衆議院

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第20号 平成27年8月7日(金曜日)

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平成二十七年八月七日(金曜日)

    午前八時五十九分開議

 出席委員

   委員長 河村 建夫君

   理事 金田 勝年君 理事 萩生田光一君

   理事 原田 義昭君 理事 平口  洋君

   理事 平沢 勝栄君 理事 森山  裕君

   理事 前原 誠司君 理事 今井 雅人君

   理事 上田  勇君

      秋元  司君    池田 道孝君

      池田 佳隆君    石原 宏高君

      岩屋  毅君    衛藤征士郎君

      小倉 將信君    小田原 潔君

      金子 一義君    金子万寿夫君

      金子めぐみ君    熊田 裕通君

      小池百合子君    小林 鷹之君

      鈴木 俊一君    田所 嘉徳君

      土井  亨君    長坂 康正君

      根本  匠君    野田  毅君

      古屋 圭司君    星野 剛士君

      細田 健一君    御法川信英君

      宮崎 謙介君    保岡 興治君

      山下 貴司君    山田 美樹君

      山本 幸三君    山本 有二君

      小川 淳也君    神山 洋介君

      岸本 周平君    後藤 祐一君

      階   猛君    鈴木 貴子君

      玉木雄一郎君    辻元 清美君

      馬淵 澄夫君    山井 和則君

      柚木 道義君    井坂 信彦君

      木内 孝胤君    重徳 和彦君

      篠原  豪君    牧  義夫君

      松木けんこう君    松浪 健太君

      石井 啓一君    岡本 三成君

      中野 洋昌君    樋口 尚也君

      赤嶺 政賢君    笠井  亮君

      高橋千鶴子君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   総務大臣         高市 早苗君

   文部科学大臣       下村 博文君

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   経済産業大臣       宮沢 洋一君

   国務大臣

   (原子力防災担当)    望月 義夫君

   防衛大臣         中谷  元君

   国務大臣

   (復興大臣)       竹下  亘君

   国務大臣

   (経済再生担当)

   (経済財政政策担当)   甘利  明君

   国務大臣

   (地方創生担当)     石破  茂君

   国務大臣

   (東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当)       遠藤 利明君

   財務副大臣        菅原 一秀君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府特別補佐人

   (原子力規制委員会委員長)            田中 俊一君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  田中 茂明君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        高橋 道和君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官) 日下部 聡君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    豊永 厚志君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局長)            毛利 信二君

   参考人

   (独立行政法人日本スポーツ振興センター理事長)  河野 一郎君

   参考人

   (日本放送協会会長)   籾井 勝人君

   予算委員会専門員     石崎 貴俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

七月十六日

 辞任         補欠選任

  長妻  昭君     小川 淳也君

八月七日

 辞任         補欠選任

  小田原 潔君     池田 佳隆君

  熊田 裕通君     御法川信英君

  小池百合子君     山田 美樹君

  根本  匠君     池田 道孝君

  古屋 圭司君     細田 健一君

  保岡 興治君     金子万寿夫君

  岸本 周平君     神山 洋介君

  後藤 祐一君     玉木雄一郎君

  馬淵 澄夫君     柚木 道義君

  井坂 信彦君     篠原  豪君

  松木けんこう君    牧  義夫君

  松浪 健太君     木内 孝胤君

  中野 洋昌君     石井 啓一君

  赤嶺 政賢君     笠井  亮君

同日

 辞任         補欠選任

  池田 道孝君     根本  匠君

  池田 佳隆君     小田原 潔君

  金子万寿夫君     保岡 興治君

  細田 健一君     古屋 圭司君

  御法川信英君     熊田 裕通君

  山田 美樹君     小池百合子君

  神山 洋介君     岸本 周平君

  玉木雄一郎君     後藤 祐一君

  柚木 道義君     鈴木 貴子君

  木内 孝胤君     松浪 健太君

  篠原  豪君     井坂 信彦君

  牧  義夫君     松木けんこう君

  石井 啓一君     中野 洋昌君

  笠井  亮君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 貴子君     馬淵 澄夫君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 予算の実施状況に関する件(経済情勢等)


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     ――――◇―――――

河村委員長 これより会議を開きます。

 予算の実施状況に関する件について調査を進めます。

 本日は、経済情勢等についての集中審議を行います。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として独立行政法人日本スポーツ振興センター理事長河野一郎君、日本放送協会会長籾井勝人君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として内閣官房内閣審議官田中茂明君、文部科学省スポーツ・青少年局長高橋道和君、資源エネルギー庁長官日下部聡君、中小企業庁長官豊永厚志君、国土交通省総合政策局長毛利信二君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。御法川信英君。

御法川委員 おはようございます。自由民主党の御法川でございます。

 予算委員会での質問を初めてさせていただきます。理事の皆様、御協力、大変感謝をいたしたいと思います。

 初めてということで、いろいろな方々に御報告をさせていただきましたが、一番大きな反応は、高校野球はどうなるんだ、こういう話でございまして、Eテレ、教育テレビの方で熱戦が繰り広げられているわけでございますけれども、その熱戦に負けないような議論をしていかなくちゃいけないなと思います。

 時間もございませんので、早速質問に入りたいと思います。

 まずは、オリンピック・パラリンピックのための新国立競技場の整備にかかわることに関して質問をさせていただきたいと思います。

 さまざまな経緯の中で大臣の責任を問う声があるというふうに考えておりますが、きのうの議論の後、きょう、我が党ではこのことに関して新しい提言も出てくるというふうに聞いております。さまざまな経緯の中ではございますが、やはり、オリンピック・パラリンピックに向けて、この競技場についてしっかりとした結論を出し、整備をしていくというのがまずは大臣の大きな責任のとり方ではないかというふうに私は考えますけれども、大臣自身、この責任論ということについてどうお考えか、御所見をお伺いしたいと思います。

下村国務大臣 おはようございます。

 ありがとうございます。

 新国立競技場の整備につきましては、さまざまな御批判をいただいていることについては謙虚に受けとめたいと思います。

 私は、本年四月に問題の報告を受けて以降、見直し案の具体的な検討を行い、六月に、総理に対し、ザハ案とそれからもう一つの見直し案について、それぞれの案のメリット、デメリットについて御説明をいたしました。また、さらに研究を進めるようにという総理の指示を受けまして、さまざまな関係者から話を聞いて研究を進める中で、限られた時間の中で最大限の努力をするように努めてきたというふうに思っております。

 委員御指摘のとおり、私としては、新国立競技場の整備を二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に確実に間に合わせること、そして、できるだけコストを抑制し、現実的にベストなものにすることによって国民に歓迎していただけるような、そういう対応をすることが最も責任を果たすことになるのではないかと考えております。国民の理解が得られるということが第一義的に大臣としてやるべきことであるというふうに考えております。

 新たな整備計画の策定に当たりましては、新国立競技場整備計画再検討のための関係閣僚会議におきまして議長を務める遠藤オリンピック・パラリンピック担当大臣のもと、私も副議長として積極的に参画することによって、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックが夢のあるすばらしい大会になるようにしっかり努めてまいりたいと思います。

御法川委員 ありがとうございます。

 しっかりとした整備計画のもと、国民の理解が得られ、そして、大会後の運営まで含めたしっかりとした計画をつくって実行していかなくてはならないというふうに考えております。

 二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック、オリパラというふうに我々は呼ぶわけでございますが、一九六四年の第一回の東京オリンピック、いみじくも私が生まれた年でございまして、五十六年後の大会ということになるわけでございます。パラリンピックが最初に開催されたのがこの一九六四年の東京オリンピックだったということでございまして、世界で初めて二回目のパラリンピックが開かれる都市、それが東京だということだと思います。

 このことについて私は、政府、そして我々も、もっともっと皆さんに理解を賜りながら、今後、障害者スポーツというものに対して一層の後押しをしていただけるような、そういう大会にしていただけないかなということを考えておりますけれども、総理、もしよろしければ、この点についての御所見をいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今、御法川委員がおっしゃったように、パラリンピックという名称を使った大会としては初めての大会が一九六四年の東京オリンピックにおけるパラリンピックであったわけであります。

 パラリンピックは、スポーツを通じて障害者の方々の自立や社会参加を促すとともに、さまざまな障害への理解を深めるものであり、大きな意義を持つ大会であると考えています。

 そして、二〇二〇年に我が国としては二回目となるパラリンピックを開催するわけでありますが、この大会を契機として、日本がまさに障害者の方々にとってバリアがない、そして障害者の方々にもチャンスのある、世界で最も生き生きと生活できる国としていきたい、そういうメッセージを発信できる大会としていきたいと思います。

 二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックの施設整備に当たっては、全ての競技施設をユニバーサルデザインに基づいたものとしていく。ユニバーサルデザイン、つまりこれは、誰にとっても使いやすい競技場である、使いやすい施設であるということであります。そして、競技施設へのアクセスについても、道路や駅などの交通基盤のユニバーサルデザイン化や、バスのノンステップ化などを行うこととしております。

 今後、大会の成功に向けて、組織委員会や東京都と連携しながら、政府一丸となって全力で取り組んでまいる決意であります。この大会を目指してバリアをなくしていく、これは設備、施設においてもそうなんですが、同時に、心、気持ちのバリアもなくしていく、そういう大会にしていきたい、このように思っております。

御法川委員 ありがとうございました。

 遠藤大臣にも同様のことを若干お伺いさせていただきたいと思いますけれども、まずは、二〇二〇年にしっかりと間に合うような形で、この競技場、どういう結果になるにせよ、計画を策定していかなくてはならないと思っておりますが、そのスケジュール感、どのようにお考えなのかという点が一つ。

 もう一つは、今、安倍総理からも御言及があったわけでございますけれども、障害者の皆様、障害者スポーツということに今まで以上に焦点を置いた形でこの競技場というものを考えていただけないものかというふうに考えておりますけれども、大臣の御所見をいただければと思います。

遠藤国務大臣 お答えいたします。

 今、関係閣僚会議のもとで、私が議長として作業を進めておりまして、秋口には新しい新国立競技場の整備計画を策定し、それをもとにして公募を行い、来年の初旬には設計、建築会社を決めたい。そして、何よりも二〇二〇年の春までには新しい国立競技場を完成し、間違いなくこのオリンピック・パラリンピック大会が成功のうちにできるように取り組んでまいります。

 今委員から御指摘ありました、パラリンピックの大会は二回目ということでありますが、この競技場、何よりもオリンピック・パラリンピックのメーンスタジアムとして世界の人々に感動を与える場とすること、あるいは、できる限りコストを抑制し、現実的にベストな計画をつくり、国民の皆様から祝福されること、こうしたことが必要であります。

 とりわけ、オリンピック・パラリンピックにつきましてはこれまでいろいろな皆さん方から、アスリートあるいは有識者の皆さん方から話を承ってまいりましたが、パラリンピアンの皆さんからも話をお伺いしてまいりました。パラリンピックの参加選手が自己ベストを目指すことができるような設備等とすること、あるいは、客席エリア等の整備に当たって、国際パラリンピック委員会のアクセシビリティーガイドに準拠して施設を整備することなどの意見を承っております。

 今後、このような御意見を踏まえ、新国立競技場がパラリンピアンの競技にとってだけではなくて、観戦する障害者の方々にとってもすばらしいものとなるよう、ユニバーサルデザインにも配慮してまいります。

 大会後の利活用についての議論の中には、御指摘のように、ポストパラリンピックの視点や、あるいは民間業者等のノウハウ等の考え方もあると承知しておりますが、いずれにしても、今総理から話がありましたように、二〇二〇年春までに確実に竣工することが大前提であり、オリンピック・パラリンピックを成功に導きますように全力を尽くしてまいります。

御法川委員 関係閣僚の皆様には、ぜひともよろしくお願いしたいというふうに思います。

 オリンピックの話からちょっと離れまして、TPP関連の質問をさせていただきます。

 先週の会合、それに至るまでの数次の会合におきましても、甘利大臣には、本当に多忙な中、力を尽くしていただいているということに対しまして、まずもって心から敬意と感謝を表したいというふうに思っております。

 結果については、先週の会合については合意に至らなかった、こういうことでございますが、我々、残念ながら、報道ベースでさまざまな情報を聞いている以上のものはないわけでございます。今回、せっかくこういう委員会がございますので、この閣僚会合の進捗状況及びその結果について大臣の方から一言いただければというふうに思います。

甘利国務大臣 七月二十八日から三十一日まで四日間、ハワイで行われたわけであります。交渉は大きく前進をいたしましたけれども、幾つかの限られた論点について引き続き議論が必要だという結論に達したわけであります。

 具体的に申し上げますと、ルール分野でいいますと、物品貿易のルール部分、それから投資、環境、金融サービス、法的・制度的事項などに関して、これまで未決着の論点が残されていた多くの分野において交渉をまとめることができたわけであります。難航していました知財の分野でありますけれども、多くの論点について決着をさせることができました。しかし、ここが残っている一番厳しいところでもあります。物品の市場アクセスにつきましても、鉱工業品を中心に多くの国との間で交渉を前進させることができたと思っております。

 報道にありますとおり、一部の国の間の物品の市場アクセス交渉、それから、今申し上げましたように、知的財産分野の一部につきまして各国の利害が対立をしまして、交渉が終結ということには至りませんでした。

 今回の成果を踏まえまして、早急に大臣会合までの段取りをしっかり整えて、まず、期日ありきということではありませんけれども、次の会合では必ず決着できるという環境を整えて、しかるべき後に閣僚会合が設定をされるというふうに思っておりますし、その地ならしが終わった上であれば、次こそは各国間の合意が成り立つのではないかというふうに思っております。

御法川委員 ありがとうございます。

 本当に大詰めだという理解でいいんだと思いますけれども、一方で、国内で、とりわけ農業分野においては不安を持っていらっしゃる方もまだたくさんいらっしゃるし、国会決議もございます。しっかりと踏まえた中で、いい交渉、そして結果を出していただければと思いますが、今後の最終段階に臨む総理の御決意があればお伺いをしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 TPPは、二十一世紀のアジア太平洋地域にフェアでダイナミックな一つの経済圏を構築する挑戦的な試みであります。この地域の成長を取り込み、アベノミクスの成長戦略の核となるものであります。

 TPP交渉は、先ほど甘利大臣から御説明をさせていただいたように、先般の閣僚会合において、あと一回閣僚会合が開かれれば決着できるところまで来ています。交渉は最終局面が一番難しいわけでありまして、まさに国益と国益がぶつかり合う厳しい交渉が続いております。

 我が国も、国益を最大限に実現し、いずれ国会で御承認をいただけるような内容の協定を早期に妥結できるように、交渉に全力を挙げていく考えであります。

御法川委員 TPP関連もしっかりと取り組んでいただければというふうに思います。

 きょうは、経済等の集中質疑ということで、毎週地元に帰っている中でさまざまな声を聞きますので、中小企業の金融の分野についての質問を若干させていただきたいと思います。

 金融庁では中小企業金融円滑化という観点からさまざまな取り組みを行っていると思いますけれども、まさに毎週帰って地元の企業の生の声を聞けば、いや、なかなか資金繰りに困っているんだというような声が聞かれるのは事実でございます。

 さらに、ちょっと数字を述べさせていただきますけれども、本年六月の日銀の短観によれば、中小企業の資金繰り判断DIはプラス五です。近年、プラスにはなっておりますけれども、一方、大企業はプラスの二二、あるいは中堅企業はプラスの一七ということで、水準で考えるとやはりまだまだ低いなという印象を受けざるを得ないというふうに思います。

 私の地元は秋田県でございますけれども、秋田県をちょっと抽出してみると、同じ日銀の短観の企業金融判断DIのうち、資金繰り判断DIというのはマイナス五という水準になっております。まだまだ地方には十分な資金が回っていないというのは、地元の声あるいはこういう数字からも言えるのではないかなというふうに考えております。

 そういう中で、やはりお金をしっかり回していくということが何よりも重要なことではないかというふうに考えておりますが、麻生大臣、金融担当大臣としてこういう部分についてどうお考えか、また、どのような取り組みをしていただけるのか、御所見をお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 今御指摘のありましたように、地域の中小零細企業等から、今お話のありましたように、金融機関の対応は変わっていないのではないかとか、また、相変わらず担保とか保証とか個人保証とか、そういったようなものを言ってくるという話等々があるのは事実であろうと思います。

 したがいまして、金融機関に対しまして、私どもとしては、企業のいわゆる事業性、損益性等々を評価した融資または助言、また経営者の保証ガイドラインというのがいろいろあるんですけれども、これを積極的に活用することを促す等々、取り組みを浸透させるようにいろいろ要請をしてきたところなんです。

 基本的には、これは九〇年から始まったデフレにスタートして、資産の暴落によって企業が、銀行、金融機関に差し出す担保の不足、経済用語で言えば債務超過になっているところに金は貸せませんので、その部分というところが大きかったんだと思いますが、結果として、債務の返済に走った結果、今度は逆に銀行が倒産、誰も金を借りに来ないので銀行が倒産ということになって、九七年のアジア通貨危機が同時に来て、大銀行、北海道拓殖銀行を筆頭に多くの銀行が倒産ということになって、その状況がかなり銀行の貸し出しの気持ちを抑えたことは確かです。

 それが大分直ってきたときに、重ねてリーマン・ブラザーズというのが二〇〇八年に来たものですから、さらに冷えてなかなか動かなかったんですが、私どもが政権に戻りました三年前の一月のときに、とにかく金融処分庁というような金融庁のイメージから金融育成庁に変えるように努力するのが俺たちの仕事ということを言ってかれこれ二年半たつんだと思いますが、大分雰囲気が変わってきたと思って、末端の方までそういう話になってきているとは思います。

 今度は、言われた金融機関の、上の方はともかくとして、実際に貸し出す課長以下のところがなかなか、そういった雰囲気に至るまでもうしばらく時間がかかるかなとは思わないではありませんけれども、積極的に、いろいろな会合、ほとんどこの話しかしておりませんので、中小、なかんずく第二地銀、信用金庫、信用組合等々が一番この影響を受けるところだと思っておりますので、その方向に沿って、御法川先生御指摘のとおり、一番大事なところだと思っておりますので、引き続きこの方向で適切に指導してまいりたいと思っております。

御法川委員 ありがとうございました。

 今大臣がいみじくも御説明いただいたとおり、例えば担保ですとか個人保証に頼らない形で、当該企業の事業計画の内容、事業性というものをしっかり見てお金を貸すようにという話があるというふうには聞いておるんですが、逆にこのことが銀行の判断、最終的に銀行の判断ということになります、難しくさせているんじゃないかというような声もありますので、この点、うまいかじ取りができるように御指導いただければというふうに思います。

 今、こういうものが行き渡るまでには多少時間がかかるというお話もございましたけれども、やはり今、地方創生という話の中で、新しい事業を試みてみようという若い、意欲のある皆さんもたくさんいらっしゃるわけでございまして、こういう方たちにどういう形で資金の供給ができるのかということをしっかり我々は考えていく必要があると思いますし、決してそういういわゆる融資だけではなくて、投資という分野でこういう小さい、意欲のある人材あるいは熱意というのを拾っていけないのかなということを考えておりますけれども、大臣の方から御所見があれば伺いたいと思います。

麻生国務大臣 全く御指摘のとおりで、融資と投資というのは、投資するのか金を借りるのかの違いで、金を出す方は同じことなんですけれども、金を借りる人に対しては、借りている方は、金利さえ払えば赤字でもいい、投資となりますと、これはその金を返済するためには黒字にして配当するしか方法がないということで、これはいわゆる税理士と公認会計士の役目がここに出てくるんだと思っておりますが。

 いずれにしても、投資という部分ができるほど民間の資金力がふえてきておりますので、そういった意味では、私どもとしては、投資を含めていろいろな形ができるようにするためには、地域で一番よくその種の話がわかっている人は、いわゆる転勤の少ない中小の金融機関の現場の人が一番詳しいし、あの企業のこの仕事とこれとくっつけたらというような話ができるのも、はっきり言って金融機関の現場の人ではありませんかという話も何回もしてあります。そういった形で少しずつ生まれつつあるような感じもしますけれども、まだまだ数の絶対量が足りておりませんので、引き続きその方向で指導してまいりたいと考えております。

御法川委員 しっかりとした取り組み、よろしくお願いしたいと思います。

 時間もありませんが、もう一問、地方創生ということでお伺いをさせていただきたいと思います。

 秋田県の方でも、さまざまな形で、国家戦略特区の指定もいただいたり、何とか地方、頑張っていくんだという意欲を形にするべく今頑張っているところでございますけれども、全体としての人口減少、ちなみに、秋田県というのは人口減少率、残念ながら都道府県で見れば日本一ということなんでございますが、やはり東京一極集中というトレンドが変わっていくような感じがしていないわけでございます。確かに、東京というのは世界の大都市を見ても最も魅力的な町だろうというふうに私は考えますが、その魅力が地方の犠牲の上に成り立つのでは意味がないというふうに思っております。

 この地方創生という観点から、東京一極集中は是正をやはり少しずつはしていかなくちゃならないんじゃないかなと私は思いますが、こういう分野についてどういうふうに取り組んでいくのか、石破大臣に御所見を伺いたいと思います。

河村委員長 時間が来ておりますので、簡潔に願います。

石破国務大臣 ありがとうございます。

 東京の富と人を地方にばらまこうなんぞというつまらぬことを考えているわけではございません。東京の過度の一極集中を是正し、地方の人口減少に歯どめをかけるということは、地方が持っている潜在力をいかに引き出すかということにかかっていると思います。第一次産業であり、観光であり、その他のサービス業であります。

 先般、委員の御地元の仙北市へお邪魔をいたしました。そこでは、世界で一番いい生ハムをつくるんだということで、国有林野の規制を面積も参入できる人も緩和して、そしてそこにおいて新たな産業をつくろうとしております。

 地方にはそういう伸び代がたくさんあるのであって、それをいかに伸ばすか、そして、東京が持っている人口集中あるいは災害に対する脆弱性、そういうような負担をいかに軽減するかということをあわせてやっていかなければなりません。地方は地方、東京は東京ではなくて、その持てる力をお互いに最大限発揮して日本を成長軌道に乗せる、それが地方創生であります。

御法川委員 時間ですので、終わりたいと思います。ありがとうございました。

河村委員長 これにて御法川君の質疑は終了いたしました。

 次に、石井啓一君。

石井委員 おはようございます。公明党の石井啓一でございます。

 まず、新国立競技場につきましてお伺いをいたしたいと思います。

 この新国立競技場の整備計画につきましては、費用が二転三転をいたしまして、デザインを募集して決定したとき、これは民主党政権時でありますが、そのときの目安は一千三百億円程度であったものが、その後、当初デザインでやると三千億円以上かかるということで、いろいろ経緯がありましたけれども、規模を縮小しても二千五百二十億円に膨れ上がりまして、国民の皆様やアスリートから大きな批判を受けました。

 このたび、二〇一九年のラグビーワールドカップには間に合わないものの、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックには間に合うことを確認した上で、新国立競技場の整備計画を白紙に戻し、ゼロベースで見直すというふうにしたことは、私は、これは総理の英断であり、高く評価をいたしたいと思います。その上で、整備計画が迷走したのはどこに問題があったのか、どこにどのような責任があったのか、しっかり検証する必要があると思っております。

 文科省に設置されました外部有識者による検証委員会によりまして、これまでの経緯について検証が開始をされまして問題点が詳細に解明されると思いますけれども、これまで私は文科省とそれから整備主体である日本スポーツ振興センター、JSCから説明を聞きまして、私なりに、これまでの問題点として三点指摘をいたしたいと思います。

 まず第一点に、大規模な施設整備にふなれな日本スポーツ振興センターと文科省だけで課題を抱えてしまっていたということ。二点目に、日本スポーツ振興センターと文科省との役割分担が不明確で、誰が責任を持って整備計画を進めるのか、全体の責任者が明確でなかったということ。三点目に、計画を進める途中の段階で国民の皆様に対する情報提供、説明が不足をし、透明性に欠けていたことが挙げられると思います。

 この指摘につきまして、文部科学大臣、それから日本スポーツ振興センターの理事長からそれぞれ御認識を伺いたいと思います。

下村国務大臣 JSCは、新国立競技場のような大規模な施設を整備した実績がなく、技術的に難易度の高い案件に係る調整や折衝等の業務についての知見が十分でなかったことから、国としてJSCを支援するため、文部科学省及び国交省から建築に関する専門的な知識を有する職員を派遣してきたところでございます。

 JSCも、平成二十五年度から、民間の専門的な知識を有する技術アドバイザーを委嘱するなどによりまして体制の強化を図ってきたというふうに承知をしております。

 また、JSCと文部科学省との役割分担につきましては、国立競技場の実施主体はJSCであり、文部科学省はその円滑な整備を支援してきたところでありますが、御指摘のように、外部から見てその役割が分担として必ずしも明確でなかったという批判は謙虚に受けとめたいと思います。

 さらに、情報提供の点におきましては、JSCのホームページにおきまして国立競技場の整備に係る最新の情報を随時掲載するとともに、政権交代以降、JSCの有識者会議におきましては公開で実施するなど、情報提供に努めてきたところでございます。

 国立競技場の整備につきまして、委員御指摘の点など、国民、さまざまな批判の声を受けたことについては真摯に受けとめたいと思います。

 今般、新国立競技場の整備計画に係るこれまでの経緯について検証するため、文部科学省に新国立競技場整備計画経緯検証委員会を設置し、きょう朝八時から第一回目の会議を開催したところでございます。第三者の立場から、御指摘の点も踏まえ、しっかり新国立競技場の整備に係る経緯について検証していただき、文部科学省として必要な対応を講じてまいりたいと思っております。

河野参考人 新国立競技場の設計、建設に際しましては、日本スポーツ振興センター内に新国立競技場設置本部を設けまして、文部科学省及び国土交通省からの出向者を含めまして、技術系の職員を配置するとともに、発注や設計などに関する専門家をアドバイザーに委嘱させていただいて取り組んでまいりました。

 また、独立行政法人であります日本スポーツ振興センターは、実施主体として、文部科学省から指示、認可を受けております中期目標、中期計画など国の方針に基づいて取り組んでまいったところでございます。その推進に当たりましては、文部科学省に御報告を申し上げて、必要な指示を仰ぎながらこれまで推進してきたところでございます。

 これまで、基本設計条件、基本設計案などを取りまとめるに当たりまして、ホームページ等を活用して情報提供に努めるとともに、有識者会議につきましては四回目以降公開で行ってまいりました。また、建築家団体との意見交換、建築計画に関する近隣住民説明会や各方面からの質問への回答など、計画の進捗に応じて実施するなどの説明に努めてまいりました。

石井委員 この文科省に設置された検証委員会は責任の所在も明らかにするというふうに聞いておりますけれども、国民の皆様から厳しい批判を受けた今回の問題について国民の皆様に御納得いただくには、この責任の所在に関する検証の結果を受けて、新国立競技場の整備計画が迷走した責任のとり方もやはり明確にすべきだというふうに考えます。総理の御見解をお伺いいたします。

安倍内閣総理大臣 新国立競技場の整備につきましては、これまでの経緯を検証するため、文部科学省に第三者委員会を設置したところでありまして、客観的な立場から適切に検証が行われるものと考えています。文部科学省の第三者委員会では、経緯とあわせて責任の所在についても議論していただくことになると考えております。

 いずれにいたしましても、東京オリンピック・パラリンピックを世界の人々を感動させる大会にする責任は政府にあり、その最終的な責任は総理である私にあるわけでありまして、その責任を果たすため、新国立競技場を二〇二〇年の大会までに間違いなく完成させるよう、全力を尽くしていく考えでございます。

石井委員 総理は、オリンピック・パラリンピックの主役は国民お一人お一人であり、アスリートであるというふうにおっしゃっております。したがいまして、新整備計画を策定するに当たっては、国民とアスリートの声を聞くということが重要であります。現に今、首相官邸のホームページやあるいは外部のインターネットサイトを通じて国民の皆様からの御意見を募集したり、また、遠藤大臣が直接アスリートの代表と会われて意見を聞かれていることは評価をいたしたいと思います。

 そうした声を聞いた上で新国立競技場に求められる機能を検討するということになると思いますが、その際、費用をなるべく抑えるという原則のもとで、機能と費用とのバランスをどういうふうにとっていかれるのか、これは遠藤大臣からお伺いしたいと思います。

遠藤国務大臣 新国立競技場は、オリンピック・パラリンピックのメーンスタジアムとして世界の人々に感動を与える場にすることはもちろんでありますが、何よりも、大会に確実に間に合わせること、そしてできる限りコストを抑制することを両立させることが必要だと考えております。

 今委員から御指摘いただきましたように、私みずからも十四回、きのうは建築家の槇先生、あるいはマラソンの高橋尚子さんからもお伺いいたしましたが、こうした意見交換を行うとともに、インターネットを活用した意識調査を実施するなど、幅広く意見を聞くよう努めております。

 四日の日にスタートしましたこの意識調査では、昨日夜時点で十四万件の回答を得ておりまして、その途中経過を見ますと、コストの抑制に対しては、一つは維持管理が容易な施設にする、二つ目は施設整備の水準を選別する、三つ目はスポーツのための機能に重点化するなどなどの意見が多く見られておりました。

 お尋ねの機能と費用のバランスは、御指摘のとおり非常に難しい問題と理解しておりまして、現時点で具体的なことは申し上げられませんが、いずれにせよ、取りまとめに向けて、今後さらなる関係者からのヒアリングを重ね、国民の皆様の御理解と納得を得られるように努力をしてまいります。

石井委員 遠藤大臣の責任のもとで新しい整備計画を取りまとめられるということでありますけれども、この新しい整備計画に盛り込まれる内容は、これからデサインを含めた設計、施工一体のコンペをおやりになる、そのコンペを実施できるだけの必要条件といいますか、スペックといいますか、そういったものと費用の上限というふうに考えていいのか、確認をいたしたいと思います。

 また、新しい整備計画の策定、オリンピック・パラリンピックに間に合わせるために遅くとも九月上旬までということですから、もう一カ月ぐらいしか時間がありませんけれども、その中でさまざまな意見の集約、調整もしなければなりません。新整備計画策定に向けての今後の段取りもあわせてお伺いをいたしたいと思います。

遠藤国務大臣 今御指摘いただきましたように、二〇二〇年の大会までには何としても間に合わせなきゃならない。そうすると、当然、遅くとも春までには完成させなきゃならないということであります。そこで、秋口には新しい整備計画を作成するとともに、直ちに事業者の公募に着手し、年明けごろには設計、施工を行う事業者の選定を行いたいと考えております。

 したがって、整備計画には、公募に当たって要件となる事項を盛り込む必要があると考えておりまして、例えば、スタジアムの性能としてどのような機能を有し、どの程度の水準とするか、あるいは、できる限り抑制した上でコストの上限としてどのように示すかなどについて、IOCや組織委員会からの要請も踏まえ、検討しております。

 また、関係閣僚会議においても、秋口の整備計画の取りまとめまでに複数回開催する予定であり、その中で、さらにアスリート等からのヒアリングを実施したり、意識調査の結果を報告することで広く国民の皆様に耳を傾けてまいります。

 あわせて、関係閣僚会議の資料は全てホームページ等を通じて公表し、プロセスの透明化を図ってまいります。

 いずれにしても、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックの開催に必ず間に合うように、内閣全体で責任を持って取り組んでまいります。

石井委員 新国立競技場は二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック開催に確実に間に合わせる、これは大前提でありますけれども、その上で、国民の皆様から祝福され、世界の人々に感動を与えられる大会にしていかなければならないと思います。政府を挙げてこの新国立競技場の整備を推進するとともに、国民の皆様に適時適切に説明をして御理解を得ていくという努力を求めたいと思います。

 続いて、テーマをかえまして、TPP協定交渉についてお伺いをいたしたいと思います。

 七月末にハワイで行われました今回の関係閣僚会合では、結果的に、医薬品のデータ保護期間の調整がなかなかつかなかったりということ、あるいはニュージーランドから各国に対する乳製品の受け入れの要求が過大であったことなどにより、大筋合意に至らなかったというふうに聞いております。

 一方で、アメリカでTPA法案が成立をして、大統領に貿易交渉権限が与えられました。また、アメリカの大統領選挙の政治日程から当面のラストチャンスとも言われていて、大筋合意の機運が高いと見られていただけに、今回合意に至らずに、肩透かしを食った感じがしているのでありますけれども、これは事前の準備が不足をしていたのか、あるいは交渉の進め方に課題があったのか、その要因について甘利大臣にお伺いをいたしたいと思います。

甘利国務大臣 残念ながら、大筋合意には至りませんでした。誰のせい、何のせいというのは余り言わない方がいいのかなとも思いますけれども、参加国全てが、今度の閣僚会議で大筋合意に持っていくという決意で臨んだことは確かであります。

 そうしますと、これが最後の会合という思いで臨めば、要求が過大になることもあろうと思いますし、あるいは対立点が先鋭化してしまうということも、会の性質上、あるかもしれません。あるいは、議長国のアメリカは、TPA取得等でかなり議会に手足をとられてしまったということもあって、十分な根回しができなかったという点もあるのかなと、まあ、複合的な要素があるんだというふうに思っております。一言で言えば、前さばきが不十分だったということだと思います。

 でありますから、次の会合は、日付設定ありきではなくて、前さばきがしっかりできて、閣僚会合を開けば時間をかけずにまとまるという自信を各国が持ったときに、もちろん迅速にですけれども、開くということが適切なのかなというふうに思っております。

石井委員 今の御答弁にも関係いたしますけれども、次回会合でございますね。当初、八月下旬を目標にということでありましたが、昨日の報道によりますと、八月中の開催は難しいということのようでありますが、次の会合は本当の意味でのラストチャンスではないのかしらと。次回会合でまとまらないと、TPP交渉が漂流しかねないという危惧がございます。

 甘利大臣は、あと一回閣僚会合を開催すればまとまるところまで来ていたというふうにおっしゃっておりますけれども、次回会合で大筋合意に至る成算、これをお伺いいたしたいと思います。

甘利国務大臣 私だけではなくて各国がそういう思いを持って、残念ながら散会したんだというふうに思います。

 おっしゃるように、今回の会合でまとめないとなかなか厳しいなと、各国の政治情勢がありますから。アメリカであれば大統領選が、予備選がいよいよ始まる、あるいはカナダであれば、もう今解散をしていますから、十月中旬に総選挙がある等々いろいろな事情がありますから、前回でまとめられるならまとめたかった。

 ですから、次の機会、前さばきが十分にできて、持ったときには、ここはまさに決着をしないと、各国の政治日程上、かなりの期間、その会合に全身全霊をかけて取り組むということができなくなるおそれがありますから、まさに次の機会は、これを本当に最後とするというくらいの気概で各国が臨んでくるというふうに思っております。

石井委員 もう時間が迫ってきましたので、質問はこれで終わりにしたいと思いますけれども、国益を守った上でのTPP協定の合意を期待しております。特に、最も影響が懸念される農林水産業の分野については、衆参農水委員会の決議、すなわち、「米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などの農林水産物の重要品目について、引き続き再生産可能となるよう除外又は再協議の対象とすること。」こういった決議をしっかり守っていただいて、次回会合では大筋合意に至るように期待を申し上げたいと思います。

 時間が参りましたので、以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。

河村委員長 これにて石井君の質疑は終了いたしました。

 次に、階猛君。

階委員 民主党の階猛です。

 本日は、復興のことを主にお尋ねしますけれども、その前に、きのうは広島に原爆が投下されて七十年の節目の日でありました。平和記念式典が行われ、多くの国民が原爆投下に象徴される戦争の悲惨さ、愚かさに思いをいたし、不戦の誓いを新たにしたわけです。

 首相もその場で挨拶されたわけですけれども、核兵器を持たない、つくらない、持ち込ませない、いわゆる非核三原則には言及しませんでした。非核三原則については、一九九四年以来、毎年総理が言及されてきた事柄だけに、なぜ言及しなかったのか、これは皆さん、疑問に思っているわけです。

 このことについて、まず総理から御説明をお願いします。

安倍内閣総理大臣 昨日、私は、私自身は総理大臣として四回目の平和記念式典に出席をさせていただいたところでございます。

 非核三原則は、これは当然のことでございまして、その考え方に全く揺るぎはないということは明確にしておきたいと思います。

 昨日の平和記念式典の挨拶では、これを当然の前提として、我が国は世界で唯一の戦争被爆国として核兵器のない世界を実現する重要な使命を有しており、その実現に向けて国際社会の取り組みを主導していく決意を表明したものであります。

 そして、現に式典直後に行われた被爆者代表の皆様との話し合いの中におきまして御挨拶を行った際には、非核三原則の堅持について明言をしているところでございます。

階委員 堅持とおっしゃいますけれども、先日、安保法案の審議が行われましたが、その中で、政府側からの答弁として、核兵器の輸送も法律上は可能だと、持ち込ませないどころか、運び込むことも可能だというふうな答弁もあったわけです。

 まさに、堅持すると言われている非核三原則が揺らぎつつあるのではないか、そういう疑念もある中で、あえてこの七十年という節目の年に、これまでずっと述べられてきた、総理自身も過去三回述べられてきたものをわざわざ外そうとしたのか、外したのか、私たちは、そのことについては本当に不思議なことだし、また、総理自身の堅持するという言葉が本当に信じられるのか、疑問に思っています。

 このことについては後ほど同僚の議員からもまた改めてお尋ねしますけれども、私たちとしては、きのうの挨拶は問題があったということをまず指摘させていただきます。

 さて、被災地の復興についてお尋ねしますけれども、安保法案や新国立競技場の問題の陰に隠れて、このところ国会でも復興のことについては余り取り上げられなくなってきています。

 しかし、私たちはあの四年半近く前、三・一一のときに、被災地がどれだけ大変な目に遭ったか、何の落ち度もない人々が、たくさんの方が命を落とし、また形あるものは全て失われた、ああいう被害を目の当たりにしたときに、私も戦争経験はないですけれども、まさに戦争と同じような惨状だったというのはいまだに記憶に新しいところであります。

 そこで、私たちの政権のときから、被災地の復興なくして日本の再生なしということを申し上げてきました。安倍政権になっても、復興最優先、まずは復興ということをマニフェストでもうたわれていたと思います。

 そこで、きょうは、本当に復興最優先ということがちゃんと行われてきたのか、事実関係をまず述べさせていただきたいと思います。

 第二次安倍政権発足直後、平成二十五年三月十三日、この委員会で私は総理にお尋ねしました。平成二十四年十二月末に政府が新たにつくった住まいの復興工程表というものを取り上げました。これは、その中で、岩手県のものをまとめたものでございます。ごらんになっていただければわかりますとおり、各年度ごとに、各市町村ごとの宅地の供給あるいは災害公営住宅の供給の計画について当時示したものであります。

 例えば、平成二十六年度でいいますと、平成二十六年度の終わり、すなわちことしの三月末の時点では、宅地の供給の進捗率は全体の二一%、そして災害公営住宅の進捗率は七九%、こういう数字になりますよということで、政府が被災地に示してきたわけであります。

 そして、今どうなっているのか。パネル二をごらんになってください。

 今、二一%、七九%というところに対応する数字をごらんになっていただきたいと思うんですが、実際の宅地供給は、まだ進捗率一二%です。また災害公営住宅に至っては、何と二六%しか進んでおりません。これは岩手のケースでありますが、宮城でも災害公営住宅については極めておくれておりますし、福島では、宅地供給、災害公営住宅、いずれも極めておくれております。このような状況。

 私は、二十五年三月に質問したときに、工程表どおり住宅の再建を進める決意はあるのかどうか、これを総理にお尋ねしました。その際、総理は、我々も工程表を示した以上、大きな責任があるという答弁をされました。きょうもオリンピックの関係で、責任があるということをおっしゃっていましたけれども、当時、被災地の住まいの復興についても工程表どおり進めることに責任があると言ったわけです。

 今この数字をごらんになって、このようなおくれについて総理はいかに責任を感じていらっしゃるか、御答弁をお願いします。

安倍内閣総理大臣 我々が政権についた段階においては、いつどこに何戸の住宅が完成するかの見通しすら立っていなかったのは事実であります。そして、県、市町村の住宅再建計画等について、住まいの復興工程表の取りまとめをスタートしました。工程表のもとで住宅再建に取り組んだ結果、今や、高台移転、災害公営住宅ともに九割以上で事業が始まるなど、事業が着実に進展をしているのは事実であります。

 例えば、確かに、災害公営住宅については、二十四年十二月の工程表では、二十六年度末に東北三県で一万四千九百七十五戸の完成予定でありましたが、二十七年三月の工程表では八千九百四十戸となっております。しかしながら、本年六月までに一万二百九十四戸が完成をしまして、今年度末までには一万八千四百七十四戸が完成見込みでありまして、住宅再建は相当進んできているのは事実であろうと思います。

 また、高台移転についても、二十四年十二月の工程表では、二十六年度末までに東北三県で五千八百七十三戸が完成予定でありましたが、二十七年三月の工程表では三千八百五十九戸となっております。しかしながら、本年六月までに四千六百五十二戸が完成しまして、今年度末までには九千六百五十四戸が完成見込みであります。これは、二十四年十二月の工程表において予定していた八千五百十四戸を上回っているわけでございます。このことも十分に御認識をいただきたいと思います。

 そもそも、平成二十四年十二月の住まいの復興工程表は、具体的な設計や用地を確保する前の段階で、県、市町村が標準的な事業スケジュールをもとに作成したものでありまして、その後、工事着手による完成時期の明確化などを反映いたしまして、県、市町村によって四半期ごとに見直されているところでありまして、このため、精度の異なる当初の計画と現在の計画を単純に比較し、おくれを論じるのはいかがなものかと思います。

 私自身、平成二十五年の予算委員会におきましても申し上げたとおり、課題が出てくるのであれば対処方法を検討していくのは当然のことであり、これまでに、所有者不明の土地等の取得における土地収用手続の迅速化、資材、人材確保の円滑化を図るため、発注規模の大型化など、さまざまな課題に対して累次の加速化を打ち出してきたところでありまして、今後とも、被災者の方々が一日も早く安心して暮らすことができるように進めていきたい、このように思うところでございます。

階委員 この数字は復興庁の出してきた数字でございまして、当初の工程表で示した数字より、明らかに平成二十七年三月末時点ではおくれている。

 その背景には、今総理もるる述べられましたけれども、平成二十五年三月に、私も、復興用地の取得のおくれが全体のおくれにつながるということで、立法措置を提言したんですけれども、当時は、問題があればということで先送りしてきた。ようやく去年になって、私たち野党が中心となって、復興用地の取得を迅速化するための法案を成立させましたけれども、それまで手をこまねいていた結果がこういうおくれにつながっているということを指摘しておきたいと思います。

 それからもう一つ、復興大臣の発言についてお尋ねをします。

 復興大臣とは委員会でもあるいはほかの場でもるる議論させていただきましたけれども、復興大臣は、このように復興がおくれているにもかかわらず、なお被災地の頑張りが足りないかのような、すなわち、復興予算の地元負担を求める理由をお尋ねしたときに、リスクを負うことで人間は本気になるんだとか、ほんのわずかにリスクをとっていただくことでもう一回緊張感をより強く持ってもらう、そういうようなお話がありました。

 本気度や緊張感が足りない、これを被災地に対して言っていること、私は、この四年半近くの被災地の大変さを見ているだけに、到底納得はいかないですし、現場の人たちもそのように言っています。

 私は、時間の関係で総理にお尋ねしますけれども、こうした発言は復興大臣としてふさわしくないのではないかと考えますが、どのようにお考えでしょうか。

安倍内閣総理大臣 復興大臣は、まさに被災地の皆様とともに、住まい、そしてなりわいの復興に全力を挙げているところでございます。

 そして、今、集中復興期間を終えるに当たり、新たに緊張感を持って被災地の方々とともに力強く復興を進めていきたい、いつもこの考え方のもとに発言をしておられる、その前提で発言をしているというふうに考えております。

階委員 今、被災地の状況は、この住宅のおくれを初め、まだまだ復興の事業というのは道半ばなわけですね。道半ばという中で、まだ税収も回復してきておりませんし、また、被害が大きければ大きいほど、事業の一定部分とはいえ、地元負担を求めるということになれば、大変な負担額になってくる、事業の大きさに比例して負担額は大きくなるわけです。

 そうした、被災地にとっては大変厳しい今回の方針変更になるわけですけれども、このことに関して復興大臣が何とおっしゃったかというと、これから復興が進んでくるにしたがって、被災地以外の自治体からひがみが出ないかということを心配したということも御発言されました。

 さらに、今現在ひがみが出ていないということも確認させていただきましたが、私が思うに、こういうひがみというものがもしほかの地域から出るようなことがあれば、いやいや、そんなことはないんだ、被災地の皆さんは頑張っています、被災地の復興がなし遂げられることによってほかの地方にとってもプラスになるんだということを言って、被災地の側に立って、ほかの地域からひがみが出ないようにするのが復興大臣の務めではないかと思っています。

 今復興大臣が言われていることは、被災地の側に立つというよりも、被災地ではない側の立場に立って物を申されている、復興大臣の職責とは真逆なことをされているのではないかと思います。この点についても、総理大臣、いかがお考えになるか、お尋ねします。

安倍内閣総理大臣 東日本大震災の復興事業費については、町全体が壊滅的な打撃を受けたことや膨大な復興事業を実施していく際には十分な財源がないと見込まれる被災自治体が多かったことを踏まえまして、集中復興期間中の自治体負担を実質ゼロとしてきたところであります。

 二十八年度以降の復興については、新たなステージにおいて、被災地の自立につながるものとするという観点から、一部の事業について自治体に御負担をお願いすることとしたわけでございます。

 御指摘の復興大臣の発言は、どういう状況で発言されたかということは承知をしておりませんが、このような考え方に基づいて、被災地の復興を心より願う気持ちからのものではないか、こう思うわけであります。

 御負担をいただくに当たっては、自治体の財政状況に十分配慮しているところでありまして、被災自治体におかれては、今後とも安心して復興に取り組んでいただきたい、復興に向かって進んでいっていただきたいと思います。

階委員 時間が来ましたのでこれで終わりますけれども、今回、地元負担が新たに導入されることによって、被災三県である岩手、宮城、福島、合計二百二十億の負担が発生します。

 他方で、新国立競技場の建設計画の白紙撤回で六十二億円が無駄になります。それから、復興の財源ですけれども、復興法人特別税、これの廃止によって八千億円という減収もありました。

 こういうことを不問に付した上でこの二百二十億の負担というのは、私は不合理ではないかということを最後に申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

河村委員長 この際、小川淳也君から関連質疑の申し出があります。階君の持ち時間の範囲内でこれを許します。小川淳也君。

小川委員 民主党の小川淳也です。

 総理、先ほどの階委員の問いに引き続いてちょっとお尋ねをいたします。

 非核三原則を堅持すると毎年歴代の総理大臣は明言したわけでありますが、昨年以前の文案と比較をいたしまして非常に私はこれは、言わなくてもわかるだろうというのでは済まない、明言しなければならなかったことではないかと思います。

 なおかつ、これは事務方が起案して落としたとは思えない。総理なり総理周辺の指示でこの非核三原則を堅持するという文言が落ちたのではありませんか。

安倍内閣総理大臣 もう先ほども申し上げたとおりでございまして、今まで三回、以前に三回、平和記念式典には出席をしております。その際、非核三原則は堅持するということは申し上げておりますし、また、国会等においてもそうした発言をしているわけでございます。

 それを前提として、まさに核兵器のない世界を実現する重要な使命を有しており、その実現に向けて国際社会の取り組みを主導していく決意をるる述べたわけでございますし、そして、その後直ちに行われました被爆者団体の代表の皆様との会合におきまして、その際の御挨拶におきまして、非核三原則の堅持について明言をしているところでありまして、その姿勢には一切変化はないということは申し上げておきたい、このように思うところでございます。

小川委員 懇談会の場でおっしゃったということはお聞きしておりますが、大勢の集会参加者、式典参加者を前に総理は明言されるべきでした。そして、世界に向けて中継もあったわけですね、その場で、私は、申し上げるべきだったと思います。

 総理はこの原稿を、もし総理の指示でないとすれば、目にしたときに相当違和感を感じていなければおかしかった、私はそう思いますよ。

 総理、もし姿勢が変わっていないというのであれば、ここで明言してください。あさって長崎に行かれますよね。ここではきちんと非核三原則を堅持すると明言、長崎でするとこの場でお答えください。

安倍内閣総理大臣 先ほど来、当然の前提として申し上げているわけでございまして、毎年毎年私の場合は、今、連続して出席をさせていただいているわけでございますし、二つの式典にも出るわけでございますが、長崎の式典におきまして、この文言は入っているものと承知をしております。

小川委員 あえて落としたのでないとすれば、うっかり落ちた。しかし、それは今回、さまざまな波紋を呼びました。素直に、長崎ではきちんと文言を入れるということでありますので、それはしっかりと受けとめたいと思いますが、特に今、国民の一人一人が戦争の惨禍をそれぞれの立場で振り返っているこの季節であります。改めて、総理の一言一言の影響力の大きさにしっかりと思いをいたしていただきながら、さまざまな場での発言なり、また国会での御答弁なり、しっかりとお願いをしたいと思います。

 あわせて、昨日は、七十年談話に関する有識者会議の報告書が提出されたという非常に重要な節目でございました。

 この中では、さまざまな表現がございますが、焦点でありました、満州事変以降、侵略は拡大したという表現、そして、三〇年代以降、植民地支配が過酷化したという表現、これは明確に入っているようであります。

 こうした、侵略の拡大、植民地支配、そして、あえて言えば、痛切な反省、さらに言えば、今後、焦点は、心からのおわび、これを政府の公式見解としてきちんと近隣諸国を初め国内外に対して示すということが重要だと思いますが、現時点の総理のお考えをお聞きします。

安倍内閣総理大臣 戦後五十年には村山談話、そして戦後六十年には小泉談話が出されているわけでありまして、安倍内閣としては、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでおり、今後も引き継いでいく考えであることは、累次申し上げてきているとおりでございます。戦後七十年の談話は、それを前提として作成するものであります。

 その上で、新たな談話の内容については、さきの大戦への反省、戦後の平和国家としての歩み、今後、日本として、アジア太平洋地域や世界のためにさらにどのような貢献を果たしていくべきか、次の八十年、九十年、そして百年に向けて、日本はどのような国になることを目指すのかといった点について、世界に発信できるようなものを英知を結集して考え、書き込んでいく考えであります。

 そして、昨日の夕方、二十一世紀構想懇談会から報告書を提出していただきました。戦後七十年の談話につきましては、発表の形式、内容を含め、提出していただいた報告書をよく読んだ上で適切に考えていく方針でございます。

小川委員 総理は確かに再三、過去の談話を全体として引き継ぐとはおっしゃっています。しかし、個別に、特にキーワードを引き継がなければ、大きくその精神が変わったととられるリスクがあるわけですね。

 私は、この過去の談話は、ある意味日本外交が積み重ねてきた一つの外交資産でもあると思っています。この局面でそれを傷つけるということはあってはならない。侵略戦争なり植民地支配というのは事実の認定です。そして、痛切な反省というのは我が国の話です。心からのおわびというのは、諸外国に対する、相手のある話です。これはあくまで三点セットでなければ、日本としてメッセージを変えたと受け取られかねません。

 総理は再三、未来に向けて、未来に向けてとおっしゃいますが、やはり過去に対する厳格な反省、正確な認識、これがあってこその未来ではありませんか。そういうことに対して、極めて、場合によっては甘いお考えを持って、不用意な談話を発表されるということは決してあってはならないと思いますし、植民地支配、侵略をしっかりと認める、そして、心からのおわび、これをしっかりと対外的に表明していく、このことを改めて求めたいと思います。

 そして、季節柄もございますけれども、現在、安保法案の審議が参議院で進んでいる、そして、国を挙げて今は戦争を振り返る時期でもあります。そういう中で、政府・与党内から極めて不用意な発言が頻発、連発しているということは、大変残念なことであります。

 特に、取り上げることもはばかられるような思いでありますが、さきには、御党の武藤議員、若い人たちが今、デモを初めとしてさまざま行動しているようでありますけれども、これに対して、これは戦争に行きたくないじゃんという自分中心、極端な利己的考えに基づく、利己的個人主義だと。とんでもないと耳を疑いました。

 総理、この発言、総理はどう受けとめておられますか。戦争に行きたくないというのは自分中心の極端な利己的考えですか、そもそも。総理のお考えをお聞かせください。

安倍内閣総理大臣 そもそも戦争は違法化されているわけでございまして、いわば、その阻却の理由としては、個別的自衛権、集団的自衛権の行使、あるいはまた国連決議があった際ということになっているわけでございます。いわば戦争というのは違法化されているということを、まず認識として我々申し上げているところでございますが、当然、これは政府・与党、共通の認識と言ってもいいんだろう、このように思うわけでございます。

 その上におきまして、現在、我々、平和安全法制を御議論していただいているわけでございますが、これはまさに日本人の命と幸せな暮らしを守るために切れ目のない対応を可能とするためのものである、こういうことでございます。いわば、その認識のもとに我々はこの法案を審議していかなければならない、こう思っているわけでございます。

小川委員 この武藤議員の、戦争に行きたくないというのは自分中心で極端な利己的考えですか、これに対して総理はどう評価しておられますかとお聞きしています。

安倍内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、そもそも戦争は違法化されているわけでございます。その上において、そういう認識を持った上において、我々は今法案を審議しているところでございます。

 この武藤議員の発言がどういう文脈でなされているかということを私は詳細には存じ上げませんが、これは党の方において、必要とあればしっかりと吟味するということになるんだろう、こう思うわけでございます。

 そもそも戦争は違法化されているわけでありまして、違法な戦争に参加するということは、そもそもこれはあり得ないわけでございまして、これは個人の勝手とかいう問題では、そもそもその前提が、前提として、戦争は違法であるということは申し上げておきたい。

 戦争が違法だということの上において、その違法な戦争にそもそも参加をすることを強制されること自体が間違っているわけでありますし、また、戦争自体に、徴兵制とか戦争法案というレッテル張りが行われているわけでありますが、先ほども申し上げましたように、戦争はそもそも違法なものであるということでありますし、徴兵制ということは憲法上もあり得ない、こういうことでございます。

 今私が申し上げたことから、これは当然御理解をいただけるものと思います。

小川委員 総理、何で正面からお答えいただけないんですか、こんなことに対して。戦争に行きたくないというのは当たり前のことでしょう。普遍的な思いでしょう、平和に対する思い。こんな発言はけしからぬとなぜここで一言言えないんですか。そういう総理の甘い姿勢、この手の発言に対する甘い姿勢が、この間頻発、乱発している大きな原因ではありませんか。

 あえて一覧にさせていただきましたよ。この国会が延長される前後から、マスコミに対する強権的な姿勢、そして今回の武藤議員、さらに礒崎総理補佐官におかれては、総理の補佐官であり、安保法制の担当補佐官です。そして、今も総理の身近で、この安保法制に関連してさまざま技術的な助言、アドバイスをしているんじゃないですか。そして、この安保法制を議論するに当たって、法的安定性は崩していないという強弁が、一つの安倍内閣の、安倍政権の筋道でした。しかし、それをいとも簡単に、法的安定性なんてものは関係ないと言った。致命的だと思いますよ、総理、これは。

 総理、ちゃんとおっしゃってくださいよ。この武藤議員、発言撤回しないと言い放っています。総裁として、武藤さんには発言を撤回させて謝罪させる、礒崎さんは、この際けじめをつけてもらう、更迭する。しっかり総理、けじめをつけてください、矜持を示してください。

安倍内閣総理大臣 まず、武藤議員の発言につきましては、今申し上げましたように、戦争は違法なんですから、その違法なものに参加しなければならないというのは、前提そのものが本人の発言として間違っているということは、はっきり申し上げたではないですか。

 その上において、これは党の、私は行政府の長でありますから、党については党にお任せしているところでございますので、党においてしかるべく適切に判断されるものと思います。

 そして、礒崎補佐官の発言につきましては、これまで繰り返し申し上げているとおり、先日、礒崎補佐官自身が、国会において、説明、おわびをしたところでありまして、私自身も、礒崎補佐官に対し、誤解をされるような発言は慎むべきであるとの注意をしております。

 礒崎補佐官は、法的安定性は関係ないという部分の発言を取り消すとともに、今後、補佐官としての職務に精励する旨説明をしており、引き続き職務に当たってもらいたいと考えているところでございます。

 今回の平和安全法制につきましては、自衛のための必要最小限度の武力の行使しか認められないという従来の政府見解における憲法第九条の解釈の基本的な論理は全く変わっていないわけでございまして、四十七年の解釈における見解といわば基本原理が変わっていない中において当てはめを行ってきたものであり、法的安定性は損なわれていないというのが我々の基本的な考え方でありまして、補佐官もそのことは十分に認識をしているものと思います。

小川委員 それをいとも簡単に覆したから申し上げているわけです。これは重大だと申し上げているわけです。

 引き続き精励するからそれを認めるということは、総理大臣として、極めて甘いし、けじめがついていない、矜持を示せていない。だから、この手の発言が頻発、連発するんですよ。これは、ますます国民の、この安保法制そのものに対しても、不信を高めていると思いますよ。

 少し残りの時間で国立競技場問題についても聞きたいと思います。

 この国立競技場問題がここまで混乱してきたことにも、一部報道等では集団的無責任体制と言われています。一体誰がこの責任を負うのか。

 そして、ここではっきりお聞きしたいんですが、七月の十七日に、総理はいきなり、突然、突如、白紙撤回だということをおっしゃいました。しかし、その直前まで、総理も下村大臣も遠藤大臣も、国会を初めしかるべき場で、見直しは難しいということを盛んにおっしゃっていた。

 急転直下、十七日になって、白紙撤回。私、乱暴だと思いますが、急転直下白紙撤回に至ったその理由を、総理、おっしゃってください。

安倍内閣総理大臣 このザハ案につきましては、先ほど御法川委員からも御紹介をいただいたように、民主党政権下において、国際的なデザインのコンペを行い、ザハ案に決定をし、いわばIOCとの関係においても、国際コンペを行ったということ、そしてそのザハ案を採用したということについて、これは明らかにしたわけでございます。

 これは、そのときに、千三百億円のもとで、我々も当然、その案を採用したのだろう、こう考えていたわけでございます。しかし、その後の経緯は委員も御承知のとおりだろうと思います。

 そして、六月にザハ案と見直し案について下村大臣から説明を受けた際、それぞれの案のメリット、デメリットについて説明があったわけであります。下村大臣からは、見直し案でも、特にラグビーワールドカップには間に合わない、また、オリンピック・パラリンピックにも間に合うかどうかについても確信が持てないとの説明がありました。その際、私から、工期も含め見直すことが本当にできないのかさらに研究を進めてほしい旨指示をしたところであります。

 その後、下村大臣から随時状況の報告がありましたが、七月の十七日には下村大臣から、新たに事業者選定を行うこととし、選定まで約半年、そして設計から工事完成まで五十カ月強で、今月中に見直しを判断すればぎりぎり二〇二〇年東京大会に間に合うとの報告を受け、計画を白紙に戻し、ゼロベースで見直すことを決断したところであります。

 新国立競技場の整備計画の見直しについては、現在、遠藤大臣を議長とする関係閣僚会議を中心に検討を進めています。見直しに当たりましては、新しい競技場を世界の人々に感動を与える場とすること、その大前提のもとに、できる限りコストを抑制し、現実的にベストな計画をつくることが重要であると考えています。

 オリンピック・パラリンピックを成功に導いていくことは私の使命であります。メーンスタジアムとなる新国立競技場の整備について、国民やアスリートの声にしっかりと耳を傾け、御理解をいただきながら、二〇二〇年の開催まで、間違いなく完成させるように、内閣全体で責任を持って取り組んでいく決意でございます。

小川委員 一カ月前から検討をしたと総理はおっしゃっているんです。七月十七日の一カ月前、六月中旬、下村大臣もそうお答えになっている。

 であれば、なぜ七月九日に、スタンド工区の工事三十三億ですか、あるいは工事監理業務二十三億ですか、何で契約するんですか。保留すべきでしょう、せめて。今、白紙撤回の可能性を含めていろいろ研究している、契約書にはサインできないと言うべきじゃありませんか。

 JSCの理事長もきょうお越しいただいていると思いますが、施工主であるJSCの理事長ですら、十七日に総理がおっしゃるまで白紙撤回の話は聞いていないと国会で言っているんですよ。これは真剣に検討したんですか。うそじゃないですか。十六日に安保法案を衆議院で強行採決しましたね。それに対する目先をそらして、批判をかわして、この競技場の問題を政治利用したんじゃありませんか、総理。

下村国務大臣 先ほど総理から答弁ございましたが、ことしの四月にザハ案の問題点、工期の問題とか費用の問題、これにつきましてJSCの理事長からの報告を受け、私としては直ちに、コストの縮減等の検討について指示しました。また、私自身も、さまざまな関係者から話を聞いて研究を行いました。その上で、六月に、ザハ案とそれから見直しをする場合の案、これについて総理に御説明をいたしました。

 ただ、この見直し案におきましても、槇さんたちの案はラグビーワールドカップも間に合うということでの見直し案だったんですが、さらに精査しても、私としては、ラグビーワールドカップにやはり間に合わないのではないか、また、そもそも、オリンピック・パラリンピックにも、見直しをして本当に間に合うのかどうか、これについては、その六月の時点で確信がはっきり持てませんでした。そういうことを受けて、総理からさらに研究を進めてほしいという指示がされました。

 ですから、見直しをするという確定ができれば、それは、今、小川委員が指摘されたように、契約をストップするということもあり得るというふうに思いますが、その時点においてはまだ確証が得られなかった。

 しかし、総理には随時状況については報告しておりましたが、七月の十七日になって、私の方から総理にはっきりと、事業者選定までで約半年間、それから、設計から工事完成までで五十カ月強、これをスキームとして考えれば、七月中に見直しを判断すればぎりぎり二〇二〇年東京大会に間に合うという報告を七月の十七日にしたところでございます。

 今回のゼロベースの見直しは、ラグビーワールドカップには間に合わないが、オリンピック・パラリンピックには間に合うとして総理が決断されたものでございまして、その際、そういう経緯も踏まえまして、私の報告を踏まえてなされたものであるというふうに承知をしております。

小川委員 何で契約を保留しなかったのかと聞いているんですよ。ストップと言っていませんよ。せめて保留すべきでしょう、結論が出るまで。全くもって真摯な検討をしていると思えない。

 六十億というのは、これは既に支払い済みの分だけで、総理、もし御存じでしたらでいいんですが、選手強化費用がどのぐらいか御存じですか、このオリンピックに関して、今年度予算で。御存じなければ、もうそれで結構です。

遠藤国務大臣 ことし、七十数億だったと思っております。

小川委員 パラリンピックの十億分を含めてそうなんですよ。オリンピックに関して言えば六十億なんです。

 総理が白紙撤回したことで全く無駄になった支出ですよ、デザイン、設計、監修業務から。これは誰が払うんですか、この六十億。オリンピック選手の強化費とほぼ同額ですよ。何のためのオリンピックで、誰のためのオリンピックで、そういうことを本当に問われていると思いますよ。

 ちょっと駆け足で、数字を見ていただきたいと思いますが、仮に今回の二千五百億、絞って一千億台にするとかいろいろなことが報道では言われていますけれども、それでも過去五回分のオリンピックの競技場費用は、見てください、これ。三百億から五百億。

 ちょっと時間がないので急ぎますが、きのう、民主党内では、建築家の森山先生をお呼びしていろいろお話をお聞きしましたよ。世界では、競技場は改築せずに、改修して見事に生まれ変わらせているという例も多々あるんだそうですね。

 東京オリンピックだって、まさにコンパクトでエコなオリンピックを主張されていたんでしょう。これから人口減少、高齢化に対してきちんとメッセージを発するということもあったんじゃないですか。まさにこれから公共施設の老朽化、そしてそれに伴う改修の需要だって莫大ですよ。一つのモデルケースにすべきだったと思う。

 そういうことも含めて、真摯な検討をしたとはとても思えない。この問題を政治利用していることは明らかだ。

 総理は格好よくおっしゃいますよ、競技場問題については国民の声を聞いた、アスリートの声を聞いた。辺野古移設も一カ月停止するんですか。しかし、考えは変えない。政府高官は絶好のタイミングだろうとつぶやいたと言われています。この手の問題では国民の声を聞いたといって盛んに政治的にアピールをする一方で、肝心の安保法制については全く耳をかさない、国民の声を顧みない。

 この安保法制こそ、これだけ不安が高まっている、審議すればするほど疑念は高まっている、反対は強くなっている。白紙撤回すべきじゃありませんか、安保法案こそ。

 せめて、私は再三申し上げますが、消費税の増税を延期することで総理は国民の信を問うたんですよ。これだけの安保政策の大転換で、国民が自己決定すべきじゃないですか、これこそ。この安保法制、白紙撤回するか、解散するか、国民の信を問うか。総理にそれを求めたいと思います。

安倍内閣総理大臣 国立競技場について政治利用しているのは委員の方じゃないですか。

 我々はあえて余り言っていませんけれども、では、なぜ、国立競技場を、今までの国立競技場を壊して新しいものをつくる、そういう案を決めたんですか、民主党政権時代に。民主党政権時代に決めて、それを、まさに国際コンペを行って決めたじゃないですか。そして、それをIOCに対しても主張したんですよ。

 WTO上の課題も出てきたわけですね、その中において。そして、IOCとの関係も出てきたわけですよ。その中で皆さんはザハ案を決められて、しかし、そのときは千三百億ということで決められたんでしょうけれども、その後膨らんでいった。我々はそれを受け継いで、IOCとの関係もありますから、そう簡単にそれを直ちに撤回というわけにはいきませんよ。その方向でこれは進めていくしかないじゃないですか。しかし、その中でどんどんとこれは工費が膨らんでくる設計だということがわかりましたから、最終的にああいう決断をしたところでございます。

 ただ、間に合うかどうかがわかるまでは、表に出すこともできませんし、それを多くの人たちに伝えるわけにもいかなかったんですよ。もちろん、間に合わないかもしれないのにいきなり私が白紙撤回するという、そんな無責任なことはしませんよ。当たり前じゃありませんか。それはしっかりと間に合うかどうかということを確かめながら、最終的にその確信が得られたから、十七日にそれを申し上げたわけでございます。

 そしてまた、この問題と安保法案の問題は全く別の問題であって、私たちは、国民のまさに命と幸せな暮らしを守り抜いていく使命があるわけでありまして、必要な自衛のための措置とは何かを考え抜いた結果、いわば四十年以上前の解釈は一部変更して、必要な自衛のための措置の中に、今回私たちが解釈を変更したものも、集団的自衛権の行使の一部を容認すること、これはまさに国の存立、国民の命がかかわるということについてのみだけ行使をするということは、十分にその範囲の中に入っている、この確信の中で、今回、法改正を行っているわけでございます。

 そうした法改正を行っていくことは、さきの総選挙においても我々はお約束をしているわけでございます。選挙を経た上において、我々は今回、法案の御審議をお願いしているということでございます。

小川委員 私どもとしては、デザインまでは当然そうでありますが、それも含めて、国民は見透かしていますよ、総理。そのことを申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

河村委員長 この際、玉木雄一郎君から関連質疑の申し出があります。階君の持ち時間の範囲内でこれを許します。玉木雄一郎君。

玉木委員 玉木雄一郎です。

 小川議員に引き続いて質問させていただきます。

 まず、この八月は、日本国民が一年の中で最も、過去、そして戦争ということを考える月の一つだと思います。

 まず二点、総理に伺いますが、七十年談話に関する有識者懇で、満州事変以降、大陸への侵略を拡大したということの記述がありました。十六人の委員のうち異論は二人あったということですけれども、特に満州事変以降の大陸での軍事的な展開、拡張、これを有識者懇は侵略ということで指摘をしましたけれども、総理は、この満州事変以降の大陸での活動について、侵略だとお考えになりますか。

安倍内閣総理大臣 私は常々申し上げているわけでございますが、行政府の長として、また、政治家は歴史に対して謙虚でなければならないということでございます。

 これは二つの意味がございまして、常に我々は歴史を直視し、そこから教訓を酌み取り、現在、未来に生かしていく、そういう責任を負っているということでございます。一方、歴史につきましては、あくまでもこれは歴史家に、専門家に任せるべきであろうと思います。政治の場で歴史にかかわることを発言する上においては、どうしてもこれは政治性と外交性を帯びてくるわけでございまして、その配慮の中から、発言することによって、本来歴史家に任せるべき事実の確認等をおろそかにしていくことにつながりはしまいかという謙虚さを持つべきであろう、こう思います。

 その中におきまして、今回、新たな談話を検討していくに当たって、本年二月、外部の有識者の皆様方による二十一世紀構想懇談会を立ち上げたわけでありまして、約半年間にわたって皆様に御議論をいただいたわけでございます。同懇談会におきましては、歴史や政治に造詣の深い学者、言論界、ビジネス界など幅広い分野のさまざまな世代の方々にお集まりをいただき、報告書を提出していただきました。

 昨日御提出をいただいた報告書は、このような有識者の方々によって作成された報告書であり、政府としての見解を取りまとめたものではないわけでございますので、その内容について、政府として一々コメントすることは差し控えたい、こう思うわけでございますが、いわば、出来事一つ一つを取り出してどのように評価をしていくかということについては、今この場でお答えをすることは控えさせていただきたいと思います。

玉木委員 いや、総理、何度もお答えになっているように、歴史家あるいは専門家、そういった方々が判断する面もあるだろう、また、そういった声に謙虚に耳を傾ける、そう総理もおっしゃいましたが、私、今の総理の答弁は、コメントをしないというようなものでもないと思いますけれどもね。

 半年間にわたって、それなりの見識のある方がまとめてこられた。非常に議論の分かれる話であります。しかし、十六人の委員のほとんどが、満州事変以降、大陸への侵略を拡大したという指摘をしていることについては、これを重く受けとめ、総理としても、十四日の総理の言葉の中に反映させるお気持ちはございませんか。

安倍内閣総理大臣 この報告書と、どういう議論がなされたかということも同時に公開をされているものと承知をしておりますが、おおむね、委員の方々が、認識として合意に達したところとそうでないところもあるのは、読んでいただければおわかりのとおりだろうと思います。

 事ほどさように、歴史にはいろいろな見方、あるいは専門家の方々が事実に基づいてさまざまな議論を深めていく中においては、全ての方々がこれは同じ認識に立っていない部分も当然あるわけでございまして、そういうことも含めて、私は今回、報告書をしっかりと吟味をしながら、私の、また政府、私の考え方としては談話にまとめていきたい、このように思っているところでございます。

玉木委員 総理、大多数の方がこういう指摘をされているわけであります。これを反映しないと、一体何のために有識者懇を設けたのかわからなくなりますけれども。

 では、総理、逆にお伺いしますが、この侵略という言葉は使わない可能性もあるということでよろしいですね。

安倍内閣総理大臣 まさに報告書をいただきました。この報告書を十分に熟読をさせていただきながら、私の考えといたしまして、この七十年の節目に当たる談話を作成していきたい、このように考えております。

玉木委員 しっかりと謙虚に、こうしてまとめた意見には耳を傾けるべきだということを指摘しまして、次の質問に移りたいと思います。

 非核三原則の堅持の発言が先ほどから出ておりますが、この堅持をするという、歴代内閣総理大臣が平和記念式典で必ず言ってきたことを、この七十年の節目であえて言わなかった。総理はこういう選択をとられたと思います。

 私は一つだけこれは具体的に聞きたいと思うんですが、安保法制の審議の中で、中谷防衛大臣が、核兵器の輸送は法律上可能だとも発言しております。これを無理に絡めたいという気持ちはありませんが、一つお伺いしたいのは、核を搭載した航空機あるいは船舶の寄港あるいは飛来を認めるのかどうかという問題であります。特に、半島有事の際に核を持ち込むことを認めるのかどうなのか。このことは、歴代の内閣が苦悩してきた問題の一つであります。

 今回、日米の、ある意味の協力を高めていくという観点から安保法制の議論がなされていると思いますが、あえて、この持たず、つくらず、持ち込ませず、この持ち込ませずにかかわる、英語で言うところのいわゆるイントロダクションの定義がどうなのかということは議論がありましたけれども、この核を搭載した艦船あるいは航空機の寄港、飛来といったことを、総理はこれは認めるべき、有事の際には認めるべきだという考えなのかどうか、この点だけお答えを明確にお願いします。

安倍内閣総理大臣 従来から、政府は、いわば核の持ち込みについては当然事前協議の対象になるということでありまして、事前協議の対象となればそれはお断りをするという立場で申し上げてきたとおりでございます。

 その中において、御党の岡田外務大臣時代に、いわば密約について調査をし、発表された、このように承知をしております。その際、日米の認識にずれがあったことは明らかになっているわけでございます。

 しかし、あれは九一年だったですか、ブッシュのお父さんの方でありますが、戦術核は載せないということを発表して、戦略としてそれは確定をしているわけでございまして、いわば事実上それは起こり得ないということになったわけでございます。

 今ここにいる岩屋議員が、ではどうするんですかということを岡田当時の外務大臣に質問をされたわけでございますが、今と同じ答弁をされたわけでございまして、いわば、九一年に米国が基本的な戦術、戦略を変えて、海上において戦術核は配備をしていないということになった、空母等々にはもうこれは配備していないということになったわけでありまして、これはもう今後米国はこの考え方を変えることはないであろう、また、変える場合は当然日本側に相談があるだろうという趣旨の答弁をなされた、こう承知をしているわけでございまして、この当時の岡田外務大臣と我々も同じ立場でございます。

玉木委員 小川委員も聞きましたけれども、改めてお伺いしますが、では、長崎においては非核三原則の堅持ということは明確に総理のお言葉の中に入れるという理解でよろしいでしょうか。もう一度お願いします。

安倍内閣総理大臣 それと、つけ加えさせていただきますと、核弾頭の運搬等は、これはあり得ない話、基本的にこれは全くあり得ないわけでございまして、これは周辺事態安全確保法においても、純粋法理論上はあるという、全く机上の空論について、空論に対して空論でお答えをしたにすぎないわけでありまして、基本的には全くこれはあり得ないということははっきりと申し上げておきたい、こう思います。

 長崎につきましては、この非核三原則の堅持という文言は入っているものと承知をしております。

玉木委員 一連の総理の発言や安保法制の議論の中で、国民の皆さんの中にそういった疑念が、あるいは懸念が広がっているということは真摯に受けとめていただいて、平和国家としての礎、ちょうど七十年の節目であります、しっかりとそれをむしろ深めていく、その方向でぜひ政策を進めていただきたい、このことを強くお願い申し上げて、次の質問に移りたいと思います。

 新国立競技場でございます。

 先ほど小川議員からも質問がありましたけれども、民主党政権下においてザハ案を決定したことは事実であります。その以降約三年弱、お手元の資料の六をちょっと見ていただきたいんですが、この間、いろいろな報道も含めて、ザハ案についても、金額が当初一千三百が三千になり、またそれを絞り込んで一千六百二十五になって、またふえて二千五百二十になって、そして今回白紙撤回ということなんであります。

 けさの毎日新聞にも出ておりましたし、我が党の蓮舫議員が参議院の委員会でも指摘をしましたけれども、この十四年五月は基本設計案が出てきたときであります。この一千六百二十五、これは前の年の年末に、自民党の無駄撲滅チームにおいて削減の提案もなされ、そして財政当局ともそういった合意がなされた上でこの一千六百二十五ということが基本設計案として出てきたんですが、この一千六百二十五は実は過小見積もりになっているのではないのか。

 実は、消費税の税率ももう八%に上がっているのにあえて五%で計算していたり、あるいは設計単価もあえて一年前の数字を使ったり、このことは委員会でも指摘をされましたけれども、きょうの報道では、例えば、あり得ないような資材単価を用いて概算工事費を過小に見積もっていると。しかも、この設計JV、設計四社と契約を前の年のたしか五月にしておりますけれども、日建設計ほか四社としておりますが、計算するとどうも三千億ぐらいになりそうだということで言ったんだけれども、JSCから、これは国家プロジェクトだから予算は後で何とかなるというふうに言われて、無理やり一千六百二十五に押し込んで上限に合わせた可能性があるという報道がなされております。

 まず、JSCの理事長にお伺いしたいと思いますが、この事実関係について教えてください。

河野参考人 基本設計の条件整理に当たりまして、スポーツ、文化団体などの要望を全て盛り込み、かつ、ザハ氏のデザインを忠実に実現すると三千億を超えるという設計JVの試算もあったため、文部科学省へ報告いたしました。文科省より、その後、総工費を圧縮するように指示を受けまして、これを受けて、デザインや規模のコンパクト化を図り、解体工事費六十七億円を含む概算工事費として千八百五十億円と算出して文部科学省に報告させていただきました。

 その後、文部科学省内で精査をいただきまして、政府内の調整を経た結果、平成二十五年十二月二十七日に、解体工事費を除きまして千六百二十五億円という概算工事費が文科省より示されましたので、これを受けまして、平成二十六年度の概算要求の積算条件でありました二〇一三年七月時点での単価、消費税に基づき試算をしたものでございます。

玉木委員 これはいいかげんなのではないですか。少なくとも消費税は、だって、八%に上がるのは決まっているのに、何で五%で計算するんですか。事ほどさように、これはあえて粉飾という言葉を使って下村大臣からお叱りも受けたやに議事録を読みましたが、ちょっとやはり数字をいじっていますよ、これは。

 私は実は何を言いたいかというと、幾つかの段階で、引き返せるときがあったと思うんです。

 一つは、やはり基本設計を四社にお願いして専門家が計算して出てきたときに、三千億円ということで出てきたら、それで無理に一千六百二十五におさめるのではなくて、ここで根本的なやり直しなり、ほかの案を検討する機会が私はあったのではないかなと思うんですけれども、これは下村大臣、この時点で、三千億円に膨らんでしまうというようなことをJSCからお聞きになっていますか。

下村国務大臣 まず、別に民主党の責任にするつもりは全くありませんが、前の国立競技場を解体して、そして新国立競技場としてザハ・ハディド氏の案を選定したというのは民主党政権のときでございます。それを受けて、このザハ・ハディド氏の案にのっとって建築を進めようとしてきたわけでございます。

 最初のときが、委員の資料の中にもありますが、一三年一月、立候補ファイルに一千三百億というふうに書いたわけでありますが、これについて私のところに報告が来たのは、一三年の十月になって、一千三百億ではできない、三千億になりそうだという見積もりがあったということでございまして、これについては縮減するように指導したということでございます。私も、建築の設計にしても、あるいは施工にしても、専門家ではありませんから、これについてはコスト削減。それから、三千億になったときには、ザハ・ハディド氏の案は生かしながら、二五%規模を縮減するということと、あとは、それぞれの建材等のコストダウンを図る、そのことによって国民が納得できるような額が可能ではないかということの中で、それぞれの専門家、立場の人たちが議論した中で、一四年の五月、一千六百二十五億という基本設計になったわけであります。

玉木委員 一四年五月の時点では、大臣は聞いていなかった。なぜ私はこの時点が大事かというと、もう壊してしまいましたけれども、旧国立競技場の解体が始まったのがこの年の年末からです。つまり、いろいろなところで見直しをしていく、そのときに、例えば、既存施設の利用だということも今いろいろな議論が出ていますが、壊してしまうと、もうできませんよね。

 今の三千にしても、壊した後に出てくるわけです、その数字が。もうどうしようもなくなってから。幾つかの時点できちんと財政的な積算根拠なりをチェックして、民主党のさまざまな政策を自民党だって変えておられるわけですから、それはもう変えればよかったんじゃないですか。

 私はそこで聞きたいのは、総理にお伺いしたいのですが、一番目の資料をごらんください。おととしの九月七日のIOC総会で、総理はこういう発言、プレゼンテーションをされておられます。これが東京招致につながったということだと思います。「ほかの、どんな競技場とも似ていない真新しいスタジアムから、確かな財政措置に至るまで、二〇二〇年東京大会は、その確実な実行が、確証されたものとなります。」こうおっしゃっています。

 実は、このプレゼンテーションをするときに立候補ファイルというのを提出していまして、その中に、それぞれの施設の、これは国がつくるものだけではありません、東京都がつくるものも含めて、これぐらいの予算がかかるんだということがリストに全部書いてあります。

 一国の総理が国際的な場で発言する際でありますから、その一千三百億の積算根拠が正しいかどうかは、財政当局も、今、麻生大臣はいらっしゃいませんが、含めてチェックをしてからプレゼンテーションをしているはずだと思うんですが、おととし九月七日のIOC総会で、財政措置まで確実にやりますということを言っているわけですからね。ここを、一千三百億について、これはザハ案ですね、この真新しいスタジアムというのは。ザハ案が一千三百におさまるとファイルには書いてありますから、そのしっかりとした見積もり、積算根拠、精査をしてからこの演説をされたのかどうか、そこを総理、お答えください。

安倍内閣総理大臣 まず、皆さんのときに決められたザハ案、これは千三百億円というのを前提としているわけであります。当然、そういうしっかりとした契約になっているということを前提としなければならないわけでありますし、そもそも、千三百億円の中に入るまさにデザインを選ぶという責任があったと思いますよ。その中で、まさに皆さんがそれを採用されたわけでございますが、しかし、実際はそうはならなかったわけでありまして、デザインそのものにこれは予算を膨らませるという大きな原因があったわけでありますから、我々は白紙撤回したわけでございます。

 そこで、日本スポーツ振興センターは、新国立競技場のデザインを国際公募し、平成二十四年十一月にザハ・ハディド氏のデザインを選定しました。その後、このデザインを前提にフレームワーク設計を行うなど、整備のための作業を進めていたわけであります。

 また、民主党政権時代に作成が進められ、当時の野田総理の保証書をつけて、野田総理が保証書をつけたんですよ、保証書をつけて、平成二十五年一月初めに東京都がIOCに提出した立候補ファイルでは、新国立競技場を整備し、開会式等の会場とすることが記載をされていたわけでございます。

 これらを踏まえまして、平成二十五年の九月のIOC総会においてプレゼンテーションを行ったわけでございますが、野田総理の保証書では、日本政府が以下のことを保証することを確認するとして、ずらずらと書いてあるわけでありまして、立候補都市として義務を完全に遂行できるよう、必要なあらゆる措置を講じることということも書いてあるわけでございます。

 そうしたことも含めて、それを前提に私はプレゼンテーションを行ったわけでございます。

玉木委員 二十五年一月は安倍政権ですよ。そこだけ野田総理の保証書がどうだこうだと出してきて、責任転嫁も私は甚だしいと思いますよ。それから何カ月たっているんですか。半年以上たって、総理が……(発言する者あり)

河村委員長 御静粛に願います。

玉木委員 安倍総理として、国際的な場で、財政措置も含めてやる、一千三百億、ザハ・デザインだということでやっていたわけでしょう。これは安倍総理の発言ですよ。私、そういうところに無責任体質があらわれていると思うんです。

 では、もう一つお伺いします。

 今回、総理は白紙撤回されましたね。先ほど小川委員が言ったように、その白紙撤回の根拠もよくわかりません。それで、お伺いしたいのは、白紙撤回の範囲であります。

 今回、旧国立競技場より約一・六倍の敷地面積をこのザハ案はとっていました。そうすると、それを白紙にすれば、敷地についても当然白紙にすべきですよね。あの大きなものをつくるんだったら、それが当たって壊さなきゃいけない建物があったり、あるいは切らなければいけない木があったりするんだと思います。でも、それをそもそも白紙に戻したということは、今、自民党の提案では、そもそもあそこにつくらないという、ゼロオプションということさえ示されているわけですね。

 そこでお伺いします。資料の四をごらんください。

 このザハ案を前提に大きいのをつくりましたから、白紙撤回を総理はされました。私はこれは評価をいたします。しかし、新しい、ザハ案をつくることを前提に、ひっかかるといって、今問題になっているJSCさんの本部ビル、そして日本青年館、これを一緒にして、近接する地域に新しい建物を建てることにしているんですね。

 これをごらんください。設計、建設費百六十六億円、取り壊し費用、あるいは、今JSCが仮本部にありますから、そのリース料を入れれば十億円入れて、約百八十九億円。先ほど、階委員から被災地の追加負担が二百二十億という話がありましたが、それに相当するような二百億の負担をしてこんな立派なビルを建てるんですよ。これもあわせて白紙にすべきだと思いますよ。

 上物だけ白紙にして、なぜ、今本当に問題になっているJSCさん、こんな立派なビルを建てて、ここだけは白紙にしないというのは、とても国民の理解を得られないと思いますけれども、いかがですか、総理。

下村国務大臣 まずは、私は責任回避するつもりは全くありませんが、先ほどのブエノスアイレスの総理の件について、あたかも見直しすればよかったじゃないかということで……(玉木委員「いえいえ、違います。積算をきちんとしたかということですよ」と呼ぶ)いや、その前に。しかし、事実関係だけちょっとやはり確認を申し上げたいと思う、テレビを見ている方がたくさんいらっしゃいますから。

 東京都が二〇二〇年オリンピック・パラリンピック競技大会立候補ファイルに記載したオリンピックスタジアム、国立競技場ですね、この建設費の一千三百億円については、JSCが民主党政権下である平成二十四年時に実施した国際デザインコンクールの募集要項に、工事費概算として約一千三百億円程度として示した額であり、国内の既存スタジアムの建設コストを参考に推計した額であります。

 国際デザインコンクールの審査におきまして、審査前に構造、それから設備……(玉木委員「ごまかさないでください、大臣、答えてください」と呼ぶ)いや、答えます、ちゃんと。都市計画、積算等、十名の審査員による技術審査を実施しており、この中で事業費についても評価が行われ、その中で、デザインと一千三百億はセットになって言ってきているということをまず申し上げておきたいと思います。これは前政権のときの……(玉木委員「では、やめてください、これは白紙にしてください」と呼ぶ)

 それで、答えでありますが、今の質問についてお答えをさせていただきたいと思います。

 ゼロから見直すということについて、総理が決めましたが、このゼロベースでの検討を行う対象というのは、東京オリンピック・パラリンピックのメーンスタジアムである新国立競技場の本体の設計、施工のみであります。

 JSC本部事務所につきましては、国立競技場の改築に伴い、日本青年館も移転が必要となったことから、JSCと日本青年館は共同で建てかえ、代替建物を建設することとし、ことしの六月に工事請負契約を締結し、工事が進められております。

 このため、JSCの意思のみで当該契約を変更することは困難であること、JSC本部事務所は既に取り壊しが完成し、日本青年館について現在取り壊しが行われている。JSC本部事務所の整備計画は継続をさせる。

 いずれにしても、建てかえにおいても八万人規模を想定すると、これは移転が必要であるということであります。

玉木委員 六万人規模にすればいいという建築家の提案や、自民党の中にもそういう提案があるのに、八万席を前提として、なぜこれを白紙に戻さないんですか。だって、敷地面積も変わるんだから、何でこんな、立ち退きを前提に立派なビルを建てるということもあわせて白紙にすべきじゃないんですか。だって、これだけ問題を起こしているJSCが何でこんな立派なビルに入るんですか。

 そういう信頼も含めて全部改めないと、総理がおっしゃるような、国民から祝福されるようなオリンピックにならないと思いますので、総理、改めて、このJSCの入る新しいビル、こんな巨額で巨大なビルを建てる必要はないと思いますけれども、白紙撤回すべきだと思いますけれども、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 これは、JSCの建物というよりも、青年館も移るわけであります。全国の青年団の皆様のまさにこれは象徴的なビルとして、今多くの人たちが使っているわけでありまして、そこも立ち退きが必要になりますので、その建てかえもあるということは、先ほど下村大臣が述べたとおりであります。

 いずれにいたしましても、国民の皆様が納得するような形で、我々、これを白紙にし、見直しを行っているわけでございますので、多くの方々から祝福されるものにしていきたい、このように思います。

 我々も、民主党政権時代がどうだったかということは言いたくありませんが、これは、お互いがそうして政治的に批判し合うよりも、お互いに協力をして、いいものをつくっていきましょうよ。そのために、我々、オール・ジャパンでしっかりと取り組んでいきたい、このように思っておるところでございます。

玉木委員 積極的な提案をしているつもりですが、都合のいいところだけとって、都合の悪いところは白紙撤回しない、こんなことでは大変この先行きが不安である、このことを指摘申し上げて、質問を終わりたいと思います。

河村委員長 この際、山井和則君から関連質疑の申し出があります。階君の持ち時間の範囲内でこれを許します。山井和則君。

山井委員 三十分間、質問をさせていただきます。

 まず冒頭、二問。

 昨年、過労死防止法が成立をいたしました。超党派、安倍総理も含めた全ての議員、政党の賛成で成立をしたわけですが、残念ながら、この国会に出てきております残業代ゼロ法案、労基法改正、そういう中で、逆にこれは過労死促進法ではないかという、過労死の御家族や労働団体からの悲鳴も起こっております。

 そういう中で、きょうは、実際、異常な長時間労働でクモ膜下出血で倒れてそれで失明をされた山下照之さん、そしてまた、ブラック企業による長時間労働で残念ながら過労事故死をされてしまわれました渡辺航太さんのお母さんも、傍聴にお越しをいただいております。

 安倍総理に質問通告しておりますので、まず冒頭二問、そのことについてお伺いしたいと思います。

 この山下照之さん、五十三歳の方でありますけれども、多い年は年間三百日海外出張、そしてまた月百五十時間を超える残業もしておられました。それで、クモ膜下出血で倒れられて、一命は取りとめられましたが、残念ながら失明をしてしまわれました。

 そして、普通、こういう話を聞くと、これは労災だというふうに当然なるわけですけれども、ところが、労災の認定は不認可。その理由は、会社側は、月の残業が十時間未満だと。全く労働時間を把握していないわけですね。

 それで、なぜそういう違いが起こるのかというと、会社側が、山下さんの勤務、労働時間がわかるパソコンのデータやメールを消去してしまった、証拠を隠滅してしまったわけですね。こういうケースは今続出しているんです。

 今、安倍総理が進めようとされておられます裁量労働制、高度プロフェッショナル、そういう成果主義と言われる労働時間の中で、労働時間の把握が曖昧になる。それで、いざ、こういう労災になったり過労死で倒れたりしたときに、会社側が労働時間を把握していない。把握していないどころか、あるケースでは、過労死をされたその日に、会社側が、お亡くなりになられた方のパソコンを持っていって、全て勤務記録の証拠を消してしまう、そういうことが今続出しているんです。こんなことはあってはならないと思います。

 こういうふうなことは、やはり違法ではないですか。今後、禁止すべきではないですか。このことについて安倍総理に通告しておりますので、安倍総理の答弁をお願いしたいと思います。安倍総理。

    〔委員長退席、萩生田委員長代理着席〕

安倍内閣総理大臣 労災認定に係る労働時間の把握については、タイムカードの確認や、同僚、取引先への聞き取りなど、さまざまな方法により労働基準監督署が独自に調査を行い、実労働時間を把握し、適切に対処しているところであります。

 また、過重労働等が疑われる事業場に対して監督指導を行った際、労働時間の実態を隠蔽する目的でパソコン記録等を消去するような悪質な行為が認められた場合には、労働基準法違反の有無について徹底した調査を行うこととなります。

 その結果、割り増し賃金の不払いなど、法違反が認められた場合には是正を指導し、重大または悪質なケースについては書類送検を行うこととしています。

 今後とも、全ての方が安心して働くことができる労働環境の確保に努めていく考えであります。

山井委員 重要な答弁です。こういうことが今横行をしております。いざ過労死や労災になろうというときに、会社側がパソコンやメールを消去してしまう、証拠を隠滅してしまう、それで労災さえも、過労死の認定さえもさせない、そういうことがふえているというのはあり得ない話であります。そういうブラックな企業をふやすことがあってはなりません。

 そして、もうお一人、非常に残念なケースですが、昨年四月に渡辺航太さんが過労事故死をされました。これもブラック求人でありまして、求人票を見たときには月残業二十時間となっていた。ところが、多いときには百時間以上の残業を強いられた。

 それで、航太さんは、本当に親孝行で真面目で、自分のことよりも他人のことを思いやるすばらしい若者でありました。人生これからというときに、そういう、求人票では、残業時間二十時間、正社員と書いてあったのに、いざ就職したら、残業百時間以上の月があったり、あるいはアルバイトで、正社員でもなく、本当につらい思いをされました。

 こういうブラック企業の被害、過労死でも、最近では娘さんや息子さんが過労死をされてしまう、そういう悲劇が本当にふえておりますし、過労死をした上でも、なお労災すら受けられない、また、受けられるとしても、五年、十年、裁判で闘うケースもある。そんな本当にブラックな世の中になろうとしている中で、今、残業代ゼロという考え方を今の政権が推進しているのは非常に問題であります。

 結果的に、このフリップを見てもらいましたらわかりますように、出勤時間から退勤時間まで、例えば、四月の九日の場合は十九時間三十四分。そして、十五日には二十三時間。そして、一番最後、過労事故死をされる前日は、十一時に朝出勤して、翌日の朝八時まで働いておられるという、二十一時間、こういう出勤と退勤まで時間がある。こういう徹夜勤務の翌日、過労事故死をしてしまわれました。

 そこで、これも質問通告しておりますので、安倍総理にお伺いしたいんですが、やはり成長戦略ということで、経団連からの要望もあって、こういう残業代ゼロ、成果主義ということを安倍総理は進めておられるようですけれども、やはりこれは、人の命を犠牲にする成長戦略というのはおかしい。余りにも安倍総理の考え方というのは企業寄り過ぎるのではないですか。安倍総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 過労死はあってはならないことであり、政府としては、長時間残業に関する監督指導を徹底するとともに、社会的に影響力の大きい企業が違法な長時間労働を繰り返している場合には、これまで、書類送検を行った段階で原則公表する取り扱いとしてきたところでありますが、一歩進めまして、是正を指導した段階で公表することにいたしました。対応の強化を図っています。

 その上で、国会に提出している労働基準法改正案は、これは残業代ゼロとかそういうものではなくて、ワーク・ライフ・バランスの観点から、働き過ぎを是正するとともに、多様で柔軟な働き方を進めるものであります。

 法案では、また、全ての働く人の働き過ぎを防止するために、企業に対し、働く人の意見を聞いて休暇を指定することの義務づけ、中小企業における時間外労働への割り増し賃金率の引き上げ等を行うことにしています。

 また、裁量労働制につきましては、企画立案を担うホワイトカラーの働き方の実態に合わせ対象を見直すとともに、健康確保の観点から、特別な健康診断や休暇といった措置のいずれかを必ず行うよう企業に求めることとしています。

 さらに、時間ではなく成果で評価する制度は、例えば金融商品の開発などグローバルに働く専門職の方に力を存分に発揮していただくものでありまして、その健康確保のため、在社時間等を把握した上で、一定の休暇を与えるなどの措置を求めるとともに、医師による面接指導を企業に行わせることとしております。

 このように、働く人の健康を確保しながら生産性の向上を図っていく、これが安倍内閣の成長戦略であり、人の命を犠牲にする上に成り立っている、これは全くの間違った指摘であるということを御理解いただきたいと思います。

山井委員 残業代を払わずに、若者を初め労働者の方々を使い倒してしまう、そういうブラック企業が喜ぶような法改正、何よりも一番つらい思いをされている過労死の御遺族の方々や、またそういう過労で倒れられた当事者の方々が心配し、反対している残業代ゼロ制度というのは、ぜひ断念をしていただきたいと思います。

 次の質問に入りたいんですが、ちょっと先ほどの小川議員、玉木議員、階議員の質問で私は納得できないことがありまして、お伺いしたいと思います。

 非核三原則なんですが、先ほど、長崎では非核三原則の堅持ということに触れるとおっしゃいました。では、なぜ広島ではそのことは触れられなかったんですか。歴代の総理大臣は全て触れていたんです。安倍総理も、去年、昨年、第一次安倍政権でも触れていたんです。わざわざなぜ広島で抜いたんですか、それを。

安倍内閣総理大臣 先ほども答弁をしておりますように、まさに国是として、この非核三原則を前提のもとに、広島におけるスピーチにおきましても、核のない世界を実現していくために、日本は国際社会の中においてその実現のためにリードをしていく、国際社会をリードしていくということもしっかりとるる述べているわけでございます。ですから、この考え方には毛頭も変わりはないわけでありまして、その前提の上でお話をさせていただいているわけでございます。

 また、その後に開催されました被爆者団体の方々との懇談会におきましても、挨拶の中で、非核三原則の堅持は申し上げているとおりでございます。

山井委員 全く答弁になっておりません。

 私の知り合いの広島の方からも、非核三原則に安倍総理が式典で触れられなかったことにショックで涙がとまらなかったということをおっしゃっておられました。世界に、唯一の被爆国である日本が、核廃絶をアピールする一番重要な場じゃないですか。

 答えになっていないんです。懇談会で言いました、なぜ、懇談会で言うのであれば挨拶から抜いたんですか。世界の人が注目している、アピールしている、これは、今までも入れなかったからことしも入れなかったじゃないんです。歴代の総理大臣がずっと入れてきた、御自分も、去年、おととし入れてきた。おっしゃったように国是じゃないですか。

 なぜ国是を抜かれたんですか、広島だけ。

安倍内閣総理大臣 これはもう国是でありますから、不動の政府としての考え方であります。ですから、その意味におきまして、私も総理大臣として既に何回もこれは申し上げているとおりであります。

 ですから、その上におきまして、いわばこれは御挨拶の中で、それを前提として、核兵器のない世界をつくっていくために我々は何をしていくかということについてるる述べているわけでございまして、当然それを前提としてお話をさせていただいているということでありまして、これを落としたから、我々は政策から、それを変えたということでは全くないわけであります。

 それが証拠に、先ほど申し上げましたように、その後行われた被爆者団体の方々との懇談会の席においては非核三原則の堅持についてはお話をさせていただいているとおりでございまして、そしてまた、長崎の御挨拶の中ではそれが入っているということでございます。

山井委員 全く理解できません。

 広島に入れなくて、なぜ長崎で入れるんですか。私は入れるべきだと思いますよ。どう違うんですか。どう違って、なぜ広島で入れなくてよくて、なぜ長崎では入れないとだめなんですか。お答えください。

安倍内閣総理大臣 いずれにいたしましても、もうそれを前提として我々はお話をさせていただいているわけでございます。

 その中で、いわば広島の御挨拶と長崎での御挨拶、それぞれでどういう御挨拶にしていくかということで案文を起案していくわけでございますが、いずれにいたしましても、これが入っていないから我々が国是を変えたということではないということは御理解をいただいたと思うわけでございまして、これを前提に私は御挨拶をさせていただいたということに尽きるわけでございます。

    〔萩生田委員長代理退席、委員長着席〕

山井委員 全く理解できません。

 これだけの国是を、あなたは、わざと意図的に抜いたんですよ。世界が、非核三原則の堅持を日本はやめるのかと思うのが当たり前じゃないですか。

 そうしたら、お聞きしますが、もとから広島は抜いて長崎は非核三原則を入れる予定だったのか、それとも、広島に批判が出たから急遽長崎で入れることにしたのか、どっちですか。

安倍内閣総理大臣 もともと、広島での御挨拶の案と長崎での挨拶の案は、これは基本的にセットで起案をしているわけでございまして、その中で、重複する言葉もあればそうでない言葉もありますし、前年まで使ってきた言葉をどう調整するかということにつきましても、外務省、厚労省、そして官邸において、まず事務方で協議をしながら文案を作成するわけでございます。

山井委員 いや、全く、ちょっとしたてにをはじゃないですよ。国是じゃないですか。唯一の被爆国であって、世界で一番の苦しみを感じられている広島の被爆者の方々は、もう本当にあきれられ、失望されておられます。

 そのことと私は関連するんではないかと思いますが、おととい、中谷大臣は、今回の安保法案の中で、結局、弾薬とみなされて、核弾頭つきの核ミサイルは、法律上は自衛隊が輸送することからは排除されないという答弁をされました。岸田外務大臣も、そのとおりだと認められました。

 法理上、自衛隊が他国の領土で、そして核兵器を輸送することが、先ほどあり得ないとおっしゃいましたが、総理の決意は聞いていませんから、純粋法理上、核兵器を自衛隊が輸送することは除外されているのか、されていないのか、イエス、ノーで、安倍総理、お答えください。

安倍内閣総理大臣 それは、周辺事態安全確保法においても変わりがないわけでありますが、そもそも、政策的選択肢としてないものをどうだという議論をすること自体が私は意味がない、このように思います。

山井委員 安倍総理、全く答弁されませんね、先ほどの非核三原則にしても。国民の方は、これじゃ理解できませんよ。国民の方が不安に思っているんです。

 私たちが今審議しているのは法律なんですから、安全保障法案という法律なんですから、法律上は、今回の安保法案で自衛隊が核兵器を輸送することは排除されているんですか、されていないんですか。イエス、ノーでお答えください。

安倍内閣総理大臣 先ほどそれは答弁しているとおりでありますが、そもそも、政策上、これはあり得ない話であります。いわば政策的な判断をする私が、あり得ない話について、政策的な判断をする私が答えることは、まさに政策的な判断をしているという誤解を与えさせようと山井さんは考えておられるんだろうと思いますが、これは政策的には全くあり得ない話であります。

 そして、純粋に法理上ということではありますが、これは、事実上、政策的にはあり得ないんですから、まさに机上の空論と言えます。机上の空論ではありますが、中谷大臣がまさに純粋法理上は答弁したとおりでありますが、であるならば、それは、周辺事態安全確保法、今まである法律ともこれは同じであります。

 しかし、この場において、まさに私は政策的な判断をする立場の行政府の長でありますが、その長にそういう答えをさせて、それがあり得るかのごとくの印象を与えようとする議論は、私はそれは真摯な議論とは言えないのではないか、このように思います。

山井委員 安倍総理、今、中谷大臣が答弁されたとおりだと。つまり、法理上は核兵器を自衛隊が今回の安全保障法案で輸送することは排除されていないということをお認めになりました。これは非常に大きなことであります。

 昨日も、核兵器を輸送することを認めるということは使用することも容認するということにつながりかねない、そんなことはあり得ないということを被爆者団体の方々もおっしゃっておられます。世界一、反核、非核、そういうものに先頭をとるべき日本で、法律上核兵器を自衛隊が他国の領土で輸送できるようにする、そんな危険な法律が許されるはずがないじゃないですか。

 岸田外務大臣は、法律上核兵器を自衛隊が輸送できるということを、おとつい、今初めて承知したと答弁されました。安倍総理は、その事実をいつから御存じでしたか。

安倍内閣総理大臣 先ほども申し上げたとおり、これは法理上の話であって、本来、法理上の話ではなくて、政策上あり得ないと私は言っているじゃないですか。政策上あり得ないということは、それは起こり得ないんですよ。起こり得ない。起こり得ないことをまるで起こるかのごとくそういう議論をするのは間違っていると、私が何回も申し上げているとおりであります。

 山井さんは、そのように起こり得ないことを十分にわかっているはずですよ。わかっているのに、まるで我々がそういう政策的な選択肢としてそれがあるかのごときの印象を与えようとして、そういう議論をわざわざされているんだと思います。

 そもそも、そんな、弾頭自体を日本に運んでくれと米国が言うこと自体は一二〇%あり得ませんよ。そして、日本側が、一二〇%ないということを前提に、頼まれたとしても、それは絶対にやりませんよ。それは当たり前ではありませんか、非核三原則もあるんですから。しかし、ただ単に、純粋上、それはどうなのかと言われれば、理屈としては、これは周辺事態安全確保法と同じですよ。それは御存じのはずですよね。なぜそのことは聞かれないんですか。周辺事態安全確保法、今でもそうなんですよ、それは、純粋に議論であれば。

 ですから、それをこの法律だけについてどうかと言うことは、まさに国民に誤解を与えようとしている意図を感じざるを得ない。ですから、今私が申し上げたとおりであります。

山井委員 安倍総理の答弁はおかしいと思いますよ。私たちが今、国会で議論しているのは法律ですよ。この法律は、五年、十年、二十年、三十年、将来の日本の国を左右するんですよ。今の政権が政策判断で核兵器は輸送しませんと、そんな答弁じゃ、全く安心も納得もできるはずないじゃないですか。

 法律的に可能だったら、次の政権が違法じゃないから核兵器を運びますと言えば、違法じゃないんですよ。絶対にあり得ないと言うならば、安倍総理、今回の法案の中で核兵器は除外するとしっかり明記してください。そうしないと納得できません。

安倍内閣総理大臣 それは、先ほど申し上げましたように、周辺事態安全確保法、今既にある法律においても同じことなんですよ。法理上は同じだということは中谷大臣も述べているじゃないですか。ですから、それはそもそもそこでも起こり得なかった、これはあり得ないことだからであります。

 私は総理大臣として、あり得ない、こう言っているんですから、間違いありませんよ、それは。総理大臣としてそれは間違いないということを言っているわけですから。これはそもそもあり得ないということについて、それはまるで政策的にあり得るかのごとく議論することは間違っているということを申し上げているわけであります。

山井委員 憲法を解釈変更して、憲法違反の安保法案を出している安倍総理があり得ないと言っても、国民は信用しませんよ。あり得ないことをやろうとしているから、国民は不安に思っているんじゃないですか。

 では、お聞きしますが、自衛隊が輸送するときに、この中に毒ガスが入っている、普通の兵器だ、大量破壊兵器だ、あるいは核弾頭が含まれている、一々これを確認することができるんですか。安倍総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 これは、いわば輸送する段階において、実際の運用においてはそうしたものを確認していくのは当然のことなんだろう、このように思うわけでございます。

 そして、今、毒ガス等々とおっしゃった。それはまさに国際法に違反するわけでありますから、国際法に違反するものを我々が実行するということは、これもあり得ないわけでございます。

山井委員 確認を一々、そんなことは本当にできるはずがないわけでありますよ。一々本当に事前に確認するんですね。今の答弁は非常に重要ですよ。一々確認すると私は初めて聞きましたよ。だめですよ、だめですよ、今おっしゃったわけですからね、安倍総理。

 それに、国際法上違反していると言うけれども、今は国際法の話をしているんじゃないんですよ。安倍総理が提出している安保法案の話をしているんです。でも、一々排除しないということですが、なぜ排除しないんですか。核兵器は絶対にだめだと排除するように修正したら、国民の方々も納得できるかもしれません。

 では、五年、十年、次の政権あるいはその次の政権が政策的判断で核兵器を輸送するともし判断した場合、この核兵器を輸送するということは違法になるんですか、違法でないんですか。

安倍内閣総理大臣 これは、山井先生、先ほど私が答弁したように、一々確認しますよ。当たり前じゃないですか、運び方が違うんですから、それぞれ対象物がどうなるかによって。何でも同じように運ぶわけではないんですよ、そうしたものを運ぶ際には。ですから、一々確認をしながら、それに対応した運び方をしていくのは当然のことであります。

 ですから、例えば米軍は日本側にこういうものを運んでもらいますということを言ってくるわけでありますから、それに対応して我々は運んでいく。そして、もちろん、当然我々は、先ほど申し上げましたように、国際法に反することはそもそもやらないわけでありますから、これは当たり前のことでございます。

 そして、先ほど核弾頭云々かんぬんという話をされましたが、そもそも日本側にそれを頼むということは一二〇%ありませんが、しかもそれを運ぶという能力を我々は持っておりませんが、その上においてそれを運ぶということはもちろんあり得ないわけでありまして、それは当然断る。

 しかし、それはそもそも全くない話でありまして、ですから、これはまさに、ほとんどここで政策論として議論する意味はないわけであります。そういう議論をするのであれば、ではなぜ周辺事態安全確保法のときに法理上どうかという議論をしなかったのかということなんだろう、こう思うわけでありまして、まさに法理上の話については答弁しているわけでありますが、しかし、政策論としてはこれは一二〇%あり得ないわけであります。

山井委員 あり得ない、あり得ないとおっしゃるんだったら、政策判断であり得ないんじゃなくて、安倍総理のあり得ないという言葉ほど説得力のないものはないんですよ、法律で、安倍総理の言葉じゃなくて。

 私たち政治家は、後世の子供や孫たちの時代にも戦争のない、核兵器を絶対に輸送もしない、そういう日本を残す責任があるんですよ。その担保は、安倍総理の答弁ではだめです。法律にしっかり書いてください。核兵器、毒ガス、大量破壊兵器、それは絶対に弾薬に含まれない、そのことを法律に書いてください。書けない理由は何ですか。

安倍内閣総理大臣 国是として非核三原則を我々は既に述べているわけでありますし、はっきりと表明をしております。それを例えば全ての法律に落としているかといえば、それはそうではないわけでありまして、国是は国是として確立をしているわけでありますが、この国是の上に法律を運用していくのは当然のことであろう、このように思うところでございます。

山井委員 その国是を、きのうの平和式典で非核三原則、国是を言わなかったのはあなたじゃないですか。

 その前日に中谷大臣は、法律上、核兵器を輸送できると国会で答弁しているんですよ。日本だけじゃなくて世界じゅうの方々が、核兵器をもしかしたら持つかもしれない、そういう議論を始めるんじゃないかと不安に思うのはごく自然だと思いますよ。

 二〇〇六年、安倍政権、第一次政権のときにも、核保有の議論はすべきだという議論が自民党の中から出てきたじゃありませんか。

 安倍総理、なぜ、この法案に核兵器の輸送を除外すると入れないのか、全く納得ができません。

 安倍総理は、今までの国是であった平和憲法、専守防衛、そういうものを壊そうとしているんじゃないかと原爆の被害者の方々もおっしゃっておられます。最近の政府の施策には被爆者の願いに反するものがあり、危惧と懸念を禁じ得ない、その最たるものが安保法案だと被爆者の代表の方々もおっしゃっておられます。

 きょう安倍総理が認められたように、法律上、核兵器を自衛隊が輸送できるようにする、こんな危険な法律を日本の国で成立させることはできません。その撤回を求めます。

 安倍総理、最後に答弁をお願いします。

安倍内閣総理大臣 山井委員が前提としていることは、全て間違っています。

山井委員 法律的にはそのとおりじゃないですか。国民が議論するのは法律ですから。

 以上で質問を終わります。

河村委員長 これにて階君、小川君、玉木君、山井君の質疑は終了いたしました。(発言する者あり)

 理事会で協議させていただきます。

 次に、牧義夫君。

牧委員 維新の党の牧義夫でございます。

 山井議員の後でございますから、少し静かに質問させていただきたいと思うんですけれども、今回は広範にわたる質問をさせていただきますが、基本的には、安倍内閣の国民に対する責任のとり方について、これを基調にお話をさせていただきたいと思います。

 まず、何といっても、安全保障をめぐる法整備についてでございます。

 我が国の安全保障をめぐる議論の舞台というのはもう既に参議院に移っておりますが、そもそもこの安保法制、私、平安特でも申し述べましたけれども、十八年ぶりに改定された日米防衛協力の指針、いわゆるガイドラインの中身、これが、従前の周辺事態法等では対処できないものが入っているから、だからそれをきちっと法整備するんだということが、今回の法改正の肝の部分、趣旨だと思います。

 この十八年ぶりの改定というのは四月の二十七日に日米2プラス2で合意がなされたわけですけれども、安倍総理は、その二日後、四月二十九日に、連邦上下両院合同会議においてゲストでスピーチをされました。そのスピーチの中身そのものについては今申し上げたガイドラインに基づくものでありますけれども、まだ法案そのものが国会に提出をされない前に、安倍総理はそこで、この法案の夏までの成立を約束してきたわけであります。

 もとより、このガイドラインそのものがアメリカの利益にもかなうものでありましょうから、だから、上下両院の合同会議においては、本当に共和党も民主党も、上院議員も下院議員もみんなそろって見事にスタンディングオベーションをされながら、安倍総理は喝采をされたわけでございます。これは当然といえば当然の話で、本当に、言い方は失礼かもしれませんけれども、カモがネギをしょってきたんじゃないかというような、私はアメリカの対応だったと思います。

 その後、五月にこの法案が閣議決定をされて、ようやく、私たちこの国会で議論をすることになったわけで、国民の代表者が集まる国権の最高機関における議論がアメリカでの約束の後に始まったということは、私は大変心外でございます。国民の命よりもアメリカとの約束を優先させるんじゃないか、そのことを言われても、私はいたし方がない事実であろうと思います。反論があれば、後で述べていただければ結構でございます。

 さらに、国会での議論が始まって審議が進む中で、さらに国民の疑念が深まっているというのも、これも一方で私は否定できない事実じゃないかと思います。何よりも、これはもう再三こういう場で言われておりますけれども、権威ある憲法学者が次から次へと、これは違憲ではないかという意見を述べておられる、そして歴代の内閣法制局長官も、これは違憲であるということをはっきりと述べているわけでございます。さらに、安倍総理の補佐官でもある礒崎さんが、法的安定性、こんなものは関係ない、こういう発言をされる、こういう中で、国民の理解が深まるどころか、ますます疑念が深まっていると言っても過言ではないかと思います。

 先ほど来お話が出ておりますけれども、その議論の中で、中谷防衛大臣からもまた、核兵器が法文上は運ぶことができる、法理上はできるというような発言もあり、さらには、これもお話が出ましたけれども、昨日の平和記念式典における安倍総理の挨拶の中に非核三原則堅持という言葉がなかった、こういうことを踏まえると、国民の皆さんは、言葉にはならないかもしれませんけれども、何かが着実に進んでいるんじゃないかという懸念を持っていると言っても、私は過言ではないと思います。

 こういう状況の中で、それでも総理は、六十日ルールを使ってでも、何が何でもこの法案を通そうとしているのか、これはアメリカと約束してしまったんだからしようがないんだというのか否か、まずはお聞かせをいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 米国におきまして、この夏までにと平和安全法制の成立について決意を述べたところでございますが、この平和安全法制につきましては、二〇一二年暮れの総選挙、そしてその翌年の参議院選挙、また昨年暮れの総選挙におきまして、それぞれ、我々は我が党の公約として、法整備を進めていくということを公約として掲げてきたわけでございます。そしてまた、昨年の衆議院選挙後に第三次安倍政権が発足した際の記者会見におきまして、来るべき国会において速やかな成立を図っていくということを申し上げております。また、ことしの本会議におきましても、質問にお答えをさせていただきまして、この国会で成立を図っていくということは、二回かな、累次申し上げているわけでございまして、当然、既にもうこれは国会においても、記者会見においても、選挙においても申し上げている決意を、改めて米国の上下両院の合同会議で申し上げたわけでございます。

 そこで、六十日ルールにつきましては、参議院における審議の進め方については参議院の御判断に従うべきものと考えておりますが、いずれにいたしましても、国民の皆様のさまざまな御意見に真摯に耳を傾けながら、今後の法案審議においてもわかりやすく丁寧な説明を行うよう心がけてまいりたいと思っております。

牧委員 それはわかるんですが、私が言いたかったのは、ここまで国民の疑念が深まっている中で、それでもやるのかというお話で、これまで衆議院選挙のときもそれを問う選挙をやってきたんだというお話であれば、私は、それは違うと言わざるを得ないと思います。そしてもう一つは、ここまで権威ある方々からの違憲という判断がある以上、私は、ここで安倍総理は正々堂々と国会に憲法改正の発議をして、そして国民投票に持っていくべきだと思うんですね。

 中谷大臣にもお聞きしたいんですけれども、自衛隊というのは、発足当初から、これは憲法違反の存在だということを言われながら、本当に自衛官の皆さんはそういう中で苦労をされてきたと思います、日陰者扱いされる中で。しかしながら、地道に努力を重ね、災害派遣やら、あるいは国際貢献をする中で今のポジションがやっとできたところで、今度はまた違憲の法律に基づく活動をさせられるのかと。これはまた自衛官にとっては第二の苦悩の時代が始まると言っても過言ではないと私は思うわけで、その辺のところ、中谷大臣、本当にこれはいいんでしょうか、このまま通していいのか。本当に正々堂々、憲法改正をやるべきか。それが自衛官に対する配慮ではないのか。お気持ちを簡単にお聞かせいただきたい。

中谷国務大臣 今回の法整備におきましては、これまでの政府見解の基本的な論理、これは全く変わっておらず、この基本的な論理におきましては、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているということとは到底解されないとしていることは、砂川事件に関する最高裁判所の考え方と軌を一にするものでありまして、今回の法整備におきましても、集団的自衛権の行使を一部限定容認はいたしましたが、それはあくまでも自衛のための必要最小限度の措置でありまして、集団的自衛権全て行使の一般を認めるものではなく、また、他国の防衛それ自体を目的とするものではなくて、あくまでも国民の命と平和な暮らしを守るということが目的で、極めて限定的なものでございます。

 自衛隊の諸君は、我が国の防衛のために自分たちの存在が必要であると確信をして日々任務に取り組んでいるわけでありまして、今般の法案に基づいて活動する自衛隊の行為、これは憲法の裏づけがあるものと考えておりまして、この平和安全法制、これはまさに国民の命と暮らしを守ることでありまして、これが成立しても何ら変わることなく任務に邁進してくれるものだと私は確信をいたしております。

牧委員 中谷大臣はそう確信されているんでしょうけれども、私は、本当に命の危険を感じながらこの法律に基づいて派遣される自衛官の気持ちに寄り添った話にはなっていないと思います。本当の意味での納得ができる、そんな形にした上で、それなりの行動をとるべきだと私は思います。

 憲法については、憲法改正の手続は今とる判断は総理はないんでしょうから、もうこれは聞いてもしようがないのであえて申し上げませんけれども、であれば、やはり私は、先ほど総理もおっしゃったように、これは選挙で国民に問いかけているんだ、今まで問いかけてきたんだというお話がありました。

 ただ、私は、昨年、二〇一四年の総選挙を振り返ると、消費税の税率を一〇%に上げることを先送りする、そのことで解散したんじゃないですか。全くわけのわからない解散でありました。まあ個人的に言えば、その解散をしていただいたおかげで私も二年でこの国会に帰ってくることができたわけで、それはそれで感謝申し上げなきゃいけないんですけれども、ただ、しかしながら、全く年末の忙しいさなか、寒いさなか、争点もはっきりしない、そんな選挙であったことは否めない事実で、だからこそ非常に低い投票率だったわけです。

 そういう中で、安倍総理が本当にこの安保法制について国民の信を問うたのか、私はそうではないと言わざるを得ない。国民の皆さんが、本当にこの国の根幹にかかわる、そういった重要な法案についても、安倍総理にあの十二月、白紙委任をしてしまったというのが私は偽らざる事実だと思います。だからこそ、こういうことを押し通すのであれば、もう一回安倍さんは衆議院を解散して国民に信を問うべきじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 昨年末の総選挙におきましては、いわば、我々、消費税の引き上げについて、これはもう三%、二%という順番で引き上げることをお約束しておりまして、これは法律にも書いてあったわけでありますが、この法改正を行ってそれを変更するわけでありますから、これは国民に信を問うべきだ、こう考えたわけでございます。

 と同時に、我々が進めている経済政策に対しても、随分御批判もありましたから、予算委員会でも随分議論になったところであります。これをさらに進めていく上において、国民の皆様の信を問うということであったわけでございます。

 しかし、それをもちろん、信を問うたわけでありますが、同時に、政権選択、衆議院の選挙というのは政権選択の選挙でもあるわけでございますから、我々はさまざまな施策を政権公約として掲げているわけでありまして、安全保障政策の中においては、この平和安全法制について明確に書いてあったわけでございます。

 また、これも議論の大きなテーマであったことは間違いないわけでありまして、例えば日本記者クラブ主催の党首討論会におきましては、アベノミクスについては七分しか使っていなかったんですが、集団的自衛権については十一分使っていたわけでございます。例えばNEWS23においては、アベノミクスは十七分、集団的自衛権は十八分使っているわけでございますから、それぞれ、これはテレビの討論においては必ず大きなテーマとして議論をさせていただいた、このように承知をしております。

牧委員 そういう答弁がありましたが、テレビをごらんの皆さんは、振り返っていただければ、まだつい最近のことでありますから思い出せると思います。確かに、アベノミクスのこれまでの効果をどう判断するか、どう評価するかということも一つの争点でありました。もう一つは、消費税の先送り。ただ、この安保法制については、恐らく、今テレビをごらんになっている国民の皆さんもほとんど印象にないというのが私は事実だと思います。これをまさに問うんだという選挙でなかったことだけは事実でありますので、そのことだけ申し上げておきたいと思います。

 そして、ちょっと話題をかえますけれども、私も二年ぶりに国会へ戻ってきて、非常に国会の中の様子がさま変わりしていると感じました。本会議場に入ってみると、与党席、自民党席はたくさん二回生以下の方が後ろの方までいて、本当に異常発生したバッタのような、こういう言い方をすると失礼かもしれませんけれども、こういうふうにやじがたくさん与党席から飛んでくる、そういうありさまでございます。本当に、学級崩壊と言ってもいいぐらいの、そんな現象もあったわけでございますけれども、私は、この人たちを決して十把一からげに評価するつもりもございませんし、私にこの人たちの評価をする資格もないと思いますが、ただ、一つ言えることは、やはり数のおごりですとか権力のおごりというものが目に余る、これは恐らく多くの国民の皆さんもそろそろ感じ始めていることじゃないかなと思っております。

 先ほど来お話に出ておりますけれども、自民党文化芸術懇話会の皆さんのお話、とりわけ広告主を通じて報道規制しろとか、あるいは礒崎総理補佐官の、法的安定性、こんなの関係ないというお話、あるいは武藤貴也議員の、戦争に行きたくないという考えは極端な利己的な考え、こういったツイッターによるツイート、こういうことを目にするにつけ、耳にするにつけ、本当におごりというものを感じざるを得ないわけであります。

 それぞれ、私が今例示した例というのは異なる状況で、また話の内容も次元も違うんですけれども、一つ言えることは、これはいずれもみんな安倍さんの応援団なんですね、この方たちというのは。

 一つ言わせていただければ、特に文化芸術懇話会というのは、九月の総裁選、安倍総理・総裁が無投票でいけるように、その勢いを、その道筋をつける、そのために結成された応援団だというふうにも私は聞いております。いわば安倍さんと価値観を共有する皆さんがこういう発言を次から次へと繰り広げられているということは国民の皆さんももう気づいていることだと思います。総理がいかに否定しようとも、この人たちが総理の背中を見ながら育ってきたというふうに私は思うわけで、その意味での道義的な総理の責任についてどう御自身でお考えになっているのか、まずはお聞かせをいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 まさに私も自民党の総裁でございます。誰がどうのこうのということではなくて、自民党の議員の皆様によって私は首班指名を受けたわけでございます。これは公明党も含めて、与党の皆様から首班指名に一票を投じられている、その責任の重さをかみしめながら、今も仕事をしているわけでございます。

 今後とも、政府・与党それぞれの議員がしっかりとした責任感を持って仕事を進めていくことが重要ではないかと思っております。

牧委員 私も、これは誰かが責任をとれば物事が解決するというものでないことは承知をしておりますけれども、それにしても、余りにも誰も見事に責任をとらないのが今の安倍内閣だということをあえて申し上げさせていただきたいと思います。

 特に礒崎補佐官については、これもお話が再三出ておりますけれども、法的安定性は関係ないという部分については発言を撤回されたと言っておりますけれども、ただ、この発言をしたときの様子というのは、多くの方がテレビ等で再三見ております。これは本当に本心を語っているんだなという印象は拭えないわけでありまして、発言を撤回しても、これは本心だというふうに国民が見抜いている以上、このまま安倍総理がこの補佐官を解任しなければ、安倍内閣そのものが法的安定性というものを非常に軽く見ていると言われてもいたし方ないと思うんですけれども、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 法的安定性が重要であるということは、もう何回も何回も、繰り返し繰り返し繰り返し申し上げているとおりでございまして、我々は、憲法解釈の変更を行うに際して、四十七年の基本的な論理である必要最小限度、この中においての、いわば必要な自衛の措置をとるというこの基本的な考え方、論理を残しつつ当てはめを変えた、こういうことでございますから、法的安定性は保たれているということは申し上げているとおりでありますし、それは重視している、こういうことでございます。

 ですから、その上において、誤解を与えた発言については礒崎補佐官も取り消し、そしておわびを申し上げているわけでございますが、もとより法的安定性については、これは共有された考え方であります。

牧委員 誤解を与えた発言を撤回したとおっしゃいましたけれども、私が申し上げたのは、これは誤解じゃなくて本心を言っているんだという印象を国民の皆さんが持っているんだということなんです。その人間を解任しないということが、つまりは安倍内閣が法的安定性を軽く見ているということにつながるんだということをもう一回申し上げさせていただきたいと思います。

 文化芸術懇話会については、ちょっと時間もございませんので、きょうははしょりますけれども、もう一つ、武藤貴也代議士のことでひとつ触れさせていただきたいと思います。

 先ほどお話が出ていましたように、戦争に行きたくないというのは非常に利己的だというような発言について取り上げられましたが、もう一つ重要なことを言っているんですね、この人は。憲法の三大原理、平和主義、国民主権、基本的人権の尊重、この三つの原理が日本的精神を壊しているんだ、こういうお話をされております。

 個人的な思想、信条の自由というのは私も尊重したいと思いますけれども、こんなことを言う政党というのは、自民党、民主党、共産党、維新の党、どこを見たってそんな政党はありませんよね。いかに自民党が幅の広い、層の厚い、大きな政党だといっても、でも、こういう人までいるんだということで総理は自民党総裁として、いいんでしょうか。国民の皆さんはそう思いますよ、自民党というのは幅が広いからこういう人間もいるんだと。

 この三原則まで否定する、そういう人物も自民党の中にはいてもいいんだということでよろしいんでしょうか。離党勧告なり、いや、自民党の中にだって、これは議員辞職だという意見まで出ているそうじゃないですか。こういう人間もいてもいいんだと。これは思想としては、私は詭計だと思いますよ。危険だし、詭計だと思いますよ。こういう人まで自民党の中にいるんだ、いいんですか、それで。

安倍内閣総理大臣 そもそも、自民党として、谷垣幹事長のもとに憲法改正草案を我々はつくりました。この草案をつくったときにも、この三原則を堅持していくということは明確にしているわけでありまして、これはもう自由民主党の考え方としてそれはまとまっているということでございます。ですから、当然この中において我が党の議員は発言をしているんだろう、こう思うわけでございます。

 私もその全ての発言について承知をしているわけではございません。ですから、これは、党と全く考え方が違うのであれば党として対応していくということになるんだろうと思いますが、繰り返しになりますが、今委員がおっしゃったこの三つの原則については、これは当然、自由民主党として、それはそのまましっかりと堅持をしていく、憲法改正の草案をつくった段階においてそれは明確にしているわけでございます。

牧委員 自民党の憲法の草案の中にその三原則をしっかり入れるということはよくわかりました。だからこそ、私が言っているのは、それを否定する人間まで自民党の中で抱えていていいのかどうなのか、せめて離党勧告ぐらいしてしかるべきじゃないのか、それを私は申し上げただけでございます。この辺については、外野からいろいろな声もあるのでこの辺でやめます。

 時間がございませんので、申しわけない、きょうは新国立競技場のことも聞く予定でありましたけれども、時間がちょっと詰まってしまいましたので、日本年金機構のことですけれども、サイバー攻撃を受けて百二十五万件の年金情報が流出した、この問題についても、やはり責任論というものが問われるべきだと思っております。いまだにその辺のところが判然としないまま今日に至っております。

 五月八日に内閣官房が不正アクセスを検知してから、きょうでもう三カ月が経過をするわけでございますけれども、この間、対応の不手際、おくれだとか、あるいはずさんな管理についての話が次々と明るみに出てきたわけで、こういう不手際もさることながら、それをさらにまた隠蔽しよう、こういうけしからぬ話も次から次へと露呈をしているわけで、前の消えた年金のときに総務省年金業務監視委員長として対応された郷原弁護士は、この流出後の対応を見て、国民の資産とか情報を扱う組織として適切でない面がはっきりした、こういうふうに述べているわけでありますよね。

 今回、第三者委員会が八月中旬にも一定の報告書を出して、これで幕引きをするんじゃないかといううわさもございますけれども、本当にそんなお盆のさなかにこんなごまかしは私は許されないと思うし、もっと基本的に、抜本的に組織そのものを見直さなければいけないときに来ていると思います。

 私ども維新の党は、昨日、歳入庁設置の法案を提出させていただきました。日本年金機構というのは、これは社保庁から体質的には何にも変わっていないと言わざるを得ない、そういう組織であります。本当に、ただ単にうみを出すとかそういうレベルの話じゃなくて、私どもは、根本的に、国民の負担の部分を預かる歳入庁というものを国税と一緒になってつくり上げる、そのことを法案として、民主党、生活の党と一緒にきのう提出をさせていただきましたので、せっかく延長した国会でありますので、しっかりと議論をしていただきたいと思うわけであります。

 かつて、私がまだ民主党に所属していたときもこの歳入庁の話もございました。そのときも、私も国税の方からいろいろ話を聞いたんですけれども、国税の人たちは、あの腐ったミカンのような社保庁と我々を一緒にしないでくれ、こんなお話も当時ございました。それぐらい、中が腐り切っているということは同じ政権の中で、同じ行政の中でもう衆目の一致するところであったわけで、そういうことにほっかむりをしながら、ただ小手先だけのびほう策で来てしまったということ、これでは本当に国民の資産あるいは情報を任せることができない、そういうことを申し上げさせていただいて、これについてのお考えをお聞かせいただきたいんです。

 厚労大臣、この情報流出の問題についてはどういうてんまつをつけるのか、そのことだけ、最後、一言お答えください。

塩崎国務大臣 今回の情報流出につきましては、不正アクセスという問題で今警察も捜査を続けているわけでありますけれども、いずれにしても、個人情報が流出したことは間違いない事実でありますので、私どもも大変申しわけなく思っておりますし、機構がそれを守れなかったということも大変遺憾に思っているわけであります。

 我々は、第三者委員会の検証委員会を設けて、七月の八日に第三回目をやりましたけれども、この八月の中旬ぐらいに一定の中間報告をいただくというふうに聞いているわけでございます。

 私は、先ほど先生からお話がありました幕引きのようなことは一切考えておりませんで、この第三者委員会の検証委員会が出す結論に従って、我々も徹底的に、そこから報告を踏まえて対応していく。つまり、それは機構自体をどうするのかという問題と、厚労省の側の問題というものも私たちは認めざるを得ないと思っていますので、ここで、私は甲斐中委員長に、徹底的に解明をしてほしい、そしてこれをどうしたらいいのかということをゼロベースで提案してほしいということを申し上げているわけでありますので、それを受けて、まさに我々は、そこから検証というか、検証プラス何をどうするのかということを実際にやっていかなきゃいけないというふうに覚悟を固めているところでございます。

牧委員 本当に覚悟を固めて、言い逃れできないところはしっかりと明るみに出していただいて、根本的にそのあり方を見直していただきたいと思います。

 お盆のさなかに、七十年談話だなんだ、そういうどさくさに紛れて中間報告みたいなことをしないで、もっと正々堂々と、しっかりと開示をしていただきますようにお願いを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

河村委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

河村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。

 この際、木内孝胤君から関連質疑の申し出があります。牧君の持ち時間の範囲内でこれを許します。木内孝胤君。

木内(孝)委員 維新の党、木内孝胤でございます。

 本日は、NHKの新社屋三千四百億円の建てかえ計画と受信料の引き下げについてお伺いをいたします。

 午前中の予算委員会におきましては、多くの質問が新国立競技場の問題に集中いたしました。NHKの新社屋の建てかえ、そして新国立競技場、非常に多くの共通した構造的な問題をはらんでいる、そのように感じております。

 いろいろ問題は午前中の委員会でも指摘されておりますけれども、やはり、責任の所在が極めて不明確なこと、そして、さまざまな意味でコスト意識、本来であれば、国民の税金あるいは半分税金のような受信料というのは通常以上にコスト意識を高めなければいけないところを、非常にコスト意識が低い、こういう二つの構造的な問題があると思っております。

 ここで指摘したいことがございまして、二〇〇八年にNHKは受信料を一〇%引き下げることを約束いたしました。しかしながら、二〇一二年に七%は下げたものの、まだ残された三%は引き下げられていません。その一方で、千三百四十八億円ものお金が建設積立金勘定に積み立てられております。これは、三千四百億円の新社屋の建てかえ及び放送センター用でございます。

 初期的試算とはいいながら、この三千四百億円あるいは二十六万平米の社屋、そして放送センターの計画ですが、こちらのパネルにお示ししておりますが、こうした収支予算と事業計画の説明資料に載っているわけでございます。

 概要の説明をお尋ねいたしますと、まだ概要は十分には固まっていないのでわからないという説明である一方で、積立金だけは千三百四十八億円も建築用として積み立てられております。それに加えまして、別途、財政安定化資金として八百億円以上積み立てられている。

 ここでお尋ねしたいわけですけれども、そもそも一〇%引き下げると言って、直近の決算でも三百九十八億円もの利益が出ている、あるいは積立金が二千億円も、財政的にも非常に良好な状況である、こうした状態で、なぜNHKの受信料を引き下げないのか。

 これは、籾井会長にお伺いしたいと思いますが、残りの三%、今から引き下げる予定があるのか、計画はあるのか、お伺いいたします。

籾井参考人 お答えいたします。

 前回一〇%の値下げを約束した後に、結局、いろいろ精査したあげくに、やはり七%しかできないと、当時、ということで、経営委員会とも鋭意議論をしまして、最終的に七%に落ちつき、国会でもそのように承認を受けているというふうに理解しております。

 私は、その七%の残りの三%を、今、残ったものを、さらにこれを下げるとか、そういう議論はもはやないものと理解しております。

木内(孝)委員 直近の決算で四百億円近い利益が出ています。そして、三千四百億円もの、ある意味、新国立競技場的な非常に大規模な放送センターが建てられようとしております。なぜ直近で五百六十八億円もの積立金が積み増されている中で、財政的な余裕があるのにこれを還元しないのか。

 今、国民の家計は物すごい傷んでおります。先週金曜日に発表になりました家計調査、これもマイナス二%。四月―六月期のGDPも個人消費の低迷によってマイナス成長が見込まれているところでございます。

 今やるべきことは、維新の党が申し上げているとおり、身を切る改革。我々が徹底的に身を削って、これを国民の家計に還元するべきではないかと思います。利益がぎりぎりであれば私もこういう要求はいたしません。しかしながら、利益は安定的に二百億円以上出ております。積み立てられている内部留保、建設以外でもたくさんたまっております。

 こうした状況で、所管する大臣として、これは値下げが困難な状況、そのように理解されているか、お伺いいたします。

高市国務大臣 NHKにおかれましては、国民・視聴者が負担する受信料によって支えられている公共放送として、番組の充実ですとか、経営の合理化、効率化に向けた不断の努力を行っていただくというのは当然のことでございます。

 そうした観点から、平成二十七年度のNHK予算に付した総務大臣意見では、コスト意識を持って業務の合理化、効率化や、給与等の適正化に努めること、先ほどお話がありました新放送センターにつきましても、受信料により整備されることから、国民・視聴者の十分な理解のもとで計画を進めることが重要であり、整備計画の具体的内容を逐次かつ速やかに明らかにすることを私から要請しました。

 NHKにおかれて、受信料ですとか、新センターの整備計画については、もちろん国民・視聴者の十分な理解が得られるよう説明責任を果たしていただく必要があるかと存じます。

 平成二十四年度から二十六年度のNHK経営計画において、この還元の実施を決定しました。当時、受信料の値下げは結局七%となり、そのかわり、全額免除の拡大が二・四%あります。ただ、このとき、〇・六%分、首都直下地震に備えた本部バックアップ機能、つまり、どんな災害時にも放送を続行していただかなきゃいけない、そういう責務においての投資のための減価償却費というものが積まれたものと考えております。

 しかしながら、あくまでも、やはり、視聴者の皆さんにきっちりと説明がつくようにNHKには取り組んでいただきたいと考えております。

木内(孝)委員 新国立競技場で国民の皆さんがこれだけ怒ったのは、やはり、これだけコストの意識のない、千三百億円と言いながら三千億円になる、責任も転嫁する、責任の意識もない、責任もとらない、こういうことなんです。

 今、これだけ余裕資金があって、そして損益ベースでも四百億円利益が出ている。三%の値下げというのは、年間二百億円の財源があればできます。これすらも捻出しようとしない、この政府の姿勢というのは一体何なんでしょうか。

 例えば、この三千四百億円という計画もございます。私は、これが高いのか安いのか、非常に見きわめは難しいですが、民放と比較するのはなかなか困難ですけれども、例えばテレビ朝日、五百億円で社屋を建てかえています。日本テレビ、千百億円。何で、NHKは三千四百億円もかかるのか。お尋ねすると、いやいや、これは平米六十万円掛ける二十六万平米の建築予定地だと。そういうことで、いきなり乱暴な数字が出てくる。

 この予算というのは、国会承認事項なんです。それにもかかわらず、こんな乱暴な形で、三千四百億円ということと二十六万平米というのがひとり歩きしています。今みたいな乱暴な説明で、しかも、この二十六万平米、渋谷の土地が二万五千坪ございます。そもそもこの二万五千坪も本当に必要なんでしょうか。例えば一万坪売却すれば、もしかしたら七百億、八百億円になるかもしれない。

 二百億円の受信料を下げる。あるいは、土地を売却する、そしてこの三千四百億円を二千四百億円、計画を見直す、こういうことをやれば全部で三千、四千億円の財源が捻出して、これが家計に直結するわけでございます。もう少し、経済対策として、家計に直結するような意識を持って対策を練られないのか。

 逆に、これは総理にお伺いしたいんですが、家計に届くような、こうした直接的に効果のある、今申し上げたような話、総理は御検討いただけないでしょうか。

高市国務大臣 今、センターの例を挙げられました。三千四百億円という数字がひとり歩きしております。

 これは、具体的な経費につきましては、今後、放送法第七十条第一項、第二項の規定に基づいて、NHK予算として総務大臣に提出され、総務大臣がその内容を検討して意見を付し、国会に提出され、承認をいただくといった手続の中で確定していくものでございます。

 そもそも、NHKの放送センターの建てかえ計画について、現在NHKにおいてその具体化が進められておりますので、一体幾らかかるのか、そういった計画についても今後一年かけて検討されると伺っております。

木内(孝)委員 ですから、計画の概要が固まっていないものに対して千三百四十八億円ものお金を積み立てること自体がおかしいのではないか、そのように申し上げているんです。まだ中身がわからない、これもわからない、それなのにこれだけの積立金は計上する。私は、国民感情からいってあり得ない話だと思っております。

 それでも、これだけのお金が必要だ、値下げもできない、そのようにおっしゃるわけですか。

高市国務大臣 今後やはり、センターの建てかえというのはいずれにしても必要です。著しく老朽化が進んでおりますし、どんな状態の災害になってもやはり放送の基幹機能は維持しなきゃいけないという中で、さっきおっしゃったような金額にならないと思いますよ、これから建設計画を立て、やはり視聴者の皆さんが納得していただける、そういった計画にしていく責務が私はNHKにあると思います。そのための準備としてしっかりと積み立てをしていくというのは必要なことであります。

 また、NHKには、さまざまな技術開発等、放送法に定められた責務もございます。急な用途に対して対応できる積み立てというものを全否定するつもりはございません。

木内(孝)委員 予算よりも、あるいは予算の範囲内でおさまるというような話ですけれども、千三百億円の新国立競技場が三千かかったというような状況でございますので、もう少し丁寧に答弁いただきたいと思います。

 やはり、構造的な問題というのは、人のお金、税金であるからコスト意識が全くない。そうした中で、私は、コスト意識を持つ方法の一つとして、NHKの民営化というのは一つの選択肢ではないかと思っております。

 二〇〇六年、規制改革推進会議におきましてNHKの民営化が検討され、具体的な中間報告も出ております。私はこういう、国立競技場も国立である必要はないと思いますし、NHKも十分に民営化が可能だと思っております。

 二〇〇一年の閣議決定で特殊法人だというのが決まったことは承知しておりますけれども、安倍総理にお伺いしますが、これは、民営化をいま一度検討してもいい、そのようなタイミングではないでしょうか。

安倍内閣総理大臣 民営化の議論というのは小泉内閣のときにもありました。そこでもさまざまな党においてもいろいろな議論がなされたことを記憶しております。

 そうしたことも踏まえまして、我が国の放送は、長い間、民間放送と公共放送による二元体制のもと、お互いが切磋琢磨することによって着実な発展を遂げてきたという今までの歴史。そして、放送事業者は、これはNHK、民間放送を問わず公共性が求められているわけでありますが、特にNHKについては、放送法第十五条に基づき、公共の福祉のため、あまねく全国における放送、そして広告主の意向や視聴率にとらわれない、豊かでよい放送番組の提供といった高度な公共性を期待されているものと認識をしています。こうした良質な放送をあまねく提供するという公共放送の基本的役割は引き続き重要であり、NHKを民営化するということは考えておりません。

 NHKにおきましては、国民・視聴者から受託する受信料によって支えられている公共放送として、新放送センターの整備の件も含めて、国民・視聴者の十分な理解が得られるように進めていただきたいと考えております。

木内(孝)委員 受信料を還元する余裕がある財政状況にもかかわらず、それをため込み、そして、ずさんな三千四百億円の計画を着々と進めている。私は、これはあってはならない話だと思っております。

 時間もありませんので、次の質問に移りたいと思います。

 日本を代表する東芝という名門企業の粉飾決算がございました。歴代三社長が辞任をするということで、非常に甘い幕引きをしようとしているんではないか、そのように感じております。こうして事件が起きて、きちっとした再発防止策、対応がとられ、そうであれば市場の信頼回復も十分成り立つと思いますけれども、今の状況でいうと、これは身内、非常に近い会社、政府に近い会社に甘い処分をしようとしているんではないか、そのように感じられるところでございます。

 具体的に何が甘いのか。第三者調査報告書というのが出ました。なぜ東芝に関係のある弁護士がそういった調査委員会に入っているのか、なぜ東芝が選んだ人たちで構成された調査報告書なのか。それであれば、第三者という言葉は入れるべきではないんです。身内で調査したものだから、全く信頼性がもともとない。

 かつ、決算説明会等でも一番質問が出ておりました。東芝は、二〇〇六年にウェスチングハウスという会社を買収しております。それによって、のれん代を計上している。その後、原発事故等もあり、大きな状況の変化があった中で、本来であれば減損をしなくてはいけないのではないか、そういう指摘がされている中で、この第三者報告書の中には一切こののれん代、償却のことが触れられていません。こののれん代の償却、八月十一日、もしかしたら川内原発が再稼働されるかもしれません。されるかされないかによっても、大きく東芝の業績は変わります。

 こうした中で、今この進め方、私は、金融庁も甘過ぎるのではないか。そして、監査法人のことにも触れていない。これは、監督大臣として、麻生大臣、どのようにお考えでしょうか。

麻生国務大臣 今回のケースというものは、これは基本的には経営者のモラルが欠如しているんですよ。一番はっきりしていると思いますね。低収益性だというのを見せかけでごまかしていたわけですから極めて低次元の事案で、その結果、市場に極めて明確なもしくは正確な情報が開示されていなかったというところが一番問題、市場の信頼性を失わせましたから。そこが私どもとしては一番問題だと思っております。

 また、東芝におきましては、市場に対して正確な情報が開示されるように適切にやるようにしていかにゃいかぬわけで、その上で、金融商品取引法上の法令違反というものが今後疑われるということになった場合には、それは証券取引等監視委員会において厳正な調査が行われるということでありまして、今の段階はまだそこの段階ではありません。

 また、今監査法人のお話がありましたけれども、この監査法人のことに関しましても、私どもとしては、監査法人というものにつきましては、個別の事案の監査の内容について、ちょっとこの監査法人はいかがなものかというようなことをコメントする立場にはない、私らの立場としては。そこはまず一般論としては控えさせていただきたいと思っておりますが、企業の財務諸表の信頼性の確保というところが一番大きな問題です。

 したがいまして、重要な役割を担うものでありますので、こういった、今のような、木内先生からのような話が出ないようにきちんとやるというところが、今後監査法人として一番問われるところだと思っております。

木内(孝)委員 今の麻生大臣の説明では市場の信頼は全く回復できない、そのような内容だと考えております。

 私も、なぜここまで処分が甘いのか、考えてみました。関係している人たちがどうなのか。最も中心人物の佐々木前社長、経団連の副会長。その前の社長も経団連の副会長。さらにその前も前も。その先はちょっと調べる余裕もなかったので調べておりませんけれども。そして、佐々木社長は、今の政権の非常に重要な会議体でもございます産業競争力会議のメンバーでもございます。六月には原発、エネルギーの問題についてもその会議でコメントをしていらっしゃいます。それに加えまして、安倍政権になってから、東芝は企業献金を千四百万円から二千八百五十万円にふやしている。

 さらに言いますと、西室元社長は、きのう報告書が出ましたが、七十年談話の有識者会議の座長も務めている。また、刷新会議等の人選もフライングして記者会見で発表してしまったとおり、今の東芝の人事にも影響力があるのではないかと推察されるようなコメントもたくさん出ております。あるいは、秋にも日本郵政の民営化が予定されているようでございますけれども、ここの社長も務めているんです。

 これだけ癒着している会社の状態の中で、真っ当な処分がまずできるのかどうか。それと、原発の再稼働をする、しない、これの厳正な、公正な判断が今の状態でできるのかというと、私は、国民が見て、こんなずぶずぶな関係なのかと。もうめちゃくちゃな状況じゃないですか、これは。副会長、経団連の幹部として全企業に寄附金を呼びかけている。

 我々維新の党は、企業・団体献金の禁止を呼びかけております。これは、こういうことを回避するために呼びかけているんです。身を切る改革とか、単なるキャッチフレーズではなくて、いろいろな事象を改善するために、企業献金の禁止、これも訴えております。

 これだけの深い関係であって、国民から見て、今の政府がこの東芝に関して厳正な処分ができるとお考えでしょうか。

麻生国務大臣 それは法律ですから。法律にのっとってきちんと証券取引監視委員会、いわゆる法令違反が問われる場合には、まずは証券取引監視委員会でしょう。ルールできちんとそうなっていますから、まずそこできちんとやるという、これは法律でそのとおりやることになるんだと思います。

木内(孝)委員 二〇〇六年当時、東京証券取引所の社長は西室元東芝の社長でした。

 そのときも、不正会計ということで元ライブドアの堀江貴文氏、二年六カ月の実刑判決を受けました。そして会社は上場廃止になりました。今回、東芝もそういう処分の対象になり得るということなんでしょうか。証券取引監視委員会の検査その他全部終わった段階で、なり得るんでしょうか。

麻生国務大臣 繰り返し申し上げて恐縮ですけれども、いわゆる法令上の違反が疑われるということになった場合には、証券取引等監視委員会において厳正な調査が行われた上、本件についても対応がとられるということなんであって、ライブドアの上場廃止の話が出ていましたけれども、上場にかかわる話は東京証券取引所の話で、私どもの話ではございませんので、お間違えのないようにお願いいたします。

木内(孝)委員 安倍総理にお伺いしたいんですが、安倍総理は成長戦略の中でコーポレートガバナンス改革というふうに言っております。私は、いろいろある成長戦略の中で、コーポレートガバナンス改革、非常に結構なことだと思いますけれども、今政府がとっている対応というのは全く正反対の、市場の回復を全く得られない、そういう対応だと考えております。なぜ、よりきちんとした対応をとらないのか。

 今、麻生大臣の説明を聞いて、これはきちんとコーポレートガバナンス改革ができているなと安倍総理はお考えでしょうか、お聞かせください。

安倍内閣総理大臣 今回の東芝のケースについては、先ほど麻生大臣から答弁をしたように、まさに経営者のモラルが欠けていた。これは、低い収益性を見せかけでごまかしていたということでありますが、これを一般的な日本の問題とすることは適当ではないと思います。

 一方では、形だけではなくて、実効的にガバナンスを機能させ、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上につなげていくことが極めて重要であると考えています。このため、コーポレートガバナンス・コード及びスチュワードシップ・コードの積極的な普及、そして定着や、コーポレートガバナンスのさらなる充実に向けて、有識者の方々に議論、提言いただくための会議を金融庁と東証において設置することとしたと聞いています。この会議において有益な議論が行われることを期待しております。

木内(孝)委員 安倍総理の三本の矢でございますけれども、一本目の金融政策、二本目の財政政策、三本目の成長戦略でございますけれども、安倍総理の経済アドバイザーでいらっしゃいます浜田宏一先生が、一本目の金融緩和はAだ、財政政策についてはBだ、増税をしてしまったので、私はこのBがDに変わったんだろうと思いますけれども、総理のアドバイザーですら、成長戦略はEだ、五段階評価でEだという言い方をなさっています。

 私は、そうはいいながらも、こうしたコーポレートガバナンスとかいろいろな、目立たないけれども、幾つか成長戦略の中に挙げているのは評価するべきだという立場でずっと思っていたわけですが、実は、三本目の矢、ふたをあけてみますと、結局、政官業の癒着構造そのものじゃないですか。

 三本の矢というのは毛利元就から多分来たんじゃないかと思いますけれども、昔、「三本の矢 政官業の癒着構造」という本がありました。私は、総理のこの成長戦略、ちょっと撤回していただきたいと思っているような状況です。幾ら何でもこれはひどくないですか、この状況。これは本当に甘いんですよ。なぜこれをきちっと対応していかないのか。なぜきちっと成長戦略をやらないのか。もちろん、安保法制でばたばたしているのかもしれません。

 続いてお伺いしたいんですが、きょうはもうちょっと時間がないのであれですけれども、成長戦略とおっしゃるんであれば、政府資産を五十兆円ほど売却したらいいんです。いろいろアイデアを出しても実現性がない成長戦略であれば、やらなければいい。しかしながら、政府が保有している資産であれば、十分に売却が可能。例えば、日本たばこの株三・一兆円、NTT三・六兆円。そして、秋にも日本郵政の民営化がございます。こうしたものを一つ一つ足し合わせて、あるいはNHKの二万五千坪、それをやったところで七百億円かもしれません、その一部を売却する。あるいは、新国立競技場も民営化して、家計にきちっとお金が届くような、小さな政府にして、それで家計は大きくする、こういう形で私は取り組むべきだと思っております。

 安倍総理は、日本政策投資銀行、三月末に方向性が見きわめられるところ、これも延期されました。商工中金の民営化も延期されました。こうしたことも含めて、なぜ当初言っていたような改革路線から後退をしてしまったのか、私は極めて残念でございます。私も資本市場から来た人間で、いっとき安倍総理の言っている話に期待していた時期がございますけれども、こんないいかげんなことを続けているのであれば、私は全く期待できない。総理、方向転換をしてしまったんでしょうか、それだけお伺いいたします。

安倍内閣総理大臣 浜田先生がA、B、Eという評価をつけられたのは二年前のことでございまして、A、B、Eというのはアベになっておりまして、実はユーモアを込めておられたわけであります。

 そして、この夏の国会はまさに改革断行国会でありまして、電力の自由化、これは木内委員も主張しておられたことだと思います。そして農協の改革、農業の改革も、そしてまた働き方の改革も推し進めているところでありまして、今、我々の改革を、実効性を上げていることを市場にも評価していただいているんだろうと思います。

 そしてまた、それと同時に、政府系金融機関の民営化、政投銀と商工中金の二つの政府系金融機関の見直しに当たっては、完全民営化の方針は堅持しつつ、民間金融機関による危機対応が十分に確保されるまでの当分の間、危機対応業務を義務づけ、政府が必要な株式を保有することなどとしておりまして、官から民へという政策金融改革の趣旨に反するものではないわけであります。我々はリーマン・ショックのときの対応等からも学ぶべきものはあったと思っておりますが、まさに民間において危機管理対応の体制が十分に整うまでの間、こういうことで御理解をいただきたい。

 我々の改革マインドは、全くこれは後退をしていないどころか、着実に成果を上げている、このように思っております。

木内(孝)委員 新国立の問題あるいはこうしたNHKの問題、今のようなおごった答弁では、私は、国民は全く理解できない、そのように思っております。

 以上、これを何とか改革の方向に持っていってほしい、それを申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 以上です。

河村委員長 これにて牧君、木内君の質疑は終了いたしました。

 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 九州電力川内原発一号機が、来週早々、十一日にも再稼働されようとしています。

 東京電力福島第一原発事故、あれから間もなく四年半。一昨年九月以降、日本の全ての原発が動いていない中で、全国の原発を再稼働させようとしていることに対して、国民の世論はどうか。

 このパネルをごらんいただきたいと思うんですが、全国紙など、最近のどの世論調査でも、再稼働賛成は三割台、それに対して反対が大きく上回っております。いずれも六割前後という状況で、日本世論調査会六三・二、産経新聞六〇・九、日本経済新聞五六、読売新聞五五%などであります。

 そこでまず、安倍総理、総理は、こうした国民世論、こういう状況をどのように受けとめておられるでしょうか。

安倍内閣総理大臣 三・一一の東日本大震災に伴う福島第一原発の過酷事故を我々は経験しているわけでございまして、そうした中におきまして、まだ国民の皆様が原子力発電所の稼働に大きな不安を持っておられるんだろう、このように思うわけでございます。

 だからこそ、世界で最も厳しい基準であります安全基準に合致したものでなければ、我々、再稼働はしないという方針で進めているわけでございます。

笠井委員 総理はそういう説明を何度もこの場でも繰り返してこられましたが、国民の皆さんは、聞けば聞くほどそれに納得できないと、確固とした世論としてあらわれているのが今の状況だと思います。

 毎週金曜日には、この三年四カ月、百五十八回もの官邸前行動が繰り広げられて、再稼働やめよの声が上がっております。官邸前ですから総理の耳にも届いていると思うんですけれども、福島原発事故の原因究明さえ行われていないではないか、いまだに十万人もが避難生活を強いられている、賠償を打ち切るな、あのような事故を二度と繰り返させてはいけない、これが国民みんなの思いであります。

 それでは、川内原発の地元ではどうか。

 宮沢経済産業大臣は、この間、鹿児島県を訪問されておられますけれども、県民の皆さん、住民の皆さんの同意が得られたというふうに思っておられるでしょうか。いかがですか。

宮沢国務大臣 原子力発電所の再稼働に当たりましては、住民の方の理解を得るということは大変大事なことだと思っております。

 私は、昨年の十一月に鹿児島県を訪れまして、伊藤知事また岩切薩摩川内市長とお話をいたしまして、政府の方針等々についてお話をいたしました。そのこともあって、県議会また市議会において決議もしていただいて、再稼働を容認するという方向で進んでおります。

 もちろん、まだまだ理解が進んでいない部分はございますけれども、九州電力におきましても、フェース・ツー・フェースのコミュニケーションということで、例えば、昨年度は九万人、一昨年度は八万一千人、そして、ことしに入りましても、五月までの二カ月間で一万三千人近い方とフェース・ツー・フェースで理解を求める活動をしております。

 理解が進んできているというふうに考えております。

笠井委員 理解が進んできているどころか、県民、市民は同意していないと。

 ことし四月の鹿児島県民への世論調査、地元南日本新聞ですが、そこでは、川内原発の再稼働に反対が昨年よりもふえて約六割、女性は七割にも上っております。多くの住民が再稼働に大きな不安を抱いているのが現状であります。

 宮沢大臣は、努力が進んでいるし、さらにそういうことが進むように努力するというふうに言われるわけですけれども、では、この間、鹿児島の県とそれから五つの市町村が共催の住民説明会はありました。では、国はどうか。

 まとめて経産大臣にお答えいただけるといいと思うんですが、経済産業省あるいは原子力規制委員会主催のもの、また、九州電力が主催する公開の住民説明会というのは何回開かれてきたでしょうか。

宮沢国務大臣 国が主催する説明会というものはこれまで開かれておりませんが、県等が主催する住民説明会に担当者が出て説明をしたりしてきております。

笠井委員 国がやっていないんですね。

 そういう中で、ことしに入って、九州の地方議会が、九州電力に対して、国民の同意が得られているとは到底言えないということなどを挙げて、公開の場での住民説明会の開催を九州電力に求める決議や陳情を相次いで採択しております。鹿児島県でいいますと、出水市、日置市、伊佐市、屋久島町、肝付町、南種子町、熊本県の大津町、荒尾市、水俣市、宮崎県の高原町、この十自治体であります。

 ところが、九州電力は、これらを受け取っていながら、立地自治体の薩摩川内市を含めて公開の場での住民説明会に全く応じない、そして再稼働へと突っ走っております。

 宮沢大臣は、こういう電力事業者の対応をよしとするというお立場ですか。

宮沢国務大臣 私どもといたしましては、九州電力に対しまして、住民の理解を得るように努力をするという指導はしてきておりますが、一方で、どういう形で住民の理解を得る活動をするかということ自体は、個々の事業者にお任せしております。

 そういう中で、先ほども申し上げましたように、九州電力としては、まさにフェース・ツー・フェースでのコミュニケーション活動を積極的に実施したいということで、昨年度、一昨年度、十万人近い方、また、今年度に入りましても二カ月間で一万三千人近い方とコミュニケーションを図って、理解を深める努力をしてきていると考えております。

笠井委員 再稼働はできるというんだったら、何で公開の場で説明会をやらないのかとみんな思うわけですよ。

 政府は、今、九電の対応ということで言われたんですけれども、昨年四月に閣議決定した新エネルギーの基本計画がありますけれども、その中で、福島原発事故を踏まえた「国民、自治体、国際社会との信頼関係の構築」というのを掲げている。そして、立地自治体や住民等関係者の理解と協力が必要であり、国がより積極的に関与し、丁寧な対話や情報共有のための取り組み強化等必要な措置を講ずるということを閣議決定で政府は決めている。ところが、現実には、今のお話を伺っても、具体的には九電任せというふうになっているんじゃないですか。

 宮沢大臣は、九州電力はフェース・ツー・フェース、つまり、お客様一人一人と顔を突き合わせながら説明を続けている、だからいいんだということで言われるわけですけれども、公開の説明会なら、鹿児島県や周辺、あるいは九州、全国、いろいろやはり不安、疑問を持つ、特に周辺住民の皆さんですね、自主的に、自分から、疑問を持っている、不安がある、説明会があるんだったら行って聞いてみようということで参加できるわけですが、そういう機会がなければ、誰が具体的に不安、疑問を持っているかは、やはり九州電力に当たってみないとわからないですね。

 そうすると、全体の理解を得るためにということでフェース・ツー・フェースというふうにやるというんだったら、全住民回れるのかと。不安、疑問を持つ住民に当たり尽くせると大臣はお考えでしょうか。

宮沢国務大臣 公開の説明会というものにつきまして、私も、これまで共産党の議員の方からいろいろ御質問を受けましたけれども、いろいろ評価があるということは事実でありまして、ある意味ではフェース・ツー・フェースのコミュニケーションの方がすぐれた部分もあるという中で九州電力がこういう方式を選択しているんだと思っております。

笠井委員 自治体の議会から要望がある、住民から要望がある、だから両方やったらいいじゃないですか。フェース・ツー・フェースでやるけれども、公開でもやる。徹底的にやりました、そして国もやり尽くしたというふうに見たというのが、大体、普通の考えじゃないですかね。

 やはり、今説明を聞いても、苦しいと思うんですよ。やはり、聞いていると、とことん九電の対応を擁護して、できもしないことを黙って見過ごすのかということになります。

 九州電力といえば、私も、二〇一一年の七月、あの福島事故の後の当委員会で、この場で、予算委員会で追及をしましたけれども、当時、玄海原発の再稼働をめぐる国の説明会で、やらせメールという問題が問題になって、それを九州電力が組織して大問題になった。社長もやめるということで、ここの場にも社長が来られて、言われました。要するに、何も変わっていないじゃないか、住民との関係。できないこともやっているみたいな形だけとって、そしてこういうことをやる。

 私は、事業者である九電を守るんじゃなくて、地震や火山や、あるいは過酷事故対策、使用済み燃料の問題、避難計画など、県民の皆さんや国民の皆さんが不安、疑問に思っていること、こんなので動かしていいのかなということについてきちんと答えて、そして命と安全を守るのが、監督官庁たる国の、経産省の仕事ではないかと。逆立ちだと思います。地元住民、議会の要望すら無視して、国は、九電任せで再稼働を強行する、聞く耳さえ持たないのは、およそ民主政治とは相入れない、そういう姿勢だということを強く言いたいと思います。

 そこで、総理、九州電力に住民説明会を求めている自治体の一つ、熊本県水俣市議会は、昨年九月十八日、国に対して、川内原発の拙速な再稼働を行わず、住民の安全安心の確保を最優先し、対応するよう求める意見書を国に出しております。その中でこう言っています。

 水俣市は川内原発から五十キロ圏内。福島県でいうと飯舘村と同じ距離になり、風向きによっては、避難地域となります。避難しなければならない者が避難者を受け入れることができるのか、地域住民としては混乱しているのが現状です。一たび原発の事故が起これば、全てが水俣病の惨禍以上の状態になってしまいます。そして、何より孫や子供たちのふるさとがなくなることは、許しがたいことでありますと。

 こういうことで意見書を出しているわけですが、そういう不安を持っている地元あるいは周辺住民に対する公開の説明会さえやらなくてよいとするのは、結局、総理、この説明会をやっても納得は得られない、説明不能という事態がここにあるんじゃないかと私は思うんですが、いかがお考えでしょうか。

安倍内閣総理大臣 原発につきましては、先ほど答弁させていただきましたように、福島の事故の教訓を踏まえ、いかなる事情よりも安全性を優先し、独立した原子力規制委員会が科学的、技術的に審査し、世界で最も厳しいレベルの規制基準、新規制基準に適合すると認めた原発について、その判断を尊重し、地元の理解を得ながら再稼働を進めていくというのが、一貫した政府の方針でございます。

 川内原発については、原子力規制委員会により新規制基準に適合することが確認され、現在、再稼働へ向けて法令上の手続が進められているところであります。引き続き、原子力規制委員会によって、厳格に手続を進めてもらいたいと考えております。

笠井委員 総理は、原子力規制委員会は世界でも最も厳しい基準ということで、そういうことを繰り返して言うわけですが、この川内原発の再稼働をめぐっては、国会でもさまざまな問題点が指摘をされてきました。私自身も何度も安倍総理にもただしてまいりましたが、例えば火山の問題です。

 このパネルをごらんいただきたいんですが、川内原発に影響を与える可能性がある火山の一覧です。原発から百六十キロ圏の火山を対象にするとした原子力規制委員会の基準に基づいて、九州電力が再稼働に向けた申請の中で提出した資料であります。

 この中には、最近爆発的噴火を繰り返す桜島はもちろんですが、口永良部島など、三十九もの火山が含まれております。本当に火山が集中している地帯、その中にこの川内原発はある。

 原子力規制委員会の田中委員長は、この間の答弁の中で繰り返し言われました。川内原発の運用期間に破局的な噴火が発生する可能性は十分小さい、こう言われるわけですが、可能性は十分小さいと言われるだけで、予知できるということは明言できない。それはもう、規制委員長、何度聞いてもそのことです。

 そこで総理に伺いたいんですが、そんなことで再稼働など、政府の責任を持った対応と言えるんだろうか、総理として、これはとんでもない、これじゃだめだというふうに思われないかどうか、これは総理の見解を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 川内原発の火山対策については、原子力規制委員会が、桜島で過去最大規模の噴火が起こることを前提に、それでも火砕流が敷地に到達しないこと、また、火山灰が積もっても原子炉の安全性を損なわないことを確認しています。

 また、九州全域に壊滅的被害をもたらすような破局的噴火についても、原子力規制委員会は、地下のマグマの状況や過去の噴火履歴等を総合的に検討した結果、川内原発の運用期間中に影響が及ぶ可能性は十分小さいと判断をしているわけであります。

 その上で、念には念を入れて、現在の状況に変化がないことを継続的に確認する目的で、火山活動のモニタリングを実施することとしています。モニタリングにおいて状況に変化が生じた場合には、早い段階で原子炉の停止を命じるなど、今後も厳重に監視が行われることになります。

 このように、原子力規制委員会が、火山による影響についても、科学的、技術的に厳格な審査を行っており、再稼働に求められる安全性は確保されていると考えております。

笠井委員 規制委員長の言っていることの上に立って今総理言われたわけですが、九州電力はもっとひどいんですね。破局的噴火の兆候が数十年オーダーの前にわかるとまで、九州電力は鹿児島県議会で発言しているんです。

 これに対して、気象庁火山噴火予知連絡会の会長の藤井敏嗣東大名誉教授はこう言われています。モニタリングによって火山活動の異常を捉えることは可能であるが、その異常が破局的噴火につながるのか、通常の噴火なのか、それとも噴火未遂に終わるのかなどを判定することは困難であると。そして、いずれにせよ、モニタリングによって把握された異常から、数十年先に起きる事象を正しく予測することは不可能であると。火山学会、こういう権威の方が言われている、断じているんです。

 総理は、こうした火山学会の専門家の知見に真剣に耳を傾ける、こういうことはないんですか。総理。

安倍内閣総理大臣 先ほど私から答弁をさせていただいたとおりでございますが、これはまさに、三つに分けて考えていただければいいと思うわけであります。

 過去最大規模の噴火が桜島で起こったことを前提にしても、火砕流は敷地内には到達をしないし、火山灰によって原子炉の安全性は損なわれない。そして、破局的噴火というのは、これはまさに九州全域が壊滅的被害を受ける、そういう噴火でございますが、それにつきましても、地下のマグマの状況や過去の噴火履歴等を総合的に検討した結果では、川内原発が運用している期間中は可能性は十分小さいということを報告を受けているわけでありますが、その上において、さらにモニタリングを行っていくということになっております。

笠井委員 可能性は十分小さいと言いながら、九州電力は数十年前に予知できると言っているんですね。

 それで申請して動かそうとしているわけですが、火山学会は厳しいですよ。こういう声があります。綿密な機器観測網のもとで大規模なマグマ上昇があった場合に限って、数日から数十日前に噴火を予知できる場合もあるというのが火山学の偽らざる現状だ、九州電力の主張は荒唐無稽であり、学問への冒涜と感じると、小山真人静岡大学防災総合センター教授がここまで言われているわけです。

 火山学会が困難と言うものを、九電なら予知できる、そういうのを基礎にしながらやっているという話ですが、私は、憲法学者だけじゃなくて、火山学者の知見にも耳を傾けずに九電の主張をうのみにする、これほどの安全神話はないと思います。原発を動かすためには何でもありじゃないかと国民みんな思っています。

 そこで、一たび原発事故が起こったらどうするか。避難計画の問題でありますが、私もたびたび取り上げさせていただきましたが、東京電力福島第一原発事故では、避難の混乱で入院患者の方や高齢者が亡くなる、死亡するという事態が相次ぎました。今回も住民の皆さんが最も不安視するところであります。

 第四回原子力防災会議が昨年九月十二日に開催されて、安倍総理も議長として出席をされ、鹿児島県川内地域の防災計画、避難計画についても内容が報告をされ、それが具体的かつ合理的なものになっているということで確認、了承されている。

 そこで伺いますが、国は、福島原発事故を受けて、原発から三十キロ圏の医療機関や特別養護老人ホームなどの社会福祉施設に対して、避難先や経路、移動手段の計画をつくるように求めております。もちろん、そのことも必要なんだけれども、国は三十キロ圏と区切っている。

 川内原発におけるこうした要援護者の避難計画というのはどうなっていますか。端的に言って、整った、できたという判断を総理はなさっていますか。

望月国務大臣 質問にお答えさせていただきます。

 川内地域の場合でございますけれども、医療機関や福祉施設の避難計画は、まず、半径十キロ圏内で既に個別施設で作成済みでございます。

 それから、今御質問のありました十キロから三十キロでございますけれども、医療機関、社会福祉施設の入居者の一時移転については、あらかじめ用意した避難先候補リストから避難先を調整するという原子力防災・避難施設等調整システム、我々ではマッチングシステムと言いますけれども、これを用いることとしております。

 これは、まず第一に、十キロ圏内、五キロ圏内の皆さんは、そういう事象が起きたらすぐに避難ということになりますけれども、十キロ以上の方たちは、すぐに移動することで、先ほど申しましたように、かえっていろいろな事故が起きるということもございますので、まず第一に、そこで退避をしてもらう、屋内退避をしてもらうということになります。

 それから、一気に全部の人たちが逃げ始めますと大変なことになりますので、我々は、それを順番に避難させるというような形を、地域の皆さんとそういったものをつくっております。そして、そこへ行くのには、どれくらいの人たちがどういう方向に行くかというのは、そのときになってみないと、比較的、プルームとかそういうものの流れによって変わってまいりますので、そういったことでこのマッチングシステムを、実効的に避難ができるそういう体制を整えております。

 そして、移動手段については、施設が保有する車両のほか、県、市町村に車両を確保することになりますが、困難な場合には、国として実動部隊による支援を行うこととしております。

 いずれにいたしましても、政府としては、引き続き、地域原子力防災協議会において、国と自治体が一体となって地域防災計画、避難計画の充実強化に取り組んでまいりたい、このように思っております。

笠井委員 まあ本当にそんなに甘いものじゃないんですよ。大体、そのときになってみないとわからないと。そのときに、それからどうするかという話も出たぐらいですから、大体、全く実態とかけ離れたものだと思います。

 鹿児島県の保険医協会、県内の医師、歯科医師の皆さんの団体ですが、ことし行ったアンケート調査結果によれば、鹿児島県内で川内原発周辺三十キロ圏の医療・介護施設のうち、要援護者の避難計画を作成済みと回答したのは六施設に対して、今後作成予定、未作成が合わせて六十施設にも上っております。また、避難計画作成に関する自治体等からの説明なしというのが五十七施設にも及んでいる。

 アンケートには、本当に深刻な実態、叫びが出ております。どのような被害が想定されるのかが具体的にわからない、一病院で作成することは困難、個別で作成することには無理がある、四百人ほどいる入院者などをまとめることが難しい、認知症患者を預かっている施設としては避難先の確保、誘導人員などの手配、難しい問題ばかりだ、寝たきりや車椅子利用の人が大多数を占めており、その人たちを長期間にわたり受け入れてくれる施設、避難先を見つけ、避難するための手段を一施設が準備することは大変困難。

 まさに、人命を預かる最前線のお医者さんの皆さんの悲鳴、現場の困惑がアンケートに示されているのが現実であります。

 総理に率直に伺いますが、こういう現場の悩み、実態があるということについては、総理は御存じでしょうか。総理、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 再稼働に当たっては、地元の住民の皆様の御理解をいただくことが極めて重要であると思います。

 避難計画を含む地域防災計画は災害対策基本法に基づいて自治体に策定が義務づけられておりますが、避難計画、地域防災計画を策定し地域の防災体制を整備することは、住民の方々の安全、安心を高めるために重要であり、継続的に改善充実を図っていくことが欠かせない、このように考えているところでございます。

笠井委員 私が伺ったのは、そういう深刻な実態、悩みや叫びが上がっていることについて御存じかということなんですよ。

 国は、防災計画づくりを支援するということで、体制をとって、総理が担当者を派遣した、総理が任命したというのを、私はここでも伺って確認しましたけれども、やってきたわけですけれども、そうした現場の不安や疑問に対して、ちゃんと報告が上がっているのか、それに対して解決の努力をやっているという報告を総理は聞いていらっしゃるかどうか。そこはどうですか。総理です。

安倍内閣総理大臣 もちろん、望月大臣のところにおいてそうした声を集約しながら、適時、望月大臣から私は報告を受けているところでございます。

笠井委員 そうしたら、この痛切な叫びですよ、本当に命がけの話なんですから、それに対して心が痛まなくてどうするかという問題で、何かそこのところが伝わってこないんですね。

 大臣も言われたりする、これでやっていますけれども完璧ということはない、不断に改善、強化というところを繰り返されますが、これで終わりどころか、まだ始まっていないというのが要援護者対策なんですよ。避難計画なんですよ。

 それ以外に、在宅で呼吸器や酸素を利用されている方、あるいは寝たきりの方、認知症や精神疾患などで介助が必要な方の避難計画は全くされていないということが、現場のお医者さんからも上がっております。

 鹿児島県当局は、三十キロ圏内には医療機関と介護施設一万床があって、これについての避難計画は困難だということで、伊藤知事も、十キロから三十キロ圏内の要援護者の避難計画について、現実的ではない、つくらない、時間をかけて空想的なものはつくれるが、実際問題としてはなかなか機能しないだろうというふうに言われている。

 県としては、策定は困難ということで、さっき大臣ちょっと言われた避難施設等調整システムなるものにしたということで、国もそれでよしというふうにされているようですが、肝心の住民はその説明を受けていない。これは、風向きや放射線量に応じて避難先を自動的に選ぶシステムを使うというんですけれども、事故時の状況に応じて避難先が決まってくる。

 そのとき、どこに何人、どんな要援護者を受け入れてもらえるかどうか、相手がそういう状況にあるかどうかはわからないと。そのときにならないとわからないとさっき大臣も言われた、そういう問題がある。住民の避難計画など、つくろうにもつくれない、これが原発事故ということじゃないでしょうか。

 なのに、避難計画は確認された、了解したと、国は、総理出席のもとで言われて、だから、基準に合っていれば再稼働というのは、要援護者切り捨てと言わんばかりだと言いたいと思います。総理は、原子力規制委員会の審査基準に適合した安全な原発は再稼働すると言われますが、避難計画は審査の対象外です。国がやるべきこともやっていない。

 この間、総理は国会の場でも、国民の命と平和な暮らしを守る、総理大臣としての責任と覚悟ということを、あの戦争法案の審議でも繰り返されますが、このまま再稼働など、国民の命と平和な暮らしを危険にさらすだけじゃないでしょうか。こんな無責任なことはない。避難計画もできていないのに原発を動かしちゃだめだと思うんですが、総理、いかがですか。総理。

安倍内閣総理大臣 先ほど望月大臣からも説明をさせていただきましたが、まさに避難計画については、不断の見直しを行っていくことは当然のことだろう、このように思います。

 そして、万が一の事故の際には、鹿児島県が、このシステムを使って、放射線のモニタリング結果に基づいて、一時移転等が必要となった場合の避難先を迅速に選定します。

 そして、このシステムを活用する手法は、緊急時に、現実に起こった状況に照らして、実際に避難が必要となった病院等の施設の入所者数や避難先施設のその時点での受け入れ能力に即して、最も適切な避難先を選定できることとなるわけでありまして、このように、今までの経験等を生かしながら、住民の避難を、そしてまた安全を確保していきたい、このように考えております。

笠井委員 時間になりました。

 安全神話の復活は許されない。そして、日本じゅうの原発が停止した一昨年九月以来、原発ゼロの期間は七百日間になろうとしていますが、この猛暑で、熱中症予防に水分補給と冷房をということで、それを使ってという、それが必要なときに、その夏でも電力不足は起こっていない、国も電力事業者も認めております。原発なしでも電力は足りている。しかも、原発一基も動いていないもとでも、電力会社九社は経常黒字でありまして、再稼働の必要性もない。

 まさに再稼働をやめてゼロを決断する、原発ゼロ。そして、省エネ、再生可能エネルギーの本格的活用ということで切りかえるべきだ。それが福島事故を体験した日本のやるべき仕事だ、政治の仕事だということを申し上げて、質問を終わります。

河村委員長 これにて笠井君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして本日の集中審議は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時四分散会


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