衆議院

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第2号 平成27年1月29日(木曜日)

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平成二十七年一月二十九日(木曜日)

    午前八時五十九分開議

 出席委員

   委員長 大島 理森君

   理事 金田 勝年君 理事 萩生田光一君

   理事 原田 義昭君 理事 平口  洋君

   理事 平沢 勝栄君 理事 森山  裕君

   理事 前原 誠司君 理事 今井 雅人君

   理事 上田  勇君

      秋元  司君    石原 宏高君

      稲田 朋美君    岩田 和親君

      岩屋  毅君    衛藤征士郎君

      小倉 將信君    小田原 潔君

      勝沼 栄明君    金子 一義君

      金子めぐみ君    木内  均君

      熊田 裕通君    小池百合子君

      小林 鷹之君    鈴木 俊一君

      田所 嘉徳君    土井  亨君

      長坂 康正君    根本  匠君

      野田  毅君    古屋 圭司君

      星野 剛士君    松本  純君

      三ッ林裕巳君    宮崎 謙介君

      保岡 興治君    山下 貴司君

      山本 幸三君    山本 有二君

      泉  健太君    小川 淳也君

      岸本 周平君    後藤 祐一君

      階   猛君    鈴木 貴子君

      玉木雄一郎君    辻元 清美君

      長妻  昭君    福島 伸享君

      馬淵 澄夫君    宮崎 岳志君

      山尾志桜里君    山井 和則君

      井坂 信彦君    遠藤  敬君

      重徳 和彦君   松木けんこう君

      松浪 健太君    吉田 豊史君

      石井 啓一君    岡本 三成君

      中野 洋昌君    樋口 尚也君

      赤嶺 政賢君    島津 幸広君

      高橋千鶴子君    畠山 和也君

      宮本  徹君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   総務大臣         高市 早苗君

   法務大臣         上川 陽子君

   外務大臣         岸田 文雄君

   文部科学大臣       下村 博文君

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   農林水産大臣       西川 公也君

   経済産業大臣

   国務大臣

   (原子力損害賠償・廃炉等支援機構担当)      宮沢 洋一君

   国土交通大臣       太田 昭宏君

   環境大臣

   国務大臣

   (原子力防災担当)    望月 義夫君

   防衛大臣         中谷  元君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (復興大臣)       竹下  亘君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当)       山谷えり子君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (消費者及び食品安全担当)

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)     山口 俊一君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   甘利  明君

   国務大臣

   (女性活躍担当)

   (行政改革担当)

   (規制改革担当)

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)   有村 治子君

   国務大臣

   (地方創生担当)

   (国家戦略特別区域担当) 石破  茂君

   外務副大臣        城内  実君

   財務副大臣        菅原 一秀君

   国立国会図書館調査及び立法考査局社会労働調査室専門調査員         中川 秀空君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府特別補佐人

   (原子力規制委員会委員長)            田中 俊一君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   予算委員会専門員     石崎 貴俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

一月二十九日

 辞任         補欠選任

  石原 宏高君     稲田 朋美君

  熊田 裕通君     松本  純君

  小林 鷹之君     岩田 和親君

  土井  亨君     三ッ林裕巳君

  宮崎 謙介君     木内  均君

  岸本 周平君     長妻  昭君

  後藤 祐一君     宮崎 岳志君

  辻元 清美君     山尾志桜里君

  馬淵 澄夫君     福島 伸享君

  山井 和則君     鈴木 貴子君

  井坂 信彦君     遠藤  敬君

  松木けんこう君    吉田 豊史君

  岡本 三成君     石井 啓一君

  赤嶺 政賢君     宮本  徹君

同日

 辞任         補欠選任

  稲田 朋美君     石原 宏高君

  岩田 和親君     勝沼 栄明君

  木内  均君     宮崎 謙介君

  松本  純君     熊田 裕通君

  三ッ林裕巳君     土井  亨君

  鈴木 貴子君     山井 和則君

  長妻  昭君     岸本 周平君

  福島 伸享君     玉木雄一郎君

  宮崎 岳志君     後藤 祐一君

  山尾志桜里君     辻元 清美君

  遠藤  敬君     井坂 信彦君

  吉田 豊史君     松木けんこう君

  石井 啓一君     岡本 三成君

  宮本  徹君     島津 幸広君

同日

 辞任         補欠選任

  勝沼 栄明君     小林 鷹之君

  玉木雄一郎君     泉  健太君

  島津 幸広君     畠山 和也君

同日

 辞任         補欠選任

  泉  健太君     馬淵 澄夫君

  畠山 和也君     赤嶺 政賢君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成二十六年度一般会計補正予算(第1号)

 平成二十六年度特別会計補正予算(特第1号)

 平成二十六年度政府関係機関補正予算(機第1号)


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     ――――◇―――――

大島委員長 これより会議を開きます。

 内閣より、緊急の対応を要するため、菅内閣官房長官及び岸田外務大臣を退席させたいとの申し入れがありました。やむを得ないものと認め、菅内閣官房長官及び岸田外務大臣の御退席を許可いたします。

     ――――◇―――――

大島委員長 平成二十六年度一般会計補正予算(第1号)、平成二十六年度特別会計補正予算(特第1号)、平成二十六年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲田朋美君。

稲田委員 おはようございます。自由民主党の稲田朋美です。

 ISILによる邦人拘束に関し、緊迫した状況が続いております。ISILの人命をもてあそぶ非道な残虐行為に強い憤りを感じます。我が国としては、引き続き、人命尊重、人質救出に万全を期すとともに、国際社会と一致団結して、このようなテロ行為と闘う姿勢を明確に示す必要があると思います。

 今般の事案を受け、安倍総理として、改めて、テロとの闘いに臨む基本姿勢と国際社会との連携のあり方について、さらには、今般の中東支援策に込めた安倍総理のお考えをお示しください。

安倍内閣総理大臣 今回のISILのテロ行為、無辜の市民を巻き込んだ卑劣なテロ行為は、断じて許すことのできないテロであります。強く非難をいたします。

 シリアにおける邦人テロ事件やパリで発生した新聞社襲撃事件など、世界の情勢は、テロ事件の頻発により緊迫度を増しています。もはやどの国も、テロの脅威から安全な国はないと言ってもいいと思います。

 しかし、テロを恐れる余りテロのおどかしに屈するようなことがあれば、日本人に対するさらなるテロの誘発を生み、卑劣な暴力を行使する者の意図がまかり通る世界になってしまうわけでありまして、このようなことは断じてあってはならないと思います。

 また、中東地域の平和と安定は、我が国にとり、エネルギー安全保障上、極めて重要であります。と同時に、この地域の平和と安定のために貢献をしていくということは、世界の諸課題に対して日本が貢献をしていくということにもなるわけであります。

 先般私が訪問した際、中東訪問で発表した人道支援は、この地域で、住むところもなく、日々寒さに震えながら、私も訪問して思ったんですが、今この時期は大変中東地域は寒いわけでありまして、日々寒さに震えながら飢えや病気に苦しむ一千万人以上の避難民や子供たちに、食糧支援あるいは医療支援といった命をつなぐ支援を行っていくものでありまして、我が国の支援に対して国際社会からも高い評価をいただいております。

 テロに対する国際社会の取り組みに、我が国ならではの人道支援など非軍事的分野で積極的に貢献し、国際社会の一員として当然の責務を果たしていく考えであります。

 我が国としては、引き続き、テロに屈することなく、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、国際社会と緊密に連携し、地域の平和や世界の平和、安定に今後とも積極的に貢献していく考えでございます。

稲田委員 断じてテロに屈することなく、予断を許さない状況ではありますけれども、一刻も早い後藤さんの救出に全力を挙げていただきたいと思います。党としても全面的にバックアップをしていきたいと思っております。

 まず、総理に昨年の十二月の総選挙の意義についてお伺いをいたします。

 総理は、消費税八%から一〇%の引き上げを一年半先延ばしにされ、同時に、消費税が一〇%になる平成二十九年四月の判断について景気条項を外す、すなわち、二年後には、リーマン・ショックのような事情変更の原則が適用されるような場合を除いて、必ず消費税は一〇%に上げるということを決め、そのことについて国民の信を問うたわけであります。消費税の一〇%の一年半引き延ばしにつきましては、地方経済また中小企業の現状を見ますと、私は、これは正しい選択であったというふうに思います。

 今回の選挙で、経済再生と財政再建という二兎を追って二兎を得る大変難しい選択をし、不退転の決意で臨むということであります。まさしくここからが勝負。地方へ、中小企業へ、また暮らしが豊かになったと実感できるように、この二年間でやっていかなければならないわけであります。

 総理は、今回の選挙を受けて、平成二十九年四月の一〇%消費税上げに向けて、何を優先的に取り組み、そしてまたどのような日本を目指して改革を進められるのか、総理の御決意をお伺いいたします。

安倍内閣総理大臣 二年前に我々が政権を奪還した際、デフレから脱却をし、経済を力強く成長させていく、国民生活を豊かにしていくというお約束をいたしました。

 三本の矢の政策を進めてきた結果、現在はデフレではないという状況をつくり出すことができました。名目成長もプラスであります。そして、その間、宿題でありました財政の再建でございます。

 国の一般会計においては、我々政権奪還前は、プライマリーバランスの赤字はマイナス二十五兆円であったわけでありますが、これが約半減いたしました。それは、税収が十二・二兆円伸びたからでございます。まさにアベノミクスの果実を我々は得ることができた。

 しかし、昨年の四月の消費税引き上げによって、個人消費ががくっと落ちたのも事実でございます。そこで、我々はさらなる二%の引き上げを延期したところでございます。確実に経済は回復し、そして賃金も上がっているわけでありますが、昨年の二%の平均賃上げも、三%の消費税の引き上げには、残念ながら、これは追いついていなかったのは事実でございます。

 そこで、我々は一年半延期をいたしまして、ことしの春、四月に確実にさらに賃金を上げ、来年の春、またその翌年の春も賃金を上げていくという状況をつくっていけば消費税二%の引き上げも十分に可能であろう、こう考えたところであります。

 我々は、経済の再生と財政の健全化、この二つの道を達成する、この道しかないと考えております。そして、この道を進んでいく上においても、今進めている三本の矢の政策しかない、あとはしっかりと、成長戦略、さまざまな規制改革等々がございます。こうしたものをしっかりと進めていく。

 日本に住んでいる皆さんが日本に生まれたことに喜びと誇りを持てる日本、強い国をつくっていきたい、このように思っております。

稲田委員 成長戦略と財政再建、この二つの難しい道を二つながら実現していく。私は、安倍政権でなければ、昨年の四月の消費税上げもできなかったと思っております。二〇二〇のプライマリーバランス黒字化等、大変難しい問題に向けて、財政再建と成長戦略、党でもしっかりと議論をしていきたいと思います。

 さて、総理は、第一次安倍内閣において、戦後レジームからの脱却という旗を掲げられました。

 この戦後レジームからの脱却とは、まさしく占領下において、主権が制限されていたあの時代においてつくられた日本のシステムをもう一度主権国家として見直すことだというふうに理解をいたしております。その一環として、第一次安倍内閣時代に、六十年ぶりに教育基本法を改正し、防衛庁を省に格上げし、さらには憲法改正のための道筋もつけたわけであります。

 もちろん、現在の最優先課題は経済であります。十五年以上続くデフレからの脱却の出口がようやく見えたこの日本において、そして、地方創生により全国津々浦々にまで景気回復の実感を届けていく、まさしく景気回復、経済最優先が私たちの道だろうと思います。

 しかし、一方でまた、この待ったなしの世界情勢の中で、総理の掲げられた戦後レジームからの脱却というその旗、そして、その中核にある憲法改正や安全保障法整備、さらには東京裁判史観からの脱却ということもまた重要なテーマであろうかと思います。

 こういったテーマに関し、総理はどのようにお考えなのか、お伺いをいたします。

安倍内閣総理大臣 私が従来から申し上げてまいりました戦後レジームからの脱却とは、日本は占領時代を経験しておりますが、この七年間の占領時代にさまざまな仕組みがつくられたわけであります。いわば、占領されている時代に基本的な大きな仕組みがつくられた。つまり、これは、自分たちの手でこの仕組みをつくったとは私は言えない、こう考えているわけであります。

 そして、そのよしあしはまたいろいろな議論があるんだろう、中身の議論はあるんだろうと思いますが、我々はまさに、今、二十一世紀を迎え、二十一世紀にふさわしい新たな仕組みを自分たちの手でつくっていくべきだ、このように考えておりますし、これは私の信念であります。

 例えば、教育基本法がそうであります。自分たちの手でつくっていなかったことによって、かえってこれは指一本触れられないんだ、こう考えてきたのも事実であります。教育基本法も、その結果、ずっと変えることができなかった。しかし、我々は、これはやはり、新しい仕組みを子供たちのために、未来の子供たちにつくっていく、変えていくべきだ、その信念のもとに新たな教育基本法をつくったわけでございました。これは全面改正でございました。新しい教育の目標、目的をしっかりと書き込んだところでございます。

 と同時に、憲法についてでございますが、こうしたものも含めて、政治は理念だけではなくて、理念もとても大切でありますが、結果を出していく必要があります。結果を出していくためには国民的な理解、国際的な理解も必要でありますが、特に国民的な理解と支持を得なければ大きな改革を進めていくことはできない、こう考えているところでございまして、憲法改正は結党以来の主張であり、また草案も既にできております。

 しかし、国民投票で過半数を得ることができなければ、改正という結果を得ることができないわけでありまして、そのためには、まずどこから改正をしていくか。憲法調査会で今活発な議論が行われておりますので、この憲法調査会における議論がさらに深まっていくこととともに、国民の議論が広がり深まっていくことを期待したい、こう思っているところでございます。

 安全保障法制につきましては、この国会において法整備を進めていきたい、こう思っておりますが、安全保障法制もまさに、七十年前と現在とは大きく世界は変わっているわけでございます。世界が変わったのに頭の中は七十年前のままでは、日本人の命や幸せな暮らしを守っていくことはできない、こう考えているわけであります。今を生きる私たちが、子供たちを守るための安全保障法制にもしっかりと取り組んでいきたいと思います。その上においても、しっかりと国民の皆様に丁寧に説明をしていくことが求められている、このように考えております。

稲田委員 憲法改正は我が党の党是であり、戦後レジームからの脱却は我が党の立党の精神そのものであると思います。総理の、保守政治家、そして闘う政治家として、こういった自民党らしい、また総理らしい課題にもチャレンジをしていっていただきたいと思います。

 さて、ことしは戦後七十年の節目の年です。

 総理は、五十年の村山談話、六十年の小泉談話を全体として引き継ぎつつも、未来志向の安倍談話を明らかにしたいと述べてこられました。談話に盛り込む言葉が何かではなく、談話にどのようなメッセージを込めるかが大切だと思います。

 総理は、七十年談話に、どのような日本の姿を国際社会に発信していかれるおつもりか、お尋ねをいたします。

安倍内閣総理大臣 我が国は、戦後七十年の間、さきの大戦の深い反省とともに、ひたすら自由で民主的で、人権を守り、法を尊重する国をつくり上げ、アジアや世界の友人たちの平和と発展のためにできる限りの貢献を行ってまいりました。

 戦後七十年の談話については、さきの大戦への反省、戦後の平和国家としての歩み、今後、日本としてアジア太平洋地域や世界のためにさらにどのような貢献を果たしていくのか、次の八十年、九十年、百年に向けて日本はどのような国になっていくのかについて、世界に発信できるようなものを、英知を結集して新たな談話に書き込んでいく考えであります。

 具体的な内容は、今後、有識者の皆様の御意見を伺いながら、政府として検討していく考えであります。

稲田委員 戦後の日本の平和国家の歩み、そして国際社会に対する貢献とともに、正しい歴史認識に基づく未来志向の談話を発表していただきたいと思っております。

 さて、総理は、ことしの冒頭の記者会見で、通常国会を改革断行国会とすると決意を述べられました。

 成長戦略の一丁目一番地は規制改革であると思っております。私も、規制改革担当大臣時代に、農業、医療、労働などの規制改革に取り組んでまいりましたが、昨年六月に閣議決定された規制改革実施計画に基づいて、いよいよこの国会で法案を提出する段階になっております。

 総理がこの国会を改革断行国会であるとされた理由、そして、なぜ改革がアベノミクスにとって重要であるのか、総理の改革に向けた決意をお伺いいたします。

安倍内閣総理大臣 まず、なぜ改革をしなければならないかということでありまして、私は、改革のための改革は厳に慎まなければならないと思います。改革という名のもとに、改革という行為自体に酔ったかのようにただ物事を破壊していく、これは改革の名に値しない、このように思います。

 日本は、先ほど申し上げましたように、戦後七十年を迎えました。大きく今、世界も変わり、日本の人口構成、職業構成も変わっている中において、日本を豊かな、誇りある国にしていかなければいけない、世界の中で輝く国にしていかなければならないという中においては、今までのやり方でうまくいかないものについては思い切って、この大切な日本の伝統や文化を守っていくためにも、勇気を持って改革を断行していかなければならない、こう思っているところであります。

 私は、大胆な規制改革を断行して、まさに民間のダイナミックな創意工夫の中から多様性あふれる新たなビジネスが生まれてくる、こう思っているわけであります。これが私の成長戦略の鍵でもあります。

 日本を力強く成長させていかなければ、日本は、少子高齢化社会が進んでいく中において、大切な社会保障制度を守っていく、その財源を確保していくこともできないわけでございますから、そのためにも成長していく。当然、それはやはり官主導の成長ではなくて民主導の成長、そして民間にこそ今申し上げましたダイナミックな知恵、創意工夫があるだろう、こう思います。

 このため、これまでできるはずがないと言われてきた多くの改革を次々に決断してきました。例えば、約六十年間独占が続いてきた電力小売市場の完全自由化、六十年ぶりの農協の抜本改革、患者本位で治療の選択肢を拡大する新たな制度の導入などであります。

 今通常国会を改革断行国会と位置づけまして、国家戦略特区制度も活用しながら、農業、雇用、医療、エネルギーなど、岩盤のようにかたい規制に対し、強い決意を持って改革をしていきたい、このように考えております。

稲田委員 きょうは、その中で農協改革を取り上げたいと思います。

 農業は国の基であります。そして、お米は日本人の主食、稲作は日本人の文化、そして水田は日本の美の象徴だという思いで私も農業政策に携わってきました。農業を守ることが日本を守ることだという思いで携わってきたわけでありますが、よきものを守るためには改革が必要であると考えております。

 今、自民党内では、農協改革について連日活発な議論が行われております。私も、地元福井で組合長さんや農業者の方々をお招きして意見交換をしたところであります。今回の中央会制度改革は、単位農協を強くすることであり、地方創生の重要な役割を農業者や単位農協に担ってもらうための改革であるというところの共通認識がまだまだ不十分のような気がいたします。

 これは、安倍政権が推し進めている農協改革が農協潰しであるという誤った本末転倒の宣伝が行き渡っていることによるものも原因の一つだと思っております。しかし、六十年ぶりの大改革を進めていくためには、やはり農家の方々に響かなければならない。成長戦略、所得向上といっても、なかなか抽象的な言葉では響かないというふうに思います。

 本当に改革を進めなければ、日本の農業も救えないし、そして農家も豊かになることができないとちゃんと納得してもらうことが必要でありますし、日本の農業を強くするというのは、まさしく、額に汗をして、そして第一線で農作物をつくっておられる方々がつくる実感を感じていただく、そのために地域の単位農協にも頑張ってもらいたいというのが今回の改革であります。

 パネルの一を示します。

 やや単純化した図で恐縮ですけれども、農協の組合員さんは全国で約一千万人いらっしゃいまして、その組合員さんたちで全国で約七百の単位農協が存在をし、地域で信用事業、経済事業そして共済事業などを営んでおります。

 全国農業協同組合中央会、このトップにある全国中央会、全中といいますけれども、それは全国に一つ。また、県の中央会はそれぞれ県に一つずつあり、これらの中央会は、業務は行っていませんけれども、単位農協を指導したり、情報提供したり、また監査をしたりと、JAのマネジメントを行っておられます。

 そして、一JA当たり賦課金として約二千四百万、今のは全国約七百の単位農協の賦課金ですけれども、そして、合計で年間約七十八億円の賦課金が全中に支払われていることになります。

 西川大臣にお伺いをいたしますが、この全国七百の協同組合、何のために存在するのか、教えてください。

西川国務大臣 今冒頭にお話しいただいたように、今度の農協改革は何のためにやるんだ、こういうことでありますが、私どもは、あくまでも、農家の所得をふやし、農村のにぎわいを取り戻す、これを大前提にやります。

 そういう中で、農協の果たす役割でありますが、昭和二十二年に農協ができました。それで、昭和二十年代は日本経済が低迷しておったということで、一万を超す農協が、経営が行き詰まった、こういうケースがたくさん出ました。そこで、昭和二十九年に特別な立法措置をして、全国に一つ、それから都道府県に一つ、中央会制度を置いた、こういうことでありまして、これに監査権限を与えたということは、強制監査、こういうことになって、農協経営を非常にいい方向に導いてきたと思います。それは昭和二十九年のことでありまして、農協法を改正した。

 それから六十年たちまして、当時一万を超える農協は、今、七百弱に減ってきた。こういうことでありまして、体質強化の面では非常に役に立ったと思いますが、時代が六十年たって変わってきた、新しく果たす役割は何だろうか、こういうことを今議論させてもらっております。

稲田委員 今大臣からは、この全中、中央会制度の役割もお話をいただいたわけですが、基本的に、まず、この七百の単位農協が何のためにあるかといいますと、協同組合法一条に、「農業者の協同組織の発達を促進することにより、農業生産力の増進及び農業者の経済的社会的地位の向上を図り、もつて国民経済の発展に寄与することを目的とする。」と書かれておりまして、要するに、単位の農協は、農業者が農協を利用することによって、農業の生産力を高めて、そしてメリットを得るために設立したものであるということが書かれているわけであります。

 しかし、今のJAは、信用事業で二千五百十億円の黒字、共済事業で千五百二十四億円の黒字、しかし、本業の農業の経済では千六百四十四億円の赤字という状況になっております。

 パネル二を示します。

 今大臣から主なところは言っていただいたんですけれども、農協の数は七百に減っております。また、農協の組合員さん一千万人のうち、農業を営んでおられる正組合員は四百六十一万人と半数に満たないわけであります。しかも、その四割が七十歳以上のお方であります。

 収支構造を見ましても、先ほど申し上げましたように、一JA当たりの平均値で見ましても、肝心の農業の経営は赤字で、その赤字を信用事業、それから共済事業で埋めている。お金を貸したり、保険で賄い、本来の農協設立の目的とは変わっているというのが実情であります。

 もう一度パネル一を示します。

 先ほど大臣から、中央会の制度、そして現在までの経緯についてお答えをいただいたところでありますが、この全国の中央会、県の中央会は、農協法に基づく特殊な法人であります。

 農協法の三章、農業協同組合中央会の章で、全部で三十四の条文があり、そこで指導権、監査権などさまざまな権限が法律で決められていて、そして、全国の七百のJAを統率しているわけであります。今回、この組織を自律的な新しい組織にする改革をする。そして、その目的は、全国七百の単位農協の活性化が目的であります。

 昨年の六月に、農協、農業委員会等に関する改革の推進について与党で取りまとめを行っております。

 その中で、農協法上の中央会制度は、制度発足時との状況の変化を踏まえて、他の法人法制の改正時の経過措置を参考に適切な移行期間を設けた上で現行の制度から自律的な新しい制度に移行すると書かれていて、それに基づいて今党内でも議論がなされています。

 全国中央会が自民党の農協改革等法案検討PTで資料として自己改革案を提出されましたが、その自己改革案の中でも、中央会制度は、六月の与党の取りまとめに即して、統制的権限を廃止しというふうに書かれているわけです。

 すなわち、全国中央会みずからが、みずからの統制的権限を有していることを認めて、それを撤廃するということを書かれているわけでありますので、私は、まさしく改革の方向性は何ら異なっていない、一致をしているというふうに思います。

 先ほど大臣がおっしゃったように、中央会制度が果たしてきた役割は大きかったと思います。行政が担うべきものを、一部を全中が担ってきていただいたこともまた事実であります。

 しかし、地方創生が最大のテーマになっている今の日本において、この中央集権的な組織、中央集権的な農業のあり方というのが果たしていいのかということであります。私は、そこから脱却すべきだと思っています。石破大臣が頑張っておられる地方創生とこの農協改革は、全く私は同じ理念に基づくものだというふうに思います。

 要するに、地域の自主性とか自律性が大切だということで、国から、また中央から何かを指示されて、言われたとおりにやるのではなくて、それぞれの地域が、単位農協が、自主性を持って、自律性を持って物事に当たる。受け身ではなくて、自律的に、全てを自分事として捉えて判断をして行動するという理念が地方創生の理念であり、農協改革の理念なのであります。

 こういった観点から、今の中央会制度について大臣はどう評価し、どのように改革すべきと考えておられるのか、お伺いをいたします。

西川国務大臣 昨年の六月の、与党と政府で取りまとめたわけでありますが、このときに、自律的な新たな制度で発足する、こう私どもは最後の文章を書かせてもらったんです。自律的なというときに、今持っている監査権限、あとは業務監査、金融の監査、これは本当に自律的な制度と言えるだろうか、こういう議論を我々はやってきています。それで、農協も体質はかなり強化されました。

 そういう中で、私どもは、ぜひ全中の皆さんにもわかってほしいのは、鳥のインフルエンザ、韓国では物すごい発生をしておりまして、今二百六十九カ所あるというんですよ。日本は五カ所でとまっています。これを、日曜日の深夜にもかかわらず全員集合していただいて、各県に、文章だけじゃだめだ、とにかくもう電話でやってくれ、こういうことで、職員の皆さん、本当によくやってくれました。

 さらに、米の需給バランスで価格が決まるわけですけれども、米価が低迷しています。これは、需要に応じた生産に直さない限り、どんなにお金を使っても私は体質強化につながらないと思います。

 農水省も挙げて頑張っています。そういう意味で、ぜひ全中の皆さん初め農協の皆さんにも御協力をいただいて、農業の体質強化のためにともに行動してほしい、こう考えています。

稲田委員 今大臣おっしゃったように、大変今大きな議論になっているのがこの中央会の監査であります。

 JA監査は、今、全国中央会の内部組織であるところの監査機構が、会計監査だけでなくて業務監査も行っております。農協法の七十三条の二十二で、中央会は組合の監査を行うことが法定をされています。同じく農協法三十七条の二で、信用事業を営む農協や農協連合会は監事の監査のほかに全国中央会の監査を受けなければならないと定められていて、全中の監査を受ける法的な義務がある。すなわち、JAの選択権はなくて、強制的な監査権があるというのが今の監査制度であります。

 有村規制改革担当大臣にお伺いをいたします。

 昨年の十一月に、規制改革会議として、全中のこの監査権限廃止を含む農協の見直しについて意見を提出されましたが、その受けとめと、大臣としての、この全中の監査権限についてどのようにすべきだと考えておられるか、質問いたします。

有村国務大臣 お答えいたします。

 委員が御指摘のとおり、今回の改革というのは、やはり額に汗をしている農業者の方々の実利がふえることが、みんなが持つ共通認識であるというふうに広がることが極めて大事だと思っております。

 昨年十一月に規制改革会議として提言をまとめさせていただきました。この中で、明確に私どもは、農協法から中央会に関する規定を削除して、会員のリクエストに応じて調整等を行う組織に移行していただきたい、あくまで中央会については、農業者、地域農協が自由な経済活動を行うための支援役、サポート役に徹していただくことが基本だと考えております。そして、今御指摘がありました、全中による監査の義務づけを廃止することが適切だというふうに提言を出させていただいております。

 私自身も、この方針、本当に競争力があって魅力があるのであれば、別に強制する必要が本当にあるのかどうかということを冷静に判断していただいて、規制改革の提言ということが尊重されるように議論をしていただきたい、また注力をしていきたいと考えております。

稲田委員 もう一度このパネル一を見ていただきたいんですけれども、農協の預貯金残高は九十一兆円、これはもう三大メガバンクに次ぐ大きさであります。また、共済も、JA共済の契約高は百四十五兆円ということで、日本生命に次ぐ契約高であります。民間で信用事業を行っていれば公認会計士の監査が必要となるわけでありますが、西川大臣にお伺いをいたします、透明性の確保、また単位農協の自主性を確保、確立するという観点から、どのような監査制度が望ましいと考えておられますか。

西川国務大臣 今は、農協監査士を含めて全中の公認会計士の皆さんが監査をやっておりますが、内部の人たち、関係者が監査して、業務指導と重なっておって、それで適当か、こういう議論があって、私どもとしては、公認会計士による監査制度、これを前向きに検討しています。

 ただ、党があしたまでいろいろな議論を詰めていってくれる、こういうことでありますから、それと相まってやっていきたいと思います。

 今、自己資本率は、国際的な業務をやる八%を我々は基準として、それを大きく超えているかどうか、こういうことを基準にしておりますが、農協も農林中金も、それから共済連も、全て非常に高い数字でそれはクリアしております。

稲田委員 最後に、総理にお伺いをいたします。

 昨年の六月の与党の取りまとめでは、中央会は「自律的な新たな制度に移行する。」というふうに書かれております。「自律的な新たな制度」とはどのようなものと受けとめておられるのか、改革の方向性についてお伺いをいたします。

安倍内閣総理大臣 先ほど稲田委員が紹介をされたように、農業者の平均年齢は相当高齢化が進んでいるわけでありまして、生産額が減少し、そして耕作放棄地がふえている、そういう構造的な問題が顕在化をしている中において、農業の活性化は待ったなしであります。

 消費者ニーズに対応した強い農協をつくり、農家の所得をふやしていくことが私たちの目的であります。そのためには、農家に一番近い地域の農協が創意工夫を発揮して、農産物の販売力の強化に取り組むなど、農業の成長産業化に全力投球できるようにしていくことが必要であろう、このように思います。

 このいただいた紙にある、農業者の農協に対する期待、販売力の強化を求める声が七九%で、資材価格の引き下げを求める声も八〇%あります。そうした声にこそしっかりとこたえていく必要もあるんだろう、こう思っております。

 農協の中央会制度が発足した六十年前は農協の数は一万を超えていましたが、今は七百に集約されておりまして、個々の農協も力をつけています。そうした状況が変化した中で、今後、中央会は地域の農協や農家のサポート役に徹してもらいたい、こう思っています。

 なお、昨年六月の取りまとめにおいて、中央会制度は、「現行の制度から自律的な新たな制度に移行する。」としていますが、一般論として申し上げれば、法的な裏づけがないとできないような事業を行う組織は自律的とは言えないのではないかと考えています。

 いずれにしても、若い農業者や新規就農者が自分たちの情熱や能力によって新しい地平線を切り開いていくことができるような、そういう分野にしていきたいと考えています。

稲田委員 今回の改革は、全国七百の単位農協の活動を活発にしていただくための改革です。

 そして、農協は、いかに農家の方々が汗を流してつくったよい農作物をその品質に見合った価格で販売をし、利益を農家に還元するか、そして、農機具や肥料を共同で仕入れていかに安く農家に販売するか。つまり、農業者が農協を利用することでメリットを受けられるための組織なんだという、本当に、農協法一条の精神、原点に立ち戻って地方創生の重要な役割を担っていただきたいし、担えるだけの実力があると私は思っております。

 農協改革は、決して農協潰しではありません。我が党は、まさしく農村や地域に支えられた地域政党であり国民政党であります。その意味で、今回の緊急対策では、米価下落に対してもきちんと対策を打っているところであります。

 全国の農家の方々から多くの要望が寄せられた米価対策について、この補正予算でどのような内容になったか、農水大臣にお伺いをしたいのですが、特に、既に頑張って先進的な取り組みをしている農家の方々から、今回の対策の要件を満たすためには新たな取り組みが必要とされているので、結局、今まで既に頑張っている人は対象にならないじゃないか、これでは正直者がばかを見るという御批判もあるわけであります。

 そういったところも含めて、お答えください。

西川国務大臣 私どももこれは議論しました。

 それで、今既に省力化をやったり生産費を下げるために努力している農家はどうする、こういうことでありましたが、それを拡大していただく、さらには新しい方法を取り入れていただく、そういうことで、今までやっていた人も対象になる、こういう結論に達しました。

稲田委員 私は、コシヒカリの発祥の地の福井県出身の国会議員なんです。政治家になってからも、農業政策に重点を置いて政治活動を行ってきたつもりです。農業は単なる産業ではない、農業を守って農地を守ることは、地域を守り、国を守ることだという思いで私は政策に携わってきたわけであります。

 だからこそ改革が必要なんです。私の政治信条、伝統と創造、よきものを守るために改革を進めるというその思いで、党内議論をきちんと尽くした上で、ひるまず改革を進めていきたいというふうに思っております。

 さて、待ったなしの財政再建に関連してですけれども、私は、このためには行政改革が必要だと思っております。この行政改革については、行政の無駄を徹底的に省くという観点から、民主党の時代にできた行政事業レビューというものを引き継いで、さらに改善をして基金シートというのも取り入れたわけでありますが、行革担当大臣にお伺いをいたします。

 行政事業レビューの結果、特に基金シートの取り組みと改善策についてお伺いをいたします。

有村国務大臣 お答えいたします。

 今委員御言及ありました、政権交代を経てですが、民主党政権時代におやりになったところでいいところは、しっかりと稲田前大臣のところも踏襲し、また進化をされてこられました。

 稲田大臣のときに導入された基金シートによって、平成二十五年度から、各府省が持っていた基金の執行状況やあるいは残高、余剰資金の点検をしっかりとするということが公表されて、基金の透明性というのは格段に向上をいたしました。

 具体的には、昨年十一月、秋のレビューを実施させていただきましたが、その指摘を各省庁が概算要求の予算にもしっかり反映していただいて、概算要求から実際に予算の削減額は一千億円を超えることになりました。そういう意味では、基金のレビューということをすることの実効性は上げてきています。

 百七十四ありました各府省の再点検を実施した結果、昨年十月以降にも新たに三千億円を超える国庫返納を確保することができました。

 同時に、やりながら、基金シートの改善点ということ、またそれの国民への告知ということも、まだまだ伸び代があるというふうに思っておりますので、実効性のある点検ということの取り組みをこれからも強化していきたいと考えております。

稲田委員 行政の無駄を省くためには、きちんとPDCAサイクルを回していくということが重要で、基金シートにより三千億余り国庫に返されたということは成果だと思います。

 と同時に、今回、大きな改革として、内閣府、内閣官房の見直しがあります。中央省庁等改革において内閣府を設置して、総理みずからがリーダーシップを発揮できるような仕組みを整えたわけでありますけれども、一方で、近年の政策課題が一つの省の枠におさまらないものもふえてきて、こうした課題を内閣官房、内閣府で全て抱え込むのではなくて、専門性を持った各省の力をおかりする、活用するということも必要だということであります。

 今回の内閣官房、内閣府の見直しの意義、そして各省に移管をしたことによって支障が生じないのか、有村大臣にお伺いをいたします。

有村国務大臣 お答えいたします。

 御指摘のとおり、内閣官房、内閣府に近年、省庁横断的な政策課題が増加することに伴って、業務が集中しているという現状がございます。やはり、内閣が取り組もうとしている現下の課題に応えていくためには、機動性を確保して、本来の役割を発揮できるような体制、布陣にしておくことが極めて大事だというふうに認識をしております。

 先週、与党から御提言をいただきました。そして、業務見直し、そして各省庁が内閣府、内閣官房だけではなくて調整機能を発揮するということの閣議決定をいたしたところでございます。これに伴って、今国会に関連法案を出させていただきたいと考えております。

 この見直しによって狙いとするところは、内閣官房、内閣府が、本来の役割である内閣の重要政策に集中できるような体制、戦略性を発揮できるような体制にすること、そして各省庁が中心となることで、強力に現場に近いところでの政策の推進ができるようになることを狙いとしております。

 御懸念のありました、見直しによって各省庁に移管されることで支障はないのか、あるいは不合理はないのかということでございますけれども、やはり私たちは、調整権限も内閣府、内閣官房ではなくて各省庁にも持っていただくということもしっかりと法案に組み込んだ上で、必要な予算措置、定員措置をやっていきたいと思います。

 平成十三年に省庁再編がなされました。それ以降の初めての大きな改編でございます。機動性を確保するためにはこのような改編もいとわない、不断に努力をするんだというメッセージを、またその実行力を示していくためにも、法案をしっかりと提出させていただいて、成立を見るように努力いたしたいと考えております。

稲田委員 まさしく橋本行革で入れられた、内閣の機能強化、そして内閣官房を戦略の場、内閣府を知恵の場という制度の本来の趣旨に立ち戻って改革を進めていただきたいと思います。

 さて、行政機構の見直しに関して私が注目しております、今度できる訟務局について、法務大臣にお伺いをしたいと思います。

 今回、法務省に訟務局が復活することになったわけですけれども、これにより、国が訴えられている訴訟に対する体制や方針にどのような変化があるのでしょうか。

上川国務大臣 訟務局の新設についてお触れいただきました。

 平成二十七年度の予算の政府案におきまして、訟務局の新設が盛り込まれたところでございます。

 訟務局新設の狙いでございますが、訟務機能の強化を図り、総合的な訟務対応を行うことができる体制を構築するというものでございます。

 新設された場合におきましては、局長のもとで人的配置を充実させるとともに、国の利害に関係のある争訟に関する総合的な政策の企画立案を担う課の設置ということなどによりまして、体制の整備をしっかりと図ってまいりたいというふうに思っております。

 このように整備されました新しい体制のもとで、関係行政機関に対する指揮、指導力を発揮して、国の主張、立証をこれまで以上に迅速かつ的確に行うとともに、予防司法の機能を高めて紛争の発生そのものを未然に防止すること、また、海外で提起されている訴訟等に対しましても適切な関与のあり方について積極的に検討を行うなど、より一層国民の権利利益の保護を図る方針で臨んでまいりたいというふうに考えております。

稲田委員 すごく画期的なことだと思うんです。

 というのが、国が訴えられている裁判がどんどん複雑化しておりまして、一つの省だけでは抱え切れない国際的な、例えば捕鯨の問題ですとかTPPの投資協定に関する訴訟も出てくるでしょうし、諫早湾のあの訴訟の混乱ですとか、いろいろなことを考えますと、きちんと法務省が戦略的に各省と連携をした上で国が訴えられている裁判に対応していかなければ、国益がもう守れないという時代に入ってきているというふうに思いますので、ぜひとも機能をきちんと発揮する運営をしていただきたいというふうに思っております。

 中でも、私は、弁護士時代からこだわっていた戦後補償裁判、これについても、今回の訟務局ができることで、きちんと国の名誉というものも裁判によって毀損することなく守っていくことができるのではないかというふうに考えております。

 パネル三を示します。

 御承知のとおり、朝日新聞が虚偽と認めた吉田証言があるわけでありますけれども、この吉田さんは国の法廷にも出てきておられたわけであります。そして、国の法廷で証言台に立ったんですが、全く国の代理人は反対尋問もしない、事実関係も争わないんです。戦後補償裁判について、戦後補償裁判というのは、戦時中の日本の非道な行為によって損害を受けた、そういう裁判ですけれども、そういう事実について全く争わないどころか認否すらしない、証人に対して反対尋問の一問もしない。

 事実はどちらでもいいんだ、法的に勝てさえすればいいというのがずっと今までの訴訟の方針で、そして、裁判では争わないことは事実なんです。弁論主義、当事者主義がありますから、裁判では、争わなければ、それが事実として判決の理由中に書き込まれてしまうということが、非常に日本の名誉を毀損してきたわけであります。

 その結果、今大変懸念すべき事態がアメリカで起こっておりまして、党の中の、中曽根委員長のもとで、日本の名誉と信頼を回復するための特命委員会でも取り上げたんですけれども、アメリカのマグロウヒル社の教科書。

 これはアメリカのカリフォルニア州の公立の高校で使われているわけでありますが、慰安婦に関して、軍用売春宿で働かせるために、最大で二十万人にも及ぶ十四歳から二十歳までの女性を強制的に募集をしたんだ、そして、それらは天皇からの贈り物だということで軍隊に供用したんだと。

 そして、この売春サービスに強制的に組み込まれた慰安婦の方々は、多くが殺害をされて、そして、戦争の終結に当たっては、慰安婦活動をもみ消すために多数の慰安婦が殺害されたという、全く事実に反する、虚偽の、日本の名誉を毀損する、私たちの先人が強姦、殺人、誘拐犯の集まりだということをアメリカで教えられております。

 南京事件についても、日本軍は二カ月以上にわたって、七千人の女性を強姦して、数十万人の非武装兵士と民間人を殺害して、四十万人の中国人を殺したという、東京裁判にすら書かれていないことがアメリカの教科書で教えられているわけであります。

 これは決して過去の問題ではなくて、私は、現在進行形の、例えばアメリカにいる日本の子供たちの人権が侵害されているものだというふうに思っております。

 こういう事態に立ち至った一つの原因が、やはり、繰り返される戦後補償裁判で、国が全く事実関係を争わず、それが全部判決の中に書き込まれ、そして、それが権威のある日本の裁判所の判決の中の事実認定だというところに大きな原因があると思います。

 しかも、法律論で日本では勝っても、今や韓国の最高裁判所が、日本の植民地支配を正当化するようなことを前提とした日本の裁判はもう無効だということで、新たに韓国で、日本の、今度は企業が訴えられて敗訴するといった事態が韓国でも中国でもあり、それが、日本の裁判所の判決の理由中に書かれたその事実認定を全く争わないがために、虚偽の事実が書かれている判決が重要な証拠になっているということを私は見過ごすことができないんです。

 法務大臣にお伺いをいたしますが、今回、この訟務局をつくることによって、そういった対応が是正されるのかどうか、そして国の名誉を守るための訴訟活動ができるのかどうかについて、お伺いをいたします。

上川国務大臣 御指摘のいわゆる戦後補償に係る訴訟に関してでございますが、日韓請求権協定や日華平和条約等によって解決済みで、原告らの請求に理由がないことが法的に明らかであるということが大変多いということもございまして、これまでは御指摘のような訴訟方針をとってきたものというふうに理解をしておるところでございます。

 もっとも、今般の訟務局の新設によりまして、みずからの体制を整備して、その能力をより一層向上させるとともに、先ほど御指摘ございましたとおり、関係行政庁を強力に指導、統率しながら訴訟対応することを目指していかなければならないというふうに考えております。

 そこで、今後、従軍慰安婦訴訟などの我が国の名誉と信頼にかかわる戦後補償に係る訴訟が提起された場合におきましては、戦前の事実でありますので、種々の困難が伴うものとは思いますけれども、事実調査をし、その結果を踏まえ、認否、反対尋問することも含めまして、より主体的、積極的な姿勢で訴訟に臨むことができるように努めてまいりたいというふうに考えております。

稲田委員 大変前向きな答弁をありがとうございます。

 最後に、総理にお伺いをいたしますが、こういったいわれのなき日本に対する名誉毀損というのは、私はこれを正していくことも国益だというふうに考えておりますし、政治の責務だと思っております。訟務局が設置されることもあり、また外交を通じて日本の正しい姿を発信していく必要があると思いますが、お考えをお伺いいたします。

安倍内閣総理大臣 先ほど、この資料、マグロウヒル社の教科書を拝見いたしまして、私も本当に愕然といたしました。主張すべき点をしっかりと主張してこなかった、あるいは訂正すべき点を国際社会に向かって訂正してこなかった結果、このような教科書が米国で使われているという結果になってきた。

 国際社会においては、決してつつましくしていることによって評価されることはないわけでありまして、主張すべき点はしっかりと主張していくべきであり、また、現在、日本の名誉に重大な影響を与える訴訟も増加しているのも事実であります。そうした訴訟に対応していくためにも、訟務局を新設し、戦略的にしっかりと取り組んでいきたいと思います。

 また同時に、外務省におきましても、外交におきましても、国際社会の正しい理解を得るべく、今後とも我が国の国益の実現に資するよう、戦略的かつ効果的な発信に努めていきたい、このように思います。

稲田委員 ありがとうございます。期待をいたしております。

 最後に、石破大臣、今回の補正で、地方創生、非常に私は新しいと思うのは、内閣府の大臣の本部に受け付けて、受け付けるだけでなくて、きちんと執行もするということ、そして、三百億はめり張りをつけたものになっている、このPDCAサイクルをしっかりと回していただきたいんですが、いかがでしょうか。

石破国務大臣 委員御指摘のとおり、プラン、企画づくり、そして実行のD、ドゥーですね、そしてチェックのC、そしてそれを見てリニューアルをし改善するというアクションのA、このPDCAの中で皆で参画しなきゃいかぬ。そんなものは市役所がつくるんでしょう、町役場がつくるんでしょうじゃない。そこの地域の方々、多くの方々が参加してプランをつくり、そうであるからにはみんなで実行する。一番大事なのはCだと思うんです、チェック。それがどのような効果をもたらしたかということをそれぞれの自治体において、何を達成するんだということを自由につくっていただく。宿泊観光客なのか、農業の生産額なのか。それが達成できたかどうかをきちんとチェックする。これによってばらまきをとめるということだと思います。

 私は、このPDCAサイクル、議員がおっしゃいますように、それをきちんと回すのは、地域において責任を持って回していただく、これが一番肝要だと承知をいたしております。

稲田委員 アベノミクスの効果を一日も早く全国津々浦々に届けるよう、党の英知を結集して政策議論に携わってまいります。

 総理におかれましては引き続きリーダーシップを発揮していただくことをお願いして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

大島委員長 この際、松本純君から関連質疑の申し出があります。稲田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。松本純君。

松本(純)委員 自由民主党の松本純です。

 稲田政調会長も触れられましたISILの件につきまして、新たなメッセージが流れたとの報道がなされております。総理におかれましては、政府の対応について、改めてお尋ねをしたいと存じます。

安倍内閣総理大臣 新たなメッセージについては、情報には接しております。現在確認中でございますが、いずれにせよ、一日も早い邦人の解放に向けて全力を傾けてまいります。

松本(純)委員 ぜひ政府におかれましては、引き続き、テロとの闘いに屈せず、また、解放に向けて全力を尽くしていただきたいと存じます。

 さて、思い返せば、現在審議されております補正予算の端緒は、安倍総理が昨年十一月十八日に経済対策の策定準備を指示されたことであります。そして、その日に総理は記者会見を開き、衆議院の解散を表明されました。

 国民の皆様の御支持をいただき、自公両党で引き続き政権を担わせていただけることになりましたが、選挙戦を通じて、景気回復、この道しかないと訴えを続けた我が党にとりまして、この補正予算は公約実現の第一歩ともいうべきものではないでしょうか。一日も早い成立に向け、緊張感を持って質問に臨ませていただきたいと存じます。

 補正予算についての具体的な質問に入る前に、農政に強い思いを持ってこられた稲田政調会長の手前、僣越ではございますが、私も農協改革について一言申し上げさせていただきたいと存じます。

 どうしても、岩盤規制だとか、改革、改革と言うと、農協潰しだとか、地域の農業を切り捨てるとか、そういった誤ったイメージが先行しがちであります。しかし、政府・与党が一丁目一番地としている地方創生のためには、地方でこそ力を発揮できる農業を強くしていくことは絶対欠かせません。まだまだ農業や農村には潜在的な力が眠っていて、それを最大限発揮させていくことが必要であります。ぜひとも、農協改革が地域の農協や農業者にメリットのある、地域の農業を元気にするために進められる改革だというメッセージを強く出していただきたいと存じます。

 不安を抱いている農業者に御安心いただけるよう、誰のための改革なのか、農業者に具体的にどうメリットがあるのか、いま一度わかりやすく御説明いただけるとありがたいと存じます。安倍総理大臣、よろしくお願い申し上げます。

安倍内閣総理大臣 農業においては、既に農業従事者の平均年齢は高齢化が進んでいるわけでありまして、その中で、生産額は減少しているわけでありますし、また、耕作地も耕作放棄地が増大をしている。こういう構造的な大きな問題があります。その意味におきましては、我が国の農業の活性化は待ったなしであろうと思います。

 このため、安倍内閣では、農地集積バンクによる農地の集積を行い生産性を上げていく、さらに、輸出促進や六次産業化の推進など、生産性を上げていくとともにマーケットを大きくしていく、そしてさらに、付加価値をつけて農業者の所得をふやしていく、そうした改革を進めていかなければならないと思います。

 こうした改革は今までやっていないわけでありますから、つまり、全てをやった上において農業が衰退をしているのではなくて、販売努力、あるいは海外への輸出努力、あるいはまた付加価値をつけていく努力、ブランド化をしていく努力等々、また、六次産業化をしていく努力、まだやっていない努力、もちろん、これに既に手をつけている人たちがたくさんいるのは私も承知をしておりますが、まだまだやっていないところもたくさんあるわけでありますから、そういう意味においては、十分にまだ可能性は秘めている、私はこう思うわけであります。

 この可能性を引き出していくのは、やはり農家に一番近い地域の農協が中心になって創意工夫をしていくことではないかと思います。農産物の販売力の強化に取り組むなど、農業の成長産業化に全力投球できるようにしていく観点から、農業者の視点に立った農協の抜本改革を断行していきたい、こう考えているわけでありまして、こうしたことを行うことによって農業者の所得倍増を目指していきたいと思っています。

 例えば、農林水産物の輸出額でございますが、農林水産物については輸出をふやしていくのは無理だ、こう言われていたわけでありますが、平成二十五年には過去最高の五千五百億円、我が党が政権をとってこの方針を進め始めてから、前年よりもこれは一千億円ふえているわけであります。四千五百億円から五千五百億円にふえているのは事実であります。さらに、平成二十六年も前年を上回る見込みであり、我が国の安全でおいしい農水産物は、国内の消費者はもちろん、世界の人々にも評価されているのは間違いないわけでございます。

 私も外に、海外出張に行くたびに必ず日本の農水産物を持って紹介をしているわけでありますが、必ず大好評になっているわけでありまして、もっともっと我々は、日本の農業、農産物のすばらしさ、おいしさ、安全性を発信していきたい、こう思います。そして、消費者のニーズに応えた強い農業にしていくことも必要だろう、このように思うわけであります。

 そういうことを、ありとあらゆることにこれから挑戦をしながら、若い皆さんにとっても、この農業という分野は本当に可能性に満ちあふれているなと思ってもらえれば、新たな農業人口の参加が見込まれる、こう思うところでございます。

 今後ともこうした改革を皆様とともにしっかりと進めていきたい、農業にかかわる方々とともに進めていきたい、このように思っております。

松本(純)委員 ありがとうございました。

 農協改革を初めとする農政の推進は、地域のため、農家の方々のために進められるものと思いますので、よく御説明をいただいて、また国民の皆様にもよく御理解をいただきながら、しっかりと農業者に寄り添った改革を実現していただきたいと存じます。

 それでは、補正予算の具体的な質問に移ります。

 先ほど稲田政調会長が地方創生への配慮について触れられておりましたが、この補正予算の第一の特徴は、まさにこのように重点分野を定めて、そこに徹底した対策を講じている点だと思っております。

 私がまず強調したいのは、非常に充実した中小企業対策が講じられている点であります。

 原油価格こそ下落しておりますが、円安による材料価格の高騰に引き続き直面している企業を初め、業種、地域、規模によって業績回復状況はまだら模様であり、地域経済を支えている中小企業の景気回復はおくれていると言わざるを得ません。

 今回の補正予算による経済対策全体の規模は三・五兆円と、一年前の平成二十五年度補正予算の五・五兆円と比べると抑制されておりますが、中小企業対策は三千億円台を保っており、遜色のない規模だと言えます。その内容も、資金繰り対策、ものづくり支援、地方創生関連など多岐にわたっております。

 まず、この中小企業対策予算の内容及びそこに込められた狙いについて、宮沢経済産業大臣に御説明をいただきたいと存じます。

宮沢国務大臣 今委員御指摘のように、アベノミクスの成果がなかなか感じられないという中小企業の方が大変多くいらっしゃることは事実であります。そして、やはり、このアベノミクスの成果を全国津々浦々に、そして中小企業の方、また小規模事業者の方に感じていただくということが何より大事なことだと思っております。

 そういう観点から、今委員おっしゃいましたように、今回の補正予算では三千十三億円の中小企業対策費を計上しております。

 まず、中小企業対策の基本は金融でございますけれども、今おっしゃいましたように、円安によって原材料が高くなっている。また、円安によって、製品を輸入して販売されている中小企業者の方もいらっしゃる。さらに、電気料金は、産業向けでもう既に三割上がっている。こういう状況を、何とか資金繰りを支援しなければいけないということで、政策金融公庫、さらに商工中金に新たな低利融資制度を創設するなど、資金を重点的に配分しております。

 次に、地域経済活性化のためには地域資源の掘り起こしが重要ということで、ふるさと名物の開発等についても新たな資金を計上しております。さらに、イノベーションに取り組む中小企業、小規模事業者への支援も重要でございまして、このために、ものづくり・サービス補助金を一千二十億円計上しております。

 また、小規模事業者から大変要望が強いいわゆる小規模事業者持続化補助金など、小規模事業者の販路開拓支援に二百五十二億円を計上しております。

 これらで三千億円強でございますけれども、それ以外に、省エネ設備の導入補助金九百三十億円を計上しておりますが、この中で、特に中小・小規模事業者の方が利用しやすいようにという観点から、補助対象機器の範囲を明確にするといったことで、大変使いやすい制度として用意をいたしております。

 これらを通じまして、何とかアベノミクスの成果を地方に、そして中小企業の方に感じていただくために、最大限努力したいと思っております。

松本(純)委員 今回の補正予算は、中小企業対策ばかりでなく、個人消費や住宅投資といった景気の脆弱な部分に重点的に対応した結果、従来型の公共投資重視とは趣が異なり、生活者支援という性格が色濃いものとなっております。

 プレミアム商品券の発行支援等のための地方団体への交付金という発想も斬新ではありますが、消費税率の八%上げ以降冷え込みが続いていた住宅市場への対策が講じられたことも注目に値するところであります。

 これらの対策が、マイホームを持ちたいという国民の皆様の希望を後押しし、業績不振に苦しむ地場の工務店にとって福音となることを期待してやみません。

 そこで、今回の住宅市場活性化策の内容とその期待される経済効果について、太田国土交通大臣に御説明をいただきたいと存じます。

太田国務大臣 住宅市場につきましては、住宅着工戸数が、一昨年は、駆け込みもありました、九十八万戸を記録しました。かなりふえたわけです。去年は、四月からの消費税上げということもありまして、八十九万程度、最終的には数字はもう少し細かいんですけれども、に上る、このように予測をされているところで、約九万ほど少ないという状況です。特に、持ち家については依然として低迷をしている。

 しかし、今、松本先生がおっしゃったように、住宅は、一人一人のマイホームを得たいという方にとっても非常に大事なものでありますとともに、景気、経済ということからも非常に波及効果が多いということで、手を打たせていただいております。

 三つあります。

 大きく三つあるわけですが、一つはフラット35S、これについて金利の引き下げ幅を拡大するということでございます。

 省エネ住宅に関するポイント制度の実施ということもやらせていただいておりまして、省エネ住宅の新築や省エネリフォームに対してさまざまな商品券と交換できるということでございます。

 また、税制上の措置としましても、住宅取得資金に係る贈与税、この非課税措置を拡大させていただいて千五百万円、消費税を上げた後には三千万円ということを決めさせていただいているところで、かなりてこ入れをして、住宅市場の活性化というところに手を入れた内容となっているところでございます。

松本(純)委員 ありがとうございました。

 次に、今回の補正予算の第二の特徴は、未来志向であると私は思っております。

 今回の補正予算では、家庭用燃料電池、エネファームや燃料電池自動車の購入支援、さらには水素ステーションの整備費用など、将来を見据えたエネルギーコスト対策が盛り込まれておりますが、改めてその意義を宮沢経済産業大臣に御説明願います。

宮沢国務大臣 現在、我が国のエネルギー自給率というのはわずか六%、九四%を輸入、化石燃料を輸入している、こういう状況でございます。

 将来的に、やはり水素というものは我が国にとりまして大変大事なエネルギー源だと思っておりまして、ぜひ水素社会を早く実現するようなお手伝いを国としてもしていかなければいけないという観点から、今お話がありましたように、昨年六月に水素・燃料電池戦略ロードマップというものを経済産業省において策定して取り組んでおります。

 そして、今回の補正予算におきましては、家庭用燃料電池、いわゆるエネファームにつきまして二百二十億円少し、また燃料電池自動車の購入補助につきましても百億円、そして水素ステーションの整備支援ということで百億円弱という予算を計上しております。

 エネファーム、家庭用燃料電池につきましては既にもう十一万件普及しているということでございますので、さらに背中を押していかなければいけないし、また燃料電池自動車も、昨年十二月、世界に先駆けて初めて市販をされております。

 そのためにも、燃料電池車に対する補助金、また水素ステーションの整備が急務でございまして、こういうことをしながら、やはり日本を水素エネルギーの一大先進国にしていかなければいけないと思っております。

松本(純)委員 ありがとうございます。

 さらに申し上げますと、今回の補正予算では、私たちが総選挙でお約束をした復興の加速化も実現させております。いまだ二十三万人もの方々が、避難先で四年目の冬を過ごしておられます。現地では、住まいの再建に向けた工事が着実に進み、一部公営住宅が完成するなど、復興のつち音は確かに聞こえています。一日も早く自宅で暮らすことができるよう、さらなる工事の加速をお願いいたします。

 一方で、原発事故被災地の多くは、いまだ復興の段階にはありません。今回の補正予算では、対策規模三・五兆円のうち実に一兆円を復興加速化に充て、このために、アベノミクスの成果ともいうべき税収上振れ分によって生じた前年度決算剰余金を活用しております。

 そこで、竹下復興大臣にお伺いします。

 福島の復興を進めるために、今回の補正予算ではどのような対応をされたか、また今後どのように対応される方針か。さらに、平成二十七年度で五年間の集中復興期間が終わります。しかし、現地での事業は二十七年度では終わりません。二十八年度以降の予算確保についてのお考えについても御見解を伺いたいと存じます。

竹下国務大臣 御指摘いただきましたように、津波と地震のエリアについてはかなり復興のつち音がはっきり聞こえ始めているなと私自身も感じておりますが、福島につきましては、残念ながら、緒についたばかりと言わざるを得ない現状にございます。

 しかし、何としてもこの復興を加速していかなければならないという状況の中で、今回の補正予算では、中間貯蔵施設を建設するために、地域のさまざまな、生活環境の整備ですとか地域の振興ですとかに役立てていただけるような二千五百億円の交付金を交付することといたしておりまして、これは自由度の高いものでございますので、しっかりと使って地域の活性化の礎にしていただきたい、こういう願いを込めております。

 そして、それだけではなくて、福島復興特措法という法律をつくっていただいておりますが、それを改正いたしまして、福島の再生を加速する交付金を面的な整備にもしっかりと使えるように法律の改正をいたしまして、加速化を促進していかなければならない、このように考えておるところでございます。

 それから、集中復興期間が終わった後のことについてのお尋ねもございました。

 今、現時点では、我々は、ともかく二十六年度補正予算、そして、近く提出させていただく二十七年度予算を成立させていただいて復興にしっかりと役立てていきたいということで、全力を注いでおります。

 そして、その上で、二十八年度以降につきましても、集中復興期間が終わったら復興が終わるなんということはあり得ません。安倍内閣の一丁目一番地の政策だと総理もたびたびおっしゃっておりますように、復興をきちっとやり遂げるまでやっていくのが復興であるというのが私たちの基本的な認識でございます。

 しかるべき時期に、何ができていて何ができていないか、あるいはこれからどういうことをやっていかなければならないかと、しっかりと見直した上で二十八年度以降も復興をやり抜いていくという決意でございます。

松本(純)委員 これほど翌年度当初予算との関係が透明化され、また財政規律の制約を受けた補正予算の編成はこれまでなかったかと思っておりますが、平成二十六年度補正予算と財政規律の関係について、改めて、編成に携わられました麻生財務大臣の御見解なり御感想をお尋ねします。

麻生国務大臣 御指摘のありましたように、平成二十六年度の補正予算が繰り越されるということになりますと、平成二十七年度の国、地方の財政計画なり基礎的財政収支に影響を与えるということになりますので、二十七年度の財政健全化目標、プライマリーバランス半減という目標がございますので、平成二十六年度の補正予算の規模というものはよくよく考える必要があったところであります。

 そこで、補正予算におきましては、先ほど経済産業省の方から話があっておりましたが、景気のいわゆる脆弱な部分と言われる中小企業等々に的を絞るということと、財源の一部を歳出に充てずに、いわゆる公債金の減額に充てるということをやらせていただいて、二十七年度の基礎的財政収支への悪影響を最小限に抑えることができたということだと思っております。

松本(純)委員 いよいよ時間もなくなってまいりまして、最後に安倍総理にお尋ねをしたいと思います。

 昨年末の経済財政諮問会議では、歳出改革には適正なスピードが必要とのお考えも示されています。そこで、財政健全化計画に向けて、総理としては、これまでの安倍内閣における社会保障予算への取り組みをどう総括し、社会保障を初めとする歳出改革を今後どのように進めていかれるのか、最後に安倍総理にお尋ねをしたいと存じます。

安倍内閣総理大臣 財政の健全化を進めていくためには、デフレから脱却をして、しっかりと経済を成長させ、税収をふやしていく。同時に、歳出を見直しをしていく、削減すべきものは削減していかなければならないと思います。

 そして、歳出におきましては、最大の項目については社会保障分野になるわけでございます。安倍内閣の三カ年の予算編成においては、生活保護の見直しや、診療報酬改定や介護報酬改定を通じて社会保障の自然増を見直すなど、歳出の重点化、効率化を進めてまいりました。

 社会保障というのは、まさに人生のセーフティーネットであり、極めて重要であります。この機能を失ってはならないわけでありまして、この機能をより効果的にしていく、そしてサービスの水準を落とさずに無駄は省いていく、常に改革努力をしていく必要があるだろうと思います。

 こうした取り組みもあって、二〇一五年度の財政健全化目標の達成が見込めるところでございます。二〇二〇年度の財政健全化目標についてもしっかりと堅持をし、本年の夏までにその達成に向けた具体的な財政健全化計画を策定することとしております。その際、歳出改革については、引き続き、社会保障の自然増を含め、聖域なく、歳出の徹底的な重点化、効率化を図っていく考えでございます。

松本(純)委員 ありがとうございました。終わります。

大島委員長 これにて稲田君、松本君の質疑は終了いたしました。

 次に、石井啓一君。

石井委員 おはようございます。公明党の石井啓一でございます。

 まず、シリアでの邦人拘束事件についてお伺いいたします。

 いわゆるイスラム国と称するテロ組織に拘束されていた湯川遥菜さんが殺害されたとする動画がネット上に流されました。事実とすれば、許しがたい言語道断の残虐行為であり、強く非難をいたします。

 さらに、二十七日の深夜には、後藤さんと見られる写真と音声メッセージがネット上で公開をされまして、二十四時間以内にテロリスト側が要求する死刑囚との交換を要求してきました。

 既に二十四時間経過をして、大変心配をしていたところですが、報道によりますと、けさ、後藤さんと見られる新たな画像がネット上に流されまして、二十九日の日没まで、本日の日没までにテロリストが釈放を要求する死刑囚がトルコ国境に移送されなければ、ヨルダンのパイロットが殺害される、こういう警告が流されている、そういう報道に接しております。

 政府においては、テロに屈しない対応とそれから人命の尊重、非常に難しい対応を迫られていらっしゃいますけれども、公明党としては、政府の対応を強く支持していきたいと思っております。政府には、ヨルダンを初め国際社会との連携を一層強めながら、後藤さんの早期解放に全力で取り組んでいただきたいと思います。

 人命や外交にかかわる機微な問題でありますから、詳しく説明できないとは思いますけれども、多くの国民が心配をしていらっしゃいますので、後藤さん解放に向けた最新の状況を総理にお伺いいたしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 政府としては、人命第一に立って、これまで培ってきたあらゆる外交チャンネル、ルートを最大限活用いたしまして、早期解放に向けて全力で取り組んでいるところであります。

 私自身も、中東訪問中を含め、帰国してからも、各国の首脳との電話会談を通じ、情報の収集、協力の要請を行ってきているところでございまして、各国からは、最大限の協力について約束をしていただいているところであります。

 昨夜、ヨルダン広報担当国務大臣が、ヨルダン軍パイロットを解放するならばサジダ死刑囚を釈放する用意があるとの声明を発表しました。

 さらに、けさ、ISIL側から発出されたと見られる新たな声明がインターネット上に配信されたことを受け、現在、その内容を早急に分析しているところでございます。

 事柄の性質上、具体的な内容を申し上げることはできませんが、政府としては、極めて厳しい状況の中、ヨルダン政府に協力を要請してきておりまして、引き続き、後藤さんが早期に解放されるよう、全力を尽くしていく考えでございます。

石井委員 現在はまだ事態が進行している最中でございますので、多くの説明はできないというふうに思いますけれども、事態が一段落した段階で、政府として今回の事態への対応を検証していただきまして、改めて我々国会側にも説明をしていただきたいと思っております。

 同じくテロ関係でありますが、フランスでは、イスラム教を風刺した新聞社へのテロ事件が発生をいたしまして、関連事件を含めて十七名が死亡しております。これは、フランス国内で過去五十年で最悪のテロ事件となったようでありますが、シリアでの邦人拘束事件、フランスでのテロ事件を受けまして、我が国においてもテロへの警戒を強める必要がございます。

 テロリストの入国を防ぐ厳しい入国審査、また海外の危険な地域に渡航する邦人への注意喚起など、テロ対策の強化について政府の取り組みを総理にお伺いいたしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 御指摘のとおり、フランスでの報道機関に対するテロ、あるいはベルギーにおける大規模なテロのいわば準備が行われていたという事案もございました。世界ではテロの脅威が増大しているものと認識をしています。

 政府としては、こうした厳しい状況を踏まえまして、国際社会と緊密に連携し、不穏動向の早期把握に向けた情報収集、分析の強化、海外に渡航、滞在する邦人の安全の確保に向けたホームページ等による迅速な情報提供、そしてテロリストの入国阻止などに向けた関係機関の連携による水際における取り締まりの徹底、空港、公共交通機関などの重要施設の警備、警戒の実施などを推進し、政府一丸となってテロの未然防止に万全を尽くしていく考えであります。

石井委員 よろしくお願いいたしたいと思います。

 続いて、日韓関係についてお伺いしたいと思います。

 本年は、戦後七十周年であるとともに、日韓国交正常化五十周年に当たります。

 先日、韓日議員連盟の徐清源会長一行が来日されまして、一月十五日には、官邸で安倍総理と会談をされました。私も同席をさせていただいたところであります。

 総理は、国交正常化五十周年の本年をよい年にしたい、こういうふうに御挨拶をされまして、徐清源会長からは、国交正常化五十周年の年を両国関係の新たなスタートとしたいという朴大統領からのメッセージが伝えられたところであります。

 ただ、徐清源会長は、慰安婦の方々の名誉回復がなされれば関係改善はうまくいくと主張されました。それに対して、総理からは、河野談話を継承し、見直すことは考えていないが、慰安婦問題を政治問題化すべきではない、こういうふうにお答えになりまして、必ずしもやりとりがかみ合ったとは言えない状況でございました。

 慰安婦問題をどのように扱うのか、これは極めて難しい課題ではありますけれども、国交正常化五十周年という節目の年に日韓首脳会談をぜひ実現していただきたいというふうに考えております。

 日韓両国の議員交流によっても後押しをしていきたいというふうに思っておりますが、日韓首脳会談実現に向けた総理のお考えを伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 日韓関係は、ことし、正常化して五十周年を迎えるわけでございまして、五十周年にふさわしい年にしていきたい、こう思っております。

 韓国は、戦略的利益を共有する大切な隣国であります。日韓間には難しい問題もありますが、だからこそ、前提条件をつけずに、首脳レベルでも率直に話し合うべきだというのが私の考え方でございまして、つまり、日本は、常に対話のドアはオープンにしているわけであります。

 昨年の十一月、北京で開かれたAPECの晩さん会で、朴大統領と隣り合わせになったところでございますが、率直な意見交換を割と長い時間行うことができました。

 その後、朴大統領から、日中韓三カ国の外相会議を早期に開催し、首脳会議につなげていきたいというお話がございまして、私からも、協力したい旨お伝えをしたところでございます。

 日中韓の外相会議、首脳会議の開催に向けて、議長国が韓国でございますが、議長国の韓国を中心に関係国の努力が前に進んでいくことを期待しているところでございます。

 大局的な観点から、日韓は話し合うべき課題はたくさんあるわけでありますし、日韓が協力をしていくことは両国にとっての国益だろう、このように思います。未来志向の日韓関係を構築すべく、お互いに努力を重ねていきたい、このように思っております。

石井委員 局長級の事務協議も続けられているようでございますけれども、公明党としてもできる限りの協力をしてまいりたい、このように思っております。

 続きまして、テーマをかえまして、昨年の総選挙の結果を踏まえまして、内閣の基本姿勢についてお伺いをいたしたいと思っております。

 昨年十二月の衆議院選挙では、自民党、公明党の合計で三分の二を上回る多数の議席を得ることができました。引き続き、自公の連立で政権運営を担うことになったわけでありますが、最大の争点は経済政策でございました。これについては、いわゆるアベノミクスの継続、進展が信任を受けたというふうに思っております。

 ただし、有権者は、アベノミクスの利益をそれほど享受しているわけではないけれども、野党に明確な対案があるわけでもなく、もうしばらく様子を見ようといったところではないか、こういった指摘がございます。私も、有権者に接して同様の感触を得ております。

 すなわち、アベノミクスの成果が全面的に評価されたというよりも、成長の成果を全国各地域に、中小・小規模事業者に、また家計にもたらしてほしい、実感できる景気回復を実現してほしい、こういう期待がもたらした選挙結果というふうに私は思っております。

 衆院選の結果をどのように受けとめていらっしゃるのか、総理の御見解を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 この選挙の結果でございますが、日本は十五年にわたってデフレ不況に苦しんできたわけでございます。給与は下がり、国の地位も低下している、この状況を変えてもらいたい。

 我々は、この二年の間に、デフレではないという状況を三本の矢の政策、異次元の政策でつくり出すことはできました。そして、その成果として、例えば雇用においても、二十二年ぶりの有効求人倍率の高水準を実現しておりますし、高卒の皆さんの内定率も一〇%以上向上しているわけであります。そして、何といっても、昨年の四月、賃上げ平均で二%、十五年間において最高の水準になったわけでございますし、倒産件数も着実に減っているわけでございます。

 このような成果を上げているわけでありますが、まだまだ実感できないという方もたくさんいらっしゃるのは事実であります。地方の方々、あるいは中小企業の方々もそうです。

 ただ、同時に、中小企業においても、六〇%の中小企業は賃上げは行っていますが、しかし、それは当然、大企業の平均よりは低い。かつ、消費税を三%引き上げたわけでございますから、二%収入が上がったとしても、それは物価安定目標に伴う物価の上昇には追いついているんですが、消費税の三%分を補うほどにはなっていないのは事実でありますから、当然そのように感じておられる方々がたくさんおられるのだろう、こう思います。

 まさにここからが正念場。ここからが正念場だということを多くの国民の皆様も共感していただいているのではないか。つまり、しっかりと今までの政策を前に進めていきながら、地方においても、中小・小規模事業者の方々においても、そこで働く汗を流している方々においても実感できるようにちゃんとやっていけということではないか、このように思います。

 特に、地方の創意工夫を全力で応援する、このことに対しての期待はある、こう思っておりますので、昨年末に地方創生の総合戦略を策定し、雇用の創出、地方への人の移住、定住、安心して暮らせるまちづくりの実現を目指したさまざまな支援策を取りまとめたところでありますが、しっかりとこれを実行していきたい、このように思うところでございます。

 同時にまた、中小・小規模事業者に対しては、地域資源を活用したふるさと名物の開発、販路開拓を応援するとともに、原材料高に苦しむ事業者への支援や、ものづくり・サービス補助金による支援も実施をしてまいります。

 これに加えて、地方への人材還流、企業の拠点の地方移転など、国のさまざまな支援策を活用しつつ、地方において地方版総合戦略を策定し、実施していただきたい、こう思うところでございます。

 こうした取り組みによって、人が主役の地方創生を推進し、この地域に住んでよかったと実感できる地域社会を目指していきたい。

 このような政策を進めていくことは、まさに今回の選挙において国民の皆様から示された声ではないか、このように思っております。

石井委員 有権者は、もうしばらくアベノミクスをやらせてみようという気持ちだと思っております。

 実感できる景気回復実現への強い期待に応えなければいけないという点で、総理がおっしゃっているように、まさにアベノミクスは正念場を迎えている、こういうふうに思っております。政府・与党は、しっかり景気・経済対策最優先で取り組んでいきたい、このように思います。

 ところで、アベノミクスに対しては、大都市と地方、また大企業と中小企業、正社員と非正規社員との格差を拡大させているという批判がございます。

 これは、衆議院選挙の際からそういう批判がございますが、政府としては、まず、足元のこの景気足踏み状態を解消、克服するための緊急経済対策を盛り込んだ補正予算を早期に成立、執行していく。続いて、来年度当初予算や税制改革案を早期に成立、執行させていく。さらに、春闘の機会等を通じて、収益を上げた企業が賃金引き上げや設備投資を拡大していく。経済の好循環を続けていく。また地方創生による地方経済の活性化、また成長戦略による新産業、新事業の育成、こういったことを通じて、成長の成果を全国各地域に、中小・小規模事業者に、また家計に波及させていく。そのこと自体がそのまま格差批判に応えることになるというふうに思っております。

 総理の御認識をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 安倍内閣におきましては、経済の好循環を確かなものとすることによって、幅広い方々に景気回復の実感をお届けすることができると考えています。そのための三本の矢の政策を進めていきたい。

 例えば、雇用環境については、二年連続で最低賃金の大幅引き上げを実施いたしました。パートタイム労働者について、正社員との均等・均衡待遇を推進しているところであります。

 さらに、政労使会議の合意において、非正規雇用労働者のキャリアアップや処遇改善に向けた取り組みを今後も進めていくこととしているところでございます。

 また、地方への人の流れをつくるために、地方への移住を支援する施策の推進、企業の地方拠点の強化や、地方採用、就労の拡大、地方大学の活性化などに取り組むこととしております。

 そして、今回の経済対策は、個人消費のてこ入れと地方経済を底上げする力強い対策となっています。

 具体的には、平成二十六年度補正予算において交付金を創設して、例えば所得の低い方に向けた灯油等の助成やお子さんの多い御家庭の支援など、地方自治体の創意工夫で実施する生活支援策を後押しします。

 また、中小・小規模事業者に対しては、地域資源を活用したふるさと名物の開発、販路開拓を応援するとともに、原材料高に苦しむ事業者への支援や、ものづくり・サービス補助金による支援も実施をしていくわけでございまして、このような施策を通じて、経済成長の成果が広く国民に行き渡るようにしていく考えでございます。

石井委員 それでは、テーマをかえまして、補正予算案についてお伺いしたいと思います。

 パネルを提示させていただきました。委員の皆様には、あるいは閣僚の皆様には資料が配付をされていると思いますけれども、「平成二十六年度補正予算案の主な内容」ということで示させていただきました。

 平成二十六年度補正予算案につきましては、消費税率引き上げ後の反動減が長引くなど、特に消費が足踏み状態である、これへの対応と、円安による輸入原材料の高騰など、経済の弱い面に確実に手を打つとともに、地方の活性化や大震災からの復興の加速、災害への対応などが盛り込まれております。

 昨年の総選挙前の十一月の二十日に公明党として政府に提案をいたしました経済対策案の多くが実現をしておりまして、評価をしているところでございます。

 まず、生活者の支援として盛り込まれました地域住民生活等緊急支援のための交付金、このうち、地域消費喚起・生活支援型二千五百億円、これについてお伺いしたいと思います。

 これは、地域の消費を喚起する、また生活を支援するために地方自治体が実施する計画に対して国が全額国費で支援をするというものでありますけれども、この例のところにございますように、例えばプレミアム商品券の発行支援。一万円で例えば一万二千円のお買い物ができる、こういった商品券ですね。そのプレミアム部分に対して国費で支援をするということですから、今の例でいえば、二千円の国費で一万二千円の消費が喚起をされる、こういうことになります。

 また、このパネルには載せておりませんけれども、ふるさと名物商品券、旅行券としまして、地域の外の方にその地域の名産品を購入してもらったり旅行してもらったり、私の地元の茨城県で例に挙げますと、茨城県外の方に茨城県の名物を購入してもらうための商品券あるいは茨城県に旅行に来ていただくための旅行券、この発行支援ということで、これについてもプレミアム部分に助成をする。

 また、低所得者に対しては、積雪寒冷地が中心となると思いますけれども、灯油購入の補助を行ったり、またお子さんのたくさんいる世帯への支援を行ったり、こういうことで使えるようになっておりますけれども、この交付金による地域経済への効果をどの程度想定されていらっしゃるのか。これは地方創生担当大臣にお伺いしたいと思います。

 また、この交付金については、地域の消費喚起、生活支援という目的にかなうものであれば、このメニューに示されている事例以外でも地域の自主性に応じて自由に使えるというふうに承知しておりますが、あわせて、地方創生担当大臣に確認をいたしたいと思います。

石破国務大臣 委員御指摘のとおり、それはそれぞれの自治体によって何が一番効果的なのかというのを、それぞれの地域の実情に即してお考えいただくということにしております。

 国としてメニューを例として提示いたしておりますが、何もそれに限らなければならないというものではございません。創意工夫で、まさしくプレミアム分をどれだけ生かすような商品設計を行うかということでございまして、これは幾らぐらいの効果があるということをここで断定するのは極めて難しいことだと思っております。

 そうであるがゆえに、まさしくそれぞれの地域において創意工夫をしていただき、プレミアム以上のもの、あるいは県外から多くの消費が喚起できるもの、そういうものを設計していただきたいというふうに考えております。金額が申し上げられないのはそういうことでありますが、それをどれだけ生かすかということが一番肝要かと存じます。

石井委員 これは、この補正予算が成立すれば、三月上旬にもそれぞれの自治体が実施計画を立てるというスケジュールだというふうに伺っております。余り時間がないということもありますので、各自治体において早急にこの中身の検討を進めていただきたいと思いますし、また、政府の方も指導をしっかりとしていただきたいと思います。

 続いて、中小企業支援ですが、今回、資金繰り支援としまして、円安による原材料高や電気代などのエネルギーコスト高、これで資金繰りに困難を来す中小企業、小規模事業者に対する資金繰りの支援、あるいは、大分おさまっておりますけれども、漁業や中小トラック事業者の燃料費高騰対策、あるいはものづくり・商業・サービス革新補助金等々、多彩な中小企業支援策が盛り込まれております。

 特に、ものづくり・商業・サービス革新補助金についてお伺いしたいと思いますが、これは二十四年度補正予算でつくられまして、当初はものづくり補助金ということでありましたが、二十五年度、昨年度の補正から、新たに商業、サービス業も対象に加わるということになりました。ただ、商業、サービス業について申し上げれば、二十五年度補正で採択された一万四千四百三十一件のうち、商業、サービス業というのは千九百七十四件、一三・七%にとどまっております。革新的なサービスの創出、つくり出すという要件が十分に理解されていないんじゃないか、円滑に利用されていないんじゃないかという懸念がございます。

 二十五年度で採択された事例もたくさんありますから、わかりやすい、取り組みやすい事例を盛り込んだ事例集を提示するなど、丁寧に説明、指導していただきたいと思います。経済産業大臣の答弁を求めます。

宮沢国務大臣 委員おっしゃいますように、中小企業の、特に商業、サービス関係の生産性向上というのは大変大事なことであります。中小企業者、全国三百八十五万社ですけれども、八割弱は商業、サービス業ということでありますので、この分野でのまさに生産性向上というのは、ある意味我が国経済の底上げに一番つながるところであります。

 そういう観点からは、委員おっしゃっておりますように、二十五年度補正で、ものづくりだけではなくて商業、サービスというものを加えましたが、おっしゃるようにまだ二割強というような状況でございまして、そういう状況を踏まえまして、私どもとしましても、これは二月上旬ぐらいにもう公表しようと思っておりますけれども、中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドラインということで、例えば新規顧客層への展開とかブランド力の強化とかIT利活用といったような十項目について、詳しくモデルのようなものを示しまして、また、おっしゃいますように、この採択事例等々、前例についてもお示しをしていきたいと思っておりまして、しっかりと中小企業者に対しまして丁寧に説明、助言をしていきたいと思っております。

石井委員 せっかくの補助金でございますので、最大限に利用されるようによろしくお願いしたいと思います。

 続いて、住宅市場の活性化ですが、今回の消費税率引き上げの反動減の影響が最も大きかったのが住宅市場ではないかと思っております。

 今回、住宅金融支援機構のフラット35S、フラット35というのは最長三十五年間の長期固定金利ですが、この35Sというのは、さらにそれを一定期間金利の引き下げをする、その金利引き下げ幅を拡大していく。

 また、かつて実施しました住宅エコポイント制度を今回復活させて、新築住宅それから省エネ改築等に対してポイントを提供する。最大三十万ポイント、三十万円相当の商品等が交換できる、そういうポイント制度を復活させる。

 さらに、これは二十七年度の税制改正ですが、親や祖父母からの住宅資金の贈与税非課税制度、これも継続、拡充していくというふうにされております。

 これらの施策によって住宅市場の活性化にどの程度寄与できるというふうに想定をされていらっしゃるのか、国土交通大臣にお伺いしたいと思います。

太田国務大臣 今御説明いただきましたように、住宅市場が、昨年消費税を上げた後、反動減であるということで、これを活性化するということは、庶民がマイホームを得るということからいっても経済への波及効果からいっても、極めて大事なことだと思います。

 今御指摘のありましたように、公明党からは随分提案をいただきまして、住宅エコポイント制度、これが復活をする、そしてフラット35が金利を引き下げるということができ、この補正で行いましたこれらによりまして約五万戸の住宅着工の押し上げがある、このように試算をしています。

 さらに、税制上の措置としまして、贈与税の非課税措置を大幅に拡大する。千五百万、そして消費税が上がった場合には三千万という大胆な措置をとらせていただきまして、三十一年六月までの間におおむね八万戸、一年当たり大体一・五万戸の押し上げという効果が見込まれる、このように思っておりまして、住宅市場の活性化に大きく寄与するものだ、このように考えています。

石井委員 そのほか、補正予算には、復興加速化、災害対応としまして、福島の中間貯蔵施設に係る交付金一千五百億円、原子力災害からの福島復興交付金一千億円、また、緊急防災対応としまして、昨年の広島の豪雨災害を受けまして土砂災害基礎調査を推進したりとか、あるいは、御嶽山の噴火を受けまして火山観測体制の強化等々、非常に重要な施策が盛り込まれておりまして、改めて、早期の成立、執行が必要だというふうに申し上げておきたいと思います。

 最後のテーマでございますが、昨年十二月十六日に合意がされました政労使会議の合意について、最後、お伺いいたしたいと思います。

 まず、持続的な経済の好循環を確立するために、パネルの一番上ですが、「政府の環境整備の取組の下、経済界は、賃金の引上げに向けた最大限の努力を図るとともに、取引企業の仕入れ価格の上昇等を踏まえた価格転嫁や支援・協力について総合的に取り組む」というふうにされました。

 賃金の引き上げも極めて重要です。同時に、下請の中小企業について、原材料価格等の上昇分を取引価格にきちんと上乗せする、このことは、中小企業に景気回復の成果を届けるという意味でも大変重要だというふうに思っております。

 ここにあります政府の環境整備、これは来年度の税制改正から法人実効税率の引き下げを行うということで、政府としてはきちんとやっていらっしゃいますから、賃金の引き上げと取引価格の適正化について、これはぜひ経済界に強く実現を促していただきたいと思っております。

 政府の取り組みを総理にお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 この二年間の私たちの政策の成果で、多くの企業が最高の収益を上げているわけでございます。

 そこで、デフレから脱却をして景気の好循環をしっかりと回転させていくためには、ただ企業の政策に任せているだけでは実現しないわけでありまして、いわば、市場主義、自由主義経済としては若干これは新しい試みと言ってもいいと思いますが、政府がお願いをいたしまして、政労使の会議を開催して賃上げを要請し、昨年はそれを達成することができました。

 経済界の皆さんにまた最大限の努力をお願いして、賃上げをさらにお願いしたところでございまして、また、原材料高騰に苦しむ下請企業の価格転嫁といった取り組みにも合意をしていただいたところでございます。つまり、賃上げと価格転嫁、この二つについて経済界側に合意をしていただいた。

 普通であれば、これは企業同士の相対の取引、自由な取引になるわけでありますが、ここは、デフレから脱却をして好循環を進めていくためにはみんながこれは協力をしていこうということで一致できた、日本ならではの取り組みであった、こう思っております。

 賃上げについては、経団連は、今春闘の基本方針である経労委報告において、賃金の引き上げを前向きに検討されることが強く期待されるとの昨年より踏み込んだ方針を表明しました。労使間の真摯な議論により、ことしも賃上げがしっかりと実現することを強く期待しています。

 また、取引価格の適正化について、経済界に対して、原材料価格の上昇分を適正に取引価格に転嫁するよう関係省庁から要請をしているところであります。今後、経済界へのアンケート調査などにより、改善状況をきっちりとフォローアップしていく考えであります。

 政府としては、政労使合意の実施状況についてフォローアップを適切に行うことにより、経済の好循環を確実に図っていきたい、拡大させていきたい、このように思っております。

石井委員 もう時間がなくなりましたので質問をやめますが、政労使会議の主な内容では、そのほかに、サービス業の生産性を向上させて、非正規雇用者について意欲と能力に応じて処遇改善や正規化を図る、これも非常に重要なことです。

 また、都市圏から地方への円滑な人材還流を行う、こういった施策も盛り込まれております。

 こういった合意をきちんと実現するということが、とりもなおさず、経済の好循環をさらに継続させて、実感できる景気回復につながるわけでございますので、政府としても一層の後押しをお願いいたしたいと思います。

 以上で終わります。

大島委員長 これにて石井君の質疑は終了いたしました。

 次に、長妻昭君。

長妻委員 おはようございます。民主党の長妻昭でございます。

 総理、お疲れのところ、よろしくお願いをいたします。

 民主党代表選挙を経まして新しい体制になって、初めての予算委員会の質問でございます。よろしくお願いをいたします。

 いわゆるISILによって拘束されている後藤健二さんの解放に向けて、政府においては全力を尽くしていただきたい。これは本当に許しがたい暴挙であり、強い憤りを覚えております。

 総理、今の段階で、言えないことは多々あると思いますけれども、国民の皆様に言える範囲内で今の現状をお教えいただければと思います。

安倍内閣総理大臣 政府としては、この事案が発生以来、人命第一の立場に立って、これまで培ってきた外交チャンネル、ルートを最大限活用して人質の解放に全力を尽くしているところであります。

 そして、昨夜、ヨルダン広報担当国務大臣は、ヨルダン軍パイロットを解放するならば、サジダ死刑囚を釈放する用意があるとの声明を発表しました。

 さらに、けさ、ISIL側から発出されたと見られる新たな声明がインターネット上に配信されたことを受けまして、現在、その内容を早急に分析しているところでございます。

 この性格上、具体的な内容を申し上げることはできないわけでありますが、政府としては、現在、中山外務副大臣を本部長としてヨルダンに置いているわけでございますが、この副大臣経由を初め、ヨルダン政府に協力を要請してきておると同時に、緊密に連携もしているところでございますが、引き続き、後藤さんが早期に解放されるように全力を尽くしていく考えでございます。

長妻委員 全力で取り組んでいただきたいと思います。

 人の命にかかわる問題でありまして、与野党の違いはございません。政府の取り組みに対して、我々もできる限りの支援を申し上げてまいります。

 そしてもう一点、国内外でのテロの懸念も私は強まっていると思っておりまして、これも政府に万全の対策をとっていただきたいと思うんですが、その基本的な方針、お考えをお教えいただければと思います。

安倍内閣総理大臣 今回の出来事だけではなくて、先般、フランスにおいて報道機関に対する許しがたいテロ行為があったわけでございます。

 政府としては、こうした厳しい状況を踏まえまして、国際社会と緊密に連携し、情報交換なんかもしっかりと行っていかなければなりませんが、不穏動向の早期把握に向けた情報収集、分析の強化、テロリストの入国阻止等に向けた関係機関の連携による水際における取り締まりの徹底、空港や公共交通機関などの重要施設の警戒警備の実施などを推進していく考えであります。

 今後とも、テロ情勢の変化を踏まえつつ、テロ対策について不断の検証と見直しを行い、関係各国とも緊密な連携、情報の交換を行いながら、政府一丸となってテロの未然防止に万全を期していく考えでございます。

長妻委員 ぜひしっかりとよろしくお願いをいたします。

 そして、格差の問題についてお伺いをしたいと思います。

 くしくも、本日、フランスのトマ・ピケティ教授が我が国に来日をされておられる。格差ブームの立て役者とも言われている方であります。

 あるいは、ポール・クルーグマン、スティグリッツ教授など、あるいは、IMF、S&P、OECDなどの国際機関も、格差が拡大をすると経済成長の足を引っ張っていくんだ、こういうようなレポートを次々に発表しているところであります。

 我々も、格差の問題は、かねてより重視をして、それを是正することが大変重要であるという論を展開してまいったところでございます。

 まず、安倍総理に基本的な考え方をお伺いしたいんですが、この日本社会における格差、これをどういうふうに捉えるべきなのかというお考えをお聞かせいただければと思います。

安倍内閣総理大臣 いわゆる格差でございますが、格差がいわば固定化されたものなのかどうか、あるいはまた、この格差が例えば人々にとって許容の範囲を超えているものなのかどうかということが重要だろう、こう思うわけでございます。

 今御紹介されましたOECDの報告書では、先進国の傾向として、所得格差が拡大すると経済成長は低下する、その理由の一つは、貧困層ほど教育への投資が落ちると主張されているというふうに私は承知をしているわけであります。

 日本としては、まず、デフレ不況からしっかりと脱却をして経済を成長させていく、そして、成長の果実が広く国民に均てんされるようにしていかなければならない。

 特に教育においては、誰もが教育を受けるチャンスを持たなければならない。つまり、経済的な理由で教育を受けるチャンスを得ることができないという社会にしてはならない、こう考えているわけでありまして、誰にでもチャンスのある社会をつくっていくことが大切だろうと思いますし、そのための政策も進めてきております。

 そして、人は、時には、幾ら頑張っても、さまざまな、病気等の理由によって生活の根底が崩れることもあるわけでありまして、そのためのセーフティーネットはしっかりと張っていく、再び立ち上がるための支援も行っていくということが重要ではないか、このように思っております。

長妻委員 今総理がおっしゃいました、格差が拡大すると教育の機会が損なわれてなかなか能力を発揮できない。私も同感なんですが、ただ、その問題意識をお持ちになりながら、政府の予算案や政府の施策というのはそうはなっていないということが、私は強い懸念なんです。

 きょう、ちょっと異例でありますけれども、OECDが先月非常にいいレポートを発表されましたので、本来はOECDに説明いただくのが一番いいのですが、国会図書館に簡単にその中身を説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。

中川国立国会図書館専門調査員 ただいま御指摘のありましたOECDの報告書について御報告いたします。

 昨年十二月にOECDから、所得格差と経済成長に関する報告書が出されております。この報告書は、OECD諸国の大半で所得格差が拡大しておりまして、格差の拡大は経済成長の妨げにもなるという内容でございまして、大変注目された報告書であります。

 今回お配りしたこの配付資料は、この報告書の概要をまとめたOECD自身による資料でございまして、これに基づいて簡単に御説明させていただきたいと思います。

 OECDの報告のポイントの一つ目は、富裕層と貧困層の格差は、今、OECD諸国の大半において過去三十年間で最も大きくなっている、そういうことでございます。OECD諸国の大半で、所得格差をあらわすジニ係数が長期的に上昇しているところでございます。

 OECDの報告のポイントの二つ目でございますが、このような所得格差の拡大は経済成長を大幅に抑制している、そういうことでございます。OECD諸国のジニ係数につきましては、過去二十年間の平均で〇・二九から〇・三二へと三ポイント上昇しております。この報告では、ジニ係数が三ポイント上昇しますと、経済成長率は二十五年間にわたり毎年〇・三五%ずつ押し下げられ、二十五年間の累積的なGDP減少率は八・五%になるとの試算を紹介しております。

 OECDの報告のポイントの三つ目でございますが、格差の経済成長に対するマイナスの影響は、最下位の貧困層だけではなくて、実際には下位の四〇%の所得層においても見られるということでございます。したがいまして、格差対策におきましては、貧困層の問題に取り組むだけでなく、より広く低所得者層の問題にも目を配る必要があるとされております。

 次のポイントといたしまして、格差が経済成長を阻害する要因として、社会的背景の貧しい人々は教育に十分な投資をしない、そういうことを挙げております。所得格差は、社会的に不利な立場に置かれている人々の教育機会を奪い、社会における上の方向への流動性を阻害し、技能開発を妨げる、この結果として経済成長を抑制する、そのように報告されております。

 また、報告では、租税政策や移転政策による格差への取り組みは、適切な政策の下で実施される限り成長を阻害しない、そのように指摘されております。政策の対象者を適切に絞り込む等の効果的な手法を用いれば、再分配政策そのものは経済成長を阻害するものではないということでございます。

 また、これまでのOECDの調査したデータを見る限り、経済成長の促進と格差対策の間にはトレードオフ関係が存在するという見方に関しましては、今後、終止符を打たなければならない、そのように指摘しているところでございます。

 最後に、報告では、特に再分配の取り組みは、子供のいる世帯や若年層を重視するべきであるとしております。

 以上がOECD報告の概要でございます。

 また、配付資料の最後に、OECDによる一九八〇年代半ばから二〇〇〇年代後半にかけての所得階層別の所得の変化を示した表をつけております。この表によれば、我が国日本のみが、所得が最も低い層における実質所得の増加率がマイナス、そういう結果になっております。所得が最も低い層の実質所得は、一九八〇年代半ばと比較して、現に低下していると指摘されているところでございます。

 以上でございます。

長妻委員 今のとおりなんですけれども、やはり我が国は、特に低所得者層の家計が非常に傷んでいる、GDPの六割を占める個人消費がなかなか戻ってこない、そして実質賃金も十七カ月マイナスということで、長期的に見ても短期的に見ても格差是正というのが大変重要ではないか。やはり、所得格差が拡大すると経済成長は低下する、格差問題に取り組めば、社会を公平化し、経済を強固にすることができるというような今の話でございました。

 これは総理に基本的なことをお伺いするのでございますが、配付資料にも、四ページにお配りしましたけれども、日本の、特に税の再分配機能、所得あるいは資産含めて再分配機能が非常に弱くなっている、アメリカよりも弱い、ジニ係数の改善度が低い、こういうようなデータがございます。やはり今後、我が国は税の所得あるいは資産再分配機能をさらに強めていくべきだと私は考えるんですが、総理の基本的なお考えをお聞かせ願えればと思います。

安倍内閣総理大臣 ピケティも本書の中で、欧米、特に日本は一九四五年以降、格差は顕著な拡大はない、このように述べていることもつけ加えておきたい、このように思うわけでございます。

 またさらに、労働市場につきましても、高齢者の再雇用もあって非正規雇用者数も増加をしておりますが、一方、非正規雇用者を取り巻く雇用環境は改善をしているのも事実でありまして、具体的には、非正規雇用者に占める、不本意ながら非正規の職に就職している者の割合は着実に低下をしています。五十五歳未満の働き盛りの正規、非正規間の移動を見ますと、二〇一三年から、非正規から正規に移動する方の方が正規から非正規になる者を上回っているというのも事実であります。

 パート時給の着実な上昇など、非正規雇用者の処遇改善も進んでいるということも申し上げておきたい、こう思いますし、仕事につけない人の数が、我々が政権を担い政策をスタートしてから、それは確実に、仕事につけない人の数は着実に減ってきているわけでございますから、そういう事実も見ていただきたい、このように思うわけでございます。

 そこで、再分配機能についてはさまざまな議論があるわけでございますが、これは政府の税調あるいは党の税調において議論が行われているわけでありますが、いずれにいたしましても、基本的には、ピケティも成長は否定していないわけでありまして、しっかりと成長して、その成長の果実がどのように分配されるかということが大切であって、成長せずに分配だけを考えていけばそれはだんだんじり貧になっていくということであって、そこが、もしかしたら皆様との違いではないか、こう思うところでございます。

長妻委員 ちょっと明確なお答えがなかったんですけれども、いつも総理はそうなんですが、つまり、成長がなければ始まらないということではなくて、成長か分配かどちらか一方の二者択一ではなくて、やはり、適切な分配がなければ持続的成長ができないんだ、ここが我々のところとかなり違うんじゃないか。

 その意味で、では、子供の格差に具体的に限定してお伺いをしたいんですが、格差は、これは相対的貧困率あるいはジニ係数をつけさせていただいておりますけれども、日本はかなり拡大をしております。

 特に、子供の相対的貧困率一六・三%、OECDで四番目に悪い。六人に一人の子供が日本では貧困状態にある、十七歳以下では三百万人余りと言われております。専門家によると、そういう方々は、学ぶ、遊ぶ、医療を受けるなど、子供にとって当たり前の生活が難しい状態にある。

 例えば東京なんかは、私も代表選で地方を回って、よく東京は豊かだと言われるんですけれども、例えば私の選挙区の渋谷区、中野区、そこの公立中学校の生徒さんのうち、給食代が払えないなど就学援助を受けておられる方が、三人に一人も受けておられるんですね。かなり都市部でも格差が激しくなっておられる。例えば墨田区、足立区では、四七%も公立中学校の生徒さんが就学援助を受けておられる。

 全国では、公立小中学生の百五十五万人が就学援助を受けておられて、十五年前の二倍になっておられる。

 そして、深刻なのが、生活保護を受けておられるお子さんのうち四人に一人が、大人になっても生活保護から抜けられない、貧困の連鎖が起こっております。

 母親が中学卒業でありますと、お子さんは、一割近くが中学卒業で、七割近くが高卒ということで、なかなか学歴が高くならないということもございます。

 あるいは、資料もつけておりますけれども、年収と学力というのがかなり比例をしてきて、年収が高い御家庭は学力も高い、年収が低い御家庭は学力も低い、こういう傾向が顕著になってきております。

 そして、貧困の複合性ということで、金銭的困窮が、ストレスがたまり、親の健康状態が悪化して、精神状態が悪化する、あるいは子供の学力低下、不登校、子供の不健康など、連鎖が始まってしまう、そして貧困の御家庭の連鎖ということもあります。

 その中で、一ついい取り組みといたしましては、学習支援事業というのがございます。これは、私も山井議員と埼玉に行って見てまいりましたけれども、生活保護のお子さんたちの高校進学率を高めようという取り組みでございまして、ボランティアなどの学生さんが生活保護のお子さんに勉強を教える、こういうような事業でございます。

 これが、今年度、平成二十六年度は二十二億円の予算がついて全額国庫負担だったわけでございますけれども、これが、平成二十七年度、ことしの四月からは、二分の一の補助に減らされて、しかも予算も十九億円に減らされてしまう、こういうようなことがあるんです。非常にいい取り組みなのに、予算は減らされる、しかも非常に微々たる予算である。これについては、政府はどんなお考えなんでございますか。

塩崎国務大臣 今、長妻先生からお褒めをいただいた学習支援でありますが、御指摘のように、生活保護世帯の子供に対して、予算事業としてこれまでは学習支援事業というのをやってまいりました。

 これに対しまして、議員立法で、民主党の皆さん方も御賛成をしていただいて成立をした生活困窮者自立支援法がこの四月から導入をされるわけでありますけれども、これに基づきまして、生活保護世帯以外の生活困窮者世帯の子供たちを対象に拡大をするということをこの四月からやることになっております。

 今御指摘のように、十分の十から二分の一に国庫補助率はなるわけでございますけれども、自治体が継続的に事業を実施するには、これはやはり予算事業では不安定なものですから、これを法的に固めていただいて、位置づけていただいて、恒久的な制度にしたというのが生活困窮者自立支援法だったわけですね。

 今御指摘の予算でありますけれども、実はこれは、今申し上げたように、自治体が今度は主体的にやることになるものですから、今まで百八十四自治体でやってまいって、そのうちの一つに行ってごらんをいただいたと思いますけれども、今回、二十七年度に向かっては三百二十四の自治体が実施をするということで、大幅に増加をするということになっております。

 それで、今お話がございましたように、国からの国費ベースでいきますと二十二億が実は十九億になりますけれども、事業費でいきますと、今までは全額国費ですから二十二億だったのが、今度は、二十七年度では三十八億に広がるわけであります。

 先生今御指摘のように、学習支援あるいは居場所の提供とか、いろいろなことをこれでやっていけるわけでありますけれども、これについては事業としてはさらに拡大をして、それも自治体が責任を持ってやっていただくということになって、国がそれをしっかりとサポートしていく、こういうことでございます。

 先ほど総理から、教育がやはり格差拡大の阻止につながるのだというお話がありましたが、これは確かに非常に重要なものなので、さらに自治体とも連携をしてやっていきたいというふうに思います。

長妻委員 いささか今のは公式見解でございまして、自治体に聞くと、やはり二分の一に減らされて実際に規模も縮小せざるを得ない、こういうようなお話もあります。

 プレミアム商品券とかいろいろな大盤振る舞いの予算がある中で、非常にこういう重要な、格差を是正して貧困の連鎖を防ぐものが数十億円、そして予算も金額が減るというような姿勢そのもの。あるいは、いろいろこれは議論があると思います。贈与税を非課税にする。教育、おじい様、おばあ様がお孫さんに一千五百万円非課税、あるいは結婚、子育て、一千万円まで非課税。これは富裕層がお金を使うという効果があるのかもしれませんけれども、やはり、ここでお金を使うということがあるのであれば、私は、貧困の連鎖を防ぐ、低所得の方に対する所得再分配政策、限界消費性向も高いわけでございますので、そういうところにも目配りをする必要がある、それが大変不足していると思います。

 一人親家庭の貧困率、これが日本は最悪でございまして、全OECDの中で、五〇%を超えるということでございます。今、母子家庭が百二十四万世帯ございます。定時制高校生の三割が一人親の御家庭であります。こういう一人親家庭の相対的貧困率も、せめてOECD平均の三〇%程度に削減をしていくというようなことが必要ではないかと思います。

 例えば、児童扶養手当をもう少し増額していく、これによって消費も喚起できるとも思っております。当然その効果測定をきちっとしなければなりませんけれども、やはり何でもかんでも社会保障は削っていくというのが私は正しいとは思いません。もちろん社会保障にも無駄はありますから、それは削らなければならないんですけれども、投資として考えて、ここの社会保障の部分はプラスをすることによって最終的には社会にプラスになっていく、社会にリターンがある、こういうような考え方もぜひ政府としてとっていただきたい。

 一人親家庭への学習支援ボランティア事業も別途ありますけれども、これも予算が四・三億円ということで、非常に微々たるものでございます。

 その中で、今回、我々民主党も後押しをした子どもの貧困対策法という議員立法が成立をいたしまして、昨年にこの大綱がつくられました。これは、総理も会議で大綱の決定に立ち会われたと思います。その中で我々も強く求めたわけでございますけれども、この大綱の中に、子供の貧困率の削減目標、数値目標を入れるべきだと強く申し上げたわけですが、それが結局は入らなかったわけであります。

 これはぜひ数値目標を、イギリスと同じように日本も入れていただきたいと思うんですが、いかがでございますか。

安倍内閣総理大臣 子供の将来がそのお子さんの生まれ育った環境によって左右されることがないように、子供の貧困対策に取り組むことは極めて重要であると考えております。

 貧困率は、世帯ごとの可処分所得に基づいて算出されているため、資産の保有状況が反映されていません。また、一般に、貧困世帯の所得が改善しなくても、社会全体の所得が減少することで貧困率が改善してしまうといった問題があることも認識をしています。

 子どもの貧困対策の推進に関する法律においても、指標とその改善に向けた施策を大綱において定めることとしているところでありまして、このため、政府としても、子供の貧困率だけではなくて、教育や就職の状況、子供を支援する施策の状況など、子供の貧困に関する二十五の指標を掲げまして、その改善に向けた重点施策を取りまとめた大綱を昨年八月に策定したわけでございます。

 今後とも、この大綱に基づきまして、教育費負担の軽減を図るため、高校生等奨学給付金の拡充や、大学の無利子奨学金、授業料免除の充実、そして、中学校等で貧困の子供を支えるスクールソーシャルワーカーの配置を拡充していく、あるいは、中学生に対する学習支援や保護者の学び直しの支援などの施策を推進して、子供の貧困に関する指標の改善に向けて総合的に取り組みを進めていく考えでございます。

長妻委員 やはり数値目標がないと不十分になると思うんですね。配付資料五ページ目でございますけれども、ヨーロッパの国々ではほとんどの国が国家として貧困率の削減目標というのを数字で出しているわけでありまして、日本は余りにも格差対策が弱い。GDPの比率で先進国を調べますと、公共事業は一位、しかし、子育て支援、教育予算は先進国最低レベル、今もこれが続いております。

 そして、大学進学率、先ほども総理、給付型奨学金のことをおっしゃっていただきましたけれども、これも早急に入れていただきたいと思うんです。

 今、我が国では大学進学率が五割、このパネルにもございますけれども、ほかの国に、ドイツにも大学進学率は抜かれてしまいまして、先進国の平均よりも低い状態にあります。しかも、年収四百万以下の御家庭だと大学進学率が三割ということで、意欲と能力があっても金がないと大学へ行けない、こういう傾向がどんどんどんどん強くなっている。こういう若者の能力を生かさないで何が成長なんだと私は言いたいわけでございます。都道府県民の県民所得と大学進学率もきれいに正比例しているんですね。

 そういう意味で、主な国では日本だけが給付型奨学金がないわけでございますので、いろいろな大盤振る舞いの公共事業をやるお金があるのであれば、やはり給付型奨学金の創設をぜひ強力に推し進めていただきたいと思うんですが、総理、いかがでございますか。

下村国務大臣 担当ですので、私の方からお答えさせていただきたいと思いますが、長妻委員の問題意識はそのとおりだと思います。

 安倍内閣においても、教育再生実行会議の中で同じ認識を持って、今、子供の貧困対策、これは議員立法で、御党は山井委員が中心となってつくっていただいたわけでありますが、超党派の議員立法としてつくっていただいて、政府もそれに基づいた大綱をつくって、一つずつ確実に実現をし、やはり貧困の連鎖というのは教育によって大きく影響しますから、それを断ち切っていくためには、どんな家庭の子供においても教育によってチャンス、可能性を提供するということが必要だと思います。

 そのために、昨年から高校における給付型奨学金はスタートいたしましたが、大学においてもぜひそれを考えていきたいと思っておりますが、まずは、我が国において、残念ながら奨学金といっても実際は学生ローンに近い有利子奨学金をできるだけ無利子奨学金にしていく、そして、所得連動型奨学金、本人のその後の所得によって、例えば年収三百万以下だったら返済については猶予するという形をとりながら、これから、大学における給付型奨学金制度の導入も今文部科学省の中で検討しているところでありますし、ぜひそういう道を開いていきたいと考えております。

長妻委員 ぜひ、効果測定をきちっとした上で、日本は人への投資が本当におくれておりますので、しっかりお願いをしたいと思います。

 そしてもう一つは、我が国労働者の労働生産性の問題でございます。

 どんどんどんどん労働生産性が下がって、今や先進国の中で二十位まで下がってしまいました。この労働生産性が日本が下がった理由は何だとお考えでございますか。

塩崎国務大臣 生産性の問題は、まさに今の日本経済の本質であると思っています。

 業種別に日米の比較などを見てみますと、一つ二つアメリカよりも生産性が高いというのがありますが、あとは押しなべて低い。となれば、企業収益は上がらない、競争力もない、そして、賃金を上げられないということになれば、生活水準が上がらないということになります。

 なぜそうなったか。それは、いろいろな意味でいろいろな要因があると思っています。

 一つは、資本の投資が少なかった、効率的な投資が足りなかったということが一つ。もう一つは、労働の質の向上についてもさらにやっていかなければいけなかったものが十分ではなかったかもわからないというようなことで、特に資本に関しては、IT投資などを見てみれば、かなり欧米におくれをとってしまった。

 一番就業者が多くて生産性が悪いというのは実は卸、小売あたりでありまして、やはり、これは典型的にIT投資も少ないというところだと思いますし、効率的な、言ってみれば売り方というものを十分できなかったという意味においても、人的投資も少なかったのではないか、その辺をやりかえないといけないんじゃないかというのが日本の経済の本質だと思います。

長妻委員 私も認識は似ております。労働の質を向上する、これがほかの国におくれをとってしまった。

 先ほどの大学進学率の話も、実は、日本がなかなか伸びないのは、社会人の大学進学率が非常に低い。OECDの平均だと二〇%なんですね、社会人が大学に学び直し。ところが、日本はたった二%しかない。

 それは、労働の質が、大学に入ることを繰り返すことによって上がるということが日本は非常にないということもありますし、そして何よりも私は皮肉な結果だと思いますのは、日本が産業界の意向を聞いて、派遣法を含めて非正規雇用をどんどんどんどんふやしていった、国際産業競争力を高めるという名目で非正規雇用をふやしていったはいいけれども、実は、かえって労働生産性を下げてしまう方向に働いてしまったという皮肉な結果が生まれたと私は思います。

 この十八ページ目に、内閣府に文書で回答を求めたところ、一般論としては、非正規雇用者が高まると、必要な技能や労働者の熟練の蓄積がなされず、労働の質が低下し、労働生産性を押し下げる可能性がある、こういうふうに政府も公式にやっとこれは認めていただいたわけでございます。

 そういう意味で、ぜひ経営者側も、非正規雇用を減らしていく、正社員をふやしていくということは労働生産性を上げるためにもプラスなんだと。

 この特効薬として私が提案をしたいのは、均等待遇なんですね。これは、解散の前に野党として法律を提出いたしました。同一労働同一賃金ということでございますが、この均等待遇原則を、法律を成立させて日本にも根づかせていく、これによって労働生産性も上がる方向に働くというふうに私は信じておりますけれども、総理の基本的なお考えを聞かせていただければと思います。

安倍内閣総理大臣 同一労働に対して同一賃金が支払われるという仕組みをつくっていくことは、一つの重要な考え方というふうに私も認識をしています。

 しかし、ある時点で仕事が同じであったとしても、さまざまな仕事を経験し、責任を負っている労働者と経験の浅い労働者との間で賃金を同一にすることについては、直ちに広い理解を得ることは難しいものと考えています。

 このため、非正規雇用労働者について、まずは多様な雇用形態に応じた均衡待遇を推進していくことが重要であって、処遇の差の改善を図ることによって、頑張る人が報われる社会の実現に向けて全力を尽くしていきたい、こう考えております。

 均衡待遇については、パートタイム労働者について、差別的取り扱いが禁止される労働者の範囲を広げる改正法が四月から施行されるわけでありまして、まずしっかりとこの均衡待遇を進めていく中にあって、最初申し上げました均等待遇についてどうあるべきかということについて議論を深めていく必要があるだろう、このように思っております。

長妻委員 いや、もうちょっとこれは踏み込まないと、やはり均衡じゃなくて、均等待遇というのは、これはEU指令でも、ヨーロッパの国々はある程度厳格に守られているわけでございまして、先ほどの熟練している熟練していない話も、ヨーロッパで蓄積があって、それも乗り越えているわけです。

 つまり、どんな働き方であっても同じ労働であれば同じ賃金にすれば、それは正社員でも非正規雇用でも同じになるわけですから、それであれば、非正規のままではなくて正社員的な働き方、賃金が同じであれば区別しない方がいい、そういう経営の判断も働くわけでありまして、そういう非常に厳しい労働法制を乗り越えて高付加価値の産業を生み出しているのがヨーロッパだと私は思います。

 ドイツは、うらやましいことに、国の借金がゼロになると。私は、労働生産性がかなり上がったことも要因の一つだと思いますので、経営者の言いなりになって、労働法制をどんどんどんどん緩くすればするほど経済がよくなる、こういう発想をぜひ転換していただきたいというふうに思います。

 そして、例えば介護なんですよね。介護についても、介護報酬が最大下げ幅、削られました。そして、ことしの四月からは、要支援の部分が国の介護給付から切り離されるということになります。これは、私はかえって高くつく懸念があるんじゃないのか。

 つまり、今、毎年親の介護で会社をやめる方が十万人いらっしゃるんですね。それが、政府に試算をしていただくと、このままほっておくと、十六ページ、十七ページでございますけれども、二〇二五年には、毎年十四万人、十五万人の方が親の介護で仕事をやめる推計もある、GDPは一兆円減る、こういうような試算もいただいております。

 つまり、目先の国費を削って、節約できたと思いきや、会社をやめざるを得ない人がふえて、結局、経済のパイが縮小してしまう、かえって高くつく。

 こういうこともぜひ政府は吟味をしながら、私は、社会保障は聖域ではないと思います。無駄なところもあります。過剰介護、過剰医療もあります。削らなきゃいけないところはありますけれども、削ってはいけないところまで削ってしまうというのが今回の政府の決断だったと私は思いますけれども、これはお考え直すということは、総理はないですか。

塩崎国務大臣 今のお話に入る前に、先ほど、生活困窮者自立支援法を議員立法と申し上げました。これは内閣提案で、先ほどお話が出た子どもの貧困の法律の方が議員立法でございまして、おわびして訂正いたします。

 今、地域支援事業の、地方への移管の話がございましたし、介護でもいろいろ離職が起きているというような御指摘もございましたが、そもそも、この要支援の地方への移管については、まさに、地域でどういう形でそれぞれに合った介護を、医療とも連携しながら地域包括ケアの中で実現していくかということをそれぞれの地域地域で考えていただこうというのがもともとの発想であって、それは、基本的にファイナンスも介護保険でやり続けるわけでありますし、国もガイドラインを示すということでまた段階的にやっていくということで、それぞれの地域で改めてニーズに合った形での介護を提供してもらうということは、働きながら介護を続けられる人にとっても、よりニーズに合ったものが出てくる可能性が高まるということだろうと私は思っています。

長妻委員 という説明なんですが、これは実際、企業でも、個別名は出しませんけれども、もう自己防衛に入っている企業は多いんですよ。つまり、もう国は頼りにならない、従業員がどんどんどんどん親の介護でやめてしまう、しかも五十前後ですから重要な管理職、ですから自己防衛しよう、もう介護は自分の企業でやろう、こういう企業も大きな企業の中で出ております。

 そういう意味では、かえって経済成長のパイを小さくするような、そういう社会保障の削減ということもあるということも、ぜひ肝に銘じていただきたいと思います。

 そして、戦後七十年の談話についてでございますけれども、私は、戦後七十年というのは、今、戦場で戦った日本国民の方、少年兵の方でも、最年少、八十五歳ぐらいになっておられるのではないのか、七十年というのは、戦争の体験が、体験から歴史に変わる、この節目ではないか、非常に重要だと思っております。

 その中で、総理が、何か細々としたというような表現で、個々の文章について、記述についておっしゃられるということについて、私は違和感があるわけでございますけれども、まず、ちょっと総理に基本的なことをお伺いしたいのでございますけれども、村山談話のみにある記述として、「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、」国策を誤りという昭和の戦争についての記述がありますけれども、総理自身も、我が国は国策を誤ったというふうにお考えでございますか。

安倍内閣総理大臣 これはもう繰り返し答弁をしているように、村山談話についても、そしてまたその後に出された小泉談話についても、政府の閣議決定された談話を全体として受け継いでいくという考え方を表明しているとおりでございます。

長妻委員 いや、私が聞いたのは、この談話とは別に、では、我が国がかつて国策を誤ったということがあったのかどうかということについて、総理はどういうふうにお考えを持っておられますか。

安倍内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、談話については全体として受け継いでいくということを明確に申し上げているとおりでございます。

 その上に立って、過去の反省、大戦の反省の上に立って、戦後の歩み、日本は自由で民主的な国をつくり、法をたっとび、そして、アジアや世界のために貢献する日本国をつくってきたわけでございます。そしてさらには、今後、二十一世紀、二十二世紀に向けて、日本がしっかりと世界の平和と繁栄のために積極的に貢献をしていく、どういう国になっていくかということについて書き込んでいきたい、こう考えているところでございます。その上について、有識者の方々にさまざまな見地から御意見を賜りたい、こう思っているところでございます。

長妻委員 そうすると、総理は、我が国は国策を誤ったということはないというふうにお考えなんですか。

安倍内閣総理大臣 私は、今ここで一つ一つの字句について論評するつもりはございません。

 これは、再々申し上げておりますように、全体として受け継いでいるということを申し上げているわけでございます。そして、これはもう再三申し上げているわけでありますからここで繰り返す必要はないのだろうと思いますが、村山談話につきましても、そしてまた小泉談話についても、全体として受け継いでいる、これは政府の立場として変わらないということは申し上げているとおりであります。

 その上に立って、戦後の七十年の歩みも重要であります。日本は、ひたすらに平和国家としての道を歩んできたわけでございますし、同時にまた、アジアや世界の平和と安定のためにも貢献してきたところでございます。そうした日本の姿勢、あるいは、今後、日本はどういう国になっていくのか、あるいはどういう貢献をしていくかということを明確に発信していきたい、こう考えているところでございます。

長妻委員 これは大変重要なところでございます。

 三百十万人の命と、私、国会で質問させていただくと、今のお金にすると二百十兆円の税金を使った戦争、我々は貴重過ぎる教訓を得たわけでございまして、この戦争について、国策を誤っていない、あるいは誤っているのかどうか、これを総理に問うというのは、私は、まず第一歩の質問として総理がお認めになってから質問しようと思っていたんですが、国策を誤ったという理解はないということですか。

安倍内閣総理大臣 再々申し上げておりますとおり、五十年において発出された村山談話、あるいは六十年において発出された小泉談話については、閣議決定されているものであり、我々は全体として受け継いでいるということは、申し上げているとおりでございます。

 その上に立って、我々は、さきの大戦の反省の上に、戦後七十年、どういう国をつくってきたのか、そしてまた、今後、未来について、未来に向かってどういう国をつくっていくかということについて発信をしていきたいと考えているわけでございます。

長妻委員 私は非常に懸念を強く持つわけです。

 今も、やじで、自虐的だなというやじが飛びました。自虐史観という言葉があるんですね。戦争の教訓や反省を言うと、あなたは自虐史観だ、もっと、そんな反省とか教訓を言わないで、未来志向にしろと言わんばかりの論調、私は大変これは違和感を覚えます。これだけの犠牲を出して、日本が得た教訓について冒涜するのかという気持ちにもなるわけでございます。

 それでは、総理、質問をかえますと、さきの戦争の教訓というのは、総理は何が教訓というふうに肝に銘じておられますか。

安倍内閣総理大臣 今、長妻委員は、やじの発言をまるで私が言ったかのごとくの紹介をしておられたので、私は非常に不愉快でありまして、これは、教訓は必要ないと言ったことは一回もないわけでありますし、まさに私が申し上げたのは、さきの大戦の反省の上に立ってこういうことを申し上げているわけでございます。私は、長妻委員に対して自虐であるということを言ったことはないわけでございますから、そういうイメージづくりはしないでいただきたい、こう思います。

 そのことをまず申し上げておいた上に立って申し上げれば、まさに、多くの国民の命を失い、アジアの方々にも多大な御迷惑をおかけしたわけであります。その中で、塗炭の苦しみの中から今日の日本をつくってきたわけでございます。

 当然、教訓というのは、さまざまな教訓があるわけであります。歴史家もそうした教訓についてさまざまな見識を表明しておられるわけでありますが、そういう中において、まさに戦後の日本の歩みがあるわけであります。国際協調主義の中において、しっかりと世界とともに平和を守っていくということも極めて重要であろう、こう思うところでございます。

長妻委員 こういうやりとりでこの質問を終わると私は非常によくないと思っておりまして、これは総理にもう一度あえてお伺いするんですが、さまざまな教訓があるとおっしゃいましたけれども、それでは、さまざま、全ておっしゃらなくても結構なんですが、教訓の一つ二つ、具体的にどういう教訓なのかをおっしゃっていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 教訓は、これは多くの国民とともに教訓を共有しているところでありますが、まず、戦争の惨禍を二度と繰り返してはならないということであります。これが最大の教訓であろう、このように思うわけであります。

長妻委員 私自身は、今回の、七十年になったことし、体験から歴史に変わる節目だと思っておりまして、やはりこの歴史の教訓を胸に刻むような談話を出すべきだ。

 恐らく、八月十五日にぱっと出されるのかどうかわかりませんけれども、十分に事前に国会にもお示しをいただいて、国民的議論の中で談話をつくり上げるということがやはり必要だと思っているんですけれども、これはある程度国会で議論する時間というのを設けていただくということはできますか。

安倍内閣総理大臣 これは、国会においては国会の御意思として決議なりなんなりを出されるということはあるんだろう、こう思うわけでありますし、長妻委員は長妻委員の御見識を示されたらいいんだろう、このように思うわけでございまして、安倍内閣としては安倍内閣の責任の上において談話を発出させていただきたい、このように思っているところでございます。

長妻委員 でも、戦後七十年の談話というのは、一内閣が出す談話ではあるものの、我が国の国柄を含めて、我が国のこれからの将来を決める本当に大切な談話でありますから、これはやはり国民的な議論の中で、皆さんの意見も、多くの国民の皆様の意見も聞いた上で私はつくるべきだというふうに思っております。

 戦争の教訓というのは、いろいろあると思いますけれども、やはり、当時、軍事の下に政治があったということもありました。情報が制限をされて、空気がつくり上げられた、大本営発表という一元化の発信で、異説を認めない、そういうような空気があった。治安維持法を初め法律が拡大解釈された。テロ、暴力が横行した。あるいは、教科書改訂というのも、私は要因としてあったんではないかと思います。かなり明治の一定の時期までリベラルだった教科書が、だんだんと、進め進め兵隊さんというような論調になっていったこともある。

 こういう貴重過ぎるあの教訓をかみしめていくために、もう二度とそういう兆候、あるいはそういう社会にさせない、こういう強い決意を持った談話を私は出すべきだと思うんですが、私のこの考え方というのは、総理、どう思われますか。

安倍内閣総理大臣 今、長妻議員のお考えは、一部でしょうが、拝聴させていただきました。安倍内閣としては、今後、有識者の方々からの御議論もいただきながら、安倍内閣として談話を発出させていただきたい、このように思うところでございます。

 その際、まさに……(発言する者あり)済みません、もうやじを飛ばさないでください、うるさいですから。

大島委員長 静かに。

安倍内閣総理大臣 静かにしてくださいよ。

 よろしいですか。(発言する者あり)

大島委員長 まあまあ、ちょっと静かにしなさい、今答弁しているんだから。

 はい、どうぞ。

安倍内閣総理大臣 それでは答えさせていただきます。

 その上に立って、我々は、さきの大戦の反省の上に立って、さらに、その時代は、世界はどういう時代であったのかということも俯瞰もしながら、その中で日本はどうあったのかということも御議論をいただきながら、そして、戦後の歩み、そしてさらに、今後、日本はどういう国になっていくのか、あるいは世界にどのように貢献をしていくのかということをまとめていきたい、このように思っているところでございます。

長妻委員 私は、今の質疑で本当に懸念が大変大きくなりました、総理に日本国を任せて大丈夫なのかと。

 この国策を誤りというところについては、総理、明確な御答弁はありませんでしたから、これについては今後ともお伺いをすることになると思います。

 時間も残り少なくなりましたが、最後の議題に参ります。

 年金積立金の話でありますけれども、これは、総理がダボス会議で、成長への投資に貢献することとなるでしょう、こういうふうにおっしゃったことから始まって、結局、百三十兆円もの年金積立金の半分も株に投資をするということが、これまでの倍増でございますけれども、決まってしまいました。

 これは、端的にお伺いするんですが、リスクは高くなったんですか。

塩崎国務大臣 長妻先生、もう御存じでお聞きになっているんだろうと思いますけれども、リスクというのはいろいろなものがございますので、多面的、かつ、年金の場合にはやはり長期的な観点から見ていくということがとても大事で、とりわけ、将来の年金給付をしっかり確保するためには、長期的に、年金財政上必要とされる積立金額から下振れるリスクというものをできるだけ抑制するということが一番大事なことなわけであります。

 今回、リスクが高まったのか低くなったのかという端的な御質問でありますけれども、変更前の古い基本ポートフォリオのままで今回のシミュレーションを当てはめてみると、どういう結果になるかといいますと、経済中位ケースの場合では名目賃金上昇率プラス〇・七一、それから、市場基準ケースでも名目賃金上昇率プラス〇・九ということで、今回の要求されている、年金をちゃんと約束どおりもらえるための利回りというのは名目賃金上昇率プラス一・七ですから、今の〇・七一ないしは〇・九では、運用目標を下回ってしまって、年金財政上必要な積立金を確保できない。

 つまり、約束どおり国民の皆様方に年金を受け取っていただくために必要なGPIFによる運用の利回りが確保できないという最も大きなリスクを、前のままでは負ってしまうということになるわけです。

 それに対して新しい基本ポートフォリオでは、株式というのは当然インフレに強いわけで、これからはデフレではなくて緩いインフレでいこうという二%の目標というのがあるわけですけれども、そういう中での運用でいきますと、確かに、先生御指摘のように、単年度のぶれ、いわゆる標準偏差、これは大きくなっているわけでありますけれども、今、繰り返し申し上げますけれども、最も大事なのは、年金財政上必要とされる、つまり、約束どおり支払うための原資としての利回りを長期的に確保できずに年金財政上必要な積立金から下振れるリスクというものは、実は少なくなったというのが今回の新しいポートフォリオであると我々は理解をしているわけであって、そういうことで、我々としては、国民の皆様方に、単純に、半分株式に投資するようになったからといってリスクが高まったというような問題ではないということを丁寧に御説明していかなければいけないなというふうに思っているところでございます。

長妻委員 非常に奇妙な、バラ色な説明だと思うんですね。株を半分引き上げたことでむしろリスクは低くなったんだと。これは本当に国民の皆さん、納得できるでしょうか。

 一番大事なものが下振れリスク、名目賃金上昇率よりも下振れるリスクだとおっしゃいました。

 これはちょっと政府に聞いて、奇妙なことがわかると思うんですけれども、例えば、国内株式を一〇〇%運用した場合と国内債券を一〇〇%運用した場合とどっちがリスクが高いのかと聞くと、ここに、下方確率のことでございますけれども、おわかりのように、国内株式一〇〇%で運用した方がリスクは低い、こういう結果が出るんですね。

大島委員長 長妻君、時間が来ていますから、短く、端的にしなさい。

長妻委員 はい。

 ある意味では安全だという結果が出るわけです。

 こういうおかしな考え方、国民の皆さんに真摯にリスクを説明しない政府の姿勢、これからも追及をいたします。

 どうもありがとうございました。

大島委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

大島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。

 この際、山井和則君から関連質疑の申し出があります。長妻君の持ち時間の範囲内でこれを許します。山井和則君。

山井委員 二時まで安倍総理に質問をさせていただきたいと思います。

 全て、十一項目、質問通告を安倍総理にさせていただきましたので、基本的なこの国のあり方、社会保障、雇用のあり方、格差拡大について質問をさせていただきたいと思います。

 本日は、フランスのピケティ教授が来日をされているということでありまして、この非常に分厚い「二十一世紀の資本」という本、私も買わせていただきました。資本主義においては格差が拡大する、そのことについての警鐘を鳴らしておられます。

 アベノミクスにおいても、今どんどん格差が広がっている。そして、補正予算、来年度予算、また、この国会での改革断行という中でも、格差が拡大し、また、本当に弱い立場の人たちにますます痛みが行っているというふうに思います。

 そこで、まず最初に安倍総理にお伺いしたいんですが、このピケティ教授の一つの主張は富裕層に対する課税強化ということでありますが、このような考え方については、安倍総理、いかがお考えになりますか。

安倍内閣総理大臣 このたびの税制改正においても、累進課税の最高税率を上げておりますし、また相続税のいわば課税範囲を広げているところでございまして、我々も、所得の再配分を適切に行いながら、頑張った人が報われる社会をつくっていきたい、このように考えております。

山井委員 今回の成長戦略の目玉は、法人税減税、実質来年度二千億円というふうに聞いておりますが、やはり一部のもうかっている大企業に対して支援をする、もちろんそれは財源が十分にあるんだったらいいわけですけれども、一方では、介護報酬についても二・二七%、これは物価高というものを勘案すれば過去最大の引き下げです。さらに、障害者の報酬、これについても、物価高を勘案すると史上初のマイナス改定です。アベノミクスで景気がよくなっていると言いながら、一番困っている方々にますます痛みを強いているのではないですか。

 さらに、一般企業には賃上げと安倍総理は言いながら、介護報酬を過去最大幅で引き下げたり、障害者の報酬も実質引き下げたら、一番低賃金と言われている、一般業種よりも少ない給料で働いていると言われている方々の賃金は上がらないと思います。

 安倍総理、こういう格差の拡大、一方では賃上げと言いながら、介護報酬を史上最大カット、障害者の報酬も史上初の実質マイナス改定、なぜこういうアンバランスなことをするんですか。

安倍内閣総理大臣 先ほどお答えをした税制については、つけ加えさせていただきますと、二十五年度改正でございまして、本年一月から適用されているものでありまして、所得税については最高税率を四〇から四五、相続税の見直しで最高税率引き上げ及び基礎控除の引き下げを講じてきたところでございます。

 そこで、介護報酬についてでございますが、適切な介護報酬は大体どれぐらいかということになるわけでありますが、介護報酬は、介護報酬を上げていくことによって、例えば介護保険料も上がっていくということも当然勘案をする必要はあるんだろうと思います。

 その上で、お答えをさせていただきますと、今回の介護サービス料金改定、いわゆる報酬改定でございますが、介護事業者の経営状況を踏まえた適正化を行う一方、最重要の課題である介護職員の確保を図るため、他の報酬とは別枠で、一人当たり月額一万二千円相当の賃金を引き上げるための措置も講じているわけでございまして、まさに、大切な仕事である介護の現場で働いている方々の処遇の改善も同時に行っているということは申し上げておきたいと思います。そして、高齢者の増加に伴う中重度の要介護者等へのサービスを充実するものであります。

 介護給付費は、毎年五%程度伸びており、介護保険制度の持続可能性を確保するためにも、制度の効率化や重点化が必要であります。適正化を行うことにより、高齢者の保険料が今後三年間で一五%程度上昇すると見込まれていたのを、一〇%程度まで抑制できたわけでございます。

 低所得者の保険料は、現行とおおむね同水準に維持できると見込んでいます。また、介護サービスの利用者負担を平均で二%軽減できることとなります。

 そして、介護職員の処遇改善につきましては、これまでの取り組み、月額プラス三万円程度でありますが、と合わせて月額四万二千円相当の処遇改善の実現を目指すものであります。この加算によって、確実に処遇が改善されるよう運用の見直しも検討します。

 さらに、平成二十七年度からは、都道府県に設置した基金に消費税収を充て、介護人材の確保に向けて取り組みを進めてまいります。

山井委員 一言最初に言っておきますが、累進課税の強化は、安倍政権ではなく民主党政権でやることを決めたわけですから、そのことはしっかりそこまで言ってもらわないとだめです。私たちがそれを決めたわけです。

 それで、今の件ですが、本当に介護職員の賃金が上がるのか。私、今ちょっと気になったのは、一万二千円賃金を上げるとおっしゃいましたけれども、本当に上がるんですか。

 例えば、二十万円の月給の介護職員さん、二十一万二千円に、安倍総理、本当に上がるんですか。安倍総理がおっしゃったことですので、まず安倍総理、お答えください。安倍総理の発言に対して聞いております。

塩崎国務大臣 先に、今、どうやって実際に上がるのか、そういうお話でございますので、私の方から答えさせていただきたいと思います。

 この加算を取得するに当たっては、現在でも、介護職員の処遇改善に確実に結びつくように、事業所から、一つは、計画の提出、賃金改善の見込み等に関する計画を出させているということ、それから、支給された賃金額等に係る実績の報告も徴求をしているということでありますが、これに加えて、今回の改定では、実効性を一層上げるように、まず、計画や実績に記載する項目を今までに加えて再検討して、そして、事業者の具体的な取り組みを今まで以上に詳細に把握するということがまず第一点。

 それから、第二点は、現行においても、経営の悪化等の場合には、加算を取得しながら、やむを得ず所得の賃金改善を図らない、そういう例外的な取り扱いというのを今までは認めてきたわけであります。その例外の取り扱いが適切に運営されているかどうかという確認がすぐにはできていなかったということで、これを新たに届け出を求めるということで、運用の見直しを行うということにしているわけでございます。

 ですから、今までよりもちゃんとチェックを事前的にも事後的にもしっかりとやるということで、こういう取り組みによって、基本的には介護職員の賃金が確実に上昇するということを我々は想定して、都道府県とやはり我々はしっかり連携をしながら、これが実際に処遇改善につながるかどうかということを、現場の声も聞きながらしっかりと運用をしていきたいというふうに考えているところでございます。

山井委員 安倍総理、結論を聞いているんですよ、システムじゃないんです。一万二千円上がると先ほどおっしゃいましたよね。これは全国の方がテレビで見ておられます。本当に介護職員の賃金、一万二千円上がるんですか。

 というのは、なぜこんなことを聞くのかというと、もし上がるのであれば、国が個々の老人ホームやホームヘルプ事業所の職員の賃金を決めるということになりますからね。本当に上がるんですか。

安倍内閣総理大臣 ですから、今、システムについて御説明をさせていただいたわけでございまして、こういうシステムになっているわけでありますが、都道府県とともに、国はこういう方針のもとに一万二千円上げることが可能となる財源手当てをいたしておりますので、しっかりと上げていただくように我々も見ていきたい、このように思っております。

山井委員 これは難しい話じゃないんです。過去最大で、介護報酬という介護事業所に入る収入は減らしているんです。減らしているんですよ。減らしているのに、賃金が一万二千円、月給が上がるようにしますと言ったって、普通、信用できないですよ。

 ちなみに、六年前に三%介護報酬を上げました。六年前に上げました、三%。そのときでも九千円しか上がりませんでした、三%上げて。今回は二・二七%下げているんですよ。それで一万二千円上がるんですか。

 私は、安倍総理のおっしゃっていることにうそがあるんじゃないかと思うんです。繰り返しになりますよ。老人ホームや介護事業者に入る収入は、過去最大で今回下げられたんですよ。下がっているんですよ。普通に考えたら、賃金を維持するだけでも必死じゃないですか。

 このグラフを見てください。

 介護報酬、過去最大でカット。そして、障害福祉サービスも、プラス・マイナス・ゼロですが、物価高を考えれば史上初のマイナスです。

 実際、日本テレビの世論調査では、介護報酬の引き下げを支持しますか、支持しないが五九%、支持するが二一%。やはり、国民の皆さん方も、介護報酬を下げたら介護現場は困るよねとわかっておられるんですよ。

 おまけに、安倍総理、既に今、介護職や障害福祉の職員の方々の賃金は平均より十万円安いんですよ。

 安倍総理にお聞きしたいと思います。

 安倍総理は、賃上げ賃上げと経団連に要請されていますよね。ですから、私、先週末も、介護現場、障害者福祉の現場、五カ所回りました。みんなが言っているのは、安倍総理が賃上げ賃上げとおっしゃっているから自分たちの賃金も上がるものだと思っていた、ところが過去最大の引き下げ、これでは上げられない、何で自分たちの、一番大変な仕事をやっているのに、こんなに大変な仕事をやっているのに、何でこんなに福祉の現場に冷たいのか、そういう失望の声を聞きました。

 安倍総理、賃上げ賃上げと先頭を切っておられる安倍総理、介護や障害者福祉の現場も賃上げをしようと思ったら、普通は報酬を上げませんか。なぜ上げないんですか、安倍総理。安倍総理にお聞きしております。安倍総理、安倍総理。

大島委員長 山井君、仕組みの問題ですから、まず厚労大臣にお答えをしていただいて、それから総理がお答えします。

塩崎国務大臣 まず第一に、介護職員の処遇改善加算というのがあるのは御存じのとおりでありまして、これは、当然のことながら、申請をするわけです。それに対して実績報告の提出を求めるわけでありまして、先ほど申し上げたとおりでありますけれども。

 そこで、提出を行わないとか、あるいは悪質な事例というのが発覚をするとか、それから、加算の算定要因を当然チェックしますけれども、それを満たしていないようなものを不正請求するとか、要するに、上げると言って上げなかったというようなことがあれば、当然これは全額返還をしてもらうということになるわけで、あくまでも加算は処遇を上げるためにやってもらう、それを中身もちゃんとチェックする、事前的にも資料を徴求するし、事後的にもチェックをするということを強化しようということを申し上げているので、今まで十分上がっていないところがもしあったとしたら、そういうところを徹底的に今回は上がるようにしていこうというのが、今言った運用の強化ということでもあります。

 それと、もう一つは、介護事業の経営の実態というのを我々はよく見ながら、そして、サービスを一つ一つ見ながらそこの収支差というものも見て、それは今までの流れで見てどうなのかということも勘案しながら、やはり一定程度の収支差は残るようにこの改定率を設定するということになるわけであって、全部がマイナスになるかのようなことはなくて、先ほど総理からお話があったように、中重度であるとかあるいは認知症であるとか、そういうものについて重点化をしていくというようなことを初め、やはり大事なことはしっかりとやっていくし、適正化すべきところ、合理化すべきところは当然のことながらやっていかないといけないということでありますので、決して、今山井委員がおっしゃったように、全部が何かマイナスになってもう給料を上げられないみたいなお話は、それは非現実的な表現ではなかろうかというふうに私は思いましたので、今申し上げたように、加算はちゃんと処遇を改善するために使っていただく、それについては我々もしっかりと見ていくということであります。

安倍内閣総理大臣 今度のこの介護報酬全体の改定においては、例えば介護職員の処遇改善としてプラス一・六五%、そして、例えば中重度の要介護者に対する在宅生活を支援するためのサービスの充実としてプラス〇・五六%、このように決めているわけでありますから、これにのっとってしっかりと施設側が実行していただければ、これは間違いなく上がっていくわけであります。

 つまり、これは上がらないということの方がおかしいわけでありますから、上げるということをしっかりと前提としてやっていただきたい。

 ただ、もちろん、これはその施設施設によってさまざまな状況があるというのも我々も承知をしておりますから、そうしたところはきめ細かく見ていきたい、こう思っているわけであります。

 なぜマイナスになったかといえば、もちろんこれは、全体として見れば、施設側が、経営状況がこのマイナスの改定に耐え得る、こう考えたわけでございます。

 それと同時に、再々申し上げておりますように、介護報酬は介護保険料も大きな財源の一つでありまして、介護報酬を上げていけば介護保険料は上がっていくということになるわけであります。と同時に、全体の介護給付は、これは大きくなっているというのも事実でございますから、その上において我々はこういう判断をしたところでございます。

山井委員 いろいろ加算をつけたとおっしゃっていますが、このフリップにありますように、トータルの収入は二・二七%も過去最低で下げているんですよ。その下げた内訳で何か加算をつけたといっても、それは内訳の問題ですから、トータルは減っているんですよ。これは安倍総理、非常に深刻ですよ。

 次のフリップを見てください。

 今、介護現場の有効求人倍率は、一般では一ですけれども、介護現場は二・五ですよ。二・五、人がいない。東京だと何と四倍ですよ。人がいないんですよ。おまけに、今、月給が平均より十万円少ない。

 さらに、今後高齢化社会で高齢者がふえていくのに、介護福祉士養成学校の定数は激減しているんですよ。なぜですか。賃金が低くてなかなかライフワークとして人生をこれで暮らせない、そういう不安があるから、進路指導の高校の先生も勧めにくい、親も反対する。

 私は別に介護職員や障害者福祉職員の賃金だけのことを言っているんじゃないんです。障害のある方々、そして、年老いてこれから介護が必要になっていかれる方々、仕事と両立で介護されている方々、そういう方々を支えてくださっている一番大切な人材じゃないですか。その人材の方々、今までより十万円低いのに、さらに、ごちゃごちゃと言いわけはされましたけれども、トータル過去最大の収入を減らすというのは、私は大問題だと思います。

 安倍総理、確認します。

 安倍総理、一万二千円、本当に上がるんですか。テレビで全国の方が見ておられます。ここは重要なんです。これは、安倍総理……(発言する者あり)違う、関係ないです。上がるのなら上がると、安倍総理、約束してください、この場で。一年後にわかる話ですから。上がるかどうかはわからないけれども、上げるべく頑張ってほしいという願望なら、願望だと言ってください。約束か願望か、安倍総理、どっちですか。(発言する者あり)

大島委員長 静かにしなさい。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、介護職員の処遇改善加算については、運用を今までよりもはるかにしっかりやるということを申し上げているわけであって、これが上がらないということでは何のためにやっているのかわからなくなってしまうので。これは議員立法でも、先生方が一致団結して議員立法を去年通されたように、やはりこの人材をきちっと確保して介護の現場を守っていくということは共通の思いなんです。

 同時に、しかし、我々が考えなきゃいけないのは、この介護のシステムが持続可能であるということも大事であって、これは必ず負担と給付と両方あるわけでありますから、先ほど総理から申し上げたように、保険料の問題もあります、それから自己負担の問題もあります。したがって、きちっと重点化するところは重点化して充実をしていく、これはもう先ほどから申し上げているとおりであります。

 そして、しかし、利益率がどうも高過ぎるようなところについてはやはり合理化を図っていくというのは当然だし、しかし、今回、我々は、さらに基金も介護について設けるようになったことは先生御存じのとおりであって、これは施設の整備もあれば人材確保のための使途にも使えるということでもありますから、我々はやはりこの人材を充実していくということに関しては先生と同じ考えだというふうに思っています。

 これは全体をどうきっちり高齢化が進む中で持続可能にしていくかということも同時に考えて、そして同時に、先ほど申し上げたように、利益率は、収支差率は一定程度はやはり守るようにしながら、今回のマイナス改定というのが行われているということであります。

 なお、最大というのは必ずしも正しくないということも申し添えておきます。

山井委員 安倍総理、お答えください。

 一万二千円、介護職員の賃金を上げるというのは約束ですか、願望ですか。全国の方にそこを言ってください。

安倍内閣総理大臣 既に今、大臣から説明をさせていただきました。

 今回の改定に当たっては、例えば収支差については一〇%ですか、それぐらいあるという現実、特養は一〇%であり、また内部留保も相当程度あるという中において、今回こういう改定をしたところでございます。そして、その中において、我々は、一万二千円、その前の三万円と足し込んでいけば四万二千円ということになっていくわけでありますが、そういう改善はしっかりしてくださいねということが前提であります。

 そこで、他方、非常に小さなところもあります、収支状況が悪いところもあります。そういうところについては実態についてしっかりと説明をしていただくということが必要になってくるわけでありますが、基本として上げていく、一万二千円上げていくというのが基本であるということを申し上げておきたい。これはむしろ全国に向けてしっかりと申し上げておきたい、このように思います。

山井委員 いや、これは要請してもらっても困るんです。現場の立場としたら、それなりの財源がついてくるんだったらいいけれども、過去最大に収入を減らしておいて、賃金を上げてくださいと言われても困るんです。

 例えば、介護の労働者のクラフトユニオンの方々のアンケート調査によると、報酬引き下げと処遇改善の両立について、できないと思う人が八九・五%。それはそうですよね。

 どういう声が出ているか。介護報酬が引き下げられれば、当然事業所は苦しくなり、その結果、介護職員の処遇改善は見込めない、人材確保が厳しい今、より人手不足になり、その結果、サービスの低下につながり、負の連鎖になる。介護職離れがふえる。報酬が下がれば利益が下がり、月額の賃金で一部改善されたとしても、業績連動が反映されるボーナスで調整されて年収ベースでは変わらない、あるいは今より低くなるだろうと。

 結局、報酬を下げておきながら、いろいろ言いわけをして、上がります、上がりますと言うのは、非常に私は現場に対しても失礼だと思います。

 先ほどの安倍総理の答弁で、一万二千円上がるかどうかわからない、要は現場任せだというふうに私はわかりました。

 では、安倍総理、消費税で八兆円も増収がありましたよね、八%に上がって。おとつい訪問した介護施設の方も、消費税が三%上がったから介護報酬は上がるものだと思っていたと。八兆円増収になったんですから。

 私も、社会保障に財源が必要なことはわかっています。社会保障を充実させるために消費税を上げたんですよね。八兆円増収。介護報酬を一%上げるための国庫負担は二百五十億円です。八兆円増収。介護報酬一%は二百五十億円です。障害者福祉報酬は百億円です。

 ことしの法人税減税は実質二千億円、民主党政権のときよりふえた公共事業は年間一兆五千億円、商品券は千五百億円、今年度ふえた防衛予算は九百五十億円。こういう数字を見たら、一%の二百五十億円の介護報酬アップ、障害者福祉報酬の一%の百億円は、出せない額じゃないんじゃないですか。

 安倍総理、余りにも福祉、一番弱い立場の人たちに対して冷たくないですか。安倍総理の答弁をお願いします。

安倍内閣総理大臣 これは国費が一〇〇%ではありません。半分が税金です。(山井委員「国費のことを言っているんです」と呼ぶ)国費のことを今おっしゃった。全体は違います。国費が半分。今おっしゃった額と同程度の額が保険料と本人負担です。つまり、上げるということは、保険料も上がるし本人負担にも影響が出てくるということ、そのことを踏まえなければいけないんですよ。

 そういう中において、我々は、施設において収支差が特養では一〇%あるという事実、そしてまた内部留保もたまっているところも多いという中において、適正化するという観点から、今回介護報酬の改定を行ったわけでございます。

 しかし同時に、現場において、介護職の方々の待遇を改善する必要がある、人手不足であるということも、我々も十分に承知をしております。その意味において一万二千円の加算を行ったわけでありますし、一万二千円のこの加算については、施設側もしっかりとそのための加算であるということで認識をして待遇の改善に使っていただければ、間違いなくそれは一万二千円上がっていくということになるわけでありますし、また、きめ細かく小さな施設についても我々は目配りをしていきたい、こう考えているところでございます。

山井委員 そういうのを机上の空論というんです。トータルの収入を下げておいて、どうやって賃金を上げるんですか。常識で考えたらわかるでしょう。もし賃金を上げてくれというのならば、収入を上げるのが普通じゃないですか。

 この問題で、今、介護職員はどんどん集まらなくなっています。これは誰が今後支えていくんですか。今、年間十万人介護離職がふえています。結局、安倍総理は、女性の活躍支援と言いながら、介護報酬を下げると、賃金が下がったり、あるいは非正規がふえたり、あるいは職員の数を減らす。なぜならば、介護という仕事は七割が人件費なんですよ。収入が減ったら、人手を減らすか賃金を下げるか、正規の人を非正規にするか、それしかないんですよ。

 今、東京では、特養の半分が一部のベッドを閉鎖し始めているんです。あるいは、ホームヘルパーが足りないからホームヘルパーを派遣できないという事業所も出てきている。さらに、今回の介護報酬引き下げ、このことによって、残念ながら、ますます若い人たちがもう介護や障害者福祉に集まりにくくなります。そうなると、結局、仕事をやめて女性が介護をしろということに一歩間違うとなりかねない。

 安倍総理、今回の介護報酬引き下げは、女性の活躍支援に逆行すると思いませんか。安倍総理じゃないですか、女性の活躍支援を言っているのは。

大島委員長 山井さん、改革担当の甘利さんがさっきから御説明申し上げたいと言っておられるので。

甘利国務大臣 介護全体について、施設ごとに収支差というのを調べているんです。もちろん、デイサービスとか幾つかは、収支差、企業でいう利益率、これが低いところもあります。しかし、一〇%近いところもあるんです。今おっしゃった特養は、まさに収支差というのは一〇%なんですよ。しかも、一施設当たりの内部留保というのは三億円です。それを、それでいながら介護報酬が、上がらないということはないと思うんですよね。これを適切にして、トヨタよりもうかっているところには考えてくださいと。

 これは、半分は税金を入れてやっているわけでありますから、めり張りをつけてちゃんとやっていきますから。政府としても、介護の人材の給与が上がるようにきちんと指導していきます。

山井委員 私は、極めて不適切な今の発言だと思います。なぜならば、もちろん一部、会社でもあるいは福祉事業者でも、もうかりのするところは企業であろうがどこであろうが一部あるでしょう。しかし、それをもって全体の介護報酬や障害者報酬を下げるというのはどういうことですか。一生懸命赤字で頑張っておられる法人、給料を上げたいけれども上げられなくてぎりぎりでやっておられる法人、福祉法人はいっぱいありますよ。それに対して、あたかも福祉法人が金がもうかっているような決めつけの言い方というのは、私は国会でするのは極めて不適切だと思います。

 それが証拠に、厚生労働省に聞きましたが、過剰な内部留保はどれぐらいあるか調べたことがありますかという文書回答をいただきましたが、厚生労働省は調べたことはないと言っているんですよね。調べたこともないのに、感覚的にいって、もうかっていそうだから報酬を上げない、そういうことは私は極めて高齢者や障害者やあるいは今介護されている方々に対して不穏当だというふうに思っております。

 それで、もう一つ今問題になっているのが、技能研修の問題があります。

 今回、安倍政権は、外国人の技能実習に介護を加えようとしております。しかし、この技能実習、大変問題が多いんですね。

 例えば、昨年、技能実習について調査をしたら、二十五年度、二千三百十八件の外国人技能実習の実施機関、主に製造業です、ここについて厚生労働省が調査をしたら、何と七九・六%、約八割で労働基準関係法令違反、違法状態が見つかった、八割で。

 例えば、以前は国連から、この外国人技能実習制度は奴隷的だということで、やめるべきだというそんな意見も国連から出ております。搾取的で安価な労働力を供給し、奴隷的状態にまで発展している場合さえある、制度を廃止すべきだ、国連の特別報告者がこれは日本に対して言ったものです。

 こういう札つきの、問題があると言われている技能実習に今回介護を加えようとされている。何ですか。史上最大介護報酬を引き下げておいて、安上がりの外国人にさせる、それは私は非常に失礼だと思いますよ。

 安倍総理、こういう成長戦略の名のもとで、技能実習で介護を活用するのはやめるべきだと思いますが、安倍総理いかがですか。

 安倍総理、質問通告しているんですから、安倍総理、答えてください。質問通告をそのためにしているんですから。ちょっと安倍総理、ここに質問通告、きのう出してあるのになぜ答えないんですか。

大島委員長 仕組みやらそういう具体的なお話に対してまずお答えをして、その後に総理の所感があれば総理の答弁を求めます。

塩崎国務大臣 その前に、先ほど社会福祉法人の内部留保についてお話がありましたが、厚生労働省が何も調べていないかのようなことをおっしゃいましたが、それはこういう聞き方で、適正なものと不適正な内部留保に分けたような調査をやっているかと言うから、そういうことはやっていないと言っているのです。

 我々がしかし同時にやっていることは、社会福祉法人のいわゆる内部留保については財務的な余裕を示すものではないことから、やはり、我々の社会保障審議会の福祉部会で、現在の事業の継続に必要な財産と、それから社会福祉事業等の拡充に再投下可能な財産とを峻別する、そして社会福祉法人のガバナンスを強化するというようなことを今議論していて、恐らくこれは我々としては法律をきちっと出していかなきゃいけないと思っているわけです。

 何も調べていないかのようなことをおっしゃるので、それは正しくないということをまず申し上げ、早晩、この内部留保を必要があってやっているということについては、なぜ必要なのかということもきっちりやはりオープンになるようにしながら積み立ててもらう。そして、そうじゃないものについては、福祉のために使うものであるならばそうだし、そうじゃないものは、やはり我々としてはきちっと対処をしていくということを今考えながら新しい仕組みをつくりつつあるので、それを知っていただきたいというふうに思います。

 その上で、今、技能実習の話がありました。

 これは、山井議員がおっしゃったように、日本再興戦略の改訂二〇一四において、日本語要件等の担保等の介護分野特有の観点も踏まえて検討し結論を得るということが閣議決定で決まっているわけであります。

 それで、これを受けて、私ども厚労省としては、昨年十月から外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会というのを開いております。

 そこで、先般おいでをいただいたと思いますが、この取りまとめが一月二十六日にございまして、介護人材不足への対応ではなくて、今御指摘のような、人材不足だからやるということではなくて、技能移転という制度趣旨に立った上で、今御指摘のように、確かにいろいろな御批判があることはよくわかっているので、その指摘されているさまざまな懸念に対応するために、まず第一に、介護職に対するイメージ低下を招かないようにする。先生が御指摘のような大事な職場であります。

 そして、外国人については日本人と同様に適切な処遇を確保する。安いからということをおっしゃいましたが、そうじゃない。適切な処遇を確保して、そして、日本人労働者の処遇、労働環境の改善の努力が損なわれないようにする。まさに御懸念のところであります。

 それから、介護サービスの質を担保するということとともに、利用者の不安を招かないようにする。

 こういう今の大きく分けた三つの要件に対応した制度設計というものを、具体的に今考え方として示されたところでございます。

 職種の追加には……(山井委員「もう結構です。そんなこと聞いていませんから」と呼ぶ)まあ、ちゃんと聞いてください。

 技能実習制度本体の見直しというのが同時に行われているのは、御存じのとおりであります。(山井委員「もう結構です。わかっています。そのことは知っています」と呼ぶ)いや、これをちゃんと国民の皆さん方にわかっていただかなきゃいけないので。

 この内容の詳細が確定をしないと、制度全体をどう見直していくかということが確定をしないといけないので、その確定ができた段階で、介護固有の要件等とあわせて、さまざまな懸念に、今先生がおっしゃったような懸念に対応できることを確認して、新たな技能実習制度の施行と同時に職種追加を行うことが適当であるという考え方がこの検討会から示されたので、これを受けて、この考え方を……(山井委員「委員長、長過ぎます」と呼ぶ)

大島委員長 簡明に。簡明に。

塩崎国務大臣 我々、省内とそれから与党の中でもよく考えて、介護職種の追加に向けて、さらに具体的な制度設計等を進めて、さまざまな懸念に対応していきたいというふうに考えているところでございますので、経緯のあることで、進んでいる話でありますから、そこを踏まえた上で御意見をいただければありがたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今、詳細については厚労大臣から丁寧に説明をさせていただいたところでございますが、要は、安い外国人労働者を安易に使うことはしないということでありまして、介護職のイメージを低下させない、あるいはまた日本人と同じ待遇をちゃんとしていく、そしてまた、あるいは日本人の介護職の方々の待遇改善の努力を妨げないようにするというのが基本的な課題であります。その課題のもとに、本来の技能移転という制度の趣旨にのっとって検討していこうということでございます。

山井委員 安倍総理、既にもうイメージ低下になっているんです。消費税を上げたにもかかわらず、過去最大幅で介護報酬を下げて、現場に不安を広げて、おまけに、それとセットで、先ほど言ったように国連からも警告を受けているような技能実習制度で外国人をさせる。そして、今検討されている案は、小学校低学年レベルの日本語で、十分に通じない方、介護の経験をしたことのない方が入るわけなんです。

 安倍総理、私は政治家になる前は福祉の研究者で、一年ぐらい国内外の介護施設で実習をしたことがありました。やはり介護は重要なんですよ。三日前もある施設に行きましたが、そこである高齢の女性の方からこう言われました。山井さん、軍歌を歌ってほしい。えっ、何で軍歌ですかと聞いたら、自分の父親が戦争で亡くなった、だから自分は軍歌が好きだ、そして、自分の村では八人が戦争で亡くなった、だから自分は介護施設に来ると軍歌を歌ったり、歌ってほしいと。

 つまり、何が言いたいかというと、今介護のサービスを受けている方々は、戦時中、本当に一番日本のために苦労をされた方々も多いんですね。そういう方々を、いかにいい職員さんが丁寧に優しくお世話するか、これは、私は政治の最優先課題の一つだと思います。それに対して、何ですか、消費税を上げておきながら介護報酬を大幅にカットし、おまけに安上がりの外国人労働者ということに、事実上なるじゃないですか。

 今、現場では、安倍総理、どうなっているか御存じですか。今回の介護報酬引き下げでなかなかもう福祉の人材は来ない。となると、もう外国人に頼るしかない。サービスの質はもうこれは考えていられない、人がいないから、外国人に頼るしかない。こういう議論にもうなっているんです。

 安倍総理、やはりこういう、介護のイメージを損なうべきではない、介護の職員の賃金が上がりにくくするのはよくない、そこまでおっしゃるんでしたら、今でさえ問題のある技能実習制度に介護を加える、安易に外国人に介護のお世話をしてもらう、そういう導入はやめてほしいんです。安倍総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 介護職についてのイメージについても、確かに、大変きつい仕事であるというイメージ、そして、なかなかそこでキャリアをアップしにくいというイメージがあるのも事実であります。そして、現実の問題としてそういう状況が生まれているところもあるのも事実なんだろうと思います。

 我々は、何とかこれを変えたい、こう思っているんです。だからこそ、今回も一万二千円の処遇改善ということもさせていただきました。

 今回の介護報酬の改定について、これは現場を、まさに現場で働いている人たちの賃金をカットさせていこうとしているかのごとく今、山井さんは議論をされておられますが、これは全く別でありまして、つまり、経営全体を考えれば一〇%の収支差があるわけでありまして、その中においては介護報酬をマイナス改定させていただいた、過去最大ではありませんけれども、マイナス改定させていただいたということでございます。

 それと、介護給付自体については、これは全体は大きくなっているわけであります。年々年々、当然、大きくなっているわけでありまして、これを支えるのは税金と介護保険料と御本人の負担であります。そのことも考えながら介護報酬を決めていかなければいけません。

 介護の現場の皆さん、施設の皆さんにとっては、これは介護報酬をプラスにすればみんな喜んでいただけますよ。私たちだって、選挙で皆さんに応援していただいています。皆さんに喜んでいただきたいという気持ちはありますが、しかし一方、それはまさに、直接、介護報酬にも本人負担にもはねていくわけでありますから、その中で、しっかりと経営の状況を把握した上でこういう判断をさせていただいた。

 同時に、介護現場で働いている方々の報酬についてはプラス一万二千円、これは基本的にプラス一万二千円ですから、しっかりと施設経営者の皆さんは対応していただきたい、このように思っている次第でございます。

山井委員 今回、物価高を勘案したら過去最高の下げ幅ですが、このことによって、今十万人の介護離職がさらにふえる、あるいは、一歩間違うと介護心中すらふえかねません。収入が減るということは、提供するサービスの、例えば、ある老人ホームは、建てたけれども、職員が不足しているのでベッドが半分しかオープンできないとか、ホームヘルパーがもう派遣できない、そういう事業所も出てきております。

 そういう意味では、私は、非常に高齢者に冷たい、障害者に冷たいと思いますが、次に、若者に対しても非常に安倍総理の成長戦略が冷たいというふうに言わざるを得ないのが労働者派遣法の改悪であります。

 今、派遣労働者、全国に約百六十万人。そして、このグラフにありますように低賃金で不安定。今まで臨時的、一時的であったはずの労働者派遣法を今回、昨年廃案になったにもかかわらず、大変不評な法改正で、若者が安定雇用、正社員になりたいと言っているのに、若者が派遣に流れるように派遣労働者をふやす改革。

 なぜならば、ここにありますように、今までは三年の上限があった。ところが、今回また政府が出そうとされている改正案においては、三年以上も、労働組合に意見さえ聞けば、労働組合が反対しようが何しようが、永遠に、一生派遣を続けていくことができる。

 安倍総理にお伺いしたいと思いますが、若者が、あるいはその若者の御家族が今求めているのは正社員であったり、あるいは安定雇用だと思うんですね。にもかかわらず、今回の派遣法では、派遣労働者がふえる内容になっています、規制緩和ですから。やはり、若者は社会の宝です。日本の未来を支えてくださるのは若者です。その若者が、望めば結婚をし家庭を持ち、安定した人生を送るために、派遣をふやすこの派遣法の改悪はもうこの国会では再提出をやめていただきたいんです。

 安倍総理、いかがですか、安倍総理。委員長、安倍総理。

大島委員長 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 まず第一に、現在提出を検討している労働者派遣法の改正案は、御存じのように、公労使で構成する労政審での建議を踏まえてつくっているところでございまして、このときには、ですから労働組合側の皆さん方の御理解もいただいての法律だったということを……(山井委員「反対しました」と呼ぶ)いや、法律としてはお認めをいただいたというふうに我々は理解をしております。

 今回の検討しているものについても申し上げれば、これは、派遣会社に対して、計画的な教育訓練とかキャリアコンサルティングとか、それから派遣期間が満了した場合の雇用安定措置というのを新たに法的に義務づける、それから、派遣労働者の正社員化の推進等に向けた措置を強化するという法律であって、今おっしゃっているような、直接雇用を後退させ、生涯派遣というようなものを進めるんじゃないかということでありましたが、それと全く逆であって、正社員になりたい方についての措置についてはきっちり法的にやるということでもある。

 さらに、派遣先にも、派遣労働者への正社員募集に関する情報提供を義務づけるとか、正社員として雇用する場合のキャリアアップ助成金の活用などを進めるとか、こういうようなことを検討中の案ではしっかりと入れ込んでいる。

 派遣労働者の一層の雇用の安定、それから保護等を図って、正社員を希望する方は当然正社員になりやすくするように、そして、派遣でいきたいという方については、さらに処遇改善され、そしてまたキャリアアップも図れるようにしていくということでありますから、生涯派遣というようなことは全く当たらない御指摘だというふうに思います。

山井委員 実際これは、ドイツでも同様の、それまであった、派遣は一年や二年という上限を撤廃する改革を二〇〇三年にやったんですね。安倍総理、見てくださいよ、これ。そうしたら、四年間で派遣労働者が倍増しているんですよ、倍増。それで、ドイツは、ワーキングプア、貧困の若者がふえて、この改革は失敗だったということで、もう一度期間制限を入れることにしたんです。四年間で倍増ですよ。

 安倍総理、正社員化とか待遇改善とかおっしゃいましたが、実効性はほとんどないんです。実際、一番大きな効果は、派遣労働者がふえるということなんです。それが証拠に、昨年の夏、派遣法が廃案になったときに、日経新聞十一月十三日、「人材派遣会社など「非常に残念」」と。人材派遣会社が一番ショックを受けたんです。ということは、派遣労働者がふえる改革なんです。

 安倍総理、今、日本の成長戦略を考える上でも、若者が安定した雇用にしていくようにするのが成長戦略ではないですか。一番不安定な派遣をふやす、こういう緩和はよくないと思います。安倍総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 いや、山井委員、それはこじつけであって、今厚労大臣からお答えをさせていただいたように、正社員化を望む方には正社員化への道をしっかりと用意しなければいけない、そのためにさまざまな義務づけ、規則をつくっています。一方、非正規で働く方々に対しては、そのまま非正規でいこうという方々もおられますから、そういう方々に対しましてはしっかりと処遇の改善をしていく。この二本立てと言ってもいいんだろう、このように思います。

 そして、同時にまた、非正規、正規の増減については一概に法制だけでは言えなくて、景気の状況等も大きく影響はあるんだろう、このように思います。

 我々が政権をとってから以降においては、非正規の中における望まない非正規の比率は下がってきておりますし、一三年以降について言えば、正規から非正規に行く人に対して、非正規から正規に行く人は、働き盛り、五十五歳未満の方についてはふえているんですね。逆に非正規から正規になる人の方がふえている、そういう状況を今つくってきているわけでありますし、さらに、望まない人は正規に行けるような、そういう道が開かれる経済状況もつくっていきたいし、今回の派遣法の改正でさらにそういう道をしっかりとしたものにしていきたい、このように思っております。

山井委員 安倍総理の言っていることは、全く説得力がないんです。

 実際、今回の法改正で正社員化、どういう方法にしてなれるか、安倍総理、御存じですか。ここに資料がありますが、説明しましょうか。

 どういう形で雇用安定化措置、正社員にするか。

 一番目、派遣先への直接雇用の依頼。つまり、派遣期間が終わったら、正社員に雇ってもらえませんかと言うんですって。言ったら正社員になれるんですか。そんな簡単な話だったら、今までから正社員になれていますよ。言っても無理ですよ。そう簡単にはなれません。

 二番目、新たな派遣先を提供します。そんなの当たり前じゃないですか。派遣期間が終わったら、ほかの派遣先を提供するのは当たり前じゃないですか。今までからやっていますよ、こんなことは。

 三つ目、派遣元の人材派遣会社において無期雇用してもらう。でも、そんなことは、必ずしも派遣から抜け出すことにはなりませんよね。

 つまり、正社員化の雇用安定措置というけれども、今聞いてもらったらわかるように、実効性がないですよ。

 あるいは、資料にも入れていますが、キャリアアップの要件も、一年間に一時間キャリアアップ研修をすればいいのか、一カ月に一時間キャリアアップ研修をしたらいいのか、それも全く決まっていません。

 何ですか、それは。正社員化します、待遇改善します、お題目はいいですよ。実効性がないじゃないですか。それよりも一番確実に起こるのは、派遣がふえるということですよ、期間制限がなかったら。

 安倍総理、ドイツの同じ例があるんです。日本で絶対にこういうふうに派遣労働者が今回の派遣法改正によってふえないと自信を持って約束できますか。安倍総理。

大島委員長 塩崎厚生労働大臣、的確に答弁を。

塩崎国務大臣 まず第一に、ドイツはもともと一九九〇年代の終わりに、ドイツはヨーロッパの病人と言われていた経済だったんですね。それが、シュレーダーによって、さまざまな労働市場の改革をやりました。失業保険も短くしました。そして、派遣についても青天井、つまり期間制限なしにしたぐらいです。それはなぜかというと、失業者が物すごく多かったからですね。それで吸収をしていった。

 ということで、今いろいろまた揺り戻しが来ていることはそのとおりでありますけれども、しかし、いまだにそれは結論が出ていないんです。決まっていないんです、まだ。決まったかのようなことをおっしゃいましたが。

 そういうことであって、それから、まず第一に、今回の改正の最大のポイントは、届け出制を、一部届け出制にまだなっていました。今度は許可制に全部変えることにしたということが、これから新しく入る雇用安定化措置にしても、実効性をもたらすのは、やはり許可制にするというところが大きな違いであって、今までのように、届け出をして後は自由にできるというのとは全く違ってくるわけであります。

 それは一方で、野党側にちゃんと働きかけを我々もしていかなきゃいけないと思っているわけでありますけれども、それは、許可制のもとで新しくやるということがたくさん入ってくるわけで、これはこれからのことで、法律ができて実際にどうやるかはこれからのことであります。

大島委員長 厚労大臣、これでふえるかふえないか、そこだけ的確に答えなさい。

塩崎国務大臣 派遣労働者がふえるかどうかは、それは雇用者がどうするかということと、働きたい人がどういう働き方をしたいかということと、それから、当然経済情勢によって全然変わってくるわけでありますから、一方的にどっちかにふえるだ、減るだということを事前的に言うことは、それは余り意味があることではないというふうに私は思います。

山井委員 安倍総理、なぜ私はこの問題にこだわっているのかというと、若者の人生がかかっているんです。

 派遣の方の結婚しておられる割合は、無期の安定雇用の約半分です。例えば女性の派遣の方は、育児休業を取得されている方は四%、正社員の女性は四〇%。十倍も違うんです。臨時的、一時的だったら、今のような派遣という制度、まあ、今、日本に存在しているわけですし、海外にも存在しています。しかし、安倍総理、あなたが今やろうとしているこの派遣法改正は、その派遣を一生続けようとしている話ですよ。もしこういうふうに日本でも派遣労働者が激増したら、その方々の人生、本当にこれは、なかなか途中で正社員にはなりにくいんです。

 だから、わからないとかじゃなくて、今回の法改正によって派遣労働者がふえる可能性は極めて高い、これは誰が考えてもそうじゃないですか、期間制限を撤廃するんだから。若者の人生がかかっているんです。

 だから、安倍総理に聞いているんです。安倍総理が日本の若者の人生のことを真剣に考えるのであれば、この法改正で本当に一生派遣の若者はふえないですか。安倍総理、御答弁ください。

安倍内閣総理大臣 先ほど大臣から答弁したように、届け出制から許可制に変わる、これは大変厳しい変化だと思いますよ。

 それと同時に、派遣期間終了時の派遣労働者の雇用安定措置について、これは派遣元に課すわけでありますし、三年経過時は義務であり、一年以上三年未満は努力義務、こういうことになっているわけであります。

 それと同時に、先ほど塩崎大臣が説明をしたように、派遣がふえるかどうかというのは、これは経済状況にも多く左右されるわけであります。

 実際、我々、法改正を行っていない中において、先ほど申し上げましたように、働き盛りの人たちで見れば、一二年から一三年において、正社員に移る人の方が正社員から非正規に移る人よりも多くなっているわけでありますし、不本意な非正規で働いている人の比率も落ちております。

 さらに加えて言えば、果たして、では、この格差が、正規、非正規間において、安倍政権になってふえているかのごときの印象を与えておられますが、それは逆で、むしろ安倍政権になってからの方が、正規、非正規間の所得格差は縮まっているわけであります。それは、パート労働者等の時給が増加をしているということでございます。

 このように、我々としてはしっかりと、望む方においてはキャリアアップをしながら正社員の道が開かれるようにしていきたいと思います。

 絶対数において非正規がふえる場合においては、例えば、景気が回復局面においては非正規の方がふえます。これは、非正規から始めていこうという人もいれば、企業が慎重に、非正規からということになっていくわけでありますから、それがだんだん正規に行きたい人は正規に行けるような、そういう経済状況もつくっていきたいし、今回の法改正によってしっかりとルール化をしていきたい、このように思っているところでございます。

山井委員 まとめになりますが、私は非常に無責任だと思います。これだけ本当に若者が安定雇用につきたいと思っている中で、こういう派遣労働者をふやす改革を成長戦略といって強行しようとする。何としても阻止せねばと思っていますし、トリクルダウンの安倍政権の格差拡大ではなく、ボトムアップで格差が少ないことが、やはり機会が均等であり、真の経済成長につながる。岡田新代表も、格差が拡大する世界において、格差の少ないモデルの国に日本をしたいということをおっしゃっています。

 格差を拡大させながら、弱い立場の方々を今回のようにふやしながら経済成長というのは難しいということを訴えて、私の質問を終わります。

 ありがとうございます。

大島委員長 この際、馬淵澄夫君から関連質疑の申し出があります。長妻君の持ち時間の範囲内でこれを許します。馬淵澄夫君。

馬淵委員 民主党の馬淵でございます。

 六年ぶりに野党の一員としての予算委員会の質疑に立ちます。きょうは、原子力政策並びにエネルギー政策につきまして質疑をさせていただく、その思いでこの場に立たせていただきました。

 今日、原子力政策、川内原発、高浜原発の再稼働、これらが話題になり、また、福島第一原発は、いまだもって事故の収束についてはなかなか見通しが立てられない厳しい状況にございます。汚染水問題などは、二年前に私は経産委員会などでこの問題を質疑させていただきましたが、この原子力の問題、事故処理のみならず、極めて課題が山積している。

 こうした状況下の中で、政府が昨年の四月に第四次のエネルギー基本計画を閣議決定されました。このエネルギー基本計画、我々は通称エネ基と呼んでおりますが、このエネ基の方針に基づいて、長期的なエネルギーの需給の見通し、この検討を行うために、経産省では長期エネルギー需給見通し小委員会を立ち上げる。ちょうど、あす一月三十日が、エネルギーのベストミックス、この議論が始まるということを聞いております。

 テレビをごらんの方もいらっしゃいますので、エネルギーのベストミックス、これはもう、この委員会室にいらっしゃる方は皆さん御存じだと思いますが、これに関しては、火力、水力、さまざまな発電の形態の特性を踏まえて、いわゆる環境に対するその状況、あるいは経済性、さらには供給の安定性、こうした観点から電源構成を最適化する、これをエネルギーのベストミックスと呼んでおります。

 こうした議論、私どもも政権時代、二〇一二年の九月に、民主党政権では、「二〇三〇年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する。」と宣言をした革新的エネルギー・環境戦略を策定いたしました。以来、実に三年ぶりということになります。議論は、今申し上げたように、あすから、いよいよこれからということでありますが、この三年前の議論も踏まえて、今後の政府のエネルギーのベストミックス、これらについての議論をさせていただきたいと思っております。

 まず冒頭に、総理にお尋ねをしたいと思っております。このエネルギー政策の議題に入る前の前提として確認をさせていただきます。

 四月に閣議決定をされたエネルギー基本計画、ここでは総理の決意が見られると私は思っておりまして、ここには、エネルギー基本計画第四十二ページには、「我が国の原子力発電所では深刻な過酷事故は起こり得ないという「安全神話」と決別」、このように書かれております。

 原発の安全神話と決別する、まずこの決意を、総理、この場で確認させていただけますでしょうか。お願いいたします。

安倍内閣総理大臣 福島の福島第一原発の過酷事故、なぜああいう結果になってしまったのかということは、これはやはり安全神話に寄りかかっていたと言わざるを得ないわけでありまして、事故は起こり得る、起こり得る事故の中において、いかに住民を、国民を危険から守り得るかという視点がやはり一部欠落していたと言わざるを得ない。

 今後は、この安全神話から決別をした中にあって、しっかりと安全対策を構築していかなければいけないし、安全対策というのは、常に常に、日々更新をしていくという決意も必要であろう、このように思っております。

馬淵委員 安全神話、これと決別する、エネ基に書かれたことを踏襲されるということであると承りました。

 さて、電源ごとの発電コストの検証について、ここで改めてベストミックスの議論の中での重要なポイントについてお話をさせていただきたいと思います。

 先ほど申し上げた、我々が政権下で革新的エネルギー戦略を積み上げていく中で、最も重要だ、あの福島第一原発の事故を踏まえてそれを見直さなければならないとしたのは二〇一一年の十二月でございます。当時、コスト等検証委員会というのを立ち上げ、報告書をつくりました。そこでは、それまでは安価だ、安いとされてきた原発のコストについて、新たに原発事故のリスク費用などの社会的費用を加味することで、原発イコール安価な電源であるという前提をゼロベースで見直すことになりました。

 冒頭申し上げたように、あすの一月三十日には、政府において、総合資源エネルギー調査会基本政策分科会と長期エネルギー需給見通し小委員会の合同会合が二時よりスタートということであります。そして、この合同分科会、合同会議が行われた後に、恐らくといいますか、そういう段取りになっているというふうに理解をしておりますが、この長期エネルギー需給見通し小委員会のもとに発電コスト検証ワーキンググループが設置されるということであります。

 この発電コスト検証ワーキンググループ、電源ごとの発電コストについて改めて試算を行うということであります。当然ながら、公平中立な立場からのコスト検証がなされるか、これは極めて重要な問題でもあります。そのためには、さまざまな意見を闘わせ、もちろん異なる立場からのさまざまな御意見、これを十分に検討することが必要だ。同じ団体から複数の委員が、それこそ選出されたり、あるいは中立公正性が疑われるような、そのような形になってはならないと思います。

 そこで、お尋ねをしたい。経済産業大臣にお尋ねいたします。

 ところで、この発電コスト検証ワーキンググループの委員の構成であります。

 委員長のお許しをいただきまして、皆様のお手元には資料をお配りいたしました。資料の一をごらんいただきます。

 発電コスト検証ワーキンググループの委員七名中に、座長を含む二名が同じ民間研究機関の出身となっております。

 いわゆる学識、東大、京大等々、大きな大学、こういったところから複数の委員が入る場合があるというのは伺っておりますが、経産省において七名以下の有識者会議、これも非常に少ないと思います。私も政府にいまして、五名、七名という委員会も、もちろん審議会、なくはないですが、十五名とか、幅広くというのもあります。

 そういう意味で、この七名以下の有識者会議で、民間研究機関、これは大学を除いた場合、どういったケースがあるかという、こういったケースがほかにあるかというのは、これは大臣には、お尋ねじゃなくて認識を伺います。そういうケースがあるのかという事例についての認識、イエスかノーで結構ですので、お答えいただけますでしょうか。

宮沢国務大臣 同じ機関から複数名というのがあるかないかというのは私も正直言ってよくわかりませんが、人数が少ないというお話がありましたけれども、これはワーキンググループということでございますので、座長を含めて七名ということでやる方向で検討しております。

馬淵委員 お答えいただけないのはもう私もよくわかっておりまして、経産省の中で審議会、ワーキンググループ等、これはホームページでわかるものだけでも四百以上あります。この中に七名以下はどれぐらいのものがあって、そして民間の研究機関から複数名が入っているようなものはどれぐらいあるかということ。これはさすがに、調べてくださいと言っても、なかなか役所の皆さんも大変だということで、勘弁願いたいということでもありましたので、ここは私の事務所の方で調べました。

 全部は無理でした。しかし、三分の一程度、これを確認していくと、先ほど申し上げた四百程度ある中の三分の一程度なんですが、それで精いっぱいだったんですけれども、七名以下の会議体は四つ、うち、大学を除く、同じ民間の研究機関から複数名の委員が入っているケースというのは一件だけでした。全てを網羅したわけではありませんので、これはサンプル抽出ということになってしまうかもしれませんが、一般的に言って、非常に珍しいケースではないかと私は思います。

 そして、なぜこのことを私がこのように取り上げているかといいますと、一般の大学から二名、三名入られることがあるかもしれません。しかし、大学の場合は研究者です。極めてこれは独立性の高い立場に立っておられる。民間の研究機関などは上司と部下の関係、こうした方々が座長と委員で入るということ、これはその組織そのものの考え方がそこに反映されはしないか、当然、中立公正性に大きな疑義が生じるのではないかということを私は非常に危惧いたします。

 そこで、ここは、済みません、特命大臣にお願いで恐縮ですが、この七名中、座長を含む二名の委員、これを派遣しているのは、お手元の資料に、二枚目につけております公益財団法人の地球環境産業技術研究機構、通称RITE、ライトと称する、このように聞いております。

 この組織を所管されているのは内閣府特命担当大臣でいらっしゃいますので、どのような組織かということでお尋ねをしたいと思います。

 このRITEへの出捐企業、出捐金というのは、この組織をつくるときに、設立するときに財産を提供するという意味です、会社でいえば出資のようなものですが、このRITEへの出捐企業には、電力関係は含まれていますでしょうか。含まれているとすれば、それはどこでしょうか。大臣、恐縮ですが、お答えいただけますか。端的にお願いいたします。

有村国務大臣 お答えいたします。

 このRITEには、電力関係が含まれています。

 電気事業連合会、電源開発株式会社、日本原子力発電株式会社、沖縄電力株式会社、この四社が含まれているというふうに把握をしております。

馬淵委員 ありがとうございます。

 大臣、大変恐縮ですが、このRITE、組織として、そこには評議員、役員という方々がいらっしゃいます。このRITEの評議員、役員には、電力の関係者は入っておられますでしょうか。済みません、これも大臣にお答えいただけますでしょうか。

有村国務大臣 お答えいたします。

 公益財団法人地球環境産業技術研究機構のホームページ等で確認をいたしましたが、評議員には、関西電力株式会社顧問、もう一人、関西電力株式会社取締役常務執行役員との肩書を確認しております。

馬淵委員 このRITEには、今申し上げたように、評議員長に電力会社の方、評議員にも入っておられるということであります。

 そして、お手元の資料に、三で示しておりますが、役員名簿、こちらの理事長の方も元電力会社の顧問でいらっしゃいました。

 このRITEという組織、民間の研究調査機関なんですが、国内の主な電力会社全てが実質的に資金の出し手となっている。これは電事連が入っていますから、そういうことになります。評議員長及び評議員として電力関係の会社関係者が入っておられる。つまり、RITEは電力会社とは極めて密接な関係にある研究機関ではないか、このように考えられます。

 そして、かてて加えて、RITEは調査研究を行われる機関ですから、いわゆる受託業務、調査研究を行っておられます。その主な委託先、調査研究、受託をしているRITE側からすれば委託をしてくれる先ですが、この主なところは経産省やNEDO、これは独立行政法人の新エネルギー・産業技術総合開発機構などであります。これもRITEの事業報告書を見れば明らかであります。

 そして、このRITEの研究所で、発電コスト検証ワーキンググループの座長の方は、御本人みずからも電力会社と関係の深い電力中央研究所の出身でいらっしゃる。この委員の方も同様であります。

 私が申し上げたいのは、人数が少ない、これもあるんだというお話でありますが、極めて重要な、これからベストミックスの根幹にかかわるコスト検証を行う中で、民間の研究機関、しかも一部業界と非常に密接な関係のある、さらには所管をする経済産業省と極めて近い関係にあると称される、これはもう外形的に明らかです、その機関から二名入って、そして検証を行う。これで本当に議論の公平性が保てるんでしょうか、あるいは、国民の皆さん方がそのように理解をされるんでしょうか。この中で、私はやはりここは慎重な判断が必要ではないかなというふうに思います。

 この電源ごとのコスト検証、繰り返しますが、客観性、公平性が担保され、国民の理解が得られることは極めて重要。現在の委員構成を見る限り、電力側に寄った委員構成と言わざるを得ません。このような状況の中で、国民の皆さんも同じような印象を持つ、そういったことも考えられるということであります。

 これはあしたからスタートなんです。そして、このワーキングもこれから動かしていくということです。ここは、大臣、人事ということですからいろいろ難しいのはよく承知をいたしておりますが、公平性をしっかり担保するということであれば、この座長をそれこそ中立な立場の学識の方にかえていく、あるいは委員の構成を、より人数をふやす。

 繰り返し申し上げますが、我々が政権のときには、コスト等検証委員会は幅広く、それこそ原発に対して推進も反対も含めた幅広い委員の方々に検証をいただいたんです。これが極めて重要な、そのベストミックス、今後の日本のエネルギー政策を決めていく根幹となるワーキングの、検証を行うチームだからということでありました。

 大臣、お尋ねしますが、私は、繰り返し申し上げますが、委員の個人の方々の見識を問うているのではありません。まさに、プロセスをつかさどる行政の立場として、この委員の構成を含めて変えていく、考えていくということが必要ではないかということを申し上げます。このワーキンググループを、より高い中立性を持つ組織に変えられる御意思はありますか。いかがでしょうか。

宮沢国務大臣 いろいろ、これは答弁をしなければいけないお話をたくさんいただきました。

 まず、長期エネルギー需給見通し小委員会の下部機関としまして、発電コスト検証ワーキンググループをあしたから動かします。そして、規定上は、これは小委員長の任命ということで座長等々が決まるわけでありますけれども、もちろん我々としても随分アドバイス等々しておりますので、しっかりお答えをしなければいけないと思っております。

 まず、RITEについていろいろお話がありました。これは一九九〇年に地球温暖化問題に対する革新的技術開発に関する中核的研究機関として設立をいたしまして、決して電力だけが出捐者ではございません。金融、鉄鋼、電機、また電力でもない、エネルギー関係でもガス等々という、広く財界から出捐金をいただいているということであります。

 そして、現在は、公益財団法人ということで、公益性が極めて高い財団であるということをまず申し上げます。

 そして、新しい委員につきましては、やはり前回、二〇一一年十二月に民主党時代やられておりますから、それとの継続性というのは大変大事だと思っておりまして、そういうコスト検証、前回経験された方、それから現在のエネルギー政策に詳しい方、また国際的な発電コストに関する議論をよくおわかりの方ということで選ばせていただいたわけであります。

 そして、今お二人とおっしゃったお一人の方はもともと前回のコスト検証にも参加されていた方、それで、座長の方が新しくて、同じ機関、こういうお話だろうと思いますが、この方は、まさに東京大学の名誉教授でもあって、電力全般に関する第一人者ということは衆目の一致するところでございます。

 決して、委員のおっしゃるような、ある意味では李下に冠を正すようなことは一切ないような形でやらせていただきたいと思っております。

馬淵委員 大臣、私、先ほど申し上げたように、我々も政府を経験して、審議会やワーキンググループ等々、どういう成り立ちか、仕組みか、よくわかっているつもりです。その上で、最も根幹になるところだからこそ、より透明性、公平性を担保しなきゃならないと申し上げているんです。

 私は、立派な方であるということも承知で、個人のお名前も含めて何ら申し上げていません。言及しておりません。座長云々という人事のことは大変だと私から申し上げている。委員の構成をふやせばいいじゃないですか。ワーキンググループでもしっかりと中立性を保つような、さらに委員を増員する等々、私は方法は幾らでもあると思う。なぜそこまでこだわられるんですか。

 先ほど申し上げたように、ざっと四百幾つあると言われる委員会や審議会等々、私、繰り返し言いますが、役所の皆さんにそんなものを調べろということは、申しわけないからお願いしていませんよ。だから、通告ではありません。しかし、実にこの七名以下というのはほとんどないんですよ。その中で複数名以上入っているというのは、これはやはり普通の形ではないということなんです。そのために私がこうした指摘をして、大臣に人数をふやしたらどうですかと申し上げているんです。

 これは大切な議論ですから、この後に国民的議論の話もしますが、大臣、これはもう一度確認しますけれども、そういったお考えはありませんか。前向きな御答弁いかがですか。

宮沢国務大臣 繰り返しになりますけれども、おっしゃったように、個々人の御経歴等々ということ、まさに能力というものを評価して委員に選ばせていただいたわけでございまして、私はこの七人の方でしっかりやっていけるものだと思っております。

馬淵委員 繰り返し同じことしか、きょうは言うお気持ちなさそうですので、私はもう申し上げません。

 七名のうちの二名が、繰り返し言います、民間であります。公益法人としても、これは民間として活動されているわけですから。これはしっかりと公平性担保をするための仕組みを、役所として私は取り組むべきだと思いますよ。

 この問題にかかわることとして、また一歩踏み込んだお話をさせていただきます。

 先ほど私申し上げて、また宮沢大臣からもありましたが、二〇一一年、我々がつくったコスト等検証委員会、その報告書では、原発の発電コストとして、かつて加味されなかった核燃料サイクルの費用、核燃サイクルと呼んでいるものです、あるいは原子力の事故リスクへの対応費用、これを加味するなど、従来安いとされてきた原子力発電の発電コスト、これについて、いわゆる隠れたコストがあるのではないかという視点から徹底的に検証したわけです。

 当然ながら今回も、このワーキンググループにおいては、核燃サイクル費用や原発事故リスク費用、あるいは国が負担している立地費用あるいは研究開発などこうした政策経費、これも、二〇一一年検証で我々が行ったと同様に加味するということでよろしいでしょうか。これは端的にお願いします。

宮沢国務大臣 具体的な検討はまたワーキングでやっていただくことになるわけでありますけれども、先ほど申し上げましたように、前回の検証の経験者という方に相当数入っていただいておりますので、おっしゃった方向で検討されるものと思っております。

馬淵委員 今申し上げた、私が特にここでも重要視するのは、原発の事故のリスク費用ですね。これは、かつてはなかったんです。だから安価な電源だということで、我々もそう信じてきた。しかしそうではないことが明らかになったからこそ、いわゆるコスト等検証委員会での検証を行ってきたんです。今、大臣からも、踏襲するんだということをいただきました。しかし、これは踏襲の仕方が重要なんです。

 私自身は、この原発事故に関して申し上げれば、あの事故が起きてから、二〇一一年の三月二十六日、総理補佐官として事故収束の担当を命ぜられ、以来九十四日間、事故収束にかかわりました。

 当時は、もちろん皆さん御案内のように、高線量下の中での、あのサイトでの事故の収束、大変な思いで作業員の方々も取り組んでいただいた。私は、当時の責任者として、耐震補強が必要な第四号機あるいは遮水壁をつくらんとしての、サイトでのバウンダリーの確定のために、当時、まだ作業員が入ることも困難であるような状況の中で、私一人でした、国会議員としてただ一人、六月十一日、高線量下サイトの中で、そのサイトに入り、四号機の中にも入り、それらの強度確認やバウンダリーの確定をしてきたものであります。

 その当時の思いとしては、あれだけの事故を起こす、そして、この事故に対しての、リスクに対する恐れというもの、我々がコントロールし切れないものに対する恐れというものを痛烈に感じました。だからこそ、私は、事故確率ということについては非常に高い意識を持って取り組まなければならない、検討しなければならないと思っております。

 そこで、この事故確率というものでありますが、十万炉年に一度などという言葉があります。なかなかぴんとこないんですが、十万炉年です。これは、仮に世界に原発が一つしかないとする、一基、一炉です、その場合には十万年に一回しか事故が起きない、これが十万炉年に一度という事故確率の表現の仕方です。

 この想定でありますと、我が国は原子炉が五十基、五十炉ですね。ですから、十万炉年の場合は割る五十で、我が国の事故確率は、日本は二千年に一度ということになる。そして、世界じゅうの原子炉、これは四百三十基、四百三十炉ありますから、十万炉年割る四百三十炉で、これは二百三十年。日本では二千年に一度、世界じゅうでも二百三十年に一度しか過酷事故、いわゆるシビアアクシデントが発生しないという意味を持つ事故確率です。

 さて、この事故確率、十万炉年に一度というのはどういう数字かということでありますが、今申し上げたのは確率としては非常に低い確率、このように私は感じるものであります。

 そして、この十万炉年に一度という事故確率、発電コストワーキンググループの座長を含め二名の委員を派遣しているRITEが昨年十月に出した報告書の中で、試算で使われた前提条件がこの十万炉年に一度という事故確率だったんです。

 RITEは、事故確率を十万炉年に一度とし、そして、被害額は昨年の十月の段階で十兆円と想定しています。その上で、事故リスク費用については、パネルをごらんいただきたいと思います。事故リスクの費用、これをごらんいただきますと、お手元にはパネルの写しをお配りしていると思いますが、RITEの試算は、リスクコスト、事故リスク費用はほぼゼロと見積もっておられます。

 この報告書を見ると、今申し上げたように、大変ここは、過酷な事故が起きることのないようにということで、事故確率をよく吟味しなきゃならない。RITEは、昨年十月に、十万炉年に一度の事故確率というものを前提として計算されている。

 一方、我々民主党政権のときのコスト等検証委員会、このときには、我々は、二千炉年に一回に相当という事故確率の数字となる、この数字を出しました。どういうことであったかといいますと、当時は、事故確率については非常に計算するのが困難といいますか、それまで安全神話で、我々は信じ切っていた、だから逆に、逆算をしていくという方法をとったわけです。

 つまり、当時の費用、事故の収束のためにかかる費用は五・八兆円以上。現実には十兆円以上ということになっていく状況だと思いますが、五・八兆円以上。これを、炉規法で定められている四十年の運転制限期間でこれだけのお金を積み立てていくと考えたときに、いわゆる疑似的な保険の要素で計算した場合に、結果的には一キロワットアワー当たり〇・五円となった。〇・五円となったそのお金について、これを換算していくと、その事故確率は二千炉年に一度、こういう確率になったという、いわゆる逆算から導き出した数字なんですね。

 当時は、安全神話に我々すっかりとはまっていました、その中にずっぽりと入っていたから、十万炉年という言葉もなかった、そのような認識すら実は持ち得なかった。

 このように、事故リスク費用と事故確率、ここで大きく変わってくるんです。コスト検証にもかかわってくる。

 今、繰り返し申し上げますが、RITEは原発事故のリスク費用をゼロ円としている。そして、このような状況の中で、今後、ベストミックスあるいは原発ということを考えていくとどういう結果が生まれるかということになるのではないか、このように考えます。

 そこで、大臣、お尋ねしますが、RITEが算出した、事故リスク費用をほぼゼロとするこの試算についてはどうお考えになっておられますでしょうか。お答えください。

    〔委員長退席、金田委員長代理着席〕

宮沢国務大臣 私も、実は今これを見せていただいたんですけれども、先ほど総理が最初に答弁されましたように、安全神話に陥ってはいけないということは、我々は常に肝に銘じておかなければいけないことであります。

 そして、この比較表でありますけれども、やはり、先ほども申し上げましたけれども、七名のうち五名の委員の方は前回作業に参加されているということを考えますと、基本的な考え方は私は維持されるのだろうというふうに思っております。

馬淵委員 今、重要な御発言をいただけたと思います。

 このRITEは、繰り返し言いますよ、RITEの所長である方が今回座長になられている。そして、もう一名、七名という中で入っておられる。そのRITEの試算は、十万炉年という極めて低い確率で事故が起きる、ほとんど起きないと言っているに等しい。すなわち、原発事故のリスク費用はゼロ円だと言っている。こうした見解を持っている方が座長であるワーキンググループのコスト検証については、そのような方向には行かないであろうと大臣はお考えであると答えたということでよろしいですか。もう一度確認させてください。よろしいでしょうか。

宮沢国務大臣 もちろん、最終的には委員がこれから議論されることになりますけれども、私は、申し上げましたように、一一年の検証と基本的な考え方が異なる方向には行かないと思っております。

馬淵委員 もちろん、ワーキング、そしてこうした審議会で議論をしていただいて答申を受けるというお立場でありますから、大臣がお決めになる立場じゃないということはよくわかっておりますが、今の大臣のお言葉は非常に重いです。この十万炉年あるいは事故確率というところからコストが大きく変わっていきますから。それによって、原発の比率、後ほどまたお話をしますが、いわゆる再エネの比率、ここにも大きく影響していきます。

 きょういただいたその御答弁で、私、先ほど来、委員の構成というふうに申し上げていますが、これはぜひ御検討いただきたいと思っておりますが、この国会、予算委員会の中で、あしたから動き出すわけですから、これについては厳しい行政に対する監視を行き届かせなければならないと思っておりますので、きょうの大臣のお言葉は非常に重いです。そこまで踏み込んでいただいたということで、私はそれをきょうは了といたしますが、これから長丁場でありますから、しっかりと監視を高めていただきたいと思います。

 重ねて申し上げますが、繰り返しになって恐縮ですけれども、こうした状況の中で、やはり、七名の委員をふやすということについては、これは重ねてお願いをしたいというふうに思っております。

 十万炉年ということは、これはいかに低い確率かというのは、皆さんに原発の事故リスクコストがゼロだということで御理解いただけると思うんですが、二〇一一年のときにもこういう議論はあったんです。我々のコスト等検証委員会の報告書の中にも、この十万炉年ということについてはさまざまな意見がありました。

 ここには、このパネルにも書いてありますが、その委員会の報告書での、ある委員の発言の抜粋なんですね。これをごらんいただきますと、ある委員の発言は、字が小さくて恐縮なんですが、十のマイナス五乗というのは、これは十万年ということですね。十万年に一回くらいの低いところを目指す、目指す以上はそれが実現する蓋然性、すなわち、実現するはず、そういう低いコストになるという論理展開は悪い意味での安全神話だ、このようにおっしゃった。これを目指すのだからそれは実現するはずということではないか、こういう数値を出すこと自体が、このコスト等検証委員会そのものへの信頼感の毀損になる可能性があるのではないか。

 これは三年前ですよ。報告書でいえば二年前。二年前にもこういった議論がありました。先ほど、もう繰り返しになりますから申し上げませんが、大臣からもはっきりと答弁いただきました。

 このように、目標があるんだ、十万炉年という数値は、原子力規制委員会の中でも、十万炉年という数値が管理放出という数値として掲げられています。目標がある、目標を目指して安全基準を高めていくんだ、これが結果的に目標を根拠に置きかえてしまうようなことがあってはならないということをここで改めて申し上げたいと思います。

 三年前にもこうした議論があるわけですから、これからの議論に、きょうの国会の審議、しっかり議事録に残していただけるということになりますから、それこそ、目標が根拠、そういった形にならないように、このコスト等ワーキンググループの検証をしっかりと拝見させていただきたいし、私もまた、たびたび国会での審議を通じて確認をさせていただきたいというふうに思います。

 そして、こうした状況の中で、将来のエネルギーミックス、これはやはり国民の声を、幅広く生活者の声を聞く必要があるということを私は強く実感をしております。ある意味、国民の皆さんの理解なくしてはこれは議論はできません。

 国民の声に耳を傾けることが必須だということでありますが、そんな中で、これはお配りをしている資料の五をごらんください。

 大変恐縮ですが、全員の皆さん方、閣僚の皆さん方、御党と申し上げると、公明党の大臣もいらっしゃるので恐縮ですが、自民党の河野太郎議員の公式ブログ、一月九日付です。これに気になる記載がございました。

 河野太郎議員が、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度に関する省令改正のパブリックコメントにつきまして、経産省が、一月九日金曜日の五時にパブリックコメントを締め切り、三連休明けの十三日、ちょうど十、十一、十二は連休でした、明けて省令改正をやると自民党の再エネに関する委員会の席上で発言したところ、河野議員が、経産省はパブリックコメントを無視するのかと言って省令改正を延期させた、このようにこのブログでは書かれております。「形骸化するパブコメ」ということであります。

 大臣、これは同じ政党ということで、所管というお立場ではないかもしれませんが、これは事実でしょうか。お答えください。

    〔金田委員長代理退席、委員長着席〕

宮沢国務大臣 再生可能エネルギーの接続保留問題につきましては、昨年来、相当な議論になっておりまして、何とか接続を再開させたいという、なるべく早くという気持ちが実はございました。そういう中で、一月の九日までパブリックコメントをやっておりましたが、十三日に公布できればということで実は作業を進めておりました。

 河野議員からも、行革本部長からも幾つかアドバイスがあり、また一方で、パブリックコメントが二千通を超えるというような、大変たくさんのコメントをいただきましたので、丁寧にやらなきゃいけないということで、その後、パブコメにいろいろ全部返答する等々というようなことも全て考えまして、二十六日付で施行するということで党内の了承を得たところでございます。

馬淵委員 急がせているから、しかし丁寧にやらなければならないから延ばしたと。

 大臣、こういうことで政治主導というものがやはり問われるんですね。私は、河野議員が御指摘されているのは、これは本当にもっともだと思いますよ。

 行政手続法四十二条の違反だ、このように指摘をされている河野議員でありますが、ここは法律の解釈というのもあるかもしれません、ここはちょっとお尋ねをしたいところではありますが、急がせているから頑張ってやろうとしたけれども、丁寧にやる、だから延ばしたという話じゃないんです、これは。

 パブリックコメントというのは、広く国民の声を聞くという姿勢そのものですよ。まさに、行政手続法四十二条というのは、これは命令等制定機関、今回の場合は経産大臣ということになるんでしょうか、意見公募手続を実施して命令等を定める場合には、提出意見を十分に考慮しなければならないと規定しています。

 このブログ内容が実際そうだったということであれば、九日にパブリックコメントを締め切って、三連休を挟んで実質翌日とも言えるような十三日、そこに省令改正を行うというのは、これは余りにも形骸化していると言わざるを得ない、私はそう思います。

 違法だということについては、これは何か御見解があればお答えいただきますが、大臣、いかがですか。

宮沢国務大臣 行政手続法に明らかに違反するということではないかもしれませんが、やはり少し短過ぎたなと思っております。

馬淵委員 閣僚の皆さん、これは笑える話じゃないですよ。ほほ笑みも出ません。こういう手続をそれこそないがしろにする、形骸化させること自体が、このエネルギー問題、それこそ風化させてはならないと閣僚の皆さんが幾ら声高に叫んでもどんどんどんどん風化しているという、これは証左じゃないですか。極めて重要ですよ。

 ぜひ、こういったことは二度と起こらないように、そして、法律の問題ということについては、なかなか困難な見解だということ、違反ではないということでお答えいただきましたが、ここはよくよく今後も身を律していただかねばならないと思います。

 これは、繰り返し申し上げますが、誰が悪いというのがはっきりわからないで起きるんです。まさに、不作為による無責任の連鎖、それが、我々がかつての野党時代も与党自民党の皆さん方を厳しく追及した、私の基本的なテーマでもありました。そして、私自身も、閣僚として、あるいは政府の一員としてそこに直面するという瞬間を感じたこともありました。

 ぜひ、パブリックコメントを含めて国民的議論を高めていくということについては、十分に御配慮いただかねばならないと思います。その上で、ベストミックスの議論においては、本当にこれは国民の声をちゃんと聞いていただきたいんです。

 このパネルでごらんいただいているのは、これはコスト等検証委員会、その後、我々がエネ環戦略策定、エネルギー・環境戦略を策定していくという中で行った手続なんです。これをごらんいただきますと、意見聴取会、そしてパブリックコメント、討論型世論調査、これを広く行って国民の声を政策に反映するということを行いました。

 意見聴取会、ここにごらんいただくように、全国十一都市で開催。さらに、パブリックコメント、これは先ほど話がありました、パブリックコメントを締め切ってすぐに答えを出すみたいなことは絶対にあり得ない。団体等の提言を受け、特にここでも刮目すべきは、討論型世論調査です。これに関しましては、全国の二十歳以上の六千八百人、無作為抽出で電話での世論調査を行い、参加可能だった二百八十六名が二日間にわたって、単に世論調査で答えるだけじゃなくて、討論を行う。パブリックコメントは八万九千件です。

 これだけのことをやった結果、我々政権時に、大きな方向性として、二〇三〇年の原発ゼロシナリオが五割という最も高い支持を集める結果となったんです。大きな方向性として、少なくとも過半の国民は原発に依存しない社会の実現を望んでいるとの結果を得た。最終的に、二〇三〇年代の原発稼働ゼロを目指す政権の方針決定に影響を与えました。

 今回のエネルギーミックスの策定に関しても、こうした討論型の世論調査あるいは国民参加型の議論、国民的議論なんて言ってしまうと、抽象的で何をやったかわからないです。先ほどのお話のように、パブコメをやって、国民的議論で終わってしまいかねない。

 総理、これはぜひ、私、総理にお尋ねをしたいんです。

 これほど、本当に国民の関心が高いんです。私たちの方法がベストかどうかは別です。さらにバージョンアップしていただいても結構です。こうした国民参加で、具体的に意見聴取会、そして討論型の世論調査、これも含めた、国民の声を反映する仕組みづくり、これに総理、取り組んでいただけませんか。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 討論型世論調査というのは、いわゆるフォーカス調査とも言われているものなんだろうと思います。これは、幅広くサンプルを抽出するものから、ある程度の人数の中で議論を重ねていく。

 これは当然、そこでさまざまな議論がなされる、あるいは情報がその中で吟味されるというよさもあるわけでありますが、他方、この設定の仕方もあるんですが、時間に余裕のある人の意見が全体の意見を支配しやすいという課題もありますし、周囲の意見を気にする人がその場でさらに流される、そういう点もあるんだろうと思います。

 今回は、一人でも多くの方が自由に意見を表明し議論に参加いただけるよう、プロセスをオープンなものとしたわけでありまして、幅広い意見が集まれば議論は活発になり、より効果的に国民の声を政策に反映できるものとなる、このように考えております。

馬淵委員 いろいろな課題があるのは承知しておりますが、幅広くという言葉で曖昧にならないように。

 この討論型世論調査、御指摘のような課題もあるかもしれませんが、少なくとも、今までになかった行政手法を取り入れたわけです。ぜひこれは前向きに取り組んでいただきたい、私はそのように思っております。

 その上で、我々がつくった革新的エネルギー・環境戦略、ここでは、原発に依存しない社会の実現に向けた原則としての、四十年運転制限制、原発を厳格に適用するんだとか、あるいは原発の新設、増設は行わないということを明記してきました。

 宮沢大臣、大臣は、昨年四月のエネルギー基本計画、安倍政権でつくられたこのエネルギー基本計画の中で、原子力を重要なベースロード電源、このように位置づけておられますが、大臣の御発言を見ていますと、原発の新増設、リプレース、これは古い原発の廃炉と並行して同じ敷地内や周辺で新しい原発を建設することを指しますが、宮沢大臣は、昨年の十二月二十六日の閣議後の記者会見、これは私が知る限りの直近なんですが、現時点で新増設またはリプレースといったことについては想定しておりませんと語っておられます。

 重要なベースロード電源という発言に対し、現時点では新増設、リプレースは考えていない、こういうことでありますが、これは矛盾していませんか。そして、今後もこのリプレース、新増設、あり得るという趣旨なのかどうか、これは端的にお答えいただけませんでしょうか、宮沢大臣。

宮沢国務大臣 原発の新増設、リプレースにつきましては、現時点で想定していないということで、政府としてはそういうことであります。

 そして、エネルギー基本計画においてベースロード電源というふうに書かれていることと矛盾していないかという御質問でありますけれども、エネルギー基本計画は、今後二十年間程度のエネルギー需給構造を視野に入れているということでございまして、この二十年間ということを視野に入れますと、今後の、ある意味では再稼働がどうなるかということにもいろいろ関係はしてまいりますけれども、重要なベースロード電源と位置づけることと矛盾はしていないと思っております。

馬淵委員 長期だからということでおっしゃっておられますが、一つ指摘をさせていただきたいと思っています。

 先ほど河野議員の指摘のあった省令は、これは一月二十六日、今週の初めに施行されたということであります。これによって、固定価格買い取り制度の見直し、接続留保の問題ということについてのルール改正がなされるということであります。

 そして、この出力抑制、すなわち、再生可能エネルギーをつくっておられる方々に対しては、もう受け入れられないからそれを抑制するよという新たなルールができたことになるわけでありますが、その検討の土台となるのが、この再生可能エネルギーの接続可能量の算出根拠という部分になります。

 これは、資料の六をごらんください。

 この接続留保の問題というのは、再生可能エネルギー、特にソーラーエネルギーなどで発電して、固定価格買い取り制度で全て買い取っていただくということで、電力会社はそれを買い取ってきた。しかし、もう十分に電力が足りているということで、買い取りができない状況が出てきた。これについて、買い取り制度のルールを見直そうということになったわけであります。

 今回、再生可能エネルギー、では、どれぐらいだったら受け入れられるのかという中で、この資料六にあるのは、北海道電力、東北電力、北陸電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力、沖縄電力はここはブランクになっておりますが、つまり、これだけの電力会社が、受け入れが困難である、接続留保だということをおっしゃっている。その算定の根拠として、原子力の供給力、これがここに載っている表であります。

 これをごらんいただきますと、原子力の供給については、震災前過去三十年間の平均稼働率によって出力を評価しています。この資料は、昨年の十二月十八日に経産省から出されたものです。

 つまり、今回のこの再生可能エネルギーの接続留保問題について、では、そもそもどれぐらい受け入れられるのかというのを見直すときの前提として、各電力会社、受け入れられるというところは入っていません。各電力会社は、これをごらんいただいたらわかるように、過去三十年間の平均稼働率で出力評価、つまり、原発がずっと動いているという前提で、だから受け入れられませんという算出根拠を出してきているんです。

 資料七をごらんください。この表をよりわかりやすく示したものであります。

 これは、自然エネルギー財団がまとめたものでありますが、これをごらんいただくと、稼働想定している原子力発電所、このように北海道、東北、北陸、中国、四国、九州とありますが、四角で囲んである原子力発電所、これは二〇二〇年までに、あと五年で四十年の運転期間に達するものです。そのうち、敦賀第一と島根の第一に関しては、もう既に四十年を超えています。

 このような状況で、この老朽原発が動く前提で、再生可能エネルギーの受け入れの限度ということについての算定根拠を出してきているんです。おかしくないですか。矛盾しませんか。

 つまり、四十年の運転制限制を前提として、この老朽原発、供給力は確実に減っていくんですよ。そのことを織り込んで、本来ならば、再生可能エネルギーの受け入れということを考えなきゃならないはずなんです。

 大臣は、今、現時点においてはリプレースは想定していないとおっしゃっています。しかし、今、現時点で、再生可能エネルギーの接続留保問題について、これをどう解決するかという、先ほどの河野さんのあのブログにもあったように、どう解決しようかというルール改定をやるときの算出の根拠として、原発が動いていることになっているんです。

 大臣、これはリプレースするということじゃないんですか。現時点でとおっしゃっているけれども、つまり、再生可能エネルギーの今後を考えたときの仕組みづくりの中で、大臣、これは原発が動いているんです。しかも、四十年規制を超えても動くという前提に立ってこの算定根拠を出して、ルールをつくっているんです。

 重ねてお伺いしますが、大臣、今回のこのような状況、どの設備をどう稼働させるかというのはわかりませんが、ずっと今時点はとおっしゃっているけれども、現時点においてリプレースはある、今はすぐにそれは言えないけれども、これはリプレースを織り込んでいるということじゃないんですか。お答えください。

宮沢国務大臣 まず、太陽光発電の接続可能量の算定につきましては、恐らく一般の方はよくわかっていられない方がいるので、ちょっと御説明させていただきます。

 まず、原子力発電、水力発電、地熱発電といった電源につきましては、各電力会社ごとに、震災前過去三十年間の平均稼働率に設備容量を乗じて出力を想定しております。火力発電につきましては、安定供給上必要な最低出力で運転することを想定しております。さらに、現行制度上認められている年間三十日を上限とした出力制御といったことも前提として先ほどの表ができております。

 そして、古い、まさに四十年近い、四十年を超えたものが含まれているという点につきましては、これは、四十年を超えても原子力規制委員会で審査を受けるということは、制度上はあり得るわけであります。

 そういう中で、一方で、再生可能エネルギーの買い取りは、太陽光等々、基本的に二十年間同じ価格で買い取るということになりまして、ある意味で大き目に見積もっておかないと、逆に言いますと、途中で予想外にベースロード電源が出てきてしまったときに、途中で再生可能エネルギーの受け入れをとめなきゃいけない、こういう話が出てくる。

 一方で、ここが大事なんですけれども、例えば廃炉というようなことが起こったときには、その部分で当然、再生可能エネルギーの受け入れ余地がふえてくるということで、そこはそれでふやしていく、こういうことになろうかと思います。

馬淵委員 大き目の数字というのは、すなわち、電力会社が言っていることを、まずそれを受けて、申告をベースにやっているんだという話、そして廃炉等が出てくれば、あきが出てくるから、それについては再生可能エネルギーをその段階で見直す、そういうことでしょうか。

 ちょっと、もう時間が余りありません、端的にお答えいただけますか。

 では、再生可能エネルギー、このいわゆる出力抑制のルールの見直しについて、これは今後十分可能性はあるということですね。あきが出てくれば、当然ながら、廃炉等で出てくれば、そこは再エネの出力抑制のルールの見直しが十分あり得るということであり、それはどの程度の頻度で行われるおつもりですか。お答えいただけますか。

宮沢国務大臣 余力が生じた場合には当然それをふやすということで、その場合、どういうものから順につないだらいいのかということも、いろいろ今後検討していかなければいけないと思っております。

 そして、では、どのぐらい頻繁かといいますと、やはり、常識的に言いますと、まだこれは今後検討しますけれども、固定価格買い取り自体が一年ごとに見直しということでありますので、その程度の見直しの期間が適当なのかなと思っております。

馬淵委員 一年程度の頻度で見直しを図る、出力抑制のルールの見直しを図るという御答弁をいただきました。これは重要な御答弁をいただけたと思っています。

 総理、今の話もそうなんですが、原発を今後どうするかというところで、結局は、この再生可能との兼ね合いになってしまうんです。ベースロードだといいながらも、一方、リプレースは今考えていない。しかし、再エネをどうするのかというときには、原発が全部動いている前提でしていく。これは結局、政府が主体的に原子力政策をどう進めるかということについての明確なスタンスが、私は、まだ出ていない、あるいは、少なくともそれを決めていくんだという姿勢が見えていないことが最大の原因だと思っています。

 今、宮沢大臣のお話のように、経産大臣としては電力会社が申告してきたものをベースにするというふうにおっしゃっている。しかし、それで本当に決まっていくのかというと、電力会社側は電力会社側で、先ほど打ち消されましたが、RITE等を含めて、さまざまな、原発は安全だというところにまた踏み込まされる可能性も十分あるわけです。この中で、総理、私は、ぜひ総理の原発政策に対する明確な姿勢が必要ではないかと思っています。

 もう時間がなくなってしまいますが、原発政策、今までは、再稼働の問題も、適合性の判断は規制委員会に任せているんだ、そして世界最高水準の安全基準で適合性の判断を委ねている、だから、安全なものから、それが確認されれば稼働、再稼働を認めていくというお答えしかありません。一方で、再生可能エネルギーとの兼ね合いの中で、このように、原発がそのまま、今までどおりという道筋も十分につくられかねない状況の中で、安倍総理にぜひ確認をさせてください。

 こうした状況の中で、原発政策について政府として主体的にみずからが判断するということを、御自身の中で、今この委員会の中で明確に御答弁いただけますか。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 政府としては、国民に対して安定的な、そして安価なエネルギーを供給していく、電力を供給していくという大きな責任を負っていると思います。その中において、我々は、あの過酷事故を経験いたしましたので、原子力依存度は可能な限り減少させていく。では、今どこまで減らしていくのかということについては、まずは最大限の省エネ努力を行い、そして再生可能エネルギーの導入を最大限進めていく、その中で我々はイノベーションを起こしていきたいと考えております。

 同時に、現在、一日約百億円の国富がエネルギー費として外に、海外に石油、ガス代として出ていってしまっているという現実もある中において、原発においては、原子力安全委員会が厳しい規制基準に合致したというものについては再稼働を進めていくという中において、我々は、エネルギーのベストミックスということについて、大臣からもお話をさせていただいたところでございますが、まずは原発の比率を最大限低減していく、これが基本的な考え方で、安全第一に考えていくのも当然のことであろう、その中で、電力を安定的に、そしてなるべく安く提供していくという責任を果たしていきたい、こう考えているところでございます。

馬淵委員 明確なお答えだというふうに私は受けとめられません。

 残念ながら時間が参りました。引き続き、今後予算委員会にてまた議論をさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

大島委員長 この際、小川淳也君から関連質疑の申し出があります。長妻君の持ち時間の範囲内でこれを許します。小川淳也君。

小川委員 小川淳也でございます。

 総理初め閣僚の皆様、本当にお疲れさまでございます。特にここ数日、総理におかれましては大変な苦悩、苦心の中におられると存じます。

 特に外交、安全保障関連をお尋ねいたしますが、事態は進行中であり、なおかつ切迫をしている、さまざま私どもとしても踏まえるべき状況がございます。これを前提に、さきの本会議でのやりとりを少しフォローさせていただきながら、最低限の事実確認なり検証をさせていただきたいと思います。

 まず、この邦人拘束事案についてでございますが、総理も御答弁されましたとおり、昨年段階で既に連絡室なりが設置されているということでございます。そうなりますと、当然のことながら、中東訪問を計画されるに当たって、総理御自身がこの邦人拘束あるいはその可能性があるということは御存じだったということでよろしいかどうか、まずその点を確認させてください。

安倍内閣総理大臣 これは既に御答弁を申し上げておりますが、昨年八月に湯川さんが、そして十一月に後藤さんがそれぞれ行方不明になっているとの事案を認知した直後に、官邸に情報連絡室、外務省に対策室を設置するとともに、ヨルダンに現地対策本部を立ち上げ、全力を挙げて情報収集や協力要請を行ってきたということでございます。

小川委員 総理は、そうした状況について十分レクチャー等を受けながら、事態を見守っておられたということだと思います。

 そういたしますと、その後の情勢として、さまざまなテロ事件も発生をいたしましたし、また、昨年十一月に国連安全保障理事会に提出された報告書によれば、いわゆるイスラム国の関連で、身の代金目当ての誘拐事件、そしてその略取した身の代金については四十億から五十億とも言われているような、さまざまな事態がございます。

 そういたしますと、さきの本会議において明確には御答弁になられておりませんが、今回の事態は想定の範囲内か、全くもって想定外か、リスクをどのように考えておられたのか、この場で改めてお答えいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 先般はパリで言論に対する大きなテロがございました。また、ベルギーにおいても、大規模なテロの準備が行われていたという中で銃撃戦が行われたという事案があったわけでありますし、大勢の人々がこのISILによって略取されている。いわば、どの国もテロから完全に安全ではない、この認識のもとに、いかにこのISILの影響力をそぎ、過激主義の流れをとめていくか、その中で我々日本もその責任を果たしていかなければならない、こう考えているわけであります。

小川委員 もう一点、確認させてください。

 これもあくまで結果論でありますので、しかし、なお今後慎重を期すという意味で確認をさせていただきたいと思いますが、まさに今回の補正予算の中に、この中東関連の支援が計上されていると思います。予算書並びにその関連資料には、あくまでこれは人道支援であり、また、事務的に確認をいたしましたところによりますと、国連の難民高等弁務官事務所、国連の世界食糧計画、赤十字国際委員会等々の極めて中立的な機関を通して各国に人道支援が行われるということのようであります。

 しかし、総理は、さきの日・エジプト経済合同委員会におけるスピーチの中では、いわゆるイスラム国、ISILと闘う周辺各国に総額で二億ドル程度、支援をお約束しますというふうに表現をされた。

 この予算の趣旨と政策的なアピールが必ずしも一致をしていない、あるいは曲解されるおそれがある、あるいはつけ入られるおそれがある、そのことについての評価なり御認識をお聞かせいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 我々日本は、エネルギーを中東地域に負っているわけであります。また、中東地域の平和と安定は、世界にとってまさに実現をしなければならない大きな課題であって、その中で日本もその貢献を果たしていく当然の責務があるわけでございます。

 その中において、日本は過激主義の流れをとめなければならない。イスラムと過激主義はまさに全く別のものであり、中庸こそ最善である、これが私がカイロで発出したメッセージのメーンテーマでございます。

 その中で、過激主義をとめる意味において、いわゆるISILの、今彼らが行っていることをとめなければならないわけでありまして、この中において、闘いというのは、具体的に戦火を交えるだけではなくて、その中でたくさんの難民を受け入れている国々もあるわけであります。そういう国々へのいわば、我々は周辺国支援が目的でございますが、彼らもまさにISILによって大きな被害を受けている国々であり、難民と同じような思いをしていると言ってもいいんだろうと思います。彼らに日本の連帯の意思を表明することは当然大切なことであって、ともに闘っているということが今求められているわけであります。

 そこで、我々は、ISILの意図に屈し、あるいはテロに屈して、そういう国々への連帯を表明しないということこそ私はおかしいんだろう、こう思うわけでありまして、あの二億ドルの表明については、もちろんこれは詳細な説明は別途しているわけでございますし、ここはまさにISILが我々の意図、つまり周辺国に対するこうした人道支援すら敵に回したということではないか、このように思うわけでございます。

 これはISIL側に立って解釈するとなれば、それはさまざまな、当然いろいろな理由は出てくるのであろう、このように思うわけでございますが、基本的に、ISILによって我々のいわば政策が、ISILに対する恐怖によって我々の中東政策がねじ曲げられる、あるいは変更されてはならない、このように思っております。

小川委員 総理の御趣旨には賛同、共感するところ大でございます。

 しかし、何分にも、相手は予測がつかない、あるいはこちらの常識の範囲内で動いてくれる相手ではありません。そういう意味でいいますと、より、今後も総理は、積極的平和主義を掲げて、さまざまな外交努力、これ自体は極めて大いに評価されるべきことだと思います。しかし、相手は極めて言語道断、非道きわまる存在であり、いささかもつけ入るすきを与えないというふうに、少し緊張度といいますか、配慮の度合いを上げていく必要はあるのではないか。今回の事案を拝見して、そういうふうに感じております。

 そのことは申し上げた上で、さきの本会議で、私は、このテロ対策を含めた総理の外交姿勢に関して、極めて重要な御答弁があったというふうに認識しております。リスクをどう考えるかという前原委員の問いに対して、リスクを恐れていては周辺国への人道支援はおよそできなくなってしまうということを明快におっしゃいました。

 これはもちろん、許すべからざる行為であり、言語道断であることは何度も確認したいと思います。しかし、現実は理論、理屈を待ってくれません。あらゆる事態が想定され得ますし、起き得るという前提の中でいいますと、やはりさまざまな場面にかかわればかかわるほど、積極的に平和外交を進めれば進めるほど、それがどう利用され悪用されるかも含めて、いろいろなリスクを負うということをお認めになった。

 総理の掲げる積極的平和主義には伴うべき相応のリスクがあるということをお認めいただいたというふうに私は受けとめておりますが、それでよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 委員が何をもってリスクというふうにおっしゃっているか、私もよく理解できないところがあるのですが、例えば、今、我々と情報を共有し合っているヨルダンは難民を受け入れているわけであります。このヨルダンに対して、世界が支援の手を差し伸べているわけでございます。また、この周辺国のさまざまな国も、そのように難民を受け入れているわけであります。ただ、難民を受け入れている国に対しても、ISILはその牙をむいているわけであります。

 そういう国の例えば元首が日本にやってくるということだけにおいても、そしてその国に対して日本が支援をするということに対しても、当然それは、もし小川さん流に言えば、リスクはある。だったら、では、それは断るのかという話になってくるわけでありまして、それはあり得ないわけであります。

 いわば、そのリスク、リスクということでいえば、当然さまざまなことにはリスクが伴うわけであります。そうしたリスクに対して、我々は最大限の緊張感を持って臨んでいくのは当然のことであります。緊張感を持って臨んでいくのは当然のことでありますが、ISILに対して我々が気配りをすることはないということは申し上げておかなければならない。

 むしろ、テロに対しては毅然と、国際社会とともに手を携えて、地域の平和と安定を実現するために努力を重ねていきたい、こう思うところでございます。

小川委員 恐らく、この国会での終盤、後半は、安全保障法制をめぐる議論が最大の焦点、山になるんだろうと思います。この間、特に集団的自衛権の議論を含めて、やはり総理の御説明なりお答えを拝見している中で私が一番気になるのは、例えば、自衛隊の活動領域が明らかに広がるわけですね。広がらないのであれば、法的安定性をわざわざ変える必要はありません。

 いずれにせよ、例えば、七月一日の閣議決定に照らしていえば、相手国、領域国の同意に基づけば、邦人救出などの警察的な活動に自衛隊を送る可能性に言及しておられます。今回の事案は、まさにそうした事態に、少なくとも検討対象になる一つのケーススタディーかもしれません。

 あるいは、最終的には、集団的自衛権ですから、我が国に対する直接の攻撃がなくとも武力攻撃に及ぶ可能性がある、紛争や戦争に巻き込まれる可能性もある、そこのリスクを総理はきちんと国民に説明してきたかということに関して、私は甚だ不満に思っています。

 もちろん、政策的には私はそもそも慎重な立場ですし、賛否はその上で議論しなければならない。しかし、賛否を議論する前に、総理は、この重大な安全保障政策の転換に当たって、そのリスクをきちんと国民に説明をし、いわば国民に覚悟を求めるということをあわせて行うことが、事この政策に関して、この過程において、内閣総理大臣の最大の務めだと思いますが、その点いかがでしょう。

安倍内閣総理大臣 今、リスクというお話を中心にされているわけであります。

 我々が今進めようとしている安全保障法制は、まさに国民の命と幸せを守るための法制であります。それはつまり、我々がしっかりと法制を定めて自衛隊が活動をしなければ、国民に大きな被害があるということであります。つまり、そこにこそ問題があるわけでありまして、では、それを放置していればリスクはないのかということであります。

 例えば、邦人の救出について言及をされました。海外に住む日本人は百五十万人いるわけでありまして、さらに、年千八百万人もの日本人が海外に出ているわけであります。これらの邦人が救出された際に、領域国の受け入れ同意がある場合には、自衛隊の持てる能力を生かし、その救出に対して対応できるようにすることは国の責任であろう、私はこう思うわけであります。

 今の段階においては、自衛隊は、輸送はできますが、救出のためには武器の使用はできないということになっているわけでございまして、邦人が人質になっていて、そこにいわば救出のために輸送に行って、そしてその地域の皆さんの軍事力あるいは警察力に協力してもらって、しかし、救出そのものをするのは、その地域の方々にお願いをしなければならない。これは、たとえ日本人だけが人質になっていて、たとえこちらの装備の方が上回っていたとしてもそれはできないというのは、我々はそれはおかしいであろうということであります。

 つまり、そこは、例えばそれを可能にするということも含めて、ちゃんと議論していこうということであります。これは、受け入れ国が同意をしているかいないかということも重要なことであります。

 先般、アルジェリアでああした出来事があったわけでございますが、ああした際に、あのときには当事国が救出のオペレーションを行ったわけでございます。しかし、例えば英国等々他の国々は、自分たちの国の国民に対しては自分たちでオペレーションをして、またあるいはアルジェリアと協力してオペレーションをしようということも当然考えるわけでございますが、日本は基本的に、これは、私はもう既にその段階ではお願いをしたわけでありますが、これはお願いをするだけになるわけでございまして、大変危険なそうしたオペレーション、例えば日本人のみを助ける場合であっても、そうなってくるということであります。

 そこで、では、日本人も一緒に行ってくれよと言われても行けないということになって、果たして責任を果たせるかということについては、我々立法府の一員としても、当然、私は行政の一員でございますが、考えていく必要があるのではないかということを申し上げているわけでございまして、であるならば、そこで、リスクとは何かということであります。

 いわば、火事が起こってそこに消防士が入っていくのは、これは当然リスクであります。でも、消防士が火事のときに家に入って救出をしないのであれば、救出されない人は命を落とすということになるのではないか、このように思うわけでありまして、国全体として考えれば、そういうときにこそいわば消防士は、これは危険を顧みない行為ではありますが、救出に向かっていく。もちろん、安全を確保する上において、最大限消防士の安全も確保するというのは当然のことであろう、このように思います。

 行動する自衛官においてもそうでございます。自衛官はまさに、事に当たって危険を顧みず、任務を全うするために全力を尽くしていく、こういう趣旨の宣誓をするわけでございます。もちろん、こうした仕事をする上において、その安全の確保について全力を尽くすのは当然のことであろう、このように思うわけでございます。

 リスクを恐れて何もしないということは、果たしてそれでいいのかということについては、常にこれは考えなければいけないわけでありますし、私は決してそれでいいとは考えていないわけでございます。

小川委員 総理のおっしゃる国民の命と幸せを守る、非常に美しい言葉です。それから、消防士の例も出されました。恐らく皆さん命がけで、いざというときには出動しておられる。しかし、消防士の例でいえば、これは他国の火事に消防士を派遣するということですから、集団的自衛権を行使するということは。そうしたことも含めて、やはり無傷では済まない。

 総理のおっしゃる積極的平和主義は、国民に対して、あるいは自衛隊員に対して、無傷では済まない。そのことのすさまじさといいますか、そうした覚悟を十分国民に求めるところからこの議論はスタートしなければならないということを、ぜひ、今後、この議論は本格的には後半国会でありますが、今回の事態、直接関連を置くのはどうかと思いますが、いろいろなことを考えさせられる事案でした。そういう意味で、少し押さえさせていただきたいと思います。

 次に、経済財政についてお尋ねいたします。

 どうしても、総選挙後初めての国会での論戦でありますので、本会議でも議論になりましたが、総理は、さきの総選挙を前に消費増税の延期を決められ、そして衆議院を解散された。総理は盛んに正当化しておられますけれども、非常にそれに対していぶかしがる気持ち、納得しがたい気持ちは国民の間にもあると思います。

 私も選挙中よく言われました、何で今ごろ選挙をやっているの、何のための選挙ですかと。いやいや、私が解散したわけではありませんと申し上げながらですけれども、そういう意味では非常につらい選挙でした。十二月といえば、まさに世の中は忙しい時期でもあります、当然。地域の飲食店からは、さまざまな会合がキャンセルになって悲鳴が上がっているというような声もありました。

 こうした国民との関係をあえて無視して、そして解散に突っ切ったその要因が消費税の先送りだった、これは極めて理解しがたいものでありました。

 そこで、ひとつ、やはりいずれにせよお認めいただかなければならないのは、一四年第一・四半期の景気が一見いいように見える状況でありますが、ほとんどは設備投資と住宅とそして個人消費。個人消費の中身は耐久財と半耐久財です。つまり駆け込みです。その後の激しい落ち込みは、明らかにその駆け込んだものが反動減で落ちている。

 つまり、ですから、アベノミクスが本当に実体経済にいい影響を及ぼしているかどうかをよく見るためには、この反動減からの回復ぶりがそれ以前の水準を上回るかどうか、これをよく見なければならないということだと思います。

 そういう意味では、総理、アベノミクス、この間、誤算、副作用、限界、さまざま議論されていますけれども、決して万能ではない、いろいろと心配もあれば不安もあるということそのものは、まずお認めいただかなければならないと思いますが、その点いかがでしょう。

安倍内閣総理大臣 投票日については、野田総理の行った解散と二日しか違わないということは申し上げておきたいと思いますし、いわば野党の立場にあれば、解散がない限り政権は絶対にとれないわけでございまして、我々は野党になった次の日から、与党を解散に追い込ませるために全力を尽くしてきたところでございまして、野党第一党の方にそう言われるとは全く思わなかったわけでございます。

 つまり、選挙が必要ないということは安倍政権のまま続いていくということでございまして、それを望んでいただいたのであれば大変ありがたい話だとは思います。

 しかし、そうはいっても、税制において大きな変更をする以上、我々は解散すべきだ、このように考えたところでございます。

 そこで、私たちが進めている政策でございますが、我々は、デフレから脱却して経済を成長させていく、国民生活を豊かにしていくためにはこの三本の矢の政策しかない、こう考えているところでございます。

 その中で、消費税の引き上げを行った際、消費が冷え込んだのは事実でございます。そこで、さまざまな経済対策を打ったわけでありますが、我々は、消費税の引き上げを本年十月から一年半先延ばししたところでございます。

 大切なことは、やはりしっかりと賃金が上がっていくということでございまして、賃金が上がっていく、あるいは中小・小規模事業者が材料費等々について価格に転嫁できる状況をつくっていくことも大切であろう、こう思っておりますが、景気の好循環をしっかりと回していくように力を入れていきたい。まだまだ、そういう意味においては道半ばである、こういう認識を持っております。

小川委員 実体経済に本当にいい影響が出ているかどうかは、繰り返しますが、この反動減の戻りぐあいがアベノミクスの前の水準を上回るかどうか、これは本当に注意深く見る必要があると思います。

 もう一点。きょうは、日銀総裁、お忙しい中ありがとうございます。もう一つのアベノミクス、アベノミクス劇場といいますか、非常にこれが注目をされている、やはり陰の立て役者は日銀であります。異常なまでの金融緩和を続けている。

 しかし、ちょっと資料をごらんいただきたいと思います。物価の上昇を分析したその中身であります。

 最近、原油価格が下がりつつあることで、恐らく、二年で二%という物価上昇目標は、黒田総裁、なかなか難しくなっているんではないかという気がいたします。

 この資料をごらんいただきたいと思いますが、消費者物価の総合指数、これはほとんど公共料金、電気やガス、それから消費財。しかも、もう一枚おめくりをいただいて、その消費財の中身でありますけれども、次の資料をごらんください。消費財の中身のほとんどを占めるその内訳でありますが、食料関係、そして石油製品。

 明らかに、黒田総裁、この間の物価上昇は、エネルギー、食料ですから、ほとんど輸入に頼っている、輸入物価が牽引することで初めて実現した物価上昇であるというふうに考えられると思いますが、それをお認めいただけるかどうか、そしてそれは望ましい姿かどうか、あわせてお答えいただきたいと思います。

黒田参考人 まず、二〇一三年の四月に始めましたいわゆる量的・質的金融緩和の効果につきましては、基本的に所期の効果を発揮しておりまして、物価は、企業収益あるいは雇用者所得の増加などを伴いながら上昇してきているというふうに見ております。

 やや詳しく申し上げますと、消費者物価、除く生鮮食品の前年比は、量的・質的金融緩和を導入する直前の二〇一三年三月の段階ではマイナス〇・五%、〇・五%下がっていたわけですが、その後、水面上に出ましてプラスになり、昨年秋にかけて、一%程度の上昇で推移していたわけでございます。ただ、その後、原油価格が大幅に下落いたしまして、プラス幅は〇%台の後半というところに縮小をしてきております。

 ただ、基調的な物価上昇というものは続いているというふうに見ております。その背景といたしましては、何といいましても、需給ギャップが縮小してきているということと、物価上昇期待が高まってきているということでございます。

 御案内のとおり、GDPギャップは、主として、失業率が三・五%という非常に低いところに来ていることからも明らかなように、労働面を中心に縮小してきておりまして、現段階で、需給ギャップは長期的な平均とほとんど近い、需給ギャップがいわゆるゼロに近いというところまで来ております。

 また、中長期的な予想物価上昇率も、やや長い目で見ますと高まってきておりまして、こうした動きは、賃金あるいは物価の形成過程にも影響を及ぼしているというふうに思っております。

 賃金につきましては、昨年、十数年ぶりにベースアップが復活いたしましたし、今、足元で春闘の議論が始まっているわけですけれども、そこでも労使双方で賃上げに向けた動きが進んでいるということであります。

 物価上昇の要因につきましては、個々の品目ごとの動きというのはそれぞれの要素であるわけですが、やはり、中長期的な物価の基調という意味では、この需給ギャップの動きと物価上昇期待がどのように動いているかということに注目し、さらには、何度も申し上げて恐縮ですが、やはり賃金が上がっていくときに物価も上がる、物価が上がるときにも賃金が上がるということで、この両者の動きも相当よく見ていく必要があるというふうに思っております。

 その意味では、原油価格の下落によって、足元、今後もやや物価上昇率が下がっていくと思いますけれども、原油価格の下落というのは基本的には経済にプラスですので、二〇一五年度後半にかけて物価上昇率はまた加速していき、基本的に二〇一五年度を中心とする期間に二%に達する可能性が高いという見通しは引き続き持っておりまして、その意味で、金融政策としては、二年程度を念頭に置いて、できるだけ早期に二%の物価安定目標を達成するという基本的なスタンスには変更はございません。

小川委員 総裁、そして総理、デフレからの脱却は大事ですよね。そういう意味では、緩やかなインフレというのは経済全体にとっては望ましいでしょう。しかし、私はその中身を問うています。

 おっしゃったように、雇用やあるいは需給の逼迫を含めて、いい形、需給の逼迫によって安定的に物価が上がる場合は、例えばその関係で値上がりした売り上げ上昇分は国内に還流しますよ。しかし、原油高と円安によって輸入物価が牽引する形でインフレが起きても、それによって仮に売り上げ等が上昇しても、それは海外の支払いに消えるんだから、決してそれはいい形の物価上昇とは言えないじゃないですか。こんなことを想定して異常な金融緩和を続けているんですか。違うでしょう。限界がある。

 しかも、この間の、日銀そのものが実施された昨年十二月の生活意識調査、生活は苦しくなっているという人が五一%ですよ、楽になったと答えた人は三%強。極めて偏りのある、このアベノミクスの状態をもたらしているのではありませんか、総裁。

 こういう輸入物価の上昇、輸入物価が牽引する形でデフレから脱却しても、決して日本経済、国民生活にとっていいとは言えない。そのことをはっきりお認めいただきたいと思います。どうですか。

黒田参考人 物価の動きを見る場合に、先ほど申し上げましたように、個々の品目ごとの動きを見ることも重要ですけれども、やはり中長期的なトレンドというものを見ていく必要がある。

 その場合には、例えば特定の輸入品の価格が上がったということがあったとしても、それが短期的には物価上昇率を上げるかもしれませんが、中長期的にはそういったことが経済全体にとってプラスにならなければ物価はやはり上がらないということになりますので、あくまでも、二〇一三年の四月に量的・質的金融緩和を始めて以来、マイナスの物価上昇率が徐々に上がってきて、昨年の秋まで一%台で推移し、その後、原油価格が非常に大きく下がったために〇%台後半に落ちてきている。

 こういった中長期的なトレンドを見る場合には、個々の品目で云々するよりも、常に、需給ギャップであるとか、あるいはインフレ期待であるとか、そういったマクロ的な指標を見ていく必要がある。そうでなければ、中長期的な物価上昇率を予測したり、あるいはそれに働きかけて物価安定を達成するということも難しくなると思います。

 輸入物価が下がっている、今、大幅に原油その他一次産品価格が下がっていますので、下がっています。これは、足元、物価上昇率をもちろん下げるわけです。しかし、それは日本経済にとって大きなプラスであり、日銀が最近公表いたしました政策委員会のメンバーの予測の見通しでも、二〇一五年度、二〇一六年度と成長率を上方修正しています。

 そうした中で、物価上昇率も、来年度は前の予想よりも下がっていますけれども、実は、二〇一六年度、再来年度については、むしろ若干上方修正して二・二%ぐらいになるというような見込みをしておりまして、個々の品目の動きとか輸入価格の動きというのは重要なんですけれども、それが何かトレンドとしての物価上昇率を決めているということではないというふうに思います。

小川委員 総裁、やはり本当に中身が重要なんですよ、同じインフレでも。それは率直に認めてください。これはもっとよく時間をかけて検証する必要があるとは思いますが、日銀のこの金融緩和自体が極めて難しい事態に陥りつつある、出口も見えず、思ったほどの効果も出ず、そういう状況になりつつあると思いますよ。それは指摘をした上で、物価についても、実体経済についても、そういう意味では、総理、非常に正念場を迎えているということだと思います。そういう御認識だと思います。

 その上で消費増税なんですが、二年後、一七年の四月。これまで総理は、景気だ、景気だ、景況感だ、税率を上げても税収が上がらなければ元も子もないとずっとおっしゃっていた。しかし、二年後に向けては、景気は一切考慮しない、何が何でも消費税を上げるんだとおっしゃっている。この矛盾は一体どういうことですか。どういう形でこれはここまで極端な判断を変更されたのか、お聞きしておきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 金融緩和を含めた三本の矢の政策が確実に成果を上げているのは間違いない、このように思います。有効求人倍率も二十二年ぶりの高水準を記録しておりますし、昨年は十五年ぶりの高い水準の賃金の上昇幅であったわけであります。そこは間違いないんだろう、こう思うわけでございます。

 そこで、今、消費税、平成二十九年には景気条項をなくしたことについての御質問がございました。

 もちろん、リーマン・ショックのような事情の変更があればこれは別でございますが、今回のような景気判断は行わないということにいたしました。それは、我々としては、賃金が上昇していくというトレンドをつくり出すことができたということが一つの大きな自信でございます。

 昨年も、二%物価上昇目標以上に二・二%引き上げることはできたのでございますが、三%消費税が上がった。これに追いつくことができなかったことによって、ことしはそれを延期したのであります。

 しかし、ことし二%上がれば、これは純粋に昨年よりも二%乗ってまいりますので、昨年との比較においては、実質賃金においても上がっていくことは間違いない、昨年と比べたらですね。そしてまた、さらに来年も上げていく。ことし、来年、再来年、しっかりと上げていけば、私は、消費税を上げていく環境はつくり出すことができる。

 そしてまた同時に、国際社会に対する国の信認を確保するということも大切でございます。この消費税の引き上げということは、事実上法律でもって国際社会にアナウンスをしている中における変更でございますから、我々は、今回は、次なる消費税引き上げについては、法改正の際に景気条項をなくすということにしたところでございます。

小川委員 非常に、総理の御説明そのものが、やはり場当たり的といいますか一貫性がないといいますか、私は、外交・安全保障政策にせよ経済財政政策にせよ、そういう印象を拭えません。

 日銀総裁、また追って議論をさせていただきます。どうぞ御退室ください。

 その上で、もう残り時間は少々でありますが、補正予算についてお聞きします。

 補正予算は、財政法に、麻生副総理、こういう記述があります。次に掲げる場合に限って補正予算を提出することができる、特に、予算作成後に生じた事由に基づいて緊要となった経費の支出という財政法の記述があります。

 そして、副総理は、財政演説の中で、本対策におきましては、経済の脆弱な部分に的を絞り等々とございまして、その成果を地方に広く早く行き渡らせるというお題目をお述べになった。

 補正予算全体、約三兆円でありますが、どうも中身を見ますと、ずさんなお手盛りがたくさんあるのではありませんか。

 裁判所の地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策の一環として災害、危機等への対応を図るために行う司法情報システムの整備。内閣官房の情報通信施設の整備。警察庁、警察庁施設の整備、刑事部だと思いますが、捜査に当たっての録音、録画装置の整備、科学警察研究所は鑑定機材の整備。刑務所は保安用機器の整備。文科省に至っては、日本原子力研究開発機構の中性子線施設整備、その他、国際宇宙ステーション開発、国立美術館施設整備。官庁施設整備、果ては掃海艦の建造まで、さまざまなものがここぞとばかりに潜り込んでいる印象であります。

 あわせて、同趣旨の事業に対して、各省が同じような名目で、さまざまな事業をダブって実施しているのではないかと疑われる事例もあります。

 地方への人材移出、これは重要なテーマでしょう。内閣府が、プロフェッショナル人材事業、都市部の高度専門人材を移すということだとお聞きしています。総務省は、全国移住促進センターを設置する。経済産業省は、中小企業・小規模事業者人材対策事業、若者や女性を首都圏から地域に移す。厚生労働省の地域しごと支援事業。各省がいかにも縦割りで、ばらばらな形で、整合なくやっているような印象を受けます。これがもう一つ。

 もう一点。例えば総務省の放送コンテンツ事業でありますが、昨年も話題になりましたけれども、去年の夏、概算要求をした。そして、それはゼロ回答だった。やや趣旨を変えたとの説明は事務的に受けておりますが、今度、それが補正で復活している。

 この場当たり的なお手盛りの官庁内の施設営繕、整備の予算、そして各省似たり寄ったりの、整理が十分ついていないと思われる重複予算、そして概算要求の再提出予算、こうしたものがたくさん紛れ込んでいるのではありませんか、補正予算。

 副総理、この趣旨についてお聞かせください。

麻生国務大臣 今回の補正予算において、今、最初に言われましたように、経済の脆弱な部分に的を絞るということで、先ほど総理も述べられましたように、現下の経済情勢を踏まえた生活者、事業者への支援、また、地方の直面する構造的課題等々への実効ある取り組みを通じた地方の活性化等々の話をさせていただき、災害復旧復興加速化など災害、危機への対応、この三つに重点化をいたしております。

 その三点のいずれかにかなうものとしてやっておりますので、こじつけたというような話で、そう言いたい気持ちはわからぬじゃないのかもしれませんが、御指摘は当たっていないと思っております。

 例えば、総務省で、御出身のところでいえば、地方創生関連施策につきましては、従来の施策を検証させてもらって、問題点を、重複しているんじゃないかというようなことを指摘して、関連施策を精査した上で、事業内容の重複がないようにしております。

 また、二十七年度の当初予算として概算要求されていた事業は二十六年度補正予算で計上されておりまして、二十七年度当初予算では全然計上されなかったという例もありますが、緊要性の観点から全ての、補正予算に計上したものでありまして、特段問題があるというように考えているわけではありません。

 もう一個は放送の話をされましたが、この事業は地域の魅力を紹介する放送コンテンツの海外的な発信を支援するもので、この事業によって地域における観光とか産品輸出の増加が期待される地方活性化につながること、また、まち・ひと・しごと等々の総合戦略におきまして緊急的取り組みとして位置づけられたものとして踏まえて、補正予算の計上をさせていただいた次第であります。

 これは、新たに放送コンテンツを作成して、ASEAN等の放送局の放送時間を買い上げて、一定期間、持続的に放送するというようなことを考えたり、いろいろなことをやっておると思いますので、補正予算の手当ての直後にまたというようなことも考えて当初予算には計上しておらぬというように御理解いただいたらよろしいんじゃないでしょうか。

小川委員 理解はいたしません、大臣。

 もう時間があれですので、目玉の一つのプレミアムつき商品券について問題点を指摘して、御答弁があれば、石破大臣、どうぞ。

 過去、地域振興券を含めて、商品券を発行したことはありました。しかし、実際の経済効果は、その発行額の二五%ということで、十分じゃなかった。今回、そうした検証を十分踏まえているのかどうか。

 そして、プレミアム部分に今回は出すということだそうですね。一万二千円券のうち、二千円分だけ公費で負担する。ですから、一万円分については、消費者に自分で買ってもらうということです。

 問題だと思うのは、これは二千五百億円なんですが、単純計算しますと、二千円部分を負担するということであれば、一億二千五百万枚発行する前提になっているんですよ、この二千五百億円。国民が一人一万円以上、全員が買うということですか、そういうことまで含めて事務的に聞けば、一切積算していませんというお話なんですね。

 そんなずさんな、スケジュール感もままならない、そういう予算では甚だ国民に対して誠意を欠く対策だと思いますが、その点も含めて。

石破国務大臣 それは、それぞれの地域でどういう設計をするかということにかかっております。

 つまり、御自身で御負担になるわけですから、それは使わなければ損ということになるわけですね。御自身で御負担になったが何も買いませんでしただったらば、それはそのお金は一体何だったんだいということになるわけです。

 それぞれの地域ごとにどんな商店街があるか、どんな商品があるか、どういうような消費状況であるかということを把握した上で自治体において設計をいただくわけでありまして、それは最大の効果が出るように、それぞれの地域が一番よく御存じですから、最大の効果が上がるように設計をしていただく、そういうものです。

小川委員 一億二千五百万枚、国民全員が一枚以上、一万円出して買うという前提ですからね、この予算は。よく結果を検証させていただきたいと思います。

 時間ですので、終わります。ありがとうございました。

大島委員長 この際、階猛君から関連質疑の申し出があります。長妻君の持ち時間の範囲内でこれを許します。階猛君。

階委員 民主党の階猛です。

 私、十月六日以来のここの委員会での質問になります。

 前回、米価下落の対策についてお尋ねしましたけれども、そのときに私が指摘しましたのは、去年の新米の概算金が前年より三千円ぐらい下がっている、そういう中で農家の皆さんは赤字で苦しんでいます、赤字補填のための、我々の民主党のときの政権でやったような戸別所得補償制度のようなものが必要なのではないかということを申し上げました。それに対して、ナラシ対策で対応するというお話でしたけれども、私は、それでは不十分ではないかと申し上げました。

 その後、解散になり、私は選挙でも訴えていたんですが、安倍政権は、先ほど長妻さんの質疑でもありましたけれども、GPIFがたくさん株を買ったりして、株価を上げることには熱心だけれども、米価が下がることには無関心だ、これってあべこべではないかと。つまり、株というのは、自分が額に汗して働かなくても、才覚や運があれば、うんともうかることもある。ところが、お米の方は、自分で汗をかいて苦労して、長い期間をかけて収穫して、それでようやっとお金が入ってくるものだ。政治としてはやはり米の値段が下がったときにこそ温かい手を差し伸べるべきではないかということを選挙でも訴えました。

 今、総選挙が終わって、予算委員会に入ります。そして、この補正予算の中で、米価下落への対策ということで二百億円というものが計上されています。

 現場の声を聞いていますと、二種類の反応が返ってきます。一つは、規模は小さいけれども、これで少しは赤字の補填になるから、とりあえず手を挙げようということを言われる方がいます。その一方で、いやいや、これは手を挙げた後が大変なんだと。要するに、生産コストの削減をちゃんと実現しなければ、後でそのお金を返してほしいと言われるかもしれないから、そんな軽々に手を挙げるわけにはいきませんよということで、使えないというような声も聞こえてきます。

 それで、農水大臣にまずお聞きしますけれども、この制度の趣旨、要するに、所得を補填するための一種の直接払いなのか、それとも生産コストを削減するための助成金なのか。そしてまた、この制度、手を挙げた人が、将来生産コストが実際に削減されなかったということで、もらったお金を返さなくてはいけない場合があるのかどうか。この二点について確認させてください。

西川国務大臣 階先生、米価の話で、概算金払い、全国平均は九千円でした。

 それで、私は、そのうち相対取引価格が決まれば追加払いが行われます、こういうことを申し上げておきました。最近になって、千葉県あるいは茨城県、静岡県等で追加払いが始まりました。私の住んでいる栃木県は、二度にわたって追加払いをやります、こういうことを言っておりますので、まず追加払いがあるんだ、その中から経費は払ってもらう、こういうことになりますね。

 その後、米価の取引の標準価格が一万五千円前後で設定されています。それと相対取引価格との差の九割は、ナラシに入っている人、収入減少影響緩和対策事業に入っている人は九割が補填される、さらに、このナラシに入っていない人も半分補填される、こういうことでこれから支払いが行われる、こういう状況です。それで、セーフティーネット資金で、ナラシが出るまでの間、無利子のお金を使ってもらいましょうと。だんだん浸透してきたと思います。

 それから、直接払いの七千五百円、これは十二月の中旬までに全部お支払いを済んでおります。

 そこで、今度の二百億円でありますが、米価は需要と供給のバランスで決まります。残念ながら、需要は毎年八万トン減ります。全体消費量八百万弱の中で八万トン減る。それに合った供給、生産ができれば米価は安定すると思いますが、なかなか難しい問題で、我々は全省挙げてやっています。

 そこで、今度は、一方で、生産費の引き下げもやれば農家の所得の増につながる、こういうことでありまして、私どもは、省力化を図っていただいたり、新しい農法で、例えば直まきをやるときに、鉄のコーティングをして、米が沈んで鳥の食害に遭わないとか、いろいろなことをやっていただく。やっていただいて、少しでも生産費を下げていきたい、こう考えております。これは、やる以上、必ず実効が上がるように指導してまいりたい、こう考えております。(階委員「答えてください、返還義務はあるかどうかということ」と呼ぶ)

 返還義務とかというのは特別議論はしておりませんが、それなりの効果を上げていただく、ここで判断したいと思います。やって、だめなものをやるわけはありませんで、効果が上がるためにやるわけでありますから、その状況を見ながら私どもは指導していきたい、こう考えています。(階委員「はっきりしませんが……」と呼ぶ)

大島委員長 階君、発言するときは手を挙げて発言しなきゃだめですよ。

 階君。

階委員 最後のところ、重要なところなので、生産コストが実際には削減されなかったかどうか、これをちゃんと検証した上で、削減がされなかった場合、返す必要があるかどうか。これはもう結論だけで結構です。必要がないと言えば、それで結構です。

西川国務大臣 政策をやるのに効果がないということは、私どもはありません。必ず効果を上げて、返還が起きないように指導してまいります。

階委員 そうはいっても、きょう私は質問して、現場では、この制度の理解もあやふやな中で、あしたが申請の締め切りになっているんですよ。これは、あした締め切りという中で、そんな実のあるようなコスト削減策なんて考えられるんでしょうか。

 とりあえず手を挙げて、その後考えて、ひょっとしたらうまくいかないケースというのもあり得るんじゃないですか。そういう場合、返さなくちゃいけないということになったら、やはりなかなか手は挙げづらいと思いますし、私は、そもそも申請の期間設定自体、問題があると思いますよ。

 なぜそうなるかというと、私は総理にお尋ねしたいんですが、来年度、二〇一五年度、平成二十七年度というのは、基礎的財政収支の赤字削減目標が達成されているかどうかを計測する年度に当たります。したがいまして、来年度の本予算というのはなるべく圧縮したい。そしてまた、今年度の補正予算についても、年度内に執行が終わらなければ、来年度に支出が延びれば、それも来年度の基礎的財政収支の削減目標のマイナス要因になります。だから、慌ててこのような期間設定をして、そして、農家の人たちがよくわからないまま、申請したりしなかったり、こういう状況に陥りかねない。私は、これは本末転倒だと思っています。

 総理の、このような私の考え方に対して、何か、間違っているとか、御意見があればお聞かせください。

安倍内閣総理大臣 基礎的財政収支についての考え方は、今議員がおっしゃったとおりでございます。

 しかし、基礎的財政収支ありきで農政をねじ曲げるようなことがあっては私はならない、これは当然のことであって、基礎的財政収支を二分の一にするための努力はちゃんとしますが、それと、今、階議員がおっしゃったように、そのために、例えば農家の方々にとって無理な期日を設定するということがあってはならない、このように思います。

階委員 わかりました。

 その総理のお考えを前提にして、あした締め切りというのはおかしいですし、私は、もっと言えば、こういう仕組みというのは、農家の皆さんが生産コストを削減していくというのは大事なことだと思いますよ。だから、補正予算だけでなくて、本予算でもやるべきじゃないですか。

西川国務大臣 私どもは、間近に迫った二十七年度の営農計画があります。そういう意味で、早くこの結論を出してやっていきたいと思いますが、今募集しておりますけれども、金額二百億円でありまして、制度の趣旨徹底がおくれておればまだ残るわけでありまして、来年の営農計画に間に合うようにするため、この二百億が、全部使い切るまで少し時間がかかる面も発生するかと予測しておりまして、とりあえず締め切った後、またさらに御希望を聞いて、そして営農計画に支障のないようにやっていきたい、こう考えています。

階委員 繰り返し申し上げますけれども、これはやはり期間を長くとって、本予算でも対応するようにした方がいいと思いますよ、趣旨は認めますので。

 かつ、昨年にも申し上げました赤字補填の仕組みというのは、私は必要だと思います。ぜひそこも御検討いただきますようお願いします。

 そこで、次の質問に移らせていただきます。

 テーマをかえます。エネルギーコスト対策、これも今回の補正予算で三千六百億盛り込まれております。

 私は、昨年の予算委員会でも、当時はガソリンが高騰していました、ガソリンが高騰している中で、そういう状況が一定期間続けば、ガソリン税の暫定税率については適用を停止すべきではないかと。そういう適用を停止するトリガー条項というものを民主党政権のときに一時設けたわけでありますが、震災復興の財源を調達するということで、このトリガー条項は凍結状態にあるわけです。この凍結状態を解除するよう求めましたが、麻生大臣からは、これをやると財政負担が大きいということで、消極的な御答弁をいただきました。

 そして、今日に至って状況は一変しました。今は、先ほどもどなたかおっしゃっていましたけれども、原油価格がうんと下がっています。

 これは、「日本の原油輸入額と原油価格の推移」ということで示したものです。ちょうど、去年、質問したあたりは、日本の原油輸入額は大体十五兆円ぐらいあった。そして、当時は、一バレル当たりの値段も、ドルベースでいうと百ドルぐらいあったわけですね。ところが、今や五十ドルを下回ってきています。

 仮にですけれども、「予測」という欄に書いています、このまま五十ドルぐらいで一バレル当たりの価格が推移し、そして今の輸入量がそのまま継続するとして、為替が、百二十円、大体今の水準ですね、百二十円の水準であれば、二月以降は七・六兆円、これぐらいにとどまるんですね。私が質問したときの半分ですよ。もっと言えば、仮に、後で日銀総裁にも聞きますけれども、為替が円安ではなくて当時の水準、百円ぐらいにとどまれば、もっとこの効果は大きくて、六・三兆円ぐらいになる、こういうふうに試算できます。こういう、原油価格が大幅に下がって、これは生活者、事業者にとっても大きなメリットで、ありがたいことであります。

 ただ、補正予算との関係でいえば、今、こういう状況のもとで、三千六百億もの巨費を投じてこのエネルギーコスト対策をやる必要があるのかということなんです。

 この点については、前原代議士が代表質問の際にも質問されました。そして、総理も御答弁されましたけれども、私がその答弁を聞く限り、本予算でこの対策をやる説明にはなっていたと思いますが、緊急性、そしてこの時期にやる必要性が求められる補正予算での、この予算を計上する理由にはなっていなかったと思います。

 どうしてこのタイミングで、しかも補正予算でこういうエネルギーコスト対策をやる必要があるのか、これは総理に対してお尋ねします。

安倍内閣総理大臣 原油価格は現在下落基調にはありますが、長期的には、高騰と下落を繰り返しながら上昇してきたところであります。引き続き注視が必要な状況にあるのは事実であります。

 また、電力料金は、震災前に比べて産業用で約三割上昇しており、依然として高い水準にあります。さらに、原油価格の下落が、資源開発投資の抑制等を通じて再びエネルギー需給が逼迫する可能性を十分に考慮する必要もあるわけでございます。

 そこで、こうした事情を踏まえまして、国民への水産物の安定供給や物流の安定化の観点から、漁業者や中小トラック事業者などのコストに占める燃料費が高い業種に対し、今後の高騰にも備え、燃料費削減に資する設備投資等への支援を行うことが必要と考えているわけであります。常にそうしたコスト削減の努力を、日本のようなエネルギーを海外に頼っている国は、していく必要があるのではないかと思います。

 省エネルギー対策や再生可能エネルギー導入施策として計上している予算は、エネルギー使用の削減等を通じてエネルギーコストの低減やセキュリティー向上を図るものでありまして、また、投資を促進することで地域の活性化等にもつながると考えておりますので、今般の補正予算の趣旨に合致しているものと考えるわけであります。

 いずれにせよ、地域の実情にも配慮しつつ、省エネルギー、再生可能エネルギーの推進や、エネルギー価格の影響への対策について、決して手綱を緩めることはない、そういう取り組みをしていきたいと思います。

階委員 これも、先ほどの米づくりのコスト削減と同じような話で、エネルギーコストを削減する努力というのは、補正だけではなくて本予算でもやっていかなくてはいけないことであるし、拙速にやるべきものではない。だから、私は、補正予算で対応するのは理由がないと思っています。

 そして、個別のエネルギーコスト対策の中に含まれる事業に、次世代自動車充電インフラ整備促進事業、三百億なるものがありますけれども、この事業は、安倍政権発足直後、平成二十四年度の補正予算で一千億の基金を設けて実行してきたものです。

 先ほど、基金返納の成果を有村大臣がいろいろお話しされていました。

 そこでお尋ねしますけれども、これは通告していないので、わからなければ、まあ、そこまでの話かもしれません。しかし、通告していなくても、基金についてあれだけ成果を誇っていたのであれば、私はぜひ答えていただきたいと思いますが、この基金は、昨年末までの約二年間で、一千億のうちどれだけ使われたのか、そして、その残ったもの、残額はいつの税外収入として計上されるのか、この二つについてお答えいただけますでしょうか。

宮沢国務大臣 お話のように、本事業につきましては、二十四年度補正予算として一千五億円、基金としてつくりました。結果的に、二百三十五億円しか出ていないということでございまして、八百億近くを税外収入としてお返しをするということになって、恐らく来年度予算に計上される。

 ことしの補正で、いろいろ制度を見直しまして、三百億を別途、基金としていただいている。恐らくネットアウトすることも可能であったのかもしれませんが、やはりしっかりと一回戻した上で新しい制度として構築するということで、こういうことにさせていただいております。

階委員 三百億円は基金としてとおっしゃいましたでしょうか。ちょっと確認させていただけますでしょうか。三百億円は基金ですか、また。

宮沢国務大臣 基金でございます。

階委員 まず、そもそも、まだ残額が残っているのに、わざわざそれを廃止した。廃止したことを先ほど有村大臣は手柄のようにおっしゃっていましたけれども、廃止した上で三百億という基金をまた設ける、その意味がよくわかりません。それとともに、これまで二年間で二百三十五億しか使われていないのに、なぜ補正予算で三百億を積む必要があるのか、これもよくわかりません。御説明ください。

宮沢国務大臣 私の方は若干勘違いでございまして、補正は、基金ではございません。

階委員 今の答弁自体、私は問題だと思っています。

 補正でやるべき重要な事業について、基金なのか単発の予算なのかもはっきりしていない。それだけではなくて、基金じゃなくて単発の予算で三百億といったら、なおさら問題だと思いますよ。これは年度末までに執行しなくちゃいけないわけでしょう。二年間で二百三十五億しか使えないのが、補正で年度末まで三百億。これは本当に使えるんでしょうか。また、使えるとしたら、ばらまきにならない、無駄遣いにならない保証はあるのでしょうか。この点についてお聞かせください。

宮沢国務大臣 年度内に使う努力をしてみます。

大島委員長 階君、今の御質問されていることは、通告はしてありますか。そのことにまずちょっとお答えして。

階委員 きのう、エネルギーコスト対策について伺うという中で、担当の役所の人とは、このやりとりはしています。

大島委員長 ああ、そう。

 階君、どうぞ、質問をもう一度。

階委員 今の大臣の答弁がちょっと聞き取りづらかった。

 私の質問は、単年度での支出だ、しかも、補正予算、あと二カ月しかない中で三百億もの巨額の支出だと。しかし、これまで二年間で二百三十五億しか使っていないとおっしゃった。

 なぜ三百億なんですか。よくわかりません。無理やり三百億使ったら無駄遣いになるんじゃないでしょうか。無駄遣いにならないというんだったら、その証拠をちゃんと説明してください。

宮沢国務大臣 電気自動車の普及が思ったよりおくれていたものですから、なかなか出なかったんですけれども、このところ普及が進んできておりまして、何とか年度内に予算を執行する努力をいたします。ばらまきにはいたしません。

階委員 全く、単に思いを述べられただけで、論理的な説明になっていないですね。

 二百三十五億、二年間ですよ。それがなぜ二カ月で三百億になるのか。私はこれはおかしいと思います。これは、ぜひテレビの皆さんにも、こういうずさんな補正予算がつくられているということを御理解いただきたいと思います。

 その上で、テーマをかえますけれども、被災者の住宅再建支援策について、まずは復興大臣にお尋ねしたいと思います。

 私も岩手県、被災地の議員でありまして、三年十カ月が震災から経過しました。そして、まだ被災三県を中心に、仮設でお住まいの方々が二十四万人ほどいらっしゃいます。

 ようやく昨年、与野党の議員立法で、土地を迅速に取得するための法律も成立して、高台移転をする土地や区画整理でかさ上げする土地、こういった土地の確保については進みつつあって、いよいよこれから家を建てる段階なんですが、今度は別の問題が持ち上がってきている。

 それは何かというと、家を建てたくても、住宅の建築費が、アベノミクスで公共事業が全国で行われたせいもあるでしょう、円安の影響もあるでしょう、いろいろな要因があるでしょうが、私が調べたところでは、坪単価で建築費が二十万円ぐらい上がって、そうすると、三十坪に直すと六百万円ぐらいかかり増しが生じます。

 六百万円という数字がどういう意味を持つか。

 今、国の被災者生活再建支援金、これは上限が三百万円です。そして、自治体ごとに住宅建築の補助金を出していますが、大体、県と市町村を合わせて、平均すると三百万ぐらいでしょう。国の被災者生活再建支援金プラス自治体独自の補助制度、合わせて六百万円ぐらい。ということは、ちょうど値上がり分でせっかくの補助金が相殺されてしまって、結局、自分で、自腹で家を建てるのと変わらなくなってしまう。こういうことで、仮設から早く出たいけれども家を建てられない、こういう人がたくさんいらっしゃるんです。

 この件については、私の地元でも、被災者以外の方も心を痛めていまして、署名運動をされています。私の地元だけでも十五万人ぐらいの方が、被災者生活再建支援金、今は上限三百万だけれども五百万ぐらいに見直してほしいと。五百万というのも私は控え目な数字というふうにも思います。ただ一方で、三百万から五百万、二十四万人ということを掛け算しますと、結構大変な額になるんですよ。

 ただ、これはやはり自己責任とは言えないのではないか。別に、家を建てるのがおくれたのは、自分の責任じゃなくて、リアス式海岸、津波で流されて、もとの場所には家を建てられない、新しい土地を探すにも、それはかさ上げしたり高台を造成したりしないと移れないから、必然的に時間がかかってしまった。時間がかかっているうちに値段が上がったわけですから、これはしようがないことです。

 私は、こういう部分については、やはり復興庁としてはちゃんと面倒を見てあげるべきだと思います。こうした被災者生活再建支援金の見直しであるとか、あるいは自治体ごとの独自の補助金をつくるための取り崩し型の復興基金であるとか、こういったものを拡充していくべきだと考えます。復興大臣、いかがお考えでしょうか。

竹下国務大臣 今、被災地で高台移転のための高台を切る工事がかなり進んで、もう御存じのとおりでございますが、まさにこれから住宅を建てていく。これは復興住宅という形で建てていく部分と個人がお建てになる部分、両方でございますが、この住宅を建てていく、そしてそれに対する自立支援が、まさに重要な局面をこれから迎えようとしていると私自身も認識をいたしております。

 先ほどから階議員がお話しになりましたように、いろいろなことをしております。三百万円の生活再建支援金等々、いろいろやっております。

 例えば、利子補給の問題、さらには、土地を高台で買うという場合に、買えない場合は定期借地権という形で、事実上、ほぼ固定資産税と同じぐらいの形、買うという行為はほとんど経済負担にならないというような対応もいたしております。

 防災集団移転促進事業、あるいは、さらにはいろいろな資金、いろいろな交付金、市町村に渡している部分、県に渡している部分、さまざまなものがございますが、一つは千九百億円以上、一つは一千億円程度、これも御存じのとおりです。

 それから、消費税の引き上げに伴う税負担も補填いたします。住宅ローン減税も行います。住宅金融支援機構による災害復興住宅融資の金利の引き下げも行っております。

 さらには、仮設住宅からお出になってあいたところを大工さんたちに入ってもらって、そのことによって宿泊費を浮かすといったようなことを、これは小さなことですが、フルに使えば百万あるいは百八十万ぐらいに相当する金額に当たりますが、そういうことも含めて、あらゆることをやっております。

 確かに、おっしゃったように、値上がりで苦しんでいる方がいらっしゃるということを、私自身、何人もの方から言われました。ただ、このように東日本大震災の被災者の自宅再建に対しては、これまでの大災害に比較しても比較にならないぐらい充実したさまざまな対応をしておることも事実でございます。

 さまざまなほかの制度とのバランス、あるいは国、地方の負担の増等を考えますと、この被災者の生活再建支援金の支給額の増額、慎重な検討が必要であると言わざるを得ない状況にあると私は認識をいたしております。

階委員 ちょっと残念な答弁でございました。

 いろいろなことをやっているのは私も重々承知していますけれども、やはり根幹のところをもうちょっと手厚くしないと、せっかくのいろいろな手だても結局使われないで、宝の持ち腐れになるんです。

 財政が厳しいのは重々承知の上で、しかし、またこのような大災害がいつどこで起きるとも限らない。そういうときに、また、仮設住宅に三年も四年も暮らしつつ、それでもまだ移る見込みがない、家を建てる見込みがないという人をたくさんつくっていいんでしょうか。私は、ここで考えるべきではないかと。

 もう、もうすぐ四年。丸四年ですよ。私は仮設住宅に何度も行っていますけれども、ここで四年間暮らす、まあ四年弱でしょうけれども暮らすというのは、本当に大変なことだと思いますよ。心を害したり、体を害したりしている人もいます。

 だから、財政の問題もあるでしょうが、ぜひここは検討していただきたいと思います。もう一度、いいですか。

竹下国務大臣 苦しい答弁になりますが、例えば阪神・淡路のときどういう対応を国がしてきたかとの比較、あるいは中越地震の被災者に対してどういう対応をしてきたかといったようなことも、全くそれとかけ離れたことをするのが一人一人の国民に対して公平な対応であるかといったような点も考慮しなければなりません。

 しかし、一方で、階議員お話しになりましたように、阪神・淡路のときは、いわば五年間で仮設住宅がほぼなくなるというレベルまで移ることができたんですが、今、被災地は、高台を切っていて、これから建てる。さあ、五年でどれぐらいというように、時間の長さというものの重さも我々非常に感じておりますので、あらゆる検討をさせていただいておりまして、今やっておるさなかでございます。

 ただ、先ほどお話ししましたように、被災者の生活再建支援金の支給額の増額ということについては、さまざまなバランスを考える、あるいは財政の事情を考える、国、地方の負担を考えた状況の中で、慎重な慎重な検討が必要であるというお答えをせざるを得ない状況にございます。

階委員 被災地の春はまだ遠いという感を強くしましたけれども、ぜひ、その氷が解けるのを私も待っておりますし、被災地の方々も待っておりますので、引き続きこの点については別な委員会でも御議論させていただければと思います。

 あと、財源の点について一点だけ申し上げたいと思います。

 以前この委員会でも浅尾代議士が取り上げていましたけれども、外為特会の含み益が、今、円安の恩恵で、私どもの試算したところでは七兆円ぐらいありそうだということであります。この七兆円というお金、為替は変動しますので一年後にどうなっているかわかりませんけれども、せっかくこの七兆円という含み益があるんだったら、これを何とか使えないものかといつも思っております。

 財務大臣、為替相場への影響とかいろいろあってなかなかお答えにくい問題ではあると思うんですが、これを財源として使う可能性について、何かありますでしょうか。

麻生国務大臣 これはもう階先生よく御存じのとおりに、外国為替資金特別会計、通称外為特会というんですけれども、この含み益を活用しようとすると、当然のこととして、外貨から円を買うということになります。

 したがいまして、これは実質的にはドル売り・円買いということになりますので、今七兆とか言われましたけれども、軽々しく七兆円の資金介入なんというのは、それはとてもじゃないけれども、世界じゅうからということになりますので、とても今のことに関しましては、これは不測の影響を与えるおそれがありますので、これは極めて慎重な検討が必要であるとしかお答えのしようがございません。

階委員 慎重な検討が必要であるというのはわかっています。しかし、一方で、さっき指摘しましたけれども、円安によって、せっかくの原油の値下がりによる恩恵が相殺されている面もあります。国民はその分負担を負っているわけですね。そうしたら、別途、こういう外為特会とかでプラスがあるのであれば、それを逆に国民に還元してあげる、それが私は政治の正しいあり方ではないかなと思っています。

 きょうは日銀総裁にも来ていただいています。

 総裁に質問します。

 先ほど小川代議士からも質問が出ていました。二年前、正確に言うと平成二十五年の四月四日ですか、二%のインフレ目標を二年間で達成するという趣旨の決定がございました。もうあと二カ月で二年間です。

 しかしながら、先ほど総裁も答弁の中で触れられていましたけれども、直近の日銀の見通しでは、二〇一五年度、年度の物価上昇見込みが一%であるということで、二%の半分です。

 二〇一五年四月がタイムリミットだとすると、もうこの目標というのは撤回された方がいいのではないかと思います。いかがでしょうか。

黒田参考人 御指摘の展望レポートの中間評価で、最新時点で申し上げますと、原油価格の大幅な下落によりまして、二〇一五年度にかけて物価上昇率の見通しが下振れております。

 ただ、先ほども申し上げておりましたとおり、一方で、需給ギャップあるいは予想物価上昇率等によって決まってくる基調的な物価上昇については変化が起こっておらないと思いますので、足元は確かに物価上昇率は下がっておりますし、今後も何カ月かは下がっていくと思いますけれども、経済活動の動き等を見ますと、年度後半にかけて、再び物価上昇率は加速していくというふうに思っております。

 したがいまして、年度全体で一%というのが見通しの中央値でございますけれども、今申し上げたように、年度後半にかけて再び加速していくということから、従来から申し上げております、二〇一五年度を中心とする期間に二%に達する可能性が高いという見通しには、変わりはございません。

 ちなみに、二〇一三年の四月に、二年程度を念頭に置いて、できるだけ早期に二%の物価安定目標を実現するために量的・質的金融緩和を導入いたしまして、その直後からずっと一貫して、二〇一五年度を中心とする期間に二%に達する可能性が高いという見通しを述べておりまして、二年きっちりで二%になりますということは、どの中央銀行もそういうことは申し上げられませんし、私自身も、先ほどから申し上げているとおり、一貫して、二年程度を念頭に置いて、できるだけ早期に達成するために導入し、それから見通しについても、二年前の春から一貫して、二〇一五年度を中心とする期間に二%に達する可能性が高い、この点については、最新時点の政策委員会での議論でもそれを維持しているわけでございます。

階委員 あの二年前、四月のときには、二年間で二%、マネタリーベース二倍、二をたくさん見せびらかして説明していた総裁の姿が今でも目に浮かびますよ。

 ところが、いつの間にか、二〇一五年四月ではなくて二〇一五年度を中心として、そうしたら二〇一六年度も入っちゃうじゃないですか。とんでもないですよ。

 ちなみに、私どもの同僚の津村議員が岩田副総裁に以前国会で質問したときには、岩田副総裁は、二〇一五年四月がタイムリミットだ、できなければ責任をとってやめる、こういうこともおっしゃいましたよ。

 総裁、あなたはそういう責任は感じないんですか。

黒田参考人 先ほど来申し上げていますとおり、二〇一三年の四月に量的・質的金融緩和を導入した際に、二年程度を念頭に置いて、できるだけ早期に二%の物価安定目標を実現する、それを目的に量的・質的金融緩和を導入いたしました。

 その直後の展望レポート以来、一貫して、二〇一五年度を中心とする期間に二%に達する可能性が高い、これは見通しですね、ということを申し上げております。

 そういう意味で、私どもは政策委員会で、一貫して、二〇一五年の四月、つまり二〇一三年の四月からちょうど二年後に二%になるというような見通しを述べたことは、政策委員会としてはございません。ですから、その意味では、基本的に二年前から一貫しております。

 ただ、一つここでお断りしておきたいのは、そういうことで、二〇一五年度を中心とする期間に二%に達する可能性が高いというのは依然として政策委員会の見通しですけれども、原油価格がもっと下がっていくとか、あるいはもっと早く上がっていくとか、そういう原油価格が大きく動きますと足元の物価上昇率は変化しますので、二%に達する時期については、若干前後する可能性はあるというふうに思います。

階委員 去年の十月三十一日には、この二%のインフレ目標を達成するために、なりふり構わぬ追加金融の緩和をされていますよね。国債の大量購入、それまでは年間五十兆円の純増というペースだったのを、八十兆円という莫大な国債購入をするということを宣言されました。

 八十兆円ということは、一方で既に買ったものが償還されて戻ってくるものがありますから、買い入れ額でいうと年間で百十兆円ぐらいになると私は計算しています。百十兆円ということは、国が年間に発行する国債の大体八割ぐらいですよ。これだけ国債を買って弊害が出ている。リスクが生じている。

 申し上げますと、まずリスクということでいえば、財政ファイナンス。これだけ日銀が国債を買って、買った代金が市場にお金で流れていく。そのお金が将来のハイパーインフレ、超インフレにつながるかもしれない。

 また、負担ということでいえば、先ほど申し上げました金融緩和によって円安が進んだ結果、本来恩恵を受けるべき原油の価格の下落による恩恵が小幅にとどまった。

 それから、今示したのは家計の利子所得と長期金利の推移ということでありますが、一貫して低金利のもとで利子所得は下がっています。これがさらに直近では、長期金利が〇・二とか〇・三という中でもっと利子所得は下がって、貯金で暮らしている高齢の方々とかもますます生活が苦しくなっている。

 そういうような、国民に負担あるいは将来へのリスク、これを拡大している中で、日銀には、より深い、そして説得性のある説明責任が求められていると思います。

 そこでお尋ねしますけれども、こういう異常な金融緩和、異常な国債の大量購入の出口戦略、どうやってこれを終了させていくのか、この出口戦略について簡潔に、最後、お伺いします。

黒田参考人 先ほど来申し上げておりますとおり、二%の物価安定目標をできるだけ早期に実現するということのために量的・質的金融緩和を導入し、さらに昨年の十月にこれを拡大したところであります。

 御案内のとおり、消費者物価、生鮮食品を除くでいいますと、足元、ゼロ%台の後半ということでございますので、まだ道半ばということであります。したがいまして、現在は二%の目標をできるだけ早期に実現するよう最大限の努力を払っているところでありまして、出口戦略を議論するのは時期尚早だと思います。

 なぜ時期尚早というふうに申し上げているかと申し上げますと、量的・質的金融緩和の出口に向けた対応あるいはその後の政策運営のあり方ということについては、やはりその時々の経済あるいは金融の状況、そして何よりも物価がどういうふうになっているかということ等々、そのときの状況によって変わり得るものでございます。

 これは以前にも申し上げたことがございますが、米国のFED自身も、やや、前に言っていた出口戦略と違うようなことを言ったりして、かえって市場に無用な混乱を及ぼすということもあり得ますので、早い段階から具体的なイメージを持って出口戦略を申し上げるということはかえって混乱を招くおそれがあるということで、申し上げていないということでございます。

階委員 本来でしたら、今、出口戦略を議論しなくちゃいけない段階なのに、インフレ目標が達成されていないから出口戦略の議論に入れない。だからこそ、我々は、こういう目標というのは撤回すべきだろうし、また、日銀は撤回した際にちゃんと説明責任を果たさなくてはいけないと思います。皆さんは、国民の生活にリスクやあるいは損失を拡大しているという認識があるのであれば、もっとわかりやすい説明責任を果たすべきだと思います。

 そう申し上げまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

大島委員長 この際、後藤祐一君から関連質疑の申し出があります。長妻君の持ち時間の範囲内でこれを許します。後藤祐一君。

後藤(祐)委員 民主党の後藤祐一でございます。

 きょうは補正予算の審議でございます。

 私は、昔からこの予算委員会の審議を見てきて、予算の審議を本当にしているんだろうかと疑問に思ったことがありました。

 きょうは予算について主に議論したいと思いますが、これが補正予算の、一般会計のところだけですが、予算書です。これがどうやってできているのか、これについて伺いたいと思います。

 まず、これは麻生財務大臣に伺いたいと思いますが、この補正予算、どんな方針に基づいて編成されたんでしょうか。

 昨年の十二月二十七日に、地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策というものが閣議決定されておりまして、恐らくこれに基づいて基本的にはできているんだと思います。

 この中で、経済対策の基本的考え方というものがございますが、特に聞きたいのは、この中に、「平成二十七年度の国・地方の基礎的財政収支赤字については、対GDP比半減目標を着実に達成するよう最大限努力する。」という言葉が触れられています。

 来年度、二十七年度本予算をつくる際にはもちろんそうなんですが、この補正予算をつくるに当たっても、二十七年度のプライマリーバランス、これを着実に達成するよう最大限努力すると書いてありますが、ちょっとわかりにくいので、国民の皆様向けに言いますと、日本の経済なり財政が体重百キロのメタボリックな状態になっていて、九十キロまで二〇二〇年までに減量しなければいけません、二〇一五年までにまず九十五キロまで減量してくださいという中で、九十五キロまで減量、二〇一五年度にしなきゃいけないという中で、今年度の補正予算、半減目標を着実に達成するよう最大限努力すると言われていることとこの補正予算の編成方針との関係について、財務大臣の見解を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 これは、後藤先生、役人をしておられたので、この種の仕組みをよくおわかりの上で聞いておられるんだと存じますが。

 基本的には、こういう補正予算を組みました場合に、よく言われますように、二カ月間、三カ月間で使い切らなかった場合はその分は翌年にということになりますと、繰越明許等々のきちんとした手続を踏めば翌年に繰り越せることになりますが、それは二十七年度、翌年の予算というものの結果に影響を与えることになります。

 したがって、前回、五・五兆円の補正予算を組ませていただいたと思いますが、今回は三・五兆で、いかがなものか、もっと組むべきじゃないか等々、いろいろ御意見は昨年の秋ぐらいからあっておったことは事実です。

 しかし、私どもといたしましては、少なくとも、税収も伸びておりますし、税収は、御存じのように、過去二年少々の間で四十二兆円が五十四兆円ですから、十二兆円、税収が二年少々でふえた形になっておりますので、地方もいいではないですか。したがって、前回、五・五兆のときは、消費税を上げるということをやりましたので、反動減も考えて五・五兆とさせていただきましたが、今回はそれがなくなったんだからというようなことも申し上げて三・五兆にさせていただきました。

 これが五・五兆ですと、それは丸々、翌年、二十七年度の本予算のプライマリーバランスに二兆円影響が出てくるということになり得ますので、私どもは、そういったことは考えながら、全体としてきちんとした形で、翌年に影響は、全然ゼロとは申しませんけれども、そういった与えるものはなるべく少ないようにというようなことを考えたことは確かです。

後藤(祐)委員 それは、この補正予算で計上されている予算の執行が来年度にずれ込まないようにという意味ですか。

麻生国務大臣 補正予算は従来そうあるべきです。ところが、なかなか使い切らないというケースもいっぱい、間々あります。土地を購入した場合、土地が買い切れなかったり等々、地元等々あってみたりいろいろしますので、なかなか使い切らない場合。これは生き物ですから、いろいろなことがありますから。しかし、できるだけ年度内に使っていただきたいというのが基本です。

後藤(祐)委員 実はもう一つ意味があるんじゃないですか。つまり、この補正予算と二十七年度本予算、両方見た場合に、来年度の本予算はプライマリーバランスの半減目標を実現しなきゃいけないので、できるだけ今回の補正の方で読めるものは入れておいて、本予算の方に余り送らないでくださいね、そういう意味でここを書かれているのではないんですか。

麻生国務大臣 私どもは基本的にそういう発想はありませんで、私どもとしては、もう少しでしたら、五・五兆にも四兆にもなってもおかしくなかったんだと思いますが、そういったことはしないで、きちんと使える範囲内でやっていただきたいというお願いで、各省にお願いをさせていただいております。

後藤(祐)委員 その割には、本来本予算でやるべきものがいっぱい入っているんですね。

 予算書はありますか、財務省の後ろの方。例えば、まず公共事業の話について言いましょう。

 先ほどのメタボリックの関係でいえば、いろいろなものを食べなきゃいけないんですけれども、野菜やビタミンみたいなものは常にとらなきゃいけない、たんぱく質はとらなきゃいけないけれども、脂肪をとり過ぎると太っちゃうよという中で、御飯はある程度食べなきゃいけないけれども、毎日デザートを食べるというのはいかがなものかという中で、デザートぐらい食わせてくださいよというぐらいのことが今言われているんだと思うんですね。

 その中で、公共事業の予算を見たときに、例えばこの中で、四百四ページというところを見ますと、道路交通安全対策事業費というのが百十三億円計上されています。この中で、確かに、防災だとか耐震だとか、こういったものというのはある程度いいと思うんですけれども、維持管理、国が行う一般国道の維持管理七十三億というのが入っているんですね。

 維持管理というのは予想される予算なわけで、本来本予算の中で読まなきゃいけない話であって、緊急に発生する、先ほどの財政法の中で言っている緊要性みたいなものとはちょっと違うと思うんですね。なぜ、こういった維持管理の予算が入っているんでしょうか。

麻生国務大臣 笹子トンネルの話を御記憶かと思いますが、ああいうようなものは、あらかじめしてあればきちんとしたものはやれたはずだというようなことははっきりしているんですから。あれは、みんなで予算をずっと、公共事業を、かつて十四兆あったものを六兆まで減らしてきたわけですよ。間違いないでしょう。十四兆あった公共事業を六兆までずっと減らしてきたというのが過去の歴史で、その結果、かなりのあちらこちらで補修、メンテナンスというところの手が抜けたことは事実でしょうが。違いますか。そこらのところをよく考えてもらわないと、私どもとしてはいけないのであって……(発言する者あり)

大島委員長 静かに、静かに。

麻生国務大臣 こういうような緊急事態というものは、我々としては、これまで長い間かけて悪くなってきている部分、補修の部分が手が抜けている部分、あちらこちらで、ここの橋は渡れないという事業、渡れない橋の数が〇・何%までふえてきているとか、いろいろ実態問題としてありますから、こういったときには、事故が起きてから、橋がおっこちてから、トンネルが落ちてから、やっておかなかったじゃないかというふうになるくらいだったら、安心、安全を考えるんだったら早目に対応するのは当然のことだ、私はそう思っています。

後藤(祐)委員 まず、中央高速道路の笹子トンネルに関して言うと、これは料金収入でつくっているものですから、一般会計予算は全く関係ありません。そこを誤解されておられます。

 それと、維持管理予算について言いますと、これは私は必要だと思うんですよ。ですが、補正予算ではなくて、これこそ本予算できちっとやるべきであって、補正予算でやる理由がないんじゃないんですかということを申し上げているんです。

 もうちょっと言いますと、先ほど小川委員も引用されておられましたけれども、補正予算の法的根拠として、財政法二十九条では、次に掲げる場合に限り補正予算を作成できるとあって、二つしか理由がないんです。一つは、法律上または契約上国の義務に属する経費の不足を補う場合、それともう一つは、予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出、この二つしか補正予算は計上できないはずなんです。

 まず、この原則について確認したいと思います。それ以外の予算はこの中に入っていないという理解でよろしいですか。

麻生国務大臣 基本的には、我々としては補正で読める範囲のものに読み込んでいきたいと思っております。

 まずは、今、高速道路等を例に引きましたけれども、一般道路でも補修が必要なことは確かです、トンネルは高速道路とは限りませんから。一般道路でもある。

 理解力が足りない方に説明するのは苦労するんですけれども。大蔵省の割には理解力が少ないなと思わないでもないけれども。ああ、大蔵省じゃない、通産省か、経産省か。あちらが大蔵省。ごめんなさい、間違えました。済みません。

 いわゆるこういったようなことはきちんとしたものをやっていかないと、事故になってからということは断固避けたいというのが一点。それから、何といっても緊急経済対策という部分が我々の中にはありますので、緊急経済対策に資するということも十分に考えたというのは確かです。

後藤(祐)委員 質問に答えてほしいんですが、財政法二十九条に反するものはこの中に入っていないという理解でよろしいですか。

麻生国務大臣 我々としては、基本的に、法律違反をしているかと聞かれて、法律違反をしていますというふうに返事をするわけはないと思いますよ。

後藤(祐)委員 そうしましたら、維持管理に関する道路予算が、なぜ先ほどの二つのどちらかに入るか、どちらに入るのか、説明していただけますか。

麻生国務大臣 基本的には、我々は、先ほど経済対策の話も申し上げましたけれども、当初に予算編成をいたしました後生じたということであれば、我々としては経済対策等々を考えて、こういったもの、需要を追加ということで、私どもとしてはさせていただいたものだと理解しております。

後藤(祐)委員 道路の維持管理は前からわかっている話ではありませんか。

麻生国務大臣 今申し上げたのは、道路が悪くなるというのが後から、これは思ったより補修が必要だなという事態が後になって急にわかってくることだって十分にあります。元セメント屋ですから、少なくともあなたよりは詳しい。そういった意味で、私どもとしては、そういったこともありますし、同時に、経済対策としては需要を追加するという意味が大きいと思っております。

後藤(祐)委員 別の例で言いましょう。

 totoというのがありますね、サッカーくじ。これは二〇一三年度、一千億売れて、史上最高の売れ行きです。ちなみに、今週の土曜日にキャリーオーバーで十億というのが出るらしいですから、ぜひ買っていただいたらいいと思います。

 この独立行政法人日本スポーツ振興センターというところがございます。大変お金を持っている団体でいらっしゃいます。利益剰余金が八十九億あって、純資産が三千四百億ある。これだけ資金が潤沢なところに今回またお金を足すわけですね。百二十五億、今回の補正でさらにお金を出すんですが、これはお金を出さなくても、いろいろな事情があるかもしれませんが、できると思うんですね。これなんかは、財政法二十九条との関係でどう説明するんですか。

麻生国務大臣 これはオリンピックの、たしか国立競技場の予算の関係でというのが大きな理由だったと記憶いたしますので、これはオリンピックに合わせて、なかなか決まりませんでしたのが、最終的にオリンピックの何とかセンターとかいうのをつくり直すとかなんとかいうのが最終的に決まったのがその結果だというように理解しております。純粋に需要拡大、大きなところだと思いますが。

後藤(祐)委員 いや、キャッシュフローがあるんですから、別に、そのキャッシュの範囲でつくれるじゃないですか。

麻生国務大臣 総額が幾らだったか、ちょっと記憶がありませんし、まだ正確には決まったとは聞いておりませんけれども、少なくとも、今言われたようなキャッシュフローで足りる範囲ではなかったんだというのが大きな理由だったと記憶しています。

後藤(祐)委員 一つずつ根拠がないということがわかってきますが、基金というのがまさにその典型なんです。

 どこに緊要性があってこの基金というものが正当化されるかよくわからないんですが、今、世の中には基金というものが百七十四あるそうで、三・一兆、そこにお金があるそうなんですが、今回の補正で五千億の予算が十四の基金にさらに積み増しされています。これなんかはどの程度の緊要性があるのか、二十九条との関係でどう説明するんですか。

麻生国務大臣 今、どの基金の話といって個別に申し上げるわけではありませんけれども、全体として申し上げれば、各基金とも経済対策に大きな需要効果が波及し得るというのがこの大きな背景だったと記憶しています。

後藤(祐)委員 効果の話を言っているのではありません。財政法二十九条との関係を言っています。財政法二十九条との関係で、基金に積み増して、その需要が二〇一五年度以降に発生するようなものについては、なぜゆえに二十九条で読めるんですか。

麻生国務大臣 財政法二十九条は、本予算ができ上がった後、いろいろな形で出てきた需要に関して財政法二十九条というような形のものが適用できるんだと記憶していますので、そういった意味では、今申し上げたオリンピックの部分に関しましても同様の話であって、つい最近の話。先ほどの道路の話も同じですけれども、基金としてはそういった部分を考えて、経済効果も考えてやらせていただいたと記憶しています。

後藤(祐)委員 さっきのスポーツの話は基金ではありませんし、経済効果ではなくて法律の根拠を言っているんですが、全く答弁していないんですが、もう一度答弁をお願いします。

 時計をとめていただけますでしょうか。

大島委員長 時計をとめるかどうかは委員長の判断です。

 大臣、早くお答えください。

麻生国務大臣 お待たせしまして恐縮です。

 今言われて、ちょっと混乱して恐縮でしたけれども、財政法二十九条に、予算編成が行われた後の需要というものに関しては、財政法上何ら問題はないというふうに理解しておりますが。

後藤(祐)委員 いや、基金で、実際に基金から先の支払いがなされるのは二〇一五年度以降のものもあるわけです。ですから、緊要性という点で、基金というのはどういう説明をするんですか。

麻生国務大臣 これも知っていて聞いておられるんだと思いますが、国から基金に金が出る、基金に資金が出るということは、財政法上何の問題もないというふうに理解しておりますが。

後藤(祐)委員 その先の需要が緊要性がない場合に、なぜゆえに財政法二十九条上、認められるんですか。

麻生国務大臣 国から出しますのは、基金に対して国からいわゆる資金が出ていくわけでありまして、その基金が考えて、これが緊急性があると判断するのは基金が判断して、その基金を所管しておられる大臣が判断されるんだと思いますが、先ほどの例でいけば、いろいろなところで考えておられる話は、いずれ本予算の後に出てきた話を各基金の中でいろいろ対応していくことになる。緊急経済対策とか、経済を大きくするとかいう部分はもちろんありますけれども、そういった部分を含めて、基金が必要だと判断をされた場合、その基金に対してお金をつけていくということだと存じます。

後藤(祐)委員 全く答弁できないことがよくわかりました。

 基金の中にも、ましなものとけしからぬものがありまして、実は、そこは、昨年の十一月二十八日の行政改革推進会議というところで、「「秋のレビュー」の指摘への対応と基金の再点検について」という文書がございます。

 その中で、次の三つは基金として緊要性があるのではないかということになっていて、不確実な事故等の発生に応じて資金を交付する、保険みたいなものですね。二つ目が、資金の回収を見込んで貸し付けを行う場合。三つ目が、他の事業の進捗に依存する場合。この三つについては、基金としてわかります、ただ、この三つを満たさないようなものについては、だめですよというチェックをされておられます。

 実際に、今回の補正で十四の基金に五千億積んでいますけれども、では、十四の基金、全部そのチェックをしたんですかと、きのう、この辺は全部事務方とやりとりしていますから、聞いてみました。

 十四のうち十二はこのいずれかの要件を満たすそうなんですが、二つは満たしていない。ものづくりに関する基金千二十億、これなんかは、二十七年度予算は予定していない。つまり、今回とれるだけとっちまえという典型なんですね。これは大変けしからぬ。でも、やめるからまだいいでしょう。

 もう一つ、農地集積バンク。これも今回の予算で二百億積むわけでございますけれども、これも、先ほど階先生が別のお話でやっていましたけれども、なかなか進捗しておられないそうなんですね。昨年の夏の段階では、実際に農地を借りたいという方はいっぱいおられるんだけれども、実際にそこの進捗が進んでない、極めておくれているという報告もなされている中で二百億また積む。

 この二つは明らかに、これは財務省の方が認めているんです、この十一月二十八日の、秋のレビューの指摘への対応と基金の再点検という条件を満たしていないと言っているんですね。わかっていて、なぜこの補正予算にこの二つをのっけたのですか。

麻生国務大臣 過日、行政改革推進会議において取りまとめられたルールにおきまして、基金の点検に当たりましては三つ、不確実な事故などの発生に応じて資金を交付する事業、資金の回収を見込んで貸し付け等を行う事業、事業の進捗が他の事業の進捗に依存するもの等々以外の事業については、基金方式によらず実施できないかを検討するということにされたところであります。

 このルールを踏まえて、基金方式による実施が真に必要な事業に絞り込んで、二十五年度補正予算に比べて、約一兆二千億ですから、〇・七兆円を減らして今回五千億円を計上するなど、大幅に削減をさせていただくことにしております。

 このルールに基づいて基金を不断に見直すことにしておりますが、基金方式によらず実施することができると判断された事業については、基金方式をやめることは当然であると考えております。

 それから、もう一個言われました事業につきましては、済みません、小さな字なので、高齢者は眼鏡が要りますね。

 農業構造改革支援基金の話等は、十四のうちの二つのうちの一つだと思いますが、もう一つの、ものづくり中小企業・小規模事業試作何とかというこの点、これは二十八年の三月末で設置期限が、全部延長が切れるということになっておりますので、その意味で今年度ということにさせていただいたということであります。

 それから、農業、これは、先ほど申し上げました……

大島委員長 大臣、マイクに少し入るように。

麻生国務大臣 非基金化については、農地中間管理機構の業務の状況というものを今後勘案しながら、今の事業の進捗状況や過去の実績から合理的に見積もることは極めて困難。なぜなら、昨年の三月に始まったばかりですから、これは。そういった意味で、これは始めることは困難なので、今後とも農林水産省と議論してまいりたいということで、農林水産省と話をいたしておると理解しております。

後藤(祐)委員 マイクにちゃんと向かってしゃべられた方がいいと思います、全国で聞いていますので。

 どうなるかわからないんだったら補正には積まない方がいいんじゃないんですか、お金がないんだったらともかく。

 これ以上言っても答弁はなかなか難しいようなので、次のテーマに行きたいと思います。

 最初にメタボリックの話をしました。要するに、この補正予算というのは、百キロの体重の日本が九十五キロまでに来年減量しなきゃいけないんですが、脂肪を取り外していいよというのが補正なんです。今、本当は九十九キロぐらいにしか減っていなくて、一年で四キロ減らさなきゃいけない。では、四キロ分取り出して、補正予算で計上する。そうすると、ごまかすことができちゃうんですね。

 これをやらないためには、歳出そのものを減らしていかなきゃいけない、特に経常的になっているものを減らさなきゃいけないわけですが、一つ例として挙げたのが国家公務員の総人件費の話。

 これについては、我々が政権のときにも大変苦労してきました。我々は労働協約締結権を付与すべきだと考えておりますが、今の自公政権ではこれは人事院勧告でやられるということなので、お給料の額についてはなかなか内閣としていじることは難しいという中で、では人数をどうするかということになるわけですが、国家公務員の場合、突然解雇したり降格したりといったことはできませんから、結局、コントロールできる部分というのは採用のところだけなんですね。

 我々は、この苦しい事実をわかっていて、これを見ていただきたいんですけれども、麻生大臣が総理だったときに決めた、これは一年前の段階で決めますから、麻生さんが総理のときに二十二年度の採用の方を決めて、これは六千二百人ぐらい雇っている。その後、民主党政権で苦しい思いをして人を減らしてきました。ところが、安倍政権になって、七千四百十五人。これは、今年度、二十六年度なので、まだこれからふえる可能性もあるんですね。約二倍弱採用の数をふやしてしまって、この方々というのは、四十年間にわたってずっと支出が続くわけですね。

 もちろん、仕事を減らさなきゃいけません。今仕事が忙しいのはわかります。ですが、仕事を減らした上で、それに人数を合わせていかなきゃいけないわけです。でも、一回採用してしまったら、これはもうずっとこの方々にお給料を払うわけです。当然です。内閣人事局ができて、総人件費に関することが初めて所掌事務に定義されて、長い目で見た総人件費を管理していかなくちゃいけません。

 有村大臣、きょう来られていますけれども、総人件費を一体どうやって管理していくつもりですか。総人件費は、人事院勧告でお給料が決まるということを仮に前提としたならば、採用を、苦しいけれども……

大島委員長 後藤君、ちょっとサービスをして我慢しておるが、そろそろ質問を簡明にしなさい。

後藤(祐)委員 はい、これで終わりにしますから。

 人事院勧告がいじれない以上、採用を減らしていかないと総人件費は管理できないはずなんです。どうやって総人件費を管理するつもりなのか。こんな、二倍にも採用をふやしてしまって、将来に向けて中長期的な総人件費管理をどうやって行うつもりなのか、有村大臣に御答弁いただきたいと思います。

大島委員長 有村大臣、簡明にお願いします。

有村国務大臣 お答えいたします。

 総人件費の抑制を図り続けることは極めて大事なことだと思います。

 安倍内閣になって新規の採用者数がふえたということでございますが、これは、委員が御指摘のように、民主党内閣でかなり厳しいことを、歯を食いしばって純減をされてきた、二十一年を基本の年にして四割、五割、六割の新規採用を抑えようとしてきた、その反動があることも御理解いただきたいと思います。

 そして、実際には、刑務官の勤務シフトが組めずに、全国の刑務所で勤務する刑務官の週休二日が確保できていない。それは、若者が新たに入ってきていないという現実のゆがみも出てきています。

 その中で、私どもは、この十年間連続して千人以上の純減ということも、これは安倍内閣でも実現しておりますし、総人件費の抑制に配慮しつつ、定員の範囲内で適切に採用をしたいということでトップは守っている、そういう姿勢でございます。

後藤(祐)委員 これでは総人件費は守れない、減らすというのはなかなか難しいということが確認されたと思います。

 終わります。ありがとうございました。

大島委員長 次回は、明三十日午前八時五十五分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四分散会


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