衆議院

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第12号 平成27年3月2日(月曜日)

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平成二十七年三月二日(月曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 大島 理森君

   理事 金田 勝年君 理事 萩生田光一君

   理事 原田 義昭君 理事 平口  洋君

   理事 平沢 勝栄君 理事 森山  裕君

   理事 前原 誠司君 理事 今井 雅人君

   理事 上田  勇君

      赤枝 恒雄君    井上 貴博君

      池田 道孝君    池田 佳隆君

      石崎  徹君    石原 宏高君

      岩田 和親君    岩屋  毅君

      衛藤征士郎君    小倉 將信君

      小田原 潔君    尾身 朝子君

      大串 正樹君    大隈 和英君

      岡下 昌平君    鬼木  誠君

      金子 一義君    金子めぐみ君

      熊田 裕通君    小池百合子君

      小林 鷹之君    佐々木 紀君

      鈴木 俊一君    田所 嘉徳君

      土井  亨君    中村 裕之君

      長尾  敬君    根本  匠君

      根本 幸典君    野田  毅君

      古屋 圭司君    星野 剛士君

      堀内 詔子君    前川  恵君

      三ッ林裕巳君    宮崎 謙介君

      宮澤 博行君    務台 俊介君

      保岡 興治君    山下 貴司君

      山田 賢司君    山本 幸三君

      山本 有二君    若狭  勝君

      阿部 知子君    小川 淳也君

      金子 恵美君    岸本 周平君

      後藤 祐一君    階   猛君

      鈴木 貴子君    西村智奈美君

      馬淵 澄夫君    本村賢太郎君

      山尾志桜里君    山井 和則君

      井坂 信彦君    伊東 信久君

      木内 孝胤君    重徳 和彦君

      初鹿 明博君   松木けんこう君

      松浪 健太君    岡本 三成君

      角田 秀穂君    中野 洋昌君

      樋口 尚也君    高橋千鶴子君

      真島 省三君    宮本  徹君

      本村 伸子君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣         麻生 太郎君

   総務大臣         高市 早苗君

   法務大臣         上川 陽子君

   外務大臣         岸田 文雄君

   国務大臣         下村 博文君

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   経済産業大臣       宮沢 洋一君

   国土交通大臣       太田 昭宏君

   環境大臣         望月 義夫君

   防衛大臣         中谷  元君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (復興大臣)       竹下  亘君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   甘利  明君

   国務大臣

   (女性活躍担当)     有村 治子君

   国務大臣

   (地方創生担当)     石破  茂君

   財務副大臣        菅原 一秀君

   文部科学副大臣      丹羽 秀樹君

   農林水産副大臣      あべ 俊子君

   環境大臣政務官      高橋ひなこ君

   政府特別補佐人

   (公正取引委員会委員長) 杉本 和行君

   政府特別補佐人

   (原子力規制委員会委員長)            田中 俊一君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  別府 充彦君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   武川 光夫君

   政府参考人

   (総務省自治行政局公務員部長)          丸山 淑夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 山上 信吾君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局安全衛生部長)       土屋 喜久君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁廃炉・汚染水特別対策監)    糟谷 敏秀君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    北川 慎介君

   政府参考人

   (国土交通省都市局長)  小関 正彦君

   政府参考人

   (国土交通省鉄道局長)  藤田 耕三君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局長)            小林 正明君

   政府参考人

   (原子力規制庁長官官房審議官)          山田 知穂君

   政府参考人

   (原子力規制庁原子力規制部長)          櫻田 道夫君

   政府参考人

   (防衛省人事教育局長)  真部  朗君

   参考人

   (東京電力株式会社代表執行役社長)        廣瀬 直己君

   参考人

   (日本放送協会会長)   籾井 勝人君

   予算委員会専門員     石崎 貴俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二日

 辞任         補欠選任

  秋元  司君     三ッ林裕巳君

  岩屋  毅君     山田 賢司君

  衛藤征士郎君     宮澤 博行君

  金子 一義君     堀内 詔子君

  熊田 裕通君     大串 正樹君

  小林 鷹之君     務台 俊介君

  土井  亨君     井上 貴博君

  長坂 康正君     前川  恵君

  根本  匠君     大隈 和英君

  星野 剛士君     池田 道孝君

  保岡 興治君     尾身 朝子君

  山本 有二君     石崎  徹君

  小川 淳也君     金子 恵美君

  後藤 祐一君     西村智奈美君

  階   猛君     山尾志桜里君

  辻元 清美君     阿部 知子君

  山井 和則君     鈴木 貴子君

  松木けんこう君    木内 孝胤君

  松浪 健太君     初鹿 明博君

  岡本 三成君     角田 秀穂君

  赤嶺 政賢君     宮本  徹君

  高橋千鶴子君     本村 伸子君

同日

 辞任         補欠選任

  井上 貴博君     土井  亨君

  池田 道孝君     鬼木  誠君

  石崎  徹君     佐々木 紀君

  尾身 朝子君     池田 佳隆君

  大串 正樹君     熊田 裕通君

  大隈 和英君     根本  匠君

  堀内 詔子君     金子 一義君

  前川  恵君     根本 幸典君

  三ッ林裕巳君     若狭  勝君

  宮澤 博行君     衛藤征士郎君

  務台 俊介君     長尾  敬君

  山田 賢司君     岩屋  毅君

  阿部 知子君     本村賢太郎君

  金子 恵美君     小川 淳也君

  鈴木 貴子君     山井 和則君

  西村智奈美君     後藤 祐一君

  山尾志桜里君     階   猛君

  木内 孝胤君     伊東 信久君

  初鹿 明博君     松浪 健太君

  角田 秀穂君     岡本 三成君

  宮本  徹君     真島 省三君

  本村 伸子君     高橋千鶴子君

同日

 辞任         補欠選任

  池田 佳隆君     保岡 興治君

  鬼木  誠君     星野 剛士君

  佐々木 紀君     山本 有二君

  長尾  敬君     岩田 和親君

  根本 幸典君     中村 裕之君

  若狭  勝君     赤枝 恒雄君

  本村賢太郎君     辻元 清美君

  伊東 信久君     松木けんこう君

  真島 省三君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  赤枝 恒雄君     岡下 昌平君

  岩田 和親君     小林 鷹之君

  中村 裕之君     長坂 康正君

同日

 辞任         補欠選任

  岡下 昌平君     秋元  司君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 公聴会開会承認要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 平成二十七年度一般会計予算

 平成二十七年度特別会計予算

 平成二十七年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

大島委員長 これより会議を開きます。

 平成二十七年度一般会計予算、平成二十七年度特別会計予算、平成二十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般的質疑を行います。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、参考人として東京電力株式会社代表執行役社長廣瀬直己君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として内閣官房内閣審議官別府充彦君、内閣府政策統括官武川光夫君、総務省自治行政局公務員部長丸山淑夫君、外務省大臣官房審議官山上信吾君、厚生労働省労働基準局安全衛生部長土屋喜久君、資源エネルギー庁廃炉・汚染水特別対策監糟谷敏秀君、中小企業庁長官北川慎介君、国土交通省都市局長小関正彦君、国土交通省鉄道局長藤田耕三君、環境省総合環境政策局長小林正明君、原子力規制庁長官官房審議官山田知穂君、原子力規制庁原子力規制部長櫻田道夫君、防衛省人事教育局長真部朗君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

大島委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。金子めぐみ君。

金子(め)委員 おはようございます。自由民主党の金子めぐみでございます。

 本日、審議の冒頭に貴重な機会をお与えいただき、感謝いたします。

 それでは、早速、直ちに質問に入ることにしたいと存じます。

 私からは、地方創生について質問をさせていただきたいと思います。

 まず初めに、地方創生とこれまでの分権改革との関係について、確認の意味でお伺いをさせていただきたいと思いますが、地域活性化といい、地域振興といい、人口減少対策待ったなしの我が国日本にとっては、これまで以上の重要性を持ちます。そういう意味において、このたび、地方創生という名のもとに、政府が喫緊の政策課題として認識をされたこと、このこと自体が大変に意義あることだ、評価し得るという声をたくさんいただいております。

 その趣旨、目的を達成、実現していくためには、国と地方が一体となって取り組んでいくことが何よりも必要だということは言うまでもございません。地方と国、また地域の関係者、指導者が共通の認識に立つことが何よりも大切である、必要であることは言うまでもないのでありますが、一方で、自治体関係者の中には、今般の地方創生は、これまでの地方分権の取り組みとの関係がどうなっているのか、その点が不分明であり、困惑をしている、そういうお声も、また御指摘もいただいているのが事実であります。

 そこで、地方創生論を展開する前に、これまでの中央政府においての長きにわたっている分権改革と地方創生との関係、いわば地方分権の推進の行方と言ったらいいでしょうか、そこと地方創生との関係について明確に申し述べることも、これは政策責任の務めと私は思っておりますので、地方創生担当大臣にその点をまずお伺いしたいと思います。

石破国務大臣 御指摘のとおり、これは非常に長い取り組みであります。平成五年、衆参両院の地方分権の推進に関する決議というのがございました。それから二十年ぐらいが経過をして、まず国と地方で、国が上で地方が下であるというようなことではないのだ、平成七年には、国と地方との関係を上下主従、すごいことを言うものですが、上下主従から対等、協力の関係に変えるというふうにいたしたものでございます。

 平成十八年には、第二次地方分権改革というものがなされました。地方に対する権限移譲、義務づけ、枠づけの見直し等々を行ったわけでございます。

 今回は、提案募集方式というのを採用いたしました。地方がどういうような御提案をなさるかということを国においてきちんと議論する。できるものはできる。運用で可能だというのは、一体どういう運用をすれば可能なのかよくわからぬので、一体どういうような運用をするのだというのをきちんとお示しするということが必要であります。そして、できないというのは、何でできないんだという説明責任は私どもの方が負っておりますので、御納得いただけるまできちんと御説明をするということでやってまいりました。

 今回は特に、例えば従来からの懸案でありました農地の転用についての許可権限の移譲を図るということをやっておりまして、今国会に第五次地方分権一括法を提出するということになっておるところでございます。

 極めて異例のことでありますが、地方六団体から、地方分権改革の力強い前進が図られたことを高く評価する、こんなことは言われたこともございませんで、高く評価するといただいたところでもございます。

 今後とも地方の方からの御提案を積極的にいただきたいと思いますが、例えば農地に関して申し上げれば、国が自給力あるいは自給率について責任を持つということになっておりますので、それとの整合をどう図るかということが重要なことであります。そして、権限を移譲した際に、その権限が適正に行使をされるのかということも極めて重要な点であります。

 地方分権を進めるということはこれから先も積極的に行ってまいりますが、国の政策との整合、そしてまた、分権した場合にその権限がきちんと使われるということも重要なことかと承知をいたしております。

金子(め)委員 自己決定、自己責任ということを基本とした地方、地域社会づくりの実現にはより一層の地方分権改革の推進が必要であるということは、今さら論をまたないと私も思っております。

 今ほど御紹介いただいたとおり、地方分権の決議が衆参両院でなされてから二十年余りがたちましたし、そして、昨年の五月には地方分権改革のいわゆる第四次一括法も成立を見たところであります。この間、私自身も、新潟市議会議員、新潟県議会議員として、地方議員として、地方分権改革の行方、歩みを見てまいりました。

 今回、地方拠点、地方都市ということでしょうか、それを中核拠点都市とする、いわゆる市町村単位とする施策へこれからシフトをしていくとなると、次に考えられるのは、そこに大きく存在がかかわる都道府県というのはどうなっていくのかということであります。

 この際でありますので、都道府県制の今後の、将来のあり方についても、現在の政府の考え方をお示しいただきたいと存じます。

石破国務大臣 かねてから申し上げておりますとおり、地方創生に当たっての一番の主役というのか、これは基礎自治体たる市町村だと思っております。

 これは平成の大合併でかなり規模が大きくなりましたが、どこで何が起こっておって、それは何に由来するものであって、さすればどうしたらいいのであろうかというのがわかるのは、基礎自治体である市町村であります。ですから、総合戦略を立てるに当たっても、市町村においてきちんとしたものを立てていただきたいというふうにお願いをいたしておるところであります。

 さすれば、都道府県は何をするのかいということでございますが、そこは、市町村だけではなし得ない、いろいろなアドバイスを必要とするものがございます。そういうものは県としてアドバイスをしてちょうだい。もちろん、都道府県にも総合戦略というものを立てることを努力義務として課しております。

 今回は、国と地方が同じ目標のもとにやっていくということが今までの取り組みと違うところです。国が長期ビジョンを設定し、総合戦略を設定する、それと符合する形で、その特色を生かした長期ビジョンと総合戦略を都道府県が行う、またそれを市町村が行うということですが、その連携というものを図っていただかねばなりません。

 正直申し上げて、市町村の場合には、かなりばらばら感があるのだと思います。それを県の総合戦略のもとに調整するということも必要でしょう。あるいは、A市、B市、あるいはC町、こういうものが、では一緒にやったらどう、そんなアドバイスをすることも必要なのでございましょう。あるいは、場所によっては進度に差があるところがございます、みんなが同じスピードで進むとは限りませんので。そういうような調整も県にお願いをしていかねばなりません。

 私どもとしては、県にはコーディネーターとしての役割をかなり強く期待しておるところでございます。

金子(め)委員 地方分権と叫ばれて久しいわけでありますが、とはいえ、なかなか分権改革が進んでこなかった中で、その過去の経緯があるわけですが、しかしながら、今回、地方が、今大臣のお言葉をかりるならば、主役ということでありますから、やはり地方が本当に今度は主役になれるんだという地方自治体も気概を持って、今後の総合戦略の策定に当たってもらいたいなと私も考えております。

 そこで、総合戦略の中身といいましょうか、具体的な施策に入っていきたいと思います。

 観光にしろ産業にしろ、その多くというのは自治体の区域単位で考えがちであろうと思いますが、今大臣からもお話があったとおり、これからはネットワーク化が不可欠であるということは識者の方々の御指摘にもございます。

 まさに、地域経済の再生策として、産業のクラスター化が論じられるのもその一例であろうと私は思っています。自治体と大学とそして企業、これらがネットワークをつくり、そして、さらにそこから、集積の中で学び合いながらイノベーションを結び、つくっていく、こういう流れがこれからさらに促進されるべきだと私も考えております。

 そういう中で、これらの方向性というのは必然的に、都道府県また市町村という単一の区域単位にはとどまることなく、これらを大きく超えるエリアに広がっていく、及ぶものだということだと思います。そこで、今後の地方創生政策についてでありますが、今大臣からもお話があったとおり、区域外連携型の自治体計画に対して、積極的に優遇、優先をしていただけないかという御提案をさせていただきたいと思います。

 既に総務省では、定住自立圏構想という考え方がございます。この場合は救急医療体制の考え方であろうと思いますが、県境を越えてバス運行事業を行っている。と同様に、観光なんかも同じように考えられると思います。単一の市町村、単一の自治体よりも、複数の市町村にまたがる広域のルートをつくっていく、そうした交通アクセスを整備した方がより効果的だという場合も、観光では、特に総合的な観光政策では考えられるのではないかというふうに思います。

 そこで、今申し上げたとおり、区域外の連携型の事業計画に対して優先的に、そこに重きを置いた事業計画策定を促すことを自治体にしていただけないでしょうか。私の提案に対しての御所見をお伺いいたします。

石破国務大臣 ありがとうございました。

 委員御指摘のように、例えば観光で見たときに、京都府と滋賀県というのを見たときに、お客さんは京都にわあっと集中をして、それが電車で二駅だか三駅だか、十分かそこらで行ける滋賀は、外国のお客さんの数がかなり少ないということがあるわけです。

 神社仏閣の類いでいえば、一に京都で、二に奈良で、三に滋賀でということで、滋賀は、距離的にも近いし、ストーリーとしても、かつて都のあったところでございますから、そういうストーリー性を持って京都にいらっしゃるお客様が滋賀にもおいでになるということで、一つの観光ルートができるということだと思っております。

 また、私の選挙区でいえば、山陰海岸国立公園というのがございまして、これはまたジオパークにも指定をされるということでございますが、兵庫の北の方、但馬と言われるところといろいろな連携を図っていくことによって、さらに潜在力を生かすという面があろうかと思います。

 それは物流においてもそうでございます。

 今回、ビッグデータという形で、各市町村に対しまして、人、金、物がどこから入り、どこへ出ていくのか、それはどんな人であり、どんな物であり、どんな金なのかということをかなり詳細に示したデータをお示しいたします。

 ですから、どこと組むのがいいのだろうか、どういうクラスターを構成するのが一番いいのだろうかということは、地域連携というものは不可欠であるというふうに認識をいたしておるところでございます。

 自分の町がどうなっているかもよくわからないんですから、ほかの町がどうなっているかもよくわからないわけで、どのように組み合わせることが一番地方創生に資するものであるかということは、委員御指摘のように、地域連携というのをお考えいただきたいと思います。

 ただ、地域連携をやればそれだけで優先をするということに自動的にはなりませんので。地域が連携して、こんなにすばらしい成果が上がるんだよねというのが必ず出てくるはずなんです。そうでなければそういう考え方ができませんので。そういうような有効な地域連携の総合戦略というものを、これは県をまたいでいただいても結構です、おつくりいただくというのは。まさしくそれぞれの地域の創意工夫であり、受け取りましたデータをどういうふうにして精密に分析をし、生かすかということで、地域の力量が問われるものだと思います。

金子(め)委員 今お話しいただいたとおりでありまして、決してこれは隣接をしていなくてもよいと思います。観光に関しては、同じ、共通の観光資源を持っているところが組んで海外PRに、海外PR活動はなかなか単一ではできないでしょうけれども、複数市町村で連携して海外にPRしていく、こういう考え方もあろうと思いますので、ソフト面でのそうした域外連携に対して、全面的にぜひ政府としても御助言、御指導いただきたいというふうに思います。

 そのことをお願い申し上げ、次の質問に移りたいと思いますが、これまでの地域振興策というのは、いずれにしましても効果的な政策検証という仕組みが余り入っていなかった、そのために、政策効果の議論をしていくのが大変困難であったと思います。

 しかし、今回の地方創生にあっては、まさに、達成目標もそうだろうと思います、整備の水準という、そういう仕組みの設定はもちろん不可欠でありますが、加えて、段階的な評価、例えば事前、そして中間、終了時、終了後、事後ですね、こうした段階的な仕組みも導入していくべきだと私は考えております。

 いわゆるPDCAサイクルの導入の機運というのは、既に政府機関そして行政計画の中では醸成されつつあるとは思いますが、これは中央政府だけの問題ではなくて、やはり地方自治体に対して求めていく時代ではないかと私は考えております。

 それゆえ、今回の総合戦略において、このPDCAサイクルをどのように地方自治体に導入を求めていくのか、確立していくのか。具体的に言ったならば、行政実務として、市当局、県当局に対してどのような指導助言に当たっていかれるのか問うものであります。大臣、お願いします。

石破国務大臣 このPDCAという言葉が一体どこまではやっているのか、私自身余り自信がなくて、ちょっと機会があれば新橋駅前に立って、あなた、PDCAって知っていますかというのをやってみようかなと思わないではありませんが、これは民間においてはかなり広範に導入されている考え方でございます。

 つまり、企画立案、プランニングのP、実行するドゥーのD、点検を行うチェックのC、そして、点検に基づいて改善をなし新たな行動を起こすアクションのA、このPDCAというものがサイクルとして機能するかどうかということが、地方創生のもう一つのポイントでございます。

 これは、昨年地方創生法というものが成立をし、全ての自治体に対して総合戦略、これから五年を期間とする総合戦略をつくってくださいという努力義務を課しました際に、今日に至るまでもうこれでもかというほど話はしておりまして、このPDCAサイクルというものをきちんと機能させてくださいと。

 わけても、委員御指摘のように、チェックというものが有効になされたという例を余り見たことがない。

 地方自治体にしてみると、これはどこでもそうですけれども、自治体の長の力量というのは、できるだけ大きな事業を、できるだけ補助率の高いもので、そしてできるだけ自己負担が少ないものというものを持ってくると、立派な知事である、立派な市長である、立派な村長である、ぱちぱち、よかったよかった、こういう話になるわけですが、では、それは一体どんな効果を発現しましたかということを誰も点検していない。

 議会においてやるものだということになっていますが、設定する、同時に、KPI、すなわち何を我が市は目指すのかということにその事業がどれだけ有効であったかということはちゃんと検証しないと、墓標があちこちに立つことになるわけですね。

 ふるさと創生一億円でも、きちんとした検証をしていかなければならないという必要性が指摘をされていますが、考えてみれば、これは一体何だったのというのはいっぱいあるわけです。

 当時、竹下総理がこれで地方の知恵と力がわかるというふうにおっしゃっておられたけれども、失敗の事例と、ここで並べても仕方がないですが、やはりみんなでつくるプランである、みんなで実行するものである、そうすると、市長が悪いだの町長が悪いだの、そんな話をしていても仕方がなくて、どうやってみんなで参画をし、みんなで点検をし、そこにまだ至らざる点があるのであれば、どのようにして総合戦略を変えていくかという改善に結びつくチェックの機能が大事であって、これから交付金というものが拡充をされるとしても、必要なのは、そこにおいてちゃんとしたチェックが行われるかどうかということであります。

 チェックがなくてお金を出すのは、それはばらまきなのでありまして、チェックが行われるかどうかという、PDCAにおいてCという機能が極めて重要だと認識をいたしております。

金子(め)委員 ありがとうございました。

 地方自治体に対してはチェックが必要だで終わるのではなくて、やはりこれは仕組みとして、体制として制度化することが必要だと思いますので、その点も御検討いただきたいというふうに思います。

 続いて、農村社会と地方創生との関係という視点で質問をさせていただきたいと思います。

 農村社会における緊急の対応しなければならない諸課題というのは、もはや農業とか農政という枠内にとどまらないんです。非常に領域が広いと私は思っております。

 その具体例として申し上げるのであれば、まず一つ、高齢者世帯の雪おろしの対応あるいは事故の対応だと思います。

 今般、総務省では、特別交付税に雪おろしの支援枠というのを創設されたということで、これで地方の財政支援を拡充していただいたというふうにお聞きをしております。

 そこで、ぜひ、私の地元新潟もそうでありますが、豪雪農村地帯にお住みの皆さんに直接、総務大臣のお言葉による御答弁をお届けしたいと思いますので、今般の措置に対する考え方、そして内容について御説明を願います。

高市国務大臣 近年、委員が御指摘のとおり、本当に高齢者の屋根からの雪おろしによる痛ましい犠牲がふえております。

 例えば、ことしの冬で見ますと、雪害による死者が五十八名のうち、屋根の雪おろし等によって亡くなった方が四十六名、そのうち六十五歳以上の方が三十五名ということで非常に割合が高いんです。

 去年の十二月に、何とかこれは改善できぬやろうかということを考えました。既に各自治体で除排雪に関しまして支援措置があるのは承知しておりましたけれども、多分自治体によっていろいろな事情があると思いました。お金が足りないということなのか、それとも人手が足りないということなのか、さまざまな事情があると思いまして、総務省の職員に指示をいたしまして、全自治体に向けて調査をしました。そこで明らかになったのは、やはりさまざまな事情でした。

 自治体によっては、民間の事業者に委託をして、高齢者だけのお宅の雪おろしにかかる費用を支援しているという場合もあるんですが、民間事業者に依頼しますと割と高額でございますので、やはり所得制限をかけて非課税世帯に限るというやり方であったり、それから、意外にも安全対策、啓発活動がほとんど行われていないというようなことも明らかになりました。

 そこで、ことしの三月の特別交付税から高齢者等の雪おろし支援という項目を新たに創設しました。

 これはもう既に二月十三日に全国の知事さん、市区町村長さんに通知をしたんですけれども、具体的には、この特別交付税の措置率をまず八割に引き上げるということ。それから、対象経費ですけれども、これも、雪おろしが困難な世帯が民間事業者に委託をする場合だけではなくて、ボランティアですとか、また自治体ですとか、そういった皆様に委託をする場合の費用、この経費を助成の対象に加えまして、新たに、安全対策の普及啓発、これを行っていただくことですとか、あと雪おろしの担い手を育成していただく、こういったことにかかる経費も措置をすることにいたしました。

 ぜひ、各自治体においてしっかりとこの新たな制度を活用していただき、地域の皆様みんなで力を合わせて、痛ましい犠牲を減らしていただきたいと思います。

 やはり地方創生ということを考えると、命を守る、これも本当に大切なことです。安全な暮らしをつくっていきたいと思っております。

金子(め)委員 ありがとうございました。

 今お話があったとおり、多様な施策を財源を伴って展開し得る可能性がふえたということで、大変喜ばれることと思います。ありがとうございました。

 先ほども申し上げましたが、農村社会における諸課題というのは、既にもう、農業とか農業補助金とか、そういった縦割りの発想、思考では対処困難な時代に入っておりますので、やはり分野総合的な政策に向かっていかなければなりません。

 農村社会におけるさまざまな問題、いわゆる地域の農家に対してであったりとか、あるいは景観保全もそうだろうと思いますし、観光の面でいったならば、グリーンツーリズムの受け入れ環境整備も、これはまさに地方自治体が役割を担っていただかなければならない分野ばかりでございます。

 そういう意味において、農村であるとか農村社会におけるこれまでの、従来の農政の視点は、既に、まさに地域活性化政策である、言ってみれば、今回の地方創生の政策そのものである、その領域に至っていると私は考えております。

 そこで、今後、農村社会におけるさまざまな諸課題に対応するのは、縦割りの発想ではなくて、極力、地方創生という大きな概念で、領域にわたっての政策判断にしていく方向性を持つべきだと考えますが、この私の考えに対して、地方創生担当大臣の御所見を伺いたいと思います。

石破国務大臣 まさしくそうなので、農政だけに限定しておってもどうにもならぬお話でございますよね。

 六次化というのはそういう話であって、物をつくるだけでは付加価値は全然出ない。つくったらJAさんに出して、後は知らぬというような話ではどうにもこうにもならぬわけで、それを加工し、販売をし、付加価値をつけ、どうやって利潤を上げるかということは、全ての分野にわたっていかねばならないことでございます。

 あるいは、農業というのは時間の設計が自由にできるわけでありまして、農業と子育てという視点もございましょう、農業と女性政策という視点もございましょう。それは、この分野だけという縦割りでこれから先の地方創生ができるとは全く思っておりません。

 例えば、道の駅というのができました。これは国土交通省の政策なわけですが、それによって地域が活性化したなんという例は枚挙にいとまがないわけで、そういうような狭い分野ではなくて、総合的に取り組むということが地方創生の要諦だと思います。

金子(め)委員 ありがとうございました。

 そういった方向性、この方向性というのは、まさに農業の未来であったり、将来の農村社会、地域社会の方向性というふうにも考えられるわけであり、大変大事な発想だというふうに思います。

 今の考え方とあわせて、財源の部分を言及させていただくならば、今回、新型の交付金が創設をされるということで、大変、鋭意御努力をいただいたと思いますが、もう一歩踏み込んだならば、地方への財政措置に関しては、可能な限り使途が特定されない、裁量幅の大きい、いわゆる一般財源に近い性格の財源付与をしていただきたい、そのように以前から私は思っているわけですが、時間の関係で、地方創生担当大臣はもちろんのこと、地方財政にかかわる総務大臣、高市大臣に対して、そして、財政当局である麻生財務大臣に御要望申し上げて、最後の質問に移りたいと思います。

 最後の質問は、地方創生に密接にかかわります女性の活躍について触れておきたいと思います。

 真の地方創生については、地域全体として総合的な成長を期すものである、そうあるべきだと私は思っています。全体として地域力を向上させるには、やはり多様な人材、多様な方々の参画が必要になってくるわけです。

 今後、日本の社会においては、地域人材の基盤形成が最大の課題になってくると思いますが、とりわけ、女性の参画、参入、活躍というのが、どの地域にとっても必須、不可欠の戦略事項だと考えます。

 人によっては、女性の活躍なくして地方創生の将来の姿は描けないという声もありますが、そういう考え方において、女性の活躍あるいは女性の参画社会、これを主要な内容とする地方創生の計画を私は策定すべきではないかと考えておりますし、そして、当該計画に対しては、政府として全面的に特別な支援をしていただきたいと考えております。

 まず初めに、これまで地域社会における女性の活躍推進に取り組んでこられた担当である有村大臣の御所見をお伺いするとともに、地方において、女性の活躍というのは全面的に地方を挙げて取り組むべき、すなわち、地方創生の構造的課題として正面から取り組むべきだと地方自治体に対して徹底すべきと考えますけれども、その点について地方創生担当大臣にあわせてお伺いし、私の質問を終わりたいと思います。

有村国務大臣 お答えいたします。

 昨年出されました日本創成会議、いわゆる増田レポート、消滅可能性のある都市、自治体ということでした。消滅という言葉が適切かどうかという賛否は分かれましたけれども、日本の未来に向けて問題提起をなされた画期的なレポートだと思っております。

 その中で特に注目されたのは、二十代から三十九歳までの女性の人口増減がどうなるかということが、消滅になるかどうかということの大きな指標になりました。まさに、女性が活躍し、住み続けたいと思う魅力ある地域づくりが地方創生の鍵、ポイントになると認識をしております。

 今国会で再び提出をさせていただきました女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案、いわゆる女性活躍推進法も、地域の実情に応じた女性の活躍推進のための取り組みを後押しするものでございます。

 地方公共団体としっかりと連携をして、まさに全国津々浦々で女性活躍の裾野を着実に広げる施策を、地方創生部局、石破大臣ともしっかりと連携をしながら、女性の側面に全て横串を貫いていきたいと考えております。

石破国務大臣 ありがとうございました。

 今、有村大臣から答弁があったとおりでございますし、アクションプランにおきましても、いろいろな具体的な数値目標を掲げてはおります。ただ、数値目標を掲げればそうなるんだったら誰も苦労しない話でありまして。

 私、最近思うんですけれども、何かの会議で女性が全体の二割か三割いらっしゃって、では女性の方々の御意見も聞いてみましょうというのは、どうもこれは余りうまくないんじゃないかという気がするんですね。

 私は、この間、滋賀県で、自民党の会合でしたが、いろいろな立場の女性の方ばっかり、女性の方々十数人、男性は私だけという方が女性の意見が出るんですね。女性がそうだそうだと言って、そこで恐ろしい力が発生して、私はたじたじと聞いているわけですが、私は、会議のやり方としてそれは一つのやり方じゃないかと、そのときふと思ったんです。女性の御意見も聞いてみましょうじゃなくて。

 今問題になっているのは、二十代、三十代の女性が二〇四〇年になったら何人になりますかという話ですが、二十代、三十代の女性というのが、一番そういうところに、御意見を言われないような立場にいるんじゃないかと思うんです。女性の御意見を聞いてみましょうというと、もうちょっと上の方がいらっしゃって。

 やはり私は、広く女性の意見を聞くことは大事だし、会議体のあり方というものも考える必要があるだろうと思っております。

 事は急を要するお話でございますので、委員も市議会、県議会、国会と経験をしておられるわけですが、どういうやり方の会議であれば最もそういう意見が出やすいかということについても、また御教示を賜りたいと思います。ありがとうございました。

金子(め)委員 質問を終わります。まことにありがとうございました。

大島委員長 これにて金子君の質疑は終了いたしました。

 次に、西村智奈美君。

西村(智)委員 民主党・無所属クラブの西村智奈美でございます。

 きょうは、民主党は女性デーでございます。私を含めて五名の女性議員が登壇して質問いたしますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。特に、大島委員長、お計らいをよろしくお願いいたします。

大島委員長 こちらこそ、よろしくお願いします。

西村(智)委員 さて、安倍内閣は、全ての女性が輝く社会づくりというのを目指しておられるそうです。

 実は、この女性の活躍促進は、民主党の野田政権時代にスタートした考え方でございまして、特に、厚生労働省で行われているポジティブアクションなどの中身を拝見しますと、私が副大臣であった当時、小宮山厚生労働大臣のもとでのプロジェクトチームでつくられた、働く「なでしこ」大作戦、これがベースになっているというふうに拝見をいたしました。

 民主党政権で進められた取り組みが今継続されている、こういうことなんだろうというふうに思いますけれども、しかし、自民党政権と私たち民主党政権、民主党の考え方の違いというのは、やはりいろいろなところで随所に見えてまいります。

 やはり、鳴り物入りで入閣をした女性閣僚お二人が任期途中でやめてしまわれたり、そして、これもまた目玉法案とされていた女性の活躍推進法案が急な解散・総選挙で廃案になってしまった。やはり女性や女性政策というのは人気取りのために使われてしまったのかというふうに、がっかりした女性が多かったというふうに私は思っています。

 私たち民主党は、やはり一人一人の女性の人権というものにきっちりと目を向けて、それを尊重して、そして多様性を認め合う、そういう社会をつくるということから、例えば、シングルマザーや非正規で頑張って働いておられる方々、また社会制度のさまざまなひずみの中で苦しんでおられる方々の声にもしっかりと耳を傾けて政策をやってきた、そういう実質をとるやり方をやってきたんだというふうに自負をいたしております。

 そういった観点から、私はきょうの質問をさせていただきたいと思っています。

 まず一つ目でありますが、政治と金をめぐる問題です。

 二〇二〇年までに女性の参画を社会のあらゆる分野で三〇%にする、これは政府目標でございます。残念ながら、政治の分野、政策決定分野においてはこの取り組みはちょっとおくれているようでありまして、やはり女性にとって政治というのは少し遠いところにあるのではないかという感覚があるのかもしれません。しかし、それでも少しずつふえている女性議員ですから、また女性閣僚ですから、やはり、今までとは少し違う、政治と金をめぐる問題についてもしっかりと説明責任を果たしていく、そういうことを通じて、政策決定過程においても女性をふやしていくというような手伝いができるんじゃないかなというふうに思っております。

 さてそこで、あべ農水副大臣にお伺いをいたします。

 あべ俊子政策研究会、これはあべ農水副大臣の後援会のような組織だというふうに拝見をいたしますけれども、この平成二十四年分の収支報告書を拝見いたしましたら、政治活動費からお中元代として二十四万六千二百七十円の支出が一月の五日に見られております。

 あべ農水副大臣は、お中元を一月に贈っていたんでしょうか。お中元の定義とあわせてお答えください。

あべ副大臣 西村委員にお答えいたします。

 あべ俊子政策研究会、私の団体でございますが、お中元の記載の点でございます。

 これは年末にお贈りしているものでございますが、計上が一月になってしまったということの記載ミスでございます。

西村(智)委員 一月の五日の支出なんですけれども、これは単なる記載ミスですか。一月でしたら、お歳暮の支払いで一月にずれ込むというのはわかるんですけれども。

 では、お中元とお歳暮の定義について教えてください。

あべ副大臣 申しわけございません。お歳暮とお中元の記載ミスでございます。

西村(智)委員 この平成二十四年分の収支報告書には、そのほかに、七月と八月にお中元代として四十四万六百四十七円。そうしますと、合計で六十八万六千九百十七円、これがお歳暮代ないしはお中元代として支出をされているわけです。

 平成二十三年には、お中元代として二十三万五百九十円。

 平成二十五年には、お中元代が三万三百八十円、それからお歳暮代が二十三万六千八百円、それで合計二十六万七千百八十円。

 お中元とお歳暮のオンパレードなわけでありますけれども、お中元やお歳暮を贈るということが、あべ副大臣の政治活動なのでしょうか。

あべ副大臣 お歳暮とお中元に関しましては、私が政治活動を行う上で特にお世話になっている自民党本部の職員の方々、また、国会議員事務所の方々にお贈りしているものでございまして、政治活動というふうに考えられるものと思っております。

西村(智)委員 先ほど私、冒頭申し上げましたけれども、やはり、女性議員ないしは女性閣僚というのは政治と暮らしを近づける存在でなければいけないと思いますので、今のような説明で、本当にそれが、政治活動から支出するものが適正なのかどうか、ここは私、よくよく考えてみる必要があるというふうに思うんですね。

 本当に、あべ農水副大臣の政治活動というのはお歳暮やお中元を贈ることなんでしょうか。

あべ副大臣 お中元とお歳暮を贈ることが政治活動として必要だということでございますが、それは、お歳暮とお中元を贈ることが政治活動ということではなく、政治活動をしていく上で必要な経費と私ども考えておりまして、特に、党の職員、また、さまざまなところで私が政治活動をしていく上で、一人で政治はできないという観点から、私ども政治活動の一環として考えてございます。

西村(智)委員 大変恥ずかしいといいましょうか、これを堂々と収支報告書に政治活動費として記載されるということが、私は本当にどういうものかというふうに思うわけですね。

 ちょっと話はかわりますけれども、靖国神社社務所に、同じく平成二十五年だったと思いますが、政治活動費から献灯代として二十一万二千円が支出をされております。

 例えば、高市大臣、靖国神社に参拝されていらっしゃいますよね。その是非については私も申し上げたいことはありますけれども、それについてはとにかく、さておき、高市大臣は、参拝されるときには個人として参拝し、玉串料はポケットマネーから支出をされているというふうにおっしゃっておられます。

 あべ農水副大臣は、これを政治活動費から支出している。このような支出がふさわしいというふうにお考えでしょうか。

あべ副大臣 西村委員にお答えいたします。

 今回の、この平成二十四年の政治資金収支報告書に入っております靖国神社の献灯代の件でございますが、政治活動の支出として問題ないと考えておりまして、靖国神社、選挙区外でもございますので、その点におきましても問題はないと考えて、支出したところでございます。

西村(智)委員 そこはよくよく高市大臣からも御指導いただいた方がいいのではないかというふうに思いますけれども。

 こうした支出の中身一つ一つというのは有権者の目に触れるわけでありますし、やはり、政治家が政治活動費としてこのような使い方をしているということは、議員活動として、あるいは政治活動として私はふさわしくないというふうに思います。ぜひ、そこは適正な支出がされるように、今後はしっかりとチェックをしていってもらいたいというふうに思います。

 週末、私も地元に帰りまして、いろいろな方とお会いをしました。そうしたら、やはり皆さんの話題は、政治と金をめぐる問題、一体どうなっているのと。特に女性の方からの嫌悪感といいましょうか、すごく疑問視する声が大変多かったわけであります。

 この間、西川前大臣は、法的には問題はないとおっしゃりながら辞任をされました。しかし、まだわからないことがあります。

 それは、彼が恐らくみずから公表したんだというふうに思いますけれども、関連会社等報告書、この訂正を行い、それと同時に、所得等報告書については記載がなかったわけですけれども、それを訂正したということで、その訂正の中身は、二月の二十八日に報道されたものによりますと、また、これは所得等報告書、閲覧してきたものでございますけれども、雑所得として五百七十三万九千二百四十七円がございます。その内訳は、厚生、共済、企業年金、そして出演料、講演料というふうになっておりましたが、この講演料のところに、括弧として、顧問料を含むというふうに、これは先月、二月二十七日の時点で追加記入をされたということのようでございます。

 追加記入されたということになりますと、最初からここの部分に本当に入っていたのか、それとも、入っていなかったんだけれども、後から説明を合わせるためにあえて書き加えたものではないか、そういう疑いもあるわけでありまして、私は、ここは徹底的に事実を解明しておく必要があるというふうに思います。

 そこで、委員長にお願いなんですけれども、既に玉木委員そして後藤委員から西川前大臣の参考人招致の要求がありますけれども、私からも、あえてもう一度お願いをしたいと思います。

 この雑所得の内訳となっております厚生、共済、企業年金、出演料、講演料、この全ての項目の中身について、個別にその詳細を明らかにしていただきたい。特に講演料の積算については、一つ一つ明らかにしていただきたい。このようにお取り計らいをお願いしたいと思います。

大島委員長 理事会で協議いたします。

西村(智)委員 安倍総理も、福島で先日、この政治と金をめぐる問題については発言をされておりまして、閣内にいようと、与党、野党であろうと、しっかりと説明責任を果たさなければならないということであります。ですから、西川前大臣がこの場でしっかりとそれについて説明をする責任があるというふうに思っております。

 また、この点については、通告をしておりませんけれども、塩崎大臣に一点お伺いしたいことがございます。

 二〇〇六年に、大臣が代表を務める党支部が、補助金を受給している法人から二百二十四万円の献金を受けておられます。これが発覚したのが今から七年前の二〇〇八年の一月。もう既に長い時間がたっておりまして、このときに、明らかになった当時で返金をした閣僚の方も何人かいらっしゃったようなんですけれども、塩崎大臣はこの二百二十四万円を返金されたでしょうか。

塩崎国務大臣 通告を受けていないので、ちょっと調べないとわかりませんので、後日、また調べて御報告したいと思います。

西村(智)委員 よろしくお願いいたします。

 それで、私は、今回の政治と金をめぐる問題、これだけ次々と出てきたのは本当に残念だというふうに思っております。

 特に、子供の教育を所管される下村大臣のもとで、今なおわからないことがとても多い。加えて、また、新聞報道等によりますと、支援団体の会費が下村文部科学大臣の政党支部に献金として還流をしていたのではないか、そのように疑われるような新聞記事も多々出されております。

 私は、この問題については、やはり政治資金の透明化を図るというのが政治資金規正法の立法趣旨であったというふうに思いますので、ここは、任意団体としてではなく政治団体としてきっちりと登録をして、そして国民の皆様の目の前にその流れをさらす、そのことによってその是非を国民の皆さんから判断していただく、そういう方向へと向かわせなければいけないのではないかというふうに思います。

 改めて、下村大臣にお伺いをいたします。

 これは大変大きな問題になっておりますけれども、任意団体それぞれの御判断だというふうに下村大臣はおっしゃるでしょうが、やはり大臣が関係をされている団体でございます。下村大臣の方から、政治団体へと登録する、そのように促すと申しましょうか、取り計らうと申しましょうか、そのようなことはお考えにはなりませんでしょうか。

下村国務大臣 まず申し上げたいんですが、新聞記事の、それだけであたかも疑惑があるような質問をすることについては、これはぜひ訂正していただきたいと思います。国会は事実に基づいて議論をする場だと思います。

 今御指摘がありましたが、これまでも何度も説明させていただいていますが、改めて説明させていただきます。

 東京都の選管に届け出をしている博友会以外の全国にある地方の博友会、これは六カ所ございますが、塾の経営者など民間教育者らの有志の方で構成をする、懇親のための任意団体であります。

 地方の博友会は、各地域の有志の皆さんで運営をしておられ、私の事務所の者が一切タッチしているわけではありませんし、また、私自身、財政面を含めたこれら団体にかかわる具体的な運営に関する事柄は一切存じ上げておりません。

 地方の博友会の皆さんからは、年に一度ぐらいは顔を見せて仲間に話をしろと言われており、年に一度行って懇親をしているという実態であります。この年に一度程度の懇親会はそのような集まりでありまして、政治目的を持った会合ではありませんし、まして政治資金を集めるような集まりでもありません。実際、地方の博友会から寄附を受けたり、パー券の購入をしてもらったことはありません。

 また、私の選挙区は東京十一区でありまして、地方の博友会は選挙区外であるということで、私の政治活動とも無関係でございます。

 このような位置づけでありますので、私の方から、こうしてほしい、ああしてほしいと言う立場ではありませんが、任意団体のそれぞれの皆さんが独自に判断されることだと思います。

 ただ、今回、国会でもこういうふうな議論が出されているということでありますから、それぞれの任意団体が疑惑を持たれないような対処をそれぞれ判断されるというふうに思います。

西村(智)委員 私は、大臣自身がそのように促すといいましょうか、大臣の関係団体としてのやはり説明責任の部分というものはあると思いますから、それに対してはこれからもぜひ応えていってもらいたい。

 今の答弁では、私の質問に対する答えには全くなっていないということは申し上げたいというふうに思います。

 次の質問に移ります。

 下村大臣、LGBTという言葉を御存じでしょうか。

下村国務大臣 性的マイノリティーのことでしょうか。

西村(智)委員 今、有村大臣か上川大臣からこそこそっとつぶやかれたので、それでおわかりになったのかもしれませんけれども。

 L、レズビアン、ゲイ、それからバイセクシュアル、トランスジェンダー、この頭文字をとってLGBT。そのほかにもいろいろな言い方はありますけれども、性的マイノリティー、性的少数者を指していう言葉だというふうに言われております。

 こういった方々が、大臣は、日本でどのくらいの人口規模でいらっしゃるというふうに想像されますか。

下村国務大臣 実際、これは統計をとっているわけではないと思いますので、存じ上げておりません。

 ただ、今回、渋谷区で条例を出すということについては報道されております。渋谷区で、男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例、これが報道されておりますので、条例をつくるぐらいですから、かなりの方がいらっしゃるかもしれないというふうには思っております。

西村(智)委員 下村大臣御指摘のとおり、渋谷区で、今度、パートナーシップ条例案が提案をされる。二月議会も始まったでしょうから、そろそろ提案をされているかもしれません。

 アメリカの推計ですと、全人口のうち性的少数者は三から五%程度いらっしゃるのではないかという、これは推計です。しかし、日本では、その現状というのはほとんどわかっていない、実態はわかっていない。

 民主党は、先ほど冒頭申し上げましたけれども、多様性を認め合う社会というのを目指しています。私は、今回のこのパートナーシップ条例案が、そういった性的少数者の方々との共生社会に向けて、ある意味大きな一歩になるのではないか、そういう予感がいたしているわけでありますけれども、上川大臣、お伺いいたします。

 一人の女性政治家として、この条例案が提案されるというニュースをどういうふうに受けとめられたでしょうか。

上川国務大臣 今回の報道がございまして、先ほど西村委員も御指摘がありましたけれども、アメリカなどではそうした方たちがいろいろな形でいらっしゃるということにつきましては、私もアメリカに行ったときに実感しておりましたので、今回は渋谷区が動きが出るということでございますが、その動きについては報道を通して承知をしているところでございます。

西村(智)委員 法務省では、平成二十六年度の啓発活動年間強調事項というのがありまして、これは十七項目あるそうです。このうちの一つとして、性的指向を理由とする差別をなくそう、こういうことも掲げられています。

 大臣自身の受けとめ、この条例案についてどういうふうにお考えでしょうか。

上川国務大臣 今回、渋谷区が、御指摘のような条例案ということで、区議会に提出するという報道がなされているということで承知をしているところでございます。

 条例案の内容につきましては、先ほど、パートナーシップについての証明書という御発言がございましたけれども、詳細について承知をしておりませんので、現時点につきまして、法務大臣として条例案につきましての所見ということについては申し上げるということがなかなか難しいというふうに考えております。

西村(智)委員 一人の女性政治家としてどういうふうにお考えですかというふうに私は伺ったんですけれども、それについての感想が伺えないというのは大変残念です。

 高市大臣にも同じ御質問をしたいと思います。

 この条例案について、一人の女性政治家としてどのように受けとめておられるでしょうか。

高市国務大臣 この場は、あくまでも閣僚として、内閣として、国会に責任を持てる答弁をする場所ですから、一人の女性としてということで個人的な見解を聞かれてもなかなか難しゅうございます。

 ただ、地方自治法の精神にのっとりますと、総務大臣が地方公共団体が立案をされようとする条例案について見解を申し述べるということは適切ではないと思っております。

 ただ、今回の報道されております条例案に限らず、一般論として申し上げます。地方自治法上の解釈を申し上げますと、地方公共団体は、地方自治法第十四条第一項の規定によりまして、法令に違反しない限りにおいて地域における事務等に関して、条例を制定することができます。よって、一般論ですが、条例を立案される場合には、法令との関係を慎重に検討した上で行われるべきものでございます。

 なお、仮に、条例に基づく事務の処理が法令に反するようなものである場合には、地方自治法第二百四十五条の五等の規定によりまして、各法令の所管大臣において是正の要求などを行うことができます。

西村(智)委員 せっかく女性の閣僚でいらっしゃるので、それぞれお考えがおありなのではないかと思って伺ったんですけれども、お二人のいずれからもお伺いできなかったというのは、大変残念です。

 男性と女性がともにその個性を生かし、そして互いに支え合ってともに生きていける社会というのは、やはりそこにはさまざまな想像力が求められますし、また、このような性的少数者にもしっかりと想像力を働かせ、思いをいたして政策をやっていくということは、私は必要なことだというふうに思います。

 実は、お二人の大臣がお答えにならなかった理由は、私はうっすらとは想像はしております。

 実は、昨年の総選挙の前に、ある民間団体が各政党に対してアンケート調査を行いました。性的少数者への施策について問われたそのアンケートの中で、あらゆる政党の中で、唯一、自由民主党だけが、この問題については人権問題として取り組まなくてもよい、そして、性同一性障害者の人権を守る施策は必要だが、同性愛者へは必要ないというふうに答えておられるわけであります。

 つまり、政権全体が、党全体がそういう考え方ということですから、お答えにならない、なれないというのも、私はむべなるかなというふうに思うわけでありますけれども、しかし、これは放置できない問題もあるということは、ぜひ理解をしていただきたい。

 実は、性的少数者の方々においては、自殺念慮が非常に高いということが指摘をされております。

 民間団体の調査によりますと、その子供の七割、性的少数者と言われる方々が、七割が学校でのいじめに遭って、そして三割は自殺を考えたことがあるという実態なんです。

 そして、いじめの内容については、言葉の暴力が五三%、無視や仲間外れが四九%、身体的暴力が二〇%、服を脱がされるといった性的暴力が一一%という実態。また、多くの方々、その七二%が一年以上にわたっていじめを受けているということなんです。また、そのいじめをした加害者の側については、大半が同性の同級生なんだけれども、一二%が担任の教師から受けているということなんです。

 他方、別の調査によりますと、教師約六千人を対象にしたこの調査では、六割を超える学校の先生が、同性愛や性同一性障害について教える必要を感じながら、授業で取り上げたことがあるのは一四%にすぎないということです。

 平成二十四年の八月二十八日に、自殺総合対策大綱というのが閣議決定されております。ここの大綱の中で、性的マイノリティーについて、自殺念慮の割合等が高いというふうに明確に指摘をされており、同時に、教職員に対する普及啓発等の実施がうたわれております。

 下村大臣にお伺いいたします。

 現在、この大綱に書かれている教職員に対する普及啓発等の実施、これは実際、今学校の現場でどのように取り組まれていられるでしょうか。

下村国務大臣 お答えいたしますが、我々閣僚は、それぞれの閣僚の立場で出席をしておりますので、個人的な見解を言う立場ではない。別に、これは隠しているとかなんとかいうことではないということについては、私の方からも申し上げたいと思います。

 それから、自殺総合対策大綱についてでありますが、早期対応の中心的な役割を果たす教職員に対し、いわゆる性的マイノリティーに関する理解を促進することと、御指摘のようにされております。

 これを踏まえれば、教職員が正しい知識を持ち、子供たちのいじめや自殺の未然防止等を進めることは重要であります。また、子供たち自身についても、他者の痛みや感情を共感的に受容できる想像力等を育むことが必要であります。

 このような観点からは、性同一性障害を有する人などに対する差別的言動が許されるものではないことを子供たちが理解することが重要であるというふうに考えます。

 今後とも、適切な生徒指導、人権教育の実施を通じまして、性同一性障害を有する児童生徒などが不登校やいじめの被害者とならないよう、学校における問題行動の未然防止等に努めてまいります。

西村(智)委員 今答弁を聞かれた方もお気づきかというふうに思いますけれども、性同一性障害についてはさまざまな取り組みをするというふうに下村大臣はおっしゃったわけですね。しかし、私は、性的少数者全体に対する、例えば教職員に対する普及啓発、これについてお伺いをいたしております。

 性同一性障害は、これは医学的にと申しましょうか、見方はいろいろ、社会学的にもいろいろありましょうけれども、トランスジェンダーの一類型と見られている、その見方が一般的であります。LGBT全体まで含めますと、とても性同一性障害に対する対応だけでは足りない、十分ではない、こういうことなんですけれども、下村大臣、もう一度お伺いいたします。

 性的少数者に対して、自殺総合対策大綱に基づいた取り組みを今後どのようにされていかれるでしょうか。

下村国務大臣 自殺総合対策大綱において、性的マイノリティーということで明記されております。

 文科省の中では、これを性同一性障害等ということで表現をしておりますが、今御指摘のように、それは一部分だけということであれば、改めて、等というふうに入っていますが、文言については検討したいと思います。

西村(智)委員 法務省の啓発活動年間強調事項の中に、性的指向を理由とする差別をなくそうというふうにもあるわけでありますので、ぜひそこのところは文言の整理をお願いしたい。

 先ほど、大臣からはそのようにするというふうに明確に御答弁をいただいたと思いますけれども、確認のため、もう一度お願いをいたします、下村大臣。

下村国務大臣 文部科学省においては、先ほど申し上げましたが、性同一性障害等という言い方をしているということについて、これが性的マイノリティー全体ではなくてごく一部分を指摘するように見える、聞こえるという話がありましたから、この整理をいたします。

西村(智)委員 整理をいたしますというその文言については、また後ほど、どういうふうに検討されたかということは、場を改めて伺いたいというふうに思います。

 あわせて、大臣にもう一点だけ要望があります。学校での実態調査をやっていただきたいんです。

 先ほど大臣は、等について整理をするというふうにはおっしゃってくださったんですけれども、日本で、いまだかつて、どこでも、性的マイノリティーについて面的な調査を行われたことはありません。ですから、アメリカの推計で、例えば人口の三%から五%というふうに言われていても、それはアメリカの数字であって、推計でしかない。日本で面的な調査を学校現場でやっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、平沢委員長代理着席〕

下村国務大臣 これは、御指摘のように、国として調査したことはありません。

 その中で、学校で調査することになると、言葉の定義の問題等々ありますので、これは政府として全体的にそこから取り組む必要があるかと思いますので、関係省庁と相談する中で、学校で調査する場合については、適切な語彙とか定義とかそういうこともありますので、そういうことをしっかりと、意思疎通といいますか、コンセンサスをつくって、そして検討してみたいと思います。

西村(智)委員 先ほど申し上げましたけれども、非常に自殺念慮が高い層なんですね。ですから、そこに対してきちんと対応、対策をとっていくために、やはり政治の力で実態を可視化していくということは、私は必要だというふうに思います。ぜひそこは、大臣、また後でお伺いをいたしますので、よろしく御検討をお願いいたします。

 次に、労働者派遣法について伺いたいと思います。

 私は、今回の労働者派遣法、やはりよくないというふうに思います。経団連には賃金を上げるようになどというアピールは盛んにされておられるようでありますけれども、そもそも労働者派遣法は、例外的なものであった派遣労働を、言ってみれば、だんだんだんだんその間口を広げ、そして今回、労働者派遣法という改悪法案によって、常用代替防止という大原則があった日本の労働法制の基本的な原則を大きくゆがめようとしている。

 その中でも、特に痛みを受けるのは、これは女性になってくるんだというふうに私は思います。不安定な働き方だとされる登録型の方は、やはり女性の方が多いわけでありますし、それから、さまざまなハラスメントの被害者にもなっている。先日、最高裁で、セクハラ発言をした方が、懲戒処分は妥当という判決がありましたけれども、あの被害者も派遣労働の方だったわけであります。

 この常用代替防止の大原則を事実上放棄しようとしている労働者派遣法、そして女性の派遣労働者をさらに理不尽な状態に追いやる派遣法については、私は、やはり女性の問題であると同時に働く人たち全体の問題だというふうに思いますので、そこは大臣もしっかりと受けとめていただきたい。

 大臣、大臣は、派遣労働は労働者を物扱いしているというふうにお考えですか。

塩崎国務大臣 今、先生から幾つか派遣の問題について御指摘がございました。

 まず、御存じでない方もおられるといけないので改めて申し上げておきますと、今申し上げたように、これはもともと一時的、臨時的な扱いとして考案された制度ではないかというふうに思っておりますし、そういう位置づけでございます。

 実際、今、全雇用者の中でどのくらいが派遣労働者かといいますと、二%でございます。それから、ニーズとしては、もちろん正社員として働きたいという方と、それから派遣労働者として働きたいという方ももちろん、大体半々ぐらいだというふうに我々は、平成二十四年の派遣労働者の実態調査でも思っております。

 今、女性の話がございました。女性の比率は五六%、男性が四四%ということを申し上げておきたいと思います。

 常用代替ということについて……(西村(智)委員「最後のところだけ答えてもらえばいいです、大臣。物扱いしていると思いますか」と呼ぶ)

 ですから、決してそういうことではなくて、さっき申し上げたように、希望して働きたい、臨時的、一時的ではありますけれどもその方がいいというふうに思っていらっしゃる方が半分、そして、正社員になりたいという人が半分ということは、やはり物扱いをするのではなくて、多様な働き方が求められている中で、選択肢としても選んでいらっしゃるということなので。

 もちろん、物扱いをしているようなところがあれば、しっかりと指導をしていかなきゃいけない対象でありますからこそ、今回、規制を強化して、全てを許可制にして、そして許可に合わないような、要件を満たさないようなところについてはしっかりと指導をしていくということで、当然、許可の剥奪ということもあり得るわけでありますから。

 当然、今先生がおっしゃったような、物扱いするようなことはあってはならないと思いますし、今あるとすれば、しっかりと指導をしていくための規制を今回強化するということであります。

西村(智)委員 私は、やはり派遣労働というのは、パート労働やさまざまな契約、有期も含めて、分断された雇用の中であえいでいる人たちがたくさんいる、本当に、つらい思い、苦しい思い、理不尽な思いをしている人たちがたくさんいるということを受けとめなければ、労働法制の審議というのはスタートできないんだというふうに思っています。

 本来は、そこのところを厚生労働省がしっかりと受けとめて、法改正なりルールの整備なりをやっていかなければならない。

 先ほど大臣は、物扱いをするなどということはあってはいけないんだというふうにおっしゃいましたけれども、実は、厚生労働省の中で、大臣の部下がそのような発言をしておられるわけです。人材派遣業協会というところの新年会で、まさに労働者派遣法の担当者がこういう発言をしておられます。これまで派遣労働というのが、期間が来たら使い捨てだったというふうな物扱いだったと。

 こういう認識の中で労働者派遣法の議論をしているんですか。このような考え方を持って労働者派遣法改正案を出してきているとすれば、私たちはとても認めることはできない。大臣は、このような発言をされた部下がいらっしゃるということを御存じだったでしょうか。

    〔平沢委員長代理退席、委員長着席〕

塩崎国務大臣 そういった具体的な発言については存じ上げておりませんが、恐らく、現状の扱いにおいて不十分なことがあるということで、今回、さっき申し上げたように、さまざまな規制強化をして、なおかつ、今まで四分の三だったこの届け出制であったものを全て許可制にした上で、それぞれの規制が有効に機能しているかどうかをしっかりと見ていくということで、さらに働きやすくするようにするということ、そして派遣の方々の立場を守るということをさらに強化していこうという意味で多分言ったんだろうと思うんですが、もしあるならばですよ、表現として的確ではなかったのかもわかりませんが。

 ただ、その事実は、私も接しておりませんので、存じ上げておりません。

西村(智)委員 大臣は、部下の方がそういう発言をされたということを、今の今まで御存じなかったようであります。ぜひ、そこはしっかりと調査をしてください。そして、この予算委員会の中で、その真偽について明らかにしていただきたいと思います。

 なぜならば、この労働者派遣法に関連して、例えば、新年度予算の中で、キャリアアップ基金ですとか、さまざま労働者派遣制度に関する見直し等々の関連予算があるわけであります。私たちは、厚生労働省が、そして厚生労働大臣がそのような認識で出してきている労働者派遣法の審議はやはりできない、そういう思いを強くいたしております。大臣、いかがですか。

塩崎国務大臣 課長が発言したということを今引用されたわけでありまして、私の大臣としての法案提出とは全くレベルの違う話であって、私は、さっき申し上げたような考え方でやろうとしているわけでありますから。

 今御要望がございましたように、発言の真偽について調べろということでございますので、それはしっかり調べたいと思いますが、どこでの場所かということを、発言かということを、もう一回ちょっと教えていただくとありがたいなと思いますが。

西村(智)委員 人材派遣業協会の新年会でございます。一月二十七日でございます。テープもございますので、もしでしたら、お貸しすることもできますので、申しつけてください。

 今回の労働者派遣法は、本当に、一生涯派遣をやるための法案だとか、いろいろな言われ方をしておりますけれども、私は、一生涯派遣をさせるための法案であると同時に、正社員をゼロにする、そういう法案でもあるというふうに思っております。

 雇用安定措置、これについてはいろいろと措置をとるということでありますけれども、それについて、私は一つ一つその内容を精査いたしました。しかし、キャリアアップをしたところで、それが本当に労働者のその後の労働条件の向上につながるという担保は、残念ながらどこにも見えませんでした。これで本当に、物扱いされているとその担当課長が言っているその派遣労働が本当に人間扱いのものになるのかどうか、私は、そこはしっかりと議論をしていかなければいけないというふうに思います。

 それから、常用代替防止、この原則が事実上廃止されるわけですね。そういたしますと、安価な、安い値段の派遣労働にどんどん正社員が置きかわっていってしまう、そういうおそれが非常に強いということなんです。これは、まさに日本の労働の質をさらに劣化させる、分断させると同時に劣化をさせる、そういう中身だというふうに思います。

 厚生労働省は、口を開けば、これは許可制にしたからいい法案だ、そしてキャリアアップ支援も含めたからこれで労働者の質もよくなっていくんだというふうにおっしゃいますけれども、どこにもその担保はないじゃないですか。出口が四つあるといったって、そのうち一つとれなければ、そのほかの三ついずれかとればいい、それも、派遣元に対しての義務ではあるけれども、労働者の側の権利ではありません。

 そして、その後のキャリアアップが本当に、例えば賃金だけではなくて福利厚生、交通費、それから有給休暇、こういったもので本当に均等待遇になるのかといえば、これは絶対にならない。均衡待遇じゃなくて均等待遇を目指していくべきなんです。まず、その根本が間違っている。

 ですから、私は、今回の派遣法については、まさに厚生労働省の中で物扱いというその考え方のもとでこの法案がつくられているのではないか。であるとすれば、ここはきっちりと調査をして、この予算委員会の中で提案をしてもらいたいと思います。

 委員長、その点について、お取り計らいをお願いいたします。

大島委員長 理事会で協議いたします。

西村(智)委員 こういった点一つ一つ見ますと、本当にどこの点が女性の活躍促進なのだろうかというふうに大変疑わしく思います。

 私たち民主党は、真の意味で、一人一人の女性の暮らし、生活、そして人権、こういったものに目を向けて、そして、一人一人の女性が本当の意味で輝く社会を目指していく、そのことを改めて誓って、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

大島委員長 これにて西村君の質疑は終了いたしました。

 次に、山尾志桜里君。

山尾委員 民主党、女性で二番バッターの山尾志桜里です。

 きょうは、私、野党としての初質問でもございます。そんな中で、大きく分けて二つ、やはり政治と金の問題について、まだ聞き足りていない点、そしてまた後段では、主に有村大臣と子供、女性、家族について建設的な議論をしたいと思っております。よろしくお願いいたします。

 最初に、望月大臣に伺います。

 この週末、新たに報道がございました。二〇一一年から二〇一二年にかけての鈴与からの献金も政治資金規正法二十二の三に違反する疑いがあると。

 事実関係の確認をさせてください。

 環境省から一般社団法人を通じて二〇一一年九月に三十五万円の補助金、同年十二月に三十三万円の補助金が鈴与に交付決定をされた。そして、この一年内、一一年十一月に百四十万円の献金、一二年十月に三百九十万円の献金がこの鈴与から望月大臣の静岡四区総支部に向かってなされた。

 この事実関係に間違いはございませんか。

望月国務大臣 これは家庭・事業者向けエコリース推進事業補助金でございます。これは環境大臣による交付決定というようなことでございますが、私自身、鈴与の決定をもちろん知らなかったわけでありますが、このエコリース促進事業補助金は、一般社団法人ESCO推進協議会が交付決定をしておりまして、これは政治資金規正法第二十二条の三で規定する国の交付決定を受けた補助金には当たらない、このように思っております。

山尾委員 今、事実関係については間違いがないが、一般社団法人を通じているので違反には当たらない、そしてこの補助金交付決定については知らなかった、こういう御答弁でございました。

 二〇一三年三月の補助金交付も知らなかった、二〇一三年八月の交付決定も知らなかった、そして二〇一一年の二回にわたる補助金交付決定も知らなかった、どれもこれも知らなかった。

 でも、私は、政治家が献金を受けている場合に、一年以内にさかのぼって補助金を受けていたことを知らなかったということは、率直に言ってあり得ると思います。ただ、この望月大臣の件については、本当に知らなかったということはどうしても納得ができない。なので、続けて伺います。

 なぜ疑わしいか。一つは、やはり補助金受領先である鈴与と政治家望月義夫議員との深い関係でございます。もう一つは、補助金の中身と大臣のこれまでの職務との深い関係であります。

 今まで表に出てきている事実として、重立ったものを申し上げます。時間がもったいないので、もし違うものがあったらおっしゃってください。

 まず一点目、大臣の後援会長は鈴与の元副社長で、現在の相談役であること。

 二点目、鈴与からの献金は、二〇〇六年以降、総計で千四百八十万円に及んでいること。あえてグループ会社からの献金は申しません。

 次に三点目、二〇一四年四月二十八日に発足された清水港湾連合会の会長は望月大臣であり、設立発起人代表は鈴与の社長であること。まさにお二人が地元港湾振興の中心にいることをあらわす一つの象徴的な事例を申し上げました。

 また、四点目、二〇一三年に交付決定された補助金事業の中身は、まさに地元港湾における二酸化炭素排出を抑えるクレーン事業などであること、そして、この決定時、大臣は自民党港湾振興議連の会長であったこと。まさに、この地元の港湾振興をめぐって、大臣は、公務としても、あるいは政務としても、地元と国をつなぐパイプの役割を果たしていたというふうに私は思います。

 あわせて、大臣のこれまでの役職を見せていただきますと、環境大臣政務官、国交副大臣、国土交通委員長、シャドーキャビネット国交大臣、そして今、環境大臣。

 まさに、今言ったような事実を、ここからは評価を交えてお話しします。地元において大臣の最大の支援者であり、ともに地元港湾発展のために汗をかいてきた鈴与が、大臣の専門分野が二つ重なる領域において、その目的に資する大きな補助金交付を受けた。それを知らないとおっしゃるのであれば、これは、地元の国会議員として仕事をしていない、議連会長、国交、環境のスペシャリストとして仕事をしていないということではありませんか。もし本当に仕事をしていたなら、これだけのあなたの役職と、そしてそれに対して努力してみえたと思います。私、自民党の方の、この港湾議連の方のホームページも幾つか見ました。しっかり出席されて挨拶されて、会長としてその職務をこなしている。決して名前だけの議連会長とは思わなかった。

 いかがですか、大臣。地元としての仕事をしていなかったのか、国会議員としてあるいは大臣としての仕事をしていなかったのか、それとも、仕事をしていたなら、なぜこの交付金を知らなかったのか、御説明ください。

望月国務大臣 まず、先生に評価をしていただいたことについてはありがたいなと思います。

 ただ、その評価の内容でありますけれども、我々は、例えば港湾議連の会長というのは、全国津々浦々、何千カ所の港がございます。これは、地域の雇用だとか、それからまた地域の発展、そういったものに非常に関係がございまして、それぞれ有志の皆さんがそういったことをもって地域の発展のために尽くそうということでございまして、個々の問題については役所が決定することであって、我々が、個々の問題で決して政治家が口を出してはいけない、そういう形の中で、我々はそういったものを同志の皆さんとやってきたということでございます。

 また、この港湾の発展については、それぞれの議員の皆さん、港を抱えているところでは、これは与野党を問わずに、自分の地域の港や、あるいはまたそういった関係のものを発展させていきたい、そういうことで、それぞれの皆さん、これは与野党を問わないと思います。

 そういうことでございまして、我々も港とかそういうことに関してはやってきましたが、その内容の個々の問題についてそれぞれ口出しをして、自分の権力をかさに着てやるというようなことは、これはあってはならないし、そういうことで我々もやってきたつもりでございます。

山尾委員 としますと、先ほど私が、事実については誤りがあったら言ってくださいと申し上げましたが、事実については間違いないということでよろしいですか。

望月国務大臣 我々は仕事をしているということを申し上げたつもりで、その質問をしてきた内容の中身について、事実とか事実でないということではこれはございません。

 私は私の形、それから先生は先生の形でそれをおっしゃっている中で、一つ一つ個別具体的なものについて、事実とか事実でないということを、それぞれ内容について精査しなければ、そのことについてはお答えができかねるものと思います。

山尾委員 決して難しい事実確認をしているのではありませんので、先ほど申し上げた一、二、三、四、五、六。六点の中から、大臣自身がまだこの場でお認めになっていないものだけ申し上げます。

 二〇一四年四月に発足された清水港湾連合会の会長は大臣であり、設立発起人代表は鈴与の社長であるという事実に間違いはございませんか。

望月国務大臣 そのことについては、私が港湾のそういった役をやらせていただいておりますが、たくさんの皆様方の、こういう形で相談にというような形でございますので、そういう形の中で私がその役職をやらせていただいているということでございます。

山尾委員 今の件は事実だということで、もう一点だけなんです、先ほど申し上げた中で新しく大臣に確認しているのは。

 この二〇一三年の補助金交付が決定されたときに、大臣は自民党港湾振興議連の会長でありましたねということでございます。いかがですか。

望月国務大臣 この港湾議員連盟の会長というのは、全国津々浦々の皆さんで港湾の振興を図ろう、そういうことでございます。

山尾委員 事実だけ確認していただければ結構です、ちゃんと事実と評価を分けてお話ししておりますので。

 私、口を出したかどうかということはお聞きしていないんです。ただ、事実を一つ一つ確認していくと、知らなかったということは国民の皆さんになかなか納得していただきにくいのではないですか、説明責任が本当に足りているんですかということを申し上げたくて言っているんです。

 余り昨年のことを持ち出すつもりはありませんでしたけれども、大臣、説明責任の姿勢ということでいえば、昨年、やはりお金の問題で、ある意味、疑いが出たときに、大臣は、深夜、真夜中、十二時過ぎに会見を開かれて、この報道がしにくい時間帯に、そして、会計責任者は亡くなった奥様であるのでどうしてもわからないところがある、こういうような説明をされた。

 あわせて、今回のこの説明のあり方ということで、私は、やはり大臣に本当に、これは大事な問題で、しっかり当事者が説明責任を果たしていただいて、その上で、でも、この法律そのものにもやはり問題があるであろうから、与野党で新しいルールづくりに向けてそれもしっかりやっていきましょう、その前提として当事者の説明責任があるんじゃないかということを申し上げております。

 上川大臣にお聞きします。

 同じことです。この週末に出た新しい事実ですね。繰り返しますけれども、今と同じ、一一年九月三十五万円、一一年十二月に三十三万円、鈴与に補助金が交付決定をされ、そして、その一年内であります一一年九月から一二年十一月にかけて、上川大臣が、計九十万円、総支部としてお受け取りになった、この事実に間違いはございませんか。

上川国務大臣 先日の二月二十七日でございますが、この予算委員会におきまして御質問をいただきました。

 私は、それぞれ御質問、御指摘いただいたことに対して、その時点でそのデータがということで、ございませんでしたので、丁寧に調べてしっかりと対応していきたいという旨のお話をいたしました。

 今御質問の、土日にということでありますが、そのことにつきましては、きょう、正式に今聞いていただきましたので、この点については、しっかりと調べて、そしてきちっと対応してまいりたいと思います。

 今、新聞の報道ということでありますが、正式に今おっしゃっていただきましたので、調べてお答えしたいと思います。

山尾委員 ちょっと驚いたんですけれども、今、この新しい事実が出たのは、二月二十八日土曜日の朝日新聞から引用させていただきました。きょうは月曜日です。予算委員会も予定されておりましたし、週明けにはこのことについて説明をする責任があろうことは、政治家として当然予測すべきことであったと思いますが、今なおこのことについては調べていないということですか。

上川国務大臣 今、鈴与さんの方の家庭・事業者向けエコリース促進事業補助金ということでございますけれども、この交付決定を受けているとの報道がございます。

 私は、こちらにつきましては、調べまして、国から直接交付決定を受けたものではないということを確認しておりまして、政治資金規正法に抵触する可能性は全くないというふうに考えております。

山尾委員 私が伺っているのは、この補助金交付決定の一年内である一一年九月から一二年十一月にかけて献金九十万円を受け取っていらっしゃいますかという事実の確認です。もう一度、大臣、お願いします。

上川国務大臣 今のデータでございますが、受け取っているというふうに思います。

山尾委員 そして、補助金交付決定については、知らなかった、あるいは知っていた、どちらですか。この一一年九月と十二月の交付決定についてです。

上川国務大臣 そもそも、私としましては、この鈴与が補助金の交付を受けていたということについて、全体として受けていたということ自体も知りませんでした。ですから、御指摘についての件につきましても、全く存じ上げておりませんでした。

山尾委員 先ほど申し上げたような補助金の受給先と政治家との関係性、あるいは補助金の内容と受け取った政治家の職務との関連性、この二つの面から考えると、望月大臣と上川大臣を比較して、同じとは私は思いません。しかし、上川大臣は法務大臣であります。そして、望月大臣も当然環境大臣であります。

 そして、改めて、この法の趣旨、なぜこういうルールがあるのかということをさかのぼりますと、やはり補助金と寄附の間をめぐって腐敗を生ずるおそれが多分にあるから、腐敗を伴いやすい政治献金を防止して選挙の公正を維持せんとするため、こういうことだろうと思います。

 そして、今回の両大臣の一連のこの出来事は、国民の目から見て、補助金と寄附の間をめぐる腐敗の不信感というのを高めたことは、これは明らかだというふうに思っています。

 法務大臣、法整備の必要性を感じませんか。

上川国務大臣 ただいま御指摘がありましたけれども、まず、実態、事実かどうかということについてしっかりと調査をして、そして、その上で対応していくということであるというふうに思っております。

 今御指摘にありました法整備の必要性ということにつきましては、その上で出てくることの一つの可能性というふうには思いますけれども、今直ちにそのことについて必要である、必要でないというようなことを私から申し上げることは差し控えさせていただきたいと存じます。

山尾委員 まだ事実を確認すべきことがあるということでありますと、ではさらに確認をしていただいて、調査をしていただいて、さらに説明をしてくださいということになるんですけれども、それはおきまして、少し遅いと思います、いろいろな確認が、幾ら何でも。

 私たちは、個別具体の件とはまた別に、近く、間近にしっかり提案したいと思います。補助金と政治献金に対して国民の不信をもう少しでも低減できるようなルールづくりを提案したいと思いますので、ぜひその際には与野党を超えて協力をしていただきたいということを申し上げて、次の、後段の質問に移りたいというふうに思います。

 後段ですけれども、有村大臣、私、こうして有村大臣とお話をすることも初めてなんですけれども、共通点をあえて挙げるとすれば、現職の国会議員である中で出産を経験したということだと思います。しかし、他方で、有村大臣の政治家としての言行や発言をひもといていくと、同じ女性という立場からも、正直、違和感を感じることも多々ございます。そして、その違和感は、安倍政権の進める子供や女性や家族にかかわる政策への違和感と相当程度重なるんです。

 私、三つのことを申し上げたいというふうに思います。

 まず一つ。夜間保育あるいは延長保育、二十四時間保育、必要としている子供やそして働く母親、もちろん父親もたくさんおります。そんな中で、私は、子供の幸せを、子供の価値観を押しつけないで、ぜひ多様な保育のあり方というのを政治家として心から必要だと認めていただきたいと思うんです。

 そんな中で、二十四時間保育のことを少し御紹介します。

 私、先日、二月の十三日に東京都内のエイビイシイ保育園というところをお訪ねしました。そして、二十四時間を含む、夜間であり認可であるという保育園の必要性を、本当に深く意義を受けとめました。

 例えば、この保育園は都内という場所にありますけれども、保護者の方の仕事は多種多様です。会社員、飲食店の方、お医者さん、メディアの方、私たちを支えてくださっている霞が関で働く役所の方、助産師、美容師、障害施設で働く方、学生もいらっしゃいます。昼ばかりでなく、夜働いてこの社会を支えているさまざまな職業の方が大事なお子さんを預けています。

 今、二〇二〇・三〇というのを掲げて、働く女性を応援する、こういう政権にとって、この夜間保育の必要性は私は言うまでもないというふうに思っています。

 そんな中で、実際にその現場をお訪ねして、必要があるのに足りていない、このことを知りました。

 今現在、夜間の認可保育は全国で八十カ所、定員は二千七百九十五人です。一方で、認可外で、いわゆるベビーホテルを利用している子供たちは三万四千五百十一人です。認可の夜間を利用している子供は定員二千七百九十五、認可外のいわゆるベビーホテルに通っている子供は三万四千五百十一です。十倍以上の子供たちです。

 なぜ、これだけニーズがあるのに夜間の認可が少ないのか、現場でお尋ねしました。

 細かいことはいろいろあるけれども、皆さん異口同音におっしゃったのは、これは、ハードルは偏見だと。子供は夜母親といるべきだ、長い時間の保育は子供にとってよくない、こういう偏見が夜間保育をやろうとしている事業者の方の足を引っ張っている。

 私は、本当にそんな偏見が今もなお続いているのかと正直驚きました。そうしたら、あったんです。

 有村大臣にお尋ねします。

 有村大臣は、御自身の原稿で、議会人として、保育行政を提言していく上でいつも念頭に置いている考えがありますと前置きをして、ある方の言葉を次のように引用しています。

 申し上げます。有村大臣がいつも保育行政を提言していく上で念頭に置いている考え方の引用です。「保育園を二十四時間開設したり、ゼロ歳児の延長保育を促進するなど、単に保育園や幼稚園を「コンビニ化」することが、教育・育児支援ではありません。むしろ、安易な気持ちで子育ての外注化を助長してしまったことで、数十年後、結果的に家族を崩壊させてしまっているような政策も見受けられます。」こうして、ある方の言葉を引用されて、御自身で書かれた原稿の中で、「その発言には説得力がありました。」というふうに書かれている。

 今、大臣は、保育行政を提言するどころか、執行する立場にある大臣です。全ての女性を輝かせるという担当大臣でもあります。少子化を担当している大臣でもあられます。

 尋ねます。ゼロ歳児の延長保育の体制を整えている保育園や、二十四時間受け入れの体制を整えている保育園は、家族を崩壊させると今もお考えですか。

有村国務大臣 委員にお答えをいたします。

 ゼロ歳児保育を必要な方に届けていくことは極めて大事です。それを、家族を崩壊するなどということを私は申し上げたことは一言もありません。理論の跳躍があります。しっかりと書いたものを見ていただいて、読み込んでいただきたいと思います。十年間、私はその記事をホームページに掲載しておりますが、そのような、委員のような誤解をされた方は誰もありません。クレームも一件も来ておりません。

 そういう意味では、ゼロ歳児を必要なところに届けていくというのは極めて大事な価値ですけれども、同時に、家庭が夜安心して一緒にいられるような環境を一生懸命みんなでつくっていこうということの論旨に何ら恥ずるところはございません。その点は明確にさせていただきたいと思います。

 同時に、核家族、共働き家庭の増加、働き方、働く時間の多様化で、子育てをめぐる環境は大きく変化をしています。医師の夜間のオペ、あるいは看護師の皆さんの夜勤、あるいはセキュリティーの方々など、実際に、夜中に保育園に預けなきゃいけない方々もたくさんいらっしゃいます。そういうさまざまなニーズにきめ細かに対応して、子ども・子育て支援のさらなる充実を図ることは極めて大事なことだと、言うまでもなく、存じております。

 そして、安心して子育てができる環境を整備していくことは、女性が職場においても家庭や地域においても十分にその能力や可能性を発揮して輝くことができる社会をつくる、その観点からも重要だというふうに申し上げます。この価値を明確に申し上げた上で、偏見などとは闘っていかなければなりません。

 同時に、私も委員と同じように、全国各地の保育、なかんずく夜間遅い時間に保育をしていらっしゃる現場に幾度となく足を運んでまいりました。そして、それは、本当に需要を満たして、そういう必要な方々にサービスを届けようと現場も一生懸命されています。

 ただ、そこに預けていらっしゃる親御さんからも、そして保育園の先生方からも、地域の自治体の首長さんからも言われるのは、やはり夜中十時にお母さん、お父さんが子供を引き取りに行ったら、子供は一回寝ています、ぐっすり寝ています。それを起こして、ぐったりしている子供を抱えてやっていく、あの痛ましい姿を見ると、それは子供の睡眠が中断されるという、健やかな育ちにとってベストな環境でもないということの、そののりはしっかりとわきまえて、より健やかな睡眠がとれるような環境を整えていくことも重要なことだと思っております。

 以上です。

山尾委員 私、原稿は読み込んでおります。この場に、手元にもございます。

 これは、ただの、ほかの、メディアが書いた取材とは違います。御自身が執筆された原稿かと思います。その中で、あえて、今申し上げたような言葉を引用して、これをいつも念頭に置いて考えている、そしてその発言には説得力があった、こういうふうに御自身で原稿に書かれているから申し上げているんです。でも、今、そういう多様な保育が必要だと考えられているんだったら、時を経てそういうふうになっていただいたなら、それは結構です。

 でも、もう一つ、私は改めて厚労大臣にお伺いをしたいと思います。

 これは、なぜこういう偏見を、あるいは価値観の押しつけを事業者の方が、感じていらっしゃる方がいるかと申しますと、一九八一年にベビーホテルでの事故が社会問題化をして、この年、夜間保育を初めて国の制度として厚生労働省が位置づけました。ただ、その紙の中にこういうふうに書いてあったんです。保育所における夜間保育については、児童の心身に与える影響等を考慮し、従来実施していなかった、モデル的に夜間保育事業を実施することにした。

 でも、ここから三十四年たっているんですけれども、それではこの夜間保育が夜間保育だということで児童の心身に悪影響があったのかなかったのかということについて、公の答弁がいまだないんです。

 なので、ぜひ、今この機会をいい機会と捉えていただいて、まさに所管の厚生労働大臣に、夜間だから子供に悪影響があるのではない、長時間だから子供に悪影響があるのではない、時間帯や時間の長短という単一のファクターを取り上げてその是非を論じるよりも、保育のケアの質そのものこそを上げて、子供の発達をみんなで見守っていこう、こういう考えになっておられるのであれば、その旨を所管の大臣から明確に言っていただきたいというふうに思います。

塩崎国務大臣 既に、子ども・子育て支援新制度をこの四月から実施しようということで準備を進めておるところでございますけれども、御案内のように、これは自公民で子育てについても一体改革の中でお決めをいただいたわけでありまして、特に、保育に欠けるというかつての表現を、今度は保育の必要性ということで、やはりいろいろな働き方がある、そういう中で、フルタイムもパートタイムも夜間も、全てに対応できるような保育のサービスを提供していかなきゃいけないということでやっておるわけでございます。

 今先生御指摘の、児童の心身に与える影響ということでございますけれども、夜間保育所を対象に、十一時間を超える長時間保育について調査した平成十六年の三月の厚生労働科学研究の報告書によりますと、長時間にわたり保育を受けることと子供の発達との間には直接的な関係は見出されない、そして、保育サービスの質や家庭におけるケアの質が重要とされておりまして、夜間保育も含め、我々としては、多様な保育ニーズに応えていく中で、保育を行う時間帯やその長さにかかわらず、保育の、先生御指摘のように、質を確保し、向上させていくことが児童の健全な育成のために大切だというふうに考えております。

山尾委員 大変貴重な答弁をいただいたというふうに思います。

 こういった形で、今まで頑張ってこられた、夜間保育、延長保育、二十四時間体制の保育も含めて、これからも頑張ろうと思っていらっしゃる事業者の方に与野党を超えてしっかりと支援をしていきたい、それが子供を幸せにする道だというふうに私は思っております。このことについては大変感謝を申し上げます。

 もう一つ、これは法務大臣にお伺いをしたいと思います。

 選択的夫婦別姓の問題が、最高裁で、小法廷から大法廷に回りました。どんな判決が出るかは、それはもちろん最高裁の判断を待つしかございませんが、その違憲、合憲という判断を待つ前に、政治の責任としてこの選択的夫婦別姓を前に進めるというお考えはございませんか。

上川国務大臣 御質問の、選択的夫婦別氏制度につきましての御質問でございますけれども、ただいま、最高裁判所の大法廷におきまして審理をするということで、判断が至ったところでございます。結果につきまして注視をしてまいりたいというふうに思っております。

 選択的夫婦別氏の制度の導入につきましては、平成八年に、法務大臣の諮問機関であります法制審議会から答申をいただいているということでございますので、この問題につきましては大変関心の深いテーマでもございます。その上で、この問題が最高裁判所の大法廷に付されたということでございますので、そのところにつきましては十分に注視をしてまいりたいというふうに思っております。

山尾委員 御質問には答えていただけませんでした。

 その判断の前に、選択的夫婦別姓を政治の責任として取り組むつもりはありませんかとお伺いしましたけれども、お答えがないということでございます。

 これは、もちろん違憲であれば大変恥ずかしいことです。違憲判決が出たらどうなさいますか。

上川国務大臣 ただいまの御質問でございますが、違憲であるかどうかということについては、まさに大法廷で御判断をいただくということでございますので、そのことにつきまして注視をしてまいりたいというふうに思っております。

山尾委員 ということは、判決が出るまで注視をするだけで、政治の責任として何かその前に取り組むというお考えはないというふうでよろしいですか。

上川国務大臣 この問題につきましては、かねてより法制審でも議論をしてきたところではございます。この間、法案につきましても出されているということでありますので、審議がなかなかできなかったということもございます。いろいろな御意見をいろいろな形でいただいているということも事実でございます。世論調査もしているところでございます。

 こうしたことから、こうしたプロセスの中でいろいろな御意見があるということでございますので、最高裁判所の判断がある、なしやということだけではございませんけれども、そうした、皆さんからどういう御意見があるのか、また、時代の変化の中でいろいろな形での可能性ということもございますので、そういうことの実態につきましては、十分に把握をしながら対応してまいりたいというふうに思っております。

 今の点につきましての大法廷の裁判につきましては、その結果につきまして注視をしてまいりたいというふうに思っております。

山尾委員 注視をするという以上の答弁が得られませんので、最後の質問に移りたいと思います。

 自民党の改憲草案、二十四条についてでございます。これは、二十四条、「家族は、互いに助け合わなければならない。」というふうにございます。

 有村大臣は、憲法改正推進本部起草委員会の委員であったかと思います。また、以前、新聞の中で、これは憲法ではありませんけれども、教育基本法について、子供の教育は、両親、保護者がまず責任を負うことを明記したいということもおっしゃっております。

 こういう背景の中で、自民党改憲草案のこの家族規定、「家族は、互いに助け合わなければならない。」というふうにわざわざ憲法に書き込むことに賛成でありますか。有村大臣にお尋ねします。

有村国務大臣 現在、国務大臣の立場をお預かりしており、この席は国務大臣として答弁をする席でございます。個別の政党の憲法の改正法案についてお答えすることは適切でないため、差し控えさせていただきます。

山尾委員 有村大臣は、常に、命の重み、家族のきずな、国家の尊厳ということを政治家として発信しておられます。その家族の中には、例えば同性婚パートナーは入るんですか。

有村国務大臣 先ほど答弁申し上げたとおりです。

山尾委員 この家族には、同姓義務に支障を感じて事実婚をしている夫婦は入るんですか。

有村国務大臣 この場で議論させていただくお話ではないかと認識をいたしております。

山尾委員 見解を答えていただけないということは、ある程度予想しておりました。ただ、私が申し上げたいのは、憲法を含む法律に何か言葉を書き込むということの重みなんです。

 家族ということを憲法に新しく書き込むということは、家族を定義づけることなんです。定義づけるということは、その内と外を峻別するということなんです。だから、この家族の中に、では、同性婚の方は入るのか、夫婦別姓で事実婚の方は入るのか、そんなこともはっきりわからない。でも、家族はそういうものだと思います。私たちは多様性を認める政党です。

 家族は、これが家族だ、こうあるべきだ、そんなふうに定義づけられるものではない。本当に、もっと広くて深くて温かいものだというふうに思います。そして、それを憲法の中に、一つの価値観、一つの美意識を持って位置づけるということの重みを知っていただきたい。

 そして、船田推進本部長が、きのう、この憲法はずたずたになるだろう、ほとんどずたずたになる、こう思って結構ですとおっしゃった。ずたずたにしていい憲法の案なんて出してほしくないんです。改正したいだけで、これは中身はどうでもいいということを党として認めたのと同じことだと私は思います。

 だから、この二十四条のように、ただ価値観を押しつけて、それによる社会的影響も考えていない、そういう条文が含まれた、ずたずたにされてもいいような案が出てくる。本当に私は、与党として、憲法の重みをもう一度考えていただきたい、そういうことを申し上げて、質問を終わります。

 以上です。

大島委員長 これにて山尾君の質疑は終了いたしました。

 次に、鈴木貴子君。

鈴木(貴)委員 民主党女性議員として、三番手で質問に立たせていただきます。鈴木貴子でございます。

 しっかりと四番手選手につなげられるよう、建設的な、前向きな議論に努めさせていただきたいと思います。

 それでは、きょうは、領土問題、そして刑事訴訟法、いわゆる取り調べの可視化、そして、時間次第で、防大のいわゆるいじめ問題について伺わせていただきたいと思います。

 まず最初に、領土問題について、岸田外務大臣にお伺いをさせていただきます。

 日本政府として抱える領土問題とは何でしょうか。

岸田国務大臣 日本政府として抱える領土問題は何かという御質問ですが、政府としましては、みずからの国の領土、領海、領空は断固として守り抜かなければなりません。日本政府としましても、現状において、我が国の領土、領空、領海、しっかりと守っていく、それが我が国における領土問題の本質だと考えております。(鈴木(貴)委員「具体的に領土問題はどこか」と呼ぶ)

大島委員長 鈴木さん、手を挙げて。それで発言を許しますから。

 鈴木君。

鈴木(貴)委員 改めて、岸田外務大臣、領土問題、どの領土かというところを具体的にお話しいただいてよろしいでしょうか。(発言する者あり)

大島委員長 岸田大臣、丁寧に答えてください。

岸田国務大臣 失礼いたしました。問題の趣旨を取り違えておりました。

 我が国におきましての領土問題、北方領土問題と竹島問題がございます。

鈴木(貴)委員 今、領土問題、いろいろな見解があるんだよというような不規則発言が耳に入ったんですけれども、国家主権にかかわるこの領土問題、さまざまな捉え方があっては、逆に、これは国家主権にまさにかかわる問題であります。今の不規則発言を聞くからにしても、やはり我々政治家もしっかりとこの領土問題に向き合っていかないといけない、勉強をしていかないといけないと意を強くしているところであります。

 今、岸田外務大臣は、領土問題に、竹島そして北方領土という名を挙げていただきました。

 私も、北方領土返還運動原点の地を地元としている者としても質問させていただいているんですが、竹島問題。北方領土は、例えば、二月七日、北方領土の日があります。そして、その日には政府主催で式典もあります。また、沖縄北方対策の担当大臣もいらっしゃいます。しかしながら、竹島においては、竹島の日、そしてまた式典、そして竹島と名の入った担当大臣の設置がいまだありません。

 領土問題は竹島と北方領土であるというのであれば、どうしてこういった対応の差が生じているのでしょうか。

岸田国務大臣 まず、竹島につきましては、歴史的事実に照らしても、また国際法上も、明らかに日本固有の領土であり、我が国はこの問題に関し、法にのっとり、冷静かつ平和的に紛争を解決する、これが我が国の考え方、立場であります。

 竹島問題は、一朝一夕に解決する問題ではありませんが、大局的な観点から、冷静に、粘り強く対応していくことが必要だと考えます。

 そして、具体的な対応について今御質問をいただきました。

 御指摘の点も含めて、この竹島問題に対する我が国の立場を主張し、そして、同問題を平和的に解決する上で何が有効的な対応なのか、こういったことを不断に検討していかなければならないと考えます。そうした検討の上で、具体的な対応を決定していかなければならないと考えます。

鈴木(貴)委員 具体的な対応、こういったところを見詰めていく上でも、やはり担当大臣の設置というのは一つこれは大事なのではないのかな、このように思っております。

 また、実は、これは二〇一二年のJ―ファイル、総合政策集に書かれているんですけれども、「民主党政権発足後、わが国の領土・主権問題に関わる周辺国の挑発行動が相次いでいます。」と他党を批判した上で、「この流れに歯止めをかけるべく領土政策の立て直しが急務」、このようにもおっしゃっております。

 並んで、二月二十二日、竹島の日に政府主催の式典を開催するといったことも明記をされているわけでありますが、しかしながら、いまだにその竹島の日の制定も行われず、条例で示されている、現場で行われているその竹島の日にもいまだ大臣も閣僚も参加をされていないという事実があります。

 大臣のように、先ほど来から、その平和的解決を目指す、そしてまた、領土問題に当たっていくのが急務だというのであれば、北方領土と同様に、竹島、同じ対応が求められている。

 例えば担当大臣の設置、これについてはこれまでどのような議論があったのか、そしてまた今後どのような議論がなされるのか、大臣の見解をお尋ねします。

岸田国務大臣 まず、竹島問題については、先ほど申し上げましたような我が国の立場、これはしっかりと内外に明らかにし、しっかりと広報、説明をしていかなければならないと考えております。

 そして、こうした主張を行いつつ、この問題について、平和的に、そして冷静に、粘り強く、解決を図っていく上で何が最も有効であるのか、そして適切であるのか、こういった観点から具体的な対応を考えていかなければなりません。

 担当大臣等、具体的な御提案をいただいておりますが、これについても、韓国との関係等を総合的に勘案した上で、この問題を平和的に解決する上で有効な対策を検討していきたいと考えています。

鈴木(貴)委員 しっかりと領土問題、検討を前向きに、動いていただきたいなと思います。

 次に、ことしの一月二十日、外務大臣がベルギーのブリュッセルにおきまして、ウクライナで起こっていることも力による現状変更だが、北方領土の問題も力による現状変更だと発言されたということが明らかになっております。私も質問主意書も出させていただきました。

 さらには、二十八日、その一週間後、ロシア外務省のモルグロフ外務次官がインタビューで、交渉に直接影響を与える同じような発言がされた場合、岸田外務大臣のモスクワ訪問を初め、今後の二国間の接触について慎重に考慮するとまで言及をされております。

 このモルグロフ外務次官の発言を聞きながら、私も、日ロ間、そしてまた領土問題の交渉、若干陰を帯びてきてしまったのではないかと非常に危惧をしております。

 その観点から、質問主意書でも、岸田外務大臣の発言が今後の日ロ交渉にどのような影響を及ぼすと考えるか、このようにたださせていただきました。答弁書では、影響を与えないと明言、断言された答弁書が返ってきました。

 この答弁、大臣ももちろん了承済みの、閣議決定済みの答弁だと思いますが、まず、どなたがこれを起案され、何をもってして領土問題交渉に影響はないというふうになったのか、見解をお願いいたします。

岸田国務大臣 御指摘の私の発言ですが、この発言の趣旨は、歴史的事実に基づいた認識を述べた上で、ロシアとの対話が重要であるということを申し上げた次第です。

 一月二十日、ベルギー・ブリュッセルで講演をさせていただき、たしか、その講演の後、質疑応答の中で私は発言をさせていただきましたが、その際に、ウクライナにおいても平和的、外交的に問題を解決することが重要でありますが、ロシアとの間においても政治的な対話を行うことによって北方領土問題を解決していくことが重要である、こういった趣旨の発言をさせていただきました。

 御指摘の発言は、その発言の一部であります。そして、この発言につきましてロシアから指摘があったということは承知をしております。ですので、私の方からは、ロシアとの政治的な対話が重要であるという趣旨の発言であるというようなことをロシア側に丁寧に説明をさせていただいております。

 そして、政府の答弁書を誰が決めたのかということでありますが、私自身の発言ですので、私自身の発言の趣旨、経緯等を政府内でよく検討した上で答弁書を決定させていただいたという次第であります。

鈴木(貴)委員 モルグロフ外務次官の発言の後にまた外務大臣の方からロシア政府に説明があったという今答弁でありましたので、その点については、私も今その答弁を聞いて安心をしているところではあります。

 しかしながら、やはりこの領土問題、言葉の使い方、こちらの真意が何であれ、趣旨が何であれ、相手側、受け手に届かなかった場合には、これは非常に大きな問題になるのかなと。そしてまた、領土問題においての言葉というのは非常に重要だと思います。

 そこで、言葉に関することなんですが、九一年、まだソビエト、ソ連の時代ですね。ソ連が崩壊し、ようやく民主主義の国ロシアになってから、領土問題、領土交渉というものが本格的に始まったものだと思っております。それに合わせて、日本も、九一年、それまで掲げていた四島一括即時返還要求から、北方四島の日本の主権が確認されれば返還の実際の時期や態様については柔軟に対処するという言いぶりに変わっております。

 中には、この柔軟な対応という言いぶりで、政府がこの領土問題を諦めたんじゃないかというように不安視をされる方もいらっしゃるんですが、私は、領土問題、これは解決しなくてはいけない、逆にその政府の強い思いがあるからこそ、まずは交渉のテーブルにのろうじゃないか、相手を引っ張り出してこようじゃないか、こういった前向きな姿勢がこの言いぶりの変化にあらわれているかと思います。

 この私の見解が正しいか、そしてまた、政府として今どのような姿勢でこの領土問題に向き合っていかれようとしているのか、改めてその決意のほどを伺わせてください。

岸田国務大臣 まず、政府としての基本方針ですが、北方四島の帰属の問題を解決し、そしてロシアとの間で平和条約を締結するというものであり、この基本方針を堅持しつつ、北方四島の我が国への帰属が確認されれば、実際の返還の時期、態様及び条件については柔軟に対応する、これが我が国の基本的な考え方です。

 こうした考え方に基づいてロシアとしっかりと交渉していかなければならないと考えており、この点については、日ロ間、プーチン大統領と我が安倍総理、再三にわたって首脳会談を行っております。この首脳会談においてもこの問題に取り組むことが確認をされておりますので、ぜひ、我が国としましては、引き続き、先ほど申し上げましたように、隣国であるロシアとの政治的な対話、これをしっかりと大事にしながら、この交渉の道を探っていきたいと考えております。

鈴木(貴)委員 ありがとうございます。

 質問ではないんですが、一点だけ。

 大臣、よく二月に、そしてまた八月に、返還要求運動、住民大会、全国大会が開かれるかと思います。

 私、毎回出席をしていて甚だ遺憾に思うのは、よく来賓挨拶で、政府からも、往々にして代理の方が多いというのも一つ問題だと思うんですが、挨拶の最後に、皆さん頑張りましょう、返還要求運動促進月間である、皆さん頑張りましょう、こういう挨拶をされる方がいらっしゃいます。しかしながら、地元の、特に元島民としては、頑張るのはあなたたちじゃないかと。元島民の私たちは、三百六十五日、見えるけれども帰れない、帰りたくても帰れないあの島のことを思っているんだ、領土問題の交渉に当たっている政府が頑張ってくれ、こういった思いが率直な思いだと思います。

 この場でぜひ大臣に心にとめていただいて、またぜひ大臣の方からも関係各位の皆さんに御指導をしていただければありがたいな、このように思っております。

 続きまして、今度は上川法務大臣に、刑事訴訟法等の一部改正の法案についての質問をさせていただきます。

 今国会、取り調べの可視化などを含めた刑事訴訟法等の一部を改正する法律案が審議予定となっております。その中でも、例えば取り調べの可視化、証拠開示制度、そして通信傍受法、いわゆる盗聴法であります、そして訴追に関する合意制度、いわゆる日本版司法取引、こういったものが一つの法案の中にぐっと凝縮をされた形で審議が行われる予定であります。

 しかしながら、冤罪防止策である可視化、そして証拠開示の制度、それと、まさに冤罪の温床でもあった捜査権限の拡大、まさに水と油の存在だと思うんですけれども、この異質な二つをあわせて一本の法案として提出される、これについての大臣の見解をお尋ねします。

上川国務大臣 ただいま委員から御指摘がございました、刑事司法制度につきましての法案提出ということでございます。

 この法案につきましては、法案を提出する予定でございますけれども、これにつきましては、大変長い審議時間をかけまして、長年にわたりまして審議をしていただいた結果ということでございます。

 新時代の刑事司法制度特別部会におきまして、時代に即した新たな刑事司法制度を構築するという諮問に照らして、そして御議論をいただいたところでございます。

 全体として刑事司法制度において機能するか否かを勘案するということで、諸制度につきましては個別には検討しておりますけれども、同時に、全体として刑事司法制度について機能するか否かを勘案するということが大変重要である、こういう観点からこの調査審議が行われてきたというふうに考えております。

 この部会におきましては、答申案に掲げられた諸制度が一体の現行制度に組み込まれることによって時代に即した新たな刑事司法制度が構築されるという意見に収れんをされていったものというふうに考えております。

 そもそも、この法制審議会の総会または部会における採決方法についてでありますけれども、一括ではなくて、全体としてということでの意思決定をした上で審議をずっと積み上げてきたということでございまして、その上で、今のようないろいろな制度につきまして、全体としてのパッケージとして、御審議の上で採決されたものというふうに考えております。

鈴木(貴)委員 ありがとうございます。

 今、大臣まさに、諮問がまずあった、そして法制審があって特別部会、そこで事務当局試案というものがたたき台の上での今回の法案、今作成が進められている、大詰めを迎えられていることかと思います。

 また同時に、今、大臣はこうおっしゃいました。時代に即した見直しが必要である。

 では、改めてお尋ねをいたします。

 この法制審特別部会、この特別部会の設置の背景には、郵便不正事件、いわゆる村木局長事件であります。無罪が決まったその事件、捜査機関による証拠捏造、そしてまた自白の強要、こういったものが問題化され、冤罪事件、こういったものに注目が当たった、ゆえに特別部会が開かれたと思っております。時代に即したと言うのであれば、やはりまずは、この法案は冤罪防止のために何ができるか、その一点に集中すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

上川国務大臣 ただいま、特別部会が設置された背景ということで御指摘がございました。まさにそのとおりでございます。

 諮問そのものにつきましては、大阪の地検特捜部における一連の事態を受けて開催されました検察の在り方検討会議の提言を受けてなされたものというふうに承知をしているところでございます。

 この検察の在り方検討会議におきましては、先ほど申し上げた大阪地検特捜部におきましての一連の事態を受けまして、全会一致で、取り調べ及び供述調書に過度に依存した捜査、公判のあり方を抜本的に見直し、そして、制度としての取り調べの可視化を含む新たな刑事司法制度を構築するためにということで検討が開始されたというふうに考えております。

 その上で、今後、国民の安全、安心を守りながら、冤罪を生まない捜査、公判を行っていくために、抜本的かつ構造的な改革としてさまざまな仕組みを導入しようということで、長い議論を踏まえた上で提言がなされたところでございます。

 そういう意味では、まさに冤罪を生まない捜査、公判を行っていくためのさまざまな制度ということにつきまして、十分に御議論を、専門的な知見、また同時に国民の皆さんの御意見を踏まえつつということでなしてきたものでございますので、大変重たい提言であるというふうに考えております。

鈴木(貴)委員 今、大臣は答弁の中で、抜本的見直しと。抜本的という言葉を、私の記憶する限りでも最低二度は使っていらっしゃったのではないかなと思います。

 それでは伺います。

 可視化対象になっている事件というのは、全体の事件の中での何%ぐらいでしょうか。

上川国務大臣 今回の制度につきましては、法制審議会の答申を踏まえまして、対象事件として、裁判員制度対象事件と検察官の独自捜査事件ということでございます。そのことを検討しているところでございます。

 対象事件の数は年間三千から四千件程度ということで見込まれておりまして、対象事件については数%程度になるというふうに考えております。

鈴木(貴)委員 数%というのは何%でしょうか。

上川国務大臣 毎年の犯罪の状況につきましては動くわけでありますが、三から四%程度ではないかというふうに見込んでいるところでございます。

鈴木(貴)委員 抜本的見直しをすると再三答弁もされながらも、しかも、数年、もう長きにわたって議論を尽くされてきた、専門者、有識者によっての議論があったとまでおっしゃっておりましたが、しかしながら、この可視化の対象は全体の三から四%、これは余りにもひどいんじゃないでしょうか。やる気があるのかと国民から思われても、また指摘があっても仕方ない。

 そしてまた、その指摘があった際にはしっかりと、それに対しての背景を、なぜ、三%、四%、それをもってして抜本的見直しと言えるのか、上川大臣の見解をもう一度お尋ねいたします。端的にお願いいたします。

上川国務大臣 今回の制度の中では、録音、録画の必要性が最も高い類型の事件を対象とするということでございまして、この制度の対象外となる事件につきましても、さまざまな形で録音、録画の実態はございます。

 しかし、義務化をするという形で今回特定をし、そしてこれにつきましてしっかりと取り組んでいくということでございますので、御指摘、三、四%ということではございますが、質的に大変大事な部分を扱っているということでございますので、範囲が必ずしも、数だけ見てということではない、狭いものではないというふうに考えております。

鈴木(貴)委員 今の答弁も、非常に私は矛盾を覚えるわけであります。

 今、必要とする案件を優先的に可視化していくんだというような趣旨だったかと思いますが、今の三%から四%の中で、例えば痴漢の冤罪であるとか、こういったことは入ってこないわけであります。まさに国民の皆さんにとって一番身近な、よくニュースなどでも出てくる痴漢冤罪なども、これは可視化が入ってこない。私は、これは非常におもしろいな、そのように思うところであります。

 そして、検察の不祥事、村木事件で言うところの証拠改ざんであるとか、再審無罪の冤罪の発覚を受けてこれは発足して、審議がなされてきた。村木局長も、全面的な可視化というものが必要であると訴えてこられております。そしてまた、村木さんもこの委員のメンバーの中で、部会の中でも再三にわたってその発言をされております。

 なぜ村木さんがそのメンバーに選ばれたのか。それはやはり、冤罪の被害者だったからということだと思います。ならば、その被害者の思いをなぜこの試案は全く反映していないんでしょうか。上川大臣、見解をよろしくお願いいたします。

上川国務大臣 ただいま、審議につきましての問題があるのではないかという御指摘がございますけれども、本制度につきましては、捜査機関に原則として取り調べの全過程の録音、録画を義務づけるということで、新しい制度であるということでございます。

 捜査への影響を懸念する御意見も実はございまして、対象事件以外の事件につきましても検察等の運用による取り調べの録音、録画が行われることも考慮した上で、制度としては、録音、録画の必要性が最も高い類型の事件を対象とするということにしたところでございます。

 検察におきましては、本制度の対象外である事件につきましても、平成二十六年の十二月の一カ月だけとってみても三千五百件程度の録音、録画が行われているところでございまして、これを年間に換算いたしますと約四万件程度となるというふうに考えております。

 まだまだデータの蓄積が十分ではないため、確固たることを申し上げることができないわけでございますが、このような制度と運用をあわせて見ますと、相当程度の割合の事件で録音、録画が行われることが見込まれておりますので、その意味につきましては、必ずしも狭い範囲ではないというふうに考えております。

鈴木(貴)委員 私はまず、答申もそうでありますし、今回、法案のレクを受けたときにも愕然としたのは、やはり本来の目的、冤罪の防止、もう二度と冤罪を起こさない、こういった反省のもとにこの法案というものが、存在が浮かび上がってきたかと思っております。しかしながら、取り調べの可視化、そして証拠開示については極めて限定的であります。一方で、諮問の中にも入っていなかった新しい捜査手法、盗聴法、盗聴であるとか、あと日本版の司法取引であります。こういった性質のものを盛り込んできている。

 それを見たときに、可視化など、権利保障の拡大というものを盾にしつつ、実は社会的にも批判の強い盗聴法であるとか司法取引というものを便乗させて通してしまえ、抱き合わせて通してしまったらいいじゃないか、可視化が限定的だという指摘もきっと出てくるであろう、しかしながらゼロよりはいいんじゃないか、そんな声が上がってくるであろう、だから抱き合わせてしまえといった背景が、狙いが実は裏にあるんじゃないかと私は思っております。

 上川大臣、ぜひとも、この私の考えがどうか、そしてまた、違うというのであれば、何ゆえこの水と油の、性質の異なる二つのものを一本化させての法案上程なのか、改めてお尋ねします。

上川国務大臣 先ほど来の御指摘をさせていただいているところでございますけれども、法制審議会に対する諮問はそもそも、検察の在り方検討会議の提言を踏まえて、そして時代に即した新たな刑事司法制度を構築するために、取り調べの録音、録画制度の導入を含めまして、取り調べ及び供述調書に過度に依存した捜査、公判のあり方の見直しにつきまして幅広い調査審議をいただいたということでございます。

 法制審議会におきましては、ただいま申し上げたような諮問に基づきまして、証拠収集手続の適正化、多様化、また公判審理の充実化を実現するという理念に基づいて検討が重ねられたということでございまして、そうした答申に掲げられました諸制度を一体として現在の刑事司法制度の中に取り入れるべきであるという形で取りまとめが行われたところでございます。

 したがって、答申に掲げられた諸制度につきましては、犯罪事実の解明や適正な処罰でありますとか、あるいは被疑者、被告人の権利利益の保護でありますとか、被害者、証人となる国民の権利利益の保護ということでございまして、こうしたいずれにも配慮された、全体としてバランスのとれたものであって、十分に合理性のあるものというふうに考えております。

鈴木(貴)委員 冤罪防止のためにそもそも動き始めたものが、実は冤罪の温床ともされた捜査権力、権限の拡充、拡大というところに一役買わされているというのは本末転倒である、このように私は強い憤りを感じております。

 また同時に、この焼け太りの改革案を見るだけでも、改めて、捜査機関の体質、自己のこれまでの過去を、過ちを認めない、反省しない、見直さない、検証しない、こういった体質が逆にありありと見えてきたのではないのかなと思います。

 そして、最後に一点、もう時間も来ましたので一点だけ申し上げます。

 時代に即したと先ほど来から大臣はおっしゃっておりますが、ならば、村木事件、冤罪があったじゃないですか。足利事件、再審無罪だったはずです。東電OL事件、再審無罪であります。袴田事件、四十八年間自由を奪われて、再審が静岡地裁によって決まったわけであります。このたかだか数年間の中でもこれだけの再審無罪判決が出た。これを踏まえた上で時代に即したと言うのであれば、このたかだか全体の三、四%の可視化というものは、私は、合理性は全くない、みずからの反省が全くなされていない、国民の信頼を回復しようという思いがさらさら感じられない、この強い憤りを持っているものであります。

 もし時間が許すのであれば、上川大臣、最後に……(発言する者あり)改めて、今後ともまた、質問主意書、そしてまた委員会などでもたださせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

大島委員長 これにて鈴木君の質疑は終了いたしました。

 次に、阿部知子君。

阿部委員 民主党の四番手バッター、そして、民主党として初めて質問をさせていただきます、衆議院議員の阿部知子です。

 私の本日の質問は、東日本大震災から丸四年をもうすぐ迎えようとしております。とりわけ原発事故をあわせ被災した福島の皆さんにとって、この福島の再生、復興なくして我が国の再生と復興もないという政治家からのメッセージが本当に心に響くものとなっているのかどうか、私どもの総力を挙げて今応えねばならない課題だと思いますので、本日の質問がそうしたものに資するものになるよう質問をさせていただきます。

 まず冒頭、本日は、委員長初め皆様の御高配で、東京電力の廣瀬社長にお越しをいただきました。参考人として、忙しい中お運びいただきましたことを、まずお礼申し上げます。

 早速ですが、質問に入らせていただきます。

 先週来、大変国民の耳目を集め、また、現地、とりわけ漁業関係者の大きな憤りを買っております汚染水問題について、冒頭の質問をさせていただきます。

 二月の二十二日には汚染水のタンク周辺での側溝の高い放射性濃度が指摘され、と同時に、二日後には四つの並んだ原発、原子炉のすぐ横、山側の排水路からこれまた高い放射性濃度が放出され続けている。事の事態の発覚は、実は一昨年の十一月にさかのぼりますが、自来今日まで、雨の都度、放射性物質の濃度が上がり、それが直接、港湾の中ではなくて外、外洋に漏れ出ているという事態が指摘をされております。

 先ほど申しましたように、とりわけ漁業者の皆さんにとっては生活の糧であり、再生を願って日々その場で魚類などの測定もしておられて、一日も早く仕事を再開したいと思っているところを、冷や水を浴びせるような事態であって、なぜ隠すのか、なぜ真実が伝えられないか、そして対策はどうなっているのだ、そういう声が上がっております。

 東電廣瀬社長にお伺いいたします。

 漁業者の皆さんに対して謝罪もなさったようですが、この事案について、まず東電の姿勢、情報を十分開示せず、対策が後手に回っているのではないかという指摘について、いかがお考えでしょうか。お答えをお願いします。

廣瀬参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の一Fの排水路の件でございますが、K排水路につきましては、御指摘のように、昨年の一月から特定原子力施設監視・評価検討会というところで、データを提出して、どうやっていくのかという議論が始まりました。そして三月に、その検討会で、これから一年かけてしっかり対策をとってレベルを下げるようにという御指示がありまして、以来、私ども、瓦れきを撤去したり、清掃したり、それから草を刈ったりということが始まったわけですが、大変残念なことに、四月以降、その検討会にデータ等を報告するのをとめてしまいました。

 御指摘のように、特に、漁業関係者の方々におかれましては本当に申しわけなく思っているところですし、地下水バイパスであるとか、そうしたことで我々に説明の機会を与えていただいておりますし、また、苦渋の決断もいただいてきたちょうど同じころのことでございますので、そうした方々がこうしたデータをどのぐらい心配されるかということに、まさに我々が思いをはせることができなかったということで、大変反省をしております。

 とにかく大変重要な問題ですので、今後もしっかり原因を究明して、まずは、とにかくデータの公開はもちろんですが、排水路のつけかえ等々についていち早く対策をとってまいりたいというふうに思っております。

阿部委員 今の廣瀬社長のお言葉にもありましたけれども、やはり、被災地の人々の感じる不安や必死な思いに対して東電がきちんと情報を公開しながら、もちろん、対策については、実は難しいというところも多々あると思います。

 日本の東京電力福島第一原発事故は、水との闘いという大きな困難を抱えてしまいました。そのことをどう本当に克服していけるのか。しかし、と同時に、現実をありのままに伝えて、一緒に乗り越えていくしかないときに、片っ方側、情報を持っている側がそれを遮断してしまえば、不信が募って、かえっていろいろな意味で本当の復興につながらないと思います。

 私は、今、社長の言葉にもありましたが、せめて、港湾の中、シルトフェンスで囲われた港湾の中に流すくらいの処置は、原因がわからなくともやるべきであったし、それは止血処理と一緒であります。例えば、出血をしたらとりあえずとめないと、とりあえず海に垂れ流しちゃいけない、まして外洋に垂れ流しちゃいけないくらいの緊張感を持たないと、環境を汚染して人々を苦しめて、これ以上どうしようというのかという思いになられると思います。

 経済産業大臣にお伺いいたします。

 経産大臣は、せんだっての二月二十七日の記者会見で、こうした状態を放置していた、あるいは東電から情報もない、そのこと自身はうかつであったという御発言でした。うかつと言われて、果たして漁業者の皆さんはどう思ったでしょうか。だって、国が、この汚染水処理問題は積極的に責任をともに担うと言っているのに、うかつと言われて済むんだろうか。この感覚のずれも私は非常に大きなものがあると思います。

 東電は隠す、意思があったかどうかは別です、言わない。そして経産も知らない。結果、うかつ。やはり私は、これは宮沢大臣に訂正していただきたい。うかつという言葉は、余りにもうかつです。本当に、そういうことを聞いて、人の気持ちを逆立てる、がっかりさせる、悲しいと思います。いかがですか。

宮沢国務大臣 阿部委員がおっしゃるとおり、漁業者を初めとする地元の関係者との信頼関係というのは大変大事だと認識しております。そういうことで、今回の事態については、大変遺憾なことだと思っております。

 少し経緯だけ御説明をさせていただきますと、昨年の二月の廃炉・汚染水対策現地調整会議で、排水路の放射性物質濃度について説明、公表されました。その後、排水路の清掃等を進めている間、東京電力が測定したデータについては、経済産業省には報告がなかったわけであります。

 昨年の十二月に経済産業省に東京電力より、清掃等を実施してもK排水路の濃度が十分下がらないという報告がございました。港湾外の海水の濃度は継続して告示濃度限度に比べ十分低いものでありますけれども、おっしゃるように、K排水路というのは、港湾外に直接つながる排水路であります。そうした点で、経済産業省としてのこれまでの対応は必ずしも十分ではなかったといった意味で、うかつと申し上げましたけれども、うかつという言葉がそういった意味で関係者にそういう印象を与えるのであれば、私どもも、ある意味で反省をしているということを申し上げたつもりでございます。

阿部委員 深い反省をしていただきたいです。情報が来ないから待っているというのでは、国が前面に出てとは言えないんです。求めて、対策を一緒に考えて、少しでも、一日も早くよい方向に持っていかねばならない、それが政治というものだと私は思います。

 きょうは、原子力規制委員長にもお越しをいただいています。

 この件に関して、原子力規制委員長としても、私は、この東電の福一の事故の後、アメリカのNRCに倣って、きょう塩崎大臣おられますけれども、日本の規制行政をもっとしっかりしたものにしようとして発足したのが我が国の規制委員会であり、そのある意味のモデルはNRCにあると思います。NRCは、正面玄関すぐに入ったところに、環境と人々、パブリックヘルスを守るという、これが戦略ゴールであるということがもう真っ正面から掲げられています。

 果たして原子力規制委員会はどうか。環境を守る、人々を守る、この二つにおいて、港湾の中だけじゃなくて、外洋に出てしまっている現状、これについて、なぜもっと迅速に、本来の規制委員会としてのこれは戦略ですから、その観点に立っての行動がなかったのでしょう。つけかえなどはとうの昔にできるはずのものだと思います。

 一年以上も先延ばしして、最近でも、田中委員長の御発言、記者会見を読みますと、曖昧です。こんなものは可及的速やかにつけかえ、せめて原因の探索とともに、その結果が少しでも環境を汚染しないように努力すべきだと思います。もちろん、港湾の中、シルトフェンスの中だって漏れ出ます。だけれども、直接外洋に流しているのとは違うと思います。

 いかがですか。

田中政府特別補佐人 原子力規制委員会では、福島第一原子力発電所については、特定原子力施設として、監視検討委員会をずっと行っております。それから、別途また汚染水対策グループというようなところで、こういった汚染水全体についての監視は頻繁に議論をさせていただいております。

 今回のK排水路の問題についても、昨年一月からこれまでに、K排水路だけ取り上げた議論も六回ほどやっています。その間、東電からもなかなか濃度が除染しても下がらないということで、これについては、早急に対策を立てるようにということも指示しまして、昨年の春には、一年ぐらいその対策にかかるということで。ただし、昨年の十二月の末には、その状況ももう一度確認して、さらに早急にきちっと対策を立てるようにという指示をしてまいりました。

 しかし、今回、そういったことも、私どもに具体的な濃度データの報告がなかったものですから、そういったことで、早急に立てていただく、早急に対策をしていただくということで了解しておりました。しかし、今回の事態が起こりましたので、早急にその対策については、つけかえも含めまして求めていきたいと思っております。

 なお、今回外洋に出ていたということについて、外洋の汚染についても、今、その海水等の濃度の測定を再度行うようにという指示をいたしました。また、最近排水口近くではかっております福島県のモニタリングデータによりますと、昨年来特に変わったデータは出ておりませんが、念のために、再度測定するように指示したところでございます。

阿部委員 何だか、御答弁を伺っていると、みんなどこか人ごとなんですね。私は、それは本当に余りに被災地に対しても申しわけがない。国策として進めた原子力政策であります。その限りにおいて、皆当事者なんです、私たちは皆。

 だから、原子力規制委員会にも、今おっしゃったのは、情報がなかなか来なかった、これからは福島県のともあわせてやりましょう、先ほどの宮沢大臣も、来なかった、これからはやりましょう、そういう姿勢自身が問題です。みずから求めてでも、どうしてでもこれを対策していこうという強い決意を持ってやっていただきたいです。

 菅官房長官、ありがとうございます、お越しいただきまして。ぜひお伺いしたいです。

 安倍総理は、二〇一三年の九月でありましたでしょうか、この汚染水問題、アンダーコントロールという言葉を使われました。

 そのとき、少なくとも、安倍総理の発言を聞いて私が二点思いましたのは、シルトフェンスの中、港湾の中に入れているから、まあ外には広がっていないでしょうねという意味でアンダーコントロールとおっしゃったのではないかというのが一点。その当時、そういう受けとめが大半でした。それでも、先ほど言った、シルトフェンスだって漏れます、水ですから。

 と同時に、今規制委員長のお言葉にありましたが、外洋をはかったら、大したこと、上がっていないよと。だから、影響がコントロールされている。要するに、漏れた、だけれども影響は大したことないよ。出血した、だけれども大したことないよと言ったのと一緒だと思います。

 私は、前者も、このたびの事案で、中じゃない。後者も、実は、海の修復力、海は広く、大きく、暖かで、その中に放射性物質が出て、はかってもなかなかその濃度は数値として上がってこない。しかし、海底も含めて放射性物質の動態は、かつてムルロア環礁などであった原水爆実験でもそうですが、ずっと影響は及ぶ。もちろん、その当時ほど高くはないです。だけれども、放射性物質というのは消えないんです。動くだけ、どこかに移動するだけ。だから環境中に漏らしてはいけない、最大限そこが私は守るべき原点なんだと思います。

 そうなると、安倍総理のアンダーコントロール発言は、一は、シルトフェンス内じゃないよね、二は、たかだか海水をはかっただけじゃないか、もっと環境に対しての影響をきちんととるべきではないかという意味で、取り消していただきたい。いかがでしょう。

菅国務大臣 当時、総理が申し上げたのは、汚染水の影響はアンダーコントロールということを申し上げておりますので、現在も、フェンス内あるいは港湾内また外洋、そういう中で調査をして、告示濃度限度に比べて十分に低い数値であるということは御理解をいただきたいと思います。

阿部委員 官房長官は、国民との対話の窓口なんですね。とても大事な役割なんだと思います。そういう言い方をされるから、この原子力問題をめぐって国民との間にそごが生まれ、不信が拡大し、かえって物事を私は後ろに向けるんだと思います。

 官房長官のお立場として、それは、総理の発言は間違っていたと言えないかもしれません。でも、心の底で、先ほど申しました、港湾の中にとどまっていないですよ、外に捨てているんだから。海の濃度をはかったってそれが全部じゃないということを私は申し上げました。

 官房長官として、国民との情報交換、特に原子力問題は、本当に国民に対してありのままに伝えて一緒に考えていくということが大事であります。

 せめて、環境への影響はこれから調査せねばならないくらい、直していただきたいが、いかがでしょう。

菅国務大臣 まず、今度の告示濃度限度というのは、国際基準に照らして国として調査をして問題がないということで、汚染水の影響は完全にコントロールされているということを総理が申し上げたのでありますし、私たちも、現時点においても同じ考え方であります。

 ただ、約束したこと、やはり情報開示、漁協の皆さんと、その濃度に異変があればそこは連絡するとか、そういう信頼感を損なうようなことは絶対にすべきじゃないというふうに思います。

 今回のこの情報開示ができなかったことについては、私は心からおわびを申し上げたいと思います。

阿部委員 申しわけないですが、それではとても国民との対話はできないですよ。海が上がっていない、垂れ流しているじゃないというのが国民の実感であります。

 また時間を改めて官房長官にはお伺いいたしますので、官房長官の一言はとても大事だということを本日はお伝えして、ありがとうございます、お時間がおありだそうで、ここで官房長官は御退室いただいて結構です。

 引き続いて、この汚染水問題は、実に、放射性物質が漏れただけじゃなくて、そこに働くたくさんの作業員に対しても深刻な事態をもたらします。

 次に、作業現場の問題を取り上げたいと思います。

 皆様のお手元に、この東電福一の事故の後、果たしてどのくらいの作業員がこの収束に必要か。きのうの雨の後、きょうも働いておられる人、毎日七千人、八千人というたくさんの人々が命を削りながら働いている中であります。その作業員の問題についてお尋ねをいたします。

 廣瀬社長にも、東電の廣瀬さんにもお手元の私のつくりました資料を見ていただきたいですが、東電の当初の予想では、青のラインで、だんだん年月がたつとともに作業者の数は少なくなっていくだろうと思いきや、赤のライン、これは二〇一三年六月ですが、いや、いろいろなところでトラブルが起きて、作業員はふえてしまっているぞというのが赤の、二〇一三年の六月の見直しです。

 でも、実際に、放射性の、その濃度の測定をつけた人の数を私の方でデータを集積して計算してみますと、さらに上乗せして、白、すなわち、二〇一三年度では一万四千七百四十一人、当初のというか、二番目の赤の線よりも四千人上乗せ。さらに二〇一四年度では、もうこの九カ月で七千人以上、すなわち、一万八千百八十七人。当初の予測は一万そこそこ、現在、一月末で一万八千八百何十人。とにかく、漏れた汚染水の処理も含めて、膨大な数の作業員が必要となっております。

 この実態についてと、あわせて、これは東電からいただきました二枚目の資料ですが、作業員の数がふえていっていることは東電の社長もお気づきであるようであります。と同時に、労働災害が多発しております。二枚目の資料を見ていただきますと、例えば、平成二十五年度と二十六年度では倍増であります。

 人はたくさん来てもらわなくちゃいけない、事故は多発する。果たして、今、東電はどのくらいの人を必要とみなし、また、こういう労災に対してどう向き合っていこうとしているのか、この点をお願いいたします。

廣瀬参考人 御指摘のとおり、作業の方、一日、今、六千人、七千人の方が入ってやっていただいております。これは、中期ロードマップ、前回のロードマップを作成したときとの比較において、今先生の御指摘のように、数が相当ふえております。

 これは、御承知のとおり、汚染水対策としてタンクをたくさんつくらなきゃいけないであるとか、さらに、労働環境の改善をとにかくしなきゃいけないということで、なるべく被曝を少なくしていただくために、フェーシングといいまして、全面を覆うであるとか、あるいは休憩所をつくるであるとか、給食センターをつくるであるとか、そうしたようなこともかなり今やっておりまして、そうしたことから、土木工事がすごく多くなっております。

 したがいまして、御指摘のように、当初の予定よりも大分人数を割いてやっておりますけれども、毎月、今、元請さんとヒアリングをして、どのぐらいの作業の方々が確保されているのかということは当然定期的に把握しておりまして、現在のところ、たくさん数はふえておりますけれども、作業者数としてはしっかり確保ができていると思っております。

 ただ、御指摘のように、では工事がふえたら事故もふえるのかということでは決して、これではもうあり得ないことですので、当然、工事がふえますとたくさん新しい方も入ってまいりますので、初めて発電所に入ってこられる方には初任者の研修ということなどをやらせておりますし、安全講習会であるとか、そうしたことはとにかく徹底をして、こうした事故、続いておりますけれども、ないように万全を期してやってまいりたいというふうに思っております。

阿部委員 確かにお答えとしては万全を期すということしかないと思いますが、現実はふえて、そして二十六年の三月、死亡事故まで起きて、その死亡事故たるや、積んであった土砂が崩れて生き埋めになりました。

 先ほど廣瀬社長がおっしゃったように、この事故の前、東京電力福島第一では、いわゆる土木建築系はわずか全体の作業者の中の二%でありましたが、今や土木建築系が四一%、労働現場、労働実態が明らかにもう建設業と等しく、そして実は、その中で、お手元の三枚目の資料、廣瀬さんにも見ていただきたいですが、これは去年の事案、深刻な事案四件です、平成二十六年。ちなみに、死亡事故はことしに入って二件立て続け、福一と福二ですが、これは去年であります。

 二十六年三月のが、これは生き埋めで亡くなりました。二十六年の九月二十日は、上から鉄パイプが落ちてきました。この方は、そのとき頸椎というか背骨を損傷した。ただ、もう復帰をしたと言っておられます。二十六年九月の三十日は感電事故。二十六年十一月七日は、これもレールが落下して、この方は意識不明であります。

 一番目の二十六年の三月については、この生き埋めになった人に対して、そばで作業の安全管理をする人がいなかった、専任者がいなかった。だから、崩れるまま埋められていって死んでしまった。ほかの三件について、果たして安全管理、安全点検はいかがであったでしょう。専任の安全のための担当者はいたんでしょうか。廣瀬さん、お願いします。

廣瀬参考人 御指摘のように、死亡事故を含む大変な重篤な事故が昨年来多発しております。

 御指摘のありました三件につきましては、もちろんその安全管理者というのが決まっておりましたが、その事故当時は、まさに事故が起こったときには不在であったと聞いております。

 いずれにしましても、管理者の役割等々も含めて、とにかくもうしっかりやっていくしかございませんので、とにかくこれは、二度とこうしたことを起こさないように、元請さん、協力会社さんたちと一緒に協力しながらやらないといけませんので、その辺を一緒になって、きょうもこの後、会社に帰って安全大会みたいなものを開いて、協力会社の方々にもたくさん参加していただいてやらせていただこうと思っておりますが、とにかく、一つ一つしっかりやっていくということに尽きると思っております。

阿部委員 選任したけれども不在だったら、それは安全管理にならないんです。その人を選任したら、そこにいて安全管理してもらわないと、死亡事故が立て続くわけです。

 きょうは私の質問時間はこれまでということで、実は東電の社長には数々、本当に作業員のためにきちんとやっていただかないと私はこれだけの負荷をかけた作業員に申しわけないと思っておりますので、また機会を改めて質問をさせていただきたいし、申しわけありません、厚生労働大臣と経産大臣にはまた午後も聞かせていただくので、恐縮ですが、よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

大島委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

大島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。阿部知子君。

阿部委員 では、午前中に引き続いて、東電福一並びに東京電力全般もそうなのですが、非常に労働災害が多いので、その件について引き続き質疑をさせていただきます。

 午前中ずっと待っていただいている宮沢経産大臣にも御質問できるよう頑張ります。

 先ほどまでの質問では、平成二十六年度までの労働災害について御紹介いたしましたが、実は二十七年度に深刻な死亡事故が二件、そして柏崎でも転落事故、これは東電ですけれども、相次いで三件、重篤な事故が一月の十九、二十日前後で起きてございます。

 少しこの事故を、手元に資料がございませんので、詳細を御説明いたしますと、汚染水をためているタンクの天板、天井を、明かり取りのために動かそうと思った作業の方が、安全帯をつけていなくて、お一人で作業されたために転落して死亡をされたのが東電の福一の一月の十九だと思います。

 一月の二十日は、これは福一ではございませんが、福一の関連処理とも関係いたします、放射性廃液を濃縮減容する設備を扱っておりまして、これが大きなタンクのようなものですが、これのボルトを外して頭を挟まれて亡くなっていった事案でございます。

 これはともに、実は亡くなったのはベテランの作業員で、これまでも作業現場で働いておられたのですが、なぜか、例えば天板を動かすなどはお一人ではやってはいけない、転落が非常に多いですから。でも、一人でやられて、安全ベルトも締めておらなかった。もうお一方も、大きなねじを取ると動きますので、頭など挟まれますので、これもお一人ではやらず、誰かの監視のもとにやらなければいけなかった。

 なぜ、ともにベテランなのにこうした事故に遭ったんだろうかということが、極めてこれが問題だと思います。

 先ほど東電の社長は、これからも作業員については見直しはするけれども、現状足りておるやにおっしゃいましたが、こうやって人が次々と亡くなり、また、恐らく、私が思いますに、過密ダイヤになっているんだと思います。

 一人の作業は、天板を動かす作業はお昼どきでありました。相方がいないところでお一人でやり、東電の監督者も、そばにはいたそうですが、ひとり作業をとめなかった。結局、そうすれば、起こるべくして起こる労災だと私は思います。

 宮沢経産大臣にお伺いいたしますが、先ほどの汚染水問題、処理にかかわる人手のたくさん要る状態、そして相次ぐ労災、当然、工程を急がせれば急がせるほど、不測の事態が発生することが重なって、結局、私は、逆に言うと長引いてしまうというか、最適な環境にならないと思います。

 全体のロードマップの見直しですね。今、いろいろな、四号炉は使用済み燃料を取り出しましたけれども、その後の処理工程があって、最終的には廃炉まで行きますが、この工程をもう一度経産省としてもきちんと見直されて、急いでいないのか、急ごうと、できないことはできない、逆に、安全ときちんとした管理を旨として行うべきで、作業工程の見直しをお願いしたいが、いかがでしょうか。

宮沢国務大臣 現在、二十五年六月に決めましたいわゆるロードマップに沿って作業をしております。

 ロードマップの基本原則といたしまして、四つほどありますけれども、第一に、地域の皆様と作業員の安全確保を大前提にとさせていただいております。また、第二は、透明性を確保する等々が書いてありますし、また、第三の原則で、今後の現場状況や研究開発成果等を踏まえ、本ロードマップは継続的に見直していくというふうに原則が決まっております。

 そして、このロードマップが決まってから、いろいろなトラブルが発生したわけであります。また、多核種除去設備の増設とか陸側遮水壁の設置、タンクの増設、リプレース等、新しい仕事が出てきておりまして、やはり安全確保が原則でございますので、ことしの春をめどにロードマップの改定作業をさせていただこうと思っております。

阿部委員 きょう、私がるる、これだけの労災事故あるいは汚染水との格闘をお伝えしましたのは、作業員の安全が第一で、実際に可能な現実的なロードマップを描いていただきたいということですので、今、見直しをされるということですので、よろしくお願いしたいと思います。

 引き続いて、塩崎厚生労働担当大臣にお伺いいたしますが、きょうは、去年の労災、ことしの労災、次々起こる労災について御紹介をしましたが、大臣は、東電の福一は御視察になったことがあるでしょうか、お伺いします。

塩崎国務大臣 たしか三回ぐらいお邪魔をいたしました。

阿部委員 労働安全行政に大変に関心が高い大臣ですから、もう視察していただいて、そして、逆に率先してこの労働現場を私は改善していただきたいと思いますので、次の御紹介をしたいと思います。

 皆さんのお手元、数えて四ページ目にございますのは、これは、東電がこれまで五回行いましたアンケート調査の五回目のアンケートでございます、二十六年の十一月。

 ここにアンケート項目で、あなたの労働環境や労働条件についてお尋ねしますと作業員にお尋ねした中で、作業員の中から、作業内容や休憩時間を指示する職長や上長の会社と賃金を払っているところが違うという事案が約二八・三%あるという集計でございます。

 これは、実は四回目の集計よりふえておりまして、これのみでは簡単には言えませんが、いわゆる偽装請負や、さまざまな入り組んだ労働の指揮命令系統というものが発生していると見るべきかと思います。

 この労働現場における錯綜した働き方ということについて、大臣はどのような御認識をお持ちなのかが一点。

 そして、ちょうど今私がお示しした、ページでいうと四ページ目の下の方に、これは、東電が相次ぐ事故で何を改正するか、改革するかという点で述べているところから引っ張ってまいりましたが、元請がいて、下請がいて、労働者がいて、その横に星印で、安全確認をする人のところに星がついています。しかし、この安全確認がいないというのが先ほど来の東電の答弁でありました。一応決まっているけれども、現場ではいないんだよと。

 錯綜した元請があり、下請があり、一次、二次、三次となっていけば、当然、誰が労働安全衛生、特に労災等の発生に責任を持つかが見えなくなってしまっているのではないか、この点を大変懸念いたしますが、これは東電側のデータでありますから、この二つをごらんになって、塩崎大臣の感じられることをまずお伺いいたします。

塩崎国務大臣 まず、先ほどアンケートで、偽装請負のようなことがあるのではないかというお話でありますが、これは、仮にあるとすれば、それはきちっと我々としては指導しなければいけないということでございます。

 今の、現場での安全確認のお話がございましたが、労働者の労働災害防止というのは、一義的には事業者が責任を負っているということが基本でありますけれども、東京電力のこの第一原発では、原発事故に伴う高い放射線環境下において、多数の作業が行われているというのが現状でありまして、現場巡視の強化とか、被曝管理を徹底するよう、我々としては、東電に対して、今のような点については指導しているわけであります。

 今、現場にチェックする人がということでございますけれども、今申し上げたように、一義的には事業者でありますから、どこが請け負っていて、どこが作業に当たっている事業者なのかということが大事で、それに従ってその事業者がやはり安全管理をきちっとやるということが大事であろうかと思います。

 ただ、今回、先生も御案内のように、法律で示している以上のことについて配慮をするように東電には言っているわけでありますけれども、基本的には今申し上げたような法律関係になっているということだというふうに理解しております。

阿部委員 法律関係の中で事がおさまっている、あるいは犠牲が出ないのであればいいのですけれども、先ほど申しましたように、各事業者、元請、下請に安全配慮を求め、また、これは作業現場の特定元方でしょうね、一番上に立つ元方に言ってもなおそれが担保されていないというのが現状であると私は思います。

 次のページをお開きいただきたいと思いますが、これは私が疑似的につくった現状であります。

 幾つかの事業者がここには配置されておりまして、それが元請であったり下請であったりいたしますが、そこに実は安全管理の責任所在が本当にどこにもなく、さらに、そのことを厚生労働省は、特定元方事業者という、東電が発注者として仕事を投げた元方の親玉にやりなさいと言っているという形なんですね。二階から目薬と申しますか、あんまりあちこちで労災が起こるから、では、元方に仕事を発注して、東電は発注者、それで元方の人たちにもっと頑張りなさいというのが今の法令の要請であります。

 私は、ここは厚生労働省に本当に英断をもってお願いがありますが、今、東電の福一は、先ほど申しました、四割が建設関係の仕事であります。ただ、建設業に課せられる安全管理義務と、東電のように、発注者、注文さえ出していればいいという方の抱える義務は違います。そこで、大臣の方で労基発でいろいろな指令を出しますが、一貫して事故は減らないし、死亡は起こるし、ここは東電を、この際、事故処理に当たる四十年、五十年あると思います。労働災害が本当になくなる、そうした観点から、むしろ安全管理の責任者として労働安全衛生法の改正を考えていただきたい。

 普通、建設現場とか造船しか、直に特定元方責任といって安全配慮義務はかかってまいりません。だから、東電にはかかっていません。そこを厚労省から、いや、そうはいってもやりなさいと言っているのが今の現状であります。しかし、毎日七千人、八千人が働いて、そのほとんどが作業現場のような実態で、死亡事故が相次いでいる。やはりきちんとした管理責任と意識を持っていただかないと、先ほど申しましたように、タンクの上をあける事故でも東電の社員はいらした、だけれども、ひとり作業を許した。自分たちの直の責任じゃないものねと思ってしまうんだと思います。

 大臣にあっては、よくこの間の事態を一つ一つ丁寧に、何が原因であったのか、今申し上げたのは、私がそう思い、やはり東電には、この際、他の建設業並びの、特定元方並びの責任を法的にもとってもらうべきだと思います。検討していただけませんか、大臣。

塩崎国務大臣 確かに、先ほどお話がありましたように、死亡事故がことしになって二件出てまいりました。それも、私どもの方から一月十六日に福島労働局長から東電に対して労働災害防止対策の徹底を要請した、その直後の十九日と二十日、ここで死亡事故が起きたものですから、私の方から、私自身の名前で、東電の社長宛てに、当事者意識を持った労働災害防止対策に万全を期すようにという書面を出し、そしてこの間、山本副大臣に現地に行ってもらって、東電がやると言ったことを本当にやっているのかということをチェックしてもらいました。

 それで、今のお話でありますけれども、先ほど申し上げたように、労働安全衛生上の義務、指導というのはどうなっているかということでございますけれども、さっき申し上げたように、一義的には、まず、その実際に当たっている労働者を雇っている事業者に義務を課している。そして、今の元請でありますが、これに関しては、元請、下請の混在作業でありますので、労働災害防止のための協議組織の設置とか運営等の措置義務を課しているわけであります。

 それから、東電は発注者になるわけですけれども、安全衛生上の適切な発注条件とするように配慮するような義務を課しているわけでありますけれども、今お話がありましたが、法律でもって元方に義務を課すべきじゃないかということであります。先生の御趣旨は今御説明いただいたとおりでありますけれども、我々としては、法定事項以上のことを今行政指導でお願いをしているわけであります。

 それを法律でということについて、我々としては、今のような御提案に対して考えるべきことは、まず一義的には、さっき申し上げたとおり、この事業者に責任がある。これに加えて、元方事業者に対しても下請事業者間の連絡調整等の義務を今申し上げたようにかけているわけでありますけれども、同様の義務を発注者にかけた場合にどういうことが起きるのかということもやはり同時に考えていくべきであって、そこでいろいろあり得ることは、責任関係が、一義的なこの事業者の責任について曖昧にならないかという懸念もあって、モラルハザードを起こさないかというところも同時にやはり検討しなければいけないことではないかというふうに思いますが、先生の問題意識はよくわかるところでございます。

阿部委員 今、残念ながらモラルハザードを起こしているのは東電じゃないかなと思います。本当に大変な作業をやっておられることはわかります。だけれども、これだけ相次いでしまっているということから、私は、この福一について東電を特別な管理者と指定しなさいという提案ですから、大臣もおわかりいただけると思いますし、ぜひ検討をしていただきたい。

 そして、もう一つございます。実は、資料の次のページをごらんいただきますと、ここに働く労働者の被曝問題でございます。

 従来言われておりますように、東電の社員とそこに入る下請の皆さんの被曝の総量を比較いたしますと、このような、東電の方が当然少なく、下請等々の作業者の方が多い、これはずっと続く傾向であります。

 と同時に、実は我が国の場合何が一番問題かというと、個人の生涯の被曝線量について名寄せがされておらず、一元管理、個人は長い人生を勤労者としてもまたその後リタイアした後も生きるわけですが、その一元管理というものがなされておりません。働いているとき、その作業所からあるいは事業者から登録センターに放射線量は行っても、五十年、その方の一生を見るような仕組みはない。年金でも名寄せが重要でした。手帳も重要でした。それは、その方の生涯にかかわることであるからです。

 次の最後の資料を見ていただきたいですが、これは、先ほど例を引きましたアメリカのNRCの被曝管理でございます。NRCでは、個人の健康を守るという意味においても、名寄せして、きちんとソーシャル・セキュリティー・ナンバーにまでこの放射線のデータを載せるくらいのことをして、管理をしてございます。

 ここで、規制委員会の田中委員長と塩崎さんに最後に、済みません、時間がない中で。これを検討してみてくださらないかどうか、お願いをいたします。

田中政府特別補佐人 放射線被曝量の一元管理についての御質問だと理解しますが、これについては、学術会議を中心にして、いろいろな学協会が中心になって、以前からそういう御指摘がございます。

 それで、原子力事業者については、放射線影響協会が中央管理センターとして登録されて、これは電力の資金によって登録とかデータの整理をして、いわゆる名寄せをやっているわけですけれども、我が国においては、医療とか研究とか、非常に幅広い放射線従事者があります。これについては、実質的にほとんどそういうことが行われておりません。それから、今回の福島の事故のように、一般国民も一定程度被曝する状況もあります。それから、医療被曝は世界でも最も多いというのは、もう先生御存じのとおりです。

 ですから、そういったことを含めまして、ある程度こういったことは前向きに考えていってもいいのではないかというのはそう思いますが、今は各行政ごとにいろいろな管理をされておりますので、それはそれとして、今後の課題ではないかというふうに思っております。

阿部委員 済みません、大臣の時間、終わってしまって。申しわけないので、また大臣にはしっかり考えていただいて、御答弁をいただくようにしたいと思います。

 次の方に食い込みます。申しわけありません。ありがとうございます。

大島委員長 これにて阿部君の質疑は終了いたしました。

 次に、金子恵美君。

金子(恵)委員 民主党の金子恵美でございます。よろしくお願いいたします。

 冒頭、私のふるさとの福島第一原発の汚染水問題につきましては、漁業者の方々のみならず、多くの福島県民が本当に心から憤りを感じているということを申し述べさせていただきたいと思います。

 そして、ここで、やはり国の監視機能というものが本当に十分なのかということが問題視されているのではないかというふうに思っております。改善すべきものは改善していくということをしっかりと強く求めていきたいと思います。

 そこで、きょうは、この福島原発再生総括担当でもいらっしゃいます復興大臣に質問させていただきたいと思います。

 被災地三県について、全般としてまずはおただししたいと思いますけれども、被災地の皆様方の心のケアというものが、本当に今、喫緊の課題となっております。

 阪神・淡路大震災におきましても、震災後三年から四年あるいは五年に、心のケアを必要とする人たちがピークに達しているという状況でありまして、この三月十一日には東日本大震災から丸四年となります。今こそ本当に、仮設住宅でお暮らしの皆様も大変多くいらっしゃるわけでございますし、また、これから復興公営住宅に移り住む皆様の中でも、やはり新しいコミュニティーになじむのかどうかということで大変不安感を持っていらっしゃる方もいるということでありますので、心のケアをしっかりと進めていかなくてはいけないと思っております。

 二十七年度の心のケアの予算はどのようになっているでしょうか。そしてまた、考え方をお伺いしたいと思います。

竹下国務大臣 お話しいただきましたように、復興のステージがいろいろ地域によっても違っておりますけれども、特に福島におきましては、仮設で避難されている方が多い、長引いておりますので、心のケア、健康のケア、あるいはコミュニティーの形成というソフトの場面が今一番重要なステージになってきている、こう認識をいたしております。

 そういう中で、まず予算のことでございますが、二十七年度、被災者の心のケア支援事業は十六億円、それから、緊急スクールカウンセラー等派遣事業は、二十七年度の予算、二十七億円を計上いたしております。

 これは一見しますと、例えば心のケア、二十六年度から、このとき十八億円だったので一億円減っているように見えますが、金子先生おわかりのように、二十五兆円突っ込んでやっております。ここで一億円削ることに意味があるかという、そうではなくて、前年度、前々年度の予算額に対して決算額が八〇%ぐらいであるという、つまり、予算の執行の現状に合わせてしておるということで、一億円を切ったというものではないということをまず御理解いただきたい、このように思うわけでございます。

 その中で、先日、各府省の局長級を集めて、五十の対策から成る被災者支援総合対策、これは健康あるいは生活支援を狙ったものでございますが、策定をいたしまして、対応いたしておるところでございます。

 具体的には、見守りを行う相談員や復興支援員を確保していく、これは大事なことであります。それから、心のケアセンターによる相談支援、これも非常に大事であります。さらには、スクールカウンセラーを派遣することによる支援というのも行っておりますし、加えまして、新たに、生きがいづくりを支援する心の復興事業の実施などにも取り組んでいるところでございます。

 これからも、被災者の心に寄り添う、健康に寄り添う形で復興を加速化していくと同時に、心のケア、十分に気を配っていきたいと思っております。

金子(恵)委員 今の御答弁の中で、例えば今年度より来年度の予算は削減されているということで、つまりは執行率が余りよくなかったからというような御説明ではなかったかというふうに思うんですけれども、ただし、重要なところは、専門職の方々の人手不足というのが言えるというふうに思っています。

 この十四日に開かれます国連防災世界会議においても、復興庁も関係しているんですけれども、「大規模災害被災地への長期メンタルヘルス支援」と題されましたパブリックフォーラムが開催されることになっているんですが、この募集案内を見ますと、明確にこの問題点が指摘されていまして、「東日本大震災からまもなく四年。被災地では住民へのメンタルヘルスケアがますます大きな課題となっています。しかし、震災以前から地域が抱えてきた支援専門家の不足は今も解消されていません。」となっています。

 もちろん、十分な予算をしっかりととる、そして、その予算を活用しながら、本当に現地、現場で働く人たちの確保も必要になってくる。本当にそれぞれが課題になっているというふうに思いますが、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

竹下国務大臣 お話しいただきましたように、心のケアの問題、健康のケアの問題、さらには、将来に向けて心の活性化、生きがいを求めていただくというさまざまな形でのケアというのは、これからまさに必要である、特に、長い間仮設で避難されている皆さん方にとっては本当に大変必要な事業である、このように思っております。

 今、予算をしっかり確保しろ、そして、人をしっかり確保して配置をしろということでございますが、いろいろな問題が実はありまして、では復興庁の職員でできるか、町の職員でできるか。できません。保健師の資格がある人がいたり、あるいは、スクールカウンセラーになるからにはそれなりのノウハウを持った人、あるいは、見回りといいましても、NPOの皆さん方に実はほとんどお願いをするというレベルの話でございまして、役場の職員が直接というのはなかなか、マンパワーの面からも非常に難しいという問題がありまして、その辺が隘路になっていると言われれば、むげに否定はできないなと。

 だけれども、懸命にやってくれている、被災地の市町村も、それからケアしていただいておる皆さん方も、保健師の皆さん方も、全国から来ていただいてお手伝いをいただいておるところでありまして、私は、彼らは懸命にやっていると評価をいたしておるところでございます。

金子(恵)委員 先ほどの御答弁の中で、今年度の予算、生きがいづくりというところで触れていただいたと思うんですが、この生きがいづくりは、実施主体が県、市町村、NPO等、今大臣も触れられておりました。

 中身を見ますと、地域活性化の取り組みということで、農業、水産業、伝統文化の継承活動、物づくり、世代間交流等の実施を支援しながら被災地の皆さんの生きがいづくりをするということだと理解をしています。

 ただ、これは心のケアとしては予防という形になっていくとは思うんですけれども、しかし、今までもこのような取り組みはもう既になされていたということでありまして、実際にこのような事業を実施するときに、それに本当に参加してくださる、そういう方々ばかりではないということをしっかりと認識していただきたいと思うんです。やはり、引きこもりがちになっていらっしゃる方々にどのようにこのような活動に参加していただけるかということで、こちらからよほど信頼関係を持ちながらアウトリーチしていかなくてはいけないということもあると思いますけれども、十分な対応が必要になってくると思います。

 もう一度、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

竹下国務大臣 お話しになりましたように、生きがいづくりというのは、実は非常に重要だと思っております。

 現実にいろいろなことを行っておりますが、先ほどお話しになりました中でちょっと気にかかりましたのは、例えば、女性たちが、手づくりのグッズ、ニットで編んだりいろいろなものをしたり、これは復興庁が始めたことじゃないんです。被災者の皆さん方が集まって、いろいろなところから、コミュニティーが壊れて集まっていらっしゃいますから、その中で自然発生的に起きてきた事業というのは結構あるんです。それにちょっと先生の手配を支援してあげると、その会が非常に盛り上がって、多くの方に参加していただく。

 それから、中高年の男性の皆さん方に料理教室というのも、これも割と人気があるんです。私は全くできませんが、割と人気がある教室でございまして、そういった点で生きがいを感じていただく。

 もちろん、外へ出て農作業をしていただいたり、あるいは、その地域の掃除でも何でもいいんですが、そういう地域活動をしていただくといったような、人間というのはふとしたことに生きがいを感じることがありますし、私は、田舎のよさというのは、ある意味そこにあると。

 例えば、東京で公園を掃除する、どぶを掃除するのを地域の町内会がやったらニュースになりますが、私どもの田舎、東北の被災地では、それは当たり前なんです。当たり前に地域の皆さん方が奉仕活動でやっていらっしゃる。私は、それが田舎の強みであり、今度の被災地のコミュニティーづくりの中には、その田舎の強みというものを獲得していただきたい。それは、ある種生きがいにつながる、ともに生きているんだという生きがいにつながるというふうに私は思っております。

金子(恵)委員 復興庁が予算を出す、出さないということではなく、地方あるいは地元の皆さんの力をいかに引き出すかということが、予防的な心のケアを進める上でとても重要であるというお話ではあったんですが、本当にそれだけで十分なのか。繰り返しになりますけれども、やはり専門的な知識を持った人たちの配置というのは本当に重要だというふうに思っております。

 先ほど大臣が触れていただきましたが、被災地ではさまざまな職種を持った方々が働いているわけですが、みずからが被災者でありますけれども、避難をされている方々などへの行政サービスを滞りなく提供するために、厳しい労働環境の中で働いている自治体職員の皆さんがいます。

 全日本自治団体労働組合、自治労は、被災三県の自治体職員の心と体の健康調査をいたしました。その結果を、ことし一月に出されました冊子、第二回「こころとからだの健康調査」の中で報告しています。

 重症精神障害に相当する重篤な精神的不健康群、ハイリスク群の割合は、震災直後は三〇・一%ありました。一年後には一四・三%、現在は一二・七%と改善はされているものの、このハイリスク群に対しては、しっかりとしたメンタルサポートが必要になってきています。特に福島県のハイリスク群は全体の一五%と、高い割合を示しています。

 復興に尽力している被災自治体職員の皆さんに対する心のケアもしっかり進めるべきだと思いますが、お考えをお伺いいたします。

竹下国務大臣 被災地の市町村の職員の皆さん方、私、毎週のように被災地に行っておりますが、懸命にやっていただいている、本当によくやってくれていると評価をいたします。

 その上で、簡単に数字を申し上げますと、全国の地方自治体から、今、二千二百五十五人、それから、被災自治体が期限つき職員を採用しているのが千二百三十一人、国による職員の派遣百九十九人、あるいは、URによる支援体制四百十二人、復興支援員の委嘱を受けている方が百八十一人等々、三千人、四千人という方が、もともとの市町村職員と一緒に、力を合わせて復興に努力をしていらっしゃるわけでございます。大変な負荷がかかっておると思います。

 被災直後は気が張っておりますので、まだ乗り切れるんですが、一定の時間がたちますと、ぽっと心にすき間ができる、あるいはいろいろな、体もきついということももちろんありまして、途中で、市町村職員で退職なさる方もいないわけではありませんでした。

 しかし、今我々必死に、自治体の職員にもメンタルヘルスケア対策、あるいは、被災自治体の業務負担を減らすかマンパワーをふやす。今の局面は、当初のようなストレスではなくて、むしろ、業務の負担を減らすか、あるいはマンパワーをふやすかという対応に移ってきているのではないかな、こう思っておりますが、被災自治体における職員の健康管理ですとか安全衛生対策にも十分配慮しつつ、今後の復旧復興に当たっていただくことが重要であります。

 政府としては、そうした市町村の職員の皆さん方の力がなければ、政府はほとんど現場のことはわかりませんので、現場とどれだけ結びついてやるかは、まさに市町村の職員の皆さん方の肩にかかっている。これからも、力を合わせて復旧の加速化をやっていきたい、復興の加速化をやらせていただきたいと思っております。

金子(恵)委員 総務省にお伺いしたいんですが、地方公務員災害補償基金というものがあって、それを活用しながら、メンタルヘルス総合対策事業がありまして、今申し上げました自治体職員の皆様への支援というのもできる仕組みはあります。

 ただ、それがまだまだ不十分であるのではないかということで、そもそも、この事業自体が今後継続されるかというような課題もありますが、どのように生かされているのか、お伺いしたいと思います。

丸山政府参考人 お答えいたします。

 東日本大震災の被災自治体の職員の皆様は、みずから被災された方も多い中で、長期にわたって困難な業務を担当され、心身の大きな負担が懸念されているところでございます。このため、職員の健康管理や安全衛生対策にも十分配慮しながら復興業務に当たっていただくことが重要であると考えております。

 総務省におきましては、被災自治体におけるメンタルヘルス対策として、地方公務員災害補償基金とともに、全国から派遣されております派遣職員も含めた被災自治体の地方公務員に対しまして、ストレスチェックや臨床心理士によるカウンセリング、専門家によるセミナーなど、総合的なメンタルヘルス対策事業を行っているところでございます。平成二十六年度におきましては、百三十七団体、延べで十一万人を超える参加者を予定しているところでございます。

 引き続き、被災自治体の要望も伺いながら、このメンタルヘルス対策の的確な実施に努めてまいる考えでございますし、今後につきましても、御要望等地元の事情をよくお伺いして、検討してまいります。

金子(恵)委員 この事業なんですけれども、セミナーを行う、ストレスチェックを行うという内容も含まれているわけなんですけれども、実際に訪問カウンセリングを受けている人たちというのは、そんなに多くはいらっしゃらないようです。それはやはり、実際には、実態に合っていない形で専門職の方々が派遣されるということであるということで、一言で言えば、重篤な状態にある方々もカウンセリングを受けることができない、そういう実態があるということであります。

 いかがでしょうか、その辺の改善策はありますか。

丸山政府参考人 お答えいたします。

 私どもが実施しております総合的なメンタルヘルス総合対策事業でございますけれども、メニューはさまざまなものがございまして、ストレスチェックでありますとか訪問のカウンセリング、あるいはメンタルヘルスセミナー等々でございます。このメニューの中から、個々の自治体が、職員の事情も勘案しながら、ピックアップして選んでいただく。また、複数にわたって実施いただくことも可能でございます。

 私ども、事業を行うに当たりましては、各自治体の声を十分に聞くつもりでございますし、また、参加いただいた方からは、個別にいろいろなアンケート調査等も御協力いただきまして、御要望等もいただいているところでございます。

 総じては大変好評であるというふうには理解しておりますけれども、まだまだ課題があるということでございます。これにつきましても、これからさらに、さまざまな御意見をお伺いしながら、よりニーズに応えた対策となりますよう、検討を進めてまいります。

金子(恵)委員 これは評価されている仕組みであればいいんですが、そうではなく、二月四日には、自治労から地方公務員災害補償基金、田村理事長宛てに要請書も出ています。そもそもが、このメンタルヘルス総合対策事業については二〇一五年度までとなっている、ですから、二〇一六年度以降も継続することというところからスタートして、五項目の要請の内容となっています。

 ですので、十分でない部分があるというのは間違いのないところでありますが、今後ますます、本当に厳しい状態の中で働いている方々のメンタルヘルス、そして心のケアというのをしっかりと進めていかなくてはいけませんので、ぜひこれも重視していただきたいというふうに思っています。

 次の質問に移らせていただきますが、復興大臣に対する最後の質問といたしまして、母子避難をされている人たち、あるいはそういう方々も含めての自主避難をされている方々に対する今後の取り組みを含めまして、お考えを伺いたいと思います。

竹下国務大臣 子ども・被災者支援法に基づく基本方針におきましては、母子避難者を初めとする自主避難者に対するさまざまな支援施策を盛り込んでおりまして、各施策を担当省庁において実施中でございます。

 特に、母子避難者等につきましては、御承知のとおり、高速道路の無料化、これを延長いたしました。あるいは、家族が別れて避難していらっしゃる場合には、公営住宅への入居に当たる収入要件を二分の一ということにして実施をいたしております。あるいは、避難元や避難先での支援施策等に関する情報提供や困り事の相談対応などについても、支援を行っているところでございます。

 引き続き、母子避難者に対しまして、さらにきめ細かな対応をしていかなければならない、このように思っております。

金子(恵)委員 県外自主避難者等への情報支援事業というのがありまして、相談の窓口としてとても重要なんですが、実は八つの地域の皆さんに地域のNPO等の支援団体を通じて支援を行っているということで、北海道、山形県、東京都、新潟県、京都府、大阪府、岡山県、福岡県ということで大変限られた方々にしか支援が届かない可能性があるということです。ほかの地域に避難されている方々、全ての都道府県に今福島県民の皆さんがいらっしゃるという状況にありますので、ぜひそういう方々に対しての支援、そしてまた支援の中身ですね、情報提供をしっかりとしていただければというふうに思っています。これは答弁は結構です。よろしくお願いいたします。

 次に質問させていただきますのは、障害者政策でございます。安倍政権の障害者政策、どのような考えで進めていただいているのかということを、まず基本的な考えをお伺いしたいと思いますが、民主党はこれまで、障害のある方たちが当たり前に地域社会で暮らすことができるようにということで、障害者施策の充実に取り組んでまいりました。

 その中身といたしましては、政権交代を果たした平成二十一年には、障害者権利条約の締結に向けて、国内法の整備を初めとする障害者制度の集中的な改革を行うべく、内閣総理大臣を本部長、全閣僚をメンバーとする障がい者制度改革推進本部を設立し、そのもとには、障害者当事者を中心とした方々から構成される障がい者制度改革推進会議が設置されました。この中で議論が重ねられまして、その意見が反映された「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」が閣議決定されるなど、障害者制度改革の道筋がつけられました。

 そして、平成二十三年には障害者基本法の改正、二十四年には障害者自立支援法を廃止し障害者総合支援法の成立、平成二十五年には障害者差別解消法の成立など、さまざまな改革が行われ、昨年一月には我が国は障害者権利条約の批准をいたしました。

 今の政権では、どのような考えで障害者政策を進めているのでしょうか。お伺いします。

有村国務大臣 お答えいたします。

 まずもって、金子委員が、障害者施策に一貫して熱心に取り組まれ、また、政務官時代にも建設的な議論を重ねられて、その御貢献があったことに真摯に敬意を申し上げます。

 その上で、全ての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し支え合う共生社会の実現を引き続き目指していきます。その中で、障害者施策は幅広い国民の理解と協力のもとで推進していくことが重要であると認識をしています。

 ここ数年の進捗を具体的に申し上げれば、先ほど御言及いただきました障害者の権利に関する条約の締結をすべく、締結に向けた国内法の整備を進め、平成二十五年六月に障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律を制定し、また、二十六年一月にその条約を締結することができました。

 さらに先月、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針を策定し、閣議決定をいたしました。締結した障害者権利条約の趣旨を踏まえて、平成二十五年九月に第三次障害者基本計画を策定しており、今後とも、この計画に基づいて、障害者の自立と社会参画を促進するための施策を着実に推進したいと考えております。

金子(恵)委員 障害者政策委員会というものが基本法の改正の中で設置されたわけですけれども、この障害者政策委員会の位置づけが大変弱くなっているというような意見が障害者団体の方々から聞かれます。

 つまり、障害者政策委員会はさまざまな障害当事者の意見を聞く場でありますが、障害種別に関係なく、全ての障害のある人たちの代表者の意見を伺える場であると理解しています。残念ながら、精神障害当事者の方そして知的障害当事者の方はメンバーに入っておりません。

 我が政権のときにありました障がい者制度改革推進会議の中では、全ての当事者の方々がメンバーに存在していたと理解をしております。この障害者政策委員会、基本法のもとで設置されておりますこの委員会の位置づけと、そして、障害のある方々の意見がしっかりと反映されているという仕組みになっているのかということを、二点お伺いさせていただきたいと思います。

武川政府参考人 お答えいたします。

 障害者政策委員会の位置づけでございますが、同委員会は、障害者基本法第三十二条に基づき、内閣府に設置された審議会でございまして、基本計画の策定に関する調査審議、また、それに伴う意見具申、さらには、基本計画の実施状況の監視、勧告、それから、障害者差別解消法に基づく基本方針に関する意見具申がその任務とされております。

 また、先生からお話のございました、それの委員の構成でございますが、委員の構成につきましては、基本法第三十三条二項の規定に基づきまして、障害者、障害者の自立及び社会参加に関する事業に従事する者、学識経験者の方から任命されております。

 具体的には、現在、二十八名中十六名の方が身体、知的障害の御本人、または障害者団体の方でございます。また、委員長は、御自身も視覚障害のおありになる静岡県立大学の石川准教授が務めていただいております。

大島委員長 大臣からはいいですか。

金子(恵)委員 大臣にもお伺いしたいんですけれども、御存じの言葉です、スローガン。障害者権利条約の中で最も重要な言葉として、私たちのことを私たち抜きに決めないでという言葉があります。

 できるだけ、障害のある方たちの声をとにかく吸い上げる仕組みというのが必要であるということから、基本法の改正においてこの政策委員会が設置されたということでありますが、実際に障害当事者の方々、障害のあるメンバーは二十八人中十一名です。確認をさせていただいていました。先ほどの御説明は、家族も含めてということでの、家族や関係者を含めてということだったというふうに思います。

 ここで重要なのが、本当に障害のある方々の声が届いているのですかという私の問いにどなたが答えてくださるのかということであります。これは障害者団体の方々からの声です。政権がかわり、そしてスローダウンしてしまった障害者制度改革というものをまたさらに進めるためには、自分たちの声をとにかく吸い上げていただきたいという声があります。

 先ほどお話がありました障害者権利条約の話と、そしてまた、それを批准するために最も重要な要件でありました障害者差別解消法の件でありますけれども、基本方針がやっと閣議決定されたということでありました。二十四日のことでありましたが、しかし、当初、基本方針は昨年の二月、三月ごろに策定されることになっていたはずであります。おくれにおくれて、昨年十一月にやっとこの障害者政策委員会において基本方針案が大筋了承された。

 そして、その後、年末にかけてパブリックコメントがなされたということでありましたが、実際、パブリックコメントの後に、この政策委員会でしっかりとそのパブコメの後の修正された案を報告されるというような予定であったにもかかわらず、それがなされなかったという事実を確認させていただきました。

 そこで、やはりこの政策委員会、障害のある方々、当事者の方々の意見を吸い上げる場である政策委員会が軽視されているのではないか、そういうお声がありますが、有村大臣、いかがでしょうか。

有村国務大臣 お答えいたします。

 これは政権交代の有無にかかわらず、一貫して、引き続き当事者の方々の現場の御意見、また現状をお伺いして進めていかなければならないことだと私も思います。先生がおっしゃるように、当事者の方々のお声がしっかりと施策に反映されるように、その努力を引き続き指示していきたいと思います。

 また、先ほどから御指摘の障害者政策委員会においては、そのメンバーにも当事者また関係者、団体、家族の方が入っておられますけれども、それ以外にも、定期的に当事者の方々からヒアリングをさせていただいています。平成二十六年、二十五年、四回を私自身も確認しておりますけれども、引き続き、その趣旨をとうとび、私もいま一度、その趣旨をとうとぶような体制にしていくように指示をしてまいります。努めてまいります。

金子(恵)委員 障害者権利条約の批准というのは、また新しいスタートラインに立ったにすぎないことであります。ですから、今後、しっかりとモニタリング機能を持ったこの政策委員会を動かして、そしてまた、実は、批准後二年後となる平成二十八年一月までには、国連に対し包括的な最初の報告書というものを提出しなくてはいけないということでもありますので、しっかり、この報告書の準備も含め、つまりは、報告書を書くということは、批准をした中で、国内の障害者政策というものがどのように動いているかということをチェックしていくということでありますので、まず、しっかりと報告をするための準備をしていかなくてはいけないというふうに思っております。

 このことについて、二年以内に報告をすることになっていますが、工程表があるのかないのか、そしてまた、さらには、今申し上げた政策委員会がどのようにこの報告書作成に関与していくのか、お伺いしたいと思います。

山上政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、障害者権利条約のまず規定ぶりでございますが、この条約のもとでは、締約国に対しまして、条約に基づく義務を履行するためにとった措置などに関する報告を障害者権利委員会に提出するよう義務づけているところでございます。

 そして、初回、第一回目の報告につきましては、自国、自分の国について効力が発生した後二年以内にということでございますので、日本については、来年の二月十九日までに初回の報告を提出することが求められているところでございます。

 その上で、二番目に、我が国の対応でございますが、作業を政府としては既に開始しております。現在、調整を進めているところでございまして、関係省庁の取り組みや見解などを外務省にて取りまとめた上で、障害者権利委員会に提出する予定でございます。

 その過程で、政策委員会、どのように関与するかというお尋ねでございます。

 政策委員会は障害者基本計画の実施状況の監視を行っている機関でございますので、この条約の実施に関する意見を政策委員会から伺って政府の報告にも反映していくということを考えておりますし、また、パブリックコメントも実施する予定でございます。

金子(恵)委員 本当に進んでいるのか進んでいないのかというのを明確に示す報告書でありますので、ぜひしっかりと、当事者の方々の意見を聞きながら、つくり上げていただきたいと思います。

 最後の質問になりますが、障害福祉サービスの報酬改定について質問させていただきます。

 今回は、全体の改定率はプラマイ・ゼロということでありますが、その内訳は、一・二万円相当の処遇改善加算の拡充を行う一方、それ以外の報酬は一・七八%分減らすということでありました。

 実際に障害のある方々が地域で働き、活動し、生活することを応援する全国組織きょうされんが実施した調査が、今きょうされんのホームページにアップされていますが、調査の結果、五十九事業所のうち、収入全体が減る見込みとなっているのは四十三事業所です。七二・九%にも上ります。全体の予算規模もさまざまですけれども、減収の幅は、八百五十二万一千円という膨大な形での減収になるところもあるということでありまして、割合からすると一四・九%減収です。平均すると、百七十五万円も減るということであります。

 これでプラマイ・ゼロでいいんでしょうか。実際に障害のある方々に対するサービス提供ができない状況になるということがあるのではないかと思いますが、厚労大臣からの御答弁をお願いいたします。

塩崎国務大臣 障害者の施策につきましては、障害者自立支援法ができてまだ十年弱ということでもございまして、おまけに、小規模な事業所が多かったり、それから重度の利用者が多い事業所も多い。こういうこともあって、我々としては、配慮をきちっとした中で今回この障害福祉サービスの報酬改定を行ったところでございます。

 全体の改定率がプラマイ・ゼロであるということは今申し上げたとおりでありますが、やはりアクセントをつけていかなければいけないということで、まずは、介護でも同じでございましたけれども、障害者につきましても、福祉、介護職員の処遇改善を図るために、一人当たり月額一・二万円相当の加算の拡充。それから、重度の障害者であっても病院や施設ではなくて地域で暮らすことができるだけできるようにということで、入院、入所から、住居の確保その他の地域生活に必要な支援を行う地域移行支援について、サービス利用の初期段階の業務量を配慮した初回加算の創設とか、あるいはグループホームの重度の利用者に係る基本報酬を引き上げるとか、あるいはグループホーム等における強度行動障害支援者養成研修を修了した者が支援を行った場合には評価をする。

 要するに、重点的に、伸ばすべきところを伸ばすし、また、大事な、ニーズのあるところについてはちゃんとやるということでありますし、就労後の定着期間をより適切に評価できるような加算の見直しを行って、全体としては、充実を図りながら、適正化についても配慮をしていくということだと思います。

大島委員長 金子君、時間が来ています。

金子(恵)委員 報酬が下がるんです。収入が減収するんです。

 このように、障害のある人への支援とそして職員の労働条件が対立関係のような、そういう形になっているということは本当に残念でならない。これは本当に憤りを感じている方々もたくさんいると思います。働いている人たちとそしてまたサービスを受ける人たちが一体となって、そして地域社会で自立をしていくという、本当に心から懸命に頑張っている人たちを救うということこそが、障害者施策を進める上で最も重要なことだというふうに思います。

 お答えを受けることはできませんけれども、ぜひ調査を徹底してやっていただきたいと思います。間違いなく、プラマイ・ゼロではない、減収していく事業所がこれだけたくさんあるということを念頭に置きながら、しっかりと調査をした上で、そして、これからの障害のある方々に対する支援策を考えていただきたいと思います。

大島委員長 これにて金子君の質疑は終了いたしました。

 次に、重徳和彦君。

重徳委員 維新の党の重徳和彦でございます。

 きょう初めての男性の議員ということで少し緊張していますが、維新の党はちょっと女性が足りません。そういう意味で、女性議員をふやそうという議員連盟が先週立ち上がりましたが、民主党の中川正春会長、自民党の野田聖子幹事長のもとで、私も事務局次長を拝命いたしまして、女性の参画を政治の分野でもふやしていこう、こういう活動に取り組んでいるところでございますので、御容赦いただきたいと思います。

 さて、きょう午前中から、環境大臣に対します政治と金の問題でさまざまな議論が行われてまいりました。そういう中で、一企業との深い関係、それから与党自民党の港湾振興議連の会長を務められているという望月大臣のお立場というのが明らかになったわけなんですけれども、ある種、望月大臣が言われるように、港湾に関して言えば、全国視野で津々浦々まで面倒を見る、これが与党の港湾振興のトップとしての役目である、これはこれでわかるんですが、その一方で、でも地元のことは何もわからないということは、少し、一般国民の皆さんにも理解ができないところだと思います。

 そこで、これからも説明責任を果たしていただきたいと思うんですが、一点だけ私の方から確認をしたいのが、確かに、今の法律上、国から直接の補助金でなく、間に一般社団法人が入ればこれは法律違反ではないとか、それから、補助金をもらってから一年を超えていたら法律違反じゃないけれども、一年以内だとだめだとか、そういう法律上の要件というのはあるんですが、そうはいっても、どの時点かわからないけれども、あるいは国から直接じゃないかもしれないけれども、何か補助金は当該企業が受け取っていた、いるということぐらいは御存じじゃないんでしょうか。その点だけ、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。

望月国務大臣 直接とか間接とかいろいろありますけれども、我々、先ほど申しましたように、全国だと千カ所以上の大小の港湾、港がある、そういうことで、この日本は海洋国家でありますから港を大切にするということで、私はたまたま港湾議員連盟の会長というような形になりましたが、それぞれの皆さんが、やはり日本の国の港をこれからどういうふうにしていったらいいか、そういう政策的なものを勉強させていただく。

 そしてまた、それぞれの港、あるいはまた地域については、これはもう与野党問わずに、今回も地域創生というのがございますけれども、そういったことで発展させていこうという気持ちは一緒でございまして、細かい、千何カ所ある中で、我々がそういったことを一々、そのことについて知る由がなかなかない、そういうことでございます。

重徳委員 全くお答えになっていないと思います。

 私が言っているのは、当該特定、鈴与という企業が、時期を問わず、あるいは直接、間接を問わず、国からどこかのタイミングでお金を受け取っていた、あるいは受け取っているんだという状況を見聞きしたことがないのかどうかということでございます。

 もう一度お願いします。

望月国務大臣 それは、会社自体がそういったものは、経営方針とか、会社によってやっていることであって、私たちが、その会社の内容について一々そういったことで連絡をとってやるというようなことはございません。

重徳委員 ちょっと、きょうはほかにも重要なテーマだと考えている問いを私、用意しておりますので、これ以上この問題に費やしたくはないんですけれども、一言で言えば、それは知らなかった、全く知らないということなんでしょうか。それとも、見聞きしたことぐらいはある、時期を問わずですよ。それから、直接か間接かは別です。ないなら、ないというふうにお答えください。

望月国務大臣 はっきり言って、会社の経営とかそういったものに関して私は一切、口を出しておるとか、連絡をとっておりません。日本全体の港をこういうような形でよくしていきたいということで、さまざまな皆さんと協力をして海洋国家の日本を発展させていきたい、こういうことでございます。会社の経営の方針については、私たちは関与しておりません。

重徳委員 もうこれ以上は、恐らく平行線になると思います。今の問いは、恐らく、一般感覚、一般国民が聞いていて、いや、何にも知らないということはないだろうなというのが常識的な感覚だと思います。この点も含めて、さらに説明責任をしっかりと果たしていただきたいと思います。

 私、次の質問に入らせていただきます。次のというか、今のは質問というような質問じゃありませんけれども。

 まず第一に、総務大臣、高市大臣に御質問させていただきます。

 きょうお配りしている資料にありますように、今、投票率というものは、非常に若年層は低いんですね。ですが、そうはいっても、このままではいけないという問題意識はどなたもが持っていると思います。そういう中で、与野党各党が、選挙権の年齢を二十以上から十八歳以上に引き下げようということに合意をいたしまして、近く国会に公職選挙法等改正案を提出しまして、成立は確実だというふうに言われております。

 私、前回から主張しております、これから末広がりの日本をつくっていかないと、子供の数もふえていくような、増子化と名づけておりますけれども、そういう社会をつくっていこうとか、本日テーマとして取り上げてまいります年金の持続性、あるいは若者の自殺対策、こういったことにも責任を持って政治が取り組んでいかなきゃいけない。そういう中で、これまでの政治というのは、ともすると高齢者を重視してきた側面があります。

 今の政治家の姿勢にとりましては、今回の十八歳に年齢を引き下げるということは、そういう意味では今まで以上に若い世代に目を向ける、耳を傾ける、そういう機会になろうかと思いますが、今回のは一応議員立法ですので、総務大臣としては、十八歳で選挙権を得るということ、これは我々政治家にとってもいいことであるのかどうか、このあたりの御意見を聞かせていただきたいと思います。

高市国務大臣 議員立法ということでございますけれども、非常に多くの国で選挙権年齢十八歳以上、もしくは十六歳、十七歳というところもございます。これからの時代を切り開いていく、担っていく若い方々が選挙に参加できるということは、大変意義深いものだと思っております。

    〔委員長退席、平沢委員長代理着席〕

重徳委員 意義深いと、ちょっとさらっとした御答弁でございましたけれども、私は、やはりこれから次世代への責任、若年層への将来に向かっての責任というものが今まで以上に我々政治家にとっては大きくなるもの、このように解しております。その点を大臣が否定されているものではないというふうに私も受けとめます。

 そこで、本日、資料を二枚目におつけしておりますが、今後、将来に向かっての年金制度につきまして、ちょっと気になる議論がここのところ政府と与党自民党の間で行われたという記事がございますので、これについて質問をさせていただきたいと思います。

 ちょっと、またかという感じがいたしますけれども、次世代に対する、政府はもともと改革を実行しようという案を提出したようですが、自民党の方から異論が出て改革路線が断念というようなものでございます。マクロ経済スライドのデフレ時の適用というものを先送りする、こういうものでございます。

 ですが、今回のこの記事をぱっと見て意味のわかる方というのは意外と少ないんじゃないかなと思います。一般の年金受給者の中で、マクロ経済スライド云々と言われたときに、その言葉自体が難しくて。

 まず塩崎大臣に、マクロ経済スライドという言葉、これはどういうものなのかというのを、一般の年金受給者の方にもわかるように御説明いただきたいと思います。短くお願いします。

塩崎国務大臣 そもそもマクロ経済スライドという言葉そのものは、「年金改革の骨格に関する方向性と論点」という、二〇〇四年に議論をしていただいた中で出てきたものであります。

 なぜこの名前になったかといいますと、全ては少子高齢化、この進展に基づくもので、どうやってこの年金制度そのものを長もちさせて将来世代もちゃんと受け取れるように、しかし、やはり将来世代の負担が過多にならないように、そして現役世代にも、今もらっていらっしゃる方々と近々もらわれるような方々についても配慮をした中でどうなるかということで、この年金額の改定が、賃金単価の伸びではなくて、今後の労働力人口の減少も考慮したマクロの賃金総額に連動するという考え方をとったところでございます。

 今申し上げたように、労働人口が減少する中で、現在の高齢世代と将来世代のバランスをとっていくための措置として考えたということでございます。

重徳委員 今大臣がいみじくも言われたように、確かに、なぜマクロ経済スライドなんという名前かというのは、これはマクロ賃金総額を勘案したものだというような、そのマクロだとおっしゃるんだと思いますけれども、しかし、今冒頭言われたとおりだと思うんです、全ては少子高齢化に基づく調整であります。

 したがって、こんなマクロ経済スライドなんて、聞いただけで、マクロ経済学とかIS・LM曲線とか、何か変な、わけのわからぬ、あれ、何だっけみたいな、そういう目くらましのような名前になっている、私はそんな感じがいたしております。

 実際、ことし一月の社会保障審議会年金部会でもこのように言及されております。マクロ経済スライドそのものの仕組みについて多くの方が正確に理解しているとは言いがたい状況である、高齢者にも理解していただけるよう、わかりやすい説明を丁寧に行っていくことが大切であるというわけですから、私だったら、これは、少子高齢化スライドとか、何かもうちょっとぴんとくる名前をつけるところですけれどもね。

 専門家の会議でマクロ経済とか言っているのはいいですけれども、なぜもっとわかりやすい名前にしてこなかったのか。一体、これは意味が伝わっていると思われますか、大臣。

塩崎国務大臣 先生御指摘のように、なかなかこれを正確に理解している方は少ないというふうに思わざるを得ないところがあって、大変難しいお話になっているかと思います。

 要は、先ほど申し上げたとおり、少子高齢化が起きることによって、保険料を払っていただく方々が減って、そして一方で年金をいただく方々がふえる、それをどうやってうまく回っていくようにしていくか。言ってみれば、トータルの保険料の支払い額と、将来推計をして、年金の受取額を総体として考えたときにバランスがとれるかという中で、賃金、物価、そして経済成長、そういったものを考えるので、さっき言ったマクロ経済スライドという話になってくるわけであります。

 理解しているかどうかという意味においては、なかなか、そう簡単な仕組みでもないですし、難しいことは難しいわけですけれども、しかし、一言で言っちゃえば、将来の世代の方々がちゃんと一定程度年金を確保できるように、今もらっていらっしゃる方々、これからもらう方々について調整をすることでバランスをとるということかというふうに思います。

重徳委員 こだわるようですけれども、名称を、例えば少子高齢化スライドとか、スライドじゃなくてもいいです、少子高齢化調整とか、実際に年金をもらっている方に理解できるような、なぜ調整が必要なのかということが一言でわかるような、そういう名称に変えるというお考えはありませんか。

塩崎国務大臣 これは、法律用語としてマクロ経済スライドという言葉があるわけではなくて、考え方としてそういう調整の名前が、先ほど言った報告書の中で使われたのがそのまま定着してしまったということでありますので、できる限り国民の皆様にわかるように説明をしていく中で、どうするかはまた、もし御提案があれば、御意見も賜りたいと思います。

重徳委員 今まさに提案をさせていただいているものですから、少しでも検討をいただくような御答弁がいただけることを期待しておったんですけれども。

 なかなか伝わっていないんじゃないかと大臣御自身がおっしゃっているわけですし、マクロ経済スライドという言葉が定着しているとおっしゃいましたけれども、一般には全然定着していないわけですから、これはぜひともお考えいただきたいと思います。非常に重要なところだと思うんです。

 それで、今回、まさにこの記事にあるマクロ経済スライドは、もともと二〇〇四年に制度ができてからこれまでずっと適用されてこなかったんですね。デフレだから、デフレで、ただでさえ年金が減額されるところを、さらにマクロ経済スライドで減らすということはとてもできないというようなことで、もともと十年前にできたルールが一回も適用されないまま今まで来たというような状況でございます。

 これによって、やはりしわ寄せが若い世代にも来ているはずなんです。ですから、この十年間ずっとこれが適用されなかったことによります、経緯は大体承知しておりますが、その影響というものについてちょっとお話をいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 なぜ十年間適用されてこなかったかといえば、今御指摘があったように、特例水準をやってきたということで、これは、この間国会議員であった、これに賛成した政党は皆同じ責任を負っているわけであります。

 その結果としてどうなったのかということですけれども、一つは、仕組みを導入したのは二〇〇四年なんですけれども、そのときの財政再計算では、二十年後の二〇二三年にスライド調整が終了するということになっていました。残念ながら、この十年間スライド調整が発動されなかったがゆえにスライド調整に要する期間が三十年になって、スライド調整が終了するのは二〇四三年ごろということに今なっているわけであります。

 あの当時と比べると高齢者とか女性の労働参加が進んで、厚生年金保険の被保険者が増加したこと等を受けて、経済再生ケースというもの、今回いろいろなケースをやっていますけれども、再生ケースでは所得代替率が五〇%確保できる見通しとなっていますけれども、スライド調整のおくれは、やはり今申し上げた調整期間の長期化、それから今先生御指摘のように将来世代への給付水準の低下につながることから、将来世代への給付水準の確保のためにはスライド調整を極力先送りしないということが大切であるというふうに思っております。

重徳委員 大臣、要は、今まで二十年で終わるはずだったもの、十年前から始めて二十年ですから、今から十年後にはこのマクロスライドが終わるはずだったところ、まだ全然手をつけていないわけですから、今から三十年かかるということですね。ですから、二十年間毎年一%前後調整されて減らされるというところが、さらにもう十年減らされるということですから、これはもう大きなしわ寄せが次の世代にのしかかってくるということでございます。

 そこで、今回、これは先月二十四日でしょうか、自民党の厚労関係部会に、デフレ時にやはり引き続きマクロ経済スライドを適用するのはやめよう、こういうことが了承されたというか、つまり、政府はデフレ時にも適用するべきだと言ったところ、自民党の方から、それじゃだめだ、さらに先送りをするべきだということに、いわば負けたという状況、押し切られたという形だと思うんです。

 しかも、デフレのときに調整をかけないかわりに、そこでかけられなかった分はいずれインフレが起こったときにその分まとめて後で適用しようということですから、これは先送りも先送りです。そのときに一体そんなこと、ちょっと、インフレで物価が上がったときに、二年分まとめて、三年分まとめてマクロ経済スライドをそのときにかけるなんという、こっちの方がよっぽどハードルが高いように思うんです。

 そういうことを考えても、デフレのときでもきちんと、それは、今の御年配の方には本当につらい、申しわけないことかもしれないけれども、それでも、ここは将来世代と痛みを分かち合って、そういったことを政治家としては、高齢者の方々にいわば迎合するんじゃなくて、むしろ、こういうことだから皆さんに何とか納得していただいて我慢していただく、こういう努力をしていかなくちゃいけないと思うんです。

 このように、簡単に、あっさりではないかもしれませんが、断念してしまうということは、私は非常に問題があると思いますが、大臣はいかがお考えでしょうか。

    〔平沢委員長代理退席、委員長着席〕

塩崎国務大臣 繰り返し申し上げますけれども、将来世代の年金受け取りを確保するためにこの調整を行うということであるわけでありますから、極力先送りはしない方がいいというのは、先生の御指摘のとおりだと思っています。

 今回のことは、今先生、断念というお言葉をお使いになられましたけれども、むしろ時間をかけて調整をしていくということを決めているわけで、マクロ経済スライドを、デフレ下でも導入しないということについて、断念をしているわけではなくて、むしろ、これからは緩やかなインフレに持っていこうということで、二%のインフレ目標なども設けながらやっているのが経済政策アベノミクスであるわけであります。

 その中で、ことし調整し切れない分については来年、もしそれでまだ残ったらその次ということで、できる限り調整は続けていくということでいくわけでありますから。

 やはり、先生のように、将来世代を考えたときには、経済政策でもって、一つは、少子化を解消してできる限り労働参加をふやしていくことと、成長率を高めていくことで賃金が上がっていく、物価もそこそこ安定的に上がっていくということを確保する中にあっては、このスライドは調整をできるだけ短い期間でできるということでもございますので。この年金の制度だけで全てをやろうと思ってもなかなか難しいのであって、経済政策と年金の政策とは一体のものとしてやっていかなければいけないので。

 ですから、このスライドを今オーバータイムで調整するにしても、しかし、経済政策でちゃんとそれが長引かないようにしていくことをやることも、同時に大変重要な経済政策だというふうに私は思っております。

重徳委員 大臣、極力先送りするべきではないとまでおっしゃっているわけですから、経済再生ケースの一番ベストなパターンのことですから、余りに将来に対して楽観的過ぎて、これまでの年金制度というのは、戦後一貫して、負担は軽い方へ、そして受益は大きい方へとずっと先送りの歴史で、ついに人口減少局面まで迎えてしまったということでありますので、これから本当に加速度的に将来世代への痛みが、しわ寄せがふえていくということを今の現役世代の我々議員がよくよく認識して、覚悟を持って臨まないと本当にこれは恐ろしいことになっていくと思っております。

 またこれは時間をつくって指摘をさせていただきたいと思いますが、ぜひとも覚悟を持った政治というものを実現していきたいというふうに、これはもう与党も野党もなく一致協力して将来世代には責任を持たなきゃいけないというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。お願いするといっても、お願いしても何も聞いてもらえませんので、非常に残念なんですけれども、また引き続きこれは指摘をしてまいります。

 それから、次に、自殺対策の予算について議論させていただきたいと思います。

 御存じのとおり、日本というのは、数年前まで自殺者が年間三万人を超えているという状況でございまして、ここ数年は少し改善されてきたとはいえ、依然二万五千人以上の皆さんがみずから命を絶っている、そういう国でございます。世界的に見ても、これはもう異常な国だと言っていいかと思います。

 これまで自殺対策につきましては、主に参議院議員の先生方が中心に、議連を立ち上げたりして取り組んでこられた歴史があるわけであります。そして、民間の団体、NPO法人ライフリンクの清水康之さんなどを初めとした民間団体のネットワーク、あるいは首長さん方の市区町村協議会といったものが、さまざまな自治体、民間レベルで取り組みが進められて、そういう中で、平成二十四年からは十五年ぶりに自殺者の方の数が三万人を下回ったということであります。

 一昨年の平成二十五年の秋には、それまでは参議院議員の先生が中心と申し上げましたが、衆参の超党派の議員連盟、自殺対策を推進する議員の会というものが発足をいたしました。私自身も副会長として参画をいたしておりまして、安倍総理にも一層の対策の推進を申し入れをいたしたところでございます。

 ですが、ここへ来て、問題は、少しずつですが自殺者の数が減っているとはいえ、中高年世代の自殺者の数は減少傾向でありますけれども、しかし、若者の世代が高どまりをしているんです。特に二十代、三十代の死因の第一位は自殺、さらに二十代の方の死因のおよそ半分が自殺ということで、もちろん病死とかそういう全体の数も二十代は少ないんですが、そうはいっても、これは世界的に突出した数字であります。

 さまざまな各方面から早急な対策を強く求める声が寄せられておりまして、この議員連盟では、議連の中に若者自殺対策ワーキングチームというものをつくりました。ここにも私は事務局長として参画をいたしております。このワーキングチームでさまざまなところから精力的にヒアリングを行った結果、去年六月に、若者自殺対策に関する緊急要望を官邸の方に、菅官房長官に提出いたしまして、かなり前向きな感触をいただいたところでございます。

 この緊急要望の内容は大きく三点で、命や暮らしの危機に陥った若者が、助けの求め方そのものがわからない、相談機関や支援策の存在を知らない、そのままに自殺へと追い込まれてしまうという状況を解消しなきゃいけない、これが一つ。

 自殺で亡くなる特に若年女性、四十歳未満の女性の約半数は自殺未遂の経験もあるということでありまして、自殺未遂をしたことのある方のケアというものに力を入れなければならない、これが二つ目。

 そして、三つ目には、そのほか、相談にたどり着けない、つながりにくい若者、特に高校を中退した方とか進路が未決定の方など、こういう方に対するアウトリーチ、手を差し伸べる、こういうことをしていかなきゃいけない、こんなような提言でございます。

 この私どもの要望も踏まえて、内閣府の自殺対策推進室を中心に検討いただいて、昨年夏には概算要求をしていただいたと思うんですが、来年度予算にはどのように盛り込まれたのでしょうか。

有村国務大臣 毎年度、当初予算において、自殺を未然に防止する職場におけるメンタルヘルス対策など、各種の施策を実施するための所要の予算を計上いたしております。

 これに先んじての補正予算でも二十五億円確保しておりまして、委員がおっしゃるように、若者の減り方が少ないということ、そして、この三年間連続して三万人を下回っていますが、それでも、一日七十人という命を絶っている人が、毎日毎日起こっているという計算を鑑みると、まだまだ手を抜くわけにはいかぬということで、予算の計上、補正予算それから本予算ということはありますけれども、引き続き力を入れていきたいと考えております。

重徳委員 今、有村大臣の御答弁は、補正予算、本予算ということもありますけれどもということは、本予算ではないけれども、そういう意味でおっしゃったわけですね。概算要求はされているはずですけれども、本予算ではない、そういう意味でおっしゃったんですね。

有村国務大臣 事実上そういうことになります。

 当然、私たちは、予算の区別にかかわらず、引き続き手を抜くことなくここを強調したいという思いでございますが、当局との折衝ということもございます。

重徳委員 私もわかっていて申し上げているんですけれども、つまり、二十七年度当初予算を昨年概算要求していただいたはずなんですが、そこには盛り込まれずに、この間成立しました二十六年度の、この年度末の補正予算の方に、補正予算ということはあくまで緊急的、臨時的ということだと思うんですが、そういう予算としてこの若者自殺対策が盛り込まれたわけであります。

 ですけれども、問題は若者だけではありませんが、こうした相談事業を充実させなきゃいけない。それから、相談にかかわる人材ももちろん育成しなきゃいけない。さらに、今申し上げました自殺未遂者の支援といったことは、非常に息の長い、人も育てていかなきゃいけない、根気強い、そういう取り組みなんです。ですから、毎年、年度末のつくかつかないかわからぬような、そんな補正予算として盛り込まれる性格のものではないと思っております。

 自殺対策、これは長年の我が国においての課題であります。自殺対策を恒久的な制度にすることがぜひとも必要だと私は、私だけではありません、超党派の議連の総意として考えているわけであります。

 しかも、この自殺対策の予算は、実は平成二十一年度から基金事業として始まっています。二十一年、二十二年、二十三年の三カ年度において基金事業で百億円。ですから、毎年三十億円程度ですね。さらに、その後も、二十四年度、二十五年度、二十六年度、三十億円ずつ、これも補正予算で措置がされ、そして、六年も続いたので、七年目はそろそろ本予算だろうということで二十七年度の特別枠として要求をしていただいたと聞いておりますが、消費税増税の延期とともにでしょうか、枠がなくなったということでしょうか、補正で予算化をされたということでございます。

 これは、国で本予算じゃなくていつも補正でついているということになると、さっきから言っているように、これは自治体だとか民間団体が必死になって取り組まなきゃ実現できない事業でありますので、これについては国の本気度が疑われますし、自治体だって非常に取り組みにくい状況になります。

 そういう意味で、もう一度有村大臣にお聞きしますが、二十七年度当初で要求していたのに二十六年度補正になってしまったというのは、これはやはり、今申し上げましたような意味において、執行ベースの意味において、おかしいと思われませんか。

有村国務大臣 委員御指摘のように、二十七年本予算で二十五億円を要求していたところ、二十六年の補正予算で緊急的に措置をいただいております。

 その背景には、委員当然御案内のとおり、去年の自殺の減り方がとまってしまって、去年の秋から三カ月連続で自殺者数が前年度同月比でふえてしまった、早く手を打ちたいという思いがあったことも御報告させていただきたいと存じます。

重徳委員 そういう意味では緊急的だったというようなことを今、御趣旨としておっしゃりたいんだと思いますけれども、本来のあり方として、やはりこれはおかしいんですね。二十六年度補正で組んだからといって、これは二十六年度中に消化をする予定の緊急的な予算ではないわけですから。あくまで二十七年度に執行することになる予算で、事実上そういう予算でありますので、この状況は変えていただきたいと思います。

 これを要求する事業官庁側としても、今申し上げましたような意味でもちろんそうなんですが、財政当局としても、これは、常に問題だということでこの委員会でも補正予算のときから、そして今の本予算の審議においてもずっと問題にしてきたことでございます。当初予算の枠に入らないけれども補正で措置をするとか、それは後ろ倒しもあれば前倒しもある、補正予算というものを余りに便宜的に使い過ぎである、財政規律の問題もあると、この委員会で多くの委員から再三指摘をされたところだと思います。

 その意味で、査定側の麻生大臣にお伺いしたいと思うんですが、この事業の必要性の精査というのはもう要らないぐらいに本当に毎年毎年予算がついているわけで、これは本来の当初予算の方に、きちんと枠の中におさめるというのが財政当局の腕の見せどころだと思うんですが、ここのあたり、大臣、いかがお考えでしょうか。

麻生国務大臣 自殺者、これは、三万人を超えておりましたのが減ってきたというのは御存じのとおりですが、昨年まで、七月マイナス二百七十、八月マイナス十と、ずっと減ってきたんですが、九月からいきなりプラスに変わって、プラス五、プラス六十六、プラス四十と、ずっとふえてきたというのが補正というものになった一番大きな背景なんだと思います。

 地域自殺対策緊急強化交付金の二十五億円のことだと思っておりますので、それに対するお答えは今申し上げたとおりです。

 ただ、今、二十七年度当初の一・五億円というようなお話があっておりましたけれども、これは先生よく御存じなんだと思いますが、この自殺対策は内閣府だけでやっているんじゃありませんから。

 したがいまして、どこでやっているかといえば、各府省でやっておられます。例えば、厚生省等々、文部科学省等々、関係省庁全体で見ますと、二十七年度分については今集計中ですけれども、二十五年度当初予算においては三百四十億、二十六年度当初予算においては三百六十一億を計上しておりますので、これは継続的に取り組んでいる、三百億円単位で取り組んでいるという部分もちょっと忘れて一億円だけの話をしていただくと偏りますので、聞いている人は間違えちゃいますので。

 一億とか一億五千万というのは、これは内閣府が計上しているものです。しかし、その他の省庁で自殺対策で計上しているものは、三百億、三百六十億でやっているという点もちょっと御記憶をいただかぬといかぬところだと思います。

重徳委員 他の省庁の分ももちろんあるというのは承知をしておりますが、今問題にしているのは二十五億円のことであります。

 今回はもう補正で措置済みの話でありますが、次回からは、本予算の方で恒久的な予算として事業化をしていただくことを、麻生大臣、確約いただけないでしょうか。

麻生国務大臣 補正予算になって、この効果が出てきてまた下がってくれば、また別の話でしょうし、いろいろな事情を考えて、補正予算というのは緊急に対応していくものだと思いますので、今の段階で御確約申し上げられるというような状況にありませんが、出さなくてもいいような状況になりたいと思っております。

重徳委員 これは、先ほどから御紹介している議員連盟の与野党議員の共通した思いでございますので、補正で対応ということ自体が問題だというふうに再度申し上げておきます。

 そして最後に、今の話で、マクロ経済スライドにしても、非常に、私に言わせれば本当に覚悟なきというか、将来への先送りといったような判断の仕方だと思います。プライマリーバランスの黒字化というものも二〇二〇年に迫ってきておりますが、現状、九・四兆円まだ足りていないという状況でございます。

 これはもう一〇%の消費増税も織り込み済みで、なお九・四兆円足りないというわけでありますので、本当に聖域なき歳出削減、歳出構造改革をしていかなきゃいけないと思いますし、日銀がずっと続けております金融緩和によりまして、国債発行に対する痛みというものも感じにくい状況になってしまっています。

 財政危機のシグナルが国債の金利という形で非常に出づらい状況になっておりまして、本当に緊張感を持って、先送りをしないという姿勢で取り組んでいかなければならないと思いますが、この点、甘利大臣の覚悟のほどを、決意のほどをお述べいただきたいと思います。

甘利国務大臣 御指摘のように、二〇二〇年にプライマリーバランスを黒字化するためには、経済再生ケース、つまり経済再生がうまくいった方のケースでも、九・四兆のまだすき間があいている。この九・四兆というのはSNAベースでありますから、当初予算、国費ベースでいいますと九・一兆円であります。それをどう削減していくか。

 これは、社会保障とか、それから地方財政とか、大どころのものについて予算のコストパフォーマンスを上げていく。制度改革を、社会保障でいえば一九七〇年型から二〇二五年型にしていく。そういう中で、サービスの質を落とさず予算の効率を上げていく。

 そのために、社会保障情報の見える化を図って、無駄とか、あるいはより効率のいいやり方とか、それを探っていかなければならないと思いますし、そして、どういうふうな工程でいくかということはこれから設計をしていきますけれども、いずれにいたしましても、経済成長をさらに加速化させることも含めて、社会保障支出の見直しについては、聖域なくやっていかなければならないというふうに思っております。

 もちろん、社会保障サービスの質を落とさずにやるということをしっかり念頭に置きながら、取り組んでいきたいと思っております。

重徳委員 きょう申し上げてきましたマクロ経済スライド、もうルールを決めたわけですから、それにのっとってやるだけのことなんですから、新しいルールで高齢者の方に厳しくするという話でも何でもありませんので、これはやはり、きちんと一つずつ実行していかなきゃいけないと思います。

 自殺対策の予算も、変なつけ方をしていると財政規律そのものがゆがんできてしまいます。これはもう本当に、これから参政権を得る十八歳、十九歳、若い方にも顔向けのできないありさまだと私は考えます。

 何とか、今本当に、待ったなし、待ったなしという言葉がいろいろな場面で使われますが、この予算委員会の場も含めて、政府、与党、野党みんなで覚悟を決めて取り組んでいく、身を切る改革もついでに申し上げておきますが、政治家の覚悟として、みんなで実行していかなきゃいけない問題だと思います。

 これだけ申し上げまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

大島委員長 これにて重徳君の質疑は終了いたしました。

 次に、井坂信彦君。

井坂委員 神戸から参りました維新の党の井坂信彦です。

 維新の党は、本日、男性デーということで、男性の二番バッターとして質疑をさせていただきます。

 まず、政治とメディアの関係について、官房長官に伺います。

 「安倍政権への批判後退か、メディアの自粛ムード強まる」、こういった記事がロイターで報道され、ニューズウィークにまで掲載をされました。

 「日本のメディアが、安倍晋三政権の反応に配慮して報道の自粛姿勢を強めているのではないかとの懸念が、ジャーナリストや専門家の間に広がっている。」「テンプル大学日本校でアジア問題を研究するジェフリー・キングストン教授は指摘。「いまはメディアに自粛を促すような、ぞっとする雰囲気がある」と懸念を示す。」こういう記事で、籾井NHK会長の、政府が右と言っているのに我々が左と言うわけにはいかない発言でありますとか、あるいは、昨年衆院選の、与党自民党が在京テレビ各局に選挙時期に一層の公平中立な報道を求める文書を送った、こういった例が幾つも幾つも書かれている記事であります。

 こういう記事が、この時期、ロイター、ニューズウィーク、こうした海外の主要メディアに上がっている、この現状認識について、まず官房長官にお伺いをいたします。

菅国務大臣 我が国は、憲法に保障されている報道の自由、そして表現の自由、そうしたものが最大限尊重されているんだろうというふうに思います。

 政府、総理を批判する記事というのは、まさに毎日同じようなことを書いている報道機関もあるわけですから、我が国ほど報道の自由、表現の自由が尊重されている国はないだろうと私は思います。

井坂委員 建前では、もちろん憲法も何も変わっておりませんし、そういうお答えだろうと思うんですが、まさにこのくだんの記事に、「政府に対する批判は大幅に減少したのではないか」、こういうことまで書かれてしまっているわけであります。まあ、事実かどうかわかりませんよ。ただ、こういった文字が世界の主要メディアにこの時期出ているという現状があるわけであります。

 本日、メディアと政府の関係というのがこれほど注目されることは近年なかったというふうに思いますので、前半は、ちょうどNHK経営計画が出されたタイミングでありますからNHKのこと、そして後半は、まさに政府とメディアの関係を一番規定する政治的公平ということについて議論をさせていただきたいと思います。

 まず、NHKのインターネット放送について伺います。

 今、NHKの受信料の制度といいますのは、これはまずNHK会長の方にお伺いをしたいと思いますが、NHKの受信料制度、これは放送法では、NHKの放送を受信することのできる受信設備を設置したら受信契約が必要とされる、義務づけられる、こういう法律になっております。

 そして、この法律に基づいて、例えば、現在売っているほぼ全てのテレビが衛星放送を受信できてしまいますので、もう持っているだけで衛星契約が、線も電波もつながっていれば強制をされてしまう、こういうことも実際に起こるわけであります。

 同じく、ワンセグ放送でNHKが見られてしまう携帯やパソコンも、これは受信設備に当たるということでありますが、しかし、こちらの方は、受信料の徴収、なぜか放置をされています。

 ここで、今回出されましたNHKの経営計画に、放送の同時再送信の課題解決を図り、そして取り組みを推進、こういうことが新しく大きな取り組み事項として書かれております。

 この同時再送信というのは、NHKで、テレビで放送するのと同じ番組を同じタイミングで、つまり、事後的に、後でビデオみたいに見られますよということではなくて、同時に、ネット上で同時並行で見られる、これが同時再送信であります。

 ここでお伺いいたしますが、同時再送信というのは、これは私は放送ではなくて通信だというふうに思いますが、この同時再送信をやっても、パソコンやスマホを持っているだけで受信料の徴収の対象になってしまうのかどうか、お伺いをいたします。

籾井参考人 インターネットサービスにつきましては、四月に施行される改正放送法に基づき、インターネット活用業務の実施基準に沿って、現行の受信料制度のもとで適切に実行してまいります。したがいまして、今回の改正放送法に基づきインターネット放送をやっている間には、新たに受信料を徴収することはございません。

 なお、インターネットでのテレビ放送の同時配信と受信料制度の関係についての研究は今後の課題であるというふうに認識いたしております。

井坂委員 この同時再送信に関しては、通信ということですから、放送受信設備ではないので、今のままでいくと受信料の対象にはならないというふうに理解をしております。

 なぜ会長にお聞きするかといいますと、まさに、この同時再送信をNHKで実行したい、実現したいということに、経営トップとして非常に強い意思を持って、この間、推進をしてこられた方であるからでありますが、今後の課題とおっしゃいましたが、受信料をパソコンやスマホから取るということになれば、これは当然、放送設備ではない、通信設備から取るということで、大幅な受信料制度の変更が必要となってくるというふうに思います。

 同時再送信をする場合に、今後の課題、パソコンやスマホから受信料を取るか取らないのか、その検討の方向性、研究の方向性だけでもお示しをいただければというふうに思います。

籾井参考人 お答えいたします。

 先ほども言いましたけれども、テレビ放送の同時再送信、同時配信と受信料の関係については、本当に今から研究していきます。そういう意味で、今後の課題と認識しております。

 ただ、今現在、我々は受信料で全てを賄っていっているわけでございます。そこに七千億近くの受信料を払っていただいている視聴者がおられるわけですから。それと同じものが見られるというときに、料金を取らないとか、あるいは、いろいろなことがあるわけですが、やはりフェアでなければならないだろうというのが今私の頭にある漠とした基本的な考え方ですが、いずれにしましても、この問題は今からの問題でございますので、そのように御理解いただければ大変にありがたいと思います。

井坂委員 まさに今、会長が答弁いただいた点は、実は、この同時再送信を今回、経営計画に入れ込むのか入れ込まないのか、もう随分前から議論される中で、結局、これをやろうとするとこういう問題が生じるということで、随分議論があった点ではないかなというふうに思います。

 今回、経営計画にのせてこられたので、大まかな方針を定めた上でのせてこられたのではないかなと思ってこのように質問を差し上げたわけでありますが、さすがに、テレビではお金をいただいているものが、同じものがネットではただで見られるのはおかしいのであろう、こういうお考えであります。

 そこで、加えて、ネット放送におけるネット広告ということについて、会長にお伺いをいたします。

 放送法の八十三条では、広告を放送することを禁止しているわけであります。これは先ほどと同じ理屈でありますが、ネット上の広告というのは、ネットの画面はそもそも放送ではありませんので、ネット上で広告を掲載するというのは広告を放送しているということには当たらないかというふうに理解をしておりますが、まず、それでよいのかどうかということと、それであれば、NHKのネット同時再送信をやる際に、横に広告を張りつけておいて、そこで広告料を取るということは何ら法に触れないのではないかというふうに思うわけでありますが、この点に関して、NHKネット放送でネット広告は可能ではないかということに関して御見解をお伺いいたします。

籾井参考人 お答えします。

 NHKのインターネットの活用業務は、総務大臣の許可を受ける実施基準にのっとって行うことになっております。実施基準の認可に当たりましては、総務省の審査ガイドラインというものに基づくわけですが、「法第八十三条第一項の規定により広告放送を禁止している趣旨を没却しないことが必要である。」とされております。

 したがいまして、NHKの実施基準では、他人の営業に関する広告を行わない形でインターネットサービスを実施することとしております。

井坂委員 実施基準では確かにそういうことになっているんですけれども、もともとの、法律の八十三条は広告放送の禁止、あと、本来の趣旨としては、やはり特定のスポンサーがNHKについてしまって、そのスポンサーの意向とか、そういったものを仮にもNHKがそんたくしたり、それに左右されることがあってはならない、こういう趣旨で広告がそもそも禁止されているんだろうというふうに理解をしております。

 ところが、ネット上の広告というのは、別に、特定のスポンサーをNHKがとって、特定の会社の広告をそこに張っているという形式ではありませんで、広告の枠があれば、そこにどの会社の何の広告が表示されるかは、これはもうネット上で、広告料の出稿の金額に応じた、ランダムに何が出てくるかわからない、こういう状況でありますから、NHKがネット広告をそこに張りつけたからといって、何か特定のスポンサーがついてNHKの運営や放送内容がねじ曲げられる、こういうおそれは皆無であるというふうに思うわけでありますが、そこも踏まえて、なおそういう御見解なのかだけお伺いしたいと思います。

籾井参考人 先ほども申しましたけれども、NHKの実施基準においては、他人の営業に関する広告は行わないという形でインターネットサービスを実施することとしております。

 委員のおっしゃっている意味は、個人的には、何となくネットのイメージからしてわからぬではないんですが、やはり、我々、今の中では実施基準にのっとって行うことになっておりますので、それに沿って、我々としては、先ほども言いましたように、広告放送を禁止している趣旨を没却しないことが必要であるというふうに考えてインターネットサービスを実施することとしております。

井坂委員 会長は、同時再送信ということで、ネットによるコンテンツの提供を大幅に強化したいと経営計画に書かれております。しかしながら、その財源をどうするのかということに関しては、まだ今後の課題とはされながらも、しかし無料にはさすがにできないだろう、さりとて、今申し上げたように、私が御提案した広告を張ったらどうかという話については、それはできないというお考えであるとすれば、これはまた受信料という形で広く集めることにならざるを得ないというふうに思うわけであります。

 実は、衛星放送に関しても私は同じような不満を持っておりまして、このNHKの衛星放送の受信料について重ねてお伺いをするんですが、これも、NHKが衛星放送という新しいサービスを大幅に拡充して始めて、それを見る人も見ない人も、その設備があるという理由で受信料を取られてしまう、こういう仕組みであります。

 私がよく例えるのは、ハンバーガー屋さんに行ったら、ハンバーガーだけ頼んだのに、そのお盆にポテトまで、ついでにポテトもどうぞと載せられてしまって、ポテトは要らないとポテトを残しても、いや、あなたはいつでもポテトを食べられる状況にあったんだからポテト代も払いなさい、こういう状況で、今ほとんどの家庭で衛星受信料というものが上乗せを、これはもう法律上されてしまっているわけであります。

 そこでお伺いをしたいんですけれども、これはちまたではよく出てくる意見でありますが、NHK衛星放送を見ない、見ないのに取られるのはどうも納得がいかない、見られる状況にする必要はないので、例えばスクランブルでもかけてもらって見られないようにして、その分衛星受信料を払わないでいい仕組みぐらいつくってくれないか。見ない自由、契約をしない自由、こういった声も、恐らくちまた、受信料徴収の方からたくさん聞いておられると思いますけれども、こういうことがなぜできないのか、スクランブルをかけて受信料を払わない、こういうことはなぜできないのか、お伺いをしたいと思います。

籾井参考人 お答えいたします。

 放送法第六十四条第一項におきまして、「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。」とされております。したがいまして、受信機を、受信設備を持たれた限りにおいては、NHKと放送の受信について契約をしなければならないということになっているのは御承知のとおりでございます。

 また、受信料は、広く視聴者全体に公平に御負担いただくという、そのための負担金と位置づけられております。

 衛星放送につきましても、受信料は、テレビを見ることの対価ではなく、公共の福祉のために豊かでよい放送番組を放送するという公共放送の社会的使命を果たすための財源であると認識しております。

 我々はやはり、現在まだ五〇%も満たない衛星比率でございますけれども、これを丁寧に説明しながら、皆さんの御理解を得ながら衛星比率を高めていきたい、こういうふうに思っております。

井坂委員 受信できる設備があれば、それはもう契約を結ばされてしまう、そういう法律になっているんですが、これは電波なので、それを受信したくなければ受信できる設備ではなくする、スクランブルをかけるということですけれども、そういうことぐらいあってもいいのではないですかということなんですが、なぜスクランブルをかけるということはできないんでしょうか。

籾井参考人 お答えいたします。

 スクランブルの是非につきましては、いろいろな御意見があることはよく承知しております。

 おっしゃるとおり、全面的にスクランブルをかけるという御意見も、当然、今委員がおっしゃったようにありますし。ただ、NHKにとりましては、放送法に沿った放送を実施しております。NHKにスクランブル有料放送を行わせるかどうかというのは、立法政策上の問題であるということで、やはり法律的な裏づけがないとなかなかしづらいのではないかなというふうに思っております。

井坂委員 総務大臣に同じことをお伺いします。

 立法政策上の問題であるという、最終的に御答弁でしたので、これは法律的にはやれば可能だと思うんですね。技術的にももちろん可能なことだと思うんですけれども、むしろ経営上の問題があるかなと思って会長と議論させていただいたんですが、立法政策上と言われたので、総務大臣、スクランブルをかけて、見る、見ないを最低限選べるようにすることの是非についてお伺いをしたいと思います。

高市国務大臣 受信料制度ですけれども、受信機の設置という非常に客観的な事象のみに着目するものでございまして、これは視聴の対価という位置づけではございません。公共の福祉のために、豊かで、かつ、よい放送番組を放送するという公共放送の社会的使命を果たすために必要な財源を広く国民の皆様に公平に御負担をいただくという、特殊な負担金という位置づけでございます。

 ですから、スクランブル化、技術的には日本の場合は可能なんだろうと思うんですけれども、やはり、これをしてしまいますと、受信料について視聴の対価という性質を強めてしまいますので、NHKの公共放送としての基本的性格にまず影響を及ぼすということ、それから、諸外国の公共放送におきましても採用されておりませんので、慎重に考えなきゃいけないことだと思っております。

井坂委員 放送が見られることの、サービスの対価としての受信料ではないというお考えで、確かに事前にそのように承っております。

 ただ、やはり私は、納得がいかないのは、地上波に関しては、私はそのお考えに賛成であります。しかし、一部の難視聴地域を除いた地上波が見られる地域で、なおかつその上乗せサービスといいますか、私から見ればぜいたく品のようなサービスである衛星放送が、それを受信できるテレビが家にあるからというだけで、自動的にその料金が公共の福祉のための負担金だということで乗せられてしまうことに、納得ができないわけであります。

 受信料制度の今後のあり方についてお伺いをしたいと思いますが、まずNHKの会長に、大まかな話ですからお伺いをしたいと思います。

 今、平成二十七年度のNHK予算を拝見しますと、給与費で一千百八十二億円、これは一般の職員さんの給与です。しかし、それとは別に、契約収納費ということで五百八十五億円。つまり、一般の職員さんの人件費のもう半分ぐらいの規模まで、受信料を集めるための、これはほぼ人件費とその管理費ですけれども、かかっている、こういう現実があります。そこまでやってなお、支払い率は平成二十六年度見込みでも七六%。これを毎年一%ずつ引き上げて、年百四十億円ずつNHKの収入が増収をしていく、こういう経営計画が立てられているわけであります。

 これは、真面目に払っている四分の三の国民は、衛星放送を仮に見ていなくても、実は、ほとんど見ていない方が実情多いわけでありますけれども、その真面目に衛星分まで払っている四分の三の国民が、何も払っていない四分の一の衛星分まで負担をしている、こういう構図であります。

 受信料なら、当然、見ている人だけから取る。逆に国民全員から取るのであれば、これは一つ検討の考え方としてあり得べき方向ですけれども、もういっそ税あるいは強制徴収、そういう考え方も今後あるんだろうというふうに思うんですが、現状はいかにも中途半端な制度になっているのではないかと私は考えております。

 これは、仮に全員が払う税という形になりましたら、真面目に払っていた人は受信料は今より二五%安くなります。さらに、契約収納費、年間六千七百億円のうちの五百八十五億円ですから、九%を占めるこの契約収納費も要らなくなるので、その分さらに受信料は安くなるのではないかなというふうに考えます。

 会長、今後、受信料制度の見直し、国と連携していろいろやっていくわけでありますけれども、受信料という考え方から一遍離れて、全体からいただく。既に衛星放送は事実上そうなっているわけですから、テレビを置いてあるというだけで全員から取る仕組みになっているんですから、全体からいただく。さらに、ネットのことまで考えたら、端末ごとの、設置しているかしていないかなんという基準でお金を取る取らないと決めるやり方はもう続かないというふうに思うんですけれども、受信料制度の今後、まず会長の御所見をいただきたいと思います。

籾井参考人 お答えいたします。

 徴収の仕方というのは、今委員がおっしゃったように、強制的にやるとか税でやったらどうだとか、いろいろな意見があるのは承知しておりますが、いかんせん、我々はやはり放送法にのっとって受信料を徴収する、こういうふうになっております。六十四条の第一項に基づいて、受信料を財源として事業を運営するということになっているんです。

 やはり、委員御指摘のとおり、皆様に公平に御負担していただくということが大原則なわけですね。けれども、現実はまだ普通の地上波でも七五%前後、それから衛星に至っては五〇%弱、こういうことなんですが、これは法律的に言いますと、やはり、受像機といいましょうか、放送を受信する設備を持っている人たちはお金を払っていただかなければならないということになっているんですが、なかなかそうもいっていない。

 ということで、今はまだ、本当に営業経費をかけながら、現場の営業担当が駆けずり回って、少しずつでもふやしていこうという努力をしているんですね。そして、やはりそれでも、やるためにまだまだ経費がかかるということで、皆さん御指摘のとおり、まだまだ高い営業経費を支払いながら、一生懸命やっているわけです。

 一方、それだけではなかなかうまくいかないので、今は、いわゆる民事訴訟という形をとりながら、やはり皆さんに何が何でも払っていただくという方策もとっております。

 いずれにしましても、皆さんが払ってくれれば本当にいろいろなことが可能になってくるんですが、現状では、やはり我々としては、放送法第六十四条第一項に基づいて受信料を徴収するという方法でやらざるを得ないといいましょうか、やらなければならない立場にございます。

    〔委員長退席、平口委員長代理着席〕

井坂委員 皆さんが払ってくださればとおっしゃるんですが、しかし、現実はもう取り切れない。しかも、本当は、ワンセグを取れと言っているんじゃないですよ、ただ、法律に厳格にやるんだったら、ワンセグ機能のある携帯を持っている人からも取らなきゃいけないのに、そんなことは手すらつけていないわけで、その一点をとっても、受信料制度というのはもう破綻しているのではないかなというふうに考えるわけであります。

 ちょっと時間の問題もありますので次に行きたいと思いますが、NHK国際放送とそして政府広報のことについて、官房長官にお伺いをしたいと思います。

 NHK国際番組基準というところで、第三章一項二というところにこういうことが書いてあります。国際放送は、その解説、論調は、公正な批判と見解のもとに、我が国の立場を鮮明にする、こういうルールが書かれています。

 この場合、我が国の立場とは、政府の公式見解のことをあらわしているのかどうか、お伺いをいたします。

籾井参考人 お答えいたします。

 放送法の第八十一条第五項におきましては、「我が国の文化、産業その他の事情を紹介して我が国に対する正しい認識を培い、」とあります。これは、日本の文化、産業その他の事情であると考えております。

 NHKは、国際番組基準の第三章「各種放送番組の基準」第一項「報道番組」において、

 一 ニュースは、事実を客観的に取り扱い、真実を伝える。

 二 解説・論調は、公正な批判と見解のもとに、わが国の立場を鮮明にする。

 三 わが国の世論を正しく反映するようにつとめる。

と定めております。

 NHKは、この番組基準の規定に基づきまして、自主自律の国際放送を行っております。NHKは、自主自律の国際放送であり、この国際放送は政府広報ではございません。

井坂委員 お尋ねしたことにお答えいただきたいんですが、さっきおっしゃった第三章一項二の我が国の立場というのは政府の公式見解ですかとお聞きして、先ほどのような御答弁だったわけですけれども、政府の公式見解ではないのか。ないとすれば、一体、我が国の立場というのはNHKとしてどうやって決めていくのか、お伺いをしたいと思います。

籾井参考人 お答えいたします。

 我が国の立場とは、政治経済など、各側面での日本の立場であるというふうに考えております。

井坂委員 官房長官にお伺いをいたしますが、我が国の立場は、政治経済、いろいろなところからの立場ということでお答えになられましたが、一方で、政府広報ということ、特に国際的な広報を強化していかれる方向だというふうに認識をしております。

 広報は広報でされるわけですけれども、一方でNHKも、国際放送、しかも外国人向け国際放送を今後強化していくと。この外国人向け国際放送は、放送法六十七条によれば、国が、政府が要請して、費用も国負担でやるようなものも含まれてくるわけでありますけれども、政府が予算を出してNHKにやってもらう、こういう国際放送と、政府広報と、どういう関係あるいは使い分けということになるのか、お答えをいただきたいと思います。

菅国務大臣 NHKの国際放送については、今会長から答弁されていましたけれども、放送法に基づいて国際番組基準というのをNHKでつくって、それに基づいて放送をする、そういうことだというふうに思います。

 一方、政府の広報でありますけれども、これは国の予算によって、官邸で司令塔の役割を果たしながら、国際社会における、事実関係だとかあるいは我が国の基本的立場、そして政策等に対しての理解を浸透してもらうために、政府がさまざまなイベントをやったり、あるいは情報発信資料の整備、海外メディアを通じてのPRだとか、あるいはSNS、こうしたものを通じて、ありとあらゆるそうした広報を通じて、政府みずから効果的な発信に努める。そういう意味で、NHKとここは異なるというふうに思います。

    〔平口委員長代理退席、委員長着席〕

井坂委員 今官房長官が我が国の基本的な立場ということをおっしゃいましたけれども、それは、NHKの言う我が国の立場と、政府の言う、今官房長官おっしゃった我が国の基本的な立場、これは違うのか、基本的な立場というのは政府の公式見解ということなのか、そのあたり、またお伺いしたいと思います。

菅国務大臣 そこはNHKが国際番組基準の中でつくられるんだろうというふうに思いますけれども、政府の公式な立場が明らかな場合については、まあNHKで判断をするんでしょうけれども、政府とすれば、政府の公式的な立場あるいは考え方、そうしたものをありとあらゆる広報を通じて対外的に理解をしてもらう、それが政府の役割だというふうに思います。

井坂委員 国営放送ではなくて公共放送、そして税ではなくて受信料ということで、形式的には政府からかなり距離をとって経営しているNHKなんですけれども、やはりこのあたりは随分いろいろと今後混線をしてくるのではないかなというふうに思っておりますので、本日質疑をさせていただきました。

 一問飛ばしまして、最後に、民放の政治的公平と、それから放送法の改正について総務大臣に伺います。

 日本のテレビ局は、これはNHKも民放も、それからCSもだと思いますが、放送法四条で政治的に公平な番組編集が義務づけられております。

 これは、私は不思議なんですけれども、新聞にはこういう政治的公平という縛りは法律上はないかというふうに思いますが、テレビにはある。その理由は、電波は非常に希少な資源だから、限られたテレビ局しか持つことができないから、その分縛りをかけるんだ、加えて、テレビ局は影響力が非常に大きいから政治的公平という縛りをかけるんだ、こういうふうにこれまで説明をされてきました。

 しかし、電波の希少性という話になりますと、もう最近は、CS、衛星放送、いろいろなチャンネルが出てきて、しかも、CSの中身を見れば、中国国営放送を流していたりとか、そういうチャンネルもあるわけで、そういったところまで本当に政治的公平ということは担保されているのかすら疑問な状況であります。こういった電波の希少性ということも、時代が進んで、もう当たらなくなってきているのではないか。

 また、影響力ということでも、むしろテレビよりも新聞の方が、特に政治関係に関しては影響力が高まっている、こういう調査も今幾つも出ております。また、ネットの影響力というのも最近は無視できないほど強まってきております。

 加えて、放送法自体も、できた当初は、NHK部分と民放部分に分かれていて、この政治的公平という条項はNHK部分にもともと入っていたというふうに聞いております。それが、一九八八年の放送法改正のときに、この政治的公平、NHK部分から民放も含めた一般部分に、全部に適用されるところに一般化された、こういうふうにも聞いているわけであります。

 こうした、放送法ができたときの政治的公平、しかもNHKしかなかったころの政治的公平と、現状の、チャンネルがたくさんあって、しかもいろいろなメディアが出てきて、ネットも出てきて、しかも新聞の影響力も強くて、こういう状況の中で随分変わってきているのではないかなと思うわけであります。

 大臣にお伺いをいたしますが、放送法、これはNHKの部分に関しては、当然、公共放送ですから、政治的公平という縛りは必須だと考えます。一方で、民放にはこの政治的公平原則を課さなくてもよいのではないかなという考えもあると思うんですが、いかがでしょうか。

高市国務大臣 委員が、政治的公平、これが民放には必要ないといったスタンスでの御質問かと存じますけれども、先ほど委員が述べられたとおり、やはり放送の世の中に与える影響というのは依然として非常に大きいものがございます。やはり、これは限られた資源である電波を独占的に、電波帯の一部を独占的に使用しているということもありますし、それから、本当に不特定多数に対して、紙媒体以上に同時に安価に情報提供というのが可能であるという、これは物理的な特性でございます。

 そういった中で、憲法で報道の自由、表現の自由、こういったものが保障されておりますけれども、憲法が保障する自由及び権利というものは、公共の福祉によって一定の制限もございます。これを濫用してもいけないということがあります。

 一方、先ほど申し上げましたような事情で、非常に影響力が大きいものですから、やはり不偏不党、それから一党一派に属さない、偏さない、そういう報道というものが今も要請として求められているものだと考えております。これは民放であれ、そしてまたCSであれ同じだと思います。

井坂委員 テレビの影響力ということですが、二〇一三年の参院選の後の全国のアンケート調査の結果を持ってきているんですが、事政治に関しては、例えば、投票する際の候補者、政党を決める際に参考になったかどうか、一位が新聞、二位NHK、三位民放、こういう結果もあるわけです。あるいは、公正中立な報道がされていたと思いますかというアンケートに関しても、これは一位はNHKで、さすがに公正中立と信頼されているわけでありますが、二位が少しあいて新聞、三位、新聞の半分の数の人が、民放も公正中立な報道をされていたと。公正中立なメディアと実は新聞の方が民放の倍ほど思われていて、民放はそれなりにいろいろ偏りもあるだろうというふうに、当の視聴者自身が思っているというふうに思います。

 新聞も、もう既に各紙、それぞれスタンスがはっきりしているわけで、それでも新聞は許されている。でも、テレビの方がいつでもチャンネルを切りかえられますし、見比べることができる。新聞の方が、同じ論調をずっと何年も毎朝浴びるわけで、むしろそちらの方が実は影響は大きいかなと思うわけであります。

 ぜひその辺もまた、きょうは時間ですので、この問題、私は、政治的中立公平と公正と、それから報道の自由の関係、非常に議論の余地があるところだと思っておりますので、引き続き大臣と議論させていただきたいと思います。

 本日、時間ですので、どうもありがとうございました。

大島委員長 これにて井坂君の質疑は終了いたしました。

 次に、伊東信久君。

伊東(信)委員 維新の党の伊東信久でございます。

 本日は、予算委員会での質問という貴重な機会をいただきまして、日本を少しでも前進させることができるような貴重な時間にしたいと考えております。

 私は、現役の外科医なんですけれども、椎間板ヘルニアのレーザー治療という先進医療を専門としております。医療法人の経営者そして現役の医師として、現在の拡大し続ける社会保障費にメスを入れ、社会保障制度改革に取り組んでおります。

 さて、毎年一兆円規模で増額する社会保障費が日本の財政を悪化させる一因となっているということは、残念ながら明らかです。社会保障費の重要性をわかった上で、この原因となっていることは明らかということを認識の上での、平成二十七年度予算の支出額九十六・三兆円のうち社会保障費が占める割合は三十一・五兆円の三二・七%、日本財政再建のためにはこの社会保障費の抑制が不可欠。もちろん、アベノミクス、三本目の矢である成長戦略を軌道に乗せ、歳入をふやし、我々維新の党が訴える身を切る改革から、歳出削減を実行することも大切であると考えております。

 さて、日本の財政危機が叫ばれていますけれども、欧州でも財政危機の話題がたびたび出ています。現在、欧州では、二〇一〇年に深刻化したギリシャ危機が再燃しておりますけれども、EUの問題児たるギリシャが再び欧州問題の中心になっています。

 二〇一〇年―二〇一二年、ギリシャは、EUやIMFから総額で二千四百億ユーロの巨額支援を受ける見返りに、歳出削減、増税などの財政削減に取り組んできました。こうした中でギリシャの国民の中に緊縮疲れが蔓延し、緊縮に反対する野党、急進左派連合がこうした不満の受け皿となり、支持を延ばしているわけです。

 EUのユーロの信認を得るために、ユーロ導入国に対し、累積赤字がGDP比六〇%以下の厳しい縛りを受けていることは御存じかと思います。

 さて、この縛りをギリシャに当てはめると、累積赤字の対GDP比が一九一・六%。日本にこの縛りを当てはめてみると、累積赤字の対GDP比二三一・九%。日本はユーロの参加どころか、ギリシャ以上に財政状況が悪い。

 この中で、麻生大臣が財務金融委員会で答弁されているように、日本とギリシャでは、GDPの規模、日本は経済収支が黒字、ギリシャは赤字、国債の所有権などの違いはありますけれども、もちろん、日本がユーロに参加することはあり得ませんけれども、世界のGDPの二〇%を占めるユーロの参加資格を満たしていない日本の財政状況に関する感想は、まず冒頭、麻生大臣からお聞きしたいのですけれども。

麻生国務大臣 これは伊東先生、御指摘がありましたように、例のGDP比マイナス三%がユーロの加盟条件ですから、日本はそれに当てますと約六・六ぐらいになろうかと思いますので、その意味においては、これは間違いなく非常に大きな問題があろうと存じます、それはもうはっきりしておりますので。

 その上で私どもとして、ギリシャとか、ほかはいろいろありますけれども、そういった国に比べて私どもの大きなのは、これらの国々のいわゆる国債というものは全て外貨でやっておられます。日本の場合、自国発行の円という通貨でやっております。自国の通貨で出しておりますので、今、日本の国債発行の中に外国人が買っている比率は一五%ぐらいあろうかと思いますが、いずれも円で買っていただいております。その意味ではギリシャとか他国とは全然違っております。自国通貨の発行というのは、日本とアメリカとイギリスとスイス、この四つだと思いますけれども、そういった意味では状況は全く違うことははっきりしております。

 それでもやはり二〇〇%というのは、どう考えてもこれは我々としては真剣にバランスをさせにゃいけませんし、これはほっておきますと、プライマリーバランスがゼロになったところでも、金利だけがことしで十兆一千億ぐらいふえていますので、PBが成ってもまだふえていくことになりますので、その意味では、さらにGDP比で落としていくということを真剣に考えにゃいかぬ。

 日本にとって一番大きな問題はこれだと存じます。財政にとりまして一番大きなのはこれだと思います。

伊東(信)委員 おっしゃるとおりに、自国の通貨ということで。解散前に引き続き、またことしも財務金融委員会でお世話になりますので。

 そういったことも含めまして、ギリシャは緊縮財政により二〇一四年にプライマリーバランスを黒字化しているわけなんですね。

 大臣の今のお話で、やはり危機感は感じてはる、このままではいけないということで、広く国民の皆さんにも、あえて不安をあおるようなことというのはいかがなものかという意見もあるんですけれども、日本においても、平成二十六年六月二十四日の閣議決定において、基礎的財政収支を二〇二〇年までに黒字化という目標を立てておられます。

 二月二十日の予算委員会で、我が党の馬場議員が二〇二〇年度までのプライマリーバランスの黒字化について質問させていただいて、安倍総理は、目標の達成は難しいが、デフレから脱却し、経済成長で税収を確保していくとの回答をされました。

 今回の質問でプライマリーバランスの云々かんぬんの話を聞くつもりはないんですけれども、大臣の言うように、政府が閣議決定したPBの黒字化は本当に日本にとって採用すべき指標なのかということに対して、ちょっと疑問を持っております。

 日本はフローの財政健全化目標にプライマリーバランスの均衡を用いていますけれども、諸外国はより厳しい財政収支の均衡を用いています。プライマリーバランスの黒字化というこの言葉だけを聞くと、やはり千兆円を超える借金が減るような印象を国民の皆さんは覚えてしまうのではないか。

 大臣の危機感の認識というのはよくわかりました。ただ、PBの均衡を用いている限り、日本の借金の増減額というのが私には見えてこないんです。日本も、プライマリーバランスの均衡だけでなく、諸外国と同じ財政収支均衡を用いるべきではないかと考えておるんですけれども、麻生大臣、重ねてお考えをお聞かせください。

麻生国務大臣 これは全く正しい指摘だと存じます。

 伊東先生、昔は、最初にこのPBというのを使い始めた二〇〇一年か二年、私、政調会長のころだったと思ったんですが、当時、PBといったら、ポケットベルかプライベートブランドかといっておちょくられたものだった。予算委員会で、何だそれとかいうやじが飛んでいたぐらいだったんです。そういう時代だったんです。今は、基礎的財政収支の意味だということが何となく通じるようになりましたけれども。

 御指摘のありましたように、仮に二〇二〇年に、仮にですよ、達成したとしても、ことしのあれを当てはめますと、それでもプライマリーバランス、基礎的財政収支に見合っただけで、いわゆる赤字の分の金利が積み増していきますので、ことしの金利だけを乗っけても、十兆円を超えるほどの金利がまだふえていきますので、これは委員もおっしゃいましたように、一つの目安ではありますけれども、基本的にはこれだけではだめです。

 それに、プライマリーバランスを達成した後、さらに、私どもとしては、いわゆる債務残高、帳簿はわかられるんだと思います、帳簿の貸方、借方でいえば、こちらの借方の方に一千兆というんでしたら、こちら側にも一千兆の債権者がおられる計算になるんですが、これは対GDP比をバランスさせないといかぬのであって、対GDP比で、分母になりますGDPの方に対して、分子になります歳出の方をずっと抑制していって、ヨーロッパやら何やらで目指しているところと同じように、私どもとしても、いわゆる分子の側を抑えていく努力を行うことによって、結果として財政収支というものがちゃんときちんとするような方向に。

 ゼロになった次の段階として目指さなければならぬ目標はこれであって、これが最初から最終目標ではありません。これは単なる途中の一里塚であって、ことしというか二〇一五年の半分が一里塚、その次がゼロ、その次がさらにということになっていかざるを得ぬ。私どもとしてはそこまでもやらないと、この国の財政というものは安定したもの、安心したものにならぬ、私どもはそう思っております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 大臣も歳出と歳入のバランスの話をしていただいたわけなんですけれども、当然、出る方を抑える、こういったことも大事なわけでございます。PB、ポケットベルとは懐かしいお話でして、私、救急医をやっていたもので、ずっとポケットベルを持っていたので、ちょっと懐かしい気分になりました。

 さて、ここで、今までのお話、もちろん大事なお話であったんですけれども、いかに日本の財政が悪いかというメタファーでございまして、ではどうするんだということを、現役の医師の立場、もしくは経営者でもございますので、そういった立場からお聞きしたいと思います。

 ここで、塩崎厚生労働大臣の方に御質問を移らせていただきたいと思います。麻生大臣、余り座ってばかりいると腰を痛めますので。いいクリニックが大阪にありますけれども。

 財政健全化に向けて、バイオシミラーの話をお聞きしたいんですけれども、これからの質問の内容にもかかわってきますので、バイオシミラーについて。

 塩崎大臣、かつて民主党の柚木議員が質問されたんですけれども、バイオシミラーについて、国民の皆さんに知り得る情報をお伝え願えればと思います。

塩崎国務大臣 正直、バイオシミラーといっても、普通の方は、わからない、初めて聞いたということが多いかと思うわけでございまして、私も正直言ってそんなに詳しくないので、先生の専門家としての知識をきょうは学びたいと思っておりますが。

 バイオシミラー、バイオ後続品というのは、国内で既に承認されたバイオテクノロジー応用医薬品と同等、同質の有効性そして安全性を有することが治験によって確認をされている医薬品ということで、いわゆるジェネリックといったときには治験は必要なく認められるものでありますけれども、先生御指摘のこのバイオシミラーは、治験が確認の手続として必要なものでございます。

 そもそもバイオテクノロジー応用医薬品というのは、微生物とか細胞が持つたんぱく質をつくる力を利用して生産されるヒト成長ホルモン、インシュリン、抗体などの遺伝子組み換えたんぱく質を有効成分とする医薬品でございまして、一方で、ジェネリック、いわゆる後発医薬品の構造は、単純な化学式であらわされ、先発品と同一の構造であるのに対して、バイオ後続品の方は、この構造は複雑でありまして、先行品と同一のものではないために、後発医薬品と異なり、同等性、同質性を判断するために、先ほど申し上げた治験が必要だというものでございます。

 バイオ後続品を含めた後発医薬品全体の数量シェアというのが、現在、平成二十五年の九月調査で四六・九%になっておりまして、これを平成三十年三月末までに六〇%以上とする、こういう目標を掲げておりますロードマップ、正確には後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップを、平成二十五年四月、おととしに策定しているところでございます。

 バイオ後続品のみの数量についての目標というのは特に今はございませんけれども、今申し上げたように、ジェネリック全体というか、後発医薬品全体では六〇%という目標を平成三十年の三月末にターゲットとして持っているということでございます。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 今、塩崎大臣がおっしゃったことを繰り返して言うと、二〇一七年度末までにジェネリック医薬品のシェアを六〇%以上と。私も医療の現場を知る者としてジェネリック医薬品の積極的な導入を大歓迎しておりますし、財務金融委員会でも、麻生大臣に御質問したところ、このターゲットを上げていく、そういった答弁もしていただきました。

 ジェネリック医薬品が世間をにぎやかしたのは本当に少し前の話でして、おっしゃるとおりに、特許期間が満了後に厚生労働大臣の承認を得て製造販売される医薬品のことです。要するに、開発費が大幅に削減できて、新薬と同じ成分、同等の効き目であれば薬の価格を低く抑えることができるというわけなんです。

 少し気になったのは、厚労大臣、塩崎大臣、ジェネリックの中でバイオシミラーの中の数値目標というのは決まっていないがとおっしゃったんですけれども、私の認識では全然別物として捉えています。というのは、大臣、治験が必要と今おっしゃったわけなんですよ。ということは、このターゲットの中に入っていないはずなんですけれども、その点はいかがですか。

塩崎国務大臣 これは先ほど申し上げたように、バイオ後続品も含めた後発医薬品全体の数量シェアを平成三十年、これから三年ですか、の三月末までに六〇%以上にしようという目標をこのロードマップで策定しておりまして、これは、バイオ後続品もこのジェネリック全体の中に入っている、それを含めて六〇%にしようというふうになっていると理解しております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。おっしゃることはわかるんです。

 この二〇一五年自体、バイオ医薬品の特許が続々と切れ始める年なんですよ。だから、バイオの後続品、バイオシミラーが脚光を浴びるのはまさにことしではないかと私は確信しているわけなんです。

 遺伝子組み換えとか細胞培養といった、そういったことをやろうと思えば、かなり大きな施設が要るわけです。今、政府で、再生医療の新しい法律が施行されるということなんですけれども、そういった場合も、細胞培養の施設が要るということで、各企業は今かんかんがくがくとそういった議論なり対策をしているところなんですけれども、日本において、そういったバイオのきちっとした施設がないんですね。研究開発も全部外注でやっています。かつ、世界におけるバイオ医薬品のシェアもほとんどが海外、日本の製品というのはほとんどないに等しいわけです。

 バイオの医薬品の後続品で、ジェネリック医薬品と同等に低価格に設定されているこのバイオシミラーが一般的に定着すると、医薬品の負担額は軽くなることは間違いないと確信しているんです。

 先ほど、ジェネリック医薬品の中にバイオ後続品を含めて六〇%とおっしゃいましたけれども、やはりさらなる医療費の削減のために、バイオシミラーにも、別建てとしてそのシェアの目標設定というのを決めた方がいいというのが私の質問の趣旨なんですけれども、この点はいかがですか。

塩崎国務大臣 先生御指摘の点は、バイオシミラーだけのシェア目標も設定すべし、こういうことだと思います。

 先生御指摘のように、価格差においても、先行品と比べますと、このバイオ後続品の場合には大変大きいわけでございますし、何よりも、治験が必要だということとも関係しますけれども、医療費の効率化の観点から必要だという今の点と、臨床上の必要性に応じて使用するしないの医師の判断が大変重要で、その適切な御判断のもとで使っていただくということが大事だというふうに思います。

 平成二十五年に策定されましたロードマップの中には、バイオ後続品だけのシェアというのは今目標値が設定はされておりませんが、今申し上げたように、医療費の効率化の観点、そしてまた適切な医師の判断による使用が医療の発展にもつながるということで大事だということにおいては、そのとおりだと思います。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 医師の判断が必要、特に専門医の判断を必要とするというところで、では、なぜジェネリックとの違いがあるかということで、補足と言うとおこがましいですけれども、がんとか関節リウマチなど、生命への影響が強く、処方される際に必要だからという、そういった意味でおっしゃったと思うんです。

 今回のバイオシミラーの話をさせていただいたポイントとしましては、アベノミクスの三本目の矢の成長戦略を、我々維新としてぜひともそれを後押しするのであるのならば、やはり規制緩和なり現行制度の改革が必要だと思うんですね。

 今、日本の医療費の負担の中に、高額療養費制度というのがあると思うんです。もちろん、そういった患者さんの負担を減らす意味というのは大事ですし、難病の治療、生命の危険にさらされている患者さんを手厚くするというのは非常に大事なんですけれども、一定額以上の医療費は高額療養費制度によって国が負担してくれるわけです。だから、生物製剤、つまりバイオ医薬品というのはもともとが高額であるために、バイオ後続品、バイオシミラーを使っても、やはりある程度高額療養費制度に頼らざるを得ないわけです。

 患者さんにしたら、同じであれば先発の方を使いたい、もしくは、そのこと自体を知らない。患者さんがどちらを使用しても、バイオ医薬品とバイオシミラーどちらにしても、患者負担が変わらないのであれば、この普及というのはなかなか難しいと思うんですね。

 国が支出する高額療養費というのは年々増加をしています。十年前は八千億円だったんですけれども、今は二兆円を超えておりまして、ここ十年で倍増しているんですね。

 同じ効能、同じ安全性、これを前提にしまして、患者さんの負担が、国民の皆さんの負担が変わらないのであれば、やはり、みずからの懐に関係がないために、患者さん主導でバイオシミラーを普及させることが難しいと思うんですね。

 これは、今回厚労委員会で議論される、いわゆる選択療養の話とはまた全然違います、あれは自費ですから。患者サイドから、高額医療費や公費削減に対して、このバイオシミラーを、今言った高額療養費との関係で何かよい方法はないものか、検討というのはいただけないでしょうか。

塩崎国務大臣 これはバイオシミラーの使用促進という意味ですね。

 今、高額療養費制度のお話がございました。国が負担をするといっても、これは保険料と税金でございますので、療養費として高額なものについて払わなくてよくなるというメリットは、誰かの負担で賄われているということもまたこれは事実でございまして、医療費そのものには変わりがないわけであります。

 したがって、先生がおっしゃるように、バイオシミラーをできるだけ使った方が、医療費全体、つまり国民負担も減り、なおかつ、医療の効果は先生御指摘のようにこの後続品で同じわけでありますから、それは治験でも確認をされた上でバイオシミラーになるわけでありますから、そうなると、できるだけ厚労省としても後発医薬品全体の使用を促進することは、もう皆様方も同じお考えだと思いますけれども、このバイオシミラーについても同じであって、そうなると、何らかのインセンティブがあるべしということでその考えをというお話ではないかなというふうに思うわけであります。

 それについてはできる限り、ですから、自然な形でという意味においては、インセンティブを診療報酬を通じてこのバイオシミラーに対して与えるということで、診療報酬において、現在も、バイオ後続品も後発医薬品として取り扱って、後発医薬品の使用促進の中にも入っているということであります。

 今、保険適用されているバイオ後続品は四成分ということになっておりますが、これをさらに具体的に申し上げれば、全ての医薬品の採用品目数のうち、後発医薬品、いわゆるジェネリック医薬品の割合が高い医療機関については、その割合に応じて入院基本料に加算を行って点数をつけているというインセンティブが一つございます。

 もう一つは、DPC対象病院、つまり急性期の入院医療の定額報酬算定制度、これがDPCというわけでありますけれども、その対象病院についても後発医薬品の使用割合に応じた診療報酬上の評価を行っておるところでございまして、いわゆる急性期でありながら一日当たりの包括払いをしているところでもそういったインセンティブをつけているということでございます。

伊東(信)委員 今大臣は、日本のバイオの後発品は四製品しかないとおっしゃいまして、そのこと自体は間違いはないんですけれども、逆に、バイオ医薬品、そもそもの、もともとにあるバイオ医薬品なんですけれども、一九八〇年代には、日本も、世界の市場におくれまいとするために非常に開発が進んだんですよ。だけれども、武田薬品さんも含め、そこから撤退して、結局は、今の現状、ほとんどの市場が海外の製品だったというわけなんですね。

 つまり、最初、日本の技術を考えて、日本の企業の体力を、一九八〇年代の体力を考えて、特に抗体の医薬品に関しては日本企業はフロントランナーのポジションであったんですね。だけれども、現実は、商業化の果実を得ることなく、今、後塵となっているわけなんです。

 文科省の範囲になるのかもしれないんですけれども、あえて私は、いわゆる死の谷の、デスバレーの解消ということで、常々臨床と研究を一つにつなぎたいということで、塩崎大臣にお尋ねしたいんですけれども、政府の視点で見ると、この研究分野における国としての開発戦略、これの不在が一九八〇年代にはあったと思うんです。では、今度、その治験も、後発品であっても治験が必要であるのならば、やはり国としての開発戦略、これこそ成長戦略になると思うんですけれども、大臣の御所見というのをお教えいただいてよろしいでしょうか。

塩崎国務大臣 医薬の専門ではない私になかなか難しい御質問でございますけれども、いずれにしても、今、安倍内閣として、医薬品の開発促進というのは大きな政策の柱の一つでございまして、かつて、アメリカのNIHの機能を日本でもということで、新たな機構がこの四月からまたスタートをして研究開発を促進しようということでもあり、先般、いわゆる研究開発税制、少し手直しはしましたけれども、研究開発に対する、国として税で応援をするということに関しての重要性は、何ら基本は変わっていないというふうに思います。

 また、先ほど先生御指摘のように、旧薬事法の改正あるいは再生医療の法律も、議員立法そしてまた政府からの提案と、続いて成立をしていることもあり、先生今おっしゃるような、高額ではあるけれども大変大事なバイオの医薬品に、今度、それが確立したところで後続品を開発していくという、その安全性も治験で確認をしながらやるということは大変大事なことであります。

 大学の改革も今進めていることでもありますから、こういった、大学を含め日本の中で新しい医薬品が開発されていくということは非常に大事だし、これからの、先生おっしゃった、成長戦略というお話がありましたが、成長戦略の中で医薬品は大変大きな柱でありますし、また、非常に力ももともと日本にはあるところでもございますので、さらに伸ばしていこうということで、いろいろな環境整備を、規制改革を含め、やっているというところではないかというふうに理解をしております。

伊東(信)委員 積極的にお取り組みいただくという決意のほどは十分おうかがいできます。

 その上で、あえて御質問したいわけなんですけれども、かつて経産委員会で、僕がそのときの茂木大臣にお尋ねしたのは、要は、研究開発は文科省で、臨床応用は厚労省、製品になるときは経産省ということなんですね。ここがワンストップにならない限り、日本の成長戦略というのは海外には勝てるわけがないということなんです。

 FDAの話は出ませんでしたけれども、NIHその他の話も出ましたけれども、そのときに、私はそのとき経産委員会だったので、経産大臣、これをリードしてくれるのは経産大臣ですねと言ったら、はいとおっしゃったんですけれども、ここはやはり、現役医師の立場で、心情的には、臨床ということで厚労大臣の塩崎大臣にリードしていって、死の谷、デスバレーを解消していただきたいんですけれども、ワンストップの各省庁間の横串のことに関して、厚労大臣はどのように捉えられていますでしょうか。

塩崎国務大臣 先生は死の谷というお言葉をお持ち出しになられましたけれども、特にベンチャー、新しい企業をつくっていくときの大事なことは、このベンチャー、エコシステムのように、切れ目のない支援が官民を問わず必ずつながっていくということで新しいものが生み出され、それが育って、またそれが実を結び、種を落とし、そしてまたそれが回っていくという、エコシステムのようなものが大事だというふうに私は思っておりますし、我が党の中での成長戦略の際にも、ベンチャーの大きな柱として、切れ目のない支援が大事だと。

 これは、官だけでやろうと思っても、それは難しい話であって、シリコンバレーなんかは、官の力はほとんどなくて、民の力でエコシステムができ上がっているというふうに私は理解をしています。

 したがって、官も有効に機能できるときにはやはりやらなきゃいけないので、そこで先生が今おっしゃった横の連携という、どこかの一カ所だけで全部エコシステムを回すということは多分私は不可能であろうと思いますので、横の連携というのが極めて大事で、これがうまくいくとともに、民間も自然な形で官とも一緒になってエコシステムを構成していくということが大事なので、そこに配慮をしていくことが、我々としても、成長戦略としても、よく考えていかなきゃいけません。

 これから、地方創生ということで、地方で新しいベンチャーを生み出すためにも、そういうようなシステムをつくっていくことが大事で、その際の官における横の連携、これは極めて大事だというふうに思います。

伊東(信)委員 産官学一体の話をしていただきまして、あえて、ちょっと産官学の方はしなかったんですね。私自身、今、大阪大学の臨床医工学の准教授もやっていまして、その産官学の話は各アカデミアにおいて取り組んでいる、その際に、官に持ち込んだときの各省庁間のことを申し上げたかったわけなんです。このことは、以前、麻生大臣は、そのことを解消していかなければいけないという答弁もいただいたんですけれども。

 本当に、繰り返しになりますけれども、財政健全化の柱の一つに、医療費の削減があると思います。この二〇一五年、バイオ医薬品の特許が切れていきますので、まさにバイオシミラーの元年になるのではないかと私も捉えております。

 医療費の削減の中心を担う可能性があるのがバイオシミラーの普及であると思いますので、この普及のために、医療費削減のために、党派を超えましてバイオシミラーの議連も今期立ち上げる予定ですので、数少ない医療現場を知る現役の医師の立場から、社会保障費の抑制や、そして財政の健全化に対し積極的に提言をして、日本のために、少しでも前進できるように頑張っていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

大島委員長 これにて伊東君の質疑は終了いたしました。

 次に、真島省三君。

真島委員 日本共産党の真島省三です。

 中小・小規模企業の経営を守る対策について質問をいたします。

 まず、二月四日の予算委員会で、我が党の塩川議員に対し安倍総理が答弁された内容について、幾つか掘り下げたいと思います。

 総理は、二〇一四年の倒産件数は二十四年ぶりに一万件を切って、大企業だけではなくて、中小・小規模事業者の事業環境はよくなりつつあると、アベノミクスの自慢を繰り返しております。これは、東京商工リサーチが集計した二〇一四年の倒産件数九千七百三十一件を指しているんですけれども、ここで言っている倒産件数は、負債総額一千万円以上のものだけで、しかも、休廃業、解散件数は含まれておりません。

 最初に、中小企業庁長官に伺います。

 二〇一四年の休廃業、解散件数は、東京商工リサーチ、帝国データバンクの集計で、それぞれ何件か。件数だけ端的にお答えください。

北川政府参考人 お答えいたします。

 東京商工リサーチ社の「休廃業・解散企業」動向調査によりますれば、二〇一四年の休廃業、解散件数は二万六千九百九十九件でございます。

 一方、帝国データバンク社の全国「休廃業・解散」動向調査によりますれば、二〇一四年の休廃業、解散件数は二万四千百六件となっております。

真島委員 休廃業、解散は、倒産の二・八倍あるんですね。しかも、この三年間の件数は、過去十年のうちで最高レベルで推移しています。しかも、ほとんどが地域経済を支えてきた小規模事業者です。

 宮沢大臣、この事実を見て、中小・小規模事業者の事業環境はよくなりつつあると言えますか。お答えください。

宮沢国務大臣 おっしゃるように、休廃業、解散件数がこの十年間で増加基調にあることは事実であります。この理由は、やはり、経営者の高齢化が進み、体調や事業の先行きに対する不安を感じる方がふえているということが、どうも原因のようでございます。

 その事業環境がよくなりつつあるかという御質問でありますけれども、それぞれの企業によってもちろん状況は違うと思いますけれども、恐らく、一番ある意味で象徴的なのは、有効求人倍率が大変上がってきているということだろうと思っておりまして、二〇一二年、〇・八だったものが、今、一・一四まで来ている。ということは、かなりたくさん仕事があるという状況が中小企業にも起きていないと、こういうことにはならないわけでありまして、そういう点を考えますと、事業環境はよくなりつつあると私は思っております。

真島委員 二月四日の予算委員会で総理は、倒産件数が二十四年ぶりに一万件を切ったことをもって、中小・小規模企業の事業環境はよくなりつつあるとおっしゃったんです。

 ですから、ちょっと調べたんですけれども、倒産件数は、二十四年前の一九九〇年が六千四百六十八件。二〇一四年が九千七百三十一件。しかし、この間、企業数が約五百二十三万社から約三百八十六万社に激減しています。つまり、企業数に対する倒産件数の割合で見れば、二十四年前の倍以上に悪化しているんです。

 先ほど紹介した東京商工リサーチの調査では、二〇一四年の企業倒産の減少ぶりは確かに際立っているけれども、一方で後継者難や事業不振などから休廃業、解散は高水準で推移している、中小零細企業の経営実態の把握には休廃業、解散の動向も勘案する必要があると指摘しています。さらに、最近の急速な円安による原材料価格の上昇でダメージを受けている企業も多いことから、休廃業企業が増勢する懸念を払拭できないと指摘しております。アベノミクスが中小零細業者の苦境に追い打ちをかけているじゃありませんか。

 総理は、為替の是正で中小・小規模事業者の仕事量が間違いなくふえているとおっしゃいましたけれども、これも現場の実感とは正反対です。

 宮沢大臣、仕事量がふえているというその根拠を示してください。

宮沢国務大臣 経産省の行った調査でありますけれども、前年同期に比べて商売の引き合いが増加したと答えた企業から減少と答えた企業の割合を引いた数値、いわゆる引き合いDIというものがございます。二〇一二年の平均はマイナス一八・六でありましたものが、二〇一四年の平均はマイナス四・一と一四・五ポイント改善をしております。

 まだマイナスではないかというお話があろうかと思いますけれども、二〇〇五年以降の状況を調べてみますと、たしかリーマン・ショックの前というのはかなり経済の調子のよかったときでありますけれども、現在はそれをかなり超えて引き合いが来ているという状況でございますので、仕事量としては間違いなくふえているんだと思っております。

真島委員 今おっしゃったのは年の平均値なんですけれども、二〇一四年の四半期ごとの値はどうなっていますか。

北川政府参考人 数字をお答えいたします。

 引き合いDIを四半期別に見ますと、二〇一四年第一・四半期プラス五・一、第二・四半期マイナス五・六、第三・四半期マイナス七・二、第四・四半期マイナス八・七、このような推移を示しております。

真島委員 今おっしゃったように、足元では悪化しているんですね。

 取引についての問い合わせ数です、この引き合いDIというのは。これはあくまでも印象なんですね。実態を示す鉱工業生産指数で見ますと、足元で予測値を大きく下回る水準になっております。

 総理は、アベノミクスの成果によって企業の経常利益は過去最高となって、そのもとで好循環が生まれているとおっしゃいましたけれども、中小企業庁の昨年十月の調査では、中小・小規模企業の半数くらいがここ一年で経常利益が減ったと答えております。

 中小企業庁長官にお尋ねします。

 中小・小規模企業は、利益が減った要因として何を挙げておりますか。

北川政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘の調査でございます。これは、中小企業、小規模事業者の、原材料、エネルギー価格の上昇により収益の圧迫を受けている、こうした声を受けまして、経済産業省で昨年十月に調査を行ったものでございます。このころは、まさに原油価格が現在よりかなり高い水準にあったような、そういう状況でございます。

 これによりますと、経常利益が一年前と比べて増加と答えた企業は三八・八%、減少と答えた企業は四七・六%となっております。

 経常利益が減少した企業の減少の要因につきまして、原材料、エネルギーコストの変化と答えた企業の割合が六二・九%と最も多くなっております。次に多い要因が売上高の変化で、五四・〇%となっております。

真島委員 今おっしゃったように、多くの中小・小規模企業が、原材料、エネルギーコストを転嫁できていない上に消費税増税で売り上げが減って、二重に苦しめられているというのが現状なんですね。

 帝国データバンクが二月五日に公表した円安倒産件数は、十三カ月連続で前年を上回っています。

 私、トヨタ自動車九州の工場があります福岡県の直方市や私の地元の北九州市で、町工場の皆さんから話を聞いてきました。直方は麻生大臣の地元でございます。

 その中で、ある社長さんが、消費税を転嫁できても、一度下がるところまで下がった単価は上がらないので利益は出ない、賃上げどころじゃないとおっしゃいました。別の社長さんは、消費税分の転嫁はできているけれども原材料分は無理だ、単価がここ何十年も変わっていないというふうにおっしゃいました。もう一人の社長さんは、仕事をしたくても仕事がない、家族を養えないので息子に継がせられない、自分の代でこの工場も終わりだというふうにおっしゃったんですね。これが地方の町工場の声です。

 皆さんのいろいろ出している数字を拝見しますと、アベノミクスの成果を強調したいがために、都合のいい数字ばかり拾い集めているように見えます。実態は、多くの中小・小規模事業者が追い詰められて、地方はアベノミクス不況という状況にあると思いますけれども、麻生大臣にこれはお聞きします。どう受けとめておられますか。

麻生国務大臣 たしか地元は八幡だったね。隣の町の直方まで足を運んで、熱心なことで結構ですわ、本当に。県会議員のころと違って大分勉強されたんだと思って、改めて評価しますけれども。直方なんて名前は普通の人は読めぬしね、あれは。こういうところで直方の名前が出たのは多分三十二年ぶりだな。本当に、正直、懐かしく聞いていましたけれども。

大島委員長 個人的なことは別にして、御答弁ください。

麻生国務大臣 今言われましたように、地方でいろいろまだ問題があるのも確かですよ。地域によって差がある、業種によっても差がある、企業の大きさによっても差がある、それはもう間違いなくそういった差があるので、今は、景気が回復しつつある途中においては、そういったことにどうしてもならざるを得ない一時期ではあろうとは思いますが、間違いなく、今言われましたように、先ほど経産大臣から答弁があっておりましたが、有効求人倍率等々全て上がってきておりますし、また、現金の給与総額というのも名目で上がってきたと思いますので、地方でも、いろいろな意味での、都市部以外の地域でも、これは前年比プラスとなっている等々あります。景況感を見ましても、多くの地域で、都市部でもよくなってきていると思いますので、あの消費税の引き上げた後の分の、今、例のQEのあれを見ましても、あれで底かなと思います。

 そういった意味では、今後とも、各地で今からそういったものが実感されるように、いわゆる補正とか本予算等々が実施に移されていく段階で、はっきりした形で地方でももっと見やすく出てくるようになると思っております。

真島委員 いろいろ今政府も対策をされているわけなんですけれども、今やっておられる対策というのは、アベノミクスが招いた円安、原材料高や消費税の大増税という、中小・小規模企業に与えている被害を緩和しようとしているだけの小手先の対策に見えます。これでどうやって日本の重層下請構造の末端にある中小・小規模企業に賃上げできるだけの利益が出るんだろうかなと思うんですけれども、その点について、トヨタ自動車とその下請企業を例に伺いたいと思います。

 配付資料をごらんください。

 グラフの下の表にあります数字は、トヨタ自動車の当期純利益の額です。〇一年度の六千百五十八億円から右肩上がりで、〇七年度には二・四兆円になっています。〇八年度はリーマン・ショックの影響で五千六百四億円の赤字になりましたが、翌年には黒字回復、二〇一三年度には二・四兆円と、わずか四年でリーマン・ショック前の水準までV字回復しております。そして、二〇一五年の三月期、第三・四半期の当期純利益は二兆九千二百億円と過去最高額が見込まれております。

 真ん中の黒い棒グラフは、〇一年度以降の原価改善額をずっと積み上げていったものなんですけれども、トヨタは、グラフの下に矢印がありますけれども、その矢印のように、二〇〇〇年の七月に、主要百七十三品目の原価を三〇%低減して世界最安値を実現するというCCC21を提唱して以来、BT2、これはブレークスルートヨタ、VI、バリューイノベーション、RRCI、こういう原価改善策を相次いで進めてきました。〇四年までの五年間で一兆円の削減を実現し、さらに、〇五年からは年三千億円以上のコスト削減を目指すというすさまじい原価改善を行いました。

 春と秋の年二回、下請に対し、部品価格を半年前よりも一%から一・五%値下げすることを要求してきたんですね。二〇一一年の十月からは、これに加えて、円高協力の名目で、従来の原価改善に加えて一・五%の追加値下げまで要求をしております。

 この十四年間の原価改善額、積み上げを見ていただきますと、三兆九百億円にもなるんですね。下請業者自身も、作業工程の効率化など、必死のコスト削減の努力をしております。本来、この努力は下請業者の皆さんの利益にならなきゃいけないんですけれども、作業効率が上がったら単価を下げられるんです。下請の努力を全てトヨタが吸い上げるという構造になっております。

 宮沢大臣、こういうところを是正しないと、下請の中小・小規模企業での賃上げにつながらないんじゃないでしょうか。

宮沢国務大臣 今おっしゃいました自動車産業というのは、五百万人を超える雇用を確保している大変大事な産業であります。

 まず、自動車産業の持続的な発展のためには、取引の各段階において原材料やエネルギーコストが適正に転嫁がなされるとともに、完成車メーカーと部品メーカーなどが一体として、改善による原価低減、共同開発に取り組むことが重要であり、それこそ我が国の自動車産業の競争力の源泉であります。まさに、成果が適正にシェアされていくということは極めて重要だと思っております。

 こうした認識のもとで、自動車産業適正取引ガイドラインというものをつくっておりまして、消費税転嫁対策や電気代のコスト上昇分の転嫁などを進める観点から、フォローアップや、昨年の十二月にも改定を行っておりまして、全国で説明会を開いております。

 一方、昨年十二月の政労使会議では、取引企業の仕入れ価格の上昇などを踏まえた価格転嫁や支援、協力についても総合的に取り組むとの合意をしているところであります。

 私といたしましても、自動車各社の収益を取引先に幅広く還元されていくことは大変重要だと思っておりまして、昨年十一月と本年一月、自動車経営のトップの方に対して直接要請をいたしましたし、特に、一次下請だけではなくて、さらにそれが広がっていくように努力をしてほしいということを直接申し上げました。

 これらを受けまして、トヨタは、二〇一四年度下期、二〇一五年度上期の二期連続で、値下げ要請は行わない方針を決定したと聞いております。

真島委員 今おっしゃったように、年二回実施していた下請への値下げ要求を二期続けて見送るとトヨタの方で表明されたわけなんですが、これで、甘利大臣がおっしゃっていましたけれども、好循環を大企業から中小企業に展開しつつある、大企業は範を示していただいたと。宮沢大臣も同じ受けとめなのかと思いますけれども、これは、本当に現場はそんなに生ぬるくないですよね。

 私は、トヨタの車のシートの縫製をしている下請業者さんからお話を聞きました。親会社が乗り込んできて、ストップウオッチを持ってきて、そして縫った布の長さをはかって、非常に技術が要る立体縫製、そういうものは抜きにして、長さと時間だけで一枚四百三十円の単価を百二十円にされたというふうにおっしゃっているんですね。こういうことが日常的に行われています。

 今、原材料とか電気代のコストもふえる中で、下請単価を据え置くだけでは切り下げと同じなんですよ。これでは大企業が範を示したと言えないんですね。本当にピラミッドのような重層下請構造の頂点にあるトヨタの鶴の一声で、二次、三次、四次と、末端までずっと一方的に単価が切り下げられる。

 宮沢大臣に聞きますけれども、こんな、まるで買いたたきのようなやり方は是正させないと、下請の中小・小規模企業は賃上げどころじゃないというふうに思うんですけれども。

宮沢国務大臣 その辺の問題意識も私自身持っておりまして、トヨタ自動車と話したことがございます。

 トヨタ自動車がそのとき私に言っていたことというのは、まさに、自分たちも乗り込んでいって、その会社の技術者と一緒に改善の努力をする、そして、その半分を取引価格の引き下げ、残りの半分は下請、納入業者の利益というふうにしているんだというような説明をしておりました。ただ、本当に末端の方に行ったときにそうなっているかどうかは、私も自信はございません。

 一方で、こういう問題につきましては、やはり、しっかりとした転嫁というのは当然やらせなきゃいけないわけでございますので、まず、下請取引ガイドラインに取引の模範事例を追加するなどの改定を年度内をめどに実行いたします。そして、産業界に要請しようと思っております。

 また、下請代金法に基づきまして、本年度末までに、約五百社の大企業への集中的な立入検査を行うこととしております。しっかりフォローしたいと思います。

真島委員 まさに、今おっしゃったように、末端までいかに利益の還元を届けるかということなんですね。

 その点で公取委員長にお聞きしますけれども、下請代金法は、資本金三億円以上の親事業者と下請業者、一千万円以上の親事業者と下請業者、この取引しか適用になりませんから、例えば、トヨタ自動車の四次下請の方が直接トヨタを訴えることはできないんですね。

 重層下請構造のもとでの優越的地位の濫用ということに対して、下請代金法の親法である独占禁止法を適用して、もっと規制を強化する必要があるんじゃないでしょうか。

杉本政府特別補佐人 お答えさせていただきます。

 重層的な下請構造におきましては、取引段階が下層になるほど、下請業者に対して厳しい環境となりやすいということは十分理解しております。このような環境に置かれました下請事業者の保護を図るために、従来から下請法を厳正に執行しているところでありますが、下請法の適用対象除外でございます取引につきましても、独占禁止法上の優越的地位の濫用に当たる場合には、これに対して厳しく対処していく所存でございます。

真島委員 私、愛知県に行って、トヨタ自動車の下請の社長さんから話を聞いてきました。

 ある社長さんは、単価なんてこの値段でやれ、嫌ならやめていい、ほかにやるところは幾らでもあると言われて、それで終わりです、国に訴えたら仕事を切られてしまうとおっしゃいました。

 別の社長さんは、円高のときには一ドル八十円で単価設定しないとトヨタが潰れるから協力しろと言われたが、今、トヨタは円安でぼろもうけしているのに何の還元もないとおっしゃっていました。

 もう一人の方は、設備投資を勧められて三千万円、五千万円の機械を入れても、それで生産効率が上がれば何分何秒単位で単価を下げられる、トヨタは設備の減価償却のことも考えてくれないと言っていました。

 下請単価の基準の決め方については、下請中小企業振興法の第三条で、下請中小企業の適正な利益を含み、労働時間の短縮等労働条件の改善が可能となるよう、下請事業者及び親事業者が協議して決定するものと定められております。

 ところが、下請の方から話を聞きますと、帳簿上は消費税も原材料費も転嫁したことになっていても、消費税が八%になるときに三%単価を下げられたというんですね。取引を継続したければ、利益も出ない、賃上げもできない、こんな単価の切り下げに応じるしかない。こういうやり方が末端で横行しているんですね。下請の側から協議の余地がないんですよ。

 宮沢大臣に聞きますけれども、下請代金法で重層的下請構造に対応した規制が、今おっしゃられたように、できないんですね。だから、下請振興法に実効性を持たせて規制を強化するという方向に踏み出していかなきゃいけないんじゃないでしょうか。

宮沢国務大臣 下請中小企業振興法では、まず、親事業者と下請事業者との取引関係改善のための振興基準を定めております。この基準に実効性を持たせるためには効果的な普及啓発が極めて重要だと考えておりまして、本年度は全国で約百五十回の講習会、昨年十月には約七百四十五の業界団体に対し振興基準に基づいた取り組みを実施するよう文書で要請したところであります。

 今、御質問は、このような中でガイドラインを定めておりますけれども、これを強制的なものにしたらどうかという御提案かと思いますけれども、いろいろな取引の実態がありますので、これを強制的にするということについては幾つかの問題点があろうかと思っておりまして、私どもとしましては、ガイドライン等をお示ししておりまして、できればこれを守っていただきたいというようなことで、講習会等々で対応させていただいております。

真島委員 一番末端で、本当に下請振興法が言っているような適正な単価になっているかどうかということ、それがまず問題だと思うんです。

 私がお話を聞いた下請企業の方は、一人の方は、単価を時給計算したら七百円程度しかなく、これではパートさんの最低賃金分にもならない、経産省からアンケート調査が来るけれども、この実態をわかっているのかと。もう一人の方は、公取から書面調査が来た、材料費、加工費、人件費、機械の償却費などを積み上げてやっと利益が出る適正な単価になる、その適正な単価もわからないような書面調査で何の意味があるのかというふうにおっしゃいました。

 宮沢大臣にまた聞きますけれども、こういう重層的下請構造の中で、下請振興基準をどうやって実現しますか。末端の小規模企業でも、適正な利益を含んで、労働条件の改善が可能になる単価になっているかどうか、これを基準にして、下から上に積み上げていくように決めていかなければ、いつまでも末端は適正な単価にならないんじゃないかと思うんですよ。ちょっとお答えください。

宮沢国務大臣 今ちょっと御質問の意味がいま一つよくわからなかったんですけれども、末端から、ある意味では、必要なコストプラス適正利潤ということで積み上げていくということになりますと、納入される側の業者からいいますと、逆に言えば、そういう積み上げで一番安い業者さんを選ぶということをやる、いわゆる競争入札的なことになってしまって、逆に大変競争が厳しくなるんじゃないのかなというのを、実は伺っておりまして、印象を持ちました。

真島委員 中小企業庁が、一九八三年以降四半期ごとに、下請企業短期動向調査というものに基づいて、下請受注単価前年同期比指数の推移というのを出しているんですね。ところが、これは二〇〇五年の九月でやめたままなんです。重層下請の末端まで利益が還元されて、下請振興法に基づく適正な単価になっているかどうか、今調べてもいないんですよ。

 配付資料の中に白い棒グラフがありますけれども、トヨタ自動車が二〇〇一年度以降新たに積み上げた利益剰余金、トヨタが総額三兆円を超える原価改善を実行していた二〇〇一年度から二〇一四年度の間に利益剰余金を約八・五兆円積み上げております。

 中日新聞も、昨年十一月の社説で、超円高のとき為替対応を名目に値下げ要求をしたんだから、今回はトヨタが下請を支援する番ではないかと、単価の引き上げを提唱しているんですね。

 大企業は、乾いたタオルを絞るように下請単価を引き下げて、空前の利益を上げて、内部留保を積み上げてきたのに、利益を生み出した中小企業にきちんと還元してこなかったんです。ここを正さないと、中小・小規模企業での賃上げにはつながりませんよ。昨年十二月二十日の政労使会議の合意では、下請関係を含めた企業間取引において、取引価格の適正化に努めるとあります。

 麻生大臣にお聞きします。

 下請の中小・小規模企業でも賃上げができるように、大企業に対して単価の引き上げを強く求めていくべきではありませんか。

麻生国務大臣 先生よく御存じのように、うちは共産主義じゃなくて自由主義でやっていますから、だから、政府が企業に対して幾らにしろということが言えるような状況にないのは知った上で聞いておられるんだと思います。

 その上で、私どもは、少なくとも、先ほど例を引かれましたけれども、企業の中で見れば、労働分配率、組合におられた方はこの単語はおわかりと思いますが、労働分配率が下がっているんですよ、間違いなく、昔に比べて。その労働分配率の内容が問題なんだと思うんですが、間違いなく、内部留保がどんどんどんどんたまって、この一年間で二十四兆円ぐらいふえています。

 そういった意味では、そのものを少なくとも企業の賃上げに回してくださいと、政府が経営者に頼むんですよ。だけれども、これは、普通は組合が企業に頼む、それを、政府が経営者に頼む、これはどう考えてもおかしいでしょうがと私自身は思いますよ。思った上で、そう言いましたから、みんなの前で。議事録にも残っていますから。

 しかし、今は非常事態。間違いなく過去七十年で一回もないようなデフレを食らっているんですから、非常事態だという御指摘でありましたので、おりますといって私はおりて、それで、そのときに同時に申し上げたのは、取引企業の仕入れ価格の上昇等も踏まえた価格転嫁や支援、協力についても総合的に取り組んでいただきたいという話も、賃上げと同時に申し上げました。

 これは、それをやらないと、今度は孫請、ひ孫請のところが、その利益が出たことによってそこで賃上げが起きますので、そういったようなこともあわせてお願いしたいと申し上げて、最後にもう一回言っておきますけれども、これは強制じゃありませんからね、ここは自由主義経済をやっていますのでと言って、最後に、それは重ねて念を押さないと、いかにも命令調で言われるととられるとまた何を書かれるか、かなわぬから、そう申し上げた記憶もありますけれども。

 いずれにしても、今御指摘になられた点は、これはみんなで総合的に考えていかないかぬ大事な点だと思います。

真島委員 もう質問を終わりますけれども、それは、政府が企業に下請単価を幾らにしろと強制なんてできないというようなことは誰でもわかっていますよ。

 もう一つ、直方市の町工場の声で、大企業の注文で、中国であらあらの加工をした部品をその中小企業に持ってきて、最後の丁寧な仕上げの加工をしておりました。精密な加工は、やはり日本の町工場がやっているんですね。こんな日本の宝である町工場のすぐれた技術や技能が失われるということは、大企業や日本経済全体にとっての大きな損失だと思います。

 雇用の七割を支えて、地域経済、地域社会、日本の物づくりを支えている中小・小規模企業が元気になってこそ、日本経済を再生する道が開けてまいります。大企業の利益が下請、中小・小規模企業に還元しないという今の構造を正して、大企業と中小企業の公正な取引や賃上げにつながる適正な単価を保証していくために、ぜひ政治の責任を果たしていただきたいと思います。

 中小企業憲章や小規模企業振興法の立場で、全ての中小・小規模企業に寄り添って、その持続的な発展を支援する施策に抜本的に転換していくことを求めて、私の質問を終わります。

大島委員長 これにて真島君の質疑は終了いたしました。

 次に、本村伸子君。

本村(伸)委員 日本共産党の本村伸子です。

 リニア中央新幹線について質問をさせていただきます。

 初質問でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 昨年十月十七日、JR東海が二〇二七年開業を目指すリニア中央新幹線品川―名古屋間工事実施計画を太田昭宏国土交通大臣が認可をいたしました。

 お配りをしております資料の一をごらんいただきたいというふうに思いますけれども、走行距離二百八十六キロ。南アルプスという壮大な山々を貫通するトンネルで穴をあけ、八六%がトンネル。そのうち、大都市部の五十五キロが大深度地下トンネル。品川―名古屋間を最高時速五百五キロ、四十分で結ぶ、総事業費五兆五千二百三十五億円という事業です。さらに、二〇四五年開業予定の大阪までは四百三十八キロ。総事業費九兆円にも上る事業です。

 国土交通大臣にお伺いをいたします。

 これほどまでに大規模な事業は、これまでにない、今世紀最大の事業だと思いますけれども、いかがでしょうか。

太田国務大臣 インフラの整備事業の事業費等につきましては、物価変動の影響もあり、また、事業の単位をどのように考えるかということで金額が異なるために、一概に、巨大事業ということ、あるいは今まであったかなかったかということについては、申し上げるという状況にはありません。

 単純には比較はできないわけでありますけれども、例えば、リニア中央新幹線と同様に、東京―大阪間を結ぶ新幹線、これは五十年前にできたわけですが、東海道新幹線の場合には総事業費は約三千三百億円となっています。これは、当時の例えば一般会計予算と比較しますと、その十分の一に上る巨額のプロジェクトでございます。

 また、同じ鉄道事業から見ますと、東京メトロ副都心線の事業費は約二千五百億円ですが、一キロ当たりの単価は約二百八十億円となっておりまして、リニア中央新幹線は一キロ当たり単価約二百億円、こういうふうになっておりまして、それよりも多い金額ということの例はございます。

 アクアラインも総事業費は一兆四千億円、羽田空港の沖合展開及び再拡張事業に係る総事業費は合わせて二兆二千億円、関空の第一期及び第二期事業の総事業費は合わせて約二兆三千七百億円となっています。

 大きな事業であることは間違いないということだけは申し上げたいと思います。

本村(伸)委員 大規模な事業であるということは確認できたと思います。

 大きいがゆえに、南アルプスを貫通するトンネルの難工事や大規模な自然破壊、トンネルを掘ることで発生する膨大な量の残土をどうするのか。静岡県では、大井川の下流域七市二町六十五万人の生活、産業用水の取水量と同じ毎秒二トンの水がなくなってしまう。

 地下水への悪影響や地盤沈下、日本有数の活断層地帯を横断するという問題、災害時の避難対策や、工事の際や走行時の安全性、ウラン鉱床の放射性物質の心配、電磁波の悪影響、過大な消費電力の問題、そもそも採算性があるのかという問題など、さまざまな懸念や疑問の声が上がり、問題が山積をしております。

 昨年、環境影響評価の手続の中で環境大臣が意見を出しました。環境大臣も相当な懸念を表明されておられます。意見の要点をお示しください。

高橋大臣政務官 お答えいたします。

 リニア中央新幹線事業は、その事業規模の大きさから相当な環境負荷が発生するという懸念は、そのとおりでございます。

 具体的には、多大な電力消費に伴う温室効果ガスの排出、トンネルの採掘に伴う大量の残土の発生、御質問がありました。そして、多くの水系を横切ることによる地下水や河川への影響等の可能性が考えられ、これに対しまして、昨年六月の大臣意見では、これらについて十分な環境保全措置を求めております。

本村(伸)委員 環境大臣の意見の中では、「本事業は、その事業規模の大きさから、本事業の工事及び供用時に生じる環境影響を、最大限、回避、低減するとしても、なお、相当な環境負荷が生じることは否めない。」と指摘をされ、そして、「河川の生態系に不可逆的な影響を与える可能性が高い。」ということも指摘をされております。そして、「これほどのエネルギー需要が増加することは看過できない。」こういうことまで指摘をされているわけでございます。

 環境大臣が指摘をされているように、リニア中央新幹線の事業というのは相当な環境負荷を与える今世紀最大の事業で、周辺住民の皆さんへの影響もかつてない大規模なものになります。地権者の皆さん方を初め、関係住民の皆さん方の数も相当な数に上ります。だからこそ、国会でもしっかりと検証をし、議論をしなければならないというふうに思います。

 そもそもということで、資料の二をごらんいただきたいというふうに思います。パネルにもしてございますけれども、これは、リニア新幹線事業と公共事業の適用の違いを示したパネルでございます。

 このリニア新幹線は、公共事業と同じように土地の強制収用ができる、そして、不動産取得税や登録免許税の非課税措置を受けている事業です。事業者にとっては都合のいい制度が適用されます。

 その一方で、薄い黄色い部分ですけれども、住民の皆さんやジャーナリストの皆さんが情報の開示を請求しても、JR東海はこの情報を開示する義務はありません。そして、WTO政府調達協定の対象から外れるということから、一般競争入札でなくてもいい、随意契約でもいいということになっております。リニアに係る工事の入札、落札の情報、契約の情報も、開示する義務はJR東海にはありません。事業評価制度の対象外ともなっております。

 つまりは、事業者であるJR東海の事業を国民の皆さん方が、住民の皆さん方がチェックしようとする、そういう制度や、国がチェックをする制度、透明性を高める制度の適用がないんです。事業を推進する側にとって都合がいい制度は適用されて、事業者を国民の皆さんがチェックしようとする、そういうものが適用はない。

 こういう大きな、巨大な事業でありながら、安倍首相が国家プロジェクトと言っていいという事業でありながら、この事業の進め方は、このあり方はおかしいのではないかと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

太田国務大臣 国などが行う公共事業におきましては、これは税金が投入をされていることから、透明性を確保するということは極めて大事です。このために、工事の入札や契約などのそうした情報につきまして、関係法令に従って公表することにしているところです。

 今回は民間企業であるJR東海が行う工事でありますから、税金を投入するという意味でのいわゆる公共工事ではございません。このために、契約等の公開に関する法令上の適用はありません。

 しかし、今御指摘になりましたように、この中央新幹線の工事では、沿線の生活環境やあるいは自然環境、こうしたことに影響が大変あるというふうに考えておりまして、可能な限りの情報公開に努めることは必要だというふうに考えています。

 このため、昨年の八月に、JR東海の環境影響評価書に対する国土交通大臣の意見ということでは、環境保全に関するデータや情報を最大限公開すること等を述べたところでございます。また、昨年十月の工事実施計画認可の際には、JR東海社長に対しまして、私から直接、地元住民等への丁寧な説明を行って、地域の理解と協力を得た上で事業を進めるようにということを申し上げたところでございます。

 JR東海は、これに従って、昨年の十月以降に市町村単位の説明会を五十一回、そして自治体単位の説明会を百七十四回実施したとの報告を受けているところでございます。

 今後とも、地元の声に十分配慮しながら工事を進めるよう、JR東海を指導監督してまいりたい、このように考えています。

本村(伸)委員 可能な限り情報公開をするとおっしゃっていただきましたけれども、JR東海には情報公開の義務はございません。

 情報公開もせずに、日本の宝である南アルプスの環境を壊し、強制的に土地の収用まで行う、こんなことは絶対に認められないということを申し述べておきたいというふうに思います。

 今世紀最大の事業で、国民の皆さんに秘密にして事業を進めていいのかということが問われているというふうに思います。

 もう一つお尋ねをしたいと思います。大深度地下トンネルの問題です。

 先ほどの資料一を見ていただきますと、ルート上の左端の部分、大深度地下使用申請予定区間というものがございます。リニアは、地下四十メートルよりも深い大深度地下を通る部分がかなりあります。大深度地下法に基づき使用の認可を受けると、地権者一人一人から同意を取りつける必要がないというふうにされております。

 品川―名古屋間でいいますと、東京都内、神奈川県内、愛知県内は大深度地下法の対象地域となっております。山梨県、静岡県、長野県、岐阜県は大深度地下法の対象地域ではございません。

 お伺いいたしますけれども、そもそも、このリニア事業で、大深度地下法の大深度地下の使用の認可の手続は終わっているんでしょうか。

藤田政府参考人 大深度地下の使用に関しましては、事業の円滑な遂行と大深度地下の適正かつ合理的な利用を図ることが求められます。このために、大深度地下の公共的使用に関する特別措置法第十二条におきまして、いわゆる事業間調整の手続が設けられております。

 具体的には、大深度地下使用の認可を受けようとするときは、あらかじめ、当該事業の事業区域またはこれに近接する地下において事業を実施、施行しようとする者との間で事業の共同化、事業区域の調整等を行うこととされておりまして、そのための手続が定められております。

 JR東海は、昨年、平成二十六年三月に、これにのっとりまして、事業の概要を示した事業概要書を作成し、国土交通大臣に送付するとともに、公告縦覧に供したところであります。

 現在、JR東海は、事業区域の調整等の申し出を行った事業者との間で調整を行っている段階と承知しております。

本村(伸)委員 大深度地下法の使用の認可はまだおりていない、申請もまだしていないということを確認いたしました。

 法務大臣にお伺いをいたします。

 土地の権利についてお伺いをいたします。民法上、土地の所有者の所有権はどこまで及ぶとされているでしょうか。

上川国務大臣 お答えをいたします。

 土地の所有権についての範囲でございますが、民法の二百七条に規定をされておりまして、「土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ。」と規定されているところでございます。

本村(伸)委員 土地の所有権は、その土地の上下に及ぶということを確認いたしました。

 そこで伺いますけれども、大深度地下法にかかわって、大深度地下の使用の認可が行われた場合、土地の所有権は及ばない、なくなってしまうのでしょうか。

小関政府参考人 「土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ。」とされております。大深度地下にも土地の所有権は及んでいるものと考えられます。

 大深度地下の使用の認可がされた場合は、大深度地下の公共的使用に関する特別措置法第二十五条の規定によりまして、認可事業者は、当該事業区域を使用する権利を取得し、土地の所有権は、認可事業者による事業区域の使用に支障を及ぼす限度においてその行使を制限されることになってございます。

本村(伸)委員 要するに、土地の所有権はなくなっていないということだというふうに思います。

 資料の三ページ目を見ていただきたいんです。赤の下線が引かれている部分をごらんいただきたいんですけれども、JR東海は、説明会やホームページの中で、大深度地下による「認可を受け使用する場合には、地上の権利が及ばない」というふうに説明しております。

 JR東海は、所有権が及ばない、なくなるかのような間違った説明をしております。事業説明会では、私のところは関係ないというふうに、途中で帰ってしまった方もみえました。丁寧な説明以前の問題だというふうに思います。

 丁寧な説明どころか、間違った説明をしている。これを撤回させ、説明し直させるべきではないでしょうか。

藤田政府参考人 JR東海のホームページの記載につきましては、JR東海によりますと、わかりやすく平易な言葉で説明をしたということで、説明を受けております。

 いずれにしても、JR東海に対しましては、正確で、かつわかりやすい説明をするように指導してまいりたいと思います。

本村(伸)委員 ぜひ、説明し直させるということを約束していただきたいというふうに思います。

 先ほど確認をしましたように……(発言する者あり)時間がないので大変申しわけございませんが、大深度地下の使用の認可はまだおりておりません。申請すらされていない現状でございます。ということは、今現在、リニアルートの地権者の皆さんに対しては、大深度地下ルートの方を含めて、個々に、地下を使用する、そういうことに同意してもらう必要がある段階だということでございます。丁寧な説明、協力、そして理解というのであれば、一軒一軒説明することぐらいは最低限やるべきだということを指摘しておきたいと思います。

 国土交通大臣は、丁寧な説明ということを、日本共産党の国会議員団の繰り返しの質問に対しても何度も答弁されております。確実な実施ということをJR東海に求めておられます。先ほども回数を大臣がおっしゃっていただいたんですけれども、各地で行われているその事業説明会が、本当に丁寧な説明が実際にされているのかということを問いたいというふうに思います。

 私は、名古屋市東区、北区、西区、そして岐阜県の恵那市の行政区、自治体ごとの事業説明会に参加をしてまいりました。そして、地区ごとの事業説明会では、名古屋市の西区那古野小学校、西区江西小学校の事業説明会に参加をし、実際に参加者の皆さんの不安の声やJR東海の回答を聞いてまいりました。手を挙げても質問できない人が相次いで、一方的な回答でございました。とても丁寧な説明とは言えない状況だというふうに私は思いました。丁寧な説明どころか、住民の皆さんをごまかすことまでやっているということがはっきりいたしました。

 私は、先日、リニアの非常口、立て坑が三カ所できる東京都の町田市に調査に行き、本当におかしいというふうに思いました。

 昨年十一月の町田市側のJR東海主催の事業説明会では、町田市と神奈川県の川崎市と隣接する地域の立て坑から土砂を搬出しないということをJR東海は町田市側には明言をしておりました。その一方で、同じく十一月に開かれた川崎側のJR東海主催の事業説明会では、町田市側からの土砂搬出もあるというふうに答えております。JR東海が二枚舌を使って、どちらかにうそをついて、事業を強引に進めようとしています。

 大臣、住民の皆さんが納得していない事業を強引に進めようとしているから、こんなことになるのではないでしょうか。こんなやり方を許していいのでしょうか。お答えください、大臣。

太田国務大臣 いわゆる大深度使用の手続等については、ちょっと鉄道局長に話をと思っておりましたが、ちょっと長くなりますから、時間の関係で恐らく好まないでしょうから。

 私としては、大深度の使用の手続については、まさに大深度地下の公共的使用に関する特別措置法に基づく手続ということで、事業間の調整を行うとか、そうしたことで手続が決まっているということについて、そのままやるということだと思います。

 私としましては、その大深度使用の手続ということにつきまして、今申し上げたようなことの法的な段階があるわけですが、リニア中央新幹線について、昨年十月の工事実施計画認可の際に、私から、JR東海社長に対しまして、地元住民等の理解と協力を得た上で事業を進めるよう、直接申し上げたところでもございます。

 この大深度使用ということにつきまして、国土交通省としまして、JR東海から大深度地下の使用について申請がなされた場合は、大深度地下の公共的使用に関する特別措置法に従って適切に対応してまいりたい、このように思っているところです。

 いずれにしましても、今後の地元の声に十分配慮しながら工事を進めるようにJR東海を指導監督してまいりたい、このように思っているところです。

本村(伸)委員 町田と川崎の説明会について、こんなことを許していいのかと問いましたけれども、お願いいたします。

太田国務大臣 町田と川崎の件についてありましたが、事業説明会は事業実施主体であるJR東海の責任で行われるべきものでございます。この事業について、私としては、地元の理解と協力を得ることが重要であり、国土交通省としては、JR東海に対しまして丁寧に説明するよう指導監督してまいりたいと思っています。

本村(伸)委員 ですから、事業説明会で丁寧な説明が行われていない、住民の皆さんをごまかすことまでやっているという事実をきょうは大臣にお示ししたわけです。こんなやり方を絶対に許してはならないというふうに思います。

 太田大臣は、地元の理解と協力を得ることが不可欠だ、このことも繰り返し答弁をされております。このことに関しまして、長野県の大鹿村の事業説明会についてもお話をしたいというふうに思います。

 この長野県大鹿村の事業説明会では、人口一千百人の村の中で約三百人の方が参加をされました。リニアルートというのは大鹿村の南部、東西を走り、土砂を搬出するための作業用トンネル坑口、出入り口ですけれども、四カ所つくり、変電施設をつくり、小渋川の上流に橋をかける計画です。人口一千百人の小さな美しい大鹿村に、最大で一日一千七百台以上の大きなダンプや工事車両が生活道路を走ることになります。人口よりもダンプや工事車両の方が毎日多いという状況になるわけです。

 この豊かな自然を求めて移住する方も多く、暮らしや観光業への影響は避けられない。大鹿村は、美しい景観を守るために小渋川の橋の地中化を求め、環境保全協定の締結を求めております。ところが、JR東海は全く考えていないと不誠実な回答をしております。事業説明会では、住民の皆さんから、風景は一度失ったら取り戻せない、JRの利益の裏返しが村の犠牲だ、こういう根本的な反論が相次ぎ、大鹿村は今のままでいいと訴える若い世代が多くいたということです。

 こうした大鹿村の住民の皆さんの声に、JR東海中央新幹線建設部担当部長は、地元の理解と同意がなければ着工できないと何度も発言し、住民の皆さんの前で約束をいたしました。

 大臣、JR東海は地元の理解と同意がなければ着工できないと住民の皆さんに約束をしております。この事実をつかんでおられますでしょうか。同意がなければ着工できない、これは当然のことだと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

太田国務大臣 どういう表現をしたかということについては、私はそこでのやりとりを報告は受けています。

 しかし、いずれにしましても、事業説明会というのは、事業実施主体であるJR東海の責任で行われるべきものであると。

 そうした上で、本事業につきまして、私としては、地元の理解と協力を得ることが重要であり、国土交通省としては、JR東海に対しまして、丁寧に説明をするよう指導監督をしてまいりたいと思っているところです。

本村(伸)委員 丁寧な説明ができていないということからこういう追及もさせていただいているわけですけれども、きょう議論をいたしましたリニア、この事業については、今世紀最大の巨大な事業であるにもかかわらず、JR東海に情報開示の義務もないし、環境大臣が指摘している問題をどう解決していくのかも明らかになっておりません。そして、事業説明会でも、丁寧どころか、住民の皆さんをごまかすことまでやっている。そして、事業の前提である大深度地下法の手続だってできておりません。そんな段階で、工事の着工など絶対に許されません。住民の皆さんの不安は全く解消されておりません。

 未解決、未解明の問題が山積をしている、こういう工事を認めるべきではないということを申し上げ、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

大島委員長 これにて本村君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

大島委員長 この際、公聴会の件についてお諮りいたします。

 平成二十七年度総予算について、議長に対し、公聴会開会の承認要求をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 なお、公聴会は来る三月九日とし、公述人の選定等の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、明三日午前八時五十五分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三分散会


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