衆議院

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第2号 平成26年10月3日(金曜日)

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平成二十六年十月三日(金曜日)

    午前八時五十九分開議

 出席委員

   委員長 大島 理森君

   理事 上杉 光弘君 理事 金田 勝年君

   理事 菅原 一秀君 理事 萩生田光一君

   理事 原田 義昭君 理事 森山  裕君

   理事 前原 誠司君 理事 今井 雅人君

   理事 上田  勇君

      秋元  司君    井上 貴博君

      伊藤 忠彦君    石川 昭政君

      石原 宏高君    稲田 朋美君

      岩屋  毅君    衛藤征士郎君

      小田原 潔君    小野寺五典君

      大西 英男君    加藤 寛治君

      勝俣 孝明君    金子 一義君

      菅野さちこ君    岸  信夫君

      熊田 裕通君    小池百合子君

      小林 茂樹君    佐田玄一郎君

      白石  徹君    寺田  稔君

      土井  亨君    中山 展宏君

      根本  匠君    野田  毅君

      船田  元君    堀内 詔子君

      松本 文明君    務台 俊介君

      保岡 興治君    山本 幸三君

      山本 有二君    若宮 健嗣君

      枝野 幸男君    小川 淳也君

      階   猛君    辻元 清美君

      細野 豪志君    山井 和則君

      柚木 道義君    井坂 信彦君

      坂本祐之輔君    清水鴻一郎君

      重徳 和彦君    赤羽 一嘉君

      中野 洋昌君    樋口 尚也君

      古屋 範子君    西野 弘一君

      山田  宏君    佐藤 正夫君

      塩川 鉄也君    玉城デニー君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   総務大臣         高市 早苗君

   法務大臣         松島みどり君

   外務大臣         岸田 文雄君

   文部科学大臣       下村 博文君

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   農林水産大臣       西川 公也君

   経済産業大臣

   国務大臣

   (原子力損害賠償・廃炉等支援機構担当)      小渕 優子君

   国土交通大臣       太田 昭宏君

   環境大臣

   国務大臣

   (原子力防災担当)    望月 義夫君

   防衛大臣         江渡 聡徳君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (復興大臣)       竹下  亘君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当)       山谷えり子君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)

   (クールジャパン戦略担当)            山口 俊一君

   国務大臣

   (女性活躍担当)

   (行政改革担当)

   (消費者及び食品安全担当)

   (規制改革担当)

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)   有村 治子君

   国務大臣

   (経済再生担当)

   (社会保障・税一体改革担当)

   (経済財政政策担当)   甘利  明君

   国務大臣

   (地方創生担当)

   (国家戦略特別区域担当) 石破  茂君

   財務副大臣        宮下 一郎君

   経済産業大臣政務官    関  芳弘君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  佐々木裕介君

   政府参考人

   (法務省大臣官房訟務総括審議官)         都築 政則君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    深山 卓也君

   政府参考人

   (公安調査庁長官)    寺脇 一峰君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官) 上田 隆之君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    北川 慎介君

   政府参考人

   (原子力規制庁長官官房原子力安全技術総括官)   竹内 大二君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   予算委員会専門員     石崎 貴俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月三日

 辞任         補欠選任

  岸  信夫君     大西 英男君

  熊田 裕通君     稲田 朋美君

  船田  元君     中山 展宏君

  古屋 圭司君     堀内 詔子君

  山本 有二君     勝俣 孝明君

  若宮 健嗣君     小野寺五典君

  階   猛君     柚木 道義君

  辻元 清美君     枝野 幸男君

  中野 洋昌君     古屋 範子君

  樋口 尚也君     赤羽 一嘉君

同日

 辞任         補欠選任

  稲田 朋美君     加藤 寛治君

  小野寺五典君     若宮 健嗣君

  大西 英男君     岸  信夫君

  勝俣 孝明君     山本 有二君

  中山 展宏君     務台 俊介君

  堀内 詔子君     小林 茂樹君

  枝野 幸男君     辻元 清美君

  柚木 道義君     階   猛君

  赤羽 一嘉君     樋口 尚也君

  古屋 範子君     中野 洋昌君

同日

 辞任         補欠選任

  加藤 寛治君     小田原 潔君

  小林 茂樹君     古屋 圭司君

  務台 俊介君     石川 昭政君

同日

 辞任         補欠選任

  石川 昭政君     船田  元君

  小田原 潔君     熊田 裕通君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 予算の実施状況に関する件


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     ――――◇―――――

大島委員長 これより会議を開きます。

 予算の実施状況に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として内閣官房内閣参事官佐々木裕介君、法務省大臣官房訟務総括審議官都築政則君、法務省民事局長深山卓也君、公安調査庁長官寺脇一峰君、資源エネルギー庁長官上田隆之君、中小企業庁長官北川慎介君、原子力規制庁長官官房原子力安全技術総括官竹内大二君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

大島委員長 この際、委員会を代表いたしまして一言申し上げます。

 本年八月からの全国的な大雨及び広島県における土砂災害並びにこのたびの御嶽山の噴火による被害により、多くのとうとい命が失われました。お亡くなりになられた方々とその御遺族に対しまして、深く哀悼の意を表します。

 また、被災者の皆様方に心からお見舞いを申し上げますとともに、負傷された方々が一日も早く御回復されますようお祈り申し上げます。

 これより、お亡くなりになられた方々の御冥福をお祈りし、黙祷をささげたいと存じます。

 全員の御起立をお願い申し上げます。――黙祷。

    〔総員起立、黙祷〕

大島委員長 黙祷を終わります。御着席ください。

    ―――――――――――――

大島委員長 基本的質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲田朋美君。

稲田委員 おはようございます。自由民主党の稲田朋美です。

 御嶽山が噴火し、多くの方々がお亡くなりになられました。亡くなられた方々、そして御遺族の方々にお悔やみを申し上げ、負傷された方々にお見舞いを申し上げます。

 今回の火山噴火は、戦後最大の火山噴火となりました。まだ安否不明の方々もおられます。現在、政府、与党ともに、非常災害対策本部を設置し、今後の対応に万全を期しているところです。雨も心配され、二次災害や火山灰による影響も懸念をされております。

 我が国には百十の活火山、四十七の常時観測火山があり、二度とこのような惨事を起こさないよう、体制整備も急務であると思います。

 今回のこの噴火を受けて、総理の御決意をお伺いいたします。

安倍内閣総理大臣 現在、御嶽山の現場におきましては、噴火活動が続く中、警察、消防、そして自衛隊による懸命の救助活動が行われておりますが、いまだ連絡のとれない方々がおられます。

 政府としては、二次災害に留意をしながら、引き続き救助活動に全力を尽くしているところであります。

 同時に、周辺に堆積した降灰状況を調査するとともに、農作物被害に対する対策など、国民生活への影響にも万全の対策を講じていく考えであります。

 今後は、今回のこの痛ましい経験を踏まえまして、火山活動の監視を強化するため、観測機器の整備等、監視体制の強化や、登山者等に対する情報提供の改善を図るなどの対策に、スピード感を持って取り組んでいく考えであります。また、火山地域の防災対策を充実させるため、火山ごとの火山防災協議会の設置、火山ハザードマップの作成等を加速化させていく考えであります。

稲田委員 今回の噴火は、水蒸気爆発ということで、予測が困難だったということなのですが、今後の対応として、観測網のさらなる整備、情報伝達の仕組みの構築、噴火時の緊急避難場所の整備、また人材の育成など、やるべきことはたくさんあると思います。

 現在、党といたしましても具体的対策について議論をいたしておりますが、政府として、今後の対策、体制整備についてどのように考えておられるのか、山谷防災担当大臣と太田国土交通大臣にお伺いをいたします。

太田国務大臣 総理から今答弁があったとおりでありますけれども、観測体制を強化する、監視をする、そうしたことをより充実させるということが大事だと思います。そういう意味では、機器の整備や、火口付近ということに対しての微妙な微震動ということについても観測をする、そうした監視体制を強化したいというふうに思っています。

 その情報を的確に登山者を初めとする地元の方々にお知らせする、ここのところが非常に大事で、気象庁としては、ホームページ等々でやってはおりますが、よく地元の方たちと連携をとってそうした体制をとりたいというふうに思っているところです。

 特に、御嶽山につきましては、二次災害に備えるということが一番大事でありまして、第一点目は、再び噴火をするということの予兆というものを十分察知して対応するということ。もう一つは、台風も迫っているということもありまして、積もった降灰が一気に土石流となって流れていくということを、どの程度の規模になるかということも含めてお知らせをしていかなくてはならないというふうに思っているところでございます。

 監視カメラ、土石流センサー、そうしたことをしっかり備えて、万全の体制を備えたい、このように考えているところでございます。

山谷国務大臣 亡くなられた方の御冥福を祈り、そして、負傷された方々の一日も早い御回復をお祈りしているところでございます。

 ただいま総理、太田国土交通大臣からもございましたように、今回のさまざまな検証を含めて、さらなる事前防災、減災に努めてまいりたいと思います。

 今回の御嶽山で発生した水蒸気噴火の予知や地震予知を確度を高く行うことは現時点で困難でございますけれども、火山噴火予知、地震予知については、国民の生命財産の確保に大きく資するものであることから、関係機関が連携し、予測精度向上のための調査研究の推進や観測体制の強化などに努めてまいります。

 このほか、今回の災害において顕在化いたしました火山防災情報の伝達や専門家の育成などについてもしっかりと検証し、速やかに対策を講じていきたいと思います。

 また、災害を防ぐためには、災害発生時の迅速な応急対策活動のほか、災害が発生する前の備え、いわゆる事前防災の取り組みが重要であります。国、都道府県、市町村と緊密に連携しつつ、さらには、住民や地域における自助、共助の取り組みを推進するなど、総合的に進めることによって安全、安心な社会を実現してまいります。

 御嶽山の噴火対応については、噴火活動が続く一方、昨日から降雨を観測するなど、厳しい条件下で懸命の捜索救助活動が行われております。いまだ連絡のとれない方々がおられます。二次災害に留意しつつ、引き続き救助活動に全力を尽くしてまいります。

稲田委員 今回の惨事を受けて、水蒸気爆発で予想困難だったということは、もう二度とこのような惨事を起こさないためにも、万全の対策を講じるべきであるというふうに思います。党としてもしっかりと議論してまいりたいと思います。

 八月十九日からの豪雨の被害で広島市に土砂災害が発生し、七十四名もの方々が亡くなられたことに対して、謹んで哀悼の意を表します。

 また、避難生活を強いられている方々を初め、被災者支援に万全を尽くすとともに、一刻も早い災害復旧に向けて全力を尽くす必要があります。また、二次災害や他の地域での危険箇所の類似災害が生じることがないよう、土砂災害対策、風水害対策の総点検と必要な対策を講ずるべきだと思いますが、太田国土交通大臣に対応をお伺いいたします。

太田国務大臣 雨の降り方が従来とかなり違ってきまして、局地化し、激甚化し、集中化している。しかも、時間五十ミリの雨。これは、車でいいますとワイパーがきかない、外は見えない、そしてマンホールから水が飛び出す、こういう状況ですが、これが三時間、四時間と続くというような状況が生まれておりまして、新しい雨の降り方のステージが変わったという認識のもとで対応をしていかなくてはいけないということを強く思っているところでございます。

 土砂災害につきましては、八月の豪雨による広島市の災害を踏まえまして、五十二万の危険箇所ということを発表しているわけでありますけれども、全国でそのうち三十五万カ所の土砂災害警戒区域がありまして、そこの点検を行っているところです。制度や運用の点検ということが大事だというふうに思っているところです。

 例えば、都道府県や市町村と連携しながら、情報伝達方法や避難場所の周知状況など、警戒避難体制の緊急点検を現在行っているところです。また、土砂災害防止法の改正案を今国会に提出したいというふうに考えているところです。

 新しいステージになったということを明確に認識して、それに対応するハード面、ソフト面、両面にわたる体制をとっていきたいと強く思っているところでございます。

稲田委員 どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、総理、政権を取り戻して一年九カ月がたったわけであります。

 民主党に政権をとられて、野党時代、三年半ありましたが、私は、ある意味、下野してよかったというふうにも思っております。下野したからこそ立党の精神に立ち戻ることもできましたし、また、下野したからこそ、自民党の、地域に根差した国民政党であるというアイデンティティーを取り戻すこともできたのだというふうに思っております。

 私は、自民党の立党の精神において、三つのことが柱だと思っております。

 一つは、自民党は真の改革政党であるということであります。真の改革とは、伝統を守りながら創造する、つまり、いいものを守るために不断の改革が必要であるということであります。

 二つ目は、占領政策、そして占領期において弱体化した我が国を、もう一度真の主権国家に生まれ変わらす、そのための憲法改正ということでございます。

 そして三つ目は、国民道義を確立するということ。日本は、単に経済大国というだけでなく、高い倫理観と道徳心によって世界から尊敬され、頼りにされる、そして社会正義が貫かれた道義大国を目指す。

 この三つが立党の精神の柱だというふうに思っております。

 また、野党時代、党にいて陳情に来られる方を待っているのではなくて、現場に出向き、一線で活躍しておられる方々の意見をお伺いして、それを政策に結びつけていく、地域に根差した国民政党であるという真髄を取り戻したというふうに思っております。

 総理にお伺いをいたします。

 政権奪還して最初の総理になられて、強い経済を取り戻すというアベノミクスは着実に成果を上げていると思います。また、世界から注目も集めております。民主党政権に比べ、為替は一ドル七十五円に迫る危機的な円高から脱し、そして、株価は八千円台から約二倍に、有効求人倍率は〇・八から四十七都道府県全てで改善をして平均一・一倍にまで上昇し、賃金も十五年ぶりに二%を超える伸びとなりました。

 しかし、アベノミクスは道まだ半ば、日本を取り戻す闘いもこれからが正念場になるというふうに思いますけれども、総理、今の日本の課題、そして、それにどのように取り組まれるのか、決意をお伺いいたします。

安倍内閣総理大臣 稲田委員の御指摘のように、まさに我が党は、三年三カ月、なぜ我が党は野党に転落をしたのか、我が党の使命は何か、見詰め直す機会を与えられ、そして国民政党として鍛え直すことができたのではないかと思っております。

 そして、我が党の使命。

 まずは、当時の状況の中において、日本は二十年近くデフレ経済の中に沈んでいたわけであります。デフレ経済というのは、まさに毎年毎年給料が下がっていくという状況になっていくわけでありまして、まさに頑張る人が報われない、そういう社会になってしまい、そして人々の気持ちは内向きになっていた。あのときは、もう日本はたそがれを迎えていて、成長することはできないのではないか、それを前提に物事を考える、そうしたなえた考え方が流布されていたわけであります。

 我々は、それを変えなければいけない。そのためには、デフレ脱却をして、力強く成長することができるんだという自信を取り戻すことではないか。今政調会長が御紹介いただいたように、我々はまさにその自信を取り戻しつつある、このように思います。

 その中において、しかし、このまままいりますと、人口が減少し、多くの地方都市が消滅をするかもしれないという危機に直面をしているわけでありまして、まさに今、地域が地域のよさを生かして、地域の未来を描いていくことができる、そういう地方創生を進めていかなければならない、このように思います。

 しかし、当面の間は人口減少が続くわけであります。だからこそ、全ての人たちがその能力を開花できる、女性の能力を開花し、あるいは障害のある人たちも何度でもチャンスのある、そういう社会をつくっていく必要があるんだろう。

 そして同時に、教育の再生、あるいは外交、防衛の立て直しが必要なんだろう。

 日本が再び力強く成長し、そして世界の中で輝くような、多くの国々から尊敬される国として発展していく、そういう日本をつくっていきたい、このように思います。

稲田委員 私は、総理は保守政治家ではいらっしゃいますけれども、改革派政治家だというふうに思っております。

 私自身もそうありたいと思っておりますし、私の政治信条の伝統と創造というのは、伝統だけで、守るだけでは枯渇をしてしまう、よきものを守るためには創造していかなければならない、しかし、伝統のない創造というのはまた空っぽであるということであります。

 そもそも保守と改革というのは、私は、両立をして、よきものを守るために不断の改革が必要だというふうに思っています。総理はみずから改革のドリルになるとおっしゃったわけですが、総理が考えておられる、また、ドリルとなって改革すべき分野は何であると考えておられるのか、お伺いをいたします。

安倍内閣総理大臣 ただいま委員が指摘されたように、保守と改革は相矛盾する概念のようではありますが、しかし、大切なものを守っていくためには、あるときは勇気を持って変えていかなければならないわけでありますし、常に変革を求めていく気持ちこそ大切なものを結果として守っていくことに私はつながっていくんだろうと思います。

 ただ、戒めなければいけないのは、改革それ自体は手段であって、目的ではない。改革を自己目的化することによって、ただの破壊しか起こらない。今委員がおっしゃったように、創造、そして守るべきものを守っていくということが大切ではないか、このように思います。

 大胆な規制改革を断行して、そして民間のダイナミックなイノベーションの中から多様性あふれる新たなビジネスが生まれていく、これが私の成長戦略の中核でもあります。

 その中におきまして、委員には、規制改革・行政改革担当大臣として、思い切って改革に取り組んでいただき、成果を出していただいたと思います。

 戦後六十年続いた電力の地域独占を打ち破る電力小売完全自由化など、これまでできるはずがないとされてきた多くの改革を実現することができたと思っています。

 今後は、例えば委員が担当大臣として推進された六十年ぶりの農協の抜本改革、これはまさに、地域の農協が地域の農業者の未来をつくるためにさまざまな改革を行うことができる、あるいは、さまざまな取り組みを行うことができるようにするためのものであります。

 また、患者本位の新たな保険外併用制度の導入、これは医療の分野における改革であります。また、雇用や農業、医療、エネルギー、国家戦略特区も活用して、こうした岩盤のようにかたい規制に果敢に挑戦していく考えであります。

稲田委員 今総理がおっしゃった、まず農協改革ですけれども、六十年間、誰も提言すらできなかった大きな改革だというふうに思います。

 中央会制度は、昭和二十九年に農協法の中に法律で規定をされました。しかし、法律で規定をされた昭和二十九年と今の現状を比べますと、まず、農協は、一万以上あったものが七百にまでなっております。今と当時とでは、農協、農業をめぐる状況は全く違っているというふうに思います。一県一JAというところもあるわけであります。

 今求められているのは、総理がおっしゃったように、農家の独自性ですとか創意工夫を生かせるということだと思いますし、単位農協の活性化だというふうに思っております。

 だとすれば、全国中央会と県の中央会が法律によって指導権、監査権、会費徴収権を与えられているということが果たして本当に必要なのでしょうか。むしろ、法律から外して、農家の独自の取り組みや創意工夫を発揮するということが必要だというふうに思っております。

 何も中央会を潰すとか農協を潰すとかいうのではありません。法律の縛りをやめて、そして、もっと自由な存在に生まれ変わるということであります。生まれ変わって、農家の方々や単位農協が必要だと思えば、今の中央会の役割を維持することもできるわけでありますし、反対に、中央会の役割を変えるときに、法律を改正しなくても自由に変えられるという組織にする必要があるのではないかと思います。

 農業は国の基とも言われます。日本の農業の確固たる発展を目指すという目標、総理もお持ちだと思いますけれども、農協改革の方向性について基本的な認識をお伺いします。

安倍内閣総理大臣 今のままで農業がいいんだ、農業の今の状況のままでいいんだ、あるいは農協も今のままでいいんだと思っている人は、ほとんど私はいないんだろうと思います。

 近年、ずっと農業人口は減少しているわけであります。私の地元も、多くは農業地帯であります。農家の方々、おじいさん、おばあさん、本当に多いです。一生懸命、真面目につくっておられますが、相当高齢化しているのも事実でありまして、このままでは、まさに地域も崩壊をしていくという状況にあるわけでありますから、まさにここで我々は、農業を変えていく、成長産業に変えなければいけないわけでありまして、若い皆さんが農業の分野で、自分たちの情熱や努力で未来を切り開いていくことができる分野なんだ、このように思ってもらえるような、そういう農業に変えていきたいと思います。

 そのためにも、経営マインドを持つ意欲ある農業の担い手が活躍しやすい環境を整備することが重要であります。六十年ぶりとなる農業、農協の抜本改革に、そのために取り組んでいく考えであります。

 地域の農協が主役となり、創意工夫を発揮して、農業の成長産業化に全力投球できるようにするとともに、連合会、中央会は地域の農協のサポートに徹するというのが今回の農協改革の基本的な考えであります。

 昭和二十九年にできたわけでございまして、まさにこれは私が生まれた年でありますから、この中央会制度も還暦を迎えていると言ってもいいんだと思いますね。

 ですから、先ほど紹介されたように、当時一万を超えていた農協は七百に減少しているわけでありまして、それぞれ自立できる状態にあるなど、制度発足時と状況は変化しています。これを踏まえて、自律的な新たな制度に移行する必要があり、農協法に基づく現行の中央会制度は存続しないことになると考えています。

 これらの考え方に立って政府が中心となって検討を行い、次期通常国会に関連法案を提出すべく、検討を進めていくこととしております。

稲田委員 西川農水大臣にお伺いをいたします。

 今の農協改革について、現行の中央会制度を法的にはなくして自由で自律的な組織にするという改革の方向性、そしてスケジュール的には、ことしじゅうに骨子をまとめて来年の通常国会に法案を提出するということでよろしいでしょうか。御決意のほどをお伺いいたします。

西川国務大臣 ただいま総理から、農協改革を実行する、こういうことを申されました。私どもも、それを受けまして、次の法案作成に向かって今準備中であります。

 確かに、先ほど御指摘がありましたように、一万以上の農協があったと。昭和二十二年に農協法ができたわけでありますが、非常に農協の経営が危うくなった、昭和二十年代、こういう時期があったわけでして、二十九年に、それではならないということで、全国に農協中央会を一つ、それから都道府県に一つ、こういうことで指導権限を強めた、こういうことをやったわけですね。その結果、今は七百の農協ですけれども、非常に経営が困難になっている、こういう話は私どもの方へ来ておりません。

 そういう意味で、この農協中央会制度は一つの目的は果たしたのかなと、こういうことを私どもも受けとめています。

 そこで、与党としましても、六月に、農協改革をやりましょうということで提言をまとめました。政府の方も改革の実行プランの中で決めてくれた、こういうことであります。

 さて、どういう改革にするかということになりますと、私どもは、何も農協改革は言葉だけの改革ありき、こういう捉え方はしておりません。あくまでも、農家の所得をふやし、農村のにぎわいを取り戻す、これを大前提として改革に取り組んでいきたい、こう考えております。

 それで、どういう制度になるかと。

 私どもの提言の中も政府の方も既に決めたところは、現行の制度から自律的な新たな制度に移行の必要がある、こういうことで与党も政府も決めたわけでありますから、新しい制度で再度組みかえをやっていきたい、こう考えております。そして、法案は次の通常国会に出させていただきたいと思います。

 私どもとしましては、農協団体が、みずからの計画の中で私どもと同じ方向を見ていただいて、どういう改革をやれば農家の所得の増大につながるか、こういう意見を持ってきてくれることを今待っている状況でありますが、次の通常国会で改革案を出させていただきたい、こう考えております。

稲田委員 ありがとうございます。

 農林大臣が常におっしゃっている、農業者の所得を向上するための改革をするんだ、私もそのとおりだと思います。農業者の所得を向上させて、そして生き生きとした農村をつくる、そのために抜本的な改革をお願いしたいというふうに思っています。

 塩崎大臣にお伺いをいたします。

 規制改革会議が提案した患者申し出療養でございますけれども、いわゆる混合診療の拡大になるわけですが、来年の通常国会で法案を提出する予定となっておりますが、きちんと法律を改正して新たなカテゴリーをつくるという改革という方向で進めておられるのか、大臣にお伺いをいたします。

塩崎国務大臣 六月に当時の稲田大臣が中心となっておまとめになられました規制改革実施計画の中で、この患者申し出療養が、患者からの申し出を起点として、国内で未承認の医薬品などを迅速に保険外併用療養として使用できるようにするということを創設するということであります。したがって、これは、例えば、患者から申し出を行うことができる点であること、それから先進医療よりも迅速に審査が行えるという点で、今までとは違う、先進医療とは違うものとして創設をしようと思っております。

 当然、健康保険法等の改正が必要になってまいりますので、二十七年、来年の通常国会で提出できるように、ただいま具体的な内容につきまして法改正に向けて検討しているところでございます。

稲田委員 今の保険外併用療養制度も、実質的には混合診療を一部認めているわけですけれども、患者目線ではない。新たな治療に保険が適用されるかどうかということのいわば反射的効果として、患者も混合診療が受けられる。

 今回の患者申し出療養は、患者の目線に立って、困難な病気と闘っている患者が、どうしても保険の適用されない治療を受けたいといったときに、全てが自由診療になるというのでは過大になる。そこで、患者目線で、患者の申し出によって、安全性、有効性を確認した上で、迅速に、そして多くの病院で受けられるという患者申し出療養でございますので、ぜひ改革をお願いしたいというふうに思っております。

 さらに、雇用改革についてもお伺いをいたします。

 女性が働きやすい社会を実現するために、規制改革会議で提案していた労働時間法制についての三位一体改革、すなわち、長時間労働を規制することと、休暇の強制取得などワークライフバランスの実現と、さらには時間でなく成果で評価される働き方の実現、三つを一遍に改革しようという提案でございましたが、そういう方向性について、大臣のお考えをお伺いいたします。

塩崎国務大臣 ただいま御指摘のありました三位一体の改革でありますけれども、これはもちろん、女性のみならず、働く人全てにわたっての大事な改革の視点ではないかなというふうに思っております。

 しかし、特に女性が働きやすい社会を実現していこうという中にあって、労働基準法の遵守を徹底した上で、仕事と生活の調和のとれた働き方の実現に向けて、労使の自主的な改善の取り組みを支援していくということが重要だというふうに考えております。

 私ども厚生労働省においても、十月一日に第一回目の長時間労働削減推進本部、私が本部長を務めることにいたしまして、厚生労働省内につくったわけでありますけれども、そこで二つやろうと思っています。

 一つは、著しい過剰労働や悪質な賃金不払い残業等の撲滅に向けた監督指導の強化、もう一つは、時間外労働の削減とかあるいは休暇の取得促進とか、こういう働き方の見直しに向けた企業への働きかけの強化に、厚労省としても省を挙げて取り組んでいきたいと思っています。

 その上で、今お話がありました労働時間法制の見直しを行っていくこととし、もちろん大前提は労働者の健康を守りながら多様で柔軟な働き方ができるようにということで、特に子育て、介護等の事情を抱える働き手のニーズに応えていくために、例えば、清算期間の延長、これは今一カ月というのがマックスになっていますけれども、これなどを柔軟にするというようなことでフレックスタイム制の見直しを行うということとか、あるいは時間でなくて成果で評価される働き方にふさわしい選択肢として新たな労働時間制度を創設するというようなことで、今、労政審で議論を深めているところでございます。

 これらの結論を得て、次期通常国会をめどに所要の法的措置を講じて、子育て支援策等と相まって、女性が働きやすい社会をつくっていくということでございます。

稲田委員 私は、総理が、女性が輝く社会をつくる、そして女性が生き生きとする社会をつくることが日本の再生につながるということをおっしゃって、女性活躍のための政策を重要政策と置いて、また、国際社会、例えば国連の演説などでもそのことをおっしゃっていただいていることに非常に勇気を感じておりますし、また、世界じゅうから日本の女性政策というのは注目をされているのではないかと思っております。

 ただ、女性が働きやすい、活躍できる社会というのは男性にとってもいい社会だというふうに思っておりまして、私は、やはり今必要なのは、価値観の転換であったり意識の変革ではないかなというふうに思います。

 女性が働きやすい社会をつくるということは女性のためだけではないということでありますが、これは、法律の改正とか予算措置だけでといった、そういう対策だけでは容易に実現できるものではないと思っておりますが、具体的にどのようにこの政策を推し進めていかれるのか、女性活躍担当大臣の有村大臣にお伺いいたします。

有村国務大臣 お答えいたします。

 御指摘のように、全ての女性が輝く社会というのは、それぞれの希望に応じて、女性が、家庭や地域や職場といったそれぞれの場において個性と能力を十分に発揮して、輝くことができる社会になるというふうに思っております。稲田委員が御指摘のように、女性が輝くことは、暮らしやすい社会を実現していくこと、また活力のある社会をつくることにつながると確信をしております。

 女性が暮らしやすい社会の仕組みや意識の改革をすることは、同時に、言及をされたように、男性のみならず、若い方々、高齢の方々、障害のある方々、あるいは妊婦さんや小さなお子さんを持ったなかなか移動がつらい方々というように、いわゆる女性のくくりというだけではなくて、社会全体にとってプラスが必ず出てくる、そういうことを実感していただけるような政策や意識の啓発をしていきたいというふうに思っております。

 総理も何度も言及されていらっしゃいますが、日本の女性というのは、日本の中で最も可能性と力があるにもかかわらず潜在力になってきた、なかなか可能性が引き出し切れずにいたという現状を鑑みますと、日本の持続可能な社会づくりにつけても、女性の力というのは、人口減少そして超高齢化社会においても、これから顕在化していくべき最も可能性のある分野の一つというふうに認識をしております。

 ポイントとしては、男性の理解者をふやして、社会の中に賛同していただきやすい政策、また、そういう妥当な国民意識に受けていただけるような政策を出していくことが大事だというふうに思っております。

稲田委員 ありがとうございます。

 さて、今国会の最重要課題とも言われ、また、アベノミクスの第二章は地方であるということであります。総理は、今国会を名づけて地方創生国会と言われました。

 党でも、地方創生実行統合本部が総裁直属の組織としてでき、河村建夫本部長のもとで、地方の方々の意見を政策に反映させる議論を始めたところです。

 政調といたしましても、どこでも政調会を立ち上げて、党本部で陳情に来られる方を待っているのではなくて、現場に行って、地方に出向いて皆さんの生の声を聞いて、真摯な意見交換をしようというふうに思っております。第一回のどこでも政調会は、今週末の五日に高知で行います。農業、介護、子育ての現場を視察して、意見交換をしてこようと思っております。

 まち・ひと・しごとは、机の上での政策ではなくて、実際に人が生活し、町をつくり、仕事をしている、そこにまち・ひと・しごとのストーリーが生まれ、その地方ごとの一つ一つのストーリーを後押ししていく、そして現実の営みと生活に根差した血の通った政策でなければならないと思っております。

 総理に、まず前提として、経済構造についてお伺いをしたいんですけれども、私は、アベノミクスというと、どうしても、輸出中心、大企業中心、世界の投資を呼び込んで、大企業が利益を得て、そしてそれが賃金や雇用に回って消費もふえるといったような、そういう経済の好循環を指しているように思います。

 しかし、そういう考え方の延長でアベノミクスを地方に波及させるのは、ちょっと違うのではないか。地方は大企業中心のグローバル経済とは全く違った経済構造があって、地方を前提とした新たな政策が必要ではないかというふうにも思います。例えば円安は、地方の中小企業にとっては、燃料の高騰であり、資材の高騰につながり、むしろ経済を圧迫しているという面もあります。

 そういう意味において、今回の地方創生は、中央におけるアベノミクスを地方に普及させるということももちろん大切なんですけれども、むしろ発想を転換して、地方の実情に即した新たな経済政策を構築するということも示すべきではないかというふうに思います。

 つまり、経済というのはつながっていて、アベノミクスも、動脈もあれば毛細血管もあって、動脈をいきなり地方に持ってくるのではなくて、毛細血管が生き生きとするような、そんなイメージの発想の転換が必要ではないかというふうに思うのですが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 まず、我々の政策は、全体として、デフレから脱却して日本を成長させていく、そのための三本の矢の政策を進めているところであります。

 その結果、多くの企業が収益を上げ、そしてその収益を人件費、賃上げに、あるいは設備投資に回し始めています。その結果、消費も伸びています。

 そこで、これを、ただ単に同じことを、全部これが地方でできるかといえば、地方はそれぞれのさまざまな状況、立地条件、あるいはそれぞれの地域の企業の分布が違いますから、それをよく見ながら、地域の再生を考えていかなければいけない。

 ですから、国はこれでやる、地方はこれでやるというものはないと思います。地方によってもそれぞれ違いますから。

 そういう中において、現在、経産省、内閣府を中心に、まずしっかりとデータの分析をしていく必要があるんですね。

 例えば、私の地元の山口県においても、山陽側と山陰側は全然事情が違うわけでありまして、山陽側は、まさに輸出企業があります。マツダ等々の大企業があります。そして、その周辺の企業、下請企業があります。ここはここの考え方があるでしょうけれども、しかし、山陰側は、多くは一次産業、あるいはその加工等々なんですね。

 そうしたときに、さらにそれを詳しく見ていきますと、果たして、売り先はどこなのか、納入先はどこなのかということもわかってくるわけでありますし、人の流れもわかってくるわけでありまして、観光においては、では、どういう地域を人々は観光して、どこに泊まっていくんだということになると、そうしたデータを分析しながら、では、山口県だけではなくて、山口、島根、鳥取で、ここで一つの例えば観光のパッケージをつくった方が、人々が来て、一泊、二泊していただけるだろう。

 そうした分析による新たなビジネスを創出していく、あるいは、さらにビジネスを拡大していくという方法があるんだろう。つまり、それは、きめ細かな分析であり、その地域に合わせた発展を目指していかなければいけない。

 国がすることは、金太郎あめみたいなものをつくっていくのではなくて、そうした地域が伸びていくためのサポートをしていく。例えば、今のような情報提供というのは、国ができる一つの仕事でもあろう、このように思うわけであります。

 そして、地域でさまざまな成功例も生まれています。ただ単に、これは単純に横展開できるものではありませんが、それをさらにその地域に当てはめながら、そのかつて成功した成功例を自分のところの新たな例としてつくりかえていく、そういう努力を我々も応援していきたい、こう思うところであります。

 いずれにせよ、安倍政権の地域再生は、まさにまち・ひと・しごとでありまして、仕事をつくるためには、ただ単に企業の移転ということ、これもありますが、仕事をつくれる人が地域にやってくる、つまり、そういう地域に自分は行きたいと思えるような、そういう状況をつくっていく。さらには、調べてみますと、東京に住んでおられる方々の中でも、約四割近い方々が、チャンスがあれば地方に住んでみたい、こう思っているんですね。

 そうであるならば、そういう方々のニーズに対応していくことによって、十分に私は可能性はあるのではないか、このように思っています。

稲田委員 新設された地方創生担当大臣、石破大臣にお伺いをいたします。

 今まで、地域活性化、中心市街地活性化、地方再生など、地方に目を向けた取り組みは、どの政権も言い続けてきて、対策も講じてきたことだというふうに思います。

 にもかかわらず、十分な成果が上がっているとは言えないわけでありますが、今回、一体何が新しいのか。この地方再生で、どのような理念でもってどのような地方をつくろうと考えておられるのか、その点についてお伺いします。

石破国務大臣 今までと何が違うかというと、まず第一に、危機感だと思います。

 少子高齢化という言葉があって、子供さんは少ないんだが、長生きしていただけるようになったので、一見して人口は減らないように見えてきた。ですが、これが、人口急減というのがあっという間に始まりまして、今限界集落と言われているのが、やがて限界市町村になり、日本全体がこのままいけば限界国家になるという強い危機感であります。それを中央も地方も全ての人々が共有するという危機感、そして、全ての人が共有するという意識、これが違うんだというのが精神論のお話だと思っております。

 実際にやる場合に、現場に知恵があるのであって、霞が関や永田町にすばらしい知恵があるんだったらこんなことにはなっておりません。それぞれの地域が、どうしてこのようになったのかということについて、中央からいろいろなデータは提供はいたします。それを見ながら、それぞれの地域で政策立案をしていただく、そしてそれに沿った政策を展開し、大事なのは、それによる検証をきちんと行うということであります。

 いろいろなことをやってきましたが、各省ばらばらにいろいろな施策を展開する。そして、それは時期的にずれもございます。検証というものが仕組みとして入っていなかったということがあります。

 そういうようなことで、日本国じゅう事情は違います。だけれども、日本国じゅうで同じようなことが起こっているということもまた事実なので、それを細かく地域において検証しながらやっていくという、手法を変えてまいりたいと思います。

 まち・ひと・しごと創生本部というのは、総理が本部長で全閣僚がメンバーでございますので、そういうような体制をもってして、地方と中央が一体となって、強い危機感のもとに、今これをやらなければ日本全体が衰退に向かう、そういう意識のもとでやってまいります。

 以上であります。

稲田委員 今、大臣は、各府省の縦割りやばらまきはやらない、創意工夫のある地方を応援するとおっしゃっています。そのとおりだと思います。

 私も、行政事業レビューをやっていて、各府省がそれぞれ同じような事業をやっていることもありますし、重複になっていることもあるし、一体何のためにやっているのかわからなくなってしまっているのもあります。

 やめる勇気というのも必要だと思いますし、内閣人事局ができたというのは、まさしく、行政事業レビューに取り組んで要らない予算を削り、要らない事業をやめた官僚をきちんと登用させる仕組みをつくるということでもあったというふうに思っております。

 そこで、大臣がおっしゃっていることと、新たな交付金、つまり地方が使いたいものに使うという交付金をつくるということは、矛盾しているのではないかというふうに思います。

 そもそも、地方の理想的な姿は、国への依存、国からの支配から脱却して、自主的、自立的に財源を調達して行政を行うということだと思っております。地方が交付金の新設を国にお願いして国がそれを判断するというのは、ちょっと違うと思うのですが、ばらまきにならない交付金のあり方というのはあるのでしょうか。

石破国務大臣 ここがまさしく問題のポイントで、個別補助金のように、非常に狭く使用目的を限るということはいたしません。

 他方におきまして、地方において、先ほども申し上げましたが、それをやることによってどのような効果が出るのかということは、理想論ではなくて、なぜこれをやればこのような効果が発現するのかということは、地方においてお示しをいただかなければなりません、中央ではわかりませんので。

 それで、現状分析に基づきまして、将来予測を踏まえた、これも、超楽観的なものだと何でもできますが、現実的な予測を踏まえました上で政策目標を設定していただきます。そして同時に、効果検証も地元でやっていただかなければなりません。そういう仕組みで交付金的なものを考えていくということは、私は有意義なことだと思っております。

 政策目標をきちんとつくる、そして検証のシステムをビルトインするというところを私は重要なところだと思っております。

稲田委員 しっかりPDCAサイクルを回すということだと思いますが、私は、地方創生は、お金を地方に落とすことでは決してないというふうに思っています。アイデアや工夫で地方を活性化させるということもできる、そして、より新しい国の形、自立した国民参加型の社会をつくっていくというのが、この地方創生のあり方ではないかというふうに思っています。

 例えば、福井県の西川知事が提唱している、ふるさと企業減税、それからふるさと投票というのがあります。ふるさと企業減税というのは、東京と東京以外の道府県で税率の引き下げ幅に差を設けるというもので、これにより東京から地方へ企業が移転するという考え方でありますし、ふるさと投票というのは、住所地ではなくて本籍地や両親、家族の生活本拠地を投票帰属地として選択できるようにする制度でありますけれども、こういう地方から出るアイデアを競い合わせるということが、私は、地方創生の一つの大きな要素ではないかなというふうに思っております。

 また、クールジャパン戦略とぜひ連携をしてほしいというふうに思っております。私も、クールジャパン戦略担当大臣時代に若手のクリエーターといろいろな検討会をしたんですが、その中で、タレントの篠原ともえさんを中心に、地域の伝統工芸を継承して発信する施設としてジャパン・ラボというのをつくると。これは新たに箱物をつくるのではなくて、今ある地域の学校とか、使われなくなっている公民館とか、深刻化している空き家を有効利用することで、地域の伝統工芸などを伝承して、外国人を含む観光客に発信をしていくという考え方なんですけれども、地方創生とクールジャパン戦略、ぜひコラボレーションをしていただきたいと思うのですが、クールジャパン戦略担当大臣の御意見をお伺いいたします。

山口国務大臣 私の方からもお答えをさせていただきます。

 今お話がございましたジャパン・ラボ、これは稲田前大臣の時代に、クールジャパンムーブメント推進会議、これは御提言をいただいたもの、私も全部拝見をさせていただきました。その中に出てくるわけであります。

 確かに、私も、実は記者会見で申し上げたのですが、クールジャパン、いろいろあるんですが、地方にもそれぞれ、伝統芸能とか、あるいは伝統工芸品、さらには食、日本酒もあります。そういったものを、やはりクールジャパンで発掘をし、あるいは発信をし、さらにはイノベーションもしていただいて、それによって、クールジャパンとしての目的はもちろんでありますが、地方も、やはりみずからが持っておるものに対して誇りを持っていっていただけるんだろう、そういったことを掘り起こしていきたいというふうなことも申し上げました。

 とりわけ、稲田前大臣、例のゴスロリもネットで拝見をしましたが、非常に力を入れておられるわけでございますが、そういったお話も受け継いで、これも実は、今検討させていただいております、各府省でそれぞれ施策化できないだろうかということで進めさせていただいておりますし、今のお話のように、やはり地域創生、地域活性化に私も必ずやつながっていくものだろうと思っておりますので、石破大臣とも相談をさせていただきながら、しっかり頑張っていきたいと思っております。

稲田委員 私は、お金をかけなくても、地方創生というのはやることがいっぱいあって、民間や行政やみんなが組むことで、縦割りではなくて組むことによって力を発揮させていく、そして自立した国民参加型の社会をつくっていく、他人事ではなくて、地方創生を自分事としてそれを動かしていく、国民的な運動にしていく必要があると思うのですが、その先頭に総理に立っていただきたいと思いますが、最後に、地方創生にかける決意をお願いいたします。

安倍内閣総理大臣 先ほど石破大臣からお答えをさせていただいたように、現在、このままでは大変なことになるという危機感をみんなで共有することは今できていると思います。そして、まさに、今までと違う形で、地域に活力を、そして地域に人材が、若者が、女性が集まってくる地域に変えていくという大きなムーブメントを起こしていく必要があるんだろうと思います。

 そういう中で、大都市部から地方に住みたいと思っているけれども、なぜ、では地方に行かないのか。とすると、不安は、例えば子育てであったり、そして仕事であったりとかします。あるいはまた、雰囲気が少し排他的なんじゃないか、そういう先入観もありますから、そうしたものを、例えば隠岐の海士町なんかは、そういう先入観を変えることによって、ああいうところに若い人はまず来ないだろうと思われていたものを大きく変えることに成功しているわけであります。

 国が、霞が関が、そういうアイデアが最初からあるということはないんだろうと思いますね。ですから、まさに、縦割りを排し、そして現場に出向いていって、地域のよさを引き出しながら、そして地域で頑張っていこうという人たちを応援していきたいし、地域にみんなが住みたい、国が地域に住めと言ったって、それはそういうことができるわけではありませんから、そうではなくて、自分の人生はむしろ地方にあるんだ、自分の人生は地方に行った方が豊かになるんだ、こう皆さんに思っていただけるように、地方がチャンスになる、そういう時代をつくっていきたいと思います。

稲田委員 ありがとうございます。

 さて、私は、弁護士時代からこだわってきたことがあって、それは、日本の名誉を守るということであります。それは、殊さら、日本がよいことをしたとか、日本はすぐれた国であるということを言うのではなくて、いわれなき非難に対しては断固反論をするという当たり前のことを言ってきたわけであります。

 ことしの八月五日、慰安婦問題について、朝日新聞が三十二年たって誤りを認め、謝罪をいたしました。これにより、慰安婦を奴隷狩りのように強制連行したという吉田清治氏の証言が虚偽であって、さらには、慰安婦と挺身隊を混同したということは誤りだったということが認められたわけであります。

 もちろん、慰安婦制度そのものは、女性の人権に対する侵害であって、悲しい出来事であったと思っております。総理が国連演説でおっしゃったように、今も存在する、紛争時の女性の人権の侵害は絶対に認められませんし、二十一世紀を女性の人権侵害のない世界にするために、日本が国際社会でリーダー的な役割を果たしていかなければならないというふうに思っております。

 しかし、現在、国際的に慰安婦問題は非常に憂慮すべき事態になっております。国連勧告やらアメリカの非難決議、そして、慰安婦の碑、慰安婦の像が建てられています。そこで何が言われているかといいますと、戦時中の日本が二十万人の若い女性を強制連行して、性奴隷にして監禁をした。さらには、あげくの果てに殺害までしたという、あたかも日本が誘拐監禁、強姦致死の犯罪集団であるという汚名を広められているわけですが、それは全くの虚偽であるということであります。この吉田証言の虚偽を根拠として、日本の名誉は地に落ちていると言ってもいいと思います。

 国連からは、性奴隷国家として名指しで批判されて、アメリカの下院では平成十九年に、日本に対して、謝罪をしろ、そして、教科書で未来永劫子供たちに教えろと言われ、それと同じ内容の決議が、台湾、オランダでもされております。アメリカの各地で非難決議がされて、慰安婦の碑、慰安婦の像が設立されて、あたかも日本が性犯罪国家のようにみなされている現状があります。

 このように世界じゅうで広まっている、日本に対するいわれなき不名誉な汚名を不作為によってそのままにしておくことは、私は、将来に禍根を残すというふうに思っております。

 総理は、若手議員のころから、教科書から慰安婦の記載を削除して日本の名誉を回復するために尽力をされていたわけですけれども、今回の慰安婦問題をめぐる状況、そして、世界じゅうで地に落ちているこの日本の名誉を回復するために、政府としてどのように取り組まれるのか、お伺いをいたします。

安倍内閣総理大臣 本来、個別の報道についてコメントすべきでないと思っておりますが、しかし、慰安婦問題については、この誤報によって多くの人々が傷つき、悲しみ、苦しみ、そして怒りを覚えたのは事実でありますし、ただいま委員が指摘をされたように、日本のイメージは大きく傷ついたわけであります。日本が国ぐるみで性奴隷にした、いわれなき中傷が今世界で行われているのも事実であります。この誤報によってそういう状況がつくり出された、生み出されたのも事実である、このように言えますし、かつては、こうした報道に疑義を差し挟むことで大変なバッシングを受けました。

 かつて、まさに、日本が性奴隷にしたということの判決をクローズアップした番組をNHKがつくったわけでありますが、これに中川昭一さんと私が事前に介入して番組を変えさせたという朝日の報道があったわけでありますが、これも、中川昭一さんは事前には会っていないということがその後明らかになり、朝日新聞が認めていますし、私が呼び出したということも、そうではないということが明らかになっているわけでございます。

 しかし、今回、これが誤報であったということが明らかになったわけでございます。政府としては、客観的な事実に基づく正しい歴史認識が形成され、日本の取り組みに対して国際社会から正当な評価を受けることを求めていく考えでありますし、そのため、これまで以上に戦略的な対外発信を強化していかなければならないと思っております。

 もちろん、現在でも、紛争下において女性の人権が侵害される、これに対して、日本は積極的に、そうした状況において女性の人権が侵害されることのないように貢献していく、その貢献策について先般国連で演説をしてきたところでございます。

 他方、こうしたいわれなき中傷については、そうではないという発信をしっかりとしていくことが大切ではないか、このように思っております。

稲田委員 河野談話に関しては、政府の検証がなされて、検証結果が出されました。そこで、河野談話作成過程において強制連行を示す事実はなかったんだ、そして、事前に韓国と日本との間ですり合わせが行われて、最終的に日本が韓国に譲歩、配慮するような形で作成されたということが明らかになったわけであります。

 ただ、今世界じゅうで広められているこの慰安婦の問題というのは、もう河野談話を大きくかけ離れた全く異質なものになっているわけであります。そういった状況を前提として、日本に謝罪と補償を勧告している国連人権委員会報告、また、アメリカ下院決議、その他の国々の非難決議、アメリカ各地での決議、慰安婦の碑の建立、像の設置について、一体どういった対応をとっておられ、またどういった対応をとられるのか、外務大臣にお伺いをいたします。

岸田国務大臣 まず、日本政府としましては、正しい事実認識に基づき、日本の考え方や取り組みについて国際社会から正当な評価を得るよう、しっかりと求めていかなければならないと考えます。

 そして、御指摘いただきました諸点の中で、まず、国連の委員会からの勧告につきましては、七月に、自由権規約委員会におきます審査におきまして書面及び口頭で我が国の立場を説明させていただきました。しかし、残念ながら、その勧告について、我が国の説明が十分に理解されなかった、この点については遺憾に思っています。

 同勧告は法的拘束力を有するものではありませんが、引き続き、我が国の立場が正しく理解されるよう、しっかり説明する努力を続けなければならない、このように考えます。

 また、米国におきます慰安婦像あるいは碑等の動きにつきましては、我が国政府の立場と相入れない、これは極めて残念なことだと考えます。このような動きは、慰安婦問題を政治問題あるいは外交問題化し、状況を複雑化させるものであり、さまざまな民族系から成る地域コミュニティーを分断させることになる、こういった点を憂慮しております。

 日本政府としましては、慰安婦問題を政治問題あるいは外交問題化させるべきではなく、また、諸外国において、各民族系が平和と調和の中で共生することを希望しており、出身国間の意見の違いが持ち込まれること、こうしたことは適切でないと考えます。

 こういった考え方に基づいて、従来からも、さまざまな地域の地方議員ですとかあるいは地方自治体、さらにはメディア、有識者、こういった関係者に対しまして、現地の大使館あるいは総領事館の館員、これはもう当然のことですが、さまざまなロビイスト等を動員しまして、我が国の立場を説明し、この理解を得るべく努力を続けてきました。

 今回の誤報問題等も含めまして、我が国としましては、引き続き、さまざまな関係者を動員し、そして、説明の仕方等も工夫しながら、我が国の立場について説明する努力をしっかりと続けなければならない、このように認識をしております。

稲田委員 外交問題にしない、政治問題にしないということなんですが、いわれなき非難に関しては事実をきちんと示して反論をすべきだというふうに思っています。

 ことしの八月、福井市の姉妹都市のフラトン市で慰安婦の非難決議がなされ、現在フラトン市の博物館で慰安婦像が建てられようとしております。フラトン市の決議の後、福井市長が反対の親書を送り、また九月二十四日に福井市議会で慰安婦像を建てることについての反対の決議をしたわけです。これは私は日本で初の取り組みだと思います。

 フラトン市の問題は、吉田証言の虚偽が明らかになった後、初めてのケースでありますので、どうしても慰安婦像の設置を阻止する必要があり、外務省も頑張っていただいているわけですが、予断を許さない状況でもあります。

 私は、日本の名誉を回復するためには、こういった一つ一つの反論、それから、いわれなき非難についてきちんと反論していく事実を積み重ねていくということが必要だと思いますが、総理、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 基本的には、事実は強いわけでありまして、吉田清治証言が、これはでたらめであるということがかなり早い段階からわかっていたわけであります。だからこそ、きょうは中川昭一さんの命日でもありますが、中川昭一さんを中心に、それが教科書に、事実であるかのごとくの前提に強制連行を書かれるのはおかしいという運動を展開してきました。

 しかし、なかなかそれは成果を生むことができなかったのでありますが、随分時間はかかったのでありますが、しかし、だんだん強制連行の記述はなくなっていったわけであります。そして、さすがに朝日新聞も、この段階においては認めざるを得なくなった、こういうことであろうと思います。

 我々も、粘り強く事実は事実として発信していかなければならない、このように思っております。

稲田委員 私は、この問題は与党も野党もないと思っています。朝日新聞も産経新聞もないと思っています。党も政府も政治家も言論人も経済人も、日本の名誉のために国民運動として私は邁進をすべきだと思っています。

 かつて、平成十九年、米国下院で非難決議がなされようとしていたときに、作曲家のすぎやまこういちさんが私財を二千万投じてワシントン・ポストにFACTという意見広告をされて、そこに言論人やら政治家が賛成署名をしたわけでありますけれども、本来政府がやるべきことを民間人がかわってやってきたわけであります。私は、やはりこういう国民運動として展開することが重要だというふうに思っております。

 また、朝日の誤報に関しては、報道の自由、それから表現の自由が憲法上優越的な地位を認められているのは、それが国民の知る権利に資して、民主主義の基盤であるからこそ優越的地位を与えられているわけですから、その優越的地位にふさわしい責任、報道機関としての責任、真実に対して謙虚に向き合うべきだというふうに思っておりまして、今、検証委員会を立ち上げておられますが、朝日新聞には、みずからの責任を認識して真摯に検証した上で、全力を挙げて日本の名誉の回復に邁進をしていただきたいというふうに思います。

 ただ、我が党としましては、吉田証言の虚偽が我が国の外交政策などに与えた影響や国際社会に与えた影響、それに対して政府はどのような対応をとってきたのかという検証と、また現状の把握、そして今後どのようにして日本の名誉回復を図っていくのか、その具体策を真剣に検討する場を党の中に新たに設けたいというふうに考えております。

 ところで、この吉田清治さんは、戦後補償の裁判で証人として出廷されたことがあるんですね。この慰安婦訴訟では、吉田さんのうそということがわかった本が証拠として採用されているわけです。

 日本の国が被告として訴えられた、戦時中の日本がこんなことをしたという訴訟の日本の国の代理人は、法務省の訟務検事がされているわけです。吉田清治さんは、その戦後補償裁判に出てきて、そして、朝鮮人女性を暴力で奴隷狩りのように狩って慰安婦にした、それから挺身隊といっても実態は日本軍将兵の性的奴隷だったということを裁判で証言しているんです。しかし、法務省は、このうその証言に対して一問の反対尋問もなさっていないんですね。私は、法務省のその訴訟の方向は間違っていると思うんですが、法務省の政府参考人にお伺いをいたします。

 戦後補償裁判を争うとき、またいわれなきうそがそこで主張されたときには、きちんと事実の反論をし、また反対尋問もすべきだというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

都築政府参考人 戦時中の責任を問う外国人原告らの請求は、日韓請求権協定や日華平和条約等によって解決済みで、いずれも棄却されるべきことが明らかです。そのため、事実関係について認否や反対尋問を行う必要がないというふうに考えております。

稲田委員 それがおかしいんですよ。法律論で勝てるから、事実でうそを言われようが何を言われようが反論しないと。

 裁判において争わないということは認めたことになってしまうわけです。そして、裁判の中で吉田清治が証言した奴隷狩りだとか性奴隷、強制連行、全てそれが真実として判決の中に書き込まれているわけです。そういった名誉を毀損することがどんどん日本の判決に書き込まれるということが繰り返されるんです。強制連行の裁判もそうですし、七三一部隊に関する裁判もそうですし、毒ガス訴訟に関する裁判もそうですし、もう全て、そういう戦後補償裁判で、法務省の役人は、それは条約でけりがついているとか時効だとか法律論だけを言って、全く事実を個々に争わないわけであります。

 そして、うそが書き込まれた判決書が海外で雑誌で紹介をされると、それが全部あったことになってしまって、海外の人たちは、本当に日本はこんなひどいことをした、性奴隷をつくった、そんな犯罪国家なんだというふうに思うわけです。なぜなら、権威のある日本の裁判所の判決書に書き込まれちゃっているわけですから。

 私は、事実に反して、証拠もないのに、日本の戦時中の加害事実がどんどん書かれることは、非常に日本の名誉を毀損することだと思います。ちゃんと争っていただきたい。そうしないと、判決がひとり歩きをするんです。そのことをずっと言ってきたんですが、今の答弁のように、法律論で勝っているから大丈夫なんだという答弁であったわけですが、今はもうそれで済まないんです。

 なぜなら、日本で負けた原告が、今度は韓国それから中国で同じ裁判を起こして、例えば韓国だと日本の企業が負けております。そして、さらに中国では、日本の国を相手に、日中戦争の被害を訴える裁判の準備がされているということであります。

 ここで外務省にお伺いをいたしますが、先日外務省にお伺いをしたところでは、中国で準備中の、日本国相手の日中戦争の被害の戦後補償裁判の代理人を、中国における日本大使館が、法務省に何の相談もなく、現地の弁護人を選任するという方向だとおっしゃったんですけれども、なぜでしょうか。

岸田国務大臣 御質問は、中国における日本政府を相手取った戦後補償に係る裁判ということでありますが、政府として把握している限りにおいては、これまで中国の裁判所でそうした訴状が受理されたものはなく、最近、訴訟の準備が報じられている案件がありますが、この案件につきましても、その後具体的な動きはなく、いまだ提訴はされていないと承知をしております。

 そして、一般論として申し上げるならば、こうした訴訟が仮に提訴されたとしましても、これは国際法上、主権国家は公的な行為において裁判で訴えられることが免除される、こうした国家免除を享有しているということとされています。よって、こうした訴訟が仮に提訴されたとしても、我が国が中国の国内裁判所の管轄権に服することはないと判断をしています。

 よって、こうした中国で日本政府を相手取った戦後補償に係る裁判が提訴されても、こうした国際法に基づいて対応されるものだと考えております。

稲田委員 国際法に基づけば、まさしくそのとおりなんです。しかし、予断は許さないんです。

 例えば韓国では、慰安婦問題について、韓国政府が、日本から謝罪も、それから補償もとってこないことが人権侵害で憲法違反であるというような判決が出ておりますが、それは国際法上の常識から、実は考えられないような判決であるわけですね。

 そういう予断を許さない状況において、私は、もっと法務省と連携をして、どういう反論をやっていくべきか、仮にその準備された訴状が受け取られた場合にはどうするかということを戦略的にやらないと、後で手おくれということがあるので、ぜひお願いをしたいと思います。

 そして、こういう事態は戦後補償裁判だけではないんです、実は。

 国が訴えられている裁判で、その結果が国の政治、経済、社会に大きな影響を及ぼす重要な大型の裁判が増加をしています。国が被告になっていなくても、その裁判の結果が、国益であったり、政策に重要な影響を及ぼす裁判もあります。これらの裁判に対する戦略的な対応が果たしてできているのか。

 法務省にお伺いいたしますが、国が被告になっている裁判の現状と、それに対する対応状況、各省との連携状況、人員体制、海外の裁判への対応はどのようになっているでしょうか。

都築政府参考人 国が当事者である国内の訴訟の現状ですけれども、平成二十五年度末現在で、係属件数が約一万五百件ございます。そのうち、重要大型事件と位置づけられている事件は約二千三百件に達します。

 人員体制ですが、全国で訟務検事が約百名配置されております。

 また、体制ですが、現在、訟務は、法務省の官房の一部門であり、四つの課と一つの管理官があります。これらが横並びの配置のもとで、国内訴訟について各省の局等の組織と共同して主張、立証を行っているという現状にあります。

 国外訴訟にあっては、法務省は関与していないというのが実情であります。

稲田委員 いや、それで果たしていいのでしょうかと思うわけです。

 総理にお伺いをいたしますが、私は、政府全体として司法戦略を練る時代に突入しているのではないかと思います。戦後補償裁判では、きちんと事実関係を争う。その他の、国が訴えられている訴訟については、各省連携をとって、戦略を練って、法務省を中心に訴訟を追行する。国が被告になっていなくても、大きな影響を及ぼすという裁判については、少なくともフォローできるような、そういう体制をつくるべきだと思いますが、総理の御見解をお伺いいたします。

安倍内閣総理大臣 議員御指摘のとおり、国の制度のあり方や政策の根幹、あるいは日本の名誉に重大な影響を与える訴訟がさまざまな形で増加していることについては、事実であると認識しています。これら訴訟に適切に対応していくことは、国として喫緊の課題であると考えています。

 政府全体として、しっかりと訟務機能の充実強化に迅速に取り組んでいく、戦略的にしっかりと取り組んでいきたいと思います。

稲田委員 法務大臣にお伺いいたします。

 今、法務省として訟務局の設置について要求されていますが、その必要性と設置に向けての覚悟についてお伺いいたします。

松島国務大臣 お答えいたします。

 今、総理からの答弁にもございましたように、国の利害に関係する訴訟、これは、どの官庁に関する事件であっても、法務省が一手に引き受けて行っております。そして、訴訟の結果が国の政治や行政、経済に重大な影響を及ぼす訴訟が増加しているところであります。国としてこれらの訴訟に適切かつ迅速に対応していく必要がますます高まっております。

 と同時に、法務省というのは、もともと法律のプロ、検察官や裁判官を長く経験した者たちを抱えておりますので、いわば政府の顧問弁護士として、いろいろな訴訟が起きてから対応するのではなくて、それを未然に防止する、訴訟や紛争を未然に防止する、そのような法的な支援、アドバイスも行ってまいりたいと思っています。

 そういうわけで、委員がおっしゃいましたように、来年度予算概算要求におきまして訟務局の新設をお願いしているところでありまして、今後、関係省庁の理解を得てしっかりと進めてまいりたいと思っております。

稲田委員 司法戦略を練ることは、政府として重要だと思っています。我が党には四百人を超える国会議員がおりまして、そして、皆、地方で、地域でいろいろな意見を吸い上げて、朝八時から政策議論をやっておりまして、大変今活気があります。政策を、本当に党と政府で競い合って磨き上げていくということをやっていきたいと思っておりますし、私は、安倍内閣しかこの国を再生することはできない、謙虚に、しかし、ひるまず、真の改革を進めていただきたいと思います。

 終わります。

大島委員長 この際、小野寺五典君から関連質疑の申し出があります。稲田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。小野寺五典君。

小野寺委員 自由民主党の小野寺五典です。

 きょうは、安倍総理に対しまして、主に外交、安全保障の問題について質問をさせていただきたいと思っております。

 安倍総理は、総理就任後、大変精力的に世界じゅうを回っていらっしゃいます。ちょっと地図に落としてみました。この紺色の色が塗ってあるところ、これは相互の首脳が往復した、ですから、日本の総理も行き、先方の総理も来られたという国であります。それから、ブルー、これは安倍総理が訪問した国ということになります。また、紫、これは先方が日本に訪問した首脳のいる国ということになります。

 数えてみますと、安倍総理が訪問した国は四十九カ国、これは過去最大でありました小泉元総理の訪問国を上回る数字であります。また、首脳外交、特に首脳会談を行った国は百三十一カ国になると聞いております。恐らく、これだけ各国の首脳と会ったということは過去なかったのではないかと思っております。

 その一つの成果だと思いますが、先般の国連総会におきまして安倍総理は演説を行い、そして、その演説の終わった後に、各国の首脳、それから国連関係者、多くの方が列をなして安倍総理に握手を求めに来たというふうに伺っております。

 まず、先般の国連総会におきましての安倍総理の、要人との会談を含めたその成果と、その目的についてお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今回の国連総会における大きなテーマは、エボラ出血熱の問題であり、あるいはイスラム国を標榜する武装勢力への対応、またウクライナ、気候変動、そしてまたPKO等々であったわけでございますが、私は、総会におきまして、戦後七十年の日本の平和国家としての歩み、そして、今後、積極的平和主義の考え方のもと、国際協調主義に基づいて、今まで以上に世界の平和と安定のために貢献をしていくという考え方、日本の考え方、あるいは歩んでいく道について説明をしたところでございまして、基本的に多くの国々から、この日本の考え方に評価が与えられたわけでございます。

 特にPKOについては、バイデン副大統領が議長を務めたハイレベル会合があったわけでありますが、共同議長になるように要請されまして、なかなか帰国の日程との関係があったんですが、こちらの日程にも合わせていただきまして、私も共同議長として参加をしたところでございます。これはまさに、日本の積極的平和主義に対する評価の中において、日本もしっかりと世界に向かってPKOにおいて世界が何をすべきかという主張をしてもらいたいということであったのではないか、このように思います。

 来年は創設七十周年を国連は迎えるわけでございまして、安保理を含む、二十一世紀にふさわしい姿に改革していく上において、我が国がリーダーシップを発揮していかなければならない、そのことも一般討論演説で申し上げたわけでございます。

 そしてまた、女性が輝く社会をつくっていく、このことも強く発信したわけでございまして、ヒラリー・クリントン前国務長官との対談を通じ、米国社会、そして世界に発信してきたところでございます。

小野寺委員 今回、国連での演説を含めて、今世界がグローバルな舞台で活躍する日本を必要としている、それが安倍政権にしかできない、そのような実感を恐らく総理は持たれたんだと思っております。

 全体の国連での流れからしますと、例えば、中東でのイスラム国の台頭の問題、テロの問題、またエボラ出血熱の問題、そして現在、香港ではさまざまな混沌とした状況が起きております。国際社会はまさに動いている、そういう状況だと思います。

 その中で、訪問した各国を見て、皆様もお気づきだと思いますが、日本の近隣の大切な国との関係が実はまだ白い状況になっています。中国そして韓国ということになります。

 まず、日中関係についてお伺いをしたいと思います。

 日中関係、実は、東シナ海をめぐるさまざまな緊張感、現在も続いております。昨年には、中国の海軍艦艇から日本の海上自衛隊の艦船に対して、火器管制用のレーダー照射、いわゆるロックオンをされるような事態がございました。また、その後も自衛隊機に対して異常な近接行為を行うなど、非常に緊迫した、一歩間違えば不測の事態を招きかねない非常に危険な状況があります。その都度冷静に日本政府は対応されてきたと思っておりますが、やはり、中国のこのような対応は、国際社会全体としてしっかり物を申していくこと、これは大切だと思います。

 また、実は、先日、小笠原村の村長が私のところにお見えになりまして、今、中国の漁船と思われる多数の漁船が小笠原村父島と母島の間に来ており、そしてそこで恐らく何らかの漁業をしているのではないか。地域の漁業者にとって、あるいはダイビング、観光、島民の方にとって初めての事案であります。大変今緊張感を持ってこの状況を見ているということであります。

 どうも、太平洋においてもさまざま進出の状況が見られる、これが今の日本の周辺環境だと思っています。

 中国とどのような形で今後話し合っていくのか。私ども防衛当局にいた場合の一番の問題は、やはり、不測の事態を招きかねない衝突を避けるための連絡メカニズム、海上連絡メカニズムでありますが、これも含めて、今後、日中間の対話は重要だと思っています。

 十一月のAPECのタイミングを捉えて、総理はどのような形で日中関係の対話あるいはさまざまな交流を深めていくか、その方向性について教えていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 私は、中国との関係を改善していきたいと考えております。中国の平和的な発展は、我が国にとってチャンスでありますし、世界にとってもチャンスであろうと思います。

 隣国同士であるがゆえに、さまざまな課題、問題、歴史的な課題もあるのは事実であります。しかし、課題や問題があるからこそ、胸襟を開いて、前提条件なしに話し合うべきだろう、このように思います。

 ですから、私はずっと日本の対話のドアはあいている、こう申し上げてきたところでございまして、先般、国連の場において岸田外務大臣と王毅氏との間で対話が行われたことは御承知のとおりでございます。

 そして、今、小野寺委員が指摘をされました海上連絡メカニズム、この必要性については、まさに防衛大臣を経験しておられた、本当に実感をしておられたのではないか、こう思います。

 これは、第一次安倍政権のときに中国側に申し入れをしまして、中国側はその後基本的に合意をしたわけでございますが、しかし、その後、中国側がこれを実行してこないという問題が今日に至るまであるわけでございます。

 その観点から、今般、二年ぶりに開催されました日中高級事務レベル海洋協議において、防衛当局間の海上連絡メカニズムの早期運用開始に向けた協議再開に原則一致したことは、私は大変有意義であった、こう思っております。

 十一月にはAPECが北京で開催されるわけでございまして、そこの白いところに、私は北京に参りますから、ちょうど五十カ国目が中国ということになるわけであります。地域の平和と繁栄に大きな責任を持つ日中両国が安定的な友好関係を築いていくためにも、APECの際に日中首脳会談ができればよいと考えております。

 そのためには、両国が互いに静かな努力を重ねていくことが大切だろうと思っております。

小野寺委員 日中間の対話に向けての間合いが少しずつ何か迫ってきたな、そういう印象を持っておりますが、ぜひ対話の中で、日本の主張、そしてまた、これは東シナ海、南シナ海で中国に対して私どもが常々言っている、力による現状の変更はあってはならない、国際的なルールそしてまた対話による解決、これを今後も進めていただきたいと思います。

 日ロについて少しお伺いをいたします。

 総理とプーチン大統領は、大変個人的には親しい関係で、何度も交流をされ、そして、私ども、実は防衛当局も、昨年、ちょうどこの時期だと思いますが、日本で初めて日ロの2プラス2、外務、防衛の当局の会議がこの日本で行われました。これは大変画期的なことでありました。そして、これを機に、私どもは、ロシアとのさまざまな交流あるいは対話、これは北方領土も含む問題でありますが、それが解決する、前に進む、そういう期待を持ちました。

 ただ、残念ながら、ウクライナ問題を含めてさまざまな制裁を科す中で、今むしろ日ロの関係は少し距離があるというのが現実だと思います。

 ですが、やはり従来、私どもとして、ロシアというのは、これは中国も含めて大切な隣国でありますし、エネルギー問題、安全保障の問題でも重要であります。

 今後の日ロ関係、どのような形で進めていかれるか、総理のお考えを伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 プーチン大統領とは、就任後一年九カ月の間、五回首脳会談を行いました。その間、日ロの間で2プラス2ができました。これは画期的なことだったんだろう。

 かつては、米ソ冷戦時代には、まさに敵対的な関係が存在したのは事実でありますが、その防衛当局間も含めた2プラス2、小野寺大臣もショイグ国防大臣と大変緊密な関係を築いていただいた、このように承知をしております。先般もプーチン大統領とは電話会談を行い、両国の間で対話を継続していくことで一致をしたところであります。

 現在、ウクライナの問題があります。ロシアが責任ある国家として行動をとっていくこと、これはG7において一致してロシアに求めているわけでありまして、今後も、日本はG7と歩調を合わせてウクライナの問題の平和的な解決に向けて貢献をしていきたい、こう考えているところでありますが、こうした問題を解決していくため、あるいはまた、日本にとってまだ残っている大きな大きな問題である、日ロの間に平和条約がない、こういう異常な状況があるわけでありますから、その解決のためにも対話は必要であります。

 今後、十一月の北京APECの際の首脳会談の可能性を含め、対話を積み重ねながら、我が国の国益に資するよう日ロ関係を進めていく考えであります。

小野寺委員 ぜひ、大切な国でもありますし、ただ、国際社会の中で今、ロシアがやはりどのような形で見られているか、これはむしろ、総理がプーチン大統領と近いから、真の友人だからこそ率直なことを申し述べていただくことが大切だと思っております。

 次に、拉致問題について触れたいと思います。

 これは、古屋前大臣、そして山谷現大臣も大変努力をされております。多くの国民が、この拉致の一日も早い解決について期待を持っておりますが、残念ながら、また北朝鮮は私どもの期待に反する行動をとっております。

 先般、瀋陽で行われました日朝外交当局間会合におきましても、北朝鮮の対応、これは私どもから見ても全く誠意がない対応だと感じております。何か日本が北朝鮮に振り回されているような、そんな印象が持たれないように、政府としては戦略的な考えを持ってしっかり対応していただきたいと思います。

 そして、総理には、ぜひ、この戦略的な対北朝鮮対応、拉致の問題についての対応について、どのようなお考えをお持ちなのか。

 そしてもう一つ、実は北朝鮮側が、今回、日本側が平壌を訪問してくればより明確な情報を出すというような話もしておりますが、拉致家族の皆様は、この問題に関しては非常に厳しい考えも持っているようであります。

 政府として、この平壌への調査団の派遣についても含めて、どのようなお考えを持っているか、お聞かせいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 この北朝鮮の問題、また拉致問題については、私も初当選以来、二十数年かかわってきたところでございます。その中で、北朝鮮は、なかなかこちらの要望どおりには動かない国でありますし、何回も期待を裏切られているわけでございますが、北朝鮮に対しては迅速に調査を行い、そして速やかに、かつ、ここが大切なところなんですが、正直に結果を日本に通報するよう強く求めてまいります。

 引き続き、全ての拉致被害者の帰国に向けて、対話と圧力、そして行動対行動の原則を貫き、全力を尽くしていく考えであります。

 瀋陽での会合における北朝鮮側の説明を踏まえまして、調査の現状や結果を把握すべく、引き続き最善を尽くす考えでありますが、今後の具体的な方針については、今御質問のあった平壌への担当者派遣についてでありますが、被害者御家族を初めとした関係各方面の御意見にもしっかり耳を傾けながら、政府として総合的に判断をしていきたいと考えております。

小野寺委員 ぜひ、御家族の皆様の意見にしっかり耳を傾けながら対応し、これは、拉致家族の皆様、そしてまた政府が、足並みが乱れない形で対応していただきたいと思います。

 これまでの安倍外交を見ますと、大変、経済外交にも力を入れていらっしゃいます。例えば、これは地球儀を俯瞰する外交の中で、日本企業関係者とともに外国訪問を行い、総理みずからトップセールスに力を入れていらっしゃいます。

 これまでに、例えばマレーシアの発電所建設においては約一千三百億円、そしてイギリスの高速鉄道計画には一千八百億円、このような日本企業の受注ということが成り立っております。

 恐らく、なぜ総理がトップセールスを行うのかということに多少の疑問を持つ方ももしかしていらっしゃるかもしれませんが、実は今、世界各国の首脳はそれぞれトップセールスをし、その国のさまざまな経済的な強化を図っているのが現状であります。

 オランド・フランス大統領は、インド、ブラジルを訪問し、かなりの成果を上げておりますし、キャメロン英国首相も、過去三年間、G20の国を中心にさまざまな経済ミッションを送ってトップセールスを行っている。

 これからも、この分野、私は、やはり日本の経済成長のためには、総理みずからさまざま足を運んでトップセールスをするということは大変重要なことだと思いますので、これからもこの方向で進んでいただきたいと思っております。

 さて、外交の問題はこのぐらいにさせていただきまして、少し安全保障の問題についてお話を進めさせていただきたいと思います。

 安全保障法制の問題です。

 私も、実際、集団的自衛権の問題にかかわる閣議決定をする立場の中におりました。そのとき、さまざまな方から、例えば日本の国がもう一度戦争をするような国になるのではないか、さまざまな不安の声を聞かされました。

 ただ、私、とても違和感があることがあります。実際、自衛隊という組織を担任させていただく立場になって一つ一つの事例を見ていくと、これはやはり集団的自衛権のことに真っ正面から向かわなければいけないなという事案が幾つかあります。少し聞いていただければと思います。

 総理が時々引き合いに出されますが、例えば、日本の周辺国で紛争が起きます。紛争が起きたときに、その国には多くの日本人、これは住んでいる方もいるし、ビジネスマンもいますし、観光の方もおります。もし紛争がここで起きてしまったときに、恐らく民間の航空機や民間の船舶はストップします。

 なぜかというと、例えば、ウクライナで先般、マレーシア航空機の撃墜がありましたが、今は比較的小型の武器で航空機を撃墜することもできます。大変危険です。ですから、恐らく民間の航空機や船舶は動かなくなる。

 そして、どこでこれに対応するか。もちろん、日本政府は懸命に邦人をとにかく日本に安全に連れて帰ってこようと努力をすると思いますが、それでも足りない場合、例えば関係の深い国にお願いすることもあると思います。米国、ここは日米のガイドラインの中で明確に、こういう邦人については輸送を行うという約束を現時点でも持っております。

 そうすると、仮に、米国の輸送艦あるいはチャーターした船、この船で、多くの日本人が、助けてほしいということで、日本に輸送してもらう途中、乗っているのはみんな日本人です、そこに対してある国の船から攻撃が行われる。これは日本人の命が危なくなる。その近くに日本の海上自衛隊の船がいる、航空自衛隊の戦闘機がいる。これはいつでも助けられる。

 ところが、公海上において、まだ日本が攻撃される前に、日本人がたくさん乗っている外国の船舶が攻撃されているときに、日本の自衛隊が武力をもってこれを阻止しようとした場合、これは国際法上、集団的自衛権と解される可能性が高いんです。

 誰が考えても、日本人がたくさん乗っていて、日本に安全に運んでくる船を攻撃する国、船、その船に対して、当然、日本政府、自衛隊が攻撃をする。日本人を助けてくれ、恐らくここにいる方はみんな、それは当然だと思います。助けるのは当たり前だと思います。

 ですが、これが公海上で行われ、日本が攻撃される前だとすれば、国際法上、これは集団的自衛権と解される可能性が高い。もしこの邦人を助けるのであれば、この問題に踏み込まなければいけない。

 これが、私ども、この安保法制の議論をする中で、常々、特に私は部隊の司令官として重く感じておりました。

 もしこの場面に部隊の隊員が直面したらどうするか。恐らく海上自衛隊の職員は、まず自分がその攻撃されている船の間に入って、みずからが攻撃を受けて、そしてみずからが攻撃を受けたことをもとに、武器等防護の規定で反撃をする。まず自分が撃たれる、こういう判断をする可能性だってあるんだと思います。

 このような問題に、今まで政治は直面して見てきませんでした。

 もう一つ、悲しい例をお話しします。

 もし、この船が、日本人がたくさん乗っている民間の船が仮に攻撃を受けて沈没してしまった。そして、そこにたくさん日本人がいて、民間人ですよ、泣き叫んで助けてくれと言っている。この現場に日本の海上自衛隊の船がいたときに、この日本人を助けていいかどうか、これを迷うことになります。

 なぜかというと、ここは戦闘が行われている地域ということに解した場合には、自衛隊はそこに行っていいかどうか。実は、こういうことすら、私ども、今まできちっと整理できていなかった。

 なぜかというと、恐らく、こういう問題、日本人を守る、生命財産を守るということを詰めていくと、集団的自衛権にこれはなってしまう、そこに踏み込んでしまう。この踏み込んだ話をもししたら、恐らく、多くのマスコミや、済みません、野党の皆さんから、日本は再び戦争をする国になるんだ、必ずそういう攻撃を受けます。そうすると、済みません、支持率も下がります。それから、選挙も大変になる。やはりこの問題はなるべく触れないようにした方がいい、恐らくそういう判断も残念ながらあったんだと思います。

 ですが、安倍総理は、この問題に対して真っ向から、これは避けて通れない、議論しようということで、今回踏み込んでいただきました。

 総理も自衛隊の最高指揮官をされていらっしゃいます。恐らく、現場の自衛官が困るようなこと、身を危険にさらすようなことをしないで、日本人の、国民の生命財産をしっかり守っていただきたい、そう思う気持ちは一緒であります。

 それをずっと詰めていくと、これは集団的自衛権に踏み込まなければいけない、結果的にそうなってしまう、国際法上ではそうなってしまう。こういうことがある中で、私どもとしては、今回の憲法解釈の変更について閣議決定をされたんだと思っていますし、私はその思いでさせていただきました。

 そして、これから法整備をするに当たって、例えば日本が再び戦争をする国になることはない、あるいは、例えば日本が地球の裏側まで行って自衛隊が戦争をするような立場にはない、例えば私たちの子供たちが将来徴兵制のようなことがしかれるようなことはない。こういう今皆さんが思っている危険の気持ちに対して、ぜひ総理の気持ちから、今回の集団的自衛権の、あるいはさまざまな安保法制の問題というのは、国民の生命財産を守るとき、どうしても、それをやっていく中で、国際法上にやむを得ない中でこのような集団的自衛権の中の解釈の変更が必要なんだ、こういう私どもの共通の認識を多くの国民の皆さんに訴えていただけないでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今、小野寺委員が指摘をされたように、近隣諸国でもし紛争が起こったときに、基本的には、そこにいる外国人は一旦日本に退避してきて、そこから、日本人は日本にもちろん、そしてほかの人々は自分の母国に帰っていくというのが基本的なオペレーションになっているわけでありますが、それは基本的には米軍が担うという形の中で、日本にも協力が求められているところでありますし、その協力の中で模擬演習等が行われているわけであります。

 しかし、最大の問題としては、その船がもし攻撃されたときは、日本人が乗っていても、日本の自衛艦はそれを守ることができない。それは日本の法制局の判断で、これは集団的自衛権に該当するという考え方でありますし、これは国際法的にも集団的自衛権に該当する、こう言われているわけでありますから、できない。そして、その後の事態についても、戦闘地域になったらということもあるわけであります。

 もちろん、こんな事態は起こらない方がいいわけでありますし、起こる可能性は低いわけでありますが、起こることもあるわけであります。想定外は我々には許されないわけでありまして、その中においても私たちは国民の命と幸せな生活を守り抜いていくという大きな責任の中で、今回、閣議決定を行ったところでございます。

 私たちがやろうとしているのは、あくまでも国民の命と平和な暮らしを守るわけでありまして、そのことは三条件にしっかりと書き込まれていて、それは閣議決定を行っています。

 そこで、今、いわれのない批判としては、海外派兵をするのではないか。海外派兵は一般には許されていないという従来の原則も、これは全く変わりはありませんし、米軍のために海外の戦争に参加するのではないか、こう言われています。戦争ができる国というのはそういうことなんだろう、こう思いますが、従来から何回もこれは答弁しておりますように、かつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するということはこれからも決してないわけでございます。

 現在、ISILに対する空爆等が行われていますが、日本は平和的な貢献をしていくということを表明しているわけでありますが、空爆等、あるいは地上軍を出すということはないわけでございます。そしてまた、他の国、他国の防衛それ自体を目的とする集団的自衛権を認めるものではありません。

 したがって、外国を守るために日本が戦争に巻き込まれるという批判は、これは当たらないということは申し上げておきたいと思います。

 かつて、一九六〇年に安保改定をしたときにも、日本は戦争に巻き込まれる、盛んにそう批判をされたわけでございますが、あれから五十年たって、果たしてどうなったか。まさに抑止力が増して、日本の平和はそれによって守られてきたんだろうと思います。

 また、徴兵制、若者が戦場に行かされる、お父さんがいなくなるかもしれないという、これは全くのデマと言ってもいいと思いますね。徴兵制は憲法違反であるということは何回も私はこの予算委員会で申し上げているわけでありまして、徴兵制につながるとの批判は当たらないわけでありますし、この憲法解釈については、これは変えていくという余地はないわけであります。

 今後、法整備を進めていく中において、しっかりとわかりやすく説明を重ねていきたい、このように思っているところでございます。

小野寺委員 ぜひ、私どもとして、日本人の生命財産を守るために、その行動をとる中で、ここはやはり国際法上のジャンルからいえば集団的自衛権に解される、そういう中で今回見直しを行っている、そういう前提、これを多くの皆様に知っていただくことが私は大切なことだと思います。

 そして今回、今、抑止力というお話が総理から出ましたが、私ども、紛争を起こさない、問題を起こさない。今、江渡大臣が頑張っていらっしゃいます、私の在任中もそうですし、これは石破先生のときもそうだと思いますが、自分の在任中に何事も起こさない、これが私は防衛大臣の最大の勲章だと思っております。そして、抑止力が一番大切。その抑止力の一つの大きな原点となっていますのが、日米の同盟関係だと思います。

 日米同盟関係、これはもうかなり長い期間結んでおりますが、実は、その都度、同じ同盟であっても、どういう形で役割分担をするか、日本の安全を守るために日本はどういうことを担う、アメリカはどういうことを担う、こういう役割分担を日米のガイドラインといいます、このガイドラインが今、十七年ぶりに改定をすることになります。

 理由は、御存じのとおり、十七年前であればまだ米ソの冷戦構造が多少残っていた。ところが、現在私どもが直面している安全保障環境は、例えば周辺国の軍事的な能力の向上があり、あるいは我が国の周辺を見れば東シナ海のさまざまな緊張関係があり、あるいは新たな脅威として宇宙やサイバーという分野まで広がっている。

 そうすると、こういう分野に対応できるための日米の役割分担、日米ガイドライン、この早期の改定が必要だ。これは日米間で合意をしております。恐らく近々この中間報告が出ると伺っておりますし、従前からこれは、ことしじゅうに結ぶ、ガイドラインの一定の方向が出るということで私ども承知をしておりますが、このスケジュールは変わらないのか、そして今度のガイドラインではどのようなことを重点的に考えられるのか、教えていただければと思います。

江渡国務大臣 小野寺委員にお答えさせていただきたいと思います。

 小野寺委員、防衛大臣として、この2プラス2の改定に向けては、もう十二分に御承知のことだと思っておりますけれども、昨年の十月の日米合意、このときに結ばれたスケジュール感、これをしっかりと守っていきたいというふうに、今、精力的に一生懸命作業を進めているところでございます。

 今委員が御指摘のとおり、現行のガイドラインにつきましては、前回の一九九七年の見直しから既にもう十七年が経過しておりまして、その間に我が国の周辺の安全保障環境は本当に厳しさが増しているところでございます。

 そして、特に、今委員が御指摘のあったとおりに、グローバルな安全保障環境の状況が変わったということもありますけれども、そのほかにも、海賊や国際テロ、あるいはサイバー、宇宙空間、こういうような新たな領域という部分の課題もあるわけでございます。

 ですからこそ、日本の防衛というものを確固たるものにするためには、日本独自の防衛力の向上ということも必要でありますけれども、それ以上に、米国との幅広い協力を強化する必要ということはあろうというふうに考えております。

 このため、ガイドラインの見直し作業につきましても、その実効性を確保するためにも、見直し作業と安全保障法制の検討の両方の作業というものを十分に整合させるために、今、一生懸命努力させていただいているところでございます。

 そして、この安全保障法制の検討の状況を十分に踏まえながら、米国との協議というものも加速させていただきたいと考えているところでございます。

小野寺委員 江渡大臣には、防衛大臣という日々の日本の安全保障の役割、そして今回の安全保障法制に対しての役割、二足のわらじということで、大変御負担が多いとは思いますが、すばらしい能力、私どもよく存じ上げておりますので、存分に発揮していただければと思っております。

 さて、沖縄の負担軽減について少しお話をさせていただきたいと思います。

 私ども、とにかく沖縄には過度に米軍の基地が偏在しているということ、そして沖縄の皆様には、日本の中で第二次世界大戦のときに唯一の陸上戦が行われ、不幸な、さまざまな思いがある。その複雑な気持ちの中で、現在も多くの米軍基地が集中している。その沖縄県民の皆様の重い思いを常に背負いながら、少しでも負担軽減の努力ということで、今までしてきているんだと思っております。

 昨年十二月ですが、十七年ぶりに、普天間基地の辺野古への移設についての埋め立ての申請について、沖縄県から御了承をいただきました。そして、十八年越しでありましたが、同じく普天間にありましたKC130空中給油機、この十五機を山口県の岩国飛行場へ移駐することができるようになります。そしてさらに、これは申しわけないことでありますが、今後、厚木にあります空母艦載機、六十機であります、これがまた岩国基地に移駐することになります。

 そうなりますと、実は岩国に所在します米軍機は百二十機になります。これは恐らく、日本全体の米軍の航空基地の中で最大級ということになります。改めて、これだけの負担を受けていただいております山口県民の皆様、岩国市の皆様に感謝を申し上げたいと思っております。

 その中で、やはりまだ沖縄県では負担軽減がさらに必要だ、これは共通の認識であります。ぜひ、この負担軽減について、特に沖縄県側からもさまざまな御要望をいただいております。一部、残念ながら、県民の方の意識の中には、まだ負担軽減は確実にできていないんじゃないかとか、あるいは一部のメディアの中には、これは選挙向けじゃないかとか、いろいろな意見があります。ですが、私どもはそんな気持ちで沖縄の負担軽減を行っているのではない。とにかく沖縄県民の皆様の気持ちに立って一日も早い負担軽減をする、これが共通認識だと思っております。

 安倍総理の決意を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 小野寺委員には、大臣時代、負担軽減に本当に取り組んでいただいたと思いますし、また、米国のヘーゲル長官との信頼関係を生かしてさまざまな課題を前に進めていただいたと思っております。

 仲井真知事からの四項目の御要望については、県民全体の要請だと受けとめ、日本政府としてできることは全て行うというのが安倍政権の基本的な考えであります。

 具体的には、今委員が既に御紹介をいただきましたが、普天間配備の空中給油機130、十五機全機が岩国への移駐が八月に完了しております。これは、十八年越しの課題が一挙に解決できたわけであります。

 また、嘉手納以南の返還計画も、日米で七年越しの課題ではありましたが、昨年、日米首脳会談でオバマ大統領に直接問題提起をし、日米合意をすることができました。来年三月には西普天間住宅地区が返還予定でありますが、これは五十一ヘクタールで、東京ディズニーランドとほぼ同じ面積が返ってくるということになるわけであります。

 そして、まさに市街地の真ん中にあるこの普天間飛行場を一日も早く移設しなければいけない、これは県民全体の、また日本国全体の考え方だろうと思いますが、この移設は、現在の施設を単純に辺野古に移設するものではありません。また、一部には、普天間を強化して辺野古に持っていくという、そんな批判がありますが、これは全く的外れでありまして、ちょっとこれを具体的に説明させていただきたいと思います。

 現在の普天間飛行場は、まず第一にオスプレイなどの運用機能、第二に空中給油機の運用機能、そして第三に緊急時に外部から多数の航空機を受け入れる基地機能という、この三つの機能があるわけでありますが、これに対しまして、辺野古に移る機能はオスプレイなどの運用機能のみでありまして、ほかの二つの機能は県外に移します。一つはもう既に岩国に移ったということであります。

 また、辺野古において埋め立てる面積は、全面返還される普天間飛行場の面積と比べて三分の一、大幅に縮小されます。

 さらに、訓練等で日常的に使用する飛行経路については、現在は市街地の上空でありますが、これが移設後は集落から数百メートル離れた海上に変更されるわけでありまして、このため、騒音は大幅に軽減されます。現在は住宅防音が必要となる地域に一万数千世帯の方々が居住していますが、これを辺野古に移せば、移設後はこのような世帯はゼロになります。騒音の値は、住居専用地域に適用される環境基準を満たすことになるわけであります。

 これに加えて、万一航空機に不測の事態が生じた場合は、海上へと回避することで地上の安全性が確保されるわけでございまして、つまり、辺野古に移転する、これは、そのまま移転するのではなくて、大幅に縮小して、地元への負担は大幅に軽減されるということは申し上げておきたいと思うわけでございます。

 今後も、我々、米国に対して、累次、負担軽減について要請をしていきたい、このように考えている次第でございます。

小野寺委員 この辺野古への移設というのは、普天間の危険性を一日も早く除去する、普天間の危険性をなくすということが前提で進めている計画であります。ぜひ、着実に進める中で、また、沖縄の皆様に少しでも理解がいただけるように、誠心誠意これからも取り組んでいただきたいと思っております。

 安全保障の分野を担当させていただいて、私も総理の御信任をいただきまして、大臣在任中、一年八カ月、約百五十カ所の駐屯地、基地を視察、激励をさせていただきました。

 例えば、日本最東端、南鳥島というところがあります。ここには、十数名の海上自衛隊の隊員、そして十数名の国土交通省、気象庁の職員、合わせて三十名だけが住んでいる、それだけの島になります。周りは絶海の孤島であります。

 ところが、この島を日本が持っているということで、実は、海洋面積、これは、日本の全陸地の面積よりも広い面積を日本は海底鉱物資源を含めて領有することができます。

 最近ここに、世界最大のプラチナ鉱山、あるいはレアメタル、レアアース、このようなものが見つかりました。これを維持するということは、今すぐこの瞬間には活用できないかもしれませんが、私どもの子供や孫の世代は必ずこれを活用することができる。私は、大変重要なところ、そこを実は日々守っている隊員がいるということをぜひ知っていただければと思います。

 また、印象深かったのは、山口県の見島。ここは山口県の、それこそ本土からは五十キロ離れた離島であります。生活環境が大変厳しいところ。ここに、今この瞬間も、レーダーサイトにおいて、ここは実は北朝鮮を見張る一番いい場所になります。二十四時間三百六十五日、この厳しい場所で必死に日本のために警戒監視に当たる隊員がいるということ。

 そして、きょうもそうでありますが、今、御嶽山を含めて、災害対策において、危険を顧みず活躍している警察、消防、そして自衛隊員がおります。私ども、この現場の隊員がこれからもさまざまな判断に迷うことなく、必要な法整備は今回の安保法制の議論の中でしっかり進めていただきたい、そのように思っております。

 さて、ここから少し話題がかわります。

 私は、宮城県の田舎の出身であります。生活環境も田舎の人間であります。その中で、安倍政権の今回の非常に重要な政策、地方創生というテーマがあります。大変重要なことです。

 ですが、この地方創生、なかなか、地元を回ると、皆さん、ふっと心に落ちてこない、気持ちの中にすっと入ってこない。これはなぜかなと思って聞いてみたら、中長期的に地方を元気にする、人口をふやす、これは大切なんですが、実はそれ以前に、今、あしたの生活、これを不安に思っている地方在住者がたくさんおります。ガソリンが上がりました。地方の方は、車、一人に一台。ガソリン高は直接懐に響きます。

 そして、きょう少しだけ取り上げたいのは、米の概算払いの下落、米価格の下落ということであります。

 実は、米、これは今、ちょうど収穫の時期になっています。ことしも豊作基調と言われています。そして、この米の収穫、農家が農協に出荷した後、概算金ということで一時金が農家に入ります。通常、昨年、宮城県のひとめぼれであれば、一万一千二百円の概算金が農家に支払われました。ところが、ことし、農協が出した数字は八千四百円。八千四百円です。

 ちょっとこの数字で、どういうことかということを知っていただきたいんですが、例えばこれで、十ヘクタール、東京ドーム八個分の面積を水田として耕している方、この方が全部米を売って、そして手取りで入るお金は七百四十万円、概算金八千四百円とするとですね。これは、資材と機械代を取ると、手取りは四十万しかありません。東京ドーム八個分を耕しても、手取り四十万。この概算金が余りにも低過ぎるんです。

 そして、なぜ低いかというと、ことしはどうも豊作だという基調が出てしまったために、各県の農協、今は独自に概算金を出しますが、なるべく自分の県で持っている米は早く売りたい、早く売りたい、こういう気持ちが、今、各県の農協に蔓延しています。ですから、できるだけ早く売るためには、安くても早く出さなきゃいけない、そういう、むしろ値段を下げるインセンティブが動いているのではないか。

 本来、農協というのは、農家の方の生活を守る、農家のための収入を上げる、ということは、逆に言えば、米の値段を少しでも上げる方向に努力するはずなのに、残念ながら、現在、この概算金を見れば、むしろこれだけ下げれば実際の価格も下げざるを得ない、そういう不安が今地方に蔓延しています。

 宮城県の場合でぜひ知っていただきたいのは、一応、宮城県の農協は、昨年よりは下がるけれども、一万三千三百円を販売目標にするんだ、この八千四百円は概算金なんだ、後で追加払いするんだ、そして少しでも農家の手取りを上げるんだ、こういうことで今頑張ってくれています。

 私は、やはり政府も、農協任せではなくて、一緒になって少しでも農家の所得が上がるように、値段がしっかり適正な価格になるように支援をしていただきたい、そう思っています。

 それからもう一つ、実は価格が下落したときに、国は保険を掛ける制度をつくっています。農家の米の価格が下がったら、ナラシ対策という、下落分の九割を補填するという、ある面ではありがたい保険制度をつくっています。

 ところが、この保険制度に入っている農家は、面積要件でいうと全農家の四割だけ。六割は保険に入っていない。なぜ入っていないかというと、入る要件が高過ぎたんです。認定農業者になる、そして、個人であれば四ヘクタール以上、集落営農であれば二十ヘクタール以上、これが要件でした。ですから、入りたくても入れない。

 ことしのような価格下落になったときに、救われる農家は四割、救われない農家が六割いるわけです。こういう方の不安があるから、実は地方創生といっても、まず初めに今のこの不安を解消してほしい、これが農家の声だと思っています。

 私は、この米の下落が今後続くのであれば、大切なやり方は、三者がしっかりする必要があります。

 一つは農協。農協がもとの、やはり農家のためにという原点に返って、多少自分たちがリスクがあっても、しっかり支えるための、米を適正価格で売る努力をこれからもしていただくこと。

 そして、国はこれをしっかり後押しする。さらにいろいろな制度をつくって、今回の厳しい状況については対応していただくこと。もし今回、最終的な精算をした場合に、採算に満たないような状況であれば、私は、ぜひ政府としてもう一歩の後押しをしていただきたい、そう思っています。

 そして、政府の努力もそうですが、もう一つは農家の方の努力も必要だと思います。ことしみたくこうやって下がるのであれば、これは来年も再来年もあり得ます。ぜひ、みんながこの保険制度に入っていただきたい。ナラシの保険制度に入っていただきたい。そうすれば、国が、下落した場合、下落分の九割を実は出せる。三方が努力して、来年に向けて努力をする必要があるのだと思います。

 ぜひ、西川農林大臣に、今回の米対策について、農林省としての考え方をお示しいただきたいと思います。

西川国務大臣 米の下落、全国的に心配がある、こういうことは私どもの方へも声が届いております。

 しかし、今、小野寺議員が申されたように、これから追加払いが農協からある。さらには、それと、我々が目標とする一万五千円を少し超える価格との差は、この価格差の九割を収入減少影響緩和対策事業、ナラシということで補填をしますので、農協で追加払いした額と、それから国で考えている一万五千円強との差額、これの九割が補填されますので……(発言する者あり)九割が補填されます。

 それで、ほとんどされるかどうかというのは、四割がこのナラシに入ってくれています。入っていない人は、今回に限って、二十六年度に限って国庫の半額を支出いたします。

 収入保険と同じでありますから、今御指摘がありましたように、入っていただいた方がいい、これはもう当然のことでありますから、来年からは面積要件を外します。そして、営農対策で皆さんが一緒にやってくれる、こういうことになった人を、大規模に入っていただいて、価格の下がったときに余り心配しないで米づくりができる、こういう方向に私どもも誘導していきたい、こう思います。

 そこで、米のことしの状況を申し上げますけれども、九月の十五日、これの作況が出ました。一〇一ですね。去年は、作況、一〇二です。二十八万トン、米の収量は減る予定です。

 そこで、そういう状況の中、今月末にもう一度やります。稲穂の数と収量は相当違うんではないかという説もあります、ありますけれども、いずれにしても、これが出たときに、どういう対策をやるか、こういうことを決めていきたいと思います。

 ことしに限っては、入っていない人も国庫の半額を出す、これだけ、全国の水稲農家の皆さんにわかっていただきたい、こう思います。

 以上です。

小野寺委員 しっかりとした対策をお願いしたいと思います。

 最後に一つだけ、震災復興のことを少しお話しさせていただきたいと思います。

 私も、宮城県の気仙沼、被災地の出身であります。実は、被災地で一番今心配をしているのは、さまざまな政策、これは竹下大臣も一生懸命やっていただいていますので進んではいるんですが、今後の財源ということになります。

 例えば、今、災害公営住宅をつくって、着工は約八割、これは既に動いているということになっていますが、これができるのは、ことし約二割ぐらいしかできません。でき上がるのは、あと三年、四年先です。そうすると、これからも、実はこの災害公営住宅にたくさんのお金がかかります。ましてや、福島はこれから始まります。そうすると、本当にお金がいつまで続くのかという心配があります。

 ここに数字を示させていただきました。この青い方が二十三年から二十六年の復興に係る事業費ということになります。そして、この事業に係る財源が、この片方にありますが、二十五兆円、自民党になりましてさらにこれは前の予算よりも約六兆円ふやして、今二十五兆円の財源があります。ところが、残り、差額は二・四兆円しかありません。これであと何年間の、これからの復興、十分この予算で間に合うのか、これが多く出ている声であります。

 大島委員長は自民党の加速化本部長であります。こういう声をたくさん自治体の首長から聞いていると思います。

 総理に最後に一言、ぜひ、財源の問題を含めて、復興がなし得るまでしっかりやるぞという決意を伺い、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 まずは、五年間の集中復興期間の区切りとなる二十七年度予算について、被災地の一刻も早い復興のため、必要な額をきちんと措置していきたいと思います。

 これまでも、例えば、用地取得が難しいといった被災地の声をもとに、用地取得の迅速化など、加速化措置を講じて災害公営住宅等の住宅再建を進めてきました。二十八年度以降についても、引き続き、被災者の方々の心に寄り添い、しっかりと対応してまいります。

小野寺委員 ありがとうございました。終わります。

大島委員長 この際、菅原一秀君から関連質疑の申し出があります。稲田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。菅原一秀君。

菅原委員 自由民主党の菅原一秀でございます。

 本日、大島委員長を初め各理事の皆様のお力添えをいただき、質問させていただく機会をいただきました。

 まず冒頭に、今般の御嶽山の噴火、このことによってお亡くなりになられた方々に心から御冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された方々にお見舞いを申し上げる次第でございます。

 また、広島を初め各地で、豪雨土砂災害、こうした事案によってお亡くなりになった方々に御冥福をお祈り申し上げますとともに、重ねて被災地にお見舞いを申し上げる次第でございます。

 御嶽山は今なお噴火が続いております。まさにそうした火山灰や有毒ガスと闘いながら、警察、消防、そして自衛隊、関係各位が懸命なる救命救助に当たっているわけでございます。心から敬意を表するとともに、政府の一層の現場へのバックアップをお願い申し上げるものでございます。

 質問に入らせていただきます。

 私は、去年の九月まで安倍内閣の経済産業副大臣を務めておりました。また、この一年間は党の財務金融部会長を仰せつかってきたわけでございますが、ある意味では、風景が違って見えたこの一年九カ月であったわけでございます。

 まず、この一年九カ月、安倍内閣のもとにアベノミクスを推進して、御案内のとおり、民主党政権終わりのときに日経平均株価、八千七百円であったものが、今や一万六千円台をうかがう状況にあります。有効求人倍率も、当時〇・八七であったものが、今や一・一倍となりました。また、東証の株式の時価総額、これも、当時二百七十五兆円であったのが、今や四百三十兆、百五十五兆近くも上積みになっているわけでございます。

 まさに、こうしたアベノミクスの成果が確実に出て、そして日本経済が回復軌道に乗ってきている、このことがまず見てとれると思います。

 ところが、ここに来て、十月一日発表の日銀短観を初め、幾つか、やや足踏み状態にある、こういう報道や指摘もあることも事実であります。しかし、人間の体と一緒で、レントゲンだけじゃわからない、MRIやPETによって、あるいはその人間の血液や免疫力が意外とあるのではないか、こういったことも日本経済を見るにおいては大変重要なことだと私は捉えております。

 ここに資料を置きましたが、例えば、八月の実質消費支出、マイナスとなっておりますが、振れ幅が大きい住宅ですとか自動車、こういったものを除きますと、前月比で二・一%ふえております。小売販売額も前月比プラス一・九。こうして、個人消費は緩やかに回復をしている、持ち直しが続いている、こういう状況にあると思います。

 生産も、八月の鉱工業生産はマイナス一・五、ちょっとびっくりしましたが、同時に公表されました九月の生産予測指数は前月比プラス六・〇と極めて強い数字が出ておりまして、企業が景気回復の先行きに対して決して悲観的ではない、こうしたことも見てとれると思います。

 一方、雇用情勢、先ほど申し上げたように、有効求人倍率、二〇〇九年は〇・四二ぐらいだったのが、今一・一。まさに隔世の感があるわけでございまして、失業率、私はこの前ドイツ、ヨーロッパに行ってきましたが、スペインとかギリシャは完全失業率が二六%、若年層の失業率は五二%。ドイツに至っても五%、イギリスが八%。こういう状況の中で、だから日本がというわけではありませんが、三・五という状況、これは冷静に捉えるべきだと私は考えます。

 こうした消費や生産、雇用、それぞれ、数字によっては強く出るものもあれば弱く出るものもある。いわば、経済、金融というものは生き物でありますから、こうした状況の中で消費税の判断もしなければいけない。しかし、ここは間髪を入れずに、経済対策、不断の推進をするべきだと思いますが、年末から来年にかけての経済財政運営、安倍総理のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 我々は、三本の矢の政策によって、一昨年の十二月、政権奪還以来、経済最優先で全力を尽くしてきたところであります。

 その結果、我々が政権をとる前の二〇一二年の四月、五月、六月はマイナス二・二%、七―九はマイナス二・七%、十―十二月はマイナス〇・五%であったものが、一三年、昨年は、一―三がプラス五・一、そして四―六がプラス三・四、そして次はプラス一・八と、ずっとプラスで推移してきているわけであります。そして、ことしの一―三はプラス六・〇であったわけでありますが、四月の消費税引き上げ後、これは反動減でマイナス七・一%となったわけであります。

 我々の政策によって、日本はまさに暗い雲を吹き飛ばすことができた、そして成長軌道に乗り、日本は再び成長できるかもしれない、この自信を取り戻すことができたわけでございますが、この四月、消費税を上げたことによる影響がマイナス七・一%であったことは事実であります。その後、天候の不順等もあるわけでございますので、また、燃油価格の高騰もあります。そうしたものをしっかりと見ていく必要もあるだろうと思います。

 消費税一〇%の引き上げ判断については、経済再生と財政再建の両立を図る観点から政策を進めていきたい、こう思うわけでありますが、さまざまな経済の指標を十分に注視していきたい、このように、引き上げについての判断は、注視していき、そして適切に年内に判断をしたい、このように思っております。

菅原委員 今、安倍総理がおっしゃったように、経済指標というのは、時折、強くも弱くもある。しかし、これは、中長期的な視点で見ながら、そしてまた、しっかりとその責任を担っていただきたい。いわゆる小状況的から大状況的な視点を持って経済運営を進めていただきたい。

 アメリカは、九〇年代、名目GDPが六兆から七兆ドルだったんですが、今、御案内のとおり、約二十兆ドル、三倍以上あります。今度は日本の番だ、こう考えます。さらなる力に期待をしたいと思っています。

 次に、GPIF改革について伺いたいと思います。

 ことし一月、安倍総理は、ダボス会議におきまして、世界の経済リーダーが集まる場において、国家戦略特区による岩盤規制の突破、あるいは法人税率の引き下げ、あるいはGPIF改革という政策の方向性を明らかにしまして、その実行に誠実に取り組んでおられる姿、これが、アメリカの、エコノミスト誌などにおいては大変評価が高くなっております。

 GPIF、いわゆる昔の年金福祉事業団、これは、自民党も、社会保険庁改革を進めながら、かなりこの期間、組織はスリム化をし、改革を進めてきたわけでありまして、今現在のいわゆる年金積立金の管理運用独立行政法人、国民の年金積立金を運用あるいは管理をする機関であるわけでございますが、六月末で百二十七兆円という運用資産額。これは世界でもトップクラスの資産でもあるわけであります。

 この運用のあり方は、御案内のとおり、我が国の、あるいは国内外の金融市場に極めて大きな影響を与えるものでありまして、国内外のマーケットの関係者から大変注目度も高い。事実、安倍政権の一年九カ月において、運用収益は二十五兆円。これは大変目をみはるものがあって、そしてまた、それは国民の年金の資産にもなっているわけであります。

 このGPIF改革は、自民党の経済再生本部でも論議をし、デフレ脱却を見据えた、国内債券中心の運用から、国内株式を初め、株式、証券、こうしたものを中心に運用していこうではないか、そのための基本のポートフォリオの見直し、そしてもう一つは、やはりこの運用の独立性を高める、こうしたガバナンス体制の見直し、こういう二本の柱で私どもは進めてきたわけであります。

 そして、GPIF、御案内のとおり、日本政策金融公庫やカナダの公的年金基金と一緒に各国のインフラ整備に進出をしたり、あるいは、日本版スチュワードシップ・コードの受け入れを決定するなどして、いわば閣議決定をした日本再興戦略改訂版二〇一四、これに沿った動きになってきていることは大変いいことだと思っております。

 ここで、お尋ねをしたいと思います。

 このGPIF改革、このたび鳴り物入りで厚生労働大臣に就任をされました塩崎大臣に、我が党も変わりました、党では、河野太郎さんが行革本部長。こうやって自民党は変わりつつあります。ぜひ塩崎大臣に、このGPIF改革についての意気込みをお聞かせいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 菅原委員とは、ともに議論を重ねて、この改革を含めていろいろやってきたものでございますので、ただいまの御発言、大変力強く思ったところでございます。

 去年の成長戦略、自民党のとそれから政府、そこで、一回、有識者会議をつくるということで、分散投資の考え方を入れながら改革を進めるということになりました。十一月に有識者会議の報告書が出て、さらに議論を深めた上で、五月に自民党からの改革の提案、そして政府の再興戦略の改訂版が六月に出てまいりました。

 柱は、二本立てでありますけれども、まず何よりも大事なのは、GPIFの百二十七兆というのは大事な国民からお預かりをした年金の掛金だということが一番大事なことであって、これを法律どおりにどうやって安全かつ効率的に運用するかということを私たちは改革を通じて実現をしていこう、これが大方針であります。

 それにのっとって、議論の結果、政府として閣議決定をされた日本再興戦略改訂版二〇一四の中で出てきているのは、二本立てであって、一つは、今お話があったように、基本ポートフォリオをできる限り早く決めるということ、変えるということ、この運用改革。それと、強固なガバナンスをしっかりと持った組織にすることによって貴重な年金の掛金の運用が確かなものになる、これが大事で、国民の皆さん方がこの体制ならば安心できるのではないのかということだと私は思っています。

 したがって、この運用改革とガバナンス改革は車の両輪であって、これをしっかりと両方ともやっていくということが大事なことだと思っておりまして、今鋭意議論をしているところでございます。

 もちろん、年金部会というのが社会保障審議会の中にございまして、ここでの議論をしていただきながら、省内でも議論をし、成案を得ていきたいというふうに思っております。

菅原委員 若干、厚生労働大臣らしくなったわけでございますが、ぜひ改革の魂はしっかり保持して頑張っていただきたい。

 今お話があったように、あくまでも国民の大切な資産、年金積立金であります。これを、長期的な健全性をしっかり確保して、アベノミクスのデフレ脱却に向けた経済運営、これをしっかり即応する、そういう体制、ガバナンスの二本柱ということでお進めいただきたいと思っています。

 次に、日本全体の企業の九九・七%を占める中小企業、小規模事業者対策についてお尋ねをしたいと思います。

 まず、日本の企業を二つに分けると、大きく、グローバル経済、ローカル経済という二つに属する、そういう特性があるのではないかと思っています。いわば、グローバル経済といえば、輸出中心で、今回の円安の恩恵をこうむっている、そしてこれが株価やGDPに寄与している、こうした部類と、あわせて、地域経済を支える、そしてまた、地域というのは都市も地方もそうでありますが、こうした地域経済を支える、いわゆる非製造業を中心とする、サービス業等を中心とする中小企業、こういうふうに大きく分かれるのだと思います。

 安倍総理のリーダーシップによって、ローカルアベノミクス、地域経済、先ほどもるる議論があったように、地域経済の担い手としての中小企業、小規模事業者、この成長こそが必要不可欠でありまして、私も一昨年の経済産業副大臣時代に、全国、“ちいさな企業”成長本部という会議を回らせていただきました。

 本当に、全国津々浦々回っておりますと、三百八十五万社のうちの約九割を占める三百三十四万社の小規模事業者、製造業でいえば二十人以下、サービス業でいえば十人以下、こうしたいわゆる地域の小さな事業者の方々の思いに触れ、悩みに触れ、さまざまな政策を安倍政権として打たなければいけない、こうしたことでやってきたのが、千四百億円に上るものづくり補助金の支援、あるいは中小企業の設備投資の減税。控除額は、御案内のとおり、資本金三千万以下の企業であれば、仮に一千万投資をすれば百万円戻ってくる、七パーから一〇パーにこの税額控除のボリュームをふやしたわけでありまして、こうした対策。

 あるいは、個人保証ということが大変中小企業経営者にとっては重い悩みであるわけでありますが、この個人保証の偏重を打ち破るための経営者個人保証ガイドライン、こうした運用がこの二月から開始をされまして、公的金融機関だけで既に二万件を超えるこうした融資が個人保証なしで進められる、これも安倍政権の大きな仕事であった、こう思います。

 こうした中で、昨年十二月の日銀短観、そして中小企業の業況判断が非製造業で二十二年ぶりにプラスに転ずる、景気回復の流れが着実にあらわれたわけでありますが、先ほど申し上げたように、今般の日銀短観、九月調査によりますと、この中小企業の製造業、非製造業、いずれも前期比でマイナス二ポイント、こういう状況も出てきておりまして、いわゆる足踏み状態に今なっているわけであります。

 その要因の一つが、実は、原材料、燃料の高騰、ここに円安が拍車をかけている、こうした状況なんですが、この燃料高騰、原材料高騰問題について、中小企業、小規模事業者、トラックもタクシーも製造業もみんなそうですが、大変困っております。ぜひ、この対策、安倍総理、早急にお願いをしたいんですが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 御指摘のとおり、原材料、エネルギーコストの増加により厳しい経営環境に置かれた中小・小規模事業者の方々への支援は、極めて重要であると考えています。

 このため、これまでも政府系金融機関による資金繰り支援に万全を期してきたところでありますが、省エネ設備の導入支援も実施をしているところであります。

 そして、こうした状況に鑑み、さらに今般、原材料やエネルギーコストの上昇を転嫁できないという中小・小規模事業者の方々の切実な声に対応するため、エネルギーコスト増加分の転嫁対策パッケージを講ずることとしました。

 具体的には、政府系金融機関に対して、中小企業からの返済条件の緩和要請があった際には、これに配慮するよう求める。

 そして次に、二十万者の新規事業と七百四十五の業界団体に対して適正な価格転嫁を求める。

 そして三番目に、約二百社の代表的な大企業を選定して、年内に集中的に下請代金法の立入検査を実施します。

 そしてまた、四番目に、約六百名の消費税転嫁Gメンが立入検査を行う際、エネルギーコスト増加分の価格転嫁状況を厳正に確認いたします。

 そして五番目には、全国四十八カ所に設置をした下請かけこみ寺に、新たに原材料、エネルギーコスト増に関する相談員を配置していきたい、こう思っているわけであります。

 我々の政策の効果によって、大企業、特に輸出企業は大きな収益を上げているわけでありますが、下請企業は、納入先が大きな収益を上げているにもかかわらず、原材料等の高騰によって苦しんでいるわけでありまして、そこをしっかりと転嫁できるようにしなさいということを、政府を挙げてやっていく考えであります。

菅原委員 ここのところの業況判断が中小企業にとって厳し目になってきた要因が今の原材料あるいは燃料高騰という要因でございますので、ぜひとも、今総理おっしゃったように、力強く進めていただきたいと思います。

 いわゆるコストプッシュ型の物価上昇、こうした状況の中で、せっかく賃金が上がってきた、しかし、その賃金が実質で物価上昇に追いついていないという状況があって、ここもやはりしっかり力を入れなければならないと思っております。

 しかし、日本の中小企業、まさに、わずか五人や十人しかいないけれども世界を席巻する、そういう中小・小規模事業者もたくさんありまして、いわゆるグローバルニッチトップ企業、こうした企業は経産省としても評価をしているわけであります。

 例えば、大阪の吹田市にあります企業。最高千二百度までの、大変高度な、使用可能な耐熱バーコードラベル、バーコードですね、これを製造する中小企業は、従業員がわずか二十二名。ところが、世界のシェアの一〇〇%を占めております。

 また、徳島の鳴門にあります小型の紫外線のLEDを製造する中小企業は、わずか八名。しかし、世界のシェアの五割を占めております。

 このほか、イカ釣り漁船のイカ釣りの方法をコンピューターのソフトに入れて、これがアフリカの漁業国では大変好評を博している。

 こういう日本の中小企業、小規模事業者の持てるポテンシャルを生かしていく、このことこそが、ローカルアベノミクス、そしてまた、中小企業こそが日本経済を牽引する、こういう流れをつくることが大事だと思いますが、ぜひともこの対策。

 しかし、そういう中小企業、光が当たってこそ初めて脚光を浴びるわけですが、それまでの資金繰り、商品開発あるいは販路の拡大、本当に、ベンチャーをやっている人はみんな苦労しています。最近、ベンチャーといっても、若者だけじゃなくて、三割以上が六十歳以上。サラリーマンをやめてベンチャー、今こういう流れも出てきておりますから、こうしたところを安倍政権はしっかり応援していくんだ、この流れをぜひつくっていただきたい。

 こうした中で、ぜひ総理、もろもろ含めて中小企業対策。日本経済、腰折れにならないように、ぜひとも、私は、消費税の判断をする前に、早く補正予算を打つべきだ、こう考えますが、お答えをお願いします。

安倍内閣総理大臣 お答えする前に、先ほど二十万者の新規事業者と申し上げたんですが、これは二十万者の親事業者の間違いでございましたので、訂正させていただきます。

 そこで、中小・小規模事業者に対する支援をしっかりと行っていきたいと思いますが、賃上げを行う中小・小規模事業者に対しては優先的にものづくり補助金を支援していくなど、賃上げの波が中小・小規模事業者にも及ぶように、さらに努力をしていきたい。ふるさと名物をてこに、地域の特色を生かした取り組みを支援するため、本日、中小企業地域資源活用促進法の改正案を閣議決定もしたところでございまして、今後も、こうした施策を政府を挙げて進めていくことによって、地域活性化、経済の好循環の波を全国津々浦々の中小・小規模事業者の方々にお届けしたいと思います。

 そこで、補正予算でございますが、この四月の消費税率の引き上げや燃料価格の高騰、この夏の天候不順などによる景気の影響もあるわけでございますが、ことし七―九月期のQEなどの各種の経済指標が明らかになってまいりますので、それらをよく見ながら、経済の状況等に慎重に目配りをしていく考えであります。

菅原委員 ぜひ対策をお願いしたいと思います。

 ここで、質問ではないんですが、申し上げておきたいのは、法人税減税、閣議決定をしました。我が国が国内外の投資を呼び込む、甘利大臣もかねてからおっしゃっていた、こうした流れをようやくつくり出せるんだなと、大きな期待をしております。

 しかし、一方で、ここに来て、政府税調等で、その財源、いわゆる減税した分は本来は投資の拡大や雇用の拡大、賃金上昇につながらなければいけない、しかし、その財源として、一億円以下の中小企業に外形標準課税をかけよう、こういう論議が今出ておりますが、せっかく中小企業、日本経済を引っ張っていく、景気がよくなりつつある、この部分に水を浴びせるようなことがないように、ぜひここは慎重にお願いをしたい。

 そして、先般、私はドイツに若手の議員と一緒に行ってきました。何を見てきたかというと、向こうの商工会議所あるいはマイスターの現場を見てきました。

 ドイツ型のマイスターというのは、たくみの技術あるいは技能、こうしたものを国が評価して、そして、マイスターというラベルを贈呈して、そこに至るまでは、デュアルシステムという、日本の教育制度とはまた違ったシステムで、学校の勉強と職業教育、幼いときから両方を子供にしっかり教育しながら、立派な技術や技能や、あるいはケーキ屋さんもそうなんです、お花屋さんもそうです、そういったところにもマイスター制度があるんです。

 ここに来て、御案内のとおり、建築現場でも、型枠の職人が少ないとか、左官屋さんがいない、少ない、被災地にはいるけれども、東京のマンションがふえていく中では、いない。こういう状況の中で、やはりたくみのわざや日本古来の伝統技術というものをしっかり継承しなければなりません。

 これはやはり石破大臣の地方創生のかなめにもなると思いますが、こうしたマイスター制度、党としても研究をしてまいりますので、ぜひ政府としても御検討をお願いしたいと思います。

 次に、エネルギー政策についてお伺いをしたいと思います。

 東日本大震災以来、全国の原発は、御案内のとおり、停止をしている状況であります。そして、その停止をしている原発の部分を、御案内のとおり、火力で賄っているわけであります。化石燃料の輸入額は、去年一年間だけでも三・六兆円。日に百億円の国富が流出している、こういう計算にもなっているわけであります。

 電気の需要家が負担をする電気料金も、震災の前に比べまして、家庭用の電気料金は約二割、産業用は約三割上昇しているわけであります。中小・小規模事業者の中には、電気代が上がって、しかしそれを価格に転嫁できない、実際にした人はどれくらいと日商が聞いたところ、わずか八%というデータも出てきているわけであります。

 こうした中で九割以上の中小企業が、電気料金の上昇、そうしたことによって経営が圧迫をされている、この状況について、やはりさまざまなことを考えていかなければいけない。

 原発が停止をした場合、いわゆる温室効果ガス排出量は、二〇一〇年度に比べて一・一億トンふえております。このボリュームは日本の温室効果ガスの総量の約一割にも達する水準でありまして、原発が停止をしていることのそういう部分の影響、これもしっかり捉えなければならないと思います。

 しかし、一方で、福島第一原発の傷跡はまだ癒えておりません。数万人の方が避難をしていらっしゃる。そしてまた、さまざまな収束のトラブルもある。こうしたことを確実に、きちっと対応しなければいけない。

 こうした中で、総理が所信でも述べられたように、原子力規制委員会によって安全性が確認をされた原発については再稼働を進める、こういう御発言がありました。こうした中においても、やはり大事なことは、地元の理解を得ること、そしてまた、消費地も含めた国全体、国民全体の理解を得るような最大限の努力をすること、そして、省エネあるいは再エネ、こうした、最大限の導入によって、できる限り、総理がおっしゃったように、原発の依存度を低減させる。

 こうした流れの中で、エネルギー政策全体を国民にしっかり説明することが必要だと思うんですが、ぜひ、この点、国家の大変重要な命題でありますし、新しく就任されました小渕経済産業大臣、御答弁をお願いしたいと思います。

小渕国務大臣 大臣に就任して、まず最初に、私は福島の第一原発に訪問いたしました。福島第一原発の廃炉、そして汚染水対策を何が何でもやり抜いていく、このことがやはり福島に対する責任でもあり、原発に対して国民の皆様の理解を得るための第一歩ではないかというふうに思っています。

 しかし、そんな中、福島の廃炉・汚染水対策がどのように進んでいるのかということについては、なかなか表には見えてこないような状況にあります。なので、経済産業省のホームページを使いまして一つポータルサイトを開きまして、この廃炉・汚染水対策の進捗状況というものをこれからあらわしていこうということで、開設をさせていただいたところであります。

 このエネルギーの問題というのは、まさに私たちの生活や経済を支える基本であります。しかし、エネルギー源については、全ての面ですぐれているエネルギーというものはありません。なので、現実的にまたエネルギーのバランスをとっていくということが大事なことではないかというふうに考えています。

 エネルギーのことでありますが、原発の依存度、これはできる限り低減させていく、一方で、再エネに関しては最大限導入をしていく、そして、できる限りの省エネをしていく。これは政府の方針でありまして、変わることではありません。

 一方で、この原子力発電でありますけれども、先ほどお話にもありましたように、コストの面、安全保障の面、またCO2の排出の面において、すぐれたベースロード電源であります。原子力規制委員会において再稼働に必要な安全性が確保されたと確認された場合には、原子力発電に関しては再稼働を進めていく、この方針にも変わりはないところであります。

 また、再稼働については、しっかりと立地自治体、また関係者の理解というものを得ていかなければなりません。鹿児島の川内原発に関しても、今、経済産業省の職員が入って、地元とコミュニケーションをとり、説明に回っているところであります。これから住民の説明会も開かれますので、しっかり、丁寧に説明をしていきたいと考えています。

 そして、全体的な国民の理解ということでありますけれども、今のこのエネルギーの状況というものを国民の皆様に理解していただくため、これまでも百二十回ほど説明会を開いてきましたが、そうした機会をふやしていくとともに、丁寧に、また誠実に、日本のエネルギーのことについて説明をしてまいりたいと考えています。

菅原委員 ぜひ、お話があったように、小渕大臣の行動力、現場主義、そして対話主義を貫いていただき、説得をしていただくような努力をお願いしたいと思っております。

 お話がありましたように、この再生可能エネルギー、大変重要であります。水素に関しての、安倍政権において、二十五項目の規制を取っ払った結果、新たな燃料電池自動車が市販されるまでに至りました。まさに規制改革が新しい産業を生み出した、こういう、大変立派なことだと思います。

 こうした中で、固定価格買い取り制度、フィード・イン・タリフ、太陽光を中心に進めてきたわけでございますが、この制度開始前の十年間の導入量をわずかこの二年間で達成した、こういう計算になってございます。

 しかしながら、ここに来て問題が一つありまして、この再生可能エネルギーの導入拡大、九月二十四日に九州電力から、そして九月三十日には北海道電力、東北電力、四国電力、沖縄電力から、この再生可能エネルギーの発電量、これが管内の電力系統の受け入れ容量を超えてしまった、もう接続ができない、保留だ、こういう回答が来ているんです。

 これはとんでもない話でありまして、ぜひ、正当な理由が本当にあるのかどうか、きちっと現場、電力会社を調査していただきたいと思います。そうでないと、本当に、新エネ、再エネをやってきた、しかし、投資をした方々がそうしたことでばかを見るようなことがあってはなりません。ぜひこの点、小渕大臣、確認をしたいと思います。

小渕国務大臣 御指摘のように、今、各社でこの系統への受け入れの回答が、保留をしているというような状況になっております。これでは、再生可能エネルギーに取り組みたいと思っている方々にとって大変大きな影響を及ぼしているということは否めないというふうに思います。

 しかし、この再生可能エネルギーは最大限導入をしていくという方針には変わりはありません。このため、新エネルギー小委員会のもとに検討の場を設けて、各社の受け入れ可能量というのが本当にそれが適切であるかということ、それを第三者の立場でしっかり検証していこうと思います。あわせて、この受け入れ可能量がどこまで拡大できるのか、その拡大方法についても検討を行ってまいりたいと考えております。

菅原委員 十の電力会社、それぞれ枠を超えた広域的な連系、例えば、北海道で発電した電気を東北、あるいは東京、都市、こういったところに、受け入れ可能な、いわゆる発電量をもっとふやすことができるわけでありますので、こうした、法ができて、第三段階の法的分離、しっかりと実現をしていただきたいと思います。

 最後にお尋ねをしたいと思いますのが、神戸でも女児が殺害されるという大変痛ましい事件が相次ぎました。まさに子供の命を守る、そうした政治を行わなければなりません。先般も、倉敷でも、女の子が誘拐をされる、私の地元の練馬区でも、去年、小学生が切りつけられた、そういう事件が発生をしました。

 警察官を三年間で三千人増員すること、これは、東京オリンピックの警備もありましょうし、ストーカー対策あるいは振り込め詐欺対策、いろいろとあると思います。

 しかし、まさにここに来て、子供の命を守る、国民の命を守る、大変重要なことでありまして、町会や自治会のボランティアの皆さんも頑張っている、育成の皆さんも頑張っている、警察関連の団体、ボランティアの皆さんも頑張っている、PTAも頑張っている、こういう連携をとりながらしっかり子供の命を守ることが大事だと思っています。

 そこで、一つ重要なツールとして防犯カメラがあります。この防犯カメラ、実は、さまざまな事件の解決の糸口になったり、逮捕、検挙のきっかけになって事件の解決になっている、あるいは犯罪の抑止力になっている、こういう経緯があるわけでございます。

 一方で、プライバシーの問題、ここに防犯カメラをつけると自分の家が常時監視をされているのではないか、こういうことで、実は、警察庁がつけた防犯カメラは何台ぐらいあるのかなと思って調べましたらば、千百六十五台なんです。商店街対策でつけているのが大体一万三千台ぐらい。個人のマンションとか住宅等々を含めると、ここは数万台。コンビニは全国で五万台ありまして、コンビニにもよくついていて、それが事件の解決の鍵になったりするんですが、全国で何万台という数があるものの、これは実は全部自己負担なんですよ。

 東京都が、今度、実は公立の小学校の通学路に防犯カメラを設置する、これは知事が大変いいことを進めているわけでございますが、こうした中で、実は、防犯カメラをつけるけれども、商店街でも、設置の補助金は出る、しかし、三分の一は持ち出し、その後の維持費も全部持ち出しとなると、商店街対策だけじゃなくて、子供の命を守る、国民の命を守るためには、ここはやはり国がしっかりコミットして予算をとるべきだと思うんですが、ぜひ、この点、政府のお考えをお聞かせください。

山谷国務大臣 子供が被害者となる犯罪について、多くの国民が不安を感じている状況にございます。また、菅原委員御指摘のように、街頭防犯カメラの存在が非常に安全、安心なまちづくりを推進する上で有効な手段であるというふうに認識をしております。

 このことから、警察においても、犯罪の発生状況等を踏まえ、繁華街を中心に街頭防犯カメラを設置しているところでございます。

 また、近年、自治会、商店街等において街頭防犯カメラを設置する例も見られ、警察では、必要な助言を行い、その設置、運用について、支援に努めているところでございます。

 さらに国による整備を進めろということでございますけれども、いろいろ、警察といたしましては、モデル事業、パイロット事業をしておりますし、また、関係省庁も公的助成をしておりますけれども、さらに今後とも、街頭防犯カメラの設置を初めとして、安全、安心なまちづくりの推進に向けてしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

菅原委員 終わります。

大島委員長 これにて稲田君、小野寺君、菅原君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

大島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。古屋範子君。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 きょうは、女性の活躍を中心に質問をしてまいりますので、よろしくお願いを申し上げます。

 その前に、まず、災害対策について、一問、質問をさせていただきます。

 九月二十七日に御嶽山が噴火をいたしました。亡くなられた方々に心からお悔やみを申し上げます。公明党もすぐに対策本部を立ち上げ、現地に国会議員も参りました。多くの登山者が山頂付近にいた、そのとき噴火が起きたというわけでございます。

 気象庁は、全国四十七の活火山、二十四時間体制で監視をしているということでございます。しかし、今回は予知ができなかった、非常に残念であります。噴火の予知は現在の科学技術ではなかなか難しいと、気象庁の見解でございますけれども、やはり、今後いつ噴火が起きるかわからないということを考えますと、そうした事態に備えるために、政府を挙げて万全の体制をとっていただきたい。

 今回の教訓を生かしまして、一連の火山活動の監視体制を強化すべきであります。また、小さな兆候であったとしても、登山者に情報を提供していく体制がとられなければならないと考えます。また、降灰によって農業被害も出ているということでございます。

 災害対策の取り組みについて、総理にお考えをお伺い申し上げます。

安倍内閣総理大臣 御嶽山の現場では、噴火活動が続いている中、警察、消防、自衛隊による懸命の捜索救出活動が行われておりますが、いまだ行方不明の方が現時点で十六名おられます。政府としては、二次災害に留意しつつ、引き続き捜索救出活動に全力を尽くしてまいります。

 今後は、今回の経験を踏まえまして、火山活動の監視を強化するため、観測機器の整備等、監視体制の強化や、登山者の皆さんなどに対して情報提供をしっかりとしていく、情報提供の改善を図るなどの対策にスピード感を持って取り組んでいく考えであります。

 また、火山地域の防災対策を充実させるために、火山ごとの火山防災協議会の設置、火山ハザードマップの作成などを加速化させていく考えであります。

古屋(範)委員 消防、警察、自衛隊、二次災害に留意しつつ、行方不明者の捜索に全力を挙げていただきたいというふうに思います。また、雨が降るということでございますので、土石流などへも万全の体制を期していただきたい、このことを申し添えておきたいと思います。

 女性の活躍について質問をしてまいります。

 我が国が直面をしております高齢社会。地方においては、人口が減少する、若い人々も流出をする、若い女性も減っていく、高齢者までも減少していく。大都市圏においては、高齢化が急速に進展をしていく。こういう中で、地域社会を支え、また高齢者を支え、そして社会インフラも維持をしていかなければならない。守るだけではなくて、そういう中で雇用をつくり、定住化も促進をし、そして地域を活性化していく、これが我々に課せられた最重要命題であろうと思います。

 それを担うのは、やはり人であります。そして、女性こそ、潜在力を備えた、地域を活性化していくその鍵である、このように考えます。

 私たち公明党、本年、結党五十年を迎えておりますが、全国約三千人の議員のうち、約三割、九百名が女性議員でございます。この九百名の女性議員で、本年、三カ月をかけまして、全国、団体、有識者、企業、現場で働く方々の声を集めて、女性の元気応援プランを作成いたしました。四章から成っております。

 パネルを用いて説明してまいります。

 まず、第一章、あらゆる分野で女性の現場力を発揮ということでございます。女性の活躍加速化推進本部を設置して、女性の参画を進めていく。また、研究者、技術者等の活躍を支援していく。また、農業分野、水産業、ICT分野へも参画を促進していく。

 また、第二には、子育て、介護と仕事の両立であります。育児・介護休業制度の見直し、また、働き方改革、新制度への着実な実施などを掲げております。

 そして、三番目に、女性の健康。

 そして、第四章には、女性の安心、安全を確保ということで、女性を暴力から守る、女性の人権を守る。

 このような形で、総合的な女性政策をつくりました。

 まず、二〇二〇年、指導的な立場にある女性の比率を三〇%まで引き上げていく、これが大きな目標であります。これは総理のリーダーシップで、総理が本部長となり、推進本部というような組織をぜひともつくっていただきまして、この目標を何としても達成していただきたい。

 政府におかれましては、企業において女性の採用あるいは登用に関する行動計画を策定していく、その法律を用意されていると伺っております。これは非常に重要なことであろうと思います。

 しかし、これはあくまでも女性の参画を進める入り口の一つだというふうに思います。このエリアに入ってこない女性たちがたくさんいるわけであります。自営業であったり、農業、商店、NPO、また地域で観光を支えているような旅館、土産物店、現実に地域の経済とか地域社会を担っている女性たちにこそ、ぜひ光を当てていただきたい。このために、私たちもこの女性の元気応援プランをつくりました。

 私の地元横須賀にも漁協がございます。女性部は、イカ飯とかタコ飯とかいろいろ評判のよい商品をつくっているんですが、いかんせん後継者がいないというような悩みも抱えております。全国で女性たちが知恵、工夫を生かしながら、地元産品、野菜とかフルーツ、牛肉などなど、いろいろなものを生かして地域を活性化しようと努力をしております。

 農業生産法人を立ち上げた女性でありますけれども、こういう分野は若い女性が少ないので逆に強みにもなっている、女性の感性を生かして農業を行っていく、このように語っている方もいらっしゃいます。

 このように地域に根を張って、そして地域の発展にこれから大きな力を発揮し、生かしていく、その女性の底力、これを発揮できる社会をぜひつくっていかなければならないと考えます。

 女性の活躍について、まず総理のお考えをお伺いいたします。

安倍内閣総理大臣 本年五月に、御党より女性の元気プランを御提出いただきました。

 このプラン作成に当たっては、地域の女性の皆さんの声を集めたということでございますが、特に、提言に盛り込まれましたが、もう既に先生御紹介されましたが、女性活躍加速化推進本部の設置、そして地方発の女性登用促進の取り組みの普及、女性の健康支援、そしてまたストーカー対策など、女性の安心、安全の確保などは特に参考になる、こう思っております。今後の政策に生かしていきたいと思います。

 早速、女性本部につきましては、本日、すべての女性が輝く社会づくり本部の設置を閣議決定したところでございます。

 私の地元におきましても、先生がおっしゃったように、商店街において、商店街を何とか元気にしたいと頑張る女性がいます。あるいはまた、漁協の女性部においても、お魚を少し加工したりして付加価値をつけるための努力をする、そういう試みをスタートしたのも、やはりこれは女性の皆さんの知恵でありました。特に観光においては、女性の皆さんの感性や知恵でさまざまなアイデアを生み出していただいていると思います。

 こうした地域で頑張る女性の皆さんの活躍を、我々はぜひこれからも支援をしていきたいと思います。

 今国会に提出を予定している女性活躍に関する法案の立案、運用に当たっても、地域の取り組みを重視していきたいと考えております。

古屋(範)委員 本日、推進本部を設置されたということでございます。ぜひとも、現場で頑張っている女性たちを最大限応援していただきたいというふうに思います。

 私も、現場の女性たちの声を伺っていまして、やはり、子育てと介護、これと仕事の両立が非常に大きな課題であると感じました。

 育児・介護休業法、前回の改正で、子供が三歳に至るまで短時間勤務を義務づける。あるいは、公明党が主張してまいりました男性の育児休暇取得の推進のために、北欧ではパパクオータ制と言っておりますけれども、父親も母親も両方育児休業をとったら延長するパパ・ママ育休プラス、このようなものも盛り込み、改正をいたしました。

 しかし、さらなるこの育児・介護休業法改正、強化が必要であろうというふうに思います。就学前までは短時間勤務を拡充する。あるいは、今、介護で離職をする方が非常に多い。また、晩婚化によって、子育てと介護が重なってくるというような傾向もございます。介護と仕事、これが両立をするような、そういう制度をつくっていかなければなりません。

 また、テレワークの活用、これも非常に有効でございます。場所、時間を選ばない働き方。

 私も、二〇〇六年、総務大臣政務官を務めておりましたときに、テレワークを普及させたいということで、まず隗より始めよで、総務省の中で、中央省庁では初めてテレワークの本格実施をスタートさせました。数人からスタートをいたしまして、現在、六十人ほどに拡充をしているということでございます。

 霞が関にいる国家公務員の女性たちも、非常に長時間勤務、過酷な勤務をしております。テレワーク、これもワーク・ライフ・バランスを実現していく大きな働き方の一つであろうというふうに思っております。

 女性の働き方の改革、子育て、そして介護、これと両立できるような働き方、仕事と生活の調和、ワーク・ライフ・バランスの実現について、総理のお考えをお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 我が国では、出産などを機会に仕事を離れる女性が多いわけでありまして、就業継続年数が短いことから、当然、昇進や能力の開発の機会が限られてしまいます。

 仕事と育児等を充実させるためには、保育サービスの充実による待機児童の解消等が重要でありますが、より基本的な課題は働き方の見直しである、このように思います。

 日本では、ともすれば、長い間働いて、残業をどんどんすることを成果として自慢するような風潮があったわけでありますが、これを思い切って変えていく必要があると思います。長時間労働の抑制を初めとした働き方改革や多様で柔軟な働き方を推進し、ワーク・ライフ・バランスの実現に取り組んで、仕事でも家庭生活でも充実感を得られる社会を実現していきたい、そのことによって人生はもっともっと豊かになっていくのではないか、このように思います。

古屋(範)委員 そのとおりだというふうに思います。

 私も、二十八歳の息子がいるんですが、もうここまで来てしまえば、仕事に一〇〇%専念できるという段階になってまいります。

 しかし、子育てのとき、また学齢期、そして介護等々、女性にとっても、そのライフステージに応じて働き方というものは変えていかなければいけない。ギアチェンジをしていく、あるいは、トライアスロン型の働き方と言った方もいますけれども、細く長く、働き方を柔軟に変えながら、その上でキャリアを続けていく、働き続けられるような、そういう制度、環境整備が必要であろうというふうに思います。

 次に、子育て支援について質問をしてまいります。

 現在、待機児童解消に向けて、加速化プランが進行中でございます。また、子ども・子育ての新制度、この着実な実施が求められております。

 来年度から始まります子ども・子育て新制度、この目玉は認定こども園でございます。幼稚園とそして保育所、ここのよいところをあわせ持つ、教育、保育、子育て、これを総合的にサポートする施設であります。ゼロ歳から五歳まで、子供たちの触れ合いの場として、親の就労にかかわらず利用ができるということで、定員割れの幼稚園、低年齢児の保育を担うということで、待機児童の解消にも資する制度でございます。

 しかし、この五月に公表されました公定価格の仮単価に基づく試算の結果、減収が見込まれてしまう、認定こども園を返上しよう、そういう動きも一部でございます。

 この試算について、正しく行われていないケースもあるということで、政府においても、試算のチェックポイントなどを作成したり、説明会、相談体制をつくっていらっしゃいます。しかしながら、完全に不安を解消するところまでは至っておりません。

 消費税による〇・七兆円の確保、これは絶対に確保しなければなりません。そして、その改善分を見込まないとすると、一部の園では減収になってしまう。

 また、現行の幼保連携型こども園の場合には、現在二つの施設で経営しているところが一つの施設になるということでありますので、施設長が一人に減らされる、経過措置を講じてほしいという事業者の切なる声がございます。大規模な園ほど公定価格の水準が低く抑えられているとの指摘もございます。

 先駆的に取り組んできたところが割を食う、このようなことがあってはならないのではないかと思います。

 親が就労している、いないにかかわらず、幼稚園など、また保育園に通う、園によって地域の子供が分断されることがない認定こども園、この意義は非常に大きいと思っております。また、最低でも一兆円の財源確保、これは非常に欠かせないものでございます。

 認定こども園の普及、これは今回の新制度の柱でございます。この返上という動きは避けなければいけない。新制度をスタートさせるために、こうした事業者の声をしっかりと聞いていただき、財源を確保し、五月に公表された公定価格の仮単価の水準が確保できるよう努めるべきと考えます。これについて、総理のお考えをお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 平成二十七年の四月に施行予定の子ども・子育て支援制度は、全ての子育て家庭を支援する重要な制度であります。

 この制度に基づく子育て支援の質、量の充実を図るための財源の確保については、消費税分はもちろんでありますが、それ以外のものも含めてしっかりと対応してまいりたいと考えています。

 また、新制度の施行に向けて、関係事業者や自治体の声、真摯に受けとめつつ、引き続き、制度内容の正確な周知や、予算編成過程での必要な調整を行っていく考えであります。

 新制度が着実かつ円滑に実施できるように準備を進めてまいります。

古屋(範)委員 社会保障の充実、また子育て支援の財源確保、これは消費税の問題と密接につながっているというふうに思っております。

 総理も、所信表明で経済最優先ということを、わかりやすく国民にメッセージを発せられたと私は感じております。ぜひ、景気回復、また経済の再生、あらゆる努力をしていただきたい、このことを申し添えておきたいと思います。

 次に、女性の活躍の基盤、これは何といっても健康でございます。

 これまでも私たち公明党は、女性専門外来の設置ですとか、不妊治療の拡充、また妊婦健診の公費助成等々、一生涯にわたる女性の健康支援というものを進めてまいりました。中でも、女性特有のがん対策には力を入れてまいりました。

 この十月、ピンクリボン月間でございます。乳がんの撲滅キャンペーン月間でございます。年間七万六千人の方々が乳がんを罹患し、一万三千人が亡くなられるということであります。

 二〇〇九年、私たちは、無料であれば検診に行くという女性たちの声を受けまして、無料の検診クーポンの発行を実現いたしました。昨年、五年たち、その効果は限定的だということで、厚生労働省の方からこれを打ち切るという方針が打ち出されたんですが、その後も、私たちも継続を強く求めまして、本年、クーポン事業も継続をされております。

 それにプラスをいたしまして、がんの検診に行かなかった方には個別の受診勧奨、がんの検診に行ってくださいというようなコール・リコールの事業もプラスをいたしました。これを入れることによって、がんの検診率の向上というものが期待をされております。

 国民生活基礎調査によりますと、この二年間、乳がん検診に行った方四三・四%、四〇%を超えてまいりました。がん対策推進基本計画の目標は五〇%であります。この五〇%にいよいよ届くところまで参りました。私たちは、この二カ年かけまして、がんの検診率五〇%を目指したい。

 また、女性の健康の上で、出産後、産後ケアが非常に重要でございます。児童虐待を防ぐ、また、妊産婦を出産後孤独にさせない、このようなことから産後ケアも重要と考えます。

 世田谷では、公明党の都議会議員も頑張りまして、産後ケアセンターというものもつくり、専門家のカウンセリングも行われるなど、非常に恵まれたセンターをつくっております。なかなか、財政力が厳しければこのような施設というのもつくるのは難しいとは思いますが、今ある施設、人材を最大限生かして、産後ケアも進めていかなければなりません。

 この通常国会、私たちは、女性の健康包括的支援法を提出いたしました。女性の健康を一生涯支援をしていく、サポートをしていく、これにつきまして厚生労働大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

塩崎国務大臣 ただいま古屋先生から、女性の健康の包括的支援に関する法律案、この議員立法についてもお話がございました。女性の活躍を支えるためにも、女性の健康というのを包括的に支援していくことの重要性、これはもう当然のこととして認識をしているところでございます。

 また、乳がん、子宮頸がん、この検診につきましては、平成二十一年度より、各市町村が検診の受診を促すためにクーポン券を配付するということをやってまいりましたとともに、受診を呼びかける取り扱いを行ってまいりました。引き続き、これらの取り組みは進めていきたいというふうに思っております。

 それと、先ほど御指摘のあった産後ケアであります。今年度から、母子保健コーディネーターによります相談支援とか、それから、退院直後の母子への心身のケア、孤立をしないようにという、さっきお話ありました。それから、育児サポート等を行う妊娠・出産包括支援モデル事業を実施しておりまして、平成二十七年度につきましても、このような取り組みを強化していくという姿勢で臨みたいと思っております。

古屋(範)委員 ぜひ、女性の一生涯健康を守る施策にこれからも尽力をしていただきたいというふうに思います。

 最後になりますが、感染症対策について質問をしてまいります。

 昨日、公明党の山口代表の質問に対しまして、総理は、高度安全実験施設、BSL4、この早期稼働につきまして、稼働させたいという答弁をされました。国内における感染症対策に積極的に取り組むと答弁をされております。

 エボラ出血熱でございますけれども、米国の疾病対策センター、CDCによりますと、適切な措置がとられなかった場合、来年一月には最大で百四十万人に感染が拡大するという試算を発表しております。このエボラ出血熱、致死率が高く、非常に深刻な事態に至っております。

 国連本部におきましても、総理は、エボラ出血熱に対する日本側からの支援として、新たに約四十三億円追加支援を行うということを表明されております。

 今、日本からも専門家のチームを送っておりますけれども、その方々も、隔離施設が非常に不足をしているということを訴えていらっしゃいます。

 私は、こうした追加支援とともに、ぜひ、現地スタッフの教育、確定診断の技術提供、可能な限りの支援、もう少し派遣する専門家も増員をしていく、これが重要なのではないかというふうに思っております。ぜひ、人道支援、人間の安全保障の上からも、この支援、拡充をしていただきたい。

 また、このエボラ出血熱以外にも、MERS、中東呼吸器症候群ですとか新型インフルエンザ、このような新型感染症への国内の備えも万全にしていかなければならないと考えます。

 また、途上国、アフリカなどで子供が亡くなる最大の要因は、肺炎、また下痢であります。こうした子供たちの生命を守るためにも、予防接種の提供、こういうものもさらに拡充をしていく必要があるのではないか、このように考えます。

 また、感染症に対する正しい知識、罹患をした人に触れないであるとか、さまざま、感染症に対する現地の方々への教育というようなものも支援をしていく必要があるかと考えます。

 この感染症対策について、総理のお考えを最後にお伺いいたします。

安倍内閣総理大臣 感染症は国境を越えて影響を与えることでありますから、我が国を含む国際社会が一丸となって対応していく必要があります。我が国は、人材や技術などの面で大きな貢献をなし得る立場にあります。

 新型インフルエンザ対策として、これまで、人材育成、検査機器整備や医薬品の整備等の支援を実施しています。

 また、エボラ出血熱対策でありますが、もう既に多くの方々が命を失い、また、治療に当たっている医師たちも命を落としているという状況にあります。この脅威に対して世界が一丸となって対応していく必要がありますが、日本は、これまでに約五百万ドルの緊急支援を実施したほか、専門家をWHOのミッションに派遣しました。さらに、先般、新たに、エボラ出血熱対策として総額四千万ドルの追加支援を発表いたしました。

 今後とも、関係国や国際機関等と密接に連携をして、感染症対策への国際的支援を積極的に行っていく考えであります。

古屋(範)委員 本年、アフリカの歌姫であるイボンヌ・チャカチャカさんが来日をされまして、アフリカの子供の健康、命を守る支援を日本に要請されました。ぜひとも、そうした声に応えるべく、これからも感染症に全力で取り組んでいただくことをお願いし、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

大島委員長 この際、赤羽一嘉君から関連質疑の申し出があります。古屋君の持ち時間の範囲内でこれを許します。赤羽一嘉君。

赤羽委員 公明党の赤羽一嘉でございます。

 まず、地方創生について御質問したいと思います。

 自公政権、安倍内閣が発足して一年九カ月、最大の課題でありました円高、デフレ不況からの脱却につきましては、いわゆるアベノミクス三本の矢政策で、我が国の経済を取り巻く環境が明らかに好転しているというのは、株価を見ても、有効求人倍率等々の指標を見ても明らかでございます。

 しかしながら、そのいわゆるアベノミクスの恩恵が、中小企業また小規模事業者にまで行き届くのかどうか。また、私は神戸選出でございますが、神戸の地方経済ですらまだまだ、神戸、地方が元気になるというのは、まさにこれからが正念場であるというのが正直な実感でございます。

 そうした中で、少子高齢化、人口減少化の中で、今回、地方創生というものを安倍内閣の最大のテーマに掲げ、地方創生担当大臣を創設し、そしてその大臣に、私の尊敬する実力政治家、石破さんを配置されたというのは、まさに政府を挙げて取り組むその姿勢、私は高く評価をしたい、こう考えております。

 まず最初に、私の学生時代の友人について一言御紹介させていただきたいと思います。

 彼は、実は新潟県生まれでございました。しかし、彼は、自分の夢を実現するためには東京に出なければいけないということで、学生時代、東京で過ごしました。就職も、大手の証券会社に勤務をしまして、将来を嘱望された人物でございました。

 しかし、それが三十六歳のときに、実家の、自分の家の家業を継がなければいけないということで新潟県に戻りました。そして、一生懸命仕事をしている中で、自分の会社だけよくなってもだめだな、地域がよくならなければ限界があるなということを感じて、さまざまな地域おこしの事業に参画をされました。そういう活動をしているうちに、地元から請われて、実は市長になっているんです。

 この市長は、実はさきの国連総会に、アメリカに、総理に同行された新潟県十日町市の関口市長、彼が私の友人でございます。

 この前、よく彼と話をいたしました。彼は、まず、大変な状況の中でどうしようかと。地域おこし協力隊、大変感謝しておりました。これまで延べ四十名を受け入れておりまして、実は、任期を終えたうちの七割の方が定着をして、引き続き、自分で会社をつくったり、一生懸命十日町のために頑張っていただいている。そうした人たちのネットワークを生かして、地域住民と世界のアーティストが協働でつくり上げる世界最大規模の国際芸術祭、大地の芸術祭を開催するなど、実に多くの観光客の誘致にも成功して、そして、ふるさと納税も大幅に増加して、官房長官肝いりの政策だと思いますが、本当に目覚ましい地域活性化が進んでいるとお話を伺いました。

 そのエッセンスが、この「本で旅する十日町」という、ガイドブックなんですが、これは大変すぐれものでして、地域の伝統芸能とかいろいろな見どころを正確な説明がされていて、加えて、へぎそばですとかコシヒカリとかさまざまな特産品、着物を生かしたお土産物といったようなものとか、あと、農業体験とか陶芸体験とかができるギフトセットにもなっているんです。四千円分使える。こうしたことの大変すぐれた、これは誰がつくったんだと聞いたら、これは実は、十日町が主催したビジネスコンテストで、東京の女子大学生が参画してつくってくれた。その彼女もこの十日町に来て一生懸命仕事をしてくれた。

 まさに、大変厳しい状況の中で、知恵を出して、人を集めて、そして地元の方たちとも融合させて頑張っている地域だ。そういった頑張っている地方を、まず、国としてはぜひ強力に支援をしていただきたいというのが私の第一点でございます。

 さはさりながら、この少子高齢化、人口過疎化の中で、どの地域も地方創生に成功するというのは大変難しいテーマだというふうに思っております。

 我が公明党は、この地方創生のまず大前提として、そこに住む人が安心して暮らしていける行政サービス、特に、介護、医療、また、安全に暮らせる防災、こうした最低限のものを整える。そしてそれから、それからというか同時にですけれども、魅力のある働き場をつくる。まさに、主役は人だ、人が生きる創生を目指すべき、これは山口代表も井上幹事長も代表質問で主張させていただいたところでございますが、まず、この難題に立ち向かう安倍総理の見解とその決意を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 地方創生は安倍政権の最大の課題であります。

 先ほど御紹介いただきましたように、三本の矢の政策で間違いなく経済はよくなっているんですが、残念ながら、全国津々浦々にはまだ広がっていない。特に地方の中小・小規模事業者はそうだと思います。

 その中において、地方の人口がどんどん減少しているという状況に我々は直面をしているわけでありまして、ここでしっかりと地方をまさに夢のある地域にしていく、チャンスのある地域にしていくことが求められている、こう思います。

 その中において、やはり人に着目した地域づくりをしていく、当然のことであろう、このように思います。今までのような省庁縦割りを排していく、そして、従来の取り組みの延長線上にはない政策を実行していきたい、こう思っています。

 例えば、東京在住の四割の方が地方への移住の意思を持っているという調査があります。彼らの不安は、地方に行くと仕事がない、あるいは、さっき委員が指摘をされたように、介護、医療は大丈夫だろうか、また、学校は大丈夫だろうかというのがあるんですね。

 こうした不安を取っていくことによって、この皆さんの希望を実現していくことで、これは、地方にどんどん人材が出ていく、出ていった人材が新たに仕事をつくっていくということにもつながっていくんだろうと思います。

 先般、島根県に行った際に、地域おこし協力隊によって海士町に行った若い女性なんですが、京都大学を出てゲーム会社に就職をして、そしてゲーム会社でその会社の人材育成、教育の責任者だったんですが、自分の人生はちょっと違うんじゃないかと思って、この海士町に協力隊で行って、そして今やもう定住をしているんです。彼女のアイデアによって、高校、魅力ある学校づくりに取り組んだんですが、高校の生徒数がふえる、当然、生徒数がふえるということは、人口増にも彼女のアイデアで大きな成果を得ているということであります。

 できることはたくさんあるわけでございまして、地域のよさをしっかりと見ながら、金太郎あめのような町をつくる、あるいは国が型にはめていくということではなくて、この創生本部においても、どんどん地域に出ていって、地域の声を聞きながら、人を中心に据えた地方創生を行っていきたい、このように思います。

赤羽委員 大変力強い決意、ありがとうございます。

 今の御答弁を聞いておりまして、私も感じたことがございます。

 私の地元に実は有馬温泉があって、この有馬温泉というのは三大古泉でもあるんですが、塩分と鉄分が大変高くて、金の湯というのは真っ赤なんですね、手拭いを入れると赤くなる。大変すごい成分でございまして、アトピーなんかも簡単に治る。私は最初に行ったときに大変驚いたんですが、実は、その宝物のようなお湯の成分を地元の人は当たり前と思っているんですね。地域のリソースというのになかなか地元の人は気がつかない。

 ですから、新しい人、若い人がそういったところでさまざまな、柔軟な思考から地域創生につながるようなことが政府・与党を挙げてどんどん出てくること、また我々も頑張りたい、こう考えております。

 次に、地域の魅力をいかに磨き上げていくか、これは大変大事だと思っております。先ほど、十日町の例でお示しをしたとおりでございます。製造業を育てるとか、サービス業のさまざまな課題はあると思いますが、所信表明演説にもありましたように、しっかり観光業とリンクしながら、地域の魅力のブラッシュアップ、磨き上げをしていくというのは大変意味のあることだ、こう思っております。

 観光業につきましては、外国人旅行客が昨年初めて一千万人の大台を超え、本年も、ビザ要件を緩和した、例えばタイとかマレーシアからも訪日の外国人は大変数もふえておりますし、中国からの日本への訪日客は前年より八四%も増になっている、リピーターがふえているといった状況があります。

 政府間がたとえ難しくても、こういう旅行を通して国民同士が文化交流を進めていくというのは大変意味のあることだと思いますが、残念ながら、そうした外国人の旅行客、いわゆるゴールデンルートといって、東京に来て富士山に行って京都に行って帰る、こういったことが相場になっているんですが、ぜひ日本各地のよさを知っていただく、それこそ地方の創生につながる。

 ですから、新たな地域で日本各地のよさを体験できるような観光周遊ルートのプロモートですとか、また、消費税の免税ができるお店というのは結構限られているんですが、地方の商店街でも工夫はできるはずなんですね。そうすると、地方で疲弊化した商店街も、やりようによってはまだまだやっていける可能性もある。

 そういった意味で、地方創生に資する観光政策の取り組みについて、担当の太田国土交通大臣に伺いたいと思います。

太田国務大臣 おっしゃるとおり、地方創生にとって観光は極めて重要なことでありますし、昨年十二月二十日に念願でありました外国人旅行客一千万人を達成しまして、ことしも大変好調が続いておりまして、リピーターも多く、買い物に来る方も多く、そしてクルーズ船がかなりふえてきているという状況にありまして、去年の二〇%以上、現在のところふえるという傾向にあるということであります。

 見るもの、食べ物、買い物という三つが大事で、地方創生のそれぞれの市町村が、我が都市、市で、見るものとしては何があるかと。この見るものは、景色がすばらしいということも当然ありますけれども、歴史とか文化ということが非常に外国の方にとっては魅力的であるということだと思います。

 それから、食べ物そして買い物、それぞれのところを今度は流れで結んで、点で帰るのではなくて、線にそれを持っていく。そして、一泊、二泊していただくようなルートを形成するということが大事で、今おっしゃいましたゴールデンルートというのではなくて、例えば中部から北陸に至るところ、昇龍道ということで、伊勢の方から竜の尻尾、能登半島が竜の頭ということで、ずっとルートをつくって、それぞれに見るもの、食べ物、買い物というものをセッティングするというような、地域のブランドをブラッシュアップするということに今努めて、さらに、この地方創生ということに絡んで、その辺を戦略的に取り組んでいく必要があるというふうに思います。

 食べ物そして買い物、買い物の中には、今御指摘のありました消費税の免税制度ということで、十月一日から拡大して始めさせていただいたりしておりまして、ビザの緩和やブラッシュアップということと同時に、さまざまな意味でバックアップして、地方の創生に大きく寄与するということに努めたいと思っているところであります。

赤羽委員 見るもの、食べ物、買い物、太田大臣らしいネーミングだなと思って感動しましたが、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 次に、東京電力福島第一原発被災地域の復興の加速について質問させていただきたいと思います。

 私自身、一昨年の十二月二十七日に経済産業副大臣そして原子力災害の現地対策本部長を仰せつかりました。以来、原則週二日、被災地域に足を運びながら、一日も早い福島復興の加速を目指して仕事をさせていただきました。

 こうした行動は、実は私、二十年前、私自身も阪神・淡路大震災で被災いたしました。住む家がなくなった被災体験をしながら、東京と被災地の温度差、余りの温度差に大変悔しい思いをした。そうさせてはいけないという信念から、原則、できるだけ多く被災地のところに足を運んで現場の声を聞いていこう、こう思ったわけでございます。

 ただ、自然災害と異なって、原子力災害特有の大変難しさがあり、また、私が引き継ぐまでに、相当東京電力そして政府に対する被災者の信頼感も損なわれ、大変難しい作業でございましたが、幸い、この四月一日に田村市の都路地区で、また今月の一日には川内村で避難指示の解除を実現することができました。総理には両方の地域にもすぐ足を運んでいただきまして、心から感謝をしているところでございます。

 いよいよ避難指示解除が進み、これから本格的な復興支援が展開される、新しい展開、局面になったな、私たちも頑張ろう、こう考えておるところでございますが、一方で、大変心配をされ、正確な事実が伝わっていない福島第一原発の廃炉・汚染水問題についても一言言及しておきたいと思います。

 昨日、参議院の本会議でも山口代表から正確に発言をしていただきましたが、昨年の夏は、大変ヒューマンエラーの連続で、汚染水の問題が発覚し、大変御心配をおかけしました。私も、通う中で、何とかこれを変えなければいけないということで、総理の御理解もいただきながら、昨年九月に国が前面に立つという国の方針転換を行って、現地事務所も設置し、常駐者も張りつけて、それ以後は、東京電力、政府そして規制庁が一体となって、福島第一原発の中で起こった全ての事象について徹底して議論をし、そしてその具体的な対策を徹底してとろう、こういうリズムで昨年の九月からずっと展開をさせていただきました。

 その結果、連日大変厳しい現場の環境の中で、今約六千名の方が作業に従事していただいていますが、皆さんの御奮闘で、例えば四号機の建屋からの使用済み燃料棒の取り出しも予定より早く進行しておりまして、着実に前進している、私はこう考えておるところでございます。

 ヒューマンエラーのようなトラブルも、実はほとんど最近起こっていません。新聞報道に出るのは、昨年のこととか、そうした昔のことでありまして、私の正直な感覚、責任を持って発言させていただければ、たとえヒューマンエラーが起こったとしても、深刻な事態にはならないだけの現場の組織は構築できた、まさにザ・シチュエーション・イズ・アンダー・コントロールが実現しているものだということを改めて、きょうはテレビ放送が出ていますので、なかなかいい話というのは報道してくれないものですから、責任者であった私の立場からそう伝えていきたい、こう考えております。

 しかしながら、ふるさとに帰りたいと考えている被災者の皆さんにとりまして一番の問題は、実は、あの浜通り地域というのは、原子力関係で雇用されていた方が大半でありました。そうでない方は農林水産、酪農業。そうした方たちが、戻っても働く場があるのかどうか、農林水産業がこの風評被害の中で展開できるのかどうか、どっちにしても夢を持つことはできないなと大変複雑な苦しい状況でいらっしゃるのが、福島第一原発の被災地域の大半の皆さんの心情だというふうに思っております。

 ですから、私は、現地対策本部長としてやらなければいけないことは、この地域の皆さんが夢を持って、そして誇りを持って、健康を回復してふるさとに戻ってこられるような、そういった地域再生を、まさにふるさと創生を国の責任としてやらなければいけないということで、福島イノベーション・コースト構想の研究会を立ち上げて、この夏にまとめさせていただいたわけでございます。

 その内容、お手元の資料で配らせていただいております。

 この二つの流れがございまして、一つは、廃炉。廃炉といっても、やはり初めてのチャレンジであります。事故炉の、原子炉の廃炉というのは人類史上初めてのチャレンジでありまして、今、三十年から四十年の工程がかかると言われております。まだ放射線量が高い一号機から三号機の中では、人が入れませんので、その中でデブリの取り出し等々、大変な困難が待ち受けている。しかし、これは必ずやり抜かなければいけないことである。

 そのやり抜くための、国内外の、世界の英知が結集できる開発拠点、国際廃炉研究開発拠点ですとか、遠隔作業ができる災害対応のロボット開発・実証拠点をつくるということが一つの柱でございます。

 もう一つは、新しい産業基盤の構築であります。

 福島県民の皆さんは、原発の再稼働というのはとても考えられないような状況でございますし、私は、まさに再生可能エネルギーのトップランナーの地域になるべきだ、こう考えております。

 そうした思いで、この四月から、郡山市にでありますが、産総研の福島再生可能エネルギー研究所を立ち上げて、世界トップの再生可能エネルギーの拠点にするべく全力を挙げているところではございます。

 そうした中で、ちょっとわかりやすい図が、スマートエコパークのイメージ、新しい再生可能エネルギー、特に森林が多い地域ですから、バイオマスを利用して、新しいエネルギー源として生んで、そして、なりわいの農業を、例えば植物工場を集積して、ICT化する農業で、福島の浜通り地域の農業は、日本で一番安全でおいしくて、すばらしい食品ができる、こういったことをつくる努力をしていかなければいけない。そして、再生可能エネルギーを初めとするエネルギー産業でも数多くの雇用が生まれるもの、こう期待をしているところでございます。

 他方、冒頭申し上げました、遠隔作業ができる災害対応のロボットについてでございますが、このロボット、日本は技術力というのは大変高いんですが、やはり、例えばアメリカなんかに比べると実践型がない。だから、ロボットの技術はあっても、このロボットが、商品化と言うと変ですけれども、フル活動できるような状況じゃない。

 そのために、まず、ロボットの開発技術、技術者が集結できるような国立の研究所、アメリカのハンフォードというところの例に倣えば、国立の研究所が設置されて、そしてそこに世界じゅうの、本当にロボットの開発研究ができる人たちが集まる。モックアップ施設が先週着工いたしまして、来年度からモックアップ施設自体は稼働するわけでございますが、それにとどまらないで、やはり世界じゅうの拠点が、福島・浜通りにロボットの実証拠点があるんだということをつくるべきだと思っております。

 そのために、ここに書いてあるんですけれども、ロボットテストフィールド、なかなか我々実感はないんですが、これは実は、アメリカのテキサスA&M大学にディザスターシティーというのがございまして、広大な地域に、ゴルフ場みたいなところで、一番ホールには鉄道事故の現場、二番ホールでは石油化学コンビナートの火災現場、そういった現場を模擬した部分がありまして、そこでロボットの対応や人の訓練がなされているところがございます。

 そうしたものをつくるということが実は大事で、これは実は、国内の防衛省、また災害対応の国土交通省初めさまざまな関係省庁でも、このことについては、民間の企業はもちろんでありますが、大変こうした声が強いわけであります。しかし、これは規制緩和を伴うことでありますし、官需がないとなかなかこうしたものは展開できないという難しさもございまして、なかなか前に進むことが難しいなと。

 ですから、きょうはその一つの質問であり、お願いでありますが、この福島の再生は、私は、一番困難を受けられた地域は一番幸せになる権利がある、そうした思いでこの構想を立ち上げましたので、ぜひ、絵に描いた餅に終わらせずに、政府の中でこのイノベーション・コーストを実現できる体制を安倍総理のリーダーシップでつくっていただきたいとお願いするものでございますが、御答弁いただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 福島の再生のためには、まさに議員がおっしゃったように、地域の再生への道筋を示しながら、雇用を生み出す新しい産業基盤を構築して産業復興を図っていくことが必要だろうと思います。

 そういう中において、復興といっても、新たな福島をつくっていく、そういう夢をやはり示していく必要があります。

 ずっともう地元に張りついていただいた赤羽さんに、原子力災害現地対策本部長を務めていただいたわけでありますが、取りまとめていただいた福島イノベーション・コースト構想は、廃炉の研究開発拠点、そしてロボットの研究、実証拠点の整備、そして、これらを支えるまちづくりを含んだ幅広い構想であるというふうに思います。

 この構想は、まさに福島の浜通りの産業復興の柱となるものであり、その具体化に向けて、政府一丸となって取り組んでいきたいと思います。

赤羽委員 私も、任期の一年八カ月の間、あらゆる福島の会合に出ましたが、最終回だけ初めて参加者全員から拍手が出た。そのくらい地元の期待が強い案件でございますので、ぜひ、これは、二〇二〇年東京オリンピックに来られた外国人の方は、ほとんどが福島の再生を見に行かれると思うんです。そのときにどうなっているかというのは、まさに国のこけんにかかわる大変重要なプロジェクトでありますので、今の御答弁のとおり、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 最後に、エネルギー政策について一言申し上げたいと思いますが、三・一一以来、日本はエネルギー制約に直面をしております。私は、安全面、経済面、また安定供給面、そして環境面、この四つのファクターを全てクリアできるような電力源というのはなかなかない、ですから、現実的なベストミックスをしていかなければいけないと。

 しかし、いずれにせよ、私は、再生可能エネルギーを育てるというのは大事だと。固定価格買い取り制度を実施してもう経過しておりますが、まだ全体ではたった二・二%なんですね。ですから、ここをもう少し頑張らなきゃいけない。私は、そのために、ぜひ、具体的な提案が一つございます。

 これは、実は、平成二十一年、麻生政権の一番最後の補正予算で公明党が頑張って立ち上げた、学校教育の現場をよくしようということで、耐震化と省エネ化とICT化を進めるという特段の事業をいたしました。総事業費一兆円を超える事業で、国が二分の一補助で、それで、臨時交付金というのもその補正予算でつくっていただきましたので、実に国から九五%補助金が出る。その結果、実は、三万五千校のうち二〇%近い六千校を超えるところに太陽光パネルが設置されました。

 具体例が幾つかありまして、その学校の校長先生のいろいろ発言を聞きますと、やはり環境教育が身近になった、実際、災害があると、避難、防災の拠点になりますから、地域の皆さんも大変喜んだ、地域が協力するようになったと。

 実は、太陽光パネルというのは、地元の工務店さんとかにとって具体的なお仕事ですし、節電にもなります。最近、地球温暖化の影響で、学校の冷房化というのが大変進んでいまして、学校の消費電力というのは極端に上がっていく傾向があるんですね。

 ですから、私は、このスクール・ニューディールで太陽光パネルを全国に設置しよう、こういった問題をもう一度展開していただきたい、こう念願するんですが、ぜひ担当大臣の小渕経済産業大臣から御答弁いただきたいと思います。

小渕国務大臣 ありがとうございます。

 委員御指摘のこの自家消費型の再生可能エネルギーは、電力の系統の負担が少ないことに加えて、これは災害等の緊急時の非常用電源としても活用ができると期待もされています。

 これは、二十四年から、自家消費型の再生可能エネルギーを導入する事業者に対して費用の三分の一を補助する事業を開始しております。とりわけ、御指摘の公立小中学校のような地方自治体が導入するものについては、補助率を三分の一から二分の一に引き上げることによりまして、重点的に支援を行っているところであります。

 引き続き、再生可能エネルギーの導入について最大限頑張ってまいりたいと思います。

赤羽委員 ぜひ、文部科学大臣とも協力をしていただきまして、もう一度国民運動として展開されることを強く期待いたしまして、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

大島委員長 これにて古屋君、赤羽君の質疑は終了いたしました。

 次に、前原誠司君。

前原委員 民主党の前原でございます。

 まず冒頭に、ことしは、広島を初めといたしまして、全国各地で豪雨災害が起きました。お亡くなりになられた方々に対して心よりお悔やみを申し上げたいと思いますし、また、被害に遭われた方々に対して心からお見舞いを申し上げます。

 政府には、復旧復興に対して、スピード感を持って万全の体制をとられることをまず要望いたします。

 また、先般の御嶽山の噴火によりお亡くなりになられた方々に対して心よりお悔やみを申し上げますとともに、負傷された方々の一日も早い御回復をお祈り申し上げます。

 消防、警察、自衛隊、あるいは地元自治体の職員の皆さんが、危険と隣り合わせで大変な救助活動に日夜従事されておられますことに心から敬意と感謝を申し上げ、行方不明者が全員早期に見つかられますことを衷心より祈っております。

 さて、安倍総理、第二次安倍内閣が発足をしてから約一年九カ月がたちました。経済再生をうたわれて、そして三本の矢というものを打ち出されて、そして国民やマーケットの気を大きく変えたということについては、私は、トップリーダーの姿勢として率直に評価をしたいと思います。比較的高い支持率というのは、そういった、株価の上昇もありますけれども、国民の評価の裏返しかと思います。

 さて、きょうは、今までの与党議員、あるいは安倍総理の御答弁にもありましたけれども、アベノミクスがうまくいっているというのは本当かということについて、幾つかのファクトから話をさせていただきたいと思います。

 まず、一枚目の資料をごらんいただきたいと思います。

 まず、私は、主に五つの誤算が今のところ出てきているのではないか、こう思っています。

 一つは、これだけ円安になったのに輸出が伸びない。期待をされていたJカーブ効果というのは出ていませんね。

 それから二番目。これだけいわゆる量的緩和を行い、そして日銀が国債を買うことによりましてイールドカーブ全体を押し下げた、つまり、金利を下げたにもかかわらず、法人向け貸し出しは伸びていなくて、日銀の超過準備高がどんどん積み上がっている。そしてまた、本来なら賃金の上昇とか設備投資に使ってもらいたい企業の内部留保は、過去最高ですよ、三百十三兆円まで積み上がっている。

 三番目。安倍総理は、いわゆる賃金が上昇した、こういうことをおっしゃっておられますけれども、これは名目賃金なんですね。名目賃金は上がっておりますけれども、実質賃金それから実質可処分所得はずっと減少しているんですよ。これは、後でお話ししますけれども、消費税の影響じゃないですよ。その前から、実質賃金、実質可処分所得は減っているんです。

 そして四番目。物価上昇は確かに一%を超えてきている。総合CPI、あるいはコア、コアコア、一%を超えてきましたけれども、これも後でお話をしますけれども、悪いインフレが始まっているんじゃないか。つまりは、インフレというのは、需要と供給が逼迫をして、そして経済が過熱をする形でインフレになるということは、それはいいことかもしれない。円安による輸入価格の上昇によって望ましくないコストプッシュのインフレが起きているのではないか。

 五番目。財政出動を行い、また補正予算を行うことによって、復興地のみならず全国各地で入札不調が起きている。そして、これは皆さん方も地域に帰られたり、あるいはいろいろな地域に行かれたら聞かれたことがあると思いますけれども、民間の建設投資までとばっちりをこうむっている。こういうことでありまして、建設業界の方々の有効求人倍率は、職種にもよりますけれども、五倍から九倍ですよ。つまりは、一人に対して五社から九社が奪い合っているという状況で、人手が全く足りない。そして、まさに、人が足りなくて倒産をする、仕事ができない、入札不調がふえていく、こういう状況になってきています。

 この五つの誤算というのは、本当に、一年九カ月たって、大きな誤算なんじゃないですか。

 さて、では、幾つか、全部やると時間がありませんので、幾つか総理と議論させていただきたいと思います。

 総理は、去年の四月に海江田代表と党首討論をやられています。これは、異次元の金融緩和の後なんですね。そのときに、急激に円安が進んでいって輸入価格が上昇するという懸念を海江田代表は提示されているわけですけれども、このときに、安倍総理の口から、みずからどうおっしゃったかということをちょっと読ませていただきます。

 輸出において、これは去年ですよ、輸出において、経常収支も間違いなく今年度、つまりは二〇一三年度は、大体四・六兆円プラスになりますと。間違いなくという言葉までつけておっしゃっているんです、四・六兆円。実際どうだったか。八千億円の黒字。そして、再来年度、二〇一四年度は八兆円の経常収支プラスになるということを申し上げておきたいということをおっしゃっている。今年度は八兆円プラスになるとおっしゃっているんです。一月から六月までの上半期、五千億円の赤字ですよ。全然、総理がおっしゃったこととかけ離れているじゃないですか。

 好循環というのは、消費がふえる、輸出がふえる、設備投資がふえる、こういうものでないと好循環になりませんよね。輸出は、総理が間違いなくとおっしゃった言葉からはかなり乖離をして、そしてJカーブ効果が出ない、そして、むしろことしの一月から六月は減っているということでありますが、これは誤算じゃないですか。

安倍内閣総理大臣 まず、安倍政権が誕生した後と、する前についてお話をさせていただきたいと思いますが、二〇一二年の四月―六月期、七月―九月期でありますが、マイナス二・二%とマイナス二・七%であったんですね。まさにマイナス成長が続いていたわけでありますが、しかし、我々が政権をとったその後は……(発言する者あり)その後は、皆さんは聞きたくないと思いますが、一応、経済のことですから、説明させていただきたいと思います。(発言する者あり)

大島委員長 御静粛に。

安倍内閣総理大臣 二〇一三年一月―三月期においては、まさに四月―六月期の実質成長率は、それぞれプラス五・一%とプラス三・四%になったわけであります。まさに、マイナス成長だったものをプラス成長にした、これは前原委員もお認めになるだろう、このように思います。

 そして、有効求人倍率も、基本的に、我々が政権をとって以降ずっと成長が改善をしているわけであります。そして、有効求人倍率においては二十二年ぶりの、まさに高い水準になっているということであります。

 そこで、今御質問のあったのは輸出についてであります。輸出については、確かに、これは我々が予想していた伸びがなかったのであります。これはさまざまな原因があるわけでございます。

 経常収支には貿易収支と所得収支があるわけでありまして、所得収支の方はふえておりますが、貿易収支においては赤字になっています。そして、輸出自体も余り伸びていない。

 赤字になっていることについては、燃料費代の、原子力発電所をとめているという効果もあるのは、これはお認めになるんだろう、こう思うわけでありますが、輸出については、輸出数量は横ばいに推移しているわけでありまして、この背景には、新興国の需要が減速したこと、そして、それと同時に、日本企業が現地の外貨建て販売価格を余り引き下げずに、輸出数量ではなくて収益で稼ぐ傾向が強まったということであります。ですから、数量がふえなかったんですが、収益……(発言する者あり)済みません、ちょっと、少し静かにしていただけますか。やじをし続けるというのはやめていただきたいと思います。

 そして、輸出数量ではなくて、いわば収益に重点を置いた。しかし、収益に重点を置いた結果、輸出企業においては、相当、これは税収としては、我々、ふえているということは申し上げておきたい、こう思います。

 それと、どれぐらいかはまだ今調べてみなければわかりませんが、円高基調が長い間、我々が政権を取り返すまで円高基調が続いておりましたから、多くの企業が製造拠点を海外に移していたということもあるわけでございます。

 そして、この諸条件の変化が、まさに為替の状況が、今のこの為替水準に続くかどうかというのを見ているわけでありまして、その中から、今後、国内への投資が伸びていくことによってそれはさらに是正されていく。これは少し時間がかかることでありますが、この輸出の伸びについては、我々の予想を下回ったというのは事実でございます。

前原委員 安倍総理、長期政権を目指される総理であれば、もうそろそろ、一年九カ月たったら、民主党政権がどうのこうのというようなことをおっしゃるのはちょっと小さく見えますから、余り言われない方がいいと思いますよ。言われると、やはり私もお応えをしなきゃいけないところがあるんです。

 ここの事実を申し上げましょう。麻生政権から我々が継いでから、有効求人倍率は麻生政権末期に幾らだったか。〇・四三ですよ。我々が政権をとったとき、〇・八何まで回復したんです。失業率が五・四から四・〇まで下がったんですよ。そして、実質GDPは四百八十九・二兆円から五百十五・二兆円まで上がったんです。

 先ほどの、こういうふうに、民主党政権でも、麻生政権の後を継いで経済はよくなったんですよ。経済はだめになったというステレオタイプの批判は、もうやめられた方がいいと思いますよ。

 それと同時に、これも申し上げておかなきゃいけない。僕は、ずっと総理がおっしゃるので、二〇一二年のことを申し上げますと、あと、円高のことも先に申し上げましょう。

 民主党政権でいつから円高になったか、覚えておられますか。三・一一ですよ。東日本大震災の後から急激な円高になったんです。円安になると思っていたのが、復興需要が見込まれるということの中で急激に円高になったんですよ。ですから、民主党政権の三年三カ月がずっと円高で、そしてその間に何か空洞化が進んだような、そういう言い方はやめられた方がいいと思います。これは、事実関係として我々は申し上げておきます。

 それから、先ほど、政権交代前の年のマイナス成長とおっしゃいました。それはそうです。そういうところはあったと思います。それは率直に認めなくてはいけませんけれども、参議院選挙に負けてねじれていたんですね。そのときの野党の皆さん方の方が数が多かった。そのことによって、我々は補正予算は剰余金でしか組めなかったんですよ。剰余金だけで組めなくて、我々が補正を組もうとしたら、そういう経済が腰折れしそうなときに足を引っ張ったのは自公の野党じゃないですか。そういうような状況があったということは、事実として申し上げておきたい。

 私ももう言いませんから、総理も民主党政権のときの話はもうそろそろ、一年九カ月たっているから、お互いやめにしましょうよ。前向きな話をしましょう。

 輸出が伸びないというのは、私も意外だったんです。これはもっと伸びると思った。これは別に安倍さんに全て責任を負わそうという気はない。だけれども、御本人が、間違いなく二〇一三年には幾ら、二〇一四年には幾らとおっしゃっているから、そのことについて、違いますねということで、誤算ですねということを申し上げているわけです。

 では、二つ目。

 所信表明演説で総理は、こう誇らしげに言われましたよね。

  この春、多くの企業で、賃金がアップしました。連合の調査で、平均二%を超える賃上げは過去十五年間で最高です。中小企業、小規模事業者でも、一万社余りの調査において、六五%で賃上げが実施されています。

  頑張れば、報われる。日本は、その自信を取り戻そうとしています。

 これをごらんください。これを見ていただくと、輸入物価指数、つまりは、円安が進むことによって輸入物価指数がどんどん上がって、そしてその結果、先ほど申し上げたように、消費増税前ですよ、消費増税前に実質賃金も実質可処分所得も下がっているんです。ということは、株が上がった人はいいですよ、株を持っている人は。資産を持っている人はいいかもしれないけれども、一般のサラリーマンや一般の年金生活者の方々の生活は、安倍政権で、アベノミクスで苦しくなっているということを示しているじゃないですか。

 総理、これは、賃金は名目じゃなくて実質で見るべきじゃないですか。本当にトリクルダウン、好循環というものをもたらすのであれば、こういう名目賃金で所信表明演説で誇るよりも、実質賃金を上げなきゃいけないということをお認めになった方がいいんじゃないですか。

安倍内閣総理大臣 まず、雇用状況については、有効求人倍率が二十二年ぶりに高い水準になっている。失業率も低い水準になっています。いわば雇用市場についてはだんだんタイトにすることができています。

 その中で、多くの人たちが仕事につくことができているわけでありますが、その中において、必ずしも正規だけではなくて非正規、景気がよくなり始めたときには、だんだん、企業も今までの経営マインドが残っていますから、慎重にいきますから、どうしてもまず非正規をふやしていく。そして、非正規の中でも短時間の人たちをふやしていきます。

 そうしますと、例えば、今まで私だけが働いていた。私は収入が二十万でしたよ。そして、しかし、パートでうちの家内も働けるようになった。となると、十万円足して家計は三十万円になったんですが、しかし、二人足して三十万円ですから、平均すると十五万円になるんですね。平均すれば下がるんです。しかし、家計ではふえていますから、そうしますと、どう見ていくかということになるわけでありますが、そのときの見方として、国民全体の所得、賃金である総雇用者所得で見ていくことが大切でありまして、今言ったような要素も加えて見ていくことが大切だろうと思います。

 そこで、名目総雇用者所得は八月に前年同月比でプラス二・一%でありました。そして、昨年四月以降、十七カ月連続で上昇基調にあるわけであります。また、実質総雇用者所得は、これは実質でありますが、七月には前年同月比プラス、それでも〇・二%でありますが、プラスになりました。しかし、八月はマイナス一%になっています。

 それは、消費税を三%上げていますから、私も昨年の予算委員会でお話をしているとおり、我々が今進めている経済政策においては、物価安定目標の二%があります。そして、二%上げていきますが、この二%に賃金が追いつくようにしていきますよというのが我々の政策であります。そして、賃金が追いついていく上においては、少し時差があるということも申し上げています。

 浜田先生は二年間かかるとおっしゃっていたんですが、これは政治的には長過ぎる。デフレマインドが再び頭をもたげてくる危険性がありますから、なるべく早く賃金を追いつくようにしたい。そのためにも、機動的な財政政策をしっかりと進めていく、また成長戦略を進めていくことが大切ですねということを申し上げています。

 しかし、消費税が上がった分については、これはまさに年金や医療の分で国民にまた給付するものでありますから、ここについては、残念ながら、これは追いつくことはできないわけでございます。

 ですから、我々が申し上げているのは、まさに物価安定目標についてはこれを超えていくようにしていく。一回限り、消費税については一回上がって、物価については、物価安定目標については毎年上がっていくわけですから、この毎年毎年のものにはしっかりと追いついていきますと。

 消費税は一回なんですが、ことしやって来年もやるということになれば来年も上がりますが、その後は、消費税はしばらく上げていくということにはなっていないわけでありますから、それはその後、さらに経済を成長させていくことによって追いつかせていきたい。

 これが全体の我々のプランでありまして、これには、最初に申し上げた我々の政策どおりには、一応、賃金は追いついていっているというのが我々の考えであります。(拍手)

前原委員 これはまだ拍手をするようなところじゃないんです。

 これは裏がありまして、後で調べていただいたら結構なんですが、総雇用者所得というのは公務員の給与も入っているんですね。公務員の給与というのは、震災で二年間、七・八%平均で下げたんです。それを戻しているんですね。戻しているからその部分が入っているということと、これは厚生労働省の発表のものですけれども、厚生労働省が発表しているものには公務員は入っていません。それと同様に、企業の役員レベル、つまりは、そういう資産を持っているような人たちはこれは入っていない。

 だけれども、先ほどの総理が引用されたところには、公務員と、そういった役員報酬も含まれているんですよ。つまりは、一般の国民の、一般サラリーマンの方々は、それは、総理がおっしゃるように、私は全否定はしません、有効求人倍率は上がっていますよ。だけれども、一九八八年、全労働者に占める非正規雇用の割合はどれぐらいだったか、一八・三%ですよ。今、三八まで上がっているじゃないですか。

 つまりは、どんどんどんどん非正規雇用が上がっていく中で、しかも、非正規雇用の方々の六割ぐらい、一千百万人ぐらいの方は年収二百万円以下ですよ。そういう方々が、総理が言うように家計で合わせてといっても、結婚できていない人もたくさんいますよ。

 そういうような方々を考えると、どれが一般の国民目線、一般の年金生活者の目線で正しいかというと、総理がおっしゃるのじゃなくて、これが正しいんですよ。つまりは、実質賃金が下がり、実質可処分所得が下がっているから生活が苦しくなり、そして消費が伸びないんじゃないですか。つまりは、これも、まさにトリクルダウン、好循環というものの大きな誤算じゃないですか。

 総理、伺いますけれども、総理は実質賃金が上がった方がいいと思われるでしょう。名目のことばかりおっしゃいますけれども、これは前向きな話をしたいんですよ。本当にそのトリクルダウンが起きるのであれば、実質賃金を上げるとおっしゃってください。そして、非正規よりも正社員の方が多い働き方の方がいいと、この二つについておっしゃっていただけませんか。それなら私は、前提として、総理がやられようとすることについては一定の理解をしますよ。

安倍内閣総理大臣 これは、もちろん、先ほども御説明をさせていただいたとおり、物価安定目標をしっかりと持って金融緩和を行い、そして大胆な機動的な財政政策を行っていくという中において、デフレから脱却をしなければ。まずデフレから脱却しなければ経済は健全に成長しませんから、このデフレから脱却するということに重点を置いています。その中においては、まさに物価をある程度、物価安定目標に向けて、緩やかに上がっていくという目標に向けて進んでいく必要はあります。

 しかし、それと同時に、賃金が、あるいは先に行くということには、残念ながら、これはなりませんし、やった国なんかはないわけであります。十五年以上続いたデフレから脱却するということはそう簡単なことではない中において、思い切った政策をやらなければ脱却できないわけであります。

 そこで、今やっている政策の中においては、時差はあっても、しかし、それは追いつくようにしていく、そしてその時差はなるべく短くするというのが我々の政策でありますので、当然、実質賃金がしっかりとふえていくというステージには入っていきたい。ただ、それには少し時間がかかるというのと、そしてもう一つは、消費税を上げたという要素があることも、それは御理解をいただきたい。

 消費税を四月に上げましたから、この上がった分は、これはまさに国民の皆様に、年金、医療、介護、社会保障を持続していく、子育てを支援していくために皆さんに出していただくというものでありますから、これは分けて考えていただきたい、こういうことでございます。(前原委員「働き方」と呼ぶ)

 正規、これは、もう今までも申し上げておりますように、働き方に対するニーズはいろいろでありますが、正規雇用を目指したいという方が、その希望が実現されるような、そういう支援は、今も行っておりますが、これからも行っていきたい、このように思います。

前原委員 非正規で働いている方々の六割は正規で働きたい方々なんですね。これについては、後で山井議員がお話をされます。

 ですから、今確認ができたことは私は非常に前向きに捉えているんですが、これから実質賃金で言ってください。名目ではだめです。実質賃金で上昇が大事だと今総理はおっしゃったんですから、実質賃金を上げるということ。

 それから、本当に正社員として働きたい非正規の方々が正社員になる社会をつくりたいということをおっしゃったんですから、その二つを総理がおっしゃる好循環に入れていただきたい。それを我々は前提に、これから話をしようじゃありませんか。

 さて、日銀総裁に。日銀総裁、来られていると思いますが。

 十月三日、きょうですね、きょうの恐らく今の為替は、私は明確にわかりませんが、先ほどは、お昼ごろは、大体百八円の八十銭ぐらいだったと思います。円はドルに対して、九月だけで五円超下落いたしました。これについて、経済同友会代表幹事の長谷川閑史さんは、国にとっても産業界にとってもプラスではない、こう発言されています。

 中小企業を会員企業とする日本商工会議所がまとめた調査、これは九月の十二日から十九日に実施しておりますけれども、会員企業が望ましいと考える為替水準は、百円から百五円未満が三八・八%、そして次に多かったのが九十五円から百円未満、これは三〇・五%です。約八割の企業が現在の為替水準は望ましくないと考えているということなんですね。

 さて、黒田総裁に伺います。

 まず、簡単な質問です。

 去年の四月に異次元の金融緩和をされたときに、二年で二%の安定的な物価上昇というものを約束されました。この二年で二%の物価上昇の考えは変わっていませんか。そして、実現できますか。

黒田参考人 考え方は変わっておりません。二年程度を目途に、できるだけ早期に二%の物価安定目標を実現する、しかも、それを安定的に持続できるようにしたいというふうに思っております。

前原委員 それでは、資料の三枚目をごらんいただきたいと思います。

 これがいわゆる物価上昇率、指数をあらわしたもの、CPIですね。そして、一番赤いのが、左上を見ていただきますと、総合というもので一・二%、コアという生鮮食料品を除いたものが一・一%、これは増税の影響を除いております、それからコアコアが〇・六%、こういうことでございます。

 黒田総裁、これは、二年で二%というのはコアCPIで見るということでよろしいんですよね。そこで首を振っておいていただいて結構です、時間がもったいないですので。

黒田参考人 物価安定目標を昨年の一月に決定したわけでありますが、従来から物価安定目標の議論のときには総合指数というものをターゲットにしているということは事実ですが、ただ、生鮮食品は非常に大きく振れますので、趨勢を見るためにはどうしても、コアといいますか、生鮮食品を除いた指数を見ていくということになると思います。

 目標自体は総合指数というふうに御理解いただきたいと思います。

前原委員 それでは、先ほど、二年で二%の安定物価上昇を目指すということをおっしゃいましたが、変わりない、そしてできるということをおっしゃいましたけれども、今見ていただくと、総合が一・二、コアが一・一で、あと何カ月あるかということを考えますと、半年ぐらいなんですね、四月ですから、四月の一番初めに始まったわけですから。これは、相当程度、今のままだったら、総合は落ちてきていますから、これを上げてくるというのは大変です。

 ただ、私は若干上がってくると思うんですね。それは、右の下を見ていただきたいんですが、「コアCPIの前年比と寄与度」というところであります。

 では、物価上昇は何で上がっているのかといったところが大事なことでありまして、この赤いのが実はエネルギーなんですよ。エネルギーというのは、まさに、日本は油もとれません、そして天然ガスも輸入しているということですから、これは輸入なんですね。つまりは、輸入品によってこれはかなり上がっている。コアコアとコアの差がこれだけ開いているということは、まさにこの輸入部分が大きいということの証左であります。

 そしてまた、非耐久消費財という青いところ、これは食料なんですね。一般の、今テレビを見ておられる皆さん方からすると、十月一日から食料品がかなり値上がりしています。つまり、輸入物価が上がることによって食料品が上がっている。皆さん方が口にされている食料品のカロリーベースでいうと六割が輸入品です。

 となると、この寄与度を見ると、エネルギーと、そしていわゆる非耐久消費財というのは食料で、円安によって輸入価格が上がることによって上がっているということで、まさにこれは、経済がよくなっているのではなくて、コストプッシュ型、悪いインフレが起きているんじゃないですか。黒田総裁、お答えください。

黒田参考人 御指摘のとおり、輸入財、特に価格弾力性の低いエネルギー関連のものにつきましては、輸入価格が上がると比較的早く国内物価に影響していくということは御指摘のとおりであります。

 ただ、そうした中で、消費者物価指数全体がどのように動くかということは、もちろんこういった積み上げ方式で先行きは私どもも見ておりますけれども、一定の期間をとった場合には、全体としての需要の動向がどうかということがやはり物価上昇率に対しては影響してくるというふうに思っております。

 したがいまして、委員御指摘のとおり、エネルギー部分がかなり物価の押し上げに貢献していたということは事実でありますし、逆に言いますと、今若干物価の上昇率が下がってきているというのは、この委員のグラフでも示されているとおり、一年前のエネルギー価格が上がっていたものが剥げ落ちてきているということで若干下がっているということであります。

 ただ、あくまでも物価上昇率を趨勢で見ていく場合には、そういったことも全て含めてどうなっていくかということを見ますので、私どもとしては、今若干垂れていますけれども、委員も示唆されたように、これから今年度の後半にかけて、また物価上昇率は少しずつ加速していく。これは基本的には、需要の関係で、労働市場にしても一般の財の市場にしてもだんだんタイトになってきて、物価や賃金が上がりやすくなってくるということではないかと思っております。

前原委員 そんな物価上昇というものを誰が望むんですかね。輸入物価が円安によって上がる、そして、二年二%は実現をする、そのためにいろいろな施策を行うといって、そんな物価上昇を誰が国民は望むんですか。

 そして、それをもしやろうとすると、例えば追加緩和なんかしたら、もっと円安が進みますよ。円安が進んだら、さらに輸入価格が押し上がって、そして、要は、今度また十月末に発表されるかもしれませんが、今年度の実質GDPの成長の見通し、ずっと下方修正されていますよね、日銀。九名の政策審議委員の見通しはずっと下方修正。今、一まで落ちましたね。初め、一・六が一番高かった。一まで落ちて、これは〇・五じゃないかと言われている。

 そういうような中で、無理やりコストプッシュ型の、輸入価格が上がることによって、そしてインフレが起きている、それをまた二年で二%で、また追加緩和も含めてやろうということになると、さらに円安が加速してコストプッシュ型になる。

 そして、先ほどのように、実質賃金、実質可処分所得が減って、成長率が落ちて、物価だけ上がるということになると、スタグフレーションになるんじゃないですか、日本は。皆さん方がやろうとしていることは、このまま本当にやり続けるとスタグフレーションになりますよ。いかがですか。

黒田参考人 ただいまの点については、若干違った角度からお話しさせていただきたいと思いますが、為替レートが、例えば円高になった場合には、確かに一方で、特に、価格弾力性の低いエネルギー関係の輸入物価そして国内物価を押し上げていくという効果があることは事実でありますが……(前原委員「円安ですね」と呼ぶ)円安のときに。

 他方で、輸出あるいはグローバルに展開している企業の収益をよくするという面もあるわけでして、ここは、エネルギー価格自体が国際的に上がっていくときは、日本のようなエネルギーの輸入国としてはプラスはなくてマイナスだけなんですけれども、為替の動きの場合にはその両方の効果がありますので、経済実態と合った形で為替が円安になっていった場合に、経済全体としては何か大きな問題を引き起こすということはない、全体としては、むしろ恐らくプラスだろう。

 ただ、産業とか企業規模によっていろいろな影響があるということは委員よく御存じのとおりでありまして、製造業、特に大企業には非常に大きなプラスになるのに対して、非製造業、これは輸出がほとんどなくて一部輸入品のコストが入ってきますので、そういうところにはむしろマイナスにきくということはあると思いますが、ただ、円安が何か日本経済全体としてマイナスになるというようなことではないというふうに思っております。

前原委員 確かに円安にはプラスマイナスがありますね。

 しかし、このアベノミクスというのは、私は格差を広げる政策だと思っているんですよ。つまりは、株が上がることによって、持っている人はよりお金持ちになる。しかし、一般のサラリーマンや一般の年金生活者は、先ほど申し上げたとおり、実質可処分所得、実質賃金は下がっているわけですから、どんどんどんどん生活が苦しくなっているということですよね。

 そして、後でお話ししますけれども、大企業は為替効果でもうかっているところは確かにありますよ。だけれども、中小零細は大変なことになっている。

 そして、地方はどうか。先ほどから与党の議員にもありました。地方の方々は、一家に一台どころか一人に一台、車に乗る。そうするとガソリンを使う。そして、農業に従事されている方々、肥料、飼料、この値段が上がっていますよね。そして、漁業に携わられる方々、これは燃油価格が高騰している。トラック業界、運輸業界、零細企業、大変な企業が多いですよ。非常に困っているところが多いじゃないですか。

 つまりは、このアベノミクスというのは格差を広げる施策なんですよ。格差を広げる施策で、トリクルダウン、そして、そのいいものが好循環になればいいけれども、実際問題、先ほどから申し上げているように輸出はふえていないんです。先ほど輸出がふえるということをおっしゃいましたけれども、一ドル八十円のころから今百十円ぐらいになったって、輸出は伸びていないじゃないですか。

 そういうようなことを含めて考えると、実際問題、このアベノミクスということについては、私は、今のまま、誰も望まない、二年で二%という物価目標をやって、そして、コストプッシュ型のインフレになって、さらに一般の国民の生活は疲弊をする、そして、中小零細企業は困る、地方は困る。地方創生と全く逆のことをやろうとしているのがアベノミクスだということは申し上げておきたいと思います。

 去年の十月二十一日、予算委員会で、総理は、ゴルフに例えて答弁されているんです。覚えておられますか。デフレで、バンカーに球が入っている、バンカーに入ってしまって、バンカーから出てグリーンに乗らなきゃいけない、そのグリーンの先に崖があるんじゃないかと心配して、ずっとパットを持って打っていた、サンドウエッジを持たなきゃいけない、こういうような話をされましたね。

 私、このアベノミクスの、特に財政出動、先ほど補正予算の議論がありましたけれども、先ほどの、言ってみれば、いわゆる入札不調とか建設業界の有効求人倍率を見たときに、補正予算でまた、例えば半分ぐらい公共事業をやったということになると、余計大変になって、復興はおくれますよね。そして、誰も望まないインフレというものを起こして、そして可処分所得が減っていく中で景気が実質的に悪くなるということになったときに、バンカーから出すのに、サンドウエッジじゃなくてもっと大きい番手のものを持って、もっとボールは、グリーンじゃなくて違うところに飛んでいく、そういう施策をやろうとしているんじゃないかと私は思うんですね。

 そういう意味では、このアベノミクスというものについて、特に二本の矢、財政出動そして金融緩和については、私は見直すべきときに来ていると思いますよ。いかがですか。

甘利国務大臣 バンカーでどの番手を使うかは別の話として、確かに、公共事業のクラウディングアウトという指摘はあります。ですから、仮に何らかの対策を打つときには、そういう指摘もしっかり踏まえて財務大臣はやられると思います。

 それから、実質賃金の話をされました。しかし、実質賃金は、名目賃金が物価上昇をオーバーライドしたときに初めて実質がプラスになるんです。

 実質にこだわったというのは、我々の反省でもあるんですけれども、実は、名目が上がらなくても物価が下がっているから実質賃金は確保されているんだ、経済成長も、名目は伸びなくても物価で引けば実質はそこそこなんだと。でも、こういう反省を込めてやっているんです。それが、まさにデフレなんです。

 経済規模がシュリンクしてきちゃったら、税収も入らないし、財政再建もできないし、全部できないんです。だから、経済規模を、名目規模を大きくしようと。名目規模を大きくする中で、名目賃金が一年で一発ではいかないけれども、複数年で実質がプラスになるようオーバーライドしていこうということが大事なんです。

 現実、そうすると、どうするかということなんです。

 今、企業の売上高収益率というのは五・二%です。これは、一九五四年の統計をとって以来最高値なんです。六十年ぶりです。要は、そこからです、そこは同じ認識だと思うんですが、それをどうやって好循環に還元していくか。

 去年は、一巡目は、本来やるべきことじゃない賃上げ要請をして、賃金が上がりました。二・〇四ですけれども、少なくとも上がってきました。これを循環でしていくという作業を我々はやっていきたいんです。

 働き方の改革をしていく、そうすれば限定正社員にもなる、非正規が正規に行く道も開ける。そうやって一つ一つ障害を乗り越えながら、やがて名目賃金が実質でもプラスになるようにしていく、その過程だと思ってください。

前原委員 いや、長々と答弁されましたけれども、当たり前のことをおっしゃっているんです。

 デフレのときは名目が大事なんです。だけれども、今デフレを脱却しているわけでしょう、脱却させると言っているわけでしょう。そのときに……(発言する者あり)だってCPIは上がっているじゃないですか。そのときに、実質がこれから大事になってくるんですよ。それは同じでしょう、認識は。だから、先ほど私は総理に対して、名目賃金じゃなくて実質賃金を上げるということの方をこれからやってくださいと申し上げて、だから、それは同じ認識なんです。

 デフレのときは名目ということを見て、そして、今、実際問題、我々もデフレ脱却は大事だと思っていますよ、脱却は。ただし、私は、今のは番手が大きいクラブを持ち過ぎているということで、やはり臨機応変に見直さなきゃいけないと。何が何でも二年で二%だということになったら、先ほど私が申し上げたように、スタグフレーションになりますよ。そのことを私は申し上げておきたいと思います。

 では、総理、消費税の引き上げについてそろそろ御判断をされることになるわけでありますが、仮に、先ほど総理が私のことに対しては反論されて、好循環は続いているんだ、アベノミクスはうまくいっているんだ、こういうことをおっしゃるのであれば、消費税は当然上げますよね。これは、もし消費税を上げないということになったら、アベノミクスはうまくいっていなかったんだということをみずから証明することになりませんか。

安倍内閣総理大臣 先ほど甘利大臣が答弁をさせていただきました、また、私が申し上げたように、そもそもアベノミクスというのは、デフレから脱却する。デフレから脱却するというのは、しっかりと経済が成長していく、そして、しっかりと給料がふえていくということであります。

 デフレというのは、まさに物価が下がっていく以上に、結果としては恐らく収入も下がっていくという状況から脱却しなきゃいけない。これは、十五年続いていたものを脱却するというのは、相当なマインドチェンジをしなければいけませんから、思い切った政策をしなければならないという中において、三本の矢の政策を打ったところであります。

 先ほどいろいろ言われたので、少し反論させていただきたいと思います。

 株価でありますが、それは一部の人たちだけが利益を得るのではなくて、いわば株が上がっていく、株を持っている人は資産がふえますから、資産効果としては、例えば給料やボーナスが上がったよりも大きな効果があって、これは消費につながるんですね。消費につながって、買い物をすれば、その物をつくっている人にとってはプラスになっていって、その後は、収益が上がった企業が、これは賃金になっていけば、消費から賃金に、こうなっていくわけでありまして、これが景気の好循環であります。

 そして、企業が収益を上げるというところまでは、先ほど甘利大臣から説明をさせていただいたように、多くの企業が相当の収益を上げているのは事実であります。この収益が内部留保に回らずに、しっかりと賃金に転嫁されるようにしていかなければならない。

 デフレ下では、なかなか賃金にならないんですよ。お金を持っていれば、それだけで価値がどんどん上がっていくわけですから。人材にちゃんと投入するように、そして、政労使の三者の会談をやって、十五年ぶりの賃上げを成果として得ることができました。そして、来年も上げたい、こう思っていますよ。

 しかし、経済の状況というのは、新興国の経済の状況も見なければいけませんし、デフレ脱却を我々は優先しているわけでありまして、デフレから脱却をしなければ財政の健全化もできませんからね。その中において、生き物である経済を見ながら消費税を上げるかどうか判断する。

 これはアベノミクスの成功とか失敗とかにはかかわりがないわけでありまして、どういうタイミングで消費税を上げるかどうかというのは、既に法定で決まっているわけでありますが、やはり七―九の状況を見て判断をするというのは、これは当然のことではないか、このように思います。

前原委員 好循環だとおっしゃっているときに上げられなかったら、いつ上げるんですか。だから、好循環にないということの証明になるということを私は申し上げているんです、意見が違うかもしれませんが。

 最後、次の法人税減税について少し議論をしたいというふうに思います。

 このグラフ、五番目をごらんください。法人税減税。大企業、中堅企業、中小企業に分けました。政権交代前の一二年の十月から十二月を一〇〇とした場合、今どうなっているかということを示したものです。

 大企業については、売上高は変わっていません。でも、利益は、おっしゃるように上がっている。これは、さっき申し上げた為替効果。中堅企業、資本金一億から五億円は、売上高は一〇〇から一〇一にふえたけれども、経常利益は一〇〇から八六に減っている。中小企業については、これは資本金一億円未満、売上高も落ちているし、経常利益も落ちているんですね。

 それで、その右を見ていただきますと、企業の中でどれだけ法人税を払っているかというのは御存じだと思います。二七%ぐらいですよ、二七%ぐらい。それで、大企業はどうなのかというと、大企業では黒字企業は七〇%で赤字企業は三〇%。中堅企業になると、六五から三五。中小企業になると、黒字企業は二九になり、赤字企業は七一になるんですね。

 ということは、法人税減税、それは、税は少ない方にこしたことはない。しかしながら、実際問題、これだけ内部留保が積み上がっていて、為替のプラスになっているようなところを減税して、そして、先ほどの話にもあったように、その代替財源については必ず手当てをするということは決められている。そして、その決められている議論の中身が、赤字企業からも、さまざまなインフラを使っているところから取らせてもらうという外形標準課税が拡大をされると、まさにこの赤字企業にも、言ってみれば税金がかかるという話になりますよね。

 ということは、これは本当に一部のもうかっている大企業には恩恵があるけれども、中堅・中小企業に対しては、まさに、法人税を払っていないところも多いわけですから、恩恵が行き渡らないどころか、外形標準課税が仮にとられれば泣きっ面に蜂ですよね。(発言する者あり)決まっていないといったって、財源はどこかで確保するんですから、必ず財源の議論はされるというふうに私は伺っている。

 そうすると、これは何のための法人税減税なんですか。国民には消費税をお願いする、これは決まったことだ。しかし、これだけ利益が、言ってみれば、先ほどの話で、為替効果などで上がっているところは大企業に多い。中堅企業や中小企業は利益が落ちている。そして赤字企業も多い。恩恵を受けない法人税減税は何のためにするんですか。

 まさに、経団連から献金再開という話がありますよね。これを結びつけたくはないけれども、勘ぐってしまうような話じゃないですか。ストーリーができ上がってしまっている話じゃないですか。いかがですか。

甘利国務大臣 内外の投資家にアンケートをとれば、日本に投資することにとっての最大の不安要因は何かというと、必ず三つ挙がります。一つは、エネルギー価格が高い、電気代が高いということ、それから、人の手配ができるかということ、そしてもう一つは、法人税が高いという三つです。

 日本の企業も内部留保を抱えています。なぜ今抱えているかというと、これをどこに使おうかという点はあると思うんです。設備投資でも、国内の設備投資に回すか、海外に回すか。海外の方が税金が安いとしたら、向こうでやった方が有利だ。しかし、政府としては、ぜひ国内に投資をしてください、研究開発基盤もつくります、投資減税もいたします、法人税についても手をこまねいているわけではありません、日本を投資家にとって魅力的な地にしますということでやっているわけです。

 それから、外形標準の、中小企業に関しては、いろいろな議論があります。ですから、私のところにも、中小企業、赤字企業にかけるのかという心配がいっぱい来ていますから、そこはしっかり配慮しながら組み立てていくことになろうかと思います。

前原委員 これで終わりますけれども、総理、法人税減税、では、先ほど、一番初めに申し上げたように、税は、それは安い方がいいんですよ。ただ、何でもって企業は判断をしているかというと、先ほど甘利大臣がおっしゃったような、電気代もあると思いますけれども、やはり給与ですよ、給与。それと、マーケットということを考えたときに、幾ら法人税を下げても、出ていくものは出ていくというのはありますね。

 それから、総理に申し上げたいんですが、一年九カ月たちました。好循環が続いているとおっしゃっているけれども、きょう私は五つの誤算というものを出させていただきました。輸出が伸びないということはお認めになりました。そして、実質賃金が上がらなきゃいけないということもお認めになりました。これからアベノミクスの過程を見させていただく中で、私は、このままの延長線上では、日本の再生、黄色信号だと思いますよ。そして、何よりも、格差がどんどんどんどん広がっていき、日本というものの土台が崩れてしまう。その危惧を申し上げて、私の質問を終わります。

大島委員長 この際、辻元清美君から関連質疑の申し出があります。前原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。辻元清美君。

辻元委員 辻元清美です。

 私は、午前中の集団的自衛権の行使についての総理の御答弁で、ちょっと疑問が残りますので、その点から質問をしたいと思います。

 午前中、小野寺委員の質問に対して、総理は、集団的自衛権の行使容認の必要性をこうおっしゃいました。このパネルですね。覚えていらっしゃると思いますが。皆さんは資料です。

 近隣諸国でもし紛争が起こったときに、基本的には、そこにいる外国人は一旦日本に退避してきて、そこから、日本人は日本に、そしてほかの人々は自分の母国に帰っていくというのが基本的なオペレーションになっているわけです、それは基本的には米軍が担うという形の中です、日本にも協力が求められているというところであります、協力の中で模擬演習等が行われているわけでありますというように御答弁をされました。

 疑問がありますので、この点についてお聞きをいたします。

 まず、江渡防衛大臣、ここで、米軍から、総理が言うところの近隣諸国で紛争などがあったとき、そこにいる日本人、米輸送艦等で救助してもらうということがあり、それに対して、自衛隊がそのような米輸送艦などを防護するようにという要請が来ているんですか。総理がそうおっしゃっていますけれども、大臣、いかがですか。

 いかがですか。安保法制担当ですよね。総理がそう朝答弁をされたから、法制担当大臣なら御存じじゃないでしょうかね。アメリカから要請が来ていると。そうであるならば、ちょっと待ってください。(安倍内閣総理大臣「さっきの私の答弁ですから」と呼ぶ)

 では、総理に。どういう形で、いつ要請が来ているのか、お答えください。

安倍内閣総理大臣 これは、正確に申し上げますと、ガイドラインの中で協力することになっているということでありまして、具体的にこれと言うことはまだ今の段階では我々はできないわけでありますから、協力することになっているということでございます。

辻元委員 では、ガイドラインの審議のときに、私はこの周辺事態法の特別委員会の委員でした。そのとき、このことが問題になっているんですよ。日本人の退避についてどうするんだ、石破さんなら覚えているかもしれませんが。

 今、私もガイドラインを読み返しました。確かに、総理がおっしゃるように、非戦闘員を退避するための活動というのはございます。

 これは、ガイドラインの二、「周辺事態への対応」の(1)の(ハ)というところにあります。このための活動の大枠のタイトルは、「日米両国政府が各々主体的に行う活動における協力」になっているわけですよ。日米両国政府がおのおの主体的に行うんです、それぞれの国の自国民の保護についてはというタイトルになっているわけですよ。

 私は、総理、何回もこのことをおっしゃっていますので、おかしいなとずっと思っていたんです。なぜかといえば、そのガイドラインのときに議論になっているんですよ。

 これは、周辺事態法、一九九九年三月十八日の衆議院の委員会で中谷委員がこう言っています。中谷元さんです。安保通ですね。

 当初、ガイドラインにも米軍による邦人の救出を入れて、米国が実施する項目というようなことでお願いをしておったのですが、最終的にはアメリカから断られました。自分のことは自分でやりなさいということで、当然のことだと思います。

 こういう議論を、私、自分がその委員におりましたので、していましたよ。断られたんじゃないですか。

安倍内閣総理大臣 正確に言うと、米軍はやります。しかし、それを義務化するということについては、それは義務にされるのは困るということでありまして、当然、米国は協力をするということであります。

辻元委員 それでは、今まで湾岸戦争とかイラク戦争とかアフガニスタンの戦争がありました。このときに、米軍が、日本人の退避を、輸送艦などに乗せてもらって、いっぱい事例があって、だから自衛隊に防護してほしいとか来るならわかるんですが、外務大臣にお聞きしますが、今までのアフガニスタン、イラクやベトナムやさまざまな戦争で、アメリカの輸送艦によって日本人が救助された、救出された案件はありますか。

岸田国務大臣 海外における邦人の退避の事例につきまして、邦人が独自に退避した例もございますので、全て網羅的に把握しているわけではありませんが、政府としましては、お尋ねのような、過去の戦争時に米輸送艦によって邦人が輸送された事例、これはあったとは承知しておりません。

 要は、米国が参戦している戦争において米輸送艦によって邦人が輸送された例は承知はしておりませんが、ただ、過去の事例、例えば一九九八年のエチオピア・エリトリア国境紛争、あるいは二〇〇〇年のソロモン諸島における武力衝突、あるいは二〇〇六年のレバノン・イスラエル情勢の悪化、こういった際に、米軍機ですとか、英国ですとか豪州等の軍艦船で邦人が輸送された例はあると承知しております。

辻元委員 今外務大臣がおっしゃったけれども、ちょっと認識違いですね。

 要するに、戦争に参加している国の輸送艦に救われるかどうかということなんです。どこかの内戦とか、それとは違うんです。なぜかというと、近隣諸国というのは朝鮮有事のことをおっしゃっていますけれども、アメリカが戦争に参画しているということは、相手国から見たら敵国の艦船になるわけです。

 それはどういうことかといいますと、アメリカは、世界じゅうで割合、戦争している国なんです。はっきりルールを決めております。そのルールが次の資料です。

 これは、アメリカの国務省と国防総省で、世界じゅうに向けて、アメリカはこうしますよというルールを決めております。

 この線を引いてあるところをちょっと読みますけれども、「国務省は、外国政府と、同国民の退避について正式の協定を締結することを控えている。」事前に約束はしませんよと。石破さんはうんとおっしゃっていますけれども、ということです。

 そして、ではアメリカはどうするかと言っているかといえば、その下なんですね。各国にどういうことを要請しているか。これは外務省にあらかじめ言ってありますので、どういうことをしようとしているんですか、お答えください。

岸田国務大臣 御質問の趣旨ですが、御指摘のあった箇所、これはどういう意味かという御質問でよろしいんでしょうか。(辻元委員「はい」と呼ぶ)

 お尋ねのこの日本語訳ですが、本年六月の衆議院外務委員会におきましても外務省冨田北米局長から答弁があったとおりですが、あくまでも仮訳として申し上げるならば、全ての外国政府は、自国民の避難についての計画を立て、また米国政府の手段に依存しないことが求められる、こういった訳になります。

 ただ、一つつけ加えさせていただきますが、同じ文書、その少し上の部分でありますが、米国政府は、人道的観点から、余地がある場合に、ただし費用の弁済を受けることを基本として、外国国民に対して避難支援を行うことを検討するであろう、こういった記述もあることも指摘しておきたいと存じます。

辻元委員 今、ここに「カナダ及び英国を含む」と書いてありますよね。これはどういうことかというと、カナダやイギリスは、アメリカと一緒に戦争に参画していることもよくあるわけです。アメリカは、いろいろな国と同盟を結んでいるんですよ。ですから、そうなってきますと、日本とだけ、日本人の退避は手伝いますよ、では、ほかの国の退避は手伝わないのか、韓国はどうするんだ、フィリピンはどうするんだ、オーストラリアはどうするんだとなるわけですよ。

 私は、NGOで、実際に湾岸戦争のときに湾岸の近くを客船で走っておりました。現状はどうかというと、むしろ、アメリカの政府から、アメリカから各国の客船などに避難民を乗せてくれという要請が来るんですよ、現場では。

 どういうことかというと、この国だけ乗せますよと約束もしないし、避難民が押し寄せてきているときに、あなたは日本人、何人が来るかわからない。では、全部現地で避難民を人道的に乗せるかというと、なぜ乗せないか。避難民の中にテロリストとか、それから敵国の国民がまじっていたら困るから。これはアメリカだけではなくて、常識的に、紛争時、その戦争当事国の船は民間人を乗せません。これが常識ですよ。総理、そう思いませんか。

安倍内閣総理大臣 先ほど外務大臣がお答えさせていただきましたが、国防総省と国務省との覚書について一部だけを御紹介されたわけでありますが、この覚書には、実際、我々は、非戦闘員退避活動が必要となった国々から自国民を退避させる場合に、支援を求めるほとんど全ての政府を繰り返し支援してきたと書いているわけであります。

 また、実際上も、邦人の事例ではありませんが、一九九一年のフィリピンのピナツボ火山噴火に際して、米軍の揚陸艦が民間人を含む避難民の輸送を行ったことや、二〇一一年のリビア、これは紛争地域ですよ、情勢悪化に際して、在留邦人が米軍が手配したチャーター船とスペイン軍が派遣した輸送機により退避したことがあります。

 米艦艇による在外邦人等の輸送は現実に起こり得る課題でありまして、先ほどアフガン等の事例を出されましたが、実際には、例えば近隣諸国の場合には、そこにいる在留邦人は相当の数に上るわけであります。そして、そこに民間の米国人もたくさんいるわけでありますが、民間の米国人が日本に一時退避するのに日本人を乗せないということは、なかなかこれはあり得ないんですよ、誰が考えたって。

 その中で、まさにガイドラインにおいて、日米が協力して非戦闘員の退避に係る訓練、演習を実施してきているところでありまして、その際、我々の自衛隊が防護できるということになれば、さらに、これは一体的なオペレーションとして、最初からまさにこの退避オペレーションの作成自体からかかわることもできるということではないかと思います。

辻元委員 今、アメリカ人を乗せるときに日本人を乗せないというのはおかしい、だから乗せてくれると言っていますが、アメリカではどうなっているか。

 今、アメリカ人がパスポートを取るときにどういう注意書きがあるか。これはホームページに載っていますけれども、その中に、アメリカ国民に対しても、ある国へ旅行して危険情報が出たときに、アメリカ市民の救出はアメリカ軍が支援してくれると期待してはなりません。これはアメリカ人がパスポートを取るときの条件になっています。そして、アメリカ軍のヘリコプターや米国政府の輸送機が護衛つきで救出してくれると期待するのは、ハリウッドのシナリオに影響され過ぎていて、現実的ではありません。アメリカ人に対しても、これはインターネットで見てください、注意書き。要するに、総理は現場を知らない。

 それから、これは国防総省の方の文書です。同じように、他国は全部自分でやってほしいと。アメリカは、あらゆる文書でそのようにオープンにしているわけです。

 私、総理、訓練しているとおっしゃいましたね、訓練。これも調べましたよ。そうしたら、タイで、米軍とそれからタイや日本の訓練が一個あるんです、コブラゴールドという。しかし、これは避難する人たちを米軍が救う話ではなくて、日本人は日本が救う、そしてアメリカはアメリカを救うという前提でやっている訓練なんですね。石破さん、うんと言っていますけれども。

 それでは、防衛大臣にお聞きしますが、これ以外に訓練があるとおっしゃるのならば、その訓練名と日時をちゃんとオープンにするようにと私は言っておりますが、防衛大臣にお聞きします。いかがですか。

大島委員長 総理が、ぜひこれは重要な問題なのでお答えさせます。

安倍内閣総理大臣 では、一問だけ、前半の、後半のところについては防衛大臣からお答えしますが、先ほどの国務省のお話。

 米軍に、そういうところに勝手に行ったって、アメリカはランボーが救出するみたいなことはないよ、これは当たり前なんですね。紛争地域には勝手に行かないでくれと言って、これを税金を使って、あるいは軍の、軍人の危険を冒して助けには行かせないよ、これは当たり前の話であります。

 しかし、それと、紛争が起こったときにエバキュエーションを軍がやる、これは全く別の話で、当たり前の話でありますよ。紛争が起こったときには、米軍は自国民の救出に全力を挙げるのは当然のことであって、国務省が出しているのは、そうやって無責任に、勝手に行かないでくださいよ、みずから危険に陥ったとしても、それはいつも助けるとは限りませんよということをホームページで示している、当たり前のことではないか。

 この後については、防衛大臣から答弁させます。

江渡国務大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 自衛隊と米軍は、さまざまな事態を想定した訓練を必要に応じて実施しておりまして、在外邦人を含む非戦闘員の退避についても、日米共同訓練等において、訓練項目の一つとしてこれまで訓練を繰り返し行ってまいりました。

 このような訓練のうち、在外邦人等の輸送に特化したものとしては、過去五年間に行われたものを申し上げれば、米・タイ主催の、先ほど先生が御紹介いたしました多国間共同訓練、コブラゴールドが挙げられるところでございます。また、このコブラゴールド以外にも、各種事態における対処を目的とした訓練において、文民が取り残されているとの状況を想定した、その退避のための活動を含め、日米間で演習等をしているところでございます。

 また、これらの訓練は、訓練自体が特定の国・地域を対象としたものではないにせよ、いわゆる朝鮮半島有事が仮に生起した場合の在外邦人の退避にも資するものということで考えて訓練等を行っておりますけれども、何せこういう訓練なものですから、運用状況のこと、あるいは米国等との、相手のあることでございますので、表に出ているこのコブラゴールド以外は、ここではお答えさせていただくのを差し控えさせていただきたいと思います。

辻元委員 私は、七月一日に閣議決定したときに、安倍総理が、冒頭、この例を挙げて必要性を訴えられたんですね、この例を挙げて。それ以外具体的なことは言っていないんですよ。だから問題にしているわけです。

 今、コブラゴールド以外の訓練はお答えできないとおっしゃいましたね。

 私は、防衛省の記者クラブも含めて、メディアの人に聞きました。日米の訓練があったら、これは隠すことではないので、必ずこの訓練はこういう形で何をやっているかというのを情報公開しているということを聞きました。

 それで、委員長、今私が申し上げましたコブラゴールドというのは、これは、実際やっているのは確認した。でも、それぞれの国がやっているわけですね。私が以前、総理が記者会見をする前に、どんな訓練をやっていますかと言ったら、それしか防衛省からお答えはなかったんです。

 総理が記者会見でこの例の訓練があると言ってから、防衛省に問い合わせたら、その後、ちょっと官邸との調整がありますから待ってくださいだったんですよ。

 ですから、委員長、訓練があるということですので、これは、総理はいつもこのパネルを背にして集団的自衛権の行使の必要性をおっしゃって、きょうも、訓練までやっているとおっしゃったわけですから、そうであるならば、国民の関心は非常に高いわけですから、この訓練の名前とそれから日時と、コブラゴールドは、私、今手元にあります、日時を全部入れて持ってきていますので、資料を防衛省に出すように。じゃないと、これは、これだけがひとり歩きしちゃっているんですよ。

 実際に紛争地を考えた際に、先ほど小野寺さんが飛行機のこともおっしゃいました、軍の飛行機。ところが、現場に行きますとどうなっているかというと、例えばバグダッドの空港、民間のパイロットの方が何回も着陸しているからよく知っているんですよ。民間の飛行機と軍の飛行機があったら、大体、避難民は民間の飛行機に乗ります。なぜかというと、軍の飛行機というのは民間の飛行機よりも攻撃のターゲットになるんですよ。それはみんな知っています、NGOで現場に行っている人間も。

 ですから、そういう現場を私は知った上で、これは、総理の、集団的自衛権の行使を国民に感情的に訴えて何とか持っていこうというふうな声もたくさん聞こえてきていますので、ですから、委員長に申し上げたいのは、その訓練の名前を出していただいて、はっきりさせた方がいいと思いますよ。お願いします。

大島委員長 辻元さん、その前に、総理がぜひお答えをしたいと。その上で、あなたの提起に対する委員長としてのお答えを申します。

安倍内閣総理大臣 後で防衛大臣からも答弁しますが、整理をさせていただきたいんです。

 私がパネルとして挙げたのは、まさにこの行為が、今までの法制局的には、法制局においては、集団的自衛権の行使になるからこれができないと。これができないのは事実であります。

 それはそれとして、他方では、そのニーズがあるかどうかということについては、朝鮮半島で実際こういうことがあれば、日本が防衛ができるようになれば、護衛ができるようになれば、まさにそれはしっかりとニーズとして発生するわけであります。

 今まではそれができないわけでありますから、できない中における、民間人のエバキュエーションについての協力についてガイドラインで決めているわけでありますが、先ほど、今までやった個々の、コブラゴールドは発表しておりますが、それ以外の模擬演習等々においては、個々の事例については、これは対象国との関係もあり、それは対外的に出せないということであります。

辻元委員 では、総理、このケースは非常にレアケースだと。

 あるかもしれないけれども、普通、希少なケースであるということは、要するに、今問題になっているのは、これは防衛省でもそうですけれども、総理が訓練までやっていると言うから、委員長、訓練を出すように資料請求いたしますので、私は、ぜひ委員長にお取り計らいをお願いしたいと思います。隠すことないじゃないですか。(発言する者あり)ですよね。堂々と、国民を助けるために、これだけ総理は背中にパネルを背負って記者会見して、これが理由だと言っているわけだから、どんな訓練をどうしているかと、国民は安心するんじゃないですか。

 委員長、お願いいたします。資料請求をお願いいたします。

大島委員長 防衛大臣江渡大臣。(辻元委員「なぜ言えないんですか」と呼ぶ)

 答えると言っているから、まず答えてから。

江渡国務大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 実際、こういうような自衛隊と米軍あるいはほかの国々との共同訓練というのは、どうしても相手のことがあることですし、また自衛隊の運用上のこともありまして、全てがオープンにできるというわけではございません。

 ただ、その中において、ほかにも例えば、これは平成十六年の日米共同統合演習におきましては、在外邦人輸送の訓練、これが三回目で、行われたことでありまして、この訓練は二〇〇〇年以来で三回目でございまして、これはもう報道等に載ったものですから、今ここでお話もさせていただきますけれども。

 ただ、委員に頭の中に入れておいていただきたいのは、どうしても、こういうものを先ほど委員はオープンにした方が国民の方々の御理解が進むという、その話はそのことで私も御理解させていただきたいと思いますけれども、やはりこういう訓練というもの、あるいは演習というもの、相手もあることであります。ですからこそ、日本の、我が国の自衛隊の運用上の観点、そして相手の国との関係、こういうものも含めて、公表できるものとできないものがあるということも御理解いただければありがたいなと思っております。

 後でこれはちゃんと差し上げます。

辻元委員 私は、先ほど申し上げましたように、総理が訓練もしていますと七月十五日の委員会でおっしゃる前に、防衛省に確認したんですよ。そうしたら、コブラゴールドという、日本は日本、アメリカはアメリカの訓練しかありませんというお答えでしたので、私は、国民を安心させるためにも、委員長、この訓練をどうしているのか。これだけこれを理由におっしゃってきたわけですから。

 それともう一つ。総理はきょう、アメリカからの、自衛隊がこれを守る要請を受けたという答弁をしていますので、議事録を精査していただいて、いつアメリカから要請が来たかをぜひ資料請求したいと思います。

 次に行きます。

大島委員長 私が答えていないけれども、いいんですか。お座りなさい。

辻元委員 はい、わかりました。

大島委員長 私、委員長席でこうして聞いていまして、総理や防衛大臣の答弁で私自身はなるほどなと思う点はありますが、せっかくの委員のお話でございますから、理事会で検討します。

辻元委員 委員長、私は委員長には敬意を払っておりますけれども、議員が質問をして資料請求しているわけですから、一々感想はお述べにならない方が委員長として名委員長になれると思います。

 次に、歴史認識についてです。

 まず、今、日中、日韓の首脳会談というのが非常に注目されておりますが、その中で、河野談話のことがきょうも出ました。これは、政権が引き継ぐというだけではなくて、各閣僚が足並みそろえて引き継ぐというふうにしてもらわないと困ると思います、不協和音が出ては。

 これは全閣僚の問題だと思いますので、何人か、今までちょっと違ったことをおっしゃっていた方にお聞きをしたいと思います。

 まず、高市大臣、積極的に発言をされてきました。私もいろいろ読ませていただいて、例えば、「正論」にかつてこういうことをお書きになっています。村山談話を指して、この不見識な見解をこのまま放置するならば、犯罪国家の国民として子孫を縛り続けることになる。

 今でもこの御認識ですか。

高市国務大臣 私は、憲法第六十六条の精神にのっとりまして、閣僚は一致して国会に対して責任を負うものだと思っております。

 この場は、私の個人的な思想、見解を述べる場ではないと考えております。

辻元委員 そうしましたら、閣僚として村山談話と河野談話は継承する、これはよろしいですか。

高市国務大臣 まず、河野談話につきましては、官房長官談話でございます。これは、菅官房長官がこれから引き継がれるか、またそうでないか、官房長官の御決定に私は閣僚として従わせていただきます。

 村山談話につきましては、既にこれは閣議決定されたものでございます。過去に閣議決定をされたものでございます。政権として引き継ぐということを伺っておりますので、内閣という機関の一員といたしまして、その方針に従います。

辻元委員 かつて高市さんが英霊慰霊顕彰勉強会というところで、今から思えば、なぜ歴代自民党政権が村山談話を踏襲してしまい、閣僚全員ががんじがらめにされてきたのかとあほらしくなってしまいます、私が一番無念に思っているのは、安倍内閣までもが村山談話を踏襲したことですとおっしゃっているので、私はお聞きしたわけです。

 もう一度お聞きしますが、このときはこうおっしゃっていましたが、踏襲するということですね。

高市国務大臣 現在私は内閣の一員でございます。一政治家としての信念、思想、これまでの主張はございますけれども、内閣のメンバーが、国民の代表であります国会に対しまして、みんながばらばら、めいめいに好きなことを言い出しては、それは内閣として機能しないと考えております。私は、内閣の方針に従わせていただきます。それが国民の皆様への責任だと思っております。

辻元委員 私とほぼ同じときに当選をしましたが、高市さんも随分お変わりになったなと、今お聞きしながら思いました。

 さて、そこで、河野談話についてお聞きをいたします。

 河野談話について、安倍政権も河野談話を継承するという答弁をされ、そして、検討チームの報告書をお出しになっておりますね。これについて質問したいんですが、総理が今ちょっと行かれたので、総理のお帰りを待ちたいと思います。総理の発言も関係をしてきますので、ちょっとだけとめてもらえますかね。

大島委員長 菅官房長官にまずは答えてもらいましょう、一体ですから。

辻元委員 それでは、もう一回総理に問いますので、菅さんにお願いをしたいと思います。

 この報告書で、吉田清治氏の証言が河野談話の内容に影響を及ぼしたことはないという理解でいいですか。

菅国務大臣 河野談話の作成過程の中で、政府は吉田清治氏から聞き取り調査は行っております。その結果、同氏の証言は、客観的事実と照らしてつじつまが合わなかった、他の証言者の証言と比較して信用性が低かったところから河野談話に反映されなかった、こういうことであります。

辻元委員 総理がお帰りになりました。

 どうぞおかけください。今、河野談話ですので、総理がいないとちょっと始まらないので。

 今、御答弁で、総理、総理が検討会を依頼して、その中で、この吉田清治氏の証言が河野談話の内容に影響を及ぼしたことはないという理解でよいかという質問に対しまして、菅官房長官から、それはないという御答弁でしたが、総理も同じ認識ですね。

安倍内閣総理大臣 この検討会は、官房長官のもとで官房長官が責任を持って開いたものでありまして、今、官房長官が答弁したとおりだと思います。

辻元委員 次に、この河野談話は、今問題に、いろいろ言われております十六人の元慰安婦の聞き取り調査が根拠になったのではなく、官房長官、よく聞いてくださいね、関係省庁における関連文書、米国国立公文書館の文書や、それから軍関係者や慰安所経営者等各方面への聞き取り調査、それから証言集の分析などで出た結果であって、十六人の元慰安婦の聞き取りが根拠になったものではないということでよろしいですか。

菅国務大臣 この十六人の元慰安婦からの聞き取り調査でありますけれども、六月二十日に公表した政府の河野談話作成過程等に関する検討チーム、その報告書のとおり、河野談話の原案は、元慰安婦からの聞き取り調査の終了前に、それまでに日本政府が行った関連文書の調査結果等に基づいて既に作成をされていた、そのように確認をされております。

辻元委員 総理も同じ認識で、十六人の元慰安婦の方の証言が河野談話に影響を及ぼしていないということでよろしいですね。

安倍内閣総理大臣 通常であれば、十六人の聞き取り調査をしたのだから、河野談話をつくるために聞き取り調査をしたとみんな思っていたわけでありますが、調査をした結果、もう既にそれは日韓で協議をしていたということでありまして、十六人の証言を入れる前に、証言をする前に決まっていたということであったということでございます。

辻元委員 次に、この作成過程で事前の韓国側とのやりとりがあったことで河野談話の内容がゆがめられたことはないという理解で、官房長官、いいですか。

菅国務大臣 六月二十日に公表した政府の河野談話作成過程等に関する検討チームの報告書に明らかにされているとおり、当時の日韓両国政府は、河野談話を発表することによってこの問題に一つの区切りをつけて未来志向の関係を築くことを目指し、綿密な調整、意見交換を行ってきたということ、そして、政府は、一連の調査を通じて得られたと言われるいわゆる強制連行は確認できないという認識に立って、それまでに行った調査を踏まえた事実関係をゆがめることのない範囲で、韓国政府の意向、要望について、受けられるものは受け入れ、受けられないものは拒否する姿勢で、河野談話の文言をめぐる韓国側との調整に臨んできたということです。

辻元委員 官房長官、ということは、やりとりは、直接、河野談話の内容を、日本政府の意向をゆがめたわけではないということですね。

菅国務大臣 この検討チームの報告から推測しますと、日韓両国において、まさにこの問題に一区切りをつけて未来志向の関係を築こうという中のぎりぎりのすり合わせの結果の文書であったというふうに考えられると思います。

辻元委員 もう一問お聞きします。下村文科大臣に。

 教科書の問題ですね。河野談話は、検定基準上の、閣議決定等により示された政府の統一見解に該当するんでしょうか。

下村国務大臣 これは、辻元委員の質問主意書、答弁、河野官房長官談話を受け継いでいる旨を閣議決定しているということでございまして、この談話の内容は、検定基準上の、閣議決定等により示された政府の統一的見解に該当するということであります。

辻元委員 総理にお伺いしたいんですが、総理はかつて、この問題、何回も国会で発言をされ、また、決算委員会でこういう発言をされているんですね。この河野談話について、ほとんどの根拠は、この吉田清治なる人物の本あるいは証言によっているということであります、その根拠が既に崩れているにもかかわらず、官房長官談話は生き、そしてさらに教科書に載ってしまった、これは大きな問題である。

 要するに、河野談話は吉田清治なる人の証言が根拠で既に崩れているけれども、官房長官談話は生きているというのは問題だというように御指摘をなさっているんです。

 今回、総理みずからが調査された結果、この吉田清治なる人物の証言、河野談話に何か影響を及ぼしているわけではないということですから、この当時の総理の御認識は間違いというか、違っていたということになりますが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 まず、そのときの発言は、私、まだ、質問通告がございませんから、わからないのでお答えをしようがございませんが、しかし、河野談話について、そこでは、強制性については事実上認めていない、こちら側は。韓国側とのやりとりの中でそうなのでありますが。河野洋平官房長官がいわば記者会見の中でそれを事実上お認めになったということであります。そして、それとの、河野官房長官談話と河野官房長官のお答えが合わさって、いわばイメージがつくり上げられているのは事実であります。

 それに吉田証言がどのようにかかわっていたかはわかりませんが……(辻元委員「わかりませんというのは、何で」と呼ぶ)いや、吉田証言が河野官房長官のお答えにどのようにかかわっていたかはわかりませんが、吉田証言自体が強制連行の大きな根拠になっていたのは事実ではないか、このように思うわけであります。

辻元委員 もう一回申し上げますけれども、正式の国会の場で総理は、この吉田証言を根拠にしている河野談話、これは問題だという趣旨の発言をされているので、総理みずからが吉田証言と河野談話は関係ないと、かなり活発に総理はあちこちで発言されているわけですよ。ですから、関係がなかったということは、これをお取り消しになる、この認識は違っていたということかと聞いているんですよ。

 これは、韓国も含めて、世界じゅう見ていますよ。はっきりおっしゃった方がいいですよ、今まで間違っていたということを。河野談話は吉田証言が根拠で崩れていると既に国会でおっしゃっているわけですよ。いかがでしょうか。

 私は、朝日新聞の間違いは認めろとおっしゃった、それは正しいと思います。そうすると、御自分の認識違い、今回の検証で明らかになったじゃないですか。認められたらどうですか。

安倍内閣総理大臣 私、まだその発言自体を精査はしておりません。

 いずれにせよ、今申し上げましたように、河野談話、プラス、いわばそのときの長官の記者会見における発言により、強制連行というイメージが世界に流布されたわけであります。

 つまり、その中において、河野談話自体が、事実上、いわば強制連行を認めたものとして認識されているのは事実でありますが、文書自体はそうではない。いわば、河野談話それ自体について今回検証したわけでありますし、我々は、河野談話については継承するというふうに申し上げているところでございます。

辻元委員 先ほど高市さんにもお聞きしましたけれども、今まで総理がおっしゃってきたことと、今回検証したことで、みずから総理がおっしゃってきたことを否定されたんです、あの検証というのは。よく認識された方がいいと思います。

 ですから、私はお認めになっているからこれ以上言いませんけれども、その点ははっきりと国際的に示された方がいいですよ。いろいろなことをおっしゃる、それが日中、日韓のとげになっていますから。

 最後に、もう一つ、女性が輝く話もお聞きしたいと思います。

 先ほどから前原さんの質問で、経済状況のことで、実質賃金か名目賃金かという話がありました。実質的に実質賃金が下がっているだけじゃなく、非正規雇用の人は名目賃金も下がっているんですよ。

 女性は非正規全体の七割なんですね。かつ、中小企業の方が非正規の率は大企業より倍多いんです。ということは、実際に、今、女性が輝くと言っているけれども、実態は、これは後で山井さんがやりますけれども、派遣法の改正などで女性は格差が広がって、トリクルダウン、女性版トリクルダウンじゃないけれども、非正規にどんどんしわ寄せが行っているという現状があります。

 ですから、私は、先ほど前原さんの質疑で、アベノミクスという船に乗せて女性が輝くとやろうとしても、アベノミクスそのものの船がもう逆回転し始めていると思います、経済政策として。その中に、女性が輝くと言っても、非正規の賃金が下がっている、女性は今苦しくなっているんですよ。どう思いますか、総理。

安倍内閣総理大臣 これは全く辻元議員とは意見を異にいたします。

 非正規について、名目賃金が下がっている、このようにおっしゃったわけでありますが、非正規については、いわば非正規につく方々がふえた、そして同時に、いわばパートタイムの中で短時間の非正規の方々がふえたんですよ。それによって、どうしても、これは賃金が少ないですから、働く人はふえたんですが、結果として、まずは短時間からということで、企業側もまだデフレマインドがこびりついていますから、こびりついたデフレマインドの中で、まずは非正規、かつまたパートの、短い人たちから雇うものでありますから、その賃金は低い。そうしますと、ならして平均すると下がっていくということになります。

 しかし、先ほど来申し上げておりますように、有効求人倍率は、これは一・一、二十二年ぶりの高水準になっているのは事実です。いわば、労働市場がタイトになっていけば当然人手不足になっていきますから、人手不足になっていけば、これはもう少し条件をよくしなければ人が雇えないようになっていくという中において、だんだん非正規から正規へという流れも事実起こっているわけであります。

 そして、その非正規から正規への流れをしっかりとしたものにしていきたいし、非正規から正規に移りたいという方々が、先ほど前原委員が指摘されたように六割近くいるわけでありますから、こういう方々のキャリアアップを支援していきたいし、企業にも促していきたい、このように考えているところでございます。

辻元委員 それは物すごく甘いと思います。

 今、女性にしわ寄せが来ているんです。アベノミクスをやり始めてから、では、実際に非正規の人たちの賃金が下がっていることを、これは名目賃金ですよ、非正規の七割ですよ、女性は。ですから、先ほどの、アベノミクスという経済政策そのものの上でやっても弱い人たちにしわ寄せが行く、それが女性なんですよ。

 実際に総理はヒラリー・クリントンさんと会ったとか、それから、何かセレブの人たちとばっかりという感じです。確かに、指導的立場の人たちを三〇%にするのはいいですよ。しかし、実際に格差が広がる中で、物すごく、例えば非正規の人たちは、実際に、妊娠したら、それを告げただけで会社をやめさせられるという人もたくさんいるわけです。そこに全く光を当てていないと思います。

 ですから、これは引き続きやりますけれども、女性が輝くといっても、一部の人たちだけ輝くしかないということを申し上げて、終わります。

大島委員長 この際、山井和則君から関連質疑の申し出があります。前原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。山井和則君。

山井委員 四十五分間、質問をさせていただきます。

 安倍総理は、政府の薬物乱用対策推進本部の本部長をされておられまして、危険ドラッグ対策の責任者をされております。冒頭、二問ぐらい、非常に今深刻化しておりますこの危険ドラッグの根絶について、薬物乱用対策推進本部の本部長であります、日本の危険ドラッグ対策の総責任者であります安倍総理に質問をさせていただきたいと思います。

 現在、約四十万人の方が危険ドラッグの吸引をされたことがあるという統計が出ております。それで、非常に深刻なのは、この毎日新聞の記事にもありますように、御本人の問題だけではなく、それで車を運転して交通事故を起こされる。そして、一番痛ましいのは、この記事にもございますように、残念ながら、ことし一月には、香川県で小学校五年生の実久ちゃんが、危険ドラッグを吸引したとされる男性の暴走車にひかれて亡くなってしまわれました。私も先日、香川県に行って御両親のお話をお聞きし、お墓参りもさせていただきました。

 また、昨日は長野県から、二十五歳の消防士の育也さんという方、この方も、残念ながら、ことしの五月に、危険ドラッグ吸引による暴走車の交通事故によって、二十五歳でとうとい若い命を落としてしまわれました。消防士であり、救急救命士であり、すばらしい二十五歳の育也さんの命も、危険ドラッグ運転によって奪われたわけでございます。

 本日は、かわいらしく、親孝行な実久ちゃんの御遺族も傍聴席にお越しをいただいております。その思いは、御遺族の方々の思いは、二度と同じような被害者を出してほしくないと。

 この危険ドラッグ、安倍総理を先頭に対策に力を入れていただいておりますが、残念ながら、六月、七月、八月、九月と、どんどん危険ドラッグによる交通事故はふえております。

 安倍総理、私は思うんですが、これは危険ドラッグの業者と私たち国会議員の戦争ではないかと思うんです。なぜならば、危険ドラッグによってとうとい若者や子供の命が奪われてしまっております。これ以上危険ドラッグによって人の命が奪われる国であってはならない。

 先日あった関西広域連合でも、危険ドラッグはテロ行為であるという指摘さえありました。何の罪もない国民が殺されてしまう。

 御家族からの切なる願いは、二度と危険ドラッグ運転による死亡の犠牲者を出さないでほしい、それが天国の実久ちゃんや育也さんからの切なるお願いでもあると思います。

 そこで、安倍総理の決意をお聞かせ願いたいんですが、二度と危険ドラッグ運転による死者を出さない、根絶する、その決意をこの場でお聞かせいただきたいと思います。

    〔委員長退席、上杉委員長代理着席〕

安倍内閣総理大臣 まず、危険ドラッグによる事故により命を落とされた方々の御冥福をお祈りし、御家族の皆様に心からお見舞いを申し上げる次第でございます。

 何の落ち度もない子供たちや方々がこの危険ドラッグを吸引した人の運転する車によってとうとい命を落とした、まことに胸の詰まる思いであります。二度とこうしたことは起こしてはならない、根絶をするという強い決意で臨みたいと思います。

山井委員 安倍総理、力強い御決意、ありがとうございます。

 これは答えの出る話です、白か黒か。次の犠牲者が出る前に危険ドラッグを根絶できるのか、それとも、私たちの力が及ばず、残念ながら次の犠牲者が出てしまうのか。これは答えの出る話ですから、与党も野党も、政府も国会も関係ありませんから、危険ドラッグ業者、その人たちとの戦いに勝って、絶対にこれ以上国民の命を失わせない、そのかたい決意で私たちも取り組んでいかねばと思います。

 そこで、安倍総理にもう一点お伺いしたいと思います。

 この間、安倍総理を先頭に必死に取り組んできてくださって、進んでいる面もございます。しかし、今日においても、まだ七十ぐらいの店舗、三十以上のインターネットで、残念ながら、簡単に、危険ドラッグ、きょうのこの時点でも買うことができます。私も、この議場にもおられます維新の井坂議員やみんなの党の中島議員とも危険ドラッグの店の調査にも行ったことがございますが、非常に若い人たちや一般の方々が買っているという現状が残念ながら今でも、今日でもあるんです。

 ということは、現行法、今の薬事法という法律の中では、これだけ政府が必死になって取り組んでくださっても交通事故がどんどん逆にふえているということを考えると、議員立法も含めて、その昔、薬害肝炎も、和解ができないと言っていたけれども、最後の最後、与謝野先生などが知恵を絞って、超党派の議員立法で薬害肝炎の被害者の方々を救済したということもありました。それに倣って、国民の命を守るために、自民党総裁である、総裁としての安倍総理にお伺いしたいと思いますが、議員立法などの法改正も含めて検討すべきではないか。

 ちなみに、民主党は、この三カ月間、危険ドラッグ禁止法案の策定を進めてまいりまして、近々国会にほかの党とも一緒に連携して提出をしたいと思っておりますが、法改正を含めて、危険ドラッグの根絶を御検討いただきたい。総理、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 危険ドラッグについては、先ほど申し上げましたような、大変な問題だと思っております。

 本年七月に、関係省庁に指示をして、緊急対策を策定させました。その後、現在までの約二カ月の間に、関係省庁が一丸となって、指定薬物の迅速な指定、指定薬物の疑いのある物品に対する取り締まりの徹底、検査命令及び販売停止命令、指定直前の薬物のインターネット削除要請等に積極的に取り組んできました。その結果、販売店舗の三分の二を廃業または休業に追い込むとともに、国内インターネット販売サイトの四分の三を閉鎖または危険ドラッグの販売停止に追い込み、一定の成果を上げているところであります。

 危険ドラッグを容易に買うことができない状況を一日も早く実現できるよう、販売店舗に対する取り締まりや販売サイトの削除要請等に全力で取り組んでいきたいと思います。

 そこで、さらなる立法に向けて、実効性のあるよい案があればお伺いをしたい、このように思います。

 政府としては、まず現行法の中で最大限の取り組みを進めることを最優先に取り組んでいく考えであります。

山井委員 国民の命を守ることが国会議員の責務であります。何としても、育也さん、実久ちゃんのような痛ましい死亡事故を二度と起こさないために、ぜひとも一緒に力強く取り組んでいきたいと思っております。

 それでは、派遣法の質問に移らせていただきます。

 先ほどの前原議員の質問にもございましたが、実質賃金が十四カ月連続下がっている。そして、消費がなかなか回復しない。この中で、今一番重要なのは雇用の安定だと思います。地方の創生ということを考えても、若者が安定した、夢のある仕事を持てるかどうか、そこに日本の未来がかかっていると思っております。

 そこで、派遣労働者には若者が多いわけですけれども、日本の国をどのような国にするのか、日本の国でどんな働き方をふやしていくのか、減らしていくのか。今国会に提出されております労働者派遣法改正案というのは、日本の国の未来、特に日本の若者の働き方を左右する非常に重要な法改正だと思っております。私たちは、この法案について非常に問題が多いというふうに考えておりますが、今から述べさせていただきたいと思います。

 先日、知り合いの大学生と話しておりましたら、こんな話がございました。友達と一緒に就職活動をしているけれども、合い言葉は、派遣は嫌だ、やはり正社員に、仕事がきつくても、ちょっとぐらい給料が安くても、とにかく正社員になりたい、そうしないと人生設計が立たない、結婚したり家庭を持ったり、そういうことを考える上では、人生の安定を考えるためには、やはり派遣ではだめだから正社員になりたいというのが、その大学生や、また高校生の人たちとも話をしましたが、そういう思いでありました。

 そんな中で、今、大きな問題点は、正社員と派遣労働者では賃金に大きく差があります。若いころはそれほど変わらないんですけれども、正社員の方は、年齢、勤続年数に応じて賃金が上がっていく。ところが、派遣労働者は、賃金が上がるどころか下がっていったりもする。おまけに、三カ月契約や半年契約で簡単に解雇されたり、雇いどめに遭って人生設計が立たないということですね。

 そして、後で述べますが、今回提出されている改正法案というのは、実は、労働者を保護する方々から反対されているだけではなくて、労働市場を緩和する規制改革、緩和の方々からも反対意見がたくさん出ております。それはなぜかというと、同一価値労働同一賃金、均等待遇というものが不十分だということであります。

 それともう一つ、このことも深刻なんですが、残念ながら、派遣で賃金が低いだけではなく、雇用が安定しないとどういうことになるかというと、ここにございますように、日雇い派遣の方の既婚率は三五%、製造業派遣は三三%、その他の派遣は三八%。そうではなくて、期間の定めのない直接雇用だと六九%の既婚率。つまり、残念ながら、派遣労働では、なかなか結婚したいと思ってもできないという方もおられる。そういう少子化対策にも、派遣労働者をふやすということは逆行しているというのがわかると思います。

 その結果、何が今起こっているか。つまり、このフリップにございますように、六〇%、六割の派遣労働者は正社員を希望している。つまり、不本意派遣なんですね。本当は正社員になりたいんだけれども、正社員の口がないから派遣だと。しかし、派遣のまま二十代を過ごすと、三十代以降になるとなかなか正社員になりづらい、一生派遣という方もふえかねない、そういう深刻な状況であります。

 そこで、安倍総理にお伺いしたいと思います。

 二月十七日にも、この場で安倍総理とこの議論をさせていただきました際に、私はこう質問いたしました。ここに議事録がございます。安倍総理、今回のこの派遣法改正で、派遣労働者を安倍総理としてはふやすべきだと考えておられますか。それに対して安倍総理は、「私は、ふやすべきだとは全く考えていない。」という答弁をされました。

 そこで、安倍総理にお伺いします。

 派遣労働者を今回の労働者派遣法の改正でふやすべきとは全く考えていない、そのようにお考えになっておられる理由をお聞かせください。

安倍内閣総理大臣 今回の法律によって、いわば今回の法律の前提として、派遣労働者をふやすべきだと思っているということは全くない、このように申し上げたわけでありますが、現在もそのように考えているということであります。

    〔上杉委員長代理退席、委員長着席〕

山井委員 派遣労働者をふやすべきだとは全く考えていない、私は全く同感であります。今言ったように、低賃金、そして雇用が非常に不安定で、リーマン・ショックのときには数十万人の方が解雇されてしまった。そういう不幸なことは絶対繰り返してはならないと思っております。

 それでは、安倍総理に再度お聞きしますが、なぜ派遣労働者をふやすべきだとは全く考えておられないんですか。

安倍内閣総理大臣 今、山井委員からも資料を説明していただいたわけでありますが、もちろん、働き方にはいろいろ多様性がある中において、そのニーズに合わせていく、多様性のある働き方は必要だろうと思うわけでありますが、派遣で働いている方々の六割のいわば正規になりたいという方々に対しては、その人たちの要望が実現できるような、そういう状況をつくっていくことが必要である、このように思います。

 なぜ必要かといえば、この派遣というのは、不安定であるのは事実でありますし、非正規であり、また、派遣であれば、当然これは立場、身分、あるいは社会保険の中において不安定な状況の方々が多いのは事実であります。安定的な職場を得たいという方が恐らく多いわけでありますから、その方々がそういう希望が実現できる状況をつくっていかなければならない、このように考えております。

山井委員 さらに、派遣がふえるということは、若者の将来が暗くなるというだけではなく、女性の派遣の方々は、妊娠したとしても産休がとれない、育休がとれない、妊娠を機に派遣が解雇される、雇いどめに遭う、契約終了になってしまうというふうに、本当に、女性にとっても非常に、もちろん、その働き方がいいという方もおられるでしょうし、私は派遣労働というものを全否定する気は全くありません。しかし、不本意にも派遣、本当は正社員になりたいこの六割の方々がおられるというのは、非常に深刻な問題だと思っております。

 それでは、安倍総理にお伺いしたいんですが、安倍総理は今、派遣労働者はふやすべきではない、低賃金で不安定だということです。では、今回の政府が提出している労働者派遣法改正というのは、安倍総理もそうおっしゃるぐらいですから、今回の改正案は、派遣労働者をふやす目的の、趣旨の改正案なのか、逆に、減らして、正社員をふやす趣旨の改正案なのか、安倍総理、お答えください。

塩崎国務大臣 先ほどのデータでありますが、今の御質問に答える前に、六割ということでありますが、確かにこれも厚生労働省がつくったということになっておりますが、実はこれはネット調査でございまして、政府として総務省ともすり合わせた上でつくった派遣に関しての希望の割合を見てみると、大体、半分半分なんですね。もちろん、ですから、四割の人が、派遣の方をあえて選んでいらっしゃるという方がおられるということを国民の皆様にも知っていただくことが大事であって、しかし、大きな方向としては、今総理が答弁したとおり、やはり正規雇用の方向に行くべきだということであります。

 今回の法律改正につきましても、当然、これはできる限り正社員になれるようにという工夫を派遣元にも派遣先にも課しているわけであって、例えば、派遣会社に対してはキャリアコンサルティングや計画的な教育訓練の実施を義務づけていますし、それから派遣元に対しても、例えば、派遣労働者の求めに応じて、均衡待遇確保の際に配慮した内容の説明を義務づけるとか、そういうような形で、できる限り、三年なら三年の区切りのときに正社員になれるようにするように、派遣元にも派遣先にも訴えかけていこうということで、大きな流れは、やはり多くの方々が正規雇用をされるという方向が正しい。

 しかし、派遣でおられる方々の身分もちゃんと守らないといけないということもあって今回の法改正をお願いしようということでございますので、また改めて厚生労働委員会でしっかり御議論いただけるとは思いますけれども、方向としては、そういう方向でまいりたいというふうに考えた法改正でございます。

山井委員 大事な点ですので、安倍総理にお伺いしたいと思います。

 端的にお聞きしますが、今回政府が提出した労働者派遣法改正案は、派遣労働者をふやす改革ですか、減らす改革ですか。立法趣旨はどちらですか、安倍総理。

安倍内閣総理大臣 この法律は、さまざまなニーズに応えていくための法律であるということでありまして、派遣をふやすための法律ではない、こういうことでございます。

山井委員 派遣をふやすための法律ではないと。

 少し心配なのは、そう思っていたけれども結果的に派遣がふえてしまったということになるとまずいわけでして、そうしたら、安倍総理としては、責任者として、先ほども今回の改正法案で派遣労働者はふやすべきじゃないとおっしゃっているんだから、今回の法改正は派遣労働者を減らしたいという趣旨の改正ということで理解してよろしいですか、安倍総理。

 安倍総理、通告してありますから、これは。よろしくお願いします。

安倍内閣総理大臣 今回の労働者派遣法改正案では、派遣期間が満了した場合、正社員になったり、別の会社等で派遣を続けることができるようにする措置を派遣会社に新たに義務づけるほか、キャリアコンサルティングや計画的な教育訓練の実施を派遣会社に新たに義務づけるわけでありまして、派遣就労への固定化を防ぐための措置を強化することとしています。

 このため、改正案は、派遣労働者の正社員化を含むキャリアアップを支援するためのものであり、これによって派遣で一生働くことになるわけではない。まさに、繰り返しますが、改正案は、派遣労働者の正社員化を含むキャリアアップを支援するものであるということであります。

 他方、派遣労働者数は、景気動向や多様な働き方を希望する勤労者の方々の意向や企業の経営戦略など、さまざまな要因に影響を受けるものであり、一概に、この結果、この先どうなるかということについて断定することは難しいわけでありますが、正社員を希望する方にはその道が開かれるようにしなければならないと考えているわけであります。

 なお、ニーズが多様化している中で、みずからの働き方として派遣を積極的に選択するケースもあるということでありまして、そのような方には待遇の改善等を図ることが重要と考えております。

山井委員 キャリアアップや正社員化、この法案に書かれてはいますけれども、実効性はほとんどないと思います。

 そこで、安倍総理にお伺いしたいんですが、安倍総理は派遣をふやすべきではないというふうにおっしゃっていますが、私たちの理解では、今回の改正案は、これは、派遣がふえる、派遣をふやす改正案だと理解をしております。

 それでは、きょう配付した資料を見ていただきたいんですけれども、例えば各新聞がどう今回の改正案を報道しているか。

 まず、十一ページの日経新聞。「派遣見直し案決定 企業、制度利用しやすく 継続受け入れ可能に」という見出しがあります。つまり、「企業、制度利用しやすく」ということは、派遣労働者をふやしやすくなる、そういう改革ですよ。日経新聞に書いてありますよね。

 次のページ、十二ページ。では、産経新聞、一月三十日朝刊、こう書いてあります。赤線を引いておきました。「正社員から派遣社員への置き換えを防ぐ目的で派遣期間に上限を設けてきた従来の原則を事実上転換。規制緩和により労働者派遣市場の活性化を図る。」先ほどの総理の答弁と真逆ですよ。正社員から派遣社員に、今までは派遣社員に正社員が置きかえられないようにしていたけれども、その派遣期間に上限を設けてきたのを今回は廃止する、三年の上限をなくして、ずっと派遣で雇えるようにする、その業務を。派遣労働者をふやす改革じゃないですか、安倍総理。さっきの答弁と矛盾しないですか。これが産経新聞。

 では、読売新聞を見ましょう。読売新聞、一月二十九日。「無期限派遣を了承」。無期限派遣ですよね。今までは三年の上限があったのに、今後は、もうずっと派遣で働けるようにする。「制度の重点は、現在の労働者保護から派遣の活用拡大に転換される。」つまり、これは派遣をふやす改革じゃないですか。話が違うんじゃないですか。

 十四ページ、毎日新聞。「遠のく正社員 派遣三年上限 全業種で撤廃 雇用政策見直し加速」。

 そして最後に、朝日新聞。「派遣、無期限受け入れへ 生涯ハケンに不安」「諦めた結婚 遠い正社員」と。

 安倍総理、これをどう思われますか。安倍総理は、派遣はふやすべきではないと先ほど明確に答弁されましたよね。ところが、安倍総理が考えておられる法改正の内容と違いますよ、はっきり言いまして。いや、別に私が違うと言っているんじゃなくて、右から左までの全ての報道機関が、これは派遣労働者をふやす、活用しやすくする改革だと言っているんですよ。

 安倍総理、どっちなんですか。派遣労働者を減らしたいと考えているのか、それだったら派遣労働者をふやす法案を出したらだめですし、ふやすんだったら、いや、派遣労働者は実はふやしていいと思っているんだと正直に言ってもらわないと、国民も悩むわけですよ。安倍総理は、派遣労働者、不安定雇用を減らしたいのか、ふやしたいのか、どっちなんですか。

 安倍総理はどっちなんですかと聞いている。安倍総理。安倍総理に聞いている。安倍総理はどっちなんですか。

大島委員長 山井さん、法案のことにかかわりますから。

 厚労大臣。

塩崎国務大臣 まず、新聞の見出しだけで物事を判断してはいけないのもおわかりのとおりであって、これはじっくり厚労委員会で御議論をさせていただきたいと思うわけであります。

 その生涯派遣という批判は、今回の見直しによって派遣労働が利用しやすくなるとか、あるいは労働者個人が派遣労働者のまま固定化されちゃうんじゃないか、あるいは、現行の派遣先の直接雇用申し込み義務がなくなって派遣労働者が派遣先に直接雇用される道が狭まるんじゃないかとか、それから、派遣元に無期雇用される派遣労働者については期間制限なく受け入れることが可能になるんじゃないかというようなことで、こういう主張が見出しに躍っているわけであります。

 しかし、例えば、今の、派遣労働が利用しやすくなるんじゃないかという、二十六業務でも、自由化業務であるかを問わず、同じ派遣労働者が同じ派遣先の職場で就労するのは三年までとするという個人単位の期限を新たに設けているわけです。さらに、派遣先についても、同じ事業所における派遣の継続的な受け入れは三年までとする、この事業所単位の新たな期間の制限というのを設けて、過半数組合等からの意見聴取をしなければ受け入れ期間の延長はなかなかできないということにしているわけであって、他の雇用形態にはない規制が新たに設けられているんです。

 したがって、今回の見直しによって、今先生が決めつけておられますけれども、派遣労働の利用がしやすくなるというふうなことは一概には言えないというふうに思いますし、先ほどの均衡待遇の問題も、これは職能制というのと、ヨーロッパ型と日本型と全く違うところであって、しかし、日本としても、同一労働同一賃金じゃないですから、そうすると、やはりこれは均衡に十分配慮しないといかぬということをさらに今回は強調しているわけでありますので、そういう意味で、総理が今、できる限り正規雇用にということは全く変わらない信念だというふうに思います。

山井委員 総理に聞いておりますので、総理、この改正は、派遣労働者をふやす改革なのか、減らす改革なのか、お答えください。

安倍内閣総理大臣 まさにそれは法案の説明になりますから大臣から答弁をしたわけでありますが、そこで、例えば、現行において、三年経過したら派遣先で正社員になれるというのは、これは誤解でありまして、今の現行制度でも、係をかえれば同じ者の三年を超える派遣の受け入れも可能になるわけでありますが、今度の法改正によって、改正後は、少なくとも課をかえなければいけないということに変わるわけでありまして、三年を超えて同一の労働者の派遣受け入れはできなくなるわけであります、課をかわらなければですね。

 そしてまた、先ほど、これは大臣から答弁していることでありますが、三年ごとに人をかえ、いつまでも派遣を使い続けるということはできるという、これも誤解でありまして、派遣労働者を使い続ける場合、受け入れ企業は過半数労働組合の意見聴取が必要になります。過半組合が反対意見を表明した場合、対応方針を説明しなければならないということになるわけでありまして、意見聴取や対応方針の説明の記録を一定期間保存し、受け入れ企業において周知をしているということになります。

 そしてまた、正社員化に向け、派遣会社や受け入れ企業の義務を強化するということが法律に書かれているわけであります。正社員化に向け、まさに受け入れ企業側に義務を強化しているということでありますから、こうした法律の中身を見ていただければ御理解いただけるのではないか、このように思います。

山井委員 安倍総理は一番重要なことにお答えいただいていない。

 端的にお答えください。いろいろ説明はいいですが、今回の改正案は、派遣労働者をふやす方向性の改正案なんですか、減らす方向性なんですか。一番重要な点です。それをお答えください、安倍総理。どっちなんですか。

安倍内閣総理大臣 今までお答えをさせていただいておりますように、まさに正社員化に向け、派遣会社や受け入れ企業の義務化を強化しているわけでありますし、そしてまた、三年を超える場合、今まで、係をかえれば同じ人の受け入れも可能になったわけでありますが、今度は、少なくとも課をかえなければ、三年を超えて同一の労働者の派遣受け入れができなくなるわけであります。

 そういう意味においては、しっかりと正社員あるいはキャリアアップに向けて資する法改正だ、このように思います。

山井委員 確かに、いろいろ、プラスマイナス、トータルでこの法案はまざっています。端的にお答えください。プラスマイナスして、この法案の趣旨は、派遣労働者をふやす目的ですか、減らす目的ですか、どっちですか。安倍総理、お答えください。

 ここは一番重要です。なぜならば、全国の、特に若者の人生にかかわる問題です。もし、安倍総理が国会で派遣労働者はふやすべきじゃないとおっしゃっていながら、この改正案の結果、一生派遣の若者ができたら、その方の人生はどうするんですか。一番重要です。だから、ちゃんと答弁いただいたら国民も安心しますから。

 派遣労働者を減らす改革ということでいいですね、安倍総理。安倍総理、お答えください。

安倍内閣総理大臣 つまり、全体数がふえていくか、減っていくかというのは、そのときの経済状況にもよりますよ。グローバルな競争の中でどうかということもあります。

 この法律の趣旨については、今、再々お話をさせていただいているとおりであります。この法律は、まさに……(山井委員「どっちなんですか、減らすのか、ふやすのか」と呼ぶ)減らすのか、ふやすのか、そういう単純なことではなくて、それぞれの人々が、それぞれの働こうという人々が……(発言する者あり)

大島委員長 静かに。

安倍内閣総理大臣 それぞれの方々が自分の自己実現をしやすいような、そういう仕組みをつくっていこう、こういうことであります。

山井委員 今、安倍総理、すごいことをおっしゃいましたね。ふえるとか減るとか、そんな単純なことでないということは、ふえる可能性があるんですか、この法改正によって。そうしたら、先ほどおっしゃっていた答弁と違うじゃないですか。

 ここは、単純な話じゃなくてとかじゃなくて、一番重要ですよ。日本の若者で、今、景気回復のために安定雇用が必要だ、女性のためにも安定雇用が必要だ。非正規雇用の中で一番立場が弱いのは派遣なんですよ。それをふやすのか減らすのか、総理大臣はどっちを考えているのか、国民は一番知りたいんですよ。どっちなんですか。今回の法改正で減らすんですか、ふやすんですか。総理大臣の思いを聞かせてください。

大島委員長 法案の……(山井委員「総理大臣、答えてください」と呼ぶ)

 山井君、指名したらしゃべりなさい。

 塩崎大臣。(山井委員「大事なことですから、これは。なぜ逃げるんですか。一番大事なことじゃないですか」と呼ぶ)

 委員に申し上げる。委員長の指名があってから、立ってしゃべりなさい。

塩崎国務大臣 山井先生、わかっておられておっしゃっているんだろうと思いますけれども、派遣労働者の数というのは、例えば、経済情勢とか雇用情勢とか、あるいは労働者の、働く方の意向とか、あるいは会社の経営の方針とか、いろいろなもので結果として決まるものであります。

 我々立法府や政府としてやらなきゃいけないことは、それは、法律を通して何を実現するかといえば、派遣で働く人の身分をどう守るか、権利をどう守るか、これが大事であって、正社員になりたいという人には十分なれる条件を整えよう、それが法律に書かれていることじゃないですか。ですから、それをやるのが、我々政府として、皆さん、議会で、国会で御議論いただいて、まあ、私たちとしては、データを見ても、半分の人が派遣でいい、半分の人は派遣じゃない正社員になりたい、こう思っていらっしゃるわけですから、みずから選択をして派遣で働く方々もおられることは先生もよく御存じだと思うんです。

 いずれにしても、その方々に正社員の道も開き、キャリアアップの道も開き、そして、もし派遣のままいるならば、十分権利が守られるようにせないかぬということを法律であらわしているわけであります。

山井委員 総理大臣、お答えください。

 今回の法改正で、総理としては、派遣労働者を、景気の変動は関係なしです、それはもちろん、景気が変動したらふえたりするというのはある。今回の法律の立法趣旨として、派遣労働者をふやそう、ふやしたいと総理はお考えになっているのか、減らしたいと考えておられるのか。一番重要です、ここは。

安倍内閣総理大臣 基本的な考え方を申し上げれば、まず、派遣の中で働いている方々において正社員になりたいと思っておられる方は、まさにその道が……(山井委員「趣旨はどっちなんですか」と呼ぶ)今まで何回も申し上げているじゃないですか。この道がちゃんと、しっかりと確保されるようにしていくということでありまして、まさにそのために、正社員化に向け、派遣会社や受け入れ企業の義務を強化しているわけでありますし、再三申し上げておるように、今まで係をかえればよかったものを、課をかえなければ継続ができないということにしているわけであります。

 そして、この法律にはさまざまなものが含まれていて、派遣でそのままいきたいという方にとっては、その派遣の立場がしっかりとまた守られるように、あるいはその派遣の中でキャリアアップが図れるようにということでありまして、この法律は、全てが、派遣を減らす、いわば派遣のままでいいという人たちを強引に、おまえらだめだという法律ではもちろんないわけであります。だから、そう単純化はできない、これは当たり前の話であります。

 だから、これは今大臣が御説明したとおりでありまして、非正規の方については、派遣の方については、しっかりと正規への道についてはこの法律の中に書き込まれている、こういうことでございます。

山井委員 安倍総理は、最初におっしゃっていることと今の答弁が全く違いますね。派遣はふやすべきじゃないと言いながら、結局、法律の中身になったら、ふえるのか減るのかわからない。私は、そんな不誠実な、そんな派遣労働者の人生を考えないような答弁では困ります。

 例えば、今回も、根本的な問題は、先ほど言いましたように、規制緩和の方々も、規制緩和派も、そして労働者保護派も、両方ともこの法案には問題があると言っているんです。

 なぜならば、ヨーロッパでは均等待遇が前提なんです。世界の常識は、もちろん派遣はあってもいい、しかし、それは臨時的、一時的な仕事であって、かつ均等待遇、この二つが常識なんです。しかし、今回の法律では均等待遇の義務は入っていないわけですよ。前提がそろっていない。

 さらに、今言ったように、派遣の受け入れの上限が三年から拡大する。これはまさに、生涯派遣で暮らさざるを得ない若者をふやす大問題だと思います。

 もう一つ、安倍総理の認識に私、疑問のあるGPIFの話に移ります。

 ことし五月の一日、イギリスのシティ、証券街で、ドリルの刃となって年金運用改革ということを安倍総理は発言されました。世界最大の年金基金、七千三百億ポンド、約百三十兆円を超える運用資産を持つGPIFについては、一月、ダボスでお話ししたように、フォワードルッキング、先を見据えた改革を進めていますと。このような発言を受けて、日本の株価は上がったわけです。

 安倍総理、この株式比率を上げるか下げるか、ここは、安倍総理も御存じのように、安全で効率的な運用によって年金受給者の最大の利益をもたらすために判断をするわけですね、国債の比率や株の比率を。ところが、安倍総理は、成長戦略として、株価対策としてこのGPIF改革を考えておられるんじゃないですか。なぜこういう、シティ、証券の地においてこういうGPIF改革をおっしゃるんですか。

 今までこれは、私は、日本では禁じ手だったと思います。百三十兆円もある、国民の大切な老後の安心の命綱、年金保険料、これの積立金、これを株に使えば株価が上がっていいなという議論は今までにもされてきました。しかし、それは株価対策には絶対使ってはだめだ、国民の保険料なんだからと考えてきたのに、今回こういう成長戦略の一環としてGPIF改革を言われたということは、私は非常に問題があると思います。

 安倍総理、安倍総理は、このGPIF改革というものを株価対策として考えておられるんですか、全く考えておられないんですか。

安倍内閣総理大臣 まず、このGPIFの運用のポートフォリオについては、デフレ時代の投資としては当然これは国債になるわけでありまして、しかし、これは、そのときと、いわばデフレから脱却をしていくという環境の変化の中においては、機動的に見直しをしていくことであります。

 この見直しは、結果としても日本の経済成長には資するわけであります。経済成長に資するということは、またさらには、結果としては年金の運用にプラスになっていくわけであります。年金の計算においても、当然、経済成長ということを見込んで計算をして、そして幾ら払えるかということが決まっているわけであります。成長しなければ当然年金の支払いの方にも、給付の方にも影響が出てくるのは、山井委員も御承知のとおりだろう、こう思うわけであります。

 そして、他方、年金積立金の運用は、専ら被保険者の利益のために行われるものでありまして、引き続き、長期的な観点から、安全かつ効率的に行うことにしております。

 積立金の運用は、年金制度の一部として、所管大臣である厚労大臣の責任のもとで、専ら被保険者のために行われているわけでありますが、政権交代直前の平成二十四年度の上半期の運用収益がマイナス一・五兆円だったのに対して、平成二十四年秋に政権交代の兆しが見え始めた以降の株式市場の好転で、プラス二十五兆円になっているわけであります。

 つまり、これは、株式市場のために私はGPIFの話をしているわけではありませんが、株式市場において株価が上がることは、これは明らかに、運用はプラスになり、年金の資産、二十五兆円プラスになったんですから、それはまさに、そういう意味においては、経済が成長し、しっかりとした効率的な運用は、これは年金受給者のためのものである、こういうことでございます。

山井委員 バリュー・アット・リスク値というものがございまして、結局、リスクは国債と株とはどちらが高いかということですが、このグラフにありますように、バリュー・アット・リスク値、これにおいては、株価の方が変動がどうしても多いわけですね、御存じのように。さらに、元本割れということも、株ではあって、国債ではないわけですね。こういうことがあるにもかかわらず成長戦略の一環として、これは、株というのはもちろんやってもいいに決まっているわけですが、これは自己責任という原則があるわけですね。

 しかし、今回のこのGPIFは、政府のお金じゃなくて、国民の大切な年金の積立金です。昔、グリーンピアや、年金保険料の流用で六兆円年金の財源を流用してしまって、国民からすごい批判を受けた。一歩間違うと、そういう株価対策として使ったら、これは、今、二十数兆円プラスになったとおっしゃいましたが、リーマン・ショックのときは年間十兆円下がっているわけです。もし、株価対策としてそのようなことをされて、リーマン・ショックのような株価が下がったときの損失となった場合、安倍総理は御自分で責任はとれるんですか。安倍総理。通告している。

大島委員長 塩崎厚生労働大臣。

 なお、あなたの時間が来ておりますから、節度を持っておやりください。

塩崎国務大臣 まず第一に、先生おっしゃるように、株というのは変動するわけですね。しかし、株だけではなくて、全ての金融商品にはリスクがあります。したがって、我々が言っているのは、単一の金融商品であった国債とかに過度に偏らないようにしていくことで、分散投資をすることでリスクを管理しながら、減らしながら、そして、リターンを上げて年金財政のプラスになるようにするというのが目的であります。したがって、中身をどうするか、何を何に分散投資するかは、これは専門家の方々にお決めをいただくということで、我々が口を出すことではないというふうに思っているんです。

 大事なことは、お願いしていく利回りを、これだけは回さないと年金は回っていかないよということをきちっと与えて、そのもとで専門家がやっていく、分散投資をしながらリスクをコントロールしていく。ですから、強固なガバナンスの仕組みが必要だというのはそのことなんです。

 もう一つ大事なのは、長いタームで見なきゃいけないという、さっき長期的なというふうに総理はおっしゃいましたが、まさに十年タームぐらいで見ていかなければ、一年ごとで今のようなお話を持ち出したのでは、年金というのは長いお金です、したがって、長い目で見るということが世界の常識だということも覚えておいていただければありがたいなと思います。

山井委員 支持率対策、株価対策でこういう老後の安心の命綱をリスクにさらされることは、私は非常に問題だと思います。

 それと、委員長、今も前原理事からも話がありましたように、五分ずつずれ込んできておりまして、私の持ち時間は四十五分ですので、あと三分質問をさせていただきます。

 結局、労働者派遣法改悪、残業代ゼロ制度、今の年金の株式運用拡大、そして、今後、法人税減税という、やはり、働く者や若者や女性の立場というよりも、どちらかというと、こういう企業の立場に立った、もちろん企業にも頑張ってもらわねばなりませんが、余りにも偏っている。

 そうしたところ、私びっくりしたのは、今回、経団連、献金再開予定と。結局こういうことですか。派遣労働者の立場や働く人の立場や、あるいは老後の安心ということよりも、こういう法人税減税をして、その見返りに経団連が献金の呼びかけを再開するということは、法人税減税してもらった中から献金をする。一方では、国民は消費税を増税されてしまっているわけですよ。これはやはり不公平じゃないですか。

 今後もし経団連が献金を再開したとしても、安倍総理、自民党総裁にお願いしたいんですが、そんなお金があるんだったら賃上げに使ってほしいということで、受け取りを自粛すべきだと思いますが、安倍総裁、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 まず、テレビを見ておられる方が誤解をするといけないので、もう一度きちっと申し上げておきますが、GPIF、年金基金の運用については、株か国債かという二者択一ではなくて、まさにポートフォリオの中のバランスを見ていくということであります。当然、先ほど申し上げましたように、デフレ下における運用、ポートフォリオと、デフレから脱却をしつつある状況では、ポートフォリオは変わってきます。

 その中で、これは私が決めることではなくて、これは専門家が国際的な常識の中でポートフォリオをどうしていくか、さらには、その先で運用の専門家がしっかりとやっていく。だから、塩崎大臣は、大切なのは、このポートフォリオを見直していくこともそうだし、この見直し方も含めてガバナンスが大切だ、こういうことであります。

 それぞれに、株にもリスクはありますし、専ら国債だけを買っていれば、今〇・五%ぐらいですから、これではとても年金をお支払いできませんよ、全く。お約束をしている金利、ある程度の利率でこれは運用していかなければいけないということは申し上げておきたいと思います。

 そこで、法人税については、これは法人対個人ということではなくて、多くの個人は法人で働いているわけでありまして、先ほど甘利大臣からもお話をさせていただきましたように、多くの投資を引き出していく、そして企業が日本にいて、日本にとどまって活動をしていくためにも、法人税率はどうすればいいかということを考えていかなければいけない、成長志向で考えていこうと思っております。

 そこで、経団連からの献金でございますが、我々は法人からの、私は自民党総裁としてお答えいたしますが、ここは総裁としてお答えをする立場ではございませんが、山井議員でございますからあえてお答えをいたしますが、ここは、政治にかかるコストをどうみんなで負担していくかということではないかと思います。

 私は、基本的には、法人による寄附というのは認められてしかるべきだと考えております。しかし、どう負担すべきかということは、各党各会派でまた議論がなされれば、またその議論に我々も従っていくということでございます。

山井委員 法人税減税の見返りにこういう企業・団体献金をたくさん受け取るというのは、古き金権政治、古き自民党の大問題だと強く抗議して、終わります。

大島委員長 この際、枝野幸男君から関連質疑の申し出があります。前原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。枝野幸男君。

枝野委員 民主党の枝野でございます。

 まず最初の一問、これはむしろ激励をさせていただくような中身ですので、余り緊張せずに、短くお答えいただきたいんですが、拉致問題です。

 拉致の解決、そのためには、これはもう与野党なく、国家を挙げて頑張っていかなければならない課題だと思っております。そのときに、対話と圧力という言葉がありますけれども、安倍総理のもとでは圧力にウエートをかけてしっかりやっていただける、このことについては、内閣発足以来、信頼もしてきているつもりですし、期待もしているところでございます。

 ただ、最近の日朝間の協議のプロセスを見ると、若干向こうのペースに乗せられてしまっているのではないかという不安の声も、正直、一部に出てきております。これは、間違っても北朝鮮のペースに乗せられるようなことなく、そして、安易な妥協をすることなく、しっかりと、拉致された皆さんが帰ってくるまで、安易に、例えば制裁の解除であるとか、あるいは経済支援だなんていうことにならないということを、総理、断言してください。

安倍内閣総理大臣 私は、議員になって以来、この拉致問題に取り組んでまいりました。今、数々の制裁を行っています。一部解除しましたが、制裁を可能にするための法律をつくるべきだというのを私はずっと主張してまいりました。そんなことをやったら対話が途絶えるという方々がおられたわけでありますが、しっかりと圧力に軸足を置いた対話と圧力の路線の中で、かけるべき制裁はかけ、あるいはまた、制裁は、かけた後、解除する上において、これはまさに手段として活用できるということも申し上げてきたわけでございます。

 そして、二〇〇四年に、今かけている制裁の法律は成立をしたわけでありますが、官房長官、今いる官房長官等が議員として、山本一太議員等を初め多くの議員とともに、私どもが主導いたしましたが、成立をしたわけであります。

 そこで、しかし、対話をしなければ解決をしないのは当然のことであります。圧力をかけていく中において、今、北朝鮮側が調査をしよう、こう言ってきたわけでございます。そして、しっかりとした組織、権限を持った組織ができたということの中において、行動と行動、行動対行動で我々は一部制裁を解除したところでございます。

 今後、これは、交渉でありますから相手があることであります。こちらの思いどおりになるわけではそう簡単にはないわけでありますが、大切なことは、北朝鮮側が誠意を持って対応し、正直に、しっかりと、迅速に報告してくることだろう、こう考えているところでございますし、そして、全ての拉致被害者の帰国、全ての拉致被害者の御家族がしっかりと御自身の手で肉親を抱き締める日がやってくるまで私の使命は終わらない、この決意で臨んでいるところでございます。

枝野委員 ちょっと先が思いやられるんですが、これは激励をして期待を申し上げている質問に、最後の部分だけで十分でございますのに、長々と時間を使われたのは若干不本意でございます。

 先ほどの山井議員の質問、やはり重要なところで気になりますので、改めて確認をさせていただきたいと思います。

 実際の派遣労働者の数がさまざまな経済的な状況によってふえたり減ったりする、これは当然のことです。だけれども、法律案の趣旨として、このことによって、他の経済要因が変わらなければ、これは経済の分析をするとかそういったことを仮定しなければいろいろな経済分析はできません。他の経済要因がイコールであるならば、それが派遣をふやすことにつながる中身なのか、それとも派遣を減らす方向につながる中身なのかということは、これはお話をいただける話だというふうに思います。

 そうした中で、もちろん派遣を希望しておられる方もいらっしゃいますが、それは塩崎大臣が訂正をされたというか、違う数字もあるということでおっしゃられた、派遣から正社員になりたいという方の比率が低い方の数字でも半分ぐらいいらっしゃるわけです。できれば我々は、一気にできませんよ、こういうことは経済との関係がありますから。ですが、できればこの数字はゼロにしたい。希望する人だけが派遣をする状況に、これは時間はかかりますけれども、していきたい。これは我々の立場として明確ですし、我々はその方向に向けて努力をしてきたつもりです。

 そうした意味で今回の法改正は、他の経済要因が変わらない場合に、派遣をふやす方向に向かう中身であるのか、それとも派遣を減らす方向の中身であるのか。大臣で結構ですから、お答えください。

塩崎国務大臣 希望される方がふえないことも考慮に入れずにもしやったとすれば、我々としては、キャリアアップを進め、そして正規雇用を進めるわけですから、方向としては、それは正規雇用がふえるという方向になるということですから……(発言する者あり)ええ、だからそれは希望される方々がふえるかどうかということがありますけれども、そうではない方々にとっては正規雇用になりやすくなるということだと思います。

枝野委員 先ほどの山井さんの話にそうお答えをいただければよかったんですが、ここから先は今後の審議の中で、今のお答えどおりの中身であるのか、我々はそうは見ておりません。むしろ、希望しない派遣の方がふえるという中身になっていると思っておりますので、これは今後の議論の中でさらに細かく詰めていきたいというふうに思っております。

 七月一日の安全保障に関する閣議決定についてお尋ねをしたいと思っています。

 この閣議決定は多岐にわたる内容を含んでおりますが、特に国民的な注目を集めている大事な論点、特に立憲主義との観点で問題になるのは、「3 憲法第九条の下で許容される自衛の措置」という部分でございます。

 まず、ここは評価するところからお話をしたいと思います。

 この「3 憲法第九条の下で許容される自衛の措置」というところの(2)では、昭和四十七年のいわゆる政府見解を引用し、自衛の措置として許容される武力の行使について次のように述べております。

 すなわち、武力の行使は、外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫不正の事態に対処し、国民のこれらの権利を守るためのやむを得ない措置として、必要最小限度で許容されるとしています。

 そして、今回の閣議決定でも、「この基本的な論理は、憲法第九条の下では今後とも維持されなければならない。」と閣議決定しています。

 これは、憲法第九条に関して論理的整合性の範囲で解釈変更が可能な限界を示したものとして、内容も含めて適切であるというふうに思っております。

 閣議決定したものです。今のような理解でよろしいか、総理に確認したいと思います。

安倍内閣総理大臣 今、枝野議員が述べられた閣議決定、全体は、当然これは閣議決定しておりますから内閣の統一した考え方でありますが、閣議決定の3の(2)では、昭和四十七年見解を引用して、自衛の措置として許容される武力の行使についての考え方を述べております。

 まさに閣議決定をしているわけでありますから、これは内閣の統一した見解であることは言うまでもないわけであります。

枝野委員 先ほど高市議員が模範回答をされたので、同じ逃げられ方をするのかなと思うんですが、これは、まさに憲法がどこまで解釈変更の余地があるのか、まさに公権力を縛るルールについて、解釈の幅について閣議決定したものですから、これは内閣がかわるごとにころころ変わってもらっては困ります。

 そこで、もちろん閣僚の一員として、この閣議決定のこの四十七年見解の基本的な考え方は今後も維持されなければならないということについては従われるんだろうと思いますが、閣僚を離れてもこれはそうだよねと思っておられるのかどうか、石破国務大臣と小渕国務大臣と菅国務大臣にお尋ねします。

石破国務大臣 現在、閣僚でございます。閣僚であります以上、内閣の方針に従うのは当然のことでございまして、この場で答弁すべきはそれに尽きます。

小渕国務大臣 内閣の一員として、内閣の方針に従ってまいります。

菅国務大臣 私が閣議決定したものでありますから、今後もそのとおりであります。

枝野委員 菅大臣だけは、今後もと言っていただきました。

 今回の閣議決定の大事なポイントは、閣議決定そのものに「憲法第九条の下では今後とも維持されなければならない。」と決めているということであります。

 憲法の解釈が、総理大臣がかわるたびにころころ変わっては困ります。そんなことはないんですねと、もう一度、今後もと言っていただかなかった二人の国務大臣にお尋ねしたい。

石破国務大臣 先ほどお答えしたとおりでありますが、憲法の根幹に触れる部分がころころ変わってはならないのは当然のことであります。

小渕国務大臣 委員御指摘の、許容される武力の行使についての基本的な論理については、私も含めて政府として、憲法九条のもとでは今後とも維持されなければならないと考えています。

枝野委員 小渕大臣には答えていただきましたが、石破大臣のお答えは不十分かなと思います。やはり、一度憲法の解釈を変に変えると、総理がかわるたびに変わる余地があるんだなということの疑いを持たせていただかざるを得ないと思っております。

 さて、中身です。

 その後の(3)で、いわゆる新要件という基準を示しておられます。

 率直に申し上げます。昭和四十七年の、変えてはいけない基本的な原則に大方従っておられるというふうに思っています。それは、何とか立憲主義の観点からつじつまを合わせようと御努力されたという努力は評価をしたいと思います。

 ただ、この中には、「明白な危険がある場合に」という部分が従来の基準とは明確に違っています。これまでは、国民の生命云々かんぬんが「根底からくつがえされるという急迫、不正の事態」に対して武力の行使が許される。今回は、「根底から覆される明白な危険」だけで武力の行使が許されるということになります。

 この四十七年見解で言う「根底からくつがえされるという急迫、不正の事態」と、今回の「根底から覆される明白な危険がある場合」とは、どう違うんですか。総理、お答えください。

安倍内閣総理大臣 新三要件の第一要件を満たす事態、すなわち「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」には、昭和四十七年の政府見解に言う「外国の武力攻撃によつて国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態」に該当するということであります。

 昭和四十七年の政府見解に言う「急迫、不正の事態」に該当するものとして、これまでは我が国に対する武力攻撃が発生した場合に限られてきたわけでございます。しかしながら、現在の安全保障環境は大きく変わったわけでありまして、我が国に対する武力攻撃が発生していなくても、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生」した場合に、この「急迫、不正の事態」に該当するものがあると判断するに至ったものであります。

 これはちょっと具体的に説明しないと国民の皆様はわかりにくいと思いますが、例えば、我が国近隣で米国に対する武力攻撃が発生している状況下で、我が国近傍の公海において米国のイージス艦と自衛隊艦艇が弾道ミサイルの発射警戒に当たっているような場合において、米国のイージス艦が攻撃を受ければ我が国の存立にも影響を与える場合があると考えられるわけでありまして、イージス艦が弾道ミサイル警戒を行っている場合にはみずからを守る能力は相対的に低下をする、しかしながら、従来の解釈では、我が国が攻撃を受けていなければ、ともに警戒に当たっている自衛艦は米国のイージス艦を守ることができない、このような状況下で米艦を守ることができなくてよいのかということが基本的な問題意識でありました。

 昭和四十七年見解が示された、発表された四十年前と比べれば、弾道ミサイルの拡散やあるいはイージス艦によるミサイル防衛など、安全保障の環境は大きく変化をしているわけでありまして、先般の閣議決定では、このような安全保障環境の根本的な変化により、他国に対する武力攻撃があっても、「その目的、規模、態様等によっては、我が国の存立を脅かすことも現実に起こり得る。」との問題意識のもとに、新三要件を満たす場合に、他国に対する武力攻撃が発生した場合を契機とする自衛の措置として武力の行使が憲法上許容される、こういう整理をしたわけであります。

枝野委員 実は、昭和四十七年見解のこのパネルをつくるときに、私はわざと「自衛の措置は、あくまで外国の武力攻撃によって」というのを外に出しました。今回の新要件はよくわからなかったので内側に入れましたが、あえて言います。時々我々が曖昧だと言われる、批判のもとでもあるんですが、「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態」というのが外国の直接の武力攻撃以外で生じ得ることがあるのならば四十七年見解でも武力行使はできるというのが四十七年見解だと思います。

 今までは、この根底から覆される事態というのは外国の武力攻撃を日本が受けた場合しかないと思っていたので、だから個別的自衛権で十分ですという話だったと思います。

 ところが、今総理がおっしゃられたような、いろいろな事情で直接外国の武力攻撃を受けていない場合であっても、四十七年の見解の方です、覆されるという事態があり得るかもしれない、その場合には武力の行使も必要最小限ならあり得るというのは、四十七年の憲法解釈からいっても私はあり得ることだと思います。

 ただし、恐らく、十六事例と称するものをいろいろ検討してみたら、具体的にはないねということになったのでこっちに行ったのではないかと予想するんですが。これは勝手なこちらの予想ですから、結構ですが。

 「急迫、不正の事態」というのと「明白な危険がある場合」というのはイコールなんですか。実際に「根底からくつがえされるという急迫、不正の事態」が起こった場合と「根底から覆される明白な危険がある場合」というのでは、「明白な危険がある場合」の方が広いんじゃないですか。法制局長官でもいいですよ。法制局長官が来ているなら、法制局長官でいいですよ。でもいいですよだから、誰でもいいんですよ、こちらは。

大島委員長 法制局長官に御質問ですか。

枝野委員 でもいいですよと申し上げた。

横畠政府特別補佐人 昭和四十七年見解で触れております、御指摘の「根底からくつがえされるという急迫、不正の事態」という場合ですけれども、その場合には、憲法九条のもとにおいても例外的に自衛の措置としての武力の行使が許されるという整理をしたものが、この四十七年の見解でございます。

 今回お示しした新三要件においては、二つ要件がございまして、従前どおり、自国に対する、つまり、我が国に対する武力攻撃が発生した場合。これは従前どおりでございます。

 それと並べまして、他国に対する武力攻撃が発生した場合というのが加わっておりますけれども、単に我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生した場合というだけでは足りずに、それによって我が国の存立が脅かされ、国民に対する、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合という、その要件を満たすような他国に対する武力攻撃というものを考えまして、それはまさに昭和四十七年見解で申し上げている「根底からくつがえされるという急迫、不正の事態」に該当する、そういう理解をしております。

枝野委員 そう答えないとつじつまが合わないんでしょうね、きっと。

 「くつがえされるという急迫、不正の事態」と「覆される明白な危険がある場合」というのがイコールですか、日本語として。それは実際に、今まで、まさに自国防衛については、実際に武力攻撃の着手がなければ、この四十七年見解に照らして、日本は武力行使できないと言われていたんですよ。今度は、明白な危険があるだけで、日本の国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される事態になっていなくても、危険があると政府が御判断をしたら武力行使ができる。決定的に違うじゃないですか。

 具体的に申し上げましょう。

 法令用語というのは、時々、いろいろな、普通の常識と違う読み方をするのは、残念ながら、私も法律家として知っておりますが、例えば同じ言葉が民事法と刑事法で違う意味に使われることもあります。ただ、明白な危険という言葉は、実は自衛隊法にあります。もう石破大臣などはよく御存じのとおりだと思います。

 自衛隊法の第七十六条一項が防衛出動の要件を示していますが、この防衛出動の要件は、「武力攻撃が発生した事態」、これが一つ。「又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至つた事態」、このどちらかに該当することが防衛出動の要件です。ただし、明白な危険が切迫しているということにとどまる段階では、防衛出動はできますが、武力行使はできません。そうですね。石破大臣、うなずいておられます。

 つまり、自衛隊法は、憲法九条、そして四十七年政府見解からは当然のことですけれども、武力攻撃が発生したときに初めて国民の権利が根底から覆されるという急迫不正の事態が生じたんだ、したがって、国民のこれらの権利を守るためにやむを得ない措置としての武力行使ができるんだという、自衛隊法で武力行使ができる基準を定めている。

 明白な危険が切迫をしていても、武力行使をせざるを得ない状況になるかもしれないから、それに備えて防衛出動はできるけれども武力行使ができないというのが、これが従来の昭和四十七年見解の読み方、それに基づく自衛隊法の武力行使の基準です。明白な危険だなんという段階では、明らかにその考え方と矛盾するんじゃないですか。

安倍内閣総理大臣 先ほど長官からも説明させていただいたわけでありますが、最初の明白な危険と急迫不正の事態との関係でありますが、四十七年見解は三段階から成り立っているわけであります。

 これは御承知のとおりだと思いますが、憲法九条において戦争放棄をしているけれども、しかし、憲法の前文とそして十三条において「自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとはとうてい解されない。」という部分があります。そして二番目の部分として、今委員が紹介をしておられる、外国の武力攻撃、「しかしながら、だからといつて、平和主義をその基本原則とする憲法が、右にいう自衛のための措置を無制限に認めているとは解されない」と。それは、あくまでも、「外国の武力攻撃によつて国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態」ということに限っています。そして三番目に、しかし、集団的自衛権は認めない、認められない。

 こういう三段論法で来ているわけでありますが、今回の、まさに三要件において、我々は、我が国に対する武力攻撃が発生したことの後の、または「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」ことということを結論において当てはめているわけでありまして、こういう、今、我が国に対する武力攻撃が発生したこと、または我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生して、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があるということは、まさにこれは急迫不正の事態に当たるという考え方であります。

 あと、後段の質問に対するお答えでありますが、昭和四十七年の見解のもとで武力の行使が許されるのは、あくまでも「外国の武力攻撃によつて国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態」に限られるわけでありまして、これが憲法解釈の基本的な論理であります。

 いかなる意味でも、武力攻撃が発生しなければ武力行使は許されないというのが基本であります。我が国に対する武力攻撃が発生する明白な危険が切迫しているという状態は、いまだ我が国に対する武力攻撃が発生していない段階でありまして、武力攻撃が発生する前に武力行使をすることはいわゆる先制攻撃であって、これは、憲法上はもとより、国際法上も許されないわけであります。そして、まさに明白な危険というのは、他国に対して発生した武力攻撃でありますが、この三要件、これを満たせば、これは急迫不正の事態に相当する、このように解しているところでございます。

枝野委員 法というのは、その法の基本になっている物の考え方と、それに対してどういう事実が当てはまっていくのかということで組み合わさっています。

 四十七年政府見解は、「外国の武力攻撃によつて」というのは、まさに事実の、こういう事実の場合についてという話です。この四十七年政府見解のポイントは、それは、憲法九条は戦争放棄を書いてあるけれども、「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態」が生じたのに、手をこまねいて、こうしたものが根底から覆されるということを放置することまでは憲法九条は求めていませんと、我々も当然だと思う基本的なルールを書いているんです。

 そして、その後ろのところは言葉の使い方が違いますので、あとの二つの要件は今回は省略しましょう。

 まさに、ここで大事なのは、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆されるということには、それは対処しなきゃならないですねというのが、まさに法の精神ですよ。

 そして、これまでは、そういうことがあるとすれば、外国の武力攻撃を直接受けた場合ということしか考えられなかったですね。だから、集団的自衛権考えられませんねという解釈をしてきたんですが、事態が、国際状況、いろいろなものが変わっているから、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生した場合についても、もしかすると、この「根底からくつがえされるという急迫、不正の事態」に当たることもあり得るかもしれない、そこまで認めます。あり得るかもしれない。でも、あり得るかどうかわからない。少なくとも、十六事例を我々は精緻に検討させていただきましたが、どうもそういうケースじゃないようだというのが我々の今の時点の判断です。

 でも、これはまさに国民の生命財産にかかわることですから、それは、国際環境も軍事に関する科学技術も、いろいろなものが進展しますから、我々が想定していないようなこともあり得ます。だから、その余地は残しますが、まさに、本当に我が国に対する武力攻撃がないのに、根底から覆されるという急迫不正の事態があり得るのかどうか。あり得るなら解消しなきゃならない。でも、そこに明白な危険だなんというどうにでも読める要件をつけてしまって、さあ、これはどこまで広がるの、こういう話になってしまっているから問題なんです。

 そこで、伺いたいと思います。

 どうも、これまでの国会答弁その他では、この新三要件の明白な危険云々かんぬん、明白な危険がある場合について、我が国が直接攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況みたいな答弁をされておられます。そして、これまでとは余り変わっていないんですよというイメージをつけておられます。

 だとすると、シーレーン防衛なんかは当然入らないと思うのが普通なんですけれども、太田大臣、どうですか。

太田国務大臣 これは、あくまで新三要件に当たるかどうか、そして、特に我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求権が根底から覆される明白な危険、それに当たるかどうかという一点だと思います。

枝野委員 閣内一致のための模範答弁だと思います。我々もそういったところは見習わなきゃいけないなと思います。

 では、総理にお尋ねをしましょう。

 これは総理自身が七月十四日の予算委員会閉会中審査において、日本の経済に与える打撃によって、そういうものを勘案しながら総合的に判断していくと、この明白な危険の判断についてお答えになっています。

 確かに、日本は輸出立国です。貿易立国です。エネルギー、食料、多くを輸入に頼っていますから、海外での紛争がエネルギーや食料の輸入に大きな影響を与えて深刻な打撃を与えること、そのことを何とか避けるための最大限の努力をしなければいけないと思いますが、そうした経済的に受ける影響、被害というのは、四十七年見解で従来言われてきたような、我が国が直接他国から武力攻撃を受けたような場合と準ずる、あるいは同視できるようなケースなんですか、総理。

安倍内閣総理大臣 今おっしゃっているのはシーレーン防衛だと思いますが、例えば、ホルムズ海峡においては、我が国の輸入する原油の約八割、そして天然ガスの二割強が通過をしているわけでありまして、同海峡は我が国のエネルギー安全保障からいって生命線と言ってもいいんだろう、このように思います。

 仮に同海峡で地域の紛争が発生をして機雷が敷設をされた場合、我が国には確かに石油備蓄は半年分あるとはいえ、機雷が除去されなければそこには危険が存在し続けるわけでありますし、これは当然、石油価格も高騰し、経済は壊滅的な被害を受ける可能性は高いわけであります。経済の状況が厳しければ、先ほど来の質問にあるように、これはもうそれぞれの方々、働いている方々にとっても命にかかわってくる問題にもなるわけであります。

 そういう意味におきまして、我が国の国民の生活に死活的な影響が生じ、我が国の存立が脅かされ、まさに国民の命や自由及び幸福追求の権利が根底から覆される事態は生じ得ると考えているわけであります。

 いずれにせよ、事態の個別具体的な状況に即して判断することになりますが、この新三要件についてしっかりと、いずれにせよ、この新三要件によるわけでありまして、この新三要件によって判断をしなければいけないわけでありまして、明白な危険というのは、これはまさに明白なんですから、これも結構厳しい、これは曖昧なものではないわけでありまして、明白な危険という中からこれは判断をしなければならない、こういうことであります。

枝野委員 日本が、石油が入ってこないとか食料が入ってこないというのは本当に深刻な打撃を与えることになりますが、経済的な事情で間接的に影響を受けるというようなことを根拠にして武力行使をしていいのかどうか。

 例えば日中戦争のときも、生命線という言葉が今総理の口から出ましたが、満州が生命線だとか、いろいろな話がありました。だから、死活的な価値だからそこを守らなきゃならないなんて話がありました。あるいは日米戦争に、これは追い込まれていったという側面もあったと私は歴史的にも思いますが、これもやはり、石油が入ってこなくなる、備蓄が足りなくなっていく、それに先手を打って石油のとれるような地域を占領しなきゃならないという要素が少なくともあったのは否定できないだろうというふうに思います。

 やはり、これまで私たちの国が守ってきた政府の昭和四十七年政府見解、「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態」、それも、今まで、外国から直接武力攻撃を受けた場合だけでしたね。もし、これ以外のケースがあるんだとしても、まさにこれに準ずるケースであり、明白な危険だなんという曖昧な基準でなく、本当にそれが、直接我が国の国民の権利を根底から覆されるという急迫不正の事態かどうかを判断して、そういうものがもしあるなら、今のところあるとは思いませんが、あるならば、それは我々もちゃんと対応しなきゃいけないと思いますが、明白な危険じゃ、今みたいなところへ入るのか入らないのかわからない。こういう基準でやってしまっていいのか。

 逆に伺いましょう。

 総理は、いわゆるアフガン戦争やイラク戦争に参加することにはならないと発言しています。その根拠は何なんですか。明白な危険に読みようがあるんじゃないですか。どうしてないんですか。

安倍内閣総理大臣 イラク戦争、アフガン戦争と、機雷の敷設、これを除去することとは全く違うわけでありまして、機雷の敷設、まさに国際法に違反して機雷を敷設したものを除去するというのは、受動的な、まさに受動的な、制限的な、一応武力の行使には入りますが、しかし、これは極めて限定的かつ受動的な行為であります。

 一方、イラク戦争とかアフガン戦争のようなものは、これはまさに、例えばかつての戦闘、アフガン戦争、イラク戦争での戦闘、すなわち、敵を撃破するために大規模な空爆や砲撃を加えたり、敵地に攻め入るような行為に参加することは、必要最小限度の自衛の措置の範囲を超えるものだ、こう考えているわけでありまして、今回の閣議決定においても、憲法第九条のもとで許容されるのは、あくまでも国民の命と平和な暮らしを守るための必要最小限度の自衛の措置としての武力行使のみであります。

 今、まるで、かつてのように、日本がどんどんこの閣議決定をもとに武力攻撃を繰り返す、あるいは外へどんどん出ていくという印象を振りまくのは、これは明らかに間違いだろう、このように思うわけでありまして、正確を期しておく必要がありますから、ちょっと答弁は長くなりましたが、機雷の敷設されたものを除去するということと、アフガン戦争やあるいはイラク戦争に参加して空爆をしたり陸上軍を送るということは、これは全く別だと。そして、さらには、今申し上げましたように、必要最小限度というものもかかっていますから、そちらの方でしっかりとかかるということを今はっきりと申し上げたわけであります。

枝野委員 四十七年見解、つまり自国が攻撃された場合の必要最小限というのは、これはわかりやすいんですが、今のような、受動的な、機雷の除去ぐらいならいいかと何となく思ってしまいがちです。でも、機雷の除去に行くのは民間の皆さんじゃないですよね。丸腰で行くんじゃないですよね。自衛隊の皆さん、訓練した上で行っていただくんですよね。

 なぜか。それは、まさに武力の行使に該当するような機雷の除去に行けば、もしかすると、その機雷を敷設した国からは攻撃をされてもある意味ではやむを得ない、そういう環境だからですよね。それは、スタートは受動的かもしれないけれども、行ったら攻撃されるかもしれないから自衛隊の皆さんに行っていただくんです。攻撃を受けたら、当然のことながら、今度は個別的自衛権のその戦争に参加することになるんじゃないですか。どういうことですか。

 ですから、そのリスクがあるんですよ。つまり、最初は受動的かもしれないけれども、戦争をしているような地域で、受動的とはいえ武力行使をしていれば、相手国からは敵国とみなされますから、そこで武力攻撃を自衛隊が受けて、そうすると、今度は個別的自衛権になりますから、今度は個別的自衛権だから、空爆の能力があるかどうかは別として、地上部隊を送りますとかなんとかとなるのを、どこの要件でとめているんですか。

 いや、私はやりませんではだめですよ、政府としての決定の要件ですから。どこの要件で、そういう場合とまるんですか。

安倍内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、必要最小限度の措置の武力行使は、まさに、アフガンに兵隊を送ったり、空爆に参加したりということはできないということは申し上げたとおりであります。

 一方、機雷の除去でありますが、機雷の除去はどういう状況で起こり得るかということであります。事実上、我々はかつて、機雷の除去は停戦合意がなされたときに行ったことがあります。事実上停戦状態に、事実上の停戦状態が確保されているけれども法的には停戦になっていない場合は、これは武力行使になって、しかもこの機雷が専ら我が国に向けられたものであるということではない場合は、これは集団的自衛権の行使に当たるということであります。

 事実上、機雷が敷設されてそれを除去に行くときには、これはまさに、機雷掃海艇というのは木でできたもので脆弱なものでありますから、相当安全が確保されていなければできないということでありまして、まさに可能性としては、非常に少ない可能性であるわけであります。

 事実上停戦状況にはなっているけれども法的にそれが行われていない中で除去できるかどうかというときに、それは行うということでございまして、掃海艇が、攻撃にはこれはもう非常に脆弱なわけでありますから、まさに戦闘地域のような状況になっているところに掃海に行くということは当然ないということは申し上げておきたい、このように思います。

枝野委員 今の御発言の担保は、この新三要件のどこにもないんですよ。

 例えば、機雷が敷設されていることが、日本にエネルギーが入ってこない、食料が入ってこない、だから国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険だというときに、どんどんどんどんまかれ続けている状況だったら、除去する前にまかれないようにすることも必要最小限に入らない理由は何かあるんですか。

 やるべきだと思っているんじゃないんですよ。やるべきじゃないと思うんですが、まかれ続けている状況だったら、まかれないようにしなければ、まいたものを除去することだけしていたって、結局、石油が入ってこないのは一緒だから、明白な危険があるのに対して必要最小限の措置ということに、この新三要件では入ってしまいますよ。

 あるいは空爆は、それは現行憲法の解釈でも、敵国からどんどんどんどん爆撃されているときに、やらないけれども、では、憲法上の制約で敵基地を、つまり、例えばミサイル基地を破壊することをできないのかというと、これは憲法上の制約ではなく法律上の制約ではやっていない。当然ですよね。

 どんどんどんどんミサイルが飛んできて、こっちで構えて撃ち落とすだけでは、何百発、何千発と日本じゅうに飛んでくるという状況のときには、今は米軍に依存しているから我が国はやらない、僕は、やらないで済むならやらない方がいいから、それでいいと思うんですが、でも、従来の憲法上の必要最小限でも、そのミサイル基地を壊さない限り日本じゅう焼け野原になっちゃうんだったら、必要最小限に入りますよね、石破先生。必要最小限と言っただけでは、受動的な機雷の除去しかしませんだなんという、そんな歯どめには全くなっていないということを国民の皆さんにぜひ知っていただきたい。

 どこの要件で、受動的なことしかやらないで、今のようなことは絶対やらないというのは、安倍総理が私はやりませんというのは意味がないですからね、これは。国としての憲法のルールですから、総理が何代かわっても、この閣議決定が変更されない限りは、この枠の中でできちゃうわけですから。

 今のようなことができないという歯どめはどこにあるんですか。

安倍内閣総理大臣 これは、今までも必要最小限度の中でさまざまなことができなかったわけでありまして、当然、アフガンへの空爆や陸上部隊の派遣はできなかったんですよ、それは当然。そして、それは自衛の措置としてもできなかったわけですよ、個別自衛の措置としても。

 そして、それは、個別自衛権に対してもこの必要最小限度はかかっているわけでありますが、この閣議決定の三要件は、そこにありますように、我が国に対する武力攻撃が発生したこと、または我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があることと、これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るに他に適当な手段がないこと。そして三番目に、必要最小限度の実力行使にとどまるべきことということでありまして、この必要最小限度というところについて、機雷の敷設ということについては、この一を状況として満たすことになれば、必要最小限度の中には、受動的であり限定的でありますから、これは満たされます。

 しかし、おっしゃったように、アフガンへの攻撃とかあるいはイラクへの攻撃は明らかに三番目の要件に反するということでありますから、閣議決定上これは明白だということをはっきりと申し上げておきたい。

 枝野委員の発言では、国民の皆様が、多くの皆様が誤解されますから、ここでもう一度はっきりと申し上げておきますが、そのようなことはない、こういうことでございます。

大島委員長 枝野君、時間が来ておりますので、簡単にお願いをいたします。

枝野委員 はい。短くします。

 安倍総理は大見えを切っておられますが、明白な危険の範囲がどこまでなのか全く明確な答えはないし、必要最小限度だって、それは安倍総理の思い込みはそうかもしれないけれども、必要最小限という範囲でどこまで読めるのか全くはっきりしません。本当に受動的なものだけなどという担保などは全くない。

 これについてはさらに厳しくやらなきゃいけませんし、きょうも、実は半分の時間は経済をやりたいと思っていました。これも大変重要です。

 委員長、これは党としても努力しますが、ぜひ予算委員会で十分な審議時間をとっていただきたい。お願いを申し上げて、質問を終わります。

大島委員長 次回は、来る六日午前八時五十五分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十一分散会


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