衆議院

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第8号 平成26年2月14日(金曜日)

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平成二十六年二月十四日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 二階 俊博君

   理事 上杉 光弘君 理事 金田 勝年君

   理事 塩崎 恭久君 理事 萩生田光一君

   理事 林  幹雄君 理事 森山  裕君

   理事 長妻  昭君 理事 山田  宏君

   理事 石田 祝稔君

      あかま二郎君    秋元  司君

      今枝宗一郎君    今村 雅弘君

      岩屋  毅君   うえの賢一郎君

      衛藤征士郎君    小倉 將信君

      小田原 潔君    越智 隆雄君

      大岡 敏孝君    大島 理森君

      大野敬太郎君    鬼木  誠君

      金子 一義君    神山 佐市君

      神田 憲次君    菅野さちこ君

      黄川田仁志君    小池百合子君

      小林 鷹之君    小松  裕君

      古賀  篤君    佐田玄一郎君

      関  芳弘君    薗浦健太郎君

      武部  新君    中川 俊直君

      中山 泰秀君    野田  毅君

      馳   浩君    原田 義昭君

      藤井比早之君    船田  元君

      細田 健一君    牧島かれん君

      宮路 和明君    村井 英樹君

      保岡 興治君    山田 賢司君

      山本 幸三君    山本 有二君

      大串 博志君    岡田 克也君

      後藤 祐一君    篠原  孝君

      玉木雄一郎君    福田 昭夫君

      古川 元久君    坂本祐之輔君

      椎木  保君    重徳 和彦君

      杉田 水脈君    中山 成彬君

      西野 弘一君    三宅  博君

      宮沢 隆仁君    中野 洋昌君

      浜地 雅一君    柏倉 祐司君

      佐藤 正夫君    柿沢 未途君

      林  宙紀君    高橋千鶴子君

      宮本 岳志君    畑  浩治君

    …………………………………

   財務大臣         麻生 太郎君

   総務大臣         新藤 義孝君

   外務大臣         岸田 文雄君

   文部科学大臣       下村 博文君

   厚生労働大臣       田村 憲久君

   国土交通大臣       太田 昭宏君

   環境大臣         石原 伸晃君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 古屋 圭司君

   国務大臣         森 まさこ君

   国務大臣

   (行政改革担当)     稲田 朋美君

   財務副大臣        古川 禎久君

   環境副大臣

   兼内閣府副大臣      井上 信治君

   総務大臣政務官

   兼内閣府大臣政務官    伊藤 忠彦君

   政府参考人

   (内閣法制局長官事務代理)

   (内閣法制次長)     横畠 裕介君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        久保 公人君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            岡崎 淳一君

   政府参考人

   (国土交通省海事局長)  森重 俊也君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    佐藤 雄二君

   政府参考人

   (環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長)   梶原 成元君

   参考人

   (日本放送協会会長)   籾井 勝人君

   予算委員会専門員     石崎 貴俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月十四日

 辞任         補欠選任

  伊藤 達也君     武部  新君

  岩屋  毅君     牧島かれん君

  うえの賢一郎君    大野敬太郎君

  越智 隆雄君     細田 健一君

  小池百合子君     菅野さちこ君

  菅原 一秀君     小田原 潔君

  関  芳弘君     山田 賢司君

  薗浦健太郎君     馳   浩君

  中山 泰秀君     小林 鷹之君

  西川 公也君     小倉 將信君

  原田 義昭君     大岡 敏孝君

  船田  元君     今枝宗一郎君

  篠原  孝君     福田 昭夫君

  古川 元久君     後藤 祐一君

  杉田 水脈君     三宅  博君

  西野 弘一君     宮沢 隆仁君

  伊佐 進一君     中野 洋昌君

  佐藤 正夫君     柏倉 祐司君

  柿沢 未途君     林  宙紀君

  宮本 岳志君     高橋千鶴子君

同日

 辞任         補欠選任

  今枝宗一郎君     神山 佐市君

  小倉 將信君     神田 憲次君

  小田原 潔君     小松  裕君

  大岡 敏孝君     原田 義昭君

  大野敬太郎君     藤井比早之君

  菅野さちこ君     小池百合子君

  小林 鷹之君     中山 泰秀君

  武部  新君     村井 英樹君

  馳   浩君     薗浦健太郎君

  細田 健一君     越智 隆雄君

  牧島かれん君     岩屋  毅君

  山田 賢司君     鬼木  誠君

  後藤 祐一君     古川 元久君

  福田 昭夫君     篠原  孝君

  三宅  博君     椎木  保君

  宮沢 隆仁君     西野 弘一君

  柏倉 祐司君     佐藤 正夫君

  林  宙紀君     柿沢 未途君

  高橋千鶴子君     宮本 岳志君

同日

 辞任         補欠選任

  鬼木  誠君     関  芳弘君

  神山 佐市君     黄川田仁志君

  神田 憲次君     古賀  篤君

  小松  裕君     菅原 一秀君

  藤井比早之君     うえの賢一郎君

  村井 英樹君     中川 俊直君

  椎木  保君     杉田 水脈君

同日

 辞任         補欠選任

  黄川田仁志君     船田  元君

  古賀  篤君     西川 公也君

  中川 俊直君     伊藤 達也君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 委員派遣承認申請に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成二十六年度一般会計予算

 平成二十六年度特別会計予算

 平成二十六年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

二階委員長 これより会議を開きます。

 平成二十六年度一般会計予算、平成二十六年度特別会計予算、平成二十六年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。

 この際、委員派遣承認申請に関する件についてお諮りいたします。

 三案審査の参考に資するため、来る二十一日金曜日、委員を派遣いたしたいと存じます。

 つきましては、議長に対し、委員派遣承認申請をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

二階委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 なお、派遣地及び派遣委員の人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

二階委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

二階委員長 これより一般的質疑に入ります。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として内閣法制局長官事務代理・内閣法制次長横畠裕介君、文部科学省スポーツ・青少年局長久保公人君、厚生労働省職業安定局長岡崎淳一君、国土交通省海事局長森重俊也君、海上保安庁長官佐藤雄二君、環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長梶原成元君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

二階委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

二階委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。馳浩君。

馳委員 おはようございます。自由民主党の馳浩です。

 ただいま、自由民主党の二〇二〇年オリンピック・パラリンピック大会の実施本部長を拝命しておりまして、昨年は、招致本部長として世界を回らせていただきました。

 先週、ソチ・オリンピックの開会式にも出張させていただきました。そのときにIOCの関係者から、非常に、期待とともに、約束はちゃんとやってくれるんだろうな、こういうふうな声をかけられました。

 そこで、まず、麻生大臣に質問させていただきます。

 招致の段階で、昨年七月だったと思いますが、ローザンヌでの会議のときに、我が国が東京オリンピックを開催した暁には、スポーツ・フォー・トゥモロー、この事業を推進します、今後、百カ国、対象となる一千万人ほどの方々に、指導者やスポーツ交流等々を含めて、世界の皆さんに日本が発信するスポーツの力、この恩恵と言うと言葉は悪いと思いますが、影響力、プレゼンの力、こういったものを世界の皆さんに提供するとお約束をして、九月七日の最終プレゼンのときにも、当時、安倍総理が具体的な数字を申し上げながら、日本は政府として約束をします、こういうふうな流れで、招致の大きな柱になったのは間違いありません。

 今回も、そのことについて、馳さんと麻生大臣、また安倍総理も約束をしたスポーツ・フォー・トゥモローの事業は適切に今後ともやってくれるんでしょうね、具体的にどういうイメージなんだろうか、こういうふうな話を伺いまして、もちろん私なりに事前に調査をした上で、お話をしてまいりました。

 改めて、お約束をした麻生大臣、そして何よりも、元オリンピアンとして期待も多く、非常に注目を集めていた麻生大臣の生の声をまずお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 これは、当時、ローザンヌの本部でテクニカルなものを主にしてのプレゼンテーションをやらせていただきましたときに参加をしたんですが、そのときに、各市、自分のところの売りをいろいろ表明された中で、日本の場合は、経済面とか治安面とか、いろいろな面がみんなあるんですけれども、そのほかに、我々としてやりたいこととして、スポーツ・フォー・トゥモロー、SFTというプログラムがありますと言ったら、みんな、御記憶のように、ばっと顔を上げて、何だそれという話になったものですから。

 各国にスポーツに関していろいろな人を送り出す。例えば、過去の例でいきますと、キューバは今バレーボールが強いですけれども、あれはもともと、スポーツ・フォー・トゥモローなんという前に、日本からバレーのコーチをキューバに送って、結果的にキューバは日本よりはるかに強くなったわけですけれども、敵に塩を送ったといえば塩を送ったみたいな話なんですけれども、いいことですよ。僕はそう思いました。

 そういうのを、一つの例ですけれども、過去に例がありますので、コーチというものを、とてもそんなものは、スポーツもないし、そのコーチもないというところに、例えばバレーボールを送り、ネットを送り、運動できるいろいろな、ジャケットだ、シューズだ、何だ、そういったものを提供する。そして、それによって向こうがそれに関心を持って、そのスポーツが普及する。結果として、それが貧困地域において、例えば非行化の防止にもなるでしょうし、いろいろな意味でこういったものが大きな影響を与える、金を稼ぐものにもなるでしょうし。そういったようなことが大事なのではないかと思って、我々は考えたんです。

 結果として、それが、もうちょっと組織的にやるというのはどうだというお話だったので、私どもとしては、あれは外務省の青年海外協力隊なんかで、スポーツ指導で行っているというのは少なくはあるんです。それをもうちょっと組織的にやったらどうだということで、今、文部省、それから外務省、財務省、体協なんかでいろいろ案を練っております。

 基本的に、どこの国から何をというので、私どもとして、やはりその国に向いたスポーツというものもあろうかと思いますので、キューバは、御存じのように、ばねが強いというのは身体能力テストをするとすぐ出るそうなので、そういった意味ではバレーボールということになって、バレーとかバスケットとかいうのがいいのではないかということに当時されたそうですけれども。

 もっとそういったものをきちんと大がかりでやれば、もう少し効果が上がるものになるのではないかということから、今、るるそういった協議を詰めさせていただいておるのが現状でありますので、間違いなくその方向で事は進んでおります。

馳委員 ありがとうございます。

 そこで、具体的に私からもちょっと提言をさせていただきます。

 今、麻生大臣がおっしゃったように、実は、新たにやるものではなくて、今まで我が国がそれぞれの省庁でやっていたことをスポーツに特化をしてやりましょうねというのがスポーツ・フォー・トゥモローの事業なんですよ。

 JICAは、実は、累積すると三千人に及ぶんですよ。若手のスポーツ指導者を途上国に派遣して、その地域のいわゆる貧困や開発に貢献をするという、とうとい事業に三千人弱の若者が行っているんですね。

 私は、こういう時代でもあります、JICAには六十を過ぎたシニアのボランティアもございます。やはりこういうベテランの方々も、若手とは違った、味のある指導ができるものでありますから、シニアボランティアなどもこういった派遣事業にもっともっと活用していただきたいというのがまず一つ。

 二点目は、これは下村大臣にお願いしたいんですが、私は、オーストリア、ウクライナ、そしてペルー、招致活動で訪問をしたときに、招致ですから、我が国のスポーツを取り巻く事情を当然説明しました。そのときに非常に関心を持って受けとめられたのは、体育なんですよ。

 何でかなと思って、私が質問をたくさんいただいた中で、全国に小中学校合わせて三万ちょっとはございますよね。その小中学校には必ずプールもあります、グラウンドもあります、体育館もあります。そして、専門的な教育を受けた体育の教師がおります。やはり、スポーツの教育的価値観を義務教育の時代から提供する環境が極めて整っている。

 一時、ヨーロッパ型のクラブスポーツがいいんじゃないかと言われていた時期もありましたし、我が国でも今、総合型の地域スポーツクラブも盛んではありますが、そもそも、この小さな国土に三万を超えるスポーツの拠点も人材もいて、専門的な人材を育成する機関、高等教育機関もある。そのノウハウをぜひ教えてほしいと、ウクライナのキエフ国立体育大学。

 あるいは、オーストリアにおいては、今、我が国の社会問題は、子供たちが、特に女性が全く運動をしない、スポーツをしない、これはやはり地域社会のつながりの薄さを証明している、日本型の体育、そして義務教育の拠点である小中学校の施設の活用、このことをぜひ教えてほしいと言われて、その後、もちろん大使館などを通じて、ノウハウのやりとりをできるようにというふうに私もお願いをしてまいりました。

 したがって、下村大臣にもお願いしたいのは、我が国の体育、そして部活動、これは世界に誇る制度であるという誇りを持って、どんどんこれもスポーツ・フォー・トゥモローの事業において展開をしていっていただきたいし、これが、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック大会が日本で開かれた、東京で開かれてよかったなということを世界に伝播していく一つのツールになると思われるんですね。大臣、お願いいたします。

下村国務大臣 確かに、おっしゃるとおり、ヨーロッパでは、学校では体育という位置づけじゃなくて、学校が終わった後、地域の中でスポーツクラブのような形で受け皿をつくっているという国がほとんどで、日本のように授業の中で体育という位置づけをしているところは、逆に極めてまれだというふうに聞いております。

 麻生大臣からもお話がありましたが、これは国によって、私も、昨年ロシアの世界陸上等でIOCの方々とたくさんお会いするときがあった中で、特にアフリカとか発展途上国では、それぞれの国に応じたいろいろなスポーツの、指導者だけでなく、そういうような運動器具等、基本的にとにかくボールがないとかネットがないとかいうようなことをたくさん聞きましたから、そういうことを含めて、JICAやあるいはJOC、オリンピアン、パラリンピアンにも働きかけながら、スポーツ指導やスポーツ体制が整うようなバックアップと同時に、そういう体育的な位置づけ、教育の中でスポーツをどんなふうにしているかということについて、求める国に対しては、我が国のノウハウ等をきちっと提供できるような環境づくりをしていきたいと思います。

 特に、日本では当たり前のようなことですけれども、知育、徳育、体育。食育も最近入っていますが、そういうコンセプト、学校教育の中で体育をきちっと位置づけている、スポーツを教育として位置づけているというのは、当たり前のようでいて世界の中ではそれほどあるわけではありませんから、そういうことを希望する国に対しては、ぜひ日本のノウハウ等も提供するように努めていきたいと思います。

馳委員 麻生大臣、私も招致に半年間かかわる中で、改めてなるほどと思いましたのは、スポーツの力という言葉でありますし、スポーツを通じて社会に貢献する、そして相互理解を高める。非常に言葉は美しいんですけれども、でも、スポーツというのはそもそもどろどろした戦いでもありますが、ただ、その機会を提供することができるし、指導者も、施設も、設備もパッケージで提供できる力が我が国にはあります。

 私は、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック大会は、まさしくそのスポーツの力を通じて、世界に日本の外交力、そして日本の力を証明していく、提供していく大きなきっかけにすることができるということを感じました。

 同時に、海外に行ったときに、福島は大丈夫かと必ず言われるんです。私も、放射性廃棄物処理のための特別措置法の立法にかかわらせていただきましたので、こういう法律をつくって、モニタリングをして、政府も責任を持ってきちんとやりますよという説明をしてきましたが、やはり、福島初め東日本大震災の被災地の皆さんが、何かの一つのきっかけをもとに社会に大きく参加をし、貢献をしていくツールとしても、このスポーツの果たす役割は大きいということを実感いたしました。

 改めて、スポーツの力を、いかに社会貢献や世界平和に貢献をしていく、まさしくオリンピックムーブメントそのものなんですが、それに臨む責任者としての思いを、麻生大臣と下村大臣の方から一言ずついただきたいと思います。

麻生国務大臣 きのうの羽生のスケートを見られた人、この中にどれぐらいいらっしゃるんだか知りませんけれども、少なくとも、若い日本人が、カナダとかロシアの選手を抑えて、史上初めて百点を超えて百一点をとって、ショートプログラムで優勝しているんですけれども、やはりこういうようなものは、やったという感じを与える。

 国民に感動とか感激とかそういったものを与えるというのは、やはりスポーツの持っている力で、あれだけ国じゅうを沸かせる、そんな沸かせられる政治家はいませんよ。大したものだと思いました。夜中三時に、全部、これだけの人を集めて、テレビをみんな起きて見ていろなんて言ったって、みんな見やしませんよ。しかし、それを見せるんですな。大したものだ、僕はそう思って、きのう見ていたんですけれども。

 ぜひ、そういった意味で、私は、このスポーツの持っている力というのは非常に大きなもので、ほう、こういうのがいるのかという意味で、私どもは、スポーツの持っているものは、我々スポーツの中につかっていた方ですから、スポーツがこれだけ人に感動を与えたり、人をそれなりのやる気にさせてみたり、先ほどの言葉を使えば、ちょっと非行に走りそうなところがスポーツでうまく更生したりというような、不良少年がラグビーを始めて直ったとか、いろいろな例は数々ありますけれども、そういった話というのは、我々はもう少しこのスポーツというものは真剣に考えて、かつ国威の発揚にもつながるのかもしれませんし、いろいろな意味で広く考えてしかるべき種類の分野かなという感じが率直な実感です。

    〔委員長退席、上杉委員長代理着席〕

下村国務大臣 馳委員がソチでも縦横無尽な活躍をされておられまして、世界じゅう回っていることに対して、本当に敬意を申し上げたいと思います。

 私は、三月にIOCの評価委員の方々が東京に来たときに、ある委員が私に言った言葉が、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックのキーワードだと思っていることがございます。

 それは、自分は五輪書を読んだ、宮本武蔵の五輪書なんですけれども、これを読んで、日本には、柔道、剣道というふうに、スポーツをただのスポーツに終わらせないで、スポーツを通じて人の生きる道まできわめていく崇高な、非常に深い哲学、精神がある、これは本来、オリンピック憲章に書かれていることだけれども、そこまで達成しているエリアまではまだ行っていない、ぜひ日本から発信してほしいということを言われました。

 事実、例えば柔道も、ブラジリアン柔術というふうに、柔術であって道ではないんですね。そういうふうに、ほかの国ではスポーツはスポーツだと。しかし、日本は、ただのスポーツに終わらせないで、人がいかに生きるかということを一つの道を通じて、これは茶道とか華道とかほかの部分についても全部言える部分がありますが、まさにオリンピック憲章そのものでもあるというふうに思います。

 ぜひ、二〇二〇年のオリンピック、パラリンピックを通じて、スポーツはかくあるべきだという部分を日本から世界に発信していくような、そういう取り組みをしていくことによって、オリンピック、パラリンピックの、スポーツにおける大きな次元上昇、意識上昇にもつながるような取り組みをしていきたいと思っております。

馳委員 麻生大臣、このスポーツ・フォー・トゥモロー事業の中で、私は、ここはやはり日本が今まで欠けていて今後ぜひ取り組まなければいけないなと思わされたことを一つ申し上げます。

 それは、大臣はスポーツをしておられたのでよくわかると思うんですが、各競技団体の世界連盟の役員に日本の役員が入っている割合というのは極めて少ないんですよ。オリンピック、夏の二十八競技の中で、我が国は今七つだけです。

 私が中国へ行きましたときに、中国の于再清さんとお会いしてお話をしたときに、中国は戦略的に、オリンピックの夏の競技の三分の二の国際競技団体には会長とか副会長とか理事を送り込むべく、常に意識をして、そのような不断のロビー活動をしているとおっしゃっていました。二十八のうちの三分の二といえば二十二、中国は入っているんですよ。我が国は七だけです。

 したがって、スポーツ外交というものにも取り組まなければいけないと思いました。

 きょうは岸田外務大臣はちょっと呼んではおりませんが、私は、ぜひ、IOCのメンバーにももっと日本人を、IOCの事務方職員にももっと日本人を、あるいは、世界のいろいろなスポーツの統括団体にスポーツアコードというのがあります、そこのメンバーや職員にも日本人を。今、国連のもとにUNOSDPというのがあります、国連の、スポーツを通じた、貧困を解決し開発を促進する協議機関。ここにも日本からインターンの人が一人行っておりましたが、継続してこういった国際機関にスポーツに関する人材を我が国から送り込み続ける必要があると思います。

 国内の各競技団体では残念ながらそれだけの力がありませんし、人材を育成する力がありません。ここをつなぐのが、ある部分、政府としての役割。今後もしスポーツ庁が設置されるとするならば、その機能を政府の側が、スポーツ庁の側が持っていくべきだなと思わされました。

 大臣の見解をお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 もし柔道の山下が英語ができたら会長になっていますよ。やはり、一言もできなかったから。あの試合のときでも、おかしいじゃないかと審判のところへ行って、監督として手を挙げられない、言葉ができないから。残念ながら現実です。

 したがってこれは、義務教育に読み書き計算、英語英語と言っているけれども、ジス・イズ・ア・ペンなんて生涯使ったことがないセンテンスですよ。一回も使ったことがないでしょうが、みんな。ジス・イズ・ア・ペンなんて言ったことある、ないだろう。それが学校で習うんですよ。今でも言っているわけだから。やはり英会話を少々という義務教育の方が俺は正しいと思っているんだけれども。

 そこからスタートしなくちゃいかぬとは思いますけれども、とても、河清を待つような話ですから、なかなかそんな簡単にはいきませんので。

 これはある団体がやった例を引きますが、そこは、外務省の元条約局局長を呼んで、おまえ、ちょっと国際担当の副会長と言ったら、私は全然そのスポーツをやったことがありませんと断った。いや、やらなくてもいい、やったような顔をして行けばいい。ただし、そこの会に行くと、本部があれはモナコにありますので、年に三回、タキシードを着て夫婦で三日間、今までの方々は早い話がもう苦痛の三日間を過ごしてこられたんだそうですが、その方にとっては、別に今までの仕事でなれていますので、行って二年目で副会長になりました。

 そして、会長がやめると言ったので、では当然自分もやめるかと思ったら、次の人がフランス系の人だったものですから、その人がちょっと待ってくれと言って、この人はフランス語の方がうまいような人でしたので、フランス語の会長で筆頭で残ってずっとやった。

 この人は小学校のときからそのスポーツをやったことはただの一度もない。しかし、組織力、英語の文章を直す能力、フランス語も含めて、会話、普通の選手たちとしゃべる話、日本という国をバックにやるわけですから、それを堂々と演じてもらえればそれでいい。したがって、当分の間これでやるしかないかなとその体育関係の偉い方にはその方を申し上げて、推薦した後どうなったかなと思ったら、物すごい成功したというお話だったので。一つの例です。

 いろいろな形で、今できておられる方々を当分の間使って、あとはそういった人たちを育てていくということをしませんと、いつの間にか柔道着が青くなったりいろいろルールが変わって、JUDOというスポーツと講道館柔道とは違ったスポーツ、あれは片っ方は武術で片っ方はスポーツだと言ってのけた方もいらっしゃいますけれども、違ったものになっちゃったんですよ。

 そういう意味では、先ほど下村大臣が言われた武士の精神とかいうようなところも、一本というものはほとんどなくなって、とにかくポイントだけとればいいというようなものが主流になっていくというようなものに関して非常に不満も出る。傍ら、フランスでそこそこうまかった者は全部、講道館柔道の方がいいと言って、日本に来て講道館柔道を習う。

 そういった、各国によっていろいろ差が出てきているのは確かなので、私どもとしては、武術とは言いませんけれども、そういったものに限らず、スポーツ全体の中で日本の力をというのであれば、私どもも馳先生と同じで、語学がある程度できる、ある程度できればいいので、必要以上にできる必要は全くありませんので、語学がある程度できる、そして堂々と向こうと話ができるというような者がきちんと育っていくというのが、当面の方法で取り急ぎそういう人を入れて、かつ、それを継続していかないと意味がないという感じがしております。

馳委員 大臣、特別な例にしちゃいけないんですよね。今大臣がおっしゃったような例はスタンダードにしていかないと、今後、やはりIFの役員に日本からどんどん役員を送り込めないんですよ。送り込めないと、いわゆる試合をつくる人、つまりルールをつくる人、物事を決定する人になれないし、情報も入ってこないし、そういった観点でおくれてしまいます。

 ところが、積極的に入っていき、メンバーになることができると、スポーツだけの外交じゃないんですね。私はびっくりしました。私も元オリンピアンでもありますから入っていったんですが、必ず経済の話になります、必ず歴史の話になります、必ず外交の話になります、必ず、老後はどうするかという話にもなります。

 したがって、スポーツを通じた力というのは、こういった外交の面においても大きなやはり潤滑油になりますし、役割を果たしていくと思うんですね。

 そこで、関連してちょっと話を下村大臣の方に。

 今、ソチ・オリンピックでも活躍している若い選手、すばらしいと思いますが、やはり、強化を予算を使って、国の税金を使ってするわけですから、せめて英会話教育をしっかりさせるとか、テーブルマナーぐらい教えるとか、できたら社交ダンスぐらい教えるとか。そうなんですよ、ヨーロッパの、あるいはアメリカも含めて、やはり、一定レベルの理事会や会合があった場合にはそういう大人の社交的なつき合いが求められるんですよ。と同時に、さすがにやはりある程度の、少しはお土産の交換もしたり、そういった話し合いもできなきゃいけないんです。

 したがって、各競技団体の役員となるような人には、ある程度の資産が必要か、あるいはやはりどこかの会社の社長さんとか実業家になってもらうとか、そういうことをスタンダードにしていかないと、日本はスポーツ外交では太刀打ちできないんですよ。

 まず、その強化の面において、選手たちにきちんと英会話を教えていますか。

下村国務大臣 九月七日のブエノスアイレスで、二〇一六年の招致と違ったのは、アスリートが立派なスピーチをジェスチャー含めてやった、そのプレゼン能力が日本はこれまでと違うというところが評価されたところだと思います。あるいは太田選手や佐藤真海選手、すぐれた語学力もあったということですが、御指摘のように、スポーツ選手がみんな英語をしゃべれるかというと、しゃべれない子の方が多いというふうに思います。これは、スポーツ選手だけじゃなくて、我が国のやはり語学力の問題というのはあると思います。

 ですから、小学校の三年生から英語教育の導入を、残念ながら、やはり英語が世界共通語ですから、共通語をしゃべれないと国際社会の中でなかなか、能力があったとしても語学ができないために通用しないというような現状というのはありますので、ぜひ英語には力をしっかりこれから入れていきたいというふうに思います。

 同時に、しかし、英語だけしゃべれても世界で相手にされるわけではないので、やはり日本人としてのアイデンティティーとしての伝統とか文化とか歴史も一緒に教えて、タフな、知識を持ったアスリートなりあるいは日本人を育成するということにおいてもっと貪欲に教育に力を入れていかなければ、世界の中で対等に活躍できるような人材は、スポーツだけでなくどんな分野においても、やはり地球は狭くなってグローバル社会が必然的な流れですから、それにたえ得るような教育を力を入れてやっていきたいというふうに思います。

馳委員 なぜオリンピック・パラリンピック大会を東京で開くのか、なぜそんなに税金をかけてまで開くのか、常にこれは問い続けなければいけない問題です。その答えは、今、麻生大臣も下村大臣もおっしゃったように、スポーツの力を信じて、スポーツの力を通じて、社会に、世界に貢献していくという具体的な姿を見せ続けることだと思います。

 同時に、やはり汚染水の問題を初め福島問題には高い関心が今でもございます。私も今回のソチの出張でも必ず言われました、あの後汚染水の問題はどうなっていると。したがって、注目を浴びているからこそ、常に緊張感を持って、東日本大震災の復興に向けての取り組みを対外的にも説明していかなければいけないというふうに思わされました。

 この二〇二〇年の大会を開く意義というものを、ただイベントとしてやればいいというものではない、その認識をぜひ改めて持ち続けていただきたいということを、言うまでもありませんが、このスポーツ・フォー・トゥモローの事業を通じて展開していただきたいということをまずお願いしておきます。

 オリンピックの件でもう一つは、新国立競技場の建設の問題です。

 総額幾らで、その内訳はどうなっていて、そして、国と東京都とtotoとどのような割合でこの財源を工面していくのか、このことについて、まず具体的なことをお伝えいただきたいと思います。

下村国務大臣 国立競技場の件ですけれども、現在の改築工事費の見積もり金額は一千六百九十二億円を上限として行うこととしておりまして、私どもとしては、現在の見積もり金額を上回らないようにしっかりと対応していきたいというふうに思います。

 現在、その内容についてですが、これは政府としては、国の財政状況に鑑みて、多様な財源を確保していくことが必要であるというふうに考えております。このようなことから、平成二十五年五月には、議員立法によりスポーツ振興投票の実施等に関する法律等が改正され、スポーツ振興くじの売り上げの一部を国立競技場の改築等の財源に充てるということになっております。

 現在、東京都に対しても費用の一部負担を要請しております。実務的にこの費用分担の協議を進めているところでありまして、まだ金額が正式に合意をされているわけではありませんが、東京都にも協力をしてもらいながら、しっかり財源確保に向けて対応してまいりたいと思います。

馳委員 麻生大臣、今、下村大臣は、上回らないように取り組みますと殊勝におっしゃいました。

 しかし、私、リオデジャネイロへ行ったときに、このことを聞いたんですよ。あそこは、もう開催経費が二七%も、今の時点でですよ、オーバーしているんだそうですよ、計画段階から。何が一番大変ですかと聞いたら、これだけ計画から実際に予算が二七%も上回ったので、それだけ税金を使いますということを国民に説明して納得してもらうのが、一番リオデジャネイロ・オリンピックを開催する大変なことですとおっしゃいました。

 もし万が一上回ったら、財務大臣としてどうしますか。面倒を見ますか。

麻生国務大臣 霞ケ丘競技場と正確にはいうんですが、この競技場で、今、一千六百九十二億円と文部大臣から話があっておりましたけれども、内訳を見ると、建設費一千三百八十八億、解体工事六十七億、立体工事などの周辺整備二百三十七億、合計一千六百九十二億ということになっておりますので、これは、今の段階から見て高いなと正直思いますね。元セメント屋としては、このぐらい大体はわからぬことじゃないから。

 しかも、何だか知らないけれども巨大なものをつくっておられるので、あの高さを計算しますと、伊藤忠のビルがあそこにありますけれども、あれとほぼ同じ高さのものを今の競技場を倒してその後に建てるという話なので、ちょっと待て、そんなにというような感じがしないでもありませんので、今からいろいろ話をしていかないかぬところだと思います。

 これは、仮に工事がばれたときというのは、リオデジャネイロのは二七%、それはもともと設計が悪いからそういうことになるのであって、もうちょっときちんと詰めてやらないからそういうことになったと言えばそれまでのことだと思いますが、いずれにしても、こういったものはきちんとやっていかねばならぬことだと思います。

 いずれにしても、仮に上回ったときは、それは関係省として文部省とか、それから、東京都でこれはやっておられる、国がやっているんじゃありませんので、これは基本的には東京都という、市がやるということになっておりますので、東京都、それから文部省、それと財務省、これをよく三人で御相談させていただかないかぬところなので、財務省が責任持って全て払いますなんというようなことを軽々しく言うつもりは全くありません。

馳委員 大臣、私は、実は党の無駄撲滅チームの副会長もしていまして、もうちょっと踏み込んで、びた一文払いませんと言うんじゃないかなと思って、ちょっと期待もしながら聞いていたんですが、ここはやはり計画を詰めて詰めて詰めてというふうな、その緊張感は大事だと思います。

 そこで、この新国立競技場については、そうはいうものの、計画段階でIOCとの約束をしておりますから、その計画を大いにたがえるわけにもいかないわけですね。

 下村大臣、サブトラックの問題ですね。仮設で約束をしておりますが、陸上競技場をつくって、オリンピック・パラリンピック大会の後も使うわけでありますから、私は、仮設はいかがかなと思います。今後とも、陸上の国際大会も開催できるようにし、国内の大会も開いていくためにも、この仮設というのは、常設にしていくという方向性を持つべきだと思っております。

 無駄撲滅チームでも、オリンピックのためだけに仮設で十四億も払うのならば、毎回、国際大会で払うときに十四億も使わなきゃいけないじゃないか、そんな無駄なことは認められないと、あの河野太郎さんが強調しておりましたし、私もそのとおりだと思っているんですね。

 やはりこのサブグラウンドは常設にしていくべきだと思いますが、下村大臣の見解をお願いします。

下村国務大臣 まず、新国立競技場がばかでかいという話がありましたが、高さが今度七十六メートルになる。馳さんも行ってごらんになったと思う、私もソチへ行ったとき、開会式が行われた競技場がありますね、あの高さが六十九メートルで、ソチの収容人数は四万人なんですね。今回の新国立競技場は八万人ということで、やはり、八万人規模でほかの国を見ても、決して別に高いというか、標準的な高さ。これまでに比べると高いということですが。ただ、トータル的な規模は、最初の設計のデザインよりは相当縮小する段階で、ぜひ予算の範囲内で対応できるようにしっかり頑張りたいと思います。

 サブトラックの件でありますけれども、これは、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック東京大会の開催後も国際大会や全国大会を開催できる陸上競技場であるための必要条件として、陸上競技場には補助競技場が常設である必要性があるということでございますので、文部科学省としては、常設のための方策について関係者と協議してまいりたいと思います。

馳委員 麻生大臣、最後の質問です。

 羽生君、金メダルをとってくれるとうれしいですねという期待を持ちながらも、選手強化に向けての取り組みも一つの大きな課題です。

 私、十二月にギリシャに行ってまいりましたときに、アテネ・オリンピックの後、一気に予算が削られて、政府が悪いんだと、非常に、私を案内してくださった政府の関係者と強化担当の重量挙げの強化委員長がけんかし始めるぐらいで、びっくりしました。

 したがって、大臣は御存じだと思います、JOCの強化予算は、三分の一自己負担なんです、各競技団体。ところが、各競技団体、裕福なところとそうでないところ、そうでないところの方が多いんです。したがって、三分の一を準備できずに、せっかくいただいた三分の二の分も返しちゃっているんですよ、国庫に。この現実があるんです。

 そうすると、まず、東京オリンピックに向けて、その後の継続的な強化予算を確保できるようなシステムというものが今こそ必要ではないかと思いますが、最後に麻生大臣に答弁をいただいて、終わります。

麻生国務大臣 金もないけれども、システムもだめです。僕は見ていてつくづくそう思いますよ、あそこは。あそこはというのは、JOC。いたから、よくわかります。

 基本的に、強化費というものをやはり強化委員長に集中させないと、totoから入ってくる、地方から入ってくる、体協から入ってくる、国から入ってくる、じゃらじゃら蛇口がいっぱいあって、強化本部長の指示が徹底しないんですよ。

 だから、自分の学校の試合のためには、例えばアンダー22に出したいとか、どこどこのジュニアの試合に出したいといっても、インターカレッジがあります、我が校を代表してのインターハイがありますといって、そういうのには絶対出さない。結果的に、その選手はそれでだめになっちゃうんですよ。

 そういった意味では、いいのはいっぱいいるんだから、それを集めてきて、がしゃっと競争して、おまえ、田舎じゃ大将かもしれぬけれども、ここに集められたら大したことないだろうがと。学校だって、みんな、ラ・サール高校じゃよかったかもしれないけれども、早稲田に行ったら大したことなかったろうと。思い知ったのがいっぱいいるわけですから、そこらにも。

 だから、そういったのは、やはり、田舎ではこうだったんですけれども、東京へ来たらだめだったわけですよ。だから商売の方向をやめて国会議員になったというだけの話なんだろうとは思いますけれども、やはり医者より国会議員だというように発想を切りかえた人もいますし、いろいろいるんだと思いますが、僕は、そういったのをきちっと集めて七年間徹底してやれば、幾らでも出てくる候補者はいる。

 要は、システムと金の集中のさせ方が問題なんだ、私はそう思いますので、私どもとしては、今おっしゃいましたように、スポーツ団体で、とれそうなところだけれども金がないというのは、それは組織の運営として下手なんですから。スポーツがうまいからといって、組織の運営がうまいなんという保証は全くありませんから。そういった意味では、きちっとしたものを経営の感覚を入れてやりさえすれば、僕は幾らでも方法はあるんだと思っていますので。

 ぜひ馳先生、こういったものは、金を今度はたしか十四億今より多くつけることになってはおりますけれども、そういった意味で、強化プロジェクトというのを新規に、これは新たに十四億つきますが、オリンピック、パラリンピックの強化費用としては、前年度比プラスの二十三億円で九十九億円というのは既に用意ができておりますので、問題はこの金の使い方が、どううまく集中して使っていくかということだと思いますので、その点に関しましては終わった後のフォローもきっちりさせていただきたいと思っています。

馳委員 終わります。ありがとうございました。

上杉委員長代理 これにて馳君の質疑は終了いたしました。

 次に、浜地雅一君。

浜地委員 おはようございます。公明党の浜地雅一でございます。

 きょうは、予算委員会の一般質疑で二十分の時間をいただきました。皆様、本当にありがとうございます。

 まず一問目は、若者の就労支援について、田村厚労大臣にお話をお聞きしたいと思っております。

 若者の支援を取り上げましたのは、我が公明党は、若干若返りまして、衆参合わせて五十一人の議員がおるんですが、青年委員会といいまして、大体三十代、四十代の前半までの議員が今十五名おります。約三割が青年議員ということで、昨年の夏にも安倍総理の方に若者支援対策ということで提言を申し上げまして、日本再興戦略の方にも一部反映をしていただいております。

 しかし、その中で、今回、この予算の中で気になるのが、これは補正予算であったわけでございますが、若者サポートステーションの事業費が非常に削られているという問題です。昨年は約六十五億ついていたのが、ことしは三十五億ということで、実は私、実際、この若者サポートステーションに従事している従業員の人から、この予算が削られたことについて、非常に心配の声を聞いております。

 よく聞きますと、秋の財政レビューで指摘を受けて予算が削減されたと聞いておりますが、この若者サポートステーションは、全国に約六十万人いると言われております、いわゆるニートと呼ばれる若者の支援に対して、非常に有効な効果がございます。

 きょう、資料をお配りしておりますけれども、一枚目、一番右の、サポステの実績の推移ということで、二十四年度が一万四千七百十三人が就労しているのでございますけれども、実際、このサポステに登録したのは二万八千人です。二万八千人の中で一万四千人といいますと、約半分の若者がサポステ、若者サポートステーションを使って新たに就労したということでございます。

 ニート支援といっても、私も勉強しましたが、さまざまあるようで、まず、そもそも引きこもってなかなか人に会うことができない人、または、少し就職活動してみようかな、でもこれまで引きこもっていたので怖くて就職活動ができないといった人、または、高校を中退してこれからどうなっていくかわからないということで、ニートになる原因、また今の状況というのはさまざまあるようでございます。

 その中で、このサポステというのは、特に、就労してみようかな、そういった意識が芽生えた人に対して、一人一人の状況に応じてカウンセリングをしながらきめ細かく支援をして、しっかりと就労を促し、将来的にはしっかりと納税をできる若者を育てようという大事な事業だと私は思っております。

 特に、アウトリーチ型といいまして、学校の方に出向いて、どういった子がいるのか、また中退者のその後、どういうふうになっているのか、それをわざわざアウトリーチ型で訪問をしてやっているところに非常な成果があると聞いておるんですけれども、この秋の財政レビューの指摘を受けて、どういった点が問題として指摘をされて、どういった部分の予算が削られたのかを、田村厚労大臣に答えていただきたいと思います。

田村国務大臣 地域若者サポートステーションに対する御質問をいただきました。

 以前から、ニートの若い方々の職業的自立、これをしっかり支援していくという意味で事業をやってきたわけでありまして、これは合宿型が入っているわけでありますが、以前は若者自立塾というような事業、私も何度か視察にもお伺いをした覚えが数年前、あります。

 今般、補正予算で三十五億円計上させていただいておるわけでありますが、今委員おっしゃられました行革推進本部の秋のレビューにおきまして、幾つか指摘をいただきました。

 例えば、ちょうど今、生活困窮者の自立支援、これに力を入れてきておるわけでありまして、法律も通ったわけでありますが、これの支援モデル事業というのがございます。こういう部分で、相談事業なんかで重複する部分がございますので、それはやはりやめるべきである、重複しないようにするべきである。

 それから、学校との連携という部分では、在学者の方々に、今言われたように訪問事業があるわけでありますけれども、これも、これは学校が対応するべきであるので、こういうものは廃止すべきである。

 さらには、学校の中退者に関しても、中退者の連携に関しては学校連携が進んできておりますので、そういう意味では減額をすべきであるというような御指摘をいただき、さらには、いよいよ執行段階においても、地方で単独でよく似た事業をやられている自治体がございます。こういうものは重複しないようにというようなことを、さらに財務省の方からいろいろと御議論をいただいておるということでございます。

 ただ、大変重要であることは間違いないわけでありまして、しっかり精査しながら、これは予算を獲得いたしまして対応していかなければならぬ、このように思っております。

浜地委員 ありがとうございます。

 今の御指摘の部分は理解をいたしましたけれども、ぜひ、このサポステの強み、きめ細かくサポートできるというところだけは、しっかり特徴を生かしながら行っていただきたいと思っています。

 そうなると、予算は削られているといいますと、若者に対する支援が薄くなったんじゃないかという懸念が生じるわけでございますが、このサポステ以外に、安倍政権として、いわゆる若者の就労支援対策、総合的にはどういったものがあるか、ほかのアウトラインも含めて、田村厚労大臣にお聞かせいただきます。

田村国務大臣 若い人たちへの支援ということでございまして、まずは、新卒者の方々に対して、新卒応援ハローワークというものを展開いたしております。ここで、ジョブサポーターの方々によるきめ細かい職業紹介でありますとか相談を実施しておりまして、平成二十四年度の実績でいきますと、新卒応援ハローワークの利用者は延べ七十一万人であります。ジョブサポーターの支援による就職者数が十九万四千人ということになっておりまして、現在、この新卒応援ハローワーク、全国で五十七カ所展開をさせていただいております。

 それから、フリーターの方々中心に支援をするということで、わかものハローワークという事業をやっておりまして、今、これは大都市圏に三つほど持っておるわけでありますが、これを二十六年度は広げまして二十八カ所、さらに、わかものハローワークではないですけれども、若者の支援コーナーでありますとか支援窓口ということで、全国に二百十一カ所展開をいたしておりまして、しっかりと予算を獲得してこういう支援もしていこうということでございます。

 さらには、若い方々の支援ということでは、今般、基金事業、いろいろと言われておるわけでありますけれども、こういうものも利用しながら、それこそ初期集中で、短期で教育訓練等々をやる、一カ月から三カ月、こういうもので、しっかり、若い方々、今まで余り就労経験のないような若い方々に対して密接に対応していくというような事業もいろいろと考えておりまして、若い方々に対する支援というものをこれからも強化してまいりたいというふうに考えております。

浜地委員 ぜひ、総合的な支援ということでお願いしたいと思っています。

 聞くところによりますと、このわかものハローワークは、就職後の、どれぐらい離職せずにその会社に勤めたのか、そういったデータもとられるということで、特に、就業が長く続くということが大事であろうと思っていますので、その点の御支援もお願いできればと思っております。

 しかし、私に、予算が削られて大丈夫かと言ったサポステの青年は、何と、お給料が十四万円だということです。

 私、やはり問題と思うのは、いわゆる若者を支える、例えば先ほどの若者サポートステーションの職員、そして、女性進出ということであれば女性の子育てを助ける保育士、また、高齢者ということになりますと介護福祉士ということなんですが、よく言われていることなんですが、この人たちの給料が安いということがやはり地元でも言われますし、皆様方の耳にもよく入って、処遇を改善してほしいと。

 私、特に介護等は、これから成長産業にしようというときに、やはり給料の安いところに、支え手として、従業員として入ってくる人はなかなかいないと思っております。ですので、国としてもしっかり、こういった子育て、女性、高齢者、また若者の支援を求めるのであれば、やはりそれを支えている側の処遇というものもしっかりこれから目を配っていかなきゃいけないと思っておりますが、その点について大臣の見解をお聞かせください。

田村国務大臣 御指摘のとおり、福祉職はやはり待遇が余りよろしくないというようなお声を我々もよく聞いております。賃金等々を見ましても、比較的低い、ほかの産業と比べて平均的に低いという結果もございます。

 特に介護がいろいろとそのような声があったわけでありまして、これは平成二十一年の介護報酬改定のときに、それではいけないということでございまして、まずは九千円、このときに月額でこれを引き上げていこうというような報酬改定をやりました。

 その後すぐにでありますけれども、処遇改善交付金という形で一万五千円ほど、平均でありますけれども、これは交付金という形で基金を組んで処遇改善。さらに、先般、前回の介護報酬改定のときに六千円、これを改善しようという形で、この介護報酬改定の中に盛り込んだわけでありまして、都合、これはざっとした計算でありますけれども、月額で三万円ほど処遇が改善をしておるわけでありますが、それでもまだ低いというお声もお聞きをいたしております。

 なかなか財源のかかる問題でもございますが、次の介護報酬改定に向かって、各般の方々からいろいろな御議論をいただきながら、これに対応していきたいな、このように思っております。

 あわせて、保育の方も、実はこれもまた非常に賃金が低い分野でございまして、二十四年度の補正予算におきまして、処遇改善をすべきであるということで、これを組ませていただきました。一般の保育職の方々は月額八千円、主任保育士の方々に関しては一万円ということでございまして、これも平均でありますけれども、一応そのような改善ができるようなものを民改費に積んで対応したわけでありまして、二十六年度予算に関しましても、そのような手当てをさせていただいております。

 あわせて、子ども・子育て支援制度、これは今いろいろと、単価も含めて、議論をやっております。この中においても保育士の処遇改善ということが一つ大きな課題として挙がっておりますので、しっかりと御議論をいただきながら、消費税も上がる中において、予算の手当てをしてまいりたい、このように考えておるような次第であります。

浜地委員 こちらの支え手の方の処遇という点、またぜひよろしくお願いしたいと思います。

 次の質問に入らせていただきますが、上水道の整備ということについて聞きたいと思います。

 老朽化を迎える上水道が多くありまして、これからこの更新に向かってピークを迎える時期が来るわけでございますが、資料の二枚目を見ていただきますと、実は平成二十一年の事業仕分け、前政権時代に、上水道の整備に対する補助金の対象が、この「メリ」という部分の下に資本単価というのがあるんですが、資本単価が七十円以上から九十円以上に改定をされました。資本単価というのは、一立方メートル当たりの上水を出すのにどれぐらいお金がかかっているかということであるわけでございますが、これが引き上げられたことによりまして、これまで七十円の時代では、全国の千五百ぐらいの自治体が補助の対象になっておったんですが、これが引き上げられたために、約五百の自治体しか補助が受けられない。

 私、九州の比例区選出でございますけれども、九州に鳥栖市というところがございます。人口約七万人で、もともと上水道の更新を計画しておったんですが、この事業仕分けによって補助金がつかないので、現在断念しているという状況がございます。

 当然、大事なインフラでございますし、また、上水道といいますと、人々の安全または健康にかかわる部分でございます。

 次のページの三枚目の予算を見ても、この水道施設整備事業の予算額は年々減ってきておりまして、なかなか財源も苦しい中、予算措置も難しいと思いますけれども、いわゆるこの資本単価の引き上げに伴う上水道の整備が全国自治体でなかなか進まないという現状について、田村厚労大臣に所見をお聞きしたいと思います。

田村国務大臣 上水道というものは、人が生きていくために基本的なインフラであります。文化的で健康的な生活をするためには必須のものだというふうには思っておるわけでありますけれども、今委員がおっしゃられました、本来ならば、水道料金の高騰でありますとか、または耐震化等々を進めるために、一定程度やはり補助をしていくということであったわけでありますが、これは事業仕分けに遭いまして、その中において、今おっしゃられましたとおり、資本単価の引き上げで対象事業者が絞られたということでございます。

 ここに事業仕分け取りまとめのコメントがありますが、水道料金が平均を上回るところを全て対象とするのはいかがなものかなどというような御意見もいただきました。

 これは我々の政権以前のときなんですけれども、結果的に、老朽化をして、これから更新が必要な水道管でありますとか、さらには耐震化が必要な部分、これに関して、必要なんですけれどもなかなか予算が獲得できないというようなお声も、我々、地方からお聞かせをいただくわけであります。

 これはそれぞれ、これから必要なものでございますから、我々も、予算の要望をしっかりやりながら、それぞれの地域がお困りにならないような、そんな対応をしっかりやってまいりたい、そういう思いでございます。

浜地委員 そうですね、やはり予算という面がありまして、特に厚労省は、いわゆる年金や医療等の予算もございますし、唯一、厚労省の中で公共事業的な補助事業をされているのがこの上水道であると思っています。

 そうなると、私は内閣委員会にも所属しておるんですが、PFIの活用、やはり民間の資金を使ってこういった社会インフラを整備していく必要性というものを痛感しておりまして、特に上水道については、下水道と違いまして、民間の事業者が事業を行うためにはもう法律的な障害はないわけでございますが、厚労省としては、こういったPFI、民間資金を使っての上水道の更新というものに対する何かPRとか、もしくはそういった取り組みをされていますでしょうか。

    〔上杉委員長代理退席、委員長着席〕

田村国務大臣 今委員おっしゃられました水道事業者によるPFIなどの官民連携、この支援でありますけれども、平成十九年度から、水道事業におけるPFI導入検討の手引、こういうものを順次策定してきているところであります。二十三年度にPFI法の改正がございましたので、これを踏まえて、現在、改定を行っているところでございまして、今後、水道事業者にしっかりと周知をさせていただきたいというふうに思っております。

 また、経済産業省と連携をいたしまして、平成二十二年度から、水道分野における官民連携推進協議会、これを継続して開催いたしております。

 これらの取り組みを通じて、PFIを含む多様な官民連携、これは水道部分も含めてでありますけれども、図ってまいりたい、このように思っております。

浜地委員 ぜひPFI、各自治体のやはり自主性に任せながら、当然また地元の住民の方の意見も聞きながらでございますが、私もやはり、業者の方はぜひPFIをやってみたいんだというふうに言われるんですが、なかなか自治体の方が、住民等の意見もありますので進まないところもありますので、国の方としても、そういう興味のある自治体にはぜひ推進をしていただきたいと思っています。

 最後の質問になりますが、太田大臣に御質問させていただきます。

 公共工事の予定価格の適正化ということでございます。

 公共工事、特に労務単価につきましては、大臣に英断していただきまして、昨年は全国平均で一五%、そして、ことしはこの二月から七・一%の引き上げということで、私の地元の建設業者も大変喜んでおります。実は私も、祖父は大工で父は建設業でございますので、喜んでおる次第でございます。

 ただ、公共事業というのは、いろいろ、さまざま言われるんですが、私は九州におりまして、特に比例区で、福岡に住んではおりますが、ほかの県を回りますと、やはりまだまだ建設事業者の占める割合、そして、地方においては、この建設業というものの地方経済における重要な役割というのを痛感します。東京にいるとなかなかそれはわからないかもしれないんですが、やはり地方経済にとっては大事でございますし、これから大事なインフラ整備をするためには必要な工事をやっていかなきゃいけない、そのように思っております。

 しかし、よく言われるとおり、資材が円安によって非常に上がっているということで、人件費の方は今少しずつよくなってきてはいるんですが、どうしても入札時と応札時にタイムラグが生じておりまして、役所が見積もったときからさらに円安が進んだり、または資材が高騰、逼迫しまして、予定価格といわゆる応札価格が合わないという状態がございます。

 それについて、この資材の高騰という点について、いわゆる労務単価の引き上げとともに、公共事業の予定価格の適正化について、国交省の取り組み、これを大臣にお聞かせいただきたいと思っています。

太田国務大臣 時間のようでありますので、簡単に申し上げます。

 人件費については、労務単価を上げさせていただきました。

 資材については、御承知のように、円安によってということもありますし、高騰してきているということがあります。

 入札時に、毎月更新される最新の資材単価を適用する、これを徹底しました。それから、契約後に資材が高騰した場合、スライドさせる、これも徹底をさせていただきました。あるいは、遠隔地から、これは東北の場合が特に多いんですけれども、調達した場合には、追加コストを円滑に支払う措置を活用するよう、これも徹底させていただきました。

 円滑に執行され、そして構造物ができるようにということに力を入れていきたいと思います。

浜地委員 終わらせていただきます。ありがとうございました。

二階委員長 これにて浜地君の質疑は終了いたしました。

 次に、岡田克也君。

岡田委員 岡田克也です。

 まず、国の資産売却について何点かお聞きしたいと思います。

 JT株の売却について、平成二十三年度に法改正をして、二分の一超から三分の一超ということに引き下げまして、既にこれはもう売却がなされました。九千七百億円の収入が国に入って、被災地の復興のために使われたということであります。

 このJT株の売却について議論がいろいろありまして、実は、私は全株売却を当時主張したわけですけれども、葉たばこ農家や小売店の影響もあるということもあり、あるいは、葉たばこ農家は福島に多く集積しているということもあり、まずは三分の一超ということにした経緯があります。

 しかし、法律上、復興財源確保法附則第十三条には、「その保有の在り方を見直すことによる処分の可能性について検討を行うこと。」ということが明記されているわけであります。

 もう三分の一にまでなったという現状で、さらなる売却についてどういう検討状況なのか、麻生財務大臣、お答えいただきたいと思います。

麻生国務大臣 これは、岡田大臣というか岡田先生よく御存じのところなので、この復興財源確保法の附則には、御存じのように、政府が保有するJT株式の売却につきましては、たばこ事業法等に基づくたばこ関連産業への国の関与のあり方を勘案して、その保有のあり方を見直すことによる処分の可能性について検討を行うこととされております。

 それによりまして、今言われましたように、三分の二を売却しておりますが、問題は、このJT株式の保有を政府がやっておるというものは、これは今言われましたように、いわゆる国産葉たばこの全量買い取り契約というものがありますので、これを担保するという点と、JTの国内たばこの製造独占とも密接な関係を有しているということから、この全株売却に当たっては、法制の根幹について議論をしておく必要があるというお話があっております。

 そして、今言われました附則第十三条における検討ということですけれども、復興財源確保法につきましては今申し上げたとおりなんですが、この附帯決議におきまして、たばこ関連産業への国の関与のあり方を勘案する際には、葉たばこ農家や小売店への影響などを十分見きわめることとされておりまして、こうした規定を踏まえまして、現在、葉たばこ農家、小売店の状況について、引き続き実態調査をしているところですけれども、これは結構、数が物すごく多いというのが正直な実感です。

岡田委員 たばこ事業法の法目的に、たばこ税が財政収入において占める地位に鑑みと、そういう理由で、今大臣がおっしゃったさまざまな規制がかかっているわけであります。

 しかし、たばこ税の税収はもちろん大きなものではありますが、それがいろいろな規制を合理化するものなのかというと、私はかなり疑問があるわけですね。

 例えば酒について考えても、同じような規制が別にかかっているわけではありません。今大臣がおっしゃった全量買い取りとか価格規制とか、あるいは国内における製造の独占とか、そういうものはもちろんないわけで、私は、規制改革という観点から見ても、こういう規制、それからもう一つは、国がなぜたばこ産業を、一部とはいえ株式を三分の一持たなきゃいけないのかという合理的な理由というのは考えられないわけです。

 そういうことを考えると、いろいろな経緯があることはわかりますけれども、やはりここは抜本的に考え方を変えるべきではないか、そういうふうに思うんですが、いかがでしょうか。

 もちろん、いろいろな経緯もありますし、葉たばこ農家に対してもし何らかの保護が必要であるということであれば、それはむしろ農業政策として対応すべき話であって、たばこ産業株式会社に何か負担を強いる、そういう話ではないはずだというふうに思うわけであります。

麻生国務大臣 ごもっともな御意見だと思います。

 今、たばこは、ちょっと正確な数字じゃありませんけれども、多分二兆円ぐらい税収を上げているんだと記憶しますけれども、そのうち半分がたばこを買っていただいたその地方にかかりますので、御存じのように、本社が東京にあるところの支店で買うと全部本社が税金を納めますが、支店で買っていただくんじゃなくて、そこにあるお店で買っていただきますと、そこの市、町にたばこ税が落ちるというのは約一兆円ぐらいあったと記憶いたしますので、そういったものの話というのは、これは丸々民間になったときに、それだけの税金を取り上げて全部配る、ちょっといろいろなことを考えないかぬところだと思います。

 おっしゃるように、葉たばこ産業を保護するためだけにこれをやるような値打ちがあるのかという点が御指摘なんだと思いますけれども、その点につきましては、検討の余地はないわけではないと思います。

岡田委員 値打ちがあるかということもありますが、もう民間企業ですね、たばこ産業は。そこに対してこういうさまざまな規制を強いて、負担を強いるということもよくわからないし、国がわざわざ法律をつくって規制しなきゃいけないということもわからないし、国がたばこをつくる企業の三分の一の株式を持たなきゃいけないということもわからない。わからないことだらけで、それを説明するのは、従来からの専売から流れてきた経緯ということですが、もうそろそろ考えていいのではないか。

 そして、そういう規制を取っ払えば、恐らく株の値段は上がります。そうすると、それを売却すれば、売却益も、あと残りの三分の一ということですから、恐らく二兆円ぐらいは、現在でも二兆円以上入ることは確実で、そういうことを総合的にお考えになって、国家としての収入をふやすべきじゃないか、こういうふうに考えるんですが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 これは御存じのように、たばこ事業法においては、国際的に見て割高な国産の葉たばこというものの全量買い付けをJTに義務づけるという点と、もう一点は、国内たばこの製造独占をJTに認めるという点なんですけれども、独占を見直して完全に民営化するということについては、これは今申し上げましたように、小売店とか葉たばこ農業とかいうものに対する影響などを十分に考える必要がありますので、今言われましたように、これを農業政策でやるのかというと、そこのところはいろいろ検討してみる必要があろうかとは思いますが、いろいろなものを考えて、これはちょっと、今すぐ即答はいたしかねます。

岡田委員 小売の方は、今の定価販売ということが維持できないわけではないと思うんですね、そういうものはあるわけですから。ただ、それも、定価販売を維持すべきなのか。酒なんかは定価販売ではないわけですから、そこに合理性があるのかどうかという議論もあると思います。

 いずれにしても、これは東日本大震災の必要な収入を賄うための一環でありますので、少し馬力をかけて御検討いただきたいというふうに思っております。

 それからもう一つ、太田大臣に来ていただいていますが、同じ東日本大震災の関係の財源として検討事項になっておりますのが、政府が保有する東京地下鉄株式会社、東京メトロの株の売却であります。

 これは東京都との調整が必要だということですが、現時点においてどこまで話が進んでいるのか。何か問題があるとすれば、乗り越えなければいけない問題は何なのか、御説明いただきたいと思います。

太田国務大臣 東京メトロの株式につきましては、平成十四年に制定されました東京地下鉄株式会社法によりまして、経営効率化と利用者サービス向上の視点から、民営化に向けて、国と東京都はできる限り速やかに売却するよう規定をされております。

 また、今御指摘のありましたように、東日本大震災の復興財源確保法におきまして、東京メトロの株式売却収入は復興財源に充てられる。早期の売却は非常に重要であると認識をしております。

 このような認識のもとで東京都と調整を進めているところでありますが、この調整の中で、東京都の意向にも配慮しまして、民営化に先立ち、まずサービスの一体化をしっかり進めるために、昨年七月から東京の地下鉄の運営改革会議を開きまして、終電延長などさまざまな施策を中間的成果として本年一月にまとめたところです。

 猪瀬知事の時代は、全体的な一体化とか、そういうことも含めていろいろ論議はあったわけですが、今回、新しい東京都知事になりましたが、東京メトロの株式売却につきましては、国と東京都が十分な連携をとることが大事だというふうに思っておりまして、新しい舛添知事の考え方も踏まえながら、早期売却に向けて関係者と調整を進めてまいりたい、このように思っております。

岡田委員 これは、誰が考えても必要なことは、まず東京メトロと都営地下鉄との一体化、経営統合ということだと思うんですね。その上で、民営化をする、株式を上場するということが必要かと思います。いろいろ都営地下鉄と東京メトロとの、どういうふうに評価するか。これは、いわば資産査定をきちんと第三者に行わせればできることでありますので、そういう形で一体化して、そして株式を公開すべきだというふうに思います。

 私、特に思うのは、オリンピックなんですね。やはり外国人のお客様が地下鉄を利用するということは非常に多いというふうに考えられますので、利便性をより増して、サービスをよくしてということを考えると、早く民営化した方がいいんじゃないか、その方がずっとサービスが向上するんじゃないかというふうに思うわけです。

 ですから、オリンピックを一つのターゲットにして、先ほど言った経営統合や民営化、そしてサービスの向上、株式上場ということをやはりやっていかなきゃいけないと思うんですが、そういう御決意はおありでしょうか。

太田国務大臣 まずサービスの一体化というところで進めて、そこを結節点にしてやっているわけですが、新しい知事とよく協議をして、サービスの一体化、それからその先、株式の売却に至るまで、協調していけるように努力をしたいというふうに思っています。

岡田委員 今大臣もおっしゃったように、知事もかわりましたので、ぜひ新しい舛添知事とよく協議をしていただいて、オリンピックまでに私が申し上げたようなことができるように御尽力いただきたいというふうに思います。

 それから、公務員宿舎の削減、売却計画というのを野田政権のときにつくりまして、平成二十八年度末までに五・六万戸、二五・五%削減するということになっております。

 それから、使用料につきましても、本年四月から、二年ごとに三段階で約一・七倍に引き上げるということも決まっております。

 政権はかわりましたが、現状、どこまで来ているのか、順調に進んでいるのかどうか、お答えいただきたいと思います。

麻生国務大臣 国家公務員宿舎の削減計画、平成二十三年の十二月一日では、国家公務員宿舎の戸数につきましては、平成二十八年度末を目途に、二十一万八千戸から十六万三千戸まで、五万六千戸、約二五・五%、おっしゃるとおりの削減を行うということにされております。

 この削減計画において廃止を決定した宿舎につきましては、平成二十八年度末までの売却手続が可能となるよう、退去期限を設定の上、順次退去及び廃止手続を進めているところでありまして、今、二年弱になりますが、宿舎の戸数の削減は、二十五年九月一日時点で六割相当が進捗しております。約五万六千戸に対して約三万二千戸が終わっておるということであろうと思います。

 廃止した宿舎の跡地につきましては、同年、二十五年九月までに約四百八十億円が売却済みという状況でありまして、おおむね順調に推移をしておると思っております。

岡田委員 国家公務員宿舎の売却は、計画どおりおおむね進んでいるというふうに私も認識をしております。

 問題は、独立行政法人の宿舎の問題で、これにつきましても国家公務員に倣って、野田政権の折に、五年間で三分の一に当たる約六千六百戸を廃止する、使用料についても、そのときの使用料の一・九倍にするということになっております。

 これは、現状、私はかなりおくれているのではないかというふうに思っているんですが、どうなっているんでしょうか。

稲田国務大臣 独立行政法人の職員宿舎については、岡田委員が行革担当大臣の平成二十四年四月三日、民主党政権において、宿舎戸数及び使用料の見直しの方針が決定され、平成二十九年末を目途に約八千百戸を廃止するとの実施計画、これは、平成二十四年十二月十四日、岡田委員が行革担当大臣のときに策定されたというふうに承知をいたしております。

 私が行革担当大臣になって、岡田委員に来ていただきまして、当時の状況、そして引き継ぎをさせていただきました。この問題についても、方針の進捗状況についてはフォローが必要であるという引き継ぎを受けたところです。

 現政権においても、この方針に基づいて、行革の立場から、計画どおり進められるよう、各独法の取り組みを毎年度フォローアップすることといたしております。

 現在、実施計画の最初のフォローアップ作業を行っているところでありまして、今月中に取りまとめの上、公表することといたしたいと考えております。

岡田委員 独法も非常に多様ですので、国家公務員と比べるといろいろ難しい点もあるんですが、ぜひ、フォローアップして、計画どおりできるように、あるいは、できれば深掘りができるようにお願いしたいと思います。

 次に、日米密約について、外務大臣と少し確認をさせていただきたいと思います。

 日米密約について、私が国会で発言したり、あるいは記者会見で確認したことについて現政権に引き継がれているかどうか、そういう観点から質問したいというふうに思います。

 まず第一に、ここに岩屋さんがおられますが、私が外務大臣のときに岩屋議員に、非核三原則というのはもちろん今、日本にあるわけで、つくらず、持たず、持ち込ませず、このことはきちんと原則として守っていくということを申し上げた上で、将来の、核が持ち込まれる可能性について御質問をいただきまして、私は、国民の安全が危機的状況になったときに、原理原則をあくまで守るのか、それとも例外をつくるのか、それはそのときの政権の判断すべきことで、将来にわたって縛ることはできないと思う、重要なことは、国民に対してきちんとその必要性を説明することだというふうに答弁をしております。これは、二〇一〇年三月の衆議院外務委員会であります。

 非核三原則を守るということを原則にしつつ、緊急時において内閣の判断で例外を認めるという答弁でありますが、現政権もこの方針を引き継いでおられるのかどうか、確認したいと思います。

岸田国務大臣 まず、結論から申し上げますと、安倍内閣としましても、当時の岡田外務大臣が示された方針、引き継いでおります。

 岡田委員は外相時代に、今触れられましたが、国民の安全が危機的状況になったときに原理原則をあくまで守るのか、それとも例外をつくるのか、それはそのときの政権の判断すべきことで、将来にわたって縛ることはできないと思うと答弁されておりますし、重要なことは、国民に対してきちんと説明することだとも答弁されております。

 現政権もこの答弁を引き継いでおります。

岡田委員 それでは、朝鮮半島有事の密約についてお聞きしたいと思います。

 日本の基地からの米軍の戦闘作戦行動につきまして、岸・ハーター交換公文で事前協議制というのが導入されました。これは一九六〇年の安保改定時であります。それに対して、朝鮮半島有事の際にはこの事前協議制を適用しないという密約があるのではないか、こういう問題でありますが、これにつきましては、外務省調査の結果、一九六〇年当時の藤山外務大臣とマッカーサー駐日大使との間の文書、俗に朝鮮議事録と言われていますが、これが発見され、密約が存在していたことが明確になりました。

 このことに関して、日米両国政府で交渉した結果、以下の二点が確認されております。

 一つは、朝鮮議事録は既に失効している、すなわち、朝鮮半島有事の際に、日本からの戦闘作戦行動については事前協議を必要とする。第二に、日本政府としては、朝鮮半島有事の際の事前協議がなされた場合には、適切かつ迅速に対応することにする。こういう二点を日米間で確認いたしました。

 これは国会で聞かれませんでしたので、私は、平成二十二年六月十五日の外相としての記者会見でこのことを明らかにしたわけですが、この点についても現政権に引き継がれているかどうか、確認したいと思います。

岸田国務大臣 御指摘の立場につきましても、安倍内閣において引き継いでおります。

 すなわち、御指摘の文書は第一回安全保障協議委員会のための議事録ですが、これは、岸・ハーター交換公文において事前協議の主題とされている戦闘作戦行動のための施設・区域の使用に関するものであり、朝鮮有事という緊急事態においては、在日米軍が行う戦闘作戦行動のために、例外的な措置として、日本の施設及び区域を使用することができるという内容のものでございました。

 この文書につきましては、一九六九年の佐藤総理、ニクソン大統領の共同声明、さらには佐藤総理のナショナルプレスクラブにおける演説による対外的表明によって実質的に置きかわったものと考えられ、今日的な意味はないと考えております。

 そして、平成二十一年から二十二年、岡田外相時代に行われました外務省におけるこの調査結果を受けて、米国との間で、日米安保条約第五条の規定に基づいて行われるものを除き、日本国から行われる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用は事前協議の対象であること、さらには、御指摘の議事録の内容は有効ではないことを改めて確認している、このように承知をしております。

 日本政府は、朝鮮半島における有事の際には、米国政府から行われる事前協議に対しては、朝鮮半島における平和と安定の維持は日本及びこの地域の安全に極めて重要であることを踏まえて、個別状況を考慮しつつ、適切かつ迅速に対応することとしております。

岡田委員 佐藤総理のプレスクラブにおける発言で置きかわったかどうかは、恐らく日米間できちんとした意見の一致はないというふうに私は理解していますが、いずれにしても、今やそれはもう有効ではないということは確認されたということでありました。

 次に、沖縄返還時に、有事の際の核兵器の沖縄への持ち込みについて、これは、外務省調査では確たるものは出てこなかったわけですけれども、平成二十一年十二月に、佐藤総理の御次男の佐藤信二氏によって、佐藤総理とニクソン大統領の署名入りの文書が御自宅に保存されているということが明らかになりました。

 この文書の中身は、極めて重大な緊急事態が生じた場合に、沖縄への核の持ち込みについて、米国政府は日本政府の好意的な回答を期待すること、それから、沖縄返還時に現存する核兵器貯蔵地、嘉手納や辺野古や那覇などをいつでも使用できる状態にしておくことなどが明記されている文書であります。

 この文書の効力について、日米両国政府間で少なくとも今や有効ではないという確認をいたしましたが、この点についても安倍政権の認識は同様ですか。

岸田国務大臣 安倍内閣としましても同様の認識でおります。すなわち、御指摘の文書については、歴代の内閣に引き継がれていないと承知しております。

 よって、日米両国政府を拘束するような効力は、持っているとは考えていないというのが、内閣の立場であります。

岡田委員 私がお聞きしたのは、内閣の立場だけではなくて、日米両国政府で確認をしたということで、アメリカがアメリカ側にある文書についてどう判断しているかということはわからなかったわけですが、そのことも含めて、少なくとも今や有効でないと。つまり、アメリカも、これは有効であるということを主張しないということを確認したところに私は意味があると思うんですが、この点いかがでしょうか。

岸田国務大臣 おっしゃるような立場、安倍内閣も同じ立場、認識でおります。

岡田委員 最後に、沖縄返還時の財政密約について。

 これは財務省が調査を行ったわけでありますが、大蔵省の柏木財務官とジューリック米財務省特別補佐官の間の了解文書というのが、財務省の中では発見できなかったけれども、アメリカにあった文書をもって、これは事実であるというふうに財務省が認定をされました。

 この了解文書では、沖縄返還時の日本政府の負担が四億五千万ドルとしているわけですが、公表された、あるいは国会で議論された金額は三億二千万ドル。そこに大きな開きがあるということが問題になったわけであります。

 当時の菅財務大臣は記者会見で、公表されている三億二千万ドルに加えて、基地施設改善移転費六千五百万ドルや労務管理費一千万ドルが後年度負担的に負担された可能性に言及されています。これは個人的な意見ではなくて財務大臣としての当時の菅財務大臣の発言だったと思いますが、この点は麻生財務大臣も引き継いでおられるのかどうか、確認したいと思います。

麻生国務大臣 平成二十二年三月十二日の記者会見で、当時の菅財務大臣が、個人的な理解としつつ、日本政府は沖縄返還協定に記された三億二千万ドルに加え、約七千五百万ドルを追加的に負担したと考えられる旨述べたと承知をしております。

 菅大臣がそうした発言をした背景として、米国側の資料において、七千五百万ドルの公にできない追加負担が存在した可能性を示唆する記述があったとのことでありますが、一方で、当時の菅大臣も述べておられたとおり、財務省にはそれを示す行政文書は残されておりません。

 事実関係ができない以上、約七千五百万ドルが追加負担をされた可能性について評価するということは困難であります。

岡田委員 ここは、私は非常に深い闇だというふうに思うわけですね。国会では何度も何度も議論されながら、三億二千万ドルという説明をしてきた。しかし、それ以外にどうも負担したものがあったかもしれない、あるいはあっただろうということであります。

 これをどういうふうに処理したのかと考えると、菅財務大臣も示唆しておられるように、後年度の沖縄予算の中に埋め込んで、そして処理をしてきたということが一つ考えられるわけですが、いずれにしろ、それもまた非常に不健全なやり方で、こういうやり方がまかり通ったということは、私は非常に大きな問題ではないかと。そういうやり方をしなければ、本当に沖縄返還に支障が生じたのか。三億二千万ドルが、実はもう少しあるということで、正直に金額を述べるという選択は果たしてなかったのかというふうに思うんですが、麻生大臣、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 これは、その当時、その政治的判断をされた方々がいろいろおられるんだと思いますけれども、その方々がそれぞれ国益を考えられた上での判断だったと存じます。

岡田委員 それぞれの密約について、そのときの状況あるいは国益、そういったものを判断する中で、事実に反する答弁などがなされたということについて、これは、私は一方的に批判しようというふうには思いません。

 ただ、ほかの密約の問題は、当時の核に対する厳しい国民感情とかそういったことを考えれば、私でも同じようなことをしたのではないかというふうに率直に思うわけですけれども、そういう部分があったんじゃないかと思うわけですが、この金額については、沖縄が返ってくるためにこれだけの負担は必要ですという説明を率直にして、それで何か反対運動が起こって沖縄が返ってこないとか、そういうことは私はあり得なかったんじゃないかと思うんですね。

 そういう意味で、これは少し安易にやり過ぎているんじゃないか。一回こういうことをやっているということは、ほかにもあるんじゃないか、そういう疑義すら生じるわけですけれども、先ほどの麻生大臣の答弁でいいんでしょうか。

麻生国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、その差額の約七千五百万ドルにつきましては、関連をいたします行政文書が我が方には残っておりませんので、事実関係を確認できないという以上は、それが追加負担された可能性についての評価ということになりますので、極めてその評価については難しいと存じます。

岡田委員 きょうはこの辺でやめておきますが、当時のことを知っている人からもしっかり聞かれた上での御答弁とは必ずしも思えないわけであります。

 国の予算について、事実と違う金額が国会に出され、そしてそれをもとに国会で議論されてきたというのは、私は非常に大きなことじゃないかなというふうに思いますので、この点は、なおお聞きする場面があると思います。

 最後に、官房長官に、内閣官房、内閣府の事務、組織の見直しについてお聞きしたいと思います。

 官房長官は、二月五日の記者会見で、内閣府のあり方について、今のままでよいとは思っていない、組織が非常に複雑になってきていると発言されています。

 内閣府の何が問題というふうにお考えでしょうか。

菅国務大臣 これは、委員も副総理を経験されて感じたことだと思いますけれども、府省庁横断的な仕事、課題が数多くなっている中で、どうしても、平成十三年に再編をした当時と比較をして、内閣府、内閣官房に対しての仕事量が集中してきているということを私は常日ごろ感じておるところであります。

 そういう中で、当時の目的であります内閣を補佐する機能の強化、必要なものはやはりしっかり充実をさせて、そしてまた、集中をして、ある意味で処理が終わった部分についてはそれぞれの府省庁にまた戻していく、そうした不断の組織の見直しというものが必要だというふうに私は考えているところであります。

岡田委員 私は、今官房長官も言及されましたが、内閣府も問題だが内閣官房はさらに問題だというふうに思うわけです。

 省庁再編後の定員の増加を見ますと、内閣府は千二百人から千三百五十九人と百五十九人増、それから併任者は四百五十七人増です。これに対して、内閣官房の方は定員が五百十五人から八百十八人と三百三人増、それから併任が千百六人ということですから、当初五百三十九人が千六百四十五人になっているわけで、極めて肥大化しているというのが現状かというふうに思います。

 官邸主導とか、そういったことの必要性というのは私も認めるわけですけれども、それにしてもこれは多過ぎて、何でもかんでも内閣官房や内閣府に持ってきてしまうという傾向があるんじゃないか。内閣官房や内閣府に持っていくと、特に議員立法なんかでもそうなんですけれども、そっちの方が見ばえがいいと、余り検討も十分しないまま持ってきてしまう、そういう傾向もあるのではないかと思います。

 その結果、私は、内閣総理大臣や官房長官が極めて忙しくなり過ぎているというふうに思うんですが、官房長官は、危機管理とか、もちろん全体の調整、人事、そういう非常に重要な役割を果たしておられるんですが、やっていて、ここまでやらなきゃいけないのかというふうに思われたことはないですか。

菅国務大臣 実際、日々業務を行っておりまして、府省庁横断の仕事が余りにも多くなり過ぎてきているんじゃないかなというふうに思います。

 そういう中で、どうしても内閣官房にその調整の役割というんですか、そうしたことがどんどんどんどんふえ続けてきている。とりあえずは内閣官房にこの仕事を一旦振ろうという府省庁も多くなってきているんではないかなというふうに思っています。

 そういう中で、ある程度役目の終わったというんですか、そうしたものについては、やはり関係の府省庁、なかなかこれは受けてくれませんけれども、そうしたところにおろしていって、できるだけ、常に、まさに不断の見直しを行っていって、仕事をしっかり行うことのできる体制というのをつくっていく重要性というのは、日々痛切に感じています。

岡田委員 やはり重要な仕事に集中するためにも、もう一回きちんと見直す必要があるというふうに思います。

 実は、我々も同じような問題意識を持ちまして、平成二十四年十一月二日の閣議決定で、内閣官房及び内閣府の本来の機能を向上させるための事務分担の見直しの基本方針というものを閣議決定しております。

 その中で、今官房長官も言及された、同じことなんですが、所期の目的を達成したものはやめる、それから、関係省庁間の調整に委ねられるものは最も関係の深い省庁に移管をする、それから、内閣官房と内閣府の間の事務分担についても検討する、そういう三方針を決めたところであります。

 十二月七日、政権交代直前だったんですけれども、閣議決定で、既にある閣議決定や閣議口頭了解、各省庁申し合わせなどを見直して、かなりの部分を廃止したり、各省庁への移管を行いました。ただ、法律を変えなきゃいけないことについては、全く手つかずのまま終わってしまったということであります。

 ですから、一つの流れはつくったつもりですので、もちろん、中身は、政権がかわったわけですからもう一度精査されたらいいと思いますが、法律を変えることも含めて、つまり、総理大臣が本部長であるというふうに法律で書いてあると、これは変えようがないわけですね。

 そうすると、総理大臣がいろいろな会議に本部長として出ていって挨拶しなきゃいけない。中身はほとんど、実は余り聞く暇もないし、自分が何かやっているわけじゃないんだけれども、挨拶だけでも時間をとられてしまう。そういうこともあるんじゃないかと思いますので、これはもう一回精査して、法律に基づいてそういった廃止や移管をされたらどうかと思いますが、いかがですか。

菅国務大臣 民主党政権で閣議決定をされたこの三点、そうした方向というのは、私も今痛切に感じておるものでありますので、必要なものはしっかりと受け継いで、正すことは正していきたいというふうに思います。

 法律改正の話でありますけれども、ここはなかなかすぐということにはいかない部分というのはあるとは思いますけれども、会合に出席して挨拶をする形式的なもの、そういうものはできる限り私は避けるべきだという思いの中で、ここはしっかりとした方向をつくっていきたいというふうに思っています。

岡田委員 もう一つは、最初に、内閣官房や内閣府にそういった事務を追加するときに、あらかじめサンセット化とか一定期間経過後の見直しを基本にするということを法律の中にもちゃんと書いておくということも非常に重要なことじゃないかというふうに思います。

 終わります。

二階委員長 これにて岡田君の質疑は終了いたしました。

 次に、後藤祐一君。

後藤(祐)委員 民主党の後藤祐一でございます。

 きょうは、まず特定秘密保護法の関係から始めたいと思いますが、お手元に今配付している資料に、いわゆる独立した、独立性の高い第三者機関についての現在の政府における検討状況についての紙がございますが、一月二十八日の衆議院本会議で、安倍総理は、内閣府に独立性の高い第三者機関である情報保全監察室を設置するというふうに答弁しておられます。

 配付の資料でも、独立公文書管理監(審議官級)と情報保全監察室というものは、内閣府にそれぞれ置かれるということになっておりますが、これは内閣府に設置するということで間違いないでしょうか、官房長官。

菅国務大臣 そのとおりであります。

後藤(祐)委員 この配付した資料の、今の二つの、独立公文書管理監と情報保全監察室の所掌事務が書いてありますけれども、この所掌事務は特定秘密の保護に関する事務でしょうか、官房長官。

菅国務大臣 まず、ここは御理解をいただきたいのでありますけれども、特定秘密保護法の施行準備に当たっては、安倍総理から、森国務大臣に担当させるという閣議の発言があり、そしてまた指示書も交付されておりまして、現在、森大臣を中心に施行準備に取り組んでいるところでありますので、そこはまず委員に御理解をいただきたいというふうに思います。

 そして、私の官房長官としての立場で答弁できることについては、そこは私から答弁させていただきたい、こういうふうに思っております。

 今のこの資料についてでありますけれども、情報保全諮問会議の設置、さらに保全監視委員会の設置、また独立した機関ということでありますけれども、情報保全諮問会議については、御承知のとおり、既に発足をして、今、森大臣のところで準備をしておるところでありますし、この情報保全諮問会議の委員の皆さんからのさまざまな意見を聞く中で、保全監視委員会というんですか、この新たな、独立した設置するものについても検討しているところであります。

後藤(祐)委員 質問にお答えいただきたいんですが、そこに書いてある所掌事務は、「個別の特定秘密の指定及び解除の適否を」云々と書いてあって、これは特定秘密の保護に関する事務だというふうに私は理解しているんですけれども、その理解で間違いないでしょうかと聞いております。それについてお答えください。単純なことです。

菅国務大臣 ここに書いているのは、そのとおりだというふうに思います。

後藤(祐)委員 配付資料の二枚目に、今回の特定秘密保護法の成立に伴って、その附則で内閣法が改正されております。そして、特定秘密の保護に関する事務というのは、この内閣法二十条で内閣情報官、広報に関する部分だけ内閣広報官の所掌になっているんですが、それ以外は全て内閣情報官の所掌となっています。

 そして、内閣府設置法は改正されておりません。

 つまり、特定秘密の保護に関しては、内閣官房そして内閣情報官がその事務を行うことになっております。

 そうしますと、今のままですと内閣府において特定秘密の保護に関する事務は行えないんじゃないんですか。

菅国務大臣 昨年の十二月に、自民、公明、みんな、そして日本維新の会の四党協議では、内閣府に設置する独立公文書管理監、仮称と、その下に置かれる情報保全監察室、仮称の所掌事務としては、内閣府設置法三条、四条三項及び本法附則九条に基づいて、各行政機関による個別の特定秘密の指定及び解除の適否を検証及び監察し、不適切なものについては是正を求めていくことや、各行政機関における個別の特定秘密の有効期間の設定及び延長の適否を検証及び監察し、不適切なものについては是正を求めることなどを規定する旨、合意をされておるわけであります。

 政府としては、この四党協議の結論に従って、これら機関の具体的なあり方について、本年一月に設置された、外部の有識者で構成された情報保全諮問会議の御意見も伺いつつ、検討を進めているところであります。

後藤(祐)委員 質問にお答えいただきたいんですが、特定秘密の保護に関する事務は内閣官房しか行えません。ですが、今の、今度新しく設けられる独立性の高い第三者機関は内閣府に設置されるとなっています。

 内閣府設置法を改正しないと、内閣府に置かれた機関においてはこの事務は行えないんじゃないんですか。もう一度答弁をお願いします。

菅国務大臣 公文書管理監とその下に置かれる情報保全監察室の具体的なあり方については、先ほど申し上げましたけれども、政府として、四党協議の結論も踏まえつつ、これらの機関に具体的にいかなる事務を所掌させるべきかという点も含めて現在検討を行われているところでありますので、お尋ねの点については現時点でお答えすることはできないというふうに思います。

後藤(祐)委員 実際、二月三日の予算委員会で、山田宏議員は、設置法でやるべきだ、内閣府設置法でやるべきだという質問をされておられて、これに対して安倍総理は、法定、法律という意味でだと思いますが、法定でいくのか政令でいくのかということについては、検討していきたい、このように思っておりますと答弁されておられます。つまり、内閣府設置法改正を否定していないんですね。

 ところが、一月十七日の第一回情報保全諮問会議の議事概要によれば、森大臣は、政令案の作成と限定的に言ってしまっているんですね。

 先ほど申し上げたように、これは論理必然的に、内閣府に第三者的機関を、もうちょっと正確に言うと、独立性の高い第三者機関を置くのであれば、内閣府設置法の改正が必要なはずなんです、論理的に。それを安倍総理は答弁で否定していないので、官房長官、これは内閣府設置法改正の可能性がある旨、ここで御答弁いただけますか。

菅国務大臣 まず、やはり総理が発言されたことが優先するということを、ここははっきり申し上げたいというふうに思います。

 それで、今、森大臣が、このことについて政令というのは言っていないんじゃないかなというふうに思います。

後藤(祐)委員 いや、これは議事概要でそう出ているので、森大臣がそう発言したのは事実のはずですから、森大臣にその認識を改めておいていただきたいと思います。

 もう一つ、独立性の高い第三者機関というためには、独立性が高いというだけの法的根拠が必要です。

 通常、独立性の高い第三者機関というのは、いわゆる三条機関、国家行政組織法の三条に基づく機関、内閣府に置かれる場合は、内閣府設置法の四十九条あるいは六十四条といったものがこれに該当するんですが、これらをまとめていわゆる三条機関とするのであれば、独立性の高い第三者機関というためには、このいわゆる三条機関、内閣府設置法四十九条または六十四条に基づく機関にする必要があるんじゃないんですか。

菅国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、四党協議の結論に基づいて、この一月に設置をされた、外部の有識者で構成されております情報保全諮問会議の御意見も伺いながら検討していくということであります。

後藤(祐)委員 きょう、内閣法制局長官は体調の関係で来られないということなので、次長をお呼びしておりますけれども、内閣法制局の次長にお聞きします。

 独立性の高い第三者機関といった場合に、今申し上げた国家行政組織法三条、あるいは内閣法の四十九条、六十四条、場合によっては、会計検査院は憲法上の組織ですからちょっと別かもしれませんが、こういったものは独立性の高い第三者機関と言えると思いますが、それ以外に、法的根拠を持って、独立性の高い第三者機関と言える法的根拠が何かほかにあれば述べてください。

横畠政府参考人 お答えいたします。

 独立性の高い第三者機関と言われるものの概念でございますけれども、さまざまな種類があろうかと思います。会計検査院のように、政府からの独立性といったものに着目しなければならないものもありましょうし、今回のものがいかなる観点での独立性というものに着目するのかという、さまざまな観点があろうと思いますので、一概にはなかなか申し上げられないと思います。

 今般の機関が法的にどのように位置づけられるべきか、独立性というものをどのように認識、担保するかということについては、まずは立案当局において具体の制度設計を行い、当局としてはその法令案の審査を行う、そういうプロセスになりますので、今の段階で、どのような法整備が必要であるか、妥当であるかということについてまで御意見を申し上げる段階ではないと思います。

後藤(祐)委員 今回の個別のことを聞いているんじゃなくて、一般論として聞いているんです。独立性の高い第三者機関という類型を、国家行政組織法三条、内閣法四十九条、六十四条、会計検査院は別とした場合に、それ以外に法的根拠を持って独立性の高い第三者機関と言えるものがありますかと聞いております。

 これについて、もう一度御答弁いただけますか。

横畠政府参考人 いろいろな制度がございます。例えば、政令で設置しているものとして、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律第五十条第一項に規定する合議制の機関の組織及び運営の基準を定める政令というのがございますが、その第五条において、「委員は、独立してその職権を行うものとする。」と規定している例などがございます。

後藤(祐)委員 委員が独立してその職権を行うというのは、その職権の対象となっている権限はどこに由来するんですか。

 つまり、私は、独立性といった場合に、設置される機関に固有の権限なり所掌事務が、法律上の、設置法上の根拠を持っているか持っていないかというのが大事だと思うんです。

 つまり、例えば、きょうの昼の本会議で情報公開・個人情報保護審査会の委員の同意人事が行われますけれども、これなんかは、きちんと法律でもってこの委員会が設置されて、所掌事務と権限が規定されています。ですから、内閣府なり内閣官房なりの権限とは全く別にその権限、所掌事務を行使することができますが、今おっしゃった機関、必ずしもよくわかりませんが、公益社団法人云々という機関は、別の設置法に書いてある事務をかわりにやっているだけじゃないんですか。固有に権限を行使していますか。

横畠政府参考人 先ほどお答えいたしました政令の制定根拠は、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律第五十条にあろうかと思います。

後藤(祐)委員 つまり、ここにありますけれども、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律でその権限は別途規定されているわけですよね、明示的に。

 ですから、今回の話に合わせて言えば、特定秘密法でこの権限をきちんと定義して、その所掌事務なり権限が定義された部分のうち、こういったチェックのところについては内閣府に置かれるこれこれの機関が行うということを内閣府設置法の所掌事務に加えて、そして、その内閣府の所掌事務を行う機関として政令なりで書くということはあり得るかもしれませんが、きちんと設置法上の所掌事務がないと、これは根拠がやはりないんですよ。今の話も、もともとの根拠法がやはり法律にあって、そこにぶら下がっているわけですよ。

 ですから、もう一回繰り返しますけれども、内閣府設置法上の所掌事務の根拠がないものを内閣府に置くことはできないということと、独立性の高い第三者機関というためには固有の権限、所掌事務がなければならない、それを規定する法律がないという中で、内閣府設置法改正を否定していないわけですから、論理必然的に内閣府設置法改正につながるということをぜひ御理解いただいて、もしそうでないとするならば、ここでの議論を反駁するだけの論理的、法的な根拠を述べて、説明していただきたいと思います。

 次に参りたいと思いますが、では、そこを踏まえて、検討の方向について官房長官から一言。

菅国務大臣 いずれにしろ、四党合意があるわけでありますし、これらの機関が高い独立性を有すということもあの中でうたっていますから、政府としては、実効的に機能するように、この情報保全諮問会議の意見も伺いながら、ここはさらに検討していきたいというふうに思います。

後藤(祐)委員 この通常国会には内閣府設置法改正案が別の案件で出ているんです。その法案を審議するまでにはこの話を決着をつけてもらわないと、なかなかその法案は審議できないんじゃないでしょうか。そこも含めて、早急な検討をお願いします。

 次に、特定秘密に指定できない情報について聞きたいと思います。

 今配付した資料の一枚目、その所掌事務というところに、「不適切なものについては是正を求めること。」という言葉が1、2、3で出てまいります。この不適切なものというのは何なんでしょうか。

 これについて、去年十二月四日の参議院特別委員会、小野次郎さんの質問に対する森大臣の答弁で、「限定列挙した以外のものを指定するとそれは違法であり、無効でございます。」という答弁があります。ですが、これは本当にそうでしょうか。つまり、特定秘密法で定義され、そして別表で限定列挙されたものの中で違法行為が行われた場合は、それは特定秘密に指定できるんでしょうか。

 例えば、こういうことはないと信じたいですが、テロリストを暗殺せよ、殺害もやむなし、こんな指令が出ていたとします。これはテロリストに関する情報ですから特定秘密に指定可能です、特定秘密法の条文だけ見ると。ですが、明らかに違法行為ですから、違法行為は指定してはならないという条文がない以上、これは指定できてしまうんじゃないんですか。

 アメリカでも、違法行為は指定しちゃいけないだとか、いろいろな規定がありますし、我々が提出した特定秘密法の対案の中でも、違法行為は指定してはならないという、ネガチェック条件も我々は法律できちんと書いてあります。

 今申し上げたような、違法行為は特定秘密に指定することがもしできないということであれば、それは法律に書くべきではないでしょうか。

菅国務大臣 私、冒頭申し上げましたけれども、この特定秘密には森国務大臣が担当大臣として今取り組んでいますし、そしてまた、この施行に向けて準備をしているわけでありますから、詳細については森大臣を呼んでお聞きいただきたいというふうに思います。

後藤(祐)委員 これについては、きのうの段階で、私は官房長官に通告を出すということで、事務方も了解しているんです。それが一つ。

 それと、この法律は施行された後は森さんは関係ないんです。施行準備の段階では担当を新たに追加されましたけれども、施行が整った後、順調にいけば来年に入ったら施行されているんでしょうから、その段階では、その特定秘密法の施行責任は官房長官にあるんです。だから聞いているんです。

 だから、今のような答弁は、私は許されないと思います。もう一度答弁ください。

菅国務大臣 いずれにしろ、担当大臣として法案のときも皆さんにお答えをし、そして、法案が成立した後にも、施行準備のための大臣として総理から指示書も受けているわけでありますから、そこはやはり森大臣に聞いていただくのが私は基本だと思います。

後藤(祐)委員 しかも、私、これは全部通告しているんですよ。答弁をつくられているはずなんですよ、事務方は。しかも、そんなに難しい答弁じゃないんです、今のは。なぜ答弁できないんですか。

 ちょっとこれは、答えられないと、これ以上審議を続けることはできないですよ。委員長、答弁するように御指導いただけませんか。

菅国務大臣 私は、内閣法また設置法に関するものについて、官房長官として、私の立場でお答えできることは答弁させていただくということを先ほど申し上げましたけれども、一つ一つの詳細について、そこはやはり担当大臣を呼んでいただくことが私は正しいというふうに思っています。

後藤(祐)委員 ちょっと、全く変わっていないので、これ以上質疑できないです。

 ちょっと時計をとめていただけますか。委員長、ちょっともう少し、きちっと、通告しているんですから、答弁できるはずですよ。(発言する者あり)

二階委員長 では、時計をとめてください。

    〔速記中止〕

二階委員長 それでは、速記を起こしてください。

 委員会を続行します。後藤祐一君。

後藤(祐)委員 この問題がなぜ起きたか。一つは、私は内閣法の話を最初にしました。内閣法の所管は、明確に官房長官です。そのことも含めて森大臣が答弁するとおっしゃるので、そうすると、これは責任を持った議論ができないから、どうしてもそれをおっしゃるんだったら、森大臣は、もともと後ろの方の、消費者担当大臣としては私は呼ぶ予定だったんですよ。ですが、それで内閣法の話までされてはたまらないということでおろしたんです。しかも、これは全部通告をしているんですから、答弁はできるはずなんです。それが一つ。(発言する者あり)

 それと、ちょっとお聞きください、この問題がなぜ起きているか、それは、内閣官房に事務を集め過ぎだからなんですよ。これを内閣府にきちんと事務を置けば、正々堂々と森大臣が内閣府の担当大臣として、うなずいておられるからね、所掌大臣として森大臣が答弁できるんです。それをやらないから、この問題が起きているんです。

 つまり、先ほど申し上げたように、内閣府設置法にきちんと内閣府の所掌事務として規定すれば、この問題は起きていないんですよ。(発言する者あり)そういうことをしていないから、そのツケは官房長官に負ってもらいましょうということなんですよ。

 実際、所掌している中で、施行が始まった後、今申し上げたような違法行為に関するようなことが起きたときに、官房長官なんですよ、判断するのは。だから、今みたいな話をしたんです。

 ぜひ、委員長、この話は、やはり内閣官房と内閣府のあり方という根本的な問題なんです。先ほど岡田議員が申し上げたことが本質なんです。官房長官が忙しくなり過ぎるのは、法律の構成に問題があるんです。だからこそ、内閣府設置法の改正を……(発言する者あり)関係あるんです。内閣府設置法改正を特定秘密法の中で規定しなかったことがこの問題を生んでいるんです。

 ぜひ、そのことを含めて、官房長官、これからの議論を真剣に、自分の仕事を減らしたいのであれば、内閣府設置法で明示的に所掌事務を移してもらうよう、検討いただけるようお願いします。

菅国務大臣 私は、ですから、冒頭申し上げましたけれども、安倍総理が、施行準備までは森担当大臣ということも閣議で発言をし、指示書も出ているわけでありますから、今、森大臣を中心に準備を行っているところでありますので、私は、設置法に関する部分、私が内閣官房長官として答える部分については答えさせていただきたいということを私は冒頭申し上げました。

 ちなみに申し上げますと、民主党政権のときも、当時の中川正春大臣に新型インフルエンザのための、これはやはり担当大臣としてもそうした所管をやったということもありますから、そこはぜひ御理解をいただきたいというふうに思います。

後藤(祐)委員 まさに内閣府設置法を改正しないから起きているこの問題をどうするかということも含めて、ここは日本維新の会の山田先生も大変問題意識を持っておられるところでもございますし、ぜひ、これを議論する場がないことが問題なんです、特別委員会が廃止されてしまって。予算委員会でやるしかないんですよ。あるいは、内閣委員会の一般質疑でやるしかない。

 これだけ、これまでの予算委員会の中でかなり多くのことがこの特定秘密の問題に費やされてきているということを踏まえて、ぜひ特定秘密に関する集中審議を求めたいと思いますので、委員長にお取り計らいいただきたいと思います。

二階委員長 後刻、理事会で協議いたします。

後藤(祐)委員 それと、特定秘密法に関連する質問であっても、準備段階のものと施行後のものでは違いますし、官房長官でなければ答えられないものも当然あります。そこについては、官房長官が答えるべきものについては官房長官が答えるということでよろしいでしょうか。委員長のお取り計らいをお願いしたいと思います。

二階委員長 後刻、あわせて理事会で協議することにします。

後藤(祐)委員 それでは、ちょっと時間が短くなってしまったので、次に情報公開法について行きたいと思います。

 これも実は今の話とかかわるんですが、一月十七日に第一回の情報保全諮問会議というものが開かれて、その議事概要は公表されました。ですが、議事録は公開されませんでした。その後、あるマスコミが情報公開法に基づく請求をして、一部、安倍総理の発言のところを墨塗りにした形で、これは請求者に対してのみ開示をされました。

 これだけ注目が集まっている事案について、情報公開請求をすれば出てくる程度の議事録については、最初から積極的な情報提供をすべきだったのではないでしょうか。

 ただ、これもお答えするとさっきと同じようなことになるでしょうから、答弁は求めませんが、むしろ、これは情報公開法を所管されておられる新藤総務大臣に聞きたいと思います。

 我々は、情報公開法の改正案で、その中の二十五条というところで、政府の積極的な情報提供、開示請求がなくても出すべき情報というものについての改正案を出しています。例えば、今のような議事録を、情報公開請求があれば出せるものなわけですから、墨塗りがあってもいいと思うんです、そういったものは請求されなくても各役所の方から自発的に出すべきだと考えますが、これについてのお考えをお願いいたします。

新藤国務大臣 まず、行政情報の提供でございますけれども、これは既に、行政情報の電子的提供に関する基本的考え方、指針、この中で実施をされているところであります。各府省はこの指針に沿って積極的に情報提供を行うべきもの、これは平成十六年に定められていて、それに沿って我々は運用しているということであります。

 その内容が、今、確かに御党が提出の改正法案においては、同様のものがあることは承知をしております。しかし一方で、会議の議事録を含めて、行政情報にはさまざまな性格のものがある。個別の情報について、開示請求を待たずに情報提供の判断を行うか、それとも、開示請求があってから開示、不開示の判断を行うかは、最終的にはその情報の性格などを勘案した上で各府省において個々に判断がなされるべきもの、そのように私は考えております。

後藤(祐)委員 情報公開の請求をすれば出てくるものなわけですから、外に出しても問題ない範囲のものをどうするかという話なんです。

 しかも、ほかの膨大な行政情報全部をあらかじめ出すのは、それは確かに大変な面はあると思いますよ、ですが、審議会の議事録というのは、その中でも政策の意思決定過程の文書として大変重要な情報なんです。そういった情報が大事だということは、公文書管理法にも規定があります。ですから、ほかのものとこれは趣旨が違うと思うんです。

 ぜひ情報公開法について、今申し上げた積極的な情報提供、これは、各府省が所管している法律、予算、こういったものが、大体こんな法律ですといったものがわからないんですよ、一般の方には。それを、ホームページを見れば大体こういう法律ですというのがわかるように、一般の国民が見てわかりやすい程度には積極的に情報提供すべきだと我々の法案では書いてありますけれども、ぜひこういった情報公開法の改正も検討いただきたいと思います。

 その際、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがあるものということを理由に、情報公開法五条五号の不開示理由にこれは今あるわけですけれども、「不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ」という言葉で、この曖昧な言葉で、かなり多くのものがよくわからない理由で不開示になってしまうんです。

 我々の法案ではこれも不開示理由から外しておりますけれども、ぜひそこもあわせて、情報公開法の改正案、これは公明党さんなんかもかなり積極的な姿勢を見せておられるところがあると思いますので、政府・与党の中でも真剣に御検討いただきたいというふうに思います。

 公文書管理法に行きたいと思いますが、これは稲田大臣が所管になると思います。

 昨年十月十八日の参議院本会議で、公明党の山口那津男代表が、閣議そして閣僚懇談会の議事録の作成を義務づける公文書管理法改正案を早急に成立させるべきという質問をされ、安倍総理は、政府部内で必要な調整、検討を行った上で提出することとしたいと答弁されておられますが、その後、NSC法の改正の経緯の中で、附帯決議において、NSCの議事についても検討し、その結果に基づいて必要な措置を講ずるというふうにされています。これは、必ずしも公開ではなくて、議事録の作成についての規定であります。

 公開するかどうかというのは、閣議やNSCでの発言を公開するのは多少時間を置いてからの方がいいという判断は、先ほどの話とは違って若干あるかもしれませんが、記録を残しておかないと、これは私はNSC法の改正のときに修正案の提案者としても答弁で言ったんですが、政府部内であのときどんな議論があったかということを検証することすらできなくなってしまうわけです。それは、やはりできるべきだと思うんです。

 ぜひ、今、公文書管理法の改正案はこの通常国会に提出予定と伺っておりますけれども、閣議、閣僚懇談会、そしてNSCを含めた閣議メンバーが参加するような会議などは、特に、議事録を少なくとも作成するということについて今回の公文書管理法の改正の中に盛り込むべきと考えますが、今の検討状況はどうなっているでしょうか。

 特に、NSCは、きのう、二月十三日に開かれて、これまで計十二回開かれております。この中で、NSCの議事録を残す、残さないというのは極めて重要な話なんです。NSCそのものにおける検討も含めて、NSCの議事録を残すかどうかについての検討も含めて、現在の検討状況はどのようになっていますでしょうか。

稲田国務大臣 後藤委員が御指摘になったように、政府の政策の決定の過程についてきちんと記録を残しておくということは、公文書管理法の重要な視点というか趣旨であろうかと思います。

 その上で、閣議及び閣僚懇談会の議事録作成を法定化する公文書管理法の改正法案については、総理が国会で答弁されているとおり、公文書管理の観点のみならず、閣議のあり方ともかかわる問題であるため、政府部内で必要な調整、検討を行った上で提出をすることになっております。

 また、NSCの議事録については、衆参両院の国家安全保障に関する特別委員会の附帯決議において、会議の性質などを十分に勘案しつつ、公文書等の管理に係る制度の趣旨を踏まえ、国の安全保障を損ねない形で速やかに会議録その他の議事に関する記録の作成について検討することとされており、これらを踏まえ、同会議の所管部局である内閣官房において適切に検討されているものというふうに認識をいたしております。

後藤(祐)委員 非予算関連の法案でも三月半ばには閣議決定しなきゃいけないはずなので、もう時間がないんです。内閣官房お任せではまずいですよ、公文書管理法の改正案の条文をどうするかという話ですから。

 そこは積極的に、稲田大臣、リーダーシップをとって、NSCという固有名詞を入れる必要は必ずしもないかもしれないんです、ですが、読めるようにしておく。我々の案でも、NSCという固有名詞ではなくて、閣議メンバーが参加するような会議、そういったような書き方にしておりますから、ぜひ、そこは稲田大臣の所掌の範囲だと思いますので、早急な検討をお願いしたいと思います。

 それと、この公文書管理法に関連して、法案の策定経緯に関する文書ファイルというのは、極めて重要なファイルということで、移管されたものは必ず国民が見られる、利用できることになっておるんですが、では三十年たったものがどうなっているか、私は調べてみました。

 国立公文書館に行って、三十年前、つまり一九八二年ですとか、そのころできた法案の策定経緯の資料というのは、各省からきちんと国立公文書館に移管されて、しかも、それは国民が見られる、利用できる形になっているんですかと一月の前半にお伺いして、わからないとここの次長がおっしゃっておられて、では一月中にでも御報告くださいと言ったら、全然来ない。きのうになって、どうなったんですか、わからないと。それで、さっき、きょうの午前九時二十一分に、石油備蓄法改正案についてはこんなのがありましたよと一個ぽろっと来ました。

 稲田大臣、三十年前、三十年よりも前の法案策定経緯の資料が、国立公文書館でどのように扱われているか、ぜひチェックしてみてください。その中には、稲田大臣が好きそうな北方領土問題等の解決の促進のための特別措置法なんというのが一九八二年に制定されたりしておりますので、ぜひ、全部でなくてもいいですけれども、これがきちんと移管されていなければ国民は見ることができないんです。

 あるいは、各省に残してある、ふだんから使うのでどうしても残してあるというのであれば、それはそれでもいいと思うんですが、であれば、国民からすると、そこにあるということがわからなきゃいけなくて、そこにあったら、そっちに情報公開請求しなきゃいけないわけですから、ぜひ、三十年たった法案策定資料については国民が全部見られるということを実際に運用されているかどうか、公文書管理法を所管する大臣としてチェックしてみていただきたいと思います。

 それと最後、もう時間が終わりましたので一、二はこれで終わりますが、公益通報者保護法の関連で、J―ADNIの問題は、昨日、三谷議員から質問がありましたので、もう時間が終わっているのでこれだけにしますが、この問題の本質は、告発に至るかどうかとか、その内容とかということよりも、通報された方の名前及び通報されたという事実が、被通報者、つまり、この人が悪いことをしましたと言われている方に行ってしまったという事実が問題なのであって、その方に漏えいしたという事実が現行の法令の何に違反するんですかというところが問題なんです。

 国家公務員法百条に違反するかどうか、今、厚労省の中で検討されていると聞いています。ですが、この問題の本質は、公益通報者保護法上、公益通報に該当しない通報であっても、特に被通報者に対しては、その通報の事実、そして固有名詞についてはもちろん漏らしてはならないということを刑罰でもって担保すべきなんです。

 公益通報者保護法の改正は担当じゃないと思いますが、少なくとも厚生労働省ができることとして、きのう問題となっておりました「研究活動の不正行為への対応に関する指針について」という指針、これを改正して、漏えいしてはならないということを新たに設けるつもりはありませんか。これは、事務方では検討するというお答えをいただいていますが、そこについて、最後、御答弁をいただきたいと思います。

田村国務大臣 時間もございませんので、今先生おっしゃられたこと、ちょっと私も細かい中身をまだ精査できておりません。また御意見をいただいた上で検討はさせていただきます。

後藤(祐)委員 きのう答弁していた内容ですよ、それは。指針の見直しをちゃんと検討してください。そのことを申し上げて、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

二階委員長 これにて後藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、宮沢隆仁君。

宮沢(隆)委員 日本維新の会、宮沢隆仁であります。

 重い雰囲気の中、ちょっとやりにくいんですが、今回はたばこを扱います。場合によってはむしろもっと重くなるかもしれませんので、よろしくお願いいたします。

 まず、私は、もともと脳外科医だったんですが、産業医でもあります。そして、国会に来て約一年たったわけですが、産業医の立場で国会及び議員会館等を観察いたしまして、正直、これは喫煙環境としてはひどいかなと思いました。

 何がひどいかといいますと、例えば議員会館の中、各部屋、たばこを吸う議員の方、吸わない議員の方、いらっしゃると思うんですが、吸う方はかなり遠慮なく吸っておられて、秘書、若い女性等もいると思うんですが、もちろん議員には文句を言えませんよね。だから、そういう環境で働かされる女性たち、吸わない方々はちょっとかわいそう過ぎるんじゃないかなと思ったのが正直なところです。

 私のたばこに対する立場をあらかじめ申しておきますと、私も実は二十ぐらいから十二、三年吸っておりました。子供が生まれるということで、女房から強硬に反対されまして、最初トイレで吸っていたんですが、それもやめて、結局禁煙させられたというのが正直なところです。したがって、たばこがおいしいという感覚は私も十分よくわかっておりますという前提を置いておきます。

 もう一つは、たばこを吸う方々はたばこが健康に影響するということは十分認識した上で吸っておられるんでしょうから、個人の権利という意味で私はもちろん認めておりますし、嗜好を選ぶこと自体は自由であると思います。

 各党にも、自民党、もちろんうちの党、愛煙家はたくさんおりまして、ある意味では、与党、野党というより、そういう吸う方々との、抵抗勢力からの戦いになるかもしれないんですけれども、僕は戦いという形にはしたくないので、できるだけ共存するような形に日本のたばこ文化を持っていくにはどうしたらいいかという形で議論を進めたいと思います。

 ちなみに、一つのデータとして、今の日本の喫煙率がどうなっているかといいますと、平成二十四年現在で、全体で三四%の喫煙率、男性は二〇%、女性は九%ということであります。この喫煙率は、全体で、この二十年ぐらいでどんどん減ってきております。二十年ぐらい前はたしか半分ぐらい、五〇%ぐらいの方が吸っていたように記憶しております。

 まず資料の一を見ていただきたいんですが、ある意味、ここが予算医科大学みたいなものだと思って、ちょっと医学的なことを聞いていただきたいんですけれども、受動喫煙によって起こる病気、これは吸っている方が罹患する病気ではありません、受動喫煙です。要するに、吸っている方の周りにいる方が発症する可能性のある病気。

 例えば、一番上が、がんですね。肺がんは皆さんよく御存じだと思うんですが、そのほかにもたくさんがんが並んでいます。呼吸器でいいますと、慢性閉塞性肺疾患というのは呼吸が物すごく苦しくなる病気ですね。よく酸素ボンベを引っ張って歩いている方がいると思うんですが、ああいう方はヘビースモーカーのなれの果てと言われておりまして、あの病気になった方は、地獄の苦しみだ、もうたばこは吸わなきゃよかったと、ほとんどの人が反省しております。それから、怖いのが心筋梗塞、それから私が扱ってきた脳卒中。脳卒中の中にもヘビースモーカーの方はかなりたくさんいます。

 私が一番気にかかっているのは、この真ん中にある、妊婦の受動喫煙です。もちろん、国会の中も、どこの職場でも、女性がいれば当然妊婦もいる可能性がある。こういう方々が受動喫煙すると、低出生体重児、子宮内発育遅延、流産、早産等に結びついていくということがまず第一点。

 それから、一番下の小児、これもかわいそうですよね。もちろん将来のがんの可能性もあるし、物すごい量の病気を発症する可能性があるということで、まずこの医学的事実を認識していただいて、この次の話に進みたいと思います。

 まず、厚生労働大臣の田村大臣に、ここまでの今のこの事実を認識した上で、どのような感想を持たれたか、ちょっとお聞きしたいと思います。

田村国務大臣 感想と申し上げますか、私ももうたばこをやめて数年になるわけでありますけれども、やめますと、やめた者の勝手でございまして、たばこの煙が来ると非常に不快な思いをする部分もあるわけであります。自分が吸っているときには大変御迷惑をおかけしたわけでありますから、勝手な話なんですが。

 しかし、今、お医者様である先生から、そういういろいろな弊害のお話をいただいた。非常に重いものがあるなというふうに思います。以前と比べると、かなり受動喫煙に対しては世の中が敏感になってきておるわけでありますが、まだ諸外国と比べて取り組みが十分でないということも認識をいたしております。

 一方で、吸う方々の権利という問題も確かにあるのも一つでございまして、なかなかこれは、今言われたとおり、政党がどうのこうのではなくて、与野党ともにいろいろとお考えがある方々がおられる中において、労働安全衛生法、これも今国会に提出をさせていただきたいなというふうに思っておるわけでございまして、この中にも受動喫煙対策の内容が入っておるということでございますので、いろいろと御議論をいただければありがたいというふうに思っております。

宮沢(隆)委員 どうもありがとうございました。

 その次は、資料の二を見ていただきたいんです。

 これは厚生労働省からいただいた資料なんですが、もちろん、厚生労働省としてはたばこは抑制していく方向に向かうのは当然だろうと思うんですけれども、この一番上の「背景 たばこの健康への影響と経済損失」というところですね。真ん中に、受動喫煙による年間超過死亡は六千八百人。それから右側の方で、超過医療費は一・七兆円ということですね。がん死亡の約二〇から二七%は喫煙が原因。これから見ても、たばこによる経済的影響も大きいということですね。

 厚生労働省としては、その下に四つ、タイトルだけ言いますけれども、「成人の喫煙率の低下」「未成年の喫煙をなくす」「受動喫煙の防止」「妊娠中の喫煙をなくす」という非常に結構な目標を掲げておられます。ただ、これは目標であって、ある意味、国民にとっては努力義務にすぎないわけですね。目標を掲げるのは結構なんですが、これから実質的にどういう形でたばこの被害を減らしていくかというところが問題になっていくんだろうと思います。

 もう一つ、資料三に行かせていただきます。

 日本における受動喫煙防止対策に係る法令、これもちょっと歴史的経緯があるんですが、一番上の、健康増進法が平成十五年五月に施行されまして、ここでも努力義務になっていますね。

 二番目、受動喫煙防止対策、これも、対策を進めるということで宣言した形です。

 重要なのは、上から三番目、WHOが、たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約、FCTC、これを日本は批准しまして、FCTC第八条、たばこの煙にさらされることからの保護をしなくてはいけないということで、一番下に書いてあるように、「特定の空間または環境から喫煙とたばこ煙を完全に排除しなければならない。」というところまで書いてあるんですが、日本はほとんどこれに従った対策はできていないというのが現状だろうと思います。

 ここで、本当は総理に聞きたいところだったんですが、田村大臣にちょっとお聞きしたいんです。

 過去にも、たしか民主党政権のときにも、禁煙条例、禁煙の法律みたいなものをつくろうという動きがあったんですが、結局自民党の反対で成立しなかったというようなお話を聞いたんです。ちょっと僕の記憶が定かでないんですけれども、今の政府及び自民党の喫煙、たばこに対するスタンスというのはどのようになっているか、ちょっとお話しいただけますか。

田村国務大臣 たばこを吸われる方は吸われる方として、もちろん、それは健康日本21の中で、今言われたような、男性の場合ですと一九・五%ぐらい吸われているのを将来一二%ぐらいにまで下げていこうという目標はありますが、それは別といたしまして、受動喫煙という立場から考えますと、それを防止するということは、やはりがんも含め生活習慣病の予防という意味では大変重要だというふうに考えております。

 現行では、例えば、多くの方々が利用する施設を管理する者、こういう方々には受動喫煙の対策を措置しなければならないというような努力義務は課しているわけでありますが、先ほど言いました、例えばFCTC等々、たばこの枠組み条約でありますけれども、こういう中では、受動喫煙防止対策に関する罰則つきの立法措置というのがガイドラインの水準という形で示されているわけでありまして、我々は、条約は履行しているわけでありますけれども、その水準にはまだ到達できていないというところがあるわけであります。

 しからば、たばこに対して政府としてどういうような対応をやっているのかというところでいきますと、例えば、今、がん診療拠点病院等々の機能強化で、クイットライン等々でいろいろな相談をやったりでありますとか、たばこをやめたい人に対してのいろいろな取り組み等々、そういう対応はしておるわけであります。

 いずれにいたしましても、今委員がおっしゃられた受動喫煙という立場から見れば、先ほど言いました労働安全衛生法の中において、職場での受動喫煙対策ということで、これは一昨年、その前になりますか、民主党政権時代に法案の提出予定がございまして、中身に対していろいろと議論をさせていただいて、自民党は自民党の党内の中においても一定の理解を示す中において、法案に対して方向性は出てきておったわけでありますが、どちらかというと国会の状況によってそれが審議できなかった。当時、私も野党のたしか筆頭理事をやっていたという記憶があるわけでありますが、そういう状況でございました。

 そういうこともございましたので、今国会で、状況もいろいろ変わっております、労働安全衛生ですから、受動喫煙だけではなくてほかの部分もございますので、時代の変化に応じてほかの部分もリニューアルをさせていただきながら、職場の受動喫煙対策に関しましても含めて、今国会に提出をさせていただきたいというような状況になっておるわけであります。

宮沢(隆)委員 ありがとうございました。

 実は、このたばこ問題を私が悶々として勉強しているころに当たった本がありまして、「JT、財務省、たばこ利権」という、これは松沢成文先生、元神奈川県知事の方です、あの方が神奈川で受動喫煙禁止条例のようなものをつくられた苦労話と、あとは今のたばこの状況を書いてある本で、非常によく書かれていた本なんですが、松沢先生が力説しているのは、今度の二〇二〇年東京オリンピックとの関係ですね。

 その中で、松沢先生からいただいた資料で、ちょっと今回用意が間に合わなかったんですが、過去のオリンピックを開催された都市は、もう数年前から事前にたばこをどんどん禁止する方向に向かっておりまして、例えば北京でも、オリンピックを開催するときにはかなり禁煙が厳しかったようですね。

 今回、ソチでもかなり厳しく禁止されているということで、この二〇二〇年の東京オリンピック開催に備えて、政府として、今、田村大臣がおっしゃられたような対策を、もっとスピーディーに、より厳しく推進される意向があるのかどうか、それからもう一つは、そこに罰則をつけるような法律をつくられる予定はあるのかどうか、もう一回お願いできますでしょうか。

 下村大臣、よろしくお願いします。

下村国務大臣 オリンピック、パラリンピックの担当大臣として、お答えを申し上げたいと思います。

 御指摘のように、委員の資料三のところにも、我が国も努力義務というのがあるわけでございます。

 松沢参議院議員から、毎回参議院ではこの問題を必ず質問されておりまして、お話を申し上げておりますが、実際、ソチに行きましたら、罰則規定があるようには思えない、まあ努力規定程度かなという感じで、何となくその辺は、そんなにきっちりと施行されているような感じは、印象としてはありませんでしたが、ただ、御指摘のように、過去、オリンピック、パラリンピックの開催都市では必ず、受動喫煙に対しての厳しい法律ができているというふうに聞いております。

 今、オリンピック・パラリンピック推進室で、罰則規定をどう設けるかどうかというところまでは行っていませんが、この受動喫煙法について検討しております。

 ただ、関係省庁、厚生労働省や財務省等ほかの省庁との、政府全体での対応についてはコンセンサスを得るところまでの議論は行っておりませんが、一応、オリンピック・パラリンピック推進室としては、受動喫煙法のより厳しい法律改正に向けた取り組みについては、今、事務方には調査をさせておりまして、ある程度決まったら関係省庁と前向きに相談したいというふうに考えております。

宮沢(隆)委員 それはぜひよろしくお願いします。

 私も時々ヨーロッパとかアメリカには行くんですが、たばこに対する姿勢は相当厳しいものがあるなというのが僕の印象ですね。それに比べると、残念ながら、日本国民はなあなあで来ちゃった。だから、もちろん、たばこを吸う方の権利を守りながらも、インターナショナルに通じるようなたばこ観というのをやはりつくっていっていただきたいと思います。

 同時に、罰則を設ける設けないがポイントではないかもしれませんが、どうしてもたばこ文化を変えられないのであれば、罰則を設けるのも一つの方法だと私は思いますので、ぜひ前向きに検討していただきたいと思います。

 受動喫煙の話はここでちょっと終わりまして、この後、たばこ税の話をちょっと、麻生大臣中心に質問させていただきたいと思います。

 私は、たばこ税、今回改めてこの松沢先生の本等で勉強したんですが、レクも少々受けました。私の理解では、現在、たばこによる税収というのはトータルで約二兆円ある、国庫に一兆円、地方に一兆円入ることになっている、国に入るたばこ税の四分の一は地方交付税に回るので、実際の税収としては地方六に対して国は四という比率になっているという理解をしております。それから、たばこ代金の約六割が税金となっているという理解をしております。

 資料四を見ていただきたいんですが、各国のたばこの価格と税率の比較をしてあります。この棒グラフの下の方が税金、上の薄い方がそのほかの利益となっているということですね。この中で特筆すべきは、まずは、左の方にたばこの値段が書いてあります。一箱の値段ですね。千円を超えている国があるんですよ。英国、カナダ、豪州。豪州はすごいですね、千二百円にいこうとしている。

 一方、では、日本はどうかといいますと、実は、二〇一〇年の十月にたばこを値上げしたということなんですが、その前後で比較したグラフが二つ載っております。値上げする前のたばこの値段は一箱三百円ぐらい、値上げした後は四百十円ということです。少なくとも、値上げした後でも、たばこ一箱の値段という意味では、どちらかというと低い方に入っておりますね。したがって、税収もそれなりになっている。この中で、結局、トータルで二兆円の税収が生まれているということになります。

 一番下に文章で書いてありますが、日本のたばこの価格は他国に比べて低いことから、税率、千本当たりの税額を上げることを通して、たばこの価格を上げることが重要であるということで、二〇一〇年にたばこの値上げをしたということだと思います。

 もう一つ、資料五を見ていただきたいんですけれども、この右側のグラフは、四のグラフを拡大したようなグラフで、この中で、たばこ税、国税、地方税、販売店マージン、消費税等、どういう比率になっているかというのを示したグラフです。私が見ていただきたいのは、左側、たばこの販売数量、一番上に書いてありますが、当然、値上げすれば減ります。一五%減少と書いてあります。それから、真ん中の四角のところに、製造者等ということで、葉たばこ販売代金は三五%減少。それから、一番下の四角、税金のことが書いてありますけれども、たばこ税、国税は二五%増加、たばこ税、地方税は一七%増加ということであります。

 ここでちょっと、ある方、別に匿名にする必要はないんですけれども、日本財団会長の笹川陽平さんが、もう随分前から、たばこ千円論というのをぶち上げておりまして、今もインターネット等でがんがん発信しておられます。その趣旨は、たばこを千円にすれば、税収は九兆円を超えて、消費量がたとえ三分の一に減ってもなお三兆円の税収が見込まれる、なおかつ、喫煙率が減って、医療費が節約でき、税収はむしろふえるということをおっしゃっています。

 ここで、麻生大臣にお聞きしたいんですが、消費税導入の前でちょっとお答えにくいかもしれないんですが、たばこを思い切って値上げするという発想に対して、どのようなお考えあるいは感想をお持ちかということをお聞きしたいと思います。

麻生国務大臣 御記憶にないと思いますが、二〇一〇年にたばこが上がったときの担当者。俺が上げた。忘れないでもらいたい。大反対を押し切って、公明党の北側さんだったかな、ヘビースモーカー、そろって二人で上げた。俺はヘビースモーカーじゃないけれども上げた。まず、それが一つ。

 それから、たばこを上げたらという話は、私どもとして、税金というのを扱っている立場からいったら、二兆円というのは大きいです。消費税にはめてみてください、何%になるか。これは極めて大きい話なので、税収との関係というのは極めて大きいというのが私どもの立場であります。

 もちろん、葉たばこ業者とか小売業者とか、そういった失業対策とか雇用問題を含めて、税金というのは大きい。特に地方税の部分が極めて大きいと思っております。これが二つ目です。

 それから、三つ目は、これは厚生労働省、あなたも医者をやっている、私も病院をやっていますのでわかりますけれども、どれくらい肺がんの患者が減ったかといえば、この三十年の間、肺がんの患者は実はふえておる。たばこがこれだけ減っているにもかかわらず肺がんの患者がこれだけふえている、なぜですと言って医者に聞くと、大体たばこを吸わない医者は、いやそれは、たばこは何とかといろいろ理屈は言うんですけれども、たばこ以外のものがふえているんですよね、きっと。排ガスとか、多分いろいろなものがそうなんだと思います、私どももいろいろな話を聞くんですが。

 したがって、私は、税収がふえる部分に関しましては、たばこの税金を上げていただく、結構ですよ、私どもとして、税収がふえますから。ということに関しましては、これはなかなか、反対者の方がいろいろ多いところなので。

 今は吸われない方の方が、昔、私どもが当選したときは七八%が吸っておられたと記憶するんですが、今は三〇%ちょいということでしょう、さっきの数字が正しいとするならば、三四%。そうすると、肺がんの発生率は五割減っていないと計算が合わないんですけれども、五割ふえておるような感じになっておりますからね。

 そうすると、自動車とかその他の排気ガス等のせいによるのかとか、いろいろな説をお医者様は皆おっしゃるんですけれども、では自動車会社に言ったらと言うと、何となく、たばこの方には言われるけれども、自動車会社の排気ガスの方には言われない。もうちょっと言ったらどうですという話もするんですが。

 私どもとして、たばこの税金がふえるということに関しましては、私らの立場としては、税収増につながりますので、それは決して、私どもとしては、歓迎すべきことだと思っております。

 ただ、一点だけ、先生。

 このたばこの税を使わせていただいて、新幹線なんかは、たばこから、当時、十年前のときの記憶で、今ちょっと幾らになっているんだか正確な数字は知りませんが、一千億円ぐらい行っていたと思いますね、いわゆる鉄道というか新幹線に。当時、新幹線が分離というか独立したばかりのころでしたので、新幹線等々に千億ぐらい、当時行ったと記憶はする。政調会長だったので、全体の数字は漠としたものしか記憶がないんですが。しかし、禁煙と言うから、千億もらって禁煙って、おまえ、それはちょっと、幾ら何でも世間は通らぬだろうとぼろかす言いましてね。一応のんでいいという車両ぐらいはおつくりになったらということで、今あるんだと思いますけれども。

 いろいろなことは、これは折り合いをつけてやっていかないかぬところなので、なかなか簡単にすぱっとやれる話ではないというのがこの十数年間の自分の体験です。

宮沢(隆)委員 スモーカーでありながらたばこの値段を上げていただいたというのは存じ上げませんでした。敬意を表します。

 今の、肺がんが減っていないじゃないかというお話、確かにそういうお話を僕も聞いたことがあります。ただ、肺がんだけではたばこの影響は語れないかなと思っていまして、実際、たばこを全く吸われない方でも結構肺がんになっているのは事実なんですね。それこそ子供のころに父親が吸っていたたばこの影響でなっているんじゃないか、データはないんですけれども、私はそんなふうに推察をしております。したがって、受動喫煙はやはり何としてもコントロールしなきゃいけないなというのが私の持論なんです。

 たばこ千円論については、それが本当にいいのかどうかというのは、私自身、そういう計算とかシミュレーションはできませんので、もちろんこれについては財務省等にお任せしなきゃいけないんですが、ただ、先ほどの他国のたばこの値段と比較してみた場合に、考えてもいいことじゃないかなということも私の印象であります。

 ちょっとほかの質問もしたいので、たばこについてはここで終わりにさせていただきます。前向きな答弁がありましたので、ぜひ実務的にどんどん進めていただきたいと思います。

 もう一つ、インターネット病理というテーマに入ります。

 これも医者としての着眼点なんですが、SNS、IT、ICT等が世の中に氾濫するようになってから、誰にもそれはとめられないですね。しかし、それによって、人間の考え方、行動及び社会に対しては悪影響も及ぼしつつある。恐らく政治家の皆さんもそれは感じ取っていらっしゃるとは思うんです。

 では、どんな悪影響があるかというと、うんと具体的な話をしますと、私、地元のある支持者の母親から聞いた話なんですが、中学生の息子がスマホに夢中になっていると。お茶の間で食事をしながらでもやっている。LINEというものですね、僕はやっていないんですけれども。LINEで友達から何かメールが来ると、それに返信しなきゃいられない、即返事をしないと何か仲間外れにされるとか、そういう状況らしいんですね。その結果、何が起こるかというと、家族の中で会話がなくなる、コミュニケーションがとれなくなって、場合によっては家庭崩壊にもつながる。宮沢さん、何とかしてくれないかというようなことを言われたことがあります。

 もう一つは、脳を扱っていた医者から見ましても、携帯電話を使い過ぎると電磁波によって脳腫瘍ができる可能性があるといって、脳外科学会でも真面目に議論されていたことがあります。今は大分鎮静化していますが、そういう物理的な影響もあることと、やはり、生まれたときからもうデジタル社会にいるというだけで、脳のつくり方というんですか、発達の仕方は、恐らくアナログ時代とは全く違う方向に行っていると思うんですね。そういう意味で、何らかの悪影響をコントロールする体制が必要ではないかと思っております。

 せっかく資料を用意しましたので、資料六で、岡村さんという方の、スマホの悪影響に関する論文を引いてきたんですが、ちょっと時間がないので、一番最後の六番のところですね、六番、七番。「従来の枠組みでは、新たな問題を適正に解決できない恐れがある。しかもスマホの世界には国境がない。」「利用者保護のために新たに国際的な仕組み作りが求められる」云々と書いてあります。

 まさにそのとおりで、これは今の時点から取りかからないと本当に大変なことになるんじゃないかという危機感を持っております。

 これは既に三省庁の大臣に質問としてお願いしてあったんですが、まずは、では厚生労働省、田村大臣に、インターネットが誘発する人間への悪影響というものを、いわゆる一つの病理というぐらいですから、病気として扱って、診断基準みたいなものをつくることはできないかということと、あとは、それに対する対策を講じることはできないかという意味で、ちょっと質問させていただきたいと思います。

田村国務大臣 インターネットが普及して久しいわけでありますが、スマホはそれをさらに一歩助長といいますか、進めておる。どこにいたってネットにつながるわけでありまして、そういう意味では、スマホを見ながら町を歩いたりするだけで、非常に周りのことが気にならなくなって事故を誘発したりだとか、いろいろな要素があるんだというふうに思います。

 もうこれは委員御承知のとおりだと思いますが、ネット依存、依存と言っていいのかどうかわかりませんが、いろいろな依存がありますよね、アルコール依存や薬物依存やギャンブル依存や。それと同じように、ネット依存というものが、診断基準のある、診断ガイドラインのある、そういう言うなれば疾病というふうな形で分類されているかというと、これはもう御承知のとおり、国際的にまだそのような分類はされていないわけであります。

 しかしながら、やはりこれだけ社会で注目を浴びてきておりますので、全く何もやっていないかというとそうではございませんでして、厚生科学研究の中において、今、インターネット嗜癖の実態解明と治療法開発に関する研究というのを久里浜医療センターの方で、これは院長さんが研究者となっていろいろと研究をしていただいておりまして、医療機関や教育研究機関等を通じた、過剰なインターネット利用に関する実態調査、また、研究結果を踏まえた診断治療ガイドライン等の作成というようなことに取り組んでいただいております。これは二十五年度から始まりまして、一応二十七年度までの研究調査ということでございます。

 このようないろいろな研究の結果を我々も参考にさせていただきながら対応を考えてまいりたい、このように思っております。

宮沢(隆)委員 久里浜医療センターの先生のお話は僕も聞いたことがあります。もちろん、それもどんどん進めていただいていいと思うんですが、可能であれば、班会議のようなものをつくってもいい時期じゃないかなと私は思っていまして、それは政府の中で検討していただければいいんですが、この分野はかなりいろいろな業界の方に入っていただかないと、医者だけがじたばたしても多分どうしようもないと思うんですよね。そういう意味で、これこそまさに政府にやっていただきたい仕事だと思っております。

 それからもう一つ、総務省の新藤大臣に伺いたいんですが、インターネットの利用環境を構築するのはまさに総務省で、この入り口で、総務省として何か対策を講じておられるのかどうかというのを、ちょっとよろしくお願いします。

新藤国務大臣 委員からは、この問題について昨年四月にも御質問をいただいております。

 私どもとすれば、まずはいろいろな状況を把握しなければならない、こういうことでございまして、昨年の二月に、私たちの総務省情報通信政策研究所において、青少年のインターネット利用と依存傾向に関する調査研究を実施いたしました。その結果、ネット依存傾向が高い青少年の割合については、高校生で九・二%、中学生で七・六%、こういう結果を得ております。

 その結果を踏まえて、特に依存傾向が懸念される高校生のスマートフォンの利用について、これは、ことしの一月、今現在ですね、高校生のスマートフォンアプリの利用環境と依存傾向に関する調査研究、こういったものを実施して、現在、その結果を集計中というところであります。

 あわせて、総務省、文科省、民間企業等が協力いたしまして、子供たち、それから保護者、教職員を対象とした、インターネットの安心、安全な利用に係る啓発講座、これはe―ネットキャラバンと名づけておりますけれども、そういったものを全国で開催して、その際にも、この携帯依存についても題材として取り上げていただいております。

 また、オンラインゲーム依存、携帯依存など、インターネット利用に伴い発生するトラブルについての事例集をつくりまして、こういったものを、全国自治体等への配付、それから教職員、保護者会、相談窓口等で活用していただくように依頼をしているところでございます。

宮沢(隆)委員 昨年私が質問させていただいてから前進はあるようなので、ありがとうございます。

 結局、総務省は、このICTの分野で恐らく企業と一番かかわる省庁だと思うんですが、企業側の立場に立つと、会社を起こすという意味で、ビジネスにかかわっている方には魅力的な世界だと思うんですが、余りこういうネガティブな面に対して頓着しているようには見えないんですね。そこはやはり政府の方で目を光らせていただいて、時々意見を述べるなり抑制するなりというのは僕はしてもいいと思っていますので、ぜひその面もよろしくお願いします。

 それから、文部科学省の下村大臣にも、このスマホ等の扱いについては、まず学校で入っていくと思うんですけれども、そこで、こういうインターネット病理を防ぐためにどのような対策を講じておられるのかという点についてお聞きしたいと思います。

下村国務大臣 私も、知り合いの方の知り合い、子供を持っているお母さんから、LINEにはまってしまって、もう食事も家族と一緒にできないぐらいだという深刻な話を聞いたことがありまして、これはほっておいたら本当に大変な問題になるということを認識しております。実際、子供のインターネットの利用時間、今、中学生で、一日一時間以上利用している割合が四九・五%なんですね。ですから、どんどんふえてきていると思います。

 文科省では、学習指導要領において、インターネットの適切な利用方法や、疲労など健康への影響について、各学校で適切に指導するようにしております。

 ネット依存などの新たな課題に対し、学校における情報モラルの指導の充実を図るために、来月をめどに、教員向けの手引書を取りまとめる予定でもございます。

 また、スマートフォン等の利用について、家庭での安全対策や親子のルールづくりを促進するため、リーフレットの作成及びPTAと連携したシンポジウムの開催など、保護者への普及啓発にさらに努めてまいりたいと思います。

 来年度の予算案では、規則正しい生活習慣に改善するための宿泊プログラムを開発する研究、これを新たに盛り込みました。

 関係省庁とも連携して、必要な施策についてしっかり取り組んでまいりたいと思います。

宮沢(隆)委員 ありがとうございました。

 私は、子供の指導ももちろん大事なんですが、お母さんと先生への指導はもっと重要かなと思っておりまして、それぞれ、スマホという機械に対するスタンス、使い方は皆さん違うようなので、子供の指導と同時に、教員、母親への指導もよろしくお願いしたいと思います。

 今、三省庁の大臣の方にお答えいただいて、私は、少なくとも、同じ班会議をつくるなら、省庁横断で、専門家を集めて班会議をつくっていただければなと思っております。

 これで終わりますが、このようなちょっと生活に密着したタイトルで、与野党対決というようなムードにはならなかったかと思うんですが、国民にとってはかなり重要なテーマであると思いますので、我が党としてはこういうテーマに関しては幾らでも是々非々で協力はしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 どうもありがとうございました。

二階委員長 これにて宮沢君の質疑は終了いたしました。

 この際、休憩いたします。

    午後零時十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時十七分開議

二階委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。三宅博君。

三宅委員 日本維新の会の三宅博でございます。

 戦後日本の実相と国家のあり方について認識を深めたい、そのために個々具体の問題について質問をさせていただきたいと思います。

 まず初めに、きのう朝十時半から厚生労働省の方で、硫黄島の引き揚げられた御遺骨、これの引き渡し式がございまして、私も出席をさせていただきました。合計百八十一柱の御遺骨が厚生労働省の方に引き渡されたわけでありまして、新藤大臣来られていますけれども、ひょっとしたらその中に新藤大臣のおじいさんの栗林中将の御遺骨もあったかもわからない。

 遺骨収集団の方々が厚生労働省の職員の方に御遺骨を渡されるときに、非常に万感胸に迫るような感じで、もう目を泣きはらしてお渡しをされておられました。見ておりました私も、本当に感きわまるような感じになりましたけれども、こういうふうな国のために亡くなった英霊、こういった方々の思い、あるいは名誉、誇り、こういったものを取り戻していかなくてはならないと思います。そのためには、当然、河野談話の撤廃あるいは村山談話の撤廃、こういったものについてもこれから実現していかなくてはならないというふうに思います。

 まず初めに、拉致問題について質問をさせていただきたいと思います。

 拉致問題で、宇出津事件というのがございました。昭和五十二年の九月十九日なんですけれども、久米裕さんという東京三鷹の市役所のガードマンをされていた方が石川県の宇出津海岸から北朝鮮工作員の手によって拉致をされた事件なんですけれども、このときに久米さんを拉致した犯人、工作員、これは石川県警に捕まって一切合財を白状したんです。ところが、石川県警は、二週間もたたずぐらいだったと思いますけれども、工作員を無罪放免してしまったんですね。ここで全て警察あるいは政府の知るところになったと思うんですけれども、これをうやむやにしてしまった。これは昭和五十二年の九月十九日です。

 その直後、昭和五十二年の十月二十一日、これも政府認定被害者の松本京子さんという方が拉致をされました。それから期間を置かずに、同じく十一月の十五日、今度は新潟で横田めぐみちゃんが拉致をされました。

 宇出津事件のときに警察がこのことを、警察といいますか、日本の政府が国民に発表しておりましたらその後の多くの拉致事件は当然防げたであろうというふうに思いますけれども、これをうやむやにした結果、多くの拉致事件がその後頻発をしてしまったということなんですね。

 政府の認定被害者は十三件十七名ということなんですけれども、今パネルで示させていただいておりますけれども、特定失踪者問題調査会の方は公開で二百七十名。この二百七十名がここのパネルに写真で張られている方なんですね。これ以外に非公開の方が二百名いらっしゃいまして、合計四百七十名。それから、警察の方の二百三十名を含めて、調査会では約七百名の拉致被害者の把握をされておられます。

 調査会の方は、二カ月に一回、全国の現地調査ということでずっと全国を回られていらっしゃるんですね。そういった中で新たに寄せられる情報、未遂、既遂、こういったものがいろいろと来て、反対に、四百七十名じゃなしに、どこまでこの被害が広がるのか、あるいは底の深さ、わからなくなるようなことになってくる。

 私も何回かその現地調査の方には参加させていただいて、いろいろと御家族であるとか当事者であるとか、そういうふうな情報を直接聞かせていただきました。そういう中で、本当にこの拉致事件の底の深さ、恐ろしさというものを実感しております。

 拉致事件の問題については、安倍さんは、自分の内閣でこれを全面的に解決したいというふうに明言されていらっしゃるんですね。その覚悟のほどといいますか、その本当の思いを私は確かめたいというふうに思います。

 平成十四年に帰国された五名の方、地村夫妻、蓮池夫妻、曽我ひとみさんですね。彼ら、彼女らは、北朝鮮の招待所で多くのその他の拉致被害者と共同生活をされていたと思います。そういうことを一部発言されていらっしゃいますけれども、彼ら五人は、大阪の誰それもいてた、あるいは東京の誰それもいてた、あるいはその他何十人の拉致被害者もいてたということをほとんど御存じなんですけれども、これについて全くと言っていいほど発言されていらっしゃらない。これは、警察の方がどこまで本当にこれを確認しているのか、聞いているのか、これを本当に私はお伺いしたいと思います。

 彼らが公に全面的に知っていることを言えないという、やはり、そこに言えない何かが働いているんじゃないかなというふうに思えて仕方がないんです。日本に帰ってきた、しかしながら、北朝鮮のおどしといいますか脅迫下にいまだに置かれているんじゃないか。だからこそ、言ったら、ひょっとしたら自分あるいは家族の身辺に危ないことがある、それを恐れて言っていらっしゃらないんじゃないかなというふうに思えて仕方がないんですね。

 それから、特定失踪者の問題については、非常にここから大きな問題なんですけれども、ここに張っております、一九八四年ですから昭和五十九年です、六月四日に山本美保さんという方が失踪をした。彼女についてはほぼ間違いなく北朝鮮に拉致されているであろうというふうなことがうかがわれるんですけれども、山梨県の甲府に住んでいらっしゃって、山梨県の甲府の御家族であるとか双子の妹さん、あるいは同級生の方々が救出活動をずっとやっていったんですね。甲府市民の人口を上回るぐらいの署名を集められた。

 ところが、これに対して政府が危機感を抱いたのかどうかは知りませんけれども、その実相はわからないですよ、この昭和五十九年の事件に対しまして、平成十六年の三月五日、山梨県警が、突如、山本美保さんと一致する遺体があったということを発表したんです。

 その遺体というのは、山本美保さんの事件は昭和五十九年の六月四日、ところが、身元不明遺体、これは山形県の遊佐海岸に漂着した遺体なんですけれども、六月二十一日に漂着した、ほぼ二週間ちょっとの後に女性の身元不明遺体が漂着したと。このDNAと山本美保さんのDNAが一致したということを山梨県警が言ったんですね。これは警備一課長が言ったんですけれども、それは余りにも唐突な発表であったし、あるいは、体のサイズそれから身につけていた衣服が全く違うと。だから、双子の妹さんも、これは絶対違うということをおっしゃっているんですね。

 特に、山本美保さんについては、失踪された当時、お父さんは山梨県警の警察官だったんですね。だから、自分の娘のことを非常に心配されて、全国の行方不明遺体のデータをずっと全て取り寄せたと。いなくなって直後の六月二十一日の漂着遺体、これについても当然されたけれども、ああ、これはうちの美保と違うということを判断されて、全然問題にされていなかったんですね。

 ところが、平成十六年に、この山梨県警の発表、それから御家族に対する伝達で、DNAが一致したと。特定失踪者問題調査会では、いや、このDNAは偽造だというふうにもう断定しているんですよ。ところが、警察発表ですから、世間一般は非常に、まさか警察がDNAの偽造をしてまで拉致事件の鎮静化を図るということはあり得ないというふうなことで、今に至っているんですね。

 当時の警備一課長、この間までタイの大使館におられて、今はもう日本国内に帰っていらっしゃるんですけれども、いつか御本人にその辺の経緯を聞きたいというふうに思います。

 それから、拉致事件の犯人については、多く、国際手配、あるいは逮捕状が請求されているんですけれども、これは国外にいる犯人にばかりされているんですな。国内にいてる拉致実行犯、判明している人間には全く逮捕状等がとられていない。

 一番有名なのが八尾恵さんといって、八尾恵というのは元赤軍派の関係者ですけれども、彼女は自分の「謝罪します」という本で、私が有本恵子さんを誘拐しましたと自分で書いて、言っているんですね。ところが、彼女に対して、これは警察とどのような司法取引があったのかわかりませんけれども、全く彼女を逮捕して取り調べていないんですね。

 あるいは、さっき言いました宇出津事件の北朝鮮工作員、これは名前もわかっている。今、日本国籍を取って、西東京市で悠々自適ですわ、この実行犯であるにもかかわらず。あるいはまた、認定被害者の田中実さんの拉致をしたであろう実行犯、こういった人々も、多く名前がわかっているにもかかわらず、全くこういった部分については手つかずなんですね。本当に拉致問題を解決しようかどうかということを、私は本当に大きな疑念を抱きます。

 特に、原敕晁さんという大阪の中華料理店のコックをされていた方がいらっしゃるんですけれども、この方の拉致事件では辛光洙が主犯だったんです、皆さんよく御存じだと思いますけれども。二〇〇〇年、恩赦で北朝鮮に帰りました。辛光洙の事件のとき、辛光洙は原敕晁さんの合法的身分を手に入れて、パスポートを取ったり運転免許証を取ったりして、日本と北朝鮮を行き来していたんですね。韓国で捕まって、死刑判決を受けた。

 その取り調べで、韓国の地裁が発表した表といいますか、それは皆さんのお手元に行っていると思いますけれども、これを見ますと、日本の朝鮮総連が中心的な役割を果たしている、原敕晁さんの。そういうふうな、拉致の日本国内における実行部隊の中心的役割を朝鮮総連が果たしているということですね。大阪の商工会の会長であったり、商工会の理事長であったり、長野県の朝鮮総連の商工会長であったりとか、そういうふうな多くの人間がこの表に出ているんですね。

 言ってみれば、北朝鮮本国が指令を出して、日本国内における実行部隊の中心は朝鮮総連が担って実行してきた、こういう構図が浮かび上がってくるんですね。

 私がお聞きしたいのは、日本政府は、過去、数百人の被害者が北朝鮮に拉致をされているであろう、これは知っているはずなんですよ。知らなかったはずがない。どう考えても知っていたとしか思えないんですね。ところが、これに対しては、見て見ぬふりをしようとどうも政府決定したんじゃないかなというふうに私は思っているんです。その辺のところを聞きたいんですね。

 これは、大半の拉致被害者は、自民党政権のもとにおいて事件が発生し、拉致されたであろうということが思われるんですね。政府は、口では全面解決と言っていますけれども、この拉致事件の全容というものが明らかになった場合、自民党あるいは過去の政権に対して非常に大きな国民の怒りというものが爆発するんじゃないか、このことを心配して、本当は拉致事件の解決をする気がないんじゃないかなというふうに思います。

 安倍さんは先日も、北朝鮮のちょっとした変化を見逃さず、それに臨機応変に対応するとか、こういうふうなことをおっしゃっていて、言ってみれば向こうの姿勢の変化を待っているのか、待ちの姿勢でどうするのかということを私はお話をしたいんですね。

 以前に、細田さんが官房長官のときも、なぜ拉致事件の解決がいかないのかというふうな質問を受けたときに、相手も一国の政府ですから、政府対政府の交渉で、日本は北朝鮮にお願いするしかないんですよというふうなことをちょっとおっしゃったんです。

 国家主権を侵害されて、犯罪行為であるものと外交案件とを同等の取り扱いをされているんじゃないか。これはとんでもない話でして、日本の覚悟と行動によって拉致被害者全員を取り戻していかなくてはならないというふうに私は思うんです。

 今、古屋大臣と岸田外務大臣にお聞きしたいのは、政府はみんな知っていたんじゃないかということをお聞きしたいんですよ。日本の公安あるいは警察関係は非常に優秀ですよ。彼らが知らないはずがなかった、数百名の人間を。現場サイドはみんな知っていた。ところが、それに対して政治の方がストップをかけてきたという構図が浮かび上がってくるんですね。政府は全て知っていたと思うんですけれども、古屋大臣と岸田大臣、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 まず、一九七〇年代から一九八〇年代にかけて、多くの日本人が不自然な形で行方不明になっていく中、政府としましては、一九八八年の国会答弁において、北朝鮮による拉致の疑いが濃厚である行方不明事案について答弁をしたというのが初めてでありました。当時の梶山静六国家公安委員長が、北朝鮮による拉致の疑いが十分濃厚である等の答弁をしております。

 政府は、一九九一年の第三回日朝国交正常化交渉において、北朝鮮に対し、北朝鮮による拉致の疑いが強い失踪事件である李恩恵問題を提起し、以来、繰り返し北朝鮮に拉致問題を提起してまいりました。その結果、二〇〇二年九月の第一回日朝首脳会談において、北朝鮮側が初めて拉致を認めるに至った次第です。

 拉致問題につきましては、言うまでもなく、我が国の主権、そして、国民の生命そして安全にかかわる重大な問題であると認識をしております。拉致問題の解決なくして国交正常化はあり得ない、こういった認識、方針を強く持ちながら、国際社会と連携しつつ、総理が表明しておりますように、現政権下での完全解決に全力を尽くしていかなければならないと認識をしております。

古屋国務大臣 幾つもそういったことがあるが、どこをお答え……

三宅委員 いや、知っていたのか、いないのか。

 政府は、長期にわたって非常に多くの日本人が北朝鮮に拉致をされていたであろう、そのことをもうとうの昔から知っていたんでしょうと私は聞いているんですよ。知っていたのか、いや、知らなかったとおっしゃるか、それを聞きたいんです。

古屋国務大臣 この拉致問題の可能性については、今外務大臣が答弁をしたとおり、当初、一番古い事件で昭和五十二年の宇出津事件、今御指摘がありましたあの宇出津事件で、福井県とか新潟県、鹿児島県で三組のアベックの失踪事案がありましたよね。これはもしかしたら北朝鮮の関与の可能性があるかなということで、警察は捜査を行ったんですね。だけれども、結果として、北朝鮮の容疑事案と判断する客観的証拠というのは出てこなかった。

 今の時代と、当時、三十数年前とは、この拉致問題というものに対する、国民の皆さんもそうですし、やはり警察の意識というのが今ほど正直言って高くはなかったというのは、これは委員と同じ、否定はできないと思うんですよ。委員は、地方議会のころから熱心にこの特定失踪者問題あるいは拉致問題に取り組んでおられました。私も、実際によくお目にかかっていろいろお話ししたことがあります。

 その後、昭和六十年にいわゆる辛光洙事件があって、それで原敕晁さんを北朝鮮に拉致をした上で本人に成り済ましていたという事件があり、その後は、今外務大臣からもありましたように、いわゆる李恩恵事件ですよね、大韓航空の。

 そして、最終的には、昭和六十三年に、当時の梶山国家公安委員長等が、アベック拉致事件とか辛光洙事件とか宇出津事件というものを国会の答弁でして、これではっきり関与というものが、国会の中においても政府の中においてもしっかり判明をしてきた、こういう流れですよね。これは恐らく、委員もそういうことはよく承知だと思うんです。

 それ以来、やはり警察はしっかりこの問題について取り組んできている。

 それから、今ちょうどそのリストを出されていますので、これは四百八十名ぐらいあったのかな。(三宅委員「四百七十。ここは二百七十名」と呼ぶ)ええ。実は今、警察が拉致の疑いを払拭できない事案というのは八百六十一人いるんですけれども、全員これは……(三宅委員「入っています」と呼ぶ)入っています。

 ですから、そうやってかなり正確なデータベースをつくって、今、去年の春先からは、警察庁の中に特別指導班というのをつくって、この一件一件全部チェックをして、あるいはチェックをするだけではなくて、ホームページに家族の御了解をいただいたら載せる、あるいはDNA鑑定をしたりとか、現実に、ホームページで統一フォーマットを載せますと、今でもやはり数十年前の事件でも情報が入ってくることがあるんですね。

 だから、引き続き、そういう真相究明、そして拉致問題解決のために、警察も今全力を挙げて取り組んでいるということだけは申し上げたいと思います。

三宅委員 それ以上のお答えは返ってこないだろうというふうに私も思っておりましたけれども、拉致事件についてはこのあたりにしまして、次に、朝鮮総連の方の問題についてお話をしたいと思います。

 今も申し上げましたけれども、お渡ししております表にありますように、拉致事件の多くの日本国内における実行犯の中心は朝鮮総連であるということなんですけれども、朝鮮総連はどんな団体か、古屋国家公安委員長、どのような御認識を持っていらっしゃるか、これだけちょっと聞かせていただきたいと思います。

古屋国務大臣 朝鮮総連はどんな団体と認識しているかという御趣旨の質問だと思いますけれども、警察は、朝鮮総連は、過去に国際テロ事件とかあるいは拉致容疑事案を引き起こした北朝鮮を支援する在日朝鮮人等で構成された団体であり、北朝鮮と極めて密接な関係があるという認識を持っています。

 これまでも、北朝鮮工作員の密出入国であるとか、あるいは北朝鮮への大量破壊兵器関連物資の不正輸出に、朝鮮総連の構成員やあるいはその関係者が関与したという事例はしっかり把握をいたしております。拉致の事案においても、朝鮮総連関係者の関与が把握された事例もあります。

 警察は、そういったことをしっかり把握した上で対応させていただいているということであります。

三宅委員 これは、公安調査庁が発行しています「内外情勢の回顧と展望」ですね。破壊活動防止法、破防法の要監視対象団体の行動を報告したものなんですね。この一番に北朝鮮・朝鮮総連というようなことが書かれているんですね。

 私、さっき言いましたように、多くの拉致事件の日本国内における中核組織である、言ってみれば、犯罪者集団と言っても私は過言ではないというふうに思いますよ。これは、文世光事件のときもそうですね。朝鮮総連の生野支部で政治部長が文世光を唆してやらせたんでしょう。ところが、これも政治の方でストップをかけられて、捜査ができなかったんですね、あのときに。

 そのような危険団体である朝鮮総連、これの施設の固定資産税、これが、多くの自治体で特別な取り扱いといいますか、減免をされているんですね、全額であったり一部であったり。最近は、かなり自治体によってそのあたりは改善をされてきた。ところが、いまだに相当数の自治体が特別扱いをずっとしているんですね。

 これはとんでもない話で、熊本県の朝鮮会館の固定資産税の訴訟があって、福岡高裁でこれは違法だということが断定されて、最高裁の方でもこれは確定したんですね。何が違法かといいますと、朝鮮総連の内容どうこうは関係ないということをそこではっきりと判決に盛られているんですね。

 それは、地方税法三百四十三条第一項は、固定資産税の納税義務者を固定資産の所有者と定めとなっているんですね。この朝鮮総連の関連の施設は、ほとんどダミーの法人が所有していることになるんですね。朝鮮総連は法人格はないので、土地、建物の所有については登記ができていない。ところが、ダミーであろうがなかろうが関係ない、そこに登記された法人なり代表者が都市計画税も含めて払わなくてはならない。それを、朝鮮総連会館は公民館的施設だとか地域の集会所的役割がどうとか。関係ないと最高裁判決では言われているんですよ。

 今や、固定資産税は、地方自治体、地方税の収益の柱なんですな。これにこういうふうな恣意的運用があったりとか、言うたら不正がまかり通っているということは、税体系全般の中で非常に問題があるというふうに思うんですね。

 そういう点を踏まえて、新藤総務大臣、各自治体に対して、やはり私はそれなりの強力な指導をしていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

新藤国務大臣 まず、三宅委員が硫黄島の御遺骨の引き渡しにお立ち会いいただいた、また、御参列いただいたことを、私も関係者の一員として御礼を申し上げたいというふうに思います。

 また、今のお尋ねでございますけれども、朝鮮総連の関連施設、これに対する固定資産税の減免の取り扱いにつきましては、地方公共団体に対しまして、対象資産の使用実態を的確に把握した上で、公益性の有無等条例で定める要件に該当するかを厳正に判断するように、総務大臣通知等により注意喚起をしております。

 平成十八年から毎年のようにやっておりますし、また、さまざまな機会で、全国地方税財政連絡会議であるとか、市町村税の担当課長会議とか、いろいろな場面でそういったことを注意喚起させていただいております。

 現状で、平成二十五年度の課税状況、これは、関連する百二十八の地方団体を対象に調査をしております。全部を減免している団体はゼロであります。それから、一部減免が十団体、減免を実施していないのが百十八団体、このようになっております。

三宅委員 さっきも申しましたけれども、地方税法に定められた内容からしますと、使用実態とか、それは関係ないんですよ。所有者は払わなくてはならないと定められているにもかかわらず、なぜそういうふうな使用実態とか、あるいは地域の集会所としての実績がどうこうとか、そんなことは関係ないでしょう。ごく普通の日本の方があそこの朝鮮総連会館を地域の集会所というふうに使うこと自体も、普通はあり得ないんです。

 私、自分の地元の八尾市の朝鮮会館のそれも調べましたが、使用実績はなかったんですよ。にもかかわらず、全額減免していた。今は全額納税してもらっていますけれども、これは当たり前のことで、地方税法に定められた趣旨をゆがめて、使用実績がどうこうというのは、これはもう全然おかしいと思います。これはまた委員会の方でもさせていただきたいと思います。

 次に、日本放送協会、NHKについてお伺いさせていただきたいと思います。

 これは十二月三日の総務委員会でも、私、NHKさんに聞いたんですね、外国人職員の国籍別人数をちょっと教えてくれと。ところがNHKは、把握していませんとふざけたような答弁をしたんです。

 もう一度ここで聞きたいんですけれども、外国人職員の国籍別人数を報告していただきたい。

籾井参考人 お答えいたします。

 外国籍の職員の全体に占める割合は〇・二%程度でございます。人数的に言いますと二十二人でございます。

 NHKでは、人物本位の採用により、公共放送を支える多様な人材を確保し、なおかつ確保しようとしております。そういう中に外国籍の職員もいるわけでございます。

 国籍を理由とした差別的な取り扱いは職業安定法で禁止されておりますので、職員の募集時には国籍は不問としております。

三宅委員 外国人職員の数が二十二名というふうにおっしゃいましたけれども、それでは、もともと外国籍の人間が日本国籍を取得した、それは相当数いらっしゃるんじゃないかなというふうに思われて仕方がないんですね。その中には、ひょっとしたら中国の密命を帯びた工作員も一部いるんじゃないかなというふうに私は想像しているんですよ。

 なぜ、外国人職員の国籍別人数ということをあなたにお伺いしているかというと、放送法の精神からいっているんですね。放送法の第九十三条、法人または団体の議決権割合とか、あるいは百十六条、外国人が取得した株式の取り扱い。これは、電波というのは公のものだから一部の国の影響下に入ってはならないということでこういう放送法が定められているんでしょう。外国人職員の数を聞いたのも、そういうことなんですよ。

 そういった中に、一部、中国あるいはその他の国々の密命を帯びたような職員がいたらぐあいが悪いな。なぜか。中国は国防動員法というのをやっているでしょう。いざとなったら、中国国内に何かあったときに、それはもう国内外を問わず、中国人はみんな協力するんだ、中国共産党の指令に協力しなくてはならない、協力しなくては罰則があるというふうなことで、これは非常に危惧されるということで、こういうことを聞いているんですよ。

 それは二十二名かは知らぬ、あるいは日本国籍を取得した者が何人ぐらいいらっしゃるか、これもわからないんですけれども、ごく少数の確信犯によって巨大組織というのは牛耳られていることはよくあることなんですよ。それを私自身は非常に危惧しています。でないと、あそこまで反日放送を次から次とできるかなというふうに思われて仕方がないんです。

 ついこの間も、東京高裁判決、去年の秋にあったでしょう。「JAPANデビュー」という、台湾の問題をやった。あれはとんでもないということで名誉毀損が成立して、関係者に対して百万円の損害賠償請求が認められたでしょう。あのときも言ったけれども、私、過去四年間ずっと台湾を回って、特にその「JAPANデビュー」で描かれたパイワン族の方たちと会っているんですよ。彼ら、彼女らから、日本の統治に対して懐かしむ声は多くあっても、それを恨みに思うようなことを聞いたことがないんですね。

 ところが、一部の反日的な思想の人間であろう、こういう確信犯の人間が、NHKの番組の制作あるいは編集の実権を握っているように思われて仕方がないんですな。このことは非常に、NHKは公共放送と言っているんですけれども、私は時々、聞いていて、これはほんまに公共放送かいな、中共放送かなと思うときもあるぐらいですよ、本当に。そんなことは絶対やっていただきたくないんですね。

 この「JAPANデビュー」の第二回は御皇室のことを取り上げて、しかも、それは非常に失礼な角度からやった。あるいは、平成十三年の一月に、女性国際戦犯法廷という、昭和天皇に対して極めて失礼な取り扱いをした番組を放映したり、過去、NHKのやってきた偏向報道の数々、その罪の深さは許しがたいものがあるというふうに私は思います。

 そのNHKが、人件費というのを法外なものをとっている、このこと自体もやはり問題にしたいと思いますね。

 太田大臣、海上保安庁の平成二十四年度予算で、職員数が一万二千六百三十六人。総予算が、これは装備から人件費からみんな入れて千七百三十二億円ですわ。一人当たりの人件費は七百四十万円。

 こなた、NHK、これは二十三年度決算で、まあ同じような時期ですよね、職員数が一万三百五十四人。一割以上少ないんですよ、職員数が。NHKの人件費だけで千八百十九億ですわ。一人当たりでいうと千七百五十六万円。

 海上保安庁は七百四十万円ですわ。海上保安庁は昼夜を問わずああいう航海に出て、本当に日本の領土を守っている。こういった方々が七百四十万円で、こなたで反日放送をずっとつくり続けているNHKが千七百五十六万円で、とんでもない話ですよ。

 国家公務員全体でいいましても、五十七万九千の国家公務員で五兆五百二十四億円の人件費なんですね。これは一人当たり八百八十万なんです。これは給与費あるいは福利厚生費、それから退職手当、これを含めての話なんですけれども。

 ここまでつかみ銭みたいな感じでNHKが給与を取っている。これは犯罪行為に等しいというふうに思われて仕方がないんですね。なおかつ、それで優秀な人材が集まっていい放送をつくるのであればいいけれども、とんでもない放送の数々をやっているんでしょう。

 だから、これに対してはやはり、新藤総務大臣、主管大臣として非常に厳しい御指導をいただきたいんですけれども、御感想はいかがですか。

新藤国務大臣 まず、委員が御指摘をいただいている点でありますが、現行制度において、電波法第五条、NHKか民放かを問わず、役員に日本の国籍を有しない者が一人でもいるような法人または団体には、放送局の免許は与えません。外資規制を導入しております。

 そういったことで、電波が有限希少な資源であること、そしてその利用は自国民の利益を優先する必要がある、その観点であります。また、放送は言論報道機関としての性格を有して社会的影響力が大きい、こういうことから設けられているわけであります。

 一方で、役員については外国籍を排除しますが、職員については外国籍を排除する規定はありません。例えばNHKワールドTVですとか、国際放送についてはそういった外国籍の人材を活用しているものと聞いております。

 そして、放送法において、これは不偏不党そして公安及び善良な風俗を害しないことと、さまざまな設定をいたしまして、その中で放送を担保しているということであります。

 また、人件費につきましては、私も、適正化に努めること、この意見を出させていただいております。

三宅委員 もう時間が五分少々しかございませんので、あとちょっと走りたいと思うんです。

 次に、特定秘密保護法についてなんです。

 これは、昨年、ああいう騒然とした中で成立したんですね。この中で、民主党は大反対したんですけれども、一色正春さんが、尖閣で中国漁船と称する船が海上保安庁の船に体当たりした、このビデオを流出させた。そのときに、民主党政権が、とんでもない、あいつを逮捕させいとかいうふうなことになったと思うんですよ。結果、一色さんは辞職をされたんですね。

 このビデオを政府は、裁判の関係か何か、一昨日ですか、十二日に公開することになったらしいんですけれども、一色さんが公開したビデオは四十四分間ですね。それから、自民党の参議院議員の礒崎先生が十二分ほど何か公開している。合わせて一時間足らずのビデオの部分は公開しているんだけれども、その他のいろいろな情報がやはり公開されていないんですね。

 それは、中国漁船の、その漁船と称する船の実態、これは臨検したはずなんですね、海上保安庁は。その実態がどうかなということを、本来はやはりやっていただきたいと思うんですけれども、太田大臣、出席要請していませんが、一言だけちょっとお願いできますか。

 臨検した中国の船の実態を公開する予定はないんですか。

太田国務大臣 今回の件は、損害賠償請求訴訟を起こしまして、これで、時効になるものですから、時効中断ということの証拠として提出するということにしたものでございます。

 この件につきましては、一色さんについては国家公務員法違反ということで処分をしたということになりますけれども、特定秘密法という、今回のことについて言えばこれは当たらないということになると思いますが、刑事訴訟法の上でこれは公開できないということになって、四十七条です。

三宅委員 もう時間がございませんので終わりますけれども、この一色正春さん、これは日本の国益を考えてビデオを流出させた、この方が職にとどまることができなかった。あるいは、五年前を振り返ると、これは麻生さんが総理大臣のときに、田母神俊雄さんが、日本はいい国やと言ったときに、空幕長を解任されて、更迭されてしまったんですね。あるいはまた、今問題になっているのは百田尚樹さんですね、NHKの経営委員として選挙応援がどうこうといって。

 百田さんも、きのうも電話で話したら、自分は予算委員会でもどこでも行って話をしたいと。だから、百田さんとか、田母神さんとか、一色さんとか、一度、こういう予算委員会なり総務委員会なりに来ていただいて、主張をどんどん聞きたいなと思うんです。やはり、勇気ある発言をされた方が公職を追われるというのはおかしな話で、これはまさに戦後日本の欺瞞というふうな形じゃないかなと。まあ、麻生さんは、田母神さんの解任については今となっては後悔されているかどうか、それは知りませんよ、わからないけれども、私は、あれは不適当だったんじゃないかなというふうに思います。

 以上です。質問を終わります。

二階委員長 これにて三宅君の質疑は終了いたしました。

 次に、柏倉祐司君。

柏倉委員 みんなの党の柏倉でございます。よろしくお願いいたします。

 私、衆議院に来る前は、医療従事者として、また研究者として働いておりました。きょうは、そういった経験を踏まえて、発展著しい情報通信分野を中心にお伺いしたいと思います。

 まず最初、教育の情報化について伺いたいと思います。

 日本の情報通信分野、これはもう、光ファイバー網や高速無線通信網の整備がかなり進んでいて、通信だけでなく、さらに地上放送までもデジタル化されているということです。国際的にも、日本の情報通信インフラ整備はかなり進んでいるというふうにプライドを持っております。

 しかしながら、そういった整備されているインフラをしっかり利活用しているかというと、必ずしもそうは言えないのかなというふうにも思います。道路に例えるのであれば、しっかりとしたぴかぴかの高速道路を建てたのはいいけれども、なかなかそこを通る車が少ないというような状況ではないかなと思います。我が党の観点から申し上げれば、例えば薬のネット販売のような、規制、慣習、そういったものが一つの妨げになっているのかなというふうに思います。

 しかしながら、それでもやはり民間の人たちは頑張って、競争の激しい中でも、日本のICT、情報通信の利用は日に日に拡大を続けております。ネットショッピング、ネットバンキングというのはもう一般的なものとなりました。若い世代では、もう年賀状というよりも、種々の時候の挨拶は全部メールで済ませてしまうような状況にもなっております。情報の電子化、電子媒体によるコミュニケーションというものがもう実生活の分野ではなくてはならないものとなっているというところで、教育ではどうなのかという質問をさせていただきたいと思います。

 英国のトニー・ブレア元首相は、イギリスの三つの最重要課題は教育、教育、教育だというふうにおっしゃっております。当然、この哲学は、私もそう思いますし、多くの皆様方も共鳴されるところだと思います。

 昔の教育というのは、読み書きそろばんというものがゴールデンスタンダードだったと思うんですが、やはり今の時代は、小学校、中学校、これは、情報通信社会に生きている、そして生き抜かなければいけないわけですから、しっかりと、読み書きそろばんのクラシックに加えて、パソコン、タブレット、これを本当に自然に使いこなせる、そういう能力が国際競争を勝ち抜く上で絶対に必要であるというふうに私は思います。創造力、そして表現力、コミュニケーション力、そういったものに関しても今後大きな力を発揮してくる、それが、私はツールとしてのPC、スマホだというふうに思っています。

 そこで、初等中等教育からパソコン、タブレットにどんどん親しんでもらおうということで、国が国費を投じて地方自治体にいろいろ援助をしてきてくれております。しかし、残念ながら、海外と比較しますと、私はまだまだおくれているのではないかなと思います。

 例えば、子供一人に対してコンピューターが一台かっちりあるような欧米、韓国、シンガポールなのに、日本の場合は、これは概算ですけれども、六・五人に一台ぐらいの今状況だというふうに聞いております。大きくハードの設備がおくれている部分、これをまず何とかしなければいけないのではないかなというふうに私は考えております。

 そこで、お伺いいたしますが、さらなる成長に向けて、各分野のICT対応が推進されております。そういった中で、教育における情報化の重要性をどのようにお考えになられているのか、文部大臣にお伺いできればと思います。

 そして、可能であれば、この分野に造詣の深い麻生財務大臣にも一言賜れればありがたいと思います。

下村国務大臣 基本認識は、おっしゃるとおりだというふうに思います。

 教育においてICTの活用を推進することは、子供たちの学習への興味、関心を高め、わかりやすい授業や子供たちの主体的な学びを実現する上で非常に効果的であり、確かな学力の育成に資するものであることから、重要であるというふうに認識をしております。

 文科省では、今年度まで、総務省と連携し、学びのイノベーション事業として、学校におけるICT活用の実証研究を実施してまいりました。

 平成二十六年度予算案におきましては、総務省との連携のもとで、最先端のICTを活用し、学校同士や学校と家庭が連携した教育体制を構築するための実証研究、また、ICTを活用した効果的な指導方法や教員の指導力の向上を図るための方法の開発等の実施に要する経費を計上しておりまして、今後とも、教育におけるICT活用を積極的に推進してまいりたいと考えております。

麻生国務大臣 ITとかICT、インフォメーション・コミュニケーション・テクノロジー、Cが入ったのと、どっちを使うか等々、いろいろ世の中が混乱した時代もありましたけれども、ITをイットと読んだ人もおられたり、いろいろした時代もあったんですが、随分と定着したと思いますね。

 私どもが初めて、田舎のところですけれども、情報通信というものを国立大学に初めて採用した大学を、私どもの地元にあるんですが、ITという言葉は当時は通じませんでした。情報工学という名前にして国立大学でスタートさせた時代から、この種の話がきっと、次の世代はこれになるなと思っておりましたので、非常に熱心にやらせていただいたんです。

 これをわかっている人とわかっていない人、多分、情報収集量はもう何十倍も今違っちゃっていると思っております。したがって、今この種のことに追いついていない方は、総じて、皆これに反対です。はっきりしていると思いますね。党派とかは関係ないです、この種のことがわかっておられる人はすごくこの意味がわかりますので。

 言葉が、英語も多いんですけれども、英語ができないと、日本語もできないくせに英語なんかとんでもないと言う人がいるのも、大体、英語ができる人はああいうことは言わないことになっておりますので、非常に人によって差があるとは前々から、この種の予算をやらせていただくたびにそう思っていました。

 今回、今御指摘のありましたように、積極的な活用をやっていった上での教育というのは、これは地方においては特に効果がでかい。私は地方にいるせいか、そう思う。遠くのところまで光ファイバーでつながってみたり、衛星でつながったり、いろいろしますので、学校に来なくても、自宅で双方向でということができるようになってきています。塾なんというのは、多分、全てこっちの時代になりはせぬかなと思うぐらいなんですけれども。そういう時代になってくると思っていますので、今後、こういったものを活用するためには、教師の育成をやらぬと、ちょっとなかなかいかないのかなとも思わないでもありません。

 いずれにしても、こういった方向でやっていかない限り、日本という国の少なくなっていく人口構成の中にあって優秀な人たちを育てていくには、このICTの技術というものをより多く活用することが絶対条件の一つだと思っております。

柏倉委員 御答弁ありがとうございます。

 地方でよりこの効果が高いというのは、私もやはりそのように思います。私もずっと地方に住んでおりましたので。

 その中で、先ほど下村大臣の方から、文科と総務省が一体となって学校のIT化を進めていくというようなことで予算をとっているというお話がありました。

 その実証事業に対する政府の姿勢を次にお伺いしたいんですが、政府は、教育情報化に関して、二〇一〇年代中に学校のIT環境、これは、超高速ブロードバンドですとか電子黒板、無線LANというものをしっかりと配備するというふうにしております。この方針に基づき、地方自治体に国費を出して、実証事業、環境整備を進めてきたわけでございます。

 そんな中で、財政が厳しい地方都市でありながらも成功例がある。例えば、佐賀県武雄市では、小学校へのタブレット導入、これを三年前からずっと国費を利用して進めてきた。そして、この四月から、自主財源で、今度は市内の十一小学校全児童にタブレットを無償貸与することができるようになったという報道がございました。

 この成功例を見ると、地方が財政的に厳しい、そういった中でも、国費投入、これがボトムアップにつながって、タブレットを小学生に全部配付できる、これは私は輝かしい業績だと思うんです。三年間、国のお金を使って、今度から自分たちの自主財源でやる。こういった例をどんどん全国につくっていただきたいんです。

 しかしながら、今回の当初予算で、文科、総務省からの要求額がかなり減らされているように思います。しかも、この実証事業、これが、十地域ほどやりたいという文科、総務省の提案があったけれども、三カ所まで縮小をされているという状況がございます。やはり、このところはかなり重要な部分でございます。三地域というのではちょっと寂しいのかなというふうに思います。

 ぜひ、麻生大臣のお力で、もう何カ所かおふやしいただけることをお考えになっていただけませんでしょうか。

麻生国務大臣 これは要求をされませんと、私の方から、どうぞやりませんかなんという立場にありませんので、ちょっとそこのところはルールとしては、柏倉先生が下村先生に督励していただいて、おまえやれということを言っていただかないと、私の方から、あんたやらないかなんて話は、財務省の方から言うことはありませんから。

 ちょっとまず頭に入れておいていただいた上で、その上で、これは先ほど聞いておられたかと思いますけれども、野党の方は、反対して、これがまた復活したらとんでもないと言っている方もいっぱいいらっしゃるという実態がありますので、これは私ども、採用をする立場としてはなかなか難しいのが正直な実態なんです。それが一点。

 もう一点は、そのやった実態が、武雄みたいにうまくいった実態とそうでないのと、きっといろいろあると思いますので、これは成功した例を、こういうのにやるんだという例を使うと、文部省は、これが一つの前例として、他県もしくは他校もこういったようにやればいいのではないかという話がしやすくなると思います。

 ちょっといろいろ、情報なんか大したことありませんから、ぜひ、そちらの方が詳しいところはじゃんじゃん教えていただくと、向こうの方もその気になって採用して、やる気はありますので、情報の絶対量が不足している部分も否めない事実だと思いますので。本当にどんどん進歩していきますので、私らが習った時代とはもう全く違っちゃいましたので、ぜひ、そういった意味では、今の時代というものに合わせて、いろいろな新しいものを教えていただければと思います。

柏倉委員 恐縮でございます。ぜひ、下村大臣にも御指導いただきながら、前向きに皆様に御検討いただけるように、文科委員会でも頑張っていきたいと思います。

 次に、各論になります。デジタル教科書についてお伺いしたいと思います。

 私、デジタル教科書というのはどういうものかということで、詳しい友達が持ってきてくれて、それを自分で使ったりして、非常に便利だな、利便性の高いものだなというものを体感しております。英語に関しても、生の発音を自分が聞きたいときにぽっと聞ける、こういったオンデマンドなシステムというのは今後教育にも必要になってくるなというふうに痛感をしております。

 政府の知財計画二〇一三でも、全ての小中学校において児童生徒一人一台の情報端末によるデジタル教科書、教材の活用を初めとする教育の情報化の本格展開が急務であり、実証実験を行いながら、教科書検定や著作権上の課題を検討し、必要な措置を講じるというふうな文言がございます。デジタル教科書に関して、政府の地財計画でも、これは前向きに進めるんだということで読めます。

 ところが、現実にどうなっているかと、私、詳しい人間に聞きますと、なかなか、急務であるという文言がありながら、実証研究の数は、先ほど申し上げたとおり、ちょっと減ってしまっている、審議会の制度検討のスケジュールも正直まだ明らかになっていない、整っていないというふうに聞いております。

 かけ声倒れの感が否めない状況なんですが、政府は、このデジタル教科書に関して、制度整備、どのような工程で進めていかれる予定なのか。大臣、よろしくお願いいたします。

下村国務大臣 先ほどは柏倉委員から応援演説をしていただきまして、ありがとうございます。

 先ほどのICTですが、御指摘のように、十地域を要望したんですが、残念ながら、三地域に見直しがされてしまいました。理由は、先ほど麻生財務大臣からお話がありましたように、行政改革推進会議で、秋のレビューの中で当該経費に係る事業についての議論がなされて、事業の目的、ビジョン、効果検証が十分とは言いがたい、事業を絞り込んで行うべきではないか、そもそも教育のICT化の全国展開の前提として教育効果の明確化や教員のICT活用指導力向上等が必要ではないか、こういう指摘がありましたが、これについてはしっかり対応していきたいと思います。ぜひ応援をしていただければと思います。

 それから、デジタル教科書でございますけれども、現在においても副教材として使用することは制度上可能でありますが、教科の主たる教材である教科書図書として位置づけるためには、デジタル教科書を活用した教育の効果、影響を検証した上で、学校教育法の改正や、教科書検定、発行に係る関係法令、規定の整備、無償措置としての関係の整理が必要となります。

 文科省では、今年度まで、学びのイノベーション事業として、学校におけるICT活用の実証研究を実施してきたところでありますが、来年度予算においても、ICTを活用した教育の推進のための実証研究や、デジタル教材等の標準化などに必要な予算を計上しております。

 これらの事業を通じて、教育におけるICT活用の推進に努めるとともに、教科書制度への位置づけについては、知的財産推進計画や、世界最先端IT国家創造宣言の工程表において、実証研究等の状況を踏まえつつ、平成二十六年度までに課題を整理し、平成二十八年度までに導入に向けた検討を行うというふうにされておりますので、このスケジュールに沿って必要な検討を進めてまいりたいと思います。

柏倉委員 前向きな御見解をどうもありがとうございます。よろしくお願いいたします。

 ちょっと最後、新藤大臣にお伺いしたいと思います。東京オリンピックと情報化について、一点だけ。

 おもてなしということで、我々、日本食を初めとして、日本のホスピタリティーを発揮していくというのが東京オリンピックかと思います。

 そこで、外国人の方がいろいろ大挙して来られる。その外国人の方が、日本の情報を言語の違いによらずオンデマンドで、例えば交通渋滞、治安、災害、疾病なんかの情報がすぐにわかるような、簡単に言えば多言語の音声翻訳システム、こういったものをすぐにスマホでダウンロードできる、ホテルのテレビでそういうシステムがついている、こういう多言語翻訳のシステムをかなり普及させていかなきゃいけないと思うんですが、その辺の見解がございましたら、よろしくお願いいたします。

新藤国務大臣 御関心を持っていただいて、ありがたいと思います。

 時間がほとんどなくなりましたので、また別の機会をいただければと思いますけれども、私は、我が国が国際化をする上において、言語の壁を取り払うことができたならばすごいことが起きる、日本にいろいろな人が来て、ストレスなしで教育が受けられたり、医療が受けられたり、住んで、楽しんで、また仕事ができる、こういうことをやれたらおもしろいじゃないか。

 実は、私ども総務省では、情報通信研究機構、NICTというのがありますが、ここで既に一部実用化をされております。既に、現状で四カ国においては、私がしゃべったことをそのまま、私が電話で話をすると、相手のスマホで相手の望む言葉で翻訳できるんです。もう一、二秒でぱっといきます。

 ですから、これをオリンピックのときまでにもっと拡大しようじゃないか、今回の補正予算で十億円確保させていただいたところでありまして、ぜひそういう新しい展開を、イノベーションを起こそう、このように思っているわけなのであります。

 それから、教育においても、実は私たちが、文科省と連携しますけれども、日本の地デジのみが唯一データ放送を乗せられるんですね。ですから、映像を通じて、そこにデータ放送を加味して教育ソフトを開発するならば、全国でもっとレベルの高い教育ができることになります。

 それから、タブレットを持たせるにしても、何に使うかです。この間、私はフィンランドへ行ってその実態を見てきましたけれども、一人一人のカリキュラム、勉強の進捗状況を管理することによって、飛躍的な成績向上が図られるんです。

 ですから、そういういろいろな新しい仕組みを入れながら、ICTが世の中の基盤になるわけなので、そういったものを活用していきたい、このように考えております。

柏倉委員 どうもありがとうございました。

 これで終わります。

二階委員長 これにて柏倉君の質疑は終了いたしました。

 次に、林宙紀君。

林(宙)委員 結いの党の林宙紀でございます。どうぞよろしくお願いします。

 まず冒頭、こちらの衆議院予算委員会におきましても、我が結いの党に議席をいただき、また、こういった質問の機会を与えていただけたということに関しまして、改めて感謝を申し上げます。

 本日は、私の地元宮城県も含めまして大きな問題になっております、福島第一原発に由来する放射性物質に汚染されたいわゆる指定廃棄物、一般廃棄物、こういったものについて質問をさせていただきたいなというふうに思っています。

 御存じのとおり、間もなく東日本大震災からは三年になろうとしているところなんですが、私の地元宮城も含めまして、栃木、茨城、群馬、千葉、もちろん福島もそうなんですが、広範囲にわたって、当時の原発の事故によります放射性物質の拡散、それに伴う汚染された廃棄物というのがいまだに処理のできない状態であるということが、地元、特に住民の皆さんにとってはかなりの不安材料であるというところは、皆さん御案内のとおりなのではないかなというふうに思っています。

 指定廃棄物、いわゆる一キログラム当たり八千ベクレルを超えているもの、これに限定しても、全て合わせて、今わかっているだけで十三万トン。その中で十一万トンほどは福島にあるということですので、ほかのところを考えても、二万五千から三万トン近くなのではないかというふうに言われている状況です。

 そんな中、最終処分場を建設する方針というのが宮城県を含めまして五つの県で既に決められているわけなんですが、中でも、宮城県というのが一番進捗が進んでいるというふうに言われております。ようやく、先月の一月二十日に、宮城県で指定廃棄物の最終処分場の詳細調査をする候補地ということで、栗原市、加美町並びに大和町、この三カ所が提示されました。井上副大臣にもお越しをいただいて、御説明をいただいたというところでございます。

 ただ、詳細候補地になりましたよというその発表があって即座に、この地元三市町では、議会でも反対の意思があらわされ、また、各団体でも反対の声が非常に大きい。さらには、住民の皆さんの中でももちろん反対の署名があったりとか、今月中には、この三市町のうち一つで、地質学者の方による科学的見解に基づく反対論ということも講演がなされるということでもありまして、非常に反対が大きいというところになっています。

 このことにつきまして、政府として、今現状、どのように認識されているかというところをまずは御答弁いただきたいと思います。

井上副大臣 宮城県における指定廃棄物の問題でありますけれども、そういう意味では、調査候補地として選定をさせていただいた三市町の皆様には、いろいろと御迷惑、御負担をおかけしているというふうに感じております。

 ただ、これは、いわゆる迷惑施設でもあるものですから、簡単になかなか賛成というわけにはいかない、そういう事情だというふうに思っております。

 他方で、県内でも多くのこの指定廃棄物があって、仮置きが逼迫している、これを何とかしてほしい、これも県民の願いでありますから、国が責任を持って、最終処分場の建設、これを何とか受け入れていただくように取り組んでいく必要があると思っております。

 私ども、そういう思いで、もう既に、共通理解を醸成するということで、これまで五回の市町村長会議を開催して、丁寧な説明、議論を重ねてまいりました。そして、この一月二十日の市町村長会議において三カ所を提示し、翌日には、村井知事と一緒に私、三市町に参りまして、そしてお願いをしてきたところであります。

 こういった今回の選定プロセスに対しては、ぜひ、重く受けとめていただいて、尊重してもらえればというふうに思っております。

 引き続き、しっかり取り組んでまいりたいと思っております。

林(宙)委員 今回、反対する理由の中で、三市町いろいろとございまして、地形的な問題、地すべり、雪崩の危険、あるいは、今後、風評被害がまた拡大するんじゃないかということも言われているわけですが、共通して大きな理由の一つに、水源の汚染につながるんじゃないかということが言われています。

 どういうことかというと、いずれの候補地もかなり山合いの方に設定をされていまして、例えば、そのうちの一つなどは、大きな川の一番上流のところに位置する。地図なんかを見ると、そこから川の湧き上がりというか起点が始まっていくような、いわゆる、その付近から、山に降った水が湧き出して川になっていきますよというような土地でもあるということで、もちろん、その下流にはダムがあり、農業用水として使い、また飲料用水として使いというような状況でもあるところから、非常に懸念が強いというのもまた一つの事実ではあります。

 いろいろとプロセスを市町村長会議でも御説明はいただいているとは思うんですが、改めて、水源というところも加味をして、この三カ所を選定された基準というのを簡潔にお答えいただきたい。また、放射性物質が水源を汚染しないという根拠について明確に教えていただければと思います。

井上副大臣 処分場を設置するに当たりましては、水源に影響を及ぼさないように配慮するということ、環境省としても極めて重要であると認識しております。

 処分場の構造について、水源に影響を与えることのないよう、水を排出しない遮断型の構造として、放射性物質が漏れ出すことがないよう管理にも万全を期すことによって、十分な安全対策を講じることとしております。

 それに加えまして、候補地の選定に当たっては、地域の不安が生じないよう、安心などの観点からの評価項目として、生活空間からの距離とともに、水源である水道用水、農業用水の取水地点から候補地までの距離についても取り上げて、そして、総合的に評価した上で候補地の選定を行ったということであります。

林(宙)委員 では、これから、うまく話がまとまれば詳細調査というところになっていくわけなんですが、先ほども申し上げましたように、地元でも、かなりの反対論の強さによって、ここがどうして適切でない土地なのかというのを、いろいろと今調査をしながら挙げるというような話にもなってきております。

 これは、場合によっては、詳細調査をしていただいたときに、国の立場としてはそれは想定していないかもしれませんが、三つとも、詳細調査をしてみたら、ちょっとまずいかもしれないという可能性がゼロとは言い切れないと思いますので、その場合でも、政府としては、とにかく宮城県については今決まっている三カ所のいずれかに基本的には必ず決定する、この中から選定をするんだというお立場は今のところ変わらないということでよろしいでしょうか。

井上副大臣 やはり候補地の安全ということが一番重要でありますから、そういう意味でも、詳細調査をできるだけ早くやらせてもらいたいと思っております。

 その詳細調査の結果を踏まえた上で、総合的に判断して、この提示した三カ所の中の一カ所を選定したいと考えています。

林(宙)委員 しかしながら、現状を、状況を見ておりますと、あとどのくらい時間がかかるのかなというふうに正直思わざるを得ません。

 このまま決まらずに、詳細調査にすら入れずに時間が過ぎていくだろうという可能性も十分に考えられるわけなんですが、政府としては、希望的観測でも結構なんですが、この期限、いつまでには詳細調査に入りたいとか、入るべきだとか、そういった目標というのがあるのかどうか。宮城が一番最初に、今、詳細調査の候補地を挙げたというところまで来ていますので、宮城で進まないということになると、これはほかの地域にも波及しかねないと私は認識しているんですね。

 ということで、政府としては、いつごろまでには最低、最低なのか最長なのか、この詳細調査に入りたいというふうにお考えなのかというのをお聞かせいただきたいと思います。

井上副大臣 先ほども申し上げましたけれども、仮置きの状況が非常に逼迫しておりまして、周辺の住民の方は大変不安に感じておられます。しかし、他方で、私どもの方はお願いをする立場でありますから、いつまでにというよりも、とにかくできるだけ早く、ぜひこれをやらせてもらいたいというふうに思っております。

 とりわけ詳細調査に関しましては、実際のところは、現地の気候状況、条件などを見ますと、やはり雪が深いということがありますので、雪解けの季節、四月ぐらいにならないと、実際の詳細調査は難しいのではないかと思っています。ですから、少なくとも四月ぐらいまでの間に詳細調査の準備をさせていただいて、四月には詳細調査に入らせていただく。

 そうなると、実際には調査も数カ月かかります。ですから、それをなるべく早くやって、一刻も早く今の状況を脱していきたい、こういうふうに考えています。

林(宙)委員 国の本気度というか意思といったものも、恐らく今回ここで、ある程度試されてくるんじゃないかな、ちょっと言い方が失礼かもしれませんが。そういったところも、やはり地元としては非常に敏感に感じ取ろうとしているところはあると思うんですね。やはり、それを本気でやろうとしているんですよということをぜひ示していただきたいなと思うんです。

 一方で、今、指定廃棄物の最終処分場のお話をしましたが、もう一つ、八千ベクレル以下の、一般廃棄物と分類されるものもありまして、これが量としては圧倒的に多い。宮城県内だけで考えても二万七千トン、このぐらいあるということなんですね。

 実際に、指定廃棄物というのは、今、基本的には、ある程度集約して、その集めた場所で保管していますから、なかなか目には触れにくいような状況があるんですけれども、一般廃棄物というのは、農家の軒先ですとかあるいは農家の所有している土地のできるだけ道路から遠いところというか、そういったところに積み上げて保管をしている。当然、腐り始めるということもあるんですよ。

 去年の夏ぐらいには、一部腐敗が始まり、一部、巻いているロール資材が劣化してきたので、もう一回巻き直しをするということで、数千万円、大体四千万から五千万ぐらい追加費用がかかっているんです。また、これは長引けば長引くほどこういった作業をやらなければいけないし、本当に腐ってきてしまうと、今度はそれを封じ込める対策というのをまた別に考えなければいけないということで、地元は非常に懸念しているということなんです。

 当然、余計なコストという意味においては、最終的には東京電力に求償することになっていますので、地元の負担はないということで御理解いただきたいという御説明をいただいていますが、その東京電力の賠償費用についても、賠償の原資はそこの管内の電気料金にはね返ってくるんでしょうから、できれば追加的な費用を発生させずに済むように早期に解決をするというのがもちろん望ましいというふうに思っています。

 この八千ベクレル以下の一般廃棄物に分類される方も、これはかなり促進しなければいけないと思いますが、今現状、政府ではどのように促進しようと考えておられますでしょうか。

井上副大臣 八千ベクレル以下の農林業系廃棄物につきましても、実際にはなかなか処理ができないということで大変困っているということ、そのことはよく承知をしております。ただ、科学的、技術的には、これは通常の一般廃棄物として処理することができるというのが大原則だということであります。

 環境省においては、例えば平成二十四年度の補正予算において、処理が滞っている八千ベクレル以下のこの廃棄物の処理費用を補助する事業を創設いたしました。これによって、岩手の一関あるいは花巻、こういったところでは既存の焼却施設を活用して処理が進められております。

 ですから、私どもとしては、それぞれ市町村と相談をして、こういった対策を施していきたいというふうに思っています。

林(宙)委員 今おっしゃっていただいたとおり、一般廃棄物ですので、通常の処分場というか焼却施設などでも処理はできますよというのは、これはもちろん地元の皆さんには周知していただいている。地元の自治体の職員の皆さんが非常に頑張って、何度も何度も説明会を開いて御説明はいただいているんですね。ただ、それでも受け入れていただけないというのが今の現状であって、これをどう打開するんでしょうかというのが、地元任せではもう進まないところまで来ているんじゃないのかなと私自身は思っています。

 実際に地元で話を聞いていても、これはちょっと、いつまでたってもこの状態では膠着してしまうだろうというところまで来ているのは、副大臣も、もちろん地元に入られて、いろいろなところで説明を聞かれて、御存じのとおりだと思うんですね。

 時間が大分差し迫ってきましたので、ちょっと最後の方の質問に入らせていただきたいんです。

 事の本質はというか、廃棄物とかこういった問題になると必ず出てくるんでしょうけれども、今回に関しては、宮城県だけではなくて、それはもう栃木県も茨城県もみんなそうだと思うんですけれども、今回、自分たち自身には何ら瑕疵がないというところが非常に感情としては強くなっています。言ってみれば、自分の家の庭先に知らない間にごみが積まれてきてしまって、それをみずからの費用で処理せよということになってしまうんじゃないかなと。ちょっと例えがいいかどうかわかりませんが、状況としてはそういうことですよ。

 先ほども申し上げましたが、地元の自治体の職員さんたちが本当に頑張って、矢面に立って、何度も何度も説明をして、そのたびに、それは当然、かわりに自治体の職員さんたちがどなられるというような状況を何度もやってきたわけなんですが、そろそろ限界ですというところまで正直来ているんだろうなと、話をしていればそう思います。

 副大臣に奔走していただいている、これは大変ありがたいところなんです。先月、一月二十日にお越しいただいたときに、村井知事も奥山仙台市長も同席の上で説明もしていただきましたし、私たちとしては非常にその部分については感謝を申し上げたいというところではあるんですけれども、三市町で共通する声というのがあったんですね、その説明会の後に。それは何かというと、なぜ大臣には来ていただけないのかというところでした。

 それは、副大臣にお越しいただいているということで、国としても何らかの形での誠意というのはもちろん見せていただいていると私は理解していますが、今回の問題は、では、責任を一体誰が、どの立場の人がとるんでしょうかというのがわからないんですね、実際のところ。

 地元の市長や町長が最終的に責任をとるんでしょうかといったら、それは違うと思うんですね。県知事でもないと思います。なぜならば、この最終処分場については、国が国有地において責任を持って処分するんだという立場でやられているはずですよね。そうなると、当然、地元としては、私たちが発生させたものではないけれども、国の方針に従ってこれは処理をするんだということで、では責任は誰なんですかと言われたら、それは所管官庁の一番トップである大臣だということになるんじゃないかという認識になるのは、これは至極当然なんじゃないかなと思います。

 この問題も、先ほどもちょっと申し上げましたが、国として、この問題をどのぐらい重要なことだと捉えているのかというのをまずお聞きしたいんです。その結果、早期にこれの解決を実現したいんだと強い意思があって、国が本気でやります、絶対に放射線が漏れることもありません、責任を持ってやりますというようなことが言えるのであれば、そういうふうに思いを持っていただいているのであれば、これは、井上副大臣にも行っていただいて、なおかつこの状況ですから、やはり最後は、私は、責任者である大臣に、宮城だけではなくて、そのほかの県もお越しいただいて説明をしていただくというのは、ある種必須なのではないかというふうに思っていますが、そういった形で打開していただくことが可能かどうか、最後にお伺いをしたいと思います。

石原国務大臣 林委員が御指摘になりました指定廃棄物の最終処分問題というのは、非常に重要な案件であると認識しております。ですからこそ、一貫して政治レベルで対応させていただいてまいりました。

 平成二十四年、一昨年でございますけれども、十二月の政権交代の後、新体制ができまして、井上副大臣、そして前政務官であります秋野先生、また今は浮島政務官、この皆様方と一緒になって、何でここまで、また委員が御懸念されているように、こんなにこじれてしまったのか、まずその検証作業から入らせていただきました。

 その結果、やはり自治体の皆様方の意見を十分に酌み取る、そういうプロセスというものをつくっていかない限り、井上副大臣から御答弁させていただきましたとおり、これは迷惑施設ですから、どなたも、どうぞ来てくださいという話には絶対ならないわけであります。そこのところに重点を置いてやっていかなければならないと考えたわけでございます。

 こういう基本的な考え方を踏まえまして、その後、全ての市町村長会議に井上副大臣、また秋野前政務官、そして浮島政務官が出席いたしまして、いろいろお話を聞いてまいりました。そして、井上副大臣をヘッドにして、この三地域というものが望ましい、しかし、それも、調査をした結果でなければそこにつくることはできないというお話をさせていただいたわけでございます。

 今後の具体的な進め方については、これからも県とよく相談をさせていただきながら、委員の御懸念に応えるように、全力で取り組んでいかなければならない。また、ぜひ出てこいというお話でございますので、今後の状況を見ながらしっかりと検討させていただきたいと考えております。

林(宙)委員 ありがとうございます。また引き続き環境委員会等でも議論をさせていただきたいというふうに思います。

 本日はありがとうございました。

二階委員長 これにて林君の質疑は終了いたしました。

 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは、労働者派遣法を中心に、雇用労働問題について質問したいと思います。

 好循環実現国会が今国会の目玉だと言われています。一月二十四日の施政方針演説でも、企業の収益を雇用の拡大や所得の向上につなげる、それが消費の増加を通じてさらなる景気回復につながる、経済の好循環なくしてデフレ脱却はありませんと総理は強調されました。

 そこで、きょうは官房長官においでをいただいておりますので、お願いをしたいと思います。

 今国会提出に向けて準備をされております労働者派遣法の改正、この派遣法の改正と好循環がどうかかわるのでしょうか。

菅国務大臣 提出予定であります労働者派遣法改正案の具体的な内容については、現在まだ政府内で検討している段階であって、詳細については法案審議の際に御議論いただきたいというふうに思います。

 なお、現在の検討状況としては、派遣期間の見直しだとか、さらには、雇用の安定やキャリア形成に資するものとして、派遣労働者のキャリアアップの促進をも検討しているところであります。特に、ことしの補正予算において、非正規の方々の雇用の安定だとか処遇の改善を推進するためのキャリアアップ助成の拡充等を行ってきたところであります。

 一方で、今回の派遣法の見直しは、成熟産業から成長産業へという失業なき労働移動と多様な働き方を実現することによって、活力ある日本経済を取り戻すとともに、企業収益が雇用拡大さらには賃金上昇につながるという経済の好循環を目指す安倍内閣の方向に沿ったものであるというふうに認識をいたしております。

高橋(千)委員 もちろん、法律そのものはまだ出ておりませんので、詳細について議論するつもりではないんです。ただ、建議という形で方向は出ておりますので、それをあえてこの国会で通したい、それも二十四年に改正したばかりですのに、そういうことと好循環がどうなのかということで、あえて官房長官にお聞きをいたしました。

 今の、多様な働き方の実現ということがこれまでの本会議などでも答弁をされているんですが、やはり納得いかないので、それでどうして好循環になるんだろうかということなんですね。

 少し田村大臣と議論を進めていきたいと思うんですが、官房長官にもう一度、後で質問いたします。

 総理が言う、企業が世界で一番活動しやすい国、これがやはり答えなんだろうと思うんですね。経団連は昨年の七月に「労働者派遣制度のあり方について」の中で、日本再興戦略、これは成長戦略と我々はよく呼んでいますけれども、の中で、失業なき円滑な労働移動の実現には労働市場の柔軟性確保が必要と。柔軟性、つまり伸び縮みですよね。企業の都合に合わせてふやしたり減らしたりできる、大変便利だし、できるだけ安くと、企業の論理になるのではないか。これが私はやはり核心ではないかというふうに思うんです。

 それで、まず、議論を進める前におさらいをしますけれども、職業安定法四十四条は労働者供給事業を禁止しています。労働者派遣はその例外であり、一時的、臨時的なものに限るとして、一九八五年に制定されました。常用雇用の置きかえであってはならないということだったと思うんですね。

 そこで、なぜそうなのか。職安法が労働者供給事業を禁止していることの意味と、派遣がその例外であるという意味について、簡潔に説明していただきたい。そして、これからもその原則が変わらないのか、伺います。

田村国務大臣 派遣が臨時的、一時的な労働力の需給調整役ということで、常用代替の防止として期間制限というものが設けられているというのは、これは基本的に、ネガティブリストが採用された平成十一年の労働者派遣法の改正、このときにこういう考え方が導入されたわけであります。でありますから、期間制限の中で、やはりこれに関しては臨時的、一時的であるというような位置づけがされているわけであります。

 今般、この国会に労働者派遣法の改正を提出させていただきたいと思っておりますけれども、これに関しましても、期間制限の中身自体、若干これは変わっておりますが、しかし、期間制限は設けておるわけでございまして、今まで同様、やはり臨時的、一時的な扱いとして派遣というものがあるわけでございますから、そこは変わっていません。

 ただ、例外として、無期で派遣で働く方々、この場合は比較的雇用が安定をしておるということでございますので、無期契約の派遣労働者に関しましては、これは期間制限なしで働けるというような形を今回例外的にとらせていただいておるということでございます。

高橋(千)委員 戦後、労働者の基本的人権を明記した日本国憲法とともに、労働者供給事業は禁止された。いわゆる人貸し、そういう仕事ということの強制労働やピンはね、これをやはりもう禁止しようということで憲法とともに生まれた、そういう経過があったのではないかなと思っています。

 ただ、今大臣がお答えになったとおりに、平成十一年の中で代替の防止という概念が非常に狭められた。そういうことを図らずもおっしゃったのかなと思っております。さっき紹介した経団連の提言は、もうその原則さえも廃止してしまえと言っているわけですからね。私は、もうかなりそういう中身になっているのではないか、こういうふうに思っております。

 それで、一応、一時的、臨時的な働き方なんだということは原則だということは建議の中にも書いております。しかし、実際にどういうことになるのか。

 期間についてだけ今質問しますけれども、個人については三年未満というのは変わっていない、だけれども、人をかえれば、派遣する人をかえれば、それはずっと入れてもいいんだ、それから、同じ労働者が、今まで働いていたラインでない、ちょっと違う部署に行けば、それは別に派遣のままでも構わない、それから三つ目に、今も大臣がおっしゃった、派遣会社に無期雇用されている労働者ならば期間制限はかからない、この三つ、どうですかね。確認です。

田村国務大臣 今般の建議でいただいたものの内容は、今言われた期間制限の中身を見直す。つまり、今までは、業務に関してそれがあったわけであります。それに対して今度は、人というところ、それから派遣先というところに着目して、三年間というような期間制限を設けるわけであります。

 まず、人がかわればいいではないかという話がありますが、今も申し上げましたとおり、基本的には、これは臨時、一時的なものでございますので、この場合には、やはり意見聴取を、その職場で過半数以上の労働者を代表する方々と意見聴取をしなければならない。それの中において、例えば反対等々の意見がある場合には、対応方針というものをしっかりと示していただく。

 そういう意味では、やはり、一番現場がわかっている、職場がわかっておられる労使ともの、一応そこでのいろいろな意見を交わす中において、それが可能かどうかということを調整いただくということでございますから、野方図に、これは三年、人がかわればまたその後いいというわけではないということであります。

 それから、職場は一緒であっても部署がかわればいいではないかというのは、これは今までも実は現状、そういうようなところがあったわけでございまして、今までは全く何もない中でそのようなことが現実として行われておったということがございます。

 しかし、今回は、同じ職場であれば、部署が違っていたとしても、やはり同じように労働者の過半数を代表する者と意見聴取をしなければいけないわけでございますので、今までよりかはハードルはちゃんと上がっておるわけでありますから、そういう意味では、常用代替防止という意味からしますと、ここは強化されたのではないのかなというふうに思います。

 それから、無期で派遣元と契約をされておられる方、そういうふうな派遣労働者の方々に関しましては、先ほども申し上げましたけれども、比較的雇用が安定しておるという点でございますので、これは例外として、三年という期限を設けずにその職場で働けるというふうなことにしたわけでございまして、決して、委員がおっしゃられたように、人さえかえれば何でもできるという話じゃございません。

 この後、多分また御質問があろうと思いますけれども、みなし制度に関しましても、やはりこれはちゃんと意見聴取というようなプロセスを踏まなければ、それは違反でございますので、そのままみなしという形になっていくわけでございますから、しっかりとそういうところで担保はさせていただいておるというふうに認識をいたしております。

高橋(千)委員 今でも実際に起こっていることを、それ自体が問題じゃないかという認識がないんだろうな、逆にそれを法定するということを御説明しているわけですから。また、それを強化するんだともおっしゃいました。

 でも、労働組合にも意見を聞くといっても、それは、聞けば、とりあえずは、反対だと言われても、いいということになっているじゃないですか。そう説明しているじゃないですか。それでちゃんと担保されているなんということは言えない。

 しかも、これは、労働組合といっても、ちょっとうっかりするところなんですけれども、派遣先の労働組合ですからね。派遣労働者の労働組合じゃないわけですよ。そうしたら、派遣先の労働組合が、自分の職域が荒らされないかどうかということは意見は述べられるかもしれないけれども、派遣労働者の立場に立って言えているわけじゃないんですから、そこは、それで担保しているという話じゃないんだ、これを指摘しておきたいと思うんですね。

 それで、日本生産技能労務協会と日本人材派遣協会は、昨年の七月二十六日付厚労大臣宛ての要望書の中で、業務ごとの制限ではなく、個々の派遣労働者ごとの就労期間の制限とすること、ただし、派遣元において無期雇用の労働者については、就労期間の制限を設けないと申し入れています。

 これは、言ったとおりのことを今、法定したことになるじゃないですか。この要望書は、大臣自身が直接、大臣室で受け取っているわけですよね。これは、派遣協会のホームページに写真が載っておりますから、大臣自身が受け取っている。派遣業界の政治連盟との大変密な関係もございますということがあると思うんです。きょうはそのことは指摘をしませんよ。これ以上は言いませんけれども、派遣業界の要望そのものなんだ、結局、今出てきているのは。これでも常用雇用の代替ではないとおっしゃいますか。

田村国務大臣 まず、派遣先の労働組合の意見聴取、また、反対がある場合には対応方針を示すというようなこと、これはなぜそうなっているかといいますと、常用の雇用の代替の禁止ですから、それはもうまさに派遣先の常用の雇用、これとの代替の防止ですから、そこの労働組合とやはりしっかりと労使で話をしていただくのがこれは私は筋だというふうに思いますので、そのような仕組みをとらせていただいたわけであります。

 あわせて、今おっしゃられた中で、それはいろいろな議論はありました。といいますのは、そもそも、前回の労働者派遣法の改正のときにも、我々は野党でありましたけれども、幾つかの政党がいろいろな議論をする中において、今般のこの建議の中身に関しても、そのときにもいろいろな議論があったのは、多分、委員も覚えておられる話だと思います。そういうところの中において、当時、附帯決議等々でいろいろなことが盛り込まれ、その後、研究会で御議論いただいた上で、労働政策審議会の中で今般建議という形でいただいたわけでございますので、急に降って湧いたわけではございませんでして、以前からそのような御議論がある中において今回建議をいただいたものであろうというふうに我々としては認識をいたしております。

高橋(千)委員 その当時の議論については、後で質問しますので。

 だから、今大臣がおっしゃったのは、やはり、派遣先の労働組合、ここに派遣という間接雇用の問題点があるんですよ。常用雇用の置きかえになっている派遣労働者の立場に立って物を言う、そこができないじゃないかということを指摘している。ただ、尊重するということは言っているんだから、そこはちゃんと確認をしたいと思うんです。

 ちょっと話を進めたいと思うんです。

 やはり、派遣先の責任、このことがこの間ずっと問われてきたのではないかなと思うんです。

 少し振り返りたいと思うんですが、正社員で働いていた会社をリストラされて、いすゞ自動車栃木工場で三年一カ月働いたTさんという方がいらっしゃいます。いすゞが派遣契約を打ち切ったことで、二〇〇八年の十二月二十六日に解雇されました。実は、青森県出身の方で、この間、三年一カ月の間にですよ、派遣、期間、派遣と切り変わっているんです、働き方が。それで、自分の生活費を切り詰めて、給料の大半をふるさとの家族に送金をしていました。解雇後は、失業給付、わずかですけれども、一日一食に切り詰めて仕送りをした。それでも家族の生活費は賄えず、子供たちも進学の夢を諦めるんですね。だから、解雇は、私の生活だけではなく、家族みんなの生活を破壊し、子供たちの人生を狂わせたのだ、そういうふうに東京高裁の弁論で訴えました。

 本当に、この当時、随分議論されましたよね、労災が随分多いじゃないかとか。だけれども、派遣労働者は、派遣先の正社員であれば認められている、だけれども、この人の場合は、指を切ったとしてもカットバンでいいんだ、そういうことがあって、やはり、同じように働いているけれども、都合が悪くなれば紙切れ一枚で首を切られる、そういうことをやめようじゃないかということで、派遣法の抜本改正が叫ばれてきたんだったと思うんですね。

 それで、まず聞きますけれども、あの派遣切りに遭った方たちがその後どうしたのか、政府は把握していると思いますが、お願いします。

田村国務大臣 まず基本的な認識として、我々もそういう問題意識があるからこそ、今般、この建議をいただいて、法改正に取り組んでいきたいと思っているんです。

 それは、やはり派遣元業者、ここもリーマン・ショックの後、いろいろな問題が起こったのは事実でございます。そういう中において、ちゃんと派遣業者を育成していかなきゃならない。そこで、今般の建議の中では、特定派遣、言うなれば、登録だけで業務をやっておる、このようなものはやめて、許可を受ける、許可制の派遣労働業者、こういうものしか認めないというふうにしようということで、質をしっかり担保していこうということが一つ。

 それから、やはり、派遣労働者の方々が、これから教育訓練を受け、またキャリアアップをしていただかなきゃならぬわけでありまして、その意味からしますと、派遣元に、しっかりと定期的な教育訓練と、それからキャリアコンサルティングを含めたキャリアアップの手法、こういうものを義務づけておるわけであります。

 あわせて、三年間というような期間制限がありますけれども、その三年がたったときに、派遣先に対して直接雇用の依頼を派遣元がしたりでありますとか、無期の派遣労働の雇用転換でありますとか、そういうような措置というものもしっかりと対応していくこと、これも義務づけているわけであります。

 そして、派遣先に関しましても、均衡待遇ということでございまして、例えば賃金、それから教育訓練、さらには福利厚生、こういうものに対して、自分のところの直接雇用の職員と同じような扱いをするような配慮義務、これもお願いをさせていただいておるわけであります。

 そのような意味からいたしますと、まさに、派遣労働者の方々が今よりももっと安定した、そのような待遇になるようにというような思いの中で、実は今回このような法律を出させていただきたいと思っておるわけであります。

 先ほど官房長官がおっしゃられたように、キャリアアップ助成金というものを今回拡充しました。これは、一人当たり四十万だったんですけれども、五十万円。しかも、派遣から正規の場合ではさらに十万円加算でありますから、こういうものを使って処遇改善をさせていただきたい、このように思っておるわけであります。

 本題に入ります。簡潔に言います。

 どうなったかという話をいたしますと、平成二十年十月から平成二十四年十月まで、全国の労働局、ハローワークを通じて事業所に聞き取りをさせていただきました。この中において、離職後の状況について、平成二十二年十一月まで把握しておりますが、七割強が再就職をされておられます。

 雇いどめの方も申し上げます。雇いどめは、これは、派遣だけではなくて非正規全体でありますけれども、十九万人に達したわけでありますが、これは二十年であります。二十四年度は一万人まで数が減ってきております。派遣に関して申し上げれば、今、千六百八十九人、これは平成二十四年度の四月から十月の数字ではありますけれども、このような形になってきております。

高橋(千)委員 順々に聞いているのに、余り一遍に言わないでいただきたいと思うのね。

 結局、今言ったのは派遣元の話なんですよ。そんなにお人よしの派遣元がありますか。派遣契約を切られてもずっと、無期雇用だといって抱えていて、キャリアアップの訓練までさせてあげて、そんなことをやるわけないじゃないですか。結局、このいすゞだって、違法派遣だというのが高裁で決まったんですよ。だけれども、切ったのは派遣会社であって、いすゞは痛まないんです。それが問題だということをずっと言ってきているじゃないですか。

 話に行きますけれども、結局、累計だと、厚労省の調査では、三十万人切られているわけなんですね。だけれども、その中で、今おっしゃったように、再就職は七割を超えています。これはすごい数字だねという話でしょうが、だけれども、何でそうなのかということを考えたときに、それは、再就職といっても、さっき例に言ったように、派遣、期間工、派遣と、また繰り返しているんですよ、非正規の間を。それで、また三年近くなって切られている。そういう実態が全然見えてこないだろうということを指摘しなければならないと思います。

 私は、二〇一〇年の一月二十五日の予算委員会で、日産自動車を相手に闘っている、Tさんという方なんですが、女性のことを取り上げたことがございます。六年間、三カ月契約を二十五回も繰り返して雇いどめされて、今、神奈川県内で日産自動車と日産車体の非正規切りされた五人の労働者が闘っているんです。ぜひ官房長官に聞いていただきたいんですが、この方の最後の陳述でこんなふうに言っているんです、昨年の十一月、横浜地裁で。

 日産自動車による解雇によって、私の生活は大きく変わりました。解雇通告のあった二〇〇九年二月以降、精神的ショックから、うつ病、睡眠障害を発症しました。解雇からはさらに、電車に乗るだけで目まいがして、動悸で胸が苦しくなり、パニック障害という病まで患いました。ストレスから摂食障害にも悩みました。解雇で受けたダメージは、精神だけにとどまらず、私の体全体に及びました。ほかの四人の原告も皆同様に、並大抵ではない生活をしながら裁判を続けています。原告の一人は、精神不安定な状況から、体重の増減を繰り返したり、腎臓を病んで入院治療してきました。

 でも、何で原告らがそんなにつらい思いをしながら裁判を続けてきているかということに対して、彼女はこう言っています。

 日産自動車のような大企業は肥え太る一方で、派遣労働者や期間工は、会社から解雇されて路頭に迷っても泣き寝入りするしかない、そんな暗黒のような社会を次の世代に引き継ぎたくないのです。こう言っているんですね。

 日産自動車は、〇九年、リーマン・ショックの影響だとして、世界で二十四万人いる従業員を三万五千人、リストラを発表したんですね。国内では、正社員四千人、派遣、期間工八千人に始まって、トータルで二万二千人以上がリストラされているんです。

 解雇ということがどれほど労働者を経済的にも精神的にも苦しめるか、このことをどう受けとめるかということと、企業が利益を上げれば賃上げにもつながって好循環というかけ声は、やはりそうはならない、うたい文句なんだということは、この間にもう証明されているんじゃないですかということを、官房長官。

菅国務大臣 今回の改正法の考えというのは、派遣期間の見直しはもちろんですけれども、雇用の安定とキャリアのアップ、こうしたものの促進というものも主に検討されておるわけでありますし、いずれにしても、派遣労働者の一層の雇用の安定というものを掲げて、私どもは今、この改正を検討しようというところであります。

高橋(千)委員 結局、派遣は派遣のままで、それでも安定を図っていけばというお話だったと思うんですね。それがどういう意味なのかということを少し議論したいと思うんですね。

 期間工、派遣社員の賃金は、日産の場合では大体年収で三百万円程度なんだ、こういうふうに言っているんです。だけれども、カルロス・ゴーンCEOの役員報酬は、日本で一番高い九億八千八百万円なんですね。しかも、内部留保は、トヨタには負けますけれども、それに次いで自動車業界では二番目に高い四兆四千六百億円なんですね。だけれども、世界じゅうでリコールが大問題になっています。数十万台の規模になっているんですね。

 それで、ことし一月六日には、日産の重要な株主であるフランス・ルノーの労働組合が、日産自動車と日産車体での雇用確認を求めた裁判について、日産経営は、利益拡大のために労働者の権利と利益を侵害し、非正規労働者を利用してきた、こう指摘をして、横浜地裁に公正な判決を申し入れているんですね。

 だから、国際競争とか成長戦略とか盛んに言っているんだけれども、やはり働き方の面でも世界に恥じない、そういう企業じゃなくてはいけないんですよ。そういうことをうたった雇用と職業の差別をなくす国連グローバルコンパクト、これには日産だってキヤノンだってみんな署名しているんですよね。そういう国際的枠組みに署名しているのに何でこうなのかということをやはりちゃんと言わなきゃいけないと思うんです。

 それで、パネルと同じものを資料で皆さんのところにも配っております。

 キャリアアップの問題が本当にできるのかということなんですけれども、派遣労働がピークだったのは二〇〇八年です。リーマン・ショックの直前ですね。その後、二〇一二年まででいいますと、雇用者の数というのは減っているわけですね。二〇〇八年から二〇一二年までで二十一万人減っています。だけれども、この黄色いところ、非正規の労働者はふえているんですね。全体が減っても、まだふえている。二〇〇〇年と比べると五百四十一万人もふえているんです。ですから、割合が、三五・二%にまで比率は高まったんですね。

 だから、派遣はその中ではまだちっちゃいんですけれども、この中で、非正規の黄色い枠の中で行ったり来たりしているというのは見てわかると思うんですね。非正規の割合が高いことが全体の賃下げにつながっているということは、厚労省の労働経済分析でも数年にわたって指摘をしているところなんですね。

 だから、キャリアアップと幾ら言っても、この非正規の枠の中で行ったり来たりしている、そういう実態じゃないですか。そこをどう見ているんですか。

田村国務大臣 基本的な認識は一緒なんですね。これは、きょうは派遣の話だという話なんですが、全体として非正規の問題が大きいんだと思います。非正規と派遣とをどう見るかという問題が一方であります。

 派遣と直接雇用の非正規、ここに二十四年度の資料がありますけれども、登録型派遣、時給、これは全体の平均ですが、千二百六十三円。常用雇用型は千四百三十二円。それに対して、一般労働者、これは直接雇用の正社員以外ですけれども、千百九十八円。実は派遣よりも低いという数字が出てきておるわけでございまして、我々は、派遣労働というのは、決して派遣労働ばかりが悪いというのではなくて、非正規、本来ならば正規になりたいというのに、仕方なく非正規で働いておられるという方々をどうやって正規に働いていただけるか、こういうことを考えておるわけでありまして、キャリアアップ助成金もそのうちの一つの手法であります。

 同時に、先ほど来官房長官がおっしゃっておられますけれども、多様な働き方という中においては、多様な働き方の中において正規というような、そのような形のことも我々はいろいろとこれから考えていっておるわけでございまして、言われるとおり、本来正規で働きたいという方々を、ぜひとも正規で働けるような環境をつくっていく、そのためにはやはり経済の好循環もつくっていかなきゃならない。景気がよくならないことにはなかなか正規の雇用というのはふえないわけでございますから、そのようなことをする中において、しっかりと正規をふやしていく、その中にこの派遣労働というものも一つのツールとしてあるわけでございますので、思いとしては先生と同じ思いの中で、しっかりと、非正規で働く方々が正規に移っていけるような環境整備をしてまいりたいというふうに考えておるような次第であります。

高橋(千)委員 そこで、環境整備ということで、二十四年の改正で唯一残ったのが、資料の二枚目、労働契約申し込みみなし制度なわけであります。これは、野党だった自公修正によって、登録型派遣、製造業派遣の原則禁止が削除されたわけですよね。それで、この労働契約申し込み制度が残った。

 イメージ図がございます。下の点線の囲みの中であるわけですけれども、禁止業務に従事させた場合とか、無許可、無届けの派遣元事業主から受け入れた場合とか、派遣可能期間を超えて受け入れた場合とか、いわゆる偽装請負とか、そういう違法のときには労働契約を申し込んだとみなすということを決めました。

 だけれども、これは何と何と二〇一五年十月施行なんですね。まだ施行されていない。果たして日の目を見ることができるでしょうか。

田村国務大臣 労働契約の申し込みみなし制度でありますが、今委員がおっしゃられましたとおり、平成二十七年の十月施行する予定でございます。

 これに関しては、本来、前回の労働者派遣法の中では、結果的に、このみなし制度に関しましても、見直す検討をするということでございましたが、今般の建議の中では、これはそのまま残っておるわけでございます。

 あえて申しますと、期間制限の考え方が変わりましたので、そこの部分は若干見直す部分はありますけれども、基本的にこのみなし制度自体は残っておるわけでございまして、今般の法律を改正させていただく、今国会に提出をさせていただく予定の法律案の中には、この部分に関しては、これを見直すということは書かれていないという状況でございます。

高橋(千)委員 まず、そこは確認しました。

 ただ、大臣は、二〇一二年の、二十四年の改正のときは修正案の提出者だったわけですよね。厚労委員会の中でこのことを聞かれています。それで、答えています。

 この労働契約申し込みみなし規定というのは、やはり、採用の自由でありますとか、また労働契約の合意原則からいたしましても、ちょっと問題があるのではないかという意見も多くあります。私自身も、こういうものでペナルティーをかけること自体がいいのかどうかというようなことは思っております。

  そういう意味で、この三年の間に、このみなし規定自体がなくなるということも含めて、労政審の方でしっかりと議論をいただければありがたい

こういうことを、大臣は当時、修正案の提出者としておっしゃっています。

 言ったけれども、しかも、この中身は、さっき言った派遣協会の要望書の中にも、三年の間にやめてしまえという要望も入っています。しかし、今おっしゃったように、やめないということでいいんですね。

田村国務大臣 いや、ですから、今回の労働政策審議会の中において、これに関して、やめるというような議論にはならなかったということでありますし、私も、中身を見ていただいたら、読んだとおり、いいのかどうなのかということですから、絶対だめだと言っているわけではないので、そういうことも含めて、いいのかどうなのかということも含めてということを言っております。

 ただ、これから、この規定の中において、これは検討するということにはなっておりますので、今後検討するかどうかというのは、これからまた労働政策審議会の中でいろいろと御議論をいただくべき問題だというふうに思っております。

高橋(千)委員 まずは確認をしました。ちょっと心の中にいろいろな思いがあるような気がいたしましたけれども。

 ただ、この点線の中身を見ますと、今言ったように、許可業種しかだめになった。これは私、質問で何度もやったんです、許可制にしなさいと。そうなったとか、そういうことを言うと、違法の範囲がほとんどなくなっちゃったというのがあるんですよ。労働組合に意見も聞かなかった場合くらいなんですよね。そういう意味では、ちょっと骨抜きにされちゃったということがあると思います。しかし、それはやはり大事なこととして残すということを確認いたしました。

 実際は、このみなし規定、あるいは二十四年の改正をしたことが、日の目を見たというか、生かされたことがあったというのを御存じなのかなということでお話をしたいと思うんです。

 資料の三枚目、これは、昨年一月九日の、マツダ派遣労働者地位確認訴訟の山口地裁の判決であります。

 この原文の中の本当の一部ですけれども、雇いどめされた労働者十五名のうち十三名について黙示の労働契約が成立していると認めた画期的な判決なんですね。これは国会でも取り上げられたんですけれども、いわゆる三カ月のクーリング期間、これは、三カ月プラス一日ということで間を置いて、それをサポート社員と名乗って直接雇用して、同じ社員を切れ目なく働かせていた、こういう事案だったわけです。

 そこで、アンダーラインを引いているところを見ていただけるといいんですけれども、「同改正により」、つまり二十四年の改正によって、「「派遣労働者の保護」がその目的として正面から規定されるに至った経緯を踏まえると、」云々、ちょっと飛ばして、「同法が派遣労働者の保護にも配慮する労働法としての側面を併有していたことは否定できないというべき」である、こういうふうに言っているんです。

 つまり、法案の名前を、保護という言葉を入れました。その趣旨をやはり踏まえたい。これは、派遣法の世界だけでは、違法派遣なんだけれども、だけれども罰則がないんだ、だから公序良俗だ、まさに労働者の保護にならないということであの判決が出たんですね。まさにこれは国会の意思が判決に反映された、この意味はやはり本当に大事だと思うんです。

 そうやって、さっきの派遣切りされた労働者の思いから始まって、こうやって国会で議論してきたことが、我々にとっては随分不満なところがあったけれども、しかし、保護ということが判決にも生かされて、地位を取り戻すということになったわけですね。

 こうした到達を踏まえて、原則は変わらないといいながら、例外では派遣がもう当たり前になるような今度の改悪はやはりすべきではないと私は思いますが、いかがでしょうか。

田村国務大臣 派遣切りでありますとか解雇というような形の中で、派遣のみならず非正規の働き方に対しては、リーマン・ショック後、いろいろな、我々も反省しなければいけないところもあったのも事実であります。

 そういうところも踏まえて、平成二十四年十月には、派遣契約の中途解除をするときには、あらかじめ、これに対して、解除のときの派遣労働者の雇用の安定を図るための措置、これについて取り決めをしておくということを義務づけ、さらには、中途解約の場合には、派遣先が派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置を講じなければならないということで、例えば、これは、派遣切りといいますか中途解約をした場合に、解雇予告手当等々も踏まえて、しっかり派遣元が派遣先に請求をするというようなことも進めてきておるわけでございまして、そういう意味では、派遣労働者を保護する、そういうような制度は着々と進んできておることは、これは間違いないと思います。

 我々も、今回の法律改正、提出をさせていただこうと思っておる内容は、まさに派遣労働者の方々をしっかりとキャリアアップも含めて守る、そういう思いの中でいろいろと法改正をさせてきていただいておるわけでございまして、そのような意味では、今委員がおっしゃられた派遣労働者の保護という意味では、まさにその精神のもとで法改正をさせていただきたい、このように思っておるような次第であります。

高橋(千)委員 さっき私が言ったことを少し訂正しますけれども、ごめんなさい、マツダのものはまだ係争中なので、まだ戻ってはいないのです。ただ、それを本当に生かしてほしいということを改めて言いたいなと思っています。

 やはり、せっかく今大臣が派遣労働者の保護ということを何度も言ってくれた。ただ、派遣先についても一定のことを言っているわけですよね。やはりそこをちゃんと見ないと、派遣先指針というのは、実態で見よう、単なる期間だけではなくて、実態で、常用と同じことをやっているんじゃないかということを見ようということを書いているわけなんですね。

 だから、ここの議論もそうなんですよ。単に期間制限を守っているかいないかということだけではなくて、ランクをつけて、派遣社員を派遣先が評価をして、それで配置がえをしたりとか、そんなことまでしているんです。そこを見て、やはり問題なんじゃないか、これは実質、代替になるよねということを見ているんだ、そういうことがちゃんと拾われるように検討するべきだ。ここは、きょうは時間なので、指摘にしておきたいと思います。

 それで、最後に、紹介だけして終わります。

 さっき、賃金が派遣の方が高いんだよとか、そういうお話をされました。人材派遣協会のアンケートでは、やはり三割が二十六業務で、時給も比較的高いんですよ。約半数が、今の仕事の内容に満足してやりがいを感じていると答えている。だけれども、一方では、賃金に対する不満は満足を上回り、雇用の安定度に対しての不満は五七・四%で、満足の三倍なんです。それで、長く働いても、現時点では正社員登用をなかなか現実として採用してくれないので、今後の派遣法改正の際の派遣期間終了時に不安が非常に大きい、できれば、正社員登用をあっせんしていただけるようお願いしたい、こういう声があったんです。

 だから、緩和せいと言っている派遣業界のアンケートの中でも、やはり正社員にできればなりたいということを言っているんだから、そこをちゃんと見ていただきたいということで、きょうは指摘をして、時間なので、終わります。

二階委員長 これにて高橋君の質疑は終了いたしました。

 次回は、来る十七日午前八時五十五分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十九分散会


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