衆議院

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第15号 平成27年3月6日(金曜日)

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平成二十七年三月六日(金曜日)

    午前八時五十八分開議

 出席委員

   委員長 大島 理森君

   理事 金田 勝年君 理事 萩生田光一君

   理事 原田 義昭君 理事 平口  洋君

   理事 平沢 勝栄君 理事 森山  裕君

   理事 前原 誠司君 理事 山井 和則君

   理事 今井 雅人君 理事 上田  勇君

      青山 周平君    秋元  司君

      安藤  裕君    池田 佳隆君

      石崎  徹君    石原 宏高君

      岩田 和親君    岩屋  毅君

      衛藤征士郎君    小倉 將信君

      小田原 潔君    大西 英男君

      大見  正君    金子 一義君

      金子めぐみ君    神山 佐市君

      菅家 一郎君    熊田 裕通君

      小池百合子君    小林 鷹之君

      小林 史明君    小松  裕君

      今野 智博君    鈴木 俊一君

      田所 嘉徳君    土井  亨君

      長坂 康正君    根本  匠君

      野田  毅君    橋本 英教君

      藤原  崇君    古屋 圭司君

      星野 剛士君    堀内 詔子君

      前田 一男君    宮崎 謙介君

      保岡 興治君    山下 貴司君

      山本 幸三君    山本 有二君

      小川 淳也君    逢坂 誠二君

      岸本 周平君    後藤 祐一君

      階   猛君    辻元 清美君

      馬淵 澄夫君    宮崎 岳志君

      本村賢太郎君    山尾志桜里君

      柚木 道義君    渡辺  周君

      足立 康史君    井坂 信彦君

      柿沢 未途君    重徳 和彦君

      篠原  豪君   松木けんこう君

      吉田 豊史君    稲津  久君

      岡本 三成君    中野 洋昌君

      濱村  進君    樋口 尚也君

      大平 喜信君    塩川 鉄也君

      高橋千鶴子君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣         麻生 太郎君

   総務大臣         高市 早苗君

   外務大臣         岸田 文雄君

   文部科学大臣       下村 博文君

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   農林水産大臣       林  芳正君

   経済産業大臣       宮沢 洋一君

   国土交通大臣       太田 昭宏君

   環境大臣         望月 義夫君

   防衛大臣         中谷  元君

   国務大臣

   (防災担当)       山谷えり子君

   国務大臣         甘利  明君

   国務大臣

   (国家公務員制度担当)  有村 治子君

   国務大臣

   (地方創生担当)     石破  茂君

   財務副大臣        菅原 一秀君

   文部科学副大臣      丹羽 秀樹君

   内閣府大臣政務官

   兼復興大臣政務官     小泉進次郎君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府特別補佐人

   (原子力規制委員会委員長)            田中 俊一君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  山崎 和之君

   政府参考人

   (総務省自治行政局公務員部長)          丸山 淑夫君

   政府参考人

   (総務省自治税務局長)  平嶋 彰英君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 鈴木  哲君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 岡庭  健君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          河村 潤子君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        久保 公人君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  三浦 公嗣君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 今別府敏雄君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房長) 佐藤 一雄君

   政府参考人

   (農林水産省食料産業局長)            櫻庭 英悦君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            三浦  進君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           土井 良治君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁次長) 高橋 泰三君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            木村 陽一君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  橋本 公博君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  梶原 成元君

   政府参考人

   (原子力規制庁長官官房審議官)          山田 知穂君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 吉田 正一君

   参考人

   (日本放送協会経営委員会委員長)         浜田健一郎君

   参考人

   (日本放送協会会長)   籾井 勝人君

   予算委員会専門員     石崎 貴俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月六日

 辞任         補欠選任

  岩屋  毅君     大見  正君

  衛藤征士郎君     青山 周平君

  小田原 潔君     池田 佳隆君

  金子 一義君     堀内 詔子君

  熊田 裕通君     藤原  崇君

  小池百合子君     小林 史明君

  土井  亨君     安藤  裕君

  根本  匠君     岩田 和親君

  星野 剛士君     小松  裕君

  山下 貴司君     石崎  徹君

  山本 有二君     神山 佐市君

  小川 淳也君     柚木 道義君

  岸本 周平君     山尾志桜里君

  階   猛君     逢坂 誠二君

  辻元 清美君     本村賢太郎君

  馬淵 澄夫君     宮崎 岳志君

  山井 和則君     渡辺  周君

  井坂 信彦君     柿沢 未途君

  重徳 和彦君     篠原  豪君

  松木けんこう君    足立 康史君

  松浪 健太君     吉田 豊史君

  中野 洋昌君     稲津  久君

  樋口 尚也君     濱村  進君

  赤嶺 政賢君     大平 喜信君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     菅家 一郎君

  安藤  裕君     土井  亨君

  池田 佳隆君     小田原 潔君

  石崎  徹君     山下 貴司君

  岩田 和親君     根本  匠君

  大見  正君     岩屋  毅君

  神山 佐市君     山本 有二君

  小林 史明君     小池百合子君

  小松  裕君     星野 剛士君

  藤原  崇君     熊田 裕通君

  堀内 詔子君     金子 一義君

  逢坂 誠二君     階   猛君

  宮崎 岳志君     馬淵 澄夫君

  本村賢太郎君     辻元 清美君

  山尾志桜里君     岸本 周平君

  柚木 道義君     小川 淳也君

  渡辺  周君     山井 和則君

  足立 康史君     松木けんこう君

  柿沢 未途君     井坂 信彦君

  篠原  豪君     重徳 和彦君

  吉田 豊史君     松浪 健太君

  稲津  久君     中野 洋昌君

  濱村  進君     樋口 尚也君

  大平 喜信君     塩川 鉄也君

同日

 辞任         補欠選任

  菅家 一郎君     前田 一男君

  塩川 鉄也君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  前田 一男君     大西 英男君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 英男君     今野 智博君

同日

 辞任         補欠選任

  今野 智博君     橋本 英教君

同日

 辞任         補欠選任

  橋本 英教君     衛藤征士郎君

同日

 理事前原誠司君同日理事辞任につき、その補欠として山井和則君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の辞任及び補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成二十七年度一般会計予算

 平成二十七年度特別会計予算

 平成二十七年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

大島委員長 これより会議を開きます。

 平成二十七年度一般会計予算、平成二十七年度特別会計予算、平成二十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官山崎和之君、総務省自治行政局公務員部長丸山淑夫君、総務省自治税務局長平嶋彰英君、外務省大臣官房審議官鈴木哲君、外務省大臣官房審議官岡庭健君、文部科学省生涯学習政策局長河村潤子君、文部科学省スポーツ・青少年局長久保公人君、厚生労働省老健局長三浦公嗣君、厚生労働省政策統括官今別府敏雄君、農林水産省大臣官房長佐藤一雄君、農林水産省食料産業局長櫻庭英悦君、農林水産省農村振興局長三浦進君、経済産業省大臣官房審議官土井良治君、資源エネルギー庁次長高橋泰三君、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長木村陽一君、国土交通省住宅局長橋本公博君、環境省地球環境局長梶原成元君、原子力規制庁長官官房審議官山田知穂君、防衛省大臣官房審議官吉田正一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

大島委員長 本日は、地方創生等についての集中審議を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。根本匠君。

根本(匠)委員 おはようございます。自由民主党の根本匠です。

 冒頭、川崎市内の中学生である上村遼太君の痛ましい事件についてお尋ねをいたします。

 上村遼太君に心からの哀悼の誠をささげます。これを何とか防げなかったのか、命を守れなかったのか。この件は文科省だけでなく、警察、法務、厚労など関係省庁横断で取り組むべきだと思います。これまで、そしてこれからの取り組みについて、総理の決意をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 改めて、上村遼太君の御冥福をお祈りしたいと思います。また、親御さん、そして御家族の方々に心からお悔やみを申し上げます。

 今回の事件では少年が三人逮捕されていますが、なぜこのようなことが起きてしまったのか、上村君の命を何とか救ってあげる手だてはなかったのか、その思いで、私としては、文部科学省等に対して、速やかな対応を行うよう指示を行ってまいりました。

 政府としては、これまで、丹羽文部科学副大臣を主査とするタスクフォースを設置し、状況の検証と再発防止策の検討を行うこと、そして、文部科学省の担当者を川崎市に派遣して、子供たちの心のケアの要請や正確な事実関係の把握を行うこと、そして、全国の小中学校に対し、七日以上連続で連絡がとれず、生命または身体に被害が生ずるおそれがある児童生徒等の緊急確認調査を実施することなどの対応をしています。

 上村君と同様の状況にあるかもしれない子供たちに一刻も早く救いの手を差し伸べるため、文部科学大臣や関係府省に対し、さらに指示を行いました。

 具体的には、タスクフォースのメンバーに、内閣府、警察庁、法務省、厚生労働省を加え、政府全体で再発防止策を構築すること、本日、丹羽副大臣を川崎市に派遣いたしますが、その際、外部の視点を入れて取り組みの検証を行うよう市長、教育長に要請すること、緊急確認調査の結果を早急に取りまとめること、教育現場と警察や児童相談所との連携を強化することを指示したところであります。

 子供たちの命を守るのは私たち大人の責任であります。このような悲しい出来事を決して二度と繰り返すことのないよう、できることは何でもやっていくという決意で取り組んでまいる考えでございます。

根本(匠)委員 政府も極めてスピーディーに対応しておられます。子供は国の宝です。再発防止に政府一丸となって、そしてオール・ジャパンで取り組まなければならないと思います。

 次に、復興加速と政治のガバナンスについてお尋ねをいたします。

 東日本大震災から四年がたとうとしております。いまだに避難生活を余儀なくされておられる方々に、心からお見舞いを申し上げます。

 そうした方々のために、何としてでも復興を前に進めなければなりません。地方創生、被災地、とにかく復興を急ぐ。復興と地方創生を重ね合わせて、復興が地方創生のフロントランナーになるように復興を急ぐとともに、単なる復旧にとどまらない、新しい東北をつくり上げていかなければならないと思います。

 復興はいまだ道半ばです。東日本大震災は、千年に一度の未曽有の大震災です。復興には時間がかかります。その時間がかかる復興をどう加速化していくか、その実現が安倍政権に課せられた使命。そのために必要となる政治とは何かについて、政治と政治力、政策力、政治のガバナンスと復興、統治のあり方の視点で質問をいたします。

 私は、復興大臣に就任し、現場主義を実現するために、直ちに被災地を訪れました。そのときに相馬市長から、これは前政権の時代にも訴えていたそうですが、農地法の転用規制が高台移転事業の妨げになっている、こういうお話がありました。林農林大臣と直ちにこの問題を解決しました。大事なのは、現場での問題を吸い上げる、これに加えて、政策によって実際にその問題の解決を実現できるか、その能力がまさしく政治のガバナンスではないかと私は思います。

 私は、三月十一日のあの大震災のとき、地元郡山市におりました。実は、不覚をとっておりました。大震災後すぐに、郡山市の防災対策アドバイザー。陳情しても動かない、誰に言ったらいいかわからない、こんな意見を本当に聞いた。そして、私が直接厚生労働省と、国とやりとりする中で、十件以上の案件は動いた。非常にもどかしさを感じました。

 大震災時は、特に政治の統治能力が問われます。しかし、その当時、政治のガバナンス、統治能力が弱い、劣化している、これは私の体験した率直な印象であります。現場から実感してきた。現場主義と司令塔機能の強化が必要、これが私の実感、原点であります。

 復興加速化のためには政治のガバナンスが重要、特に復興にかける政権の意思が極めて重要だと思います。このような観点から、総理は復興にどのような姿勢、考え方で臨んでおられたのか、その成果を含めてお尋ねをしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 根本復興担当大臣とともに第二次安倍内閣を立ち上げたとき、復興の加速は安倍政権の最重要課題であるということ、そして、全ての大臣は復興担当大臣という気持ちを持って取り組むことということを決定しました。

 そして、根本さんが今おっしゃったように、根本担当大臣のもと、現場、そして司令塔、この二つをキーワードとしました。私も、そのほとんどを大臣とともに、合計二十二回にわたって被災地に足を運びました。被災地の方々の声に耳を傾けてきたところでありまして、根本当時の大臣にも、そのほとんど、一年九カ月、ともに仕事をしていただき、リーダーシップをとって復興を着実に進めていただいたと思います。

 二年前の段階では、用地確保が難しいといった切実な声を伺うことが多かったわけでございます。まさに難問にぶつかって行政が立ちすくんでいた状況と言ってもいいと思います。いつどこに何戸の住宅が完成するかの見通しすら立っていない中で、被災地の方々は本当に不安だったと思います。

 そうした中で、絶えず被災者の方々の声に耳を傾けながら、累次にわたる加速化策を打ち出し、今や、高台移転で九割、災害公営住宅で八割で事業が始まるなど、事業が着実に進展をしています。

 また、なりわいの再生については、水産業や物づくりの現場に伺う中で、産業の成長を地域経済の再生につなげていく必要を感じ、関係省庁の施策を総動員するよう指示をいたしました。このような取り組みもあり、例えば津波で被災した農地の七割が復旧し、水産加工業の八割が業務を再開したほか、グループ補助金の活用によって一万を超える事業者を支援し、交付先企業の約四割が震災直前の売上水準以上まで回復をしています。

 さらに、仮設住宅や災害公営住宅を訪れ、避難が長期化する中、住民の皆様の心身のケアに力を入れる必要を感じ、健康管理、生活支援に向けた総合的な施策の策定を指示いたしました。本年一月には、高齢者の見守り活動やコミュニティー形成の推進を含む被災者支援総合対策を策定しました。

 被災地の復興なくして日本の再生なしとの考え方で、今後とも、被災者の方々に寄り添いながら、復興の加速化に全力で取り組んでいく考えでございます。

根本(匠)委員 復興を加速するとは、何がそれを実現できるか、具体的な加速化措置を講ずることであります。

 安倍内閣において、住宅再建、まちづくり、なりわい、産業の再生、健康、生活の支援、福島の復興再生、新しい東北、地域の創意工夫、厚い地域の可能性を引き出す取り組み、さまざまに加速化措置を講じてまいりました。

 どんな加速化措置を講じたか。例として、住宅再建、まちづくりを挙げたいと思います。用地取得の抜本改革を初め、九十項目以上の加速化措置を講じました。

 高台移転加速化、三本の矢。

 一つは、用地取得困難な土地を計画対象地域から外す。高台移転事業とは、津波被災地から山を削って高台に移転する。この移転候補地の用地取得困難地は計画から外せばいい。簡単な手続でできるようにした。

 そして、津波被災地から市町村が土地や農地を買い取るわけですが、農転の許可が必要だと言われた。農転の許可を不要にしました。これで一気に買い取りが進んだ。

 そして、所有者不明の土地がある。何ともならない。財産管理制度というのがあります。これは、裁判所で財産管理人を選んでもらう。司法書士や弁護士の方から選んでもらう。選ばれた財産管理人が土地を調査して、裁判所の許可を受けて処分ができる。これは半年から一年かかっておりました。これを最短で三週間で進めた。私は女川町に訪問したときに職員の皆さんと対話をした。用地課職員の方が、本当に早くなりました、三日で財産管理人を選んでくれるんです。裁判所も本当に対応していただきました。

 用地取得の抜本改革によって、二十五年九月の時点では用地取得率四九%でした、これが現在では九四%に一気に加速した。高台移転事業の着工率も、安倍内閣発足時は一二%ですよ、これが現在では九五%に向上した。

 二十五年度予算の執行についても、復興交付金の現場での執行率は一五%改善した。それ以外の復興事業も五・七%改善した。町の復旧復興に至っては一七・九%改善した。

 土地収用法も七つの改革措置を講じました。モデル事業で六年から三年に短縮した。応援職員の派遣。そして、工期をいかに短縮するか。これはURの活用。URを活用して、東松島市では六年かかる工期が四年半に短縮されました。

 復興を加速したポイント、これは九十項目以上にわたる例えば加速化措置を講じた。このポイント、政治のガバナンスの観点から三点申し上げたいと思います。

 一点目、復興加速を、総理がおっしゃられたように、政権の最重要課題に据えた。全閣僚が復興大臣。司令塔を復興大臣に一元化した。縦割りを排する。内閣を挙げての体制、総理がその先頭に立つ。

 二点目、政府・与党の連携。加速化本部。大島委員長、加速化本部長、四次にわたる提言をいただいた。非常にうまく機能した。幅広い英知を結集することができた。

 そして、住宅再建、まちづくり、例えばこのテーマは各省庁にまたがります。横串を刺す、縦割りを乗り越える。

 復興大臣をトップに各省庁の局長クラスを集めたタスクフォース、これが効果的でした。大臣が陣頭指揮をとるタスクフォース。よく作業部会と訳されますが、そうではありません。私に言わせれば本質は戦略実行部隊。うまく政と官が回ったと思います。

 政治家が、見たまま聞いたまま、復興がおくれていると言っても復興は進みません。医者に例えれば、具体的な処方箋が書けるか、手術ができるか。政治のガバナンス、統治能力が問われます。具体的な加速化措置を講じ、復興の加速化を実現できるか、これが政治の使命であります。

 福島の復興再生についてお伺いをいたします。

 福島においては、いまだにふるさとを離れている、避難している方々が約十二万人おられる。その方々の気持ちを思うと本当に胸が痛みます。一日でも早くふるさとを取り戻す。

 福島は、地震、津波に加えて、原発事故、風評被害など原発事故に起因する災害、特有の問題、課題がある。復興大臣に就任したときに、その課題に対応する予算、施策が薄い、これは私の実感です。

 福島に関する施策を抜本的に強化しました。福島再生のための加速化措置を講じました。

 避難指示を強いられた皆様、まず帰還支援。避難指示を解除する区域も出てきました。避難指示区域も縮小してまいりました。戻りたい方には戻っていただけるよう、帰還支援を進めた。長期避難を余儀なくされる方、復興公営住宅、仮設住宅から安定した生活に移っていただく。昨年秋から入居が始まって、五千戸つくります。

 復興拠点。例えば大熊町の大川原地区。魅力ある新しい町をつくる。法改正でさらに後押しをする。賠償。新しい生活も選択できるように、土地、住宅の追加賠償、昨年七月から始まりました。

 中間貯蔵施設も動き出しました。三月十三日に搬入を開始します。私は、就任直後、この中間貯蔵施設の進捗状況を聞きました。唖然とした。一枚の地図に丸がついているだけですよ。ほぼゼロからのスタートだった。昨年九月に、ようやく福島県から重い決断をいただきました。除染に弾みがつきます。

 子ども元気復活プロジェクトで子供たちが伸び伸びと運動する運動施設を整備する。風評被害対策もやる。

 そして、新たな産業への取り組み。農業、商工業等の再生とあわせて、自然エネルギー、医療機器など新産業を創出する。浜通り地域はロボット産業を集積する。双葉郡の将来構想も動き出してまいります。

 復興に着実に歩み出しておりますが、しかし、さらなる加速化が必要です。国、市町村、県がスクラムを組んで取り組む必要があります。

 総理の福島復興再生への思い、決意をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 福島の一日も早い復興は国の責務であります。国が前面に立って、政府一丸で取り組んでいかなければならないと考えております。

 根本議員におかれましては、復興大臣として、住宅再建やまちづくりへの支援にとどまらず、避難の長期化を見据えて、健康・生活支援といった被災者の方々に寄り添った支援についてもリーダーシップを発揮していただきました。おかげで、おくれていた福島の復興も新たなステージに入りつつあると思います。

 三月一日には、常磐自動車道が全線で開通をしました。今後、仕事や観光で全国各地から福島を訪れる方々がふえることが期待されます。

 仮設住宅で生活されていた避難者の方々の復興公営住宅への入居もいよいよ始まりました。中間貯蔵施設も先月二十五日に、福島県知事、大熊、双葉両町長に、除染で生じた土壌の搬入受け入れという大変重い、苦渋の決断であったと思いますが、重い決断をしていただきました。

 今国会では、福島県からの要望も踏まえ、住民の帰還促進のための復興拠点の整備に向けて、新たな交付金の創設や法案を提出いたしました。一日も早い成立をお願いしたいと思います。

 除染も加速をしながら、福島の復興を確かなものとしていきたい。被災者の方々の心に寄り添いながら、福島の復興再生に向けて全力を挙げて取り組んでいく考えでございます。

根本(匠)委員 復興は、当然まだ道半ばでありますが、第二次安倍内閣が誕生し、二年余りがたちます。安倍総理の復興にかける確固たる信念と、そして安倍内閣の政治のガバナンスによって、復興は大きく加速化したと思います。一日でも早くふるさとを取り戻す。とにかく、我々は、政府一丸となって、被災地の復興、地方創生に取り組まなければなりません。

 これからも、ぜひ、みんなで頑張って復興をなし遂げるように、安倍総理にも先頭に立って頑張っていただきたいと思います。我々もしっかりと取り組みます。

 ありがとうございました。

大島委員長 これにて根本君の質疑は終了いたしました。

 次に、稲津久君。

稲津委員 おはようございます。公明党の稲津でございます。

 通告に従いまして、順次質問してまいります。

 まず、きょうは、自治体間の財政力の格差への対応についてということで、パネルを順次紹介させていただきながら、本題に入っていきたいと思っています。

 まず最初は、東京圏へ転入超過が一極集中しているという資料でございますけれども、これは総務省の二〇一四年の人口移動状況の発表でございます。

 このパネルを見ていただきますとわかるとおり、四十七都道府県中、転入超過は、東京、埼玉、神奈川、千葉、愛知、福岡、宮城、この七都県のみ。その他は転出が転入を大きく上回っている。特に、首都圏に人口が集中している、いわゆる東京への過度な人口の一極集中ということがここでわかると思います。

 私は、その上で何を申し上げたいかというと、それは、人口の増加、減少というのは地域の経済活動に反映していく、そうすると、それは税収につながっていく、そして、ひいてはこれは地方財政に影響するということをまず申し上げておきたいと思います。

 次のパネル、これは直近十年間の都道府県の一般財源の推移ということで、パネルにしてみました。

 ここ十年間の財政状況を調べてみますと、これは総務省の地方財政調査をもとに、地方交付税それから地方税、一般財源の比較ですけれども、四十七都道府県の全体の平均、これが十年前との比較で、全国平均で一〇六・九%、要するに六・九%伸びている。これをもう少し分析してみますと、平均以上に財源が増しているところは実は十一都府県のみであるということ。神奈川一二一・一%を初め、これらの地域です。

 これは何を言っているかというと、要するに、人口がふえるところは一般財源もよりふえるということ、したがって、人口が増して財源が潤う地域と、逆に人も金も減っていく地域があるということ、地方の二極化が進んできているということが言えると思います。

 私は、平成二十七年度の地方税、地方交付税、ここについては、これは一般財源は前年からふえました。それから、補正予算、本予算、ここも、地方創生のもとに一・七兆円、関連事業が予算化されました。これは非常にすばらしいことであって、そして、評価もするし期待もいたしたいというふうに思っております。

 ただ、ここで大事なことは、地方創生というのはやはり息の長い取り組みですから、その取り組みを進めるに当たっては、やはり自治体の財政基盤が揺るぎのないものにならなければいけないということをまず申し上げておきたいと思います。

 次のパネル、このパネルは、平成二十六年度の都道府県の税の徴収実績、これは対前年比で見ていますけれども、十二月末現在の地方行財政調査会の調べです。

 これを見てみますと、収入額ベースで前年同期と比較した伸び率、これは都道府県全体では一〇七・一%、ふえています。ふえているんですけれども、それでは全国平均を上回っているところはどこですかというと、愛知県を初め、残念ながら九都府県のみ。逆に、平均の半分、三・五%未満のところは北海道や青森を初め十五ありまして、奈良県は一〇〇・九%。

 これは何を言っているかというと、要するに、自治体間の財政力の格差が顕著になってきているということが言えると思います。これは地方税のことですから、地方税というのは、どうしても地域間の偏在は避けられないと思います。

 そこで、では、そこを補完するのは何かというと、これは地方交付税になるんですけれども、しかし、この地方交付税、財政調整の仕組み、私が先ほどパネルで紹介させていただきましたように、地方税と地方交付税の一般財源は、残念ながら、人口がふえるところはよりふえるということをこのパネルで証明させていただいたというふうに思っております。

 私は、地方創生を推進する、地方財政を確立するためには、自治体間の財政格差を縮小していく、そして、そのためには、財政調整、これをしっかりきかせるような制度にこの地方交付税の制度を見直すべきだ、このように思っています。

 これは総務大臣に見解を伺いたいと思います。

高市国務大臣 地方団体間で一般財源の額の格差が拡大しているという要因につきましては、稲津委員御指摘のように、交付税の基準財政需要額の算定において人口に関係する測定単位を多く用いているということから、人口が増加している都市部の団体の基準財政需要額が増加する傾向にあるということ。さらには、近年の景気回復に伴いまして、都市部の団体の方が地方税収の伸び率が大きいということなどが考えられます。

 それからまた、加えて申し上げましたら、基準財政需要額に関して、法令等によって支出が義務づけられている経費、主に社会保障関係経費なんですが、これが大幅な増加傾向にございまして、やはり社会保障は人を対象としておりますから、こうした意味でも、人口の多い地域、すなわち都市部の団体の基準財政需要額が増加している要因になっていると考えております。

 このような中で、各団体間の財政力格差が拡大しないようにしていくためには、一つは、税源の偏在性が小さくて税収が安定的な地方税体系を構築していく、これが重要でございます。さらに、地方交付税の持つ財源保障機能と財源調整機能、これを合わせて財政調整機能といいますけれども、これも委員の御指摘のように、この財政調整機能を強化していくということを考えていくべきです。

 ですから、この方向に従いまして、この交付税の基準財政需要額及び基準財政収入額の算定方法を今後見直していく必要があると考えておりますので、検討をしっかりと進めてまいりたいと思っております。

稲津委員 今後の見直し等も含めて検討されるというお話をいただきましたので、期待をさせていただきたいと思っています。

 去年、この地方交付税については、制度ができて六十年の佳節を迎えました。私は、この六十年間、我が国において地方交付税の制度というのが続けられてきたということは、大変すごいことだと思っています。

 世界に冠たるこの地方交付税の仕組み、六十年間の間にいろいろなことがあった。財政状況の厳しいときもあった、いろいろな時代の変化があった。しかし、この交付税の部分的な見直しも含めて今日まで六十年間来たということは、これは誇りを持ってもいいというふうに思っています。大変な努力をされた方もたくさんいらっしゃると思っています。

 ただ、その上で、やはり、先ほど申し上げましたように、地方創生という、我が国にとってまさにこれから百年の大計に立つような取り組みをしていくに当たっては、ぜひこの地方交付税の制度の仕組みについて検討いただくということを申し上げておきたいと思います。

 次の質問に移りますけれども、次は地方の大学の、特に私立大学の機能強化ということについてお伺いをしていきたいと思います。

 地方と都市の間で人が移動する機会というのは四つあるというふうに言われていまして、一つは大学入学時、そして卒業して就職するとき、それから特に四十代で転職など、それから定年退職後と言われていますけれども、人の流れを変えるためには、これらを、地方に人を呼び込む、そういう好機と捉えていくことも大事かなというふうに思っています。

 それで、その最初の機会であります大学の進学時、それからその後の就職ということで少し表にまとめてみましたので、ごらんいただきたいと思うんです。

 パネルの左側、これは大学の進学時における都道府県別の流入、流出の割合ですけれども、もう一目瞭然なんですが、東京、京都が圧倒的に実は流入が上回っている。それから、プラスは十都府県のみということで、やはり大都市、特に首都圏等に集中しているということ。あとは、やはり転出が三十七道県ということで大変超過している。

 その上で、今度は右の方を見ていただきたいんですけれども、これは私立大学の卒業生の就職先の属性ということなんですが、これを見ていただくとわかるんですが、例えば東京。東京では六六・四%が東京都内に就職、それから八一・五%が南関東地域で就職をしている。首都圏全体で見ても、千葉、神奈川、埼玉、東京、七五%以上が南関東、首都圏に残る、就職するということです。

 では、どういう対策が必要かということになってくるんですけれども、一つは大都市への学生の集中を抑制するということもあると思います。それから、一方で、都市部へ大学進学したとしても、今度は地方に就職を促すということ。それから、これも当然、当たり前かもしれませんけれども、地方の大学、特に地方の私立大学は数が多いですから、この地方の私立大学の機能強化をして雇用創出の取り組みにしっかりつなげていくということが、私は大変重要なことだと思っています。

 総理も私も東京都内の私立大学の出身ですのであれですけれども、このような状況を見たとき、地方の大学による地元就職を支援する事業、それから特に地方の私立大学の機能強化、これが地方創生を考える上で極めて重要である、このように思っておりますが、総理の所見を伺います。

安倍内閣総理大臣 ただいま稲津議員のお示しになったパネルを拝見させていただきまして、改めて、地方の大学、特に地方の私立大学の機能の重要性、そしてその大学生が地元に、地域に就職をすることの重要性、再確認をさせていただいたと思います。

 地方から東京に若い人たちが流入する、それはまさに、大学に入学する際、そして卒業する際もそこで残ってしまうということなんだろう、こう思います。それはまさに、地方から都市圏に、人材と、また仕送りもするわけですから、人材もお金も流入してしまうということになると思います。

 ですから、だからこそ若い皆さんに、ある意味地域に密着した、物価も安い地域で、そしてまた、たくさんある私立、その魅力を生かして、特性を生かしてしっかりと学生を確保していく、学生を育て、そして地域の企業に人材を送り出していくという機能を発揮してもらいたい、このように思います。

 このため、学生の地方への就職を積極的に進める大学や、地方企業等でのインターンシップ、地元産業界等と連携した実践教育を実施している大学を私学助成において重点的に支援するとともに、地方で就職する学生について奨学金の返済を免除する新たな仕組みをつくることとしています。

 そして、これらの取り組みによって、地方の私立大学等への進学や地方企業等への就職を促進し、地方への新しい人材の流れを、人の流れをしっかりとつくっていきたいと考えております。

稲津委員 ありがとうございました。

 ぜひ、私立大学の機能強化、特に地方、そしてそれが地元の、自分の県の就職につながっていく、そういう仕組みづくりを強化していただくようお願いをさせていただきたいと思います。

 次は、地域住民生活等緊急支援交付金について伺ってまいりますけれども、公明党としても提案、推進させていただいたプレミアムつき商品券、これは、地域消費喚起・生活支援型の交付金ということで、二千五百億円が二十六年度の補正で盛り込まれました。

 きょう三月六日が各自治体から実施計画が出される、このように承知をしておりまして、全国各地でもかなりの自治体がこのプレミアムつき商品券を実施するのであろう、このように考えております。

 地域によっては、十八歳未満のお子さんのいる世帯には割引券、それから、小規模な店舗でも使えるような、専門に使えるような、そういった券の発行とか、あるいは、北海道の岩見沢市では住宅のリフォームに使えるプレミアムつき建設券とか、さまざまな工夫が各地でなされていまして、まさに消費喚起効果、経済効果があるのは間違いない、このように思っているところでございます。

 きょうは、その上で、そのことを踏まえて、地方創生先行型の交付金について伺っていきたいと思うんですけれども、その前にまず、地方版の総合戦略について総理にお伺いさせていただきたいと思います。

 昨年、まち・ひと・しごと創生法が成立しまして、国の長期ビジョンと今後五カ年の国の総合戦略が閣議決定されました。これを受けて、今後各自治体では地方版の総合戦略を策定することになりますが、この地方版総合戦略について、これまで地方自治体が策定してきた総合計画とは何が違うのか、また、地方創生の取り組みの中でこの地方版総合戦略にどのようなことを期待されるか、総理の見解をお伺いします。

安倍内閣総理大臣 私たちが進める地方創生は、霞が関発ではありません。まさに地方発の地方創生を進めていかなければならないと考えています。各地域にはまさに知恵を絞っていただいて、実効性のある地方版総合戦略を策定し実施していただくことによって、若者が将来に夢や希望を持てる、個性豊かな地方を創生していただきたいと思っています。

 各地域において総合戦略の策定が始まっていますが、例えばことし一月に地域再生計画の認定を受けた北海道夕張市は、炭鉱の閉山による人口の減少に対応するため、コンパクトシティーと再生エネルギー活用による、これは炭層メタンガスでありますが、地域活性化を目指しています。こうした地方の取り組みを推進していきたいと思います。

 国もまた、やる気のある地方の創意工夫を全力で応援するとの方針に基づいて、地方の取り組みに対してあらゆる方策を使って後押しをしていきます。例えば、地域経済分析に基づく情報の提供などの情報支援、地方の要望に応じた人材派遣、人材支援、そして予算や税制措置による財政支援などを駆使して、地域の特色を生かした新しい政策づくりを最大限支援していく考えであります。

稲津委員 次に、石破大臣にお伺いします。

 地方創生先行型の交付金についてなんですけれども、これは、私が思うに、各自治体だけではなくて、むしろ農林水産業とかあるいは観光とか、そういった仕事をつくっていくという考えでいきますと、エリア別とか、あるいは県と市町村が連携するとか、そういう仕事づくりをするための計画、あるいは交付金の使い方、これをぜひするべきだ、このように思っておりますけれども、大臣の所見を伺います。

石破国務大臣 それはまさしく御指摘のとおりで、総合戦略も複数の自治体をまたいでつくっていただく方が効果的な場合もあろうかと思います。場合によっては県をまたいでいただいても結構だということで、何が一番その地域において仕事をつくり所得を上げということに寄与するかという点が大事でありまして、自治体ごとにというような狭い考えは全く持っておりません。

 総合戦略においてもそうですし、いろいろな交付金の使い方もそうでございます。何が一番よいかということにおいて、広域連携は極めて重要なことだと考えております。

稲津委員 時間が参りましたのでこれで終わらせていただきますけれども、非常にきょうは大事な視点での御答弁をいただいたというふうに思っています。地方創生、これから、政府また我々国会議員一人一人も総力を挙げてこれに取り組んでいきたい。

 以上申し上げまして、質問を終わります。

大島委員長 これにて稲津君の質疑は終了いたしました。

 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 民主党の渡辺でございます。

 民主党の政権をとったときに、原口大臣のもとで、私が総務省の副大臣を務め、この後質問に立たれる小川、階両議員が政務官を務められ、そして補佐官を務められたのが逢坂議員でございます。私たちが地方創生というよりも地域主権という名前で取り組みました、まさに我が意を得たりという、本日は地方創生がテーマでございます。それぞれの立場から質問をさせていただきたいと思います。

 地方創生の最も根本となりますのは国土の保全でございまして、まず冒頭に外交から入りたいと思いますが、我々日本の領土、領海、私も超党派の領土議連の事務局長を仰せつかっております。

 その上で申し上げますけれども、中国国家海洋局が尖閣の領有を主張するサイトを立ち上げられました。我が国はそれに対して直ちに反論をし、取り消しを求めているわけでございますが、我が国の情報発信、特に国際社会における情報発信という意義について、今後どう取り組んでいかれるのか。ぜひ、この点について、外務大臣にお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 領土の保全など重要な外交課題につきまして、国際社会から正しい理解を得るべく対外発信を強化していくという観点、これは大変重要な取り組みであると思っております。

 従来から、総理、そして外務大臣を初め各閣僚、各国の大使が、国際会議の場、さらにはメディアにおける取材等を通じまして対外発信に努めてきたわけでありますし、有識者の派遣ですとかあるいは招聘、こういった取り組みも行ってきました。さらには、広報資料の作成をし、パンフレットを配布するですとか、動画を作成し、外務省のホームページに掲載するなど取り組みを行ってきたわけですが、現状を考えますときに、より一層対外発信に力を入れなければならないということで、今お願いしております予算の中においても、戦略的な対外発信予算として大きな予算をお願いしております。

 現地専門家を活用した国際世論の分析と発信力強化、約十億円。IT広報の強化、二十八億円。また、知日派育成のための交流事業の拡充、四十二億円。あるいは、日本研究支援、二十億円。こうした予算をお願いしているわけですが、ぜひ、こうした予算を活用することによって、より具体的に、積極的に対外広報に努めていきたいと考えております。

渡辺(周)委員 ジャパン・ハウス施設関連経費というのが今回の予算の中に計上されておりますけれども、イギリスのロンドン、それからロサンゼルスとブラジル・サンパウロに広報文化外交拠点を創設するということでございまして、このジャパン・ハウスを通して日本の情報発信をしていく、これは我々も求めてきたところでございますが、一体これはどういう内容の施設になるのか。

 聞くところによりますと、日本の多様な魅力のさらなる発信だと。さまざまなポップカルチャーというのでしょうか、日本発のコンテンツを周知させるとか、あるいは、和食であるとかアニメーションなんかの魅力も発信するというのですが、それも決して悪いとは言いません、しかし、それが全てではない。一番必要なことは、戦略的対外発信にありますように、領土保全、歴史認識等の重要課題について、対外発信を抜本的に強化するというのであれば、まずそういうことをやるべきではないのか。その点についてはどういうお考えかをまず伺いたいと思います。

 そして、あわせて、私、議院運営委員会で理事をしておりましたときに、議運の席で提案をしたことがございました。国会議員が、さまざまな政治経済事情調査で、衆参の議員が外国に行きます。もちろん、国会の派遣のみならず、いろいろな形で、議連であるとか、さまざまな国際会議に出たり、各国の要人と会ったりするときに、例えばこの領土の問題、まさにパンフレットもつくっていらっしゃる、つくっているけれども、拉致の問題ももちろんそうです、我が国の国会議員が世界へ行くときにそうしたことを、パンフレットを携えて、向こうで会う国会議員、時には国家の大統領や首相にも会う、あるいは経済界のトップにも会う、そうしたときに、私はやはり、日本の立場を理解してくれということで、これは周知すべきではないかということを提案しました。

 幾つかの議運の委員会でヨーロッパに行ったときにはそれを、事務方に重たい資料を持ってもらって、随分広報してきたわけですけれども、こうしたことをやはりしっかりと、まさにホームページ等で動画等で説明することもいいんですけれども、そうした努力も必要じゃないかと思いますが、あわせていかがか、お考えを伺いたいと思います。

岸田国務大臣 まず、ジャパン・ハウスですが、世界の主要都市において日本の正しい姿をしっかりと発信する、また、日本の魅力を発信する、そして、ぜひ親日派、知日派を育成する、そういった目的のために拠点をつくらなければならない、こういった発想でジャパン・ハウスに取り組もうとしております。

 そして、こうした拠点をつくることはもちろん大事ですが、これは中身が重要だと思っています。単に役所がさまざまな政策を説明し、あるいは陳列をする、こういったことにとどまらず、第三者委員会をつくりまして、民間あるいは地方自治体、こういった関係者の皆様方の知恵もしっかりと出していただきまして、運営において、しっかり日本の姿あるいは日本の魅力を発信できるような工夫をしていかなければならない、こういった思いでこの取り組みを進めようとしております。オール・ジャパンで発信する拠点を世界の主要都市につくっていこう、こういった考えに基づいて進めている次第です。

 そして、議員外交等を通じてしっかりと発信をしていかなければならない、こういった御指摘についても、大変重要な指摘だと認識をいたします。対外発信においてはさまざまな切り口が求められますが、その中にありましても、議員外交を通じての発信、大変大きな力になると考えています。

 その際に、やはり我が国の考え方をしっかりと確認し、そして、思いを一つにして発信していただく、そのために、外務省としてしっかりとした材料を用意し、そして支援をさせていただく、こういった観点につきましては、引き続きしっかり力を込めていきたいと考えます。

渡辺(周)委員 何か非常につるっとした答弁でして、もう少し熱のある、思い入れを込めて、それが大臣のお人柄というか特性なのかもしれませんけれども、しかし、やはり国民の税金を使って世界に向かって発信する拠点をつくるわけですから、そこについては、まさに戦略的な対外発信という意味で、領土保全、歴史認識等についてはぜひとも中心に据えてやっていただきたいと思うんです。

 一つ申し上げたいんですが、こうした新しい施設をつくるということもいいんですけれども、私は、既存の施設でやはり大事にしていただきたいなというものが一つあります。それは、リトアニアにあります日本の領事館。これは、かつて外交官杉原千畝氏が、ヒトラーに追われたユダヤ人を救うために、いわゆる命のビザを発給したところでございます。ここは、麻生財務大臣も、外務大臣当時に訪問されたということが資料として残っておりますが、私も昨年行ってまいりました。

 カウナスというところにございます杉原さんの記念館が、建物も大変老朽化をしておりまして、今非常に存続が危ぶまれている。私も行きましたけれども、そこで実は杉原さんのチョコレートを売っているんですね、この記念館が。あるいは、絵はがきだとかパンフレットが置いてあって、有料なんです。それを買うことによって、あるいはカンパを求めて何とか維持されているというところがございます。

 ここが、かつての日本の総領事館の執務室につくられております。それが再現されているんですけれども、訪れた方々は、まさに日本という国が、当時の外交官杉原千畝氏が、日独伊の三国同盟が結ばれている中で、それは悩みながらも、国の方針に背いてでも人道的な立場に立って支援をした、ビザを発給したという、まさに感銘を受ける施設でございます。

 ここをまずは何とかして、昨年行ったときにも、私は当時の外務省の政務官にお願いをしまして、どういう支援ができるのかということもお尋ねをしました。

 そしてまた、その建物の二階は、ここはかつては日本センターだったんです。ところが、途中、アジア・センターになって、昨年から孔子学院教育センターというのも設立された。それは日本のまさに歴史的なところでありますけれども、韓国や中国の、日本のみならずアジア全体を研究するセンターとして今は運営されているんです。

 私は、この日本の歴史的な建物に対してどういうことが考えられるのか、ぜひ考えてほしいということで、杉原財団の関係者の方と外務省の政務官にお会いをしていただきまして、今現状どうなっているのか、その点についてぜひ伺いたいと思います。また、検討しているのであれば、これはやはり日本の戦略的な情報発信の拠点として活用いただきたいというふうに考えますが、いかがですか。

岸田国務大臣 まず、杉原千畝氏ですが、杉原氏の命のビザの発給により、多くのユダヤ人のとうとい命が救われました。杉原氏の行動は、戦後七十年経た今日でも、世界に広がるユダヤ人を通じて、各国でも高く評価されています。

 杉原氏の行動は、勇気ある人道的な行為であり、杉原氏の業績を後世に語り継いでいくことが重要だと考えておりますし、外務省はこれまでも、外務省外交史料館に杉原千畝顕彰プレートを設置し、除幕式で、これは二〇〇〇年のことですが、当時の河野洋平外務大臣が祝辞を述べるなど、杉原氏の顕彰に努めてまいりました。

 そして、御指摘の杉原千畝記念館ですが、これは設立されて七十五年と聞いております。老朽化が進んでいるという御指摘があります。まず、施設の充実について、日本政府としてぜひ検討したいと考えております。

 記念館自体は、リトアニアにある財団が運営管理をしており、館長さんの私財の提供等によって施設が存在しているということでありますので、運営はこの財団の運営を尊重しなければなりませんが、財団による資金集めの側面支援など、政府として可能な支援、これをぜひ検討したいと思っています。

 そして、財政的な支援はもちろんでありますが、広報の強化への協力、あるいはコンテンツの充実、こういった面につきましても、ぜひ、政府として、この記念館の運営に協力をすることによって、全体としてこの記念館の活動を盛り上げ、そして、ひいては我が国としての発信にもつながる、こういった効果にもつなげていきたいと考えております。

 ぜひ、さまざまな面を通じて記念館の運営を支援するべく、検討を続けたいと考えます。

渡辺(周)委員 検討を続けたいではなくて、ぜひ実現をしていただきたい、そのことをぜひお願いしたいと思います。

 この質問の項目のおしまいになりますが、中国の国家海洋局による、日本語と英語によって国際社会に尖閣の発信をするというようなことに対して抗議をしたということを冒頭申し上げました。

 その上で、総理にぜひ伺いたいのですが、先般、一月の十四日に、石垣市で尖閣の日の行事が行われました。これは、一八九五年、明治二十八年一月十四日に尖閣諸島を我が国の領土として編入することを閣議決定した、この日を記念日として、沖縄県石垣市においては尖閣諸島開拓の日というものを定めたんですね。

 党に案内が参りましたので、私が参りました。そのときの内容は、ここで式典とあわせて尖閣諸島のジオラマのお披露目式がございまして、その後、東海大学の山田吉彦教授によります講演会などもあったのですが、出席した国会議員が私と次世代の党の二人でした。

 日本を取り戻すという、自民党総裁でもある総理のお考えをぜひ伺いたいのですが、二月の二十二日にありました島根県松江市での竹島の日には、政務官が出席をされ、そして与党からも出席をされました。しかし、一月十四日の石垣市民会館で行われました尖閣諸島開拓の日には、政府からも与党からも、議員の出席が残念ながらございませんでした。

 ぜひ、総理、お答えをいただきたいのですが、どうして出席されなかったのか、自民党総裁でもある安倍総理に伺いたいと思いますし、また、今後、毎年あるこの式典に対して与党としてどうされるのか、お考えを伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 尖閣と竹島は、御承知のように、性格が違うわけでございます。尖閣は、歴史的にも国際法上も我が国固有の領土であるとともに、現に我が国はこれを有効に支配をしておるわけでございまして、したがって、尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題はそもそも存在をしないという立場でございます。これは、民主党政権時代とも変わらない、日本の不変の立場と言ってもいいわけでございますし、これからも変わりがないわけでございます。

 中国公船によるたび重なる領海侵入は極めて遺憾でありますし、我が国の領土、領海、領空は断固として守り抜いていくとの決意で、毅然かつ冷静に対処していく考えでございます。

 と同時に、尖閣諸島を初めとした我が国の固有の領土について、国際社会の正しい理解を得るべく対外的な発信を強化していくことは当然重要だと思っておりますし、政府は、従来より、我が国の領土を取り巻く情勢について、十一カ国語に翻訳したパンフレットを配布したり、外務省ホームページを通じた発信等を行っております。

 そこで、式典出席の件については、私はちょっと寡聞にして承知をしていなかったところでございますが、政府の立場としては、そもそも、そうした問題は存在をしないという立場でございます。

渡辺(周)委員 いや、自民党総裁として、与党の国会議員の出席がなかったということはいかがですか。

 石垣市からの案内にはこうあります。「より明確に国際社会に対し意思表示をし、国民世論を啓発するとともに、国土保全に努めなければなりません。」

 まさに、国民世論を啓発して、国際社会に対して意思表示をするチャンスだったと思うんですが、なぜ与党からは出席がかなわなかったのか、その点について。

 領土問題は存在しないというその見解は、我々もそのように与党時代に言ってまいりました。これは、法的にも歴史的にも我が国のものであると。だからといって、こうした式典があるのに、出席しなくていいという理屈にはならないのですが、その点について、もう一回答弁を求めます。

安倍内閣総理大臣 基本的な立場が、我々は、存在しないという、政府としての立場がそういう立場でございますから、いわばそういう問題は存在しない。しかし、であるにもかかわらず、いわば領海等に挑戦が行われていることに対しましては、適切に我々は抗議等を行っておりますし、国際社会に発信をしているということであります。

 ですから、我々は、まさに政府の立場は一貫して、存在しないという立場のもとに、政府としては、そこに政府から人員を、政府の人間をそこに派遣するという考え方をとらなかったところでございます。

渡辺(周)委員 それでは、与党からなぜ出席がされなかったのか。

 ちょっと肩書きは忘れましたけれども、与党から幾つかの、その日に新たなメッセージは届いております、これは党本部から。残念ながら、沖縄県から選挙に出られて今バッジをつけられている議員の方も、お見えにはならなかった。そのことについて石垣市の方も大変残念だとおっしゃっていました。

 ぜひ、その点についてもう一度伺いたいのですが、ぜひ出席すべきだったと思います。そしてまた、今後は政府からも、あるいは与党からも出席されるべきだと思いますが、総裁としての安倍総理、いかがですか。もう一度答弁してください。答えになっていません。

安倍内閣総理大臣 私も、その大会について、詳細について存じ上げません、正直申し上げて。

 ですから、ここで今直ちにお答えすることはできませんが、政府の立場としては、今、通告のない質問でございましたが、基本的に、尖閣については実効支配をしておりますから領土問題は存在しないという立場でありますから、殊さらこれは私たちの島であるという国内的な活動の必要性というのは、政府として実際に、それは説明をしていくということはちゃんとやりますよ。教育等を通じてやっていくということについては、むしろ我々の政権になってしっかりとやっているじゃないですか、逆に。それははっきりと申し上げておきたいと思いますが、そうした大会等に出ることについては、政府としては、今申し上げたとおりの考え方で一貫しているわけでございます。

 党について、どういう対応をとってきたかということは、私は、基本的に党の運営については党本部にお任せをして、一々私が口を挟むということは当然ないわけでございますが、どういう経緯であったかということについては、今ここでお話をすることはできない。前もって質問をいただいていれば、党がどういう対応をとってきたかということについてはお話しすることができる、このように思います。

 いずれにいたしましても、尖閣についてはそもそも領土問題がないんだという認識は共有しなければならない、このように思います。

渡辺(周)委員 それでは、政府からは今後も派遣しないということでよろしいですね。

安倍内閣総理大臣 政府としては、今まで派遣してきた経緯があるかどうかというのはまだつまびらかではございませんが、基本的には、まさに我々、領土問題が存在しないという立場でありますから、現在、そこに派遣をするということを考えているわけではございません。

 いずれにせよ、この尖閣の問題については、領土問題が存在しない、そして、領土問題が存在しないということも含めて、しっかりと教育の場でそれを子供たちに教えていくという中において、学習指導要領等に対しては、むしろ我が政権においてはしっかりと対応しているんだということは申し上げておきたい、このように思います。

大島委員長 渡辺さん、山谷さんが何か手を挙げていますが、よろしいですか。

 山谷大臣。

山谷国務大臣 安倍内閣になりましてから領土・主権対策企画調整室ができまして、初代、山本一太大臣、そして、私が二代目の領土担当大臣でございます。

 超党派の領土議連におきましては、渡辺事務局長とともに、私、前会長として尖閣諸島周辺での漁業活動などもやってきたところでございます。

 石垣市の尖閣諸島開拓の日の制定、そしてまた、世論啓発を積極的に進められていることには大変に敬意を表しているところでございまして、本年の式典には、政府関係者として内閣官房参事官を出席させたところでございます。

渡辺(周)委員 事務方の方にはお会いをしました。東京都庁からもお見えでございました。

 しかし、先ほどの総理の答弁は大変残念なんですね。日本を取り戻すと言って国民の支持を得て総理になられた安倍総理は、この尖閣の問題についてはそれなりの思いがあるだろうと思って私は答弁を期待しておりましたけれども、大変歯切れの悪い答弁でございました。

 ぜひ、その点については、今後、与党からどうされるのか、そして政府からどうされるのか、この点についてもう一度検討いただいて、来年にはぜひとも出席をされるようにお願いをしたいと思います。

 残りの時間がございますので、次の質問に移ります。

 次は、石破大臣に伺います。

 石破大臣、先日、記者会見をされまして、三月三日、東京都内にある研究機関、研修所など政府機関の七十組織、支所等を含む独法など百八十、合わせて二百五十の機関を、東京圏外、東京、千葉、神奈川、埼玉の一都三県以外に移転をしてもいい、ただし、それは、地方が手を挙げて、条件が整ったら提案をしてくれということで、リストを、各道府県の対象となる自治体の、一都三県以外の自治体の地方創生担当課に対して発信をされていますね。

 昨年、私も地方創生の特別委員会におりましたけれども、たしか、当時の目玉は、五万人以下の都市に公務員を派遣するんだというようなことをおっしゃっていましたし、どうしてそれが目玉なのかと。しかも、中央官庁の官僚や、あるいは大学の研究員であるとか民間人、シンクタンクの方も含めて派遣をされる。それはいいんだけれども、派遣をすると言うけれども、その実は、負担は地方自治体がするという制度で、派遣というけれども、結果的には人件費は地方自治体が持つ。どうしてこれが地方創生の目玉なのかというような議論もさせていただきました。

 ですから、今回、ある意味では、見るだけですよ、これは新聞の見出しだけを見ると、政府機関の地方移転というふうに受けとめられるんです。ところが、見てびっくりしたんですね。随分大玉が出てきたなというふうに思いました。なぜもっと早く出さなかったのか。

 そして、この各道府県の地方創生担当課に送られたリストを見ました。二百五十とおっしゃいましたけれども、この二百五十を記載したリスト、これは大臣、ごらんになっていると思いますが、名称と所在地と所管する府省庁、そしてホームページのアドレスが書いてある、これだけなんです。

 これを見て、石破大臣は会見で、ぜひ地方から手を挙げていただきたい、でも、ひょっとしたら、これは手が挙がるかもしれないけれども挙がらないかもしれない、やってみないとわからないということを会見でおっしゃっていますけれども、これだけの大玉がどうして今出てきたのかなというふうに思いながら見てみたら、言葉は悪いんですけれども、非常にやっつけ仕事みたいなリストですね。こういうリストですよ。こういうリストを送って、あとはホームページを見てくださいというような、このリストを送って、本気なのかというふうに思ったんです。

 石破大臣、これは会見でおっしゃったような、地方に対して情報提供をして、その上で八月までに、どの機関が来てほしいかということを、その受け入れの条件も提示をしてぜひ手を挙げてほしいと言っているんですが、これで地方に対して本当に呼びかける、これは本気ですか。

石破国務大臣 本気です。

 というのは、今、渡辺委員がおっしゃったようなことは、私どもの内部でさんざん議論をして、実は渡辺委員が言ったのと同じことを私は言ったんです、大体御想像のとおりでありますが。

 ただ、そこまで持っていくだけでも大変なことであって、そのリストを出すということだけでも、それが何で今までできなかったという御指摘ですが、やはりそういうことだったんだろうと思います。できればやりたくない、今のままが一番よいということです。

 最初はずらっと名前だけ書くという話だったので、そんなことがどこにあるかと。それは一体どのようなことをやっているところであり、どれぐらいの人がいるのであり、では名前だけ出したらそれでいいという話じゃなくて、それはどのような業界、業種、そういう方々と関連をしたものであるかということもわからなければどうにもなりません。

 これは、私、いろいろな民間に地方に行ってくださいと言うからには、中央省庁はどうなんだという話になるんだろうと思います。そこはやはり自治体の方でそれをごらんいただいて、さらに親切な情報を提供すべきという御指摘ですから、そこは検討させていただきます。できるだけ手が挙がりやすいようにしていかねばならぬ。

 アリバイづくりみたいなことで、はい、こういうのがあります、選んでください、手を挙げなかったあなた方がよくないんですというようなことを申し上げるつもりはございません。地方がもう少し検討ができるような工夫ができないか、そこは考えてまいります。

 ただ、御指摘のように、本気なのかと言われれば、それは本気です。

 今までいろいろな機関を移転すべきだという話があり、だけれども、地方は何があるのかわからない。ただ、地方も、それに来てくれと言うからには、なぜそれがその地域に来た方がより望ましいのか、なぜ東京になくてもいいのか、そこへ来た方がより効果を発現するのかということは、地方にお考えいただかないとわかりません。これは中央でわかるお話ではありません。

 例えば、静岡市に何が来た方がいいか、あるいは御殿場市に何が来た方がいいか、京都市に何が来た方がいいか、沼津市に何が来た方がいいか。沼津では深海を使ったいろいろなビジネスが盛んなのであって、では、こういうものが来た方が、より沼津の発展のためにもなるし国全体のためになるということは、地方でぜひお考えをいただきたいと思うんです。これは霞が関で考えてわかることではありません。

 御指摘をよく踏まえて、今後とも努力をさせていただきます。

渡辺(周)委員 恐らく、テレビでこの議論を見ている方は、大変、国としては随分な決意を持って取り組んでいるんだなというふうに思われるかもしれません。

 ただ、このリストを見て驚いたんですよ。

 二百五十の機関を提示したというふうに、このリストがありますね。このリストの中には、どうしてこんなものが入っているんだろうかというのもございます。

 そもそも、東京にある国の行政機関や独立行政法人を移転させるということで、東京、千葉、埼玉、神奈川以外の自治体の方、手を挙げてくださいとおっしゃる。

 ところが、この地方に送られたリストを見ました。大臣が本当にこれを知っていたのか。名誉のために申し上げると、恐らく大臣も抵抗されたんじゃないかと思いますが、例えばです、防衛省の機関が、国の行政機関というのが三十四個入っているんですよ。もちろん、防衛省の施設が一都三県以外に出ることもあるでしょう。しかし、静岡県駿東郡小山町にある陸上自衛隊の富士学校だとか、あるいは、広島県の江田島にあります海上自衛隊の幹部候補生学校。どうして、東京都から移転を望みますかといって地方に呼びかけたものの中に、静岡県や広島県のものがあるのか。

 海上保安学校、京都府舞鶴市、広島県呉市の海上保安大学校、これは国土交通省ですけれども、これもリストに入っているんですね。

 ですから、私は本気ですかと。これを送ってきて、受け取った自治体にしてみると、東京都からの機関の移転だと思って見てみたら、何で我が町の施設が入っているのかと。

 これは本当に大臣、お認めになったんですか、このリストを送付することを。

石破国務大臣 それは、そこへ行った方がより効果が発現できる場合があるかもしれないということ……(発言する者あり)ですから、いや、それはどうなんだということで、例えば、今おっしゃった防衛省関係のものがございます。それは常識的に考えれば、そこが訓練に適地である、あるいは潜水艦隊が近くにある、だからそこが一番よいのだということはございましょう。ただ、そこはまたいろいろな議論があって、私どもが提示する上において、ここはもうだめだということを最初から決めてかかるべきではない。

 逆に……(渡辺(周)委員「いや、違います。移転リストでしょう」と呼ぶ)いいえ、候補先です。ですから、それが、地方自治体が、いやいや、うちに来た方がより効果があるのだということが仮にありとせば、そういうものを最初から排除すべきではない。

 ただ、中に、いろいろな性質があるね、これは東京にあるものとそういうものを一律に論じるべきではないねと言われれば、それは私として、そこはどうかな、もっと工夫の余地はなかったかなと思いますが、一律に私どもの方で、ここは除外する、ここは残すというようなことを考えるべきではないと私自身判断したところでございます。

渡辺(周)委員 大臣も、とても苦しい答弁だと思うんですね。

 いいですか、そもそも、東京にある機関を移転させますというふうに最初に書いてあるわけですよ。そのリストを見たら、東京以外のものが、ありていに言うと六割ですよ。

 もっと言いますと、例えば、独立行政法人宇宙航空研究開発機構というのがある。これは何かといったら、種子島宇宙センター。種子島宇宙センターがどうして移転のリストに載っているのか。もっと言うと、六ケ所村だとか東海村とかも載っているんです。「もんじゅ」まで載っているんですね。

 それで、何だこれはといって見て、さすがに、きょう質問するに当たって、もう一回これは創生本部に確認しろと。何度も確認しました。これを送ってきて、では、東京都に幾つ所在しているんだといったら、約五十ですよ。二百五十のリストを送りました、今そういうふうにおっしゃった。だから、知らない方は、国は随分思い切ったことを考えているんだと思って見てみたら、東京都にある機関、対象となる機関は五十しか載っていないんです。

 これでは、余りにも無神経というかお粗末というか、やっつけ仕事を、地方に対して、リストを送りましたから、これを見た中から公募に手を挙げてくださいと言われても、私は本気度が問われると思うんですよ。ですから、本気なんですかと聞いたんです。

 どうしてここに種子島の宇宙センターや「もんじゅ」が載っているのか。どうして大臣、そんなものをお認めになったんですか。

石破国務大臣 御指摘は、それは真摯に受けとめなければなりません。そこは、私自身、それを見ながら、どうなんだろうという議論は当然役所の中でいたしました。

 ただ、それはもう、おっしゃれば、種子島はどうして、「もんじゅ」はどうしてということは、それはそうでしょう。実際そっちの方が常識的なお考えであって、そこは私自身の配慮が足りなかったかもしれません。

 ただ、そこにおいて、先ほどの防衛省の話ではありませんが、では、それはうちに来た方がより効果があるということがあるかもしれません。そのことは、予断を持って、私自身が、ここは載せる、ここは載せないということは判断をしなかったものですが、委員の御指摘は、そこはやはり私自身、配慮が足りなかったということはよく考えさせていただきます。

 ただ、私申し上げたいのは、そういうものが今まで出てこなかった。やはり地方の方で、参議院の御議論だったと思いますが、例えて言えば、文化庁が京都にあった方がいいのではないかというお話がある。そのことの価値判断は、私はここで申し上げることはいたしません。

 だけれども、それが、京都としてはそうあるべきだという御主張がある。それだけでは話は前に進まない。こういう形をとることによって、例えば復興庁は福島というお話も昔からございます。地元の方々が、それは来るべきだ、そしてそこに向けて条件整備はこのようにする、そして、それがこの地域に来た方が、国全体として行政の公平性という観点から考えても、支障がなく効果がより出るということを言っていただくことによって、事は前に進むということだと思っております。

 冒頭の御指摘とはこれは分けて、このことの趣旨はどういうことなのかということは御説明はさせていただきたい。そして、そこにおいて、委員が御指摘になりましたことはよく踏まえまして、ここは自治体の方々に混乱、御迷惑をかけないようにさらなる改善はさせていただきます。

渡辺(周)委員 ぜひ、大臣、もう一回これは出し直していただきたいと思うんですね。そして、東京都にある機関はこれですと、それを出す、もう一回出し直すべきだと思います。やはりそれは、ちょっと余りにもこれでは自治体の方々が、しかも、いろいろな受け入れの要件を検討して八月末までに答えてくださいというんでしょう。これはとてもじゃないけれども、地方としても答えられないだろうと思うんです。

 それから、今、文化庁などの話、復興庁の話を出されました。ぜひそこは、かつての竹下内閣が昭和六十二年の十一月に、政府みずから範を示すとして、一省庁一機関の移転について検討するようにと指示を出されて、そして、結果的に、いわゆる東京の一極集中を分散すべく流れが始まるわけです。

 その点について、やはり政府として、民間企業に、税制の優遇措置などをつくるからぜひ地方に移転をしてほしい、そして地方創生のまさに趣旨にかなうような形で取り組んでいただいて、地方に雇用をつくるということをやってほしい、東京一極集中から、人口の東京、首都圏への流入を地方にやはりもうちょっと均衡をとるようにしよう、そのためには政府もやるのだというふうにおっしゃいましたけれども、だとすれば、では、政府機関の人間を一万人転出させますというような方向性をつくってやらなければ、本気度を疑われると私は思います。ぜひ、その点について、大臣のお考え。

 そして、総理、今のやりとりを聞いていて、本当に政府機関を移転させるというならば、本当にそうした姿勢が本気であるということを示すために、言葉は悪いけれども、こうしたやっつけ仕事をもう一回見直して、腰を入れてやっていただきたいと思うんですが、後に総理のお考えも伺いたいと思います。

石破国務大臣 御指摘まことにありがとうございました。

 自治体が見て、なるほどね、親切だね、本当に考えているねと思っていただくようにさらなる努力は必要だということは、御指摘を踏まえてよく改善をさせていただきます。

 そして、一万人という数ありきではございませんが、なぜ東京にあった方がいいのか、なぜ地方に移転した方がいいのかということは、お互いにきちんとしたやりとりを国民の前ですることが必要だと思っております。

 できれば行きたくないと。竹下内閣のときに移転しましたけれども、あれは結局、地方に本当に出たのは当時の大蔵省関係の酒に関する研究所だけだったんですね。あとはみんな首都圏でございました。ですから、通うのが霞が関からそこへ変わったというだけの話で、御本人も御家族も移転したというのはほとんどなかったと思っております。それはそれで、あの時代のことですからああいうお話でした。

 今回は、数ありきではありませんが、本当に地方に移った方が、同じことを申し上げて恐縮ですが、より効果を上げるということを地方自治体にもぜひお示しをいただきたいし、私どもは、それはだめですと言うんだったら、なぜだめなのかという挙証責任はこちらにあると思っております。そういうのをちゃんとやらないと、お互い本気度を問われると思っております。

 冒頭の御発言はごもっともな部分がたくさんありますので、私自身、そこはおわびを申し上げ、さらに改善をさせていただきます。

安倍内閣総理大臣 ただいま大臣が答弁をさせていただいたように、政府機関の地方への移転は、基本的な考え方としては、地方の発展に寄与すると考えられる政府の機関については、地方がまさに選んでいく、考えていくという形で進めていきたいと思っております。

 また、リストについては、確かに、こういう仕事を始める中においては、冒頭、大臣から御説明をさせていただいたように、役所としてはなるべく今のままがいいという中において、その中でいろいろなリストを出してくるんでしょうが、もう一度、我々はしっかりと精査をして、各省庁にしっかりと我々の方針をよく理解させ、そして省庁に本気で考えさせるべくしっかりと取り組んでいきたい、このように思います。

渡辺(周)委員 予定していた質問を随分残してあと五分になってしまいましたけれども、ぜひ、地方のまさにその受け入れの体制を、例えば、大学が移転をしてしまって、大きなその大学の敷地だったところが残っている、確かに、国の研究機関や研修所が来てくれたら大変すっぽりとはまるぐらい場所がある、来てくれたら非常にありがたい、そういうことは、当然、皆さん色めき立っていると思うんです、もし本当に来るならば。では、そのために、本当に八月の末までに、おい、検討しようということで、今、恐らく真面目に取り組んでいらっしゃる方々もいると思うんです。

 その後に、例えばこれを、手が挙がらなかった場合は、では、移転をしないのかという話になります。では、手が挙がってもその後に何が起きるかといえば、その提案を受けて、関係府省庁とも連携をし、必要性、効果の検証を行い、具体的な移転の候補を決定するとあるんです。またその後にもハードルがあるんですね。

 これだと、いやいや、地方自治体はそうおっしゃっているけれども、我々はどうしても東京にいなければいけないから地方に行くわけにいきませんみたいな話になると、結局、一生懸命この作業をして受け入れの体制をつくるぞといって、やった、ところが、手を挙げてみたら、本当に来るか来ないかわからなくなってきた。それでは何の意味もなくて、まさにそれだと、何か目玉をつくらなきゃいけないね、しかも、来月は統一地方選挙があるから、国の何かそういう方針でも示して、大風呂敷でもちょっと出しておこうというような、私は何かもくろみでもあるんじゃないかと。

 このまさにやっつけ的なリストを見て、その先にどうなるかということを考えれば、ぜひしっかりと実現をできるようにしていただきたいというふうに思います。

 その点について、総理、いかがですか。本当にこの地方創生にかなうような形で本当にこの東京にある政府機関を移転させる、そこまでの思いが、確固たる覚悟があるかどうか、その点について総理に伺います。

安倍内閣総理大臣 今回の私たちの進めている地方創生は、国が指導していくという形ではなくて、まさに地域の発想、また、まさに地域の皆さんが、地域はこうすればよくなるという中において進めていきたい、そして、それは国の機関の移転も同じ考え方で進めていきたい、こう思うわけでございます。

 ですから、まず最初に国が、ここはここ、ここはここという形で振り分けていくのではなくて、今回のように、確かにいろいろと課題は渡辺議員から指摘をされました、リストを出して、地域の皆さんがまさに地域のことを未来を見据えて考えていただき、こうした機関が来れば、地域の特性を生かしながら、こうやって地域の発展を考えていけるねということをぜひ考えていただきたい。

 そして、私たちも、まさにこうしたことを進めていく上において、今、基本的に東京に集中している機関を、もう一度、果たして東京にある必要があるかどうかということも含めて根本から考え直していく機会としていきたい、このように思っております。

渡辺(周)委員 ぜひ、この省庁の抵抗を乗り越えて、このリストにあるのは五十しかございませんけれども、ほかに移転するところは本当にないのか、その上で、一つの役所が所管をする組織については、とにかくここが候補じゃないかということをやはり政府の側でもやるべきです。地方が手を挙げるのを待つのではなくて、本当にそこはぜひとももう一度考え直して、政治の確固たるリーダーシップでやっていただきたいというふうに思います。

 最後に、石破大臣、うなずいていらっしゃいますので、御意見を伺って、私の質問は終わりにしたいと思います。

石破国務大臣 委員のおっしゃること、まことにありがとうございました。

 今、総理から答弁がございましたように、できれば今のままがいいなというのはあるわけです。それを、何しろこのリストをつくるだけでも大変な話で、もう出したくないとか、そういう感じがありありとあって、それをつくるところまでいきましたが、それは、委員御指摘のように、決してユーザーフレンドリーでないところがたくさんあります。そこはさらに改善はさせていただきます。政府は本当に本気なんだと。

 ただ、同時に、地方の側も、やはりこれが来た方が、よりこの地域のためであり国全体のためだということは、ぜひお考えをいただきたいと思うんです。私どもの方が、あれやこれ、これ、これと言って、それこそばらまきみたいな話をしても、それはどうにもならぬ。

 一緒になって考えるというのはそういうことなのであって、委員の選挙区におかれても、先ほど深海のお話をいたしましたが、これは日本の中で沼津だけの取り組みだと思っております。いろいろなものが地域地域にあるわけで、ぜひお互いの共同作業としてやらせていただきたいと思います。

 御指摘いただきまして、まことにありがとうございました。

渡辺(周)委員 終わります。

大島委員長 この際、小川淳也君から関連質疑の申し出があります。渡辺君の持ち時間の範囲内でこれを許します。小川淳也君。

小川委員 民主党の小川淳也でございます。

 きょうは地方創生に関連してお尋ねをいたします。

 その一つの柱である農業の再生、農政改革等々、政務三役の資質を含めてきょうは御質問をさせていただく予定でございましたが、残念ながら、通告をいたしました中川農水政務官、御出席いただいていないようであります。その理由、また上司としてどういう報告を受けているか、まず林農林水産大臣にお伺いをいたします。

林国務大臣 小川委員から委員会に出席するようにということは、理事会で御要請があったということはお聞きしておりますが、中川政務官におかれては入院をされたということで、そういう事実を承知しております。

 詳細についてはまだ聞いておりませんが、入院をきのうしたということでございます。

小川委員 大事な国会審議の場でございますので、政策及び政務三役の資質等についてもきちんとした説明を求める機会であります。きちんとした御報告を受けていただきたいと思います。

 また、委員長にお願いがございます。

 こういう公式な場に出られないということでありますので、医師の診断書その他、事情をきちんと公に証明するものを当委員会に御提出いただきたい。

大島委員長 理事会で朝協議して、その方向で今協議しておりますので、そのことを踏まえて御質問ください。

小川委員 よろしくお取り計らいをお願いしたいと思います。

 御本人のお言葉をかりれば、軽率な行動であったという事案でございますが、報道によればですけれども、二月の二十三日月曜日といえば、まさに前西川農水大臣が辞任を突如表明され、そして林新大臣が就任をされる。その間、夕刻から夜にかけて、恐らく、省内初め、また官邸、そして宮内庁関係者含めて相当な緊急事態に忙殺されながら対応していたのではないかと思います。そういう中にあって、御本人の言葉をかりれば、軽率な行動、こういう形で著しく信任を傷つけた可能性があります。

 農林水産大臣、今後、農協改革を初めとした農政の見直し、そしてTPPの交渉、さまざまな困難に打ちかちながら政策を前に進めなければならない、そういう中にあって、この中川農水政務官、職責にたえられますか。その評価をお聞きしたいと思います。

林国務大臣 まず、当日のことについて御指摘がありましたが、二十三日の月曜日でございましたけれども、政務官におかれては、事務方と連絡をとりつつ対応していたものと承知をしております。

 また、中川政務官におかれては、前任の西川前大臣時代から、今お話のありました農協改革、農政の改革を前に進めていく上で大変重要な役割を果たしてこられた、こういうふうに思っておりますので、一日も早く回復をいただいて、この職責を全うしていただきたい、こういうふうに考えております。

小川委員 職責にたえられるかどうか、診断書の提出等も待った上で、野党のサイドからもしっかり議論をさせていただきたいと思います。

 少し、私自身の感想でありますけれども、私も、想像いたしました。

 政権を担当させていただいたときに、総務省の政務官を務めさせていただきました。当時、政務三役には相当な一体感がございまして、あらゆる困難に共同して立ち向かっていたというのが真相であります。

 これは私自身想像したわけですが、万一、突如大臣が辞意を表明し、そして、その後の展開がどうなるのか、誰が新たに来られるのか、そこでどんな指示をされるのか、あるいは会見の対応はどうなるのか、考えれば考えるほど、私は、役所内に待機をして、そして新大臣の無事の着任を見届け、さまざまな指示、相談事項等を速やかに、緊急のものを含めて済ませと対応するのが当然ではないかと思いますが、農林水産省内のそのあたりの危機管理、危機対応はどうなっているのか、お聞かせいただきたいと思います。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 今先生の方から御指摘ございました二月二十三日の経緯でございますが、夕刻の五時半ごろに西川大臣の辞任の報道が入りまして、直ちに私ども、十七時四十分ごろでございますが、両副大臣そして両大臣政務官に対しまして、登庁に備えて都内近郊で待機いただくよう要請、依頼したところでございます。

小川委員 都内待機では足りないと申し上げています。極めて当事者意識、当事者感覚に欠けているのではないか、業務を進める上に当たっての責任意識にも欠けているのではないかということを指摘しております。

 最後に、この問題に関して内閣総理大臣にお尋ねをいたします。

 先ごろ、政治と金の問題をめぐって担当大臣が辞任し、交代したばかりでございます。その直後に、こういう形で軽率な行動をもって信任を傷つけ、そしてこの大切な国会審議の場にも出てこられない。こういう事態を目の当たりにして、業務遂行、総理はよくおっしゃいます、政策を前に進めることをもって任命責任を果たしていきたい、これは総理が再三口にされる言葉であります。その言葉に照らして、今後の職務の遂行を含め、当然総理にも御判断をいただかなければならないと思いますが、罷免、更迭含めて、総理の任命責任、これをお尋ねしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 中川政務官をめぐる報道について、詳細について私が承知をしているわけではございませんが、大臣が交代した二月二十三日についてはただいま農水省から説明があったとおりでございまして、危機管理上の問題はなかったと考えています。

 いずれにしても、今後は、公人として誤解を受けることのないようみずからを律しつつ、政務官としての職務に全力で取り組んでもらいたいと考えております。(発言する者あり)

大島委員長 お静かに。

小川委員 より緊張感を持って、もっともっと厳しく、政務のメンバーに対しては統率をお願いする、その姿勢が大切だと思いますよ。

 中川政務官には、御退院後は速やかに国会にお出ましをいただき、さまざま説明責任を果たしていただきたい。また、野党としてもその立場から引き続き議論をさせていただくことを申し上げて、この問題はひとまずおかせていただきたいと思います。

 きょうは、地方創生等が主題でございます。先ごろ、委員長を座長とする視察団、地方公聴会団、金沢に参らせていただきました。新幹線の開業を直前に控えて、極めて町の盛り上がりは熱気に満ちて、非常に思うところ多々ございました。

 きょうはあらゆることに関してお尋ねをしたいところですが、時間の制約もあり、私自身かねてから高い関心、問題意識を持っております地方創生とふるさと納税との関連についてお尋ねをしたいと思います。

 ふるさと納税は、言わずと知れた、安倍内閣の地方創生策の一つの目玉でございます。誤解なきように申し上げたいと思いますが、二〇〇八年の制度開始以降、地方に対する財源の移譲、そして地域の特産品のPR、さらには販売促進含めて、一定の成果を上げているということに関しては、私も認める立場でございますし、その限りにおいては応援をする立場でございます。

 しかし、いかんせん、この制度設計がもたらしているさまざまな弊害、こちらの方に対しても、総務行政、地方行政をつかさどる大臣としてはよく目くばせをお願いしなければならない、その観点からきょうはお尋ねを申し上げたいと思います。

 制度発足後、二〇一一年に震災がございました。そのときに爆発的にこのふるさと納税は活用が拡大をしており、実に寄附金総額が六百四十九億円、そして、ふるさと納税を利用した方々が七十四万人と言われております。

 ただ、まずこのグラフ、資料からごらんをいただきたいと思うんですが、一枚目のグラフです。これはある資料をもとに私の方で作成したものでございますが、極めて妙なことが起きているなという印象であります。二〇一一年にかけて、まさに被災地である福島県や岩手県に対する寄附額が急増をしています。ところが、被災地は急減をし、この際、きょうの質疑では名指しを避けますが、とある県は逆に急増しているという傾向が見てとれます。

 高市大臣、地方税財政を所管するお立場でありますので、これを見て、なぜ被災地以外の県で急に伸びているところがあると御想像になられるか、お考えになられるか、まずその点をちょっとお聞きしたいと思います。

高市国務大臣 さまざまな事情はあると思います。

 ふるさと納税の趣旨に沿って、我が地方はこういう政策を実行したいということを非常に上手にアピールをされて、それに賛同する方々が積極的にその地域を応援しようとされたケースもありましょう。

 他方で、非常に過剰な返礼品競争というものもございます。ちょっと、私から見てもこれは異常だと思われるような高額な返礼品もございますので、そういったものに興味を持って、引かれて納税をされた方がいるということも、これも紛れもない事実だと思います。

小川委員 まずは、大臣に率直にお認めをいただいたことに敬意を表し、感謝を申し上げたいと思います。

 まさにそのとおりなんですよね。これは各自治体の努力によるところですから、評価するべき部分もあると思います。しかし、もともと、住民税ですから、本来、住んでいる地域の学校や病院、ごみ処理、さまざまな経費をみんなで分かち合う、そして、その納税の対価としていかなる特定の利益も受けることはないというのが税の基本であります。しかし、今回のふるさと納税に関しては、どうもこの点をないがしろにしかねないおそれがあり、現にこうした傾向にあらわれているということだろうと思います。

 現在のプレゼント合戦でありますが、肉や魚、地域の特産品、これは当たり前です。果物、旅行券、最近では、航空会社のポイント、さらには電子マネー、ありとあらゆるものが出つつある。一つ問題だと思うのは、これはどんどん高額化しているんですね。報道等によれば、例えば二百万円寄附してくれると六十五万円のかばんを上げます、三百万円くれると百三十万円のコートを上げます。

 さらに、この資料も、きょうはあえて図示させていただきましたが、これも名指しは避けたいと思います。関東のある市では、百万円寄附してくれれば四十万円近い布団のセットを差し上げます。九州のある町では、三百万円の寄附で牛一頭を差し上げます。近畿のある市では、一千万円寄附してくれれば宅地を差し上げます。ちょっとこれはやり過ぎじゃないですか。

 幸いにもといいますか、最後の土地については、さすがに総務省も見かねたのか、事実上の行政指導、助言をもって、控えなさいということをおっしゃった。それで踏みとどまったようであります。

 この過剰なプレゼント合戦、大臣、先ほどお述べになられましたので、ぜひともこれは抑制していくべきだと思いますが、自治体自身が悩んでいますよ、過剰なプレゼント合戦で、やり過ぎだと。大臣、まずその決意を述べていただきたいと思います。

高市国務大臣 まず、返礼品については、先ほど委員もおっしゃってくださいましたけれども、地場産品の振興ですとか、それからまた、ふるさとの宣伝にもなります。ただし、これは節度がある場合でございます。ふるさと納税の趣旨から逸脱するような高額なものであったり、それからまた換金性の高いようなものであると、これは税法上も問題が生じると思っております。

 昨年末からさまざま、予算編成や税制に向けて、地方の各団体とも私たちは何度も会議の場を持ちました。その場でも節度ある対応を申し上げておりますし、地方六団体の方でも、今かなり問題意識を持って、節度のある対応をするべきだということで打ち出していただいております。

 まだこの改正地方税法、成立しておりませんので、今の段階で大臣通知として発出するのは早いと思いますが、成立後速やかに、節度ある対応について、大臣としての通知を発出いたします。

小川委員 正式な通知は、法律が成立して以降だと思います。しかし、一月の時点で事務連絡は既に行っている。それから、二年前ですかね、二〇一三年にも事実上の指導は行っている。しかし、一向に改善が見られる傾向にないということを前提に、大臣には指導力を発揮していただかなければならない。

 改めて地方税法の規定も確認しておきたいと思いますが、寄附金控除の対象となる経費に、確かに都道府県、市町村に対する寄附金が挙げられているんですね、法律上ですよ。しかし、その中には、資料にも示しました、括弧書きで、ただし、特別の利益が当該納税者に及ぶと認められるものは除くとはっきり書かれている。

 ということは、まかり間違っても、特定の利益、確約された利益、期待された利益と引きかえに納税するということは税の本来の趣旨にもとるわけでございまして、この法律的な意義についてもまずはよくかみしめていただきたい。

 加えて、私、もう一つ大きな問題だと思っていることがあります。

 ふるさと納税の限度額は、現在、おおむね住民税の一〇%です。住民税の一〇%ということは、住民税は所得の一〇%ですから、大体所得の一%前後が自己負担二千円で寄附できる上限になる。そうすると、ざっと言えばですけれども、百万円の所得の方は一万円です、上限が。一千万円の所得の方は十万円寄附できる。一億の収入がある方は百万円寄附ができる。いずれも上限は二千円ぽっきりです、二千円どまり。つまり、十万円寄附すれば九万八千円返ってくる。百万寄附すれば九十九万八千円は返ってくるんです。

 その上で、最近、大臣も御存じだと思いますが、ふるさと納税を推奨する推奨本が世の中に氾濫している。これも実名は避けます。避けますが、納税モラルの点からいって、私はとても看過できないという記述が多々見られる。

 例えば、ちょっとした手間でとんでもなく得をする、余りにおいしい仕組み、どうすれば何をもらえて、どれだけ得をするのか。所得税、住民税を合わせて私は年間数億納める、納税が国民の義務だということはよくわかっている、しかし、これだけ納税しても、例えば保育園の競争倍率に優遇があるわけでもなく、何もいいことはない。

 納税ってそういうものなんですよ、もともと。誰かに特定の利益を及ぼすものじゃない。

 果ては、何月にどこに寄附すれば、いつ何が送られてきて、我が家の食費はゼロだということを豪語しておられる。

 大臣、謎解き、答えられますか。ふるさと納税とかけて、家でゲームばかりをしているニートと解く。その心は、ただ飯を食べますだそうです。とんでもないですよ、これは。

 同じ公益的な寄附でも、例えば日本赤十字社、共同募金、一〇%は必ず自己負担になるという仕組みが入っている。ところが、ふるさと納税には限度額もなければ二千円ぽっきりという変な制度が入っているがゆえに、高額所得者は、何百万も寄附して、ほとんどが返ってきて、おまけに食べ切れない、数え切れないプレゼントをもらっているということが現に起きている。

 私は二つ提案したいと思います。

 まず、他の公益的法人に対する寄附と同様、一定割合で自己負担を求める。自己犠牲、自己負担あってこその寄附だと思いますが、こうした制度改正をする気はないか。

 もう一点。早速にもことしから、この限度額を住民税の一割から二割に倍増されるおつもりだと聞いている。大臣が今決意をおっしゃった、過剰なプレゼント合戦を抑止する、指導力を発揮するとおっしゃった。その効果が立ちあらわれるのを確認してから、やられるならやられればどうかと思います。すなわち、ことしの倍増については見送るべきだと思いますが、この二点、御答弁をいただきたいと思います。

高市国務大臣 まず、ふるさと納税制度は、納税者が納税対象地方団体を選択できる道を開くものとなるように、寄附金税制を活用することで、住所地団体から寄附先団体に対して実質的に個人住民税の一部を移転する効果を生じさせるものでございます。そういう制度として創設をされました。

 この制度創設の趣旨に鑑みて、ふるさと納税については、寄附金税制を活用する仕組みではございますけれども、他の寄附金税制とは区別されて議論がなされてまいりました。

 現在の仕組みにおきましても、二千円の自己負担にとどまる寄附枠には所得に応じた一定の上限というものが設けられております。上限を超える額の寄附を行った場合にはその超過分は自己負担となる仕組みですから、行政サービス主体である住所地地方団体への納税の確保にも配慮しております。

 このふるさと納税の制度を進めることで、私はやはり、寄附を行うということ、それに伴って税制上の手続をすること、それから寄附文化全体の醸成につながる、結果的には、ほかのNPO団体等の行っているさまざまな寄附に向けても皆様が気持ちを寄せてくださる、その効果もあります。地方創生という最重要課題に取り組む上で効果はございますので、ここは御理解を賜りたいと思います。

 二点目でございますけれども、一割から特例控除額の上限を二割に引き上げるということですけれども、これで寄附枠を拡大するわけです。これもやはり、政府の最重点課題であります地方創生をしっかりと進めていくということ。それから、この拡充案でも、個人住民税所得割額の二割という上限の中で特別控除を適用するものですから、一定の範囲内で活用していただくという仕組みになっております。

 先ほど申し上げましたが、とにかく地方公共団体に対しまして、良識のある対応は、しっかりと私、今までも要請してまいりましたし、これからもいたします。

 それから、委員がおっしゃいましたとおり、ちょっと税制上の問題についても、しっかりと警鐘を鳴らす必要を感じております。特に、所得税法、地方税法、返礼品も法人から寄附者への贈与と解されますから、返礼品については一時所得に該当することになります。

 良識の範囲内にとどまる返礼は、一般論として申し上げると、特別の利益に該当するとは考えられませんけれども、それでも、全体の金額から、普通でしたら経費を引いて、それから五十万円の控除があって、二分の一掛けて、そしてまた給与価格と合算する。こういった通常行っている税制上の措置を考えますと、私は、先ほど委員が例に挙げられたような高額過ぎるものというのは、明らかに税制上の疑義を生じ得るものであると思います。

 やはりこういう寄附金控除の適用の否認が危惧されるような状況を生じますと、ふるさと納税制度そのものの健全な発展の阻害要因になってしまいますから、これは本当に、地方団体において、本気で寄附金控除の趣旨を踏まえた良識ある対応をしていただかなければなりません。

 ただ、民主党政権の間も続けてくださったこのふるさと納税制度、本当に多くの地方活性化に資する効果を上げておりますので、ぜひとも、ふるさともしくは縁のある地方公共団体に対して寄附をしたい、そうお考えの皆様にも良識のある対応をお願いしたいと思います。

小川委員 大臣、一時所得は五十万円の控除がありますから、五十万円分のお土産をもらうというのは、それだけで異常な事態です。

 それから、非常に純朴なことをおっしゃっていますが、先ほどの本のくだりをあえて改めて紹介しますと、私は今後も毎年数百万円のふるさと納税をする、それもこれも、節税と無料お取り寄せグルメという営利的な動機があるからで、社会正義などは、非営利的なものは長続きしない、営利的な動機は絶対なくならないというような、裏をかくようなことを盛んに勧めている方もいるわけです。

 そういう意味では、もっと政策当事者として厳しい目を持ってこの制度、まあ、生み育てなければならない部分もあると思うんですよ。しかし、制度がいかんせん弊害を抱えているがために、これは租税社会に対する信頼とか信任とかいう基本的なものを侵しかねない。その意識をしっかりお持ちいただいて、今後取り組んでいただくことを心よりお願いを申し上げたいと思います。

 残りの時間で、少し安全保障の問題を取り上げさせてください。

 特に、集団的自衛権を含めて、政府・与党協議も進んでいるというふうにお聞きしております。特に防衛省設置法、けさ閣議決定されたんですか、文官優位規定を見直したということでございますが、それに関して、過去の総理大臣の答弁との矛盾を先般の委員会の中で指摘をしたものに対し、きょうは政府統一見解をお述べいただくということをお聞きしております。

 まず、どういう統一見解になったのか、総理大臣からお聞きをします。

大島委員長 いや、まず中谷大臣からお答えさせた上で、質問があれば総理にしてください。(発言する者あり)

 中谷大臣、きちんと答えなさい。

中谷国務大臣 お尋ねの件に関して、文民統制、シビリアンコントロールにつきまして、次のとおり内容をまとめましたので、答弁をさせていただきます。

  文民統制(シビリアンコントロール)とは、民主主義国家における軍事に対する政治の優先を意味するものであり、我が国の文民統制は、国会における統制、内閣(国家安全保障会議を含む。)による統制とともに、防衛省における統制がある。そのうち、防衛省における統制は、文民である防衛大臣が、自衛隊を管理・運営し、統制することであるが、防衛副大臣、防衛大臣政務官等の政治任用者の補佐のほか、内部部局の文官による補佐も、この防衛大臣による文民統制を助けるものとして重要な役割を果たしている。

  文民統制における内部部局の文官の役割は、防衛大臣を補佐することであり、内部部局の文官が部隊に対し指揮命令をするという関係にはない。

以上でございます。

安倍内閣総理大臣 文民統制と内部部局の文官の役割についての政府の基本的な考え方、これは不動の考え方でございますが、ただいま中谷大臣から答弁したとおりでございます。

小川委員 統一見解ですか。

安倍内閣総理大臣 これは防衛省の大臣として中谷大臣が答弁し、そして総理大臣として今答弁をまさに追認した、追認というか、これは統一した見解でございまして、総理大臣として、いわば内閣を代表して答弁をしているわけでございますから、当然、政府の考え方でございまして、これは今までの考え方と変わりがないということでございます。

小川委員 きょうは、この点はまず受けとめたいと思っているんですが、二、三、指摘をさせてください。

 過去の総理大臣答弁と比較をしますと、厳密な文理解釈が、今おっしゃった見解で本当に耐えられるかどうか、これはちょっと、なお疑問があります。

 そして、この法律改正によって、今後の業務遂行に当たって制服組と背広組との実態関係に何らかの影響を及ぼすのかどうか、これは一つの大きな論点です。さらに、もし仮に何らかの変更があるとすれば、これまで統合幕僚長を初めとした制服組は一切国会での説明責任を果たす機会から免れておられます。それは、今後出てくるのかどうか、これも一つの大きな論点であります。

 きょう、ここでは議論いたしませんが、非常に大きな論点をこの統一見解、またこの法改正は伴うということをひとまず指摘をさせていただきたいと思います。

 次に、ちょっと私、今度は、後方支援と集団的自衛権について議論をしたいと思っています。

 この間、総理に、レッテル張りだというふうに叱られたんですけれども、私はやはり心配しているんですよ。

 後方支援の拡大、ここにもございますとおり、恒久法を制定するわけですから、いつでも行けるわけですね。周辺事態概念を撤廃するという議論が言われていますから、これはどこでも行けるんです。米軍以外も支援すると言っているわけですから、誰とでもやれるんですよ。弾薬も提供する、何でも。国連決議や国会承認をこれからどうするのか。

 後方支援の拡大に関しては極めて丁寧な、緻密な、抑制的な議論を積み重ねてきたこの七十年の歴史に対して、総理は一夜にして、一足飛びにして、大きく踏み越えようとしておられる。ここに対しては大きな心配と疑問を私は持っています。

 加えて、先ほど、下にも書かせていただきましたが、文官優位規定。それから、既に武器輸出三原則は大幅に見直されました。また、PKO等を含めた武器使用の拡大。そして、後ほど議論したいんですが、集団的自衛権。これは、憲法九条の制約、存在感、一体この国ではどこに行ってしまうんですか。

 仮にこれだけのことを本気でやるのであれば、総理、真っ正面から憲法九条改正をまず国民に問うべきではありませんか。来年の憲法改正発議、自民党内でされているという報道もございますが、そこに九条改正を正面から持ってくる気概と覚悟は総理にありますか。

安倍内閣総理大臣 先般、こうした議論は緻密な議論が必要であって、レッテル張りはやめた方がいい、こう申し上げておりました。今回も、いつでも、どこでも、誰でも、何でも、どのようにでもと書いてありますが、しかし、クエスチョンマークが書いてありますから、これは委員の御疑問なんだろう、このように思います。

 そこで、一言申し上げておきますと、文官優位規定、正式に申し上げますと、これはあくまでも文民優位でございます。それがシビリアンコントロールであって、文官はまさに補佐する、文民である防衛大臣を補佐するわけであります。防衛大臣も補佐をしますし、あるいは統幕も補佐をする。

 まさにシビリアンコントロールというのは、基本的に、国民によって選ばれた内閣総理大臣が最高指揮官であり、そしてまさに同じように、文民である防衛大臣が指揮をしていく、こういう構造になっているわけでございますし、自衛隊の活動においては国会の決議も必要であるし、また、予算においては国会を通らなければならない、これこそがまさにシビリアンコントロールと言える。

 基本的には、国民から選ばれた内閣総理大臣が最高指揮官であるということにおいて完結をしていると言ってもいいんだろうと思います。

 その上において憲法改正の必要があるかどうかということでございますが、その中において、まさに、我々は今回、グレーゾーンから、そして集団的自衛権の一部行使容認に至るまで、切れ目のない対応を可能とする安全保障法制を進めていく、この中において、今までの憲法解釈との関係においてはきっちりと整理をしてきたわけでございます。

 今回、憲法改正をしなければならないような法律は当然ないわけでありまして、それを出せば違憲立法ということになるのは当然のことでございます。それに先立ちまして、昨年、閣議決定を行い、政府としての考え方をお示ししたとおりでございまして、その上に立って、今、法案を与党において協議をしている次第でございます。

 与党案ができ次第、政府案として提出をし、国会で御審議をいただきたい、このように考えております。

小川委員 私は、疑問は持っていません。ただ、法律が成立していないので、最低限のマナーとしてクエスチョンマークをつけましたが、総理は一〇〇%この方向でやられるんだろうという確信を持っています。その上で心配をし、質問をしているわけであります。

 周辺事態の概念について言えば、これは平成十一年、小渕総理大臣、総理もよく御存じだと思いますが、「周辺事態が生起する地域にはおのずと限界があり、例えば中東やインド洋で生起することは現実の問題として想定されない」という議論の積み重ねのもとにでき上がっています。

 周辺事態に関して米軍を支援するのは、日米安保条約の目的の達成に寄与する活動を行っているという制約が入っています。

 武力行使との一体化については、武器の提供を含めて、我が国が武力の行使をしたとの法的評価を受ける場合があり得る、そのことを考慮して、我が国の憲法が欧米諸国に例を見ない戦争の放棄等に関する九条の規定を有することから生まれる当然の解釈だ。極めて抑制的な解釈を積み重ねてきた歴史があるわけですね。

 総理は先ほど、最高指揮官である内閣総理大臣のもとでというふうにおっしゃったわけでありますが、私は、その言葉に全てが集約されているような気がしてなりません。確かに、総理は自衛隊の最高指揮官でいらっしゃる。しかし、それも法律と憲法という制約のもとにあるということを時にお忘れになっているんじゃないかというふうに感じるときがあります。

 逆サイドからお尋ねします。

 先般、辻元委員が極めて重要な点を指摘いたしました。逆サイドからですよ。唯一、総理がみずから制約を口にされているのは、イラク戦争、アフガン戦争、湾岸戦争には行かないとおっしゃっている。それは、辻元委員もこうおっしゃいました、法的制約で行けないと言っているのか、政策判断で行かないと言っているのか、どちらですかというお尋ねをいたしました。私もそれをお聞きしたい。

 果たして、イラク戦争、アフガン戦争、湾岸戦争に行かないと宣言しておられるのは、行かないんですか、行けないんですか、政策判断ですか、法的制約ですか。

安倍内閣総理大臣 今まで何回も明確にかつ簡潔に答弁させていただいているとおりでございまして、政策判断ではございません。

 いわば、海外に武力行使を目的として自衛隊を派遣することは、まさに三要件の中にあります必要最小限度を超えるものであると考えているわけでございますから、これは基本的に憲法上出さない、こう考えているわけでありまして、一般に海外派遣は許されていないという考え方でございます。

 一般に許されていないという中において、繰り返しになりますが、武力行使を目的として海外に自衛隊を派遣することはできない。つまり、イラク戦争……(発言する者あり)済みません、今答弁している最中ですから。答弁中は、済みません。よろしいでしょうか。

 そこで、イラク戦争やあるいはアフガン戦争や湾岸戦争等に自衛隊を派遣して戦闘に、戦争に参加することはない、これは今まで累次答弁をしているとおりでございまして、これは明確でございます。

小川委員 私は、総理、その答弁はおかしいと思うんですよ。

 武力行使の新三要件は、武力行使をするための要件なんですね。総理は、武力行使を目的として自衛隊を海外に派遣することはないとおっしゃっている。違うんですよ。武力行使をする場合はどういう場合ですかとお聞きしているんです。

 それに対して総理は、イラク戦争、アフガン戦争には行かないとおっしゃっている。今あるいは過去にも、いみじくもおっしゃっているのは、必要最小限度の実力行使、反撃を超えるということはおっしゃっている。第三の要件です、ここで言えば。

 では、逆にお尋ねします。

 アフガン戦争のきっかけは、ニューヨーク貿易センタービルに対する航空機による攻撃。あそこでは日本人も二十四名亡くなっています。そして、イラク戦争は、大量破壊兵器の所持疑惑、そして国際社会から要請した査察に応じないという事態であります。湾岸戦争は、クウェートに対するイラクの侵攻。こういう事態は、総理がおっしゃるように、三の要件、必要最小限度の実力行使にとどまらなければならないという要件はそうかもしれない。

 では、逆のお尋ねですが、今申し上げたような三つの事態は、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃であり、これにより我が国の存立が脅かされている、いわゆる今議論されている存立事態に当たるんですか。

安倍内閣総理大臣 これは明確でございますが、いわば、武力行使をするに当たっては、三要件に合致をしなければならないということでございます。

 ですから、この三要件に合致をするかしないかの中において、そこで必要最小限度がかかっていますから、それにおいては、海外に出ていって、つまり、領土、領海等に入っていって、まさに武力行使を目的としていわば自衛隊を派遣することはできないわけでございますから、それはできないということはもう明確であるということは累次答弁させていただいているとおりでございます。

小川委員 では、逆にお尋ねしますが、必要最小限度の反撃にとどまる反撃であれば、イラク戦争や湾岸戦争、アフガン戦争のような事態に際しては行使し得るということを今おっしゃったんですね。

安倍内閣総理大臣 それはもう今まで何回も、何回も何回も何回も申し上げておりますように、つまり、例えばアフガニスタンに行って、あるいはイラクに上陸をして、部隊を送って、そこで武力行使をするということは、これは必要最小限をそもそも超えている。つまり、武力行使を目的として海外に出かけていって、武力行使を目的としてですよ、海外に出かけていって、いわば、そこで空爆を行ったり戦闘行為を行うということは、必要最小限を超えているということでございますから、それはできないということは明らかではないか、このように思います。

小川委員 総理、質問に答えてください。

 必要最小限内にとどまる反撃であればできるということ、加えて、このアフガン戦争やイラク戦争のきっかけになった事態は、日本にとって存立事態に当たり得る、つまり、第一の要件は満たす可能性があると今おっしゃったと私は受けとめましたが。(発言する者あり)

大島委員長 議員の皆さん、非常に大事な議論ですから、特に後ろの方と山尾君、ちょっと静かにしなさい。

安倍内閣総理大臣 今お答えをさせていただきたい。これは同じお答えでございますから……(発言する者あり)

大島委員長 誰なの。自分の席に座りなさい、あなた。(発言する者あり)パネル……。それでも後ろの方に座りなさい。自分の席じゃないところはだめだよ。静かに聞いていればいいけれども。

安倍内閣総理大臣 同じ答えでございますから、申し上げたいと思います。

 まさに、海外に出かけていって、いわば武力行使を目的として他国の領土に入っていくということはできないということでございます。

 ですから、これはアフガン戦争にしろ、湾岸戦争にしろ、そこに自衛隊の部隊を送るのは、これは武力行使を目的に行く、いわば、そこで、上陸をしていくという、戦闘状況が起こっているときには、武力行使を目的にして行くに決まっているじゃないですか。

 基本的に、それ以外においては、例えば後方支援という考え方はございますよ。後方支援という考え方については、これは武力行使と一体化していませんから、一体していないことしかできませんから、それは武力行使ではないということでございます。

 今……(発言する者あり)でも、これは明らかじゃないですか。これがわからない人は、私、どうかしていると思いますよ。こんな理路整然とした御説明をさせていただいているところでございます。

 何回も御説明をさせていただいておりますように、湾岸戦争やアフガン戦争やイラク戦争に参加しない。参加できるんですねと今、小川委員がおっしゃった。参加できないということは、今申し上げましたように、武力行使を目的として、武力行使を目的としてアフガニスタンやイラクに上陸していくことはできないし、まさにそれはできないということでありますから、これはできないということは明らかである。

 今、小川淳也さんは、何ができると言おうとしているんでしょうか。それをまずは明確にしていただかないと、それ以上のお答えはできないということでございます。

小川委員 残念ながら時間ですので、また改めたいと思いますが、これは、総理、極めて大事な議論なんですよ。日本が戦争をどういうときにするのかしないのかの、ぎりぎりの議論なんですよ。

 必要最小限の実力行使にとどまるからできないとおっしゃるということは、第一、第二の要件には当てはまるということをおっしゃっているんです。そこをぜひ、物すごい大事な論点ですから、総理。

 私、今の総理の説明がわからないならどうかしているなら、どうかしているで大いに結構ですよ。国会でどう言い逃れるかじゃなくて、国民に対して、どういうときに日本は戦争するのか、どういうときにしないのか、このぎりぎりの事例を話し合っているわけですから、これはしっかり説明をしていただきたい。

 残念ながら時間ですから、機会を改めますが……(発言する者あり)

大島委員長 答弁されますか。もうよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 今、私は、第一、第二の要件を満たしているということは申し上げておりません。第三の要件を満たす必要がいずれにいたしましてもあるわけでありまして、第三の要件についてはまさに満たしていないということを申し上げているとおりでございます。

 第三の要件は満たしていないわけでありますから、これはできないということは明々白々であるということでございます。

小川委員 もう終わりにしますが、今、中谷大臣が閣僚席から不規則発言で、第一、第二は判断しないとおっしゃった。それは、つまり、武力を出すかどうか、武力行使するかどうかは白紙委任、ブラックボックスということだ、この要件は。何のための新三要件かわからない。そのことを申し上げて、質疑を終わります。(発言する者あり)

大島委員長 静かに、静かに。ちょっと後ろの方、星野君も、それから宮崎君もちょっと静かにして。中谷さんも余り余計なことを言いなさんなよ。

 この際、階猛君から関連質疑の申し出があります。渡辺君の持ち時間の範囲内でこれを許します。階猛君。

階委員 民主党の階猛です。

 今、我が党の小川委員と総理との間でやりとりがあった件、後ほど議事録を精査し、また、内閣法制局長官のこれまでの見解も踏まえて、また我が党として取り上げさせていただきたいと思います。

 その上で、私の方から、まず総理に対して質問させていただきます。

 三月二日の日に、ラグビーのワールドカップの開催地、全国で十二カ所、決まりました。その中に、我が岩手県の釜石市も、おかげさまで、選ばれました。野田市長を初めとしまして、関係者の皆様のこれまでの御尽力に敬意を表しますとともに、これまで応援していただいたワールドカップを成功させるための議員連盟の皆様を初め、関係者の皆様に私からも心より感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございます。

 こうしていろいろな方から応援していただけるのは、今、被災されて復興に向けて頑張っている方々にとって大きな励ましになると思います。誇りにつながると思います。しかし、まだまだ復興は道半ばであります。私は、この二〇一九年のワールドカップを、ぜひ、被災地の復興とともに前進させていきたいと思っております。

 この釜石という地は、全国的にも有名になりました。震災のときに、ちょうど今回ワールドカップの競技場をつくるという場所が、釜石の奇跡と言われた、小学校、中学校の子供たちが高台まで率先して逃げて、そして、お年寄りとかも助けながら命を守った、そういう場所でもありますし、また、ラグビーファンにはおなじみのとおり、新日鉄釜石があの厳しい練習環境の中で日本選手権七連覇をなし遂げた、そういう奇跡があった地でもあります。

 私は、今回のラグビーのワールドカップの釜石開催を三回目の奇跡にできないだろうか。すなわち、被災地の復興が前の町よりもさらに立派になってなし遂げられる、そして、その場所に世界から多くの方を迎え入れて、地元の方々が大漁旗を振っておもてなしをする、そういうすばらしいワールドカップにできないものだろうかと心から思っております。

 そこで、総理にお伺いします。

 釜石でのワールドカップの成功と、そして被災地の復興の両立をなし遂げるために、国からの支援もいただかなくてはいけないと思います。総理に、それに向けてのお考えをお伺いします。

安倍内閣総理大臣 釜石市は、昭和五十年代に、当時の新日鉄釜石が七連覇を遂げた、まさにラグビーの聖地と言っていいと思いますし、当時の新日鉄釜石のチームも地元出身の人たちが大変多いチームであった、このように記憶をしております。

 今回、ワールドカップの会場に選ばれたことは、地元の方々の熱い思いのたまものではないかと思います。釜石市で大会を開催することは、東日本大震災からの復興のシンボルとなり、被災地の方々を勇気づけ、地域の活性化を促進するなど、復興を加速することにつながっていくと思います。また、日本の復興を世界にアピールしていくよい機会になっていく。世界の皆さんからも支援をされて、立派にラグビーの会場として、こうして復興がなし遂げられつつあるということを示していきたい、このように思います。

 政府としては、二〇一九年の大会の成功に向けて、被災地の方々の御意見も伺いながら、今後も必要な支援をしっかりと行っていく考えでございます。

階委員 よろしくお願いします。

 それでは、きょうは地方創生ということなんですが、その前に、きょうもNHKの会長、NHKにも地方創生において重要な役割を果たしていただかなくてはいけないと思っております。

 きのうも、別の委員会でしたけれども、籾井会長は、NHKの使命として、あまねく日本全国において受信できるように豊かで、かつ、よい放送番組による国内基幹放送を行うというふうに答弁されました。

 一部の地域や一部の人々に偏らない、豊かで、かつ、よい放送番組をつくり、地方創生に向けても頑張ってほしいと思いますが、残念なことに、今、NHKの会長のさまざまな言動、きのう総務委員会で経営委員長に確認したところ、これまで、会長の言動がもとで経営委員会が注意や申し入れをしたことは一度としてなかった、しかし、この一年間で既に四度も注意や申し入れが籾井会長に対してなされている、こういうことでありました。今、籾井会長の資質が問われております。

 経営委員会で資格六要件というものを定めまして、任命のときに、これを満たしているかどうかということが審査されて、その時点では満たしているものとして籾井会長が任命されました。しかし、その後の言動から、さまざまなことがこの要件を満たしていないという方向でわかってきています。

 「NHKのことを何も知らないんですから」。公共放送としての使命を十分に理解していないのではないか。また、予算承認の全会一致が八年ぶりに崩れたり、NHK退職者、市民団体等から辞任要請が来ています。これも大変な数になっていまして、私どもが調べたところ、NHKの退職者からはもう二千人を超える数、そして、市民団体等からは七万人を超える署名が、辞任要請あるいは罷免要請ということで集まっているということであります。

 まず、この「広く国民から信頼を得られる」かどうかというところが問われるわけでありますけれども、広く国民から信頼を得られるというための必要条件として、国民の代表であるこの国会の場でNHKの予算承認の全会一致が行われる、これが絶対的に重要だと思います。

 この点について、まず経営委員長から御見解をお願いします。

浜田参考人 先日の経営委員会で意見交換を行いました。その結果を踏まえて、執行部としては、全会一致で予算承認をお認めいただくよう最大限の努力をしていただきたいという旨の申し入れを行いました。

階委員 つまり、そういう申し入れを行ったということは、全会一致は絶対的に必須のものであるというふうに経営委員会は判断したということでよろしいですか。

浜田参考人 NHKは皆様の受信料で成り立っている公共放送であり、放送法で定められた理念を実現するためにも、全会一致の御承認をあくまでも追求すべきだというふうに考えております。

 二十七年度の収支予算、事業計画については、全会一致の承認を目指して全力で取り組むよう執行部に申し入れております。経営委員会としても、そのための監督はしっかり行っていきたいと考えております。

 何とぞ、どうぞよろしくお願いいたします。

階委員 監督権の最大のものは罷免権にもつながるということです。ここをぜひ、経営委員会としても、しっかり行使すべきときは行使していただきたいと思っています。

 そこで、資格要件の三点目として、「政治的に中立である」ということがありますけれども、既に籾井会長は、「政府が右と言うことに対して左とは言えない」、これは就任時の会見です。それから、二回の注意、一回の申し入れを経た後に、ことしになって二月の五日でも、「正式に政府のスタンスがまだ見えない」ということで、政府の意向に追随するような発言を繰り返しています。これは政治的に中立ではないと言えると思います。

 そもそも、政治的中立を確保するために、NHK会長の任命については特別の配慮がされているわけです。普通、NHKのような特殊法人については、内閣総理大臣が任命権を持って、国会同意人事で決まるというのが通常なんですが、放送法の解説によりますと、NHKの場合は、政府が直接関与することを避け、公平かつ適切な人選を通じて協会の業務執行の中立を確保するためということで、経営委員会が会長の任免を行うということをわざわざしているわけです。そこまでして経営の政治的な中立性、これを守ろうとしているにもかかわらず、それを踏みにじるかのようなこれまでの発言、私は大変問題だと思います。個人的見解であるとか取り消したからといって済まされるような問題ではありません。

 例えば、裁判の世界でいえば、裁判官が、原告、被告、一方当事者と利害関係があれば、これは忌避事由だということで、その裁判官は任務に携われないわけです。あるいは、野球の審判だってそうです。幾ら有能な審判であっても、個人的には巨人ファンだと明言している人が巨人対阪神戦の主審を務める、これでファンは納得するでしょうか。

 私は、個人的見解であるとか取り消したからといって、今までの発言がその資質を失わしめるような問題は全く解消されていないと思います。この点について、経営委員長、御認識を伺います。

浜田参考人 御指摘いただきました点につきましては、経営委員会が、放送法に則し、自律的に総合的に合議によって適切に判断するものと認識をしております。

 現時点では、経営委員会といたしましては、平成二十七年度の収支予算、事業計画を国会で全会一致で御承認いただけるよう努力し、次期経営計画を着実に実行することを執行部に求めております。

階委員 これだけでも、もうNHK会長の資格はないということは明らかでありますが、六要件の残り三つについても触れておきます。

 四点目、「構想力、リーダーシップが豊かである」ということについては、理事全員から、就任早々、辞表を取りつけたということがあったわけです。リーダーシップが豊かであればそんな必要はないし、その取りつけたことに関し、「求心力を付けるには何らかの方法が必要」とあります。求心力よりも、NHKで大事なことは、報道の自由を守るために言論の自由が保障される、そういうマネジメントをすることが大事であり、そういうリーダーシップこそが会長には求められている。これが欠如しています。

 それから五点目、「社会環境の変化、新しい時代の要請に対し、的確に対応できる経営的センスを有する」、こういう要件もありますが、クライシスマネジメントをどうするかという経営委員の質問がかねてありました。クライシスマネジメントというのは、いわゆる危機管理であります。その質問に対して、「正直よくわかりません」と経営委員会の場で答えている。これで社会環境の変化に対応していると言えるでしょうか。

 さらに六点目、「業務遂行力があり、説明力がある」というところにつきましては、もう私どもの部門会議でさんざんやり合いましたけれども、「一般社会ではよくあること」を、なぜか、「皆無ではない」というふうに言いかえて、自分の言っていることは間違いないというふうに強弁されている。これで説明力があると言えるでしょうか。

 私は、こういう資格六要件を満たさないで、NHKという、報道の自由にとっても、また地方創生にとっても欠くべからざる役割を期待される組織、そのトップとしてふさわしくないと思います。籾井会長、みずから身を退くお気持ちはないでしょうか。改めて聞きます。

籾井参考人 いろいろ御指摘いただきましたけれども、まず、一つだけ言わせていただきたいのは、右とか左とかいう話については、昨年、国会の場で取り消しておりますので……(発言する者あり)いや、国会で取り消しておりますので、これは公式に取り消しているということで、これは言わせていただきたい。

 それから、いろいろ私の真意が伝わらなかったことについては、私の拙い言葉遣いで、まことに申しわけなく思っております。

 ただし、中立の問題につきましては、私は、放送法にのっとり、事実に基づき、公平公正、不偏不党、誰からも規律されずという強い意思のもとにNHKを経営いたしております。

 私は、着任以来、政府からどんな干渉も受けておりません。それから、私は、そういうことをそんたくしながら、政治的なそんたくをしながら番組をつくったこともございません。これは私は自信を持って言えると思います。私は、NHKの職員とともに、放送法にのっとって、本当に事実に基づいた放送をするということを心がけております。

 私の今一番大事な仕事は、放送法にのっとって、なかんずく一条から四条に書いております、最初に申し上げましたように、公平公正、不偏不党、自律、何人からも規律を受けず、こういう方針で伝えておるわけでございます。

 それから、辞任するかという話がありましたけれども、私は、着任して初めて三カ年経営計画というものをつくりました。そして、その中に、今後あるであろうインターネットの問題とか、それから、さらに技術の進歩を踏まえた4K、8Kの問題とか、さらに、国際放送につきましても、やはりNHKのもっと発展した国際放送ということでこの三カ年計画に組み入れているわけでございます。

 どうぞこの辺をよく御理解いただきたいと思います。

階委員 かねがね籾井会長は、業務を遂行するに当たっては、公平中立で問題ないかのような発言をしていますが、私が先ほど申し上げたのは、個人的見解がどうであるか。そこでNHKの政治的中立性に疑問があるような発言をしたら、幾ら業務遂行をちゃんとやっていますといっても、国民からの信頼は得られないわけです。裁判官の世界でも、野球の審判の世界でも、それが常識です。籾井会長は、その認識が余りにも欠けています。

 失われた信頼は、業務を遂行することではなくて、私は、潔く身を引くこと、それによってNHKをしっかり国民から信頼を得られる存在にしていくことが大事だと思っています。

 総理、私は、この個人的見解と公式見解を使い分けて政治的中立性を守っているというような言い方、これは、総理大臣の任免権ではなくて、わざわざ経営委員会の任免権にしてNHK会長を選任しているということに鑑みれば、総理大臣としても、その趣旨を没却するものとして看過できない、本来総理大臣が任命していればそういうことはなかったのではないかというふうにもお考えになられるかもしれません。

 政治的公平ということをさきの国会の答弁でも繰り返しおっしゃっていましたけれども、その政治的公平、政治的中立性という意味において、私は籾井会長は問題だと思いますが、いかがお考えでしょうか。

安倍内閣総理大臣 放送事業者の長に対して行政府の長として今ここでコメントすることは差し控えさせていただきたい、このように思います。

 いずれにいたしましても、経営委員会によって適任と判断されたわけでございます。しっかりと放送法の精神、法令にのっとって仕事を進めていただきたい、このように思います。

階委員 経営委員長にも最後にお尋ねします。

 今私もるる問題点を指摘させていただきましたけれども、最後は経営委員会の御判断であります。全会一致ということをあえて四回目で申し入れしていただいたということを踏まえて、きっちり罷免権を行使すべきときは行使するように経営委員長としてお取り計らい願いたいと思います。

 この点について御見解を伺います。

浜田参考人 御指摘のような点につきましては、経営委員会が放送法に則し自律的に、総合的に合議によって適切に判断するものと認識をしております。(発言する者あり)

階委員 圧力というやじも今飛びましたけれども、圧力ではありません。これは、資格要件を満たしているかどうかをきちんと判断すべきだということを言っているわけです。今までのこの一年間を見てきて、それが満たされないことが客観的に明らかだからこそ、そうであれば、経営委員会、任免権を持つ者としてしっかり対応していただきたい。当たり前のことを言っています。そのことを申し上げまして、次のテーマに移らせていただきます。

 まち・ひと・しごと創生総合戦略、これが定められました。この中で、ちょっと普通の人には耳なれないKPIという言葉、成果指標と日本語では置きかえられるのでしょうか、そういう言葉があります。

 私もこの総合戦略を見まして、いろいろなKPIが挙がっていますけれども、肝心なことが一つ抜けているのではないかという問題意識です。それは、小売年間販売額とサービス業収入額、こういったものを地域ごとの指標にすれば、これが年々どの程度拡大していくかということを目標にしていけば、マーケットが拡大することによって人も仕事も地方に来る、そして町も発展する。

 それから、もう一つの副次的効果として、今申し上げました小売年間販売額とかサービス業収入額、地域ごとの数字が消費税、地方消費税の配分の基準にもなっています。

 ですから、実際に買い物をすればするほど地域の社会保障サービスにも役立つんだ、そして、行政もそれによってサービスを拡充していけるんだということで、二重の意味において、こういう指標を設けた方がいいと思っております。

 このKPIに、今申し上げました小売年間販売額とかサービス業収入額といったものを設けて、地方経済の活性化とともに社会保障の安定化にもつなげていく、そういうお考えはありませんか。

石破国務大臣 御指摘ありがとうございました。

 KPIという言葉はまだ全然広まっておりませんで、キー・パフォーマンス・インディケーター、つまり指標でございます。数値目標と言ってもそんなに違わないんだろうと思います。国としてKPIを設定させていただきましたが、これから地方において総合戦略をお決めいただき、そこにはKPIを設定していただくようにお願いをしております。

 それは国と地方との共同作業ですが、国が掲げましたKPIにそのままスライドしたようなKPIばかりということをお願いしているわけではございません。委員がおっしゃいましたような、小売の販売額でありますとかあるいは宿泊者の消費額でありますとか、そういうようなものは地方において任意にお定めをいただいて全く問題ないと思っております。

 私ども、このKPIが唯一絶対と申し上げるつもりはございませんで、これから先、こういうものを入れた方がいいということがあれば、検討させていただき、有効なものは取り入れたいと思っております。

 御指摘ありがとうございます。

階委員 やはり、地域ごとにこういう指標を設けることによって、活性化が目に見えますし、社会保障のサービスについて自分らも貢献しているということも目に見えるということで、やるべきだということを申し上げます。

 そして、今回、地方創生ということでさまざまな予算がある中で、私どもの方で精査したうちの問題点を指摘させていただきます。

 総合戦略の四ページには、「従来の政策の検証」ということで、まず真っ先に、従来の問題点として、府省庁、制度ごとの縦割り構造があったということが指摘されています。「地域の経営人材の確保・育成に関しては、各府省庁で政策手法が似通うことが多く、事業相互の重複や、小粒な事業が乱立する傾向にある。一方で、移住希望者向けのワンストップ窓口を設置した地方公共団体が移住希望地の上位に急上昇した事例等にみられるように、「縦割り」排除の効果は非常に大きい。」という記述があります。

 移住の関係で、政府は移住促進事業をいろいろやっていますけれども、これが、今申し上げたことと、まさに問題点、指摘されたとおりになっているのではないか。

 実例を申し上げます。

 例えば、内閣府のプロフェッショナル人材事業、これは、さきの補正で手当てされた十五億円強の事業ではありますけれども、地方の中堅・中小企業の生産向上に必要なプロフェッショナル人材を都市圏から地方へ還流させるという目的のための仕組みだそうです。

 それから、総務省では、全国移住促進センターというものをつくって、移住に関する情報についてワンストップで対応する窓口、また、ポータルサイトを活用して総合的な情報提供をするといったものにも補正で一・五億円。

 それから、経済産業省では、地域中小企業人材バンク事業ということで、Uターン者などへの、中小企業への就職の支援をして移住を促進していこうというものもあります。

 内閣府では、地域しごと支援事業ということで、地域しごと支援センターを整備する。これがさっきの全国移住促進センターとかとどう違うのか、よくわかりません。

 それから、厚労省では、地方就職希望者活性化事業。

 こういったものなど、いろいろなことをやるようになっております。ワンストップということにも反していますし、縦割りにも反していますし、いずれも小粒であります。

 こういったものをやる意味が私はないと思いますけれども、そもそも、わざわざ従来はこういう問題点がありますねと言ったにもかかわらず、こういう事業がなされようとしている、このことについて大臣はどうお考えになりますか。

石破国務大臣 民主党政権のときも相当に御苦労なさったんだろうと思います。

 そういう指摘をしますと、いやいや、それぞれ対象も違いますし、手法も異なりますし、それぞれの事業をそれぞれに設ける意味があるのです、こうくるわけですね。ですから、これはなるべく統合したいと思っています。

 ただ、それぞれの省庁において、予算をとり、そしてまた事業として確立しているものですから、当面、当面という言い方は私は余り好きじゃないんですけれども、近々というか、今月中なるべく早くに、各省庁の関係部局から成ります人材還流政策各省連絡会、これも何だかよくわからないけれども、そういうものをつくって、要は、各省庁いろいろある、では、これが本当に望んでいる人たちに対してワンストップでできるのかどうかというのは、各省庁が集まってここは検討させます。そこには政務もきちんと入って、その議論というものはきちんと見なければなりません。

 要するに、厚労省ではだめ、はい、それじゃまた帰って考えなみたいなことで、今度は別の省庁に行くというような、こんなものがどこがユーザーフレンドリーだという話なのであって、これには合わないけれども、ほかのものがすぐその場で、ではこういうものでどうですかということにならなければ、ユーザーフレンドリーでも何でもないわけです。

 そこは、なるべく、これから先ワンストップということを心がけ、重複は排除いたしてまいります。ですから、連絡会を立ち上げることによって、さらにその問題点は出てきます。

 要は、使う人が使いにくければ、そんな制度は存在の意義がないということはよく承知をいたしております。

階委員 問題意識は共有できていると思います。

 それで、仮に、これから議論して、ワンストップに近づけていこうというのがうまくいったとします。ところが、これは民間でも同じような窓口が既にあるんですね。

 例えば、一般社団法人移住・交流推進機構というところでは、地域活性化センターというところでポータルサイトの運営等を行い、年に一回、移住・交流&地域おこしフェアを開催している。あるいは、NPOのふるさと回帰支援センターというところでは、ポータルサイトを運営して相談窓口の開設を行っていて、また、年に一回、ふるさと回帰フェアを開催している。民間でも似たようなものがあります。

 政府でワンストップにするとはいっても、そもそももう民間にツーストップもあるわけですから、政府はワンストップにしても、スリーストップですよ。もうあえてここから先、政府がこういうことをやるよりも、民間の方を、足らざるところがあれば民間の活動を応援してあげるなり、そういうことでも足りるんじゃないですか。お考えをお尋ねします。

石破国務大臣 それは、民間でできることは民間にやっていただく方がいいに決まっています。それは私も、この仕事についてから、今委員が御指摘のように、こんなにたくさんあるんだということを改めて実感した次第でありまして、今委員御指摘のようなものが、どれがどれだけあるのか、それにどれだけ利用される方があるのか。

 それが、これはパーフェクトだというものであれば、何も政府でこんなことをやる必要はないわけであって、それが、どのようなお客様があり、どのような実効性を上げ、どのような実績があって、どういうふうにお互いにリンクしているかということもよく点検をした上で、政府として、余計なことをやって民間の仕事を圧迫するつもりはございません。

 要は、どうすればこの移住の情報というものが、すぐにわかるようにするか。

 例えば、岩手県でも、岩手県の東京事務所というのが、あれはどこにありましたか……(階委員「今は移っちゃいましたね」と呼ぶ)移っちゃいましたね。例えば島根ならば日本橋にあるわけです。鳥取は岡山と一緒に、ももてなしという、おもてなしと桃と梨をかけたような不思議な名前でありますが、そういうようなところを新橋に開きました。あるいは、青森県であれば飯田橋にあるわけです。そこにいろいろなそういう移住関係のセクションがあるわけですが、それも一カ所にして、八重洲に近々開こうと思っております。

 要は、お互いにきちんと連携ができるかどうか、まさしく二重の仕事をしていないかどうか、そして官が民を圧迫するようなことをしていないかということで、さらに改善を図ってまいりますので、どうぞまた御指摘くださいませ。

階委員 ぜひ、民間も含めたワンストップにして、ユーザーフレンドリーにしていただきたいということを、目指していただければと思います。

 それで、私はこの総合戦略を見ていて、ここも私の考えと近いなと思ったのが、四十ページに、「若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる」というところで、「若い世代が希望通り結婚し、子どもが持てるような年収水準(例えば独身で三百万円、夫婦で五百万円程度が必要との指摘もある。)を確保する安定的雇用が必要である。」ということが掲げられています。

 そこまでは私も共通なんですが、それを実現していくための方策について、法人税減税で中小企業へ外形標準課税を拡大するようなやり方は、私はむしろ逆効果だと思っています。

 地方では、圧倒的に中小企業、かつ赤字の中小企業が大半であります。そして、そういう中で、赤字企業であっても、しかも、特に雇用をたくさんやっているような企業であればこそ課税がふえていくというような仕組みは絶対にやるべきではないと思っています。

 こういうことを大臣は同意いただけますでしょうか、石破大臣。

石破国務大臣 そこは、法人税減税というものは、もちろん地方創生ということにも配意をしてなされるものであります。と同時に、日本全体の経済をいかに活性化させていくか、日本経済がどうやって競争力を持つかということにも重きを置いて法人税改革というものはなされているものだと承知をいたしております。

 そのことが地方創生に逆行するものだとは私自身考えておりませんが、一方におきまして、地方にそういうような企業が多い、赤字でありながら大勢の人たちを雇用しているというところが多くあることも承知をいたしております。

 そういうところが、今、地方こそ人手不足になっている。それは、有効求人倍率は相当に改善をしていますが、委員御指摘のように、収入が高くない、かつての公共事業や、家電、電機メーカーに勤めていたころのような収入が得られない、あるいは、安定して継続するかどうかわからないということでございますので、まさしく地方が人手不足であるがゆえに、この言い方は気をつけなければいけませんが、生産性を上げていくということによって労働者の環境も改善をする。それは岩手県北バスなんかも一つの事例かと思っておりますけれども、住民のサービスも向上させつつ、そこに働く労働者の収入が安定していくというやり方は、いろいろな手法があるのだと思っております。

 法人税のことについて私が言及すべきではございませんが、法人税減税とはまた別に、地方が人手不足であるがゆえに、生産性を上げ、雇用を確保し、賃金を上げていくということにおいて地域のお知恵を賜りたいと思っております。

階委員 確かに、人手不足というところはよくお話を聞くんですけれども、一方で、正規社員を雇ってしまうと社会保険料の負担が大き過ぎるということで非正規雇用にとどまっているということが多々あるわけです。

 厚労省の方でアンケートなどをとっているのを見ますと、これは平成二十二年の就業形態の多様化に関する調査ということですけれども、正社員以外の労働者を活用する理由というのは、賃金の節約のためというのが四三・八%で一番多いんですが、次に多いのは、賃金以外の労務コスト節約のためというのが二七・四%、しかも、前回の調査、三年前の調査のときに比べてこの比率が六ポイント以上上がっています。だから、賃金以外の労務コスト、すなわち、社会保険料負担というものをいかに軽減していくかということは重要な政治課題だと思います。

 そこで、例えばということで試算してみました。

 仮に、年収百万円の非正規社員を年収二百八十七万円、先ほど三百万円が一つの独身の場合の目安だとありましたけれども、ちょっと足りないんですが、仮に年収二百八十七万円、もとは地方税の課税最低限ということで百万円。今までは社会保険料、会社負担はほぼゼロだった。これが、正規社員にすることによって、賃金ももちろんふえるんですけれども、社会保険料だけでも四十三・四万円、これだけ負担がかかるということが、やはり正規社員、三百万円程度の正規社員を雇う上でのネックになっている。

 仮にこの部分を国が支援した場合、財政的にどれだけ影響があるか。

 これは一人当たりで考えてみました。一人当たりにすると、確かに、四十三・四万円国が支出する、負担するとなると、その分、支援額として歳出が出ていきます。そしてまた、人件費がその企業の利益の圧迫要因になりますから、法人税が減収して、これら歳出増、歳入減で五十・九万円、財政に新たな負担が生じます。

 他方で、歳入増の要因もある。消費税が所得がふえて消費をすることで十万円、所得税が収入がふえることで五・三万円、住民税も十・九万円、これだけふえるわけです。

 トータルで見てみますと、財政的な負担は二十五万円程度で済むということです。

 今、法人税減税で、二十七年度は二千億円程度の財政負担ということなんですが、同じ財政負担で、約八十万人分、非正規社員を正規社員に転換するということにつながるわけであります。こうしたことをやった方が地方創生に資するのではないかと思います。

 総理の御見解をお願いします。時間がありませんので、総理、お願いします。

安倍内閣総理大臣 今回の法人税改革は、これは単なる減税ではありません。稼ぐ力のある企業等の税負担を軽減することによって、法人税を成長志向型の構造に変えていくというものであります。これが今回の法人税改革の基本的な考え方であります。

 こうした改革と、そしてコーポレートガバナンスの強化や政労使の連携といった取り組みとが相まって、企業の積極的な投資、さらには継続的な賃上げや下請企業の価格転嫁といった取り組みにつながっていくと考えております。

 今後ともこうした改革を着実に実施していく必要があると考えておりますし、間違いなくこれは効果を発揮していくと私は確信しています。

 他方、今委員の御指摘になった社会保険料は、必要な給付との見合いで、賃金を基礎として、労使双方に負担をいただいているものであります。地方での中小企業の雇用改善等のため、事業主の負担に限って軽減できる性質のものでは、残念ながら、ないわけであります。

 なお、その中でも、主に中小企業の従業員が加入する協会けんぽについては、財政基盤が脆弱であるということから、給付費に対する国庫補助を行い、事業主と加入者の保険料負担の軽減を図っています。今国会に提出をした医療保険制度改革のための法案においては、国庫補助割合を当分の間一六・四%に安定化させることによって、その運営の安定を図っていくこととしております。

階委員 総理の答弁で、一点だけちょっと誤解があったようなので指摘させていただきますけれども、中小企業の社会保険料の負担をなくすわけではなくて、その部分に対して財政的な支援をするということです。そこで財政支出が生じるわけだけれども、それについては、先ほど申し上げましたとおり、一方で歳入になって戻ってくる分もあります。そして、これがやられることによって、結婚して子供を持てる、そして人口減少にも歯どめがかけられるということにもつながっていくということで御提案申し上げたわけです。

 そしてもう一つ、先ほど我が党の渡辺周議員から、民間だけではなくて、官庁の施設についても地方移転を進めるべきだという文脈で、いろいろ問題点の指摘がありました。

 二百五十個、さっきリストを見せていただきましたけれども、今回は研究施設等ということで、余り我々にとってなじみがあるところは少なかったんですけれども、例えば、私も調べてみますと、先ほど石破大臣もおっしゃっていました。過去には酒類総合研究所が移転したケースが唯一だみたいなお話でしたけれども、同じあたりに、北東公庫を函館市に移転することも決まっていたようなんですよ。平成元年八月二十四日の国の機関等移転推進連絡会議というところで決まっていたようなんです。これが今どうなっているのだろうか。

 今、御案内のとおり、政策投資銀行と一緒になりましたけれども、私は、こういう北東公庫も過去に地方に移転するということを決められたのであれば、地方自治体が手を挙げるのをまつまでもなく、政府から積極的に、こういうたくさん雇用を抱えているようなところが東京から地方に移転していくということを進めるべきではないかと思います。この点について、石破大臣の御見解をお願いします。

石破国務大臣 先ほど渡辺委員から重要な御指摘をいただきました。あの後、私、役所に帰りまして、御指摘を踏まえて、もっと自治体にわかりやすくするような、近々、都道府県の担当者を集めて説明会を開きますが、そのときは、ホームページを自分で引いてきてくださいじゃなくて、こちらの方でちゃんとホームページをプリントアウトして、ちゃんと印刷してお配りするということもしなければなりませんし、ジャンル別に分けるということも必要なことであります。

 今御指摘のように、地方から上がってくるのを待っていなさいというような話ではなくて、私どもも、ここはここへ行った方がいいではないかというようなことは、やはり、言葉は難しいですけれども、政治主導も必要なんだと思っています。

 やはり、官僚機構というのは、できれば今のままがいい、そういう特性というか属性というか何というか、そういうものを持っているわけでありまして、それは、こっちに行った方がより効果を発現できるのではないかというのは、まさしく政治が力を発揮すべきときだと思います。

 与野党問わず、我が地域にはこういうものが来た方がいいのではないかというような御指摘があれば、どうぞ賜りたいと存じます。

階委員 では、最後に国交大臣にお尋ねします。

 私は新聞を見ていて、これはお正月ぐらいだったかもしれませんが、読売新聞の橋本五郎さんが、地方創生というのは心が大事なんだ、東京にいると、冬でも布団が干せて暖かいところで寝られるけれども、その同じ時間帯に、雪国では八十歳のおばあさんが一人で雪かきをしている、そういうところに思いをはせるのが地方創生の心なんだみたいな話が載っていて、私も同じ雪国というか北国の出身なもので、非常に感銘を受けたんです。

 まさにそのとおりで、私の地元もそうなんですけれども、非常にお年寄りが寒いところで暮らしていたりするんですね。断熱効果のないおうちで、冬になると、私の実家もそうなんですが、起きると、朝、息が白い、そういう家に住んでいるんです。こういうところでお年寄りが体を悪くしないだろうか、あるいは暖房代もどんどんかかって、これから省エネを進めていかなくてはいけないときにもったいないなという思いもあります。そして、そのお金がもし節約できて、暖房代を節約できて、ほかの消費に回せれば、まさに地方活性化、地方創生にも資するわけですね。

 そういう意味で、地方の住宅、特に北国を中心にして省エネ化、断熱化を進めるということは大事だと思うんですが、国交大臣、今政府で進めていることがあれば教えてください。

大島委員長 太田大臣、時間が参っておりますので、簡明にお願いいたします。

太田国務大臣 省エネまたはゼロエネ、それは省エネの観点でも、あるいはヒートショックということの上でも非常に大事です。

 一つは、大工、工務店等が省エネリフォームなどを行った場合に、戸建て最大百万円を支援する事業を行っている。もう一つ、省エネリフォームに対しまして、さまざまな商品券と交換できる省エネ住宅ポイント制度を今回の平成二十六年度補正予算で措置している、こういうことでございます。

階委員 さらに積極的な支援をお願い申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。

大島委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

大島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。

 この際、柚木道義君から関連質疑の申し出があります。渡辺君の持ち時間の範囲内でこれを許します。柚木道義君。

柚木委員 民主党の柚木道義でございます。

 二月の二十六日以降、この問題で下村文部科学大臣と委員会でやりとりをさせていただいているわけですが、改めて、今回の質疑の中で我々としてこれは問題ではないかと思っているのは、大臣を応援される団体があることは結構なことです、しかし、その任意団体が、事実上政治団体と言われても仕方のないような、そういった形で後援会等で会費を集めて、そして、この後、あるいはこれまでの質疑の中でもさまざまな問題が明らかになっています。

 例えば、任意団体に年会費として納めたはずの会費が、その会員の了解を得ないままに勝手に政党の支部に寄附として計上されて、しかも、寄附控除の扱いを受けられる形で領収書が発行されている。ただし書きにもわざわざ「年会費として」と書かれている。

 こういったことなどで、塾の皆さんがお出しになられる献金、浄財というのは、それはもうもとをたどっていけば、本当に子供たちを思う親御さんたちの身銭を切っての授業料なども原資になっているわけでして、私たちの問題意識は、脱法的なと言っても仕方がないような、こういう仕組みの中で、会費、収支が一切計上されないままにいろいろな形でお金が集まる。そして、場合によってはそれが政党支部に政治献金される。こういう仕組みを本当に許していいのかどうなのかという問題意識の中で、きょう新たに示された資料を私は初めて見ましたが、本当に驚きました。

 私が二月の二十六日から一貫をして大臣に、お調べをいただいて当委員会に御提出をお願いしたいと申し上げてきた、要望がなかったのに、会員さんから、年会費として納めている、勝手にただし書きに年会費と記載して、政党支部の寄附扱いの領収書を発行していた、このことが、では実際には、件数、日付、金額、どれぐらいあるのか、こういうふうに私が尋ねていたら、きょう、先ほどの理事会にお示しをいただいた資料を見て、私は本当に驚きました。

 要望がないのに勝手にただし書きに年会費と記載した領収書の件数、日付、金額は、平成二十六年八十一件。これは五百九十九万八千円、約六百万円にも上るということですが、これは大臣、お間違いないですか。

下村国務大臣 今の柚木委員の前提条件そのものが誤解に基づいた発言をされていると思いますが、それは一つ一つ説明していきたいと思いますが……(発言する者あり)いや、今のことについて端的に申し上げたいと思いますが、地方の支援者に対する選挙区支部からの領収書送付の件についてということで、きょう理事会にお出しいたしました。

 これは、先方の要望でただし書きを年会費として記載した領収書の日付と金額、平成二十六年二月四日付で二十四万円です。それから、要望はなかったが、ただし書きに年会費と記載した領収書の件数、日付、金額、これは平成二十六年、八十一件ありました。平成二十六年の一月二十七日付から九月十日付で、合計が五百九十九万八千円であります。そして、平成二十五年以前は見当たらない。古い任意団体はもう二十年近くしていただいていますけれども、それ以前は見当たりません。それから、二十七年度はなしということであります。

 なぜ二十六年度だけ八十一件もただし書きに年会費と書いたのかという理由でありますが、前の年に入った事務所の新しい経理担当者が、先方からの要望を受け、ただし書きに年会費と記載した領収書を発行した。これは、先ほど申し上げましたように平成二十六年の二月の四日付であります。担当者は、その後も同様に、ただし書きに年会費と記載した様式で領収書を発行し続けておりました。それが先ほどの件数。このため、平成二十六年の地方の博友会関係者からの全ての寄附の領収書に、ただし書きに年会費と記載しており、その件数が八十一件というふうに事務方から聞いております。その後、このような記載は不適切であるというふうに気づきまして、年会費との記載はやめております。

 したがって、ただし書きに年会費と記載した領収書はこの八十一件のみでございまして、それ以外は見当たらないと事務方から報告を受けております。

柚木委員 資料の最後のページをごらんいただけますか。ちょっと順番を変えます。

 これは、私もきょう、もともと質問を予定しておりまして、まさに今、大臣が御答弁をされたものも含まれる。二〇一四年、昨年の四月一日付で、まさにただし書きに「年会費として」と。この領収書が突然送られてきてびっくりされている方は、会費として納めたのに、なぜか政党支部から、寄附、しかも年会費とわざわざ書いてあって、送られてきて意味がわからないと。その方は、そういうものなのかなと思っていたぐらいのことをおっしゃっていましたが、これはとんでもないことなんですね。

 よくごらんいただくと、これは確かに、二〇一四のと、恐らくナンバリングされているんでしょうが、今の御答弁だと、八十一件そういう形でナンバリングもされているのかもしれませんが、私が今の大臣の御答弁で耳を疑ったのは、大臣は、前回三月三日のこの予算委員会での私の答弁に、要望のない方からも、ただし書きの中で年会費と書いて送った事例があるということを指摘されましたので、それは今調査をしておりますが、本来、そういうことは望ましいことではありませんからと。それはそうですよね。そもそも政治資金規正法の疑義が生ずる、こういうことで望ましくないんです、確かに。そして、この後ですよ。これは、今回のことが私から質問されるより前から、昨年から、つまり二十六年から、そういうただし書きは一切しないようにしておりますと答弁されているじゃないですか。

 どういうことなんですか、説明してください。

下村国務大臣 これは、先ほどちゃんと申し上げましたが、この平成二十六年の八十一件というのは、二十六年の一月二十七日から九月の十日付であります。つまり、九月の十日にそういうことがわかったということですね。それ以降については、ただし書きに年会費を記載するような事例はしないということであります。

 それから、今、領収書の事例が出ましたが、それは、委員がきょう資料として用意をされている鈴木文代さんの領収書だというふうに思います。

 委員が、きのう記者会見を鈴木さんがされたということで、その抄録をきょう資料の中に出されていますね。その委員が提出された抄録の中には実は入っていないんですが、私も、きのうの……(柚木委員「それはそうですよ、二十六年はまだ出ていないもの」と呼ぶ)いや、そのことではありません。きのうの記者会見の全録を入手しております。これは、鈴木文代さんと一緒に弁護士の方がいらっしゃって、一緒に記者会見をされたんですね。鈴木文代さんと一緒に同席された弁護士さんが、こんなふうに言っているんですよ。

 鈴木さん、もう一回聞くけどさ、何らかの会を設立して会費を納めるというと、会の維持管理、運用、行事のための費用、こういうのに充てるのが普通だと思うんだ、それが全部下村事務所に行っちゃって、年会費が幾ら集まってどういうふうに使ったか収支報告がないままね、ずっと推移して、来てもらうときには講演料を払わなかったんだと。

 鈴木さんが、払ってないですと。

 次に、弁護士が、参加者は食事代だけは払うといっても、何かお話が聞けるだけだわね、そんな会なんてもともとなかったんだよと言われるかもしれない、これはもともと下村氏に対する何らかの寄附なり政治献金だったんだよと。鈴木さんが言っていること、おかしいんじゃないのと言われるかもしれない、どうですかというふうに、同席している弁護士が言われているんですね。

 これは、鈴木さんは、いや、会費だと言われるのかもしれませんが、明らかにうちの事務所は、年の、政党支部として寄附のお願いで出しているんですよ、寄附のお願いで。寄附のお願いで出している中で、今御指摘のように、たまたまこの二十六年度は会費と書いたという領収書を鈴木さんに送ったということは事実でありますが、しかし、基本的にこれは政党支部からの寄附としてお願いしているわけですし、同席された弁護士さんがそういうふうに認識されるというのは、至極もっとも当たり前のことだというふうに思います。

柚木委員 まず、私が聞いたことに対する御答弁、本当にその答弁でよろしいんですか。

 大臣は明確に、昨年度じゃないですよ、昨年からそういうただし書きは一切ないようにしておりますと明言されているんですよ。二十六年一月二十七日付から九月十日までとか、一切、区切って御答弁されていませんよ。

 大臣は、私には、まさになかったと言っていたあの暴力団系の企業に十万円の献金、受け取っていない、よく調べてから質問しろと逆切れして言っておきながら、自分の答弁は、言っていることを言っていないような、そういう答弁をされているじゃないですか。

 私は、やはり誠実にお答えいただきたいんですよ。鈴木さんも寄附のお願いなんか受け取っていないんですよ。大臣は、言ってみれば御自分のお立場から、私からしてみれば、会員の方々を本当にないがしろにするような解釈ですよ、それは。

 鈴木さんだけじゃありませんよ。複数の会員の方に私、もちろん当たっていますよ。会員の方が本当に会費として納めたと思っているお金が、結果的には政党支部への寄附として領収書が送られてきている。それを大臣がどう認識されようが、会員の方々はそう思っている方は複数いらっしゃるんですよ。そういうことを、御自分の都合のいいような解釈で、それは寄附としての扱いなんだと。

 今の会見も、私この後ちょっと質問いたしますが、御自分の都合のいいところをそういうふうに解釈されるということではなくて、本当に全体を見る中で私はこの後やりとりをさせていただきたいと思いますが、私、ここの点については本当に抗議しますよ。前回の質問ですよ、これ。そういうことは望ましいことではありません、だから、今回のことが質問される以前から、昨年からそういうただし書きは一切しないようにしておりますと明言されているんですよ。

 今の御説明でも、一月から九月の間も含めて五百九十九万八千、約六百万、しかも全てのものという御答弁だったと思いますが、これは驚きですよ。個人献金、私の拝見した二十五年度、直近の個人献金の総額はたしか七百八万ぐらいだったと思いますよ、百二件ぐらいだったと思いますね。年間百件程度なのかなと思いますよ、こういうのを見ると。

 全てのものが要望がなかったのに、ただし書きに年会費と記載した領収書として発行されていること自体だって問題なのに、そんなことはやっていないという答弁をしたら、二重に問題じゃないですか。ちゃんと説明してくださいよ。

下村国務大臣 先ほどからちゃんと答弁しています。昨年から気がついて、ただし書きで年会費と書くのはやめたというふうに申し上げているとおりであります。

 それから、先ほど委員が暴力団関係者から直接十万円寄附を受けた云々ということを言われましたが、そういうことはありません。

 先ほど言ったのは、そういう方々に融資をしている方から十万円寄附したということについて、これは訂正させていただいて、寄附を個人として受けましたということで、これは返還させていただきました。

柚木委員 ぜひ大臣、やはりこれは、この間、まさに今おっしゃった暴力団関係企業に六億円を融資して、そのことが……(発言する者あり)報道を引用しているんですよ。そして、脱税で起訴をされ、その調査の際には公文書を破棄する、国税調査の職員の住所を風俗店の幹部を使って調査させる、そういうような方から受けていた十万円が、これは問題だ、不適切だということで返金をされたという御答弁、これもその前回の質問では受け取っていなかったと。(発言する者あり)安倍総理、今そうやっておっしゃるんですが、総理はそのときに、ないことをあるかのごとき質問とおっしゃったんですよ、十万円の件を。ちょっと静かにお聞きいただけませんか。

 私は、今の御答弁も、昨年から気がついたときからと今おっしゃいましたが、そんなことは答弁録に入っていません。昨年からそうしたただし書きを一切しないようにしておりますということですから、それに基づいて私が今確認をさせていただいているわけですから、きょうそういう言い方をしたから前回の答弁が問題がないということには全くなりませんので。

 それで、私は、この鈴木さんの会見も各紙報道されていますが、これは本当に大事なことですから確認をさせていただきますが、まず二点、まとめて伺います。

 けさの新聞報道等を引用させていただくと、大臣に講演料、約十年前に十万円、そして、一〇年と一二年の二回、下村大臣を市内のレストランに招いて講演会を開いた際に、お車代として数万円を直接渡した、これは鈴木さんの会見の報道でございますが、講演料を十万円受け取ったのかどうなのか。これはきのうもやりとりがありましたね。そして、車代、二回にわたって、これはかなりディテールまでコメントされていますが、車代、二回にわたって受け取っているのかどうなのか。以上二点、ファクトについてお答えください。

下村国務大臣 両方受け取っておりません。

柚木委員 明言されて大丈夫ですか。

下村国務大臣 受け取っておりません。

柚木委員 やはり、二人がそれぞれ述べられていることが、テレビをごらんになっている方から見ても、食い違っていると思うんですね。やはり、それぞれの方からお話を聞かないと、私たちも含めて、これは明らかにならないと思います。

 そして、こういったやりとりを、ほかにも、この後も、資料の中にもおつけしておりますので、これはやりとりをやらざるを得ませんが、やはり、当事者の方からしっかりと私たちもお話を聞かせていただき、大臣の言い分もお聞かせをいただき、そして、そういうやりとりを窓口として担っておられる榮秘書官についても御答弁もいただいて、ここの場で、こういうことが本当に、真実は何なのか。今、講演料ももらっていない、車代ももらっていないとおっしゃいますけれども、鈴木さんが、仮に本当でないことを言って何のメリットがあるんですか。

 私は、鈴木さんとお会いして、皆さん御存じの方はおられるかもしれませんが、本当に不登校の方を一生懸命そうやって応援をして、頑張って進学をして、私、卒業式の日に伺いましたからね、本当に熱心な教育者の方ですよ、純粋な。私がお会いした中ではですよ。大臣がどう思っていらっしゃるか。この後、もう少し確認をさせていただきますが、そういう方で、しかも、大臣のことを熱心に応援されていて、大臣、この会見録をごらんになったら多分お感じになられたと思いますが、本当に大臣のことを信用して、尊敬をして、応援していたのに、大臣がこの国会の中でうその答弁をされているから、これはその方の言葉ですよ、うその答弁をされているから、真実を語ってほしい、この一点で、実名を公表して、こういうことになっているわけですよ。

 大臣、そういう方ですから、今本当に即答で否定されましたけれども、この後、私、その他の方からもお話を伺っていますから、これは確認をさせていただきますけれども、メールの中に、口どめをしているんじゃないかとか、あるいは、そういう連絡をとり合っていることによって、まさに事務所として、まさに政治団体ということであれば、継続的、組織的な関与をしているんじゃないか、こういうことも問題になっているわけですね。

 私は、では、ちょっと資料にもおつけしておりますので、それぞれ皆さんごらんをいただきたいと思いますが、この会見録以降の資料です。この間の議論の中で問題になっているそれぞれの報道をつけておりますが。

 支援団体の、任意のですね、会費、一部が献金に。これは下村文部科学大臣についての産経新聞の報道で、九州博友会の会員の方が、高額だが自腹で払っている、年会費として払っているつもりだったということで、そういう報道がなされておりまして、しかし、その関係者名で同支部に対して、つまり政党支部に対して六万円の個人献金が記載されていた。

 続いて河北新報についても、これは東北博友会の記事。これはこの間もこの委員会の中でも質疑がなされている、講演会で車代や宿泊費の負担、東北博友会。この中で、松良会長は、会費の使途を敬遠して退会する人もいたと。そして、前任者の方から、その会費は政治献金として使うという申し送りがあったということを述べておられます。

 さらには、これも産経新聞でございますが、これは近畿博友会の報道。この近畿博友会の会長さんというのは全国団体の会長さんというか世話人をされている方ですね。この方が、任意団体を届け出ると政治資金規正法上の規制がかかる、収支を明らかにする必要が生ずると無届けの理由を説明。その近畿博友会では、二万円で百人の会が行われている。そして、私が問題だと思うのは、まさに年会費の十二万を政党支部に寄附として納めている。つまりは、会費が政党支部への献金として処理されていることも認めた。

 こういう報道がるるなされておりますが、私が本当に問題だと思うのは、こういうことを、大臣の事務所、これをまずお認めになられるかどうかというのが一つあります。

 実際に私も地方博友会の幹部の方と昨日初めてお会いをして、話をした方からも聞きましたが、その秘書の方からやはりやりとりがあって、そして何か全国の博友会があるときには協力をする、さらには何かあるときには連絡をとり合う。もちろん、そういうことがあるときには必ず連絡が来るわけですから、まさに継続的にやっている。そして、中部の件もそうですし、この近畿の件も九州の件も、皆さん集まってくるわけですが、やはりそういうやりとりをしながら、これは全国六支部あるわけですから、まさに組織的、そして継続的な活動がなされている。

 私がもう一つ耳を疑ったのは、まさか口どめとかされていませんよねというふうに昨日もお尋ねしたら、いや、口どめされていますよと。どなたからですかと言ったら、榮秘書官ですとおっしゃっていましたよ。

 メールの内容、大臣は御自分が指示されていないというコメントを出されていますが、秘書官が窓口となって、全国の博友会の支部の会員さんとやりとりもされ、そしてまた口どめまでしている。

 こういうことをおっしゃっている地方の会員の方々のお言葉というのは、これはうそなんですか、大臣。

下村国務大臣 まず、鈴木さんの件ですけれども、私のことを熱心に応援していただいている方だというふうに思います。教育に対しても一生懸命されている方だと思います。

 ただ、その記者会見の内容は、柚木委員は全くおっしゃっていませんが、鈴木さん御自身が、覚えがない、非常に記憶があやふやの中で発言されているという部分が多々あるんですね。

 その中で、先ほど会費がそのまま政党支部に行ったかのような話もありましたが、これは、鈴木さん自身が、十一選挙区支部に寄附しているというのは認識しているはずだと思います。それは、そういうふうに案内が行っているわけですから。それが前提で寄附をしていただいているということでありまして、これは政党支部に対する寄附だということだと思うんですね。

 それから、今、新聞ニュース、そのままコピーで資料を出されていますが、これが全部事実だと思われるのは、それは間違いだということを、私の方から指摘を申し上げたいのは、例えば、近畿博友会のこの記事でありますけれども、これに対して、この記事を受けた、ここに書いてある方が、抗議文をすぐ出しているんですね。

 これは、取材にお答えしたときは、近畿博友会は政治団体ではなく任意団体であることを重ねて説明してきたことは、記者もよく御存じのとおりだと思います。それにもかかわらず、あたかも近畿博友会が、政治団体にもかかわらず政治資金法を免れるために届け出をしなかったような、政治団体であるかのように誤った前提で記事を書いています。近畿博友会は任意の団体であることを前提に御説明をしてきた次第であり、今後、誤解を持たれるような記事を書かれないよう、厳重に注意申し上げますということでありまして、これは、うちの事務所として、明らかに寄附は寄附ということでやっています。

 それから、支部というふうに言われましたが、これは支部ではありません。それぞれの六地方で博友会という会を任意につくっていただいていまして、それに対して何ら、何か疑惑がありそうな献金をうちの事務所が受けているとかいうことは全くありません。

柚木委員 終わりますが、今度、十日の分科会でまたこの続きをやらせてもらわなきゃいけないと思いますね。会費を献金にしたということを証言されている地方の方とも私はやりとりしておりますので、これは真実を明らかにすべく、引き続き質疑をさせていただきます。

 ありがとうございました。

大島委員長 この際、逢坂誠二君から関連質疑の申し出があります。渡辺君の持ち時間の範囲内でこれを許します。逢坂誠二君。

逢坂委員 逢坂誠二でございます。

 総理、きょうはよろしくお願いいたします。

 まず最初に、総理にお伺いします。

 総理も私も権力者というふうに位置づけられると思うんですけれども、総理は具体的にどういうことをもってして権力者というふうに位置づけられているのか、そのことについてお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 何をもって権力者というかということでございますが、私は、内閣総理大臣として、憲法第七十二条に規定する職務に任じられております。憲法第七十二条に規定する職務とは何かといえば、いわば、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する立場であるということであります。いわば、行政各部を指揮監督する権限を持っている。

 何をもって、いわば権力者というのは、これはある種形容詞的な、名詞でもございますが、表現でありますから、権力者であるかないかということは申し上げませんが、私はそういう権能を有しているということではないかと思います。

 また、議員は、立法府の一員として立法をする権限を持っている、またそれは国民から負託されているということではないかと思います。

逢坂委員 総理、ありがとうございます。

 私たちは、法律というものを通して、国民の自由を制限する力を与えられているんですね。私どもは、私は立法府におりますから、法律をつくるということにおいて、法律を作用させることによって国民の自由を制限するわけであります。総理の場合は、立法府にもおりますし、行政府にもおります。行政府において、実際に法律をワークさせることによって国民の自由を制限させる。

 そういう意味で、我々は権力者というふうに位置づけられるのだと思っております。これは憲法の教科書にもよく書いてあることであります。

 そこで、この権力者たる我々が、自由に、気まま勝手に法律を制定して国民の自由を制限するということをやってしまったのでは、これは国民の皆さんは不安で生活もできないわけですね。勝手にいろいろな法律をつくられちゃう、勝手にいろいろなことをされちゃうということであれば、夜も落ちついて眠れないわけであります。

 そこで、この権力者の法律をつくる行動を制限しているのが憲法という枠組みになっているわけです。憲法で、権力者が法律をつくる範囲、あるいは国民の皆様に権利を与えなきゃならないというものについて明確にしているわけであります。だからこそ、私たちは、国民ではなくて私たち自身が、憲法を擁護したり尊重したりする義務が課せられているわけであります。

 そこで、お手元に資料を用意させていただきましたけれども、憲法九十九条、抜粋を書かせていただきました。「国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」ということであります。これは、我々が権力者であって、この憲法を超える以上の法律なんかつくっちゃいけませんよ、ちゃんと憲法の範囲を守ってくださいよということなわけであります。

 私たちは、この憲法を尊重し擁護する義務を負っているわけですが、私、最近の総理の発言を聞いておりまして、本当に総理がこの憲法を擁護し尊重する義務を果たしているのか、疑問に思えてならないんです。

 例えば、平成二十五年四月二十七日の産経新聞のインタビューですけれども、総理がこう発言されております。昭和二十一年に連合国軍司令部の憲法も国際法も全く素人の人たちが、たった八日間でつくり上げた代物だ、これは今の日本国憲法について言及している総理の言葉であります。

 それから、衆議院の予算委員会、平成十九年二月十四日に、私は憲法改正について政治スケジュールに乗せていきたい、歴代総理の中でそれを申し上げているのは私が初めてであろうと思います、そうでなければ、これは全く前進しないということになってしまう、こういう発言をされているわけですが、総理自身が憲法改正について非常に前向きな発言をして、歴代の総理の中で初めてこういうことを言っているんだということを言っているんですが、これは現行憲法を尊重し擁護するという姿勢なんでしょうか。

 具体的に、総理はどういうことをもってして現行憲法を尊重し擁護するというこの義務を果たしているんでしょうか、答弁をお願いします。

安倍内閣総理大臣 そもそも、行政府の長として憲法を擁護し尊重する、これは当然のことであります。我々は、憲法に反しているか反していないかの中において立法をするわけであります。

 そもそも、我々が勝手気ままに法律をつくるということはあり得ないわけでありまして、我々は、まさに選挙を通じて公約をしております。そして、この公約を掲げて選挙を戦い、国民の皆様から負託を受けている。同時に、選挙でお約束したことを実行していくという責任も持っているわけであります。その中において、我々は、まさに必要な立法活動を、またお約束した立法活動を行っているということは申し上げておきたい、このように思います。

 そして、憲法ができたいきさつにつきましては、現行憲法は、まさに帝国議会において議決されたものでありまして、安倍内閣においては、憲法を厳に遵守しているということは言うまでもないことでありまして、当たり前のことでございます。

 御指摘の私の発言につきましては、現行憲法については、戦後の占領下において、その原案が連合国軍総司令部によって短期間に作成されたものであるとの事実を述べたものにすぎないわけでありまして、総理大臣として事実を述べてはならないということではないんだろう、このように思います。

 当然、繰り返しになりますが、私は、現行憲法下においてしっかりと憲法を遵守し、その職務を遂行しているところでございます。

逢坂委員 総理、そうおっしゃいますけれども、この言葉の中で、代物だという言葉が使われているんですね。代物だとは、これはどういう意味の言葉でしょうかね。(発言する者あり)言葉尻の問題ではなくて、これは基本姿勢の問題なんですね。

 物または人、低く評価したり、皮肉を込めて言うことが多い、とんでもない代物をつかまされた、えらい代物が舞い込んだ、これは大辞林に書いてある言葉なんですけれども、私は、こういう発言をする総理が、憲法を擁護する、尊重する、そういう姿勢を持っているとは思われないんです。

 総理、一般法と憲法の違いはどこにあるとお考えですか。

安倍内閣総理大臣 まず、自民党はそもそも、結党以来、憲法改正を党是として綱領に掲げているわけであります。私は、自由民主党の総裁として、ではなぜ憲法を改正するかということを述べているわけでありまして、同時に、今の憲法は憲法として、まさに基本法として、我々を当然厳しく律しているわけでありますから、その中で行政を行っていく、尊重義務があるのは当然のことだろう、こう思うわけであります。

 一般法と憲法との違い、これはまさに、憲法というのは、いわば一般法というのは憲法に反しているか反していないかという中においてつくられるものでありまして、その意味において、いわば基本的な原則であり、基本法と言ってもいいんだろう、このように思います。

逢坂委員 憲法と一般法の違いについて、例えば、ここに易しく書いてある、池上彰さんという方の「憲法はむずかしくない」という本があるんですが、ここにこう書いてあるんですね。「憲法は、国民が権力者に勝手なことをさせないように、その力をしばるもの。 法律は、世の中の秩序を維持するために、国民が守らなければならないもの。」というふうに書いてある。多分この定義で、こういう書き方でいいんだろうと思います。

 もう一冊、これは有名な憲法の教科書、芦部憲法でありますけれども、この中にも似たようなことが書いてありまして、「近代立憲主義憲法は、個人の権利・自由を確保するために国家権力を制限することを目的とする」、これが憲法の役割なんですね。

 そういう意味でいいますと、総理、我々がやはり憲法をしっかり守るという基本姿勢を貫くことが大事なんだと思うんです。総理みずからが憲法をおとしめかねないような発言をするというのは私は厳に慎むべきだと思うんですが、先ほど私が紹介した、憲法は何々の代物だみたいな発言とか、これは少し修正するとかお取り消しになるような気持ちはございませんか。

安倍内閣総理大臣 一般に、憲法とは、主権者たる国民の意思に基づいて、国家権力の行使のあり方について定め、これにより国民の基本的人権を保障することにその基本的な役割がある根本規範であります。一方、先ほど申し上げましたように、従来から私が申し上げておりますように、一方で憲法は国の形や未来を語るものでもある。

 これに対して、法律とは、憲法のもとで、憲法の定める立法機関が定める法規であるということを先ほど申し上げたところでございます。

 繰り返しになりますが、当然のこととして、我々は、いわば行政府は、また私は総理大臣として、憲法を遵守する、擁護する義務があるのは当然のことでありまして、それがなければそもそも行政として成り立たないわけでございます。

 他方、自由民主党として憲法を変えていく。ことし、自由民主党は立党六十年を迎えるわけでありますが、その中において、では、なぜ憲法を変えるかという議論を行ってきているわけでございます。

 そこで、やはり幾つかある。理由がなければ憲法を変える必要はないわけでございまして、そもそも、占領下において、短い期間において、占領軍の司令部において二十五名の方々によってつくられたのは間違いのない事実でございます。さらに言えば、憲法ができて長い年月がたって、時代に合わなくなった条文もあるだろうという中において、憲法を変えていくべきだということであります。

 つまり、その中で、この条文は変えていく必要がある、こういう過程でできたから変えていくということについて議論するのは、これは当然のことではないかと私は思うわけでありまして、そうでなければそもそも変える必要はないのではないか、こう思います。

 一方、それと憲法に従わないというのとは全く別の話であって、憲法を遵守する、これは当然のことではないか、このように思います。

逢坂委員 総理、総理がそうおっしゃりたい気持ちは、私は、総理のこれまでの発言を見ているとそうは思うんですけれども、ぜひ冷静に考えていただきたいんです。

 一般の法律は、これは多少手荒に扱っても、実は結構強いんですよ。その理由は何か。憲法という後ろ盾、バックボーンがあるから、多少手荒なことをしても、必ず憲法の枠内におさまるという安心感を持っているのが一般の法律なんです。

 ところが、憲法の場合は、これは最高規範であって、一般の法律のように後ろ盾がないんです。だから、憲法というのは、おかしなことをやり始めると壊れるのも早いんですよ。これは非常に大事なポイントでありまして、だからこそ、憲法を擁護したり尊重したりする義務を持っている我々自身が、常にこの憲法をしっかり守るんだという思いを持って守らないと大変なことになるんですよ。

 それで、もしこの憲法の扱いがおかしいということになれば、最後、そのことに審判を下すのは、実は国民の一票なんです。

 ただし、この際に注意しなければならないことがあるんです。巨大与党が存在しているときに、この国民の一票が機能しないという場面が時々ありまして、巨大与党であればあるほど、憲法を擁護し遵守するということについて神経を研ぎ澄ましておかないと、憲法の動きが少し変わっていく可能性がある。

 午前の質疑の中でも、私どもの同僚の小川議員から、憲法九条に対する、本当にこの存在が大丈夫なのかというような趣旨の質問がございましたけれども、そのことをぜひ総理にはわかっていただきたい。

 一般の法律と憲法は、実は、その強さにおいて違うんだ。それを守るのは、我々がまず守る。それがだめなときは国民の一票だ。だがしかし、国民の一票が機能しないようなことも場合によってはある。だからこそ、権力者である我々が憲法をしっかり守る。

 憲法を改正する議論とは、これはまた違います。まず、現行憲法をしっかり守る、その義務、擁護する、それがあるんだということを総理にしっかり認識をしていただきたいんです。ほかの議論に話が行く前に、そこをまずしっかり認識をしていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 私は、逢坂さんとは意見が違います。

 私は、一般法であったとしても、手荒に扱っていいとは思いません。しっかりと遵守していくのは当たり前のことじゃないですか。一般法であったとしても、憲法であったとしても、行政府の一員として、しっかりと厳密に守っていく、これは当然のことであります。当然のことなんですよ。

 そして、どちらが弱いということではない。

 憲法においては、まさに、いわば根本的な規範であります。基本法であります。だからこそ、国会においては、いわば三分の二の発議で、さらには国民投票、まさに、最後は国民が決めるんです、憲法を変えるか変えないか。これがまさに憲法であろうと思います。法律については、これはまさに、我々が国会に選ばれてきて、そしてそこで過半数を得れば法律となっていくということであります。

 ですから、どちらが強くて、どちらが弱いという議論には私はくみするつもりもありませんし、どちらか一方を手荒に扱っていいなんということは、全くこれっぽっちも考えていないということは申し上げておきたいと思います。

逢坂委員 私は、何も法律を手荒に扱うということを認めるとか認めないという話をしているわけではなくて……(発言する者あり)まあいいでしょう。それでは、次の問題に行きましょう。

 ただ、残念なのは、総理の憲法に対する認識というのは非常に危ういということが改めてよくわかりました。

 次の問題に行きたいと思います。

 昨年の四月一日に、以前の武器輸出三原則が廃止されて、新しいルールができました。昨年の四月以降、日本の国は、ある一定の条件のもとで、政府が承認しさえすれば、海外に対して武器などを輸出できるというふうになったわけです。

 私、地元を歩いておりまして、このことを知っている人たちというのは余りいないなというふうに思いましたし、今、実態がどうなっているのかよくわからないという方も相当多いんじゃないかと思います。

 そこで、一覧にまとめて、今、表にしてお配りしておりますが、現在政府が認めたものは二件、それから、報道ベースではありますけれども、政府がこれから検討しようとしているものは表に記載のとおりなんです。

 総理、まずこのことについて、昨年の四月一日の新しい防衛装備品の移転に関する原則、これを閣議決定するに当たって、国民の皆さんの声はしっかり聞いたんでしょうか。それと、今、国民の皆さんは、このことについて賛同している、賛成している、理解している、そう思われますか。どうですか、この点。

中谷国務大臣 昨年四月にこれを閣議決定しておりますので、そのときには国民の皆様方に周知はいたしております。

 そこで、その内容、三原則ございますが、仕向け先及び最終需要者の適切性、当該防衛装備の海外移転が我が国の安全保障に及ぼす懸念の程度を複合的に考慮して、この移転の可否を厳格に審査するとともに、移転された防衛装備の目的外使用や第三国移転について、適正な管理を確保するとしております。

 この表にございますPAC2のシーカージャイロ、これの米国への移転については、仕向け先の管理体制の確認をもって厳正な管理を確保するとしておりまして、最終需要者である米国企業から最終用途誓約書、エンドユース認証の提出を求め、ジャイロの管理体制を確認することとしております。加えて、ジャイロが組み込まれたペトリオットPAC2を一元的に管理する米国国防省からPAC2ユーザー以外の移転が厳しく制限されていることなど、その管理体制についても確認をすることといたしております。

安倍内閣総理大臣 安倍政権としては、まず、我が国として初めて策定した国家安全保障戦略を踏まえまして、昨年の四月、従来の武器輸出三原則等を見直し、そして、防衛装備移転三原則を閣議決定し、これを公表しております。

 国会においては、政権発足以降、防衛装備移転に関し、延べ四十名の議員から御質問があり、私を初め関係閣僚から御説明をしているとおりであります。

 また、見直しに先立ちまして、私、先ほど申し上げましたね、我々は、選挙を通じ、私たちがこれからやっていこうということについて御説明をし、そして、それに対して信を得ている。そして、私たちは、約束したことは実行していくために力を入れていく。

 この見直しに先立ちまして、我々は、平成二十四年の衆議院選挙及び平成二十五年の参議院選挙のいずれにおいても、自民党の総合政策集J―ファイルの中で、我が国及び国際社会の平和と安全の確保の目的に資するため、個別に輸出の許可を決定する仕組みを構築する旨明記しているわけであります。我々は、選挙でお約束していなかったことを突然やったということではないということを申し上げておきたいと思います。

 また、政府としては、新たな原則の考え方をわかりやすく説明し、国民的理解が進むよう、引き続き努力をしていきたいと思います。

 ちなみに、なお、民主党政権時代にも、平成二十三年十二月に、平和貢献、国際協力、国際共同開発、生産に関する案件につき、武器輸出三原則等の包括的な例外化措置を講じておられるというふうに承知をしております。これを選挙で公約されていたかどうかは承知をしておりませんが、そういう措置をとっておられたというふうに承知をしております。

逢坂委員 中谷大臣も、聞いていないこともいっぱい答えてくれたんですけれども、聞いていることだけにお答えいただきたいと思うんです。

 総理、素朴な疑問として国民の皆さんが思っているのは、こうやって武器を日本がどんどん輸出する、このことによって日本国民は本当に平和でいられるんですか、こういう素朴な疑問があるんですが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 まず、何か無制限にどんどん輸出をしていくのではないかとの意味で今御批判をされたんだろうと……(逢坂委員「違います。日本国民が平和でいられるのか、より平穏になるのか」と呼ぶ)

 これは、我々は、まさに、三原則をよく読んでいただければいいわけでございますが、この新たな原則は、あくまでも、国連憲章を遵守するとの平和国家の基本理念と、これまでの平和国家としての歩みを引き続き堅持した上で、これまで積み重ねてきた例外化、今までも例外化をずっと累次積み重ねてきたわけでございますが、その実例を踏まえて、これをむしろ包括的にしっかりと整理をし、防衛装備の移転に係る具体的基準や手続、歯どめを、ある意味、今まで以上にわかりやすく明確化をしている、このように思います。内外に透明性を持ってまさに明らかにしたものであります。内外にというのは、日本国内のみならず世界に対しても、私たちの武器輸出のこの新しい原則はどうですかということがより明らかになって、それをしっかりと海外に示していると思います。

 新たな原則のもとでも、積極的に武器輸出する方針に転換したというものではもちろんありません。政府としては、これまで同様、厳正かつ慎重に対処していく方針であります。

 したがって、日本のリスクが高まったり軍需産業の台頭により日本の政治や平和主義がゆがめられるといった、そういうことを批判する人たちがおられますが、これは全く当たらないんだろう、このように思うわけであります。

 また、これは、我が国の平和を守る上において資すると考える場合にも適用されるということにもなるわけでございますが、そういう意味においては、しっかりと我が国の平和と安全を守っていくものに資することになっていくのではないか、このように考えております。

逢坂委員 今の説明で国民が、いやあ、そうか、武器の輸出のルールが変わったので、これから、より我々が平和になるんだねというふうには私には全く理解できるとは思えないんです。

 もう一つです。今回こういうことになりまして、武器を輸出する、武器などをつくっている産業、これがウエートが高まるわけですね、輸出をするわけですから、分野が広がっていく。そうなったときに、日本の政治や平和主義がゆがめられるという懸念はないですか。

 例えば、よく軍産複合体なんという言い方をして、政治の判断が武器を輸出するというその分野の産業の力によってゆがめられているなんということが海外においては聞かれることもあるんですけれども、そういう懸念はございませんか。

安倍内閣総理大臣 これは先ほども答弁させていただきましたように、国連憲章を遵守する、平和国家の基本理念と平和国家としての歩みを引き続き堅持していく、これがまさに原則であると言ってもいいわけであります。

 その上において、さらに包括的に整理をしたものでありまして、規則をちゃんとしている。今までも、これは民主党政権時代もそうですが、例外化措置をとっていた。ですから、例外化、例外化ということは、これはやはりかえって内外に透明性を失わさせるものであります。そうではなくて、しっかりと、どういう基準で、規則でそれを行っていくのかということを我々は明確化したわけでございますし、そして、まさにどんどん輸出をしていくということになれば、これは防衛産業が肥大化をしていくということになりますが、そうではありません。もちろん、我が国の自衛隊に対する供給はしっかりと行っていくという体制を整えていくのは当然のことであります。

 他方、例えば、F35について、この一部を我が国において生産することによって、F35をより安定的に廉価で我々は購入することができるわけであります。そうなれば、当然、できたF35がある程度のところに出されていくわけでありますが、これは、今までの規則でいこうとすると、これはかなりの例外になってくるわけでありますが、今回はちゃんと基準をつくっているわけでございます。

 つまり、そういう意味におきましては、我が国がそもそも購入するF35にとってはそれが必要であるということもあるわけでございまして、そうしたことも含めて我々は慎重に判断をしていく、日本やアジア太平洋地域の平和と安定に資するということも当然考えていくというのは当たり前のことなんだろうと思うわけでありますが、この新たな原則のもとにおいても、積極的に武器輸出をしていくという方針を持ったわけでは全くないということは申し上げておきたい、このように思いますし、この新たな原則にのっとっても慎重に判断をしていきたい、こう考えているところでございます。

逢坂委員 総理の答弁を聞いていて、やはり私は国民が納得できるとは全く思えないです。この点は、またいずれ時間をとってやりたいと思います。

 それで、話題をかえたいと思いますが、総理、原発のことですけれども、総理は、原子力規制委員会の規制基準をクリアした原発については安全であるというふうに判断をして、それを稼働させるという発言をこれまでもしていたと思うんですが、この方針に変わりはございませんか。

安倍内閣総理大臣 より詳細な説明が必要であれば大臣から答弁させていただきますが、私は総理大臣として全体的な考え方だけを述べさせていただきたいと思います。

 原発の再稼働については、原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認めた原発について、その科学的、技術的な判断を尊重し、再稼働を進めるとの政府の方針でありまして、これには変わりがないということは申し上げておきたいと思います。

逢坂委員 それで、原子力規制委員会の田中委員長にお越しをいただいておるんですが、規制委員会では原発を稼働するかしないかの判断はしない、これがまず一つ。それからもう一つが、規制基準に適合しても一〇〇%安全と言えるものではない、こういうことを規制委員会委員長はお話しされているかと思うんですが、規制委員会の委員長、これでよろしいでしょうか。

田中政府特別補佐人 原子力規制委員会は、これまでも再三申し上げてきたように、再稼働について、その是非についてコメントする立場にはありません。

 いわゆる新しい規制基準への適合性が確認された発電所については、法律に基づいて、運転に当たり求めてきたレベルの安全性が確保されているということを確認したという意味であります。

 しかし、新規制基準に適合したからといって、それが絶対に安全である、リスクはゼロであるということを意味するものでもありません。これは、福島第一原子力発電所の反省として、いわゆる絶対安全であるということで安全神話に陥っていたということはいろいろな事故調査でも指摘されております。国際的に見ても、常に継続的に安全のレベルを上げるための努力をする必要があるということが当然のこととして言われております。

 我が国も、そういった点で、そのことを私ども規制の立場から求めていきたいと思いますし、事業者には、そういった意味で安全のレベルを上げるための努力を引き続き行っていただくように、規制の立場で求めていきたいというふうに思っております。

逢坂委員 今の田中委員長の発言は、私は科学者として当然の発言だと思うんですね。どんなに技術を尽くしてみても一〇〇%安全とは言えないんだということ、これは科学あるいは技術の限界だと思います。

 日本の政治で今問題なのは、専門家とかあるいは科学技術で何らかのことをある一定のレベル証明すると、それが全部正しいものであるかのように思い込んでしまう風潮があるんですが、科学技術万能主義では必ずしもないんですね。どんなに科学技術を尽くしてみても解決のつかない問題がある。だがしかし、それを実社会で運用する、使うというようなときに、その科学技術の限界と実社会で使うというところのある種のリスクが存在する。ここをどうやって整合性をとるかというのは、まさにこれは政治の役割なんです。

 ところが、総理の発言を聞いておりますと、原子力規制委員会が一〇〇%安全とは言えないと言っている、だがしかし、総理は、それを安全とみなして稼働させると言っている。この間を埋める努力を政治がしなきゃいけないんですけれども、総理、この点、どう思いますか。

安倍内閣総理大臣 それはまさに、私は委員のおっしゃるとおりだと思っております。

 原子力規制委員会は、法律に基づき、再稼働に求められる安全性について、独立した立場から科学的、技術的に厳正に審査を行います。

 しかし、確かに委員がおっしゃったように、自動車であれあるいは飛行機であれ、一〇〇%の安全やゼロリスクということはないわけでございますので、田中委員長の発言は、このような安全神話に陥ることなく、科学的、技術的に厳正に審査を行うという認識を示すものだと私は理解をしているわけでございますが、いわばその中で、その基準に適したということになれば、我々は再稼働を進めていくということでございますが、同時にそれは、いわば安全神話とは決別してさらなる安全性を不断に追求していくということが重要であろうと思います。

 しかし、先ほど申し上げましたように、科学的、技術的観点から再稼働が可能であるということになれば、我々は再稼働をしていくわけでございますが、同時に、さらなる安全性を不断に追求していく、これは当然のことだろうと思っております。

逢坂委員 さらに安全性を追求するのは当然なんですけれども、総理の今の発言からは、やはり抜け落ちているんですよ。

 科学技術的には一〇〇%安全はあり得ない、だけれども、それを安全とみなして、もし仮に稼働させるのなら、この間を埋める何らかの手だてが要るんですね。

 例えば、そこは関係自治体の同意を得た上で、みんなも納得した上で稼働させるとか、あるいは、一〇〇%安全ではないですから、万が一の事故を想定して、ある一定の被害想定のもとで具体的な避難計画がつくれるのかどうか、そういうことをしっかり考えた上で稼働させるといったような、科学技術とはまた違った側面で、ここの、一〇〇%安全ではないというところと安全だというところのギャップを埋める努力を政治がしなきゃいけないんですね。

 だから、そういう意味でいいますと、今の避難計画の考え方を少し変えて避難計画がしっかりつくれるかどうか、つくれないとするならばそれは稼働させないとか、あるいは、関係自治体、関係自治体の範囲についてはいろいろ議論はありますけれども、そこの同意が得られなければやはり稼働させないとか、そういうことをしなければ、科学技術と実際の運用面での安全の間のギャップを埋めることはできないんだと私は思うんですが、総理、いかがですか。

大島委員長 逢坂さん、これは、むしろ経産大臣からちょっと、そこに運用その他あるから。

宮沢国務大臣 まさに、地元の理解を得るということは大変大事なことだと思っております。

 法律上は合意ということは条件になっておりませんけれども、しっかりと地元の方の意見を聞きながら対応していかなければいけないと思っております。

 ただ、それぞれの自治体のどこが合意をするかというのは、それぞれの立地で少し違っていっておりますので、それぞれの立地、特に都道府県の知事さんの意見を尊重しながら進めていきたいと思っております。

安倍内閣総理大臣 今、逢坂議員が指摘された、避難計画をしっかりとつくっていく、我々もこれを大変重要視しております。

 避難計画、地域防災計画は、住民の方々の避難ルート、避難先といった地域の実情を熟知する自治体が中心となって策定するのが適切でありますが、一方、自治体だけではなく国の関係機関が大きな役割を担わなければ、実効性のある計画はできません。

 このため、避難計画、地域防災計画の策定に対しましては、安倍政権になってから国の関与を大幅に強めました。そして、国が前面に立って自治体をしっかりと支援をすることといたしました。

 具体的には、原発所在地域ごとにワーキングチームを設置し、関係省庁が関係自治体と一体となって避難計画、地域防災計画の充実強化を進めていき、その上で、国と関係自治体のワーキングチームで、避難計画、地域防災計画がIAEAの国際基準や原子力災害対策指針などに沿った具体的で合理的なものであることを詳細に確認をし、原子力防災会議で国として承認をすることとしております。

 さらに、先日の自民党原子力規制に関するプロジェクトチームの提言を踏まえまして、災害対策基本法に基づく国の防災基本計画を改定し、これらの取り組みを明確に位置づけることを検討していくことになっています。

 原子力災害への備えに終わりや完璧はないわけでありまして、避難計画あるいはまた地域防災計画の継続的な改善強化に努めていく考えであります。

逢坂委員 この点についても、またさらに議論を深めていきたいと思うんですが、石破大臣、済みません、お待たせしました。

 簡単な話を三つ。地方創生と今言っているんですけれども、地方にどうやって具体的にお金を回していくかということを考えなきゃいけないと思っているんです。そのために三つ、石破大臣にぜひ取り組んでいただきたいことがあるんです。

 まず一つは入札制度、これを見直して、安倍政権になってから、公共投資の予算、結構たくさん積まれたわけですが、やはり大手しか引き受けできないというのが結構多いんですよ。地元を回ってみると、予算はいっぱいついているのに受注しているのはやはり大手だけだ、地場の中小は仕事を受けられないんだ、逢坂さん、何とかしてくれ、こういう声がある。入札制度を見直して地場の中小も受けられるようにすると、お金は結構回りますよ。

 それからもう一つ。下請にしかなれない業種というのは結構ありまして、例えば電気の内装工事の皆さんとか管工事の皆さんは割と下請中心なんですね、たまに大きな工事は元請になれますけれども。下請の皆さんは今なかなか利益が出ないんですよ。これを下請の皆さんにも利益が出るというふうにすると、地場にお金が回っていきます。

 それから三つ目。国の出先機関はたくさんありますけれども、その出先で使う物品、例えば本だとか事務備品だとか、いろいろなものがあります。それを買うのを、予算の効率的な執行と称して、東京や地域の中心都市で一括購入するんですね。確かに、それをやればお金は安くなるんです。だけれども、それをやっちゃうと、どんどんどんどん地域のその業態が衰退していくわけですよ。これは、予算の執行上は非効率に見えるかもしれないけれども、地場で使うものは地場で買うんだというようなことをやられた方が、同じ計上された予算を使うにしても地方にお金が回ると私は思うんです。

 この三点、石破大臣、省庁縦割りじゃなく横串で仕事をされると石破大臣はおっしゃっておられますので、大臣、ぜひよろしくお願いしたいと思うんです。

石破国務大臣 それは、恐らく、この場におられる全ての方がお感じのことだと思っております。私自身もよく言われます。そのとおりです。

 ただ、地元の会社さんに仕事が出るようにしようと思っても、実績がないのでだめだと言っている限り、絶対できないですね。未来永劫できないわけですよ。実績がないというのは答えにならないことなので、何とかそれを少しでも入るような形で実績を積むような工夫ができないか。

 あるいは、これは公共工事に限ったことでございますが、品確法というものをつくることによって、ダンピング等々あってはならない。つまり、下に行けば行くほどしわ寄せが来て、仕事がないよりはましだみたいなことで、赤を覚悟でとるようなところがたくさんあることも承知はいたしております。

 それから、三点目の御指摘は、これは確かに中央で買った方が安いんです。例えば、北海道で机をつくる、椅子をつくる、それは大手の事務メーカーに頼んだ方が安いでしょう。だけれども、北海道の材で机をつくり、椅子をつくれば、お金はそこで回るわけですよね。地域の経済ということを考えれば、そこでお金が回った方が、雇用も維持されて、所得も増すはずなのでございます。

 そうすると、地方創生という観点でいきましたときに、委員も町長をお務めでしたからよく御案内のとおりで、どのような形で発注をするか、何が地方創生に資するものか、これは担当大臣は主に国土交通大臣でございますが、よくお話をしながら地方創生に資するようにしてまいりたいと存じます。

逢坂委員 石破大臣、あともう一つお願いがあるんです。

 地方版の総合戦略ですけれども、策定する期間を少し長くしていただきたいし、それから地方の自主性を認めていただきたいんです。ここを焦ってやると、この問題だけではなくて、あらゆるものが間違ってしまいますので。地方の意見を丁寧に聞いて、長い時間をかけて、場合によっては長過ぎるんじゃないかという自治体も私はあると思う。それぐらいのことをやらないと、これはうまくいかないと思うんです。大臣、最後に一言。

大島委員長 時間が来ておりますから、短く。

石破国務大臣 一応、平成二十七年度、すなわち二十八年末日ということにいたしております。

 一年を二年にしたらいいものができるかというと、そういうものではない。やはりニセコを考えてみても、委員が三期町長を務められ、いろいろなチャレンジをして、いろいろな提案もいただいております。多分、ニセコはいいものができてくるだろうと思っております。

 先般、青森に行きましたが、ほとんどの自治体が、できる、あるいは国、民間の支えがあればできるというふうにおっしゃっておられました。

 総合戦略は、これで最初で終わりというわけではなくて、また随時改定もしていただくものであります。私どもとして、いつも申し上げておりますように、情報面、財政面、人的面で最大限の支援をして、何とか地方自治体が一年で創意工夫のもとにできるようにしていただきたいと思いますが、また地域の実情等々御教示くださいませ。

逢坂委員 ありがとうございます。

大島委員長 これにて渡辺君、小川君、階君、柚木君、逢坂君の質疑は終了いたしました。

 次に、柿沢未途君。

柿沢委員 維新の党の柿沢未途でございます。

 まず、何度か出しているアレシナの黄金律のおさらいをしたいと思います。

 ハーバード大学のアルベルト・アレシナ教授が、過去のOECD二十カ国の財政データを用いて、財政再建に成功した国と失敗した国の要因を検証した。それによると、増税先行の財政再建は失敗に終わり、財政再建を成功させた国は歳出削減に力を入れていたということであります。その比率が、歳出削減七、そして増税三。この七対三が、財政再建と経済成長を両立するアレシナの黄金律ということであるわけです。そして、財政再建に成功した国が歳出削減で何を削っていたかというと、公務員人件費と社会保障費、これが対象になっていた。

 このところ国会ではピケティの話が非常に多いんですけれども、私は、日本の現状を鑑みて言うと、ピケティよりアレシナだ、こういうふうに思っているところです。

 地方創生の集中審議で何でハーバード大学の先生の名前が出てくるんだという話なんですが、ここからが本番です。

 土日で、私、海士町に行ってきました。安倍総理も昨年秋の所信表明演説で取り上げられた、隠岐に浮かぶ、人口二千四百人、小さな町であります。米子の近くの七類港からフェリーで四時間半かかります。しかも、しけていて大変揺れました。東京から八百五十キロ、本当に遠いです。

 しかし、この離島に、東京から、全国から、Iターンの人たちがこの十年間で四百八十七人も移り住んできております。定住しているだけでも三百人以上、島の人口の一割以上をこうしたIターンの皆さんが占めています。来るのは、ほぼ全員が四十歳以下で、トヨタを、ソニーを、リクルートをやめて、遠いこの島に移り住んでくるわけです。

 パネルを見ていただくと、さざえカレー、安倍総理も紹介されていましたが、写真で載せてあります。

 あと、これは隠岐牛です。建設業から業種転換して肥育を始めたという隠岐牛は、東京の食肉市場で最高ランクのA5になって、幻の黒毛和牛と言われているそうであります。

 ここに岩ガキの春香もつけておきましたけれども、Uターンの漁師さんとIターンのサーフショップの経営者の二人が組んで養殖を始めた岩ガキ春香が、今、東京のオイスターバーで大人気、こういうことであります。

 かつて朝廷に献上していたという干しナマコを復活させて中国や香港へ売り込みたいと、宮崎さんというこの写真にある青年が、一橋大学を卒業して、海士町に移り住んで、干しナマコの加工、生産に今取り組んでいます。

 島の唯一の高校である隠岐島前高校、生徒流出で分校格下げの寸前でしたけれども、町がIターンの青年と一緒に魅力化プロジェクトというものに取り組んで、学習支援のために町営の塾を設けて、ここでも、Iターンの皆さんが夜十時、十一時まで学生の指導に当たっている。

 今や、島留学と呼ばれる都会からの生徒もやってきて、生徒数、二〇〇八年度は八十九人だったのが、今は百五十六人。V字回復をしている。

 ちょうど、島留学で、あした卒業式を迎えるという三年生二人とそこで会ったんですけれども、上智大学や東洋大学に進学するんだそうですけれども、必ず帰ってきて島に恩返ししたいと、真っすぐな瞳で語っておられたのが大変印象的でありました。

 島根県では、平成の大合併で市町村数が五十九から二十一に減ったそうですけれども、人口減少がとまったのはこの海士町だけ。今や、Iターン者のおかげで子供の数がふえて、ことしは島で唯一の保育園に何と待機児童が出そうだというんですね。これらの取り組みを進めているのが、写真にもありますが、山内道雄町長です。

 きょうは、地方創生担当の小泉進次郎政務官にも来ていただいていますけれども、十一月に海士町を訪れていますよね。百聞は一見にしかずだと私も思いました。いろいろお感じになられたことがあるんじゃないかと思うんですけれども、海士町にも足を運んで、山内町長とも会われた小泉政務官、町と町長にどんな印象を持ったか、ぜひ聞かせてください。

    〔委員長退席、金田委員長代理着席〕

小泉大臣政務官 委員がおっしゃるとおり、十一月に私も海士町に伺いました。数多くの地方に足を運びましたが、その中でも最も感銘を受けた、そんな視察先だと言っても過言ではありませんでした。

 山内町長の、みずからの給料を五〇%カットし、そして、吉元課長初め町の幹部の皆さんがそれに呼応する形で三割カットをし、そして、それを見ていた町民の皆さんが、町の皆さん頑張っているなということで、バスに対する補助金をカットしても構わないという自主的な声が生まれ、まさに覚悟のあるまちづくりをなし遂げた結果が、さざえカレーであり、CASシステムでもあり、また島留学でもあると思いますので、この海士町の山内町長の言葉は、私も、今地方創生を担当している政務官として、常に胸の中に持っております。

 やる気と本気は違うんだ。やる気がありますかと言えば、みんな、やる気があると言う。だけれども、その本気はしっかりと見きわめなければいけない。小泉さん、お金を配っちゃいけないよ。本気で、地方の覚悟があるところに配らなければ死に金になるよ。

 その言葉を忘れずに、これからもしっかりと、地方創生、後押しをしていきたいと思っております。

柿沢委員 いい御答弁をいただきました。

 山内町長も、進次郎さんは大変将来有望な政治家だと言っておられましたよ。

 海士町では、このようにIターンの二十代、三十代の若い人たちが活躍しています。今いみじくも答弁あったとおり、山内町長は、補助金がつくからやらないかということは絶対言わないようにしている、何かやりたいと本気で考えている人というのは、最終的に熱意だけで成功に導いていく、本気で向かってくる人には本気で応えようと思っている、金があるからやりますというのは、絶対にいい結果を生まないと言っています。

 今回、その典型例みたいな記事に出くわしたので、紹介したいと思います。

 これは長野県なんですが、大変失礼ですけれども、平成二十六年度補正予算が二月の県議会で可決をされたというニュースなんです。地方創生のための国からの交付金が二十一億六千五百万円おりてきたけれども、詳細な事業設計はこれからで、何に使うのか、効果は上がるのかと県議会で問われて、担当者が説明に窮する場面があったと。担当者は、事業計画の国への提出期限も迫っているから走りながら考えるしかない、こういうふうに答えているんだそうですよ。これはまさに、金があるからやりますというものの典型ではないですか。

 地方創生は今までの地方振興策とは違う、異次元だと石破大臣もおっしゃられていたわけですけれども、現場で起きていることは、まさにこれまでの繰り返しになってしまっているのではありませんか。

 地方創生は、それぞれの地域が何をやるか考えるのが先で、国から金が来る、何をするか、こんな順番で物を考えるのはだめだと思いますけれども、安倍総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 まさに、私たちが進めている改革は、地域の主体性、地域の創意工夫を国が応援していくためのものでありまして、地方公共団体が策定する地方版総合戦略は、地方の皆さんが地域の資源の活用について知恵を絞って、それぞれの地域に適した地方創生の実現を目指していくものでありまして、国としては、しっかりと、まさに本気でやる気のある地方の創意工夫を全力で応援していくという方針に基づいて、地方がつくる戦略を、予算や税制や人材等、あらゆる方策を使ってこれからも後押しをしていくという考えでございます。

柿沢委員 そうなってはいないではありませんか。

 さて、山内町長は、平成十四年に初当選したとき、オール野党で、四面楚歌の状態だった。小泉改革の三位一体改革で、町の税収に相当する二億円の地方交付税が減らされた。累積債務は当時百五億円と、財政再建団体転落が確実視されたという状況だったそうです。

 この危機的状況から改革に打って出るためにまず行ったのが、さっきもお話が出ましたが、町長の給与五〇%カットだった。みずから身を削らない改革は支持されない、この信念を持って、町長みずから給与五〇%カットを断行したところ、町長だけにやらせるわけにはいかないということで、幹部職員も、また一般職の職員労組からも申し出があって、副町長四〇%、管理職、一般職三〇%から一六%、こういう給与のカットで続いてくれた。思わず涙が出たと町長は言っておられました。

 おかげで、これで、国家公務員給与比、ラスパイレス指数は七二・四ということになって、全国一の給与の低い自治体になったわけです。しかし、これで、町は本気だというのが住民に伝わった。住民から、バス運賃の高齢者半額をなくしてもいい、ゲートボール協会への補助金は返上しますとか、こういう申し出が相次いで、結果、交付税削減分の二億円を上回る財源が新たに生み出されることになったということであります。

 これらの財源を使って、結婚祝い金一カップル十万円。出産祝い金、一人目十万、二人目二十万、三人目五十万、四人目以上百万。島の外に妊婦健診や出産に行く交通費の助成。そして、島の特産のシロイカや岩ガキの離島からの輸送に、ハンディを克服するためのCAS凍結技術、この機器導入五億円。こういう未来の投資にこの財源を充てていったということなんですね。

 リーダーに必要なのは覚悟だ、本気でやるかやらないかだ、そして、みずから身を削らない改革は支持されないと、山内町長は繰り返し語っておられます。

 身を切る改革については、再三再四申し上げてまいりました。それなくして、いかなる大改革も実現しないと考えているからです。国会議員の定数、歳費の削減、財政再建等、改革に乗り出すための第一歩として、リーダーが身を切る改革をみずから断行する、この必要性について安倍総理はどう思われますか。

安倍内閣総理大臣 私は、行政府の長として、私の閣僚としての給与については三割カットしておりますし、昨年四月に特例による減額がなくなって以降もこの三割の削減は続けておりますし、私は三割、そして閣僚は二割、国庫に返納させていただいております。

 そういう意味におきましては、行政府の長としての覚悟は示させていただいているところでございます。(発言する者あり)

柿沢委員 今、こちらからありましたけれども、前々からそれはやられていることですね。

 ちなみに、小泉さんはどう思いますか。

小泉大臣政務官 この海士町の取り組みの中でも、今おっしゃった財政再建に対する覚悟、そこから生まれた、島留学を含めて、この取り組みがなぜ生まれたのかというのは、これは海士町だけではなくて、例えば、最近行った長野県の下條村を含め、やはりそれぞれの地域で、その政治の覚悟というのは改革の中では不可欠だ、そういった思いは委員と全く同感です。

柿沢委員 さて、山内町長は、みずからの給与の五〇%カットに続いて、一般職員の給与を削減するに当たって、島の民間企業で働いている人たちの給与水準をアンケートをとって調べた。おおむね、職員給与が民間より大体三割高いという見当をつけて、その上で職員の給与削減を決めていったということなんです。

 地方では、最も高い給与をもらっているのが公務員というのが少なくないと思います。実感ベースでもそう感じている人は多いと思います。なぜそうなるのか。国、地方の公務員給与水準の決定の前提となる人事院並びに人事委員会の官民給与比較のやり方がゆがんでいるからだと私は思います。

 パネルをごらんください。

 上は、人事院の職種別民間給与実態調査。これだと、全職種の民間給与平均は、年額換算でボーナスを含めて六百六十万とされています。ところが、下を見てください、国税庁が調べている民間給与実態統計調査、これだと四百十四万円。同じ政府の統計で、同じ民間給与の平均ですといって、二百万円以上、一・五倍もの開きがある。一体これはどういうことでしょうか。

 どういうことかというと、調査対象に違いがあるんですね。人事院の調査は、企業規模五十人以上かつ事業所規模五十人以上の事業所、つまり、社員五十人以上の企業で、なおかつ本店、支店等の事業所で五十人以上が勤務しているところ、それのみが調査対象になっている。

 そんなのどれだけありますか。しかも、地方に行けば行くほどこんな事業所は少ないし、都市部に偏ってしまう。結局、こういう調査対象にしていることによって、待遇のいい、大企業の事業所だけを取り出して調査して、それが民間給与の平均ですと出してきて、それをベースに公務員給与を決めている形になっているんです。

 都道府県の人事委員会も同じような調査をしていて、市町村もほぼそれに倣って給与水準を決めるから、結果、全国津々浦々、大企業なんか一つもないところの市町村の職員も、地域の平均とかけ離れた、大企業並みの給与を得ることになっている。

 一方、国税庁の調査は、従業員一人以上の企業と事業所を規模別に抽出して調査していますから、四百十四万円、より民間実勢に近い数字が出ているように思います。

 何で、こんな公務員給与を高くするためのような調査をわざわざ別にやっているんでしょうか。

 ちなみに、現業職員についてはもっとひどくてというか、そもそも同業の民間企業との官民給与比較そのものを行っていない。おおむね、一般職員の、行政職の給与表を引っ張ってきて、大体それで現業職員の給与にしている。だから、それこそ、同じ仕事であったとしても、官が高くて民が低い、逆官民格差が甚だしくなってしまっているわけです。

 安倍総理、この、一・五倍、二百万円も平均で違う数字が出てくる、国、地方の公務員給与水準の決定の前提となる官民給与比較を、民間企業の実勢に、本当にそれを反映するようなやり方に改めていくべきだと考えますけれども、いかがですか。

有村国務大臣 まず私の方から担当としてお答えさせていただきます。

 柿沢委員も御案内のとおり、国家公務員制度については、労働基本権が制約されているために、その代償の措置として、第三者機関である人事院による給与勧告制度が設けられています。勧告に当たっては、人事院の、何が給与を決めるのかということで、民間においても、役職、年齢、あるいは先ほどおっしゃった勤務地域、学歴など大体同じような方々の給与を比較するということで、直近では全国で一万二千事業所以上の調査をされています。

 私どもはこれを妥当と思い、また信用性があるものと認識をしておりますけれども、国税庁の調査で四百十四という数値を出していただいておりますが、この四百十四万円というのは、フルタイムの従業員でない方、つまりパートタイマーの方も入っています。また、公務員と類似しない、例えば生産労働現場、建設業、あるいは販売員の方々の給与も、いわゆる年齢とか、あるいはそういう地域を考慮せずに単純平均している数値でございまして、これを信頼性のある、ずっとやっていかなきゃいけない公務員給与制度ということに直接当てはめるのは妥当ではないという認識でございます。

柿沢委員 非正規も入っているというお話なんですけれども、非正規を抜いて正規だけを取り出しても四百七十三万円なんです。

 安倍総理、これは安倍総理に対して通告をさせていただいた質問なので、ぜひお答えをいただきたいと思うんですけれども、今の御答弁でいいんですか。

安倍内閣総理大臣 ちなみに、先ほど私が給与を三割カットしているというふうに申し上げましたら、それは前例を踏襲しているんじゃないかという指摘をいただきましたが、前例というのは、第一次安倍政権で私が三割カットというのをつくった、安倍内閣でつくった前例であるということは申し添えておきたい、このように思います。

 多くの方は御存じないと思いますが、殊さら私は今までこれを強調したことはないわけでありまして、聞かれたからお答えをしたわけでございます。

 そして、第三者機関としての人事院及び人事委員会が専門的見地からこれは判断し、そして実施しているものと承知をしております。

 いずれにいたしましても、公務員の給与については、職員の士気や組織活力の向上を図るとともに、国民の理解を得る観点から、適切に対応していくべき、このように考えているわけでございます。

 また、人事院等が行っている官民給与比較の手法については、これは調査対象企業の規模も含めて、人事院等において専門的見地から判断されるものである、このように考えております。

柿沢委員 ここから先は、今の御答弁で妥当かどうかというのは、私たち自身も受けとめて、またそれを踏まえて判断をするということになると思います。

 公務員についてなんですけれども、昇給についても能力・業績評価をやっていますと言うんですけれども、そして年功序列を排するということを言うんですが、実態は全然そうなっていないんです。

 総務省が、昨年二月に、人事評価に関する検討会の報告書を公表しています。これまでの能力・業績評価の状況というのを明らかにしています。

 パネルを見ていただきたいんですけれども、一般職については、能力と業績について、S、A、B、C、Dと五段階の評価をしているんですけれども、驚いちゃうんですよ。特に優秀、S、優秀、A、通常のB、この上三つで九九・四%を占めていて、そして下二つのCとDを合わせて〇・六%、こういうことになっているわけですね。これは幹部公務員になるともっとすごくて、A、B、Cの三段階で評価するんですが、Aが八割、そして通常のBが二割前後、そして最下位ランクのCはゼロということであります。

 これが何を意味するのかというと、これは昇給に関係してくるわけですね。Bの通常という評価で四号俸上がります。Aではその一・五倍、Sではその二倍、いわば上乗せ昇給をされるわけです。では、下のC、Dはどうかというと、実は、下から二番目のCの評価をとっても二号俸上がるんです。つまり、給与はアップするんですね。この中で給与が上がらないのは、Dの評価をとった〇・一%の人だけなんですよ。つまり、千人いれば九百九十九人が昇給する、毎年給与が上がる、こういうものなんですね。

 どこの会社で、千人いる企業で、一人を除いて、一番最下位の評価の人以外はみんな給与を上げている、こんな会社が一体どこにあるでしょうか。

 しかも、後ろから声が上がりましたけれども、この日本国というのは、いわば赤字企業であります。そして、加えて申し上げれば、安倍総理は、政労使会議で、民間企業に対しては、年功序列の賃金体系は見直せということを言っておられるわけですね。

 自分の足元では、みんなそろって、千人中九百九十九人が、仮に低い評価を受けていても昇給をする、こういう制度が残っている、このことについてどう思われますか。

有村国務大臣 恐縮ですが、まず私の方から御報告させていただきます。

 民間との給与の比較ということでございますが、国家公務員の給与制度は、民間企業の状況ということを当然踏まえます。その中で、民間企業においても、約八割、過半数を優に超える企業の方々が、いわゆる管理職においても、経験や熟練度ということでの定期昇給ということを考慮した仕組みになっておりますので、それに準拠して、参考にしているものというふうに、人事院で御判断をされているものだと理解をいたしております。

 先ほどのS、A、B、Cということの表示をいただきましたけれども、これは平成二十一年、全省庁でスタートさせました人事評価制度の本格実施から五年の検証として総務省が出されたものでございます。

 任用、給与、人事育成、全ての人事的な側面において人事管理を行うには、能力・実績主義を上げなければならない。議員おっしゃるとおりでございます。

 その中で、一人一人のこれからの人材開発という点からも、私どもは、絶対評価による評価が妥当だと思っています。これが直ちに昇給に反映されるわけではありません。あらかじめ適当な、いわゆる評語、このカテゴリーは何割というようなことを決めているわけではありません。

 けれども、やはり委員がおっしゃったように、人事の公平性、透明性、また国家公務員の総人件費の増加の抑制ということは、引き続き安倍内閣としてもやっていかなければならない、また、それを実施してまいりたいと考えております。

    〔金田委員長代理退席、委員長着席〕

柿沢委員 今のも安倍総理に通告させていただいた質問です。

 改めて申し上げます。安倍総理は政労使会議で、民間企業には、年功序列で、年功で賃金が上がっていく、そういう賃金体系を見直したらどうかということをおっしゃっているわけですね。この現状を見てどう思われますか。安倍総理、どうですか。

安倍内閣総理大臣 基本的に、今既に担当大臣が答弁しているとおりでございますが、人事評価については、あらかじめ分布の割合を定めることはせず、また複数の者による評価を行うなど、公正性にも配慮した仕組みを設けているわけでありまして、その中で、各任命権者においてそれぞれ評価された結果と考えています。

 引き続き、評価者への研修の充実など、努力すべきところは努力しながら対応して、制度の趣旨に沿ったものにしていきたいと思います。

柿沢委員 千人中九百九十九人が昇給をするというこの現状は妥当だというふうにお考えになられている、少なくとも、現状これが問題だというふうに即座にお答えになる、そんな意識ではないということなんでしょうか。そう理解させていただきます。

 リーダーが覚悟を見せるという点でも、僕はこれは落第だと思うんです。幹部公務員、もう一回見ていただくと、A、B、Cの三段階の評価で、Cはゼロですからね。事務次官クラス、もっと上になるともっとすごくて、A、Bの二段階の評価しかない。通常に仕事をしていればAとみなすということをわざわざ政令に書き込んでいるんですよ。要は、上に行けば行くほど大甘の評価をしている、こういうことになっているわけですね。

 事実上こうして年功序列で右肩上がりに毎年昇給をしていく、こういう仕組みに今メスを入れようということで、大阪の橋下市長が市職員の給与構造の調査と改革を始めています。

 ちょっとわかりにくいんですけれども、これが人事委員会に出させたデータなんです。上が事務係長、事務職の係長ですね。民間の給与実態を見ると、ほぼ三十代半ばから頭打ちになっていますね。しかし、公務員は、係長のままでも毎年昇給していくわけです。

 下は課長ですけれども、課長も、ごらんのとおり、民間では三十五歳ぐらいから大体頭打ちになっています。そして、五十五歳以上は下がってきているわけですね。

 では、公務員はどうなっているかというと、国家公務員も五十五歳から昇給停止になりましたけれども、民間は下がっているわけですから。しかも、係長であろうと課長であろうと、同一ポストにいても、さっき言ったように、通常の評価以上のものを受けていれば、四号俸、六号俸、八号俸と上がっていくわけですね。

 これは、そもそも、法律に規定をされた公務員における職務給の原則というものも踏み外してしまっているのではないかと思います、同一ポストで上がっていっちゃうわけですから。

 これは、大阪府では、局長、部長級の幹部職員は、年功的な要素を廃止して、より成果を問う定額制の給与にした。

 民間企業で、管理職、成果を問われるポストの場合は、こうした定額制の給与にして、そして賞与やあるいは昇格、昇任、こうしたことで処遇をするということが一般的になりつつあるようにも思いますけれども、やはり同様に国家公務員も、成果が特に問われる課長級以上は定額制の給与にして、そして成果に応じて昇格やあるいは賞与で処遇する、これが正しいやり方ではないかと思いますが、いかがですか。

有村国務大臣 お答えいたします。

 先ほど少し申し上げましたけれども、民間においても、約八割が、そのような同じ職員においても経験や熟練ということを勘案しておりますので、それは妥当だという認識をしております。

 また、先ほど御指摘をいただきました、特に幹部職員についてはCがないじゃないかということで、お手盛りじゃないかというような旨の御指摘をいただきましたけれども、幹部職員の人事評価においては、Cがつく場合は、求められる行動や役割がほとんどとられていないというふうに多くの者が一致して評価するという厳しい、そういうデフィニションのもとで動いていますので、Cがつかないというのは何らおかしいことではない。むしろ、そのように、一般の職員を統率してトップリーダーになっていく人たちにCがつかないというような状況の中でしっかり働いていただきたいと思います。

 ちなみに、Dというのは、本人が不利益処分を受ける、分限の契機になるというレベルでございますので、その評語というのと、何を意図するのかということを共有して、研修も続けながら、そのカテゴリーが意味することをしっかりと国家公務員制度の中でみんなで共有して、人事の信頼性を引き続き高めていきたいと考えております。

柿沢委員 そういうことで、結局、年功序列の護送船団になっているんじゃないか、そう言わざるを得ないと私は思います。

 アレシナの法則でも、歳出削減、公務員人件費の削減が重要だとされています。海士町では、町長が率先して給与カットをして、それを契機に財政再建と町の活性化が進んでいるわけですね。

 また維新の党が何か言っていると思われるのかもしれませんけれども、しかし、もともと民主党も、国家公務員総人件費の二割削減というのは言っていたわけですね。

 だから、そういう意味では、先ほど申し上げたように、官が高くて民が低い、逆官民格差がある、そして、能力や実績にかかわらず昇給する年功序列の賃金体系が事実上温存されている、こういうことがあるわけですから、そして、歳出削減というのはどうしてもやっていかなきゃいけないことですから、ならば、国、地方の公務員人件費二割削減に向けたロードマップを、これは与野党共同してつくっていこうではありませんか。

 ぜひ、安倍総理に御答弁いただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 国家公務員の総人件費については、給与水準は、労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度を尊重するとの基本姿勢のもと、民間の水準を踏まえて決定され、定員はその時々の行政需要に的確に対応する観点から決定されるべきものと考えています。

 また、地方公務員についても、各地方公共団体において、適正な定員管理の推進や給与適正化に取り組むべきもの、このように思います。

 そういう中において、政府としては、厳しい財政事情に鑑み、国家公務員の総人件費については、国家公務員の総人件費に関する基本方針において、その抑制を図ることとしています。

 具体的には、早期退職募集制度の活用や高齢層職員の給与の見直しによって、年齢構成の高齢化や高齢化による人件費の伸びを抑えるとともに、簡素で効率的な行政組織、体制の確立に努めています。

 また、国家公務員の給与については、昨年夏の人事院勧告に沿って、地域間、世代間の給与配分を見直す給与制度の総合的見直しに取り組んでいるところでありまして、地方公務員においても、この趣旨に沿った対応が行われるものと考えています。

 したがって、国、地方の公務員の人件費について、あらかじめ、御指摘のような具体的な数値目標を設けたロードマップを作成することはなじまないのではないかと考えています。

柿沢委員 安倍総理、戦後以来の大改革をやろうということですので、大変私は期待をしたいと思うんですが、そうであるとすれば、まさにこういうことから始めていく、そのことが財政再建、また歳出削減を実現し、また、改革をなし遂げる第一歩になるはずだ、そのことについて、残念ながら前向きな答弁をいただけなかったように思います。

 アレシナの黄金律に戻しますが、一番下に書いてあるとおり、公務員人件費と社会保障費、これを削っている国が財政再建に成功したということが、アレシナ教授の研究の結果、明らかになったことであります。国の一般歳出の五割を社会保障費は占めているわけですから、ここにメスを入れなければ歳出削減は進まない、これは事実だと思います。

 一方で、そうしたことが国民への給付やサービスの低下、いわゆる切り捨て的な状況を生まないように、負の影響というものは最小限にしていかなければいけないのも事実だと思います。

 一つの事例を紹介したいと思います。

 認知症の人が認知症を介護する、いわゆる認認介護、この言葉の生みの親とも言われる高瀬義昌医師が中心となった、地域包括ケアにおける医薬品適正使用に関する研究というのがあります。東京都大田区で在宅医療の専門医をやっていて、三百三十人の患者を抱えて、その多くは認知症高齢者です。

 患者さんのお宅に行ってみると、このとおりですよ、大量の薬を処方されている。こんな量の薬をもらって、認知症のある高齢者の方が果たしてこれを正しく飲めるかという話です。

 しかも、こうやって安易に薬をぱっぱと大量に処方することによって、どうなるか。中には、ベンゾジアゼピン系の向精神薬とか睡眠薬等が入っていて、これらの薬剤が患者の意識障害、特に譫妄の症状を悪化させて、むしろケアを困難にする、こういうケースが間々あるんです。特に、六剤以上の薬剤の多剤併用は危険を生じやすいというふうにされています。

 これを、在宅医療の現場で薬の量を整理するとどうなるか、お示ししたいと思います。

 八十七歳の男性、要介護三、見てのとおり、今まで十七種類もの薬剤を処方されていた。ベンゾジアゼピン系の向精神薬、これはデパスとかですね、入っています。しかも、見てください。朝食後はこれを飲め、毎食後はこれを飲め、これは朝夕二回だ、これは夕食前だ、そして就寝前だ、こんなのを正しく服用できる認知症高齢者がいるんでしょうか。複雑怪奇です。

 これを、高瀬先生が入って薬剤の整理を行った。どうなったか。

 服薬を夕食後全て一回に調節をして、四種類にした。二種類、頓服というか、不穏時に飲む不定期のお薬が出ていますけれども、基本四種類。十七種類、これは必要ないねと削っていくことによって四種類にした。

 四種類に減らしただけじゃないんですよ。減らした結果どうなったかというと、この人は、夜ぐっすり寝られるようになって、徘回がなくなって、譫妄の症状も落ちついて、自分でデイサービスへ行けるようになった。QOLが上がっているんです。

 そして、これだけ薬剤が減ったわけですから、薬剤費が減ります。一日分の薬価差額七百四円。三百六十五掛ければ、年額換算で、一人ですよ、一人で二十六万円も薬剤費の削減になるわけです。

 認知症対策は、国家戦略として今オレンジプラン、新たに策定をしたところですよね。二〇二五年には七百万人になると。七百万と言うけれども、実は、予備軍と言われるMCI、軽度認知障害の人はもう七百万人いますから、千五百万人。つまり、高齢者三千万人の二人に一人は二〇二五年には認知症になっている。あなたも認知症、私も認知症、こういう時代が来るわけです。

 このときにこんなことをやっていたら、それこそ医療費のだだ漏れになってしまう。こうした点をやはり今改めていかなければならないと思いますけれども、御答弁をお願いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 認知症については、今後、誰もがかかわる、本人、配偶者、あるいは両親という形で、誰もがかかわりを持つ可能性のある身近な病気であろう、このように思います。

 最も速いスピードで高齢化が進む我が国こそ、社会全体で世界のモデルとなる取り組みを進めていく必要があり、このため、本年一月に、新たに新オレンジプランを策定したわけでございます。

 認知症による行動や心理面の症状に対する薬の使用についてでございますが、委員が示された薬というのは、これは一つの病院で処方された薬なんでしょうか。(柿沢委員「そうですね」と呼ぶ)一つの病院で。

 一つの病院だということ、大変これは驚きなんですが、今後、高齢者の特性を考慮した対応が不十分であることによって副作用や日常生活への支障が生じる、またあるいは、複数の医療機関から投薬をされることによって薬の重複や副作用が頻繁に見られる場合があるといった課題も指摘されていることは承知をしております。

 さらに、委員が御指摘になったように、一つの医療機関でこれだけたくさんの薬を処方するというのは、これは確かに大きな問題だろう、このように私は思います。

 こうした課題に対応するために、新戦略では、まず、的確に症状や周囲の環境を把握した上、原則、薬物を使わない対応を第一選択とすること、そして、投薬が必要な場合には高齢者の特性を十分考慮することなどを定めたガイドラインについて、研修等を通じ普及を図るとともに、医療、介護の関係者が情報を共有して、連携して支援できるよう取り組んでいくこととしております。

 繰り返しになりますが、原則、薬物を使わない対応を第一選択とすることということでございます。

 今後、認知症の方ができる限り住みなれた地域で適切に医療、介護を受けられるよう取り組みを強化することとしておりまして、これによって社会保障費の伸びの抑制にもつながり得るものである、このように考えております。

柿沢委員 公務員の人件費の削減も、またこの社会保障費の削減も、やればできる、できる余地があるわけです。そして、それは、本気で取り組むことによって改革はなし遂げられる、まさに海士町の山内町長が教えてくれるとおりだと思います。ぜひ本気の取り組みを期待して、終わりにさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

大島委員長 この際、今井雅人君から関連質疑の申し出があります。柿沢君の持ち時間の範囲内でこれを許します。今井雅人君。

今井委員 維新の党の今井雅人でございます。

 下村大臣、きょうお越しいただいているので、御質問したいと思います。

 民主党の委員の皆さんとのやりとりを拝聴しておりまして、大臣のいろいろ言い分もあるんだなということは承知いたしました。

 ただ、この問題が大きくなってしまったことの一つは、やはり十万円の献金がないとおっしゃっていたのが実は間違った答弁だったということは、これは否めない事実だと思うんですね。

 それで、今、鈴木さんという方のきのうの会見録を拝見させていただきましたが、金額に関してははっきり覚えていないということをおっしゃっておられますけれども、渡したことははっきり覚えているというふうにおっしゃっておられるわけですね。

 この方は、もともと中部若手博友会の顧問をやっておられた方ですから、もともと大臣とは、支援者で、旧知の仲だと思うんですね。そういう方がおっしゃっていることと、大臣がおっしゃっていることは食い違っているわけです。はっきりしていることは、どちらかが間違っている、あるいはどちらかがうそをついている、このことだけは間違いないわけですね。

 ですから、私は、こうやって大臣のお知り合いの方、支援者の方と言い方が違っていることであれば、これは、大臣がやはりその方とお会いして、例えばオープンで会見をするなり、御自分でこの問題をはっきりさせる、それが説明責任だと思いますが、いかがでしょうか。

下村国務大臣 何が説明責任かというのは、まずは、私は、国会の場で質問されれば、それに対して誠実に、そして正しく、正確にお答えするということが説明責任だというふうに思います。

 ですから、今回、週刊誌報道から端を発しているんですが、事実確認をきちっとしないまま、私からしたら誹謗中傷に近いような記事が一方的に書かれた、そのことに対して、逆に言えば、この国会の場で質問をしていただいたことによって、私がきちっと、その週刊誌を読んだ方々に対して、なるほど、そういうことなのかということを説明する機会をつくっていただいているということは、大変ありがたいことだというふうに思います。

 ですから、国会の質問に対しては、誠実に、丁寧にお答えしたいというふうに思います。

    〔委員長退席、金田委員長代理着席〕

今井委員 週刊誌に書いてあることが全て事実ではないでしょうし、間違ったことも当然あると思うんです。そこは、私、理解していますけれども、きのう、会見で鈴木さんという方、御本人がおっしゃっている、それで、大臣ともともとお知り合いで見解が違うという、今、私はこのことを申し上げているんですね。

 このことに関しては、やはり、どちらがうそをついているか、あるいは、どちらかが間違っているのか、このことをはっきりさせなきゃいけないんですよ。だから、それは、それをはっきりさせるのは、大臣の支援者なんですから、大臣にそれは説明責任ありますよ。いかがですか。

下村国務大臣 私の説明責任というよりは、先ほどもお答えしましたが、その方が、私は勘違いされているのではないかと思います。もう一度、詳しく今までのことを調査していただければというふうに思います。

今井委員 御自分でそういう説明責任を果たすおつもりはないという感じを受けましたので、もう既に理事会で申し上げていますけれども、私は、本当は御本人がそれは説明すればいいと思っているんですよ。しかし、それができないんなら、やはりその方もこの国会に呼んでいただいて話をしないと。いや、私はそんなところ、本来はお呼びするものじゃないと思うんです。だからこそ大臣にやっていただきたいんですよ。そうすれば、そんな必要ないじゃないですか。

 でも、それはやっていただけないということであれば、それをお願いするしかないわけでありますので、委員長にそれをお願いしたいと思います。

    〔金田委員長代理退席、委員長着席〕

大島委員長 ただいま、今井委員の案件につきましては、理事会で鋭意協議をしております。また協議させていただきますので、よろしくお願いします。

今井委員 ぜひよろしくお願いします。

 ともかく、もう一度申し上げますけれども、やはり、自分の支援者の方が違うことをおっしゃっているんですから、そこはしっかりと説明責任を果たすべきだということを私はもう一度申し上げておきたいと思います。

 総理にちょっとお伺いしたいんですが、しばしば私どもは、だからこそ政治と金の問題を解決するために、一つの方法としては、企業・団体献金を禁止しましょうということを申し上げているんですけれども、そこで、総理はいつも民主主義のコストをどう考えるかだとおっしゃいます。どう考えるかではなくて、考えましょうよ。どう考えるかという、そんな人ごとみたいな話じゃなくて、考えていくということが大事なんですね。

 もちろん、政治にお金がかかるというのはわかりますけれども、では、例えば無所属の議員。無所属の議員は、政党交付金ももらえない、その上に企業・団体献金ももらえないわけです。個人献金とパーティーとそして歳費、これで活動しているわけですね。でも、我々は、政党交付金をもらった上に、さらに企業・団体献金をもらえるという二重のメリットをいただいているわけですよ。

 江田代表が二十年前の話もされましたけれども、政党に属する者は、そういうコーヒー一杯二百五十円のコストを皆さんにいただいて活動しましょうということを原点に始めているわけですから、無所属の議員とこれだけ、二重に差がついてしまっていることはおかしいと思いませんか。

安倍内閣総理大臣 平成五年の総選挙で私は初当選を果たしたのでありますが、そのとき、まさに政治改革が最大のテーマでありました。選挙制度を変えていく、あるいは、その際、選挙制度を変えていくというのは、小選挙区制度にしていくという方向であった。私は、当時、必ずしも賛成じゃなかったんですが、しかし、体制はそうなった。

 その中で、特に、選挙制度を変えていく、小選挙区を中心とした選挙にしていく、これは、二大政党をつくっていこう。当時、自民党がずっと続いてきた、自民党の中で、いわゆる派閥でぐるぐる回してきたのではなくて、二大政党をつくりましょうということになって、そして、政党中心の選挙になろうということになったんですね。

 それまでは、我が党の中では、それぞれ、中選挙区ですから、最大の敵は同じ党の人なんですよ。同じ党の人しか眼中にないんですよ。この人を落とそうと思っている、みんな。ほかの党のことはほとんど頭になかった。そうではなくて、党が主張を統一して、そして党同士で戦っていこう、ですから、党にお金を集めていきましょうね、個人が集めるのではなくてというそもそもの発想があって、そして、政党においては、いわば企業・団体献金も受けられることにしようということになったわけであります。

 その際、確かに無所属の方は不公平ですよ。でも、それは、最大の不公平ということにおいては、そもそも選挙を通じて、政見放送について大きな不利をこうむっている。というのは、そもそもこの両方が、資金においても、選挙という仕組みにおいても、基本的に政党を中心にしていこうということで今日まで来たわけでありまして、これを見直していこうということであれば、それはそれとして考え方なんだろうと思いますが、今の制度はそういう成り立ちになっている。

 企業・団体献金について、企業・団体献金も、民主主義において一つのコストを担っていただくということでは、あっていいと私は考えておりますから、その考えは述べております。でも、これはまさに民主主義のコストをどう分担していくかということでありますから、各政党間で議論をしていただきたいと思いますし、私は行政府の長でありますから、そういうことはもう党の方に、谷垣幹事長を中心とする党を中心に皆さんと議論をしていただきたい、こう思っているところでございます。

今井委員 二十年前の改革は、政党を中心にしていこうということであるのは承知しています。だからこそ政党交付金というのを創設したわけですね。そこで差をつけたわけです。政党にも企業・団体献金を認めましたけれども、その後、支部にどんどんどんどん広がるということになり、実質的には、この間も質問しましたけれども、個人と議員と支部が一体化するように数がふえていって、どんどんその本来の趣旨とゆがんでいったわけです。

 ですから、今回改めていろいろなものを見直すと、そういうところにいろいろ不備があるなということがわかったから、いい機会ですから、もう一度こういうことをやりましょうと申し上げているんですね。

 今の話、ちょっと私は常々不思議に思うんですけれども、これは自民党の議員さんが多いんですが、地方議員に出ると、自民党の推薦もなく完全無所属で出られておるのに、御自分の政党支部を持っておられるんですよ。政党支部の支部長になっておられたりするということがあるんです。そういうケースもあるんですけれども、それはちょっと何かどうかなと。まあいいです。それはいつもふと思っていることで、いいんですが、もう時間がないので、一つ御提案を申し上げたいんです、きょうは本題はこれですので。

 今までいろいろ政治とお金の問題があって、リクルートの問題とかいろいろありました。平成四年のときには、与野党間の協議の場として政治改革協議会というのを設置して、そこでこのお金の問題をどうやってやっていくのかということを議論したんですね。平成十九年、このときも、資金管理団体以外の政治団体の経費の問題とかいろいろあって、与野党六党、自民、民主、公明、共産、社民、国民、このときは維新はありませんでしたけれども、による協議機関が設けられて、そこで話し合っておられるんですね。

 ですから、今回も、第二次安倍政権になってからでも、三人の閣僚が辞任されました、お金の問題で。お一人も、実質はお金の問題で続けられなかったということが起きているわけです。四人もやめられているんですから、これは大変な危機なんですね。

 今、野党の方で、一緒にいろいろな政治改革の協議をしていこうという話をしていますが、ぜひ、この国会の場にそういう協議会をしっかりつくって、この問題を根本から、対症療法じゃなくて、パッチワークじゃなくて、根本からいろいろな問題をしっかりもう一度改革し直すということをやはりやっていかなきゃいけないと思うんです。そのために、やはりリードしていただくのは与党なんですね。自民党の皆さんがそういう気持ちになってやっていただかないと、これはなかなか進みません。

 ですから、ぜひ自民党総裁として、これは谷垣幹事長のやられることだと思いますけれども、でも、今、与党の方で協議が始まるというのを報道で拝見しましたが、与党協議じゃなくて国会の場で、全党合わせて、ふだん、選挙改革のときだっておっしゃっているじゃないですか、少数野党の意見も尊重してとおっしゃっていますから、ですから、この問題もやはり全党でやりたい、全党でやっていきましょうということでリーダーシップを発揮していただきたいと思いますが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 私どもとしては、まず与党で議論を重ねているわけでありますが、議会においては、議会でそういう場をつくるかどうかということは、まさに本院において各会派で御議論をいただきたい、このように思います。

 いずれにせよ、こうした課題について各議員が、襟を正してどのようにしていくべきか、どのように説明責任を果たしていくべきかということを考えていく、あるいはまた建設的な議論をしていくことは、それは当然のことであろう、このように思っております。

今井委員 もう一度お伺いしますけれども、安倍政権の四人の閣僚にお金の問題が出たわけで、それが今回のこの一連の騒動になっているわけですから、国会のことだというふうに思われないで、総裁というお顔も持っておられるんですから、ぜひそういうのをやっていただきたいと指示をしていただければいいんですよ。ぜひそれをやってください。

 もう一度お願いします。

安倍内閣総理大臣 それは、閣内にあろうと、あるいは与党であろうと、野党であろうと、説明責任を果たしていく、政治とお金の問題については常に襟を正していくのは当然のことだろう、このように思いますが、国会においてそうした協議機関をつくるというのは、まさにこれは院においてお決めになることでございますので、建設的な御議論をいただきたい、このように思います。

今井委員 これからもしつこくこれを要望はさせていただきますし、党の方からも各党に申し入れをさせていただきますので、ぜひ前向きにやっていただきたい、そのことをお願い申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

大島委員長 この際、重徳和彦君から関連質疑の申し出があります。柿沢君の持ち時間の範囲内でこれを許します。重徳和彦君。

重徳委員 維新の党の重徳和彦です。

 きょうは、地方創生について議論をさせていただきます。

 まず初めに、総理、安倍総理は、昨年の臨時国会から、地方創生に関しまして、従来の延長線上にない政策をやるんだとか、異次元の政策をやるんだ、こういうことをおっしゃっていました。ことしに入ってから、どうもそういう言葉がちょっと聞こえてこないんですけれども、今でもそのお考えに変わりはないでしょうか。

安倍内閣総理大臣 地方の創生は、まさに、人口が減少をしていくという中で待ったなしだ、このように思っております。今までも何次かにわたって、地方の活力を何とか復活したい、あるいは地方に活力を与えたいということで、ふるさと創生もそうですが、そういう試みがあったのでありますが、残念ながら、現在も人口減少、人口流出が続いているわけでございまして、今までのやり方ではなくて、まさに、地域が主役、霞が関発ではなくて地方発の地方創生をしっかりと進めていきたい。

 それはつまり、地方の皆さんにしっかりとアイデアを出していただき、私たちは、資金や税制や、あるいは規制を緩和していく、人材や情報を提供していくなどの方法によってしっかりと応援していく、そういう異次元の地方創生を進めていきたい、このように思っております。

重徳委員 今総理が言われた、アイデアは地方からだけれども、お金その他もろもろは国からだ、こうおっしゃいました。これは全然異次元でも何でもありません。今までどおりでございます。

 そういう意味で総理は、先ほどは、やる気というだけではだめだ、本気でやるかどうかが大事だ、こういう議論がありましたけれども、これは本気でやっていただきたいと思うんですよ。

 私は長らく地方自治、地域振興に携わってまいりましたけれども、相当、異次元の地方創生という言葉に違和感を感じております。昨年の地方創生特別委員会でも何度も私は提言をいたしておりますけれども、思い切った地方分権、地域の自立ということを手がけなきゃいけない、こういうことを申し上げてまいりました。

 そこで、今回の目玉の、既に実は二十六年度補正予算で成立をしました、目玉と言われております交付金、自治体の使い勝手のよい、自由に使える交付金、四千二百億円と言われておりますけれども、これもほとんど従来と変わりのない交付金だと私は思います。どこが異次元なんでしょうか。民主党時代の一括交付金と何が違うんでしょうか。お答えください。

石破国務大臣 異次元というのは、今回は、総合戦略を国と符合する形で全ての自治体に、北海道から沖縄に至るまで同時につくっていただくという取り組みは、今まで一度もやったことがありません。そして、そこにおいては、国のKPIと完全に符合する必要はありませんが、KPIを設定していただく、PDCAサイクルを回していただく。あるいは、委員は行政に携わっておられましたからよく御存じのとおりで、これは、市役所がやるものですとか、町役場がやるものですとかそんな話じゃなくて、みんなに参画をしていただくというのは全く違う取り組みです。

 そこにおいて、交付金の使い方というお話でございますが、これは、四千二百億が二千五百億と千七百億に分かれているのは御案内のとおりでございます。

 そこにおいて、先ほどプレミアム商品券についてというお話がありました。どういう商品をつくるかは、地方地方によって違うものです。プレミアム率をどうするかもそうです。商品設計もそうです。みんな同じ、金太郎あめみたいなものをやるわけではありません。二千五百億がそうですね。そこにおいて、いかにして魅力的な商品をつくり、魅力的なものをつくって人々の消費を喚起するかということは、まさしく異次元の取り組みでございます。

 そしてまた、千七百億は、地方創生先行型と、そして総合戦略をつくるというものに使うわけでありまして、そこにおいて、では、これはコンサルに丸投げだみたいなところは絶対だめなのであって、どれだけきちんと創意工夫をなすかということでございます。

 今までのように、国の補助金で、どれが補助率が高いかな、どれが事業が大きいかな、どれが自己負担が小さいかなということで選べばそれでいい、検証も何もなされないというものではございません。きちんと検証するということが最も必要なことで、これが異次元でなくて何だということを申し上げているのです。

重徳委員 今まで何も検証がなされてこなかったかのようなお話も、今、石破大臣はされましたけれども、基本的に、これまで、政策目標を立てて、そして達成できているかどうか、こういうことはもう自治体の中ではそれぞれ取り組みが進められてきたんです。しかも、今大臣、北海道から沖縄まで同時にとおっしゃいましたけれども、私後ほど議論しますけれども、それぞれ自治体というのは、それぞれの進捗に応じて、それぞれのタイミングで民間の取り組みを助成したりいろいろなことをやっているんです。

 ですから、ことしは地方創生元年だということを安倍総理が高らかにおっしゃるのは、それはもちろん構いませんけれども、しかし、地方の現場からすれば、今さら元年でも何でもないと思いますよ。今まで長らくずっと取り組んできたところ、まだまだ足りないところ、いろいろあるのが地方なんですから、それを全国一律、同時にというような御説明があったり、これまでそういう検証がなされていないとか、そういうのはちょっと、モザイク模様の地方自治の実態をきちんと直視していないと私は思っております。

 それから、今強調されておられましたPDCAサイクルですね、プラン・ドゥー・チェック・アクション。いわゆる、計画をして、実行をして、検証をして、そして改善する、そのサイクルのお話がありました。

 今回は交付金を出すに当たってこのPDCAサイクルをやってもらうみたいな話ですけれども、これだって、もともとは自治体の主体的な、自主的な運営に当たっての経営手法でありまして、これを、交付金をもらうためにPDCAの成果指標とか目標を立てる、これはもうただ作文の世界で、役場の職員が一生懸命必死になると思いますけれども、それをもって自治体経営が、よりその成果に向けて効率的、効果的に進むようになるというのは、私はちょっと違うんじゃないかな。

 さらに言うと、これはちょっと、把握されているかどうかなんですけれども、今回の四千二百億円の交付金の中には二種類あります。一つは、今大臣が言われた地方創生先行型千七百億円、もう一つが、地域消費喚起型で二千五百億円あるんですね。PDCAに必要な評価指標とか目標年月、効果検証、こういったものについて、この二千五百億円の地域消費喚起型については、制度要綱をきのう見ましたけれども、そこには、盛り込む必要がないというような内容になっているんですけれども、この点、どのように説明されますか。

石破国務大臣 それは、私どもが全て無謬だと言うつもりはございませんで、御批判、御指摘は、それは謙虚に受けとめねばならないと思っております。

 ただ、地方六団体とのお話というのは、相当詳細に行ってまいりました。協議の場のみならず、民主党政権のときは、社会保障改革がございましたので、協議の場の開催頻度が多かったことは承知をいたしておりますが、全国の六団体とは本当に綿密にお話をしながらやってきたものでございます。

 ですから、この総合戦略にいたしましても、あるいは補正予算にいたしましても、あるいは今御審議をいただいております二十七年度予算におきましても、地方六団体からは、本当に私はあんなことを言われたことは一度もないのですが、高く評価するとか、真に評価するとか、大変にありがたいお言葉をいただいております。ですから、委員の御指摘と随分違うなという印象を持っておりますが、地方六団体においてきちんといろいろな議論をなさった上で、高く評価する、真に評価するというお言葉をいただいたのは、私どもは励みにしていかねばならないと思っております。

 その中で、なお、委員御指摘のように、現場と感じが違うとか、そんなことは思っていないとか、PDCAサイクルなんかとっくにみんなやっているとか、あるいは、もう今までやってきたことを全国一斉にやれとは何だとか、そういうお話がございますが、それは、まずやろうということで、多くの自治体と国が目的意識を共有してやっておるわけでございます。この取り組みは、いろいろな御指摘をいただきながら、きちんとよいものに仕上げていきたいというふうに考えておるところでございます。

 そして、先ほど二千五百億についてはどうだということは、それぞれの効果の検証というものを全てに求めているわけではございませんが、しかし、私どもとして、それがどのようにして、今までの、例えば地域振興券のようなものと違うのか、創意工夫によってどれだけの消費誘発効果があったか等々は検証したいと思っております。

 それぞれの地域地域において、いやしくも税金を使って消費喚起をしようとしているわけですから、それにどのような効果があったかということは、それぞれの自治体において検証する。それをマストだと言っているわけではありません。しかしながら、それをやることは税金の使い道として当然のことだと思っております。

重徳委員 聞けば聞くほど、PDCA、二千五百億円分の交付金については必ずしも求めているものではないとか、そうなると、何が異次元なのかということなんです。

 もちろん、全国知事会と詳細な協議をして前に向かって進んでいくこと、これは否定されるどころか、どんどん進めていくべきことだと思っておりますが、今問いかけているのは、何が異次元なんだということなんですよ。今までずっとやってきたことと何が大幅にそんなに違うんだということなんです。

 言葉にこだわるようですが、やはり総理も石破大臣も異次元異次元とおっしゃっていたわけですから、これに対してきちんと、ここが異次元だ、これだけ大きく変わるんだということは自信を持って一貫して説明していただかなければ、私どもは理解をできないところであります。

 そして、これまで地方創生、非常に長い取り組みであります。これからも続いていきますけれども、自治体の財政運営とも非常に深い関連がありますので、ちょっときょうは解き明かしていきたいと思います。

 これは、平成元年度以降の地方債の発行額であります。いわゆる臨財債、近年の赤字地方債は除いておりますので、政策的な、いわば攻めの地方債の発行額、毎年どれだけ発行してきたかというものであります。

 内訳は若干、幾つかありますが、平成七年度の地方債発行額、これはおおむね二十二兆円を超える規模になっております。ここがマックス、ピークでありまして、ここからどんどんどんどん減って、平成二十七年度予定では、六・六兆円、三分の一以下に地方債発行額が減っているわけですね。

 平成七年度といえば、私は山形県庁に勤めておりまして、当時は、全ての市町村、四十四市町村全部に温泉宿をつくるんだということで、各市町村の職員の方が熱心にやっておられましたけれども、ところが、これが非常に後々財政負担として重くのしかかってきているんです。

 このあたりを含めて、今、そしてこれからも当面続くでありましょう自治体の財政危機の原因についてどのように分析されているか、総理、お願いします。

安倍内閣総理大臣 地方の財政状況については、まず、バブル経済崩壊後の九〇年代の景気対策による公共事業等の大幅増に伴い、地方債の償還額の増加に加えて、高齢化の進展によって、一貫して社会保障関係費の増加が続き、義務的経費の増大が財政を圧迫してきたところであります。同時に、長引く景気低迷やデフレ等の影響によって、地方税収の低迷が続いてきている。地方自治体の行政改革による歳出削減努力にもかかわらず、地方財政は依然非常に厳しい状況にある、このように認識をしています。

 我々は、アベノミクスの成果を全国津々浦々まで行き渡らせることで、まずは、地方税収等の増を図るとともに、歳出構造を見直すことで財務体質を強化するなど、地方再生と地方財政の健全化の両立に向けた努力を続けていく考えでございます。

重徳委員 今、総理は率直に、九〇年代の景気対策と、そして公共事業とおっしゃいました。

 このグラフで見てとれるように、平成七年度をピークとした二十二兆円、一年間で二十二兆円もの地方債を発行した、これは、決して自治体がみずからの意思で発行したものとは言い切れません。

 というのも、国がこの地方債発行に対しまして、この借金を返すときには国が交付税でちゃんと補填するから、だから安心して、どんどん景気対策だから公共事業をやってくれと、国が主導して地方に借金をさせてきたわけであります。そして、それがその約束どおり、ちゃんと償還財源を国が措置できてきたならばいいけれども、結局、国も財源不足となりまして、十分に地方はこの借金を返すことができない状態に陥った。これが真相であります。

 ここで総理にお聞きしますが、総理は二年前の御就任早々から、このように発言されております。公共事業イコール悪というレッテル張りはやめるべきだ、このように繰り返しおっしゃっておりますが、そもそも公共事業イコール悪というレッテルは、いつ、どのように生まれたんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 この公共事業イコール無駄遣いというレッテル張りがいつから生まれたかという経緯は、必ずしも私は承知をしていないわけでございますが、その後、例えばコンクリートから人へというキャッチフレーズもあったわけでございます。

 しかし、基本的に、公共事業というものについては、もちろん時代やニーズの変化を踏まえながら、しかし、真に必要なインフラ整備を着実に進めていく必要は当然あるんだろう、このように思うわけでございますし、まさに財政出動をして公共事業を行っていたときは、国も、またあるいは地方においても、相当、いわば経済の底割れが懸念されたときでありまして、それを防ぐという意味においてはしっかりと効果があった。

 でも、同時に、費用対効果等も見定めていく、効率もちゃんと考えていくのは当然のことだろう、このように思います。

重徳委員 公共事業の中にも必要な事業は、当然あります、大事な事業はたくさんあります。ですが、私がここで指摘しておきたいのは、平成七年度ですから、いわゆる地方分権一括法も施行される前の、中央集権型もいいところの、そういう時代だったわけですね。国が主導して地方にたくさんの事業をやらせた。その結果、箱物ありきで、使われない公共施設とか、車の走らない道路とかといったものがどんどんできた。それから、地方の景気は結局回復せずに、デフレが続いた。さらに、自治体は借金まみれで、その後の行政サービスに支障を来した。

 こういうことを含めて、要は、中央集権的な仕事の仕方が、そしてその公共事業の地方へのさせ方が公共事業イコール悪のレッテルにつながったのでありまして、そういう背景を踏まえて、恐らく、私は、前の政権交代のときは、コンクリートから人へという流れができたんだと思うんですよ。

 民主党政権が言ったそのものがレッテル張りでおかしいという言い方は、私はおかしいと思います。それ以前から、中央集権的な仕事のさせ方、これは自民党時代にやっていたわけですから、これは大いに反省していただかなければならないことだと思います。

 いまだに、現場を知らない中央集権的な、つまり、霞が関で地方のいろいろな、今回だって、実施計画を出させて、それを評価して、そして交付金を出す、こういう仕組みが続いているわけですから、これは、先ほどいみじくも石破大臣が言われた、北海道から沖縄まで一斉にやるんだ、こういう言葉ににじみ出るように、過去のふるさと創生一億円とか、地域振興券とか、リゾート法によるリゾート開発とか、そして今回は地方創生か、こういう流れだと私は思います。

 そういう中で、では、本当の異次元の地方創生というのはどういうものかということを申し上げていきたいと思います。

 先般、一昨日、この予算委員会の地方公聴会で島根県に行ってまいりました。非常によい話が聞けたと思っております。

 まちづくり会社を立ち上げて、ゴーストタウンのようになってしまっていた玉造温泉を立て直した角幸治さんは、美肌温泉のブランド化を進め、商品開発、専門店を設置し、ネットを活用してオンラインショッピングを進め、売り上げが何と数年間で十一倍、雇用も店舗数も著しくふえたという方が意見陳述をされましたが、この方がおっしゃっていました。

 初めに予算、建物じゃなくて、やはり、まずはやる人、そして事業内容、そういったものがあって、予算は後だというわけですよ。その中には、まず人が動くわけですから、若者、ばか者、よそ者と言われる人、それから気のきいた熱意のある公務員、そしてタイミングのよい予算が出たというところがポイントだということであります。

 それから、これは私の経験なんですが、大島委員長もよく御存じの、青森の大間のマグロの話をちょっと紹介させていただきますと、きょう委員の皆さんにはお手元に資料を配付させていただいておりますが、私が青森県に行っておりました十五年ほど前に、青森県の大間、マグロで有名な大間の町に遊びに行っていたんですけれども、実は、大間のマグロは大間で食べることができなかったんですね、当時。全部築地に行って高く売られる、だから漁師の皆さんは、マグロは地元よりも築地に持っていく、こういう形でありました。

 これじゃ寂しいということで、大間でマグロ祭りを始めようということで、大間超マグロ祭りというものが二〇〇一年からスタートいたしました。去年の秋には十四回目が、数えやすいですね、二〇〇一年が一回目ですから二〇一四年は十四回目、こういった祭りに発展をして、今では一万人以上の人たちが本州最北端の町に、半分以上は県外ナンバーの車に乗ってやってくる、こんなお祭りになっているわけですが、ここでも、調べましたところ、町からの補助金というのは二〇〇八年からなんです。それも少しだけです。

 ですから、基本的には、やはり民間の、地元の有志の皆さんがどれだけ動いていくか、そして、そこにタイミングよくそこの地元の自治体がお金を出せるかということでありまして、地方創生元年だから、ことしから全国一斉に始めましょう、こういう地方創生というのは私は違うと思います。

 ラグビーのワールドカップもこの間決まりましたけれども、全国各地十二カ所、会場が決まりました。私の地元豊田スタジアムにも決まりまして、岡崎、西尾、幸田といった周辺の市町村にも波及効果も認められると思います。

 今何が申し上げたいかといいますと、このようなまちづくり、地方創生というのは、あくまで地方自身が地方自身のタイミングで、あるいは規模で、自治体なら行政としての支援をするべきものであって、そのための財源を全部国が握って、そして国がやる以上はやはり一斉になるんですよ。全国一律、一斉に地方創生元年だというふうに始まるわけです。

 このような姿から本当に異次元の地方創生改革をやるんだとすれば、これは税源移譲だと思います。国が税源を握っている限り、国がお金を配る。だけれども、地方が、各自治体が税源をもっともっと持っていれば、自前の収入なんですから、これを適切なタイミングで適切な規模で支出することができる。このような税源移譲というものが極めて地方創生において重要だと思うんですが、総理、いかがでしょうか。総理、お願いします。

安倍内閣総理大臣 地方がみずからの発想で、特色を持った地方、地域づくりが大変重要であるということ、まさにそのとおりだと思いますし、そのもとに我々は地方創生を進めています。その観点からいえば、自由に使える税財源を充実確保することは重要であります。

 また、今回の補正予算における地方創生先行型交付金は、地方の責任と判断に基づく創意工夫を全力で応援するという方針に基づいて創設することとしました。

 すなわち、国の示す枠にはめるというやり方はとらず、地方がみずから目標を設定し、事業を実施し、成果を検証するという自由度の高い仕組みとして措置をしたものでございまして、先ほどもう石破大臣が累次答弁をしているとおり、我々が一斉に金太郎あめみたいなものをつくるのではなくて、これからみんな、アイデアの競争をしましょうということであります。

 すなわち、その中で、ちゃんと意欲を持ってきっちりとやっていこうというところは、恐らく、未来の需要をつかんで伸びていくと思いますよ。しかし、ずっと何にもしていないところに我々はお金を出していくということはもちろんしないわけでありますし、そういうところではこの仕組みをちゃんと正しく使うことはできなくなっていくわけであります。

 一斉にというのは、これからやはり地方を輝く地域にしていこうという、みんなが気持ちを一つにしていくという意味で我々は申し上げているわけでありまして、一斉に何かどんと、俺たちの言うことを聞けということとは全く、その対極にあることを我々はやろうとしているということでございますから、誤解なきよう、よろしくお願いをしたいと思います。

重徳委員 いや、全く誤解しているつもりはないんです。私は、交付金という国から出す仕組みよりも、税源移譲という形で地方の自前のお金を充実させる方がよっぽどいい、こういうことを申し上げているわけであります。

 結局、国の交付金というのは、自治体からすれば人の金ですから、もらえるものをもらっておこう、こういう思想になるわけです。だから、もらったものは使っちゃうわけなんです。だけれども、税源がみずからの自前のお金になれば、上がった税収を必ずしもその年に全部使いません。それはためるときはためるし、それから節約をするというインセンティブにもなります。

 今は、今の国と地方の関係を例えて言えば、お父さんが国だとすると、息子が何かやりたいと言ったときに、何かやりたいなら幾らでも金を使え、お父さんが補填してやる、借金したって、その財源は借金を返すときにはそれは補填してやる、こういう中でやっていますから、使わにゃ損、損なわけですよ、言ってみれば。だから、それはやはり、自分で息子がお金を稼いで、そうしたら大切に使いますよ。こういうことをやりながらでなければ、適時適切な自治体からそれぞれの地域への助成ということだってやれないと私は思っております。

 そういう中で、最後に、税源移譲のもう少し具体的なイメージをお示ししたいと思うんですが、税源といってもいろいろな、地方の税源としてどの税目がふさわしいかという、いろいろな議論があります。

 これは今、二つの例をグラフに掲げておりますけれども、これは人口一人当たりの税収額の指数なんですが、全国平均が一〇〇でありまして、上のグラフが地方消費税の場合、下は地方法人二税、法人税です。

 上の段の消費税は、全国平均からすると東京は少し突出しておりますが、あとは割と偏りの少ない税源となるので、ですから、この消費税の税源というものをより地方に手厚くすべきではないかという考え方が成り立ちます。

 一方で、下の法人税の場合には、これは見てのとおり東京が突出しておりまして、一番少ないのがここでは奈良県、高市大臣の御地元、奈良県ということになっておりますが、その差は六・三倍に上りまして、法人税というのは偏在性が大きい、偏りの大きい税源だというふうな分析をすることができます。

 したがいまして、より自前の税収として、税源として充実させるのであれば、消費税をより地方税としての税源にするべきではないか、このように考えますが、高市総務大臣のお考えをお聞かせください。

高市国務大臣 地方税制につきましては、やはり、税の偏在性が小さくて税収が安定的な地方税体系を構築することが必要であります。法人関係税制、ほかの税と比較しまして、やはり偏在性が小さくて安定的な地方消費税、この充実を図ることは重要でございます。

 こうした観点から、平成十九年には、地方税の偏在是正の方法として、地方法人二税と消費税の地方交付税分の税源交換を基本に検討するということを提案して、その結果、暫定措置として地方法人特別税・譲与税制度が創設されたという経緯がございます。これは、全国知事会も、それからまた地方財政審議会も、このような税源交換に向けた取り組みを提案しておられます。

 これを踏まえまして、平成二十六年度の税制改正において、地方消費税の増収分の範囲内で、法人住民税法人税割の一部を交付税原資化する措置を講じました。

 今後ですけれども、税制抜本改革法ですとか、与党税制改正大綱、それから御提案の税源交換の趣旨も踏まえまして、やはり偏在性のより小さい地方税体系の構築に向けて、消費税率一〇%段階の地方法人課税の偏在是正について検討してまいるつもりでございます。

 先ほど来、委員自身も、平成六年から平成二十二年まで、自治省に入省されてから総務省で御活躍でしたから、よくよく内容は御承知の上だと思いますけれども、例えば地方債の元利償還金、これに対して交付税措置をする、モラルハザードを起こすんじゃないかと、今の仕組みについていろいろおっしゃっておりましたけれども、これまでもこれは順次廃止、縮減を行ってまいりました。

 今、例えば、元利償還金に対して交付税措置をやっている、建設地方債についてそういう扱いをしているのは、防災・減災対策など国民の生命、安全にかかわるもの、それから全国的に見て財政需要が大きく偏在しているもの、例えば整備新幹線など、こういったものに絞り込んで、あと、国と地方を挙げて取り組むべき喫緊の政策課題に対応するものにも、年限等を付した上で限定して行ってきております。

 あわせて、交付税への算入率も全般的に以前の水準よりはかなり引き下げておりますので、モラルハザードを起こさないような体系をしっかりとつくってまいりたいと思っております。

重徳委員 これで終わりますが、先ほどのお父さんと息子の例でいえば、息子の支出をお父さんが補填するために、お父さん自身が決して余力のあるお父さんじゃないんですね、もう赤字国債にまみれておりますので。そういった意味でも、国全体の財政運営、これは地方の財政規律とも深くリンクをしておりますので、こういった国、地方を合わせた議論をこれからもさせていただきたいと思います。

 以上です。ありがとうございました。

大島委員長 この際、足立康史君から関連質疑の申し出があります。柿沢君の持ち時間の範囲内でこれを許します。足立康史君。

足立委員 維新の党の足立康史でございます。

 本日は、地方創生というテーマで集中審議をいただいておりますが、私の方からは福島の再生について特に取り上げて討議をさせていただきたいと存じます。

 私が地方創生ということを考えましたときに、いつも思い浮かべる都市が三つあります。

 一つは沖縄。基地の問題を抱え、戦後の日本をずっと支えてきてくださった沖縄でございます。

 もう一つが地元の大阪であります。これは、東京一極集中の中で大変、以前は経済の大阪ということで、東京、京都、大阪、三府ということで、三つが並び立って日本を引っ張っておったわけで、再び大阪を日本の経済首都にしていく、そうした思いで今我々大阪維新の会としても頑張っているところでございます。

 三つ目が今申し上げた福島でございます。きょう大臣にお越しいただいていますが、四年前、私が二十年勤め上げました経産省を辞職したきっかけが、まさに原発事故であったわけであります。

 我々、今、首都東京で、国会でこうして御討議をさせていただくときに、福島を思うときに、やはり忘れてはならないのはオリンピックとの関係であります。総理が東京都と一緒になって力を尽くしてくださって東京オリンピックの招致が決まった。これは大変すばらしいし、感謝もしているところでございますが、福島の再生なくして東京オリンピックの成功はないんだということは、私は当然のことであると思います。

 総理、これは質問いたしませんが、一つだけ、写真は、これは大丈夫でしょうか。(安倍内閣総理大臣「大丈夫です」と呼ぶ)大丈夫ですか。

 以前、写真がこの委員会で大変議論になっておりましたので、きょうは大変気を使って選び抜いてまいりまして、私が一番好きな安倍総理の写真をつけさせていただいております。

 アンダーコントロール、いわゆる福島の第一原発がコントロール下にあるという話は、きょうは追ってまた取り上げたいと思いますが、まず、私が総理に最初にお伺いしたいのが、規制委員会田中委員長のことでございます。

 言うまでもなく、安倍総理が政権をつくられましてから、名立たる、日銀総裁それから内閣法制局長官、そしてきょうもるる議論になっておりますNHKの会長、人事を行ってこられました。

 規制委員会についてはまだ任期が来ておりませんが、ちょっと、田中委員長に関する御評価と言うのもあれですけれども、もし思うところがおありであればお聞かせをいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 福島原発のあの過酷事故の反省に立って設立をされました原子力規制委員会が仕事を開始して二年半が経過をしました。この間、さまざまな立場から厳しい意見が向けられている中、田中委員長を初め原子力規制委員会は、福島原発事故の教訓を踏まえて、世界で最も厳しい水準の規制基準を策定し、そしてその基準に基づいて科学的、技術的に審査を進めてきた、このように思います。

 引き続き、しっかりとその職責を果たしていただきたい、現在、しっかりと職責を果たしていただいているものと考えております。

足立委員 総理が在任中に規制委員長の任期が来るかわかりませんが、来ましたら再任をいただく、こういうことでよろしいでしょうか。

安倍内閣総理大臣 これはまだでございますし、自民党総裁の私の任期もことしの九月に来るわけでございますが、今申し上げましたように、田中委員長には引き続きしっかりと職責を果たしていただけるものと考えております。

足立委員 今総理の方から、まず自分の再任だ、こういう御発言がございましたが、実は規制委員長の任期というのは五年あります。私、これは大変すばらしいことだと思っていまして、もちろん、余り好ましくない方がそこに座られると、大変困難なところになるわけですが、私は、田中委員長は、きょうもおいでいただいていますが、大変よくお仕事をリーダーシップをとってしていただいていると思います。

 特に私がすばらしいと思いますのは、大変忌憚のない表現で現状をいろいろ評価されておられるわけであります。

 今ちょっとパネルを出させていただいていますが、これは資料でいうと十枚目になります。一連の汚染水の問題等、私は恐らくオリンピックに係る総理の発言も含めてだと思いますが、政府は覚悟がないんだ、こういう表現を使って、要は、水の問題が今問題になっていますが、国にこれを取り扱っていく覚悟ができていないんだということをおっしゃっているし、さらに言うと、ノーコントロールで水が出ていくという状況が生まれるのが、それはもう遠くないんだ、すぐこれはもうあふれ返るんだ、こういうふうにもおっしゃっている。

 また、総理がアンダーコントロールだとおっしゃっていますが、実は田中委員長は、これは四つ目ですが、管理されていない、まあ、一応謙虚というか控え目に、ようなとつけていらっしゃいますが、今は管理されていないような状態なんだ、ある意味では、こうおっしゃっています。

 これは、総理がおっしゃっているアンダーコントロールと何か違わないですか、総理。

安倍内閣総理大臣 これは、私と田中委員長が違うことを言っているのではなくて、違うことに対して発言をしているということだろうと思います。

 福島第一原発では、排水路からの放射性物質を含む雨水の流出など、個々の事象は発生をしています。個々の事象としてそうした出来事が起こっている、これは大変遺憾なことだと思いますが、個々の事象は発生していますが、私は事態を掌握し、政府として一つ一つ対応しているという意味において、状況はコントロールされている、このように申し上げているわけでございまして、廃炉・汚染水対策については、中長期ロードマップに基づいて、また規制の観点から、特定原子力施設の実施計画に基づいて全体をコントロールして、着実に対策を進めているところでございます。

 ただ、つけ加えますと、この結果、福島第一原発の港湾外の放射性物質濃度は、従来から公表しているように、法令で定める告示濃度限度に比べて十分に低いままであるとともに、IAEAからも、周辺海域や外洋では放射性物質濃度は上昇しておらず、WHOの飲料水ガイドラインの範囲内にあり、公衆の安全は確保されているとの評価をいただいているところでございます。

 また、田中委員長の、覚悟はないという御発言でございますが、これは御本人から御説明していただければいいわけでございますが、これは、東京電力福島第一原発の現状について、原子力規制委員長としての考え方、見識を示された、このように思うところでございます。

足立委員 今総理から、委員長に聞くようにということなので、恐縮ですが、田中委員長、覚悟ができていない、これの意味をちょっと改めてお願いします。

田中政府特別補佐人 覚悟のことですが、私が先日の記者会見で申し上げたことですので、私の真意を若干御説明させていただきたいと思います。

 現在、福島第一の敷地には千トンタンクが約千基程度つくられて設置されています。それで、もう敷地にほとんど増設する余裕がなくなってきております。私としては、水をため続けるということは、水が、どうしても、溶けた燃料の冷却とかそういうことでどんどん出てまいりますので、いずれそれがあふれてしまう、どうしようもなくなる事態になるということを防ぎたいということです。

 ですから、ALPSという最終的な処理装置できちっと放射能の濃度を下げて、告示濃度、我々が決めております排出基準以下になったものについては排出させていただく、そのことをやはり福島県の皆さん、漁民の方に御理解を求めていっていただきたい。そうしないと、先ほど申し上げたように、あふれてしまうようなこと、管理できないような状況が生まれることをちょっと懸念して、そういうふうに申し上げたわけであります。

足立委員 ありがとうございます。

 まさに、今、田中委員長がおっしゃったある種の懸念、一F、福島第一の厳しい、四年たつわけですが、いまだにやはり厳しい状況が続いている。それをつぶさに御存じである、誰よりも御存じである田中委員長は、その危機感からおっしゃった言葉がこの覚悟という問題であると思います。

 私は、安倍総理を初めとする内閣に覚悟が足りないと思っています、僣越ですが。

 一つ、ちょっと数字をお見せしたいんですが、これは恐らく、私も見たことがなかったというか、これは私がつくったんですが、東京電力のホームページから、その奥の奥から拾い出してきてつくったシンプルな図でございますが、これはちょっと小さな字で時間軸が見えにくいかもしれませんが、それぞれ、原発の外洋、福島第一の港湾内ではなくて、港湾の外で、東京電力がその海水を分析しているその汚染度だと思ってください。

 左側、右側、それぞれ計測場所が違うわけでございますが、これはいつのデータかというと、発災直後でございます。二〇一一年の三月から四月にかけて、五月の第一週ぐらいまで入っています。要すれば、発災直後の二カ月のグラフなんです。

 いいですか。一万八千ベクレル・パー・リットルあるいは一万二千ベクレル・パー・リットルという大変な汚染がそのときはなされたわけでありますが、政府あるいは関係の皆様の大変な御努力で、今こうして総理がアンダーコントロールと言っていただくところまで来ているわけでありますが、私が申し上げたいのは、何か今それがアンダーコントロールではないじゃないかとか、何かそういう言葉の揚げ足を、どこかの党のようなことを言うつもりは毛頭ございません。しかし、大事なことは、このグラフ、今申し上げたように二カ月です、二カ月。この直後に実はNDが出てきます。要すれば、計測できなくなるんですね。

 総理は、恐らく事務方からレクを受けられて、今、外洋では検出限界以下にあるとか、あるいは告示濃度限度以下であるとかいうことでレクを受けられていると思いますが、私が申し上げたいことは、発災直後に、いいですか、四年前の五月に既に検出限界を下回るんです。それが外洋の、要すれば港湾の外の海というものだと私は思うし、恐らく、田中委員長も先ほどおっしゃられたように、いずれキャパシティーの問題が出てくるんだから、いずれ海洋に、もちろん害がないような形ででありますが、排出をしていくことも、漁業関係者の方の御理解も得て必要だ、そういう危機感を先ほどおっしゃったわけであります。

 実は、その危機感を田中委員長は今一人で担っていらっしゃって、総理は、海外に行かれてアンダーコントロールだと言って、いや大丈夫だ、検出限界以下だ、こういうことをおっしゃって、あるいは告示濃度限度の十分の一だとか、あるいはWHOのあれから百分の一だとか、そういうことを胸を張っていらっしゃるんですが、これは胸を張るような状況だと総理は御認識ですか。総理、お願いします。

宮沢国務大臣 今のお話につきましては、トリチウム水の取り扱いというのは、御承知のとおり……(足立委員「トリチウムじゃないですよ」と呼ぶ)トリチウムを含む水の扱いにつきましては、大変微妙な問題がございます。

 正直に申し上げまして、規制委員会の方針が発表されたときに、私のところには、福島の漁連の関係者、また全漁連の方が来られまして、我々ともよく相談してほしいということがありまして、私どももしっかり相談をいたしますということを申し上げました。

 東電としても、これを全く放置しているわけではございませんし、我々としましても、トリチウム水の取り扱いについては、現在、国の汚染水処理対策委員会のもとに設置したトリチウム水タスクフォースにおいて、さまざまな選択肢について検討を進めております。決して規制委員長一人に悩んでいただくのではなくて、我々としてもしっかりと悩みながら検討していきたいと思っております。

安倍内閣総理大臣 今大臣から答弁をさせていただきましたように、もとより田中委員長一人の双肩に全てを背負っていただくということでもありませんし、東京電力に全てを任せて国が後ろに下がっているということではなくて、こうした汚染水対策についてもしっかりと国が前面に出てこの問題の取り組みを進めていきたい、このように考えております。

足立委員 総理はそうしてお言葉では前に出て、前面に立ってということを、総理だけではありません、今の安倍政権、内閣閣僚は皆さんがそうおっしゃるわけでありますが、しかし、本当に前面に立っているようには全く私には見えないわけであります。

 例えば、今月にも、恐らくこの三月中にも川内原発の工事等の認可がおりる見通しになっていると仄聞をしております。その後、二、三カ月は事前の検査がありますから、本当の再稼働は夏になるのかもしれませんが、いわゆる政府が再稼働にかかわるポイントは、この三月中に、最後、そこが来るんです。三月中に政府がかかわる最後のポイントが来て、規制委員会がかかわるわけでありますが、いずれにせよ、その後は九州電力が粛々と夏の再稼働に向けて動いていく、また、関西では高浜原発がその後を追いかけているわけであります。

 私は、地元は大阪でありますが、大阪には、琵琶湖もあり、淀川もあるという中で、地域の方々も大変コンシャスであるわけでありますが、再三この委員会でも申し上げておりますとおり、政府の原発に対する姿勢は十分だと言えません。その最たる例が損害賠償の問題であります。

 これは、去年、おととしのこの予算委員会で、私は総理がいらっしゃる場で同じ問題を取り上げました。誰も答えられません。一体、支援機構法で速やかに見直すといった政府の役割、国の権限と責任、いいですか、福島第一原発の事故を教訓として、政府は、日本政府は速やかに原子力事業に関する国の権限と責任について見直す、その役割について見直すと言っていたじゃないですか。見直したんですか。

宮沢国務大臣 まず、原賠法の見直しにつきましては、私の権限というか文科省でございますけれども、これにつきましては、内閣で原子力賠償制度の見直しに関する副大臣等会合が開かれまして、ことしの一月でございますけれども、原子力委員会において検討することが適当との方針が決まり、原子力委員会がその方針を、そういう形で検討を進めることとしております。

足立委員 とにかく、見直していないということでありまして、大変遺憾であります。

 再稼働との関係は、まだ政府がそういうことは見直していないけれども再稼働はするんだよということであればまだロジックは成立するわけですが、政府は、安全規制も含めてさまざまな問題を処理した上で、新しい規制体系のもとで再稼働すると言っているわけでしょう。なぜ安全規制だけは見直したのに、賠償責任に関する国の役割は見直さないのか。おかしいと思うんですよね。

 もう一つおかしいのが避難計画。これは今、ずっと川内でも、また福井でもいろいろな議論がございます。これはもう時間もございませんから詳しくは御説明をしませんが、避難計画がちゃんとできているかどうかについても、私は、安倍総理を初めとする内閣は、もうちょっと責任を持っていただく必要があると思いますよ。

 これは、政府の公務員の皆さん、よくやっていらっしゃると思います。きょうも川内の避難計画の概要を持ってまいりました。これは、それぞれの市町村がつくった避難計画ではばらばらだから、こうして大変大部の、これも概要だと思いますが、「川内地域の緊急時対応」というすばらしい資料をつくられていますが、これをつくっているのは、県でもない、市町村でもない、内閣府なんですよ。そして、原子力災害対策指針というものが規制委員会によってつくられ、先日も大変すばらしい形で改定をされております。

 実質的には国がやっているんです。実質的には既に国がやっているのに、なぜもっと前に立たないんですか、総理。

安倍内閣総理大臣 この避難計画あるいは地域防災計画は、住民の方々の避難ルートあるいは避難先といった、まさに地域に住んでおられる方々がよく知っている、実情を熟知する自治体が中心となって策定するのが適切であるという考え方であります。一方、もちろん、自治体だけではなく、国の関係機関が大きな役割を担わなければ実効性のある計画はできません。

 このため、避難計画や地域防災計画の策定に対しまして、安倍政権になってから国の関与を大幅に強めたわけでございまして、国が前面に立って自治体をしっかりと支援することとしています。

 具体的には、原発所在地域ごとにワーキングチームを設置し、関係省庁が関係自治体と一体となって避難計画、地域防災計画の充実強化を進めていき、その上で、国と関係自治体のワーキングチームで、避難計画、地域防災計画がIAEAの国際基準や原子力災害対策指針などに沿った具体的で合理的なものであることを詳細に確認し、原子力防災会議で国として了承することとしております。

 さらに、先日、自民党の原子力規制に関するプロジェクトチームの提言を踏まえまして、災害対策基本法に基づく国の防災基本計画を改定し、これらの取り組みを明確に位置づけることを検討していくこととしております。

足立委員 今総理の方から原子力防災会議ということで言及をいただきましたが、これは総理、まさに総理がおっしゃるように、自民党政権になってから大変関与が深まったと思います。しかし、それは総理が関与しているんじゃないんですよ。内閣府の職員が頑張っているんです。

 総理が何をやっているかはこれですよ。総理が何をやっているかはこの紙に書いてあります。国と避難計画とのかかわりは、私は、法律にどこかに書いてないのかと。書いてないんですね。国と避難計画との関係はこの紙一枚です。この紙一枚。国は何をするか。都道府県や市町村の計画を充実化するのを支援する、次に、その進捗を確認する。

 これが総理の役割ですか。

安倍内閣総理大臣 先ほど申し上げましたが、原子力防災会議で国として了承するわけでありますが、まさにこの会議の議長は私であります。まさにそういう意味において、私が責任を持って了承をしていくということになるわけであります。

足立委員 そうであれば、その旨やはり法律に書くべきじゃないですか。

望月国務大臣 最も地域のことがよくわかる自治体がまずつくる、そして国が一体となってやっていくというような形を実はとっています。

 これはもう、自治体の方から国がそういう意味で積極的にアドバイスをしていただきたいということで、ワーキングチームをつくってやってまいりました。そこで、今回さらに、防災対策基本法に基づく国の防災基本計画を改定し、これらの取り組みを明確に位置づけることを検討しております。

 これはもう既に三年以内の見直し検討チームということで、PTの提言も出ておりますので、そういったことで進めていきたいと思います。

 これは、国の制度の中に位置づけるという意味では、防災分野の最上位の計画にこれを書き込むということになりますので、これをしっかりと進めていく、こういうことでございます。

足立委員 国民の皆様は、今ずっと内閣の、総理を初め皆さんの答弁を聞いていて、いかに国がこの問題について向き合っていないかということを痛感を、よく御理解をしていただけたことと思います。

 私たち維新の党は、これはまさに福島第一原発の教訓を本当に生かせていないと。福島第一原発の教訓を生かすのであれば、もっと国が、法律上もしっかりと位置づけて、きょう申し上げたような国の権限と責任、損害賠償の問題、避難計画への関与、さらには地元同意。これも、地元同意も結局電力会社がやってくださいということで、地域は多様だからと逃げているわけであります。

 維新の党は、地元同意の範囲についてもしっかりと法令に規定をしていく、そうした原発再稼働責任法案を今立案しておりまして、近々上程をしてまいりたいと存じますので、ぜひ、総理、これに向き合って、国の役割についてしっかりと向き合っていただきたい、こう思います。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 まさに私どもは、しっかりと国が向き合い、そして国もしっかりと正面に立っていく、こういう考え方のもとに、先ほど望月大臣から答弁をいたしましたように、災害対策基本法に基づく国の防災基本計画を改定して、中央防災会議、これは私が議長を務めるわけでございますが、そういう形でしっかり法定していくことを今検討しているところでございます。

足立委員 時間がなくなってまいりましたが、どうしてもあと一つだけお聞きしないときょうは終われないんです。

 ことしはCOPがございます。COPに先立って政府が、要は地球温暖化対策でございますが、国際協議が本格化をしていくわけでありまして、夏にはいわゆるベストミックスを定めていくということだと思います。

 原発が一五パーだ、二〇パーだ、二五パーだということは、すなわちそれに先立って政府が、原発のリプレースの問題、これについて明確にその要否を判断する、こういうことでよろしいですね。総理、お願いします。総理に通告申し上げています。

宮沢国務大臣 では、私の方から参るように。

 エネルギーミックスにつきましては、できるだけ速やかに決定するということで、現在、審議会において検討していただいております。

 そして、リプレースのお話ございましたけれども、政府としては、従来より申し上げてきておりますけれども、現段階では新増設、リプレースは想定しておりません。

大島委員長 足立君、時間がだんだん来ておりますから、短目にやらないと、他党に影響します。

足立委員 では、もう終わりますが、ここにお示ししているのは、まさに四十年運転制限のもとでどういうタイミングで原発が減っていくか、そういう図でございます。

 私は、ことしCOPに向き合う中で、リプレースの問題をこの夏に、政府がもしこれを、正面から向き合わずに、また国民にはっきりとその旨を申し上げない中で再稼働を進めるのであれば、それは徹底的に反対をしていきたいと思いますし、法案の形で我が党の立場を鮮明に打ち出して論戦をしてまいりたい、このように決意を申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

大島委員長 これにて柿沢君、今井君、重徳君、足立君の質疑は終了いたしました。

 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 きょうは、いわゆる地方創生の集中審議とされております。地方の現状は極めて深刻です。

 そこで、過疎地域や離島など、生活条件の確保に困難のある条件不利地域における現状についてお尋ねをしたいと思います。

 昨年十一月の地方創生特別委員会の質疑の際に、私、石破大臣にお尋ねをいたしました。

 石破大臣も、合併をしたがゆえにより人口が減ってしまったということについて、同じ問題意識を持っていると答弁をされておられました。

 そこで、石破大臣にお尋ねしますが、平成の大合併が、過疎地域や離島など、その合併自治体の周辺地域のより大きな人口減少をもたらしたのではないのか、このように考えますが、石破大臣のお考えをお聞かせください。

石破国務大臣 昨年の特別委員会の議論でございます。

 そこで私、総務省の答弁、すなわち、平成十二年と二十二年を比較して、過疎地域の人口が一二・三%の減であったのに対し、一部過疎を有する市町村の過疎区域の人口は一五・一%の減であったということを申し上げました。数字を見れば、実際そうだ、現実はそうだということでございます。

 何でこんなことになったのか。合併をしたからこうなったのか、それとも、それまでもそういう地域はどんどん人口が減り続けておって、合併もそうかもしれないが、そのほかに、例えば企業が撤退をしたとか、鉱山が閉山をしたとか、そういうような理由によってこういうことになったのか、そこは詳細に分析をしなければならないと思っております。

 数字だけ見ればそのとおりなので、それがどうしてそういうことが起こっているのかということをきちんと分析し結論を得なければ対策というものは打てないと思っております。

 合併すなわちそういうことを招いたのだという短絡的な議論にくみするつもりはありませんが、その数字がどうしてそういうことになったのかは、地域地域の実情をよく分析、把握する必要があると政府としては考えております。

    〔委員長退席、平口委員長代理着席〕

塩川委員 数字だけ見ればそのとおりということで、合併によって周辺地域の大きな人口減少をもたらしたということについては事実としてお認めになっておられて、それが単純に合併なのかという話でございました。

 パネルをごらんいただきたいんですけれども、いわゆる平成の大合併を前後する二〇〇五年と二〇一〇年において、過疎地域と離島の人口がどのように変化したかの図であります。

 総人口と過疎地域、一部過疎地域を有する市町村の過疎区域における二〇〇五年と二〇一〇年の国勢調査を比較した人口増減率を見ると、総人口はプラス〇・二%ですが、過疎地域はマイナス七・一%、合併した自治体の中の過疎区域を取り出すと八・七%の減少ということで、より大きくなっている。合併によって、合併自治体の周辺部に当たる過疎区域で、過疎地域全体と比べても人口減少が大きい。

 また、離島について見ても同様に、離島だけで自治体が構成されている離島である全部離島と、平成の大合併により本土の自治体と合併した離島部分について見ると、全部離島の場合はマイナス八%、本土の自治体と合併した離島の場合はマイナス一七%、極めて大きくなっております。

 平成の大合併という、まさにその前後の数字を比較したときの全国ベースの数値としてあらわれているというところに、合併との相関関係があると言わざるを得ない。

 それは、合併によって、周辺部の過疎や離島部分では、役所、役場がなくなって、地域課題解決に当たる自治体職員が減り、地方交付税が減額をされ、周辺部での行政投資も減少する。結果として、この合併というのが周辺部における自治体機能を低下させた、このことが大幅な人口減少をもたらしたんじゃないのか。こういうことについては、大臣、いかがですか。

石破国務大臣 物事には何でも光と影があって、だから、合併すなわち全てだめだということにはならぬだろうと思います。合併しなければどうなっていただろうかということをまた考えねばなりません。薬を飲んでも効かなかったじゃないかと言われますが、飲まなかったらどうなったんですかということもあわせて考えねばならぬという、当たり前の話ですが。

 ただ、委員がおっしゃいますのは、私はやや実感を共有するところがございまして、役場もなくなっちゃいました、町長さんも村長さんもいなくなっちゃいました、議員もいなくなってしまいました、そこの職員も、今までは見知った人がずっとそこの役場の職員でいたのに、支所ということになって、余り知らない人がやってきて、三年か四年でいなくなっちゃいますということは、現実としてあちらこちらで起こっていることではないかというふうに思っております。それが地域の疲弊をさらに加速させるようなことがありとせば、それをどのようにして補っていくのかということは、私ども、きちんと考えねばならないことだと思います。

 私、農林水産大臣のときに、地域マネジメント法人ということを考えました。それは、地域にまだ残っているインフラがございましょう、郵便局であり、土地改良であり、あるいはJAであり社協であり、そういうようなインフラがたくさん残っています。そういうものを地域マネジメント法人として編成することはできないだろうかということで法律を書き始めたところで政権交代になっちゃったわけであります。

 やはりそういうものは必要なのであって、その地域地域の人々が、行政の光が当たらなくなっちゃいました、そこで何が起こっているかわからなくなりましたということであれば、合併の意味合いというものが減殺されることになるだろうと思っております。

 地域をマネジメントする法人というものはいかにあるべきか、それと財政あるいは交付金というものはどういう関係にあるか、関係省庁ともよく連携をとりながら、そういう地域の疲弊というものを食いとめていく努力はしなければいけないと強く認識しておるところでございます。

塩川委員 行政の光が当たらないという点でも、地方自治を保障する仕組みが大きく後退したんじゃないのか、このことが極めて問われているわけでありますし、そういう点でも、財政上の問題も重大だということも言わざるを得ません。

 総理にお尋ねいたしますけれども、自治体の財政を支える役割を果たす地方交付税について、合併した市町村、全国で五百九十団体あります。この合併した市町村は、合併に伴って、地方交付税の総額が七兆六千百三十六億円から六兆六千五百七十億円へと、九千五百六十六億円、一割以上も減らされる、こういう見通しとなった。こういう将来の大幅な地方交付税の減少という見通しのもとで、合併を行った自治体においては、地方交付税、一割以上も減るということが、まちづくり、地域づくりにおいての大きな支障をもたらしたんじゃないのか。

 総理にお尋ねしたいのは、合併を通じて地方交付税を一割以上も減らそうとした、そのことそのものが、地方の応援だったと言えるのか。この点について、ぜひお聞かせください。

安倍内閣総理大臣 この平成の大合併でございますが、昭和の大合併もございました。それに次ぐ大きな合併であったのでございますが、では、そもそもなぜ合併をしたのかということでございます。

 一つは、ある意味、行政改革ということもあったんだろうと思います。

 人口が減少していく、いわば生産人口が減少していく中で支え手が減っていく、こういう大きな変化がある中において、行政サービスを支えるのも、地域に住む住民の税金によるものでございます。

 今までのようなたくさん市町村がある状況で、果たしてそれを支えていくことができるかどうか。市町村には、職員が、市町村長がおり、また、町議会議員、村議会議員がたくさんいるわけでございます。そうしたものを考えたときに、その支え手の村民、町民あるいは市民において大きな負担になっていくということも確かでございまして、その中において、ある程度の効率化を図っていくことはやむを得ない措置であったのではないかと思います。

 その中において、しかし、合併を行う上において合併特例債というものを出して、合併をいわばある意味においては生かしてその地域が未来をつくり上げていく、まさにそこで各地域のさまざまな創意工夫も生かされるということになったわけでございます。

 もちろん、今、石破大臣からも話があったように、その効果がどうか、いわば人口に対してどういう効果があったかということは冷静に分析をしていく必要があるわけでございますが、合併という道を選ばなかった地域は、そもそも自分たちでやっていけるということを考えていた地域はそうであった、しかし、これはやはりもう合併しないと無理だなと思っていた地域は、合併しようがしまいが人口が減少していくという状況にあったということも言えるわけでございますが、いずれにせよ、しっかりと冷静に分析をしていくことが大切ではないかと思います。

 こういう状況の中において、我々は、しかし、地方がこれから活力を持って、地域の特性を生かした、まさに異次元の地方創生を進めていきたい、このように思っております。

塩川委員 総理の答弁の中でも、人口減少の課題があるから合併だというお話もありましたけれども、しかし、合併によって、実態として、より一層その周辺部での人口減少が加速をした、この事実こそしっかりと受けとめなければいけない。そういった平成の大合併の、まさに人口減少を加速させたというこの現実から出発して、合併そのものの問題を改めて反省とすべきだ、このことを申し上げるものであります。

 異次元の地方創生というお話もありましたけれども、この地方創生に基づく連携中枢都市圏構想というのも、中心と周辺、こういうやり方でいえば、まさに周辺地域や集落の疲弊をもたらした平成の大合併と同じ過ちを繰り返すことになりかねない、このことを強く指摘しておくものであります。

 その上で、合併しない小規模自治体が頑張っている、総理や、また石破大臣のお話でもございました。自立している、頑張っている小規模自治体の支援をぜひとも必要としているときだと思います。

 そこで、困難を抱えている離島の問題をきょうは取り上げたいと思っています。

 この間、私は、議員立法であります改正離島振興法の実務作業にも携わり、各地の離島にも足を運んでまいりました。離島の一番重要な課題が、離島航路の問題があります。

 ここで、鹿児島県三島村の離島航路について紹介をしたいと思います。

 三島村は、鹿児島市から南西百キロから百五十キロの洋上に点在をします、竹島、硫黄島、黒島の三つの島から成ります。三百人余りの方が住んでおられる村ですけれども、交通手段はもちろん船ですが、赤字路線のために民間による経営がなされないことから、住民の唯一の生命線として、村営の定期船が週三回、三つの島々と鹿児島を結んでおります。

 こちら側に運航ダイヤが書いてありますけれども、一日目では、午前九時半に鹿児島を出港して、竹島を十二時四十五分に出港、硫黄島は十三時三十五分、黒島の大里地区は十五時、そして黒島の片泊地区に十五時三十分に入港し、そこで一泊して、二日目、翌日八時、黒島片泊を出港し、黒島の大里、硫黄島、竹島として、鹿児島に十四時に入港する。つまり、二日で一巡する、それも、行って戻るというコースになっているわけです。

 赤字がかさむため、週三便を限度として運航しておりますので、村から本土へアクセスできるというのは、週三回に限られるわけです。週三便行って帰ってくる、その帰ってくるときだけですから、週三回になってしまう。つまり、急な用事ができても、一週間のうち四日は、その日のうちに本土に行くということができない。

 住民の方が求めておられるのは、医療についての課題でございまして、急病でも、船が出た後だったら、船を利用するということになれば、翌々日に本土の病院に行くことになる、こういうことについての心配の声というのが共通して出されているわけであります。

 ですから、三島村の要望というのは、鹿児島からこの三つの島を回って黒島に入港した後、鹿児島に折り返すのではなくて、黒島から枕崎に行くルートを、直接本土につなぐルートとして、枕崎に入港する航路を実現することであります。

 そこで、太田国交大臣にお尋ねいたします。

 三島航路は、村民の生活航路であり、本土とを結ぶ唯一の交通手段、海の国道として、生活物資の輸送のみならず、医療、福祉、農林水産業、教育、行政サービス等、村民の生活全てにおいて必要不可欠な航路であります。

 三島村の要望というのは、黒島と枕崎をつないで、本土と村を結ぶ航路の一日一便の運航体制の実現であります。枕崎航路をつくることによって一日一便の運航体制を実現したい、こういう要望にぜひとも応えていただきたいと思いますが、いかがですか。

    〔平口委員長代理退席、委員長着席〕

太田国務大臣 離島の方たちが、生活ということから考えましても、できるだけ利便性を獲得するということは大変重要なことだと私は思っております。

 現在、鹿児島県と三島村では、黒島から枕崎の間について、医療の受診機会の確保等の観点から、この航路を延伸することを検討しているというのは御指摘のとおりでございます。鹿児島県と、運航主体でもある三島村は、共同で実証運航を行い、需要の確認を行いながら、費用負担等に関する協議を進めていると承知をしております。地元では、その協議を調え、航路の延伸に関する海上運送法に基づく許可申請を近々行いたいとの意向があることを伺っております。

 申請が提出された際には、輸送需要への適応、安全性の確保等について審査の上、適否を判断したいというふうに考えています。

 また、鹿児島―黒島間は現在でも補助航路となっておりますが、延伸部分についても補助対象とするよう要請があった場合について、各方面からも要望をいただいているところでありますが、これらを踏まえまして、島と本土を結ぶ、代替性のない、必要不可欠な航路であるかどうか、買い物や通院などの生活需要があるかどうかということを申し上げているわけでありますけれども、需要に対応した適切な運航計画となっているかどうか、これらを踏まえまして検討を行ってまいりたい、このように思っています。

 近々、そうしたことについての正式な申請を受けまして、判断をさせていただきたいというふうに思っています。

塩川委員 適否の判断というお話がありました。しっかり受けとめてほしいんですけれども、村の要望というのは、一日一便の運航なんですよ。そこにつながるような、そういう方向での対応をするというふうに約束できますか。

太田国務大臣 できるだけ要望に従いたいとは思っておりますが、判断材料でもございますものですから、先ほど申し上げたように、適否を判断させていただきたいというふうに思っているところでございます。

塩川委員 しっかり受けとめていただきたい。

 三島村は、全国の離島でも定住対策の取り組みの先駆けとなったところでもあります。この二十五年間で、三百人余りの今の人口ですけれども、累計で百六十人のIターン者を数える。離島留学でも、平成九年から二十六年度で二百八十七人を受け入れるという実績もあります。大いに頑張っておられるわけです。

 枕崎航路が実現をし、一日一便体制になれば、さらに地域おこし、仕事興しにつながっていく、このことをぜひとも、村の、島民の皆さんの切実な要望として受けとめて、対応を改めて求めておきます。

 そこで、総理にお尋ねしますが、離島を抱える自治体の皆さんでつくる全国離島振興協議会、全離島は、離島航空路への支援とともに、離島航路支援の抜本拡充を要求してまいりました。

 全離島は、離島航路は離島住民にとって何物にもかえがたい根幹的な交通手段であり、離島航路の公共性は本土における幹線道路や鉄道の比ではない、しかも、離島航路の安全性、確実性、快適性並びに就航頻度は本土におけるいずれの交通機関に比べても劣っている。

 例えば三島村も、十一月から三月の時期はしけで欠航するなんということがたびたびあるということでもあります。

 全離島の要望では、航路は離島にとって生命線であり、真の離島振興を実現するためには、従来の交通政策の延長ではなく、抜本的な対策が待ったなし、離島航路を海の国道として位置づけ、全ての離島航路に対する支援を抜本拡充することと要望しています。

 この要望をしっかりと受けとめていただきたいと思いますが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 私の地元にも六連島、蓋井島と二つの離島がございますので、航路がいかに重要であるかということは十分承知をしているつもりでございます。

 離島地域においては、地域住民の貴重な足を確保するとともに、豊富な観光資源を活用し、交流人口を拡大していくことが非常に重要と認識をしております。

 政府としても、離島航路補助金について、従来の運営費補助に加えまして、船舶の建造や島民向け運賃割引のための補助を導入するとともに、離島地域が本土からの観光モニターを招致する際の経費を補助するなど、双方の交流促進のための取り組みを行っているところでございます。

 今後とも、地域の御要望も伺いながら、自治体などと協力をしつつ、離島地域の交通利便が向上するよう最大限に取り組んでいく考えでございます。

塩川委員 全国二百六ある離島航路というのは、その住民の皆さんにとってまさに海の国道であります。陸の国道であれば、税金で道路を整備し、利用者の方は無料で利用ができる。しかし、海の国道の場合であれば、そのためには利用料も払わざるを得ないという点でも、海の国道の離島航路も、本来、無料で利用できるような、こういった取り組みこそ、地域格差の是正につながるということを強く申し上げておきます。

 次に、地方の仕事興し、中小企業に仕事が回る取り組みについて取り上げたいと思います。

 総理は、施政方針演説で、地方の仕事づくりを進めると述べておられます。また、施政方針演説の地方創生の部分で、政府調達では、新たなビジネスに挑む中小・小規模事業の皆さんのチャンスを広げていくと政府調達のお話をされています。

 これは、官公需法、国や地方における発注について、官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律に基づいて地方の活性化を図る、こういう趣旨だと思いますが、総理にお聞きいたします。

安倍内閣総理大臣 官公需法は、国等による物品などの調達において、中小企業の受注機会を確保し、中小企業の発展を図ることが目的であります。

 具体的には、中小企業向けの契約目標額や中小企業の受注機会の増大のための措置を盛り込んだ国等の契約の方針を毎年度閣議決定し、国等が率先して中小企業の受注機会を拡大することとしています。こうした取り組みにより、平成二十五年度の中小企業向け契約額は、官公需総額の過半となる約三・四兆円となっています。

 このように、官公需法は、中小企業の受注機会の確保において重要な役割を担っていると認識をしています。

 さらに、今国会において官公需法を改正し、創業から十年未満の企業を優先するための枠組みをつくり、新たなビジネスに挑む中小・小規模事業者の皆さんのチャンスを広げることを考えております。

塩川委員 今の御答弁にもありましたように、国や地方公共団体が物品の調達や役務あるいは建設工事を行う際に中小企業者の受注機会の確保を図る、それをもって中小企業の発展に資するものにしようというのが官公需法の趣旨であります。

 パネルを用意いたしました。

 官公需の実績はどうなっているか。これは、国や政府機関におきましては年間約四兆円の規模であります。こちらのパネルは地方の実績ですけれども、地方自治体で、約十兆円が中小企業、小規模事業者向けの契約となっております。地方において、中小・小規模事業者の仕事興しに大きな役割を果たしているのが官公需法であります。

 パネルでごらんいただいてわかりますように、地方公共団体の官公需契約実績を都道府県別に出しております。

 都道府県と東京特別区及び政令市を含む人口十万人以上の市の実績の合計となっています。例えば、北海道では契約実績額が六千六百七十七億円、青森県では千四百五十億円、このようにあって、右下の方に合計額がありますけれども、先ほど申し上げましたように、十兆円を超えるという額であります。

 そこで、これは地方の現状ですけれども、国の官公需契約の実績の総額の推移がこちらのパネルとなっています。

 国や政府機関等における官公需の契約実績の年次別の推移を見ると、平成二十年度、中小企業向け契約の割合が四六・一%だったものが、二〇〇八年度から二〇〇九年度にかけて、四六・一%が五三・一%へと大きくふえております。ここにあるように、赤い折れ線グラフがぽんと上に上がっているわけですけれども、こうなっている理由というのは何かを宮沢大臣にお尋ねします。

宮沢国務大臣 二十一年度以降、分母を正確にしたということでありまして、官公需法においては、中小企業、小規模事業者の受注の可能性が想定されない契約まで受注機会の増大を図る義務を課すことは適切でないと考えまして、二十一年度以降、武器、航空機、大型船舶等、中小企業、小規模事業者の受注の可能性が想定されない契約を除外して集計した結果でございます。

塩川委員 それは言葉が足りないんじゃないでしょうか。今言ったように、もともと中小企業の受注が想定されない契約を除いた、つまり、分母が小さくなった。分母が小さくなったために、このように率が高まったということであります。

 その場合に、防衛装備品のようなお話もされましたけれども、そもそも皆さんが示したのは、各府省にこの実績の取りまとめということで中小企業庁が示したというのは、WTOの政府調達に基づく適用基準額、これに基づいて取りまとめをするように実際には要請していたんじゃありませんか。

宮沢国務大臣 詳細には承知しておりません。

塩川委員 そんなはずはありませんよ。中小企業庁が各府省に出した文書の中にはっきり書いてあるじゃありませんか。何でそんなことを大臣が知らないんですか。余りにもおかしいんじゃないですか。

 改めて、大臣に。

宮沢国務大臣 正確に申し上げますと、規模、特殊性及び専門性等により、中小企業者の入札参加が明らかにないと考えるものは対象外とします。

 例として、特許権等の権利に基づきまたは特殊な設備、技術の保有により、特定の者に履行が限定される機械設備等の製造、建設、修理請負契約、大規模な放射能測定業務または除染業務ということでありまして、WTOの関係も、そのとおりでございます。

塩川委員 今確認しましたように、中小企業庁の、その契約について言えば、WTOの政府調達協定の適用基準額で線引きをして、この額よりも大きいものは中小企業はとれない仕事なんだと。中小企業はとれないということをもって、ばっさりと分母から削ってしまったために率が上がったというだけなんですよ。

 ごらんいただいてわかるように、国等の政府調達協定の適用基準額のところですけれども、そもそも、WTOの政府調達協定というのは、政府が調達をする、そういう物品や工事やサービスなどにおいて外国企業にも自由化をするものであり、自由化する政府機関の範囲と自由化する調達の最低基準額、これは運用基準額、適用基準額といいますけれども、これを締約国に約束するというものであって、それぞれ、SDR、特別引き出し権と言われる国際的な価値の単位に基づいて、国や地方公共団体それぞれの基準を定めています。

 二〇一四年度以降を見ると、国の場合、物品は十万SDR、これは邦貨換算額、日本円で換算すると千三百万円、建設工事は四百五十万SDR、六億円、役務のうち設計、測量等の建設関連サービスは四十五万SDR、六千万円、一般サービスは十万SDR、千三百万円とあるとおりであります。

 官公需法の中小企業向け実績の把握に当たって、このWTO政府調達協定の適用基準額以上の契約を除いたために、分母が小さくなって比率が上がったというのが実態であります。何ら努力を強めたという話じゃないということを言わざるを得ません。

 実際に、WTO政府調達協定が地元中小企業の官公需契約の妨げとなる事例が生じています。

 二〇〇九年度の補正予算、これは麻生内閣のときでしたけれども、スクール・ニューディール事業というのがありました。学校での地デジテレビの購入などに活用されたものですが、文部科学省の地方向け補助金交付決定通知にも、事業実施に必要な発注を行う際には、地域経済活性化の観点から地域の中小企業の受注機会の増大に努めるようお願いすると書いてあります。地域経済振興策として行って、中小企業の受注機会を増大するんだと、まさに官公需法の趣旨での、そういう通知も行っているわけです。

 しかしながら、京都府では、知事が、府議会の答弁の中で、分割発注にできればそれにこしたことはないが、担当は文科省であり、文科省に確認する中で、WTO協定に照らして非常に危ない、危険だと指摘を受けたと答弁をし、実際、やむを得ず、六十九校、百九十一台のテレビと設置工事をまとめて発注する。それで、受注、落札をしたのは東京の大手企業だったということであります。

 文科省にお尋ねをいたします。

 今紹介をした京都府の事例で、その京都府の問い合わせに対して文科省はどのような回答を行ったんですか。

河村政府参考人 お尋ねのありました京都府の担当者からのお問い合わせは、中小企業への配慮について、WTO政府調達協定を優先すべきかどうかという御質問でございました。

 当時の文部科学省の担当者としては、WTO政府調達協定において、この協定の適用を回避する意図のもとに、いかなる調達も分割してはならないと規定されており、この協定の枠内での適用であるというふうに回答したと承知しております。

塩川委員 要するに、地域振興策に基づく分割発注よりもWTOの政府調達協定を優先するという対応を述べたということであります。

 ですから、ほかの事例でも、例えば広島市でも、テレビの大量購入に量販大手が参入、落札をした。それは、WTO政府調達協定のため、地元中小業者に限定した入札ができなかったということも報道されているところであります。

 つまり、WTO政府調達協定を理由にして、地元中小企業の官公需契約に支障が生じていた。文科省の対応などは、この官公需法の趣旨にもとるものであります。

 実際には、その後、京都府においても、商工団体の働きかけもあって、分離分割発注を行う。全部丸めてじゃなくて、学校単位とか、教育事務所単位とか、合理的な分割発注というのは当然できるわけですから。こういった形で、一方での地元中小企業への振興策を図る、これをしっかりと対応する、こういうことは行えるわけで、外国企業から訴えられた事例も全くありませんし、このような運用基準額を口実に地元中小企業の仕事を損なってきたことは極めて重大だと言わざるを得ません。

 宮沢大臣に重ねてお尋ねしますけれども、この官公需の実績集計に当たって適用基準額以上の契約を除くというやり方を行った、このことが、結果として今言ったような事例を生んだんじゃないのか、一律に中小企業の受注機会の確保を図る対象から外してしまっていたのではないのか。この点はいかがですか。

宮沢国務大臣 あくまでも、実際に中小企業から、落札といいますか、購入できる割合を高めるということが一番大事なことでありまして、例えば先ほどのお話ですと、防衛庁の関係が実は一番大きく減っておりまして、二十年から二十一年にかけて、官公需の総額が九兆から七兆九千億ぐらいに減っております、一兆一千億。そのうち、防衛庁分が八千五百六十七億ということでございまして、決してそういう趣旨でやったものではございません。

塩川委員 防衛省だけじゃないですよ。全部の役所で減っているんですよ。それは分母を除いているからなんですよ。今、大臣言いましたけれども、割合を高めることが目的といっても、分母を減らして高めてもしようがないじゃないですか。

 中小建設業者の話では、協同組合は共同受注、あるいは単体であっても、中小企業でも、例えば建設工事で六億円を超えるような工事を請け負う実績というのはありますよ。それを六億で線を引いて、それは分母で除いたら、こういうところはもう中小企業への受注機会の確保の対象外、こういうことに当然つながっていくんじゃありませんか。ましてや、物品やサービスなどといえば千三百万円ですから、当然、中小企業の仕事の受注機会の確保につながっていくような、中小企業の仕事になり得る金額でもあります。

 契約額が適用基準額以上ということになれば、一律に中小企業の受注機会の確保を図る対象から外すことになってしまう。各府省が、中小企業が受注しやすい発注とする工夫そのものを怠ることになると言わざるを得ません。契約額が適用基準額以上のものを一律に中小企業の受注機会の確保を図る対象から外すということはきっぱりとやめるべきだということを申し上げます。

 そこで、さらに重ねて問われているのが、TPP交渉の問題であります。

 自治体から、適用基準額引き下げへの危惧の声が上がっております。

 北海道は、TPP協定の分野別の影響を試算しております。その中では、政府調達案件として一般競争となる入札には、現在は政府調達協定の締結国のみ参加可能であるが、我が国がTPPに参加することにより、その他のTPP参加国の企業も可能となり、また、対象品目の拡大や調達基準額の引き下げなどが行われた場合、競争激化による道内中小業者の受注機会への影響が懸念される。また、政府調達の見直しにより、地元優先等の政策的優遇ができなくなるなど影響が生じた場合は、雇用面に影響を与えるおそれがある、このように述べ、政府の方は、TPPの政府調達協定について、TPPはWTOのルール以上のものを目指すとか、国とか地方とかが政府調達を国際的にオープンにしていくということを述べております。

 そこで、担当大臣の甘利大臣にお尋ねをいたします。

 このパネルにもありますように、TPPというのは、地方の調達の適用基準額というのを国の適用基準額へと引き下げることにならない、このように言えますか。

甘利国務大臣 TPPは、項目ごとに、日本が攻めていく、チャンスを広げるところと、日本が守って向こうがこじあけたいという部分と、いろいろあるわけですね。この政府調達協定のところは、どちらかというと、日本が相手の国をこじあけてビジネスチャンスをつくっていく攻めの部分なんです。

 というのは、TPP十二カ国のうち、WTOの政府調達協定に入っている国は日本とアメリカとカナダとシンガポールしかありません。これから、要するに、外から入れないと守っている国に対して、そこをあけて、日本の企業がビジネスチャンスを持って入っていくというところなんです。残りの八カ国、WTOの政府調達協定に入っていない国に対して、TPPは、日本の企業が入っていけるチャンスを開くものというふうに捉えております。でありますから、WTO協定により近づけるために、ここはTPPを使ってやっているというふうに考えているところでございます。

 アメリカとかあるいはカナダ等々、どれくらい向こうの企業が日本の政府調達に参画しているか、私も資料を持ち合わせていませんけれども、これに加わってくる国は、もちろん先進国もありますけれども、どちらかというと、市場としてはまだ日本にとっては未開の市場が多うございます。ですから、前向きに捉えるべきだと思います。

 もちろん、中身について詳細に、締結ができて、決着がついていない時点で開示することはできませんけれども、基本的には、WTOの線に沿っていろいろと今交渉しているところであります。

塩川委員 WTOの線に沿って云々とされますけれども、しかし、海外の事例でいっても、例えば地方政府の建設工事については、TPP交渉参加国の米国やペルーやチリのこの基準額というのは、日本の三分の一に現在なっております。そういった点でも、引き下げるということが対象となり得るということは当然あるわけであります。

 甘利大臣が、この政府調達の分野というのは、日本が海外に、いわば市場をこじあけてビジネスチャンスをつくる攻めの分野だという言い方をしますけれども、地方の皆さんの受けとめは違います。これは、外国資本が入ってくるという懸念もありますけれども、要するに、こじあけてビジネスチャンスをつくっているのは、日本の大企業が、地方の中小の仕事をとる、この分野でビジネスチャンスをつくる、こじあけるということになっているんじゃありませんか。WTOの政府調達協定をさらに進めて、このTPPの問題というのは、外国資本と同時に、日本の大手企業の要求が背景にあるということを言わざるを得ません。

 長野県なども、WTO政府調達に比べて調達の範囲が拡大した場合、地元中小企業に優先的に発注する政策、つまり官公需ですとか障害者関連事業所などへの支援、こういう政策を維持することができないのではないのかという懸念を述べております。

 総理にお聞きします。

 TPPは、自治体による地元中小企業優先の地域経済振興策の大きな足かせになるのではありませんか。

安倍内閣総理大臣 答弁する前に、先ほど、官公需の中に占める中小企業向け契約額を三・四兆円と申し上げましたが、四・三兆円の間違いでございましたので、訂正させていただきたいと思います。

 TPPがまさに地方の中小企業にとってマイナスではないかという御質問でございますが、TPPは、まさにアジア太平洋地域に一つの大きな経済圏をつくっていくという野心的な取り組みでございまして、このアジア太平洋地域に新しい市場が広がっていくことは、大企業のみならず地方の意欲的な中小企業にとって海外展開にも大きなチャンスになっていく、このように思いますし、また、成長するアジア太平洋地域と一体的な経済圏を形成することで、海外から地方への投資や観光を促進し、地方創生や地域経済の活性化にも大きく貢献をしていく、このように考えます。

 また、地方中小企業の官公需における受注への影響も含めて、中小企業が優遇されないのではないかというお話でございましたが、先ほども既に甘利大臣が答弁をさせていただいておりますように、もう既に日本はWTOの政府調達協定に加盟をしているわけでございまして、TPP交渉に参加をしている国々、八カ国はまだこれには参加をしていないという状況であります。

 一方、日本は、世界各国に遜色のないレベルの自由化を既に実現しているという状況でございます。交渉の中身、進展ぐあいについては詳細にお答えをさせていただくことはできませんが、TPPによって地方自治体が行う地域振興策に影響を及ぼすことは想定はしておりません。

塩川委員 TPPそのものの大きな影響ということについて余りにも軽視をする、そういう発言。

 つまり、そういう意味でも、大手企業の要求が背景にあるということは改めて申し上げるつもりでありますけれども、こういった国基準を地方の基準に当てはめるということが、より一層地方の、地場の中小企業の仕事を奪うことになるんだということを強く指摘し、このような、政府調達を通じた地域振興策の障害となるTPPというのは、地方を支える農林水産業に壊滅的な打撃を与えるものでもあります。地方の仕事興しを根本から破壊するTPPはきっぱりとやめるべきだということを申し上げます。

 次に取り上げたいのが、PFI事業の問題であります。

 安倍内閣は、成長戦略の一環としてPFI事業を推進してまいりました。公共施設の設計、建設、運営、維持管理などを一体的に行うものがPFI事業であります。

 このPFI事業では、どうしても、公共施設の設計、建設、運営、維持管理などを一体的に行うという点でも、契約規模が大きくならざるを得ません。公共事業の営利事業化によって大企業が中小企業の仕事を奪うことになるのではないのか、こういう懸念も浮かぶわけであります。

 そこで、太田国交大臣にお尋ねしますが、国交省が行っているPFI事業の一つに、国交省が管理者である全国十四カ所の直轄駐車場があります。国交省は、直轄駐車場維持管理・運営事業として、全国十四カ所の一括PFI契約を行いました。この駐車場の所在地がどこなのか、契約企業はどこかについてお答えください。

太田国務大臣 国が管理する国道に設置した駐車場の管理運営の民営化としまして、全国の十四駐車場について、PFI事業を活用して契約をしているところでございます。その契約の相手先は、タイムズ24株式会社でございます。

塩川委員 今お答えがありましたように、全国十四カ所で北海道から四国まであるのに、東京に本社のあるタイムズ24が契約するのでは、もうけは東京に集まるだけですから、結果として、PFIにすることで地元企業の契約の機会が損なわれたことになるということを言わざるを得ません。

 これまでのPFI事業の契約は、ここに実績表がありますけれども、選定された代表企業のランキングを見てもわかるように、日本PFI協会調べで、契約代表企業というのが、大林組、大成建設、清水建設、三菱UFJリース、鹿島建設、大和リースなど、大手ゼネコンを初めとして、ほとんどが大企業となっております。こんな大企業の仕事をふやし、中小企業の仕事を減らしているのがPFI事業だと言わざるを得ません。

 この点で、もう一つ言っておきたいことがあります。

 このPFI受注の企業ランキングを見ると、その上位が大手ゼネコンとなっています。これら大手ゼネコンが会員となって、日本建設業連合会、日建連をつくっております。日建連と聞いて思い出すのが、二〇一三年、参議院選挙前の二月、自民党の資金管理団体である国民政治協会が日建連に出した献金の要請であります。このとき、自民党と国民政治協会が日建連にそれぞれ文書を出しております。

 この文書などを見ても、自民党の文書では、巨大公共事業を含む安倍内閣の経済政策、アベノミクスを説明し、国民政治協会の文書では、自民党は強靱な国土の建設へと全力で立ち向かっていると強調し、その政策遂行を支援するためとして四億七千百万円もの献金を請求していたわけであります。参院選前の党首討論会で我が党の志位委員長が明らかにしたものであります。

 このことについて、安倍総理はそういう事実があったと認めておられるということを承知しておりますが、そのとおりでよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 そのとおりでございます。

 私ども、浄財として、各団体に私どもの進めていく政策等について御支援をいただくお願いをさせていただいているところでございます。

塩川委員 二〇一三年の参議院選挙の前に献金を要請する。四億七千百万円という金額の提示があったということも、この文書でも示されているところです。

 このPFI受注ランキング上位の大手ゼネコンというのが一三年に自民党、国民政治協会へ幾ら献金しているのかを見てみましたら、大林組が千二百万円、大成建設が千二百万円、清水建設が千二百万円、鹿島建設が千二百万円。軒並み巨額の献金を行っておりますし、大手ゼネコンは、要請されたから献金を行っているだけではありません。

 この日建連は、過去、行き過ぎた中小保護の見直しなどといって、分割発注など地元企業を優遇する政策の撤廃、緩和を要求してきたところであります。さらには、官公需法についても見直し、廃止を求めてきておりました。中小業者に仕事を回すより自分たちにもうけをよこせと言っているようなものであります。

 総理にお尋ねしますが、このような要望を出している企業、団体から献金をもらう、さらには献金を要請するということは、金で政策を売っていると言われても仕方がないのではありませんか。

安倍内閣総理大臣 決してそんなことはないわけでございまして、私どもは、私どもの政策に理解をいただいている団体、企業等から御支援をいただきながら、まさに大切なことは、政治資金の流れについては透明化を図っていくということでございますから、この透明な浄財のもとにしっかりと政策を進めているところでございます。

 また、官公需の中における中小・小規模事業者の契約実績でございますが、先ほどお示しをいただいたように、絶対額でもしっかりと、安倍政権になって受注額はふえているわけでございますから、しっかりと我々は中小・小規模事業者を守っていく、そういう意識のもとに実績を残してきているということは申し上げておきたいと思います。

塩川委員 WTO政府調達協定、そして今後のTPP、実績としてもPFIで大手ゼネコンの受注機会の拡大を図ってきているというのが、この間の安倍内閣がやってきた、やろうとする方向だということを重ねて申し上げます。

 企業は主権者ではありません。したがって選挙権もない。企業が政党や政治家に金を出し政治に影響を与えるということは、主権者である国民の基本的権利を侵すことにつながり、国民主権の原則と相入れません。

 自民党から日建連への献金要請の問題だけではありません。公共事業を受注している企業からの献金は税金の還流に当たるとして、少なくとも公共事業受注企業の献金は禁止すべきだと、二〇〇二年には、我が党を含む野党四党が法案を提出したこともあります。

 あれから十年余り、何度も何度も税金の還流が問題になってきた。この間、補助金をもらっている企業からの献金が問題になっているが、これもまさに税金の還流の問題であります。

 総理にお尋ねしますけれども、政治資金規正法において、この補助金をもらっている企業からの献金が禁止されているというのはなぜなのか。このことについてお答えいただけますか。

安倍内閣総理大臣 補助金をもらっている企業からの献金を一年間禁止する法律ができたのは、これは議員立法によってできたのでございますが、それは、今委員が御指摘になったように、税金がその企業に入る、そしてそれが収益性を持つものであった場合、その企業から一年以内に献金をもらうということについては、まさに税金が入る、そしてそれが献金になった、外形的にはそのように見えているということに対して禁止をされているということではないかと思います。

塩川委員 二〇〇五年二月八日の当予算委員会で、我が党の佐々木憲昭議員が当時の麻生総務大臣に質問をした際に、麻生大臣がこのように述べておられます。

 政治資金規正法第二十二条三の第一におきまして、国から直接補助金などの交付の決定を受けた会社その他の法人は、交付の決定の通知を受けた日から一年を経過する日までの間、政治活動に関する寄附をしてはならないこととされている、この規定は、国から補助金等の交付を受ける会社その他の法人との政治資金のいわゆる授受、受け渡しというものは、補助金の決定などをめぐり不明瞭な関係を生じさせる危険性があるということに鑑みて、このような会社その他の法人が行う政治活動の寄附については規制をしようとするものであったというのがこの法律が立法された趣旨、背景だと承知していると述べております。

 つまり、税金の還流によって、金の力で、補助金決定など、政治をゆがめるようなことになってはいけない、そういう危険性があるから禁止をしているということなんじゃありませんか。改めて、総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 もとより、献金によって政策をゆがめたり、あるいは、いわば政策そのものに、こういう、自分の企業に利益を誘導するということは、補助金に限らずあってはならないことだろう、このように思うわけでございます。

 同時に、麻生大臣が答弁しましたように、いわば税金としての補助金を企業に受けさせるということについて、政治的な影響力を行使し、そして、もちろん、その見返りとして献金があってはならないのは当然のことだろう、このように思います。

塩川委員 我々は企業・団体献金の禁止を求めておりますけれども、企業・団体献金の中でも、少なくとも国民の血税を使った補助金受給企業からの献金は禁止しようというのがこの規定の趣旨であります。

 重ねて聞きますけれども、金の政治で政治を動かしているのじゃないのかという疑いをかけられているときに、知らなかったとか違法ではないとか、こういう言いわけというのは通用しないんじゃないのかと思いますが、総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 それは、再三この委員会でも述べさせていただいておりますように、この法律については、研究費等々収益性のないものについては質的な制限の範囲外ということになっております。

 同時に、受け手側の政治家については、これは知っていて受けてはならないということが構成要件になっているということは、今まで累次申し上げているとおりでございます。

塩川委員 違法ではないからといって、企業・団体献金をもらい続ける姿勢そのものが問われていると言わざるを得ません。

 そもそも、企業献金は、献金が何らかの利得に結びつけば賄賂となり、そうでなければ企業に損失を与える背任行為となるものであります。

 企業は利益を得ることを本来の目的にする営利団体であり、政治に金を出せば、投資に見合う見返りを要求することは避けられない。だから、企業献金は本質的に賄賂性を持つものなんじゃないのか。そういう認識は、総理、お持ちですか。

安倍内閣総理大臣 本質的に賄賂性を持つものという認識は持っていないわけでございます。

 個人にせよ、法人にせよ、団体にせよ、いわばお金を献金することによって自分の利益を得るということはあってはならないということではないかと思います。

塩川委員 企業が政党や政治家に金を出して政治に影響を与えるということが主権者である国民の基本的権利を侵すということを重ねて申し上げなければなりませんし、国民主権の原則とそもそも相入れない。だからこそ、必要なのは企業・団体献金の禁止であります。

 我が党は、この企業・団体献金の禁止を一貫して要求してまいりました。そういう点でも、政治資金パーティーを含めて、こういった企業・団体献金をしっかりと規制する、禁止する、こういうことこそ求められている。政党助成金の廃止と一体に、政治と金のゆがみを大もとから正し、国民が主権者である、そういう政治の実現のために全力で奮闘することを改めて表明し、質問を終わります。

大島委員長 これにて塩川君の質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

大島委員長 この際、理事辞任の件についてお諮りいたします。

 理事前原誠司君から、理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。

 ただいまの理事辞任に伴う補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大島委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に山井和則君を指名いたします。

 次回は、来る九日午前九時二十分から公聴会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時一分散会


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