衆議院

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第14号 平成27年3月5日(木曜日)

会議録本文へ
平成二十七年三月五日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 大島 理森君

   理事 金田 勝年君 理事 萩生田光一君

   理事 原田 義昭君 理事 平口  洋君

   理事 平沢 勝栄君 理事 森山  裕君

   理事 前原 誠司君 理事 今井 雅人君

   理事 上田  勇君

      秋元  司君    石原 宏高君

      今枝宗一郎君    岩屋  毅君

      衛藤征士郎君    小倉 將信君

      小田原 潔君    大隈 和英君

      金子 一義君    金子めぐみ君

      神谷  昇君    神山 佐市君

      熊田 裕通君    小池百合子君

      小林 鷹之君    鈴木 俊一君

      田所 嘉徳君    武村 展英君

      津島  淳君    土井  亨君

      豊田真由子君    長坂 康正君

      根本  匠君    野田  毅君

      橋本 英教君    藤丸  敏君

      藤原  崇君    古屋 圭司君

      星野 剛士君    細田 健一君

      堀内 詔子君    前川  恵君

      宮川 典子君    宮崎 謙介君

      宮路 拓馬君    村井 英樹君

      保岡 興治君    山下 貴司君

      山田 賢司君    山田 美樹君

      山本 幸三君    山本 有二君

      若狭  勝君    小川 淳也君

      緒方林太郎君    大西 健介君

      奥野総一郎君    神山 洋介君

      岸本 周平君    後藤 祐一君

      階   猛君    津村 啓介君

      辻元 清美君    福島 伸享君

      馬淵 澄夫君    松原  仁君

      山尾志桜里君    山井 和則君

      井坂 信彦君    重徳 和彦君

      初鹿 明博君   松木けんこう君

      松浪 健太君    岡本 三成君

      中野 洋昌君    樋口 尚也君

      赤嶺 政賢君    池内さおり君

      大平 喜信君    高橋千鶴子君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   総務大臣         高市 早苗君

   法務大臣         上川 陽子君

   外務大臣         岸田 文雄君

   文部科学大臣       下村 博文君

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   農林水産大臣       林  芳正君

   経済産業大臣       宮沢 洋一君

   国土交通大臣       太田 昭宏君

   防衛大臣

   国務大臣

   (安全保障法制担当)   中谷  元君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (拉致問題担当)     山谷えり子君

   国務大臣

   (経済再生担当)     甘利  明君

   国務大臣         有村 治子君

   財務副大臣        菅原 一秀君

   最高裁判所事務総局民事局長

   兼最高裁判所事務総局行政局長           菅野 雅之君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  藤山 雄治君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   日原 洋文君

   政府参考人

   (総務省自治税務局長)  平嶋 彰英君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    深山 卓也君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   引原  毅君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          小松親次郎君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            吉田 大輔君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房年金管理審議官)       樽見 英樹君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  新村 和哉君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  唐澤  剛君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  松島 浩道君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房技術審議官)         山田 邦博君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房官庁営繕部長)        川元  茂君

   政府参考人

   (国土交通省土地・建設産業局長)         毛利 信二君

   政府参考人

   (国土交通省都市局長)  小関 正彦君

   政府参考人

   (国土交通省水管理・国土保全局長)        池内 幸司君

   政府参考人

   (国土交通省道路局長)  深澤 淳志君

   政府参考人

   (国土交通省自動車局長) 田端  浩君

   政府参考人

   (気象庁長官)      西出 則武君

   政府参考人

   (原子力規制庁長官官房原子力安全技術総括官)   竹内 大二君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  深山 延暁君

   参考人

   (東京電力株式会社代表執行役社長)        廣瀬 直己君

   参考人

   (日本放送協会会長)   籾井 勝人君

   参考人

   (日本放送協会経営委員会委員長)         浜田健一郎君

   参考人

   (預金保険機構理事長)  三國谷勝範君

   予算委員会専門員     石崎 貴俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月四日

 辞任         補欠選任

  後藤 祐一君     黒岩 宇洋君

  馬淵 澄夫君     逢坂 誠二君

  山井 和則君     津村 啓介君

  松木けんこう君    吉田 豊史君

  赤嶺 政賢君     大平 喜信君

  高橋千鶴子君     藤野 保史君

同日

 辞任         補欠選任

  逢坂 誠二君     馬淵 澄夫君

  黒岩 宇洋君     後藤 祐一君

  津村 啓介君     山井 和則君

  吉田 豊史君     松木けんこう君

  大平 喜信君     赤嶺 政賢君

  藤野 保史君     高橋千鶴子君

同月五日

 辞任         補欠選任

  秋元  司君     前川  恵君

  岩屋  毅君     今枝宗一郎君

  金子 一義君     豊田真由子君

  金子めぐみ君     山田 美樹君

  熊田 裕通君     神谷  昇君

  小池百合子君     津島  淳君

  小林 鷹之君     村井 英樹君

  鈴木 俊一君     藤原  崇君

  長坂 康正君     大隈 和英君

  根本  匠君     橋本 英教君

  古屋 圭司君     武村 展英君

  小川 淳也君     神山 洋介君

  岸本 周平君     津村 啓介君

  後藤 祐一君     福島 伸享君

  階   猛君     緒方林太郎君

  辻元 清美君     山尾志桜里君

  馬淵 澄夫君     大西 健介君

  山井 和則君     奥野総一郎君

  松木けんこう君    初鹿 明博君

  赤嶺 政賢君     池内さおり君

  高橋千鶴子君     大平 喜信君

同日

 辞任         補欠選任

  今枝宗一郎君     宮路 拓馬君

  大隈 和英君     若狭  勝君

  神谷  昇君     熊田 裕通君

  武村 展英君     古屋 圭司君

  津島  淳君     小池百合子君

  豊田真由子君     堀内 詔子君

  橋本 英教君     根本  匠君

  藤原  崇君     鈴木 俊一君

  前川  恵君     藤丸  敏君

  村井 英樹君     小林 鷹之君

  山田 美樹君     金子めぐみ君

  緒方林太郎君     松原  仁君

  大西 健介君     馬淵 澄夫君

  奥野総一郎君     山井 和則君

  神山 洋介君     小川 淳也君

  津村 啓介君     岸本 周平君

  福島 伸享君     後藤 祐一君

  山尾志桜里君     辻元 清美君

  初鹿 明博君     松木けんこう君

  池内さおり君     赤嶺 政賢君

  大平 喜信君     高橋千鶴子君

同日

 辞任         補欠選任

  藤丸  敏君     宮川 典子君

  堀内 詔子君     金子 一義君

  宮路 拓馬君     岩屋  毅君

  若狭  勝君     神山 佐市君

  松原  仁君     階   猛君

同日

 辞任         補欠選任

  神山 佐市君     細田 健一君

  宮川 典子君     山田 賢司君

同日

 辞任         補欠選任

  細田 健一君     長坂 康正君

  山田 賢司君     秋元  司君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 分科会設置に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 分科会における会計検査院当局者出頭要求に関する件

 分科会における政府参考人出頭要求に関する件

 平成二十七年度一般会計予算

 平成二十七年度特別会計予算

 平成二十七年度政府関係機関予算

 派遣委員からの報告聴取


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     ――――◇―――――

大島委員長 これより会議を開きます。

 平成二十七年度一般会計予算、平成二十七年度特別会計予算、平成二十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。

 この際、分科会設置の件についてお諮りいたします。

 平成二十七年度総予算審査のため、八個の分科会を設置することとし、分科会の区分は

 第一分科会は、皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、内閣府、復興庁、防衛省所管及び他の分科会の所管以外の事項

 第二分科会は、総務省所管

 第三分科会は、法務省、外務省、財務省所管

 第四分科会は、文部科学省所管

 第五分科会は、厚生労働省所管

 第六分科会は、農林水産省、環境省所管

 第七分科会は、経済産業省所管

 第八分科会は、国土交通省所管

以上のとおりとし、来る三月十日分科会審査を行いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次に、分科会の分科員の配置及び主査の選任、また、委員の異動に伴う分科員の補欠選任並びに主査の辞任及び補欠選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次いで、お諮りいたします。

 分科会審査の際、最高裁判所当局から出席説明の要求がありました場合は、これを承認することとし、その取り扱いは、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次に、分科会審査の際、政府参考人及び会計検査院当局の出席を求める必要が生じました場合には、出席を求めることとし、その取り扱いは、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

大島委員長 次に、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、参考人として東京電力株式会社代表執行役社長廣瀬直己君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として内閣官房内閣審議官藤山雄治君、内閣府政策統括官日原洋文君、総務省自治税務局長平嶋彰英君、法務省民事局長深山卓也君、外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長引原毅君、文部科学省初等中等教育局長小松親次郎君、文部科学省高等教育局長吉田大輔君、厚生労働省大臣官房年金管理審議官樽見英樹君、厚生労働省健康局長新村和哉君、厚生労働省保険局長唐澤剛君、農林水産省生産局長松島浩道君、国土交通省大臣官房技術審議官山田邦博君、国土交通省大臣官房官庁営繕部長川元茂君、国土交通省土地・建設産業局長毛利信二君、国土交通省都市局長小関正彦君、国土交通省水管理・国土保全局長池内幸司君、国土交通省道路局長深澤淳志君、国土交通省自動車局長田端浩君、気象庁長官西出則武君、原子力規制庁長官官房原子力安全技術総括官竹内大二君、防衛省運用企画局長深山延暁君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

大島委員長 次に、お諮りいたします。

 最高裁判所事務総局民事局長兼行政局長菅野雅之君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

大島委員長 これより一般的質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平口洋君。

平口委員 自由民主党の平口洋でございます。

 予算委員会において質問の機会をいただきましたことに感謝を申し上げたい、このように思います。

 私は、危機管理と災害対策について、みずからの経験も踏まえて質問させていただきたい、このように思っております。

 きょうは三月五日でございまして、あと六日で三月十一日を迎えるわけでございます。あの東日本大震災から四年目の春を迎えるわけでございます。現在のところ、死者が一万五千を超えている、行方不明者も三千名弱いらっしゃるということで、死者・行方不明者で一万八千人余という、我が国の歴史でも未曽有の大災害だったわけでございます。

 関係各位の御努力で復興のつち音が聞こえておりますが、改めて、この大災害で亡くなられた方の御冥福をお祈りし、そしてまた被災された皆様にお見舞いを申し上げる、こういうところでございます。

 私は、この災害の初動期における対応というものをきちんと検証して、これから先、何が日本国に起こるかわかりませんが、きちんとした危機管理の際の対応ができるようにという思いで質問をいたします。もちろん、関係各位、本当に寝ずの努力をされて、総理、官房長官、あるいは東京電力等々、関係者の皆様方、必死の思いでされてこられたことはよくわかっておりますが、それでもなおかつ反省するところはないのかという観点から質問させていただきます。

 まず、お手元に三枚の新聞のコピーを配付させていただきました。逐一このコピーについて取り上げることはいたしませんが、これを一〇〇%信じていいかどうかもわかりませんが、おおよそ根も葉もないことも書かれないんじゃないかな、こういう感じで私も読ませていただきました。

 それで、まず、三月十一日の原発事故の発生した日、この日にアメリカのクリントン当時の国務長官は、原発事故で日本が大変な目に遭っている、アメリカ合衆国は、米空軍だと思いますけれども、この事故対応のために空軍の冷却材を保有した飛行機を出発させた、こういう記事が載っておりますが、これは正しいことかどうか、外務省にお尋ねしたいと思います。

引原政府参考人 お答えを申し上げます。

 二〇一一年の三月十一日、クリントン当時の国務長官が、福島第一原子力発電所事故につきまして、日本人及び米国市民のためにできる限りのことをすべく取り組んでいる、そういう趣旨の御発言をされたということを承知しております。

 以上でございます。

平口委員 このクリントン長官の発言内容を米国国務省は後で撤回をした、このように出ておりますが、これも事実でしょうか。

引原政府参考人 お答え申し上げます。

 米側が支援の申し出を撤回した、そういう事実は承知をしておらないところでございます。

 実際に、二〇一一年三月十一日の地震発生後、米側からは、原子力に関する技術支援を含む支援を行う用意があり、日本より必要な支援内容を提示願いたい、そういう申し出がございまして、それを受けて日米当局間でさまざまな意見交換が行われました。その結果、我が国は米国より、原子力専門家の派遣あるいは物資の提供、こういったさまざまな支援を受けたというところでございます。

 以上でございます。

平口委員 もう一つ確認したいんですけれども、当時、福島原子力発電所、何が起こったかというと、大震災が起きて津波が来たのが三時ちょっと前なんですが、三時台にはもう既に全電源喪失という事態になっております。そしてまた、それから一時間後ぐらいでしょうか、正確な時間は忘れたんですが、全電源喪失を原因とする原発施設の冷却機能が失われた、こういう事態になっております。

 こういう事態を前にして、東京電力の方では、新聞記事によれば、自社の力で復興が可能だ、冷却機能を取り戻せる、こういうことだろうと思いますが、そういうことを判断して、政府の方にはその方にそう言うように伝えた、こういうふうにありますが、これは事実でしょうか、東京電力にお伺いいたします。

廣瀬参考人 お答え申し上げます。

 東京電力の方から米国からの御提案をお断りしたという事実はなかったと認識しております。

 なお、米国からは消防車等の支援を受けさせていただいているところでございます。

平口委員 ちょっと申しわけないんですが、私が聞いているのは、東京電力の方で自力で冷却機能の回復ができるという判断をされたかどうかということでございます。

廣瀬参考人 お答え申し上げます。

 そうした事実判断はなかったと認識しております。

平口委員 きょうは岸田大臣がお見えでございますけれども、岸田大臣は、御承知のように、広島一区でございまして、広島一区は、御承知のように、人類史上最初に投下された原子爆弾の爆心地でいらっしゃいます。私はその隣で、爆心地から二キロ、三キロ、五キロというふうな地域を含む者でございますが、おおよそ原子力エネルギーというものは、原子爆弾の例をとって悪いんですけれども、原子爆弾が投下された際には、核分裂のエネルギーは六千度の温度になるということであります。

 原発の方も、物理学的な原理は原爆と一緒でございまして、それがゆっくり核分裂するか、あるいは、一旦高温になったものを冷やすから爆発しないかという相違であるだけでございまして、おおよそ冷却機能が失われたら果てしなく六千度に近づいていくことは、これはもう初歩的な知識でわかることでございます。

 そこで、全電源喪失による冷却機能の喪失という事態は、早い話が、果てしなく温度が六千度に近づいていく、こういう事態を招くわけでございまして、これは関係者なら誰でもわかっていたはずだと思うんです。

 おおよそこの地球上の物質は、鉄も銅もアルミニウムも、千五百度、二千度というぐらいの温度になると、全部溶けて蒸気になってしまう、こういうことでありますので、いわゆる、冷却機能が喪失すると、メルトダウンが生ずるわけであります。

 こういったようなことはわかっていたはずなんですが、その冷却機能の問題をきちんと判断しないで、そして結果的には大きな爆発が幾つも起きた、こういう事態だろうと思います。

 結論的に言いますと、東京電力の第一原発は日本でも最も古いタイプの原発でありまして、早い話が、原発を開発したアメリカ合衆国の知識や技術あるいは資材、こういったものを総力を投入してつくった発電所でありますので、やはり、アメリカの知識、能力、こういうものを最大限にお願いする、アメリカが申し出ようが日本が申し出ようがどっちでもいいんですけれども、そこの力を最大限に使っていく、こういうことが大事なんじゃないか、このように思います。

 そこで、この原発事故が起きたときの冷却材なんですけれども、この冷却材は、私が物の本で読むと、いわゆる眼科治療のときに用する硼酸水だ、こういうことが書いてありましたが、これはこういう理解でいいんでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 原子炉を冷却するものは、水で冷やしておるところでございますが、原子炉は、核燃料が中性子を捉えて核分裂をしてエネルギーを発生しているところでございます。硼酸に含まれます硼素は、この核分裂反応を引き起こす中性子を吸収する効果が大きいという性質を持っておりますので、この硼酸水を投入しますと、原子炉内における核分裂反応が制御されることとなります。

平口委員 わかりました。

 いずれにしても、米国ないし米軍が絶えず原発事故に対応するために、硼酸水、冷却材、これを持っているということは確かだろうと思います。

 そこで、やはりアメリカ合衆国は、スリーマイル島の原発事故も経験しておりますし、また平成十三年の九月十一日に発生した同時多発テロ、このテロのターゲットが原発に向かう事態もあるんじゃないか、こういう想定も恐らくしているだろう、このように思うんです。

 そういう意味で、やはり、アメリカ合衆国の知識、経験、こういうものをきちんと我が国も受けとめた上で原発事故の対応をすべきではなかったか、このように思いますが、外務大臣の御所見をいただきたいと思います。

岸田国務大臣 我が国としましては、福島第一原発事故への対応において、各国との協力の重要性、強く認識をしております。実際、事故直後より、米国を初め各国からさまざまな支援の申し出をいただきました。

 こうした中、御指摘の米国からは、事故発生初期から、米国原子力規制委員会あるいは米エネルギー省また在日米軍等から、専門家の派遣ですとかさまざまな物資の提供など、多くの支援をいただくなど、緊密に連携し、幅広い協力を得たと承知をしております。

平口委員 いずれにしても、やはり当時の状況としては、冷却材を投下して、さらに大量の海水を投入するという事態は、福島第一原発はもう原発として機能しない、いわゆる廃炉というものの決断が要ったと思うんですけれども、その廃炉の決断は大変ちゅうちょされた事態でもあるかなというふうにも思いますが、結果的には、廃炉を前提としたやり方をとらなかったために、幾つも爆発を起こして今日のような放射能災害を起こしている、こういうことでございますので、やはり初動期におけるその辺の判断、今後ともきちっとやっていただきたい、このように思うものでございます。

 そこで、関連して、もう一つ二つお聞きしたいんですが、東電の社長さんは、この大津波、原発事故の当時、どこにおられたでしょうか。

廣瀬参考人 お答えいたします。

 当時の社長は、三月十一日、奈良に出張しておりました。

平口委員 この東電の社長さん、恐らく、電話でいろいろ事態を聞いて、これは大ごとだと思われたと思うんです。

 それで、報道によると、自衛隊機に乗せてもらうように依頼して、実際に乗せたと。ただ、それが、大臣の命令で引き返した、こういうふうなことがありました。大臣がどういうことを考えて引き返せというふうな判断をされたかわかりませんが、この東電の社長が自衛隊機に乗ったのは事実かどうか、事実だとすると、いつどこで乗って、いつどこで引き返して、いつどこでおりたか、これについてはっきりさせていただきたいと思います。

廣瀬参考人 お答えいたします。

 事実でございます。細かく申し上げますと、三月十一日の夜、二十三時三十分ごろですが、自衛隊機に乗せていただいて、小牧基地を離陸しております。そして、二十三時五十分ごろに、場所はちょっとわかりませんけれども、引き返したということで、翌零時十五分ごろに小牧基地に着陸しております。

平口委員 当時の判断としては、恐らく、C130という主力航空機、この日、災害のためにいろいろ使う予定があっただろう、また、それを操縦する操縦士もいろいろな予定があったのをいわば割り込んだ形になったので、自衛隊としては混乱したと思うんですけれども、ただ、こういう事態のときに、事故の発生の根本原因になる会社の最高最終責任者をきちんと本社なりあるいは事故発生地点なりに送るというのは、これはやはり幾ら民間人とはいえ自衛隊の役割だと思いますが、防衛大臣の御意見を聞きたいと思います。

深山(延)政府参考人 当時の状況について、まず事務方からお答えさせていただきます。

 御案内のとおり、東日本大震災は未曽有の大災害でございました。当時、防衛省・自衛隊といたしましても、十八時に、防衛大臣が大規模震災と指定した上で、全国の自衛隊に対して大規模震災災害派遣命令を発令いたしておりました。また、当日は、自衛隊機による被災者の捜索救難活動を行いつつ、負傷者の方の救助に当たるDMAT、医療チームでございますが、DMAT等の医療支援も受けておったところでございます。

 一方、福島第一原発の方も大変深刻な事態だと承知しておりまして、同日十九時三分に総理が原子力緊急事態宣言を出された、二十一時二十三分には原発から半径三キロ圏内の住民避難指示が出された、こうした状況のもとであったと承知しております。

 防衛省・自衛隊といたしましては、同様な状況が生じた場合においては、事故が発生した原子力発電所を有する電力会社社長の方の輸送支援があれば、しかるべき依頼がありました場合には、当該輸送の緊急性、公共性、そして非代替性というものを勘案した上で、もちろん、大臣等の御判断を得た上で対応するということになろうと思っております。

平口委員 いずれにしても、最高責任者が大変遅く、本社なり現地なりに到達せざるを得なかったという事態は、これはやはり反省しなきゃいけないことだと思います。

 原因は、これだけの大変な事態になる、津波による被害、これも非常に広域にわたる、さらには、原発が全電源喪失による冷却機能がなくなってメルトダウンする、こういうふうな事態になったときは、やはり国家の非常事態ですから、私は、国家非常事態宣言、原子力災害の非常事態の宣言はなされたようですけれども、国家としての非常に危機的な状況だ、こういう宣言をして、総理、官房長官あるいは防衛大臣、これが一堂に会して、きちんとした整合のある指揮命令をするべきだったんじゃないか、このように思います。

 このような制度、これが必要だと思いますが、官房長官の御意見をお伺いしたいと思います。

菅国務大臣 国家の緊急事態に当たっては、国民の生命と財産を守るために、政府全体として総合力を発揮することは極めて重要だという認識であることは一致いたしております。

 現在、緊急事態に対応するためのさまざまな制度が現時点においてあるわけでありますので、既存の法律を最大限活用すること、まずここを、常に訓練等を行いながら緊急事態に備えることがまず大事だろうというふうに思います。

平口委員 いずれにしても、今回の原発事故で、その最高責任者をきちんと役目を果たすべきところに運べなかったというのは、やはりこれは防衛省として反省すべき点じゃないか、このように思いますので、今後こういうことがないように、あるいはこの教訓を踏まえて適切な対応ができるようにお願いしたい、このように思います。

 それでは、防衛大臣にちょっとお願いします。

中谷国務大臣 現在、防衛省におきましても、こういう緊急時においての自衛隊の対応等については見直しをして、また法改正も検討しておりまして、やはり緊急事態に速やかに情報や連絡が大臣に上がって大臣から適切な指示があるように見直してまいりたいと思っております。

平口委員 大分時間が経過しましたので、これから、災害対応についていろいろな問題点として私が感じたことを、時間の許す範囲でさせていただきたいと思います。通告を随分といたしましたので、空振りになったところはお許しいただきたい、このように思います。

 去年も随分と災害が起きました。二月の大雪に始まって、八月に広島、そしてまた九月に御嶽山、こういったように災害がありました。広島は、今から十五年前も全く同じ災害が、広島市の佐伯区の八幡川流域で起きたわけでございます。これも三十数名の方が亡くなられました。また、八・二〇の去年の災害では七十四名の犠牲者が出ました。この皆様方の無念の思いに対し、本当に御冥福を改めてお祈りしたいと思います。

 私も、災害現場に何度も行きました。東北の方も七度、八度と行ったんです。広いものですから、同じところに何度も行けませんけれども。そこで中心になって災害現場の復旧に当たっているのは主に市町村の職員なんですけれども、この人たちが申し合わせたように異口同音に同じことを言っているのは、所有権の問題があって、どうも瓦れきの処理をきちんとできない、こういうことであります。

 どういうことかというと、瓦れきというとごみくずのように思われがちなんですが、いずれも個々人の財産になるわけでございます。傾いた家があって、通行に物すごく邪魔になっても、その家の所有者はもう一回直して住みたいと思うかもしれません。そう簡単に重機で粉々にするわけにもいかないわけであります。石ころ一つとっても、庭石として大事にされた石じゃないか、こういうことが頭をよぎるということで。

 刑法的にいえば、人様の大事な財産を傷つけたら器物損壊、持っていって捨てたらこれは窃盗罪になるわけですから、こういう判断があるのも無理からないところなんですが、やはりこういう緊急事態になったら、例えば通行を妨げている家屋を破壊できなかったら、それだけまた人命救助もおくれたりする事態もあるわけですから、こういうことのために、やはり所有権の侵害を免責するような、こういう法整備をするべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

藤山政府参考人 緊急事態において、国民の私権の制限についてはどうかということでございますけれども、この点につきましては、既存の法律におきましても、公共の福祉の観点から合理的な範囲内において国民の権利を制限し、あるいは義務を課すというような規定が従来から整備をされてきているところでございます。

 例えば、具体的に申しますと、災害対策基本法あるいは国民保護法といったものにおきまして、立ち入りの制限ですとか一定の業務への従事の指示ですとか物資の収用といったような規定の整備を進めてきたということでありまして、こうした点につきましては、今後とも国会における議論なども踏まえまして、制度及び体制のさらなる充実に努めてまいりたいというふうに考えております。

平口委員 それと、いろいろ関係者は努力されているんでしょうけれども、避難所に行きますと、支援物資が山ほど来ているんですよね。例えば、お弁当なんかは余ったらちょっともったいないなと思うようなこともあるわけですし、また、トイレットペーパーとかあるいは上着とか衣類とか、そういうのもあるんですが、足らないものも山ほどあるんですね。

 例えば、私が経験したところでは、下着がない。下着を支援物資で送る人も余りいないでしょうから、当面下着が要るんだというので、ある避難所なんかは、男物の下着のセットをLサイズを七百、Mサイズを七百、そしてまた女物の下着をLサイズを七百、Mサイズを七百、これだけ欲しいんだというふうなことがありました。

 それで、いろいろとお金の操作については難しい面があろうかと思いますけれども、こういう避難所で当面不足する物資、これを緊急に調達するために、避難所の長、責任者に対して、ある程度支出権限なり物資の調達権限なりを与えるような、こういう制度にしなくちゃいけないと思うんですけれども、いかがでしょうか。

日原政府参考人 お答えいたします。

 昨年八月の広島市の土砂災害におきまして、委員御指摘のとおり、避難所に被災者が望む支援物資がなかなか届かなかったという趣旨の苦情が寄せられたと承知しております。

 このため、国といたしましても、非常災害現地対策本部のもとに被災者支援チームを設けまして、県、市と連携しながら、不足物資の把握とその迅速な供給等に努めたところでございます。

 また、御指摘の、どのような権限を現場におろすかということにつきましては、もちろん、被災者のニーズを的確に酌み取る、それを迅速に供給するということとあわせまして、どのようなことを公的支援の対象とするか、あるいは会計処理をどうするかということもございますので、それは各公共団体において的確な対応をとっていただければというふうに考えております。

平口委員 いずれにしても、実際問題として、どこの避難所に行っても足らない足らないというのでひいひい言っているのはもう事実だったわけでありますので、これはやはり制度的な問題じゃないかと私は思いますので、実際に避難をした人からよくヒアリングをして、あるいは、避難所の責任者からよくヒアリングをして、きちんとした制度を仕組んでいただきたい、このように思います。

 そこで、次に、去年の八月二十日の広島の土砂災害なんでございますが、あの地は河井克行議員の選挙区でありまして、私はその隣なんでございますけれども、現地をよく歩いてみると、本当に畑道ばかりで、これで実際に砂防ダムなんかの工事ができるのか。まず重機が中に入らなきゃいけません。あるいはコンクリートプラントを入れなくちゃいけません。そしてまた、土砂を運搬する作業が要ります。そしてまた、資機材を搬入、搬出する、こういう作業が要ります。

 私は、ここの工事用道路をつくるのに少なくとも五年ぐらいかかって、工事がおくれるんじゃないかと見ているんですけれども、その前、九年前に宮島というところの白糸川が氾濫しまして、宮島は道路がほとんどない島ですから、自衛隊のヘリコプター、木更津にあるCH47、そのヘリコプターの力をかりたんですが、そういうふうなお考えはないかどうか、大臣にお伺いをしたい。

太田国務大臣 今回の広島の工事現場周辺、確かに非常に道が狭かったりということがございますが、現在、地権者等の御理解をいただきながら、対象となる七カ所において市道の拡幅工事を進めているところでございます。また、JRの踏切、非常に狭いところにあるわけですが、既に協定を締結いたしまして、今後、拡幅工事を行うこととしています。

 そうした意味からいきまして、今回は工事用の道路を確保することができたということから、ヘリによる運搬は必要ない、このように判断をしております。

平口委員 時間が参りましたので、最後に一問だけ、国土交通大臣にお伺いしたいんですけれども、広島の……

大島委員長 平口さん、時間ですから。

平口委員 はい、わかりました。

 では、またの機会にさせていただきます。ありがとうございました。

大島委員長 これにて平口君の質疑は終了いたしました。

 次に、奥野総一郎君。

奥野(総)委員 ちょうどこの予算委員会の裏で、きょうは朝八時半から総務委員会の大臣所信をやらせていただいております。その場にも、きょうは籾井会長、それから浜田経営委員長にお越しをいただきまして、朝から質疑をしているところでございます。

 また、大臣も間もなくお見えになると思いますけれども、経営委員長は、まだお見えでないですかね。

大島委員長 大臣は、間もなくおいでになるそうです。

奥野(総)委員 大臣は了解しているんですが。

 経営委員長が来られた。それでは、質疑に入りたいと思います。

 きょうは、お手元に資料をお配りしておりますけれども、三枚ものの資料でございます。

 一番最後の五ページということで、籾井会長年表と書かせていただいておりますけれども、これまで数々のいろいろな事件がございました。昨年の一月二十八日の、就任記者会見、例の五項目、政府が右を向けば右、左を向けば左、こういう発言もございました。正確には、政府が右と言っているものを我々が左と言うわけにはいかない、こういう発言もございました。これについて、まず一回目の注意が経営委員会から出されています。

 そして、その後、二月十二日に経営委員会、この前に、国会の場で会長記者会見の発言については取り消しをしているんですが、その取り消しをしたにもかかわらず、経営委員会で、それでもなお私は大変な失言をしたのでしょうか、こういう発言をして、二回目の注意ということで、二月二十五日に経営委員会二回目の注意がなされています。

 そして、階先生が追及された辞表提出問題、こういうことは一般社会でよくあることだと私は理解しております、こういう発言があり、三月に経営委員会の申し合わせがございました。このときは、今年度内、昨年度内の国会承認を実現すべきである、こういう申し合わせがあったところでございます。

 そしてまた、この後いろいろ、入局式の話とかございますけれども、ことしの一月の会見で、また後ほど触れますけれども、問題発言をされまして、今回、二月に経営委員会の申し入れがあったところでございます。

 都合四回なんですね。注意が二回、申し入れが二回、経営委員会からイエローカードが連発されているわけであります。イエローカード三枚で、もうレッドカードが出ていると言ってもいいと思うんです。

 ここで経営委員長に伺いたいんですが、これは何回やっても効果がないんじゃないか。昨年も申し入れをしている、にもかかわらず、また同じことを、これも後ほど言いますけれども、同趣旨の発言をしてしまっています。

 昨年は、「経営委員会は、一刻も早い事態の収拾に向けて、自らの責任を自覚した上で、真摯な議論に基づく自律的な運営を引き続き行い、監視、監督機能を十分に果たしていく。」と申し合わせの中で言っているわけでありますけれども、ちゃんと監督ができていないんじゃないですか。今回、もう一度申し入れをしなければならない事態に至ったということは、経営委員会自身の監督責任が問われているんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

 また、二度とこうした事態が起きないように、どうすればいいかということを伺いたいと思います。

浜田参考人 このような事態になっていることは大変残念だというふうに思っておりますけれども、会長以下執行部には、皆様の御理解を賜るための最大限の努力を行っていただきたい、また、経営委員会としても、そのための監督はしっかり行っていきたいというふうに思っております。

奥野(総)委員 何回注意を出しても申し入れをしても、一向に改まる様子がないわけであります。ここはやはりやり方を少し考えなければならないと思うんですが、今回の申し入れ、経営委員長の記者ブリーフで内容が明らかになっていますけれども、全会一致ですね、平成二十七年度の収支予算、事業計画が国会で全会一致での承認を得られるよう最大限の努力をしていただきたい、こういう申し入れになっていますが、全会一致でない場合、これはどういう責任が問われるんでしょうか。どういう責任のとり方を経営委員会とすればされるのでしょうか。

浜田参考人 現時点では、あくまでも全会一致で御承認いただけるように執行部以下努力をしていただきたいというふうに思っております。

奥野(総)委員 全くこれは去年と同じなんですね。努力した結果、全会一致にはならなかったという場合に、何らかの措置、そういったことを考えておられるんでしょうか。

浜田参考人 現段階では、あくまでも全会一致のための努力をしていただきたいということでございます。御理解いただきたいと思います。

奥野(総)委員 先日の朝日新聞に、先日任期を終えられた上村達男経営委員長代行のインタビュー記事がございまして、次のように述べられています。

 経営委員会の過半数が賛成すれば会長を罷免できます、少なくとも籾井会長を立派だと思っている委員はほぼいないのではないか、中を飛ばしますけれども、私はずっと罷免すべきだと思っていた、ただ、罷免動議をかけて否決されると籾井会長は信任されたと思うでしょう、それでは逆効果になると考えました。こうおっしゃられております。

 また、昨年八月でありますけれども、NHK退職者、OBの方千五百人余りが経営委員長のところに署名を持っていかれたと思うんです。辞任勧告か放送法に基づく罷免を行うようにということで申し入れた。元部内の方も、相当、名前を見ると有名な方も入っておられますけれども、こういう声を上げています。

 今、もう一度問いますけれども、全会一致にならなかった場合に、辞任勧告、または放送法五十五条に定める職務上の義務違反として罷免を迫るつもりはあるのかということを伺いたいと思います。

浜田参考人 御指摘の点につきましては、経営委員会が放送法に即し自律的、総合的に合議によって適切に判断するものと認識をしております。

 現時点では、経営委員会といたしましては、平成二十七年度の収支予算、事業計画を国会で全会一致で御承認いただけるよう努力し、次期経営計画を着実に実行することを執行部に求めているところであります。

 二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックは、NHKのみならず日本の放送業界にとっても大きな節目の年だというふうに考えております。今、それを見据えた新しい経営計画の第一歩を踏み出そうとしている大変重要な時期でございます。私としては、速やかに着手し、その実現を目指していただきたいというふうに考えております。

 今は、会長以下執行部には、皆様の御理解を賜れるように最大限の努力を行っていただきたいというふうに思っております。

奥野(総)委員 努力を行うと。努力が例えば不十分であった場合に、放送法五十五条の職務上の義務違反に当たるということになるんでしょうか。

浜田参考人 現時点で申し上げられるのは、経営委員会は、先ほども申し上げましたけれども、放送法に則し、自律的に、総合的に、合議によって適切に判断するものというふうに認識をしております。

奥野(総)委員 放送法五十五条は、職務上の義務違反があった場合には、経営委員会は罷免することができる、こうなっています。今のお答えは、それを必ずしも否定したものじゃない、そういう判断をすることも論理的にはあり得るという理解でよろしいでしょうか。

浜田参考人 繰り返しになりますけれども、経営委員会は、放送法に則し、自律的に、総合的に、合議によって適切に判断してまいります。

奥野(総)委員 ぜひ適切に御判断いただきたい、こういう目標を会長に対して課したわけでありますから。過去ずっと効果がないわけであります。今回、これは、全会一致がならなかった場合は、合議の上、適切に御判断いただきたいと思います。

 それから、大臣に、せっかくお越しですから伺いたいんですが、今、上村代行のお話をさせていただきました。上村代行はまさにガバナンスの専門家でありまして、議事録なんかを見ると、ずっとNHKに対してさまざま提言、場合によっては苦言も呈された方だと思いますが、今回再任になりませんでした。

 今、ガバナンスが言われている中で、ガバナンスの専門家の存在は必要だと思いますが、今回、上村代行が経営委員に再任にならなかった理由を伺いたいと思います。

高市国務大臣 そもそも経営委員は、両院の、国会の御承認を得て、その上で内閣総理大臣が任命されるものでございます。任期が来たときに、例えばもう一期再任していただくか否かということ、そういうことに余りこだわらず、その時点において最適だと思われる方を考えて国会に御提示をするという形になっておりますので、上村前委員が特に今回再任をされなかったということについて、特段の事情があるものではございません。特に、これから経営計画についても新たな一歩が踏み出される、そういう時期でございますから、そういう中で最適だと思われる方を選ばせていただいたという形だと承知をいたしております。

奥野(総)委員 今のお話だと、その場その場で適切な方を選んでいるということですが、裏を返せば、上村代行は今の経営委員としては必要がなかった、こういうふうにとれると思います。私は、少なくとも、こういったガバナンスの専門家は今こそ必要だと思います。これ以上これは言ってもしようがないんですけれども、非常に残念な事態だということを申し述べさせていただきます。

 それでは、次の問題に移りたいと思います。

 これから会長に答弁を求めるわけでありますが、やはり、会長の一言一句がきちんと全会一致に向けて努力をしているか、こういうことが問われる国会審議だと思うんですね。ですから、ぜひ真摯にお答えいただきたいと思いますし、また、浜田委員長もそれをしっかりごらんいただいて、きちんと職務義務を果たしておられるかどうかという観点からまた御議論をいただきたいと思います。

 それでは、去年の三月に発足しましたNHKの関連団体ガバナンス委員会について伺っていきたいと思います。

 この件については、昨年三月に、NHK出版の架空の外注費発注など事件が相次ぎまして、その再発防止策として、小林弁護士、これは安倍総理の弁護代理人を務めたこともございますし、会長とも旧知と言われています。そういうふうに言われている方ですが、これを委員長とするNHK関連団体ガバナンス委員会というものが発足をいたしました。

 まず伺いたいのは、NHKには監査委員会もございます。また、内部監査、会長特命の内部監査室も設置したと当時の議事録に残っています。こうした組織があるにもかかわらず、なぜあえて新たに外部の方に委員長に就任いただいてガバナンス委員会を設置したのかということをまず伺いたいと思います。どういう役割があったんでしょうか。

籾井参考人 お答えいたします。

 昨年の三月と記憶しておりますが、私自身も国会でいろいろごたごたしているときでございましたけれども、そしてまた、NHKの中では、今出ましたように、NHK出版であるとかそういうところの問題について不祥事が発覚して、それの調査等々にいろいろ忙しくしていたときでございますが、ある新聞に、NBC、いわゆるNHKビジネスクリエイトという会社でもまださらに不正があるという記事が結構大きく出ました。

 当時私はそういうことについて知る由もなかったんですが、実際に、過去、平成二十三年ごろNBCの問題はあったと聞いております。その後NHK出版が出てきたわけで、そういう過去の出来事、不祥事が表面化していた時代、さらに、それを新聞でさらにあると書かれましたので、私は、当然のことながら、これは大変なことである、もし事実であるとすればとんでもないことであるということで調査に入ったわけです。

 その当時の状況としまして、今申しましたように不祥事が続いたために、やはり外部の専門家に客観的な視点で調査してもらい、提言をいただきたいと考えたわけでございます。今後の業務遂行の参考とするためにも、外部の専門家に調べてもらうことにしたものでございます。

 私が小林弁護士と親しいとか親しくないとか、そういうことは全く捨象した話でございます。

奥野(総)委員 では、どういう基準で小林弁護士を選ばれたんでしょうか。いろいろ比較をした中で一番ふさわしいという判断をされたんでしょうか。一体どういう基準で外部から小林弁護士を招いたのか。

籾井参考人 今申しましたように、やはり客観的な視点で調査してもらいたいということで、外部の専門家に調べてもらうことにしたものでございます。

 このスペシフィックな弁護士、小林弁護人という方については、私は、その選択については一切タッチをしておりません。関係各所で十分に、弁護士を選んだというのが本当の話でございます。

奥野(総)委員 伺いたいんですが、こういう委員会を設置するときには当然予算も伴うでしょうし、予算項目でいうとどういう予算の項目でこれは支払われているのか、あるいは、一体どういう手続で設置を決めたんでしょうか。

籾井参考人 弁護士の費用という問題については、皆さんよく御承知のとおり、最初から幾らというのは決まっていないですよね。案件によってどれぐらい時間がかかるかということで、結果として弁護士の方から請求があるというのは、多分一般的なことだろうというふうに思っております。

 これをどうやって決めたんだということについては、今申しましたように、これは私の方では、私個人は一切タッチしておりません。

 それで、関連団体ガバナンス調査委員会というのは、やはりNHKの関連団体で不祥事が続いた、ということは先ほども言いましたように、問題に速やかに対処するために私の判断で専門家に依頼したということでございます。

 今後とも適切に判断してまいりたいと思っております。

奥野(総)委員 今もう一度伺いますが、答えていないんですが、では費用は一体どこから出ているんですか。これは受信料から充てられているんですか。その場合、一体幾ら支払われたんでしょうか。これは調査は一応終了していると思いますが、一体幾ら支払われたのか。予算項目でいうと、どの項目にあって、そこから幾ら支出されたのかということを伺いたいと思います。

籾井参考人 報酬は、小林弁護士事務所の基準によりNHKが時間制で払いました。金額は、社会的にも適正な額と考えておりますが、個別の契約に関することであり、その金額については公表を控えたいというふうに思っています。

 小林委員会が調べたのは、十三関連企業及び四つの団体、これを調べております。そして、四月から八月までかけてやっております。これでどれぐらいの時間がかかったかということは御想像いただけるというふうに思います。

 正直申し上げまして、どの勘定から払ったかということについては、ちょっと私は承知しておりません。

奥野(総)委員 要するに、今の話だと、これは受信料で充てられているという理解でよろしいのか。それから、数千万円という記事もありますし、事実かどうかはともかく、私が伺った話では六千万円という数字なんかもあるようなんですね。まず、この辺の事実関係、受信料なのか、それから、では、こういった数字が当たっているのかどうかということを伺いたいと思います。

 少なくとも、受信料で充てている以上、私は、個別の契約であってもつまびらかにする必要がある、まして、こういう不祥事にかかわるものを会長がみずからやった以上、きちんとアウトプットについても報告が必要だし、そして、この経費についてもつまびらかにする必要があると思います。

 また、選定過程もそうですね。どうやってこういう方が選定されたか、そして、この経費についても明らかにする必要があると思いますが、いかがでしょうか。

籾井参考人 選定につきましては、先ほどから申しておりますように、我が社の専門の部門に任せております。私はそれには一切タッチしておりません。

 それから、費用につきましては、私が具体的に幾らと言うわけにはいきませんが、先ほど申しましたように、期間は四月から八月まで、十三子会社プラス四関連団体、これだけを調べております。これは膨大な作業でございます。その辺から、四月から八月までかかったということで、これはお察しいただければ私はありがたいと思います。

奥野(総)委員 それでは伺いますが、では、この結果、報告書ですね、提言というのは具体的にどういう中身だったんでしょうか。会長みずから伺いたいと思います。(籾井参考人「ちょっと済みません、聞こえませんでした」と呼ぶ)

大島委員長 もう一回、奥野さん。

奥野(総)委員 提言の中身、八月二十六日に出された報告書の中身ですね、これだけ鳴り物入りで報道までしてやった、会長直属の、会長が直接陣頭指揮を振るってできた委員会、その報告書の中身について、提言について、会長。

籾井参考人 お答えいたします。

 委員御承知と思いますけれども、我々は報告書の要旨については公表しております。それを読んでいただきたいと思いますが、もうお読みになっているとは思いますけれども。

 それから、今、内容についてということでございましたが、私が一番恐れておりました、さらに新しい不祥事があるのではないかということについては、詳細なる検査の結果、新しい不祥事はないということが非常にはっきりしました。

 それから、もう一つは、今後の関連企業等々の、いわゆるガバナンスというよりもっと以前の話かもしれませんが、やはりどういうふうな形でのガバナンスのとり方をやっていくのか、こういうアドバイスがございました。

 もう一度申し上げますが、新たな不祥事はありませんでした。これが一番大きな、報告書の結論のポイントでございます。

奥野(総)委員 これは何で公表されていないんですか。要旨だけなのはなぜなんでしょうか。これだけ、これだけというか、かなりの額がかかったと今おっしゃっておられましたし、報道発表もしている。報告書が出てきているのに、なぜ要旨しか報道されないのか。何か公表して都合が悪いことがあるんでしょうか。

籾井参考人 今言いましたように、報告書の要旨については公表しております。

 それから、報告書には、新たな外部に公表しなければならないような不正の事実は含まれていなかった、これも今申し上げました。

 また、仮に全文を公表した場合、プライバシーの問題や関連会社の経営に支障を来すおそれがあるということで、全文の公表はやっておりません。

 ガバナンス調査委員会の調査は、再発防止策に関するアドバイスを受けるため、会長として依頼したものであり、今後も全文を公表することは考えておりません。

奥野(総)委員 きょうおつけした資料の一ページ目の下のところにも書いてありますが、抜粋してあるんですね。事件そのものの評価というのはその前段にあるんですが、そのほか、「抜本的な再発防止策、ガバナンスに関する提言」、これが結構ポイントだと思うんですよ。

 受託事業と自主事業、要するに、受信料で成り立っている事業、受託している事業と、そうでない事業を分けて、そして、受信料で行っている事業については会社を分離して、そして統合しなさい、あるいは、関連の公益法人については財団法人化あるいは株式会社化、こういったことが書かれています。ここがポイントだと思うんですが、この部分について、下のところに書いてありますが、下の注、「なお、」以下ですけれども、提言を実行するには一定の時間を要する、それほど容易ではない、そのために別の文書を取りまとめている、「関連団体ガバナンス根本的解決策についての提言」とあります。

 少なくともこれについてはプライバシーの問題は発生しないと思うんですね、この部分について。この部分はなぜ公表されないんですか。

籾井参考人 お答えいたします。

 繰り返しになりますけれども、報告書には、新たな外部に公表しなければならないような不正の事実は含まれていなかったということでございます。

 また、仮に全文を公表した場合、プライバシーの問題や関連会社の経営に支障を来すおそれがあるので、我々は、いわゆる要旨として公表しているわけでございます。

 要旨の中には、この報告書の中の重大部分は全部入っております。よって、我々が隠さなきゃいかぬような問題はないわけでございます、その中には。

 したがいまして、私が、ガバナンス調査委員会の調査を、再発防止策に関するアドバイスを受けるために、会長として依頼したものであり、今後も全文を公表することは考えておりません。

奥野(総)委員 公表すべきかどうかを判断すべきは、受信料を払っている国民であり、そしてその負託を受けている我々にその権利があるということをまず言いたいと思います。

 それから、公表に差し支える部分とおっしゃいましたが、新たな不祥事がないのであれば、それは結構なことじゃないですか。その部分を公表すればいいわけですね。

 そして、プライバシーにかかわる部分については、そこは、公表しろと、そこまで私も申し上げません。

 今申し上げたように、提言の部分ですね、この資料にあるような、ガバナンスの抜本的解決策に対する提言の部分、こういったものについてはどんどん公表すべきじゃないですか。公表できない理由は何なんでしょうか。

籾井参考人 何度も申しますが、ガバナンス調査委員会の調査は、再発防止策に関するアドバイスを受けるため、会長として依頼したものであり、今後も全文を公表することは考えておりませんが、この報告書の内容がわかる要旨については公表しておりますので、もし内容的に知りたいのであれば、これを参照していただきたいと思います。

奥野(総)委員 だから、要旨が完全なものかどうかというのも、全文を見なければわからないじゃないですか。だから、出していただきたい。

 まして、それが、仮に、さっきお認めになったと思いますが、受信料で使われている、しかも相当な経費で使われているとすれば、それはやはり国民の前に、明らかにできるところは明らかにすべきじゃないですか。

籾井参考人 私何回も申し上げておりますが、大事な部分は要旨として公表しております。本体については、人の名前であるとか、そういうものがたくさん出てきますので、これについては公表を差し控えさせております。

 それから、NHKは、もちろん大半が受信料でございます。それに若干の事業利益というのもあるわけでございます。

奥野(総)委員 全くお答えになっていないですよね。

 私が申し上げているのは、出せる部分があるでしょうと。新たな不祥事はない、それは結構なことです。そこは出せばいいじゃないですか。また、プライバシーのところは墨塗りするなり、あるいは、都合の悪いところは出さなきゃいいじゃないですか。

 別冊があると言っているわけですね。この別冊については、提言ですから出せるはずですよね。

 会長、ちゃんと全部報告を読んでおられますか。

 この答えがあるまでは、ちょっと私は質問を差し控えさせていただきます。

大島委員長 今答弁している間に、初めからとめると言っちゃいけませんよ。

籾井参考人 別冊につきましては、それに基づきまして、今現在、どういうふうにしていくかということをやっている最中でございまして、お約束しているように、三月末までにその作業は終わる予定になっております。

 それから、このレポートについて、我々としては、二〇一五年度から、次期三カ年計画では、グループ全体でのリスク管理、コンプライアンス推進体制の強化等を明記しております。これに、情報共有を図り、一体となってガバナンスの強化に取り組んでいきたいと思います。

 何がお知りになりたいのか、具体的に言っていただければ、答えられるかもしれません。

奥野(総)委員 まずお願いしたいのは、少なくとも、このホームページ、要旨のところ、きょう資料をお配りしている中で、本報告書とは別の文書、括弧の中、八月二十六日付「NHK関連団体ガバナンス根本的解決策についての提言」、これについては少なくとも出せると思いますが、いかがでしょうか。それから、本体についても、プライバシーにかかわる部分を除く部分、事実認定とか名前のところを墨塗りにして出せるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

籾井参考人 お答えします。

 委員から今いろいろ御指摘があっておりますが、そういうことも踏まえまして、それで要旨を出しているわけです。要旨に述べていることに何か不足な点があるのかどうか。本当にございませんから。(発言する者あり)

大島委員長 静かにしてください。

籾井参考人 要旨をまず見ていただきたいと思います。(発言する者あり)

大島委員長 もう一度答弁させます。

 籾井会長、奥野さんの質問をもう一度御自身で整理してみてお答えになる、もう一回質問させますか。(奥野(総)委員「二点」と呼ぶ)

 では、もう一回、奥野さん、その二点というのを、きちっとわかるように質問してやってください。

奥野(総)委員 丁寧に申し上げているつもりですが、この報告書は二つに分かれていて、別の文書、別冊、特に、この関連団体のガバナンス部分について、「関連団体ガバナンス根本的解決策についての提言」というものがある、これについては少なくとも出せますね。そして本体、本体についても、プライバシーにかかわる部分以外、これについては出せるはずですね。この二点です。

籾井参考人 本体につきましては、先ほどから何遍も申し上げておりますように、出さないことにしておりますので、それは要旨でよく御理解いただければと思います。

 それから、別冊については、これはちょっと検討させていただきたいと思います。

奥野(総)委員 まず、委員長にお願いしたいんですが、理事会に現物を両方出していただきたい。お願いします。

大島委員長 理事会でちょっと検討してみます。

奥野(総)委員 ありがとうございます。

 時間も大分費やしてしまいました。こんなことで使いたくなかったんですが、まさかこれに時間をとられるとは思いませんでした。

 もう一度確認しますが、別冊の方はぜひ出していただきたいということと、それから、昨年、ことしの三月末までに実行する、この提言について、内部統制の準備を完了したい、こうおっしゃっていますが、この関連団体の事業整理、ここに書いてあるような、受託業務とそうでない業務を分けて関連団体を整理統合する、ここまで踏み込んで、これは三月までやっておられるんでしょうか。これがこの報告書のポイントだと私は思うんですけれども、いかがですか。

籾井参考人 お答えします。

 NHK関連団体ガバナンス調査委員会の報告書を踏まえて、昨年九月に関連団体ガバナンス向上プロジェクトを立ち上げました。ガバナンスと内部統制の強化に取り組んでおります。

 プロジェクトが各関連団体を回り、規程の整備や内部監査体制の構築など、個別に検証、指導を行っており、今月末には作業を完了し、内部統制の整備に一区切りをつける予定でございます。

 こうした取り組みを踏まえまして、二〇一五年度から、次の三カ年経営計画では、NHKグループ全体でのリスク管理、コンプライアンス推進体制の強化を明記しております。

 NHKグループがこれまで以上に情報共有を図り、一体となってガバナンスの強化に取り組んでまいりたいというふうに思っております。それが、今、委員がお尋ねになりましたNHKグループ全体の話でございます。

奥野(総)委員 いや、私が伺ったのは、関連団体の整理に取り組むんですか、それは三月末までに終わるんですか、終わらないとしたら、これからどうされるんですかということを伺っているわけですが、今のお答えだと、関連団体の整理統合、この提言は取り組まない、こういうことなんでしょうか。

籾井参考人 今の関連企業のガバナンスについての作業は、今三月で終わります。報告書には若干の時間も要るかもしれませんが、作業は終わります。

 それから、経営計画にも盛り込んでおりますように、我々は、この三カ年計画の中で、グループ全体のいわゆる仕事の整理、そういう中で、例えば、十三ある関連企業をもう少し減らすことができるとか、あるいは、今、外出ししているものをもう一回中に取り込むとか、そういうふうなことができるように、この三カ年計画でやるように取り決めております。

奥野(総)委員 これは、もう一度戻りますが、先ほど額についてはお答えがなかったけれども、少なくとも受信料で委員会を設置したと。一説には数千万、六千万という数字もありますが、それなりの額がかかっているとおっしゃっていましたね。

 そうした額をかけてできた調査、この報告書が一切公表されない。公表されないがゆえに、その部分、どこが実行されているかも今の答えではよくわかりません。

 果たして、こういう調査をやる意味があったんでしょうか。だとすれば、まさに受信料の無駄遣いに当たると思うんですよ。

 これから、会長、受信料の問題、きょうお聞きしようと思っていたんですが、見直しをされると思うんですね。インターネットでの同時再送信の話もございます。受信料、パソコンを持っておられる方、こういった方々にも恐らく負担を求めなければいけないと思うんですが、こういったときに、受信料の無駄遣い、こういうことがあってはならないと思うんです。

 まず、受信料の見直しをするのか、しないのか。そして、この提言についてしっかり取り組む意思があるのかどうか、もう一度最後に会長に伺って、終わりにしたいと思います。

籾井参考人 お答えします。

 同時再送信の場合の料金については、いろいろ手直しをしなきゃいかぬのだろうというふうに思っております。これはまだ全く手つかずでございますので、今からやっていく所存でございます。

 私は、基本的に、まだ試験の段階でございますけれども、テレビで我々は二千二百三十円とか八十円とかいただいているわけですが、やはり、それをネットで見たらただということはあり得ないだろうと思います。これだけ、六千五百億から七千億近い受信料を払っていただいている人たちに、やはり不公平になってはいけないというのは軸としてはっきり持っているつもりでございます。

 それから、受信料でやったんだから公表しろと言われますと、僕は、それはそれで大切な考え方だと思います。けれども、事これに関しては、こういうものに関しては、そういうものはやはり公表しないものもあっていいんじゃないかと。よって、要旨を紹介しているわけでございます。

奥野(総)委員 残念ですが、時間が来ました。続きは総務委員会の方でやりたいと思います。

大島委員長 これにて奥野君の質疑は終了いたしました。

 次に、大西健介君。

大西(健)委員 民主党の大西健介でございます。

 予算委員会では久しぶりの質問の機会を与えていただきました。前原筆頭を初め、同僚議員の皆さんに感謝を申し上げます。

 時間が限られていますので、早速質問に入ってまいりたいというふうに思いますが、私の方からは、柚木委員が一昨日にこの委員会でした質問に続いて、下村大臣にお聞きをしていきたいというふうに思います。

 柚木委員から、大臣の榮秘書官が、博友会の会員だった、あるいは会員の方に出した、口どめとも受けとめられかねないメールについて紹介をした上で、その内容について確認をしてほしいということを申し上げました。大臣の方からも、秘書官の方にしっかりと確認をしたいという答弁をいただきました。

 このメールですけれども、これはどういう目的で出されたものなのか、そしてまた、これは大臣の指示によるものなのか、この点について御説明いただけますでしょうか。

下村国務大臣 今まで柚木委員からはこのことについて何度も質問されておりますが、大西委員に対して初めての答弁でありますので、ちょっとこの博友会についてまず申し上げたいと思いますが……(大西(健)委員「結構です、それはよくわかっていますから。時間がもったいないので」と呼ぶ)わかっていますか。そうですか。では、そういうことだそうですので。

 メールについてでありますが、先方から、雑誌記者から取材を受けたということで、榮秘書官の方に、私の秘書官の方に問い合わせメールが来たということだそうです。ですから、「ご連絡ありがとうございます。」という冒頭から始まっているわけですね。

 その中で、今回のメールは、相手の方は、かつて中部博友会の会長をされていた方でありまして、大変熱心に私のことを応援したいというふうに思っていただいている方であります。

 ただ、その方は、会長としての資質等いろいろな問題があったということで、関係者の方々が、ほかの方に会長を交代してもらったという経緯があって、それは私も、うちの事務所も全然タッチしたわけではありませんが、そういう経緯もあっても、しかし、うちの秘書官とは連絡をとり合っていたということでありまして、今回、そういう中で、先方から秘書官の方に問い合わせメールがあったということであります。

 秘書官からは、突然のマスコミからの取材で対応に非常に困っているようだというふうに感じたので、地方の博友会の一部のメンバーの方からいただいている寄附については、全て適正に処理しているということで心配ないということを伝えたということであります。

 また、御迷惑をおかけしていることのおわびとあわせて、地方の博友会があたかも政治団体であるかのような誤解や間違いを持たれぬよう、以後は下村事務所でまとめて対応することにしたいという趣旨を伝えたということでありまして、当然、私が指示したとかいうことではありません。

大西(健)委員 皆さんのお手元に、きょうは、御本人の御了解をいただいて携帯のメール画面を撮影させていただいたものをお配りさせていただいております。

 この文面を見ていただくと、「大臣より、取材の要請が来ても応じる事無く、無視でお願いと申しております。」これは大臣が言っているんじゃないですか。これは指示じゃないですか。

 また、これを見る限りは、口どめをしていると受けとめられてもしようがないんじゃないかと思いますけれども、これは大臣の指示じゃないんですか。

下村国務大臣 今、大西委員が、私の指示で秘書官がメールを送ったのではないかという質問をされましたから、そうではないということを申し上げたわけであります。

 そして、先ほども申し上げましたように、地方の博友会があたかも政治団体であるかのような誤解やあるいは間違いを持たれぬよう、以後は下村事務所でまとめて対応するということについては、そうした方がいいということは榮秘書官に私の方からも言っております。

大西(健)委員 これは「大臣より、」と書いてあるんですよ。だから、大臣から指示があってこのメールが出されているのではないかということを申し上げたいと思いますし、それから、先ほど、この方は中部博友会の元会長であった人ということをおっしゃっていますけれども、榮秘書官とはこうやって、メールの番号もわかっていて、やりとりをふだんからやられているようにこの文面からは感じますし、また、この文面ではこういうふうに書いてあります。「ほとんど全ての後援会会長、幹事の処に取材に行っています。」と。何でそれが榮秘書官もわかるんですか。

 いろいろな地方の博友会の方々と、常日ごろから会の運営にタッチして、連絡をとり合っているから、いや、取材に来ているんだけれども、ちょっと困ったんだけれどもどうしようみたいな話が相談で来ているんじゃないですか。これは個別でそういうことが来ているんじゃなくて、常日ごろからタッチをしているということなんじゃないか。

 あるいは、ここで榮秘書官は、後援会会長、後援会という言葉を使っているんです。大臣はこれまで、地方の博友会というのは任意の団体だというふうにおっしゃっている、事務所は運営にも一切タッチしていないと言っているけれども、後援会と榮秘書官は言っておられるし、そして、何でほとんど全ての後援会会長、幹事のところに取材に行っているということが榮さんはわかるんですか。おかしいんじゃないですか、これは。

下村国務大臣 これは私を支えていただいている任意の会ですから、当然、人間関係はふだんから親しくあります。

 ですから、担当秘書官が人間関係を持っていて、そして、そういう連絡があればきちっと対処するということはあるのは、これは当然のことだと思います。

 一方で、任意団体ですから、そこの中の人事とか、先ほどもちょっと申し上げましたが会則とか、そういうことについて全くタッチしているわけではないということと、それから、地方の任意の会が私に対して直接政治資金を提供しているとかいうこともありませんし、今までも申し上げましたが、その会から、講演会の講演料、それからいわゆるお車代等を直接受け取っているということもないということであります。そういうことですね。

大西(健)委員 大臣の政治活動とどういう関係があるかということについては、また後ほど伺っていきたいというふうに思いますが、今申し上げましたように、では、何でほとんど全ての後援会会長、幹事のところに取材に行っているということがわかるんですか。例えば、こういうメールが来たときに、ほかの博友会にも、取材ありますかというようなことを、榮さんが連絡をとり合っているんじゃないですか。ふだんからやはり、私は、これは会の運営に下村事務所が、榮秘書官が深く関与しているんじゃないかと思っているんです。

 もう一つ、ではお聞きをしたいと思いますけれども、榮さんは地方の博友会の会員に対して会費の督促メールというのを送っていたという報道があります。これは会費ですからまさに会の運営そのものだと思いますけれども、もしそれが事実だったら、これは博友会の運営にふだんから下村事務所が深く関与していることの証拠にもなりますので、この点についても、榮秘書官に改めて、会費の督促メールを榮秘書官が送ったことがあるかどうか、御確認いただけませんでしょうか。

下村国務大臣 これは今までも答弁をしておりますが、先ほどから申し上げていますように、地方の博友会は任意の会であります。

 ただ、厳密に言えば、これは政治資金団体としての、そういう意味での後援会ではありませんが、任意の、私を応援していただいている会ですから、そういう意味では広く後援会という言い方をしていますが、厳密に言うと任意の団体であるということをまず申し上げたいと思うんですね。そういうことですから、直接そこから私のところに政治献金等は全くありません。

 ただ、全国の私の知り合いの方々に、年に一度、東京十一選挙区支部、政党支部から寄附のお願いはしております。その中には、地方の博友会に所属されている方々にもお願いが行きます。ですから、そういう意味で知り合いの方に寄附をぜひお願いしますということは、個々にはお願いしたこともあるというふうに思いますが、しかしそれは、それぞれの任意の後援会の会費をお願いとかいうことはしておりません。

大西(健)委員 報道の中では、あるいは会員の中には、会費の督促のメールを榮さんからもらったという人もいるんですよ。もしこれが会費ということであれば、まさに会の運営そのものですから、寄附ではなくて会費ということであれば。ですから、ぜひここはもう一度確認をいただきたいというふうに思います。

 あわせて、これは、榮秘書官が本当に事務所として博友会の運営に関与していないのかどうなのか、榮秘書官、大臣の秘書官、公職である方でいらっしゃいますから、ぜひ私はここに来ていただきたい。しかも、先ほど、大臣の御答弁では、これは大臣の指示じゃなくて榮さんの判断でやったことだということであれば、それならばなおのこと、榮さんに聞かないとこれはわからないわけですから、榮秘書官にこの委員会に参考人として来ていただきたいと思いますが、委員長、よろしくお願いいたします。

大島委員長 理事会で協議します。

大西(健)委員 では、なぜこういう口どめとも受けとめられかねないメールを送らなきゃいけなかったのか。

 私は、これは、任意団体である地方の博友会の年会費として納められた会費が、例えば政党支部の寄附として処理をされて、そして寄附金控除の証明書が発行されて、仮にそれを使って例えば寄附金控除を受ければ、これは脱税になるんじゃないかと。そして、寄附でないのに寄附金控除証明書を、もし、下村事務所というか東京十一区総支部が発行していたら、これは私は脱税の幇助にも当たるんじゃないかと思っているんですけれども、下村大臣、この部分はどうお考えですか。

下村国務大臣 まず、先ほどのお話ですが、これは予算委員会ですから、私も、私の秘書ですから、榮とはきちっと事前確認して答弁をさせていただいているということをまずお話し申し上げたいと思います。

 それから、地方の任意団体から寄附金控除の依頼用紙を求められたことはないというふうに聞いております。

大西(健)委員 大臣のこれまでの説明は、これは会費じゃなくて寄附なんだという説明ですよね。

 ただ、一方で、寄附の領収書のただし書きに会費としてというのを書いたものが事実あるわけです。あるいは、大臣自身も、先方の求めに応じてただし書きに会費と書いたこともあるということもお認めになっている。さらには、柚木委員が関係者に聞いたところ、こっちから別に要望なんかしていないけれども勝手に向こうから送ってきたことはあるぞと怒っておられる方もいらっしゃる。

 あるいは、私も博友会の会員の方に直接お聞きしましたけれども、その方はこんなふうに言っています。

 私たちは会費だと思って指定の口座に振り込みをした、ところが、いつの間にかそれが東京十一選挙区支部の政治資金になっていたと知ってショックを受けています、私たちのところにも十一区支部から領収書が来ましたけれども、そのただし書きには会費と書いてあるから、我々素人は、会費と書いてあるから会費なんだなと思っていました、こういうふうに言っておられるんですよ。

 それで、さらにもう一つ申し上げると、皆さんのお手元にけさの産経新聞をお配りさせていただいていますけれども、この中で、近畿博友会の会長の男性が、この会費についてこういうふうに言われているんですよ。「博友会の会費の取り扱いにも言及。「会費は年間十二万円。各自が政党支部に支払っている」」と。会費が政党支部への献金として処理されていることを認めたとおっしゃっているわけです。近畿博友会の会長が、会費が政党支部の寄附金になっているということを認めているんですね。

 この部分、どうですか。大臣、いかがですか。

下村国務大臣 これは、先ほども申し上げましたように、任意団体がその中でどんな協議をしているかどうかというのは、詳細について把握しているわけではありません。

 私の事務所と、それから個々の地方の方々の関係は、寄附ということであれば、これは政党支部を通じて皆さんにお願いをしているということでありまして、その中で、寄附をしていただいた方にはきちっと領収書も出しているということでありまして、何ら問題点はありません。

大西(健)委員 そんなことを聞いているんじゃなくて、会費として払ったものがいつの間にか寄附になっていますよと証言されているじゃないですか、近畿博友会の会長が。あるいは、我々が聞いた会員の方の中にもそういうことを言っておられる方がいらっしゃるということなんですよ。

 ですから、先ほど申し上げましたように、会費が寄附になっていて、寄附金控除が出ていて、それで控除を受けたら、これは脱税なんですよ。そして、寄附金控除の証明書を寄附でないものに発行していたら、これは脱税幇助になるんです。だからこそ、私たちは、柚木議員が求めておられるのは、年会費として納めたはずのものが政党支部の寄附金控除の対象となる領収書として一体これまで何枚発行されているのか、寄附金控除の処理がされているのかについて、この委員会で確認を求めています。それに対して、大臣は、調査しますと答弁しているんです。

 これは、先ほど来申し上げているように、場合によっては脱税幇助にも当たりかねないという重要な問題ですから、ちゃんと調査して報告をしていただきたいんです。

 先ほど来大臣がお認めになっている、先方の要望でただし書きを記載したという一件の金額と領収書の日付。そして、先方から要望はないけれどもただし書きに年会費と記載した事例があるのかないのか。あるんだったら、その件数、金額、領収書の日付について、これは速やかに調査の上、理事会に報告をいただきたいというふうに思いますけれども、委員長、お取り計らいをお願いします。

 大臣に、まず今の件について、ちゃんと調査していただいているんですか。

下村国務大臣 基本的に、先ほどから申し上げていますが、地方の方々に対して、政党支部から寄附のお願いをしております。ですから、寄附については、いただいた方には領収書を発行しております。その中で、会費とかそういうことではまずないということを申し上げたいと思うんですね。

 その中で、一件だけ、領収書の中に、ただし書きとして年会費として書いてくれという相手方の要望があったということを受けて、そういうただし書きを書いたことがあるということですが、それ以外、過去、要望がなくて年会費と書いてしまったことがあった。これは事務所としても望ましいことではありませんから、そういうふうなただし書きは書くべきことではありませんし、それはもうしないということで、今なっております。

 そして、今までのことは調査をしておりますが、それが今どれぐらいの数か、もともとそれほど大した数ではないということですが、いつからいつまでというのは、ちょっとまだ確認ができておりません。それは今調査をしている最中でもあります。

大西(健)委員 いや、先ほど来申し上げているように、会費としてと書いたものが、求められていないのに送られているものがもしあるんだとしたら、今大臣はそんなに多くないと言っておられますけれども、多いかどうかもわからないわけです。ですから、多いのかどうなのかわからないですけれども、それをちゃんと調査をして出してください。

 出してもらわないと、これは先ほど来言っているように、場合によっては、これは私は脱税の幇助にも当たりかねない話だというふうに思いますので、それを、もしちゃんと潔白を証明したいなら、しっかり調査をして出していただきたいんですけれども、いつまでに調査してもらえるんですか。

下村国務大臣 そもそも、脱税幇助のような言い方をされていますが、寄附金控除の依頼そのものはどこからも受けていないというふうに聞いております。

 しかし、年会費とただし書きに書いた領収書がどの程度あるかどうかについては、ある一定期間だとは思いますが、今調査をしているところであります。調査をしています。

大西(健)委員 委員長、ぜひ、これは繰り返し柚木委員からも質問させていただいて、そのたびに、調査します、これでもう、きょう、三回目です。ぜひ、早急に調査をして、しっかりと理事会に報告をしていただくことをお願いしたいと思いますが、よろしくお願いします。

大島委員長 理事会でまた話し合います。

大西(健)委員 繰り返し申し上げますけれども、近畿博友会の会長が、会費として払ったものが政党支部の献金として処理されていることを認めておられるんです。ですから、そうじゃないと言うんだったら、これはちゃんと調査をして、報告をしていただきたいと思います。

 別の論点についてもお聞きをしたいと思います。

 これも、前回、柚木委員の質問に対して、先ほども御答弁の中で言っておられましたけれども、これまで、講演料とかタクシー代とか宿泊代とか、そんなものは一切受け取ったことがないとおっしゃっていますけれども、きょう発売の週刊文春の中で、これは鈴木文代さんという方が実名で、いや、私は過去に、封筒に入れて講演料を大臣に渡したとおっしゃっているんです。これは食い違っていますよね。

 そうなると、もしこの鈴木さんの言っていることが真実なら、大臣の答弁が虚偽答弁ということになりますが、この点はいかがでしょうか。

下村国務大臣 鈴木さんという方は、先ほど申し上げたような方であります。

 私は、今までも申し上げましたが、講演料とか、いわゆるお車代、受け取っておりません。この鈴木さんがどういうふうに……(発言する者あり)タクシー代ももらっていません。

大島委員長 やじに答えないで、大臣。淡々と、淡々と。(発言する者あり)

 後藤君も静かに。

下村国務大臣 どういうふうに言われたのかわかりませんが、そういうふうな事実はありません。何かの勘違いではないかと思います。

大西(健)委員 いや、私は週刊誌の記事に基づいてただ言っているわけじゃなくて、私、実は愛知ですからこの方を知っているんです。たまたま昔から知っている人で、お話も直接聞いております。ですから、鈴木さんから直接お話を聞いていますが、鈴木さんは大臣のことを本当に応援しておられた方です。だけれども、今、国会の答弁を見ていて、大臣が真実を語られていない、そのことに対して非常に裏切られたという思いを強くしておられます。

 また、若手博友会というのをつくって、本当にお金のない若い人たちに、下村さんの話を聞くとためになるからと言っていっぱい勧誘したのに、だけれども、そういう若い子たちに私は悪いことをしてしまったとすごく責任を感じておられるんですよ。その鈴木さんを裏切るようなことを私はこれ以上言わないでいただきたいと思いますが、鈴木さんは、決意をして今回実名でこれを言っておられるんです。

 今、記憶違いだ、これは鈴木さんの記憶違いだと言うならば、これはやはり鈴木さんにここに来ていただいて、真実をしっかり語ってもらう。大臣が虚偽の答弁をもし繰り返されているとしたら、これ以上予算委員会をやったって意味がないわけですから、うその答弁するんだったら。だから、うそかどうかというのをしっかり、はっきりさせるために、これは鈴木さんにも委員会に来ていただきたいと思いますが、委員長、鈴木文代さんの参考人招致をお願いします。

大島委員長 理事会で協議いたします。

 委員の諸君に申し上げます。

 後ろの方、テーブルをたたくのはよしなさい。

 大西君、これは私が引き取ったから、次、質問しなさい。

大西(健)委員 はい。ぜひこれは、大臣が本当のことを言っておられるのか、それとも鈴木さんがうそをついておられるのか、しっかりとこの場ではっきりさせていただきたいと思います。

 それから、もう一つ下村大臣のこれまでの説明には矛盾があるんですね。

 これは資料をごらんいただきたいというふうに思うんですけれども、まず、平成十八年三月の「自由民主」。これは、トップニュースとして、「全国博友会合同幹事会行われる」と。九州沖縄、北海道東北を加えて、これで全国七つの博友会で下村代議士を支える輪が広がった、下村代議士自身が合同幹事会に出席をしたということが書かれているんです。

 今まで大臣は、運営には関与していないと。合同幹事会ですよ、運営を話し合うための合同幹事会に出ているし、そして、任意の団体で、それぞれの地域で任意の人たちが集まって一年に一遍下村さんの話を聞くという会と言っていますけれども、そうじゃないんです。これはネットワーク化されていて、組織化されていて、それぞれのブロック、地域ごとに、全国七つの博友会があるということが書かれているんです。

 さらに、次の資料ですけれども、昨年十月十四日付、「御礼」という文書ですけれども、ここの中には、全国博友会ネットワーク強化とともに、博友会ネットワークというのは何なんですかね、支援の輪を広げていただき、国政での活動を支えていただきたく存じますと。これは政治団体ですよ、下村大臣を応援するための団体なんですよ。末尾には、「博友会合同後援会 役員一同」、そして連名で、文部科学大臣の肩書を付して下村大臣の名前が書かれているんです。これはまさに一体なんです。

 大臣がこれまで、地方の博友会は地域の有志の皆さんで運営していただいており、事務所は一切タッチしておりません、私の政治活動とは無縁でありますと言っていますけれども、これは全く今までの説明と矛盾しているんじゃないですか。

下村国務大臣 まず……(発言する者あり)後藤さん、静かにしてください。いいですか。(発言する者あり)

大島委員長 後藤君、静かにしなさい。

下村国務大臣 よろしいでしょうか。

 まず、この「自由民主」ですが、これは私のところで出している新聞であります。その中で、全国博友会合同幹事会、別にここでそれぞれの任意団体の中身について議論をしているわけでは全くありません。これは、それぞれの意思疎通を図るための会議といいますか会合でありますが、それぞれの任意団体がこんなことをしている、あんなことをしている、その中の、中身についてどうかとか、そういうことを議論する場ではないということでありますね。

 それから、この「御礼」のことでありますが、この博友会セミナーというのは、ここにも日にちがありますが、平成二十六年十月十四日、東京で開かれた、東京の博友会の博友会セミナーであります。そのときに、全国の任意団体の代表者の方々も来ていただくようにしようということで、実際は、任意団体からお一人から二人、まあ、数人程度でありますが、主体は東京の博友会であります。ですから、博友会は、政治資金団体として届け出しておりますから、収支報告にもちゃんと出しております。

 なぜ、それにもかかわらず合同だという名前を出したのかということについては、博友会と、名前としては一体化していますけれども、先ほど申し上げているように、東京の博友会のみが政治資金団体として届け出ている。ほかの団体は任意団体だということでありまして、この主催も、これは東京の博友会がやっている。ほかの団体が、任意団体とか、共催団体になっているわけではないということであります。

大西(健)委員 そうであれば、ここに東京博友会と書けばいいだけの話でありますし、まさに一体化しているとお認めになっているわけです。あるいは、意思疎通を図るというのは、先ほどの合同幹事会、まさに一体としてやっているということでありますし、この合同後援会ということで、まさに任意の団体が政治団体として無届けでパーティーを一緒になって開いていたら、これは政治資金規正法違反ですよ。ですから、まさにそのところが問題になっているんです。

 再度この産経の記事を見ていただきたいんですけれども、近畿博友会の会長、この方は全国博友会の世話役でもあるんですけれども、この方は、先ほど言ったように、会費が献金になっているということを認めているし、もう一つは、こう言っているんです。届け出ると規制がかかる、収支を明らかにする必要が生じると無届けの理由を説明しているんです。

 でも、こんなもの、我々、政治団体に登録したら収支報告を出して、そしてお金の流れも明確になるわけです。それが嫌だからといって任意団体で済まされるんだったら、みんなそうしてしまいますよ。政治資金規正法が全く意味がなくなってしまうんです。

 ですから、まさにそういうことを近畿博友会の会長が認めておられるわけですから、この近畿博友会の会長、森本一さん、この方も委員会に呼んでいただいて、このとおりなのか、会費が政治資金に化けているのか、あるいは、届け出しないのは、収支を明らかにしたくないから、わざと届け出していないと言っているんです。そのことをぜひ、これはもうこの質疑そのものの根幹にかかわることですので、森本一さんの参考人招致をお願いいたします。

大島委員長 理事会で協議します。

大西(健)委員 本当に当事者の方々に来てもらってこの問題は明らかにすべきだというふうに思いますが、時間が限られていますので、きょうはこの問題についてはここまでといたします。

 次の問題に移りますが、去る二日の本委員会で我が党の西村委員が、二〇〇六年に、塩崎大臣が代表を務める政党支部が、補助金支給の決定を受けた法人から二百二十四万円の献金を受けていた問題について、返金をしたんですかどうなんですかということを尋ねて、大臣は調べてお答えしますということでありましたが、調べていただけましたでしょうか。簡潔にお答えください。

塩崎国務大臣 今御指摘のように、先日の当委員会で西村議員からお尋ねがございました。突然のことだったものですから資料がなかったわけでございますので、お調べをいたしました。

 御指摘の献金は地元の後援企業から行われたものでございまして、当該企業が受けました補助金は試験研究に関するものでございまして、政治資金規正法の規制の適用除外に当たるものと聞いておりまして、適法な献金と理解をしております。

 したがって、この献金については返金する必要はないものと考えております。

大西(健)委員 これは西村委員からの質問に対する宿題になっていたことですので御確認をさせていただきました。

 では、現在、安倍内閣では既に、補助金交付決定を受けた企業からの違法な献金というのを受けたという閣僚が総理を含んで六名に上っていますけれども、この二〇〇六年のではなくて、直近というか現在、塩崎大臣に改めてお聞きしますけれども、大臣が一年以内に、補助金交付決定を受けた企業から献金を受けたという事実はありますか。

塩崎国務大臣 この一年間ということでありますけれども……(大西(健)委員「一年間ではなくて、二〇〇六年以降」と呼ぶ)

大島委員長 もう一回ちゃんと聞きますか。(塩崎国務大臣「はい。お願いします」と呼ぶ)

 もう一回、大西さん。

大西(健)委員 先ほど、二〇〇六年のものは、これは適法なものなので返金もしないということですけれども、その後、今までの間に、補助金交付決定を受けた企業から献金を受けたという事実はありますか。

塩崎国務大臣 献金につきましては、法にのっとって適正に処理をされているものと認識をしております。

大西(健)委員 お手元に自由民主党愛媛県第一選挙区支部の報告書のコピーを配らせていただいていますけれども、ここに印をつけているダイダンという会社、十二万円の献金を受けておられます。この会社は、二〇一二年の九月に独立型再生可能エネルギー発電システム等対策費補助金の交付決定を受けておられますけれども、その一年以内、二〇一三年五月に、大臣、この献金を受けられているんじゃないんですか。

塩崎国務大臣 今先生御指摘の、このダイダンという会社からの、平成二十四年度に受けた補助金は、独立型再生可能エネルギー発電システム等対策費補助金という、今先生御指摘のとおりでありますけれども、この補助金は、一般社団法人の新エネルギー導入促進協議会を通じた間接補助金でございまして、政治資金規正法に規定する、いわゆる国からの交付の決定を受けたという要件には該当しないものでございます。

大西(健)委員 いや、これは資源エネルギー庁の補助金で、事務はこの法人がやっておられますけれども、これは国の補助金なんじゃないんですか。

塩崎国務大臣 今申し上げたとおり、これは一般社団法人新エネルギー導入促進協議会を通じた間接的な補助金でございまして、国からの交付の決定を受けたという要件には該当しないというふうに考えております。

大西(健)委員 県とかに一旦行って、それで県がやる補助とかはあれですけれども、ほとんど、この手の補助金というのは、そういう社団とかが事務とかは代行していますけれども、国の補助金だと私は思います。

 いずれにしろ、これは大臣、一回、二〇〇六年、第一次安倍政権のときにもこのことで指摘を受けて、結果、調べたら研究開発の話だったから返さなかったという話ですけれども、また今回問題になっていて、ダイダンというのは、北陸新幹線の融雪工事談合で、ことしの一月に営業停止処分を受けているんです、談合で。

 そういう企業からの補助金ですけれども、お返しになるというつもりはありませんか。

塩崎国務大臣 繰り返し申し上げますけれども、このダイダンが受けた補助金は、国からの交付を受けたものではございませんので、これは政治資金規正法に当たるものではないということでありますから、先ほど説明したとおりのことであって、ほかの問題はほかの問題で、政治資金規正法の問題を今問題にされているはずでありますから、余り問題を混同していただかない方がいいんじゃないかと思います。

大西(健)委員 談合で営業停止処分を受けている企業ですけれども、お返しになるつもりはありませんか。

塩崎国務大臣 今繰り返し申し上げましたが、政治資金規正法上の問題としてどうなのかということで、法律に触れるかどうかという問題でありますので、その意味では、今申し上げたとおり、これは国からの交付ではないということなので、政治資金規正法には当たらないということでございます。

大西(健)委員 ちょっと時間が押してきたので、もう一つの問題に移りますけれども、これも西村委員が指摘をされた問題ですけれども、厚労省の派遣法の担当課長が、派遣労働者を物扱いしたという発言であります。

 まず、本日、この発言を行った当事者の富田課長に、直接ここに来ていただいて、言った本人にその真意を私確認したかったんですけれども、それを認めていただけなかったということで、これは非常に遺憾に思います。

 また、昨日の夕方、我が党の会議に富田課長に出席をお願いしましたけれども、体調不良ということでドタキャンをされました。

 私は、疑いたくはないんですけれども、担当課長が、正当な理由なく、我々が呼んでも来ていただけない、国会にも来ていただけないということになると、これは今後、派遣法の審議なんてできないと思いますので、塩崎大臣、富田課長は本当に体調が悪いのかどうなのか、医師の診断書を出していただきたいんですけれども、お願いできますか。

塩崎国務大臣 先ほど御指摘ありましたように、体調不良できのう出席をしなかったということでありますが、私の理解では、きょうも体調不良のために半休を今とっているというふうに聞いておりますので、今、診断書ということでありますが、持ち帰って検討したいと思います。

大西(健)委員 皆さんのお手元に、富田課長が日本人材派遣協会の新年賀詞交換会で挨拶をしたときの、その挨拶の内容を文字起こししたものをお配りさせていただいているんですが、ここですよね、労働者は、期間が来たら使い捨ての物扱いだったのが、ようやく人間扱いする法律になってきたと。この発言は、国会に労働者派遣法の改正をお願いしている担当課長の発言としては、余りにも私は不用意な発言だと思います。

 派遣労働者を物扱いしてきた派遣法をこれまで三十年以上推進してきたのは、これはどこの誰なんですか。厚生労働省じゃないですか。その厚生労働省が、その責任をさておいて、こういうことを言っているわけです。

 そして、今も、正社員になりたくてもなれないで、低賃金で働き続けてつらい思いをしている、そういう派遣の人たちに、厚生労働省として、改めてこの場で、大臣、謝罪をすべきじゃないですか。

塩崎国務大臣 前回、西村議員の方から、人材派遣協会の賀詞交換会における需給調整事業課長の発言について御指摘がございました。

 これは、発言自体は、今お配りをいただきましたけれども、事実でございまして、厚生労働省としては、派遣で働く方々を物扱いしているということは決してないわけで、しかし、誤解を招くような不用意な言葉を担当課長が使ったということについては改めておわびを申し上げたいと思いますし、私から、先日、これを確認した上で、発言した担当課長に対して、先般、二日でございました、月曜日でありましたが、西村先生から御指摘をいただいたその日に私から直接厳重注意をいたしました。本人も深く反省をしているというふうに私は受けております。

 発言の意図は、その際、西村先生にも申し上げましたけれども、現行制度では派遣で働く方々の保護が不十分であり、今回の改正によってより一層の保護の強化を図ろうとしていることを説明したかったものだというふうに認識をしていて、その際、派遣で働く方が物扱いされているのではないかという批判がずっとされてきたことについて、前提も置かずに不用意な用い方をしたということに関して、改めて、これは問題だし、私は厳重注意をした。そして、私としても、この発言に関しては、上司としておわびを申し上げなきゃいけないというふうに考えておるところでございます。

大西(健)委員 これは、ある意味、富田課長、私は正直な方だとも思います。

 皆さんのお手元にちょっと資料を配らせていただきましたけれども、企業によっては、正社員の人件費は人事部で、派遣社員に関する費用は購買部で管理しているというところもあるんですね。そして、人件費は固定費だから簡単には削れない、だけれども、派遣社員の雇用に関する経費は、企業にとっては経理上仕入れになるので、変動費だから削ろうと思えば削れる、こういうようなことになってしまっているというところもあるんです。

 だけれども、今回、富田課長は、今回の法改正で、物扱いだったのが人間扱いされるようになると言っていますけれども、では、派遣社員に関する費用が今回の法案で物件費から人件費に変わるんですか。変わらないんですよ。何にも変わらない。変わらないどころか、正社員の人件費は減って、不安定な雇用への置きかえが進むのが今回の法律案だというふうに私は思います。

 しかも、富田課長は、ようやく人間扱いすると言っているんです。ようやく人間扱いする、そんなレベルの法案だったら、ちゃんとしたものを出し直してください。そうじゃないと、私たちはとてもじゃないけれども認められないということを最後に申し上げて、質問を終わらせていただきます。

大島委員長 これにて大西君の質疑は終了いたしました。

 次に、神山洋介君。

神山(洋)委員 神山洋介でございます。

 きょうの予算委員会、そしてこれまでの予算委員会の議論を通じて改めて思いますのは、信なくば立たずという言葉でございます。法律の条文、文言にきちんと照らし合わせてどうなのかという、その形式的な判断というのはもちろん大事ではありますが、我々政治の場に責任を有する人間としては、その文言に合致するかどうかということに加えて、やはり多くの有権者、国民の皆様方から、道義的にも、論理的にも、そして情念の観点からしても納得感をいただいた中で政策立案をし、そしてそれを実行することができるのかというところが極めて大事なのではないかということを改めて感じているところでございます。

 きょうは、その観点の中から、安全保障法制、そして経済、そして格差の問題というところを取り上げさせていただきたいと思っておりますが、少し盛りだくさんなので、場合によってはお尻に届かない可能性もあるということは、あらかじめ御容赦をいただければと思っております。

 さて、私は、二年前の総選挙で落選をして、二年間浪人をして、このたび二年ぶりに国会に戻ってまいりました。国会に戻ってきたら、大きく景色が変わっておりました。それは、会派の構成人数の話のみならずでありまして、一番大きく変わっていたのは、この安全保障をめぐる前提条件の部分ではないかなということを感じております。

 さきの任期をいただいていたときには、この日本という国は、集団的自衛権は行使をすることができないという前提でした。戻ってきたら、集団的自衛権を行使することも可能であるということに変わっておりました。どうにも腹に落ちません。

 この二年間の間に、例えば憲法改正の発議があって、国民投票があって、そこで確定をして、その上でこれから安全保障法制の議論をしようということなのであれば、それは、立憲主義の前提の中で、国民の命によって憲法の改正がなされて、そしてその前提の中で法整備をしなければならないのは、我々立法府にいる人間の責任であると私も思います。しかし、この二年間で国民投票が行われたということを私は知りませんし、そうではなかったのではないかというふうに思うわけです。

 きょうは中谷大臣にもお越しをいただきました。この集団的自衛権の容認、立憲主義との関連性において大臣はどうお考えであるのか、この点をまずは確認させていただきたいと思います。

中谷国務大臣 先般閣議決定をしたわけでございますが、それは、国民の命と幸せな暮らしを守るために必要最小限度の自衛の措置が許されるという従来の憲法解釈の基本的考え方を変えるものではありません。したがって、憲法の規範性を何ら変更するものではなくて、立憲主義に反するものではございません。

 もとより、閣議決定だけで集団的自衛権が行われるわけではなくて、自衛隊の根拠となる法律、これが必要でありますが、そのためには、政府としてこの法案を国会に提出する際に、内閣の意思統一をして初めて政府としての法案の準備作業に入ることができますので、この閣議決定はあくまでも法律制定の準備のための基本方針でありまして、現在法案の準備を進めておりますが、状況の変化等に対して憲法の枠内で対応しているという認識でございます。

神山(洋)委員 論理的にそういう解釈をなされたということが、さまざまな資料であり、御説明の中からもいただきます。その論理をどう評価するかは別として、論理的という、そこに一定の論理があるということは、私もある程度は理解をすることができます。しかし、先ほど冒頭申し上げたように、論理に合致をしていればそれでいいのかといえば、我々政治の場にいる人間は、それだけでオーケーだと言うことはできないのだと思うわけです。

 特に、安全保障という、多くの有権者、国民の方々からの理解、合意があって、そしてこの国の権限の発動という意味で、場合によっては武力を行使するという極めて大きな要素が含まれているということを考えてみれば、それは、論理的整合性があるがゆえに立憲主義に合致をしていて、そして、であるがゆえに問題がないんだと果たして言うことができるのかという、そこに私は疑問を抱くわけです。

 多くの国民の方々が、ぜひそうあるべきだ、そうすべきだということを命じて、その上で、今の現実の安全保障環境に照らし合わせて、さまざまな立法措置であり、戦略環境を踏まえた中での具体的な防衛装備の整備でありということが行われるべきであると私は今でも信じておりますが、大臣、いかがでしょうか。

中谷国務大臣 現在でも、防衛力の整備計画に基づいて我が国の防衛のあり方について準備をしているわけでございますが、非常に我が国をめぐる安全保障環境は激変をしておりまして、もはや、どの国も一国のみで平和を守ることができません。そういうことで、いかなる事態に対しても国民の命と幸せな暮らしを守り抜く、また国際社会の平和と安定にこれまで以上に積極的に貢献をしていく、そのためには、あらゆる事態に対応できる切れ目のないようなことを可能とする法律の制定が必要でございます。

 この点につきまして今検討しておりますが、国民の皆様方の御理解がいただけるように努力をしてまいりたいと思っております。

神山(洋)委員 おっしゃるように、今の日本の周辺の環境は大変厳しくなっているという安全保障環境、これは私も恐らく変わらないかなと思います。だからこそ、その厳しい安全保障環境の現実を多くの国民の方々に説明をし、理解を得る努力をし、その裏返しとして、では、我が国はどうやってこれから我が国の存立を保っていくべきなのかという手段の話をする、理解を得るという努力を我々政治の側はきっちりとしなきゃいけないんだと思うわけです。

 にもかかわらず、その説明なくして、そして昨年七月一日の閣議決定の前後の話でいえば、密室とまでは申し上げませんが、広く国民にそのことを訴えて、その結果として大きな戦後の安全保障政策、防衛政策の転換を図るのだということを真摯に国民に対して訴えて、理解を得ようとして、その結果こうなったんだというプロセスが果たしてあったのだろうかという、そこに私は大変大きな疑問を抱くわけです。

 これまで、そもそも終戦以降、今の日本国憲法の中で、時に、この日本の安全保障環境をどう変えていくのか、どう守っていくのかということを考えたときに、知的アクロバットとも言われるような表現で、さまざまな苦労を積み重ねてここまで来たわけです。

 私は、その結果、この国会で行われている議論も含めてでありますが、日本の安全保障政策というものと国民の理解、関心、感覚というものが大きく乖離をしてしまっているんじゃないか、ずっとそういう問題意識を抱き続けてきました。そして、それを少しでも縮めていくということが、それはいかなる選択肢を、いかなる政策をとるかということは別として、極めて重要だということを今でも考えております。

 その意味からすれば、今回の、昨年七月一日の閣議決定によって大きくこの基本的な考え方を改めたということは、国民の方々の理解と、そして現実としてある今の日本の安全保障政策とのこの距離を、さらに大きく広げてしまったということになりかねないんじゃないでしょうか。私は、そのことが極めて大きな問題だと思っておりますし、恐らく中谷大臣にもそのことは御理解いただけると思うんですが、いかがでしょうか。

中谷国務大臣 我々は、こそこそやっているつもりではございません。堂々と議論をして、しっかりと閣議決定をして、政府の考え方を示しながらやっているつもりであります。今やっている検討におきましては、国民の命そして幸せな暮らしを守るために必要最小限度の自衛の措置が許されるという従来の憲法解釈の基本的な考え方、これに基づいてこの閣議決定を行いまして、その後も、開かれた場ということでそれぞれのテーマごとに今議論を展開いたしておりますので、その報道や、また、それぞれのこういった国会での質疑の場等を通じて国民の皆様方になるべくわかりやすいような議論をして、御理解をいただきたいと思っております。

神山(洋)委員 そういう場をもっときっちりとつくるべきだと思うんです。そして、もっと言えば、そのことは前段であるべきだと思うんです。

 閣議決定によってそのことが決まって、そして、もう決まっちゃっているから、それについての安全保障法制について個別具体的な議論をしましょうという中で、前段の閣議決定そのもののよしあし、今のこの国の憲法解釈のよしあしを議論しても、もはや手続的には後先になっちゃうわけじゃないですか。今さらこれを言ってもしようがないと思われるかもしれませんが、私は、ここは大きな禍根を残したんじゃないかということをこの点では申し上げておきたいと思っております。

 でき得る限り、これは国民にオープンな形で、いかなる脅威に対していかなる対処をしなければならないがゆえに、その手段を、実行する手段を担保するためにこういうことをやらなければならなくて、その前提として憲法をこう改めなければならないのだという、その道筋を私は誤ってはならないと思うんです。いかがでしょうか。

中谷国務大臣 今の安全保障の議論は、今の憲法で集団的自衛権がどう考えられるのかという点でありますが、これは、第一次安倍内閣のときからもう七年にわたって、審議会を設け、メディアでも議論をされ、そして総選挙、また参議院選挙、これでもそれぞれの党として、我が党も訴えましたけれども、それに加えて、国会においても延べ七十名の議員から、先生もそのお一人でございますが、質問がありまして、総理も、官房長官も、また担当大臣も、さまざまな場で説明をし、議論をいたしておりました。

 閣議決定は、その上で、自民、公明の連立与党としての濃密な協議がされた結果でございまして、その後も議論を続けておられますけれども、こういった場で、きょうも新聞各紙、安全保障議論がどうなるのか、報じているわけでございますが、できるだけ開かれた場で行っているという認識でございます。

神山(洋)委員 論理的整合性に注意を払って今回の解釈改憲を行ったという、そこはわかります。先ほど大臣のお話がありましたが、あらゆる事態に対して切れ目のない対応を行うということは、これは誰が考えても必要なことであると私も思っております。

 あらゆる事態に対して切れ目のない対応を行わなければならないという観点の中で、さまざまな検討が、これは与党協議の中でかもしれませんが、今なされているのかもしれません。

 そのことを考えたときに、一つ確認をさせていただきたいわけですが、集団的自衛権の話であり、ROEの話であったり、広範囲に今回、見直しが行われようとしているということだと思うわけですが、では、これまでの我が国の防衛政策の一つの重要なコンセプトであった専守防衛という考え方に関しては、変更はあるのでしょうか、ないのでしょうか。

中谷国務大臣 これからも専守防衛を維持するということには変わりがございません。

 というのは、専守防衛とは、相手から武力攻撃を受けたときに初めて防衛力を行使して、その形態も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢をいうものでございます。

 今回の閣議決定におきましても、憲法九条のもとで許容されるのは、あくまでも国民の命と平和な暮らしを守るための必要最小限度の自衛の措置としての武力行使のみでありまして、我が国または我が国と密接な関係にある他国への武力攻撃の発生が大前提で、また、他国を防衛すること自体を目的としたものではありません。

 そういう点で、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢であるということに変わりがなくて、政府としては、我が国の防衛の基本的な方針としての専守防衛を維持することには変わりがないというふうに考えております。

神山(洋)委員 大臣、私も専守防衛に関しては、基本的には、これはきちんと維持をしなければいけない、当然のことだと思っています。

 ただ、あえてこのことをお伺いしたのは、先ほども大臣からのお話もありました、私も申し上げましたが、あらゆる事態に対して切れ目のない対応を考えなければならない。そして、今回の憲法の解釈改憲の話をすれば、そこに対して論理的に精緻な議論を組み立てていくんだという姿勢でやってきておられるのだと私は思います。だとすれば、専守防衛は本当にその論理的帰結の中で見直さなくていいんでしょうか。

 あくまでも論理上の問題でお伺いをしておりますが、例えば、敵地攻撃能力を持たなければならないという議論は昔からあります。これは半島情勢等を含めた議論の中で何度も出ていると思います。

 そして、昨今でいえば、極めて大きな問題になりつつあると私は思っていますが、サイバー領域の中でどうやって我が国がこの安全を確保していくのかということを考えたときに、では、サイバー領域の中で我が国がどうやって専守防衛を実現するんでしょうか。

 御存じのとおり、詳細はこの場では申し上げませんが、サイバー領域の中で受動的に防衛をし切るということが極めて難しいということは、一般的に、技術的にもよく言われている話だと思います。これは、そもそも、それが先制攻撃という法律上の文言に該当するかは別として、DDoS攻撃があったときに、そのサーバーに対して一定の打撃を加えなければ防御はすることができないという技術的な判断も多数出ているのではないかと思うわけです。

 再度申し上げますが、論理的に考えたときには、では、そこに対して攻撃をしなくてどうやってあらゆる事態に切れ目のない対応をすることができるのでしょうか。この点を一つ考えたときにも、なぜ、ではそこに対しては検討がされていないのかということは、一つ、論理を前提とすれば、疑問に思う点があるわけです。大臣、この点はいかがでしょうか。

中谷国務大臣 これまでは個別的自衛権の範囲で国を守ってきましたが、先ほど御提示されたサイバーとかミサイルとか、いろいろな事態が現実に考えられますので、それだけで本当にこの国を守ることができるかということで、閣議決定で三つの要件を立てました。

 一つは、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において、これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るためにほかに手段がないとき、そして三つ目は、必要最小限度の実力を行使するということを満たす場合に対応するということでありまして、いずれも、我が国と密接な関係にある他国への武力攻撃の発生が大前提でありまして、他国を防衛すること自体を目的とすることではありませんが、あくまでも、我が国を防衛する、専守防衛を維持するという観点は維持してまいっております。

神山(洋)委員 ちょっとよくわかりません。

 論理的に考えれば、サイバーの領域であったり、そして、一つの政策的な考え方として、半島情勢が急を要して、ミサイルの発射が差し迫っているというときに、そこに対してパワープロジェクション能力をもって打撃を加える能力が必要だという論もあるわけです。論理的に考えればです。政策オプションとしてそれをとるかどうかは別ですが、論理的に考えればそれはあるわけです。

 今回の、あらゆる事態に対して切れ目のない法制を検討するのだという前提に立ったときに、なぜこの問題は検討から落ちるのでしょうか。優先度が低いという御判断なのでしょうか。集団的自衛権の行使を是認するという中で可能にしようとする対応よりも、今申し上げたようなサイバーの事例を含めた観点、それが発生する可能性が低いと判断をされているから、今回はそこは見直しの範疇に入っていないという理解でよろしいんでしょうか。大臣、いかがでしょうか。

中谷国務大臣 お尋ねの、ミサイルの源ということで、策源地攻撃と言われますけれども、もう既に個別的自衛権の中でもそれは認められるということで、既にこれは個別的自衛権の中での対応として認められております。

 しかし、今回は、我が国に対する武力攻撃が発生していなくても、他国に対する武力攻撃が発生した場合に、先ほど申し上げました我が国の存立にかかわるような三つの条件に対応した場合に対応できるようにしましょうということでございますので、お尋ねの最初の方は、もう既に個別的自衛権の範囲内であるというような見解も出ておりますので、それもあわせて法的な整備を検討しているということでございます。

神山(洋)委員 サイバーの場合にはどうなんでしょうか。専守防衛という今の解釈をサイバー領域に当てはめた中で、それを今後も、安全保障戦略、安全保障政策の基本として専守防衛であるという前提で、では、本当にこの先も存立可能なんでしょうか。

 そもそも、このサイバー領域の中で何をもって攻撃を受けたとするのかという基本的な概念も含めて、まだ真っさらなんじゃないでしょうか。検討を始めているというお話は伺っていますが、少なくとも、明文化をされて、そして具体的な法規に落ちた形でペーパーになっているものは、私は知りません。私は、前の現職時代からもこのことはずっと言い続けてまいりましたが、そういったことも漏れているという中で、なぜ集団的自衛権の話のみがぼんぼん進んでいくのかということに違和感を抱かざるを得ないわけです。

 集団的自衛権に関して議論をして検討することも確かに大事だと私は思っております。しかし、余りにもバランスがよくない。あらゆる事態に対して切れ目のない対応をしなければならない、それはそのとおりでしょう。あらゆる事態ということの中で、この御時世の中で、第四、第五の領域と言われている宇宙、サイバーという領域がなぜ漏れていて、集団的自衛権の話だけがなぜ突出をしているのか。どうしてもここには、そのことが目的だったんじゃないかという疑念を抱かざるを得ないから、このことを申し上げているわけです。

 大臣、もう一度お伺いをしたいんですが、では、サイバーのことを考えたときにも、果たして専守防衛を維持できるという論理的帰結という理解でよろしいんでしょうか。

中谷国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、憲法の持つ基本的理念というのは変更をしておりません。

 前回もこの委員会で、では機雷の場合がどうかというような議論もありましたけれども、サイバーであろうがほかの分野であろうが、あくまでも新三要件、これに含まれるかどうかによって判断をされていきますので、こういった問題も含めて、ありとあらゆる事象に対して適切に対応できるようなことを考えております。

神山(洋)委員 時間も限られておりまして、これ以上それに突っ込むのはやめますが、しかし、やはり今の大臣のお話をお伺いしても、ちょっと苦しいと思うんですよ。

 新三要件に該当するか否かで、サイバー領域であろうが、それが物理的な領域であろうが判断をする、それはまあ当然でしょう。ですが、そもそもそのサイバーという領域の中で、先ほど、前段で私が申し上げた、お伺いをしたような、では、専守防衛という今までのコンセプトを本当にそのまま維持することができるのかという論理的な検討はあってしかるべきなんじゃないかと思うんです。

 その論理的な検討があって、結果としてそのことは必要ないのであった、それよりも集団的自衛権の話であり、周辺事態法、PKO関連、そして今、これから議論がされるでありましょうけれども、グレーゾーンの議論が優先だからそのことをやれと言うのであればまだわかる。どうしてもバランスがよくない。このことだけは指摘をさせていただきたいと思います。

 もう一点、お伺いをさせていただきたいことがありまして、今申し上げたのは少し細かい話ではありますが、この安全保障をめぐる議論というのは、これはお集まりの委員のどの選挙区でも、どの有権者の方とお話をしていてもそうだと思うんですが、なかなか遠い、話しづらい話であることは事実です。ですが、これほど我々の生命と財産を左右する問題というのも、逆に言えばない、極めて重要な問題だと私は思っています。

 その意味でいえば、いかなる政策を選択するにしても、国民の一人でも多くの方々の理解と同意があるということは、私は大変重要なことではないかなというふうにずっと思っております。

 今回の集団的自衛権の行使の容認が昨年七月一日の閣議決定でなされたことに対して、各社さまざま、いろいろな形で世論調査がなされております。ここでその一個一個の数字だったり聞き方をつまびらかにしようとはしませんが、総じて見る限りは、せいぜい、いいとか悪いとかという意味ではどっこいどっこい、時々そういうのがある。でも、多くは、評価をしないとか反対だとかという表現ではありますが、ネガティブな評価が多い。これは事実だと私は思っています。

 この程度の理解の中で、戦後の安全保障政策、防衛政策を根底から変えるような決断をするということで本当にいいのかということを大臣に問いたいと私は思うんです。

 これだけ重要な問題であって、そして、逆に言えば、これまでの、ある意味では戦後七十年間ずっと我が国が苦しんできた知的アクロバットともいうべきその論理をさらに、知的アクロバットの上にさらにアクロバットを積み重ねてこれからの政策遂行をしていくというスタンスで本当にいいんでしょうか。それは大臣の本意でしょうか。もっと多くの国民の方々から理解をされて、同意をされて、そうあるべきだという大きな声の中で、場合によっては現場にいる自衛隊員の方々も活動したいと思っていらっしゃるんじゃないでしょうか。

 大臣、この国民の理解の必要性、どうお考えですか。

中谷国務大臣 御承知のとおり、主権在民ということでございますので、何よりも国民の理解が第一というふうに認識をいたしておりまして、政府としても、国民の皆様方により一層の理解がいただけるように、丁寧に説明を行っていきたいということでございます。

 また、我々国会議員も、与党も野党もこれは関係なく、やはり国民の負託を受けておりますので、国会議員として説明をし意見を伺うということが大事で、御党の前原理事ともずっと安全保障については協議をしながら、やはり時代が変わってきておりますので、どういうふうに変わるのかということは常に説明をしなければならないと思います。

 しかし、マスコミの方も非常にこれは熱心に、連日のように今の協議については報道して伝えていただいておりますし、きょうもこういう御質問をいただきました。努めてこれからも政府として国民の皆さんに説明をして、御理解をいただく努力をしてまいりたいと思っております。

神山(洋)委員 マスコミの方が熱心に報道してくれて、国会でさしたる議論も行われない中でぼんぼこ進んじゃうというのがまずいということなんですよ。

 マスコミはマスコミで報道していただくことは大事でしょう。しかし、国権の最高機関たる国会の中で、この七十年にわたる安全保障政策、防衛政策の根幹を改めるのだということについて、まだ一年もたっていませんが、かれこれ昨年の七月からすればもう八カ月、九カ月ぐらいになりますでしょうか。その間、そして、二十日ぐらいに法案が出てくるの何のという話もありますが、全然議論が行われていない中で物事が進んでいってしまうということがまずいんじゃないですかと。そして、その結果、それは国民の方々の理解を深めなければならないんだという前提を大きく阻害してしまうんじゃないかということを申し上げているわけです。

 大臣は、もともと自衛官として任官をされて、そして今に至るというふうに承知をしております。自衛官が任官をする際に、「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえる」という重たい宣誓をして任官をするということは承知をしております。そして、大臣はそのことを理解した上で、今防衛大臣としてその責任を果たしていただいているんだと思います。

 国民の多くの方々の、できるだけ多くの方々の同意と合意と頑張ってくれという思いの中で現場の自衛官が働きたいと思っていらっしゃると私は思うわけです。今の、頑張っても半分ぐらいしか理解してもらえないという中で、知的アクロバットの上にさらに知的アクロバットを積み重ねて、そして、多くの方々からすればよくわかりませんという中で物事が進んでいき、そして、これから安全保障法制の議論が始まっていって、そこで、それはどういう形をとられるのかよくわかりませんけれども、これだけの数の中ですから通そうと思えば幾らでも通せるでしょう、法案が通って、いざ、では、存立事態というんでしょうか、その事態が発生をしました、国民の方々からは余り理解を得られていない、同意も得られない、反対運動まで起きちゃった。その中で、命を賭して現場に行けという指示を、命令を、大臣は本当に迷いなく下すことができるでしょうか。大臣、いかがですか。

中谷国務大臣 まさに自衛隊としてそういう活動を行うべきかどうかということで、これは法律がなければ自衛隊が運用できませんので、まずこういった法律を今つくろうとしているんですね。

 国会でもこういう議論はいたしますが、やはりまとまった議論、まとまった形を政治は示さなければならないということで、これはやはり政党間でも意見をまとめ、そして与党間でも意見をまとめ、そして法律という形で国会に出して、そして与野党で議論をして採決に至るというプロセスの一環でありますので、どういう形にするか。これを今まさに与党の中で議論をいたしております。

 できるだけ具体的に法案という形で早期に出して、国会で、それぞれの議論を通じて、やはり立憲、国会の意思として法律をつくって、それに基づいて自衛隊、先ほど言われましたけれども、大変強い使命感を持って行動していただいておりますが、反対に、国会としては、それを送り出す側として、部隊や隊員の安全性、そして正当性、国際的な枠組み、こういったものをしっかり示すことができて国民の理解が得られるように、これからも努力をしていきたいと思っております。

神山(洋)委員 そのことを具現化して実際にやっていただきたいんですよ。オープンに、広く国会の場できちんとこのことについて真っ正面から受けとめて議論をしようという姿勢が感じられないからこのことを申し上げているわけです。

 それをぜひやっていただきたい。そのことによって、多くの有権者の方々が、国民の方々が、今のこの国が置かれた状況であり、今後とらなければならない政策オプションであり、その観点の中で、憲法がいいのか悪いのかという話も含めて理解をいただいて、結果として、我が国の安全保障が確固たるものになるんじゃないでしょうか。そのことを最後に改めてこの場でお願いを申し上げまして、私からの質問は以上とさせていただきます。

 ありがとうございました。

大島委員長 これにて神山君の質疑は終了いたしました。

 次に、緒方林太郎君。

緒方委員 民主党、緒方林太郎でございます。

 予算委員会、今回初めてでありまして、当てていただきましてありがとうございます。

 まず、麻生大臣、質問通告いたしておりませんが、一つお伺いさせていただきたい。そんな難しい話じゃないです。

 かつて、外務省時代に、ガッチャマンということについて非常に言及をされていた。こういうことに注目する大臣というのは非常に珍しいなと思ったんですけれども、ガッチャマンに対します思いを一言語っていただければと思います。

麻生国務大臣 質問通告を受けていないことは間違いありませんが。

 一時期を風靡した、今でいえばアニメなんだと思います。当時はアニメという言葉もなくて、まだ動画も出ていなかった時代だったと思いますが、そういったときに一世を風靡したあれだと思います。あの辺から漫画の流れが少し変わってきたかなというイメージがあります。(緒方委員「そうじゃなくて、ガットの専門家ということです。ガット、WTOの専門家ということで」と呼ぶ)ああ、ガットマン。ごめんなさい、間違えました。ゼネラル・アグリーメントの方のガットマン。失礼しました。全く漫画の方と取り違えまして、ごめんなさい。

 ガットマン、ゼネラル・アグリーメント何とかというのを略してガットマンというんですが、あの時代に比べて、今の時代というのは随分世の中がインターナショナルによりなってきたと思いますので、ああいうような貿易とか非関税障壁とか、いろいろな言葉があの時代からありましたけれども、かなり、日本の国力もついたせいもあるんでしょうけれども、よりオープンなものになってきて、今、TPP初め、いろいろな交渉が対等の立場でいろいろでき上がりつつあると思っておりますので、一つの流れとしては、随分時代が大きく変わってきたなという印象はございます。

緒方委員 済みません、変な話から始めました。ガット、WTOの話をしようと思ったので、最初に麻生大臣にその話をお伺いしました。

 きょうはミニマムアクセス米についてお伺いをいたしたいと思いますが、その前に、日本で国家貿易企業というのが幾つかございます。日本は、輸入をする際に、米、麦、そして生糸、指定乳製品、そういったものを国家貿易企業で輸入をしている。そして、この国家貿易企業については、ガット十七条に規定がございます。

 岸田外務大臣、ガット十七条、どのような規定でしょうか。お願い申し上げます。

岸田国務大臣 御質問のガット十七条ですが、国家貿易企業について、この協定の他の規定に妥当な考慮を払った上で、商業的考慮のみに従って購入または販売を行うこと、また、無差別待遇の一般原則に合致する方法で行動すること、こうしたことを規定している規定であります。

緒方委員 そうですね。商業的利益のみに基づいて輸入する、そして無差別待遇だということがガット十七条に規定をされている。

 そこで、お伺いいたします。林大臣、日本の米の輸入、ミニマムアクセス米の輸入は、このガット十七条に従って行われておりますか。

林国務大臣 当然、ガット十七条に基づいて行われているということでございます。

緒方委員 その割には、ミニマムアクセス米の輸入、もうこの数年、ずっとびたっと同じ数字なんですね。大体三十六万トン。およそ輸入している米の半分ぐらいが、もうほぼ半分が、決まったように日本の輸入分としてアメリカから輸入をしている。

 当時の、ガット・ウルグアイ・ラウンド妥結時のアメリカの農務長官であったイスパイ長官であったりとか、交渉官であったオメーラ交渉官、こういった方々は、日本の取材に対して、日本はミニマムアクセス米で約束した分を半分買うと約束した、この約束を守れなければ対抗措置の対象になる、そこまで言っています。

 本当に、商業的考慮のみに基づいて日本の米は輸入されていますか。

林国務大臣 ミニマムアクセス米の輸入ですが、これは、国内における実需者のニーズ、それから輸出国の安全性を含めた生産状況、それから輸出余力等を勘案して、競争入札ということで行われております。

 したがって、国別の輸入数量というのは公正な入札の結果として決定されておりますので、国家貿易企業は、商業的考慮のみに従って売買を行わなければならない、先ほど御指摘のあった十七条等の規定に照らして何ら問題はないというふうに考えております。

緒方委員 アメリカが半分ですけれども、その残りの半分のシェアについては、結構国が入れかわっていますね。タイが多いときもあれば、オーストラリアが多いときもある。いろいろと入れかわっている。

 商業的考慮のみに基づいて輸入するにもかかわらず、アメリカのシェアだけがばちっと一定に維持されて、ほかのところが揺れ動く。どういう理屈で商業的考慮のみに基づいてそんなことが起こり得るんでしょうか。論理的に説明ください。

林国務大臣 論理的にというと先ほどの御説明になりますが、さらにつけ加えますと、米国産の輸入が多く、かつ安定しているということでございますが、まず、米国からは中粒種というのを大宗、輸入しております。これが、我が国の国産の加工用米の品質に近くて、国内の実需者から一定の実需が、需要があるということと、それから、ほかの国のお米と違いまして、安定的な生産量と輸出余力を有しているということ、それから、もちろん安全性の面でも問題が少ない、こういうことがあって、こういう数量で推移しているものと考えております。

緒方委員 ということは、絶対に密約はない、米の密約はないということであり、そして、今の輸入している結果というのは、あくまでも、目標としてそういうものを設定したものではなくて、商業的考慮のみに基づいて輸入した結果である、結果にすぎない、そういう理解でよろしいですか。

林国務大臣 冒頭申し上げたとおり、今おっしゃっていただいたように、そういう密約はございませんので、結果としてこういうことになっているということでございます。

緒方委員 前西川農林水産大臣が、私が落選しているときですけれども、何度か記者会見で、あれっと思う発言をしていたことがあります。それは、今以上に自由化を進めれば、アメリカの米は売れなくなり、ベトナム産米であったり、ほかの国の米が強くなるから、だから自由化をすることはやめた方がいいということを、西川さんは自民党のTPPの対策委員長のときも、そして国務大臣になった後も、何度かそういう発言をしておられます。

 林大臣にお伺いをいたしたい。商業的考慮のみに基づいて現在輸入しているにもかかわらず、それを自由化したら、ベトナム産の米がふえるというふうにお思いになられますか。

林国務大臣 西川前大臣がそういう発言をされたということは、報道で見ております。私が見た報道は、TPP委員会というのが党にありまして、その時代の発言というふうには承知しておりますが、大臣として御発言されたかどうか、ちょっと私は報道を拝見しておりません。

 TPP交渉は委員会決議がございますので、これが守られたという評価をいただけるよう頑張ってまいりたい、こういうふうに思っておるところでございまして、どこの国がどういうふうになると有利になるか不利になるかというのは、一概になかなか申し上げにくいことだと思っております。

緒方委員 しかし、普通に考えれば、商業的考慮のみに基づいて現在輸入しているにもかかわらず、その関税が、アメリカとベトナム米とオーストラリア産米と全部がっと下がったときに、それでベトナム産米が有利になるということが仮にあるとするならば、現在、アメリカの米を優遇するような手が入っているんじゃないかというふうに推察することが可能なわけですけれども、そういうことはないというふうに、よろしいですね。

林国務大臣 まず、TPPの話は交渉中でございますので、これを前提になかなか申し上げられませんが、一般論として、どの国のものがどういう品質でどういう値段かというのは、それぞれいろいろな条件で決まってまいりますので、全くそういう仮定を置きませんと、どこがどっちに対してどう有利だということはなかなか申し上げにくいのではないか。したがって、定性的にアメリカの方がベトナムより有利だとか不利だとかというのはなかなか言いにくいのではないかと思っております。

緒方委員 それ以上の答弁が出てこないだろうと思いますけれども、私は実は、西川大臣にこれは聞いてみたいなとずっと思っていたんですが、余りに不謹慎な発言なんですよね。自民党のTPP対策委員長として、しかも、自分自身はアメリカに行ったときにフロマン通商代表に対してこれを言ってやったということを記者会見で言っているんですね。日本はおたくを優遇してあげているんだ、だから、これ以上自由化を進めたら、あんた不利になるよ、うちの手がもうきかなくなるよ、関税がゼロになったらいろいろな差配をすることができなくなるよということを俺は言ってやったと言っているんです。国際法違反ですよ、これ。

 こういうこと、林大臣、絶対にないようにしていただければと思います。もう一言、御答弁いただければと思います。

林国務大臣 先ほど申し上げたように、西川先生のこの発言というのは党の役職時代の発言だったということは報道で承知しておりますが、私としては、閣僚として、そういうことは申し上げるつもりはないということは申しておきたいと思います。

緒方委員 それでは、ミニマムアクセス米の使われ方等々について御質問させていただきたいと思います。

 現在、ミニマムアクセス米、輸入をした上で、テーブルに並んでいないもの、テーブルライスでないものというのが相当程度あります。飼料米に回しているもの、さらには援助に回しているもの。そして、援助に回しているものというのは長粒種ですね、あのぱらぱらしたお米、インディカ米です。ああいったお米を輸入して、そして、国内でマーケットアクセスを与えて、にもかかわらず、そのマーケットアクセスが存在しなかったから、だから援助に回しているということだと思います。

 林大臣にお伺いいたしたいと思います。今、ミニマムアクセス米で輸入されているもの、七十六・七万トン輸入されておりますが、日本の国内に需要が存在しないものがある、そういう理解でよろしいですか。

林国務大臣 輸入したMA米でございますが、価格等の面で国産米では十分に対応しがたい用途、主として加工食品の原料用を中心に販売をしております。輸入数量ほどはこの加工用等の需要が多くないため、飼料用に販売するほか、海外の食糧援助に活用しているというのが現状でございます。

緒方委員 商業的考慮のみに基づいて輸入した結果として国内に需要が存在をしない、そういう理解ですね。商業的考慮のみに基づいて輸入したけれども、だけれども、国内に需要が存在しないから、テーブルに並べるほどの、テーブルに並ぶものは中粒種ですよ、ジャポニカ米。ジャポニカ米の需要がないから、だから恐らく、援助に向いているもの、インディカ米ですけれども、ああいったものを輸入して、そして援助に回している。

 需要がないからということ、もう一度答弁いただければと思います。

林国務大臣 これは、緒方委員は外務省におられましたので御案内かと思いますが、商業的考慮というのは、先ほどお話があったような、入れるときの考慮のことでございますので、売り先が全部国内で、その価格でニーズが満たされるかどうかということでは必ずしもないのではないか。それ以外のことで差別をしないという意味で商業的考慮のみという言葉が使われていると思います。

 そういったことで、このミニマムアクセス米の輸入を国貿によってやりまして、結果として、価格等で、先ほど申し上げたように、需要に全部回らない部分について、別途、飼料用や輸出援助用に回している、こういうことでございます。

緒方委員 需要が十分でない分について援助に回しているという話がありました。

 これは恐らく長粒種であろうと中粒種であろうと同じでありまして、いずれにせよ、今、日本の米、国家貿易で輸入しているものについては、国内に十分な需要が存在しないということだというふうに私は理解をしております。

 さらに言えば、ミニマムアクセス米を輸入している中には、SBSで輸入しているものがございます。最近、SBSで輸入している、十万トンやっていると思いますけれども、枠を、上限までいっていないケースが結構ありますね。これも、実際には国内に需要がないから、そういう理解でよろしいですか、林大臣。

林国務大臣 おっしゃるとおりで、SBSは入札でやっておりますので、応札がなければ枠に達しないことがあり得るということでございます。

緒方委員 ここから甘利大臣であります。

 今、国家貿易で輸入している日本の七十六・七万トンの米があります。その中において明らかに、年によって変わりますけれども、何万トンかはわからないけれども、その年によって二十万トンだったり何十万トンだったりしますけれども、国内に需要がないわけですよね、今輸入している枠の中だけでも。

 ゆめゆめ、今行われているTPP交渉等で、今の状態ですら需要がないのに、新たな枠を設けるということは論理的に整合的でないと思いますけれども、いかがですか。

甘利国務大臣 TPP交渉ですから、これは全部がセットされて初めて全体が決まるということになりますから、途中経過について個々の内容を開示するということはできないので、そこは御理解をいただきたいと思います。

 いずれにいたしましても、今までの議論の中で、WTOのルールに従ってきちんとやっているのか、どこかの国だけ特別、さじかげんをして、そうなるようなことはしていないだろうなというお話の経緯の中で私に質問が振られているわけであります。

 私どもは、基本的に、WTOのルールというのは大原則で、二国間交渉や多国間交渉、多国間協定についても、その枠内でやっていく。もちろん、いい意味で掘り下げていくということは奨励をされることだと思いますけれども、悪い意味でこれに抵触するような交渉というのはやってはいけない。

 委員御自身がWTO交渉にかかわってこられましたから、委員自身もそれに従ってやっていらっしゃると思いますから、それをきちんと継承していきたいと思っております。

緒方委員 しかし、おっしゃるとおりだと思うところもあるんですけれども、現行で輸入している中に需要がない分があるのであれば、新たな枠を外にくっつけるというのはそもそも論理的に整合的じゃないですね。

 もしどうしても、中粒種、テーブルライスを買えとかいうことであれば、現行の枠内で、いや、新たにそういう需要が出たんです、五万トンなり十万トンなり新たな需要が出ました、だから現行の枠内でやりますというのが本来のあるべき姿であって、何か、今ある枠の中にもう一個余計な枠をくっつけてとか、そんな醜悪な姿で貿易体制を築くことは適当でないと思いますけれども、甘利大臣、もう一言お願いします。

甘利国務大臣 貿易交渉、関税交渉というのは、それぞれが関税を引き下げていった場合に、需要にどういう変化が起きるかということも考えなければいけない。自然推移の需要を見据えて事を決めるというルールは貿易交渉にはないわけですね。例えば、自動車がだんだん人口が減って売れなくなってきたから、だから、そこをどんどん入ってくるのはおかしいじゃないかみたいな話は、これはなかなか難しい話であります。

 基本的には、関税あるいは非関税の障壁を下げていくというのが自由貿易の基本であります。私から説明するまでもなく、携わっておられた当事者ですからよく御存じだと思います。その枠内で各国間の利害がぶつかっていくことをどう調整していくか、その際に、既存のガット何条違反にならないようにどうしていくか、これをしっかり工夫しながらやっていきます。

 具体的な需給の動向等については、現業官庁、農水省とよく打ち合わせをしながら、しっかり取り組んでいきたいと思います。(発言する者あり)

緒方委員 オプションとして残されましたね。今、後藤さんが言ったとおりです。

 一言、絶対にそういうことがないという答弁が欲しかったですが、多分これ以上話してもなかなか出てこないと思いますので、もう一言、林農水大臣。

 今、ミニマムアクセス米というのは、九四年の政府統一見解によって全量輸入するというふうに決まっています。一九九四年の国会答弁で、政府統一見解として、ミニマムアクセスの枠があって、そしてそれを国家貿易で運営するときは、当然にしてそれは全量輸入すべきであると書いてあります。

 いま一歩よく理屈がわからない。なぜそんなことをしなきゃいけないのかというのと、あと、諸外国では、同じようにそういった枠を設けて国家貿易でやっているにもかかわらず全量輸入している国なんて本当に少数ですよ。日本の方が圧倒的に少数なんです。国家貿易でミニマムアクセス米を輸入するときに全量輸入しなきゃいけないなんというルールはどこにも書いてない。国際法上、どこにもないです。そして、先ほど言われたとおり、国内に需要のないお米が相当数あるということです。

 この政府統一見解、そろそろ見直すべきときじゃないかなというふうに思いますけれども、いかがですか。

林国務大臣 ガット・ウルグアイ・ラウンドの農業協定に基づいてミニマムアクセスの機会を設定する場合は、我が国が負う法的義務の内容というのは、輸入機会を提供する、こういうことであります。

 我が国のミニマムアクセス米については、閣議了解を当時平成五年にしておりますが、国産米の需給に極力悪影響を与えないようにということで、国家貿易によって輸入をする。

 したがって、ミニマムアクセスを決めた後、国家貿易にするのか民貿にするのかというのはオプションがあると思いますけれども、米の場合は、まさにそういうことで、国家貿易によってやっておるということになっております。したがって、国家貿易である以上は国が仕組みを持ってやらないと、民貿がないということでございますので、機会は提供したけれども、国貿にしておいて国が全くやらないということになると、機会を提供しているということにならないということになる、こういうことでございます。

 したがって、平成六年、これは羽田内閣でございますが、この政府統一見解にあるように、ミニマムアクセス機会を設定して国貿でやる以上は、通常の場合は当該数量の輸入を行うべきものである、こういうふうにして、今でもそれはそういうことであるというふうに考えております。

緒方委員 先ほど言いましたとおり、例えば中国、枠を設けていろいろなものを輸入しています。そして、それを国家貿易でやっています。しかし、全量輸入などしていないし、もっと言うと、その枠の満たし方のパーセントなんというのは一〇パーを切るようなものも相当程度ある。

 別に、国際的ルールでも何でもないんです。日本が勝手に、自分たちがそうあるべきだと思ってやっている。だけれども、輸入した結果として、商業的考慮のみに基づいて輸入してみたら、需要のないものが一定数あった。矛盾していないですかね、大臣。

林国務大臣 米の輸入では、約束数量を設定しまして、かつ国家貿易でやっている国というのが、日本以外に中国、韓国、台湾、フィリピンというふうにありますけれども、これは委員御案内だと思いますが、中国を除いて、基本的には約束数量を全量輸入しているものというふうに認識をしております。

 これは二十四年の数字でございますが、中国は約束数量五百三十二万トンに対して輸入数量二百三十七万トンでございますが、韓国は三十七万トン約束して三十七万トン、台湾は十四万トン、十四万トン、フィリピンは三十五万トン、三十五万トンということになっております。

 中国は、米の約束数量の全量を輸入していないわけですが、先ほど申し上げました五百三十二万トン約束しているうち、半分を国貿、半分が民貿、民間貿易でやっておられるということでございます。

 ここが我が国とちょっと違うところですが、国内の価格が国際価格と比べて低いんですね。したがって、枠内税率一%という低率にしているんですが、この民貿の枠でさえ満たされていない、こういう状況でございますので、なかなかこれを日本の価格の状況に当てはめると、ちょっとそうはならないだろうな、こういう事情の違いがあるということを御理解いただければと思います。

緒方委員 今るる説明いただきましたけれども、いずれにせよ、そういうことをやることが世界的なスタンダードとまでは言えないということは、これは事実だろうというふうに思います。

 これから、先ほど甘利大臣は否定されませんでしたけれども、今の国家貿易の枠があって、そしてさらに、場合によっては、もしかしたら新たな枠ができて、そして、その二つの枠は、片方は低関税でやっています、片方は今の国家貿易のシステムでやっています、物すごく複雑なんですよね。しかも、わかりにくい。さらには、国家貿易の方は、国際的なルールとして決してスタンダードではない全量輸入というものまで入っている。

 米の輸入の体制、私は、このまま、今みたいに枠があって、新しい枠をくっつけて、そして二つは全然運営の仕方が違いますとか、そういうことをやっていくことは決して適当ではないというふうに思います。これは、党派を超えて、ぜひ勉強していただいて、新たないいシステムを考えていただきたいなというふうに思います。

 それでは、質問を移したいと思います。

 安保法制について、中谷大臣、まず、昨年七月一日の閣議決定のその骨子はいかなるものでしょうか、お答えください。

中谷国務大臣 緒方委員も外務省で日本の経済または暮らしを守るために努力をされましたが、やはり、いかなる事態においても国民の命と暮らしを守り抜くということ、そして、国際協調主義に基づいて国際社会の平和と安定のためにこれまで以上に積極的に貢献するために閣議決定を行ったわけです。

 まず、一、武力攻撃に至らない侵害への対処、二、国際社会の平和と安定への一層の貢献、三、憲法九条のもとで許容される自衛の措置といった、安全保障法制全般の課題について検討を行い、あらゆる事態に切れ目のない対応を可能とする法整備を進めているところであります。

 このうち、第三の、憲法九条のもとで許容される自衛の措置については、我が国を取り巻く安全保障環境が大きく変化をしまして、他国に対する武力攻撃であったとしても、我が国の存立を脅かすということも現実に起こり得るということを踏まえて、我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによって我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福の追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において、これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないとき、そして必要最小限度の実力を行使することは、従来の政府見解の基本的な論理に基づく自衛のための措置として、憲法上許容されるという判断に至ったわけでございます。

緒方委員 これまでいろいろ国会審議だ何だと見てきて、一つよくわからないのが、これまでの政府の見解、自衛権に関するさまざまな政府見解があって、恐らく、最近よく取り上げられるのは、一九七二年、参議院決算委員会に対する資料提出であったりとか、けれども、それがさらに進んで、一九八一年、当時の社会党だと思いますけれども、稲葉誠一議員に対する質問主意書答弁、これが大体通常取り上げられる。どちらかというと、これまでは、一九八一年、稲葉誠一議員に対する質問主意書答弁というのが安全保障法制の中ではよく言及をされるものでした。

 ここでお伺いをいたしたいのは、その七月一日の閣議決定というのは、安保法制のこれまでの参照される基本となってきた、先ほどの一九八一年質問主意書答弁の枠内におさまっているというふうにお考えですか。

中谷国務大臣 緒方委員からも質問書をいただいてお答えしたとおりでありますが、これは、昭和四十七年の見解から始まりまして、るる説明をしてまいりました。

 五十六年に、また政府答弁書が出されておりますが、これは、四十七年の政府見解を踏まえて、憲法九条において許容される自衛の行使は、我が国を防衛するために必要最小限度の範囲にとどまるべきと解しており、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって、憲法上許されないということにしております。

 そこで、昨年の七月の閣議決定、これは、憲法九条下でも例外的に武力の行使が許容される場合があるという従来の政府見解における九条の解釈の基本的な論理を維持し、その枠内で武力の行使が許容される場合として、我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみがこれに当てはまると考えてきたこれまでの認識を改め、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利を根底から覆される明白な危険がある場合もこれに当てはまるとしたものであります。

 この閣議決定は、あくまでも、国の存立を全うし、国民の命と平和な暮らしを守り抜くための必要最小限度の自衛の措置を認めるものであり、他国の防衛それ自体を目的とするものではありませんので、その関係におきましては、従来の政府見解の基本的な論理を維持しております。

緒方委員 よく基本的な論理構成に基づいてと言いますが、その基本的な論理構成の中に、一九七二年の資料であったり、八一年の政府主意書答弁も、いずれも、結果のところには、集団的自衛権は、これを行使できないと書いてあります。これは、今大臣が言われた基本的論理の中に入っていますか。

中谷国務大臣 お答えいたします。

 この九条の解釈には、一貫した見解の基本的論理と申しますのは、次のとおりです。

 まず一、憲法九条……(発言する者あり)説明しますので。

 文言からしますと、憲法九条は、国際関係による武力の行使は一切禁止しております。

 その前文で、国民の平和生存権、十三条で国民の権利の追求、これは最大限国政の上で尊重するという趣旨を踏まえて、三点目に、だから、自国の平和と安全を維持して、その存立を全うするために必要な自衛の措置をとることは禁じていないと解されております。

 それで、四番目が、この措置はあくまでも外国の武力攻撃によって国民のいろいろな権利を覆されるという急迫不正の事態に対処し、国民のこれらの権利を守るためにやむを得ない措置として許容されている、そのための最小限の武力の行使は許されるという論理、これは同じ論理でございます。

緒方委員 私は、一番最後の結論のところの集団的自衛権を行使することができないというのは、大臣が言われた基本的な論理の中に入っていますかと聞いているんです。もう一度お願いします。

中谷国務大臣 今申しましたとおり、基本的な論理は維持をしておりまして……(発言する者あり)

大島委員長 静かに。今、一生懸命考えて答えようとしているんだから。

中谷国務大臣 その論理については、従来の憲法解釈の再整理という意味で、それまでの政府答弁書において示された憲法解釈の一部変更……(発言する者あり)聞いてください。今、説明していますから。大事なところですよ、これは。

 従来の憲法解釈の再整理という意味で、それまでの政府答弁書等において示された憲法解釈の一部変更ですが、この基本的論理を維持しつつ、その枠内で我が国を取り巻く安全保障環境の大きな変化という客観的状況を踏まえて検討した結果の帰結として導き出されたものであって、合理的な解釈の限界を超えるような便宜的、意図的な憲法解釈の変更ではないということです。

緒方委員 集団的自衛権を行使することができないというのが、一九七二年の資料の見解にも八一年の答弁にも書いてあります。それは今大臣が言われた基本的な論理の中に入っているのであれば、入っていると言うべきなんですよ。入っていないというのであれば、いや、もうこれまでの見解をオーバーライトしました、変えましたというふうに言えばいいんですよ。今みたいな長々とした答弁は要らないんです。(発言する者あり)何か変なやじが飛んでいますけれども、本当に、これは政府統一見解をぜひ出していただきたいということを政府にお願いしますので、予算委員会の方で御議論いただいた上で、また委員会の方で質問させていただければと思います。

大島委員長 引き取らせていただきます。

緒方委員 以上であります。ありがとうございました。

大島委員長 これにて緒方君の質疑は終了いたしました。

 各大臣は御退席いただいて結構でございます。

    ―――――――――――――

大島委員長 この際、三案審査のため、昨四日、第一班石川県、第二班島根県に委員を派遣いたしましたので、派遣委員からそれぞれ報告を聴取いたします。第一班金田勝年君。

金田委員 石川県に派遣されました委員を代表いたしまして、団長にかわり私からその概要を御報告申し上げます。

 派遣委員は、大島理森委員長を団長としまして、理事平沢勝栄君、今井雅人君、委員小倉將信君、長坂康正君、星野剛士君、宮崎謙介君、小川淳也君、岸本周平君、黒岩宇洋君、井坂信彦君、岡本三成君、中野洋昌君、藤野保史君、そして私、金田勝年の十五名であります。

 昨四日、現地におきまして、金沢商工会議所会頭との懇談、近江町市場及び北陸新幹線関連施設の視察を行った後、金沢市において会議を開催いたしました。

 会議におきましては、石川県知事谷本正憲君、連合石川事務局長西田満明君、株式会社emu代表取締役社長村木睦君及び金城大学特任教授本田雅俊君の四名から意見を聴取いたしました。

 まず、谷本君からは、石川県の少子化対策への取り組み、地方の一般財源の確保などの意見が、

 次に、西田君からは、石川県内の賃金及び雇用情勢と課題、地方分権の推進などの意見が、

 次に、村木君からは、介護職員の処遇改善策の見直し、介護職員育成に当たっての課題などの意見が、

 最後に、本田君からは、地方創生に係る理念及び哲学の必要性、地域間格差の解消に向けた方策

などの意見が述べられました。

 次いで、各委員から意見陳述人に対し、政府の地方創生策に対する評価、北陸新幹線金沢開業に伴うデメリット、財政健全化目標達成に向けた地方財政の取り組み、衰退傾向にある第一次産業への具体的取り組み、中小企業振興のための具体策、介護職員の処遇改善策への評価などにつきまして質疑が行われました。

 以上が会議の概要でございますが、議事の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知を願いたいと存じます。

 なお、今回の会議の開催につきましては、地元関係者を初め多数の方々の御協力をいただき、極めて円滑に行うことができました。ここに深く感謝の意を表する次第であります。

 以上、御報告を申し上げます。

大島委員長 次に、第二班森山裕君。

森山委員 島根県に派遣をされました委員を代表いたしまして、その概要を御報告申し上げます。

 派遣委員は、私、森山裕を団長として、理事原田義昭君、平口洋君、上田勇君、委員金子めぐみ君、熊田裕通君、小林鷹之君、土井亨君、逢坂誠二君、階猛君、津村啓介君、重徳和彦君、吉田豊史君、樋口尚也君、大平喜信君の十五名であります。

 昨四日、出雲市において、出雲大社の神門通りを視察し、関係者から説明を聴取いたしました。

 続いて、松江市において会議を開催いたしました。

 会議におきましては、島根県知事溝口善兵衛君、株式会社玉造温泉まちデコ代表取締役社長角幸治君、隠岐島前高校魅力化コーディネーター岩本悠君及び島根大学名誉教授保母武彦君の四名から意見を聴取いたしました。

 まず、溝口君からは、人口増加に向けて必要となる対策、島根県における人口の動向及び増減要因などの意見が、

 次に、角君からは、玉造温泉が取り組んだ雇用創出事業の成果、地方の政策を箱物の建設から人材の育成に転換する必要性などの意見が、

 次に、岩本君からは、中長期的に持続可能な地方創生を目指す必要性、人づくりを通じた地方創生のあり方などの意見が、

 最後に、保母君からは、国会としての福島原発事故の教訓の生かし方、政府が進める地方創生の問題点

などの意見が述べられました。

 次いで、各委員から意見陳述人に対し、地域活性化を進める上で制約となる国の制度の有無、地域活性化で地方が目標とすべき指標、時代に合った地域づくりの具体的な方向性、地方における人材育成の具体的方策、島根県における原発事故避難計画の策定の現状などについて質疑が行われました。

 以上が会議の概要でありますが、議事の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知を願いたいと存じます。

 なお、今回の会議の開催につきましては、地元関係者を初め多数の方々の御協力をいただき、極めて円滑に行うことができました。ここに深く感謝の意を表する次第であります。

 以上、御報告を申し上げます。

大島委員長 以上で派遣委員からの報告は終わりました。

 お諮りいたします。

 ただいま報告のありました第一班及び第二班の現地における会議の記録は、本日の会議録に参照掲載することに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔会議の記録は本号(その二)に掲載〕

    ―――――――――――――

大島委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

大島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 一言申し上げます。

 先般の理事会において、質疑者、答弁者それぞれに真剣な議論をしているときに、その議論が委員各位に聞こえないほどのいわば規則外発言がある、それはお互いに自粛し、充実した審議にしようではないかということでございますので、諸君の御協力と御理解をいただきたい、このように思います。

 質疑を続行いたします。松原仁君。

松原委員 この予算委員会において質疑の時間をいただきましたことを、まずもって同僚議員にも御礼を申し上げる次第であります。

 ちょっと聞きづらいかもしれませんが、しようがないわけですね、風邪ですから。

 拉致問題でありますが、この拉致問題について、非常に安倍政権に対する期待感は国民の側にも大きかったと思っております。また、被害者家族会、救う会、調査会においても、安倍さんならやってくれるだろう、こういう期待感がありました。

 私は、拉致問題に関しては党派を超えて解決するために汗を流すべきだ、このように思っております。

 言うまでもなく、日本の主権侵害であり、そして拉致をされた無辜の市民にとっては人権侵害であるというふうな状況であって、これは何としても早期に解決をしなければいけない。早期というのは、私も大臣時代に言いましたが、拉致被害者家族と拉致被害者が再会をして抱き合える、例えば横田めぐみさんであれば早紀江さんや滋さんと抱き合える、そこまで持ってこなければ解決ではないということを主張してきましたし、その認識は安倍総理や関係の閣僚の皆様でも同じだと思っております。

 拉致に関しては、従来から対話と圧力ということが言われてまいりました。対話だけでは十分ではない、圧力が必要であるというふうなことであります。

 特に、国際情勢の中で、今から二年前になりますか、張成沢粛清があった。私は、これは極めて大きな拉致事案に関する転回点であったというふうに思っております。

 かつて十二年前、小泉訪朝のとき、五人の拉致被害者が実際に戻ってきた。戻ってきたその理由は幾つかあるでしょうが、一番大きな理由として、米国のブッシュ大統領が北朝鮮を悪の枢軸、こう言って、物すごい脅威を与えていたわけであります。戻ってきた拉致被害者のある人は、当時の北朝鮮の高官は非常に米国に対して恐れをなしていたということをおっしゃっているわけであります。

 つまり、こういった圧力があったからこそ、言ってみれば、米国の同盟国である日本に対して拉致の解決というこの材料を持ってアプローチをし、米国の矛先を少しでもかわそうとしたのではないかと私は思っております。圧力があったからこそ対話ができたのであって、圧力がない限りこの北朝鮮から拉致問題の解決をとることはできないと思っております。

 張成沢処刑によってそういった環境になったということについての御認識を、どなたでも結構です、まずお伺いいたします。

岸田国務大臣 御指摘のように、我が国は、この拉致問題に関しまして、対話と圧力の方針のもと、臨んでまいりました。

 我が国としましては、安保理決議に基づく制裁に加えて、我が国独自の制裁を実行してきた、こういった次第であります。そして、それに加えて、昨年の三月、一年四カ月ぶりに対話の部分を開始したということであります。

 こうした対話と圧力の方針のもとに臨んでいるわけですが、御指摘の張成沢粛清等、こうしたさまざまな国際情勢が、こうした我が国の方針に対してどういった影響を及ぼしているのか、この点につきましてはしっかり注視し、そしてそれをしっかりと判断した上で、前向きな対応を北朝鮮から引き出す上にはどうあるべきなのか、しっかり検討を進めていきたいと考えます。

松原委員 張成沢粛清は明らかに拉致問題の圧力になっているというのは、恐らく認識としてお持ちだろうと思っております。だから、この張成沢粛清が中朝の関係を悪化させ、中国からのプレッシャーが北朝鮮に及んでいる。この環境こそが、ある種の、日本が拉致問題を解決するために極めて有効な環境であると私は思っております。

 その後、北朝鮮側と日本の間でさまざまなやりとりがあったと思っております。

 後ほどストックホルム合意の問題点についてはお伺いしたいと思っておりますが、この間、官房長官が、さまざまな記者会見、また雑誌等のインタビューに対して、さまざまなお答えをしているわけであります。特に昨年は、夏の終わりから秋の初めごろにということで、北朝鮮側から具体的なさまざまな報告がなされるようなことをおっしゃっておられた。被害者家族は、官房長官がおっしゃっているわけですから、極めてその発言は意味が重くて、それは期待を込めて感じていたわけであります。

 残念ながら、現在は、夏が過ぎて、秋が過ぎて、冬が過ぎて、もうすぐ春がやってくる、こういう状況でありますが、菅官房長官、御自身の夏の終わりから秋の初めという発言についてどんなふうにお考えか、お伺いいたします。

菅国務大臣 拉致問題は安倍政権にとって最重要の政策課題である、総理自身、みずからの手で全面解決するという強い決意で拉致問題には当たっているということをまず御理解いただきたいと思いますし、そういう中で、数年ぶりに、閉ざされていたあの北朝鮮のかたい扉を安倍政権になってこじあけたわけです。

 そして昨年の五月、その日朝合意において、北朝鮮側が特別委員会を立ち上げる、また、拉致被害者を含む全ての日本人に関する包括的そして全面的な調査を実施するということをこの場で約束しました。

 そして、その場の中で、北朝鮮による調査に関する最初の通報については、昨年夏の終わりから秋の初めごろに行うことが望ましい、両者の会談の中で北朝鮮側がそういうことを発言しているわけですから、私ども日本側との間で。私は、その夏の終わりごろから秋の初めという表現を会見で申し上げたということです。

 その後に、昨年九月の瀋陽での会合において、北朝鮮側から、調査は初期段階であって、日本人一人一人に関する具体的な調査結果を通報できるような段階にはないという説明があり、その後も、北朝鮮側からは具体的な情報を含む調査結果は得られておりません。

 いずれにしろ、我が国としては、北朝鮮側に、拉致問題が最重要課題であることを強調し、さらに、迅速に調査を行って速やかに、正直に結果を日本に通報するよう強く求めているところでありまして、引き続き、拉致被害者全員の帰国を求めて、対話と圧力、そして行動対行動で、今全力で取り組んでいるところであります。

松原委員 官房長官は、週刊文春の二〇一四年八月十四日、二十一日号のインタビューで、「私は、北朝鮮は拉致被害者を全員、管理下に置いていると思います。当局が現在の状況を把握していないということはあり得ない。」このように語っておりますが、これはどういうふうな御意思でしょうか。

菅国務大臣 私は、週刊誌だけでなく会見でもそう申し上げています。

 それは、北朝鮮はみずから拉致を実行したということを認めているわけですから、そういう意味で、被害者が北朝鮮の管理下に置かれているということは、これは自然なことじゃないでしょうか。それと同時に、政府としても、北朝鮮側に対して重大な関心を持って当たってきました。そして、内部情勢の把握に努めてきております。そういう観点から、具体的なことは避けますけれども、申し上げたところであります。

 政府として、被害者の安全確保と即時帰国、これに向けて懸命の努力をしているところです。

松原委員 夏の終わりから秋の初めに関して、北側は、調査の初期段階である、まだ報告できない、こういう話があったと御答弁がありました。しかし、他方において、官房長官は、御自身の判断も含め、さまざまなほかの情報も含め、北朝鮮側は拉致被害者を全員管理下に置いている、こう認識をしているわけであります。

 この二つのことを突合すると、明らかに、北朝鮮のこの態度というのは不誠実きわまりないものだ、こう思いますが、御所見をお伺いしたい。

菅国務大臣 私自身が会見でそう申し上げていました。何を根拠にということは、委員も大臣をされました、事柄の性質上、ここは控えさせていただきたいというふうに思います。

 ただ、みずから拉致を政府として行ったということは北朝鮮は認めていますから、拉致をした邦人が北朝鮮の管轄下にあるということは、これは当然のことじゃないでしょうか。ですから、北朝鮮側が実態を全て掌握している、こう私は考えていますし、そう考えることも自然のことだと思います。

 ただ、今、私たち、日本の要求に一つ残さず、包み隠さずやはり迅速に報告すべきである、ここを強く求めているところです。

松原委員 私は、やはりここは、官房長官、怒りをあらわしてもらわなければいけないと思っているんです、不誠実だと。北朝鮮が、当初、夏から秋と言って、そして、初期段階の調査が終わっていないと言っている。明らかに不誠実だということをこの場でおっしゃってもらえませんか。

菅国務大臣 今政府を挙げて交渉しておりますので、そういう中で、行動対行動、そうしたことを含めて北朝鮮側と今交渉しているところです。

松原委員 極めて不誠実だと思いますし、これはもう一回後でお伺いしたいと思っております。

 次に、ストックホルム合意についてお伺いをしたいと思います。順番をちょっと変えていますが、済みません。

 ストックホルム合意は、拉致に今まで関心を持ってきた人、山谷さんなんかは一緒に議連で活動してきたわけですから、我々から見れば、あり得ないような合意だったと私は思っております、率直に言って。拉致とそして遺骨問題と日本人妻の問題、こういったものを一緒くたにして包括的に解決する。私は、拉致問題を置き去りにするとは言いませんが、まぜこぜになってしまって、極めてこのことに関して、関係者は、何でこんなふうに合意したんだというふうなことを考えていたわけであります。

 このストックホルム合意に関して、山谷大臣の今の評価をお伺いしたい。

山谷国務大臣 拉致問題は、国家主権の侵害、そして人権侵害であります。そして、その解決は安倍内閣の最重要課題でございます。

 拉致問題に関して、これは最重要、最優先の課題だということを北朝鮮側にきちんとお伝えしているところであります。

松原委員 評価を聞いているわけでありまして。

 ストックホルム合意というのは、この運動にかかわった立場からすれば、これは評価できない。何でこんなことに合意したんだとみんな思っている。山谷さんはどう評価しているかと聞いているんです。

山谷国務大臣 日朝協議の場が閉じて長い年月がたってしまったわけです。それをやっとこじあけることができた。そして、拉致問題が最重要、最優先課題だと今伝えていて、誠実な、正直な報告を一日も早くするようにと求めているところであります。

松原委員 なかなか苦しい答弁ですね。

 言ってみれば、このストックホルム合意がなされて、拉致の扉をこじあけたというふうに思う人は極めて少ないと思います。この問題によって、日本人妻の問題や、また遺骨問題、こういったものが優先的に扱われる可能性が出てきている。

 ストックホルム合意というものに関して、これは内閣で決められたことでしょうが、菅官房長官、どう評価していますか。

菅国務大臣 北朝鮮は、これは民主党政権のときもそうだったと思いますけれども、拉致問題は既に解決済みだという立場でありました。

 私たちが政権をとった中で、政権を獲得して、その交渉の中で、北朝鮮側は、このストックホルムの会合の中で、「従来の立場はあるものの、全ての日本人に関する調査を包括的かつ全面的に実施」という、事実上、解決済みであったという拉致問題をここでまた認めさせた。それによって、今交渉に入る。そういうことで、私は、ここは一つの大きなきっかけになっていると思います。

松原委員 このストックホルム合意をやるにおいて、日本側は制裁の一部緩和をしたわけであります。具体的にその制裁の緩和について中身は聞きませんが、この制裁の緩和をしたということが、当初安倍政権が言っていた行動対行動という枠組みに入るとお考えか、岸田外務大臣、お答えください。

岸田国務大臣 五月の日朝合意につきましては、まず、先ほども一部申し上げさせていただきましたが、我が国は、国連安保理決議に基づく国際的な制裁に加えて、我が国独自の制裁を行ってきました。この制裁につきましては、北朝鮮の厳しい経済状況を考えますときに、一定の効果があったと認識をしています。

 しかし、我が国は対話と圧力の方針で臨んでおりますので、この一方の対話の部分につきましては、昨年三月、一年四カ月ぶりに対話を再開いたしました。そして、それ以後、五月に、今御指摘の日朝合意に至った次第です。

 この合意において、特別調査委員会を立ち上げて、具体的な北朝鮮の取り組みを促していくことになったわけですが、この枠組み、取り組みを通じて具体的な成果を上げるべくしっかりと努力をしなければならない、そういった合意であると認識をしています。

 こうした合意を通じてしっかりと努力をしていかなければならないと思っておりますし、これは、今御指摘がありましたように、対話と圧力の従来の我が国の方針に従って進められた、具体的な取り組みの一環であると認識をしております。

松原委員 このストックホルム合意で、拉致問題について、具体的な、拉致被害者が出てくるというふうなことではなくて、文章として、それはもう一回俎上に上げますよということが、行動対行動の行動になるというふうに御認識ですか。

菅国務大臣 委員は全ておわかりの上で発言されているんだろうというふうに思います。

 まず、長年の間に日朝間は全く交渉がなかったわけです。その扉をこじあけたことは、私たち政権がしたことは、これは間違いないんです。そして、そのときに、拉致問題、解決済みだと北朝鮮がずっと言っていたものを、含めて調査するということに合意をしたわけです。

 そしてまた、私たちは確かに政権として制裁を解除しましたけれども、解除したものは、彼らは最大限はやはり万景峰号の入港ですよね。そうしたものでなくて、人的往来だとか、支払い報告義務等の、携帯輸出届け出のまさに外為法の問題だとか、人道的な北朝鮮籍船の入港だとか、我が国にとってはほとんど影響のない、そういう中でこの解除であるというふうに思っていますし、彼らの望むことは全く、行動対行動でありますから、私たちはまだ持っておるということです。

松原委員 官房長官の御認識は承りましたが、再入国禁止というのは、私は極めて大きな制裁だと思っております。再入国禁止に関して、これが解かれてしまったということは、それは大きな制裁の解除だと私は認識をいたしております。

 北朝鮮は、もちろん、万景峰号、こういったものに関して入れたいという思いはあっただろうけれども、再入国禁止まで、これを解除したというのは、私は制裁緩和のし過ぎではないかというふうに思っております。

 そもそも、行動対行動という観点からいけば、制裁解除というのはこの部分では私は出てこない議論だと思っております。山谷大臣、御認識をお伺いします。

山谷国務大臣 日朝協議が開かれているわけでございますから、その中で、さまざまな状況の中で拉致問題の解決のためにいろいろな検討をしていくというのは当然のことだと考えています。

松原委員 何か余り答弁になっていないような気がするんですけれども。

 少なくとも、制裁解除をする、行動対行動という本来の概念は、私は、調査委員会を立ち上げたら行動だというのは不十分だというふうに思っておりますし、当時、超党派のさまざまな議論の中でもそういった議論がなされていたというふうに認識をしております。

 そこでお伺いしますが、制裁というものは、日本人妻の問題や、また遺骨問題で行われたわけではありません。この際、はっきりと、官房長官でも結構です、お答えいただきたいんですが、たとえ、遺骨問題や日本人妻問題、つまり、拉致以外の案件で物事が進んだとしても制裁解除はしないということをこの場で明言していただけますか。

菅国務大臣 今回の合意の中で今交渉を進めているわけでありますから、そういう中で、政府は、拉致問題は最優先である、拉致問題の方向性が示されなければ、解決が示されなければ、たった一ミリとも動かない、ここは厳しく日本の立場というのは主張しています。

松原委員 私がお伺いしているのは、拉致問題の進展がない限り、もちろん、核、ミサイルで進展があれば別でしょう。多くの関係者がいぶかっているのは、拉致問題以外の進展で制裁は緩和しないですねということを確認したいわけです。

菅国務大臣 そこは全くそのとおりです。

松原委員 非常に重要な御答弁です。

 拉致問題解決が進まなければ、ストックホルム合意の中で、日本人妻の問題、遺骨の問題、さまざま議論があっても、制裁は緩和しない、こういうことでよろしいですね。もう一回答えてください。

菅国務大臣 先ほど申し上げたとおりです。

松原委員 それは大事なことですから、今の一言は重要だと思います。

 さて、その中で、この拉致の問題、拉致問題の解決と我々は言っている。拉致問題の解決というものに関して、私も担当大臣のとき、さまざまなことを主張してまいりましたが、担当大臣の山谷さんは、拉致問題の解決とはどういうものか、教えてください。

山谷国務大臣 政府認定の有無にかかわらず、被害者全員の安全確保、そして即時帰国、真相究明、実行犯の引き渡しと考えております。

松原委員 それはそれで当たっていると思います。

 そのことを北側が、これが真相ですと出してきたときに、それが真相であるかどうかをどこが判断するか、お伺いしたい。

山谷国務大臣 さまざま情報収集を行っているところでありまして、北朝鮮がこれが真相だと出してきても、そうではないということはすぐに打ち返していきたいと思いますし、情報収集、具体的な、個別的なことを申し上げるわけにはまいりませんけれども、政府、オール・ジャパンで取り組んでいるところでございます。

松原委員 政府、オール・ジャパンで取り組むという話でありました。

 これは、安倍総理もオール・ジャパンということをおっしゃっている。私も、拉致問題の解決はオール・ジャパンで扱うべきことだと思っております。したがって、拉致問題の解決というものに関して、これはオール・ジャパンで判断する、こういう認識でよろしいですか。

山谷国務大臣 そのとおりでございます。

松原委員 オール・ジャパンで判断するということは、オール・ジャパンの中身には、例えば被害者家族、もしくは救う会、もしくは調査会、こういったところも当然オール・ジャパンだから入る、こういう認識でよろしいですか。

山谷国務大臣 家族会、救う会、そして特定失踪者問題調査会、関係団体等の御意見を伺うというのは当然だと考えています。

松原委員 つまり、これも極めて重要な御発言でしたが、家族会や救う会や調査会、そういった方々の意見を聞いて判断する、これがオール・ジャパンの解決である、こういうことでよろしいですね。

山谷国務大臣 関係団体の御意見をきちんとお聞きする、そして政府が判断をするということでございます。

松原委員 そうであれば、当然、北側からの情報をそういった団体で精査することになります。

 ただ、問題は、今度、北朝鮮側から見た場合に、北朝鮮が拉致被害者を仮に出してきたとする場合に、それが不十分である場合は、これは拉致問題解決とは当然みなさないということでよろしいですね。

山谷国務大臣 松原委員は大臣時代に、一定の進捗がある場合はどうかというようなことで御発言をなさいましたけれども、拉致問題の解決については、北朝鮮の対応を見きわめた上で、我が国において判断することとなると考えております。

松原委員 つまり、拉致被害者が若干出てきても、それは日本側がそれをよしとしなければ、当然これは解決ではないし、制裁の緩和には簡単には結びつかない、こういうことでよろしいですか。

山谷国務大臣 具体的に何をもって一定の解決等々とするかということについては、日本側が北朝鮮側の実際の対応を見た上で個別具体的に判断することとなりますが、被害者全員の安全確保、そして即時帰国、真相究明、実行犯の引き渡しということであります。

松原委員 拉致事案は、この十二年間も含めてずっと扱ってきたわけでありますが、今、外務省主体で、伊原さんは外務省の局長でありましたが、やっているわけであります。

 これに関して、外務省主体で果たしていいのだろうか。つまり、農林水産省関係の交渉は外務省と農水省、経済産業省関係のものは外務省と経済産業省がやる。そのときに、拉致はある意味で人質を奪還するというミッションですから、それは、むしろ中心は、警察を主体にする拉致対策本部である必要がある、こういう意見があります。これについて、岸田外務大臣、答弁をお願いします。

岸田国務大臣 拉致問題は、先ほど来答弁の中にもありましたように、安倍政権にとりまして最重要課題であります。そして、国の責任において解決すべき最重要課題であるとも思っています。ですので、北朝鮮の交渉に当たっては、拉致問題対策本部事務局、あるいは警察庁も含めて、政府全体としてしっかり連携しながら取り組んでいかなければならないということ、これは先ほど山谷大臣の答弁の中にもあったとおりであります。

 各方面の御意見も踏まえつつ、オール・ジャパンでこの問題に取り組んでいき、その中にあって、外務省としても貢献をしていきたいと考えています。

松原委員 これは外務省中心というよりは、まさに、できれば、そのトップは拉致対なり、そういった場所がした方が交渉は迫力を持って進むだろう、僕はこういうふうに思っております。山谷さんはいかがお考えですか。

山谷国務大臣 拉致問題解決のためには政府全体として取り組んでいくことが肝要でありますが、昨年七月以降、警察庁からも職員を派遣し、日朝協議に参加しているところであります。

 松原委員は拉致担当大臣であり、そして国家公安委員長でもいらしたわけでありますが、警察としては、引き続き、外務省や拉致問題対策本部を含め、政府全体として緊密に連携するとともに、関係各方面の御意見に十分留意しながら、オール・ジャパンでの取り組みにしっかり貢献していきたいと思います。迫力を持って解決のために進みます。

松原委員 さてそこで、菅官房長官にお伺いしたいんですが、先ほど、北朝鮮、夏から秋と言っていまだにその報告を上げてこない、初期の部分で非常にまだ時間がかかっていると。しかし、菅官房長官は、それはそうではないという認識を持っている、こういうことをおっしゃいました。不誠実ではないかという質問に対しては明快な御答弁をしていないわけでありますが。

 当然、こういう状況になったときに、一旦緩和した制裁をもとに戻すということは日本の国の意思をあらわすために必要なことではないか、このように思っております。

 先ほど菅官房長官は、拉致以外のものが具体的な進展があっても制裁は緩和しない、こういうことを明快におっしゃったわけでありまして、私は、それは大変に答弁としていい答弁だったと思います。

 その上で、制裁をもとに戻す、制裁緩和をもとに戻すべきではないか。さすがにもう三月だ、いつまで制裁緩和が続くんだ。もとに戻して、口頭ではなく行動でもって北朝鮮に対して我々の意思を示すべきタイミングに来ていると思いますが、御所見をお伺いします。

菅国務大臣 私は議員立法で制裁法案をつくった一人であります。何が最も効果的であるかということも十分承知しているというふうに思っています。そうした中で判断をしていきたいと思います。

松原委員 そうした中で御判断ということでありますが、それは本当に、もうこの段階で、ストックホルム合意があって、七月しょっぱなに緩和をして、七、八、九、十、十一、十二、一、二ですよ。横田さんの御夫妻も、それから関係の方々も、どんどんと年齢を重ねていく。そうした中で、私は、北に対して強い意思を今もうこの場で発動するぐらいでなければいけないというふうに思っております。

 もうちょっと拉致被害者の心情を踏まえた上で、わかりやすい表現、おっしゃっていただけませんか。

菅国務大臣 二〇〇八年に途絶えていた北朝鮮との交渉を、一昨年ですか、ようやくそのかたかった扉を、ドアをこじあけて、交渉に入りました。

 しかし、当時、夏の終わりから秋の初めまでという形でしたけれども、北朝鮮側は、まだ調査の初期の段階だということで延ばしています。

 私たち政府としては、北朝鮮側に対して、問題解決のために何が最も効果的であるのか、そうしたことを常に頭の中に入れながら今対応をしているところでありますので、そこは政府でしっかりとそうしたものを考えながらこの交渉を行っていく。そして、何が北朝鮮側に対して最も効果的であるかということは、不断の努力を、今私たちはその検討を行っている、そういうことで御理解をいただきたいと思います。

松原委員 この段階で北朝鮮側が具体的なことを語らない。徐大河氏をトップにするあの平壌における会議もあったけれども、具体的なものはあらわれなかった。ここまで日本政府が北朝鮮に、言ってみれば、いいようにされて、それでもなお、一度緩和した制裁をもとに戻さないというのは、私はちょっとその理由がわかりません。

 ストックホルム合意というのは、確かに、こじあけたとおっしゃる。しかし、私が冒頭言ったように、張成沢処刑以来、非常に潮目というのは、私は、従来と違って、十二年前のアメリカのブッシュ政権の悪の枢軸と同じように、中国からの圧力というのは北にとって極めて脅威であり、一つの機が熟していたというのも、もちろん安倍政権の努力は認めますが、それはあったというのは申し上げている。その中でのストックホルム合意。

 では、ここでちょっとお伺いしたいけれども、ストックホルム合意が結ばれたときに、そのときの見通しはどうだったんですか。どれぐらいのタイミングでこの問題に目鼻がつくとお考えだったか、お伺いします。

菅国務大臣 北朝鮮側と政府の合意は、夏の終わりから秋の初めということでしたけれども、私たち日本側は、拉致問題が最優先だ、拉致問題が解決しなきゃ何も動かない、ここは交渉の段階で明言をしていますし、平壌に日本の代表が行ったときにも、そのことを北朝鮮側のトップに通じるように強く主張をしてきています。

 ですから、今も、全面解決に向けて取り組んでおりますし、何が最も効果的であるかということ、そうしたものを不断に検討しながら取り組んでおりますので、現時点において、いついつということを申し上げることは控えたいと思います。

松原委員 拉致問題は、外交交渉ではなくて、とにかく救出をする、人質救出のミッションだと私は思っております。

 その上で言うならば、使える手段というものは使っていかなければいけない。しかし、使える手段は制裁しかないと思うんですよね。制裁しかない。もちろん、国際機関に対しての働きかけもあるでしょう。しかし、制裁が最も有効であるということを考えるならば、制裁をもう一回発動する。それは、私は、そんなゆっくりするのではなくて、もっと早くやるということが必要だということを申し上げたいと思います。

 北朝鮮と極めて深い関係がある朝鮮総連の問題がございます。

 総連会館の売却については、前原議員が先般の予算委員会でも質問をいたしました。そのときに、賃貸借契約が結ばれた場合には、その賃貸借契約の原資、つまり、賃貸借をグリーンフォーリストと総連が結んだとするならば、グリーンフォーリスト側に賃貸借契約の家賃が払われる前にそれを押さえることができるという答弁があったと思いますが、もう一回確認をしたいと思います。

三國谷参考人 お答えを申し上げます。

 個別の債務者の具体的な回収方法を明らかにすることにつきましては、今後の債権回収に影響するためコメントを差し控えたいと思いますが、一般論で申し上げまして、これまで、私ども預金保険機構は、付与された権能、それからこれまでに蓄積された債権回収に関する知見、ノウハウをフルに活用してまいりました。これによりまして、債権回収に必要な端緒情報等を丹念に収集し、必要となれば、整理回収機構と緊密に連携して、競売、差し押さえといった法的な手段も排除せず、厳正な債権回収に努めてきたところであります。

 御質問の賃料の件でございますが、これも一般論で申し上げたいと思います。

 一般論で申し上げますと、差し押さえは資産に対して行うものでございますので、賃料を支払う債務それ自体は直ちに差し押さえにはなじみませんが、しかしながら、このような賃貸借契約が結ばれているといったさまざまな情報というのは、債権回収の対象となる資産を把握するに当たり、それは端緒となり得る情報の一つであると考えているところでございます。

 したがいまして、私どもは、これまでと同様に、さまざまな情報を丹念に収集いたしまして、賃料を支払えるような資産を有していることが判明すれば、これまで同様に全力を挙げて回収に努めてまいりたいと考えているところでございます。

松原委員 ここで問題になるのは、朝鮮総連が会館に賃貸借契約を結ばないで居座った場合でありまして、これはなかなか、それを押さえることはできない。彼らは当然、こうかつにそうしてくるだろうというふうに思っております。

 そこで、私がお伺いしたいのは、白山出版管理会、正式名称は白山出版会館管理会、この組織が、今マスコミにも随分報道されておりますが、五十億円の根抵当をグリーンフォーリストが所有の、朝鮮のいわゆる会館、総連会館に持っているわけであります。

 私は、どう見ても、この白山出版会館管理会というのは、誰が見ても朝鮮総連の下部組織としか見えないわけであります。それは、具体的に、この出版管理会の中に、理事の一人の女性は、平成十三年に朝鮮総連傘下の女性団体トップを務め、十五年に北朝鮮の国会議員に当たる最高人民会議代議員に選出されている。また、トップは、北朝鮮側のいわゆるプロパガンダの中心者である、こういうふうにも言われております。

 私は、いわゆる債権を回収する側の論理としては、この白山出版会館管理会が十七億でその建物を売ったときに、その十七億を差し押さえる努力をなぜしなかったのかということであります。十七億を差し押さえる努力をして、それは総連とは別組織であるということで裁判になったとして、それは最後の最後は裁判所の判断でしょう。しかし、その十七億の差し押さえをやる努力をなぜしなかったのか、お伺いしたいと思います。

三國谷参考人 お答え申し上げます。

 私ども、これも一般論でございますけれども、債権回収の立場から、与えられた権能に基づきまして、事実を丹念に積み重ねまして、これに基づきまして適切な措置を講じてきているところでございます。これまでもこのような方針でまいりました。

 個別の事情については、これは今後の債権回収に影響する問題であり、コメントを差し控えたいと思いますが、私ども、個別の事情ということではなくて、総連全体につきましては、今後ともこれまでどおり、情報の収集と、それから債権の回収に努めてまいりたいと思っております。

松原委員 事柄の一番大事なことは、総連会館に朝鮮総連がずっといて、六百億になんなんとする負債をしょいながら、今もそこに平然といる。これは、明らかに、この間の動きを見れば、厳格な法執行であったのかもしれないが、どうも、してやられたというふうに言わざるを得ないと思っております。山谷大臣、御感想をお伺いします。

山谷国務大臣 民民の取引であります。ただ、警察では、朝鮮総連の動向について、その土地建物をめぐる状況を含め、平素から重大な関心を払って情報収集をしているところであります。

 個別の事案に関してその詳細を逐一明らかにすれば、今後の警察活動に支障が生ずるおそれがあるのでお答えは差し控えますが、情報収集してまいります。

松原委員 もちろん、このいわゆる総連会館の問題と拉致問題というのは別にあるわけでありますが、しかし、拉致の解決のために極めて厳しい法執行をやるというのは第一条に書かれていて、そこは一定の、実は関係があるんだろうと私は認識しております。したがって、御質問したわけであります。

 私が担当大臣をしているときにも、この総連会館に関しては、北側からは、何とかできないかという話が随分ありました。恐らく、山谷さんのところにもあったかもしれない。もしくは、菅官房長官のところにもあったかもしれません。少なくとも、そういう中で、北側はこの問題に対して極めて熱心だったということであります。

 さて、白山出版会館管理会は五十億の抵当をつけている。このグリーンフォーリストの買収した費用、四十四億ですか、この買収した費用の中で、そのうちの十七億がこの白山から出ているんじゃないかと言われている。また、総連関係者がお金をかき集めたとも言われている。そういったことがなければ、常識的に考えて、五十億の根抵当は設定をされないわけであります。

 この五十億の根抵当は権利であって、そこに資産があるかどうかというのは別でありますが、ここに少なくとも何らかの形で総連側のお金が入っていて、根抵当をつける上でそれが残っているとするならば、債権回収はそれに対して行い得るかどうか、お伺いいたします。

三國谷参考人 御質問は恐らく二点。

 一つは、最初の方で御質問がありました一体性の点かと思いますが、これにつきましては先ほどお答えしたところでございます。

 次に、法律論としての根抵当ということでございますが、これは一般論で申し上げますと、根抵当権という担保だけ差し押さえるということは、なかなか法的にもいろいろ検討すべき課題があろうと思っておりますが、私どもは、いずれにいたしましても、あらゆる事案につきまして、債権回収の立場から、さまざまな契約の事情でございますとか個々の状況、そういったものを総合勘案しながら事実を丹念に拾い集め、それに基づいて対応してきているところでございます。

 以上でございます。

松原委員 この会館の問題については、最高裁判所が逐次判断をしているわけでありますが、その最高裁判所がこの競売停止を決めたということが報道されているわけであります。

 この最高裁判所の競売停止というのは、従来、そういったことがよく行われているんでしょうか。

菅野最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 委員御指摘の件ですが、執行停止申し立て事件につきましては、事件統計をとっているものではなく、その事案及び件数については、事務当局としては把握してございません。

 以上でございます。

松原委員 木で鼻をくくったような答弁ですが、恐らく、ぱっと思いつくものはないというのが実際だろうと思っております。

 その上で、これの解除が行われて、一番札がモンゴルの会社、これがだめだと、二番札のマルナカに、再入札という仕組みを使わないで、その入札の結果を受けて、二番手にこれが落札された、こういう事案というのは初めてなのか初めてじゃないのか、お伺いします。

菅野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 委員御指摘の事案につきましては、事務当局としては把握しておりません。

 もっとも、執行裁判所が入札手続からやり直すことなく、改めて開札期日を開いて、再度、最高価買い受け申し出人を定め直すべきであるとした事例といたしましては、平成二十二年八月二十五日付の最高裁決定というのがございます。

 以上でございます。

松原委員 最高裁判所は、もちろん、行政の影響を受けているとは思いませんが、時系列を見ると、例えば、執行停止解除は、言ってみれば、徐大河に会って、回答ゼロで戻ってきて、執行停止解除がすぐ行われているというふうなことも含めて、見ようによっては極めて政治的な色彩があるのではないかというふうに思われることを付言しておきたいと思います。

 この北朝鮮拉致問題に関して、冒頭、菅官房長官がおっしゃったように、安倍政権としては最重要課題として扱っているということをおっしゃいました。しかし、ここに来て、どうもその見通しといいますか、段取りというものが見えづらいわけであります。

 官房長官、この段階において、これからの拉致問題解決のロードマップはどうなるとお考えか、全くそういうアイデアはないのかあるのか、お伺いしたいと思います。

菅国務大臣 今交渉中でありますから、具体的なことに言及することは差し控えたいと思いますけれども、しかし、いつまでもだらだら交渉を続けていくものではないということは、私は、日朝の間で合意したときに申し上げております。

松原委員 おっしゃるとおりで、官房長官は、だらだらやるものじゃないと何回も記者会見でおっしゃっている。

 その官房長官の気質からいけば、今のこの状況はだらだらしているようにしか私には見えないんだけれども、どういうふうにこれを切り抜けるのか、もう少しおっしゃっていただかないと、聞いている家族会の方や救う会の方も、どうなっているのか、納得できない、こうなると思うんです。おっしゃってもらえませんか。

菅国務大臣 安倍内閣として、最重要課題のこの拉致問題、まさに政府を挙げて取り組んでいるということです。

松原委員 これも木で鼻をくくったような答弁で、熱意が伝わってこないんですな。申しわけない、熱意が伝わってこない。

 これは、要するに、第三者的に語っているようにしか聞こえないんですよ。この問題のかなめは安倍総理であると同時に官房長官なんだから、もうちょっと情熱を込めて見通しを言ってもらわないと。今みたいな、何か木で鼻をくくったように、第三者的に、評論家的に言われたんじゃ、みんな納得しませんよ。もう一回答弁してください。

菅国務大臣 安倍内閣として拉致問題解決が最重要課題、そして最優先の課題である、そういう中で、政府として全力で今取り組んでおりますし、北朝鮮側に具体的な、また前向きの行動を起こさせるのに何が一番効果的であるか、そうしたことを不断に検討しながら、今解決に向けて進んでいるということであります。

松原委員 拉致問題解決を目指す関係者の中には、ストックホルム合意のこの路線で進む限りは拉致問題の早期解決は困難であるという声が随分と上がっております。そういった声に対して、ストックホルム合意を、極端に言えば、一回ゼロから見直すべきだという議論もあります。こういった議論についてどうお考えですか。

菅国務大臣 この拉致問題解決というのは、北朝鮮側がある意味で全て持っているわけですから、みずからも拉致をしたということを国家として認めているわけですから、どういう状況であるかということは北朝鮮が全部掌握している。

 ここで、交渉までこぎつけるのに六年ちょっとかかったじゃないですか。二〇〇八年にこの扉が閉ざされてから、今まで日本は交渉できなかったんです。安倍総理の熱意によって、私たちは、少なくともストックホルム合意で、解決済みだと言われていた拉致問題を俎上にのせたんです。そして、今取り組んでいる。このことは、委員は拉致担当大臣をやられましたからよく知っていることだと思いますよ。全力で取り組んでいます。

松原委員 最終的に、ストックホルム合意についての判断ということになってくると思うんです。私は、このストックホルム合意が拉致問題に対して足かせになる可能性があるというのを申し上げている。結果として、拉致と日本人妻と遺骨と。順番だって、拉致は最初は一番上になかった。こういう交渉が拉致問題を極めて、隠すような交渉になっているような気がしてならない。

 私は、申し上げたように、北朝鮮は、張成沢を処刑することによって中国からの強烈な圧力を受けている。彼らは、日本にアプローチするそれなりの理由が、ちょうどおととしの段階で生じていた。あのとき、関係者はみんな、この張成沢処刑から拉致の解決に向かって大きな可能性が生まれるだろうと思っていた。もちろん、安倍政権の努力はあったと思う。しかし、ああいったストックホルム合意のようなものではない、拉致問題に絞った合意を私はとるべきだったと思う。山谷さん、答弁をいただきたい。

山谷国務大臣 日朝協議の場で、今、拉致問題の解決に向けて懸命に日本政府として取り組んでいるところであります。

 そしてまた、安倍内閣がリードいたしまして、国連の場に北朝鮮の人権問題と拉致問題の実態を調査する委員会がつくられ、そして、昨年四百ページ近い報告書が出まして、国際社会に、北朝鮮の人権侵害と拉致問題というのはこのようにひどいものか、解決を図らなければならないということで、昨年の十二月に国連総会でこれまでにない高いレベルの決議が出たわけです。そして、ことしの三月も、今、EUとともに日本はさらにそれを前に進めようということで、ともに関係各国と連携しながら進んでいるところであります。私も、五月にはアメリカに行って、国連やさまざまなところに働きかけたいと思います。

 これほど国際社会が北朝鮮の人権問題と拉致問題を認識したということはこれまでになかったことであります。さまざまな角度から拉致問題の解決のために努めてまいりたいと思います。

松原委員 ストックホルム合意という合意ではない、もうちょっと拉致に特化した合意を五月につくるべきだったんです。遺骨だ、日本人妻だというのを入れてつくって包括的にやる、こういうふうな合意をつくるんじゃなくて、安倍政権が戦闘的に拉致を解決しようという強烈な思いがあるならば、そういう形じゃなくて、拉致に特化して議論をし、拉致に特化して協議をするべきだったというふうに私は思っています。

 ストックホルムの合意があって、その後の北朝鮮の対応というのは、私は不誠実この上ないというふうに思っております。そのことを私は官房長官に認識をしてもらいたい。もっと拉致に特化した協議を進めない限り、拉致問題は時間との戦いの中で、この問題の解決は極めて困難だろうと思っております。

 そういった意味で、ストックホルム合意、ストックホルム合意というけれども、ストックホルム合意を、これをもって拉致の問題の解決の大きな前進と見るのではなく、どうやってこの中で拉致を突出させるか、そのことに専念してもらいたいと思います。御答弁お願いします。

菅国務大臣 ストックホルムで少なくとも、北朝鮮と交渉の場に着いたわけです、引っ張り出すことができたわけです。そして、今まで、拉致問題は解決済み、委員が大臣のときも、ずっと北朝鮮はそれ一点張りだったでしょう。そこも含めて、初めて拉致問題をまた、いわゆる交渉に私たちは引き戻したと思っています。

 そういう中で、拉致問題が最優先、最重点である、このことはこの交渉の中でありとあらゆる機会を通じて主張していますし、この拉致問題が終わらなければ何も解決しない、ここの政府の強い姿勢も北朝鮮当局はわかっていると思います。

 これからもまさに、総理を先頭に、オール・ジャパンでこの問題解決のために政府としては全力で取り組んでまいります。

松原委員 もう時間が来ましたから終わりにしますが、ストックホルム合意というような合意ではなくて、もっと違う合意をつくるべきだった。私は、国際環境からいって、北朝鮮が拉致のことを解決する可能性がある状況に一昨年から入っていたと何回も申し上げております。したがって、その部分に関して、私はストックホルム合意でないものであっても、十分に、彼らにとって、日朝平壌宣言、これの履行を目指してやるということであれば、彼らは乗ってきたと思います。極めて安直に、北朝鮮の描いた絵に乗ってしまったというふうに私は思えてならない。大変にその部分では残念です。

 しかし、ストックホルム合意があって、その後、それでどんどんと進むのかと私は思っていました。こういうものに合意をして、普通はあり得ないが、どんどん進むのかと思っていた。夏の終わりから秋の初めといって、年を越え、どうなっているんだ、こういうことなんです。多くの関係者はそれをいぶかっています。

 そのことを含め、私は、この拉致問題に関して、再制裁を含め大至急検討し、行動を見せてもらいたい、このことを申し上げたいと思います。

 終わります。

大島委員長 これにて松原君の質疑は終了いたしました。

 次に、松木けんこう君。

松木委員 それでは、質問をさせていただきます。

 菅長官もちょっとお疲れのようでございますが、大丈夫ですか。大丈夫ですね。

 我が党、維新の党なんですけれども、企業・団体献金禁止の法案を出させていただいているのは、大臣、御存じですよね、当然。

 きょうも、午前中ちょっと荒れましたね。大分、今ちょっといい雰囲気になって、それぞれの主張を聞こうかという雰囲気にはなっていますけれども、それまでまた、十二万円もらったんじゃないかとか幾らもらったんじゃないかとか、すごいですね。

 しかし、私もこの世界、もう三十何年いるんですね、十九歳のときからいます。献金の実態というのもちょっとかいま見てきたところもあるんですけれども、今までいろいろと大臣がやり玉に上がってきたわけですけれども、ちょっと怪しいなという感じの方もおられないわけではない。

 しかし、見ていると、どうも補助金だのワンクッション置いただのとかいろいろな話があって、そういうことで、わからないでいただいてしまったということも、かなり、ほとんどそうなのかなという感じは受けています。これは、言葉で言うなら業務上過失違法献金、こういうふうになるんでしょうか。大臣、どう思いますか。

菅国務大臣 政治資金規正法の中で、補助金を受けた企業から受けていい部分とそうでない部分がある、非常にわかりにくい部分があるということは、ここは事実だと思います。

 ただ、今回の問題というのは、それぞれ収支報告書に届けて出た部分についての議論ですよね。そういう中で、まず、みずから個人としてこれを是正することができるのかどうか。企業献金をいただくときに、こういう補助金をいただいている方は一年以内は無理ですよとか、そういうことをやることとか、あるいは、さらに今、党全体としてさまざまな問題を、再発防止ということをやるとか、いろいろな考え方があるんだろうというふうに思います。

 いずれにしろ、まず基本的には、本人がそこを、献金を下さる方に対してもしっかり熟知していただくということも必要だろうというふうに思います。

松木委員 維新の党は、企業・団体献金はこういういろいろなことがあるから禁止なんだということで、法案も出させていただいています。ですから、私がこれからしゃべることは、江田代表から見たら、おまえは余計なことをしゃべるなとちょっと怒られそうな感じもするんですけれども、まあ怒られることを覚悟で、ぜひいろいろな提案をやはりしたいなというふうに思います。

 みんな悪者になっちゃいますよ、こんなことをやっていたら。本当にひどい話だなと思います。もっと悪いのというのは大体隠れているものですからね。まあ、それは別として。まあまあ、余り笑わないでください。

 例えば、それでは、こういうことが二度と起きないようにするにはどうしたらいいのか。今、民主党さんからもいろいろな意見が出ているみたいですし、自民党の皆さんも一生懸命お考えでしょうし、公明党の方々も一生懸命お考えだというふうに思いますけれども、これからどこの場所でそれを、話し合いをしていこうというのはまだ決まっていないんでしょうか。

菅国務大臣 政府の立場で答えることは控えたいと思いますけれども、私が承知している限りにおいては、まだ具体的に、これは各党会派で検討してほしいということを総理はずっと申し上げております。ですから、まだ、どこでかということは決まっていないというふうに思います。

松木委員 ということは、永田町でいえば、国対の方で話し合いが始まるということになるんでしょうかね、多分。そうですね。まあいいです、それ以上言ったらまた立場が違いますから、申しわけないのでそれ以上聞きません。

 そうであれば、やはりいろいろな意見がこれから出てくると思うんですけれども、補助金をもらう会社に対してもやはり罰則を設けるべきだという話もありました。罰則という言葉はちょっときついですけれども、しかし、何らかのことをしていかなきゃならないのも事実だと思いますね。

 そこで、僕の提案なんですけれども、ここでお話しすれば、国対で、どこかでお話をするときに参考にもしていただけるかなということも含めてお話をするわけですけれども、例えば、補助金を受けた会社であれば、その通知のときに、一緒に、一年間は献金はできませんよということをしっかりそこで通知を申し上げるということが一つ大切なことだと思うんですね。

 その上で、私、さっき、業務上違法、違法とまでは言わなくても、業務上過失献金なんですよ。ということは、例えば交通事故を起こしたら、業務上過失致傷とかということはあるじゃないですか。やはり過失でも罪を問われるところは罪を問われるんですね。であれば、わからなければいいということで済んでいくということになると、わかろうとしないということになりますから、それじゃまずい。

 ですから、まずは企業の側もやはり気をつけてもらおうという意味で、例えば、発覚をしてしまったときに、この補助金はお戻しをいただく、そして、三年なり五年なり、そういうことを受けることができない、そういうルールをおつくりになるのもいいかなというふうに思います。

 そして、もちろん政治家の方も、わからなかっただけで済むのはよろしくない。ですから、例えば、十万円もらいました、百万円もらいました、いろいろな方がいるんですけれども、これを今は企業にお返しをする、こうなっているんですけれども、これを国庫にお返しする。企業に返すんじゃなくて国庫にお返しをして、しかも倍づけでお支払いをする。そして、その個人の方は、企業・団体献金は任期の間は受けられないとか、あるいは一年間は受けられなくなるとか、こういうようなこともしっかりつくっていくというのが私は大切だと思うんですけれども、どうでしょう、こんな意見は、長官。個人の意見で結構ですよ。

菅国務大臣 松木委員らしいユニークな提案だなと今思いながら聞かせていただきました。

 いずれにしろ、それぞれの、各政党各会派にとっても極めて重要な問題になりますので、そういうところで話し合いをしていくことが大事だろうなというふうに思います。

松木委員 長官の立場で余りべらべらしゃべれないとは思いますけれども。

 しかし、本当に、私も二年ぶりに国会に戻させていただいて、やはり予算委員会がこんなに荒れているというのは余りよろしくないなというふうに思います。そして、マスコミの方はもう喜んで書くわけですから、菅さんがああだこうだかあだと。私もそのうち出てくるのかなあなんて思いますけれどもね。

 本当に、笑い事じゃないんですよ、皆さん。全部なんか把握できませんでしょう、皆さん。私、そう思いますよ。全部把握できる人がいたら、これはもう本当に神に近いと思います。こういうことを言ったらまたマスコミに怒られる。でも、本当だと思いますよ、私。

 ですから、ちゃんとしたルールをもう一度おつくりになるというのは非常に私は大切だと思いますので、これは何もなしで、このまま通知を出すとかそのぐらいで終わるんじゃなくて、やはりペナルティーも設ける。例えば、五年間選挙に出られなくなるだとか、そんなことはいいです。まずはちょっとした罰則を、ああ、こんなことはしない方がいいという気持ちになるような罰則がなきゃいけないですね。

 そしてもう一つは、やはり、補助金をもらった企業の一覧表をどこかで把握しておつくりになる、それで、それを見るとある程度わかるということもあってもいいかなというふうに思っております。

 いろいろなことをぜひ考えてやっていただきたいと思います。

 財務大臣もお疲れですか、大丈夫ですか。大丈夫ですね、まだ。

 そんなことで、この献金問題は終了させていただきます。

 それでは次に、景観保護ということでちょっとお話をさせていただきたいと思います。

 今、政府は海外からの観光客誘致に大変積極的に取り組んでおられますけれども、豊かな自然、さまざまな伝統文化、または都市における日本らしい建物、そういうものが醸し出す風景も、多くの外国人観光客を引きつける要因というふうに私はなっていると思います。

 既に一部メディアでも取り上げられたこともあるんですけれども、赤穂浪士ゆかりのお寺で知られている、東京港区にあります泉岳寺の件なんですけれども、このお寺の山門のすぐお隣に、マンション建設というのが今持ち上がっているそうでございます。

 かつて、東京中央郵便局、あれがなかなか立派ないい建物だということで、保護をしていきたい、あのまま残していただいたら一番ありがたい、そういう運動がありまして、そのときに、今市長をやっていますけれども、名古屋の河村たかしさん、それと、民主党の原口さん、そして、自民党でいえば、きょう理事をやっている平沢勝栄さんなんかがみんな一緒になりまして、ぜひ、ちょっと古めかしい東京中央郵便局のあの雰囲気を残していこうよということで、当時、鳩山邦夫総務大臣だったですか、そして、そのときの総理大臣は、何を隠そう麻生総理ですよね。今は副総理ですけれども。そういう関係がありました。

 それで、そのときに、政府の方も考えていただいて、のり面というんですか、面のところで少し残してもらったんですよ、古いものを。そういう過去もあるんですね。そういうことは、非常に私は大切だと思います。

 東京駅も、今、四階建てにあれを戻したんでしたっけ、たしか。あれと、こっちの東京中央郵便局の雰囲気と。

 要するに、日本というのは、どちらかといえば点で残しちゃうんですよね。札幌の時計台なんてむごいですよ。大きなビルの中にちょこんとあるんですよ。それで、観光客が、いや、何か詐欺みたいな話だなあなんて言っていく人もいるんです。でも、風情はあるんですけれども。

 経済的なこともいろいろとあるので全部とは言いませんけれども、やはりちょっと、面で残すというんですか、そういう思想をこれから景観とか古いものには入れていった方が私はいいんじゃないかなと。点でやってはてんでだめだという話ですよね。やはり面で残さなきゃだめだというふうに私は思っております。

 そこで、国土交通大臣にお尋ねしますけれども、大臣が所属していらっしゃる政党は公明党さんですね。公明党さんは、こういう景観保護ということに対しても大変熱心にお取り組みになっているというふうに私は聞いています。

 泉岳寺に限らず、東京や大阪といった大都市にも、また多くの地方都市や山間地域にも、非常に歴史のある建物というのは多く点在しております。現在は都市計画法に基づいて自治体が規制地域を指定するというのが基本的な仕組みだというふうに承知していますけれども、大臣、国として、いま一歩何かちょっと踏み込んだ対応というのを、これからやっていこうというのがありましたら、ぜひお話しいただきたいと思います。

    〔委員長退席、金田委員長代理着席〕

太田国務大臣 歴史的な建造物の周辺の景観保護については、国土交通省としても重要であるというふうに認識していますし、私も、そうしたことがますますこれから重要になる、こう思います。

 観光ということからいっても、また、地元の人が誇りを持つ建物等が自分の住むところにあるということは誇りでもありますし、町の雰囲気全体に影響すると思います。

 観光には、見る物、買い物、食べ物という三つの物が必要というんですが、見る物という中には、景色だけでなくて、そこに文化とか伝統というものを世界の人たちは多く見に来るんだと私は思います。

 良好な景観のあり方につきましては、各地域で実情が異なるということから、以前は、各地方公共団体の都市計画あるいは条例等におきまして基準を設けて、届け出、勧告制度などによって対応してきたというわけでありますが、それでは不十分だということで、平成十六年に景観法を施行しまして、こうした地方公共団体の条例による独自の取り組みに法律の根拠を与えて、一定の場合には変更命令までかけられるようにということができまして、実効性のある規制を可能としたところです。

 現在、景観法に基づいて、景観行政を行う地方公共団体が景観行政団体となりまして景観計画やあるいは景観地区を定めることで、建築物の高さとかあるいは面積等について、地域の実情に即してきめ細かな規制を行うことが可能となっておりまして、多くの地方公共団体で活用をされています。

 泉岳寺の高さの規制については、港区が都市計画権者及び景観行政団体であって、しかるべき対応をいただくことが基本になっているところです。

 国交省としては、引き続き先進的な取り組み事例の周知、先進的なというのは、例えば、松本城というのが長野県松本市にあるんですが、その松本城の周りにかなり厳しい規制をかける、先生がおっしゃった、点ではなくて面的にかけるということを条例で、決めているというようなこともありまして、あくまで決めるのは地方公共団体ということになりますが、この先進的な取り組み事例というようなこともさらに徹底したり相談をしていって、観光が特に大事という今では、先生がおっしゃるように、点から面への展開ということについて、私としては、何らかの形で、法的なことというよりは指導、指導というか相談に乗っていくという、そうしたことに努めたい、このように思っているところです。

松木委員 大変よろしいお答えだったと思いますけれども、何でも中央政府が決めてやるという時代じゃなくて、なるべく、地方分権なんということを言われている時代ですから、地方の人たちの意見を尊重しながらというのは、非常に大切なことだというふうに思います。

 泉岳寺の話をもうちょっとしますと、山門があって、すぐ隣の場所に二十四メーターのマンションが建設されるんですね。景観が損なわれるということで、地元住民から反対の声が上がっているという問題なんです。

 これは、高さ制限というか、都市計画法に基づいて自治体が高度地区とか風致地区とかいったものを設けて規制するそうなんですけれども、都市計画法に基づく規制にはこのマンションはひっかからないそうなんです。報道によれば、一帯は三階建て、マンションは八階建てということで、どうなんだという議論になっているんです。

 都市計画法では、細かな規制については自治体が設けているわけですけれども、国全体で、文化財、そしてその文化財によって醸し出される景観を守る必要性もあるのではなかろうかというふうに私は感じます。文化財とその文化財が中心となっている周辺の景観、これも当然のことながらしっかり守っていかなければならないと私は考えます。

 そして、守っていく主体として、もうちょっと、今大臣もお答えをいただきましたけれども、国も積極的にかかわるべきだというふうに考えますけれども、ぜひもう一度、よかったら、文科大臣も含めて、端的でいいですからお答えください。

太田国務大臣 先ほどお答えしたとおりなんですが、あくまで、例えば泉岳寺の場合、港区ということになりますけれども、今回の例にそれが届くかどうかはわかりませんけれども、とにかく、港区は非常にほかにもいろいろありますから、そうした工夫ができないものかということについては申し上げたい、このように思っているところです。

下村国務大臣 私のところにも、松木委員と同じように、泉岳寺正面脇へのマンション建設、何とかならないかという要望を直接受けております。

 御指摘のように、泉岳寺というのは、大変由緒ある寺でありまして、赤穂義士に対する国民的人気も根強いことから、地域のシンボル的な観光資源としての活用も含め、この地域の景観のあり方について、委員の思いも含め、地元で議論が尽くされることが望ましいというふうに私も思います。

松木委員 泉岳寺の件は、ぜひ両大臣、できたらもうちょっと、あのまま建っちゃっていいのかなと思うので、どこかで俎上に上げてください。ぜひお願いしたいというふうに思います。

 そして、建てちゃいけない建てちゃいけないということになると、今度はやはり開発業者の皆さんの死活問題にもなってしまうので、過剰な規制は地域や国家全体の経済発展を阻害するということで、余り乱暴な規制もできない。

 それでなんですけれども、例えば、これはちょっと私の提案なんですけれども、文化庁が中心となって一定の基準を設けて、歴史的価値の特に高い建物などを全国の市町村や都道府県と一緒にピックアップをしていただいて取りまとめる。同時に、学界の先生方のお知恵もおかりして、そういった建物のピックアップをして、漏れのないように作業を進めていって、その上で、そこで指定された建物については、その建物の周辺地区の景観を守るための、ある程度、全国共通とまでは言わなくても、何か共通の景観保護のルールをつくっていく、こういったことができないだろうかというふうに思います。

 省庁をまたがる取り組みになるというふうに思いますけれども、日本は文化国家として世界の人々からの日本に対するよいイメージを確固たるものにするためにも、ぜひこれを御検討いただきたいと思います。

 どうでしょう、御意見があったら、ぜひお二人。短くて結構です、時間が余りないので。

太田国務大臣 地方公共団体が実情に即して判断をするということが一番大事だというふうに思っておりまして、地元の意向等を踏まえて、必要な規制について十分に御検討いただくことが重要だ、このように思います。

下村国務大臣 二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックに向けて、日本全体を文化芸術立国として、世界じゅうの方々が観光立国で日本を訪れるという意味の受け皿として、既存の文化、景観法も含めて維持していくというのは大変重要なことだと思いますし、関係省庁と連携して、それがきちっと保存され、またそれが観光の拠点になるようなフォローアップをぜひ考えていきたいと思います。

松木委員 文科大臣もいいお答えですよ。こういう話だったらいいでしょう。ぜひしっかりやってくださいよ。

 本当に、やはり点だけじゃだめですよ。しゃれるわけじゃないけれども、てんでだめ、やはり面でいかないと、ああいうものというのはね。私はそう思いますので、ぜひこれは一生懸命頑張っていただきたいというふうに思います。

 それでは、次の質問に行きますけれども、厚生労働大臣、先ほど大分責められていましたけれども、我慢もされていたみたいですけれども、まあまあ、頑張ってくださいな。

 それでは次に、今般、介護報酬の改定のことがありますよね。これはちょっと私も気になっているんですけれども、今般の介護報酬改定は、財政面を考える余り、介護保険制度を支える事業者の経営への目配りが必ずしも十分でないのではないかと心配になっている場面があります。

 実は私のところにも、こういう事業者の方々から、かなり多くの言葉が寄せられてきているんですね。これは選挙区じゃないですよ。違うところの人が多いんですけれども。

 そんなことで、先般、平成二十七年の介護報酬改定が決定されましたけれども、全体の改定率はマイナスの二・二七%ということでありましたけれども、内訳は、月額プラス一万二千円相当の処遇改善加算の拡充分ということで、プラス一・六五%ですね。中重度の要介護者や認知症高齢者等への介護サービスの充実分がプラス〇・五六%。そして、介護事業者の収支状況等を踏まえた適正化分がマイナス四・四八%となっているわけですね。

 物価の上昇などを考えれば、今回の報酬改定というのは数値以上の大幅なマイナス改定と言っていいのだというふうに私は思うんですけれども、まず大臣にお伺いしますけれども、今回のこの介護報酬の改定について、マイナス改定であったという御認識はありますか。

塩崎国務大臣 数字という面では、確かにそのとおりでございます。

松木委員 今大臣のお認めになったとおり、残念ながら、マイナス改定ということになっているわけでございます。

 そもそも今回の介護報酬の改定は、財務省によるマイナス改定を求める動きから始まったようでございまして、財務省の主張では、介護サービス全体の平均収支差率はプラス八%程度と、中小企業のプラス二から三%を大きく上回っているのだから、この差に当たる六%程度の適正化、引き下げが必要だというものであるわけですけれども、この根拠となったのが、厚生労働省の平成二十六年の介護事業経営実態調査というものですね。

 しかし、この調査というのは平成二十六年三月の一カ月だけの収支の調査ということなんですけれども、これは本当なんですか。

    〔金田委員長代理退席、委員長着席〕

塩崎国務大臣 先ほど、その次の質問があると思って、数字ではそうですと申し上げたんですが、次の質問に行かれるならば、なぜ結果としてこういう数字になったかということを言えば、一言で言えば、やはり、少子高齢化が進む中にあって、国民、利用者のメリットと、それから介護職員のメリットと、さらには事業者の皆さん方のメリットということを十分考えて、ニーズに合った形で改定をして、結果としてこういうふうになったというふうに御理解をいただければなというふうに思っております。

 今先生御指摘の介護事業経営実態調査、これについて、一カ月だけの数字じゃないかという御指摘がございました。

 これは、サービスの種類ごとに分割をして収支を把握してサービスごとの収支差の動向を評価するものでありますけれども、もちろん、我々、収支差の数字のみで単純に改定率を今回も改定したわけではなくて、先ほどのような総合的な判断をした上でやっているわけであります。

 今先生、一月だけかということでありますが、私たち、大きく言って二つ調査をしておりまして、経営の実態調査と概況調査というのがございまして、今先生御指摘の実態調査というのは三月一カ月間ですけれども、これは平成二十六年三月の一カ月間の収支等の状況を三万三千余りの施設、事業所で調査をかけまして、有効回答数が一万六千余り、一万六千百四十五施設、事業所になっております。回答率が四八・四なんですけれども、もう一つ、実は一年間、収支等の調査をするというのもあります。

 これが概況調査というものでありますけれども、しかし、一年間かけてやるものですから、ちょっと古いわけですね。これでいきますと、直近は平成二十四年度でございます。先ほどの調査先に比べても、約半分、一万五千六百余り、それから有効回答数も六千五百四十ですから、これも半分以下ということでございます。

 こういうようなことでございますので、我々としては、幾つかの調査を見ながら実態をより正確に把握する観点から、この回答率も、小規模の事業者にも配慮して、回答用紙を簡素化するとか、インターネットでの回答もオーケーにするとか、問い合わせへのサポートも強化するとか、いろいろな形で、今先生一カ月じゃないか、こういうことでありますが、足らざる部分を足すためのいろいろな調査などをサポートもしながらやっているということでございます。

松木委員 やっている方々というのは、やはり、一カ月で全部かよという気持ちがどうも強いようですので、そこら辺、もうちょっと実態に即してもう一度調査し直すとか、そういうこともちょっとお考えになった方がいいんじゃないかなというふうに思うんですけれども。大変ですかね。やってみたらどうですか、大臣。

塩崎国務大臣 さっき申し上げたように、一カ月だけの調査のみで判断しているわけではございませんで、それぞれトレンドがあるわけですね。ですから、今のこの一カ月のものも、毎年やっていてトレンドを見て、それで一年間見ているものもトレンドを見て、さらにはヒアリングをやり、他のいろいろな指標も参考にしながらこういうようにやってきたということでございます。

 なお、今先生御指摘のように、改善すべきところは改善をするということで、先ほど申し上げたような努力はしているということでございます。

松木委員 これは三年に一度改定するわけですよね。ですから、またよりいいものを考えてあげていただきたいなというふうに思います。非常に大切なことですからね。日本がこれから少子高齢社会になって、これから介護に携わる方々も三十万人ぐらい足りないんじゃないかとかいろいろな話がありますので、ぜひ、これは本当に大切な部分ですから、頑張っていただきたいというふうに思います。

 それでは、ちょっと時間がぎりぎりになってきたんですけれども、技能士のことに関してまた厚生大臣に聞きたいんです。

 さまざまな分野で技能士という資格があるんですけれども、技能士は、さまざまな分野の技能検定の合格者がそれぞれのレベルごとに名乗ることができる国家資格であり、労働者の技能の高さを示すものであります。

 この技能士制度が始まって以来、半世紀以上たっているところでありますけれども、本制度は、目的どおり、技能士の資格を取得した労働者の社会的地位の向上につながっていると言えるとお考えでしょうか。例えば、雇用された企業内で技能士となることでちょっと給料が高いとか、個人事業でやっていれば、やはり、あっ、技能士だということで仕事がふえるとか、あるいは仕事の単価が上がるなど、そういうプラスの評価につながっているのかどうか、ぜひ、その現状、どうなっているのか、厚生労働大臣にお聞きをしたいと思います。

 そして、技能のことというのは世界的にもやはり大切にされていて、二〇〇七年にユニバーサル技能五輪というのもやっていますよね、たしか。これは千円銀貨の記念硬貨まで出ていますから、だから、技能士というのを大切に政府もしているんだと思いますけれども、では、今までのことに対してのお答えをお願いします。

塩崎国務大臣 先生御指摘の技能士は、職業能力開発促進法に基づいて、国家検定で、技能検定制度の合格者を対象として、いわゆる名称独占の資格ということでございます。

 今、それが生かされているのか、こういうことでございましたが、制度の沿革上、物づくり技能分野を中心として整備をされてきたところでございまして、これらの分野で本制度を認知している事業所では、職業意識や職業能力の向上に役立つというふうに考えている事業所が九割近くでございます。

 一方で、採用のときとかあるいは配置転換のとき、昇進のとき、こういうときに活用しているかということでございますけれども、それは、今申し上げたようなパーセンテージではなくて約半分以下、これは平成二十四年度に能力開発基本調査というのをやっていますが、このときを見ると四二%にとどまっているということでございまして、発注業者等を含めた技能検定とか技能士制度の社会的認知がなお、先生御指摘のように、御心配のように、不十分ではないかということは指摘されてもやむを得ないなという感じでございます。

 しかし、今お話がございましたように、技能士の資格というのが本来はもっと重視をされて活用促進が図られるようにせないかぬわけでありまして、私どもとしても、一級技能士などの要件を満たした熟練技能士をものづくりマイスターとして認定を厚生労働省がして、若者に対する実技の指導等の取り組みを講ずるものづくりマイスター制度の推進などを平成二十五年度からやっていますし、現代の名工というのもありますが、これも、卓越した技能者の表彰を行って、すぐれた技能を有する者の評価を上げるということで、社会的な地位を上げていくという努力も、取り組みもしてきているところでございます。

 平成二十七年度、今度の予算でも、技能検定に合格した従業員に対する手当などを創設した企業には助成をするというようなことで、この技能士の資格あるいは技能を大事にする、そういう文化をバックアップしていこうということでやっているところでございます。

松木委員 ありがとうございます。

 例えば、北海道の平成二十六年十二月の有効求人倍率というのを見ますと、型枠大工、とび工、これで四・八六倍あるんですよね。全職種の〇・九二倍と比べて極めて高いんですよ。ということは、それだけいないんだろうと思いますけれども、技能者不足が深刻な状況だというのがこれでわかると思うんですね。

 そこで、このような建設分野における技能者不足なんかも踏まえて、技能者の養成、確保なんかが強く求められるわけですけれども、ぜひやはりこういうところにもっと予算をつけてしっかりやっていった方が私はいいと思いますよ。

 本当はもっと細かく聞きたかったんですけれども、もう時間がなくなってきましたので、このぐらいにしますけれども、やはり、物をつくる人がいなくなっちゃったらどうしようもないですからね。やはり現場が大切じゃないですか。選挙で政治家もよく言うじゃないですか、現場が大切だって。そう言いながら、現場を大切にしなきゃだめですよ。

 現場を大切にしながらやっていくには、やはりこういう方々を大切にしていくというのが私は大切だと、本当に大切だと思いますので、ぜひそういうお気持ちを持って、本当はもっと細かくお聞きしたかったんですけれども、ぜひこれからの政策に反映をしてもらいたい、そういうふうに思います。

 官房長官、どうも本当に御苦労さまでございました。ぜひ、いい政治の形をつくるように、官房長官も、何といったって、御苦労をなされてきた、人の気持ちがわかる官房長官ですから、頑張ってくださいね。

 以上です。ありがとうございました。

大島委員長 まだ時間がありますが、もういいですか。答弁をもし求めるなら。

松木委員 もし何かお話ししたいことがあったら、ぜひ。

太田国務大臣 幾らいいビジョンをつくっても、それを担う人がいなければ何ともならないと私は本当にそう思います。

 若い人が現場で働くというところになかなか来ないということが、建設のみならず、運送業者におきましても、パイロットにおきましても、全てにあるわけです。そういう意味で、処遇を改善するということも非常に大事ですし、誇りを持てるようにということも大事ですから、さまざまな形を通じて、現場で働いて汗を流す人はとうといのだという社会を目指して進んでいかなくてはいけない、こう思っています。

松木委員 ありがとうございました。

大島委員長 これにて松木君の質疑は終了いたしました。

 次に、松浪健太君。

松浪委員 維新の党の松浪健太であります。

 ただいまは、我が党の松木議員から、大変、本日は仏のような質問がありましたけれども、我々も身を切る改革を進める上で、しっかりとこれを皆さんにアピールしていくとともに、きょうは成長戦略に焦点を当てて質問をさせていただきたいと思います。

 正直者がばかを見ない、これは人が頑張る世界では当たり前の話でありますけれども、これがないがしろにされているというのが、やはりマイナーなさまざまな業界だと思います。

 特に、私が本日最初にスポットライトを当てますオートバイ業界、これはまさに縦割り行政の巣窟のようなところでありまして、各種の、運送車両法において国交省によって規制をされているわけですけれども、振興は経産省、そして税は総務省、さらには改正自転車法の関係で内閣府にまで及ぶ、これが戦後ほとんど整理をされてこなかった現状があります。

 これを踏まえた上で本日の質問をさせていただこうと思います。ちょっと通告とは順番が変わりますけれども。

 オートバイ業界、実は、日本国内では今四十万台ぐらいしか売れておりませんけれども、年間、世界では六千万台を売り上げている。しかも、それはほとんどが発展途上国であります。発展途上国において、ホンダ、ヤマハ、カワサキ、スズキといった日本のブランドのこの宣伝効果たるや、私は、はるかに自動車をしのぐものではないかなというふうに思っております。

 このオートバイ業界、長年、随分と政治的に弱い立場にあった。御承知のとおり、自民党の中には自動車議連があって、各団体がわっと何十団体も集まってアピールをするわけですけれども、二輪は少し外に外れている面があったわけであります。

 政権交代がされてから、成長戦略としてオートバイの位置づけが大きく変わってきたと思いますけれども、まずもって、経産大臣に、オートバイの位置づけ、成長戦略としての位置づけを伺います。

宮沢国務大臣 私は、オートバイというのは、普通免許を取るまで少し原付に乗ったぐらいで、それほど詳しくありませんけれども、まさに、日本におきましても、日常生活の足でありますし、また趣味で乗られている方も大変多いということで、委員おっしゃいましたように、今、六千万台を超える世界市場でありますけれども、日系二輪車のブランドはそのうち四割以上という大変大きなシェアを占めております。これは、乗用車が三割でございますから、乗用車よりはるかに大きいシェアを持っております。

 今おっしゃいましたように、新興国、発展途上国では、ホンダとかヤマハという名前がまさにバイクの代名詞となっているようなところがありまして、海外市場で高い品質とブランド力で稼いでいくという成長戦略にさらに磨きをかけていく必要があると考えております。

 一方で、国内では、三ない運動、乗せない、買わない、免許を取らせないといった運動とか、若者の嗜好の変化などを背景といたしまして、八〇年代には三百万台を超えていた販売規模が、現在では四十四万台にまで縮小してきております。

 国内市場を活性化していくということは大変重要であり、そのために関係者で知恵を絞っていく必要があると考えております。

 二輪車政策に関しては、国内市場の活性化や国際競争力の強化を目指して、昨年十一月に経済産業省で取りまとめた自動車産業戦略二〇一四の中でも重要な要素として位置づけておりまして、自動車産業政策においても不可欠な存在だと考えております。

松浪委員 今御答弁ありましたように、随分と経産省でも大きな戦略にのせていただいたわけでありますけれども、現在、年間国内では四十万台であります。これは、世界で六千万台に比べると非常に小さいと思われるかもしれませんけれども、我々が若いころは、二百五十ccのラインナップなんというのは、特に、高市先生は私もオートバイ雑誌で見かけたことがありますけれども、山ほどあったわけであります。しかしながら、今は、二百五十なんというのは本当に限られた、ホンダ、カワサキ、車種もすごく少なくなっているわけですね。

 これが何をあらわすかというと、結局、車種が少なくなる、それでユーザーにとっての魅力が少なくなる、アフターパーツ、日本は非常にアフターパーツマーケットが豊富で、日本人の感性というのは細やかで、これも世界に対して感性を輸出する大きな分野ですけれども、これが伸びなくなってきている。まさに、てこの原理がきいてきたのがこのオートバイマーケットなんですね。

 これが、四十万台。今大臣がおっしゃった国内販売百万台を目指す。これは、もともと私どもがビジョンをつくって、自民党にも民主党にもオートバイ議連があります、私も当時、平成二十年段階で百万台目指そうということで、自分でいろいろな業界の人と話をして、そして議連でもそれを訴えて、四枚目にあるビジョンをつくって、今回は経産省がこれをしっかりとのせていただいたということは非常にありがたいんですけれども、宮沢大臣、この四十万から百万台というのは、絵そらごとに終わってはならない。消費者に向かって、それからまた、制度全体で抜本的な改革なしにこれができるのかどうか、問わせていただきます。手短にお願いします。

宮沢国務大臣 昨年五月に、先ほど申し上げましたように、二輪産業や関係自治体を中心にして、国内販売台数百万台への回復、さらに世界シェアの五〇%以上、さらに利用者のマナー向上という三つの目標を示しまして、二〇二〇年までに取り組むべき施策のロードマップをまとめました。

 そのロードマップには、二輪車の駐車場の整備、また、高速道路料金、免許制度など、二輪車の利用環境の整備に関する強い要望も含まれております。

 こうした議論を踏まえて、経済産業省としてはしっかりと取り組んでいきたいと思っております。

松浪委員 計画だけを美しく言うのは簡単なんですけれども、ユーザーの心をつかむというのはちょっとやそっとのことで、この四十万台が百万台、せっかく百万台と言ったんですから、それだけ大胆な、消費者のマインドにかかわる政策を打っていかないといけないと思います。

 本日は麻生大臣には通告を出していないわけでありますけれども、大臣、軽自動車に乗られるかどうかはわかりませんが、一般論として、オートバイと軽自動車、軽自動車と一般の、ふだん乗られている乗用車、どっちの方が違いが大きいかなというのは、どういう御感想を持たれますか。

麻生国務大臣 屋根がある分だけ、軽自動車とオートバイだと思いますね。

松浪委員 全く明快なお答え、ありがとうございます。

 軽自動車と乗用車の方は、当然、屋根もある、車輪の数も同じであります。子供が見ても、これは軽自動車と自動車の方が共通点は明らかに多い。世界的に見ましても、さまざまな国で、高速道路、ほとんどが、無料だという国が多いので、一般車とオートバイが一緒になっている国も多いわけでありますけれども、フランスなんかでは二輪車と乗用車は分けている。

 日本国内におきましても、わざわざつけませんでしたけれども、これは、スカイラインの一覧表があるんですが、例えば津軽岩木スカイラインは〇・五七だとか、一般乗用車にも、必ず、大体二分の一ぐらいまで引いている例というのが、日本のスカイラインでも、何十本も、ここに、私の手元にある、これが大体妥当な形だと思うんですけれども、日本はユニークですね、軽自動車が二輪車と一緒になっているんですね。軽自動車が二輪車と一緒の扱いを受けている、乗用車と二輪車が一緒のカテゴリーで高速料金をつくっている。こんなユニークな国は日本だけですよ、皆さん。

 だから、ここをしっかり、すぱっと割らないと、まずもってオートバイ人口なんというのはふえていかない、これは根幹にあります。

 ですから、これがくっついてはあると思うんですけれども、しかしながら、もう一問、麻生大臣に聞きたいんですけれども、これまた一般論で結構です。

 こういう高速料金は、いわゆる三つの負担というものを基本に大体計算をしているといいます。一つは占有者負担、車が一台、幾らとるか。原因者負担、物を維持するということですね。三つ、受益者負担、百キロで走っているとあるんですけれども、麻生大臣、大体、照明とか標識とか道路の維持とか道路巡回の費用なんというのが高速道路を維持するために必要だと思うんですけれども、最もお金がかかる項目というのは、セメント屋さんの大臣のことでありますので、どういうものが一体、道路維持には一般的にお金がかかると思われますか。

麻生国務大臣 道路維持という意味ですか。

 コンクリートの質にもよりましょうけれども、コンクリートのメンテナンスというのは意外と金がかかると思いますけれどもね。

松浪委員 そのとおりであります。

 当然、道路をひっくり返す方がかかるんですけれども、この資料二を見ていただきたいんですけれども、自動二輪、国交省から出していただきました。これは原因者負担に当たります。照明、標識等に要する費用や道路巡回費用等に関して、ほかの車種同様の負担を行うべきと書いているんですけれども、実は、ここに、等の中に、道路を直す、そういうお金も入っている。

 昔、笹川先生がおられたころに、これはETCが入ったら軽自動車と分けるからみたいな議論があったというようなことを私は伺っておりますけれども、結局、これを隠すために、自動二輪の部分で、そうした道路巡回費用とか照明を出す前に、もっと実は道路を直すのにお金がかかっているんじゃないですか。太田大臣、答弁をお願いします。

太田国務大臣 道路を直すということがお金がかかるのは、麻生副総理が今答弁したとおりですが、重さということについては、老朽化に至る、あるいは崩壊に至るということからいきますと、重さの十二乗だけこれがかかる、こう言われているという状況でございます。そこは御認識をいただきたいと思います。

松浪委員 十二乗かかるということを考えますと、この一枚目の表にありますオートバイ、これは二人乗せている。軽自動車は四人。乗用車はいろいろなタイプがあるんですけれども、二トントラックまで含みますから、この場合は乗用車に十人乗せた重さであります。

 当然、通常EUなんかの基準も鑑みますと、重さによって使用者負担、これでも少ないぐらいだと思いますけれども、二万五千キログラム超でも二・七五というぐらいなので、本当はもうなきに等しい重さだと思いますけれども、こうしたことを変えていかないと、結局、ユーザーの心理は変わってきませんし、我々議連等でも、渋滞のときにはオートバイは余計に危ないんですね、渋滞している高速道路の間でついついすり抜けしますから。

 それであれば、路側帯で可能な、広い路側帯の場合は、実は、ゆっくりと徐行してもいいんじゃないか。こうしたインセンティブを与えることなしに、オートバイ振興なんというのはかけ声に終わってしまうということをまずもって指摘をさせていただきたいと思います。

 そして、これは五枚目ですか、一覧表をつくらせていただきました。「二輪車の法律上の区分」というものでありまして、現行の法律と、登録とか車検とか、それから一般道に乗れるかというようなものを、現行のものを上の図に整理をさせていただきました。そして、下の図は、将来的に、これは私の提案でありますけれども、イメージ的にはここまできれいにやれるんじゃないかなというふうに思っております。

 これは、個々にはまた国土交通委員会等で、民主党政権時代に私も国交委員会でこれを指摘したことはあるんですが、こうしたビジョンをやはり省庁を超えてつくっていただきたい。

 特に原付の方を申し上げますと、原付なんというのは、道交法ですから、警察庁にとっては原付は五十ccまで、そして、国交省にとっては、道路運送車両法でこの二種に分かれて、原付というのは百二十五までだということで、結局、自治体が改正自転車法で駐車場をつくってくださいといったときに、ある自治体は、道交法だから五十ccまでだと、ほとんど車格の変わらない九十cc、百二十五ccを取り除いて、わざわざ意味なく、全然実害がないのに、緑の服を着た民間の人が、これは違反ですと押している。誰も得をしない、そういう原因にもこれはなっているわけであります。

 太田大臣、これから各省庁と連携をして、こういう問題、改善するおつもりがあれば伺いたいと思います。

太田国務大臣 高速の運賃につきましても、総合的にいろいろ判断してやっていかなくてはいけないし、先ほど私、重さということについて十二乗ということを言いましたが、それだけ大型車からの老朽化への負担が大きいということを言っているところであります。

 今、例えば道路運送車両法と道路交通法ということで、原付の区分ということが違っているということについて御質問だったと思いますけれども、この道路運送車両法におきましては、百二十五cc以下の二輪車は、構造が簡便であり、簡素な基準を用いていることから、原動機付自転車としておりまして、一方、道路交通法では、五十ccから百二十五ccの二輪車は二人乗りが認められているなど、五十cc以下の原付の自転車に比べまして高度な運転技術を要するということから、普通自動二輪車としているという認識があります。

 道路運送車両法が車両の安全ということに注目をして区分しているということに対して、道路交通法は、交通の安全と円滑性ということについて法律が立法されているということでございます。

 しかし、今御指摘のありましたように、これらについて、区分の違いがあったり、あるいは混乱が生じるというようなことの御指摘については、法律の問題、それ自体とは別にいたしましても、必要に応じ、関係省庁と連携して、よく研究していかなくてはならないものだと思っております。

松浪委員 大臣がおっしゃったのは、昔の区分では、原付というと、昔は足がついていて三十キロまでしか出なかった。今の原付というのは、改造すれば百キロまで出る。そして、今のものは、大体七・二馬力に全てを規制までして、六十キロはやすやすと出るという代物でありますので、この法律ができた当時と状況は全く違うということを申し上げなければなりません。

 そして、三十キロ規制でもし走られたら、余計にここは、警察庁が、そういう私の質問に対して、これでは困るというような現実的なものもお認めになっているので、また議事録等を見ていただければありがたいと思います。

 そしてさらに、これは見捨てられているのが、ユニークなのが軽自動車なんですね。

 私も、この軽自動車税、今回、歴史を初めて勉強いたしました。これは七枚目なんですけれども、戦後、当時は自転車に税金がかかっておりまして、昭和二十九年には荷車にもかかっていたので、自転車荷車税ということで九十ccまではくっつけたというのがこの表であります。

 そして、この表で、九十cc以上は実は軽自動車と認めていたという歴史があることを私も改めて勉強し直しました。昔の基準が続いているんだろうなと。

 今、二百五十以上は、千五百ccのバイクとか千二百ccのバイクとかがばんばんあるんですけれども、しかしながら、そうしたカテゴリーは、二百五十一以上は全然カテゴリーが一緒で、本当に頭隠して尻隠さずみたいな状況になっています。

 大臣の手元にあろうかと思いますけれども、けさ方、総務省が昭和三十三年の二輪車の課税台数を持ってきてくれました。五十cc以下は二十九万三千で、現在はこれが六百六十六万で、二十倍以上になっている。五十から九十だけは、これは四十一万から五十一万でほとんど変わっていない。九十から百二十五は二倍になっている。これは表はちょっと皆さんにおつけできませんでしたが、百二十五から二百五十ccは三倍、そして二百五十cc以上は三十倍と、まさに五万台から百四十八万台というぐらいまで大きく、その昭和三十三年時代にほとんど均等にあったこのカテゴリーが、今はもはや用をなしていない。

 課税をするんだったら、二百五十以上で、大型とかそういうところで変えていった方がまだフェアなわけでありまして、これはまた自民党の中でも、税調も恐らく今回、取得税のところでこれを倍にということでやってきているんですけれども、やはりこれは役所ベースですよね、高市大臣。

 はっきり言って、この九十ccとか、今、地方も過疎になって、私も一覧をいただきましたけれども、沖縄のある村なんかは、五十から九十cc一台なんというところが山ほどあるんですね。

 ですから、こうしたところで、このカテゴリーはもうそろそろ見直すべきだというふうに思いますけれども、特にバイク行政に深い御理解のある高市大臣、これはちょっと時代おくれじゃないですかね。

高市国務大臣 委員が問題意識を持っておられるのは、特に軽自動車税に九十ccから百二十五ccの区分を残しているというところだと思いますけれども、御指摘は、税制を考える上で、やはりこの税制上の区分が与える影響というのを十分考慮する必要があるという意味で、大変重要な問題を提起されたと私は思います。

 その一方で、税制上の区分の変更については、それが与える影響については慎重に検討しなければなりませんし、それから自動車税においても、道路運送車両法や道路交通法よりも細かい区分で税率が設定されておりますから、二輪車についてこの九十ccを基準とする税率区分を維持することが必ずしも不合理であるとは言えないと私は考えています。

 ただ、車体課税の今後のあり方は、やはり松浪委員初め幅広く御意見をいただきながら検討してまいりたいと思いますし、バイクの振興につきましても、高速道路で二人乗りができるようにという議員立法を実現した自民党の議員連盟の初期メンバーの一人でありますし、また、当時のように、私たちの若いころのように、「バリバリ伝説」や「ナナハンライダー」や「汚れた英雄」、ああいう映画やアニメなども通じて、バイクが格好いいものである、そしてまたみんなが憧れるような乗り物として、また生活の足として、産業としても発展していくことを祈っております。

松浪委員 この縦割りを全部廃止する議員立法による法案というのが自民党の議連にもう既にありますので、どうか自民党の議連にいらっしゃる皆さんは、あの法律をもう一回ごらんになって、オートバイ行政推進一括法という形で、今さまざまに挙げた問題は全部網羅されておりますので、これこそ省庁はばらばらですので、我々議員主体が、我々もよろしければ一緒に法案を提出いたしますので、どうかこの法案を、一刻も早くやらないと、とても百万台なんかは無理ですよということを申し上げまして、このオートバイの行政、あと一問だけ忘れていました。太田大臣、済みません。

 それで、これはすごく大事な問題だったんです。オートバイにそれだけフェアにしようと思って、ETCなんですけれども、現在、軽自動車と一緒になっているので、電波は、恐らくETCではオートバイとそれから軽自動車は違えているはずなんですけれども、これを何とか調査できるように。

 まさに消費者は、今経産大臣もおっしゃった、抜本的なインセンティブを求めています。そのための調査として、やはりこうした、せめてどういうふうにETCを通っているのか、値段は一緒でも、見比べる、調査するカテゴリーが今あるはずですから、これについての対応をお願いしたいんですが、いかがですか。

太田国務大臣 大事な御指摘だというふうに思っておりまして、ETCのことも含めて、高速料金のあり方については幅広く検討していかなくてはならない、このように思っておりますし、研究もしたいというふうに思います。

松浪委員 力強い御答弁、ありがとうございました。

 一刻も早くこれをやらないと、今、ハーレーなんかでは、かばんがあって、軽自動車のものでもいいから、軽自動車のを載せるなんというケースも報告をされておりますので、そのあたりはしっかりとやっていただきたいと思います。

 次に、前回の予算委員会で積み残しました薬価改定の問題を取り上げていきたいと思います。

 前回、薬価の問題で、これから毎年改定なんということをもしすると現場負担が非常に大きくかかるという話を申し上げました。二年ごとの薬価改定の間に、さまざまな妥結率の違いというものも指摘をさせていただいたんですが、まず、今回は特に、妥結率が九月段階で五〇%以下だと、結局、基本料を四分の一もカットするという未妥結減算制度、私はこれはある意味評価をしております。結果も出していると思いますけれども、しかしながら、現場には大変なコストをかけている。

 この民間コストについて、塩崎大臣に伺います。

塩崎国務大臣 平成二十六年度の診療報酬の改定の際に、適正な薬価調査を実施する観点から、妥結率が低い保険薬局及び二百床以上の病院の診療報酬を減算するいわゆる未妥結減算を導入いたしまして、その結果、平成二十六年九月の妥結率は大幅に向上したことは事実であるわけであります。

 一方で、卸業者、薬局、病院からは、価格の遡及値引きがなく、流通改善につながるものと評価する意見があった一方で、先生今御指摘のように、短期間で価格交渉しないといけないということ、あるいは地方厚生局への報告とか、あるいは妥結の根拠となる資料をたくさん作成しないといけないということで、そういったことでかなりの労力を費やしたという御意見があったことは御指摘のとおりでございます。

 いずれにしても、未妥結減算は導入したばかりの制度でありまして、薬価調査の適正性確保の観点から、あるいは卸業者や薬局、病院の負担を含め、関係者の意見を踏まえながら、今後、あり方をさらに検討していかなきゃいけないなというふうに、私も地元の関係者といろいろ話をしながら、そういうことも感じながら、役所としてはそう考えているところでございます。

松浪委員 この薬価の世界、先ほど、正直者がばかを見ないと言いましたけれども、オートバイ業界の場合は、大変、官製不況の面もあって、駐車場もないのに取り締まりをするとか、これでがんがんがんがん官製不況の面があった。こちらはさらに、薬価はもともと公定なものですから、しかも右肩下がりのマーケットでありまして、市場経済の我が国によくこんなシステムが成り立っているなというような、複雑な、非常にバランスの難しい業界になっていると思います。

 そして、特に十枚目に、九枚目の表、今大臣がるる説明されたものを十枚目に今回まとめてまいりました。十八年には薬価改定があって、十九年には改定がなくて、改定の年には大体妥結率が落ち込む。薬価が変わってきて妥結率が落ち込む。特に、平成二十年は、厚労省の中で、流改懇、流通改善懇談会でこれを頑張ろうといって、頑張り過ぎた業界は下がりが少なかったわけでありますけれども、この年は何と〇・一%台しか利益が出なかったというような、こんなことを続けるんだったら、公定マージンでも入れた方がいいんじゃないかというぐらいの状況になったわけであります。

 そして、これを見ていただいて、今回の平成二十六年は、本来、このジグザグが下がる予定が、下がることなく、これがはね上がっているということは、さまざまな副作用が出るというのはほぼ確実だろうと思います。これだけの表の中で、これを見れば、素人目に見ても、魔法でも使わないとこれはできない。まさに妥結率が上がっている、部分妥結的な形になっているのか、後でアローアンスを戻すのか、さまざまな現場でのことはこれからの検証が大事だろうと思いますけれども。

 これに加えて、こうした二年に一回の改定に合わせている、しかも、後ろに表をつけましたように、昭和六十年代から、我が国の場合は、薬価改定は診療報酬改定とセットで行ってきているわけでありまして、これを安易に崩してしまうと、DPCの関係とかでさまざまな影響が出てくると思います。

 特に、私は、この間、ある会に伺いますと、伊吹文明先生がおっしゃっておりました。これは実態から無理だな、そして、製薬産業の業界からすれば、長期的な視野での開発が非常にやりにくくなるというようなことをおっしゃっておりました。私もそういう声を聞きます。

 今、薬価は、新薬創出加算制度を入れて、何とかこういう画期的な新薬を入れてこようという形になっているんですけれども、この新薬創出加算等のこういう画期的な効果が、毎年改定になった場合、かなり影響があるんじゃないかなと思いますけれども、その点、いかがですか。

塩崎国務大臣 まず第一に、先生御指摘の薬価の毎年改定ということでございますけれども、政府としては、内閣としては、去年の骨太で、「薬価調査・薬価改定の在り方について、診療報酬本体への影響にも留意しつつ、その頻度を含めて検討する。」というふうに閣議決定がされているわけでございます。

 今、薬価改定につきましては、先生がお示しいただいたように、二年に一度、基本的に診療報酬改定の際に実勢価格に応じて引き下げを行ってきたわけでありますけれども、薬価の毎年改定が仮に行われた場合に、新薬創出・適応外薬解消等促進加算、この効果がどのようになるかというのを現時点で答えるのはなかなか難しいわけでありますけれども、薬価の毎年改定については、革新的な医薬品の創薬意欲に及ぼす影響も見きわめる必要があるというふうに考えておりますし、そのような指摘が、国の内外からいろいろ懸念が示されていることは事実でございます。

 さっき申し上げたように、事務負担とか、あるいは実勢価格の適正な把握への影響とか、あるいは薬価調査、改定に伴ういろいろなコストなども課題がありますから、骨太の方針二〇一四を踏まえて、これから薬価調査、改定のあり方については検討してまいりたいというふうに考えております。

松浪委員 ありがとうございます。

 この点を、せっかくこうした問題について、各大臣がそろっていただけるのはこの予算委員会ぐらいですので、甘利大臣にも伺いたいんですが、特に、日本はこの数年、ドラッグラグを急速に縮めてまいりました。これには新薬創出加算の導入とか、こういうものもあった。かつては、逆に、国内でやるよりも、まずは日本の企業でもアメリカで上市して、まず高い値段をつけて、それをもとに日本の国内に持ってくるから、日本の製薬企業ですら、日本国内で出すよりもまずアメリカで出した方が得じゃないかなんという構図もあったわけですけれども、それをようやく我々は改善してきているところであります。

 この新薬創出加算、それから、先ほどの妥結率の問題、そしてまた、ある程度、二年のマーケットが見れるからこうした投資もできるというような面もあるんですけれども、甘利大臣、この創薬産業、特に我が国の成長戦略で重要な部分だと思いますけれども、こうした分野をどのように認識されて、創薬を考えていらっしゃるのか伺います。

甘利国務大臣 成長戦略におきましては、何を成長分野として育てていくかというフォーカスを絞るときに、日本が抱える社会課題を逆手にとってそれを政策目標にしていこうと。つまり、それは何かというと、日本は少子そして高齢化社会を迎えていきます。そのソリューションは健康長寿社会だというふうに思います。もちろん、少子化を克服するということもあります。

 少子高齢社会というのは、日本が一番最初に迎えているわけでありますけれども、これはやがて他の国の課題にもなってくる。そのときにソリューションが示せるようにしたいということで、そういう中では、医薬品とか医療機器を、新たなものを日本から世界に発信していくというのは極めて重要な成長戦略の課題でありまして、そのための環境整備を行っているというところであります。

松浪委員 きょうは先駆け加算等についても指摘をしようと思いましたが、画期性加算なんというのは、あっても十二年間そんな薬は一個も出ていないということでありますので、やはりこうしたところにも筋を通していかなければいけないと思います。

 麻生大臣にも、通告はしておりませんが、毎年改定、伊吹文明先生がこの間おっしゃった話が、実態からすると無理であることを財務省もよく理解をしたので今後は皆さんなんというお話をしているんですが、毎年改定について、実態から無理だと財務省はよく理解をしたんでしょうか。

麻生国務大臣 調べたことがありませんので、よくわかりません。

松浪委員 通告をしておくべきだったなというふうに思います。

 それから、あと、最後になりますけれども、かつて、二〇〇八年の段階で、後期高齢者医療制度がありまして、後期高齢者医療制度のときに私は残念だなと思うのは、後期高齢者終末期相談支援料という、本当に、七十五歳を超えた方が、末期に現場の自分のお医者さんと家族とお話し合いをすれば、二百点で一回限りでリビングウイルをとれるという制度が、そのときに、舛添大臣の会見を今でも覚えておりますけれども、政治的な理由でこれはなくなるんだと。そして、当時の報道では、一回ついた点数を中医協の議論なしに撤回する初めてのケースだったということがあります。

 私は、これは、さらには民主党政権下において、一旦、その政治状況ですから、中医協の方もこれはやめたというのは理解をできるんですけれども、惜しいなと。本当は、年齢を四十代ぐらいまで広げて、健診の際に我々もこうした自分の終末期をどういうふうにするかと考えるような機会というのは今後つくっていかないと、やはりQOLというのが上がっていかないというふうに思います。

 そして、厚労省の調査で、たしかリビングウイルをとることについては賛成だというのが七割ぐらいあるんだけれども、実際にとっている人が三%だというような調査があります。この乖離というのは、やはり我々政治の側がもうちょっと、医療政策において、リビングウイルというものへのアクセスを皆さんにしていただく機会が明らかに欠けているんじゃないかなというふうに思いますけれども、厚生労働大臣に伺います。

塩崎国務大臣 いわゆる人生の最終段階における医療ということについては、患者、家族に十分に情報が提供された上で、これに基づいて患者が医療従事者と話し合いを行って、患者本人の意思決定を基本として行われることが重要である。

 それに関連して、今先生が、できるだけ事前に機会を捉えて、みずからの意思を示しておくべきじゃないかというお話がございました。かなり、医療の現場あるいは国民の意識も、先生のおっしゃっているような方向に私も向かっているように思うわけであります。

 そういうこともあって、厚生労働省では、今年度、人生の最終段階における医療について、患者の相談に乗る相談員、これは看護師さんとか医療ソーシャルワーカーとか、こういう方々でありますけれども、医療機関に配置をするモデル事業を実施しておるわけでございまして、本人の意思を相談員が引き出すための研修とか、それから、先生今おっしゃったように、本人の希望を書面で残す取り組み、あるいは、地域住民への相談員による普及啓発とか、こういうことをやっているわけであります。

 モデル事業の成果を踏まえながら、我々としては、国民の意識に沿うような形で人生の最終段階における医療が行われるような、言ってみれば、そのインフラであります国民の意思のあらわし方というか、そういうことについても検討を進めていかなければならないなというふうに考えております。

松浪委員 先ほどもお話に出ましたとおり、健康寿命を延ばしていかなきゃならないということもあるんですが、しかしながら、これは一応、八枚目ですか、資料をつけましたけれども、これを見ても、健康寿命も確かに延びているけれども、それ以上に寿命が延びている。やはり健康寿命と平均寿命の間をしっかり縮めるだけ、健康寿命を上げていかなきゃいけないと思いますけれども。

 こうした理由のほかに、今、自民党さんの方でも尊厳死のPTがあると伺っております。

 先ほどの終末期相談支援料なんかは、どちらかというと、回復が不可能な方々の対応、そして、この尊厳死法案は、一旦つけた人工呼吸器等を外すというような結構シビアな尊厳死なんですけれども、それ以上に、私は、今の状況、老衰する権利が失われているんじゃないかなと。

 私の祖母なんかは、非常に、ぼけたくない、寝たきりになりたくないと言いながら、やはり我々も怠慢だった。こういうリビングウイルをつくるまでには至らなくて、本人の、違う形で死なせてしまったなという思いが私はあるんです。

 やはり尊厳死とちょっと一つ離れた上で、老衰する権利というものが全うされるような、本人が本当のQOLを高めるような政策を打っていただくことをお願い申し上げまして、時間になりましたので、質問を終わります。

 ありがとうございました。

大島委員長 これにて松浪君の質疑は終了いたしました。

 次に、初鹿明博君。

初鹿委員 維新の党の初鹿明博です。

 国会に二年ぶりに戻ってまいりまして、初めて質問をさせていただきます。いろいろ聞きたいことがたくさんありますので、できるだけ閣僚の皆様、短い答弁で的確にお答えいただければと思います。

 さて、きのうの報道によりますと、生活保護世帯がまた過去最多を更新して、百六十一万八千百九十六世帯となったということであります。この報道を考えても、まだまだ格差は拡大をしているのかなというのを感じるわけです。

 まず最初に、現状の格差についての認識をお伺いしたいと思います。

 代表質問や予算委員会などでも質問が出ておりまして、そのたびに安倍総理の答弁は、格差に関する指標はさまざまあり、格差が拡大しているかどうかについては一概に申し上げられませんが、税や社会保障による再分配後の所得の格差はおおむね横ばいで推移していますという答えをしているんですね。

 お配りをした資料を見ていただければ、まあ何度も見ている資料だと思うんですけれども、ジニ係数の変化の資料を一枚目につけさせていただいています。恐らくこの中の所得再分配後の格差というところで、大体同じだなということを言っていると思うんです。ただ、当初所得は広がっているんですね。

 二枚目の相対的貧困率、違う指標になりますが、こちらも数字は上がっております。ずっと上がっているんですね。

 一般的に、人が格差が広がっているかどうかと言われたときに感じるのは、まずお給料をもらった瞬間の、この給料の差が大きいかどうかというのが、人が格差が広がっているのか縮まっているのかということを感じることだと思うんです。

 そういう意味でも、この当初所得が広がっているということが、私は格差が広がっているということであると思うんですけれども、まず、厚生労働大臣、この件についてどのようにお考えになっているのか、お聞かせいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 いわゆるジニ係数でございますけれども、所得格差に関する指標で、所得の分布に偏りがあるほど大きな数値になるというものですね。

 それで、我が国の状況でありますけれども、先ほど来出ているように、総理も指摘しているように、再分配後の所得ではなくて、今先生御指摘の当初所得で見るべきではないかという御指摘でございましたが、再分配後の所得というのは、言うまでもなく、税と社会保険料を支払って年金などの社会保障給付を受けた、現実の、言ってみれば暮らしそのもので、先生は今、給料を受け取ったときの感じということでありましたけれども、年金はまだ給料を受け取っている間は余りもらう人がいないわけで、むしろ社会全体で見ると、今のような形で、年金など社会保障給付を受けた現実の姿がやはり暮らしという実感かなという感じがいたします。

 当初所得というのは、あくまでも税や社会保障制度の効果を見るために、年金制度などが存在しなければどういう姿かということで出ているもので、再分配後のジニ係数を用いるのが普通ではないのかなというふうに思っておりまして、その結果がこれで、再分配後のジニ係数はまずまず抑えられた格好で横ばいになって、近年ほぼ変化がない。また、どの年齢層をとっても、大体おおむね同程度の数値になっているということです。

 以前にも少し議論になりましたけれども、今の分配前の当初所得によるジニ係数は若年層においてやや上昇をしているということなので、さまざまな対応を、今、若年層に対して、今回その法律も私どもの方から出しますけれども、いろいろな手を打っているということでございます。

初鹿委員 再分配後だと横ばいだということなんですけれども、まず、横ばいだからいいというものでもないんじゃないかと思うんですね。

 三枚目の貧困率の国際比較の指標を出させていただきましたが、こちらを見ていただければおわかりになりますとおり、世界の諸外国と比べるとかなり貧困率が高いというのが、貧困が多いという指標が出ていますね。特に、片親、大人が一人の世帯だと、韓国がこれは数字が出ていないんですが、最下位になっているんです。ですので、横ばいでいるのが必ずしもいいということではないというのをまず御指摘させていただきます。

 そして、再分配後のと言いますけれども、所得の再分配で分配されるものというのは何がありますか。

 年金が多分一番大きいと思います。これは、まず現役世代は受け取らない。高齢者のものですね。介護保険でサービスを受けるというのも、これも再分配です。これも、多く受けるのはほとんど高齢者です。医療もそうですけれども、医療も圧倒的に高齢者の方が受ける率が高いんですね。

 若い現役世代で受けるのは、児童手当、また一人親だったら児童扶養手当ということになっていて、若い世代で単身で所得の低い人で再分配の恩恵を受けられるのは、仕事がなくなって生活保護になる、それ以外はほとんどないんだと思うんですよ。ですので、若い人の所得格差は、若い低所得者の人たちはなかなかそれが解消できていない。

 今この国の最大の課題の一つは、少子化なんですよね。少子化を考えたときに、若いそういう所得の低い層が、これがだんだん給料が伸びていく時代だったらいいんですけれども、そうじゃないときにそのまま所得の低いままでいたら、結婚もできないし、子供も産めないわけですよ。ですから、若い世代の貧困層に対して再分配の恩恵がある程度受けられるようにしていくというのは、私は非常に重要だと思うんです。

 そう考えたときに、消費税が上げられました。一年先延ばしにするといっても、二〇一七年の四月には一〇%まで上がります。逆進性が高いということは、低所得者ほど税の負担が重くなるわけですね。だから低所得者の対策をしなければいけないということで、私も当時民主党にいましたから、横に前原さんがいますけれども、さんざん議論をさせていただいて、消費税増税法の七条の一番最初に、給付つき税額控除等の低所得者に配慮した再分配に関する総合的な施策を導入するということが書き込まれたわけですよ。

 ところが、今、自民党や与党の議論を見ていると、給付つき税額控除がどこかに行ってしまって、軽減税率に偏っていると思うんです。

 この給付つき税額控除についての検討というのは、今、政府の中でどれぐらいされているのか。財務大臣、聞いていらっしゃるか、どうでしょうか。財務大臣、ぜひお答えください。

麻生国務大臣 ちょっと今の数字を見ていたら、この数字はおもしろかったけれども、アメリカの方が随分日本より低いんだね。(初鹿委員「そうですね」と呼ぶ)考えちゃうね、これは。

大島委員長 答弁をしてください。

麻生国務大臣 はい。

 消費税の軽減税率制度についてのお話でしたが……(初鹿委員「給付つき税額控除です」と呼ぶ)給付つき税額控除。給付つき税額控除の話があったんですが、これは、いわゆる軽減税率というものと、いわゆる給付つき税額控除と、二つ考え方があるのではないかということで、これまでも与党の協議会の中でいろいろな御意見が出たのです。

 給付つき税額控除の方が、所得の把握が難しいとかいろいろあるけれども、少なくとも効率的な支援が可能になるんじゃないか。軽減税率にしたら、豊かな人だって何だってみんな一律になっちゃうからだめだという御意見と、いろいろ御意見が分かれておりますのが現状です、今のところで。

 したがいまして、今後どういうものをやっていくかというのは、今から与党の中でいろいろ議論を見守ってまいりたいとは思っておりますけれども、両方一長一短あるというのが現実かなと思っております。

初鹿委員 ありがとうございます。

 今、大臣、非常にいい答弁をしていただいたんですが、給付つき税額控除の方が確実に低所得者対策になるんですよ。軽減税率は、例えば食料品が安くなれば、全員みんなうれしいですよ、助かったなと思うんですけれども、所得の高い人もそうじゃない人も同じように安くなるんですね。だから、軽減税率というのは、実は低所得者対策とは言えないんだと思うんです。

 さらに加えて言えば、これは何を対象にするかによるんですけれども、例えば生鮮食品を対象にするとします。そうなったときに、低所得者の人は、実は比較的、加工食品を食べている人が多いんですよ。特に若い人、カップラーメンとかお弁当とか。そうなると、所得の高い人は安い税率で御飯を食べられて、所得の低い人はインスタントラーメンとかを食べて高い税率を払うということになる。

 これは若い人だけじゃないんですよ。高齢者の世帯のひとり暮らしの人も、私、浪人中、女房が働いているので、週の半分ぐらい御飯をつくっていたんですよ。よくスーパーに行っていて、総菜売り場に行くと、一番多いのが大体七十歳以上ぐらいの男の人ですね。次に、おばあちゃん。そうなると、やはりなかなか、軽減税率が低所得者対策と言えるのかというのが、私は非常に疑問です。

 あと、母子家庭の人からすれば、まず冷凍食品をたくさん使いますよね。働いているお母さんたちも、朝は忙しい、弁当は冷凍食品になる。これも加工食品ですよ。だから、生鮮食品だけに限ると、ほとんど実は、所得の低い人たちよりも、そうじゃない人たちの方がメリットになるんだということを、ぜひ皆さん、頭の中に入れていただいて、これから、軽減税率がいいのか給付つき税額控除がいいのかという、その議論をしていただきたいなというふうに思います。

 このように、制度をつくって、それによって再分配しようとしたら、お金を持っている人、所得の高い人の方がプラスになるようなものというのが幾つかあります。

 その一つは、医療費控除です。

 医療費控除も、実はこれは所得控除ですね。二百万まで控除を受けられますが、例えば百万円の医療費控除を受けようとしたら、五〇%の所得税の割合の人は幾ら戻ってきますか、五十万ですよね。では一〇%の人は幾ら戻ってきますか、十万円ですよ。では、病気になって仕事をやめて収入がなくなった人は、百万円の医療費がかかっても戻ってこないんですよね。

 これは、どちらに本来多くの分配をするのかということを考えたら、私は明らかに違っているんじゃないかと思います。確かに、高額療養費の制度とかで、所得の低い人は別の給付を受けることもできます。ただ、それを受けて、さらにかかっている医療費があるということは、それだけ重いということですから、そこも考えなきゃいけないと思います。

 特に、所得の高い人の場合は、会社の役員をやっていたり自分が経営者だったり、病気になっても給料をもらい続けられるような方なわけですね。所得のない人とか仕事をやめちゃった人は、もう収入もなくなっている。

 このように、所得の高い人が有利になるような所得控除ではなくて、医療費控除は税額控除にするべきで、しかも、給付つき税額控除になれば、所得が全くなくなった人にも恩恵が行き渡ると考えるんですけれども、厚生労働大臣、御所見を伺います。

塩崎国務大臣 給付つき税額控除につきましては、今財務大臣がお答えになられたとおり、これからの議論でさまざま、先生御指摘のようなことも含めて考えていかなきゃいけないと思っています。医療費の控除のあり方についても、それはその中で同じように考えていかなきゃいけない。

 と同時に、今、部分だけをとっていくといろいろなことが言えるときがあると思いますが、先ほどのジニ係数でも、税、社会保障の再分配効果というのは、税なら税のトータルで、税の使い方として、若い人たちは恩恵を受けていないというのは、確かに社会保障においては、かなり高齢者に向かっていくというのが当然でありますけれども、そのほかいろいろな形の、例えば職業訓練とかそういうような形のものもたくさん、教育もある、そういうこともありますから。

 やはりそこはトータルで考えていかなきゃいけないということで、今のような、部分的にとったときの効果についてどうなのかということは、先生のような御指摘も踏まえた上で、新しい制度設計をしていかなきゃいけないんじゃないかと思います。

初鹿委員 もう一つ、所得控除といえば配偶者控除があります。配偶者控除も、所得の高い人の方が税金が割り引かれる金額は大きいわけですね。

 先ほども例に挙げましたが、例えば五〇%の税率の人だったら、今だったら十九万円ですよね、一〇%だったら三・八万円しか戻らない。ここでもやはり逆転になっているし、そもそも専業主婦の世帯の方が、御主人の方の、旦那さんの方の年収は高いんだと思うんですよね。

 これを考えても、配偶者控除は、再分配ということから考えてもやめるべきだし、これがあるから日本的な家族が守られるみたいな発想を持っている方がいまだにいると思いますが、もはや今そういう時代じゃなくて、やはり共働きが当たり前の時代になっているときに、専業主婦世帯だけが優遇されるような配偶者控除というのは、今、時代おくれになっているというふうに思うんです。

 いろいろ議論がされていると思いますが、財務大臣、配偶者控除をなくすということについて御見解をお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 初鹿先生、配偶者控除については、これは働き方の選択ということになりますので、中立的な制度のあり方というので、随分前から話題になっております。

 配偶者の就労を抑制する効果があるという御指摘があり、反対が、今言われましたように、家族の助け合い、家庭というものの意味で配偶者への配慮を残すべきだという意見、これはもう全く意見が対立します。そういった意味では御指摘のとおりです。

 こうした状況下の中で、昨年の経済財政諮問会議において、私の方から、正直言って、こういうところで思いつきで言い合うようなレベルの話じゃない、したがって、これは税制調査会において幅広くきっちりしたあれをしていただこうということで、政府税制調査会で話というか検討を進めさせていただいております。

 昨年の十一月の税制調査会の論点整理において、今の段階で、家族のあり方や働き方に関する国民の価値観に深くかかわることから、今後、幅広く丁寧な国民的議論が必要とされておって、さらに検討が進められているというのが現状です。

初鹿委員 ぜひ、今の、特に若い世代の、現役世代の生活の実態に即したような改革に向かっていただきたいと思います。

 では、次に、住宅政策についてお伺いをします。

 人が暮らしていく上で、衣食住の中でもとりわけ住というのは非常に重要であります。言うまでもないと思います。

 私も二十年近く前から議員活動をしているんですけれども、ホームレスの問題にかかわっていたときに、一回家をなくしてしまうと、家がないと仕事につけないんですよね、当たり前ですけれども。面接に行って、住所のない人を雇う企業はなかなかないわけで、ですから、家があるというのは非常に重要なんですよ。

 ところが、我が国の住宅政策というのを見ると、公営住宅中心というか、公営住宅制度があるだけでほかにほとんどなく、非常に乏しいなというのを感じています。

 今、生活困窮者自立支援法ができて、仕事と一緒に家がなくなった人に対しては住宅確保給付金というのができましたけれども、これは有期ですよね。ずっと所得が低くて家賃が大変という人にはなかなかその恩恵がなくて、公営住宅に何度申し込んでも当たらないみたいな状態がありますよね。

 公営住宅だと、当たれば、家賃が安くて、所得がどんどん上がっていっても出ていかないで住み続けられて、私は東京都ですけれども、東京の場合は、一千万円の世帯所得を超えると強制的に、裁判にかけられたりするんですが、七、八百万だと、ずっと住み続けられるわけですよ。その一方で、年収が二百万ぐらいの人は、高い家賃を払って一人で暮らすということになっているわけですね。

 では、これをどうするのかということなんだと思うんですよ。

 例えば、東京でアルバイトをして十万円稼ぐ若者がいると思います。家賃がなければ暮らしていけるんですが、五万円の家賃を払って年金の保険料とか払ったら、きついですよね、というかほとんど暮らせませんよね、だから生活保護になる。生活保護になると全部見てくれちゃうから、働いて、働いた分を減らされるぐらいだったら働かない方がいいという意識に向くのは、これは人としてやむを得ないのかなと。いいと言っているわけじゃないですよ。いいと言っているわけじゃないですからね。

 だから、家賃を補助するような制度があれば、生活保護の手前でとめられるんじゃないかというのを非常に強く思うんです。

 例えば、基礎年金しかもらっていない方もそうですよね。六万数千円で、家賃が必要でなければそれで暮らしていけるかもしれないけれども、その六万数千円から五万円の家賃を払ったら、もう生きていけませんよね、だから生活保護になるという面もあるんだと思うんです。

 ですので、私からの提案ですけれども、今、公営住宅も大体四十年ぐらいたってきて、建てかえの時期に入っています。これはもう建てかえるのをやめて、新規の建設もやめて、この際、家賃を補助するような制度に切りかえていったらどうかなと思うんです。

 生活保護の住宅扶助だけを出すような家賃補助制度みたいなものなんですけれども、これは私だけが言っているわけではなくて、去年の十二月に森記念財団というところが「二〇三〇年の東京 part3 成熟した世界都市東京の街づくり」という報告書を出していて、ここの中で、都営住宅の建てかえをせずに家賃補助に切りかえた方が、セーフティーネットを拡大しながら社会保障費の低減が可能と言っておりまして、六十年間で約一・三兆円、年間で二百十六億円の節約になるという試算をしております。

 この中で言われているのは、都営住宅の敷地を活用して、また別のものを建てるとか、あと、今、日本で問題になっている空き家がありますよね。空き家を活用して、例えば三LDKの家があったら、それをシェアハウス化して、低所得の住宅困窮をしている人たちに貸し出すとか、そういう活用をして、民間の賃貸住宅も活性化させながら、低所得者に対する支援をすることができるということなんです。

 このような形で、公営住宅制度から家賃補助に切りかえていくことについて、国交大臣と厚生労働大臣の御所見を伺います。

太田国務大臣 住宅の状況は、歴史的に見ましても、相当今、激変をしてきていると思います。人口減少社会になってきている。空き家が非常に多くて、八百二十万戸というようなことにもなってくる。

 公営住宅というのは、昔は循環型であったと思います。所得が低いときには、東京でいえば都営住宅を初めとするそうしたところにいて、少し給料が上がってくるということになると、郊外に一軒持つということもあり、またURというようなこともありと、そうした循環であったんですが、なかなか高齢者が多くなって、そこからもう動けない、動くということ自体が生存ということに関係するような時代を迎えた。

 今御指摘のお話は、非常に具体的な提案であるわけですが、現在の公営住宅のあり方ということについても、東京都等も始めており、各区が空き家を借り上げたり買い取ったりというようなことを、東京でも、都はやっていないわけですが、区で始めてきているという状況もございます。

 また、現在ある都営住宅等々についても、それをなかなか出られない、また出ない、こういう状況がありますから、定期借家ということにして、十年なら十年ということで回転をするということをやるというようなこともございます。

 なかなか今までは、新婚さんいらっしゃいというようなことで家賃補助というのはあったんですが、全体的な構造の問題として取り組んだことは余りないと思います。御指摘のことも含めて、今後の住宅政策、特に、若者が借家に何とか入れるという形については相当研究をしなくてはならないと認識をしているところでございます。

塩崎国務大臣 先ほどのジニ係数のお話と相通ずるところもあるわけでありますけれども、今回、先生の御指摘もございましたけれども、生活困窮者自立支援法がこの四月から施行になります。この自立支援法も、基本的な王道は、やはり自立を支援するということでありますから、みずからが稼ぐ、この力をつけるということが大事で、もちろん、一人親家庭の子供さんたちの貧困をどうするかとか、そういうような問題も含めて、その力をつけていくということがやはり一番大事であります。

 そういう意味では、若い人たちを大変御心配されているのはそのとおりで、正しいと思いますけれども、まずはやはり民間の給料が上がっていくということが大事なので、ですから、これは政労使でも賃金を上げていくということで合意をして、これを政府としても最大限バックアップをしていくということで、なおかつ、構造的にも経済が強くなるようにということの中において、若い人たちが自立をしながら稼いでいくということなので、今のように、確かに、家賃が高いから生活保護になってしまうというようなケースはないことはないと思いますけれども、むしろ、逆の方向に行くことをどうするかということ。

 そしてまた、現金給付だけではなくて現物給付でもそのサポートは随分やっているわけで、いろいろ御批判はありますけれども、キャリアアップのための施策も今回我々が出そうとしている労働関係法案でもたくさん入れ込んでいるわけで、それも一環だと思います。

 住まいの確保についての厚生労働省においての各種支援がございまして、生活保護における住宅扶助とか、あるいは無料低額宿泊所とか、特別養護老人ホームとか障害者の施設とかいろいろありますが、今お話にあった自立支援法で、施行されますと、住居のない生活困窮者に対して緊急的に衣食住等の支援を行う一時生活支援事業や、それから、離職者に対して、就職活動を支えるため、家賃相当分の給付を行う住居確保給付金というのもあるわけで、これが制度化されるということで、法律があるわけでございます。

 こうした中で、公営住宅の代替措置として、先生御提案の低所得者に対する家賃補助、これを行うことについては、今国交大臣からもお話がございましたけれども、執行体制の確保とかあるいは財源の確保、これをどうするか、そしてまた、今申し上げた住宅確保給付金の支給のみならず、就労支援とか家計相談などを、この自立支援法、生活困窮者の自立の際にいろいろメニューとしてやるわけでありますけれども、今後、この生活困窮者の自立支援法を通じて、これらの支援を、言ってみれば包括的にやはりやっていかないといけないんだろうと思いますので、この四月からまたしっかり頑張っていかなきゃいかぬと思っています。

初鹿委員 大臣、先ほど答弁の中で言いましたけれども、若い人たちは、単身だと公営住宅に入れないですから、そういうことも踏まえて、検討をぜひ真剣にやっていただきたいと思います。

 先ほど、住まいのあり方もいろいろ変わってきたというお話もありましたが、今、ネットで一緒に住む相手を探してシェアハウスに住むなんということをする人が出てくるような時代になっていて、本当に私、今までとは違う発想に立たなきゃならないんだというふうに思っているんです。

 ただ、なかなか制度が追いついていない面があって、皆さんのところに新聞の記事を入れさせていただいておりますが、これは国立で実際にあったことなんですが、シェアハウスに入居をしていた母子家庭の方が、同じシェアハウスの中に男性がいたら、同じ住所のところにいるということで児童扶養手当が打ち切りになったということであります。報道を見ましたら、きのうの国立市の市議会の中で質問がされて、支給開始を始めるということになったそうなんです。

 厚生労働大臣、婚姻関係にないし、内縁関係でも全然ないのに、同じところに住んでいるというだけで児童扶養手当が打ち切られるというこの対応が、児童扶養手当という制度の精神にのっとったものなのかそうでないのかというのを、まずお聞かせください。

塩崎国務大臣 児童扶養手当は、もう先生御存じのように、離婚によりまして一人親家庭になってしまった、そういうときに、父または母と生計を同じくしていない児童を対象に手当を支給する制度となっていまして、その際に、事実婚については、当事者間に社会通念上夫婦としての共同生活と認められる事実関係が存在するかどうかを確認するということが必要なわけです。

 御指摘の国立の事例は、シェアハウスに異性が同居しているということを理由に事実婚による受給資格喪失の取り扱いを行ったというふうに聞いておりますので、受給資格者の生活実態をきちんと確認することが、当然でありますけれども、重要であるわけであります。

 私どもの厚生労働関係の部局長会議でも、二月の二十四日に、シェアハウスなどさまざまな居住スタイルが今ありますから、そういう中で、受給資格者がシェアハウスなどに入居している場合には、事実関係を十分確認して、そして、社会通念上夫婦としての共同生活と認められる事実関係の有無についてきちっと判断をしなければいけないというふうに指示をしたところでございまして、また、都道府県とか指定都市に対して、類似の事例の有無等について確認を行っているわけでございます。

 それから、厚生労働省としても、各自治体において適切な判断がなされるように、生活実態の確認方法とか具体的な事例に即した考え方について、情報提供をこれまで以上にやっていかなきゃいけないなというふうに思います。

初鹿委員 これは市町村にきちんと指示を出した、そういう認識でよろしいんですか。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、厚生労働関係の部局長に出したということは、そういう意味でございます。

初鹿委員 ぜひこれは徹底されるように、きちんと厚生労働省も後追いで追っかけていっていただきたいと思います。

 ちょっと時間がなくなってきましたので、せっかく総務大臣と有村大臣が来ているので、そちらの話題に先に入らせていただきます。

 私は、浪人して二年の間に、何か自分で事業をやろうかということで、障害者の福祉事業を始めまして、今、居宅サービスと相談支援と放課後等デイサービスという事業をやっていて、この一年ちょっと、本当に毎日、障害を持っている人や家族とずっと一緒につき合ってきたんですけれども、その中で、この一月、選挙が終わった後にお会いした家族や当事者から、選挙に行ったよというお話をたくさんいただきました。

 特に、成年後見を受けている方が選挙権がなかったという問題を、私がいない間に、本当に皆さん方の努力でこれを認めるようになっていただいたことによって、成年後見を受けているわけではない障害を持っている知的障害の方も、ああ、行けるんだと思ってくれたようで、たくさん行ってくれたんですね。

 そこでお話を聞いていたら、一人、行ったんだけれども、意思確認ができないと言われて投票できなかったという人がいました。

 いろいろ話を聞いていったんですけれども、まず、私のチラシを手に握り締めて投票所に行かれた方もいるんですが、それだと誰かが握らせたんじゃないかということで、それでその人に入れる意思があるかというのは、それはだめだよというのは何となくわかるんですね。

 ところが、私の選挙区での対応は、投票箱の前に名前が書いてありますね、その名前を、どれかを指さすということで意思確認をするということだったんですよ。中には漢字がわからない場合もあって、ただ、私の名前を言えたら、それは職員の方が代理で書いてくれたりしているんですが、漢字がわからないけれども顔を覚えていて、写真だったら指させるのにという場合もあるんですね。

 投票所に行けば、横にポスターの掲示板があるわけだから、そこに、職員が一回外に出ていって、誰に入れますか、この人と言ったのを戻ってきて書くとか、それぐらいの配慮はあってもいいんじゃないかなと思うんですよ。それとか、あと、選挙公報という公のものがあるわけだから、選挙公報を見せて、その中でどの人といって指を指して、その人の名前を代理で書いてあげるというやり方だってあると思うんですが、その辺がどうも、総務省さんに聞いたら、市町村によって対応がばらばらだったというわけですよ。

 障害を持っている方、特に成年後見を受けているような方は、やはり漢字をきちんと認識して覚えるということがなかなか難しい方もいると思うんです。また、自閉症の方なんかは、写真とかそういうもので認識をするのがすごく得意な方もいて、写真だったらわかる、政党のマークだったらわかる、そういう方もたくさんいるんですよ。ですので、投票に障害者が行かれたときに、きちんとした意思確認のできるようにぜひしてもらいたいなと思うんです。

 有村大臣はいろいろな担当をやっていますが、共生社会の担当で、障害者差別解消法の所管の大臣でもあるということですので、法律自体は来年からの施行ということですけれども、もう四月に選挙があるので、その選挙に向けて、きちんとした、そういう意思確認をする合理的な配慮をできるように徹底していただきたい。有村大臣のその決意と、あと総務大臣から、市町村に対してきちんと徹底をする、こういう事例があるよというのをお示しすることをお願いしたいんですけれども、御所見を伺います。

有村国務大臣 時間の制約上、短く申し上げますが、障害者基本法は、障害者が円滑に投票できるようにするため、国、地方公共団体が施設整備そのほかの必要な施策を講じなければならないと明記をしております。

 現在、内閣府においては、選挙制度を所管される総務省と連携をして、代理投票の制度の利用に至らない場合も含めて、委員がおっしゃったように、合理的配慮が切れ目なく適切に行われるよう、障害者差別解消法の理念、また、その実施の周知に努めていきたいと考えております。

 具体的には、各省庁の協力も得ながら、選挙分野も含めた、社会における合理的配慮の具体例、現場の例を今収集しておりまして、国民の皆さんに、特にここは気をつけていただきたいということの情報を具体的に提供することによって、おっしゃっていただいた合理的配慮の取り組みを広く社会に広げていきたいと思います。御指摘は貴重な御意見として承りました。

高市国務大臣 御指摘の点でございますけれども、ことし二月六日に、既に各都道府県の選挙管理委員長宛てに要請文を出しております。内容も御承知かもしれませんけれども、投票というのはあくまでも選挙人本人の自由意思に基づいて行われるべきものでございますから、法律に明記してあるとおり、投票所の事務に従事する者のうちから、定められた補助員二名が選挙人本人の意思を確実に確認した上で、そのうちの一人が選挙人が指示する候補者の氏名をかわりに書く、代筆をする。その間、残りの一人の方がずっとその流れを見ておられるように対応していただくこと、これはもう法律に基づいた手順です。

 これとあわせまして、やはり投票を補助する方は、投票手続に入る前に、つまり、記載台に進む前、投票所の隅などで、必要に応じて、選挙人の御家族や付添人の方との間で、候補者の氏名の確認に必要な選挙人本人の意思の確認方法について事前打ち合わせをしていただきたい。

 それからまた、代理投票が認められる選挙人の態様はさまざまでございます。例えば、選挙公報を見せて指を指していただくとか、名前を書いた紙を見せて、この人ですかと言って、うなずいていただくとか。あと、声の出し方によって、こういう声の出し方をされたらこの人を指していますよ、こういったことも御家族等と打ち合わせをしていただいて、しっかりきめ細かく、手続に入る前に、投票記載台に進む前に、しっかり、必要に応じて打ち合わせをしていただく、こういったことも含めて、通知をいたしております。

 全国一律というのは、やはりこれは選挙人の態様によってさまざまでございますので、できるだけ、しっかりうちも事例を集めて、改善は重ねてまいりたいと思います。

大島委員長 これにて初鹿君の質疑は終了いたしました。

 次に、池内さおり君。

池内委員 日本共産党の池内さおりです。

 私は愛媛県松山の出身です。松山は道後温泉などでも知られる大変いいところです。しかし、私は子供のころから納得のいかない経験もして育ちました。男尊女卑といいますか、女は男に従うものだという言葉が身近に語られるのを聞いて育ちました。

 男らしさ、女らしさという規範が個人の上に置かれるとき、それは多様な生き方を抑圧するのだと感じるようになりました。私は、こうした決めつけに個性が押し潰されることなく、誰もが自由に生きられる社会であるべきだと強く感じるようになりました。

 そうした思いを強める中で、私は、LGBT、Lはレズビアン、Gはゲイ、Bはバイセクシュアル、Tはトランスジェンダーをあらわし、いわゆる性的マイノリティーという意味ですが、こうした人たちの存在を知りました。

 私が、男は男らしく、女は女らしくという決めつけによって個性の発揮が妨げられていると感じたように、LGBTの人たちは、異性を愛するのは当たり前、体の性に沿った性自認、ジェンダーアイデンティティーを持つのが当たり前という決めつけによって個性の発揮が妨げられているのではないか、ありのままに生きることが妨げられているのではないか。こうした女性やLGBTのおもしとなっている、それは男性にとってもおもしだと思いますが、この現状を一歩でも変えていきたいと、選挙ではこの思いを強く訴えてまいりました。この中で、LGBTの当事者の悩み、思い、期待の声を聞いてきました。

 きょうは、私の初めての質問です。性的マイノリティーの人権について質問させていただきたいと思います。

 まず、国際的な動向、国連の動きについて外務大臣にお尋ねします。

 二〇〇八年に初めて、国連全加盟国で構成される総会において、LGBTと総称される、いわゆる性的マイノリティーの人々に対する人権に関する声明が提出されました。さらに二〇一一年には、やはり初めて、国連人権理事会においても性的マイノリティーの人々に関する決議が採択されました。さらに続いて、二〇一四年にも決議が採択されています。どのような内容の声明、決議だったのでしょうか、教えてください。

岸田国務大臣 LGBTの方々の人権に関する国連の動きですが、まず、二〇〇八年の第六十三回国連総会におきまして、我が国を含む六十六カ国は、性的指向等を理由とした人権侵害を非難する内容のステートメントを発出いたしました。

 そして、二〇一一年の第十七回国連人権理事会においては、国連人権高等弁務官に対し、性的指向等に基づく差別的法令等について調査の上、報告書として提出することを求める内容の決議が我が国を含む賛成多数で採択されております。

 そして、二〇一四年、第二十七回人権理事会においては、二〇一一年の決議で述べられた報告書を今後もアップデートするよう求める内容の決議が我が国を含む賛成多数で採決された。

 こうした動きを承知しております。

池内委員 今大臣がおっしゃった二〇〇八年の声明には、性的指向や性自認にかかわらず、人権が全ての人に平等に適用されるとされています。性的指向と性的自認という用語の英文の原文は、セクシュアルオリエンテーション、ジェンダーアイデンティティーという用語です。

 二〇一一年の決議は、性的指向、性的自認を理由とする暴力行為、差別、こうした人権侵害の状況を調査して、また要請しています。この決議に基づく調査、国連人権理事会でのパネル討議という動きの中で、国連人権高等弁務官事務所が、ボーン・フリー・アンド・イコールという冊子、私も持ってきましたが、この冊子を公表しています。

 性的指向、性的自認を理由とする暴力行為や差別に対しての取り組みといいますが、具体的にどのような人たちに対する取り組みだと国連人権高等弁務官事務所のこのレポートは言っていますか、教えてください。

    〔委員長退席、萩生田委員長代理着席〕

岸田国務大臣 御指摘の報告書ですが、二〇一一年の国連人権理事会決議を受けて、性的指向等に基づく差別的法令等について調査したものであり、いわゆるLGBT、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、そしてトランスジェンダーの人々がその対象として含まれていると承知しています。

池内委員 いわゆるLGBTという性的指向、性自認を持つ性的マイノリティーの人たちの人権保護の取り組みだということです。

 ナビ・ピレイ国連高等弁務官は、この冊子の中でこう言っています。他の全ての人々が享受する権利と同じ権利をレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、LGBTの人々に広げる今回の事例は、ラジカルなものでもなければ複雑なものでもありません、それは国際人権法が支持する二つの基本的原理、平等、非差別に基づいています、世界人権宣言の第一条は明白です、全ての人間は生まれながらにして自由であり、かつ尊厳と権利について平等である。

 私は、今回の質問を準備する勉強の中で、国連決議に至るまでの長期にわたる各国関係者の努力を知りました。これまで幾度となく性的マイノリティーの人権について前進させようとする試みが国際社会では取り組まれました。しかし、その都度、宗教や文化を背景とした対立によって決議にまでは至らなかった。そうした中で、やっと人権擁護の流れが国連決議という形に結実しました。

 長年にわたる自由獲得の努力に私は強い感銘を受けましたが、今回の国連の声明、決議について大臣はどのような認識をお持ちですか。

岸田国務大臣 まず、全ての人々はいかなる事由による差別も受けることなく人権を享有することができるのであり、性的指向等に基づいた人権侵害、これは非難すべきものであると考えます。

 我が国としましても、引き続き、人権分野におけるさまざまな国際的な課題が存在します、こうした課題に積極的に取り組んでいかなければならないと考えます。

池内委員 ぜひとも、こうした決議がなされたことを多方面にお知らせいただき、関係者と一体となってさらにこの取り組みを進めていただきたいと思います。

 次に、国内の取り組みを法務大臣にお伺いいたします。

 国際社会は、性的指向や性自認にかかわらず人権が全ての人に平等に適用されるとして、LGBTと総称されるいわゆる性的マイノリティーの人権擁護の取り組みを進めようとしています。

 私は、きょう、ここに法務省の「人権の擁護」という冊子を持ってきました。この中には、性的指向、国連決議との関係ではセクシュアルオリエンテーションということに対応すると思いますが、この性的指向と、性同一性障害、これはジェンダーアイデンティティーに対応するものと思います。

 日本政府は性的マイノリティーの人権についてどのように認識し、取り組んでおられますか。

上川国務大臣 御質問をいただきました性的マイノリティーに関する人権問題についての国内での取り組みということでございまして、今こちらの方の冊子も御紹介いただきました。

 性的指向に関しましては、男性が男性を、また女性が女性を好きになるということで、これにつきましては根強い偏見あるいは差別があるということでございます。また、性同一性障害に関しましては、体の性とそして心の性との間の食い違いに悩みながら、周囲の心ない好奇の目にさらされるというようなことで苦しんでいらっしゃる方もたくさんいらっしゃるというふうに承知をしているところでございます。

 そこで、性的指向あるいは性同一性障害を理由とする偏見あるいは差別をなくし、国民の皆様の御理解を深めていく必要があるというふうに認識しているところでございます。

 法務省の人権擁護機関におきましては、この啓発活動の強調事項といたしまして、平成十四年度から性的指向を理由とする差別をなくそう、また、平成十六年度からは性同一性障害を理由とする差別をなくそうということで、この強調事項に掲げまして、各種の啓発活動に取り組んでいるところでございます。

 また、全国の法務局また地方法務局におきましては、面接あるいは電話によりまして人権相談に応じているところでございますが、こうした人権相談の中で、性的指向や性同一性障害の問題を抱えていらっしゃる皆さんの中で人権侵害の疑いがある事案ということが認知されました暁には、人権侵犯事件ということで調査をしっかりと行って、その結果を踏まえて事案に応じた適切な措置を講じる、こうした取り組みをしているところでございます。

池内委員 今大臣もおっしゃっていただきました。この冊子の中では、性的指向は、男性が男性を、女性が女性を好きになることに対しては根強い偏見や差別があり、苦しんでいる人々がいる、性同一性障害では、心と体の性の食い違いに悩みながら、周囲の心ない好奇の目にさらされたりして苦しんでいる人々がいる、そして、こうした双方の問題に対して理解を広げていくことが大事だということが述べられました。私はこのとおりだと思うんです。

 この質問に先立って、LGBT当事者の皆さんと懇談をしました。あるゲイの方が、飲み会や職場で、彼女いるの、結婚しないのと聞かれることにとても傷ついていると話してくれました。彼女いるのという問いかけ自体が男女の異性愛を前提とした問答であって、現実に存在する多様な性的指向を全く想定していない無理解をあらわしています。

 存在なき者として扱われている日常の中で、当事者は息を潜め、自分を押し殺し、沈黙を強いられています。自分のセクシュアリティーを表明した場合、ホモ、おかまなどの侮蔑表現にさらされるかもしれない。まさに偏見や差別をなくし、正しい理解を深めることが必要だと私は思いました。そのためには、性的マイノリティーについての正確な知識がどうしても必要だと思うんです。

 この点で私が大変学ばされたのは、この研究です。「学校教育におけるセクシュアリティ理解と援助スキル開発に関する研究」、先日、西村議員も当委員会で取り上げていた調査と同じものだと思いますが、私はきょう持ってきました。

 厚生労働省にお聞きいたします。

 この研究では、性的マイノリティーの児童生徒に対する対応をする際に先生方が最低限備えておくべき基礎的な知識を問う設問がされています。その一つは、同性愛は精神的な病気の一つだと思うというものです。この設問に対する先生方の回答はどのような結果が出ていますか。

新村政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の研究班の報告書によりますと、平成二十三年度から二十四年度に教員を対象としてセクシュアルマイノリティーに対する意識や経験の実態調査を行い、五千九百七十九人から回答を得たとのことでございます。

 その中で、同性愛は精神的な病気の一つだと思うかという質問項目に対しまして、そう思うと回答した者が五・七%、わからないと回答した者が二五・〇%、そう思わないと回答した者は六六・二%となっております。

池内委員 全体の五・七%は同性愛は精神的な病気の一つだと思うと捉え、二五%はわからないという結果だったということです。率直に言って、同性愛は精神的な病気の一つだと思うという認識は性的マイノリティーへの偏見を助長するものだと私は思います。

 同じ研究グループが行った別の研究の中で、医学における同性愛の位置づけについて言及しているところを紹介したいと思います。厚生労働省にお願いいたします。

新村政府参考人 平成十九年度エイズ対策研究推進事業の成果報告書、「ゲイ・バイセクシュアル男性の健康レポート2」という中に記載されておりますが、かつて医学界では同性愛は精神疾患であるとされておりましたが、米国では一九八七年には精神疾患とされなくなったということ、また、世界保健機関、WHOでは一九九二年に疾病分類の見直しを行い、同性愛は治療の対象とはならないとの趣旨の記載がなされております。

池内委員 塩崎大臣に確認したいと思います。

 今紹介されたように、九二年にWHOは国際疾病分類改訂版、ICD10の中で、同性愛はいかなる意味においても治療の対象とはならないと宣言し、厚生省はそのICD10を九四年に公式基準として採用しているという理解でよろしいでしょうか。

塩崎国務大臣 WHOのつくっております国際的な診断ガイドライン、いわゆる国際疾病分類、ICD10におきまして、同性愛は精神疾患ではないとされておりまして、厚生労働省としてもそのように認識をしております。

池内委員 九〇年代までは我が国の書物の多くに同性愛は異常、性的倒錯であると記述がなされてきたことを研究グループが指摘しています。しかし、それがそうではないと国際社会と日本が公式に認識したのは、わずか二十年前のことです。同性愛者のことを病気の一種であると思っている、あるいは病気ではないとしっかりと否定できない現実の中で、今でも特殊な少数派という見解、偏見は根強いと私は思います。

 大多数の同性愛者は、異性愛者と同じ生活圏に暮らしながら、身を守るために、見えない存在となって生きている。カミングアウトしようものなら、異常、変態、性的倒錯等の言葉にさらされるかもしれない。やはり、無理解と偏見を乗り越えていく必要があると私は思います。

 先ほどの研究に戻ります。

 基礎的な知識を問う設問として、さらに、性同一性障害と同性愛は同じようなものだと思うという設問、さらに、性的指向を選べるのか、つまり、同性愛になるか異性愛になるか本人の希望によって選択できるという設問があります。これに対してはどのような結果が出ていますか。

新村政府参考人 御指摘の研究班報告書によりますと、性同一性障害と同性愛は同じようなものだと思うかという質問項目に対しましては、そう思うと回答した者は五・〇%、わからないと回答した者は二九・四%、そう思わないと回答した者は六四・一%となっております。

 また、同性愛者になるか異性愛者になるか本人の希望によって選択できると思うかという質問項目に対しましては、そう思うと回答した者は三八・六%、わからないと回答した者は三二・八%、そう思わないと回答した者は二五・四%となっております。

池内委員 性同一性障害と同性愛は同じようなものだと思うという設問に対して、そう思うが五・〇%、わからない二九・四%という結果です。

 先ほどの法務省の冊子でも人権擁護の課題として二つに分けて捉えているように、性的指向そして性同一性障害というのは区別され、それぞれに固有の課題があります。この認識もまだまだ浸透しているとは言えない状況だと思います。

 続いて、性的指向を選べるのか、つまり、同性愛になるか異性愛になるか本人の希望によって選択できると思う、この設問に対しても、全体の三八・六%がそう思うと答えています。

 以上のような結果を受けて、調査に当たった研究者は、同性愛そして性同一性障害についての認識について、どのように評価していますか。

新村政府参考人 当該研究報告書には、教員に対する調査結果の評価といたしまして、セクシュアルマイノリティーの児童生徒に対応する際に最低限備えておくべき最も基礎的な知識さえ圧倒的に欠如している現状であったと記載されております。

    〔萩生田委員長代理退席、委員長着席〕

池内委員 最も基礎的な知識さえ圧倒的に欠如している。私は、教職員に対するこのアンケートをきょう取り上げましたが、これは教職員だけの傾向なのではなくて、日本社会全体の傾向をあらわしていると思います。

 異性愛者があしたから同性を好きになれと言われてもみずからの性的指向を変えられないように、同性愛者が同性に引かれるという性的指向は意のままにはなりません。私がお話をお聞きした同性愛の当事者も、気がついたら同性を好きになっていたとお話ししていました。

 人を好きになるという気持ちに、異性愛、同性愛で変わりがない、この変えられないものに対する無理解、偏見が強いから苦しんでいます。LGBTと総称される人々は人口の五%程度存在すると言われ、いつの時代もどこの国にも存在したし、今も私たちの身近に生きています。

 上川大臣、まさに偏見、無理解をなくしていくことが急務だと思いますが、上川大臣の認識をお聞かせください。

上川国務大臣 先ほど申し上げたところでございますけれども、法務省の中でも、人権擁護の中の大変重要なテーマとして、この十年来、取り組んできたところでございます。各種の啓発活動につきましても、これまでもそうですし、これからもしっかりと取り組んでいくということでございます。

池内委員 政府としても、より一層の力を込めて、努力に努めていただきたいと思います。

 同時に、性的指向、性的自認、これを普遍的人権として日本社会に根づかせていく担い手は私たち一人一人だと思います。

 私自身も、性的マイノリティーについて理解できていない、気づいていない人間の一人でした。しかし、男女という枠組みが前提の社会にあって、性的マイノリティーの存在を知り、命の多様性を私自身が学ぶ中で、相手を思いやる気持ちを持てたし、何より、自分自身とより深く向き合うきっかけになりました。

 性の問題は命の問題であり、人間が生きることと表裏一体の大事な問題だと思います。一人一人が偏見、無理解を乗り越えていくことが求められていると私は思います。

 次に、教育の問題に進みたいと思います。

 私は、先日、ゲイの方のお話を聞きました。私の心に残っている話を紹介します。

 子供のころに、男のくせに女っぽいといじめられ、自分の性的指向をいけないものだと押し殺し、自分を肯定的に受けとめることができたのは、優に三十歳を超えてからだったとのことです。こうした状況に追い込まれることの苦しさは、私にも想像できます。

 LGBT当事者が子供時代に孤立感や自己否定、いじめなどに苦しんでいる実態について私が大変学ばされたのは、LGBTの学校生活に関する実態調査結果報告書、「いのちリスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」が二〇一四年五月に公表した調査です。この調査によれば、調査に応じた当事者の実に七割がいじめの被害経験を持ち、そのうちの三割が自殺を考えたという結果です。

 さらに私が心を痛めたのは、LGBT当事者が自分のセクシュアリティーについてカミングアウトできない、ほかの人に打ち明けることができないという実態です。調査によれば、男子の五割、女子三割は、小学校から高校までの間に、みずからのセクシュアリティーについて誰にも打ち明けられなかった。その理由は、理解されるか不安だった、これが六割です。男子の場合には、話したらいじめや差別を受けそうだった、これが六割に上っています。

 LGBTについての正確な知識が普及しているとは言えないこの環境下で、どのように自分のことが伝わるのかわからない孤立感がひしひしと伝わってきます。思春期の真っただ中で、恋愛や性、ファッションについて、自分のありのままを表現できずに、あるいは隠して日々を送ることはどれほどのストレスでしょうか。

 先ほど、厚生労働省とのやりとりで、学校の先生方の性的マイノリティー、同性愛、性同一性障害についての認識と、その調査結果について明らかにしてきました。研究グループの評価は、残念ながら、最低限備えておくべき基本的な知識が圧倒的に欠落しているという辛辣なものだった。

 下村大臣にお伺いいたします。

 文科省みずから、性的マイノリティー全般について正確な知識を伝えるパンフレットをつくるなど、教員が正確な知識で、それに基づいて子供たちに向き合えるように状況を変えていくことが急務ではないでしょうか。

下村国務大臣 性同一性障害やその他の性に関することも含め、教職員が児童生徒の悩みや不安を適切に受けとめて対応することは極めて重要なことであります。

 このため、文科省では、性同一性障害につきまして、児童生徒の心情に十分配慮した対応をとるよう、これは平成二十二年四月以降でありますが、学校、教育委員会に指導を行ってまいりました。

 また、自殺総合対策大綱、これは平成二十四年の八月に閣議決定されましたが、ここにおきましても、早期対応の中心的役割を果たす教職員に対し、いわゆる性的少数者に関する理解を促進することとされております。

 このような視点を踏まえまして、生徒指導、それから人権教育等の場を通じまして、性同一性障害を有する児童生徒等への教職員の適切な理解を促し始めたところでもございます。

 文科省としては、現在、専門家の意見を聞きながら、各地の事例等を整理し、性同一性障害等の児童生徒への支援に係る参考資料を作成しております。今後、この資料を活用するなどしまして、性同一性障害の児童生徒への支援方策や、児童生徒のさまざまな悩み、不安を受けとめる必要性やあるいは対策等について、教職員の理解を促進してまいります。

池内委員 先ほど紹介した厚生労働省の調査でも、教職員の知識や理解が不足している背景について示唆しています。

 調査項目の、同性愛や性同一性障害について出身養成機関で学んだことがあるかとの質問に対して、学んだことがあると答えたのはごくわずかです。研修で学んだことがあるかという問いに対しても、二割台の方しか学んだことがないという状態です。一方で、性の多様性に関する研修があれば参加したいという、この項目に、はいと答えている先生方は六割を超えていらっしゃいます。

 こうした教員の現場の意欲に応えて、取り組みがさらに求められていると思いますが、大臣、どのようにお考えになりますか。

小松政府参考人 ただいまお話しの教員養成その他につきまして、個別の事項につきましては、それぞれの大学で教育課程等を定めてまいりますので、その詳細に文部科学省で一律のことは申し上げることはできませんけれども、今現在、こうした教員養成の中で、具体的にカリキュラム等にこうした正しい理解について入れるものなどが出てきております。具体的にそういった教育課程などが見られるようになっているところでございます。

 それからまた、就職をいたしましてから後の職員向けの研修につきましても、先生御承知のとおり、各都道府県等でもそういった例が出てきております。

 文部科学省としては、学校現場における、先ほど大臣から御説明を申し上げました正しい理解の促進とあわせまして、そういったさまざまな場面でこうした理解が進むということが望ましいと考えておりますので、引き続き、そうしたものが進むような、先ほど先生おっしゃられたパンフレット等を通じまして理解を促進してまいりたいというふうに考えております。

池内委員 こうした教育の現場を変えていくということは、先生方を含めた周りの大人の理解と取り組みが不可欠だと思います。その先生方の取り組みの土台となる性的マイノリティーに対する正確な知識、これが圧倒的に欠如していると指摘されているような事態を変えていくということは本当に急務だというふうに思います。抜本的な取り組みを求めます。

 そして、この問題は日本社会全体の問題だと私は思います。最初にも言いましたが、男らしく、女らしくに縛られず、誰もがありのままに生きられる、誰もが自分自身のセクシュアリティーに誇りを持ち、違いを認めながら生きられる社会を目指したいと思います。性的マイノリティーの人権が保障される社会は、私にとっても、そして、これまでこうしたくびきに縛られてきた人たちにとっても生きやすい社会のはずです。

 LGBTを初めとし、あらゆる差別を許さない。私にとっては、私が私であり続けるために、この問題に取り組んでいきたいと思います。

 以上のことを述べまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

大島委員長 これにて池内君の質疑は終了いたしました。

 次に、大平喜信君。

大平委員 日本共産党の大平喜信です。

 比例中国ブロックの選出で、広島の出身です。平和を願う広島の心を国会へ、このスローガンで活動してまいります。

 ことしは被爆七十年という節目の年です。七十年前、二発の原子爆弾によって二十数万人の方の命が奪われるとともに、生き残った方たちは、さまざまな健康被害や差別に苦しみ続けながら、懸命に生きてこられました。

 今被爆者の平均年齢は八十歳になろうとしており、被爆者援護事業の改善は時間との戦いとなっています。その一つに、被爆者手帳を持ち、さまざまな病気で苦しんでいるにもかかわらず原爆症と認められない、原爆症認定制度の問題があります。

 三百名を超える被爆者の方たちが国の審査には納得がいかないと闘った原爆症認定集団訴訟では、九割以上の原告の方が勝訴となりました。そうした司法判断を受けて、厚生労働省は審査基準の変更を行い、二〇〇九年には、当時の麻生総理大臣と被爆者団体との間で、集団訴訟の終結に関する確認書、これを取り交わし、同日、当時の河村官房長官が記者発表を行っています。そこでは次のように述べています。

 十九度にわたって国の原爆症認定行政について厳しい司法判断が示されたことについて、国としては、これを厳粛に受けとめ、この間、裁判が長期化し、被爆者の高齢化、病気の深刻化などによる被爆者の方々の筆舌に尽くしがたい苦しみに思いをいたして、これを陳謝する、政府としては、現在待っておられる被爆者の方々が一人でも多く迅速に認定されるよう努力すると述べています。

 官房長官に確認ですが、この内容と精神はそのまま今の安倍政権にも引き継がれているということでよろしいでしょうか。

菅国務大臣 原爆症認定に関する当時の姿勢については、現政権でも変わるところはなく引き継いでおります。

大平委員 官房長官、ありがとうございました。御退席いただいて結構です。

 政府との確認書を交わし、この陳謝も受けて、これで被爆者は納得のいく審査基準になると期待をしていましたが、今なお抜本的な解決には結びついていません。

 資料に、厚労省の数字をもとに、過去十年の原爆症の処分件数と認定却下件数をグラフにしたものをお配りいたしました。

 二〇一〇年には、六千四百三十五件のうち五千件、七七・七%が却下、二〇一一年には、三千九百八十一件のうち千九百三十七件、四八・七%が却下され、その後、若干割合が減っているとはいえ、二〇〇九年以降も依然多くの方が却下されています。そして、確認書でももう争わないと決めたはずなのに、再び被爆者の皆さんはやむにやまれず訴訟を起こすことになりました。

 塩崎大臣の御認識をお伺いしますが、被爆から七十年もたち、平均年齢八十歳にもなろうとしているにもかかわらず、なぜ被爆者の皆さんは今でも原爆症の申請をし、却下されれば訴訟まで行っているんだと思われますか。

塩崎国務大臣 先生御指摘のように、ことしは被爆七十年、そしてまた、こういった方々が八十歳を超えるということは厳然とした事実だということは厳粛に認めなければいけないと思います。

 今申し上げたように被爆者が高齢化していることを踏まえて、原爆症の審査について、今お話がありましたが、平成二十年にこの認定の基準でございます審査の方針を定めて以来、甲状腺機能低下症などの非がん疾病の病名を追加し、その拡大を行ってまいりました。

 これによって、認定対象者の範囲は拡大をしておりまして、却下割合、今、図示をしていただきましたけれども、平成二十二年に七八%であったものが、平成二十五年度には三七%まで低下をしているということでございます。

 さらに、一昨年十二月には、非がん疾病についての審査の方針の拡大も図ったところでございまして、その結果、昨年の非がん疾病の認定数は百六十九件と、前年の二十七件から約六・三倍へと大幅にふえているわけでございまして、認定状況は大きく改善を見ているというふうに考えているわけでございます。

 いずれにしても、厚生労働省としては、高齢化をしていらっしゃる被爆者の皆様方に対して、一日も早く新しい審査の方針に基づいて認定がなされるように、原爆症の認定審査に鋭意取り組んでまいりたいというふうに考えているところでございます。

大平委員 なぜ、平均年齢八十歳になろうとしているにもかかわらず被爆者は訴えるのか。それは、被爆者が、体が悪くて思うように働けない、怠け者と思われてつらい、そうした原因が、自分の責任ではなく、さかのぼれば被爆したことにある、このことを国に認めてほしいからです。そのことをわかってほしいと切実に願っているわけです。

 そして、前回の集団訴訟に続いて今度の訴訟でも、原告の皆さんが連続して勝訴を重ねています。一月三十日には、大阪地裁の判決が出ました。厚労省の新しい基準のもとで申請を却下された四人の方が原爆症と認められました。

 先ほど大臣は、非がん疾病が改善に向かっている、認定件数が六・三倍にふえたとおっしゃいましたが、それは、その前年の認定件数がわずか二十七件だったから六・三倍にふえた。そして、百六十九件が認定されているというその一方で、二〇一四年の非がん疾病申請件数は五百七十件ですから、依然多くの方が認定されていないではありませんか。決して改善とは言えません。

 そして、大阪は何より、大阪地裁で勝訴した原告の方たちの疾病は、甲状腺機能低下症という、まさに非がん疾病でした。それが厚労省に却下された方々だったわけです。大阪地裁の判決では、現在の厚労省の基準について、地理的範囲や線量評価において過小評価の疑いがあると指摘をし、あくまで一応の目安にとどめるのが相当だと述べて、四人の却下処分を取り消すように命じているんです。

 五月二十日には広島地裁の判決も予定されていますが、私はその原告の一人の女性に直接お話を伺いました。

 その方は、生後十一カ月のときに爆心地から二・四キロの地点で被爆をし、小さなころから現在まで、白血球増加、脳動脈瘤など、さまざまな病気にかかり、苦しみ続けてきました。今から七年前に白内障で原爆症認定訴訟の原告に加わり、訴えを行っていますが、放射線白内障は爆心地から一・五キロ以内にいた者に限るという厚生労働省の基準に縛られて、いまだに認められずにいます。

 その方は、国は解決を引き延ばし、高齢となった被爆者が死に絶えるのを待っているのではないでしょうかとおっしゃっていました。

 大臣、被爆者は、もう少し待てと言われても、待てません。被爆から七十年がたち、いまだに裁判に訴えないと認められないという現状は、余りにも冷たいのではないでしょうか。いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 原爆認定制度の見直しにつきましては、三年間にわたる原爆症認定制度の在り方に関する検討会におきまして、抜本的改革が必要だという考え方と、現行制度のもとで見直しを行うという考え方の両方の観点から検討が行われてまいりました。

 この検討の中で、放射線の被曝の状況にかかわらず一律に支給をいたします手当を創設するなど、原爆症認定制度を抜本的に見直すべきとの指摘に関しては、他の戦争被害との関係をどう考えるのか、そして制度設計上の難しさをどう考えるのかなどの理由から、なかなかこれは容易ではないというような判断が示されたというふうに考えております。

 この検討会での結果を踏まえて、先ほど申し上げたように、現行の認定基準については、非がん疾病に関して拡大を図り、そしてまた、今申し上げたような認定実績そのものは増加をしているということでありまして、厚労省としては、現行の被爆者援護法のもとで、できる限りの対応を行うことが重要だというふうに考えて、被爆者の皆様方が高齢化をしていることなども踏まえつつ、できる限り多くの被爆者の方々に対して迅速に認定を行えるように努めてまいりたいと考えているところでございます。

大平委員 厚労省が新しい審査基準にしてもなお、司法判断と行政認定の大きな乖離が埋まらないわけです。高齢になった被爆者の皆さんに本当に寄り添って、七十年という節目の年でこの問題の決着がつけられるように、重ねて認定制度の抜本的見直しを求めたいと思います。

 一方で、被爆しているにもかかわらず、被爆者として認められず、被爆者手帳すら持つことができない黒い雨の問題があります。

 黒い雨とは、原爆投下後に放射性物質とすすなどがまじって降った黒い色の雨のことですが、政府は、一九七六年に黒い雨の大雨地域と言われる範囲を健康診断特例区域に指定し、その区域にいた方は無料で健康診断が受けられ、そこで指定された病気と診断されれば被爆者手帳が交付されるという制度をつくりました。

 しかし、この地域指定に対して、降雨図は正確でないと不満の声が上がり、そうした声も受けて、広島市と県は実態調査を行ってきました。

 三度目となる二〇〇八年から行った調査では、約二万七千人からアンケートを集め、そのうち九百人の方からは一人一人個別面談も行いました。その調査結果として、黒い雨の降雨地域は従来言われていた範囲よりも広い、未指定地域で黒い雨を体験した者は心身健康面が被爆者に匹敵するほど不良であり、放射線による健康不安がその重要な要因の一つであると結論づけました。

 そして、広島県と県内三市五町の首長が連名で、二〇一〇年七月に、国に対して、黒い雨指定地域の拡大を求める要望書を提出しました。

 資料の二枚目につけたのは、広島市とその周辺地図ですけれども、一番内側の点線の楕円形が七六年に国が確定した大雨地域、現在の健康診断特例区域です。その次の長い点線が小雨地域と呼ばれる雨域。そして、一番外側の実線が、広島市と県が行った調査で黒い雨が降ったと結論づけた、現在の指定地域の約六倍の新降雨域です。

 大変な御苦労をされて調べられたこの広島市と県の調査とその結果は、私は、生の声を聞き取った大変貴重で重いものだと思います。塩崎大臣、厚生労働省は、この調査結果とそれに基づく地域指定の要望に対して、どういう検討を行ったのでしょうか。

塩崎国務大臣 原子爆弾の被爆者援護法に基づく被爆地域の指定、これに当たりましては、科学的、合理的な根拠が必要でございますので、御指摘の広島市等からの要望を受けまして、平成二十二年、二〇一〇年に、厚生労働省におきまして、放射線の健康影響等に関する専門家から構成をされます検討会、「原爆体験者等健康意識調査報告書」等に関する検討会という検討会を設置いたしまして、広島市などからの実態調査の結果を科学的に検証させていただきました。

 その結果でございますけれども、平成二十四年七月の検討会の報告におきまして、まず、拡大要望がございました地域においては、広島原爆由来の放射性降下物は確認をされておらず、当該地域におきまして、健康影響の観点から問題となる放射線被曝があったとは考えられない、そして、黒い雨を体験した方におけます精神的健康状態の悪化は、放射線被曝を直接の原因とするものではなく、黒い雨によります放射線被曝への不安や心配を原因としている可能性があるというふうにされておりまして、被爆地域の拡大を行う科学的、合理的な根拠は得られないというふうに判断をされたところでございます。

 他方で、報告書においては、黒い雨を体験したと訴えられる方々に対して、不安軽減のための相談などの取り組みが有用であるという可能性も指摘をされておりまして、これを踏まえて、平成二十五年度より、広島市、広島県の御協力をいただいて、黒い雨体験者に対しまして個別面談を通じた健康上の相談等を行う相談支援事業を実施してまいっているところでございまして、厚生労働省としては、今後とも、このような事業を通じて、黒い雨を体験された方の御不安や御心配の軽減に努めてまいりたいというふうに思っているところでございます。

大平委員 大雨地域については、被爆者援護法の中でも明確に、「放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」としているのに、この地図にもあります一本のきれいな楕円形の線を境界にしてその外は存在しないというのは、余りにも非科学的であり、全く納得のいくものではありません。

 私は、この間、広島市佐伯区の五日市や湯来町を訪ね、現在の指定区域の外で黒い雨を浴びたという方々からお話を伺いました。

 当時四歳だったある女性は、真っ黒い空を見上げていると、雨が降り出し、雨粒が口の中に入り込んだ、五歳のころから下痢や発熱、嘔吐を繰り返し、その後も、胃けいれん、肝炎、高血圧、不整脈、心臓肥大、白内障など、病気し続けの人生、私がうそを言っているとでも言うのかとおっしゃっていました。

 また、別の方は、八月六日当日、みんなで集団下校をし、みんなが雨を浴びた、それなのに、この川一本を隔てて、あっちとこっちで降った、降っていないとされるのは全く納得がいかないとお話しされていました。

 大臣、この方たちがうそを言っていると言うのですか。この方たちを前に、あなたたちは黒い雨に遭っていませんよ、気持ちの問題ですよと言えますか。いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 現在の広島の健康診断特例区域というのは、同区域の一部において放射能が検出された例の報告などを踏まえて、昭和五十一年に、気象関係の広島原子爆弾被爆調査報告、いわゆる宇田博士によります昭和二十八年の報告書がございますけれども、この調査に基づいて指定されたものでございます。

 健康診断特例区域に指定されていない地域、つまり当該地域の外側の周辺地域につきましては、昭和五十一年及び昭和五十三年に行われました残留放射能に関する調査において、特にこの地域において原爆からの核生成物が残留しているとは言えないとされていることに加えて、平成二十二年に広島市等の要望を受けて設置した先ほどの検討会におきまして、近年行われた残留放射能に関するさまざまな調査を改めて検討した結果として、広島原爆由来の放射性降下物が存在したとする明確な痕跡は見出せないとされてきたことから、放射能の影響があった地域として指定をしていないところであるわけでございます。

大平委員 この問題でも、原爆症認定集団訴訟の判決は明確なんです。

 二〇〇六年八月の広島地裁では、その判決で、少なくとも、増田雨域、これは増田善信さんという気象学者が発表した、宇田雨域の四倍の地域を示した降雨地域ですが、増田雨域で雨が降ったとされる範囲について、雨が放射性降下物を含んでおり、その雨にぬれた者が放射性降下物による被曝を受けた可能性は高いと述べていますし、二〇〇七年七月の熊本地裁でも、放射性降下物は、少なくとも爆心地から増田雨域周辺に至る範囲で相当量降下した、こうした判決が下されるなど、繰り返し、大雨地域の外でも放射性物質が降ったことを認めています。

 先ほど大臣は厚労省の検討会が科学的検証をしたとおっしゃられましたけれども、こうした判決や研究者の知見、何より被害者の証言にきちんと向き合って審議、科学的検証をしたのでしょうか。検討会の構成員の中には、御紹介した増田さんなど、問題の科学的検討に欠かせないはずの物理学者も気象学者もいませんでした。大臣、この政府の姿勢こそ、そして今の線引きこそ、科学的、合理的根拠がないではありませんか。いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 平成二十二年に広島市などの要望を受けて設置をいたしました先ほどの検討会は、放射能の健康影響等に関する専門家によって構成をされております。こうした専門家による知見に加えて、黒い雨地域の線量推計を行った物理学者からのヒアリングや、広島市が行った黒い雨に関します住民アンケート、この住民アンケートをもとに黒い雨の降雨地域の時間変化の推計を行った研究者などからのヒアリングを行うなど、多角的な検討を行ったものだと思っております。

 さらに、検討会のもとに、広島や長崎の疫学や放射線の専門家を含めたワーキンググループを設置いたしまして、黒い雨の降雨時間の地理分布等について掘り下げた検討を行ったところでございます。

 今申し上げた検討会、これ自体は合計で九回開催をされました。そして、今申し上げたこの検討会のもとに、専門家によって、疫学や放射線の専門家によるワーキンググループ、この会合も四回開催をいたしまして、議論を深めていただいたところでございます。

 このように、さまざまな研究者の知見を集める努力をしてまいっておりまして、その結果として、要望地域における放射線の健康影響に関して科学的な検証が行われたものというふうに考えているところでございます。

大平委員 厚労省の検討会の議事録を私も読みました。ある委員の方から、こうした発言がありました。こういう赤字国債の条件下でいわゆるバブルのころまでのようにばんばん何でも認めて、健康局の予算の半分ぐらいは原爆の問題だということを初めて聞いてびっくりした、こういうことを踏まえながら検討を続けて、因果関係を学術的にきっちり決めていく必要があると。

 私は唖然としました。ここに本音が出ているんじゃないでしょうか。つまり、財政が大変で、これ以上ふやせられないというのが頭にあって、そのことを踏まえて検討すると。到底、科学的検討とは言えません。今も苦しみ、一日も早い地域拡大を望んで調査に協力をした人たち、関係者の努力を踏みにじる姿勢であり、断じて許せません。

 毎年八月六日の平和記念式典で行われる平和宣言でも毎回黒い雨の指定地域の拡大を求めており、この問題は党派も地域も超えたオール広島の声です。つまり、体験者の実態も、司法判断も、広島市民、県民の思いも全てが黒い雨の指定地域の拡大を求めており、それに目を向けようともせず、ひたすら反対しているのは政府だけです。再検討されることを含めて、この問題でも七十年の節目の年に何としても解決するよう重ねて求めて、最後の問題に移ります。

 被爆七十年における、日本政府の核兵器廃絶に向けた姿勢について伺います。

 ことしは五年ぶりの核不拡散条約再検討会議が開催される年で、開催まで二カ月を切りました。

 日本は、被爆国として、また憲法九条を持つ国として、国際社会の中で核兵器廃絶に向けた具体的行動の先頭に立つことが求められています。しかし、国連加盟国の三分の二を超える賛成で採択されている核兵器禁止条約の国際交渉開始を求める国連総会決議に対して、日本政府は一貫して棄権するという恥ずかしい態度をとり続けています。

 こうした中、昨年十二月には、第三回核兵器の人道的影響に関する会議において、日本の佐野利男軍縮代表部大使は、核兵器の爆発時には対応できないほどの悲惨な結果を招くとの見方について、悲観的過ぎる、少し前向きに見てほしいと発言しました。

 岸田外務大臣にお尋ねしますが、私は被爆国の大使として絶対に許されない発言だと思いますが、大臣の御認識を伺います。

岸田国務大臣 まず、核兵器の使用は、国際法の思想的基盤であります人道主義の精神に合致しないと認識をいたします。そして、我が国は、唯一の戦争被爆国として核兵器のない世界を目指さなければなりません。

 ただ、核兵器のない世界というのは、核兵器国と非核兵器国が、ともに努力をし、そして協力をすることなくして実現することはありません。こうした考えに基づいて、現実的かつ実践的な取り組みを着実に積み重ねていくことこそ、遠回りのようで、実は核兵器のない世界に向けた近道であるという認識に立って、我が国は軍縮・不拡散の問題に取り組んでいます。

 こうした観点から、いわゆる核兵器禁止条約の交渉を即時に開始する、こうした決議については我が国として棄権を行っているわけですが、今御指摘のありました佐野大使の発言につきましては、まず、我が国としまして、核兵器は二度と使用されてはならない、これが基本的な考え方です。この考え方との比較において、佐野大使の発言、これは、誤解を生じたということはまことに遺憾なことであり、発言に万全を期すよう注意を行いました。

 発言に万全を期す、そして、我が国として被爆七十年という大切な年にあって、改めて我が国の取り組み、立場をしっかり確認し、今後のさまざまな会議に臨んでいかなければならないと考えています。

 御指摘のように、四月には五年ぶりにNPT運用検討会議が開催されます。そして、先月ですが、CTBTの発効促進会議の共同議長として我が国は指名をされました。八月には広島で、国連軍縮会議あるいはCTBT賢人会議も開催されます。十一月には長崎でパグウォッシュ会議が予定されています。こういった会議において、改めて我が国の立場をしっかり明らかにしなければならないと思いますし、NPT運用検討会議においても、NPDIの枠組みで十八本の基本文書を我が国として提出しています。

 ぜひこの貢献等を通じて、具体的な、現実的な結果を出せるように、我が国としてしっかり臨んでいきたいと考えております。

大島委員長 時間がそろそろ来ておりますので、短目に。

大平委員 はい。

 この佐野大使の発言に対し、国内外から批判が集中しています。そして、日本政府は依然、アメリカの核の傘のもとで、その使用を言及する発言すら飛び出していることに、国民の大きな不安と怒りが広がっています。

 原爆は、人間として死ぬことも、人間らしく生きることも許しません。人間として認めることのできない、絶対悪の兵器です。再び被爆者をつくらぬという声は、被爆者の命をかけた訴えであり、日本国民と世界の人々の願い。

 日本共産党は、被爆者の皆さん、市民の皆さんと力を合わせて、被爆七十年のことしを核兵器廃絶に向けて決定的な転機の年とするためにあらゆる努力を尽くす決意を表明して、質問を終わります。

大島委員長 これにて大平君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明六日午前八時五十五分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時六分散会

     ――――◇―――――

  〔本号(その一)参照〕

    ―――――――――――――

   派遣委員の石川県における意見聴取に関する記録

一、期日

   平成二十七年三月四日(水)

二、場所

   ANAクラウンプラザホテル金沢

三、意見を聴取した問題

   平成二十七年度一般会計予算、平成二十七年度特別会計予算及び平成二十七年度政府関係機関予算について

四、出席者

 (1) 派遣委員

    座長 大島 理森君

       小倉 將信君   金田 勝年君

       長坂 康正君   平沢 勝栄君

       星野 剛士君   宮崎 謙介君

       小川 淳也君   岸本 周平君

       黒岩 宇洋君   井坂 信彦君

       今井 雅人君   岡本 三成君

       中野 洋昌君   藤野 保史君

 (2) 意見陳述者

    石川県知事       谷本 正憲君

    連合石川事務局長    西田 満明君

    株式会社emu代表取締役社長         村木  睦君

    金城大学特任教授    本田 雅俊君

 (3) その他の出席者

    予算委員会専門員    石崎 貴俊君

    財務省主計局主計官   小野平八郎君

     ――――◇―――――

    午後一時十分開議

大島座長 これより会議を開きます。

 私は、衆議院予算委員会派遣委員団団長の大島理森でございます。

 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。

 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言御挨拶を申し上げます。

 皆様御承知のとおり、当委員会では、平成二十七年度一般会計予算、平成二十七年度特別会計予算及び平成二十七年度政府関係機関予算の審査を行っているところでございます。

 本日は、三案の審査に当たり、国民各界各層の皆様方から御意見を承るため、当地金沢にお邪魔させていただきました。そして、このような会議を催しているところでございます。

 御意見をお述べいただく皆様方におかれましては、本当に御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。どうか、忌憚のない御意見を頂戴いたしまして、実りのある会議にしたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。

 会議の議事は、全て衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願いいたします。

 なお、御意見をお述べいただく皆様方から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。

 ただし、御質問されたときに、その質問の意味が不明確な場合は、どういうことだったんでしょうかということは構いません。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、意見陳述者の皆様方からお一人十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答え願いたいと存じます。

 なお、御発言は着席のままで結構でございます。

 それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。

 まず、派遣委員は、自由民主党の金田勝年君、平沢勝栄君、小倉將信君、長坂康正君、星野剛士君、宮崎謙介君、民主党・無所属クラブの小川淳也君、岸本周平君、黒岩宇洋君、維新の党の今井雅人君、井坂信彦君、公明党の岡本三成君、中野洋昌君、日本共産党の藤野保史君、以上でございます。

 次に、本日御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。

 石川県知事谷本正憲君、連合石川事務局長西田満明君、株式会社emu代表取締役社長村木睦君、金城大学特任教授本田雅俊君、以上四名の方々でございます。

 それでは、まず谷本正憲君に御意見をお述べいただきたいと存じます。

谷本正憲君 石川県知事の谷本でございます。

 本日は、大島委員長初め衆議院予算委員会の皆様方には、地方公聴会のために石川県までお越しをいただきました。また、発言の機会を与えていただいたことに、まず感謝を申し上げたいと思います。

 午前中には、北陸新幹線の駅舎、周辺を御視察いただいたというふうにお聞きをいたしておるわけでございます。おかげさまで、県民の四十年来の悲願でございます北陸新幹線の金沢開業まで、いよいよ残すところあと十日ということになってまいりました。この場をおかりして、開業に至るまでの国の御尽力に心から感謝を申し上げたいと思います。

 北陸新幹線は、第一義的には観光誘客ということになりますけれども、これだけにはとどまらず、移住、定住人口の拡大でありますとか、さらには企業誘致など、幅広い分野で本県の発展に資するものだというふうに我々受けとめておるわけであります。開業効果を最大限に引き出し、県下全域、各分野に波及をさせていくとともに、その効果を持続発展させていくために、これからも最善を尽くしてまいりたい、このように考えております。

 そして、お手元に資料を配付しておりますが、その一ページに、北陸新幹線、当面は金沢駅が終着駅になるわけでありますけれども、これで終わりということではありませんので、これがさらに西の方へ延伸をしていかなければいけない。その第一番目が北陸新幹線の金沢―敦賀間ということでありますけれども、ことしの一月に取りまとめられました政府・与党の申し合わせにおきまして、平成三十四年度の完成を目指すということが決定をされたわけであります。

 これによりまして、当初よりも三年前倒しで県内全区間を新幹線が走行するということになるわけであります。開業効果が早期に発現するということに相なりました。改めて、関係の皆様方の御尽力に感謝を申し上げたい、このように思う次第であります。

 今後とも、金沢―敦賀間の早期完成、開業、そして究極的には大阪までのフル規格による早期全線整備について、引き続き、また御理解、御支援をお願いする次第でございます。

 以下、本県の置かれた課題等について、数点触れさせていただきたいと思います。

 一つは、本県の人口の動向等についてでございます。

 石川県の人口は、日本海側では唯一、戦後一貫して増加が続いておりましたけれども、平成十七年の国勢調査を境に減少に転じました。直近の平成二十二年の国勢調査でも、小幅ではありますけれども、減少いたしておるところであります。

 石川県は実は南北に長い県でありますが、北の方から能登地区、真ん中の金沢地区、そして加賀地区、こう大まかに分けられるわけでありますが、金沢を含めた加賀地区は、戦後一貫して人口が増加をしておるわけでありますけれども、半島特有の地理的なハンディキャップを抱えます能登地域は、残念ながら、実は昭和二十五年の国勢調査をピークとして、過疎化、少子化などによる人口減少が進んでおりまして、いまだに歯どめがかかっていない、そういう状況でございます。

 能登地域については、県としてもこれまで、能登半島へのアクセス道路の整備でありますとか、空港などの交流基盤を整えまして、企業誘致にも努めてきたところでありますけれども、今後も一層の取り組みが必要であろうというふうに考えておるわけであります。

 こういう中で、昭和六十年に制定されました半島振興法でありますけれども、二度の延長を経て、今月末に実は期限切れということになるわけであります。私ども、半島地域の自立発展に向けまして、今後とも全力で取り組んでまいる覚悟でありますが、委員の皆様方におかれましても、そのよりどころとも言える半島振興法の延長及び内容の充実に向けまして、一層のお力添えを賜りますようにお願いを申し上げる次第でございます。

 そして、景気の動向であります。

 本県経済は、おかげさまで鉱工業生産指数が一番最新のデータでは一三四ということで、全国トップクラスということでございまして、いわば物づくり産業が大きく牽引する形で生産が拡大をいたしております。そして、有効求人倍率も一・五一で全国第五位ということで、全国平均の一・一五倍を上回る水準が続いておりまして、この数字を見ておりますと、緩やかな回復基調を続けているということが言えようかと思います。

 そうしたことを背景に、我が国の港湾活用型企業立地のモデルケースでもあります、全国の重要港湾百二港の中で第二位のコンテナ取扱量及びコンテナ航路数を持ちます金沢港については、特にコンテナの取扱量が五年連続で史上最高を記録するなど、その利活用が進んでおるところでございます。

 こうした各種の指標が示す明るい兆しは、本県経済がリーマン・ショック以後の低迷状況から脱却するいわばチャンスであることを示しておりまして、これを県下全域、各分野へと波及させ、県内の事業所の大宗を占めております中小企業も含め、確かな景気回復にしっかりつなげていくことが重要だ、このように考えておるところでございます。

 次に、本県の財政状況でございますが、まずは、来年度の地方財政対策については、地方税が増収となる中で、地方交付税の減少を最小限にとどめ、我々全国知事会が要望してきたところでありますけれども、地方交付税の代替措置であります臨時財政対策債の発行を二年連続で大幅に抑制した上で、前年度を大幅に上回る地方一般財源総額が確保されたところであり、配慮に感謝を申し上げたいと思いますし、評価をしたい、このように思う次第であります。

 特に、本県では、この臨時財政対策債を除きます、いわゆる通常債の残高を前年度以下に抑制することを行財政改革の目標に掲げまして、十一年連続で達成してきたところでありますが、臨時財政対策債残高の累増に伴いまして、県債残高の総額としては毎年増加する状況が続いておりました。

 しかし、平成二十六年度の地方財政計画で臨時財政対策債の発行額が大きく削減をされましたことから、今年度末の県債残高の総額は、昭和五十年度以来、実に三十九年ぶりに前年度を下回る見込みと相なったところでありまして、平成二十七年度も同様の傾向が視野に入ってまいりました。このことは、持続可能な財政基盤の確立に向けて一歩踏み出すことができたものと考えておる次第でございます。

 次に、地方創生についてであります。

 国、地方を通じて大きな課題になっております地方創生の推進につきましては、他の地域にはない本県の優位性であります北陸新幹線金沢開業に加えまして、魅力ある雇用の場の創出、学生のUターン、県内就職と移住、定住の促進、子育て環境のさらなる質の向上、高齢化社会への対応といった観点からも取り組みを進めていきたいというふうに考えておりまして、平成二十七年度の予算、今、議会で審議中でございますが、ここにおきましても、総合戦略の策定に先立ちまして、社会減対策と自然減対策の両面から所要の措置を講じたところでございます。

 特に、雇用の場の創出に関しましては、地方への本社機能の移転やこれに伴う雇用の増加に対して優遇措置を盛り込んだ税制改正法案が国会で御審議いただいておるわけでありますが、地方創生には不可欠であります企業誘致や雇用の確保の後押しになるものと大いに期待をしておるところでございます。

 本県もこれに呼応いたしまして、新たに本社機能の誘致に向けた助成制度を創設したところでありまして、新幹線開業という本県の強みを首都圏の企業にアピールできる絶好の機会と捉え、本社機能の立地による多様で魅力的な雇用の場の創出につなげていきたい、このように考えておる次第でございます。

 次に、少子化対策でございますが、人口減少対策の一つの柱である少子化対策につきましては、待機児童の解消を優先する都市部と待機児童のいない石川など、置かれている状況はまさにさまざまであります。

 そこで、地域の実情に応じた取り組みが不可欠であり、本県では、これまでも、さまざまな要因が絡み合う少子化に対して総合的な対策を行うため、全国でも例を見ない網羅的、具体的な施策を定めた、いしかわ子ども総合条例を平成十九年に制定しております。

 これをよりどころに、保育所普及率が全国第二位という特徴を生かして、保育所を単に保育に欠ける児童を預かるという範疇を超えた地域の子育て支援の拠点として位置づけ、妊娠中の育児体験、出産後の一時保育や育児相談などを利用できるマイ保育園制度、社会全体で子育てを支援する機運を醸成するため、子供が三人以上いる家庭に対して買い物の際の割引などの特典を提供するプレミアム・パスポート事業、ワーク・ライフ・バランスを推進し、仕事と子育ての両立を図るために企業が策定する一般事業主行動計画の策定対象企業の県条例による拡大など、本県独自の取り組みを進めておりまして、その結果、平成二十二年国勢調査で女性就業率が全国第一位となるなど、一定の成果は上がっておろうかと思います。

 しかし、調査によれば、子育てに関する四つの不安、精神的な不安、経済的な不安、母子の健康に対する不安、子育てと仕事の両立の不安は依然として継続をしておるわけでありまして、これらにきめ細かく対応することが重要であるため、今回の補正予算で措置された交付金も活用しながら、これまでの施策をさらに深掘りし、拡充するということにいたしました。

 中でも、精神的な不安に関しては、核家族化や都市化の進行、地域社会の助け合いの弱まりなどの影響により、子育てをめぐって母親が孤立をすることで、いわゆる密室育児につながりやすいという問題があるわけであります。

 四月から子ども・子育て支援新制度がスタートいたしますけれども、依然として在宅育児家庭の三歳未満の子供はサービスの対象外でありますことから、こうした家庭への支援を一層強化することにいたしまして、全国で初めて、本県独自の取り組みとして、三歳未満児の在宅育児家庭が通園に準ずる保育サービスを利用できるモデル事業を実施することにいたしました。この事業の実施を通して三歳未満児の保育ニーズや課題を抽出し、必要に応じて国にも提案をしてまいりたいというふうに考えております。

 また、経済的な不安に関しては、多子世帯の経済的な不安が依然として大きいことから、十八歳未満の子供が三人以上いる世帯の第三子以降の子供の保育料を無料化することにいたしました。

 さらに、多子世帯の経済的負担軽減として、プレミアム・パスポート交付世帯に対しまして、プレミアム・パスポート協賛店舗で利用可能なプレミアムクーポンを配付することにしたところでありますが、これをきっかけに協賛店舗のさらなる拡大を図るなど、施策の好循環につなげていきたい、かように考えております。

 こうした地域の実情に応じた取り組みを行うための裏づけとなる地域活性化・地域住民生活等緊急支援交付金は、我々地方がこれまで強く求めておりました自由度の高い交付金が実現したものであり、大変使いやすいものとなっております。

 今後も、地方の実情に応じて、創意工夫を凝らした自主性の高い対策を講じていくためにも、地方創生関連事業の財政措置が今回限りとなることなく、地方の一般財源の確保を含めて、引き続き、十分に講じられるようぜひお願いをしたい、このように考えております。

 以上でございます。

大島座長 ありがとうございました。

 次に、西田満明君にお願いいたします。

西田満明君 連合石川事務局長の西田と申します。

 働く者の立場で発言する機会を与えていただきましたことに感謝申し上げたいというふうに思います。

 まずは、石川県内の賃金、雇用情勢についてお話をしたいというふうに思います。谷本知事の横にいて、少し申し上げにくい部分もありますが、しっかりと申し上げたいと思いますので、よろしくお願いしたいというふうに思います。

 政府は景気は回復していると言う状況でありますが、地方においてそうした実感はやはりないという状況でございます。

 石川県内では、所定内賃金と所定外賃金を合わせた実質賃金におきましては、昨年の四月以降、九カ月連続して前年を下回っているという状況でございます。

 県内の雇用情勢について言えば、有効求人倍率、知事も触れましたが、直近では一・五倍を超えるという状況であります。完全失業率についても、二〇一四年平均で三・一%と、全国と比べても大変低い位置にあるという状況にあります。

 しかしながら、完全失業率については、年齢階級別に見ると、二十五歳から三十四歳といった若年層では、昨年平均で四・三%と高い状況でございます。また、二十五歳から五十四歳以下の年齢層、これをとってみても、一昨年よりも悪化をしているという状況でございます。

 加えて、石川県内の雇用者に占める非正規労働者の割合につきましては、三五・六%という状況にあり、とりわけ女性に限って見れば、約半数が不安定な非正規雇用という状況にあるというところでございます。

 また、二〇一三年に石川県が行った調査によれば、育児休業や介護休業に関して就業規則等で規定していない事業所も約一、二割存在しているという状況、規定していても育児休業を取得した男性は一%にも満たないことが明らかになっているというところでございます。

 さらに、育児休暇や介護休暇に至っては、約三割の事業所が就業規則等において規定しておらず、こうした実態の中では、女性の就業割合が相対的に高い石川県において、さらなる女性の活躍は期待することが少し困難ではないかなというふうに考えるところでございます。

 次に、二〇一五年度の予算編成に当たっての課題について、少し触れたいというふうに思います。

 石川県に限らず、指標にあらわれない部分で地域の雇用情勢はまだまだ非常に厳しいという状況でございます。石川県の障害者雇用率は、民間で一・六九%という状況であります。国においては、地域の実情をしっかりと見きわめていただき、地域ごとの課題に応じた雇用対策事業をしっかりと行うことができるよう、雇用対策予算を大幅に増大していただきたいというふうに考えます。

 また、地方における雇用、労働の安定は、労働者保護ルールの強化が必要であります。政府は、これを岩盤規制と称して、ドリルで穴をあけるとしておりますが、これは、本来政府が行うべき政策に逆行するものであり、論外であるというふうに考えます。

 派遣労働者の雇用安定、処遇改善の強化につながるような法改正や、労働者の健康、安全の確保とワーク・ライフ・バランスの実現の観点から、実効性のある長時間労働抑止策を導入すべきであるというふうに考えます。

 女性の活躍推進については、男女間賃金格差の改善、非正規労働者に対する取り組みの補強が必要であります。特に、すべての女性が輝く政策パッケージに掲げた施策の実効性を高めるための予算措置を講じるべきであります。また、第三次男女共同参画基本計画の最終年に向けて、計画の着実な実行と、目標達成のためのポジティブアクションの促進に対しても、必要な予算措置を講じる必要があると考えます。

 若者雇用対策については、若者の非正規雇用比率の高まり、ミスマッチ等による早期離職などの状況の改善に向けて、労働条件の的確な表示の徹底、職場情報の積極的な提供、ニート支援の強化など、若者の雇用対策を前進させる実効性ある法律の成立を求めるところでございます。

 加えまして、非正規労働者から正規雇用への転換の促進策を強化するとともに、地域若者サポートステーションなどの若者の就労支援施策を着実に実施するための予算措置を講じるべきであるというふうに考えます。

 さらに、国民の暮らしの安心に向けた課題でありますが、消費税率の再引き上げが延期された中においても、全世代支援型の社会保障制度の確立を初め、社会保障・税の一体改革、これを着実に進めなくてはならないというふうに考えます。しかしながら、二〇一五年度予算においては、次の内容に課題があるというふうに考えます。

 その一点目は、石川県は、医師、看護師不足がやはり深刻な地域でございます。地域包括ケアシステムの構築に向けて、医療提供体制が大きな課題であり、地域医療介護総合確保基金の充実を求めておきたいところでございます。また、その基金の活用についても、効率的な提供体制に資するものである必要があるというふうに考えます。

 二点目でありますが、介護報酬改定につきましては、差し引き二・二七%のマイナス改定でありますが、本体が四・四八%の大幅なマイナス改定とされているという状況であります。この改定では、介護職員処遇改善加算が継続し増額されたものの、介護職員の処遇改善、人材確保につながるのかどうか、大きな懸念があると言わざるを得ないという状況でございます。また、事業所の撤退も懸念されることから、地域包括ケアシステムの実現に資することを基本に、マイナス改定とすべきではないというふうに考えます。

 三点目は、二〇一五年四月には子ども・子育て支援新制度が本格施行をされる、この状況を見て、財源を着実に確保するとともに、質の改善に向けて一兆円超の財源を確保すべきであるというふうに考えます。

 四点目は、医療保険制度については、被用者保険における後期高齢者支援金の全面総報酬割導入によって生じる国庫補助削減分の使途については、国保の財政対策に優先投入するとしていることは、容認できるところではないというふうに考えます。

 また、税制改正においては、所得税や相続税のさらなる累進性強化、人的控除の税額控除化を通じて、税による所得再分配機能を高める必要があると考えます。また、自動車取得税の即時廃止を含む自動車関係諸税の軽減、簡素化を進めるとともに、税制改革全般について、地方財政への影響を考慮し、必要な税財源を確保していただきたいというふうに思います。

 次に、地方財政と地方分権について触れたいと思います。

 国、地方の財政健全化は待ったなしの状況でありますが、二〇一七年度に予定されている消費税率の再引き上げや現下の経済政策効果による歳入増を見込んでも、現実的には二〇二〇年の基礎的財政収支黒字化の達成は難しい状況にあるのではないかと考えます。財政健全化のためにも、今後、歳入歳出の両面で、国民の痛みをさらに伴う施策を実行していかなければならないことが想定される中において、将来に対する不安も増すばかりという状況ではないかと思います。

 そうした将来不安を払拭するためには、やはり、公共サービスの質の維持向上と効率化の道筋を早期に示すことが求められるという状況であります。そのためにも、逼迫した地方財政をさらに弱体化させることがあってはならず、地方分権改革を強力に推し進めることによって、国から地方への権限と財源の移譲を速やかに行うことが必要であると考えます。

 つまり、地方がそれぞれの独自性と主体性を発揮できるような財政改革に向けて、確実に国から地方へ税源を移し、十分な自主財源を確保した上で、地方が、独自の政策立案と固有の資源活用によって、特色を生かした活力ある地方分権を進められるよう、地方財政の確立に十分配慮すべきであると考えます。

 また、公共事業予算については、一律的に事業量を縮減するのではなく、地域の雇用創出につながり、中小企業、地場産業の活性化に資するものに重点化するとともに、福祉、医療、介護、教育、環境、防災など、生活基盤の強化につながる事業を中心にすべきであるというふうに考えます。

 以上であります。

大島座長 ありがとうございました。

 次に、村木睦君にお願いいたします。

村木睦君 株式会社emuの村木睦と申します。

 本日は、介護報酬、処遇改善加算、介護職員の教育の三点について、お話をさせていただきたいと思います。

 資料の一つ目にありますが、まず、介護報酬引き下げについてでございます。

 実際に、今後、地域包括ケアシステムを進めていく中で、居宅介護というところを例に挙げております。小規模型通所介護事業所というところで例を挙げさせていただいております。

 その中でいきますと、二百万ほどの介護報酬の中で、今回は二十二万ほどの削減が見込まれるということになります。なので、実際、事業所の方では、約九・四%の報酬の引き下げということが行われることになります。また、利用者の方なんですけれども、利用者の実際の負担額というところは、逆に、月当たり千円くらいの負担額が軽減されるということになります。

 今後、高齢化社会におきまして、これはいたし方のないことというふうに思ってはおりますが、この二十二万、九・四%の部分を、事業所が何で経費を削減していくかというところに懸念事項がございます。サービスを提供するに当たって、実際に、関するものは下げられないということになるとしますと、実際には、職員のボーナスとか、あとは教育にかける費用とか、非正規雇用をそのまま継続するというようなことが懸念されることになります。

 しかしながら、私たち事業所もやはり、今回は、この九・四%というところで、経費の引き下げについては自分たちも努力をしていきたいと思っております。

 続きまして、処遇改善の見直しというところで、こちらも小規模型の介護事業所の例を挙げさせていただきました。

 現在、処遇改善の見直しというところでは、この資料にありますように、一、二、三という処遇改善の割り振りがあります。今は、この一番上の千分の四十という一番大きな数字を実際に想定して算定をしました。

 その中で、次のページの地方の現状というところを見ていただきたいんですけれども、処遇改善手当、皆様方は一万二千円アップされるというふうに算定をされておりますが、実際のところ、六千六百九十三円のアップにしかつながらないということです。

 ここの部分というのは、地方の現状といたしましては、まず、要介護の方だけではなくて要支援の方もこの人数の中に入ってしまっているという現状がございます。また、入院などのことで通所ができないという方も含まれて、実際には、上がると見込まれる額は、恐らく六千円くらいになるだろうというふうに予測がされております。

 次のページをごらんください。

 高齢者の住まいの状況ということで、これは高齢者の住まいの充足率をあらわしたグラフになります。

 こちらの方は、石川県を見ていただくと、四十七都道府県中第五位ということになっています。この第五位ということはどういうことかというと、小さな石川県でありながらも、施設は意外とたくさん建っているということになります。

 ということは、実際に、施設、介護サービス事業所の中で定員が満たされているかというと、その定員は満たされていないという状況になっております。そのため、一万二千円と言われているそういう介護の処遇改善ということは、実際、皆様手に入らないということになっております。

 その分、一番懸念されることとしましては、私は一万二千円あたらなかったという介護職員のこの思いのところですね。ここではやはりモチベーションの方がすごく下がってしまいまして、ただでさえ悪い離職率というところに対して、またさらなる悪化をかけるおそれがあるというふうに考えております。

 次に、下の地域包括支援センターというところのページにかわります。

 石川県の地域包括支援センターというところは、現在、金沢市には二十一カ所あります。その中で、実際にある場所に問題があるんですけれども、病院や施設内にあるところが何と十九カ所もあります。

 実際には、地域包括支援センターというところは、高齢者の皆様が一番初めに相談に来る場所でありまして、中立公正が求められているところになります。果たして、病院施設内にこの拠点があって中立公正なのかというところが、今の問題点の中に挙がっております。

 続きまして、地域包括ケアシステムの課題というところで、この絵は今後の地域包括ケアシステムの理想の姿ということになっておりますが、実際には、この左側の絵の方に書いてある地域包括支援センター、またケアマネジャーというところに関しまして、地域包括支援センターと居宅のケアマネジャーというのは定例会議というのを行っているんですけれども、居宅介護支援事業所を持っていない事業所に関してはここの部分には参加ができません。ということは、新たな利用者の情報を得ることはできないということです。

 こういうようなところから、またそういう部分では、公平性というところは今保たれていない状況になっております。ある意味、一部の施設の利用者の抱え込み現象というところが、今地域の中では起きている状態になります。

 次のページになりまして、次のグラフのところなんですけれども、まず、二つのグラフがあると思いますが、左側のグラフを見てください。左側のグラフの青いエリアのところが石川県の平均値になっております。実際、左のものと右のもの、要は、介護施設のところに格差が生じているというグラフでございます。

 左側の施設はとても悪い事例でありまして、右側の施設はとても頑張っている、こういう事例ですね。そういうことがあります。なので、これだけ多く進出してきている施設によっては、サービスに対してとても格差が生じているというところになります。

 それで、右側の方に書いてあります、介護施設に対して評価をする方法はないのかというところで、実際には、社会福祉サービス第三者評価、こういうふうな評価をする方法がございます。そこのところで、実際には、こういうことを受審することで、格差というものとか、今後どうやっていかなければならないかというところに着目すべきであるというふうに考えております。この第三者評価を受ければ、県のホームページに全ての内容が公表されるような仕組みになっております。

 ただし、悲しいことですが、石川県ではこの受審の助成というのは今全くございません。昨今決められましたのは、保育園の方では、五カ年計画ということで、受審費用の二分の一というところの予算化を、今案というのはございます。しかしながら、高齢者の部門に関しましては、ここの部分はございません。一部、東京都では助成として六十万円までが計上されているというような事例もございます。

 今後の展望になります。

 まず、今後の展望のところで、介護報酬の引き下げはいたし方ないというふうに私も思っておりますが、実際に社会福祉法人と民間の企業とではスタートが違うというふうに思っております。実際に、多額の税金をつぎ込んだ社会福祉法人と民間というのはスタートが違う。その中から、実際に下げていくところに関しては一律というところに対しては、まずは、そこの部分に対して、社会福祉法人の実際の経営の透明性や、このような第三者評価での結果の公表というところを推進していただきたいと思います。

 今後、やはり差別化は必要と思っておりますので、実際に努力している施設さんやそうでない施設さんというのは明確にすべきであると思いますし、また、表彰や特別加算ということも今後協議していただきたい内容と思っております。

 次に、職業訓練、今度は育成の方の関係に入らせていただきたいと思います。

 職業訓練の課題としまして、二つ目の、制度的課題というところに今回着目したいと思います。

 この職業訓練ですが、職業訓練の定員に対して、まず、受講生が集まらず、不開講が多いという現状が昨今ございます。この中で、不開講になってしまった場合というのは、そこまでに要した経費というのは一切請求できないことになっております。また、委託訓練では、受講率八〇%未満であった場合、訓練を行ったとしてもその人の分の委託費は一切出ないという仕組みになっております。

 次のシートをごらんください。

 まず、訓練までのフローというところがあるんですけれども、実際に、介護の資格に関しましては、事前に県へ申請の業務を行わなければいけないということで、開講式が四月一日であるならば、約四カ月前から準備をしていろいろな手続を行うということを行っております。しかし、不開講になったならば、この手続に対しての費用というのは一切出ないことになっております。

 また、訓練開始から入金までのフローということで、四月一日に開講いたしまして、実際に全ての入金があたるのは約七カ月後ということになります。しかし、その間、経費とか人件費というものは全て払わなければいけませんので、実際に委託された事業所に対しての負担はかなり高いということになります。

 今後の展望になります。

 介護の仕事を行うに当たっては、今、最低限、介護職員初任者研修、旧で言うヘルパー二級という知識や技術ということは、働くに当たって必要になります。その資格を取りやすい環境を整えていただきたいと思います。二番のところに例えれば、この委託訓練に対しては、委託する企業の経済的負担が大きいということや、逆に、三番目のところでは、今度、企業が独自に職員に対して教育訓練を行いたい場合、そこの部分に対して正規社員への助成が薄いということです。

 実際に法改正がありまして、今後は実務者研修を受けなければ介護福祉士を受験できないというシステムになりました。しかし、この実務者研修を受けるのは恐らく正規社員の方々になります。この助成の部分が甘いと、結局は、介護の人材が足りない足りないと言いつつも、介護福祉士の受験さえもできないという状況になってきています。

 このような状態でも、なぜこの訓練等々を事業者が行うのかということは、やはり介護職員が足りないから、必要だからということで、必死に介護の方の職員を育てております。

 そういうことも含めまして、今後、予算の立てる場、予算をさらにふやしていただく場ということを検討していただき、介護のサービスの質もよくなるように私たちも努力していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

大島座長 ありがとうございました。

 次に、本田雅俊君にお願いいたします。

本田雅俊君 ありがとうございます。金城大学の本田でございます。

 本日は、大変貴重なお時間をいただきまして、まずもって厚く御礼申し上げます。また、大島委員長を初め委員の先生方におかれましては、遠路はるばるこの北陸の地にお越しいただきまして、心から感謝申し上げます。

 限られた時間でございますので、早速、平成二十七年度予算、とりわけ地方創生の分野に関しまして、しばらく前に地方にUターンをしてまいった者として、また大学にかかわる者として、そして研究者の端くれとして、思うところを五点に絞って申し上げさせていただきたいと思います。舌足らずな点、失礼な点がありましたら、どうか御容赦いただきたいと思います。

 お手元の簡単なレジュメに沿って申し上げさせていただきたいと思います。

 まず、第一点でございますけれども、現在、地方創生、先ほど知事からもお話がございましたけれども、地方創生が非常に大きな関心といいますか、課題になっております。

 私ごとで恐縮ですけれども、以前、アジアの若い官僚たちに教えていたことがありました。彼ら、彼女たちが日本に来て何を一番学びたいかといいましたら、それは、どうやってこれだけ経済発展しながら均衡ある国土をつくり上げたのか、そこが彼らの一番の関心事であったわけです。

 しかし、平均的な地方都市を見ますと、残念ながら、今、それが大きく崩壊するんじゃないか、そういう兆しが見えてなりません。来年度予算案を拝見しますと、地方創生関連、まち・ひと・しごと創生事業、補正も合わせまして一兆円超充当されております。厳しい財政ではありますけれども、果たしてこの一兆円で足りるのかどうか、もう少し効果的な使われ方を検討されてはどうか。失礼な言い方ですけれども、今回は何か急ごしらえの地方創生関連予算だったような気もしますので、次年度以降、よくよく検証しながら、真に効果的なものに思い切って使っていっていただきたいなと思います。

 また、これも大変失礼なことではございますけれども、今回の地方創生、非常にうがった見方かもしれませんけれども、どうも、アベノミクスの地方への浸透、こういう経済政策の側面が非常に強くあるような気がしてなりません。

 これはもちろんこれで非常に大事なことですけれども、本当の意味での地方創生あるいは地域創生、均衡ある国土の発展、そのためにはやはり、理念、哲学、そういうものが必要だと思いますが、残念ながら、この今回の地方創生、そういうものが読み取れないような気がいたします。

 かつて大平総理は、御案内のように、田園都市構想という立派な構想、非常に奥の深い構想をつくり上げられました。もう既に三十年ぐらい前のお話ですけれども、まだまだあそこから学ぶことがたくさんあるような気がいたします。その中身についてはここでは申し上げませんが、そうした何か哲学、そういうものが必要なんだろうと思います。

 ただ、理念や哲学が必要とはいいましても、やはり時間がありません。当面は地方から都市への人口流出を早期に食いとめなければいけませんし、そのためには、中核的な都市の充実、増田レポートにもあります、いわゆる人口ダム機能を強化する、そういうことが必要なんだろうと思います。

 この金沢市、隣の福井市、あるいは富山市、それぞれの市長さんは一生懸命頑張ってこうした機能を発揮しようとしておりますので、どうか特段の御支援をお願い申し上げたいと思います。

 第二点目は、地方分権の推進についてであります。

 先ほどもいろいろお話がございましたけれども、地方分権推進法が制定されましてことしでちょうど二十年目に当たります。もちろんこれまで進展はございましたけれども、当初、明治維新、戦後改革に次ぐ第三の改革と言われました。ただ、それほど大きな改革になっていないような気がいたします。

 さらに、残念ながら、現在、地方分権ですとかあるいは分権改革に関します議論がどうも滞っているような気がいたしますので、いま一度、国と都道府県、さらには市町村の明確な役割分担、できるだけ、市町村中心の原則に基づきまして、事務権限の思い切った移譲、そういうものを図っていただきたいなと思います。

 とりわけ、中核市の事務権限強化と、さらには、これは谷本知事にお叱りを受けるかもしれませんが、若干席が離れておりますので思い切って申し上げますけれども、都道府県機能の純化と強化、非常に、余計なこともたくさんされている場合があると思いますので、純化と強化、そういうものが必要なのではないかと思います。

 さらには、これは短期的には難しいかもしれませんが、中期的には、道州と基礎的自治体、さらには地域コミュニティー、こういう三層制が本来の日本の国のあり方としていいのではないか。こうした三層制、そういう環境整備も図っていただきたいと思います。

 第三点目は、地域間格差についてであります。

 確かに、東京を中心とします大都市と地方との格差、この問題はありますけれども、私は、地域間の格差の方が今日大きいのではないかと思っております。

 本日、委員の先生方、ここ金沢にお越しくださいましたけれども、この北陸にいる者としまして、金沢は、この場ではなかなか申し上げにくいんですが、決して平均的な地方都市ではありません。多様な産業がありますし、年間八百万人以上の観光客、さらには、先ほど谷本知事さんがおっしゃいましたように、来週には新幹線も着きます。学生も非常に多い町です。そういう意味では、この金沢市、あるいは隣接します野々市市、白山市、そういうところは人口がふえていっております。

 逆に、先ほどこれも知事さんからお話がありましたけれども、こうした中核的な都市から遠い、例えばここでしたら能登半島の輪島市、ここから百キロぐらいですが車で二時間ぐらい、そういうところに行きますと、どんどんどんどん人口が減っていっています。輪島市は、今人口三万人ぐらいですけれども、毎年二%、五年間で一割の割合で人口が減っていっております。

 今回、地方創生事業の一環としまして、本社機能の地方移転を促す税制、こういうものも導入されようとしておりますけれども、私、こういうことはぜひもっともっと推し進めていっていただきたいと思います。

 隣県の富山県のことで恐縮ですけれども、富山県の黒部市、もともと発祥ということもありまして、そこにYKK、世界のファスナーで、御存じない方がいらっしゃらないと思いますが、YKKがこの地方移転の第一号で名乗りを上げました。そういうビッグネームといいますか知名度の高い会社が、地方、そしてそれも余り大きくない都市に本社機能を移転してくれる、そういうことは大きな勇気にもなります。

 ただ、願わくば、これは欲かもしれませんけれども、地方にただ単に移転するのではなくて、できるだけ小規模の自治体への移転にインセンティブが働くように、そういうところだったらもう少し法人税を減免するとか、そういう工夫もあったらいいなと思っております。

 また、先ほど申し上げました、中核的な都市の人口ダム機能を強化しなければいけないわけなんですが、間髪入れずに第二弾としまして、例えば近隣自治体と一生懸命広域的な取り組みをしている小規模自治体、そういうところへの特段の御配慮もお願いを申し上げたいと思います。

 そういうところでは、例えば農林水産業ですとか製造業、あるいは伝統芸能、そういうところで一生懸命汗をかいて、歯を食いしばって頑張っている、いわば日本の足腰でございますので、例えば、自然の番人ですとか里山の番人、ふるさとの番人として、誇りですとかそういう御支援を与えていただきたいなというふうに思っております。

 第四点目は、これまで申し上げましたこととも関連しますけれども、若者の機会格差、若者にとっての機会格差あるいは希望格差について申し上げさせていただきたいと思います。もちろん、少子化、いわゆる自然減の問題は確かにありますけれども、地方にとりましては社会減、こちらの方が大きな問題になっております。

 先ほど申し上げましたように、この金沢市を中心とします石川県、これはもちろん谷本知事さんの政策が大成功してきたからであるんですけれども、非常に多くの学生がいます。石川県の人口は約百十五万ぐらいですけれども、ここに大学や短大、高等教育機関が二十もあります。人口十万人当たりの学校数は京都に次いで二番目に多くなっておりますし、人口千人当たりの学生の数は京都、東京に次いで全国三位、大阪や愛知よりも多くなっております。さらに、その六割の学生が富山県ですとか福井県、そういう県外出身者になっております。

 もちろん、卒業してから石川県から出ていく方もいらっしゃいますけれども、そういう意味では、石川県、今までの御努力もあるんでしょうけれども、非常に恵まれた地域になっております。今回の予算、新たな奨学金制度、つまり、奨学金を活用した大学生などの地方定着の促進、そういうものを図るという奨学金、私はこれは非常にありがたいことだと思いますし、よりこうした奨学金を充実させていっていただきたいと思います。

 ただ、先ほど、企業の本社機能の移転、それに対する優遇ということを申し上げましたけれども、できれば、例えば、大学などの高等教育研究機関の地方移転、あるいは附属機関の地方設立、そういうものにも優遇措置を講じていただきたいと思います。

 これもまた隣の県の話で申しわけないんですけれども、富山県に近畿大学水産研究所の実験場があります。そこが地域の漁協と協力しまして、クロマグロ、あるいはトラフグ、アナゴの開発、そういうものに一生懸命取り組んでおりまして、今日では銀座の方にいろいろそういう魚を出しているということもあります。

 そうした研究所、大学の地方移転によって、いろいろな新しいビジネスチャンス、あるいは若者にとっての起業のチャンスが芽生えますので、ぜひそうした御支援もお願い申し上げたいと思います。

 最後に、五点目としまして、これは大変生意気な言い方ですけれども、地方に住んでおりますと、もちろん行政に携わっていらっしゃる方々はよくおわかりなんですけれども、希薄な危機感、あるいは、これはよく防災のときに使われる言葉ですが、正常化の偏見、大丈夫だろうとか大丈夫であってほしいというのが当たり前の見方になってしまう、そうしたある種の感覚の麻痺というものが、人口減少に関しましても財政に関しましても非常に強く感じられます。

 もちろん、きのうときょう、きょうとあしたで何が変わるのかといいましても何も変わりませんけれども、しかし、こうした感覚が、なかなか危機感を持っていないということは非常に大きな問題なんだろうと思います。

 その最大の理由の一つ、先ほどから交付税の充実の話、いろいろな方がおっしゃいましたけれども、私は逆に、この交付税によって負担と受益の関係が非常に不明瞭になっているんだろうと思います。もちろん、私なりにこの交付税の財政調整機能の重要性についてはよく理解しているつもりですけれども、中期的、近い将来、できればこの地方交付税を抜本的に見直して、消費税を全額地方の税財源にする、そういうことが必要になるんだろうと思います。自分たちのお金を自分たちで決めるという発想になりましたら、これは行革にも大いに資することになるんだろうと思います。

 また、これも申し上げるまでもありませんけれども、国と地方を通じまして一千兆円を超す借金がございます。今後、社会保障費などなどでもっともっと支出が必要になるわけです。これも、全てではないでしょうけれども、私の周りでは、何とかなるだろうとか大丈夫だろうとか、そういう妙な楽観主義というものがあります、まさに正常化の偏見であるわけなんですが。国も地方も心底大変なんだ、子や孫たちのために切り詰めなければいけない、そういう思いをもっともっと先生方には国民に伝えていただきたいなと思います。

 この場で申し上げるのがふさわしいかどうかわかりませんけれども、そういう意味でも、議員定数の削減ですとか議員歳費の思い切った削減、そういう身を切る改革に取り組んでいただきたいと思います。

 いささか早口になり、また相矛盾することも申し上げたかもしれませんが、いただいたお時間が参りましたので、一旦これで意見陳述を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

大島座長 ありがとうございました。

 以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

大島座長 これより委員からの質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小倉將信君。

小倉委員 自由民主党の小倉將信と申します。

 意見陳述人の皆様におかれましては、御多用の中、本日の地方公聴会においでくださいまして本当にありがとうございます。また、大島座長初め予算委員会の派遣団の皆様には、この地方公聴会の場で貴重な機会を頂戴できましたことを改めて感謝申し上げたいと思います。

 けさ、我々は、小松空港におり立ってから、まずは商工会議所を訪問させていただいて、近江町市場、そして金沢駅と訪問させていただきました。いずれも、三月十四日に開業を控えます北陸新幹線に対する期待と熱気、こういったものを肌で感じました。

 私自身も、今回質問をさせていただくに当たりまして、多少ではありますけれども、金沢市、そして石川県のことを勉強させていただきました。知れば知るほど、私が感じましたのは、ほかの地域の方々からすれば、うらやましがるほどの魅力的な地域なんじゃないのかなということであります。

 里山里海が世界農業遺産に登録をされております能登半島を筆頭に、豊かな自然環境と、それがもたらす山海の恵みがございます。加賀百万石の城下町を中心とした、歴史文化にあふれた町並みもございます。また、漆器とか、あるいは和紙とか陶磁器とか、そういった伝統工芸も数多くございます。観光資源にも事欠かないと思います。

 産業面におきましても、東レやコマツといった大企業が拠点を置いておりまして、先ほど本田教授の話にもありましたように、地域の高等教育機関との産学連携も相まって、巨大な産業クラスターが形成されていると思います。

 大企業のみならず、中小企業においても、グローバルニッチトップ企業、いわゆる世界シェアをかなり多く占めていらっしゃるような中小企業も数多く立地しております。非常に、産業面でも、二次産業を中心に、恵まれた県だと思います。

 産業で恵まれているということは、雇用も存在をするということでございまして、先ほど有効求人倍率の話もございました。また、女性の就業という面でも、私勉強しましたところ、かなり保育施設が充実をしている関係で、全国一の女性就業率を誇っているのがこの石川県だという話を伺いました。

 ただ、今回の地方創生の問題の根深さは、こんな地方の優等生である石川県ですら、先ほど谷本知事のお話にもありましたように、ここ最近は人口減少になってしまっているということなんだろうと思います。

 今回、私どもがやろうとしている地方創生というのは、まずこの人口減少の波を食いとめていく、二〇六〇年までに人口一億人を維持していくということが大きな目標であり、この大きな目標に向かって、石破担当大臣いわく、異次元の地方再生を行っていくということで、昨年来議論が進んでいるところでございます。

 そこで、ぜひ谷本知事に、今、自民党安倍政権、自公の連立政権の中でやっております地方創生策について、改善点もあればもちろん聞かせていただきたいんですけれども、御評価をいただきたいと思います。

 あわせて、唯一の民間人でいらっしゃいます村木社長から、女性、そして若手経営者という視点から、今の地方創生策について御評価をいただきたいと思います。お願いします。

谷本正憲君 これまで安倍内閣のもとでとられてきましたいろいろな政策を見ておりまして、率直に評価をしたいと思います。大胆な金融緩和がございましたし、機動的な財政政策というのがございました。

 リーマン・ショック以降はやはり円高が続いておりまして、本当に石川県の企業は青息吐息という企業が多かったわけでありますけれども、あの政策以降は、やはり、円安に振れたということもあって、石川県の場合は輸出に依存している企業が結構多い、コマツもそうですし、東レさんもそうですし、それに連なる企業もあるわけですけれども、そうした企業が大いに息を吹き返してきたということが私は言えるかというふうに思います。

 そんな意味では、鉱工業生産指数が全国で第一位というのをずっと維持しているというのは、物づくり企業が大変頑張ってくれている、そして、金沢港のコンテナ貨物の取扱量が全国で第二位というところまでどんどんどんどん伸びてきたということは、やはりそういう物づくり企業が非常に元気になってきた。これは、今の政権の政策と私は大いにかかわり合いがあるというふうに思いますので、それは率直に評価したいと思います。

 そういう中で、人口減少問題にどう対応していくのかということで、今回、地方創生という政策が新たに打ち出された。我々は、現場にしっかり足を置いていろいろな施策をやっていかなきゃいけないという立場では、特に、少子化対策に自由度の高い交付金が柔軟に使えることができた。そんな意味では、第三子以降の保育料の無料化という決断もすることができたわけですし、そして、国が新たな支援制度を四月からスタートさせますけれども、その中でやはり欠けている部分はどこなのかということを、今回よくよく点検することができた。

 そんな意味で、在宅育児家庭への三歳未満児というところが、従来の保育所、幼稚園でも全くそこがエアポケットになっていたんですが、新たな支援制度のもとでも、そこは相変わらずやはりエアポケットになっている。

 専業主婦家庭こそ、新たな子育て支援が私は必要なんじゃないかと思いますね。母親が二十四時間お世話をしているから、それは行政サービスが必要ないというんじゃなしに、今の核家族化の中では、やはり、二十四時間子供と接するというのは、これは大変な負担ですよね。そのときに、我々は、保育所を、保育に欠ける児童をお預かりするということではなしに、子育て支援の拠点の役割を、これから保育所はやはり担っていかなきゃいけない。

 そういうことを考えると、三歳未満児だけをこの保育サービスの対象から外すということは、私は、選択肢としてはない。さりとて、これを今の支援制度の中に取り込んでしまうというのは、ちょっと県だけではなかなか難しいということがありますので、とりあえず十数カ所手を挙げていただいて、そこにこの制度を実際やってもらって、課題とか成果とかを洗い出した上で、私はぜひ国に提案をしたいと思うんですね。

 そういうところもエアポケットにしないで、せっかく支援新制度をつくるのならば、そういうところもきちっとやはり手当てをしていく。そういったところも、これからぜひまた手直しをしていただきたいというふうに思います。

 そんな意味では、今回のいろいろな政策も、自治体としては私は評価に値するんじゃないかと思いますね。これは恐らく、全国知事会でも、私はそういう思いが非常に強いんじゃないかというふうに思います。

村木睦君 石川県なんですけれども、実は本当に、就職をされている、お仕事されているという女性の方はとても多いです。この石川県の女性の中の今の問題といいますのは、百万の壁ではなくて百三十万の壁なんですよ。

 実際には、百万の壁というのはそんなに大きい壁とは思っていません。百三十万の壁を越えて、旦那さんの扶養から外れる、自分で健康保険を掛ける、厚生年金を掛けるというところに、すごく大きな壁があります。

 実際に、その壁を越えるときには、小学校高学年になって子供がようやく手を離れ、そこから大学に行くには、北陸は、北陸の大学ではなく、地方ではなく都会の方の大学を望むので、どうしてもそこにお金が必要ということで働かざるを得ないというところで、皆さん、どこでそのステップを踏むかというところを、女性陣はすごく悩んでおります。

 介護の業界もそうで、実際には、体とつらさということよりも、そこのギャップのところで、どのくらいの仕事の時間を働こうかというところが今問題になっております。

 もう一つは、企業の方からおりている家族手当ですね。法制の方、法令の方はいろいろなことで改正されたとしても、大きいのは、企業から出ている、旦那さんの会社から出ている扶養手当がなくなることを一番恐れています。

 そういう部分に関しましては、本当に、税制の部分だけではなくて、企業と連携してそういう部分を対策をとっていかないと、実際には、百三十万の壁、これなら越えられるだろうと思っているところがなかなか越えられないというところが石川県の現状であると思います。

 実際には、女性だけではなく、石川県の中で、私が就職支援をしている中で一番就職ができないのが、やはり新卒と言われる年代です。高校を卒業したメンバー、そして大学を卒業された方、特に専門制の大学を出られた方は、国家試験が通らなかったということで就職をできない、結局、資格がなかったのでということで、実際に就職が延びてしまったというようなことがすごく多くて、相談がたくさんあります。若者の、正規雇用で働いているというところに対して、女性の方よりも、新卒の方、高校卒、大学卒、専門学校卒、そういう方からの相談というのがすごく多いです。

 そういう部分に関して、もうちょっと支援の方をしていただけると、多分、自分に何の仕事が合うのかという、すごく手前の段階の問題だとは思うんですけれども、そういう部分から対策を打っていかないと。石川県は女性はすごく働いています。そういう部分でいうと、その働いている女性の子供たちがなかなか何に踏み切ったらいいかというところが、今、現状の問題点だと思います。

小倉委員 どうもありがとうございます。

 谷本知事からは、今の安倍政権の地方政策について、マクロ経済政策も、あと、自由度の高い交付金があるということで御評価をいただきました。また、村木社長からは、働く女性の問題点、障害というものを御教示いただいたわけでございますけれども、これからは地方創生の各論について、一、二点お伺いしたいと思います。

 一つは、本田先生が御指摘をされておりました地域間の格差、むしろ、こちらの方が大きいんじゃないかという点。小規模自治体がむしろこれから非常に大きな難題を迎えるんじゃないかという点は、私自身は非常に鋭い御指摘だと思っておりまして、実際に今の政権の地方創生策も、五万人以下の人口の小規模自治体に対して例えば中央からの官僚を派遣するとか、あるいは、これまでは門前払いだった中央官庁に対してコンシェルジュ制を設けるとか、そういった小さな自治体に対する配慮も実際にはしているわけでございますけれども、これで足り得るのか、あるいはそれ以外にもっとやるべきことがあるのかどうか。

 まず、谷本知事から、県としての立場から御意見をいただきたいと思いますし、また本田教授からも、同じように、御意見があればいただきたいと思います。

谷本正憲君 これはなかなか難しい問題でして、さっきもお話しいたしましたけれども、石川県の場合は、その地方間の格差の縮図はやはり能登に出ているんですね。

 能登には四市五町あるんですけれども、軒並み人口が減っています。昭和二十五年には能登は実は三十五万人の人口があったんですけれども、平成二十二年の国勢調査ではそれが二十一万人になっています。だから、実に十四万人人口が減っている、今もそれになかなか歯どめがかからない。

 これにどう対応していくのかというのはなかなか処方箋が見つからないというのが正直なところなんですが、基本は、やはり働く場がないから結局そこから出ていかざるを得ない、働く場をどう確保するのかという問題なんです。

 企業誘致といっても、コマツさんでも、金沢までは出てきてもらいましたけれども、能登はやはり勘弁してくれ、そこまではなかなかコマツとしても決断できないよという話がやはり出てくるんですね。

 そうなると、どういう企業がいいのかということで、基本に立ち戻るというか、能登の場合は農林水産業と観光、これがやはり基本になるんじゃないか。そういったときに、もちろん、家族経営的な農業も大事なんですけれども、耕作放棄地がどんどんふえていますから、その耕作放棄地を活用してくれるような農業系の企業をどう誘致してくるのか、我々はそんな方向に今シフトしているんですね。

 おかげさまで、ブナシメジを工場で生産してくれる企業とか、露地野菜をしてくれる全国展開をしている企業とか、それから工場の跡地を活用して水耕栽培でレタスをつくる、そんな企業が次々と能登にも来てくれるようになりました。これは、世界農業遺産の認定を受けたということで、ここでとれた農産物は消費者にそのことだけで安全、安心を持ってもらえる、こういったところが一つの切り口。

 それから、よくコンパクトシティー構想と言われますけれども、別な形では、石川県なんかはコンパクトプリフェクチャー構想というのかな、要するに、能登と金沢の時間距離を短縮することによって、これは次善の策ですけれども、能登に住まいをしながら金沢で働いてもらう、こういうこともこれから考えられるんじゃないか。

 ということになれば、その間をつなぐための道路ネットワークの整備をしていかなきゃいけない。我々は二年前に能登有料道路を、片道千百八十円でしたけれども、百三十五億円債権放棄をして、これを無料化しました。おかけで非常に時間距離がやはり短縮できた。

 こういったことはこれからもやはり進めていって、能登で生活をするけれども働く先は金沢、こんなことを実現することによって能登の人口に少しでも歯どめをかけていかなきゃいけない、そんな施策も一つずつやっていかなきゃいかぬということですね。

 ですから、そういった意味では、そういった面での社会資本整備というのはやはり不可欠なんだろうと思います。

本田雅俊君 ありがとうございます。

 先ほど申し上げましたことと、さらに今、谷本知事さんがおっしゃったことと若干重なるかもしれませんが、三点、ちょっと簡単に申し上げさせていただきたいと思います。

 一つは、かつて広域連合の制度がつくられました。余り使われなかったところもありますが、今回、新たに連携協約の制度が地方自治法の改正によってつくられました。そうした、いわゆる小規模自治体が連携したり、お互いに努力して広域化しよう、そういうときに、それに対する強力な後押しというものがやはり必要なんじゃないかなと思います。単に、広域化したから経費が安上がりで済むでしょうだけではなくて、そこは、しばらく軌道に乗るまでいろいろな支援が必要なのではないかと思います。

 二つ目としまして、先ほど意見陳述の中で申し上げさせていただきましたけれども、企業もそうですけれども、やはり研究機関、大学、そういうところの施設、研究所が、例えば能登とかそういうところにできるのは非常にありがたいことですし、必要だと思います。今、谷本知事さんからもお話がありましたけれども、やはり第一次産業が中心ですので、例えば大都市にある水産学部ですとか農業関係、そういうところの研究所をつくるには非常にふさわしいところだと思いますので、そうした附属機関をつくるときの支援みたいなものも必要なのではないかなと思います。

 三つ目としまして、先生方の中で能登に行かれた方もいらっしゃると思いますけれども、別荘地帯としてここは非常にすばらしいところになると私は思いますので、金沢で働いていらっしゃる方あるいは東京で働いていらっしゃる方、そういう方々がセカンドハウスをお持ちになるとき、いろいろな、何か税制の優遇措置があれば、多くの人たちが週末あるいは休暇のときに能登で過ごしていただく、そういうことが可能ではないかなと思います。

 以上でございます。

小倉委員 どうもありがとうございます。

 時間が来ましたので、最後に一点だけ、御質問をまたさせていただきたいんです。

 今回の地方創生策で非常に重要だと思いますのが、この地方創生策がばらまきに終わってはいけない、ちゃんとそれぞれの地域で効果的に使う、しかも、一過性のものではなくて、中長期にその地域に根づくような形でお金が投じられなければいけないというふうに私は感じております。

 その仕掛けの一つ目が、谷本知事がちらっとおっしゃいましたけれども、やはりチェックをしていくことだと思います。今回の地方創生策を実行していくに当たって、どこがエアポケットかわかったということをおっしゃっておりましたけれども、やはりPDCAサイクルをきちんと回していく、KPI、キー・パフォーマンス・インディケーターをきちんとつくって、経年的にそれがうまくいくのかどうかチェックをするということだろうと思います。

 また、プランをつくっていくという意味では、総合戦略の実行というのも重要だと思っておりまして、今回の地方創生策では、総合戦略をつくるに当たって、これまでのように役所だけがつくる、議会だけがつくる、あるいはひどいところになると外部のコンサルティングファームにそのまま丸投げをしてしまう、そういうことではなくて、言葉をかりれば、産官学金労言、この三者が合わさって、その地域に本当に必要な計画を立てるというのが今回の大きな仕掛けの一つだと思っております。

 そういう意味で、産官学金労に入っていらっしゃいます西田事務局長に、どのような形でかかわり得るのか、最後に話をお聞かせ願いたいと思います。

西田満明君 先ほど少し話も出ておりましたが、やはり石川県は高等教育の機関が集積をしておるという状況でございます。北陸エリアの若者の大都市圏への流出を食いとめるダムとしての機能を果たしていく、このような役割は、働く立場でも果たしていく必要があるんではないかなというふうに考えております。

 また、首都圏におきましても、Uターン就職、地方就職の機運醸成を図ることも大切だなというふうに感じておりますし、東京に出た若者が前を向いて地方に帰るようなイメージアップを、メディアも活用して図っていただければなというふうに連合としても考えているというところでございます。

 加えまして、東京の若者の地方への送り出しについても、国としても本腰を入れていただきたいなというところでございます。

 石川県内で働く場所をしっかりと設けていく、そのためにも、やはり賃金のアップ、これも必要になってくるというふうに思います。賃金が安いという状況があると、なかなか、Uターンで帰ってくるという気持ちにはならないということがございますので、やはり、政労使で合意しました景気の好循環に向けて賃金アップ、これが必須だというふうに考えております。

 以上であります。

小倉委員 どうもありがとうございました。

 私は東京の町田市、多摩市を選挙区としております都会の人間でありますけれども、きょう、見て、聞いた話をしっかりと踏まえて、これから地方創生の議論に参加をさせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

大島座長 次に、小川淳也君。

小川委員 民主党の小川淳也でございます。

 四名の陳述者の皆様、きょうは本当にありがとうございます。

 まず、谷本知事とそして西田事務局長のお二人にお伺いしたいと思っております。

 先ほど小倉委員が御指摘になられたように、私ども一同、この金沢の熱気、興奮、期待を非常に肌で感じてこの場に立っております。その点、非常に喜ばしいことですし、また、これがいい方向に、どんどん上昇志向の中でいい形で発展していくことをまずは祈念申し上げたいと思っております。

 一方で、東京との時間距離が極めて短縮されるということには、当然、県政全般を担われる立場からしますと、いろいろなリスクとか、いろいろな手当ても一方で考えつつ、これから県政のかじ取りをされるのであろうというふうに拝察をいたしております。

 その観点から、特に、いわゆるストロー効果、むしろ大都市部の方にいろいろな人とか富が吸収されるおそれについてどう考えるか。

 さらに具体的に言えば、きょう、我が党から黒岩委員が同席をさせていただいておりますが、新潟選出でございまして、新幹線の開業が三十年前であります。その後、羽田―新潟便の航空需要が消滅した、なくなった。それから、並行在来線、これは、特にこれからの高齢化社会でありますので、高齢者の方々それから高校生、生活に密着した路線としての維持が非常に困難になっているというような状況を新潟において目の当たりにしているというお話もございます。

 こうした観点から、当然、喜ばしい、おめでたい政策とはいえ、その光と、あえて言えば影の部分、影の部分にこれからどう対処されていくのか、県政全般のかじ取り役である谷本知事に、まずお尋ね申し上げたいと思います。

 そして、西田事務局長、きょうはありがとうございます。

 アベノミクスの景気浮揚感が地方においては十分感じることができないというふうに明言されたわけでございまして、特にこの点は、金沢駅周辺ではいろいろと、不動産物件の値上がりとか、そういったピンポイントで非常に効果が顕著な部分もある一方で、まさに知事もおっしゃったように、能登半島ですとか全体的なところまで、果たしてどこまで波及しているのか。ある世論調査によれば、このアベノミクスの効果を実感できているという方々が二割、できていないという方々が八割というのも、また偽らざる世の中の実相ではないかと思います。

 その前提で、雇用について言及されたわけでございます。特に、若年失業率それから非正規雇用が高いというようなこと。これからしますと、石川県内の労働環境を前提に、現在政府で議論されている、例えば、労働時間制の枠外で、残業代等々の対象としない新たなカテゴリーの議論が進んでおりますが、この点及び派遣法の業務制限の撤廃を初めとした新たな枠組み、これらについてどうごらんになるか。

 以上、続けてお二人の陳述者から御意見を賜りたいと思います。

谷本正憲君 新幹線の開業に伴うストロー効果、ストロー現象というんですかね、これはもう数年前からいろいろ議論をされてきたところでありまして、それを上回る魅力をどう発揮していくのか、そういうことの議論もしてまいりました。

 私どもは、一つは、観光立県を標榜しておりますので、やはり観光誘客というのは大事なんですね。

 これまで、関西圏から年間二百六十万ぐらい、中京圏から二百十万、そして首都圏から二百三十万、お越しをいただいています。この数字だけを見ると何かバランスがとれているように見えるんですが、実は、その基礎になるエリア人口は全く違うんですね。関西圏は二千万、名古屋圏は千五百万です。ですから、エリア人口に対する割合は大体一四%ぐらいなんですけれども、首都圏はということになると、これはエリア人口が四千百万人です。そこから二百三十万ということは、たかだか五%ぐらいの人しかまだ石川県へお越しになっていない。ということは、石川県は首都圏から見た場合、遠隔の地だ、やはりそういうイメージがどうしてもある。

 このイメージを払拭してくれるのが、私は、北陸新幹線。この新幹線が来ることによって、金沢と大阪、金沢と名古屋、金沢と東京は、いずれも二時間半で、時間距離的には全く同じになるんですね。そうすると、この二百三十万を倍増することは、決してこれは不可能ではない。それに値するだけの魅力を、金沢を中心に、石川県はやはり備えている。その魅力をどんどんこれから発信していくことによって、いわゆる交流人口がどんどんどんどん拡大をしていくのではないか。

 むしろ、JRさんの最近の動きを見ていましても、そのことに非常にやはり期待をしておられる。と同時に、自信をお持ちですね、特に東日本さんは。今回、新幹線も速達タイプの「かがやき」をいきなり一日十往復走らせるということは、これまでの新幹線ではあり得なかったことですし、車両も、東海道新幹線の十六両に次ぐ十二両編成で走らせる、これは相当首都圏からこの石川県へ送客できるのではないかと期待感と自信はお持ちなので、私はそちらのメリットをどんどんこれから掘り起こしていくことが大事じゃないかと思います。

 現在のところは、商工会議所の調査でも、支店を店じまいするという企業は一つもない、そんな話をお聞きしておりますので、その辺はよくよく我々これからも注視をしていきながら、メリットを引き出すという努力をしていくことが必要じゃないかと思いますね。

 それから、空港は確かに微妙な問題なんです。小松空港がございます。これは三月十四日の時点で、ここはJALとANAが飛んでいますけれども、一日十二便ございますが、便数が減るのかと思っておりましたら、両航空会社が頑張っておられまして、機材は小型化するけれども一日十二便はこれからも維持すると非常にけなげな覚悟をお示しいただいておるわけでありまして、これはそれだけのやる気といいますか、自信をJAL、ANAともにやはり僕はお持ちなんだろうと思いますね。

 その期待に我々も応えていかなければいけないというような思いがしていますので、やはり飛行機にしかできないこと、乗り継ぎ割引も大幅に今度は下げられます。それから、小松―羽田便も一番安いのは九千二百円という値段まで設定をしていただきましたので、新幹線と十分に対抗できる、こういうことでございますから、我々は、新幹線にはできないこと、乗り継ぎ割引だとか国際化とか、そういう取り組みをこれからしっかり進めていく。と同時に、福井県との連携をこれからさらに密にしていかなきゃいけない。となれば、それなりの航空需要は、僕はまだあるんじゃないかというように思います。

 それから、並行在来線は、これも大変難しい問題。本当は引き受けるつもりはなかったんですけれども、新幹線の開業とセットでこれは地元が引き受けるという約束になっているものですから。ただ、金沢は一日の乗降客が二万五千人おられますから、相当のお客様が、流動人口があるんですね。これを前提にして、いわば自分たちの鉄道だということでみんなで利用してもらう、この運動をやっていくより方法がないんです。

 ただ、我々、幸せなのは、この並行在来線は一挙に引き受けるんじゃなしに、二段階で引き受けることになったということですから、まずは金沢を中心とする、ここで十分学習をして、次にまた備えていく形で、何としても住民の足として維持それから工夫をしていかなきゃいけませんし、それに対しては国からの御支援も、独立採算といっても、実際問題、JRが手放す鉄道ですから、独立採算なんというのは、およそこれは難しい話ですから、住民の足として確保するためには国からの御支援もぜひお願いしたいというふうに思っています。

西田満明君 それでは、回答させていただきます。

 まず、アベノミクスでこの金沢駅の周辺でホテルラッシュという状況の中で、働く立場でこの景気をどう感じているのかというところでありますが、二年前に政労使合意のもとで景気の好循環を訴えて、昨年、二〇一四の春闘がスタートしました。その中で、この石川県も賃金は十六年ぶりに高水準というところで決着をしたんですが、先ほども少し触れました、昨年の四月以降実態的には賃下げにまだなっているという状況であります。

 その中で、特にこの石川県は中小企業がほぼ、会社の割合でいくと九七%、働く仲間でいくと七割の方が中小企業に働く仲間なんですよね。そうすると、大手企業の賃金は上がるという状況にありますが、なかなか中小企業まではまだまだ届いていないという状況が実態であります。二〇一五の春闘は、昨年の消費税増税分、これもしっかりと今回はかち取るべきだという闘いをしていく必要があるんだろうというふうに思います。

 まだまだこのアベノミクスの恩恵には、またまたこの地方はあずかっていないというのが実態であります。特に能登地方におきましては、先ほど知事もおっしゃいましたが、やはり農業、林業、漁業、この方がまだ多いですよね。絶対に、この部分では私たちが頑張ってもまだまだ届かないというところがあると思いますので、まずは連合、働く仲間が少し頑張って、そこに周りの方がもう少しついてきてくれればなというところが大変重要になってくるのではないかなというふうに考えております。

 また、雇用の関係でありますが、若者の雇用、先ほども話をしましたが、実質一・五倍を超える求人倍率はあるという中でありますが、やはりここにも雇用のミスマッチが起きているというふうに感じております。やはり若者の離職率がまたまた高い。

 ここはしっかりと経営者側に、会社の情報を含めて、平成二十七年、ことしの三月から就職活動に入る方には開示をしなさいということになっていますが、これはまだ努力的なことでありますから、なかなか会社側の状況がわからない。実際に離職された方がどれだけいるのか、そんな情報もしっかりと入れてくださいよという申し入れも、労働局に対しても、しっかり指導していただきたいというところも申し入れをしたというところでございます。

 非正規の方々も含めて、今、連合に加盟している、要するに労働組合に加盟している方は、二割いないんですよね。そうすると、十人働いていても八人の方が実態もわからないという中で仕事をされている。どこにこの思いを伝えればいいのかわからない中で仕事をされている。不安の中で仕事をされている。その中でも、少しでも労働組合に加入していただきたい。今、連合は、一人でも入れるユニオンを皆さんに訴えながら、少しでも不安のある方は連合のユニオンに加盟してくださいよという訴えもしているところでございます。

 そういった声を聞きながら、連合としても、非正規に働く方々も含めて救っていきたい、そんな春闘にしていきたいなというふうに考えてございます。

 あと、ワークルールの改悪の部分でございますが、ホワイトカラーエグゼンプションから、今、高度プロフェッショナル、もう名前の方は変わってきましたが、これは、残業代不払いでいく。こんな状況になると、今でさえなかなか長時間労働に耐えがたいという方がおいでる中で、しかし、健康面にこれが比例してくるんですよね。長時間労働イコール体調不良、メンタルにも陥る。これをやはり許してはいけないというふうに考えてございます。このワークルールの改悪には断固反対をしていく、この立場であります。

 また、派遣法については、もとのもくあみに戻っていく、これが本当に懸念されている状況でありますよね。年越し派遣村、あの状況に戻りつつある。大変危険な状況に考えてございます。派遣で働く方は一生派遣で働けばいいんじゃないか、このような考え方にはぜひ反対をしていく。何とかこれは食いとめたいなというふうに考えてございます。

 以上でございます。

小川委員 ありがとうございます。

 谷本知事様は、大変長年県政を担っておられた、その自信に満ちたお言葉には非常に力強さを感じました。さらなる御活躍、御発展を心より祈念申し上げたいと思います。

 また、西田事務局長様、これは、民主党、連合、石川県に限らず、大変大きな課題だと思います。中小零細事業所で働く方々の利害、そして非正規雇用の方々の思い、これをいかに受けとめ、社会に反映をさせていくか。本当に私たちに問われている極めて大きな課題だと思います。ぜひ共有をさせていただきたいと思います。

 残りちょっと五分ぐらいなんですけれども、それぞれ、一分、二分程度で、本田先生と村木社長様からコメントをいただきたいと思っております。

 本田先生の論文の中で、受け皿となり得る野党が健全な日本政治のためには必要だというくだりを拝読しております。今、民主党なり維新の党なりを中心とした野党界に対して、何が足りないか、何を求めるか、野党に期待したいものを少しお触れいただき、また、村木社長様、きょうは本当にクリアなお話をありがとうございました。女性の立場、あるいは、きょうは介護にスポットを当ててお話をいただいたわけですが、一方で、中小企業の経営改善に取り組んでおられる。お聞きしたところ、石川県の経済あるいは暮らしの強みに、非常に中小企業の強さというのはあるんじゃないかなと感じます。その石川県の物づくりなり中小企業なりの強さはどこからきているのか、お感じになるところを。

 なお、それぞれ、申しわけございません、一分から二分程度なんですが、コメントをいただいて、質疑を終えたいと思います。

本田雅俊君 ありがとうございます。

 予算ではなくて政治関係のことをお尋ねですので、率直にお答え申し上げたいと思います。

 今の状況を見ていますと、確かに、一強多弱と言われるように、野党は何をやっているのだというのが一般的な国民の見方だと思いますが、一番大きな原因は、失礼な言い方ですけれども、前回の政権交代のときに、掲げた公約が実現されなかった、掲げなかったことが無理に通された、そういうことなんだろうと思います。それに対する十分な検証ですとか総括が、国民には伝わってきておりません。

 その中で、新しい、今の与党とは違う選択肢をいかに掲げていくか、それが野党にとっての大きな課題なんだろうと思います。その二つがあったときに、初めて一般国民は、コーヒーがいいのか紅茶がいいのかという選択をしてくれるのではないかと思います。

 簡単ですが、以上です。

村木睦君 地方の方の物づくりというのは、物をつくり上げる、設備をつくり上げるような技術というのがすごくたけております。そのため、設備投資にお金が回ってくれば、この石川県の物づくりの企業というのは実際にはすごく好転してくることになってくると思います。

 ようやく、少しずつですが、そういうふうに設備投資に企業がお金を出せるというところまでは来ていると思いますので、石川県としましては、物づくりに関しての創造性であったりとか工夫であったりとか、そういうふうな物づくりのところは、とても強みというところはあると思います。

 そういう知恵と工夫というところに対してまたいろいろな助成がいただければ、まだその部分でいろいろなことをやっていけると思います。

小川委員 改めて、四名の皆様、大変貴重な御提言をいただきましたことに心から感謝を申し上げ、予算審議も大詰めでございますが、しっかりと国会において反映させてまいる決意を申し上げまして、お礼にかえさせていただきます。

 ありがとうございました。

大島座長 次に、井坂信彦君。

井坂委員 維新の党の井坂信彦です。

 本日、大変、午前中の視察、そして午後のこれまでの議論と勉強させていただきまして、ありがとうございます。

 時間に限りがありますので、早速、端的に、質問から入らせていただきます。

 まず、予算に関してですので、谷本知事にお伺いをしたいと思います。

 国の方では、二〇二〇年プライマリーバランスを黒字化するという大目標がございます。ただ、経済がかなり好調な見通しをもってしても、なお九兆円以上差がある、足りないということで、これは、歳出削減に踏み込まない限り、こうしたことは絶対に実現できないということだと考えております。

 その際に、地方財政、ことしは非常にうまくいっているのではないかという評価を知事は先ほどされておられましたが、ことしはそうであっても、今後この部分が聖域ではあり得ないというふうに考えるわけでありますが、国のプライマリーバランス黒字に向けて、地方財政にも切り込みが避けられないとしたときに、どこをどう変えていくべきだとお考えなのか、現場の側からの御意見を知事にいただきたいと思います。

谷本正憲君 国家財政の詳細については私もよくはわかりませんけれども、県財政でいえば、ここ十年間、石川県自身も行革の取り組みを進めてまいりました。

 そのとき、やはり人件費というのは大変大きなウエートを占める。人件費は給与単価掛ける人数ですから、どちらをやるかとなったときに、やはり給与単価というのは、これは人事院勧告とかいろいろな制度がありますから、なかなか手がつけにくい。ということになれば職員数だろうということで、ここ十年間で、石川県は七百人ほど職員を削減いたしました。この七百人というのは、石川県の職員定数でいうと昭和三十八年前後の水準です。今から五十年前の水準まで職員数を減らしました。

 そのときに、各部局一律二割カットとかそんな単純な削減じゃなしに、県庁の運営の仕方を基本から改める、そういう中でどれだけ人員が捻出できるのか、そんな工夫をしながら、できるだけ県民の皆さん方へのサービスが低下しないような配慮をしながらやってきた。庶務事務を一本化するとか出先機関を少し統合するとか、そういうことをやりながら、五十年前の水準まで職員、施設を落としました。

 そのおかげで、石川県の財政も相当、ゆとりというところまではいきませんけれども、収支バランスがとれるような。だから、ここ十年間は、石川県でも四百億円ぐらい基金を取り崩して対応してきたのではないのでしょうか。基金を崩さないと予算が組めないという状況が続いていました。やっと、ここへ来まして、基金を崩さなくても単年度収支均衡をとれるような予算が組めるようになったということでしょうから、まずはそういう努力が大事なんじゃないんですかね。

 地方財政をどうするかという、ターゲットを絞って、地方財政を悪者にして何かやるとかというんじゃなしに、地方財政は地方財政で、無駄遣いは避けるという形で、我々は基本的にそういう努力をしています。そのことによって、県財政の収支がとれるような、そんな努力はやはりしているということですよね。

 そういう努力を国の方もやはりやっていくということが大事じゃないですかね。

井坂委員 私も、実は地方議員の出身ですから、おっしゃるように、地方の方がかなり先行してその部分をやっているということをよく存じ上げております。

 なお、地方はもう既に雑巾を絞り切って何も出ない状況で、さらにここから先、二〇二〇年まで、さらなる国の歳出削減、そして、その中には地方の歳出削減も含まれざるを得ないというところで、大変な難しさを感じて質問差し上げたところであります。

 次に、今度は本田教授にお伺いをしたいと思います。

 一番最初のところで、地方創生の理念、哲学が読み取れないんだということを御指摘いただきました。せっかくの機会ですので、どのような理念、哲学を現状で考え得るのか。これは答えは一つじゃないと思いますが、ヒントでもいただければというふうに思います。

本田雅俊君 ありがとうございます。

 どんな理念がいいのかというのは、逆に、それは政治家の方々がお考えになることだと思いますが、ただ、今までの日本の戦後の国と地方のあり方、先ほど申し上げましたように、均衡ある国土の発展、これは世界に誇れる財産だと私は思っております。

 今日、デフレですとかいろいろな状況によりまして、これだけ都市と地方の格差が非常に広がってしまった。これまでの均衡ある国土の発展が崩れてきている、それをどうやって戻すのか、あるいは新しいスタイルに持っていくのか、これはまさに政治決断なんだろうと思います。

 今の安倍政権の地方創生を拝見していますと、先ほど申し上げましたように、アベノミクスを地方に何とか津々浦々浸透させたい、その思いは非常に強くわかります。そのための予算も組まれていると思います。また、日本全体の人口減少にいかに歯どめをかけるか、これもよく見えてまいります。

 ただ、本当に二十年後、三十年後、あるいは五十年後の日本の地方がどうなっているのか、あるいは中央、地方関係がどうなっているのか、国の形がどうなっているのかということに関しましては、私は読み取れません。

 そういう意味では、私に、どういう理念がいいのか、それはなかなかお答えはできませんけれども、先ほど申し上げました大平元総理の田園都市構想、私は非常にこれに共鳴いたしておりますし、そのまねをすればいいとは思いませんけれども、そこに多くのヒントが隠されているのではないかと思います。

 以上です。

井坂委員 確かに、おっしゃるように、それは政治家の仕事だというふうに思います。せっかくですので、きょう、少し議論をさせていただきたいんです。

 均衡ある国土の発展、こういう考え方はかつてずっととられてきた考え方ですが、今、世界の中の日本、あるいは世界の中の都市ということを真面目に考えれば考えるほど、べたっと日本国内が人口がきれいに分散されているようなありようではなくて、よくフラット化されているようなありようではなくて、スパイキーというふうに言われるんですけれども、人口が物すごく多い極が、むしろ要所要所に極をつくっていくような国土のあり方、また都市政策のあり方というのが必要ではないかというふうに、私は、実は個人的には考えているんです。

 石川県の中の金沢市が、もう十年前から先進的に取り組んでこられている創造都市戦略というもの、私、神戸ですので、まさにその兄貴分、先輩として、東の横浜、西の金沢ということで、その都市政策を大変尊敬の念を持って研究をさせ、また、神戸に取り入れようと努めてきた立場であります。

 そういう金沢、今、そういったところも一つ功を奏して、北陸の中で非常にうまくいっている都市という立場を確固たるものにしつつある。それが今回、新幹線の金沢までの延伸で一つの到達点に達するのではないかなというふうに、きょう見せていただいたところであります。

 中核都市を守りのダム機能にという増田先生のお話も、私もよくわかるんですが、もう一歩進んで、やはり攻めの都市政策、これは決して均衡ある政策にはならないんですが、しかし、北陸で金沢を拠点にするんだ、極にするんだと決めて、そこに優秀な、クリエーティブな人材の集積をつくっていくということが、結果的にその周辺も含めた発展に資するというふうに私は考えるわけであります。

 そういう均衡ある発展とある種正反対な考え方、また人口の集積という考え方についてどういうお考えをお持ちか、お伺いしたいと思います。

本田雅俊君 ありがとうございます。

 申し上げます。

 私は、均衡ある国土の発展は、特に戦後の高度経済成長期においては非常に重要だったと思います。ただ、今は、そういう高度経済成長ではなくて、もはや低成長時代ですので、必ずしもかつてのような、同じような均衡ある国土の発展、これがふさわしいのか、理想なのかといいましたら、決してそうではないと思います。

 ただ、先ほど申し上げました大平元総理の田園都市構想の中には、単に地方を豊かにするだけではなくて、これだけ不均衡が生じますと、都市の方にもいろいろな問題がある。ですから、都市は、逆に、発展するかもしれませんけれども潤いが足りない。それは田園、地方は持っているんだったら、そういう交流を通していけばいいというのは、今まさにそういうことが必要なのではないかと思います。

 今日の地方創生に関しましては、地方を何とか、そういう思いはわかるんですが、どうも、都市の役割、都市と地方との役割、そこが見えてこないのが非常に残念に思っております。

 今、井坂議員さんがお尋ねになりました、極をつくる。私も、先ほどは人口ダム機能と申し上げましたけれども、極をつくってそこが中心、それは今後の、それこそ新しい均衡ある国土の発展としてあり得るのではないかと思います。

 そういう意味では、先ほど意見陳述の中で申し上げさせていただきましたけれども、例えば道州制という考え方、その核として、これは州都をどこにするかというだけで非常に大きな議論になってしまいますけれども、大きな市を中心にした道州というのは、一つの地方分権の究極の姿としてあり得るのかなと思います。

 ただ、もう一つつけ加えさせていただきたいんですが、これは谷本知事さんからお叱りを受けるかもしれませんが、一番大きな市が必ずしも県庁所在地あるいは州都である必要はないと思います。逆に、県であれ、あるいは道州であれ、その中でバランスをとっていくためには、例えば金沢でしたら、このままいきましたら、言い過ぎかもしれませんが、ほっておいてもどんどん発展していくわけです。ここに県庁機能がなければいけないという理由がないわけです。

 先ほど谷本知事さんは、能登から金沢に通ってもらえばいい。それも一つの考え方ですが、むしろ、せっかく新しい建物をつくったのに何だとお叱りを受けるかもしれませんが、県庁機能を能登に持っていくという発想もあっていいんじゃないかなと思うんです。そういう今までの固定観念にとらわれないような新しい地域づくりというのが、これから必要になるんじゃないかなと思います。

 御質問にお答えしているかわかりませんが、以上でございます。

井坂委員 谷本知事にもう一度お伺いをしたいんです。

 県の仕事の中身の純化、強化というような話もほかの陳述人の方からあったわけです。また、私が今申し上げたような話で、県と大都市との関係。私も、兵庫県と神戸の関係というのは大変難しいものがこの間あったわけでありますけれども、石川県、そしてその人口の三分の一は金沢市、しかも、金沢市は今のところうまくいっていて、人口集積が非常にうまく、いい流れができつつある、こういう状況でありますので、今後、兵庫県と神戸市のような関係になる可能性が私は大いにある、これは前向きな意味でそういうふうに思っておるわけであります。

 知事という仕事をされておられて、都道府県としての仕事の純化、また、いろいろな能登のような地域も全部抱えた県の仕事と、そしてその中での大きな割合を占める大都市との関係、こういったあたりについて、将来のビジョンや方向性をお知らせいただきたいと思います。

谷本正憲君 知事の立場からいえば、金沢もありますし、加賀地区もありますし、能登地区もあります。それぞれがバランスのとれた形でどう発展をしていくのか。それぞれの地域には県民の皆さん方のやはり生活があるわけですから、特定の都市だけがよくなればいい、そういう立場には、知事としてはやはり立つわけにはいかない。

 能登の人口が十何万人減ったというお話をいたしましたけれども、能登はもう再生の余地が全くないのかというと、そんなことはない。まだまだ工夫をすれば再生の余地はある。

 今の金沢の発展を支えたのは、石川県でいえば能登の人たちなんですね。働く場がないからみんな金沢へ出てきて、金沢の産業、経済を支えていただいている。だから今の金沢があるので、金沢が勝手に発展したわけじゃない。能登の人たちが支えているんだ。そのために能登が今疲弊している。その能登に救いの手を差し伸べて、能登を再生するということは、これは知事としては当然やはりやらなきゃいけない。そのことが金沢の発展にもつながっていく。

 幸い、能登の場合は、農林水産業そして観光というすばらしい資源があります。それにさらに工夫を加え、具体的な再生の道筋をしっかり探っていく。むしろ、金沢市も一緒になって能登の再生に取り組んでいく、それが私は金沢市の能登に対する恩返しだというふうに思うんですよね。

 現場で実際仕事をやっていますと、金沢へ全部集中をさせればいいという、そんな簡単な話ではない。県民の生活がある限りにおいては、そこが再生できるようなことについて、知事としてはやはり最善を尽くしていかなきゃいけない。そんな意味では、金沢の所得をこちらへ再配分するとか、そんなことも知事としてはやはりやっていかなきゃいけないというふうに思います。

井坂委員 お伝えしたかったことが少し伝わらなかったかなと思うので、もう一度申し上げるんですが、能登と金沢とで人口やあるいは予算のとり合いをして、能登を薄くして金沢を、こういう話では全くなくて、まさに能登を、代表例にしてしまって申しわけないんですが、そういう場所をもう一度元気にするために、せっかく金沢のような、単に石川県内での極ということではなくて、北陸の中で極になり得る場所が既にある中で、さらにはアジアに、日本海側のゲートウエーというようなお立場もある中で、もっと本当に広域的に金沢に人や資源が集まるような政策を県知事としてとられて、まあトリクルダウンという言い方がいいのかどうかわからないですけれども、そういう極を一生懸命つくり、そして、まさに今知事がおっしゃったように、金沢に集まった資源と人で能登も含めて県全体を潤していく、こういう方向性があるのではないかなというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

谷本正憲君 そのとおりだと思います。今度の北陸新幹線の金沢開業というのは、そういうような意味では、金沢も含め石川県をさらに強くしていく大きなチャンスだと思います。

 今、金沢港の話も申し上げましたけれども、例えば金沢港と北陸新幹線をうまく連動させていくという、こんな取り組みもこれからは視野に入ってくるんだろうと思います。そんなことによって、金沢の拠点性を高め、そしてそれを石川県全体の発展につなげていく。企業が、金沢だけじゃなしに、石川県のどこに立地をしても金沢港を使えば海外に輸出ができる、こんな道筋はしっかりこれからも探っていかなきゃいかぬというふうに思います。

井坂委員 ありがとうございます。

 あと、限られた時間で、村木社長と西田事務局長に一つずつお伺いをしたいと思います。

 まず、村木社長に、私、ちょうど介護の処遇改善のことをこの予算委員会で取り上げさせていただいたんですが、さらに具体的な現場の数字を見せていただいて、やはり心配になっているところです。事業所の規模に応じて、結局、処遇改善額が随分変わってしまうという現状を見せていただいて、端的に、それをどういう仕組みで解消すれば、現状の仕組みにとらわれず、こういう差が出てしまうのを、本当はどういう仕組みがあればそうならないのになというふうにお考えでしょうか。

村木睦君 今、処遇改善というところは、確かにいろいろなサービスによってパーセントが違ったりとか、この処遇改善も、私たちが申請をしないとその一、二、三のどれかに当てはまらないというところが実際にあると思います。

 実際に、そのサービスに対してというところではなく、例えば、今でいうと施設さんでも訪問介護という形で提供に入っています。訪問介護というのは、たった一時間しかサービスを行わない、それに対して、若干プラスアルファの処遇改善手当、通所よりも大きい、倍くらいの手当はあたってはいますが、その労力、実際に職員がもらえるものに関しては、そこの部分というのは、訪問介護の方が少ないという現状に至っていると思います。

 ですので、処遇改善手当というのは処遇をよくするものに対して与えるものに変えてしまって、実際にはそこの部分というのは福利厚生とかいろいろな形で、まだまだ介護の人たちというのは恵まれた環境の中で働いているわけではございません。そういうところに対して、どんどんバックアップをしてほしいというところに向けて処遇改善をもうちょっと使うような形にして、まずは働きやすい環境をつくっていくというところがまず基本になってくると思います。

 ですので、教育も、マニュアルもいろいろ見せていただくんですけれども、事業所にとってマニュアルが一本しかなかったり、サービスが違うのにマニュアルが違ったりということで、すごく施設に対して差があります。そういうところで、働くに当たってはまだまだ整備をしていかなきゃならないですし、あと、人事考査のところで、全然、頑張っている人に対してアップするというような仕組み等々もまだまだできていなくて、環境の整備を施設側が行っているという段階なんですね。

 なので、そういうところに、もう少し処遇改善というものをまず一旦与えて、実際に施設側が、働く人たちに対して何が不足なのかというところをきっちり準備しない限りは、堂々めぐりの話になってしまうというところがあります。

 私も、この介護の業界に入ってきて三年です。やはり普通の物づくりの企業にいたときから比べると、事業計画もなっていないですし、人事考査もなっていないですし、実際にそれにまつわる福利厚生というのもなっていないです。そういうところからきちんと見直していかないと、一人当たりに対して給料をアップするというところに対しては、処遇改善だけを上げたところで、まだまだそこの部分に対して、働くスタッフたちが満足するような金額というのは与えられない状況であると思います。

井坂委員 もう時間があれですので、西田事務局長にはちょっと労働法制をお伺いしたかったんですが、申しわけありませんでした。

 これにて終わります。

大島座長 次に、岡本三成君。

岡本(三)委員 公明党の岡本三成です。

 意見陳述者の皆様、きょうはお時間をいただきまして、ありがとうございます。お一人に一問ずつ質問をさせてください。

 本日、金沢をお伺いいたしまして、雨の中にもかかわらず、町中や市場に観光客の方がたくさんいらっしゃることに大変うれしく思いました。

 その上で、四人の皆様の質問に対して全て共通している視点というのは、地方創生といいましても、結局、そこにいる人が生きるような地方創生でなければ意味がありませんので、究極の言い方をしますと、その地域に仕事があるかということと、その地域に住んだときに、よりよい行政サービスが受けられる地域なのかどうかというところの状況をよりよくしていくことが重要だと思っています。

 知事に御質問を申し上げたいのは、先ほど来より、金沢と石川全体の構図が違うことはよくわかった上で、時間がありませんので、県全体の話としてお伺いをしたいんです。

 二次産業は、コマツさんであったり東レさんであったり、非常に調子がいいのはよくわかります。鉱工業指数が一三四というのは、びっくりする数字だと思います。三次産業も、観光を中心に、新幹線が開業すればよりふえることも目に見えると思いますけれども、一次産業におきましては、かなりハードルが高いのではないかというふうに思っています。

 ちょっと調べましたら、特に農業は、三十年前の農業産出額は三十年後の今と比べますと倍以上あったというふうに伺っておりまして、三十年間で農業の売り上げが半分になっている県なんですね。林業も水産業も大変厳しい状況なんだと思うんですが、ここに対して何かてこ入れをするような政策をお考えであれば、まずお伺いできればと思います。

谷本正憲君 一次産業はかつての勢いがなくなってきたということは事実ですね。

 我々も、能登のある集落をかつて調べたことがございます。そこで出てきたのは、担い手の年齢は当時六十八歳ぐらいでしたか、今はもう七十歳ぐらいになっているんじゃないんでしょうか。それから、十年後に農業をやっていますかと聞いたら、七割の方が農業をやっていない。それから、後継者はいますかといったら、息子や娘はいるけれども、彼らは農業はやらない、だから、九割の方が後継者はいない。そして、耕作放棄地がふえ続けるという、こんな実態が浮かび上がってまいりましたので、これに対する対応は、やはり我々としてしっかりやっていかなきゃいけない。

 そういったときに、一つは、やはり他産業のノウハウをかりるということですね。特に、コマツさんが大変最近は御熱心です。農業の現場へお入りになって、農業はまだまだコスト削減が可能だ、要するに、余りにも従来のパターンで農業をやっている、コマツの方式でやれば四割ぐらい生産コストを下げることができる、それによって農業の経営をよりいい形にしておくことができる、こんな御提案をいただきましたので、我々はコマツとかトヨタのいろいろな生産改善の手法をどんどん取り入れるということを今やっています。

 それから、農家の皆さん方にも、今までのようにつくったものを売るという発想はやめて、売れるものをつくるという方向に、これから思考を切りかえていかれたらどうですかということで、我々は、加賀野菜とか能登野菜とか戦略作物とか、そういったものに重点を絞りながら、生産者の皆様方に働きかけをしている。

 そして、もう一つは、生産者の皆さん方にも、みずから一番川下側の消費地まで出かけていって、自分のつくった農作物をPRする、そして消費者の皆さんの意見を直接聞く、それを自分の生産にまた反映していく、こういったことはほとんどやっておられなかったので、そういったこともこれからはやっていく。そのことによって、一次産業の足腰が、すぐには強くならないけれども、やはり一次産業も、二次産業、三次産業と同じような形になっていくのではないか。

 ただ、そこで気をつけなきゃいけないのは、農業はやはり自然を相手にした産業ですから、外界の温度が一、二度変わることによって生産に大きな影響を与えるという特異性が農業の場合にはある。そこは十分留意しておかなきゃいかぬと思いますけれども、それ以外のところは、今言ったような方法を取り入れることによって、農業の足腰を本当の意味で強くしていく。やはり、私はそんな方向しかないんじゃないかと思いますね。

岡本(三)委員 ありがとうございます。

 他国で農業が比較的うまくいっている国を考えますと、大規模化をして固定費を削る以外のことですと、やはり、生産性を高めるという言葉の中で何を一番やっているかというと、クオリティーを上げるのではなくて、マーケティングをやっているんですよね。ですから、今知事がおっしゃった方向性、ぜひこの石川の中で実現いただけると明るいのではないかなと感じました。

 続きまして、西田事務局長、質問させてください。

 先ほど来、経済の数字を伺っておりますと、有効求人倍率は一・五を超えている、もう驚愕的な数字ですし、鉱工業もいい、コンテナの物流の伸びも著しい中で、これは石川だけに限らず日本全体の問題なんですが、にもかかわらず、実質賃金はずっと下がっている。

 政府としても取り組んでいることの中で、例えば中小企業であれば、給与を上昇した分の比率に合わせて法人税を減免したりですとか、政労使でお願いをしたりしているわけですけれども、さまざまな経済の数字がよくなる中で、実質賃金にはね返ってこない。

 どこに問題があるというふうにお感じになりますでしょうか。

西田満明君 先ほどからの経済の状況でありますが、有効求人倍率は一・五倍を超えているという状況で、二〇一四の春闘も十六年ぶりに高水準という状況がありますが、やはり昨年の四月の消費増税分、この部分が、物価上昇分の方が上へ上がってしまったんですよね。実質賃金が、それを割り返していきますと、二年前から比べるとやはりマイナスになっている。昨年の四月以降が、前と比べるとずっとマイナスなんですよね、これがまだ伸び上がってきていない。これを少しでも上げていかないと、地方へはまだまだ、経済の好循環にはつながっていかないという状況にある。

 もう一つ言えば、先ほど来から話をしております、やはり中小零細企業が九七%という状況なんですよね。大手がしっかりと賃上げをしていく、中小零細がそこを見て追従をしていく、まだこの土壌ができ上がっていない。

 少し今回明るい兆しが見えてきたなというのは、中小含めた、商工会議所を少し回っておりますと、やはり人材不足なんですよね。求人倍率がいいということは、なかなか、大手の方には人が流れるけれども、中小へは流れない。そこをどうするんですかという話になると、やはり防衛的に賃上げをする必要があるんだろう、会社の利益云々よりも、会社に人を集めるために賃金を上げていく必要があるんだろうというところが、最近、石川の中小でも言われてきておるという部分ですよね。

 どうやって人材を確保していくのか、これが今回大変重要になってくるのではないかなというふうに思います。

 あと、先ほど観光の話もされましたので、少し地方創生のために気になるのが、石川県のタクシー業界なんですよね。タクシー業界の働く仲間の平均年齢が、もう七十歳を超えていったという状況。

 これは、やはりどうしても、歩合制の中で、平均賃金が三百万前後というところになるんですよね。そうすると、一家を抱えた若者がこのタクシーで食っていけるのかというと、なかなか難しい。そうすると、一旦職を卒業された方がタクシーの運転手として入る方もやはりおるというような状況の中で、ここが、もう五年するとタクシー運転手がいなくなるんじゃないかという懸念もされている。

 これが、私たち、今働く仲間の、地方創生のためにしっかりと取り組んでいく必要があるんだろうというところで、連合石川として取り組む必要があるなというふうに感じておる部分でございます。

 以上であります。

岡本(三)委員 ありがとうございます。

 続きまして、村木社長、質問させてください。

 社長には二点お伺いをしたいんですけれども、村木さんが初めにおっしゃった、同じ介護事業をやっている者同士なので、中立公正な取り扱いを社会福祉法人と民間事業者の中でお願いしたいというのは、そのとおりだと思います。政府税調の中でも、この二つの団体の取り扱いについてより公平性を期すべきではないかという議論が持ち上がっておりますので、これはよく心にとめておきたいというふうに思います。

 その中で、第三者評価の件について言及をいただきました。利用者によりよい情報を提供するという上でも大切なんですけれども、これは今、事業者に義務にはなっていなくて、任意になっているんですね。加えて、その事業者の方に受審の費用も負担をしていただいていることになっております。利用者の方々によりよい情報を提供して、そして、事業者同士が建設的に競争するということからも重要だというふうに思うんです。

 その中で、先ほど、評価がよかった場合には、例えば、特別加算であったり表彰であったりというようなことが期待されるということをおっしゃって、よく理解できるんですが、特別加算であれば、それこそ経済的なインセンティブがあるわけですけれども、なかなか、さまざまなハードルがあってすぐには難しいんだと思うんです。表彰という経済的なインセンティブがすぐにお伝えできないようなことであっても、事業者の方の、例えば働く従事者の方のモチベーションであったり、結果的に利用者の方がふえるであったり、表彰という形でも、事業を実際に行われている上で価値がある、価値がある政府の適切な評価だというふうに思っていただけるかどうかというのが一つ目の質問であります。

 もう一つ、先ほど、キャリアアップを図る中で、非正規の方を正規にしていきたいという思いが強いんだ、そこにはある程度手は入っているけれども、正規社員の方の資質をより上げていくことも同様に重要だというような御指摘をいただきました。

 確かに、普通の経済で考えますと、経済をよくしようと思うと、資本を投入して労働力をふやして生産性をふやすという、この生産性が介護の世界で言うところの教育になるわけでしょうから、大変重要な指摘で、介護従事者の方全体に対してよりやっていくべきだなというふうに感じたんですけれども、そこにさまざまな手当て、経済的な支援をしていこう、これに限らずなんですが、全体に従事者の方々に対しての適切な所得を目指していこうと思ったときに、どこからか原資を持ってこなきゃいけないわけですね。

 これはよく言われることですけれども、お金の出どころというのは三つしかありませんで、一つは介護保険料を上げるか、もう一つは税金を投入するか、もう一つは利用者の方の負担をふやすかというこの三つしか究極的には方法がないわけです。

 実際、現場にいらっしゃって、前者の二つは政治の場で取り組むべきことですけれども、よく私、介護事業者の方にお目にかかったときに申し上げるんですが、事業を運営していく中で利用者の方と物すごく接していらっしゃるわけで、いろいろな方がいらっしゃいますが、全体として考えたときに、介護従事者の方が提供されているサービスの質と量を考えたときに、負担をしていただく方の、利用者の方の利用料というのは上げてもいいと思っていらっしゃるかどうか。

 どういうふうにお考えかというのを二つ、教えてください。

村木睦君 まず、一つ目の御質問の方ですね。表彰制度、これは効果があるのかというところになります。

 今、地域包括支援センターが施設の中にある、病院の中にあるというお話をしました。また、地域包括支援センターはケアマネジャーさんと定例会議を行っているという話をしました。その中で、参加できない事業所があるというお話をしました。実際に、どれだけ参加できない事業所が広報誌を持っていっても、何をしても、結局、そこに集まっている人たちの声の方が大きいということなんですね。

 実際に表彰制度をすることで、そこに参加できないメンバーとか、そういう人たちが日の目に当たると言ったらおかしいんですけれども、まずは、よいことをやっている事業所さんのよい事例というのをきちんと皆さんで共有しましょうよというところが一つあります。

 小さな事業所だからできること、大きな事業所でしかできないことというのはあります。一概に、全てを取り入れることというのはできないんですけれども、まず、その情報が共有できていないという大きな問題点があります。

 なので、これは、表彰するだけということよりも、その取り組みについて介護事業所でそれを公表して、よいものをよいふうに取り入れていくということが必要であるべきですし、やはり頑張った企業に対しては、地域包括支援センターも実際にそこの情報を得る努力をしなければいけないというふうに思っております。

 ですので、会社でいうと、それが人事考課に当たったりとかいろいろしますから、一円のお金も発生しないのかというと、ちょっと実際やる気のところはどうかとは思いますけれども、小さな金額でも、やる気を起こすというところがまず必要だというふうに思っております。

 二つ目の質問のところになりますが、私たちは、今回の介護報酬のところは引き下げられましたけれども、利用者様の負担が減るということで納得しております。

 ですので、私たちもいずれ高齢になります。そうなったときに、今幾らのお金を手に持っていると、皆様方、介護の施設に入れると思われますか。

 年金が、恐らく私のときには、厚生年金も含めてですよ、一カ月七万くらいしかあたりません。今の、年金の通達便というか通信便が来ますよね。あれを見ると、私は七万しかあたりません。でも、今実際に、特養でもない有料老人ホームに入ろうとしたならば、石川県であっても十五万から二十万の金額が要るんですよ。やはりそのときに、そのお金を今から私たちはためなきゃいけないというふうに思っています。

 自分の立場になったときに、やはり利用者様というのは、今まで、日本で言う経済の成長率が一番ピークのときに働かれてきて、今の日本の経済を支えられた方々ですし、その方から利用料を上げるということは全く考えておりません。

岡本(三)委員 わかりました。ありがとうございます。

 本田先生、質問させてください。

 先生のこのペーパーの中の四点目に、「若者の機会・希望の格差について」ということで、先生は学生に教えていらっしゃる立場からさまざま御提言いただいているんですけれども、先ほどのほかの方のお話の中でも、女性の就業よりは新卒の就業が難しいという村木社長のお話もございました。大学、専門学校、高校もそうなんだと思うんですけれども。一方で、本田教授は、奨学金の取り扱いによってUターン、Iターン、Jターンをふやすようなことというのは、よりよい取り組みになるのではないか、さまざまいい御指摘、御評価をいただいたんです。

 例えば、本田教授もアメリカで研究されていらっしゃる、私も学生のときアメリカにいたんですけれども、大学生で就職活動する人なんていないですよね。大体二つのパターンで決まりまして、一つは、大学が終わった後、一年間ぶらぶらして世界を旅しながら何となくやっていると、それなりに仕事が決まっていく、これは経済の好循環があるからなんですが。

 高校生の多くは、高校生のときにほとんど全員がインターンをするんですね、夏休みに一カ月、二カ月。しかも、ほとんどが地元の企業です、高校生ですから遠くまで行けませんので。そのインターンの中で、これはアルバイトですから、何となく思っていた会社のイメージと比べて本当はどうなのかとか、中小企業なので心配と思っていたけれども、アルバイトしたら実は安心して働けるいい会社であったりとかという、マッチングの機会の多くが、高校、専門学校、大学と、地域のインターンとなっているんです。

 日本の場合、残念ながら、高校生は当然のこととして、大学生でもほとんどインターンの機会が提供されていないような中で、例えば、これは知事にもぜひ御意見をいただければと思うんですが、石川県においては、石川県内の学校に行っている人には一〇〇%インターンを保障します、それだけの企業は商工会議所を中心に見つけてきます、他県からIターンで来たい人も最大限努力をしてその機会を与えます、もし嫌いだったら、一カ月間だけのインターンですからほかに行ってくださって結構です、ただ、もし気に入ったらぜひ来てくださいというようなことをやられると、日本の学生のメンタリティーに合うかどうかということを、ぜひ先生の立場からお伺いしたかったんです。

 同じようなことで、石川に若い人が集まるための情報が、ただネットやいろいろな書物ではなくて、自分の体験として得られるようなことにして、若者が集まってきて雇用の機会がふえて、そして産業が盛り上がるようにしていければいいかなというふうな期待を持っているんですが、いかがでしょうか。

本田雅俊君 申し上げます。

 今おっしゃったまず一つ目、必ずしも新卒の就職が有利ではないのではないか。確かにそういう点もありますけれども、資格がかかわる場合は特にそういうことがあるんだろうと思います。そうでない場合は、これは地域によってかなり温度差というものがあると思いますけれども、新卒の場合、私は必ずしもそんなに不利ではないというふうに思っております。

 ただ、どうしても、これだけインターネットの時代とはいいましても、情報量という意味ではやはり大都市圏の方が非常に有利なものですから、地方がちょっと出おくれる、そういうことがあるのかなというふうに思っております。

 奨学金の関連で、インターンのことをお尋ねになりました。

 確かに、アメリカではインターンが本当に一般化しております。先生おっしゃるとおりでございます。日本でも、かつては余りインターンというのは、アルバイトかそうじゃないかという分け方しかなかったんですが、最近は徐々にインターンというのはふえてきていると思います。

 中高生、まあ中学生のインターンがどのぐらい将来のことにつながっているのか、これは別にしまして、中高生へのインターンを取り入れている学校も非常にふえてきていると思いますし、大学の場合はインターンを単位化しているところも非常にふえてきていると思います。

 そういう意味では、必ずしも昔のようなインターンの認識とはちょっと違ってきていると思いますので、これをどんどん、先生おっしゃるように、地方創生、地域の活性化にうまく結びつけて、さらには、例えば大都市圏の大学生だって、地方でインターンをしたら、いきなり就職で地方に行って勤めるのではなくて、不安とかいろいろな心配を払拭することにも役立つのではないかと思いますので、私は、今おっしゃったこと、大賛成でございます。

 ありがとうございます。

岡本(三)委員 委員長、時間が終了しておりますが、知事に一言だけお願いしてもよろしいですか。

大島座長 知事、それではお願いします。

谷本正憲君 岡本委員がおっしゃったとおりだと私は思います。

 我々も今回、地方創生を進めるに当たって、いろいろな実態調査をやってみました。そうしたら、県内の生徒で、そのうちのやはり六割が県外の大学へ進学しているんですね。そのうちの四割が県外の企業に就職している。特に首都圏の場合には、四割じゃなしに六割の学生がそのまま県外の企業に就職をしている、そういう実態が明らかになってきました。

 それは、県内企業に魅力のある企業がなくて県外企業に就職をしているのかと我々は思っていたんですが、どうもいろいろ話を聞いてみると、卒業して県外の大学へ行った後は、石川県の方からそういう企業についての情報提供が何にもない、何にもない中で、進学した大学での企業情報の提供をもとにして就職先を決めている、そんな結果も出てきたんですね。

 そういうことになると、我々はやはり、県外の大学へ進学した生徒さんについても、後をフォローしていかなきゃいけないな、石川県の企業情報をしっかり提供していかなきゃいけない。それはもう一歩進めて、県内企業へのインターンシップ、そんなことの働きかけをこれからしていき、もう少しかかわり合いを強くしていかなきゃいかぬな、そんなことを今反省もしておるところなんですね。

 ですから、県内企業にはこれから働きかけて、県内の大学に進学した学生さんも含めて、そういうインターンシップを積極的にやっていこう、県内の企業にも、ぜひそういう受け入れをするべきだという働きかけを我々はすることにします。そのことによって、地方創生を一歩でも実現していく、Uターン、Iターンをさらに実現していく、そんなことをぜひ目指していきたいと思っていますので、これはもう御指摘のとおりだというふうに思います。

岡本(三)委員 ありがとうございます。

 終わります。

大島座長 次に、藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 四人の陳述人の皆様、きょうは本当にありがとうございます。

 私、実は所属は経済産業委員会なんですけれども、さきの総選挙で、この石川を含みます北陸信越ブロックから選んでいただきまして、そういうこともありまして、この石川で公聴会が開かれるということで質問の機会を与えていただきました。本当にありがとうございます。

 私も、四人の皆様にそれぞれ御質問させていただきたいと思っております。

 まず初めに、大学の先輩でもありますが、谷本知事にお伺いしたいと思っております。

 先ほど来お話ありましたけれども、間もなく、本当に間もなく北陸新幹線開業ということで、石川県の経済社会にとっても大変大きな局面になってくると思うんですけれども、石川県は、この新幹線開業に向けて、三つの条例を準備されているというふうにお聞きをしております。その三つというのは、文化振興の条例、食の安全の条例、そして中小企業振興の条例ということで、石川の経済界では、石川の三本の矢だというお話も伺っているわけです。

 この二月の県議会にも提出されているというお話ですが、このうち文化振興条例では、さまざまな、ほかの県では、文化振興といいますと伝統芸能とか芸術がメーンで、その域を出ないことも結構あるんですけれども、ここ石川では、伝統工芸や食文化も含んで振興されるということで、いわゆるNHKの朝ドラにありました海女、石川の海女の文化も振興していくというようなこともお聞きしておりますので、大変独自色が強いな、さすがだなというふうにも思っております。

 私も、党の穀田恵二衆議院議員や吉井英勝衆議院議員の秘書をしていた時代に、主に中小企業の問題を担当させていただいておりましたので、全国での中小企業条例の運動などにも参加させていただいたんです。

 きょうは、そういう意味では、この三つの条例全てについてしっかりお聞きしたいんですけれども、ちょっと時間の関係で、三つ目の中小企業振興条例につきまして、正式名称は、ふるさと石川の地場産業を担い地域経済を支える中小企業の振興に関する条例というものですけれども、これについて、中心的にお伺いしたいと思います。

 国の方でも、二〇一〇年の六月に中小企業憲章を制定いたしまして、そして、昨年の六月には小規模企業の振興基本法も成立いたしました。そういう意味では、国としても、中小企業そして小規模企業に光を当てる時代になったというふうに思っているわけです。

 そういう点で、この石川の中小企業振興条例にも、小規模企業の項目もございますし、趣旨のところでも強調されているということで、私も大変注目しております。

 そこで、知事にお聞きするわけですけれども、この条例の中で、県の責務として、県の策定する産業の振興に関する指針を踏まえ、総合的な施策を積極的に講じる、あるいは、施策を講ずるに当たって、主導的な役割を果たすという文言が盛り込まれているわけですけれども、具体的にどのようなことをお考えなのか。

 例えば、先ほど知事もお話ありました、物づくり県であるこの石川の、その物づくりを支えている中小企業あるいは小規模企業の下請単価を初めとしたさまざまな振興策というのはあると思うんですが、具体的にどのようなものをお考えでいらっしゃいますでしょうか。

谷本正憲君 石川県の産業を支えているのは中小企業、石川県の企業を見ても九九%までは中小企業ということですから、この中小企業の元気といいますか頑張りなくしては石川県の産業自体ももちろん成り立たないということでありますし、コマツさん一つ例にとっても、その傘下には四百五十社もの中小企業が存在しているということですから、中小企業にはさらに独自性を出して頑張ってもらわなきゃいけない。そのために、我々、従来も、例えば、中小企業の新たな市場開拓とか新商品開発とか新たな技術開発、そういったものに向けてのファンドでの支援策は、これまでずっと講じてまいりました。

 ただ、よりどころになる条例というものはなかったわけでありますけれども、実態としてはそういう形で手厚い支援制度を設けていたわけなんです。

 国の方で、あれは議員立法でしたか、小規模基本法が新たに制定をされたということもありますし、国全体としても、やはり中小企業にもう一度光を当てていこう、こんな動きが出てきたという中で、我々は新幹線の金沢開業を迎える。ここで、石川県の経済を支えている中小企業にもう一度頑張ってもらわないといけない。そのためには、そのよりどころになる条例というものがやはりあった方がいいのではないか。実は、県内の商工会連合会の方からもそういう御要請がありましたので、タイミングとしては新幹線開業のこの時期がベストタイミングだなという形で、条例を今、議会の方に提案させていただいているということであります。

 具体の施策については、既に我々、石川県の産業成長戦略というのは別につくっておりまして、そこで詳細な支援策も盛り込んでおりますので、それを条例でいわばオーソライズしていく、そんな形に私はなっていくのではないかと思います。

 いずれにしても、この条例が議会の方で御承認をいただければ、その条例をよりどころにして、産業成長戦略もまたよりどころにして、意欲のある中小企業の取り組みをしっかりバックアップしていきたい、そして、石川県が目指しておるニッチトップ型の企業をこれからふやしていく、そんな取り組みを加速させていきたい、そんな思いで、今回、条例案を議会に提案させていただいておるということです。

藤野委員 ありがとうございます。

 あわせまして、村木社長に、中小企業の現場、あるいはその支援もされているというお立場、あるいはソニーで働いた経験もあって物づくりの現場も御存じであるという立場から、中小企業の振興あるいは小規模企業の振興といった場合に、国への要望といいますか、先ほどの岡本委員からの質問とも重なるかもしれないんですが、もっとこういう支援が欲しいというものがあれば、教えていただければと思います。

村木睦君 中小企業が一番困っているところというのは、例えば消費税が上がった後のその支払い方法であったり、これは例えば、今、所得税とかというのは、実際に年に何回しか払えないというようなところがあったりとかするんですけれども、中小企業が一番困っているのはキャッシュフローなんですね。その中で、払わなければいけないものは明確にわかっているんですけれども、大きなお金がどんと入ってくるわけではないので、できるだけ分割で納めていく形というところはすごく望ましいことだと思います。

 ですので、徴収は大変だとは思うんですけれども、そういう部分に関しましては、次また消費税が上がっていきますよね、その際には、もうちょっと支払いが細やかな形で払えるようなことをしていかないと、実際に大きなお金が動くときに、全て借り入れをしなきゃいけないという状況が今発生しております。

 実際に借り入れをしなきゃいけないときに、やはり赤字方向に数字があると、どうしても銀行からはお金が貸していただけません。その中で、経済的な今後の見通しというところの事業計画なり、いろいろな数字というのを出さなきゃいけないんですけれども、企業が一生懸命それを出したところで、実際に欲しい融資が通らないというのが現状です。この貸し渋りというところは、まだまだ発生しています。

 その中で、やはりキャッシュフローが回らないと、会社の社長なりそういうトップの方々というのは、金策に走ることが必至な状態になりまして、全然、本来の営業活動ということとか本来の事業計画というところに、本来しなきゃいけないところの業務ができないんですね。

 ですから、このキャッシュフローというところを回していくに当たって、どうしても今の段階でも、教育にお金をかけたい、いろいろなことにお金をかけたいと思っていても、そこの部分、キャッシュフローが回らない、回りにくいという現状を解消していかないと、実際にはすごく難しいというところがあると思います。

 ですので、そういうような細かい支払いというような形とか、実際には貸し渋りというところを、戦略を見て、実際にその計画を見て、そこで本当にジャッジしていただくというようなところをしっかりとしていただきたいなというふうに思います。

藤野委員 ありがとうございます。

 改めてちょっとまた知事にお伺いしたいんです。

 私、先日、予算委員会で原発の問題を質問させていただいたんですが、この石川にも志賀原発がございまして、調査によれば、一号機の建屋の下にはS―1断層、二号機タービンの下にはS―6断層、そして、敷地から北方九キロには富来川南岸断層、さまざま指摘をされております。他方、北陸信越ブロック全体でも、福井県や新潟県もありまして、多くの原発があって、各県ごとに特徴も違っているというふうに思っております。

 そこで、石川県は昨年の十一月に避難訓練を行われて、これは国も入って行われたということで、大変さまざまな知見が得られたというふうに伺っております。

 そこで、訓練参加機関が百五十機関、そして参加者が三千七百四十名というかなり大規模な訓練だったというふうに思いますので、この訓練で得られた知見というものを、私、原子力規制委員会の議事録、昨年十二月二十四日のを読ませていただきますと、例えば、安倍総理の緊急事態宣言がテレビで音声が出なかったとか、風が強くて船が出せなかったとかヘリコプターが飛べなかったとか、そういうことが規制委員会では指摘をされているわけですけれども、知事として、今回の訓練でどのような知見が得られたのか、そして、それに基づいて、国にどのような支援といいますか、国がもうちょっとこういうことをやってほしいというのがあれば、お聞かせいただければと思います。

谷本正憲君 今回の訓練は、我々にとっては初めてでしたけれども、国といわば共同して訓練ができたという意味では、一朝事あったときにはやはり国がきちっと主導権を発揮して必要な対策を講ずる、そんな意味では、私は大変意味のある訓練だったというふうに思います。

 たまたま非常にお天気が悪くて、出すべき船が出なかった。本来、海上自衛隊の船とか海上保安庁の船であれば、あれほどのお天気はどうということはなかったんでしょうけれども、そこまでなかなか現実には用意できないということがありましたので、こういう訓練はやはり重ねていくことが大事ですから、気がついたことはまた次の訓練に反映をしていく、そんな意味では、私は大変意味のある訓練だったというふうに思います。

 これは毎年毎年というわけにはなかなか国の方もいかないんでしょうけれども、定期的には、そういう、国と共同して訓練をすることによって、またお互い新たな発見というものが出てくるんじゃないかと思いますし、そういったものを一つ一つ修正して、より実効性のある訓練にしていくということが大事じゃないかというふうに思います。

藤野委員 ありがとうございます。

 避難の問題というのは全国各地で大変関心も高い問題ですので、ぜひまた今後もいろいろ御指摘いただければと思っております。

 続きまして、西田事務局長にお伺いしたいんですけれども、先ほど労働者保護のルールのお話がありまして、岩盤規制というお話も西田さんからありましたが、今の日本の労働界の状況というのは、何か岩盤に守られているというよりも、ルールがほとんど実効性がなくて、むしろ軟弱な地盤なんじゃないか、ずぶずぶな状況で、岩盤とは言えないんじゃないかというような認識も私たちは持っているんです。

 その点についての御認識を一つお聞きしたいのと、あと、もう一つ、西田さんから若者の離職率が高いというお話がありまして、最近になって、努力義務ですけれども、開示の義務も出たということで、私ども、ブラック企業対策法というものも国会で提案をさせていただいた経過もあって、このブラック企業対策法の中に今おっしゃっていただいた離職率の公表というものも入っていたわけです。

 さらに、こうしたものはどういうルールが必要かという点で、先日私どもの委員長が、例えば、今、厚生労働大臣告示というものもありまして、残業代四十五時間上限にせよという、告示レベルの話でいけばあるんですけれども、これの法制化なんかが必要じゃないかという提起もしたわけですが、現場のお立場で、軟弱といいますか、これからルールをつくるとした場合に、どういうルールが必要なのかというのを幾つか御提示いただければと思います。

西田満明君 労働者保護ルールの関係でございますが、岩盤ではなく、ずぶずぶではないかという御指摘でございます。そこは、多分、感じるのは、やはり組合の加入率の問題も中にはあるのではないかなというふうに思いますね。八割を超える方が組合に加入していない、なかなか手が届かない、そこが岩盤ではないのではないかという御指摘に当たるのではないかなというふうに思います。

 しっかりそういったところでは組織化を進めていき、先ほど来から話をさせていただきました、やはり組合に加入していない方々の声も聞ける体制をつくっていく、そのことが大変必要になってくるのではないかなというふうに思います。

 若者の離職率、この問題は、先ほど情報開示が必要だというところもございました。その中の、もう一つ私どもも心配だなというふうに思っているのが、やはり、高校から入られた、高卒の方の新入社員。とりあえず入ってみなさいよという指導の先生もおいでるという話も離職の原因にはなったと。

 やはりそこは就職率の向上のためにという部分があるのかもわからないんですが、とりあえず一旦はどこでもいいから会社へ入ってみなさいよと。けれども、入ってみたら、自分のやりたいことが本来はあったんだと。会社へ入って、やはり違うよね、自分のやりたいことがありますというところがあると、やはり早い段階で会社を離れてしまう。ここも一つ問題があるのではないかな、ここも一つクリアしていかなきゃいけないのではないかなというのは、連合としても問題に思っているというところでございます。

 ブラック企業対策の部分でございますが、どういったルールが必要かという部分が、先ほど来から、まずは、弱い立場で働く方々、非正規で働く方々、この方、派遣法を改悪していくと、またぞろやはり過去に戻っていきますよね。そうすると、せっかく自殺者が減ってきたこの状況が、また三万人をはるかに超えていく、ここが大変な問題になってくる、労働時間の問題もしかりというところであります。

 今この石川県内、働く仲間の七割が、やはり中小企業に働く仲間であります。この石川県の県民性でいうと、本当に真面目に働く方々なんですよね。有給休暇の取得率は低い、しかし残業は多い、中には不払い残業もあるというような状況。そこの中に、新しく、ワークルールの改悪の中に、今、プロフェッショナルですよね、それを取り入れてしまうと、まさしく労働時間管理ができなくなる。そこもしっかりと改悪をとめていく必要があるんだろうと思います。

 また、もう一つは限定社員制度、これも一つ入ってくるんだろうというふうに思います。

 今、非正規で働く方々、とりあえず社員でという部分はやはり望んでいますよね。なかなか若者は結婚ができない、年収二百万以下と言われるワーキングプアの方々が一千百万人を全国で超えていっている、子供も産めない、この状況は打破したい。正社員だと言われれば、やはり飛びつくところはあるんですが、これも、限定正社員でいくと、その地域で企業がなくなると、それは簡単に首切りができますよ、こういったところもしっかりと改善をやはりしていく必要があるんだろうと思います。

 限定社員、地域限定じゃなく、その企業にしっかりとした正社員として入っていただく、このルールにしていく必要があるというふうに考えてございます。

 まだまだ何点かありますが、以上にしておきたいと思います。

藤野委員 ありがとうございます。

 この国会はそういう意味でも大事な国会になると思っておりますので、頑張りたいと思っております。

 あと、本田先生にもお伺いをしたいと思うんですが、私は北陸選出ということで、福井県もあるんですが、先日、本田先生は福井に行っていただいて、こういう地域経済を含めた、政治を含めた講演をしていただいて、大変ありがたいと思っております。また、先ほどのお話でも、富山県の取り組み、近畿大学が富山に行ってというお話も御紹介いただきました。

 そういう点では、研究に携わっていらっしゃるお立場から、新幹線開業は一つの契機ではあるんですけれども、先ほど商工会議所へ行きましたら、金沢ひとり勝ちになっては困るというお話も会頭からありまして、困るというか、ならないようにということで努力されているというお話もありまして、そういう意味では、北陸三県、あるいは長野、あるいは新潟、広く言えば関西もあるわけですけれども、それらの連携といいますか、どのように全体として活性化していくか、こういったお考えなり、こうじゃないかというサジェストなりがあれば、お聞かせいただければと思います。

本田雅俊君 北陸三県、はたから見ていますと、それぞれの知事さんたちは非常に協力して、今回の北陸新幹線、あるいは観光振興、そういうものに取り組んでいるように拝見いたしております。産業界におきましても、お互い連携をしております。さらには北信越、いろいろな会合とかで、ここも連携ができているんですが、では、さらにそれを一歩進めて、必ずしも今の御質問に関連していないかもしれませんが、先ほど申し上げました、例えば、では道州制へつながるような議論までいっているのか、あるいは、もう少し深く入り込んだ連携の話までいっているのかというと、私は、決してそうではないような気がいたします。

 もちろん、それぞれの知事さん、首長さんたちは、それぞれの県の代表ですので、まずは県の利益を最大化することが大事なんだろうと思いますけれども、もう少しお互いに力を出し合ってやれることがあるんじゃないかなと思いますし、そうした、これは市町村の場合もそうですけれども、県同士の連携、連合にももう少し国の方で支援をする形をとったら、インセンティブが働くのではないかなと思っております。

 以上です。

藤野委員 ありがとうございました。

 これで終わります。

大島座長 以上で委員からの質疑は終了いたしました。

 この際、一言御挨拶申し上げます。

 意見陳述者の皆様方におかれましては、本当に御多忙中のところ、長時間にわたりまして貴重な御意見を述べていただき、まことにありがとうございました。

 石川県の県政の立場から、あるいは労働運動の立場から、あるいはまた中小企業の社会保障にかかわる問題から、また本田先生は学者として、大変多様な陳述を頂戴しました。

 私ども、今後、この委員会の審査に資するところ極めて大なるものがあると存じます。ここに厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。

 また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして、心から感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

 これにて散会いたします。

    午後三時三十九分散会

    ―――――――――――――

   派遣委員の島根県における意見聴取に関する記録

一、期日

   平成二十七年三月四日(水)

二、場所

   ホテル一畑

三、意見を聴取した問題

   平成二十七年度一般会計予算、平成二十七年度特別会計予算及び平成二十七年度政府関係機関予算について

四、出席者

 (1) 派遣委員

    座長 森山  裕君

       金子めぐみ君   熊田 裕通君

       小林 鷹之君   土井  亨君

       原田 義昭君   平口  洋君

       逢坂 誠二君   階   猛君

       津村 啓介君   重徳 和彦君

       吉田 豊史君   上田  勇君

       樋口 尚也君   大平 喜信君

 (2) 意見陳述者

    島根県知事       溝口善兵衛君

    株式会社玉造温泉まちデコ代表取締役社長    角  幸治君

    隠岐島前高校魅力化コーディネーター      岩本  悠君

    島根大学名誉教授    保母 武彦君

 (3) その他の出席者

    財務省主計局主計官   彦谷 直克君

     ――――◇―――――

    午後二時一分開議

森山座長 これより会議を開きます。

 私は、衆議院予算委員会派遣委員団の団長を務めております森山裕でございます。

 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願いを申し上げます。

 この際、派遣団を代表いたしまして一言御挨拶を申し上げます。

 皆様御承知のとおり、当委員会では、平成二十七年度一般会計予算、平成二十七年度特別会計予算及び平成二十七年度政府関係機関予算の審査を行っているところであります。

 本日は、三案の審査に当たりまして、国民各界各層の皆様方から御意見を承るため、当松江市におきましてこのような会議を開催させていただいたところであります。

 溝口知事を初め御意見をお述べいただく皆様方におかれましては、大変お忙しい中にもかかわりませず御出席をいただきましたこと、まず厚くお礼を申し上げます。

 また、マスコミの皆さんや傍聴していただく県民の皆様にも、厚くお礼を申し上げる次第であります。

 御意見をお述べいただく皆様方におかれましては、どうぞ忌憚のない御意見をお述べくださいますようにお願いを申し上げまして、開会に当たりましての御挨拶とさせていただきます。

 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明を申し上げます。

 会議の議事は、全て衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言をされる方は、その都度座長の許可を得て発言をしていただきますようにお願いを申し上げます。

 なお、御意見をお述べいただく皆様方から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、意見陳述者の皆様方からお一人十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えを願いたいと存じます。

 なお、御発言は着席のままで結構でございますので、よろしくお願い申し上げます。

 それでは、本日御出席の方々を私の方から御紹介申し上げます。

 まず、派遣委員は、自由民主党の原田義昭委員であります。次に、同じく自民党の平口洋委員であります。次に、自民党の金子めぐみ委員であります。次に、自民党の熊田裕通委員であります。次に、自民党の小林鷹之委員であります。次に、自民党の土井亨委員であります。次に、民主党・無所属クラブの逢坂誠二委員であります。同じく民主党・無所属クラブの階猛委員であります。同じく民主党・無所属クラブの津村啓介委員であります。維新の党の重徳和彦委員であります。同じく維新の党の吉田豊史委員であります。公明党の上田勇委員であります。公明党の樋口尚也委員であります。日本共産党の大平喜信委員であります。以上でございます。

 次に、本日御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。

 溝口善兵衛島根県知事でございます。株式会社玉造温泉まちデコ角幸治代表取締役社長であります。隠岐島前高校魅力化コーディネーターをお務めの岩本悠さんであります。保母武彦島根大学名誉教授であります。以上四名の方々でございます。

 それでは、まず溝口島根県知事に御意見をお述べいただきたいと存じます。

溝口善兵衛君 それでは、御指名でございますので、私の方から説明をさせていただきます。

 私、資料一、二、三とお配りをいたしておりますが、これは質問のときのデータなどとして活用させていただきたいというふうに思っております。

 本日は、人口問題を中心として、地方、島根などでどういうふうに考えておるのか、どういう状況にあるのかといったことを説明し、私どもの要望等を申し述べたいと思います。

 国におかれましては、現在、日本経済の再生、地方の創生、あるいは景気回復、あるいは、政府におかれましてはアベノミクスの地方への浸透など、さまざまな分野でさまざまな施策を同時並行で進めておられるわけでございます。

 大きく分けますと、短期的な景気対策と申しますか、景気の変動、特に、消費税引き上げに伴う景気回復のおくれに対する対応、あるいは、輸出企業、大企業あるいは大都市を中心とした景気回復が速いのに対しまして地方でおくれているといった問題に対応するといった政策、そしてまた、中期的には、国、地方を通じまして財政が厳しい状況が続いておるわけでございまして、そういう中で、将来、増嵩し続ける社会保障の財源をどう確保するのか、その改革をどう進めるのか、そのために消費税の引き上げあるいは財政の健全化をどうするかといった中期的な課題があるわけでございますし、そして、その上に、超長期と申しますか長期と申しますか、日本全体の人口の減少、特に地方における人口減少にどういう対応をすべきか、いろいろな政策が同時並行で進んでおるわけでございます。

 この点、国民の方々によくわかるように、政府におかれて、国におかれて整理をして説明していくということが、国民の皆さんの理解を得るのに必要なことではないかというふうに思うわけでございます。

 人口問題は、後で若干触れますが、特に日本の戦後の発展の中で長い時間をかけて進んできた問題であります。これを克服するためにはやはり相当長い時間を要するだろうと見ておりますが、こうした長期的な人口対策につきましては、国民の理解を得ながら、政府や自治体だけでなく、国全体として本腰を入れて取り組んでいかなければならないというふうに思うわけでございます。

 その対策に必要な点を三点、最初に申し上げます。

 国全体として、子供を産み育てる、多くの子供が生まれて健全に育つといったことが大事でございます。

 日本の中を見ますと、子供を産む世代が減少する中で、出生率の高いところ、子育てのしやすいところ、いろいろあるわけでございますが、子育てが比較的しやすい地方に若い世代のための働く場をどんどんつくっていき、地方に人口を分散させるということが一つの方法として大事な課題だろうというふうに思います。

 それから二番目に、そのためには産業の振興などを行っていく必要があるわけでございますけれども、島根などで感じますのは、やはり大都市から非常に遠いといったハンディが産業の振興に大きな障害となってきたというふうに思っているところでございます。

 これまでの道路などのインフラの整備は、できるだけ多くの人が住んでいるところから順次やっていきましょうと、いわば多くの人が恩恵を受けるように、人が住んでいるところに対してインフラの整備が手厚く行われてきたわけでございますけれども、これからは、若干視点を変えまして、人が住みやすいところ、住むべきところ、あるいは子育てのしやすいところ、そういうところにも手厚いインフラの整備が行われるということが大事ではないかというふうに思うわけでございます。これによりまして、東京など大都市に集中する人口が分散をする、働く場が広がる、これが大事なことだというふうに思っております。

 それから三番目に、世代間では、子育て世代に所得の分配といいますか、それを配慮していくということが大事だろうというふうに思うわけでございます。

 ほかの制度を変えないでこういうことをやっていくということはなかなか難しいわけでございますし、新しい視点でこうした政策を進めようとしますと、国民の間で利害の違い、対立も起こるわけでございます。この問題に対しましては、やはり国政の場で、政治の場で進むべき道をきちっと模索していくということが求められている状況ではないかというふうに認識をするところでございます。

 そこで、資料一というのがございますが、島根の人口減少がどのようにして起こったのかということをこの資料で少しお話ししたいと思います。

 一ページをめくっていただきますと、島根の人口の動向というものがございます。

 一九四七年、戦後から、一九五五年、高度成長が始まるところでございますけれども、九十三万人ぐらいありました。一九七五年、高度成長が終了する時期でございますが、石油価格が一バレル一ドルから四ドルに引き上がって、経済の状況が変わり、ここで日本経済もある意味で停滞の局面に入っていくわけでございますが、それまでが二十年間あります。この二十年間に人口が十六万減っています。

 それから、その後、停滞が続き、大都市での仕事の場が余りふえない、大都市が人口を必要とする、あるいは吸収する力が弱まってまいりまして、島根からの人口の流出も少しずつになっていきます。二〇一四年までの四十年間に七万人の減でございます。最初の二十年間で十六万人、その次で七万人、こういう違いがあるわけでございます。

 下のグラフがその原因を示しておるわけでございまして、上の黄色い部分が社会増減でございます。人口が、出る人が上の点線、入ってくる人が下の青い線でありますが、この間に大体十六万人減っています。外に出た人が大体二十数万人おりまして、その時代はまだ若者がおりましたから、出生率は高くて、自然増もございまして、ネットで十六万減っている。

 しかし、その過程で若者たちがどんどん減ってまいりますから、今度は子供を産む世代が少なくなって、出生数も減ってまいります。これが、人口のピラミッドが変わったということが大きな要因でございまして、それを簡単に示したものが二ページでございます。

 二ページをお開きいただきますと、一九五五年は九十三万人でございまして、一歳ごとの人口が男女両方書いてあるわけでございますが、若い世代が多いと、産む若者の数がふえますから、人口は自然にふえていく。これが人口がふえる場合の健全な形であるわけでございます。

 二十年たったところでは、これがずんどうの形になるわけでございます。若い人たちが、子供を産む世代が減るわけでございます。一番上の表の赤い部分がいわゆる団塊世代の始まりのところでございます。それが、二十年たったところでは、二十歳と三十九歳の真ん中辺でとがったところがございますが、そんなに縮んだわけでございます。若い人がいなくなったわけでございます。その若い人たちが子供を産むわけですから、子供はもっと減るということになるわけです。

 これが、ほぼ四十年たつと、一番下のようなグラフになって、産む人が少なくなった。二十代を超えるぐらいから、就職をする、進学をするといったことで大都市に出てまいりますから、子供を産む若い世代が減る。そうすると、生まれる子供はもっと減る。

 そういうプロセスが四十年間続いて起こっているわけでございます。これは、この構造が変わらない限り直らないわけでございます。もちろん、出生率を高くするというのは若干はありますけれども、そんなにはすぐはきかないわけでございます。

 したがいまして、地方の創生、島根のような人口が減っているところでは若者の職場がふえるような政策をとっていく。

 資料二の方に、島根がどういうものをこれまでとってきたかというものをグラフ等で書いてございますが、時間の関係で、そこら辺はまた後ほど御質問にお答えする形で説明いたしたいと存じますし、それから、今、政府の地方創生の中で島根がどういうことをやろうとしておるかということも資料二の中にございます。そういう点をまた後ほど申し上げたいと思います。

 資料三は、十一月に、政府の動きを受けまして、国としてこういう施策をとる必要があるというものをリストアップしたものでございます。これにつきましても、後ほど御質問等があればお答えを申し上げたいと思います。

 時間の関係で、とりあえずここでとめておきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。(拍手)

森山座長 ありがとうございました。

 次に、角幸治社長にお願いいたします。

角幸治君 ありがとうございます。

 立ってやっていいということだったので、ちょっとこっちに移動させていただきます。

 私、玉造温泉、田舎からやってまいりました角と申します。民主党の岩田先生から最初にお話をいただいたときに、いや、そんな、私なんてと思ったんですが、きょうは、大変いい機会をいただけると思いました。それで、この機会に、ぜひ、国会議員の先生方に、まずは感謝のお礼をしたいなと思っております。それと、恩返しをしたいなと日々思っていますので、それをお伝えする時間にさせてもらえればと思います。

 では、まず最初に、事例発表者、私ですけれども、ふだんはこんな格好をしています、ふざけていますが。島根県出身で、島根県の高校を卒業して、島根で就職をした、きっすいの島根人で、IターンとかUターンとかがはやっていますけれども、何ターンも全然していないような人間です。現在は、玉造温泉の観光協会の嘱託職員をしながら、まちデコというまちづくり会社の社長という二足のわらじを履いております。

 まず、お話をするときに、十年前の我々の玉造温泉というのはどういう町だったのかということですが、お客さんが減りました、お店もどんどん閉店していってシャッター商店街になりました、誰も歩かない温泉街になって、一言で言うとゴーストタウンのような町。余談ですけれども、平成十九年のころには、旅館が四軒潰れて、このままいくともう大変なことになるねみたいな状態でした。

 十八年から、予想図ではどんどんどんどんお客さんが減っていって、五軒目、六軒目の倒産旅館が出て、全滅するんじゃないかななんという話もありましたが、結果、このようにふえていった。リーマン・ショックも乗り越えて、震災の復興キャンペーンも乗り越えて、二十五年は遷宮もありましたが、二十六年は大体百十五万人ぐらいじゃないかと予想しております。

 そんな温泉街を再生させた四つの成果事例、ここからは具体的に話をしたいと思います。

 まず一つ目は、ふるさと雇用再生特別基金事業。皆様も覚えがあると思います。緊急雇用とかいうものですけれども、あれによって再生しました。これは、詳しくは後ほどです。

 二つ目、まちづくり交付金の活用によって五年間やった結果、二十五年には国交省から、何と、達成大賞ということで、評価もいただきました。

 それから三つ目は、稼ぐ観光協会。私の本業になりますが、自立に向けた体制を見直ししました。それによって事業収益が、当時六十六万円しかなかったものが、三十倍ぐらいですか、二千万円まで今は膨れ上がっています。

 それから四つ目は、地域住民が参加するおもてなしということで、現在でも、ボランティアさんが三百六十日、ほぼ一年じゅう、二十人ぐらいがやるようなこともしています。

 この中の一番、もう現在はたしかなかったと思うんですけれども、緊急雇用で一体何をしていたのかというと、ブランド化をしました。

 玉造温泉は、千三百年前に出雲風土記というものに書かれた、日本で初めて美肌温泉と呼ばれた温泉であり、現代科学で調査した結果、潤いを与える力は日本一じゃないか、この二つの武器を得たわけです。

 日本で初めての美肌温泉であり、日本でトップクラスの美肌温泉、これをもってしてコスメをつくります。実際につくりました、お湯で。なぜコスメかということですが、コスメをつくりたかったというよりも、温泉を毎日おうちで使ってもらうにはどうしたらいいんだということで、やりました。

 温泉街に専門店をつくりまして販売した結果、雇用も当然あると思います、それから、旅館の売店で売るよりもこっちの方がイメージがよかったようで、よく売れて、現在では、このお店だけで一億円近く売れています。

 それから、おうちで毎日使える。温泉というと、美肌温泉だよと幾ら言っても、そこに行かないと入れない。それに対して、コスメにすることで、毎日おうちで美肌温泉を感じることができる。玉造温泉に何回も来られなくても、おうちで体験ができる。

 それから、お土産もつくっています、六百円ぐらいの。そうすると、玉造というのはどこなの、島根というのはどこなのという方にも、この玉造温泉をお渡しすることができて、どんどんどんどん広がっていく。

 さらには、オンラインショップもやることによって、一回使ってなくなっちゃった、でもこうやって送ってもらえるんだ、また使おうと、何年でも玉造温泉を使ってもらえる。このオンラインショップも今や一億円近くになっています。

 専門店とオンラインショップが軌道に乗って、売り上げも上がり、雇用人数もふえて、そして、助成期間終了後も、これが一番大事でした、雇用の継続が可能となった。

 では、実際に数字であらわしますと、こういう感じです。

 二十一年の十二月に受託しまして、二年ちょっとほどやりましたけれども、それが現在、約五年後、雇用人数は、パートを含めると、最初、もともとゼロだったんですが、緊急雇用というかふるさと雇用で二人雇いました。それが、現在は何と三十一名。わっと、いっぱいになりました。

 事業所の年間売り上げも、まちデコは、当時は二千八百万ぐらいでしたけれども、現在は三億を超えて、十一倍。

 障害者さんの雇用もやっていまして、最初は五人ぐらいしかいなかったのが何と二十人ぐらいになって、お願いしている施設は、島根県のB型施設では月の平均賃金が何と県内で今一番、三年連続一番というV字回復をされています。

 それから、温泉街の拠点も、最初は一カ所だったのが四カ所まで一気にふえまして、こういうふうな活動になった。大げさですけれども、まさに、ふるさと雇用、緊急雇用の成功事例と言っていいのかなと。

 ここで、皆様、本当にありがとうございます。もう一回言います、本当にありがとうございます。

 では、なぜこれがうまくいったのかということなんですけれども、多分、そこに熱意のある人がたくさんいたからではないかと思っています。じゃないかなと思って、当時の担当者、松江市職員の岡田さんという方に二年半担当してもらったんですけれども、その人にちょっとヒアリングしました。そうしたら、こんなことを言っていました。

 まず一つ目、地元の熱意がすごかったよねと。玉造温泉という特色を生かしたマンパワーがすごかったよ、ばかみたいな者の集まりだったねと。まちづくりでよく言われます、いわゆるばか者がいたよみたいな感じだと思いました。

 それから二つ目は、若者がすごかったよねと。共通課題に一丸となるパワーがすごかった。いわゆる若者のことを言っているんだろうなと思いました。

 それから三つ目が、御縁。製薬会社さんもデザイナーさんもすごく前向きな方との出会いがありましたよねとこの人は言っておられました。いわゆるよそ者のことを言っているのかなと思いました。

 それから、一番言われたのが、やはりこういう大事なときに、めちゃくちゃタイミングよく国の交付金があったよね、この投入のタイミングがすばらしかったよねと。お金もやはり要ったのかなと思います。

 最後に、私はこれはすごく要るなと思ったのが、こういう熱い行政担当者さんがいると、やはり、ばか者、若者、よそ者、お金なんかを本当に生かしてくださる方がいると、全然違うなと思います。これは、勝手に公務員者と名づけましたけれども、やはり人。

 それで、私の陳述ですが、恩返しの部分です。

 緊急雇用の検証をぜひできたらと思いますが、当時の行政担当者さんとか事業者さんによってこういうものをやって、検証結果、数字でいいです、それでカテゴリー分けをして、成功したよとか、うちは多分ここに入れてもらえると思いますが、雇用がふえたねとか、現在も継続して、二名雇用したのが二、三名で続いているよという継続をしているところ、それから、残念だった、失敗したところ。カテゴリー分けをして、その中で、次にまたもしこういうふうな事業をやるときに、私たち、成功した人たち、成功させていただいたと言いたいです、恩返しをする必要があると思います。

 国への恩返しをしなければいけないということは、我々は、もちろん無償でやってもいいと思っています。次にこういう制度があったときには、ぜひとも、当時の担当者や私たちはこういうことをして成功したというアドバイザーに、よそからコンサルを呼ぶんじゃなくて、地域でアドバイザーになって恩返しができたらいいななんて思っております。

 人から人への恩返し。ヒトモノ創生なんて勝手に名づけています。これからのまちづくりは、ぜひヒトモノへ。

 箱物がよくないと言われるのは、建物をつくっちゃって、先に内容とか建物、予算を考えた後で、最後に人員配置をするというのがあると思います。最近はこういうのがよくあります、仕組み箱物といって、これも、建てないんだけれども、内容とか仕組み、予算を先に考えて、最後に誰がやるのか。それじゃなくて、ヒトモノというのが我々がやりたいところで、やる人とか事業内容が先にあって、あっ、こういう人ならぜひ予算をと。この間、新聞を読みましたけれども、この後発表される岩本さんが島根県の教育コーディネーターということで、まさにヒトモノだよねなんて思いながら僕も新聞を見ていました。

 人が主役のまちづくり、ヒトモノというのをこれから広めていきたいと思っております。

 きょうは、貴重なお時間をいただきまして、お礼も少しは伝えられたかなと思っています。また、できれば恩返しもしていきたいなと思っておりますので、どうかよろしくお願いをいたします。

 以上で発表を終わらせていただきます。ありがとうございます。(拍手)

森山座長 ありがとうございました。

 次に、岩本悠さんにお願いをいたします。

岩本悠君 それでは、よろしくお願いいたします。

 島根県の隠岐諸島の海士町という島から来ました岩本と申します。

 私自身は、東京で生まれ育ちました。九年前、縁がありまして、海士町に移住させていただいて、今、妻と子供二人、家族で一緒に暮らしています。

 きょうは、地方創生と教育とか学校というのはなかなかなじみがないと思うんですけれども、少し違った視点から地方創生を考えてみたいなと思いますので、よろしくお願いいたします。

 まず、地方創生と今言われていますけれども、短期間で効果が見える地方創生とは何かというのを考えてみると、例えば海士町でつくっていますさざえカレー、今も売られ続けていますけれども、こういう商品を開発したりとかブランド化というようなことをやっていく。あとは、全国的に見れば、こういった何とかビジネスとか、そういう会社をつくったとか、こういう事業で成功した、これだけ雇用をつくったとか、非常にわかりやすい、目に見える短期的な成果だと思います。

 では、中長期的に効果があらわれる地方創生とはどんなものなんだろうかというのを考えたときに、こういった商品や事業やビジネスや会社をつくれる人をつくるということで、先ほどのヒトモノというのもありましたが、まさに、やる人を育てていくということなしにはなかなか続かないだろう。

 本気で五十年後を見据えて考えてやろうとしたときには、そういった持続可能な地方創生を考えれば、東京から地方に人を送るんだ、地方にお金をしっかりつけるんだ、地方に仕事をやろう、こういう発想は非常に重要だと思うんですけれども、これだけではなかなか続かない。やはりそれに対して、地方に何かをするのではなくて、地域でみずから仕事をつくれるような人をつくっていく、こういう主体的な動きを生み出していかない限り、五年間ぐらいは短期のものが続いても、恐らくオリンピック以降とかになるとなかなか行き詰まっていくということですので、今は短期のものをやりながらも、やはり長期的なものも、時間がかかるものですから、少しずつ始めていくということが重要じゃないかというのが基本的な考え方です。

 それを実感したのが、九年間取り組んできました島での取り組みです。これは魅力化プロジェクトというふうに呼んでいますけれども、どういう地域で何をやったのかというのを御紹介します。

 海士町は、人口七千人いたのが、もう今は二千四百人というような超人口減少の地域です。それに伴って子供の数もどんどんどんどん、十二年間で約三分の一ぐらいに十五歳の人口が減っていますけれども、そういう勢いで、未来が早送りでやってくるような地域でした。

 このままいくと地域唯一の高校がなくなってしまう、そういう状況だったんですけれども、これは、海士町の人口ピラミッドで、高校がなくなると、十五歳から十九歳、ここがみんな地域から外に出ていかなきゃいけなくなる。それだけではなくて、二十代から三十代、この層が子供たちを連れてやはりどんどんどんどん地域から、子供たちを学校に行かせるということで外に出ていってしまう。実は、中長期的に見たときには、学校の存続が地域の存続に直結する。学校がないような場所に子供を連れて若い人たちが移住する、定住するということは非常に考えがたいというところです。

 地域経営において、なかなか学校というのは相手にされてこない存在ですけれども、実はこれが急所になり得るということが、離島という箱庭のようなところだと非常にわかりやすく見えてきました。

 そこで動き出したのがこのプロジェクトですけれども、学校存続の危機を地方創生の好機、チャンスというふうに捉えてやっていこうと。まさに、まちづくりや人づくりにおいて、学校、特に高校は盲点。今までそういった文脈で誰も議論してこなかった、俎上に上がってこなかったものを、ここを逆に拠点と捉えて、人づくり、地域づくりをやっていこう、そういうプロジェクトです。

 では、こういった地域、地方で必要な人づくりと言うけれども、どんな人が本当に必要なのか。これを真剣に議論していったときに生まれてきたのが、今は既存の産業がどんどん衰退している、これからやっていきたい地域の方向性はこうだ。それを見たときに、この現状とこれから向かいたい地域の姿のギャップを埋める人材像だとか能力というのを議論して出てきたのが、やはりこういう地域でなりわいだとか事業とか産業、仕事をみずからつくり出せる、まさに角さんのような人材、地域起業家的な精神を持った人材ですよねと。

 さらに、これからのグローバル化の時代を考えたときに、東京ばかりを見て仕事する時代はもう長く続かないと思っています。そんなときに、グローカルな人材、ただグローバルに、世界に、海外にというだけではなくて、地域にいながらちゃんと世界と戦っていける、つながっていける、そういう人材を育てていかない限り、地域の衰退は中長期的には免れない。人材の自給率をちゃんとアップさせていくということですね。Iターンとかだけに頼らない。人の自給自足に向かっていく。

 なぜ若い人たちが地方に帰らないか。一番言われるのは、当然、仕事がないから帰れませんと。東京には仕事がたくさんある、雇用の場がたくさんあると。こういう今までの発想を、この目指すべき人づくりの人材像は、仕事がないから帰れないと言わない。地方に仕事が少ない、わかっている、だから自分たちが帰るんだ、仕事をつくりに帰りたいと。こういう発言だとか意欲、気概を持った若い人たちを地方で育てていかない限り、いつまでたっても東京から人を送ってもらう、何か送ってもらうということで、それで成り立つような地方では絶対に自立しない。

 では、その人づくりをどうやっていくのか。

 僕らは、高校でしたけれども、やはり高校の中、学校の中だけではできない、地域全体を学びの場だというふうに考えようと。高校自体、学校自体はぼろかったりとかします。教員の数も少ない。でも、住民もみんな先生だ、いろいろな形でかかわってもらう。

 そして、今、ICTもある中で、世界ともつながるような学びを展開していこうということです。現場にどんどん入っていくだとか、子育ての現場、高齢化の中の現場、いろいろな形でやりながら、ICTとか使いながら、世界ではこうやってビジネスをつくっているんだとか、地域課題を解決する人たちがいるんだ、そういう出会いをつくりながら、では、自分たちはこの地域のために何ができるのか、プロジェクトをつくって考えていく。

 その中で、二年生は今全員、地域の支援もいただきながら、ど田舎モデルのこの島の真逆の発展をしようとしている島であるシンガポールに行って、向こうの大学生に英語でプレゼンテーションをしているというところです。そんなことをしながら、では、どうやって世界に発信できるような商品をつくれるかとか、そんなことを生徒たちが考えたり、実際に事業化してみたりということを地域の方たちとやったりしています。それが地域にも実際に波及して、取り組みになっていく。

 また、地方の子供や若い人たちの大きな課題というのは、刺激や競争がなかなかない、だからどうしてもチャレンジ精神だとかイノベーティブな発想、多様な人たちと協働していく力というのが育ちにくい。逆に、こういう自立精神だとかチャレンジ精神がある若者ほど、やはり都会に行きたい、都会の方が刺激があると言って、地方から外に出ていく。学校もそうです。意欲ある子供ほど都市部に出ていく。

 この環境を変えられないかというので始めたのが、島留学。逆に、全国から多彩な脱藩生をここに集めようと。多様性をこの学校の中に創出する。まさに角さんが言われた若者、ばか者、よそ者を入れて、コンフリクトを引き起こしながら活性化させるという考え方を学校にも応用して使っている。

 そういった取り組みをする中で、少子化の中でも生徒の数はどんどんふえていっている。今四割ぐらいは県外から、東京とかドバイとかも含めていろいろなところから来ていますし、今、島根県内の推薦入試に関しては倍率が最も高くなっていますし、進学の方の実績も変わってきている。

 卒業生も、地域づくりをやりたい、帰ってきたい、世界に行ってまたその知見を地域に戻したいということで活躍をし始めていますし、子供を連れての移住、この島前高校に入れたいといって子供たちを連れて家族で移住してくる、そういう教育移住も出てきていますし、こういった影響もある中で、海士町の人口は、今、増加の方に転じている。

 最後ですけれども、今までは、教育の標準化、どこも画一的にやろう、だがやはり都会みたいになれない、だから格差がある、そういう話になっていく。みんな田舎から都会の担い手を育ててやってきました、おかげさまでちゃんと地方は人口減少と少子高齢化、こういう現状になっている。

 この逆流を引き起こそうというのがこの取り組みです。ここだからこそできる、地域、地方だからこそできる教育をやっていく、そして都会の担い手ではなくてグローカルな人材を育てていくんだと。また、教育の魅力化によって、ここで子育てをしたい、子供ができたら、やはり育てるんだったら島根県だ、島根の教育を受けさせたい、こういう形で移住、定住につなげていくことを通して地域の魅力化につなげていくというのが大きな流れです。

 今までの二十世紀の価値観から、これから持続可能な社会へということで、ファストからスロー、いろいろ価値観の転換が起こり始めているこの時代に、今まではみんな東京へ向かってやってきた、東京も海外へと、こういう黒船以来の流れを、これからは、そこに引っ張られるのではなくて、こういう場所が新しい時代を牽引していく引き船、タグボート、小さいけれどもその先を切り開いていく、そういう場所になっていきたい。そういう思いを持って、教育、人づくりからの新しい地域創生の形を、この島根の地からモデルをつくっていきたいという思いで取り組んでいるというところです。

 済みません、最後は早口になりましたけれども、以上で紹介と意見の方を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

森山座長 ありがとうございました。

 次に、保母武彦名誉教授にお願いいたします。

保母武彦君 私の方は、お手元にA3で二枚物を配っておきましたので、参考にしていただきたいと思います。意見陳述の要旨と書いてありますけれども、意見陳述の方が十分と短いですので、要旨以上に書いてあるかもしれません。はしょって進めたいと思います。

 そこに、どういう人間かという自己紹介を書いておきました。日本財政学会の関係もあり、いろいろ、地域振興を四十年ほどやってきました。その関係で、きょうは、地方創生問題を中心にしたいと思います。

 ただ、いろいろの点に現在もかかわっております。そこで、大きくは四つほどの大きな項目についてもやりたいと思います。

 一つは、東北大震災被災地の復興の問題です。

 これは、三・一一以来四年間、さまざまな財団等の研究助成を受けて、そして現在も調査を続けておりますけれども、二つの問題があります。

 予算は一定ついているんですけれども、資材、建設労働力、これが決定的に不足している。だから、金があっても仕事が進まないという状況があります。二つ目は、復興制度の硬直性と書いておきましたけれども、縦割り行政をなくすると言われながらも、なかなかそうはいかない。千年に一回、あるいは六百年に一回という震災があったにもかかわらず、それより前の制度のままその制度を適用していくために、本省まで問い合わせをする、時間がかかって進まない、さまざまあります。このあたりの抜本的な対策が必要だ、これが一つの点です。

 それから、二つ目に、今大きなニュースになっている沖縄の辺野古の問題です。

 この問題も、日本環境会議、自己紹介のところで団体を書いておきましたけれども、一橋大学の以前の学長であった都留重人さんなどが立ち上げたところです。ここが今いろいろかかわっておりまして、その中で、特に、辺野古がいいの悪いのという話ではなしに、その手続の問題として、沖縄の御存じのような選挙結果が、知事選挙も含めて出た。その段階で、沖縄の振興の問題についての予算をすぐ取り消すというような発言を政府側からしたり、あるいは、知事が会談を申し込みしているのに三度にわたって拒否する。

 このような問題が、辺野古がどうのという問題ではなしに、それ以前の問題として、国が守るべき地方分権改革の理念との関係で大きな問題で、これは、衆議院がみずから決めた地方分権の制度を内閣に守らせていくということは、皆さんの責任としてぜひやっていただきたいと思います。

 それから、大きな三つ目で、原発再稼働問題です。

 この島根県には島根原発があります。ただ、国のレベルでかなり間違った議論がなされていて、それが横行しております。それが各地に混乱をもたらしております。それは、やはり国会の場でただしていただきたい。

 ここには一つ二つ書いておきました。安倍総理も言いましたけれども、世界で最も厳しい安全基準だと。したがって、この基準さえ通れば再稼働に進むというようなことが言われているんですけれども、世界で最も厳しい安全基準ではないということをそこにちょっと書いておきました。

 例えば、コアキャッチャーだとか、あるいは配線素材を不燃性にするのが今世界的な到達点ですけれども、それは一切やられていないとか、さまざまあります。バックフィット、要するに既存の施設にもこれを適用する、これもしていない。さまざまなおくれがあるのに、世界の最高だから問題ないというのでやる。このあたりは、国のレベルでの議論の不足なり、そこの問題としてぜひ解決していただきたい問題だというふうに思います。

 それと、私は、地方におりまして、よくわからないのは、福島原発の事故の教訓をどのように国あるいは国会が導いているのか、これがどうも明確ではない感じがします。国会事故調、これは報告書が出てから二年半たちますけれども、改めて、このような国会での専門の調査委員会を設置して、その後の対策も含めて議論するとか、そういうことをすべきだろうというふうに思います。

 最後に、四番目、地方創生の問題に移ります。

 この地方創生の問題は、先ほどずっと三人の方の意見陳述がかかわっておりましたけれども、これについては、期待と同時に、大きな乗り越えるべき問題もかなりあるというふうに考えております。

 六点ほど申します。

 一つは、これまで、地域活性化、地域の再生あるいは総合計画、経済計画、計画はさまざま山積みにされてきましたけれども、日本創成会議が昨年出したものでは、過疎地域等八百九十六市町村が消滅すると。八百九十六というのは市町村数の半分です。半分の自治体が消滅する、こういうような状況について、これは、今までの総括をする必要がある。

 それから二つ目に、地方中枢都市、これが中心ですけれども、どうも島根県の実情とそれから全国的な状況を見ていると、そうではないだろうと。地方中枢都市よりも農村部に人が集まって、人がIターンしてくる。先ほどの岩本さんが報告された海士町などは、実に人口の三割以上、三四%だったと思いますけれども、これがIターン、Uターン、五百人ほどが小さな島に来ているんですよね。そういうことです。

 それから三番目に、東京政策と地方創生政策との関係がどうもよくわからない、整理されていないんじゃないかということです。

 それから四番目に、方法として、選択と集中、企業の経営ではこれをやりますけれども、これをやると、結局は、効率性に限界がある農村部について、農村部の閉鎖、閉店、要するに農村畳み、こうなることが指摘されていて、この問題では、特に食料問題とエネルギー問題、これが今回の地方創生の議論の中で十分な議論がされていない、これを明確にしてほしいということを思います。

 五番目に、地方創生に至った過程の中で、地方税財源の充実が十分でない。三位一体改革の中で、あのときに大きく減らされて、その後、臨時財政対策債などでやってきたんですけれども、それが今たしか全国で五十兆円ほど累積されていると思いますけれども、根本的にこの財政を変える必要があるだろう。

 それから、あと一つ、六番目に、地方版の総合戦略、これを一年の間に提出せよということになっておりますけれども、これは到底、実情としては無理だ。共同通信の全国首長の調査がありますけれども、三割ぐらいが自力でできる、あとはコンサルだと。さまざま言われていますけれども、これは十分な議論をやらないと、まちづくりは人づくりと言われますけれども、その基礎をつくることは到底できない。したがって、そのような時間、せいぜい三年ぐらいに延ばしたらどうか。このあたりを議論していただきたい。

 以上です。(拍手)

森山座長 ありがとうございました。

 意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

森山座長 これより委員からの質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。まず、土井亨委員。

土井委員 こんにちは。自由民主党の土井亨でございます。

 きょうは、お忙しい中、貴重なお話をお聞かせいただきまして、改めて御礼を申し上げます。

 私自身、宮城県仙台選出でございまして、まず、東日本大震災等々を含めて、島根の皆様方にも大変お世話になり、御支援をいただいて、今復興が進められております。改めて御礼を申し上げます。ありがとうございます。

 それでは、質問をさせていただきたいと思います。

 今、四方のお話を聞いて、ある言葉を思い出しました。単純な言葉なんですが、ない物ねだりよりある物探し。何から何まで国に頼って無理を重ねていた、それよりも、その地方に、地域にあるいいものを生かして、どう開発をして、どう活用しながらその地域を活性化させていくか、そういう時代が来ると言われましたのが、私が県議会議員、二十年前ぐらいだったでしょうか。それ以来、私は、地方自治体の皆さんというのは大変頑張ってこられたというふうに思います。

 人口減少も、今言われ始めたわけでもなくて、もう前から言われてきている。そういう中で、島根県さんは、平成四年から定住元年というような形で、しっかり頑張ってこられた。そしてまた、今、角社長さん、岩本さん、本当に、若い力で、新たな発想で頑張っておられる。本当に頼もしいなというふうに聞かせていただきました。

 そこで、まず一点。知事さんには、いろいろな地域振興、また地域の活性化、頑張ってこられたというふうに思いますけれども、行政の側からして、国のこういう法律があってなかなか前に進まない、こういう基準があって思うように進まない、そういう、今まで政策を取り進める中で、やはりもっと自由にやらせてほしい、こういうところが地方の手足を縛ってなかなか思うようにできないという点がございましたら、お聞かせいただきたいというふうに思います。

 角さん、岩本さんも、今までの頑張りというのが今の成果につながっているんだと思いますが、初めてスタートしたときには大分苦しんだというふうに思います。それはやはりいろいろな壁にぶつかりながらということでありますので、もし国に対して、今知事さんにお話ししたような形で、こういう壁がなければもっと前に進めた、もっと別な形で町の振興が、未来を見据えた形でできた、そういう思いがありましたら、ぜひまずお聞かせいただきたいと思います。

溝口善兵衛君 私への質問は、地方の行政から見て、国のいろいろな基準、そういったものがどの程度制約になっているかということですが、私が知事として、私のレベルでいろいろな仕事をするときに、国の基準が制約しているというものもあります。福祉の世界でありますとか、あるいは教育の世界、あるいは産業振興の世界でもありますが、それがクリティカルといいますか最も障害になるというのは、そうはないと思いますね、大きな問題につきましては。やはり一番大きな問題は財源でしょうね。

 それは、国の制約というよりも、あるいは政府というよりも、日本全体の問題ですね。いわば、民間の活動があり、行政の活動があり、それから行政の中でも福祉だとかいろいろな世界がありますが、日本全体として長年停滞が続いておりますね。そういう中で、国の財政も地方の財政も極めて悪化をしておるわけでございまして、結局のところ、最終的な負担は国民がするほかないわけでありますが、それがなかなかうまく進みません。

 そういう状況がやはり一番厳しい、思うようにいかないというのは、多々ますます弁ずというサービスはたくさんあるわけでございますけれども、それを多くの方に満たすほどするということは、国というよりも、あるいは政府というよりも、日本全体の問題がやはり一番大きい課題ではないかというふうに思いますね。やはり、健全な経済に日本が立ち直っていく、そういう中で地方の経済も立ち直っていく、そして成長も一定の成長が遂げられる。そういう健全体を国全体として築き上げていくということが課題なんだ、一番基底にある課題なんだというふうに思いますね。

 そういうことについて国民の皆さんのいろいろな理解を求める。地方独自の課税権とか非常に限定されておりますから難しいわけでございまして、国に要望することはありますが、それは、繰り返しになりますが、政府の問題というよりも国全体の問題だろうというふうな気がいたしております。

角幸治君 角です。

 余り難しいことは実はわからないんですが、体験談からちょっとお話しします。

 私たちがふるさと雇用を活用させていただいたときに本当に助かったのは、松江市の公務員さんの熱意とか我々に対する思いが非常によかったなというふうに思います。

 ここで振り返ると、私たち民間人というのは国のことを何も知らないんだなということも本当によく痛感しました。今でもちょっとそういうのもあります。国会でやっていらっしゃることなんかも、かなり勉強不足で知らない部分があります。その中で、ああして地方自治体の担当者さんが親身になって、法律のプロとして我々をサポートしてくださったのが、私たちにとっては、やはり成功できたということの一番大きな部分じゃなかったかなと今でも思っております。

 ぜひ、もしお願いできるのであれば、私たちから担当者が選べたりすると本当に助かるかなと。逆の発想ですけれども、こういうふうな担当というか、私だったら、ほかの、サポートしてほしい方とか国の交付金を使いたいという方を、あの人だったら多分我々と同じように成功させることができるだろうと思いますので、そういう制度がもしできたら、逆指名みたいな、無理でしょうけれども、そういうことができると本当にありがたいななんて思っております。

 以上です。

岩本悠君 岩本です。

 お伝えしたい点は二点あります。

 根は一緒なんですけれども、例えば、僕らは高校の問題に取り組んでいるんですけれども、この高校は設置者が県である。県の教育委員会が当然管理しています。県の教育委員会が見る県立高校の見方と、その地元、地域から見た学校、高校の見方というのは当然違うわけですよね。

 県レベルで見ると、やはり生徒数の問題など、財政的にもあるので、統廃合だとかそういうことは非常に重要で、ただ、それだけではない物の見方というか、教育だけではなく地域からの視点で見たときに、本当に何が大切なのかとか、どういう取り組みが必要なのか、やはりそこが本当の意味で地方創生をやっていく上で重要になってくると思っています。

 ポイントとしては、いかに教育も地域主権を実現化していくのかということです。

 一つ目の具体的な例としては、例えば寮があります。

 島根県は、離島、中山間地が多いから、公立高校において寮の設置の割合が日本で最も高い県だということですけれども、寮の運営は、例えば設置者である学校が運営しなきゃいけない。これは教員にとって負担なわけですよ。毎日泊まりに行かなきゃいけない。土日も日直で入らなきゃいけない。ただ、そうなっているので、そうしなきゃいけない。

 でも、この運営を地域側に委託などできれば、それで一人とか二人の雇用が生まれて、地域が、では地元のものを全部使ってとか、地域の方がもっと入ってきやすいような形でということができるけれども、寮は必ず学校が管理運営しなきゃいけないというのがあって、寮で本当に地域に根差した全人教育をやっていくことがなかなか地域側からはできないわけですね。

 これは、学校自体についてもそうです。二点目は、学校の運営とか経営に関してですけれども、地域側から見ると、校長なんかも推薦してこういう人に来てもらいたいとか、学校をもっと地域に根差してとか、学校の運営形態だとか、市町村側であればこういう財源とかが使えるけれども、県がやるからなかなか使えなくて、校舎もぼろいままでこれもできないとか、いろいろなことがある中で、共同運営というか、例えば県立なんだけれども市町村もその経営に一緒にかかわっていけるとか、県が得意なことは県レベルでやるし、市町村側ができることとかそっちがやった方が効果的なことは一緒にできるとか、そういうような新たな運営形態ですね。

 文科省でいうとコミュニティースクールみたいなことをやっていますけれども、あれをより進化させて、本当の意味でも地方創生とか地域活性に資する学校経営の新たな形、スーパーローカルハイスクールとか、そういったようなものとかを、本当に、学校とか教育という瑣末なポイントから見ると、そこら辺が非常に気になるというか、そこら辺がネックでなかなか動かなかったというのが現実ですので、教育も地域主権をということで、そういった部分を少し進めていただければというふうに感じています。

 以上です。

土井委員 ありがとうございます。

 今度は知事さんに、具体的に地方創生のあり方についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 私は、地方創生のスタートに、国と自治体の信頼関係がなければだめだというふうに思っております。

 それは、復興事業で、被災自治体がつくり上げた事業計画であっても、やはり今お聞きしたような法律や制度や基準によってなかなか前に進まなかったというのが初期段階で多く見られております。ですから、幾ら交付金の仕組みをつくっても、その自由度がしっかりと担保されておりませんと、やはり国に一々お伺いを立てなければならない。また、財政規模の小さな自治体ですと、一々国に、これは使えるのか使えないのか、そういう形で進むしかない。

 そういう中では、今回の地方創生の地方の総合戦略の計画に当たっては、県という立場の役割というのは、県全体をしっかりと調整するためには大変必要になってくると思います。

 そのときに、今、前段で申しましたとおり、余り国が関与すると、地方の知恵を使って計画を立ててくれといっても、中身に入ったら、これはだめ、あれはだめ、これは使える、使えない、そういうような新型の交付金だったり、また、事後の評価もされるということになりますと、私は、計画自体が萎縮をしてしまって、今までのものの焼き直しにしかならないのではないかと。一方で、今まで頑張ってきたのに、また何で新しい計画を立てなきゃいけないんだというふうな思いもありますので、私は、ぜひ、国からすると地方自治体をもっと信じて思い切ったことをやらせてくれ、そうでないと地方創生は前に進まないという思いがあるんですが、その点はいかがお考えでしょうか。

溝口善兵衛君 地方創生の戦略も、来年度中につくるということでやろうとしています。そのこと自体は非常に大きな枠組みのプランでございますから、今おっしゃったような技術的な問題が制約になるということはそう大きくないんだろうと思います。いずれにしても、大きな基本的な枠組みをつくるということでございます。

 それを離れまして、現実のことでいいますと、例えば大きな国の直轄事業とか、あるいは補助事業とか、いろいろありますが、長年のやりとりの中で、それが全般的に大きな障害になっているというようなことはそんなにはないと思いますね。それは、個別の事態でいろいろ柔軟性があってというものは、調整は相当できるというふうになっていると思います。

 ただ、いろいろな点で、基準とかがありますが、一律の基準ということについては、地方の方に、一律の基準では適当でないというのが、福祉の世界でありますとか保育の世界でありますとか教育の世界、いろいろございます。そういうものは現実に即して調整をしていくということで図られると思いますけれども、今の復興などでそういう大量の事業をやるときに技術的な問題が制約になるということは御経験からおありになるんだろうなということはよくわかります。

 ケース・バイ・ケースで対応していくということでありますが、国の方も、できるだけの緩和はしていこう、相談に乗ろうという体制で臨まれているというふうに理解をしております。

土井委員 ありがとうございます。

 私は、なぜ復興のお話をしたかといいますと、復興は何もないところから新たな計画を立てて今まで以上に活力ある町を再建していくという、これは地方創生に相通ずるところがあるのではないか、そういうふうに思っております。そういう観点で、いろいろな意味でやはり財源も必要だと。

 そういう中で、まだしっかりとコンクリートはされておりませんけれども、来年度から新しい交付金という形で創設をする。その場合に、やはり本当の意味での交付金のあり方というもの、地方のための交付金でなければならないのではないかな、そういう思いもありましたので、ちょっとお伺いをしたということであります。

 どうもありがとうございました。

森山座長 それでは次に、階猛委員にお願いいたします。

階委員 御紹介いただきました民主党の階と申します。きょうはありがとうございました。

 私も被災地の岩手の出身なんですが、きょう初めて島根県に参りました。島根県も岩手県も、やはり人口がこれからどんどん減ってくるということで、同じような悩みを抱えられているのかなと。ただ一方で、自然にも恵まれていますし、人の温かさといいますか、最近、上村遼太君という男の子が殺された事件がありましたけれども、島根に住んでいたころは、すごく明るくて、生き生きと暮らしていて、それが都会に行ったらあのような残念なことになってしまったわけですけれども、私は、そういう意味で、やはり地方というのは人を育てるには一番いい環境があるのではないか。

 結局、地方が衰退していくということは、都会で活躍している人間というのは多くが地方で育っていますし、また、地方でつくられた食べ物が都会に行って台所をにぎわせていたり、あるいはエネルギーだってそうだと思うんですね。結局、地方が衰退するということは、東京も含めてですけれども、日本全体が衰退するということにつながるのではないかと思っています。そういう意味で、この地方創生というのは、日本にとって大変重要な、かつ喫緊の課題だと思っています。

 そういう中で、今、政府の方では総合戦略というのを立てています。その中で、KPIという、これは経営戦略の世界ではよく使われる言葉で、キー・パフォーマンス・インディケーターの略なんだそうですけれども、要は、目的が達成されたかどうかを見る上で一番鍵となる指標、これがキー・パフォーマンス・インディケーターだと思います。

 島根が地方創生に成功したと言えるために、皆さん、四方にお聞きしますけれども、もし一つ挙げるとすれば、KPIとしては何を考えられますでしょうか。

溝口善兵衛君 それは、一つは、どういうタイムフレームでそういうキーインディケーターというものを設定するかということにも係ると思いますが……(階委員「ちなみに、政府では、五年間、二〇二〇年を目標達成の年度と」と呼ぶ)五年間のインディケーターとしてですか。

 そうしますと、やはり、先ほど来私申し上げておりますけれども、若者の職場がふえるということがキー・パフォーマンス・インディケーターの大事な一つだろうというふうに思います。

角幸治君 ちょっと話が大き過ぎて余り思い浮かばなかったので、申しわけございません。数字に出ないようなことしか思い浮かばないんですけれども、幸福度とか、本当に抽象的なことしかちょっと思い浮かびませんでした。申しわけございません。

岩本悠君 僕も、島根という単位で見たときには、ブータンなんかはそれで一世を風靡しましたけれども、GNHじゃないですけれども、本当に、ここで暮らす人たちの暮らしの質、満足度、県全体での総幸福度のようなもの。どれだけクオリティー・オブ・ライフが高まっているのか。ただの人の数という部分だけではなく、一人一人の生活の質、そこを大切にするというのが島根らしい島根のKPIの一つになるのではないかと考えています。

 以上です。

保母武彦君 一つ言えば、これは角さん、岩本さんの方から言われたのとほとんど同じですけれども、満足度だと思います。

 ただ、これをどのようにして指標化してわかるようにするかという上では、科学的に満足度、幸福度を指標化していく、やはりこれをやらないとだめだとは思いますけれども、結局は、一人一人の希望が実現して、充足した人生であったと思えるような、そこのところをしっかりとすべきだ。これは、今までのこういう開発政策の中では十分でなかった点だと思います。

 以上です。

階委員 KPIというのを一義的に数字であらわすのはなかなか難しいというのがこの地方創生だと思います。私もそうだと思いまして、数字という形では地方のよさというのはなかなかあらわれてこないんだろうなという気がします。

 ただ一方で、どうにかして人口減少を食いとめなくてはいけないという中で、やはり仕事がないと何ともならないとか、収入が得られないと地方を離れざるを得ないということで、経済活動をいかに活発にしていくかということは重要だと思います。

 今、政府の方では、プレミアムつきの商品券というのが先ごろ補正予算で決められましたけれども、これは、地域でお金を使ってもらうという意味では一つの手段なのかもしれませんけれども、問題は、それが永続しなければ、プレミアムがついたおかげで今はお得に買えるけれども、それがなくなった後、果たしてどうなるのかということと、あとは、やはり所得が乏しい人はそもそもプレミアムつきの商品券であっても買えないということで、お金がなるべく稼げるような、あるいは消費にお金が回せるような、可処分所得をふやすような政策というのがないと、これは一過性のものに終わってしまうんだと思います。

 可処分所得をふやすという意味で、例えばエネルギー代を、今まで電力会社とか海外の産油国に払っていたものを地域内にとどめるように再生可能エネルギーを強化するとか、あとは、角さんのように、観光というのは域外から来る人たちにお金を持ってきてもらって地域にお金が入ってくるということだと思うんですが、そういう地域でお金が回る仕組みをどうやってつくっていくか。

 まあ、仕事をつくると言えばそれまでなんですけれども、より具体的に、地域でお金が回る仕組みというのをどのようにつくっていくかということについて、それでは、知事と、あと、観光の分野で角さんからお話を聞きたいと思います。

溝口善兵衛君 このたびの補正予算で、そうした地域の消費をふやす、県の方は、県外から来られる方々の宿泊代を割引にするとかお土産代を割引にする、あるいは県内の市町村では、御自分の市町村でそういうことをやるということですが、これは御指摘のように短期的な経済対策でありまして、その分がなくなると、それで充足した需要というのは減っちゃいますから、先ほど冒頭申し上げましたけれども、やはり永続的に安定した雇用が生まれるということが大事なので、今の商品券の話は、当座の、いわば消費税の引き上げで景気回復がおくれているという短期的な対策であると私は理解をしていまして、これは永続的な人口対策とは別物だろうというふうに思います。

 それから、そういう短期的な消費対策でありましても、お金のない方はそういうのは買えないじゃないかということは確かにあるわけでございまして、政府の案の中では低所得の人たちに対する対応も行うようにという部分がございまして、それは若干しております。

 いずれにしても、そうした短期間の対策というのは、私が冒頭申し上げましたように、長期的な雇用をふやす人口対策とは別のものでありまして、政府においてそこをよく整理される必要があるのではないかということを申し上げたところであります。

角幸治君 観光で最近よく議論されるのが、特に地方ではあるんですけれども、観光イベントの見直しという問題がよくあると思っています。

 具体的に言いますと、私たちの町にも、年に一度、夏になると花火大会があります。この花火大会の目的を観光誘客に持っていこうとよくされるんですけれども、こういう場で言うと波風が立つかもしれませんけれども、これは本当に個人的な思いですが、思いっ切り市民イベントに持っていった方が実はいいんじゃないかなと思っております。それは、市民の幸福度も上がるとか、定住につながるとかですけれども。

 さらに具体的に言うと、今現在、花火大会で一番いいところに桟敷席みたいなのをつくって、県外の方とかに席を売るわけですよ。でも、そんなことよりも、個人的には、桟敷席のスペースを千席、例えば、市長が用意する席、それから知事が用意する席みたいな、お隣にいらっしゃっていますけれども、年に一度の花火大会に市民とか県民を抽せんで呼んじゃおうと。プレゼント。お子さんを連れてこの年に一度の花火を見せに来てやってくださいみたいな。

 当日は、その入り口のところに、例えば市長がいらっしゃって、ようこそ、またこの花火の時期が来ましたねみたいな感じで、その年に抽せんで当たった人たちが入っていく。それで、花火を見る。わあ、きれいだな、いやあ、花火をこんないい場所で見せてもらって本当によかったな、この町は本当にいいところだなというふうにつながっていくことが、さっきの地域の中の活性化というかお金が回る仕組みにもつながっていくのかなと。

 小さいころに花火とかでそういういい思いをした子というのは多分ずっと覚えていると思うので、結局、大学で出ていっても、ほかの地域ではやっていないようなことを、松江ってあそこまでしてくれたよな、よかったなとかと、将来帰ってきてくれるきっかけになったりする。そこでもまた地域でお金が回るという方向に行けばいいかななんて思っています。

 本当に一例ですけれども、できかねるとは思いますけれども、そういうふうなことを思っています。

階委員 では、岩本さんにお尋ねします。

 島留学でいろいろなところから学生がいらしているということで、大変いい取り組みだと思うんですけれども、そこに来られた生徒さんたちは卒業後どれぐらいの割合で地域に残っていただいているのか。それから、地域で仕事をつくれる人を育てたいというお話だったんですけれども、卒業した中でそういう仕事をつくっている人というのは実際にどれぐらい出ているのかということを教えてください。

岩本悠君 結論から言うと、出ていません。今、この新しいカリキュラムを始めて、まだ卒業生が大学生ですので、まだ大学卒業後というところへ行っていません。

 まず、大前提として、島に残そうとは思っていないというところです。僕らはブーメラン人材戦略と言っていますけれども、ここに残れ残れではない、ここで十八までしっかり地域に根差した教育をやっていったら、一度外に思いっ切り出す。ブーメランもそうですけれども、なるべく近くに、山陰地方ぐらいにいてくれみたいな形で力を抜いてぽんとやると、そこら辺に落ちてそのまま帰ってこない。出るんだったら世界の最前線でも行ってこい、東京に数年いてもいいけれども、すぐ飽きるから、もっと先だと。そういう形で思いっ切り飛ばす。最前線で修羅場をくぐって、全くここと異なるような価値観だとか現場を知って、やはり似たものを見ているとなかなか見えてこないけれども、全く異なる場所に行くとここの価値の相対化ができますので、ああ、ではこういう人たちには逆に島根のこういうのが魅力に映るんじゃないかとか、やはり発想が全然変わってきますので、そういう形で一回外に出ろというふうに言っています。最前線に行ってこいと。

 かつ、大学を卒業してすぐ帰ってこいよでもないですし、基本的には、二十代は異なる場所で修羅場をくぐって、ある程度自分で仕事を回せる力ですね。やはり大卒ですぐ帰ってくると、事業所さんで育てられる。ただ、なかなか地方に、そういう若手を本当に鍛え上げて育成する現場とかというのは、正直ちょっと、そこまで多くないというのが実感値であります。

 そうした全く異なる越境体験をする中で、本当に鍛えられて、自分で仕事を回せるようになって帰ってきて、そこで現場の人たちと一緒にいいものを生かしながらマーケティングしていくとか仕事をつくっていくような、そういう動きというのが一つのイメージですので、基本的には、二十代後半とか三十前後ぐらいで、結婚するぐらいのタイミングか何かで帰ってくるのがいいかなと思いながらやっているところです。

階委員 私、岩手県なんですが、増田元岩手県知事が「地方消滅」というレポートを書かれて、大変反響を呼んでいますけれども、増田さんは、東京への一極集中をとめるためには、中国地方とか東北地方とか、各ブロックごとに人口のダム機能を持つような大きな都市をつくって、そこで食いとめるべきだということをおっしゃっています。多分、中国地方だと広島ということになるんだと思うんですけれども、他方で、それは、東京一極集中はとめられるけれども、松江とか、島根からの流出はとまらなくなってしまうわけです。

 今政府がやろうとしている政策の中に、東京から地方へ会社の本社機能を移転した場合にいろいろな支援をしましょうということなんですけれども、それをやった場合に、ひょっとすると、広島とかはいいかもしれないけれども、むしろ、広島に大きな拠点ができることによって、今まで島根とかにあった支社とか支店とかもそこに集約されてしまうんじゃないかなという気がしています。

 増田さんの考え方とか、あるいは今政府がやろうとしている本社の移転とかというのは、島根とか、岩手もそうなんです、仙台に集約されかねないということで一抹の危惧を覚えているんですけれども、そのあたりについて御意見があればお願いします。四人、簡単にお願いします。

溝口善兵衛君 私どもも同じ考えですね。

 人口問題はあらゆるところが相似形になっていまして、東京一極と言った場合にはほかの地方と東京ということになりますが、それが、今度また地方で拠点ということになると、さっきおっしゃったような問題がまた相似形として出てきますし、それから、島根県の中で見ると、松江を中心とした中海・宍道湖圏域と中山間地域、離島ということになると相似形になるわけであります。

 したがいまして、我々が言っていますのは、一律の基準で、どこを大拠点にするとか、これを県内にするとかじゃなくて、そこは地域地域の状況に応じて考えてくださいということを申し上げて、「国への提案」という三番目の資料がございますけれども、その六ページに、「地域の中核的自治体への支援」ということでは、全国一律の人口規模等による基準ではなく、地域の実情に応じた基準により支援をしていくべきだということでありまして、地方中枢拠点都市制度などにおいては、産業・生活拠点機能の向上に取り組む、例えば複数の地方都市を一括して指定すると。

 宍道湖・中海圏域というと五市ありまして、五市を合わせますと大体七十万とかそのぐらいの人口になりまして、瀬戸内海側の大都市だけがそういう拠点とならなくても可能ですし、県内で見ますと、今度は海岸沿いに参りますと、市が五つぐらいあるわけでございますけれども、その背後には広い中山間地域があるんですね。

 人口が地域で五、六万でも、中心になるところがないと、そこでいろいろなものが整備をされていないとうまくいきませんから、地域地域の状況に応じてそういうことを考えるべきだという主張を国に対してしているところであります。

森山座長 済みません、時間が押していますので、簡潔にお願いいたします。

角幸治君 簡潔に、都会の真逆を行く方が僕はいいんじゃないかなと思っております。

 以上です。

岩本悠君 僕も、今言われたような発想は、松江あたりぐらいまでだったらいいのかもしれないですけれども、離島、中山間だと通用しない。ポイントになってくるのは、やはりその地域ごとでの新しい働き方だと思います。

 中山間地でいけば、夏は観光客が多くて、ホテルは人が欲しい、冬になると岩ガキをやって、ここは人が欲しい。でも、そこそこで雇用ができないものを、現代版の百姓という形で、この時期はここで、この時期はここ、四季折々で通年でやっていくとそれで何人分かの雇用ができるとか、そういったような働き方もありますので、もっと柔軟な働き方だとか仕事のあり方だとか暮らし方というところを模索するというのも、特に離島、中山間では必要かなと感じています。

保母武彦君 ダム機能と言われたのについては、農村から東京にすぐ出るのではなしに、途中でダムでとめようというのと、それから、東京から地方に帰る場合に、中核、中枢都市でとめてそこでダム機能をやる、両方の機能が説明されていますよね、増田さんの中で。

 いずれにしても、今、地方の二十万なりそのあたりの都市を見ると、そこに大勢の若い人たちあるいは若い女性たちが集まるというような実態は余り見られないですよね。例えばよく話題に出る淡路市のあたり、あのあたりでも人口は大幅に減っています。あるいは、浜松が出ますけれども、あそこは企業が相当撤退していますよね。だから、あれは実態と合っていないです。

 私は、地方から東京へ出る場合のダムにして東京に集中させないようにするというような意見が出されていますけれども、むしろ、農村部から都市部へ、ダムへ人を持っていけばさらに農村部の人口減少が加速するから、あれについてもうちょっと実態を皆さん調べられて、それに適した方法を探した方がいいと。

 以上です。

階委員 ありがとうございました。

森山座長 それでは次に、吉田豊史委員、お願いいたします。

吉田(豊)委員 維新の党の吉田豊史と申します。よろしくお願いいたします。富山県の富山市の方の委員でございます。

 何で立ったかと申しますと、実は私、ついこの間議員になりまして、それで、きょうのこの伝統ある衆議院予算委員会の地方公聴会の場が私の初質問なんです。それで立たせていただきました。

 テーマが地方創生ということで、富山県も島根県と同じように非常に厳しい状況が予測されておりまして、その中で、何らか私も得るものがあればなという思いでおります。

 まず最初に知事の方にお聞きしたいと思うんですけれども、私が持っております資料の中に、二十七年の二月に議会でなさった提案理由説明がございますでしょう。そこのところに、一番最初に地方創生のことと、それから人口減少についてというのが来ているんですね。これは本当に、島根県がこのことについていかに真剣に議題になさっているか、取り組んでいらっしゃるかというあらわれだと拝察するんです。

 その中で、幾つか項目がありましたが、私が一番お聞きしたいなと思っているのが、時代に合った地域をつくるという言葉がありました。この時代に合った地域というのは、もし具体的にイメージがあれば、どのようなことを想像なさっているのかなということをお聞きしたいと思います。

溝口善兵衛君 私の二月議会の話ですね。時代に合ったというのは、時代が大きく変化をしておる、人々の考え方とか、先ほど来出ておりますけれども、若い人たちは、島根などに来られまして、例えば、隠岐に住んでみたいとか、あるいは中山間地域で農業をやりたいとか、人々の物の考え方が大きく変わっております。それに合ったようないろいろな対応の仕方がある。

 それから、島根で見ますと、地域でもいろいろな特色がありまして、その特色に反応される方もいろいろ違うわけでございまして、そういうものを含めまして、時代に合った、地域地域の特色のある活性化をやっていくべきだ、こういう趣旨でございます。

吉田(豊)委員 そこで、もう少しお聞きしますと、地域地域の特色という意味が、例えば都道府県ですとか、さまざまな大きさの単位というものがあると思うんですけれども、そのことを、地方創生という言葉が国から今出てきている、それは、地域をどう応援しようかということだ、大きく考えればそうなるかと思うんです。

 その中で、時代に合った地域、それは全ての地域も求めていくんでしょうけれども、それが、例えば島根の場合はどういうような方向性ということが時代に合ったということか、もう少しお教えいただければと思います。

溝口善兵衛君 島根でいいますと、例えば今皆さんがおいでいただきました出雲、松江といったところは、やはり古い文化、歴史が残っているところでございまして、出雲大社それから八重垣神社とか、そういうところは、神々は縁結びという方々がたくさんおられて、そういうことに関心を持つ人がおられる。この一帯はそういう古い文化、歴史がありますから、観光という意味でまちづくりをしていくということがあります。

 隠岐などでは、隠岐も古い歴史がありますが、離島といった特色のある景観、そしてそこに住む人々のなりわい、そういうものがいいとする人たちも出ておりますから、岩本さんがやられているように、県も支援しているわけですけれども、島前高校の魅力化のようなものを行うとか、県西部などにおきましても津和野とか古い町もありますし、私もしばらく東京に出ておりましたから、島根県全体を知っていたわけではないんですけれども、中山間地域は本当に、やはり私どもから見ても、ああ、すばらしいところだなということを感ずるわけでございまして、そうしたものがいろいろ違いますよね。

 県の西部ですと、温泉などがたくさんあって、それを目指して来られる方もおられる。それから、やはり日本海という豊かな海があります。そこからの豊かな海産物もございます。中山間地域は林業があって、バイオマスの発電も島根の中ではかなり進みつつあります。そうしたものを活用して、地域地域に合った発展を目指そうという趣旨でございます。

吉田(豊)委員 ありがとうございます。

 続いて、保母先生にお聞きしたいと思います。

 先生のお書きになった文章の中に、自治体のことなんですけれども、全国の中で残念ながら進むべき道を明らかにしない自治体がふえていると。私も本当に同感でして、この進むべき道を明らかにしない、あるいはできないということが地方創生ということと非常につながるんじゃないかなと思うんですけれども、先生のお考えを少しお聞きしたいと思います。

保母武彦君 かつて、高度成長期と前後して、そのころには、地方の産業振興といえば企業誘致、私たちの言葉で言うと外来型開発、外来患者のように外から引っ張ってくるわけですね、外来型開発。それだとさまざまな問題が生じましたので、それを克服する方法として、「内発的発展論」というのを私も一九九六年に岩波から出したんですけれども、その方法はかなり各自治体で受け入れられていったんです。

 その中で、最近聞いた中で、以前の東京大学の総長であった小宮山宏さんが、日本の農村の中で断トツに進んでいるのは二つある、一つは隣の海士町と、もう一つは北海道の下川町だと。下川というのは、御存じだと思いますけれども、木質バイオで非常に進んでいます、私、また来週委員会があるので、呼ばれていますから行きますけれども。その二つのところが断トツだというのが小宮山先生の評価でして、このあたりは、もう少し全国的にいろいろなところと比較しながら、何がすぐれていて何が学べるのか、これをもっとしっかりとやらなきゃならないんじゃないかと思います。

 今説明があった将来像の問題ですけれども、これは三ページ目の第二パラグラフのあたりに書いたんですけれども、私は、いろいろ見ておりまして、最終的には、亡くなられた宇沢弘文先生は松江の近くの米子市の出身なんですけれども、この宇沢先生の書かれた社会的共通資本、これがどのように備わっているかということをしっかりとやらなきゃならないだろう。

 だから、地方創生で、もし国と地方が協力してやるとすれば、自然環境と社会的インフラと制度資本、この三つがどのように整備されているのか、でこぼこがあってもいいですけれども、そこのニーズに合わせてちゃんとできているかどうか、地域の声を聞いて足らないところを補っていく。制度資本というのはちょっとわかりにくいですけれども、これは、教育だとか福祉医療だとか、あるいは社会的な共同体だとか町だとか集落だとか、こういう社会の仕組みなんですけれども、これがやはりこれから考えていくべき地域の姿だ、あるいは応援していく社会の仕組みと言ったらいいでしょうか、ではないかというふうに考えております。

 島根県の問題は知事さんの方からの返事があったんですけれども、昔からここの地域で、開発だ、環境だ、いろいろな意見と運動がありました。その中で、最終的に宍道湖の問題で商工会議所連合会の会頭さんが言われたのは、この地域は歴史と自然を生かすべきだ、したがって自然を壊すことは許されない、こういうふうに言われたんですけれども、それぞれの地域でそういうあり方を発見するというか、住民が抱いていて、ここに住みたい、ここで死にたいと思っている、その心をどこまで掘り起こすかにかかっているんじゃないかと思います。

 以上です。

吉田(豊)委員 ありがとうございます。

 日本全体で金太郎あめみたいな都市ができてきたということも事実だと思うんですけれども、そうではなくて、今、これから地方創生というものが目指すのはそれぞれの地域の個性ということもわかるんです。そうなんですけれども、では、その個性というものが表に出ないと地域というものは創生されていかないのかということが実は非常に難しいところじゃないかなとも考えておるところでございます。

 岩本さんにお聞きしたいと思います。

 岩本さんのところにうちの維新の党の柿沢未途政調会長が先週お邪魔したということで、御対応いただきましてありがとうございました。いただいた名刺、「ないものはない 海士町」と書いてあるんですけれども、本当に、ないものはないと言い切れるのはすばらしいですし、お聞きしたところ、それが、武器と言えばいいか、非常に大事なポイントになって人を集めていらっしゃるということだと拝察します。

 このないものはないというのは、今現状すばらしい。これを、日本という国はどうしても、ないところには何かを足していかなくちゃいけない、同じようにしなくちゃいけないんじゃないか、こういう根本的な発想もあると思うんですね。これが、ないものはないから要らないよ、そこまでお考えかどうか、少しお聞きしたいと思います。

岩本悠君 このないものはない、恐らく三つぐらい意味があるかと思っています。

 一つ目は、ないものはないんだと、まさに、言葉は悪いですが、開き直っているというか、そういう都会的なものを求められても困りますよ、例えば、島ですけれども、コンビニだとか、そういうものを求めるんだったらうちじゃないところに行ってくださいよ、ここはこうだと。逆に、僕らは島留学とかをやっていますからそうですけれども、ないということが価値なんだということを言っているんですね。コンビニがない、便利じゃない、だから忍耐力がつくんですとか、不便だ、不自由だ、課題、問題がたくさんある、だから問題を発見してみずから解決していくような力が育つ、そういう教育環境なんだ。やはりそういう、ないということの価値というものを伝えていく、そういう意味での、ないものはない。

 もう一つは、本当に幸せに暮らしていく上で大切なことは全てあるんだと。そういう、ないものはないが二つ目です。先ほどのGNHとか言われていた発想と同じ。

 三つ目、町長なんかがよく言うのは、いや、ないならつくればいいんだと。ないということを認識した中で、本当に必要なものであれば新しく生み出していく、そういう気概を持って地域をつくっていこうというような意味合いを込めて、ないものはないというふうに言っているんじゃないかと推察をしています。

吉田(豊)委員 ありがとうございます。非常にわかりやすい。そして、ないものはないということですし、それは、開き直りという言葉をおっしゃったけれども、一つの危機感と言えばいいか、そういうところがあった上での話がもちろん大前提にあるだろうというふうに思うんですね。

 この地方創生という言葉も、やはり危機感というものがベースにあった上でないと物事は全て進んでいかないだろうな、こう思うわけなんです。

 今、こうして島で一つのプロジェクトを成功なさって、そして、ではこれから先、これがどういうふうに進んでいくかというときに、次に何を共有しなくちゃいけないというふうにお考えかということをまたアドバイスいただければと思います。

岩本悠君 海士町で見ている中で、おっしゃられるとおり、やはり最初は、その地域の中で、もしくはキーマンの間で、どれほど危機感を醸成するのか、もしくは共有をしていくのか、やはりそれが原動力を生み出す。特に、大きい動きとか新しい動きをする中で必ず抵抗がありますので、それを乗り越える上での危機感の醸成というのは、やはりそのベースに必要です。

 今、地方創生もそういう戦略でやっているんだと推察しますけれども、それをやってきた中で、危機感は長くは続かない。これは、二年ぐらいたつとだんだんそれになれてきますから、それを幾ら言われても、わかっていますよ、人口減少ですよね、少子高齢化ですよねと、もう誰もそれに危機感を感じる人はいなくなっていきますから、その先に本当に必要になってくるのは、恐らく北風から太陽へというところですね。どういうコミュニティーを、どういう地域を、どういう国をと、まあ、国というレベルに、今のこの地域の住民とか国民を含めて、そこまで描ける、共感できる人というのは、私自身もそうですけれども、まだまだ多くはないかもしれない。こうなったらもっといいよね、こうなったらもっと暮らしが、こうなったらもっと自分たちの地域がという、共感できるビジョンとか価値観を共有しながら、やはり次はそういうものをちゃんとともにつくっていく。

 それで、海士町の場合、やはり大きな課題となっているのは、それを引き継いでつないでいく次の人ですよね。リーダーはたくさんいますし、やっています。ただ、そういう人たちがつながり合いながら、今、大きなうねりとして、ある種の生態系のようになっている。では、それが次の四十代、三十代、二十代というふうに、この輝きの連鎖をどう下に伝えていくのか、ここが次の大きなテーマになっているのかなというふうに感じているところです。

 以上です。

吉田(豊)委員 ありがとうございます。

 そうしましたら、時間がちょっとなくなってきましたけれども、角さんにお聞きしたいと思うんですが、先ほどプレゼンをなさっている中で非常に感銘を受けたのが、ありがとうという言葉を言いにここにいらっしゃったということなんですね。

 では、ありがとうということをどういうふうにして次につなげていくのかというところなんだと思うんですけれども、最初のところでさらっと、現場には熱意のある人がたくさんいらっしゃった、こうおっしゃったんです。実際そうだったんだろうと思いますけれども、では、熱意のないところからということも当然考えられるわけですよね、もしそのありがとうということのアドバイザーでいかれるんだったら。

 これはやはり、どんなふうにして取り組まれていくかということを、お考えがあれば教えていただきたいと思います。

角幸治君 また難しいところですね。

 ありがとうの連鎖、恩返しという考え方でいろいろと日々考えておりますが、熱意のないところに火をつけるというのは本当に難しいんじゃないかなと正直思っております。

 ただ、熱意がない方、済みません、ちょっと……

吉田(豊)委員 ごめんなさい、言い方がよくなかったです。熱意がないということじゃなくて、気づいていないということだと思うんですね、この先のところについてどうなっていくか。地方創生ということは、地方が沈んでいくということが予測されているということなんだけれども、それにやはり気づいたから危機感があってという話に進んでいくんだと思うんです。

 ぜひ、アドバイザーということで、私は富山県ですので、予約させていただきたいと思います。次はぜひ富山の方にお越しいただいて。お待ちしたいなと思うんです。

 私は、きょうは、この島根で皆さんが、現場でなさっているというお二人のお顔を見ていても、本当に生き生きしておられるし、そういう力をぜひ、この地方創生という言葉が、創はつくるで、生むですよね、これが本当の意味で何を意味するのかというところを国としてもしっかりと受けとめて考えてやっていくということが、やはり本当の意味での生きていくことになるのかなというふうに思っています。

 時間がないので、ちょっと一言だけ、せっかくここにいますのでお伝えしたいなと思うのは、私、島根というのは、自分の妻を連れて日本全国行きたい中で、一番行きたいなと思ったところの一つなんです。

 何でかというと、県議会議員をやっているときに、ここ島根の方に視察に参りました。島根の松江の方に小泉八雲記念館というのがございますでしょう。そこで、小泉八雲の奥さんが八雲さんに宛てたラブレターというのを見たんですけれども、本当に感動しました。

 きょうホームページの方を見ましたら、今は、ハーンと家族というテーマで特集をやっていらっしゃる。こういうことが、僕は、本当の意味で、地方創生というときに、一番大切な、何をよりどころにしていくのかという、こういうつながりというところ、これが、別に家族というのは、血がつながっていてもつながっていなくても家族、国家自身が家ということから考えればそうじゃないかなと思うので、きょうは本当に勇気をいただいたなと思っています。

 ありがとうございます。

森山座長 次に、樋口尚也君。

樋口委員 公明党の樋口尚也でございます。

 きょうは、四人の皆様からすばらしいお話をいただきました。

 私たち公明党は、地方創生、まさに、まち・ひと・しごと創生でございますので、町があって、人があって、仕事があるわけであります。真ん中に人があるということが極めて重要だというふうにずっとお話をしています。人がいるから町があって仕事ができるわけでありまして、きょうは、そういう点から、人にスポットを当てたお話をたくさんしていただいたことに、まずもって心から感謝を申し上げたいと思います。

 そして、まず溝口知事にお伺いをしたいと思いますが、私、二十数年ぶりに島根にお邪魔をいたしました。今、公明党の青年局長もやらせていただいております。しかし、きょう、角さんや岩本さん、私たちと同世代か少し下ぐらいだと思いますが、島根にはきら星のようないい青年の人材がいらっしゃるなということにまず感動いたしました。そしてまた、保母先生のような大先生もいらっしゃいますし、これからの地方創生に島根がかけられる思いを聞かせていただいたような、そんな思いでございます。

 まず知事にお伺いをしたいのは、知事が最初におっしゃっていただきました、短期的に、そして中期的に、長期的に、国民にわかるようにこれからのことをちゃんと話していかなければいけないんだというお話の後で、まさに、人口問題には長い時間がかかるけれども、その中で一番大事なことは若者の職場がふえること、これが一丁目一番地だというようなお話に承りました。

 私たち公明党も、地方創生をやるときに、最も大事な五つのことに重点を置いてやろうと今言っておりますが、その一つ目は、やはり、若者、若年人材の定着を促す地域しごと支援だ、とにかく地域で仕事をつくらないと始まらないんだということを申し上げておりまして、きょう知事から伺って、まさにその意を得たところでございました。

 私たちは、今、国と地方、そして教育機関と職場、会社などが横串になった法律が、若者に関する雇用の法律は今、国にありませんので、今国会に内閣提出法案で提出をしていただこうということで、何とかブラック企業には本当に退場していただいて、働きやすい、また仕事の見つけやすい、そういう国づくりをしなきゃいけない、こういう思いでございます。

 ぜひ、先ほども短期的なお話がありましたけれども、きょう知事から資料をたくさん寄せていただいておりますが、中長期的にでも結構ですけれども、これから若者の職場をつくっていく上で大事なポイントというのをまず何点か教えていただきたいと思います。

溝口善兵衛君 若者の職場をどうつくるかということでありますが、これは多岐にわたっております。

 まず、資料二をごらんいただきますと、これまで私どもがやってきておりますのは、一つは、企業の活動の中で仕事をふやすということ、そういう企業がふえること。それから、農業のように、土地はあるけれども人がいない、担い手をどうやってつくっていくかということ。いろいろあるわけですけれども、あらゆることに全力を挙げていくということだと思います。

 資料二の一ページをお開きになると、一番手っ取り早いというか、ビジネスモデルを持っている企業が工場を島根につくるといった企業誘致ですね。それから、そういう中でも、例えば、島根の中でIT産業というのが、ソフトウエアですけれども、かなり広がっております。これは、ITのビジネスがどこでもできるような時代になりましたから、そういうものをさらに進めていく。

 それから、次のページにつきましても、ここら辺に書いてあることも全て、若者の雇用対策、研修、それから、産業におきましても、中小企業の振興、県内企業においてはものづくり産業の生産革新、販路拡大、集積の創設、中小企業、それから、先ほど来申し上げておりますけれども、観光というものが島根の一つの大きな産業でございます、これを拡充していく。

 それから、三ページを見ますと、農林水産業、農業などにおきましては、半農半Xと言っていますけれども、奥さんは農業以外の仕事をする、旦那さんは農業をするとか、そういうことを進めておりますし、林業なども、山の好きな人なんかが都市からたくさん来られますね。それから、漁業は、隠岐の西ノ島町というのがあります。そこは、まき網漁船の大きいのがあるんですけれども、そういう若い人が、海の好きな人とかが来られまして、まき網漁船に乗られて、結婚して子供ができまして、西ノ島町は人口がふえているところになっておりますね。そういうことをさらに進めるということでございます。

 あと、いろいろありますが、そういう中で、我々が今度の対策の中で目新しいものとして取り組もうとしているのは、例示でございますが、十一ページに書いてございます。

 「ご縁の国しまね」の観光総合対策ということで、(一)から(六)まで、これはPRとか宣伝だとかも兼ねておりますけれども、島根県内各地で観光の動きが活発化するようないろいろな事業に取り組んでまいります。

 それから、IT産業の振興ということで、松江にはRubyという日本発のコンピューター言語をつくった方が住んでおられまして、その人を中心にして一定の集積ができつつあります。こういうものをさらに進めるための研究開発センターを設けるとか、あるいは森林、農業といったものがメーンでございます。

 そういうことをするためにも、最後のページですけれども、島根の弱点は、最初に申し上げましたが、都市から遠いということでございます。最も遠いところだったと思いますね、東京から見ますと。道路の整備なんかもおくれてきておるわけでして、近年進み始めております。こういうものをしっかりやっていこうということでございます。

樋口委員 ありがとうございます。総動員していろいろやっていただいて、貴重な御提案もあると思いますし、マスコミにも、県外人材を呼び込む島根県ということでよく取り上げられておりますので、これからも、私どもも一生懸命頑張ってまいりますけれども、ぜひモデルになっていただけるように、またお願いをしたいというふうに思います。

 次に、角社長にお伺いをいたします。

 先ほどは、プレゼンテーションありがとうございました。すばらしいプレゼンテーションで、特に感動したのは、やはり、そこに熱意のある人がたくさんいたからという、人にスポットを当てていただいたということだと思いますし、その後に、いわゆるばか者、若者という話の後に、最後に公務員者の話をされたところが非常に感動的でございました。

 私は今、吉田茂元総理の「回想十年」という本を読んでいますけれども、議会政治の発達には官僚制度の充実を考えなければならない、官僚政治といえば一概に悪く考えるものであるが、甚だしき間違いである、こういうふうに書いてありまして、私も、公務員の皆様や官僚の皆さんに一生懸命頑張っていただける日本をぜひつくるべきだと思っております。

 ただ、世の中ではやはり悪いことを言われることが多くて、きょう社長に言っていただいたように、いや、公務員の方を選んだり、公務員の方が頑張っていただければすごくよくなるんだというのは、公務員の皆様に極めていいメッセージだと思うんです。ぜひその点をもう少しお話しいただけたらありがたいなというふうに思います。

角幸治君 公務員の方というのは、私も、深くおつき合いするまでは、何か、安定とか、仕事が楽なのかなと思っていましたが、全く逆のことがたくさんあります。

 私が最近本当にすごいなと思う方なんかは、県にも市にもいらっしゃいます。五時を回ってから活動し始めるんですよ。特に最近はフェイスブックとかでイベントとかをやりやすくなっているんですけれども、公務員さんが個人で、例えば、僕みたいな人がいますよ、皆さん話を聞きたくないですか、イベントをしますよみたいなことを自分で告知して、時間は七時からなんです、会費は千円ですとか、自分で主催して自分でやっていくという人がいたりして、県でいうと錦織さんという、企業誘致か何かにいらっしゃると思うんですけれども、何でこの人が企業誘致をやっているんだろうと最近思うんです。それぐらい、自分の仕事はちゃんと五時までやるけれども、それ以降に、さらに自分が本当にやりたい活動、しかも公務員という立場で人をつないでいく活動というのをやる方がいらっしゃいます。

 松江市にも飯塚さんという人がいらっしゃって、この人なんかも、この間もありましたけれども、岩ガキとかサザエとかの生産者をたくさんの人に知らしめたいということで、自分で夜にイベントをやって知り合いを呼んで、そこからまたどんどん広げていこうとする人もいます。

 だから、公務員さんというのは五時までしか仕事をしていないと思いきや、本当に熱意のある方や我々に近しく親身になってくださる方は、最近のツールを使ってすごく活動していらっしゃるというのを本当に思います。SNSなんかの最近のツールを使うのもうまいと思います。

樋口委員 ありがとうございます。知事も大変喜んでいらっしゃると思います。錦織さんや飯塚さんも、名前を出していただいてうれしかったと思います。

 今、やはり人を褒める文化が日本に減っているので、すごくよくないと私は思うんです。やはり褒めて伸びて伸びてというのはあります。公務員の方で今一生懸命頑張っていらっしゃる方もたくさんおいででありますから、ぜひ今の角社長のメッセージが全国に行き渡るようにしたいなというふうに思いますので、一層頑張っていただくようにいたしたいと思います。

 次に、岩本さんにお伺いをしたいと思います。

 大変すばらしいお話で、私もまた個別にゆっくりぜひ御指導いただきたいなと思ったわけでございますが、ちょっと二、三点聞きたい点があります。

 きょうお話をされましたグローカル人材という話、この育成ということが重要だというお話だったと思うんですけれども、このグローカル人材のイメージはどういうものなのかということと、どのようにすれば育成ができるというふうに皆さんがお考えなのか、この二点を教えていただけますか。

岩本悠君 グローカル人材ということで、まず、そもそもなぜこういう地方で必要なのかというところですけれども、今見ていて物すごく感じるのは、やはり地方というのはどうしても東京を向いている。この四月からはまさにそうだと思うんですけれども、みんな、では東京からどうやって人を連れてこようかと。いろいろなお金をつけて、うちの町だったらこれだけ補助があるよとか、こんな支援制度があると、どこもかしこもそこに予算をつけて、みんな東京からこっちへ来てくださいというようなことをこれからやり始めると思うんですけれども。それはそれで大切なことだとは思っています。

 ただ、では東京にどうやって物を売ろうかとかやっているだけでは、日本全体はなかなかそれだけでは難しい。そういう競争に巻き込まれるのではなく、地域が本当に自立していく中で、やはり東京だけではなくて、ここからはグローカル人材のイメージですけれども、例えば隠岐であれば、隠岐は世界ジオパークになっています。今、観光客は日本人ばかりで海外から来ないですけれども、もっと世界にこの魅力を伝えて、ある程度高い値段であってもそれに価値を感じて来てもらえるような形でもっとやっていけばいいじゃないかと頭で思っても、それができる人はやはりほとんどいないわけですよね。

 この商品だって、この国のこの都市のこの層の人たちにもっと売ってもいいんじゃないかとか、そうやって、ちゃんと地域のものを海外にも、もしくは海外からも来てもらえるような、そういうことができる人材がやはり求められていく。もしくは、それがいることによってブルーオーシャンでの戦いに入っていけるということ。

 グローカルというのは、シンク・グローバル、アクト・ローカル、地球規模で物を見ながらとか、足元から、地域からという意味と、シンク・ローカル、アクト・グローバル、ふるさとをしっかり思いながらも海外や世界で活躍していくとか、そういう中でまた、ふるさと納税とかいろいろな形で地域貢献もできますし、ただ浮ついたようなビジネスをやるだけじゃなくて、いろいろな現場だとかコミュニティーに対しての目もちゃんと行き届く上でグローバルなビジネスをできるというような人材も含めてグローカルと言っています。

 最後、どのようにというところで、一つ、そういう勝手に育つような環境をやはりつくっていくというのが必要かなと思っています。

 今は、例えば島前は島留学というので全国から来ていますけれども、やはり世界じゅうからもっともっとここで学びたいという子供たちを呼びたいというのが次のステージですけれども、そういう形で、当たり前のようにいろいろな国の子たちと一緒に協働していくような動きだとか環境をつくっていく。

 プロジェクト学習も、例えば島に幸福度の高いコミュニティーをつくっていく、では、ブータンの方では実際どういう問題が起きているのか、そこに行って調べてみたりというような形でちょっとつないでみようかとか、地域の課題解決やプロジェクト学習なんかも、フィールドは地域にとどまらず、地球規模でネットワークしながらやっていく。

 大学なんかも、別に東京や京都の大学だけに絞らなくても、ガーナ大学だっていい大学ですし、英語で、いろいろな分野で先端的なものがあります。そういう、別にアメリカのトップ大学にみんなで行きましょうという発想ではなくて、フィリピンでもどこでも、いろいろな地域の大学とかの進路ももっともっと生徒が選べるような、今は日本の子供たちにそういう大学の選択肢はほとんどないですから、そういうところを切り開いていくような制度だとか仕組みだとか環境を整えていくということで、本当に地方のグローバル化に対応するものを学校とか教育分野がさらに牽引していくというような形が必要かなというふうに思っているところです。

樋口委員 ありがとうございます。

 もう一つだけ。

 これから、例えば小学校や中学校もやはり統廃合が加速化していくのではないかというふうに思います。一方で、中山間地域や離島などでは、小規模であっても学校は残していきたい、こういう思いもあるわけであります。小さな島の小さな学校で取り組まれてきた御経験から、これから、この残したいという小さな学校の今後のあり方みたいなお話と、あと、予算がなかなかない中で、小さな学校で魅力的な教育を行うためには何が必要か、この二点もお願いします。

岩本悠君 まず、ポイントは三つあると思っています。

 一つは、やはり小さな学校の新しいあり方、これはやはり探求していかなきゃいけない。今までの、学校の標準規模という標準法の発想でやるだけではなく、地域の実態にというところが大前提ですけれども、一つ目のポイントは、学校外のリソースを使う。まずは地域のリソースを非常に多く活用する。小さい学校は学校の教員の数が少ないわけですから、どれだけ地域の人たちに来てもらうか、もしくは地域に出ていくか。

 それに加えてICTですね。各教科、科目の教員を全部そろえてしっかり授業をする、これだけの教員をそろえるというのは小さい学校ではなかなか難しい現状になっていきますから、そういう教科学習に関しては、ICTを使って、東京だろうがどこだろうが、そこの本当にプロフェッショナルな授業を受けられる、それは双方向的にも受けられるというような、地域のリソースとICTを活用していく。

 そのためにはコーディネーターの役割がやはり必要になっていく。それは、地域のリソースを学校教育に結びつけていくとか、ICTもそうです。一方通行の授業はICTでやっても、それを討議するとか、グループワークをするとか、そういうところのファシリテートのような機能だとか、学校の教員の役割自体も変わっていかなきゃいけないし、ある種それをプロフェッショナルでやっていくようなコーディネーターの配置みたいなものも一つ重要かなというふうに思っています。

 二点目は、小さい学校のあり方も大事なんですけれども、そもそもの大前提として、今まで、小中高の統廃合、日本国内でもかなりたくさんやっていますけれども、これをちゃんと分析、評価する必要があるというふうに思っています。

 今までは、生徒の数だとかそういうところで、もしくは教育の質の話だけだったところが、地方創生の文脈が入ってきた中で、では、どんな学校の統廃合の、再編の仕方をしているところの地域はそれによって活性化しているのか、もしくは、こういう形の再編をした、統廃合をしたところは、その後、人口がどうなっているのか、ふえているのか減っているのか、物すごく減っているのか、そういったところで、学校の教育という文科省的な視点だけではない視点で、コミュニティーに対してのインパクトを見ていく。

 そうすると、統廃合が悪いわけでもないし、全てがいいわけでもない。何がよくて、どういう形だったら本当に地域にとっても生徒にとっても教育行政にとってもいい統廃合、再編の形なのかというところをちゃんと評価せずに、今のような形で一気にこれから義務教育、小中学校のことをやっていくというのは、地方創生の流れから見ていかがなものかというふうに感じているので、そこら辺の検証は大事かなと。

 三点目は、僕が出させていただいた資料でカラーのものがあって、そのスライドの十三、十四にちょっとだけ書かせていただいているんですけれども、やはり地方の小さい学校のさまざまな課題がある中で、一つそのソリューションになり得るものは、地方留学の形だというふうに考えています。

 今、若い人たちが都市部から地方にという流れができていますけれども、これを、もっと子供たちにもそういう学びの場を提供していくということ。島留学はその一つの形ですけれども、このときに何がネックになるかというと、都会の、自分の家から通える高校とか学校に通うのに対して、こういう島根とかの学校に来ようとすると、寮とかに入らなきゃいけない。そうすると、余計な費用がかかるわけですよ。

 今は、県内とかであれば、受け入れる、海士町なら海士町がその寮費だとかを補助するわけですよね。ある程度経済的な負担がなく、家から通える公立高校に通うのと同じような負担で学校を選べるような形にして、フラットにして、来るというような形でやっているところを、これをもっと大きいうねりにしていこうとすれば、こういう、仮称ですけれども、飛び込めジャパンじゃないけれども、「トビコメ!地方留学」、地域おこし協力隊の子供版だと思ってもらったらいいと思うんですけれども、そういう形で、都会の子たちが地方で学ぶ機会をもっともっと提供していく。

 そういう地方でしっかり日本の文化とかを学んだ先に、では、次は海外にという形で飛び立っていくとか、もしくは、親も一緒に、では、それを機会に子供たちと地方に移住してみようかとか、そういう形の取り組みを、海外に行くのは奨学金とかをどんどんつけても、地方に行くそういう学びに対してはまだ奨学金制度とかは一切ないですから、そこら辺なんかがあると、小さい学校の中に多様性が生まれたり、もしくは地域の活力自体にもつながっていくというふうに考えていますので、ぜひこれも御検討いただけるとありがたいなというふうに思っています。

 以上です。

樋口委員 ありがとうございました。終わります。

森山座長 次に、大平喜信委員。

大平委員 日本共産党の大平喜信です。

 四人の皆さんの大変貴重な御意見を聞かせていただいて、ありがとうございました。

 私は、中国ブロック選出で、きょう唯一の地元の者だということになります。住んでいるのは広島でして、道路ができたものですから、島根は本当に近くなりまして、毎年、プライベートでも来させてもらっているところです。本当にいいところだなと思って、いつも来させてもらっています。きょうはどうぞよろしくお願いをいたします。

 まず、溝口知事と岩本さんに、教育の問題についてお伺いしたいと思います。

 私は衆議院の文部科学委員会の所属なんですけれども、島根県では、少人数学級制度を、国が決めている小学校一、二年生の三十五人学級に上乗せをして、小学校三年生から中学校三年生までですか、三十五人学級を実現させることを決めておられるということで、その御努力、御決断に私は大変励まされております。

 一クラスの人数が少なければ少ないほど、学力の面でも、あるいはさまざまな問題行動や生活面においての不安の発見においても、やはりきめの細かい指導ができるということで、これは多くの関係者が認めているなというところなんですけれども、知事には、少人数学級に取り組まれておられる中で、いわゆるプラス面、効果といいますか、お感じになられていることをお聞かせいただきたい。

 岩本さん、先ほど樋口先生も聞かれたこととちょっとかぶるんですけれども、高校の実践ということで大変参考にさせていただきたいと思います。

 少子化の影響で、小中学校の学校統廃合が急速に進んでいる。同時に、過疎地で暮らす保護者や学校関係者の皆さんは、統廃合すべきかどうかということで大変意見が割れているという現状があるんですね。

 ですので、ちょっとかぶるかもしれないですけれども、海士町の小中学校でどんな声があったり、今どんな現状なのか、あるいは、岩本さんの実践が小中学校でも生かせることがあったらどんなことがあるかということを改めて聞かせていただきたいと思います。

溝口善兵衛君 昨年から、三十五人学級を三年間で小学校六年生まで、そして中学校三年生まで実現できるように始めたわけでございますが、これにつきましては、県議会の方も、ぜひやるべきだという御意見でございまして、私どもも、そういうものも受けまして実施をすることといたしたわけでございます。

 やはり、人数が一定規模より大きくなりますと先生方の注意も制約をされますし、いろいろな面でできるだけ早く少人数学級を実現してほしいという要望が県内の保護者の方々、学校関係者からありまして、実施をしておりますが、一年でございますから、まだ十分な評価をするところまではいっていませんけれども、それぞれ、よかったなという感想等が伝わってきておるところでございます。

岩本悠君 海士町の中では小学校が二つあります、中学校も一つですけれども。当然生徒数は少ないですけれども、統廃合とかそういった話は基本的には上がっていないです。

 どちらかというと、今は、高校は大分やってきた、次はこれをどう中学校、小学校に広げていくかとか、中学校、小学校もそれをやりたいというふうになってきている中で、次の四月から、まず中学校にコーディネーターを配置するというふうになっています。

 やはりコーディネーターのいる、いないが、学校のそういう外部のリソースの取り込みだとか、チーム学校というか、そういうのをつくっていく中で大きく違うというのは、ほかの中山間地域の学校を見ていてもまさにそれが顕著にあらわれていますので、まず中学校に入れていく。次は小学校にというふうになっていますし、公立の寺子屋、公立塾みたいなものなんかも地域でつくってやっていますけれども、それも、高校生だけじゃなくて、もっともっと中学生、小学生にも学びに行けるようにしてほしいという声がある中で、次は中学校にも広げていくというところです。

 ただし、やはり小さい中でのデメリットはあるわけですね。多様性がないとか、そういったことに対しては、先ほどお伝えした島留学みたいな形で、外からも、中学校、小学校もやっていく。これは知夫村なんかもそういう話をしています。だから、次はそこにも広がっていくと思います。

 あとは、人数が少ないと習熟度別の授業とかができにくいわけですね。学力の分布というか、それもかなり固定化しています。高い子もいれば低い子もいる。その中で、競争とかも起きないんですね。自分はこのポジションで何番目というのがもう固定化している。自分はいつもできている、自分はいつもできない、こういう状況になっている。それが学習意欲の低下にかなり影響を及ぼしている。

 今始めて進んでいるのは、島前は三つ島がありますけれども、中学校をつないで授業をする。学力が正規分布だとしたとき、中学校の上位層向け、これは数人しかいない。でも、一つの学校に数人、次の学校も一人、次は三人と、そうやってつなぐと、十何人かで一斉に学力の高い子たち向けの授業ができる。それを、いろいろ双方向でやる中で、実は自分より全然できる子がいるとか、何だあいつはとか、そういうので刺激を受けて、学習意欲はかなり高まる。逆に、低い子は低い子向けの学び直しみたいなところをそういう形で手当てしていくということをICTを活用してやっています。これは、ほかの離島の中学校とかも、うちも入れてほしいというので、ちょっとほかの離島もトライアルで中に入れてやっています。

 こういう取り組みなんかは、本当に小さい小学校、中学校を含めて同じような課題を抱えているところはたくさんありますので、それをうまくつないでそういう仕組み化をしていく中で、ここだけじゃなく、離島だけではなく、中山間地域も含めて活用できるんじゃないかというような印象は受けています。

 以上です。

大平委員 ありがとうございます。

 溝口知事に重ねてお伺いをします。

 人口減少との関係で、ちょっと原発の問題に触れたいと思うんです。

 島根原発は、全国で唯一、県庁所在地に立地されている。半径三十キロ圏内に約四十万人が生活をし、十キロ圏内には県庁や市役所初めさまざまな都市機能が集中しています。大変不安を感じておられる県民の方も少なくないですし、とりわけ、子育て世代の御家族が定住を考えたり、県の立場からいえば、それを確保していくという上でやはり大きな検討要素になると思うんです。

 私たちは原発の再稼働には反対という立場なんですけれども、その立場の違いは横に置くとしても、事故時の避難計画の策定の問題、これは自治体の責任できちんとやらなければならないということで、この点で、現状の避難計画の内容と、策定やその具体化に当たって国や政府への要望などありましたらお聞かせいただけますか。

溝口善兵衛君 万が一の事態が生じたときの避難対策をどうするかということにつきましては、国にもいろいろな予算的な措置も必要でございますから、そういうものを手当てしながら、一昨年からになりますか、国の原子力規制委員会の支所がこちらにもありますから、そこと、県それから立地自治体、周辺自治体、一緒になって避難の計画づくりをやっております。

 当座の話としましては、原発所在地から近いところにつきましては、特に御高齢の方々などにつきましては直ちに避難ができないケースがありますから、避難所を確保して、あるいは、介護施設などにおきまして、放射性物質が排出されたような場合でもそういう物質が建物内に入らないような防護の措置をとるとか、あるいは、地区ごとに、どういうところに集まってどういうふうな形で避難を開始していくか、具体的な避難の計画をずっとつくってきておりまして、折に触れてそうした訓練を行ったり、住民の説明会を行ったり、さらに、すぐにはそういうものが全部完成いたしませんから、毎年その避難計画の見直しをし、充実強化を図っておるというのが現状でございます。

大平委員 ありがとうございます。

 角社長にお伺いいたします。

 島根県の貴重な資源を生かしたさまざまな創意、あるいはチャレンジ精神、大変学ばされました。こうして皆さんの努力によって観光業を中心に広がったこのにぎわいを、県内各自治体、市町村への定住、人口増にどうつなげるかというのがこれからの課題になると思うんです。

 先ほど来おっしゃられている中身ともちょっと重複するのかもしれないんですけれども、角社長の立場から、雇用の創出だったり若者の人材育成だったりという目の前の問題と、国レベルといいますか、より大きいレベルで、国への提言みたいなことも含めて考えられていることがありましたら教えていただきたいと思います。

角幸治君 ありがとうございます。

 ちょっと、観光とか産業振興と全く違う話で考えていることがあるんですけれども、よろしいでしょうか。

 このプレゼンとつながりがまた全然違うんですが、ここ最近本当に思っておりますのが、時代に沿った人口減に対する対策とか、そういったもので日々すごく思っていることがあります。それは、女性の仕事とか人口減のお話になります。特に安倍政権では、女性の幹部をたくさんつくるみたいなことがよくニュースで出ていますけれども、女性の仕事の中で本当にすごいことというのは何だろうかと、最近気がつきました。

 といいますのが、プライベートの話なんですが、妻が妊娠しまして、三十六歳にして初めての子を宿しました。子供ができた妻を毎日見ているんですけれども、今六カ月なんですが、毎日、日々変化していく中で、夜になったらいろいろなことを心配したり、朝起きたら子供のことを心配するという、おなかの中で十カ月も子供を育てるというのがとんでもない仕事なんだよなということに最近は気がついております。

 そんな中で、女性がこれから本当に、一番格好いいというか、一番とうとくて何よりもすばらしい仕事というのは、社会に出ることももちろんだけれども、自分の愛する男性の子を宿す、そしてそれを十カ月もおなかの中で育てる、これが、その人しかできない仕事、オンリーワンの仕事なんだよというような教育とかができないかなとかというふうに思っています。

 うちの妻も、実は不妊治療で宿ったんですけれども、不妊治療のことを知っていたらもっと早くやりたかった、三十六歳でスタートしたけれども、こんなことなら二十五歳からやりたかったわと言っておりました。なので、こういう教育を誰も教えてくれないけれども、中学、高校ぐらいのときに本当に教えてもらっていたならば、私の人生は大分変わっていたし、二十五歳ぐらいで子供を宿して、本当に自分しかできない仕事、十カ月間の子供を宿すということができたと言っていました。

 国にお願いしたいのは、子供を宿している期間中が本当に女性が一番誇りに思えるようなことをできないかなと。リアルになりますけれども、例えば、御主人には税金の基礎控除とかがありますよね。妊娠している十カ月間は控除なんかがさらにふえたりして、家庭を助けてあげるとかいうような施策ができると本当にうれしいなと思います。

 あと、もう一つ済みません、不妊治療という話をしましたが、うちの妻が嘆いていたのが、やはり不妊治療に対する費用がかかり過ぎて、自分たちは子供が欲しくてしようがないのにできない、でも、国は人口をふやせと言う。人口をふやしてほしい国に対して、人口をふやしたい自分たち、思いは同じなのになぜつながらないのということを日々言っておりました。

 幸い、うちの場合は本当にラッキーで、不妊治療二回目で着床して授かったわけですけれども、そこの米子の病院に行きますと、十回ぐらい通っていて、診察室から、結果を聞くと泣き崩れるような四十歳ぐらいの女性、奥さんもいらっしゃるんですよ。それぐらい本当に欲しいのに、多分ですけれども、もう費用が続かないから諦める。それで、余り知らなかったんですが、国の保険対応になっていないことなんかも嘆いていました。

 いろいろな方が、そういうふうに、本当に子供が欲しいのに、欲しい方のケアができていないという部分ももう少し何とかしてもらえたらうれしいですし、やはり、小さいころから、本当に女性の一番すばらしい仕事は宿すことという教育をみんなでやっていけないか。特に、地方創生の中で、都会ではできないかもしれないけれども、島根県あたりからこれができていくと本当にすばらしいなと思います。

 全然回答は違いましたけれども、申しわけありません。

大平委員 ありがとうございます。

 最後に、保母先生にお伺いをいたします。

 きょうお配りの資料の中にも文言としてあるんですけれども、創生事業の最大問題の一つということで、食料、エネルギー問題で供給機能への影響シミュレーションがないということをおっしゃられていて、大変関心があるんですけれども、時間の関係で飛ばされたと思うのでお聞かせいただきたいということと、先ほど階先生なども聞かれたこととちょっとかぶるんですが、ダムの問題というか、人口減少のダムの問題、連携中枢都市圏構想ですよね。今回、一つの目玉として地方創生の中で掲げられているんですけれども、実は、この構想は、中国地方の各都市、結構手を挙げられているところが多くて、私も大変関心を持って見ています。広島市、福山市、岡山の倉敷、それから下関なども手を挙げている。保母先生はこの点について、これも農村畳みなんだというふうにおっしゃられている。あわせてお聞かせいただけたらというふうに思います。

保母武彦君 時間が余りないようですので、簡単にしておきます。

 食料とエネルギー問題は、両方とも、少なくとも昭和三十年代の初めまではほとんど全てが農村から全国に供給されていて、東京、大阪などを支えていたわけですね。それがなくなってきている。だからもとに戻すというわけではないんですけれども、農村問題あるいは中山間地域問題をいじくるときに、食料問題あるいはエネルギー問題を真正面から議論しないという計画自体は、私は全く納得できないです。だから、これはもちろん国会の中で十分な審議をしていただきたいと思います。

 食料問題でいえば、中山間地域が、農産物で国内生産の大体四割ぐらいを占めております、果樹も含めまして。その役割を誰が担うのかという、食料供給の面からこれもやはりしなきゃいけないと思います。

 あるいは、どなたでしたか、先ほど出ましたけれども、日本のエネルギーは、昭和三十年代のエネルギー革命以来、外国から輸入する石油系統が中心になってきて、その中で、現在は海外からの貿易が大体二十兆円から二十五兆円ぐらいのはずです。この部分の何割を国内で供給するようにするかということになると、GNPも五百兆ちょっと、去年、おととしは五百四兆ぐらいですか、というぐらいであれば、二十五兆ぐらいであればその中で非常に大きな割合になる。その部分を地元供給するとなれば、その分、新しい仕事が地域にできて、それがまたプラスする。大体五十兆ぐらいにはなるんじゃないかなと思います。

 というのは、先ほど一言言いましたけれども、再生可能エネルギーで一〇〇%供給をする、まさに自分の力でというところが、エネルギーのためだけではなしに、材をやった後の残った分を使って、木くずですよね、チップと言ったら製紙会社に怒られたので、木くずと言っていますと言っていましたけれども、それで町全体の熱と電力を全て供給して、さらに周辺部にも供給できるようになるというのを進めているんですね。その場合に、町の中での生産が二十三億ふえる、雇用についても百七人新しくふえるとか、いろいろそういう経済効果を生んでいるんですね。これをやればかなりの部分が出てくるんです。

 それから、ちょっと話が飛びますけれども、先ほどの議論をずっと聞いていて、仕事という言葉と雇用という言葉がいろいろ出てくるんですけれども、仕事の中には、人に雇用されるという部分だけではなしに、自分でやる部分があるんですよね。あるいは、海士のあたりでは起業。この全てを、地方創生対策は雇用対策みたいに行政の文書を見ていると出ているんだけれども、それは私は間違いだと思うんです。むしろ、自分で納得のいく仕事をそこでやりたい、それをいろいろな形で行政なり社会が助けていく、この仕組みが本当のやりがいのある地域になっていくわけで、それが重要だろうというふうに思います。

 それから、今質問があった最後のところ、ダム機能の問題ですけれども、連携都市構想は、長野県の南部の方、伊那地域、あるいは北海道の旭川の周辺でしたか、あそこのところで、かなり自主的な連携でうまくいっている例があるんですね。ぜひそこを調べていただけたらいいと思います。

 この間、政府の政策を見ている中では、むしろ国の方で最終的に、ここの市を中心としてこことここ、この三つか四つが一緒になれ、合併はしないんだけれども一緒に連携せよという形でかなり機械的にやると、これは危ないなと思っているんですよ。それをいかに自主的にやるのか、このあたりが課題になってくる。ダム問題についてはそのあたりが一番のポイントかなというふうに思います。

大平委員 ありがとうございました。終わります。

森山座長 以上で委員からの質疑は終了いたしました。

 ここで一言御挨拶を申し上げます。

 意見陳述者の皆様方におかれましては、大変御多忙の中、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べくださいましたこと、まず厚くお礼を申し上げます。

 本日拝聴させていただきました御意見は、当委員会の審査に資するところ極めて大きなものがあるというふうに考えております。ここに厚く御礼を申し上げる次第であります。

 また、この会議開催のために格段の御協力をいただきました関係各位に対しましても、心から感謝を申し上げる次第でございます。まことにありがとうございました。

 これにて散会いたします。

    午後四時三十八分散会


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