衆議院

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第4号 平成27年2月4日(水曜日)

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平成二十七年二月四日(水曜日)

    午前八時五十八分開議

 出席委員

   委員長 大島 理森君

   理事 金田 勝年君 理事 萩生田光一君

   理事 原田 義昭君 理事 平口  洋君

   理事 平沢 勝栄君 理事 森山  裕君

   理事 前原 誠司君 理事 今井 雅人君

   理事 上田  勇君

      青山 周平君    秋元  司君

      穴見 陽一君    井上 貴博君

      池田 佳隆君    石原 宏高君

      岩屋  毅君    衛藤征士郎君

      小倉 將信君    小田原 潔君

      大西 英男君    金子 一義君

      金子めぐみ君    熊田 裕通君

      小池百合子君    小林 鷹之君

      鈴木 俊一君    田所 嘉徳君

      土井  亨君    長坂 康正君

      根本  匠君    野田  毅君

      古屋 圭司君    星野 剛士君

      宮崎 謙介君    村井 英樹君

      保岡 興治君    山下 貴司君

      山本 幸三君    山本 有二君

      小川 淳也君    緒方林太郎君

      金子 恵美君    神山 洋介君

      岸本 周平君    後藤 祐一君

      階   猛君    玉木雄一郎君

      辻元 清美君    細野 豪志君

      馬淵 澄夫君    山井 和則君

      井坂 信彦君    井出 庸生君

      小熊 慎司君    重徳 和彦君

      松木けんこう君    松田 直久君

      松浪 健太君    丸山 穂高君

      岡本 三成君    中野 洋昌君

      樋口 尚也君    赤嶺 政賢君

      梅村さえこ君    塩川 鉄也君

      高橋千鶴子君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣         麻生 太郎君

   総務大臣         高市 早苗君

   外務大臣         岸田 文雄君

   文部科学大臣

   国務大臣

   (東京オリンピック・パラリンピック担当)     下村 博文君

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   経済産業大臣       宮沢 洋一君

   環境大臣         望月 義夫君

   防衛大臣         中谷  元君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 山谷えり子君

   国務大臣

   (少子化対策担当)    有村 治子君

   国務大臣

   (地方創生担当)     石破  茂君

   財務副大臣        菅原 一秀君

   内閣府大臣政務官

   兼復興大臣政務官     小泉進次郎君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  澁谷 和久君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  能化 正樹君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 井野 靖久君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    三浦 正充君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  井上  宏君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長)            田中 正朗君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房長) 佐藤 一雄君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   参考人

   (東京電力株式会社代表執行役社長)        廣瀬 直己君

   予算委員会専門員     石崎 貴俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月四日

 辞任         補欠選任

  小倉 將信君     穴見 陽一君

  小田原 潔君     大西 英男君

  熊田 裕通君     青山 周平君

  宮崎 謙介君     井上 貴博君

  山下 貴司君     村井 英樹君

  小川 淳也君     神山 洋介君

  岸本 周平君     玉木雄一郎君

  辻元 清美君     金子 恵美君

  馬淵 澄夫君     緒方林太郎君

  山井 和則君     細野 豪志君

  井坂 信彦君     小熊 慎司君

  重徳 和彦君     井出 庸生君

  松木けんこう君    丸山 穂高君

  松浪 健太君     松田 直久君

  赤嶺 政賢君     塩川 鉄也君

  高橋千鶴子君     梅村さえこ君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     池田 佳隆君

  穴見 陽一君     小倉 將信君

  井上 貴博君     宮崎 謙介君

  大西 英男君     小田原 潔君

  村井 英樹君     山下 貴司君

  緒方林太郎君     馬淵 澄夫君

  金子 恵美君     辻元 清美君

  神山 洋介君     小川 淳也君

  玉木雄一郎君     岸本 周平君

  細野 豪志君     山井 和則君

  井出 庸生君     重徳 和彦君

  小熊 慎司君     井坂 信彦君

  松田 直久君     松浪 健太君

  丸山 穂高君     松木けんこう君

  梅村さえこ君     高橋千鶴子君

  塩川 鉄也君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  池田 佳隆君     熊田 裕通君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 国政調査承認要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 予算の実施状況に関する件(経済・外交等)


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     ――――◇―――――

大島委員長 これより会議を開きます。

 国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。

 予算の実施状況に関する事項について、議長に対し、国政調査の承認を求めることとし、その手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

大島委員長 予算の実施状況に関する件について調査を進めます。

 本日は、経済・外交等についての集中審議を行います。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君、東京電力株式会社代表執行役社長廣瀬直己君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として内閣官房内閣審議官澁谷和久君、内閣官房内閣審議官能化正樹君、内閣府大臣官房審議官井野靖久君、警察庁刑事局長三浦正充君、法務省入国管理局長井上宏君、文部科学省研究開発局長田中正朗君、農林水産省大臣官房長佐藤一雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

大島委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平沢勝栄君。

平沢委員 おはようございます。自民党の平沢勝栄でございます。

 きょうは、ISILのテロ行為についてお聞きしたいと思います。

 このテロ集団といいますか、本当に残虐な犯罪集団であるISILによりましてお二人の日本人が殺害されたわけでございまして、本当に残念無念でございまして、御家族の皆さんに心から哀悼の誠をささげたいと思います。

 彼らのやっていることは、国とか何か言っていますけれども、これは国じゃなくて、単なる極悪非道、そして冷酷無残な犯罪集団でございまして、こういった集団がはびこっているということは絶対に許せないことで、この撲滅に向けてしっかり我々は取り組んでいかなければならないんじゃないかなと思います。

 そうした中で、きょうもまた新たなニュースが流れてきまして、この犯罪集団であるISILがヨルダン軍のパイロットを焼殺したという映像が流れているということでございます。

 これについて、ヨルダンの広報官はマスコミに対してこのように言っています。情報によれば、既に一月三日に操縦士は余りに野蛮な形で殺されていた、我々、過去の、一週間の努力は全てこの犯罪組織によって愚弄された、彼らはイスラムについて何も知らないし何ら関係ない卑劣な犯罪者だ、こういうことを言っているようでございます。

 最初に、総理にお聞きしたいと思いますけれども、この事実関係、そしてこれについての御見解をお願いいたします。

安倍内閣総理大臣 ヨルダン軍パイロットのムアーズ・アル・カサスベ氏がISILにより無残にも焼き殺されたことは、まことに言語道断であり、大きな憤りを覚えます。御家族の心境を思うと、言葉もありません。ここに、日本政府及び日本国民を代表し、衷心より哀悼の誠をささげ、心からお悔やみを申し上げます。

 この困難なときに、日本はヨルダンとともにあります。ヨルダンの政府及び国民の皆様に対し、心からの連帯の意をあらわしたいと思います。

 このような非道、卑劣きわまりないテロ行為に強い憤りを覚えます。許しがたい暴挙であり、強く、断固非難をいたします。

 テロに決して屈しないというヨルダンの意思に対して、敬意を表したいと思います。

 日本も決してテロに屈することはありません。国際社会と連携しつつ、人道支援をさらに拡充し、テロとの闘いにおける我が国の責任を毅然として果たしていく決意であります。

平沢委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 次に、外務大臣にお聞きしたいんです。

 まず、今回のお二人の人質事件は昨年の段階でわかっていたわけですけれども、その間いろいろと外務省としては大変な御苦労をされたと思います。これはもちろん、表に言えること、言えないこと、諸外国との関係等もいろいろありますので大変難しいと思いますけれども、今言える範囲でちょっと御説明をお願いできますか。

岸田国務大臣 まず、政府としましては、昨年八月十六日の夜、湯川さんが行方不明になった事案を認知いたしました。

 これを受けまして、シリアの治安が極めて危険な状況であること、さらに、現在、シリアには日本大使館が所在しないこと、そのほかさまざまな情報に接したことを踏まえまして、邦人の保護に万全を期す観点から、ヨルダンに現地対策本部、そして外務省に対策室を立ち上げ、官邸においても情報連絡室、そして警視庁においても連絡室を立ち上げた次第であります。

 そして、具体的な対応ですが、例えば、早期解決のための情報収集等を目的としまして、八月下旬以降、シリアと国境を接するトルコに、外務省本省及び在外公館から出張ベースで数名ずつ、延べ十数名の人員を派遣するなどの対応を行いました。さらに、警察庁においても、八月十七日以降、情報収集要員数名をシリア周辺国各国に派遣しまして、各国当局に対する協力要請及び情報収集を行ったと承知をしております。

 そして、十一月一日に、後藤さんが行方不明になっているとの家族からの連絡を受けてからは、この事案につきましても、既に設置してありました外務省対策室等において全力で情報収集に当たったということでございます。

平沢委員 今回、相手が我々の話の通じない極悪なテロリスト集団だったということだろうと思います。外務省は本当にお疲れさまでございました。

 次に、現地対策本部を今回ヨルダンのアンマンに置いたんですけれども、これについていろいろ一部言う方がおられますけれども、もともとシリアの大使館が情報収集しなきゃならないところなんですけれども、シリアが治安が悪化してクローズして、その仕事がアンマンの方に移っているわけですから、アンマンに現地対策本部を置いたというのは私は当然のことではないかなと思いますけれども、これについて外務大臣の御見解はいかがでしょうか。

岸田国務大臣 今回の事案、シリアで発生したものであります。ただ、御指摘のように、在シリア日本大使館、これは各国とも同様でありますが、シリアの治安情勢の悪化を受け、一時閉鎖中であります。そして、在ヨルダン大使館内に臨時事務所を設置しているところであります。こうしたこと、さらには、ヨルダンというのはこの地域におきます情報の拠点として評価されています。こうした現地の情報拠点でありますヨルダン政府から緊密な協力を得られる、こういった点も考慮いたしまして、現地対策の拠点をヨルダンに置くとした次第でございます。

平沢委員 ありがとうございました。

 次に、山谷大臣にお聞きしたいと思うんですけれども、今や、こういった、海外で邦人が人質拘束事件なんかに巻き込まれたときに、もちろん現地の当局が第一義的に救出作戦をやらなきゃならないんですけれども、一九七七年にダッカ事件がありまして、その後、場合によっては、ハイジャック等が起こったときに、日本の警察部隊も外国に行ってそういった救出作戦を当事国の同意があればやってもいいじゃないかということで、警察の中にSAT、スペシャル・アソールト・チーム、SATというチームができて、いわば特殊部隊です、いろいろ訓練を重ねていると思うんです。

 今、自衛隊が海外にこういった場合に行くかどうかという検討もなされているようですけれども、警察の部隊が海外に行ってこういった救出作戦をやる可能性、これができるのかどうか。今回のようなケースみたいに相手が強大なテロリスト集団の場合はもちろんできませんでしょうけれども、ケースによってはできるのかどうか、これをちょっと教えてください。

山谷国務大臣 一般論として申し上げれば、警察権限の外国における行使は、警察法第六十一条の管轄区域外における権限に係る規定により、否定されるものではありませんが、当該国の主権との調整が必要でありまして、少なくともその同意が前提となります。

平沢委員 要するに、当該国の同意があれば、警察が海外に行ってこうした救出作戦をやることもあり得る、こういうことで理解していいんでしょうね。

山谷国務大臣 一般論として申し上げれば、SAT、スペシャル・アソールト・チーム、特殊部隊、一義的には国内の治安維持のための部隊でございまして、ハイジャック、重要施設占拠事案等の重大テロ事件、銃器等武器を使用した事件等に出動し、被害者や関係者の安全を確保しつつ、被疑者を制圧、検挙することとしておりまして、一般に、国外での活動のための体制整備、訓練等を行っているものではないと承知しております。

平沢委員 これは、できたときに私もかかわっているからよくわかっているんですけれども、これはもちろん一義的に国内のこういった事案に対処するのは当然のことですけれども、海外でやる可能性というのは排除していないはずなんです。そういったケースは起こらないことを望むんですけれども、ケースによっては、例えばドイツなんかがモガディシオ事件で結局救出チームを送った、こういったことを参考にしてできたわけですから、私はそれはあり得るだろうと思います。それはまた、いろいろ御検討をお願いしたいと思うんですけれども。

 次に、外務大臣にお願いしたいと思います。

 今回、後藤さんに、シリアに入りたいということについて、外務省当局は、それはぜひやめてほしいということで再三にわたり、いわば説得をされたということが報じられておりますけれども、もしそれが事実であれば、どういう形で、どこで注意喚起をされたのか、その辺のことについて、言える範囲でお答えできませんでしょうか。

岸田国務大臣 後藤さんに対しましては、一般の方と同じように、シリア全域に外務省の渡航情報の中で最も厳しい渡航延期を含む退避勧告が発出されていることを含め、外務省担当部局から説明をしておりました。

 具体的には、後藤さんに対しまして、九月下旬及び十月上旬に電話によって、そして十月中旬には面会で、合計三回にわたって外務省担当部局から、危険な地域には渡航しないよう注意喚起を行わせていただきました。

平沢委員 これは、今もこういった形で、シリア行きをもし望んでいる方がおられたらやっておられるということでよろしいんですね。

岸田国務大臣 はい。今現在も、シリアに対する渡航情報は変わっておりません。今現在でも、渡航を意図されている方がおられれば、同じ対応をすることになると存じます。

平沢委員 渡航を禁止するということは憲法上できませんので説得ということになると思いますけれども、やはり、危険な地域には行かないように、ぜひ説得をよろしくお願いしたいと思います。

 次に、今回の件で、ISILは、いわば日本国民をどこでも殺害するような脅迫めいたことを言っているわけで、断じて許せないわけでございますけれども、いずれにしましても、私たちは、国内外において十分警戒警備を強めていかなければならないわけです。

 海外については、もう外務省の方でいろいろと注意を呼びかけている、あるいは文科省も呼びかけているというようなことがもう既に報じられているわけですけれども、まず国内、国内でもこういったテロ、イスラム過激派のテロが起こる可能性。これは、今回、これからじゃないんです、今までもあったんです。ですから、今までもあって、これからも起こる可能性はあるだろうと思いますけれども、これについて、山谷大臣、いかがでしょうか。

山谷国務大臣 過去のテロ、テロの脅威、過去にもございました。必ずしもイスラム過激派によるものではないのですけれども、過去、日本国内で発生した、国際テロリストの関与も疑われた事件としては、「悪魔の詩」邦訳者殺害事件等がございます。また、殺人、爆弾テロ未遂等の罪で、国際刑事警察機構、ICPOを通じて国際手配されていた者が、他人名義の旅券を使用して我が国に不法に入出国を繰り返していたということも判明しております。このほか、米国で拘束中のアルカイダ幹部が在日米国大使館を破壊する計画に関与したと供述していたこと等が確認されております。

 国際テロの危険性でございますけれども、これまで、国際テロ情勢については、シリア等に渡航した戦闘員が帰還後に敢行するテロ、テロ組織とかかわりのない個人がインターネット等を通じて過激化したローンウルフ型のテロの危険性が世界的に指摘されているところであります。

 我が国を対象としたテロに関する具体的な情報に接しているわけではございませんが、先月にはパリ市内における多数の死傷者を伴う銃撃テロ事件が発生しているほか、今回、後藤健二氏を殺害したことを伝える動画の中では日本国民をテロ対象とすることも言及されるなどしているところであり、テロに対する警戒を怠ってはならないと認識しております。

 警察では、国内におけるISILの活動実態に重大な関心を持ち、さまざまな手法で関連情報の収集、分析を行っているところであります。ISIL関係者と連絡をとっていると称する者や、インターネット上でISIL支持を表明する者が国内に所在していることも承知しております。

平沢委員 今、山谷大臣が言われた中で、ICPO手配のデュモンですね、デュモンは二〇〇三年にドイツで捕まったんです。これはICPOが手配しているテロ犯です。捕まってわかったことは、偽造旅券で日本に出入国を繰り返していたということなんです。

 そこで、きょうは入管の局長に来てもらっています。入管の局長にお聞きしたいと思うんですけれども、ICPO手配のテロリストが偽造旅券で日本に出入国ができた。そして、もっと言えば、金正男というのが二〇〇一年に、金正日の息子ですね、これが日本に偽造旅券で入ってきた。その後わかったことは、その前にも偽造旅券で入国を繰り返していた。

 これは入管、なぜこういったことができたのか、今でもこんなことはできるのかどうか、それをちょっと教えてください。簡単に。

井上政府参考人 委員御指摘のとおり、アルカイダの関係者等が偽造旅券を行使して本邦への入国を繰り返すことを許してしまった事案が過去にございました。その事案の判明後、テロリストの入国を確実に阻止するためにさまざまな措置を講じてきております。

 具体的には、平成十九年から指紋等の個人識別情報を活用した入国審査を導入しておりますし、その後、ICPOが構築する紛失・盗難旅券データベースの活用等、厳格な入国審査のためのさまざまな施策を講じておりまして、あわせて、警察等関係機関との情報連携を密にし、水際対策に万全を期しております。

 入管当局といたしましては、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック東京大会の開催に向けて、計画的に出入国審査体制の強化を図り、水際対策の一層の徹底を図っていく所存でございます。

平沢委員 水際対策は極めて大事になりますので、入管、どんどんどんどん機器も最新のものが導入されているようですけれども、ぜひ体制の強化をお願いしたいと思います。

 そこで、外務大臣、ISILが今後どうなるか、簡単にその見通しについてお聞かせいただけませんか。

岸田国務大臣 ISILにつきましては、シリアで戦闘経験を積んだ戦闘員や制圧した油田を通じて得た潤沢な資金等を活用して、既存の国境を無視して、シリアとイラクにまたがる地域で独自にいわゆる国家の樹立を宣言しているという集団です。このように、従来のテロ組織とは異なる特異な集団でありますので、ISILを撲滅するためには、ISILの資金調達阻止、あるいは人道的危機への対処といった幅広い分野での取り組みが不可欠かと存じます。

 このような国際社会の取り組みが成果を得るには長期間を要するという予想がされます。こうした見方につきましては、米国オバマ大統領の声明ですとか、対ISIL連合閣僚級会合のパートナーによる共同声明、こうしたものの中にもこういった見方が示されております。

平沢委員 では、時間が来ましたので、最後に総理にお聞きしたいと思いますけれども、テロとの闘い、大変に困難が予想されるわけですけれども、ISILの問題というのは、ISILを根絶というか撲滅というか壊滅する以外ないわけで、これはほかの国と連携して取り組んでいかなきゃならない。

 そんな中で、総理が言われるように、日本としてはできる分野で人道支援を拡大していく、こういった方法が一つあると思いますけれども、同時に、日本というのは、やはり情報をもっともっと収集する機能を充実させなきゃならない、それを分析する機能を充実させなきゃならないということで、情報機関を設置したらどうかということが前から言われていまして、党の中で、今、町村先生なんかがそういったことをいろいろと検討されまして、そういった提言もされておられるわけでございます。

 こうしたテロとの闘い、そういった中での人道支援の強化あるいは情報機関の創設、こういったことについて総理のお考えをお聞かせください。

安倍内閣総理大臣 我が国をめぐる安全保障環境は厳しさを増しているわけでありますし、こうしたテロ行為は国境を直ちに越えていく。その中で、どの国もこのテロの脅威から逃れることができないわけでございます。

 その中で、関係する国や組織の内部情報を収集することが死活的に重要であります。しかしながら、こうした国や組織は閉鎖的であるため、内部情報の収集には相当の困難が伴うのも事実であります。そのため、政府の情報機能をさらに強化し、より正確かつ機微な情報を収集して国の戦略的な意思決定に反映していくことが極めて重要であると考えております。

 我が国の情報収集能力は日々増強していると考えておりますが、御指摘のような対外情報機関の設置につきましてはさまざまな議論があるものと承知をしておりますが、今後とも、政府における情報の収集、集約、分析の一層の充実強化に取り組んでいきたいと思っております。

平沢委員 ありがとうございました。

 時間が来たから終わります。

大島委員長 この際、山本幸三君から関連質疑の申し出があります。平沢君の持ち時間の範囲内でこれを許します。山本幸三君。

山本(幸)委員 自由民主党の山本幸三でございます。

 まず初めに、ISILと呼ばれる非道なテロ集団によって非業の死を遂げられました湯川遥菜さんそして後藤健二さんの御冥福を心からお祈り申し上げ、そして、御家族の皆様に哀悼の誠を表したいと思いますし、政府におかれては、こうしたことが二度と起こらないように全力を挙げていただきたいということをお願いし、その上で、経済問題に入りたいと思います。

 総理、私は二年前、この場、予算委員会の集中審議の場におきまして、安倍総理は日本経済の救世主であるということを申し上げました。それは、長きにわたるデフレでまさに日本経済は沈没しかけていたわけでありますが、これをまさに救っていただいた、そういう意味で救世主であるということを申し上げました。

 今回、私はもう一度、その救世主という言葉を使わせていただきたいと思います。それは、アベノミクスが始まって、ずっと順調に日本経済は進んでおりました。株も上がり、円も異常な円高が是正されて、そして経済も、消費もふえてきた、生産もふえということで順調に来ていたわけでありますが、昨年の四月の消費税の第一弾の引き上げで急激なブレーキがかかってしまいまして、ちょっとこれは危険な状況になったわけであります。

 四―六は仕方がないにしても、それ以降の七―九もマイナス経済になるというような状況でありまして、これは日本経済、またデフレに逆戻りして、そして悪夢を引き戻すのではないか、そういう心配をしたんですが、それを避けるためには、私は、あの時点で消費税の再増税は延期するしかないというふうに思っておりまして、それを決断できるのは安倍総理しかおられないわけでありまして、それを敢然と決断していただきました。

 最近、私のところに、かなり著名なアメリカの経済アナリストがやってまいりまして、こういうことを聞いてきました。自分たちは、今まで、日本というのは官僚が全部決める社会である、そういうふうにずっと思っていた、今回も、ニューヨークでもワシントンでも、日本の官僚、そして日本の経済界、マスコミも含めて、いや、もう決まった路線だから、必ず消費税の再引き上げはありますよという話を聞いて、そうかなと思っていたんだと。ところが、安倍総理は、そうした官僚の抵抗を排して、敢然と消費税の再増税は延期するという決断をした。自分は初めて総理大臣らしい総理大臣を見た、どうしてミスター安倍は総理大臣らしいそういう決断ができたのか、そういう質問を私は受けました。

 総理、その質問に対してどのように御自身でお答えになるでしょうか。

安倍内閣総理大臣 長い間、山本委員は、日銀前総裁とこの予算委員会の場において日本銀行の金融政策について議論をしておられました。その際、当時の日本の経済の低迷の元凶はデフレであり、デフレ脱却に資する大胆な金融政策をとるべきだ、こう主張してこられたわけであります。当時は、残念ながら我が党においても、山本議員の主張は主流的な議論ではなかったわけでありますが、しかし、国際的にはまさに主たる手段であったと言ってもいいのではないかと思います。

 そこで、私が政権を獲得したときに、山本委員がまさに主張しておられた、大胆な金融政策によってデフレマインドを打ち砕く。マインドを変える、マインドをリセットするのはそう簡単なことではないわけでありますから、まさに異次元の政策でそこに挑んだわけであります。幸いその成果も出てきたところでございますが。

 今回も、既に法定されている消費税の引き上げ、これを変えるというのはそう簡単なことではないわけでございますが、まさに、デフレ脱却、そして私たちが進めてきたこのアベノミクスを成功させるためにはこの道しかない、こう判断したところでございます。また、事前に山本議員からも、ここは一年半延期すべきだと、強い御進言もいただきました。そういう皆様の御意見を参考にさせていただき、今回そう判断したところでございます。

山本(幸)委員 まさに、最終的な決断ができるのは総理しかおられないわけでありまして、本当に勇気ある決断をしていただいた、改めて、日本経済を救っていただいたという意味で、救世主であると申し上げたいと思います。

 その上で、アベノミクスについて、アベノミクスは失敗したんじゃないかというような議論をする方がいます。選挙のときも、民主党の議員の方々はそういう話をしておりました。その最大のポイントは、格差が広がったのではないかということでありましたが、私はちょっとお門違いの議論ではないかというふうに思いました。

 それはなぜかというと、格差というのはデフレのときの方が広がるんですね。デフレというのは、金持ち、現金を持っている人が、何でも買えますからどんどん豊かになる。一方で、デフレでは、企業がリストラをする、賃下げをする、そして解雇をするという意味で仕事も失っていくわけですから、下の方はどんどん下がっていく。まさに、デフレこそが格差を広げるものなんです。

 これを直すのは、逆に、格差をなくそうという政策でありまして、現に、格差が広がったと批判している民主党の皆さん方の議論の根拠になるデータは、全部アベノミクスが始まる前のデータを示して、日本では格差がこれだけ広がったじゃないかと言っているんですね。この前の長妻さんのデータもそうでした。唯一、最近のデータを使っているのは、昨年の春から実質賃金が下がったではないかというときに使っていますけれども、まさに、この実質賃金が下がったのは、昨年四月の消費税の引き上げによって下がったわけでありまして、これをなくそうということを言っているわけであります。(発言する者あり)前と言っていますが、たった一カ月だけです。そういう意味で、データをしっかり見て議論した方がいいと思いますけれども。

 いずれにしても、そういう、デフレが格差を広げてきたんだという意味で、私は、アベノミクスは逆にデフレを縮小する政策だというふうに思っているんですね。

 なぜならば、現金だけを持っている人は損をする。そしてまた、仕事をどんどんつくっていくわけです。失業率がどんどん下がってきたわけです。そして、まさに賃金を上げようという政策なんですね。まさに、これをしっかりやっているわけです。

 先般来て、格差の問題を言っているピケティという人がいますけれども、私は、あの人の理論は理論的にはちょっとおかしいと思っているんですが、きょうは時間がありませんからそれは申し上げません。ただ、格差について重要だということはそのとおりだと思いますし、彼も、格差をなくすためには、一番大事なことは賃金を上げることだとしっかり言っているわけですね。国家公務員の賃金は率先して上げなきゃいけないぐらい言っていますよ。どこかの党と全然違う主張をしていると思いますけれども。

 そういう意味で、まさにアベノミクスこそ格差をなくす政策であって、これを我々は敢然として進めなければいけない、そういうふうに私は思っているんですけれども、総理の御見解をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 まさに委員御指摘のとおり、デフレ下においては、現金を持っていればその価値が上がっていくわけであります。デフレ下においては、物の値段が下がっていくよりも、賃金の方が下がっていく、このスピードの方が速いし、幅も大きな幅になっていくわけでありまして、そこに大きな問題があるわけであります。

 そこで、私たちはデフレから脱却をしなければいけない。つまり、物の値段が下がっていく、現金を持っていればその方が利益が出るということであれば、人にも投資をしませんし、当然設備投資もしない。結果、日本の名目GDPが大きく下がったのは事実であります。私たちが政権をとってからこの傾向を反転させまして、名目GDPは大きく前進をすることになりました。

 そこで、格差の問題でありますが、安倍政権が政権をとって、昨年、二%賃金が上がりました。そして同時に、平均の賃金だけではなくて、最低賃金も二年連続大幅に上げることができました。パート労働者に対しての報酬もそうであります。そして、非正規、正規の差、この収入の差も、実は私たちが政権をとってから縮まり始めているわけであります。

 さらには、昨年度から、働き盛りの五十五歳以下で見てみますと、正規の方が非正規になってしまう数と、非正規から正規になる数、これが逆転をしたわけでありまして、つまり、非正規から正規に移っていくことができる経済状況をつくったことによって、まさにその希望をかなえることができる、そういう経済状況をつくることができた、こう思うわけであります。

 デフレ下においては新たな果実は生まれない。しかし、デフレから脱却をしたことによって、新たな果実を生み出していかなければ企業は存続することができない、イノベーションは活発になり、そして新たに生み出された収益をいわば従業員なり社会に均てんしていくということが可能になっていくんだろう、こう思うわけでございます。

山本(幸)委員 おっしゃるとおり、そういう意味で、アベノミクスこそ格差をなくす政策ですから、しっかりと自信を持って進めていっていただきたいと願う次第であります。

 次に、黒田日銀総裁においでいただいておりますので、日銀総裁にお伺いしたいと思います。

 二年前のこの予算委員会で、私は黒田総裁に、総裁、あなたは安倍総理からデフレ脱却という重大な使命をいただいたので、もう全てをそれにかけて頑張ってもらいたい、これからいろいろ批判や誹謗中傷があるかもしれないけれども、一切耳をかしてはならない、敢然とその目標だけに向かっていってもらいたい、そういうお願いをし、黒田総裁も、命がけでやるというお答えをいただきました。

 なぜ私がそういうことを言ったかというと、いわゆる日本銀行の独立性、中央銀行の独立性についてしっかり理解していない議論が横行するからなんですね。例えば、金融政策で円が安くなり過ぎているから問題じゃないか、あるいは国債を買い過ぎているから問題じゃないか、あるいは出口戦略を何で言わないんだ、そういう議論が横行してくるわけであります。しかし、それは、従来から先進国の間で慣行として築かれてきた中央銀行の独立性の議論を理解していない議論なんですね。

 先進国でインフレ目標政策というのが導入されて、それ以降、中央銀行の独立性は整理されました。それはどういうふうに整理されたかというと、達成すべき目標については政治も政府も物を言う、そして中央銀行と政府、政治と一緒になって決めよう、しかし、そこから先は全て日本銀行に任せるんだ、中央銀行に任せるんだ、その上で、万一目標の達成ができなかった場合には説明責任を問おうということでありまして、一旦目標が決まったら後はくどくど言っちゃいけないんです。それはもう全て中央銀行に任せなきゃいけないんです。

 そのことが非常に大事なんですけれども、黒田総裁、どういうふうにお考えでしょうか。

黒田参考人 委員御案内のとおり、二〇一三年の四月に、二%の物価安定の目標をできるだけ早期に達成するということ、それを目標にして量的・質的金融緩和を導入したわけでございます。

 先ほどの委員と総理との対話の中でも出ていましたように、デフレのもとでは、自己実現的にいわばデフレが続き、経済の低迷が続くという状況があったわけですけれども、それを打破するためには、やはり、異次元といいますか、思い切った金融緩和を打ち出し、二%の物価安定目標をできるだけ早期に実現するという強いコミットメントをすることによってデフレマインドを脱却するということでありまして、その目標に向かって着実に進んできているというふうに思います。

 今後とも、二%の物価安定目標をできるだけ早期に実現するということをしっかりと守って、目標達成に向かって邁進していきたいと思っておりますが、御承知のように、二%の物価安定目標をできるだけ早期に実現するという、これはもちろん日本銀行が二〇一三年の一月に決定したことでありますけれども、同時に、これは日本銀行と政府との共同声明の中ではっきりとうたわれていることでもございます。

 そういった意味で、この共同声明に沿って、まさに日本銀行として、自己の責任において二%の物価安定目標を達成してまいりたいというふうに思っております。

山本(幸)委員 雑音に耳を傾けないで、出口戦略とかそんなことを気にする必要はないんです、無視して、そして敢然とデフレ脱却の政策を進めていただきたいと思います。

 最後に、そういう中央銀行の独立性、政府、政治と中央銀行との関係をきちっとするためには、やはり私は法律でこれを制度化した方がいいと思っているんです。各国もそういうふうにしています。今は口約束、まあ、協定ですから文書ですけれども、ですから、これは総裁がかわったらどうなるかわからないという不安感もある。

 そういう意味では、きちっと法律でインフレ目標政策というものを入れるようにした方がいいし、これは今の黒田体制のうちに始められるようにした方がいいと思いますので、遅くとも来年の通常国会では法案が通って、そして実現されるということが望ましいと思いますけれども、時間がありませんので、最後に総理の御見解をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 私も、委員と同じように、いわば政策目標については政府と中央銀行が同じ目的を共有する、同時に、その目標に向かって進んでいく手段については、日本銀行がその手段を専門家としてしっかり決めていくことでなければならない。

 そこで、安倍政権が発足以来、政府と日本銀行の間で緊密な意思疎通を行いました。その中で、日本銀行は、政府との共同声明において、二%の物価安定目標をみずから設定したところでございます。まずは、この目標に向けて、日本銀行が今後とも大胆な金融緩和を着実に推進していくことを期待しています。

 なお、具体的な金融政策の手段については、もちろん日本銀行に委ねているところでございますが、その中において、私は黒田総裁を信頼しております。

 日本銀行法の改正については、将来の選択肢として、引き続き視野に入れていきたいと思います。

山本(幸)委員 質問を終わります。ありがとうございました。

大島委員長 これにて平沢君、山本君の質疑は終了いたしました。

 次に、岡本三成君。

岡本(三)委員 おはようございます。公明党の岡本三成です。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 まず初めに、経済の再生についてお伺いをいたします。

 よく政府、日銀は、デフレの脱却、そして二%の物価上昇が大切だというふうにおっしゃいますが、それはあくまでも手段であります。では、目的は何か。それは間違いなく賃金の上昇です。したがいまして、物価上昇以上のスピードで賃金が上がらなければ政策を実現することはできません。その意味におきまして、経営者の方々に賃金を上げていただけるような状況をどう応援していくか、これが重要だと思います。

 特に、金融の支援におきましては、日本政策金融公庫が低利で中小企業に主に貸し出しをしておりまして、この活動というのが、パートナーとなり、中小企業を支援していることは間違いありません。

 しかしながら、私は、一つだけどうしても改善をいただきたい問題点があります。それは、仮に、借り入れをした中小企業が何かの理由で一時的に返済が滞った場合に、延滞金を払うわけですが、何とその延滞金利が現在一四・五%です。高利貸しみたいな延滞金利になっています。

 ちょっとこちらのボードをごらんください。実は、国債金利が大きく低下をしてきましたので、政府におけるさまざまな延滞金利が下がってきております。例えば国税の金利、国税が延滞した場合に、そのときの延滞金利は、以前は一四・五%でしたけれども、四・三%に引き下げられております。

 私は、この事実に着目いたしまして、一昨年、この予算委員会の中で、奨学金の延滞金利が一〇%だったことに着目をいたしまして、これも大きく下げるべきだというふうにお願いをいたしまして、政府の英断をいただき、今年度からは、延滞金利、五%になっております。にもかかわらず、この公庫の延滞金利におきましては、いまだに一四・五%という、目を疑うほどの高金利となっています。

 私、もともと、この事実を耳にしましたのは、地元所沢の公明党のある市議の方が経営者の方と懇談をする中で、一生懸命経営再建をやっているんだけれども、公庫からの延滞金利を返すことでなかなか再建が立ち行かないというふうな御相談を受けて、耳にして、この問題意識をぜひ実現したいというふうに思っています。頑張る方を応援していくことこそが、政治の使命であります。

 ぜひとも、全体的な政府の延滞金利のバランスを考えても、一刻も早く、一四・五%を大幅に低下させるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 日本政策金融公庫の遅延損害金のお話なんだと思います。

 これは、基本的には、返済遅延の抑制、返済遅延により生じた損失の補填、期日どおりに返済している借入者との公平性、当然考えにゃいかぬところだと思いますが、設けられているというのはもう御存じのとおりです。

 こういったことを考えて、今、日本公庫において決定されておりますその水準が法令に反しているかと。法令には反しておりませんね。

 また、民間とのバランスというものを見た場合にどうであろうかといえば、もうこれは御存じのように、地銀等々においては、地方銀行、第二地銀において、一四%、一四・六%、大体皆同じようなものになっておりますし、そういった意味でいきますと、日本政策金融公庫だけを一方的に引き下げるといえば、民業圧迫じゃないかと言われたときには、これはなかなか答えようが難しいところだと思いますね。

 したがいまして、ここは制度上のなかなか問題があろうと思いますので、遅延損害金の減免というのを場所によっては行っていることは事実ですけれども、これを全部一律ということになりますと、これはちょっと他の、民間との間の関係も調整していかねばならぬところだと思いますので、これは少々、簡単に、我々の方で一方的にどうのこうので決めてくれと言われてできるような話ではないというように御理解いただければと存じます。

岡本(三)委員 財務大臣、日本公庫は民間の金融機関ではありません。加えまして、民間の金融機関の再考を促すことも政府系金融機関の務めだと思います。

 実際に、奨学金の延滞金利が下がった後に、民間の銀行も奨学金のローンを出しておりますけれども、同じように金利の低下を実現したような銀行がたくさん出てきております。

 したがいまして、政府といたしまして、中小企業を支援するために、まずは政府系金融機関こそがこのような延滞金利を下げていくような御尽力を、ぜひ再考いただきたいと思います。

 ちなみに、借り入れの平均期間は三年ですけれども、今の三年の国債金利はほぼゼロであります。ゼロの国債金利のもとで一四・五%のペナルティーは余りにも高過ぎると思いますので、ぜひ前向きな御再考をいただければと思います。

 続きまして、昨日成立をいたしました平成二十六年度補正予算に盛り込まれましたプレミアムつき商品券の効果につきまして、いま一度御質問させていただきたいと思います。

 まず、今回の経済政策におきましては、昨年十一月二十日に公明党が取りまとめましたさまざまな施策を大きく取り上げていただいておりますので、そのことに関しまして、改めて感謝を申し上げます。

 とりわけ、今回のプレミアムつき商品券につきましては、既に全国から熱い注目が集まっております。

 今回のプレミアムつき商品券、若干誤解されているところがありますので、御説明申し上げますと、例えば、仮にプレミアム率を一〇%といたしますと、一万円の商品券を御自分のお金で消費者に買っていただくんですね。イメージといたしましては、千円のチケットが十一枚ついているイメージです。一万一千円分消費ができるチケットを一万円で購入するという、それが今回の取り組みであります。

 このポイントは、一万円は個人の方が自分のお金を使うということなんですね。つまり、眠っているお金が消費に回っていくわけです。したがいまして、一万円は個人のお金、そのプレミアム分、おまけの千円は国からの補給、そして、商店街には一万一千円分の消費が生まれます。景気の回復を実現するためには個人消費を促すことが最も重要ですので、このインパクトは大変大きいものだと思います。

 そこで、次のパネルをぜひごらんいただきたいんですが、国全体で考えますと、こういうグラフになります。

 つまり、仮に二千五百億円の予算が全部このプレミアムつき商品券に使われたとして、仮に全ての商品券のプレミアムが一〇%だといたしますと、国が拠出するプレミアム分が二千五百億円、そして、これを呼び水といたしまして、民間が直接消費をする、個人の方がお金を使っていただける金額がその十倍の二兆五千億円、トータルで二兆七千五百億円がその地域の商店街で消費をされてまいります。つまり、国の呼び水が十倍の民間資金を消費に向かわせるということになります。

 そして、この次のパネルをぜひごらんになっていただきたいと思うんですけれども、これは実際にこのプレミアムつき商品券が地域で先駆的に実施された成果であります。

 このパネルの一番右側をごらんになっていただければわかるように、それぞれの自治体が発行の後に効果を検証しておりまして、質問の中で、商品券を買った方に、仮にこの商品券がなければこの商店街で買い物をされませんでしたか、それとも商品券がなくても買い物をしたかという質問をしています。そうしますと、実は何と、多くの方が、商品券がなければ私はこの商店街では買い物をしなかったというふうにおっしゃっているんですね。それを検証した数字が一番右側でございます。つまり、公的なプレミアム、呼び水の何倍が新しい消費につながったかというと、おおむね二倍から六倍。大変大きな経済効果があったことが、もう既に地域で実証されているわけです。

 実は、このさまざまな事例がありますけれども、私が大変誇りに思っておりますのは、ここに掲げましたほぼ全ての事例は、我が公明党の市会議員が市議会の中で提案をして実現されたものであります。例えば、一番上の鳥取市、この鳥取市の実現におきまして、竹内鳥取市長は、記者会見で、公明党市議の働きかけがなければ実現できなかったと述べられております。

 今後も、このような公明党のネットワークを使って、この政府の取り組みを全国に広げてまいりたいと思いますけれども、今回の経済効果、数字ではかることはできませんけれども、大きな期待をされているということを私は思っています。

 加えまして、さらに地域で工夫をしていただくために、例えば、お子さんがたくさんいらっしゃる御家庭にはプレミアム分を多くするとか、その商店街のリピーターになっていただくためにポイントカードをつくるとか、このような知恵も発揮していただくことを期待したいと思いますけれども、石破大臣、ぜひ、経済効果の見通し、地域に対する期待、御答弁をいただければと思います。

石破国務大臣 鳥取市の事例を御紹介いただきまして、まことにありがとうございました。

 委員御指摘のとおり、公明党の地方議員の方からいろいろなありがたい提案をいただいて、それぞれの自治体ごとに工夫がなされております。

 現金でやっちゃいますと、それは貯金したらおしまいなのでありまして、それは使っていただかなければどうにもならぬということでありますし、今回の場合には使っていただかないと助成はいたしませんので、そこが大きなポイントだと思っております。

 しからば、どういう商品を設計していただくかということがまさしくポイントでありまして、先ほど御紹介いただきましたように鳥取市で一・九五倍、神戸市の場合には何と六・三六倍、佐世保の場合が五・〇五倍ということで、助成した額の何倍も効果は期待できるのですが、それはまさしく地域によってどんな商品を設計していただくかということに全てかかっております。

 また、その地域に余り商店街がないよねとか、そういうところに余り商品を置いていないよねというところは、また独自の工夫というものを連携してやることも可能でございましょう。まさしく地域によってどういう商品をつくっていただくか。それはまさしく自分の地域にどれだけ誇れるものがあるかということにかかっていると思っておりまして、独自の創意工夫をいただくことによって何倍もの効果が生まれる。個人消費を喚起するのに極めて有効だと考えております。

 ありがとうございました。

岡本(三)委員 ありがとうございます。

 公明党の地方議員とのネットワークを使って、この取り組み、ぜひ大成功させてまいりたいと決意をしております。

 続きまして、社会保障、とりわけ若者の社会保障としての奨学金の拡充について御質問をいたします。

 私、一昨年の予算委員会、この場におきまして、下村文科大臣に、現在の日本の奨学金制度は奨学金という名に値しない、ただの学生ローンだと思いますということを申し上げました。その際に、例えば高所得者のお子さんなどの例外を除いては基本的には全ての奨学金を無利子にしてくださいというお願いをいたしまして、その際、大臣から、岡本議員が指摘するように無利子奨学金にしていくということを目指す方向が基本だというふうに考えておりますという答弁をいただいております。

 その後、大臣の強力なイニシアチブで、この無利子奨学金、大幅な拡充をいたしまして、来年度は、さらに一万九千人新たな拡大、何と年収三百万円以下の御両親のお子さんにつきましては、資格を満たしていれば全員が無利子奨学金の対象としていただきました。本当にありがとうございます。

 しかし、まだ八十七万人の学生の方が奨学金に対して利子を払っていらっしゃいます。

 そこできょうは、仮に来年度から全部の学生に対して無利子奨学金とした場合に国の負担が幾らかということを文科省にシミュレーションしていただきましたので、そのグラフをごらんになっていただきたいと思います。

 これは、現在の状況、例えば貸し出しの規模や学生数、金利状況が仮に一定水準で推移したと考えますと、国の負担というのは年々増加をいたしまして、ピークが二十年後、そのときの国の負担は約八百億円であります。八百億といいますと大変大きな数字ですけれども、実は我が国の国家予算の何とたったの〇・一%。国の予算の〇・一%を使えば、全ての学生の方を無利子の奨学金の対象とすることができます。

 仮に金利が急上昇いたしまして、上のグラフ、三倍程度の金利水準にこれから上がったとしても、その総額は国家予算の〇・二%であります。

 このような、全体としたら少ない比率の中、このような水準になっても、実は、OECD諸国の中では、我が日本はそれでも最低水準です。青年に徹底的に光を当てることこそが、私たち政治家の使命だと思っております。

 大臣は基本的にゼロを目指すというふうにおっしゃいますが、いつになったら達成できるのか、その目標の時期をお聞かせください。

下村国務大臣 おっしゃるとおりだというふうに思うんですね。

 今は、例えば世界で一番大学進学率が高いオーストラリア、九六%ですけれども、これは所得連動型返済奨学金制度で、基本的に、年収四百万以下だったら返さなくていい、所得によって返す額はしかし決まってくるという形で、大学進学率も九六%になっているんですね。

 ですから、我が国は、奨学金といっても、おっしゃるとおり学生ローンですから、まずは有利子を無利子にするということが必要だと思います。そのために、過去最大ですけれども、ことし、八千六百人、無利子奨学金新規貸与人員をふやして、累積ですと、今御指摘のように、一万九千人をふやした。これも、ふやし方として過去最高なんですね。

 ただ、今委員の御指摘のとおり、有利子を無利子にして金利負担すると、それだけでも三十年ぐらいかかってしまう話でございますので、今、教育再生実行会議の中の第三分科会で、教育における公財政支出をいかにこれから考えるかという議論をしていただいていますので、できるだけ早く、まずは無利子奨学金を、有利子からシフトして、それでも今、八十七万七千人の方が有利子奨学金を使っている。無利子は四十六万ですから、この八十七万七千人を変えること自体も相当大変な話でありますけれども、いつまでにというのははっきりはまだ今申し上げられませんが、できるだけ早く、教育再生実行会議の提言を受けて、しっかり取り組むように、先頭に立って頑張りたいと思います。

岡本(三)委員 総理、時間の関係がありますので総理に御答弁はいただきませんが、文科省の中での予算のつけかえだけで実現できるような金額ではありません。しかしながら、国家予算全体を考えますと、非常に少ない比率でこのことは実現できますので、ぜひ総理のリーダーシップで、予算の配分、御検討いただけるような来年度としていただければと思います。

 それでは最後に、積極的な日本の平和貢献について、総理に御質問させていただきます。

 いわゆるイスラム国と名乗るテロリスト集団ISILの蛮行に対しまして、総理は、難民に対して、人道支援二億ドル、とりわけ食糧や医療に対しての支援を表明されました。私は、このことを大変強く支持しております。

 その上で、大変に僣越ながら、総理のお気持ちをそんたくさせていただき、平和国家日本の世界にあるべき貢献の姿で、ぜひ御提案させていただきたいことがあります。

 それは、現在世界には五千万人の難民の方がいらっしゃいます。この五千万人の難民の方々の半分以上は十八歳以下です。最大の問題点は、難民の状態が長く続いているということなんですね。そして、この難民の方の多くは発展途上国にお住まいでいらっしゃいます。

 したがいまして、今後の日本の積極的な人道支援としては、その難民の方々が中長期的に御自分で生計を立てられるような自立支援をしていくこと、また、住まわれていらっしゃる地域の中で溶け込んで、コミュニティーの中で安心して生きていけるような、そういう支援をしていくことが重要ではないかというふうに思っております。

 このような状況を考えますと、例えば、国連難民高等弁務官事務所や日本のすばらしい団体であるJICAとともに、その難民の皆さんと、受け入れをしてくださっている途上国の皆さん、その途上国の例えば若者や女性の方、この方々全員に、教育の提供であったり職業訓練の提供だったりをすることによって、その地域における経済の拡大ということと、そして、その難民の方々が自分で生計を成り立たせる、自立できるような状況をつくっていくことこそが、中長期的な、世界に誇れる貢献の形になるのではないかと思っております。

 私は、日本は平和国家としてこの地球上から悲惨の二文字をなくすんだという決意を高らかに、高邁に掲げて、武力支援ではなく人道支援に徹していく、そのような国家になっていただきたいと思います。

 総理、時間もありませんので、ぜひ総理の御答弁をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

安倍内閣総理大臣 我が国の国際貢献の基本理念は、人間の安全保障でございます。

 そして、今議員が御指摘になったポイントは大変大切だと思います。難民への支援だけではなくて、難民を受け入れている国への支援、これをしっかりとやっていくことによって、難民となっている方々がその地域でその地域の方々と一緒に生活をしていくことが可能になっていくわけであります。

 とかく難民の方々と受け入れ国の人たちとの間にさまざまなトラブルが起こる、残念なことであります。そうしたトラブルをなくしていくためにも、双方に対してバランスよく支援をしていくこと、その中で、特に教育は大変重要であります。

 JICAを通じて教育支援や職業訓練を行うとともに、国連難民高等弁務官事務所を初めとする国際機関やNGO等と緊密に連携しながら支援を実施してきているところでございますが、我が国は、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、このような難民支援、人道支援を積極的に進め、国際社会における我が国の責任を果たしていく考えでございます。

大島委員長 時間です。

岡本(三)委員 ありがとうございます。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

大島委員長 これにて岡本君の質疑は終了いたしました。

 次に、細野豪志君。

細野委員 おはようございます。

 まず、ISILによるテロ行為につきまして質問させていただきたいと思います。

 湯川さん、後藤さんが殺害されました。深い悲しみと同時に強い憤りを私も感じております。

 また、きょうになりまして、ヨルダン人のパイロットの方がこれまた非常に残虐な方法で殺害をされる、そういうニュースが飛び込んでまいりました。

 こうしたテロに対しては、当然、厳しい姿勢で臨んでいかなければならないし、また、日本人がテロに狙われることがないように、しっかり政府として対応していただきたいと思います。

 これまで民主党は、こうした危機管理に当たっておられる皆さん、総理を初め閣僚の皆さんはもちろんですが、官僚の皆さんも含めて厳しい環境でやっておられますので、そのさまざまな取り組みを絶対に妨害してはならないだろうということで、できる限り私どもとしては、さまざまな調査を依頼するようなことは控えてまいりました。また、国会での議論というのも、これは突っ込んだことはやらないということでやってまいりました。ただ、非常に残念な、最悪な結末を迎えた以上は、そのプロセスについてしっかり検証していかなければならないというふうに思っております。

 私、この間の経緯を見ておりまして感じておりますのは、一月の二十日に画像が公開をされた、その後の対応についてですね。今回、政府が取り組まれた、それ以上の対応が何ができたかということを考えたときに、非常に選択の幅は限られていたであろう、そんなふうに感じています。

 しかし一方で、その逆に、一月の二十日以前の取り組みについて、何らかのさまざまな取り組みができた可能性があるのではないかというふうに思っておりまして、そのことについて、まず外務大臣にお伺いしたいと思います。

 きのうの参議院の予算委員会の質疑で、十一月には行方不明に後藤さんがなっておられることを把握していた、そして、十二月の三日に、犯行グループからのメールで、拘束をされていることも把握をした、そういう答弁がありました。

 まず、外務大臣にお伺いしたいのは、その後、後藤さんの御家族と犯人グループの間では十数回メールのやりとりがされたということが報じられておりますが、一本目のメールである十二月の三日のこのメールは把握をしているということですので、その後のメールも把握をして状況を承知していたというふうに考えてよろしいですか。

岸田国務大臣 御指摘の最初のメールを後藤さんの奥様が受け取られてから後も、引き続きまして、政府としましては、緊密に連絡をとらせていただいてまいりました。

細野委員 そうしますと、そのメールの中身からいって、その犯人グループというのがISILであろうということについては推定が働いていたということでよろしいでしょうか。

岸田国務大臣 メールの中身からは、何者かに拘束されたこと、これは確認できるわけですが、その時点では、ISILである可能性、これは当然否定はできませんが、確たる情報は得ていなかったというのが実情でありました。

細野委員 シリアの北部で拘束をされているということですので、これはISILの支配地域ですから、そういう推定が働いていたであろうというふうに思います。

 次にお伺いしたいのが、そのメールのやりとりの中で、御家族に対する身の代金の要求が来ていたということが報じられています。私も、周辺にいろいろな形で可能な限りで情報を収集してみましたけれども、それは恐らくそうだったんだろうという推定をしております。これは事実でしょうか。

岸田国務大臣 先ほども申し上げましたように、後藤さんの奥様とは緊密に連絡をとってまいりました。そして、できる限りそのお気持ちに沿って対応してまいりました。

 しかし、そのやりとりにつきましては、一月二十日、こうした映像が公開されて、広くこの事実が公になるまでは、後藤さんの安全の問題もありますので、これは非公開とさせていただきました。

 そして、その間のやりとりにつきましては、この具体的なやりとり、これは控えさせていただきたいと思っております。

細野委員 御家族の気持ちを考えますと、プライバシーには最大の配慮が必要だと思います。個別のメールを全て開示するというところまでは申し上げません。

 ただ、この事案の検証ということを考えたときに、事前に御家族に対して身の代金の要求がされていたかどうかということは、非常に重要なポイントだと思います。少なくとも、そこについてどういうものがあったのかということについては、説明する責任が政府にあると思いますよ。これは答えてください。

岸田国務大臣 その時点でのメールのやりとり、あるいは、犯人側から何らかの要求があった等につきましては、これは後藤さんの奥様に対するさまざまなメッセージであったわけであります。その部分について政府として明らかにするのは控えさせていただきたいと申し上げております。

細野委員 委員長、この件はきちっと検証するということになっているわけですから、この身の代金がどういう形で要求されて、幾らだったのか、どういう状況であったのか、この部分についてはきちっと国会としても把握する必要があると思いますので、しっかり資料の提出を求めたいと思いますので、お取り計らいをよろしくお願いします。

大島委員長 理事会で検討します。

細野委員 もう一点お伺いしたいことなんですが、ちょうどこの十二月三日からその後の期間というのは、我々、選挙をやっていたんですね。ちょうどその時期に当たるわけです。

 まず、ちょっと外務大臣にお伺いしたいんですが、外務大臣も、当然、選挙で全国を回っておられたと思うんですね。その情報はきちっと把握をされていたのかということが一つ。

 もう一つは、その後総理が中東を歴訪されたわけですが、そのときに、そういうメールのやりとりがあった、そして、おっしゃらないということでありますけれども、身の代金の要求があったということについても、きちっと総理にお伝えになっているかどうか。

 この二つをお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、選挙の真っ最中であったとしても、私は、日本の国の外務大臣でありますので、この事案につきまして、しっかり報告を受け、承知をしておりました。そして、あわせて、こうした情報につきましては官邸としっかり共有をしておりました。

細野委員 確認ですが、そうしますと、身の代金についてはお答えをしないということでありましたけれども、そういったメールの中身のやりとりについても、外務省として総理にきちっと報告をしていたということでよろしいですね。

岸田国務大臣 私自身、その状況について把握をし、そして、官邸と情報は共有しておりました。

細野委員 そうなってくると、この後総理にも聞きますが、もう一つ確認をしなければならないことがあるんですね。

 冒頭でも申し上げましたが、テロには毅然と対応していかなければならないと思います。また、人道支援も私は必要だろうと思います。その意味で、この人道支援について私は不適切だとは思いません、やるべきだと思う。

 しかし、一方で、人質がとられていて、身の代金の要求をされているということは、命の危機があるということですね。ということになった場合に、その人質がどのようになるのかということについてのケーススタディーは、外務省としてはしっかりやっておかなければなりませんね。これはしっかりやったんですか。

 すなわち、あの一月の十七日の総理のカイロでのスピーチ、これには外務省は当然ドラフトの段階からかかわっていますね。その中で、こういうスピーチをしたら人質にどういう危険が及ぶかということについては、外務省は当然しっかり検証している、検証というかケーススタディーをしているというふうに思うんですが、どうでしょうか。

岸田国務大臣 まず、今や全ての国がテロの脅威にさらされており、テロのリスクは全ての国にあると考えています。これは、今回のシリアにおける邦人殺人テロ事件や、あるいはパリの新聞社襲撃事件などによって浮き彫りにされていると認識をしています。

 そして、こうした事態に対しまして、テロのリスクをいかに低くするか、これは大変重要な視点だと思っています。

 この点から考えましても、テロを恐れる余り、そのおどかしに屈するような態度をとれば、テロには効果があるとテロリストに考えさせ、そして、日本人がテロに巻き込まれる可能性がさらに高まる、こういった考え方は重要だと思っています。

 そして、テロの背景には、言うまでもなく貧困とか抑圧が存在いたします。

 今回のエジプトでのスピーチについて御質問をいただきました。このエジプトのスピーチというのは、この地域に存在する一千万人の避難民の命をつなぐ、こういった支援を表明したものであります。こうした避難民を受け入れている国々に対する支援をする、こういったメッセージを発出することはまことに重要なことだと認識をしております。

 こうしたことを総合的に勘案したということであります。

細野委員 外務大臣、テロを防ぐためにも厳しく対応しなければならないというところは、政府の見解と私も一致をしているんです。ですから、そのメッセージを出すということは間違っていません。

 私が聞いたのは違う部分なんですね。すなわち、これからのテロを防ぐために、人道支援をする、さらにはさまざまな厳しい対応をすることによって抑止する、これは必要だと思いますよ。しかし、この二人が具体的に人質として拘束をされていて、命の危機にさらされているわけだから、この二人についてどういう影響が及ぶかというところはしっかりと少なくともシミュレーションをしておかないと、これは外務省として責任を果たしたことになりませんよね。それをやったのかどうかを聞いているんです。しっかりそこについて答えてください。二人についてどういうケーススタディーをしたのかということです。

岸田国務大臣 さまざまな状況についてはしっかり勘案し、そして、日本の置かれている立場、日本の責任等を総合的に勘案してスピーチ等を考えたということであります。

細野委員 今の答弁からすると、そうしますと、もう一度外務大臣に聞きますが、非常に酷な質問になると思います、難しい判断だったとも思います。ただ、検証というのはこういうものですからね。

 あのスピーチをしても二人を殺害することはないであろうというふうに外務省としては考えたんですか。今の答弁は、総合的にというのは、その部分についても含めて総合的にということになると、そういうことになりますよ。どうですか。

岸田国務大臣 先ほども申し上げましたように、さまざまな事態、状況、そして我が国の立場、責任、こういったものを総合的に勘案した次第です。

細野委員 総合的にという言葉の中に、二人についてどれぐらい真剣にケーススタディーをして考えたのかという跡が、正直言って感じられないですね。

 総理、きのうも大分やりとりをされていました。私も、テロに厳しく対応するのは必要だと思いますので、そういうメッセージも出すべきだったと思います。しかし、テロに屈しない、しっかり対応するということと、現実に二人が拘束をされて命の危機にさらされている、となると、その部分についての言葉を選ぶということは、私は、一緒にやっていかなければならない、これはどちらも落とすことができない、そういう重大な問題だと思うんですね。

 その部分について総理はどれぐらいの認識を持って、報告も受けていたということですが、あのスピーチを考えられたのか。その部分についての御答弁をいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今まさに、このISIL、残虐な行為、恐怖の支配を拡大しようとしているわけであります。この過激主義の流れを我々はとめなければいけない。日本もその責任から逃れるわけにはいかないわけであります。

 同時に、日本はもちろん、この二人の方が人質となっていた、ISILかどうかということは定かではなかったわけでありますが、しかし、それも排除されないという分析はしていたわけでございます。

 同時に、今、世界じゅうで多くの邦人が仕事をしています。また、海外旅行に出る人たちもいます。そういう人たちの安全も確保しなければならない。常にそういうことを総合的に勘案しながら我々は判断を下しているということであります。

 そして、事の本質は何かといえば、最初に申し上げましたように、今、世界各国が、このテロの恐怖に屈せずに、このテロの恐怖を排除していく、その努力をそれぞれが積み重ねているわけでございます。特に、多くの難民を受け入れている国々を孤立化させ、困窮化させるということは、まさにISILの思うつぼになってしまう。そこで日本は、日本のできる支援を、まさに日本は連帯を表明する、その場所で連帯を表明することが極めて私は大切である、このように考えたわけであります。

 お二人がこのような結果になったのは大変残念であります。日本人の命、すべからく、国の最高責任者である私にあります。その責任は引き受けるのは当然のことであろうと思います。

 しかし同時に、国際社会の中において日本もその責任を果たしていかなければいけない。その責任を果たしていかなければ、結果として、海外で仕事をしている人々、海外に出かけている日本人の命が危うくなる、さらに危うくなっていく可能性もある、このように私は考えているところでございます。

細野委員 テロに屈せず対応していく、それは私も全く総理と考えは同じです。しかし、今の部分についての私の質問には総理はお答えになっていない。

 私が聞いたのは、二人の命が危機的な状況にさらされていて、そしてそのリスクが現実的に外務省から説明をされている中で、きちっとその部分にも配慮をした言葉を選ぶことが必要だったのではないかということを言っているわけですね。もう一回、そこを答えていただきたい。

 それともう一つ、総理にお伺いしたい。

 それは、先ほど外務省から、総理には説明があったという話がありました。メールのやりとりですね。すなわち、ISILと思われるそういうテロ組織に拘束をされているということ、さらには、恐らくは身の代金が要求をされているということ、これも報告があったと思いますが、それはきちっと把握をされていたかどうか。ここについてもあわせて答弁をいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 先ほど外務大臣が答えたとおりでありまして、さまざまな情報等については我々は共有をしているわけであります。

 特に、中東地域を訪問するという総理の訪問については、これは外務省と官邸が一体となって、訪問先を決め、そして、そこで行うスピーチについても、推敲の段階からこれは一緒に作業をしていくことになるわけでございます。そして、そこで盛り込む、どういう発言をするか、これも我々は慎重に言葉を推敲しているわけでございます。

 そこで、ISILに、ISILの気持ちをそんたくすることは、私たちは、どのように考えるかということはもちろん推測をするわけでありますが、しかし、彼らに気配りあるいはそんたくをして、彼らの意向に沿うスピーチをするつもりは……(発言する者あり)

大島委員長 お静かに。総理が今答弁しています。

安倍内閣総理大臣 済みませんが、答弁をしているんですから、少し静かにしてくださいよ。(発言する者あり)

大島委員長 前原理事も静かに。

 どうぞ答弁してください。

安倍内閣総理大臣 よろしいですか。答弁拒否ではなくて、答弁妨害はやめていただきたいと。このように……(発言する者あり)よろしいでしょうか。

 そこで、我々は、いわばスピーチに盛り込む言葉をさまざまな観点から選んでいくわけであります。その中で、私たちが選んだ言葉が不適切であった、このようには考えていないということは申し上げておきたい、このように思う次第でございます。

 大切なことは、実際に、この過激主義、ISILを中心とする過激主義とヨルダンを初め多くの国々が闘っているんですから、彼らに対して明確に、その闘いを支援していく、そして日本は人道支援をしていく、このメッセージを発していくのは、当然、日本の役割であろう、このように考えたところでございます。

細野委員 テロリストの思いをそんたくするなんというのは論外です。そんなことは私は一言も言っていません。

 ただ、目の前で拘束をされている二人がいて、その命がどうなるかというのは、国民の命を守るのは政治の役割ですから、それは考えた上でスピーチをするのが当然でしょう。

 総理、もう一つお伺いします、ここについてはもう水かけ論になるんでしょうから。

 総理、積極的平和主義と今回の中東訪問の関係なんですが、これを少し御説明いただけませんか。

 総理は、就任以来、積極的平和主義ということを言われてやってこられた。今回のこの中東訪問もその一環というふうに考えてよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 今、細野委員は、私が二人の命、あるいは海外で活躍している日本人の命のことを考えていないかのごときの発言をされましたが、それは全く間違いでありまして、先ほどの……(発言する者あり)

大島委員長 お静かに。

安倍内閣総理大臣 先ほどの答弁の中で明確に申し上げたはずであります。(発言する者あり)

 済みません、やじを少し抑えていただけますか。静かにしてくださいよ。

大島委員長 後藤さん、ちょっと静かにしてください。

安倍内閣総理大臣 そこで、先ほども申し上げましたように、お二人の命について考えるのは当然のことであり、さらに、海外で仕事をしている多くの人たちの命のことを考える、これは当然のことであり、そして、私は日本の行政の最高責任者として責任を負っている、結果に対しても当然私に責任がある、このように申したわけでありまして、そこに全く私は思いをいたしていないかのごときの批判は当たらないということは申し上げておきたい、このように思う次第でございます。

 そこで、積極的平和主義について御質問がございました。

 今や、脅威は容易に国境を越えてやってくるわけでございます。そしてまた、テロについても、水際でもちろん阻止をしなければいけないわけでありますが、テロも国境を越えていく。世界にとって、テロの脅威から安全な国はないと言ってもいいと思います。

 我が国の平和と安全を守るためには、アジア太平洋地域の平和と安定を確保し、さらに世界の平和と安定を確保しなければならないわけであります。そのために、我が国は、地域と世界の平和と安定のためにこれまで以上に積極的に貢献をしていく、これが国際協調主義のもとの積極的平和主義の観念であります。

 積極的平和主義には、人道支援などの人間の安全保障の促進、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ、開発援助協力や軍縮・不拡散の推進、法の支配の強化、人道の擁護など、あらゆる外交努力が含まれるわけでございます。

 そこで、今回の中東訪問でございますが、中東訪問、まさに、イスラエルとパレスチナの中東和平の問題もあります。過激主義を拡大させようとしているISILの問題もあります。シリアの問題もあります。周辺国の不安定化の問題があり、そしてテロの拡散の問題がある。戦後七十年を迎えた日本、平和国家として歩んできた日本として、まさにこの中東の平和と安定をもたらすために貢献をしていく、その発信をしていくことは、私は極めて有意義だ、ことし、その発信をすることは、年頭に発信をすることは有意義である、こう考えたわけであります。

 特に、このISILの問題について、一千万人の難民が出ている中において、今は中東においても、まあ、中東は何となく暖かい、暑いのではないかという印象があるかもしれませんが、この時期の中東は大変寒いわけでありまして、ヨルダンには数日前には大雪が降っていたという状況の中において、彼らは、この寒さ、飢え、そして行き届かない医療サービスの中で苦しんでいるわけであります。

 まさに日本としてできる支援こそは、この人道支援、食糧や医療といった命をつなぐための支援を直ちに行うべきだ、こう考えたわけであります。難民となっている方たちに連帯を表明し、この難民を必死に受け入れている国々に連携をし、あなたたちは一人ではないという意思を示す、それこそ積極的平和主義の考えに沿うものだ、このように考えたところでございます。

細野委員 今回、総理が中東に訪問をされた。今の時期に中東に行けば、これは当然ISILについて厳しい姿勢で臨み、そのメッセージを出すことになるわけですね。総理はその判断をされた。

 私は、これまでの日本外交、さまざまな評価はあるというふうに思いますが、総理の考え方とこれまでの外交というのはやや違うのではないかというふうに思うんですね。

 さまざまな国際貢献をしてきたけれども、そのことを余り喧伝して、こういうことを日本はやってきたということを言わなかった、これが日本の評価につながらなかった、そういうことを言う方もいらっしゃいますが、一方で、見えないところで日本は世界じゅうのために貢献をしているということが評価をされてきた部分もある。言うならば、陰徳を積んできたと言ってもいいかもしれない。

 そういう外交に対して総理は、これからは日本は国際的にも非常に貢献をしていくんだ、テロなどについては、撲滅について先頭に立つんだということをおっしゃる。これは、一つの積極的平和主義という考え方かもしれない。

 しかし、その一方で、そういったことで前面に立つということは、例えば世界にいる日本国民が、それこそテロリストはそれを意図的に利用してくるわけだから、悪いのはテロリストですよ、悪いのはテロリストだから、そこをしっかりと我々は踏まえていかなければならないけれども、現実的なリスクにさらされる可能性が高いというところはしっかり認めた上で国民に説明すべきだというふうに思うんですね。

 今、世界で、テロの問題で非常に恐怖を持っている日本国民はたくさんいるでしょう。そこも含めて、積極的平和主義がもたらすその部分については、総理、きちっと御説明すべきじゃないですか。いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今私が説明をいたしました積極的平和主義、私は決して間違っているとは思わないわけでありますし、これによって日本人の命が危うくなる、この考え方は全く私は逆であろう、このように思うわけであります。

 まさに、世界とともに我々はしっかりとその責任を果たしていく。そして、日本の存在、世界における存在は大変大きなものがあるわけであります。そこから目をそらして、まるで海外における日本の、そうした日本人の活躍、存在がないかのごときのように考えること自体が間違っているわけでありまして、そういう中において、我々はしっかりと、海外において我々も活動し、そして、当然その中において、我々は国益を守り、また多くの企業は海外で活躍し、その地域に利益をもたらすとともに利益も上げているわけでございます。

 そういう中において、日本もその責任を果たしていくのは当然のことであり、私は、この積極的平和主義の考え方について、五十四カ国の国々を訪問し、二百回以上首脳会談を行っておりますが、ほぼ全ての国々から支持をされ、また称賛もされているところでございます。

 我々の考え方によって日本がかえって危うくなるという考え方は、私は全く間違っていると言わざるを得ない、このように思います。

細野委員 我が国が世界の一員としてテロをなくしていくためにしっかり貢献をしていくべきだという考え方は、私も合意をします。そこは私も総理に賛成します。

 しかし、現実的に、過去の国際情勢を見たときに、それはアフガンもイラクもそうですけれども、さまざまな国際的な取り組みをしてきた中で、テロが撲滅できてこなかったという歴史もあるわけですね。その中で、日本は日本で独自の役割をさまざま果たしてきた、これも日本のこれまでのあり方だったわけです。

 もうこれ以上総理にこの件は聞きませんが、来年には、日本が久しぶりに国連の安全保障の非常任理事国になる、さらにはサミットの議長国になる、そういった中で、積極的平和主義のもとで日本が世界の先頭に立っていくんだということになった場合には、テロの標的にされるリスクはあると思います。それは、私は、テロリストをもちろん非難をしなければならないし、そこについてはしっかりとした態度で臨まなければならないんだけれども、国際社会の現実としてある以上は、そのことを総理はしっかり御説明すべきだ、私はそう思います。そのことを申し上げた上で、次の質問に参りたいと思います。

 戦争責任について、総理と少しやりとりをさせていただきたいと思います。

 総理は、就任直後の、一昨年の十二月の二十六日に靖国神社を参拝されました。

 私も、実は、閣僚のときは、いろいろとさまざまな余波がありますから参拝をいたしませんでしたが、静かな時期に、年に一回程度の割合で靖国に参拝をいたします。

 なぜ私が参拝をするのかというと、私の肉親に一人戦死者がおりまして、細野光男というんですが、この私の親戚を大事にするという意味と、そして戦没者の皆さんに手を合わせるという意味で参拝をいたします。

 少しだけ彼のことについて話をしたいと思います。

 細野光男というのは、十八歳になった次の日に海軍に入隊をしています。そして、その二年後、一九四四年の十一月の十七日に、南シナ海で水雷艇に乗っていて撃沈をされて戦死しています。この十一月十七日、四四年ですから戦争が終わる前の年ですが、その一カ月前にはフィリピン沖海戦というのが行われていまして、もう完全にその地域の制海権は日本は失っていた。その一月ほど後に、細野光男というのはそこに、船に乗って、水雷艇に乗って戦争に行っているわけですね。

 横須賀から行ったそうです。私の祖父からこの話は何度か聞いておったんですが、私の曽祖父ですね、横須賀まで、京都府の綾部という丹波の山奥なんですが、そこから人生最大の旅行をして、送り出して、そしてそのまま戦死をしたと。恐らく、両親もそうですが、本人も、もうこれは行ったら帰ってこられないだろうということは把握をしていたというふうに思うんですね。

 昨年、靖国に確認をいたしましたら、この細野光男は靖国に合祀をされておりました。従来からそうだというふうに思っておりましたが、改めて確認をすることができた。

 私が靖国に参拝をするときに、そういう戦没者に対して手を合わせると同時に、やや自分の中で若干のわだかまりがあるのは、一九四四年の十一月という、もうほとんど行っても帰ってこられないときに行ったこの細野光男という私の親戚と、一方で、そこに行くという判断をした戦争指導者が一緒に祭られていることに関して、私は若干の違和感を禁じ得ない。

 そこで、総理にお伺いしたいと思います。

 資料をお配りしました。これは、総理が就任直後に靖国に参拝されたときに発表された談話です。

 この五段落目にこういう文言がある。「日本は、二度と戦争を起こしてはならない。私は、過去への痛切な反省の上に立って、そう考えています。戦争犠牲者の方々の御霊を前に、今後とも不戦の誓いを堅持していく決意を、新たにしてまいりました。」こうおっしゃっている。

 「戦争犠牲者の方々の御霊を前に、」ということで総理は発信をされました。この戦争犠牲者の中には、恐らく私の祖父の弟である細野光男も入っていると思います。一方で、靖国に合祀をされている戦争指導者、これが入っているのか入っていないのか。

 私がこれを聞くのは、私が靖国に参拝する思いと総理が靖国に参拝される思いというのはもしかしたら若干違うかもしれない、そこも確認をしたいという思いも含めて、総理はこの戦争犠牲者の中に戦争指導者を入れておられるか入れておられないか、お答えをいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 毎年多くの方々が靖国神社を参拝しておられます。その思いはそれぞれ恐らく違うんだろうと私は思うわけでございます。

 あの場に行けば父とあるいは祖父と魂が触れ合うのではないか、そういう思いで行かれる方もおられるでしょう。戦後七十年間のこの歩みの中で大変苦しい思いもあった、そうした思いを亡くなった御主人とともにしたいという気持ちで参られる方もあるだろうと思います。また、日本のために戦い、戦場に倒れた方々の存在があって今の自分たちがあるとの感謝の思いを伝えたいという方々が当然たくさんおられるんだろうと思います。

 私の思いにつきましては、資料として配っていただいた「安倍内閣総理大臣の談話 恒久平和への誓い」に尽くされているわけでございます。今御質問があった、いわば誰に対して手を合わせているのか、誰を除外しているのかということについて、私はお答えをする考えはございません。いわば、ここに込めた思いが全てでございます。

細野委員 総理、もう一回お伺いします。

 そうしますと、総理は、戦争犠牲者の中に戦争指導者も入るというふうにお考えなんですか。

安倍内閣総理大臣 今の答えが全てでございまして、私は、戦争は二度と起こしてはならない、戦争で倒れた方々あるいは亡くなった方々、全ての方々に対して手を合わせたところでございます。

 同時に、また、鎮霊社というお社がございまして、日本人の犠牲者だけではなくて、世界じゅうのありとあらゆる戦争によって命を失った方々を祭るお社があるわけでございます。その方々に対して手を合わせたのでございます。

細野委員 私も歴史の勉強は自分なりにしてきたつもりでして、戦争指導者と言われる人たちの中に、最大限の努力をしたり、それぞれ本当に努力をされた方がいることは認めますよ。

 しかし、我が国は、あれだけの犠牲者を出して、そして戦争を乗り越えてここまで来ている。私は、戦争犠牲者の中に戦争指導者は入らないと思います。犠牲者ではない、少なくとも。

 総理、もう一回お伺いしますが、そうしますと、戦争犠牲者の中に戦争指導者が入るということについては排除しないということですね。もう一度お伺いします。

安倍内閣総理大臣 いわば、この靖国神社については、合祀をされている方々全てをお祭りしているわけでございます。靖国神社と同時に、その場には鎮霊社という社があって、これは日本の神道のある意味特徴の一つなんだろう、このように思います。

 誰がいい、誰が悪いということを差別せずに、全ての方々をお祭りしている。我々と戦った相手の方々も含めて全てをお祭りしている。そして、こういう愚かな行為を二度と繰り返してはならないと手を合わせるわけであります。その思いは今後とも変わらないわけでございますし、再三申し上げておりますように、私の思いはその談話の中に全て尽くされているわけでございます。

細野委員 太平洋戦争が始まったのは一九四一年ですが、この一九四一年に総力戦研究所というのができていまして、そこでさまざまな検討がされたことは恐らく総理も御存じだろうというふうに思います。一番それをわかりやすく書いたのが猪瀬直樹さんの本でありまして、「日本人はなぜ戦争をしたか 昭和十六年夏の敗戦」というこの本ですね。

 これは、実は石破大臣がしばしば若い人に、読むべきだということで推薦をされている図書で、私もこの本を読んで、その後、歴史について改めてさまざま考えるきっかけになりました。

 聞いておられる方、少し承知をされていない方もおられると思いますので説明をさせていただきたいと思うんですが、一九四一年、太平洋戦争開戦前夜に、我が国は、各省庁から俊英を集めて、戦争の日米開戦のシミュレーションをした。その中には、外交、財政、運輸、食料、さまざまな分野を担当して、実際日米で開戦したらどうなるかというシミュレーションをした。そして、その結果としては、戦ったら必ず負けるということの分析がなされていた。

 国会図書館にこれだけの資料がありました。この全二十部の演習の最終結果というのは第九十八号というところに入っているんですが、これは、東京裁判でも全てこれが資料として読まれている、そういう重要な資料です。

 そして、シミュレーションを担当した、閣僚をやった全ての官僚は、戦争には突入すべきではない、日米開戦は避けるべきだという結論に達した。

 これはまず石破大臣にお伺いしたいんですが、総力戦研究所のこのことから我々が学ぶべき教訓は何ですか。そして、できればあわせて、先ほど総理がおっしゃいましたが、戦争犠牲者に戦争指導者は入るのかどうかも、石破大臣のお考えもぜひお伺いしたい。

石破国務大臣 「昭和十六年夏の敗戦」という猪瀬さんの作品は、私は極めて示唆に富むものだと思います。大勢の方々に読んでいただきたいと思います。

 その教訓というのは、自分たちに何ができて何ができないのか、相手に何ができて何ができないのかということをきちんと認識しなければならないということです。敵を知りおのれを知ればということだと思いますが、そのときの日本は、本当に主権者がそれを知っていただろうか。陛下であらせられた、先帝陛下であらせられますけれども、それにどのようなことが伝わっていたのだろうか。今の場合には主権者たる国民です。それをきちんと知らしむることが必要でしょう。

 そしてまた、その専門家の判断というもの、やはり軍人というのは軍事合理性で考えますから、そして戦が一番嫌いなのも軍人であることも間違いない。その軍人の判断というものをいかに政治が受けとめるかということが一番の教訓だと思っております。

 靖国については、ここでお答えをする立場にはございません。

細野委員 この報告は、当時の総理である近衛首相、そして当時陸相であって後に総理になった東条英機陸相、この二人も当然聞いておられる。そこも含めて、戦争指導者についての責任をここでしっかりとやはり我々は認識すべきだろう、そういう観点から、石破大臣には、彼らは戦争犠牲者かということを聞いているんです。これは政治家としてぜひお答えいただきたいと思います。

石破国務大臣 正確な記述は覚えておりませんが、そこにおいて、いかなる理由があってもこの戦争は避けるべきだという主張がなされております。それを聞いた東条英機、当時陸相であったかと思いますが、それは君たちの言うことを机上の空論とは言わないが、偶然の要素が抜けているのだ、戦は時の運というではないかという、それはそのとおり言ったかどうかは存じません、そのような記述があったと思います。

 そういうような精神論というものでそういう合理的な判断を退けたことは、私は間違いであったと思っております。靖国に関係なく申し上げれば、そのことについて申し上げる立場にございませんので、いろいろな情報を知りながら開戦を決断した人と、何も知ることなく召集令状一枚で戦地に送られ、ガダルカナルなぞというのは本当に悲惨きわまりないもので、一発の弾も撃つことなく飢えて死んでいった人たちに対する責任というのは誰かがとらねばならないし、情報をきちんと知り決断をした者はそれなりの責任がある、靖国とは別に私はそのように考えております。

細野委員 総理、今お帰りになりましたが、ちょっと席を外しておられましたので、もう一問だけ石破大臣にお伺いします。

 総力戦研究所の教官をやられたのが堀場さんという方でありまして、この方がいろいろな記録を残されています。私、基本的に全て読みました。その中で、研究の成果を政府が採択してくれたなら大東亜戦争は恐らく起こらなかったであろうとつけ加えたという記述がある。やはりあの戦争には突入すべきではなかった、私はそう思います。

 大臣にぜひお伺いしたいのは、やはりこのときに我が国は、その前も含めていろいろな経緯はあったけれども、特にこのときに我が国は国策を誤ったであろう、これはもちろん村山談話に入っている言葉ですが、この村山談話を離れても、私は、やはり国策を誤ったその瞬間の一つだというふうに思います。大臣はどうお考えになりますか。

石破国務大臣 それは、国が焦土と化し、大勢の人々が死んでいったということに対して、それが誤っていないということは言えないと私は思っております。それは村山談話も言っていることですし、政府として堅持している、そういうような立場であると承知をいたしております。

細野委員 石破大臣のこの部分に対してのこれまでの御発言は非常に一貫をしています。私もそこは同じ見解です。

 そこで、総理にお伺いしたい。

 一九四一年夏にシミュレーションをして、敗戦がもう間違いないと言われていた。そして、それを政府は当時採用しなかった。やはりどう考えても、私は、国策を誤った瞬間がこのときにあったと思います。そして多くの日本人が犠牲になった。

 総理、村山談話について聞くのは次の辻元さんがやられますから、私はそこについては聞きません。やはり我が国は国策を誤った、このことについては総理としてはっきりお認めになるべきだというふうに思いますが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 ただいま石破大臣が答弁いたしましたように、日本は、敗戦の結果、多くの人命を失い、そして国土は焦土と化し、その後の日本の歩みの中でも多くの方々が塗炭の苦しみの中にあったのは事実であります。

 そうした結果に至ったことについては、当然これは我々は深く反省をしなければならないという考えでございますし、その結果を生み出した日本人の政治指導者には多くの責任があるのは当然のことでありまして、これは私は一貫してこのように申し上げてきているとおりでございます。

 その上において、どの時点で果たしてその判断が間違っていたかということについて、私もこの総力戦の研究会の書についても読んだことがございますが、それぞれのタイミングというのがあるわけでございます。果たしてどこで日本は、どこでもこれは引き返すことは当然政治の判断ではできるわけでございますが、それはそれぞれの判断というのが、これは歴史をさかのぼっていけばそれぞれの判断があるわけでございます。

 そうした歴史をもう少し俯瞰した見方も大切であろうし、世界でどういうことが起こっていたか、日本だけではなくて世界全体を見ていくという、俯瞰をしていく、そういう鳥瞰をしていくという目も私は大切ではないかとも、このように考えるわけでございます。

 いずれにいたしましても、今後、我々は二度とああした悲惨な戦争を、これは我々は二度と戦争を引き起こしてはならない、これはまさにあの大戦における我々の、日本人の同じくする教訓ではないか、このように思うところでございます。

細野委員 どこの時点で誤ったかというのは、幾つかのタイミングもあったと思いますし、そこについては確かにいろいろな検証があるかもしれない。ただ、このときも含めて明らかに国策を誤ったがゆえに、国民を犠牲にし、そして世界の中でさまざまな、それこそ我々が反省をしなければならない、そういう事態を引き起こしてしまった。そこの国策を誤ったということについて総理はお認めにならないんですか。

 もう一回お伺いします。ここは、談話と関係なく、総理の基本認識として極めて重要なところです。国策を誤ったというお考えがあるかどうか、もう一度御答弁いただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 ですから、今答弁をしたとおりでございまして、まさにあの大戦の結果、日本は敗戦を迎えたわけでございます。そして多くの日本人の命が失われ、そしてその結果、国土は焦土と化したわけでございます。塗炭の苦しみの中で生活せざるを得ないという状況が生み出されたわけでありますから、そうした結果に対して、政治の指導者は、戦争の指導者もそうでございますが、大きな責任があるというのは当然のことであろう、こう思う次第でございます。

 そして、歴史については、どのようにその歴史を見ていくかということについては、私は歴史家に任せたい、こう思うところでございますが、教訓としては、その総力戦も含めて、政治の責任にある者、またあるいは行政の責任にある者は、常に冷静な分析の上に判断をしていくということが求められるのは当然のことでございますが、同時にまた、国際社会の中で決して孤立してはならないということも原則の一つではないか、このように思うところでございます。

細野委員 国策を誤ったという最も基本的なところは、総理はお認めにならない。戦争指導者が戦争犠牲者であるということについても否定をされない。私は、今の答弁を聞いていて、総理はやはり歴史の修正主義者だという批判を免れないと思いますよ。

 そのことは、この国の戦後七十年をきちっと総括し、新たな歩みに前向きな政府として、さらには国会として進むということにならない。そのことを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

大島委員長 この際、辻元清美君から関連質疑の申し出があります。細野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。辻元清美君。

辻元委員 民主党の辻元清美です。

 関係者の皆様、このたびの交渉は、御苦労さまで、お疲れさまでございます。

 私は、今回のシリアでの日本人拘束事案、そして、今、総理と細野さんの議論がありましたが、歴史認識について質問したいと思います。

 今回のことを受けまして、多くの皆さんが、これからのかじ取り次第では、日本がどんな方向に行ってしまうのか、先ほどから過去の戦争の話がありましたけれども、再びまた日本が国策を誤り、戦争の方向に行ってしまったらどうしようというような不安をお持ちの方もたくさんいらっしゃると思います。

 今まで日本は、比較的国際テロの起こることが少ない国でした。これから変わってしまうのか、これからどういう国を目指していくのか。私は、こういう時期であるからこそ、忌憚なく議論すること、そして議論できることが日本の民主主義を守るということにもつながると思っています。

 お二人の方が犠牲になられ、このことにつきましては、本当に憤りや悲しみをみんなで共有していると思います。そして、きょうまた、ヨルダン人のパイロットの死亡、殺害というニュースも飛び込んでまいりました。

 きょうのニュースにつきまして、総理に一問お伺いしたいと思います。

 このヨルダン人のパイロットが殺害されていたのは一月の初めのころであったという報道がなされておりましたけれども、総理がこのヨルダン人のパイロットの殺害の情報をヨルダンから受け取ったのはいつでしょうか。そして、ヨルダンとどんな連携をしていこうとしているんでしょうか。

岸田国務大臣 ヨルダン人パイロットの方の殺害については、ヨルダン政府が、ことしの一月三日に殺害されたという発表をしています。ただ、ヨルダン政府は、その根拠あるいは状況について何も説明はしておりません。

 我々は、ヨルダン政府とは緊密に連携をとってまいりましたが、我々が得ている情報はそれだけでございます。

辻元委員 ということは、一月三日に殺害をされていたとヨルダン政府が判断していたことは日本は知っていたということですか。

岸田国務大臣 本日、ヨルダン政府は、一月三日に殺害されていたという事実を公表されました。ただ、それについて何も説明をしておりませんし、我々はそういった情報しか得ておりません。

辻元委員 緊密に連携をされてきたので、我々はその情報しか得ておりませんということなんですけれども、これはまたちょっと後ほど議論させていただきたいと思います。

 そして、もう一点、先ほどから、後藤さんがISILに拘束されていたというのは、一月二十日、これはISILによるビデオでの公開がされる以前、推定はしていたが断定できなかったということ、それでよろしいんでしょうか。

岸田国務大臣 ことしの一月二十日、映像が公開されるまでは、ISILの犯行であるということは否定できないとは認識しておりましたが、確たる情報は得ておりませんでした。そして、一月二十日、映像が公開されることによって、ISILの犯行である可能性が高いと認識をした次第であります。

辻元委員 といいますのは、私はこの間の政府の御説明を聞いていましたら、一月二十日までにヨルダンに対策本部を設置して、情報を集め、分析をして、そしてあらゆるチャンネルを通じて働きかけをしているというようなニュアンスのことをおっしゃっていたんですけれども、一月二十日まで交渉する相手もわかっていなかったということであれば、何をしていたんですかね。

岸田国務大臣 一月二十日までにつきましては、現地対策本部等を通じまして、情報収集、そして関係各国との連携に努めてまいりました。

 その中で、シリアに国境を接するトルコに人員を送るなど、さまざま努力を続けた次第であります。そして、後藤さんの奥様にはメールが届けられているということを我々は十二月の段階で把握をしておりました。こうしたさまざまな事情について、分析をし、対応を検討した次第であります。

辻元委員 分析をしても相手の特定も数カ月間できていなかったということが、きょう明らかになったと思うんですね。

 他国の事例を見てみますと、欧米諸国でも拘束されている案件が多いんですよ。しかし、あのようにビデオで公開される前に、解放されている各国は全部その前に水面下の交渉で解放しているわけです。そして、例えばイタリア、デンマーク、フランス、スペイン、トルコ、解放されております。アメリカとイギリスは解放に失敗しているんです。それ以外の国はほとんど成功しているんですよ。

 そうしますと、日本政府はあそこに出てくる前に相手の特定もできていなかったというような状態であったこと、これは日本として物すごく大きな反省点だと思いますが、いかがですか、総理。

 これは総理です。総理、してくださいよ。総理、総理言わさぬといてください。総理です。ほんまに、これは、総理、すごく大事なことですよ。そこまで特定もできなかったんですか。総理、いかがですか。総理、だって、総理はあれだけテロと闘うとおっしゃっていたじゃないですか。

大島委員長 辻元さん、まず外務大臣からお答えをいただいた後に、総理の所感をいただきます。

岸田国務大臣 我が国としましては、湯川さん、そして後藤さんが行方不明になられたという情報を得てから後、今日まで培ってきたさまざまなチャンネル、ルートを総動員しまして、各国の情報機関、宗教関係者、あるいはさまざまな地元の関係者に働きかけ、情報を得、そして、そうしたルートを総動員して働きかけを行ってまいりました。

 その具体的な内容については明らかにはできませんが、そうした条件の中で我が国としては最大限努力をし、解放に向けてさまざまな取り組みを行ってきた次第であります。

辻元委員 今、外務大臣が、宗教者などさまざまなチャンネルで働きかけを行ってきましたとおっしゃったんですが、相手もわからないのに、どこに働きかけをしていたんでしょうか。

 総理、やはり、この一月二十日にビデオでああいう形で公開される前、ここが勝負だったと思うんですよ。やはりここで非常に大きな反省をしなきゃいけない。結局、相手も特定されていなかったということがきょう明らかになったわけですが、総理、どのようにお考えですか。

安倍内閣総理大臣 ただいま辻元委員からほかの国々のケースについての事例を挙げられたわけでございますが、それは、その国々において、あるいはその人質となった方々の家族に対するアプローチ等、さまざまだったんだろうと思うわけでございます。

 残念ながら、我々は、この二十日以前の段階においては、ISILという特定もできなかったわけでございますし、また、ISIL側から我々政府に対する要求ということではなかったわけでございます。

 そこで、我々は、一月の二十日に、この事案について、ISILということが彼ら自身のビデオによって特定されたわけでございますから、その段階から、さまざまなルート、培ってきた外交ルート、チャンネルを駆使しながら、このお二人の人質の解放に全力を尽くしてきたところでございます。

 もちろん、それ以前にも、外務大臣からお答えをさせていただきましたように、さまざまなルートを生かしながら情報収集に努めていたわけでございますが、完全に特定するには至ってはいなかった、こういうことでございます。

辻元委員 私は、残念ながら、これはひょっとしたら、普通の失踪者というか、どこかに拘束されたこと、それ以上には扱っていらっしゃったかもしれませんけれども、この間の政府の対応がやはり非常に甘かったと思います。そのことについてちょっと検証していきたいと思うんです。

 まず、総理にお伺いしますが、日本は、いわゆる有志連合ですね、これはISILを打倒する世界連合とも言われていますけれども、この有志連合に日本は入っているんでしょうか。総理、いかがですか。

岸田国務大臣 有志連合についての御質問ですが、この有志連合には、ISILに対して空爆を行っている、空爆に参加している軍事的な有志連合と、そして、ISILの資金源対策、あるいは人道支援を含む包括的なISIL対策を行う広い意味での有志連合、二種類があります。

 我が国としましては、前者、ISILへの空爆を行う諸国から成る軍事的な有志連合には参加しておりません。最近では、一月二十二日にロンドンで閣僚級会合が行われましたが、我が国は参加いたしませんでした。

 他方、我が国は、ISILの脅威に対抗するため、これまで、シリアあるいはイラクの難民、避難民支援、そしてヨルダンやレバノンといった周辺国への人道支援、こうした関連安保理決議の履行を着実に行ってきた次第です。

 こうした取り組みは中東諸国からも国際社会からも高く評価されているわけですが、かかる背景から、我が国は、ISIL対策関連の累次の国際会議には参加しており、その意味で、人道支援を含む広い意味での有志連合には参加していると認識をしています。

辻元委員 広いか狭いか、有志連合は一つだと思いますけれども、そのことは後でちょっと議論したいと思いますが、いつから参加しているんですか。

岸田国務大臣 昨年の九月の十九日ですが、ケリー米国国務長官主宰によりまして、イラク情勢に関するハイレベル安保理会合が開催されました。我が国は、この会合に薗浦外務大臣政務官が出席をしております。その会合直後に、米国務省が、連合参加国として、日本を含む五十カ国以上の国と地域が含まれるリストを公表いたしました。

 日本が有志連合参加国に名を連ねるのは、この時点が初めてだったと認識をしています。

辻元委員 今、九月の十九日とおっしゃいました。

 有志連合参加国はどこかと私は外務省に問い合わせましたら、外務省からの答えは、アメリカの国務省のホームページを見てくださいという答弁だったんですよ。日本のホームページを見るんちゃうかなと思ったんですけれども、アメリカのを見てくださいという御説明だったんです。

 外務省が最初私に示したのが、この十月一日のホームページでした。これは資料を皆さんにお配りしております。そして、さらに調べていきますと、資料二ですが、九月十九日のホームページ。この二つ、これが世界じゅうに有志連合に参加している国を示す、これしかほぼないですね、世界じゅうの人が、有志連合にどこの国が参加しているのかなと検索すると一番に出てくるのがこれです。

 これを見ていただきますと、これは十月一日の分ですけれども、下に参加国というのがあって、日本が入っております。そして、その下にどんな役割をするかということが書いてあるんですが、これが、九月に発表された時点では、どの国が空爆をしていて、どの国は人道支援だというのがわからないんですよね。全部一緒くたに、全部有志連合だと。ですから、国際的には、有志連合は一つなんだ、その有志連合で分担をして、空爆もあれば人道支援もあるという理解のされ方なわけですよ。

 私は、日本は有志連合から一線を置いて、日本独自の人道支援をしているのかなと最初思っていたんですが、はっきりと国際的には位置づけられているわけです。

 それで、これは総理にお聞きしたいんですけれども、九月からこれがホームページで公表されていたんです。九月から有志連合に日本が入った。そして、人道支援だということはわからない、ごちゃごちゃですから。そうなってくると、世界じゅうの人は、ああ、日本は有志連合に入ったんだな。

 九月のこのころはどうかというと、アメリカがイラクでの空爆を開始したのは八月八日なんです。その後に、オバマ大統領が九月の十日に、シリアを空爆すると拡大の表明をして、非常に緊迫して、九月の二十三日に、シリア空爆開始、そして、アメリカは集団的自衛権の行使でやるんだという宣言もしている。殺し殺されというか、物すごい戦闘も激化して難民が続出していたときに有志連合が結成され、日本が入っている。そして空爆が始まった。どの国が有志連合に入るのかが世界から注目を浴びていたときなんですね。

 こういうときに日本がもう入っているわけですから、私は、この九月の段階から、日本人がターゲットにされる。ISILも、有志連合に入っている国はどこかしらといったら、このホームページで見ているはずです。有志連合の一員をターゲットにするんだと、この九月から、物すごく日本人が狙われる、ターゲットとされるリスクがぐんと高まっていた。これがターニングポイントだと思うので、ここから、人が誘拐されたり、日本人に対しての対応を練らなきゃいけなかったと思うんです。

 まず総理に、この段階から日本は狙われるリスクが非常に高くなったという御認識はお持ちでしたか。(岸田国務大臣「委員長、その前に」と呼ぶ)いや、その前じゃなくて、お持ちだったか総理に聞いているんですよ。というのは、大事なことだと思うんですね。

大島委員長 岸田外務大臣からお答えした後に、安倍総理からお話をいただきます。

岸田国務大臣 総理がお答えする前に、一言確認をさせていただきたいと存じます。

 我が国の対応ですが、昨年、国連安保理におきまして、ISIL対策の決議が採択をされています。我が国としましては、この決議に示されている、ISILの脅威に対抗するという国際社会の決意を踏まえて、責任ある一員として責務を果たすべく人道支援を行う、こういった取り組みを続けてきました。そういった思いで、自主的に、この人道支援を含むさまざまな対応を議論する国際会議に参加をした次第です。

 そして、御指摘のこのリストですが、これは、米国政府が独自にこのリストを作成し、そしてホームページにアップしたというものであります。

 我が国としましては、こうしたISIL対策、この国連決議に基づいて、人道支援を中心に、この責任を果たすべくしっかり努力をしてきた。そうした努力をしてきただけでありまして、このリストというのは、そういった中で米国が発表したものであるということをまず一つ確認させていただきたいと存じます。

辻元委員 すごく今の形式的な説明というか、日本はこうですよ、こういうことを表明しましたじゃないんですよ。世界じゅうはこれを見て、ISILも含めて、有志連合に入っている国はこういう国だな、こういう国はターゲットだなと見られていたわけですよ。

 要するに、私、危機感が少ないと思います。今のは日本の都合を言っているだけ。日本は人道支援をしてくれるんだから世界はわかってくれるだろうじゃないんですよ。

 実際に、これが九月から出ていて、非常に日本人が狙われるリスクのレベルが上がっていた。そして、その間に……(発言する者あり)味方じゃないですよ。シビアに、日本政府は何をしてきたのか。

 この後に後藤さんが誘拐されているんです。ですから、このときに日本の危機感が、この段階で、もう有志連合に入ったということはターゲットになるんだという認識を持ってしっかり対応しないと。

 もう一つ。このときに、注意喚起ですね、国民に対してこの九月から、広域地域における。

 世界じゅうに日本人はいてるわけです。世界じゅうにいる日本人がターゲットにされたら困るわけですよ。しかし、どこにどんな過激主義者が潜んでいるかわからない。その人たちがターゲットにする有志連合というのは、ホームページで今でも検索したらこれが出てくるんです。そんなのんきな話ではないです。それはアメリカが勝手に書いているんだよという話じゃないですよ。

 そういう中で、日本が、この九月以降に、広域情報でイスラム過激主義者に注意喚起を出したのは、たった一回だけなんですよ。

 私はやはり、この九月の空爆が始まってから、そして後藤さんたちのビデオが公開されるまでの間の日本の対応というのは非常に甘かったし、甘く見ていたというか、危機感が少な過ぎたんじゃないかと思います。そんな中で総理が中東を訪問された。

 ですから、先ほどから、これだけISILの危機感が高まっているのにエジプトでの発言はどうだったんだという話がありましたけれども、これは、政府全体がやはり危機感が非常に低かったんじゃないか。その中で中東訪問があったと思います。

 私は、総理、今回お二人の方が亡くなってしまったわけですから、このプロセスは、総理はよく結果責任とおっしゃいますけれども、結果責任ということであれば、やはり残念ながら失敗になってしまうわけですよね。これから検証していくということですけれども、私は大きな反省をしなきゃいけないと思いますが、総理はいかがですか。

安倍内閣総理大臣 我々がのんきだった、危機感がなかった、我々はその批判は当たらないとはっきりと申し上げておきたいと思います。

 今まで何回も申し上げているように、この場でも申し上げています。世界じゅうは、いわばテロの脅威に対してどの国も安全ではない、だから万全を尽くさなければいけないということは何回も申し上げているとおりであり、我々はしっかりとそのように対応してまいりました。

 また、そうした危険な地域には行かないように、しっかりと我々は発信もしておりますし、先ほども申し上げましたように、何回か後藤さんに対しても、三回にわたって、行かないようにというお話をさせていただいているわけでございます。

 それと同時に、この有志連合に入ることが間違っているかのような御意見でございましたが、まさにこの過激主義を誰かがとめなければならないわけであります。日本としては、空爆とかそうした軍事支援はしませんが、しかし、周辺国に対する支援をしっかりとしていく。過激主義をとめるということの有志の連合であれば、日本もその一員であるわけでありますが、その中でそれぞれの役割があって、日本は軍事的な役割はしないわけであります。

 それと、日本だけが人道支援だと思っているという御発言がありましたが、それも間違い、明確な間違いであります。

 一月の二十日にISILが公開したあのビデオの中において、ISIL自体が、アラビア語の字幕とテロップをつけて、中東における人道プロジェクト及びインフラに対する借款供与を表明したと我々を非難しているわけです。そして同時に、安倍、イスラム国との闘いに非軍事的支援で貢献、こうISILが、まさに私の支援は非軍事支援だと明確にあのビデオの中で、英語とアラビア語で彼らの見解を表明しているわけであります。これは、辻元さんはそう理解をしていないかもしれませんが、彼らは明確にそれは理解をしていたわけであります。

 つまり、非軍事的支援であっても彼らはまさにテロの対象とする。ここにISILの大きな問題があるわけであり、だからこそ今、国際社会は連携して彼らのこの勢いをそぎ、そして最終的にはこのISILの支配地域から多くの人々を解放しなければならない、このように考えているわけでありますし、日本は日本しかできない支援をしっかりとやっていきたい、こう考えているところでございます。

辻元委員 私は、人道支援はするべきだし、それから総理がおっしゃった、テロと、国際連携してしっかりと対応しなきゃいけない、それはそうだと思うんです。しかし、今さっき申し上げましたように、一方でお二人の方が殺害されてしまったという、これに対しての反省はどうかと問うたわけです。

 先ほど、一月二十日まで特定もできていなかったということもはっきりしたわけです。これは大きな反省をしないと、私、ここで、二人がお亡くなりになったこの日本の対応、のんきにしていたんじゃない、そのとおりだと思います。ですから、私も最初に、本当にお疲れさまでしたと申し上げました。しかし、やはり、二十日まで特定されなかったことも含めて、危機感が薄かったと言わざるを得ないということも申し上げておきたいと思います。

 これについては、やはり、特に二十日までの検証というのは一つ一つきっちりしていかないと、二十日以降のことももちろんそうですけれども、その前が大事だということを申し上げたいと思います。

 もう一つ。今、総理は人道支援ということを強調されましたけれども、日本が人道支援に徹する国というのは、これは過去の戦争の反省があると思います。日本は戦争と一線を画して、世界の貧困や、そして難民を支援していく、これが戦争を、負の連鎖といいますか、暴力の負の連鎖を断ち切るんだということで人道支援に力を尽くしてきたと思うんです。それで、過去の戦争の見方なんですよ。

 戦後七十年の総理の談話を出されるというお話の中で、総理は、全体として過去の歴代の談話を引き継ぐとおっしゃっています。この全体としてというのは、一体どういうことなんでしょう。

安倍内閣総理大臣 安倍政権としては、戦後五十年の村山談話、そして戦後六十年の小泉談話を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいるわけでありまして、今後も引き継いでいく考えでございます。

辻元委員 小泉談話と村山談話というのは、いろいろ書いてあるんですね。資料の三です。

 そして、村山談話と小泉談話の共通点は、この黄色のラインマーカーを引いてある部分、ここだけなんです。あとは、村山さんの思いやこれからこんな国にしたいということや、小泉さんの思い。

 特に、小泉さんの場合は、サンフランシスコ講和条約のことに触れています。これは、靖国に行きましたので、靖国に行ったことが、東京裁判史観の否定であったりサンフランシスコ体制の否定に見られたら困るということで、わざと入れていると思うんです。

 ということは、全体として引き継ぐというのは、それぞれこの核心の部分、歴史認識の部分を引き継いでいるのであって、あとはそれぞれの思いを書いていらっしゃる。ということは、引き継いでいくということは、このラインマーカーを引いている、両方の総理大臣の歴史認識のところを戦後七十年談話も引き継いでいくという認識でよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 先ほど答弁をさせていただきましたように、安倍政権としては、戦後五十年の村山談話、そして戦後六十年の小泉談話を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいるということでございまして、今後も引き継いでいく考えでございます。

辻元委員 といいますのは、資料の四を見てください。

 かつて総理はいろいろな発言をされ、積極的に歴史認識について発言をされてきました。これは、山谷大臣と、きょうはお互い、本音レベルで話しましょうと書いてある対談なんですが、その五ページを見ていただくと、村山談話について、村山さんの個人的な歴史観に日本がいつまでも縛られていることはない、その時々、総理が出せばいい、村山談話が余りに一面的なので、もう少しバランスのとれたものにしたい、こうおっしゃっているわけですね。

 これは山谷さんと対談されていますので、山谷さんにもお聞きしますけれども、山谷さんも、村山談話を認め引き継ぐという立場ですね。

山谷国務大臣 戦後五十年の村山談話、そして戦後六十年の小泉談話、歴代内閣の考え方を安倍内閣としても引き継いでいくということでございます。

辻元委員 総理、こういうように過去に発言されているので、どうなるのかなと国際的にも見られているわけです。ですから、一つ一つ確認、歴史認識を引き継ぐということですから、この部分、先ほどの歴史認識の部分ですので。

 先ほど細野さんとも議論になりました、我が国は、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れた。同じ認識ですか。

安倍内閣総理大臣 先ほど細野委員の質問に対してお答えをさせていただいたとおりでございますが、日本は七十年前、敗戦を迎えたわけでございますが、多くの日本人の命が失われたわけでございます。そして、国土は焦土と化した。この反省の上に立って、今日の日本をつくってきたわけでございます。いわば、その痛切な反省の上に立ってきたということに尽くされているのではないかと思います。

辻元委員 ここのキーワードは国策を誤りなんですが、これは引き継がれるということは認めていると考えてよろしいですね。

安倍内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、五十年の村山談話、そして六十年の小泉談話について、安倍内閣としては全体として引き継いでいる、このように申し上げていることでございます。

辻元委員 ということは、認めているということですね。

安倍内閣総理大臣 繰り返しになりますが、五十年の村山談話、そして六十年の小泉談話、全体として安倍内閣として受け継いでいるということでございます。

辻元委員 さっきから申し上げておりますように、全体はいろいろ書いてあるんです。そして、共通しているのは歴史認識の部分です。ですから、そこは、国際的に注目されているのもここであるという認識があると思います。ですから、一つ一つ、私は、総理、はっきりお答えになった方がいいと思います。先ほど、国策を誤りという話がありましたが、今、暴力の連鎖の話も先ほどから議論しておりましたけれども、やはり過去、日本は戦争しているわけです。

 では、次、お聞きします。

 植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えた、植民地支配と侵略によって与えた、この文も継承しているということ、同じ認識ということですね。

安倍内閣総理大臣 先ほどからの答弁の繰り返しになるわけでありますが、安倍政権としては、戦後五十年の村山談話、そして戦後六十年の小泉談話を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでおり、今後も引き継いでいく考えでございます。

辻元委員 またはっきりおっしゃらないんですね。

 次に、もう一つ、痛切な反省の意をあらわし、心からおわびの気持ち、これはアジア諸国などに対してですか。これも引き継いでいますね。

安倍内閣総理大臣 繰り返しになるわけでありますが、安倍政権としては、戦後五十年の村山談話、戦後六十年の小泉談話を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでおり、今後も引き継いでいく考えでございます。

辻元委員 総理は、有識者会議を立ち上げて検討してもらうという話がありました。有識者会議に依頼するときに、この歴史認識の部分、結局、引き継がれているのはこの部分なんです、この部分の検討も含めて依頼されるのか。この歴史認識の部分はこれを引き継ぎ、そして将来に向けてや総理の思いを書かれる。どのように依頼されるんですか。

 先ほど、歴史認識を引き継ぐとおっしゃいました。有識者会議には、歴史認識の部分は引き継いだ上で、いろいろな思いを、歴代内閣もそうでした、そこは引き継いでいますという検討を依頼するということでよろしいですね。

安倍内閣総理大臣 これは既に委員会で述べていることでございますが、安倍政権としては、戦後五十年の村山談話、戦後六十年の小泉談話を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでおり、今後も引き継いでいく考えであります。七十年の談話はそれを前提として作成するものであります。

 談話の内容につきましては、さきの大戦への反省、戦後の平和国家としての歩み、今後日本としてアジア太平洋地域や世界のためにさらにどのような貢献を果たしていくのか、次の八十年、九十年、百年に向けて日本はどのような国になっていくのかについて、世界に発信できるようなものを英知を結集して考え、新たな談話に書き込んでいく考えであります。

 いずれにせよ、具体的な内容は、今後、有識者の御意見を伺いながら、政府として検討していく考えでございます。

辻元委員 この有識者会議なんですけれども、議事録をとって、議事録を公開すべきだと考えますが、総理はいかがですか。

安倍内閣総理大臣 自由な御議論を私は行っていただきたい、このように思いますので、その自由な意見の発表について、自由な発言について担保しなければならないという観点から検討しなければならないと思います。

辻元委員 歴史認識の部分は、この有識者にも、引き継いで検討してくれというような依頼をするということでいいんでしょうか。もう一回確認します。

安倍内閣総理大臣 安倍政権としては、戦後五十年の村山談話、戦後六十年の小泉談話を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでおり、今後も引き継いでいく考えであります。七十年の談話は、それを前提として作成するものであります。

辻元委員 歴史認識以外のところを議論していただくのなら、議事録の公開はしやすいと思います。そこに踏み込むとしにくいということで、言葉を濁していらっしゃるのかなと思ってしまうんです。

 例えば、民主党政権のときは、原子力政策を決めるときも、同時中継でインターネットでオープンにして、その中で議論していただく。これは、特にこの談話というのは、国際的に、どういう談話を出すかによって日本が孤立しかねない、そういう性質の、単なる総理の思いを書くものではないということをよく御理解されていると思います。だからこそ、有識者の委員に緊張を持って議論していただく、歴史にたえ得る議論をしていただくためにも、議事録をしっかり公開する、そのとき公開できなくても後で公開することを約束された方が国際的な信用を増すと私は思いますが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 私自身は、国際的な信用を得ている、このように思っております。その中において、日本の国益を確保し、そして地域や世界の繁栄のために、平和と安定のために貢献していくよう努力を重ねていきたい、このように考えているところでございます。

大島委員長 時間が来ておりますよ。

辻元委員 はい、終わります。

 今回の歴史認識の問題も中東外交も、私は、自民党も含めまして先輩たちが非常に難しいかじ取りをしてきて心を砕いてきた、日本の立場を築いてくださった、その信頼を崩すことがないように、両方とも、総理にはくれぐれも慎重な御判断をいただきたい。そのことを申し上げまして、終わります。

 ありがとうございました。

大島委員長 この際、玉木雄一郎君から関連質疑の申し出があります。細野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。玉木雄一郎君。

玉木委員 民主党の玉木雄一郎です。

 まず、本日は補正予算の問題点について伺いたいと思います。

 最初に、昨年の補正予算、国会でも何度も私は質問いたしましたけれども、厚生労働省の短期特別訓練事業、パネルの一を見てください。これは去年の補正予算で計上された予算ですけれども、ことしと同じように、残り年度が大変少ない中で予算を計上して、それを無理して執行する中で起きた事件だと私は思います。総理も覚えていらっしゃると思いますが、執行見込みがないということで、約半額の七十億円は国庫返納いただきました。

 これに関して、先日、執行を担当した厚生労働省の職員二名が官製談合防止法で書類送検されたという報道がありましたけれども、事実関係はいかがでしょうか。

三浦政府参考人 お答えをいたします。

 御質問の件につきましては、警視庁が厚生労働省職員二名について、入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律、いわゆる官製談合防止法違反容疑で告発を受けましたことから、所要の捜査を遂げた上、本年一月二十二日に検察官に送付したとの報告を受けております。

玉木委員 まだこれは検察に送られた段階ですから、罪が確定したわけではないので、慎重にそこは言いたいと思いますけれども、ただ、補正予算の執行に関して書類送検されるような事態が起こったことは重大な問題だと思うんですね。

 私は、ここで送検された二人のことを責めるつもりはありません。むしろこれは、厚生労働省の幹部の皆さんあるいは大臣、場合によっては、こうした補正予算を組んだ財務大臣や総理にもその責任の一端があるのではないかと私は考えます。

 この原因の一つは、無理に補正を組んで、それを年度末までに無理に執行させて、現場に物すごい負担をかけていること、そのことがやはり遠因だと思います。

 その上で、やはり補正予算というのは、財政法が規定する、本当に年度の当初には予定していなくて、どうしても緊急で組まなければいけない、そのことに限定すべきだということをこの事件は教えてくれていると思いますので、その観点から質問したいと思います。

 本年度の予算、農政の改革が今進んでいます。私も、農政は改革をしていかなければならないと思う一人であります。このパネルに出したのは、その中で進められている、担い手に大きな固まりとして農地を集積していこう。私、これは政策としては進めるべき政策だと思います。

 そんな中で、各都道府県に一つ、今年度から、農地バンク、農地中間管理機構というものが設立され、ここに農地を、もう年もとってできないので出したい人と、そして、例えば若い人で農地を新たに借りたい人、これをまさにマッチングさせる組織ができました。

 そして、この下に書いていますけれども、出し手に対しては、より出しやすくするために出し手への補助金があります。そして、農地バンクには農地バンクを運営するための補助金、また、受け手にもそれなりの補助金がある、こういう仕組みになっておりますけれども、きょう私がまず問題にしたいのは、この農地の出し手への補助金について、この補正予算について聞きたいと思います。

 まず質問します。今年度から始まっているこの農地バンクの事業でありますけれども、この事業の現在の進捗状況、そしてこの予算の執行状況について教えてください。

大島委員長 佐藤官房長、丁寧に説明しなさい。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 今先生御指摘いただきました農地中間管理機構でございますが、昨年三月一日に施行されまして、各都道府県におきまして昨年十一月までの間に創立されているところでございます。

 今先生の方からお話がございました件でございますが、現在私どもが把握している昨年八月末の機構の担い手への貸し付け面積でございますが、これは試行的に転貸を実施したといったようなものでございますが、五百六ヘクタールとなっております。

 この五百六ヘクタールに対する予算の執行状況につきましては、本年一月末時点でございますが、申請額が一・六億円となっておりまして、〇・五億円を機構集積協力金として県の基金から支出しているところでございます。

 他方、農地中間管理機構からの借り受け希望の公募への応募面積につきましては、昨年九月末現在で全国で合計二十三万ヘクタールと相なっているところでございます。

玉木委員 資料の三を見てください。今農林水産省から説明があったことを少しパネルにまとめました。

 まず左側の棒グラフを見てください。今最後に説明がありましたけれども、農地を受けたい人の希望合計面積、これが二十三万ヘクタールですね。結構多いと思います。それに対して、八月末現在と言いましたけれども、マッチングできた実績は、単位が随分変わりますけれども、五百六ヘクタールです。パーセンテージでいうと約〇・二%。

 そして右側の棒グラフを見てください。これにかかわる出し手への支援金である機構集積協力金の執行状況ですけれども、二十五年度補正と二十六年度、今進行しているこの年度の予算の合計が既に二百五十三億円積まれていますけれども、その執行状況、この五百六に対応するものは、一・六億円の申請はあるけれども、実際に出ているお金は〇・五億円、つまり五千万円です。これもたまたま〇・二%です。

 そこで、麻生大臣にお伺いします。

 今回、もうこれは通りましたけれども、二十六年度の補正予算で、この農地の出し手に対する支援金として新たに二百億円を積んでいます。冒頭申し上げたように、補正予算というのは、財政法上、計上できる要件が決まっておりまして、予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出、こういったものを賄うために計上できることとなっています、限定的に。

 お伺いしたいのは、このマッチングの執行もそれに伴う予算も、私が見る限りかなり余裕があるような気がするんですが、今年度あと二カ月を残した中で、さらに二百億円を積み増さなければならない緊要性について御説明ください。

麻生国務大臣 御指摘のありました、農地中間管理機構とかバンクとかいろいろ言い方はありますけれども、この農地の貸し出し手に対する協力金というもの、今言われました数字は間違いなく合っておる、私どもの数字でも合っております。五百六ヘクタールというのが実績だったと思いますが、これは去年の八月までのものがその主たるものです。

 基本的には、これは先生の香川県でもほぼ同じだと思いますけれども、これは農繁期、はっきりしていると思います。したがって、農閑期に入ってからこれは進み始めるのが当然のことなのであって、農繁期のところでは五百六ヘクタールというのが実績だと理解をいたしております。

 そして、地域活性化のために、二十三万ヘクタールという地域からの要望というものに最大限にこたえられるというのを考えておられるというように理解しているんですが、少なくとも、今御指摘のありましたように、二十六年度補正予算で九万ヘクタール分に対して二百億円を計上しているというところですけれども、十月以降も借り受け希望が増加しているということのようでありますので、二十四万ヘクタールへの借り受け希望に対応できるように、二十六年度の当初予算までに計上した十五万ヘクタールとの差し引き九万ヘクタールというのが農水省の算出した背景だと思っております。

 これに対して、我々としては、生産性の向上というのは農業の中で最も言われているところでもありますので、現在の借り受け希望に迅速かつ最大限に応じられるように、こういったような形で万全の予算手当てをしたというように理解をいたしております。

玉木委員 私は、この事業の必要性は当然認めています。いい制度だし、出し手への支援はやるべきだと思うんですけれども、私が質問したのは、あとわずか、一カ月ちょっとしか残っていない年度の中で補正予算として二百億を積み増す緊要性、財政当局として、査定当局として、どうしてもこの二カ月弱で積まなければいけない、要は、お金が足りなくなるから急がなきゃいけないという、その急ぐ理由を聞いているので、もう一度お願いします。

麻生国務大臣 これは、財務省におられたので、このルールというかあれはよく御存じのとおりだとは思います……(玉木委員「いや、わからないです」と呼ぶ)わからない。ああ、わからない……(発言する者あり)いえ、わからないからと、別に自慢されることないですから。

大島委員長 やじに答えないようにしてください。

麻生国務大臣 経済対策というのは、これは、二十六年度の当初をもってつくったときにいわゆる想定できていなかったというものが新たに経済対策とかいうことで出てきておりますので、財政法の二十九条で、予算作成後の事由に基づいて緊要な経費というものに当たるということがその背景なんだと私どもは理解をいたしております。

玉木委員 今の財務大臣の説明は、多分、農地を借りたい人、受けたい人が想定では十四万ヘクタールだったのが、調べてみたら二十三万ヘクタールにふえたので、その九万ヘクタール分を乗せましたということなんですが、これはちょっと冷静に聞いてください。今回の予算は、農地を貸したい人に対する支援策です。ですから、予算を仮に積算するのであれば、農地を貸したい人の面積が予定よりふえたら、つけたらいいと思いますけれども、まだ借りたい人がふえるかどうかは、長い道のりがありますから。私はそこは、何か正しそうに聞こえて正しくないなと思うのは、あくまで農地を貸したい人がふえたのであれば、つけてもぎりぎりいいかなと思うんです。

 そこで、お伺いしたいんですが、では、農地を貸したい人の希望総面積、これは現在幾らにふえたか把握されておられますか。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 今の貸し手の状況でございますが、御案内のように、まさに今、稲刈りあるいは脱穀が終わりまして農閑期の時期に相なっておりまして、先生御案内のように、農地の権利移動というのはこういった一月―三月の農閑期に行われるといったような状況に相なっているところでございまして、こうした冬場でのマッチング活動を現在まさに行っているところでございまして、こうしたような状況でございますので、先ほど財務大臣の方から御答弁いただきましたように、やはりこの一月―三月が一つの大きな焦点になってくるというふうに考えているところでございます。

玉木委員 私は、ちょっとそれはいいかげんな答えだと思いますよ。

 なぜなら、私は地元が香川県なので言いますけれども、香川県だと、例えば去年、平成二十六年の十二月三十一日現在の借り受け希望総面積千九十一ヘクタール、貸し付け希望面積百六十四ヘクタール、そのうちマッチングできたのが九十一ヘクタールと、ちゃんと去年の年末でデータをとっているんですよ。これは香川県だけではなくて、例えば青森県も、借り受け希望面積は一万一千七百二十ヘクタールで、貸し出しの希望面積は九百ヘクタール弱と、各県に聞いたら全部あるわけですよ。

 予算査定するときに、少なくとも、だって、一月の予算編成だったわけでしょう、今回の補正予算も。だったら、去年の年末の各県がオープン情報で出しているようなこういう情報はとって、実際、一体、貸したい人の総希望面積はどうなのかは集めて予算編成するのが、査定するのが筋なんじゃないですか。違いますか。

大島委員長 佐藤官房長、もう一度きちっと答えなさい。(玉木委員「いや、財務大臣」と呼ぶ)

 いや、これは政策の中身にもあることだから、官房長、ちゃんと答えなさい。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたように、この機構につきましては、ようやく立ち上がったというような状況になっておりまして、知事さんがトップになって、先頭を切ってこういったことを進められている県もある一方で、まだまだ体制が不十分な県もあるといったような状況に相なっているところでございます。

 そうした中で、今、私どもといたしましては、まさにマッチングといったものを進めていただくということで、今関係者が一体となってこの利用調整活動に取り組んでいるところでございまして、そうした中で、各県に調査を行えというお話でございますが、やはり今現場での調整活動をやっておりますので、そうした負担にならないようにしていきたいというふうに思っております。

 いずれにしましても、この関係につきましては、権利移動がおおむね終了する三月末時点のデータを集計しまして抜本的にこの評価を行うこととしておりまして、これを踏まえて、各都道府県で機構を軌道に乗せるべく、今、全力を挙げていきたい、こういうふうに考えているところでございます。

玉木委員 テレビをごらんの皆さんもちょっともう一回これに戻ってもらいたいんですが、それは、田んぼをやっているとき、農繁期のときはなかなか動かしにくいのはわかりますよ。農閑期になったら、これから権利移動が動いてくる。だから、ここからぐっとふえてくるのもわかります。

 でも、この予算を見てくださいよ。それは、二〇%とか三〇%とか四〇%使っているんだったら、ぐっと伸びたら足りなくなるかなと思うけれども、〇・二%ですよ。これは一月末現在で一応ピックアップした数字ですけれども、これを見て、いきなり一カ月でぐわっとくると思いますか。少なくとも、足りないんだったら調べますよ。だって、国民の大切な税金なんだから。その態度が問われているんだと思いますよ。

 私が一つ提案したいのは、間もなく二十七年度の当初予算の議論が始まると思います。ですから、二十七年度の当初予算の、また中間管理機構の予算はありますから、この議論までには、今の中間管理機構の実施状況と予算の執行状況をこの予算委員会にきちんと出してから二十七年度の当初予算の議論をすること、このことを、ぜひ、委員長、お取り計らいをいただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

大島委員長 理事会で協議します。

玉木委員 よろしくお願いします。怒らないでください。建設的な提案をしているので、お願いいたします。

 では、続いて次のテーマに行きたいと思うんですが、本当に皆さん、これは真面目に考えないと、財政再建をどう進めていくのか。やはり補正予算が単年度主義やさまざまな財政規律の隠れみのになっているんじゃないのかという問題は、これは我が党だけではなくてるる指摘があった問題です。ですから、こういったことを、やはり財政法二十九条が定める緊要性についてはより厳格に見ながら査定していくということを、財務大臣にはぜひ御配慮いただきたいと改めて要望したいと思います。

 TPPについて伺います。

 今、農協改革などで非常に騒がしい状況になっておりますが、その陰で、TPPが大きな進展を見せているやに報道がされています。

 私がきょう聞きたいことは一つです。米について、米の関税についてであります。

 甘利TPP担当大臣はこの交渉に関してこのようにおっしゃっています。一月二十七日、米を一粒もふやすなということは不可能、一月三十日、譲歩の範囲をできるだけ小さな範囲で決着させることが全て、このように述べておられます。

 米についてもいよいよ譲るのか、こういう懸念が農村に広がっています。米価が下がり、不安が広がる中で、いよいよTPP、米までかという農家の不安は、私は当然のことだと思います。

 甘利大臣、米を一粒もふやすなということは不可能だ、譲歩の範囲をできるだけ小さくする、つまり譲歩が前提になったような言い方。総理もこれは同じ認識でしょうか。私は、もし仮に、牛肉や豚肉や乳製品いろいろありますけれども、米について譲歩するようであれば、さすがにこれは、御党、自民党の公約、そして衆参で決めた国会決議に反すると思うんですけれども、総理、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 私は甘利大臣の発言はつまびらかには承知をしておりませんが、日米間の物品に係る協議については、米の問題も含めて日米間ではまだ多くの課題が残っておりまして、交渉は何ら確定しているものではありません。現在、日米間でいかに間合いを詰めていくことが可能か、その着地点を探っている状況でございます。

 その中において、恐らく甘利大臣の発言については、そういう趣旨で述べられたものなんだろう、このように思いますが、私は、日本というのはまさに瑞穂の国であります。単にこれは作物ということだけではなくて、そこには日本の文化と伝統が込められている、このように認識をしているところでございます。

 香川県もそうでありますが、日本各地の田園風景をしっかりと次世代に引き渡していくことも我々の責任だろう、こう思っているわけでございまして、米は最大のセンシティブ品目でありまして、ここはもう再三、米国側にも我々は強く強く強く主張しているところでございます。

 国益にかなう最善の道を追求し、TPPの早期妥結に向けた最大限の努力をしていく考えでございます。

玉木委員 総理、交渉中なのでそういう言い方になると思うんですが、米農家の方は、ことしの作付はどうしようかと。うちもそうなんですけれども、ちょうど苗の注文の時期なんですよ。総理の、とにかく聖域の中の聖域と今おっしゃいました、米を守ってくれる、あるいは所得を倍増してくれる、このことを信じてやっている農家も多いと思うんです。

 総理、もう一回伺いますけれども、今月、来月、苗の注文をしていいですか、答えてください。

安倍内閣総理大臣 もちろん今、日本は既にミニマムアクセスを受け入れているわけでございますが、今、来年に向けての苗の注文をしていいかどうかという御質問でございますが、それはもちろん、もう既に農家の皆さんには準備をしていただきたい、このように思うわけでありまして、来年の作付に影響があるということはもちろんございません。

 その上において、先ほど申し上げましたように、しっかりと国益を守るために我々としては全力を尽くして交渉していきたい、こう思っている次第でございますし、米をしっかりと守っていくという思いについては、玉木議員と全く思いは同じでございますし、私は、初当選のとき、ちょうど細川内閣でございましたが、ウルグアイ・ラウンドを受け入れる、ミニマムアクセスを受け入れるというときに、あそこに座っている根本議員とともに国会の前に座り込みをしたこともあるわけでございます。そういう強い意思を持って交渉に臨んでいきたい、このように考えているところでございます。

玉木委員 野党、我々国会議員に対する答弁は、総理、何とでもできるんですけれども、やはり、農家の方は生活がかかっているので、そこは、ぜひその思いを全身で受けとめて、ぜひ強い交渉で臨んでいただくことを改めてお願いしたいと思います。

 次に、農協改革についてお伺いします。

 私の質問はシンプルです。今、農協改革の最大の焦点となっている全中の監査権限をどう見直そうかということだと思うんですが、私は、しっかりやるべきところはやったらいいと思います。ただ、質問は、この監査権限を見直すことと農家の所得がふえていくことはどうつながるのか。

 総理は、この委員会でもおっしゃいました、改革のための改革はしない、きちんとした道筋のある改革をすると総理はおっしゃいましたので、この監査権限の見直しと農家所得の向上との関係、農家の皆さんにもわかるように、わかりやすく御説明ください。

安倍内閣総理大臣 この監査権限について、さまざまな議論がございます。いわば、全中が各農協を監査しているという状況がございます。

 昭和二十九年にできたわけでございますが、当時はたくさんの農協があったわけでございますが、一万の農協があったわけでありますが、今は七百に集約をされているわけでございます。

 我々としては、主役は農家であり、そして地域の農協であろう、こう考えるわけであります。

 その中において、いかに生産コストを下げていくか、そして付加価値を上げていくか、この創意工夫を農家とともに地域の農協が行っていく中において、さまざまな営業、販売活動も積極的に行っていただきたい。そのことによって、付加価値を高めていく、生産性を高めていく努力、あるいは、販路を拡大していく努力、海外に輸出をしていく努力を、まさに今まで十分開花されていないこうした潜在力を生かすことによって、必ず農家の収入をふやすことができる、こう思う次第でございます。

 例えば、まだもちろん農協改革は行っておりませんが、今までなかなかふえていかないと思われていた農水産物の海外への輸出でございますが、一千億円ふえたわけでございます。一千億円ふえたというのは、今までなかった需要をつくり出すことができたわけでございまして、かかわっている農家の数が同じであれば、その分だけ収入がふえていくということにもつながっていくわけでありまして、そういう意味において、この農協システム全体を変えていく上において重要ではないか、こう考えているところでございます。

玉木委員 私は、今の説明を聞いて、なぜ全中の監査権限をいじると農家の所得がふえるのかというのは理解できませんでした。

 ですから、例えば、これまでも農協改革はさまざまな提案がされてきました。いわば地域独占になっていますから、地域が重複するところで新たな、いわば第二農協をつくる、そういう要件を緩和しようとか、例えばトマトだけの新しい農協をつくろうとか、私は、そういうことはすごく改革につながるし、農家の所得にもつながると思うんですが、監査をいじったからといって何か所得がふえるような気は、今総理の説明を聞いただけではしませんでした。

 改革のための改革にならないように、ぜひ御留意をいただきたいと思います。

 最後に、資料の五をごらんください。

 これは、自民党の政権公約、そして再興戦略、政府の決定にも入っておりますが、「農業・農村の所得倍増を目指します。」ということをよく言われます。

 私、農業所得というのはわかります。統計上の概念で、これはたしか約三兆円でした。でも、私が聞きたいのは、常に「農村の所得倍増」と書いてあって、このデフレの時代なので、倍増というのは、皆さん、どんなイメージか。これは、十年で倍増しようと思ったら、単純平均、年率七・二%ですよ。一・〇七二の十乗をしたら二になるんですよ。これは本当にできるのかどうか。

 資料六を見てください。

 これは私が言っているんじゃなくて、農林水産省の審議会で農村の所得倍増を議論する中で、農村の定義について、これまで役所が明確に定義したことはない、これは農林水産省の課長さんが言っています。

 次、農林水産省の審議官。昨年四月、一昨年四月ですね、与党で議論が始まり、農業だけで倍増はどう考えても道筋がないという中で、農業と六次産業化を中心とした農業、農村所得で倍増していくということになり、農業、農村の所得倍増という言葉ができたとなっています。

 そして、生源寺さん、大変有名な方でありますけれども、審議会の会長さんです。こうおっしゃっています。所得倍増を政府として基本計画に書き込むことはふさわしくない、ある意味では倍増ありきで策定されたものとおっしゃっておられます。

 所得をふやしていくこと、増大させていくことは必要なんですが、この年度末、三月末に、今度新たな基本計画を策定することになっております。私は、その基本計画の策定の中にはやはり現実的な目標を定めて、農家の皆さん、学者の人や官僚の皆さんも納得できるような、そういう目標に改めるべきだと思うので、所得増加とは書いても、もうそろそろこの倍増という言葉は取り下げたらいかがでしょうか。最後に総理にお伺いします。

安倍内閣総理大臣 農林水産大臣が指定されておりませんので、私がお答えをさせていただきたいと思います。

 いわば、今も委員が御指摘になったように、農業の所得だけではもちろんそれは難しいわけでありますが、これからはまさに六次産業を進めていくわけであります。村ぐるみで加工、流通、あるいは観光も含めて、農村を訪れる人々がお金を落としていく、それぞれの付加価値を上げていく努力をしていけば十分に私は可能ではないか。

 また、日本の国内においてはだんだん人口が減少していくという状況にあるわけでありますが、アジアの国々は、さらに一人当たりのGDPがふえていく中において、ただおなかをいっぱいにするだけではなくて、より、自分の食べたいものを食べる、よりおいしいもの、安全なものを食べていく、そういう大きな変化が生まれつつあるわけでありまして、農業の、いわば農産物の市場は、加工も含めれば相当のスピードで大きくなっていくわけであります。そうした成長を日本がしっかりと取り入れていくことができれば十分に私は可能性もあるんだろう、このように考えているところでございます。

玉木委員 本当に農家の所得が倍増するような現実的な政策をお願いして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

大島委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

大島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。

 この際、前原誠司君から関連質疑の申し出があります。細野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。前原誠司君。

前原委員 民主党の前原でございます。

 昨年の十月の三日にこの場で質問をさせていただきまして、アベノミクス五つの誤算ということで質問をいたしました。

 これだけ円安になっているのになかなか輸出が伸びない。それから、これだけ金利を下げて、そしてマネタリーベースをふやしているのにもかかわらず、法人向け貸し出しが伸びない、他方で内部留保がどんどん積み上がっている。それから、実質賃金、実質可処分所得が減少している。悪いインフレが起きている。そして、財政出動によって復興、民間建設投資への悪影響が起きている。

 この五つの誤算というものを前回やらせていただいたわけでありますが、きょうは、誤算ではなくて、アベノミクスのリスクについてお話をいただきたいと思います。

 この国会でも、外交、安全保障を含めて、正しいかどうかという判断は別にして、何かやったときのリスクというものがやはりあって、そして、それについて本当に国民に対して説明ができているのかということについて問われるケースがあるわけでありますが、きょうは、このアベノミクスのリスク、余り国民に語られていないリスクについてお話をさせていただきたいと思います。

 さて、日銀黒田総裁、きょうは二月四日ですから、ほぼ二年前の四月四日に異次元の金融緩和というものをなされました。二年で二%の物価上昇ということは達成できそうですか。そして、目標は変わっていませんか。

黒田参考人 日銀の金融政策決定会合の最近時点での議論及びその後の公表文でもお示ししておりますとおり、最近の原油価格の下落というものが足元の物価上昇率を押し下げていくということではあるけれども、長期的に見ると、経済成長率を引き上げ、需給ギャップを縮小していくということによって物価の押し上げ要因として働くということを述べております。

 そうしたもとで、二〇一五年度の物価上昇見通し、昨年の秋の段階では一・七%と見通しておったんですけれども、これを一%に引き下げました。ただ一方で、二〇一六年度の物価上昇見通しは、二%台に乗るという見通しを変えておりません。

 したがいまして、原油価格が現状程度の水準から先行き緩やかに、急速に上がるとは思っておりませんが、緩やかに上昇していくという前提に立ちますと、原油価格下落の影響が剥落するに伴って消費者物価の前年比は伸び率を高めていくというふうに見ておりまして、二〇一五年度を中心とする期間に二%に達する可能性が高いという見通しを維持しております。

 したがいまして、二%の物価安定の目標を、二年程度を念頭に置いて、できるだけ早期に実現するという量的・質的金融緩和の考え方は変わっておりません。

前原委員 黒田総裁、二年前は、二年で二%、しかも、できるだけ早くとおっしゃった。そのときは多くの国民、マーケット関係者は、四月までに二%上がる、二%に物価上昇がなるというふうに考えていたんですよ。原油価格のことをおっしゃいましたけれども、それだけでは原因になりませんよ。後でお話ししますけれども、内政的な要因でうまくいっていないことがある。

 しかし、原油価格の下落ということについて言えば、例えばリーマン・ショックのようなときも起こり得るし、そしてギリシャに端を発するユーロ危機のようなことも起こり得るし、東日本大震災のようなものも起こり得る。常に何か起こるんですよ。そのことを理由に、自分が二年で二%と、みずからがおっしゃったんですよ。こちらが言ったんじゃない。

 二年で二%達成するということを今ほやらほやらと答弁されましたけれども、結局二年で二%はできていなかったんじゃないですか。二年で二%はできていませんということをまずお認めになることから始められて、ごまかすことではなくて、まず二年で二%はできませんでしたということから始めるのが筋じゃないですか。

黒田参考人 これは、二〇一三年の四月に、現在の量的・質的金融緩和を導入した際の決定事項、それからその後の公表文で一貫して申し上げているわけですけれども、きっちり二年で二%に達するということではなくて、二〇一五年度を中心とする期間に二%に達する可能性が高いという見通しを申し上げております。

 それから、量的・質的金融緩和を導入した際の公表文でも、二年程度を目途に、二年程度を念頭に置いて、できるだけ早期に二%を達成するために量的・質的金融緩和を導入したわけですけれども、その政策自体は、きっちり二年でやめますということではなくて、これもそのときから申し上げておりますし公表文にも出ていますが、一種のフォワードガイダンスと言われるものですけれども、二%を達成し、それが安定的に持続するようになるまで量的・質的金融緩和を継続するというふうに申し上げているところでございます。

前原委員 多くの人たちは、二年で、つまりは二〇一五年の四月の段階で二%に上がるという意思表示をしたと思っていた。それをいろいろと理由をつけておっしゃっているけれども。

 では伺いますよ。はっきり答えてください。二〇一五年度を中心とする期間とはいつですか。二年程度とはどのぐらいですか。それにちゃんと答えてくださいよ。

 つまりは、二年程度というのは、二年と三百六十四日も二年程度なんですか。それは普通三年というんですよ。二〇一五年度を中心とするといったら、二〇一三年の四月から二年だったら大体半年前後ですよ、中心とするとは。みずからがおっしゃった。我々が言って聞いているんじゃないですよ。総裁がおっしゃったんです。総裁がおっしゃって、それでマーケットもそれについていろいろ判断しながら動いている。

 では、二〇一五年度を中心とするというのはどこからどこまでですか。二年程度というのはどれぐらいですか。はっきり答えてください。

黒田参考人 これも以前から申し上げている点で、委員も御承知と思いますけれども、政策委員会で決定し、それを公表文で示し、さらには私も記者会見等で申し上げておりますけれども、一貫して二年程度の期間を念頭に置いてということを言っております。

 その程度がどのくらいかというのは、まさに二年程度ということ以上のものはないわけでして、どこの国の中央銀行も、十八カ月から二十四カ月程度と言ったり、中期と言ったり、いろいろな言い方をしておりますけれども、ピンポイントして、二年間できっちり二%にします、あるいはなりますというところはないわけでして、二年程度を念頭に置いて、できるだけ早期に二%の物価安定の目標を実現する、そのために量的・質的金融緩和を導入した。

 そのもとで、二〇一五年度を中心とする期間ですので、二〇一五年度いっぱい、その前後に若干はみ出るところもあるかもしれませんが、二〇一五年度を中心とする期間、これも一貫してそういうふうに申し上げているわけでして、従来から言っていることと現在言っていることとは全く違いませんし、今、同じことを申し上げているわけです。

 ただ、何回も申し上げますが、金融政策は金融市場を通じて実体経済への影響を与えるものですから、一定のタイムラグとか、あるいは不確実性というのを常に伴っているわけです。そうした中で、先ほど申し上げていますように、二年程度を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する、そのために、必要であれば常に調整を行う用意があるということで、そうした考えのもとで、昨年の十月に量的・質的金融緩和を拡大したということでございます。

前原委員 今の答弁の中で若干尻尾を出されたのは、やはり二〇一五年を目途に、ちょっとはみ出るかもしれないということをおっしゃったわけでありますが、つまりは、三年にはならないというのが、今の話だったら二年程度ですから、三年になったら二年程度じゃないんですよ。ということは、今の話でいうと、まあ、普通は四捨五入だけれども、切り捨て、つまりは二年と三百六十四日、これも二年程度というところに入るのかなというところで、ごまかされているのではないかと思いますね。

 先ほど申し上げたように、いろいろなイベントが起きるんですよ。まだこの二年間、二年弱は起きていない方ですよ。まだまだいろいろなイベントが起きるかもしれない。その中において、みずからが、岩田副総裁なんか二年で二%上げられなかったらやめるとおっしゃったじゃないですか。これはやめてもらわなきゃいけない。

 つまりは、みずからが言ったこと、変わらないとおっしゃっているけれども、どの世界で二年と三百六十四日が二年程度ですか。それは三年程度というんですよ。そういう意味においては、まさに、みずからの政策的な実現ができていないということをはっきり認めないで、なし崩し的にこの施策を続けてやっている。まあ、続けると言わないといけないんでしょう。

 だけれども、これは、総裁、今から別の形で質問していきますけれども、この二年で二%について、三年たってできていなかったら、これはもう言いわけできませんよ。三年たって、言いわけできませんよ。このことについては明確に申し上げておきます。これは、後で別の質問で答弁があれば、三年たってできていなかったら、それで二年程度と言うんだったら、そんな大うそつきはない。

 さて、物価上昇率、パネルをちょっとごらんいただきたいと思いますが、これは今〇・五なんですね。だから、二カ月で二%なんかとてもじゃないけれども無理だということであります。

 先ほど、総裁は原油価格のことをおっしゃいました。右側の上が原油価格でありますけれども、今、一バレルが五十ドル前後ですね。底を打ったような感じもいたしますが、これがどうなるのかというのはわかりません、誰もわからないと思いますけれども、下を見ていただくと、九十ドルになった場合は何とか、一年たったら二%ぐらいになるかもしれない。七十ドルだったら一・五を割り込むぐらいであります。

 しかし、こんな物価上昇というのは誰も望んでいないわけであって、もともと、物価上昇が望ましいものというのは、需給が逼迫をして、そして、いわゆる景気が過熱をする中での物価上昇というのはいい物価上昇で、外的な要因で、例えば原油価格が上がる、無理やり円安にして輸入価格が上がる、それで物価を上げるなんというのは、これはまさに悪い物価上昇、誰も望まない物価上昇であります。

 さて、ここで、先ほどの話、二年程度ということになれば、二〇一六年の四月までに本当に二%になるのかどうなのかということが大きなポイントになってくるわけであります。

 次のパネルをごらんください。

 これがこの間も議論しました実質賃金、実質可処分所得でありますけれども、これには十七カ月連続と書いてありますけれども、きょう発表されて、十八カ月連続マイナスですよ、実質賃金。マイナス一・四%、連続十八カ月マイナス。しかも、一年間で見ると、実質賃金は前年比マイナス二・五%。これは、リーマン・ショック発生時の、二〇〇九年のマイナス二・六と同等の下げ幅ですよ。つまりは、リーマン・ショックの後と同じぐらい、この一年間で実質賃金が下がっている。

 先ほど山本幸三委員が質問をされました。あたかも消費税を上げたから実質賃金が下がったようなことをおっしゃるけれども、そうじゃない。これは、グラフを見ていただくと、十八カ月連続ですよ。今は二月ですね。消費税が上がったのは去年の四月ですね。ということを考えると、その前から、七、八カ月前から実質賃金は下がり始めているんです。つまりは、消費税の影響じゃないんですよ。

 これを見ていただくとわかりますけれども、輸入物価が上がっていることが相関しているわけですね。ということは、まさに異次元の金融緩和ということに伴うことも大きな要因として円安が進み、輸入物価が上がって、そして結果的に多くの実質賃金が、実質可処分所得が下がっているということであります。

 総理、この十八カ月連続実質賃金マイナス、そして一年で見ると、リーマン・ショック以来の同等の下げ、本当に好循環ですか。そして、こういう内政的なところがよくならないと本当の物価上昇というのはないんじゃないですか。

安倍内閣総理大臣 まず、先ほどの日銀総裁との議論でございますが、これは、政府と前総裁の白川さんと合意をして、二%の物価安定目標を定めたわけであります。政府と中央銀行が同じ目標を持った。その上において、手段は日本銀行に任せたわけでございますが、要は、ポイントは、それに向けて進んでいるかどうか、あるいはおくれているかどうかについて中央銀行がちゃんと説明責任を果たしていくことが重要であろう、そこが一番のポイントだろうということ。

 先ほど、そういう意味においては、石油価格の下落等について説明をされ、我々としては、いわば政府と日本銀行がここで合意をしたわけでありますから、その点では、我々政府としては納得しているところでございます。

 そこで、実質賃金について言えば、この国会でも何回も議論したわけでございますが、景気が回復局面になりますと、人々は仕事が得やすくなるわけであります。しかし一方、スタートする時点においては、短時間のパートから始める人も多いと思いますし、また企業側も、なかなか正規の雇用はしない、慎重な姿勢がまだ残っているのも事実であります。その中で、働く人の数はふえている。しかし、働く人の数はふえていきますが、いきなり一千万円とか五百万円という収入にはならない、パートからスタートする。

 例えば、安倍家において、私がそれまで三十万円の収入を得ていて、しかし、女房がどこかで仕事をする、残念ながらそういう経済状況ではない中において、しかし、私が三十万円の収入であれば、いわば平均すれば三十万円なんですが、では、景気がよくなって、女房がパートで十万円の収入を得たとすると、安倍家としては四十万円なんですが、平均すれば二十万円に減ってしまうという現象がまさに今起こっているのがこの実質賃金の説明であって、ですから、総雇用者所得で見なければいけない。

 総雇用者所得、いわば働いている人の全員の稼ぎ、ここで見れば、これはずっと上昇しているということは申し上げておきたい、こう思うわけでございますし、この総雇用者所得で見れば、消費税の引き上げ分を除けば、総雇用者所得はプラスになっておりますし、消費税分を入れても、十二月にやっと全体でもプラスに、消費税分を入れてもプラスになってきたということであります。

 実際、雇用の分野においては、二十二年ぶりの、まさに有効求人倍率が高い水準にあるのは事実でありますし、名目賃金はずっと上がっているのも事実であろう、このように思いますし、高卒、大卒、それぞれ内定率は上昇しているわけでありまして、間違いなく我々は好循環の中に入ってきている、これをしっかりと回していくことが今求められているんだろう、このように思います。

前原委員 全然拍手するところじゃなくて、だって、一番のポイントはGDPでしょう。この一年間、GDPはマイナスじゃないですか。それで好循環が続いているといったって、何の説得力もないですよ。しかも、十八カ月連続、実質賃金が下がり続けているわけですから、どんどんどんどん。だって、先ほどの総雇用者所得にしたって、プラスになった十二月はボーナス月だから上がりますよ、ある程度。だけれども、実質賃金はそれでもマイナスなんですよ。その中で、実際にGDPがこの一年間はマイナスになっているんじゃないですか。

 だから、そういうことを含めて考えると、きょうはこの指摘をしておく中で、私がきょう一番申し上げたいことは、つまりは、原油価格がどうのこうのじゃなくて、異次元の金融緩和が長くなればなるほど、つまりは国債引き受けというストレスがたまっていっている、そのことに対するいわゆる暴発リスクというものをどんどんどんどん高めていっているということをきょうはお話ししたかったので、これについては指摘をするにとどめておきます。

 さて、日銀総裁、黒田さん、二〇一七年の四月、消費税を八から一〇まで上げる。それから、総理は、景気弾力条項は削除するということをおっしゃっています。仮に、日銀の予想ということで、先ほどおっしゃったことを総括すると、二〇一五年については、一・七%のCPI上昇だったけれども一・〇に落ちる、しかし、来年は二・二まで上がる、こういう見通しですよね、これが日銀の見通しですよね。

 これは、私、黒田総裁の責任だけではないと思うんですが、消費税が一年半先送りになったことによって、より難しい金融政策を求められるということになると思うんですね。

 つまりは、仮に、私はなかなか難しいと思いますよ、バブルのころで、一九八五年から八九年の一番バブルの最盛期でCPIは一・二%ですから、そういう意味では、二%というのはなかなか難しいと思いますけれども、これは結論が出る話で、出たときにまた厳しくやらせてもらったらいいわけですから、それはそれでまたやらせていただくとして、仮に、日銀が言われるように、こうなったとしましょう。そうすると、市場は出口が近づいたのではないかということを織り込み始めますね。そうすると、今、国債を大量に買う中で、イールドカーブ全体を抑え込むということで金利を抑え込んでいるわけでありますが、金利上昇リスクというのが出てくる。

 しかし、消費増税というものを何とかやり遂げるためには、これは五から八にするときもそうでしたけれども、いかに消費税を上げやすいような環境、つまりは、勢いをつけて消費増税に突入するかというのが二〇一六年になるわけですね。そして、二〇一七年の四月以降については、今度は反動減が来ますから、反動減が来るということになると、これはまた金融政策も含めて後押しをしなきゃいけないということになりますよね。

 そうなると、言ってみれば、去年の十月三十一日に追加緩和をされて、かなりの勢いがついた国債購入というものを、この消費増税の前後では続けざるを得ないような状況になるんじゃないですか。

 これは、総裁、日銀の想定するCPIに基づき、そして、安倍総理が一年半延ばされた消費増税の前後の財政金融政策の金融政策を扱われるお立場として、今私がお話をしたことについてどうお考えですか。

黒田参考人 日本銀行の金融政策は、あくまでも二%の物価安定目標を実現し、しかも、それを安定的に持続できるようにするということが目標でございますので、その考え方のもとに必要な調整を行っていくということに尽きると思います。

 財政の問題は、委員御指摘のとおり重要でありますし、消費税の問題も極めて重要だと思いますけれども、それは基本的に、政府、国会において議論され決定されることでありまして、私どもとしては、そういったことで決まってくることを前提にして、いかにして二%の物価安定目標を実現し、安定的に持続できるようにするかということに尽きると思います。

 委員の御指摘の趣旨はよく理解いたしますけれども、あくまでも中央銀行としての役割は、やはり物価安定、具体的には二%の物価安定目標を安定的に持続させるということに尽きると思います。

前原委員 今総裁がおっしゃったように、二%の物価安定目標、これはなかなか難しいと思いますよ。一般では、展望レポートは願望レポートと言われていますから、二%にするというのはなかなか難しいわけでありますが、そうなるにしても、あるいは日銀が言っているように二%になるにしても、消費税引き上げの時期というものが、非常に複雑な要因になってきたということは、先ほど申し上げたとおりであります。

 となると、このグラフを見ていただきたいんですね。これは、国債発行のうち誰がどれだけ持っているかというものの推移をあらわしたものです。

 右の丸を見ていただきますと、一四年の九月末の全体が八百六十・七兆円ということで、日本銀行は五分の一なわけでありますけれども、これはまだ年末ではないですね。これだと大体百八十兆円ぐらいですかね。だから、一四年末が二百兆円になるということですから、二一%よりも比率は今高くなっているわけですね。

 しかも、QQE1というのは、これは約二年前、一年十カ月前の異次元の金融緩和を日銀が始められたころ、これで角度が上がって、そして去年の十月三十一日にまたさらに買い増しの角度が上がって、今これを前提に国債を買っておられるわけですよ。

 となると、先ほど私が申し上げたように、まず二%にするために緩和は続けられるんでしょう、金融緩和、量的緩和は続けられるんでしょう。そして、消費税の前というもの、速度をつけなきゃいけない、金融政策としても、その前に出口というのはなかなか考えられない、消費税を上げた後も、反動減があるから、そのときに出口ということも考えられないということになると、一七年の末まで今のものをやり続けるとしたら、何と日銀が持つ国債の量というのは四百四十兆円ぐらいになるんですよ、四百四十兆円。

 これは、要は、国債の大体半分ぐらいを日本銀行が保有するということになりますし、そして、対GDP比でいうと八割ですよ。GDPの八割を日本銀行が国債として持つということで、これは異常中の異常ですよね。

 つまりは、これはまさに国の借金の肩がわりを日本銀行に実質的にやらせているという、財政ファイナンス、財政法第五条で禁止をしている財政ファイナンスに実質的になっているということじゃないですか。

 これは財務大臣、種々の答弁がありますので、時間がもったいないので省略しますが、直接引き受けじゃないと。つまりは、直接引き受けじゃないからいいんだ、直接引き受けを禁止しているんだ、こういう答弁を今までされていますが、一日後に引き受けていますよね。つまりは、民間の金融機関に買わせて一日後に買わせている、こういうことであります。

 違う質問をします。

 仮に、今私が前提とした、消費増税の前後というものに、これだけのいわゆる負荷を、国債購入、日銀に負荷をかけさせるということが、それまでにできるかどうかもわかりません。

 つまりは、後でお話をしますけれども、二つのリスクがあるんですよ。一つは、それまであるいはその後に国債が暴落して金利が急騰するリスクがある。つまりは、それだけ、発行量の半分近くを国が持っているということになったら、これは中央銀行と日本の政府というのはずるしているんじゃないかと市場が判断した段階で、国債価格は暴落し、そして金利は急騰しますよね。それまでに来る可能性がありますね。その可能性が、財務大臣、ないと言い切れますか。

麻生国務大臣 この金融緩和の一種の出口戦略みたいな話なんだと思いますけれども、これは具体的に言及……(前原委員「えっ、出口戦略」と呼ぶ)出口戦略でしょう、基本的には。(前原委員「いやいや、金融政策の話をしているんです。出口というのは最後の話ですよ。出口じゃないですよ。今はオンゴーイングの話をしているんです」と呼ぶ)ああ、オンゴーイングね、オンゴーイングで、それについて。済みません、じゃ、出口じゃない。出口じゃないかと思って聞いていたので……(前原委員「出口じゃないです、違う答弁しないでください」と呼ぶ)はい。

 日銀の国債引き受けというのは禁じられているという話なんだと思いますが、これは、御存じのように、戦前もしくは戦中において日銀引き受けにより発行した結果、強烈なインフレになったということに基づいて、他の主要国も同様なものですけれども、公債の日銀引き受けというのを原則として禁止をしておるということはもう御存じの状態なんで、これは市中消化の原則というものを定めたものなんですが。

 他方、日本銀行の量的また質的金融緩和のもとで今行っている国債の買い入れというものは、二%の物価安定目標というものの実現のための金融政策が目的ですから、日銀みずからの判断でこれは行っておられるということだと理解をしております。

 全て、マーケットに流通している国債を対象に、金融機関を相手方にして実施しているものだと理解しておりますので、いわゆる財政法でいいます日銀の国債引き受けには当たらないというように理解しておかないといかぬのじゃないかと思いますけれども。

前原委員 ちょっと、財務大臣に質問しない方がよかったと今思いましたが。

 総理に聞きます。

 総理は、好循環を生み出すんだ、そして、要は思い切ってやるんだと。後で高橋是清さんの話をさせてもらいますけれども、思い切ってやるんだということで、そして有効求人倍率も上がった、株価も上がった、好循環になったということをおっしゃっています。

 我々はそうでないことを、格差の問題、実質賃金の問題、さまざまな問題を言っておりますが、仮に総理がおっしゃっていることが正しいという前提に立ったとしても、こういう、つまりは日銀に国債を買わせるというストレスをずっとためていく中で政策を行っていて、日銀が国債引き受けができなくなるような事態になったときには全てオジャンになるというリスクについて、国民に説明されてきましたか。そして、財政破綻は絶対にない、国債暴落リスク、そして金利高騰リスクは絶対ないんだということを言い切れますか、この政策は。

安倍内閣総理大臣 日本銀行が市場を通じて国債を買っている、これはまさにただいま財務大臣が答弁したとおりでありまして、我々が日本銀行と結んだ政策合意というのは、二%の物価安定目標をいわば定めて、それに向かってさまざまな政策をとっていく、その中で大胆な金融緩和という政策をとっている。その中で何を買うか。国債を買うのか、何を買うか、これはまさに日本銀行が定めることであります。

 我々はまさに、財政需要の中で税収との関係で公債を発行しているにすぎないわけでありまして、我々が日本銀行にこれだけ国債を買えと言ってはいない。そういう意味では、財政ファイナンスでは全くないということは申し上げておきたいと思います。

 同時に私たちは、経済の再生と財政の健全化、この二つを同時に達成するという、この道しかない、こう考えているところであります。

 私たちが進めている政策によって、皆さんのときよりも税収は十二兆円、十二・二兆円ふえました。その結果、皆さんのころの二十五兆円のいわばプライマリーバランス赤字が約半減して、全くの半分ではございませんが、半減して十三・四兆円かな、に圧縮しているわけでありますし、一〇年と比べて一五年のプライマリーバランスの赤字をGDP比で半減するという目標も大体、おおむね到達できるというところまで来ているわけであります。

 いわばそのことによって国債に対する信認も維持できている結果が、今の国債の金利、低い金利としてあらわれているんだろう、このように思います。

 ただ同時に、もちろん前原委員が指摘をしておられる点にも十分に私たちも留意をしながら、国としての信認を維持していきたい、こう思っているところでございます。

前原委員 二〇一三年六月に、イギリスで安倍総理は講演されて、高橋是清さんのことを取り上げて演説されたのを、御自身の演説ですから覚えておられると思います。高橋是清さんという方が一九三一年に大蔵大臣につかれたわけでありますけれども、このリフレ政策を称賛されているのが安倍さんであります。

 揚げ足をとるつもりはありません。確かに、第一次世界大戦の後のいわゆる需要不足で不景気になって、そして関東大震災、そして金融恐慌、世界恐慌、この中で、大変な状況にある中で高橋是清が出てきた。そして、経済の回復を見事にやり遂げたというのは、その時期で見たら事実です。

 これは何をやったかというと、いわゆる緊縮財政から積極財政に変えた。積極財政に変える手法として何をやったかというと、今のお話の国債の引き受けをやった。国債の引き受けをやって、そのかわり、今と逆ですよ、高橋是清は、逆に、民間の金融機関に引き受けさせた。売りオペをやったわけですね、今は買いオペをやっていますけれども。つまりは、民間に買わせて買いオペをやっていますけれども、そのときは、国債を大蔵省が引き受けて、そして買わせるということをやっている。その違いはもちろんありますけれども、実際問題、積極財政をやったからよくなった。

 しかし、何が起きたかというと、まずインフレが起きた。今と同じですよ。つまりは、インフレが起きて、何が起きたかというと、一般の労働者の実質賃金がずっと下がり続けた。高橋是清のときも同じことが起きている。これがまず一つ。これは事実であります。

 そして、二・二六で殺される。そして、いわゆる財政の出動というものに対して歯どめがかけられなくなって、どんどんどんどん、軍部の暴走も含めて収拾ができなくなって、結果的には国家財政は破綻するわけですよ。

 つまりは、戦争があったからとか軍部があったからなかったからということではなくて、その一時期を見たら、確かに見事なまでに経済を回復させるのが高橋是清なんですよ。

 ただ、きょう私が申し上げたかったことは何かというと、国債をずっと買い続けて、そして、どんどんどんどん日銀の国債保有が膨らんでいっている中で、今申し上げたように、突然やってくるんですよ。例えば、ある国債格付会社が、日本国債の格付を、これは実質的に財政ファイナンスじゃないかと。直接引き受けしていないから財政ファイナンスじゃないと言われますけれども、実態的に見ていったら、これは財政ファイナンスじゃないですか。

 実態的に見たら財政ファイナンスだというふうなことを、先ほどの有志連合の説明と一緒ですよ、政府が幾ら説明をしたって、外形的にどう見えるかが大事であって、財政ファイナンスと見られて、そして、ある時期に、例えば国債の格付が下がる、そのことによって国債が暴落し金利が急騰する。そういうストレスをためる政策をして、今、よくなっている、なっているだろうと言われても、それは国民は知らないわけですよ、リスクをためてやっているということについては。

 つまりは、そういうリスクを抱えているということについてちゃんと説明をしていないし、先ほど答弁は、それは政府はちゃんと財政規律に基づいてやっていますから、国債を買っているのは日銀ですからと、何か日銀のせいにしているような話をしている。

 では、日本銀行総裁に伺いますけれども、この政策を本当にずっと続けていって、途中で国債の暴落とか、あるいは金利急騰のリスクはないと言い切れますか、自分の政策をやっていて。つまりは、この政策というのは、国民全体を巻き込んだギャンブルのような政策じゃないですか。

黒田参考人 日本銀行の金融政策は、あくまでも物価の安定を達成するために行っているわけでありまして、財政ファイナンスのために行っているわけではないということは、従来から申し上げております。

 もとより、委員も懸念されておられるように、財政構造を健全化し、国債に対する信認を確保していくということは極めて重要であり、これは日本が国全体として取り組まなければならない課題であるということは、そのとおりだと思います。現に政府も二〇二〇年の財政構造健全化目標の達成に向けて夏までに具体的な計画を策定するというふうに言っておられますし、私どもといたしましても、国債の信認を確保し、財政構造の持続可能性を確保するということが具体的に進展するということを強く要望したいというふうに思います。

前原委員 総理、さっき笑っておられましたけれども、これは笑うような話じゃないんですよ。つまりは、本当にそういうストレスをためながら、今の指標がいいというふうにおっしゃっているかもしれないけれども、それは、未来永劫続く施策をやっておられないんですよ。それまでに本当に実体経済がよくなって、そして、この出口が、先ほど聞いていないのに答弁されようとされた出口について、本当にうまくいくということは、私は、ナローパスだと思いますよ、すごく。

 そういうようなことを、つまりはギャンブルのような政治をやっているということをちゃんと国民に対して説明しないと、今の経済がいいから、そうしたら、民主党政権とはこう違いますと言っていて、二年後、三年後、五年後、どうなっているかということになったら、今笑っていることについて、まさに、国の財政を破綻させた張本人は安倍さんだということになる危険性を私は指摘しているわけです。そうなったら、もう国民の生活は元も子もないですよ。そういうことを私は指摘しているわけです。

 去年の十月三十一日の追加緩和のときに日銀から説明をいただきました。そのときにどういう説明があったかというと、原油価格が下がった、原油価格が下がることは中長期で見れば国民にとってボーナスではあるけれども、しかし、デフレマインドを変えるためにここで追加緩和をして、そして、二年で二%という道筋をつけるんだ、こういうことをおっしゃっていた。

 私はそのときに聞いたんですよ、その日銀の方に。総理と手を握っているんですか、つまりは、ちゃんと消費増税をするということについて約束をしたんですかと言ったら、していない、しかし、実際に消費税を上げてもらわなければ財政ファイナンスと見られてしまう、こういうことだった。つまり、日銀は総理にはしごを外されたというふうに私は思っています。

 総理、この消費増税のときに、これは本会議でも質問しましたけれども、今回は、経済は生き物だと言って消費増税を延期されました。しかし、二〇一七年四月には必ずやるということは、総理、先ほど笑っておられたけれども、総理自身も、これは財政再建ということをちゃんとやらないと、ストレスをためる施策で大変危ないんだということをわかっておられるんじゃないですか。御答弁ください。

安倍内閣総理大臣 いろいろと前原委員が指摘をされましたが、しかし、三本の矢の政策によって、どういう目的を持っているかといえば、デフレからの脱却であり、そして、雇用状況の改善でもあります。そして、給与を上げていく。その目的に向かって着実に進んでいるのは間違いないわけであります。

 いわば金融政策によっても雇用状況をよくしていただきたいというのが私の思いでありますが、まさに、黒田総裁のもとの金融緩和政策によって雇用状況が改善されているのは間違いのない事実であろうと思います。

 高卒者の内定率も、これは十一年ぶりの改善になっているのは間違いないんです。つまり、高卒の皆さんも大卒の皆さんも、これは改善されているんですから、喜んでおられる。また、有効求人倍率が上がっていくことによって、当然、待遇の改善に結びついていく。そして、給与も、まさに昨年、十五年ぶりに二%以上に上がったのは事実であります。

 こうしたように、政策の成果が出ているのは間違いないんですよ。立ちどまっていて何もしないリスクの方が大きいということははっきりと申し上げておきたい、そう思いますよ。

 失業率がどんどん悪化していく、あるいは、収入がどんどん減っていくという状況を私たちが変えたのは事実であります。そして、働く人の数はふえたじゃありませんか。

 つまり、このようにしっかりと前に進めていくと同時に、国債の信認も確保しなければなりません。

 ですから、我々は、来年度の予算編成においても、四兆四千億円の国債発行の減額を行いました。過去三番目の、これは大きな減額であります。ちなみに、一番大きかった減額は第一次安倍政権のときでありますが、今回は三番目の減額をしっかりとしている。そういういわば財政規律を守るための努力を世界に示しているわけであります。

 そこで、我々は、再来年に消費税を引き上げ、これはリーマン・ショックのような事情の変更があったら別でございますが、基本的には今回のような景気判断は我々は行わないという意思を示し、そして同時に、既に、その意思を示す上において、政労使の会議をやりまして、ことしの四月はいわば給与を引き上げるという約束を得ているわけでありますし、下請企業に対しても、いわば原材料費等の価格転嫁も行うように企業側も努力をする。

 ことしの四月、来年の四月、またさらに再来年の四月もしっかりと引き上げていくことによって、ここは一番大切なところですから、引き上げていくことによって、我々は、消費税を引き上げていく環境を整えていくことができる、このように思うわけであります。

 出口戦略等々については、これはまだ二%の物価安定目標に達していないわけでありますから、当然、時期尚早なんだろう、このように思うわけであります。

前原委員 質問に答えないなら長々としゃべらぬでください、しかも、同じこと、いつも同じことを。

 私がきょう言っているのはそういうことじゃない。短期的に成果が上がっているかどうかを言っているんじゃなくて、この成果を得るためにどれだけストレスをためてやっていって、それがたまっていったときのリスクというものを国民に話していないということを言っているわけですから、そんな、今の状況をべらべらしゃべったって意味がないんですよ。

 もう一つ、総理……(発言する者あり)いや、やり過ぎているということですよ、簡単に言えば。黒田総裁……(発言する者あり)いや、やり過ぎですよ。我々だって、別にやじに僕が答弁する必要はないんだけれども、デフレはいけないですよ、デフレはだめ。しかし、我々は、一%までのプラスの領域、そこで抑えるということをやって、こんな、国民をギャンブルに入れて、どんどんどんどんストレスをためるような政策をやらなかったですよ。

 つまりは、デフレ脱却というのは、魔法のつえはないんですよ。何か魔法のつえがあるようなことを言っているけれども、結果、それが破滅になったら大変だということを、私は警鐘を鳴らしているわけです。そのことを言っている。

 そのもう一つのことを黒田総裁に質問します。

 きのう、株価が二百二十二円下がりましたね、きょうは上がっていますけれども。

 何できのう株価が下がったかというと、新発十年国債が入札不調になったということで二百二十二円下がった。そして、きのうの日本国債の利回りは、〇・二八五から〇・三五五に上がった。きょうの午前中も〇・三八五まで上がっているんですよね。三ポイント上がっている、こういうことであります。

 つまりは、金利急騰、そして暴落のリスクとともに、このいわゆる異次元の金融緩和というのが成り立つのか、つまり、買う国債があるのかというところがこれから問われてくるんじゃないかと思うんですね。GPIFがうまいこと、国債のポートフォリオを減らして株をふやすということをやって、渡りに船になっているところがありますが。

 五の資料を見てください。パネルはありません、五の資料を見ていただいて。

 新発国債の八割が日銀によって吸収されている。しかも、五年から十年は、何と、発行されているより多くの国債を買い続けているわけですよ。

 つまりは、この国債の品薄状況の中で、今後の、言ってみれば、先ほど申し上げたように、それはしばらくは大丈夫でしょう、しかし先ほどの消費増税の前後の話も含めて申し上げれば、本当にこの国債を買い続ける政策というのがサステーナブルと考えておられるかどうか、そのことについて御答弁ください。

黒田参考人 日本銀行は、量的・質的金融緩和の政策のもとで、マネタリーベースが年間約八十兆円に相当するペースで増加するような形で国債その他を購入しております。

 これまでのところ、こうした方針で進めている国債買い入れ等につきまして、特別に支障を来すような状況は起こっておりません。市場の流動性その他も、さまざまな指標を見る限り、特に流動性が低下したということにはなっておりません。

 したがいまして、今後ともこういった形で、二%の物価安定目標を達成し、安定的に持続できるようになるまで続けるということは十分可能だと思っておりますが、市場の状況につきましては、常に市場関係者と対話をして、必要な調整はこれまでも行っておりますし、今後とも行ってまいります。

前原委員 このやりとりはこれで終わります。つまりは、私がきょう申し上げたかったのは、仮に今いい成果が出ているとしても、それは相当なストレスをためながらやっていて、それが爆発をしたら元も子もなくなるような危険なギャンブルをやっているんだということ、そのことを指摘させていただきたいと思います。

 さて、石破大臣含めて、少子化の問題を、ちょっと時間が少なくなったので大変申しわけありませんが、質問をさせていただきたいというふうに思います。

 人口問題について、二〇六〇年に人口一億人程度ということでありますが、これは必ずやり遂げるということかどうかということと、あとは、二〇六〇年に一億人というのは通過点であって、どれぐらいで下げどまらせるということを政府として考えているのか。

 その二つを御答弁ください。

石破国務大臣 これは、一億人、二〇六〇年というのは、達成しなければならないと私どもは思っております。それは、産めよふやせよみたいな形で家庭に国家が介入するというよりは、国民が、できれば結婚したい、できれば子供は二人以上持ちたい、そういうふうに思っていらっしゃるので、それを妨げる要因をとにかく取り除くということによって達成しなければならないと考えております。

 それから、一億人というのは、それは通過点でございます。これで最終というわけではございません。

 問題は、人口の数のみならず、そこにおいて高齢化比率というものをどれだけ下げていくかということだと思っております。人口は下げどまりました、しかし高齢化がずっと続きましたということを私どもは企図しているわけではございません。

 もちろん、健康で長生きをしていただくことは重要でありますが、若年の比率をふやしていく、人口の若返りというのもあわせて、数と同時に必要なことでございます。

前原委員 後者の質問にお答えをいただいていないと思うんですけれども、どれぐらいで下げどまらせるということなのか。それは、やはり大きな政策目的だと思うんですね。

 この政府からいただいているものだと、うまくいった場合においては九千万人ということになっていますが、九千万人で安定させる、これ以上は下回らせないというのは政府の意思なのかどうなのか。その点を確認させてください。

石破国務大臣 九千万人というのは一つの目標だと思っております。

 そして、そこにおいて必要な若年の比率、若返りというのをあわせて達成しなければならないということだと承知をしております。

前原委員 もう時間がないので、また本予算の質疑のときにも譲りたいと思いますけれども、他国の事例を見ますと、出生率を結果として回復しているところ、出生率を目標にしている国というのは余りないんですね、出生率を結果として回復している国というのは、家族向け支出、子供向け支出というものが対GDP比で大体二%ぐらい使っているんですよ。今、日本は〇・九七ぐらいだと思うんですね。一%いっていないですよ。ということは、対GDP比でいうと、あと五兆円ぐらい。

 一〇%になったときには、子ども・子育てが七千億、一兆円を目指すという話になっていますけれども、それではなかなか人口減少というものに歯どめがかけられないと思いますね。もちろん、中身を精査しなくてはいけませんが、それぐらいの規模を、やはりOECD並みにやらないと、とてもじゃないけれども目標は達成できないと思いますが、その認識はいかがですか。

石破国務大臣 ありとあらゆる方策は講じなければいけないと思っております。

 ですから、これは有村大臣の所管でもありますが、どうやって子育てがしやすい環境をつくるかということは、もちろん財政的な規模というものも当然必要なものでございます。

前原委員 ある程度、財政支出を伴い、また中身を詰めていかないとこの国家目標というのは達成できないということですので、相当、予算の組み替えも含めて思い切ったこと、あるいは歳入改革も含めて思い切ったことをやらないと、本当にこの国家目標は達成できないということ、このことを申し上げ、また質問をさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

大島委員長 これにて細野君、辻元君、玉木君、前原君の質疑は終了いたしました。

 次に、小熊慎司君。

小熊委員 維新の党の小熊慎司です。

 政府におかれましては、今、理不尽なテロの対応で大変苦慮しているところ、また、検証しなければなりませんけれども、一定程度の評価をしたいというふうに思っています。

 また、理不尽なことというのは、四年たとうとしておりますけれども、東日本大震災、そしていまだ継続中の原発事故災害というのも、これは今、被災地においてもまだ理不尽な状況が解消されていないという点を考えれば、総理初め政府においては、これからまた復興に向けての力強い推進を求めていきたいというふうに思っているところであります。

 そうしたさなかで、まず最初に質問いたしますけれども、二〇二〇年に東京でオリンピックが開催をされます。これが大きな日本の情報発信となるきっかけとなりますし、昨年の予算委員会でも、この東京オリンピックに関して、被災地における関連事業の実施を質問させていただきました。

 その段階では、下村大臣は、オール・ジャパンでやるんだと。それはもちろんそのとおりでありますけれども、それ以上の発言が、そのときは踏み込んでいなかったんですが、その後、総理のリーダーシップで、総理の方から、これは復興五輪とするんだ、被災地について特に情報発信をしていかなきゃいけないという力強い指示があり、そしてその後、被災各県との連携をしながら今後のオリンピックについて取り組んでいるというのは、大変私はありがたいことであると思いますし、これをしっかり成功に向けて結びつけていかなければならないというふうに思っています。

 そうした中で、オリンピック、今でも東京一極集中が加速するんじゃないかという懸念もあるんですけれども、来週には国会図書館の方でセミナーも開かれますが、二〇一二年のロンドン・オリンピックの際、これは各省庁でも検証していますけれども、地方に経済的な波及効果があったということが言われています。今、各省庁でもそれは研究されているというのもお聞きしております。やはりこの肝というのは、事前のブランド化、イギリスをブランド化するという、情報発信に非常によかったという点と、地方との、さまざまな関係機関との連携が成功したというふうにも聞いております。

 そうしたことで、まず初めにお聞きしたいのは、総理が言われている復興五輪ということで、それはオール・ジャパンの取り組みではありますけれども、とりわけ被災三県についてはどのように力を入れていくのか、まずお聞きをいたします。

安倍内閣総理大臣 ただいま委員が御指摘になったように、東京オリンピック・パラリンピックは、東京のみならず日本全体の祭典として、我が国が活力を取り戻す弾みとしていきたいと思っております。特に、福島を初めとして東日本大震災の被災地については、復興五輪として、大会が復興の後押しとなり、そして、見事に復興した東北の姿を世界に発信していきたいと考えています。

 政府としては、全国の自治体とオリンピック参加国との交流を図るホストシティ・タウン構想を推進するとともに、組織委員会も、来年のリオ大会に向けて、事前キャンプの誘致に向けた取り組みを進めているところでございます。また、昨年七月には、被災三県と政府、そして組織委員会等の関係者による被災地復興支援連絡協議会が設置をされました。被災三県と連携した取り組みについて、今検討しているところでございます。

 東京大会の開催まで残り五年となったところでございますが、福島県を含め、被災地の皆様からさまざまな御意見をいただいておりますが、そうした御意見もしっかりと生かしたオリンピックとしていきたい、このように思います。

小熊委員 ここでぜひ留意していただきたいのは、被災県といっても、東日本大震災というのは、それは東北三県だけではなくて関東、北関東にも及んでいるものもありますけれども、残念ながら、今継続中の災害である原発事故災害ということを考えると、やはりほかの県と福島県というのはまた違うところがあります。

 情報発信については、福島県、この原発事故災害というのをとりわけ意識して、これはほかの県も、被災県、しっかり見ていただくことも重要ですけれども、また別の災害があるということを捉えてこの情報発信に努めていただきたいというふうに思います。

 リオの、特に予選、その情報発信もありましたけれども、オリンピックの組織委員会に義務づけられている、開催前の四年間にわたってカルチュラル・オリンピアードといういろいろな文化事業をやっていかなきゃいけない。このときにしっかりと情報発信、いろいろな関連イベントとかをやっていくことが重要であるというふうに思っています。その辺どう取り組んでいくのか、その姿勢。

 あとは、昨年の暮れに、福島県の新しい知事の内堀知事が東京都の舛添知事に、オリンピックでのいろいろな予選とかを福島県でやってくれないかと要請に来たときに、これが世界にニュースとして流れたときに、さまざまな海外のネットユーザーからは、そんなので大丈夫なのかという結構ネガティブな意見も寄せられたというのも事実であります。

 この際、正しい情報発信をしていく、日本全体が大丈夫ですよというのももちろんですけれども、福島県の正しい情報をこの機会にまさに発信をしていくということが必要でありますから、このカルチュラル・オリンピアードを含め、事前の取り組みについての姿勢をお伺いいたします。

下村国務大臣 今月中に、JOCがIOCに対して、我が国の二〇二〇年オリンピック・パラリンピックに向けた取り組みについて、オリンピック・パラリンピック組織委員会とともに詳しく報告し、了承してもらうことになっておりますが、御指摘のように、来年、二〇一六年にリオでオリンピック・パラリンピックが開催されます。

 その直後から二〇二〇年に向けた対応がIOCでも認められておりますので、二〇一六年の秋から、リオが終わった直後から、スポーツ文化ワールドフォーラム、これを日本でぜひ開催したい。同時に、世界経済フォーラム、ダボス会議の方でも、ぜひ日本でスポーツ、文化に特化したダボス会議をしたいということをお聞きしていますので、一緒にやれるところは一緒にやりながら、二〇一六年から文化、芸術、スポーツに向けたムーブメントを、世界の中心、日本に集まっていくような流れをぜひつくっていきたいというふうに考えております。

 その中で、一つは、スポーツ・フォー・トゥモロー、これは日本政府が、世界百カ国一千万人に対してスポーツにおける国際貢献をするという部分がございます。その中の一つとして、今、被災地、特に福島という話がありましたが、私も東京電力の第一原子力発電所に昨年行って、直後に、東京電力からも協力をいただいて、一つはJヴィレッジ、今、作業員の拠点になっていますが、連日五千人以上いた、昨年五月ですね、これを二〇一九年のラグビーのワールドカップ前にもう準備体制として整えて、ここにサッカー練習ができるような、つまり、福島原発のすぐ近くで、Jヴィレッジが実際にサッカーの拠点として国内外の事前キャンプや練習ができるような、それをぜひやろうということについて進めております。

 また、組織委員会が、東京だけでなく幅広くということでありましたから、ぜひ、福島県の御要望を踏まえながら、できるだけ対応できるような体制を政府としてもとってまいりたいと思います。

    〔委員長退席、原田(義)委員長代理着席〕

小熊委員 総理も、福島の復興なくして日本の再生なしというのは何回も言っておられます。この手の質問、昨年の予算委員会で言ったら、与党席の方から、県議会の質問かなんて来ましたけれども、そういうことじゃなくて、やはり福島の復興が日本の再生につながるという、この総理の姿勢をしっかり具現化していただきたいというふうに思っています。

 でも、さりながら、今現在、まだ現在進行形の災害で、私も調べると、この処理をしている東電の第一原発のところでは、大体平均的には三日に一回ぐらい、大きなものから小さなトラブル、この間は作業員の方が亡くなられるという大変痛ましいことがありましたけれども、三日に一遍、小さなトラブルまで入れれば起きているんですね。

 そのたびにネガティブな情報が国内外に発信されているというのが現状です。もちろん、福島県内のさまざまな県民がポジティブな情報発信には努めているんですけれども、そうした側面もありますので、風評被害といったものも今なくなっていない状況です。

 実際、いろいろなスポーツ合宿で大変にぎわっていた猪苗代町なんというのも、一割も戻っていないんですね、今スキーシーズンで、スキー合宿なんか。

 そうした中で、麻生大臣の方が詳しいと思う漫画のことですけれども、昨年連載されていて、今単行本化して、少し表現ぶりも単行本化するときに作者が変えていただいたんですけれども、福島の鼻血の話で、「美味しんぼ」という漫画がありました。これで、檜枝岐村というところがあるんですけれども、ここは東京より線量が低いんですよ、実際は。だけれども、この漫画が出たときにキャンセルが相次いだという声も聞こえました。

 でも、同じ小学館、出版社でありながら、同時期に、「そばもん」という、まさにまた福島県のそばの話を描いてあるのがあるんですけれども、これは麻生大臣の方が多分詳しいと思いますが、これは逆に、私の主観ですけれども、客観的な冷静な分析のもとにしっかりやっていただいているんですね。

 だから、この漫画のよしあしというのは私は言うつもりはありませんけれども、こういう状況です。いまだに風評被害というのも改善をされていません。

 風評被害というのはどこまで続くかといえば、これは、事故が完全に収束して、それでもなお、その先もまだこのイメージの払拭に取り組んでいかなきゃいけないということを考えれば、もう三十年も四十年も取り組むべき課題だというふうに、私は、心してやっていかなきゃいけないというふうに思っています。

 そうしたさなかに、昨年、営業損害の来年二月の打ち切りというのが、突然、国、東電が発表されました。これについて、さまざまな、県内から批判、また改善要望等の陳情書が出ておりますけれども、この件について、二月で打ち切ることについての説明を、まず東電から求めたいと思います。

廣瀬参考人 お答えをいたします。

 先ほど先生からも御指摘がありました福島第一原子力発電所における事故が連発していることにつきましては、本当に申しわけなく思っております。とにかく再発防止にしっかり努めて、これ以上皆さんに御心配をおかけすることのないようにやってまいりたいと思っております。

 さて、風評被害を初めとする営業損害でございますけれども、これまで私ども、営業損害、風評被害については、事業ごとあるいは地域ごとに類型化をして、震災前の営業の売り上げに対してどのぐらい減収したかということをもって一律的に賠償してきたわけでございますが、大分月日もたってまいりましたし、それぞれ業種ごとによっても濃淡が出てきているという状況にございます。

 したがいまして、そうした状況を踏まえて、今後どうしていくのかということをそろそろ考えていかなければいけない。特に、ことしの二月でこれまでの四年間の営業損害について一旦切れますので、その後どうしていくのかということについて検討を始めたということでございます。

 国の御指導もいただきながら、これも検討していかなければいけませんし、何より、本日も東京電力の方に商工団体、四団体の方々がお見えになって、今まさに御意見を伺っているところでございますが、私、もう一回帰ってまた御意見を伺いますけれども、そうした御意見をしっかり伺いながら、今後また検討してまいるということであるというふうに考えております。

小熊委員 そもそも、今現場で起きているのは、社長、これは、いろいろな手続をやりに行くと、今までも払い過ぎていたんだみたいなことを社員が言うんですよ。申しわけありませんと反省していながら、実際、現場ではもうそんな雰囲気ですよ。(発言する者あり)一部ですけれども、そういうことがあるんですよ。でも、震災一年目ぐらいのときは、もう平身低頭でした。しっかりとこれは説明を果たしていかなければいけません。

 これは政府とも相談すると言っていましたけれども、ここから政府に聞きたいんですけれども、もちろん、これは永続的に続くんです、恐らくこの風評被害というのは。でも、これは地元の経済界の人たちとも、経営者の人たちとも話していますけれども、ずっと補償経済をやっていくわけにもいかない、しっかり自立の経済に福島県も変えていかなきゃいけない。でも、いきなり打ち切るというのは、これは死んじゃうよねという話をしているんですね。

 ですから、これは、今の風評被害、営業損害というのを自立に変えてしっかりと立ち直っていくという、段階を踏んでいくということが重要なんじゃないですか。

 いきなり来年二月で打ち切るということではなくて、今後の話として、そうした自立型に変えていくということと、永続的にこれから何十年も続く風評被害に対しては、個人の補償というよりは、PRであるとかさまざまな情報発信というのは国はずっとやっていかなきゃいけないと思うんですけれども、この二点について、今後の対応をお聞きいたします。

宮沢国務大臣 風評被害につきましては、委員おっしゃるように、我々は、もうと思っておりましても、なかなか気持ちで理解していただけない厄介な話であります。

 我々としては、なるべく早く風評被害がないような状況をつくるために、これからも政府を挙げて最大限努力をしていかなければいけないと思っております。

 一方で、賠償でありますけれども、賠償も、東電は、全般的には誠実に対応してきていると思っております。

 今般、結局、風評被害につきまして、商工業者の方などに、これまでは、ある意味では、震災前の売り上げに対して一律に賠償する、こういうことをずっとやってきておりました。もちろん、それぞれ個々の事業者ごとに状況は違うんだろうと思います。頑張っている方もいらっしゃるし、本当に打撃を受けている方もいらっしゃるというような四年間の経緯がある中で、事故との相当因果関係を確認の上で、風評被害による将来にわたる減収分として、直近一年の逸失利益分を一年間にわたって賠償する、こういう素案をつくって、今関係者と御相談していると聞いております。

 おっしゃるように、段階を踏むということは大変大事なことであります。一方で、それぞれの事業者で事情も違うということも、ある程度これは考慮していかなきゃいけない。そういうことも考えながら、一方で前向きな対応もぜひ必要でございますから、そういうものに総合的に対応して、段階的に対応していきたいと思っております。

小熊委員 今大臣が言われた相当な因果関係というのも、これは民主党政権時代から出ていた言葉ですけれども、相当な因果関係というのは、明確には出せない部分もやはりあるのも事実です。

 一方で、やはり売り上げが落ちていたり、観光客が戻ってきていなかったりというのもありますから、我々は、しっかりと現場の声を聞く。今言われたとおりです、事業者によって違うのもあります。

 ですから、先ほどお話しさせていただいたとおり、しっかり自立に向かっていく、経営力をつけていく、これを主眼として制度を変えていくということが見えていないから、不安に思って皆さん騒いでいるんです、いきなり打ち切りで、ゼロになるのかということになっていますから。だから、丁寧な説明、丁寧な聞き取りがなかったんですよ、いきなり発表しちゃったから。

 ですから、今後、来年二月に向けて、しっかりと地元の関係団体、あと実態をしっかり見て、でも、相当な因果関係なんというものは出ない部分もありますから、そこはしっかりと被災者に寄り添う、被災地に寄り添う、そういう姿勢で今後の対応、取り組んでいただきたいというのを申し上げて、次の質問に移ります。

 東電のADRの和解案拒否についてであります。

 もちろん、ADRの果たしている役割というのもあって、相当程度この和解案が受諾されているのも私も承知をしているところでありますけれども、そういった中でも、東電が拒否をしているものも多数あります。浪江町、飯舘村といったものもありますし、そうした一万人を超える方々の、集団での、この中でもう既に二百人以上の方が亡くなっているというのも現状です。早く解決の道を示さなければなりません。

 このADR、そもそも、政府が主導でつくりました。この和解案について、政府としては、東電にしっかり受諾すべきだという指導をすべきじゃないですか。それはどうですか。

    〔原田(義)委員長代理退席、委員長着席〕

下村国務大臣 御指摘のように、ADRセンターにおける和解仲介手続は、平成二十七年一月三十日現在で、和解仲介手続を終えた一万一千九百九十八件の約八三%に当たる約一万件、これが和解成立をしております。また、現在においても約三百件を超える新たな申し立てがあったところでございます。

 こういう中で、ADRセンターにおいて和解仲介手続が進められている個別の案件についてコメントすることは差し控えたいと思いますが、一般論として言えば、東京電力には、みずからが表明している「三つの誓い」において掲げた和解案の尊重、この趣旨に鑑み、誠意ある対応をしていただきたいと考えております。

 文科省におきましては、従来より東京電力に対して賠償の迅速化や被害者への誠意ある対応等を要請してきたところであり、改めて、昨年十二月に「三つの誓い」の遵守について要請を行ったところでもございます。

 引き続き、ADRセンターにおける和解仲介手続を初め、公正かつ適正な賠償が迅速に行えるよう、しっかり政府として取り組んでまいりたいと思います。

小熊委員 大臣が言うとおり、尊重するようにと言っていますから、東電に聞きますけれども、そうでありながら、幾つかの案件に関しては、このADRの和解案について、再考を求めるように書類を幾つか出していますよ。これは尊重していないということになるんじゃないですか。社長、どうですか。

廣瀬参考人 お答え申し上げます。

 私どもも、今、文科大臣の御指摘のとおり、和解案を尊重するという基本で、これまでも、先ほどお話がありましたけれども、一万件近い和解案の受諾をさせていただいてきているところでございます。

 もとより、法廷外でこうした紛争手続、解決の手続を進めるということの役割の重要性といいますか、紛争解決センターの果たしていただいている大変大きな役割というのは十分認識しておるつもりでございますので、しっかり踏まえて、今後とも我々としてはしっかり対応していきたいというふうに思っているところでございます。

小熊委員 そうはいいながら、もし和解案が拒否されれば裁判になっちゃうんですね。本当は裁判しなくていいようにADRができているんですけれども、その狙いとは外れた方向に行ってしまうんです。

 裁判になれば長期化します。今でも、この段階で浪江町の訴訟の人たちの中には、二百人以上がもう亡くなっちゃっているんですよ。長期化することはできない、するべきじゃない、そういう思いでADRが機能を果たさなければならないんですが、残念ながらこうやって拒否していて、硬直している状況がありますから、こうなっていくとADRの信頼も損なわれます。

 現段階のADRが果たしている役割も多いのは事実でありますけれども、これは今の、逆に滞っている問題に関して、少しADRもバージョンアップしていかなきゃいけないんじゃないかと私は思います。

 そこで、そのADRについて、東京電力がしっかり尊重する、和解案を尊重する、これは誓約までしているわけですから、これをしっかりと、受諾を速やかに行うように、和解案が示されたとき、一定期間提訴しない限りは受諾する義務を負うといった片面的裁定機能をADRの和解案に持たせる、そうしたことも検討すべきではないかと思いますけれども、大臣、どうでしょうか。

下村国務大臣 仮に、東京電力に対し訴訟手続を経ずにADRセンターの和解案の受諾義務を課すということになりますと、裁判を受ける権利との関係で、法的には困難な点が大きいのではないかと考えております。

 なお、東京電力は、国が認定した新・総合特別事業計画におきまして、和解仲介案を尊重し、迅速な和解の実現に努めることをうたった、先ほど申し上げましたが、被害者の方への「三つの誓い」、これを徹底することをみずから明記されているわけでありますから、文科省としては、まずは引き続き関係省庁と連携しながら、被害者の方々に対して迅速、公正、適正な賠償が実現するための取り組みを全力で進めてまいりたいと思います。

小熊委員 今大臣が言ったことで、だから進んでいないんですよ。

 東電というのがありますけれども、東電の最大の株主というのは政府じゃないですか。政府がそうやって尊重すべきと言っているんだったら、株主としても言わなきゃいけないんじゃないですか。こういうことが、決められない政治なんですよ。

 長期化にわたることで失われる命もある、失われる時間によって損なわれるさまざまな県民生活の影響もある。しっかりとここは、ADRの和解案、尊重して受諾するように、これまで以上に政府としては東電に促すことを求めて、次の質問に移ります。

 先週のこの委員会でも話題になりましたけれども、東電の福島第二原発のことです。

 これはもう御承知のとおり、これまでもさまざまな質疑の中で出されてきた課題でありますけれども、福島県においては、県においても、県議会においても、また、県内の市町村、さまざまな関係者によっても、第二原発を動かせる動かせないにかかわらず、やはり福島県においては再稼働すべきじゃないというのが県民の総意です。そうしたさなかで、総理は先週の答弁の中では事業者次第みたいなことを言われていましたけれども、東電の社長にお聞きしますけれども、第二原発について、こうした福島県民の総意を受けて、どう今見解をお持ちですか。

廣瀬参考人 現時点におきまして、東京電力の最も優先しなければいけない課題は、福島第一原子力発電所の汚染水対策、廃炉であるというふうに思っております。これに向けて、社内のリソースを全て投入するという覚悟で今当たっているところでございます。

 福島第二の廃炉につきましては、先生御指摘のように、県議会初め、市町村の議会から廃炉の決議をいただいており、県民の皆さんの御意見というのも十分重く受けとめておるところではございますが、まずは、今は、福島第二も、福島第一の廃炉、汚染水の支援に回るということでやらせていただいているところでございます。その上で、そうした状況を鑑みて、福島第二については、現時点ではどういうふうにしていくのかというのを未定とさせていただいているところでございます。

 今後、エネルギー政策も、当然、議論を進められていくというふうに考えておりますし、もちろん福島の皆さんの御意見もしっかり踏まえた上で、また私ども、電気事業ですので、しっかり低廉な電気を安定的に送るという安定供給ということも考えながら、今後、事業者として、私どもがしっかり検討、判断をしていきたいというふうに考えているところでございます。

小熊委員 これは、昨年、前の経産大臣の茂木前大臣も、委員会で質疑したときには、事業者次第みたいなことも言っていますけれども、ただやはり、ほかの、福島県以外の原発とは同列に考えられないということまで踏み込んでいただいているんですね。

 さらに、小泉政務官にお聞きしますけれども、小泉政務官においては、昨年の参議院の方の民主党の増子議員の質問に対しても、また、その後のさまざまな公の場でも、第二原発は廃炉だということを明言しておられます。そのことは間違いないですか、政務官。

小泉大臣政務官 間違いありません。

小熊委員 しかし、今の政府の対応は、こうした慎重に、そして、ほかの原発と分けて考えると前大臣、茂木大臣は言っていただいていたんですけれども、結局、同じなんですね、慎重にということで。そのことに対する見解はどうですか、今の政府の、事業者次第という、先週の総理の答弁も含め。

小泉大臣政務官 これは、総理初め、関係閣僚も含めて、小熊委員も、昨年の私の、当時の民主党の増子先生の質問の議事録も見た上での御質問だと思いますが、私の思いはそのときと全く変わりはありません。

 そういった上で、今、私も政務官として、復興政務官、内閣政務官をやっている中、福島県の復興に向けて、内堀知事が副知事の時代から、当時の佐藤知事、そして内堀副知事、そして今の内堀知事、さまざまな方々との思いも交換する中で、私なりに考えた思いと、そしてその中で、何とか復興を前に進めたい、そんな思いで発言してきたことでありますから、その思いを胸に持ちながら、復興を一日でも早く前に進めたい、その思いを持って取り組んでまいります。

小熊委員 今の答弁が、まさに福島県民の心に寄り添っているという答弁だと思いますけれども、それを受けて、総理はどうですか。

安倍内閣総理大臣 ただいまの小泉政務官の発言は、まさに復興担当の政務官として足しげく福島に足を運んで地元の皆様からお話を伺っている、その思いの中においての発言だろう、このように思います。

 政府全体といたしましては、政府としては、福島第二原発については、今後のエネルギー政策の状況や新規制基準への対応、そして、先ほど小泉政務官が代弁したような地元のさまざまな御意見等も総合的に勘案しながら事業者が判断を行うもの、このように考えております。

小熊委員 事業者といっても、だから株主は政府なんですね。これは政府が、政治が復興に関してしっかり責任を持つと言っていながら、肝心なところでは、事業者ですと。

 これだから、年末、県内で首長のアンケートをとりましたけれども、残念ながら、安倍内閣の復興に関しては十分でないというのが大多数のアンケート結果ですよ。

 こういったことを政治主導でやれるんじゃないですか、事業者の判断ではなくて。これは政治主導でやるべきことじゃないですか。まさに、だから小泉政務官、政治家として信念を持ってずうっと言っているわけですよ。

 官僚答弁みたいなことじゃなくて、総理、これは踏み込めないんですか。県民の感情を勘案してというのは、だから県民はもう意思を表示していますから、あとはどうするかだけです。やめるのかやめないのか、いつ決めるのか。ほかの原発と同じようなスキームでやるのか、前茂木大臣が言ったとおり違うスキームでやるのか。

 総理、もう一回お願いします。

宮沢国務大臣 少し事情を御説明させていただきますと、恐らく、第一原発の五号、六号につきましては、昨年の九月に総理から要請をして、昨年十二月に廃炉を決定したというようなことが頭にあって、第二についてもという御意見を福島県知事もおっしゃっていました。

 実は、第一と第二でかなり状況が違っておりまして、第一原発につきましては、今、原子力災害対策特別措置法に基づく緊急事態宣言のもとにあるということで、実は、総理から東電に必要な指示ができるというのが法的背景にございましてそういう要望ができた。しかし、第二についてはこれはございません。

 それから、国が東電の大多数といいますか、五〇%を超える株を持っていることは確かではありますけれども、それ以外に四十数%は民間の方が株主でございまして、これらの人の権利というものはきっちりありますので、なかなか国だけの判断というわけにはいかないので、事業者の判断ということを申し上げております。

小熊委員 これは総理も昨年、慎重に判断すると。慎重にということじゃないと思うんですね。いろいろなことを勘案してというけれども、これはやはり福島県の立場に立って、小泉政務官の言うとおりにやっていただくことが重要だというふうに思いますし、小泉さんも未来の総理と言われていますけれども、そういうことでは、今現在の総理は早く未来の総理にかわってほしいという声も福島県から出ちゃいますよ。

 ぜひ、ほかの原発とは切り離して福島県の原発は考えるべきでありますから、その中で、総理のリーダーシップのもとに、肝心なところでリーダーシップを発揮しないでいないで、しっかりとリーダーシップを発揮して決断されることを求めたいというふうに思います。

 次に、最後に移りますけれども、今やっと除去土壌等の中間貯蔵施設、おくれながらも進んでいます。昨年にも、三十年後のこの中間貯蔵の県外移設というのも、法制化はしましたけれども、まだ抽象的な法制化です。具体的にどうするかというのは見えていませんから、福島県民も、将来にわたって、本当に三十年後、県外に出せるのかというのは不安であります。

 確認しますけれども、前回の環境委員会でも確認しましたが、これは北海道から沖縄まで、福島県外全部が対象になり、そしてその減容化した後のものに関しては、それが合致する自然環境、また周辺環境があれば、全ての土地が対象になるということの確認でよろしいですか。

望月国務大臣 今、除去土壌等の問題でございますけれども、これは、三十年間の間に、物理的減衰により四割程度減る、そういうようなさまざまなことを含めて、今、二千二百万立方メートルの半分程度は技術的には減衰をしていく、そういうようなことで、少なくとも、公共事業のことについて、再利用ができる、そういうさまざまな情報を通して、もちろん、技術的なものも今度の予算でも組んでおりますけれども、そういうような形の中で、我々は、あらゆる国民の皆さんの理解を得ながら、このことについては進めていきたい、このように思っております。

小熊委員 今、現時点においては、三十年以内にはこれは搬出完了にしなきゃいけないんですね。そうすると、ぬるいことを言っていられなくて。今の、現時点では、その候補地が、国が指定する方法なのか、市町村が手を挙げる方法なのかというのもしっかり決まっていないのが事実です。

 これは県外に持っていけたらいいというふうに私も思いますけれども、なかなか今の現実世界では、本当に悲しいんですけれども、現実性を私は感じられないでいるんですよ。

 実際、去年の環境委員会でも、もし大臣の選挙区にそういう候補地があれば、大臣は率先して誘致に取り組みますかと言ったら、答弁はなかったんです。

 これは総理、どうですか。もしそういう、科学的にやって、総理の選挙区内に合致する土地があった、ぜひ持ってこい、そういうのを想像したことはありますか。仮定の話だけれども、もし答えられるなら、総理、答えてください。

大島委員長 望月大臣。(小熊委員「総理。いや、望月大臣だったら、いいです」と呼ぶ)

 個人的な問題じゃなくて、仕組みその他内容の問題だから。

望月国務大臣 これはまさに我々が、政府が責任を持ってやっていかなくてはいけないということで、福島の皆様方が、今回、中間貯蔵施設、佐藤前知事が苦渋の決断をしていただいた、そういう英断をいただきました。

 ですからこそ、最終処分場については、今回の法律の中に、JESCO法ができましたけれども、必ず国が責任を持って三十年後までにはこれは福島県外に持っていく、そういうことを国が責任を持って皆さんに決めていただき、もちろん、我々が提案して出したわけでございますので、これについてはきっちりと進めていきたい、このように思っております。

大島委員長 小熊君、時間です。

小熊委員 そうではありながら、説得すると言っていながら、それはほかの、当該市町村長だってそれは大変な問題ですよ。今でも、宮城県や茨城県や栃木県、それぞれの最終処分場も決まっていないわけですよ。政治家みずからが自分のところでもいいよと言うぐらいの迫力がない限り、人の説得なんかできませんよ。そういう覚悟が見えないから、最終処分場を県外に持っていけるのか、県民の多くが信頼していないということなんです、結局、三十年後も続いてしまうんじゃないかと。

 そういうものを払拭しない限り、本当に政治の責任を果たしたとは言えませんよ、総理。きょうは答弁をいただきませんでしたけれども、一回、総理も考えてみてください、総理の地元がそういうことになったときに自分がどういう発言をするか。

 ぜひ、覚悟ある政治、本当の決められる政治というのを求めて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

大島委員長 この際、井出庸生君から関連質疑の申し出があります。小熊君の持ち時間の範囲内でこれを許します。井出庸生君。

井出委員 維新の党、信州長野の井出庸生です。

 総理、きょう、主に答弁をお願いしておりますが、よろしくお願いをいたします。

 冒頭、ISIL、イスラム国の非道な行為に対して私からも強く抗議を申し上げるとともに、お二人の御家族初め御関係の皆様に心からお悔やみを申し上げます。

 また、けさ、ヨルダンのパイロットが残虐な形で命を絶たれ、昼のニュースでは、ヨルダンでも死刑囚の死刑執行が行われたと。まだ本当に現在進行形の出来事であると大変憂慮しております。

 この人質事件、テロに関連して、まず、これは通告をしていないんですが、総理に一点お伺いをいたします。

 今月、二月の十八、十九日に、ワシントンでテロ対策の国際会議があると聞いております。ケリー国務長官が閣僚級に呼びかけをされているということで聞いているんですが、総理、このワシントンで行われる会議に外務大臣を派遣されるおつもりがあるかどうか、現時点でのお考えを教えてください。

安倍内閣総理大臣 この会議が、閣僚級のレベルか、またはもう少し下のレベルなのかも含めて、我々は今検討しているところで、つまり、米側と、どういう中身にしていくかということも含めて、今米側に問いただしているところでございます。その上において判断したい、こう考えているところでございます。

井出委員 この会議は、もともともう少し早く開催の予定であったのが、フランスであったテロ事件ですとか、日本の事件もそうですが、そういうことで少し延びてきたという話も聞いておりますが、基本的にはその参加には前向きということなのでしょうか。そこだけもう一度お願いいたします。

安倍内閣総理大臣 いずれにせよ、日本は参加する予定でございます。

 当初発表された段階においては、日本が招待国になっているかどうかということもまだわからなかったわけでございますし、当初は首脳級という話もあったわけでございますが、外相級あるいは閣僚級、あるいはまた事務次官級ということも含めて、米側と今我々も調整をしているところでございます。

井出委員 今、参加の予定というお話がありましたが、今、日本がそういう国際的な場でどういう発信をしていくかということは非常に大事な局面だと思いますので、これまでも国会でさまざまな議論がありますが、そういったものを踏まえて御検討いただきたいと思います。

 この人質事件の関係なんですが、今回の事件についてさまざまな論調がありまして、当然、事件の全責任はテロリストにあると私も思っております。

 そういう中で、例えば、マスコミが、安倍総理、安倍政権の対応を批判ばかりしているという意見もあれば、それに対して、一方で、政府対応を批判するところはしっかり批判しなければいけない、そういう意見もあります。

 国会でもさまざまな意見がここまで議論があるんですが、ISILの非道に対する抗議の思いというところは多くの人が一致するところであると思いますが、お二人が行方不明になられてから、政府の対応、交渉、またこういう残念な結果になってしまった結果の責任について賛否の両論があることについて、総理はどのように受けとめておられるのか、伺います。

安倍内閣総理大臣 政府としては、この事案が発生以来、いわば我々がISILによって日本人が人質にとられたということを確認して以来、今まで培ってきたあらゆるチャンネル、ルートを最大限活用いたしまして、情報の収集あるいは協力の要請を行ってきたところでございます。

 残念ながら、二人の命が無残に、残酷に、卑劣に失われたわけでありまして、我々は強く抗議をしているところでございます。私どもとしては、全力を挙げて取り組んできたところであります。その意味において痛恨のきわみである、このような思いでございます。

井出委員 これから、当然、検証というものを進めていく上で、さまざまな議論が続いていくと思いますし、そのさまざまな議論については真摯に受けとめていただきたいと思うのですが、議論をしていく上で、政府側も出せるべき情報を出していただくということも当然大切だと私は考えております。

 以前、官房長官が、相手国のあることなので、全ての情報は出せないと。それは私もごもっともだなと思ったのですが、きょうは外務大臣に来ていただいておりまして、伺いたいのですが、今回の人質事件のような案件は、当然、昨年の十二月に施行されました特定秘密保護法、この特定秘密に指定されるような可能性のある、そういう情報も多々あるかと思います。実際に、今回のテロ事件で政府が収集している情報が、特定秘密に指定されているものがどのくらいあるのか、説明をいただきたいと思います。

岸田国務大臣 特定秘密保護法におきましては、一つは、四つの分野にわたります別表に該当するか、そして、公に知られている情報ではないということ、そして、特段の秘匿の必要性があるということ、こういったことを満たす情報が特定秘密に指定される、このようにされております。

 外務省の所掌事務との関係におきましては、三十五件の情報が、上記要件を満たすとの判断のもと、平成二十六年分として指定されました。外務省としては、平成二十六年十二月末の時点で、この指定状況につきまして、内閣府独立公文書管理監及び内閣官房に報告をしております。

 右を踏まえまして、現在、内閣官房等において国会報告に向けた準備が行われているものと承知をしております。

井出委員 今、国会報告の準備もというお話がありましたが、特定秘密の国会報告の仕方というものがどういう形で出てくるのか、まさに今やっていただいていると思うんですが、この人質事件で何件あったとか、そういうことも言っていただけるのか、いただけないのか、端的にお願いいたします。

岸田国務大臣 特定秘密は、法律に限定列挙された四つの分野に関する情報に限り指定し得るものです。

 今回の事案につきましては、政府としては、お二人を解放するために何が最も効果的な方法なのかという観点から、あらゆるチャンネルを最大限に活用して、全力で情報収集等を行ってきました。

 本件は、外国における邦人に対するテロ事件でありますから、特定秘密に該当する情報が含まれ得るものであると認識をしております。

 他方、個々の事案について、個々の事案に関する情報活動、外交交渉等について、特定秘密の有無を一々明らかにするということになりますと、外交交渉等のやりとりを予断する可能性を生じることがあります。

 ですから、今後の情報収集活動あるいは外交交渉等に支障を及ぼすおそれがあることから、個々の事案にこうした特定秘密が含まれるかどうか、このことについては控えさせていただきます。

井出委員 個々の事案については特定秘密のあるなしも控えるということで、これは恐らくこの人質事件に限った話でもなくなってくるのかなと思っているんです。

 私は、この人質事件の関係は、総理と同じ思いだと思いますが、本当は、お二人の無事な姿を見て、そういう形で検証したかったんですが、残念ながらこういう形になってしまっている。

 しかし、人命にかかわる問題に結論が出た段階、また、これから、イスラム国という脅威に対して、国際社会を挙げてその脅威がなくなっていく方向に活動をされていくと思うんですが、イスラム国の脅威がなくなった暁には、この事件に関しての全ての情報を公開して検証する、それがどれぐらいの期間になるのか、歴史的な検証ぐらいのスパンになってしまうのか、今わかりませんが、私は、いずれ全ての情報を必ず公開していただきたいと思っておりますが、総理に御見解を伺います。

安倍内閣総理大臣 最初に答弁をさせていただいたように、今回、人命第一にこの事案を解決すべく努力をしたところでございますが、その際、これまで培ったあらゆるチャンネル、ルートを駆使して、情報の収集あるいは協力の要請を行ったところでございます。

 特定秘密は、法律に限定列挙された四つの分野の事項に関する情報に限り、これは、防衛、外交、あと、いわゆるスパイやテロリズムでございますが、指定し得るものでありますが、こうした、いわば特定秘密という新しい法律ができたことによって、今までそれぞれ、秘密がなかったわけではなくて、特別管理秘密等々がたくさんあったわけであります。共通のルールもありませんでした。そして、国会における審査もありませんでしたし、総理大臣にちゃんと報告をする、指示を受ける、そういう仕組みもなかったところに新しい仕組みをつくったという意味においては、まさに、秘密について国民の命を守るために正しく管理されるようになった、そして、知る権利等々との関係においても、国民の代表との、国会、あるいはその国会によって選ばれた総理大臣との関係においてもきっちりと整理された、整備されたものができたと思うわけでございます。

 今回の事案につきましては、外務大臣が答弁させていただいたとおりでございますが、外国における邦人に対するテロ事件であることから、これらの今申し上げた事項に該当し得る情報が含まれ得るわけでございますが、一々の事案について、これは含まれるかどうかということについては、答弁を差し控えさせていただきたい。

 なぜかといえば、例えば、私がある首脳と電話会談をする、その電話会談の内容が特定秘密に当たるかどうかということについて、当たるものがあったと言うことについては、そういう当たる情報をその国の首脳が私に渡したということになるわけでありまして、それは、そもそも相手方にとっては、そういう情報を渡しているのかというのが公になるわけでありますから、そういうことが公になる国の首脳には絶対に、例えば私であれば、秘密は伝えないということになるわけであります。

 特に、テロ組織、ISISのようなテロ組織にかかわる情報、例えばそういうテロ組織にかかわる情報をとってくるということは、相当のこれは難易度が高いものであるわけでございますし、それぞれ、とってくる人々も、これは命をまさにかけているものであります。ということから、いわば我々も、情報の提供を依頼した以上、しかし、情報の提供を依頼しておりますが、当然、それについてはこちら側にも義務がかかっておりまして、情報を提供したかどうかの有無についても、これは一切言わないということの条件において情報提供を受けているわけでございます。そういうこと等についても御理解をいただきたい。

 その上において、もし特定秘密に指定されていれば、今回、しっかりと、ルールができたわけでありますから、そのルールの中で対応をしていくということに尽きるわけでございます。

井出委員 私は、そういう外交上の支障ですとか、そういったものの支障が心配がなくなった暁にはしっかり出していただきたい、そういうお願いをさせていただいたんですが、今、秘密保護法の関係でいろいろ解説をいただきまして、これからまたいろいろな情報や事実が明らかになってくることもあると思います。その中で、特定秘密の該当要件、非公知性、要は、秘密にしていたものが何らかの別の形で公の知るところとなった、公知の事実となった、そういうときは特定秘密には該当しないということもありますので、これから、きっとこの人質事件の関係はいろいろな検証の情報、報道が出てくると思います。そういうものに対して真摯に向き合っていただきたいということをお願いしたいと思います。

 次の質問に入ります。

 冒頭、人質事件に関しても賛否両論があるというお話をさせていただいたんですが、きょうは、その賛否両論という意味で、報道の不偏不党、公平公正、この観点で伺いたいと思っております。

 総理御自身も、フランスでテロがあったときに、言論の自由、報道の自由に対するテロを断じて許すことができないと。言論、報道の自由に対する御理解をかなりいただいていると思っております。

 しかし、きょう、資料でお示しをしておりますが、昨年、総選挙の直前に、自民党が在京テレビ各社に、選挙時における報道の公正中立並びに公正の確保を求めるお願い、十一月二十日付で文書を出しております。また、もう一昨年になりますが、参議院選挙のときには、TBSに対して取材を拒否するといって、TBSといろいろ話し合いがあったという問題がありました。

 国政選挙のたびに自民党がマスコミとの間にそういう注文をつけてきたことがある、そういうふうに承知をしておりますが、まず、総理御自身の、報道の不偏不党、公正、そのことについての総理のお考えを伺います。

安倍内閣総理大臣 これは、報道といっても、報道一般ではなくて、放送であります。新聞は、これは例えば、維新の党、万歳という主張をしようと、それはもう勝手でございます。そういう新聞があったって構わないわけでございますが、電波は、これはまさに公共の電波を、限られたものを割り当てられて、既得権として使っているわけであります。当然それにはルールと責任が伴うのは、これはもう御理解いただけるんだろうと思います。

 そのルールそして責任、それはまさに放送法で定められている。放送法で定められている目的規定の中で、「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること。」と定めているわけであります。つまりこれは、自由勝手にやっていいということではないわけでありまして、今申し上げたように、放送の不偏不党そして真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保するということであります。

 また、放送番組の編集に関する規定、これは第四条でありますが、において、政治的に公平であること、また、ここが大切なところだと思うんですが、意見が対立する問題については、できるだけ多くの観点から論点を明らかにすることを定めているわけでありまして、そういう意味において、そういう放送をしていただきたい。

 しかし、もちろん、民主主義の基盤は言論の自由である、これは言うまでもない、言論の自由、そして報道の自由であろうと思います。しかし、放送法においては、これはまさに公共の電波を活用しているという点から、今、法律によって定められているということであります。

 そこで、今委員が挙げられました出来事については、我々がそういう要請を、放送法にのっとってやっていただきたいという要請をしたわけでありまして、放送法に……(発言する者あり)済みません、後藤さん、黙っていただけますか、いつもやじを飛ばして。もうやめてくださいよ、真面目に議論をしているんですから。よろしいですか。

大島委員長 どうぞ答弁をしてください。

安倍内閣総理大臣 そこで大切なことは、この法律にのっとって放送されるということではないか、このように思います。

井出委員 今、放送法にのっとって自民党は文書で要請したというお話がありましたが、放送法の三条に、「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。」という文言がありまして、これは、逐条解説を読めば、一義的には放送というものは放送事業者の自律に任せるべきで公権力の行使は極力避けるべきだと。また、総理がおっしゃった四条、政治的に公平であること、また多角的な視点から取り上げるということについても、これも一義的に事業者が取り組むべき話であって、そこに国や政府が干渉することは避けるべきである、そういう逐条解説もなされているんです。

 この自民党の文書は、自民党は言うまでもなく政権政党であります、小さい政党がもう少し時間の配分を均等にしてくれとか、そういうお願いとはわけが違うと思います。放送法の三条に抵触しているという識者の声もありますが、総理、いかがでしょうか。

高市国務大臣 昨年十二月の総選挙に当たりまして、複数の政党、与野党から、選挙報道の公平、中立を求める文書が放送事業者に送付されたという報道がございました。この点ですけれども、先ほど総理から放送法一条及び四条についてお話がございまして、今委員から第三条についても言及があったところであります。

 まず、第四条につきましては、総理がお話をしましたが、放送事業者というのは非常に大きな社会的影響力を持ちます。一つは、やはり不特定多数に対して同時に安価に情報提供を行えるという物理的な特性、もう一つは、総理が言及されたように、有限希少の国民的資源である電波の一定の帯域を排他的かつ独占的に占有している、よって、一党一派に偏した放送を行ったり、議論のある問題について特定の主張を行うことは妥当でない、これが四条の趣旨でございます。

 三条で、先ほどお話がありましたが、「法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。」こう定められております。

 それでは、複数の政党が行った申し入れ自体についてどうなのかと考えますと、例えばこれが行政指導であったとしても、過去の行政指導などの例を見ましても、放送事業者の自主規律を放送法にのっとって要請するようなものについては、三条に定める干渉には該当しない、こう考えております。

井出委員 きょうは、事前に申し上げておりますが、総理に答弁を求めておりますので、できれば総理にお願いしたいと思います。

 そこで、次に総理の個人的なマスコミ対応について伺いたいのですが、総選挙の投開票日の夜、日本テレビの番組に出演をされた。そのときに総理は、キャスターが問いかける音声が流れてくるイヤホンですね、あのイヤホンを外して、御自身の話をされた。話が終わってまたつけられた。今度はまた、少し音がうるさい、そういう御発言をして、インタビューの質問が流れてくるそのイヤホンを外されて、またお話をされて、時間切れになった。

 そういう報道がありまして、インターネットなどでも、あの総理の対応はいかがなものか、そういう話があったのですが、報道されているように、うるさいから外したということでよろしいんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 それまでもキャスターとのやりとりがずっとあったわけでありますが、基本的に音が少し大き目だったわけでありまして、ただ、私が発言しているときに、発言中に相手のキャスターはかぶせて発言はしていなかったものでありますからずっと耳につけたままであったわけでありますが、私が発言しているときにキャスターが発言すると、ここですごく音が大きくなって、非常に発言がしにくいというのは御理解いただけるんだろう、このように思います。

 そこで、私が発言しているときにかぶせて発言されるとしゃべりにくいものでありますから、私が発言しているときには外して、そして、すぐにその質問を受けるためにまたイヤホンをした、こういうことでありまして、それ以外の何物でもない、こう思うわけでございますが、そのことをこの予算委員会で議論することかということで、ちょっと私も驚いているところでございます。

井出委員 この件に限らず、これからさまざまな案件が、特にことしは大きな法案、政策の議論があると思いますが、総理のマスコミ対応というものは国民に伝える形の前提として極めて大事なものだと思っておりますので、質問をさせていただいているんです。

 昨年の十二月十七日の朝日新聞によれば、キャスターが質問をしようとすると、イヤホンを外して一方的に話し続けたと。また、私もこの件についていろいろ調べをしまして、そのキャスターが総理に対して質問をしている際に、それを遮る形でイヤホンを外された、そういう話を聞いております。私は……(安倍内閣総理大臣「見ていないんじゃないの」と呼ぶ)見ております。(発言する者あり)

大島委員長 総理、今は質問を聞いて。

井出委員 私は、質問を聞いた上でお答えになるのであればいいと思うんですが、イヤホンそのものを外して、質問する手法を遮ってしまうということは、総理大臣としての取材対応としてどうなのかなと、そこは非常に疑問なんですが、総理のお考えを伺います。

安倍内閣総理大臣 最初にお答えをしたとおりでありまして、朝日新聞の報道はどうか、私は知りませんよ、それは。しかし、その場を見ていただければ明らかでございますが、私は、そのキャスターの番組に何回も出演したこともございます。

 そこで、今申し上げましたように、私がしゃべっているときに、またしゃべり始めたときにしゃべられてしまうと、こちらもしゃべりにくいというのが事実であります。それまでの、ほぼ全ての局に私は出演しておりますが、ほかの局においては、私がしゃべっているときに途中でいきなり大きな声で向こうからは言われたことがないものですから、そのまましゃべり、そして相手の質問を聞いている。また、質問を聞いていなければ答えられるはずがないじゃないですか。ですから、向こうが質問しているときには、当然イヤホンをつけている。

 私がしゃべっているときに質問されたので、ちょっと途中で外したのは事実でありますが、向こうも、私がしゃべっているときにしゃべったら、これはしゃべりにくいんだろうなということを理解していただいたのではないか、こう思ったわけであります。その程度の話なんですよ、これは。

井出委員 キャスターの質問を聞いて、それに反論をしていただく、それをテレビを見ている人が、その姿を含めて、いろいろな思いで見ていただくということは、私は、公の取材とその対応、議論としてはいいと思うんですが、もう一点、昨年の十一月十八日、夜、TBSのニュースに出演した際に、そのニュース映像、街頭のインタビューについて、これを選んでいるのではないか、そういうお話がありました。

 私は、イヤホンを外すですとか、あと、街頭インタビューについて、これを選んでいるのかということは、その街頭インタビューを見たら、そのときも街頭インタビューに対する反論はされていると思うんですけれども、マスコミがしてくる質問、マスコミがつくってくる映像のインタビュー、それに対して反論をしていただくことは当然必要だと思いますし、いいと思うんですけれども、この映像を選んでいるでしょうとか、イヤホンを外してしまって質問を途中で切ったように視聴者から受けとめられるというのは、反論ではなくて取材の手法を拒否しているんじゃないかと思うんですね。その姿勢を、私は、総理として改めていただきたいと思いまして、きょう、こういう質問をさせていただいているんですが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 これは全く一方的な質問であり、事実をねじ曲げています。

 再三再四、何回も申し上げているとおり、私がしゃべっている間にしゃべられたので、音がうるさかったので外したわけであります。その以前から、音の調整のとき、私は、これはちょっとうるさいですよということは言っていたんですよ、調整する人に対して。でも、これは始まってしまいましたから、そのまま入ったわけであります。

 連続でずっとこれはインタビューが続いているわけでありますが、そこで私がしゃべっているときに、質問しているんだから、私がしゃべり終わるまで待っていればいいじゃないですか。そうではなくて、かぶせてくるので、ちょっとうるさいから外したわけでありまして、その後、また質問を聞かなければ、私、答えられるはずがないじゃないですか。ですから、またつけるのは当たり前であって、相手の質問を遮るためにそもそもとったのではないということは御理解をいただきたい、このように思うわけでございます。

 そして、それを見てどう感じたかというのは、いろいろな人がいますよ。あなたが取り上げた意見はそうかもしれませんし、別の人だっていると思いますよ。ですが、それは、あなたが今、取捨選択して一つの意見を言っている。それは委員の自由であります。

 しかし、同時にまた、TBSに出て、街角の声、景況感でありますが、そういう町の声として伝えるのであれば、普通は大体、一つの意見、Aという意見、意見が対立するのであれば、二つの意見を出すものですよ。しかし、一方だけだったので、私は、これはちょっと偏っているんじゃないんですかと言った。

 でも、これは議論ですから、いや、そうではないですよという反論は自由であります、そこで議論が行われるわけでありますから。そうした私の反論も含めて、我々は国民の信を問うたわけであります。(発言する者あり)

 今、井出さんもやめてくれというジェスチャーをしていますから、やめていただけますか。

大島委員長 かぶせないようにしてください。

安倍内閣総理大臣 ということでありまして、まさにこうした議論を、ちゃんと議論をやらせてもらいたいということであります。

 いわば、放送においては、公正中立、不偏不党にやるべきであって、かつて、私も間違った報道をされたことが随分ありました、事実自体が。その事実を訂正してくれと言っても、なかなか訂正してくれないのが事実ですよ。なかなか訂正しないですよ。訂正放送なんてほとんどないですよ、全く事実じゃないことを放送されて。

 そして、選挙の前に間違った事実を提供された場合、多くの議員が議席を失うんですよ。それは取り返しがつかない、後で謝られても。それをもし意図的にやられたのであればこれは大変な問題になるわけであって、意図的でないとしても、やはり対立する事実についてはちゃんとやってもらいたいし、事実についてはちゃんとやってもらいたいということを選挙の前にお願いするのは、私は当然のことではないかと。

 不偏不党でやっている、事実に基づいてやっているという自信があれば、これはもう全く微動だにしないということではないか、このように思うところでございます。

井出委員 放送側が微動だにしないとか、そういうところはメディアの対応ですから、今回、選挙で、選挙報道が大分減った、自民党の文書が影響したのではないか、そういう新聞報道も数多くあるんですが、私が、イヤホンを外した問題ですとか、自民党の文書の問題、また、街頭インタビューに総理が、これは選んでいるでしょうと、その編集についてコメントした問題をきょう取り上げさせていただいたのは、総理は、ふだんから丁寧な説明を国民に尽くしていく、そういうことをおっしゃっているんです。

 一例を取り上げれば、昨年の五月十五日に、集団的自衛権の検討を始める、そのとき、記者会見をしたときに、私からも引き続きあらゆる機会を通して丁重に説明をしていきたいと思いますと。こういう発言はほかでも会見でされているんですけれども。

 総務大臣からも御説明ありましたが、公共の電波、既得権だと。もちろん公平公正にやることは事業者側の責任なんですけれども、電波の免許も含めて、政権与党、総理大臣というお立場の総理には、もう少し大局といいますか、毅然とした、もう少しどんと構えていただきたい、そういうことをきょうお願いしたくて質問をさせていただきました。ぜひよろしくお願いいたします。

 では、終わります。

大島委員長 この際、丸山穂高君から関連質疑の申し出があります。小熊君の持ち時間の範囲内でこれを許します。丸山穂高君。

丸山委員 維新の党の丸山穂高でございます。

 私からは、我が党を代表しまして、安全保障の観点から質疑をさせていただきたいと思います。

 ISILによる日本人人質事件については後ほどお伺いしていきたい、そのように考えておりますけれども、まず最初に、いまだまだ最後まで終息していないエボラ出血熱を含めた感染症対策についてお伺いしたいと思います。

 さて、私の地元は、大阪の一番南、泉州の泉南の地域でございまして、関西の空の玄関口、関西国際空港がございます。その関西国際空港においても、昨年の十一月七日にエボラ出血熱の感染の疑いがある方が来られた、そういった事例が発生いたしました。

 各地でエボラ疑いのニュースが出ておりますけれども、この関空での事例では、昨年の十一月七日夕刻に関空に到着された外国籍の方に発熱症状があって、そしてマラリアに関しては陽性反応が見られたため、事前の想定どおり、全国三カ所に特定感染症指定医療機関というのを厚労省が指定しておりまして、そしてその一つがすぐ近くに、りんくう総合医療センターがございます、そちらに患者さんが搬送されました。

 一方で、問題はそこからなんですけれども、厚労省の通知では、エボラ出血熱の感染を確認する機関、検体を検査する機関が東京にしかありません。東京の国立感染症研究所、通知でここに限定しているために、患者からとった検体を東京まで運ばなければなりません。

 ちょうど時間的に、新幹線や、また飛行機の最終便が終わってしまっている時間ということもあって、この件では検査開始まで約七時間、結果が、結局、翌日昼過ぎにまで及んだという事例になってしまいました。

 幸い、本件ではエボラに関しては陰性でありましたけれども、もしこれが陽性であったなら、大阪府は、飛行機の同乗者を含めまして、検査、健康調査を行う必要があります。

 そうした中で、これは時間をかけていていい問題ではもちろんないと思います。厚労大臣もそのようにお考えだと思うんですけれども、このエボラ出血熱の対策、世界的には徐々に、少しずつでありますけれども、終息の方向に向かっておりますけれども、まだまだこれは油断大敵な分野でございます。

 また、エボラだけじゃなくて、第一類の、同様な対応をしなければならない感染症はエボラだけではないですよね。そういった意味で、厚労省にこのお話を入れましたら、また、大阪府からもこの要望が来ておりますと思うんですけれども、その中で、厚労省さん、この検査自体は、ウイルスが合う型があれば、余りそんなに特殊なものではなくて、十分ほかのところでできるものだという御回答がありました。

 この特定の感染症指定の医療機関は、東京に二個、そして大阪に、今申し上げた、りんくうの一カ所がございます。

 そうした中で、安倍内閣では、国民の生命を守る、ISILの件でも強いお言葉で総理自身が、この安全保障問題、国民の生命を守るというのを発せられておりますけれども、この検体をできる機関を、できる限り時間を短くするために、やはり東京だけじゃなくて、西日本対応でも大阪にも一カ所つくっていただくのが、安全保障上非常に大事だというふうに考えます。そして、それは大阪府からも要望が来ていると思いますけれども、この点、安全保障、国民の生命を守るのは大事だとおっしゃっている安倍内閣において、厚労大臣、どのようにお考えでしょうか。

塩崎国務大臣 今先生御指摘のように、十一月にこの疑い例が発生したときには、先生に大変御心配もいただき、また御尽力もいただいたことを改めて感謝申し上げたいと思います。

 一類感染症につきましては、検査によってエボラ出血熱であるということがわかって陽性だと認められた場合には、患者の入院措置を含めた厳重な感染対策というのが必要になってくるわけです。

 今お話しのように、特定感染症医療機関というのが三つあって、そのうちの一つが今回のりんくうの医療センターだったわけでありますが、その検査につきましては、厳重な管理のもとで高い精度で行うことが大事でありまして、そして、万が一、これが陽性で、発生をしたということになりますと、患者の入院措置とか、あるいは交通遮断とか、建物の封鎖とかの強制措置というのが必要になってくるわけであります。したがって、検査に正確を期さないといけないということがあるということをまず押さえなきゃいけないと思います。

 それで、こういう観点から、一類感染症の検査につきましては、今先生御指摘のように、現時点では、十分な専門知識を有した職員がいて、なおかつ施設整備も整っているというのは、今、国立感染症研究所の村山庁舎で行うことが必要であると我々は考えております。

 国立感染症研究所以外で一類感染症の検査を行うことについて、御指摘のような、地方の衛生研究所において国立感染症研究所と同等の体制を確保できるのかどうかという点とか、あるいは今後の一類感染症の発生状況なども踏まえた上で、検討を必要に応じてしていかなければならないというふうに考えております。

 一見、七時間というのは長いということで、リスクがあるじゃないかという御指摘でありますけれども、これを、陽性だともし発見されたときの体制などを考えてみると、なかなか、それができるのは今のところ村山庁舎以外は考えられないということで、七時間かけて運んできたということでございます。

丸山委員 しっかりと御検討いただけるということですので、大臣もこの重要性をしっかりわかっていただけるという御答弁だと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 時間がありませんので、またこの話は厚労委員会等でも御質問させていただきたいと思います。

 次に、いわゆるイスラム国、ISILの日本人人質事件について伺っていきたいと思います。

 まず、今回の事件で、結果としてお二人の命が奪われてしまったこと、本当に本当に痛恨のきわみですし、心より哀悼の誠を我が党としてもささげたいと思います。

 ISILによる蛮行は決して許されてはいけないと思いますし、当然、厳しい態度で臨むべきであります。

 政府に対しましては、国内外での国民の保護、そして安全の確保に万全を期すように改めてお願いしたいと思います。

 そして、何よりまず、今回の事件、まだ終わっておりません。なぜなら、殺されてしまった、そういうことであれば、御遺体や御遺品の回収にももちろんできる限りの、困難はあると思いますけれども、努力をしていただかなければなりませんし、何より、同じようなことが二度と起こらないよう、政府の体制を強化するためにも、今後、政府はもちろん検討されると思いますけれども、国会でもきちんとした検証が必要でございます。単なる揚げ足取りではなくて、改善のために検証していく、そんなフェーズに今、国会が入り始めた、そのように私は認識しているところでございます。

 そこで、幾つか、事実関係を含めまして、お伺いしていきたいんです。

 今回の人質事件について、一月二十日にISILが動画をインターネット上にアップするまで、政府としてこの件について言及されることはありませんでした。そうした中で、昨年、平成二十六年末に、このような新聞が出ております。フランス人男性と御結婚された日本人女性がいわゆるイスラム国、ISILが支配する領域内にトルコ経由で現地入りしているという報道です。

 政府によりますと、あらゆる答弁では、湯川さん、後藤さん以外の情報には接していないという御答弁をされておりますけれども、それは事実なんでしょうか。この記事が、そうすると、誤報なのか。それとも、記事によると、トルコに入国後、イスタンブールからシリア国境に近いガジアンテップというところまで移動したことは確認している、政府関係者によるとという書きぶりで書かれていますけれども、ここまでは把握されているのか。

 政府としての把握状況、そして、この記事が誤報かどうか、そのあたりについて御答弁いただけますか。

岸田国務大臣 報じられております御夫妻につきましては、シリアへの入国の可能性につきまして事前に把握したことから、外務省は、日本国籍である同夫人に対して、十月中旬及び十月下旬、面会の上で、シリア全域への退避勧告の発出や現地の治安情勢につき担当部局から説明をし、渡航の取りやめを強く働きかけました。その際、同夫人は、シリアには渡航しない旨、述べておられました。その後、トルコに出国されたと承知をしております。

 現在、この御夫妻の所在については確認はできておりませんが、鋭意、把握に努めているところであります。

 ISILの活動地域に所在している邦人を把握すること、これは、現在の状況を考えますと、極めて困難でありますが、現時点において、邦人がいるということは政府として承知はしておりません。

 引き続き、関連情報収集に努めていきたいと考えています。

丸山委員 しっかり集めていただきたいところなんですけれども、総理にお伺いしたいと思います。

 総理の御発言で、犯人を追い詰めて、法の裁きにかける、そして罪を償わせると、非常に強い形で御発言されております。また、きのうは、都内ですか、邦人に指一本触れさせないとまでおっしゃってくださっているところですけれども、一方で、具体的に、ではどういった行動を政府がとるのかということは、国民の皆さんは非常に関心のあるところだと思います。

 有志連合に対する自衛隊の後方支援ということは考えていないという御発言がございました。そして、総理は人道支援の拡充をするという表現はされておりますけれども、一方で、参院の予算委では、外務大臣は、今具体的にこの支援等について数字上の上乗せまでを確定しているものではないという御答弁をされております。

 この強い決意、総理の決意を受けて、具体的にどういう行動をとられるということなのか、お伺いしたいんです。これまでどおりの人道的支援以上に新たなものをやるのか、それともこれまでどおりなのか、具体的にお答えいただけますか。

安倍内閣総理大臣 先般、中東への人道支援を拡充すると述べたのは、我が国はテロに屈することはないという国としての意思を示したものであります。具体的には、先般私が中東において表明した二億ドルの人道支援に加え、今回のテロ事件を受けて、今後さらに人道支援を拡充していくとの方針を表明したものであります。

 そして、罪を償わせる、このように申し上げましたのは、まさに犯人を捕らえ、そして裁きを受けさせるために全力を尽くしていく。これは、キャメロン首相も、今回の事案について、私たちのために、日本のために表明をしていただいているわけでありますし、私との電話会談においてもその趣旨を表明したわけでございます。

 そういう意味において、私は、国際社会とともに、いわば実行犯についてしっかりと裁きを受けさせるために全力を尽くしていきたい、このように考えているところでございます。

丸山委員 総理の決意そして思いに関しては、国民の皆さんは一定の安心感を覚えていらっしゃると思います。

 私も総理の思いに関しては非常に同意するところなんですけれども、具体的に、ではどういう行動をしていくかというのが非常に国家としては重要なところでありますし、何より国会でその話をお伺いしていかなければならないんですね。

 そういった意味で、後ほど二億ドルの支援の話も少しさせていただきたい、具体的にお聞きしたいと思うんですが、今回の件、一部では、お二人の自己責任もあるんじゃないかという声があります。でも、政府としては、国民の生命を守るということが非常に重要な役割でございます。そして、同じようなことが起きないようにあらゆる手段を尽くす義務がありますし、断じて自己責任という言葉で終わるわけにはいかない、そういう話だというのは総理も御同意いただいていると思います。

 マスコミの皆さんもいろいろ報道されておりますけれども、後藤さんもマスコミからの依頼があって、ビジネスとして危険地域に過去行っているケースもあるんじゃないかという話もあります。今回は、そういう依頼があったかどうかはわかりません。しかしながら、マスコミの皆さんも、報道される中でやはり危機管理上の問題をしっかり捉えていただきたいと思うところです。

 とはいえ、報道の自由が保障される日本において、そしてこういう危険な地域に行かれる方がいるからこそ報道されるニュースがあるということも十分わかっています。そして、何より憲法が保障する居住、移転の自由の関係で、政府が何ができるのか、特に、行かないように、予防の観点から、何ができるのかというのは、非常に難しいところがあるかもしれません。

 しかしながら、やはり今回の件を受けて、リスクと社会的影響とそしてこの問題度合いを考えたならば、マスコミに対して、例えばですけれども、そのような依頼を控える話を何とか入れられないかどうかとか、また旅券法に基づく旅券の返納命令の話、少し議論が出ておりますけれども、この辺をもう少し詰められないのかどうか。限界があるのはわかります。しかしながら、そもそも邦人をできる限り危険地域に行かせない、この予防の観点は非常に大事だと思うんです。

 三回ほどおとめになったということですけれども、何か国内においてもさらに手を打てるものはないんでしょうかね。この辺、総理、国の最高責任者として、外務大臣でも構いません、お答えいただけますでしょうか。

岸田国務大臣 政府としましては、退避勧告等の危険情報を発出して、現地の状況につきまして的確な情報を提供するべく努力をしております。ただ、この危険情報等には法的拘束力がないことから、こうした情報にもかかわらず入国される方々がおられるのも現実であります。

 ただ、法的拘束力を持つかどうかということにつきましては、憲法の渡航の自由との関係において慎重な議論が求められるところであります。ただ、この渡航の自由とて、あらゆる場合にこうした渡航が認められるべきなのかどうか、これは慎重な議論が必要かと思います。

 そして、こうした議論はもちろん大切ですが、その以前の問題として、現在の状況の中にあっても、当事者あるいは広く国民の皆さんに、こうした危険情報が発出されているということ、これをより的確に、そして広く知っていただくためにさまざまな工夫はできないのだろうか、こういった問題意識は私自身持っております。具体的に、今の危険情報の発出方法あるいは情報の伝達方法、何か工夫するべく努力をしていきたいと思っております。ぜひそうした、現状においても、できることはしっかりやっていくべく努力をしたいと考えます。

丸山委員 決意、重ねて、具体的な行動をぜひやっていただきたいと思うんですが、ここからは、これから今国会でずっとこの件は審議されていくことと思いますけれども、そのために、幾つか事実関係をお伺いしておきたいと思います。

 まずは、二億ドルの支援の中身について少しお伺いしたいんです。

 配らせていただいた資料の中に、合計二億ドルの支援を各国に対してお渡しするという補正予算の内容を書かせていただいております。そして、その中で、赤線を引かせていただきました。ヨルダンとレバノン、エジプトに対して、国境管理支援という名目で、合計五百四十二万ドル、日本円にしたら六億四千万円ほど拠出されるということでございますが、きょうの質疑を聞いていても、あくまでも人道支援ということでございますが、国境管理支援と聞くと、軍事的な意味合いもなきにしもあらずかなという受け方もないとは言えないと思うんですけれども、このあたり、この名目、国境管理支援、何を想定されているのか、お答えいただけますか。

岸田国務大臣 御指摘のように、総額二億ドルの支援の中にエジプトの国境管理能力強化に関する案件も位置づけられております。この内容ですが、国境管理分野では二百五十一万ドルを国連薬物犯罪事務所、国連開発計画等の関連機関に対して拠出することを予定しております。

 具体的な内容として、国境管理能力を強化するための訓練、研修の実施、また、同分野での法執行能力や司法手続の強化に係る支援、さらには関連機材の調達、こうしたものを行う予定にしております。

丸山委員 関連資材の調達ということで、もちろんそこに武器等はないということですよね。

岸田国務大臣 今申し上げました、訓練、研修の実施ですとか司法手続の強化、こうしたものに関する関連機材の調達であります。

丸山委員 ここのあたり、表現が非常に難しいところで、中身を詳しく詰めていかなければならないと考えておりますが、時間もありますので、まず、きょうは最初の集中審議でございますので、このあたり、もう少し詰めたいところでありますけれども、少しほかのところからお伺いしていきたいと思います。

 時系列の資料でございますが、何を申し上げたいのかといいますと、少し、前半、きょうの午前中等の議論で出ておりましたけれども、事実関係をお伺いしたいと思います。

 八月十八日に現地対策本部、日本政府が情報を入手して、すぐ立ち上げられました。そして、十二月三日に後藤さんの奥さんより、ISILから電子メール、ISILからかはわからないと先ほどの話ではありましたけれども、メールが来たというのを日本政府が把握し、そして、一月二十日にあのインターネット上の動画が公開されたという話でございました。

 これまでの委員会の質疑では、人員増強のタイミングについて、一月二十日の、この最後の赤線の段階で初めて十数人増員したということですけれども、これは事実なんでしょうか。八月設置の時点で何人体制で、十二月にこの情報が入ったときには増員していなかったのか。邦人救出に全力という割に、少し対応が、一月二十日というのでは遅いのかなという気がするんですけれども、このあたりの背景について、外務大臣、お答えいただけますか。

岸田国務大臣 一月二十日以降は、中山外務副大臣等を現地対策本部に派遣するなど、人員の増強を行いました。

 それ以前の体制ですが、もとよりヨルダン大使館にはシリア大使館が退避しておりました。現地には、シリア大使館、ヨルダン大使館、両大使館のアラビアの専門家が存在いたしました。

 こうしたメンバーを中心に対応をし、あわせて、これも午前中答弁をさせていただきましたが、シリア国境に隣接するトルコに対しましては、外務省本省あるいは他の在外公館から出張という形で人員を派遣し、協力要請、情報収集を行った、こういった応援体制も行っておりましたし、あわせて警察庁からも、周辺諸国に対しまして人員を派遣し、情報収集、協力要請を行う、こういった体制も行っておりました。

 現地においては、おっしゃるように、一月二十日以前はシリア大使館、ヨルダン大使館の専門家を中心に対応していましたが、あわせて、その一月二十日以前も、今申し上げましたように、外務省本省、他の在外公館、あるいは警察から、さまざまな形でさまざまな箇所に必要な人員を派遣して対応していたというのが、この案件に臨んでいた体制の実情であります。

丸山委員 今の大臣の御答弁だと、人は足りていたという御認識で、しかしながら、午前中の御答弁もあわせると、なかなか情報が集まってこなかった。いわゆるヒューミント、人と人との関係を現地でつくれていなかった、そういうことで入ってこなかったという御認識でいらっしゃるということでよろしいですか。

岸田国務大臣 一月二十日以前ですが、一月二十日以前につきましても、シリアで活動する過激派に強いとされる各国情報機関を含め、各国から情報提供等の具体的な協力を得ておりました。また、犯行グループの可能性があると考えられる組織、こうした組織に影響力を及ぼし得る組織への働きかけを行うなど、お二人の解放に向けて何が最も効果的な方法なのかという観点から、あらゆるルート、チャンネルを活用して取り組んでいたというのが実情でありました。

 また、十一月一日、後藤さんが行方不明になったのではないかという情報を得てから後、御家族と緊密に連絡をとってきたわけですが、十二月三日、犯行グループからメールが後藤さんの奥様のところに届いたこの時点以降も、政府としましては、後藤さんの奥様と緊密に連絡をとりながら、できるだけ気持ちに寄り添って相談、助言を行ってきた、こうした取り組みを行ってきた次第です。

丸山委員 総理にお伺いしたいんですけれども、今回の事件だけじゃなくて、例えば二〇一三年、アルジェリアの日揮の事件がありましたけれども、ずっと指摘されていることだと思います。また、午前中、平沢議員との質疑で出てきました、対外情報収集力が不足しているんじゃないか、特に、人のつながりを介して集めてくるヒューミント力の不足がこの国の情報収集の分野において圧倒的に欠けているんじゃないかという御指摘、常々起こっています。

 シギント、つまり画像の処理に関しては、この間、予備衛星を打ち上げられました。また、内調等、オープンソースのもののオシントはやっておられますけれども、このヒューミントに関して、対外諜報機関をきちんとやはり日本でも、ほかの国にあるようなものをきちっと整備すべきじゃないかという平沢議員の議論が午前中ありましたけれども、総理として、今回の事件、さまざまな対応に当たられる中で、ヒューミントの、対人間での情報が足らなかった、弱かったとお考えかどうか、率直にお伺いしたいんですけれども。

安倍内閣総理大臣 安倍政権になりましてから、内閣情報官を中心に、各国の情報組織との関係を強化してまいりました。また、今例として挙げていただきましたが、我が国は、情報収集衛星、シギント等々の能力は、高度なものを今構築しつつあるわけでございます。

 情報というのは、ただ情報をいただくだけではなかなかそう簡単には情報は集まらないものでありまして、こちらも提供できるものがあっての情報収集ということに基本的になっていくわけでございます。

 ただ、日本は、今まで積み上げてきたODA等々の努力の成果もあり、そうした今までいわば積み重ねてきた国としての徳を生かしながら情報収集も行っているところでございますが、人的関係を強化することによって情報収集能力は向上しているわけでございますが、今御指摘のように、我が国が独自に海外に情報収集機関を持っていないというのは事実でございます。

 御指摘のような対外情報機関の設置については、さまざまな議論があるものと承知をしておりますが、今後とも、政府における情報の収集、集約、分析の一層の充実強化に取り組んでまいりたい、このように考えております。

丸山委員 つまり、今のお話と午前中のを入れますと、情報機能をさらに強化して、国の戦略的な意思決定に反映していくことが重要だというお考えなのはわかりました。

 それは具体的にどうなるのか。つまり、対外諜報機関新設について具体的に検討されるということでいいか、それか、何か具体的に前進させるものがないのか、それとも、残念ながら、お言葉だけで、今と変わらないということなのか、お答えいただけますか。

安倍内閣総理大臣 今政府として直ちに検討しているわけではございませんが、与党あるいは自民党において、対外情報機関の必要性、また、あり方については検討しているところでございます。

丸山委員 ありがとうございました。

大島委員長 これにて小熊君、井出君、丸山君の質疑は終了いたしました。

 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 最初に、大企業と中小企業の格差問題について質問をいたします。

 まず、確認ですけれども、中小企業、小規模企業が果たしている役割について確認するものですが、宮沢大臣にお尋ねします。

 中小企業白書において、大企業、中小企業、小規模企業の区分ごとの企業数、率、従業者数、その割合、これがどうなっているのかについて御説明をいただけますか。

宮沢国務大臣 もとの数字は、総務省、経済産業省が実施しました平成二十四年経済センサス活動調査によるものですけれども、大企業と中小企業、中小企業は、これは小規模企業も含んでという数字になりますが、数は、大企業が一万社、中小企業が三百八十五万社、そして中小企業のうちの小規模企業の企業数は三百三十四万社。全体に占める割合は、それぞれ〇・三%、九九・七%、八六・五%となっております。

 また、従業者の数については、大企業につきましては千三百九十七万人、中小企業につきましては三千二百十七万人、そして小規模企業につきましては千百九十二万人となっておりまして、それぞれ割合は三〇・三%、六九・七%、二五・八%となっております。

塩川委員 ここで総理にお答えいただきたかったんですけれども。

 ちょっととめていただけますか、流れもあるものですから、時間の関係で。

大島委員長 いやいや、もう一度宮沢大臣にどうぞ。

塩川委員 いやいや、流れもありますから。とめてくださいよ。(発言する者あり)そうですよ。

大島委員長 では、速記をとめてください。

    〔速記中止〕

大島委員長 速記を起こしてください。

 塩川鉄也君。

塩川委員 今、中小企業が占める割合、特に小規模企業を含めた中小企業が雇用の面では七割を支えている、地域経済、地域社会を支える大きな存在であると考えます。この点について改めて、中小・小規模企業の果たしている役割について、総理としての認識をまず伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 全国三百八十五万の中小・小規模事業者は、従業員の数が全体の七割を占めているわけでありますし、我が国の経済や雇用を支える重要な存在であると我々は認識をしております。

 経済の好循環を全国津々浦々にまで届けていくためには、中小・小規模事業者の活力を最大限に発揮させることが必要不可欠であり、政府としても、昨年、中小・小規模事業者の九割を占める小規模事業者を支援するため、小規模企業振興基本法を策定し、地域で雇用を維持し、頑張る小規模事業者の方々を正面から応援しているところでございます。

 こうした施策に加えまして、今回の補正予算においても、頑張る中小・小規模事業者の活動を後押しするための施策を講じることとしておりまして、引き続き、中小・小規模事業者の支援に万全を期していきたいと考えております。

塩川委員 総理の御答弁にありましたように、やはり地域の経済を支える、雇用を支える大きな役割を中小・小規模企業は果たしている。そういった大きな役割を果たしている中小・小規模企業ですけれども、この間、小規模企業の数も大きく激減をしているわけですね。こういう点についてもしっかりと見ていかなければならない。そういう中でも雇用を守って頑張っているのが中小・小規模企業の実態であります。

 そこで、次に二枚目のパネルをごらんいただきたいんですが、失われた二十年とされる一九九〇年代以降における大企業と小規模企業の経営状況がどうなっているのかを見てみたいと思います。

 このグラフにありますように、上が資本金十億円以上の大企業、下が資本金一千万円未満の小規模企業について、一九九一年度を起点にした推移が掲げられています。

 上のグラフの大企業の部分では、経常利益は十六兆円から三十五兆円に二倍以上、配当金は三兆円から十一兆円に三倍以上ふえているのに、従業員給与は三十九兆円から四十一兆円と横ばいであります。

 一方、下のグラフ、資本金一千万円未満の小規模企業の場合は、経常利益は十一兆円程度、また配当金は一兆円程度で伸びがない中、そういう中でも従業員給与をほぼ維持しているわけであります。

 そこで総理にお尋ねしますが、このように、この間、経常利益や配当金において大企業と小規模企業の格差が拡大してきたのではないのか、このように思いますが、総理の御認識はいかがですか。

安倍内閣総理大臣 まず、倒産件数においては二十四年ぶりに一万件を切ったわけでございまして、そういう意味におきましては、大企業だけではなくて、中小・小規模事業者の事業環境はよくなりつつある、こう思っているわけでございます。

 また、中小企業、全産業でございますが、資金繰りにつきましても、二十四年の十二月はマイナス五だったものが、二十六年の十二月ではプラス二と改善もしているわけでございます。

 そうした中において、中小企業においても約六割が賃上げを昨年達成したのは事実でございますが、しかし、まだまだそれは、大企業と比べれば厳しい状況にあるのも事実であろう、このように思います。

 そういう意味におきましても、我々、経済界に対しまして、資材の値上がり等、価格転嫁に対応するように要請をし、合意をしているところでございます。

塩川委員 九〇年代以降の傾向、推移についてお尋ねしたんですが、その点についてのお答えはありませんでした。

 見てはっきりわかるように、大企業は経常利益、配当金を大幅に伸ばし、一方、小規模企業にはその恩恵は及んでいないということがはっきりわかるわけであります。

 今、安倍総理が、大企業に対して中小企業は厳しい状況にあるということも、足元の話として改めて御説明をされました。安倍総理は、アベノミクスの成果によって企業の経常利益は過去最高となり、そのもとで経済の好循環が生まれていると述べておりますが、一方で、景気回復の実感が地方に暮らす方々や中小・小規模事業者の方々に届いていないのも事実と述べておられます。

 アベノミクスの成果が中小・小規模事業者には届いていないというのは一体どういうことなのか、この点で宮沢大臣にお尋ねをいたします。

 中小企業庁が、原材料、エネルギーコストの増加による中小・小規模企業への影響調査を行っております。ここでは、足元の原材料、エネルギーコスト増加の商品、サービスの販売価格への反映状況、このようなアンケートをとっておりますが、その回答がどのようになっているのかについて御説明をいただいた上で、中小・小規模企業にとって価格転嫁が困難という状況がはっきり示されていると思うんですが、その点についての認識もあわせてお答えいただけますでしょうか。

宮沢国務大臣 経済産業省におきまして、昨年十月に、中小企業・小規模事業者を対象として調査を実施いたしました。原材料、エネルギーコスト増加の商品、サービスの販売価格への反映状況についての調査ですけれども、ほとんど反映できていると回答した者が一四・八%、半分以上反映できていると回答した者が一二・五%、半分未満しか反映できていないと回答した者が一六・四%、その一方で、ほとんど反映できていないと回答した者が三七・一%、全く反映できていないと回答した者が一九・二%となり、ほとんどできていない、全くできていない人で、合わせて五六・三%の者が価格転嫁が非常に困難な状況にあると回答しております。

 したがいまして、原材料価格の高騰、大変速いスピードで起こってきておりまして、なかなか転嫁できていないというのが今の現状だと思っております。

 私どもとしても、ガイドラインを今年度中に作成いたしまして、よい価格転嫁の例などを各業界に周知徹底するとか、また、消費税の転嫁Gメンが各社を回っておりますので、そういうところを中心に、年度末まで大手五百社は会社に伺って調査をするなど、価格転嫁を進める支援をしていきたいと思っております。

塩川委員 転嫁できていないというのが現状だというお話、アンケートの数字でも、物価上昇分の価格転嫁が困難というのが五六%、一部というのも含めれば六割から八割ぐらいになっている。いずれにせよ、多くの中小・小規模企業が価格転嫁が困難だという実態について、改めて確認をいたしました。

 次に、衆議院の調査局経済産業調査室が一万社以上を対象に行った、最近の企業動向等に関する実態調査というのがあります。円安の影響が大企業と中小企業にどのような違いとなってあらわれたかについて、この実態調査の報告では次のように述べています。

 大企業においては、景気がよくなり業績見通しが明るくなった、取引先、親会社等からの受注が増加した、為替差益により収益が増加した等、円安がプラス面に働いたとする項目の回答率が中小企業のそれを上回った。一方、中小企業及び小規模企業においては、原材料品の仕入れ価格が上昇した、燃料費が増加した、景気が悪くなり業績見通しが暗くなった等、円安がマイナス面に働いたとする項目の回答率が大企業のそれを上回った。中小企業及び小規模企業は、大企業に比べて、円安がプラス面に働いているとの認識は薄く、逆にマイナス面を強く実感している傾向にあると考えられている。

 これが衆議院調査局の実態調査の報告の内容であります。

 そこで、安倍総理にお尋ねをいたします。

 ここに言いますように、円安の影響を問うたときに、アベノミクスによる円安というのは、大企業にはプラス、しかし、中小・小規模企業にはマイナスに働いているというのが現状じゃありませんか。この御認識をお聞かせください。

安倍内閣総理大臣 一般論として、円安方向への動きは、輸出や海外展開をしている事業者にとってはプラスと考えておりますが、一方、円安方向への動きに伴う輸入価格の高騰は、原材料価格の上昇等を通じ、マイナスの影響を及ぼしていると考えております。

 だからこそ、こうした状況を踏まえて、デフレ脱却をし、経済の好循環をしっかりと回していくために、経済界、政労使の懇談会を開きまして、こうした原材料コスト高に対して、下請企業に対して価格転嫁をしっかりと行っていくようにということについて合意をしたわけでございますし、昨年十月以来の原材料コスト高への対策パッケージを講じているところでございます。

 先ほど大臣からも一部答弁をさせていただきましたが、各公的金融機関では、昨年末までの間に、資金繰りに苦しむ中小・小規模事業者に対して、約十五万六千件、二兆三千億円の返済猶予を行っております。また、下請法に基づいて、昨年末までに約五百社の大企業に対する立入検査も行っておりますし、平成二十六年度の補正予算では、日本政策金融公庫及び商工中金に新たな低利融資制度を創設し、厚い資金繰り支援を実施していくことにしております。こうしたコスト高にしっかりと対応していく。

 しかし、中小・小規模事業者にとっても、今、いわば為替が是正されたことによって、仕事量としては間違いなくふえているわけでございます。仕事量がふえている中において、倒産件数は減少して二十四年ぶりに一万件を割っているのも事実でございますし、我々が政権をとる前よりも二割倒産件数は削減しているのも事実でございます。

 仕事はふえているけれどもなかなか利益にならないなという状況を我々はさらに変えていくべく努力をしていきたい、このように考えているところでございます。

塩川委員 中小企業は利益にならないという状況が円安のもとでも起こっているというところであります。

 対策パッケージのお話などもされましたけれども、中小・小規模企業にとっては、価格転嫁が困難というのは、円安による物価上昇分の価格転嫁が困難であるということとともに、私は、消費税の八%増税の価格転嫁が困難という実態が相まって起こっているということを指摘したいと思います。この点については後で議論をいたします。

 中小企業庁のアンケートで、価格転嫁が困難な理由について主に大きく二つあるということを指摘しております。一つは、販売先が交渉に応じないためという企業間取引、発注者、親事業者と下請事業者との関係、もう一つが、価格転嫁をすると売り上げが減少するためという対消費者との関係での取引の二つの面があります。いわゆるBツーB、BツーCと言われている関係ですけれども、その両面から見なければいけません。

 まず、この企業間取引の問題を取り上げたいと思います。

 今、総理もおっしゃった昨年の政労使合意で、下請企業への価格転嫁の取り組みについても促すということで合意されたという話もありました。そういう中で、例えばトヨタが下請への値下げ要請を見送ったという話なども紹介をされ、甘利大臣は、好循環が大企業から中小企業に展開しつつある、大企業が範を示していただいたということもおっしゃっておられます。

 しかし、そもそもトヨタのような重層下請構造ですから、一次、二次、三次、四次、五次、六次、こういった重層下請構造のもとで、トップダウンで実際にはトヨタが単価について示すという要請が行われている現状では、下請中小企業、特に末端においては価格転嫁はやはり困難なままなんじゃないのか、このように思いますが、この点について宮沢大臣の認識をお聞かせいただけますか。

宮沢国務大臣 おっしゃるように、なかなか下請のことまで考えて行動してくださる経営者というのは少なかったわけでありますけれども、総理からもお話がありましたように、政労使の場でもそうですし、また、私は、経産大臣の新春というのは各業界の賀詞交歓会の挨拶回りみたいなものでございまして、各業界に行くたびに必ず、給料の話と、下請、納入業者にも利益を均てんしてほしいという話をずっとしてまいりました。また、いろいろな大手の企業、特に下請が重層構造になっている企業の幹部とお目にかかるときには、要するに、一次下請だけではなくて、さらに下までその利益が均てんするような努力をしてほしいということもつけ加えております。

 なかなか難しい話かもしれませんけれども、しっかりその重層構造の下まで利益が均てんするように、我々としてもやはりいろいろそういった意味で、会社を指導といいますか、そこまでの権限はございませんけれども、お願いをしっかりとしていかなければいけないし、一方でまた、下請の特に五次、六次というようなところになりますと、いろいろ事業の多様化みたいなものをしていただくと同時に、やはりこれからは中小企業がまさに中心になっていく時代ですから、彼らがいろいろな第二の創業的なことをすることのお手伝いは我々としてもしっかりするシステムをつくっていきたいと思っております。

塩川委員 重層下請構造のもとで末端まで価格転嫁ができるということについては、直接御説明もありませんでした。そういう意味では、難しいということをお話しされておられたわけであります。

 重層下請構造の下まで転嫁できるようにしていきたいというお話ですけれども、重層下請の三次、四次、五次といった末端の小規模事業者に実際に届いているのかということがあります。

 この点で、例えば愛知県のトヨタグループの有力企業の下請のお話を伺いました。確かに、この一次下請、トヨタグループの大企業ですけれども、そのもとでは三次までは単価の見直しに応じるようになっているというけれども、四次の親、つまり三次下請事業者がとても余裕がないということで、四次下請に対してはそれは無理と言っているという話なんかも出されております。また、同じ愛知県のトヨタの部品下請企業が集まっている地域の五次下請の事業者、ここは車のシート加工をしている事業者の方でしたけれども、昨年四月の消費税増税時に増税分の単価を引き下げられたという話があるということであります。

 今回の原材料高騰についての価格転嫁の通知、国の方からも出されておりますけれども、こういう国からの通知があるのは承知している、承知しているけれども、とても親事業者には言えない、言ってばれたら取引を切られる、こういう声というのがまさに実態じゃないでしょうか。

 総理は、こういった重層下請構造のもとで、特に末端の事業者が価格転嫁しようにもできない、こういう実態があるということを承知しておられるんですか。その認識についてぜひお聞かせください。

安倍内閣総理大臣 まさに、なかなか価格転嫁ができないという状況があるからこそ、我々はしっかりと、先ほど申し上げましたように、下請法に基づいて、年度末までに約五百社の大企業に対する立入検査を実施していくということにしているわけであります。

 と同時にまた、我々も経済界に対して、デフレ脱却をしていく上において経済をよくしていく、そして経済の好循環を回していく上においては、しっかりと中小・小規模事業者あるいはそこで働く人たちの給与が上がっていくという状況をつくらなければだめですねというお互いに認識をつくるということをもってして、政労使の場で合意をしたわけであります。

 まさに、トヨタの車が売れる上においても、全国で働いている人たちは中小・小規模事業で働いているんですから、そういう人たちが例えばトヨタの車が買えるようになっていくという状況をつくらなければ、彼らにとっても結局この好循環を維持することができないという理解をお互いにしながら進めていく。

 今まで、政府がそういう政労使の場みたいなものを設けて、賃金を上げろとか、下請に対してちゃんとやれということを言ったことはなかったわけでございます。こういうものをつくれということについては共産党からも御要望をいただいたのではないか、こう思うわけでございますが、自民党として共産党の御要望も取り入れる、これは、デフレ脱却というのは相当国民全体で取り組まなければいけないという中において、こういう試みも行っているところでございます。

塩川委員 まさに現場の実態が深刻だからこそ、こういうことを求めているわけであります。総理も、価格転嫁できない実態があるということをお認めになりました。

 いろいろ政策パッケージをやっているという話もありますが、例えば消費税増税についての転嫁Gメンというのがありますけれども、しかし、中小企業は四百万事業者ありますが、その人数といえば四百七十四人。それで、仕事はふえる。そういう人たちに今度は物価上昇の価格転嫁問題についての調査や取り締まりもお願いするというんですけれども、増員の話というのも特段聞いておりません。そういうことを含めて、一人一人のこのGメンの人がどんなに頑張ってもとても追いつかないというのが実態でもあります。

 トヨタの単価の要請の問題についても、値下げ要請を見送ったという話ですが、物価上昇のもとでも単価の値上げには応じないという宣言ということなんじゃないですか。

 超円高のときにトヨタは、一律のコストダウン要求に加えて円高協力金というのを設けて、円高協力金という形で超円高部分のコストダウンの要求をしたんです。半期ごとに一・五%減るのに加えて、一・五%円高協力金ということで上乗せをして減らしてもらうということで要請をしてきたわけですよね。

 こういった円高協力金を超円高のときにやっておきながら、今、円安の局面であります。今、円安になって、では、この円高協力金を還元してくれるのか。こういう話なんかも全く出てこないわけで、そういう点でも、重層下請構造のもとで、一律に単価の引き下げ、あるいは単価の値上げに応じないというやり方そのものが下請中小企業、末端の小規模企業に甚大な影響を及ぼしているということを出発点に、我々は今の対策を考えなくちゃいけないということを強く申し上げておくものであります。

 もう一つ、今企業間取引の話を指摘しましたが、対消費者との取引の問題であります。

 消費者を相手に経営を行う中小・小規模企業の実態も深刻です。実質賃金が十七カ月連続マイナスということもあります。国民の購買力が減少し消費が落ち込み、そのため、消費税増税分に加えて、物価上昇分の価格転嫁を行うことが困難になっております。

 お話をお聞きした、首都圏に二店舗の洋風レストランを経営する事業者の方ですけれども、今、仕入れはどんどん上がるわけですよね。エビも上がるし小麦も上がるし、チーズも肉も値上げをしている。ですから、全体として前年より一〇%ぐらい上がっているというお話でありました。

 一方で、売り上げの方は、懸命に努力して、いろいろチケットなどもつくったりして販売を促すような、そういう取り組みで前年水準は維持しているけれども、やはり利益は減っているわけですね。

 販売価格については、夜の食事については上げました。しかし、昼のランチの方は、競争が激しいものですから、据え置かざるを得ない。ですから、消費税増税分もあり、物価上昇の価格が上がっている部分もあり、しかし、そういう中でも、ランチについてはやはり消費者の方との関係でもなかなか上げることができないということで、消費税増税分については五〇%しか転嫁できていないというお話でありました。

 宮沢大臣にお尋ねしますが、こういった中小・小規模企業というのが、消費税増税分に加えて物価上昇分の価格転嫁ができずに利益が出ないという実態があるということは、よく御承知でしょうか。

宮沢国務大臣 まず、BツーCの話でありますけれども、まず消費税の方について申し上げますと、二年前の春に、転嫁に関する特別措置法というのを私どもの政権になってつくりました。実は私、税調の中心になってこの法律をつくりまして、ともかく九七年の二の舞は絶対だめだということで、徹底的に転嫁をしてもらおうじゃないかということでやりまして、今回はそれなりに消費税については転嫁がうまくいけたのかなというふうに思っております。

 調査におきましても、八八・二%の事業者が、全部または一部をBツーCにおいてすら転嫁できている、こういうアンケート調査もございまして、それなりに九七年の轍は踏まないで済んだのかなと思っております。

 そしてまた、今、原材料高ということで、先ほど言いましたように、なかなか転嫁ができていないということは、申し上げたとおり実情であります。

 我々としても転嫁できるように努力いたしますが、このBツーCというのはなかなか難しいところがございまして、お客さんとのあれですから、納入業者と親会社というわけではありませんので難しいわけですけれども、ともかく、例えば物販であれば、大型の物販店がしっかりと値段が上がっていくという姿が小さな小売にいい影響を与えるでしょうし、また、レストランチェーンみたいなものがしっかり原材料費をちゃんと上げていくというようなことがやはりいい影響を与えると思いますので、そういった意味では、そういう大きなところについての調査はしっかりやって、なるべく小さいところにもそれが波及していくような、そういうことをやっていかなければいけないのかなというふうに思っております。

 また、そういう意味では、利益が上がっていないのを認識しているかというのは、なかなか、個別の会社それぞれ、上がっているところと上がっていないところがありまして、中小企業全般でいえば、昨年の十月―十二月期においても、利益水準としてはかなり高い水準を中小企業も全体としては上げているということは事実であります。

塩川委員 御答弁の中で、BツーC、対消費者の価格転嫁は難しいというお話もありました。あわせて、消費税増税分の転嫁についてはできているというアンケート結果の話がございました。

 この点でいえば、消費税増税分の価格転嫁だけ聞いても経営の実態は見えてこないわけで、消費税も上がりました、物価上昇分の価格も上がりましたとセットで考えなければいけません。そういう意味で、実際には、消費税増税分を形式上転嫁できたとしても、物価上昇分まで価格転嫁することができずに、利益を出せず赤字になるという実態というのはあるんじゃないのか。

 都内の弁当製造販売の事業者の方、ここは女性経営者の方でありますけれども、いろいろ工夫して、従業員十六人で弁当をつくり販売をしておられます。ワンコイン弁当の激戦地だ。つまり五百円弁当。でも、資材も高騰し、消費税増税時の昨年四月から売り値五百円を五百四十円に値上げした。一時は売り上げは上がったけれども、また昨年並みに下がった。値上げした四十円分は、本来であれば、消費税増税もあり物価上昇もあるんですからその転嫁となるんだけれども、競争が激しいので、中身を充実しないとお客さんが納得しない。そのために、今までは三十円のコロッケを入れていたのに、六十円のコロッケにバージョンアップをする。こういう形でお客さんに買ってもらいたいとなると、上がった分のほとんどがコロッケで消えてしまう、こういう状況になっているわけです。

 ここに、形式的には消費税は転嫁をしているが、物価上昇分もあって、結果として赤字で、この事業者の方も納税に回す余裕がなくて消費税の滞納が発生しているというのが現状であります。

 消費税というのは間接税で、最終的な負担者は消費者とされておりますけれども、実際に納税するのは事業者の方であります。ですから、事業者の方にとってみれば、消費税というのは直接税なんですよ。やはり払わなくちゃいけない。ですから、利益が出なくても、赤字のもとでも払わなくちゃいけないというのが消費税だ。これがどれだけ大きくのしかかっているのかについて、我々は本当に胸を痛めなければいけない。それが消費税そのものだということを、ぜひともこの点で大いに指摘していきたいと思います。

 そこで総理にお尋ねしますが、このように、経営が赤字に追い込まれても払わなければならないのが消費税なんだ、事業者にとって直接税だ、深刻な税金だという認識は、総理はお持ちですか。

安倍内閣総理大臣 五%から八%、そして再来年さらに一〇%へ引き上げていく消費税は、伸びていく社会保障費に対応し、さらに子育て支援等社会保障を充実させていくために必要なものであります。

 この世界に冠たる私たちの大切な社会保障制度を次世代に引き渡していく、その責任を果たしていく上において、三党合意を行い、消費税を引き上げていく。もちろん、消費税を引き上げていくその収入は全て、税収は、今申し上げたとおり社会保障に充てていくわけでございます。いわばこれは、御負担もいただいておりますが、それはさらに、医療、介護あるいは年金、さまざまな社会保障のサービスとして国民の皆様に還元していくものでございます。

 そのような御理解をいただきながら、しかし同時に、やはり私ども、そのように中小・小規模事業者の方々にだけ負担が重なることのないように、先ほど来経産大臣から答弁させていただいておりますように、しっかりと価格転嫁をするように、消費税については、BツーCでいえばおおむね価格転嫁ができているという調査結果も出ているわけでございます。そういう意味において、御理解をいただくべくさらに努力をしていきたい、このように思っております。

塩川委員 消費税を引き上げても、医療も年金も介護も悪くなったじゃないか、これが実際の国民の声ですよ。

 その上で、今の事業者の問題ですけれども、国税庁の法人企業統計によると、中小企業の七割が赤字法人で、毎年ふえています。消費税は赤字でも納めなければなりません。五%が八%になり納税の負担は一・六倍になり、一〇%になれば二倍となります。

 さきに紹介した弁当製造販売の事業者の方は、消費税滞納と延滞税の納税のため、生命保険を解約させられたと。身を削って納めているのが中小・小規模事業者の実態だ、こういう負担を強いるのが消費税の増税だということを強く言わなければなりません。

 そこで、では、実際に、中小・小規模企業が賃上げができるのかどうかということですけれども、先ほど紹介した衆議院調査局の実態調査で、賃金引き上げの動向についても取り上げております。

 ここでも、小規模企業で定期昇給を実施するというのが、大企業、中小企業に比べても著しく低いとか、小規模企業において賃金を引き上げる予定はないというのが三六・三%にも上る。大企業の一六・二%と比べて非常に高くなっております。以上のことから、特に小規模企業において、我が国経済が回復基調にあるにもかかわらず、賃金引き上げまでに至っていない事業環境にある企業が多く存在することがうかがえると指摘をしております。

 率直に言って、こういう状況で、中小企業、特に小規模企業で賃上げができるんだろうか。

 日本商工会議所、これは政労使の会議に参加をされている団体でもあり、合意にも加わっておられるわけですが、この企業調査でも、来年度賃上げを予定している企業は、昨年十二月時点で三三・五%で、一年前の昨年一月に比べて六・四%低下をしているんです。つまり、この一年で賃上げをしようという企業は減っている。一方で、賃上げの予定なしという企業が二・五ポイント上昇して一九・三%になる。つまり、昨年四月の消費税増税を挟んで、賃上げするという企業が減り、賃上げしないという企業がふえているというのが実態です。

 総理にお尋ねしますけれども、一月二十九日の予算委員会の答弁で、消費税の引き上げを行った際、消費が冷え込んだのは事実、そこでさまざまな景気対策を打った、消費税の引き上げを本年十月から一年半先延ばしした、大切なことは、しっかりと賃金が上がっていく、あるいは中小・小規模事業者が材料費等について価格転嫁できる状況をつくっていく、このように言っておられました。

 そこでお尋ねしますけれども、消費税一〇%になっても中小・小規模企業は賃上げそして価格転嫁、これはきっちり本当にできるのか、この点についてはいかがですか。

安倍内閣総理大臣 今回、昨年の四月の消費税引き上げによる消費の冷え込みの状況を考慮し、デフレ脱却、また私どもの進めている経済政策を成功させるために、消費税の引き上げを一年半延期したところでございますが、再来年の四月には確実に引き上げることができる状況をつくっていく考えでございます。

 そのポイントは、何よりも賃金が上がっていくことでございまして、昨年、平均で二%以上上げることができました。そして、ことしも上げていくということについては政労使で合意できているわけでございますので、ぜひ四月に実施していただきたい、そしてそれが中小・小規模事業者にも及んでいくようにしていきたい、こう考えているわけでありますが、さらに来年の春、そしてその次の、翌年の春にも上げていくことができれば、いわば各中小・小規模事業者にとっても三%の引き上げにたえ得る状況をつくることができる、このように考えております。

塩川委員 中小企業の実感と全く違うということを言わざるを得ません。

 中小企業家同友会全国協議会の二〇一四年十月から十二月期の景況調査では、消費税増税後の個人消費の低迷と、一ドル百二十円近辺への円安進行が中小企業経営にとって二重苦である、消費税増税分と合わせた物価上昇を十分に価格転嫁するのは至難のわざ、特に小規模企業で困難な状況、中小企業は既にアベノミクス不況のさなかと指摘をしております。

 アベノミクスが大企業と中小企業の格差拡大をもたらし、円安による物価上昇だけでも賃上げが困難な中小企業に、さらなる消費税増税では、賃上げなどできないと言わざるを得ません。もともと最悪の不公平税制であるとともに、中小・小規模企業の経営を圧迫し、営業を破壊する税金であり、消費税一〇%増税は先送りではなく中止ということを強く求めておくものであります。

 次に、パネルの三枚目を紹介しますけれども、安倍内閣の成長戦略の目玉としている法人税減税についてお伺いをします。

 このパネルにありますように、法人税の大企業の実質負担率というのは基本税率よりも非常に低いわけです。黄色い階段状の線というのが基本税率になっていますが、赤の大企業の線というのが実質の負担率を示しているわけです。その上にある緑が中小企業ですけれども、一部軽減税率が適用されている中小企業よりもさらに低い。

 一連の大企業への優遇措置というのがとられた結果だと思いますが、麻生大臣、そういうことでよろしいでしょうか。

麻生国務大臣 どういう資料を使われたという資料が出ていないので、私どもの想像で申し上げるようで恐縮ですけれども、この法人税負担の内容を見ますと、これは中小企業より大企業に対して、いわゆる、かなり偏ったような数字に多分なっているはずだと思うんです。

 なぜなら、この中には多分受取配当というようなものが、入れて計算をしてやると、益金不算入額というのを入れていないとこれは、全体として、益金不算入額を全部入れますと当然のことで大企業の方が圧倒的に多くなりますし、外国からの子会社の配当金というようなものも益金不算入ということでこれは全部決まっていますし、また、連結決算ということの分も全部損金不算入ということに、これは塩川さん、多分全部なっておる。

 なぜなっておるかといえば、それは二重課税ということになりますので、これは当たり前の話で、連結決算を認めないというんだったら、これは、勝手に動かして赤字をつくったり、適当に移されたりするとかないませんから、連結決算というようなことにして、きちんとやっておりますので、そういった意味では、そこのところは少し計算が違うのではないかというのが一点。

 それから、四月以降どんと下がっているような形の数字になっておりますけれども、これは平成二十四年度ということになっていますので、この年度でいきますと、平成二十四年四月以降に事業年度が開始します。大体、大企業が四月―三月ということになるのに対して、中小では一月―十二月という決算が圧倒的に数字の上で多いことになりますので、二十五年三月から法人の決算が始まりますので、その前のところでいきますと、大企業の方がどんと下がるというのは、御存じのように、このとき大企業の税率というのは、三〇%から二五・五に下がったのがその年だと思いますので、その下がる率は四月からスタートする大法人の方に非常に多く出たのではないかな。

 ちょっと細目を伺っていないので、その数字を見ただけの印象で恐縮ですけれども、そう思っております。

塩川委員 下に注釈もつけてありますから、そういう意味では、一連の減税措置でこれだけ下がっているというのは、結果としてはそのとおりであるわけで、それを前提に考えなければいけませんし、加えて、ここで大企業と中小企業の差が生まれているということは見てもらったとおりであります。

 さらに、平成二十七年度税制改正で、来年度は二・五一%、さらに二十八年度で三・二九%、法人実効税率の引き下げも行われることになっております。その後、引き続き二〇%台まで引き下げることを目指して改革を継続しているという点を極めて重大だと言わざるを得ません。

 パネルで一つ示しておきたいんですが、この間でいえば、大企業の内部留保と法人税率の推移を見ても、法人税率を下げても賃金は上がらず、内部留保がたまるだけという実態にあるわけです。

 大企業の内部留保というのは、ひとり大企業が頑張ってたまっているわけではなくて、働く皆さんの頑張りがあり、下請中小企業、取引先の頑張りがあり、結果として生まれているわけですから、こういった内部留保の還元についてしっかりと行ってこそ、消費を拡大し、結果として大企業の利益にもつながるという好循環をもたらす道だということを指摘しておきます。

 残りの時間で、こういった大企業への法人税減税の背景の問題についてお尋ねします。

 宮沢大臣にお尋ねしますが、ことし初め、一月六日、自動車メーカーの業界団体である日本自動車工業会の賀詞交歓会で挨拶をされました。先ほど、御自分でも賀詞交歓会の話を紹介しておられましたけれども、自動車工業会での挨拶の中では、高村副総裁から自民党の財務についてのお礼についても言っておいてくれ、こういう話を承りましたので、私が言うのが適当かどうかは別にしましても、申し上げさせていただきますとお礼を述べたそうであります。

 このように述べたのは事実ですか。

宮沢国務大臣 申し上げました。

塩川委員 自民党の財務についてのお礼を述べた理由は何ですか。

宮沢国務大臣 上がる前にちょうど副総裁がいらっしゃいまして、自分は挨拶をする時間がないので、かわりに言っておいてくれ、こういう話でありました。

塩川委員 自民党の副総裁から頼まれたということでありますけれども、私は、この話を聞いて大変驚きました。

 日本自動車工業会に対して自民党の財務についてお礼を述べられていたので、自民党の財務、自民党の政治資金収支報告書を見てみましたら、自民党の政治資金団体である国民政治協会への献金を見ると、日本自動車工業会とその会員企業の献金額は、二〇一二年には二億二千万円だったのが、二〇一三年には三億円に、一・五倍に増加をしております。

 宮沢大臣にお尋ねしますが、これは二〇一二年と二〇一三年の変化です。去年は二〇一四年ですから、ことしの賀詞交歓会、二〇一五年の賀詞交歓会でお礼を述べたんですから、二〇一四年分はさらに献金額が増加しているということなんでしょうか。

宮沢国務大臣 私は、自民党の財務については全く存じ上げておりません。

塩川委員 自民党の財務を全く承知していないのに、何でお礼を言うんですか。その姿勢そのものが問われているんじゃないでしょうか。

 自民党への企業・団体献金の全体像がどうなっているかも見てみました。野党時代の二〇一二年には十三億七千万円だったものが、政権復帰をした一三年には十九億五千万円へと、やはり一・五倍に増額をしています。

 自民党総裁である安倍総理にお尋ねしますが、このように、なぜ自民党への企業・団体献金がふえたか、どのように受けとめておられますか。

安倍内閣総理大臣 私も財務内容は、総理としての職務がございますので、幹事長以下にお任せをしているわけでありますが、ふえたのは我々の政策が評価された結果ではないか。我々の進めている政策によって経済状況がよくなって、多くの企業が利益を上げ始めた。国全体の税収についてもふえているわけでございまして、十二・二兆円ふえているわけでありまして、それだけ企業にも余裕が出てきた結果であろう、このように思う次第でございます。

塩川委員 政策が評価された結果だとお話しになりました。

 私は献金を出した側の言い分も見てみましたが、経済界の総本山とも言われる日本経団連は、自民党が政権に復帰した直後、二〇一三年の一月には、政党の政策や活動の評価を実施することを表明しました。

 そして、一三年十月には「政策評価について」を発表し、次のように言っています。過去、政党の政策評価を実施していたが、二〇〇九年の政権交代に伴い、一旦中止。昨年の総選挙で政権交代が再び実現した。アベノミクスを推進するなど、日本再生に向けた政策を強力に実行している。本年夏の参院選で衆参のねじれが解消し、政策を着実に実行できる環境が整ったと述べ、今般、経団連として、政策実現の観点から、自由民主党を中心とする与党の政策、取り組みの評価を実施するとして、その中で、経団連の要求として、法人実効税率二五%に向けた抜本改革や消費税の着実な引き上げを挙げています。

 自民党政策全体への評価として、経団連が主張する政策を積極的に推進しており、高く評価できる、まさに同じような思いでいるということでしょうが、引き続き、大胆な規制改革を初めとする成長戦略の実行を強く期待すると述べています。

 要するに、献金した方は高い評価をして自民党に一・五倍の献金をしたということは、先ほど総理が、政策が評価をされた結果だと述べたとおりであります。

 しかし、経団連は、二〇一四年の政策評価の中で次のように述べています。法人実効税率の二五%程度への引き下げを要求し、自民党は、来年度から引き下げを開始し、数年で法人実効税率を二〇%台まで引き下げることを目指すことを決定したことを、日本経済の再興に向けた政策を掲げ着実に実行に移しており、高く評価できると述べています。

 そして、先ほどの宮沢経産大臣が自民党財務についてのお礼の発言の後にどのように述べていたか。法人税率の実効税率の引き下げという問題が、これから数年間で二〇%台を目指すということですが、私自身も経団連の幹部の方との会合で、少なくとも二・五%は目指したいといってのろしを上げた立場でございます、何とか、〇・〇一ではありますが、この二・五%を超える引き下げを実現したことを本当によかったなと思っておりますと述べているわけです。

 これは、自民党が経団連の要求である法人税率の引き下げを行い、企業・団体献金が結果として増加をするということではないでしょうか。まさに政策評価による政策買収としか言いようがない。こういう点でも極めて重大な発言であって、政策評価によって金の力で政策を実行させるという姿そのものではありませんか。総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 我々は、経済界あるいは経団連から言われて政策をやっているのではなくて、まさにデフレから脱却をして経済を成長させ、国民生活を豊かにするために政策を打っている。

 そのマクロ政策全体の中において、例えばグローバルな競争に企業が打ちかっていくことができるように、あるいはまた、賃上げをしっかりと実行していくことができるように、投資をしていくことができるように法人税の減税をすべきであるというのが我々の経済政策であり、要求されたわけではなくて、我々の経済政策があって、それを経済界が評価しているという姿でありまして、彼らが要求して私たちがやったということではないということははっきりと申し上げておきたい、こういうことでございます。

塩川委員 この間、総理は、経済の好循環を実現し、国民にも景気回復の実感を届けると言ってきましたが、安倍内閣の経済政策の柱というのは、企業が働きやすい国づくり、ビジネスのハードルを下げます、岩盤規制を突破しますと言っている。まさに、大企業のために働く政治というのが安倍内閣の政策だと言っておかなければなりません。

 企業は主権者ではなく、したがって選挙権もありません。企業が政党や政治家に金を出し、政治に影響力を与えるということは、主権者である国民の基本的権利を侵すことにつながり、国民主権の原則と相入れないものだ。だから、必要なのは企業・団体献金の禁止そのものではないでしょうか、このことを強く求めておくものであります。

 東電の廣瀬社長においでいただいております。福島第一の廃炉・汚染水対策で労災がふえ、死亡事故も相次いで発生をしております。現場は深刻な実態だ。このことについては、これは時間を入れてもらっていますかね。

大島委員長 あと一分だけあるということで、三十一分まででございますから、一方的にしゃべって終わってください。あと三十秒ぐらいです。

塩川委員 労働条件が改善されない中、現場に習熟していない労働者がふえて、士気が下がり、作業も雑になっている中で、労災が頻繁に起き、死亡事故も続いています。労働条件の抜本改善なしに廃炉、汚染水など事故収束対策を着実に進めることはできない。東電は、史上最悪の原発事故を起こした、いわば加害者であります。その自覚と責任がない中での対策は進まない。

 抜本的な労働環境の改善、それによって廃炉・汚染水対策をしっかりと進める、このことを強く求めて、質問を終わります。

大島委員長 これにて塩川君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして本日の集中審議は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三十二分散会


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