衆議院

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第2号 平成25年10月21日(月曜日)

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平成二十五年十月二十一日(月曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 二階 俊博君

   理事 上杉 光弘君 理事 金田 勝年君

   理事 塩崎 恭久君 理事 萩生田光一君

   理事 林  幹雄君 理事 森山  裕君

   理事 長妻  昭君 理事 山田  宏君

   理事 石田 祝稔君

      あかま二郎君    青山 周平君

      秋元  司君    穴見 陽一君

      安藤  裕君    井野 俊郎君

      伊藤 達也君    石破  茂君

      今枝宗一郎君    今村 雅弘君

      岩屋  毅君   うえの賢一郎君

      衛藤征士郎君    小倉 將信君

      小田原 潔君    越智 隆雄君

      大串 正樹君    大島 理森君

      大西 英男君    大野敬太郎君

      鬼木  誠君    勝沼 栄明君

      門  博文君    門山 宏哲君

      金子 一義君    神山 佐市君

      神田 憲次君    木内  均君

      熊田 裕通君    小池百合子君

      小島 敏文君    小林 史明君

      古賀  篤君    今野 智博君

      佐田玄一郎君    齋藤  健君

      菅原 一秀君    薗浦健太郎君

      東郷 哲也君    野田  毅君

      原田 義昭君    前田 一男君

      宮路 和明君    山下 貴司君

      山本 幸三君    大串 博志君

      岡田 克也君    奥野総一郎君

      篠原  孝君    玉木雄一郎君

      古川 元久君    前原 誠司君

      遠藤  敬君    坂本祐之輔君

      椎木  保君    重徳 和彦君

      杉田 水脈君    中山 成彬君

      西野 弘一君    伊佐 進一君

      上田  勇君    浜地 雅一君

      桝屋 敬悟君    大熊 利昭君

      佐藤 正夫君    宮本 岳志君

      畑  浩治君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   総務大臣

   国務大臣

   (地方分権改革担当)

   (地域活性化担当)    新藤 義孝君

   法務大臣         谷垣 禎一君

   外務大臣         岸田 文雄君

   文部科学大臣       下村 博文君

   厚生労働大臣       田村 憲久君

   農林水産大臣       林  芳正君

   経済産業大臣

   国務大臣

   (原子力損害賠償支援機構担当)          茂木 敏充君

   国土交通大臣       太田 昭宏君

   環境大臣

   国務大臣

   (原子力防災担当)    石原 伸晃君

   防衛大臣         小野寺五典君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (復興大臣)       根本  匠君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当)       古屋 圭司君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)     山本 一太君

   国務大臣

   (女性活力・子育て支援担当)

   (消費者及び食品安全担当)

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)   森 まさこ君

   国務大臣

   (経済再生担当)

   (経済財政政策担当)   甘利  明君

   国務大臣

   (規制改革担当)     稲田 朋美君

   財務副大臣        古川 禎久君

   財務副大臣

   兼復興副大臣       愛知 治郎君

   経済産業副大臣

   兼内閣府副大臣      赤羽 一嘉君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    小松 一郎君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    北川 慎介君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   参考人

   (東京電力株式会社代表執行役社長)        廣瀬 直己君

   予算委員会専門員     石崎 貴俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十一日

 辞任         補欠選任

  衛藤征士郎君     東郷 哲也君

  越智 隆雄君     小田原 潔君

  大島 理森君     熊田 裕通君

  関  芳弘君     大串 正樹君

  薗浦健太郎君     石破  茂君

  中山 泰秀君     穴見 陽一君

  西川 公也君     井野 俊郎君

  船田  元君     安藤  裕君

  保岡 興治君     青山 周平君

  山本 有二君     山下 貴司君

  大串 博志君     前原 誠司君

  篠原  孝君     奥野総一郎君

  中山 成彬君     遠藤  敬君

  西野 弘一君     椎木  保君

  伊佐 進一君     桝屋 敬悟君

  浜地 雅一君     上田  勇君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     門山 宏哲君

  穴見 陽一君     今枝宗一郎君

  安藤  裕君     大野敬太郎君

  井野 俊郎君     小倉 將信君

  石破  茂君     齋藤  健君

  小田原 潔君     鬼木  誠君

  大串 正樹君     神田 憲次君

  熊田 裕通君     大島 理森君

  東郷 哲也君     前田 一男君

  山下 貴司君     山本 有二君

  奥野総一郎君     篠原  孝君

  前原 誠司君     大串 博志君

  遠藤  敬君     中山 成彬君

  椎木  保君     西野 弘一君

  上田  勇君     浜地 雅一君

  桝屋 敬悟君     伊佐 進一君

同日

 辞任         補欠選任

  今枝宗一郎君     勝沼 栄明君

  小倉 將信君     門  博文君

  大野敬太郎君     神山 佐市君

  鬼木  誠君     越智 隆雄君

  門山 宏哲君     木内  均君

  神田 憲次君     関  芳弘君

  齋藤  健君     薗浦健太郎君

  前田 一男君     大西 英男君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 英男君     今野 智博君

  勝沼 栄明君     小島 敏文君

  門  博文君     古賀  篤君

  神山 佐市君     小林 史明君

  木内  均君     保岡 興治君

同日

 辞任         補欠選任

  小島 敏文君     中山 泰秀君

  小林 史明君     船田  元君

  古賀  篤君     西川 公也君

  今野 智博君     衛藤征士郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 予算の実施状況に関する件


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     ――――◇―――――

二階委員長 これより会議を開きます。

 予算の実施状況に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君、東京電力株式会社代表執行役社長廣瀬直己君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として中小企業庁長官北川慎介君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

二階委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

二階委員長 基本的質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石破茂君。

石破委員 おはようございます。自由民主党幹事長の石破茂であります。

 主に総理からお答えいただきたいのでありますが、必要に応じて関係閣僚にお答えいただいて結構でございますので、よろしくお願いを申し上げます。

 七月二十一日の参議院選挙におきまして、我々自民党・公明党政権としては、六年ぶりに、いわゆるねじれ状態を解消いたしました。国民の皆様方が、ねじれを解消せよ、そういうような意思を表示されたものだというふうに理解をいたしております。先般の七月二十一日の参議院選挙は、昨年の十二月の総選挙に続きまして、国民が自公政権に対して、信頼そして期待をあらわされたものだというふうに認識をいたしております。

 参議院選挙において示された国民の皆様方の民意について、総理のお考えを承ります。

安倍内閣総理大臣 さきの参議院選挙におきまして、まずもって、自民党、公明党、連立与党を支持していただいた皆様に御礼を申し上げたい、感謝を表したい、このように思います。

 その上において、この皆様からいただいた信頼は決して裏切ってはならない、この皆様の期待に必ず応えていかなければいけないという、この思いを新たにいたしておる次第でございます。

 同時に、残念ながら、投票率は、さきの衆議院選挙と同じように、余り高いとは言えなかった。つまり、そのことも、政治が十分に信頼を回復しているかといえば、まだそうはなっていないということも我々は肝に銘じなければならない、このように思います。

 その上において、私たちが国民の皆様にお約束をしたことを一つ一つ実行し積み上げていくことによって、そうした信頼を回復していかなければならない、このように思います。

 私自身も、六年前、我が党を率いて参議院選挙を戦ったわけでございますが、残念ながら惨敗をし、そしてそれがねじれの原因となったわけでございます。あのときのことを決して忘れてはならない。また、そのときの結果に対して、私は大きな責任を負っているわけでございます。

 その意味におきましては、あのときの惨敗を肝に銘じながら、しっかりと国民の期待に応えていきたい。何よりも、政治は国民のもの、これは、自由民主党、我が党の立党の原点でありますから、この原点に立ち返り、責任を果たしていきたい、このように考えております。

石破委員 今、総理の答弁にありましたように、我々は本当に国民の全幅の信頼を得たのであろうかということは、よく認識をしなければいけないことだと、私自身、思っております。

 昨年の総選挙にも我々は多くの議席をいただきました。この参議院選挙においてもそうでありました。ただ、あのときの自民党本部の雰囲気はどうであったかといえば、浮かれたような、はしゃいだような雰囲気というのは全くなかったんだと思います。安倍総理・総裁も、また幹事長たる私も、マスコミの皆さんからもうちょっと笑ってくださいと言われて初めて笑顔をつくるような、つくると言っては変だが、そんな感じであったと思っております。

 それはなぜなのかといえば、今総理がお話しになりましたように、投票率は、低いところも高いところもありますが、おおむね五〇%ぐらいだったのですね。半分の方は行っておられないということなのです。

 そして、参議院選挙について申し上げれば、選挙区で我が党が得票した得票率というのは四〇%ぐらいが平均です。もちろん、他党はもっと低いんですけれども。定数が一ですから、そういうことは往々にしてあり得ることですが、投票率が五〇%で得票率が四〇%、それで、参議院の選挙区についてだけ言えば、六〇%の議席を持っているわけです。

 このことを我々は決して忘れてはならないのだ、圧勝したことをもって、あたかも国民の大多数が支持したかのごとく、そういう錯覚に陥ってはならないということだと思っております。ですから、私たちは常に、国民の多くの方々に御理解、御納得いただけるように、丁寧に真摯に謙虚に、政権を、あるいは党を運営していかねばならないと思っております。

 このことについて、総理も同じ御認識かと思いますが、もしお考えがあれば承りたい。

安倍内閣総理大臣 先ほどもお話をさせていただいたように、投票率が低かったということは、我々政治の場に身を置く者として大変残念なことでありますし、政治に対して期待を持っていただく、あるいは、政治に自分も参加をし、そして政治の将来に自分も影響を与えていきたい、こう思ってもらえるように我々も努力をしていきたい、このように思いますし、若い世代の方々も含めて、国民の皆様が一票を投じることの意義、意味について、もっと我々は国民の皆様にお話をしていく必要もあるんだろう、このように思います。

 同時に、自分たちの投じた票は意味がない、このように思われないようにすることも我々に求められている。つまり、例えば、政党が約束したことを全く守らない、約束したことを守らないのであれば、その約束を聞いて一票を入れても意味がないじゃないかということにつながってくるわけでございまして、この不信は、政治の土台を根本的に、まさに民主主義の土台を崩していく危険性を私ははらんでいるのではないかと思います。

 そのことに鑑み、我々も、政権公約をつくっていく上においても、より一層強い責任感を持ちながら、そして、この失われている政治への信頼を何とか取り戻さなければいけないという強い情熱を持って臨んでいく必要があるだろう、このように思います。

石破委員 総理がお話しになりましたように、この低投票率というのは、誰がやっても一緒だよ、政治なんかどうせ変わりはしないんだよというような、そういう国民の方々が残念ながら相当数おられるということだと思います。誰がやっても一緒だよ、政治なんか信用できないんだよ、そういうふうにお思いの方々も残念ながら多い。国民が政治を信じていないというのは、確かに現象としてあるでしょう。

 では、我々政治の側は本当に国民を信じて語ってきたのかということも、我々が問われなければいけないことだと思っています。これを言えば票が減るとか、これを言えば人気が落ちるとか、これを言えば政権を失うとか、そういうことを恐れて本当のことを語らないとすれば、それは政治も国民を信じていないのではないか。国民を信じていない政治が国民から信用されるというのは、私はあり得ないんだろうと思っております。

 民意が、答えを出せ、もういい話はたくさんだ、いい話ではなくて本当のことを言ってもらいたい、そういうふうに思っておられると思うんですね。答えを出していかなければなりません。

 この国会において議論せねばならないこと、我々の政権が直面している課題、例えて言えば、デフレからの脱却、財政再建、社会保障の持続可能性の維持、エネルギー政策、あるいは食料の問題、あるいは安全保障、そして憲法。これは、実は本来、我々がもっと早くに答えを出しておかなければならなかったことなのではないか。

 民主党政権のいろいろな失敗をあげつらっても仕方がないのであって、我々はそのことを承知の上で今政権を担っているのであって、民主党政権が悪かったの何の、そんなことを言っても始まりません。我々は、そのことを承知の上で政権を担っているのであります。

 私たちが本来もっと早くやるべきであったのに、これを言えば票が減るとか人気が落ちるとか、そういうことを言って先送りしてきた課題、今こそ、それに答えを出していかねばならないのではないか。国民を信じて、いい話ばかりではなくて本当のことを語り、国民に判断を委ねる、そういうような政権でありたいと思いますが、総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 今、石破議員が質問をされた点、これがまさに、政治家にとって最初の選挙のときから突きつけられている課題なんだろうと思います。

 まさに、その意味においては、石破幹事長は、地元において、これを言ったら票が減るかもしれないということを言い続けて当選をしてこられたんだろう、このように思いますが、しかし、そのことによって信頼を得ることもできるわけでありまして、実は、有権者も国民の皆様もそれを求めているんだろうと思います。

 たとえ言葉を、幾らお化粧を施しても、結局、やはりそれは見抜かれるわけですね。それは真実なのか、本当にこの人物はそれをやろうとしているかどうかということなんだろうと思います。

 政治家が真実を語り、国民の皆様とともに問題意識を共有し、その上において、解決策を、あるいは選択肢を提示しながら、自分はこの道をとっていきますということを、正直に、そして真摯に訴えていくことこそが、私は、政治の信頼を回復する近道なんだろう、このように思います。

石破委員 それでは、それを議論する国会のあり方というのはどうなるんだろうかということについて、少し総理のお考えを承りたいと存じます。

 私も、いたずらに議歴を重ねて、二十八年目になります。四百八十人の中で、いつの間にか、上から数えて三十番目ぐらいになってしまいました。与党も野党も経験もしましたし、閣僚も務めさせていただきましたし、常任委員長も務めさせていただきました。ある程度は知っておるつもりですが、世の中にあまたあるいろいろな組織の中で、この国会というものの改革、これがかなりおくれているのではないか、そういう認識を持っております。

 国権の最高機関である国会において本当に有意義な議論が闘わされ、そして結論を出して、まさしく国会はどうあるべきかということに、我々は答えを出していかねばならないと思っております。

 総理が国会に出席する日数というのが、日本の場合には極めて多い。これはいいことなんでしょう。総理が国会においていろいろな存念を述べられるというのは、それはいいことなんでしょう。しかしながら、民間有識者のあるデータによれば、平成二十三年ですが、総理が国会に出席した日数は百二十七日であったということであります。同じく議院内閣制をとっておりますイギリス、その調査をした期間は少し違いますが、イギリスにおいて総理が国会に出て発言した日数は三十八日、ドイツは十一日ということでありました。

 それは、一国の総理ですから、多くの問題を処理しなければならない。同時に、総理は今非常に努めておられますけれども、外国に出て日本国の立場というものを述べねばならない、まさしくそういう時代になったんだと思っております。

 というようなことを言いますと、ほらほら、総理の負担を減らそうとしているのかとか、国会における総理の説明をおろそかにするのかとか、そういう御批判がございますが、私はそのようには考えておりません。むしろ、この国会というのは、政府と議員がやりとりをする、質問をするということも大事ですが、同時に、議員同士の議論の場、政党同士の議論の場、そういう国会としてもっと機能しなければならないのだと私自身は考えております。

 きょうもこうやって全部の閣僚が御出席でありますが、こういう場合においてはやむを得ないにしても、往々にして予算委員会においては、全閣僚が出席をする、場合によっては答弁が一回もないけれどもずっと座っているということが、実際問題、あるわけですね。そして、九時から五時まで国会に座っていて、それから役所に帰って仕事をして、役所を出るのは十一時、十二時ということもよくあるお話でございます。

 これをもっと機能的に動かすことはできないのだろうかということに、我々自民党、公明党も、そしてまた野党の多くの党も、与党として政権に携わってまいりました。維新の会とかみんなの党とか、党自体としては政権に参画しておられないけれども、党首クラスは政権に入った経験をお持ちの党もたくさんあるのであります。既に自民党から提案が出た、民主党からも提案が出た、維新の会からは率先して提案が出ております。あのときああ言ったらおまえら断ったじゃないか、このときああ言ったらおまえら断ったじゃないか、そんな過去のことを言っても仕方がないのであって、この国会をさらに有効に機能させる、そういうことが必要だと思っております。

 その場合に、では、総理はどこにおいて答えるのかということでありますけれども、党首討論というのがございます。あれをもっと充実させるべきなのではないだろうか。その頻度においては国会で決めることですが、頻度を上げる。そして、内外の課題全般なんぞというふわっとした抽象的なテーマではなくて、今度は汚染水問題である、今度はエネルギー問題である、今度は財政であるというふうにテーマを決めて、さらに時間を少しふやしてということについて、私は、総理と野党との間にもっともっと議論が行われることが国会改革においては重要であると考えております。

 総理のお考えを承ります。

安倍内閣総理大臣 国会において、総理大臣以下の閣僚が、国民の代表たる国会議員から質問を受けて、それに答えていく、政府が進めようとしている政策、あるいは行ってきた政策、そして執行しようとしている予算、執行を行った予算について詳細に国民の疑問に答えていくという意味において、国会でその責任を果たしていくことは当然のことなんだろう、このように思います。だからこそ、これは憲法によって我々もその義務を負っているわけであります。

 と同時に、我々は、この国会での説明と同時に、さまざまな行政に求められる課題は多いわけであります。

 特に今、経済においては、グローバルな経済の中で日本は勝ち抜いていかなければならないわけであります。大変、変化も激しい。その中において、我々は政治主導によって物事を決めていかなければなりません。政治主導によって決めていくということは、最終的には総理大臣が判断をしていく。この総理大臣の判断を問われることは、日々行われるわけでございます。

 また同時に、海外に総理大臣が出向いていく、あるいは政治レベルで出向いていって、さまざまな交渉において日本を優位な立場にしていく、日本の魅力を売り込んでいく、日本の存在感を上げていくことも大きな責任であり、今まさにそれが求められているわけでありますし、また同時に、海外から要人がやってくる上において、国会が開会中は日程調整が非常に難しいという課題も他方あります。今は、国会の了承を得ながら、お願いをしながら、その中で最大限行っているわけで、了承を得ながら海外に出張したり、あるいはまた海外のお客様をお迎えしているわけでございます。

 この中で、あるべき姿はどうか。つまり、その中で、歴代の総理大臣も、もう少し、政治的な判断をする上において、静かに考え、熟考し、決断を下していくという時間があった方がいいのではないかということを述べておられる方々が、我が党だけではなくて、多くおられたのも事実であります。

 そういう中において、時間の配分のあり方、そして国会の運営のあり方、議員と政府との議論のあり方等、これは建設的な御議論をいただければいいと思いますし、その中で、今、石破委員が御指摘になった党首討論、まさにこの党首討論を活用して、与党と野党のトップ同士が議論をし、お互いに見識を闘わせることによって、国民の皆様に選択肢を示していく、あるいは今の課題は何かということを浮き彫りにしていくということも大切ではないか。党首討論のより一層の活用、そしてそのことによって中身を深めていくということも重要ではないか、このように思うわけであります。

 あるいはまた、さまざまな質問に対して、こうした、例えば予算委員会の場合は全ての大臣が出席をしているわけでありますから、それぞれの役所の課題においては、基本的にはその責任者である出席をしている大臣が答えていくことによってより深い議論につながっていくのではないか、このようにも思うところであります。

 いずれにせよ、こうした政府と国会との間の議論、どれぐらい時間を使っていくべきかどうか、そして中身を、質をどのように高めていくべきかどうかということについて、ぜひ国会において御議論をいただければ大変有意義ではないか、このように思います。

石破委員 まさしく国権の最高機関たる国会、これが十分な機能を果たしていかねばならぬと思っておるのです。

 国会改革というのは本当に急がれる課題なのであって、私ども議会としてそのことにきちんと答えを出したい。できればこの臨時国会から、さらには通常国会において。

 国会において政府を追及する、政府は何とか何とかその場を逃れようとして時間を費やすというような議論は、そろそろ変えていかなければならぬのだと思っております。国会において有意義な議論が闘わされ、そこにおいて、揚げ足をとったり、そういうことではなくて、そして何とか何とかそういうような言質を与えまいとする答弁に終始するのではなくて、本当に本音の議論が闘わされ、答えが出る、そうしていかなければ日本全体の改革は難しいと実は思っているのです。

 我々自民党も提案をいたします。ぜひ野党の皆様方におかれても、与党でも野党でもいいんです、この国会において我々がいかなる責務を果たすことが、国民に対して、国家に対してその役割を果たすことか、そういう気持ちで議論をしていきたいと思いますので、ぜひよろしくお願いを申し上げます。

 政策課題に入ります前に、一つお尋ねをしておきます。伊豆大島であります。

 また台風の接近というものが報ぜられまして、伊豆大島においては非常に緊張が高まっておる。政府挙げて、今度は犠牲が出ないように、いかにして被害が最小にとどめられるかということに尽力をしておられると思います。現場も、大変な状況の中で、最大限の努力をしておられると承知をしております。

 伊豆大島の災害につきまして、総理のお考えを承ります。

安倍内閣総理大臣 台風二十六号により伊豆大島で多くの方々が命を落とされた。改めて御冥福をお祈りしたいと思いますし、今の段階で困難な避難生活を余儀なくされている方々にお見舞いを申し上げたい、このように思います。

 さらなる被害が懸念されているわけでございますが、これ以上犠牲者が出ないように万全を期していきたい、このように考えておりますし、今までの台風、豪雨と違って、降る雨の雨量が過去と比べて飛躍的にふえているわけでありますから、過去の事例の積み上げにとらわれることなく、できることは全部やって、人命尊重第一で対応していくことが重要ではないか、このように思います。

 十九日には、古屋防災担当大臣そして太田国土交通大臣を現地に派遣したところでございまして、その場におきまして万全の体制をしくようにそれぞれ指示をしていることと承知をしておりますが、いずれにせよ、さらには台風二十七号も再びこの大島を直撃する可能性もあるわけでありますから、万全の体制で臨んでいきたい、このように思っております。

石破委員 今までの常識では通用しないような、そういう災害が頻発するようになりました。

 私も、もう今から随分前です、若いころ、災害対策特別委員をやっておって、そのときに、避難勧告の出し方とか避難命令の出し方とか、いかにあるべきなんだろうかと。今回、町長さんが公務で出張しておられた、そのことが議論になっていますが、避難命令とか避難勧告とかいうのを出す場合に、それが行政の裁量に任されて本当にいいものなんだろうかという思いがそのときからずっとあるのです。

 早く出して被害がなければ、何だ、人騒がせなみたいなことにならないとも限らない。しかし、そういうような勧告あるいは命令を出すことがおくれて甚大な被害が出たとすれば、それはもう責任は免れないわけですね。行政のトップというのは、常にそういう逡巡の中にあるし、ぎりぎりの判断を求められているんだろうと思います。

 この避難勧告と避難命令の出し方は、出すことができるという規定になっていますが、こういう条件を満たした場合には出さなければならない、これを私は断定的に申し上げるつもりはありませんが、総理がおっしゃいますように、今まで経験したことがないことが起こっているわけであります。だとすれば、この災害に対する仕組み自体、見直していかねばならないのではないか。

 もう一つは、防災に携わる政府の人員、マンパワー、これが本当に十分なんだろうかという思いがございます。

 仕組みの問題あるいは人員の問題において、防災担当大臣あるいは関係大臣、政府内において、もう一度新たな考えを示していただく必要があるのではないかと思いますが、もしお考えがあれば承りたいと存じます。

古屋国務大臣 お答えいたします。

 委員御指摘のように、今回の二十六号台風では、大島町内において、結果として、避難の警告やあるいは指示というものが出なかったわけでございます。

 御承知のように、この避難の警告とか指示は地方公共団体の首長が出していただくということになります。その出す判断基準を、今回の場合ですと東京都あるいは気象庁等々から情報を提供して、最終的に判断をする。町長さんも、今御指摘のように、当日は公務でいらっしゃらなかった。いろいろな要素があります。今その辺の、時系列的にどういう対応をしたのかということを詳細に検討いたしております。

 これはやはり、残念ながらこういった多くの犠牲者を出してしまいましたので、今後この教訓をしっかり生かしていく。そのためには、今申し上げた指示の出し方、警告の出し方、あるいは特別警報のあり方についても、もう一度検証して、必要な改正をすべきということになれば、しっかり私どもとしては対応していきたいというふうに思っております。

 そのためにも、やはり全てを地方公共団体に任せるということではなくて、いろいろな知見を持っている政府がしっかり指導的なアドバイスをしていくという環境も、場合によっては整えていくべきかもしれません。その辺は詳細に検討して、速やかにお答えを出していきたいというふうに思っております。

石破委員 この点は数年前に、我々が野党のときにも指摘をしたことなんです。

 私たちも、法律をこうするべきだ、制度をこうすべきだということを具体的に示さなければならなかった、そのことについての反省はあるのですが、今、古屋大臣お答えのとおり、もう一度検証していただいて、できるだけ早い機会に、このように変わったということを示さなければならない。それが我々政府・与党の責任だと思っております。私どもも最大限尽力いたしますので、ぜひよろしくお願いを申し上げます。

 さて、政策について承りたいと存じます。

 冒頭お話があったように、私ども、衆参において国民の御支持をいただきました。黄金の三年間、何が黄金だかよく知りませんが、とにかく三年間は、もちろん解散は総理の御判断ですから私がここであれこれ言うことではありませんが、三年間は大きな選挙がないということがあり得るという状況になっております。

 第一次安倍政権というのは、例えば教育基本法の改正、あるいは国民投票法の制定、あるいは防衛庁の省への移行、多くの歴史に残る仕事をしてこられました。しかしながら、余りに多くの課題というものに一度に総理が、国家に対する使命感、責任感を持って臨まれた、多くの課題に取り組まれた。冒頭おっしゃったように、参議院選挙が来ちゃったわけですね。小泉改革というのがあって、いろいろな改革がなされた、そのことのケアというものを国民は望んでいたのかもしれない。多くの改革はなされたけれども、結果として、参議院において勝つことはできなかった。総理が退陣された。

 第一次安倍内閣と第二次安倍内閣の違いはそこにあると思っています。衆議院、参議院において国民の御信任をいただいた。総理の御判断ではあるけれども、三年間という期間を見据えることができるということになりました。そこが大きな違いです。

 さすれば、どのように政策をこの三年間にやっていくか。もちろん、先延ばしにしていいとか、いいかげんにしていいとか、そんなことを申し上げているわけではありませんが、私自身、一番急ぐのは、やはりデフレからの脱却であり、経済が成長を取り戻すのであり、財政の規律が回復するのであり、雇用が改善するのであり、一人一人の所得が増すのであり、そのことをまず示すということが政権として一番急がれることではないかと思っています。

 もちろん、並行して、被災地の復旧復興、汚染水への対応、普天間の問題、TPPの問題、あります。そういうものは並行して全力を尽くしていかねばならないが、まず、我々の政権として、この経済の成長、そして財政の持続可能性の維持、社会保障の持続可能性の維持、まずこれをきちんとお示しする。そのことによって、国民が期待ではなく実感として安倍政権を信任するということになって、多くの課題が解決できるのではないか。

 それまで何もしなくていいというのではありません。後ほど議論しますが、集団的自衛権の問題というものは、総理も私もライフワークとしてどうしてもなし遂げたいと思っている、その思いは全く総理と共有するものであります。

 しかし、そういう問題が俎上に上ったときに万全の体制でそれに臨めるように、周到に綿密に誠実に、準備を重ねておく、そういう期間も必要なのではないでしょうか。この三年間というものが、計画的に政策の優先順位を定め、三年間の間にこの失われた二十年の答えをきちんと出すということが必要なのではないかと思いますが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 ただいま石破議員が御指摘になったように、まさに第一次安倍内閣においては、さまざまな課題に挑戦したわけでございますが、残念ながら国民の皆様の評価をいただけずに、参議院選挙で惨敗をしたわけでございます。

 さまざまな原因があるわけでありますが、今回との違いの一つは、小泉総理から引き継ぐ形で、党内の総裁選挙は行いましたが、しかし、総選挙を経ることなく総理に就任をしたわけでございます。その際、総裁選挙で約束したことについてのアジェンダを決めて実行していったわけでありますが、国民的な、いわばそうしたアジェンダについては共感を得ていたかといえば、必ずしもそうではなかったんだろう、国民のニーズとはそれがマッチしていなかったということも言えたかもしれない、このように思います。

 今回は、昨年、まさに私たちは、日本を取り戻す、これを大きなテーマに、そのためには、デフレから脱却をして強い経済を取り戻さなければならない、そして家計を潤していく。そのためにも、賃金を増大し、そして雇用を拡大していく必要がある。早くそうしたいい景気循環の中に入っていくために、三本の矢を初めとしたこういう政策を打っていくということを明確にして、私たちは政権を獲得したわけでございます。

 参議院選挙においても、私たちが進むべき方向、今申し上げた方向性、優先順位を明確にしながら、参議院選挙でも勝利を得ることができました。

 その上においては、優先順位は極めて明確になっているわけでございまして、デフレから脱却をして、そして強い経済を取り戻す。そして、それは安定的な社会保障制度にもつながっていくわけでございますし、まさにそれは、賃金をふやしていく、雇用を拡大していく、国民一人一人が潤っていく。

 まだそれは道半ばであり、残念ながら、まだまだ、全国津々浦々にそれをお届けできているかといえば、そうではないわけでありまして、これを全国津々浦々にお届けするというのが参議院選挙の公約でもあったわけでございますから、これをもちろん最優先に、もちろん、今委員がおっしゃったように、東北の復興、これも重要な政策でありますし、今、日々の汚染水対策もあります。また、安全保障に目を転じれば、普天間への移設の問題を含めた課題もあるわけでございます。そして、教育の再生もありますし、さまざまな課題に挑戦をしていくことが求められているんだろうな。

 その中で、きっちりと優先順位をつけながら、間違いがないように体制を整え、同時に、体制を強化しながら、より力を蓄えながら、なかなか国民の皆様の中において十分に議論が深まっていない大きな中長期的な課題もあります。それに備えていく。

 その備えていく上においては、そうした課題を避けるのではなくて、同時に、そういう課題に対しても議論が深まっていくような努力もしていくのは当然のことなんだろうと思いますし、そうした難しい中長期的な課題にも私たちは挑んでいくんだという姿勢を見せなければ、いつまでたってもそうした課題に取りかかることはできないんだろうなと思います。

 そうした優先順位、あるいはまた中長期的な認識と決意を持ちながら、政権運営に当たっていきたいと考えております。

石破委員 去年の今ごろを考えてみますと、株は七千円台ということだった。円は七十円台ということで、一体日本はどうなっちゃうんだというふうに思った人がたくさんいたのでありますが、安倍政権がスタートして、もうすぐ一年になります。株は一万五千円をうかがう勢いになり、そして円は適正水準を取り戻しつつあります。

 大胆な金融緩和と機動的な財政出動、これでここまで来ました。これは総理の大きな決断だったと思います。それまで、そんなことをやっても意味がない、そういうことをやっても効果がない、いろいろなことを言われていましたが、あえて決断をされて、この一本目の矢、二本目の矢は大きな効果を発しつつあります。

 しかしながら、問題は、三本目の矢である成長戦略、これをやらなければデフレからの脱却はできない。はっきり申し上げて、金融緩和は、どこまでも、いつまでもできるものではない。財政出動も、いつまでも、どこまでもできるものではない。これにはおのずと限界があることは、みんなわかっていることであります。

 さすれば、成長戦略をどのように描くかということは、何でそもそもデフレになったのということの認識をきちんと持たなければならない。これがデフレの原因だという唯一無二のものがあるわけではない。多くのものが複合的に重なり合ってデフレというものが起こっているのですが、結局、経済というものが、リーマン・ショックの衝撃が余りに大きかった。投資をするよりも手元に現金を持っておいた方がいい、バブルの崩壊のショックも大きくて、いろいろな投資というものを控えるようになった。

 個々の企業としてみればそれは正しい判断であったかもしれないが、バックミラーを見ながら、後ろ大丈夫かな、右大丈夫かな、左大丈夫かな、右を見ながら左を見ながらというような、そういうような経営があちらこちらで行われるようになって、それが合成の誤謬という形で、日本経済をデフレに導いていったのではあるまいか。

 従業員を削減する、あるいはコストを下げる、そのことによって、労働者の賃金は減る、下請はたたかれる。それは過当競争というのがあったのではないだろうか。あるいは、投資を抑える、過少投資という状況があったのではないか。あれもやっちゃいかぬ、これもやっちゃいかぬという、規制にかなり岩盤的な、強固なものがあったのではないか。

 スローガン的に申し上げれば、過当競争をやめ、過少投資を適正な投資に変え、そして規制を、社会的規制は維持しつつも、経済的な規制はなるべく取っ払っていった方がいいのではないか。スローガン的に言えばこの三つなんだろうと思っていますが、デフレの原因というのは何であり、それをどのようにして除去していくのかということがこの国会において議論されねばならないことだと思います。

 後ほど塩崎委員から詳細な議論があろうかと思いますけれども、政府は何でもできる魔法遣いではないのであって、政府としてできる限りのことを全てやる。この後は、民間が、雇用者側も労働者側も含めて、どう応えてくれるか、あるいは、地方がどう応えてくれるか。

 先ほど、政権に対する信任が大事だと申し上げたのは、この政権は信頼できるということを国民の皆さん方に思っていただいて、政府が可能な限りのことを全てやった上で、今度は国民に応えていただくということも私どもはお願いをしなければならないことであり、民間の力の爆発というのはそういう意味合いではないかと私は認識をしておるのであります。

 今申し上げた、過当競争の是正、過少投資から適正な投資へ、そして規制の緩和、この三つについて、総理のお考えを承ります。

安倍内閣総理大臣 現状の問題点、デフレの問題点、あるいはデフレ克服に必要なのは何かという問題意識においては、全く私も委員と同じでございます。

 デフレはなぜ起こったか。さまざまな議論がありますが、同時に、十五年間デフレが続いてきたことによって起こった一つの大きな問題としては、デフレマインドがこびりついてしまったということであります。

 まさに、このデフレマインドをまず払拭していくために、我々は、大胆な金融緩和と機動的な財政政策、今までとは次元の違うものでデフレから脱却をしていくという強い意思を示しました。その中で、デフレから脱却できるかもしれないという気持ちが起こったのは事実だろうと思います。

 それが、ある意味では、十五年間こびりついたものを取り去る、一番難しい作業なんですが、まずそれに我々は最初に取りかかったのでありまして、その上において、しっかりとこれから安定的にデフレから脱却をして成長軌道に乗っていく上においては、過剰な規制、そして過少投資、あるいは過当競争、この三つをしっかりと見据えながら、それに対する対応をしていく。

 行き過ぎた規制については、それを取り除いていく。新たな可能性をどんどんそこから引き出しながら、チャレンジする企業がどんどん出てくる、あるいは海外からも投資が起こるような、そういう経済に変えていく、ダイナミックな経済に変えていく。

 ということと同時に、過当競争、これはおっしゃるとおりでありまして、この過当競争の中において、グローバルな競争をする前に、もう日本の中でくたびれ果てていく。これは賃金の低下を招き、デフレにも、いわばデフレストッパーとしての役割を果たしていた賃金自体が、むしろお互いに競って賃金を下げ合っていくという状況にもなりかねないわけであります。

 やはりこの過当競争を、成熟産業から成長産業に人が移っていくということも起こしながら、業界再編がスムーズにいく中において、競争力を回復し、そして、それぞれの企業が強い体質をかち得ていく中において、十分な賃金、そしてさらには、成長産業が伸びていくことによって、雇用の拡大も図っていきたいと思います。

 その中において、今申し上げました、企業がしっかりと投資をしていく。最初の二本の矢によって、デフレから脱却できるかもしれないというインフレ期待が起こってきたわけでございまして、その中においては、投資をしていくこと、これがだんだん、経済合理性において経営者として正しい判断として、多くの経営者が共有するに至ってくれば、しっかりと投資が起こっていく。

 デフレ状況であれば、現金を持っていれば現金を持っているほどいいわけでありまして、その中において投資をして新たな生産性を上げて物をつくろうというふうにはなかなかならないわけでありますが、そうではなくて、持っていてはむしろ、これがだんだん少なくなってくる、デフレから脱却すればそうなっていくわけでありますが、そういう認識を経営者が持って、早く投資をして生産性も上げなければいけない、早くしなければ人材が集まらない、しっかりと雇用条件をよくしなければ人材も確保できないとなれば、これはデフレから脱却していく、いわばそういう経済になっていくのではないか。

 そのためにも、今委員がおっしゃったように、過剰規制、過当競争そして過少投資、この三つにしっかりと取り組んでいきたい、取り組んでいかなければならない、このように考えております。

石破委員 この国会において、さらに具体論について踏み込んで論じたいと思っております。

 この時期に消費税を上げるというのは一体どういうことなんだというふうによく言われます。しかしながら、私どもとして、三党合意に基づき、それは誰も喜ぶ話ではありませんが、消費税を上げていかねばならない。

 二つの論点があると思っています。

 一つは、消費税を一九九七年橋本内閣のときに三から五に上げたじゃないか、あのときに経済が悪くなったじゃないか、そのことと今と何が違うんだという論点が一つ。

 もう一つは、ともすれば忘れられがちなのですが、何のために消費税を上げるのかという議論がどうも十分ではないように思うのですね。順序が逆になりますが、何のために今回上げねばならないかということであります。

 そして、橋本政権時に上げたときは、あのときはアジアの通貨危機があり、国内の金融危機があり、この二つがぶつかってしまったのだ、今回はそのようなことがないのだ、以上、おしまいというようなことであってはならないのであって、あのときと比べて、財政ははるかに悪いわけですよね。そしてまた、企業の設備投資の状況も、総理が先ほどからおっしゃいますように、かなり低い水準にあるわけですね。

 ですから、あのときと単純に比較をすることはできないが、あのときと今と何が違うのか。今回、消費税を上げても経済が安定的に成長するというのは、それはどういう根拠に基づくものであるのか。

 そして、消費税は、社会保障の安定のためであり、財政への信認のためである。よく、ギリシャになるぞという議論をする人がいますが、ギリシャと日本というのは随分前提条件が違うので、ギリシャの場合には、ユーロ圏ですから、独自で金融政策というものをとることはできない、そして公務員が圧倒的に多いということであって、日本とギリシャとを同一に論じることはかなり危ない議論だとは思っていますが、財政への信認が要求されるのは同じことであります。

 借金するときには担保を出すんですけれども、国債の場合には担保を出すわけではありません。何が担保かといえば、それは国の信認、財政規律に対する信認なのであって、これが一回失われたら、もう手の打ちようがない、財政破綻しかないわけですね。

 なぜ今の時期に、そして、九七年時と何が違うか。消費税を上げることによって、実際に国民にはどのようなメリットがもたらされるのか。簡単でいいですが、お答えいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 消費税については、我が党では、随分長い間、議論をしてまいりました。

 既に我が国は累積債務を相当多く抱えているわけでありますし、毎年伸びていく年金や医療や介護、そして子育て、社会保障費があります。この社会保障費に対して、特に年金と医療と介護、これは毎年伸びていくわけでありまして、これに対するしっかりとした対応が必要であるわけであります。

 もちろん、日々改革を行う、見直しを行う、合理化を行うことは大切でありますが、サービスの水準を落としてはならないと思いますし、それは多くの国民は望んでいない。その財源を安定的なものにしていかなければ、社会保障制度自体を安定的に次の世代に引き渡していくことはできないわけであります。

 一方、既にある累積債務に対応する上において、国の信認を確保しながら、同時にしっかりとそうした社会保障のニーズに応えていくことが重要であります。さらには、子育てに対する施策も拡充をしていく必要があるでしょう。それを行っていくためにはやはり新たな税の負担をお願いするしかないということでございまして、当然、全て、消費税引き上げ分は全額社会保障費、社会保障の財源として使うわけでありまして、それを例えば経済対策に回すということは、一銭たりとも回すということはありません。全てを回していく、これははっきりさせておきたい、このように思います。

 そして、それは、具体的には、基礎年金の国庫負担を三分の一から二分の一にしていくものに振り向けてまいります。さらには、待機児童解消加速化プランの推進を初めとする子育てへの支援であります。そして、在宅医療や在宅介護サービスを充実してもらいたいというのは相当大きな要望があるわけでありまして、これも、今回の消費税引き上げによってそれが可能になっていくわけでありますし、低所得者の方々の保険料のさらなる軽減も行ってまいりますし、また、難病対策も充実をしてまいります。

 こうしたさまざまな社会保障制度を充実するとしておりまして、消費税財源という安定的な財源によって、国民が安心できる社会保障制度、体制を構築、維持していきたい、このように思います。

 そして同時に、一九九七年、橋本内閣のときに消費税を三から五に上げ、あれ以来ずっと日本はデフレ経済に落ち込み、景気は低迷したではないか、税収もそれからふえていないではないかという指摘があります。

 そこで、私たちも、あの後の日本のいわば経済の状況をマクロ的にもしっかりと分析をしながら、今回は二度と同じ道を進まないようにしようということに一番これは気を配ったわけでありまして、だからこそ、有識者の方々、六十名の方々にお集まりをいただいて、集中的な検討を加えていただきました。

 何人ものマクロ経済学者に集まっていただいて、さまざまな議論をしていただいた結果、九七年四月の消費税率引き上げ以降、個人消費は、駆け込み需要の反動減が見られたものの、七―九月期には増加に転じ、短期間で回復はしていますが、その後の、同年七月以降のアジア通貨危機や十一月の金融システムの不安定化という他の要因もあり、景気は後退に向かったものと、今委員御指摘のようなこういう事情については、承知をしております。

 一方、現在の我が国経済について見ると、不良債権処理を初めとする構造改革の進展などにより、九七年当時と比べて、金融システムはまず安定をしているということであります。そして、企業の財務体質も相当強化されているということであります。さらに、三本の矢によって大胆な金融政策を行っている。そして、機動的な財政政策も行っているということでありまして、これはまさに、あの後陥ったデフレマインドを払拭するためでありますが、これも大きな違いであります。日本銀行と政府が二%という物価安定目標について合意をしている、これも全然大きな違いと言ってもいいんだろうということであります。

 そして、今回の引き上げの判断に当たっては、五兆円規模の経済対策の策定や、一兆円規模の投資減税等を含む経済政策パッケージをあわせて策定しまして、引き上げによる反動減を緩和して景気の下振れリスクに対応するとともに、その後の経済の成長力の底上げを実現していくこととしております。

 つまり、来年の四月から消費税が三%上がるわけでありますが、その反動減を緩和しながら、その後、今進んでいる成長軌道に、またもとに戻すような、そういう対策を打っているということでありまして、いわば、その場しのぎの経済対策ではなくて、成長力を維持するための対策を今回は打っているということであります。

石破委員 この国は、ともすれば、法人は悪、企業は悪で、個人は善であるというような考え方が一部にはまだあるように思います。しかし、我々は、何も個人の負担を増して法人を優遇してということを考えているわけではなくて、どういうやり方をとれば国民一人一人の生活が向上するかということのためにどういう手段をとるかということなので、観念論で論じているわけではありません。消費税は上げる、法人の負担はなるべく減らしていかねばならない、それは何のためかといえば、法人を潤すためではなくて、いかにすれば個人が豊かになるかということのためにいろいろな税制は論ぜられるものだと思います。

 総理がおっしゃいますように、消費税分は全て社会福祉に充てられるということになっています。一部において、附則によってそれ以外にも使えるように読めるじゃないかという話がありますが、それは曲解なのであって、今まで消費税というものが負担をしなかったことによっていろいろな投資というものが抑えられてきた。消費税を上げることによって生じた余裕を、本来回すべきもの、減災であり防災であり、そういうものへ回していこうという意図なのであって、消費税をそのようなものに流用するというようなことは断固として考えていない、そういうことだと思いますが、それでよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 私たちがなぜ消費税を上げるかといえば、これはもう目的ははっきりしているわけでありまして、伸びていく社会保障費に対応するためであり、同時に、子育て等の新たなニーズ、今までもあったニーズでありますが、不十分であったそういう対策をしっかりと拡充していくため、社会保障費に充てていく。

 これはもう重ねて申し上げますが、これ以外には充てないということははっきりさせていただきたい、このように思います。

石破委員 それでは、今国会において議論されますことのテーマのもう一つでありますNSC並びに秘密保護であります。

 なぜ今回、秘密保護というものを行うのかということでありますが、逆に申し上げれば、何で今までやらなかったのかということの方が問われてしかるべきだと思っています。

 今回の法案は、各省ばらばらに秘密が指定されていたのを、統一の基準をもって定めるということ。そのことが明らかになれば国家の安全保障にとって重大な影響を与えるおそれのある、そういうふうに厳しく基準を決めて、統一した基準でそれを定め、誰がそれを取り扱うかということを明確にし、さらに、それを知った上で漏えいをしたらどうなるかということで抑止力を高める。そうしていかなければ、NSCをつくっても、本当の情報が入ってこなければ、きちんと機能しないということになるのだろうと思います。

 詳細な議論はまた委員会で論ぜられることでありますが、恐れられているのは、行政の恣意をどれだけ防ぐかということだと思います。行政の恣意によって、秘密にしてはならないものを秘密にしてしまったということがあってはなりません。基準をつくるに当たっては、一つの権威ある、そういう機関によって、何が秘密であるかということを指定することが極めて重要なことだと思っております。

 どのようにして行政の恣意を防ぐか、あるいは、それを監視する機構というものが立法府であるのか行政府であるのか。立法府が問われねばならないのは秘密会のあり方であって、秘密会というものが議事録をとらないだけよみたいな秘密会であっては、秘密会の意味は全くありません。これは我々立法府において答えを出さねばならないことですが、何にしても、よく心得ねばならないのは、行政府の恣意をいかにして防ぐかということであります。

 今回提出されるであろう法案も、十分に配意をされたものだと承知をいたしております。基準について有識者による会議を設ける、これは権威のあるものでなければなりません。総理の私的諮問機関で十分だと私は思っておりません。

 誰がそれを検証するかということ、行政の恣意をどのように防ぐかということについて、担当大臣でも結構です、総理でも結構ですが、お答えいただきたいと存じます。

安倍内閣総理大臣 まず、なぜこの法律が必要かということについてお話をさせていただいて、中身については担当大臣から答えさせたいと思います。

 NSCについては、国家安全保障会議をつくる。なぜ必要かといえば、日々さまざまな問題も起こるわけでありますが、安全保障上の重大な決断を下さなければいけない事象が起こる可能性というのは常にあるわけでありまして、その際、総理大臣がどういう対策をとるかということは、あらかじめ、ある程度選択肢が用意されていた方がいいわけであります。その起こり得るかもしれない事態に対して、その選択肢において、その選択肢をとったらどういう外交的な反響があるか、同盟国との関係はどうか、アジアの諸国との関係はどうかということも含めて分析がなされている。この課題をとったら、そうです。

 と同時に、いわば安全保障上それはどういう意味があるのかということを、外交的に、そして安全保障上、そしてさらには軍事的にどうかというさまざまな分析がなされている必要があるんだろう、このように思うわけでありまして、やはりそうした機能は、今後、安全保障環境が厳しさを増している中において必要なものであるということは、我が党だけではなくて、与党だけではなくて、多くの議員が共有していただいているのではないかと思います。

 そうしますと、それを分析していくためには、分析する情報の収集も必要になるわけであります。分析と情報の収集は別でありますが、情報の収集を行う場合は、国内の情報収集の機関が行うだけではなくて、海外のさまざまな機関との情報の共有、交換もあるわけであろう、このように思います。それを分析したものを、さらには各国のNSC同士と政策的な議論も行っていくことは、政策をより緻密にし、深めていくことにつながっていく。

 ただ、各国の情報機関との情報の交換あるいは政策における意見の交換を行っていく上においては、秘密を厳守するということが大前提であります。つまり、NSCの機能を発揮させるためには、どうしても私は必要ではないか、このように考えているわけでございます。

 そして、今の委員の御指摘については、担当大臣から答えさせたいと思います。

森国務大臣 行政機関による恣意を排除しなければならないという御質問がありました。

 まず前提として、今検討中の法案でございますけれども、特定秘密は、従来から秘密として扱われている情報のうち、安全保障、テロ、スパイ活動など特に秘匿を要するものを指定するということを想定しているものであって、従来の秘密の範囲を拡大するものではございません。

 そして、それを指定する行政機関の長が五年ごとに延長するということで、五年ごとであると同一人物ではない可能性も出てきておりますので、そこでのチェック、さらには三十年後に内閣の承認を要するということで、チェックをしております。

 さらに、国民の知る権利をしっかりと法定して、情報公開法の手続も適用するということで、行政の恣意をしっかりと排除してまいりたいと思います。

石破委員 国家にとって、国家の独立と平和、国民の生命と財産、それにとって、どうしても重要な情報というのがあるということは確かだと思います。そして、それを保全するために法律をつくるというのも当然のことであります。

 問題は、先ほど大臣がお答えになりましたように、真っ当な政府ばかりとは限らないので、そうじゃないときにどうするかということも考えておかねばならないのであって、いかにして行政の恣意というものを阻止するかということについて、ぜひ、この国会においてきちんとした議論をし、国民の皆様方に得心をしていただきたいと存じます。

 それでは、NSCにおいて何を論ずるのだということでございます。

 今の安保会議が、総理も何度も御出席になっておられる、私も担当大臣として出席したことが何度もあります、正直言って、かなり形骸化しているという批判は免れないところがあるだろうと思います。

 そして、総理の諮問機関ですから、最終的な決定権は閣議にあるわけですね。それは今回も余り性格に変質があるとは思っていませんが、安全保障に関する企画立案を、今まで外務省が負っていたものを、これからはNSCが負うのだというところに大きな意味があるのだと私自身は思っております。

 お答えは要りませんが、シリアの情勢というのを国会で余り議論したことがありませんね。

 かつて、一九三八年、ナチスがズデーテン地方に侵攻するという事案があったときに、イギリスのチェンバレン首相が、あれは我々にとって関係ない地域の関係ない人々の出来事であると、私は直接聞いたわけじゃないが、物の本によればそう語ったと言われている。それが、融和政策と言われることもあるけれども、結果としてヒトラーの増長というのを許したということも否定できないことだと思っています。

 オバマ大統領が、シリアに対して軍事攻撃というものを、ロシアの提案に従う形で、一時的にかどうかは知りませんが、その用意を怠ることはないと言っていますけれども、今回それを行使することはありませんでした。これは一体何を意味するものなのだろうかということでございます。

 シリアにおいて亡くなったとされる方は、もう十万人を超えている。これはボスニアの犠牲者をはるかに上回る数なわけですね。国外に逃げていく人は、もう二百万人と言われている。サダム・フセイン政権と比べて、もし世評言われることが事実あるとせば、このアサド政権が国民に対して大量破壊兵器を使ったということが事実でありとせば、今回の事の経緯というのは、決して、戦争が回避された、よかったよかったということで喜ぶ話にはならないのだろうと思っています。

 要は、大量破壊兵器を持っている、しかし、それに対していろいろな軍事介入が行われない。大量破壊兵器を持っていることが独裁者の政権というものを延命させるものだとするならば、その期間において、さらに反対勢力に対する弾圧、殺りくが行われるものだとすれば、それは決していいことだと思っていないのです。

 こういう状況を見て、では、北朝鮮ならどう考えるだろうか、あの国がこの状況をどう見ているだろうか、では、ロシアが果たした役割をほかの国が果たすとすればどうなのだろうかということまで、我々は考えなければいけないことだと思います。NSCにおいては、そういう議論もぜひしていただきたい。

 もう一つ、尖閣について、これを守るのだという強い意思が総理から常に示され、先般の本会議でも示されました。まさしくそのとおりだと思っています。しかし、そこにおいて我々がやらねばならないことは何なのだろうか。

 今の海上保安庁に、領海、領土を守るという任務は明確には与えられていない。海洋の治安を維持するという任務は与えられているが、明確にそのようなものに対処するというミッションは、海上保安庁には与えられておりません。

 そうすると、中国の船、軍艦であれ、あるいは公船であれ漁船であれ、それぞれ対応は違いますけれども、こういうような領海侵犯、領空侵犯が恒常的に行われるとすれば、それは、日米安全保障条約に言うところの、日本の施政にある領域ということ自体が揺るがされることにもなりかねないのだと思っております。

 海上保安庁の権限には限界がある。そして、能力を考えてみたときに、海上保安庁の船、本当に最大限の体制で臨んでいますが、いかんせん船が少ない。洋上給油ができませんから、油がなくなれば帰らねばならない。洋上補給の能力がなくていいのかということも論ぜられなければならないでしょう。

 さらに、法的にもっと議論されねばならないのは、それでは、海上警備行動、治安出動、これを下令したとしても、それはあくまで本質が警察権ですから、警察比例の原則というものは厳格に適用される。何で警察比例の原則というのがあるかといえば、それは憲法に基づく基本的人権の尊重というのがベースにあるからですよね。

 そうすると、我が国の領土、領空、領海を侵そうとする外国の勢力に対して本当にその憲法の精神がストレートに適用されるかといえば、そこには問題があるのではないだろうかという議論があって、では防衛出動という話になりますが、平穏裏に領空、領海、領土の占拠が行われた場合に、急迫不正の武力攻撃というふうに法的に評価できるかといえば、それはできないんでしょう。防衛出動を下令するというのはかなり困難だと思います。

 今の法律では限界がある、しかしながら防衛出動を下令することはできないとすれば、何の法律に基づいて我が国の主権を維持するかというお話、ずっと前から指摘されていることですが、私どもの努力不足もあって、まだ答えを出すに至っておりません。このことについても、NSCは答えを出していただきたいと思うんです。そのときになって、関係閣僚が集まって、困った困った、どうしようと言って六法全書を開いているようなことではどうにもならないのであって、法的にどのような手当てが必要か、能力的にどのような手当てが必要か、そういうことについて答えを出す。

 もう一つ大事なのは、そのシミュレーションを行うと同時に、訓練をきちんと行うことだと思うんです。海上保安庁任せやあるいは海上自衛隊任せではなくて、まさしく閣僚が、政治家がそこに入って、あらゆる事態に対応できるようにする、それもNSCの大きな役割だと思いますが、総理のお考えを承ります。

安倍内閣総理大臣 今、我が国が直面している安全保障上の課題を、網羅的にお話しをいただいたんだろう、こう思います。

 こうした課題に対応するために、NSCをつくり、そして同時に国家安全保障戦略を策定していく。と同時に、今、安保法制懇において、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増している中において、今後どう対応していくべきかということについて議論を進めていこう、こう思っているわけであります。

 NSCにおいては、内閣官房長官、そして外務大臣、防衛大臣等が集まり、今まで以上に頻繁に意見を交換しながら、現状の問題点、課題を共有していくということでありまして、そしてNSCにおいて、関係閣僚の持っている共有の課題そして問題意識に対応するために、さまざまな情報分析を行い、そして、それを政策としてあらかじめ用意をしていくということなんだろうと思います。

 今、委員がシリアの例を挙げられましたが、いわば、今後どう状況が変化をしていくのか。これは、化学兵器の除去だけではなくて、確かに御指摘のように、人道状況が悪化しているじゃないかということですね。つまり、人道状況が悪化している、この状況をどうやってとめていくべきか。そして、政治対話はどのように進めていくべきか。その中において日本はどう役割を果たしていくべきかどうか。そして、その役割を果たしていく中において、中東のほかの諸国との関係はどうなのか。そしてまた、さらなる危機が起こった場合、日本のいわばエネルギーとのかかわりもありますから、どういう経済的な影響が及んでくるのか。

 つまり、こういう政策をとったときにはこういう影響があるということをあらかじめしっかりと考えておく必要もあるんだろうと思いますし、そのときにはどういう手当てをすべきかということも含めて、あらかじめしっかりと、そのときになって考えるのではなくて、それこそまさに、私はNSCの仕事なんだろうと。外交、安全保障そして経済もそうなんですが、その分野においてスタッフが綿密に分析をし、対応も考えていくということではないかと思うわけであります。

 そこで、その中において、例えば、海の守り等についてどうなのかという御指摘もありました。当然、NSCでも考えていくことになる課題なんだろうと思います。同時に、安全保障の法的基盤を再構築する必要があるとの認識のもと、現在、安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会において、ここで専ら集団的自衛権の行使だけを議論しているような印象があるんですが、それは間違いでございまして、それに限定しているわけではなくて、例えば、集団安全保障の中で、国連がこれをやろうという活動の中で、日本が今のままでいいんだろうかということも議論をしております。

 同時に、今委員が御指摘になったような、例えば、外国の潜水艦が我が国の領海に入ってきた。国際法上は浮上して国旗を掲げて入ってこなければいけないところを、沈んだまま入ってきて徘回をして、なかなか出ていかない、その状況をいわば恒常化させようという狙いもあるという中において、果たして今の法制度で適切な対応ができるかどうかということについても議論を重ねているわけであります。

 つまり、あらゆる可能性についてしっかりと守りを固めていくことは、抑止力となり、結果としてそういう事態を引き起こさないということになるわけでございますので、いわば、そういうことも全て、これはしっかりと前に進め、議論を行っていく。この安保法制懇で行っている議論も、できるであろうNSCにおいては、これは、重大な課題について、現実を直視しながらNSCが選択肢を提供する上においては極めて有意義であろう、このように考えております。

石破委員 最後に、二点指摘して終わりたいと思います。

 一つは、今総理がおっしゃいました集団的自衛権の問題。

 これは、よく国民的な議論、御理解をいただかねばならぬことだと思います。地球の裏まで行って、アメリカと一緒に戦争をするのか。そのようなことを我々が言っているのではない。この地域において、相対的にアメリカの力が落ちていく、中国の力が相対的に上がっていく、この地域においていかにして軍事的なバランスを保つかということを我々は考えていかねばなりません。

 沖縄の問題も同一であって、このことに答えを出さなければいけない。鳩山さんはああ言った、こう言ったと今さら言っても仕方がない。いかにして、沖縄において、日本がやるべきものを日本がやるか。本土が負うべきものをいかに本土が負うか。どれだけ沖縄の負担が軽減されるかということを明確に示して、沖縄県知事が申請に許可を与えていただくような環境をつくるのは我々の責務であって、尖閣の状況を考えるときに、この問題について答えを出すことは我々の使命だと思っております。

 集団的自衛権について申し上げれば、先ほど申し上げたようなことなのですけれども、何で国連憲章のど真ん中に集団的自衛権というものが入っているか。それは、国連がオールマイティーではないからです。拒否権を持った国が関与をすれば、集団的自衛権を認めなければ、侵略国の思うがままになってしまう。それを防ぐために、国連憲章は、わざわざ集団的自衛権という権利を入れたんです。

 国連中心を唱える国が、国連のシステム、国連の仕組み、そういうものを知らずしてこれを論ずることがあってはならないことであって、今の状況をどう考えるか、国連とはどのようなものなのか、それが憲法改正を要するのか、我々はそれを要しないという立場ですが、それはなぜなのかということについて議論を深め、答えを出したいと思います。

 TPPについて一言申し上げれば、守るべきものは守る。公約ですから、我々はうそはつきませんので、守るべきものは守ります。しかし、守るべきものとは何なのか。それは、日本の農業なのでしょう。農地でしょう。次の時代にそれが受け継がれるという、きちんとした所得が保障されることでしょう。守るべきものとは何なのかということを明確に示し、私どもは、公約を守りつつも、今の日本の農業、漁業、林業が今のままであっていいとは全く思っておりません。そのことについての展望も、ぜひこの国会においてお示しいただくことをお願いして、質問を終わります。

二階委員長 この際、塩崎恭久君から関連質疑の申し出があります。石破君の持ち時間の範囲内でこれを許します。塩崎恭久君。

塩崎委員 石破幹事長に引き続き、質問をさせていただきたいと思います。塩崎恭久でございます。

 先ほど、石破幹事長の質問の冒頭にも、さきの衆議院選挙そしてまた参議院選挙で、私ども自民党そしてまた公明党は、国民の皆様方のお力を得て、政権復帰、ねじれ解消ということになりました。

 しかしながら、先ほどお話があったように、引き続き丁寧に、そしてまた謙虚に政権運営をしていかなければならないという覚悟であることを総理からお聞きしたところであります。

 今、日本版NSCあるいは公務員制度改革等、言ってみれば、国家の統治機構のあり方を変える、あるいは官邸主導を強化するということをやりながら、経済、あるいは社会保障、外交、安保、教育、そしてまた財政再建等々、国家の土台にかかわる大きな改革に挑戦されているということで、私ども与党としても一緒にやっているわけでありまして、この国家の土台の立て直しをやる。たまたま大きな選挙が当分ないかもわからないということで、腰を据えて、今こそ国家の土台をつくり直して強固なものにする、これが一番大事なことではないかと思っております。

 その覚悟のほどをお聞きしたいわけでありますけれども、しかしながら幾つか問題があって、先ほど、大島の大変な災害が起きています。

 私ども、実は、原子力規制委員会の法律をつくったときに、附則に、アメリカにございますFEMA、つまり、あらゆる災害に対応するしっかりしたものをつくろうじゃないかという提案をしているわけでありますが、そのこともなかなか進んでいないようで、恐らく古屋大臣は、十分熟練された災害のプロをたくさん抱えては仕事をまだされていないんだろうというふうに思います。

 そういう意味でも、短期的にはそういったFEMAのようなものをつくることもあり、一方で、これは私が個人的に今思っているのは、これから社会保障の改革をいろいろやったとしても、あるいは税の改革をやったとしても、そもそも、肥大化してしまったかもわからないこの政府をこのままいっていいのか。

 稲田大臣のところで行革をやっていただいておりますけれども、橋本行革、いろいろな成果を上げました。しかし、省庁再編が先に来たことによって、実はあのとき転法輪委員会というのがあって、あの行革本部でやるべきことは、本当は一つ一つの業務について見直しをして、本当に政府がやらなきゃいけないのかどうか、民間でいいんじゃないか、あるいは、場合によっては地方でもいいんじゃないか、そういう仕分けをする前に省庁再編に走ってしまった。

 私は、ですから、物には順番が大事だということが先ほどありましたから、今、一遍にやれということは申し上げませんが、言ってみれば、橋本行革に続く安倍行革のような、要するに、国民負担をいかに軽くしながら、社会保障もきっちり守り、なおかつ経済も元気な日本にさせていくかということをやっていかなきゃいけないと思いますが、こういった大きな、言ってみれば国家の土台の改革について、覚悟のほどをもう一回お話しいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 昨年の暮れ、我々は総選挙において、日本を取り戻す、これをテーマに選挙戦をみんなで戦ったわけであります。

 それは何かといえば、経済を強くしていく、経済の再生であります。そのために、デフレから脱却して経済を再生していこう、同時にまた、おくれている復興を加速化させていかなければならないということでありますし、教育の再生であり、外交、安全保障の立て直しであります。こうした課題に取り組んでいくことをお約束して、私たちは政権を担ったわけであります。

 社会保障についても、外交、安全保障についてもそうなんですが、強い経済を手に入れることによって強い外交力を展開していくことができるわけでありますし、安全保障の基盤をつくっていくためにも強い経済が必要です。そして、当然、社会保障制度の財政的な基盤を構築していく上においても、強い経済力は必要であります。

 そのお約束を果たしていかなければいけない。みんなで頑張れば夢はかなう、ことしよりも頑張っていけば来年はよくなるんだ、こういう思いを持てる、それを信じることのできる日本をつくっていきたいと思います。

塩崎委員 ありがとうございました。

 今お話がありましたように、経済が何といっても第一だという話でありまして、きょう、ちょっとこれまでの指標を、主な指標を用意してまいりました。

 もう何度も何度もお話がこれまで口頭ではされていますけれども、こうやって一遍に見てみますと、安倍内閣のスタート、自公政権の再スタートの中で、経済がいかに回復してきているかということが見てとれると思います。特に、株価あるいはGDP、設備投資、そして雇用者所得。つまり、金融、マクロ経済、それから企業、さらに家計、それぞれ、もう一々説明いたしませんけれども、顕著な改善が見られているわけであります。

 これまでの経済を振り返ってみると、一つはやはり期待値。つまり、経済理論的に言っても、期待の理論で、デフレから脱却をするかもわからない、期待値ががらっと変わった。

 それはやはり、マネタリーな現象だということで、日本銀行の政策も変わった、このことも大きかったと思うわけでありますが、何よりも、例えば今回のオリンピックのことにしても、それぞれが、あのプレゼンテーションでも、一人一人がみずからの能力の一二〇%、一五〇%を出し切って、なおかつそれも、言ってみれば心を一つにして出し切るというところに大きな意味があったんだろうなというふうに思うわけで、そういうときこそ初めて大きな偉業をなし遂げることができるということだろうと思うんです。

 そういう意味で、本当はアベノミクスについての意気込みを聞こうと思っていたんですが、先ほど既に石破幹事長に対して御説明をされましたので、もう一々聞きません。きょうは少し中身についての話をします。

 今回、私がつくづく思うのは、このアベノミクスがやらなきゃいけない大きな使命というのは、言ってみれば、日本がここまで競争力を失って、収益力を失ってしまった、その原因は何なのか。多分それは、風土とか経済文化とか、かなり根深い問題がたくさんあって、これを解決しない限りは、いろいろな対策をやっても、恐らく一時のものに終わってしまうんだろうなというふうに思っているわけであります。

 そういうことで、後ほどいろいろお話を聞きますけれども、やはり、総理が今回先頭に立っているということが一つこれまでとは決定的に違う。成長戦略であり、そしてまた、今度、産業競争力強化法で、やらなきゃいけないことを法律で縛って政府がやるようにするということで、これからいろいろ進むわけであります。

 そこで、具体的な話に入っていきたいと思いますけれども、まずは国家戦略特区のことであります。

 日本再興戦略、これは政府の成長戦略、六月に出たものですね。それから、私ども自民党でも、中間提言というのを、五月に成長戦略を出しているわけであります。いずれもたくさんの日本経済再生メニューが入っているわけでありますけれども、特に私が思うのは、やはり競争力を失った、世界がどんどん変わっていく中で競争力を日本が失って、なおかつ潜在成長力が下がってしまった、これをどうやって直していくのかというときに、いろいろな切り口があると思います。

 私がかねてから言っていたのは、やはり産業構造が世界の変化の中についていっていなかった、産業構造の大転換をやっていかなきゃいけないということであり、言ってみれば、かつては日本でうまく機能したものが、むしろ機能しなくなって、経済をだめにしてきたという制度などもたくさんあるわけでありまして、その象徴が、言ってみれば規制だというふうに思うわけであります。

 岩盤のように固まった規制を打ち破っていくことが一番大事だということを総理は何度も何度もおっしゃっていますし、この間、APECでは、みずからドリルの刃になるんだということで、先頭に立ってやるということでありまして、その実験場が恐らく国家戦略特区ではないかというふうに思うんです。

 先週、十八日金曜日に、政府の日本経済再生本部で決定がこの規制改革についてなされました。新聞報道を見てみると、かなり、不十分だと批判的な報道が多いわけでありますが、よく見てみれば、結構、十年、二十年、岩盤だということでなかなか動かなかったものが動いてきた。

 例えば、外国人の医師の国内での診療行為を許すとか幅を広げるとか、あるいは、これは東大病院で私も先生方から聞いてきましたけれども、スーパードクターのような海外にしかいない人が日本でデモンストレーションすらできない、あるいは、研修で受け入れていたけれども、実は手続に半年ぐらいかかって、結局、来たはいいけれども見学しかできないで帰っていくみたいなことばかりやってきたという意味において、今回、それで非常にやりやすくなったと言っていますし、公設民営学校などもやることになっている。

 そして、雇用の規制の改革の問題。これが一番象徴的にマスコミに取り上げられているわけでありますが、報道を見てみると、例えば、「解雇特区 事実上見送り」とか、それから「「解雇特区」の断念は当然だ。」という社説があったり、要は、雇用に関しての規制改革は余り進まなかったという報道ばかりなんですけれども、私は必ずしもそうでもないんじゃないかというふうに思っているので、総理にお尋ねしたいわけでございます。

 自民党の中でも、八田座長を呼んでいろいろな議論をしました。その中でもいろいろ話がありましたけれども、今回の解雇ルールないしは解雇条件の明確化ということが一番大事なのであって、もともと規制の緩和をやろうという提案ではなかったというふうに私たちは八田座長から聞きました。

 そういうことであれば、今回、条件の明確化というのは全国的に行われるようになったはずでありますから、これでもって雇用の拡大は行われるし、解雇特区、これは民主党の海江田代表も本会議で言っておられましたけれども、これはやはりちょっと的外れではないかなというふうに私は思っているわけであります。

 ルールが明確化をされて予測可能性が高まるということが、実は、人を雇用しようということにつながるわけであって、今大事なことは、やはり雇用を広げていくということが一番大事なんだろうと思うんですね。

 有期雇用の問題についても、五年を十年にするというのを実は特区の中でやろうと思ったけれども、全国でやりますということですから、我々としては、これはむしろ予想以上に雇用が広がる余地が広がってきたということでありますから、私はそれを評価していいんだろうと思いますし、後退、後退と新聞には書いてありますけれども、必ずしも私はそうじゃないと思いますので、総理の御認識をお聞きしたいのと、まだ、労働時間の問題等々、この規制の問題についてやらなきゃいけないことが残っていますから、今後についての決意も総理の方からお尋ねをしたいというふうに思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま委員が指摘をされたように、そもそも、解雇特区、解雇の自由化なんか最初から考えていないわけですから、そんな特区をつくろうとは最初から考えていないんですから、そういう特区にならなかったのは当たり前のことだというふうにまず申し上げておきたいと思うわけであります。

 もともと私たちが目指していたのは何かということは、この検討方針においては、雇用ルールがわかりにくいことがグローバル企業や新規企業の投資阻害要因になっていた、それが阻害要因にならないように、特区内では雇用ルールを明確化するための体制を構築することを法案に盛り込むことにしたわけでありまして、十月十八日に日本経済再生本部を開催して、十一月上旬に提出予定の特区関連法案に盛り込む規制の特例措置等について定めた「国家戦略特区における規制改革事項等の検討方針」を決定したわけであります。

 大事なことは、雇用条件を明確化することで雇用の拡大を図ることであります。この当初の方針をしっかりと実現できることができたと思っています。

 あわせて、検討方針では、有期雇用の特例についても、個人が柔軟で多様な働き方ができることを可能とするために、全国規模の規制改革を行うことといたしました。

 こうした措置のもとに、残された課題も含めて、今後、若者や女性や頑張る人の雇用が拡大をしていく、そういう方向に向けて検討を進めていきたいと考えております。

塩崎委員 そういうことだと思うので、報道の皆様方も、少し本質をきわめていただけたらなというふうに思うわけであります。

 そこで、もう一つ大事なのは、そういった中身を今後特区の中で決めていく際の特区の法律であります。これについて御質問申し上げたいと思います。

 総理、ロンドンのギルドホールでスピーチをされました。総理の私が直接担当する場所で、徹底的な規制撤廃を図り、世界から資本と英知が集まる場を日本にこしらえるつもりだ、こう高らかに宣言をされているわけであります。言ってみれば、突破口をつくるんだという決意表明だったと思います。

 ここに今ございますパネルは、四月の十七日に産業競争力会議で配られた民間議員のペーパーでありまして、これがまさに、今の国家戦略特区のもとの提案であります。

 総理が、私が直接担当する場所、これが実は上側の、特区諮問会議、こう書いてあります、総理を長とすると書いてあります。ここで物事を決める。そのときに、関係大臣を入れる入れない、きょうも朝の新聞にちょっと一部出ていましたが、話がありますが、ここにあるように、もともと、関係大臣は必要なときに来てくれ、こういうことでやっていたんですね。

 さらに、実はもっと大事なのは、三者統合本部とここに書いてあります。今は統合推進本部という名前で法律をつくられているようでありますけれども、この問題については、私ども自民党の中で議論したときには大議論になりました。

 みんなが大変な批判をしたのは何かというと、この三者統合本部で、特区担当大臣と地方の代表、そして民間の規制改革を唱えている代表、この三者で物事を決めていくということになっていたにもかかわらず、ここに、総理は入れるわ、関係大臣、つまり抵抗大臣になるかわからない人を入れるという案だったんですね、最初。それで、我々の自民党の中での議論で、それはとんでもないということになったわけであります。

 そこのところで私ども今非常に心配しているのは、そうはいいながら、この統合推進本部、下の方で、三者でやるところですが、そこにやはり担当大臣をお呼びになるのではないのかというふうに我々まだ懸念をしているわけでございまして、ぜひここは、関係大臣の話を聞くのは総理のおられる諮問会議で十分なわけですから、この下の統合本部は、まあせいぜい事務方に来てもらって、いろいろな議論をする、詰まった議論をする。その上で、ここはここで決めて、それを特区の諮問会議に上げて、そこで必要なときには総理が御判断されて、担当大臣を呼んで、関係大臣を交えて物事を決めるという形が私はあるべき姿ではないのかなということで、こういう意見が自民党の中でも多いわけであります。

 この点について、総理の見解をお聞きしたい。これは、つまり、みずからドリルとなって、自分の場でやろうということで今つくりつつある国家戦略特区での法案でありますので、総理のかたい決意を聞かせていただければというふうに思います。

安倍内閣総理大臣 国家戦略特区ごとに設ける統合推進本部は、国家戦略特区担当大臣そして関係地方公共団体の長及び民間事業者の三者により組織する方向で検討しております。

 御懸念の関係大臣についてでありますが、ちなみに、安倍内閣には抵抗大臣というものは存在をしないということは申し上げておきたいと思いますが、この関係大臣については、三者の協議により、具体的な事業の推進等のため、必要な場合には協議への参加を認めます。当然これは、見識、専門的な知識を有する所掌する大臣が入って、その所掌する立場から意見を開陳することは必要だろうと思います。そうした議論をするのは、これは妨げないわけであります。むしろそれは必要なんだろうと思いますが、意見を述べる機会を与えることとしますが、大切なのは意思決定でありまして、この意思決定には加えない方向で検討をしております。

 いずれにせよ、規制改革の突破口として機能が十分発揮されるように制度設計を行ってまいります。

塩崎委員 まず、正規のメンバーとして入れないということ、そしてまた、今、意思決定には加えない、こういうことを関係大臣については総理からお話がございました。

 それは大変結構な方向だというふうに思っておりますが、一つ一つのところでやることですから、大臣が出るまでもないんじゃないかなという気持ちは持ちながら、法案として出てきて、私どもはまた政調の方で議論をさせていただきたいというふうに思いますので、ぜひ、いずれにしても初志貫徹ということで、それができる法律にしていただいて、頑張らなきゃいけないというふうに思うわけでございます。

 それからもう一つは、起業大国。つまり、日本の経済が低迷をしている、再生をせにゃいかぬというときに、何度も政府の方も我々の方も使っている言葉に、新陳代謝という言葉を使っています。

 これは、実は人間でも新陳代謝が悪い人というのは、やはり血行が悪くて、顔色が悪くて、顔がかさかさしちゃったりして、そんなようなことで元気もない、覇気もない。こういうことになって、しかし、それが実は日本のこの二十年ぐらいの現状だったと私は思うんですね。

 ですから、廃業率も少ないけれども起業率も少ない、何となくどろっとした経済で、実は去年まで、九月の総裁選で安倍総裁が出てくるまでは、経済のことなんかにはほとんど関心がなかったわけですから、全然もう、閉塞感という言葉が合い言葉、そういうことでありました、今すっかり変わりましたけれども。

 そういうことで、この新陳代謝の典型は、開業率、起業率を今回政府の方も倍にするんだということで、欧米並みにするという話をしていますけれども、やはり大事なのは、雇用をつくることが我々にとっては大事です。

 もちろん、雇用があれば所得を生む、それが生活水準を上げていくということになるわけで、実は企業も、つくってから三年以内の企業というのが一番雇用をするんですね。ですから、やはり、さっきの規制改革の話の中にもありましたけれども、ベンチャー企業なども、さっきのような有期の雇用形態も大変助かるんだろうというふうに私は思っています。

 そういう意味で、私は、起業、新しく企業を起こす、創業、これはとても大事だというふうに思っています。

 ところが、政府は、今までずっと二十年、三十年、ベンチャー、ベンチャーと言ってきました。しかし、なぜか本当にすごいベンチャーというのはほとんど出てきていない、こういうふうになっています。

 一方で、シリコンバレーというのは、一年間に一万七千社が誕生して、そして一万二千社がなくなっていく、あるいはMアンドAで合併する、結局、ネットで五千社ふえていくという、まさにこれは新陳代謝がすごくいいということなので、やはりこういう形に日本じゅうをしていこうということが私は大事なんじゃないかなというふうに思っています。

 私たち自民党の中で、さっきの中間提言で提案をまとめたときに、あえてベンチャーについてはワンチャプター、特別に、特出しで新陳代謝のプラスの面として取り上げたわけでありますが、そこの中での議論の結果は、我々、今まで二十年、三十年、ベンチャーと言っても、何がなかなかうまくいかなかったんだろうか。

 これは経産省の担当の人たちとも議論をして、結果として、これは我々が提案したものですけれども、やはり切れ目のないサポートシステム、支援の仕組みというものがなければいけないということが私たちの結論だったと思うんです。

 それも、官が全部やるかといったら、そんなことはないので、民がやるのを官が後ろからバックアップするとか、あるいは民だけでやるとか、そういうものでも何でもいいんです。何しろ、途切れることがなく、企業がちょうど生態系と同じように育っていくということが大事なので。

 これは、一番下に事業企画とあります。それから、その下に起業家教育支援というのがありますけれども、まずやってみようというふうに思わせる教育が大事だ。それから、ずっといろいろな政策を書いてありますけれども、こういうものが切れ目がないようにしていくことが大事だということが我々の結論でありました。

 もう一つ、九月十日に、総理とベンチャー、起業家たちと、若き人たちと昼飯を食いながらいろいろ議論をしていただいて、そのときに出てきた一つの提案が、やはり圧倒的な成功事例を政府がつくってほしいという話がありました。

 その中で出てきたのは、メジャーリーグの野茂が最初に行ったときは、みんな、あれで大丈夫かいのというふうに言っていたぐらいでありますけれども、大成功だった。その後、松井も、それからイチローも、今もたくさんのメジャーリーグに行っている日本の選手がいますけれども、やはり、どおんと成功する例があれば、日本人というのは割合それについていく、新しい道を行くということが結構ありますので、この点についても私は見習っていただいて、ぜひ考えてもらいたいと思っています。

 ニューヨークの証券取引所で、総理は、日本を起業大国にしていきたいという宣言をされました。大変我々としてもうれしかったわけであります。

 そこでの質問は、ベンチャーとか起業といっても、製造業だけじゃないことはもう言うまでもない。観光もあれば、流通もあれば、農業もあれば、医療もあれば、もう何でもあるわけですね。そういうことであるならば、どこかの役所に任せっきりにしないで、官邸で、例えば起業大国実行本部とか、そういうところで横断的な政策をつくっていく、それをやはりやるべきではないかと思うわけで、それについての御意見と、それから、今申し上げた成功事例を、それもでっかい成功事例をつくるために、政府の調達を含めてお考えをいただけないかという質問でございますので、よろしくお願いします。

安倍内閣総理大臣 先般も、塩崎委員のお取り計らいで、若い起業家たちとお目にかかる機会を得ました。彼らの話を聞くと、こちらも元気になってくるような気がしましたし、まさに今、グローバルな経済の中における戦いの中で一生懸命頑張って、そこで勝ち抜いて、さらに雇用をふやそうとも考えている皆さんだった、このように思います。

 新たなベンチャーの起業は、日本経済活性化、再生の鍵だ、私はこう思っています。日本再興戦略においても、開業率一〇%台を目指すと野心的な目標を掲げて、大きな柱として打ち出しているところでございまして、起業支援は各省横断的な取り組みが不可欠であると私も考えています。

 このため、全閣僚がメンバーとなる経済再生本部や、官邸に設置した産業競争力会議において、成長戦略の重要な柱として起業支援を検討してきています。

 御指摘の点は極めて重要であると思いますので、今後とも、縦割りに陥ることなく、我が国をベンチャー精神あふれる起業・創業大国にするために、政府全体で起業支援に取り組んでいく体制について真摯に検討していく考えであります。

塩崎委員 大変前向きなお言葉をいただいたので、意を強くして、我々自民党サイドとしてもいろいろやっていきたいというふうに思っております。

 それで、少し、先ほど申し上げた日本の経済文化とか風土とか、そういうような根深い問題についても一緒に考えていこうというふうに思っておりまして、次にお話を申し上げたいんですけれども、今、我々、この日本経済再生を考えるときに、答えを出さなきゃいけない疑問というのが幾つかあると思うんです。

 例えば、なぜ日本の企業というのは、この二十年来、競争力が低下しながら、低収益のままで、余り利益が上がらないままで、でも何で生き延びてこられたんだろうか。さっきの、新陳代謝が悪いということですよね。なぜこういうことが許されちゃうのか。これがやはり解決されない限りは難しいんじゃないか。

 もう一つは、例えばアメリカでいえば、アップルとかマイクロソフトとかグーグルとかフェイスブックとか、アマゾンもそうですけれども、いろいろなベンチャー企業から大きな企業にまで育っていく。これが日本はなぜ、ほとんどと言っていいぐらいないんだろうかということもやはり大事で、結局、総理がおっしゃる新陳代謝のいい経済にするためには、やはりその原因、企業の文化、風土、慣行、根深いものを一つ一つ潰していかないといけないと私は思っています。

 そのためのメニューとして、今、日本経済再生本部、甘利大臣のところで取りまとめていただきましたけれども、この中にも我々の中間提言にも入っているメニューがあって、それは、まずは何といっても規制改革ですよね。

 それから、金融機関改革というのも私は大事だと思っています。

 コーポレートガバナンスの改革、つまり、企業が本気にならない限りは、何をやったってうまくいかない。

 それから、機関投資家改革、後ほどまた申し上げますけれども。

 それから、株式の持ち合いというのは、減ったといえどもいっぱいあるんですね。ですから、俺はあなたのところのことについては何も言わないけれども、あなたのところも俺のところには何も言わないでくれ、だから、利益が余り上がらなくてもお互い何も言わないようにしようぜ、こんな感じになっているんですね。

 それから、政府による業者行政で、利益が低くとも何となく生きていけるというようなこと。

 こういった、かつては日本の成功モデルだったかもわからない、そういう政策や慣行を、もうこれは世界がどんどこどんどこ変わっているわけですから、これをやはり変えない限りは、むしろマイナスになってしまうのではないか。

 ですから、結論から言えば、企業が、さっきのオリンピックの招致のときのみんなのプレゼンテーション、すばらしいプレゼンテーションの話じゃありませんけれども、どうやったらみんなが本当に自分の力を目いっぱい出すようになる仕掛けをつくっていくかということが私は大事なんじゃないかなというふうに思っているわけであります。

 規制改革はもう先ほど申し上げましたから、ドリルの刃となって総理も頑張る、こういうことでありますから、それはそれでいいと思います。

 金融であります。

 円滑化法というのがつい三月までありました。それが、問題を先送って、経済の何となくよどんだ感じを許してしまった。言ってみれば、そういった新陳代謝の悪さが金融機関側から実は許されるような形で行われてきてしまったのかもわからないということで、我々は、この中間提言で、銀行の貸し出しはやすきに流れてはいけない、やはり企業再生、経済再生、あるいは創業支援、起業支援にもっとシフトをしなければいけないし、それが本来の育てる金融になっていかなければいけないんじゃないかという提案をいたしました。

 早速、金融庁が九月に、監督指針とモニタリング指針、検査指針ですね、これをかなりドラスチックに変えてくれました。中間提言で示した今のような方向で変えてきているわけでありまして、私としては大変これは評価をしていますし、また、スピード感も大変あったというふうに私は思っております。

 そこで、金融担当大臣、麻生大臣にお尋ねをいたしたいと思うわけでありますけれども、こういうような金融行政の変化について一言お願いできたらと思います。

麻生国務大臣 御存じのように、金融監督庁というのが、最初にできたのは九十何年でしたか、できたんですが、そのときの状態は、御存じのように、アジアの通貨危機等々で長銀が潰れるとか不動産銀行が潰れるとか、どでかい金融がばたばた潰れていった後だったこともこれありで、金融庁としての主な仕事は、金融企業の内容が、倒産するとかいうようなことによって不測の事態を招かないようにするために、いかに金融を監督するかというのが主たる業務でスタートしたというのが歴史なんだと存じます。

 ところが、だんだん時間とともに時代が変わってきて、その後、大きいのではリーマン・ブラザーズの話がありましたけれども、基本的には、世の中が一九九〇年代以降からずっと続いたデフレというものの中にあって、いわゆる金利はどんどんつかなくなるわ、金利はほとんど全くつかないみたいな話になって、ゼロ金利みたいな話がずっと続く時代だったんだと思います。銀行は金利がつかなければ利益が出ないということになりますので、さらに銀行の収益が下がるという状況の中であって、いかにして金融が倒れないようにするかというのが多分金融庁の主たる業務になって、早い話が、欠点を見つけては危ないところというのをやっていたので、金融監督庁より金融処分庁になっておったというのが、私が赴任して最初に言ったことです。

 したがって、これから時代が変わってアベノミクスのもとでどんどんやっていくには、金融は育成庁に変えてもらいたい。したがって、処分庁から育成庁に気分の転換をやってもらうためにはまずはといって、何を変えないかぬ、かにを変えないかぬ、いろいろ申し上げて、今、九月のモニタリングの話が出てきているんだと思います。

 いずれにしても、金融がリスクをとって金を貸すというのは、残念ながら日本の場合は、敗戦国の方は総じてそういうのが多いんですけれども、資本がないものですから、塩崎、俺は仕事をするから金を貸せという日本と、塩崎、俺が会社を始めるから俺に投資しろというのでは全く違うんですよね。その違いがわかっていない人がこの永田町にやたら、霞が関にもやたら多いんですけれども、投資と融資の区別がついていないというのは全く理解ができないんですけれども、まあそういうものです。

 そうすると、融資だと、利益を出さないと配当はできませんから、だから金は返せぬ、しかし、金を借りている場合は、いわゆる金利さえ払えばという話になりますので、当然のこととして、こっち側には税理士がふえて、向こう側には会計士がふえる、大体そういう流れが世界の中の流れだと思いますけれども、日本の場合は、その点は、間違いなく資本が少しずつ各自生まれてきておりますので、投資をされる方もふえてきております。したがって、銀行の役割はその分は減ってきているはずなんですけれども。

 いずれにいたしましても、銀行としては、今後、銀行業務というのは必要ですから、それが銀行業務として生き残っていくためにも、これは必要なものですから、生き残っていくためにも新しい分野として育成するという意味では、やはり銀行がそういった仕事、こういった新しいものは伸びるという目ききがいるかどうかというところなんだと思いますが、残念ながら、処分を専らやっていたもので、目ききとかを育てるとかいう観点を持った人は、土地を担保に金を貸すということしかできなくて、その事業の内容を見て金を貸すなどという目ききはほとんど銀行には育っていないし、育ててもいなかったというのがこれまでの歴史だ、私はそう思っております。

 したがって、その部分をきちんと変えていくというのには少々時間がかかると思いますけれども、そういった方向で事は進めていきたいと思っております。

塩崎委員 まさに私ども自民党の中での議論もおおむねそういう方向でやりますので、ぜひ金融庁をしっかりと育成庁にしていただいて頑張ってもらうことが経済を再生していくということにつながるんだろうというふうに思います。

 そしてもう一つは、子供に勉強しろ勉強しろとお母さんが一生懸命言っても、なかなか普通は勉強しないんですね。したような顔をして、していない。大体どういうことが起きるかというと、高校から急に勉強するやつなんて出てきますよね。何でかというと、それは、やはり自分で勉強した方が得だと思うときに初めて勉強し始めるんですね。

 だから、企業も、人に言われたりなんかして、では頑張ろうなどというのでは絶対だめであって、みずからの中にそういう意思を駆り立てるような、そういう仕組みがなきゃいけない。これが私はコーポレートガバナンスの問題ではないかなというふうに思うんです。

 本来、会社法の問題なので、谷垣大臣と本当はやりたいところでありますけれども、きょうは時間がないので。

 この再興戦略の方を見てみると、大事なコーポレートガバナンス、特に独立取締役、この導入の問題について、私どもは、確実に一人は入れろということを、やってくださいねということを政府に要望をこの中間提言でしていますが、それはともかくとして、その重要性。それからもう一つは、GPIFという年金積立金管理運用独立行政法人、これについても、運用方針について見直しを今有識者会議で検討してもらっています。私どもの方でもそれを提案しました。

 これを含めた機関投資家というものの役割というのが、やはり今まで物言わぬ株主に近いような形でやってきたところが多かったんじゃないかということで、やはり受託者責任として、株主権をどう行使するのかということについてはしっかりやってもらって、企業統治を強化して、収益力をつけさせて、それで、結果として運用成績を上げて、国民に広い意味で還元していくということをやってもらわなきゃいかぬし、その原則を、日本版のスチュワードシップ・コードという、余り聞きなれない、皆さん方は御存じないと思いますけれども、言ってみれば、どういうふうに機関投資家が行動すべきなのかということを今金融庁でまとめてもらっていると思うんです。

 こんなことを含めて、一見地道に見えるけれどもとても大事な、日本の風土とか、どろっとして新陳代謝が悪かった原因になっているものを取り除いていくのが実はこういうものではないかなというふうに思います。

 これは甘利大臣にお尋ねをしますが、こういう、一見地味に見えるけれども、本当に大事な政策の組み合わせでもって日本の経済の再生を図りたいということについてお言葉をいただければというふうに思いますし、それを踏まえて、総理にも感想を述べていただければ、決意のほどを述べていただければありがたいと思います。

甘利国務大臣 成長戦略を策定する中で総理が常におっしゃっておられるのは、日本を世界で一番、企業立地、つまり投資に対して魅力的な地であるようにしたいということであります。それには、企業自身が緊張感を持つことが大事でありますし、第三者の目で企業統治というものをしっかり見る必要があろうかと思います。

 企業自身が新陳代謝をしやすいような環境整備は政府が整えていきます。投資に対する環境整備あるいは産業界の新陳代謝に対する環境整備、それから、企業自身がどうあるべきかということを第三者の目で見られるようなことにする。あわせて、投資家としてあらまほしき姿というものも描いていかなきゃならない、これが日本版スチュワードシップ・コードと言ってもいいかと思います。

 実は、投資には、短期の投資はもちろん必要でありますけれども、中長期の投資が大事であります。

 先ほどシリコンバレーの話がありました。シリコンバレーでも今頭が痛いのは、投資家の忍耐力が弱くなってきていて、早く成果を出せという圧力が強くなっている。

 インターネット関連の事業というのは、立ち上がりは早いですけれども、大きなイノベーションを要するものというのは三年、五年、あるいはもう少し時間がかかるかもしれない。その間を耐えて支えてくれる投資が必要、中長期の投資が必要であります。投資家にとっても、午前中投資するから午後配当をよこせみたいな話になってしまわないように、もちろん短期資金も大事なのでありますけれども、イノベーションを引き起こすような中長期の忍耐強い投資も大事だ。

 そういうことで、投資側としてもあらまほしき姿ということについても考えてほしいということで、される側とする側と両面から日本は考えていきたいというふうに思っているところでありまして、そういう意味で、短期はもちろんでありますけれども、中長期の投資にとっても最適な投資対象地であるという日本をつくりたいと思っております。

塩崎委員 ぜひ力強く進めていただきたいと思います。

 ちょっと話題をかえて。

 総理は、アベノミクスの中でも、女性の活用というのを非常に強調されてこられました。国連のスピーチでも半分ぐらい女性の話をされたというお話でありますが、きょうは少し提案をしていきたいというふうに思うわけであります。

 既に、待機児童解消加速化プランとかマザーズハローワークとか、いろいろなことをやって、M字カーブの解消で、何とか就業率を七五%から二〇二〇年の八〇%台まで持っていくということをやっているわけであります。

 きょうは特に、余り目立ってこなかった問題でありますけれども、結構重要な問題ではないかと思っていることがあります。それは、女性が働く際の家庭での負担の問題、家事支援の問題であります。

 我が国の税制では、例えばシングルマザーとか共稼ぎの家庭にとって必要不可欠になる可能性が結構高い助っ人、ベビーシッターとかハウスキーパーとか、家事をやってもらう人がいないと、なかなか夫婦で働くということが難しい、あるいはシングルマザーの場合には難しい。

 そういう中で、今まで税制の中でどういう定義をされてきたかというと、こういう家庭内労働に対する対価を支払ったときは、実は、所得を得るための必要経費ではない、こういう整理なんです。ですから、そういうものを払うときは、アフタータックス、つまり、税金を抜かれた後の給料をもらった、そこから払えと。所得の処分という形で政府税調では整理をされてきています。

 それに対して、これは見てのとおり、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスともども、全部、何らかの形で、家事の労働に対する支払いは所得税から税額控除をされているという制度を持っているんですね。日本だけはこれを持っていない。おまけに、これは所得の処分であって、所得を得るための必要経費ではないということを明示的に定義してきています。

 さあ、本当にそれでいいんだろうか。結局、そうなると、お給料をもらった後から払わなきゃいけない、何のサポートもない。そしてまた、言ってみれば、もしそれができないんだったらば、やはり女性にしわ寄せが行ってしまう。

 そういうようなことで本当に就労を高めることができるのかどうかということが私は大変問題だというふうに思っていて、私どもの中間提言では、家事支援税制という形で、何らかの形でやはり税額控除をするようにしたらどうだろうかという提案をする一方で、政府の日本再興戦略でも、「ベビーシッターやハウスキーパーなどの経費負担の軽減に向けた方策を検討する。」という力強い一文が入っています、閣議決定されています。

 もちろん、税制というのはいろいろ国々によって違いますから、一概に同じようにやれといったって、それはなかなかうまくいかないこともあるし、特に我が国は、課税最低限が非常に高い、それから、児童手当など現金の手当もたくさんあるわけですね。そしてまた、財源の問題というのもある。

 しかし、そうはいっても、今のまま、これをアフタータックスから払いなさいということだけで、女性に就労しろ、就労しろと言っていいんだろうかということを私は非常に懸念していて、今すぐにどうのこうのということではないにせよ、本当に女性が生き生きと働けるようにするためには、家に帰ってつらいなと思って帰るんじゃなくて、まず自分でやらなきゃいけないことはあるけれども、かなりの部分はやってくれている、しかし、それにはやはり政府からのバックアップもあるんだというようなふうが私はあるべき姿ではないかなと思い、G5の中で唯一日本だけがこういう制度がない、これについての森担当大臣、そして、それをお聞きになった後、総理のお考えをお聞きしたいと思います。

森国務大臣 塩崎委員、よく質問してくださいました。

 私は、安定政権のもとで国家の大きな課題に取り組まなければならないとすれば、少子高齢化の社会への対応こそが国家の大きな課題だと思っております。これこそが構造の大転換をしなければならない。予算、税制も、今までの日本は、やはり予算についても、少子化に割かれる割合は大変小さ過ぎると思っております。この点、女性が輝く社会について、総理が先頭に立っておられるということを私は大変心強く思っているところでございます。

 子育てについて言えば、まず、親が子供を育てる、これは当然のことでございますが、親といったときに、女親にだけ負担が大きくのしかかっているという現状がございます。そこで、安倍政権では、男性も女性も子育てと仕事を両立しやすい、そういう職場環境の整備に取り組む企業に対して、助成金、そして税制も支援をしてまいります。

 ベビーシッターに関しましては、まず保育の施設を充実していくことが大切ですから、待機児童の解消加速化プラン、そして地方は、待機児童がないような地域についても、子供が少なくても、安心して産み育てる制度を整備してまいります。

 その上で、二十七年度から施行を予定している子ども・子育て支援新制度の中で、ベビーシッター、居宅訪問型保育と言っておりますが、先ほど御指摘の、シングルマザーの方などを含めた方々に対するベビーシッターの公的支援を行うということで、現在、その要件等を検討しているところでございます。

 さらに、税制でございますけれども、介護の部分もあると思いますけれども、ベビーシッターやハウスキーパーなどの家事支援税制については、御質問が通告されると同時に、役所の中でざわめきがございました。

 さっき御指摘なさったさまざまな問題は私もあると思います。控除制度のあり方も日本は諸外国とも違う。それから、財源をどう、どこに求めるか検討しなければならないと思いますけれども、アベノミクスの中の成長戦略であります日本再興戦略の中にも、「ベビーシッターやハウスキーパーなどの経費負担の軽減に向けた方策を検討する。」と明記したわけでございますので、どのような負担軽減を講じていくことができるのか、政府においても前向きに検討を進めてまいりたいと思います。

安倍内閣総理大臣 女性の能力が生かされる社会をつくることができるかどうか、そこに私たちが進めている成長戦略の成否がかかっている、このように思います。

 ですから、国連演説におきましても、ニューヨーク証券取引所における演説においても、私たちは日本を世界で一番女性が輝く国にしていきますという宣言をしたところでございます。

 やはり、女性の能力、今まで多くの女性の方も頑張っておられますが、まだまだ十分に開花されているとは言えないわけでございますし、その中において、例えば、ニューヨーク証券取引所においては、もしリーマン・ブラザーズが、リーマン・ブラザーズではなくてリーマン・ブラザーズ・アンド・シスターズだったら潰れていなかっただろう、そういうお話もさせていただいたところでございます。

 そこで、ただいまの指摘でございますが、仕事と子育てとを両立できる環境の整備は重要な課題であり、安倍内閣では、子供が三歳になるまでは、希望する場合には、男女ともに育児休業や短時間勤務を取得しやすい職場環境を整備していく、子ども・子育て支援新制度の着実な実施に向けた取り組みを進めているところであります。

 御指摘のベビーシッターについても、一定のものについては新制度の支援対象とすることとしているところであります。同時に、ベビーシッターをもっと使いやすくというか、使えるような状況にしてもらいたい、これは経済的な負担もあるんだろう、このように思うわけでありますが、ニーズは高いというふうに私は認識をしております。

 その上で、御指摘の家事支援税制については、申し上げました子育て支援策との関係や所得税の控除制度のあり方、財源をどこに求めるかといった論点もあることから、幅広い視点からの考察が必要であるというふうに考えます。

 このように奥深い問題でもあることから、引き続き幅広く議論を議員にも進めていただきたい、このように思います。

塩崎委員 ありがとうございました。

 森大臣には、ぜひ、総理にも引き続き働きかけをお願い申し上げたいというふうに思います。

 そこで、原発の問題に移りたいと思います。

 まず、オリンピックのIOC委員会のときに、状況はコントロールされているという発言については、もう既に代表質問でも何度も指摘をされていますし、いろいろな問題がまだ引き続き起きている。そしてまた、港湾内に完全にブロックされているという発言に対しても、汚染水の流出が続いて、ブロックできていないんじゃないかという声があります。

 やはりここは、総理御自身、もう一回この場で、その辺についての真意というものを、あるいは根拠を改めて御説明いただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 福島第一原発においては、貯水タンクからの汚染水漏えいなど、個々の事象は確かに発生をしています。

 しかし、福島近海での放射性物質の影響は発電所の港湾内の〇・三平方キロメートルに限定されているわけであります。また、外洋においても、福島県沖を含む広いエリアでしっかりモニタリングを行っておりますが、基準濃度をはるかに下回る値であります。さらに、個々の事象についても、汚染水に係る管理体制や保管体制を抜本的に強化するとともに、先般決定した汚染水問題に関する基本方針に基づいて予防的かつ重層的な対策を講じることで、汚染水の影響が外洋には及ばないようにしています。

 このため、汚染水の影響は、全体として状況はコントロールしている、コントロールされていると考えておりまして、また、福島近海と外洋のモニタリング結果から、汚染水の影響はブロックされていると考えているところであります。

 先般、十九日に福島を訪問いたしたわけでございますが、相馬市に行ってまいりました。その際、試験的にではありますが、操業が再開をされていまして、漁業者の皆様の中にも、明るい未来が見えてきたということをおっしゃる方もおられました。そして、お魚あるいは水産物を検査しているわけでありますが、検査の結果、健康には全く問題がないということが明らかになりました。

 しかし、いまだに深刻な風評被害もあるわけでありまして、そこで、シラスを初めいろいろな魚やタコやイカもごちそうになったんですが、大変おいしかったわけであります。こうしたものをしっかりと、正確な情報を日本のみならず世界に発信していくことも大切ではないか、このように思っております。

塩崎委員 ありがとうございました。

 今お話があったように、九月の三日に、汚染水対策、もう東電任せにしないで国が前面に出るんだ、こういう話でありました。それはそのとおりだと思いますし、よかったと思います。

 しかしながら、モグラたたきと言われてきたこれまでの状況が、モグラをたたくのが東電から政府に変わっただけだというのではだめなんで、モグラが出てこないようにせにゃいかぬというのが一番大事なことだと思っています。

 そこで、私が申し上げたいのは、ここで少し、事の深刻さ、あるいは、この事故の、言ってみれば世界で初めてのことがたくさん入っているこの事故に対する対処の仕方、体制、それについては、発想の転換を含め、解決に向けての姿勢の強化が一層必要なんじゃないかなというふうに私は思っています。特に、国の総力を挙げてということでありますけれども、では、国の役割は何なんだ、そして、東電と国の役割分担はどうあるべきなのかということもとても大事であります。

 基本的には、汚染水問題を含む原子炉の廃炉というのは、四十年ぐらいは最低でも続くわけでありますから、これは世界的にも経験のない、技術的に本当に課題山積のものばかりであって、この重責と技術力は、恐らく東電一社では力不足であることは目に見えていると思うんですね。そして、我々政府の役割というのは、自然と自然環境を放射能から守る、これに尽きるわけですね。

 そういうことであるならば、今後は、そうした責務と役割分担を踏まえた新たな体制、組織体制を私は政府が率先してつくっていくべきじゃないか、再構築すべきじゃないか、こう思っています。

 例えば、これは例えばですけれども、東電を福島第一とそれ以外に分ける、そして分社化して、福島第一の方にしては、やはり責任が今まで明らかにされていませんから、責任も明らかにし、その一方で、事故の一義的責任を負う東電を中心とはするけれども、国、それから新たな技術の開発や利用をするかもわからない国内外の原子力関連産業や研究機関あるいは国際機関、こういったところが共同出資をして、名前も、例えば廃炉先端技術推進機構とかそういった名前にして、汚染水の完全隔離や廃炉プロセスを推進しながら、新しい技術を開発する仕組みをつくっていく、そういう場にすべきではないかな。全てが世界初だということを肝に銘じてやっていくべきじゃないかと私は思っています。

 当然、技術開発にはインセンティブも与えて、よし、頑張ってやろう、新しいものをつくってやるぞということで、ロボットとかいろいろなものがあると思いますけれども、それから、モラールの高い科学者、技術者を世界から集めるということが大事で、世界最高水準の新技術をつくり出すような組織に私はしなければいけないと思っています。

 ですから、新たなフレームワークをつくるべきときに来ているのではないかなというふうに私は思っておりますが、経産大臣、そしてまた総理のお考えがあればお願いしたいと思います。

茂木国務大臣 大変いい御提案をいただいたと思っております。

 モグラたたきの状況から、モグラも出てこないような状況にしていく。九月の十日にまとめましたアクションプランにおきまして、山側の地下水をどう制御するか、そしてまた汚染源そのものをどう取り除くか、さらに、海側におきまして、汚染水を漏らさない、こういう対策をどうとるか、さらに、それに加えて、潜在的なリスクに備える、そしてアクションが十分効果を発揮しない場合の対策もとる、こういう予防的、重層的対策をとることにしております。

 その上での組織体制の問題でありますが、これから、廃炉といいますと、三十年、四十年と長い時間がかかるわけでありまして、その間に、例えば電力システム改革、こういうのが実行されることによりまして、競争環境というのも相当変わってくる、このように考えております。

 同時に、この電力システム改革におきましては、この国会でも改めて御審議をお願いしておりますけれども、発送電の分離、こういったことを進めていきたいと思っております。

 そうなりますと、当然、各事業者において、まず、一般論として、そういった大きな事業環境の変化の中でどう社内の体制をつくっていくか、こういう判断がなされるものだと思っております。

 東電は、御案内のとおり、既に社内でカンパニー制、こういうものをとっておりますが、同時に、御指摘のように、廃炉であったりとか汚染水対策に集中できる社内体制、これを構築していくことは極めて重要だ、そのように考えているところであります。

 さらに、もちろん、国も前面に出る。廃炉において、研究開発、モックアップ、ロボット、こういったこともやっていき、汚染水についても、難度の高い対策については国が前面に出る、総理の判断のもとでこういったことを進めております。

 さらには、関係の専門機関であったりとか、同時に、海外の知見、こういったことを活用していくことも極めて重要だ、このように考えておりまして、現在、IRIDを中心にしまして、こういった海外の知見を集約する取り組みも進めているところであります。

 御提案をいただきました、原子炉先端推進機構と呼べばいいのか、名前についてはいろいろあるかと思いますが、御提案のあった基本的な考え方、その目的において、私は、今私が御説明申し上げたような方向と決して違っていない、このようにも思っているところでありますが、では、廃炉であったりとか汚染水の対策をより効果的、円滑、そして適切に進めるためにはどういう組織の体制がいいのか、どういう運営システムをつくるのか、また、そこにどういう人材を入れていくのか、こういったことについてもさらに詳細な検討が必要だ、このように考えております。

安倍内閣総理大臣 福島第一原発の事故は、このような深刻な事故における廃炉や汚染水対策、これは世界にも前例のない困難な事業でありまして、このため、委員が御指摘になられたように、世界の英知を結集して、世界に開かれた形で取り組んでいくことが求められていると思います。

 そこで、既に米国やフランスの多くの技術が福島第一原発では使われているところでもあります。

 また、この八月には、技術研究組合国際廃炉研究開発機構を設立いたしました。海外の有識者を顧問として迎えるとともに、汚染水問題に関して国内外に広く技術公募を行っているところでありまして、国際的な共同事業については、これらの公募の結果も踏まえまして検討していきたいと思います。

塩崎委員 基本的な方向について共有をできたような気もいたしました。特に、国際的な協力を得るということについてはお二方からもちゃんと言明をいただきましたが、私が申し上げたいのは、時々外国の人の意見を聞くとか、あるいはいい提案を外からしてもらって、あとはこっちに任されるというのではなくて、むしろ、今、日本人だけでやっている部分で不信感を買っている。

 それから、この間、私どもの原子力規制PT、自民党の中にありますが、そこに、国会事故調の黒川委員長、それから民間事故調の北澤委員長、お二人が来られて共通に言ったことは、むしろ疑いを持たれているところに外国の研究者、科学者を入れて、一緒に共同プロジェクトにした方がいいということを言っておられました。まさにこの国際共同プロジェクト化、つまり、現地にもいる、ずっと常駐しているぐらいのことで一緒にやっていく。

 原子力に隠し事があってはならぬのですね。これはもう一切あってはならぬということで、国際的な科学者が一緒に入っていれば、心配をしている国際的な科学者たち、この間も英国のネイチャー誌が書いていましたけれども、やはりちゃんと世界の英知はかりるべきだということを言われています。

 そういうことを考えてみると、私は、国際共同プロジェクト化をすべきではないかというふうに思いますが、これについてはもう本当にごく簡単で結構ですから、茂木大臣それから総理にお願いします。

茂木国務大臣 先ほど総理の方からも、既に福島第一に、米国やそしてフランスの技術、これは具体的には水処理の設備であったりとかロボットを入れているわけでありますが、当然、そうなりますと、設置であったりとか、いろいろな形でそれの人材も入ってまいります。

 そして、現在は、IRIDにおいて、海外の有識者、顧問という形でいろいろなお力をかりておりますけれども、そういった海外の専門家のより積極的な活用であったりとか、国際事業体の組成、どの分野でやるかとか、いろいろな議論はあるかと思いますが、そういったことも検討する必要がある、そのように考えております。

安倍内閣総理大臣 今委員が御指摘をされた廃炉そして汚染水対策について、海外の知見、技術を入れるような、そういう共同事業にしていくべきではないかというお話がございました。

 今、公募を行っているところでありまして、公募の中においても海外からの応募も恐らくあるだろうと思いますし、今までお願いをしている顧問の方々の意見も入れながら、まさに世界の英知を結集した、人材を結集した形で対処していくことが重要であろう、このように考えております。

塩崎委員 ありがとうございました。ぜひそのような方向でお願いしたいと思います。

 最後に、先ほど消費税の話が石破幹事長からありましたが、端的に、時間がございませんので、一分で結構ですから。

 一つは、五兆円の対策がばらまきになるんじゃないかという批判があります。これについて説明をいただきたいのと、それから、復興特別法人税の一年前倒し廃止、これについても、私どもの後援会でも、大衆増税して大企業優遇かい、復興を大事にしないのかいということがありました。

 ぜひ、もう短時間でありますので、一分以内ぐらいで、大変恐縮でございますが、御説明をいただければありがたいと思います。

安倍内閣総理大臣 まず、この五兆円、そしてさらには投資減税等の一兆円の税制上の対応は、これは消費税による税収分は全く向けないわけでありまして、消費税の引き上げ分については、一〇〇%全て社会保障に回していくわけであります。

 一方、しっかりと強い経済を取り戻していくことは、そして、今やっと景気の回復、緩やかな景気回復軌道に乗りましたから、再びこの景気回復軌道に消費税を上げた後もしっかりと戻れるようにするためには、そうした対応をしていく必要があって、そのためのお金を、今回、対策費として、政策パッケージとして取りまとめたわけでありまして、四月、五月、六月が、これは一時的に経済が悪くなって、そして次の七―九に戻ればいいということではなくて、完全にその後も成長軌道に乗せることができるような、成長力を強める対策にしているところであります。

 そして、一年前倒しについてでございますが、これも誤解があるのは、ちゃんと復興のお金が確保されなくなってしまうのではないか、復興のお金を経済対策に回されるのではないかという誤解であります。それは全くないわけでありまして、我々は、安倍内閣においては、十九兆円だった復興の予算を二十五兆円にふやしました。これには一切手はつけません。このまましっかりと復興加速化に取り組んでいきたい、このように思うわけであります。

 同時に、景気の好循環に早く入っていくためにおいては賃金の上昇が必要でありまして、賃金が上昇していくということを前提に企業の収益を上げるという観点から、企業の収益が賃金の上昇につながり、消費が拡大し、さらに企業の収益が上がっていく、こういういい循環に早く入れるようにするためのものでありまして、そういう景気のいい循環に入っていき、経済が強くなれば、これは復興にも必ずプラスになっていく、この道しかない、このように確信をしております。

塩崎委員 ありがとうございました。終わります。

二階委員長 この際、齋藤健君から関連質疑の申し出があります。石破君の持ち時間の範囲内でこれを許します。齋藤健君。

齋藤(健)委員 自由民主党の齋藤健でございます。

 まず初めに、本日、この質問の機会を与えていただきましたことに対しまして、心から感謝を申し上げたいと思います。

 加えて、私の質問中に、もし大島で総理や関係大臣が指揮をとらなくちゃいけないような事態が発生いたしましたら、どうかそちらを優先していただきたいと思います。

 早速、質問に入らせていただきます。

 まず、これから急速に佳境を迎えていくと思われますTPP交渉についてでございます。

 実は、私は、一九九三年から九五年にかけて行われました、恐らく、戦後、日米で通商交渉を行った交渉の中で最も厳しい交渉の一つであった日米自動車・自動車部品交渉に、当時の通産省の担当課の筆頭の補佐として参画をいたしておりました。

 この交渉は、本当に厳しい交渉で、二十三カ月間もやり合うことになりましたし、最終局面では、アメリカは、自分たちの言うことを聞かなければ、日本に五十九億ドル、つまり日本円にすれば六千億円の損害を与える制裁をするという、米国通商法三〇一条のおどしも受けることになりまして、アメリカは日本と交渉手法が随分違うなということを含めて、いろいろ経験をさせていただきました。

 また、世界の貿易秩序づくりといいますのは、歴史を振り返ってみますと、一九九九年に一つの転換点があったような気がしております。

 それまでの世界の貿易秩序づくりというのは、第二次世界大戦がブロック経済化によって引き起こされたのではないかという認識のもとで、なるべく世界全体で貿易の秩序をつくっていこうということで、ガット体制、WTO体制というものが築かれてきたわけでありますけれども、ところが、この一九九九年の十二月にシアトルで行われましたWTOの閣僚会議で、ラウンド交渉がどんなに努力をしてもまとまらないということになりまして、以後、世界は、世界全体で約束事をするよりも、地域間や二国間で秩序づくりをしていこうという傾向に一気に傾斜をしていきました。

 そのWTO閣僚会議が崩壊をいたしましたシアトルの現場に私はおりました。厳しい交渉を続けてきたにもかかわらず、しかも、アメリカ自身が議長をしていながら、突然、この交渉はまとまらないと宣言した瞬間には、私は、まさかこんなことがあるんだと驚きを禁じ得ないところでございました。恐らく、アメリカといたしましては、思うような結果が得られない交渉を続けるよりは交渉を壊した方が得だという苦渋の決断をしたんだと思います。

 そういうさまざまな経験を踏まえながら、現在のTPP交渉について気になる点を御質問させていただきたいと思います。

 アメリカは、交渉において、苦しくなりますと、それでは米国議会がもたないんだということをよく言います。私は、日本も同じなんだろうと思います。特に今回のTPP交渉につきましては、我が党は、衆議院選挙の公約、参議院選挙の公約、そして党内の関連組織での積み重なる決議、最終的には、国会におきましても衆参農水委員会で決議をするなど、農業関係者の皆さんを初めとする全ての方々の不安を払拭するために、順を追って、大議論をしながら、TPPに対しての対応を丁寧に決定いたしてまいりました。

 私は、ここに至るまでの経緯でいえば、政府は最大限の努力をされてきたものと評価をしております。とりわけTPP交渉に参加をするときの経緯につきましては、私は高く評価できるものだと考えております。

 昨年十二月の衆議院選挙における我が党の公約は、聖域なき関税撤廃を前提にする限り、TPP交渉参加に反対しますとなっておりました。これも党で大議論をして決めた、思いのこもった一文でございます。

 安倍総理は、この公約を守るために、オバマ大統領との会談で、両国に聖域があることを文書で認めさせました。私の拙い経験からいって、この種のものをアメリカ政府が文書で出すということは極めて異例のことでありまして、このことを知ったとき、よく一筆をとったなと、私は正直うなりました。この点はフェアに評価をさせていただきたいと思います。

 その上で、問題は今後でございます。一筆とった後も、TPPをめぐりましては、重い経緯が積み重なってきました。参議院選挙の我が党の公約もありました。衆参農水委員会での決議もありました。

 先ほどの質問で、石破幹事長は、守るべきものは何かという問題を提起いたしておりましたが、私は、一議会人として、守るべきものの一つに国会の決議があるんだろうと思っております。

 本年四月に衆議院の農水委員会で決議されました内容は、いずれも重要なものでありますけれども、とりわけ、米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などの重要品目について、引き続き生産可能となるよう除外または再協議の対象とすること。十年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も含め認めないこと。それに加えましてもう一つ、「交渉に当たっては、二国間交渉等にも留意しつつ、自然的・地理的条件に制約される農林水産分野の重要五品目などの聖域の確保を最優先し、それが確保できないと判断した場合は、脱退も辞さないものとすること。」こう記されているわけであります。

 私は、これらの決議は大変重いものだと思います。交渉がいかなる展開になろうとも、この国会の決議が軽んじられるようなことがあっては断じてならないと考えますが、まず、この点について、総理の御決意を確認させていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 まず、我が党の参議院選挙における公約は、「TPP等の経済連携交渉は、交渉力を駆使し、守るべきものは守り、攻めるべきものは攻めることにより、国益にかなう最善の道を追求します。」ということでありました。我が党は、公約で国民の皆様にお約束をしたことはたがえてはならない、こう強く決意をしているわけであります。

 そこで、衆参の農水委員会の決議をしっかりと受けとめ、その上において、今申し上げましたこの公約、国益にかなう最善の道を追求するよう、全力で交渉に当たっていく考えであります。

 今後、交渉の進展を踏まえながら、与党ともよく連携して、我が国の国益を実現するための戦略、戦術を練っていく考えでございます。

齋藤(健)委員 私も今の総理の言葉を重く受けとめさせていただきたいと思います。

 TPP交渉が妥結に至りますと、次は国会の条約の承認ということが必要になります。万々々一この決議の精神が軽んじられるような交渉の展開になるようなことがありますと、当然、論理的に、国会では承認が得られなくなるかもしれないという事態に立ち至るということも念頭に置いていただきまして、今総理がおっしゃいました方針で交渉を行っていただきたいと思います。

 私は、今月八日にインドネシアのバリ島で開催されましたTPPの首脳会合で、年内の交渉妥結に向けて協議を前進させると首脳声明が採択されましたこと、これはいいことだなと思っております。この交渉におきましては、期限を、それも短期に切っていくということはいいことではないかと私は判断をいたしております。ただ、交渉は、合意を焦った方が負けであります。期限を切りながらも、焦らずに、脇を固めて交渉を進めていっていただきたいと思います。

 その上で、今私が心配をいたしておりますのは、実はアメリカの状況でございます。

 通常、アメリカ政府がほかの国の政府と通商交渉を行う場合には、ファストトラックですとかトレード・プロモーション・オーソリティーですとか、そういったものを、議会から権限をとってから交渉に臨む、これが通例でございます。

 これは何かといいますと、政府がほかの外国の政府と交渉してきたものを米国議会にかけるときに、一つ一つ交渉内容を議会がチェックするということではなくて、まとめて賛成するか、まとめて反対するかだけの判断を議会が行うというものであります。議会から見れば、政府に大幅な交渉権限を与えるという性格のものだろうと思います。

 これまでアメリカ政府が世界の国々と行ってきた通商交渉では、必ずと言っていいほど、この権限を議会から付与された上で政府間交渉に臨んできております。外務省によりますと、唯一の例外が二〇〇〇年八月に締結されたアメリカとヨルダンの自由貿易協定でありますが、それ以外は全て、この権限を議会から付与された上でアメリカ政府は交渉妥結をいたしております。

 ところが、今回のTPP交渉におきましては、いまだにアメリカ政府はこの権限を議会から付与されておりません。付与されずに交渉をしているわけであります。

 私は、年内にオバマ政権がこの権限を議会からとれなかった場合、議会で個別案件が一つ一つ議論されて、ひっくり返される可能性がかなりあるのではないかと思えてなりません。その場合は、我が国は大変なリスクを負うことになるのではないかと思います。

 今のアメリカ議会は、オバマ政権との関係で、いわば何でもありの状況になりつつあると思います。仮に外国政府との約束でありましても、議会が容易にひっくり返す可能性はかなりあるのではないかと思います。日本が全てのカードを切った後で、やはり議会の承認がとれませんでしたなんてことにもなりかねないと思います。

 オバマ政権としては、TPPそのものを崩壊させることは政治的には余り得策ではないと思いますので、何とかならないかとまた言ってくる可能性も十分あるわけであります。そのときに、日本が全部カードを切ってしまっていたら一体どうなるのかと私は心配をしているわけであります。

 こういう状況のもとで交渉の最終段階に入っていくということは、アメリカの議会の状況をよほど慎重に見きわめながら最終判断をしていかなくてはいけないし、こういったリスクを考えた場合には、他のTPP交渉参加国と協調しながら、アメリカ政府にこの権限を議会からとってくれと厳しく迫るべきではないかと私は思っておりますが、交渉を担当されている甘利大臣の御見解を伺えたらと思います。

甘利国務大臣 議会が政府に対して全体としてイエスかノーしか言えない、そういう権限を政府に与える、それをとった方が交渉は妥結しやすい、そういう意見があるのは承知をいたしております。

 その一方の意見として、仮に議会がそういうことを与える場合には、細目にわたって全部注文がつくのではないか。そうすると、アメリカ政府としては一センチも動けないということになってしまう懸念も一方であります。

 全部がまとまって、一項目だけで議会が承知をしないという場合にどういう対応になるのか。その国に対して、ここは何とかしてくれという行動の可能性も今おっしゃったようにあれば、あるいは、これだけで壊すのかアメリカはという反作用も働くかもわかりません。

 いずれにいたしましても、日本として、アメリカの行動に対して、今この時点でこうあるべき、あるいはそうでないということは、向こうの国内対応でもありますし、あるいはこちらの戦術、戦略上のことでもありますし、日本がどういう対応をするかということについては控えさせていただきますが、いろいろな見方があるということだけは御紹介をさせていただきました。

齋藤(健)委員 ありがとうございます。

 既にタフネゴシエーターの異名があります甘利大臣でありますので、これは駆け引きのカードとしても使えるんじゃないかと思いますので、ぜひ御一考いただけたらと思います。

 次に、農政に関して幾つか質問させていただきます。

 私は、日本の農業は、TPPいかんにかかわらず、大きな改革、改善をしなければその将来が危うい、そういうふうに認識をいたしております。多くの皆さんはそうではないかと思います。農業に携わっている方の平均年齢が六十六歳、米作に限れば七十歳を超えているという現状を考えますと、この数年が農業改革、改善を前進させていく勝負どころと言えるのではないかと考えております。

 一番大事なことは、多くのことをやらなくてはいけないんですが、農業が魅力ある産業になっていくということが一番大事なんだろうと思います。そうすれば、後継者の問題も、それから高齢化問題も、耕作放棄地問題も解消の方向に向かっていくわけでありますので、そこの根幹のところをどうしていくかということが一番大事なんだろうと思います。

 ところが、我が国の国内人口はこれから急速に減少していくわけでありまして、内需はどんどん減っていくということになるわけであります。そういう状況のもとで農業を魅力ある産業にしていくためには、もちろんコストを削減する努力というものはこれまで以上にやっていかなくてはいけないわけでありますけれども、内需が減っていってしまうわけですから、二つの方向で努力をする必要があります。

 一つは、農業ができるだけ流通、加工の分野に出ていって、付加価値を高めていくということであります。それからもう一つは、内需が減るなら外需をとりにいくということだろうと思います。この二つの努力で農業を魅力ある産業にしていくことがこれから本当に大事なんだろうと私は思っております。

 そして、この二つの方向での日本の農業の可能性は大変大きいものがあると私は思っております。米や果物にしても、野菜にしても、水産物にしても、世界に冠たる高品質のものを我が国農産物が持っているのは事実であります。

 先日も、久しぶりに国際会議でアメリカに行きまして、アメリカのイチゴを食べましたけれども、日本のイチゴとの歴然たる差を改めて感じたところであります。また、ワインやチーズだって、最近の日本製品は大変品質がすぐれたものになってきておりますので、十分日本ブランドを確立する土壌はあると思います。

 本日は、時間がないので一つ一つの政策についてお聞きはいたしませんが、私が総理にお願いしたいのは、こういったすぐれた日本の農畜水産物を国内外に売り込む一大運動といいますか、一大ムーブメントといいますか、そういうものをぜひ政府を挙げて起こしていただきたいということでございます。

 これまでも、安倍総理は海外に行かれますと必ず日本の食材をPRしていただきまして、私は大変ありがたいことだと思っております。

 そして、今度、オリンピック、パラリンピックが日本に来ることになりました。このオリンピックを契機に世界から百万人の人が来ると言われておりますし、延べにすると一千万人にもなると言われております。さらに、全世界でとてつもない人数の人々がテレビを見ることになるでしょう。日本の食材を世界にアピールするにはこれほどのチャンスはないと思います。海外の人にどうアピールしていくかの戦略をもう今から練って、二〇二〇年には世界じゅうで日本の農水産物が注目されるような、そういう展開にぜひしていただきたいと思います。

 そのアイデアの一つとして、同僚の議員がいつも言っているわけでありますが、国際青果市場みたいなものをつくったらどうか。成田や羽田の空港のそばに国際青果市場のようなものをつくって、そこにはシンガポールや台湾や中国やアメリカの仲買人が集まっておりまして、日本の農家はそこにいいものを持ち込めば、そこから先の検疫や輸出は全部その人たちがやってくれる。農家の方々に輸出をしなきゃだめですよと言ってもなかなか対応できるものではありませんが、その市場に持ち込めば、そこから先は全部その海外の仲買人の人たちが輸出まで、現地でのマーケティングまでやってくれる。

 そういう仕組みができますと、恐らく、海外で何が売れるかということを、つくるのは日本の農家の方々は大変得意でありますので、そういうものをつくってどんどんそこに持ち込むようになる。そして、二〇二〇年に世界から人が集まったときに、おいしかったなといって世界に帰ったときに、その仲買人たちが供給するものを今度は国で味わうことになるというような、そういう展開を提案している私の同僚もいるわけであります。

 農林水産省におきましては、農林水産物の輸出拡大について、一兆円目標の達成を目指して取りまとめを行っているところと聞いておりますが、林農水大臣から、これらの方策、あわせて、この国際青果市場構想のアイデアについての御見解を承れればと思います。

林国務大臣 齋藤委員、今お話があったように、今後十年間で、このアジアを中心に、世界の食市場、内需と外需ということでいえば外需は、三百四十兆から六百八十兆に倍増する、その中でアジアは三倍だ、こういうふうに言われておりますので、ここをとっていくということが大変大事だと思っております。

 したがって、FBI戦略と呼んでおりますが、メード・フロム・ジャパン、すなわち、日本の食材をフランス料理ですとか中華料理、こういうものに使っていただく。それからメード・バイ・ジャパン、日本食を広めていく。そしてメード・イン・ジャパン、日本産のものを輸出していく。こういう戦略で一体的に展開をしていこう、こういうふうに思っておりまして、今御指摘いただいたように、重点品目ごとに細かく目標額や重点先、地域を定めた国別・品目別輸出戦略というものを八月二十九日に公表しまして、今ブラッシュアップをしているところでございます。

 今お話のあった、多分、平先生だと思いますが、青果物を重点品目の一つにも位置づけておりまして、現在八十億ですが、二〇二〇年に二百五十億へふやしていこうということで、富裕層に加えて中間層もターゲットとして売れる品目を発掘するということと、それから、卸売市場の活用を初め、産地間連携しまして、どうしても、海外に売るということになると、ロットがそろうのか、ずっと供給し続けられるのか、ここがポイントになってきますので、やはり多品目周年供給体制、こういうことも考えて、東南アジア、EU、ロシア、中東というところを絞ってやっていきたいと思っておりますので、まさに、この国際青果市場もその中に大きな位置づけを持っていくべきものだ、こういうふうにも考えておりますので、しっかりと連携して取り組んでまいりたいと思っておるところでございます。

齋藤(健)委員 ありがとうございます。

 中国の人口は十三億でございます。仮に、中国の方一人当たり、一年間で日本の農畜水産物を五百円だけ余計に食べていただいたら、それだけで日本の輸出は六千五百億円ふえるわけであります。これだけで一兆円の輸出目標は達成できてしまいますし、アメリカの人口は三億人です。アメリカの方々が一年かけて千円だけ日本の農産物を余計に食べてくれたら、それだけで三千億円の輸出増になります。アメリカには、どんな食材をターゲットにして、どういう形で、どういう段取りを踏めばそういったものが可能になるのかということを、ぜひ戦略的にお考えをいただきたいと思います。同じように、ASEAN六億人、EU五億人、インド十二億人でございますので、チャンスは大きいかなと思います。

 一九六四年の東京オリンピックのときには、世界の方々が日本の新幹線を見て驚いたんだろうと思います。そして、二〇二〇年のオリンピック、パラリンピックでは、日本の食材、日本の農畜産物のよさを知って驚いたというようになるように、ぜひ林大臣には全力を挙げていただきたいと思います。

 少しだけ話がかわりますけれども、総理にもう一つのお願いは、前回の安倍政権のときに、総理は、地球温暖化対策として、みんなで止めよう温暖化、チーム・マイナス六%運動というのをみずから率先して行っていただきまして、この手の国民運動としては異例の大成功をおさめました。今なお、三万五千社以上の企業がこの運動を継続しているやに聞いております。私は、当時の総理のポスターを今でも覚えております。

 これと同じように、食料安全保障のためでもあり、美しい日本を残すためなんだというコンセプトで、国産の農畜水産物の国内での消費拡大にもぜひ陣頭指揮をとって取り組んでいただけないでしょうか。

 とりわけ、TPP交渉が妥結をいたしますと、得をするのは、二次産業、次いで三次産業だろうと思います。一次産業はそうでもないと思います。そういった産業間不公平を是正する意味でも、TPP交渉で利益を得る産業界に、日本の農畜水産物あるいは林産物の消費拡大に一汗、二汗かいてもらってもいいのではないでしょうか。

 例えば、経済界に対して、細かい話かもしれませんが、社員食堂で使う食材は国産のものになるべくしてほしいというような要請をすることも、私はこのタイミングではあり得ると思っておりますし、さらに、TPP交渉が妥結をすれば法人税収が当然上がっていくわけでありますので、その一部を農業の活性化に真に役立つ予算に回していくですとか、そういう産業間不公平の是正にもぜひ総理には取り組んでいただきたいと思います。

 私は、みんなの努力でそういった方向で日本の農業が前進をしていって、七年後のオリンピックのときには世界が注目をして、そして、自民党が掲げる所得倍増計画が十年後には実現をして、日本が、気がついてみたら高付加価値の農畜水産物の輸出拠点になっていて明るい農村が取り戻されていたというような展開に、皆の努力でぜひしていきたいと思っております。

 以上、まとめて総理にお伺いをいたしますが、一つは、二〇二〇年に向けて日本の農産物を内外に売り込む一大運動みたいなものをぜひ起こしていただけないかということであります。

 二つ目は、TPPによる産業間不公平を是正する観点からも、経済界に対して、社員食堂での国産品活用などを含めまして、農林水産業活性化へのできるだけの努力を要請していただきたいなということ。

 三つ目は、先日の所信表明演説の中で、安倍政権の成長分野の中に農水産物を位置づけていただいたのは大変ありがたいことだと私は思っておりますが、これからは、農業を成長戦略の中のむしろ中核として位置づけていただき、農業の活性化を最優先政策の一つであるとして位置づけていただきたい。

 以上、三点について、総理の御見解を承れればと思います。

安倍内閣総理大臣 伺ったところでは、先般、自民党の部会長等の人事において、希望を聞いたところ、齋藤委員は、困難な仕事をやらせてください、そういう要望を出して、それに応えて高市政調会長が農林部会長をお願いしたということだろうと思います。ここにも農林分野の森山先生、上杉先生とおられますが、新しいタイプの農林部会長が誕生したな、こんなように思うわけでございます。

 その上において、やはり若い人々がなかなか農業分野に来ないということが嘆かれているわけでありますが、この農業分野を、若い皆さんが自分たちの努力や情熱を傾けていけば新しい未来が開かれていく、こういう分野にしなければなかなか若い人たちは入ってこないんだろう、このように思います。

 その中において、日本の農業は実際質が高いですから、この可能性に富んだ農業を、私たち政治の責任で、どう農家の皆さんの所得を上げていく、魅力ある分野にしていくかということが問われているんだろう、このように思います。

 まず、その意味において、日本の農産物の輸出、先ほど農林水産大臣からもお答えをさせていただきましたが、私も、海外に出張する際、委員が紹介をしていただいたように、必ず農産物を持っていきます。ロシア等においては、江藤副大臣にも同行をしていただきました。

 すしやそばの職人も同行する場合もございますが、それはいわば、本物のすしというのはこういうものなんだと。やはり日本のお米で、世界にたくさん日本食レストランはありますが、これは日本食かと思えるような日本食も、実はそちらの方が多いわけでありまして、本物の日本食を食べて、そして一緒に飲むのはやはり日本酒ですね、このシステム全体で売り込んでいくことも必要だろう。味を覚えていただく。イチゴもそうですが、マンゴーなどもそうです。

 また、UAEでは、養殖のマグロや和牛やメロン、イチゴを紹介いたしました。クウェートやカタールでは、メロンや梨やブドウやハウスミカン、柿など、高級な果物、野菜等も紹介をさせていただいたわけでございますが、どこでも大変好評ですし、これは全然違うという評価もいただいているわけでございますので、まさに私もトップセールスをしながら、日本全体の総合力を使って売り込んでいきたいと思います。

 と同時に、これは経済界全体も、経済界、産業界も、農業というのは、やはりこれがあって日本なんだよという認識を持っていただいて、彼らにも手伝ってもらいたい、このように思います。

 TPP交渉のいかんにかかわらず、経済界の協力は重要でございますので、さまざまな機会を捉えて経済界に対して農業の活性化への協力をお願いしたいと思いますし、大切なことは、やはり農家の収入がふえていくことなんだろう、このように思います。六次産業化していく中においても、やはり農家、生産者の収入がどうやってふえていくんだ、どのようにしてふえていくんだということが大切だろう。例えば、ミカンが幾らすごく高く売れていても、意外と農家の収入は少なかったりするわけでありまして、ここをどう変えていくかということも大切であろうと思います。

 国内の農林水産業の活性化を図っていくことは、まさに待ったなしの課題でありまして、そのために、農林水産業・地域の活力創造本部を設置して、私が先頭に立って検討を進めているところでありまして、農業の活力を取り戻す、農業の活性化、これは安倍内閣の最重要課題の一つであるということを申し上げておきたいと思います。

齋藤(健)委員 ありがとうございました。終わります。

二階委員長 これにて石破君、塩崎君、齋藤君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

二階委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。上田勇君。

上田委員 公明党の上田勇でございます。

 質問に入ります前に、伊豆大島の土砂災害で多くの方々が被災をされました。謹んでお見舞いを申し上げます。そして、今なお不安な状態の中に置かれている方々、住民の安全の確保とまた早期復旧に向けまして政府として全力で取り組んでいただくことを、まず御要望させていただきたいというふうに思います。

 きょうは、時間の関係もございますので、事前に通告をしてあります項目の全部については言及できないというふうに思いますけれども、御了解いただきたいと思います。

 安倍内閣、そして自民党、公明党の与党にとりまして最大の使命というのは、日本経済の再生であるというふうに考えております。これまで、金融緩和、それから財政出動ということで、随分効果が上がってまいりました。経済、雇用に関する各種指標というのは、ほとんどが改善をしております。

 本年四月から六月期の名目GDP成長率も、年率換算で三・七%。これは、昨年の同じ時期、やはりこの名目GDPの成長率がマイナス一であったことと比べれば、もう格段の改善であります。その内訳を見てみますと、個人消費、それから企業の設備投資、ここが大きく貢献をしているということがわかります。また、最近の日銀の短観等を見てみましても、景況感、それから先行きへの期待も随分と改善をしているということがはっきりしてまいりました。

 しかし、先行きの懸念ということがないわけでもありません。

 総理も、所信表明演説の中でこうおっしゃっています。景気回復の実感は、いまだ全国津々浦々まで届いていません、日本の隅々にまでこびりついたデフレからの脱却は、まだ道半ばでありますと。まさに道半ばだというふうに受けとめております。

 そうした中で、もう一つ大きなリスク要因となるのが、消費税の引き上げではないかというふうに考えております。

 総理は、今月初め、昨年成立をしました社会保障・税の一体改革法に沿いまして、来年四月からの消費税率の八%への引き上げを決断いたしました。これは、とても困難で、しかも重大な決断だったというふうに受けとめております。

 引き上げを先送りすれば、これからどんどん社会保障の財源、ふえていくわけでありますから、それが確保できなくなってしまう。社会保障に対する信頼が失われてしまいますし、また、やはり中長期的に見たときに、財政が健全でなければ安定した経済成長もできないということはもう明らかでありますので、ここで決断を先送りすれば、日本の財政に対する国の内外の信頼が失われてしまうというリスクがあります。

 他方で、やはり足元の経済情勢がいまだ万全とは言えない中で増税を行えば、これは景気に少なからずマイナスの影響があることは避けて通ることができません。このアベノミクスによりますせっかくのいい流れの腰を折って、再度、経済停滞に逆戻りしてしまう、そういうリスクもあるわけであります。

 いずれの判断を下したとしても、これは大きなリスクを伴う決断だというふうに思いますが、そうした中で、総理が最終的にその決断をされた、引き上げるという決断をされたその根拠はどこにあるのか、総理の御見解を伺いたいというふうに思います。

安倍内閣総理大臣 消費税の引き上げにつきましては、今、上田委員が指摘をされたように、社会保障の財源確保と財政健全化のために避けて通れない課題にしっかりと対処していくためでありまして、その判断に当たっては、安倍政権の最重要課題であるデフレからの脱却、経済再生と、そして今申し上げた財政再建の両立という道筋が確かなものかどうか、最後の最後まで考え抜いたわけであります。

 足元の経済を見ますと、三本の矢は世の中の空気を一変させまして、例えば、実質GDP成長率については二四半期連続で三%以上のプラスとなり、主要先進国の中では最も高い成長となりました。また、大切な雇用情勢でありますが、雇用情勢についても、有効求人倍率が、昨年〇・八三倍であったものが、ことしの八月は〇・九五倍まで改善をしました。これはリーマン・ショック前の水準に戻ったということになるわけで、直前の水準まで行ったということになります。

 さらに、物価の動向を見てみますと、総合して見るとデフレ状況ではなくなりつつある。CPIのコアにおいては、七月でプラス〇・七、八月ではプラス〇・八に改善をしておりまして、景気は緩やかに回復しつつある、このように認識をしております。

 こうした中において、消費税率の引き上げによる反動減を緩和して景気の下振れリスクに対応するとともに、その後の経済の成長力の底上げと好循環を図るために、経済政策パッケージを果断に実行することによりその両立は可能である、このように判断をして、十月の一日に、予定どおり五%から八%に三%上げるという決断をいたしました。

上田委員 ありがとうございます。

 今、総理から経済対策のパッケージのお話が出ました。内閣、与党では、消費税率引き上げに伴う景気への影響に対処するためにこの経済対策のパッケージを発表いたしました。

 その概要を今お配りしている資料の方でもまとめさせていただいておりますけれども、消費税の引き上げに伴う影響を見てみれば、考えられるものをその表の中の左の欄に書かせていただきましたが、まず第一には、国民の可処分所得が減少して、その結果、これまでかなり堅調に伸びてきた消費が抑制をされるという心配があります。

 二つ目には、消費税引き上げ前の駆け込みがあって、引き上げ後、その反動減といったものがある。そして、これは引き上げの前と後で通算してみれば同じになるはずではありますけれども、しかし、この反動減の幅が大き過ぎると、やはりそれがきっかけとなって景気の腰を折る危険性があります。

 そして三つ目には、やはり、今申し上げた消費の減退や駆け込み反動減などによって景況感全体が悪化をしてしまうという危険性がある。その影響についてはさまざま専門家でも評価は分かれているところでありますけれども、これがきっかけになって、再度、景気後退の悪い循環に陥ってしまうということは懸念をされるわけであります。

 それぞれの影響に対処するために、今回の政策パッケージでは、減税としては総額で一兆百億円程度、そして新たな経済対策、その財政出動として五兆円程度の対策を策定いたしました。内訳は、この表の右側の方に書かせていただいております。

 最初の、可処分所得減少対策としては、企業に、従業員の賃金等を増額した場合の法人税減税のインセンティブを与えるという所得拡大促進税制、これをもっと使い勝手がいいものにしていこうという改正をいたしました。これが約一千六百億円と言われております。

 二つ目には、市町村民税非課税のいわゆる低所得者に対して、約二千四百万人が対象というふうに承知をしておりますけれども、簡素な給付措置、これが約三千億程度。

 また、足元の経済成長を賃金上昇につなげることを目的とした法人税減税、これはすなわち復興特別法人税の前倒し廃止ということでありますけれども、この法人税の税負担軽減の検討、これを決めたわけであります。

 また、政労使の連携による賃上げ要請について、総理みずからが非常に積極的に行動をとっていただいている、また、経済界からもそれに対する前向きな評価も出てきているというふうに承知をしております。

 二つ目の駆け込み反動減についてでありますけれども、これは、特にやはり値段の大きいもの、価格の大きい住宅、これについてはローン減税の拡充やすまい給付金といった制度を導入しまして、消費税の引き上げ後も負担が余り変わらないようにしようじゃないかという対策が講じられています。

 さらにもう一つ、やはり大きいのが自動車なんだというふうに思います。具体的な内容はまだこれから詰めていくわけでありますけれども、取得税や重量税などの負担について、過度にふえない、そういった見直しを行っていくということは決まったわけであります。

 そして、三つ目には、やはりこれらが複合的に、全般的に景気を悪化させてしまってはならないので、それについては、企業の設備投資や研究開発を促進する法人税減税や、事業再編を促進する、また、ベンチャーファンドへの投資等を促進するような法人税の税制措置、これが合わせて七千三百億円と言われております。それを講じることといたしております。

 また、先ほど述べた法人税減税というのも、これに資するものではないかというふうにも考えます。

 さらに、やはり根本的には経済成長力を高めていくことが重要でありますので、日本再興戦略、その着実な実行、これが何よりも重要なんだというふうに考えております。

 また、そのほか、このパッケージの中には、まだ具体的な項目や金額は決まっていないようでありますけれども、高齢者・女性・若者施策、それから、復興や防災・安全対策といったことも盛り込むというふうに決まっております。

 以上、それぞれの消費税引き上げに伴う影響に対する対策は考えられてきているわけであります。

 今述べたような対策でこの消費税率のマイナス影響に十分対応できるものなのか。また、これらの対策、最大の狙いというのはどういうところに総理は置かれているのか。そして、財政出動というのは五兆円というふうに言われていますけれども、今、具体的に金額が入るものは六千六百億円ということであります。ですから、積み上げたということではないんでしょうけれども、総額五兆円とした根拠というのはどこにあるのか。総理のお考えを伺えればと思います。

安倍内閣総理大臣 今委員が御指摘をされた点は大変大切なポイントでございますが、財政の健全化と経済の再生、経済の成長、これは相反するものなのかといえば、決してそうではなくて、これは両方とも両立が可能であり、そしてお互いにいい影響を与え合う、私はこのように考えているわけであります。

 そもそも、経済を成長させていく、そして、デフレから脱却をしてしっかりと名目GDPがふえていく、そういう成長軌道に乗せていかなければ税収はふえていかないわけでありまして、ですから、まず税収もしっかりとふえていきますよ、経済の成長による税収増、これをさらに財政健全化に資するものとしていく必要があります。

 一方、経済を成長させていくためにも、国の信認も必要でありますし、社会保障制度が持続可能なものだ、国民みんながそう思って、その上において頑張っていこうということになっていくことも極めて重要であります。お互いにいい効果を与えつつ、この二つとも達成していく以外に私は道がない、このように思います。

 一方、十五年も続いてきたこのデフレから脱却をするということは、そう簡単なことではないわけでありますし、こびりついたデフレマインドを払拭する。大事業であります。だからこそ、私たちは、次元の違う金融政策と、そして、思い切った、機動的な財政政策によってその雰囲気を一変する、そして、デフレから脱却できるかもしれないという思いを国民の皆様に抱いてもらうに至ったと思います。

 そして、ここでさらに構造改革、成長戦略をしっかりと前に進めていく必要があるわけでありますが、この四月からの消費税、消費税については今委員がおっしゃったようなリスクが伴うものでありまして、駆け込み需要とその反動減を緩和して景気の下振れリスクに対応するとともに、その後の経済成長の底上げをしていくということも大切であります。

 そこで、ああ、これはもうやはりデフレから脱却できないな、こうみんなが思ってしまえばしゅんとなってしまうわけでありますから、そうならないようなものが必要であって、今進みつつある成長軌道に復帰をする、落ちる分をただ埋めるだけではなくて、今の成長軌道に戻していく必要があります。

 そのための政策パッケージにしているわけでありまして、まず民間予測で二兆円程度と試算される来年度の四―六月期の反動減を大幅に上回るものにする必要がある、このように考え、それを念頭に、消費税率三%引き上げによる影響を大幅に緩和して、その後の成長力の底上げ、成長軌道への早期復帰に対応する観点から五兆円程度としたところであります。

 つまり、ただその穴を埋めるだけではなくて、それをやらなければ成長したであろう軌道に、その軌道まで早目に復帰をさせることによって、またマインドが萎縮してしまう、これを防がなければならない、このように考えたわけであります。そして、一兆円程度になる税制上の対応と相まって、デフレ脱却と経済再生にしっかりとつながっていくようにしなければならない。今後、その具体的な内容について、年末に向けてしっかりと検討していきたいと考えております。

上田委員 今総理がおっしゃったとおり、経済成長はしっかりと目指していかなければならない。ただ、やはり中長期的に見れば、このまま財政が悪化することを放置していては経済の成長もままならないということで、これは両立をさせなければならないというのは、もうおっしゃるとおりであります。

 ただ、ようやくこのアベノミクスでいい流れができつつある、そのときに腰折れになるようなことがないように今回の経済対策のパッケージができているわけでありますから、やはりこれから本格的な経済の成長軌道に乗れるような、乗せていけるような、そういう慎重な対応をしていかなければならないというふうに考えておりますので、今お話もありました、年末までにさらに具体的に決めるということでありますので、ぜひよろしくお願いしたいというふうに思います。

 次に、経済産業大臣に中小企業施策について、恐縮でありますが、時間の関係でちょっとまとめて質問させていただきます。

 今回決定をいたしました税制措置では、公明党の意見も反映していただきまして、新規の設備投資促進税制のほか、中小企業促進税制を延長する、また、その対象には、サーバーとかソフトウエアも拡充をされています。少額減価償却資産取得、その損金算入特例の延長といったことも、これは中小企業の投資を促進するための有力な対策ではないかというふうに考えております。

 大企業に比べればどうしても資金の余裕がない、なかなか設備投資に踏み切れない、そうした中小企業の投資を促進する効果が果たしてこれで期待できるのか。よく、中小企業の多くは法人税は納税していないじゃないか、あるいは、納税したとしてもごくわずかなので税制ではなかなかきかない、そういう指摘もございます。

 今回の減税措置では効果が限定的ではないかという指摘もあるんですけれども、それについてどうお考えか。

 また、こうしたさまざまな対策を講じていっても、やはり消費税を引き上げると、どうしても反動減で需要が落ち込んでまいります。中小企業の場合は直ちに転嫁できないというケースもある。そうすると、やはり中小、特に小規模事業者の資金繰りという支障が生じる危険性があるというふうに思います。

 景気回復の恩恵が中小企業にまで十分及ぶ前にそうした資金繰りの問題が生じてしまっては元も子もないわけでありますので、絶対そういう事態は回避をしなければならないというふうに思います。そういうときこそ、ここは政策金融をやはり活用しなければならないんだろうというふうに思います。

 中小企業の資金繰り、そのセーフティーネットを拡充する、そのための政策金融が必要であるというふうに考えますけれども、大臣の御見解をあわせてお伺いいたします。

茂木国務大臣 上田議員の方から三問御質問いただきましたので、まとめてお答えをさせていただきたいと思います。

 全国四百二十万の中小企業、特にそこの中でも九割を占めます小規模事業者、まさに地域の経済、そして雇用を支える大切な役割を担っておりまして、ここが元気になって初めてアベノミクスの実感を全国の津々浦々で感じることができる、このように考えております。

 今回の経済政策パッケージ、委員の方からも御指摘いただきましたように、中小企業の投資促進税制を、よりインセンティブの高い、そしてより広い範囲をカバーするというものに仕組みを拡充させていただきまして、三千万以下の企業につきましては七パーから一〇パーに、そして三千万以上につきましても七%を適用する。さらに、三十万以下の資産を取得した場合は即時にそれが償却できる少額減価償却資産の特例の延長も行ったところであります。

 この減税の内容は、御党の方からも、そしてまた中小企業団体からもさまざまな要望を踏まえて実現したものでありまして、これから各地域におきまして、まさに今回とっている経済対策の意味合い、そういったことを説明する中で、これがきちんと中小企業にとっても活用してもらえるということが重要でありますから、そういった働きかけを行っていきたいと思っております。

 同時に、消費税の転嫁対策ということでありまして、これが円滑に行われなきゃいけない。特に、弱い立場にあります中小企業、小規模事業者にしわ寄せが行かないようにするということが重要でありまして、消費税の引き上げを総理が決断された翌日、十月の二日に早速、消費税転嫁対策室を経産省に設置いたしまして、今回初めて全国に四百七十四名の転嫁対策官を配置いたしまして、転嫁拒否行為等々に対する取り締まりもしっかり行っていきたい、このように考えております。

 同時に、やはり消費税の引き上げに伴います資金繰り対策、こういったことも中小企業、小規模事業者にとっては大切になってまいります。政府系金融機関におけますセーフティーネット貸し付け、こういったものをしっかり活用していくようにしたいと思っております。

上田委員 ありがとうございます。

 やはりこういう大きなリスクが伴うときに、経営の基盤の弱い中小・小規模企業に対する対策にはぜひ万全を期していただきたいというふうに思います。

 経済対策のパッケージの内容を見てみますと、もう一点、現段階で具体的になっているものにおいては、低・中堅所得者層の可処分所得の減少に対応するという部分が本当に十分なんだろうかという疑問がございます。

 私も、先ほど総理もおっしゃったとおり、やはり企業の経営が改善をしてそれが雇用関係の改善につながる、そしてその結果、賃金が増加をする、これが経済の好循環をもたらす、このサイクルが一番いいことはもう間違いないんだというふうに思います。

 ただ、今、総理初め関係閣僚もいろいろと経済界にも御要請をいただいているんですけれども、やはりどうしても賃金上昇が実現をするまでには一定のタイムラグがあります。そうすると、どうしてもこの期間、消費税率引き上げ直後、具体的には来年度の前半ということをまず想定しなければならないかと思いますけれども、そこでの消費の落ち込みというのが非常に心配でございます。

 より即効性のある対策、例えば中堅所得層で特に消費性向の高い子育て世帯とか、あるいはいわゆるサラリーマン世帯に対する可処分所得の減少を補填する、それで消費を下支えするような対策、それを検討すべきだというふうに考えますけれども、総理、いかがでございましょうか。

安倍内閣総理大臣 社会保障・税一体改革においては、消費税率を引き上げ、その引き上げによる財源は全て社会保障の充実、安定化に充てられることになっておりまして、所得の低い方々により手厚い対応が行われることにはなります。

 そしてまた、今御指摘のあった経済政策パッケージにおきましては、所得が低い世帯について、簡素な給付措置や国民健康保険等の低所得者保険料軽減措置の拡充が行われます。そして、それと同時に、住宅を購入した場合を例として挙げておられましたが、住宅ローン減税の拡充や給付措置を講じております。

 さらに、子ども・子育て支援の充実による就労環境の整備や、政労使の連携や、所得拡大促進税制の拡充などにより、企業による賃金引き上げの取り組みを強力に推進することで家計の受益が期待される、このように思うわけであります。今おっしゃったように、もちろん、実際に企業が上げるまでにはタイムラグがありますが、それを我々、なるべく縮める努力を今しているところでございます。

 このように、消費税率引き上げに当たっては、低所得者を中心に中所得者も含めた家計への配慮を十分に行っているところであり、これらの施策の着実な実施に努めてまいりたいと思います。

上田委員 ありがとうございます。

 やはり、消費税が四月に上がりますので、前半といったところに反動減で落ち込ませない、そのため平準化をさせるような対策が必要なんだというふうに思っておりますので、ぜひ、その点、またこれから年末までいろいろな対策を検討していくわけでありますから、特に中堅所得の人たちのところを消費が落ち込まないような検討も、私たちもまたさせていただきたいというふうに思いますし、また、ぜひ政府の方でも御検討いただければというふうに思っております。

 次に、若者の雇用問題についてお伺いをしたいというふうに思います。

 若者の雇用の不安定さ、質の低下の問題というのは本当に今深刻になっています。若年者の失業率が高いというだけじゃなくて、非正規雇用が多くて、低賃金、劣悪な労働環境に苦しんでいる。よく最近はブラック企業などと言われますけれども、労働条件が特に悪い企業、これが重大な社会問題として取り扱われるような事態であります。

 安倍内閣としては、日本の未来を担うこうした若者の雇用、所得の安定にやはり全力を挙げて取り組んでいただきたいというふうに思います。

 日本再興戦略の中にも、自分の能力に見合わない一時的な職を転々とするのではなくて、希望を持って、意欲的に自分の能力を磨きつつ、能力に見合った報酬が得られるよう、職につき、家庭を築き、次の世代をしっかりと育てていけるようにするというふうに書かれていますが、全くそのとおりだと思います。

 今、厚生労働省とかでも、若者のスキルアップとか雇用のマッチング、そうした施策は実施しているんですけれども、やはりこれだけでは十分ではないんだと思うんですね。やはり、雇用する企業側にも、若者の将来、未来の日本に対する責任も感じていただく、若者が落ちついて経験や技能を身につけて相応の収入を得ながら安定した生活ができるような労働環境を提供する、そういう努力を促していただきたいというふうに思います。

 総理から経済界にいろいろな御要請をしているところでありますが、この点もぜひひとつ要請をしていただきたいというふうに思います。よろしくお願いをいたします。

安倍内閣総理大臣 次代を担う若い皆さんが将来に希望を持って生き生きと仕事をしていく、そして、何度でもチャンスがある社会をつくっていくことは、安倍政権の大きな課題であります。

 御指摘の若い皆さんの人材育成については、企業が果たす役割は極めて重要だと考えております。キャリアアップのために職業訓練を実施する事業主に対する助成、これまでも事業主側にさまざまな支援を行っておりますが、今、上田議員の御指摘のように、さらにそれを充実させていきたいと考えております。

 今後とも、若者や女性を含め、キャリアアップを図る皆さんにしっかりと支援を行っていく、その雇用の拡大を進めていきたい、このように考えております。

上田委員 もう時間がほとんどなくなりました。

 この消費税をめぐる議論というのは、税と社会保障の一体改革では、二十七年十月に今度は一〇%に引き上げるということが決まっております。当然のことながら、その時点で、やはり今回と同じように、経済情勢であるとか、また社会保障制度改革、それの進みぐあい、いろいろな要素をまた見きわめた上で慎重に判断されるものだというふうに理解をしております。

 今回の引き上げ、実施の約半年前に行われました。次の対策なども考えれば、次はもうちょっと前倒しで判断をするということもあり得るのかなというふうに思いますし、また、いろいろな条件、今回よりも難しい問題もあろうかというふうに思っております。

 また、次の一〇%への引き上げ、御判断をされる場合には、私どもは、以前から、消費税率引き上げのときには、食料品や新聞などの生活必需品等については基本税率よりも低い軽減税率を適用するということを提案させていただいております。

 これは、もちろん、軽減税率を導入するということについては、中小・小規模事業者の経理事務の負担が多くなるというような、そういう問題があるということも我々は十分承知をしておりますけれども、これまでも、そういった点についても党内でさまざま議論をしてまいりました。そういった点も、制度の工夫次第によってはそれほど大きな負担になることなく制度が導入できるというふうに私たちは考えておりますので、ぜひこれからも、この年末に向けまして、再度、さらに引き続き、こうした軽減税率の制度についても与党の中で議論をしていきたいというふうに考えているところでございます。

 いずれにしましても、今、安倍内閣、そして私たち与党にとって最優先の課題、これは日本経済の再生でございます。いい流れができつつあります。これをやはり本格的な経済の再生に結びつけていくために、これから、着実、そして早い対応が必要なんだというふうに思います。

 これまでの安倍総理、そして内閣、関係閣僚の皆様方の大変な対応、これは高く評価されているところでありますので、ぜひ、このいい流れをもっと本格的な再生に結びつけていけるように、私たちもまたしっかりと協力していきたいというふうに思っておりますし、また、総理初め皆様方の御努力をお願い申し上げ、質問を終わらせていただきます。

 大変にありがとうございました。

二階委員長 この際、桝屋敬悟君から関連質疑の申し出があります。上田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。桝屋敬悟君。

桝屋委員 公明党の桝屋敬悟でございます。

 安倍総理、昨年の十二月の選挙で、総理は、日本を取り戻す、こうおっしゃって選挙戦を戦われました。私は、それどころではない、失った自分の議席を取り戻す、これが大変だったわけであります。多くの国民の皆さんの御支援を頂戴し、また自民党の皆さんの御支援もいただき、再びこうして国政に帰していただいた。感謝の思いでいっぱいであります。働かねばならない、こういう強い決意で、きょうはこの場所に立たせていただいております。

 総理とは同じ長州であります。総理は、十月一日に、消費税引き上げの決定をされたあの記者会見で、我が長州の中興の祖と言われております毛利重就の話を出されました。

 毛利重就は第七代の毛利藩の藩主でありますが、厳しい藩財政の中で、検地、いわゆる増税を行い、その財源を藩の一般会計ではなくて特別会計にまとめまして、未来への投資に回し、国力を回復した、こういう話であります。その結果、総理は、長州は維新回天の基礎を築くことができた、こうおっしゃっていただいた。

 記者会見の折でありますから、時間が短かったと思っております。もう少し話を聞きたかったのであります。

 もともと、重就が行った検地は、困窮農民の撫育、いわゆる救済を意図としていた、こういうふうに言われているわけでありますが、いつの世も同じであります。増税を喜ぶ国民はいないわけでありまして、重就が行った宝暦の改革、困窮農民の撫育ということを意図としていたというふうにも言われておりますが、結果、総理が記者会見でおっしゃった新田の開拓、塩、紙、ろうという新たな産業の育成に大きな力を発揮したわけであります。

 そうした産業開発あるいは商品経済の改革というのは、これは、よく言われるように、特定商人は潤う、しかしながら、本来の目的であった農民の撫育、救済ということには直ちになかなかつながりにくかった。その結果、私は、長州では天保の大一揆もあったというふうに思っているわけであります。

 私は、毛利重就の改革も確かに重要と考えますが、後の村田清風が行った天保の改革に、実はそれがつながったのではないかと思っております。

 村田清風は、重就以上に、生産者である農民の保護にも力を入れ、年貢の緩和、あるいは長州の地域地域で行われております助け合いの修補制度、こうしたものを活用して、社会福祉的な性格を持つような制度、窮民修補、生活保護のような制度、あるいは、今日でいう出産、育児の助成に近い補助まで行った節があるわけであります。重就の改革の目的であった民生の安定を行ったと私は思っているわけであります。産業振興策にあわせて、農民へのきめ細かな施策を図りながら、維新回天のパワーを私は築き得たと思っているわけであります。

 総理は、まさに長州のこの重就の宝暦の改革、これが一七〇〇年代、天保の改革がその百年後でありますが、こうした百年の改革作業に思いをいたし、経済再生と財政再建、さらには世界に誇る我が国の社会保障を守るという、この大変な改革を一気におやりになる、こういう気迫でおられるなということを、所信表明を聞きながら、私は感じたわけであります。

 総理は、こうした長州における百年の改革に俯瞰をいたして、特に、天保の改革をやった村田清風、どういうふうに感じておられるのか、御意見を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 村田清風は、残念ながら全国的には余り知られていないわけでありますが、大体、山口県人は全部知っておりますし、旧大津郡三隅町でございまして、私の選挙区でございまして、詳しく知りたい方はぜひ行っていただければ、記念館がございますので、そこで見ていただきたいと思うわけであります。

 今御指摘のように、当時、長州藩は危機的な状況に直面をしていました。ふえ続ける財政赤字、天保の大飢饉を初めとする増大する民衆の不満、アヘン戦争などで高まる欧米列強の脅威というものがありました。そうした中で、村田清風は、委員が御指摘になったように、農民の救済策の充実のみならず、先般引用させていただきました毛利重就の改革を基盤に、成長産業を育成して、貿易を振興しながら、財政の再建に努めたわけであります。例えば、ろうのようなものは専売制でありまして、特定の商人が売っていたものを、これを開放しまして、農民なんかにも売れるようにしました。

 その結果、もともとこの既得権を持っていた人たちが強く反発をして、後々の失脚にもつながっていくわけでありますが、そういう意味においては、思い切った規制緩和も行ったのではないか、このように思うわけでありまして、あらゆる改革に同時並行的に取り組んだ高い改革の精神、そして意思の力、困難に直面している私たちも学ぶべき点は多いのではないか、このように思うわけであります。

 残念ながら、村田清風は、今申し上げましたように、その後、さまざまな抵抗する人々によって失脚に追い込まれる。ただ、また復活も、二回復活をしているという点もあるわけでありますが、復活もしております。同時に、アヘン戦争などのそうした状況を見ながら、海防、海の守りにも力を入れた、安全保障についても努力したということもあわせて追加もさせていただきまして、お答えをさせていただきたいと思います。

桝屋委員 自民党・公明党連立政権、日本を取り戻す、こういうことでスタートしたこの自公政権であります。海防も大事でありますが、農民の救済も大事でありまして、私ども公明党は、まさに村田清風が心した庶民の暮らしといいましょうか、そこに思いをいたしながらしっかり働いてまいりたい、こう思っているわけであります。

 私は、総理、今のこの国会を見ておりまして、政党政治が改めて大事だなと。しっかり政党が国民の声を聞き、その声を総理に届ける。どうも総理は一人で走っておられるような感じがいささかするわけであります。やはり総理が、官邸が政党を見ている、働いている政党、それとしっかり話をしながら、対話をしながら改革作業を進めている、そこに大きな安心感を持つのではないか、こう思うわけでありまして、公明党はこれからしっかり意見を申し上げたいと思っておりますので、どうぞ御用意のほどよろしく。

 何かございますでしょうか。しっかり公明党の言うことも聞いていただきたい、与党の言うことも聞いていただきたいと思うのでありますが、いかがでありましょうか。

安倍内閣総理大臣 まさに議院内閣制でございまして、与党、自民党、公明党によって内閣は成立をしているわけでございまして、与党・政府一体となって政策を進めていって初めて政策は実現していく、このように思うわけでございます。

 公明党の皆様から、さまざまな観点から、高い見識のもと、御助言もいただいております、御提言もいただいておりますので、そうしたものをしっかりと取り入れながら、自民党、公明党の連立政権というのは、今まで長年の風雪に耐え、結果を残してきた連立与党でありますから、我々、もちろん公明党の皆様の御議論を軽視するということは全く考えられないわけでございまして、しっかりと桝屋議員の発言も受けとめながら前に進んでいきたい、このように考えております。

桝屋委員 総理のお言葉をいただきましたので、しっかりと働いてまいりたいと思っておりますので、どうぞよろしく。

 そこで、税・社会保障の一体改革、この臨時国会でプログラム法案が出てまいります。

 総理は、記者会見で、きょうも言われました、消費税は社会保障にしか使いませんと明言をされたわけであります。

 しかしながら、消費税の、先ほどの同僚の上田議員の議論を聞いてもそう思ったわけでありますが、経済政策パッケージ、閣議決定の文書では、消費税の引き上げに当たっては、税収増を社会保障の充実、安定化に充てるのみならず、デフレ脱却と経済再生に向けた取り組みをさらに強化するための経済政策パッケージとして取り組む、こういう言い方になるわけでありまして、聞く人が聞くと、三%上がりますと約八兆円、平年度ベースで増収があるわけでありますが、そして五兆円の経済対策をする、あら、全部社会保障に使うんじゃないの、こういう素朴な疑問が国民には生まれてくると思うわけであります。

 ここはそういう非常に大事なところでありまして、ぜひ改めて、消費税増税分は社会保障に使うんだ、今の、三%であれば八兆円、社会保障に使いますよということを、総理の口からもう一度、改めて明言していただきたい。

安倍内閣総理大臣 今回の五%から八%、この消費税の引き上げ、その後のさらに一〇%、この消費税の引き上げについては、長い議論がございました。その中において、伸びていく社会保障費、そして充実をさせなければいけない社会保障費に対応するためには消費税を上げなければならないという結論に達したものでありますから、当然、三%の引き上げ分については、消費税の税収分については全額社会保障費に充てていきます。これはもうはっきりとお約束をするところでございまして、これを経済対策の財源に充てることはございません。

 では、経済対策の財源はどうするんだということでございますが、この経済対策の財源につきましては、まさに私たちが、自民党、公明党、連立与党が進めてきた、新しい次元の違う経済政策によって経済が成長しました。経済が成長したことによって、その果実として税収もふえました。この税収の自然増収や二十四年度の決算の剰余金を最大限に活用していくわけであります。

 まさに私たちが進めてきた政策によって、今までとは違う政策によって経済が成長し、得た果実、ふえた税収を、景気をさらによくしていく、維持をしていくためにちゃんと使っていこうということであります。

 そのことを、これからも丁寧に御説明しながら理解を得ていきたい、このように思っております。

桝屋委員 そういう意味では、これから恐らく厚生労働委員会等で議論があるでありましょう、プログラム法案の具体的な中身、その中でしっかりと国民の皆さんに御理解いただくように、いささかタイムラグがあるものですから、なかなか国民にはわかりにくいということもありますから、そこを明らかにしていきたいと思います。

 もう一点、総理にこれはお伺いしたいのでありますが、今回、プログラム法案、社会保障の今後の改革の工程表を法律として国会に提出をするわけでありますが、その基底に流れる考え方の中に、これは、社会保障改革国民会議、我々国会が議論をお願いした専門家によってまとめられた、八月に提出をされた報告書、その中に、こういう言葉が出てきます。一九七〇年代モデルの社会保障から二十一世紀型モデルの社会保障へ改革しなければならない。

 一九七〇年というのは、まさに、皆保険が実現し、福祉元年と言われた、そうした時代であります。そういう時代の社会保障から二十一世紀型のモデルにしなければならない、こういうふうに言っているわけでありますが、総理、この報告をどのように受けとめて、今回のプログラム法案、あるいは今後の社会保障改革に向けて進めていかれるのか、御説明いただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 社会保障制度改革国民会議の報告書では、年金、医療、介護に加え、現役世代の雇用や子育て支援、低所得者、格差の問題などが大きな課題となっております。主として高齢者世代を給付の対象とする社会保障から、切れ目のない、全ての世代を対象として、全ての世代が相互に支え合う二十一世紀日本モデルの構築が課題であるというふうに提言されています。

 急速な少子高齢化が進む中で社会保障制度を持続可能なものとしていくためには、少子化対策を充実して、全世代型の社会保障に転換するとともに、年齢ではなく負担能力に応じた負担とすることにより、低所得者に配慮しつつ、世代間、世代内の公平を確保していく必要があると思います。

 自助自立を第一に、共助、公助を組み合わせ、弱い立場の人にはしっかりと援助の手を差し伸べるという基本的な考え方に基づいて、低所得者には保険料負担のさらなる軽減など、必要な支援を行いつつ今後の改革を進めていきたい、このように思っております。

 ちなみに、先ほどの消費税の引き上げ分については、基礎年金の国庫負担割合の二分の一への引き上げに充て、残余についてはそれ以外の社会保障の安定化と充実に向けることとしておりまして、社会保障の充実に向ける金額を消費税収の増加に応じて段階的に拡大させていきます。

 具体的には、社会保障の安定化のために、来年度から、今申し上げましたように、二分の一へ引き上げるための三兆円程度を充てることとしています。これによって、少子高齢化の中でも年金制度を将来にわたり持続可能にするための長年の課題が解決をされます。さらに、医療、介護などの費用が毎年伸びていく中にあって、これらに係る国、地方負担に充ててまいります。

 そして、社会保障の充実といたしまして、来年度においては、待機児童の早期解消に向けて、今年度からの二年間で二十万人分の保育の受け皿を整備するため、待機児童解消加速化プランの推進を初めとする子育て支援や、もう既に十一万人分を充実しておりますが、国民健康保険制度などにおいて低所得者の保険料をさらに軽減していくために、〇・五兆円程度を充てることとしております。

 平成二十七年度には、介護報酬の改定により、お年寄りが住みなれた地域で介護を受けられる地域包括ケアシステムの構築を進めるなど、一・三五兆円程度を社会保障の充実に活用することとしております。

桝屋委員 ありがとうございます。

 消費税、国民の皆さんに御負担をいただく部分を使いまして、今総理がるるおっしゃった社会保障の改革が行われる。実は、この社会保障の改革は、今まで何度となく、政府においても、あるいは有識者においても議論された。今回、十年ぶりといいましょうか、改めて財源が確保されながら議論ができる。本当に私はそういうステージになったなというふうに思っておりまして、そういう意味では、今回のこの国会のプログラム法案の審議、極めて大事だなと思っております。

 今総理がるる言われたことは、全て改革の工程表としてプログラム法案の中に入っているというふうに理解をいたします。それでいいですね。ありがとうございます。

 そこで、具体的にちょっと二点ほど確認したいんですが、一つは、七十から七十四歳、本則二割負担にという話があります。負担増の話であります。

 私ども公明党は、これをやるのであれば、医療費の自己負担の増を抑えるために何とか高額療養費の制度の見直しをしてもらいたい。きょうは自民党の皆さん方もいらっしゃいますが、公明党はずっと言い続けてまいりました。なかなか財源がないために自民党の皆さんの賛同も得られなかったわけでありますが、今回めでたく、財源が確保されているということで、やっとこの議論ができる。

 難病等のために、毎月八万百円の高額療養費の一歩手前、七万円の負担をずっと強いられている、こういう若い御夫婦もいらっしゃるわけでありまして、ここを何とかしたいということで、公明党としては、年収が三百万前後の方については今の高額療養費の負担をぜひ減らしてもらいたい、こういうふうに言っているわけでありますが、今回はプログラム法案の中身にも入るし、具体的になってくるだろうと思っております。

 ここは厚生労働大臣でも結構でございます。本当にそうなりますか。それから、どれぐらいの人がその恩恵に浴すことができるのか、どういう便益を国民は得ることができるのか、規模を少しだけ、まだ決まっていないと思いますが、議論の過程で結構でございます、御説明いただきたいと思います。

田村国務大臣 桝屋委員には、つい先般まで厚生労働副大臣といたしまして厚生労働行政に大変御尽力いただきましたことに、心から厚く御礼を申し上げる次第であります。

 もう中身も十分に御承知でお聞きになっておられるんだというふうに思いますけれども、今回、社会保障の改革の中で、一つはやはり充実という部分。それから重点化、効率化、めり張りをつけなきゃならぬ。そして、負担能力に応じた負担といいますか、負担能力のある方々には負担していただこう、このような考え方があるわけでありまして、そのような意味では、所得のある方々には一定程度負担がふえる部分はあります。

 しかし一方で、所得の少ない方々には何とか軽減策をということで、先般から、公明党からいろいろな御要望をいただいておったわけでありますが、プログラム法案の中に、低所得者の負担に配慮しつつ行う七十歳から七十四歳までの者の一部負担金の取り扱い、及びこれとあわせた負担能力に応じた負担を求める観点からの高額療養費の見直しについて検討が行われるということになっておるわけであります。

 今おっしゃられたところでいきますと、ちょうど、八万百円プラスアルファという高額療養費、つまり、医療を使ったけれども大体月額でこの上限でいいですよという上限額でありますけれども、非常に層が広かったんですね。ここをなるべく負担能力に応じて分ける必要があるということでございます。三人家族でいいますと、所得が二百十万から三百七十万、これぐらいの層でありますけれども、全体で四千六十万人おるわけであります。この四千六十万人の方々に対して、今までよりも軽減策、上限をもう少し下げるというようなことを今議論いただいておりまして、十月七日の社会保障審議会の医療保険部会の中におきましても、このような検討が始められたところでございます。

 これから年末の予算編成に向かって、しっかりと御議論をさせていただいて、最終的に御納得のいただけるような、そんな方向性というものを打ち出してまいりたい、このように思っております。

桝屋委員 人口の固まりでいきますと、四千万人ぐらいの方々に対する対応策も検討されている、こういうことであります。

 もう一点、十月の十七日が貧困撲滅のための国際デーであります。

 そういう意味でお聞きするわけではありませんが、生活扶助基準、八月からさまざまな理由で引き下げられたというふうに理解しておりますが、今回、消費税引き上げに伴います対策として簡素な給付措置を行う。当然ながら、生活保護受給者については生活保護制度の中で手当てをされるというふうに理解いたしておりますが、その結果、下がった保護費が、三%消費税率が上がるわけでありますから、私はプラマイが多分プラスになるんじゃないかなと期待をしておりますが、大臣、もし予測の話ができればお話をいただきたいと思います。

田村国務大臣 生活扶助基準の見直しでありますけれども、これも委員御承知のとおり、二つの側面で適正化をいたしました。

 一つは、生活保護を受給されておられる方々の中でも、年齢、それから家族構成の人員、それから地域差、こういうものでかなりゆがみがあって不公平感があった、ここで調整した部分。

 それからもう一つは、デフレが続いておりましたけれども、それに合わせて適正化をしてこなかったわけでありまして、一般の低所得者の方々とのやはり乖離というものを合わせていく、こういう部分がございました。

 八月に一回目が行われまして、そして来年の四月に二回目が行われます。そういう意味からいたしますと、三年かけて適正化を行うわけでありますが、これに対しまして、一方で、やはり来年度の、さあ、これからの消費がどうなるかということを我々は勘案していかなきゃならぬわけでありまして、ちょうど年末に、政府の経済見通しの中で民間最終消費支出というものが出てまいります。これを基準にいたしまして、総合的に勘案をさせていただいて、来年の基準を決めていくということになろうと思います。

 消費税も上がるということを我々は決断をしたわけでありますし、それから物価全体も上がりつつある、消費の方も伸びつつあるということでございますので、その点をしっかり勘案して、適切な金額の水準というものをこれから決めてまいりたい。これは予算編成過程の方で決めさせていただきたいというふうに思っております。

桝屋委員 適切なというお話でございます。本当に適切な結果になりますように期待をしたいと思います。

 最後になりますけれども、総理、先般、十月の十一日でありますが、福岡市で不幸な事件、火災事故がございました。医療施設における火災事故でありまして、全国的に報道されましたが、十九のベッドのある診療所で、十三人が入院中、十人が亡くなる、そのうち八人が患者であった、残りの患者五名はいずれもけがをなさったということであります。

 今まで、社会福祉施設のグループホーム等の火災については、心を痛めてまいりましたけれども、対策も講じてきたのでありますが、今回こういう痛ましい事故がございました。総理、この事故をどのように捉えておられるのか、一言お話を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 病気になったり、あるいはけがをした方々が治療をするために病院施設に入るわけでございまして、その病院施設あるいは有床診療所等においてこういう事故はあってはならない、このように思います。大変残念であります。

 十名の方々がお亡くなりになられたというふうに承知をしておりますが、改めて御冥福をお祈りするとともに、お見舞いを申し上げたいと思います。

 有床診療所は、地域に密着をして、そしてかつ、比較的低コストで良質な医療を提供する重要な施設であるというふうに私は考えております。

 政府としては、地域医療の中核を担う施設でこうした事故が繰り返されないよう、防火防災対策の徹底について改めて周知を図ったところであります。

 さらに、関係省庁で連携をして、現行の規制についても再点検をして、そして事故の再発防止に向けた対策に万全を尽くしてまいります。

桝屋委員 ありがとうございます。総理がどういう見解を持っておられるのか、大変気にしておりました。

 全国的に報道されますから、今総理がおっしゃった、有床の診療所という表現がどれほどの国民に理解されているか。病院と診療所とはどう違うのか、ほとんどの国民が理解をされていないのではないかと私は心配しております。

 私は、常々、病院のような大きな医療施設ではなくて、病床数十九床以下のこうした診療所においてこんな事故が起きないかなということをずっと心配をしてきた一人であります。今回、図らずも、そういうところで本当に痛ましい事故があった。

 これから、税・社会保障一体改革の中で大きなキーワードが地域包括ケアシステム、まさにその担い手として頑張っている、本当によく頑張っている、恐らく全国で九千三百ぐらいありますが、そのうち三千五百ぐらいが同じような施設ではないかと思っておりますが、そこでここまでの事故があったということでありまして、今後の地域医療ということを考えたときに、極めて私は大きな問題であろうと思っております。

 原因等については、今、慎重に調査されていると思っておりますが、しっかりと原因分析をして、再発防止策を講じてもらいたいと思います。

 最後に、厚生労働大臣、大臣も恐らく私と同じ思いだと思います。まさに、今の医療制度の中で、ある意味谷間になっている、総理は、比較的軽費でいい医療が受けられるとおっしゃったけれども、これは病院に比べたら、診療報酬は下手したら半分ぐらいであります。利用する人は自己負担が少ないから大いに結構でありますけれども、やはり経済基盤といいましょうか、経営基盤というのはまことに厳しいものがあるわけでありますので、明年の診療報酬改定に向けてしっかり公明党も努力をしていきたいということを申し上げて、ちょうど時間です、大臣、一言だけおっしゃって、終わりたいと思います。

二階委員長 田村厚生大臣、短くお願いします。

田村国務大臣 有床診療所の機能というものはやはり期待されるものがあります。今現在、社会保障審議会の中において次期診療報酬改定の検討が始まるわけでありますが、地域の受け皿、そういう意味では、入院をしておられる方々が退院してこられたときのその受け皿にもなるわけでありますし、在宅医療、これが急変したときの受け皿でもある。もちろん、在宅医療の拠点でもありますし、専門的な医療を提供する役割もある。

 そのような部分を、しっかり機能を評価した上で、今回、次の診療報酬改定に向かって、我々議論をさせていただきたい、このように思っております。

桝屋委員 ありがとうございます。公明党としても、しっかり取り組んでまいりたいと思います。

 ありがとうございました。

二階委員長 これにて上田君、桝屋君の質疑は終了いたしました。

 次に、長妻昭君。

長妻委員 民主党の長妻昭でございます。

 大変御無沙汰しております。十月中旬になってしまいまして、本来はもっと早く国会を開くべきだと思っておりますが、これから民主党の議員六人が順次質問いたしますので、端的にお答えいただければと思います。

 まずは、伊豆大島で被災をされた皆様方に心よりお見舞いを申し上げ、そして、また別の台風の被害も懸念されますので、ぜひ政府としても万全に対応をお願い申し上げます。

 さて、安倍総理は消費税八%増税を決定されましたが、非常に懸念されるのは、昨年、自民、公明、民主三党で合意したそのお金の使い方の趣旨からだんだん逸脱しているのではないのか、こういう懸念であります。

 昨年合意した中身は、消費増税分は、社会保障を今よりもよくする部分と、借金でやっていた社会保障を借金でなくする、その二つの使い方をやる、こういうことだったんですね。つまり、後者は、借金返しを促進するために使う、こういう手はずで合意をしたはずなのに、予想外に、法人に対する減税、復興特別増税を打ち切ってしまう、あるいは公共事業に、経済対策と称して、これだけ借金大国にもかかわらずお金を使ってしまう。

 これは、きょう二階先生が委員長でいらっしゃいますけれども、国土強靱化計画、十年間で二百兆円の計画に連なる計画になるんじゃないかという懸念も持っているところでありまして、本当に、二〇一五年、二年後に国の赤字を半分にするというのは、これは安倍総理も国際公約として高らかにうたい上げたものが実現できるのかどうか、私は非常にクエスチョンマークがたくさんついてきております。

 安倍総理は常日ごろおっしゃられているのが、目指す国の形は世界一企業が活躍しやすい国だ、こういうふうにおっしゃられておられるんですが、では、それはどういう社会になるのかということもお伺いしたいところであります。

 我々は、ともに生きる社会、全ての方が居場所と出番がある社会、人への投資、格差を是正することで安心を提供して、所得再分配政策で消費も喚起していく。そして、社会保障は経済成長のお荷物ではないんだ、適切な社会保障やあるいは人への投資の格差是正策というのは、むしろ結果として経済成長の基盤をつくっていく、こういうような発想で物事を進めてきたわけでありますが、余りに余りの今の計画ではないかと思っております。

 この世界一企業が活躍しやすい国、それは一体、その先にどういう社会があるのか。格差がかなり拡大していくのではないのか、いろいろ懸念がありますので、その先の社会像を総理からお聞かせいただければと思います。

安倍内閣総理大臣 今の御質問は、世界一企業が活躍しやすい国とはどういう国を目指しているのかということであります。

 今、委員は、質問の中で、所得を再配分していく、これがまず民主党としては政策の基本だという話であります。しかし、再配分をするためにはその財源を確保しなければならないわけでありまして、再配分を繰り返していく中において縮小均衡していくことになっては、結局、全ての皆さんが収入が減っていく、国の富は奪われていく、競争力もどんどん小さくなっていくということになるわけであります。

 私たちが企業が活躍しやすい、活動しやすい国をつくっていくということは、つまり、我々が目指すべき社会というのは、強い経済を取り戻し、みんなが能力を生かし活躍できる国をつくっていく、そして賃金は上昇し、家計は潤い、社会保障も安定化していくという国をつくっていく、そして誇りある日本をつくっていくということになるわけであります。

 その中で、では、なぜ企業が世界で一番活躍しやすい国をつくっていくかということでありますが、それは、今、日本の経済は日本の経済の中だけで完結するわけではなくて、世界の企業と競争しなければいけないわけでありますし、グローバルな経済の中において、日本の経済もその中にあるわけであります。

 その中から、日本において新しく起業する、創業していこうという人たちがどんどん出てくる、あるいは世界からも投資が行われることによって、さらに雇用は拡大をしていくわけでありますし、その中において、労働市場も逼迫していけば、賃金が上昇していくことにもつながっていくわけでありまして、そういう国こそ経済が成長していく。

 我々はデフレからの脱却を目指しておりますが、名目経済が成長していけば税収もふえていく、保険料収入もふえていくわけでありますし、さらには、例えば年金の運用もしっかりとプラスで前に進んでいく、年金の運用もプラスになっていくということになるわけであります。

 その意味において、私は、企業が世界で一番仕事がしやすい、活躍しやすい国をつくっていく、こういうことを申し上げているわけでございます。

長妻委員 企業はもちろん重要であります。私も個人的に起業倍増計画ということで研究会をやっておりますけれども、当然、上を引っ張り上げて、そして豊かにして、そのおこぼれが末端までおりてくる。トリクルダウンのような発想を今おっしゃられたんだと思いますけれども、これを、本当に先進国で成功した国があるのか。私の知る限り、なかなかないわけでございます。

 結局、超金融緩和と相まって、格差も拡大して、バブルが膨れて、いずれはバブルがはじける、こういう危うさが私は非常に感じられるわけでありまして、徹底的に、その政策とともに、そうであれば、所得再分配政策、あるいは社会保障のほころびを直す政策も同時に強力に推進していくということも、ぜひ強くお願いをしたいところです。

 そしてもう一つ、社会保障の議論について、現在、削減の議論というのが先行しているんですけれども、これはそもそも、昨年三党合意で合意した中身は、消費税を上げる前提条件として年金制度改革をきちっとやりましょう、こういうことがあったわけであります。自民党にも、現行の制度に固執することなく、年金制度改革案をまだ御提示いただいていないので、提示をいただくようにずっと我々お願いしていますので、ぜひお願いします。

 なぜ年金制度改革が必要なのか。年金格差も大変深刻なわけでありまして、今、会社で働いていても数百万人以上の方が厚生年金に入れずに、将来、無年金あるいは低年金になって、生活保護にどっと流れ込むという大きな懸念があるわけであります。

 今、生活保護受給者の半分以上が六十歳以上で、どんどん高齢化をしております。非正規雇用も二千万人となりまして、非正規雇用の方は正社員と比べて、結婚率も三十代前半の男性で二・五倍も違う。あるいは、格差をあらわすジニ係数も最近の厚労省の発表では拡大しておりますし、相対的貧困率、これも先進国で日本は二番目に高い国になりました。

 年収四百万円以下の御家庭の方は大学進学が三割、年収一千万円以上は大学進学が六割。そして、生活保護四人に一人が、大人になっても生活保護から抜けられない。新しい貧困層とでもいうべき階層がもう今できている。

 こういう状況でありまして、安倍内閣、格差拡大が社会に不利益をもたらすというこの深刻さの理解をぜひ深めていただきたい。その上での年金制度改革というのが大変重要だと思います。

 そこで、麻生副総理に質問したいんです。

 今お手元にお配りした中央公論の論文がございますが、かつて麻生副総理が書かれた論文の中の、百七十八ページには、「「国民皆年金」という謳い文句は、もはや死語だ。学生や失業者にも一律定額の保険料の負担を求めるのは、酷であり、未納問題の解消は難しいと言わざるをえない。」「無年金者は結局、生活保護の対象となる可能性が高く、最後は税金を投入する羽目になる。」こういうことを書いておられて、このタイトルは、「消費税を一〇%にして基礎年金を全額税負担にしよう」。二〇〇八年三月の論文であります。

 これは私も共感できる部分もあるものでありますので、ぜひ、副総理の立場で、一歩踏み出して、現行の年金制度から踏み出して、この論文のお考えが今もあるのであれば内閣の中で御提言いただきたいと思うんですが、いかがでございますか。

麻生国務大臣 これは、総理になる前の年でしたから二〇〇八年だったかな、この話は、たしか文春だか中央公論だかに寄稿した文の中の話を引用しておられるんだと存じますが、そのときにそう申し上げたことは間違いなく事実、その種の提言をさせていただいたことは事実です。

 ただし、この公的年金制度については、その後、各方面からいろいろ御意見が出まして、スウェーデン方式とか、読売新聞から出された読売方式とか、この点に関するいろいろな御提言が随分なされたと記憶をいたします。

 したがって、私としては、別に、それは単なる一つの提言であって、これに固執して、これ以外は認めないということではなくて、いろいろな国民的な議論を広めていただくことが必要なんだということを今でも思っております。

 その後、政権交代を経た後、社会保障・税の一体改革の検討過程で公的年金制度のあり方についても国民的な議論が進められた結果、年金制度につきましては、全額方式ではなくて、社会保障制度を基本とすることで、御党を含めて、公明、自民それぞれが合意されることに至ったものだ、私はそのように理解をいたしております。

 私の意見がどうであれ、それはもう既に三党で合意がなされたということで、その話は終わっているものだと思っております。

長妻委員 ぜひ、こだわりの麻生副総理だと思っていますので、この政策にももうちょっとこだわりを持って、内閣の中で年金制度改革も発言していただきたいとお願いを申し上げます。

 社会保障の効率化ということが言われておりまして、もちろん、青天井に、社会保障を野方図に伸ばしていくというのは、これはもうそういう財政状況ではありませんけれども、注意しなきゃいけないのは、無理に、削減を乱暴にすると、結局、その方が重症になったり、あるいは生活保護になったりして、むしろ国費が大きくなる、負担が大きくなるということも社会保障にはありますし、あるいは、私は、余裕のある方がもっと負担をしていただく、そういう方向は進めるべきだと思いますが、では余裕のある方というのは、よくよく考えないと、本当に余裕があるのかないのか、見きわめ、いろいろな条件がありますので、一律にばさっと乱暴にやるのもいかがか。これもきちっとした議論が必要だ。

 そして、私も厚労大臣をやっていましたが、反省点の一つは、やはり予防。一に予防、二に予防、三に予防。日本は、介護も医療も、予防は非常にまだまだやる余地が大きくあるということも、ぜひ、予防については一緒に進めさせていただきたいとは思う分野であります。

 そしてもう一つ、不正を厳しく取り締まるというのも今回浮上してきたと思っておりまして、これは、私は戦後最大級のこの種の類いの大きな事件だと思います。

 ノバルティスファーマという薬の会社がございますが、そこが、高血圧の治療薬、商品名でディオバンというのを出しておりますけれども、これは、血圧を下げる効果のみならず、脳卒中も予防できますよ、こういうプラスアルファの効果があるということを臨床研究で実証できた、こういう論文が出たわけでありますけれども、結局はその論文で引用したデータが違うデータであった、こういう問題であります。

 この医薬品は累積で一兆円も売り上げているわけでありまして、実は、これは似たような、薬が認可されたときに、血圧を下げる効果はあるということで、それはいいんですけれども、プラスアルファの効果がデータの裏づけがおかしかったということなんですが、血圧を下げるだけの薬であればジェネリックの安い薬があるわけで、これはひょっとすると、国民の皆様は効かない効能をお医者さんに処方されて、まあ、そのお医者さんも善意で処方したんでしょう、処方されて、高い自己負担を払わされて、医療費を払わされて、薬を使わない国民の皆さんの保険料にもはねてくる。こういう問題で、これは氷山の一角なんじゃないのか、こう言う専門家も多いんです。

 今、政府は、なぜか臨床研究のほかの大学等のチェックは、二〇〇九年の四月以降に開始した臨床研究に限定するということで、簡単な一カ月ぐらいの調査で終わっちゃっているんですが、ノバルティスの臨床研究、始まったのは二〇〇二年なんですね。二〇〇二年に始まった研究が問題になっているのに、何で二〇〇九年の四月以降の研究だけ調べるんだと。

 これはおかしいんじゃないのかということで、数が多くて大変だということであれば、薬を認可されたときの以外の効能をうたった薬を限定して、そこを、二〇〇九年で打ちどめじゃなくて、過去にさかのぼって調査をする。こういうことをぜひ決断いただきたいと思うんですが、いかがでございますか。

田村国務大臣 今回のこのノバルティス社のディオバンという薬の案件でありますけれども、これはまだ真相がよくわかっておりません。

 検討委員会で専門家の方々に入っていただいて八月から御議論をいただいて、中間報告がついこの間出てまいりましたけれども、こういうことが起こったこと自体、これはもう今委員がおっしゃられたとおり、使われたデータがいじられていたということは間違いのないことでありますから、どのような経緯で、誰が何の目的でこれをいじったのか。これは引き続き調査をして、その結果においては、我々は適切な対応をやはりとっていかなきゃならぬ、このように思っております。

 その上で、今委員から、ほかの研究機関も調査したらどうだというお話がございました。事実、今言われたとおり、平成二十一年からの案件に関しまして調査をしていただきました。これは自主調査であります。百十七の研究機関に対して、それでも二万四千件あるんですね、この臨床研究というのは。

 こう考えますと、これは、では誰が調査をするんだと。自主調査が信頼が置けないという話になると、国がやるんですか。しかし、そうなれば膨大な人員が要る。しかも、これによって研究等々が萎縮する可能性もある。

 今回の場合は科学的に疑わしいということがありましたから、それは今厳しい調査を依頼して、実際問題、研究者の方もそれをやっていただいて、いろいろな問題が浮かび上がってまいりました。しかし一方で、疑わしいかどうかもわからないというものを、研究全てに関して国が出張っていくわけにはいかない。では自主調査だ、これは非常に費用もかかるわけであります。

 それからもう一つは、これは健康の問題でありますから、カルテという問題があります。これは個人の一番センシティブな情報ですよね。これを自由に開示しながら調査するなんということはなかなかできないわけであります。

 このような幾つかの問題はありますが、しかし、委員からそういうお話もございましたので、どういうようなところを調査の対象にするのか、調査方法はどうか、それから、かかる費用等々負担も勘案しながら、専門家の方々にどのような調査の仕方があるかということを検討いただきたい、このように思っております。

長妻委員 これは工夫の余地はあると思うんですよね。認可以外の効能をうたった薬を限定すれば、数はすごく少なくなるし、しかも税金を使った科研費で研究をしているものもあるわけですから、ちょっと及び腰じゃないか。

 私もわかりますよ、萎縮効果がある、萎縮したら大変だというのはわかりますけれども、ぜひ前向きに。

 それで、ぜひ委員長にお願いしたいのは、これは解明がほとんどなされていない部分が多いわけでございますので、大きな医薬品、医療費全体にかかわる問題ですので、このノバルティス社の元社員の白橋伸雄さんと、ノバルティス社の日本の社長であります二之宮義泰さんの参考人招致を検討いただきたいと思います。

二階委員長 ただいまの参考人の要求につきましては、後刻理事会で協議したいと思います。

長妻委員 ありがとうございます。

 これはノバルティス社だけでなくて、大学側もデータ集計への関与の事実や責任はあるのかということも言っておられる方もいらっしゃるので、まずはノバルティス社の方にお越しをいただいて、お話を聞いて、構造的問題であれば大きな問題ですので、よろしくお願いいたします。

 そしてもう一つ、これも企業の話でありますけれども、みずほの話でございます。

 資料の七ページをごらんいただきますと、これは金融庁につくっていただいた資料でございますが、みずほ銀行が提携先のオリコ、信販会社を通じて暴力団構成員らに融資をしていた問題でございますけれども、金融庁は毎年メガバンクには検査に入っているんですが、結局、ことしの九月に金融庁が出した業務改善命令では、この報告は担当役員どまりなんだ、こういうことを金融庁も認定をして、ことし九月に業務改善命令を出しているわけであります。

 しかし、調べてみると、この七ページの資料ですけれども、頭取や社長が主宰する会議に既に八回にもわたって、暴力団構成員らに融資をしていた、そういう資料がその会議に提出されているということでありまして、金融庁はこの会議の資料を調べれば容易にわかったはずですし、それを仮に、疑うわけではありませんけれども、この資料を金融庁が見ていて、九月のような、つまり担当役員どまりだというような報告書を出していたとすれば、つじつまが合うのか合わないのかという疑問もあるわけでございます。

 これは金融庁を所轄する麻生大臣にお伺いしたいんですが、八回も社長あるいは頭取が主宰する会議に資料が出ていた、毎年検査に入っているにもかかわらず、この資料は金融庁はことし九月の時点でも知らなかったということでよろしいのでございますか。

麻生国務大臣 みずほ銀行のコンプライアンス委員会並びに取締役会というのが、この資料にありますように、八回開かれておりますということなんですが、お断りしておきますが、個別の金融機関の検査内容にかかわることなので、コメントすることは今現在では差し控えさせていただきます。

 ただ、一般論で申し上げれば、検査においては、極めて限られた時間と限られた人材、人数で、対象になります金融機関の説明の裏づけを必要な範囲で行うということになっているんですが、他方で、結果として、みずほ銀行への検査が、当時に受けた説明とは異なる事実が判明してきているということです。

 したがいまして、さらに深い検証を行うべきだったという御批判があることは承知をいたしております。こうした点に関しましては、真摯に受けとめて、検査の質的向上には取り組んでいかねばならぬものだと思っております。

 いずれにいたしましても、この件につきましては、現在、みずほ銀行が第三者委員会を含めて事実関係を改めて再調査しているところでもありますので、その調査結果を踏まえた上で、改めて適切に処理をしてまいりたいと考えております。

長妻委員 私も何でもかんでも教えてくれと言っているわけじゃなくて、この案件については、世間も含めて非常に不可解な思いを持っておられる方が多いわけでございまして、これは、自民党の部会でも、みずほ銀行の佐藤康博頭取をヒアリングする、しないという話題が上がったというふうに仄聞しております。

 この予算委員会でも、みずほ銀行の佐藤康博頭取を参考人でお呼びをして、金融庁長官もお呼びをした上で、もろもろの問題を議論していきたい。反社会勢力に対する融資が行われて、その報告について金融庁が訂正をするような事態でありますので、ぜひ佐藤頭取の参考人招致、お願いをいたします。

二階委員長 後刻、理事会に諮って協議します。

長妻委員 それと、冒頭申し上げましたように、消費増税分が公共事業に結果として使われてしまうのではないのか、こういう強い懸念があると申し上げました。

 公共事業については、カンフル剤なんだから、これは一時的な景気を浮揚する策であるから、毎年やるわけじゃない、こんな声も聞こえてくるんですけれども、これはちょっと献金の問題があるんですね。

 これは赤旗のスクープだと思いますけれども、ある資料がありまして、今、私、手元にありますけれども、国民政治協会というのは自民党の政治資金団体だと思いますが、そこの塩川会長の名前で、ことし二月に社団法人日本建設業連合会に宛てたもので、強靱な国土の建設へと全力で立ち向かっている、何とぞよろしく御協力を賜りますようお願い申し上げますということで、金額が四億七千百万円ということで、献金依頼の体裁をとった文書があるんですが、これは事実でありますか。総裁の立場でお答えいただければ。そして、事実だとしたら、これは問題ではないのかということでありまして、お願いします。

安倍内閣総理大臣 国民政治協会は、自民党の資金団体ではありますが、自民党とは別であります。

 先般、先般といっても参議院選挙のときに、党首討論のときに、共産党の志位委員長だったかな、その資料を私に見せて、どうなんだということでございましたから、その後、そういう事実があったというふうに承知をしておりますが、政治資金規正法にのっとって適切に対処している、対応しているというふうに承知をしております。

長妻委員 これは、過去の日本建設業連合会が自民党に献金をされている金額から見ても、四億七千というのは大変大きい金額で、強靱な国土という文字もありますから、こういう請求書まがいのものを送って、そしてカンフル剤で一回でやめるというのが本当に信用できるかどうか。

 やはり自民党政権で、一回公共事業を上げると、値段というか経費を上げてしまうと、それが下がらないでずっと高どまりして借金大国になっちゃった、こういう過去の問題もありますから、ぜひ御注意をいただきたいというふうに思います。よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

二階委員長 この際、前原誠司君から関連質疑の申し出があります。長妻君の持ち時間の範囲内でこれを許します。前原誠司君。

前原委員 民主党の前原でございます。

 三十分という時間をいただいておりますので、主に安倍総理にお話を伺いたいと思います。

 まず、安倍総理は、所信表明演説の中で、経済の取り組みにはこの道しかないということをおっしゃいました。

 確かに、デフレ脱却は重要であります。デフレというのは、ほっておけば物の値段がどんどん下がっていく、物を買わない方が得であるということでありますから、デフレ脱却は重要です。そして、総理みずからが旗を振られて、そして国民や市場関係者のマインドを変えたということについては私は評価をしたいというふうに思いますけれども、経済指標でよくなっているものもあることを踏まえてこの道しかないという考え方には我々はくみをいたしません。

 しょせん、財政出動それから量的緩和というのは時間稼ぎであって、時間を稼いでいる間に、日本が抱えている構造問題、後で議論させていただきますけれども人口減少とか、あるいは歳出の改革、三本の矢に入っていませんよね、歳出改革。それから、これは取り組んでおられますけれども、成長戦略の着実な実行、こういったものに移れるかどうかが私は大切なことだというふうに思っています。

 経済指標がよくなっている主な点は、私、四つだと思っています。

 一つは、平成二十四年度の補正予算をやられました。真水で十兆円余り、そして事業費で二十兆円。これだけの、一般会計とは別の予算をさらにつぎ込めば、それはある程度景気はよくなるでしょう。しかしながら、それは借金によって賄われているものもあるということで、またこれは将来へのツケ回しをふやしたということであります。

 二つ目には、日銀による異次元の緩和、これがかなりきいていると私は思いますよ。ただ、これは黒田総裁も認めておられるように、量的緩和というのは通貨安を生み出す傾向がある。これで円安になって、そして輸出関連企業なんかの株が買われるということの中で、また、ETFも日銀が買う、買い続けるということの中で、株式市場に外資などが入ってきて株価が上がっている。国債も、新規発行の七割ぐらいを買っているということでありますので、それは、金利も押し下げられて国債価格が上がっているということについて言えば、これは官製のいわゆる資産バブルを生んでいることになるのではないかということであります。

 それから三つ目には、落ちついた外的要因。アメリカは出口を模索し始める。小康状態のヨーロッパもあります。しかし、これはいつまた噴き出してくるかわかりません。中国も、何だかんだといっても七%台後半の成長率を維持しているということの中で、外的要因は非常にいい。

 また、最後のポイントとしては、消費増税の駆け込み需要というものが起きているということであって、これだけ条件がそろえば、それは指標はよくなるだろうということであります。

 これを全て否定しているわけじゃありません。今から幾つかの問題点について議論をさせていただきたいと思いますので、総理、お答えをいただきたいと思います。

 一枚目の資料をごらんいただきたいと思います。

 総理や根本復興大臣、覚えておられるかどうかわかりませんが、私、二月のこの予算委員会で質問をさせていただいたときに、被災三県、岩手それから宮城、福島、そして仙台市、政令都市、この四自治体の入札不調の話をさせていただきました。入札不調率が非常に高いということの中で、これでまたさらに補正予算をやれば、半分が公共事業ですから、これをやったらより復旧復興はおくれるんじゃないかという質問をいたしましたときに、根本大臣は、その可能性もある、懸念もあるという答弁を率直にされました。

 太田国土交通大臣、ここにおられますけれども、国土交通省の方でいろいろと知恵は絞られています。例えばロットを大きくするとか、あるいは、これは我々が政権の末期のときでありますけれども、例えば、労務単価、昔は年に一回だったのを短くしていく中で、今、三カ月に一回ですか、三カ月に一回労務単価を見直しておられるということで、労務単価は二一%上がったという報告を受けております。それから、資材価格については一カ月に一回の見直しをするということで、努力をされていると私は思っています、国土交通省としては。

 では、この一番上の表を見ていただきたいんですけれども、また入札不調がふえているんですよ。これは明らかですよね。件数も、それから割合もふえている。これはまさに、先ほど申し上げた、補正予算というものを行う中で、結果的には入札不調というものがふえて、そして復興の足を引っ張っているんじゃないかと思いますが、認識はいかがですか。

太田国務大臣 表を見ていただければ、むしろ入札不調はことしに入ってから減ってきているという状況にあります。八月で上がっているということがグラフにもあると思いますが、八月上がって、そして、これは毎月かなり変動があります。

 しかし、全体的には、昨年の現在の地点ということからいきますと、例えば、具体的に申し上げますと、岩手県は、今年度に入りまして、昨年一年間一四%の不調であったんですが、ことし一四%、宮城県は三七から二二、福島県は二五から二四、そして、仙台市は多かったんですが、五〇から三四と、現在減っています。これは注目していかなくちゃいけない、細かく手を打っていかなくちゃいけないんですが、それは決して、昨年度に比べて高くなっているのではないというのが現状の事実でございます。

前原委員 これは、太田大臣、国土交通省にヒアリングをした上で質問しているんです。国土交通省の役人そのものが私にレクチャーをしてくれたのは、これから年度の後半ですよね、年度の後半の方が発注がふえますと。したがって、今までは今答弁のとおりかもしれないけれども、これからは、説明に来られた方々も含めて、また入札不調がふえる可能性があると言っているんですよ。そのことも踏まえて言っているんです。

 我々は、ためにする議論をしているんじゃないんです。復興が一番大事だということであれば、この入札不調がこれからまた多くなるかもしれないということ。しかも、努力をされているんですよ、国土交通省はいろいろな取り組みをして。だけれども、ボリュームがふえている中で入札不調がふえているということで、結局、それが復興の妨げになっているんじゃないかということを申し上げているんですよ。その認識は、総理、いかがですか。総理に聞いているんです、総理に。総理に聞いているんです。

太田国務大臣 これからふえる可能性があるという認識をしています。

 それゆえに、資材の不足ということについては、資材として、例えば生コンなら生コン、それを九ブロックに、岩手県からずっと分けて、プラントが足りないというところにはプラントを設置する、そしてまた、砂が足りないというところなら砂をどこに持ってくるか。細かくそれぞれの県で、ここは大事な問題ですから、注視しながらやっていくということでございます。

前原委員 今、自民党席の方から、民主党が公共事業を減らした中で建設業を潰したという話がありましたね、不規則発言が。これは、事実関係を申し上げましょうか。

 我々は、公共事業は、必要なものはやらなきゃいけないと思っているんです。これだけ莫大な借金がふえてくる中で、公共事業を含めて歳出を見直さなきゃいけないのは事実でしょうが。それを、それでまた初めにやり出したのは、小泉政権からですよ。

 これは、国全体とする中で、しかも、今、一般歳出に占める社会保障の割合は五四%ですよ。二〇〇〇年には三五%だったものが、今五四%になっている。そういうことの中で、借金は一千兆になった。そして、歳出の中で四分の一を借金の返済に充てなきゃいけない。しかも、四分の一の借金を返すのに倍の借金をしているじゃないですか。税収見込みと借金による収入が一緒という異常な状況じゃないですか。そうなれば、当然ながら、公共事業費も含めて見直していかなきゃいけないというのは当たり前のことじゃないですか。

 次のパネルを見ていただきたいのでありますが、この左上を見ていただきたいと思います。

 左上を見ていただくと、この上のところが何かというと、建設躯体工事の職業の有効求人倍率、これは九ぐらいですよ、九。東日本大震災からどんどん上がっていく中で、九まで上がっている。そして建築・土木・測量技術者というのは、今、有効求人倍率が五超ですよ、五超。

 その下を見てください。ここが一つの大きなポイントなんです。先ほど、資材の価格は、太田大臣がお答えをされたように、被災三県における資材の価格というのが上がっているというのはありますけれども、実は、建設技能労働者の不足率というのは、東北地方よりも関東の方が多いんです。つまり、今、全国的に、建設労働者の人手が足りない、技術者が足りないということの中で、仕事ができない状況になってきている、こういうことなんですね。

 さて、これを見て、景気対策のために、機動的な財政出動の中心として公共事業をやってこられましたよね、安倍総理。こういう労働市場の逼迫ということがある中で、先ほどの入札不落の問題も含めて、これから公共事業を例えばカンフル剤として景気対策に使うんだということの中で、この労働市場が制約要因になると思われませんか。

太田国務大臣 技能労働者、特に若手の人、鉄筋工とか型枠工、ここに入ってこないという状況がありまして、高齢者が多くなったということもありまして、技能者の不足というのは、これは東北の復興ということ以上に、全国的な傾向でございます。それゆえに、ことしの三月終わりに労務単価を十数年ぶりに大幅に上げさせていただいて、全国一五%、そして被災地では二一%上げさせていただいた。

 若者が入れるように、そして、公共事業というものが何か悪いものであるというのではない、これから必要な公共事業はやらなくてはいけないし、防災、減災、老朽化対策、メンテナンス、耐震化、こういうことをしっかりやらなくてはいけないという誇りを若い人にも持っていただけるような、そうしたところに持っていけるようにということで、今私は努力しているところであります。(拍手)

前原委員 全くもって拍手するところじゃないですよ。公共事業は、必要なものはやらなきゃいけないのは当たり前じゃないですか。選択と集中の中で本当に必要な公共事業をやっていくということで我々は公共事業の見直しをやってきたんです。

 例えば、我々が河川の見直しをやった中で、今でも太田大臣のもとで河川の有識者会議をまだやっていただいているでしょう。(発言する者あり)あの中で、八十三の本体工事をとめて、そして、確かに、話があったように、八ツ場ダムはとまりませんでしたよ。しかし、とめたダムの中で、今の基準に見合って不必要なものは三分の一出てきている。その三分の一を、これは今の自公政権の中でもとめてもらっているんですよ、我々がつくった有識者会議の中で。

 こういうふうに、時代に合った公共事業があるかないかということを含めて選択と集中をやるのは当たり前で、その中で総量を減らしていくのは、今の財政状況から考えたら当たり前じゃないですか。それを、何も我々が公共事業が悪だと言って公共事業を減らしたわけじゃない。

 では、この右の図を見てください。建設事業者の少子高齢化。この図を見ていただいたら、全産業に占める五十五歳以上の方々、全産業に占める二十九歳以下の方々、これと建設業を比べると、いかに建設業が高齢化が進んでいて、この建設業、二十九歳以下、太田大臣、先ほど若者が誇りを持ってというふうにおっしゃいましたよね。この図はどこから減り始めているかというと、一九九七年からですよ。

 九七年から二十九歳以下の方々は減り始めているじゃないですか。このころは何政権ですか。自公政権じゃないですか。自公政権の中で、そして建設業界の中に若い人たちが入ってきたかという話ですよ。それは努力をしてもらいたいですよ。そういうふうに、政権交代の中での考え方の違いの中で相手を誹謗中傷するようなことではなくて、今の建設業というものが、高齢化が進んで、若い人が入ってきていない。

 私が申し上げたいのは、財政出動というものをこれからやったとしても、公共事業を例えば国土強靱化でふやそうとしても、人的な制約があるでしょう、それを認めますかということを言っているんじゃないですか。総理、お答えください。総理、総理の三本の矢の話を聞いているんじゃないですか。

甘利国務大臣 成長戦略にかかわることですので、一言お話をいたします。

 成長戦略の捉え方は、日本が直面している社会課題にどう対処していくか。その中では、一斉に、過去、高度成長期のインフラが耐用年数を迎えてきております。そこにやはり事業のニーズが起きるわけであります。これはほっておくわけにはいきません。

 そこで、委員おっしゃるように、財政的な制約があります。そこで、それを工夫するために、民間資金をどう本来使っていない公的な事業に導入するかという、PFIの手法で財政的な問題をクリアしようと思います。

 もう一つ残るのが、御指摘の人的なことであります。これは国交省にいろいろと発注の仕方や効率的な仕事の仕方を研究していただきますが、その上でも足りなくなるかもしれません。いろいろTPPでも、政府の発注する仕事に対して内外無差別という議論もあります。場合によっては外からの人手をかりて、その事業を外にも開放して、そういう中で人的な処理をしていくという手法も考えなければいけないかとも思っております。

前原委員 ちょっと、総理に答えてもらってください。

 私は、総理がおっしゃっている三本の矢の中で、機動的な財政出動というのは人的制約要因が出てきている、それを認めますか、どうですかということを聞いているんですよ。

安倍内閣総理大臣 この人的な制約要因においては、なるべくそれに対応するよう先ほど国交大臣からも答弁したところでありますが、そもそも、先ほど前原委員が、金融政策と財政政策については、たかがこの二つの政策によって長続きしないという話をされましたが、しかし、十五年間ずっとデフレだったんですよ。そのたかがとおっしゃった大胆な金融政策と財政政策をやらなかったから十五年間ずっとデフレだったんですよ。このこびりついたデフレマインドを変えるというのはそう簡単なことではなかった。民主党政権時代の三年間もできなかったじゃないですか。

 だからこそ、私たちは、今までとは違う、第一次安倍政権のときとも違いますよ、あのときもできなかった。その反省の上に立って、今回は、大胆な金融政策と、そして機動的な財政政策、マクロ的な観点から、この思い切った財政政策もとったんですよ。そうしなければ国民のこのデフレマインドは変わらないと判断したからであります。その結果、変わったわけですよ。今おっしゃったように、最初は、それでも為替市場も変わらないし、恐らく証券市場も変わらないというふうに私は非難されました。でも、それは変わったじゃありませんか。

 それによって、資産効果というのはあるんですよ。株価が上昇していくことによっての資産効果によって、消費を押し上げているのは間違いありません。そして、デフレから脱却をしなければ名目GDPは、当たり前なんですが、これはふえていかないわけでありまして、それによって初めて税収は安定的にふえていくわけでありまして、そうならなければ財政再建はできないんですよ。

 デフレから脱却をして名目GDPを引き上げていかなければ、デフレからは脱却できない、そして財政再建もできないわけでありますから、我々はこの道をとっているということでありまして、今回も、マクロ政策的に、消費税を引き上げる上において、これぐらいの対応が必要だという判断をしたところでございます。

前原委員 まず、平成八年から平成二十年、これは自民党政権ですよ、ずっと。この自民党政権で、国民所得はどれだけ上がったと思われますか。マイナス八・四ですよ。ずっと下がってきたんだ。自公政権で上がらなかった。まずそれを一つ申し上げる。

 民主党政権で何もできなかったとおっしゃるけれども、これは申し上げておきたい。数字はうそをつきませんから。需給ギャップは三十五兆円から十五兆に縮小しましたよ。そして、GDPはふえましたよ、実質GDPは。名目GDPは減らなかった。つまりは、需給ギャップが縮小するようなことを我々はやったんですよ。そして、失業率は五・四から四・二に減りましたよ。有効求人倍率は〇・四三から〇・八二に上がった。

 我々の三年三カ月で、いろいろな批判はあるけれども、民主党でできなかったという一言で切って捨てるのはやめてもらいたい。我々がやったときでも需給ギャップは縮まったし、経済は成長した。失業率は減って、税収もふえた。これは、数字はうそをつきませんから、後で十分調べてください。

 その上で、安倍さんに今聞いたのは何かというと、この財政出動によって、公共事業にかかわる方々の人的要因で制約がある、太田大臣がおっしゃったようなことでできるというふうにおっしゃったけれども、本当にできるのか。私は、それはできないということを申し上げているんです。

 ですから、これからは、我々はやはり、このデフレから脱却、それは先ほど申し上げたように必要でありますよ。公共事業にできるだけ依存しない、公共事業は選択と集中。そして、建設業界の方々から言わせると、コンスタントに発注されることが一番いいんですよ。補正予算でぼんと出して、ほら、使え、これが一番困るんですよ。だから入札不調も出てくるんだ。そういうようなことを踏まえて我々は建設的な議論をしているのに、そういった答弁をされるのは、私は非常に、狭量というか、視野が狭いという気がいたしますよ。

 では、順番を変えて、日銀の話にいたしましょう。

 黒田総裁、二年で二%の物価上昇という目標は変わりませんか。それと、実現は可能ですか。この二点について簡潔にお答えください。

黒田参考人 二%を二年程度の期間を念頭に置いてできるだけ早期に達成するという目標、それからその可能性についての私どもの見方は、全く変わっておりません。

前原委員 では、市場はどう見ているか。

 ブルームバーグが日銀ウオッチャーに対して今月の初めに行った調査を幾つか紹介したいと思います。

 ある外資系証券チーフエコノミスト。日銀の一四年度実質GDP成長率見通しは高い。日銀は、消費税率引き上げ直後の展望リポートで、つまりは来年の四月ですね、一四年度実質GDPの見通しを引き下げ、追加緩和に打って出るだろう。

 別の外資系証券チーフエコノミスト。日銀は、一四年度のCPI見通しを高目に設定しているため、来年中に、彼らの設定パスと実際のCPI、つまりは物価上昇率との乖離が広がり出したところで追加緩和を余儀なくされる可能性が高い。

 さらに、別の国内証券会社チーフ金利ストラテジスト。日銀の次の一手は、来年秋ごろ、量的・質的緩和の一年延長。このころになると、日銀の物価見通しと現実の乖離が大きくなっていると見られる。

 こういう見方をしている人たちもいるということであります。

 では、このパネルをごらんください。最後のページ。総理、日銀総裁もごらんいただきたいと思います。

 消費者物価指数の推移であります。この左上を見ていただきたいわけでありますが、確かに、総合指数、CPI、それから、生鮮食品を除く総合指数、コアCPI、ともに二〇一三年六月に前年比プラスに転じています。これをもって今答弁をされたんだと思いますけれども。

 ただ、量的金融緩和が円安を、今九十七円台ですか、九十八円近く、これを引き起こして輸入物価が上がっている。食料品それからエネルギー、こういったものが上がっている。そのことによって、今原発がとまっていますので、電気料金も上がっている。このような、食料品とか電気代やガソリン等のエネルギー価格、こういうものを除いたもののコアコアCPIは、確かにマイナス幅は減じていますけれども、まだマイナスですよね。

 つまり、今の物価上昇というのは、需給が逼迫をする、本当にいい形のいわゆるディマンドプル型の物価上昇ではなくて、輸入物価が上がることによるコストプッシュ型のインフレになっているんじゃないですか。

 総裁、いかがですか。

黒田参考人 御指摘のように、エネルギー価格の上昇、特に為替の変化を反映したエネルギー価格の上昇が消費者物価を押し上げていることは事実でございます。

 ただ、委員も御指摘になりましたように、ほかの要因のものも次第にマイナス幅を縮めてきている。その結果、いわゆるコアコア、食品とエネルギーを除く部分でもほとんどゼロに近くなってきておりまして、私どもの見方では、今後、消費者物価は全体として上方にシフトしていく、その中で、いわゆるエネルギー、食料品だけでなく、ほかのものも全体として上がっていく。

 それはなぜかと申しますと、現に、現在のいわゆる潜在成長率を上回る成長が続いている中で、GDPギャップが縮んできております。労働市場もタイトになってきております。一部、賃金も上がってきているわけでございます。

 そういう中で、全体として物価上昇率が二%に向けて緩やかに上昇していくというふうに予想しております。

前原委員 私が指摘をしたのは、確かに下げ幅は縮まっている。だけれども、コアコアで見た場合はまだマイナスじゃないですか。つまり、総合CPIで見られるということでありますけれども、それで二%、二年ということになると、コストプッシュ型のインフレになりますよということを申し上げているわけです。そうではなくて、やはりトータルで見ないといけない。

 特に、賃金が上がらない、そして年金がむしろ今物価スライドの中で下がり始めている、おくれて来ますから。そういう状況の中で、輸入物価が上がる、電気料金が上がる、二割ぐらい上がっていますね、ガソリン代が上がるということになると、それは資産を持っている人はいいですよ、先ほど総理が言われたけれども。資産を持っている人はいいけれども、そうでない方々はむしろ生活が苦しくなっているということの中で、無理くりこの量的緩和の中で二年で二%の物価上昇を目指すということは、我々は反対であります。

 デフレ脱却は必要。でも、我々は、二%以下のプラスの領域、当面一%めどというものをやっておりましたけれども、それが穏当な金融政策ではないかと私は思います。

 先ほど、総理、マインドを変えたことについては評価すると僕は一番初めに申し上げました。でも、先ほどおっしゃったことについて言えば、今変わった、今の指標がいいからということについて言えば、借金は先送りして今の景気刺激をする、異次元の金融緩和で日銀が大量の資産を買う、それは、それぞれの資産は上がりますよ。いいように見えますよ。だけれども、それが出口になるときにどういう財政コストを伴うのか伴わないのか。アメリカだって今苦労しているじゃないですか、出口を、QE3。

 こういうようなことを全て、今やっている中でいい数字が出ているからこれはうまくいっているんだで果たしていいんでしょうか。これが先に行ったときに、金利の問題、出口の財政コストの問題、そういうものをトータルで示して、そしてそれを評価するというのが正当な評価の仕方じゃないですか。

 黒田総裁、日本という体を診ているお医者さんなんですよ。ドクターはインフォームド・コンセントというのをやらなきゃいけない。今こういう治療をしています、こういう治療をして、今はこういうふうに体がよくなっています、でも副作用もあります。副作用は、先ほど円安の物価上昇と言いましたけれども、そのほかに、出口のときに財政コストが生じるおそれもありますよね。

 ずっと今まで、黒田総裁は、出口について考えていないとおっしゃっていた。だけれども……(発言する者あり)いや、今から。総理、それは本音ですよ。それは本音ですよ、総理の。今から出口を考えるべきではない。

 ずっとやり続けるんですか、金融緩和をずっとやり続けるんですか。そして、トータルの財政コストというものを考えずに、全部示さないで、今はいい、行きはよいよい帰りは怖いということをやり続けるんですか。どうぞ、お答えください。

安倍内閣総理大臣 十五年間続いたデフレマインドを変えるのは、そう簡単なことではないんですよ。だからこそ、二%の物価安定目標なんですね。民主党政権時代、一%目途とやりましたよね。ところが、それはきかなかったんですよ、ほとんど。そういう結果が出ているんですよ、申しわけないですけれども。

 そして、出口、出口というふうにおっしゃっているんですが、まず、我々はデフレ脱却の道半ばなんですね、デフレ脱却の道半ば。まだ完全に入り口からどんと入っていっているわけではないんですよ。

 ですから、これは去年も申し上げていたことなんですが、これはエール大学の浜田先生がおっしゃっていたんですが、ゴルフでいえば、今バンカーに入ってしまったんですよ。バンカーから出て、グリーンに乗らなきゃいけないわけでありますが、そのグリーンの先に崖があるんじゃないかと心配して、ずっとパットでもって打ったって出ないんですね。バンカーから出るためにはサンドウエッジなんですよ。我々はサンドウエッジを持ったんですよ。そして、ボールはグリーンにまさに乗ろうとしているわけでありますから、まずはこの道をしっかりと進めていくしか我々は道はない、このように思っています。

 昨年、なぜ我々が政権をとれたか。四―六、七―九、二期連続マイナス成長だったじゃないですか。七―九はマイナス三・六%だったんですよ。私たちの政策によって、一―三はプラス四・一%になったわけですよ。次は三・八%ですよ。(発言する者あり)

 それを私たちが、今外的要因だというふうにおっしゃったけれども、そうならないと皆さんおっしゃっていたじゃないですか。うまくいったら外的要因、うまくいかなかったら君たちが悪いというのは通らないんですよ。要は、正しい政策をとることができるかどうか、それにかかっているんだろう、このように思います。

前原委員 グリーンに乗るかどうかわからないですよ。一緒に崖に連れていかれたらたまらない。だから我々はこうやって議論しているんじゃないですか。だから我々野党の存在があるんじゃないですか。

 それと同時に、民主党のときのことばかりおっしゃいますけれども、繰り返し申し上げますよ。民主党政権では、需給ギャップが三十五兆円から十五兆円に縮小したんだ。失業率が五・四から四・二に減ったんだ。有効求人倍率も伸びて、実質GDPもふえたんですよ。そのことはしっかり申し上げておきたい。

 それで、黒田総裁、出口のことは今言わないとおっしゃるけれども、出口も示して、つまりは、患者の体全体を今どういうふうに治していて、どういう副作用があるのか、どういう問題があるのかということも示すことがあなたの今の責任でしょう。出口戦略はどういうものがあって、どういう副作用があるのかということをこの国会に示していただきたい。答弁いただきたい。

黒田参考人 御案内のとおり、現在は、二%という物価安定の目標をできるだけ早期に実現するよう最大限の努力を行っている最中でございます。出口戦略を議論するのはまだ時期尚早であるというふうに思っております。

 また、御承知のように、量的・質的金融緩和の出口に向けた対応というものについては、やはりその時々の経済物価情勢あるいは市場の状況などによって変わり得るものですので、今、現時点で具体的にお話しすることは適当ではないと考えております。

前原委員 これで終わりますけれども、今の答弁は逃げているんですよ。つまりは、将来のことはわからないから出口戦略は語らないということは、おかしいんですよ。出口戦略というリスクも含めて今の金融政策があるんだ、今だけいいということだけで、その結果オーライでやられたらたまらないということを申し上げて、私の質問を終わります。

二階委員長 この際、古川元久君から関連質疑の申し出があります。長妻君の持ち時間の範囲内でこれを許します。古川元久君。

古川(元)委員 民主党の古川元久でございます。

 総理、私は、今は大事だと思いますけれども、今の前原委員からのお話にもあったように、政治というのは、今だけよければいいとか、今のことだけ考えるのではなくて、将来のこと、そして次の世代のこと、やはりそこまで考えて、今と将来、これをバランスをとってやっていかなければいけないと思います。

 そういう視点でこれまでの安倍政権の歩みを見てみますと、どうも目先のことを優先する余り、将来のリスクやコストについて、それが高まっていることについて余りにも無頓着なのではないかな、私はそんなふうに感じております。きょうは、こうした視点に立って質問をしたいと思います。

 ちょっとこのグラフを見ていただきたいと思います。

 私は、日本経済が、現在そしてこれから直面する多くの問題の根源は、私たちが今直面している、人口減少と高齢化が同時進行する、世界でもどこの国も経験したことのないそうした社会に突入している、そういうことがあると思います。

 しかも、この人口減少のスピードというのは、今二〇一三年でありますけれども、ちょうどピークを越えて少し減り始めたところなんですね。ジェットコースターでいいますと、ちょうどカタカタカタと上がっていって、一番上の高いところを越えて、少し落ち始めた。落ちるときは、最初はゆっくりなんですけれども、あるところを越えると急に落ちていく。実は、今まだ、このカタカタといって頂上を越えて、少し落ち始めて、だからゆっくりですけれども、ここから人口減少のスピードというのは急速に進んでいきます。

 もう昨年、一昨年と毎年二十万人を超える人口減少が起きていますが、この一〇年代の後半には五十万人ぐらいになってきますね。二〇年代になると七十万人を超え、そして三〇年代になると九十万人を超えて、四〇年代を超えると毎年百万人を超える人口が減少していくんですね。

 これは私の選挙区の名古屋でいうと、名古屋の人口は大体二百十万人ぐらいですけれども、二年たったら、二〇四〇年代だったら名古屋から誰も人がいなくなるくらいの、それくらいのこれはインパクトが、実は、まだ我々は感じていないんですけれども、これからもう目の前にそういう急速な人口減少、そういうものが起きてくるんですね。しかも、同時に高齢化も進行していく。

 実は、きょう議論になっているデフレの問題も含め、日本社会が直面しているさまざまな問題の大きな根源には、やはりこの急速に進んでいく人口減少社会、そこにちゃんと、今までの社会経済構造やあるいは社会保障制度、そうしたものがまだうまく合っていない。本当は、我々が直面しているこの人口減少と、そして高齢化が急速に進んでいく、そうした社会に合わせて、社会構造をもっと前からつくってこなきゃいけなかったんですけれども、やはりそれがやれてこなかった。そのことが、将来に対する不透明感や、あるいは人々の不安感にもつながっているんだと思います。

 そうしたことを前提に、きょうはぜひ議論したいと思うんです。

 私は、そういった意味では、デフレというのも、これはいろいろな議論がありますけれども、しかし、根源をただしていくと、やはり急速な人口減少、特に生産年齢人口が減少するということが極めて大きな問題だと思うんですね。

 既に、生産年齢人口というのは一九九〇年代をピークに減り始めておりまして、生産年齢人口というのは、これは現役世代でありますから、この世代は消費の中心であって、この世代が減ることによって需要も減っていくわけであります。また、そのため、主としてこの現役世代を市場としているような商品は供給過剰になって、それが値崩れをしていく。そのことによって、平均としての物価も下落する。すなわちデフレにつながってきた。十五年にわたってデフレが続いているといいますけれども、実は、生産年齢人口が減り始めたところとデフレに日本経済が陥ったところは、ある意味でシンクロしているんですね。

 やはりそういうことを考えると、これは安倍総理、二月の予算委員会、前原委員との質疑の中で、前原さんは、人口減少がこのデフレの要因であるんじゃないかと。それに対して、総理は、人口の減少とデフレを結びつけて考える人がいますが、私はその考えはとりません、デフレは貨幣現象ですから、つまり、金融政策においてそれは変えていくことができる、このように答弁されておられますが、今でもその考え方に変わりありませんか。

安倍内閣総理大臣 人口が減少してデフレでない国の方がむしろ多いですよ。日本は、先進国の中でほとんど唯一、デフレ経済に陥ってしまっています。

 そして、人口が減少しているのであればデフレから全く脱却できないのであれば、今だってコアの指数はマイナスのはずですね。ところが、今、プラス〇・七になったじゃないですか。そして先ほど、その中で、前原委員から質問があった、それはコストプッシュなんじゃないか、コアコアを見るべきだという話がありましたね。コアコアの数字だって、マイナス幅は縮小しているんですよ。前月幅で見ればゼロになっているんですよ。改善しているじゃありませんか。

 つまり、このように、我々は、まさに異次元の政策によって成果が出てきている、このように思います。

古川(元)委員 もう一回確認しますが、そうすると、総理は今でも、デフレは金融政策だけで解消できる、そのように考えているということですか。

安倍内閣総理大臣 ですから、私は、まさに三本の矢によって、金融政策は極めて重要ですよ、と同時に財政政策、しっかりと需要をつくりながら、その中において、さらに継続的に成長を可能にするように、三本目の矢もしっかりと打っていく。

 その中において、大切なことは、国民のマインドが、デフレからいよいよ脱却できるんだと思わなければ、お金は使わないんですよ。そうならなければ、実際、投資はふえていかないんですよ。

 機械受注、設備投資、ふえているじゃありませんか。しっかりと改善しているんですよ。まさに私たちが進めている政策によって結果が出ている、数字が、ファクトが示しているということであります。

古川(元)委員 目先では確かにそうかもしれませんが、この人口減少が続いていくということに対して、総理は私の質問に答えていませんよ。金融政策でデフレが解消できると二月に言った、その考え方は今でも変わらないのか。今のだと、何かそれだけじゃなくて、第二、第三の矢、それも含めてかのように感じますけれども、そこはどうなんですか。

安倍内閣総理大臣 今から改善できなければ、五年たったって十年たったってだめですよ。今できないのに、五年先、十年先できなかったというのは、今までの政策が示しているとおりなんだろう、こう思いますよ。

 そして、私は、今まで同じ答弁しかしていませんよ。つまり、デフレから脱却する上においては、いわばこの三本の矢で脱却するというふうに申し上げてきました。そして、まさにデフレというのは、多くは金融政策ですよ、貨幣現象でもありますよ。でも、同時に、デフレから脱却をしていくためにおいては、金融政策だけではだめで、ちゃんと財政政策とそして成長戦略、この三本の矢が相まって初めてデフレマインドを払拭できる、私は一定してこのように申し上げてまいりました。

古川(元)委員 答弁を変えるということですね、一定してと、二月には、とにかく、デフレは貨幣現象だというふうに総理はおっしゃっているんですよ。

 デフレから脱却するためには、まさに総理がおっしゃいましたけれども、それはもちろん、期待インフレ率を上げることも大事です。同時に、やはり予想の成長率、潜在的成長率を上げていかなきゃいけない。そのためには、生産年齢人口が減少していく、そこのところをどう考えるか、やはりこの人口減少の問題があるんですね。さらに、需給ギャップをどう埋めるかという問題もあります。

 だから、確かに、あの日銀の異次元の金融緩和でマインドは変わったかもしれません。そして、期待インフレ率は上がったかもしれません。しかし、それだけでデフレから脱却できるという問題ではないんだと思うんですね。

 需給ギャップであるとか、そしてまた将来の潜在的な成長率、これを上げていく、やはりそのためには、この人口の問題というものにしっかり今から取り組んでいかなきゃいけないというふうに思うんです。

 これは日銀総裁に聞きますけれども、黒田総裁はデフレの原因についてどのように考えていますか。

黒田参考人 我が国の、いわば十五年続きのデフレの原因としてはさまざまなものがあると思います。初めには不良債権問題がございましたし、円高の進行、あるいは新興国からの安値の輸入品の流入、企業の低価格戦略など、そのときそのときでいろいろな要因があってデフレになってきたというふうには思います。

 ただ、それはあくまでも原因の問題であって、物価の安定を確保する責務というのは、基本的にはどこの国でも中央銀行にあるというふうに思っております。

 したがいまして、原因はさまざまであった、今もいろいろな要素が影響していると思いますが、中央銀行としては、何としても二%の物価安定の目標というものを実現するべく、最大限の努力を払うということに尽きると思います。

古川(元)委員 では、総裁は、金融政策でデフレは脱却できる、そのように考えているというふうに認識してよろしいんですか。

黒田参考人 私は一貫して申し上げているわけですけれども、デフレの原因はいろいろあるわけですが、デフレを阻止し物価の安定を確保するという責任は、基本的には中央銀行にあるというふうに思っております。

 ただ、委員も御指摘のとおり、財政政策、あるいは特に中長期的な成長戦略といったものが行われることが、よりスムーズに物価安定目標を達成するという意味で非常にプラスになる。いわば経済全体がバランスした形で、賃金も物価も適切なスピードで上がっていって、経済が好循環をするということを助ける上では、財政政策、それから中長期的には成長戦略というのは非常に重要になると思います。

 ただ、そのことは、そうだからといって、中央銀行の責任がなくなることではなくて、中央銀行はやはり物価安定の目標を達成する責任があるというふうに考えております。

古川(元)委員 最初に私が申し上げた、急速にこれから進む日本の人口減少、高齢化、特に生産年齢人口がこれから半世紀で一三%ぐらい減って、しかも、数でいっても三千八百万人ぐらい減る、こういうことが大きな影響を与えている、そうした問題がある、そういうふうには認識はしておられませんか。

黒田参考人 人口の増加率、特に生産年齢人口の増加率が潜在成長率に大きな影響を与えるということは、そのとおりでございます。ただ、そのことが直ちにデフレかインフレかということを決定するというふうには言えないと思います。

 世界的に見ましても、人口が減っている国あるいは生産年齢人口が減っている国はたくさんあるわけですけれども、その中で、いわば唯一日本だけがデフレに十五年間苦しんできたということは、必ずしも生産年齢人口あるいは人口の動向がデフレかインフレかということに直接影響するのではなくて、むしろ、委員が指摘されているように、中長期的な成長のポテンシャル、潜在成長率には影響すると思いますが、インフレ、デフレの境目を決定する要因ではないというふうに思っております。

古川(元)委員 また、この問題はちょっと深く、機会を改めて議論したいと思いますけれども、金融政策について、もう少し総裁と、また総理にもちょっと聞きたいと思います。

 私、黒田総裁がこの異次元の金融緩和を決める記者会見で、二年間で二%のインフレ目標、そして通貨供給量を二倍にする、そういうのを言っていらっしゃるのを見て、かつて私も大蔵省で勤務をしていたときに、二十年以上前に、当時の黒田さんが雑談の中で私にこんなことを言ったことを思い出しました。

 景気対策で何兆円も使って全国にばらまくよりも、どこか一カ所にそのお金を全部使ってピラミッドでもつくった方がいい、そうすると、景気というのは気分の問題だから、そういうのでピラミッドができれば、その方が気分が変わって景気対策になるんだと。そういうことを雑談の中でおっしゃったことを思い出しまして、今回のバズーカ砲ですか、これは何か、私は黒田さんというのは変わっていないなというふうに思いましたね。

 確かに、総理もさっきからおっしゃるように、人々の意識というか気分は、これによって見事に変わったと思います。ただ、これはやはり劇薬と言っていい、それくらいの金融緩和でありますから、当然、その分、副作用や将来のリスク、これも大きいはずであります。ですから、そうしたことをちゃんと認識して、やはり政策責任者としては、そうした大胆な政策はやってもらわなければいけないと思います。

 特に、今回の金融緩和というのは、これは場合によっては日銀による財政ファイナンスというふうに市場から受けとめられてもおかしくなかったと思うんですね。ただ、それがそうならなかった。私は、これは、今そこに谷垣前総裁もいらっしゃいますけれども、社会保障・税一体改革、三党合意によって、社会保障の安定財源を確保すると同時に財政健全化を達成するという、そうした消費税増税を含めたこの社会保障・税一体改革というのを決めていた、財政健全化への道筋をやはり決めていた、これが前提としてあったからこそ、市場は、この日銀の異次元の金融緩和を財政ファイナンスとは見ないで受けとめたんじゃないか。

 そういった意味では、安倍総理、三本の矢、三本の矢と言われますけれども、矢を射るには弓が必要なんですよね。実は、これは、昨年の社会保障・税一体改革で財政健全化へ向けての第一歩として道筋をつけたというのは、その矢を射るための弓を用意していた、そういった前提条件じゃないかというふうに私は感じます。

 そこで、総理にちょっとお伺いしたいんですが、もし去年、ああいう、社会保障・税一体改革が合意に至らなくて、消費税の引き上げも決めないような状況であったとして、それでも総理は、今回のような異次元の金融緩和、これを日銀に対して要請いたしましたか。

安倍内閣総理大臣 三本の矢については、今、古川委員がおっしゃったように、私は常に三本の矢という説明をしていて、一本の矢だけでできるということを言ったことは一回もないわけであります。

 確かに、金融緩和、デフレから脱却する上において、デフレというのは貨幣現象ですから、これはやはり日本銀行が責任を持って二%という目標を達成してください、ですから、黒田総裁は黒田総裁の責任としてそれをやるということを明確に言っていること、このメッセージが極めて重要なんですね。私もやるけれども、これもあるし、あれもあるし、あれもあるから、私だけがやってもできませんねというのでは、結局これはできなかったわけですよ。

 今回は、まさに二%という物価安定目標をつくって、黒田総裁のところがしっかりと責任を持ってやっていく、そして、私たちは、デフレから脱却する上においてスピードをより速くしていく、そして、さらには地方へもその恩恵が行くように財政政策をしっかりとやっていく、さらには、それを持続可能なものにするために成長戦略をやっていくということをずっと今まで説明していたとおりでありまして、この姿勢は今後とも変わらないんだということは申し上げておきたいと思います。

 その上において、これは、今そういう仮定の話をしても余り意味がない話なんですが、デフレから脱却する上においては、どちらにしろ私は三本の矢の政策をやっておりました。そして、今回、消費税引き上げを判断いたしましたが、消費税を引き上げるということは、今の経済状況がなければ、これは引き上げることにはつながらなかったと思いますよ。ですから、この我々の政策によって消費税を引き上げることができる状況は生まれてきたということでありまして、しかし、それを生み出すためにやったわけではありませんよ。結果としてはそうなってきたということではないだろうか、このように思います。

古川(元)委員 黒田総裁はどうですか。総裁、この消費税引き上げを含めた財政健全化への第一歩の道筋、これが決まっていなくて、あれだけの思い切ったことを決断できましたか。

黒田参考人 委員御指摘のとおり、財政ファイナンスと受け取られますと、リスクプレミアムの拡大から長期金利が上昇してしまうおそれがあるわけでございまして、そうなりますと、量的、質的金融緩和の効果が減殺される可能性があることはそのとおりでございます。

 したがいまして、財政の健全化に向けて政府が今後とも努力していかれる、これは、一月の政府と日本銀行の共同声明の中にも、財政の持続可能性を高めるために健全化を進めるということが書かれておりますけれども、そのことは、今申し上げたような財政ファイナンスではないかと受け取られる可能性を低下させていると思いますし、今回の政府の消費税の引き上げの決定も、いわば共同声明のコミットメントをより一層明確にされた、非常に意義のある決定であるというふうに認識しております。

古川(元)委員 何か、答えているのか答えていないのか、よくわからない答弁ですけれども。

 やはり総裁、相当にこれは思い切った、やはり異次元という以上は、これは副作用も大きい、そうした政策なんですね。ある人に言わせると、日銀はルビコン川を渡ったんじゃなくて、もう三途の川を渡ったんじゃないか、そういうことを言う人さえもいるわけです。

 やはりそれであっては困るわけなんですね。通貨の信認をきちんと維持してもらう、そのためには、先ほど来から話があるように、出口なんか考える時期じゃないというのは、それは今の時点ではそうかもしれません。しかし、いつかはこの異次元のところからちゃんと今のこの世に戻ってきてくれないと困るわけであって、やはりそこのところの責任があるんだということをしっかり認識した上でこの政策をやっていただきたいということをお願いしたいと思います。

 時間がちょっとなくなってしまいましたが、もう一つお伺いしたいと思います。

 今の目の前のことを考えて、将来のリスクやあるいはコスト、そのことについての意識が足らないんじゃないかということのもう一つの例で申し上げますと、これは、原発に対する今の安倍政権の態度であります。この原発に対する態度も、特に使用済み核燃料の処分の問題、こうしたものを考えると、これは極めて深刻ではないかというふうに思います。

 安倍総理、最近、小泉元首相がいろいろなところで脱原発の発言をしておられますよね。先日も、土曜日に新聞の方に投稿もしていますけれども、その中で小泉元総理は、「日本は、原発から生じる放射性廃棄物を埋める最終処分場建設のメドが付いていない。核のごみの処分場のあてもないのに、原発政策を進めることこそ「不見識」だと考えている。」と。

 実はこれが、私は、原子力政策の一番本質的な問題ではないかと思うんですね。捨て場所もないのにこれをやり続けていくということができるか。どこかで処分場がいっぱいになれば、仮に絶対安全な原発ができたとしても、そもそもごみを捨てる場所がなければ稼働することもできなくなるわけです。そうなると、その時点から以降の世代は、使用済み核燃料の維持管理、これだけでも膨大なコストとそしてまたリスクがあります。それをしょわなければいけない。

 しかも、昨年の秋に学術会議の方の報告書で、日本の場合には、「火山活動が活発な地域であるとともに、活断層の存在など地層の安定性には不安要素がある。さらに、万年単位に及ぶ超長期にわたって安定した地層を確認することに対して、現在の科学的知識と技術的能力では限界があることを明確に自覚する必要がある。」こういう報告書を出していて、これは事実上、日本国内には最終処分に適した地層は、現時点の科学的知見を考えれば存在しないということを指摘しているわけなんですね。

 そういうことを考えれば、原発をとにかくこれからもどんどんとやっていこうということではなくて、原発がなくても済む社会にしていく、やはりそうした方向をきちんと示していくということが極めて重要じゃないか。我々もそうした立場で、私自身も担当大臣として、去年の秋、まさにこの問題があるからこそ、私はそうした最終的な判断もさせていただきました。

 安倍総理の、この小泉元総理の発言に対してどのようにお考えになっているか、そしてまた、使用済み核燃料の最終処分、これが今の科学的知見では、きちんとこれを処分できる、そういうところは見当たらない、この報告書についてどのように考えているか、その御見解を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 私の政治の師匠は小泉元総理と森元総理でありまして、お二人のけいがいに接することができたことは私の政治家としての喜びであった、このように思います。

 原発を含むエネルギー政策については、いろいろな見解がございます。しかしながら、政権を預かる立場の責任者としては、いかなる事態においても国民生活や経済活動に支障がないように、エネルギーの安定供給、エネルギーコストの低減という観点も含めて、責任あるエネルギー政策を進めていく責任がある、こう考えています。

 この際、原子力比率は可能な限り引き下げていかなければならない、そういうふうにも考えているわけでありますが、高レベルの放射性廃棄物の最終処分については、現在も処分地選定調査に着手できていないという現状を真摯に受けとめなければならないと考えております。国として、処分地選定に向けた取り組みの強化を、責任を持って検討していきたいと思います。

 そして、高レベル放射性廃棄物の最終処分方法として、地層処分については、二十年以上の調査研究の結果、我が国においても技術的に実現可能であると評価されています。一方で、地層処分について専門家間でさまざまな議論が存在するのも事実であります。このような観点も含めまして、今後、これまで以上に専門家での丁寧な議論を実施していく、そして同時に、安全性、信頼性の一層の向上に向けた研究開発を進めていくなど、今例として出されました日本学術会議の提言も踏まえて、国として、最終処分へ向けた取り組みの強化を責任を持って検討してまいります。

古川(元)委員 地層処分は技術的には可能かもしれないけれども、その地層処分に適した地層というのが、今の科学的知見では確証を持ってそれが存在すると言えないというふうに言っているんですよね。このことはやはり極めて大きな深刻な問題だ、ぜひその認識を持っていただきたいと思います。

 これで質問を終わりますけれども、今は大事です、もちろん、目の前の生活、そして我々のこれからの足元のところは大事ですけれども、しかし、それだけで、将来に対するリスクやコスト、そうしたものを忘れて突き進んでいっては、気がついたときには、これはとんでもない、取り返しのつかないことになりかねない。

 私どもは、そうした視点から、やはり将来の世代、あるいは未来への視点、そうした点から、これからも今の政権に対しての問題をしっかり追及していきたい。そのことを最後に申し上げて、質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

二階委員長 この際、篠原孝君から関連質疑の申し出があります。長妻君の持ち時間の範囲内でこれを許します。篠原孝君。

篠原委員 民主党の篠原孝でございます。

 基本的質疑ですので、このパネルをずっと掲げて、問題点は三つあるんですが、問題点というよりも安倍総理の政治姿勢について、この三点を材料にしながらお尋ねしたいと思います。

 総理、非常に今、何事も順調ではないかと思っております。今、何か、民主党がやらなかった、自民党がやったとか、やったとかやらないとか、余り品のよくない議論が続いておりましたけれども、僕は、それぞれみんな努力してやっているので、やったことはやったことで認めて、だめなのはだめだということで、お互いに議論し合って、切磋琢磨してやっていけばいいんじゃないかと思います。

 それで、今、問題が山積しています。

 例えば、復旧復興、原発処理、デフレ、雇用とかいうのは、これはやらなくちゃならない問題だと思います。山積みしているんですけれども、そこに、やらなくてもいいような、今ほかにいっぱいあるのに、憲法改正、NSC、集団的自衛権、こういったものも出されておるわけですね。僕は、余裕があるんだったらそれはそれでいいんですが、どうもやり方がちょっとこそくだと、露骨な言葉ですけれどもね。安倍首相らしくないんじゃないか。

 どういうことかというと、私は、憲法審査会、二年連続所属しておりまして、議論いたしました。突然出てきたのは憲法九十六条で、憲法改正の発議を衆参両院の三分の二でする、それを二分の一にするという、非常に横道から変なアプローチがあって、最近それはちょっとなくなったんですが、これは余りまともな道じゃないんじゃないか。

 それからもう一つ。そっちもあるんですけれども、集団的自衛権の行使を認める、これは、こういう考え方は僕はあってもいいと思います。賛成しているとかいう、賛成、反対じゃないんですが。それを何か、担当している、それで政府の伝統的な考えであると内閣法制局長官があそこに来ては答えている、その法制局長官をかえて解釈を変える、長官をかえて解釈を変えるというんですね。私は余りよくないやり方じゃないかと思っております。

 安倍総理というのは、何事も正攻法です。三本の矢をばたばたばたと射るんだ、三本ばかりじゃなくて三百本撃つ、そういう気概でやっておられると思います。しかし、この二つのやり方は私は絶対賛成できないんですけれども、総理、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 まさに私はさまざまな課題に正面からぶつかっているつもりでございまして、憲法改正についても、では、なぜ九十六条かということであります。

 九条は憲法改正の要綱でありますが、憲法改正をするために今、三分の二の発議が必要でありまして、これは、衆議院、参議院、それぞれであります。これはいわば極めて高いハードルだというふうに考えているわけでありますが、その後に国民投票に向かうわけであります。

 これは、明治の欽定憲法も昭和憲法も両方とも国民投票は経ていないわけでありますし、国民投票と同時に、いわば衆議院の解散を行って憲法改正ということを問うたわけではなくて、まさにGHQの占領下にあってこれはできたものでございます。

 そこで、では、なぜ九十六条かといえば、三分の一をちょっと超える人たちが反対をすれば、たとえ国民の六割、七割が変えたいと思っていても、国民投票すらできないのはおかしいではないかという問題意識であります。

 これは、二分の一に発議要件を下げたとしても、国民投票は同じであります。国民投票によって過半数の支持を得なければ、国民の過半数の支持を得なければ、憲法は変えられません。九十六条を私たちの改正案によって変えたとしても、それは変わらないわけであります。まさに国民が変えるんですね。国民の皆さんの手によって変えるわけであります。

 私たちが今主張しているのは、国民の皆さんにもっと委ねるべきではないか、つまり、国会の中に閉じ込めておくべきではないというのが我々の考え方であります。

 そのための改正についても、これは三分の二、それぞれ三分の二を経なければ二分の一に引き下げるものはできないわけでありますから、三分の二を二分の一にするために二分の一でやったら、横から入ったと言われて、そうしたら憲法違反でありますが、当然それはだめですが、まさに正々堂々と三分の二を獲得して、さらに国民の二分の一という高いハードルを経なければいけないわけであります。

 いずれにせよ、残念ながら、まだこれは国民的な過半数の支持を得るには至っておりませんし、今の議論が、十分に国民の中において議論が熟されているとは言えないわけでございますから、我々も努力をしていきたいし、そして、どこからやるかということについては、私はこの九十六条ということを申し上げまして、その中で議論がまさにスタートしたと思いますが、どこからということについては、これから憲法全般についてもいろいろな議論があるでしょう、その中で議論が進んでいったところからということもあるでしょうし、そういうことはこれから大きな議論の中で考えていきたい、こう思っているところであります。

 そして、憲法解釈の問題でありますが、憲法解釈の問題については、今、これは集団的自衛権の解釈の問題だけではなくて、集団安全保障の中における武器の使用とか、今の個別的自衛権の中でこれはどうなのという問題もありますから、そういうことを、こういう類型を見ながら、果たして今のままでいいかどうかという問題意識について真摯な議論を行っているわけでございまして、法制局長官といっても、これは政府の中の人事でありますから、この中で長官がかわったということでありますが、これは、それをかえて、彼に解釈を変えさせるということではなくて、まさにこれは、しっかりと法制懇において議論を行い、そしてさらには与党においても行い、その中で決めていきたい、判断をしていきたい、このように考えております。

篠原委員 三十分しかないので、端的に答えていただきたいと思います。

 資料をちょっと、国民の皆さんにはお示ししていないんですが、皆様方のお手元にお配りしてあります。

 政治主導の人事。長官に解釈させるんじゃないというのは当たり前ですね。政治家が、我々がやっていけばいいんです。

 しかし、もう一つ、国家公務員制度の改正というのが話題になっていますので、ちょっと見ていただきたい。私がつくった資料です。これは別に有識者懇に判断してもらったんじゃなくて、私が勝手にマル・バツをつけているんです。こっちもそうですけれどもね。それなりにきちんとした判断だと思います。

 政治主導の人事というのは、何か民主党政権になってから急にやり始めたような気がします、前からもあったんですけれども。余りいい例が印象に残っていないんですね。

 ちょっと見ていただきたいんです、我が政権時代。前原さんはいなくなりましたけれども、前原大臣のところもあります。見てください。うんと若造を、隣の省庁のドロップアウトを新設成った観光庁長官にしているわけです。こんなの、役人の立場からしたら、やる気がなくなりますよ。わかりますよ。

 それから、総理もいいとおっしゃいますけれども、何とかセメントの資材部長が、英語もできないのにいきなり神戸製鋼のニューヨーク出張所長になるようなのが、私は、例は悪いかもしれませんけれども、余り極端なことをやってはいけないんじゃないかと。

 残念ながら、民主党のいい例を探そうと思ったら、余りいい例が見つからなかったんです。

 では、ほかのはちゃんとやっているかということは、赤松農林水産大臣は、私はここにかかわっていたんですが、我々の農業者戸別所得補償はだめだなんとほざいていたんです、この次官は。即刻首にすればいいのに、しないで、そのまま使っているんです。こんなのは政治主導でばっとやるべきだったんですね。

 次に、自民党政権。

 ちょっと、関係者がこことあっちにおられるのが一番上に書いてあります。

 これは、小池防衛大臣がすぐさま守屋武昌次官をかえると言ったら、もめたんですね。よくわかりませんけれども、思慮があったのか、小池大臣の女性の直観が正しかったのか、このころ、守屋さんの不始末があった、しょっちゅうゴルフをやっていたとかというのは全然知られていないんです。こういうのは政治家だからわかるわけです。(発言する者あり)選んでいないけれども、いろいろごちゃごちゃした。こういうところがあるんだろうと思います。

 その下の、甘利さんの、これはちらっと書いてあったんですけれども、産政局長からだけ事務次官に経産省はなっていたというのを、資源エネルギー庁長官がやった。こういうのはいい政治主導だと思うんです。丸です。

 だけれども、下は、やはりこれは誰が見てもよくない。僕は、偶然ですけれども、小松一郎さんもよく知っているんです。山本さんもよく知っているんです。

 小松さんなどは、ちょっと余計な話ですけれども、ジュネーブ代表部の参事官でした、ウルグアイ・ラウンドのころ。ほかの、電報を書いても、そのころはまだ手書きなんですが、字もきれい、内容はもっと立派です。僕は彼の電報を見ると、ウルグアイ・ラウンドがどう動いているかというのがわかったんです。知らなかったですけれども、名前はよく知っていました。

 だから、こういう立派な人を選ばれるのはいいんですけれども、やはり条約の審査なんというのは内閣法制局ではちょっとしかない。ほとんど法律ですよ。だから、こういうのだけでこういうふうにやるのは、私は、よくない、悪い例だと思います。

 こういうことでやるんじゃなくて、おわかりになると思いますけれども、正々堂々、安倍総理がお答えになったとおりですよ。国会で議論をして、三分の二で、もう三分の二になりかかっているわけです、ほかの党も入れたりしたら。どんどんやったらいいんですよ。新藤大臣も古屋大臣も、正々堂々やった方がいいんじゃないですか。やるのならやってください。そういうやり方でやっていただきたいと思います。僕は、そういうことができる内閣だと思います。

 次に、原発。原発を見てください。原発、これは問題です。

 ここに三角が書いてあります、アンダーコントロールと。総理の得意な英語ですね。よくわかりますよ。英語で一生懸命やられた。それは、IOC総会に行って、外国人記者が六人質問した、そのうち四人が原発問題だった。わかります。それを払拭するためにアンダーコントロールだよと総理の口から言う。それで安心したかどうか、東京オリンピック開催が決まったわけです。

 ですけれども、本当にそうなのか。私は、アウト・オブ・コントロールというのが正確だと思うんです、本当は。しかし、外国でそんなことを言う必要はないと思う。だけれども、言った以上はきちんとやっていただきたい。

 僕は、原発絡みの、結構かかわっているんです。さっき原田元外務委員長にちょっと伺ったんですが、原田さんと一番下っ端が、二〇〇五年の十一月、外務委員会の視察でチェルノブイリに行ったんです。行ったといったって、そこが視察地になっていたんじゃないです、問題は起きていませんから。真面目な委員長と私が、朝六時に起きて、一時間半車を飛ばして行って、三十キロ離れた入り口でツーショットを撮ってきたんです。絶対行ってみたいと。そのときの帰ってきた、自慢話になって済みませんけれども、ブログに、日本にも同じようなことが起こるのではないかと書いていたんです。それが起きたんです。

 その後、今度は農林水産副大臣のときに、私は、二〇一一年四月二十五日の、二十五周年の記念のときに行っているんです。国会議員として初めて石棺の近くに行きました。二十二・五マイクロシーベルトで、案内してくれたウクライナの非常事態省のナンバースリーぐらいの人が、もう早く車に乗れというふうに盛んに注意していましたけれども、もう六十を過ぎているからどうなってもいいんだとかといいかげんなことを言って、見てまいりました。

 それで、この間、オンカロ、小泉元総理、余りこれを出すと意地になるからやめておきますけれども、同じところ、オンカロに行ってまいりました。二時間半かけて、一番地下の、五百メートル地下に。あの小さなフィンランドが、十万年間、生物界と一切接触できないようにするというんです。これは、スウェーデンのエスポも、それからフランスのビュールもやっている。アメリカは、ユッカマウンテンというところでやり始めたんですが、頓挫している。また再開とかしていますけれども。

 原発が設置できるかどうかの条件は、我が方は何か活断層とかなんとか言っていますけれども、ほかの国は、使用済み核燃料をちゃんと処理できる計画ができたかどうかが、建設、再稼働なんかの条件なんです。日本はそこが非常に無責任なんです。

 本当にコントロールできていると言えるんでしょうか。総理にお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 福島第一原発では、貯水タンクからの汚染水漏えいなどの個々の事象は確かに発生をしているわけでありますが、福島近海での放射性物質の影響は発電所の港湾内の〇・三平方キロメートルにブロックされておりまして、このため、全体として状況はコントロールされているというふうに考えております。

 汚染水による放射能の海への影響を福島第一原発の港湾内にとどめ、そして国民の健康を守っていくことが極めて重要であるというふうに認識をしております。

 そのため、汚染水問題に関しては、先般決定した基本方針にのっとって、国が前面に立って、今委員が御指摘になられたように、国際的にも約束をしたわけでありますから、しっかりと守っていかなければいけない、こう決意をしているところでございます。

篠原委員 ちゃんとやっているというのは、それはそれでいいんだろうと思います。再稼働というのも、僕はこれもまた信じられないわけです、こんな状態でほかの原発を動かすというのは。

 ですけれども、外国が一番怒っているのは何かというと、こういう人たちに総理や関係大臣が接しられているかどうかも聞きたいんですけれども、我々、環境委員会の一行でオンカロに行って、いろいろな関係者と話しましたけれども、プライベートで話すと、日本が原発を輸出するということについて、何を考えているのかと。当然ですよ。自分のところでつくれない。

 ちょっと例で出します。ホリドールというのは、私はリンゴ農家の生まれ育ちです、ホリドールをさんざんぶっていました。ホリドールをぶってくるというんです。後から、催奇性がある、発がん性があると言われて禁止になるんです。禁止になっても、では、ベトナムやタイやインドネシアは、いっぱい、熱帯で虫ががんがん湧くから、ホリドールを使いたいから輸出してくれといって、それを平気で輸出するんですか。例は完璧に同じじゃないかもしれませんけれども、それと同じことをしているわけです。

 総理の本、二度目、読ませていただきました。「美しい国へ」というのがありました、それが「新しい国へ」というのが出ている。

 総理は、道徳、徳育、世界に尊敬される国にならなければならない、誇りを持たなければいけない、金銭的価値だけでは動いてはいけない、日本はそっちの方は成功したけれども、大事なものは忘れたと。

 しかし、資料を見てください。総理が外遊をされる。元気になられて、これはいいことだと思います。ASEANもいっぱい行かれるので、オバマさんは来られなかったりしますけれども、間隙を縫ってどんどん行ってください。日本のプレゼンスを高めてください。しかし、どうも、そこで何をおっしゃっているかというと、何か原発を売り込むことをいっぱいされている。これだけやっておられるんです。私は、これは異様だと思います。総理がこういうことに余り口を出されるべきでない。

 ささいな例かもしれませんけれども、農林水産副大臣のときに、中国農産物輸出というのがありました。私は鹿野大臣に申し上げて、こんなことは一切やらないと言ったんです。大臣は立派でして、やらなくていいと。おまえの御高説は懲り懲りだと言って。

 どういうことを言ったかというと、中国の大金持ちが、日本の安全な食べ物、どうせあの人たちはいろいろなことをしてもうけているに違いない、その人が、一般庶民が手が出ない二十倍のコシヒカリ、長野県のリンゴ「ふじ」一つ三千円、さっきイチゴの話が出ましたけれども、イチゴ一粒三百円、そんなものを外国に輸出して食べて、日本の非正規雇用者が事故米、汚染米寸前の米を食べている、それは民間がやるんだったらいい、しかし、国がそんなところへ手をかすべきじゃないと僕は言いました。林大臣、よく聞いておいてください。それは民間がやるんだったらいいと。

 私は、それと同じじゃないかと思うんです。モラルの欠如というのがある。一番そういうことに意を砕いておられて、六年前の政権のときは、教育基本法の改正、それから徳育と連呼されていました。これが盛んに言われない。言われないというのは、自覚症状があるから言われないんじゃないかと思いますけれども、この点、どう思われますか。僕は絶対に許されないことだと思います。

安倍内閣総理大臣 我々は、一昨年、福島第一原発において過酷事故を経験したわけであります。ああした過酷事故は決して起こしてはならない。

 この決意は今ももちろん変わらないわけでございますが、同時に、それによって培った経験があるわけでありまして、そして、対応していくノウハウもあるわけであります。そして今、世界では最も厳しい基準によって再稼働するかどうかということを判断していく、原子力規制委員会が判断をしていくわけでございますが、そうした、我々、あの経験を生かして、この経験を世界と共有をしていく責任があるだろう、こう考えているわけでありまして、その中において、我々の高い水準の技術、そしてそのノウハウを世界に出していくべきだろう、このように判断をしているところでございます。

篠原委員 そこがちょっとねじ曲がっていると思います。

 ドイツのメルケル政権、社会民主党の政権でしょうか。違います。コール首相のまな娘と言われているメルケル首相です。彼女というか彼ら、福島第一原発の後、三カ月で即座に原発停止を判断された。どうして判断したんでしょう。美しいドイツの国土を汚すわけにはいかない、愛すべきドイツ人の健康をこれ以上害するわけにはいかない、だから原発はやめるんだと。そして、日本の、東京オリンピックの開催が決まるときに、汚染水が出ていました。そのとき、僕はヨーロッパに行っていたんです。ドイツの新聞の一面に出ていました。メルケル首相は、私の判断は正しかった、日本はまだ汚染水を垂れ流していると発言していました。

 僕は、保守と左翼とか云々じゃないと思います。日本の国土を守ろうということがあったら、日本の三%が住めなくなっている、十六万人が避難している。島も大事です。しかし、日本のこの国土を汚していいんでしょうか。靖国神社の英霊は、多分、そっちの方をちゃんとやれと言うんじゃないかと私は思います。

 次に、TPPです。これもほかの人たちが言っているので、僕は余り言うのをやめます。

 このノーTPPバッジ、ブルーリボンもやっていいんですが、私はずっとこれをやっています。余り、やっている人は少ないです。

 それから、もう一つこれを見てください。よく見えますか。ちょっと目がかすんできた人たちにはよく見えないと思いますけれども、「STOP!!TPP」なんです。

 これは、総理、御存じだと思います。全国的に使っているわけじゃないんです。山口県農協中央会が、えんじと紺の二セット。林さん、知っていますか。僕は、ちょっと平岡秀夫さんの応援に行ったら、農協の組合長に勧められて、十本買ってきて、みんなとられちゃって、また十本買ってきて、毎度やっていますけれども、取っかえ引っかえやっています。ちゃんと洗濯もしています。安いですから、みんなやってください。

 こういう考えがあるんです、いいですか。TPPと保守の関係もちょっと考えていただきたいんです。うちの党の保守勢力はちょっと違うんですね。まあ、わかりませんけれども、そんな、何を保守というのか。

 だけれども、稲田さんをずっと私はかねがね尊敬しておるんです、女性で保守の姿勢をずっと貫いておられて。大臣になられても同じだと思いますけれども、TPPには大反対といろいろ発言されているはずなんです。なぜ反対なのか、お聞かせいただきたいんですが。

稲田国務大臣 私も、委員が御指摘のとおり、日本の伝統とか先人から受け継いだ美しい農地やそういったものをきちんと引き継いで、それをよりよきものに創造して、また次世代に引き継いでいくというのが保守の態度だというふうに思っております。

 そういう観点から、民主党政権下におけるTPPの問題については反対もし、自民党内でも議論をいたしました。そして、そういう国柄を守るために、今、自民党ではさまざまな基準を設けて、そして、甘利大臣以下、難しい交渉に臨んでおられるというふうに認識をいたしております。

篠原委員 余り女性をいじめるのも趣味じゃないので、やめておきます。ですけれども、しゃっきり言えない立場におありになるかと思いますが、気持ちはふつふつと伝わってきております。

 これもよくお考えいただきたいんです。日本の伝統文化、社会制度、これは僕は関税だけで言っているんじゃないんですね、制度を全部変えたりする、これを安倍総理によく考えていただきたいんです。

 日米共同で世界共通のルールづくりをする。結構です。しかし、憲法は、アメリカがどうこうして、ちょっと自主憲法にしなくちゃいけないんだと。憲法もそうですけれども、ほかのルールだって、日本のを粉々にされるようなルール改正というのは僕はよくないんじゃないかと思います。ですから、およそ、日本のいろいろな制度を守ろうと。

 それで、本の中で見ました。そうしたら、安倍総理は、保守というのは日本及び日本人について考える姿勢だと書いておられました。僕もそれは賛成です。誰も保守だなんて言えないと思います。

 しかし、自分たちがやってきたこれはいいことじゃないか、守っていこうというもの、どうもそこが違っていて、勘違いしておるんですね。強い国にして、そして経済も強くして、きちんとした軍隊を持って守っていくのが保守だと。違うんじゃないか。

 では、今、政府・与党、自民党の中で、外から見ているんですよ、どなたが一番TPPに反対で声を上げておられるかというと、自主憲法制定で憲法審査会の会長をしておられる保利耕輔さん、それから尾辻秀久さんです。靖国神社にもお参りされています。私は、真正保守はそうなって当然だと思っているんです。

 だから、僕が一番の保守なんです。原発もそうです。今、民主党にいますけれども、保守党というのがあったら、保守党に一番ふさわしいのは私ですよ。だから、僕はこれを考えていただきたいと思うんです。それだったらそれで、よく考えていただきたいんです。

 一二年末の総選挙の公約というのを、私はいいと思います。これも三角してあります。向こう、見えますかね。非常にいい文章だ。どなたがお考えになったか、「聖域なき関税化を前提とする限り交渉に参加しない」と。

 この間、私の長年の友人の手嶋龍一さんの話を聞きましたら、自民党の最高文学がこの文章に集約されていると言うんですね。聖域なきというのは、もうこのときに政権交代を見込んで、聖域があればいいんだということを言っていたと。僕は、それを信じません。そこまでずるい人ばかりだったら、自民党はとっくに政権与党じゃなくなっています。一部にそういう人がいたかもしれません。いたら、けしからぬやからだと思います。こんなごまかしを続けていただきたくありません。

 ずっとやってきて、役割分担がいろいろあるわけです。

 さっき齋藤さんが、議会が反対すると。僕は、ウルグアイ・ラウンドとかそんなのをずっとやってきました。EUはずるいんです。何かやると、いやいや、フランスが大反対しているからと。本当にフランスは反対しているんです、農業関係のに。

 では、我が日本国はどうかというと、いや、自民党のうるさい人たちが、うるさいなんて言っちゃいけないですね、立派な人たちが反対している。そういうことを言うべきだし、そういう役割分担になっているのに、僕の友人で、いい人なんですけれども、西川公也TPP対策委員長が、全然役割を、ちらっとバリ島で、何か、五百八十六品目をちょっといじくってより分けてもいいとかおっしゃった。違うんですね。順序が逆で、政府がやろうとしたのを党が抑えるとかいうことをしなければいけないんです。これは、やはりよくないんです。

 それで、公約を、ちょっと資料を見ていただきたい。一番最後のページです。公約の二〇一三年のJ―ファイル、もっと前のもあるんですけれどもね。それに、国益、農林水産分野の重要五品目の聖域を、ほかにも健康保険とかあるんですけれども、最優先し、それが確保できない場合は、脱退も辞さないものとすると非常にきちんと書いてあるんです。

 だから、政府と党の役割がちょっと逆転しちゃったような気がするんですけれども、もし、この五品目、聖域でなくなって、いじくって相当関税ゼロにせざるを得ないような事態になったら、当然、この公約どおり脱退されるんでしょうねということを総理にお聞きしたいんですが、ちょっと総理の答弁は重過ぎると思いますので、甘利担当大臣にお聞きしたいと思います。

甘利国務大臣 バリでも先生にお目にかかりまして、そのネクタイも拝見をさせていただきました。いつもされているということは、よくわかりました。

 私どもは、二つの選挙で政権公約をいたしております。

 一つ目は、そういうことを前提にするんだったら入れない。しかし、日米首脳会談で、前提とはしない、聖域とは交渉の中でかち取っていくものということでありました。

 そして、参議院選挙では、守るは守り、攻めるは攻める、そして、国益に資する最善の道を選択するということを参議院の政権公約で掲げてあります。

 その上で、J―ファイルの中に具体的なことが記載されてい、そして、国会決議があるわけであります。

 政権公約をしっかり守る、そして、J―ファイルやあるいは国会での決議、私も、交渉の担当大臣としてしっかり受けとめて、国益に資する最善の道を求めて再度努力をしていきたいというふうに思っております。

篠原委員 最後に二つ。

 ぜひ、この関係では、やはり特別委員会をつくってきちんと議論すべきです。一刻も早く特別委員会をつくって議論していただきたいというのが一つ。

 それから次に、総理、頑張っていただきたいと思います。ちゃんとこれを肝に銘じて、安倍スタイルでやっていただきたいと思います、正々堂々と。

 ちょっと見ていると、やはり総理がくるくるかわるのはよくないです。絶対長くやっていただきたい。それは余り長くやってもらわないで、この次の総選挙ぐらいまで頑張っていただくというのが一番我々は都合いいんですけれども、やっていただきたい。

 見ていますと、ちょっと慢心がおありになるような気がする。我が党の三年間、それが過ぎたような感じになって、よく見ていると不安になってくるんです、総理がちょっと民主党的な総理になりつつあるのではないかなと。

 そういうふうに絶対なられないことをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

二階委員長 この際、大串博志君から関連質疑の申し出があります。長妻君の持ち時間の範囲内でこれを許します。大串博志君。

大串(博)委員 民主党の大串博志でございます。総理、よろしくお願いします。

 きょうは、三十分時間をいただきまして、予算委員会で現在の国政の重要事を議論させていただきたいというふうに思います。

 きょうは、私自身も、先ほど篠原委員からも話のありましたTPPの課題、あるいは財政政策などについての課題等々を議論させていただければというふうに思います。

 まず、TPPですけれども、今、篠原議員から脱退の話もありました。私は今、衆議院の農林水産委員会の筆頭理事の仕事をしております。この立場からすると、このTPPがこれだけ動きのある中で、やはり国会を早く開いてほしかったという思いが非常に強くあります。なぜなら、最終的にTPPの各国合意が成った折には、国会で承認するかしないかという責任を負う立場に私たちはなります。

 農林水産委員会は、御案内のように決議もしております。そういう中でございますので、閉会中審査も求めながら、この夏ずっと来てまいりました。しかし、与党の皆様には、この閉会中審査を受けてもらうことなく、かつ、国会を早く開いていただきたい、TPPの進捗もあることなので国会の場で議論していただきたいという声も届かないまま、先週やっと国会が始まった、こういう状況でございます。

 ですから、ある意味、国民の皆様も含めて、このTPPはどうなっているんだろうということで、待ちに待った国会の議論ではないかと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 まず、総理にお尋ねしたいと思います。再三おっしゃっていらっしゃいますが、私からも確認させていただきたい。

 TPPに関して、公約を守る、党で言ってきたことは守る、あるいは、農林水産委員会、衆参で決議したことを守るというふうにおっしゃってきていらっしゃいます。

 このことをいま一度確認させてください。

安倍内閣総理大臣 我々、参議院選挙において、守るべきものは守り、攻めるべきものは攻める、国益をしっかりと守っていきますという趣旨の公約をいたしました。公約はたがえてはならない、このように考えておるわけでありまして、そして、衆参の両院の委員会で決議がございました。この委員会の決議の趣旨を体して、しっかりと強い交渉力を持って国益を守っていきたい、このように考えております。

大串(博)委員 いま一つ、総理、確認させてください。

 本会議でも総理は質問に答えて述べられました。このTPPに関しては、国民の皆さん、どういう議論になっているのか大変知りたいという声が多うございます。各国政府とも、交渉に参加している国は、いろいろな方法を通じて情報開示を国民の皆様にやっているという状況にございます。

 国民の皆さんにできる限りの情報開示をしていくということ、国会でも述べてきていらっしゃいますけれども、いま一度その御存念を教えていただければと思います。

甘利国務大臣 もちろん、出せる情報と出せない情報は、交渉の性格上ございます。しかし、出せる情報につきましては節目節目にそういう機会を持たせていただいているところでありますし、ステークホルダー会議もかなりの頻度で開催をさせていただいております。他国に比べましてそういう機会を持っている回数が少ないとは思っておりません。

大串(博)委員 情報開示をできるだけしていきたい、そういう政府としての方針だというふうに理解しました。

 その上で、本当にそうなっているのかということを確認させていただきたいと思います。

 私たち、七月の末から本交渉に日本は入りました。マレーシアの会合です。それ以降、いろいろな情報が国会、そして国民にも出てくるものだろうと思って、いろいろな会議を政府とも設定してもらいました。しかし、返ってくる答えは一辺倒でありました。TPPは秘密保持合意が各国との関係であるから、これ以上の情報は出せませんということを繰り返し政府から述べられました。こういったことが続く中で、ほとんど情報が出てこない。みんな隔靴掻痒の感を覚えているというのが現状じゃないでしょうか。

 秘密保持合意、TPPというのは非常に特殊な体系をとっているんだ、この秘密保持合意というのをまず結ばされた、こういうふうな説明でございます。

 甘利大臣、ちょっと教えてください。秘密保持合意と言われますけれども、誰に対するどういう情報を出しちゃいけないんですか、どういう情報なら教えていただけるんですか、教えてください。

甘利国務大臣 これは、日本に限らず、各国がTPPに加盟するときに、その最終場面で秘密保持契約にサインをいたします。そこでそれを誓約して初めてメンバーになれるわけであります。

 中身について詳細に何をどうということをお話しすること自身、やはり機微な話だと思いますけれども、テキストやそれに関する資料や、あるいは各交渉の間での各国とのやりとり、それは少なくとも外へ出してはいけないということになっております。

 もちろん、全ての参加国がこれはいいという合意が成り立てば出せますけれども、そうでない限りは出せないということであります。

大串(博)委員 情報開示に関するこの政権のスタンスが非常によくわかると思うんですね。すなわち、秘密保持合意の中で、何が出していい情報で、誰にどういう情報を出していけないのかも言えない、そういうお答えなんです。

 しかし、資料をきょうお配りさせていただいていますけれども、二ページ目を見ていただきますと、これは、USTR、米国通商代表部のホームページの資料です。「TPPの透明性について」というところで、線を引っ張っているところを見ていただきますと、これは何を書かれているか。英語ですけれども。

 よく言われます、TPPというのは非常に特殊で、秘密保持合意なるものを入り口で結ばされるんだ、非常に特殊な合意なんだと言われますけれども、何のことはない、アメリカが書いているのは、いつもの慣行のように秘密保持合意を結ばせていただいています、アメリカ政府、こういうふうに書いているんです。どういう考え方でその秘密保持合意を結んでいるかというと、通常の考え方に基づいて、こういうふうに繰り返し書かれています。

 しかも、その下線部の下の方を見ていただくと、どういうふうな内容を出して、どういうふうな内容を出せないかということに関して、交渉の提案やあるいは相手方から言った提案、これは、政府の中の人間、さらには、ドメスティック・トレード・アドバイザリー・プロセスとあります。つまり、政府が国内で相談をしなければならない人たちには見せていいよとちゃんと書いてあるんです。

 次のページを見ていただきますと、ニュージーランドの貿易通商省のこれもホームページです。

 四ページを見ていただきますと、御丁寧に、ニュージーランド政府として、ニュージーランドはTPPの前のP4という初期段階のTPP合意の寄託国でございましたので、責任を持ってわざわざひな形まで、つまり秘密保持合意のひな形までホームページに開示しています。そこにも、先ほどのアメリカのホームページに書かれているのと全く同じように、ドキュメント、つまり、交渉のドキュメントは、政府の人間、そして政府の外の人間で相談をしなければならない人に対してのみリリースするんだというふうに明らかに書いてあるんです。

 各国が秘密保持合意に関してここまで言っている中で、なぜ日本だけ、誰に何を言えるか言えないか、これも言えないという、情報を開示しない態度をとるのは、そもそも国民への情報開示の態度が極めて薄いと言わざるを得ないと思うんですけれども、総理、どうでしょうか。

甘利国務大臣 それでアメリカから具体的にはどういう情報が出てきたでありましょうか。

 これは今、この資料の中で中略、後略とありますね。後略が大事なんでありまして、その以前は、今までの条約についてはこういうふうにしてきた、後略で、しかし、つまり、TPPは委員会メンバーと相談しているということしか書いていないはずであります。今までと同じようにTPPもやるとは書いてありません。

 それは、今までも条約というのは機密性は当然あります。ばらばらいろいろな交渉の過程で話が出ていったら、まとまるものもまとまらないということはあると思います。それに加えて、後段でTPPではと、前段と書き方は違えてあるはずであります。それが証拠に、アメリカは、そう機微な情報というのは出ていないと思います。

大串(博)委員 私が申し上げているのは、先ほど甘利大臣が口頭でも言ったようなことを各国は文章にしてホームページにも載せているということなんです。どういう文書は出せて、どういう文書を誰には出せないかと。しかも、政府の外の人間であっても、交渉に関して相談するべき人間がいたら、そこにはドキュメントをリリースできるというところまで書かれているんです。そのようなものが今回の秘密保持合意なんです。それも、一つ一つ、誰に何を言えるかも言えないという態度をとっているということが、TPP交渉全体について情報を非常に開示しない政府のスタンスをあらわしていないかということを私は申し上げているんです。

 今、特定秘密保護法案の話もございます。政府が恣意的に特定秘密の範囲を決められるのではないかという国民の皆さんの非常な心配があり、この法案にもいろいろな議論が国民的に出てきています。

 こういうことを踏まえて、総理、本会議での答弁にも、情報開示はできるだけしていくというふうにおっしゃいました。これらの事実関係を踏まえて、政府として情報開示は徹底的にやっていくんだという発言はできませんか。

安倍内閣総理大臣 当然これは、委員も御承知のとおり、交渉事ですから、お話しできるところとお話しできないところがございます。

 これまでも、私自身が、TPP交渉に臨む安倍政権の基本的考え方等について国会や記者会見等の場で御説明をし、国民にTPP交渉への理解を深めていただくように努力はしてまいりました。

 また、交渉会合の前後に、与野党の会合で交渉の状況について御説明したり、関係団体や地方公共団体等に対し随時説明会を開くなど、できる限りの情報提供をするように努力をしております。また、関係団体や国民から広く御意見をいただく機会も設けてきておりました。

 実際、交渉会合の現場には、与野党の議員の皆様、あるいはまた農業団体、経済団体、市民団体等の方々が来訪し、甘利大臣や鶴岡首席交渉官や担当者から交渉状況について説明を行い、また意見交換も行っているわけでございまして、交渉会合の終了時には、交渉現場に来訪した関係団体に対して毎回政府から報告を行っているところでございます。

 交渉から日本に戻ってきてからも、その都度、関係団体や地方公共団体への報告会を行い、交渉結果の報告をするとともに、意見を伺う機会を設けているわけでございまして、今後とも、できる限り国民への情報提供に努めていくとともに、国民の声をしっかりと踏まえながら、交渉を通じて国益を実現していきたい、このように考えております。

大串(博)委員 情報開示をしっかりしていくんだという思いを国民に信じさせてほしいんです。そのためには、一つ一つ、まさか疑われるようなことがあってはいかぬと思うんです。例えば、まさにこの秘密保持合意に関する情報開示すらこれだけ劣っているということが国民には疑念を抱かせる、そういったことがないようにしていただきたいということを申し上げさせていただきたいと思います。

 さて、TPP交渉のサブスタンスの方ですけれども、先般、先ほどもお話がありました西川公也TPP対策委員長の発言が今回のバリ会合の際にあり、特に農業関係者の耳を驚かせました。いわゆる農産物の重要五品目、これは累次の自民党の決議の中にも書かれていたし、衆議院、参議院の農林水産委員会の決議にも書かれている。聖域を確保すると言われたこの五品目、この五百八十六品目になります。これについて精査をしなきゃいかぬという発言でございました。これは非常に国内で物議を醸しました。

 総理は先ほど、公約は守るんだというふうに発言されました。総理にちょっと自民党の公約の読み方を教えていただきたいんです。

 私たちが素で読みますと、自民党の公約を先ほど引いて発言されました。そして、J―ファイルというのを二〇一三年につくられています。ここには、農林水産分野の重要五品目や、それが確保できない場合は、脱退も辞さないものとします、こういった文章があり、農林水産分野の重要五品目等の聖域を確保する、こういうふうに明らかに書かれています。重要五品目のタリフライン、これまで関税撤廃されたことが一度もない分野を全部合わせると五百八十六品目ございます。これが聖域というんだろうというふうに私は読んでおります。

 このJ―ファイルの読み方は、重要五品目の聖域を確保するというのは、五百八十六品目、これまで関税撤廃等々を一度もされていないもの、これを意味するというふうな理解でよろしいでしょうか。

 J―ファイルの読み方です。J―ファイルの読み方なので、党総裁たる総理にお願いします。

甘利国務大臣 直近の公約については、先ほど御紹介したとおり、守るべきは守り、攻めるべきは攻め、そして国益に資する最善の道を選択するということが公約であります。そのもとにJ―ファイルがあって具体的なことが書いてある、あるいは農水委員会における決議がある、それはしっかり、重く受けとめて交渉せよという指示を総理からいただいているところであります。

 それから、五百八十六品目について御指摘がありました。五百八十品目について政府の方から言い出したことは、きょうの時点までございません。党の方で検討いただいているところでありまして、政府としては、この作業を見守ることといたしているところであります。

 今後、交渉の進展を踏まえまして、与党とよく連携をして、我が国の国益を実現するための戦略、戦術を練っていきたいというふうに思っております。

大串(博)委員 交渉の状況をお尋ねしているのではないんです。党の総裁に、自民党J―ファイル二〇一三に書かれている、農林水産分野の重要五品目等の聖域を確保する、この意味は、重要五品目でこれまで一度も関税撤廃等々がなされていない五百八十六品目、これを意味するんですかということを聞いているんです。

安倍内閣総理大臣 まず、党の公約ですね。公約というのは総務省に届け出するものでありますが、その公約は、守るべきものは守り、攻めるべきものは攻めることにより、国益にかなう最善の道を追求する、これが自民党の公約でありまして、この公約を総務省に届け出しているものであります。

 そして、この公約とは別に、総合政策集というのを、我々、J―ファイルとして出しているわけであります。これは総務省に届け出をしているものではないということは、まず念のために申し上げておきたいと思います。この中に重要五品目について書かれているわけでございます。

 そこで、この重要五品目の中におけるタリフラインとの関係においては、まさに今、党においてこれは検討をして、検証が行われているということでございます。

大串(博)委員 今の発言からすると、党の方で検証が五百八十六品目について行われるということを許されるということは、農林水産分野の重要五品目等の聖域というのは、五百八十六品目、一マイナスも一プラスもないということではなくて、検証された後、五百八十六品目より少ないものが守られる結果となることもあり得るということがここには書かれているんだという理解でよろしいですか。

甘利国務大臣 別に私どもは示し合わせたわけではありません。党においていろいろな検討をなされるということであります。もちろん、政府としては、協力を要請されれば、資料の提供等々、協力をしていくわけでございます。

 それで、党の検討結果を見守っていく。一方で、我々は、交渉事でありますから、最大限、日本の守るべきものを守る、攻めるは攻めるということで交渉していくわけであります。

大串(博)委員 私は、あくまでも、このJ―ファイルに何が書かれているのか、どういうふうにこれを読むべきか、どういうふうに解釈すべきかという、きのうも実は、私、地元の農業地域を歩いてきました。そうしたら、口々に言われたことが、自分たちは、ここに書かれている重要五品目、聖域というのは五百八十六品目だと思っていたし、今でも思っているというふうに口々に言われます。恐らく、ここにいらっしゃる自民党委員の皆様も、あちこちでそう言われていらっしゃるんじゃないかと私は想像します。

 かつ、総理、きょう朝、石破幹事長との御議論の中で、言ったことをたがえてはいけない、それが政治の信頼につながるということをおっしゃいました。そのとおりだと思います。

 確かに、総理は、言葉面では公約を守るとしかおっしゃっていません。しかし、J―ファイル二〇一三というもの、これは、確かに総務省に公選法上登録した文書ではないですけれども、選挙のときに広く流布していた文書であります。多くの農家の方々は、これを見て五百八十六品目だというふうに理解されています。そういうふうな理解を広めている現実が私はあると思います。そういう中で、五百八十六品目は守るべきではないのか、守らなければ公約違反になるんじゃないのかという意見に対しては、総理、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 先ほども答弁をさせていただいたわけでありますが、いわば、我々、公約というのは総務省に届けるものでありますから、極めてこれは重たいわけでありまして、これは必ずこの字句どおり実行しますよということでありまして、それは、前回の衆議院選挙のときには、いわゆる聖域を前提条件としないということでは交渉参加できないということでありました。そして、今回の参議院選挙におきましては、「守るべきものは守り、攻めるべきものは攻めることにより、国益にかなう最善の道を追求」、これが公約でございまして、そして我々は、J―ファイル、総合政策集として、我々が目指すべき方向についてお示しをしているわけであります。

 いわば、私たちが目指していく方向についてこのJ―ファイルに書いてあって、そして、五項目についてしっかりとこれは守っていきましょう、そして五項目を守っていく。いわば五項目にかかわっている農業を守っていく上においてタリフラインというのがどうかということについて、まさに党においてそれを今検証しているということであります。

大串(博)委員 何度お尋ねしても、五百八十六品目だ、これを守るということが私たちの約束だという言葉が出てこないのが私は不思議なんです。というのが私の地元の農業の現場の肌感覚とは違います。そこが、非常に私たちは不信感、先ほどの情報開示が足りないものも含めて不信感を抱かせる結果になっているんじゃないかというふうに思います。

 もう一つお尋ねしますけれども、公約というのは、攻めるものは攻める、守るものは守る、国益を最大限追求するというところであって、それ以外は公約じゃないということは、脱退も辞さないものとするというのも公約ではない、こういう理解でよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 今、私が申し上げましたように、守るべきものは守る、攻めるべきは攻めという、そのことによって国益を守る道を追求していくということを申し上げているわけでありまして、これがいわば総務省に登録をしている公約であります。

 これ以外に、総合政策集として大部なものを我々はJ―ファイルとして出しております。我々の支持団体で、こういう方向に行ってもらいたいというものも取り入れながら、私たちが目指していくべき方向についてそれを出しているわけでございまして、その中において、今、脱退というものも入っているわけでございますが、今まさに我々は交渉している、このさなかにあって、しかも年内に交渉を妥結していこうということを申し上げている立場として、脱退ということを申し上げるのは適切ではない、このように考えております。

大串(博)委員 私は、これが公約かどうかということをお尋ねしたわけで、申し述べることが適当であるかどうかをお尋ねしたわけじゃないんですよ。交渉との関係でお尋ねしたわけじゃなくて、この読み方をお尋ねした。

 どうもTPPに関しては非常に歯切れの悪い答弁が続くというのが私の前国会からの感じでございまして、かつ、交渉が始まっている今、やはり国民の皆さんの関心は非常に強いと思います。

 ぜひ委員長にお取り計らい願いたいんですけれども、TPPの集中審議を私たち求めたいと思います。ぜひ、この場で、これだけ議論が進んでいると思われるTPP、しかも情報が出てきていないTPPでございますので、ぜひTPPの集中審議、お取り計らいをよろしくお願いします。

二階委員長 後刻、理事会で協議をいたします。

大串(博)委員 それでは、次の質問に入りたいと思います。

 消費税の決断をされました。そして、そのときに経済対策のアナウンスもされました。その中で、復興特別法人税の一年前倒しでの廃止ということも決められました。それが本当に効果を持つのかどうかということが大きな論議の対象になっています。本当に景気あるいは賃金や雇用に広がっていくのかというのが国民全体の課題あるいは関心でございます。

 総理は、閣議決定の中あるいは累次の発言の中で、復興特別法人税の前倒し廃止の結果が確実に賃金上昇につなげられる方策と見通しを確認すること等を前提にというふうに言われています。しかし、みんな言います、どうやってこれをやるんだろうかと。法人税減税したものが賃金につながるということをどうやって確認するんだろうかと、みんな不可思議に思っています。一体、どういうふうにやられるんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 私たちの政策は、デフレから脱却をして、しっかりと経済を成長させていく。その上においては、企業が収益を上げ、そしてその収益が賃金として還元され、それがさらに全体の収入を引き上げ、さらには消費を押し上げる。さらにそれが企業の収益の増になり、そしてさらに賃金が上昇していく、こういう景気の好循環に早く入っていきたいというふうに考えているわけでありまして、その中において、これは普通ある程度の時間的なタイムラグがある、こういうふうに言われていたわけでありますが、それを短縮するために、ことしの年初に経済界に対して、なるべく、ボーナスにおいて、一時金でもいいから上げてもらいたいという呼びかけをいたしました。

 これは企業と労使間で決まっていくことでありまして、そんなことを言ったって上げる会社はないと言ったら、まず最初にローソンが上げると言った。たった一社じゃないかというふうに言われていたんですが、その後、百三十二社が五%、一時金を引き上げたんですね。六十四社は七%。七%というのは、あのバブル期を上回るアップにつながっていったわけでありまして、そのときも、できないと言われていたんですね。

 今回も政労使の懇談会をつくったわけでございまして、その際も、いわば政治の場としては、この特別法人税を一年前倒ししていくことを検討していく、これは大きな決断なんだ。と同時にまた、投資減税等も今我々考えているわけでございますが、これにぜひとも企業は応えていただきたい。それによって初めてデフレから脱却をして、企業も収益が上がっていくんだということを申し上げているわけでありますが、先般、経団連の米倉会長からも、いわば、賃金を上げていくということについて前向きな答えがあったわけでありまして、豊田社長からも、そして日立の川村会長からも、そういう趣旨のお話があった。今までは、こういうお話というのはまずなかったわけでありますが、そういう話が出てきたということは大きな変化であろうと思います。

 普通はなかなか考えられないわけでありますが、まさにこれは日本型のアプローチと言ってもいいんだろう、みんなで問題意識を共有して、その方向に、それぞれができることに取り組み、実行していこう、今そういう機運が生まれつつある、このように考えているところでございます。

大串(博)委員 要請をされるのはよくわかります。要請だけなのかという気も同時にいたします。本当に、大衆消費増税をして企業減税なのかという声に対応するには、もっとしっかりした仕組みをつくらなければならないんじゃないかと思いますし、賃金というものに対する正しい理解をしていただきたいというふうに思います。

 一例が、先般の所信表明演説の中に、連合の資料として、ベースアップをする企業が五年ぶりに割合として二桁になりましたという言葉がございました。これは資料八ページにありますけれども、星の部分です。賃金改善分獲得、一〇・七%と書かれている部分ですけれども、これは、確認しましたところ、ベースアップだけじゃなくて、一時的な手当、住宅手当とか子供に対する手当とか疾病に対する手当とか、手当の上昇分を含む、ベースアップだけでは勘案していない、こういうことでございました。

 ですので、ベースアップをする企業が二桁に乗ったという発言は所信表明演説の中では不適切でございますので、訂正をされたらいかがかと思いますけれども、どうですか。

安倍内閣総理大臣 繰り返しになりますが、先日の総理としての答弁は、連合による春闘の集計結果における賃金改善をわかりやすくベースアップと述べたものでありまして、これに対して、いわゆる賃金表の改定のみをベースアップという場合もありますが、それ以外の要因による個別賃金水準の引き上げをベースアップという場合もある、このように承知をしております。

 いずれにせよ、一時金については、内閣府において、それは入っていないということを確認したということでございます。

大串(博)委員 正しく理解していただきたい。ベースアップというのは、賃金表全体が上がるということなんです。労使交渉では最もハードルの高いものなんです。一つ一つの個人に対する手当、住宅手当、あるいは子供に対する手当、疾病に対する手当を上げましょう、上げません、これも交渉としてあります。しかし、ベースアップというのは、とんでもなく難しいんです。

 ですから、先ほど総理もおっしゃったように、幾つかの企業がベースアップを考えている、これはいいことだと私は思います。ただ、連合の先ほどの調査でも、総括として、まだ不十分であるという総括がなされているんです。そこのところをしっかり認識していただいて、法人税減税が賃金上昇に結びつくかどうか、こういったところも非常に緊張感を持ってやっていただきたい。正しい理解を持ってやっていただきたい。

 ベースアップを、広い意味でベースアップだというふうに言えるような代物ではないんです、手当とベースアップの違いは。その違いを、まさか総理はベースアップも手当も似たようなものだなんていうような思いをしていらっしゃらないだろうなということをぜひ確認させていただきたいというふうに思います。

甘利国務大臣 大事なことは、一時金というのは一時金なんです。それ以外の、将来を拘束するような賃上げであるかどうかということが大事でありまして、その認識を含めて、総理は広い意味でおっしゃったと思っております。

大串(博)委員 終わりますが、甘利大臣の先ほどの発言も間違っていて、賃金改善分という先ほどの項目には一時金は入っていないんです。

 こういった非常に雑な理解のもとに賃金のことを語られる。極めて心配。(発言する者あり)

二階委員長 答弁しますか。答弁しますか。

甘利国務大臣 いや、入っていないと言っているんですよ。

二階委員長 それでは、終わります。

 この際、玉木雄一郎君から関連質疑の申し出があります。長妻君の持ち時間の範囲内でこれを許します。玉木雄一郎君。

玉木委員 民主党の玉木雄一郎です。きょう最後のバッターになりますけれども、総理、よろしくお願いいたします。

 私は二〇〇九年の初当選組であります。私、政治家としての最初の一期目に、あの東日本大震災と原発の事故を経験しました。大変衝撃的な出来事で、私の政治家としての考え方や、大げさに言えば、生きざまに大きな影響を与えたと言っても過言ではありません。廃炉には四十年かかる。そうすると、私がこれから政治家を続けていく間、いや、もっと、生きている間ずっとこのことについて向き合っていかなければいけない、そんな覚悟を持っております。

 だから、きょう取り上げる汚染水の問題を初めとした事故対策については、これはもう与野党を超えてやるべき課題だと思っておりますし、建設的な、前向きな提案をしたいと思っております。また、放射線の危険性をいたずらにあおるのではなくて、冷静な、事実に基づいた議論をしていきたいと思いますので、総理、きょうはよろしくお願いいたします。

 まずお伺いしたいと思いますが、資料の一に整理をしておりますけれども、きょうも何度か出ました、IOC総会での総理の御発言であります。汚染水による影響は完全にブロックされている、健康問題については、今までも、現在も、将来も、全く問題ないというふうに総理はおっしゃいました。

 しかし、この言葉に対しては多くの国民が疑問を持っています。ある新聞社の世論調査では、約八割、七六%の方がそうは思わないというふうな回答をしておりますけれども、こうした総理の発言に対する国民の受けとめ方について、総理はどうお考えなのか、お答えください。

安倍内閣総理大臣 大変残念であります。我々は、もっとしっかりと正確な情報を発信していきたい、このように思います。

 先般も、福島に参りまして、相馬市に行って、これは相馬の市長から、あのIOC総会の後、まさにこうやってしっかりと風評を払拭してもらいたい、今、もう試験的に既に操業をしているけれども、風評被害に漁民は苦しんでいる、こういう話でございました。

 ですから、私も福島に参りまして、相馬に行って、相馬の漁協の皆さんが、これは試験ではありますが、操業が開始されたわけでございます。その中において、とれた農産物について、これは既にちゃんと試験をしているわけでありますが、全てこれはもう全く安全であるということがファクトとして示されているわけでありますが、実際そうは思っておられない方々もたくさんいらっしゃるのも事実でありますから、そういう事実について、我々は、こういうものは全く問題ないんだよということはしっかりと発信していく必要があるんだろう、このように考えているところでございます。

 つけ加えますと、いわば、福島において、農業において作付が行われ、そして新米が収穫されているわけでありまして、市場に出回るものは安全なものしか出回らないわけでありますから、そうしたものもしっかりと我々は発信をしていきたい、こう考えているところでございます。

玉木委員 総理、陸の話をされていて、農産物の話は私は聞いていなくて、海の話を聞いている。

 あえてちょっとお聞きしますけれども、完全にブロックされているというこの定義、何がどうブロックされているのかをもう一度お答えいただけますか。

安倍内閣総理大臣 まさに海の話だから、相馬に行って漁協の皆さんと会ったという話をしたわけでございます。

 つまり、お魚等々でモニタリングをしている、まあ、モニタリングによっても問題なかったわけでございますが、実際に、今申し上げましたように、魚についてもそれは全然問題がなかった。しっかりと検査した結果、問題なかったということは、これはテレビを通じて全国に申し上げておきたい、発信しておきたい、このように思います。

 その上において、福島第一原発では、貯水タンクからの汚染水漏えいなどの個々の事象は発生しておりますが、福島近海での放射性廃棄物の影響は発電所の港湾内の〇・三平方キロメートルに限定されております。また、外洋においても、福島県沖を含む広いエリアでしっかりとモニタリングを実際これは行っております。基準濃度をはるかに下回る値であるということは申し上げておきたいと思います。

 その上において、このため、汚染水の影響は全体としてコントロールされている、状況はコントロールされているというふうに考えております。

 また、福島近海と外洋のモニタリング結果から、汚染水の影響はブロックされていると考えておりますし、食品中の放射性物質に関する基準値については、日本は国際的に見て極めて厳しい条件を設定しているわけでありまして、この基準値を超過した食品については回収、廃棄されるほか、地域的な広がりが認められる場合には出荷制限を行うなど、厳格な管理体制をしいているわけであります。

 さらに、実際に流通している食品の調査結果から、全国どの地域でも、食品からの被曝量は、日本の厳しい基準に対し、一%以下の水準であることが確認をされていまして、このため、市場に流通をしている食品を摂取することによる健康影響を懸念する必要はないものと考えているわけでありますし、先ほど申し上げましたように、試験的な操業ではあったけれども、漁を行った魚、タコとかイカとか、シラスもそうですが、それを検査した結果、これは全く安全であるということが明確になっているということははっきりと申し上げておきたいと思います。

玉木委員 いや、総理、私は風評を広げるような質問はしたくないんです。

 総理がそうやって説明をされているにもかかわらず、先ほど申し上げたように、八割弱の国民が、総理の説明はちょっと違うんじゃないのという調査が出ているんですね。調査結果で八割を超えるのもあります。

 これは、なぜこういうことが起こっているかというと、今、総理は正確にお話をされました。ブロックされているのは汚染水の影響であって、汚染水そのものではないですね。

 これは、閉会中審査に、きょうもお越しになっておられますけれども、九月二十七日でした、東電の廣瀬社長の答弁によれば、今ここに総理がおっしゃった〇・三平方キロメートルの港湾内の絵がありますけれども、ここの水は一日で半分入れかわる、つまり、二日で全部入れかわってしまうんですね。

 つまり、総理は非常に正確におっしゃいました。汚染水の影響はブロックされているんです、これは。そう信じます。ただし、あえて汚染水と私は言いたくないので、発電所由来の核物質が含まれている可能性があるかもしれない水は出ているんです。ブロックされていません。ですから、ここはきちんと正確にお伝えすることが私は必要だと思います。このことを余り否定されると、かえって私はまた疑義が生じると。

 どうですか、総理。では、水自体は出ていることはお認めになりますか。

茂木国務大臣 国民の皆さんに十分な説明というか、御理解いただいていない部分があるということについては、さらに努めていきたいと思っています。

 そこで、混乱しますのは、一つは、総理の方からも御答弁申し上げておりますように、ザ・シチュエーション、全体の状況はコントロールされている、こういう話を……(玉木委員「いや、それは聞いていません。ブロックかどうかだけ聞いています」と呼ぶ)それで、ブロックについて今申し上げます。

 汚染水の影響はブロックをされている、一定のエリアにとどまっている、こういったことであります。決して貯水タンクから全く漏れなかったわけじゃないです。漏れております。ただ、一定のエリアにとどまっております、そのように申し上げております。

 そして、そういったことが海洋に及ばないように、陸側の地下水、これをとめなきゃならない。そして、汚染源、これを浄化していかなきゃならない。さらに、海側におきまして地盤改良を行う。さらに、海側の遮水壁をつくる。こういったことを通じて、そういった影響が及ばないという状況をこれからもしっかりつくっていきたいと思っております。

玉木委員 私も、この審議を通じて変なイメージが世界に発信されることは極力避けたいと思って、言葉を選びながらやっています。ですから、この〇・三平方キロメートルの外の水を汚染水と私は呼びたくないんです。呼びたくないんです。ただ、事実として、ここの中の水が二日間で全部入れかわってしまって、中にあった水が外に出ること、これは事実なんですね。

 問題は、私は、この完全にブロックされているという言葉はやはりちょっと言い過ぎだったんじゃないかなと思います。しかし、もうこれは国際公約にある種なってしまったので、これは国を挙げて、党派を超えて、この総理の約束をみんなで実現するように全力を挙げることが必要だと思っているんですね。

 その意味で、重要なのは、総理がおっしゃった、これは極めて重要です、事実を見ることだと。ヘッドラインを見るんじゃなくて事実を見てくれと総理はおっしゃいました。これは極めて重要です。

 それで、総理に伺いたいと思います。

 そもそも、汚染水の影響がこの湾内に限定されていると判断するに至った、総理のおっしゃる事実、データは、誰がどのように収集したものですか。

茂木国務大臣 委員がお聞きになっていらっしゃるのは、この湾内ではなくて外洋、福島県沖を含みます外洋のモニタリングについてだと思いますが、海洋のモニタリングにつきましては、原子力規制委員会が中心となりまして、総合モニタリング計画を定め、環境省や規制庁、そして東京電力、自治体等々で役割分担をして取り組んでいるところであります。

 恐らく、その一番近いところを東電が担当しているのではないか、こういう趣旨でおっしゃっている部分もあるのではないかな、そんなふうに思いますが、実際のモニタリングに当たりましては、原子力規制庁が、モニタリングの測定やその結果の分析に対する総合的な評価を実施し、客観性を備えたデータ、その結果に基づき、汚染水の影響はコントロールできている、このように我々は考えております。

玉木委員 資料三をちょっと見ていただきたいんですが、今、モニタリングの話が出ました。この左側をまず見てください。海洋モニタリングの実態です。

 きょう、総理の答弁でも遠いところも含めてはかっているということなんですが、このMと書いているのは規制庁です。規制委員会の事務局である規制庁、文科省のMだと思うんですが、遠いところはこのMがはかっているんですが、横の拡大図を見てください。この二十キロ圏内、つまり〇・三平方キロメートルのすぐ外から、そして最も近いこの二十キロ、旧警戒区域内ですね、ここは東電しかはかっていないんです。一部、環境省が出てきますけれども、これは河川の下流口なので、彼らは川の観点からここをはかっているのであって、この二十キロ圏内の海をはかっているのは東電だけなんですね。今、それは大臣もおっしゃいました。

 私は、東電のデータが間違っていると言っているのではありません。ただ、事故を起こした当事者である東電しかはかっていないんですよ。それをそのまま、言葉は悪いですけれども、うのみにして、そして本当にデータの信頼性が担保されるのかどうなのか。疑問を持つのは当然だと思うんですよ。

 ですから、私は、これは提案したいと思います。

 この二十キロ圏内については、少なくとも東電に加えて規制庁自身がモニタリングを行って、データ同士を突き合わせる、つまりこれはインターコンパリスンといいます。こういったことをしっかりして、国際的にも信頼できるデータとしてしっかり出さないと、幾ら、これで大丈夫です、大丈夫ですと言っても、信頼してもらえないんです。だから韓国は、国名を出して申しわけないんですが、ある国は輸入規制をかけたりする。そういう足元を見られることを許しているんです。

 ですから、しっかりとここは、国が前面に出てやるということをおっしゃった以上、モニタリングについても規制庁が前面に出るなど、もっと主体的な役割を、それこそ東電任せにするのではなくて、モニタリングこそ国が前面に出てやるべきだと思いますけれども、総理、どうですか。

茂木国務大臣 先ほど、規制庁を含め一定の役割分担のもとでやっている、しかも近傍につきましては東電がモニタリングを実施している、その結果について規制庁の方で評価をしている、正直に申し上げました。

 その上で、どうやったらさらに客観性が保てるか、そういったことについては検討していきたい。与野党を超えて、いい提案は、汚染水対策を含め、しっかりと検討させていただきたいと思います。

玉木委員 では、もう一つ提案をしたいと思います。

 規制庁が中心となって九月三日にまとめた基本方針の中には、規制庁が、いろいろな役所がやっているものを一元的に集めて、一週間に一回公表するということになりましたよね。私、ホームページを見てみたんです、規制庁の。そうしたら、確かに集まっていました。

 でも、それぞれデータを出している各機関のリンクを張っているだけなんですよ。これは、私自身もあるいは専門家の皆さんも、実は、果たしてどうなのかといってデータを見に行ったら、なかなか見つからない、たどり着けないんです、欲しい情報に。これは見てみてください、ぜひ。

 私は、ぜひ、国際的にも日本のこの海域は大丈夫なんだということをわかっていただくためには、データベースを一元化して一目でわかるような情報の出し方をしないと、いつまでたっても信頼してもらえません。ですから、国内的にも、あるいは対外的にも、もっとデータの見える化を進めるべきだと思いますけれども、大臣、どうですか。

茂木国務大臣 今、福島第一の汚染水の問題であったりとか、この影響につきましては、外務省を中心にしながら、全てのこちらにあります公館に情報提供をする。また、海外におきましても、さまざまな拠点を通じまして、国際的な広報、メディアへの対策も行っております。

 そういった上で、政府として、できる限り一元的に、正確に、かつ速やかに情報提供できるような体制をつくっていく、このことは常に重要だと考えております。

玉木委員 私も敬愛する茂木大臣なのであえて申し上げますけれども、きょう第二回目が開かれていますが、海洋モニタリングの検討会が開かれています、専門家を入れて。これは議事録をよく読んでください。いろいろな問題が指摘されています。

 一つ紹介しますと、今、放射性物質に対して物すごく関心が集まっています。でも、実は、炉内に投入された硼酸とか、例えばヒドラジンといった有毒の物質があります。これが一体どれだけあって、どこに出たかについては、実はモニタリングしていません。同じように人体にあるいは生態系に悪影響がある物質について、もちろん放射性物質への関心を払わなければいけませんけれども、そういった有毒物質については全くノーケアなんですよ。

 ですから、どうせ井戸を掘って調べたり海から水をとるんだったら、そういったもののデータもあわせてとって、本当に日本の海が安全なんだ、日本の農地が安全なんだということを世界にもっとわかりやすく統一的に発信すべきだということを、これは提案したいと思います。

 いずれにせよ、海洋モニタリングについては、ぜひその強化をお願いしたいと思います。

 次の質問に移りたいと思います。

 資料の四をちょっと見てください。

 また総理の発言について関連してお聞きをしたいと思いますが、総理は、廃炉・汚染水対策を東電任せにするのではなくて、国が前面に立って責任を果たしてまいりますというふうにおっしゃっておられます。これを踏まえて、先般、四百七十億円の予備費がついて、凍土の壁をつくったり、あるいは高性能のALPSという浄化する装置を予算として国としてつけることを決めました。私は、国が前面に出ることは大変評価をしております、賛成しています。

 ただ、一つ総理に問題点を指摘いたしたいのは、ちょっと飛びますけれども、八の資料を見てください。

 今回、予備費を入れるときに、基本方針にも書いていますけれども、技術的に難易度が高い事業というものに限定して入れています。これは麻生財務大臣もよく聞いていただきたいんですけれども、東電は上場会社です。上場会社ですから、基本的にいろいろなことをするのは自分で資金を調達して、ただ、こういう状況ですから、政府保証がついたり側面からいろいろな支援をする仕組みがあります。研究開発だからといって、国費を上場会社、利益会社に入れているんですね。

 でも、これはある意味、私は、これから非常に厄介になってくる基準になると思うのは、例えば、技術的に簡単なもの、もっといい言葉で言うと、工法が確立しているような、何か方法があって非常に効果がある、でもお金がかかるといったものについては国費を入れることはできませんね。できませんね、今の基準だと。できない。答えられますか。

茂木国務大臣 まず一点、最初に予備費でありますが、凍土方式によります遮水壁、それから、より高性能な多核種除去設備、これが二百六億円で、全体の事業費は四百七十億ということであります。

 一方で、お示しいただいたこの右下に当たる部分でありますけれども、これをどうするかということでありますが、御案内のとおり、既に東電の方で九千六百億円、引き当てを行っております。そして、九月十九日、総理が福島第一を視察した際に、これに対するさらなる対策が必要だということで、東電としても、今後十年間で一兆円の追加の積み立てを行っていく。まずは、この枠、ほぼ二兆円であります、これを使ってしっかりした対策を進めてもらうことが必要だ、このように思っております。

玉木委員 廣瀬社長にお越しいただいているのでちょっと聞きたいんですが、時間がないので後でまとめてお答えいただきたいんですけれども。

 実際はそうです。今の答えを裏から言うと、ここは東電がやってくださいよということですね、トータル二兆円の中から。今、一兆円の既に積んでいるものは、多分、まだ三千億ぐらいしか使っていませんから、七千億残っていますね。これから一兆円積み増すけれども、コストカットと、設備投資を抑制することによって出していくんですね。今の総合特別事業計画には書いていないことを求めていくんです。これは、廃炉が決まったので、多分、関連したものが浮くから、そこから出てくるという話だと思いますけれども、でも、きついと思いますよ、いずれにしても。

 私が申し上げたいのは、高度か高度じゃないか、主計局が認めるから認めないからじゃなくて、本当に必要なものについては、おかしな基準をつくらずに、ちゃんと国も関与していくことが必要だと思うんです。

 もう一つ、実は、この問題の背景には、これはもう御党も入って、そして我々の政権のときにつくった今の東電の支援スキーム、これは先ほど塩崎先生からも質問がありましたけれども、ここに根本的な問題が隠れていると私は思っているんですね。

 九ページを見てください、資料の九。

 今の東電の賠償支援のスキームというのは、東電は上場会社のままで、上場会社として収益追求も求められます。当たり前です、これは。コストについて常に厳しい見直しを行うことが求められる一方で、事故の一義的な責任者として、時には金に糸目をつけずに事故対策に全力で当たらなきゃいけないんです。この二つの責務を負わされていて、時にこの責務は矛盾する。つまり、この間にジレンマが起きるんですね。

 こういう状態のまま、お金はちゃんと、一定程度、けちりなさいよというか、収益を上げなさいよと言いつつ、全力で事故対策に当たりなさいよというのも、結構、これは酷な話になってくると思うんです。

 もう一つ、あわせて問題を申し上げたい。これは重要な問題だと思うんですが、一番最後の資料十を見てください。

 今、東電からたくさんの人が退職をされています。人材が流出しています。これは平成二十三年度、二十四年度の数字ですけれども、それまで百数十人であった退職者が、四百六十五名、二十三年度、そして七百十二名、二十四年度です。

 お金の話を今ずっとやりましたけれども、仮に国が幾らお金を突っ込んでも、公務員をそこにやっても、公務員なんか何もできませんよ、現場では。やはり専門性のある東電の職員あるいは関連会社の人が現場で頑張ってもらわないと、事故処理も汚染水対策も進まないんです。でも、今、実際起こっていることはこういうことです。

 廣瀬社長に聞きたいと思います、先ほどの関連で。

 いろいろなことがこれから出てきます。お金も必要です。でも、高度じゃないもの、例えば、私、ここは鋼鉄製の矢板を山側に打てということをずっと言っています。つまり、地下水のバイパスが今、もう三月に設置されていますけれども、稼働のめどが全く立っていませんね。山側から毎日一千トンの水が入ってくるんですが、政府が考えている唯一の手段である地下水バイパスが全く機能していない。だったら、鋼鉄製の矢板を山側に打つようなことを一つの案としてやったらどうかと私は思うんですが、これは単純な工法です。ですから、国は絶対出せません。でも、物すごくお金がかかるから、このことを本当にやれる力が今ありますか。

 これと、今の人材が流出していることについて、社長の率直な御意見をお聞かせください。大事な話です。

廣瀬参考人 お答え申し上げます。

 おっしゃるように、人材の流出、大変大きな問題でございます。これは何とか解決したいというふうに日ごろから思っているところでございます。

 現在、合理化であるとかコストカットであるとか、人件費の削減も含めてやっておりますので、確かに処遇面で社員になかなか報いることが、限界があるという状況でございますので、何とか気持ちの面でしっかり、今後とも責任感、高い使命感を持っていただいて、これから長い廃炉への道のり、一緒に頑張っていこうということで、どちらかというと気持ちの面でございますけれども、私も現場に行って、現場の作業員の方々とできるだけ対面で対応していくというようなことを続けて、何とかその気持ちを切らさないようにという方策をしているところでございます。

 一方で、お金、全体的にはもちろん切り詰めていかなければいけませんが、必要なものについては、今回の一兆円を新たに手当てするということも含めて、これは絶対やっていかなければいけないと思っています。

 御指摘の、鋼鉄製のものを入れるというのは、機能的には凍土壁と同じことで、水をタービン建屋に入れないということですが、問題が幾つかあると思っております。幾つものパイプやトレンチがありますので、そこをギロチンのように矢板で全部塞いでいくということに関しては、より難しい技術的な課題があるというふうに考えております。

 一方で、凍土壁は、一メートル間隔ぐらいに液を入れてその周りを凍らせていこう、それによって凍らせて壁をつくっていこうということですので、施工面で一日の長があるのではないかなというふうに今考えているところでございます。

玉木委員 時間がなくなってきたんですが、総理、廃炉は、冒頭申し上げたように、場合によっては四十年以上かかるかもしれない大事業であります。ですから、今の制度、仕組みを前提に、その中で何とかつけ焼き刃的にやるのではなくて、総理、本当に安定政権になるのであれば、ぜひ、私は、何十年しっかりともつような制度に現行の仕組みを改めるべきだと思っています。

 賠償機構法の見直しは法施行から二年で行うことになっています。ちょうど八月にその期限が到来したと思っていますけれども、私は、国と東電の責任の、あるいは役割分担の明確化を、もう一度、あらゆるステークホルダーの意見も全部踏まえて、考えるべきだと思っています。

 実際に仕事をするのは東電です。しかし、資金を誰がどう負担するかについては、いろいろな考えがあっていいと思います。組織を分けるという話も出ましたけれども、例えばスリーマイル島の事故のときには、当時、州知事さんが政治的リーダーシップを発揮して、関係者間の公平な費用分担案を提示したんです。そのことによって、きちんと、国は幾ら、地方政府はどうだ、事業者はどうだ、他の電力機関はどうだということをそこで分けたんです。

 こういうことをぜひ総理のリーダーシップで進めていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今、我々もさまざまな御提案をいただいておりますし、委員からも御提案をいただきました。当然、これは中期的な課題として、さまざまな可能性について検討していくことは大切だろう、このように思いますが、今まさに現場で対応している東電の皆さんの高い士気を維持しながら、緊張感と責任感を持ちながら、東電の職員であるということにプライドを持って対応していただくということも大切だろう、このように思うわけでございます。

 いずれにいたしましても、今現在起こっている事態に対しては、しっかりとそういう中において、現在の、既に決めているスキームの中で頑張っていただきたい。また、将来的には、さまざまなそういう御提案については、これは議論していくことも大切ではないかと思います。

 あと、ちょっと一点訂正させていただきたいんですが、先ほど答弁の中で、福島近海での放射性物質と言うべきところを放射性廃棄物と言ってしまったものですから、これは放射性物質に訂正させていただきます。

玉木委員 ありがとうございました。

 問題の本当に根っこにあるものは何なのかということに掘り下げた対策をぜひ行っていただきたいと思いますし、汚染水の問題については、まだまださまざま課題があると思います。ぜひ今国会での汚染水を含めた原発問題についての集中審議を求めて、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

二階委員長 ただいまの要請も後ほど理事会で協議したいと思います。

 次回は、明二十二日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三分散会


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