衆議院

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第9号 平成26年2月17日(月曜日)

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平成二十六年二月十七日(月曜日)

    午前八時五十九分開議

 出席委員

   委員長 二階 俊博君

   理事 上杉 光弘君 理事 金田 勝年君

   理事 塩崎 恭久君 理事 萩生田光一君

   理事 林  幹雄君 理事 森山  裕君

   理事 長妻  昭君 理事 山田  宏君

   理事 石田 祝稔君

      あかま二郎君    秋元  司君

      井上 貴博君    伊藤 達也君

      今村 雅弘君    岩屋  毅君

      うえの賢一郎君    衛藤征士郎君

      越智 隆雄君    大島 理森君

      大野敬太郎君    金子 一義君

      小池百合子君    小林 史明君

      今野 智博君    佐々木 紀君

      佐田玄一郎君    菅原 一秀君

      鈴木 憲和君    瀬戸 隆一君

      関  芳弘君    薗浦健太郎君

      田中 英之君    高橋ひなこ君

      津島  淳君    辻  清人君

      東郷 哲也君    豊田真由子君

      中村 裕之君    西川 公也君

      根本 幸典君    野田  毅君

      藤井比早之君    宮路 和明君

      保岡 興治君    山本 幸三君

      山本 有二君    大串 博志君

      岡田 克也君    篠原  孝君

      玉木雄一郎君    中根 康浩君

      古川 元久君    前原 誠司君

      山井 和則君    笠  浩史君

      上野ひろし君    坂本祐之輔君

      椎木  保君    重徳 和彦君

      杉田 水脈君    園田 博之君

      中田  宏君    中山 成彬君

      西野 弘一君    浜地 雅一君

      桝屋 敬悟君    佐藤 正夫君

      杉本かずみ君    井坂 信彦君

      柿沢 未途君    宮本 岳志君

      青木  愛君    畑  浩治君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣         麻生 太郎君

   文部科学大臣

   国務大臣         下村 博文君

   厚生労働大臣       田村 憲久君

   国土交通大臣       太田 昭宏君

   国務大臣

   (経済再生担当)

   (経済財政政策担当)   甘利  明君

   国務大臣

   (行政改革担当)

   (規制改革担当)     稲田 朋美君

   財務副大臣        古川 禎久君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   石井 裕晶君

   予算委員会専門員     石崎 貴俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月十七日

 辞任         補欠選任

  岩屋  毅君     瀬戸 隆一君

  衛藤征士郎君     今野 智博君

  大島 理森君     高橋ひなこ君

  中山 泰秀君     佐々木 紀君

  西川 公也君     東郷 哲也君

  原田 義昭君     井上 貴博君

  船田  元君     鈴木 憲和君

  山本 有二君     大野敬太郎君

  岡田 克也君     中根 康浩君

  篠原  孝君     山井 和則君

  玉木雄一郎君     笠  浩史君

  古川 元久君     前原 誠司君

  重徳 和彦君     園田 博之君

  杉田 水脈君     上野ひろし君

  西野 弘一君     中田  宏君

  中野 洋昌君     桝屋 敬悟君

  佐藤 正夫君     杉本かずみ君

  柿沢 未途君     井坂 信彦君

  畑  浩治君     青木  愛君

同日

 辞任         補欠選任

  井上 貴博君     原田 義昭君

  大野敬太郎君     山本 有二君

  今野 智博君     衛藤征士郎君

  佐々木 紀君     田中 英之君

  鈴木 憲和君     小林 史明君

  瀬戸 隆一君     中村 裕之君

  高橋ひなこ君     大島 理森君

  東郷 哲也君     根本 幸典君

  中根 康浩君     岡田 克也君

  前原 誠司君     古川 元久君

  山井 和則君     篠原  孝君

  笠  浩史君     玉木雄一郎君

  上野ひろし君     杉田 水脈君

  園田 博之君     椎木  保君

  中田  宏君     西野 弘一君

  桝屋 敬悟君     中野 洋昌君

  杉本かずみ君     佐藤 正夫君

  井坂 信彦君     柿沢 未途君

  青木  愛君     畑  浩治君

同日

 辞任         補欠選任

  小林 史明君     辻  清人君

  田中 英之君     豊田真由子君

  中村 裕之君     岩屋  毅君

  根本 幸典君     西川 公也君

  椎木  保君     重徳 和彦君

同日

 辞任         補欠選任

  辻  清人君     津島  淳君

  豊田真由子君     藤井比早之君

同日

 辞任         補欠選任

  津島  淳君     船田  元君

  藤井比早之君     中山 泰秀君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成二十六年度一般会計予算

 平成二十六年度特別会計予算

 平成二十六年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

二階委員長 これより会議を開きます。

 平成二十六年度一般会計予算、平成二十六年度特別会計予算、平成二十六年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官石井裕晶君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

二階委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

二階委員長 本日は、社会保障と税・教育等についての集中審議を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。菅原一秀君。

菅原委員 おはようございます。自由民主党の菅原一秀でございます。

 本日、今お話ありましたように、予算委員会は社会保障と税を中心とした集中審議ということで、このような質問の機会をいただいたことに感謝を申し上げる次第でございます。

 ソチ・オリンピックでは、十九歳の羽生選手の金メダル、四十一歳の葛西選手の銀メダルと、大変朗報が日本に届きました。

 特に、羽生選手のおっしゃった言葉、仙台で生まれたからこそ今の僕がある、大変大きな感動を呼んだわけであります。さぞかし、十四万人を超える避難生活を強いられている被災地の方々への大きな励みにもなったと思いますし、改めて私どもは、この被災地復興のために全力を挙げるべきである、このことを共有したいと思います。

 さて、先々週、先週と、首都圏を中心に豪雪ともいう大変な大雪が降ったわけでございます。死者まで出したこの状況、こうした状況に対して政府はどのような対策をとっておられるのでしょうか。まず冒頭、このことをお尋ねします。

安倍内閣総理大臣 週末の大雪等によりまして、山梨県、長野県などの一部の地域では観測史上最も深い積雪となり、屋根などの倒壊によって全国で多くの方々が亡くなられ、また、孤立集落や車両の立ち往生なども多数発生いたしました。

 亡くなられた方々の御冥福を心からお祈り申し上げたい、哀悼の意を表する次第でございます。そしてまた、被害に遭われた方々に対して、心からお見舞いを申し上げます。

 政府といたしましては、降雪前の十四日に関係省庁災害警戒会議を開催いたしまして、古屋防災担当大臣から、国民の皆様に対して、不要不急の外出を控えて早期に帰宅すること、そしてまた関係省庁に対して、除雪の体制確保、交通障害への対応に万全を期すことなどを指示し、対応を確認したところであります。

 そして、降雪による被害が発生した地域では、警察や消防が救出救助や交通誘導などの初動対応に当たるとともに、十五日午前からは、山梨県知事等からの要請を受けまして、災害派遣された自衛隊が物資輸送、除雪などの任務に当たっています。

 また、十六日には、関係省庁災害対策会議を開催し、古屋防災担当大臣と横内山梨県知事とのテレビ会議により、山梨県の被害状況や政府への要望などの把握に努めるとともに、関係省庁、機関の対応を確認いたしました。

 本日、亀岡内閣府大臣政務官を団長とする政府調査団を山梨県に派遣いたしまして、現地で情報を収集するとともに、政府としての支援の調整を行う予定であります。

 今後とも、関係地方公共団体と連携を密にいたしまして、関係省庁一体となって、国民の生命財産を守るために、対応に万全を期していきたいと考えております。

菅原委員 ぜひ万全の対策をお願いしたいと思います。

 さて、経済の問題に若干触れておきたいと思います。

 直近の経済動向、御案内のとおり、安倍総理はこの一年二カ月、まさに異次元の行動力ともいうべく、国の内外を精力的に行動してこられました。こうした中でアベノミクス、このアベノミクスの本旨は、経済成長と財政健全化の両立、ここにあると思います。

 先ほど速報が入りましたけれども、十―十二月のGDP成長率、一%プラスということで、前年比〇・三プラスとなったわけでございます。

 ここで、間髪を入れずに、五・五兆円の補正予算の実行、また、設備投資減税や所得拡大促進税制、これも約一兆円ございますが、こうしたことによって、四月の消費税の引き上げによる腰折れを防ぐ、そして年央の新成長戦略につないでいく、このことで安定的な経済をつくっていくことが重要だと思います。

 ここで、資料一をごらんいただきたいと思います。

 アベノミクスによって、この一年の成果、例えば、今申し上げた実質GDP成長率も上昇しました。日経平均株価も六〇%上昇しております。東証の時価総額は二百兆ふえました。こうした中で、キャピタルゲインも家計で四十七兆円ふえ、さらには年金基金で十八兆円増益になる。こうしたことによって、我が国の経済が劇的に再生したということが言えると思います。そして、プライマリーバランスも五・二兆円改善されました。

 しかし、その一方で、ミクロの面、すなわち地域間や業種間における格差、特に中小企業、小規模事業者、商店街、こうした地域にこのアベノミクスの果実が行き渡っていない。このことはこれまでも総理が言及されておりますけれども、まさにこの点が今の目下の課題であります。

 そんな中、この表にもございますように、中小企業の業況判断が、非製造業においては昨年十二月の日銀短観で二十一年ぶりのプラスとなりました。中小企業は、大企業に比べて、いわゆる個人消費の内需、こうしたものに影響を受けやすい、こうした割合が高いということで、この個人消費の拡大こそ肝であります。この個人消費を拡大するためには、家計所得をふやす、いわゆる、ずばり賃上げであります。この賃上げこそが、今、目下の安倍政権の最優先課題の一つだと考えます。

 しかし、過去の状況を見ますと、企業が売り上げが伸びてから実際に基本給に波及するまで、約二年以上かかっております。前回二〇〇二年の景気回復局面においては、三年かかっております。この基本給が上がることこそ景気実感につながる、こう考えておりまして、過去十年以上、春闘の賃上げはずっと一%台でありました。特に、まあ定昇など若干上がったものもありますけれども、五年間はベアが行われておりません。

 そこで、総理にお伺いします。

 先般の内閣府の出した政府経済見通しによりますと、二〇一四年の消費者物価上昇率は三・二%、このうち二%が消費税の引き上げに伴う上昇分であると言われております。したがって、最低でも二%以上、いや三%の賃上げが望まれると思いますが、総理の御所見をお伺いいたします。

安倍内閣総理大臣 ただいま議員が指摘をされましたように、経済の好循環をつくり出すためには、三本の矢の政策によって景気が拡大をし、そして企業が収益を改善しております、この企業収益を速やかに賃金上昇に結びつけていくことが極めて重要であります。

 賃金上昇へ、そしてそれが消費の拡大につながり、そうして景気の好循環をつくり出していくことができるわけでありますが、このために政府としても政労使の会議を開催いたしまして、企業収益の拡大を賃金上昇につなげるとの共通認識を取りまとめまして、景気好循環に向けた確固たる土台を築くことができたと考えております。

 この共通認識を踏まえた経団連の経営労働政策委員会報告、いわゆる経労委報告でありますが、この経労委報告では、業績が好調な企業は、拡大した収益を、設備投資だけでなく、雇用の拡大、賃金の引き上げに振り向けていくことを検討するとの言及がありました。既に、こうした取り組みに呼応して、経済界から賃上げに向けた動きが出ていることは事実であります。

 大企業における労使交渉の妥結額を集計した厚生労働省の調査では、これまで一%台後半の平均賃金の伸び率が確かに続いているわけでありますが、他方で、より広い概念である雇用者報酬の伸びを見ますと、日本経済全体で今年度は一・一%の伸びとなる見込みであるのに対して、来年度は二%の伸びを見込んでおります。

 具体的な賃金の水準は個別労使間の交渉を通じて決定されるものでありますが、ことしの春闘においては、共通認識や経労委報告等も踏まえた真摯な議論が行われておりまして、例年以上の賃金上昇に向けた具体的な動きが広がっていくことを強く期待しているところでございます。

 いずれにいたしましても、今、菅原委員がおっしゃったように、二%、三%、上がっていけば一番いいわけでありますが、そのために、政府としては、この三本の矢の政策をしっかりと前に進めていくことによって景気をもっともっと回復していく、そして大切なことは、やはり中小・小規模事業者においても賃金が上昇していく、そういう経済環境をつくっていくことが重要であろう、このように考えております。

菅原委員 賃上げに関しましては、これまでと違って、アベノミクスによって環境は整いつつある、こう思いますので、ぜひ、あらゆる政策を総動員して、いわば異次元の賃上げをお願いできるように環境を整えていきたい、こう考えております。

 さて、本題の社会保障と税の一体改革についてお尋ねをいたします。

 社会保障の充実とその財源確保のために、二年前、三党合意に始まって、社会保障改革推進基本法の施行、そして社会保障国民会議の議論を経て、昨年秋に社会保障プログラム法が成立を見ました。この経緯に沿って、昨年八月に有識者会議でヒアリングを行って、さまざまな議論がございましたが、昨年十月、総理の英断によって、この四月から、消費税八%、引き上げが決定をいたしました。

 引き上げまであと一カ月半となったわけでございますが、私も、この一月、二月、地元練馬を中心に六百カ所以上の新年会に出てきましたけれども、その中で、消費税の引き上げあるいは一体改革について今まで以上に不断の説明が必要だ、こういうことを痛感いたしたわけでございます。

 話はかわりますが、総理、ここで、今現在、我が国の百歳以上の高齢者の方が何人いらっしゃるか、御存じでありますでしょうか。

安倍内閣総理大臣 日本国内における百歳以上の方は、平成二十五年九月一日現在でありますが、過去最高の五万四千三百九十七人となっております。

菅原委員 そのとおりでありまして、五万四千人を超えております。昔、百歳以上といえばひげの泉重千代さんが有名だったわけでございますが、今や世界一位、二位の百歳以上人口。

 この資料二をごらんいただきたいと思います。十年後には団塊の世代が、今六十五歳前後ですが、約二千百万人、全人口の二割弱となります。まさに、その意味では、世界のどの国も経験したことがないような、世界最速の高齢社会を迎えることになりまして、厚生労働省の試算によりますと、年金、医療、介護等の社会保障給付費は百五十兆円に達します。

 一方、社会の活力をしっかり高めていくためには、若い現役世代へのサポートも極めて重要であります。総理が言われるように、全ての世代が安心感と納得感を得られる、全世代型の社会保障に転換するときであります。

 また、社会保障は、御案内のとおり、給付と負担で成り立っております。

 この資料三をごらんいただきたいと思いますが、既に社会保障給付費、年間で百十兆円に達しております。しかも、既に税収だけでは賄えないことから、公債頼みの大変苦しい状況が続いていることは御案内のとおりでありまして、あわせて、資料四、社会保障と一言に言っても、生活保護、児童手当、年金、健康保険、後期高齢者医療制度、さまざまなこうした制度があるわけでございますけれども、まさに、国や地方の公費を法律によって投入しなければならない、こういうことになっているわけであります。

 こうした状況の中で、平成二十五年度末の国の公債残高は七百五十兆円にも及んでおります。財務省の後年度影響試算によれば、金利が一%上がりますと、平成二十九年度に四・一兆円、利払いだけでふえて、さらに、仮に金利が二%ふえますと、これがまた八・一兆円という膨大な額に及ぶわけであります。

 このように、税収だけでは社会保障の財源を賄えない場合、国債発行に頼らざるを得ない、それで利払いの急増、そして、それがまた財政が悪化、悪化をすると、今度はマーケットの信認が得られなくなって金利が高くなってしまう、こういう悪循環を断ち切っていかなければなりません。

 その意味においては、さまざまな社会保障の効率化、あるいは規制改革も、あるときは進めていかなければいけない。

 しかし、こうした中で、かつまた刮目しなければいけないのは、プライマリーバランスの赤字の対GDP比を二〇一五年度までに半減させて、二〇二〇年度までに黒字化するという中期財政計画、これは我が国の国際公約にもなってございますが、まさに必須の課題であります。

 麻生財務大臣にお尋ねをします。

 いわば、この社会保障の問題は財政の問題、そして財政の問題は社会保障の問題、こう言えると思うんですが、それだからこそ、各世代間の相互理解を進める、そのためにさらなる努力が必要だと思いますが、大臣の御所見をお伺いします。

麻生国務大臣 今、菅原先生御指摘のとおり、やはり日本の財政というのは、GDPの二倍という巨額な公的債務が累積しておりますので、これはもう大変厳しいことになっておることは間違いありませんし、加えて、少子高齢化というものが急激に進んでいる、多分世界の最先端を行っているという形になっておるとも思います。

 そういった意味で、この財政という面からいきますと、持続可能性というものがないと国の信用がなくなる、国債の信用がなくなるということで、今御心配になっておられますように、これは金利の上昇につながっていくということになる、それは結果として、さらに財政が厳しいことになると思います。

 その意味では、昨年行われました社会保障と税の一体改革というものは極めて大きな意味がありまして、そういった中にあえて消費税を三%上げさせていただくということによって、少なくとも安定化をしようという意欲を政府が持っているということをきっちり示すことによって、国債の信用が保たれ、国債は、かつて六%、七%ありましたものが今〇・六%を割るということになっておりますので、常識的には考えられない、借金が四倍にふえたら金利が十分の一になったという話ですから、常識的には考えられないことになっておるんですけれども。

 いずれにいたしましても、そういった状況ではあるとはいえ、私どもとしては、きちっとした財政目標というものを立てておりますので、その財政目標に沿ってきちんと借入金を返済する、公債を返済するということで、新規国債発行というものをことしは一・六兆落とし、また、中期計画によって四兆円の返済のところを五兆二千億円返済するなど、いろいろの努力をさせていただいております。

 いずれにいたしましても、こういったものは、借金を減らすと同時に、経済を成長させてGDP比率を下げていくということをするのが一番肝心なのであって、そういった意味では、経済成長を図りつつ財政再建を図るということをやらねばならぬ。これは、日本という国が今後とも信用を得つつ財政を再建させていく、同時に経済を成長させていくということがこの国の信用にもつながっていくと思って、その方向で事を進めたいと考えております。

菅原委員 ありがとうございます。ぜひその二本柱でお進めをいただきたいと思います。

 さて、このように、消費税を上げての一体改革でございますが、どのような社会保障の充実があるのか、こういう声がございます。

 例えば、医療機関や医師、看護師さん、これを効率的に活用して、いわば住みなれた地域で、自宅で、在宅のサービスを受けたい、これがいわば政府の進める地域包括ケアシステムであります。万が一病気になったときに、自宅で二十四時間、随時必要なときに、適切な医療、介護そして生活支援を受けながら、その方が人間らしくその地域で住み続けられる、この体制こそが必要であります。

 この資料五がその概要でございますけれども、医療そしてまた介護施設、あるいは老人クラブや自治会やボランティア、このように、今まで相互の乗り入れがなかなか難しかった、これをきっちりとコーディネートすることによって、例えば、今まで、病院がベッドがいっぱいだから、だから在宅という発想ではなくて、個々人がさまざまな選択ができる、このような社会保障のサービスが必要だと考えております。

 しかし、そうはいっても、医療機関、総合病院にしても中堅病院にしても開業医にしても、経営は個々人がやらなければいけない。したがって、関係者の合意や理解がなかなか地域によっては得られない、こういうことも実態としてあります。

 しかし、この地域包括ケアシステムは極めて大切な理想だと思います。これを理想論に終わらせないように、そんな中で、今何が壁になっていて、それをどう打開するのか、田村厚生労働大臣にお尋ねをいたします。

田村国務大臣 菅原委員がおっしゃられましたとおり、団塊の世代が七十五歳になる二〇二五年、これに向かって日本の医療や介護の体制を整えていかなきゃならない。病院完結型の医療から地域完結型の医療や介護、こういう流れの中で、病床機能、こういうものをしっかりと、医療提供体制を見直しながら、一方で、地域包括ケアという考え方、中学校区を一つのエリアと考えながら、そこで、医療、介護、予防、住まい、さらには生活支援というものを完結して提供できるようにしようということであります。そのためには、やはり専門職種の方々、地域の住民の方々が共同しながら、問題点、課題をしっかりと見据えて、これを解決していかなきゃならない。

 一つはやはり、その中において、それぞれの医療職、介護職等々が連携をしていくこと、これは大きな課題です。それから、認知症の方々がしっかりと地域で生活できるような、そういう受け皿をつくっていかなければなりません。さらには、生活支援のサービス、高齢者の方々が求めておるものをしっかりと提供していかなきゃならない。さらには、それを担う人材の確保、これが大きな課題であります。

 あわせて、医療提供体制の見直しでは、やはり病床機能というもの、これをしっかりとまず報告をいただく。その上で、地域医療ビジョン、法律の中では構想という名前になっておりますけれども、それを医療関係者の方々と地域自治体がしっかり話し合っていただいてつくる、こういうことが課題であるわけであります。

 そのために、今般は基金九百四億円を用意いたしておりますので、これをしっかりと使って、このような体制が整備できるようにしっかりと努力をしてまいりたい、このように思っております。

菅原委員 ぜひ、その基金によってリカバリーをお願いしたい。そして、看護師不足の問題、あるいは介護職員、東京なんかは離職率が四割もある、こういう問題についても、ぜひ今後取り組みをいただきたいと思います。

 時間があと六分になりました。

 子育て支援についても、安倍政権の肝いりの政策でお進めをいただいております。四年間で四十万人の保育所の整備、これは働く女性にとって大変重要な政策だと思います。しかし、保育士の増員、処遇改善、このための財源不足、こういったものも議論は避けて通れませんし、また、子育て支援の中において同時に考えなきゃいけないのは、子供を授かりたくても授かれない、こういう家庭。

 不妊治療に、国と地方で合わせて助成費を出しておりますけれども、例えば、年収の半分ぐらい投入する、そういう家庭もある中で、保険もきいていない。しかも、いろいろ話を聞いていると、今回、一部助成を制限するような話も出てきております。ここは、まさにふえるニーズに対してきちっと拡充することが必要なんじゃないかと私は思います。このことをあえてここで申し上げさせていただきます。

 また、幼保連携型認定こども園、これも大変大きな期待が寄せられております。これまでは、学校教育あるいは保育型、どっちかだったのが、いわば同じところでそういうサービスが受けられて、途中で失職したり職を離れたり、あるいは再度就職する、こうしたときにも、その子供は同じこども園に通うことができる、これは大変いい政策でありますから、財源も含めてきちっとお進めをいただきたい。

 最後になりますが、難病対策についてお尋ねをします。

 今回、厚生労働省の方から新法が出されました。これまで難病対策というと、いわゆる国の予算は裁量的経費だけでした。しかし、今回、この改革によって、消費税財源を充てて、医療費助成の財源が裁量的経費から義務的経費になる、このことは大変いいことだと思います。今までの五十六疾患、これを三百に拡充いたします。小児特定慢性疾患も、五百十六から六百に対象をふやす。

 しかし、私は思うんですけれども、その患者の数が多い、あるいは声が大きい、そういう団体だけの声が通って、三百という数に限って、例えば本当に症例が少ない、希少だ、しかし研究が進んでいる、そこに助成が出ない、こういうこともなくはないと思います。

 ぜひ要件を明確にして、その要件に合致すれば、三百に限らず、客観的、公正な、公平な制度にしていただきたいと思いますが、安倍総理、このことで御所見をいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今、菅原一秀議員が指摘をされたように、難病及び小児性特定疾病対策については、消費税収を財源として、大幅に予算を拡充いたしました。五百七十億円から一千七十億円に、約倍にしたところでありますが、医療費助成の対象を、大人では五十六疾病から三百に拡大をいたしました。子供は六百へと大幅に拡大することとしております。

 そして、疾病については、客観的かつ公平に選定をするため、今までは裁量的に決めていたわけでありますが、難病等の医療に見識を有する者による委員会の意見を聞いて定めることとしております。また、この医療費助成制度を通じて、症例数が少なく研究が進みにくい疾病について一定数のデータを集め、データベースを構築して、治療研究に役立てることも行うこととしております。

 やはり、果たして難病についてしっかりと治療方法が確立されるかどうか、難病に苦しむ人たちはみんなそのことを大変、ある意味ではそうしたものができることを期待しているわけでありますが、このような仕組みを構築することによって、希少ゆえに光の当たりにくい疾病の患者の方々が医療費助成を受けられるよう、公平で安定的な制度にしていきたいと考えております。

菅原委員 ぜひお願いをしたいと思います。

 これまで議論してまいりましたように、このように、さまざまな制度においては財源が必要であります。そして、消費税がいわば社会保障に全て投入される、こういうことも法律に定められているわけでございます。ただし、先ほど麻生大臣がおっしゃったように、消費税一辺倒にならないように、経済政策と二本の柱でしっかり社会保障を拡充していく、このことが大事だと思います。

 最後に、オリンピックについて触れます。

 二〇二〇年まであと六年であります。いわば久しぶりに日本が一つの事業に国民全体として向いていく、黄金の六年だと思います。東京都は、三兆円の試算、いわゆる経済効果を言っておりますけれども、これは生産誘発額のみであって、例えば海外からの観光客の誘導や、あるいは都市インフラの整備、そしてまた、北海道や九州、各地への観光の誘導、さまざまな付随効果、これを最大化することが大変重要であります。この中で政府が訪日外国人二千万人を目指す、こういうことをうたっているわけでございます。

 あわせて、オリンピックが始まると、わずか十七日間なんです。したがって、これからの六年間、まさにこの黄金の六年間をいかに景気浮揚させていくか。そして同時に、オリンピックが終わった後の日本、子供たちに、次の世代にどのようなグランドデザインを描くのか、この点について、総理、ぜひ、総理の言葉にも、去年、一文字、夢という言葉をおっしゃっております。「レ・ミゼラブル」で有名なフランスの文豪ビクトル・ユーゴーは、夢、これ以外に将来をつくり出すものはない、こういうふうに言っております。

 ぜひ、オリンピックにかける、そしてその先のグランドデザインをお示しいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 かつての一九六四年の東京オリンピック、私はまだ十歳だったんですが、あの東京オリンピックを契機として日本は大きく変わったと思いますね。あのとき、高速道路もできて、そして新幹線もできて、日本がどんどんどんどん成長していく、その勢いがついたのも事実です。世界じゅうから人々がやってきた。子供ながらに、今、日本は世界から注目を浴びているな、再び日本が世界にデビューした、こんな気持ちになったことを覚えているわけであります。

 先般の施政方針演説におきましては、二〇二〇年、これを目標に、東北の復興、そして女性の積極登用、外国人観光客を一千万人から二千万人にする、日本の姿を示したところでありますが、日本に眠るあらゆる可能性を開花させていきたいと思っています。

 また、今回はオリンピックだけではなくてパラリンピックも開催されるわけでありまして、障害者の方にとってバリアのない東京を、そして日本をつくっていくことが大切であろう。

 これから日本の人口は減少していくわけでありますが、障害者の方々にとって、女性や若者、高齢者の皆さんにとっても、バリアのない、そしてチャンスのある日本にしていくことが最も重要ではないか、このように思います。そして、こうした人口構造の変化も克服する、世界の課題を克服する日本の姿を世界に発信していきたい、このように思っております。

菅原委員 ありがとうございました。終わります。

二階委員長 これにて菅原君の質疑は終了いたしました。

 次に、桝屋敬悟君。

桝屋委員 おはようございます。公明党の桝屋敬悟でございます。

 お元気な総理を見て、安心しております。地元の知事選挙でくたくたになった桝屋敬悟が、お元気な総理にお尋ねをしたいと思います。

 同僚の菅原委員が、地域包括ケアシステム、いい話をしてくれました。自民党、公明党の連携でさらに議論を深めたい、このように思います。

 税・社会保障の一体改革、既にその作業が始まっているわけでありまして、その大きな一つのテーマが地域包括ケアシステム、このように考えております。したがいまして、田村大臣を応援する意味もありまして、我が党にも地域包括ケアシステム推進本部をつくりまして、全国にこれを広げていこう、これから十年を見通した作業でありますから、与党の一員として主体的にこの問題に公明党は取り組んでまいりたい、こう思っております。

 総理は、代表質問で、我が党の井上幹事長の代表質問に対して、地域包括ケアシステムの構築を進め、医療や介護が必要な状態となっても、住みなれた地域での暮らしを継続できる社会を目指す、このように答弁をされたわけであります。

 実は、我が党で推進本部を立ち上げて議論をしておりまして、気がついたことが幾つかあります。きょうはその議論をさせていただきたい。

 一つは、地域包括ケアシステム、言葉は随分先行して、現場へ行きますと、地域包括、地域包括とみんな言うんですけれども、我が党の国会議員も含めて、総理、地域包括ケアシステムというイメージがどれだけ国民に理解されているか。

 きょうはせっかくテレビもありますから、総理の言葉で、もう原稿は置いていいですから、地域包括ケアシステムというのはこういうものだと、絶対につくり上げなきゃならないんだという思いも込めて、全国民にアピールをいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 桝屋議員は、山口県庁において、社会福祉、社会保障問題にずっと取り組んでこられた。桝屋先生のさすがに的を射た質問だなと思います。

 この地域包括ケアシステム、厚生省のつくるこういうタイトルというのはわかりにくいものが多いんですが、言ってみれば、人生において、あるいは医療、介護を必要とする時期を迎えても、威厳を持って、自分の住みなれた地域で人生を送っていくことができるように、自分らしく人生を送ることができるような、そういうシステムと言ってもいいんだろう、このように思います。

 このため、どれぐらいの地域かといえば、大体、中学校区の中において、安心して住み続けられる住まいをまず確保していく。そして、医療や介護サービスはもちろんでありますが、健康づくりや介護予防、配食サービスや見守りなど、さまざまな支援を受けることができる。そして、大切なことは、個人のニーズにおいて多様なサービスを組み合わせて提供する仕組みを整備する。

 つまり、年をとってきて医療、介護が必要だから、あなたはこっちに行きなさいということではなくて、やはり自宅か自宅に近い中学校区の中において、さまざまなそうしたサービス、その人のニーズに合ったサービスを受けることができるという仕組みと言ってもいいんだろうと思います。

 また、急病等で入院した場合でも早期に在宅復帰するためのリハビリサービスや、在宅で病状が悪化したときに受け入れてくれる医療機関が身近にあることも大切だろうと思います。

 こうしたさまざまなサービスを一体的に提供できる地域の体制が地域包括ケアシステムであると考えておりまして、こうした目指すべき改革の姿については、引き続き国民の皆様にわかりやすく御説明をしていきたい、このように思います。

桝屋委員 ありがとうございます。

 総理のおっしゃったとおりであります。先ほど話が出ましたように、ことしは、団塊の世代が全員めでたく六十五歳以上、老人福祉法の対象におなりになった。間違いなく十年後は後期高齢期を全員が迎えるという社会、人類史上経験したことのない時代を我が国は突き抜けなければならない。そのために、今総理がおっしゃったような地域をつくる、こういうことだろうと思っております。

 まさに地域は、中学校区と総理はおっしゃったけれども、物すごい差があります。社会インフラがしっかり整った地域もあれば、何もない地域もあるわけでありまして、それぞれの地域の実情に応じた仕組みといいましょうかシステムをこれからつくらなきゃいかぬ。

 我々公明党は、まさに三千名の議員がおりますから、地方議員の主戦場がここだ、このように腹を決めてこの世界に取り組んでまいりたいと思っております。

 そこで、実は、現場へ行って、我々も移動推進本部なんかをやっておりますが、異口同音にどこへ行っても出る言葉が、総理、あります。それは、さっきも菅原委員もおっしゃったけれども、人の確保であります。医療、介護、福祉のマンパワー、これをどうするか。将来へ向けてのことももちろんありますけれども、今もう大変でありまして、本当に、どれほどハードを整備し、今総理がおっしゃったシステムをつくろうとしても、それを支える人がいなければ、これはどうにもならないわけであります。

 現場へ行きますと、総理、どういう声があるかといいますと、例えば、もう介護の職員は奪い合いであります。本当に人が得がたい。一生懸命人を育てても、新たな事業所が、総理の地元の山口県ではもうコンビニよりもデイサービスの方が多くなっていますから、そういう新しい事業所に人が持っていかれる。今までの育ててきた施設は大変な思いをして労務管理をしなきゃならぬ。あるいは、やっと人を確保できたと思ったら、その方がおやめになる、続かない、こんな問題。養成施設はもう既に半分以下という状況があるだろうと思っております。

 医療も、中国地方では、四階建ての病院で一番上は看護師が確保できないために休止状態になっている、今既にそういう状況になっている。

 そういう状況でありますから、厚生労働大臣に伺いたいと思います。

 二〇二五年に向けて、先ほどもお話がありましたが、医療と介護と福祉、一体どれだけ人材、マンパワーが必要なのか。現在何人いらっしゃって、これから二〇二五年にはどれぐらい必要なのか。もし政府がそういう数字をお持ちであれば、お示しをいただきたいと思います。

田村国務大臣 地域包括ケアシステム、これは何としても体制を全国で整えていかなきゃならぬわけでありますが、一方で、都市部と地方では、同じ中学校区といってもかなり状況が違う。そういう大きな課題がたくさんある中において、やはりマンパワー、これが充足しないとなかなか十分なサービスを提供できないわけであります。

 今委員おっしゃられました医師に関して言いますと、二〇一二年で大体二十九万人おられますけれども、二〇二五年に大体三十二万人から三十三万人ぐらい必要であろう。これはもう御承知のとおり、平成二十年から医学部の定員枠を拡充してまいりまして、一千四百四十四名ぐらい定員枠がふえてまいりました。地域枠というのもつくりまして、約五百名という形でございます。大体これは、二〇二五年、予想するところを何とか充足できるのではないか、このように思っております。

 看護が、今百四十五万人なんですけれども、やはり二〇二五年、二百万人必要になってくる。これも大きな課題でございまして、若くて看護師になられても離職が多いわけでございます。ですから、勤務環境をどのようにしていくか、これは大きな課題でありますし、今、ナースセンターというのをつくりまして、都道府県でここに登録制を、今般の法律改正でナースの方々に登録していただく、こういう形の中でマッチングを進めていこうと考えております。

 介護が、今百四十九万人ぐらい介護福祉士はおられるんですが、百万人ぐらい足らないんですよね、二〇二五年に向けて。ここをどのように充足していくか。

 福祉人材センターでありますとかハローワーク、これを通じてマッチングをやっておりますけれども、やはりイメージアップを図っていかなきゃなりません。その中で、若い学生の方々が、若いうちから介護の現場をいろいろと見ていただく中において、そういう仕事をしていきたい、こういうふうに思っていただく必要はあろうと思います。

 それから、やはりキャリアアップ、これをする仕組みをつくっていかなきゃならない。そのような意味でも、やはり、働いていれば処遇が改善していくんだ、そのような仕組みをしっかりとつくっていくこと。

 さらには、全体としての底上げ、処遇改善、これも重要でございます。勤務のいろいろな改善も含めまして、とにかく働きやすい職場をつくっていく中において、若い方々を中心に介護の現場で頑張っていただく。

 こういうことをいろいろ考える中において、都道府県において、それぞれの需給見通しというものを出していただこうということをいたしております。これを出していただく中において、政府もしっかりと全力を挙げて介護労働者の方々の充足に向けて進めてまいりたい、このように思っております。

桝屋委員 ありがとうございます。

 医療、看護、この分野は何とか、これも大変でありますが、見えている。潜在のマンパワーもある。

 問題は介護でありまして、今大臣から、百万、場合によっては今の一・五倍からさらに二倍ぐらいの人材が必要という状況でありまして、総理がアベノミクスで経済を元気にすればするほど、この分野は人がいなくなるという状況もあるわけであります。

 これは本当に、大臣は先ほど、処遇改善も大事だと最後につけ足しのように言われたけれども、あれが一番です。何はともかく処遇改善が一番だろうと思いますが、たとえ処遇を改善したとしても、これも大臣がおっしゃった、イメージをアップするということ。総理、やはり現場は、とうとい仕事だ、あるいは働きがいのある仕事だ、夢のある仕事だ、こういうふうに、介護あるいは医療、福祉の現場はそう思われていない、これは本当に残念であります。

 実は、これは大変深刻な問題でありまして、養成施設に人が行かない。それは、進学指導の先生が、介護だけはやめた方がいい、仕事は大変だし、夢もありませんよ、将来性もない、処遇も悪い、結婚もできなくなるぞというような社会的な価値観が既に定着をしている。ここを変えなければ、いかに処遇改善したとしても、私は、この事態は変わらないのではないか。

 総理は、女性の活躍ということをおっしゃっている。私も大賛成であります、我が党もずっと言ってきたことでありますから。同じレベルで、私は、医療、介護、福祉のマンパワーを確保する、この人材が大事だということを国家戦略として取り組む必要があるのではないか。でなければ、二〇二五年、どれほど法律を変え、システムをつくり、予算を確保したとしても、人がいない、こうした状況が生まれてくるのではないかという懸念を持っております。

 どうぞ国家戦略として、厚生労働大臣は一生懸命でありますけれども、政府を挙げて、総理の言葉で私はこういうことも訴えていただきたいと思うわけでありますが、総理の御所見を伺います。

安倍内閣総理大臣 まさに桝屋議員が指摘をされたように、今後、介護を必要とする人たちがふえていくわけでありまして、そのときにまだ確保されていないのが介護職なんだろう、こう思うわけであります。

 平成二十一年度の補正予算においても待遇改善のための予算をつけましたが、同時に、これからも待遇改善を行っていく、あるいは資格を取るための支援も行っていく。だんだんこの介護職について待遇を改善し、さらにキャリアアップをしていく、その支援もしていく。

 と同時に、意識改革を行うことが必要でありまして、先ほど大臣の方から御説明をさせていただきましたが、そういう現場を若いときから、学生のときからしっかりと見てもらう、経験をしてもらう。大切な仕事なんだということを理解していただくことも大切でしょうし、それと同時に、世の中全体の見方を変えていく。

 大分、今おっしゃったように、大変で、きつくて、報酬も少なくて、将来もなかなかキャリアアップも難しいという意識ができてしまった。これを変えていくことが大切でありまして、処遇改善をしていく、キャリアアップをしていく、そして同時に、極めて重要な価値のある仕事であるということと、あと、職場の環境も変えていく必要があるんだろう、このように思っております。

 あとまた、介護機材をさらにもっと改良していく、進歩を図っていくことによって、腰が痛くなったりすることもありますが、それを補助するための介護機材の改良等についても力を入れていきたい、このように考えております。

桝屋委員 かつて、ホームヘルパーの養成研修、一級、二級、三級とかやりましたけれども、やはり社会全体で介護を考える。その分野で働くということも含めて、国民運動といいましょうか、私は、ケアリングソサエティーという言葉もありますけれども、介護社会をどうつくり上げるかということは、ぜひ総理が先頭に立って旗を振っていただきたい、お願いを申し上げたいと思います。

 具体的な提案をしたいと思います。

 そんな中で、あと百万必要だという介護の現場でありますから、例えば、鍼灸マッサージ師という法律があります。あはきと言われておりますが、介護の現場では、マッサージさん方はちゃんとした働く位置というものが与えられていますが、鍼灸、はり、きゅうの方々は、私も現場で見てまいりましたけれども、物すごく頑張っていただいている、だけれども、例の機能訓練指導員という位置づけがないわけでありまして、非常に頑張ってはおりますが、寂しい思いをしております。

 百万も足らないんだったら、鍼灸師も同じように勉強しているんだから、これを活用しない手はないというふうに私は考えるのでありますが、大臣、そろそろいい知恵を出していただいて、デイサービスもヘルパーも、これから要支援は個別給付から市町村の事業にする、こういう状況でありますから、しっかり位置づけを与える、活用を考えるというふうに考えていただきたいわけでありますが、いかがでしょうか。

田村国務大臣 先ほど来出ております地域包括ケアシステムは、医療、介護、住まい、それから予防という部分もあるわけであります、もちろん生活支援もありますけれども。

 医療や介護の、これは鍼灸師の方々も含めて、専門職の方々が連携しながら地域で高齢者の方々をしっかり支えていただくということから考えれば、介護予防という部分では非常に鍼灸師の方々に対して期待される部分もあるわけであります。実際、川崎では、そのような介護予防の取り組みを鍼灸師の方々がされておられるというような、そんな事例もあるわけでございます。

 厚生労働省といたしましても、鍼灸師の方々が持っておられる専門性、その専門性というものがどのような形で予防というものに対して役割を担っていただけるのか、こんなことをよく勘案しながらいろいろと議論をさせていただきたい、このように思っております。

桝屋委員 ありがとうございます。ぜひ議論していただきたい。

 百万人足らないと言うのであれば、九千人、九千人の固まりがあるわけでありますから、しかも、勉強してきている、現場も経験されている、そういう人を活用しない手はない、こう思うわけでありまして、言っていることとやっていることが違うということでは、本当に、医療、介護、福祉の人材を確保しようというこの旗があるのかどうかと思われるわけであります。

 もう一点、これは提案だけであります、提案といいますか、私ども公明党の思いであります。

 この地域包括ケアシステムをつくる最大のポイントは、地域ケア会議、関係者が、医療職、介護職、福祉職、こうしたメンバーが一堂に会して、ともかく、個別のケースあるいは地域戦略も含めて、まちづくりも含めてみんなで相談しようという、この地域ケア会議の役割が極めて大事でありますが、私も驚いたのでありますが、現場で聞きますと、総理、共通言語がないんだそうです。共通言語が必要ではないか。

 例えば、医療職から見ると、福祉の現場で語っている言葉が理解できない。例えば社会福祉協議会、現場では社協と言っております。地区社協とかという言い方をします。これが医療職のお医者さんには、地区社協とは何だと。わからぬわけであります。あるいは、デイケアとデイサービスの違いがわかっている国民はどれぐらいいるか。

 そういうことを含めますと、さまざまな言葉の違いが最初にあったというようなことも伺いまして、こんな工夫もしながら、やはり地域包括ケアの最大のポイントは、医療職、介護職、そして福祉職、地域という舞台、地域というものを舞台に共通に情報共有できる、この環境づくりが極めて大事だろう。現場では民間でさまざまな取り組みもされておりますが、そんなこともお考えいただきたい。

 我々も、きょうは最初の発言でありますが、八月ぐらいに向けて集中的に取り組みを進めて、政府に対して御提案を申し上げたい、こう思っておりますので、どうぞよろしく。

 残された時間、診療報酬改定について伺いたいと思います。もう時間もありませんから全部は言いませんが、地域包括ケアシステムの構築に絡めての話だけにします。

 この委員会で、例の有床診療所の火災の事故で総理とも議論させていただきました。今回、有床診療所、地域包括ケアを担うという意味合いで、再評価、改めて評価されるというふうに私は理解しております。

 同時に、前回の診療報酬改定で、有床診療所に管理栄養士が要ると。包括性になってしまったものですから、大変現場で人の確保に苦しんだという事態もございまして、こうしたものがどう改正される見通しなのか、大臣の方から御説明をいただきたいと思います。

田村国務大臣 全体、今まで、どちらかというと七対一看護というような方向が進んできたわけであります。

 ただ、急性期が余りにもふえまして、当初予想しているよりもかなりふえました。今三十六万床ぐらいあるわけでございますが、実際、求められているのは急性期ばかりではございませんでして、地域包括ケア病棟という今回概念を出してきたわけでございますけれども、そのような、言うなれば急性期からの受け皿というような病床をふやしていこうということでございまして、そちらの方にある程度の重きを置きながら、一方で在宅医療というものにも力を入れていかなきゃならない。

 そして、さらには、地域包括ケアという考え方からしますと、主治医機能というものもここに取り入れていくということが大変重要でございますので、そのような形で急性期からの受け皿となる、そのような病床、さらには、地域医療という意味からしますと、在宅医療も含めて地域での医療を提供できるような、例えば、慢性期のいろいろな病気を抱えておられる、そういう患者の方々、高齢者の方々に対して健康管理でありますとか服薬管理というようなものを含めてやれるようなところに重きを置くような定数配分等々を今般させていただいておるということでございます。

桝屋委員 大臣、重ねてもう一点御質問ですが、有床診療所の評価について、今回、今大臣がおっしゃったような方向からどういう評価になっているのか、具体的に。

 それから、有床診療所が、先ほど申し上げた、前回の報酬改定で包括制になったものですから、有床の診療所に管理栄養士を置かなきゃいかぬというのは、もうとてもとても人の確保ができない、こういう状況があるわけで、そのあたりは是正されるのかどうか、ここをお答えいただきたいと思います。

田村国務大臣 有床診療所は、まさに、地域の医療の資源として大変重要な役割を果たしていただいておるというふうに思います。

 今般、入院基本料が有床診はほかのところと比べて低いものでありますから、非常に運営されるのが困難であるという御要望をたくさんいただきました。

 例えば、今ほど来申し上げました、急性期で入院されておられる、そこからの退院した後の受け皿でありますとか、それから在宅医療の拠点、さらには、介護サービスを提供していただいたりでありますとか、みとり、そして産科ですとか小児科、こういうような幾つかの要件を複数クリアしていただければ入院基本料を加算するというような形で、アップするというような形で今般取り組ませていただきますと同時に、看護職の方々の配置をふやしていただいたりですとか、看護補助者をふやしていただいたら、加算をする。

 そしてさらに、栄養管理。これが、管理栄養士がいないとそもそも入院基本料がもらえないというような義務化をさせていただくということであったわけでありますけれども、これは、実態を見ますと、なかなか管理栄養士が確保できないということもございますので、しっかりやったところには栄養管理加算というような形で、義務化ではありません、加算をするというような形の概念に戻させていただきまして、しっかり対応いただけるようにということでございます。

 いずれにいたしましても、地域包括ケアシステムの中において有床診の役割は大変大きなものがあるというふうに認識をいたしておりますので、そのような観点から、これからも取り組ませていただきたいと思っております。

桝屋委員 ありがとうございます。

 前回、この委員会で、総理から、有床診療所の火災事故を含めて、地域医療の中核を担う施設として非常に重要な施設だ、こう御評価いただいたこと、これは全国の有床診療所の皆さん方は本当に喜んでおりまして、今大臣がおっしゃったことも含めて、働く、地域で機能している有床診療所についてはきちっと評価をする、この方向性が大事だろうと思っております。

 最後になりますが、総理、大臣はさらっとあのようにおっしゃって、これから急性期の病床も整理されるようにさらっと言われるわけでありますが、えらいことであります。これが本当にできるかどうか。先ほど菅原委員もおっしゃったけれども、我が国の医療は民間セクターでありますから、民間の医療機関が医業経営の中でやはり収益を上げなきゃならぬという環境の中で、果たして本当に医療ビジョン等で改革ができるのか。

 これは、二〇二五年ではありません。消費税引き上げのこの期間、この二、三年、平成三十年から新たな医療計画が始まるわけでありますから、そこまでにどこまで動かせるか。これも、総理、やはり総理の大きなリーダーシップが必要だろうと私は思っておりまして、最後に、総理の医療提供体制の改革についての御決意を伺って、終わりたいと思います。

安倍内閣総理大臣 どなたも自分の住んでおられる地域で安心して医療を受けられる、そういう体制をつくっていく、そのためのさまざまな改革を行っていく必要がある、このように思います。

 救急医療などの急性期の医療はもちろんでありますが、早期の在宅復帰を促すリハビリや在宅医療、介護サービス等、患者の方々の状態に応じた医療を適切に受けられる体制を地域において整備していく必要があります。本年四月からの診療報酬改定でも、こうした考え方に沿って見直しを行うこととしております。また、消費税財源を活用した新たな財政支援制度を設けることとしておりまして、関連法案を今国会に提出したところでございます。

 こうした新たな制度も活用しながら、総合的な医療提供体制の改革にしっかりと取り組んでいくことによって、それぞれの皆さんが住んでおられる地域において安心して住めるような、そういう医療を提供していきたい、このように考えております。

桝屋委員 ありがとうございました。

 これで終わりますが、総理、医療改革はさすがに難事業であります。どうぞ、我々与党として全力でお支えしたいと思いますが、お力をいただきますようによろしくお願いします。

 最後にもう一点だけ。総理の話の中で、住みなれた地域と。地域包括ケアシステムを考えたときに、住みなれた地域ということもありますが、住まい方も変えなきゃならぬ、場合によっては、住みなれた地域よりも新たな地域を創造するという作業も必要だなと思っておりまして、その辺のところは、次回、総理とまた議論したいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

二階委員長 これにて桝屋君の質疑は終了いたしました。

 次に、笠浩史君。

笠委員 民主党の笠浩史でございます。

 まず、質問に入ります前に、先週末あるいは先々週末、大変な記録的な大雪で多くの被害が出ました。亡くなられた皆様方に心からお悔やみを申し上げると同時に、また、被害に遭われた皆様方にお見舞いを申し上げたいと思います。

 我が党としても、豪雪雪害対策室を設けまして、また具体的な要請もさせていただきたいと思いますので、政府としては万全の対策を講じていただきたいと思います。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 きょうは、まず、私は、この国会で、地方教育行政のあり方、教育委員会制度の抜本的な見直しを含めて、地教行法の改正というのは恐らく最重要課題の一つになろうかというふうに思っております。

 安倍総理にまず確認をさせていただきたいんですが、総理自身、教育再生実行会議、ここでも議論をされ、先般、中教審で答申も出されましたけれども、現在の教育行政のあり方、特に地方教育行政のあり方について、どういう問題意識で、今回、この大きな改革をされようとしているのか、その点をお伺いいたしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 現在の教育行政においては、これは七年前の教育基本法改正のときにも大きな議論になったわけでありますが、さまざまな課題、問題が教育の現場においては発生をするわけでございます。こうした対応、対策について、誰が最終的に責任を持っていくかという大きな課題があるわけでございます。いじめの問題につきましても、こうした問題については、早く解決していく、対処しなければならないわけでございます。

 そうした対処していくための体制ができているかどうかという観点からいって、今は、教育委員会という組織において、ここにおいてさまざまな議論をしていくわけでございますが、教育委員会があって、そして教育長がいて、そして首長がいるわけでありまして、それぞれがそれぞれの責任を持っているわけでございます。もちろん、現場もあるわけであります。

 そういう中において、ああした問題が起こったときにスムーズに対応できるようにしていくために、体制をもう一度見直ししていく必要があるんだろうという観点から議論を行っていただいたところでございます。

 先般、中教審において、改革案としてA案とB案をまとめていただき、そして、現在、与党においてさらに協議を進めていただいているところでございます。

笠委員 今総理がおっしゃったように、これはちょうど二〇〇六年、第一次安倍政権のときに、教育基本法の改正を約六十年ぶりに行ったわけでございます。私どももそのときに、教育行政のあり方をかなり議論させていただき、我々の日本国教育基本法案ということで、対案をまとめさせていただきました。

 今、教育行政を考えるときに、一つには、国、文部科学省の権限、さらには都道府県、そして市町村、学校現場というところの役割分担というものをどのようにしていくのか。あるいは、地方教育行政においては、当然ながら都道府県が県費負担ということで人事権を、政令市は除きますけれども、持っているわけです。しかしながら、市町村立の学校についての設置権というものは市町村の教育委員会にあり、けれども、人事権については県にあるという、こういったところの曖昧さや、あるいは、首長さんが学校の予算は権限を持っているわけですけれども、設置権は教育委員会にある、こういったところをしっかりと明確にしていかなければ、何か重大事案が起こったときに対応できないんじゃないかという、その問題意識を共有しながら今回の改革を進めていかないといけないというふうに考えております。

 我々は、実は日本国教育基本法案の中で、少なくとも地方教育行政においては、選挙によって選ばれる首長さんに最終的な責任を持たせると。そして、そのときに問題になってくるのは、当然ながら、政治的な中立性、あるいは継続性や安定性など、どのようにそこを担保していくのかということで、今の教育委員会を廃止して、そして教育監査委員会というものを設けて、この首長さんの行う教育行政をしっかりとチェックをしていこう、あるいは、時には、監査をしたことを受けて、またそこに勧告も行っていく。

 そして、もう一つ大事なことは、学校の現場、やはり地域の声というものをいかに反映させるのかということも、これは教育行政を考える上で非常に重要でございまして、今、コミュニティースクールというものを、これは自民党政権時代に地教行法の改正によってスタートをし、我々も政権を担ったときにこれを進めてまいりました。

 これをさらに発展させて、学校理事会というものを設けて、やはり、それぞれの公立の小中学校あるいは高等学校が創意工夫をもって、みずからの地域の力で、地域の方々にも参画をしていただいて、しっかりとした、学校をよりよいものにしていこうというような考え方で、既に新しい地教行法の対案も昨年の通常国会に提出をさせていただきました。

 今回の中教審の、今おっしゃったA案、B案というんですか、改革案とその別案というんですか、そのA案は、少なくとも首長に権限を一元化していくということでは、私たち、全く同じ考えなんです。

 今、与党の中で協議が行われているということですけれども、このA案について、首長に権限を一元化していくということについての総理の率直な評価をお聞かせいただければと思います。

安倍内閣総理大臣 御指摘の、昨年十二月の中教審の答申で示された改革案、いわゆるA案でございますが、地域の民意を代表する首長の意向を教育行政に反映させることに重きを置いた案であるというふうに承知をしておりますが、しかし一方、この案には、首長の影響力が強くなり過ぎるおそれがあるとの立場の意見もあったことから、答申においては、あわせてB案も示されたということでございます。

 ここで、首長に権限を持たせることのプラスとマイナスがあります。そして、果たして教育行政における政治的中立とは何かということも議論を深めていく必要があるだろう、このように思います。

 おっしゃるように、教育の安定性、そして教育行政の中立性も大切であり、そして責任の所在も明確にする、その中における、選挙で選ばれた首長の権限をどうするかということについてずっと議論をしてきたわけでございますが、その中でさまざまな意見があったものでありますから、事実上首長に責任を持たせるという形を明確にするA案と、先ほど申し上げましたような観点からB案というものがつくられたわけでありまして、最終的に、今申し上げましたような論点について議論を深め、与党において最終的な結論を得ていきたい、このように思っております。

笠委員 安倍総理、あるいは先般予算委員会で下村大臣が、A案を中心に与党の協議を進めてほしいということを文科大臣はおっしゃいました。恐らく気持ちの中では、首長に権限を一元化した上で、それで今御指摘のあったような政治的中立性だとかあるいは継続性、安定性などを、どういうふうにそこについて考えていくのかという議論がやはり必要になってくる。私は、その方向でこの議論を進めていくべきだと思っています。

 実は、先週の金曜日に、私どもの考え方と、そして、今、日本維新の会の皆さん方も、やはり首長に権限を一元化していくという案が、これは両案それぞれ継続案件になっているんですね。

 ですから、今度政府から案が出てきたら、もちろん今、与党内での協議を経てということになりますけれども、大いにこれは国会で議論をしながらよりよい制度をやはりつくっていく必要があると思いますし、先ほどのような問題点をどういうふうに考えていくのかということを、さまざま、いろいろな有識者の皆さんや、あるいは現場の方々からも意見を伺いながら、本当にこの十分な質疑というものを行っていきたいというふうに考えておりますけれども、やはり、総理、そういう意味では、中教審のA案に沿った形で出てくれば、そういう土俵をつくっていくことはできるんです。

 私は、常に、教育というのは、党と党の対立ではなくて、やはり人づくりというものを第一に考えていくときに、それはお互いいろいろな知恵を出し合って、そして提案を具体的にし合いながらこれから、これは五十八年ぶりですよね、教育委員会制度ができて六十六年、そして公選制がなくなって現在の地教行法ができて五十八年ぶりの大きな改革になるわけですから、そういった与野党のまた議論、政府と国会の議論というものもしっかり行っていくべきだというふうに考えておりますけれども、その点について、総理の思いを伺わせていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 教育政策の専門家である笠委員から建設的な御議論をいただいたというふうに思っております。

 先ほど申し上げましたような観点から、責任の所在の明確化、それぞれが今責任を分担しているわけでございますが、責任を分担していることによって行政上の最終的な責任の明確化ができていないというこの現状を変えていく必要、これは共通認識なんだろうと思います。

 その中において、教育行政の政治的中立を確保する、安定性を求めるという観点も加味しながら今与党において議論をしておりますが、もちろん、議論はそれで終わりではなくて、私たちとしては、ベストな案をまとめて、法案として国会に提出をしたいと考えておりますが、その上において、笠委員ともさらに建設的な議論を深めていきたい。

 これはまさに、そういう意味においては、教育行政においては、与野党の違いということではなくて、子供たちのためにどういう教育行政を行う体制をつくっていくかということについて議論を行っていきたい、このように考えております。

笠委員 この問題でもう一点、今度は下村大臣に一つだけ具体的なことをお伺いしたいんです。

 今、いわゆる自公協議で方向性がまとまったということが報じられております。ちょっと私もイメージが湧かないんですけれども、代表教育委員というんですか、新教育長というのか、現在の教育委員長とそして教育長を一緒にしていく。そして、これはもちろん首長が任命することになるわけですが、首長と教育委員などから成る総合教育施策会議というんですか、そういう会議体が大綱的な方針を決定する。

 もちろん、現在より首長の権限というものは強まっていくことにはなるのかなというふうに思いますけれども、ただ、大事なことは、執行機関は依然として教育委員会であるということを報じられているわけですけれども、それではやはり私は現行とそう変わらないと思うんです。

 例えば、新しい新教育長、この方は首長が任命するわけですけれども、それと、残りの教育委員の方々の意見が対立したときにどちらが優先するのか。それはやはり執行権を持つ方だと思うんですね。こういったことがなければいいですけれども、必ず、やはり重大事案のときほどそういったことが起こり得る可能性がある。

 私はやはり、こういったことでは、また曖昧なまま、いずれその点を見直していかなければならないというふうになると思うんですけれども、今巷間伝えられている与党内の協議でまとまったという案、大臣もそれを了承したということが伝えられておりますけれども、その点について、大臣の評価を伺いたいと思います。

下村国務大臣 御指摘の新教育委員会制度ですが、これはまだ与党間の中でまとまっている話ではございません。自民党の中で議論をまだしている最中で、今週中に自民党内がまとまれば、与党、自民党、公明党の実務者協議でこれから議論するということでございますので、まだ途中の段階でございますので、私の方から詳細あるいは結論的なことについてまだ言える立場ではありません。

 その上で、今までの議論のように、やはり今の教育委員会制度がいいということは我々も思っていないということの中で教育再生実行会議で提言され、それを受けて、中教審で答申を受けて、そしてA案が、今御指摘のような、首長により権限を持たせるという案であったわけですが、それは笠委員が指摘のように、やはり政治的中立性とか継続性とか安定性という部分で、A案では担保できないのではないかということで、B案も出てきたわけでございます。

 これは、閣法ですから、政府だけで出そうと思ったら国会へ出せるわけですが、御指摘のように、これは戦後体制の教育における抜本改革案でございますので、丁寧に、与党の中でもいろいろな議論がありますので、閣法として出す前に与党の中で議論していただきたいということで、今そのような経過でございます。

 ですから、当然、今後、与党案で出てきたものをたたき台として閣法をつくって国会に提出をしたいと思っておりますが、ぜひ、民主党も日本維新の会も既にこの教育委員会制度改革案について出されていますから、広く国会の中で議論をしていただく中で、幅広い意見が、しかし、改革に向けたコンセプトの中で法案として出てくることを私の方からもお願いをしていきたいと思います。

 その上で、与党の方の結論がまだ出ていないものについて、渡海小委員長から方向性について提案があり、その方向性については大方の合意ができたということで、詳細についてはまだ結論が出ておりません。

 方向性は、御指摘のように、なかなか、ちょっとテレビをごらんになっている方にはわかりにくいんですが、首長のもとに今まで教育委員会があったわけですが、その教育委員会の役割を分けて、一つは、首長のもとに総合教育施策会議というのを設けて、この総合教育施策会議は首長が主宰者として、その地方自治体における教育に関する大綱的な方針を決める。先ほどの政治的中立性とかそういう部分については教育委員会に残して、教育委員会も、今まで教育長と教育委員長が五人の中にそれぞれいたわけですが、これは一本化して新教育長となる。

 ですから、総合教育施策会議を法律上どう位置づけるか、それから、新しい教育委員会を法律上どう位置づけるかによって、首長がより責任を持てる体制になるかどうかということが決まってくる。今後の自民党内と、それから与党内の議論の中で明確になってくることでございます。

笠委員 この問題はまた改めてしっかり文部科学委員会の中でも、また三月以降、政府の案が出たら議論させていただきたいと思います。

 次に、平成二十六年度の文教関係予算で、私、どうしても一点指摘をしなければならない点がございます。

 それは少人数教育です。下村大臣も、少人数学級というものを進めていこうということでは、これは与党の立場、野党の立場、いずれの立場のときも積極的に発言をされてまいりました。これが今、例えば習熟度別のティーチングであったりということで、少人数教育ということで、平成二十六年度から七カ年間で、大臣自身が、教師力・学校力向上七カ年戦略ということをつくって、これを着実に進めていくんだということを委員会等々でも発言をされてきたわけでございます。

 しかし、これは我々が政権を担当していたときに、平成二十二年度には四千二百人、二十三年度には二千三百人、そして二十四年度には三千八百人の教職員の改善を行いました。そして、二十三年度に少人数学級、これは法律のもとで、小学校一年生、三十五人以下学級を実現し、二年目、小学校二年生については、二十四年度に加配措置によって小学校二年まで持っていった。しかし、残念ながら、これは、政権が再び自民党にかわって、この流れが断ち切られてしまったんですね。

 そして、この二十六年度の予算については、もうわずか七百三人の定数改善にとどまって、これは自然減以外に加えて、統合、合理化減で七百十三人削減されておりますので、定数改善は実は十人の純減になっているんですね。

 少人数学級、これは二十六年度、ほとんどゼロ回答ですよね。その点については、この七カ年計画というものをもう一度見直していくのか、これをどうしていくのか、それを大臣にお伺いしたいと思います。

下村国務大臣 これは民主党政権と同じように、我々も、少人数学級を進めていくことは非常に重要なことだと思います。そのために教師力・学校力向上七カ年戦略を打ち立てたわけでございます。

 これは、世界トップレベルの学力、規範意識を育むきめ細やかな指導体制を整備する観点から、今後七年間で計画的に三万三千五百人の定数改善を図ることを目的としたものでございまして、平成二十六年度の概算要求において、その初年度分として三千八百人の定数改善の要求を行いました。

 残念ながら、この要求は計上されませんでしたが、小学校英語の教科化への対応、いじめ、道徳教育への対応、それから特別支援教育の充実など、個別の教育課程への対応に必要な定数改善増を計上しております。

 文科省としては、今後も、この教師力・学校力向上七カ年戦略の考え方を踏まえ、教職員定数の改善を初めとする各施策を総合的に進めていく必要があると考えておりまして、平成二十七年度の予算要求に向けて検討していきたいと考えております。

笠委員 一点、今大臣は、二十五年度の予算でも難しかったので、この二十六年度からは七カ年計画で、三千八百人の定数改善とおっしゃいましたけれども、そのうち、少人数教育が二千百人要求されていたはずなんですね、これは七分の一。

 しかし、それが今回ゼロだったということでございますので、これは本当に、答弁は求めませんけれども、しっかりやっていただかないと、現場の抱えるさまざまな課題にやはり対応していけません。その必要性は大臣もよく御存じだと思いますので、その点はまた改めて議論をさせていただきたいと思います。

 それで、時間がなくなってまいりましたので、財務大臣に一点、最後にお伺いをしたいというふうに思います。

 現在、ソチ・オリンピックで、本当に日本選手団も、羽生選手、あるいはこの週末も葛西選手がメダルをとるということで、大きな勇気と喜びを与えてくれております。

 これから、パラリンピックも三月の七日から始まるわけでございまして、二十人の日本選手団がもう既に出発をし、あるいはトレーニングをしているということですが、私は、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピック大会を成功させるためには、特にこのパラリンピックに対する力を注いでいくということ、そのことによって、日本の共生社会に対する力強いメッセージを国際社会に発信していくことが大事だと思っています。

 ただ、残念ながら、今、パラリンピック専用のトレーニングセンターがないんですね。これは、実はパラリンピックの委員会の皆さん方からも、今、超党派で、スポーツ庁設置に向けた取り組みの中でもいろいろ御意見を賜っておりますけれども、このナショナルトレーニングセンターを地域に、あるいは機能別でもいいんです、分散型でも。しかし、何とか、この平成二十六年度の予算ではまだ調査費だけですけれども、基本設計あるいは建設ということになりますと三年ぐらいはかかります。二〇一六年ぐらいからは使いたいんだというのが現場の声です。

 ですから、下村大臣も、財務省との交渉が一番のハードルだと委員会でおっしゃっているんですよ。麻生大臣は今、超党派のスポーツ議連の会長でもございます。もうこれは時間との闘いなんです。その点、我々、いい案を出しますから、みんなでつくりますから、その予算については財務大臣が確保していただけるということを、ぜひこのテレビの前でお答えをいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

麻生国務大臣 パラリンピックの選手の強化、これはすごく大事な点だと思っております。極めて優秀な選手もおられますので、私どもとしては、選手強化を行っていく、極めて重要だと思っております。

 したがって、今言われましたように、平成二十六年度の予算で、パラリンピックの選手の強化費として二十一億円、前年度比で約一八九%ぐらいになろうと思いますので、そういった意味では、きちんとしたものをやろうと思っております。

 それから、ナショナルトレーニングセンターというのが現在、北区の十条のところにありますので、あそこのところの部分をパラリンピックの選手にも使えるようにある程度改修するということもやろうと思います。いずれにいたしましても、研究活動拠点のあり方を検討する、まずは調査費をつけなければいけませんので、そこで二千万円を計上しているところです。

 いずれにいたしましても、文科省を中心に検討されていかれることになろうと思いますけれども、私どもとしても、きちんとした形で、オリンピックと同時にパラリンピックの選手の強化というものについては真剣に考えてまいりたいと思っております。

笠委員 ちょっと財務省的な答弁、大臣だから仕方ないかもしれませんけれども、そこは、最終的には麻生大臣が、そしてまた安倍総理がしっかり政治的な判断をしていただけるということを確信して、質問を終わらせていただきたいと思います。

二階委員長 この際、中根康浩君から関連質疑の申し出があります。笠君の持ち時間の範囲内でこれを許します。中根康浩君。

中根(康)委員 民主党の中根康浩でございます。

 私のふるさと岡崎は、徳川家康生誕の地でございます。その家康公の御遺言というものの中に、天下は一人の天下にあらず、天下は天下の天下なりという一節があります。これを総理に御紹介申し上げておきたいと思います。

 さて、介護保険です。

 今回の改正案、一定所得以上の人の負担を一割から二割へ引き上げる、要介護一、二の人が特養に入れない、特養の利用制限、特養入居者の低所得者への補足給付の打ち切り、要支援一、二の人を保険の対象から外す。つまりは、消費税を引き上げるのにかかわらず、介護保険でも負担増と給付削減のオンパレードということになっております。社会保障や介護サービスを維持、充実するための消費税引き上げであるはずなのに、負担増と給付削減は国民の期待に反するのではないかと考えています。

 資料一、議事録にありますように、一月二十八日に民主党の海江田代表が安倍総理に代表質問で、給付カットの中で最も心配しているのは、要支援者の介護サービスを介護保険事業から外して市町村に移管する要支援切りであると質問したことに対して、安倍総理は、要支援切りといったものではありませんと御答弁をされておられます。

 総理は要支援切りといったものではないとおっしゃいますけれども、やはり私は、海江田代表の言うように、財政抑制のための、軽度者を切り捨てる要支援切りではないかと危機感を感じさせていただいております。

 要支援一、二の方々が使っておられるサービスの代表的なものは、もう御案内のとおり、訪問介護、ホームヘルプサービス、そして通所介護、デイサービスであります。これらのサービスによって、要支援の方々は生きがいを感じ、そして健康状態を維持、改善し、御家族の方々は安心を確保し、仕事にも出かけることができる。つまりは、本人も家族も事業所もまさにウイン・ウイン・ウインの関係にある、この大変喜ばれ、大切なサービスが、切り捨てられようとしているのではないかということであります。

 さて、今の要支援サービスの利用者約百万人は、市町村に丸投げをされるのかもしれない、新しい地域支援事業というものに変わり、今までと同じように必要かつ適切なサービスが受けられるのか。

 資料三がありますけれども、必要に応じて利用できると書いてありますけれども、百万人のうち何割がこれまでと同じようなホームヘルプサービス、デイサービスを受けられ、何割が受けられなくなるのか、明確にしていただきたいと思います。総理、お願いします。

 総理です。大臣ではありません、総理です。これは、総理が代表質問に対する答弁で要支援切りではないと言ったから質問しているわけでありますので、総理が答えてもらわなくては困ります。

田村国務大臣 総理は大所高所からまたお話があると思いますけれども、この質問はまさに私の担当でございますから、ここを総理にお答えをというのは、幾ら何でも、ちょっとやはり私を無視され過ぎておられるのではないのかなというふうに思います。

 もうこれは、委員、委員会でもずっと議論を臨時国会でさせてきていただきました。要は、今回の場合、通所介護、訪問介護に関しては、地域支援事業に要支援者の方々を移します。ただ、財源は介護保険から出るという話でございますから、その財源に関しては心配が要らないということがまず第一であります。ですから、これは要支援切りというものには当たらないと思います。

 それから、いろいろなニーズがあるんですね、要支援の方々には。ですから、今までどおりのサービスを受けられたい方、それはちゃんと地域包括支援センターでケアマネジメントしていただいて、必要があるとなればそのサービスを受けられるんです。しかも、今まで継続して受けられている方々は、そのまま移行して受けられます。

 また、ほかにもっといろいろなサービスを受けたい方々もおられるんです。そういう方々は、新しい、地域でニーズに応じたいろいろなサービスができますから、それを必要に応じて提供させていただきますので、必要な方々に必要なサービスが提供されるということでございますから、それは、どのような形で必要な度合いが出てくるか、またどう望まれるか、そういうことを勘案して、結果としては出てくるという話でございます。

    〔委員長退席、萩生田委員長代理着席〕

中根(康)委員 通告してありますので、総理から御答弁をいただきたいと思います。

 今、大臣からもあったんですけれども、必要な人は利用できるということであったとしても、資料四、五を用意してありますけれども、予防給付の供給を、自然増の五、六%ではなく、三、四%の伸びに抑制をする。これは、厚労省の資料をもとに、民主党の山井議員の事務所が計算した資料でもありますけれども、これによって二〇二五年に千七百億円抑制するということを政府は目指しているわけであります。したがって、これはカットされる、財源がなくなれば当然サービスの供給量は減っていくということになりますので、要支援切りという危機感を持っても不思議なものではない。

 そして、改めて総理にお伺いいたしますけれども、この要支援切りではないかと危惧をされていることの中において、これまで百万人の方が受けていたホームヘルプサービス、デイサービス、これからも受けられるのは何割で、受けられなくなるのは何割か、明確に御答弁をいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 何割をカットするか、そういう話をされたわけでありますが、まさに、そういう専門的な話でありますから、厚労大臣が答えるのは当然のことだろうと思いますよ。政府として答弁をするわけでありますから、質問通告をされていても、政府としてまさに答弁をしていく。専門の大臣は、そのための厚生労働大臣なんですから。だったら、そもそもほかの大臣が出席する必要はないじゃないですかということになってくるわけであります。

 そのために大臣を私が任命して、そしてまさにそれを厚生労働大臣が政策として取りまとめているわけでありますから、本来、そういう政策的な議論を深めていく上においては、それをまさに専門的に取り組んでくる責任者である厚生労働大臣が答えるのが一番真っ当ではないか、私はこのように思うわけであります。

 その上でお答えをすれば、これは同じことになるんですよ、政府として答えていますからね。その上で答えますと、先ほど厚生労働大臣がお話をさせていただきましたように、介護保険の中から財源についてしっかりと充てていくわけでありますから、これは要支援切りには全くならないということでございまして、今回の改正においては、要支援者に対するサービスのうち、訪問介護と通所介護について、全国一律の基準に基づくサービスから、市町村が主体となって、地域の実情に応じてですよ、地域の実情に応じて柔軟かつ効率的に実施する事業へと見直すこととしているわけでございまして、まさに、全国一律の基準から、地域地域の情勢、状況に合わせたサービスを行っていくということに変えていくわけでございます。

 市町村が実施する事業においては、従来と同様、既存の介護サービス事業者によるサービスに加えまして、元気な高齢者を初め住民が担い手として積極的に参加する支援まで、多様な主体による多様なサービス提供を考えているわけでございまして、この新しい事業においては、従来と同様、介護保険の財源を用いて行うものでありまして、また、市町村を中心とした支え合いの体制をつくっていく。

 これはまさに、市町村ができることは市町村にお任せをする。むしろ、地域の住民の、あるいは介護を必要としている方々のニーズを一番よく把握しているのは地方の皆さんでありますから、まさにこうした形で市町村を中心とした支え合いの体制をつくり、これまで以上にこうした体制づくりを推進していくことになるわけでありまして、いわゆる、おっしゃっているような要支援切りでは全くないということは申し上げておきたいと思います。

中根(康)委員 これは、お役所の答弁ではなく、まさに国民の目線で、ここに今ホームヘルプサービスを受けている人がいらっしゃる、ここにデイサービスを受けていらっしゃる方がいらっしゃるということを想定して、この方々が来年の四月からどうなるかということをきちんと政府として、小さな話と思われるかもしれませんが、命に、健康にかかわる大変重大な問題であると私は思っております。ぜひ、そこにいらっしゃる、ここにいらっしゃる、そういう感覚で、総理が御答弁をいただきたいと思います。

 私が質問したことに対して、結局、総理も厚生労働大臣も答えていただいていないということであります。つまりは、答えられないということであります。そういう将来に対しての見通しがないまま、自治体に丸投げをする。財源をカットする。だから、私たちは、要支援切りではないかということを心配いたしているわけであります。

 必要な人に利用は可能だといっても、高齢者が増加をする中で財源が抑制されたら、これは必要な人に対してもサービスはカットされる。だから、今、繰り返し申し上げますけれども、海江田代表が代表質問で、要支援切りではないかと心配を表明しているわけであります。

 介護費抑制のために軽度者を対象から外し、自治体や家族に負担を押しつけるのは、介護の社会化を約束した介護保険の導入、この国民との約束違反ではないですか、総理、いかがですか。

田村国務大臣 まあ、委員もわかっておられて、そうおっしゃっておられるんだと思いますが。

 まず、今まで介護給付、つまり介護保険の中の給付でありましたから、サービスが一定程度、画一的になっていました。実際問題、要支援の方々も、いろいろなサービスを受けたいんですよ。

 ですから、例えば地域でいろいろな集いをつくって、そこで体操したりだとか、そういう動きは動きで、地域の住民の方々やNPOや、それから元気な高齢者の方々、今から介護の担い手が本当に不足しますから、比較的軽い方々に対しては、そういう元気な高齢者の方々が支え手となるということも必要だと思います。

 その中において、その地域、地域で必要なニーズをつくって、それに対するサービスをつくっていくということを今回市町村にやっていただく。これはそれぞれ要支援の方々が望むサービスですから、そのサービスをつくる中において受けていただくわけでありますから、これを要支援切りというわけではないと私は思います。

 あわせて、費用の問題が出ました。キャップをかけるわけじゃないんですよ。あれは目標値です。

 目標値とはどういうことかといいますと、私も、この一月に埼玉県の和光市に行ってまいりました。すばらしい取り組みをしていまして、実は介護の見える化をしているんですよ、どこに問題があるか。その見える化においての対応をしっかりやるものですから、地域包括ケアがうまく動いていまして、要支援、要介護の認定率が落ちているんです。

 つまり、支援を受けなくても、介護サービスを受けなくてもいいという元気な方々、また、要支援を受けても、そこから、要支援から外れて元気に戻っておられるお年寄りもたくさんおられるんです。そうやって認定率が下がれば、当然給付は下がるじゃないですか。

 そういうところを見越して、このような目標を挙げておるわけでありまして、決してキャップというわけではありません。

中根(康)委員 今の大臣の御答弁は、私は、介護予防と専門的なケアが必要な要支援者とを混同していらっしゃるんじゃないかと。介護予防は介護予防ですよ、要支援になる前の。ここは、きちんと体操をやったり、健康づくりをやったり、こういうことだと私は思っております。

 また、海江田代表の安倍総理に対する代表質問の中で、多様なサービスを行うための見直しだと答弁をされておられます。多様なサービスということが、今大臣がおっしゃられたように、少し混同されたような議論の中で、専門的な、本当に必要な、適切な、例えば軽度の要支援者の中にも認知症を併発していらっしゃる方もたくさんいらっしゃる。ということは、これは必ずしもボランティアやNPOの方々だけでは十分対応できかねるというような、プロのサービスが必要だということでもありますので、ここは混同のないように、これからの行政、法律づくりを進めていっていただきたいと思います。

 在宅ケアは、実の親子でもとても大変なことなんです。二〇〇〇年の介護保険導入が、介護を家庭内から、お嫁さんの強制労働的なものから、専門職へと変えたはずであります。要支援者の半分は軽度の認知症、認知症というのは御案内のとおり、妄想であるとか幻覚であるとか徘回であるとか、あるいは攻撃的な言動といったものを伴うわけでありますので、これは専門的な支援が必要となってくるわけであります。

 プロの介護者の方々が頑張って丁寧な支援や対応をしてくださっているのであって、無資格のボランティアや職員の方々が医療や福祉との連携などを含めた適切な支援を提供できるとは限らないということだと思います。

 私は、無資格の方々に丸投げをするということによって、かえって重度化をしてしまうという心配もいたしておりますけれども、総理、この点についての御見解をお聞かせいただければと思います。

 総理です。

 大臣、きょうは、たまに出てくるぐらいだったらいいけれども。

田村国務大臣 いや、専門的な内容ですから、これは総理がお答えになられる内容ではありません。ですから、私があえて答えさせていただきます。

 まず前段は、確かに訪問介護は、これはおっしゃるとおり生活支援サービスでありますから、そういう意味では、見守りでありますとか、それから買い物でありますとか、そういうようなものがあります。本人が自立をしていただく中において、最大限能力を発揮していただく中においていろいろなお手伝いをしようというのは、これは訪問介護です。

 しかし、通所介護の中には、そのような運動機能も含めて、悪くなったものを改善しようというような、そういうサービスもあるわけでありますから、実際問題、私もこの目で和光市で、それは拝見させていただいてまいりました。ですから、要支援のサービスにもそれはあるというのは事実でございますので、何か要支援のサービスの中にはそういうものがないみたいな、そういうおっしゃり方というのはちょっと私は問題であると思います。

 その上で、今のお話ですが、確かに、おっしゃられるとおり、専門的ないろいろな能力を持った方が対応しなければならない、そういう場合には、そういう方々がサービスを提供されればいいわけでありまして、それは要支援の中、つまり地域支援事業の中にもそういう方々はおられるのです。そういうサービスを受けてもいいんです。

 しかし、ケアマネジメント、地域包括支援センターの中において、いろいろとケアマネジメントをしていただく中において、そうじゃなくて、こういうサービスも受けられますよね、それがいいねという場合には、これは専門的な職種じゃなくても、例えば、いろいろな研修を受けていただく。

 これは実際問題、各自治体で取り組んでおります。例えば、大垣市や鳥取の日南町等々で、四日間、五日間ぐらいの研修を受けて、心がけだとか注意する点、そういうものを学んでいただいて、そしてそういう方々が、確かに有資格者ではありませんけれどもサービスを提供していただく。それは、それなりにちゃんと研修を受けていただく方が対応を、実際に今していただいておりますので、そういう部分に関しましては、我々も十分な対応をしていく必要があるというふうに思っております。

中根(康)委員 介護保険制度でありますので、もちろん、特定の自治体、地域において、好事例はたくさんあります。しかし、問題は来年の四月から全国あまねく適切な支援が提供されるかということを、国会は議論をしていかなくてはならないわけであります。

 財政が抑制されて、そして高齢者がふえていくということの中において、先ほど、来年の四月以降どれほどの方がこれまでと同じような、必要な適切な支援を受けることができるか、そしてどれほどの方が受けられなくなってしまうのかという明確な答弁はなかったわけでありますので、やはりここは、しっかりとそういう将来見通しをきちんとお示しいただきながら、まさに生活感覚で、現場感覚で、制度、法律づくりを進めていただかなくてはいけないというふうに思っております。

 私は、この週末、ホームヘルパーの方何人かにお話を伺ってまいりました。少し御紹介を申し上げます。

 利用者目線の改正ならよいけれども、財政抑制のための改正で、今状態が落ちついている要支援者の生活に変調を来さないか心配をしている。要支援といっても、要介護と行ったり来たりしているのが実情である。訪問介護やデイサービスで現状を維持している人もいる。そして、これは先ほども議論があったわけでありますけれども、介護分野におけるプロの仕事を認めるようにしないと若い人たちが参入してこないという御意見を承りました。

 これらの御意見に対して、総理、御所見をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 介護保険制度においては、まさに専門職であるケアマネジャー等が、しっかりと要支援の方々の心身の状態に応じて適切なサービスにつなげていく仕組みをつくっているわけであります。

 先ほど田村大臣から御説明をさせていただいたとおりでありますが、まさに、そのケアマネジャーが組み立てていくプランの中において、そうしたサービスが必要であれば、いわば資格を持っている人々のサービスが必要であれば、そういう人のサービスを受けるということにこの新しい制度の中でもなっていくのは、これはもう委員も御承知のとおりであろうと思いますよ。

 そういう中におきまして、ケアマネジャー等の援助に基づいて、例えば、ひとり暮らしの高齢者の方々に対するお掃除や買い物等の家事援助や見守りなど、高齢者の方々が自分の力を生かしながら、その生活の一部について地域のボランティアなどからも支援を受けられるようにするものもあるわけでありまして、今回の見直しにおいてはそうしたものを、今までは取り入れていくことができなかったわけでありますが、今回は、それぞれのサービスの中身も十分に吟味をしながら、そうした柔軟な対応も可能になっていくというものではないかと思います。

中根(康)委員 あるかないかということでお答えをいただきたい質問をいたしますけれども、弾力的な事業実施によって、市町村の地域支援事業の上限額が要支援一よりも低いものになる自治体があるかないか、そして、自己負担が現在の一割から二割や三割に、負担増になる可能性がある、そういう自治体があるかないかということで、総理、御答弁をいただきたいと思います。

田村国務大臣 まず、要支援事業が来年の四月からすぐ対応できないんじゃないかというお話が、前段でございました。

 これは猶予期間を持っておりまして、平成二十九年四月まで猶予期間がございます。ですから、それまでにしっかりと準備をしていただくということが大事だと思います。確かに、地域によってはいろいろ差がありますから、その猶予期間の間に、我々も最大限、好事例も含めて、各自治体にいろいろなお手伝いをさせていただきたい、このように思っております。

 今の質問に関しましては、おっしゃられる意味では、例えば既存のサービスがありますよね。今の、同じ事業者が提供しておる、こういうものに関しては今と同じような負担にしていただくように、これはガイドラインを各自治体にはお示しさせていただきます。

 その他の事業は新しくできてくる事業でございますから、こういうものに関しましては、これからどういう単価になるかというのは各自治体がそれぞれお考えをいただく部分でありますが、負担がそんなに極端に高いものに関しましては、確かに、サービスを受けられる方々は、サービスを受けないので、そこは各自治体もいろいろな御努力、ましてやいろいろなボランティアや元気な高齢者、そういう方々にもお手伝いいただきますから、そうは単価の上がる事業ではないのであろうというふうに認識いたしております。

中根(康)委員 今の大臣の御答弁だと、これまでと同じようなサービスであれば一割は約束をしていただける、そして、新しいサービスが提供される場合には二割や三割という自己負担になる場合もあるという理解をさせていただきます。

 介護保険で介護の社会化を図って、女性の介護離職、老老介護が防げると、国民と約束をしたはずでありますが、今回の改正で、まあ改正と言えるかどうかわかりませんけれども、まさに社会は独居、老老介護、老障介護という実情がある中でこの改正が行われたら、介護心中、あるいは女性の活用に逆行するという事態になる、あるいは、介護事業所の収益が減り、処遇が低下し、介護分野を成長分野とする総理の考えに反するのではないか、あるいはまた自治体間で介護格差が生じるのではないか、こういう心配をさせていただきます。

 消費税増税は社会保障を維持、充実させるための国民の皆様との約束であって、アベノミクスで物価高を政策的に国民に押しつけ、そして安上がりの介護をまたこの上押しつけるということがあっては、消費税引き上げの国民の皆様方の御理解に背くものである、期待に反するものであるということであると言わざるを得ない。

 したがって、法律を提出するに当たっては、十分、国民の皆様あるいは介護現場の労働者の皆様方の御意見を反映したものにしていただかなくてはいけない、そんなことをお伝え申し上げまして、私からの質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

萩生田委員長代理 この際、山井和則君から関連質疑の申し出があります。笠君の持ち時間の範囲内でこれを許します。山井和則君。

山井委員 三十分、質問させていただきます。よろしくお願いをいたします。

 まず冒頭、先週末から、関東甲信から東北は記録的な大雪に見舞われまして、各地で大きな被害が出ております。被害に遭われた皆様に心よりお見舞いを申し上げます。

 現在でも、JRや高速道路などが寸断されて、地域の生活道路の除雪のおくれなどから孤立する集落も多いわけでありまして、自衛隊が救援物資の輸送や除雪支援などに取り組んでくださっておりますが、まだまだ困難な状況におられている方々が多いわけであります。国として、一刻も早く万全の救援、支援に当たってもらいたいと思います。

 安倍総理からも一言、対応への意見をお願いいたします。

安倍内閣総理大臣 まず、今回の豪雪の被害によってお亡くなりになられた方々の御冥福をお祈りしたいと思います。また、被害に遭われた方々に対しまして、心からお見舞いを申し上げる次第でございます。

 政府としては、降雪前の十四日に関係省庁災害警戒会議を開催いたしまして、古屋防災担当大臣から、国民の皆様に対して、不要不急の外出を控えて早期に帰宅すること、そしてまた、関係省庁に対して、除雪の体制確保、交通障害への対応に万全を期すことなどを指示し、対応を確認したところでございます。

 降雪による被害が発生した地域では、警察や消防が救出救助や交通誘導などの初動対応に当たるとともに、十五日午前からは、山梨県知事からの要請を受けて、災害派遣された自衛隊が物資輸送、除雪などの任務に当たっております。

 また、十六日には、関係省庁災害対策会議を開催いたしまして、古屋防災担当大臣と横内山梨県知事とのテレビ会議によって、山梨県の被害状況や政府への要望などの把握に努めるとともに、関係省庁、機関の対応を確認したところでございます。

 本日、亀岡内閣府大臣政務官を団長とする政府調査団を山梨県へ派遣いたしまして、現地で情報を収集するとともに、政府としての支援の調整を行う予定でございます。

 けさ方も、担当の秘書官に対しまして、万全を期すように指示をしたところでございます。

山井委員 緊急事態でありますので、ぜひとも迅速な対応をお願いしたいと思います。私たちも、その点について応援をさせていただきたいと思います。

 さて、私の三十分の質問の中では、前半は、実質賃金上昇率、つまり、賃金上昇率から物価上昇率を引いたもの、実質の賃金がここ四年の中で一番今下がっている、この問題。

 そして、後半では、そういう中で、今国会で労働者派遣法改正法案が提出されようとしておりまして、これでは正社員から低賃金の派遣労働者への置きかえが進む危険性がある。若者の雇用環境は今特に悪化の一途をたどっておりまして、不安定そして低賃金の派遣労働が若者にふえることがあっては、私は日本の未来にとって問題ではないかと思っております。ディーセントワークとも言える、人間らしい働きがいのある仕事を若者にどう提供していくのか、そのことについて後半は議論させていただきたいと思います。

 きょうの朝刊にも出ておりましたけれども、アベノミクスで景気回復を実感しておられますかという国民に対する世論調査で、実感しているという回答はたった一八%。実感していないという回答が七七%。五人に四人は実感をされていないんです。

 なぜか。その答えがこのグラフになります。

 話は簡単。過去四年間の中で、昨年の下半期、七月から十二月においてはマイナス一・三%。確かに、少し賃金は上がっているけれども、それより物価が急速に今上がっているわけですね。そうすると、生活は苦しくなるに決まっているわけであります。

 何か報道では、景気はよくなっている、よくなっている、会社はもうかっているというふうな報道が多いわけですけれども、国民生活に一番直結する、物価高を差し引いた賃金上昇率が過去四年間で一番下がっているわけですから、景気回復を実感できないのも当然であるというふうに思っております。

 例えば、大企業は少し上がっているけれども、中小企業は下がっている、正社員は少し上がっているところはありますが、非正規雇用については賃金が非常に安い、そのような問題があるわけであります。

 過去四年間で一番、実質賃金が今下がっていて、生活が苦しくなっている、このようなことの理由について、安倍総理、いかが思われますでしょうか。

安倍内閣総理大臣 御指摘の昨年後半、七月から十二月の賃金の動向を見てみますと、実質賃金の上昇率は全体で前年比マイナス一・三%でありますが、一般労働者一人当たりの賃金は、地方公務員給与が特例的に引き下げられた影響もあるわけでありますが、それにもかかわらず、特別給与の増加などで増加傾向にあります。他方、相対的に賃金の低いパート労働者の割合が上昇していることから、勤労者一人当たりの平均賃金が名目で若干のプラスにとどまることが背景にあるものと理解をしております。

 ただし、昨年の上半期だけを取り出すのではなく、これを年間で見ますと、平成二十四年は一人当たりの平均賃金がマイナス〇・七%であったため、実質賃金も前年比マイナス〇・七%でありましたが、政権交代した後の平成二十五年は、一人当たりの平均賃金がマイナスから横ばいになりました。上半期においては実質賃金はプラス〇・四%となっておりまして、通年で見ると〇・五になっているわけであります。後半だけで見ますと先ほどおっしゃったように一・三でありますが、通年で見ると〇・五になっているということでありまして、まあマイナスではあるんですが、実質賃金はマイナス〇・五になっているということであります。

 しかし、リーマン・ショック後〇・四二倍まで落ちていた有効求人倍率は、一人の求職者に対して一人分の職があるという一倍まで来たわけでございますし、そして、日銀の短観によっても、大企業はプラスに転じたわけでありますが、中小企業、特に非製造業においては二十一年と十カ月ぶりに業況判断がプラスになったということでありまして、間違いなく景気は回復をしているわけであります。

 課題は、そして実質賃金をしっかりとふやしていくということになるわけでございますが、昨年の予算委員会でも議論を行ったわけでございますが、私たちは、デフレから脱却をし、そして経済を成長させていく。その中でしっかりと国民に、その果実が全国津々浦々に行き渡るようにしていきたいと申し上げたわけでございまして、その中の過程としてどういう道程をとっていくかということにつきましては、大胆な金融緩和と財政政策によってしっかりと景気を回復し、デフレから脱却をしていく。

 デフレから脱却をしていく過程においては、ある程度輸入物価が上がっていくということも見越していたわけでございますし、また、ディマンドプルによる物価の上昇も起こっていく中において、それに対してしっかりと賃金が追いついていく。しかし、当初においては、例えばエール大学の浜田先生は、当初においてはある程度物価が先行するけれども、だんだん賃金がそれを追い越していくという分析をしておられました。

 私たちは、その期間をなるべく短くしなければならないということの中において、三本の矢、特に二本目の矢を放っていくということは、全国隅々までいち早くこの景気の実感を行き渡らせていくということと同時に、これを賃金の上昇に早く結びつけていきたい、今その過渡期にあるということは御了解をいただきたい、こう思うわけでございます。

 いずれにいたしましても、昨年行われました政労使の懇談会において、企業の収益の改善を賃金に結びつけていくことが景気の好循環をつくることにおいて大切だという認識を持てたことは極めて有意義だったと思うわけでございまして、そういう中において、しっかりと経営者の皆さんが企業の収益の改善を賃金の上昇に結びつけていただきたい、そのことを期待したいと思います。

山井委員 いや、安倍総理、非常に苦しい答弁でしたね。景気回復は確実に進んでいるとおっしゃいながら、ここのグラフにあるように、景気回復と口ではおっしゃいますけれども、実質賃金は急速に下がっているんです。そして、賃金を上げる、賃金は上がっているとおっしゃいますけれども、それ以上に物価が上がっているんです。国民生活にとって一番重要なのは、賃上げと物価高のトータルのプラスマイナスなんですね。もちろん、賃金はどんどん上がってほしいと私も思います。しかし、それよりも多く物価が上がると、国民生活は苦しくなっていくんです。

 ですから、今聞いて、私は少し違和感を感じましたが、実質賃金がこれだけ大幅に下がっているにもかかわらず、安倍総理は、景気回復している、回復していると。ここに、国民がアベノミクスの景気回復を実感できない現実と、安倍総理の認識のずれがあるんじゃないんですか。

 そして、私が心配するのは、今までは消費税前の駆け込み需要もありました。しかし、四月以降は、これまたさらに消費税もアップするんですね。

 それでは、安倍総理にお伺いします。

 四月以降、実質賃金、つまり賃金上昇率と物価が上がったものの差し引きは、もっと下がるんじゃないですか。安倍総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 何か、まるで安倍政権になって実質賃金が下がったようなことをおっしゃっているんですが、下がる率は、皆さんの政権のときには、先ほど申し上げましたように、マイナス〇・七なんですよ。マイナス〇・七だったんですよ。安倍政権においては、マイナス〇・五になっているんですよ。つまり、改善はしているんですよ、間違いなく。これは事実です。今私が申し上げているのはファクトでありまして、皆さんの政権の時代はマイナス〇・七だったものが、これがマイナス〇・五になっているんです。

 そして、今、山井さんは下半期のことしか言っていないわけですね。これは通年で言わなければおかしいわけでございます。

 そして、景気全体が悪くなっているというふうにおっしゃっているんだけれども、しかし、そんなことはないわけでありまして、我々が政権を奪還する直前の七―九の段階においては、GDPはマイナス三・五%だったんですよ。それが昨年の一―三においてはプラス四・五%に、マイナスからプラスに大きく変わったわけでございまして、このことははっきりと申し上げておきたい、こう思うわけであります。

 そこで、しかし、なぜそもそも消費税を引き上げるかといえば、これは自民党と民主党と公明党で合意したものでありまして、伸びていく社会保障費に対応するために、そして今のこの社会保障制度を次の世代に引き渡していくために、国民の皆さんに負担をお願いしたわけでございます。

 ですから、そのことと同時に、今私たちが進めている二%の物価安定目標、これに向かって進んでいるわけでございます。

 この物価安定目標につきましては、これで上がっていく物価に対しては、我々、賃金が追いついていくべく、しっかりと、政労使で議論を今進めたもの、合意したものの上に立って、経営側の皆さんにも判断をしていただきたい、こう考えているところでございます。

山井委員 長い答弁の割には、聞いたことに答えていただきたいんですが、四月以降の実質賃金は今より上がると考えておられるのか、下がると考えておられるのか。国民が一番知りたいのはそこなんですね。

 消費税が上がって、物価が上がるのは確実です。その中で、賃金も上がってほしいと私は思いますが、今、マイナス一・三%で、これは本当に過去で一番、四年間で下がっています、事実として。それを四月以降は、一・三よりも改善する、実質賃金はよくなるというふうにお考えですか、安倍総理。

田村国務大臣 まず、技術的な話をします。

 これは現金給与総額という、その数字の性格なんです。実は、なぜ、先ほど実質賃金、これは下半期ですけれども、これがマイナス一・三になるかといいますと、一般労働者の方々は〇・八プラスなんです。しかし、パートタイムがマイナス〇・四なんですね。

 パートタイムが今、雇用の改善の中でふえています。労働者はふえていますからね、今。ですから、収入をもらう方々はふえているんです。ただ、問題は、パートタイムが〇・四とはいえ、時間給で見ると、実はプラス〇・七なんですよ。

 どういうことを言いたいか。一人当たりの賃金なものですから、実は短時間の方々がふえてきたんです、働く時間帯が。ですから、そういう方々がふえたので、マイナスのように見えますけれども、時間当たりはプラス〇・七ですから、実は賃金は上がってきているんです。

 そういうことも鑑みながら、四月以降、このような、実質賃金が下がらないような、我々も考えて景気対策を打っているわけでありますから、そこは御理解をいただきたいというふうに思います。

山井委員 私は安倍総理に、四月以降の実質賃金は今よりも改善するかどうかという質問をしているのであって、安倍総理に答弁をお願いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今、田村大臣が説明をしたのは、山井さんが本当に一つの側面だけを取り上げておられるから、全体像をお示しした。そうしたら、山井さんにとって都合の悪い数字が出てきたものですから、聞いていない、こうおっしゃった。大変わかりやすい構図だったというふうに私は思いますよ。

 そこで、先ほど申し上げましたように、消費税の引き上げ。消費税の引き上げ分については、昨年、皆さんも、私たちとともに、五%から八%に引き上げるということを決めましたね。その段階で、では、三%賃金が上がるということを見越したんですか。違いますよね、できるわけがない。

 皆さんのときには、いわば正規の労働者の賃金においては、田村大臣から答弁をさせていただきましたように、どんと落ちているんですから。今、私たちの政権になって、これは後半に限って言っても、また、もちろん通年でいえばそうなんですが、いわば正規の雇用者については賃金は上がっているんですよ。賃金は上がっている。皆さんのときには下がっているんだ。皆さんのときはそちらも下がっているんです。私たちのときには、実質賃金については上がっています。これは事実、ファクトを申し上げているんですよ。賃金は上がっているんですよ。

 そして、その中において、公務員給与を下げています。公務員給与を下げているにもかかわらず、上がっているんです。景気がよくなることによって、たくさんパートの方々を雇うようになったんですよ。そして、そのトータルとして、どうしてもパートの方々については賃金が抑制されているということもあります、その中の全体量として、全体の総体としてマイナスとなった、通年では〇・五となったということを説明させていただいたところでございます。

 そこで申し上げれば、ただいま申し上げましたように、消費税については御負担をお願いするということであります。そして、消費税プラス我々が今進めている政策によって、物価が上がっていきます。この上がっていく物価を上回っていくように我々も努力をしていきたいし、間違いなく企業の収益は改善をしているんですから、この改善を賃金の上昇に結びつけていただいて、そしてしっかりと景気の好循環を取り戻していきたい、こう思っているところでございます。

 同時に、消費税の引き上げにおいては、これは私たち、一万円を給付していく、消費税の引き上げ分について消費をカバーするものを給付していくということもやっているわけでございます。

山井委員 長い答弁の割には、四月以降、実質賃金が改善するという答弁はありませんでした。結局、極めて見通しは厳しいと言わざるを得ません。

 そこで、今の安倍総理の答弁の中で、パートなど非正規雇用がふえていることが実質賃金の下がっている一つの理由だという話がありました。

 そこで、私、問題だと思いますのは、この国会で、派遣法の規制緩和の法案を政府は予定されております。労働者派遣法。

 現在、約百三十万人の方が派遣労働でありまして、これを見てもらったらわかりますように、例えば、三十代で正社員だったら時給が二千百円ぐらい、そして派遣労働者だったら千三百円ぐらい。また、五十代でいきますと、正社員だと三千円ぐらいの時給換算になるのが、派遣労働者は年をとっても賃金は上がらず、千二百円台のままであります。つまり、いつ契約が終了するかわからない、賃金が五割から七割ぐらいだ、さらに、ずっと勤めても賃金が上がらない。つまり、非正規雇用労働者がふえればふえるほど実質賃金は下がっていく、こういう傾向になるわけです。

 そして、さらに深刻なのは、この百三十万人の派遣労働者のうち、六割の方が、アンケート調査では、正社員として働きたいと。逆に、今のままの働き方がよいというのは一九%。

 もちろん、派遣労働、私は認めますし、派遣労働でこれからも働き続けたいという方には、派遣というのはいい働き方だと思います。しかし、不本意派遣とも言われる、六割の方が、正社員として働きたいんだけれども派遣しか仕事がない、こういうことは非常に深刻な問題だというふうに思っております。

 このような状況の中で、今回、簡単に言いますと、労働者派遣制度の緩和。一つは、今まで期間制限のない業務は専門二十六業務だったのが、二十六業務以外も可能になる。さらに、派遣期間についても、派遣先企業は、四年目以降も、労働者をかえればずっと派遣労働者を受け入れられるという大幅な緩和になるわけです。

 この内容については、配付資料にもありますが、人材派遣協会、派遣会社からの要望書に大体沿った内容に、今回なっているわけであります。

 そこでお伺いしたいんですが、このような派遣を拡大していくと、一生派遣のまま働かざるを得ない方がふえるのではないか。先日の本会議で、安倍総理は、そういうための改正ではないと答弁されておりますが、改めて安倍総理にお聞きしたいと思います。

 本会議で安倍総理が答弁された答弁についてお伺いするんですが、このような緩和をすると、一生派遣のまま働かざるを得ない労働者がふえるのではないでしょうか。安倍総理、お願いします。

安倍内閣総理大臣 現在検討中の労働者派遣法の改正は、労働者派遣事業を全て許可制としまして質の向上を図るとともに、派遣期間の設定について、労使双方にわかりやすい仕組みにすることであります。派遣労働者のキャリアアップを促進することを目指すものであります。

 こうした見直しの中においては、有期雇用の派遣労働者について、同じ職場への派遣は三年を上限として、節目節目でキャリアを見詰め直していただくとともに、派遣元に対して、派遣労働者本人の希望を踏まえてキャリアコンサルティングや計画的な教育訓練の実施を義務づけることとしております。また、三年の期間が満了した場合、正社員になったり、あるいは別の会社で派遣を続けることができるように、派遣会社が雇用の安定化措置を講ずることを、新たにこれも義務づけているわけであります。

 言ってみれば、義務づけとして、派遣で仕事をしている人たちが希望している中において、正社員になっていく、あるいはまた、もう一度別の派遣を続けていくことができるように、派遣会社がそうした義務を負うということになるわけでありまして、こうした仕組みを通じて、派遣労働者の希望に応じたキャリアアップを促進していきたい、このように考えております。

山井委員 今回の派遣法の改正においては、規制緩和の側面が強くて、配付しております、例えば産経新聞の一月三十日の朝刊においても、正社員から派遣への置きかえを防ぐ目的で派遣期間に上限を設けてきた従来の原則を事実上転換するというふうに報道されています。安倍総理は今、正社員になりやすくするという答弁をされましたけれども、実際、そういう面よりも、今まで正社員が行っていた仕事を派遣労働に転換しやすくする改革なんですね。

 例えば、産経新聞の朝刊の社説でも、「限定的だった派遣労働の職場を広げる」「ただ、派遣対象業務の拡大が、いたずらに正社員の仕事を奪うことがあってはならない。」と報道されていますし、また、読売新聞一月二十九日夕刊でも、「制度の重点は、現在の労働者保護から派遣の活用拡大に転換される。」と。

 私たちは派遣労働をもちろん認める立場ですけれども、それはあくまでも臨時的、一時的であって、本当は正社員になりたいのに不本意ながらずっと派遣労働にしかつけない、そういう若者をふやしていくということはあってはならないというふうに考えております。

 安倍総理、端的にお答えいただきたいんですが、今回のこの改正で、派遣労働者を安倍総理としてはふやすべきだと考えておられますか。安倍総理の御見解をお伺いします。

安倍内閣総理大臣 私は、ふやすべきだとは全く考えていない。ふやすべきだとは考えていないわけでありまして、先ほども申し上げましたように、それぞれ働いている人たちにとってはニーズがあるわけでありまして、派遣という形態を希望される方々もおられるわけでありますし、そうではなくてキャリアアップを図っていきたいという方々に対しては、よりキャリアアップを図っていきやすい仕組みを我々はつくっていきたい、こう考えているわけでございます。

山井委員 私は今の答弁、びっくりしました。というのが、新聞でも報道されているように、この制度は派遣を利用しやすくする制度ですよ。例えば、日経新聞でも、一月三十日、「企業、制度利用しやすく」、そして、大手の派遣会社は、企業が派遣サービスを使いやすくなるというふうに期待していると。

 つまり、この制度は、派遣がふえる可能性がある制度改革なんですよ。にもかかわらず、安倍総理は、派遣がふえてほしいとは思っていない。ということは、今の答弁と、出してくる制度改革が違うんですよ。私がなぜこれをこだわるかというと、この法改正は危険なんです。なぜならば、安倍総理がおっしゃるように、望んでいる一九%の人が派遣になっているケースはいいです。六割の方は、本当は正社員を望んでいるんですから、そういう不本意派遣なんですね。

 それで、安倍総理、この改革で派遣がふえていくと、賃金は下がっていくんです。ここにありますように、正社員を例えばリストラして、派遣にするケースが出てくる。何よりも、会社が新入社員を雇うときに、今までだったら業務が限定されていたから正社員を雇おうかと思っていたところが、これからは新入社員も派遣にしようかと。つまり、今回の改正において、もしかしたら、若者が正社員になりにくくなる、若者の不安定、低賃金労働がふえるかもしれない、こういう深刻な問題をはらんでいるわけです。

 安倍総理、改めてお聞きしますが、安倍総理は、本当に派遣労働がふえるべきではないと思っているんですか。派遣労働がふえるべきでないと思っておられるんだったら、この改正を出すのはおやめになられた方がいいと思いますが、安倍総理の認識をお聞きします。安倍総理。

田村国務大臣 我々も、不本意派遣、本来は正規で働きたいけれども派遣をせざるを得ない、こういう方々が少なくなって正規になっていくこと、これは必要だと思います。

 ですから、今般も、今総理がおっしゃられましたとおり、例えば三年、期間制限があります。その後、引き続きその業務で何かする場合に関しては、これは何らかの雇用安定措置を組まなきゃいけない。ですから、その中においては、直接派遣先に対して、直接雇用、これを派遣元が依頼できる、こういう制度も入れてあるわけなんです。

 ただ、山井先生、派遣のことばかりおっしゃられますが、派遣を厳しくした間も非正規はふえていっているんですよ。今、一千九百万人、非正規です。見ますと、派遣の方が実は賃金高いんです。常用派遣が一千四百三十二円、登録型が千二百六十三円、これに対して直接雇用の非正規、こちらの方が千百九十八円で安いんです。

 ですから、これは、派遣だけではなくて非正規自体をどう正規にしていくかということは、我々もキャリアアップ助成金等々で対応しますが、今般の改正は、派遣で働く方々の雇用を守る、派遣で働く方々を守っていくという意味に関して法改正をさせていただくわけでございますから、今まで登録だけしておった派遣業者も許可制にするでありますとか、いろいろな強化策をする中において質の向上を図っていこうというものでございますので、御理解をいただきますようによろしくお願いいたします。

山井委員 総理に改めてお聞きします。

 これは非常に深刻ですよ。なぜならば、リーマン・ショックで多くの派遣労働者が派遣切りに遭って路頭に迷った。本当に私たちは大変な危機を経験したわけで、そういう目に、今後、若い世代の方々を遭わせるわけにはいかない。ですから、正社員よりも派遣労働者を雇いやすくするこの改正というのは、若者の雇用環境にとって私は非常に深刻な問題があると思っているんですが、先ほど安倍総理は重要な答弁をされました。派遣がふえることは望んでいない。ということは、安倍総理は、この改革によって派遣はふえないと予想されておられるんですか。

安倍内閣総理大臣 働いている勤労者の職場環境が向上していく、あるいは賃金が上がっていくためには、まずは景気を回復することが大切なんですよ。

 そういう中において、労働市場が逼迫化していく中において、これは状況もよくなっていくのは間違いないわけでありまして、一昨年は、平成二十四年は三四半期連続マイナス成長だったじゃないですか。昨年は通年で四四半期プラス成長に変わりました。そういう中において、先ほど申し上げましたように、有効求人倍率も、かつてリーマン・ショック後〇・四二倍だったものが一倍になりました。そして、失業率においても、今三・七%まで改善をしているのは事実でございます。

 そういう中において、派遣についても、私が申し上げましたのは、後で田村大臣から補足して御説明をいたしましたように、しかし、不本意な方々にとって、何とか正社員になりたいという努力をしている皆さんにとって、しっかりと道が開かれるものにしなければいけない。

 道が開かれるものにしていくためには、派遣会社に対して我々は新たな義務を、先ほど申し上げましたような、キャリアアップをしていく人たちに対しての支援をしていく等々の義務を負わせたわけでありますし、ルールについても明確化をしているわけでございまして、派遣労働という世界の中においても、より質を上げていく、仕事の環境の質を上げていくための法律であるということは御理解をいただいていると思いますよ。

 その中において、これは、この仕組みについて、全く仕事についていない人をなくしていくことも大切でありますから、そういう人をなくしていくということも考えなければならないわけであります。そういう方々にとっては、いわばこの、まず派遣という仕組みから仕事を得るということだって当然あるわけでございます。

 全員が派遣ではなくて正社員扱いになれば、これは一番いいに決まっているわけでございますが、グローバルな競争の中で日本は打ちかっていかなければならないという状況もあるわけでございまして、そういう中において、この派遣という形態が今あり、他方、働き方のニーズもさまざまに多様化している中において、派遣を活用している方々がいらっしゃるのも事実であります。

 そういう働き方が多様化している中において、このニーズにも対応できるようなものにもしているということも御理解をしていただきたい、このように思います。

山井委員 もう時間が来ましたので終わらせていただきますが、私が非常にショックを受けましたのは、一方では賃金を引き上げろといいながら、一方では、派遣が大幅にふえる可能性のある労働者派遣法の改正を政府としてはやろうとしている。言っていることとやっていることが違う。

 さらに、安倍総理がこの改正で派遣労働者がふえると認識をされていて提出されるんだったらまだわかりますけれども、ふえてほしいとは思っていないといいながら、ふやす法改正を出してくる。これは、後々、派遣がふえたかどうか検証できることですから、安倍総理が間違った認識であったということが後で歴史で証明されることになると思います。

 このことについては、しっかり今後も議論していきたいと思います。ありがとうございました。

萩生田委員長代理 この際、前原誠司君から関連質疑の申し出があります。笠君の持ち時間の範囲内でこれを許します。前原誠司君。

前原委員 民主党の前原です。

 まず、昨今の豪雪によりましてお亡くなりになられた方々に、心からお悔やみを申し上げたいと思います。また、被害に遭われた方々に対しても、心からお見舞い申し上げたいと思います。

 先ほど山井議員からお話がございましたように、しっかり政府におかれましては対応策をとっていただきますように、私からもお願いを申し上げたいと思います。

 さて、まず総理に、非常に大きな質問をさせていただきたいと思います。

 一枚目の資料、パネルにはない資料をごらんいただきたいと思いますけれども、これは日本の負債対GDP比でありますけれども、先進国の中で最悪である。日本が二三五%、EUの金融不安、財政不安をもたらしたギリシャは一九三%、そしてイタリア、そしてほかのところは大体一〇〇%前後ということで、大変大きな政府債務残高になっているわけです。

 まず、総理に伺います。財政再建の必要性についてどう考えておられるのか、まずそのことをお聞かせいただきたいと思います。総理にお願いします。

安倍内閣総理大臣 確かに、ギリシャと比べて負債の絶対額については上回っているわけでございますが、御承知のように、負債についてもグロスとネットがあるわけでありまして、日本は多くの資産もある、政府としての資産もあるわけでありますから、これを資産で比べれば、これは全然状況は変わってまいりますし、日本の国債については全て円建て、自国債、自国の円建てでございますが、ギリシャの場合はユーロになっているということでございます。かつまた、日本の場合は、九五%は日本人がその負債を債権として持っているということでございまして、そこは決定的にギリシャとは違う点でもあろうと思います。

 同時に、確かに、累積債務があるのは事実であります。国の信認をしっかりと確保していく上においては、これは国債の金利にもかかわってくることでありますから、累積債務についてGDP比で減少させていくべく努力をしていきたい、こう思っておりますし、同時に、利払いのお金がありまして、利払いの金額がふえていくことは、裁量的経費について、これは圧縮されていくわけでありますから、硬直性が増していく。

 そうした課題を克服していく上においても、財政健全化を進めていきたいと考えているところでございます。

前原委員 資産との見合いについては後で議論させていただきますが、若干数字で、私も以前は、国債の国内消化率は九五%と今総理がお答えになった数字を覚えていましたけれども、今は九一・五ぐらいまで落ちているのではないかというふうに思います。

 それから、金利が低くおさまる中で、利払い費が、ずっと累積債務が積み上がってきたにもかかわらず抑えられてきましたけれども、増加傾向に出てきた。これだけ金利が低くて、日銀が国債を買って、そしてイールドカーブを下げているにもかかわらず利払いがふえてきているということは、これは大変危機的な問題だと思いますので、最後におっしゃった財政再建、健全化の方向性については、しっかりこれは党派を超えてやっていかなくてはいけない問題である、こう思っています。

 それで、もう一つ伺いたいと思うんですけれども、これは総理にお答えをいただきたいと思います。

 これは、前の自民党政権、そして民主党政権、そして今の自民党・公明党政権でも基本的に変わっていないと思いますが、確認であります。国、地方の基礎的財政収支の目標については、二〇一五年は二〇一〇年度の赤字半減、そして二〇二〇年には黒字化、この目標は変わっていないということでよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 その目標は変わっておりません。

前原委員 そして、この二〇一五年度の二〇一〇年度比半減目標というのは達成できますか。これは来年度ですね。

安倍内閣総理大臣 二〇一〇年度に比べて二〇一五年に基礎的財政収支の赤字の対GDP比を半減していくという目標でございますが、そのために、今年度予算について四兆円の赤字圧縮目標を掲げていたわけでございますが、これを上回る五・二兆円圧縮することができました。

 この状況を維持できれば、これは達成できる可能性は十分にあるのではないかと思っております。

前原委員 五・二兆円の圧縮とおっしゃいましたけれども、消費税が三%上がってという前提ですよね。そして、二〇一五年度の半減目標というのは、これは消費税が一〇%じゃないと実現できない。

 今、達成できそうだとおっしゃるのは、今の状況においては、一〇%という、消費税を上げるという前提でお考えになっているということでいいですね、このプライマリーバランスの半減達成目標は。

安倍内閣総理大臣 既に通っている法律がございますから、通っている法律にのっとって我々は推計をしているわけでございます。

 ただ、来年、消費税を八%から一〇%に上げることについては、ことしの四月に消費税を引き上げる、当然、反動減がありますから、この反動減からしっかりと七―九の段階で回復をして、今の軌道にまた戻ることができるかどうかという状況を見ながら判断をしたい、このように考えております。

前原委員 当然、そういう柔軟な運営にはなると思いますけれども、二〇一五年の達成目標は一〇%に上げるということが前提になっているということは、これは確認をしておきたいというふうに思います。

 さて、パネルをごらんいただきたい。総理、財務大臣におかれては、二枚目のチャートをごらんいただきたいと思います。

 先ほど総理がおっしゃったように、財政再建というのは、日本においては、何党が政権を担おうとも大変重要な課題であります。

 私は、政治家をいつまでやっているかわかりませんが、財政破綻というものを起こしては絶対いけないと思っているわけです。財政破綻を起こしたらどうなるかというと、これは、年金生活者、一般国民が、金利は上がるわ、そして円は暴落をするわ、株は暴落するわということで日本売りになって、そして、今当たり前のように受け取られる行政サービスというものが受けられなくなる、あるいはカットしなくてはいけなくなる、相当カットしなきゃいけなくなるということで、財政破綻だけは何とか避けなきゃいけないということであります。

 過去、民主党政権の前の自民党政権においても、財政再建というのは一生懸命に取り組んでこられました。しかし、残念ながら、失敗の歴史でもありました。一九九七年の財政構造改革法、それから、安倍総理が一回目に総理になられたときの二〇〇六年の歳出歳入一体改革がございますけれども、これはいずれも景気後退の影響を受けて、この法律というものが、あるいは考え方というのがうまくいかなかったんですね。

 そういったときに、我々民主党政権のときに自民党が、これは谷垣総裁のときでありますけれども、財政健全化責任法案というものを出されているんです。つまりは、中期財政計画、あるいは我々の政権のときは財政フレームと言っておりましたけれども、こういうものは拘束力がない、やはりしっかりと拘束力を持った形での法律をつくり、そして今まで失敗をしてきた二の舞にならないようなスキームをつくるべきだということを提案されたわけでありまして、これは、中身は、我々がさきの国会に出しました財政再建推進法案に、違うところはありますけれども、かなり似通っているんですね。

 そういう意味で、総理、お伺いしたいと思います。今、自民党の総裁でもいらっしゃいますけれども、野党のときとはいえ、自民党が、この法案はこれからの財政再建においては必要だということで国会に提出された法案、今でもこの法案は必要だと思われますか。

麻生国務大臣 野党時代において、これは政権をチェックするという観点からも、財政健全化責任法案を議員立法として提出したということは、承知をいたしております。

 その上で、この財政健全化の実効性の確保というのは、責任ある財政の運営におきましては極めて重要なことですが、ただし、それが法則化、法制化されなければならぬというものでもないとは思っております。

 いずれにいたしましても、政府・与党として、同法案と同様の財政健全化目標を定めて、中期財政計画に沿ってその達成に向けて取り組んでいるのが、今最中です。

 今言われました民主党の財政健全化推進法案において、財政健全化を進めて、国民生活の安定や経済の持続的な成長を図るといういわゆる問題意識というものは、これは同様なもの、同じかどうかわからぬですけれども、似たようなものだと思っておりまして、共通のものがあると思って読ませていただきました。

 ただ、現行の予算編成プロセスとはかなり異なる点があの中に入っておりましたので、いずれにせよ、与野党間でよく御議論いただかねばならぬところだと思っております。

前原委員 与野党間で議論いただければということは、自民党と議論をしろということですか。

 そして、今のお答えは、野党のときは、政府をチェックするための法律が必要だけれども、与党になれば要らぬのだ、財務大臣としては要らぬのだという答弁はむちゃくちゃおかしいんじゃないですか。

 つまりは、今まで政権与党で、これは我が党も三年三カ月政権を担いましたから、先ほどから申し上げているように、財政再建というのは共通の大きな目的なんですよ。ですから、与党だから野党だから、野党だからチェックをしなきゃいけないから法律は出して、与党に返り咲いたら法案が要らないというのは、おかしいんですよ。自己矛盾なんですよ、それは。やはり、しっかりと財政再建のスキームをつくるということが大事であるということなんです。

 そして、政党間で議論してくださいということは、政府は要らぬと思うけれども、自民党とは議論しろということですか。財務大臣、もう一度お答えください。

麻生国務大臣 妙にひねってとられると困るんですが、真面目に私ども考えて答弁をしているつもりなので。

 今のような話ではなくて、少なくとも、この中において、いろいろ、健全化推進法案と健全化責任法案というのは……(前原委員「いやいや、自民党の法案を出されたらどうですかと言っているんです」と呼ぶ)我々としては、先ほど言ったとおり、今の段階として、必ずしも法制化に限定されるものではないと考えているとお答えを申し上げました。

 それが私どもの答えなので、では、何でですかと言われると、この推進法案と自民党の出させていただきました責任法の間には、御存じのように、読まれたらわかるように、差異がありますので、そこのところを詰めないと何とも言えないなと思っております。(発言する者あり)

前原委員 今村議員、ちゃんと聞いているから。私が質問をしていることに答えていない、それ以上のことを答えているから言っているわけですから、それはちゃんと指摘をしておきたいと思います。

 これは総理と議論したいんです。財務大臣は財務省のトップですから、与党になれば財務省を主導する、そして要らぬチェックは受けたくない、そういうことで、多分そういう御答弁をされているんでしょう。

 これは、私が内閣府で経済財政担当大臣をやらせてもらったときに、野田政権の最終盤でありましたけれども、予算編成の方針でかなり財務省とぎくしゃくしました、どちらが主導権をとるかということで。我々では使っていなかった経済財政諮問会議まで使って、これは法的な組織ですから、そういうところを使ってでもやろうかというぐらい、財務省とはかなり厳しい状況に私はなりました。

 でも、これはやはり私は、財政健全化をやろうと思ったら、法制化の必要はないということではなくて、法律をつくらなきゃいけないと思うんです。総理に今からその理由を幾つか申し上げます。聞いていただいて、総理にお答えをいただきたいというふうに思います、これは政治家同士の議論をさせていただきたいと思いますので。

 まずは、拘束力のあるという意味は、国会承認ということです。国会に、例えば三年なり五年間の中期計画というものを出して、そして国会の承認を受けるということ。

 それから、よくありますよね、予算案を組むときに、会計間、一般会計と特別会計のやりくり、繰り入れ、こういったものはなかなかわかりにくい。そのことによって、言ってみれば全体像が見えにくいということの中で、新たな法律の中身においては、連結ベースでしっかりと一般会計そして特別会計の計画をつくる、また、地方とか社会保障基金を含む一般政府ベースでの計画を策定するということが大事だと思うんです。

 そして、なぜ今まで財政再建に失敗してきたのかというと、やはり景気が悪くなるわけですよ。先ほど御答弁をされた麻生財務大臣が総理のときは、リーマン・ショックという、百年に一度というものが起きました。そのときには、財政出動して、あらゆることをやって、そして経済の底が抜けるのを防がなきゃいけないというのはそのとおりですよ。やらなきゃいけない。でも、景気が悪くなって、補正予算をやって、そして、全体の枠がないために、結果的にはそれでどんどん借金がふえていったのが今までの歴史なんですね。

 だから、補正予算とかそういったものについての、つまりは、弾力条項というものを設けて、そして景気が回復したときには逆にそういったところでしっかりと、借金をして補正予算を組み、景気の刺激をしたことについて、何らかの歳入の仕組みをしっかりとつくっておくということの中で、景気が悪くなりました、補正予算を借金をしてやりました、それで後は知らぬということでどんどん借金が積み重なっていって、一般会計だけが財政規律を保ったってだめなんですね。だから、そういう意味においては、こういう法律をつくるということが私は大事だと思います。

 あとは、これは私も内閣府の担当大臣をやらせていただいて、いわゆる成長率見通しというのは、例えば政府が名目三%、実質二%と決めたら、その前提で計算をしちゃうんですよ。そうしないと国会で突っ込まれるわけです。政府はこういう目的を立てているのに、そういう前提で財政の今後のプライマリーバランスとかを計算していないねと言われたら困るから、それを前提にしちゃうわけですよ。したがって、独立的な第三者機関がそういう成長率をしっかり行う中で財政全体をコントロールするという考え方が私は必要だと思うんですね。

 財政法は、総理、これは弾力性を全然考えていないんですよ。なぜなら、建設国債というのは、残るものについては借金していいということで国会の議決は要りませんけれども、いわゆる赤字国債はだめですよね。そして、法律をつくって特例公債にするということですね。ということはどういうことかというと、全てこういう景気の腰折れみたいなものも含めて、いわゆる弾力性をしっかりと前提にしていないのが財政法なんですよ。

 だから、新たなものをしっかりつくる中で、本当に財政の縛りをかけていく中で財政健全化を図る。したがって、自民党さんが野党のときに出された財政健全化責任法案というのは、極めてこれは有効な法案なんですよ、中身についてはいろいろ議論はあるけれども。

 どうですか。これは総理としてやられませんか、第四本の矢として。これからの財政について、自分自身が責任を持つレールを敷くんだということでやられませんか。

安倍内閣総理大臣 二〇一一年に、我が党が野党のときに、財政健全化責任法というものをまとめました。

 これをまとめたときは、先ほど財務大臣から答弁をいたしましたように、我が党は野党だったという中において、当時の民主党政権が進めている子ども手当あるいは高速道路の無料化、高校の無償化等々に対して、財源がないものに対してこれだけの支出項目を設けるということに対しての危機感の中において、私たちはあの法律をつくったということでございます。

 執行部が私の執行部にかわった段階において、これをもちろん法定化すべきかどうかという中においては、私たちとしては、しっかりと新たな支出項目をつくる上においては財源を確保していこうという基本的な考え方のもとに、中期財政計画について閣議了解をしたわけでございまして、この中でしっかりと我々は財政の健全化を図っていきたい、こう考えているところでございます。

 同様に、もちろん、今皆さんが出しておられる法案も、一部はちょっと違うところもありますが、そういう法案について御議論をされるということは、私は、それはそれで立派なことだというふうに思っているわけでございまして、国会の中でどのように議論していくかということについては、これは政党間で話し合っていただきたい、こう思うわけでございますが、今、安倍政権としては、既に決めている中期財政計画に向けてしっかりと対応していきたい。

 それと、柔軟性をどうやって確保していくかということについては、これは大切なポイントなんだろう、こう思うわけでございまして、経済は生き物でありますから、最初に決めた計画どおりにはなかなか、外的要因も大きなものがありますから、いかない。そのときに機動的に対応できなければ、傷口がもっと広がってしまって、これはもう取り返しのつかなくなる危険性もあるわけでございまして、そういう柔軟性をどう確保していくかということもよく考えていく必要があるんだろう、このように思っております。

前原委員 野党のときに、時の与党が行っている政策について文句があるから財政をチェックするということで法律をつくるというのは、これは私は考え方としておかしいと思いますよ。全体をどうマネジメントしていくのか。大宗は、自民党政権、あのころの政権がつくった借金じゃないですか。この中で、どの政権が今政権運営につこうとやりくりに困るような状況になっているわけじゃないですか。

 先ほどもおっしゃったことで、私は二つ申し上げたいことがありますけれども、民主党政権がやっていたことについて、そしてチェックをするためにこういう法案を出したと言われましたけれども、菅政権のときの参議院選挙でもうねじれていたんですよ。ねじれていることによって、我々、法律については、結果的に、子ども手当は三党合意しないとまとまらなかった。

 そして、実際問題、民主党政権のときに景気が腰折れされたということを何度もおっしゃっていましたけれども、我々、予算を執行しようと思ったって、皆さん方はおわかりだと思いますけれども、予算の半分は借金ですよ。税収と公債発行収入は同じですよね。予算は衆議院の優越で通ったとしても、参議院が我々は多数を握っていませんでしたから、結果的に九月になるとお金が切れるんですよ。切れて切れて、そして実際問題、補正予算も組めない。そして、最後は、やめろ、首をとれ、菅さんやめろ、そういうことじゃないですか。野田さんのときは、三党合意がまとまったら、解散しろ、解散しろ、こういうことじゃないですか。

 結果的には、ねじれている中でこれを出されたということについては、私は、その程度のものだったのかということは、極めて残念な思いを持って申し上げておきたいと思います。

 そのことを申し上げて、我々はバージョンアップして出しますから、自民党さんと議論していいならしますけれども、今の中期財政計画で十分だということになったら、またこれは、結果的には、補正予算だ、そして一般会計、特別会計のやりくりだということで、どんどん財政は悪化していきますよ。それは安倍政権の責任だということで、私はここで申し上げておきたいと思います。

 さて、次に、先ほど総理が、資産が多いとおっしゃいました。これについて少し議論させていただきたいと思います。

 確かに、これは総理がおっしゃるとおりなんですね。(パネルを示す)この各国のバランスシート、もちろん、国によって統計のとり方は違いますから、一概にこれは横並びで見ることはできませんけれども、日本については、先ほど二三五%、六%と申し上げた負債、これは粗債務というものでありまして、左上、粗債務というものについてこうだということなんですけれども、資産を除いたものが、これは純債務と言われるものでございまして、こうなると一〇一%まで低下する、こういうことであります。

 繰り返し申し上げますけれども、アメリカ、イギリスについては日本と統計のとり方が違うということは申し上げた上で、この純債務ということについて言うと、そんなにアメリカとイギリスと遜色ないように見えるということであります。

 さて、そこで、これも第一次安倍内閣のときでありますけれども、閣議決定されました基本方針二〇〇六におきましては、行政改革推進法に基づいて、平成二十七年度末に国の資産規模対GDP比の半減を目指して、国の資産を約百四十兆円規模で圧縮するとされました。そして、これを踏まえて、財務省は、資産圧縮目標の達成に向けて、国の資産の大宗を占める財政融資資金貸付金については百三十兆円超を圧縮する、そして、国有財産については約十二兆円の売却をするということを決めました。これは安倍政権のときですよ、第一次安倍政権のとき。

 これは、現在どうなっていますか。これは麻生大臣で結構です。

麻生国務大臣 御質問は、国の資産の圧縮のことだと思います。

 これは、行政改革推進法において、平成二十七年度末の国の資産規模対GDP比の半減を目安とする旨が規定されております。これを踏まえて、国の資産を約百四十兆円規模で圧縮するとの方針が、基本方針二〇〇六、いわゆる骨太方針で示されたところなんですが、これに基づいて、平成十七年度末から二十四年度末までの七年間で、財政融資資金貸付金は百十一兆円圧縮しております。国有財産は約二・七兆円を売却するなど、国の資産約百十六兆円を圧縮して、着実に取り組んできたところだと思いますが、GDP比のところが少し違ってきておる。

 その最大の理由は、先ほど言われましたように、当時試算したGDPの伸びは、このときには六百四十三兆円になるはずだったものが、今は五百三兆円にしかなっておりませんので、GDP比の比率だけは、分母が違ってしまいましたので、変わってきておるとは思います。

 いずれにいたしましても、財政の投融資につきましては、東日本大震災からの復興への対応等々、積極的な活用を図っているところですけれども、国有財産の売却については、株式、それから不動産市場の動向なども踏まえつつ、今後とも、国の資産の売却というのを進めてまいりたいと考えております。

前原委員 今、麻生大臣がお答えをいただきましたように、財政融資資金貸付金、これは百三十兆の圧縮目標が約百十兆円圧縮されているということで、ある意味で順調に進んでいるというふうに思います。それに対して、国有財産は、十二兆円売却するといって二・七兆円しか売却ができていないということであります。

 これについて、私が今これを取り上げて批判をするつもりはありません。大事なことは、これからいかに資産圧縮を図りながら財政健全化に資するようなことをやっていくのかということであります。

 その上で、二つ提案したいと思います。

 これは、安倍総理、国有資産、債務改革に関する工程表ということで、尾身財務大臣が提出をされた工程表というものであります。こんなに、かなり細かく書かれていますよ。

 この工程表については、どうやって資産圧縮をしますということを、各年度、平成二十七年度まで書かれているわけでありますけれども、先ほど申し上げたように、国有資産についてはなかなか思うように進んでいませんし、政策的に変わったものもあるんですよ。例えば、関西空港の株については売却ということですけれども、これは、もう関空と一体にして運営権を売却するということで、中身が変わっているものもあるんですね。そしてまた、我が政権のときにおいて、国有資産及び独立行政法人が保有する資産の売却に係る工程表というのを、これは平成二十四年の八月一日に行革本部決定ということでつくっています。

 そういう意味で、時代の変化と、そしてさまざまな状況の変化の中で、これから、先ほど総理がお答えいただいたように、資産の圧縮をやっていけば、まだまだ日本には資産はあるというのはそのとおりですよ。そういう意味での財政再建もやっていかなきゃいけない、行革をやっていかなきゃいけないということになると、新たに第二次安倍政権のもとでもう一度工程表をつくり直されて、そして、しっかり資産を圧縮するという考えを示されたらどうですか。

 総理。これは総理、政治としてお答えください。どうぞ、総理。

安倍内閣総理大臣 確かにそれは、何か非常に懐かしいものでありますが、当時の尾身財務大臣が作成したものでございまして、状況が、もう七年間たちますから変わってきておりますから、それを、見直しを含めて検討していきたいと思います。

前原委員 そうなると、これは稲田大臣に御答弁いただいた方がいいのかもしれませんけれども、実務的なことです。

 行革推進法、正確に申し上げると、簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律ということが書かれているわけですが、五十九条に、五十九条、読みます。見られなくても、簡単な、弁護士でいらっしゃるから、多分頭にすぐ入ると思いますけれども、「政府は、平成二十七年度以降の各年度末における国の資産の額の当該年度の国内総生産の額に占める割合が、平成十七年度末における当該割合の二分の一にできる限り近づくことを長期的な目安とし」と書かれているわけです。

 さっき申し上げたように、財政融資資金貸付金、これについては順調にいっていますけれども、国有資産については、いっていない。あと二年間しかないんですよ、この法律でいうと。したがって、今総理が、工程表の見直しも含めて、第二次安倍政権で行革の資産の圧縮について考え方をまとめたいということをおっしゃいましたけれども、これは法律の見直しも必要になりますよ。いかがですか。

稲田国務大臣 まさしく行政改革は、本当に与野党問わず不断に改革を進めなければならないと思っております。また、今御指摘の行革推進法も、その精神、また独法の問題、公務員の人件費の問題、今おっしゃった国有財産の問題等、かなり細かく規定をされております。そして、その中で、目標が定められているものも何条かあるかと思います。

 そういう意味で、私は、岡田前行革担当大臣から、先ほど御指摘のあった二十四年八月の行革の本部の決定等を含めて引き継ぎを受けて、その引き継ぎの工程表に従って、今、行革を推進しているところでございます。(前原委員「法律、法律。今は質問していない」と呼ぶ)

 したがいまして、今、その行革推進法に基づいて行革を推進しているところでございますので、法律の改正の必要性が出れば改正ということもあろうかと思いますけれども、今は、前政権から引き継いだ工程表に従って行革を進めているところでございます。

前原委員 ぜひ、徹底的な行革ということをやるために、まず工程表の見直しを行っていただいて、そして、必要があれば、今大臣がおっしゃったように、やはり法改正をして、やる。法律の裏づけが必要なんですよ。先ほどの財政再建と同じ。やはり、計画だけでは骨抜きにされることが多いので、しっかりそこはやっていただきたいと思います。

 次のパネルをお願いします。

 まず、我が政権のときに租特透明化法というのをつくりました。租税特別措置の透明化法というのをつくったわけでありますけれども、租特の見える化をしようということでありまして、実際、国、地方の租特による減収額がどれぐらいあるかといいますと、二十三年度が一兆三千七百七億円、そして二十四年度が一兆四千百七十二億円ということで、大体一・四兆円ぐらいの予算規模になっているわけであります。

 そして、この租特の見える化をして何がわかってきたのかというと、何々社、何々社というコード名を書いてあります。これは実際の会社名は書いてないんですけれども、コード名が書いてあるんですけれども、そのコード名でいわゆる名寄せをして、そして、各企業がどういった租特を活用しているかということがわかるようにしたわけですね。租特の見える化ということをやって、やったわけです。

 そして、私が申し上げたいのは、まず一つ、これは総理に、時間がなくなってきたのでまとめてお答えいただきましょう。

 まず一番目、これは電力にかかわるものなんですけれども、電力というのは、会社、基本的に大きなところは十しかないんですよね。それで、十電力会社のうち、ここに書いてあるのは、原子力発電施設解体準備金、使用済燃料再処理準備金ということが書かれているので、当然ながら、沖縄電力には原発がありませんので、九社といったらもう全部わかるわけです。どれぐらい、どこが使っているかということはこれではわかりませんけれども、こういう形になっているわけであります。

 まず総理にお伺いをしたいのは、私は、直間比率の見直しをして、そして、法人税減税というのをグローバルな競争の中で見直していくというのは賛成なんです、方向性は。ただ、繰越欠損金とか租特というものがあって、国、地方合わせて法人税三六%というふうに言われていますけれども、二〇%ちょっとぐらいになっているんですよ、この繰越欠損金と租特を入れると。ですから、もし法人税率を見直すということになると、いわゆる隠れた補助金である租特と繰越欠損金のあり方をトータルで見直さないと、法人税減税というのは屋上屋を重ねることになりますが、どう思われますか。

安倍内閣総理大臣 法人課税の見直しについては、まずは与党に検討していただいているわけでありますが、政策効果の検証や、課税ベースの拡大や、他税目での増収策の検討といった論点が示されているところでございまして、法人税の実効税率については、今、前原委員が指摘されたように、グローバルな経済の中で日本の企業が戦っていかなければならないという観点からも見直しをしていく必要があるんだろう、その際、課税ベースをどうやって広げていくかという観点の中において租特においても当然議論がされるんだろう、こう思うわけでございます。

 いずれにしても、日本経済の活性化のために、産業構造を含めた大きな議論が必要であろう、このように思っております。

前原委員 時間がなくなってきたので、端的に質問いたします。

 例一というのを、上を見ていただくと、原発の解体準備金。これについては、当然、一〇〇%、九社でやられている。その下が問題なんですよ。こういう一〇〇%やられているんだったら、租特という見えにくいことじゃなくて、補助金でやった方がよっぽどわかりやすい。

 それから、使用済燃料再処理準備金ということについて、今、原発が約三年間とまっている、そして、プルサーマルも稼働する見通しが今のところない中で、ずっとこれがやられ続けていて、租特の十分の一がこれなんですね。つまりは、電力会社に対する補助金が、いわゆる再処理の燃料を使ったものが使われていない状況にもかかわらず、これが行われているということはおかしいんではないか。

 それから例二を見ますと、下なんですけれども、RアンドD税制なんですけれども、これは恐らく三千社以上が使っているものなんですけれども、実は上位六社で四分の一使っているんですよ。

 こういうものを考えると、やはり租特の中には、補助金化してより見える化をした方がいいということと、実際問題、状況が変化しているのに垂れ流し続けられているような使用済燃料再処理準備金のようなものがあるということと、RアンドDみたいに、大切ではあるけれども、三千以上あるのに六社が四分の一も使っているということは、これはちゃんとチェックしなきゃいけないんじゃないんですか。

 これについては、租特を扱っておられる財務大臣、御答弁をいただきたいと思います。

萩生田委員長代理 麻生財務大臣、時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。

麻生国務大臣 これはちょっと、丁寧にやらないかぬところでしょうけれども、はしょってやらせていただきます。

 特定企業に偏っているからといって、だから問題というわけだとは思っていないんです。

 いずれにしても、こういったものは不断の見直しをしていかないかぬということはもう確かです。社会情勢やら経済情勢やら変わることもありますし、今回のような事件もありますので、いろいろな意味でこういったものを不断の見直しをしていく、それはやはり、課税ベースを広げるとか広げないとかいうこととは別に、租特自体の見直しというものはきちんと不断に見直していくべきものだと、私どももそう思います。

前原委員 終わります。

萩生田委員長代理 これにて笠君、中根君、山井君、前原君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

二階委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。園田博之君。

園田委員 大雪で大変なことになりました。依然として困難な状況に置かれた方々もおられますし、不幸にして犠牲になられた方もおられて、心からお悔やみとお見舞いを申し上げたいと思いますし、政府は万全の対策をとっていただいていると思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 明るいニュースもありました。オリンピック、羽生選手もすごいと思うけれども、葛西、四十一歳、すごいですね。本当に多くの人がやはり感動を覚えたと思うんですが、つくづく感じることは、困難な状況の方もおられるし、励ましてくれる方々もおられるし、我々政治をつかさどる者は、やはりもっと頑張らないかぬなというふうに思わされます。特に安倍総理は我々の先頭に立つ方ですから、私が一番気にするのは、ポピュリズムに惑わされるな、やはり国民の幸せを願って将来への道筋を描けるような、そういう政治をぜひやっていただきたいというふうに思っています。

 さて、二十六年度の予算案ですが、私は、もし我々が予算案をつくれば、多分もっと歳出を削減し、そして、我が党の方針からいっても、地方の自由度をもっと高めるような予算をつくるでしょうから、賛成というわけにはなかなかいかないと思うんです。

 ただ、私は、この自民党が中心になってつくられた予算案、去年の参議院選挙もありました、自民党には多くの団体が支援しておりますから、参議院選挙後の予算案というのは一体どうなるんだろうと思っていたんですね。団体というのは、支援もしてくれますが圧力もかけますから、そういう目に私も何回か過去に遭ったことがありますが、それにしては私はよく抑制されたなと思っています。そういう意味では、私は一定の評価をしているつもりであります。

 ただ、予算というのは、国の施策を予算で実行するわけですから、国の行方ということについては非常に大切なことで、今後の予算の動向がどうなるのかということの方が私は気になるんですね。

 まず、そういった意味で一番気になるのが、社会保障関係費の占める割合が年々ふえているのは御承知のとおりですね。このままいってしまえば、極端なことを言えば、国が組む予算のほとんどは社会保障関係費になってしまう、今の制度だとですよ。そういうことをちょっと頭に置きながら、幾つか御質問をしますので、ぜひ、総理以下、麻生副総理も関係大臣も、踏み込んで答弁してもらいたいんですね。ぜひお願いしたいというふうに思います。

 まず、総理と財務大臣にお伺いしますが、消費税です。

 これは、もともと麻生政権のときに、自民党が税制の附則に書き込んで一定の提案をしているんですね。しかし、その後、民主党が政権をとりました。どうなるのかなと思っていましたら、野田さんが総理になられて、これの実現に向けて具体的な提案を国会にされて、そして、それは相当議論はありましたが、あえて民主党が分裂する要因をつくったんだろうと思うんですが、そうまでして国が抱えた大事な課題をやろうとした野田さんはやはりたたえられるべきだと私は思っているんですね。それと同時に、当時野党だった自民党、よくそれに応えて、この成立に向けて協力しました、結果的には。私は、これも立派だったと思うんですね。

 総理にお伺いしたいのは、もしこれがなくて安倍政権ができてきたときに、まず財政の大きな柱、社会保障を賄うための大きな柱の消費税に取り組まなきゃならなかったんだろうと思うんですね。いきなりアベノミクスというわけにはなかなかいかなかったんだろうと思う。そういう意味でよかったなと思っているんですが、安倍総理御自身の御感想はいかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 私が当選一回のときに、当時橋本政権でありまして、あのときも財政改革に取り組み、消費税を三%から五%に引き上げ、そして総選挙ということになったわけでございますが、我々は、もう既に上げるということを決めた後でございますが、上げる必要性を訴えながら選挙戦を戦ったことを記憶しております。

 今回、五%から八%へ引き上げていく、そしてさらに八%から一〇%に引き上げていくということと同時に、社会保障の改革を進めていくという一体改革、これは当時の野田政権において、野田総理も責任感と決意と覚悟を持って取り組んだんだろう、このように思います。

 また、谷垣当時の総裁は、長い間財務大臣を務めておられました。その経験の中から、財政の健全化を何としても果たしていくべきだろう、これは与野党の垣根を越えていくべきだ、このような決断をされたわけでございまして、党内においては、御承知のように、ここ一番、これはもう政権をすぐに倒しに行くべきだという議論もございました。しかし、その中で、我々は野党ではありましたが、ここは与野党という垣根を越えて議論すべきだ、財政の健全化、あるいは社会保障制度もそうなんですが、それは与野党という差を意識することではなくて、国民の将来のために議論すべきだろうと私も思うわけでございます。

 そういう中において、当時の党首同士が、そして公明党もあわせて合意ができ、そしてそれが成立をしたということは結果として本当によかった、このように思っているわけでございます。

 そして安倍政権におきましても、昨年、この消費税を引き上げていく上において、財政健全化を図っていく上においてもデフレから脱却をして経済を成長させていく必要もありますから、その観点からいって、問題のない状況をつくり上げていくべく経済対策と税制の対応をするということとあわせて、この四月から五%から八%に引き上げていく判断をしたところでございます。

園田委員 財務大臣には後で聞きましょうか。

 では、財務大臣。

麻生国務大臣 園田先生、やはり衆議院と参議院でねじれているために参議院で法案が否決、私たちのときもありましたし、民主党のときもありました。そういう状況の中にあって、与野党合意で、この消費税という最も選挙受けしない、私も掲げたことがありますのでよくわかるところですけれども、それをわかった上で与野党三党合意でやれたというところは、民主主義の成熟度合いがおたくらの国とは違う、俺たちのところを何だかんだ言うけれども、俺たちはそれをやってのけた、したがって、日本の円の独歩安とか、日本だけが財政のばらまきとかいうようなことは言わせない、自分たちもそれをやればいいだけのことだと言って、以後、G20で二度とこの種のことを我々に指摘する国はなくなりましたので、その意味では、これは物すごく大きな政治決断だった、後世歴史家に評価されるに足るものだ、私はそう思っております。

園田委員 これが四月から八%になり、法制化された内容からいうと、来年秋には一〇%という予定になっているんですね。一〇%をやるかやらぬかという質問は何回も受けられて、もうそれは聞いておりますから、ここでは聞きません。

 問題は、それも大事なんですが、消費税というのは社会保障との一体改革ですから、理想を言えば、社会保障関係費を消費税で全部賄えるというのが理想なんですね。ところが、一〇%を仮に実行しても、今の社会保障関係費を賄うにはまだ大幅に足りないですね、財源というのが。当時は、我々、研究しながら、最終的には一五%は必要なのかなとか、そうするうちに、何年かたつと、もう一五%では足りなくなっているんですね。

 このことについて、いつ何をやると言われる必要は全くないんですが、社会保障と税との関係について総理はどのようにお考えでしょうか。

安倍内閣総理大臣 社会保障費については、医療費あるいは介護にかかる費用については、税金そして社会保険料によって、あるいは、患者さんあるいは介護を受けられる方々御自身の負担によって成り立っているわけでございますが、国の歳出の中におけるそうした国の負担分が年々ふえていっているのも事実でありますし、今回五%から八%に引き上げていくもの、消費税の引き上げ分、これは全て社会保障費に充てていくわけでありますが、しかし、今の消費税全ての収入を上回って社会保障の国の支出があるわけでございます。

 そこで、私ども、まずは、社会保障費の中において、給付の質は落とさずに、いかに、合理化を図り、無駄をなくしていく中において、この伸びをある程度抑制していくことができるかどうか、この努力は続けていかなければいけない、こう思っておりますし、さらに、そうした伸びの抑制を進めていく分野はこの社会保障費の中にはたくさんあるんだろう、こう思っています。

 例えば、お薬についてジェネリックの比率をさらに上げていく、あるいは、レセプトの電子化を進めていく中において不正受給等の削減を図っていくこともできるでしょうし、さまざまなコストの削減も行っていくことができると思うわけでございまして、その中において、なるべく国民の皆様に税という形でさらなる御負担をお願いしなくてもいいような、社会保障費の自然増の抑制にできる限りの努力をしていきたい、なるべく負担増をお願いしなくてもいいような努力を続けていきたい、このように思っております。

園田委員 消費税がさらに必要かどうかということはお答えになりませんでしたが、私は、経済状況にもよりますけれども、それは何年後かわかりませんが。

 もともと消費税と社会保障という関係は、医療にしても年金にしても介護にしても、保険制度は、主として保険料で成り立っているわけですが、保険料を負担してくれる働き手、若い世代が給付を受ける人たちを支えていくんだという考え方だったんですね。

 ところが、御承知のとおり、今はもう少子高齢化ですから、保険料を払う人が少なくなって、給付を受ける人がどんどんふえている。そこで、悩んで悩んで、みんなで悩んで、社会保障制度、社会保険制度というのを、消費税という形でみんなで負担していただいて、この三つの制度は五十年たっても百年たっても国民生活の安心のためには堅持していこうではないか、こういうことから始まっているんですね。

 そういう意味で、今総理がおっしゃったように、一方ではなるべく削減を図っていかなきゃならぬ、しかしサービスは落とさないように、こうおっしゃったんですが、これが私はなかなか難しいと思うんですね。

 私は、多分、社会保障関係費をどうやって削減するか、一方で、消費税をまたお願いできる時期をどうつくっていくか、両方がないと、この制度を堅持していくことはかなり困難だというふうに思います。

 社会保障費をさっき私は申し上げましたが、例えば、財務省からいただいた資料を見てみました。そうしますと、ことしの予算でいいますと、九十六兆円の総予算ですが、国債費と地方交付税交付金を除いた予算、これをもって一般歳出というんですね。この額というのは五十六兆五千億なんですね、総額。そのうち、社会保障関係費が占めるのが三十兆五千億、五四%に達しました。これは厚労大臣はよくわかっていると思うんだけれども、このままいきますと、毎年一%から二%ずつ社会保障関係費の占有率が高くなっていきます。

 どういうことかといいますと、では、防衛費にしても、公共事業にしても、農業予算にしても、教育関係費にしても、社会保障関係以外の経費がどうなっているのかといいますと、これはちょっと違った資料なんですが、OECD加盟国で、二〇一〇年ですから今より三、四年前ですかね、GDPに占める、今言った社会保障を除いた支出が何%になるのか。一四・八%。実に、OECD加盟国で最下位に近いんですね。これは間違いなく最下位になるだろう。

 つまり、私は何を言いたいのかといったら、社会保障ももちろん大事なんですが、国づくりのために政策的に支出していかなきゃならない、それがもう、その幅がどんどんどんどんなくなってしまうんですよ。一体国づくりができるのか、成長戦略なんかちゃんと賄っていけるのかということになるんですね。

 だから、早急に社会保障について大いに議論をして、これは、ただただ財政が困るからということじゃないんです。さっき申し上げたように、国民が安心していける三つの制度、これを将来にわたって堅持するためにも、それから、大事な少子化対策に対しても国がある程度の賄いをしていけるような、そういう経費をずっと賄っていけるような改正というのをやらなきゃいけない。

 この社会保障を減らすというのも、二つあるんですね。

 一つは、よくあるように、制度以外で政策的に投じている社会保障関係費をもうちょっと少なくできないのか。よく言われる生活保護もそうなんですが、そういうものを削減するということが一つ。

 しかし、それは年々やっていると思うんですね、多分、少しずつ。多分、厚労大臣も苦労してやっていると思います。しかし、制度に手をつけるところにもう来ているんじゃないか。今の三つの制度が今のままの制度だったら、幾ら少しずつ減らしていっても、総額は間違いなく伸びるんですよ。それで、どんどんどんどんほかの経費を圧迫していって、国民の幸せを本当に求めることができるのかどうかというところまで追い込まれてしまうんですね。

 そういう意味では、私はできれば、今度の国会でも幾つか法案は出ているようですが、抜本的な制度改正をやる。もちろん、国庫負担を減らすんですから、一部、それは国民の負担はふえますよ。そういうことになるんです。しかし、これは、国民を説得してでもこれをなし遂げていかないと、この制度がもたないということになってしまうんですね。

 そのことについて、そういう考え方が間違えているかどうか、総理の御意見をまずお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、森山委員長代理着席〕

安倍内閣総理大臣 自然増を抑制していく上において、制度的な見直しというのは常に取り組んでいかなければならないと思っております。

 今回の予算におきましても、七十歳からの窓口負担について本則に戻したわけでございますが、これについてもさまざまな御批判がございました。社会保障費を制度的に変えていくということは、要は、いわば御本人の負担がふえていくか、あるいは、例えばまた保険料等において御負担をお願いするかということになっていくわけでございます。しかし、こうした不断の見直しというのは重要ではないかと思います。

 小泉政権時代に毎年二千二百億を五年間ということでやりましたが、残念ながら五年間はできなかったわけでございますし、第一次安倍政権のときにおいても、生活保護受給者の母子加算について、生活保護を受けている人と受けていない人にとって、母子加算を足し込んでいくと、消費生活水準が、受けていない人との差が逆転するということもございましたので、この母子加算はやめて、しかし、将来頑張っていこうといろいろな資格を取ろうとする人たちに対して就労の支援をしていくということを決めたのでございますが、これもその後、制度として、大きな反対等にも遭いまして、なかなかうまくいかなかったわけでございます。

 こうした改革については、やはり国民的な理解も得ながら進めていく必要があるんだろうと思いますが、いずれにいたしましても、自然増自体に切り込んでいく上においては、制度的な改革というのは常に念頭に置きながら取り組んでいく必要があるんだろう、このように思います。

園田委員 厚労大臣、そういう考え方をしておられるんですが、担当大臣として、特にやはり医療保険制度ですよ。この前の予算をつくるときの厚生労働省の対応を見ていても、どうも団体の意向ばかり反映しようとして、大臣はそうじゃなかったんだろうと思うんだけれども。しかし、これは大臣、やはり勇猛を振るって、国の将来のためですから、やってもらいたいと思いますが、どうですか。

田村国務大臣 主なところは医療、介護、年金なんですが、対GDP比でいきますと、年金は逆に比率が下がっていくんですね。これは一応、給付と負担の方のバランスをとるような形で五年ごとに財政検証をしています、自動調節機能が働きますから。

 医療はやはり伸びます。もっと伸びるのは介護であります。

 医療一つを見ますと、これは二〇一〇年の数字なんですけれども、高齢化による医療の伸びというのは一・六%、ところが医療の高度化等々で二・一%、こちらの方が実は伸びが大きいという数字も出てきています。そう考えると、これから、再生医療だとかいろいろなものが出てきます。そういうものをどう医療保険とうまくマッチングしていくか、これはいろいろな知恵を出していかなければならないというふうに思います。

 あわせて、健康づくり、つまり予防ですね。これをやろうというので、実は去年から、厚生労働省で、私が本部長で推進本部をつくりました。大体二〇二五年までに五兆円ぐらい伸びを医療と介護で抑えられないか。つまり、これは要は健康になる、もしくは病気を重症化させない中でありますから、国民の皆さんもハッピーなわけでありますから、こうやって医療や介護の給付の伸びを抑えていく、こういうこともやらなきゃいけないと思います。

 そして、今総理がおっしゃられましたとおり、負担の方も実はお願いをしておりまして、六十九歳までは自己負担三割なんですけれども、今までは七十から一割負担に下がったんですが、新しく七十歳になる方からは、これを本則の二割、三割からは安くなるんですが、一割じゃなくて二割でお願いをさせていただきたい。

 そして、介護の方も、今国会に法律を出させていただこうと思っておりますけれども、収入のある方、これは、どこに収入があるかはこれから与党とも相談しなきゃいけないんですが、そういう方々は、介護は自己負担一割なんですけれども、二割負担をお願いさせていただこうと。

 そして、特別養護老人ホームなんかに入っておられますと、居住費と食費、これは大体合わせると十万三、四千ぐらいあるんですが、これが今、収入の少ない方々には補足給付という形で補助を出しているんですね。これも、所得だけじゃなくて資産、例えば預貯金が一人一千万、二人、御夫婦ですと二千万あるような方々は、この補足給付で出している助成は御勘弁いただこうとか、いろいろなことを今負担の方も考えさせていただいております。

 とにかく、今先生おっしゃられましたとおり、制度が持続可能でなければ国民の皆様方は安心ができないわけでありまして、もちろん、経済が成長して税収をふやしていくということも大前提でありますけれども、だからといって、国庫負担を減らすとか、今保険料も自己負担も上がっていますから、これ以上国庫負担の比率を減らしてさらにそちらの方にというのはなかなか難しいので、いいバランスの中で持続可能な、そんな社会保障制度を我々はしっかりとつくり上げてまいりたい、このように思っております。

園田委員 制度もさることながら、医療費全体が減らせれば、それは大臣が言われることになると思いますし、種々の改正を試みておられるから、それはそれなりに改善されるでしょうが、多分、それを全部やったって、私が言うようなことは解決しないと私は思いますよ。

 医療費全体は間違いなくふえますから、国が負担する医療費じゃなくて国全体の医療費は、これだけ医療の技術革新が進んで、先進医療も進んでいきますから、医療費全体はふえるんですよ。だから、お医者さんは何も心配することはないんです。問題は、やはり国が制度として負担すべきものをどうするかということ、これが大事なんですね。

 そういうことも含めて、今度の国会で成立したものをやってみて、さらに、私は、来年度は、本当にそれでいいのかどうか、本格的に提案をして議論すべきときがもう来ているんじゃないかと思いますので、こう言ったからには、いい提案が出れば、それは少々批判を浴びたって、野党も賛成すべきところはすべきじゃないかと思いますよ、さっきの消費税じゃありませんが。やはりそれぐらいの提案をしていただきたいというふうに思います。

 次に、成長戦略に関連して総理にもお聞き申し上げたいんです。

 現在のところ、成長戦略といっても、具体化されているのは財政支出と税制だろうと思うんですね、今度の国会でも議論しなきゃなりませんが。これから成長戦略を描くに当たって、財政支出と税制の役割というのはどの程度だとお考えになっているのか。ちょっと聞き方が悪いけれども、それだけで済むと思っておられるのかどうか、ちょっとそのことをお聞きしたいと思っています。

安倍内閣総理大臣 まず、成長戦略において、我々は、デフレから脱却をして経済を成長させていくための三本の矢の政策を今行っているわけでございます。大胆な金融政策と、そして機動的な財政政策でございます。

 デフレから脱却をしなければ名目成長でしっかりと伸びていかないわけでございまして、当然、税収も上がっていかない。デフレから脱却をしなければ税収はふえていかない、よって、財政健全化もできないということでございまして、ですから、まずはデフレから脱却をして、しっかりと経済を成長させていく。もちろん、実質でも名目でも力強く成長させていくということでございます。

 そして、それによって税収をふやしていくということと同時に、もちろん無駄遣いもカットしていくわけでありますが、もちろん、それだけではなくて、先ほど来議論になっております社会保障制度について、伸びていく社会保障費に対応するために消費税を引き上げていくという判断をしたわけでございます。

 ここで大切なことは、やはり税制においては、国の信認を維持していくという意味においても、今回、伸びていく社会保障費に対してはしっかりと対応していきますということの意思を示すことによって、国の信認を維持していくことにおいてはプラスであった、このように思います。

 そして、財政の健全化が進んでいくことによって、日本に対して安心して投資がなされるわけでございますし、国民も、その意味においては安心して消費が進んでいくということになりますから、財政の健全化を進める中において経済の成長も相まって進んでいく、そういう道を進んでいきたい、このように思います。

 税制というのは、税制一般についてでしょうか。

 税制については、同時に、成長戦略の中における税制ということも考えていきたい、このように思っておりまして、いわば企業の投資を促していく、あるいは、収益が上がった企業が賃金にそれを結びつけていく中においては税制上も支援をしていく。こうしたことを行いながら、経済の成長そして賃金の上昇、好循環を実現していきたい、このように思っているところでございます。

園田委員 なぜこういうことをお聞きするかというと、この四月に消費税が三%上がったときに、多分、需要が冷え込んで、日本経済も一旦停滞するに違いない。それは間違いないと思うんですね。それはもう総理も認められている。

 問題は、それから、例えば七月ぐらいから、また息を吹き返して、需要もふえて経済活動が再び活発な方向を描くかどうか。私はそれを一番心配しているんですが、いろいろな方の御意見を聞くと、一つは、補正予算を先に成立させた効果というのはやはり幾分かあるだろうと思うんですね。もう一つは、税制改正で、四月からまたこの一年間の税制、特別な措置をされますから、この中を見ると、確かに住宅その他、ちょっと落ちつけば、またさらに需要が活発になるかなという税制もあるんですね。

 だから、そう考えると、まあ年内は何とかなるのかなと思うんですが、さて、その先になると、これは私は不安だらけだと思うんです。アベノミクスというのを成功させるためには、やはり何か根本的に足りないものがある。

 いろいろな考え方はあるでしょうが、私はやはり規制改革だと思うんですね。規制改革というものは、やったからすぐどこかに火がつくということは必ずしもないんですね。しかし、何年かのサイクルで考えると、その規制改革の成果というのは必ず出てくるだろうと思うんです。

 規制改革とはどういうことかというと、今までの日本の経済のやり方とか、あるいは社会生活の送り方とか、ルールを変えていくということですから、簡単じゃないんですね。これはもう、私も経験がありますが、規制を例えば緩めようというと、関係する役所は猛烈に反対しますよ。それはやはり、変えるということは、変えたことでどういうことが起きるかとまず心配もするんでしょうね。

 それから、近ごろの政治というのは余り信用されていないんですね、役所に。思いつきで言うんじゃないかというので、なかなか進んでいかない。しかし、今度は誰もがかなり安定的に運営できるだろうと言われている政権なんですから、こういうときに大胆な規制改革をやらないと。

 私は、恐らく日本は、今チャンスも迎えていますが、裏返せばピンチも迎えているんですね。これをやはり総理を先頭にやっていかなきゃならぬと思って、さきの国会で戦略特区法案というものを見ていたんですね。あれでは、戦略特区に指名されても、ああいう規制緩和があったとしても、では、その地域に行って仕事をしてみようかとか、住んでみようかというほどの魅力は私はないと思うんですよ。

 だから、それはそれで進められて結構ですから、さらにこれを深掘りしていかないといけないと思いますが、そういう考え方を総理御自身お持ちで規制改革を進めようとしておられるかどうか、まずお聞きしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 この規制改革でありますが、いわば世界の中で、今、みんなビジネスは進行しているわけでありますが、日本だけがハンディキャップを背負っていたのであれば、当然、日本で活動する企業はハンディキャップを肩から落としたいわけでありますから、外に出ていくか、また、海外からも日本に入ってこないという状況になっていく。

 この規制改革を進めていくことによって、正しい規制改革、適切な規制改革であれば、間違いなく日本の経済を活性化することになっていく。その中で、この国家戦略特区はその突破口にしていきたいと考えているわけでございます。

 この中において、なかなか尊敬する園田委員に御評価いただけなかったのですが、公設民営化の解禁は、長い間ずっとできなかったものでございます。そしてまた、雇用のルールの明確化、これもそうでありますが、長年手がつかなかったものにも我々は切り込んでいった、このように自負をしておりますし、また病床規制の緩和、そして農業委員会の見直しのように、検討するとだけ閣議決定をして、その後全く措置されなかったものもあるわけでございますが、ここも進んでいく。

 しかし、基本的には、これで十分だというふうには私も思っておりませんし、我々の改革に終わりはない、このように思っております。

 これからさらに、年央の成長戦略の改定に向けて成長戦略進化のための今後の検討方針を取りまとめたところでございまして、今後、この方針を踏まえまして、働く人と企業にとって世界トップレベルの活動環境の実現、今、園田さんがおっしゃったように、じゃ、そこに行ってみようと海外の人々も思うような、そういう方向性を出していきたいと思っておりますし、医療、介護、農業の新たな成長エンジン化、成長の果実の地域、中小企業への波及という観点から、さらなる構造改革に取り組んでいく考えであります。

 また、規制改革会議においては、保険診療と保険外診療の併用療養制度の改革や、あるいは多様で柔軟な働き方の実現、そして農業委員会、農業生産法人、農業協同組合のあり方等の改革などについて検討を進めております。

 国家戦略特区を我々はぜひ活用して、今後二年間を集中期間として、幅広い分野の岩盤規制に検討を加えて、規制改革の突破口を開いていく決意であります。

園田委員 ということで、稲田大臣、あなたは戦う人だと前から思っていた。総理の意向を受けて規制改革会議なんかも主宰しておられると思うんだけれども、これは戦わなきゃだめですよ、特に役所。やはり説得力を持って戦わないとだめですよ、ただわあわあ騒いだって。それぐらいの取り組みをやらなきゃいけないときに今来ているんですね。

 そういう意味で、規制改革の進捗状況とか、大臣のお気持ちはいかがでしょうか。

稲田国務大臣 私は、ある意味、規制というのはその国のありようとかかわってくると思うんです。規制ができた当時は、それは大変有益なものだったでしょうけれども、それが、時代が変わるにつれて、もうそれは意味がなくなったり、かえって足を引っ張る存在になっているということがあろうと思います。ですから、規制を緩和するだけではなくて、あるべき社会に向けて規制を改革していくということを心がけております。

 大変、規制改革の先生方、委員の先生方も精力的に取り組んでいらっしゃいますけれども、おっしゃるように、なかなか難しい側面もあります。

 私の担当では、規制改革だけではなくて、行政改革、公務員制度改革もあります。きちんと規制改革に取り組んだ官僚が登用される仕組みがないと私は規制改革は進まないと考えておりまして、公務員制度改革についても、この春の、内閣人事局を設置することによって、きちんと規制改革に取り組んだ官僚が登用される仕組みというのをつくっていきたいと思います。

 今は、先ほど総理おっしゃいましたように、保険診療と保険外診療の併用療養制度について、六月までに具体的な提案を行う、これも大変、今まで何度も取り組んできたことですけれども、原則に戻って、保険の適用される診療をしたときには保険を適用しましょう、そういう原則的なことをやっております。

 また、雇用分野では、長時間労働抑制、ワーク・ライフ・バランス促進、弾力的な労働時間制度構築、これを、一つ一つ論点がありますけれども、三つを一遍にやることによって解決を見出していきたいと思います。

 また、農業分野についても、農業委員会、農業生産法人、農業協同組合のあり方について、本質に戻って、原点に戻って、なぜこれができたかということを見きわめながら改革に取り組みたい。

 そして、何よりも、せっかく法律で規制はなくなったとしても、省令やら政令で規制が強化されていたり、それから地方自治体で規制が強化されていたりということがありますので、行政事業レビューではありませんけれども、規制を各省みずからが改革して、PDCAサイクルを回していくということなども考えていきたいと思っております。

園田委員 私は、そう簡単なことではないということは何回も申し上げておりますが、まだまだ、やはり医療とか、まあ農業はかなりいい形ができたかなと思っているんですけれども、建築にしても、それから労働法制、これもやはり、多くの人が雇用の場を得るためにどうしたらいいかということを考えるべきだと思うんですね。

 僕は、ある輸出企業の社長さんにお聞きしたことがあるんですが、どうやったらこれから輸出でふえる増産部分を海外じゃなくて国内でやってくれるか、どういう条件が整えばいいんだと聞くと、大体同じ答えなんですね。

 一つは、よく言う、経団連が言っている、法人税を下げろというものですね。これは、すぐ下がらなくてもいいけれども、将来に向けて下がっていけばいいと。

 もう一つは、やはりエネルギーですね。安定的にエネルギーがなるべく安く、海外とそんなにコストが違わないように供給していけるかどうか。

 三つ目は、やはり労働法制と言うんですよ。国内で多くの人に働いてもらえるために、労働法制というものをもうちょっと緩和して、強化する部分は強化しても結構ですよ、もちろん、賃金が下がらなきゃ雇わないなんて言いませんよ、賃金が上がっても結構ですが、そういうルールづくり。

 この三つが整えば国内で生産しますよ、こう言っているんですね。

 総理、これもやはり成長戦略の大事なところですから、一遍、経済界で、海外にばかり工場をつくっている社長さん方を呼んで、どうやったら国内で生産してくれるんだということを聞いて、それに対応するというのも、やはり成長戦略としてはかなり具体的なやり方じゃないでしょうか。ぜひお願いしたいと思います。

 さて、時間がなくなったんですが、最後に私は総理にどうしても申し上げたいことがあるのは、今言いましたように、社会保障制度の改革一つとっても、これは取り組み方次第では物すごく批判を浴びます。国民の側から見れば、消費税が上がるんだからもっとサービスがよくなって当たり前だろう、こう考えられるのは当然なんですね。

 しかし、今言ったように、これからの制度を堅持するためには、やはり制度改正に取り組んで、国民に一部御負担をしていただかなきゃならぬ部分も当然出てきます。消費税のことを考えれば、これはやはり与野党で取り組むということを考えなきゃいけないんじゃなかろうかな。

 二つ目に、やはり憲法改正ですよ。憲法というと、すぐ九条のことを言って、憲法を口にするだけでタカ派だなんて言う人が多いんですけれども、それは間違いだと思うんですね。やはり今の時代を迎えて、我々の手で我が国にふさわしい憲法をつくっていくということは、これは結構、喫緊の課題なんですね。そういう意味では、総理が目指しておるのは間違いじゃありませんよ。

 しかし、これは恐らく、与野党共同で取り組まなきゃできませんよ。憲法の中身をどうしようかと今言っているわけじゃないんですから、最終的には、九十六条を改正しても、内容を含めて国民に問わなきゃならないんですから。私は、そこまでの手順は与野党共同して、もう少し、九十六条を改正して、そしてそれから憲法の中身について議論していくという仕組みをつくることも必要でしょう。

 そのほかにも、考えてみたら、今、国はチャンスだけれどもピンチだと申し上げましたけれども、今言った規制改革の問題、それから、我が党がいつも言っている統治機構を変えて日本を活性化できないか、地方を活性化できないかという問題、あるいはエネルギーの問題。これから、来年でも、総理が政権を握っておられる間にこれらのことに道筋をつけるために、与野党共同でできる方法を考えるべきだと私は思います。私は野党にいますから、私が私の党を背負っているわけじゃありませんからうちの党はどうするとは言えませんが、私は、我が党も国家の危機とあらば、みんなが賛同してくれると思うんですね。

 ただ、限られた課題でやることです。それだけのことを胸に秘めてやりませんか。最後にお聞きしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 社会保障の改革もそうでございますし、今御指摘になった憲法の改正でございますが、三分の二の多数を参議院、衆議院で形成するというのはそう簡単なことではないわけでございますし、また、国民の過半数が賛成しなければ改正自体は成就しないという中においては、できるだけ多くの方々に賛成をしていただく努力をしていく必要があるんだろうと思います。

 そうした議論、まさに国の基盤をつくっていく議論については、与野党の垣根を越えて、その課題、課題について我々も御協力をお願いしていきたい、こう思っているところでございます。

園田委員 協力をお願いしたいぐらいじゃだめだな。もっと必死になってやらないと私はできないと思うよ。最後に申し上げて、終わります。

森山委員長代理 この際、上野ひろし君から関連質疑の申し出があります。園田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。上野ひろし君。

上野委員 続いて質問させていただきます、上野ひろしでございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 本日は、社会保障等に関する集中審議ということでありますけれども、冒頭、豪雪の被害について一点お願いを申し上げたいというふうに思います。

 御存じのとおり、先週末、大変な積雪がございました。観測地点によっては史上最高という積雪もありまして、報道によると、千五百名を超える方がけがをなされた、また、十五名の方々が亡くなられたということであります。

 私、地元は群馬県でありますけれども、群馬も大変な被害がありました。地元の商店街でもアーケードが崩落をした、また、個人のお宅でも駐車場が潰れた、また、ビニールハウスが崩れた、そういう状況もございます。また、まだまだ報道されていない部分もありますけれども、多くの実質的に孤立をしている集落というのもございます。さらに、弱者ということで申し上げれば、病院の方で食材がなくなって、なかなか食事を提供できない、こういうリスクもある。また、福祉施設でも同じような状況が生じているということでもございます。

 地方自治体の方で懸命の努力をされている、また、地域の方々もさまざま協力をされて自主的な動きも随分出ているというところではありますけれども、ぜひ、こういった被害が出てきているということを、これは政府の方でもしっかりと御認識をいただきまして、ぜひ万全の対策をとっていただきたいというふうに思います。

 これは通告をしていないんですけれども、総理、ぜひ一言お願いいたします。

安倍内閣総理大臣 この豪雪に対しましては、政府としては、降雪前の十四日に関係省庁災害警戒会議を開催いたしまして、古屋防災担当大臣から、国民の皆様に対して、不要不急の外出を控えて早期に帰宅すること、また関係省庁に対して、除雪の体制確保、交通障害への対応に万全を期すことなどを指示し、対応を確認したところでございます。

 降雪による被害が発生した地域においては、警察や消防が救出救助や交通誘導など初動対応に当たるとともに、十五日の午前からは、山梨県知事等からの要請を受けまして、災害派遣された自衛隊が物資の輸送、そして除雪の任務に当たっているところでございます。

 そして、十六日には関係省庁災害対策会議を開催して、古屋担当大臣と横内山梨県知事とのテレビ会議により、山梨県の被害状況や政府への要望などの把握に努めるとともに、もちろん、これは山梨県だけではなくて、テレビ会議を行ったのは横内知事でございましたが、当然、群馬県を含む豪雪の被害に遭っているところとしっかりと連携をとっているわけでございますが、関係省庁、機関の対応を今確認しているところでございます。

 亀岡大臣政務官を派遣しております。状況等を収集するとともに、政府としての支援の調整を行っておりますが、当然、この状況についての報告を古屋大臣が受けます。私も古屋大臣からその状況について話を聞きながら、さらなる被害が出ないように万全を期していきたい、このように思っております。

上野委員 ありがとうございます。今週にもまた雪のおそれがあるという予報も出ております。ぜひ、しっかりと被害の状況を把握していただきまして、政府の方でも万全な体制をとっていただきたい、改めてお願いを申し上げます。

 それでは、社会保障に関する質問に入ります。

 社会保障につきましては、総理が特に力を入れておられるのが難病対策ではないかなというふうに思います。一月二十四日の施政方針演説の中でも、社会保障という項目の中で、総理が一番長く時間をとって、また思い入れを持って話をされたのが難病対策ではなかったかなというふうに思います。

 私も、当選以来、難病対策については本当に思い入れを持ってやってまいりました。身近に難病、慢性疾患の方がいらっしゃるということもありまして、私も人ごとではない、まさに自分自身の問題として取り組んできたつもりであります。

 もう数年前になりますけれども、これは党派を超えて、与党自民党、公明党の方も入っていただきまして、私も呼びかけ人になって、超党派で、新しい難病対策の制定を求める議連というのもつくりました。ずっと法律の制定を求めてきたわけでありますけれども、今般、この国会に難病対策また小児慢性疾患対策の法案が提出をされた、また予算措置もされたということで、本当に感慨深い思いであります。

 一方で、難病対策は、本当にもう何十年間のこれは悲願でありました。であるからこそ、しっかりとした対策を講じていただきたいという思いであります。

 今回、随分この予算委員会の中でも費用負担の話について議論がありました。これはこれで、その議論というのはあると思うんですけれども、より大きな問題といいますか、私自身関心を持っているのは、では、どこの範囲までが難病ということで指定をされるのかということであります。

 総理は、施政方針演説の中で、難病については三百疾患を目途にという話もされました。一方で、三百のところで線を引かれるということになると、ではどの疾患が対象になるのか、またはならないのか、これは患者さんにとっては大変大きな問題であります。日々、難病に対する研究開発といったことも進んでいくということでもございます。

 難病の指定の要件といたしましては、原因が不明である、また、治療法が確立をしていない、また、一定の数以下、少数の疾患であるといった要件もあるというふうに聞いておりますけれども、ぜひ、ここは総理、個別の疾患をしっかりと注目をしていただいて、見ていただいて、研究開発が進む中で、また学術的な調査が進む中で、これは三百ということにこだわらず、しっかりと追加をすべきものについては追加をしていくということが必要なんじゃないかなというふうに思います。

 またあわせて、今回この対策は、医療費の問題、医療費の手当てをするという話でありますけれども、患者さん方、個別にお伺いすると、なかなか治療法がない中で継続的にその症状を抑えるために医療費が必要なんだ、これはもちろんそうなんでありますけれども、それ以外の支出、例えば、健康でない、難病を持っているがゆえのいろいろな装具でありますとか、おむつ、ガーゼといった生活に必要な支出もございます。また、就労対策というのもなかなか大変になってくる。また、そういったところに保護者の方々が一緒についていかなければいけない。そういった費用負担が大変大きいという話もございます。

 これは、医療費だけではなくて、患者の方々、また保護者の方々、周りの方々、これは多様な要請、負担がございます。そういったことにも目を向けた、本当の意味での総合的な難病対策という形にぜひしていっていただきたいと思いますけれども、難病対策がライフワークというふうに言っておられる安倍総理、ぜひ御決意をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 いわゆる難病については、原因がわからない、あるいは根治をするためのお薬がないということでありまして、そして、患者の方々は常に命の危険にさらされている方々もおられれば、症状がある程度軽くても、いわば社会生活に支障を来す、安定的な就業ができない、さまざまな課題を抱えておられるわけでございまして、そして、今般、しっかりと法定で支援策を定めていこうということになったわけでございまして、大人の方は五十六疾患から三百、そしてお子さんは六百、大幅に拡大をいたしました。予算においても、五百七十億から一千七十億にふやしたわけでございます。

 そこで、この疾病については、客観的かつ公平に選定をするために、難病等の医療に見識を有する者による委員会の意見を聞いて定めることとしているわけでございます。今般は、三百ということを申し上げているわけでございますが、今後、これは恐らくこの要件に入るであろうということについては、当然検討していくことになるということだろう、このように思うわけでございます。

 そして、やはり、この医療費の助成制度を通じて、症例が少ない、あるいはまた研究が進みにくい疾病について、一定のデータを集めてデータベースを構築して、治療研究に役立てることも行っていくわけでありまして、難病の方々が一番望んでいるのは、その難病に合った薬ができて、一番いいのは根治でありますが、根治できなくても、かなり症状を抑えることができて、社会生活が可能になるということでありますので、そういう意味において、画期的新薬の研究開発が進むような、そういう仕組みにもなっているわけであります。

 さらに、ホームヘルプなど福祉サービスを利用できる患者の方々の範囲を広げるわけでありまして、総合的な対策を推進していきたい、このように思っております。

 また、今回は、一つの疾病においても、軽度の方から重症の方もおられるわけでございます。難病ですから、完治にはなってはいなくても社会生活は十分に、私なんかもそうなんですが、全く問題なく社会生活を送っていますから、医療費の助成は必要ないわけでありますが、一方、同じ病でも、ずっと三百六十五日、病院に入院せざるを得ない方々もおられるわけでございますから、そういう重症の方には重症の、そういうきめ細かな対応もすることになっているということもつけ加えさせていただきたいと思います。

上野委員 ありがとうございました。対象疾病については柔軟に追加をいただける、また、医療費に限らずさまざまな御支援、これはしっかりとやっていただけるという答弁だったと思います。

 難病の方々にお話を聞くと、今、総理の答弁の中にもありましたけれども、大変強い要望といいますか、思いは、ぜひ研究開発をしっかりしていただいて治療法の確立をしていただきたいという話、これはたくさんの方々から話を伺っております。もちろん、医療費の手当て、これは大事でありますけれども、可能であれば、しっかりと治療法、お薬の手当てをしていくということであります。

 そういった中で、大変希望が持たれている、期待がかけられているのが再生医療ということではないかなというふうに思います。

 次に、関連をして、再生医療についてお伺いをしたいというふうに思います。

 再生医療、これは二年前、もう一昨年になりますけれども、iPS細胞ということで山中教授がノーベル賞をとられました。また、最近の話題でいいますと、STAP細胞ということが発表されまして、大変大きな関心も持たれているというところではないかなというふうに思います。

 先週の総合科学技術会議、これは総理も御出席だったのかなというふうに思いますけれども、研究者の小保方さんをお呼びになるという話がございました。実際にはいらっしゃらなかったということであるというふうに思いますけれども、総理のこういった新しい再生医療に関する研究開発に対する評価と、また、これを今後どのように支援していくのか、その考えをお伺いしたいというふうに思います。

田村国務大臣 まず、難病の方々ですけれども、希少疾患の薬、オーファンドラッグだとかウルトラオーファン、こういうものはなかなか症例が集まらないということがあります。

 そういう意味では、海外のいろいろな症例も含めて、研究に使える、もしくは、出てきた場合には優先的にこれを承認するための審査に入っていこうということもやっておりますので、そういう意味で、難病の方々の新しい治療法に向かって我々も最大限努力をしてまいりたいというふうに思います。

 今のお話でありますけれども、昨年の八月に理化学研究所の方から、加齢黄斑変性という、加齢とともに網膜の病気でありますけれども、これに対する治療法ということで、再生医療、臨床研究が始まりました。これは、世界で初めて、今委員おっしゃられましたiPS細胞を使っての再生医療でございまして、大変期待がかかるところでありますし、我が国がそのトップランナーであることは間違いないわけであります。

 そこで、委員も厚生労働委員会に御参加いただいておりますから御理解いただいていると思いますが、薬事法の改正、それから再生医療安全確保法を成立させていただきました。条件つき、期限つきで、なるべく早く再生医療製品の承認をしていくでありますとか、それから、細胞培養の加工物に関しましても、今まで医療機関でしかできなかったものを、これは許可制でありますけれども、外部に出せるようにした。そして、何よりも、ちゃんと認定再生医療安全委員会、こういうものをつくっていただいて、そこにおいていろいろな議論をしていただきながらこの再生医療を進めていただく、こういうことを担保させていただいておるわけであります。

 とにかく、今、すばらしい技術が日本で育ちつつありますから、それを我々厚生労働省も真剣に応援をしていきたい、このように思っております。

上野委員 ありがとうございます。

 今、田村大臣の方から随分詳細に、既に御説明をいただいてしまったんですけれども、再生医療につきましては、大変高い期待が、多くの患者さん、また多くの国民の方々からかけられている。一方で、実際に研究をしている方に話を伺うと、まだまだ課題はたくさんあるという話も聞いております。随分高い期待を国民の皆様が持っている、それと、実際の研究開発の現場の方々は大変御努力をされているわけでありますけれども、一方で、そこのギャップというのは実際には随分あるんじゃないかなというふうに思います。

 総理は施政方針演説の中で、小腸に病気を持つお子さんの話をされました。愛ちゃんがいつか自分の口で食事をできるようにしたい、そのためにも再生医療をしっかり進めていきたい、そういう話も総理の方でもされたというふうに記憶をしております。

 一方で、今現在、再生医療の現場で研究が進められているのは、例えば角膜であるとか網膜であるとか軟骨であるとか、いわゆるほぼ二次元のもので進められていて、では、例えば三次元の臓器の再生というのがどのあたりまで今のこの時点で現実的なものになっているのか、ここは実は随分ギャップがあるのではないかなというふうに思っています。

 再生医療が本当に夢の技術であったときには漠然とした期待感があって、何となく、研究が進めば新しい肝臓ができる、新しい腎臓ができる、そういう思いも多くの方々が持っていたんじゃないかなというふうに思いますけれども、研究が進んでいってそれが現実のものになっていく、手が届きそうなところに来たからこそいろいろな難しい課題が実は見えてきた、そういう状況でもあるんじゃないかなというふうに思います。

 政府の方では、当然、研究開発予算、再生医療に関する予算をしっかりとつけていただいていて、私も、これ自身はしっかりと研究開発をやっていくべきじゃないかなというふうに思うわけでありますけれども、これは、ただ単に予算をつければ研究開発が進むというわけでもない。個別に研究をされて、それが論文になったからそれが実用化につながるといったわけでは必ずしもないというふうに思います。

 出口をしっかりと見据えて、では医療の現場でどうそれが使われていくのか、幾つもある再生医療の分野において、ではどれを優先順位をつけて進めていくのか、または、保険のようなものをどうやっていくのか。

 単に研究開発、物づくりだけではなくて、そういった仕組みづくりをしっかりやっていかないと、研究開発予算というのは、何となく切りにくい、たくさん予算がつく分野でありますけれども、大事な分野であるからこそ、つけた予算をしっかり効果的に使っていくということが必要なんじゃないかなというふうに思います。

 ぜひ、これから先、ギャップがあるといっても、その夢に向けて、期待を持たれているところに向けて、我々研究開発を進めていかなければいけないわけでありますけれども、そこに向けたしっかりとしたロードマップ、またマイルストーンを持って進めていくということがこの分野については特に大事なんじゃないかなというふうに思います。ぜひ、その点について、お考え、この先の取り組みについてお答えをいただければと思います。

下村国務大臣 研究開発ですので、文部科学省の方から御説明申し上げたいと思います。

 御指摘のように、革新的な再生医療のいち早い実現に向けた研究を推進することは必要でありますし、先ほど田村厚労大臣がお話しされました加齢黄斑変性に対するiPS細胞を用いた世界初の臨床研究が昨年八月に開始され、ことしの夏ごろには患者さんへの細胞移植が具体的に実施される予定でもございます。

 現在、より多くの疾患に対する再生医療の実現に向けた研究を推進しているところでございますが、いち早く御指摘のような成果を創出していくという観点から、一つには、京都大学iPS細胞研究所を中心とした研究機関が連携して研究を進めるネットワークを構築するということ、それから二つ目に、研究課題に対し年限を区切った達成目標を設定し、その進捗状況を管理するなど、効果的、効率的な研究の推進を図ることが必要だと思います。

 今後とも、厚労省等関係省庁と十分に連携をしながら、社会的ニーズを踏まえまして、革新的な再生医療についての実現に向けて取り組んでまいりたいと思います。

上野委員 ありがとうございました。

 再生医療につきましては、大変高い期待が国民の皆様からかけられております。そこに行く道のりが、決してこれは平たんではないと思うんですけれども、ぜひ政府の方でもしっかりと取り組んでいただいて、また我々もできることをしっかりと協力していきまして、いい形で国民の皆様方の医療、社会保障を向上できるように頑張っていきたいというふうに思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

森山委員長代理 この際、坂本祐之輔君から関連質疑の申し出があります。園田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。坂本祐之輔君。

坂本(祐)委員 日本維新の会の坂本祐之輔でございます。

 まず初めに、このたびの記録的な大雪により、大きな災害が発生しております。この大雪の災害でお亡くなりになられた方々に心からお悔やみを申し上げます。また、被害に遭われた方々にお見舞いを申し上げます。

 私の地元埼玉県におきましても多くの被害が発生をいたしました。このようなときにこそ、地域の声をしっかりと受けとめ、一刻も早く地方自治体が復旧に向けて対応しやすいように、政府が支援すべきと考えます。このことを強く要望いたします。

 さて、本題に入ります。

 教育委員会制度改革は、我が国の戦後教育の抜本的改革案の中心的なものであると文部科学大臣はおっしゃっておられました。

 質問いたしますが、なぜ今教育委員会制度の改革を行うのか、教育委員会制度についての課題について、文部科学大臣の認識をお伺いいたします。

下村国務大臣 教育委員会制度は、戦後一貫して、教育の政治的中立性、継続性、それから安定性を確保するという意味では一定の機能を果たしてきたというふうに思いますが、一方、さまざまな課題があると考えております。

 具体的には、一つには、合議制の執行機関である教育委員会、その代表者である委員長、事務の統括者である教育長との間で責任の所在が不明確である。二つ目に、直接選挙で選ばれる首長との意思疎通、連携に課題があり、地域住民の意向を十分に反映していない。三つ目に、教育委員会が事務局の提出する案をただ追認するだけで、審議が形骸化しているのではないか。四つ目には、非常勤の委員の合議体である教育委員会では、日々変化する教育問題に迅速に対応できないのではないか。こういう課題があるというふうに認識しております。教育現場で起きる問題に教育委員会が的確に速やかに対応できていない、そのことによって発生している事態もございます。

 このため、地方教育行政の権限と責任を明確化し、全国どこでも責任ある体制を築くため、教育委員会制度の抜本的な改革が必要であると考えております。

坂本(祐)委員 ありがとうございます。私も大臣の御指摘のとおりだと考えます。

 私は、埼玉県東松山市の市長を十六年間務めました。教育行政には責任を持って取り組んでまいりました。東松山市の人口は九万人でございますが、このような人口十万人以下の市町村は、全国千七百十九の市町村のある中で、約八割を占めております。

 私の経験から申し上げれば、教育行政の現場では、教育委員会ではなく、市町村長が教育行政に責任を持って取り組んでいるのが実態であります。だからこそ、私に教育委員会から報告があったことや、あるいは、私が見聞きしたことについては教育委員会を通して対応することができました。しかし、教育委員会で情報がとめられていて、首長まで情報が上がってこない事案については、教育委員会が形骸化している場合、ほとんどこのような状況であると思いますが、事案が放置されてしまう。まさに大津市で発生した事件のようになってしまうということであります。

 また、学校教育の現場においては、学校の経営責任者は校長であります。その校長は、学習指導要領に基づいて教育計画あるいはカリキュラムをつくって、学校の運営をしっかりと行っています。まさに、校長に任せるべき、そしてそのことに首長が責任を持つべきと考えております。

 ここでお伺いいたしますが、首長が教育行政に対して責任を持つべきと考えますが、大臣のお考えをお伺いいたします。

下村国務大臣 現行制度におきましても、今お話ございましたが、首長は教育委員の任命や予算編成それから執行を通じて教育行政に重要な役割を担っているわけでございまして、教育行政は、教育委員会と首長の調和と連携のもとに進められるということが必要だと思います。

 教育再生実行会議の提言におきましては、地方教育行政の権限と責任を御指摘のように明確化するため、地域の民意を代表する首長が、教育行政に連帯して責任を果たせる体制にする必要があるとされておりまして、そのような方向での改革が必要であるというふうに私も考えております。

坂本(祐)委員 ありがとうございます。

 さて、我々日本維新の会は、この教育委員会改革については、昨年、議員立法を提出しております。これは、教育委員会制度を廃止し、首長に責任を一元化し、首長が教育部局の長を任命、その部局の長が、教育基本法や学校教育法に規定される教育の目的や目標の実現のために、首長の指揮監督のもとに事務をつかさどるものという内容であります。

 先般、政府におきましては、中教審よりA案とB案が示されました。また、報道によりますと、御党の中で新たな別の案、仮にこれをC案と呼ばせていただきますと、このC案が議論をされているとありました。

 A案その他を簡単に説明いたしますと、A案は、教育委員会は残るものの、首長を教育行政の最終決定執行機関とし、教育委員会は附属機関に格下げとなる、これは我々の案に近いものだと思います。B案は、首長が教育長を任命するものの、責任は教育委員会に残ったままということですから、ほぼ現状と同じ。C案は、首長は代表教育委員の任免を行う、また、仮称ではありますけれども、総合教育施策会議をつくり、首長、議長、教育長、教育委員、有識者で構成をする。ここでは、教育計画や学校の設置、廃止、あるいは教職員の給与水準の決定等を行うとあります。

 教育委員会が執行機関として責任を持っていく、そして首長からの独立性を保つということになっておりまして、私は、この施策会議というものについては、現状の市長を取り巻く環境、首長を取り巻く環境、すなわち、教育委員も教育長も議長も毎日のように顔を合わせているわけでございますから、設置をするほどの意義があるかということについては疑問でもあります。

 首長でなく、教育委員会がそのまま残るという点では、B案もC案も変わらない、抜本的な改革案ではないと考えます。B案では何も変わらない、C案は与党内の妥協の産物である、A案であれば、成立に向けてともに議論を進めていくことができると考えております。

 ここで質問いたしますが、大臣として、今後どのように改革を進めていくのか、御所見をお願いいたします。

下村国務大臣 まず、日本維新の会が国会に提出した法案でありますが、地域の民意を代表する首長が教育行政に連帯して責任を果たせるような体制にするということは必要であるというふうに思いますし、また中教審が答申をしたA案も、この案に近い部分もございます。

 ただ、これは両方課題があるということで、中教審でもB案が付記されたわけですが、それは首長の判断によって教育内容等が大きく左右されるなど、教育の政治的中立性、継続性、安定性が損なわれるおそれがあるということは、やはり、あるのでございます。

 そういう中で、与党の中においてもいろいろな議論があるということで、与党協議をお願いすることにいたしました。その中で、御指摘のような、新たなC案が出てきたわけでございます。

 そのC案の中で、御指摘の総合教育施策会議、これを法律上どう書き込むか。それから教育委員会も、今までのような教育委員会をそのまま残すということではないということだそうですので、総合教育施策会議と教育委員会の法律的なすみ分けをどうするかによって、首長が教育に対して責任を持つという体制にも十分なり得るものであるということで、方向性については、A案に沿った方向性も踏まえて議論していただいているということでございますので、今後、与党の中で丁寧に議論をしていただきながら、政府・与党一体となって教育委員会制度についての抜本改革案を出したいと思います。

 ぜひ、その中で、日本維新の会も一緒に御議論していただきながら、よりいいものを目指していければと思います。

坂本(祐)委員 ただいま教育の中立性について御見解をいただきましたけれども、この件に関しましては、我が党の案においては、教育振興基本計画を議会に提出してチェックを受けるということでありますし、また教育基本法の十四条の二に、この中立性が明記をされております。私は、この点に関しては中立性を保てるというふうに考えております。

 再度申し上げますけれども、教育委員会制度改革は我が国の戦後教育の抜本的改革案の中で中心的なものであると大臣がおっしゃっておられた以上、少なくともA案に絞るべきなのではないか。我々は、A案であれば、よりよい法律をつくるためにともに議論をすることができると考えています。

 文科大臣、大臣は本当はお心の中で、今でもA案で進めるべきだとお考えになっていらっしゃるんだと私は思いますが、いかがでしょうか。

下村国務大臣 中教審の答申は、基本的にはA案で、付記してB案、そもそもそれは教育再生実行会議の提言からスタートしたことでございますので、政府のスタンスとしては、それを中心に与党の中で議論をしていただきたいというふうに思っておりますし、与党の中でも当然それを前提に議論をしていただいておりますので、それに沿った、まだこれからでございますから、最終的な結論が出るのではないかというふうに期待をしているところでございます。

坂本(祐)委員 総理も大臣も、首長に権限を持たせる、責任を持たせるべきだというお考えをお持ちなんだということを私は存じております。

 最後にお伺いをいたしますが、総理にお答えをいただきたいと存じます。

 改革政党である日本維新の会の提出した抜本的改革案を踏まえ、地方教育行政における責任体制を確立すべきと考えますが、御見解をお伺いいたします。

安倍内閣総理大臣 昨年四月の教育再生実行会議の提言においては、教育長を地方教育行政の責任者と明確に位置づけるとともに、教育の政治的中立性や継続性、安定性を確保するための制度上の措置を講ずるとされております。この提言を踏まえて、与党の御意見もいただきながら、責任の所在が曖昧な現行の教育委員会制度を抜本的に改革していきたい、このように考えております。

 与党の議論がまとまり次第、国会に提出をさせていただき、また、御党とも建設的な議論を進めていきたい、このように考えております。

坂本(祐)委員 ありがとうございます。

 私が市長在職中、春に行われる教育委員会の教員辞令交付式において、着任された先生方に、教鞭をとるに当たり、校長や教育長や教育委員長の方を向くのではなくて、常に子供たちの方を向いてほしいと挨拶を行っておりました。

 国政において、大きな政府、小さな政府の議論がありますけれども、私は、学校教育においても、小さな教育行政論でよいと考えます。その分、そこに費やす労力と時間を学校現場の充実に充てるべきではないでしょうか。

 教育の大切なことは、先生が教育に専念できる環境をつくり、落ちついて子供たちと一秒でも長く触れ合い、活動する時間をつくることだと思います。教育は子供たちのためにこそあるということを政府はしっかりと認識をして、政策を実現するべきだと考えます。

 以上、申し上げ、質問を終わります。

    〔森山委員長代理退席、委員長着席〕

二階委員長 この際、中田宏君から関連質疑の申し出があります。園田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。中田宏君。

中田委員 日本維新の会の中田宏でございます。

 きょうは、済みません、風邪の後遺症で喉がやられていまして、大変聞き苦しいかもしれません。畏敬の念をいつも払っております麻生財務大臣の声に私は憧れていたんですけれども、あの声を通り越して、何やら聞きづらい声になってしまうかもしれませんけれども、きょうはお許しをいただきたいというふうに思っております。

 私も、きょうは教育です。

 本当に、教育、せっかく教育委員会制度、戦後長らくのこの制度、詳しい歴史の経緯は話しませんが、GHQが日本にある意味では強要した、これはもう事実関係としてはっきりしていますね。それ以来続いてきたこの教育の制度を、ようやく安倍政権で、ようやく教育に熱い情熱を持つ下村大臣のもとで変えようというんですから、これは中途半端なものにしてほしくない。

 日本のこれまでを振り返れば、どうしても、一回変えたものは、すぐさままた変えようということにはなかなかなっていきません。一回変えたものを、来年だ、再来年だに変えましょうと言ったって、始まったばかりじゃないかと言われるのが落ちです。

 そういう意味では、ここは本当に本質的な議論を行い、そして、本質的なところに根差した、問題点を解決できる、そうした制度改変ができるように、下村大臣にはちょっときょうは本当に議論を申し上げたいと思いますから、大臣にはぜひ前向きに答弁をいただきたいと思っております。

 総理の教育に対する御見識も冒頭お伺いをしたいというふうに思っておりますが、まず、ちょっとテレビをごらんの国民の皆さん、NHKの視聴者の皆さんにもお考えいただきたいと思うんですが、最近の事例でいいますならば、新聞にこんな報道が出ておりました。

 福岡県の高三男子生徒が昨年十一月、いじめを受けていた、そのことを示唆する内容をメモで残して自殺していた。これは先週のことであります。

 文部科学省は、こうした件に関しては当然調査をしておりまして、児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査というものがございまして、ここにおいて、学校から報告があったものについてしっかりと集計をしてございます。

 さあ、考えてください。日本全国で、一体、年間どのくらいの児童生徒が自殺をしているか。自殺ですよ。事故とか病気とかじゃないですよ、自殺です。これからの将来に希望を持てる児童生徒、どのくらい自殺していると思いますか、一年間で。

 まあ、クイズをやってもしようがないから答えを言います。昨年、平成二十四年度、二〇一二年度で自殺をした生徒児童は、百九十六人です。百九十六人、誰も少ないとは思っていませんよね。多いですよ。恥ずかしくてとてもほかの国に言えないですよ、こんなことは。二百人にならんとする子供たちが、みずから命を絶つ国。これは、我々大人、そしてなかんずく政治家は、真剣にこの問題に向き合わなければならないと思います。

 ちなみに、福岡の先ほど御紹介した例は、いじめが起因でありました。このいじめの認知件数は、平成二十四年度で、一年間で十九万八千百八件。そうすると、一日当たりどのくらいだと思いますか。一日当たり五百件ですよ、いじめの認知件数が。これも少ないなんて誰も思わないですね。多過ぎると思いますね。五百件のいじめの件数が毎日報告されている国なんです。しかも、これは報告されたものだけです。

 私が言わんとしていることはおわかりのとおりで、教育委員会に素直に報告が上がっているとは思えないわけでありまして、そういう意味では、これは氷山の一角という言い方をしてもいいというふうに思います。

 まず、この学校教育におけるいじめであるとか、また、そこから発生をする自殺であるとか、ここについてはしっかりと大人が責任を持たなければいけない。すなわち、教育現場、ここが責任を持っていかなければいけないと思います。

 下村大臣にお伺いしたいと思いますが、こうした自殺やいじめと、一方では我々が今から論ずる制度論、これとの因果関係を分析してくださいとは言いません。だけれども、制度と、一方でこのさまざまな自殺やいじめということとの、感想、文部大臣はどういうふうに整理されますか。

下村国務大臣 御指摘のように、平成二十四年度の児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する報告書、これでは児童生徒の自殺が百九十六件ですが、警察の調査では実際三百件を超えているんですね。ですから、恐らくもっと数が多いのではないかと率直に思います。

 いじめ認知件数は約十九万八千件、これも深刻な数字だというふうに思います。私は、地元の小学校の周年行事があったとき、校長先生にお聞きしたら、そこの学校ではいじめはほとんどないというふうに校長先生はおっしゃっていたんですね。私は、生徒に直接、いじめを見たり、聞いたり、自分がしたり、あるいは受けたりした子は手を挙げてと挙げさせたら、七割が手を挙げているんですよ。校長先生はゼロだと思っていても、実際、子供同士では、そういう実態があるんですね。ですから、これは単に教育委員会だけの問題ではないと私は率直に言って思います。

 ただ、教育委員会の問題というのは、大津の事件も、それから大阪の事件もそうでしたけれども、事前にそういうものが通報されているにもかかわらず、放置していたことによって結果的には子供がみずから命を絶ったという制度上の問題もあることも事実ですし、昨年の国会では、これは議員立法で、いじめ防止対策法を通していただきました。まさに、オール・ジャパンでいじめについて対応していく必要があると思いますし、自殺についても対応していく必要があると思います。

 その中の一つとして、教育委員会の抜本改革案ももちろん必要ですが、ただ、抜本改革ができたからといって、いじめや自殺がなくなる、ゼロになるということではありませんが、しかし制度設計として、戦後の抜本改革をしていくことは必要なことだと思います。

中田委員 ありがとうございます。そのとおりだと私も思います。

 大臣が今おっしゃられた中で、教育委員会制度が全ての起因ではない、しかし、報告があってもうやむやにされていたり、こういった中において教育委員会制度の問題というものもある、こういう答弁でありましたけれども、私はそのとおりだと思うんですね。

 例の大津の事件、いじめ、そして自殺、これは当然教育委員会の耳に入ったけれども、教育委員会自身が早々に調査を打ち切って、そしてうやむやにしようとしたわけですね。あるいは、大阪市立桜宮高校の体罰、自殺、これについては、もう生徒が自殺をする一年以上前のことです。一年以上前に、これはバスケットボール部の顧問が日常的にすさまじい体罰を繰り返しているということが大阪市の公益通報制度において入っていて、そしてそれが教育委員会にも伝わっていたんです。

 ところが、これは調査もしなかったわけです。なぜ調査しなかったか。それは、教育委員会に情報が入り、教育委員会の指導主事が桜宮高校に飛んでいったんです。しかし、この指導主事というのは教員上がりですね。そして、一つの教員の村社会ができ上がってしまっています。いわば身内なんです。

 しかも、大阪の場合は、これは大阪だけではなくほかでもあり得る、往々にしてある話なんですが、校長の後輩が教育主事をやっていたんです。そうなったら、教育主事が校長に対して、調査をちゃんとしろと教育委員会の命を受けて言ったところで、校長は声を荒げて、調査はしないと。こうやって、それはそのままうやむやに終わったんです。そして、一年後に自殺なんですよ。

 すなわち、教育委員会というところが適切な措置というものをとれる、残念ながら、そういう機能は今失われているわけです。もともと失っていた、こういうふうに言っていいかもしれません。

 その意味において、教育委員会の改変をしていくときに最も重要なのは、責任、これの所在を明確にすることだと私は思うし、このことは論をまたないと思うんです。

 安倍総理、総理は今国会冒頭の施政方針演説の中で、「いじめで悩む子供たちを守るのは、大人の責任です。教育現場の問題に的確で速やかな対応を行えるよう、責任の所在が曖昧な現行の教育委員会制度を抜本的に改革します。」こう安倍総理は述べられましたよね。

 さて、この責任を明確化するということが今次の教育委員会制度の法改正において最も重要なことであることは、安倍総理自身がこうやって認識をしておられますけれども、このこと、あえて確認をしますけれども、お変わりございませんよね。

安倍内閣総理大臣 現行制度においては、教育委員会、そして首長もそうでありますが、教育長、そして学校、それぞれの責任を持っているわけでございます。

 その中において、教育委員会は、全体としての責任でありますが、誰が責任を持っているかということが明確になっていないというところに最大の問題があり、今御指摘をされたようないじめの問題等について機敏な対応そして最終的な判断を下すことができていない、ここに大きな課題がある。判断ができないというところと、やはり責任が明確でないですから、責任を誰かとるということにもならないんですね。ですから、私は、そこに大きな問題があるんだろう。

 そういう観点から、教育委員会も含めた教育行政の改革を行っていきたい、こう考えているところでございます。

中田委員 明快な答弁でありました。私も全くそのとおりだと思います。すなわち、これから議論をしていく土俵が、下村文科大臣並びに安倍総理のもとに、私は、大変生意気な言い方をしますけれども、土俵ができたと思います。

 どうやって責任体制を明確化していくか、このことを教育委員会制度の改変で私たちはしっかりと制度の中に埋め込まなければいけないということであります。

 そこで、既に我が党の坂本委員から、先ほどA案、B案という話がありました。これは、中教審に基づくA案、B案ということで、今月三日、予算委員会で私もこれを下村大臣にお聞きしました。そして、A案であるならば我々は大いに議論の土俵に乗れる、こう申し上げたわけであり、下村大臣も、大いにA案を基本として議論を進めてもらいたいと与党に注文を言い、そして、私たちにも、その上でできるだけ多くの賛成を得たい、こういうふうにおっしゃっていたわけであります。

 そこに私たちは期待もしているし、申し上げたとおり、戦後初めての教育委員会制度の改変なんですから、与野党でいいものにしようじゃありませんか、こういうことに向けて、下村大臣の先般の答弁というのはさすがだ、私はこう思ったわけであります。

 さて、そこで、A案、B案はもう蒸し返しませんが、今、C案なるものが出てきております。このC案というものは、先週から与党の協議の中で出てきたようでありますが、ちょっとパネルをごらんいただきたいと思います。

 このC案、お手元の資料、パネルをごらんいただきたいと思いますが、首長が代表教育委員なる人を、斜めに引っ張っている矢印にあるように、任命、罷免の権限があるということになります。そして、代表教育委員は教育長と教育委員長を合わせたものであるということであります。さらに、教育委員は非常勤で教育委員会を構成する、こういう形になっている。一番左に総合教育施策会議というのがありますが、ここで、首長も入って、教育の方針についてまとめていこうということになっています。これはまだ検討途中の案ということだとは十分承知をしております。

 その上で、これから先、このC案なるものが、与党から出てくるものも、できる限り責任の所在が明確になる、そのことを私は願っているし、そして、C案がそのまま政府案になるとも思えないわけでありまして、政府案がそれをもとに、また参考にしながらつくり上げられてくるというふうに思いますけれども、ここで、果たして責任、先ほど来、総理も、そして下村大臣も言った、責任というものがどれだけ明瞭になるのかということについて、このC案を下村文科大臣はどのようにお考えでありますか。

下村国務大臣 実際、このC案は、自民党の中の小委員会の幹部の皆さんが私のところに説明に来ていただいて、考え方として、今まで中教審で答申を受けたいわゆるA案でありますが、これは地域の民意を代表する首長の意向を教育行政に反映させることに重きを置いた案なわけでございますが、この方向であっても、これは前から答弁もさせていただいていましたが、やはり政治的な中立性と、それから継続性、安定性、こういう部分では課題があるということは事実なわけですね。そのために、中教審でも、A案だけでなくB案も付記されたという経緯がございます。

 そういう中で、このA案とB案を調整するような形で今御指摘のC案が出てきたという経緯がございます。

 方向性としては、首長がより教育長に対して任命権や罷免権を持って、それから、この総合教育施策会議というところで教育における大綱を決めるということでありますから、これは今までの教育委員会制度とは抜本的に、首長の権限をより強化する方向での議論であることは間違いありませんから、方向性については共有する部分があるということを考えております。

 ただ、これはまだ自民党の中で実は議論されておりません。今週中に、自民党の中で、文部科学部会で議論をされ、その結果を踏まえて、来週、与党、自民党、公明党の実務者協議で議論されるということですから、このとおりの案が出てくるかどうかということはまだ全くわからない段階であるということと、それから、このC案においても、それでは総合教育施策会議をどう位置づけるのか、それから教育委員会をどう位置づけるのかということについては今後の議論でございますので、その議論を見守りたいというふうに思います。

 しかし、御指摘のように、法案を出すのは政府ですから、実際に法案、法律は政府がつくりますので、それぞれ、総合教育施策会議も、それから教育委員会制度も、今までの教育委員会とは違う形で、ぜひ与党の中で議論をしていただいて、政府・与党が一体となって出せる法案づくりをまず与党の方でしっかりまとめていただきたい。それを見守りながら、今いるというところでございます。

中田委員 見守りながらとありましたけれども、下村大臣には、単に見守るだけでなくて、大いに口を挟んでいただいて、今までおっしゃっていた方向、私たちは大いにこれに賛同するんです、そこに向けて、冒頭言ったように、中途半端にならないように、これは見守らない、口を挟む、こうしていただきたいと思うんです。

 今大臣のお話をお伺いしていて、方向性はいわば同じであるということでありました。私もそう思います。方向性は同じなんですが、C案、これはまだまだ議論途中ですから、確定的なことは言えませんが、このC案を見る限り、方向性は間違っていないけれども、一歩前進ぐらいの話ですね、私に言わせれば。

 なぜかというと、先ほど総理も答弁されたように、私は議論の土俵が整った、こう申し上げたように、責任者は誰なのかということが、このままでは、これは中途半端なんです。というよりも、はっきりしないんです。

 いや、それは、首長が代表教育委員というのを任命、罷免できますよというふうにしたというけれども、これは今までだって、教育長は、当然ですけれども、首長は教育長含みで委員を議会にかけていたんですよ。いわば、事実上、首長が教育長は決めていたんですよ。

 その教育長は、唯一の常勤の教育委員なんです。それ以外は非常勤なんです。非常勤というのは、一月に一回来て、一時間程度、よろしいかと聞かれて、よろしいですと答える、これが非常勤教育委員の仕事だと私は申し上げました、先般の二月三日の議論で。それに毛が生えたぐらいの議論しかなされていない教育委員会において、今までだって教育長は首長が任命していたんです。

 それを、教育長と教育委員長、どちらが上なんだという曖昧さもあった、ここが統一されたことは、まあよしとしましょう。すなわち一歩前進です。

 しかし、このパネルを見ていただいて、「教育委員会(執行機関)」と書いてありますけれども、これまで同様に、執行機関としての教育委員会は残るんですね。すなわち、教育の執行に関しての責任者は誰なのかといったら、これはC案のいわば基本になっていますけれども、責任者は教育委員会なんですね。これでは明確にならないんです、責任が。

 下村大臣にとっては耳ざわりなことを申し上げますけれども、二月七日付の産経新聞はこう書いています。下村大臣のメンツは立てられるが、実質的に現行制度と変わらないという文科省幹部のオフレココメントを紹介している。

 耳ざわりだと思います。誰が言ったか、無責任な発言だ、こういうふうになると思いますが、私は、この新聞記事もかりながら、やはりその感は否めないと思うんですね。これは誰が責任者なんですかと今まで論じてきた、責任者がいないまま、教育委員会が引き続き責任を持ちます、これでは根本のところが変わっていないんですよ。

 私は、皆さんにお考えいただきたいと思いますけれども、仮に、日本の政治に誰が責任を持つか。今、安倍総理が持っていますよね、責任を。だけれども、閣議という合議体で責任を持ちますといったらどうなりますか。緊急事態のときに、みんなで相談して決めますと。では、野球で、ジャイアンツでも楽天でもどこでもいいけれども、では、誰が責任を持つんですか、監督じゃない、監督も含めたコーチ会議で責任を持ちます、これでその瞬間瞬間のサインを出せますか。出せないんですよ。

 合議体というのは、聞こえはいいけれども、中立性の担保、このことがあたかも合議体、そういうふうにここはどうも議論がなりがちだけれども、そうじゃない。合議体というのは、まさに無責任、それをそのまま継続してしまうのがこのC案なんです。ここをしっかりと、大臣、口を挟んでくださいよ。このまま見守りますでは、おかしな方向に行っちゃって、我々はそれこそ反対せざるを得ない。

 これは民主党も多分反対しますよ。午前中の議論で笠議員がおっしゃっていました、民主党案も教育委員会は廃止です。私たち日本維新の会も、廃止です。しかし、中立性をどう担保するのかは、これは考えています。その意味では、これではだめだと。大臣、口を挟んでください。いかがですか。

下村国務大臣 私も産経新聞の記事を読みましたが、同時に、各紙がみんなそれぞれ違う立場で、自民党から出てきたこのC案については、それぞれの立場の論評があって、産経新聞的な見方の記事はそれだけであって、それ以外の見方もそれぞれある。

 逆に言えば、中身がまだ決まっていないんですね。この総合教育施策会議の中に、法律上、何をどう盛り込むのか。それから、教育委員会が今までと同じような権限をそのまま持った常任としての執行機関であれば、御指摘のようなこともあり得る話だと思いますが、この教育委員会の中身についても、総合教育施策会議とどうすみ分けをするかということについては、今後の与党協議ということになっておりますから、まだ決まっていないということです。

 ですから、そういうような御指摘も踏まえて、きょうは与党の実務者の方々もこの予算委員会を聞いておられると思いますので、当然、その趣旨をよく理解されながら、これから決めていただけることだと思います。

中田委員 もう一枚パネルをごらんいただきたいと思います。

 これは、我が党維新が出している維新案、そして中教審で先般来議論してきたA案、これなら議論できますねと私が申し上げたこの案、そして今回のC案、これをわかりやすく整理いたしました。恐らくこの整理には異論がないと思いますが、異論があったらお聞かせをいただきたいと思います。

 まず、責任者は誰かということですが、総理もおっしゃった、責任者を明確にするという意味において、維新案は首長です。A案も首長です。C案は教育委員会です。

 実務担当者は誰か。これは教育部局の長、教育長、代表教育委員。これは、名称の違いはあれど、それなりに同じでありましょう。

 そして、教育の中立性の確保。これは、私ども維新案も民主党案も教育委員会は廃止すると言っているけれども、当然、中立性は考えますよ。当たり前だけれども、教育がころころころころ、中立性なきままに恣意的に操られたのではかなわぬということについてはちゃんと考えているわけです。

 維新案は、議会の議決を経て教育振興基本計画を定める。すなわち、今までは、教育振興基本計画というのは出さなくてもいいんです。だけれども、これは義務づけましょうと。ある意味では、分権を目指している維新からすれば、地方政府に義務づけるというのをふやしたくはないんです。だけれども、必ずこれは出してください、そして議会のチェックを必ず受けてくださいということを言うことによって、議会であまたある案件のチェックの中に入るのではなく、教育に関してはチェックする機会を必ず一年に一回設けるんだというのが維新です。

 そして、A案、ここにおいては、教育委員会が、いわば執行機関や責任者ではなくなるけれども教育の中立性確保のために点検、勧告を行っていきましょうということで、ここがチェック機関です。

 C案は、教育委員会がそのまま存続しますから、これは教育委員会が執行機関としての中立性。一方で、いわば、我々のようにチェックをする機関ではないわけですね。ある意味でいったら、チェックする機関は誰なんだという話になるのがC案。

 そして、指導行政からの脱却。

 これはちょっと後でも時間があったら議論したいと思いますけれども、今の日本の地方教育行政の中で最大の問題、もう一つあるのは指導行政なんです。指導行政という名のもとに曖昧なことが繰り返されている。さっきの大阪市立桜宮高校も、指導主事が校長に指導に行った、だけれどもいわば突き返されて終わりというこの指導行政。すなわち、命令をできる人がいないんです。そういうところに今の日本の教育委員会制度の曖昧さがあるわけです。

 C案はどうなっているかというと、緊急時に首長が教育委員会に措置要求ですよ。何とかしてよ、教育委員会と首長が言えるというところでとどまっているわけで、これも命令をすることとは違います。こういう違いがあるわけですね。

 大臣も総理も、先ほどから言っているように、誰が責任者なのかを明確にしろと言っている、そのことにこのC案は全然なじみません。そうでしょう、下村大臣。

下村国務大臣 この相違点は、二つちょっと適切でないというふうに思います。

 一つは、まず、このC案の、教育委員会を存続という前提が、今までの教育委員会がそのまま存続するという案ではないということですね。そのために、先ほどのパネルでありました総合教育施策会議をつくって、その総合教育施策会議というのは首長が主宰者として教育の大綱を明確に決める。ですから、今までの教育委員会の中身を総合教育施策会議と新しい教育委員会に分けるということで、旧来の教育委員会がそのまま存続されるということではありませんから、この図は正確ではないということがまず一点。

 それからもう一つ。維新の案で、教育振興基本計画を定めることによって教育の中立性が確保できるということですが、本当にそうなんだろうかということについては、中田委員も市長をされておられたので考えていただきたいと思いますが、これは、第一次安倍内閣のときに新しい教育基本法を、まあ変えたわけですね、戦後の抜本教育改革として。そのときに教育振興基本計画をつくるということを定めて、政府もつくっていますが、残念ながら、政府がつくっている教育振興基本計画も私は適切じゃないと思っているんですね。

 それは、数値目標が入っていないんです。五カ年計画であって、目指すべき方向性はあるけれども、いつまでにどう目指すかということが明確に数値として入っていないので、どれぐらい達成したかどうかということがわからない。ましてや地方自治体は、これは努力義務ですから、全てのところが教育振興基本計画をつくっているわけではないということと、それが、ある意味では、計画でどの程度達成したのかどうかということが、市民が、国民が見て明確に判断できないというところが問題点だと思います。

 それがそもそも教育の中立性の確保で担保できるのかどうかということになると、私は、教育振興基本計画そのものも、いろいろな課題はまだまだあるのではないか。ですから、今の教育振興基本計画があるから教育の中立性が確保できるとは、これは言えないというふうに思います。

中田委員 中立性というのをどう担保するかという議論で、今、教育振興基本計画であるとか、あるいは、今度C案で出てくる教育委員会の性格の変更とか、こういうことが大いに議論されるべきだと思います。

 先般の議論でも私は申し上げましたけれども、どうも教育の中立性というのが非常に拡大されて解釈をされている。何か、政治家が口を挟むことが教育の中立性を損なう、そのような解釈が、下村大臣は違いますが、もうあまた広がっちゃっているんですね。

 だから、首長が権限を持つと言っただけで、教育がいかに偏向するかというような議論ばかりがなされて、もちろん、そんなことがあってはならないことは百も承知だから、中立性を確保するためにはどうするかという議論を今しているわけだし、仮に首長がおかしな方針で偏向したものをやれば、それは、選挙というものがあるんです。そのために選挙をやっているんです。

 そういう意味では、余りにもこの教育の中立性というものが拡大解釈された中で議論が進んでいくことは、私は、これは下村大臣にしっかりと目を光らせてもらわなければいけないと思うんですね。

 先ほどのパネルをもう一回出しますが、このC案。私が申し上げたいのはこういうことであります。

 首長が代表教育委員を任命する。これは、先ほども申し上げたように、今までだって教育長は首長が任命していたんだということから含めれば余り変わりはない。そして、結局のところ、合議体の教育委員会がそのまま執行機関として最終責任を持つ。一部これは総合教育施策会議の方で責任を持つということになりますが、責任をいわば切り分けたという形になるわけです。

 しかし、先ほど申し上げたとおり、いざ子供の命がかかった、こういうときに、一年間で二百人も自殺している我が国のこの学校教育現場の現状に照らしたときに、私は、誰が責任者なのか、誰が子供たちの命を守るのか、ここのところが明確になっていなければ、C案は駄作ですよ。

 それは、もしも議論の途中であるというのであるならば、これは、誰がですよ、誰がというところを明確にするということは、下村大臣、しっかりとこれからの議論の中で担保してもらわなければ、我々は、こんなのは、下村さん、期待していたけれども全然だめだったと言わざるを得なくなります。

 誰がですよ、どこがではありません。人物として一体誰が責任を持つのか、このことを、責任を明瞭にする。それがさっきの総理の答弁であって、ここはよろしくお願いしますね。

下村国務大臣 それは、御指摘のように、もともと大津の事件や大阪の事件をきっかけとして、自民党が野党のときに教育再生実行会議を立ち上げて、その中で教育委員会の抜本改革案を既につくり、それを受けて、自公政権になった後、教育再生実行会議でそれを議論し、そして、中教審でさらにそれを答申していただいたという経緯でありますから、当然、めり張りのついた明確な責任体制がわかる形で教育委員会制度を抜本改革するということが改革の前提だと思います。

中田委員 その言葉を信じて政府案というものを待ちたいと思いますから、まずは、与党案、これが骨抜きにならないように、大臣には口を挟んでいただく。

 その上で、政府案を取りまとめていただくときには、仮に今言った誰がが明瞭でなければ、政府案はしっかりと誰がということを明瞭にする案にしてもらう、そのことがその後の国会議論にたえ得る案になるというふうに私は思います。それがなければ、私たちは、申し上げたとおり、何だ安倍政権、何だ下村大臣、勇ましいことを最初は言っていたけれども全然中身としては骨抜きだね、こう言わざるを得なくなりますから、そこはよろしくお願いをしたいというふうに思います。

 先ほどもちらっと申し上げましたが、指導行政というのは教育以外にも日本の中にいろいろと出てくるキーワードでもありますが、特に教育の中でも指導行政というのは時として問題になります。

 先ほど桜宮高校の話もしました。指導主事が指導しに行ったけれども、校長は聞く耳を持たずに、のこのこと帰ってきた。結果、生徒一人の命が失われるということです。結局、教育委員会制度を詳しく知らない方は、教育委員会はかなり強権を持っているんじゃないか、こう思っておられるんだけれども、全然違うんですよ。教育委員会は、そもそも合議体の問題を今まで指摘した、それに加えて、指導なんですよ。命令できないんですよ。こうしなさい、調査しなさい、こんなことすら言えない。ここは大問題なんです。

 しっかりと指揮命令系統がはっきりする、こういうことにしていくことも今回の教育委員会制度の改編においては極めて重要なポイントだというふうに思います。ここは、大臣、いかがお考えですか。

下村国務大臣 それはおっしゃるとおりだと思います。

 特に、義務教育については、文部科学省があり、そして都道府県の教育委員会があり、市町村の教育委員会があり、学校現場があって、ある意味では四重構造の責任が何にどう明確になっているのかということがはっきりわからないというところが、子供の視点に立った、子供第一の立場に立った教育が十分に進んでいない部分ということであると思いますから、その辺、きちっとしたそれぞれの明確な責任体制をつくっていくということは大切なことだと思います。

中田委員 ここも極めて重要なポイントでありますから、案を出す前に、おかしな案が出てこないようにしっかりと目を光らせていただきたいというふうに思います。

 時間がなくなってきましたから最後にいたしたいと思いますけれども、この教育委員会議論、大変に私たちは重要だと思っています。

 自民党が、ある意味では野党のときはもっと明瞭に言っていたなと思いますし、実は民主党は、私たちからすれば、本当に共通の方向性を持った案を指し示していますから、我々日本維新の会と民主党とは、先週の金曜日から、我々の案を一本化できないか、あるいは、仮に一本化できなくとも、政府に対して教育委員会を廃止するということは共通した点です、維新と民主党は。すなわち、それは、誰がという責任者を明瞭にしようと言っているわけであって、そのことについては少なくとも政府に、案が出てきた場合、仮に政府案がそうなっていなければ、これは修正を求めて一緒にやっていこう、こういうふうに考えております。

 大臣は、二月三日の私の質問に対して、維新の会には積極的に意見をいただきながら、できるだけ多くの賛同を得るようにしていきたい、こう言っているわけですから、我々の意見も聞いて、できるだけ多くの賛同を得て可決をしたい、こういう意思だというふうにお聞きをしました。また、きょう午前の笠浩史代議士の質問に対しても、民主党も維新の会も既に教育委員会制度改革案について出されているので、広く国会の中で議論をしてもらいたい、こう言っていますから、我々と大いに一緒に議論をしていこうと。

 ただ単に聞きおいて、聞き捨てますよというのでは態度は違うというふうに考えておりますから、その意味において、先ほど来申し上げているとおり、その議論にたえ得るものを出していただかないと困るという話であります。

 先ほども言いましたけれども、これはきょう午前の大臣の答弁ですね、これから与党案が出てきたものをたたき台として閣法をつくって国会に提出したいと思っている。与党案というのは、このC案というものですね、恐らく。これの中身をどうするかは詳細はこれからの議論だとおっしゃっていたんだけれども、しかし、いずれにしても、C案が与党案というもので出てくるのでありましょう。それを大臣はたたき台と言ってくれております。

 たたき台として閣法を提出したいと言っているわけですから、繰り返し繰り返し恐縮なんですが、私は、きょうはもうそこだけ、その一点を詰めに来たと言ってもいいぐらいであって、責任体制を明確にすること、誰がということをはっきりさせること、このことなくしてこの議論はだめですよということでありまして、これを最後にいま一度申し上げて、もし決意があれば一言いただいて、終わりにしたいと思います。

下村国務大臣 まず、閣法でございますので、これは与党と政府が一体となった法律案を提出するということが重要なことだというふうに思います。

 そういう意味で、たたき台というのは、法律をつくるのは政府側ですから、あくまでも、これは、与党で議論が集約してまとまればそれで法律をつくるという意味でのたたき台であって、全然違う案ができるということではなくて、あくまでも与党の意見がそのまま政府の意見にもつながってくる。

 ただ、それを法律の中でどう書き込むかということについては、これは、先ほど申し上げた総合教育施策会議と教育委員会をどうすみ分けるかということが、中田委員が言われている、責任を明確化するということにもつながってくると思います。

 それを法律の中で明確にできるようなものにするということが、これは政府の責任であるというふうに思いますし、戦後、教育の中で最も重要な教育委員会制度の抜本改革案ですから、ぜひこれは、与党・政府の案と野党が対立して法案を与党案だけで通すというよりは、できるだけ、やはり野党も含めた幅広い議論の中で、もちろん与党・政府はベストな法案を出すというのは前提ですけれども、その中で議論をしていただきながら、より深みのあるものが国会議論の中でしていただければと思います。

中田委員 終わります。

二階委員長 これにて園田君、上野君、坂本君、中田君の質疑は終了いたしました。

 次に、杉本かずみ君。

杉本委員 ありがとうございます。みんなの党の杉本かずみであります。

 冒頭、総理からももう御答弁いただいていますけれども、雪害につきまして、降雪災害につきまして、お昼のNHKニュースの時点で、亡くなられた方が全国で十五名、そして今なお雪の中に閉ざされている方がいらっしゃるという状況であります。山梨の早川町、東京の檜原村、孤立している状況。岩手奥州市でもそのような状況という報道がございました。

 みんなの党といたしましては、渡辺代表、そして被災地域の中島代議士、柏倉代議士から、十五日午前中にも、官房長官宛てに緊急対策の要請文を出させていただいております。みんなの党としては、みんなの党緊急雪害対策本部も設置しておりますので、政府と力を合わせてこの雪害に向かっていきたいと思っております。

 それでは、質問に入らせていただくんですけれども、済みません、大変恐縮なんですが、ちょっと順序を入れかえまして進めさせていただきたいのと、ちょっと、教育問題まで行ければと思っているんですが、下村大臣、行けなかったら事前におわびをということで申し上げます。

 まず、一票の格差の問題についてお話ししたいんですが、私は、安倍総理に質問をさせていただく機会というのは一年ぶりぐらいになります。その中で、私は、安倍総理の就任早々の所信表明演説というのを改めて読み返させていただいて、やはり総理の所信が一番重たいんではないかなという思いで、取り組ませていただこうということで読ませていただいたら、総理のお言葉は、「丁寧な対話を心がけながら、真摯に国政運営に当たっていくことを誓います。」こう言われておられました。

 そして、危機の突破についてですけれども、与野党の別を問わず、国政に携わる全ての国会議員が担うべき責任でもあるはずです、この場に集う全ての国会議員諸氏に訴えます、危機を突破せんとする国家の確固たる意思を示すため、与野党の英知を結集させ、国力を最大限に発揮させようではありませんか、各党各会派の御理解と御協力を切に求めてやみませんと、すごく重たい表明をされたなというのが、あのときの私の思いであります。

 その前に、総理は、総裁であったときに、野田元総理とも、党首討論で、定数削減であったり、あるいは議員の定数の是正について、解散のときに、一つお約束ですねというようなお言葉の中でやりとりがあって、今日を迎えていると思っています。

 昨年、私が質疑をさせていただいた板を実はまた持ってまいりましたけれども、その後、各地の高等裁判所の判決、そして、最高裁の判決もございました。

 そして、現在は、与野党協議が七日、十四日と開かれて、今ちょっと席を外されておりますけれども、前副総理の岡田克也さんから出されている、まだこれは野党五党案というような感じで言われているんですけれども、実際は民主党案ないし岡田克也私案なのかもしれないんですけれども、〇増五減という問題に対して、A案として五増三十減、B案として三増十八減、五議席ふやして三十議席減らす、三議席ふやして十八議席減らすということで提案をされておられます。

 先日の岡田さんの質問に対して、総理が、定数の是正ということにおいて言えば、〇増五減について、これは最高裁において評価されている、いや、高裁においても評価されているところがあるわけです、こうお答えになられておられます。

 そして、今申し上げた岡田私案は、七日の七党での協議の段階で、これは新聞報道でしか私は確認できていませんけれども、小選挙区定数減については、自公の与党側は賛成しかねる感じのことを言われ、そして、この十四日の与野党の実務者協議では、七党で話し合ってきたものと別枠で、定数削減に賛成でない共産、社民、改革の三党、別枠で十党での会議ということになっております。

 総理がおっしゃられた評価については、確かに、選挙前に是正の実現に向けた一定の前進と言える法改正が成立したという評価が最高裁の大法廷で言われておりますけれども、一方で、今後、格差二倍以上の選挙区がふえる可能性が高く、一人別枠方式、各都道府県に一枠ずつ多いということで、山陰だとかそういった地域が人口比で比べてちょっと厚くなるというような、一人別枠方式の構造的問題が最終的に解決したとは言えないが、段階的に見直しを重ねることも許容される、こういうことが述べられております。

 一言だけ、総理に、懐広く、去年の所信を思い出していただいて、お願いしたいと思っているのは、政治学で言うところの自由と民主主義、ちょっと僣越なんですけれども、大上段に言って恐縮なんですが、この自由というのは、例えば個人の権利であります。民主主義といえば、悪い言い方をすれば数の力、しかし、いい言い方をすれば少数意見を大切にする。この自由と民主主義を取り持つ解は正義だと言われております。

 すなわち、個人の権利と数の力、少数者の意見を調整できる答えは正義であるということをイギリスの政治学者等も言っているんですけれども、こういった点を踏まえて、懐広く、お立場としては、きょうは総理に伺っている一方で、自民党総裁であり、あるいは一国会議員でいらっしゃると思いますし、昨年の総理の所信をいま一度思っていただいて、そして、この一票の格差は一対二以内に〇増五減でとりあえずはおさまったんですけれども、将来はまたすぐ一対二を超えてしまう、そもそも一対二でいいのだろうか、こういう点について、一言、お言葉をいただければと思います。

安倍内閣総理大臣 この〇増五減についてでありますけれども、〇増五減の評価については、昨年十一月の最高裁の判決において、平成二十四年の衆議院総選挙の時点では違憲状態との判断がなされたものの、その後の〇増五減の区割り画定が一定の評価をされているわけでありまして、現在では、違憲状態とされた一票の格差は解消されたものと考えております。

 そこで、一対二。もちろん、いわば全て一票一票が平等になればいいという考え方はありますが、しかし、各地域における人口は変化をしているわけでありまして、その中において、また同時に各地域の代表も兼ねているわけでありまして、これが、やはりある意味においては重要な要素も持っているのも一方の事実であろうと思うわけですね。

 東日本大震災の際にも、その地域出身の議員が、地域とのつながりの中においてさまざまな課題を地域の皆さんから伺ってくるわけですね。そして、それを政府に届けていち早く解決に取り組んでいくということも、地域の代表がいるからできるという側面もあるわけでありまして、完全比例代表にすれば、当然それは一対一ということは実現するかもしれませんが、地方代表という観点も重要ではないか、このように私は思うわけであります。

 その中において、二対一と、二倍までは許容されるというふうな考え方を最高裁は示されているんだろう、こう思うわけでありまして、そして、その中において、一票の格差の問題については、〇増五減によって、現在、違憲状態とされた一票の格差は解消されている、このように考えております。

杉本委員 お言葉はよくわかりましたが、一方で、やはり昨年の所信に与野党の英知を結集しようというお言葉もあったかと思いますので、そういった意味では、与党側の実務責任者に対しても、少し幅広く対応するようにということを御指示いただければありがたいなと思っております。

 次に、北方領土の問題を、ちょっとまた恐縮なんですが。

 総理は、昨年プーチン大統領に四回会われて、そしてことしはソチに行かれました。その直前に、北方領土の日の全国大会で総理が御挨拶をされ、その前に私は座らせていただいて、間近に総理の決意を改めて認識したという次第でございます。

 ちょっと写真をごらんいただいて、上下二枚の写真でございます。北方領土の状況でございますが、これは、昨年、私が八月上旬に行った写真で、皆さんのお手元には三日と書いてあるんですが、四日の日曜日の写真が二枚の写真の方でございます。そして、私は、数年前、二〇一〇年にも一度、合計二度、北方領土へ入って、現地の変化を改めて認識してまいりました。

 総理にはいろいろと情報が入っているとは思うんですけれども、改めてきょうお伝えしたいと思っておりますのは、この上下の写真の下の側の写真を見ていただきますと、奥に総合病院が建設されておりました。赤い建物でございます。これが色丹島の穴澗のあたりの総合病院の建設でございますが、従前は全くこういったものは、私がその前、二〇一〇年に行ったときはつくられておりませんでした。

 そして、色丹島の開発は随分手が入っていないなという思いを持っておりましたが、昨年夏に行った段階では、色丹島は開発の手がつけられておりましたし、地元の村長からは、総合運動場の建設、そしてまた総合室内プールの建設といったものも、実は担当大臣から確約を直近にもらったばかりで、一番新しいニュースを君に上げるよ、こういうことをビザなし交流のときに言われたわけでございます。

 そして、この上の段の写真を見ていただくと、この写真上は大きくアップしていますが、皆さんの手元のはちょっと小さいかもしれないんですが、これはアジア人でございます。従前は、中国、韓国の方が労働者として入っていた。しかし、彼らの賃金も高くなって、逆に北朝鮮の労働者が入っているということを聞いております。

 こういった状況で、実は、進んでいなかった色丹島ですら総合開発を進め、新クリル発展計画を進めているという実態があるということ。

 それから、もう一枚の写真でございますが、これは、同じ色丹島の穴澗湾の桟橋付近の写真なんですが、二〇一〇年に私が北方領土に入ったときは、何だ、この桟橋はと思うぐらい、木造で、ぷかぷか浮いているような桟橋だったんです。しかし、昨年上陸させてもらったときには、コンクリートでしっかりと固められた桟橋ができてしまっているという状況でございました。

 しかし、この一方で、写真の下の方を見ていただくと、鉄筋が下の方に置いてあって、また造成し直しているような状況が、実はこの北方領土の色丹島の港の状況でございます。

 この二点、この点を勘案すると、さきの全国大会でも、実は、隣に座っていた鈴木宗男元議員から一言言われて、そのお言葉を改めてお伝えしようと思っているんですが、やはり日本の技術力だ、この技術力を何とか生かすべきだ、こういうことを言われました。

 昨年、私は総理に、ちょっと僣越ですけれども、八九年の閣議了解を外して日本人がもっと入れるようにした方がいいのではないかということを申し上げ、さはさりながらという現状のことをお答えいただきました。

 その関連で、現在、環境関連のことでは、日本の関係者もビザなし交流のお墓参り以外でも入ったりしておりますけれども、一方で、技術という点で、日本が造成までするというのはやり過ぎかもしれませんが、日本の設計技術だったり土木設計だったり、そういった技術を持った人間をビザなし交流で派遣して、やはり、せっかく返ってくる地域ですから、我が国がしっかりとまともなものをつくってあげる、一年たってすぐつくり直したこの港のようなことのないようにしてもらう必要があると思っていますので、こういった技術協力支援について、ビザなし交流で考えられないだろうか。

 やはりそれは難しいから、せめて極東の開発にはそういったものを考えていくよ、こういうことも言えるかと思うんですが、こういった点について、申しわけないんですけれども、御答弁を賜れればと思っております。

安倍内閣総理大臣 今委員が御指摘になった、北方四島の開発における日本の技術者による技術協力の可能性、可否についてでありますが、領土問題に関する我が国の法的立場を害さない、これが大前提となるわけであります。

 そもそも、ビザなし渡航とも呼ばれるこの四島交流は、北方領土問題解決までの間、相互理解の増進を図り、領土問題の解決に寄与することを目的として、日本国民と四島の現島民が旅券、査証なしに相互に訪問できることを日ロ間で確認した枠組みでございまして、言ってみれば、お互いに理解を深め合っていく、その中において、日本としては、この四島の帰属問題の解決に向けて、それは環境整備になるだろう、こう考えたわけでございます。

 そこで、法的な立場を害さない、こう申し上げたのは、仮に四島交流の枠組みであったとしても、日本の技術者の活動がロシア側の許認可の対象といって仕事をするとなると、ロシア側の許認可の活動になるわけでありまして、四島に対するロシアの管轄権を前提としたものにならざるを得ない、ここがやはり我々は崩せない前提でございまして、我が国の法的立場とは相入れないことから、適当ではない、こう思っているところでございます。

 いずれにいたしましても、先般、五回目の首脳会談を行ったわけでございます。そこで、また再びG8のソチにおけるサミットで首脳会談を行い、そして秋にはプーチン大統領が訪日をして首脳会談を行うということで合意をしたところでございますし、今後、こうした首脳間での会談、あるいは外相間での会談、さらには次官級レベルでの協議を進めていく中において平和条約締結交渉妥結に向かって進めていきたい、こう考えているところでございます。

 同時に、さまざまな分野における日ロの協力を進めていくことは、これは当然、こうした協議を進めていく環境を整備していく、やはり平和条約は大切だということについての両国の国民の理解を進めていく上においては大変大切だろう、こう思っておりますが、今、技術者が四島に行っていろいろな仕事をするというのは、そうした側面がある。こうした側面をクリアしながら四島の交流に当てはまるものであれば、それは基本的に問題ないんだろう、このように思います。

    〔委員長退席、金田委員長代理着席〕

杉本委員 踏み込んだ御答弁というふうに解させていただきます。ありがとうございます。

 それで、総理は、さきの委員会の質疑でも、平和条約がないのは異常な状態だ、そして、私の総理の時代に何とかこの問題を解決していかなければならない、こう言われております。

 衆参で安定した多数をお持ちで、そして、総理は二度目の登板、そしてプーチン大統領も二度目の登板ということで、もうこのときしかないと思っております。さきのソチでの会談はニュースで拝見しましたが、多くの、外務大臣とか関係者がずらっと並ぶ中での面談だったと思いますが、いざ決断をするときは、僣越でございますけれども、膝詰めで、お二人だけなのか、通訳だけなのか、あとは記録者だけなのか、そんなぐあいで、大いなる決断をぜひともしていただきたいとお願い申し上げます。

 次に、みんなの党の一丁目一番地、増税の前にやるべきことがあるという中で、デフレ脱却というのは、本論なんですが、ちょっと遅くなってしまいましたが、昨年の質疑でも、総理は、やはり、経済の力を失ったことによって、日本は国際社会でも存在感を失う中において、領土、領海すら危うくなってきたというようなことで、とにかく経済を再生させると言われました。そして、危機突破だということの中での経済危機と言われました。そして、日銀との連携が大切だとも言われました。

 昨年の一月二十二日、日銀との共同声明を発表されまして、私、これを改めて読み直してみまして、非常に中身が濃く、とにかくデフレ脱却である、一方で、麻生元総理が、今財務大臣が御所管の財政運営の信認を確保する、この点も書いてありまして、極めて重要な共同声明だったと思っておりますが、現在も進行中であります。

 そして、日銀の項を読みますと、日本銀行は、金融政策の効果波及には相応の時間を要することを踏まえ、こうありまして、デフレ脱却には、我が党の渡辺喜美代表も言っておりますけれども、二年程度は必要だと。その前に消費税が来るわけで、一年余りで消費税ということで、それに対する対策として五兆五千億、ゾンビ予算だとかいろいろ議論はありますけれども、一の矢として五兆五千億の補正が組まれたという理解をしておりますが、正直、地域を歩いていると、総理も御案内なんですけれども、宝飾品でも高級な宝飾品、高級ダイヤモンドを扱っている会社さんに伺うと、高級品はバブルのときと同じように売れているそうであります。しかし、一方で、お値打ちのアクセサリーの類いといった、庶民が手を出すようなエリアについては全く物が動いていないというようなことを聞いております。

 また、私の地元でも、大変お世話になっていた、喫茶店のメッカなんですけれども、一宮の喫茶店がお店を閉じるというようなことが実は昨今も続いてしまっているということで、なかなか、遅行指標的に、経済の好循環が本当に行き渡っていくには時間がかかると思うんですけれども、その途中で消費税ということになる。

 これは、甘利大臣にお伺いすべきなのか、麻生大臣にお伺いすべきなのか、お任せいたしますけれども、三本の矢と言われてきたアベノミクスですが、消費税に対する一の矢は五兆五千億。では、二の矢はどうなのかというと、さらなる金融緩和が私どもみんなの党は必要であると思っておりますし、第三の矢としては、例えば減税、所得税の減税を期間限定で行うとか、あるいは、総理がダボスで言及された法人税の減税といった、二の矢、三の矢が用意されているんだろうか、十分なのか、こういうような思いをしております。この点について御答弁をいただければと思っております。お願いします。

甘利国務大臣 いわゆる三本の矢と称しておりますのは、一の矢が大胆な金融政策、二の矢が機動的な財政政策、三の矢が成長戦略であります。

 今御指摘の政府・日銀の共同声明には、それぞれがやることが書いてあります。日銀は、できるだけ早期に二%の物価安定目標に向けて金融緩和を行う。政府は、日本経済の成長力、競争力をつける、そして財政再建に責任を持っていく。そして、諮問会議は、それらを検証していくということになっております。

 諮問会議におきまして、金融緩和の政策について、日銀を交えて何カ月に一度、二、三カ月に一度だったと思いますけれども、検証をいたしております。

 そして、政府としては、二〇一五年までのPB赤字半減、それから、二〇二〇年に黒字化を目指して具体的な政策投入を行う。先般も閣議決定をされましたけれども、成長力を、具体的に三年以内に行うべき作業工程というものを示しまして、担当大臣が、どれについて、いつまでに何をやるかというのを決めました。

 六月の、年央の成長戦略のバージョンアップを目指して、そこには何を組み込むかということも今策定をしているところでございます。

杉本委員 甘利大臣には、TPPの交渉でお疲れのところ、お運びいただいて本当に恐縮ですが、お話を伺いました。

 私どもみんなの党としては、さらなる金融緩和あるいは減税策、こういったものを打っていただくということも、御準備をぜひともお願いしていきたいと思っています。

 今、甘利大臣からもプライマリーバランスのお話がございました。プライマリーバランスの目標は黒字化という表現でございますが、この黒字化という表現が、意外と、財政収支の黒字なのか、プライマリーバランスの黒字なのかとか。

 これは財務省の資料で、フローの指標ということでありますけれども、現在は、一番左の図Aで、税収が不足していて財政収支が赤である、そして、必要なお金を必要な部分で賄い切れず、ついぞ借金に手を出していますという状況です。

 そして、財政収支均衡という図Cを見ていただいても、これを見ると、一体、政府の目標は本当にこれだけで十分なのかなというふうに見えてしまう部分があって、要は、税収、入ってくるお金で必要な経費は賄うし、お金を借りている部分の利息については何とか賄うだけの収入は得る、しかし元本を返すまでいかなくても大体黒字というターゲットになってしまっているのではないかなという錯覚をちょっとしてしまうような、そうではないとおっしゃられると思うんですけれども。

 ここで改めて、私は、認識を国民全体として共有して、きょうの午前中の前原さんだったり午後の園田さんの質疑にあるとおり、相当な覚悟をして我々は財政の健全化にも取り組んでいかなければならないと思っております。

 そういった意味で、一言だけ確認したいんですけれども、本来、健全化の目標というのは、最終的に元本を少しずつでも返すというのが目標でなければならないのに、とりあえず利息まで間に合えばいいや、あとは借金はずっと塩漬けだ、こういうようなことだと、本当の健全化だったり、財政運営に対する信認という意味で、国際社会からの理解が得られないのではないかという危惧をそもそも論として持っております。

 そんな意味で、これはGDP比で見るんだという大まかな見方もあるんですけれども、とにかく元本まで返していくんだという目標をきちっと持っていますよというお言葉を改めて確認したいと思います。

甘利国務大臣 手順があるというふうに思っていただければいいと思います。

 最終的にはストックを減らしていくということをしていかなければいけないんだと思いますが、GDP比で均衡し、GDP比で減らしていくというところから取っかかっていきたいというふうに思っております。

杉本委員 ありがとうございます。

 とにかく共有しているんですけれども、私は、国民の皆さんにまだコンセンサスが得られていなくて、それこそ、これから総理がしっかりと、衆参で数を持って、本当に、一内閣一仕事じゃなくて、四つも五つも答えを出していく、そのためにも、必要な協力は惜しまずに頑張っていきたいと思っています。

 結び、もう数分しかないんですが、私は、アベノミクスという言葉が広がっていますけれども、厳しい言葉ですが、ワニの口という言葉を国民の皆様には覚えていただきたいと思っています。

 この財務省のデータでも、平成元年以降にワニの喉元が開きまして、上顎の支出はどんどんどんどん上に向かっていく。一方、下顎の税収の方は、横ばいないし減っていっている。直近は、景況感の状況と、最後、くっと上がっているのは、これは消費税を入れた数字ということで、ワニの下顎が、ちょっと歯が上に向いているというような感じですが、このワニの口という言葉をぜひとも国民の皆さんに覚えていただいて、このワニの口を閉じなければいけないということを我々は目標としているということで、ここに切り込む必要があると思っています。

 その中でも、短く一言だけ申し上げますが、財政法四十一条で、毎会計年度で、歳入歳出の決算上の剰余を生じたときは、これをその翌年度の歳入に繰り入れるものとするというのがございます。一方で、財政法六条に、「各会計年度において歳入歳出の決算上剰余を生じた場合においては、当該剰余金のうち、二分の一を下らない金額は、他の法律によるものの外、これを剰余金を生じた年度の翌翌年度までに、公債又は借入金の償還財源に充てなければならない。」こうございます。

 十分御案内の財務大臣の感触だと思いますけれども、この財政法の四十一条と六条なんですけれども、六条は半分だけ繰り入れろよというような書き方になっているんですけれども、借金を返していくんだったら、せめて、半分じゃなくて全部と言いたいですけれども、三分の二とか。

 財政法は古くからあるのでなかなかいじりにくいということだと思うんですけれども、安倍内閣そして麻生財務大臣としての覚悟という意味で、この財政法六条について前向き検討の余地がないかどうか、お伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 これは、先ほどのプライマリーバランスの話にもありましたけれども、これは利払い費まで含めているか含めていないかが財政収支かプライマリーバランスの差、まあ、英語で直訳すれば同じことを言っているんですけれども、どういうわけか知らないけれども、日本語ではそういうことになっておりますので。プライマリーバランスは利払い費が入っていないだけ、だから利払い費は含んでいない。

 財政収支のことを本来考えれば、きちんと元本返済に至るまで、財政収支まで含んだところで考えねばならぬのではないか、ごもっともです、おっしゃるとおりなんですが、今の御存じのような財政の状況ではなかなかそういったところに至っておりませんけれども、基本的には、我々としては、GDPと借金の比率を、一対二ぐらいになっておりますのを、なるべく、GDPを上げることによって借金の比率をこういうぐあいにしていきたいというのが基本的な考え方であります。

杉本委員 以上で終わります。どうもありがとうございました。

金田委員長代理 これにて杉本君の質疑は終了いたしました。

 次に、井坂信彦君。

井坂委員 神戸から参りました、結いの党の井坂信彦です。

 質問に先立ちまして、まず、週末の大雪で被災された皆様に、心よりお見舞いを申し上げます。

 我が党の小野次郎幹事長の地元山梨では一メートルを超える積雪、また、同僚の井出庸生議員からは、長野県の軽井沢町、東御市などでいまだに国道十八号線の通行ままならず、食料、ガソリンなど行き届かない状況だと、各地から報告も受けております。政府におかれましては、被害の全体像の把握と、被災自治体と連携した対応を迅速に進めていただきますように、よろしくお願いをいたします。

 本日は社会保障の集中審議ということで、総理と厚生労働大臣にお尋ねをいたします。

 私は、初当選以来、土日は必ず地元に戻って、地域を一軒一軒、端から順番に回ってまいりました。インターホンを押すと、出てきてくださる方はやはり御高齢の方が多いです。大体二つのことを言われます。一つ目は、これからは若い者が頑張らなあかん、これは本当によく言われます。二つ目は、年金を減らさないでね、これも本当によく頼まれるわけであります。若い人には頑張ってほしい、でも年金も減らさないでほしい、これが高齢者の声ではないでしょうか。

 まず、年金、医療、介護など社会保障全体を、財政、お金の面から見たいと思います。

 一枚目の資料、社会保障給付費マイナス保険料イコール将来世代へのツケというものをごらんください。

 この一番上の青い折れ線グラフ、年金、医療、介護で高齢者や患者さんに支払われるお金は、右肩上がりでどんどんふえ続ける。一方、真ん中の緑の折れ線グラフ、保険料収入はほとんどふえず、青いグラフ、給付費との差が、先ほど杉本議員もおっしゃったように、これも社会保障のワニの口として、どんどんどんどん開いてしまっています。一方、一番下の赤い棒グラフ、これは、社会保障だけでなく国全体の借金。過去の借金の積み重ねではなく、その年に新たにふえた借金の額、新規国債発行額です。

 ここで見比べていただきたいのが、ワニの口のようにどんどん開く、上の社会保障の折れ線グラフの差と、そして新たにふえる国全体の借金がほぼ同じ金額だということであります。今後も、社会保障の赤字はふえ続け、それと同じペースで国の借金もふえ続けると予想されます。

 そこでまず、総理にお伺いをいたしますが、社会保障赤字額イコール結局は新規国債発行額になっている、この認識についてお伺いをいたします。

安倍内閣総理大臣 平成二十六年度予算案における社会保障関係費は約三十・五兆円でありまして、新規国債発行額は四十一・三兆円でありまして、額自体は大きく異なっておりますが、近年、新規の国債発行額が毎年四十兆円を上回る水準となっている背景としては、社会保障関係費の増加等により歳出が増加傾向にある一方で、税収が伸び悩んできたことが挙げられると思います。

 急速な少子高齢化の進展によって、今後とも社会保障費は毎年毎年増加が避けられないわけでありまして、消費税率の引き上げによる安定財源の確保によって次世代への負担のツケ回しを軽減するとともに、不断の改革を行うことによって受益と負担の均衡を図っていくことが重要であると考えています。

 政府としては、今申し上げましたような観点から、社会保障制度改革国民会議での議論を踏まえまして、社会保障改革プログラム法を制定するなど、改革を進めてきているところでございます。

 先週十四日には、第一回の社会保障制度改革推進本部を開催いたしました。平成二十六年度を改革の第一歩とすべく、この本部を司令塔として、社会保障改革を着実に進め、暮らしの安心を取り戻していく考えでございます。

井坂委員 理由はいろいろありますし、また、年度によってはもちろん、社会保障赤字の方が多い年、また新規国債の方が多い年と、いろいろあるわけですが、この二十年ぐらい、総じて、やはり社会保障赤字額と新規国債発行額というのはほぼ同じペースで右肩上がりでふえ続けている、これが結果としての現実ではなかろうかと思います。

 今の社会保障費は、言うなれば、この緑の折れ線グラフ、保険料と、プラス新規国債、借金で、将来世代にツケを残しながら何とか成り立っていると見ることもできるわけであります。

 さて、本日は、その社会保障給付のうち約半分を占めます年金について、総理に伺います。

 実はもう、日本の年金は今後、物すごい勢いで減り続けるということが決まっています。自民党政権時代の二〇〇四年に、マクロ経済スライドという仕組みの導入が決まったわけです。

 二枚目の資料、「マクロ経済スライド=年金が毎年減り続けるルール」と書いておりますのをごらんください。

 これは、高齢者が気づきにくい形で毎年毎年年金が減り続ける、巧妙な仕組みでもあります。グラフでは、世の中の賃金や物価の上昇を、上の緑の矢印であらわしています。

 本来なら年金も世の中の賃金や物価と同じペースでふえるはずなのですが、それを低く抑えてふやさないというのがマクロ経済スライドであります。例えば、周りの皆さんの給料や食料品の値段や家賃が全て仮に二倍になったのに、年金だけがふえずに同じ金額だったら、これは年金の実質的な価値は半分に減ったのと同じという仕組みです。

 年金の見た目の金額は減らないが、実質的な価値は今後どんどん目減りをしていく。これを決めた二〇〇四年ごろ、これで年金制度は百年安心だとも言われました。しかし、年金はどんどん減って制度だけが百年続いて何が安心かという議論も一方であったわけです。

 この毎年年金が減り続けるルール、マクロ経済スライドがいよいよ来年にも始まろうとしています。そこで、まず全体の話として総理にお伺いをいたしますが、マクロ経済スライドが始まれば、二〇〇四年当時に言われたような、いわゆる百年安心というような状況になるのかどうか、お伺いをいたします。

田村国務大臣 まず、百年安心ということを政府が正式に申し上げたことはございません。

 百年安心と申し上げますと、では百一年目は倒れるのかと勘違いをされるわけでありますが、五年ごとに財政検証をやりまして、そこからさらに百年間、これは給付と負担の均衡化するような、そのようなモデルをつくるわけであります。

 でありますから、最後の年に年金の支給総額の一年分だけ残す、その間は積立金を取り崩していく、こういう制度になっておるわけでありまして、五年ごとに順繰りにいきますから、百三十年たっても百四十年たっても、最後には積立金はちゃんと一年分は残っておる、こういうような制度であります。

 そこで、今、マクロ経済スライドのお話が出ました。これは、実は、どんどん減っていくというふうになっておりますが、約束が一つございます。

 これは、世帯収入三十五万八千円の世帯なんですけれども、この世帯においては、年金をもらえるとき、つまり百年後も、所得代替率、これは現役時代にもらっている賃金、収入の平均額でありますけれども、これの五〇%を超えるというお約束になっておりまして、これを守るということの中において十六年度改正が行われたわけであります。

井坂委員 何も、百年安心と言ったか言わないか、そういう細かい話をお尋ねしたわけではなく、それぐらい長期にわたって年金制度は安心とお考えかどうかということを総理にお尋ねしたわけであります。

 それでは、年金が毎年減り続ける仕組み、もちろん、所得代替率五〇%という下限、お約束はあるものの、この具体的な内容について、さらに質問を続けてまいります。

 年金を受け取る側が一番気になるのは、これは何といっても、毎年どれだけ減らされるのか。引き続き、同じ二枚目の資料をごらんいただきたいと思います。

 賃金や物価に応じて本来は年金も点線の矢印のようにふえるはずでありますが、しかし、この赤い下向きの矢印、スライド調整率というものによって毎年低く抑えられてしまうわけであります。

 このスライド調整率、いわば年金減額率は毎年変わってくるのですが、二〇〇四年当時には、これは平均〇・九%程度と言われておりました。あれから十年たち、年金積立金も当時の予定より大幅に減ってしまっている今、毎年の年金が減る率、すなわちこの赤い矢印、スライド調整率は、どのような数字になっているでしょうか。

田村国務大臣 このマクロ経済スライドでありますが、今、委員おっしゃられましたとおり、本来ですと、年金を裁定するときに賃金上昇分と物価上昇分、オンされるわけでありますが、そこから高齢者の寿命の伸び分、あと、支える側の被保険者の方々の減少分、これを差し引いた分しか年金が上がらないというような、そういう制度であるわけであります。ですから、言われたとおり、賃金や物価の上昇のようには上がっていかないということであるわけであります。

 この中において、〇・三%、これは高齢者の寿命の伸び分であります。〇・三%は法律で書かれております。あとは、被保険者、つまり支える側の減少分に関しましては、直近の三年間の平均額をとっておりまして、これからマクロ経済調整が終わります二〇三八年までの間、これが大体〇・八から二・〇の間で推移をしてまいるということであります。

井坂委員 二〇〇四年当時は、スライド調整を行う期間が二十年間だったのが、二〇〇九年に計算し直したときには、一部三十年間も続くというような話にもなり、このスライド調整率、つまり年金の減る率というのは、まさに今後急速にふえていって、今から三十年後の二〇四〇年代に入ると、毎年二%ずつ年金の価値が減らされる、こういうことがもう既に決まっているわけであります。

 さて、そうなりますと、ちょっと時間の問題もあって一問飛ばしますけれども、本日、この年金の切り下げ問題をテーマに選んだ理由は二つあります。一つは、このパネルにあるマクロ経済スライド、年金が減る仕組みが来年から始まるということ。そして、もう一つは、二〇〇四年、二〇〇九年と来て、ことし、五年ごとの年金財政の再計算、すなわち年金の将来予測の見直しが行われるからであります。

 先月二十日に、内閣府より、中長期の経済財政に関する試算というものが発表をされました。消費者物価は中期的にも二%で高どまりするなど、やや楽観的な将来予測かなというふうに感じます。

 そこで、お伺いをいたしますが、この間、積立金の取り崩しなどで年金財政は悪化をしているわけですが、二〇〇四年当時の予測とかけ離れた姿になっている今、ことしの年金財政見直しは、相変わらず、この楽観的な内閣府中長期試算をもとに行うのでしょうか、お伺いをいたします。

田村国務大臣 年金の積立金の必要額なんですけれども、確かに、非常に運用利回りの悪いときもあったりとか、いろいろなことがありました。あと、マクロ経済スライド等とかをなかなか発動できなかったりでありますとか、また、特例水準といいまして、本来は物価が下がると年金を下げなきゃいけなかったんですけれども、それを下げていなかった部分、これを三年かけて下げていくわけでありますが、そういう部分がいろいろあったわけでありますけれども、いろいろと、安倍政権にかわったころから運用利回りが非常によくなりまして、昨年で大体十八兆円近く運用利回りを稼いでおるということもあります。

 そういう意味からいたしますと、今、積立金の方が毀損をしておるということはございませんので、それは申し上げたいと思います。

 その上で、この内閣府から出てきた数字、これをもとに、社会保障審議会年金部会の中において、経済、金融の専門家の方々に入っていただきながら、これからの財政検証をしっかりとやっていく、こういう手順になってこようというふうに考えております。

井坂委員 ちょっと資料を一枚飛ばして、四枚目の、年金の将来予測は都合のよい数字ではないかというものをごらんください。

 もちろん政府側は否定をされるでしょうが、私は、この年金の将来予測について、年金が破綻しないようにつじつまを合わせるために、利回りなどを高目に設定しているのではないかと疑っております。

 今後五年、十年の目先の経済ならともかく、今後百年の経済の大きな流れの予測が目先の経済の調子だけでころころ変わるというのは、やはりおかしいと思うわけであります。しかも、現実は、年金の積立金、二〇〇四年当時はがっとふえていくはずが、そうなっていないわけでありまして、利回りを後になればなるほど高くして、帳尻を合わせざるを得ないと見ることもできます。

 先ほどお尋ねした内閣府の中長期試算について、幾つか問題があります。

 まず、民間の調査機関の経済予測に比べても楽観的で甘い数字だと言われていることが一つ。二つ目に、増税や歳出削減をしない場合のいわゆるベースラインの予測がないということ。そして三つ目に、二〇〇九年の予測では二〇二三年まで、つまり十五年先まで予測をしていたのに、今回も同じ二〇二三年まで、つまり十年先までしか予測をされていないことであります。

 たかだか十年先までの、しかも、時の政権の目標を色濃く反映したような試算ではなく、政府の影響下を離れた独立した専門家集団が腰を据えて長期予測をすべきと考えます。

 そこで、総理にお伺いをいたしますが、年金の将来推計、これを独立した推計機関で行うということについて、これは年金だけでなく国家経営全てにかかわることですので、総理にお答えを願います。

安倍内閣総理大臣 厚生年金や国民年金の財政見通しを作成することは、年金制度の企画立案に不可欠なものであります。年金制度を企画、運営する厚生労働省の責任において今行っております。

 財政見通しの作成に当たっては、適切な情報開示を行うとともに、財政検証に用いる前提について公開の審議会において御議論をいただくなど、透明性の確保に努めていくことが重要である、このように考えております。

井坂委員 この内閣府の中長期試算というものは、私もネット上で見ましたけれども、これは表紙と前書きを入れて十一ページのものでありました。

 各国いろいろありますけれども、例えば、オーストラリアのものなどは四百ページにも及ぶ、あるいは、過去の計算と最新の計算にずれが生じたようなときは、その原因の分析もしっかりとページ数を割いて、誠実にしているなというふうに感じるわけであります。

 いわば痛みから目を背けることになってしまう楽観的な予測というものは、私は、将来世代に大きなツケとなってはね返ると考えます。根拠の薄い安心感を国民に与える楽観的な将来予測ではなく、長期にわたり現実を直視した、政権の意向などある種お構いなしの真面目な長期予測を行い、それに基づいて国会で真摯な議論ができるよう、これは引き続き総理に強く要望をいたします。

 次に、三枚目の資料に戻っていただいて、低成長やデフレだと年金がさらに減ると書いてあるものをごらんください。

 先ほど経済の将来予測を真面目にしようと申し上げたのは、この経済予測が外れると、マクロ経済スライドで年金は長期に安心という前提が崩れてしまうからであります。

 実は、マクロ経済スライド、すなわち、毎年年金が減る仕組みには、二つの例外があります。まず、左上の図で、赤い下向きの矢印、これがスライド調整率、いわば年金の切り下げ率でありますが、賃金や物価がこの切り下げ率より低い成長しかしなかった低成長の場合、年金はマイナスにはならないということ。そして次に、左下の図で、賃金や物価がゼロ成長やマイナス成長のときは、スライド調整、すなわち年金の切り下げは全く行われないという例外ルールがあるわけです。

 年金のスライド調整がおくれるとどうなるか。右側の折れ線グラフをごらんください。

 予定では、この点線のとおり、年金の切り下げは毎年行われ、そして、スライド調整期間が終わると、積立金と保険料と年金給付のバランスがとれて、年金額が一定の額に落ちつく仕組みになっています。

 ところが、この間のように、たった一年でもデフレや低成長の年があると、この青い実線のように、スライド調整がおくれて、その分だけ追加の財源がその後ずっと必要となり、そして、追加の財源を使った分だけ最終的に落ちつく年金額が減ってしまう、こういう仕組みでもあります。

 確認のために大臣にお伺いをいたしますが、このマクロ経済スライドが始まった後でもデフレの時期が一時期でもあった場合は、これは、調整期間終了後の所得代替率、いわゆる最終的に落ちつく年金額というものにどう影響を与えることになるでしょうか。

田村国務大臣 その前に、先ほど、四・一%の運用利回り、これが高過ぎるのではないかという御質問がございました。

 四・一%という利回り……(井坂委員「そこは、個別は余りお尋ねしていないです」と呼ぶ)そうですか。実際のところ、スプレッドで見ると一・六%、これを稼げればいいので……(井坂委員「はい。一と一・五と一・六で、よく理解をしております」と呼ぶ)そうです。事実上二・七以上の収益は稼いでおりますので、そういう意味では、そこはクリアをされておるということであります。

 その上で、今のお話でございますが、おっしゃられますとおり、マクロ経済スライド、これは例えばデフレ下ではなかなか適用できないわけでありまして、そうなりますと、その分だけ、初めからスライドがかかっていませんから、後の方にその分だけスライドがかかる時期が延びていくという傾向になりますものでありますから、そのような意味からいたしますと、所得代替率が予想よりも下がるというようなことが予定されるわけでございまして、そうならないように我々としては努力をしていかなければならないというふうに考えております。(井坂委員「開始後でも同じですよね」と呼ぶ)開始後でも同じでございます、それは。

井坂委員 マクロ経済スライドを早く開始しなければ年金がもたないとこれまで言われてきたわけでありますが、実は、マクロ経済スライドが始まったって、デフレの年があるたびにいわば計画が崩れていく、こういう仕組みであります。マクロ経済スライドの開始がおくれることと、そして始まってからデフレの年があるということは、実はほとんど同じ悪影響を年金財政に与えるということでもあります。

 経済は生き物であり、波のような動きをすることも多くあるわけでありますが、このスライド調整率が一%から二%に今後ふえていく中で、賃金や物価が毎年毎年それを、このスライド調整率を上回る高成長を続けていかなければマクロ経済スライドは予定どおりいかないというわけであります。

 総理、もしよろしければ、この議論を聞かれて、いかがですか。発動が早いだけではだめで、その後デフレの年があっても同じ悪影響があるということであります。

安倍内閣総理大臣 このマクロ経済スライドを導入したのは、いわば年金に対して、今まで基本的に、国勢調査を行って、そして年金の給付と負担のバランスを調整していたわけでありまして、そのたびに大きな法改正があって、これが結果として、その際、将来の出生率等の予測が中位推計ではなくて実は低位推計だったということもあって、だんだん年金に対する信頼が失われていく中において、そこでマクロ経済スライドというものを導入しまして、先ほど田村大臣から御説明をいたしましたように、平均寿命そして労働生産人口の比率等々を加味して、そして伸びを抑えるということを導入したわけでございます。

 今までずっとデフレ下にありましたから、デフレ下にあっては、このマクロ経済スライドは導入はなされなかったということでございます。かつ、デフレ下にあっても、デフレスライドもさせていなかった。今この新しい取り組みによって、今回デフレスライドを行うことになったわけでございますが。

 そこで、基本的には、市場が正しく動いている状況というのは、デフレ下ではなくて、しっかりとした、私どもも物価安定目標を、だから持っているわけでありまして、そしてそこに向かっていく中において市場が正しく機能していく、そして経済が成長していく。

 経済成長においても、一定の条件を先ほど示していただいたわけでありますが、条件が示されているわけでありまして、我々はしっかりと、このスライドがきいて年金の財政が安定化をしていく上においても、しっかりとこの物価安定目標を実現できるように、日本銀行とともに、政府としてもさまざまな政策を導入していきたい、こう考えているところでございます。

井坂委員 私ももちろん、増税よりもデフレ脱却と言っている側でありますから、デフレ脱却、その御努力はもちろん多としたいわけであります。

 本日、しかし、もう一度押さえておかなければいけないのは、このマクロ経済スライドというのは、発動したらうまくいくというような代物では全くなくて、しかも長期で経済が成長していればいいということですらなくて、もうあらゆる年、全ての年に年金切り下げ率、スライド調整率を超えた成長をしていかない限り、予定どおり使われないのだということであります。

 経済は波ですから、長期で幾ら成長していたって、いい年、悪い年、悪い年が一年でも二年でもあれば、その分スライドの調整期間が延びて、そして最終的に落ちつく金額がさらに下がる、五〇%を下回ることだって理屈の上では私はあるというふうに思っているわけであります。

 ですから、一部の専門家は、デフレのときでもマクロ経済スライドをやれ、こういう話もあるわけでありますが、しかし、私はここで思うのは、ではインフレでもデフレでもマクロ経済スライドを行うということになれば、これはもう単に、毎年何があっても年金を二%ずつ切り下げますよと言っているに等しい、とても単純な強制切り下げの話になってしまうわけであります。

 そこまで露骨に年金切り下げの議論をするぐらいであればということで、年金制度を根本的に変えようといって、私ども、超党派で、新世研という勉強会も去年立ち上げまして、そこで議論をしたのが積立方式の年金であります。

 最後の資料の「年金を世代ごとの積立方式に」というものをごらんいただきたいと思います。

 この絵で、上にいる赤い服の人が年金を受け取る高齢世代、そして下にいる青い服の人が保険料を納める若い世代であります。

 図の左端、二〇〇〇年当時は一人の高齢者を四人の若い世代で支えていたのが、二〇一〇年には三人で一人を支えるようになり、そして二〇二〇年には二人で一人を支えるようになる、こういう仕組みの中で、若い世代は年金を納めないという割合がどんどんふえて、今、二十代の年金の納付率は五割を切ってきています。

 だったら、払った保険料ともらえる年金の関係をはっきりさせようということで、図の右端にある積立方式、この方式は多くの専門家が研究を進めており、当初心配されたような、今の高齢者の積み立て不足をどうするんだとか、あるいは若い世代が二重の負担になるのではないか、こういった初歩的な問題をクリアするためのさまざまな方法も編み出されているわけです。

 そこで、最後にお伺いをいたしますが、年金制度の根本的な改革、これは、マクロ経済スライドが、やがて、やはりこれじゃ毎年できないということでデフレでも実行されるようになり、毎年ただ機械的にずるずると年金を二%切り下げるような時代が来るぐらいなら、私は、高齢者にとっても若い世代にとってもわかりやすく、会計を切り分ける積立方式にしてはというふうに考えるわけですが、いかがでしょうか。

田村国務大臣 まず、マクロ経済スライドは二〇三八年まででございます。それ以降は、もうスライドはかからないという予定で今組んでおります。

 それから、今おっしゃられたところなんですけれども、積立方式というからには、多分、確定拠出なんだろうと思います。確定給付ですと、同じ積立方式でも、例の厚生年金基金、これはたくさん破綻しました。多分、確定拠出。つまり、運用の失敗でありますとか、物価が上がりますと、これは目減りしてしまう、安定した年金がもらえるかどうかわからないという制度。

 一方で、少子化に強いというのが積立方式であります。賦課方式は、これは少子化には弱いですけれども、しかし、経済の状況の変化には強い。物価の動きでありますとか、そもそも積立金を持ちませんから、運用の失敗もない。

 今考えて我々がやっておりますのは、一定の積立金を持った賦課方式でございまして、これはハイブリッド型であるというふうに思います。

 過去勤務、今言われた、今年金をもらっておられる方々、それから今保険料を払っている方々、この権利、今五百五十兆円ぐらい。もし、今年金の制度を変えますと、この負債があるわけでありますが、この問題は、何かいい知恵があるというお話でございましたので、またそういうふうな御議論があれば、いろいろと御議論をさせていただきたいなというふうに思います。

 我々は、その部分をどう扱うのか、仮に税で負担したとしても、結局は保険料で見るのか、税で負担するのか、後世に対する負担は変わりませんので、そこがなかなか解決しない大きな課題であろうというふうに認識しております。

金田委員長代理 時間が参りました。

井坂委員 引き続き、厚生労働委員会で議論させていただきます。

 どうもありがとうございました。

金田委員長代理 これにて井坂君の質疑は終了いたしました。

 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 まず冒頭、この間の大雪により甚大な被害が伝えられ、亡くなられた方も出ております。私は、心からのお悔やみとお見舞いを申し上げますとともに、政府には、人命最優先で万全の対策をとるように求めておきたいと思います。

 さて、私は、昨年の本委員会でも、大学学費、授業料の異常な高騰と奨学金の問題、日本学生支援機構の奨学金がまるで学生を借金地獄に追い込むような制度になってしまっている事実を指摘いたしました。

 その三日後の昨年四月四日、文部科学省は、学生への経済的支援の在り方に関する検討会を設置して、四回の検討会を経て、昨年八月三十日、「学生への経済的支援の在り方について」という中間まとめを発表いたしました。

 この中間まとめでは、「学生等の経済状況」として、次のように指摘をしております。

  近年の経済状況を背景に、我が国の家庭の収入が減少する一方で、大学等の授業料は上昇しており、また私立学校においては、入学時に必要な費用の負担感について「重い」と感じている家庭が九割以上に及んでいるとの調査結果もみられるなど、高等教育の費用は、家計にとって、実感を伴って重い負担となっている。

  また、特に近年、低所得層だけでなく、中所得層においても教育に係る費用が負担となっているという指摘もある。

こう書いているわけですね。

 まず、総理の認識をお伺いするんですが、こういう現状を認識していただいていますでしょうか。

安倍内閣総理大臣 高等教育における家庭の負担について言えば、例えば、子供二人を大学に通わせた場合、家庭に占める教育費の割合が非常に大きくなるわけでありまして、家庭にとって大きな負担となっているというふうに認識をしております。

 教育の機会均等は大変重要な要請であり、政府としては、家庭の経済状況によって大学への進学が妨げられることのないよう、これまでも、奨学金や授業料免除を通じた家庭の教育費負担の軽減策を講じてきたところでありまして、今後とも、大学等の奨学金事業や授業料減免等を通じて、学生等の経済的負担の軽減に努めてまいりたいと思います。

宮本委員 日本政府は、一昨年の九月に、大学に至るまで段階的に学費を無償にしていくということを取り決めた国際人権規約、A規約の第十三条二項(c)、これを三十三年ぶりに受け入れたわけです。

 文部科学大臣はもう何度も、政権がかわってもこの条項は遵守する、こういう旨の答弁をされておりますけれども、これは確認ですが、総理も同じ立場ということでよろしいですね。

安倍内閣総理大臣 近年の教育における家庭の経済的負担の軽減に資する諸施策が講じられてきたことに伴い、一昨年、国際人権規約における高等教育の漸進的な無償化に関する留保を撤回したところでありまして、これは、議員がおっしゃるように、ずっと留保していたわけでありますが、その留保を撤回いたしました。

 国際人権規約の趣旨を踏まえて、家庭の経済状況によって学業を断念することがないように、引き続き経済的支援の充実に努めていきたい。当然これは、撤回は維持をしていくということでございます。

宮本委員 そこで、世界の趨勢が高等教育の無償化に向かう中で、我が国の学生支援がいかに貧困か。

 このパネル一をごらんいただきたいんです。これは、国立国会図書館の資料に基づいて、OECD三十四カ国の授業料無償化と大学生向けの給付制奨学金の有無について一覧表にしたものであります。

 一目瞭然でありますけれども、両方が丸の国々、スウェーデンやノルウェー、フランスやドイツなどヨーロッパ諸国では、大学授業料が無料の上に、返済の必要のない給付制奨学金が支給されております。こういう国々では、学生は、学費どころか生活費まで公的に支えられて勉学に打ち込んでいるわけです。アイスランドには給付制奨学金はありませんが、授業料は無料であります。オランダから韓国に至るまで、授業料無料化がバツの国々では、返済の必要のない給付制奨学金があります。授業料無償化もなければ給付制奨学金もない、奨学金は全て借金、両方バツというのは、先進国では見事に日本ただ一つというのが現状です。

 これは文部科学大臣に、おおむねこれは事実ですね。

下村国務大臣 OECDのこの調査において、データが確認されている加盟国においては、大学授業料が無償ではなく、かつ給付型奨学金もない国は確認されていないということでは、おおむねそのとおりでございます。

 ただ、我が国も、授業料減免制度もある、また給付型ということについては、いろいろな奨学金制度や、大学が独自にやっているところもあるということで、国としては、そういう、おおむねということについてはそのとおりでございます。

宮本委員 おおむね事実とお認めになりました。

 しかも、我が国の大学の学費は異常に高いんですね。

 文科省の最新の調査でも、二〇一二年度の私立大学の平均授業料は年間約八十六万円です。入学金などを含む初年度納付金は百三十一万五千八百八十二円に達しております。お金がないなら国公立に行けばよいという人がおりますけれども、国公立も決して低くはないんです。国立大学の初年度納付金は標準で八十一万七千八百円、下宿でもすれば百万円を超えるという状況です。

 しかも、このパネルを見ていただきたいんです。これは読売新聞一月二十二日付に掲載されたものでありますけれども、四月からの消費税の引き上げを前に、私立大学を中心に、四月から授業料、学費の値上げが相次いで予定されていることが報じられております。

 先ほど総理は、人権規約の段階的に授業料無償化を進める条項を遵守する、こう答弁されましたけれども、総理、この状況をどうお感じになりますか。

下村国務大臣 御指摘の点については、事実としてはそのとおりだと思います。

 政府としては、平成二十六年度の予算において、国立大学法人運営費交付金については、対前年度比三百三十一億円増、これは三・一%増の一兆一千百二十三億円、それから、私立大学等経常費補助金については、対前年度比九億円増、〇・三%増でありますが、三千百八十四億円を計上しております。

 このうち、授業料減免等については、国立大学は、前年度比十三億円増、これは四・八%増ですが二百九十四億円、それから、私立大学は、前年度比十一億円増、一六・一%増でございます八十一億円を計上するなど、経済的支援の充実に努めているところでございます。

 今後とも、国際人権規約の趣旨を踏まえ、さらに経済的負担の軽減に努めてまいりたいと思います。

宮本委員 前年度比でふやしたという、今御答弁がありました。なるほど、ふえているんですけれども、次のパネルを見ていただきたいんですね。

 ふやしたとおっしゃるんですけれども、国立大学の運営費交付金が去年に比べてふえているのは、この間、七・八%も大学教員の給与を減らしてきた分を戻したのが影響している、これが大きいんですね。法人化後の運営費交付金の推移は、このように一貫して減り続けております。

 私立大学では、経常費に対する私学助成の補助割合ですが、下の折れ線グラフを見てください。一九八〇年には二九・五%、このピークであったのを最後に、年々減り続けて、今では、とうとう三分の一、一〇・四%にまで減ってしまっております。

 私学助成の法律をつくったときには、できるだけ早く私学経常費の半分まで補助をふやすことを国会の附帯決議で、これは超党派で決めているわけですね。ところが、現実は逆行している。これでは、漸進的無償化といっても、これはかけ声にすぎない。逆に、学費がこうして上がっていても、ただただ手をこまねいて見ているだけだと言われても仕方がないんじゃないですか、文部科学大臣。

下村国務大臣 先ほど申し上げましたように、対前年度比で比べれば、意欲的に予算をふやす努力をしてまいりましたが、それ以上に、ことしは有名大学を中心とした学費値上げもあるということ、それから、当初、宮本委員が御指摘をされましたが、文科省の調査でも、この十年間ぐらいで親御さんの収入が減ってきているということもあって、客観的に見ると、やはり厳しくなっている状況というのは確かにあるというふうに思います。

 ですから、ぜひ、意欲のある、能力のある子供が経済的な理由で大学進学等を断念しなくてもいいような環境づくりについて、文部科学省としてもっと努力する必要があるというふうに認識しております。

宮本委員 国際人権規約や世界の常識から比べれば、大学学費がこうやってこれほど高くなっている、その結果、我が国の高等教育を受けようとする若者は莫大な借金漬けにされてしまったと私は言わざるを得ないと思うんですね。

 このパネルを見ていただきたいんです。

 家計の所得が減り続ける中で、今や、年間百万円を超えるような学費を親が簡単に負担できる状況ではなくなりました。だから、奨学金を借りるというのは、一部の低所得家庭だけの話ではなくて、中所得層にも及んでいるわけです。

 これは、日本学生支援機構の学生生活調査からとったグラフでありますけれども、今から十八年前、一九九六年に奨学金を借りていた学生は、昼間部で二割だったものが、何と二〇一〇年度には、このとおり、五〇・七%、半数を超える学生が奨学金を借りている。

 その結果、半数の学生が背負っている借金の額がどういうふうになっているかといいますと、これを見てください。「学生への奨学金の貸与額と返還額について」という資料をおつけいたしましたけれども、これは、先ほどの検討会の第一回目に文部科学省自身が出した資料ですよ。ここに赤い線で書いているところ、大学学部四年間奨学金貸与を受けた場合、要返還額は総額三百万円、大学学部から大学院博士課程まで奨学金を受けた場合、要返還額は総額一千万円近くとなる、文科省がそう言っているわけですね。

 総理、今日、我が国では、若者が真面目に勉強しようとしたら、恵まれた家庭でもない限り、社会に羽ばたくその初日から数百万の借金を背負わされる。学問を続ければ続けるほどその額がふえて、大学院博士課程まで進めば、何と一千万円の借金を背負って社会に出なければならない。

 これは総理に聞きたいんですが、我が国がそういう国のありようでよいのか。どうお感じになりますか。

安倍内閣総理大臣 今御指摘の給付型の奨学金でありますが、確かに、そうした形で給付をする、そのことによって、後で、経済的に困難を抱える学生の皆さんが返済に追われることがないということは、当然、事実だろうと思います。多くの諸外国で導入されていることなどが指摘をされているのも事実でありますが、財源を初めとする諸課題があって、導入するにはさらに検討をしていく必要がある、財源の問題において。

 そこで、平成二十六年度の予算案においては、無利子の奨学金や授業料の減免を充実するとともに、卒業後、厳しい経済状況に置かれて奨学金の返済が困難となっている人たちに対しては、返還猶予の期間の延長や延滞金の率の引き下げなど、救済措置を充実していくこととしております。

 今後とも、大学等の奨学金事業や授業料減免等を通じて、学生等の経済的負担の軽減に努めていく考えであります。

宮本委員 こういう、借金がなかなか返せる状況にない。三百万、一千万というけれども、そうしたら、学生は、真面目に頑張っていれば、五年、十年でそれが返せるような、そういう正規雇用に必ずつけるかといえば、そういう状況でないわけですね。この中間まとめでも、雇用情勢の悪化が返済に非常に障害になっているということが書かれております。

 低賃金の非正規労働者がふえたのは、これは自然現象じゃありません。これは、この間、労働法制の規制を緩和して、そういう状況を広げてきたわけですよ。

 昨年の質疑でも、私は、日本学生支援機構の奨学金が、学生に返済の保証もないのに過剰な貸し付けを行い、卒業後は、滞納したら一〇%もの延滞金を上乗せし、返済猶予期間も、去年は、いかなる事情があれども五年までとしており、三カ月滞納で個人信用情報機関、ブラックリストに登録する、九カ月滞納すれば法的措置をとる、返還金の厳しい取り立てで自己破産に追い込む、こんなむごいやり方があるか、こういうことを指摘いたしました。

 文科大臣、これを受けてこの中間まとめが出て、新年度は少し改善するようですが、どういう点を改善いたしましたか。

下村国務大臣 経済的理由によりまして学生等が進学を断念することがないよう、奨学金等の経済的支援を充実することは非常に重要な課題であるというふうに思います。このため、より効果的な学生への経済的支援のあり方について、文部科学省において、御指摘のように、平成二十五年四月以降、検討を行ってまいりました。

 昨年八月のこの中間まとめを踏まえまして、大学等奨学金事業について、平成二十六年度の予算において、まずは無利子奨学金の貸与人員の増員を図る。有利子から無利子に、できるだけこれから変えていくようにする。

 それから二つ目には、経済困難を理由とする返還期限猶予制度の制限年数を、御指摘のように五年まででしたが、これを十年に延長する。それから、そもそも、延滞金賦課率、これは一〇%で、やはり高かったわけですね。これを五%、半分に引き下げをする。また、真に困窮している奨学金返還者への救済措置の充実、こういうふうな改善充実を図ったところでございます。

 現在、同検討会においては、大学等の関係者からヒアリングを行うなど、引き続きさらなる検討を進めておりまして、この検討会の議論を踏まえ、学生等の経済的支援の一層の充実に努めてまいりたいと思います。

 私自身も、学生支援機構の前、日本育英会、これは給付型奨学金が、当時は半分返せばいいというのがあって、大学まで進学できたという経緯がございます。これは昭和五十八年までありましたが、ぜひ、こういうものが復活できるように努力してまいりたいと思います。

宮本委員 そういう改善だけでは実は不十分なんですね。実態をしっかりと見ていただきたいんです。

 実は、この奨学金問題に取り組む奨学金問題対策全国会議には本当に悲痛な声が寄せられているんですね。ここに持ってきました。

 失業中です。返済猶予の利用を繰り返してきましたが、年数を使い切って、もう猶予ができないと言われました。連帯保証人である父のところに請求が来ています。おじも保証人になっており、迷惑をかけたくありません。自分が死んで支払いを免れるなら、死んでしまいたい。

 あるいは、大学卒業後、就職しましたが、うつ病になってやめました。返済猶予の五年を使い切り、減額返還制度を利用することになりました。最長十年間の減額を毎年申請しても五十四歳までかかります。パートの手取りは九から十万円。減額後の返済額は一万六千円ですが、延滞すると減額が認められなくなります。とても結婚や出産は考えられません。

 私大に通っていました。学費がとても高く、奨学金とアルバイトでやりくりしていましたが、奨学金という名の借金がふえていくのが怖く、アルバイトをふやせば授業もままならなくなり、大学をやめました。今後、私のように途中で勉学の道を閉ざされる人が出てくるのがかわいそうでなりません。

 総理、これが実態なんですよ。大学をやめた、結婚、出産は考えられない、死んでしまいたい。今日、我が国の奨学金制度というのは、まさにそういう状況を生んでいる。

 総理、これで本当に我が国に未来があるとお考えですか。総理。

安倍内閣総理大臣 確かに、この十数年、経済の厳しい状況が推移する中において、奨学金を受けた学生が返済において大変困難な状況にあるという方々もおられるということは私も承知をしておりますし、今、宮本委員からも御指摘がございました。

 その中において、それでは不十分だということかもしれませんが、延滞金の率の引き下げ等の救済措置を充実していくことにおいて、さらに対策を充実していきたいと考えているわけでございます。

 また、今後、そうした実態等の調査もしっかりとする中において、そうした学生、また今後の奨学金のあり方等々についてもさまざまな検討を行っていきたい、このように思っております。

宮本委員 給付制奨学金が本当に待ち望まれている、これはもうどこに聞いてもそういうことですよね。総理も給付制奨学金について言及をされました。

 ただ、今の時点で、給付制奨学金にこの間頑強に反対してこられたのは私は財務省だと伺っているわけです。これだけ深刻な実態があるのに、なぜ給付制の奨学金について財務省は、必要性は見出しがたいと、こんなひどいことを言うんですか。財務大臣。

麻生国務大臣 まず最初に、幾つかの前提条件を、宮本先生、話しておかないかぬと思いますが、一定の収入ということを得ることになった人たちにも返済を求めない、全額ただだということになりますと、求めないということになりますと、これは公平ですかね。まず第一点。

 それから、やはり、過去の貸与者から返済されたものを原資にしてまた貸しているわけですから、それが返ってこなくなるということになると、貸すお金は減りますから、貸与される学生の数は減ります。それは果たして後の人にとって幸せですかねという点が二つ目。

 そして、今言われましたように、卒業しても仕事がないという、この二十年間のデフレ不況のおかげで、少なくともいろいろな問題が起きていることは確かですけれども、そこで、所得連動返済型という無利子奨学金制度というのができている。これは平成二十四年度からできていると思います。所得が年収三百万円以下の人はその分は返さなくていいというふうに新しく制度がなっているというのはもう御存じの上で聞いておられるんだと思いますけれども、今までの分を、かなりそこらのところはこの内閣になってから大幅に変えている、私どもはそう思っております。

 いずれにしても、私どもは、こういったようなものというのは厳しい状況の中においても返すというのがやはり我々としては大事なところなんであって、ちょっと極端な例を引かれるとあれですけれども、少なくとも、日本も国家として、これまで世界じゅう、世界銀行等々から借りた金をただの一回も滞ったことがなく返し切った、百九十三カ国で唯一の国ですから、こういった基礎があるんだと思いますけれどもね。

宮本委員 そんなことを言っているから、こういう状況になるんですよ。

 ではあれですか、スウェーデンやノルウェーやドイツやフランスは不公平な国なんですか。世界では圧倒的な国々が、奨学金は給付制でやっているんですよ。そんな、借りた金は返すんだというようなことばかり言って、結局、先ほど私が申し上げたようなところへ若者たちが追い詰められていっている。これはゆゆしき問題であるし、一刻も早く給付制奨学金に道を開くべきだと私は思うんですね。

 結局、この背景にあるのは財政なんですよ、もちろん。財源なんですね。思い切って教育予算をふやさないからです。下村文部科学大臣は、文科委員会で、我が国の教育予算をOECD並みにするには、GDP、国内総生産比で二%、十兆円ふやさなければならないと言い、プラス十兆円になれば、高校だけでなく大学の私学まで含めて、全ての学生が無償に近い形で教育を受けられる、こう答弁をいたしました。

 財務大臣、あなたのようなことを言っていたら、百年たったってそんなときは来ませんよ。いかがですか。

麻生国務大臣 基本的に、借りたお金は返すというのは当然だと思います。私は、まず基本的に、日本人の良識として、これが一番肝心なところだと思いますので。では、返した人と返さない人との差というのは、借りたお金は返さなくていいのかというのはいかがなものですかねということになりますので。

 そんなことを言うと、おまえ、金持ちだからそんなことを言っているんだろうとか言いたそうな顔をしているけれども、そういうことではなくて、これは真面目な話、借りたお金を返すというのはすごく大事なことだと思っていますので、私どもは、三百万円の年収がなければ返さなくていいというようなことで新しくルールを変えているというのは、そういう背景であります。

宮本委員 総理、これは、私ははっきりさせなきゃならない問題があると思うんですね。

 私、ここに、二〇一二年総選挙での自民党の、これは選挙公約ですよ、重点政策二〇一二。これは、J―ファイルでなく、総務省に届け出ていると総理がいつもおっしゃる公約の方の文書ですよ。我々が選ばれた前回の総選挙ですよ、政権を奪還したときの自民党の総選挙では、ちゃんと「大学における給付型奨学金の創設に取り組みます。」と書いているじゃありませんか。麻生さんの言うとおりだったら、では、自民党はそういう不公平を助長するような政策を掲げて前回総選挙を戦ったということになるじゃありませんか。

 総理、これは総理が、やはりこういうふうに公約した以上は、検討したい、やりたいとここではっきり答弁していただきたい。

安倍内閣総理大臣 先ほどは麻生副総理の人生観としての基本的な考え方を吐露されたわけでございますが、確かに、我が党は、給付型の奨学金について検討するということを申し上げているわけでございます。

 今まさに、財源という大きな課題の中において、どのようにその方向に近づいていくかということにおいて、先ほど麻生大臣からも答弁しておりますが、もう既に、いわば三百万円以下の方々については、これはその後の延滞が認められているわけでございまして、今後、この財源を確保していく上において、給付型について検討をしてまいる考え方でございます。

 同時に、やはり、他方、今まで、奨学金を借りた人たちが返し、そして次の人たちが使う、これは、ある意味、そういう意味において、しっかりと収入を得た人たちがその部分を次の若い人たちに回していくということは、それは一つの考え方として麗しい姿ではなかったか、こう思うわけであります。

 かつて、西鉄のピッチャーの稲尾が高校に通う上において奨学金をもらっていたわけでありますが、彼は、西鉄と契約したら、契約金をもらったその足で奨学金を全額一気に返しに行って、一度に返す必要はありませんよと言われたけれども、私が今全部返せばまた次の人がもらえるでしょうと言ったという話もあるわけでございます。

 他方、今経済状況がこういう中において、そうした困窮する学生がその中において勉学を諦めなくていいような状況もつくっていくためにさまざまな仕組みを充実させていきたい、こう考えております。

金田委員長代理 宮本君、時間が少なくなりました。まとめてください。

宮本委員 三百万以下の所得連動返済型の奨学金をつくったのは民主党政権でしたね、そのときは。民主党も、政権交代選挙では学生の給付制奨学金を掲げたんですよ。しかし、たった一回概算要求しただけで、やらなかったんですね。自民党も、政権奪還するときには掲げるけれどもやらないというんだったら、民主党と一緒だということになってしまいます。

 大体、来年度予算案には高校生向けの給付制奨学金が盛り込まれております。この予算はせいぜい二十八億円、地方の負担分まで含めたって八十四億円ですよ。八十四億のお金があれば、例えば同じ規模の学生向けの給付制奨学金はできるわけですね。

 大企業には八千億円もの復興特別法人税の前倒し廃止、あるいは思いやり予算といえば何千億円と出しながら、学生にはわずか八十四億円も出せない。これでは若者の未来は守れないということを申し上げて、私の質問は終わります。

金田委員長代理 これにて宮本君の質疑は終了いたしました。

 次に、青木愛君。

青木委員 生活の党の青木愛でございます。

 きょうは、社会保障と税、そして教育の集中審議ということで、これまで文科委員会等で質問したことも含めて、また改めて御質問させていただきたいと思います。質問の順番が変わっておりますが、どうぞよろしくお願いいたします。

 今、国民の皆様の安倍政権への期待は、やはり何といっても景気回復でございます。そして、安倍総理が常日ごろからおっしゃっているように、日本全国津々浦々まで富の果実の配分が行き渡ること、これを期待していると思います。

 そしてもう一つは、社会保障だと考えます。二〇〇九年に民主党による政権交代が実現したのは、まさにこの分野の政策に期待があったからだ、今もそう思っております。

 発端は、消えた年金問題でありました。国に対する不信感がピークになったタイミングでもありましたが、それとあわせて、年金の一元化による公平な制度と最低限の年金の保障、そして子ども手当を初めとする子育ての支援拡充といった、国民の身近な生活にかかわる政策への期待が間違いなくあったと思います。それは今でも、消化不良はこちらの責任でございますけれども、その願いは変わっていないというふうに確信をいたしております。

 ですから、安倍政権において、今の経済対策とともに、この社会保障にもっと積極的に取り組む姿勢を見せていただきたいというふうに思います。

 それは、景気を回復させるためにも、社会保障の充実が欠かせないと思うからです。国民の皆さんの将来の不安を軽減し、子育ての安心の実感を得られることで、日常生活に余裕が生まれ、消費行動とともに内需の拡大につながり、より経済の好循環が期待されるのではないかと考えるからです。

 安倍総理のアベノミクスプラス社会保障、これで景気回復、こういう観点からも、社会保障に取り組む安倍総理の意欲をぜひお聞かせいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 社会保障というのは、言ってみればセーフティーネットでありまして、老後のセーフティーネットであり、不幸にして病気になったときにも、ある程度の金額においてしっかりとした水準の医療を受けることができる。この医療制度についてもそうですし、介護についてもそうですし、また年金についてもそうでありますが、生活保護もそうでありますが、そうしたセーフティーネットがあることによって安心して仕事もできるということになっていくんだろうと思います。

 また、我々、子育ての支援にも力を入れているところでございます。子育て支援としては、二年間で二十万人、そして五年間で四十万人分の保育の受け皿をつくっていくこととしておりますし、また今回は、今般の予算において、難病対策において充実をしたところでございます。

 いずれにいたしましても、こうした社会保障制度をしっかりとしたものにしていくためにも、その財源は確保していく必要があるわけでございまして、しっかりとした財源を確保した上で、また、財源を安定化させていくためにも経済の成長は欠かせないわけでございまして、社会保障制度を充実すれば経済が伸びていくということよりも、経済をしっかりと成長させながら社会保障制度を、そのための財政基盤を確固たるものにしていく中において、それがまた、さらなる安心となって経済の成長にも寄与するということではないか、このように思います。

青木委員 ありがとうございます。

 双方向からの好循環という意味で、私も意味があると思います。

 今、本来の社会保障という意味合いでの重要性をお話しくださったと思います。

 ただ、過日成立をいたしました社会保障と税の一体改革プログラム法案で、本会議でも指摘をさせていただいたのですが、見過ごせない部分が、第二条の、自助自立のための環境整備に努めるとの規定でございました。

 あえて自助にかかわる規定を設けて、それを強調し、公助、すなわち社会保障の国の責任を後退させている、そういう印象を与えているというふうに思います。社会保障のために消費税増税をいわば強行したわけでございますので、このプログラム法案の中で自助自立を強調するのはちょっと筋が違うのではないか、個人や家族の自助自立に押しつけているという印象を与えると言ってもおかしくはないというふうに感じております。

 自助自立が難しい時代だからこそ、やはり安心できる新しい制度改革が求められているというふうに思うんですが、この第二条の自助自立の規定をあえて設けた理由を教えていただければと思います。

田村国務大臣 共助と公助とありますが、これが重要なことは間違いないわけであります。

 ただ、自助という意味からいたしますと、健康管理でありますとかそれから予防、こういうものはやはりみずからが努力していただいて健康づくりをしていただく、それによって、みずからも健康であり、そして保険も使わなくていい、そういう意味合いの中においてこのような文言を入れさせていただいたわけでありまして、おっしゃられるとおり、共助も公助も大変重要でございますから、それがしっかりと維持できるような社会保障制度、これを持続可能な中において我々としては構築していくということ、これは念頭にしっかりと置いてありますので、その点は御安心いただいて結構だというふうに思います。

青木委員 ぜひ安心をさせていただきたいというふうに思います。

 保育園の子供たちも、自分のことは自分でやるようにということで、椅子が壊れれば、トンカチとくぎを持って自分で喜んで直したりするんですね。その心の状態だと思うんです。だから、やはり、高齢者の皆さんが生きがいを持って社会参加できる、そういう施策に持っていくというところが大事なのではないかな、それが自助自立という部分と重なるのかなというふうに解釈はしているんです。

 道徳の教科書も、せんだって配付をされて、ぱらぱらっとしか見ていないんですけれども、やはり、自分のことは自分でやるとか、自立とはという、わかるんですけれども、いろいろなところに自分で頑張れ的な、ある意味、上から目線的な、そういう印象を受けるものですから、あえて質問をさせていただいた次第でございます。

 プログラム法案が成立して、これから関連法案が出されると思いますけれども、改めて、田村厚労大臣の意気込みと、また見通しについてお伺いをさせていただければと思います。

田村国務大臣 このプログラム法案でありますけれども、社会保障制度改革国民会議から御提言をいただいたものをもとにつくらせていただいた内容であります。

 もう御承知のとおりだと思いますが、一つは全世代型の社会保障制度。これは、まさに今総理がおっしゃられましたけれども、子育て世代に対してもしっかり力を入れていかなきゃならぬということでございまして、二十七年度からスタートの子ども・子育て新制度でありますが、もう既に本年度、そして来年度ということで、待機児童解消加速化プランという形で二十万人、さらに、二十九年まで五年かけて、これを四十万人分、保育の受け皿をつくっていくということ。

 そしてさらに、難病の話も午前中いろいろと御質問いただいたわけでありますけれども、難病の方々に関しましても、今まで、医療費助成、限られた方々でございましたが、これも大幅に広げていこうということを盛り込んでおります。

 さらには、負担能力に応じた負担というもの、これもお願いをさせていただいておるわけでありまして、所得の多い方々には御負担をお願いします。しかし、一方で、所得の少ない方々、例えば国民健康保険でありますとか後期高齢者医療保険制度、これに対しましては、五割や、また二割減額の方々に対して、範囲を拡充させていただく、対象者をふやさせていただく、こういうことを盛り込ませていただいております。

 高額療養費、この制度に関しましては、今まで、三人家族で二百数十万から七百数十万までの所得層が、みんな上限が八万百円プラスアルファで一緒だったものでありますから、これはさすがに、余りにも範囲が広過ぎるだろうということで、所得の低い層の方々に関しては上限を引き下げるというような形で月々の負担を減らしていこう、こういうことも考えさせていただいておるわけでございます。

 いずれにいたしましても、やはり負担能力のある方々には負担をお願いすることもありますが、しっかりと、困っておられる方々に対して、それこそ手の届くような、そのようなきめ細やかな、そういう対応も含めて今般の制度改革の中に盛り込ませていただきたい、このように思っております。

青木委員 ありがとうございます。

 ぜひ、しっかりとした社会保障制度の確立に向けて、本当にお力添えをいただきたいと思います。

 消費税アップ分は社会保障費に全て充てるということでございますが、過去の消えた年金の問題もございまして、やはりここは、政治に対する信頼を回復するためにも、この消費税のアップ分がきちんと社会保障に使われているんだということをもっと国民に随時知らせていく必要があるのではないかと思いますが、そういうお考えはありませんでしょうか。何か広報をするとか。

田村国務大臣 消費税分は全て社会保障に充てさせていただくということでございます。

 もちろん、充実する部分、ここにも充てる部分はありますが、そもそも、社会保障の伸び、これに対して税収の伸びというものが追いついていっていなかったものでありますから、どうしても赤字国債を発行しながら社会保障をやりくりしてきた、こういう部分もあるわけでございまして、こういうようなところに関しましては、持続可能性のために充てさせていただく部分もあります。

 それより、何よりも、基礎年金の国庫負担分を二分の一、これに充当するための財源といたしましてもこの消費税を充てさせていただくわけでございまして、こうやって国会でいろいろと議論をさせていただくこと自体が、国民の皆様方にしっかりと消費税増税分が全て社会保障に充たるということを御理解いただくいい機会だと思いますし、これからもいろいろな広報を通じてそれをお伝えさせていただきたい、このように考えております。

青木委員 ぜひ、わかりやすくお伝えいただきたいというふうに思います。よろしくお願いします。

 次に、文科委員会で審議をいたしました、公立高校の授業料の無償が有償になるという法律が成立をいたしました。ことしの二十六年度から実施をされるわけでありまして、今ごろその変更による膨大な作業が行われているのではないかと推察をいたします。

 国際的に比較をいたしましても、無償から有償へと理念が大きく後退をいたしました。また、所得制限を年収九百十万円に設定したことで、保護者の所得の高低により、同じ教室に条件の違う生徒が在籍をいたします。

 授業料の免除を受けるためには、家庭の事情を第三者に開示、申請しなければなりません。嫌であれば、支援を受けることができません。一方で、国が秘密とすべき事項は厳罰をもって保護をしていながら、個人情報の保護には配慮が欠けていると言わざるを得ません。

 公立高校の授業料の無償化は、民主党政権で実現をし、退学者が減少したとの報告もございました。また、子どもの貧困対策の推進にかかわる法律が議員の皆様の御努力で成立し、ことし一月に施行されています。関係閣僚で構成される子どもの貧困対策会議も設置されたかと思いますけれども、教育再生を柱にしながら、財源確保の点からは大変消極的であると言わざるを得ません。

 なぜ文科予算の上乗せで財源を確保できなかったのか、改めてお伺いをさせていただきます。

下村国務大臣 これはテレビ中継の場でもありますから、青木委員、ぜひ正確に言っていただきたいと思うんですね。

 無償が有償になったという事実はありません。所得制限を設けて、年収が九百十万以上の方については、これは無償の対象から外すということでありますが、高校授業料無償化の総額の四千億円の中で、真に必要な人たちに対してその財源を、所得制限で出た財源で、例えば公私間格差を是正するとか、それから、低所得者層に対するさらなる手当てを行うということでございます。

 その中の一つとして、高校において、今回初めて、昨年、これは超党派の議員立法で子ども対策貧困法が成立をしていただきました。この対策として、例えば、給付型の奨学金を設けることによって、貧困家庭の子供たちがより高校に行きやすいような環境をつくるということでございます。

 そして、先ほど、民主党政権で始めた高校授業料無償化によって退学者が減ったという話もされましたが、これは、高校中退者は全部で五万六千人いるんですね。その中で、経済的な理由で退学が減ったというのは、一千五百人のうちの六百人とか七百人ということでありますから、減ったことは事実ですけれども、しかし、総体的な中での発言をしていただかないと誤解をされるのではないかと思います。

 いずれにしても、我々は、この高校授業料の無償化の見直しで、根本的にこれを廃止するわけでは全くないです。このことによって、全ての意志ある子供たちが、経済的な理由いかんにかかわらず、より高校に進学できるような環境づくりをしていきたいということでの制度設計をこの四月からスタートさせていただきたいと思います。

    〔金田委員長代理退席、委員長着席〕

青木委員 私も確認をさせていただきたいと思いますけれども、これはやはり無償から有償へ理念が変わった、私はそう認識をしています。

 所得制限を設けて、高所得者のお子様はもちろん有償になりますけれども、低所得者の、ちょっと言いづらいですけれども、家庭のさまざまな事情を申請しなければ無償にはならないんですよね。なので、これは基本的にやはり有償だと言わざるを得ないと思います。そして、そこまで各家庭に、教育の課題において、家庭の事情まで開示をさせるという、そこは私は、根本的に教育に対する姿勢が間違っているのではないかというふうに思うわけです。

 退学者が、これも文部科学委員会でもやらせていただきましたけれども、割合の問題ではなくて、一人一人が教育を受ける権利があるわけですから、割合で論じるのは余り適切ではないのではないかなというふうに考えています。

 下村大臣も、本意ではないというふうにおっしゃっていたように私は思っています。であるからこそ、高校の義務教育化ですとか、あるいは幼児教育からの無償ですとか、そういうこともあわせて考えていきたいというお話でもあったかというふうに思っています。またそれはそれで前向きな議論が今後できるのかなというふうに思っております。

 また、その幼児教育の無償化についても実は質問の方でお伺いをしたいというふうに思っていたわけでございますが、幼児教育の無償化のお考えはございましたですよね、下村大臣。

下村国務大臣 まず、先ほどの話ですが、所得制限を設けるというのは、高校授業料の無償化だけではなくて、ほかの、子ども手当においても、生活保護においても、いろいろな形で所得制限というのは、額は違いますが導入されているわけでございます。

 高校授業料における無償化の対象の所得制限が九百十万円ですから、つまり、上位が約二〇%ぐらいですね、その財源の中での話でございまして、総額四千億以上の財源があれば、それはさらに上乗せして、公私間、公立と私立の格差を是正するなり、低所得者層に対してさらに厚い手当てをすべきことでもあります。しかし、先ほど宮本委員からも御質問がありましたが、やはり大学における奨学金の問題とか授業料の問題がありますので、トータル的なバランスを考えれば、これは限られた財源の中で対応せざるを得ないということでございます。

 本来は、できるだけ子供たちに、経済的な有無にかかわらずチャンス、可能性を提供するという意味ではそうすべきことだというふうに思います。そういう意味では本意ではないけれども、しかし、財源をどこかから持ってこなきゃいけないので、それで、高校については、自己完結型で財源を確保するという所得制限を導入したということでございます。

 それから、幼児教育の無償化についての今後の見通しでありますけれども、これは、平成二十四年八月に関連法が成立した子ども・子育て支援新制度において、認定こども園制度を改善し、幼保連携型認定こども園について認可、指導監督を一本化すること、それから、認定こども園、幼稚園、保育所を通じた共通の給付である施設型給付を創設することなどによりまして、幼児期の学校教育、保育、地域の子ども・子育て支援を総合的に推進することとしております。

 同時に、今政府では幼児教育の無償化についても検討しております。

 昨年六月に、幼児教育無償化に関する関係閣僚・与党実務者連絡会議において、今後の取り組みの基本方向が取りまとめられました。まず、五歳児を対象として無償化を実現することを視野に置いて、平成二十六年度から段階的に取り組むということにいたしました。

 これを踏まえまして、平成二十六年度の予算案では、幼稚園就園奨励費において、幼稚園と保育所の負担の平準化を図る観点から、低所得世帯、多子世帯の保護者負担について、保育所と同様の軽減措置を行うということを決めました。

 今後とも、引き続き、幼児教育の無償化に向けた取り組みを、財源を確保しながら段階的に進めてまいりたいと思います。

青木委員 ありがとうございます。

 平成二十一年の自民党の試算では、三歳、四歳、五歳の子供が幼稚園か保育園に無償で入園する場合、七千九百億円という試算を出されているんだそうです。

 七千九百億円をどう捉えるかでございますが、できれば、幼稚園、保育園、三歳から。フランスは三歳から保育学校に入りますのでその時点で待機児童の問題もなくなるわけですけれども、財源もありますでしょうけれども、できるだけ前向きなお取り組みを私も願っておるところでございます。

 今、下村文科大臣から幼稚園のお話がございました。私も委員会の方で指摘をさせていただいて、やはり東京都の幼稚園の数が大分減少しておりまして、まだ減少傾向にあって、いろいろ計算をしますと、現在の待機児童を収容してもまだ二万人の定員のあきがあるという計算がございます。

 計算で安易に申し上げることはできませんけれども、例えば流山などでは、駅にバスをチャーターして、そのバスが方々の保育園に子供たちを送っていくというシステムを導入したんだそうです。いろいろなやり方があろうかと思います。

 幼稚園に保育所の機能を持っていただく、延長保育とともに低年齢児の預かりをやってもらうということは大変現実的な取り組みだというふうに思っておりますが、ただ、その認定こども園への転換というのがなかなか思うようにいかない、当初の目標値の半分程度しか進んでいないということでありますので、この辺のハードルを低くして、この待機児童の問題は、厚労省だけではなくて、教育の連続性から考えたときにやはり文科省としても責任があろうかと思いますので、ぜひ積極的なお取り組みをお願いしておきたいというふうに思います。

 待機児童は都市部の課題でございますので、東京でいえば、ある意味、首都機能の一極集中の弊害の一つでもあるかなというふうにも思うんですけれども、先日、ある都議の方とお話をする中で、東京の出生率は一・〇四だ、中国は国の施策で一人っ子政策を行っているんだけれども、東京はみずから一人っ子政策をしている状況だということで、ここ二十年、何か日本だけが持つ特有の問題があるんじゃないかという指摘をいただいて、それはこれからひもとかなきゃいけないんですけれども、確かに、女性に大変な負担がかかっていることは事実だと思います。

 子供を産み育てるだけでも大変なことであり、また、仕事一つとったって、男性の方々とも渡り合いながら、とても大変な仕事であります。その両方を女性がやろうとすることなので、これはやはり大変な負担がかかっているのは間違いないことであります。

 安倍総理も、女性が輝ける政策をということで打ち出しておられるんですけれども、働くのも一方で大変であって、この女性の不安を本当にしっかり取り除いて、本当に安心して、ある意味、そんな意識もせずに、当たり前に子育て、仕事ができる環境を社会総がかりでつくる覚悟を持たないと、これは本当に女性の負担が大変だなというふうに改めて感じたところでありました。

 どうでしょうか、総理の今後の、一年たちましたけれども、大変力強いメッセージも発していただいておりますけれども、改めまして、この待機児童を含め、女性の方々の働き方あるいは子育て支援についてメッセージをいただけますでしょうか。

安倍内閣総理大臣 女性が輝く社会をつくっていく、これは安倍政権の最重要政策の一つでございます。

 その中におきまして、女性が輝く社会をつくっていく上においても、女性の皆さんが安心して子供を産み育てやすい社会をつくっていくということと同時に、子育てをすることと同時に、社会で活躍をしていく、両立ができるという社会をつくっていく必要があります。

 そこで、先ほど申し上げましたように、保育の受け皿について、二年間で二十万人、そして五年間で四十万人分の保育の受け皿をつくり、そして待機児童という言葉をなくしていく方針でございます。

 同時にまた、仕事を続けたいけれども、子供が生まれたらしばらくの間は自分で育てたいという方もおられるわけでありますから、最長で三年間育児休業ができるように、この仕組みをつくっていただくように、各企業にお願いをしているわけでございまして、そして、育児休業手当についても引き上げたわけでございまして、同時に、半年間お母さんがとって、半年間お父さんがとれば、一年間、この育児休業手当割り増しの分をもらうことができるという仕組みにもしているわけでございます。

 これは、三年間というのは、一年間でも二年間でもいいんですが、いわばさまざまな選択肢を提供していくことが重要であろう、このように考えている次第でございまして、また、企業の支援も必要でありまして、育児のために休業している女性の皆さんが、その期間を利用してキャリアアップをしたり研修を受けることができるようにしていくということも大切ではないか。そういうことに向けて、今委員がおっしゃったように、社会総がかりで対応していくことが重要ではないかと思っております。

青木委員 ありがとうございます。

 二十五年、二十六年度で、二年間で二十万人ということですよね。だから、ことし、あと一年ということでありますけれども、二十万人の保育所の定員の受け皿をふやしていただくということ。そして、今おっしゃられた育児休業も、その給付額を、今五割から、六七%まで引き上げるということで、お父さんがとりやすくするための措置だということでありますが、どれくらいの方が育児休業をとる結果となるかということもまた見ていきたいというふうに思っております。

 いろいろとまだ質問したいことがありましたけれども、時間だと思いますので、この社会保障と教育、人に光を当てていく政策、これは成熟社会を迎えた日本にとっては大変重要でありまして、ぜひ、国民のための政治ということで、安倍総理には、明るい未来に向けて国民を引っ張っていっていただけるように切にお願いをいたしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

二階委員長 これにて青木君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明十八日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時一分散会


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