというのがわかっていない議論なんですね。

 物価安定目標政策というのは、二%という目標を持って、大体プラスマイナス一ぐらいの許容範囲で考えるんですけれども、それを超えたら、マイナスもいかぬし、プラスもいかぬよという政策なんですね。

 だから、さっきの数式の左辺のPのところが二で固定されちゃったんですよ。二で固定されちゃったんだから、それ以上マネーのふやしようがない、それ以上国債は買わないことを約束するということと同じことなんですよ。だから、物価安定目標政策というのがしっかり定着すれば、財政ファイナンスの心配もないし、ハイパーインフレの心配もないんですよ。そのことが物価安定目標政策の大きな機能なんですね。これが高橋財政のときと違うんですよ。

 高橋財政のときは、国債の日銀引き受けという金融政策のレジーム転換で、一気にデフレ予想をインフレ予想に変えました。そして、財政拡大につなげました。しかし、二・二六で高橋是清さんが暗殺されて以降、歯どめがきかなくなるんですね。どんどん貨幣の供給量を軍部の要求でふやし続けて、それを日銀が引き受けるという形でやらざるを得なかったんです。あのときに二%なり三%というのが物価安定目標政策でありますよと言っていたら、そんなことはあり得なかったんですよ。

 だから、物価安定目標政策というのは非常に意味がある。日本が放漫財政に陥らないというための人類の英知なんですよ、これは。これを大事にしなきゃいけないんです。そのことをしっかりと認識していたら、財政ファイナンスであるとかあるいはハイパーインフレが起こるなんということはあり得ないんですね。

 これをぜひ、私は、多くの国民の皆さん方に理解をしてもらいたいなというふうに思っているわけであります。それがまた、アベノミクスの、高橋是清を超えるすばらしいところなんですよ。だって、もう戦争を起こすなんて憲法上できないんでしょう。だから、Mが無制限にふえるなんてあり得ないんですよ。

 そういう前提で、しかし、財政健全化のためには長期金利との関係が大事になります。これは、予算委員会でも財務金融委員会でも野党の先生方から指摘がされて、私は非常に重要な点だというふうに思っております。

 ただ、その長期金利の話をされるときに、先ほど麻生財務大臣がおっしゃったフィッシャーの方程式というのがありまして、長期金利イコール実質金利プラス予想インフレ率という式が成り立つから、物価目標二%と言ったら、すぐに長期金利がその分上がっちゃって、実質金利は変わらないから経済に何の効果もないということを言うための議論ですね。財務省は、インフレ目標政策、物価安定目標政策を言ったときにすぐこの議論をして、安倍総理のところにも問題ですよと言ってきたんじゃないかと思いますけれども、間違っています。

 もう既に、経済理論の間では、名目の長期金利は予想インフレ率ほどには上がらない、これはマンデルが証明しています。どうして上がらないかというと、経済が成長していくうちに所得がふえて貯蓄がふえるから、その貯蓄で国債を吸収していくという機能があるので、完全にはそこまで上がらないんです。したがって、長期金利が上がって実質経済に効果がないということは心配ないというふうに思っていますけれども、財務大臣、いかがお考えでしょうか。

麻生国務大臣 国債がふえれば金利が上がりますとずっと言い続けてきたんじゃないですか、財務省は。上がりましたか。七%だったんですよ、昔は。今、〇・五五、五六。間違っていないでしょうかね。

山本(幸)委員 いや、おっしゃるとおりですよ。金融政策がちゃんと機能すれば金利は上がらないんですよ。しかも、それは理論的にきちっと証明されているわけであります。

 ただし、名目成長率との関係ではまだ問題も出るわけですね。やはり、これまでデフレでもありましたから、日本の名目成長率は低いです。長期金利よりも低い。そのために財政の健全化ということについて非常に危惧があるというのは、私は、これはもう当然の懸念だし、真っ当な議論だというふうに思います。したがって、それをどうするか、増税も含めて考えていかなきゃいかぬ。

 世界各国の例を見ますと、名目成長率が四、五%になると、大体、長期金利より高くなる状況になるんですね。だから、そこまで日本がいけるかどうかが問題でありますから、これは、これから財政の健全化というところはしっかり考えていかなきゃいけませんが、しかし、その前に、何としてもデフレから脱却して、少しでも名目成長率をプラスにするよということがなければ、幾ら増税したって足らないということになるわけですから、これをまず第一歩やるのがアベノミクスで、私は非常に大事なことだというふうに考えております。

 アベノミクスが成功するためには、思い切った金融緩和政策が必要であります。これについては、あすから金融政策決定会合が開かれるわけでありますけれども、総裁、副総裁、しっかり頑張ってもらいたいと思います。

 これは合議体ですから、ほかの審議委員の意見も必要になりますが、安倍総理が政治的課題として二%の物価安定目標というのを示したんですから、これをしっかりと実現するためには、審議委員も頭を切りかえてそれに協力してもらわなければいかぬ。そういうことをしっかりと私どもはチェックしていきたいというふうに思っておりますので、そのことを申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

山本委員長 これにて山本君の質疑は終了いたしました。

 次に、上田勇君。

上田委員 おはようございます。公明党の上田勇でございます。

 まず、本題に入らせていただく前に、先週末の総理のモンゴルの訪問について御質問をさせていただきたいというふうに思います。

 安倍総理は、モンゴルの首相、大統領との首脳会談も行いまして、安全保障、エネルギー、経済、人的交流など、非常に幅広い分野で議論を行い、また成果が上がってきたというふうに承知をいたしております。

 モンゴルは、我が国にとって経済的にも戦略上も非常に重要度が増している国でありますし、また、多くの価値観も共有している国ではないかというふうに考えております。我が国また東アジアの地域の安定と発展、繁栄ということを考えたときに、今回のモンゴルの訪問の意義また成果について、総理の御見解を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 土曜、日曜にモンゴルを訪問いたしまして、モンゴルの大統領、そして首相、また議長と会談を行いました。その際、日本とモンゴルは、自由と民主の精神、そして平和の精神、さらには助け合いの精神、この三つの精神を共有しているということを確認いたしまして、戦略的パートナーシップをさらに深めていくということで一致をしたのでございます。

 そこで、今、上田委員がおっしゃったように、政治、安全保障分野の戦略対話を強化していく、政治経済の促進、人的交流の活性化ということについて意見交換をしたのでありますが、特に、東アジア地域の安定と平和に関して突っ込んだ意見交換を行いました。北朝鮮のミサイル発射及び核実験に対し、国際社会が一致して関連安保理決議を実施して、北朝鮮に対して、いかなる挑発行為も行わないことを強く求め続けていく必要があることで一致をいたしました。また、拉致問題について、我が国の立場への理解と支持を改めて得たところであります。

 加えまして、外務次官級による戦略対話を立ち上げていくこと、安全保障当局間協議の局長級への格上げ、そして、日本とアメリカとモンゴルの三カ国の事務レベル協議を開始していくことについて、モンゴル側の賛同も得たところでございます。もちろん、アメリカ側の賛同も得ているわけでございますが。

 今回の訪問によって、日本とモンゴルの間において、経済関係、そして人的交流、さらには安全保障分野においても緊密な連携関係が構築されているのではないか、このように考えております。

上田委員 大変にありがとうございました。

 次に、本日の本題でもあります、まず、デフレの要因についてお伺いしたいというふうに思います。

 今、デフレが、先ほどからの議論もありましたとおり、我が国の経済にとって長年の深刻な課題であります。

 先日、日銀の黒田新総裁は財務金融委員会で、デフレの要因についてこういうふうに述べられています。海外からの安値輸入品の増加、規制緩和などに伴う流通の効率化、それと相まって生じた企業の低価格戦略や家計の低価格志向の広がりなど、国内外に多々ある、こういうふうに述べています。

 こうしたさまざまな要因があるというのは事実ではあるんでしょう。しかし、新興国から安い輸入品が入ってくるというのは、何も日本だけの問題ではありません。まして流通システムの効率化というのは、日本よりも、ほとんどの先進諸国ではもっと進んでいるわけであります。そう考えると、こうした要因というのが、日本だけがデフレに陥っているその本質的な要因とは考えにくいのではないか、そういうふうに考えております。

 むしろ、今の先進諸国、ほとんどの国では、日本が長期間にわたってデフレになっている中で、緩やかに物価は上昇しているわけでありますから、それが原因だとすれば、本来、世界じゅうがデフレになっていなければ、先進国がほとんどデフレになっていかなければならないわけであります。

 そういうことから考えれば、私は、デフレの要因について、そうしたいろいろな要因があるということは排除するものではありませんけれども、しかし、やはり本質的な部分、最大の要因というのは、まず第一には、先ほどから質問がありました、マネーストック、マネーサプライの増加率が十分ではなかった、そういう金融政策にかかわる部分。それともう一つは、やはり大きな需給ギャップがある、そういう我が国の経済の構造に起因する部分。この二点が最大のものではないかというふうに考えています。

 そこで、このデフレの要因について、総理としては、どのようにその分析をされ、御認識をされているのか、御見解を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 私は、委員と基本的に認識を同じくしております。

 さまざまな要因を挙げていくことはできますが、結果として、デフレ脱却のために何をやるべきか、誰が責任を持っていくかということについて、責任が不明確になっていくわけでありますし、そして、実施していく政策についても、その効力は、むしろ、国民的にも、これはきかないんだろうということになってしまいまして、期待を変えていくということにもつながらないんだろう、このように思います。

 その中におきまして、やはりデフレが継続してきた原因については、長期にわたり需要が弱い中で、企業などによる日本経済の将来に対する成長期待の低下やデフレ予想の固定化が生じたことや、二〇〇〇年及び二〇〇六年の日本銀行の判断から、今から考えれば早かったことにあると考えています。

 こうしたことから、従来の延長線上にある対応ではこのデフレ期待をインフレ期待に変えていくことはできないと考えて、次元の違う政策、三本の矢でデフレから脱却していかなければならない、こう決意をしているところであります。

上田委員 ありがとうございます。

 まさに、今の日本経済の抱えているデフレの要因、これを的確に捉えて、それに対してきちんとした政策を出している、それが今の安倍内閣の経済政策、そこに期待が非常に高まっているんだというふうに受けとめております。

 すなわち、この三本の矢、一本目の矢であります金融政策については、先ほど来、これまでも、黒田日銀総裁も、二%の物価目標を達成するためにあらゆる手段を講じていくというふうに言っております。金融緩和政策を継続していくということを表明しています。

 そして、二本目、需給ギャップの解消については、本来は、民間需要がどんどんふえていってこの需給ギャップが解消していくというのがあるべき姿でありますけれども、すぐにはなかなか民間需要が生まれてはこない。だから、今、公的な需要を、財政出動を行って、民間需要の呼び水となるような、そういう喚起をしていく対策が必要である。これがまさに今安倍内閣がとっている二本目の矢だというふうに思います。

 さらに、総理もこれまでたびたびおっしゃっていますけれども、いつまでも財政に頼って需要をつくり出していると国が破綻をしてしまいますので、これは、本当に持続的に成長する日本経済にしていく、民間の需要を強く押していかなければならない、財政に頼らなくてもそういう需要ができてくる、そういう経済をつくっていかなければいけない。これがまさに安倍内閣が今推進をしています三本目の矢であるというふうに考えております。

 このように、今、日本の経済がこれまでもずっと抱えてきたさまざまな課題、それに対する明確な方針を打ち出している。それが評価され、今、安倍内閣での経済政策への期待が非常に高まっているんだというふうに受けとめております。やはり、問題の所在、それに対する対策の明快さ、わかりやすさ、そして信頼感が大切だということがよくわかるというふうに思います。

 ただ、現状では、まだまだこれは期待感の域だというふうに言わざるを得ません。この期待感を実体経済の回復に結びつけていくためには、今の三本の矢の政策を着実に、そしてスピード感を持って実施していく必要があるというふうに考えております。

 そのためには、まずは、既に成立をいたしました補正予算、その中にはさまざまな事業が盛り込まれておりますけれども、それを迅速、そして的確に執行していく、そのことが重要だというふうに考えています。内閣として、やはりその早期執行を関係機関に促すとともに、執行状況をきめ細かくモニターしていく必要があるというふうに考えています。

 また、その執行の際には、地域経済の担い手であります地域の中小・小規模事業者、そうした受注機会の確保についても特段の配慮が必要だというふうに考えています。

 補正予算の柱として計上されています防災対策や減災対策、そうした公共事業は、インフラの総点検やきめ細かな補修などを行うという内容でありますので、もともと中小事業者にとってもやりやすい内容なのではないかというふうに思っています。そのほかの、地域活性化のための通学路の整備とかバリアフリー化なども、中小事業者としてもやはり手がけやすい事業内容ではないかというふうに思っております。

 こうした点について特段の配慮をお願いしたいというふうに思いますが、御見解をお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 デフレになっていったもとに、もう一つ忘れられているのは、やはり各企業が持っております資産、すなわち動産、株でいえば、三万八千円がただの七千円に、四分の一ぐらいになった。土地も、坪百万が坪二十万ぐらいですから、八〇%落ちたというような、持っております担保資産が軒並み暴落しておりますので、企業としては、基本的には債務超過になったんだと思いますね。

 その債務超過になった分で当然銀行から金は借りられなくなりますから、利益の最大化をやめて債務の最小化を図ったというのをやらざるを得ない状態がずっと続いていったのが、基本的に、デフレという気持ちを定着させてしまった一番大きなものは、やはり八五年から八九年にかけてのあのバブルの時代の後の後遺症が極めて長引いたという結果だったんだ、私はそう思っております。

 したがって、今、第一、第二と仮にやりましても、民間のあれが伸びてくるまでの間のつなぎがどうしても、これは上田先生、必要なんだと思うんです。そこが二番目の矢の財政の弾力的な運用ということになりますので、どうしても、昨年の七―九の予想を見ましてもマイナス三・五%ぐらいになっておりましたので、今の安倍政権としてはしゃにむに対応せねばならぬということで、大型の補正を組ませていただくということになりました。

 スタートがとにかく、普通ですと十二月に予算ができ上がるのが、十二月から予算を編成しておりますので、かなりおくれざるを得なかったのも、はなからわかっておる話ではあります。

 したがいまして、我々としては、きちんとしたものが出るようにということで大型の補正予算をさせていただきましたが、時間が限られておりましたので、いろいろな形で執行ができないんじゃないかという御懸念もありましたけれども、各地方公共団体等々、いろいろなところに御協力をいただいて、この三月末で、執行率、いわゆる着手が九七・六%までいける見込みを先週立てたところでもございます。繰越明許等々、いろいろなことをやらせていただいたことは事実ですが、そういった形で一応着手というところまでできたと思っておりますので、先ほど言われましたように、地方におけます補修とかそういったものが、一応対応ができるような形になりつつあるということになるんだと期待をしております。

上田委員 ありがとうございます。

 本当に今、まだまだ実体経済は厳しいのが現状でありますので、それを下支えしていく、そしてそれをいい循環に持っていくまでのつなぎとして、ぜひこれからも円滑な執行に努めていただきたいというふうにお願いをいたします。

 次に、三本目の矢に当たります成長戦略について、一点だけお伺いをいたします。

 今、成長戦略については、産業競争力会議でさまざまな議論が行われています。大きく七つのテーマを挙げて議論をされております。

 その七つのテーマのうちで私が非常に重要だなと思っているのが一点ありまして、それは立地競争力強化という点であります。世界で一番企業が活動しやすい国を目指していこうじゃないか、これからの日本の成長にとって極めて重要な課題だというふうに認識をしています。

 残念ながら、今、海外からの我が国への直接投資というのは、先進諸国の中では最低なんですね。これはやはり、世界的に活動している企業から見ると、日本というのは残念ながら余り魅力を感じられていないという、そのあらわれではないかというふうに思います。

 本来、日本には、実は大変すばらしい点がいっぱいあります。インフラも世界最高水準であります。世界で一番安全な国と言われているような治安もある。技術力や産業の集積、優秀な人材も豊富なわけでありますが、残念ながら、それが結果としてあらわれてきていないわけであります。

 今申し上げたような利点を生かして立地競争力を強化していく。そのためには、貿易や投資のいろいろな規制の問題もあるんだというふうに思います。出入国にかかわる問題もあるかというふうに思います。非常に広範な分野にわたる規制の改革、それから税制の改革なども必要と考えますが、総理に、この立地競争力強化の重要性についてのお考え、また、今後の戦略について御意見を伺えればというふうに思います。

甘利国務大臣 御指摘のように、対内直接投資が先進国の中では極めて少ないということは、投資地として日本が余り魅力的じゃないという証左だと思います。

 そのためには、経済界から言われているように、六重苦の問題、これをできるだけ取っ払うということがありますし、御指摘のように、海外から見て、いろいろな手続がスムーズに進むような規制緩和をしていかなきゃならない。それから、成長戦略で目標を示して、それに向かって政府がコミットをするということを明確に内外に表示することだと思います。

 実は、成長戦略の成果が対内投資につながるのではないかという現象が既にあらわれておりまして、今、外資のオフィス調達、問い合わせがふえてきております。日本は、成長戦略を掲げて、規制緩和もし、立地競争力、つまり魅力的な立地地としての環境整備をしていくんだという方向性をこの内閣が出しているものでありますから、海外企業が日本立地に向けて拠点オフィスを探し始めているという話は入ってきております。これをしっかりと進めていきたいというふうに思っております。

上田委員 ありがとうございます。

 これからの日本の将来にわたります経済の成長力を高めていく、経済の活力を高めていく上では、非常に重要な視点だというふうに考えております。

 もう時間もなくなってしまいましたので、質問というよりも、最後にちょっとお願いだけさせていただきたいというふうに思います。

 今、中小事業者が事業再生を立てて、それに伴っていろいろ金融機関から債権の放棄とか減免を受けるという場合、なかなか金融機関側が無税償却が認められない、そういうリスクがある、それでなかなか対応してくれないというような面もあるというふうに聞いております。

 いろいろと国税庁とかに伺いますと、例えば地域経済活性化支援機構とか認定支援機関、そういったものを活用した場合、そのほかにも相当広い範囲で無税償却を認めている、そういう弾力的な運用を行っているというふうには承知をしております。

 ただ、なかなかそういったことがうまく伝わっていないという部分もあるようでありますので、ぜひ、そういった趣旨の周知、また、さらなる弾力的な運用にも努めていただきたい。その点、お願いをいたしまして、質問とさせていただきます。

 では、よろしくお願いをいたします。

山本委員長 これにて上田君の質疑は終了いたしました。

 次に、前原誠司君。

前原委員 おはようございます。民主党の前原です。

 まず、金融政策について質問させていただきたいと思います。

 まず、私のスタンスを少しお話ししたいと思います。

 野田政権の最後でありましたけれども、約三カ月間、経済財政担当大臣をさせていただきました。毎回、日銀の政策決定会合に出席をし、強力な金融緩和を求めてまいりました。白川さんの五年間の中で唯一、二カ月連続の金融緩和というものが行われましたし、また、政府と日銀の間で初めて共同文書の取りまとめを行わせていただきました。

 そういう意味で、強力な金融緩和を行う、そしてデフレの脱却、結果としての円高是正、そして輸出の回復というものの中で日本の経済をよくしていくという方向性については、安倍総理が今行われている政策と私は一致をしていると思っておりますけれども、ただ、先ほどからお話がございますように、二年間で二%ということについて、これを絶対的なものとするんだ、今もそういう議論になっておりますけれども、これについては危うさを感じているということを申し上げた上で、まず一つ目の資料をごらんいただきたいと思います。

 三枚目の資料でございます、皆さん方のお手元にお配りをしているのは。これは、前回安倍総理と議論させていただいたときに使った資料でありますし、黒田総裁と財務金融委員会で議論したときにも使わせていただいたものであります。

 上がマネタリーベース、日本とアメリカとヨーロッパで申し上げると、対GDP比でかなり金融緩和を行っているということ、それから、下の図をごらんいただきますと、ベースマネー、つまりは中央銀行である日銀が供給をしてきたお金というのはかなり大きなものがあるけれども、金融緩和をしてきたけれども、CPI、消費者物価指数というものは変わっていないということの中で、お二人に私が質問させていただいたのは、つまりは、今までも金融緩和をしてきたけれどもなかなか物価の上昇には至っていないということの中で、どういうメカニズムで二年間で二%上げるのかというお話を伺いました。

 もう繰り返し伺うことはいたしません。お二人とも同じ答えでありました。期待に働きかけるということが基本であったかと思います。

 この議論をしても神学論争になってしまう面もありますので、違う観点から少しお話をさせていただきたいと思います。

 先ほど、山本幸三委員の質問の中でもありましたけれども、二年で二%を実現したときの失業率はどれぐらいになるのか。先ほど、いろいろな前提条件を田村大臣はおっしゃっておりましたけれども、大体二・五%という数字をおっしゃったと思います。失業率、過去の状況ですね、二・五%という数字をおっしゃったと思います。

 それでは、違う形で質問いたします。実質GDP成長率、これは平均でどのぐらいパーセンテージがあれば、この二年間で二%が実現できるのか。そして、その場合の二年後の失業率は一体幾らになると予想されるのか。政府と日銀にお伺いをしたいと思います。

甘利国務大臣 ちょっと済みません、お待ちください。(前原委員「ちょっととめていただけますか、時間、時計をとめてください」と呼ぶ)

山本委員長 答弁まで速記をとめてください。

    〔速記中止〕

山本委員長 速記を起こしてください。

 甘利大臣。

甘利国務大臣 済みません、試算については、まだ出しておりません。それは、いろいろな要素が入ってくるからということであります。

前原委員 日銀もお願いします。

黒田参考人 御指摘のように、物価上昇率とマクロ的な需給ギャップの間には、やや長い目で見ますと、正の相関関係があるということは言われているわけでございます。ただ、二〇〇〇年代に入りますと、需給ギャップに対する物価の感応度がやや低下しているような傾向がございます。

 こうした傾きが緩やかなフィリップス・カーブに基づきますと、二%の消費者物価の上昇率を実現するためには、需給ギャップを相応のプラスとする、つまり、〇・五%前後と言われる潜在成長率を上回る高い成長、実質成長率を実現する必要があるというふうに言われるわけでございます。その際には、当然ですけれども、労働需給の引き締まりを反映して、失業率も相応に下がっていくというふうに考えられます。

 ただ、これも委員御承知のとおり、物価上昇率は、需給ギャップのほかに企業や家計の予想物価上昇率にも影響を受けますので、仮に、企業や家計の先行き、経済が持続的に回復していく、改善していくという見通しが醸成されて予想物価上昇率が上がりますと、物価安定の目標達成に必要とされる需給ギャップのプラス幅というのはやや縮小するということになると思います。

 いずれにせよ、実体経済がバランスよく改善していく中で物価上昇率が二%に高まっていくという状況を実現するためには、通常の金利引き下げを通じた需給ギャップの改善だけでなくて、予想物価上昇率への働きかけという期待を通じた金融緩和のメカニズムというものもしっかり起動させる必要があるというふうに思っております。

 そのためには、やはり強いコミットメントと市場とのコミュニケーション、さらには、それを裏打ちする適切な量的、質的な大胆な金融緩和というのが必要だと思っております。

前原委員 黒田総裁、時間を浪費するような答弁はやめていただけますか。

 私が聞いているのは、二年で二%の物価上昇を実現するために実質GDP成長率はどれぐらい毎年必要なのかということと、二年後には失業率が幾らになったかということを申し上げているんですよ。それについて答えがあるのかないのか、そういうことを端的にお答えください。

黒田参考人 先ほど申し上げましたとおり、長期的に二%の物価上昇率を実現するために必要な実質成長率というのは、一定の計算はできますけれども、それは何度も申し上げますが、期待物価上昇率その他の要因と組み合わさりますので、今の時点で、二%の物価上昇を実現するために何%の実質成長率というふうに特定することはできないと思います。

前原委員 これは、甘利大臣、そして黒田総裁がお答えされたように、いろいろな変数はあります。いろいろな変数がありますので、当然ながら、ある数値を置かなくてはいけないということであります。そうしないと予想が立ちませんから。

 しかし、いろいろな前提の中で期待に働きかけるということで、そして二年に二%だということを繰り返し言われても、その道行きというものは具体的じゃないんですよ、今までの総理のお答えも、黒田総裁のお答えも。

 したがって、総理、私は甘利大臣の立場でありましたので、総理が二年で二%の物価上昇というものを、これは民間のシンクタンクでやっているんですよ、日本経済研究センターというところによりますと、二年で二%を実現しようと思ったら、四%の成長が必要なんですよ。毎年四%の成長が必要だということです。いろいろな数字を置いていると思います。実質です。

 したがって、そういう意味において、いろいろな数値をもちろん仮定で置いていただいて、どういう形で、例えば失業率も、先ほど田村大臣が、過去二%の物価上昇のときに二・五%の失業率だったとおっしゃいました。仮に、条件が違ったとしても、それがなる場合においてはどれぐらいの雇用がふえなきゃいけないかというと、今、失業率四・三%ですから、二百七十七万人が完全失業者ですよ。ということは、単純に計算しますと、二年間で約百六十一万人が雇用されなきゃいけないんですよ。つまりは、そういう具体的な数字の中で、しっかりと失業率が下がり、そして実質のGDP成長率というものが確保され、そして二年で二%というものが本当に達成できるのかどうなのか。

 二%の、後でまた別の質問をいたしますけれども、例えばコストプッシュインフレなんかもあるわけですよ。したがって、円の相場がどのぐらいかということにもこれはまたかかわってくる問題もありますし、そういう数値を置いていただいて幾つかの試算をしていただけませんか。そうしないと、期待に働きかけると言われるだけでは、二年で二%の物価上昇をやるという気合いだけの話にしか聞こえないんですよ。いかがですか、総理。

安倍内閣総理大臣 先ほど山本幸三委員が図を使って御説明したように、物価上昇率というのは、貨幣供給の増加率と貨幣流通速度の上昇率から実質経済成長率を引いたもので決まってくるわけでございまして、その中において、やはりそういう意味において貨幣供給の増加率というのが極めて大きいということを、先ほど、私と山本幸三議員の間での議論においてそういうお話をさせていただいたわけでございます。

 だからこそ、しっかりと日本銀行がそういう意味において政策手段をとって、そして、基本的に大体二年間ぐらいにおいてしっかりとした緩和措置をとっていくことで、それを目標に達成をしていくという約束をしている、強いコミットを示しているわけでありまして、この強いコミットこそ、まずは最初にいわば為替に、そして株式市場にその働きかけは影響として出てくるわけでありまして、現に今、出てきているわけですよね。なぜ出てきているかといえば、つまり、強いコミットと市場とのコミュニケーションがうまくいっているということなんだろう、このように思います。

 その中において、株価が上昇していくことにおいて、資産効果も出てくるわけでありますし、行き過ぎた為替が是正されていくことにおいて、輸出産業は競争力を回復していくわけでございますし、国内において、いわば輸入物と対応する産業にとっても、農業もそうなんですが、競争力が出てくるわけでございまして、そしてそれは最終的には雇用にも影響していくでしょうし、もちろんその前提として、企業の収益率が改善をしていく中において、雇用にも、さらには賃金にも、そしてそれは消費にも戻ってくる。

 こういういい循環に早く入れていくということにおいて、一番最初のもととなる、的確に強いコミットメントを示し、正しい市場とのコミュニケーションによってまずは変化を起こしていく中において、いわばインフレ期待が確実に上がっていくことによって、最終的にはそれが現実に二%という結果となっていくんだろう、こう期待をしているところであります。

前原委員 多くの金融関係者の方々あるいは専門家の方々とお話をしておりましても、今の方向性について、先ほど私も申し上げたとおり、金融緩和をして、そして行き過ぎた円高が是正をされ、株価が上がっているということについては、皆さん評価されていますよ、それについては。ただ、本当に二年で二%ができるのかということについては、極めて懐疑的な意見が私の耳には多い。そして、さっきの山本先生がおっしゃったような、それを無理にやることによって、後でお話ししますけれども、さまざまなひずみ、問題点が出てくるんじゃないかという懸念も多いわけですね。

 その中で、私は本当に、今総理がおっしゃったような、いいメカニズムの中で日本の経済がよくなるということであれば、モデルを示して、こういうような社会像になりますよ、二%、二年間、成長率はどのぐらい、そして為替水準、まあ、為替水準は言えないかもしれないけれども、そういうことを、民間のシンクタンクではそういう計算ができているわけですから、ぜひこれは、委員長、お願いをいたしますけれども、我々もその前提というものを提案いたしますので、政府にも、そういった二年で二%の物価上昇がちゃんとできるんだということの試算、これを出していただくようにお願いを申し上げたいと思います。

山本委員長 後刻、理事会で検討いたします。

前原委員 先般のこの予算委員会で麻生財務大臣にはお聞きいたしましたが、黒田総裁に同じ質問をさせていただきたいと思います。

 これだけ莫大な財政赤字を抱えているのに、なぜ国債の金利がこんなに低いのかということであります。なぜ低いと思われますか。理由を幾つか、幾つでも結構です、挙げてください。

黒田参考人 幾つか、原因というか理由として考えられるものを挙げさせていただきますと、一つは、まだ物価が下落している状況があるということもあると思いますし、また、よく言われますけれども、日本の国債は大半が、九割以上が居住者によって保有されているということもよく言われるわけでございます。さらに言いますと、やはり政府が一定の財政再建に向けて努力をするというコミットをしておられるということも影響していると思います。その他にもいろいろな要素があろうと思います。

前原委員 私なりにその理由を申し上げますと、まず、日本の中に約一千五百兆と言われる個人の金融資産というのがある。それから、経常収支の黒字が続いている。つまりは、日本にお金が入るような状況というのが今まで続いてきた。それから、今総裁がおっしゃったように、国債の国内消化率は去年の末時点で九一・三%ということで、国内で消化をされているということであります。

 ただ、それ以上に、私は、やはり公的セクターで日本の国債をかなり引き受けているということに、この金利の低さというものが大きな要因を示しているのではないかと思います。ゆうちょ、どれぐらいの国債を引き受けているか、百三十五・七兆円。かんぽ、五十六・九兆円。年金、六十七・九兆円。今、日銀がどれぐらいの国債を買っているかということにいたしますと、百二十二兆円であります。

 つまりは、普通国債、今、発行残高が七百八兆円でありますけれども、三百八十兆円余りが公的セクターで買われているということ。逆に言うと、お金が本当に生き金のところに回っていないわけですね。国債の引き受けというものに公的セクターのお金がこれだけ使われているということが、いわゆる金利が低い大きな原因だと私は思っております。

 これについて、日銀総裁、同意されますか。

黒田参考人 今御指摘のありましたさまざまな公的機関の国債保有につきましては、それぞれ、資金運用であるとか年金資金の運用であるとかいろいろなことがあると思いますが、日本銀行の国債保有につきましては、これまでとられてきました金融緩和政策という中で、短期の国債あるいは長期の国債というものを保有してきたわけでございまして、これはあくまでも金融政策の一環として、日本銀行が自主的に金融緩和を進めるために購入してきたものであるというふうに理解しております。

前原委員 これから異次元の金融緩和をする、そして量と質の拡大をしていくということをおっしゃっている。その中心は、恐らく、残存期間の長い国債をこれから買われるということになるでしょう。そうすると、結果として財政ファイナンスと見られるのではないか、見られた時点で、日本の国債の信認が下がり、長期金利が上がり、国債が下落をするということになりはしないかということを私は指摘してまいりました。

 そこの大きなポイントとして、先般も財務金融委員会で質疑をいたしましたけれども、それをやらないというコミットメント、意思表示をする何らかの歯どめが必要じゃないかということで、今まで、日銀券ルールというのがあったわけですね。この日銀券ルールというものについては、この間、黒田総裁がこう答えられているんですね。輪番オペの部分と資産買い入れ基金で買っている国債を足しますと、日銀券発行残高は多分超えているんですね、こうおっしゃいました。

 私、調べました。確かにもう超えています。今は、日本銀行券が八十三兆円に対して、基金保有分を含めると長期国債保有額は九十三兆円になっているんですね。だから、日銀券ルールはもう超えている、こういうことであります。

 ただ、この間の質疑の中で、財政ファイナンスと結果として見られないために、今、黒田総裁は、これは金融緩和の手段として日本銀行の独自の判断でやっているんだということをおっしゃいました。これは大事です。財政法第五条の観点からしても、財政ファイナンスはしないということは極めて大事でありますけれども、先ほど申し上げたように、公的部分でいうと、かなり国債を買っている、そしてこれからも無制限の金融緩和を、長い国債を買っていくということになれば、結果としてそう見られないかという懸念は当然あるわけですよね、総裁。

 具体的な日銀券ルールにかわる、そのいわゆる歯どめと見られる、ちゃんとマーケットがそういうものとして信認をされるということについて、具体的なやはり議論をしてもらいたいと思いますし、どういったものが考えられるのか、具体的にお答えください。(発言する者あり)

黒田参考人 まさに、委員御指摘の点は重要な点だと……(前原委員「何と言いました、今。君たちが何。君たちが何ですか」と呼ぶ)

山本委員長 どうぞ答弁を続けてください。(前原委員「総理、不規則発言をしたら、とめますよ、委員会。ちょっとおごりが過ぎるんじゃない」と呼ぶ)

 どうぞ、日銀総裁、答弁してください。

黒田参考人 委員御指摘のとおり、この点は極めて重要なポイントであると思っております。

 世界の中央銀行を見ましても、国債の引き受けは原則として禁止するというのが通例でございまして、我が国におきましてもそういう形になっております。一方で、各国の中央銀行は、長期国債も含めて、さまざまな資産の買い入れを通じて金融の緩和をしているということでございます。

 委員の意見はよくわかるわけでございますが、他方で、日銀券ルールはもはや超えた形になっておりますので、どういった形の歯どめが適切なのか、やはり政策委員会で十分議論してまいりたいというふうに思っております。

前原委員 総理、先ほど、私の質問に対して、そんなことを言っているからだめなんだよ、君たちとおっしゃいましたね。日銀券ルールみたいなものは要らないということですか、そういうことは。お答えください。

安倍内閣総理大臣 基本的には、物価目標を定めていく、つまり、この物価目標に向かって大胆な金融緩和をしっかりとやっていくということが大切なことであって、しかし、それは物価目標ですから、この物価目標は、先ほど山本委員が説明したように、この上下でトレランスとして一%の範囲におさまるように管理をしていくことこそが、これは中央銀行の腕の見せどころなわけですね。だからこそ、中央銀行がしっかりとした能力を持ってこれに対応していく、それこそが、まさに、ある意味においては歯どめになっていくんだろう、このように思います。

前原委員 財政ファイナンスと見られないことは、極めて私は重要だと思います。一千兆円の長期債務が国、地方で合わせてある、これがほかの国との大きな違いですから。その中にあって、白川前総裁に対するいろいろな批判はありましたけれども、我々が対話している中で、やはり非常に心配をされていたポイントは長期金利でありました。長期金利の動向で、この一千兆円の借金、後でちょっと財政の話をいたしますけれども、これがどう動いていくかということについての大変懸念を持っておられたということ。

 その中で、バランスを持って、だから、我々はこれだけは申しておきます。二年で二%の物価目標にコミットメントをされるということは、もうそれはしっかりとエッジを立てられたわけですから、しかし、これも、私は、一%から三%ぐらいの幅の中でフレキシブルなものにしないと、二%、二年間、絶対なんだというときに、それを無制限に金融緩和をやっていった場合に、金利の上昇とかあるいはさまざまな問題点が起きてくるという懸念をしているということを改めて申し上げておきたいというふうに思います。

 さて、黒田総裁、就任会見でこうおっしゃっていますよね、金融政策が為替に影響するのは事実だと。その考え方にお変わりありませんか。

黒田参考人 変わりございません。

前原委員 ということは、二%の物価上昇を二年で達成するために質、量とも次元の違う金融緩和を行っていけば、さらに円安が進むという理解でよろしいですか。

黒田参考人 一般論として、他の状況にして等しければ、通常、金融緩和を行った場合にその国の為替レートが下落する傾向があるということは、一般的に知られていることでございます。

 ただ、先ほど申し上げたように、他の事情にして一定であればということが、実際は一定でなくて、いろいろな状況があると思いますけれども、大胆な、あるいは大幅な金融緩和をした場合に円安になる傾向があるということはそのとおりだと思います。

前原委員 内閣官房参与の浜田教授が、エール大学の教授が、一ドル百円なら大丈夫だけれども百十円なら問題だといった趣旨の話をされております。

 内閣官房参与のお立場の方がこういう発言をされているわけですが、そういう相場観というものは共有されますか。

黒田参考人 私は、為替レートの相場について申し上げることは適切でないと思いますので、先ほど申し上げた一般論としての傾向ということを申し上げたわけでございます。

前原委員 私が聞きたいのは相場観ではないんですよ。何を聞きたいかというと、総裁御自身が就任の記者会見で、金融政策が為替に影響するのは事実だということをおっしゃって、今でも、それについてはそのとおりだとおっしゃった。そして、一般論としても、金融緩和を進めていけば為替に影響があるということをまたおっしゃったわけです。

 今、二年で二%というその物価安定目標を実施するために、次元の違う、総理から言わせると、そんなことを言っているから、君たち、だめなんだよというような、我々は慎重だったのかもしれないけれども、次元の違うことをやっていくわけでしょう。そうなると、さらなる円安が進む可能性がありますよね。

 今の日本の状況はどうか。もちろん、Jカーブがきいてきて、そして輸出が回復するということになるかもしれない。しかし、他方で、三月十一日の、二年前の東日本大震災、原発の事故によりまして、原発が今ほとんどとまっている状況ですね。エネルギーの輸入価格というのは極めて大きな状況になってきている。ちょっと二枚目の、貿易収支は赤字、経常収支も三カ月続けて赤字、こういう状況になってきているわけですね。

 先ほど、二年で二%の物価上昇をやるといった場合、円安傾向に振れるということについては認められた。それで、これから次元の違うことをやっていくと言われた場合に、相場観は言えないにしても、浜田教授は、百円ならいいけれども百十円なら問題だということをおっしゃっているわけです。

 行き過ぎた円安になった場合でも、それでも、いろいろな問題が起きた場合でも、二年で二%というコミットメントはされ続けるわけですか。そういう判断をしてもされ続けるわけですか。

黒田参考人 先ほど申し上げましたとおり、金融政策が為替レートに影響するということはそのとおりでございます。特に、他の事情にして一定であれば、金融緩和をすれば円安になる傾向があるということはそのとおりでございますが、どの程度の円安になるかとか、それがどのような具体的な問題を引き起こすかということは、さまざまな経済状況によりますし、それから、為替の安定、為替介入等は基本的に政府の責任においてやっておられるわけでして、日本銀行は、あくまでも物価安定目標の達成のために全力を尽くすということに尽きると思います。

前原委員 今、おもしろい答弁をされました。

 我々は、二年で二%、こだわりますけれども、これをしゃにむにやってきた場合の長期金利の問題、そして為替の問題、これがさまざまな形になってきた場合に、それがマイナスの要因になっても本当にしゃにむに進むのかということをやってきたわけですね。

 その場合、先ほど黒田総裁から、いわゆる為替介入の話がありました。でも、二年で二%は自分たちの責任でやるということ、だから、責任問題も副総裁はおっしゃっているし、先ほど山本委員の質問に答えて黒田総裁も、二年で二%をやりますとおっしゃった。

 麻生財務大臣、こういう行き過ぎた円安が生じてきた場合、先ほど日銀は為替介入権はないということをおっしゃいました。政府の協力の中で二年で二%をやるために為替介入もあり得る、それを期待した発言だと私は思いましたけれども、どうですか。

麻生国務大臣 財務大臣も日銀と同じで、為替に関する発言は一切ありませんので、それを御存じの上で聞いておられるということなんでしょうか。それ以上、ちょっと答えようがないんですけれども。

前原委員 繰り返し申し上げますよ、私の立場を。

 デフレ脱却は必要なんですよ。だから、金融緩和をやり、結果的に為替が、円が安くなり、円高が是正されて、そして株価が上がる、輸出が回復する、いいことですよ。だけれども、懸念は、二年で二%というものを必ずやるということを言った場合、さまざまなひずみが生ずるのではないか。長期金利であり為替であり、そういうものにマイナスの影響が出てきても本当にやりますか。日銀の責任でやらせますというのが安倍総理の趣旨でしょう。だから、そういう意味で……(安倍内閣総理大臣「違います」と呼ぶ)違いますか。どうぞお答えください。

安倍内閣総理大臣 つまり、二%の物価目標を立てて、そしてそれに向かって日本銀行が、手段をしっかりと独立性を持って行っていくということであります。その中においては、今までとは次元の違う大胆な金融緩和をやっていただきたいという期待はしていますよ。その中で適切に判断して二%に向かっていく。そして、期限についても、おおむね二年というお話をされているわけであります。

 ただ、私たちが求めているのは、しゃにむにやれということではないんです。まずデフレから脱却して、二%という緩やかなインフレ目標をちゃんと持って、それに到達してくださいよということであって、しかし、経済は生き物ですから、世界で何があるかわからないし、それにおいてさまざまな作用が出てくるのは、これは前原委員の御指摘のとおりだろうと思います。

 大切なことは、しっかりと目標に向かってちゃんとやっていくということであって、その中において、できない場合だって、それはもちろんあります。そのときには、こういう理由で、これ以上のことをやればこうなりましたという説明責任が生じるんです。その説明責任において、我々政府に対して、そして国会に対して、彼らがその説明責任を果たせば、それはそのとおりですねということになるんですよ。

 ですから、何が何でもという意味ではなくて、しかし同時に、これは、市場に対して彼らがコミットして、決意と責任感を持ってそれを示していかなければ市場は反応しないというのも事実でありますから、そこはなかなか難しいところであって、どちらを強調するかというのは、まあ、バランスの問題なんだろう、このように思います。

前原委員 答弁が変わりましたよ。今までおっしゃっていたことと変わった。(発言する者あり)いや、デフレは貨幣現象であるということをおっしゃり、そして二年で二%というのは日銀にやらせますということをおっしゃっていましたよ。それをやらせますということをおっしゃっていた。日本の全体にとっては、今の答弁というのは、ほっとされる方はたくさんおられたと思いますよ。だけれども、私は、変わられたということはしっかりと認識をしていただきたいということを思います。(安倍内閣総理大臣「変わっていない、変わっていない。最初から言っている」と呼ぶ)いや、それは今までの答弁を比較したらわかりますよ、そんなのは。

 さて、三本の矢という話がありました。これから我々は政治で何をやっていかなくてはいけないのか。もちろん、三本目の矢の成長戦略も大事でありますけれども、同時に大事なのは、歳出の見直し、これを徹底的にやっていかなくてはいけない、私はそう思っています。

 このグラフをごらんいただきたいと思います。総理にお配りをしている二枚目のグラフでありますけれども、これは、上のグラフを見ると、本当に背筋がぞっとするんですよね。

 上のグラフというのは、明治二十三年以降の政府の債務残高の名目GDPに対する比率の推移ということで、一九四五年度の第二次世界大戦終戦のときに極めて大きな赤字を持っているわけでありますが、今、それをはるかに超えるものになってきているということであります。

 これだけの大きな赤字を抱えるようになってきているということであります。したがって、財政再建というものは極めて大事、そして歳出の見直しというのは極めて大事だということであります。

 総理に伺います。

 公明党さんの意向に沿って、こういう答弁をされていますよね。消費税については、軽減税率の導入について前向きな答弁をされています。

 どういう規模になるかわかりません、軽減税率。そして品目がどういうものに拡大されるかわかりませんけれども、軽減税率を導入すると、いわゆるプライマリーバランスの議論、二〇一五年度、二〇一〇年度の半減、そして二〇二〇年度の達成というものは変わってきますよね。これは、軽減税率を入れた場合に、何らか新たなことを導入するんですか。

安倍内閣総理大臣 消費税を八%、一〇%に上げていく際に低所得者に対してどういう対応をしていくかということは、これは我が党だけではなくて公明党、そして民主党も入れた社会保障と税の一体改革において議論をしていることであって、一定の対応をしていこうということは、我が党、公明党だけではなくて民主党の中からも出ている意見でございますので、その点を踏まえて議論を進めていかなければならない問題だろう、このように考えております。

前原委員 軽減税率を導入したら、その規模によりますけれども、いわゆるプライマリーバランス、国際公約というものの前提が変わるということも踏まえた上で議論をしていかなくてはいけないということは申し上げておきたいと思います。

 それと同時に、総理もおわかりになっていると思いますが、下のグラフです。

 これは、二〇二〇年度のPB、プライマリーバランスの黒字化、基礎的財政収支の黒字化というものについては、今のままでいっても達成できないんですね。つまりは、成長率を上げるか、歳出をカットさせるか、あるいは増税をするか、それのミックスもあるわけでありますけれども、いろいろやっていかなくてはいけないわけであります。

 次のグラフを見ていただきたいと思います。

 これは一枚目のグラフでありますけれども、左側が歳出自然体。これは、社会保障の自然増、年間一兆円というものについて、それを、言ってみれば削らないということで、一・五%という低目の成長にした場合に、今後、国債費の償還とか税収とかはどう移行していくのか。これは、八%、一〇%と上げたという前提でごらんをいただきたいわけであります。

 皆さん方に、総理にも見ていただきたいのは、二十四年度の一番下の差額、それから二十八年度の差額なんですよ。五%上げて十二・五兆円と言われていますよね。十二・五兆円と言われていますけれども、歳出自然体、経済成長一・五%だったら五年でもとに戻っちゃうんですよ。一・五%、歳出自然体であればもとに戻っちゃう。

 右側の歳出据え置き型。これは、一兆円の社会保障の自然増というものは何らかの形でカットしていく、のみ込んでいく、そして成長率も三%として高くするということで考えたとしても、一番下を見ていただくと、四十四・二から四十・二ということで、若干は、十二・五兆円というものについて、このふえた分について、五年では低くなっているわけでありますけれども、右左両方見ていただいておわかりのように、消費税を上げても、時間を稼げるのは、やはり相当歳出面のカットをしなければ五%もすぐに食い潰してしまう、こういうことなんですね。

 時間が来ましたのでこれで終わりにしたいと思いますけれども、総論として、また予算委員会で引き続きやらせていただきたいと思いますけれども、この歳出のカットというものについて、経済財政諮問会議において成長戦略もやられるとおっしゃっていますね。小泉さんのときの骨太の方針も含めて、この歳出の見直しということは徹底的にやられたと思うんです。それは私は一定の評価というものはあると思います。

 これについてしっかりと、これを四本目の矢というのか何というのかわかりませんが、少なくともこれをやらなければ財政というのは持続可能ではない、幾ら日銀に吹かせてもだめなんだという認識の中で、これについてしっかり取り組まれるおつもりはありますか。

安倍内閣総理大臣 民主党政権の中において随分それは御努力されていた、私たちもそれは思っております。当然、我々も、これからしっかりと無駄をなくしていく、そして、歳出をできる限り抑制していくということにおいて、行政の改革、不断の改革を行っていきたい、このように考えております。

前原委員 次回は具体的な歳出の見直しの点を議論させていただきたいと思います。

 終わります。

山本委員長 この際、長妻昭君から関連質疑の申し出があります。前原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。長妻昭君。

長妻委員 民主党の長妻昭でございます。

 本日は、貴重な時間をいただきまして、ありがとうございます。総理に基本的なことをお伺いしますので、端的にお答えをいただければと思います。

 今、前原委員からもアベノミクスの懸念という話がありました。私自身も、今は世の中的には礼賛をされておりますけれども、一つ一つ、やはり副作用について指摘をしていかなきゃいけないと思っております。三つの副作用があるのではないか。

 一つは、財政規律が緩む。民主党政権では、政権をいただいている三年間、毎年四十四兆円以上の国債は発行しないという方針でまいりましたが、安倍政権になって、一年間に五十兆ということで、四十四兆円の枠は取っ払われたわけであります。ある方の話によると、財政赤字、これだけの借金というのは財政的児童虐待だと言った方もいらっしゃいます。きょう生まれた赤ちゃんが最も、将来払うであろう税金を前借りするわけであります。

 二番目の副作用といたしましては、バブルの再来になるのではないのか。株あるいは土地、そして今も質疑がありましたが、私は、国債のバブルが進んでいくのではないかという強い懸念を持っております。

 そしてもう一つ、最後の副作用としては、格差が拡大をするのではないのか。一つは、小麦粉を初め、円安の影響で物価が上昇をし始めている。あるいは、生活保護の八月からの戦後最大の切り下げによって、生活保護以外の方々、低所得対策も削られる可能性が出てくる。

 こういうような副作用について、一つ一つ潰していく必要がある。それが、日本の国が誤らない、国益につながる道だと思って、質問をいたします。

 きょうは、特に、格差拡大の懸念について質問いたします。

 前回、安倍総理に、アベノミクスで格差は拡大するんですかという質問を申し上げたときに、こういうふうに総理が答弁されました。日本人としていわば許容できる範囲内に格差がおさまるようによく見ていきたいと。

 許容できる範囲内に格差がおさまるようにという御答弁をいただきましたけれども、総理が考える、許容できる範囲の格差というのは、今の格差を維持する、今の格差よりも広げさせない、こういう理解でよろしいんですか。

安倍内閣総理大臣 許容できる格差と言ったのは、日本という国は、古来から、みんなで田や畑を耕して、ともに水を分かち合ってきた国ですから、ともに五穀豊穣を祈ってきた。その中において、いわばトヨタのような大きな会社にあっても、社長がもらっている年収というのは、これは多いですよ。しかし、米国あるいは欧米の経営者と比べればはるかに小さいわけでありまして、これが多いか少ないかということにおいて、格差があるじゃないかという議論はしようと思えばできますが、しかし、それは大体、いわば常識の中に、おのずから形成されるコンセンサスの中におさまるかどうかということではないだろうか、私はこう考えているわけであります。

 いわば、この中で、今の状況の中において、今がいいかどうか。しかし、それは、頑張った人が多くの利益を得ていくということをただ批判することはやはり間違っているんだろうと思います。大切なことは、セーフティーネットがしっかりとしているかどうかということではないかと思います。

長妻委員 ちょっと明確なお答えがないんですが。

 一般的に、格差をあらわす指標というのは、御存じのように、ジニ係数とか、あるいは相対的貧困率というのもありますけれども、そうすると、政府の姿勢として、総理の姿勢として、今現在のジニ係数や相対的貧困率、アベノミクスではこれを悪化させるということをしない、そういう強い決意を表明していただきたいんです。

安倍内閣総理大臣 アベノミクスにおいて、私は余りこの言葉を使ったことはないんですが、今我々が行っている経済財政金融政策において、格差を拡大しよう、つまり、今所得が低い層の皆さんがさらにこの所得が低くなるということは、これは絶対あってはならない、こう思っております。

 ジニ係数等については、これは、高齢者世帯がふえていくことによってフローが少なくなっていきますから、ジニ係数の計数的には格差が広がっていくということになるかもしれませんが、それを省いていった、この要素をジニ係数から削除するというのは難しいかもしれませんが、ジニ係数にはそういう性格もあるんだということを念頭に置きながら、いわば貧困率が上昇していくということにはならないようにしなければならない、このように考えております。

長妻委員 相対的貧困率が上昇しないようにするというようなお話がございました。

 もう一つ総理に質問申し上げたいのが、高所得の家庭の子ほどよい教育が受けられる、こういうことについて、やむを得ないと考えるのか、問題だと考えるのか。これは総理御自身の御意見でいいんですが、どう思われますか。

安倍内閣総理大臣 先ほど、相対的貧困率の場合は、いわば貧困層と言われている方々のレベルが落ちなくても、非常に豊かになった人がふえたことによって、相対的に貧困になるということにおいてはそうなっていくんですが、そういうことを私は述べているのではなくて、今のいわば貧困と言われている層の皆さんがさらに落ちていくということはないようにしなければならない、このようなことを私は今申し上げているわけであります。

 今、長妻委員が指摘をされたように、子供たちが受ける教育について、その家庭の経済力によってなるべく差が出ないようにしていこうというのは、当然、政治の責任なんだろう、このように思うわけであります。

長妻委員 ちょっと、その前の質問で、相対的貧困率を今よりも悪化させないということではないと、絶対的貧困率の話をされたと思うんです。

 これは、そうすると、今の現在の格差、世の中の格差ということについては、これは総理が言われる許容範囲、今現在許容できる範囲内だとお考えなんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 これは考え方の問題なんですが、大切なことは、やはり経済のパイを広げていくことなんだろう、このように思います。いわば、セーフティーネットを厚くしていこうと思ったって、税収やあるいは入ってくる社会保険料が足りなくなってしまっては、やろうと思ってもできなくなっていくわけでありますから、そのためにも、やはり経済のパイを広げていく、雇用の機会をふやしていく、さらには賃金を上げていくという政策を打っていくべきなんだろう。限られたパイがどんどんどんどん小さくなっていく中において再配分を繰り返しても、結果として、セーフティーネットを厚くすることはできないんだろう、私はこう思っているわけであります。

 絶対的ということに私はこだわるわけではありませんが、もちろん相対的にも、感覚としては必要ですよ。いわば許容範囲というのは、数値的には私は申し上げることはできませんが、これは大体、日本人の常識の範囲内ということなんだろうと思います。その中で、累進率もある程度、一定の率を課税においても我々は設けているわけであります。しかし、そこで、ある人たちが大きくグローバルに活躍して収入をふやした、あるいは資産をふやしたことによって、相対的なものにおいては開いてしまう。それが悪いというか、それをやめさせなければいけない、こういう人たちの活躍を抑えなければいけないという考え方は私はとりません。

 しかし、大切なことは、まずは、ワーキングプアと言われている方々や貧困層の方々の収入がなるべく上がっていくような、そういう努力はしなければいけませんし、最低賃金においても、しっかりと上がっていくという経済をつくっていきたい、こう考えております。

長妻委員 私が何でこういうことを言うかというと、日本の高度経済成長時代、日本が、まあ生産年齢人口がふえればどの国でも経済は成長しますけれども、日本の底力を培ったのは、高度経済成長時代、私の理解では、格差が世界で最も拡大しないで経済成長できた、こういう非常に成功したモデルを持った、だから今人材がこれだけ層が厚いんだと。一九六一年に皆保険、皆年金ができて、格差を拡大しないで経済成長するという、当時、自民党の一つの意思が私はあったと思います。今回、ちょっと総理の今のお話を聞いていると、明確に、やはり格差を拡大させない、そしてアベノミクスということを宣言していただきたいんです。

 今、総理、お答えいただきましたけれども、ある程度国の責任もあるというお話でありますが、気になるのが、これは実は朝日新聞とベネッセが定期的に調査している調査なんですが、ちょっと私は衝撃を受けたんです。

 高所得の家庭の子ほどよい教育を受けられるのはやむを得ないのか、問題なのかというアンケート調査、七千人ぐらいなんですけれども、二〇〇四年は、問題だという方が半分以上、二〇〇八年も半分以上いらっしゃいましたが、二〇一二年、去年の末からことしにかけては、四割なんですね。つまり、やむを得ないと当然だ、当然だという方が六・三%、やむを得ないという方が五二・八%ということで、非常に、格差を容認というか、拡大をしつつあるのでもう仕方がないということなのか。

 もう一つ言うと、日本は、親の年収による学歴格差というのも進んでおります。我々は高校の無償化なども入れましたけれども、年収四百万円以下の御家庭は四年制大学進学率が三割、年収一千万円以上は六割ということで、これは東京大学が調査した興味深いデータなんですが、東京大学に入学される親の平均年収が一千二百万円だと。こういうところまで来ております。

 子供の相対的貧困率というのが所得再分配後に上がっていく、これは先進国で日本だけ。

 そして、一人親の御家庭もふえております。今は、お子さんのいる御家庭の五世帯に一世帯が一人親でありますけれども、二十年後には、お子さんのいる御家庭の三世帯に一世帯が一人親になる。そして、貧困の連鎖ということで、生活保護を受給しているお子さんのうち四人に一人が、大人になっても生活保護から抜けられない。これが今の現実であります。

 その中で、ぜひ総理にお考えをいただきたいのが、今、我々民主党は野党と一緒に、子どもの貧困対策法という趣旨の法律をつくっております。つまり、これはイギリスでもある法律なんですけれども、子供の相対的貧困率を数値目標として一定程度下げていくというものなんですが、この子供の相対的貧困率の下げる数値目標ということについて、その数値のレベルは別にして、これを国として掲げて取り組んでいくということについて、総理のお考えをいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 私も、委員が今述べられたように、子供たちが家庭の経済的な環境によって教育において質の高い教育を受けることができない、結果として将来、仕事もいい仕事につけないという貧困の連鎖になっていく、これは断たなければならない、このように思っております。子供の貧困対策として学習支援や経済的支援、各般の対策にしっかりと取り組んでいきたいと思っています。

 そこで、子供の相対的貧困率の低下に向けて数値目標を掲げることは、この貧困率が可処分所得のみで算出をされているために、資産の保有状況が反映されていない、これだけで貧困の状態の全てをあらわすことができないということや、学習支援や保育といった子供に対する現物サービスの充実等が貧困率の改善にはつながらないという課題はありますが、しかし、今、自由民主党においても、そのための議員立法を検討中でございます。

 こうしたことも踏まえながら、場合によっては民主党と自民党において協議をしてもいいのだろう、このように思います。どういう論点が整理されているかということについては私もつまびらかではございませんが、いずれにせよ、この貧困の連鎖を断つために、政治として何をすべきか、行政として何をすべきかということは、当然考えていかなければならない課題であると思っております。

長妻委員 これは、数値目標を入れないと意味がないんですね。ヨーロッパ諸国では、相対的貧困率などの数値目標を入れて格差を是正する。子供の格差、親の年収による学歴格差、これを是正するということは日本経済の底力を上げることにもなるという、ちょっと強い御決断を本当はいただきたいと思うんです。

 非正規雇用の問題についてもお伺いしますけれども、今、被用者の中で三分の一近くまで非正規雇用がふえて、正社員を渇望されている方も多いんですが、この非正規雇用というのは、総理は、自己責任なのか社会の責任なのか、どういうふうにお考えでいらっしゃいますか。

安倍内閣総理大臣 今御指摘になられたように、確かに、非正規雇用が増加をしているというのは事実でございます。その背景は、正規雇用、非正規雇用という二極化した働き方を前提に、非正規雇用への労使双方のニーズが高まったということが挙げられています。

 自己責任、社会の責任のいずれが大きいかを単純に判断できる問題ではないというふうに私は考えておりますが、いずれにせよ、こうした正規、非正規の二極化を解消して、雇用形態にかかわらず、将来に夢や希望を持ちながら、安心して生活できる環境を社会全体で整備することが重要であると思います。非正規雇用労働者の雇用の安定や処遇の改善のための施策を進めて、頑張る人が報われる社会の実現に向けて全力で取り組んでいきたいと思います。

 その中にあって、企業内のキャリアアップの支援など、非正規雇用労働者の処遇の改善に向けた取り組み等を行う事業主に対する支援や、有期契約労働者について不合理な労働条件の相違を禁止する改正労働契約法を踏まえて、労働条件の見直しが進むよう、きめ細かな周知啓発を行っていく考えであります。

長妻委員 一国の指導者として、非正規雇用というのは自己責任か社会の責任か、単純にはどちらか判断できないという御回答は、非常に私は不本意なんです。

 これは自己責任か社会の責任かといったときに、どちらの比重が重いのかということは、総理としてはどんなお考えなんですか。

安倍内閣総理大臣 雇用形態においては、雇用主側のニーズも確かにあったんだろうと思いますね。グローバルな経済の中で競争をしている中でということもあったんだろうと思いますが、働く側の方も、そういう労働形態を好んでおられる方々がいるのも事実だろうと思います。

 大切なことは、非正規から正規に移ろうと思う人たちにちゃんと道が開かれているということが大切なんだろうと思いますし、また、先ほど私が申し上げましたように、非正規、正規というこの二つだけではなくて、いわば働き方全体においてもう少し柔軟な対応ができるのではないか、こう考えております。

長妻委員 今、アベノミクスでボーナスが上がる、そういう企業もあると思います。ただ、非正規雇用の方はボーナスをいただいていない方も多いわけで、非正規雇用の方は、九割の方が退職金がない。あるいは、厚生年金に入っている非正規雇用の方は半分だけであります。二十代後半では正社員の八割強の賃金なんですが、四十代後半では正社員の半分ぐらいの賃金になる。今や、男性の二〇%、女性の五四%が非正規雇用で、ぜひ御配慮いただかなきゃいけないのは、アベノミクスで非正規の方が置き去りになるということはあってはならない。我々は、派遣法を改正して、非正規の方が極力働けるような環境整備を続けていたところであります。

 そしてもう一つ大きな、少子化にもかかわる問題として、配偶者、結婚率というのも正社員と非正規の方で倍違うということが明らかになりました。

 例えば、三十から三十四の男性の、配偶者がいる割合で、正社員でいうと六割、非正規でいうと三割弱ということで、こういう状況が続いておりまして、今現在、日本国では、男性の五人に一人が一生結婚しない、生涯未婚、これが二十年後には、男性の三人に一人が一生結婚しない、生涯未婚という見込みになっております。

 それに伴って、ひとり暮らし世帯というのが全世帯類型の中で急増をしております。(パネルを示す)この赤い線でありますけれども、少し前までは、数年前までは、夫婦と子供世帯、家族連れ世帯が一番多い世帯類型だったんですが、もう今や単身世帯。単身世帯というのは、社会保障的にいっても、お一人お一人単身でケアしますので、非常にこれは大変でありますし、例えば在宅医療、在宅訪問介護といっても、ひとり暮らしですので御家族がいないので、身の回りの世話をどうするのかという大変深刻な問題もあります。

 これは、やはり非正規雇用を含めて格差を是正するということで、日本の底力、GDP一辺倒でなくて、そういうことが醸成されるんだ。今、公共事業にかなり投資がなされておりますが、我々は、人への投資の格差是正というのを申し上げて、それは、所得再分配政策にもつながって、低所得の方ほど消費に回るお金が多いので内需拡大にもつながるということで進めてきたんですが、コンクリートから人へというのが逆流をしているというのは大変残念なところであります。

 そしてもう一つ、雇用でいえば、お伺いをしたいのが、総理が先日の予算委員会で、山井議員の質問で、解雇する際の金銭解決について、これを導入はしない、そういう考え方はないというふうにおっしゃられたということなんですが、これは事実でございますか。

安倍内閣総理大臣 安倍内閣の基本方針は、成熟産業から成長産業に円滑に人材が移動する、失業なき労働移動の実現であります。こうした労働移動を実現する観点を踏まえ、三月二十八日の本委員会では、金銭を払えば解雇できるという制度の導入は行わない、こう申し上げたわけでございまして、厚生労働大臣も四月一日の委員会で同様の趣旨で答弁をしておりまして、そごはないというふうに思います。

 他方、それ以外の制度の検討については、三月二十八日の委員会で私は否定はしていないわけでありまして、現在、産業競争力会議や規制改革会議の場で、それぞれの設置目的に沿って、さまざまな観点から自由闊達に議論をいただいておりますが、諸外国の制度の状況や関係各層の御意見など、さまざまな視点を踏まえながら、その適否を含めて検討していくことになると考えております。

 いずれにせよ、労働規制の見直しについては、これにより労働移動が円滑に行われるという見解がある一方で、多くの勤労者が賃金によって生計を立て、雇用を通じてさまざまなつながりを形成しているということを踏まえれば、労使間で十分に議論が尽くされるべき問題である、このように考えております。

長妻委員 ちょっとわかりにくいんですが、それ以外の制度は検討するという、それ以外の制度の中身なんですけれども、事前に手切れ金のような形でお金を渡して首にする、これはしないということだと思いますが、事後的には、総理が言っている、しないということではなくて、事後的の金銭解決というのは検討状況だ、こういうことなんですか。

安倍内閣総理大臣 四月一日の予算委員会において田村厚労大臣は、私の雇用法制についての答弁は、金銭を払えば解雇ができるという、いわば事前型の制度は一切考えていないという見解を示したものという認識を示していますが、そのとおりでございます。

長妻委員 そうすると、事後の金銭解決は検討中ということですか。

安倍内閣総理大臣 なお、解雇無効となった場合に、事後的に金銭の支払いにより労働契約の解消を申し立てるという制度について今質問されているんだろうと思いますが、この前の審議においては、私は、そのことを含めてはいないということでございます。

長妻委員 前回、山井議員がはっきりとそのことも含めてというふうに質問したと思うんですが、今、総理の御答弁、私は、ちょっと変えた御答弁なのかと。

 私自身はやはり、北欧諸国でもそういうような考え方の制度はありますが、当然、それを前提として、かなり周りの制度、例えば失業者に対して職業訓練が非常に手厚い、あとは失業対策、失業手当についても、日本と全く違う、非常にトランポリン型の制度があった上でのそういう議論があると承知をしておりますので、これについてはさらに詰めていきたい。

 それだけ突出して出てくるということに私は強い違和感を、しかも、労働法制を議論する場でなくて、競争力強化ということでそれがイの一番に出てくるというのに非常に違和感があるということを申し上げておきます。

 そして、総理にお伺いしたいのが、年金記録問題であります。

 第一次安倍内閣でも私も質疑をさせていただきましたが、私は、あのときからずっと非常に気になっていたことがありました。

 それは、この年金記録問題については、いろいろな自民党の方が、自爆テロだ、こういう発言をされておられるわけでありまして、どういう意味なのかというふうに非常に不可解に思ったところでございます。

 安倍総理も、いろいろな報道であるんですが、共同通信では、二〇〇七年の七月二十三日で、安倍晋三総理大臣も遊説で、自爆テロによる改革妨害などと批判をしていると。あるいは、昨年のダイヤモンド・オンラインの安倍総理というインタビューを見ますと、三月十五日のものですが、社会保険庁を解体しようとしたら、彼らしか知らないはずの年金問題が、まるで自爆テロのようにどんどん明るみに出てきた、こういうお話をされているんですが、これはどういう意味でございますか。

安倍内閣総理大臣 あのとき、確かに、いわば社保庁を解体していくという方針を定めた後、十分に厚生労働省も把握をしていない、もちろん我々も把握をしていないさまざまな情報等がどんどん漏えいしたのは事実であります。

 例えば、これはあってはならないことでありますが、さまざまな個人の年金記録に対する閲覧が行われていたのも事実であります。私に対しての閲覧も行われていたわけでありまして、そうしたものが流出したのは事実ではないか、このように思います。

長妻委員 年金記録問題が自爆テロということは責任転嫁みたいな話で、これは当時、自民党が、安倍総理も国会で、不安をあおるなという御発言もあったり、我々がもう何年もかかって、すぐ出てきたわけではありませんが、一つ一つ調査をして、そして明らかになった。明らかに、役所も自民党も、そういう情報は隠そう隠そうという意図が非常に強かったわけであります。

 今おっしゃった閲覧、個人の記録についての漏えいというのは確かにありました。これは年金記録問題と関係のない話でありまして、年金記録問題が自爆テロだという発想に今も立っているとしたら、年金記録問題の本当の解決にはつながらない。いや、役所が自分を追い落とすために云々みたいな話をずっと思われているとすれば、これは国にとっても不幸なことだと思いますので、そこら辺は総理、いかがでございますか。

安倍内閣総理大臣 年金記録問題の解決は、いわばあのときに、安倍政権のときにですが、確かに長妻委員が質問されたということも大きかったと思います。これは私も認めるところであります。

 それから安倍政権においても努力をする中において、社会保険庁の対応というのは大きな問題があったという中で、社会保険庁の解体を決めるということを決断したわけでございますが、しかし、あのとき、印象としては、つまり、中からしっかりと正規のルートを通って我々のところにこういう問題があるということが告発されるわけではなくて、いきなりマスコミにそれが出ていく。つまり、我々も知らない間に出てくるということについて、この組織は一体どうなっているんだろう、こういう疑問を持ったのは事実であります。

 いずれにせよ、大切なことは、まだこの年金記録問題は終わったわけではない状況の中において、多くの国民の方々にぜひ問い合わせをしていただきたい、こう思うところでございます。

長妻委員 これはもう正規のルートでというか、こういう問題というのは、ただ君たち大丈夫かと聞いて、すぐに上がってくるんじゃないんですよ。当時、社会保険庁は非常に隠蔽体質があって、いろいろな角度から捜して、そして出てきているので、自爆テロみたいな話に矮小化をすると、というのは、何でこういう質問をするかといいますと、総理も、最後の一人に至るまで徹底的にチェックをして、そして全てお支払いをするということはお約束したいと思いますというのを国会でも言われておられる。

 そして、我々も努力いたしまして、今現在でいうと、一千三百二十四万人もの方の記録が戻りました。国民の皆さん十人に一人。戻った年金額、生涯額で一・七兆円、少なくともお戻しをいたしました。

 こういうことをやってもなかなか、全て一〇〇%というのが難しいというのは我々も前から申し上げているところなんですが、しかし、この……(発言する者あり)ちょっと伊藤達也さん、うるさいです。ちょっと静かにしてください。

 我々、第三者年金記録確認委員会という、総務省の年金記録を確認する委員会が総務省からなくなって雲散霧消してしまう、こういう動きが今政府の中にもあるというふうにも聞いておりますし、私どもも活用させていただいた年金記録回復委員会、これは厚生労働大臣の直属の組織だったんですが、これが審議会の孫の小委員会に格下げをされて、一部役所の方の話によると、これでコントロールできるからいいんだという声まで聞こえてくるので、非常に後ろ向きではないかと懸念をしておりますので、最後の一人までというのは、これは安倍総理、今もそういうお考えは変わりないんですか。

安倍内閣総理大臣 当然、その考え方には変わりはございません。

 そして、今おっしゃった年金記録回復委員会については、その根拠や所掌を明確にするために、法に基づく厚生労働省の審議会に有識者による新たな委員会を設置したものであって、位置づけを低くしたという指摘は当たらないということは申し上げておきたいと思います。

長妻委員 それは審議会の孫につけた、役所から上がってきた一つの話なんですね。それは、建前としてはそういう理由ですが、大臣直属の諮問機関の方がはるかに今まで年金機構ににらみがきいていたわけで、これで何とかガバナンスが保てていた部分があるので、ぜひ総理、孫委員会になってそれが鈍らないように注意をしていただきたいと思っております。

 そして、最後に、生活保護についてのお話もちょっとお伺いしたいと思うんですが、その前に、質問通告もしておりますけれども、情けは人のためならずという言葉があります。これは、日本国民の半分の方が間違った解釈をされて、半分の方が正しい解釈をされているという言葉なんですが、これについて、総理、どうお考えでございますか。

安倍内閣総理大臣 情けは人のためならずも含めて、割合と間違って、誤解されている。私は役不足というのを間違って使う人も非常に多いんですが。

 そこで、質問通告がございましたので調べたところ、世代で随分この理解度が違うということがわかりまして、やはり六十歳以上は理解度が高いということでございました。

 日本にはもともと、ともに助け合う、何度も繰り返すようでありますが、村の農耕社会において、もし病気で困った人が出れば、みんなでお米を持ち寄って助け合った、そういう古来からの麗しい日本の国柄というものがあるわけでありまして、その中から生まれた言葉なんだろう。そういういわば感覚を共有できる人たちの中においては、十分この言葉の意味は理解されていたのかもしれない、こんな思いでございます。

長妻委員 今、正しい使い方のお話がありましたけれども、今、日本国民の半分の方が間違った解釈をされているというのが調査であるんです。間違った解釈というのは、情けを人にかけると、その人にとってよくないから、余りかけない方がその人の自立を促すことにつながるという、これは間違った解釈なんですが、正しい解釈というのは、情けは人のためならずは、情けを人にかけると、回り回って自分もそれはプラスになるんだ、助けられるんだ、こういう発想であります。

 これは、私は今の世相をあらわしているような気がしてならないわけでありまして、結局、格差論にもつながるんですけれども、人への投資の格差というのは、その人がお気の毒だからやるのではなくて、やはり回り回って、社会の基盤をつくって、経済成長の基盤をつくって、社会全体も強くしていく、この観点が安倍総理から余り聞かれないので、格差ということについても、ぜひ、拡大をさせないという強い決意を持って運営をしていただきたい。

 これはピューリサーチというアメリカの調査NPOなんですけれども、これも非常に考えさせられるんですが、政府は自分で生活できない人を救うべきではないという人の割合、国際調査なんですが、日本は先進国の中でも非常に高くて三八%、アメリカが二八%、フランス一七%、イギリス八%、ドイツ七%ということで、安倍総理がよく言われる、日本のよき文化、助け合う、そういう考え方というのがだんだんと希薄になって、国が全部お助けするわけにはいかないので、やはり地域の支え合いというのも、これはGDPにはあらわれない指標でありますけれども、そういうものも育んでいくというようなことが大変重要だと思います。

 最後に一問だけ。

 そういう意味で、格差を今よりも拡大させない、これは私、本当に心配しているんですね、アベノミクスで。それについて、安倍総理の決意を最後に聞かせていただければ本当にありがたいと思うんです。

安倍内閣総理大臣 格差については、これはまさに、日本というのは、水を分かち合い、お互いに協力をして、汗を流して、田畑を耕して、一緒に五穀豊穣を祈ってきた国でありますから、そういう国にふさわしい市場主義、資本主義があるんだろう。瑞穂の国にふさわしい姿、麗しい姿を守っていく上においては、いわば格差がなるべくない社会の方が当然いいわけでありまして、つまり、ウイナー・テークス・オールをよしとする社会ではないということは、はっきりと申し上げておきたいと思います。

長妻委員 これで質問を終わります。ありがとうございました。

山本委員長 この際、原口一博君から関連質疑の申し出があります。前原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。原口一博君。

原口委員 民主党の原口一博です。

 きょうは、日銀の総裁、副総裁、それから安倍総理、麻生元総理がおられて、アベノミクスの主役がそろっておられますので、後で少し経済全体についてお話をさせていただきたい。

 ちょっと質問の順番を変えますが、まず、文科大臣に来ていただいています。成長戦略について、総理と少しお話をしたいと思います。

 私は、総理が発案をされたデリー・ムンバイ構想、インドですね、あれは十兆円のコリドー構想、これを一緒に進めてきました。政権交代前に皆さんがやってこられたことも、私たちは積極的に引き継ぎました。

 その中で、規制改革。規制改革は、社会的規制は、僕はここは強化だと思います。そして、経済的規制はむしろ自由にしていく。そういう意味で、幾つかのビッグプロジェクト、今進んでいるものについて少し伺いたいと思います。

 日本の繁栄と世界の貢献を考えると、世界の未来を先取りしたような国家プロジェクト、これは小柴先生のお話もありますけれども、宇宙の起源を調べる、まさにビッグバンからいろいろなものを導き出すという国際リニアコライダー構想というのが進んでいます。

 これは、新たな投資をし、研究基盤を形成する観点からも重要であると思いますが、国際リニアコライダーといっても、なかなかわからないんですね。文科大臣、テレビをごらんの方に、これはこんなものだよと御説明いただけますか。

下村国務大臣 お答えしたいと思いますが、原口委員から事前に、三十秒以内で答弁するようにという話が来ておりますので。

 国際リニアコライダー計画は、全長約三十キロメートルの線形加速器を地下約百メートルに設置し、電子と陽電子を光速に近い速度まで加速し衝突させることで、宇宙の始まりに匹敵する極めて高いエネルギーの状態をつくり出し、宇宙創成の謎を解明することを目的とした、素粒子物理学分野における大規模な学術研究の構想であると承知しております。

原口委員 三十秒きっかりでした。ありがとうございます。

 これは、日本に対して大きな期待が集まっています。前、ITERのときは引き合いました。誘致競争でした。しかし、総理、これはもう時間がないんですね。政府の腰を定めてやるんだという御決断は、この内閣でやっていただきたいんです。総理の御見解を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今、下村文科大臣から御説明をさせていただきました。

 なかなかこれは難しいんですが、一回説明を聞いてもわかりにくいところはありますが、ただ、小柴先生初め、日本の多くの物理学者、科学者は、これはまさに日本に置くことによって、世界じゅうから多くの科学者、トップレベルの科学者が集まる、これだけでそこからさまざまなイノベーションが生まれてくるのではないかという話でございました。

 しかし、他方、巨額の経費を必要とするということにも留意する必要がありますが、政府としては、まずは、研究者レベルでの国際的な設計活動の進捗状況を見定めながら検討していきたいと思います。

原口委員 これは、この国会でその答弁なんですよ。次で結構ですから、一歩前に進めてください。

 それから、私たちがやったことで、今、安倍政権で引き継いでくださっている。この間、デフレが進みました。先ほど山本委員がお話をされたように、経済のイノベーションが進み、経済成長がやってくる中で、やはり技術が進むとそれはデフレ要因なんです。若い人たちが、夜遅くまで一生懸命頑張って今の日本を支えてくださっています。そういう意味で、生産性を上げていく。

 先ほど、情けは人のためならずというお話がありましたけれども、お互いがお互いを支え合う教育、これは、未来の学校というのを私たちは提案しました。これを安倍政権でもさらに広げていただいて、麻生元総理とはICTのことで議連をつくっていました。情報通信を中心にして日本の未来を開くというのは極めて大事だと思います。この予算の中でも入れていただいていますけれども、このことについて、さらに拡大してほしい。大体、今入れていて、八年ぐらいかかるんですよ、それぞれの学校全部に入るために。

 この間、ある沖縄の市から、尖閣に近い市からある報告が来ましたけれども、子供たちの学習意欲それから学習成果、飛躍的に上がっています。スピードアップしていただきたい。総理から前向きな御答弁をいただきたい。

安倍内閣総理大臣 安倍内閣で進めております教育再生は、世界トップレベルの学力を身につける機会を保障していくということでもございます。その際、ICTの活用については、子供たちにとってわかりやすい授業や、子供たちの主体的な学習活動の実現に資するものと考えております。原口大臣も総務大臣として積極的に取り組んでおられたということは承知をしております。

 政府としては、現在実施しているICT活用に関する実証研究の成果も検証しながら、引き続き、その活用を積極的に推進していく考えでございます。

原口委員 これで成長戦略については二つ伺いました。

 きょう、日銀総裁、副総裁にお見えいただいています。お忙しい中、ありがとうございます。

 これは決意を示された、二年で二%の物価安定目標を定める。私たちもこれは大事だと思っています。では、この中身について少し伺いたいというふうに思います。

 まずは、これは副総裁にお願いしたいんですけれども、私が、ちょうど一カ月前ぐらいですか、当時の、前の執行部とお話をしたときに、日銀のバランスシートが今幾らあるか、そのうち国債が幾らあるか、そして、一%長期金利が上がると日銀の含み損、十年国債を平均にしてで結構ですけれども、どれぐらいになるかというお答えをいただきました。あれから新しい執行部になりました。黒田総裁のもとでさらに日銀のバランスシートがどのように変わったか、副総裁、質問に答えていただきたいのと、国債の割合はその後どうなっているか、現状を教えてください。

岩田参考人 黒田日銀で、量的緩和とか、きちんとまだ進めておりませんので、これからなので、今のところ、そんなにバランスシートが大きく変わったということはなくて、白川体制のもとでの、二月で少しふえているという状況です。

原口委員 百六十五兆円のバランスシート、国債が百二十五兆円、一%長期金利が上がると含み損は二・三兆円減るという一カ月前の答弁でいいという理解でしょうか。

 私が伺いたかったのは、総理、実は黒田総裁になって、日銀は当座預金残高を非常にふやしているんですね。今、五十九兆円ぐらいにふやしているというふうに思いますけれども……(発言する者あり)ありがとうございます。何か日銀の補助員のような方が答えてくださっていますけれども、いかがですか。新執行部になってふえているでしょう。

黒田参考人 今手元にありますデータは三月二十二日のデータですが、当座預金残高が四十四兆ぐらいですが、御指摘のように、現在さらにふえておりまして、五十兆円台になっておると思います。

原口委員 山本代議士は五十七兆円と一番新しい数字を言ってくださいました。それぐらいふえているんです。もう実際に動いているわけです。だから、最初はアゴエコノミクスとか、あるいは気合いインフレターゲットと言われていましたけれども、もう気合いじゃないんです。実際に金融緩和が進んでいるんです。

 そこで、ちょっとこのパネルをごらんになってください。黒田総裁、岩田副総裁の御発言です。これは、覚悟を決めたんだ、だから、二年やって二%上がらないと、最高の説明責任である辞任ということを口にされたんだということでよろしいでしょうか、岩田副総裁。

岩田参考人 二年をめどに二%を達成するというのは、今、お約束というか、そういうめどでやっていくということを申し上げているので、それができなかった場合、まず説明責任をとりたいというふうに思います。

 それで、その上で、説明責任が自分としてとれなかったというときには、やはり最高の責任のとり方は辞任だという考えには変わりありません。

原口委員 先ほど少し申しましたけれども、私は、副総裁、それを責めているんじゃないんですよ。二年で二%という、では、この二%というのは一体何なのか。CPIなのか。

 きのうも、いい物価上昇、悪い物価上昇という議論をしましたけれども、このCPIだけだとそれはわからないんです。私は、指標はコアコア指数にすべきだ。つまり、為替の影響であるとか、来年消費税がこのままでいけば上がる、十月には一%年金は下がる、そして、この新年度から、たくさんの公共料金を初め、多くの国民の皆さんの負担は上がっています。その中で、では、自然に上がる物価、社会的要因や為替要因によって上がる物価ではなくて、それを除いたコアコア指数でやるべきだと思いますが、どちらでも結構ですから御認識を伺いたいと思います。

黒田参考人 御指摘のように、コアコア指数で見た方が短期的な影響を捨象できるという面では、そのとおりだと思います。具体的には、例えば米国のFRBなどはそれで見ているようでございます。

 ただ、問題といたしましては、そうしますとカバレッジが相当低くなりまして、三分の二ぐらいになってしまうと思います。

 そういった点も踏まえていくと、しばしば私どもが言っております消費者物価指数の中では、生鮮食品を除いたベースで見ることが多いわけでございます。その場合はカバレッジも九割以上になりますし、それから、生鮮食品の価格の動きというのは趨勢的な物価の動きとは相当離れておりますので、そこで見るということが多いわけでございますが、委員御指摘のように、コアコアといいますか、エネルギーと食品を除くベースの指標も重要であり、そういったものもあわせて見ていくということになると思います。

原口委員 前向きの答弁をいただきました。

 つまり、今まで私たちが見ているデフレの指数というのも、その中にはいろいろな数字のマジックがあるんだということも国民にわかっていただきたいし、これをごらんいただいている国民の皆さんは、実際に自分の生活はどうなるんだと。もう来年の給料が下がると決まっている人たちもいますね。あるいは、年金も下がるという人たちもいる。でも、それを押してでも、いわゆる好循環を広げていくんだと。

 そこで何が起きるかということを少し議論したいと思います。

 この黒田総裁のコメントをごらんになってください。できることは何でもやるというスタンスだ。つまり、二%の、今おっしゃったコアコアも含めて、物価目標の実現に向かって最大限の努力をするというふうにおっしゃっています。

 REITについてもお話がございました。REITは、ちょっと前は三・五兆円ぐらいの市場だったのが、総理、もう七兆円ぐらいになっているんです。REITを買い上げて、そして直接日銀がさまざまな企業にお金を回すというのは、それは悪いことじゃないです。

 ただ、これも伺いたいんですが、副総裁で結構です。今、日銀が持っているREITの額というのはどれぐらいですか。

岩田参考人 REITの額が約一千億円ということであります。

原口委員 お聞きになったとおりです。

 先ほど私は国債が百二十五兆と言いました。それに対して、REITのマスは一千三百億ですね。これはトリプルAまでを買い入れるということにしているからです。つまり、何でもやるといいながら、後の財政の話に行きますけれども、やはり基本は国債なんですよ。

 そして、私は、民間でやるべきことは民間でという、どこかのフレーズにあったけれども、あれは正しいと思います。国が、あるいは日銀が小さな市場に大きな力を入れると、官製市場が生まれるからです。

 株価がこの間、安倍政権になってから四割上がりました。これはいいことです。閣僚の中には四千万とかこの間利益を受けた方もいらっしゃるという報道に接しましたけれども、それは悪いことじゃないんです。よく株でもうかると悪いとかいうのは、資本主義社会ではおかしな話です。麻生副総理を見ていると、随分もうかっただろうなと思います。だけれども、それをここで責めているんじゃなくて、その富が国民全体にいかに行き渡るかということを考えなきゃいけない。

 今回も、実はこの株価上昇の中身を見てみると、総理、ほとんど外人買いなんですよ。私がちょっと気になるのは、アメリカの論文を読んでいると、ヘッジファンドの周辺の人たちが似たようなことを言っているわけです。私は、アベノミクスが悪いと言っていません。日本には新たな次元が必要です。しかし、誤ったことをやってしまうと、一部の人間だけが得をして、外人買いで上がってきたものが、あるときぱっととまって、引き揚げられるということも警戒をしておかなきゃいけないということだけは言っておきます。

 これをごらんになっている方に、私は経済に水を差す気も全くないし、ただ、今まで正の部分を言ってきましたけれども、私たち野党としても、厳しい部分についても言っておかなきゃいけない。

 麻生副総理に伺います。

 麻生総理のときは、インフレターゲット論にやはりちょっと慎重でしたよ。そして、さっきも何回も答弁されているように、お顔を見れば大体心の中はわかりますけれども、これだけのことをやったことはないんだよなというのを何回もおっしゃっています。慎重だったには慎重だった理由があるはずです。安倍総理の方針にたがえろと言っているんじゃないですよ。慎重だった理由をおっしゃってください。

麻生国務大臣 日銀が金融を緩和させたというのは、小泉内閣のときでも、二十兆、二十五兆、三十二兆ぐらいまでいきましたかね、三十五兆ぐらいまでだったかな、緩めたことがあったんですが、原口先生よく御存じのように、日本銀行がお金を出すということは、市中に回る手前の、市中銀行に日銀当座預金がふえるというだけのことです。別にお金を刷っているわけじゃありませんから、そこにお金がある。

 問題は、そのお金が、誰か、ハラグチ工業がそこにお金を借りに来て、アソウ誰々がそこに金を借りに行って、そこから金が引き出されて初めてマネーサプライとして市中に出回る。それが、過去の場合は、残念ながら第二、第三の矢はあのときは出されませんでしたので、私は閣内で反対した方だったので非常に記憶があるんですけれども、当時、残念ながら私の力足らずで第二、第三の矢に行けませんでしたので、今回は第二、第三の矢を含めて三つ一緒にやると言われるから、マイナスからプラスにするだけでも大変なのに、プラスの二%というインフレターゲット。

 ターゲットという以上は目標ですから、上を超したらそれは切ればいいだけのことなんですけれども、正直申し上げて、高いのを二%に抑えるというインフレターゲットは世界にありますけれども、マイナスをプラスにするインフレターゲットは世界初ですから、これは非常にいろいろな、デフレマインドとかいろいろな言葉が使われておりますけれども、その気持ちが変わるのが大変だろうなという感じが率直にいたしますので、原口先生御指摘のとおり、極めて慎重に、これは簡単に安受け合いできぬなと思って、第二、第三の矢の担当をする、第二の方を特に担当する私どもとしては、極めてこのところを積極的にやらないかぬと思っております。

原口委員 極めて正直にお答えいただいたと思います。ありがとうございます。

 それで、ここに日本銀行百年史第四巻。先ほど、これも山本委員がお話しになりました。「本行百年の歴史における最大の失敗であり、後年のわれわれが学ぶべき深刻な教訓を残したものといえよう。」これをどう判断するかなんです。

 今、ECBもFRBも、物すごい勢いでバランスシートをふやしています。だから、日本銀行だけがバランスシートをふやさずに、また、今、麻生元総理がおっしゃった金融のチェーン、それが切れたままだと、かえって副作用の方が多いわけです。

 日銀総裁、私もこれまで、速水総裁あるいは福井総裁、白川総裁と、ここのことについてしっかりと議論してきました。非常に保守的なスタンスでした。通貨の番人です。この時代と今と違う理由、そして、国債、何でもやるとおっしゃっている、その整合性について黒田総裁に伺いたいと思います。

黒田参考人 戦前の教訓から、現在、日本銀行が国債を直接引き受けるということは禁止されております。

 そういった中で、金融政策の一環として長期国債の買い入れを行う、これによって金融緩和を行うということは、あくまでも金融調節上の目的で自主的に行っているということでございまして、戦前の国債引き受けとは全く異なっているというふうに思います。

原口委員 初めてこの国会で日銀総裁からそういうお答えをいただいたと思います。ここはとても大事なんです。つまり、日銀は政府の財布には絶対にならない、この矜持を私たち国会議員も持たなきゃいけない。

 それで、これがGDPデフレーターの推移ですね。

 これも副総裁に伺いたいと思いますが、過去、一九八〇年代以降、二回にわたって、私が知る限りですよ、二%以上の物価上昇というのがあったわけです。一つが八〇年代、それからもう一つが、このデフレーターの中にもありますけれども、私たちの政権も、よく、おまえらは何にもやらなかったと言われますけれども、私たちの政権でも金融緩和をお願いし、そしてGDPデフレーターは半減したんですね。もう、どっちがどうだとは言いません。マインドを変え切ったのは安倍総理ですから、それは大したものですよ。

 ただ、ここで、その物価上昇の中身。副総裁に伺いますが、八〇年代の物価上昇と、それから二〇〇八年、これも二%上がっています。この二つの物価上昇二%の違い、そこで起きたことの違いは何だったでしょうか。

岩田参考人 二〇〇八年で一回なったというのは、原油高が大きな影響があったというふうに思います。

 八〇年代のはちょっと私、手元にないんですけれども、その時代は、ある程度景気がよくなっているということが反映しているんだというふうに了解しています。

原口委員 八〇年代と二〇〇八年の物価上昇の違いを見きわめるというのはとても大事です。歴史の教訓に学ぶ。八〇年代は、消費者物価指数も上がっていますけれども、それ以上に賃金が上がっているんです。二・八%賃金が上がっている。二〇〇八年は、マイナス一・一%と賃金が下がって、今副総裁がおっしゃったように原油高で逆に物が上がっていますから、国民のいわゆる使えるお金というのは減ったわけです。だから、私たちは、どっちの物価安定に持っていくかというのは極めて大事だというふうに考えています。

 そういう意味で、これも伺いたいんですが、先ほど失業率についての質問がありました。ここで、説明責任を果たすとさっきおっしゃっているから、賃金上昇率はどれぐらいを目指して物価上昇をさせようとされているのか、そこについてのお答えを、これはどなたから得た方がいいんでしょうか。黒田総裁、お願いします。

黒田参考人 日本銀行は、二%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するということを目指しているわけでございますが、その過程で、経済が持続的に成長することで企業収益とかあるいは雇用、賃金の増加を伴いながら、つまり、国民生活が豊かになる状況で物価上昇率が徐々に上がっていくという好循環をつくり出していくことが大変重要だというふうに思っております。

 したがいまして、物価だけ上がって賃金が上がらないというようなことは望ましくないと思います。

 ただ、具体的な賃金の上昇率につきましては、物価動向だけでなくて、労働生産性の動向などの影響も出るために、日本銀行としては、具体的な賃金上昇率の数値を念頭に置いたり、あるいは目標にしたりしているということはございません。

原口委員 さっき麻生財務大臣がお話しになったように、やったことのないところに乗り込むためには、やはりそれなりのロードマップと、どこで何をやればいいかという慎重な数値目標、これが私は必要だと思います。先ほど前原委員が指摘をされましたけれども、ぜひそれをつくってください。そうすると、これをごらんの方も、いやあ、安倍内閣の閣僚は大もうけしたけれども自分たちには関係ないよ、そう思われるのが僕らには一番よくないんですよ。

 そこで、少し伺いたいと思いますけれども、これもさっき山本委員が、まあ、私の質問の前払いをしてくださるようなすばらしい質問をしてくださったんですが、現実に物価上昇をして、そしてそれがハイパーインフレになるというのは、私もおかしいと思います。

 ただ、今、日銀総裁がお話しになったように、まずは手元の資金を投資に使う、投資に使ってマネーのスピードが速まってくると、今度は銀行貸し出しも上がってくる、そして好循環に回ってくるとすると、やはり経済成長を前提とした物価安定なんですよ。

 だとすると、ちょうどこれは二十三年ですね、二十三年に、金利上昇の財政に与える影響ということを、これは財政審議会が当時の財務大臣、二十三年ですから安住さんだと思いますけれども、安住さんに出しているものです。

 これはとても大事なので、少し読み上げます。名目成長率が上がると長期金利も上昇する傾向、日本だけではなく、国際的にも同様の傾向だと。そのとおりですね。これは事実を言っているだけです。そして、さっき前原さんは四%の実質成長の話をされましたけれども、名目成長率が一%に対し長期金利が〇・五五上がると仮定した場合、税収増は国債費の増を下回るために、財政悪化要因となるという見込みだと。

 これは、麻生財務大臣、財務省が増税するときによく使う理屈に使われたというのもありますよ。伊藤代議士がそのとおりだと言っています。

 だけれども、それでもこれは事象なんです。国債に順次借りかえが進むことにより、税収増と国債費の増の差額は年を追って拡大する。各国もそうです。この黒の線と青のドットを見てみると、名目成長率と長期金利の関係を見ると、長期金利が名目成長率を上回っている場合が多い。二百十回のうち百六十四回が上に上がっている、これは事実です。

 この事実はやはり謙虚に受けとめなきゃいけないというふうに思いますが、財務大臣、お答えをいただきたい。

麻生国務大臣 これは、御指摘のこの報告書というか、あれにおきましても、金利上昇による国債費の増というもの、成長による成長増を上回るという結果を示したものだ、私ども、そう承知をいたしております。

 その上で、名目成長率と長期金利の関係というのは、これはさまざまな政府の取り組みとか、市場、マーケットの反応でいろいろ違ってくるんだと思いますけれども、一概に述べることは困難なんだとは思いますけれども、少なくとも、経済成長だけ、いわゆる名目成長が伸びるとか、そういった経済成長だけでは財政健全化はなかなかできないということは、私どもも同様な認識を持っております。

 したがいまして、経済成長をしながらも、先ほど御指摘のありましたように、社会保障と税の一体改革とか歳出の合理化とか、いろいろなもので中長期的な財政の健全化というものをきちんと取り組んでいくことが必要なんだと思いますので、そういうことをしていかないと思わぬ金利の上昇を招くことになる。

 確かに、この二十年間、かつて二百兆円ぐらいだったあれが千兆円にもなって、金利は逆に三・五から〇・五まで下がるというのを想像した人はどなたもおられないと思いますけれども、それでも、そういったこれまでの例を見るまでもなく、我々としては、常に金利が上昇するということは極力抑えておかないと、財政としては厳しいことになるということだけは頭に入れて対応せねばならぬと思っております。

原口委員 だから財政再建が必要なわけです。厳しい歳入見積もりと徹底した歳出縮減、これとあわせないと、幾ら何でも物価安定そのものが長期金利にはね返らないといいながら、さっきのメカニズムを申し上げました。成長が進めばやはり長期金利は上がってくるんです。

 私は、長期金利が上がることは、将来的には大事なことだと思います、今はお金が、逆に言うと失業しているわけですから。年金を銀行に預けていてもそれは利子を生まないというのは、どう考えても厳しい話です。

 ですから、長期金利が上がるんだということをもとにしながら政策決定をしていくということが大事だと思いますが、安倍総理の基本的な御認識を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 基本的には原口委員と同じでございます。

 今、表としてお示しになられたあのグラフは、常にいつも財務省の方が持ってくる資料でもございますが、しかし、それはファクトでもあるわけであります。

 ただ、一方、あの表を見て誤解してはいけないのは、だったら名目成長してもしようがないじゃないかということになってはならないわけでありまして、名目成長をふやしていくことによって全ては解決をしませんが、他方、しっかりと名目経済を成長させていくという精神を失ってはならないと思います。

 そもそも、長期金利と名目金利が同じであれば、いわばGDPをふやしていけばGDPに対する絶対額は減っていくということにもなるわけでございまして、そういう観点からもしっかりと経済を成長させていく、名目経済を成長させていく。名目経済を成長させていくためにはデフレから脱却をしていく必要がありますが、同時に、不断の行政改革努力、歳出の適正化の努力は行わなければならない、このように思っております。

原口委員 残った時間で、少し金融についてお話をします。

 先ほど麻生財務大臣が少しお話しされましたけれども、では、この間の金融緩和、私たちもやってきました、それによって銀行の貸し出し態度というのはどうなっているのか、現状を教えてください。

麻生国務大臣 金融機関の貸し出し態度ということだと思いますが、日銀の短観によりますと、中小企業を含めてリーマン・ショック以降は改善にあるんですけれども、貸し出し態度の判断のいわゆるディフュージョンインデックス、DIは、現状はプラスとなっておりますけれども、なかなか金融機関としてもいま一つ自信がないというところ、経済の成長等々に自信がないからいま一つ貸し出し態度がちょっと迷っているぐらいのところかなという感じがいたしております。

原口委員 そのとおりで、DIは少し上向きだという数値も目にしていますけれども、現実には貸し出しはふえていないですね。むしろ横ばいなんです。

 そこで、この三月で中小企業金融円滑化法が打ち切られました。法施行されたのが二十一年十二月からですから、二十三年末までに九割強に当たる二百二十八万件の返済条件の申し出が応諾されて、そして、円滑化法は中小企業の資金繰りの安定にある一定の役割を果たしました。しかし、いつまでもこれをやるわけにはいかないので、ここから先です。

 ここから先が大事で、限られた時間で幾つか提案をしたいと思います。

 金融庁は、円滑化法終了後の円滑化法適用中小企業の経営改善のために、出口戦略として、金融機関コンサルティング機能の強化と言っていますけれども、これで餌食になっている人たちも結構いるんですよ。

 例えば、これはある関東圏の企業ですけれども、スキーム構築料という名目でA銀行に二千七百万円ものコンサルタントフィーを払って新規事業に参入した優良企業でした。しかし、その銀行から新規事業に参加しなさいと言われて参加して、多額の借金を負わされて経営破綻に追い込まれました。スキーム構築料を支払ってくれれば事業内容などについても調査するということだったので、A銀行が言うことだったら間違いないということでやったわけですけれども、現在は九億円の返済を求められ、そして会社社長の自宅は競売にかけられています。

 本当にひどいと思うんですよ。真面目に頑張っている人たちにこういうことをしています。

 また、金融庁は円滑化法指針において債務整理が必要な企業に言及していますけれども、どれぐらいが債務整理が必要だと考えているんでしょうか。

 あの平成七年の阪神大震災で神戸にあった本社ビルが倒壊してしまった会社が、一生懸命頑張って頑張って頑張ってやってきて、またこれも、銀行による円滑化法の返済条件の見直しを求めたんですけれども、拒否されて、結局、会社の存続が困難になる。

 こういう事例が相次いでいます。私は、ここにしっかりと手当てをしていかなければいけないと思っているんです。

 また、これは都内のインテリア会社ですけれども、これはB銀行ですね。会社社長の連帯保証と会社所有の事務所の担保を提供させられたために、昨年末にB銀行から会社事務所の競売を申し立てられました。しっかりと利益も上げているんですよ。にもかかわらず、結局、会社事務所が使えませんから、もうこれで廃業せざるを得ない。

 会社経営者の連帯保証とは、そもそもこういうケースの場合は違うんですから、連帯保証の責任を軽減させるべきだし、安倍総理、アメリカが、いわゆるサブプライムローンのときに、彼らは二回試行錯誤しています。

 一つが、これは最初に銀行にオフバラ化を求めました。だけれども、銀行も、何かのインセンティブがないと貸した企業に対してオフバラ化しないんですね。BIS規制でいうと、国債を持っておけば、麻生金融担当大臣、自己資本に関する国債ウエートのリスクはゼロでしょう。ゼロですよね。御答弁をいただけますか。

麻生国務大臣 今おっしゃいましたように、基本的にゼロです。それでよろしいんだと思います。ゼロです。

原口委員 ゼロなんですよ。つまり、日銀と銀行の間でこうやってお金をやりとりする限りにおいては、彼らはリスクはない。それに対して、一生懸命働いている人たちは、自分の連帯保証というリスクや、家や土地を担保にして頑張っているわけです。僕は、この構造を変えることこそが日本の再生の一番のところだと思います。

 それで、アメリカにモデルがあります。これは二〇〇八年のホープ・フォー・ホームオーナー・アクトというんですけれども、アメリカは各銀行に対してオフバラ化をお願いした。そこに、銀行にオフバラ化のインセンティブを与えていくわけです。

 今、日本の中を見てみると、復興を頑張っている人たちもまだ二重ローンの問題で苦しんでおられます。私は、復興銀行構想というのを出させていただいて、そして銀行にインセンティブを与えて、その中で、債務超過の部分、債務の過剰部分を企業の一生懸命頑張っておられる方々のバランスシートから外す、そのための施策を提案しています。

 ぜひ、この過剰債務問題ということ、これからお金の回りが速くなっていきます。だけれども、ある意味では、先ほど長妻議員が指摘をしたように、格差にもつながりかねません。本当の意味での好循環を国民全体に行き渡らせるためには、まずはロードマップをつくり、そして、今私が申し上げたようなリスクの部分は何だと、転ばぬ先のつえをしっかりとつくっていくことが大事だというふうに思いますが、総理に、金融担当大臣に伺った上で結構ですから、そういう市中にお金が回る仕組みについて、これも超党派で話し合おうじゃありませんか。

 委員長にもお願いしますが、今の金融、現下の問題はぜひこの委員会でも集中審議をしていただきたいということをお願いし、御答弁をいただいて質問を終わります。

麻生国務大臣 時間もあれなので。

 基本的には、我々としては、今回、この三月以降どういうことになるかというのは一番問題だと思っておりました。再々々延長というような形で、挙げ句の果てに徳政令みたいな話をされるとちょっと困るなと思っておりましたので、こういったものはきちんとして、各財務局、それから、ありとあらゆる公的機関はもちろんのこと、商工会議所等に、今のようなお話の場合は相談する窓口を開けということで全所に命令をいたしておりますので、そこは結構、三月後半からいろいろ窓口に御相談に来ていただいております。

 ただ、さらに徹底させねばいかぬと思っておりますが、いずれにしても、そういった金融の問題というのは、この後の話として検討をさせていただきたいと存じます。

安倍内閣総理大臣 政府としては、銀行が目きき能力を向上させて、いわば借り手の資金需要を的確に把握して、新規融資を初めとして円滑な資金供給に努めるなど、実体経済の改善、成長戦略の実現に向けて適切な役割をちゃんと果たしているのかどうかということについて、金融庁、金融検査監督を通じてしっかりと確認をしていきたいと思います。

原口委員 終わります。ありがとうございました。

山本委員長 これにて前原君、長妻君、原口君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。小沢鋭仁君。

小沢(鋭)委員 日本維新の会の小沢鋭仁でございます。

 きょうは、金融政策と日銀の役割、そういったテーマで、総理初め関係者の皆さん方と議論をさせていただきたいと思います。

 まず冒頭、総理にお尋ね申し上げます。

 昨年の三月八日、日銀法改正を求める議員連盟、これに総理は参加をしている、こういう報道があるわけですが、間違いございませんか。

安倍内閣総理大臣 参加をいたしておりました。

小沢(鋭)委員 後ほど、その趣旨も含めて聞かせていただきたいと思いますが、恐らく、総理の関心の方向性と私の関心の方向性、かなり方向は同じだ、こう思っているわけでございますが、維新の会は御案内のようにかなり急進的な改革政党でございますから、総理の半歩、一歩前をぜひ指し示しをさせていただいて、また議論を進めたい、こう思っておるわけであります。

 まず、ちょっとパネルを出してもらいたいと思いますし、皆さん方にも見てもらいたいんですが、棒グラフの資料をお渡ししていると思います。

 日本は、いわゆる失われた二十年、こういう言葉があります。日本経済停滞の二十年、こういう意味で言われているわけでありますが、このグラフを見ていただけるとおわかりのとおり、一九九四年から昨年の二〇一二年まで、日本のGDPは全く変わっていないというか、まあ、でこぼこはありますよ、減っているんですね。日本のGDPは減っているんですよ。これは、総理、また私もそうでありますが、九三年に初当選でありますけれども、その九三年のときは四百八十四兆円。日本のまさに生産力が全く変わっていない。

 これに対して、今、内閣参与になられましたイエール大学の名誉教授の浜田宏一先生は、この間の日本のデフレ不況、そのほとんどの原因は日本銀行の金融政策の失敗にある、こう最近の著書で断じているわけですね。それから、前大蔵省、嘉悦大学の高橋洋一氏は、この間の日本のGDPが全く変わっていない、そしてその間に中国は、当時、二十年前は日本の一〇%程度の成長率だったけれども、今やそれが日本を超えるGDP生産国になっている、日本がこの二十年間、先進国並みの四%の成長を保っていたならば、日本がこの間失った付加価値総額は累計で五千兆円、国民一人当たり四千万円、こういう数字を言っているんですね。

 この二十年間の不況、まさに日本の経済問題、年間三万人の皆さんたちが、これは経済問題だけじゃないけれども、自殺の人が三万人もいる。こういうまさに二十年の経済停滞をもたらした最大の要因は、先ほどの浜田先生の話だと、金融政策の失敗、こうなるわけでありますが、総理並びに日銀の見解を求めたいと思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま委員が指摘をされましたように、九七年が五百二十三兆円でありまして、それから四百七十六兆円まで減ってきたわけでございまして、まさに五十兆円近い富が失われてしまった。これは深刻なことだと思います、その間、職を失った人がたくさん出てきたわけでありますから。

 これを変えていく、まさにデフレから脱却していくということは安倍政権の使命である、このように思っておりますし、この間、ゼロ金利あるいは量的緩和ということで、日銀の政策がうまくいき始めたこともあったわけでありますが、それぞれ、ちょうどいいところでそれをやめてしまったという反省も含めて、今までとは違う、今まで日本銀行がとってきた伝統的な政策ではない、次元の違う金融政策を行わなければならない、このように思っております。

岩田参考人 九〇年代に入って日本経済が非常に長期にわたって低迷している原因ですけれども、それは、最初に資産デフレが起こり、それがフローの、持続的物価の下落を起こし、それがまた資産デフレを起こしという、それが悪循環に入ってしまって、その悪循環を断ち切る一つの大きな手段が金融政策だったんですが、それが十分適切に運営されなかったということが、デフレギャップをなかなか解消できずに、名目GDPが成長しなかった要因だというふうに私は理解しております。

 産業構造調整のおくれとかいろいろなことを言われるわけですが、もちろんそれはそうなんですけれども、しかし、デフレになると産業構造調整が難しい面があるということで、やはりデフレ脱却をするということが一番大事だったんだけれども、それがなかなか果たせなかったというところに、長期低迷の最終的な原因といいますか、遠因があるというふうに思います。

小沢(鋭)委員 今、総理からも岩田日銀副総裁からも明快な御答弁をいただきました。感無量であります。

 私は、二〇〇二年のときに、それまで、日本の経済は何でこんなに停滞感があるんだろうとずっと考えながらやってきまして、平成七年は、当時七十九円までいった円高のときがありました。あの当時は自社さ政権でありますが、アメリカに行かせていただいて、いろいろな関係者と話をした。グリーンスパンさんがそのときに言った話が、日本は、先進国がかつて経験をしたことのないデフレの状態にあります、円高ですから、だから金利が相当低くても実質金利高なんだ、こういう説明をされたんです。

 それはともかくとして、先進国が経験をしたことのないデフレの状態にいる、その言葉が頭にずっと残っていて、そして今御答弁をいただいた岩田先生、あるいは先ほど名前を出させていただいた浜田先生たちの著書を読む中で、やはりこの二十年の、この間の日本の不況感、ぱっとしない、この不況感はデフレにある、さらに言うと、そのデフレを解消できるのは金融政策しかない、こういう思いに至りまして、二〇〇二年から、実は、当時は自民党にいました舛添要一さん初め、デフレストップ実現の会というのをつくって活動してまいりました。この間、総理も、デフレ脱却国民会議とか、そういった中で一緒になることもありました。

 そういう活動をしてきましたけれども、なかなか金融政策というのが理解をされなかった。私の力不足もあったわけですが、今日、アベノミクスという話の中で、まさにそれがようやっと実現しつつあるという話で、冒頭申し上げたように、感無量の思いでいるわけでございます。

 そこで、岩田先生にお尋ねしたいと思いますが、経済政策は財政政策と金融政策とよく言われますね。そして、その金融政策を受け持っているのは、政府ですか、中央銀行ですか。どこがその機能を受け持っているんでしょうか。

岩田参考人 それはもちろん日本銀行でございます。

小沢(鋭)委員 大変簡単にお答えいただいたんですが、きょうはテレビの放映もありますが、国民の皆さんは、ここがまず御認識がないんだと思います。

 金融政策というのは中央銀行なんですね。政府は、麻生大臣いらっしゃって、金融担当大臣でいらっしゃいますが、金融行政はやれますけれども、いわゆる通貨の供給量をふやしたり減らしたり、あるいはまた金利に対するさまざまな施策は、政府は手段として持ち得ないんですね。ですから、中央銀行が極めて役割が大きいということを改めて再認識した上で、中央銀行の役割に入っていきたいと思います。

 そういう中で、まさに、中央銀行の独立性、日本でいえば日銀の独立性ということが議論になっています。この独立性の意味は、何のための独立性なんでしょうか。総理並びに日本銀行にお尋ねいたします。

安倍内閣総理大臣 いわばこれは、日本においては、かつて、西南戦争のときにどんどん貨幣を発行した。これは、中央銀行と政府が分かれていなかったということでありますが、大変なインフレになってしまったというところから、中央銀行と分けていくわけでございますが、その後、さきの大戦以前の高橋是清の金融政策がございます。そして、その後の出来事等々から、やはりこれは日本銀行に金融ファイナンスをさせてはならないということにおいて、しっかりと独立をさせていこうということなんだろうと思います。

 ですから、基本的には、目標においては、国民によって、有権者によって選ばれた政府が目標を設定して、そして中央銀行がその政策手段においては独立性を守っていくということが大切ではないか、このように思っております。

岩田参考人 日本銀行の独立性の意味ですけれども、二つございまして、目的の設定の問題と、目的を達成する手段の問題がありますが、目的の設定に関しては、現在の主要国の中央銀行、いろいろありますが、政府が決める場合、中央銀行が決めている場合、政府と中央銀行が決めている場合とありますが、基本的には、政府の政策と整合性を持っているということで、中央銀行が決めている場合でも、政府との目標の対立というのはないので、そういうふうになっているんだと思います。

 したがって、一番大事な、日本銀行、中央銀行の独立という意味では、やはり、目的を達成する手段は独立して持っていなきゃいけない。

 インフレ目標というのを今度採用しましたけれども、これを採用すると、例えば、その目標を達成しているのに、それを超えて、国が、財政ファイナンスで、国債をたくさん発行するから国債を引き受けてくれと言っても、もう物価目標を達成していますから、それはお断りするということははっきりしているわけで、むしろ、インフレ目標を設定することは、財政ファイナンスを防ぐ一つの手段になっているということでございます。

小沢(鋭)委員 ありがとうございます。

 総理も岩田副総裁も、私の後半部分のインフレ目標の意味まで御答弁をいただいたりしておりますので、若干質問を前後させながら行きたいと思うんです。

 今の総理の御発言の中にもありましたけれども、中央銀行、日本でいえば日銀の独立性をなぜ担保しなければいけないかというと、政治家は、ある意味では、先ほどは西南戦争の話がありましたけれども、政策を行う、どちらかというと政治家というのは人気取りのための政策も行うでしょう、そういったときに、お金をどんどん中央銀行がその裏づけとして刷っていく、いわゆる財政ファイナンスという言葉になるわけですけれども、そういったことがあってはいけないという話が根本の独立性の意味だ、私はこう思っておりますし、総理からもそういう御答弁をいただいたと思っているわけですね。

 そういう中にあって、では、日本銀行の役割というのは一体何なのか、こういう話でありまして、まさにその意味では物価の安定、こういう話になるわけです。

 先ほども申し上げましたように、先進国は、いわゆる戦後、デフレというのを経験した国はほとんどありません。こんな持続的なデフレを経験している国は日本だけであります。これも国民の皆さんはなかなか御認識がないと思う。二十年もデフレが続いている、そんな国はないのであります。

 普通の国は、インフレを抑制するために、いわゆるインフレ目標、インフレターゲットというものを決めてやるわけでありますが、まさに、総理が御答弁になった、金融政策の目的を日本銀行と政府が一緒に決めていく、共通の政策目標を決めるというのは、日銀の独立性と何ら関係ないと思いますが、もう一回、明快な答弁をいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 基本的には、この目標について、今、小沢委員がおっしゃったように、政策目標において日本銀行と共有していない限り、これはなかなかうまく、目標がたとえあったとしても、さまざまな手段も効果を発揮しないわけであります。

 これは、基本的には、国民によって選ばれた政府が日本銀行と相談した上においてきっちりと目標を定めていく、そしてその目標に向かってどういう政策手段をとるかということについては、日本銀行が独立性を持って政策手段を決めていく、そういう姿が正しい姿ではないかと私は思います。

小沢(鋭)委員 パネルでもお示しをしておりますけれども、金融政策の目標設定の独立性に関して、いわゆる目標の独立性とそれから手段の独立性、各国の比較の表もお配りをしてございます。これが世界標準であります。

 日本は、中央銀行と政府が目標を共有する、このことも独立性を侵すという議論がありました。特に政治家が金融政策に関して発言をすると、政治介入だと言われるんですね。先ほど来話が出ているように、金融政策が二十年デフレを解消する最も有効な手段であるにもかかわらず、政治家がそのことにコミットすると、政治介入だ、こう言われる。

 こんなばかな話はないでしょう。総理、どうですか。

安倍内閣総理大臣 私もさんざん、中央銀行の独立性を侵していると批判をされました。野党のときにおいては、政策手段についても議論を行いました。

 これは当然、日本銀行あるいは日本銀行の総裁は、国民に対して、手段においても説明する責任を負っているわけでありまして、ですから、きょうもこうして副総裁がこの場にいて、皆さんが、あしたから政策決定会合がありますから、きょうはなかなかお答えはできないんだろうと思いますが、決めた後においては、日本銀行といえども、国会において、政策手段において説明する責任を負っているわけでありますから、当然、自由に議論をする。

 ただ、私も、総理大臣になった以降は、目標についてはお話をしておりますが、手段については、これは政府と日本銀行の関係において一切言及はしていない、そういう節度を持っておりますが、国会議員が、政治家が、まさに目的も含めて、手段も含めてしっかりと議論していくということは、金融政策、これは大切な経済政策の手段の一つですから、それは当然のことだろう、このように思います。

小沢(鋭)委員 本当に、今の御答弁を聞いておりますと、隔世の感を感じるわけでありまして、まさに、安倍総理もおっしゃられていたように、政治家が金融政策を言うと、独立性を侵している、そういう批判を我々はもうずっと浴びながら、この十数年間やってきたんですね。本当にこれはおかしいと私は思いますね。

 それから、話を進めさせていただきたいと思いますが、各国、いろいろな独立性の態様があります。まず、ここまでは、目的に関するいわゆる政府と日銀の共通目標をつくるという話は、日銀の、中央銀行の独立性を侵すものではない、こういう共通のコンセンサスができてきていると思います。

 では、そのための手段でありますが、先ほど、冒頭お尋ねしました日銀法改正の議連に総理はお入りになっていた。今も入っておるのかもしれません。私は、この日銀法改正が必要だということの一つの理由は、今お話があった共通目標をつくる、それを日銀法の中にしっかりと書き込むこと、こういう話が一点だと思っています。

 それからもう一点は、先ほど総理も答弁の中で若干触れられましたが、日銀の金融政策がある意味ではいいところまで行った、だけれども、途中でまたもとに戻っちゃった、こういうお話がありました。私も、この間、本会議並びに財務金融委員会でずっと質問してきたんです。

 二〇〇〇年のゼロ金利解除、これの失敗、あるいはまた二〇〇六年は量的緩和政策の解除、これの失敗、総理もこの二〇〇六年のときはまさに当事者でありましたよね。この失敗というのを総理はどのようにお感じになっていますか。

安倍内閣総理大臣 二〇〇六年のときの量的緩和の解除でありますが、ちょうど私も官房長官でありました。当時の福井総裁と何回か会合を持ったわけでありますが、政府の立場としては、当時の小泉総理も、この段階での、量的緩和をやめてしまう、量的緩和の解除は早過ぎるという判断でありまして、政府としての立場は何回も当時の福井総裁にお話をさせていただいたわけでございますが、残念ながら、デフレギャップも解消されつつあるということにおいて、そういう判断をされた。

 ただ、あのとき、多くの市場関係者は、この段階からもうしばらくそれを続けていくことが大切だ、そのことによって大きく局面は変わっていって完全にデフレからは脱却できるということを言っている人たちが大変多かったんですね。まさに、そういう市場関係者の期待を裏切ったことが、その後、いわば、せっかくうまくいき始めた金融政策がだんだん、結果として雲散霧消していったということにつながっていったのではないか、このように思います。

小沢(鋭)委員 日本銀行、この答弁、お願いします。

岩田参考人 日本銀行は当時、それなりにやっていらした、議論をしてやっていらしたと思うんですが、私から見ますと、一つは、やはりゼロ金利にしろ量的緩和にしろ、物価の安定にもう少しコミットするというところが少し弱かったということと、そうするとどうしても緩和の期間は長くなってしまうんですが、そういう状況で、やはり量的緩和の解除は早過ぎたというふうに思います。

小沢(鋭)委員 今、二つ、私は例示を出させていただきましたが、二〇〇〇年のゼロ金利解除、二〇〇六年の量的緩和解除、これがそのまま解除ではなくて続いていれば、日本経済はこんなにデフレに苦しみ続けることはなかったと思うんですね。安倍総理の御答弁も、岩田副総裁の答弁も、まさにそれをしっかりと認めていただいたということだと思います。

 繰り返しになりますけれども、本当に日本経済がこの間苦しんできた、それを政治があるいは政策が変えられるかどうかの瀬戸際でなかなかそれができなかった、こういうことだと思うんですね。だから、それをしっかりと担保する制度的な法改正がやはり必要だというのが、私あるいは維新の会の結論であります。

 今、黒田総裁、岩田副総裁、そういう、まさに人によって政策が行われるということではなくて、法的な担保が必要だと私は思っていて、それは具体的には、日銀法の中で、政府と日本銀行が共同して政策目標をしっかり立てる、そしてそれについての説明責任は日本銀行が負う、さらには、我々維新の会は、それで万一、どうしてもいわゆる変な政策しかできないということであれば、解任権まで持つべきだと。

 解任権といったって、これも中央銀行の独立性とよく言われるんですが、任命権を持っていて解任権がないなんて、普通おかしいじゃないですか。総理大臣は政策で失敗したら、やはり責任をとるんですよね。大臣だってそうですよ。

 公の機関の責任をとる体制というのがなければおかしい、こう思っていて、維新の会は、今、日本銀行法の一部を改正する法律案をつくらせていただいております。これは、みんなの党と一緒に提出したいということで、今修正協議をやっておりますが、ぜひ総理も前向きに取り組んでいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 私も議連に入っておりましたころ、今、まだ入っているかもしれませんが、みんなの党とともに、日銀法の改正案、我が党では山本幸三議員が中心になって書いたのでありますが、それは一応できているわけでございます。

 今、小沢委員が指摘されたように、人に頼るのではなくて法的な担保ということについては、当然これは頭に入れておく必要があるんだろう、このように思います。

 現在の段階では、二%という物価安定目標を設定し、かつ二年間という期間においても、そして責任においても、岩田副総裁、そして黒田総裁もコミットしておられる中においては、今は日本銀行にお任せをしようということでありますが、しかし、常にこの法改正については視野に入れていきたいと思っております。

小沢(鋭)委員 今の総理のお立場からは、視野に入れて、こういう表現がぎりぎりなのかな、こうも思いますけれども、鉄は熱いうちに打て、こういう話もあります。一気にやるときはやるという話が私は重要だと思っているんですが、岩田副総裁、いかがでしょうか。

岩田参考人 日本銀行法改正に関しましては、私の立場としては、いずれにしても、現在は、現在の日銀法のもとで、とにかく二%のインフレ目標をきちっと二年程度の中で達成するということに邁進したいと思います。

 法の改正に関しては、私は現任の副総裁ですので、こうせいああせいということは言えませんが、今、小沢委員がおっしゃったような議論を含めて、政府、国会の中で議論を深めていっていただきたいというふうに思います。

小沢(鋭)委員 改めて、日本維新の会は、この日銀法改正、必ずこの国会で出させていただきますので、どうぞ、また与党の皆さんも議論に加わっていただいて、そして、国民の前でいい議論をやらせていただきたいとお願いを申し上げたいと思います。

 それから、当面の金融政策に関してお尋ねをしたいと思います。

 まず、経済における期待の役割という点をお尋ねしたいと思います。

 ある方が、これは与党のかなり重要なポジションにいらっしゃる方ですが、今日のアベノミクスの状況を評して、ただ単に国民の気持ちが変わっただけだ、危ない、こういう言い方をされておりました。

 この期待というのは、経済学において既に基本的なツールになっているんですね。重要な経済学の概念です。景気の気というのは、よく、気持ちの気、気分の気だ、こう言って、経済は気で動くんだよね、こう一般的にも、世の中的にも言われておりますけれども、この期待、エクスペクテーションでありますけれども、これが極めて重要なんですね。これに関する総理の御見解をお尋ねしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 よく、期待だけだと言う人がいるんですが、この期待を変えるのが一番大変なんですね。これが一番難しいわけでありまして、だから、結果として、この十五年、全くデフレから脱却をできなかったわけであります。さまざまな量的な緩和を行いながらも、できなかった。

 そこで、今回は、多くの方々に、政府、日本銀行において今までとは次元の違う政策をしっかりと行っていくという中において、二%という物価安定目標を初めて立てた。その二%に向かってありとあらゆることをやっていきますよと日本銀行も意思を示したことによって、いわばインフレ期待が生じたわけであります。

 例えば、インフレ期待というのは物価連動債と普通の国債との差をいうわけでありますが、今まではずっとデフレですから、物価連動債自体が全くこれは商品価値がなかったのでありますが、今、期待が変わり、出つつある中において、少量でありますが物価連動債も発行していくことができるようになったわけでありまして、この期待をしっかりと結果に結びつけていくことが重要ではないかと思っております。

小沢(鋭)委員 繰り返しになりますけれども、合理的期待の理論というのが経済学ではあります。もう既にこれは、二十年前に私が大学院で学んだ経済論であります。ルーカスだとかバーロだとか、そういった論文を読んだことを思い出すわけでありますが、まさにそこが大事なんですね。

 その期待の理論から、今度は、今起こっている話は、いわゆる資本市場、株が上がっています。為替が円安に振れました。ここから企業は投資に向かうんです。個人は消費に向かうんです。あるいは、企業はそこで給与を上げられるんです。さらにまた、それを個人が消費で使って、いわゆる実体経済が動いていくんですね。

 これが今の近代経済学の基本的な考えですよ。決していいかげんな話ではなくて、まさにオーソドックスな世界標準の経済学です。岩田先生、そうですね。

岩田参考人 そのとおりでございまして、まさに小沢先生が私に教えていただいているという感じでございます。

小沢(鋭)委員 岩田先生には十年間ずっとお教えをいただいてまいりましたので、私は、岩田先生のお話を申し上げているだけであります。

 二番目に、為替と金融政策という話を申し上げたいと思います。

 為替というと、常に、いわゆる介入、こういう話になります。基本的に介入はきかない、いわゆる為替の水準は各国のベースマネーの相対比較で決まる、これが私の理解だし、今の世界標準の経済学だと思いますが、岩田先生、いかがでしょうか。

岩田参考人 いわゆる購買力平価説ということで、同じ購買力になるように通貨の比率が決まるという考え方で長期的には成り立っているというふうに思います。

 したがって、長期的に購買力平価がどうなるかという、今の購買力平価じゃなくて将来の購買力平価が為替に影響するので、そうすると、将来の購買力平価がどうなるかは、人々が、期待インフレ率あるいは予想インフレ率が例えば日米でどう違うかということが将来の購買力平価の予想を決めてくるので、差し当たりは、日米、例えば予想インフレ率の差が円・ドルレートを決めてくる。

 ただ、もう少し短期的に見ると、金利差とか金融危機、ギリシャで起こった金融危機がリスクプレミアムを上げて安全資産の円を円高にするとか、そういうことはありますけれども、おっしゃるように、長期的には購買力平価説で、予想のインフレ率の差が円・ドルレートその他の為替レートを決めていくということだと思います。

小沢(鋭)委員 この間、日本経済は大変苦しんで、まさに基幹産業ともいうべき電機産業だとかそういったところが、ある意味では物すごく大きな苦痛を感じてきたわけですね。実際の赤字、損失、そういったものも出してきています。

 七十円台の為替と、現在大体九十四、五円でしょうか、そのくらいの為替だと決定的に違うんですね。これは為替ですから、円高で得するところもあれば損するところもある、円安の方がいいところもあればだめなところもある。

 ただ、トータルに考えたときに、日本のような加工貿易立国ですよ、そういった国が、どっちがある意味では楽なのか。そうはいっても、各国に逆にインフレを輸出するような話であってはいけない。もちろん、国内の中でのいわゆる標準的なレート、その話に落ちつかないとだめなんですね。

 今総理に、為替レートは幾らぐらいが適正かなんということは聞いてもお答えにならないと思います。総理が官房長官だったとき、小泉政権だったときは大体どのぐらいだったですかね。

安倍内閣総理大臣 小泉政権のときは百円前後ぐらいだっただろうと思います。

 安倍政権のときは百十円から大体百二十円ちょっとということだったように記憶をいたしております。

小沢(鋭)委員 全くそうなんですね。

 ですから、そういった意味でいったときに、先ほど来の、二十年、日本のまさにGDPは、生産力は全く変わらない、そういう中にあって、為替だけ異常に円高で、やはり行き過ぎた水準だったということじゃないでしょうか。

 それにきくのは金融政策。もちろん、政治的な要因だとか短期の要因はありますけれども、長期的には、まさにベースマネーの相対比較で決まる。

 この図表を見ていただければおわかりになるんですが、まさに、円・ドルのいわゆるマネタリーベースの比率と為替レートの図ですよ。もちろん短期的にフラクチュエートしますけれども、基本的には、まさに、アメリカがリーマン・ショックの後、一気にベースマネーをふやした、日本はふやさなかった、だから円高になった。すごく単純な話なんですね。ということだというふうに申し上げておきたいと思います。

 時間もだんだん迫ってまいりましたので、心配なことを二点だけ聞いておきたいと思います。資産バブルの話と、それから、いわゆる金利上昇の話でございます。

 一つは、さっき申し上げたような経路をたどって日本経済はいい局面に入っていく、私はこう思っておりますが、資産が高騰し過ぎる場合、そこで途中でとまってしまう場合、いわゆる資産が急高騰する、資産バブルですね、こういう心配をすることもある意味では必要な部分があるかもしれません。

 このまさに資産バブルの防止に関しまして、私は、これは金融政策だけではない、土地だったら土地対策でいろいろなやり方がある、あるいは株価だっていろいろな売買の制約もある、そういう話もあると思いますが、基本的に、この資産バブルに対する対応というのを日銀はお考えになっていますか。

岩田参考人 現在、長く続いた資産デフレ等、デフレの中では、かなり株価水準は低くなっているので、金融政策のレジームチェンジをしてこのような二%のインフレを目標にすると、株価がある程度急騰するというのは自然の現象で、過去のいろいろなデフレの脱却の歴史もそれを示しているので、差し当たり、それがすぐバブルだといって警戒するというようなことはないと思います。

 ただ、金融政策を運営するに当たって、もう少し長期的にはそういうことも目配りするということで、それは金融政策にも当然目配りしますが、金融システム安定化策というのがもう一つありますので、それと連携をとりながら対応していくのがベストだというふうに思っています。

小沢(鋭)委員 確かに、今、余り先のことを心配し過ぎてもいけないんですが、しかし同時に、心配する方もいらっしゃいますから、今、岩田副総裁がおっしゃっていただいたように、そういったことが起こったときの対応も頭に置いてやっているという日銀の新しい姿を私は評価しておきたいと思います。

 もう一点、金利上昇の問題があります。

 国債価格が安くなって金利が上昇していく、そういう局面。今は、逆の局面が起こっていますね。いわゆる国債価格は安定して金利は安くなっている、こういう話でありますが、この先、インフレが生じていくと、そういう金利上昇ということも考えておかなければいけません。その場合の対応策を日銀はお考えでしょうか。

岩田参考人 現在、むしろ名目金利は少し下がっている状況ですけれども、これが、金融政策の効果がだんだん、量的、質的、大胆な緩和がきいてくると、次第に物に対する需要がふえてきて、需給ギャップは縮小してくる。それにつれて、だんだんデフレ脱却が、きちんと足元も見えてきて、インフレが少し、穏やかにですけれども上がってくるという状況になりますと、金利は少し上昇してくるというふうに思います。しかし、これは正常な金利の上昇で、景気の回復を反映しているわけなんですね。

 一番警戒しなきゃいけないのは、国債のリスクプレミアムが上がることによって金利が上昇する、それは財政の持続性を市場が心配するということですので、やはり中長期的には、財政の持続性というのを政府、国会の方で担保するようなことをしていただくと、いわゆるリスクプレミアムが上がるという悪い金利の上昇を防げるということで、そうでない金利の上昇であれば、それは景気回復のしるしだというふうに理解していただきたいと思います。

小沢(鋭)委員 まさにそのとおりだと思いますし、今申し上げた、資産バブルへの対応、あるいはまた金利上昇をしっかりウオッチしていただくということをぜひ日本銀行にはお願いをしながら、しかし同時に、断固たる決意でこの大胆な金融緩和に向かっていただきたいと改めてお願い申し上げます。

 最後に、ちょっとこの図表を、せっかく用意しましたから、国民の皆さんにも見ていただいて、インフレ目標を導入している国、これだけの国があります。これが世界標準であります。ちなみに、インフレ目標というのを物価安定目標という言葉を今使っていただいておりますが、これは私が財務金融委員会で初めて使わせていただいた造語だと思っておりまして、インフレ目標というと誤解がありますから、物価安定目標をしっかりと政府と中央銀行で合同してつくって、そしてデフレを脱却していく、ぜひ頑張っていただきたいと思います。維新の会は、精いっぱい、その方向で頑張りたいと思います。

 以上です。ありがとうございました。

山本委員長 この際、今井雅人君から関連質疑の申し出があります。小沢君の持ち時間の範囲内でこれを許します。今井雅人君。

今井委員 日本維新の会の今井雅人でございます。

 きょうは質問の機会をいただきまして、どうもありがとうございます。

 きょうは、厚労大臣、経産大臣にもお越しいただいておりますので、全員に答弁をしていただけますように、少し順番を変えまして、二つ目のテーマから始めたいと思いますので、よろしくお願いします。

 きのうから日本は新年度が始まりまして、金融市場も新しいスタートということでありましたが、昨日は日経平均は二百六十二円安ということで、きょうの午前中も一時三百円安ということで、軟調に推移しております。

 これは、日銀短観の結果が悪かったということも実はあるんですが、もう一つは、解散・総選挙以降、直近まで、外国人の投資家の株の買い越し、五兆二千億になっています。これは郵政選挙の後に外国人が買い越した額とほぼ同じでありまして、私も外国人の投資家とよく話をしますけれども、とりあえず一巡したという感じでありまして、ここからの関心は、日本の機関投資家がどれだけリスク資産を買うかということに今マーケットの注目は非常に集まっているんですが、その中で、実は特に注目が集まっているのが、年金積立金管理運用独立行政法人、いわゆるGPIFであります。

 なぜ注目が集まっているかといいますと、実は、ここの理事長、三谷さんという方ですけれども、この方が二月にマスコミのインタビューを受けておられます。これは新聞にも出ていたと思いますけれども、まず御自分の相場観を披露しながら、為替の円安や株価の上昇傾向はなお続くだろうとし、株価は危険水準まではまだまだと見ているという発言をされながら、四月、五月に少しポートフォリオの検証をして、見直しをするかもしれない、こういう発言をしておられるわけです。それで、急に今、マーケットから注目を浴びているわけですね。

 これは所管は厚生労働大臣だと思いますので、こういう報道を御存じで、あるいは、こういうことをこの独立行政法人から報告を受けているかどうかをお伺いしたいと思います。

田村国務大臣 GPIFの年金の積立金の運用でございますけれども、厚生年金保険法の中におきまして、これに対しては、専ら被保険者の利益のため、それから長期的な観点から、また安全かつ効率的にというような、一応そういう中において運用をするということでございます。

 五年に一回、財政検証のときに全体を見直すということになっておりますが、昨年十月に会計検査院の指摘を受けまして、基本ポートフォリオの定期的な検証というものを言われたわけであります。

 必要に応じてこれを見直すというふうにいたしておりますが、実際問題、まだ検討をしておるわけでもございません。これから検討に入るのであろうというふうに思います。まだ報告を受けておりません。

今井委員 ちょっとフリップを見ていただきたいんですけれども、これは、今現在、去年の十二月末のGPIFのポートフォリオなんですね。これを見ていただきますと、実は、外国株式あるいは外国債券、これは為替リスクを持っていますし、価格のリスクも抱えていますね。国内株式、これもリスク資産です。これを合わせますと、既に三六%、三分の一以上、実はリスク資産を持っております。

 これをさらに検討するかどうかということを今やっているということをまず御認識いただいた上でお伺いしたいと思いますけれども、この三谷理事長は御出身はどちらですか。

田村国務大臣 経歴ということでよろしゅうございますか。(今井委員「前歴ですね」と呼ぶ)前歴。

 昭和四十六年七月に日本銀行に入行されまして、日本銀行の理事を経て、平成二十二年四月に理事長に就任をされたということであります。

今井委員 日銀出身ということですね。

 それでは、実は、これは最終決定権者は理事長ですけれども、その補佐として理事がいらっしゃいます。大久保要さんという方と伺っていますが、この方は御出身はどちらですか。

田村国務大臣 大久保理事でありますが、昭和五十七年四月に厚生労働省に入省いたしまして、平成二十四年九月に理事に就任しました。

 なお、平成六年七月から平成八年六月まで国民年金基金連合会で運用業務を経験しております。

今井委員 今は、それは管理をしているだけで運用したということになっていないと思いますけれども。

 実は、これはかなりリスクが高くて、過去五年間を見ても、一年間でマイナス一〇%という年もありますし、逆にプラス七・九%という年もありまして、かなり大きなリスクを抱えたポートフォリオです。

 次、ちょっと見ていただきたいんですが、今、理事長のお話をしましたけれども、過去の理事長を見ますと、これを見てください。厚生労働省、厚生省、日銀。ずっとこれは天下りのポストなんですね。

 ちなみに、理事の方も拝見させていただきました。大蔵省、厚生省、大蔵省、厚生省、大蔵省。時々、日本興業銀行というのが一回、二回ありますけれども、最近は、厚生労働省、厚生労働省、厚生労働省、厚生労働省です。ずっと天下りのポストになってきているわけですね。

 私は、ここで何が申し上げたいかというと、ガバナンスの問題なんです。

 もしリスクをとるんだとすれば、やはりそれは運用経験のあるプロをしっかり雇ってやるのが筋であって、逆に、私は天下りが絶対だめだとは言いませんけれども、もしそういう人たちに任せるのであれば、これは民主党の岸本議員がよくおっしゃっていますけれども、それこそ、アメリカは国債だけで運用しているから、もう日本も国債だけでいいじゃないか、そういう議論もあるんですね。

 私が申し上げたいことは、このバランスがしっかりしていないといけないということです。リスクをとるならプロに任せる。官僚に任せるのであれば、あくまでも安全なものに徹するべきである。そういうガバナンスをしっかりつくる必要があると思っているんですが、この点について、総理、このガバナンスについてどうお考えか、お答えいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 年金積立金については、将来の年金給付の重要な、貴重な財源であります。安全かつ効率的に管理運用するために、国内債券を中心としつつ、株式を含めた分散投資を行っているわけでありますが、こうした年金積立金の運用は、民間のプロである運用機関に委託をして行っているわけでありまして、GPIFにおいては、こうした運用の仕組みのもとに、経済、金融等の専門家から成る運用委員会の意見を聞きながら、運用機関を適切公正に選択、管理をしているというふうに考えております。

 なお、こうした業務を行うGPIFの役員について、理事長を経済、金融の専門家の中から厚生労働大臣が任命をしているところでありますが、GPIFの組織や業務の運営を行うのに適切なガバナンスを構築しているものと考えております。

今井委員 今のお話はいろいろ問題がありまして、まず、委託しているからいいとおっしゃいましたが、これはいわゆるファンド・オブ・ファンズのマネジャーと同じなんです、民間でいえば。ファンド・オブ・ファンズのマネジャーは、ファンドの中身をしっかりわかる、運用をやったことのある人間がやっているわけです。だから、委託をするからといって、運用の経験がなくても構わないということは、これは大きな間違いです。

 それともう一点、運用委員会。これは実は学者さんが多いんです。中には運用担当の方もいらっしゃいますけれども、ここは責任がありません。最終責任は理事長であります。ですから、彼らが何と言おうと、彼らは責任をとらないわけですね。そういうアドバイスを受けるということがあっても、それは無責任の意見でしかないわけです。ですから、そういうのがやっているからといってそれで問題ないということを御答弁されるのは、これは私は少し問題があると思いますけれども、変わらないですか。

田村国務大臣 今おっしゃられたみたいに、実際問題、委託するに当たって、このような専門家の方々の意見を聞きながら、GPIFの職員も、理事長を初め理事にも補佐をするわけでありまして、その職員の中に、運用経験を持った者でありますとか証券アナリスト等々の資格を持った者、こういう者も入っているわけでありまして、そういう意味からいたしますと、そういうようないろいろな意見を聞きながら、最終的には理事長等々が決断をされておられるということであります。

今井委員 余り答弁になっていないと思うんです。

 実は、このGPIFというのは、前身は年金資金運用基金というところでありますが、これは皆さん覚えていらっしゃるかはわかりませんが、十年前のころのグリーンピア、あれをやったところですね。大変大きな損失を出しましたけれども、あのとき、あの問題に関して、大変社会問題になりましたけれども、誰も責任をとっていないんですね。

 だから、そういう教訓を私たちは忘れてはいけないというふうに思っていますし、今の理事長の前任の方、これは個人攻撃をするつもりはありませんが、五年間お務めになって、無事終わられています。年間で大体、平均すると一千九百四十万円の給料をもらって、退職金もいただいていますけれども、運用目標に対して未達でずっと来ているわけですね。しかし、その未達であったことの責任はどこにもとられていない、そのまま無事に退職されているわけです。

 私はずっと民間で運用をやってきましたけれども、運用を失敗すると首になるんですよ。ですから、私はずっと問題意識を持っているのは、やはり権限と責任というのはしっかり対になっていないと、これは国民の大事な積み立てたお金ですので、そういうところをはっきりするガバナンスをぜひつくっていただきたい。今は非常に中途半端だと思います。だから、ぜひこれをお願いしたいということで、大臣、もう一度御答弁をいただきたいと思います。

田村国務大臣 グリーンピアの話もございましたが、これはちょっと今の議論とは違う話でございますから、そこは御理解いただいているというふうに思います。

 全体として、トップの責任、それから成績に対してどうだという話でございますけれども、それはある意味、あらゆる角度から、それこそマスメディア等々も通じて、そういうものが理事長に対しては社会的責任として課せられておるわけでございまして、そこは十分に御認識をいただきながら運用をしていただけるものだというふうに思っております。

今井委員 余り答弁になっていませんけれども、責任は理事長にあるということはぜひ認識していただいて、今後もこの問題は追及していきたいと思います。

 実は、本当を言うと、平成二十四年度、八・八兆近くの積立金の取り崩しとか、これは本当に先行き大丈夫なのかということを私は非常に不安に思っているので、ここも伺いたかったんですけれども、この点につきましては次の桜内委員が質問すると思いますから、私は次の質問に移りたいと思います。

 次に、プライマリーバランスについてお伺いしたいと思いますが、まず、内閣府の参考人に来ていただいていると思いますので、お伺いします。

 現在のプライマリーバランスの定義ですけれども、これは国の一般会計ベースですか、あるいは、SNAベースの、国、地方を合わせたものでしょうか。どちらでしょうか。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 国の財政健全化目標として、国、地方のプライマリーバランスをこの政府では掲げておりますが、このプライマリーバランスは、国の一般会計、それから特別会計の一部、地方政府などを含みます。また、執行ベースにより、実際に支払いや受け取りが行われた時点をもって支出、収入を記録し計算する、そういうものでございます。

今井委員 ありがとうございました。

 つまり、SNAベースで、国、地方を合わせたものということの確認をさせていただきました。

 なお、今お話のありましたとおり、このSNAベースは、本予算も入りますし、補正予算も含まれます。そして、執行ベースですので、執行された時点で認識される、こういう指標であるということを御確認いただきたいと思います。

 そこで、総理にお伺いします。

 総理は、二〇一五年度までに国、地方のプライマリーバランス赤字対GDP比を二〇一〇年度の水準から半減、それから二〇二〇年度までに国、地方のプライマリーバランスを黒字化という目標を達成する、この目標を堅持するということを繰り返し答弁しておられますが、その認識でよろしいでしょうか。

安倍内閣総理大臣 その認識に変わりはございません。

今井委員 そうすると、非常に矛盾したことが起きます。

 今見ていただいているフリップは、これは財務省のホームページから持ってきたので、今まだ記載されているものでありますが、「平成二十五年度予算のポイント」というところが書いてあります。実は昨日開かれました財政制度等審議会分科会にもこの資料が出ておりますけれども、同じ紙のところに二つの考え方が別々に入っています。

 まずは一つ、これは予算委員会で一回議論になったと思いますけれども、予算自体は十五カ月で、切れ目がありませんということを上で言っております。そして一方、下では、財政健全化目的に向けた第一歩で、この一年間を見ると、本予算を見ると、税収と公債金が逆転していますよということをおっしゃっていますね。

 片方は十五カ月で見ております。そして、都合が悪いのか、こちらの方は十二カ月で見ているということでありますが、これは統一した方がよろしいんじゃないですか。

麻生国務大臣 御質問の趣旨は、補正予算の支出分を含んだ、いわゆるSNAベースと言われる、いわゆるあっちの話ね。単語が少し特別の単語なんで恐縮ですが、これのプライマリーバランスと、当初予算のみを対象にした一般会計ベースのプライマリーバランスとの差が生じてくるではないかという御指摘、その違いを聞いておられるんだと思います。

 二十四年度の補正予算につきましては、少なくとも景気の底割れ等々を防ぐということが私どもの最初の目的でありましたので、したがって、経済の再生というものがいわゆるプライオリティーの一番ということで、我々は、景気の底上げということで、大型補正ということを組ませていただいたのが二十四年度補正予算であります。

 他方、二十五年度の本予算の方につきましては、これは財政の健全化目標というものを私どもは掲げておりますので、その意味では、できる限り重点化を行って、少なくとも四年ぶりに税収が公債金を上回るということができたということは、私どもとしては、これまでできなかったことですから、そういった意味ではそれなりの評価をしておるんですが……(発言する者あり)できなかったじゃないですか。じゃ、やっときゃよかったね。

 補正予算における支出分を含んだ国民経済統計……(発言する者あり)やじにまで一々相手して済みませんね。手なれてないものですから、済みません。プライマリーバランスと比べて、一般会計ベースのプライマリーバランスが異なっておりますのは、補正予算と当初予算の位置づけの違いというのが出てきているんだというのは、もう御存じのとおりなんだと思います。

 いずれにしても、政府としては、国際公約にもなっておりますプライマリーバランスの黒字化というのは、財政健全化目標というものの実現を目指すというのは我々の本来の所存でもありますので、その方針にはいささかも変わりがありませんので、今後とも、財政の健全化と日本経済の再生というものは、これは双方を実現するということをやらぬといけませんので、経済財政諮問会議等々において、今後とも、健全な財政化目標というのを実現するために、いわゆる中期的な財政計画というものを年央をめどに作成いたしたいと考えております。

今井委員 いや、今の答弁、おかしいんですね。国際公約はSNAベースなんです。

 それで、実は二月二十八日、内閣府が「足元の経済財政の状況について」、こういうものを発表していますけれども、「プライマリーバランスの捉え方」と書いてありますが、はっきりと、一般会計ではなくてSNAベースと書いてあります。

 その脚注に何と書いてあるかといいますと、二〇一二年度に行った、日本経済再生に向けた経済緊急対策、これはいわゆる補正予算ですね、補正予算の事業費のうち、執行ベースではどういう影響があるかというふうに書いてあります。プライマリーバランスに関係のない金融とかこういうのは除いてありますけれども、こう書いてあります。二〇一二年度に影響があるもの、昨年度ですね、一・七兆円程度。ことし、平成二十五年度に影響し得る、要するにここで執行されるもの、六兆円です。

 この六兆円というものが、本来、国際公約であるプライマリーバランスにはねてくるんですね。ここのところをしっかりと書き込まなきゃいけないのに、それを書きたくないので、税収が公債金を上回ったと、ここだけを書いているんです。

 これは不誠実ですよ。まやかしじゃありませんか。

麻生国務大臣 まやかしでも何でもなくて、現実的に発生ベースかSNAベースかの違いだけでありまして、私どもとしては、一―三月にいわゆる補正予算として組みましたものの執行が翌年度にぶれ込むものを、発生ベースで二十四年度に計上するか二十五年度に計上するかの違いだけでありまして、基本的には、我々は従来どおり、発生ベースのもので出させていただいておるということだと存じます。

今井委員 いや、ちょっとそれはおかしいですね。国際公約が執行ベースなのに、発生ベースで考えていますというのはずれている、おかしいですよね。今の答弁はちょっとやはり私はおかしいと思います。

 では、もう一個、指摘させてもらいますね。

 実は、こちらの方が問題なんですけれども、その下にあります、「プライマリーバランスを着実に改善。」と書いてありますね。見てください。一般会計では、二十四当初二十四・九兆円の赤字ですが、二十五年当初二十三・二兆円で、一・七兆円減りましたと書いてありますね。

 しかし、先ほども内閣府の方がおっしゃったように、プライマリーバランスというのは、我が国ではSNAベースです。ですから、ここに書かれるべきものはSNAベースでなきゃいけないんです。

 先ほど、二月二十八日のところに実際の数字が書いてありますけれども、SNAベース、私が直しました。SNAベースでは、平成二十四年は三十一・三兆円の赤字です。SNAベースでは、平成二十五年度は三十三・九兆円の赤字です。つまり、二・六兆円、赤字がふえているんですね。国際公約であるプライマリーバランスの定義でいけば、赤字はふえているわけです。

 ですから、ここは、「プライマリーバランスを着実に改善。」ではなくて、プライマリーバランスが着実に悪化と書くのが正しいんだと思いますけれども、いかがですか。

麻生国務大臣 見解が違うんだと思いますが、私どもとしては、従来から発生ベースでやらせていただいてきておりますので、そのとおりやらせていただいたのであって、これまでもその書き方にしてきていると存じます。

今井委員 済みません、これは政府の見解が違うということですよ。

 先ほど内閣府の方は、プライマリーバランスはSNAベースだとおっしゃったんです。しかし、今大臣は、我々は発生ベースで認識しているとおっしゃっていました。これは政府内の見解不一致ですか。

麻生国務大臣 これは一般会計ベースだと思います。

 一般会計ベースの話を我々はさせていただいておりますので、SNAベース、別に隠しているわけでも何でもないので、両方出しておるだけなのであって、我々は従来どおり、今までこのやり方で書いてきておったと存じます。

今井委員 先ほど、プライマリーバランスはSNAベースだとおっしゃったじゃないですか。ここにプライマリーバランスと書いてあるんですよ。そうしたら、SNAベースを使うべきじゃないんでしょうか。

西川政府参考人 国、地方の財政健全化目標というものは、SNAベースで国、地方のプライマリーバランスというものを掲げております。これをベースに議論をさせていただいております。

 先々月、二月二十八日の諮問会議に提出した資料では、プライマリーバランスの捉え方として、SNAベースで見た国、地方のプライマリーバランスというもので健全化を議論しておりますので、その計数はこうなっていますということを、足元の計数を明らかにしてありますが、同時に、国の一般会計、当初予算ベースでもプライマリーバランスというものがあって、それはこういう状況になっていますということをあわせて、並べて提出して御説明させていただいているところでございます。

 したがいまして、一般会計の状況はどういうことかということを説明するために一般会計のプライマリーバランスというものを説明するということが当然あり得ると思っております。

今井委員 全くわからない説明でありましたけれども、これはどう見たって、「財政健全化目標に向けた第一歩」という、ここを強調したかったわけですよね。そこで、プライマリーバランスといってまともにSNAベースを出してしまうと悪化しているのがわかってしまうので、改善しているものを持ってきたとしか思えません。

 私は、安倍総理を実は大変尊敬しているんです。ですから、こういうまやかしのようなペーパーを出して財政の議論をしないでいただきたいんですよ。ぜひここを直していただきたいと思うんですが、いかがですか。

麻生国務大臣 重ねて申し上げますけれども、この問題は、別に隠しているわけでも何でもないので、私どもは、当初予算としては従来どおり、このとおり書いてありますし、SNAベースのものもあわせて検討をさせていただいております。

 しかし、これは当初予算の段階で出させていただきますものですから、当初予算ではこうなると書いてあるということだと存じます。

今井委員 わかりました。

 余り時間をとってもいけないので、ぜひ、そうしたら、ここに併記して、なお、国際公約のSNAベースでは悪化していますということを書けば、納得されると思いますよ。それを追記されることはいかがでしょう。

麻生国務大臣 重ねて申し上げますけれども、我々は、当初予算ベースで書くということにしておりますので、こう書いて、附則としてSNAベースも書くというのはやぶさかではありません。

今井委員 やぶさかではないということでしたから、ぜひお願いをしたいというふうに思います。

安倍内閣総理大臣 この資料は、もともと、当初予算を編成した際に、我々もしっかりとやったよということをお示しするために出した資料でございますので、そういう資料になっておりますが、一方、今の委員の御指摘もわかります、国際公約との関係もありますから。

 我々も、その後にプライマリーバランスとして明らかになってきた数字もございますから、それは、その段階において整理をして、これから政府の発表ぶりとしては、そういうわかりやすい説明をしていきたい、このように思います。

今井委員 どうもありがとうございました。ぜひお願いしたいと思います。

 その上で、もう一つお伺いしたいんですけれども、先ほど、この目標を達成するということをおっしゃっていましたが、実は、二〇一五年に半減ということにすると、GDP比をマイナス三・二%にしなければいけないんですね。これは達成可能ですか。

麻生国務大臣 我々は、将来の話でありますから、確実かと言われると、それを目指して頑張るとしか申し上げようがありませんけれども、それを目指して頑張らねばならぬところだと思っております。

今井委員 わかりました。

 では、その見通しの中には、消費税の引き上げ分というのは考慮されていますか。

麻生国務大臣 消費税の三%プラス二%等々、いろいろなものを私どもは考えておりますが、それを見て直ちに、今年の十月に附則十八条ともあわせて検討せねばなりませんので、私どもとしては、入れてある分と入れていない分、これは両方考えないかぬところだと思っております。

今井委員 入れないと多分達成できないので、入れて計算しているんだと思います。

 そこで、総理にちょっとお伺いしたいんです。

 今、軽減税率の議論がされていますけれども、軽減税率は、幅を広げれば広げるほど、当然消費税の収入は減るわけですね。ですから、各業界からいろいろな圧力が来ると思いますけれども、生活に影響が出ない最低限のものにとどめないと、税収は落ち込みます。

 また、先日、私は立派だと思いましたけれども、御党の小泉委員が、七十歳から七十四歳の二割負担の補正予算で一割をカバーしている分、これも見直しをした方がいいんじゃないですかと。すばらしい勇気だと思って聞いておりましたが、この半減をするためにはこういうところをしっかり取り組んでいかないと、目標、できませんよ。そのお覚悟をちょっとお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 当然、そう簡単な目標ではございませんが、しかし、今、経済財政諮問会議において議論を行っております。骨太の方針についても年央までに取りまとめることになっておりますが、その中において財政健全化の歩みについて議論していきたい。当然、今委員が御指摘のように、我々も覚悟を持ってしっかりと財政再建に向かってやるべきことはやっていきたいと思っております。

今井委員 では、もう一点。

 先ほど、SNAベース、執行ベースだとおっしゃった、確認しましたけれども、二〇一五年にSNAベースでプライマリーバランス半減ということになると、二〇一四年、来年度です、来年度、もし赤字国債を出して補正予算を組みますと、執行が二〇一五年にかかってしまいます。

 ですから、来年消費税が引き上がりますけれども、恐らく、消費税が引き上がって景気が悪くなるから補正を組めとかそういう声が上がってくると思いますが、これは現実的には、赤字国債を出して補正予算を組むことは事実上困難になりますけれども、その御認識はありますか。

安倍内閣総理大臣 基本的には、経済は生き物でありますから。なぜ我々が大型の補正予算を組んだかといえば、昨年末に景気が底割れする危険性があった。マイナス三・五%という成長率になる危険性もあった中で、底割れを防ぐ。底割れをしてしまってはどうしようもないですから、財政健全化も何も、これは目標に全く到達できないということになりますので、思い切った補正予算を組んだのでございますが、そして、今委員が御指摘になられたような条件の中においてどう財政運営をしていくかということにおいては、そのときに適切な判断をしたい、このように考えております。

今井委員 来年度以降、この問題はしっかりチェックしていきたいと思います。国際公約を守るとおっしゃったんですから、財政規律はしっかり守っていただきたいということをお願いしておきたいと思います。

 ちょっと時間も過ぎてまいりました。きょうは経産大臣もいらっしゃっていただいておりますので、次の話題に移りたいと思います。

 クール・ジャパンの官民ファンドでありますけれども、私は、個人的に言いますと、文化というのは本当に国がかかわる必要があるんだろうか、しかも税金を出してやるべきものなのかということを疑問に思っております。この議論もしたかったんですが、ちょっと時間がありませんので、端的に質問します。

 今回、クール・ジャパン官民ファンド、五百億、これは財投ですね、用意されていますけれども、これに対して、民間からは幾ら出資を募る予定になっていますか。

茂木国務大臣 これからの話ですから、できるだけ多くということになりますけれども、私は文化というのはやはり大切だと思います、国にとって。国を挙げてその国の文化を振興する、そして海外に対しても日本のよさを知らせていく、こういったことが極めて重要だと思っておりまして、また、市場ということから考えても、例えばコンテンツであったりとか食であったりとかファッション、こういった市場規模、現在が四百六十兆ぐらいです。これが十年後ぐらいには九百兆、二倍ぐらいに広がっていく、こんなふうに言われています。

 ただ、残念ながら、日本が海外でそういったものを売っている、これは〇・五%、二・三兆円ぐらいしかいかない。コンテンツに絞ってみると、日本というのは十二兆円の市場です。アメリカが三十二兆円ですから、一番大きい。(今井委員「時間がないので」と呼ぶ)いやいや、私も真剣にやっているんですから。

 それで、日本というのは、輸出比率、これが五%なんですよ。アメリカというのは一七%いっているということで、これをやはりふやしていかなくちゃいけない。こういったことから、新しい機構法、これもつくらせていただいているわけであります。

 これは三段階で考えています。

 まず、第一段階は、日本のよさ、それを海外で知ってもらう。そして、第二段階は、実際に日本の商品であったりとかサービスを現地で使ってもらう。それで、第三段階は、そういった日本を好きになった人に今度は日本に来てもらう。かつての、韓流ブームが日本で起こった冬ソナみたいな形で。そうすると、次の段階で、今度は関連の商品が売れるんですよ。そして、最終的には、「冬のソナタ」をめぐるツアーとかいうので韓国に行くようになるんですよ。こういったことをきちんとやっていくということでやっていきたい。

 それで、これは資金を集める部分もあります。そして同時に、どういったところに投資をしていくか、こういったことも極めて重要でありまして、目きき機能、こういうのも新しい機構ではしっかりと整備をしていきたい、こんなふうに思っています。

今井委員 四十分しか時間がないので、簡潔に答えていただきたい。

 ここに資金計画があります。百億です。税金が五百億、民間が百億。これは官民ファンドじゃないですね、官官官官官民ファンドです。ほとんど国が面倒を見るということなんですけれども。

 これは実は産業競争力会議で、クール・ジャパンをみんなやれやれと言っています。そのとおりなんですが、名前は出しませんけれども、あるメガバンクの人も入っていまして、そこに資料を出していますが、そこにクール・ジャパン投資機構、官民ファンドの活用と書いてあるんですね。私は、これはけしからないと思っているんです。何かといいますと、金融機関がこの分野は有望だと言っているんですよ。有望だと言っている。

 金融機関の役割は何でしょうか。資金を出して、経済を成長させることにあるんでしょう。それなのに、自分は大してお金を出さないで、国に出してくださいと言っているんです。銀行はやる気がないということじゃないですか。口だけじゃないですか。私は金融機関出身だから、余計そう思うんです。

 金融機関の役割というのはいろいろな産業をつくっていくことであって、その役割を放棄しているんですよ、これは。こういう提言を真に受けて、税金を出してこういうものをやろうという、私はその神経がよくわからない。

 ぜひ、民間に任せる、民間にどんどんリスクをとらせる、これが国のやることじゃありませんか。ですから、そういうことをもう一回考え直していただきたい。

茂木国務大臣 委員、この官民ファンド、これだけで全てのことをやろうとは思っていないんです。実際に日本の企業でも、例えばアジアの国々に出ていく、そこで例えばモールを経営する、それに対して日本の金融機関がリスクをとって出資をしている例、これはたくさんあるのは委員も御存じだと思います。そういった形もやっていきます。

 ただ、まだ勢いが出ていない、そこの中で、これからいいコンテンツ、そしていいクール・ジャパンの、さまざまな日本の魅力というのがありますから、これを売り込んでいく、呼び水にしていく。

 もちろんこれは、百億といっても、これから募れるものですから、さらに募っていきますよ。別に百億で打ち切りなんて決まっているわけじゃないですから。百億より百五十億の方がいいに決まっていますから。同時に、運営の仕方も民間中心に、きちんとやっていきたい、こんなふうに思っています。

今井委員 ぜひやっていただきたいですが、産業革新機構も十分の一ですよ、民間の金は。ですから、実態はそんなに簡単じゃないということを申し上げておきます。

 それと、もう時間がありませんので、もう一つ。

 今回、クール・ジャパンは、ほかにも予算がいっぱいついていまして、例えば、経済産業省はクールジャパンの芽の発掘・連携促進事業十億、補正予算にもクールジャパン・コンテンツ海外展開等促進事業百二十三億、農水省も日本の食を広げるプロジェクト四十億とか、いろいろなところでお金を使っているんです。

 ですから、民間にもやはりどんどん促して、民間がどんどんやる、できるだけ税金を使わないという形でやっていただきたいということをお願いして、最後にもう一点。

 実はこのファンド、残存期間二十年です。それで、アーリーステージとか、長い結果が出るものに投資をするわけですね。その間、ブラックボックスなんですよ。どうやって国会は、この税金をうまく運用されているかチェックできるんでしょうか。

 この間、お伺いしましたら、投資している企業の業績をちゃんと開示するというふうにこの仕組みのたてつけをすれば、毎年、その出資している企業がどうなっているか、我々チェックできるじゃないですか。そうしたら、この間、大臣は経済産業委員会で、民間のところは我々はそういうことをやることができないとおっしゃったけれども、これはできるんじゃないですか。

 税金を使って投資をするのであれば、私たち国会が、それがちゃんと適切に運用されているかということをきちっとチェックできるような仕組みをぜひつくってください。

茂木国務大臣 先ほど、最初の答弁で、なぜこの第一段階が重要かということをある程度説明申し上げたんです。そうしたら、短くしてくださいとおっしゃるので、私は短くして、短くした部分を後で言われても困るんですよ。だったらきちんと説明をさせていただきたい、こんなふうに思っています。

 同時に、このファンド、二十年から二十五年、こういう形にしておりますけれども、これについては当然、モールの経営であったりとかさまざまなことをやる、場合によっては不動産を取得する。こういったことになったら、リターンを考えても、それぐらいの長さで考えるのは当然になってくると思います。

 機構に対しましては、きちんとチェックをしていきたい、そんなふうに考えています。

今井委員 ありがとうございました。

 私は、とにかく権限と責任をはっきりさせる、そういうのが日本に必要なことだと思っていますから、これからもその観点で追及をさせていただきたいと思います。

 質問を終わります。どうもありがとうございました。

山本委員長 この際、桜内文城君から関連質疑の申し出があります。小沢君の持ち時間の範囲内でこれを許します。桜内文城君。

桜内委員 日本維新の会の桜内文城です。

 本日は、先ほど今井委員も触れておりましたけれども、GPIF、年金積立金管理運用独立行政法人に関する、その運用のあり方について、厚生労働大臣にまず質問させていただきます。

 お手元に配付資料を用意しておりますが、これは平成二十一年の厚生年金の財政検証と、その次のページは国民年金の財政検証であります。

 これは、百年安心というふうなキャッチフレーズのもとでこういうふうにつくってこられた計画ですけれども、平成二十一年の当時の財政検証でありますのでそこから始まっているわけですけれども、これは五年ごとに見直しがなされてまいります。

 注目していただきたいのは、右から三列目の「年度末積立金」、あるいはその右側の「年度末積立金(二十一年度価格)」、これはインフレ率とかを割り引いた数字ですけれども、では大体今どうなんだというと、平成二十四年度が終わったところですので、どうやら百四十・九兆円程度は積立金があるんだろうなというふうに通常考えるわけですけれども、実際のところ、どうなっているんでしょうか。

 では、出ないので、かわりにお答えいたしますと、お手元にちょっと大き目の紙で、「国の財務書類(推移表)」というのを用意しております。平成二十四年度末の数字自体は私の方でつくったんですけれども、平成二十三年度までは、財務省の方で国の財務書類というものをつくって開示しておりまして、それに基づいて並べております。

 下ら辺の千四百五十行のところに「公的年金預り金」というのがあります。これが、基本的にはGPIFが積立金として運用しております、それに見合った負債としてここに計上されているんですね。見ていただきますと、平成二十四年度末が百十三・五兆円で、それから今年度、大分また取り崩しがなされていますので、平成二十五年度政府原案、これは私の方で計算したものですけれども、また大分減って百八兆円になっていくであろうというふうなものであります。

 この資料、せっかくですので、ずっと平成十四年から金額を書いております。もともとは百六十一兆円、こういった積立金があったわけですね。それがどんどんどんどん減ってきまして、今や、平成二十四年度末、先週末ですけれども、百十三兆円程度まで下がってきている。

 これについて、こういった実際の積立金の金額が、平成二十一年度の財政検証よりも、これは百四十兆円程度なくちゃいけない話ですので、三十兆円近く既に目減りしている。これについて、大臣、どう考えられますか。

田村国務大臣 済みません、国民年金も含めてというふうにこちらの方は思っておりましたので、厚生年金だけが……(桜内委員「いや、両方含めています。両方含めた数字がこれです」と呼ぶ)そういうことですか。

 そうすると、全体で、前回の財政検証のときに、二十三年度末で百五十一・九兆円と見込んでいたところが、現行百四十八・八兆円。基金分がございますので、それを入れるとこのような数字になってまいります。

桜内委員 そこはちょっとそごがあるので申し上げておきますと、厚生年金分だけで、財政検証では百四十・九兆円程度ですね、百四十兆円程度と考えてください。それで、国民年金の分がありますので、それが十・三兆円程度ですので、本来であれば百五十兆円を超える積立金がなくちゃいけないんだけれども、実際に今、政府が運用している積立金というものが、これは財務省発表のこの国の財務書類の数字でいえば、既に百十三兆円程度まで下がってきておるということです。

田村国務大臣 厚生年金基金の方で運用している部分がございますので、これを入れますと百四十八・八兆円ということになります。

桜内委員 そこはもうやめるという話でありまして、そこは国として責任を持って運用していかなくちゃいけないというところを私は述べているわけです。

 その中で、GPIFが運用しているわけですけれども、ここ数年、積立金をどんどん取り崩していっております。平成二十一年度から取り崩しが始まっておりまして、平成二十一年度が約四兆円、平成二十二年度が六・八兆円、それから平成二十三年度が六・四兆円。平成二十四年度、今終わったところですけれども、計画では八・八兆円、実際には、補正の方で、例の年金特例公債の発行でそちらを年金給付に充てたということで、六・四兆円程度というふうに聞いておりますけれども、どんどん取り崩していっているんですよ、毎年毎年。

 ちょうどきのう、これはGPIFから開示されたわけですけれども、平成二十五年度の積立金の取り崩し金額が、四・六兆円計画しております。こんなことを言って本当に百年もつんですか。

田村国務大臣 種々の事情がありますけれども、取り崩しましても、次の年に当然、運用利回りとして収入が入ってまいるわけでありますから、その運用利回りと、毎年毎年のフローでの拠出金といいますか繰入金でありますけれども、それとの要するに差額みたいな形になって、最終的には、本来、財政検証のときに、二十一年度のときに、これぐらいあるであろうというものがどれぐらいであったかということを申し上げれば、先ほど言いました、二十三年度末で百五十一・九兆円であったものが、百四十八・八兆円。

 三兆円穴があいておるという言われ方をすればそうかもわかりませんが、これは二十四年度、運用利回り、ちょうど解散時から非常に株等々が上がってまいってきておりますので、この三兆円というものが、かなりの間、埋まってきておるのではないかというふうに期待をいたしております。

桜内委員 毎年毎年の運用実績というものを見ておりますと、大体一%強、二%近くでして、だったら最初から国債で運用しておけばいいじゃないかという話になるわけですけれども、それはさておきまして、まさに年金という国民にとって大事な資産の運用というものが、先ほど今井委員の、同僚議員の質疑にもありましたように、非常に、そのガバナンスの仕組みといいますか意思決定の仕組みが本当に十分なのかという点で、私ども疑問に思っております。

 特に、先ほどお示ししましたけれども、公的年金預かり金というものがどんどんどんどん目減りしていっているわけですよ。

 もう一度ごらんになっていただけますか、この大きな資料です。先ほど指摘しましたけれども、これは配付資料で行っているはずですけれども、千四百五十行目の「公的年金預り金」、これは資産の積立金の見返りの負債として立っておりますが、どんどんどんどん減ってきているわけですよ。

 平成十六年、十七年当時が、ここで出てきますのが百五十兆円、これは財務省の開示している数字ですよ。それがどんどんどんどん減ってきて、少なくとも財務省がつくった数字として言えば、平成二十三年末で百十八兆円。こんなふうにどんどんもう既に取り崩しが始まっているわけですよ。そういうふうな運用をどう改めていくのかということを尋ねているわけです。

田村国務大臣 まず、運用実績から申し上げますと、二十一年財政検証の前提といたしまして、平成二十一年度、一・五%の運用利回りを見ておりましたが、七・五%の実績を上げました。二十二年度に関しましては、一・八%でありましたが、マイナス〇・三%、これは運用利回りを予想しておったものを出せなかった。二十三年度に関しては、一・九%の運用利回りを見込んでおったところ、実績は二・二%。

 二十四年度は二・〇%でありますけれども、年後半、株等々が上がっております。こういうものを考えますと、二・〇というものに対してどれだけの運用利回りが出せるのかというような状況であります。

 なお、先ほど来申し上げておりますとおり、百五十一兆円積立金があると予想しておったところが百四十八兆円であったということでありますが、確かに二十三年度末時点では三兆円ほど足りませんが、それも含めて、二十四年度、運用利回りをしっかりと出せれば、これに対して一定の、この三兆円というものに対しての穴埋めがなされるものではないかというふうに期待をいたしております。

桜内委員 どうもかみ合わないんですけれども、私が指摘しておりますのは、何でこういうふうにGPIFが、このとおり、ここ数年、毎年毎年巨額の取り崩しをしているのかといえば、それは、年金給付がどんどん拡大していって、保険料であるとか、こういったものが足りないからなんですよ。

 こういった意味で、今までのような制度をそのまま続けていては、とても百年なんかもちっこないし、抜本的に制度改革が必要だということを指摘しているわけです。

田村国務大臣 そこは確かに問題意識はございまして、一つは、これは民主党政権下のときに改正をしようということで取り組まれたことでありますけれども、そもそもデフレのときにしっかりと年金の給付を下げなかったということで、約二・五%、たまりが残っています。特例水準というものでございまして、これは三年かけて解消する。

 それともう一つは、本来でありますと、マクロ経済調整というものがかかりまして、年金の給付額というものが一定限度まで下がるというような、そういう制度をビルトインしてあったんですが、物価が上昇しないものでありますから、これが発動されなかったという部分がございます。

 二十一年度から入れれば、その二つが主因となって、もう一つは、景気が悪くて所得が減っておりますので、保険料収入というものがしっかり確保できなかった。ただ、この部分に関しましては、将来の給付の方も当然抑えられますから、中立だということを考えれば、年金の安定性からということを考えれば、先ほど言いました特例水準のデフレ分のたまり二・五%、それからマクロ経済調整部分がまだかかっていないという部分でございますから、これに対して一定の対応はしていかなければならないというふうに考えております。

桜内委員 実際にそれが今回の予算編成上なされていないから、こういうふうに指摘しているわけです。これは法改正を伴う必要のある部分もありますので、ぜひ、こういった年金財政の安定性を維持するために、今後、私どももしっかりと議論に参加していきたいと思います。

 一つちょっとここで述べておきますと、先ほど今井議員からも基礎的財政収支についての質疑がありました。

 ここで一言申し上げておきますと、年金の関係、このようにGPIFが取り崩してそれで年金の給付を行う、これをやりますと、一般政府の中の社会保障基金、国の方では、今、内閣府が、先ほど答弁の中では、国、地方の基礎的財政収支を公表しているというふうに言っておりましたけれども、このGPIF自体は社会保障基金に、セクターに属するものでありますので、そこでむしろ基金を取り崩して、それが特会を経由して社会保障給付に充てられると、その分、実は基礎的財政収支がよく見える効果があるんですね。

 そういった意味では、本当ならば、国、地方だけじゃなくて、一般政府として、こういった社会保障に関する社会保障基金についても、やはり政府としてこのように公的年金制度を維持していくんだという姿勢を示していくためには、基礎的財政収支をそこまで広げてカウントしていくべきだと考えますけれども、大臣、どのようにお考えになりますか。

甘利国務大臣 委員、もう先刻御承知だと思いますが、プライマリーバランスに注目するのはなぜかといえば、持続可能な財政構造を実現する。それは何かというと、中央政府、地方政府を合わせた行政サービス全体に必要な歳出が税収で賄えるかどうかを見るということが大事ですよね、御承知だと思いますけれども。

 社会保障の基金全体を考えますと、これは基本的には保険料収入とそれによる給付によって収支がバランスするということでありますから、もともとプライマリーバランスの概念からは外しているということだというふうに思います。

桜内委員 失礼ながら、ちょっとそれは間違っていると考えます。

 というのは、一般会計から、年金の、基礎年金二分の一部分、特会に対して拠出しております。ですので、実はこれは一般会計にも影響してくる話なんですよ。GPIFが六兆円分、あるいは平成二十五年度でいえば四・数兆円取り崩して年金の給付に充てるということは、ひいては、その分、一般会計のプライマリーバランスが改善したように見えるという効果があるわけです。

 ですので、単に社会保障基金がうんたらという話ではないんです。そこのところはしっかりと認識していただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

甘利国務大臣 そういうお金のやりとりは、プライマリーバランスへの改善の寄与という視点じゃなくて、個々の繰り出し、繰り入れの必要性等を判断の上、必要な範囲に限って行われているという判断なんですね。これは、財政の持続可能性というのは、やはり政策経費がそのときの税収で賄えるというのが基本哲学だと思っていますので、こういう処置をとっているというふうに理解をしております。

桜内委員 これは先ほどの質疑の中にもありましたけれども、予算上の、当初予算に関するプライマリーバランスというのは一般会計で見ていきますよと。それはそれで仕方ない面もあると思うんですけれども、そこのところで、プライマリーバランスの面で一般会計をいわばお化粧しているような、そういった側面があるということを指摘しているわけです。

 もっと重要なお化粧がありますので、そこを指摘しておきます。

 お手元の資料に、外国為替資金特別会計の、これは特別会計の予算書の中にあります貸借対照表がございます。これは三年分の、平成二十三年度末決算額と、それから、お手元の資料でいうと次のページにありますけれども、貸借対照表、同じタイミングで、黄色い印をつけたところが平成二十三年度末の決算ということで、同じものを並べております。

 ちなみに、両方とも財務省がつくったものですけれども、横長の方、これは予算書です、平成二十五年度の特別会計予算。縦長の方が、平成二十三年度決算に関連して、財務省の方で、これは特別会計に関する法律というのがありまして、法律に基づいてつくらなくちゃいけないということになっているんですが、平成二十三年度外国為替資金特別会計財務書類、これも、会計検査院の監査といいますか、これを経て国会に提出されてきております。いずれも国会に正式に出てきている、正式な手続を踏んで出てきている資料でありますけれども、数字が合っているようで合っていないんですね。

 少し印をつけております。赤丸をつけた数字のところは一致しておるけれども、それ以外のところが一致していないんですね。小さいとは言いませんけれども、二、三兆円の違いというのは、出納整理期間の、その間の現金のやりとりの違いによって生じているというふうに聞いております。ですので、そこは説明がつくんですけれども、ちょっとややこしい話で恐縮なんですけれども、お手元の横長の貸借対照表のところです。

 一番問題な勘定科目というのが、左側の借方側、合計の欄の上にあります外国為替等繰越評価損。これが、平成二十三年度末決算額では三十四兆円、平成二十四年度末予定額四十一兆円。これは為替レート八十四円で試算したものだそうですので、今、三月二十九日の終わりのレートが九十四円ですので、これを確認したところ、二十二兆円程度の繰越評価損。こんな勘定科目、普通あり得ないわけです。今、縦長の方でお示ししましたように、企業会計に基づくような財務諸表ではこういう勘定科目はありません。

 何が問題なのかといいますと、これは、貸方側に、まあ資本と見立てているんでしょうけれども、積立金という欄があります。これが二十兆円ですとか二十一兆円程度で推移しているわけですけれども、今年度末の繰越評価損失というのが、財務省に確認したところ、二十二兆円程度あると聞いております。ですので、この平成二十四年度末の段階を見るだけで、一兆円程度の債務超過となっているわけです。これは財務省の事務方自身も認めておる数字です。

 それはそれで運用にうまくいかなかった部分もあって仕方ないところもあろうかと思いますけれども、何がまずいのか。

 下の注の二のところにありますけれども、平成二十四年度において生ずる決算上の剰余金一・九兆円程度について、次の行ですけれども、一兆九千二百八十五億円を平成二十五年度の一般会計の歳入に繰り入れるということで、このような会計処理が行われております。実際、平成二十五年度一般会計予算の歳入にこの一・九兆円が計上されている。

 ところが、問題なのは何かといいますと、この外為特会の歳出に上がっていないんですね、同額の金額が。

 だから、もうちょっとめくっていただきますと、お手元の資料の方、平成二十五年度歳入歳出予算の純計表というのがあります。ここの色のついたところを見ていただきたいんですけれども、重複額、歳入で百四十六兆円、歳出の方で百四十四兆円。これは重複があっちゃいけないんですよ、本来、会計間のやりとりですので。歳入と歳出が行ったり来たりなので、金額が一致しなくちゃいけないんだけれども一致していない、約二兆円程度。

 この大宗は、この外為特会からの歳出が立っていないからと思われますけれども、この辺について、このような会計処理、麻生大臣、どういうふうにお考えになりますでしょうか。

山口副大臣 済みません。かなり技術的な話でございますので、私の方からお答えをさせていただきたいと思います。

 先生、恐らく御案内のとおりで、御存じの上でおっしゃっておられると思いますけれども、外為特会というのは、毎年度、外貨資産からの外貨収入、これは米ドル等でありますが、受け取っておりますけれども、外為特会への歳入計上に当たりましては、市場への影響を考慮して、当該外貨を円にかえて、売却するのではなくて、同額の政府短期証券を発行することによって得た円貨を実は歳入計上しております。

 この円建てで歳入計上された外貨収入相当額というのは、円建ての政府短期証券の支払い利息等の経費、あるいは一般会計繰り入れに充てられるほか、外為特会の健全な運営を確保するために必要な金額が積立金として積み立てられて、財政融資資金にこれは法律上預託をするというふうなことになっております。

 したがって、御指摘の借方の財政融資資金預け金と貸方の積立金につきましては、外貨収入と同額の政府短期証券として発行して調達をした円貨の一部が積立金になっておりまして、財政融資資金にこれは預託をまたするというふうなことになっており、財政融資資金預け金と政府短期証券が直接リンクしておる、対応しておるというものではないわけでございます。

桜内委員 丁寧に回答していただいて、ありがとうございます。

 ただし、言っておきますけれども、ここで、外為証券で、今おっしゃったように、インカムゲイン、配当ですとか利息収入というものは、外貨建てで入ってきたものについて、それに対応する円貨でもって外為証券を発行しているわけですよね。それをこの借方側の円貨預け金に計上するということになっておって、では、結局、資本の部といいますか、貸方側にある積立金というのは何なんだといえば、これは、外貨のまま持っているインカムゲイン、配当収入であるとか利息収入を、その時点時点で円建てで評価したものがここに積み重なっているわけですよ。

 ですので、逆に言えば、外国為替の評価損が左側に巨額に出ているわけですけれども、この積立金のところも、貸方側にあって、資本の部で変な話なんですけれども、本当はこちらにも為替差損が生じているはずなんですよ。

 ですので、実際のところは、債務超過というのはたかだか一兆円ではなく、実はもっと大きい。幾らかというのは今後決算が出てからでないと判断がつきませんけれども、こういった債務超過の特別会計から一般会計に、歳出も立てずに一般会計に対して一・九兆円も繰り入れている。それが、例えば先ほども話題になりました基礎的財政収支を、一・九兆円分、一般会計で見ればよくしているわけですよ。

 では、この一・九兆円をどうやって調達したのかというと、特会の側でこういった政府短期証券を発行して、一・九兆円余計に調達して、それを一般会計に入れているだけなんですね。これは大変おかしなやり方だと私は思います。歳出にも立てない。これについて、山口副大臣、どうお考えになりますか。

山口副大臣 これはお話しのとおりでございますが、外為特会におきましては、決算上、剰余金を生じた場合は、当該剰余金のうち、外国為替相場の変動あるいは市場金利の変動等を勘案して、同会計の健全な運営を確保することに必要な金額を積み立てること、これは特会法八十条でありますけれども、残余があるときには、予算で定めるところによって、一般会計の歳入に繰り入れることができる、これは特会法八条。これに基づいて、実は、特別会計の決算上の剰余金の処理として一般会計への繰り入れを行う場合に、特別会計の歳出予算ではなくて、予算総則において金額を定めることによって、一般会計繰り入れ、これを行うことになっております。

 予算総則も予算の一部として国会の議決を受けておりまして、特に不適切な点はないということでございます。(発言する者あり)

桜内委員 そこでも声が上がっておりますけれども、やはりこれはおかしいんですよ。せめて歳出に立てる。なぜならば、他の場合、財投特会からの一般会計への繰り入れというものが、財政状況が悪い折、数年間続けられておりました。これは財投特会の歳出に立っております、その金額が。

 ところが、この外為特会については、今おっしゃった特別会計に関する法律八条二項によりまして、「予算で定めるところにより、」というふうにあるんですけれども、予算総則に書きましたじゃだめなんですよ、こんなの。ちゃんと歳入歳出で、歳入側で一・九兆円、一般会計が計上しているのであれば、歳出側で一・九兆円立てるのが当たり前じゃないですか。それをやらないというのは、これはまやかしと言われても仕方ないですよ。

 これは、「予算で定めるところにより、」というふうにこの特別会計に関する法律八条二項にありますが、予算というのは一体何だというと、これは財政法上の話ですけれども、御指摘のとおり、予算総則、歳入歳出予算、両方とも予算として国会の議決を経るわけですけれども、予算総則に載っけたからいいという話じゃないんですよ。歳入歳出予算に計上してこそ、ようやく国民に対して、いきなりぽこっと一・九兆円出てきました、プライマリーバランスがよくなりました、そういう話じゃないということを伝えることができるんですよ。

 こういうふうに、きょうは日銀の方にも来ていただいていますけれども、財務省の外為特会の管理というものが、いかにガバナンスのきかない状態で行われているのか。こういった一・九兆円の金額を、簡単に、それも債務超過の特会からひねり出して一般会計に繰り入れることの当否、是非ですよ。本当に、そんなことをやって日本の財政がよくなるとでも思っているんですか。

山口副大臣 お話でありますが、先ほども申し上げましたように、予算総則の中に書き込むというふうなことにしておるわけでありますが、これは、特別会計の決算上の剰余金の処理については、今も先生お話しの特別会計法八条に基づいておりますが、原則として当該特別会計の歳入として受け入れることとしておるが、例外的に、予算総則で定めた金額については、一般会計の歳入として直接受け入れることも可能というふうにされております。

 一般会計への繰り入れを特別会計の歳出として経理をするというふうなことは、予算上、繰入額を一旦は当該特別会計の歳入として受け入れて、その同額を歳出に計上するというふうなことになりまして、不必要な両建ての経理を伴うことになるのが一点。さらには、各特別会計の歳出の範囲というのは、その設置目的等に照らして必要な範囲に限定をされているにもかかわらず、これをむやみに広げてしまうというふうなことにもなりかねないということで、現行法上は想定をされておらないというふうなことでありますので、先生も御指摘ありましたけれども、法改正等々ということになってくるわけでありますが、これは十分慎重な検討を要すると思っております。

桜内委員 丁寧な説明であると思うんですけれども、不必要な両建ての歳入歳出じゃないんですよ。これをやらないために、一般会計のプライマリーバランスが一・九兆円分お化粧されるということなんですよ。そういうものを国民に対して幻想を抱かせて、プライマリーバランスが着実に健全化しているなどというような文書を役所がつくるのは一体どうなのかということであります。

 ちょっと話題をかえます。

 先ほどから、基礎的財政収支への影響ですとか、こういったそもそもの会計処理のあり方がどうなのかということを、やや細かいところも含めて申し上げておりますけれども、これは、きょうの朝になって追加で厚生労働省に対して通知したものですけれども、SFTS、感染症ですね、マダニが媒介するというものについて、もともと中国で死亡者が出たりしておったんですけれども、ことしに入って国内でも、山口県、愛媛県、宮崎県、広島県、長崎県でそれぞれ死亡者が出ております。

 これについて、余りにも厚生労働省が情報を開示しないんじゃないかということで、私自身、健康局に話を伺ってみました。

 ところが、私は、安倍内閣もぜひ考えていただきたいんですけれども、前回の第一次安倍内閣というのは、消えた年金記録であるとか、そういったもので傷ついていったわけですけれども、厚生労働省の役人の情報隠蔽体質あるいは責任逃れの体質は変わっていないというふうに感じました。

 なぜならば、感染症予防法という法律があるんですけれども、その十六条一項で、感染症を予防するためには、その発生状況ですとか原因等に関する情報等、あるいは予防、治療に必要な情報を新聞、放送、インターネットその他適切な方法により積極的に公表しなければならない、こういう条文があるわけですよ。ところが、その二項に、個人情報の保護に留意しなければならない、そういう点もただし書きみたいについておりますが、厚生労働省の健康局の課長補佐によれば、個人情報というのを盾に、とにかく単に県名しか言わないわけですよ。

 どの辺の山でかかったおそれがあるとか、これから行楽シーズンになって子供も山に行ったりしますよ、そのときに、公衆衛生を担当している厚生労働省の役人がほとんど情報を開示しない。こういうやり方というのは本当にいいんでしょうか。私は、これは第二の安倍内閣の一つの火種になると思いますよ。

田村国務大臣 このSFTSでありますけれども、隠すというか、出していい情報を意図して隠すというような、そんな意味合いは何ら厚生労働省にはないわけでありまして、そんなことをしても何の得もないわけでございますから。

 なぜ出さないかというと、まさに個人情報の問題でありまして、御遺族が、やはりこれを出していただきたくない、そのように我々の方に言っているわけです。つまり、個人が特定される可能性があるということで、それはお避けをいただきたいというような御要望をいただきました。でありますから、県名と、それから性別等々は出しておるんですけれども、それ以上は出していない。

 では危ないじゃないかというお話があるんですが、全国七県でこれはもう既に発見をされておるわけでありまして、そういう意味からしますと、ここのこの山だというふうに言われて、逆に、ではほかは大丈夫なんだなと言われますと、日本じゅうマダニは生息しておるわけでございまして、ほかのところが安心、安全だとは言えないわけであります。

 でありますから、我々といたしましては、これから春になってまいりますと、マダニが非常に活発に動く、そんな季節になってまいりますので、どうか、どこにおられても、マダニにかまれないようにしっかりと対応していただきたいということをお願いさせていただくと同時に、これから春になってまいりますと、先ほども言いましたとおりマダニが活発に動いてまいりますので、調査をして、どの地域のマダニにこのような感染症が隠れているかということを調べてまいりたい、このように思っております。

桜内委員 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律というのがありまして、基本的には、人の生命、健康、生活または財産を保護するため開示することが必要であるというものは、とにかく開示しろというふうにあるわけですよ。

 にもかかわらず、また、御遺族の御意向というのは、もちろんそれも尊重しなくちゃいけませんけれども、少なくとも個人情報保護法というのは、これは民間企業相手の話ですけれども、個人情報とはというふうに、別の法律ですが、定義があるんですよ。生存する個人に関する情報なわけですよ。公衆衛生というのは、生きている人間をどう守るかという観点で厚生労働省の役人は仕事をやらなくちゃいけないのに、こういったものを盾に、ほとんど全く情報開示していないんですよ。

 私の地元の愛媛県であっても、愛媛県のどの辺かも全然わからないんですよ、あんな広いところで、どの辺の山だったのかとか。もちろん、これは、それですぐに気をつけられるような話じゃないかもしれないけれども、御遺族からのクレームに対して、これは公衆衛生上必要な情報なんですよ。別に、その人がというふうに言わなくていいわけですよ。この辺の山に行ったら、どうやらマダニにやられたらしいというふうな情報すらも、何も出さない。

 私は、本当に怒りを持って、課長補佐の方ですけれども、このばか役人というふうにののしりましたけれども、一体何のために国から給料をもらって公衆衛生の仕事をしているのか、その観点が全くないんですよ。とにかく情報の隠匿体質、それから責任逃れ。遺族の方が嫌だと言ったら、とにかくほかの、公衆衛生の観点よりも、そっちの方を優先してしまう。自分の責任逃れですよ、こんなのは。

 大臣、そういうのをしっかり指導していただけませんか。

田村国務大臣 マダニというのは野山にいる大き目のダニでございますので、体をしっかり隠していただいて、かみつかれなければ防ぐことができるということは、ここで申し上げておきたいというふうに思います。布団の中にいるダニではございません。

 それを前提に、もちろんこれは、社会的に、公衆衛生上の有益性というものと、それから個人情報というものをはかりにはかけているんです。ただ、今委員がおっしゃられたとおり、この山だと限定したとしても、マダニは全国にいるんですよね。しかも、もう既に七県で同じような症例が出ているということは、どこにいたっておかしくないので、それを限定することによって、逆にいろいろな問題が起こる。ほかの山なら大丈夫だと思われるのも非常に危険性がある。

 ただ一方で、おっしゃられますとおり、私も、余りにも情報を出さないものだから、もうちょっと出しようがないのかという話をする中において、どんどん症例が出てきますれば個人が特定できなくなってまいりますから、そうなったらいろいろな情報が出しやすくなりますので、そうなったときには情報開示をしてまいりたいというふうに思っております。

桜内委員 時間ですのでこれでやめますけれども、とにかく、これは国民の健康、安全にかかわる問題です。それから、個人情報の保護といっても、交通事故で亡くなった方というのはニュースで名前も報じられたりするわけですよ。御遺族の気持ちというのもあるかもしれませんけれども、公衆衛生というものをしっかりと行っていくためには、やはりここは厚生労働省の役人も泥をかぶって、国民全体の利益のために働くということをぜひ徹底していただきたいということを申し上げて、私の質疑を終わります。

 ありがとうございました。

山本委員長 これにて小沢君、今井君、桜内君の質疑は終了いたしました。

 次に、渡辺喜美君。

渡辺(喜)委員 みんなの党代表渡辺喜美でございます。

 きょうは、安倍総理に、それほどしつこくはお聞きいたしませんけれども、何点かお尋ねをしたいと思います。

 まず、このよく使われるグラフでありますが、これは過去一年の日経平均株価の推移ですね。昨年の十一月から急激に右肩上がりになっています。これはなぜかというと、野田総理が解散宣言をした日からなんですね。まさしく、次は安倍政権だろうとマーケットは見たわけですよ。そして、当時の安倍自民党総裁は、物価安定目標、大胆な金融緩和、リフレーション政策、これを掲げておられた。

 これは、何を隠そう、みんなの党が結党以来言ってきたことでございます。ぱくっていただいて、まことにありがとうございます。私も、万が一政権をとるようなことがあったらここから始めようと実はひそかに思っていたことを、安倍総理がまさにこれを真っ先にやられたというのは、国家経営の肝を心得ておられるなと思いました。これはもしかしたら長期政権になるかもしらぬな、正直、そう思いましたよ。今まで、やろうとしてもなかなかできなかったことなんですね。それを物の見事に、先ほどから出ておりますように、期待を、転換をされたということであります。

 最近、自民党の中では、好事魔多しなんということを言われる方が結構いらっしゃいます。いいことが続くと、時たま悪いことに遭遇をしてずっこけちゃう、こんな例え話です。

 最近、私が霞が関かいわいから聞こえてきたジョーク、ちょっと御披露いたします。大阪に阿倍野区というのがありまして、そこのお好み焼きにミックス焼きというのがあるんですね。アベノミックスというものですね。このボリュームを大きく見せるにはコテ先が大事という落ちがついておりまして、これがまさに霞が関の本音を表現しているような気がしてなりません。

 まさしく、あらゆる改革に取り組もうとしておられると思っておりますが、例えば、今までの日銀理論に代表されるそういう旧態依然たるアンシャンレジームの理論、これを大転換することから始まって、規制改革、公務員制度改革、いろいろな改革をやってくれるのではないかと我々は期待をしておりますが、霞が関から見ると、この際、小手先で我慢しておけばいいじゃないか、小手先で、上手にびほう策でごまかしておけばいいじゃないか、そういう本音が見え隠れするのであります。

 したがって、私は、ぜひ安倍総理には高い志を持った改革を断行してほしい、途中で腰砕けになることがないように、そういう立場から、きょうは、我々の提言と質問を行わせていただきたいと思います。

 ちなみに、大阪方面でこのアベノミクスがどう言われているかというと、大阪阿倍野区、ミックス焼きとかけて何と解く、コテ先で終わってしもうたというのが大阪方面で語られている話です。こういうことがないように、ぜひお願いをしたい。

 きょう、黒田総裁それから岩田副総裁にお越しをいただいておりますが、岩田副総裁については、我々、同意に賛成をいたしました。黒田総裁につきましては、済みませんが、ペケを出させていただきました。

 それはいろいろな理由がございまして、まさに腰砕けにならないためには、責任論、これをしっかりと持っていただくことが大事なんですね。そして、日銀官僚の中にただ一人、単身で行かれるわけでありますから、岩田副総裁という大変な理論家はおられますけれども、本当に今までのアンシャンレジームを変えることができるのかどうか、そこのところの確信が持てなかったものですから、とりあえず仮免許はペケにさせてもらったんです。

 これから本免許の申請と同意がありますので、きょうのお話を聞いて、本免許でマルにするかバツにするか、これを決めたいと思います。したがって、きょうは白紙の立場で臨ませていただきたいと思います。

 まず、過去の日銀の政策の失敗の数々、例えば、今を去ること二十年以上前でしょうか、日銀に三重野総裁という方がおられた。平成の鬼平などと言われて、バブル退治というのをやったんですよ。

 当時、自民党の中でこんな例え話がありました。土地と株がインフレを起こしてバブルになったわけでありますが、例えてみれば、十五歳の少年がいた、身長百八十センチ、体重八十キロ。こいつはいい関取になりそうだなというので、相撲部屋に入れて、飲ませ食わせ、飲ませ食わせ、稽古もつけながら、五年たったら百五十キロに太っていた。やれ、痛風は出るわ、糖尿病は出るわ、これは成人病オンパレードだ、とてもじゃないが、関取をやっているなんという場合じゃないよなというので、もとの体重の八十キロまでいきなり減らそうと思ったら、どうなっちゃうんだということですよ。

 つまり、土地と株という資産が確かにインフレを起こしておった。では、消費者物価、一般物価はどうだったのかといったら、せいぜい一%から三%ぐらいまでであって、ほとんどインフレと言えるような状況ではなかったんですね。であるにもかかわらず、金融引き締めをやってしまった。

 恐らく、今振り返ってみて、正しい政策というのは、株価と地価のインフレをとめる。例えば、株の回転売買が問題であるなら回転売買の規制をするとか、土地転がしの規制をするとかいう手段、方法でこのバブル退治はできたはずなんです。ところが、いきなり経済全体に影響を及ぼすような金融引き締めをやってしまった結果、その後の日本経済は、絵に描いたような、不良債権、銀行パニック、金融危機、デフレ経済という形で、延々と二十年も経過をしてしまったんですよ。いかに、国家経営の失敗というものが、国力を損ない、そして将来展望をなくすか、若者のチャレンジ精神を奪うかというのを、我々は嫌というほど、この間、見せつけられてまいりました。

 福井総裁の時代、先ほどもお話にございました安倍官房長官の時代、ゼロ金利解除をやっちゃいけないときに、つまり、まだ消費者物価はマイナスだった、そんなときに金融引き締めをやってしまったらどうなるんだ、御案内のとおりですよ。

 それだけではありません。リーマン・ショックというのがありました。アメリカでは、大恐慌研究家のバーナンキ議長が、ドルの量を三倍ぐらいにふやしていった。我が日本銀行はどうかといったら、ほとんどお金の量をふやさなかった。さっきもどなたかが言っていましたけれども、日本銀行のバランスシート、小泉内閣の時代に大体百五十数兆円だった。リーマン・ショックの後、まあ大体そんなものですよ。したがって、いかにこういう不作為が日本をだめにしてしまったのかということであります。

 このあたりの反省について、黒田総裁、いかがでしょうか。

黒田参考人 ただいま委員御指摘の三つの金融引き締めに対する評価につきましては、全体としては同様な意見を持っております。

 ただ、三重野総裁時代の金融の引き締めにつきましては、その前のバブルが非常に大きく、八〇年代後半に膨れ上がったわけですが、その原因のかなりの部分が金融規制であるとか土地規制の問題等にあったことは事実だと思いますが、他方で、八〇年代の後半の景気拡張期に、やや金融の緩和が行き過ぎていたということもバブルに影響したということで、その後、まさにバブルを抑えるという過程で行き過ぎた金融の引き締めが起こった。

 あるいは、むしろバブルが崩壊した後に、金融緩和のスピードが、もう少し急速に緩和すべきだったんじゃないかというのが恐らく学界の多くの意見だと思いますが、そういう意味では、いずれにせよ、もう少し金融の緩和をスピーディーにやっておけば、バブルの崩壊の過程であれほど大きな問題が生じなかったのではないかという意見が多いと思います。私もそういう意見でございます。

 二番目の、二〇〇六年の量的緩和解除のタイミング、これが早過ぎたのではないかという御批判、これも私もそのとおりだと思います。ただ、これも、その時点でかなり景気が立ち直ってよくなっていたということで、量的緩和から出口を探ったということで、いろいろな議論があって考えられた結果だと思いますが、結果的に見ると、おっしゃるように、物価がまだ上昇していない時点で金融緩和を、特に量的緩和を解除してしまったということは、結果的に見て失敗であったというふうに思います。

 それから三番目の、リーマン・ショック後の金融緩和につきましては、私も、欧米と比べて緩和の程度が少なかった、これがその後のデフレの継続に影響したという面があろうと思います。ただ、これも一方で、東日本大震災とか、リーマン・ショック自体、一九三〇年代以来のような世界的な金融危機、世界的な不況でございましたので、その中でいろいろなことをやったという面では、それなりの下支えにはなったと思うんですけれども、欧米と比べた場合にやはり不十分であって、その結果、デフレからの脱却にも至らなかったという面では、日本銀行としても反省すべき点であるというふうに思います。

渡辺(喜)委員 黒田総裁の話を聞いていると何か眠くなりそうなので、安倍総理にちょっとお尋ねしますね。

 第一次安倍内閣のころは、安倍総理はいわゆるリフレ派ではなかったかと思います。私も総理に、いつだったか官邸に行きまして、議決延期請求権を行使すべきではなかろうかというお話をしに行った記憶がございます。

 その後、安倍総理が政権を退かれていろいろと研究をされて、いわゆるリフレ派におなりになった。それはどういうきっかけで、いつごろだったんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 まず、総理をやめると非常に時間ができたということでございますが、その中において、従来から、きょうトップバッターで質問に立った山本幸三議員が、いわばリフレ派としてさまざまな主張をしてこられた。その中において、安倍政権の二〇〇六年、二〇〇七年時に、一つの考えるきっかけとしては、あのとき、三月に量的緩和を解除した。その後、経済はよくなってはいくんですが、しかし、そのことが、やはりデフレからの脱却においては足を引っ張っていたのは事実でございまして、安倍政権のときに官邸にいました嘉悦大学の高橋洋一教授からも、いろいろなそのときの話を聞きました。

 その中において、これは山本幸三議員が主張している政策は正しいのではないかという中において、浜田教授からもいろいろなお手紙をいただいて、その中において、最終的には渡辺喜美説が正しいと、そちらの方に傾いていったわけでございまして、考え方も髪型も変えたんですが、渡辺代表もちょっと髪型を変えられたようでありますが、この金融政策においても変わったということでございます。

渡辺(喜)委員 続いて、麻生副総理にお聞きをしようと思ったんですが、ちょっと退席をされてしまったので、質問を後回しにいたします。

 今、黒田総裁のお話の中で、景気がよくなりつつあったので出口戦略を目指したという趣旨の解説がございました。恐らく、こういうときにインフレ目標という明確なものがあれば、景気がよくなっているかのように見えても物価がマイナスだということは、やはりここでまだ出口に行ってはいけないという判断になるはずなんですよ。これは、もうきょうの委員会で何度か繰り返された質問ではございます。

 そこで、もう一度、黒田総裁それから岩田副総裁にもぜひ御見解を賜りたいと思いますが、この間、白川総裁が退任会見でこんなことを言っておられます。デフレは貨幣現象かという命題を、中央銀行の供給する通貨、いわゆるマネタリーベースを増加させれば物価が上がるという意味に解釈をすると、過去の日本の数字、あるいは近年の欧米の数字が示すように、マネタリーベースと物価との関係、リンクというのは断ち切られていますとおっしゃっているんですね。

 ちょっと数字が小さくて見えにくいかもしれませんが、マネタリーベースというのは、発行銀行券と当座預金、こっちの赤で囲っている方でありますが、要するに、現金と当座預金ですよ。これがマネタリーベースで、午前中の質疑では、この当座預金が、今、四十三兆円が五十七兆円ぐらいになっているというお話でありました。こういうマネタリーベースと物価の関係、リンクというのは断ち切られているんだということをおっしゃっているんですね。

 また、期待に働きかけるという言葉が、中央銀行が言葉によって市場を思いどおり動かすという意味であるとすれば、そうした市場観、政策観には、私は危うさを感じますという発言をしておられます。

 そもそも期待に働きかけるのが政策なのであって、どうもこの発言は本末転倒のような気がいたしますが、総裁、副総裁、いかがでしょうか。

黒田参考人 委員御指摘のとおり、期待に働きかけるということは、重要な金融政策の波及経路の一つでございます。もとより、伝統的な短期金利を操作するという場合も期待というのは重要でございますが、短期金利がほとんどゼロになって、量的な緩和ということを、日本銀行を含めて、ほとんどの中央銀行がやっているわけでございますが、そういう場合においては、特に期待に働きかけるということが重要であるということは認識しております。

 ただ、期待だけでなくて、その他、その期待をまさに裏づけるような大胆な緩和が必要であることは当然でございます。

岩田参考人 今、金融政策というのは期待に働きかけるのが当然だというふうな、私も同意いたします。

 マネタリーベースと物価の関係なんですけれども、マネタリーベースと、まず、物価というよりも予想インフレ率の関係ですね。その関係は明確にあるんですけれども、ただ、それが、前日マネタリーベースがふえたから、次の日にすぐ予想インフレ率が上がるというような関係じゃなくて、ある程度長い期間で、例えば六カ月ぐらい見てマネタリーベースがふえていると、やはり予想インフレ率が上昇してくるという関係は、はっきりと統計的に見られます。

 ただ、その関係がどれだけ緊密であって安定的かというのは、マーケットの判断ですが、マーケットが、日本銀行がどういう金融政策のスタンスに立っているかということに非常に依存します。

 したがって、例えば、昨年のバレンタインショックという、二月十四日に日本銀行が一%をめどにすると言ったときには、マネタリーベースが足元でそれほどふえなくても、予想インフレ率はやはり急に上がっています。それから、アベノミクスでも、ことしの一月二十二日ですか、日本銀行と政府が二%を目指すということを言うと、金融政策のレジームがそういうふうに変わったというふうに市場が判断するために、予想インフレ率が、マネタリーベースが足元ではふえていないけれども上がるということで、マネタリーベースと予想インフレ率の関係は、そういう金融政策のスタンスに非常に依存している。

 量的緩和とか、昔の時代にはそのコミットメントが明確でないために、どうしてもマネタリーベースと予想インフレ率の関係が緩やかな関係しかないというか不安定だということで、ですから、そのためにも、我々は今後、きちっと二%の目標を大体二年後には到達するということをコミットメントするんだということで、マネタリーベースと予想インフレ率の安定化を図っていく。そうすると、予想インフレ率が安定すると、将来は需要がふえてくるために実際のインフレ率も上がってきて、したがって、長期に見ると、マネタリーベースと、マネーストックとインフレ率は非常に密接な関係があるということです。

渡辺(喜)委員 麻生副総理がお戻りになりましたので、今のやりとりをお聞きしていない中で、大変突然で恐縮でございますが、デフレは貨幣現象でしょうか。

麻生国務大臣 一義的には貨幣現象だと存じます。

渡辺(喜)委員 日銀理論というのがございまして、日銀はインフレ率を管理できない、マネーストックを管理できないという理論であります。

 実は、二年前のマネーストックが今のインフレ率に関係している、二年前のマネーストックが今のインフレ率を決めるという考え方が常識なのでありますが、これは黒田総裁にお聞きいたしましょうか。

黒田参考人 マネーストックと物価の間には一定の関係があるというのは、そのとおりだと思います。

 金融政策の効果が及ぶためにはある程度の期間が必要でございまして、通常、二年程度ということを言われているわけでございます。したがって、マネーストックをふやしていくということは、物価安定目標の達成に、よりプラスに働いていくことは間違いございません。

渡辺(喜)委員 先ほど、副総裁の話の中に長期と短期とかいう概念が出てまいりましたが、短期とはどれぐらいですか。

岩田参考人 マネーストックとの関係ですか。

 マネーストックと物価の関係に関しては、先ほど申しましたように、金融政策のスタンスというのが非常に影響していて、フリードマンの研究があって、短ければ一年だけれども、長いと二年半とか三年ぐらいかかることもあるという。

 それは、要するに、中央銀行がどういうスタンスに立ってどういうことをやっているかによって、市場、マーケットが長期の、というのは一年、二年先のマネーサプライの経路を見ているわけなんですね。ですから、その経路に関して、これから我々がやるときに、例えば、こういうことをずっと続けていればふえていくだろうということになると、現在ふえていなくても、マネーストックが将来ふえるだろうというのでインフレ率が上がってくるということで、期間が、短期は幾つかというのは、やはり金融政策のスタンスに非常に影響するということです。

渡辺(喜)委員 こういう話はだんだん眠くなりますので、眠くならない話をまぶしていきたいと思います。

 来年四月、消費税が上げられるかもしれない。安倍総理が十月に、四―六の経済状況を見ながら判断をすると言われておりますが、では、物価安定目標二%の中に消費税の増税分は入るんでしょうか。

甘利国務大臣 消費税を引き上げますと、そのときだけは物価にはね返ります。しかし、翌年はそれがベースになります。ですから、そこからということに、翌年比で比べていくと、ベースが変わるということだと思います。

渡辺(喜)委員 入らないということですよね。それは当然ですよ。消費税でげたを履かせてもらった分が物価安定目標に入っちゃうなんといったら、これは詐欺みたいなものですよ。ですから、大体、消費税が三%上がると、強制的に物価が二%ぐらい上がると言われております。つまり、非課税品目というのがありますので、三%上げたら、二%ぐらい自動的に上がっちゃうんですね。ですから、こんなものを物価安定目標の中に込みですよと言ったら、これは詐欺になりますので、今のお答えは、含まないということでございます。

 消費税が上がりますと、形式的には物価が上がるんですね。でも、随分この委員会で議論があるように、給料が上がらないということになりますと、景気は悪化をする。自動的に物価が上がって景気が悪化するというのをスタグフレーションというんじゃありませんか。こういう心配は、副総理、ございませんか。

麻生国務大臣 御心配のように、それがないようにするのが一番肝心のところだと思いますので、私どもとしては、円安のこともこれあり、円が適当に是正されたおかげで、輸出産業は随分損益分岐点が下がった形だろうと存じますし、株価も上がりましたので含み資産も出た、その分だけ労働分配率を上げていただきたいというお話をさせていただいて、今夏の夏のボーナスで、特定の企業で五カ月プラス三十万とか大きな話がいろいろ出ておりますけれども、そういった形が既にできつつあるということは、我々としていいことだと思っております。

 問題は、中小零細企業のところがその恩恵に浴するまでに、渡辺先生、もうちょっと時間がかかるんじゃないかなと、私自身はそこのところが一番危惧しているところであります。

渡辺(喜)委員 時間がかかるとは、では、一体どれぐらいかかるんでしょうか。

麻生国務大臣 これは、それぞれ業界によってもあるでしょうし、企業によっても違うんだと思いますが、今回、業界で見ますと、電機関係はそうでもなかった割に自動車関連はよかった等々、業界によっても差がありますし、また、それぞれの企業によってもそこそこ差がありますので、どれぐらいかかるかというのはなかなか一概に言えないと思いますけれども、一、二年は常識的にはかかるはずだ、ある程度ずれが出てくるであろう、私どもはそう思っております。

渡辺(喜)委員 そうすると、ではお尋ねしますが、消費税を増税したとき、失業率や実質GDPがどんなぐあいに変化をするのか、ちょっとその試算を教えてください。

甘利国務大臣 私ども、政権をいただいてまだ日が浅うございます。でありますので、二十五年度の実質、名目、そして物価上昇率については発表いたしておりますけれども、中長期の試算についてはまだこれからであります。

 ちなみに、昨年の八月には前政権の数字が発表されております。御参考までに、もしそれが必要であれば、これは去年の八月だったと思いますが、民主党政権下で発表されたシナリオ、この中の慎重シナリオでいいますと、物価は、二〇一四年度から二〇一六年度にかけて、消費税率の引き上げに伴う上昇が見られる。具体的には、消費者物価上昇率で見ると、前年比で、二〇一三年度の〇・五%の後に、二〇一四年度三・〇%、二〇一五年度一・六%、二〇一六年度一・七%と推移をし、消費税引き上げの影響が一巡する二〇一七年度には一・一%となっています。

 失業率は、二〇一四年度から二〇一六年度にかけてプラス成長が続くことから、毎年〇・一%ポイントずつ低下する姿となっております。

 実質GDPは、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要及びその反動減による影響が見られるものの、引き上げ前後の期間平均、つまり、二〇一三年度から二〇一六年度で見ると、一・一%程度で成長する姿となっている。具体的には、実質GDP成長率は、二〇一三年度一・七%、二〇一四年度〇・七%、二〇一五年度〇・九%、二〇一六年度一・三%で推移をいたしております。

 私どもの方は、これから年央に向けて骨太方針、それから中期財政計画、それに基づいて成長戦略の姿も見えてくるわけでありますから、それに基づいて中長期試算を発表するという予定にしております。

渡辺(喜)委員 ちょっとしょぼいですね、これはやはり。(甘利国務大臣「これは私どものじゃなくて」と呼ぶ)まあ、前政権がつくったといっても、消費税を上げるとこんなぐあいになる。政府の試算であるということを勘案しても、やはりこれは相当よくないなということがわかります。

 例えば、物価が二%上がると、午前中の質疑でもあったかと思いますが、失業率は一%下がるんですよ。これが通常の常識的な計算です。でも、消費税を上げますと、今のような数字になるんですね。

 どうでしょうか、総理。やはり、せっかく物価安定目標二%、これはもう先ほどから議論をしているように、二年かかるんですよ。二年前のマネーストックの伸び率、これが二年後のインフレ率につながっていくんです。来年の四月というのは、まだ一年経過したところですよ。一年しかたっていないんですよ。そんなときに景気の腰を折るようなことをして本当にいいんだろうか。どうでしょうか、総理。

安倍内閣総理大臣 十月、十一月に判断をする際に、今、渡辺委員が指摘された点が最大の考慮するポイントでございまして、景気の底割れにつながって、結果として税収は落ち、失業率が上がってしまっては、元も子もないわけでございます。

 ですから、そこのところを勘案して、もちろんこれは税と社会保障の一体改革を進めて、年金、医療、介護あるいは子育てに対する財政的な裏づけを得るために消費税の引き上げをするんですが、また、国家としての信任を得るためであります。

 この方針は基本的に定めているとおりでございますが、このタイミングについては、経済は生き物でありますから、そこは十分に勘案をしながら、さまざまな指標を見て総合的に判断をしたいと思っております。

渡辺(喜)委員 総合的に勘案をするのは当然だと思いますが、しかし、ことしの十月に御判断をされる、それが、四―六のGDPが一番基本になる数字だということですよね。

 せっかくアベノミクスがこれから本格稼働するわけでしょう。本格的に稼働して一年たったところで、これは財政の積極財政から反対方向、つまり緊縮財政ですよ、増税というのは。それに突入をしていくんですよ。

 物価安定目標というのは、先ほどのお話のように、消費税増税分、三%上がったら二%強制的に上げられちゃう、この分はカウントされません。しかし、増税をしたら、明らかにこれは景気にはマイナスになる。駆け込み需要はあるにしても、その後はどかんと落ちますよ。

 そうすると、せっかくアベノミクスでお考えになられていたデフレ脱却のシナリオというのがもろくも崩れることになりゃせぬかということを私は心配しているんです。安倍政権が長期政権にならなくなっちゃうんじゃないんですかという政治的な心配はさておき、経済が腰折れをしてしまう。いかがでしょうか。

甘利国務大臣 ぜひ政権の存続性も心配していただきたいと思いますが。

 御心配はわかりますが、結論から言えば、我々は全力を傾けるということになります。

 というのは、総理から答弁がありましたように、税と社会保障の一体改革、社会保障の継続性というのは、将来に向けての安心感につながっていくわけであります。この席でも、非ケインズ効果という御主張もありました。将来見通し、財政の継続性とか社会保障の継続性が確保されればされるほど、安心感につながって、投資につながっていって、景気回復効果があるという理屈もあるわけであります。

 それで、短期は景気刺激で、中長期は財政再建でありますけれども、単なるめり張りをつけない財政再建じゃなくて、それはやはり、成長戦略に資するめり張りはしっかりつけていきます。それとあわせて、規制改革を徹底的にやっていきます。そうしますと、将来、投資をすべきだ、あるいは消費をした方がいいという期待感がどんどん膨らんでいくわけでありますし、それが実際の投資行動や消費行動につながっていくと思いますし、そうしたいと思います。

 そういう規制改革、成長戦略のロードマップに基づいた規制改革あるいは重点投資、あるいは部分的な、財政を傷めない減税政策等を組み合わせていきますと、投資行動が動き出す、企業の内部留保の二百六十兆円が動き出す、あるいは千五百兆の民間金融資産が動き出すということを誘導していかなければならない。そこに向かって全力投球をしたいと思っております。

 安易に、消費税を上げるのを諦めるような発言がありますと、これはもう国債の信用性に即刻はね返ってくるわけでありますから、そこはしっかりと、そういう環境が整うように政府としては全力を挙げていきたいというふうに思っております。

渡辺(喜)委員 大変心配をするところであります。この議論は、引き続き行ってまいります。

 そこで、黒田総裁、もう一度お尋ねをいたします。

 ブレーク・イーブン・インフレーション・レートというのがあります。これは、物価が将来どれくらい変動すると市場が見ているかを示すものであります。普通国債と物価連動債の利回りの差から算出をされます。これが、この縦の線から急激に右肩上がりになっていますね。これは一月の二十三日であります。その前日に何があったかというと、例の日銀の共同宣言があって、二%のインフレ目標があるということなんですね。

 主要国の中央銀行では、予想インフレ率の代替として、普通国債と物価連動債の利回りの差、BEIと言いますが、これを活用するのが一般的でありますけれども、日本銀行はこれを活用されるおつもりはありますか。

黒田参考人 委員御指摘のとおり、このBEIというのは、欧米でもよく使われている予想インフレ率の指標でございます。したがいまして、我々も、これを十分参考にしていきたいと思っております。

 なお、BEIだけでなく、市場関係者やエコノミスト、あるいは家計のアンケート調査などの結果を見ても、このところ、予想物価上昇率は上昇しているということであります。

渡辺(喜)委員 要するに、一月二十三日からまさしく期待が変わったということなんですね。そして、今どれくらいになっているかというと、一・四ぐらいになっているんですね。これが二に届くのはまだまだなんですよ。ここで諦めちゃいけない。いい線いっていますよ、いい線いっていますけれども、ここで諦めちゃいけないんですね。

 物価連動債というのは、私が自民党にいた時代から、これはぜひ出すべきだということをずっと言い続けてまいりました。ところが、二〇〇八年、たしかこれは麻生内閣のときだったんじゃないでしょうか、発行を取りやめちゃったんですが、なぜでしょう。

麻生国務大臣 渡辺先生、それも御記憶なんだと思いますけれども、この年にリーマン・ショックがありまして、それで、平成二十年なんですけれども、リーマン・ショックが起きましたのはその年の八月、結果的に、これは十月で発行をとめております。

 今お話があっておりましたように、この問題については、物価が下がっておりますので、なかなか売っても買い手がなかったこともあるんですが、いずれにしても、平成二十四年、昨年の三月以降に、再発行したらどうかという御意見等々が出ておりまして、タイミングをはかっておったんですけれども、この一月に、平成二十五年度国債発行計画という年度のものを立てるんですが、そのときに、市場関係者の意見をいろいろ参考にさせていただいて、新たな元本保証の物価連動債を再度発行し、平成二十五年度中にこれを再開いたしたいと考えております。

渡辺(喜)委員 元本保証というのはどういうことですか。

麻生国務大臣 償還時の元本保証ということです。

渡辺(喜)委員 こういったツールを使うということは、インフレターゲット、これをより精緻なものにしていくために不可欠であります。これはもうぜひ発行を再開すべきであります。その点は御確約いただけますか。

麻生国務大臣 平成二十五年度中と申し上げましたけれども、今月からちょうど一年間、しかるべき時期に発行させていただきたいと存じます。

渡辺(喜)委員 再び黒田総裁にお尋ねをいたします。

 日銀のバランスシートを見ると、発行銀行券と当座預金、これが、特に当座預金が、三月二十日現在で四十三兆円、ところが、午前中の質疑で明らかになったように、短期間の間に、十日足らずの間に五十七兆円になったんですか。やればできるじゃないですか。どうやってこれはふやしたんですか、この十日間の間に。

黒田参考人 御案内のように、負債側も、特に当座預金はいろいろな事情でかなり振れます。五兆円、十兆円という単位で振れるわけですが、その場合、振れる一番大きな要因は、政府預金との関係で、政府預金がふえますと、その分、民間の側の当座預金が減る。あるいは、政府預金が減りますと、民間側の当座預金がふえる。例えば、国債の償還をいたしますと、政府預金が減るわけですが、その分が民間側の当座預金となってあらわれるということで、月々で見ますとかなり振れるということでございます。

渡辺(喜)委員 ですから、振れることがよくありますので、ちょっと我々が監視を弱めると、すぐ絞っちゃったりするんですね。これが問題なんですよ。

 大体、日銀のバランスシートというのは、十日に一回ぐらいでしょうか、二十日に一回ぐらいですか、公開されていて、日銀のホームページにアクセスしてもなかなか出てこないんですね、営業毎旬報告、ここにたどり着くとようやく出てくる、そういう代物ですよ。

 恐らく、こんなものはもっと頻繁に出せるはずなんですね。あっと気がついたら、もう五十七兆円になっていた。しかし、こんなに間隔のあいているディスクロージャーですと、気がつかないうちに絞られていたなんてことになりかねない。

 今、購入する資産の話が出ましたが、三月七日の金融政策決定会合で、一名の委員から、基金の長期国債の買い入れについて、期限を定めない買い入れ方式を速やかに導入して、金融調節の必要から行う国債買い入れ、いわゆる輪番オペなどと言っておりますが、これと統合をするという議案が出されました。早い話が、大胆な金融政策を先取りしようという話ですよ。これはどうなったか。提案した委員以外の八名が反対をしております。

 こういうところに黒田総裁が乗り込むんですね。白川体制から黒田体制へ、白から黒へのオセロゲームができるのかという問題なんですよ。

 結局、白川総裁の残されたDNAというのは、これは日銀理論ががちがちの体制で守ってきたものなんです。これをブレークスルーするということは並大抵のわざではない。だから、安倍総理がしきりにレジームチェンジという言葉を使って、ことしの一月ぐらいから言っておられたことであります。

 この三月七日の提案を採用する場合、長期国債の保有残高を銀行券の発行残高内にとどめるいわゆる日銀券ルール、これは撤廃せざるを得ないと思います。これについては先ほどお答えいただきましたが、改めてこの点をお答えください。そしてもう一つ、大胆な金融緩和というのはいつまで続けていけばいいのか。この二点をお答えください。

黒田参考人 実は、現在において、もう既に長期国債の保有額は日銀券の発行残高を超えているわけでございまして、その意味では、いわゆる日銀券ルールというのは、現時点ではそのとおり守られていないということでございます。

 今後、さらに長期国債の購入額を増加させていくということになりますと、現在の日銀券ルールというのは、当分の間、それを守るということはできないわけでございます。したがいまして、当然のことながら、日銀券ルールの廃止その他を含めて、政策委員会で十分に審議していただく必要がある。

 私どもといたしましては、何としても二%の物価安定目標をできるだけ早期に、二年といったような期間を念頭に置いて実現したい、実現する必要があるというふうに考えておりますので、そのためには、国債も含めて、特に長期国債の期間の長いものも含めて、量的にも質的にも大胆な金融緩和を進める必要があるというふうに思っております。

 なお、大胆な金融緩和を進めるその期間というのは、もちろん物価安定目標にどの程度で到達するかということとも関係はすると思いますが、私どもとしては、この二年間というのは、いわば集中治療期間と言うとちょっと日本経済に対して失礼ですけれども、やはり二年というのを念頭に置いて、大胆な量的、質的緩和をして、デフレから脱却するというふうにしていきたいと思っております。

渡辺(喜)委員 長期国債というのは五年以上のものをいうと思いますが、では、総裁、三十年物国債はお買いになる御予定はございますか。

黒田参考人 輪番オペはそういったものも対象にしておりますが、現在のいわゆる資産買い入れ基金は、主として一年から三年ぐらいの残存期間の国債を買っている。それをいわば合体して、全体として市場にわかりやすい形で金融緩和の姿勢を示していくというつもりでございますけれども、その際に、どういった年限のものを買うかということは非常に重要なポイントでございますので、政策委員会で十分議論して決定していただきたい。特定のものを今から事前に排除するつもりはございません。

渡辺(喜)委員 午前中の質疑だったでしょうか、物価安定目標の対象は、いわゆるエネルギー価格は含むんだというようなことを言っておられましたね。つまり、コアCPIというものですよ。コアコアというのは、生鮮食品やエネルギー関連を除いた、まさに一番正確なものでありますが、カバレッジが少ないという理由で、たしか否定をしておられましたね。では、コアCPI、エネルギー関連の物価でいくと、例えば、日銀の金融政策と全く関係のない電気料金の値上げなんということが物すごく大きく影響しちゃうと思いますが、いかがでしょうか。

黒田参考人 午前中も申し上げましたが、物価安定目標自体は、消費者物価指数の総合指数を考えているわけでございますが、物価安定目標を安定的に達成する必要があるわけで、そのためには、例えば生鮮食品を除いたところで見た方が、より短期的な変動を除去できるわけでございます。

 それから、委員御指摘のように、全く対外的な石油価格の上昇などによる要因は、その先行き次第ではありますけれども、それを除いたコアコア指数というのも十分参考になるわけでございますので、そういったいろいろな指数を見ながら、二年程度の間に二%の物価安定目標を達成する。

 それはあくまでも、一時的にそこに行けば終わりというわけではなくて、二%程度の物価安定を中長期的に持続していく、結果として、いわばアンカーになるような形にしなければならないというふうに思っております。

渡辺(喜)委員 もう時間が迫ってきてしまいまして、どうも、きょうの質疑で賛否を決めるには、ちょっと時間が足りませんね。あした、あさって、政策決定会合があるようでございますから、そこでどういう御提案をされるのか、そしてそれが、オセロゲームで白から黒へひっくり返るのかどうか、このあたりを見させていただきたいと思います。

 総理、改めてお伺いいたします。

 デフレ脱却を確実なものにしていくためには、やはり責任体制、これがとても大事なんですよ。これはもう繰り返し質問されていることだとは思いますけれども、緊張感を持って業務に当たる、このことが大事であります。そのためには、今の共同声明のような、法的根拠がない、署名もないというようなものであってはいけません。やはりこれは、物価目標に法的な根拠を持たせるためには、日銀法改正、これが絶対に必要になります。

 達成できない場合に責任を問える仕組みが必要だ。我々は解任権を提案しております。世界じゅうどこでも、こうした解任権という規定は、明示的にはない国もございますが、きちんと責任論と裏腹の形で担保されているのであります。日本の場合には、まさしく日銀法改正が非常に不幸なバックグラウンドの中で改正をされた経緯がございまして、糸の切れたたこのような存在として、独立性が認められてしまった。

 この点、改正のお考えを端的に総理にお伺いいたします。

安倍内閣総理大臣 今般、二%という物価安定目標について、日本銀行もその責任をコミットして、最大限努力をしていっていただけるものと思いますが、同時に、四半期ごとに、経済財政諮問会議において、日本銀行の総裁が会議に出席をしていただいて現状の説明をするという、説明責任を果たしていくという状況になっております。

 新総裁、副総裁のもとでしっかりと、おおむね二年で達成をしていただけるということで私は信頼をしているところでございますが、自民党とみんなの党で日銀法の改正案について協議をし、大体成案を得ているわけでございますので、常に視野に入れていきたい、このように思っております。

渡辺(喜)委員 ありがとうございました。

山本委員長 これにて渡辺君の質疑は終了いたしました。

 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 安倍内閣は、デフレからの脱却を最大の課題として掲げておりますけれども、問題は、なぜデフレが長期化したのかという点であります。

 総理は、本会議での私の質問に対して、こうお答えになりました。「我が国経済は、長期にわたり、需要が弱い中で、企業などによる、日本経済の将来に対する成長期待の低下やデフレ予想の固定化もあって、デフレが継続してきた」、このようにお答えになりました。

 長期にわたり需要が弱いという状況がベースにあったというふうに思います。私は、需要の中でも、家計消費の落ち込みというのが非常に大きかったと思います。

 麻生大臣に確認したいんですが、家計消費というのは、国内総生産、GDPの約何%を占めているでしょうか。

山口副大臣 済みません、数字でございますので、私の方からお答えをさせていただきたいと思います。

 内閣府の国民経済計算というのがありますが、これによりますと、お尋ねの家計最終消費支出の国内総生産、名目GDPに占める割合は、二〇一一年度におきまして五九・三%になっております。

佐々木(憲)委員 五九・三%というのは約六割ですね。家計消費というのは経済全体に決定的な影響を与えるものだと思います。

 ところが、この家計消費が、内閣府の国民経済計算によると、十年間で六兆円以上も落ち込んでおります。

 総理にお聞きしますけれども、これが内需を落ち込ませた最大の要因だと私は思うんですね。総理はどのように捉えておられますか。

安倍内閣総理大臣 我が国経済は、これまでの十年間を振り返りますと、先ほど佐々木憲昭委員から紹介をしていただいたんですが、長期にわたり需要が弱い中で、企業などによる日本経済の将来に対する成長期待の低下やデフレ予想の固定化が生じたことや、あるいはまた、二〇〇〇年及び二〇〇六年、量的緩和解除、ゼロ金利の解除といった日本銀行の判断が、今から考えれば早かったことなどから、長期にわたるデフレから脱却できなかったというふうに考えております。

 このような長年にわたるデフレの中で莫大な国民の所得と産業の競争力が失われ、頑張る人が報われるという社会の信頼の基盤も揺るがされている状況でありまして、こうした教訓を踏まえれば、従来の延長線上での対策ではできないということで、三本の矢によって、デフレから脱却をし、そして経済を成長させ、さらには国民の収入がふえる、そういう景気の好循環の中に日本も入っていけるように努力をしていきたいと思います。

佐々木(憲)委員 いろいろなことをお答えになりましたが、家計消費というのが非常に経済全体の中で重要であり、それが落ち込んでいることがベースにあるということは、お答えの中にも見えました。三本の矢が家計にしっかり軸足を置いてやられているかどうかというのは、これから検証したいと思うんです。

 家計消費が落ち込んだ理由は、一つは収入が減っているからです。雇用者所得、労働者の賃金は十年で二十二兆円も減少しております。年金の給付も減りました。収入が減った上に、今度は、税、社会保障、保険などの負担がふえました。そのため、手取り収入が大変大きく落ち込みました。

 このパネルを見ていただいても、二〇〇二年以降、小泉、安倍内閣が国民負担をいかにふやしてきたかというのを示しております。非常にたくさんあるんですよ。所得税、住民税の定率減税の廃止、厚生年金の保険料の引き上げ、失業給付が減らされる、あるいは健康保険の窓口負担が三割になる、介護保険料も引き上げられた、生活保護の母子加算、老齢加算が廃止された、老人医療の窓口負担がふえた、年金が減額された。本当にじわじわと国民負担がふえて、我々この数字を計算しますと、合わせて十二・七兆円に上ります。

 総理、この長期にわたり需要が弱くなったという状況をつくり出したのは、小泉、安倍内閣にも大きな責任があったんじゃありませんか。

安倍内閣総理大臣 今、委員が示していただいた負担増については、主に社会保障の給付において、給付と負担のバランスをとっていくということと同時に、社会保障を持続可能なものにしていくための対応であった、適切な対応であったと私は思っております。

佐々木(憲)委員 給付と負担のバランスといいますけれども、給付が減り、負担がふえる、これはバランスが欠けるんですよ。そういう状況というのが、過去、非常に大きく国民の暮らしを直撃してまいりました。

 政府に対する国民の怒りはこういうところに出てきたわけです。例えば、所得税、住民税の定率減税の廃止がありましたね。あのときは、全国各地の市役所の窓口に怒りが殺到しました。列島騒然と言われるような状況がありました。あるいは、後期高齢者医療制度に対しても怒りが爆発しました。

 その怒りのもとで、二〇〇九年に政権交代が起きました。自民、公明は下野せざるを得なかったわけです。ところが、生活第一と言って政権についた民主党は、この負担増を放置して大変な負担が残ったわけです。

 このパネルを見ていただきますと、総務省の家計調査に基づいて作成した、平均的なサラリーマン世帯の家計であります。

 二〇〇〇年から二〇一一年を比較しますと、勤め先収入は四十六万六千円減少しております。その一方で、所得税、住民税の増税があり、社会保険料の負担が大きくふえております。合わせて十六万九千円の負担増であります。そうなりますと、手取り収入、可処分所得が大きく減って、消費支出は実に五十七万九千円も減っているわけであります。

 これは大変な事態だと、総理、思いませんか。

安倍内閣総理大臣 つまり、だんだん収入が減っていくというのは、デフレによって物の値段も下がっていくわけでありますから、当然、企業の収益も減っていくという中において、給与も残念ながら減っていく。

 いわばデフレの負のスパイラルの中での現象でございますから、これを変えていくために、我々は今、デフレから脱却して経済を成長させていく、そしてその成長の果実がしっかりと国民に行き渡るようにしていきたいと考えているところでございます。

佐々木(憲)委員 このデフレの負のスパイラルを加速してきたのが、国民の負担増でありました。そこを本当に直すのかというのが問題でありますが、昨年結ばれた自公民の三党合意は、さらに輪をかけて国民負担をふやそうということになっているわけであります。

 昨年末の総選挙では、消費税増税をしないと公約した民主党に、公約違反だということで批判が集中して、厳しい審判が下りました。

 しかし、再び政権についた自民党、公明党は、この国民負担増をそのまま押し通そうとしております。来年四月から二〇一五年の間、二年間で消費税を十三・五兆円、大増税であります。これは私は尋常じゃないと思うんですよ。消費税の増税分だけで法人税額を超える大きさであります。

 確認をしたいんですけれども、財務大臣、戦後の日本で、これだけ多額の増税が実施された例はありますか。

麻生国務大臣 先生、物価も大分違いますのであれですけれども、絶対額でいけば、一番高いと存じます。

佐々木(憲)委員 つまり、一番高いということは、過去、こんなにふやした増税はなかったということですね。

 このパネルも見ていただきたいんですけれども、負担増は、消費税だけではありません。年金、介護、医療、子ども手当、年少扶養控除廃止、こういうことで、負担増、給付減、大変なものであります。これも、いずれも手取り収入をさらに減少させる要因ですね。合わせて六・五兆円です。消費税増税分と合わせて全体で、これから二十兆円負担をふやす、給付減、こういうことになるわけです。

 総理にお聞きしますけれども、これからこんなに家計に負担を負わせたら、消費を一層冷やすことになって、デフレを加速させるということになるんじゃありませんか。

安倍内閣総理大臣 この消費税の八%、一〇%への増税分は、年金や医療や介護、あるいは子育て等に使われるわけでございますし、佐々木委員御承知のように、医療の体制についても充実をしていくということになっているわけでございまして、そのための財源において、国民の皆様の御理解をいただいていきたいと思います。

 一方、今佐々木委員が御指摘のような心配もあるのも事実でございまして、いわば景気が冷え込んでいって税収が逆にふえていかないということになってはならないわけでございますので、しっかりと景気の状況等々を、さまざまな指数を見ながら勘案した上で、判断をしていきたいと思っております。

佐々木(憲)委員 この増税分が全部社会保障に回るなどと言いますけれども、それはでたらめですよ。昨年、私、五月に税・社会保障特別委員会で質問をいたしましたら、これは一旦は社会保障に回るように見えるんです。しかし、十三・五兆円のうち半分以上の七兆円がほかの財源に置きかわる。これは政府も認めました。しかも、自民、公明は、附則十八条を入れて、公共事業に使える道を開いたわけですね。

 ですから、我々、こういう負担で取り上げられても、社会保障に還元されるという保証は全くない、こう言わざるを得ないと思うんです。

 では、実際に家計はどうなるんだろう。子育て世帯を見ていきたいと思うんですが、これは、私、昨年政府に要請して、世帯類型別に試算を出してもらった、これを示したものであります。

 パネルを見ていただきたいんですけれども、これは政府の試算を集計しました。二〇一一年と二〇一六年、どれだけ年間の負担がふえるかということであります。

 この試算では、平均的な子育て世帯の場合、税、社会保険料などの負担で、これから三十六万九千三百円、負担がふえる。約三十七万円の負担増になるわけです。こんなに負担がふえましたら、これはもうやっていけないという声が上がるわけです。

 総理、これにどう答えますか。

安倍内閣総理大臣 一方、子育てへの支援もしっかりと行っていくわけでございますし、例えば、この増税分において待機児童に対する対応を大きく進めていくことにもなるわけでございまして、そうした支援もしっかりとやっていく中において、御理解をいただいていきたいと思っております。

佐々木(憲)委員 しっかりしっかりと言いますけれども、その保証がないんですよ。実際に、家計に還元されるという数字は政府は出しておりません。

 夫婦高齢者世帯の場合はどうですか。このパネルは、総務省の家計調査からつくりました。

 一番大きな特徴は、年金が年に二十三万五千円減っているということであります。これはもう本当に大変な事態で、その反面、税、社会保険料の負担が二十四万円から三十四万八千円に、約十一万ふえているわけであります。その上、この消費支出の中に、節約することができない光熱費、公共料金、あるいは医療費が、五万四千六百円ふえております。

 十年前を見ていただきますと、収支がほぼ均衡している。年金収入で支出を賄っていた。それが、ほぼとんとんであった。ところが、今は、年に四十二万三千円という大変な赤字なんですよ。これは政府の統計から出てきた数字です。

 これは高齢者から見ますと大変な不安でありまして、政府が出した数字を見るだけでも、今後、これから七万から十万もさらに負担がふえるという想定があります。

 私のところに、高齢者の方々から、大変な、悲鳴に近い声が寄せられているんです。

 例えば、愛知県の方は、こう言っています。国保料、介護保険料が高過ぎて生活できない、年金は受給し出してから下がるばかりです、これ以上下がったら生活できません、医療費はせめて七十五歳からは無料にしてほしい。

 京都の方は、老後のためと思い、苦しい子育ての中から年金保険料を納めてきたのに、満了しても五万円あるかなしかです、その中から介護保険料、健康保険料を差し引くなんてあんまりです、こういう訴えですね。

 埼玉の方は、年金だけでは暮らせません、貯金を取り崩して生活していますが、すぐに底をついてしまうので、先が心配ですと。

 あるいは、東京北区の方は、昨年度は、後期高齢者医療の保険料と介護保険料の値上げで、年に二万数千円も負担がふえました、ところが年金は二万円も減らされました、合わせて四万数千円、一月十四万円の年金の三割に相当する大変な負担です、こう嘆いているんです。

 この声を、総理、どう受けとめますか。

安倍内閣総理大臣 消費税引き上げに際しては、低所得者、年金生活者の方々への対応等も十分に勘案をしていかなければならないと考えております。

佐々木(憲)委員 低所得者、年金受給者に何か措置をとるといいますけれども、例えば、月五千円の給付というのを考えているようですね。それは、ごくごく一部なんですよ。これだけ大増税、大負担が押し寄せてくる中で、まあ本当にスズメの涙のようなもので、焼け石に水ですよ。そういうことで何かこの負担増を正当化するというのは、私はとても許せないと思います。

 このままいきますと、年金や賃金は上がらないのに、負担がふえ、物価が上がる、こういうことにならざるを得ない。

 ここで、日銀の岩田副総裁にお聞きしますけれども、日銀は、先ほども議論がありましたね、消費税増税が三%上がった場合、五%から八%に上がった場合、それで物価は二%上がるというふうに計算をしているようであります。黒田総裁は、日銀の物価目標二%というのは二年以内、岩田さんもそうおっしゃいました。そして、消費税増税分を除いて達成する、こうしているわけですね。

 そうなりますと、二年後には、増税分で二%、それを除く物価上昇で二%、合わせて四%になる。毎年二%ずつ上昇するわけですから、消費税率が一〇%になった四年後には、物価は今より一〇%近く上昇する、そういう計算になるんじゃありませんか。日銀はそう考えているんでしょうか。

岩田参考人 二%のインフレ目標を目指してやっていくということは、総需要をふやしていくということで、それによって、今非常に低い国内総生産を、需給ギャップをおさめて、引き上げていく。さらに、成長戦略というのが同時にあれば、その水準がもう一つ上がるということで、実際に私たちの物価の上昇を上回るような賃金の上昇をもたらすためには、まず、デフレ脱却が必要だということと二%インフレを目指すということで経済を安定させることと、成長戦略によって一層生産性を上げていく。

 賃金というのは、長期的にはインフレ率プラス生産性の上昇というだけ上がっていくというのは関係があるので、より物価以上に、長期にわたって賃金を上げていくというためには、潜在成長率を上げていくような政策がやはり必要だというふうに思っています。

佐々木(憲)委員 今のような抽象的な答弁ではね。

 総需要をふやすと言いますけれども、総需要は抑制されてくるわけですよ、今の政府の統計を見ても、負担増を見ても。

 賃金はインフレ率プラス生産性上昇だと言いますけれども、それは机上の空論ですよ。現実に賃金というのは、本当に上がるかどうか、それは労使間の関係でしょう。そういうことを無視して、物価を上げれば何かうまくいく、これはちょっと私は理解できません。

 もう一つ、日銀についでにお伺いしますけれども、私は、七年前に財務金融委員会で当時の福井総裁に質問したことがあります。そのとき、こういう答弁がありました。九一年における受取利子額がその後二〇〇四年まで同じ額で継続するというふうに仮定した場合と現実の金利所得との比較で逸失金額を計算すると、累計で三百四兆円である。要するに、利子が下がって、家計に入るべき利子分が三百兆円以上も減少する、こういうふうな答弁がありました。

 この答弁、事実ですね。

岩田参考人 議員御指摘の計数については、その当時利用可能な統計のもとに、一九九一年における受取利子額がその後二〇〇四年まで同じ額で継続すると仮定した場合と現実の受取利子額の差を計算したもので、その数字自体は正しいものだったというふうに認識しています。

 ただ、利子所得というのは、経済全体のGDPというものが大きくならないとやはりふえないので、利子所得だけふやそうとすると、かえって、金利が上がって、そのパイ自身、分配するもとのGDP自体が減ってしまうということに御留意いただきたいというふうに思います。

佐々木(憲)委員 私は、家計の収入がどう変化するか、その事実関係をただしたわけであります。そうしますと、この間、利子所得が減ったために大変な家計に対する打撃になっているということが明らかになったと思います。

 もう一点、確認をしておきますけれども、お金が出回るという面、私は二つの面があると思います。一つは、日銀が金融機関に貨幣を供給する部分、これがマネタリーベースであります。もう一つは、金融機関全体が経済に貨幣を供給する部分、これはマネーストックであります。

 この二つに分けて見た場合、リーマン・ショックが起こった二〇〇八年二月、今から五年前でありますけれども、その二〇〇八年二月からことし二月までの五年間、マネタリーベースは何%ふえましたか。あるいは、マネーストックは、これはM3ですけれども、何%ふえたか、数字をお答えいただきたいと思います。

岩田参考人 マネタリーベースの方は、御指摘の期間、約四七%増加し、マネーストックは約一〇%増加いたしました。

佐々木(憲)委員 金融緩和をやっても、金融緩和でじゃぶじゃぶと日銀がお金を供給する、供給しても、銀行から先に流れないんですよ。つまり、この間、五年間で四七%お金をふやした。ところが、銀行から先に流れないのはなぜかというと、需要がないからです、資金需要がないから。麻生財務大臣も深くうなずいておられますけれども、これがやはり実態だと思うんですね。

 したがって、私は、マネタリーベースでどんどんお金をふやしていくというやり方で果たして経済全体がうまく回っていくか、非常に疑問に思うわけです。一番大事なことは、金融機関から先の経済活動をいかに活発化するか、これが大事なことだと思うんです。

 金融担当大臣である麻生さん、どのように思いますか。

麻生国務大臣 これは別に、歴史というより経験則で、二〇〇〇年、二十一世紀の初頭から日本銀行として、二十兆、二十五兆、三十五兆までいきましたかね、あのときは。三十五兆ぐらいまでいわゆるマネタリーベースをふやしたんですけれども、結果として、それがずっと市中銀行にとどまって、結果的に日銀の当座預金がふえただけ、結果的には市中に出回らなかった。なぜか。需要がないからです。はっきりしております。

佐々木(憲)委員 需要がないところをどのようにふやしていくかというのが一番の鍵でありまして、その中心はやはり家計消費にあると私は思うんです。政府は、その家計消費を冷やしながら物価だけ上げる、こういう形になっているわけですね、政策が。これが問題だと思うんですね。

 既に、生活の方で、所得はそんなに伸びていないのに、物価だけ上がっているんですよ。輸入価格がもう既に上がり始めております。ガソリン、灯油が上がっている。電気料金、輸入食料品なども上がりつつある。サラダ油、ツナ缶、小麦、ティッシュ、家畜の飼料、肥料、こういう非常に広範な範囲に値上げが今及ぼうとしております。

 賃金も年金も上がらないまま物価だけが上がっていく。そうなると、生活防衛で消費を減らさざるを得ないんです。結局、需要がさらに減って、不況と物価上昇が同時に進むというスタグフレーション、こういう形にならざるを得ないというふうに思いますが、総理、どう思いますか。

麻生国務大臣 今言われたようなことにならないようにするのが第二、第三の矢の一番肝心なところだ、私どもはそう思っております。

 我々として、申し上げましたように、いろいろな政策はもう御存じのとおりで、時間もないことですから、政策は触れるつもりはありませんけれども、給与が上がる、事実、ボーナスやら等々で、それらのことがいろいろな新聞に取り沙汰されている。まだ、一つの面です。そういった面で、それが結果的に消費に回っていく部分もありましょうし、また、それまでのローンの返済に充てる部分もあるでしょう。いろいろなことがあろうと思いますが、少なくとも、経済のベースを大きくしない限りは景気がよくなることはありませんから、そこのところを基本的に据えてやらなければならぬと思っております。

佐々木(憲)委員 経済のベースがなかなかふえていかないんですよ、政府の政策では。

 やはり今大事なことは、消費税増税を中止するとはっきりするということであります。社会保障を充実させて、大企業の内部留保を国民に還元させる、そういうところに大きく踏み出さなきゃならぬ。やはり家計を直接温める政策に根本的に転換しないと、このまま突き進んでいったら、これは、二重三重に、所得は減るわ、物価は上がるわ、税金が上がるわ、こんなことになっていくのではないかというふうに私は思います。

 したがって、今のこの路線を根本的に国民の立場に立って改めるということなしに日本の経済の再建の方法はない、私は、このことを最後に指摘いたしまして、質問を終わります。

山本委員長 これにて佐々木君の質疑は終了いたしました。

 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 生活の党の鈴木でございます。

 まず最初に、日銀の金融政策について質問をさせていただきたいというふうに思います。

 アベノミクス効果なのか、株も上がり、円高がとまり、景気も少しずつ上向く兆しが見えてまいります。そういったよい流れに水を差すというつもりは全くありませんが、私は、どうしても、総理が掲げる大胆な金融緩和が、行き過ぎた金融緩和になるのではないか、こういう心配を実はいたしております。

 よいインフレならいいんですけれども、悪いインフレが起きて、実体経済がついていかない、先ほどのお話のように、国民の賃金、所得が上がらない、物価だけが上がる、そんな事態を招くのではないか。私は、この大胆な金融緩和、そして二年で二%のインフレ目標達成というのは非常に危険をはらんでいる、このように考えております。

 そこで、以下、順次、安倍総理と黒田日銀総裁にお伺いをしてまいりたいと思います。

 まず、二%の物価安定目標であります。

 これは、日銀が定めたものではありますけれども、日銀と政府の共同声明で明記をされたということであります。したがって、当然のことながら、共通の目標なのだと理解をしております。

 その上で、なぜ二%なのか。問題はここでありまして、これまで過去二十年間ほとんど実現したことのない数字を、なぜここで掲げたのか。グローバルスタンダードだからとか、イングランド銀行がそうしているとか、そんなような理由ではなくて、我が国日本で、私たち国民にとってなぜ二%の物価上昇を目指すことが本当によいのか、その理由を、総理とそれから日銀総裁に順次お伺いをしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 この十数年の間、ずっと日本はデフレに苦しみ、そして、行き過ぎた円高の中で、どんなに朝早く頑張って知恵と労力を使っても物が売れないという状況に陥っていたわけでございます。そして、GNIでいえば約五十兆円の国民の富が失われてしまったんですね。毎年毎年、デフレ下にあっては、物の値段が下がっていく以上に、残念ながら、収入が減っていくということに大きな問題があります。

 結果として、現金で持っているのが一番いいわけでありまして、物の値段が上がっていかない中においては、実質金利は高くなっていくわけでありますから、現金を持っておいた方がいい。もちろん、消費は起こりませんし、投資は起こらない。結果として、経済は縮小して、人々は職を失っていくというところに直面をしていくわけでございます。

 ですから、経済を正常に動かしていく上においては、やはりこのデフレから脱却をしなければならない、こういうことでございまして、その中において、大胆な金融政策。

 ずっとデフレマインドというのが十年以上こびりついてしまったわけでありまして、物の値段は上がっていかない、給料は上がっていかない、よって、企業は、なかなか設備投資もしなければ、投資もしなければ、従業員の給料も上げない。

 これを変えていく上においては、いわば、きょうよりも半年後の方が物の値段が上がっていくのであれば、それは早く買った方がいいし、機械であれば、早くその機械を買って設備投資をした方がいいということになって、初めて経済は動き始めるわけでございます。

 そこで、我々は、大胆な金融緩和政策をとって、しかし、それは、ただどんどんやみくもに金融緩和をするということではなくて、二%という安定目標を設けますから、つまり、ここがある意味では歯どめになってくるわけであります。

 同時に、これを設けて、かつ、日本銀行が責任を持つ、コミットすることによって、初めて市場もそれを信じるということになるのではないか。という中において、我々は、大胆な金融緩和、そして機動的な財政政策、さらには、長続きさせていく、継続的な成長を維持していくためにも、やはり民間の投資を喚起する成長戦略、この三本の矢を同時に射込んでいくべきだ、こう判断したところでございます。

黒田参考人 二%の物価安定目標を設定いたしましたときの議論でございますが、第一に、消費者物価指数は、御承知のように、ラスパイレス方式に基づいてつくってあるということもありますし、新製品がタイムリーに入らないということであって、若干、上方バイアスがあるわけです。それを考慮する必要があるということ。

 それから第二に、実質的に物価上昇が完全にゼロであるというと、相対価格の調整が非常に難しくなる。さらには、名目金利は、ゼロというのは下限ですので、景気が悪化したときに金融政策の対応力を確保していく必要もあるということがあって、一定ののり代が要る。

 物価指数がそもそも過大に出ている部分もあるということと、もう一つ、のり代が必要だということで二%ということにされたわけでして、これは、ある意味で、ほとんどの中央銀行が世界的にとられているグローバルスタンダードになっているわけですが、グローバルスタンダードだからというよりも、今申し上げたような実質的理由があって、二%という安定目標を決めたわけでございます。

鈴木(克)委員 時間の関係がありますので、端的に御答弁いただければ結構だと思います。

 さて、総裁にお伺いをします。

 いよいよ、あす、あさってと、日銀の政策委員会、そして金融政策決定会合が開かれるわけであります。総裁にとってはまず最初の試金石ということになるのではないかと思いますが、そこで、どういう形でこの決定会合が結論を出すのかということです。

 これはもちろん、あす、あさってを経過しなきゃ当然わからないということになるわけでありますけれども、しかし、政策委員会のメンバーについて、総裁のお考えに反対という方もいるのではないかというふうに伺っています。

 一月の決定会合では、民間のエコノミスト二名の方が、明らかにこのターゲットは反対である、二パーは反対である、こういうことをおっしゃったというふうに聞いています。そうすると、まず、先行する期待をいわゆる実体経済としてどう波及させていくのか。これはもちろん、新生日銀の黒田総裁の一つの大きな課題なんですけれども、そこをどういう形でこの政策決定会合に向かっていくのかということが一つ。

 もう一つは、いわゆる反対をするという方がみえたときに、私、これは総理にぜひお伺いしたいんですけれども、反対をするような委員にはやめてもらいたいというような、恐らく、総理の腹の中ですよ、これはわかりませんが、そういうようなお気持ちがあるのではないのか、一度ぜひここで確認をさせていただきたい。

 黒田総裁に一点、それから安倍総理に一点、お願いします。

安倍内閣総理大臣 私も至らない人間ですから、何か気に食わない人がいると、こんなやついない方がいいと思うことはありますが、しかしそれはやってはいけないことであって、総理といえども、日銀の政策委員は完全に独立している存在ですから、そして金融政策の専門家として敬意を持っております。

 ですから、その中において自由闊達な議論を行う中において、新たに任命された黒田総裁そして二人の副総裁とともに、いわば二%の物価安定目標に向けて有意義な議論をしていただきたい、こんなように思うところでございます。

黒田参考人 政策委員会は九名の委員から成る合議体でございますので、合議体の中で賛否がいろいろあるということは当然でございます。

 ただ、合議体として、既に一月に、二%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現する、そのために金融緩和を推進するということまでは決定されていますので、そのときの賛否にかかわらず、政策委員会としては、それが決定事項ですので、それを実施していく義務があるわけでございます。

 ただ、具体的にこれからどのようなことをやっていくのか、あるいはどのようなタイムスパンで考えていくかということは十分政策委員会で議論していただきたいと思いますが、私といたしましては、金融政策の効果が浸透する期間として通常二年程度のタイムスパンを考えるというのが多くの中央銀行の例でございますので、そういうものを念頭に置いて、やはり二年程度の期間を念頭に置きながら、期待の裏づけになるような、量的にも質的にも大胆な金融政策を行うということでなければならないと思っています。ただ、具体的にどういうふうになるかということはこれからの政策委員会での議論でございます。

鈴木(克)委員 そこで、私は、日銀のいわゆる独立性ということについて少しお話をさせていただきたいと思うんです。

 総理は、日銀法の改正ということも視野に入れておみえになるやに伺っております。本当に、時の政府の思いどおり日銀を動かしていく、そして一緒になってやっていくということは、それは理想かもしれません。しかし、万々が一に、政府だって間違った判断をするときもあるわけですよね。そういうときには、やはり日銀は、通貨の番人として、毅然として国民経済を守っていく、通貨を守る、そういう存在でなければならないというふうに私は思っておるわけです。

 前に白川前総裁が、実は講演でこういうことをお話しされていました。ドイツの中央銀行のブンデスバンクについて、かつてドイツのコール首相はこう話をしたそうであります。政治家としてブンデスバンクの金融政策決定を好ましく思ったことは余りないが、一市民としての自分はブンデスバンクの存在を喜ばしく思う、こういうことをおっしゃったという紹介記事がありました。

 これを聞いて総理はどのような感想をお持ちなのか、ぜひお聞かせをいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 コール首相は、いわば政府と中央銀行との関係について御自身のお考えを述べられたんだろう、このように思います。

 政府としては、中央銀行に対して、いわばこういう手段をとってもらいたいと思ったときもあるでしょうけれども、しかし、それはやはり、中央銀行が独立性を持って政策を実行していく、手段を実行していくということにおいては、そうあるべきだ、ドイツはそういう制度がしっかりと確立をされているということは一市民として喜ぶべきことだ、こう思われたんだろう、このように思います。

 日本においては、当然、中央銀行の独立性、これは担保されているわけでございますが、その中で、日銀法の改正について、我々がかつてなぜ日銀法の改正が必要かと考えたのは、日本銀行は神のごとく間違えないわけではありません、日本銀行といえども政策判断を間違える場合もあるわけでございますが、大切なことは、いわば政策目標については政府と日本銀行が共有しなければ財政金融政策がうまく回っていかないわけでありまして、経済にとってもこれは不幸なことであります。そこで大切なことは、やはり目標を共有することではないか、こう思うわけであります。

 我々は、有権者から選ばれる、これは鈴木委員と同じでありますが、有権者から選ばれ、そして有権者に選ばれた議員によって選ばれた政府であります。我々は、直接国民に対して責任を負っている立場でございます。その私たちは、いわばまさに政策目標を日本銀行とも相談をしながら決めていく、そして日本銀行は、その政策目標について到達をするという責任をやはり明確にするべきではないかということであります。

 我々は選挙においてその結果責任を問われるわけでございますが、では、日本銀行は果たしてどこでその責任を問われるのか、何に対して問われるのかということでございまして、そこで、やはり何に対して問われるのかということは明らかにしていこう、つまり、それは政策目標について達成できたかできなかったかではないかということにおいて、この日本銀行法の改正も検討していくべきではないか、こう考えたところでございますが、手段においては、これはまさに日本銀行は独立をしていなければならない。ですから、私は、総理になって一度も、手段について何か物を申したことはないということは申し上げておきたいと思います。

鈴木(克)委員 総裁に最後にお伺いをしたいと思うんです。

 今総理は、日銀も間違った判断をしないとも限らない、こういう趣旨のお話でありました。私は、政府も間違った判断をしないとも限らない、まさに裏腹だというふうに思っています。

 そこで最後に、日銀としてのいわゆる独立性を担保しながら、そして、本当に通貨の番人として、毅然としてやはり国民を守る、国家を守る、そういう気概で総裁の任に当たっていただけるかどうか、今のお考えをお示ししていただいて、お引き取りいただいて結構でございます。

黒田参考人 当然、日本銀行総裁として、現行の日本銀行法の定めるところにより、その自主性、独立性を十分発揮して、そして物価安定という日本銀行として最大の使命を果たしていきたいというふうに思っております。

鈴木(克)委員 ぜひ毅然とした態度でやっていただくことをお願い申し上げたいと思います。

 時間もありますので、次に、成長産業と言われております再生可能エネルギーの普及促進について伺ってまいりたいというふうに思います。

 具体的にお話をした方がいいと思うんですが、我が党は、一刻も早く原子力からの脱却を目指すということを考えております。したがって、それには再生可能エネルギーの拡大を図っていかなきゃならないということなんですが、実際には、今からお示しをするように、幾つかの問題があるんですね。

 一つは、地方自治体が持っておる水力発電のいわゆる売り先なんですけれども、結果的に、東京都を除いて全て、いわゆる従来の一般電気事業者が入札をしておる、応札しておるといいますか、ということなんですね。今回、東京都が初めていわゆる新電力と契約をしたんですが、今まで買い取り価格というのが九円、これはキロワットアワーということなんですが、それが十四・五円ということになったんですね。それで、東京都には、今まで十億だったのが十七億入るということになったんですね。

 そうすると、これは、東京を除いたあとのところは、結果的には、今までと同じような流れの中で水力発電を売電しておるということになると、まさに電力会社が地方を買いたたいてと言うと語弊があるかもしれませんけれども、ということになってきておるというふうに思うわけです。こういう実態が明らかになってきたというのが一点であります。

 もう一点は、太陽光発電の設置、今、全国でもやられておるんですが、実は、太陽光パネルの設置に不可欠なパワーコンディショナーという機器があるんだそうですが、これが大変な品薄で、欲しかったら前払いで金を払えというような状況になっておるというふうに伺っておるんですね。政府は、この実態を把握してみえるのかどうか、これを二点目としてお伺いしたいと思います。

 三点目は、いわゆる電力メーターがやはり要るんです、ソーラーの発電設備ですね。それに対して、大きな設備には、いわゆる日本電気計器検定所、JEMICというんですか、ここの検査を通過しなければならないということなんですが、これがまた全く遅々として進まない、こういう状況なんですね。この状況もやはり政府は把握をしてみえるのかどうか、答弁をいただきたいと思います。

茂木国務大臣 三問連続でお答えをさせていただきます。

 まず、公営の水力発電についてでありますけれども、電力会社にも、私、自治体を買いたたくとまでは言いませんけれども、もう少し調達コストを下げる、こういった意識を持ってほしいと、逆に思っております。

 ところが、現状でいいますと、公営の発電事業については、通常、自治体と一般電気事業者、電力会社の間で、総括原価方式のもとでの規制料金のもとで、長期の随意契約をやっている。恐らく、短期でスポットでやるものと違うと思うんですけれども、こういう契約が締結をされておりまして、売電価格が必ずしも、委員が御指摘のような、電力会社が自治体を買いたたいている、こういうものにはなっていないのではないかな、そのように認識をしております。

 その一方で、新たに新電力が公営の発電事業から電力を調達することが困難だ、こういう御指摘があることも事実だと思っておりまして、公営の発電事業者が新電力への電気の販売を拡大させれば、新規参入の拡大であったり競争条件の整備にもつながっていく、そんなふうに考えております。

 幾つか問題があると思うんですけれども、やはり一つは、電気事業者と地方自治体の間でこういった長期の契約を結ぶということが一つの慣行になってきた、それから、途中で解約すると違約金がかかる、こういう問題もございます。さらに、自治体によりましては、条例等で売電先を一般電気事業者、電力会社と定めているところもありまして、こういったところも見直しをしていかなければいけないなと思っておりまして、まずは、やはり電力市場における競争を促すということから、発電の全面自由化、卸規制の撤廃、このことが一番重要になってくる、このように考えております。

 それから、二点目のパワーコンディショナーの件でありますが、確かに、昨年の七月に固定価格買い取り制度が開始をされまして、昨年十二月までの半年で、制度の導入前と比べて累積の導入量は二〇%拡大ということで、一時このパワーコンディショナーが品薄になっておりましたが、現在メーカー各社は増産を行っておりまして、この状況も早晩解消する、このように考えております。

 それから、メガソーラーに使用いたします電力のメーターでありますが、委員御指摘のとおり、設置に当たりましては、計量法に基づきます日本電気計器検定所において検定が行われることになっておりまして、同検定所によりますと、昨年十月からことし三月までの六カ月間において、検定にかかる期間は平均で三・九日、四日かかっておりません。ですから、これが大きな阻害要因になっているということは少ないのではないかな、このように認識をいたしております。

鈴木(克)委員 三点目の御答弁については、ちょっと私も納得できない部分がありますが、それは、今後、私自身も一度よく調査をさせていただきたいと思います。

 要は、総理、さっき申し上げましたように、再生可能エネルギーはいわゆる成長産業で、これから本当に脱原発を図っていく上において、私はどうしても進めなきゃいけない分野だというふうに思うんですね。そこが、国が言っておるほどのスピードで、スピード感、責任感を持ってやっていないということなんです。

 それは何が言いたいかというと、要するに、そこに、裏におって圧力をかけているのは、いわゆる原子力村とか電力村のそういう非常に大きな流れがあるのではないかなというふうに私は危惧をいたしております。

 そうでなければいいんですけれども、いずれにしても、やはり脱原発を図っていく上においては、それにかわる自然再生エネルギー、それとまたいわゆる新しいエネルギー、そういうものに対してもっともっと政府として力を挙げていっていただきたい、このことを申し上げたくてこの質問をさせていただいたということを御理解いただきたいと思います。

 次に入らせていただきますが、ISDSでございます。

 これは幾つか重要な点、もうかなり議論をされておりますけれども、仲裁手続の不透明性だとか、仲裁判断の統一性だとか、予測可能性の欠如だとか、多大な仲裁費用の負担、いろいろな問題があるということなんですが、これについて、言っておるだけではだめなので、具体的に三点、三つのケースを御紹介させていただいて、まとめて御答弁をいただきたいというふうに思うんです。

 カナダ政府が、アメリカの燃料企業、エチルという会社のカナダでの事業を、要するに妨害をした、邪魔をした、こういうことで訴えられて、カナダ政府が一千九百万ドルの和解金を払い、それから、今の環境問題の規制を撤廃せざるを得なくなった、こういうことなんですね。これが一点目。

 もう一点は、やはりアメリカの企業のマイヤーズという会社なんですけれども、カナダ政府が健康上の理由からPCBの含有廃棄物の輸出を禁止したということで、非常に不利益になったということでカナダ政府を提訴した。これは、やはり賠償命令を下しておるということなんですね。アメリカ企業による提訴の結果、カナダ政府は、先ほどもそうですけれども、このケースも賠償を支払わなければならない。これが二つ目です。

 三点目は、イーライリリーという会社なんですけれども、これはアメリカの医薬品のメーカーなんですけれども、ここも結局、カナダ政府がジェネリック医薬品メーカーを優遇するために自分のところに不利益をこうむった、こういう理由で訴えを出したということです。これはまだ現在係争中なんですけれども、むしろこれは、アメリカの市民団体がイーライリリー社を、そんなことで提訴するのはおかしいじゃないかということで非難声明を出した、こういう話もあるんです。

 以上三点、いろいろなケースを申し上げました。まだまだたくさんありますけれども、そういうことを見ていくと、いわゆるISDSというものについて、果たして、比較的そう問題はないよ、大きな問題はないよ、こういうふうに政府は考えてみえるやに私は見ておるんですが、実際には、こういう問題に一つ一つ入っていくと、相当大きな問題を含んでおる。

 これは今までの議論でも相当言われてきておりますが、私は、改めて総理の考えを一遍お伺いしたいと思います。

茂木国務大臣 委員御指摘をいただきましたマイヤーズであったりとかイーライリリー、米国の企業とカナダ政府の関係で、幾つかの事案が確かに出ております。

 ただ、ISD条項、非常に特殊なものかといいますと、各国の投資協定におきましても広く採用されておりまして、我が国がこれまで締結いたしました十五の投資協定、そして九つのEPAにも規定をされております。唯一採用されていないのは、日本とフィリピンのEPAだけであります。そして、これらの協定の締結に当たりましては、当然、国会の御承認をいただくことになっております。

 先進国の企業との関係でいろいろな問題が出るのではないか、こういう御懸念を委員もお持ちかもしれませんが、例えば、日本はスイスともEPAを結んでおります。また、韓国とも投資協定を結んでおりますが、このISD条項に基づきます手続で訴えられた事例は今までございません。

 そして、ISD条項につきましては、海外の投資家によります円滑な事業活動を確保しなければならないと同時に、国内における規制権限の確保、このバランスをとっていかなければなりません。

 一方で、日本の企業が海外に出ていくということを考えますと、海外で活躍する日本企業の事業活動をどこまで支援、保護できるか、こういう観点からの検討も必要だと考えております。

 なお、TPP交渉におきましては、これまで得られた情報によりますと、投資の保護と国家の規制権限の確保との間の公平なバランスを保つことで、ISD手続の濫用を防ぐための規定が検討されている、このように承知をいたしております。

鈴木(克)委員 いよいよ時間がなくなってしまいました。

 今のお話は、私が配らせていただいた資料に、投資協定十五本、それからEPA九本。だけれども、これは結局、途上国と言うと大変御無礼ですけれども、そういうところとの協定でありまして、やはり先進国同士ということになるとかなり状況は変わってくる、このことを申し上げておきたいと思います。

 最後に、春は名のみの風の寒さよという歌がありますが、春は名のみの物価の高さよ、こういう話になっておるんじゃないかなと。本当に今、国民の皆さんは、アベノミクス、確かに、冒頭申し上げましたように順調な面もあるんですが、その陰で、給料は上がらない、そして雇用もそんなに回復しない、そういったときに、間違いなく上がっているのは税であり、そして物価であるという状況になるわけです。

 私は、総理がこうして五年間の、野にみえて大変な御苦労をされた、やはりそのときの苦労をぜひひとつ大切にしていただいて、弱い人の立場、強者の理論ではなくて弱者の目線で、これからも社会保障とかそういったことについては徹底的にやっていただきたい。

 この部分の総理の哲学を実はお伺いしたかったんですが、残念ながら時間がなくなってしまいましたので、またにさせていただきますけれども、そのことをお願いを強く申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

山本委員長 これにて鈴木君の質疑は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時一分散会


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