衆議院

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第3号 平成28年1月12日(火曜日)

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平成二十八年一月十二日(火曜日)

    午前八時五十九分開議

 出席委員

   委員長 竹下  亘君

   理事 石田 真敏君 理事 金田 勝年君

   理事 菅原 一秀君 理事 鈴木 馨祐君

   理事 関  芳弘君 理事 平沢 勝栄君

   理事 柿沢 未途君 理事 山井 和則君

   理事 赤羽 一嘉君

      秋元  司君    井上 貴博君

      石原 宏高君    岩屋  毅君

      衛藤征士郎君    小倉 將信君

      小田原 潔君    越智 隆雄君

      大西 英男君    奥野 信亮君

      門  博文君    小池百合子君

      小林 鷹之君    佐田玄一郎君

      佐藤ゆかり君    斎藤 洋明君

      笹川 博義君    鈴木 俊一君

      瀬戸 隆一君    田野瀬太道君

      長坂 康正君    根本  匠君

      野田  毅君    原田 義昭君

      古屋 圭司君    保岡 興治君

      山下 貴司君    山本 幸三君

      山本 有二君    井坂 信彦君

      緒方林太郎君    大串 博志君

      大西 健介君    階   猛君

      玉木雄一郎君    西村智奈美君

      福島 伸享君    浮島 智子君

      中川 康洋君    吉田 宣弘君

      赤嶺 政賢君    笠井  亮君

      高橋千鶴子君    藤野 保史君

      宮本  徹君    足立 康史君

      下地 幹郎君    松浪 健太君

      重徳 和彦君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   総務大臣         高市 早苗君

   法務大臣         岩城 光英君

   外務大臣         岸田 文雄君

   文部科学大臣       馳   浩君

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   農林水産大臣       森山  裕君

   経済産業大臣

   国務大臣

   (原子力損害賠償・廃炉等支援機構担当)      林  幹雄君

   国土交通大臣       石井 啓一君

   環境大臣

   国務大臣

   (原子力防災担当)    丸川 珠代君

   防衛大臣         中谷  元君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (復興大臣)       高木  毅君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (行政改革担当)

   (消費者及び食品安全担当)

   (規制改革担当)

   (防災担当)       河野 太郎君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)     島尻安伊子君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   甘利  明君

   国務大臣

   (一億総活躍担当)

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)   加藤 勝信君

   国務大臣

   (地方創生担当)

   (国家戦略特別区域担当) 石破  茂君

   国務大臣

   (東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当)       遠藤 利明君

   財務副大臣        坂井  学君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   予算委員会専門員     柏  尚志君

    ―――――――――――――

委員の異動

一月十二日

 辞任         補欠選任

  衛藤征士郎君     大西 英男君

  長坂 康正君     斎藤 洋明君

  野田  毅君     笹川 博義君

  松野 頼久君     井坂 信彦君

  濱村  進君     中川 康洋君

  赤嶺 政賢君     宮本  徹君

  高橋千鶴子君     笠井  亮君

  足立 康史君     下地 幹郎君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 英男君     衛藤征士郎君

  斎藤 洋明君     瀬戸 隆一君

  笹川 博義君     田野瀬太道君

  井坂 信彦君     松野 頼久君

  中川 康洋君     濱村  進君

  笠井  亮君     高橋千鶴子君

  宮本  徹君     藤野 保史君

  下地 幹郎君     足立 康史君

同日

 辞任         補欠選任

  瀬戸 隆一君     長坂 康正君

  田野瀬太道君     野田  毅君

  藤野 保史君     赤嶺 政賢君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成二十七年度一般会計補正予算(第1号)

 平成二十七年度特別会計補正予算(特第1号)


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     ――――◇―――――

竹下委員長 これより会議を開きます。

 平成二十七年度一般会計補正予算(第1号)、平成二十七年度特別会計補正予算(特第1号)の両案を一括して議題とし、基本的質疑を行います。

 去る八日の枝野幸男君の質疑に関連し、玉木雄一郎君から質疑の申し出があります。枝野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。玉木雄一郎君。

玉木委員 おはようございます。民主党の玉木雄一郎です。

 まず冒頭、軽減税率の財源について総理にお伺いしたいと思います。週末、総理がテレビで発言をされておりますので、これは大変重要だと思います。冒頭にお伺いしたいと思います。

 資料の一にありますけれども、先週の我が党の山井議員との話の中で、一兆円の軽減税率の財源については、社会保障から一兆円、我々は削りませんよ、消費税引き上げ時に約束している社会保障制度の充実はちゃんと行っていく、こうおっしゃいました。

 週末、テレビの番組では、安定的な財源をしっかり確保していきたい、その際、社会保障に回っているものを切ることはないとおっしゃいました。

 少し確認をしたいのは、この一兆円の財源として社会保障を切らない、この意味です。

 先週の話を聞いていると、消費税が一〇%に上がった際に、さまざまな、年金、医療、介護、そして子育ての拡充のメニューがあります、これに二・八兆円使いますけれども、この二・八兆円分の充実の社会保障については切らないという趣旨で聞いたんですけれども、週末のテレビの番組を聞いていますと、およそ社会保障に関係する予算は一切切らない、削減しない、この財源を捻出するためには、そういうふうに聞こえたんですけれども、社会保障に回っているものを切ることはない、この趣旨について、総理にもう一度確認したいと思います。

安倍内閣総理大臣 この趣旨については、二・八兆円に充てる、充当するものについては切ることはないということでございます。

 その際御説明をしたのでございますが、例えば総合合算制度については、これは二・八兆円の外でございまして、この総合合算制度と給付つき税額控除と、あるいは複数税率、軽減税率、どれをとるかという議論の中で、我々は、軽減税率をとったのでございまして、総合合算制度は行わないということを既に決めておりますから、四千億円は既に落ちておりますから、この一兆円、一兆円というよりも、これを引いた額の六千億円というふうに考えていただいていいんだろう、こう思うわけでございます。そこで、既に我々が行っている社会保障費からこの六千億円を捻出するために切ることはないということは、明確に申し上げているわけであります。

 同時に、社会保障の適正化、合理化を行っていくことは当然必要であろう、こう思う次第でございます。

玉木委員 もう一度確認します。

 ということは、社会保障の削減は一部対象になるということですね。二・八兆円に相当する、二・八兆円分の充実部分からは切らないけれども、もちろん一般歳出の中で今社会保障は大きな割合を占めていますから、それは何らかの形で、歳出歳入の両面から財源を考えれば、当然、総理がおっしゃったような重点化、効率化も含めた社会保障からその一部財源が出てくることは否定されませんね、それは。

安倍内閣総理大臣 私が申し上げておりますのは、もう既にお約束をしている、一〇%に引き上げる際に二・八兆円の充実をしていくというお約束をしているわけでございまして、既に前倒しで行っているところもありますが、これを軽減税率の方に回すということがない、こういうことでございまして、それに尽きるわけでございまして、一貫してそう申し上げているわけであります。

 同時に、社会保障といっても、これは聖域ではございません。しっかりと効率化を図っていくのが当然のことであろう、こう思うわけでございまして、我々は、伸びを五千億円に抑えていく、これはもうそういう目標は既にお示しをしているわけでございます。その中において合理化は行っていく。

 しかし、この残りの六千億円について、それだけから行くということではなくて、予算全体の中、あるいはまた、どのような財源を、安定的な財源を得ていくかということも含めて、しっかりと与党でこれから議論していくことになると思います。

玉木委員 わかりました。社会保障も削減の対象に入っているということが今理解できました。

 おとといのテレビの言い方は、この二・八兆の充実分というのは、特段限定もかかっていなかったので、およそ社会保障にはびた一文手を触れないということかなと思ったんですが、今の総理の説明、私は非常に、ある意味リーズナブルな、合理的な説明だと思いますが、当然、社会保障についても、その財源のために削減の対象としていくということがよくわかりましたので、歳出歳入、しっかりと見直しを行っていくという理解をしました。

 もう一つ、これは公明党の山口代表がおっしゃっていたので、これも確認したいんですけれども、歳入の確保、財源の確保のために、いわゆる税収の上振れ分、デフレ脱却に伴って税収がふえた分、これを安定財源として充てる、いろいろな評価ができるので、そういったこともこの一兆円削減の財源として考えるというようなことを発言されたんですけれども、総理も同じ考えですか。

安倍内閣総理大臣 先ほどの繰り返しになるんですが、社会保障の適正化、合理化というのは、これは軽減税率いかんにかかわらずやらなければなりませんから、やっていくということは当然であろうと思うわけでありまして、既にお約束をしている社会保障の給付について、それを切ることがない、こういう趣旨で申し上げていることは一貫しているわけでございます。

 そこで、我々安倍政権が誕生してこの三年間において、国、地方合わせて二十一兆円税収がふえました。消費税の分は大体八兆円ぐらいだろうと思いますが、それ以上は、まさに私たちの政策によって大きく税収がふえたわけでございます。

 これをどのように使っていくかということでございますが、一つは、もちろん、我々、今回の補正予算においてもそうでありますが、国債の発行額を減額しておりまして、これは平成に入って三番目、四番目の多い減額になっております。ちなみに、一番多かったのは第一次安倍政権でございますが、一番、三番、四番と、しっかりと財政健全化を行っているのは安倍政権であるということを、せっかくの機会でございますからちょっと御紹介をさせていただきたい、こう思う次第でございます。

 そこで、既に三年連続、こうして税収増が出てきておりまして、それをどう考えるか。一時的なものなのか、これはある程度の期間は続いていくものなのかという分析等々も当然していかなければならない、こう考えているわけでございます。

 と同時に、この新たな、例えば、先ほど申し上げました一兆円の軽減税率に充てていくもの、もう既に四千億円は総合合算制度をやめるということが決まっておりますので、六千億円をどうしていくかということについて、これは議論していく必要があるだろう。安定的な財源をどこで得ていくかということについて議論していく。

 そして、税収増の部分をどう考えるかということは、これは諮問会議等でも議論しているわけでございますが、そうしたことも含めてしっかりと議論を進めていきたい、こう考えているところでございます。

玉木委員 税収の上振れ分もこの財源に回すという可能性があるという答弁だったと思いますが、私は極めてそれは問題だと思いますよ。

 日本の借金がゼロならそれでもいいです。第一次安倍政権も含めて、現在一千兆円を超える借金を累々と積み重ねてきて、それから毎年の利払いが十兆円あるんですよ、防衛費の二倍、こんなに金利が低いのに。もし税収が上振れたら、ほかに使うところがあるんじゃないですか。過去の後始末を先にやってくださいよ、それは。後世代に負担を残すようなことをやらない。

 この社会保障と税の一体改革の大きな目的は、社会保障の充実もありますけれども、後世代に負担を残さないための安定化も大きな目標なんですよ。それを、ちょっと税収がふえたからといって、それをあたかも安定財源のように充てるということをやっていたら、私は財政の改革や本当に安定した社会保障制度をつくることはできないと思いますよ。

 デフレ脱却ではない、まだ言い切れないとおっしゃいましたよね、総理も。ということは、税収もさらに下がる可能性があるんです、まだ。そういう中において、短期的に入った、ふえた税収でこれをやるというのは、私は間違っていると思います。恒久的な政策には恒久的な財源を充てるべきです。臨時的な支出には臨時的な歳入でもいいかもしれない。しかし、ここ数年税収が上がったからといってそれを充てるのは、私は次の世代の日本のためにならないと思っています。

 資料の二をちょっと見ていただきたいんですが、私が、なぜこの財源の話、社会保障も削る可能性があるのか、そういったことも含めて聞いたのは、この軽減税率は、総理も説明されたように、低所得者の税負担を軽減する効果があることは否定しません。加えて、収入の中で軽減される率が低所得者ほど高いことも否定しません。ただ、私は、問題なのは、これは一兆円の財源を使って一体どの世帯を助けていくのかということを棒グラフにしました。

 これを見ていただくとわかるんですが、年収三百万未満、今現在、簡素な給付措置として、八%に税金が上がった際に、消費税が上がった際に六千円の支援措置を行っていますが、その対象世帯は、給与所得世帯でいうと、夫婦で子供が二人いると大体二百五十五万以下です。その人たちだけが支援を受けています。年金受給者で六十五歳以上で夫婦だと約二百万。それ以下の方が、今、消費税増税に伴う低所得者対策として受けているんですが、三百万未満の人に対してこの新たに入れようとする軽減税率が使われるのは一一%ですよ。

 さらに見てください。三百万―五百万で三二%、年収五百万から一千万で四二%。安倍総理もここに入ると思いますが、年収一千万以上の人に一兆円の財源のうち軽減措置として一四%が割り振られるんですよ。年収五百万以上の方に約六割のお金が行くわけです。

 今総理の言う話を受けとめれば、総合合算制度で四千億は財源を見つけた、これから新たに六千億見つけなきゃいけないと言うんですが、これはちょうど、これから見つけなきゃいけない六千億というのは、年収五百万以上の人に、これは本来低所得者対策としてやるべき対象ではない人に、軽減税率がゆえにどうしてもそこは漏れていってしまう。そのために六千億をこれから、場合によっては社会保障も削って財源を見つけなければいけなくなっている。

 私は、繰り返し申し上げますけれども、軽減税率が低所得者の負担を軽減する効果は否定しません。ただ、他の制度、例えば我々が主張している給付つき税額控除、所得の低い人には給付で、税金を少し払っている方は税金を安くする、あるいはそのコンビネーションでやっていくという方法が、真に支援を必要とする人にターゲットを絞って支援を及ぼすことができるから、より効率的で効果的だと申し上げている。

 この六割の財源が……(発言する者あり)やじはやめてください。理事がやじを飛ばすのはやめてください。六割の収入が、もっと簡単に言います、半分以上の財源が所得の高い人に使われるような制度、社会保障を削ることも含めて財源を見つけなければいけないという制度は、私は、これは制度としてどうかと思いますよ。

 この道しかないということを総理はよくおっしゃいます。これに関しては他の道がありますよ、いっぱい。カナダのGSTクレジットのようなもの、他国において成功している例もあります。給付型で本当に支援が必要なところにしっかりと集中して支援を及ぼした方が、より安い税金で、より少ない財源で同じ効果を発揮することができると思うんです。

 ですから、私は、これは今からでも遅くないと思うので、ぜひ、他のさまざまな低所得者対策も含めて、逆進性対策も含めて、財源の話と同時にもう一度しっかり私は見直していただきたいと思っています。御質問しません。

 では総理、これは何かありますか。

安倍内閣総理大臣 まず申し上げておきたいのは、しっかりと私たちは財政健全化を行っているということは先ほど申し上げたとおりでありまして、我々はこの補正予算においても、平成が始まって以来、二番目、三番目になる額の減額を行っているんですよ。民主党政権時代は、申しわけないけれども、減額を行わなかったじゃないですか。

 なぜそれができるようになったかといえば、それは、私たちの経済政策によってさっき申し上げた果実が出てきたんですよ。それも、一兆円とか二兆円という果実ではなくて、二十一兆円という果実が出てきているんです。それをどのように考えるか。ある程度これは続いていくものかどうかということを考えることも十分に可能であろうと。

 そのことも含めて我々はしっかりと議論をしていくことになります。恐らく諮問会議でも議論していくことになるんだろうと思います。

 同時に、社会保障については、やはり社会保障も聖域ではありませんから、社会保障の方についても、これは一兆円とはかかわりなくしっかりと……(玉木委員「そんなことは聞いていません。時間がない。委員長、総理は関係ないことを答えています」と呼ぶ)いや、これはずっと私に対しての意見を言っておられたから、それに対して政府として答える権利はあると思いますよ。それをずっと……(玉木委員「では、違うことを答えてください、違うことを。同じことじゃないですか」と呼び、その他発言する者あり)済みません、私の答弁が聞こえないと思いますので、しばらくよろしいですか。

 そこで申し上げておきたいのは、社会保障費についても、切るべきものは当然合理化を、適正化を図っていく、これは当然のことでございます。

 そこで、消費税に係るあと必要な六千億円につきましては、これはもう既に決まっている社会保障費を、もうお約束をしているものについてそれを切っていくということは考えていない、こういうことを申し上げたわけでありまして、二・八兆円から切るということは当然ないということでございます。

 そこで、軽減税率についての御質問でございますが、消費支出に占める割合を見る必要があるんだろうと思います。消費支出に占める割合を見たときに……(発言する者あり)いや、それはちょっと違うんですよ。収入に占める割合ではありません。消費支出に占める割合を見なければいけないわけでありますが、年収千五百万円以上の世帯では一五%以上、年収二百万円未満の世帯では三〇%程度、こうなっているということでございまして、収入の高い人ほど、それはその可能性、占める比率が高い、こうなっているところでございます。

玉木委員 都合の悪い質問になったら長々と答弁するのはやめていただきたいと思います。

 総理、財政再建のことを言いますけれども、これはまた後で同僚議員も聞くかもしれませんが、この補正予算を組むことによってプライマリーバランスは当初予算に比べて悪化しているんですよ。プライマリーバランスを補正予算を組むことで悪化させておいて、財政再建をしたとか言わないでください。プライマリーバランスを補正予算を組むことによって改善しているんだったら、それは私も受けとめますよ。でも、補正を組んで、この二〇一五年というのはプライマリーバランス半減の目標年じゃないですか。それをぎりぎりまで何とか範囲におさめていますけれども、悪化させて組んだ補正予算で、何で財政再建が進んでいるなんて言えるんですか。私は、財政再建の取り組みに対する認識が薄過ぎると思いますよ。

 それで、これももう一回見ていただきたいんですが、今おっしゃったこともそうです。私は低所得者対策を否定しません。ただ、低所得者対策の名をかりたこれは高所得者対策ですよ、金持ち優遇で。だから、今総理が言ったような支援策を低所得者に限定してやるような方法を考えてくださいよ。何で、低所得者をやるために、わざわざ財源の半分以上を年収五百万円以上の人に使うような制度をやらなきゃいけないんですか。その制度の非効率と不公平さを私は指摘しているんです。

 次に行きます。

 同じく、今度は、子育て支援の名をかりた高所得者対策を私は一つ取り上げたいと思います。三世代同居を支援する住宅政策です。

 資料三を見ていただきたいんですが、石井大臣の就任の記者会見の際に、総理指示はという質問に対して、出生率を上げていくことに関して、三世代の近居、同居を促進する住宅政策を検討し、実施するようにと、これを言われました。

 総理に端的にお伺いしますが、三世代の同居が進むと出生率は上がるんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 財政再建については、先ほど申し上げましたように、GDP比、PB半減という目標を、私たち、まるで悪化させたようなイメージを与えていますが、悪化していませんよ。半減にしているんですから。半減している。安倍政権になって半減しているんですから。皆さんのときよりも悪化していませんよ。これはよくなっているということは、はっきりと申し上げておきたいと思いますし、軽減税率については、大切なことは消費に占める割合であって、千五百万円以上の世帯では一五%、年収二百万円未満では三〇%でありますから、明らかにこれは低所得者の方が恩恵をこうむっているということは、これははっきりと言っておかないと、延々と述べておいて、テレビを見ておられる方が誤解しますから、そこは私にも説明をさせてくださいよ。

 そこで、お答えをさせていただきたいと思います。

 希望出生率一・八の実現のためには、結婚、妊娠、子育ての希望をかなえる環境整備を進めていくことが必要である、こう考えています。新婚世帯や子育て世帯がそれぞれの暮らし方のニーズに応じた住宅を確保できるよう、多様なニーズに応じた住宅政策を展開していく必要があると考えていますし、展開していく考えであります。

 このため、新婚や子育て世帯向けの支援を拡充していきます。新たに結婚した若い皆さん、子育てをしている若い皆さんに対して、そしてまた、三世代の同居や徒歩圏内で暮らす近居など、世代間の助け合い、大家族で助け合う生き方も、これは一つの選択肢として支援をしていくということであります。

 具体的には、新婚世帯や子育て世帯向けに地域優良賃貸住宅の家賃優遇制度を拡充する、そしてまた、子育て世帯向けにUR賃貸住宅の近居割を拡充する、そして、三世代同居に対応した良質な住宅を建設する場合の支援などにより、結婚や子育てをしやすい環境を整備していく考えであります。(発言する者あり)そして……(玉木委員「お願いします」と呼ぶ)はい。ちょっとやじがうるさいものですから、聞こえないと。

 三世代同居は、家族において世代間で助け合いながら子や孫を育てることができて、子育てのしやすい環境づくりにつながると我々は考えるわけでありまして、そのために、今申し上げましたような政策を行っていくことによって、希望出生率一・八の実現に寄与するものと考えております。

玉木委員 私、三世代同居なんですよ。両親と息子と妻と三世代で住んでいるので、三世代のよさはよくわかります。

 ただ、私が問題にするのは、政策的にそれを税金を突っ込んでまでやるのかということと、これは具体的に聞きます、今回のこの補正予算で計上されているこの事業が、百歩譲って、三世代が出生率上昇に一定の効果があるとしても、今回の予算制度、これでは三世代同居そのものが私はふえないと思うんです。

 石井大臣にお伺いします。

 今回の三世代同居に対応した良質な木造住宅の整備促進事業ですが、三世代同居を促進する制度と言いながら、三世代同居を補助の要件としていないのはなぜですか。

石井国務大臣 今回の補正予算の中では、子育てをしやすい環境づくりにつなげるため、地域の工務店等が連携をして三世代同居に対応した良質な木造住宅を建設する場合の助成を行うこととしております。

 具体的には、キッチン、浴室、トイレまたは玄関のうち、いずれか二つ以上を住宅内に複数箇所設置する場合の割り増し工事費の補助について補正予算に盛り込んでおります。

 この対象はあくまでも外形的なものでございまして、どういう方が具体的にお住まいになるかということについては必ずしも確認をしていないところでございます。

玉木委員 おもしろい答弁です。

 これをごらんください。今大臣がおっしゃられたように、三世代同居で出生率アップという総理の話を受けとめましょう。でも、この制度は、三世代同居を要件にしていないんです。何を要件にしているかというと、三世代かなと思うような要件、つまり、玄関、台所、浴室、トイレ、この四つのうち二つが二カ所以上ある家を新築すると補助が受けられるというんです。だから、トイレ二つとか浴室二つとか、豪華なおうちをつくったら補助がもらえる。

 もう一つ言います。

 しかも、これは木造じゃないと補助が受けられないんですよ。何で木造の三世代だと出生率が上がって、鉄筋の三世代だと出生率が上がらないんですか。謎です。というか、ナンセンスです。これは、冒頭申し上げましたが、子育て支援の名をかりた豪華住宅建築支援ですよ。

 こういうことが、また、先ほどの軽減税率もそうですけれども、低所得者のためだと言いながら、お金がいっぱい高所得者に流れていく。これもそうですよ。子育て支援だと言いながら、トイレが二つ、浴室が二つ、玄関が二つ、こんなものをつくるために補助を出すんですか。税金の使い方が間違っていますよ。

 こういうことをしっかりと見直していくことが効果的、効率的な税金の使い方になるし、私は、もっと真に必要な子育て施策にしっかりとお金を回していくべきだと思います。

 ですから、このことについては、要件の見直しや、今からでも遅くはありません、運用の見直し等をしっかりやる。あるいは、できるんだったら、これを補正予算から外してくださいよ。根っこの優良住宅、優良木造住宅をつくる制度は、私は正しいと思う。ただ、三世代のために、トイレが二つだ浴室が二つだ、こういう豪邸建築支援はやめてもらいたいんですね。ですから、補正予算の中にもこういうものが他にも見られますので、ぜひ見直しをしていただきたいと思います。

 もう一つ聞きますが、はばたく女性人材バンク支援事業というのがあります。資料の六です。

 これは、今度、女性を助けよう、女性の活躍を応援しようという制度ですけれども、これは、例えば、地方の中小企業だと女性を役員に登用してくれと言ってもなかなか人材がいないので、国の審議会のメンバーをしたような人材をネットで登録して、そこで人材を見つけてマッチングさせていくという事業をやっていますけれども、これを見てください。現時点においてマッチング実績ゼロ。このホームページの月間アクセス、月間五百件ぐらいですよ。私のホームページの方が多いと思います。

 こういうことをもやって女性活躍で予算をつけるのはいいです。でも、実際そこで何が行われるのか、どういう政策効果が出ているのかを見ないと看板倒れになってしまうし、今言っている一億総活躍というこの事業も一億総ばらまき的になってしまう可能性があるということを指摘したいと思います。

 次に、オリンピックの話をしたいと思います。

 オリンピックも、税金の使い方としてどうだということが、この間ずっと指摘をされてきました。また、この予算委員会でも総理にも質問しましたけれども、新国立競技場、すったもんだがあって、混迷の上、先般、新しい国立競技場としていわゆるA案ということに決まりました。一千五百億前後ということですけれども、あれも、いわゆる旧ザハ案が二千五百億とか三千億と言われていたので、千五百億で何か安くなったなという感じがしますけれども、当初、立候補ファイルに書いてあったのは千三百億ですから、それから比べると既に数百億ふえているわけですね。

 私は心配しているんです。

 こういう報道、発言があります。昨年の七月に、これは森大会組織委員会会長が、最終的にこのオリンピック・パラリンピックの経費は二兆円を超すかもしれないと。昨年の十二月には、一部報道で、およそ一兆八千億円になって、当初見込みの六倍になるかもしれないと。

 私がこのことを問題にしているのはなぜかというと、立候補ファイルに、資金不足補填のメカニズムということがきちんと書かれてあって、それで立候補して当選しているからなんです。

 どういうことかというと、大会組織委員会は、まずお金についていろいろな形で調達する責任がありますけれども、組織委員会が資金不足に陥った場合には、東京都が補填することを保証する。東京都が補填し切れなかった場合には、最終的に日本国政府が補填するということになっていて、最終的に国民の税金になる可能があるので、国会としても聞きたいんです。

 そこで、遠藤大臣にお伺いします。

 オリンピック担当大臣として、当初の見込みと比べて、このオリンピック・パラリンピックにかかる総経費、現時点でどのようになると見積もっていますか。

遠藤国務大臣 お答えいたします。

 かつてそのような報道があったということについては承知をしておりますが、今、大会組織委員会におきまして、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の成功のために必要な業務全てを洗い出し作業をしている途中であります。このような作業段階でありますので、御指摘の金額につきましては、組織委員会においてもまだ正確に把握していないと聞いておりますし、政府としても把握している状態ではありません。

玉木委員 心配ですね。

 これは、立候補ファイルにはどう書いているかというと、大会組織委員会は、全体予算を月単位で厳しく監視すると書いているんですよ。月次の厳しい監視をしているのに、何でわからないんですか。組織委員会がもし把握していないとしたら、組織委員会としても大問題です、それは。

 加えて、最終的に国の税金、国民の負担になる可能性があるのに、何で、国として、担当大臣として把握していないんですか。私は余りにもこれは認識が甘いと思います。

 では、もう少し具体的に聞きます。

 今の時点で全体を把握するのはかなり難しいかもしれませんが、今議論している平成二十七年度補正予算、そして、同じく来年度の二十八年度当初予算、ここにもオリンピック・パラリンピック関連予算が入っていると思いますが、その総額は幾らになりますか。

遠藤国務大臣 お答えいたします。

 まず、二十七年度補正予算につきましては、一億総活躍国民会議の緊急に実施すべき対策、また、TPP政策大綱を踏まえ、平成二十七年度補正予算において、災害復旧その他緊急に必要な対策を行うとの方針で編成をされておりますので、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会関係の予算は計上されておりません。

 また、二十八年度予算につきましては、今、関係省庁とも調整をしておりますので、準備でき次第お示しをしたいと思っております。

玉木委員 二十八年度予算の話をちょっと先にしますけれども、オリンピック・パラリンピック、例えば入国管理の強化とか、たしか概算要求するときに、もういろいろな省庁が、オリンピック・パラリンピックがあるからその予算が必要なんですとみんな要求しているのに、もう今は政府案も決定して、これから国会審議だというのに、オリンピック・パラリンピック関連予算が幾らになるかというのを担当大臣も知らないんですか。麻生大臣、御存じなんですか。知らない。

 もう一つ聞きます。

 今議論している二十七年度補正予算については、オリンピック・パラリンピック関連予算は一切入っていないという説明でありました。

 資料の八を見てください。

 確かに、大臣がおっしゃったように、これは文科省の補正予算のを見ましたけれども、八の一、大学・研究開発法人等の防災基盤強化と書いてあって、等というのは何だろうと調べてみたら、一枚飛ばしていただいて八の二、ここに国立競技場の建設で問題になった日本スポーツ振興機構が出てくるんですね。事務方にも聞いたら、この等は日本スポーツ振興センター、つまりJSCなんですね。

 JSC、一つ前に担当課が書いてある、担当課はスポーツ・青少年局なのに、なぜかさっきの防災基盤強化等のところにはJSCの担当のスポーツ・青少年局が部局として出てこない。

 これは、細かくは言いませんけれども、資料を見たらわかるんですが、この二十七年度補正に計上した大学・研究開発法人等の防災基盤強化の六十八億円の予算ですけれども、これを見ると、国立スポーツ科学センター、資料の八の三ですけれども、この本館出入り口自動ドア等改修工事、六千四百三十八万五千円が計上されているんですね。これは、パラリンピック等の選手が使用するためのバリアフリー工事です。

 その後の資料に書いていますが、これは実は、二十五年度補正予算では同様の予算が計上されていて、このときは、これをオリンピック・パラリンピック東京大会開催に向けた予算として計上しているんですよ。

 このJISS、国立スポーツ科学センターの予算を二十七年度補正で計上しておいて、二十五年度の補正ではこれをオリパラ関連予算だと言っておきながら、今大臣、全く二十七年度補正にはオリパラ関係の予算は入っていないと言いましたけれども、それは虚偽答弁じゃないですか。

遠藤国務大臣 お答えいたします。

 今委員御指摘のように、資料八の三の事業につきましてはオリパラ関連予算ではないかという御指摘でありましたが、その事業、今御指摘のように、JISS本館の出入り口の改修であり、災害時の避難経路の確保のための事業として防災基盤の強化として計上したものであり、オリンピック・パラリンピック、全く関係ないということではありませんが、そうした事業の一環として整備をしたものだと思っております。

玉木委員 オリンピック・パラリンピック関連でもありますよね、大臣。

遠藤国務大臣 お答えします。

 今、関連でないかということでありますが、一つ一つの事業、それは選手強化のために必要なものについては全てオリンピック・パラリンピックの強化にも関連いたしますが、そうした整理の仕方をしているということであります。

玉木委員 私、おかしいと思うのは、要求するときはオリンピック・パラリンピックがあるからこの予算が必要ですと言いながら、いざ聞いたら、それは入っていませんと言ったり、入るかもしれない、入らないかもしれないと。私、こういうことが今後予算の膨張を招いていく大きな原因の一つになると思うんです。ですから、しっかりと総額管理をしていくこと、プロセス管理をしていくこと、これをしっかり進めてもらいたいんです。

 ロンドン・オリンピックのときも同じような現象がありました。これが、例えば、都でやること、国でやること、組織委員会でやることと分かれていますから、なかなか全体像をつかみにくいのはそのとおりです。でも、さっき言ったように、最終的には国が責任を負うので、これは国としてもちゃんと見るべき。

 一つ参考例を申し上げるので、ぜひ検討してもらいたいのは、オリンピック・デリバリー・オーソリティーというのを、同じような問題に直面したロンドン・オリンピック、イギリス政府はつくりました。そのことによって、組織をまたがって、そして予算の総額管理等、総合的な進行管理を一元的にやる組織をつくりました。ぜひ日本国政府においてもこうしたことを何らかの形でつくって、全体としての予算やあるいはプロセス管理を徹底する仕組みをつくってください。今聞くと、誰も予算の全体像に責任を負っていないと感じましたので、ぜひお願いしたいと思います。

 最後に、婚活事業についてお伺いをします。

 資料の五を見てください。

 今、各都道府県、市町村、いろいろなところでいわゆる婚活事業をやっています。若い人が出会う場をつくる。このことに国の予算としても対応できる地域少子化対策重点推進交付金というのがあります。

 二十五年、二十六年、三十億ずつやって、ただこれは、今年度の概算要求で二十五を要求されましたけれども、秋のレビュー、河野行革担当大臣のデビュー戦として、事業を見直した方がいいという指摘をされて、二十五億円の概算要求に対して、当初予算は五億円まで落としました。その意味では非常に効果があったと思います。

 ただ、見てください。二十七年度補正で二十五億、ある意味復活しているんですね、死んだと思ったのがまるでゾンビのように。二十七年度補正と二十八年度当初を足すと三十億円になって、概算要求よりもふえているし、結局、毎年と同じだけ金額が積まれているんですね。

 全く行革が進んでいないのではないですか。河野大臣、いかがですか。

河野国務大臣 少子化対策は大切な政策の一つでございます。

 今回のレビューでも、この少子化対策に関する予算を減らせと言ったわけではございません。この事業の中で、効果がしっかり出ているものと効果が出ていないものをきちっと選別して、効果が出ていないものはやめて、効果が出ているものに集中をしてくださいというのが今回のレビューの取りまとめでございます。これは、加藤大臣のところで効果をきちんと測定し、効果が出ているものに集中をしてくださったというふうに理解をしております。

 また、二十八年度から、全額、十分の十補助ではなかなか地方がそうした選別をしにくいだろうということで、当初予算からこの補助率を下げてくださいというのがレビューの取りまとめで、二十八年度の当初予算からその補助率は下げられておりますので、これはゾンビとか焼け太りというわけではありません。

 少子化対策に必要な予算がきちんとはかられて計上されているというふうに認識しております。

玉木委員 全く行革ができていません。

 見てください。確かに当初予算は補助率を下げて二分の一にしていますけれども、補正で積んだ二十五は、指摘をされたにもかかわらず、十分の十の補助のままで二十五億円を積んでいるんです、これは。

 全く行政改革が進んでいないゾンビ予算だということを指摘して、質問を終わりたいと思います。

竹下委員長 この際、大西健介君から関連質疑の申し出があります。枝野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。大西健介君。

大西(健)委員 民主党の大西健介でございます。

 本委員会でも繰り返し言われておりますことですけれども、憲法五十三条に基づいて我々は国会召集要求をしたにもかかわらず、それを無視して臨時国会は開かれませんでした。その間には内閣の改造も行われましたし、私からは、閣僚の資質の問題、あるいは国会の閉会中に起こったさまざまな問題についてお聞きをしていきたいというふうに思いますけれども、その前に、八日の、我が党の階委員の質問に対する丸川大臣の答弁に関して質問をしたいというふうに思います。

 丸川大臣が指定廃棄物の最終処分場の建設に関してなぜ宮城に行かないのかという階委員の問いに対して、大臣は、副大臣再登板の井上副大臣が行ってくれているからそれでいいんだというような趣旨の御答弁をされました。

 しかし、それを聞いて私は、丸川大臣、ちょっと認識が甘いんじゃないかなというふうに思いました。

 皆さんのお手元に地元の河北新報の記事をお配りさせていただいていますけれども、ここにはこう書いてあります。

 現地調査の年内着手断念を伝えに宮城県庁を訪れた井上信治環境副大臣に、抗議した村井嘉浩知事は珍しく声を荒らげた。候補地三市町の首長や住民からは怒りや失望、候補地の返上を強く求める声が上がった。

  「政治がリーダーシップを発揮しないから、こうなった。大臣が住民に頭を下げて初めて熱意が伝わるのに、望月義夫前環境相からは何の連絡もなく、今の丸川珠代環境相は福島に来たのに宮城には来ない」

  村井知事は新旧大臣を名指しして環境省の姿勢を痛烈に批判した。井上氏は、うなだれるしかなかった。

 つまり、井上副大臣が行ったけれども、あんたじゃだめだ、大臣をよこせというふうに地元は怒っているんですよ。

 大臣、行くしかないんじゃないですか。月内に、大臣、行っていただけるとお約束いただけますでしょうか。

丸川国務大臣 御質問ありがとうございます。

 前回も答弁をさせていただいたところでございますけれども、指定廃棄物の問題は大変重要な問題でありますので、御地元からいただいておりますさまざまな御意見をしっかり受けとめながら、私も状況に応じてみずから地元に伺うことも含めて、今後、進め方を検討させていただいているところでございます。

 その点も踏まえまして、井上副大臣にも、これまで石原前々大臣のときから首長の皆様方と顔と顔を合わせて話をしている関係の中で、どのような判断があるかということをよくお伺いして、今、状況の検討をさせていただいているところでございます。

大西(健)委員 大臣、今の私の質問を聞いていただけましたでしょうか。井上副大臣が行って、そして知事から抗議を受けて、うなだれるしかなかった。何で大臣は来ないんだ、福島に行って宮城に来ないのか、パリには行くけれども宮城には来ないのかと言われているんですよ。ぜひ月内に行くと約束していただけませんか。何で行かないんですか。

 大臣、十二月十五日の記者会見でこのようにも言っておられます、ボールはこちら側にあるという認識ですと。ボールはこちら側にあるんですよ。大臣が今行くことを求められているんですから、ぜひ月内に行くと何で約束できないんですか。もう一度答弁をお願いします。

丸川国務大臣 市町村長会議で大変厳しい御意見を伺ったということも承知をしておりまして、今現在、前大臣のときに国会で御指摘をいただきました放射能濃度の再測定についても作業を進めさせていただいておりますし、また、市町村長会議でいただいた御意見に対しても、現在、環境省の考え方について省内で取りまとめをさせていただいているところでございます。

 なるべく早くこのことにまずお答えをさせていただいた上で、私がお伺いすることについてもしっかり状況を検討させていただきたいと思います。

大西(健)委員 今テレビをごらんになっている宮城の人はがっかりしていると思いますよ。ここまで言って、何で、行くと、近いうちに行きますとでもお約束ができないんですか。

 まさに知事が言っているのは、大臣が住民に頭を下げて熱意が伝わるんだと言っているんですよ。何で頭を下げられないんですか。そんなに行くのが嫌なんですか。ぜひ行ってくださいよ。行くということぐらい何でこの場で言えないんですか。たったそれだけのことが何で言えないのか。もう一度答弁をお願いします。

丸川国務大臣 大変重要な課題だという認識もあります。私自身もお伺いしたいという気持ちはございますけれども、大臣が現場に行くということについてさまざまな受けとめをされる方がいらっしゃいますので、しっかりと今の状況を、副大臣とも御相談をして、また首長さん方の御意見にどのように回答させていただくかということもよく検討させていただいて、もちろん私が伺うことも含めて、状況を判断させていただきたいと存じます。

大西(健)委員 先ほども言いましたけれども、記者会見でも、三市町がそろって候補地を返上している、これは環境省としてもう一度作戦を練り直す、そういう時間的余裕ができたんじゃないかという記者の質問に対しても、そんなことはない、時間的な余裕は全くない、ボールはこちら側にあると大臣は答えられているんです。

 ですから、大臣がまず行くことですよ。これは行かないと、三市町はみんな候補地の返上を申し出ているという状況ですし、この今の国会中継を見ていただいて、本当にもうこれ以上、行かないということになればこの問題は前に進まないというふうに思います。これは本当に大臣失格だと私は思います。ぜひとも行っていただきたいということを再度申し上げておきます。

 次に移ります。

 丸川大臣は、十二月二十五日の記者会見で、自民党の宮崎代議士の育児休業の取得宣言に対して、ぜひ育児休業をとっていただきたい、有言実行でお願いしたいとエールを送っています。

 男性議員の育児休業の取得については、世間の受けとめ方も賛否両論あるようでございます。ただ、大方は、どちらかというと若干否定的な意見が多いように私は思います。

 その理由としては、まず第一に、国会議員が率先して育児休業を取得することで範を示すということは、気持ちはわからなくはありませんけれども、国会議員は雇用されている者ではありませんし、国会を休んでいる間も歳費が満額支給される、そういう意味では一般の労働者よりも恵まれた立場にあって、国会議員が育児休業を取得したからといって、一般の日本人男性のモデルにはなり得ないというふうに思います。

 第二には、最近も国会をサボって男性と旅行に出かけたんじゃないかということで批判を浴びた議員がいましたけれども、国会議員は国民の負託を受けて議決権を行使する、特に本会議の採決というのは代理がききませんので、そういう意味でも難しいのではないかという意見ではないかと思います。

 閣僚の中からは、丸川大臣だけではなくて、菅官房長官だとか、あるいは塩崎厚労大臣だとか、支持する声がある一方で、自民党の中では、谷垣幹事長それから二階総務会長が否定的な見解を示しておられます。六日の日には、宮崎代議士が自民党国対に呼ばれて注意を受けたということなんですけれども。

 安倍総理は、内閣を代表するとともに自民党の総裁でもあるわけなんですけれども、安倍総理、男性議員の育児休業の取得について、賛成なんでしょうか、反対なんでしょうか、どっちなんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 これはまさに、国会議員の育児休暇でありますから、国会において議論をしていただきたい、このように思うわけでありまして、我が党におきましても、党においてさまざまな議論があるところだろう、こう思っております。

 政府におきましては、昨年末に第四次男女共同参画基本計画で決定したとおり、男性の育児休業取得率が一三%以上となることを目指していく、希望出生率一・八を実現し、あわせて女性の就業希望をかなえるため、多様で柔軟な働き方ができるようにするとともに、男性の家事、育児への参画を促していくところでございます。

 国会においては、議員においては、まさにこれは議員個人個人が議員の立場をどのように考えていくか、一票一票、いわば決議のときには地域の方々の民意を代表して一票を投じるということもあるわけでございますから、そうしたことも含めて議論をしていかれることと思います。

大西(健)委員 これだけ賛否両論、国民の中にある問題で、閣僚の中からは賛同する声がある、でも、自民党の国対は宮崎代議士を呼びつけて注意をしたということなんですよね。だから、一体どっちなんだと。どっちなのかということは、先ほども言いましたけれども、総理は、総理であると同時に自民党総裁なわけですから、では、閣僚が言っていることが間違っているんですか。丸川大臣がぜひ有言実行でやってほしいと言っていることが間違っているということなんですか、それとも、それでいいんでしょうか、どっちなんでしょうか。どっちなんでしょうか。(発言する者あり)

 私は、先ほど言いましたように、世間の声はどちらかというと否定的なんじゃないですかということを申し上げました。(発言する者あり)私もそう思います。私も二歳の子供がいますし、初当選後三カ月で子供が生まれましたけれども、私は育児休業はとりませんでしたし、やはり世間の声が正しいのではないかと思いますが、総理はどう思いますか。

安倍内閣総理大臣 私は行政府の長でありまして、基本的には、三権分立の中において、議会においては議会で決めていただきたい、こう思うわけでございます。(発言する者あり)

 丸川大臣について、今やじがございましたが、丸川大臣については、まさに丸川さんは、閣僚の一員として答えたのではなくて、議員として質問に答えたんだろう、こう思うわけでありまして、閣僚としての意見につきましては、まさにこれは政府のことについてしか当然答えることはできないわけでありますから、これは当たり前のことであろう、こう思うわけであります。

 私はまさに総理大臣でありますから、行政府の長であるところである以上、院の運用においては一議員として軽々しくあなたのように答えるわけにはいかないわけでございまして、それはまさに行政府の長として、一議員として今ここで答える必要はないんだろうと私は思うわけであります。

 同時に、さまざまな党としての判断におきましては、党としての判断については、まさにこれは幹事長において、幹事長がさまざまな判断をしていくわけでございます。私もかつて幹事長のときには、党のことについての運用は私に任されていたのでございます。(大西(健)委員「時間をとめてください、時計をとめてください」と呼び、その他発言する者あり)

竹下委員長 時計をとめてください。

    〔速記中止〕

竹下委員長 速記を起こしてください。

 今の騒ぎについて説明をいたします。

 総理の答弁中に、玉木雄一郎さんの席に座っているどなたかが発言をされまして、そのことについて協議をいたしました。

 後ほど、扱いについては理事会で協議をさせていただきます。(発言する者あり)この問題は理事会で協議をいたします。

大西(健)委員 野党議員の発言に対して一国の総理が軽々しくとかというふうに批判するということは、私はどうかなというふうに思います。

 いずれにしろ、今の話というのは、私が言ったように賛否両論あるんです。だから、国民も、では日本国の代表の総理はどっちなんだろうなと思っているわけですから、ぜひはっきりと総理のお考えを示していただきたいというふうに思います。

 時間がありませんので、次に行きます。

 沖縄の問題についてお聞きしたいと思うんですが、本年は、今月二十四日に宜野湾市の市長選挙が行われます。また、六月には沖縄県議会議員選挙、続く七月には島尻大臣が改選を迎える参議院選挙もございます。

 そんな中、昨年の予算編成の作業中の十二月十五日の記者会見で、島尻大臣は、辺野古の新基地の建設をめぐって、予算確保に全く影響がないというものではないと、政府と対立する翁長知事の政治姿勢が沖縄振興予算に影響する可能性を示唆しました。

 政府は、従来、基地問題と振興予算というのはリンクしない、この立場を堅持してきたんです。この従来の政府方針ともこの島尻大臣の発言というのは明らかに異なりますし、地元からは、基地問題と振興予算をリンクさせた恫喝だ、島尻大臣は一体どこの選出の議員なのかと、怒りと大臣としての資質を疑問視する声が上がっています。

 改めて、どういうつもりでこの発言をされたのか、島尻大臣にお聞きをしたいと思います。

島尻国務大臣 お答えをさせていただきます。

 振興予算と基地問題はリンクしないということは、これまでも一貫して述べさせていただいておりまして、昨年十二月十五日の会見でも明確に申し上げております。

 こうした前提のもとで、沖縄担当大臣として沖縄振興を総合的、積極的に進めてまいりたいと考えております。

大西(健)委員 今、私の手元に十五日の記者会見の要旨がありますけれども、全くないとは考えていません、やはりこの空気感というのでしょうか、そういう意味で、私の中で予算確保について全く影響がないというものではないというふうに私自身が感じていると。まさにリンクしていると言っているじゃないですか。

 これは、今までの歴代の担当大臣の方針、内閣の方針とも全く違うわけです。菅官房長官なんかは否定されていますけれども、大臣はリンクしているかのような発言をしている。しかも、大臣は沖縄選出の議員ですよね。沖縄の方々は本当に怒っていますよ。

 島尻大臣の資質を疑う指摘はほかにもあります。

 浦添市にある専門学校運営会社、JSLインターナショナルは、二〇一三年の十二月に三百万円を、大臣が支部長を務める自民党沖縄県参議院選挙区第二支部に寄附しています。しかし、この学校は、留学生支援の目的で、独立行政法人の日本学生支援機構から同じ年に補助金を受けています。そして、この学校の理事長は、何と大臣の御主人である島尻昇氏なんです。

 政治資金規正法は、政治団体が国や自治体から補助金を受けている団体からの寄附を受けることを禁止しています。ただし、独立行政法人から補助金を受けている団体からの寄附は禁止されていませんけれども、補助金が事実上政治資金に投入されている点では私は実質的に変わらないというふうに思います。

 もしこういうことが許されるんだったら、親族が学校を経営している議員は、補助金を受けておいて、それを寄附すれば、税金を懐に入れることができてしまうことになってしまう。

 島尻大臣は、補助金を受けた夫の会社からのこの寄附というのは問題ないとお考えでしょうか。

島尻国務大臣 お答えを申し上げます。

 独立行政法人から補助金を交付された企業については政治活動に関する寄附は制限されておらず、政治資金規正法には抵触しないと考えております。

大西(健)委員 それは私も今も言いました。法律上は違法ではないということですけれども、でも、補助金を受けている会社、しかもそれは夫の会社なんです。

 ですから、夫の会社が補助金を受けて、そしてそれを奥さんに寄附するというのは、これは税金が還流していることになるんじゃないですか。違法じゃないからそれでいいというんですか。道義的に全く問題はないとお考えでしょうか。

 もう一度御答弁をお願いします。

島尻国務大臣 繰り返しになりますけれども、独立行政法人から補助金を交付された企業については政治活動に関する寄附は制限されておらず、政治資金規正法には抵触しないと考えております。

大西(健)委員 私は、政治資金規正法上は問題ないけれども、道義上は問題ないんですかと言っているんです。

 この夫の経営するJSLインターナショナルには、私が見たところでも、日本学生支援機構から四百万円補助金が入っています。三百万、大臣の支部に寄附がされているんです。これは、税金が還流しているというふうに一般の国民から見たら見えるんじゃないですか。こういうことをやっていて、本当に沖縄の皆さんの信頼が得られるのか。

 そして、先ほども言いました。一方では、沖縄振興予算と知事の政治姿勢がリンクしているかのような発言をしている。

 そういう島尻大臣が、総理、ネット上で何て書かれているか。腐れナイチャーと言われているんです。ナイチャーというのは、侮蔑の意味を込めて本土の人を指す言葉です。

 島尻大臣は、宮城県の出身で、沖縄出身の夫と結婚して、二〇〇四年の那覇市議補選に民主党公認で当選をされています。そしてその後、民主党を離党して、二〇〇七年の参議院補選に自公の推薦で初当選をして、その後自民党入りしている。二〇一〇年の参議院選挙では、普天間の県外移設を公約に掲げて再選をされましたけれども、内閣府政務官だった二〇一三年四月の参議院予算委員会で、選挙公約を撤回して、辺野古移設容認に転じている。

 そういう島尻大臣の変節ぶりを、評論家の佐藤優氏は、存在自体が日本の恥、吐き気を催すという言葉まで使って批判をしている。私が言っているんじゃないです。佐藤優さんが言っているんです。

 島尻大臣は、沖縄県民の信頼を失っていて、先ほども言いましたし、補助金を受けた夫の会社から寄附を受けていることからも、私は大臣として不適格だというふうに思いますが、総理、いかがお考えでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今まで、委員の方から島尻大臣を誹謗するお話が随分ございました。吐き気を催すというのはやはり限度を超えた表現であろう、私はこのように思います。

 確かに島尻さんは宮城の出身でありますが、御主人のもとに嫁いで、沖縄のために頑張ろう、そういう純粋な気持ちで市会議員として当選し、そして参議院議員としても当選してきたわけでございます。まさに、民主党では自分の思いをしっかりと結果として出すことができない、そう思ったんだと思いますよ。その後、自民党の議員として、地元の皆様からも信頼されながら今日の地位を築いてきたわけでございます。

 そして、政治資金については法にのっとって適切に処理をされている、このように大臣は答弁をしているわけでございます。

 今後とも大臣としてしっかりと沖縄の振興に当たっていただきたい、こう考えているところでございます。

大西(健)委員 私が言っているのは、先ほど、民主党で初当選したとか、こういうことは事実関係ですし、そのように立場をころころ変えられて、そして公約も撤回している、そういう変節ぶりに対して佐藤優さんがそのような言葉まで使って批判をしているということを申し上げただけであります。

 島尻大臣の振興予算をリンクさせた発言だけではなくて、安倍内閣では、菅官房長官が新基地に反対する運動を騒音と呼んで、法律に基づかず要綱で、名護市を介さずに、地縁団体にすぎない久辺三区に対して補助金を直接交付するということも決めています。

 政策への支持を取りつけるために交付金を出すということであれば、これは公金による地域ぐるみの買収のようなものであって、私は、これを名護市の頭越しに行うということは地域の分断工作であって、こそくな手段だというふうに思います。このような、札束で頬をたたくようなやり方を続ける限り、沖縄の皆さんの理解を得るどころか、沖縄の皆さんの心はどんどん離れていくんじゃないかというふうに思います。

 安倍総理は、以前、この予算委員会において、集団的自衛権に関する憲法解釈の変更について、選挙で支持を国民から得て勝利している、だからいいんだという答弁をされています。

 でも、沖縄では、知事選挙も、それに続く衆議院選挙でも、全小選挙区、四区全てで自民党は負けているんです。来るべき参議院選挙、島尻大臣が臨まれる参議院選挙、もし島尻さんが落選するようなことがあっても、辺野古移設というのは粛々と進めるんでしょうか。これだけ民意だ民意だ、選挙で勝ったんだからいいんだと言っている総理は、沖縄の民意は関係ないと言えるのか。総理にお尋ねしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 この場を通じて、盛んに島尻さんのことを攻撃しておられます。先ほどはネットの世界の発言まで紹介しておられることに、私は大変驚きを禁じ得ないわけであります。まさにネットの世界の中において誹謗中傷は大変飛び交っているわけでありますから、それを正当化してこの国会の場に持ち込むことは、私は明らかに品位を欠いているということは申し上げておきたい、こう思うところでございます。

 そこで、辺野古の問題でありますが、まさに民主党政権は、最低でも県外、こう打ち上げて、結果は、学べば学ぶほど抑止力を理解した、御党の総理大臣、党首がそうおっしゃったわけでございます。さまざまな選択肢を検討した結果、辺野古しかない、こうおっしゃったのは御党の当時の総理であり党首ではなかったんでしょうか。まさにここから迷走が始まったわけでございます。そして、その中において十九年間、危険なこの普天間の状況は全く変わらなかったわけでございます。

 しかし、私たちは、島尻さんとともに三年間、結果を出しているじゃありませんか。嘉手納以南の返還、これは全く行われなかった。しかし、西普天間基地が返還されましたね。そしてまた、普天間の基地につきましても、全てが移るわけではなくて、面積も三分の一になるわけでありますし、岩国基地に空中給油機が十五機、これはもうずっと今まで全く動かなかったことが、十五機の空中給油機が動くようになったんですよ。そして、オスプレイについても、整備は木更津に移る、そして訓練は九州に移る、まさに運用のみが移るようになった。このように、大きく私たちは前進させてきているということは訴えていきたいと思います。

 そして、安全保障にかかわること等については国全体で決めることでありまして、これは一地域の選挙で決定するものではない、こういうことでございます。

大西(健)委員 都合が悪くなると民主党政権のときはああだったこうだったということを言われるんですが、私が言っているのは、結論を言っているんじゃないんです。沖縄の皆さんの理解を本当に得たいと思うんだったら、今のやり方では理解は得られないんじゃないですかということを言っているのと、それから、総理は何かといえば選挙で自分たちは民意を得たんだと言われる、ならば、沖縄での選挙結果というのはこの辺野古移設にどう影響するんですかということを言っているんです。

 もう十七日には宜野湾の市長選挙があります、六月には県議会議員選挙があります、七月には参議院選挙があります。それぞれの結果次第で、私は、やはりしっかり沖縄の民意というのを総理は酌む必要があるということを申し上げておきたいというふうに思います。

 時間がありませんので、最後に、就学支援金の不正受給問題についてお聞きをしたいというふうに思います。

 パネルをごらんいただきたいと思います。

 東京地検特捜部は、去る十二月の八日でありますけれども、ウィッツ青山学園高校や関連先を詐欺容疑で捜索しました。

 このウィッツ青山学園ですけれども、教育特区を利用して、株式会社が二〇〇五年に開校しています。通信制の生徒を約千二百人抱えておりまして、全国に四十以上のサポート校があります。

 しかし、そのサポート校の一つの四谷キャンパスというのは、ワンルームマンションの一室であって、高校の実態はなしていません。そして、この四谷キャンパスでは、年二回、学校の前で写真を撮ってくれれば高校卒業資格が取れると言って勧誘しています。その上、紹介者には紹介料まで支払われている。なぜかというと、これは、生徒一人当たり、国から三重県を介して最大約三十万円の就学支援金というのが支払われるという仕組みになっているんです。

 ウィッツ青山学園は、この支援金を増すために、受給資格がないことを知りながら高校既卒者等を勧誘して、支援金を不正受給していた疑いというのが持たれています。

 この就学支援金制度、これは全ての学ぶ意思のある生徒が安心して教育を受けられるように国が高校の授業料を肩がわりする制度で、家庭の教育費負担を軽減するために、民主党政権下で、高校授業料の無償化制度としてスタートしました。その後、自民党政権になって、二〇一四年度から、所得制限が設けられる一方で、通信制とかあるいは専門学校にも支給ができるようになっています。

 この就学支援金の原資は、言うまでもなく税金であります。そして、全ての学ぶ意思のある生徒を応援するためにつくった制度であるにもかかわらず、それが金もうけのためにこのような形で利用されてしまっている。私は強い怒りを覚えます。

 担当大臣である馳文科大臣も、記者会見でこんなふうに言っておられます。民主党の皆さんも怒り心頭なのではないか、私自身、大臣として憤りを禁じ得ない、こういう人が教育を語る資格があるのか、ふざけているのか、公教育をなめているのかと、非常に腹立たしい思いと怒りを爆発させています。

 一億総活躍社会を掲げる安倍総理は、この事件について、馳大臣と同じ思いということでよろしいでしょうか。この事件に対する所感を簡潔にお述べいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 御指摘の事件は、現在捜査中であり、コメントは差し控えたいと思います。

 なお、一般論として申し上げれば、高等学校等就学支援制度は、家庭の経済状況にかかわらず、意欲ある全ての高校生が安心して勉学に取り組めるよう支援する制度であり、仮に制度が悪用されたとすればまことに遺憾であります。

 今回の支援に関し、文部科学省では、全国の広域通信制高校に対して緊急点検を行うとともに、省内にタスクフォースを設置し、広域通信制高校の教育の質の確保や指導監督体制、就学支援金制度の運用などについて、問題点の洗い出しと改善策の検討を行っています。

 今後、これらの結果を踏まえ、制度の改善等必要な措置を講じてまいりたいと思います。

大西(健)委員 私は、原資が税金で、本当は学びたい人の応援のための制度であるにもかかわらずこれが悪用されているというのは、本当に憤りを感じます。

 馳大臣、先ほども紹介しましたけれども、皆さんは怒り心頭なんじゃないか、こういう人が教育を語る資格があるのか、ふざけているのか、公教育をなめているのかと怒りを爆発されています。馳大臣も記者会見の中で、詐欺ではなくて不正受給の疑いということで、そういう前提では発言をされていますけれども、これはひどいですよね。再度それを確認させていただきたいと思います。

馳国務大臣 私も、野党時代に、民主党政権の高校無償制度について議論をし、一定の役割はあるけれども全額はどうかというふうな議論をさせていただき、与党に復帰した後に、制度として所得制限をするという形でお互いに合意をしてというか、この方向性でということで行政として進めていこうとなったと思っています。あのときに与野党で議論が一致したことは、やはり経済的に負担をできるだけかけないように高校教育についても支援していこう、その公平性の観点から、広域通信制についてもしっかり支援していこう、こういう議論でお互いにまとまったと思っています。

 にもかかわらず、今回、個別の事件ですので、また捜査中でありますから、なかなかコメントがしづらいことは御理解ください。しかし、報道にありますとおり、教育内容がどうなっているのか、また詐欺まがいで就学支援金を搾取しているのではないかというふうなことが明らかになった以上は、私たちは関与できませんが、捜査と並行して、あり方についてしっかり議論しておくべきであるということは、恐らく皆さん方と同じ考えだと思っています。

 したがって、実態の報告を求めておりまして、ことしの二月十五日までに、まず報告をしっかりとしてください、こういう通知をまず出しました。同時に、義家副大臣のもとでタスクフォースをつくりまして、制度として就学支援金制度の手続のあり方、また十分に教育内容が浸透しているのかどうか、こういったことについて年度内に方向性を取りまとめて、また皆さんにも報告したいと思います。

大西(健)委員 ちょっと記者会見のときとはトーンが違うんですけれども、ただ、大臣の心中は、こんなのは許せないという思いだというふうに私は思います。

 そして、広域通信制のこうした株式会社立の高校でいろいろな問題があるんじゃないかということは、実は文科省では大分前から気づいていたんじゃないか、ところがそれが放置されてきたんじゃないかということも言われています。

 このウィッツ青山学園の創立者は、森本一さんという方です。総理、この名前、どこかでお聞き覚えがあるんじゃないでしょうか。

 この森本一さんですけれども、昨年の予算委員会で私が取り上げた下村博文前文科大臣の後援会、全国博友会の会長です。森本氏が代表を務める株式会社メリックのホームページ、そこには森本氏の経歴が次のように紹介をされています。平成十七年の九月、「特区制度を活用して、株式会社のウィッツ青山学園高等学校(三重県伊賀市)を設立」「下村博文衆議院議員を都議会議員時から支援し、その後援会組織を全国規模に拡大しました。」

 ちなみに、三重県伊賀市の教育特区の認定は文科大臣の同意を得た上で平成十六年の十二月に行われていますけれども、当時の文科政務官は下村博文氏であります。また、下村氏は、当時、森本氏が代表を務めていたウインという学習塾から、平成十二年から平成十七年の六年間で百九十五万円の寄附も受けているということであります。

 皆さんのお手元に、月刊私塾界という業界誌の二〇〇六年の五月号という記事をお配りしています。これは本当はテレビをごらんの皆さんにもお示しをしたかったんですけれども、お許しをいただけませんでしたので、皆さんのお手元にお配りをさせていただいております。

 この記事、この年の三月に開催された全国博友会記念祝賀パーティーの記事なんですけれども、このパーティー、当時官房長官だった安倍総理も出席をされているんです。このパーティーに出席をされていますけれども、そこで挨拶をされています。下村さんは本当の盟友です、私と下村さんは国家観も同じで同じ方向を向いているとエールを送っています。また、森本氏もここで近畿博友会の会長として挨拶をしていて、下村先生は我々の夢であり、すごい人ですと持ち上げています。

 下村氏が総理の大事なお友達であるということはわかりますけれども、私は、もうおかばいになるのはやめた方がいいんじゃないかと思います。下村氏に対しては、博友会の問題で政治資金規正法違反の罪で、告発状が昨年の四月に東京地検に正式に受理をされております。

 また、先ほども話があった新国立競技場の整備計画の白紙撤回問題、この問題でも下村大臣の責任を問う声があって、下村氏からも辞意の意向があったにもかかわらず、総理が慰留して内閣改造まで続投をされました。そして、現在も自由民主党総裁特別補佐として重用されています。

 総理は、この就学支援金を不正受給したウィッツ青山学園高校の設立者である森本氏と下村氏の親密な関係、これを問題だとはお思いになりませんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 特定の事件でありますから、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

 また、先ほど委員が、まるで私と森本さんが知り合いのような印象を与える紹介をされたわけでありますが、私は全く存じ上げないわけでございます。

大西(健)委員 私が申し上げたのは、ここにこういう記事が出ているわけです。ここに総理が出席して挨拶をされている、同じ場所で森本さんも挨拶をされているということであります。

 先ほど来申し上げているように、森本氏は下村氏に政治献金を行い、また後援会組織、博友会の会長も務めてきている、そしてウィッツ青山学園高校の教育特区の認定時には下村氏が同意を与える文科省の政務官であった。こういうことを総合的に見ると、場合によっては、あっせん利得処罰法に抵触するおそれもあるんじゃないかと私は思います。

 そういう意味では、下村氏に予算委員会にちゃんと来ていただいて御説明をいただかなければいけないと私は思いますので、委員長、下村博文衆議院議員の予算委員会への参考人招致をお願いいたしたいと思います。

竹下委員長 後ほど、理事会で検討いたします。

大西(健)委員 結局、きょうも、肝心なところになったら個別問題だというふうに答えない、そして下村氏をどこまでもかばい続けるということであります。

 宮城に行かない丸川大臣、沖縄の県民の気持ちを踏みにじる島尻大臣、そしてお友達の下村氏をかばい続ける安倍総理、一体、皆さん、どこを向いて仕事をされているんでしょうか。

 私は、これからもこうした皆さんの政治姿勢についてこの予算委員会の中で厳しく追及していくことを申し上げて、質問を終わりたいと思います。ありがとうございます。

竹下委員長 この際、西村智奈美君から関連質疑の申し出があります。枝野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。西村智奈美君。

西村(智)委員 民主党の西村智奈美です。

 総理、総理はパートで働いておられる女性が一体どのくらいのお給料を平均して受け取っているというふうにお思いですか。

 私は今、NHKの朝ドラを見ております。江戸の幕末から女子の教育を非常に進める、最後は女子大学を日本で初めてつくった広岡浅子さんという方がモデルになっているドラマです。お手伝いさんがいらっしゃる家で生まれたからこそ、ああいったさまざまな商い的なこともできたのかな、教育に熱心に取り組むこともできるようになったのかな、こういうふうに思いますけれども、それでもあのヒロインには、庶民に寄り添って、ともに汗を流して、そして一緒に苦しみを分かち合おう、そういう姿勢があったというふうに思うんです。

 ところが、安倍総理を見ていて、私は残念ながらそういうふうには感じられません。今閣僚の席を見ておりましても、失礼ながら、二世、三世の大臣が非常に多い。総理みずからも三世でいらっしゃいます。こういった庶民の感覚がわからない政権であるからこそ、私は、臨時国会も開かないことも平気だし、TPPに参加交渉しないといってうそをつくことも平気だし、安全保障法制もごり押しをするし、そして軽減税率を導入して社会保障の財源に大きな穴をあけるということも平気だし、こういうことなんじゃないかというふうに思うんです。

 それで、きょう確認をしたいのは、先日八日の予算委員会に対する安倍総理の答弁についてであります。

 総理はこういうふうに答弁をされました。山井議員への答弁ですが、実質賃金の減少についてでありますが、パートで働く人がふえていく、働いていなかった妻が働き始めたら二十五万円、例えば私が五十万円。つまり何を言っておられるかというと、パートで働く妻が月二十五万円、そして夫、男性の方が五十万円、それで収入が七十五万円にふえて、足して二で割るから実質賃金の減少が、そういうふうになって平均が下がるんですと。

 何かこの話を聞いていて、ちょっとおかしな説明だなというふうに思っておりましたら、帰ったら、その日、直後からネットでさまざまな批判や疑問が渦巻いておりました。一体、パートの現状をわかっているのか、二十五万円ももらえるパートがどこにあるのか、あったら教えてほしい、こういうことなんですね。

 かわって私の方から伺いたいと思います。総理は、パートの月収、大体平均してどのくらいもらえるというふうに思っておられますか。

安倍内閣総理大臣 まず、私の答弁を正確に聞いていただきたいと思います。

 私、パートとは言っていません。言っていません。ちゃんと見ていただきたいと思います。

 私は、例えば私が五十万円のときは、家庭では、安倍家の平均というのは五十万円になります。しかし、妻が働き始める、例えば二十五万円で働き始めたら安倍家の収入は七十五万円になりますが、平均は七十五割る二になるわけでありますから、これは五十を下回っている。そうなりますと、平均賃金は下がったかのごとく見られるけれども、それはそうではなくて、大切なことは、安倍家の収入は七十五万円にふえたわけでありますから、つまり、これは総雇用者所得で見なければならない、こういうことであります。

 これを私は申し上げたわけでございまして、大切なところは、ポイントはそこなんですよ。それをちゃんと見ていただきたい、このように思うわけでありまして、五十プラス、二十五を足して、それを二で割ったところが、これは平均になりますが、五十より下がってしまう、こういうことでございます。

 そこで、今の質問でありますが、パートであれば八万円か九万円ということであろう、こう思うわけでありますが、まさに私が例として申し上げましたのは、いわば平均賃金という見方、平均の実質賃金という見方、一人一人に割り戻していくのが果たしてそのときの経済の現状を正しく見るのかという例で申し上げたわけでございます。そこのところをちゃんと見ていただきたい、こう思う次第でございます。

西村(智)委員 先ほどの総理の答弁、まだやはりおかしいんですね。実質賃金が下がっていくというのは、これは指数の話ですから、足して二で割って単純に下がっていくという話ではないはずなんです。

 それから、総理は、雇用が増加する過程においてパートで働く人がふえていく、こうした一人当たりの平均賃金が低く出ることになるわけだというふうに、明確にパートというふうに答えているんですよ。ですから、そこは逃げないでいただきたいというふうに思います。ちゃんと真正面から、自分の文脈がそういうふうに読み取れるということで、これはきちんと議事録を精査してください、書いてあるわけですから。ここはちゃんと私はそういうふうに申し上げたい。

 それと、実際に、では、仮にパートだとしても、女性が月二十五万円手取りでもらうのに一体どのくらい総収入が必要だというふうにお考えですか。今まで休んでいた人たちが急に働き始めて、手取りで二十五万得る、これは相当大変ですよ。

 私、社労士の人に計算してもらいました。これは例を置かないといけないので、私の地元で事務に従事する扶養家族なしのケースということですと、手取りで二十五万を受け取ろうとすると、総収入は三十万を超えるんです。三十万を超える。これは、企業の負担額、企業がその人に関して払うということでいうと、三十五万円ぐらいになるんですよ。

 今まで休んでいた人が働き始めるということであれば、よほどのスキルのある、経験のある、専門的な知識やノウハウがあるということであれば別ですけれども、なかなか時給はそんなに高くはないというふうに思うんですね。

 そうすると、仮にパートで一カ月でこの手取り二十五万を受け取ろうとすると、時給千九百円くらいでないと三十万にならないんですよ。時給千九百円。一体そういう仕事は本当にどこにあるのか。私も本当に素朴に疑問に思っていますし、ネットで、そういう仕事があったら本当に総理に紹介してほしいというふうに言われているんです。ぜひ、総理、お願いします。

安倍内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、私の答弁の答弁書を正確に見てください。

 いいですか。パートということを申し上げたのは、いわば、一人当たりの実質賃金が下がっているではないかということの説明において、景気がよくなって景気回復局面においては、今まで働いていなかった、つまり所得がゼロだった人たちが働き始める、しかし、その中においては、例えばパートから働き始める人がいますねということを申し上げたわけであります。

 そして、私と妻との関係においては、私が五十万で妻がパートで二十五万とは申し上げていませんよ。それは、パートというのはその前の説明でしょう。それを……(発言する者あり)違いますよ。静かに、山井さん、少しは静かに聞いてくださいよ。私は今、冷静に指数の説明をしているんですから、ちゃんと聞いて……(発言する者あり)では、それを全部読んでください。

 私が説明したのは、まさに……(発言する者あり)ちゃんと、では、全部読んでください。私が説明したのは、まさに回復局面においては一人当たりの賃金で見るのは正しくない、こう申し上げたわけであります。

 つまり、ゼロの人たちが働き始めれば、それは最初はパートとか比較的低い給料から始まるということで始めたわけでございます。そこで、例えばという例を使って安倍家で説明をしたわけでありますが、ここで五十万円、二十五万円という例を示しましたが、このとき、私は五十万円で妻はパートで二十五万とは申し上げていないのは当然のことであります。言っていませんよね、それは。もし……(発言する者あり)では、全部読んでみてくださいよ。

 ですから、私が申し上げたかったことは、総雇用者所得と一人当たりの賃金との違いについてわかりやすく説明しただけの話でありまして、つまり、私が五十万円で、私しか働いていなかった場合は安倍家の平均は五十万円になりますが、五十万円とそして妻が働き始めて二十五万円を足せば三十七・五万円になるわけでありますから、五十万円から下がっているように見えますけれども、つまり総雇用者所得は七十五万円である、こういうことであります。

 また、西村智奈美議員はこの内閣のメンバーの経歴等々についてお話をされたけれども、大切なことは経歴ではないんですよ。結果を出すことですよ。

 私たちは、百十万人、雇用をふやしたんですよ。そして、高校生については二十三年ぶりの内定率を確保しているんですよ。若い人たちが心配しなくても済むようになったんですよ。失業率も、まさに正社員の有効求人倍率は過去最高になっているということは申し上げておきたい、こう思う次第でございます。記録をとり始めてから過去最高になっています。私の地元の山口県においても、正社員の有効求人倍率は〇・九になっている。皆さんのときとは全く違う状況を私たちは生み出している。

 大切なことは、西村さん、結果を出していくことなんですよ。

西村(智)委員 悲しくなりますね、今の答弁。全く実態がわかっていない。女性で、主婦で、働き始めて二十五万円もらえる仕事が一体本当にどこにあるのか。強いて言えば、五十万円、正社員で得られる男性、女性、正規の社員の仕事というのは、五十万円というのは一体どのくらいありますか。例え話だというふうに言うかもしれません。だけれども、そこはやはり基本線を押さえた上で答弁をしていられるかどうかという、まさに安倍内閣の感覚を問うているんですよ。そういう感覚がずれている人が、私は、雇用政策なんかまともにとれないというふうに思います。

 それで、結果を出しているというふうに総理はおっしゃいました。ですので、私もあえて聞かせていただきます。

 これも八日に総理は答弁されています。民主党政権になって正規の雇用者数が減りました、そして、私たちがそれをプラスに転じました、こういうふうに答弁しておられるんですね。本当かなと。

 これは資料でもきょうお配りしていますけれども、正規の雇用者数と非正規の雇用者数の比率です。見ていただくと、大体、長期的な傾向として正規の雇用者数が減少しています。それから、逆に、非正規の雇用者の比率というのは、大体一貫して右肩上がりになっているわけですね。

 それで、民主党政権で本当に正規が減ったのか。

 確かに、出してもらったペーパーを見ると、民主党政権が始まったのが二〇〇九年の九月ですので、そのときの数字と、それから二〇一二年の七月から九月の数字を見ると、これは季節変動もいろいろありますけれども、そこは減少しているんですね。

 ところが、その後、安倍政権で正規の職員、正規の人たちがふえたというデータ、根拠になるデータは、安倍政権がスタートした時期とは実は全く重なっていないんです。一時的に見ると、安倍政権がスタートしたのは二〇一二年の十二月です、その翌期から見ると、二〇一三年の一月から三月期、がくんと正社員の数が減っています。

 これは何でこういうデータのとり方にしたのか、つまり、三年、三年というとり方にしたのかというふうに厚生労働省に聞きましたら、やはり季節変動があるから同じ時期の三年ずつでとらないといけませんと。それはそのとおりだというふうに思うんです。だけれども、あえて、正規の雇用者数が減ったように見える三年間を民主党政権の三年間として当てはめて、そして、正規の雇用者数がふえたように見える、わずか二万人ですけれどもふえていますが、二万人だけれどもふえたように見える三年間を切り取って、そして出してくるというのは、私は、これは非常に恣意的なデータのとり方で、聞いている人に物すごく大きな誤解を与えるというふうに思うんです。こういった恣意的なデータのとり方は今後はやはりやるべきではない。

 総理、これは厚生労働省と総務省に聞きましたら、こういうデータのとり方は、実は、それぞれの役所は関知していなかったそうです。官邸でつくったんじゃないですかというような話でした。こういう恣意的なデータのとり方はもうやめていただきたいと思うんですけれども、それは指示していただけますか。

安倍内閣総理大臣 正確に事実をお示ししております。

 二〇〇九年の七―九から二〇一二年の七―九、これは四半期で見ているわけでありますが、五十九万人減ったわけでございますが、二〇一二年の七―九から二〇一五の七―九で、十―十二でいけば安倍政権も入ってしまうわけでありますから、安倍政権の入る前の七―九で見ているわけであります。それとまた、残念ながらまだ十一月までしか出ていないわけでありますから、十―十二では見られませんから、七―九で見るのは当然のことではないか、こう思うわけでありまして、我々がいわば政権をとる前の七―九と政権をとって後の二〇一五の七―九で見れば二万人ふえている。そして、二〇〇九年の七―九と二〇一二年の七―九は五十九万人減っているのも事実であります。

 こういう現実を見ながら政策を立てていくことが大切であって、我々は、政権に復帰したときに、まさに現実を見ながら、それは、民主党の三年間の政策あるいは結果だけではなくてその前も含めて、デフレから脱却をしようという政策を立てたわけでありまして、例えば第一次安倍政権のときには、企業は収益を上げたけれども、残念ながらこれは必ずしも賃金には回らなかった、こうしたことも反省をしながら政労使の会議を立ち上げた。自分たちのことも反省しながら、しっかりとファクトを見詰めながら進めていったということでございますから、皆さんにもぜひそういう態度をとっていただきたいと思います。

西村(智)委員 全く答えていただいていないんですね。

 それで、私が申したいのは、確かにデータはこのとおりです、だけれども、わざわざその恣意的な数値を取り上げて説明するのは今後やめてくださいということなんです。そういったことに対しては何の明確な答弁もないし、やめますということもないし……(発言する者あり)恣意的ですよ。だって、これは違うでしょう、民主党政権の時期と安倍政権の時期と重なっていないですからね。だから、やめてもらいたいと思います。

 それで、さっきからそうなんですけれども、長々と答弁される。総理、すごく答弁したかったんだなと思います。そんなに答弁したかったんだったら、通常国会まで待たないで、やはり秋の臨時国会をやるべきだったと思うんですよ。そこできちんと答弁をしていただいた上で、この通常国会に臨んで、補正予算の審議に入っていった方がよかったんじゃないかというふうに思うんですね。

 それで、私、今回の補正予算もいろいろ言いたいことがあります。一億総活躍と三世代同居について、それから軽減税率の財源について。

 一億総活躍も、アベノミクスがそろそろ陰りが見えてきたということで、何か新しい看板を立てて国民の目をそらさなければいけないということから出てきたんだろうというふうに思いますけれども、それも非常に旧来の看板のかけかえが多い、そして、無理やりつくった新しい看板は極めて雑で、思いつきでつくっているものが非常に多いということをまず冒頭申し上げたいと思います。

 それから、軽減税率について、これまでも何度も、何人もの委員の方が議論しておられましたけれども、私は、やはりこの軽減税率というのは、低所得の方々に対する配慮というよりは、結果として高所得の皆さんに対するメリットが非常に大きく出ることになってしまうというふうに思います。これまでも既に示されているデータですが、低所得の方々はやはり消費そのものが多くない、高所得になればなるほど食費にかけるお金もふやすことができるようになるわけですから、その分、軽減税率のメリットも大きくなってくるということです。

 その結果何が起きるかというと、社会保障の財源に穴があいてしまうということなんです。その財源を今度どうするのか。いろいろ社会保障の充実、メニューもあります。また、私たちが提案をしている給付つき税額控除、これについても私はまだ諦めていません。この財源の穴、一体、総理はどういうふうに安定的な恒久財源を見つけるおつもりなのか。

 まず一つ目として聞きたいのは、この安定的な恒久財源を見つけるのに、誰が担当大臣になって、いつまでに見つけるのか、それを答えてください。

安倍内閣総理大臣 まず、軽減税率制度については、三党合意を経て成立をした税制抜本改革法において、消費税率引き上げに伴う低所得者への配慮の観点から、給付つき税額控除、総合合算制度と並ぶ検討課題の一つとして掲げられています。

 そうした中で、軽減税率制度は、給付つき税額控除、総合合算制度といった給付措置とは異なり、日々の生活において幅広い消費者が消費、利活用している商品の消費税の負担を直接軽減することにより、買い物の都度、痛税感の緩和を実感できるとの利点があり、この点が特に重要であるとの判断により導入を決定したものであります。

 これに伴い、他の二つの施策は、消費税率引き上げに伴う低所得者対策として実施することは考えていないわけであります。(発言する者あり)

 なぜ我々がとったかということについても言及されましたから、今答弁をしているわけであります。それは当然、政府の立場として、西村議員が言及されたことについても説明をさせていただきたい、こう思っているところでございます。

 その上で申し上げますと、今の御質問でございますが、担当大臣は、これは当然財務大臣になる、副総理・財務大臣になるわけでございます。

 そして同時に、この財源については、実際に消費税を引き上げる上において、これは間に合わせなければいけませんから、その手当ては、しっかりと手当てをしていく考えでございます。

 いずれにいたしましても、我々は穴をあけるということはもちろんないわけでありますし、今まで私たちがさまざまな政策課題についてお示ししたことについては、財源の裏づけがあるものばかりをしっかりとお示ししてきたわけでありまして、それが責任政党であるという矜持のもとに、しっかりと財源をお示ししていくよう議論を深めてまいりたい、こう考えております。

西村(智)委員 聞いている皆さんも、答えていないなと思っておられる方がほとんどだと思うんですね。いつまでに見つけるのかということについて、総理は全く答えていません。逃げています。答えたくないんでしょうね。

 では、担当大臣が財務大臣だということですので麻生大臣に伺うんですが、これまでの総理の答弁を聞いていますと、税収の上振れ分を安定財源として見込んでいるふうな答弁がたびたび聞かれるんです、総理から。自然増もあるというふうに答えているんですけれども、麻生大臣、それでよろしいんですか。

麻生国務大臣 税収の上振れに関しての御質問だと思いますので、経済状況等によって下振れすることもありますので、安定的な恒久財源とは言えないとたびたび申し上げております。

西村(智)委員 総理、麻生大臣は想定していないという答弁でしたけれども、総理の答弁と矛盾しているようです。総理、答弁を変更されませんか。

安倍内閣総理大臣 いわば上振れ財源ということでありますけれども、三年間ずっとこれは上振れている、それ以上これは上振れているわけであります。それをどのように捉えていくかということについて、これはまさに経済財政諮問会議等においても議論をしていくという話を私はしているわけでございます。

 財務大臣はもちろん財務省としてのお考えを述べているわけでありますから、当然それは、今までも、上振れする場合があれば下振れする場合もあるのも事実でございます。そうしたことも含めて議論をしていくということを、私は総理大臣の立場として当然申し上げているわけでございます。

 また、いわば経済が上振れていく中において、企業の法人税も上がっておりますが、所得税も上がっていく中において、最低賃金も上がってきておりますし、またパートも二十二年ぶりの高い水準になっているわけでございまして、このように経済全体が底上げされている。この底上げをどう考えるかということについて、これは諮問会議等でも議論をしていくことになる、こう私は申し上げているわけでありまして、上振れする場合もあれば下振れする場合もあるというのは、これは財務大臣と同じでございます。

 そして、どのように議論をしていくかということについては、当然、これはそのための経済財政諮問会議でありますから、その議論をここで閉じてしまってはならないわけであります。

西村(智)委員 矛盾が何かだんだん広がってくる感じがしますね。

 麻生大臣は、税収の上振れ分は安定財源ではないという見解を示し、そして、安倍総理は、それに対してうにゃむにゃ、税収が上振れ分していくから、それも含むことも想定されるという答弁をしている。これは閣内不一致じゃないですか。ちゃんと統一見解を出していただきたいと思います。

甘利国務大臣 諮問会議担当です。(西村(智)委員「諮問会議は聞いていません。聞いていません」と呼ぶ)諮問会議で、今後、どういう財源をどういう方法で確保するかということは議論をしていきます。

西村(智)委員 経済財政諮問会議のことは、私は今、あえて聞いておりません。担当大臣が麻生大臣だというふうに総理が答弁されたから、私は麻生大臣に聞いたんです。

 統一見解を出してください。ここは非常に大事なことです。

 なぜかといえば、社会保障の削減も排除されていないということになってくるからなんですよ。消費税は社会保障のために使うと言って、上げておくという判断をした。だけれども、それが社会保障の方に、肝心なところに穴があくということは先に決まって、軽減税率がされるわけですから、これは一兆円の穴があくということが先に決まって、そして、ではその財源をどこで穴埋めをしてちゃんと充実をやるのかということの答弁がないまま、これ以上続けられないですよ。

安倍内閣総理大臣 では、しっかりと整理してお答えをしたいと思います。

 まず、軽減税率について一兆円必要であるということであります。このうち四千億円は、総合合算制度をやめるということでございます。これは、二・八兆円の外であります。二・八兆円の外で処理をするということになるわけであります。この二・八兆円については、私は、これを減らすことはないということは明言しているとおりでございます。

 それとは別に、社会保障制度については、常に、常に我々は合理化をしていく、無駄を省いていく、こういう行為は行っていく。その中において、我々は、毎年毎年増加を五千億円程度に抑えていくように今まで努力して、結果を出してきたわけでございまして、ですから、なぜ私がこういう話をしているかというと、社会保障費を減らさないのかという議論に対しては、そうではないということを申し上げているわけであります。

 一方、一兆円との関係におきましては、四千億円が決まって、あとの六千億については財源を捻出していくということでございます。そして、それに対して安定財源を確保していくということの中で、いわば政府でこれからまさに議論していくわけでございまして、その中で、では、安定財源をどのように考えるかということでありますが、基本的には、他の恒久的な税収をこれは考えていくということでございます。このことにつきましては、当然これは財務大臣が担当するということは、先ほど申し上げてきたとおりでございます。

 同時に、いわば税収が年々ふえていく中において、どこをいわば発射台とするべきかという基本的な考え方については、これは経済財政諮問会議において議論していくものであろうということについて私は申し上げているわけでございます。

西村(智)委員 長々長々と関係のないことを答えてくださって、本当にこれで時間を費やすのをやめてもらいたいというふうに思います。

 私は、やはりこの社会保障の六千億削減は排除されていないということ、それから、安定財源としては財務大臣は税収の上振れ分は含んでいないということ、ここにはやはり矛盾があると思います。

 委員長に要望します。これは、政府としてきちんと統一見解を出していただきたい。そこを理事会で協議していただけませんか。

竹下委員長 理事会で検討いたします。

西村(智)委員 それが出てくるということがこの補正予算の採決の大事な前提になってくるというふうに思いますので、きっちりとこの補正予算の審議の期間中に出していただきたいと強く要望をいたしておきます。

 それで、軽減税率の話にまた戻るんですけれども、先ほど申し上げましたけれども、これは高所得の人たちほど高い食材、食料をいろいろ買うことができるようになりますので、やはり税の逆進性をより強めるというふうに私は思うんですね。

 参議院の本会議で前川委員がキャビアの事例を出しておられました。キャビア、私も調べましたら、高いものだと三十万ぐらいするものがあるんですね。お米やみそは日ごろ私たちも食べますし、八%、そこはそこで据え置かれるということは、これは一旦話の前提として是としましても、キャビアにまで八%の据え置き税をこれからも適用し続けるというのは、私はちょっと、やはり政策的にいって、税の累進性というところからいっても問題があるんじゃないかというふうに思うんです。

 総理は、キャビアの消費税を今後も八%に据え置くことになるというふうに理解しておられるでしょうか。

麻生国務大臣 この種の話というのは昔からよくある話で、これを最初に導入したのはイギリスだと記憶しますが、そのイギリスでも同じような議論がなされて、結果としてどこで線を引くかということになりますと、西村先生の御意見、その他の方々の御意見、皆統一しているとは限りませんから、ではイクラはどうだ、何はどうだ、かにはどうだといろいろな話になってくると、その線引きが極めて難しいから、だから加工食品は皆一律ということになったということだと私どもは記憶をいたしております。

西村(智)委員 私は今そういう話をしているのではないんですね。高所得者の人たちに優遇策をこれからも続けることで本当にいいんでしょうかということなんです。

 財源の半分以上が高所得の方々の軽減税率に充てられてしまうわけですし、私はやはりこういう政策判断は正しくないというふうに思います。やるんだったら、徹底的に細かく、これは据え置き税率、あるいはこれは一〇%というふうにやるか、それとも、私たちはこの間ずっと給付つき税額控除というのを提案し続けてきました。これこそが本当の意味での安定的な、そして恒久的な低所得者対策になるというふうに私は確信をしております。

 ぜひ、これはやめるか、あるいは、もう一度、給付つき税額控除も選択肢にあるということを踏まえた上で議論してもらいたいというふうに思いますが、総理、いかがですか。総理です。総理、答えてください。

麻生国務大臣 指名されたのは私。

 軽減税率制度につきましては、御存じのように、御党も入られた上で、みんな、三つ案が出たでしょう、あのとき。その中の三つをいろいろ我々は議論して……(西村(智)委員「そうですよ。そのうち、ちゃんと検討されなかったじゃないですか、給付つき税額控除が」と呼ぶ)着席してしゃべらないことね。我々としては、総合合算制度と給付つき税額控除と軽減税率と三つありましたよね、御提案なさった御本人だからよく御存じと思いますが。そのとおりに、中で、その三つの中から軽減税率をいろいろ検討した結果、痛税感等々を考えてこの方がいいのではないかという結論を出したということなのであります。

 そういった意味で、消費税そのものの負担が直接軽減されない等々いろいろなことがあるので、今のような、給付つき等々いろいろなものよりこの軽減税率の方がいいという結論に達して、我々は合わせて対応しているということであろうと思っております。

 また、いろいろな問題の中に過誤支給とか不正受給とかいろいろな問題があったのは、これはイギリスも同じでしたから、そういった意味では、他国のものもいろいろ勉強させていただいた上で、我々として、この軽減税率というのは高所得者だけを除外するというのもなかなか技術的には難しいというような結論もありますので、この問題があることはもう重々承知の上で、我々はいろいろな計算をした結果、この軽減税率をとらせていただくという結論になったということです。

西村(智)委員 事業主の皆さんも、軽減税率、すごく苦労されると思いますね、いろいろなシステムの変更。

 また、財務省も、実は軽減税率の導入には反対だったというふうに聞いております。本当に、麻生総理、軽減税率でいいと思っておられるのかどうか。そこは本心じゃないことを今答弁されたと思いますけれども、ぜひ、これは立ち戻って、やはり私は、給付つき税額控除が本当にいいと思います。

 これまでどういう検討を経て軽減税率に落ちついたのかということも全く明らかになっておりませんので、ここはぜひその交渉過程といいましょうか、検討過程を明らかにしていただいた上で、また議論させてもらいたいと思います。

 そこは、どういう議論の経過を経て軽減税率に落ちつくことになったのか、これもぜひ、委員長、ペーパーで出していただきたいと思います。

竹下委員長 理事会で協議をいたします。

西村(智)委員 お願いいたします。

 それで、時間がありませんので、三世代同居について伺いたいと思います。

 先ほど玉木委員が、三世代同居は実は豪華住宅建築支援なのではないかということを指摘されました。実際に対象になる家が木造で、三世代かどうかというのは実は問わないということも指摘をされましたし、また、トイレを二つ、お風呂を二つつくる、本当にすごい豪華なおうちになるなというふうに私も思いながら聞いていましたけれども、私がこの件について伺いたいのは、本当に三世代同居を進めることで出生率が上がるのでしょうかということなのです。その論拠は一体何でしょうか。

 総理、先ほど玉木委員の示された資料の中でもありますけれども、石井国土交通大臣に、三世代の近居、同居を促進する住宅政策を検討して実施しなさいと、まさに肝いりでこの三世代同居を推進するということを述べて、旗を振ってこられたわけなんですね。総理、本当に、この三世代同居を促進することで出生率が上がるというふうに考えておられるその根拠をぜひお聞かせください、教えてください。

加藤国務大臣 先ほどから総理からお話がありましたけれども、今回は、希望出生率一・八の実現、すなわち、結婚しやすい、あるいは子供を産みやすい、育てやすい、そういう環境をつくっていこうということの一環ということであります。

 この三世代同居、近居の環境整備は、家族において世代間で助け合いながら子や孫を育てることができることを希望する方に、その選択肢を提供する。

 これは内閣府の調査なんですけれども、理想の家族の住まい方で、半数以上が、祖父母、すなわち三世代で近居、同居を理想としている。特に、近居を理想とする割合が約三割、同居を理想とする割合は約二割ということでありますから、やはりそうした環境をつくっていくということが、今、結婚し、子供たちを産み育てやすい、そういったことにつながっていく、こういうふうに考えております。

西村(智)委員 私は、出生率と三世代同居が関連するという根拠を教えてくださいというふうに申し上げたんですけれども、今全く示されませんでしたね。希望出生率一・八に向けて、だけれども、三世代同居を希望している人が二割くらいいらっしゃるから。何かよく説明になっていないと思うんですよ、これは。

 私はいろいろ調べてみました、なぜ、この三世代同居で出生率を上げようというその話が出てきたのか。加藤大臣が主宰しておられる一億総活躍社会に関する意見交換会というのが開かれていまして、ここで、伝統的家族が出生力が高いんだということが資料として示されているわけなんです。

 その資料をきょう皆さんのお手元にもお配りしているんですけれども、これはある研究者のデータなんです。ちょっと年代は古いんですが、出生力ということで根拠になっているのがこの数字だと思うので、あえてこれを持ってきていますけれども、夫方の親と同居すると、確かに、第一子から第二子、第三子へと進むにつれて出生力というか出生率が上がっていっているんです。ところが、妻方の親と同居していると逆に下がっていっているんです。下がっていっているんです。

 政策としては、夫の親と同居するのか、妻の親と同居するのか、これはわからないし、強制することなどできっこありません。逆に、私、同居を進めていくと、変な話ですけれども、子供の数が減っちゃうんじゃないか、出生率が下がっちゃうんじゃないかというふうに思うんですけれども、総理、どういうふうにお考えになっておられますか。総理です、総理。

加藤国務大臣 この資料は、御指摘のあります国民会議に御参加された方から提出された資料だということでありまして、これをどういうふうに読むのかというのはあると思います。たまたま私のところも妻と同居しておりますが、娘が四人いるということもございます。それぞれの状況によってそこは違うんだろうと思います。

 それから、別の資料でありますけれども、これは厚生労働省、二十五年度厚生労働白書にございますけれども、そこでは、同居、近居、別居の別に見た完結出生児数ということでは、やはり同居、近居の方が別居よりも高い、こういう数字も出てきております。

 先ほど申し上げましたのは、同居をさせるとか勧めるということではなくて、同居を希望する方々にそうした希望が実現できる状況をつくっていくということでありますので、そうした状況ができることによって、今申し上げた、結婚しやすい、あるいは子供を産み育てやすい、そういった環境につながっていくもの、こういうふうに考えております。

西村(智)委員 実は、三世代同居促進というのは、補正予算だけじゃなくて税制にも入っているんですね、来年の。それで、そこの内閣府の書きぶりを見ますと、子育ても支援するようにできるし、また介護も、三世代同居の中で副次的に社会保障費が安く済むということでメリットがありますということなんです。つまり何が書かれているかというと、これまで嫁や妻がおうちの中で家事、介護、育児、こういったものに縛られていた、それを社会化しようということで介護保険が始まり、介護の社会化というのが進んでいた流れとまさに逆行することが言われているんですよ、ここで。女性の活躍促進と全く真逆です。

 しかも、これは、同居している世帯ほど実は介護の離職率が高いというデータも既に出ています。これはまた機会を改めて質問させていただきたい。

 ですから、私は、この三世代同居工事促進、豪邸建築支援、これにも反対である、そして、そこは削除していただいた上で補正予算の審議を改めてさせていただきたい、このことを申し上げて、終わります。

竹下委員長 この際、緒方林太郎君から関連質疑の申し出があります。枝野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。緒方林太郎君。

緒方委員 民主党、緒方林太郎であります。本日、四十二分間、安倍総理大臣に質問をさせていただきたいと思います。

 まず、北朝鮮情勢について安倍総理大臣にお伺いをいたします。

 北朝鮮の核実験については、これは言語道断でありまして、これまでの安全保障理事会の各種決議、そして日朝平壌宣言にも違反をしている。そして、我々立法府としても、先般国会決議まで行ったということで、強い意思を示しているところであります。

 そして、本件、恐らく対応次第によっては拉致問題への影響も出てくる可能性があると思っております。我々の率直な思いとしては、いち早い拉致被害者の全ての帰国を実現するということであり、これはどの政権であっても変わらないということでありますが、北朝鮮の核実験、そしてそれに対する日本の対応、国連安全保障理事会、さらには日本国内での独自の制裁の話もあると思います。そして、それの拉致問題への影響等について、安倍総理、いかが思われますでしょうか。

安倍内閣総理大臣 北朝鮮による核実験は我が国の安全に対する重大な脅威であり、これだけの挑発行為を行ったからには今までどおりとは決していかないことを北朝鮮に対して明確に示していくことが必要であります。

 新たな安保理決議に実効的な措置を盛り込むこと、そして我が国独自の厳しい措置についても毅然かつ断固たる対応を行っていくこと、これが北朝鮮による核実験への、行動対行動の原則のもとでの我が国の答えであります。

 同時に、拉致問題を解決するための対話の窓口を我が国から閉ざすことはいたしません。家族会の方々も、北朝鮮に対して厳しい措置をとりつつ、対話の窓口はオープンにし続けることを望んでいるわけでございます。

 行動対行動、今までのようなわけにはいかないわけでありますから、しっかりとした措置、制裁を行っていくわけでございますが、同時に、対話と圧力の原則のもと、北朝鮮に対して厳しい圧力をかけながら、対話の窓口を我が国から閉ざすことなく、拉致問題の解決に向けて全力を尽くしていきたいと考えております。

緒方委員 それでは、安倍総理のこれまでの拉致問題に対する姿勢についてお伺いをいたしたいと思います。

 先般、十二月に、元家族会の事務局長をやっておられました蓮池透さんがこのような著書を出しておられます。「拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々」という題の本でございます。その第一章の表題は「拉致を使ってのし上がった男」、そういう題であります。五十三ページのところにこういう記述があります。「いままで拉致問題は、これでもかというほど政治的に利用されてきた。その典型例は、実は安倍首相によるものなのである。」蓮池透さんがこのように書かれております。

 この蓮池透さんの認識、安倍総理、共有されますでしょうか。

安倍内閣総理大臣 その本を私はまだ読んでおりませんが、一々コメントするつもりはございません。また、家族会の中からも、実は、その本に対して強い批判があるということも御紹介させていただきたいと思います。

 大切なことは、北朝鮮に対して一致結束して、今我々も一生懸命やっているんですから、全ての拉致被害者を奪還するために全力を尽くしていくことではないかと思います。

緒方委員 それでは、端的にお伺いいたします。

 安倍首相は拉致を使ってのし上がった男でしょうか、安倍総理大臣。

安倍内閣総理大臣 私は、そういう議論をする気すら、はっきり言って起こりません。そういう質問をすること自体が、この問題を政治利用しているとしか思えないわけであります。

 私は、まさにこの問題については、父親の秘書を務めているときから取り組んでまいりました。当時は、全くこれは誰からも顧みられなかったわけでありますし、私も随分批判を受けましたよ、この問題については。しかし、批判を受けましたが、まさにこの被害者を取り戻すことこそが政治の責任であるとの思いで今日まで仕事をしてきたつもりであります。

 もちろん、政治家の仕事、困難な仕事には常に批判が伴うわけでありますが、そうした批判は受けとめながら、しかし、しっかりと結果を出していくために努力を重ねていきたい、こう思っているところでございます。

緒方委員 それでは、もう少し具体論に入ってお伺いをいたしたいと思います。

 二〇〇二年、小泉総理の訪朝時、蓮池薫さんたち五人が戻ってきたときのことですが、当時、当初は、これは一時帰国であるとされまして、その後一旦北朝鮮に戻す約束になっていたと言われています。しかし、世間的には、当時の安倍官房副長官が強硬に反対をして北朝鮮に戻さなかったということになっているわけでありまして、安倍晋三総理大臣も、直接、自分自身のフェイスブックでのエントリーで、「拉致被害者五人を北朝鮮の要求通り返すのかどうか。彼」、これは外務省の田中均アジア大洋州局長だと思いますが、「彼は被害者の皆さんの「日本に残って子供たちを待つ」との考えを覆してでも北朝鮮の要求通り北朝鮮に送り返すべきだと強く主張しました。私は職を賭してでも「日本に残すべきだ」と判断し、小泉総理の了解をとり五人の被害者は日本に留まりました。」こう書いておられます。

 その一方で、この蓮池透さんの本には、七十二ページにこのような記述があります、安倍氏や中山内閣官房参与を含め日本政府は弟たちをとめることなどしない、戻す約束があるからだと。そして、少しページを移りまして、

  北朝鮮に戻ったら、二度と日本の地を踏むことはないだろう。また日本に残った場合は、その確率は非常に小さいかもしれないが、北朝鮮当局も人の子、子どもたちを日本で待つ親元へ送るわずかな可能性がある。その可能性に賭けよう。まさに、ギャンブルだが、苦悩の決断をしたのだ。

  この弟たちの「北朝鮮には戻らない、日本に留まる」という強い意志が覆らないと知って、渋々方針を転換、結果的に尽力するかたちとなったのが、安倍氏と中山氏であった。

  あえて強調したい。安倍、中山両氏は、弟たちを一度たりとも止めようとはしなかった。止めたのは私なのだ。

というふうに書いてございます。

 安倍総理の思いと蓮池透さんが言っておられること、全く反するわけでありますが、いずれが真実でしょうか、安倍総理大臣。

安倍内閣総理大臣 私は、この問題について、利用したことも、うそをついたこともございません。

 ここに平沢議員がおられますが、当時は、この五人の被害者を北朝鮮に戻すということがいわば流れだったんですよ、実際。流れだったわけでありますが、私は断固として反対をしました。当時、平沢さんも反対をいたしました。これをどうやって覆すか。これは大変だったんですよ。

 しかし、まさに、最終的に私の、官房副長官の部屋に集まって、私も中山恭子さんも集まりました、関係者が全て集まりました。今NSCの局長の谷内さんも集まった、今の齋木次官も集まった。そこで最終的に、私は、帰さないという判断をいたしました。

 透さんはそこにはかかわっていないわけでありますが、これは例えばほかの拉致被害者御本人に聞いていただければおわかりだと思います。(発言する者あり)

 私は誰がうそをついているとは言いたくありませんが、私が申し上げていることが真実でありますし、ほかの方々に聞いていただきたいと思いますよ。

 今、一人の本だけを使って、この本に対してすごく怒っている人だっているんですよ、実際に家族会の中に。あえて余り私もそういうことは申し上げたくありませんよ、中でどうなっているかということを。しかし、それはほとんどの人たちがおかしいと思っているんですよ、実はこの本に対して。

 でも、あえて私はそれは今は言いませんけれども、恐らくこれは、こういうことをされればそういう声が上がってくることになるんですよ。ですから、私はあえてそういうことはいたしませんでした。

 大切なことは、今はそんなことを言い合っているときじゃないんですよ、五人の被害者を、八人の死亡したと言われている人たち、そして全ての被害者を取り戻すことじゃないですか。

 あの五人の被害者を日本に残すというときもそうだった。国論を二分しようという策謀は常にあるんですよ。こんなものにひっかかっていてはだめなんですよ。そうではなくて、しっかりと私たちは団結をしなければいけない。あなたがこういう質問をすること自体が、私は本当に残念に思います。

緒方委員 それでは、確認まででありますが、蓮池透さんはうそを言っているということでよろしいですか、安倍総理大臣。

安倍内閣総理大臣 私は誰かをうそつきとは言いたくありません。

 しかし、私が申し上げていることが真実であるということは、バッジをかけて申し上げます。私の言っていることが違っていたら私はやめますよ、国会議員をやめますよ。それははっきりと申し上げておきたいと思います。

緒方委員 それでは、政治利用を一度もされたことがないということでありましたが、この本の八十五ページを読み上げさせていただきます。

 拉致問題を最も巧みに利用した国会議員は、やはり安倍晋三氏だと思っている。拉致問題を梃にして総理大臣にまで上り詰めたのだ。

ということの後に、新潟でのさきの総選挙のことが書いてございます。

 さきの二〇一四年の総選挙では新潟二区は大激戦でありまして、最終的には自由民主党の細田健一候補が百二票差で我が党の鷲尾英一郎候補に勝ったわけでありますが、その際の選挙活動についてこのような記述がございます。

 安倍首相だが、この期に及んで、まだ政治利用を止めようとしない。二〇一四年の衆議院選挙のとき、新潟二区で立候補した自民党公認の細田健一候補の劣勢が噂されるなか、地元の柏崎へ応援演説に訪れた。この演説会には弟が招かれたのだが、多忙だと断ると、何と両親が駆り出された。会場で、安倍首相と細田候補から、「拉致被害者、蓮池薫さんのご両親も来ておられます」と紹介を受けたのだ。

  「結局、安倍さんのダシにされただけだね」と、母は嘆いていた。

 これは政治利用ではないですか、安倍総理大臣。

安倍内閣総理大臣 まず、例えば、蓮池薫さんの話をあなたは全く聞いていないわけですし、両親の話をあなたは全く聞いていない。その本の引用だけじゃないですか。その本の引用だけで、あなたは独自の取材は全くせずに、ここで私の名誉を傷つけようとしている。極めて私は不愉快ですよ。こんなことをやっていること、何の意味があるんですか。

 では、二十年前、私たちが一生懸命拉致問題をやっていたときに、あなたは何をやっていたんですか。あのときはまだまだ厳しい状況だったんですよ、既に。その中で我々は歯を食いしばってやってきたんです。あの五人を帰すか帰さないか、これは大変な決断でしたよ。官邸の中でも反対論もあったんです、随分。

 しかし、あのとき、帰さないことによって、事実、お子さんたちは残念ながら日本に帰ってくることができなかった。随分、批判を受けましたよ。その批判を私は一身に受けとめました。しかし、批判があったとしても、今あの五人を帰してしまっては決してもう二度と日本の土を踏むことができない、こう考えていたわけであります。

 幸い、その後、小泉総理の訪朝があって、御家族の皆さんも帰ってくることができた。まさに本当に私はよかったと思っています。

 今ここであなたがそうやって批判することが、まさに北朝鮮の思うつぼなんですよ。そういう工作は今までもずっとあったんですね。そういう工作もずっとあったというのは事実であります。常にマスコミを二分し、国論を二分してこの問題で闘う力を落とそうとしてきたのが今までの歴史であります。

 私も、一九九四年以来、ずっとこの問題にかかわってきておりますから、よくわかっています。しかし、私はそういう策謀には決して負けずにここまでやってまいりました。大切なことは、何度も申し上げますように、八人の被害者を含めて、全ての拉致被害者の奪還のために一致協力して全力を尽くしていくことではないでしょうか。

緒方委員 そういう答弁があるからこそ、冒頭に、いち早い拉致被害者の全ての帰国をどこの政党であろうとも望むと最初に言っているんです。

 そして、安倍総理大臣、今いろいろ言われましたが、政治利用をしたのではないかということについては答弁がありませんでした。二〇一四年の総選挙、新潟二区において、政治利用して選挙に使ったんじゃないですか、安倍総理大臣。

安倍内閣総理大臣 もう私は、こんな質問をここで大切なこの時間を使ってお答えをするのは本当に残念でありますよ。そんなことはございませんよ。多くの国民にこの問題について知っていただきたい、街頭で訴えてきたわけであります。と同時に、まさにこの問題を一緒に闘う同志にこの政治の場で頑張ってもらいたいという中において、選挙でお話をすることは当然ありますよ。

 しかし、今までは違いましたよね。かつては違ったんですよ。ほかの政党は随分違いましたよ。北朝鮮はそんなことをやるわけがないという質問を私は随分受けましたよ。そういう時代だってあったんですよ。そういうことを忘れてはならない。私たちはそれと闘いながら今日まで来ているわけでございます。

 そして、一人の本だけ、どういう思惑があるかはわかりませんよ、その一人の方の本だけをもって誹謗中傷をするのは、それは少し無責任ではないかと思います。

緒方委員 はい、わかりました。

 それでは、質問を移したいと思います。日韓のいわゆる慰安婦に関する合意について質問をしたいというふうに思います。

 もともと私も外務官僚でありまして、当時は条約課で、日韓基本条約、そして日韓財産請求権協定担当でありましたので、本件に関しては強い思いがあります。一九六五年、日韓財産請求権協定には、両締約国及び国民の間の請求権に関する問題が完全かつ最終的に解決をされたということでありまして、これと今回の最終的かつ不可逆的の関係がどのような関係に立つかとか、そういったことについても非常に強い関心を持つものであります。いずれにせよ、最終的かつ不可逆的に本件が解決してほしいということについては、私も同様であります。

 その上で、本件について述べれば、安倍総理は、この記者発表、黄色の部分であります、この黄色の部分で、安倍総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦としてあまたの苦痛を経験され、心身にわたり癒やしがたい傷を負われた全ての方々に対して心からおわびと反省の気持ちを表明する、こういうふうに記者発表で書いてございます。

 しかしながら、いまだこの発言を安倍総理本人から聞いたことがございません。一度自分の言葉で言うべきだと思いますが、いかがですか、安倍総理大臣。

安倍内閣総理大臣 これは既に本会議において答弁させていただいたとおりでございまして、まさに最終的、不可逆的に解決をされたということは、外相同士の会談もございました。そして、私と朴槿恵大統領との間において、私の今御紹介をしていただいた考え方をお伝えしたわけでございまして、それをもって解決をしたということであります。さらに、お互いにしっかりとやるべきことをなしていこうということでございまして、それが全てでございまして、何回も、問われるたびに私が何か答弁をするということであれば、それは最終的に終了したことにはならないわけでございます。

緒方委員 言いたくないということですか、安倍総理大臣。

安倍内閣総理大臣 今申し上げましたように、もう既に私は朴槿恵大統領に申し上げているわけでありますから、それと同じことを、では、この後も、例えば二年後も三年後も求められればどこでも言うということになれば、これは最終的、不可逆的に終わったということにはならないわけでありまして、大切なことは、まさにしっかりとそこでピリオドを打つ、責任を持って実行し、ピリオドを打つということでございます。

緒方委員 私は何度も何度も言ってくれなんて一言も言っておりません。一度御自身の言葉で言うべきではないですか、対外的に。別に朴槿恵大統領に言うことは、恐らく言ったんでしょう、それは信じたいと思います。しかしながら、安倍総理が対外的にこの件を発言したことはないわけでありまして、本会議質問でも今のような答弁で、外務大臣の記者発表でこんなふうに言ったといって、責任を全部外務大臣に押しつけている。

 安倍総理大臣、何で一度自分自身の言葉で言おうとしないんですか。もう一度。

安倍内閣総理大臣 ですから、私自身の言葉で朴槿恵大統領にお伝えをしたんですよ、国の代表として、総理大臣として。それをしっかりとお伝えしたことをもってして、私は、最終的かつ不可逆的に解決されることを確認したものであります。

 緒方委員なり、また何人もの民主党議員がそこに立ってそれを言えということを繰り返すことは、決してそれは最終的、不可逆的に終わったことにはならないわけでありまして、一回と言っているのは、それは緒方さんだけでありまして、それは、緒方さんに答えたら、またほかの議員からも言われて、では、何で緒方さんに答えたのに私には答えないのかということになっていけば、これは終わりがないわけでございます。

 大切なことは、誠意を持ってお互いにお約束したことを実行していくことでありまして、そして、今回の合意については国際社会が高く評価をしているわけであります。それは、私の朴槿恵大統領に対する発言も含めて、国際社会がもう既に高く評価をしているということを申し上げておきたいと思います。

緒方委員 一度くらい自分の言葉で発言しないと、最終的に不可逆的に解決する意思があるのかどうかということが不透明になるんです、安倍総理大臣。

 そして、もう一つ申し上げたいのは、この文章は非常に微妙なバランスのもとにできています。後でいろいろ述べたいと思いますけれども、いろいろなバランスのもとでできている。この黄色の部分について安倍総理が発言しないことで、余計なけちがつくことを私は危惧しているんです。全体のいろいろなバランスの中で、発言をしないということが、それでけちがついて、では、ほかの措置をやらないということになることを懸念しているんです。

 安倍総理、一国の宰相であります。記者会見、記者発表で単に書いてありますということだけでなく、朴槿恵大統領に二人だけで言ったということだけでなく、一度御自身の言葉で言うべきじゃないですか。総理大臣の度量が問われますよ、安倍総理大臣。

安倍内閣総理大臣 申し上げたとおり、これは、日本側と韓国側、それぞれ考え方があります。外交交渉ですから、お互いに国益があります。国民の感情もあります。その中で、最終的に我々は合意に達し、そして同時に、大切なことは最終的かつ不可逆的に解決をしようということでありまして、そして、しようという中において、お互いにこういうことを示していこうということであります。

 そしてその中で、私は朴槿恵大統領に、誠意を持って今御紹介をいただいたような発言をしております。そして、私の発言は、世界に対してもう既に示されたわけでございます。大切なことは、では、そのことを今後もこういう場で何回も取り上げるということになれば、これは終わらないわけであります。

 ですから、大切なことは、緒方さん、これはもうお互いが、与党も野党もないじゃありませんか。こういうことをまたお互いに掘り返しながら、まるで問題があったかのようなことを言われることによって、それはまさに問題があるような空気になっていってしまうんですよ。これはまさに、この問題をもって最終的に終わらせていくという、どうか我々の決意とともに、外交においては私は与党も野党もないんだろう、このように思うわけでございます。

緒方委員 対外的に言う意思がないということは確認をさせていただきました。

 その上で、この記者発表の中身についてさらに入っていきたいと思います。

 この四角で囲んでいるところですが、ここが、いわゆる慰安婦のための財団に対して日本が拠出を行うということが書いてある、心の癒やしのための事業を行うということになっておりますが、これは下のところで、心の傷の癒やしのための事業を行うことを前提で、最終的かつ不可逆的に解決をする、日本もそれを確認している。そして、尹外交部長官の発言も、この(2)の財団の設立、そしてその出資による事業の実施によって最終的かつ不可逆的に解決されることを確認するというふうになっています。これが全体のストラクチャーであります。

 そうすると、この青の部分の慰安婦の像の移転のところというのは、必ずしも最終的かつ不可逆的に解決されるための条件になっていないんですね。ここだけが浮いている状態なんです、文章として。

 これは結局、(2)の事業を行ったことによって最終的かつ不可逆的に解決するというわけでありますが、この(2)のところが浮いていることによって、では、これはいつ行われるのか、拠出の前なのか後なのかということが、この文章のストラクチャーからすると出てくるわけですね。

 安倍総理大臣にお伺いをいたしたいと思います。

 日本政府は、慰安婦像の移転がない限り、この拠出はやらないということでよろしいでしょうか、安倍総理大臣。

岸田国務大臣 まず、今回の合意が今までの慰安婦問題についての取り組みと決定的に違うのは、日韓両政府が史上初めて、最終的、不可逆的な解決であることを確認し、それを世界に向けてそろって明確に表明した点だと思っています。

 その上で、今御指摘の点についてお答えさせていただきますと、日本側は、韓国政府が元慰安婦の方々の支援を目的として設立した財団に資金を拠出するとされています。一方、韓国側は、日本の政府が日本大使館前の少女像に対し、公館の安寧、威厳の維持の観点から懸念していることを認知し、韓国政府としても適切に解決されるよう努力する、このような内容になっています。

 要は、日韓それぞれがこの合意を着実に実施するという内容になっています。これが合意の全てであります。

緒方委員 いや、それは全然答弁になっていないわけでありまして、時間的な前後がどうなるのかということを聞いているんです。

 これはまさに与野党問わず皆が知りたいところでありまして、この図でいうと、最終的かつ不可逆的な解決というのは、これは、(2)の事業をやってしまえばそれで最終的かつ不可逆的な解決を確認することになり、私はそういうことを望みませんけれども、結果として、韓国側の慰安婦像の撤去については、その最終的かつ不可逆的に解決されたと確認した後に残って、引き続き、いつまでたっても、いや、努力しています、努力しています、努力していますという状態が続くことを懸念するから、だから聞いているんです。

 時間的な前後関係についてしっかりと答弁いただきたいと思います、安倍総理大臣。

岸田国務大臣 今回の合意は、先ほど紹介させていただきましたこの合意について、日本と韓国、それぞれの政府が合意に従ってしっかり履行する、実施するということであります。合意の中身はそれ以上でもそれ以下でもありません。それぞれがそれぞれのこの合意に明記されている事柄を実施する、これが今回の合意の全てであります。

緒方委員 では、もう一度聞きます。

 最終的かつ不可逆的に解決された後に、この慰安婦像の撤去の努力が引き続き続くという可能性はあり得るということでよろしいですね。

岸田国務大臣 今回、最終的、不可逆的な解決であるということを、日本政府、韓国政府、そろって世界に向けて明確に表明をしました。

 今回、それぞれこの合意の中身を誠実に履行するというのが合意の全てであります。未来に向けてしっかり日韓関係を成長させていくために、この履行を実施することが重要であり、前後関係云々とおっしゃいましたが、この内容それぞれにつきまして、それぞれが履行する、これが合意の中身の全てであります。

緒方委員 いや、ここは非常に国民の関心も高いところでありまして、もう一度だけお伺いします。

 時間的に、この青の部分が、最終的かつ不可逆的に解決されたことを確認するというその時点よりも後に来るということは決して排除されていないですねということです、岸田外務大臣。

岸田国務大臣 前後関係について御質問がありましたが、先ほど申し上げたように、この合意の中身は、ここに書いてあります、それぞれ、日本政府、韓国政府が行うべきもの、これを履行する、こういった合意の中身であります。これが全てであり、これ以上でもこれ以下でもありません。

 これが今回の合意の全てであり、これを誠実に履行することが何よりも重要だと考えています。

緒方委員 時間的な前後について答弁がなかったということで、非常に不安を残す答弁だったと思います。

 しかし、この件について、安倍総理大臣の思いとしていかがでございましょうか。

安倍内閣総理大臣 この問題は、長い間解決をしなかった問題であります。なぜ解決をしなかったかといえば、これは、日本側の言い分もたくさんあります。韓国側のまた感情もあるわけでございます。

 その中で、我々は、最終的にこの結果しかないという判断で、最終的かつ不可逆的な解決、この一言を我々は大切にし、この問題の解決を図ったところでございます。

 そして、まさに、何度も大臣が答弁をさせていただいたように、今お示しをしたものが全てであり、これ以上でもこれ以下でもないわけでありますが、いずれにいたしましても、我々は、しっかりとお互いに誠実に実行していくことによって、完全かつ最終的に、不可逆的に解決されていくこととなる、こう確信をいたしております。

緒方委員 それでは、答弁がなかったので、また次の質問に移っていきたいと思います。

 この慰安婦像の移転につきましては、これまで外務省から我々がいただいていた資料というのは、我が方は適切に移転されると認識している、そういう説明を我々は受けてきています。紙でももらっております。

 しかしながら、先般の予算委員会での平沢議員の質問に対する安倍総理の答弁というのは、適切に対応、適切に対処していくということでございました。そして、十日のNHKのテレビ番組でも、適切に対応すると確信しているという表現でありました。

 適切に移転されると認識しているというのと、適切に対応すると確信している、この間には相当な差がありますね。対処の中には、移転するという対処も含まれるけれども、移転しないという対処も含まれるはずです。

 安倍総理、恐らく、七日の朴槿恵大統領との日韓首脳電話会談以降にどうも立場が変わったのではないかというふうに思えるわけでありますが、いかがでございますでしょうか、安倍総理大臣。

安倍内閣総理大臣 これは、外務大臣も私も従来から答弁をしておりますように、今回の合意により、慰安婦問題は最終的かつ不可逆的に解決されることとなっており、この合意を踏まえ、韓国政府において適切に対処されるものと認識しております。

緒方委員 私が今手にしております外務省の日韓外相会談、きょうはパネルにはしておりませんが、この外務省からの説明では、我が方は適切に移転されると認識しているというふうに外務省は言っているんです。

 もう一度言いますが、対処の中には移転という言葉が含まれるでしょう。移転するという対処があると思います。しかし、対処、対応という言葉の中には、それ以外の、移転せずに何らか別の対応をする、対処をするということも言葉の中に含まれるんですね。

 少なくとも、外務省からの説明で適切に移転されると認識しているというところから、今の安倍総理大臣の答弁はかなり下がっています。

 移転されない形での対処というのはあり得るというふうに思いますか、安倍総理大臣。

安倍内閣総理大臣 これは既に外務大臣も認識を示しています。外務大臣が認識を示したように、当然、適切に対処するということは、これは移転されるということであると我々は考えております。(発言する者あり)移転されるということだと考えております。

緒方委員 もう一度確認であります。

 適切に対処されるというのは、安倍総理の今の答弁でいうと、これはとりもなおさず移転ということを意味しているというふうに答弁したと今聞こえましたけれども、それでよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 それは最初に答弁をしておりますように、移転されるというふうに理解をしているわけでございますが、私は、そこで、今まさにせっかく合意をしたわけでありますから、お互いにお互いの感情を逆なですることがないように、結果が出てくるように、我々も言葉遣いに注意をしているところでございます。

緒方委員 それであれば、もともと、適切に対処とかいうことではなく、適切に移転されると認識と答弁されるべきだと思いますが、少なくとも確認はさせていただきました。

 そして、この文書についてさらに質問を進めていきたいと思います。

 ここにおける、韓国政府はという言葉がありますが、これは朴槿恵政権を意味するものでしょうか、それとも、朴槿恵政権以降の、その後の政権についても一定の拘束力を持つというふうに理解をしておられますでしょうか、安倍総理大臣。

岸田国務大臣 これは当然、韓国政府という言葉を使っておられますので、韓国政府は、この合意以降、この合意に基づいてしっかり対応されるものだと考えております。

緒方委員 もう一度確認であります。

 政権がかわってもこの文書は拘束力を持つということで日本として認識しているということでよろしいですね、岸田外務大臣。

岸田国務大臣 韓国政府という言葉を使っております。この合意が成立した以降、この合意に基づいて韓国政府は対応されるものと考えています。

緒方委員 それでは、あと一問、二問だと思いますが、この外相共同記者発表では、今後、国連等国際社会において本問題について互いに非難、批判することは差し控えるということになっておりますが、これとの関係で非常に重要なのがユネスコの世界記憶遺産、世界の遺産と言われるものです。

 ちょっと不安なのが、世界記憶遺産に申請、登録をする、これ自体は、もしかしたら韓国側は、ここに言うところの批判、非難ではなくて、単に記憶にとめるだけだ、だから非難、批判に当たらないというふうに主張してくるのではないかというふうに思いますが、ユネスコの世界記憶遺産に対する申請、登録行為は、これはここに言うところの批判、非難に当たると思われますでしょうか。これは外務大臣。

岸田国務大臣 ユネスコの世界記憶遺産の登録申請についてですが、これにつきましても、慰安婦問題は最終的、不可逆的に解決されたものと確認するとされているこの合意を踏まえて、韓国政府において適切に対処されるものだと認識をしております。

緒方委員 しかしながら、ユネスコの記憶遺産というのは別に批判するわけでも非難するわけでも何でもないというふうな理屈が可能なんですよね。そういうふうに言ってこないとも限らない。それが不安だから、そこに懸念を持つから、だから、ユネスコの世界記憶遺産に対する申請、登録行為はここにおける非難、批判に当たるんですか、当たらないんですか、内容次第によっては当たらない可能性があるんですかということを聞いているんです。岸田外務大臣、答弁いただければと思います。

岸田国務大臣 今回の合意については、先ほど来説明させていただいているとおりであります。

 そして、ユネスコの世界記憶遺産への登録申請への対応についても、韓国政府は、今回の合意に従って、合意を履行する中にあって、適切に対応されるものと我々は認識をしておるということを説明させていただいております。

緒方委員 それでは、内容次第では、ここにおける非難、批判に当たらないというふうになる可能性があるというふうに、岸田外務大臣、思われますか。

岸田国務大臣 仮定の問題にこういった場でお答えするのは適切ではありません。韓国政府はこの合意に基づいて適切に対応されるものと我々は認識をしております。

緒方委員 それでは、この文書の主語というのは韓国政府であります。しかしながら、この世界記憶遺産、世界の記憶というものは、これは政府だけではないですね。政府だけが登録申請をできるものではございません。民間団体であっても、その申請登録をすることができます。

 私の地元で、日本で一番最初に世界記憶遺産になったものは炭坑記録、これを民間の大学が申請したものでありまして、そういったことに鑑みると、ここでは韓国政府は適切に対応するということでありますが、この合意書は実はそこが抜けていて、民間団体がこのユネスコの世界記憶遺産、世界の記憶に申請することについてまで縛れないと思うんですけれども、そこは穴があいているというふうに思うんです。

 そうすると、この件、世界記憶遺産にやはり申請され、登録され、この件が国際社会でクローズアップされていくんじゃないかという懸念を持つわけでありますが、岸田外務大臣、いかがですか。

岸田国務大臣 日本も韓国も、自由で民主的な国家です。個人が意見を表明すること、これは言論の自由のもとで当然許されるものでありますが、今回、この慰安婦問題において、日本政府と韓国政府が最終的、不可逆的に解決されたものと確認するということを世界に向けて表明したことの重みは、大変重たいものがあります。

 韓国政府は、当然のことながら、この合意に基づいて、この内容を履行するべく努力されると認識をしておりますし、世界じゅうがこの表明する場面を見た、この合意を関係者の皆様方もしっかり受けとめられるものであると考えています。

緒方委員 それでは、質問を終えさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

竹下委員長 この際、福島伸享君から関連質疑の申し出があります。枝野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。福島伸享君。

福島委員 民主・維新・無所属クラブの福島伸享でございます。

 本日は、TPPと安倍農政について御質問をさせていただきます。

 このポスターは、もうおなじみのポスターだと思います。うそをつかない、ぶれない、TPP断固反対、日本を耕す、自民党。二〇一二年の、安倍総理が政権をとったときの選挙でのポスターであります。

 こうした公約に対しまして、先日、一月四日、日本農業新聞のJA組合長のアンケート、ごらんいただけたらと思います。「TPP交渉の大筋合意で政府は、重要品目の再生産を確保する国会決議を守ったと説明しています。どう思いますか。」九一・六%の方が、守られていないと。守られたと言っている人は一・七%だけ。「TPP交渉の大筋合意で管内の農業に影響が出ると思いますか。」厳しい影響が想定される、それなりに影響はある、合わせますと、これも九七%ぐらい。「安倍内閣の農業政策をどう思いますか。」どちらかといえば評価する、あるいは高く評価する、合わせて七%。評価しないが九一%。ほぼ九割以上が反対しているということは、ほぼ全員が、公約違反、そして安倍農政を評価しないと言っております。

 JAの大会にも昨年十月、安倍総理は出られましたけれども、総理、もう一度、胸を張って今回のTPP交渉の結果は公約を守ったと言い切れますか。端的にお答えください。

安倍内閣総理大臣 公約を守ったと思っております。

 聖域なき関税撤廃を前提とする以上、TPP交渉には参加をしないということでございましたが、しかし、結果はそうではなかったわけでございます。関税におきましても、平均と我々がかち得た関税、いわば守った関税は相当違うわけでありまして、交渉の結果、関税撤廃は八〇%台にとどまることになったわけであります。全体平均は九〇%の中盤以上でございますから、我々は、交渉の結果、五品目を含め、聖域なき関税撤廃という前提条件ではない交渉をし得た、このように考えております。

福島委員 こういうのは余りだらだらと言わない方がいいと思うんですね。「巧言令色鮮し仁」という論語の言葉がありますけれども、余り長く言ったら信じられない。

 私は、公約を守ったと思っているんですよ。それは、公約にからくりがあると思っているんです。自民党の公約は、聖域なき関税撤廃を前提とする限り、TPP交渉参加に反対。これは役所がつくったものですね。自民党公約って大体、霞が関の人がつくることが多いじゃないですか。私もつくったことがありますよ、昔。それで、これはこう読むんですよ。聖域なき関税撤廃を前提としないならTPP交渉に参加しますと読むのが、私は霞が関文学の世界だと思います。

 ただ、多くの地元で農業をやっている皆さん方は、このポスターを見たときに、この最後のTPP交渉参加に反対、そこを見ると思いますよ。ああ、自民党は一生懸命反対してくれるんだ、そう言って票を入れてくれたわけですよ。

 安倍総理は、二〇一三年の二月に、日米首脳会談、その後の共同声明で、最終的な結果は交渉の中で決まっていくものであることから、TPP交渉参加に際し、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではないことを確認するということを言っています。

 当たり前じゃないですか。交渉に参加する前から関税がないんだったら、交渉する意味はないじゃないですか。当たり前のことを公約に言っているにすぎないんですよ。聖域なき関税撤廃が前提なんといったら、交渉する必要はないんですよ。そもそも、この公約というのは、空集合、存在しないものなんですよ。

 二〇一三年三月、交渉参加の際の記者会見で、先般オバマ大統領と直接会談し、TPPは聖域なき関税撤廃を前提としないことを確認いたしましたと。初めからそうなものをそうと確認しただけにすぎないんですよ。私は、これは著しく、まさにだまし、こそくなものと言わざるを得ません。

 公約の文言を論理上破ったか破らなかったかが国民にとって大事なのではありません。実質は、正直に日本の農業を守り、そしてその後、国会決議もやっておりますけれども、重要五品目と言われるものを守ったかどうかが大事だと思うんですよ。論理上この聖域なき関税撤廃を前提とする限りTPP交渉参加に反対するに違反していないから公約が守られているというのは、余りにもこそくだと思いませんか。どうですか。

安倍内閣総理大臣 それは違いますね。

 当時、まさに、TPPは全て関税を撤廃する、こう言われていました。だからこそ、当時私たちは野党でした、当時私たちは野党だったんですが、かんかんがくがくの議論をいたしましたよ。その結果、最終的に我が党の中において、聖域なき関税撤廃を前提条件とする以上参加しない、参加に反対する、こういうことになったわけでございます。

 そして、事実、農産物については平均、関税は九八・五%ですよ。まさに九八・五%といえば、ほとんどこれは聖域なき関税撤廃という状況だったんですが、我々は八一%です。二割は関税撤廃の例外にしたんですよ。まさにこれは約束どおりかち取った、こういうことではないか、こう思っております。(発言する者あり)

福島委員 本当にそうなんですけれども。私もそのとき与党でTPPに反対していましたよ。そもそも、全ての関税をゼロにするなんて言っていませんよ。全ての品目をテーブルに上げて議論しましょうということを言っているのであって、初めから全ての関税をゼロにするなんというのは言っていないです。正確に言ってくださいよ。

 さらに、TPPでは国会決議というものがございます。衆議院の農林水産委員会の決議で、「米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などの農林水産物の重要品目について、引き続き再生産可能となるよう除外又は再協議の対象とすること。」「農林水産分野の重要五品目などの聖域の確保を最優先し、それが確保できないと判断した場合は、脱退も辞さないものとする」もの。

 素直に読めば、米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源などの五品目は、これは関税を残すことじゃないですよ、引き続き除外または再協議。除外というのは、そもそも交渉のテーブルに応じないことですよ。再協議というのは、結論を出さないでもう一度協議し直しましょうということですよ。国会決議はこれを言っているわけです。

 だからこそ、森山農水大臣は、二〇一三年、政権をとった後ですよ、JAグループ鹿児島に対し、これは日本農業新聞に書いてありますけれども、安倍総理の前のめりの感は否めない、最終的には国会批准のところでどう闘うかだが、重要品目は除外か再協議しか認めないというスタンスでしっかり闘うということになっています。

 今回の結果は、除外または再協議に重要五品目はなっていますか。どうですか。

甘利国務大臣 まず、前段のお話ですけれども、日本が入る前にホノルル合意というのがあったのを御承知だと思います。ホノルル合意では、我々が入る前です、全て関税はゼロを目指すということが合意されています。ですから、我々が入るときには、それが本当に聖域なき関税撤廃を意味するんだったら入れないわけであります。だから、アメリカとやるときにそこをせめぎ合って、結局、全てはテーブルにのせるけれども結果は交渉次第だということをかち取ったわけです。そこで強い交渉を行ったわけであります。

 後段のお話について、国際通商協議上で、これが明確な定義であるということは規定されていないんです。我々はとにかく五品目について精いっぱい、コアの部分を中心に関税をいろいろな方法で守る、あるいはステージングをする、それから関税削減を始める年限をずらす、いろいろな手だてを講じました。

 決議には応えたという自信はあります。ただ、最終的に、これが応えたか応えていないかということは国会の判断されるところですから、それは委ねますと申し上げているわけです。

福島委員 最終的には国会に委ねるということであります。

 まさに森山大臣も同じことをおっしゃっている、最終的には国会批准のところでどう闘うかだと。まさに除外または再協議になっていないわけですから、森山大臣、今もこのお考えが変わっていないとすれば、こちらにいる与党の皆さんは批准のときにしっかり闘って批准に反対すべきだと思われますよね。当然そう思われますよね。どうですか。

森山国務大臣 再生産が可能になるかどうかということも論点の一つだと思っております。ゆえに、全てのことを判断して、批准は改めて皆さんにお諮りをさせていただくわけですから、そこはそこでの議論があるんだろうと思います。

福島委員 つまり、批准に際しては、まだ与党の議員の皆さん方も含めて立場は決まっていない、除外または再協議の対象とすると明確に決議は言っているわけですから、それについては与党の議員各位がしっかり判断してやるという意味では、TPPを日本が批准するかどうかというのはまだ全くわからないということでいいわけですよね。

森山国務大臣 今回の大筋合意につきましては、与党は党内手続を経て結論を出していただいておりますので、そのことに沿って御判断をいただけるものだと思っております。

福島委員 そういうことを言うから、私の地元で、あんなに野党のときは一生懸命TPP反対と言っていたのにどうしちゃったんだろうと。若い人たちも自民党の部会なんかに傍聴に行っていますけれども、どうしちゃったんだろうとみんな言っていますよ。本当に残念なことだと思いますね。

 そもそも、重要五品目を一生懸命守ったのかどうか。お出しした資料は、二〇一四年、つまり二年前の五月三日の記事です。「日米TPP 豚肉関税 大幅下げ「五十円」 差額制維持 牛肉は「九%」」まさに今回の大筋合意の内容そのものであります。

 アトランタの会合では、当初二日間の予定だったのをさらに二日延長して、甘利大臣、御苦労されたと思いますけれども、最終日の朝までかかって交渉を行った。その間、例えばニュージーランドであれば、カナダやアメリカに対してもっと乳製品を買えとかんかんがくがくの交渉をし、言われた方は守ったんですよ。でも、日本は、最終の土壇場まで、重要五品目を守るためにそれだけの努力をしていたのか。

 これは、二年前の、オバマさんが来日したときにリーク記事で出た、その内容のままじゃないですか。大体、リーク記事というのは、もう決まっていることを誰か政府の人がリークして出すものですよ。もうこれは決まっちゃっていたんじゃないですか。

 本当に最後の最後まで、豚肉の関税、牛肉の関税、五品目を維持するために努力をされたんですか。どうなんですか。

甘利国務大臣 この種の交渉は複合的なものになっています。例えば、ステージングをどうするかとか、いつから、どのくらいから始めるかとか、あるいはセーフガード措置はどのくらいのものにしてどういうものにするか、全部合わせてセットできるものであります。

 ジグソーパズルじゃないですけれども、最後のワンピースが入って全体が了解されるわけでありますから、全てについて了解したのは本当に最終日。私は、フロマン代表と最後まで話し合いました。全ての要素がそろった、こういうことで日米間も含めていいですねということで、いいですよというのは、それは最終日です。間違いありません。

福島委員 いや、もう二年前にこれが出ているということは、カードとして用意していたということですよ。私は、そういう姿勢が多くの農家や農村の人にとって不誠実で、不安に思われているのだと思います。

 午後に、この残余の質問をさせていただきます。

 以上です。

竹下委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

竹下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。福島伸享君。

福島委員 午前中に続き、質疑を続けさせていただきます。

 午前中は、公約違反じゃないか、そして国会決議違反じゃないかということを議論してまいりましたが、いろいろな御答弁はありましたけれども、聞いている方にとって胸にすかっと落ちるような話はなかったと思うんですね。何か言いわけがましいな、いろいろ論理はこねくり回しているけれども、すっと胸に落ちないなということが多かったと思います。

 私は、それをさらに増幅させているのが、昨年の年末に出ましたTPP協定の経済効果の試算ではないかなというふうに思っております。

 政府は、二〇一三年にもTPPの試算というのを出しております。確かにこれは、関税、農産物全てを撤廃したという前提でつくられてはいるんですが、このフリップをごらんになっていただいたらわかりますように、農林水産物の生産額は、当初三・〇兆円減少としていたのに、何と、このゴマ粒みたいな、千三百から二千百億円の減少へと減ってしまっている。

 確かに関税が残っているものはありますけれども、オレンジとかジュースとか、そういうのも含めて全部関税撤廃になっているんですよ。豚肉だって、差額関税は維持したといっても、高価格帯の関税は撤廃になっているんですね。いかにもこれは、何でこんなに変わっちゃったんだろうと思うと思います。

 日本経済全体で見ても、二〇一三年は実質GDPがプラス〇・六六%というものだったのが、二〇一五年を見ると、何と五倍近く膨らんじゃって、実質GDPがプラス二・六%。これは余りにも盛り過ぎだと思うんです。二〇一三年の試算が出たときに、経済学者からこの試算はおかしいなんというのは余りなかったし、伊藤元重先生とか竹中平蔵先生とか、これまでTPPを推進していた学者も、この試算のデータを前提にして議論していたように思います。

 まず、農林水産分野なんですけれども、これは何でこんなに減っちゃったんですかね。森山農水大臣、どうしちゃったんですか。どういう手品で減ったか、ぜひ御説明ください。

森山国務大臣 手品ではありませんで、前提が大きく変わっているということに尽きると思います。

福島委員 どういう前提でしょうか。

森山国務大臣 前回の二十五年三月の政府統一試算につきましては、全ての関税が即時撤廃され、追加的な国内対策も行われないとの仮定のもとで、輸入品と競合する国産品は原則輸入品に置きかわるとの極めて単純化した前提を置き、その結果、農林水産物の生産額が三兆円程度低下すると試算をしたところであります。

 今回のTPP交渉の結果、重要五品目を中心に多くの主要品目について関税撤廃の例外を獲得し、国家貿易制度の維持、長期の関税削減期間、セーフガード等を措置したところであり、これらに加え、関税削減の影響が生じるまでには一定の期間があると考えられる中で、政策大綱に基づき、体質強化対策や経営安定のための備え等、国内対策を集中的に講ずることとしております。その結果、今回の減少額になったということであります。

福島委員 前提が変わったということなんですけれども、個別に見るとわかりやすいと思いますので、鳥の卵を例に出したいと思います。

 二〇一三年の三月の試算では、生産が一千百億円減少すると言っております。今回、農林水産業の生産額は一千三百億円ぐらい減ると言っているから、これ一つでもう一千百億だから、それに等しいぐらい減ると二〇一三年に試算していました。前提は、さっき関税撤廃にならなかったものもあると言いますけれども、鶏卵、これは殻つきの卵、全卵・全黄、あるいは卵白とありますけれども、期間はあるにしても、関税は撤廃になるんですよ、関税はなくなる。にもかかわらず、生産額の減少は、約二十六億円から五十三億円しか変わらない。

 試算を見ると、当初の二〇一三年では、業務用、加工用のうち弁当等用と加工用の二分の一が置きかわる。特に、卵焼きなんというのをつくるときには液体の卵を使ってやるので、原料として液体で輸入するというのは、これから当然、関税がなくなれば想定されるわけですね。

 ところが、昨年末の試算だと、TPP参加国からの輸入実績が少量であることや、TPP参加国からの輸入の大宗を加工卵が占め、用途が限定されていることに加え、体質強化対策を適切に実施することにより、引き続き生産や農家所得が確保され、何と、国内生産量が維持される、一トンたりとも輸入されないと言っているんですよ。おかしいんじゃないですか。何で、関税がなくなるにもかかわらず輸入されないんですか。

 しかも、TPP参加国からの輸入実績が少量である、それはまさに関税がきいているからこそ少量なのであって、関税がなくなれば当然ふえるのが、普通の人が考えたら当たり前の話だと思うんですよ。弁当用なんというのがなくなっちゃうんですか。この二年間の間に弁当用がなくなっちゃったから前提が変わったんですか。おかしいと思いませんか、大臣。

森山国務大臣 前回の試算については委員が言われたとおりでありますので、今回どういう計算をしたかということでありますが、TPP交渉の結果、鶏卵につきましては、国内鶏卵と強く競合する鶏卵や、輸入実績が多く用途も幅広い粉にした卵につきましては十三年までという、長期にわたる関税撤廃期間の確保ができたところでございます。

 このことが前提でございまして、このような中で、採卵鶏の生育期間というのは百五十日程度でございまして、極めて短期間であることから、交渉により獲得した長期にわたる関税撤廃期間において、特色のある飼料を活用した高付加価値の鶏卵、例えば飼料米を使った卵等は評価をいただいているところでありますが、そういうものが生産拡大をしていけるというふうに思っております。また、飼養環境の改善によって生産性が向上し飼料コストが減少するなどの生産の効率化等の、生産面での体質強化を図ることが十分に可能な状況になったと見込んでおるところでございます。

 今回の試算では、このような前回からの状況の変化を踏まえまして、前回、輸入品と強く競合して置きかわるとしておりました業務、加工用、一七・五%でございますが、このうち、揚げ物やハンバーグのつなぎ等に使用される鶏卵は置きかわらないというふうに思っておりまして、ただ、価格が関税削減相当分だけ低下するというふうに見ております。

 また、卵がメーンとなるオムレツや卵焼きの中でも、低級のものというとあれですけれども、例えばコンビニ弁当等に利用される鶏卵は置きかわらずに、価格が関税削減相当分の半分ぐらいは低下をするんじゃないかというふうに見込んでおります。

 また……(福島委員「もう大丈夫です」と呼ぶ)ちょっと聞いてください。前回、輸入品と競合して価格が低下するとした業務用、加工用のうち、例えば高級仕出し弁当等に使われるものにつきましては輸入品との置きかわりが生じないというふうに思っておりまして、国産の鶏卵価格が低下するということはないという前提で計算をいたしますと、二十六から五十三億円減少するという結果になっております。

福島委員 これを聞いて納得する人はいないと思うんですよ。私、新年会で、卵をつくっている若い農家の人とか、私の仲間でも養鶏をやっている農家の皆さん方がいますし、森山大臣自身も農家の現場に非常にお詳しい方だと思いますけれども、役場から、コンビニの卵がどうだ、高級仕出しの卵がどうだと答弁書を渡されて読むのは、おつらかったと思いますよ、私は。まさに減らすためだけに、四の五の四の五の、微に入り細に入り前提を変えて、数字を合わせているだけなんですよ。

 何で私はこのことを申し上げるかというと、今回の補正予算で、TPP関連予算は三千百二十二億円もの多額が計上されております。これは補正ですから、今後の当初予算等においても、これからさらに多くの額を講じることになるんでしょう。そうであるとするならば、関税を撤廃して何の対策もやらなかった段階でどれぐらい被害があるかとわからなければ、その予算が適当かわかりませんよ。

 今、四の五の、鶏卵でいろいろな、餌を変えてどうたらと話を言いましたけれども、そのために幾らかかるなんというのは恐らくまだ積算されていないですよね。しかも、卵というのは一番工業化されていて、効率的で、これ以上効率化できないぐらいまでやっているからこそ物価の優等生と言われてきたのが卵の業界ですよ。その業界の生産量の減少を、二〇一三年には一千百億円と言っていたわけですよ。今回、TPP関連対策を講じるのは三千百億円。

 私は、まず、今回補正予算でTPP対策を出す前に、わけのわからない前提を変えて盛った予算ではなくて、正直に、今の関税ベースで被害がどれだけになるのかというのを出すべきだと思うんですけれども。総理、正直に出すべきじゃないですか。予算を審議する前に、正直に、関税の今回のTPP交渉の結果、何にも対策を講じなければ幾ら減少するかというのをなぜ出せないんですか。お出しになればどうですか。

森山国務大臣 私の方からお答えをさせていただきます。

 二十五年の三月の試算は、先ほど申し上げたような条件で試算を行ったわけでありますけれども、今回のTPP交渉の結果を見れば、国家貿易あるいは関税割り当て等国境措置が維持されますし、また長期の関税削減期間やセーフガードが設定をされておりますので、このため、輸入品と競合する国産品がどの程度置きかわるかという点については、前回のような単純化した前提を置いて試算を行うことは困難であることから、国内対策を考慮しない試算を機械的に行うということは難しいのではないかというふうに考えております。

 また、政府として、TPP政策大綱及び関連予算を決定するなど既に国内対策の具体化を進めている中で、国内対策を考慮しない試算を行うということは、現実とかけ離れた仮定に基づいた試算結果がひとり歩きすることにもなりかねないことから、適当ではないというふうに考えております。

福島委員 結局、今最後に言ったことが本音だと思うんですよ。正直に対策を打たないときの数字を出したら、その数字がひとり歩きになって不安がふえちゃうから、だから出さないんですと。

 私は、政治の役割はそうじゃないと思いますよ。まず正直に、何もやらなかったときにこれだけ被害を受けるような交渉結果になったから、だからこういう対策をやるというのが政治としての正直な姿勢じゃないですか。

 私は、TPP協定が何の効果もないとは言いませんよ。プラスがあるところもある、マイナスがあるところもある。マイナスを受ける人たちは大いなる不安を持つわけですよ。その人たちに対して、一千三百億円しか減少しませんと言ったところで、最初のアンケートにもあったように、誰もそれは信じていないんですよ。きょうの説明でも誰も信じないと思いますよ。

 ぜひ出してください。もう一回答弁ください。

森山国務大臣 先生、TPP政策大綱も決めましたし、関連予算も決めておりますから、対策をしていくわけでございますので、対策を前提としない試算をするということは、やはり先ほど申し上げましたようなこともございますので、考慮していないということでございます。

福島委員 いや、被害がないと対策だって議論できませんよ。

 しかも、ちょっと先に進みますけれども、対策の予算だって、では本当にその対策になるかというのは議論しなければならないと思っています。

 例えば、今回の補正予算で出ているものに幾つか対策がありますけれども、担い手確保・経営強化支援事業、五十三億円と出ています。これは、借金をして農家が機械を買った場合に、その借金の半分を補助するというものですけれども、言ってみれば、補助金をやるから借金して機械を買えと言っているようなものなんですね。

 産地パワーアップ事業、五百五億円。これも、機械を買ったり施設整備をやったら二分の一補助すると。でも、残りの二分の一は、農家は手持ちに現金なんて、今、米の値段も安いし、ないじゃないですか。結局これも借金するしかないんですよ。

 畜産クラスターも同じです。畜産クラスターだって、本来の趣旨は、地域でクラスター計画というのをつくって、みんなで支え合って飼料とかをやりとりしましょうというんですけれども、実際は、もう森山大臣も地元でお聞きになっていると思いますけれども、機械を買う補助金欲しさに名目だけのクラスターを形成して、農機具会社が申請書を出してそれをやっているのが現実ですよ。

 結局、農家に借金を背負わせて新しい機械を買わせるだけの、従来型の対策ばかりじゃないですか。今まで効果がなかったものを出して、なぜ効果があると言えるんですか。答えてください。

森山国務大臣 福島委員、私も、現場もよく行かせていただいて、農家の皆さんともいろいろ協議をさせていただいておりますが、今、福島委員が言われたような農家の経営感覚ではないなというふうに思っております。

 機械を導入することによってどれぐらいコストが下がるのか、生産量を上げることができるのか、そうすると二分の一の補助であとの返済はどうなるのか、そういうことをしっかり考えて御申請をいただいていると思いますし、そういう農家がふえつつあるということは大変喜ばしいことだと思っておりますので、今後も政策をしっかり、確かに見直しをしなきゃいけないところもあるとは思いますけれども、政策の方向性としては間違っていないと思っています。

福島委員 これは聞いている人が判断すると思いますけれども、結局、ウルグアイ・ラウンド対策のときにやったのと何も変わっていないじゃないですか。二分の一補助を出して、それで何かを買わせて、借金をつけさせて。私は何も変わらないと思いますよ。

 ちょっと話をかえますけれども、TPPの経済効果の方も、実質GDP、〇・六六%がいきなり二・六%になっている。これは、相手の関税撤廃によって輸出がふえたりとかするものに加えて、さらにそこでさまざまな成長メカニズムというのが働いて成長するというモデルだと思います。

 先日、世界銀行も同じようなレポートを出しました。私も、この世界銀行のレポート、苦手な英語でありますけれども、一生懸命読ませていただきました。ただ、後で、TPPをやって、それでさまざまな規制改革が行われて、規制改革や制度の変更に伴ってどう具体的に成長していくのかというのは、これもまさに仮定の置き方によって幾らでも変わってくるんです。

 世界銀行のレポートにもそういうことが書いてあります。米韓FTA並みの前提でやったらどうなるかというので試算したと書いてありますけれども、例えば、通関手続が簡素化されたとしても、書類を書く手間なんというのは全然変わらないんですよ。本当にその効果がどれぐらいあるのかというのは、やってみなければわかりません。

 だから効果はないとは申し上げませんよ。ただ、こうやって何でもかんでも盛り込んで、今まで被害が大きいというものを小さくして、今まで効果が余りないと思われたものを大きくする。別にいいんですよ。数字上はちっちゃいけれども日本企業が努力すれば大きな成果が得られるんだからそれでいいじゃないですか、そうやって皆さんが説明すればいいのに、わざわざ、へんてこなモデルとは言わないけれども、いろいろな前提を変えて膨らみまくっているというのは、私はこれは本当に不誠実だと思いますよ。

 私は総理に聞きたいんですよ。アベノミクスの一丁目一番地はTPPなんですよね。先ほど冒頭のアンケートでお見せしましたように、被害がある人はTPPによって被害がなくなるなんて思っていないし、多くの経済界の方もTPPを進めることには確かに反対していませんよ。ただ、新年に各地の商工会議所の新年会なんかに出てみても、地域の中小企業が、ああ、これでTPPでアベノミクスは加速するなんというわくわく感はないんですよ。

 私はきちんと事実に基づいて丁寧に説明するべきだと思いますけれども、今回の試算は余りにも盛り過ぎだと思いませんか。どうですか、総理。

甘利国務大臣 いいかげんなとおっしゃいますけれども、GTAPモデルというのは、パデュー大学で……(発言する者あり)いや、GTAPモデルです。これできちんと方式が決まっているわけです。それにデータを投入して出したものでありまして、勝手に盛ったり盛らなかったり、好き勝手なことはできません。

 世銀も同じようなモデル、これはGTAPモデルとそっくりとは言いません。GTAPモデルというのはパデュー大学のいわば商標です、登録商標です。ほかの大学を中心に同じような計算方式があります、それを世銀は使っているわけです。そして二・七という数字が出ています。

 その際、世銀の報告をよく読んでいただければわかると思いますが、かなり控え目に見積もってという注釈がついております。ですから、かなりかた目に見積もって二・七という数字を出されているわけです。我々の方は、それよりもさらにかたく見積もって二・六という数字にしているわけであります。これがいいかげんだという指摘は当たらないと思います。

福島委員 仮定を変えれば幾らでも変わると世銀のモデルも言っているんですよ。確かに、モデルを回すのはGTAPモデルかもしれない。でも、どういうことを仮定してモデルを回すかによって、数値は全く変わるんですよ。その仮定のとり方が恣意的じゃないですかと言っているんです。そういう技術的なことをきょう聞きたいんじゃないんですよ。

 こうやって一回出した試算を変えて、ある意味一見、国民をうまくごまかしたように思えるかもしれないけれども、実際はそうじゃないんですよ。もっと正直な数字を出して、総理、議論しませんか。もう一度、正直な数字を出すつもりはございませんか。総理、やりませんか。

安倍内閣総理大臣 先ほど、各農家、農協のアンケートを御紹介いただきましたが、これは総合的なTPP対策大綱を我が党がまとめる前の調査でございまして、今、この大綱をまとめ、多くの農協の方々から御納得いただいている、こう考えておりますが、さらにしっかりと説明をブロックごとに、地区ごとに重ねていきたい、こう思っている次第でございます。

 同時に、ですから、総合対策をやらなければという数字を出すのは、もう既にやるということが決まっている以上意味がないんだろう、私はこのように思っております。

福島委員 総合政策大綱だって、そんな細かい政策を言っているわけじゃないですよ。現に、冒頭出しましたJAの組合長のアンケートでも、九割以上の人が安倍農政を支持しないと言っているんです。これは大綱が出た後です。(安倍内閣総理大臣「いやいや、前です」と呼ぶ)出た後です。ことしの一月です。大綱が出た後にそう言っているわけだから、もうみんな見抜いているわけですよ。ですから、もう一度正直に認めて、きちんとしたデータと分析に基づいて議論しましょうと言っているわけですよ。

 私は、そういう状況の中で、まさかこの国会で批准に向けた議論はされませんよねということをお聞きしたいと思います。

 というのは、アメリカの議会の人たちは、オバマ政権のもとではTPPに関する承認の議論はできないと言っています。アメリカの大統領の主要な候補はみんな、TPPの批准に反対だと現在のところは言っております。日本だけ先にやることはないんですよ、日本かアメリカか。両方が批准しないとTPPは発効しないんです。

 そうだとするならば、これだけ試算も曖昧で、対策なるものもいろいろなものがほぼ曖昧模糊としていて、補正予算で組まれているのは従来型の補助金だけという中であるとするならば、批准の前にしっかりと、私は、このTPPの協定が何なのか、効果がどういうものなのか、国会決議に違反しているのかしていないのか、そのために講ずる政策等はどうあるべきかというのを議論すべきだと思いますけれども、どうでしょうか、総理。

安倍内閣総理大臣 先ほどのアンケートでございますが、アンケートをとったのは昨年の十一月でございますので、大綱が出される前でありまして、掲載されたのが一月四日でございますから、それが後になっているということでございますが、そのこともつけ加えさせていただきたいと思います。

 あわせて、どの党に期待するかというのは、自民党が圧倒的な三一%ありまして、民主党は四%ということになっております。

 いずれにいたしましても、農家の皆さんにしっかりとこの大綱も御説明をしていきたいし、その結果どういう影響が、個別に、畜産なら畜産、酪農、そして稲作等々について御説明をしていきたい、こう考えているところでございます。

福島委員 いつも民主党に対するお土産の答弁をいただいてありがたいんですけれども、我々もしっかり国民の支持をいただくように、また説明をさせていただきたいと思っております。

 そもそも、安倍農政と我々民主党農政は理念が違うと私は思っております。総理はいつも対案を出すということをおっしゃいます。

 今回のTPP対策でもそうなんですが、例えば土地改良の公共事業で九百億円、TPP対策として講じられております。そのうちの三百七十億円は農地のさらなる大区画化、汎用化の推進というものを挙げていて、農地中間管理機構を中心として、新しい担い手なんかが入ってくるところは大区画化しましょうということなんですね。

 多くがこうした中間管理機構というのを通じて、農地を移動した者に予算の集中を行おうとしております。それともう一つは、機械とか施設への補助であります。

 この事業は、米価九千六百円を目指して行う人にやると言っております。でも、今は農家は、去年は九千円、ことしは一万円ぐらいで、九千六百円を目指せといって、やろうという人はいないと思いますよ。土地改良というのは、みんなの同意が必要なんです、やる人の。やる人が九千六百円を目指すものでやって、ではそれなら大規模化をやりましょうというのは、私は神経を逆なですると思っています。

 コストダウンは必要ですよ。でも、自分で努力してコストダウンしたらその利益がちゃんと自分に入ってくるからこそコストダウンをするのであって、初めからコストダウンをしなければ金をもらえないというのに手を挙げる人はいないと思うんですよ。

 今の安倍政権は常に、値段が全部安くなることを前提に、しかも、二分の一補助で新たに借金を背負わせて苦しめているのが前提なんです。あれをやりなさい、これをやりなさいという条件が補助金には必ずついております。上から目線の、私はある意味社会主義的な農政だと思うんですよ。

 我々の政権のときに出した戸別所得補償制度というのは、いわゆる直接払い、ここに書いてありますけれども。それは確かに、皆さん、ばらまき四Kと言ったかもしれませんよ。しかし、ばらまき四Kと言ったかもしれないけれども、中長期的に見て、生産者の皆さんが、どれぐらい安定して利益を得られるかと予測できるんですよ。予測ができることによって、農家の皆さん方が自主的に、では機械を買おうとか農地を広げようとか人を雇おうという、自分が自主的に利益を上げるためにさまざまな工夫ができる、その基盤だけを我々がつくりましょうというのが民主党の農政なんですよ。

 初めから北風をぐっと吹かせておいて、借金しろ何とかという自民党の農政と明確に違うということを私は言いたいと思います。

 安倍総理のホームページにこういう写真があります。「美しい国、日本」。本当に「美しい国、日本」だと思います。これは選挙の途中の写真だと思いますけれども、総理の地元の棚田、ちょっと草を刈っていないのが気になりますけれども、そこで総理が九十度腰をかがめておばあちゃんに挨拶している。TPPをやったら、こういうおばあちゃんたちはまだ農業を続けられますか。こういう棚田はどうなりますか。総理、お答えください。

安倍内閣総理大臣 私の地元は中山間地域でありまして、特に日本海側には棚田が続いているわけでございますが、既にさまざまな工夫が始まっておりまして、いわばたくさんの観光客を集めながら一緒に田植えをしたりとか、そこでさまざまな、例えばファッションショーをやったりとか、そういうこともしながら、観光客もふやしつつ六次産業化を図っているところでございます。

 また、棚田におきましてもう一工夫、二工夫を加えながら、天日干しもしながらブランド化し、一俵当たりの値段を上げていく努力をしているわけでございまして、特に私の地元におけるお米につきましては、かつては平均よりも安かったりとかしたんですが、今や魚沼産のコシヒカリよりも高く売れる米も出てきているわけでございまして、そうした努力も重ねているわけでございます。

 もちろん、多くの田については、高齢者の方々が携わりながらも、しかし一生懸命やっておられます。同時に多面的な機能も果たしているわけでございますから、そうしたこともしっかりと勘案しながら、生産性を上げ、ブランド化を図ると同時に、多面的な機能も果たしているということも勘案しながら、しっかりと守るべきものは守っていきたいと考えております。

福島委員 私は、特定のすばらしい例は、それはすばらしいと思うんですよ。でも、多くのここにいらっしゃる皆さん方も地元を回って、中山間地の方々はそうなっていないと思いますよ。九千六百円の価格だったら、恐らくほとんどの人はやめますよ。農地中間管理機構に出せと言っても、棚田のような大きくできない田んぼは、誰も借り手なんていないですよ。私の地元では、そうしたところはみんなイノシシの運動場になっちゃっている。福島先生、イノシシを駆除するために自衛隊を出してくださいというところまでいるのが現実ですよ。

 私は、そういうことを正直に言った上でTPPの対策の議論をしないと、このポスターがありますけれども、理解を得られないと思うんですよ。

 私たちは、そうしたことも含めて対案を出しています。先ほどの戸別所得補償法案と、ふるさと維持三法案という対案を出しています。継続審議でこの国会にも出ております。まさに対案を出しているんですから、そうしたどちらの農政が将来美しい国土を守るために必要な農政なのかというのを比べて議論すべきだと思いますよ。比べて議論させてください。

 そして、今回、補正予算でいろいろなものが並べられておりますが、これらは私はほとんどTPP対策に意味のないものだと思っております。だって、実際、関税がなくなって、幾ら被害があるかもまだわからないんですよ。わからないうちに国民の皆さん方の税金を三千数百億円も投じることにどうやって理解が得られるんですか。私は理解が得られないと思いますよ。

 そうした意味では、今回の予算の中からTPP対策の予算を外すべきだと思いますけれども、総理はどのようにお考えですか。

安倍内閣総理大臣 まさに、今からTPPに備えていくのは当然のことなんだろう、こう思っているわけでございます。TPPで影響が出るところにおいて、守っていかなければならないところもありますし、生産性を上げていく努力をすることによって、攻めに転じていかなければならないものもあるわけでございます。

 また、中小企業にとりましては、むしろルールに乗ってしっかりと守られている新しい市場ができるということはチャンスにもつながっていくということでございまして、こういうチャンスを生かすための予算もしっかりと組み込んでいかなければならない、このように考えております。

福島委員 試算で数字を適当にごまかして、そしてお金さえつければごまかせるというのは、私はそうは絶対にならないと思いますので、真摯な議論をこれからやっていただきますことを望みまして、質問を終わりとさせていただきます。

 ありがとうございました。

竹下委員長 この際、井坂信彦君から関連質疑の申し出があります。枝野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。井坂信彦君。

井坂委員 神戸から参りました維新の党の井坂信彦です。

 質問通告の一番最後にある年金運用の問題から伺います。

 日経平均は、きょうも直近のデータで四百円以上下がって、ことしに入って、史上初の六日連続で計一千八百円も下落ということになっております。大ざっぱに予想をすると、この一週間で年金積立金が約五兆円目減りしたおそれがあるということであります。

 安倍総理は、安倍政権に入って年金積立金は三十三兆円もふえたんだ、こうおっしゃいますが、実は、それは国債で手がたく年金運用をしていた時期の含み益であって、株式運用の割合をふやした二〇一五年一月以降は、実にもう二・四兆円負け越している、年金が減っているのではないでしょうか。まず、この点についてお伺いをいたします。

塩崎国務大臣 井坂委員よく御存じの上で言っておられると思いますけれども、年金積立金の運用というのは、言うまでもなく、厚生年金保険法に基づいて、安全かつ効率的に行うということになっておりますし、前提は随分変わってまいりまして、デフレからの脱却、国内債券だけでは実質的な年金給付を確保することが難しいというところで、物価が上昇していくことに今対応してきて分散投資をやって……(井坂委員「ポートフォリオの変更前後のことで」と呼ぶ)はい。

 それで、このポートフォリオの変更は、このような想定のもとで株式等への分散投資を進めたものであって、変更前の基本ポートフォリオで比較して、市場の影響等による一時的な損益のぶれ、つまり標準偏差は大きくなったとは言えるわけでありますが、一方で、長期的に見れば、変更前の基本ポートフォリオを維持した場合と比べて、年金財政上必要な積立金を下回るリスクは少なくなったということであって、これは、長期で運用をするという年金の特性に基づいて運用の基本ポートフォリオを変えたわけでありまして、あくまでも短期で減ったふえたのことは別にして、長期に年金を、確実に利回りを得て、そしてお約束をした年金を支払うということについて見ていくことが一番大事なことであるというふうに思っております。

安倍内閣総理大臣 ただいま塩崎大臣から答弁させていただいたように、短期間だけ見たってこれはだめなわけでございまして、まさに、例えば安倍政権についての御報告をいただきました、最近のマイナスを入れても三十数兆円、我々はプラスになっているわけでございまして、大切なことは長いスパンで見るということでございます。

 そこで、現行のポートフォリオについてはいかがなものかとの質問だろうと思いますが、旧ポートフォリオと比較をして、市場の影響等による一時的な損益の振れ幅が大きくなったことは確かでございまして、しかし……(発言する者あり)済みません、余りやじが大きいと答弁しにくいので、しばらく静かにしていただきたいと思います。

 ここで、いわばデフレ期とデフレから脱却しつつあるときは、あるいは、もちろんデフレから脱却したらそうなんですが、当然これはポートフォリオを変えなければならないわけであります。デフレから脱却をして、国内債券だけでは実質的な年金給付を確保することが困難になるという想定のもとで、長期的に見れば、旧ポートフォリオを維持した場合と比べ、年金財政上必要な積立金を下回るリスクは少なくなったと理解するのが常識であろう、こう思うわけであります。

 そこで、仮に現行の基本ポートフォリオで、リーマン・ショックを含む過去十年間、平成十六年から二十五年度、運用したと仮定すると、従前のポートフォリオよりそれぞれの年度の収益の振れ幅は大きくなるものの、名目運用利回りは四・三%と、従前のポートフォリオより一・一%高い収益率が得られるわけでございまして、そこをしっかりと見ていただかなければならないわけでございます。

 年金積立金は、長期運用で年金財政上必要な積立金を確保することを目的としているわけでありまして、短期的な収益の確保を目指しているのではないわけであります。短期的なものだけであったら、まあ、旧政権のことばかり言うなということでございますが、では民主党政権の三年間はどうだったのかということになるわけでありまして、これは長いスパンで見ていかなければならない。

 つまり、デフレから脱却しつつある中においては、私たちが今度新しく導入したポートフォリオによって運用していくことが望ましいと考えております。

井坂委員 私はふだん申し上げませんけれども、お二人でほぼ同じことを、しかもお尋ねしていないことまで大幅に時間を使ってお答えいただくのは、やはり節度ある範囲でお願いをしたいというふうに思います。

 結局、もちろん、短期の売り買いで含み損、含み益、それを一喜一憂すべきではないというふうには思いますが、ただ、はっきり指摘をしておきたいのは、国債運用をしていたころは勝ち越していた、そして株式運用に変えた後は今現に負け越している、その事実はしっかりと指摘をしておきたいというふうに思います。

 さて、増税の前にやるべきことがあると、私が落選した二〇一〇年の参院選からぶれずに訴え続けております。総理は、リーマン・ショックや大震災でもない限り、来年四月に必ず消費税を一〇%に増税するとおっしゃっています。そこで、消費増税の前提条件について、総理にお伺いいたします。

 そもそも大前提は、必要な政策にお金が足りない、無駄を削ってお金が足りないから、最後の手段として国民にお願いをするのが増税であります。ところが、今回の補正予算でも、相変わらずばらまきや無駄遣いが批判をされている。

 総理は、ばらまきではなく、これはアベノミクスの果実を広く国民に届けるんだ、こうおっしゃいますが、二十・八兆円の税収増の実に半分近くに当たる九兆円は、単に消費増税の果実ではありませんか。

 一昨年に消費税が八%に増税され、地域経済は大きなダメージを受けました。その消費税で税収がふえたら、これは果実だといってばらまき、また来年はお金が足りないと消費税を一〇%に増税する。さすがにこの悪循環はおかしいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 二十一兆円、国、地方を合わせてふえました。そのうち約八兆円ですよ、消費税は。十三兆円は、これはまさに間違いなく果実なんですよ。これをまず認めていただかなければならないと思いますよ。

 そして、消費税におきましても、景気がよくならなければ八兆円出たかどうかはわからないんだろう。景気によって増減は少ないと言われておりますが、しかしこれは、景気がよくならなければ消費はよくならないわけでありますから、当然、この中にも私たちの経済政策によってプラスが含まれているということをしっかりと申し上げておきたい、こう思う次第でございます。

 その中におきまして、私たちの経済政策によって得た果実についてしっかりと、さらなる成長、あるいはまた子育て支援や介護離職ゼロのための社会保障等、社会基盤を安定させるために投資をしていく、また、さらなる成長のための投資をしていくことによって我々はさらに成長していくことができ、新たな果実を生んでいく、こう考えているところでございます。

井坂委員 まだあります。議員定数削減、これも消費増税の大前提だと思います。

 そこで、総理に端的にお伺いいたしますが、来年の消費増税より前に議員定数の削減、これは一票の格差是正ではありません、議員定数の大幅削減を必ず実行していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 議員定数、定数是正について、まさに今第三者機関において議論がなされているところでございまして、そこから結論が出る、こう思うわけでございます。

 これは、議会政治の根幹にかかわる重要な課題でございます。与党がリーダーシップを発揮しながら、各党各会派と真摯に議論を行い、早期に結論を得ることが大切であると考えております。

井坂委員 今の御答弁ですと、結局、定数削減がもし来年までできなくても、定数削減できなくても消費増税はやるというお答えでよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 定数については今お答え申し上げたとおりでございますが、消費税については、これはまさに社会保障の充実のためにも行っているわけでございまして、二・八兆円、既に国民の皆様にこれを行っていくというお約束をしている、その財源でもあるわけでございます。

 そこで、先般は、デフレ脱却という大きな目標に向かって進んでいく上において、これを今上げることによってデフレに再び戻ってしまう危険性ということを勘案し、一年半延期をしたところでございますが、幸い、昨年も賃上げがうまくいったわけでございまして、ことしも賃金が上がっていく、そして来年も賃金が上がっていくという中において消費税を上げることができるという環境をつくっていく考えでございます。

 そして、その方向に向かっていく中において、さらなる延期ということは考えていないわけでございまして、リーマン・ショック級の世界経済への大きな影響が起こる、リーマン・ショック級の出来事が起こるということがない限り、我々は消費税を引き上げていく。これは、現下の社会保障制度を次の世代に引き渡していかなければいけませんし、また、国の信認を維持するために必要、こう考えているところでございます。

井坂委員 ちょっと、経済との関係はお伺いしておりません。

 消費増税前に議員定数の大幅削減をやるべきだと私は思っておりますが、はっきりお答えいただきたい。議員定数大幅削減ができなくても消費増税は絶対やると今おっしゃったんですか。

安倍内閣総理大臣 消費税につきましては、今申し上げましたような必要性において消費税を引き上げていくということでございます。

 他方、議員定数の削減等につきましては、先ほど御答弁させていただいたとおりでございます。

井坂委員 定数削減なしで消費増税はやるというふうに、今ほぼはっきりおっしゃったというふうに理解をいたします。(発言する者あり)そんなこと言っていないよという与党側からの御意見がありましたので、ちょっとはっきり言ってください。議員定数削減ができなくても消費増税はやるんですか。

安倍内閣総理大臣 政府としては、しっかりと社会保障制度を維持していく必要があるわけでありますし、そして同時に、二・八兆円の財源を確保していく必要がありますし、国の信認を確保していくという責任において、リーマン・ショック級の出来事が起こらない限り消費税を引き上げていくということは繰り返し述べているとおりでございます。

 他方、国会議員の定数につきましては、これはまさに院の課題であるわけでございまして、同時にこれは民主主義の土俵にもつながってくるわけでございまして、これは党首討論でも申し上げたとおり、小さな政党も含めてちゃんと議論をしていく必要があるんだろう、しっかりと受けとめて議論していく必要があるんだろう、このように思います。

井坂委員 身を切る改革のないまま消費税を増税することは認められないと申し上げます。

 低所得者対策をしっかり行うということも、これは消費増税の前提でありました。しかし、今予定されている軽減税率、一兆円の財源が必要ですけれども、その九割は年収三百万円以上の方に恩恵が行ってしまうと先ほど指摘があったところであります。

 ちょっとパネルの一、資料の一をごらんいただきたいと思います。

 食品の陰に新聞の軽減税率というものも、なぜかここだけ単品で今目指されているわけでありますが、この新聞の軽減税率、口の悪い方は、これは新聞業界への賄賂じゃないかと。私はそこまでは申し上げませんが、一体これがどうして低所得者対策になるのか。

 実際、これをごらんいただければ、年収三百五十万円以下の勤労者世帯、ここは年間の新聞代が平均一万三千円です。大体月四千円の新聞一紙を一年とれば四万八千円ですから、大体四軒に一軒しかそもそも低所得世帯は新聞を買っていない、四軒に一軒しかそもそも新聞の軽減税率の恩恵を一円たりとも受けることすらできない、こういうことになっています。なぜこれが低所得者対策なのか、端的にお答えいただきたいと思います。

麻生国務大臣 新聞につきましては、基本的な考え方で、これは前々からいろいろ議論になっていたところですけれども、日常生活の中において、少なくとも情報媒体として全国ほぼあまねく均質に情報を提供し、幅広い層に日々読まれている等々の条件を考えて、この結果、新聞の購読料に係る消費税負担は逆進的になっていると思いますので、そういった事情を総合勘案させていただいて、軽減税率を適用するということであろうと思います。

井坂委員 津々浦々、地理的には幅広く読まれておりますけれども、このグラフを見ていただいたとおり、低所得世帯はそもそも新聞を買うことすらできていない、とることすらできていない。そういう品目をイの一番に軽減税率の対象にする意味が私はよくわかりません。低所得者対策とは言えないというふうに思います。

 増税の前にやるべきことがある。続いて、公務員制度改革についても伺いたいと思います。

 公務員は、憲法で保障されている賃金交渉やストライキが制限されている。そのかわりに、人事院という中立的な組織が、公務員の給与が不当に下げられ過ぎないように、公務員給与の適正な水準を政府と国会に勧告する人事院勧告という制度になっています。政府も国会も、この人事院勧告を最大限尊重することになっています。

 そこでお伺いしますが、この人事院勧告、従わなければ違憲や違法になるんでしょうか。

河野国務大臣 かつて、昭和五十七年に人事院勧告を実施しなかったということがございます。これは最高裁で争われまして、判例で、極めて例外的な状況のもとで極めて異例の措置として単年度に限って行う人事院勧告不実施が憲法違反とはならないというふうに示されたわけでございます。

 このときは、歳入が前年度足らず、また、当年も国債の市場消化が全額できないという見通しの中で人事院勧告を不実施といたしましたが、その後、上げなかった分を三年間にわたり引き上げてきた、そういうことでございました。

井坂委員 今、昭和五十七年の例を御説明いただきました。この年、確かに、財政緊急事態宣言などが出されて大変だったというふうに説明を受けております。どれぐらい大変だったかというと、年金、物価のスライド、物価が二・四%上がったけれども年金はスライドを見合わせた、それぐらい大変だったんですというふうに人事院から説明を受けました。

 ところが、気になって私は後で年金局に聞いてみましたら、そもそも当時は、物価が五%以上上がらない限り年金スライドはしない、要は通常ルールの範囲内でただ見合わされた、こういうような経済財政状況だったのではないかなというふうにも思います。

 むしろ、この年金の話でいえば今の方が、マクロ経済スライド、端的に言えば、毎年一%ずつ強制的に年金額を切り下げるこの制度がもう発動しておりますので、昭和五十七年よりもむしろ年金、社会保障まで含めた財政状況は悪いのではないかというふうに思うわけであります。

 とはいえ、我々野党は人勧に反対もできますけれども、政府・与党が何度も何度も繰り返し人事院勧告に逆らうと、これは、大臣御指摘のとおり、さすがに最高裁で憲法違反だというふうに怒られてしまうのも事実であります。やはり人勧制度、人事院勧告制度そのものを根本的に見直していくのが責任ある対応ではないかという観点から、以下、私は人勧制度の中身についてお伺いをしたいというふうに思います。

 まず、そもそも今の人事院勧告制度、国家公務員法二十八条で、社会一般の情勢に適応するように国会は公務員給与を決めることができるというふうな仕組みです。この社会一般の情勢というのは、私は、国のこの危機的な財政状況も含まれるというふうに思います。この人事院勧告、給与決定の際には国の財政状況も考慮するべきだというふうに考えますが、これは根本的な話です、ぜひ総理のお考えをお伺いしたいというふうに思います。

河野国務大臣 人事院勧告の背景の中には、当然、国の財政その他が含まれると思います。ただし、これは労働基本権を制約している代償措置でございますので、どこまでこれをやるかというのは非常に慎重にやらなければならないというふうに思っております。

井坂委員 今、財政状況も考慮するべきだというふうなことをおっしゃったと思います。私は、現行法でもそういうことをやっていい。もちろんやり過ぎたら、財政状況を理由に不当に下げ過ぎたら、これはまた問題があるわけでありますが、しかし、一昨年増税して、去年とことしが給与アップで、また来年増税、これは私はおかしいというふうに思いますので、この財政状況を加味する、現行法でも私はできると思いますし。

 もし現行法でできないのであれば、これは御提案ですが、ドイツのように、ドイツは法律にも経済そして財政状況を考慮するとはっきり書いてあります。こういうふうな財政状況も給与決定システムの中にはっきりと組み込んでいく、このことについてちょっとお考えをお伺いしたいと思います。

河野国務大臣 昭和五十七年のときが財政を考えて実施をしなかった例でございますが、このときには、キャッシュフロー的にお金が足らないという可能性があるということでやりませんでした。そういう緊急事態ならば、しかもそれを単年度に限ってやるならば、恐らく現在でも最高裁は認めてくれるんだろうと思いますが、これをどこまで続けられるかというと、委員御指摘のように、これを毎年にわたってやり続ければ、当然これは最高裁で憲法違反ということになると思いますので、この辺の扱いについては極めて慎重でなければならないというふうに思っております。

 現在の人事院勧告は、労働基本権を制約しているという代償措置でありますから、ここについてはやはり慎重に議論が必要だと思います。

井坂委員 労働基本権、交渉権とかストライキの権利が制限されているかわりにあるんだということですが、これは最高裁の判決をよくよく見ますと、だから人事院勧告に政府や国会が逆らい続けたら即憲法違反だ、こんなことにはなっていないんです、最高裁判決は。そうではなくて、政府や国会が人事院勧告に逆らい続けたら、公務員さんたちもストライキをやってもこれは文句を言えませんね、仕方がありませんね、そこどまりでありますから、そこもはっきりと、そこを土台にした上で議論をしていきたいというふうに思います。

 実は、この人事院勧告は、現状、国の財政赤字とは関係なく、民間企業とそして公務員の給与をぴったり合わせる、こういう仕組みになっています。

 人事院からも説明を受けました。民間の方が平均給与は安く見えますけれども、同じ年数勤めた公務員さんと民間企業の方の平均を比べたら、公務員も民間も平均給与は一緒ですよ、こんな数字を持って事前に説明に来られました。

 怪しいなと思ったので、後から調べてみましたら、やっぱりなんですね。公務員の方で示された数字は、残業代とか各種の手当がほとんど入っていない数字が示されて、民間の方は、もうほぼ全て、通勤手当以外の全ての手当が示された数字が出されて、それで、両方数字は一緒でしょうと。こんなことですから、当然、同じ条件で両方に手当を全部乗せて比べたら、これは公務員給与の方が圧倒的に高い。こういうごまかしの説明がまた性懲りもなく出てくるということは、私は、これはやはり現行の制度が後ろめたいことの証左ではないかというふうに考えています。

 ちょっとパネルの二番をごらんいただきたいと思うんですけれども、現在の人事院勧告の官民の給与比較には、私は三つの不公平があるというふうに考えています。

 まず一つ目ですが、赤字か黒字かという問題であります。

 この人事院勧告、これは、民間企業、俗に民間企業の七割が赤字企業だと言われますが、これは一人とか少人数のちっちゃな会社も含めての話でありまして、人事院勧告が対象にしている事業所、一つの事業所に五十人以上いるような大企業です。この大企業だけ見れば、世の大企業の八割から九割が黒字企業です。当たり前です。大企業で存続しているからには黒字なんです。こういうほぼ黒字の企業の集団を調べて、一方、公務員組織、国の財政、これはもうずっと赤字ですから、赤字の団体の職員と単純に比較していいのか。これは議会でも都度指摘をされている問題であります。

 私は、国の財政が赤字のうちは、これは民間だったら赤字企業でボーナス満額なんということはなかなかないですし、毎年他社が賃上げだからうちも毎年賃上げだ、こういうことも民間で赤字企業ではなかなかないことですから、民間と合わせるにしても、そういう当たり前の部分までそろえるべきだ。国が財政赤字のうちは、赤字企業の平均給与と官民比較してもよいのではないかと思いますが、御所見をお伺いいたします。

河野国務大臣 この人事院勧告というのは、第三者機関である人事院が勧告を出すわけでございます。この勧告の基礎となる調査や比較の方法についても、第三者機関である人事院がみずから適切に決定をするということになっております。

 行政府の一員であります私がこれについてとやかく言うことはできませんが、少なくとも人事院は、国民の皆さんに対して、しっかりと国民の皆さんが理解できる方法で調査をし、勧告をしているというふうに思っておりますので、人事院としては、国民の皆様に対して、適切な方法でやっているという説明をする責任はあるんだろうというふうに思っております。

井坂委員 ちょっと今の御答弁は、私は大臣に御認識を改めていただきたい点がありますので、再度答弁を求めたいと思います。

 といいますのは、確かに人事院は第三者機関、中立の機関、政府がああせいこうせいと指図はできません。しかし、人事院が自分たちの制度をどう変えるか、自分たちで考えてやっているわけですが、そのときには必ずこの国会での議論が最重要で、国会でもこういう議論が出ているからそろそろ人事院としてもこういうふうに制度を変えよう、こういう順番で議論が進んでいるんです。

 ですから、大臣が、私のあずかり知らないところだ、口を挟んではいけないんだというのは間違いで、ここで私と大臣が真摯に議論して、ああそうだな、時代もそうなっているなというやりとりをすることが、人事院の制度を我々政治家が変える唯一の方法なんです。もう一度答弁いただきたいと思います。

河野国務大臣 きょう、この予算委員会で委員からそうした御指摘があるということは人事院も了解をするわけでございますから、それに対して人事院が何らかの答えをしなければいけないということになるだろうと思います。

 委員のようなお考えがこの予算委員会の中で広く表明をされるということは、この調査方法が適切かどうかという国民の間に疑念が広がることにもなりますので、それに対して人事院は適切に理解をいただくようなことをしなければいけなくなるというふうに思います。

 行政府が第三者機関である人事院に対して何か言うことは差し控えたいと思います。

井坂委員 官民比較の不公平で二点目は、係長の数が違い過ぎるという問題であります。

 この図をごらんいただきたいと思いますが、国家公務員組織には、俸給表の三級と四級、いわゆる本庁の係長さんクラスの方々が八万人おります。それに対して、俸給表の一級、いわゆる民間で言うところの平社員に当たる方々は八千九百人しかおりません。係長が八万人、そして平の職員さんが八千九百人。これは図に描くと、こういうふうに係長だらけの霞が関、見るからにおかしな組織形態になっているわけであります。

 この組織の構造は、これは政府の問題でありますけれども、人事院がこの現状をよく知った上で何をやっているかというと、係長同士同じ給料にしましょうと単純にそろえているわけであります。

 どうなるか。当然、民間企業では、一人の係長さんが平均で四、五人部下を持っています。ところが、役所の場合は、部下なしの係長さんが八割ぐらい恐らくおられるんでしょう。そういう方々が、同じ職責だ、係長と名がつくんだから同じ職責で同じ給料でいいんだといって、部下をマネジメントしている責任ある民間の係長さんと同じ給料をこの霞が関の膨大な八万人の係長さんがもらっている。これは当然、公務員の平均給与を押し上げている大きな材料になっていると思いますが、この係長八万人問題、いかがでしょうか。

河野国務大臣 繰り返しで恐縮でございますが、人事院は第三者機関でございますので、行政府がその調査方法についてとやかく言うことは差し控えたいというふうに思いますが、そういう問題提起をされたということは人事院もしっかり認識をしていると思いますので、人事院が国民の理解を得られるようなしっかりとした御説明をされるというふうに理解をしております。

井坂委員 人事院にお聞きをしているわけではありません。政府が、係長が八万人いて、しかも部下が八千九百人しかいない、こういう組織でいいのか。政府の、公務員組織の組織形態の問題をお伺いしています。

 官民比較の話は一旦おいて、係長が八万人いるのはおかしくないですか。

河野国務大臣 政府といたしましても、公務員の総人件費についてはしっかりと抑制をしていくという方向でございますので、適切に今後とも対処してまいりたいと思います。

井坂委員 いえいえ、給与抑制の話もちょっとこの瞬間おいて、部下なし係長ばかりで八万人いる、この組織形態はおかしくないですか。

河野国務大臣 単純な事務作業につきましては、機械化その他でそうしたところを抑制してきておりますので、いずれ全体的な構造改革はやらなければならないというふうに思っております。それは、そうした基本方針が出されておりますので、それに沿って適切にやってまいりたいと思います。

井坂委員 官民比較の不公平の三つ目は、民間企業、大きな企業ばかりを相手に調査をしているということであります。

 企業規模五十人以上、これだけ聞くと、五十人以上の企業といったら中ぐらいの企業かなと思いますが、一事業所にいる社員さんが五十人以上いなきゃいけないとなると、これはとてつもなく大きな会社になってくるわけであります。

 民間の方は一事業所に五十人以上いなきゃ調査の対象じゃないと言っておきながら、一方、役所の方は一事業所に数人みたいな部署が山ほどある。要は、役所の方は小規模な部署で仕事をしていて、比較対象の民間は一つの職場に五十人いるようなところじゃないと相手にしないんだ。これも不公平だなというふうに思うわけであります。

 この三つの不公平、これは人勧制度の問題だけでなくて、政府の公務員改革に対する姿勢が問われる、現状、非常におかしなことになっていると思いますから、大臣、本日のところはあそこまでの答弁しかいただけないかもしれませんが、ぜひ真摯にこの問題を解決していただきたいというふうに思います。

 次に、経済の話に移りたいと思います。

 この予算委員会でもひたすら経済の話が続きました。これは総理とそれから経済産業大臣に、ちょっと細かいこともありますので、お伺いをしていきたいと思います。

 経済に関する議論になりますと、いつも構図は決まってきています。政府・与党は常に、名目の経済指標、例えば名目賃金、見かけの賃金が上がっているんだ、これを手柄とされて、そして一方、野党は常に、実質の経済指標、実質賃金はずっと下がっているじゃないか、今は実質賃金はマイナス五%になっているじゃないか、こういうふうに責め立てている。ここにずっと平行線があるんだというふうに思っています。

 金融緩和をすれば、これは非常に粗っぽく言えば、金融緩和というのは、一万円札の価値を薄めて、その結果物価が上がる、そして賃金が追いつかない、こういうふうになるのは最初から予想されたことだというふうに私は思っています。

 同じように、日本経済を円ではなくてドルで数えたときも全く違う景色が見えてまいります。

 パネル、資料の三番目をごらんいただきたいと思います。

 このうちの左側のグラフなんですけれども、GDPをドルであらわして、アメリカ、日本、ドイツ、フランス、そしてイギリス、この六年間を比較したものであります。各国、GDPはドルで数えてもきちんと伸びている中で、日本が伸び悩み、また、ここ二、三年はドルベースでは明らかに大幅に下落をしている、こういうことになっています。

 安倍総理は、金曜日の答弁ではこうおっしゃいました。失われたGNI五十兆円のうち既に四十兆円を取り戻したんだということでありますが、これは、金融緩和で円安が起これば、円で数えたGDPというのは本当に普通にふえるものだ。しかし、ドルで、世界を同じ通貨で比較したときにどうかということを見るのが私は大事だというふうに思いますが、ドルで見たGDPの落ち込み、ここ二、三年の落ち込みに関して御所見をお伺いいたします。

安倍内閣総理大臣 最近よく、最近というか、この三年間よく、ではドルで見ればどうなんだと言う方がいらっしゃるんですが、この議場にもドルで給料をもらっている人はいないんだろうと思うんですね。

 大切なのは、まさに名目の円で一体幾ら給料がふえていくのかということであって、経済活動もそうであります、まさに円でふえていかなければ一人一人の収入はふえていかないわけでありまして、一時的に例えば円高になっていったとしても、円高になっていけば、見かけの、これはまさに見かけのドルのGDPはふえていきますが、結果どうなるかといえば、かつては今よりも二割以上倒産件数は多かったわけでありますし、百十万人以上職がなかったわけでございます。これを考えなければならないわけでございます。

 まさに、ドルベースにおいて、今の水準と同じ、例えば一ドル百十七円ベースでずっと続いている中においてドルでも伸びていくということが一番いいわけでありますが、為替の変化の中において、ドルで減っているからといって気にする必要は私はないんだろう、このように思うわけであります。それは実体経済ではなくて、まさに実体経済というのは、私たちが生活しているこの日本の中で実際に給与がふえていくかどうかということであります。

 そして、井坂委員がおっしゃったように、我々がアベノミクスを発動するときにおいて、デフレから脱却していく中において、正常に物価が上がっていく社会をつくっていく。しかし、必ずしも最初はそれに賃金は追いついていかないというお話はさせていただきました。できる限り賃金が追いついていくようにしていきたい。そのために、今までは行っていなかった政労使の対話を行って賃上げを行って、二年連続で十七年ぶりの賃上げをなし遂げたわけでございます。

 そしてまた、先ほど来議論になっておりますが、こういう景気回復局面では国民みんなの稼ぎである総雇用者所得で見る必要があるわけでありまして、総雇用者所得の実質においても、マイナスであったわけでありますが、これもプラスになってきたということもお伝えしておきたいと思います。

井坂委員 GDP、もちろん国内で見かけで上がることもそれは大事ですよ。特にデフレから脱却するというときは、物価も上がった、お給料も上がった、何かあしたはもっと上がるかもしれない、この気持ちの変化が最初に来るというのは、私はこれは否定をいたしません。

 しかし、今日本で実質賃金がなかなか上がらなくて困っている理由は、企業が人件費を出し渋っているということだけが理由ではありません。むしろ、そこの理由は実はいろいろな分析では非常に少なくて、やはり、本当の意味で世界と比べたときの経済成長、あるいは世界と比べたときの生産性、こういう経済の本当の実力の部分が、アベノミクスの、要は見かけの数字がよくなっている間に、構造改革あるいは生産性を伸ばす政策、こういったところが今まだできていないからこういうことになっているのではないかと私は考えています。

 同じグラフの右側のところで、労働生産性の方もドル建てでお示しをいたしました。労働生産性なんかはドル比較するしかないわけで、どのグラフを見てもドル建てで比較されているわけでありますが、これも日本は大変伸び悩んでいるという状況であります。

 昨年末に、気になるニュースが流れてまいりました。日本の生産性が実質マイナス一・六%、五年ぶりに減少をしたんだ。そして、OECD三十四カ国中二十一位、先進七カ国で最低。製造業の生産性はアメリカの約七割程度。非製造業は五割にしかなっていない。さらには、飲食は特に低くて、アメリカの二七%しか生産性がない。卸、小売業はアメリカの四三%しか生産性がない。こういうニュースであります。

 今回の補正予算には、それを受けてなんでしょうけれども、補正予算の紙を見ますともう大見出しにでかでかと、生産性革命、二千四百一億円、こういうことが書いてあります。

 ちょっと経済産業大臣に、これはもう補正の事業そのものなので経産大臣にお伺いをいたします。

 今回の補正予算で、生産性革命という大見出しの下に四つの政策が並んでおります。ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金、中小企業の省エネ・生産性革命投資促進補助金、住宅省エネリノベーション促進事業、それから国・自治体のサイバーセキュリティー強化、この四つの事業が補正で急いでやるべき生産性革命の事業だというふうに並んでおりますが、これは一体どこがどう生産性のアップにつながるのか。生産性のアップにつながるという理屈の部分だけ、お願いいたします。

林国務大臣 生産性向上のためには、御指摘のとおりでございまして、ハードの設備のみならず、ソフト面の投資、そして人材面の投資、これが重要であると考えておりまして、今般の補正予算に盛り込みましたものづくりでは、機械装置の設備に加えて、ソフトウエアの導入も支援対象となっているところであります。人材育成については、ものづくり現場での知見を有するOB人材を指導者として育成、派遣する、あるいはまた中小企業の技術、技能を向上させるための研修の受講などを支援しているところであります。

 ハード面、ソフト面、人材面の投資、それぞれを支援して生産性革命を実現するというところでございます。

井坂委員 私、事前に政策の担当者の方に事業の内容を詳しくお聞きしましたが、今大臣がお答えになったような内容では全くありませんでしたよ。いろいろ、何かソフトとか人材とおっしゃいましたけれども、これは本当に単純な設備投資の補助金です。あるいは、単なる、本当に省エネの設備投資の補助金。いわゆる生産性とは全く関係のない事業が並んでいると思うんですけれども、そのあたりはどういうふうに説明を受けられましたか。

林国務大臣 まず、中小企業、小規模経営者の経営力を高めるというのが政府の枠組みになっておるわけでありまして、まずは、その先進事例を業種別にガイドライン化すること、あるいは、人材育成を含めて経営力を高める具体的な措置を示すこと、そして、金融、税制や予算面での支援を行うことを検討しているところでございます。

 また、生産性向上のためには、委員から指摘がありましたように、ソフトウエアを初め、デザイン、人材教育、ブランド、知的財産への投資を促すこと、これも重要だというふうに思っております。

井坂委員 今の御答弁、今回の補正予算の事業の中には、今大臣がおっしゃったようなことは全く入っていません。多分、私が次にお聞きすることの答弁を先回りしておっしゃっただけだというふうに思いますが、御自身の所管されている事業、これは生産性向上とはおよそ関係のないことが補正に本当にこじつけて紛れ込まされているようなパターンだというふうに思います。

 今、アメリカの五割しかない日本のサービス業の生産性を今後どうやって上げていくのかということが喫緊の課題だというふうに思います。

 実は今、日本の政策の中には、設備投資とかハード面でのいろいろな政策はあるんですけれども、特にサービス業、なかなか設備投資を必要とする事業者も少ないですから、ほとんど光が当たってこなかった。そして、現時点でも、私が知る限りは、サービス業の生産性を向上させるということを目的にした政策は、今、日本に一つもありません。この点、今後どうお考えになるのか。

 サービス業の生産性向上、今政策が全くありませんが、今一番日本の経済の弱点になっているというふうに思いますから、どう取り組んでいかれるか、御所見をお伺いします。

甘利国務大臣 おっしゃるとおり、製造業の生産性に比べてサービス産業の生産性が低いのは事実です。そして、これを引き上げるのには、まず第一に言われるのがIT投資であります。これをしっかり進めていくことが大事だと思います。

 さらに、我々が取り組んでいますのは、好事例の横展開ということに取り組んでいます。例えば、サービス産業、旅館業で、星野リゾートの星野さんがどういう手法を用いて生産性を上げたか。これは多能工化です。多能工化。つまり、旅館業は、時間帯によって、窓口が混む、会計が混む、それから食事のサービスが混む。それぞれを別々の人でやっていると人件費がかかるだけで生産性は低いです。多能工は、一人が全部をできるようにすれば少ない人数で生産性は上がるというやり方です。例えばこういうやり方を横展開していく。製造業のやり方です。

 あるいは、物流で、トラック運送でいえば、空荷を減らすということ。これは荷主との連携が必要であります。荷主が協力して、極力空荷を減らして充足率を上げていくということです。

 昨年、官邸にサービス産業五業種の代表を三百社集めました。そこで好事例の発表会をやりまして、好事例を全部展開していこう、業種ごとにいろいろあります、それをみんなで共有しようということをやっています。つまり、見える化と、それにより効率を上げていくということであります。好事例を横展開していく。

 これは、ことしに入ってもその後を追っていこうというふうに思っております。そうやって生産性を上げていく取り組みをしていきます。

安倍内閣総理大臣 昨年の六月十八日に、全国のサービス業の関係者の方々に官邸にお集まりをいただきました。その中で、生産性を上げている方々もお集まりをいただき、また、製造業の方々にもお集まりをいただき、製造業での生産性の向上の実例をサービス産業にうまく移転していくことができないか。あるいは、サービス業において成功している、例えば旅館業等々において、仲居さんたちの一日の動きを見ながら、なるべくこの動きを短くしていくためにはどうしていけばいいか、どういう配置がいいのか、あるいは、どこが自動化できるかということも含めて、それを横展開していく、こういう試みをスタートしたばかりでございます。

 井坂委員のおっしゃったように、サービス業においては生産性が日本は低いということを認識しながら、そこで、しかし一方、製造業等においては大きな成果が出てきている、これをサービス業でもしっかりと生かしていきたい、このように考えているところでございます。

井坂委員 ちょっと次のパネル、資料をごらんいただきたいんですが、資料の四というところです。

 今、先進事例とか製造業でのいい例を横展開する。私はそれではまだ弱いというふうに考えています。もっとストレートに、設備投資を日本が政策でさんざん後押ししたのと同じように、非設備投資、非IT・無形投資と呼ばれていますけれども、こういう形のない投資、さっき甘利大臣がおっしゃったような業務のやり方の変革あるいは人材の育成、これは形のない投資です、こういったものをちゃんと正面から支援するべきである。

 グラフをごらんいただきたいんですけれども、ITの投資は、これはTFPですけれども、生産性の向上に多少効き目があります。そして、一番効き目があるのが無形・非IT投資。

 要は、さっき甘利大臣がおっしゃったような仕事のやり方、人材育成、デザイン、あるいはブランドづくり、知的財産、こういったところへの投資そのものを政策で正面から後押しする。設備投資でやってきたことと同じようにこの分野でやるべきだというふうに考えますが、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、平沢委員長代理着席〕

林国務大臣 今ほどの説明の中でありましたけれども、今般の補正予算案に盛り込んだ中で、ものづくりプラス、商業・サービス新展開支援補助金というのがございまして、これにソフトウエアの導入も支援対象としているところでありますし、ブランドを守るための商標登録の関連経費を初め、知的財産等関連経費も補助対象経費としております。

 また、デザインについては、昨年、中小ものづくり高度化法に基づく特定ものづくり基盤技術に、デザイン開発に係る技術を追加したところであります。これに基づきまして、平成二十八年度予算案に盛り込んでおります戦略的基盤技術高度化・連携支援事業におきまして、中小企業、小規模事業者のデザイン開発技術の高度化を支援していくことにしております。

 さらに、人材育成については、先ほど申し上げましたように、知見を有するOB人材を指導者として育成、派遣するほか、技術、技能を向上させるための研修の受講等を支援しているところでございます。

井坂委員 今おっしゃったのは、実は今申し上げた話とは余り関係のない話だと思います。いろいろやっていますやっていますで答弁されるのはいいですけれども、では、もうそれで十分なのかといったら、まさに昨年末報道されたように、結果が全く出ていないわけでありますから、きちんと正面から、この非IT・無形投資、投資そのものをしっかり税制やあるいは補助金で後押ししていくということに取り組んでいただきたいというふうに思います。

 もう一点、これは日本の特徴なんですが、普通、諸外国は、生産性が上がれば実質賃金もそれに伴って上がっています。日本だけが、非正規の問題等々もあって、生産性が上がっても実質賃金が上がらないという特異な状態になってしまっている。

 私は、ここは、生産性向上プラス賃上げ、これを両方セットでやることに動機づけをするべきだ、税制、補助金などでインセンティブ、動機づけをすることが有効だと考えますが、御所見はいかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 実質賃金においては、ただ、知っておいていただきたいのは、一昨年消費税を三%引き上げましたから、この三%というのが結構きいているということは押さえておいていただきたい、こう思う次第でございます。

 この三%を入れても、先ほど申し上げておりますように、総雇用者所得の実質賃金については上がってきているということは申し上げておきたいと思います。

 今おっしゃったように、当然、生産性を上げていく、生産性を上げていくと同時に、もちろん、いい人材を集め、そして生産性が上がっていく中において成果として実感できるように賃金が上がっていく、これは相乗効果でいい結果を生んでいくのではないか、私はこう思うわけでございます。

 本来、賃金を上げるか上げないかは経営者の判断でございますが、政労使の仕組みで賃金を上げることができた経験を生かしながら、各地域においても、そうした仕組みをつくりながら賃金が上がっていく、そしてまた、生産性も上がる中においてさらに賃金が上がっていくということを実現していきたいと考えております。

井坂委員 やはり、経済を本当によくしようと思えば、生産性を上げていく、同じ人が同じ時間働く中で、より多くの価値あるものを、しかも、ドルベースで見た、世界から見てきちんと高く買ってもらえる価値のあるものをつくっていく、これが端的に言って生産性を上げるということです。

 ここができないまま、国内の円建てでのGDPが上がった下がったとか、名目の賃金が上がった下がったと言っていても、これはやはり、長期的には、日本の経済が成長している、日本の一人当たりの稼げる力が強くなっているということにはならないというふうに私は思いますから、正面から、ドルで見てもちゃんとGDPが伸びる、ドルで見ても生産性が他国以上に上がる、特に、日本が今弱点になっているサービス業の生産性に集中して上げていっていただきたいというふうに思います。

 最後に、新三本の矢と、そして長時間労働規制についてお伺いをいたします。

 今、三本の矢が、いつの間にか答弁では三つの的というふうになっています。私は、これは別にやゆするつもりはありません。GDP六百兆円、出生率一・八、あるいは介護離職ゼロ、これは手段ではなくて目標ですから、矢というよりは的と表現した方が適当だというふうに私も実は思います。

 ただ、こうなってくると、では、その的を射抜く手段である矢は何なのかということがとても大事な問題になってきます。矢は何なのか。午前中議論があった、三世代同居、木造の、トイレが二つある家をつくる、こういう小粒な矢では私はいけないというふうに思っています。

 秋の予算委員会で、私は、長時間労働規制が、いわゆる第二の的、出生率一・八にもどんぴしゃできくし、第三の的、介護離職ゼロにもどんぴしゃでききますよ、長時間労働規制をやりませんかというお話をやりました。

 きょうの議論の中で、この最後のパネル、資料五をごらんいただきたいんですけれども、このグラフ、本当に一目瞭然であります。労働時間が短い国ほど生産性が高い。私、いろいろなグラフを見てまいりましたけれども、ここまで直線にきれいにぴしっとそろう相関グラフというのはなかなかありません。それぐらいはっきりとした相関があるというふうに思います。これも踏まえると、まさにGDP六百兆に向けても、長時間労働規制というのはどんぴしゃできいてくる政策ではないかと思います。

 三つの的を同時に射抜く最強の矢の一つではないかと私は思いますが、長時間労働規制をなぜやらないのか、なぜ御検討いただけないのか、総理に最後にお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 長時間労働を是正するとともに多様で柔軟な働き方を進めていくことは、今おっしゃったように、三本の的を射抜いていくことに十分に資するだろう、つながっていく、私もそういうふうに考えています。

 昨年十一月に取りまとめました「「ニッポン一億総活躍プラン」に向けて検討すべき方向性」においても、長時間労働を是正していく、テレワークやフレックスタイム制などによる多様で柔軟な働き方の推進といった、働き方改革の推進を盛り込んだところであります。時間を短くしていくためにも柔軟な働き方は必要だということは強調しておきたい、こう思うところでございます。

 ことしの春に取りまとめるニッポン一億総活躍プランでは、この働き方改革などの個々のテーマを新三本の矢として一体的に統合し、強力に推進していきたいと考えております。

井坂委員 流動化の前に、やはり外枠のしっかりした規制をしないと、私はもんじゃ焼きによく例えるんですけれども、周りのダムをつくってから流動化させないともんじゃ焼きはえらいことになりますので、正面から長時間労働を規制する法律を、民主・維新で今国会に提出をいたします。建設的な対案でございますので、ぜひ正面から検討いただけますようによろしくお願い申し上げまして、私の質疑を終わります。

 本日は、どうもありがとうございました。

平沢委員長代理 これにて枝野君、山井君、柿沢君、大串君、階君、玉木君、大西君、西村君、緒方君、福島君、井坂君の質疑は終了いたしました。

 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 北朝鮮は、一月六日、水爆実験を実施したと発表いたしました。北朝鮮による四度目の核実験の強行は、地域と世界の平和と安定に対する極めて重大な逆行であります。

 北朝鮮の核開発の放棄を求めた国連安保理諸決議、六カ国協議の共同声明、日朝平壌宣言に違反をする暴挙であり、日本共産党は厳しく糾弾するものであります。

 そこで、まず、岸田外務大臣。

 北朝鮮は、二〇〇五年の九月の六カ国協議の共同声明で、ともかくも核兵器の放棄に合意はしていた。にもかかわらず、二〇〇六年に核実験を強行しました。その後、前向きな合意や動きもありましたが、二〇〇九年に二度目の核実験。それから、ミサイル技術を利用したいわゆるロケット、これを二度にわたって発射して、二〇一三年に三度目。そして今度であります、核実験を強行した。

 北朝鮮は、何度も何度も合意を裏切ってきた。今度こそ、新たな国連安保理決議を含めて、北朝鮮に核兵器を放棄させる実効ある措置が必要ではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

    〔平沢委員長代理退席、委員長着席〕

岸田国務大臣 北朝鮮によるたび重なる核実験、これは、我が国の安全にとって大きな脅威であると同時に、国際社会にとっても共通の脅威であり、そして、御指摘のように、六者会合共同声明、さらには国連の安保理決議、こうした数々の決議や声明にも反するものであり、NPTを中心とする国際的な核不拡散の枠組みに対する重大な挑戦であると認識をいたします。

 国際社会としてしっかりこれに対応していかなければならないということで、我が国が中心になりまして、国連安保理の緊急会合を招集してもらい、早速、プレスステートメントが発出されたところであります。

 あわせて、日本としましては、韓国あるいは米国と首脳電話会談、外相電話会談、こういったものを行い、日米韓の連携もしっかり確認したところであります。ぜひ、北朝鮮に対しまして、国際社会と連携しながら、強いメッセージを発出しなければなりません。

 国連の安保理におきましても、新たな安保理決議に向けての新たな措置を開始することがプレスステートメントの中で表明されています。ぜひ、強い決議を迅速に採択することが重要だと考えます。

 こういった取り組みをしっかり進めていきたいと考えます。

笠井委員 新たな措置も含めてという話がありましたが、この問題を解決しようと思えば、粘り強く、やはり対話による解決しかない。何としても、北朝鮮に核兵器を放棄させるための話し合いのテーブルに着かせる必要がある。

 そこで、岸田大臣、そのためには、中国を含めた国際社会が一致して実効ある制裁措置を行うことが必要だと思います。その制裁は、制裁のための制裁ではなく、あくまでも北朝鮮を対話のテーブルに着かせるために置かれるべきだと思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。

岸田国務大臣 北朝鮮に対しまして自制を求め、そして、国連の安保理決議、六者会合の共同声明、こうしたものをしっかりと遵守させる、こういった方向でしっかりと国際社会と連携をしていかなければならない、ただいま申し上げたとおりであります。

 我が国としましても、こうした取り組みをしっかりと国際社会とともに進めると同時に、対話と圧力の方針のもとに、北朝鮮に対しまして、さまざまな諸懸案、核ですとかミサイルですとか拉致、こうした諸懸案の解決に向けた、意味のある対話に応じるようにしっかりと働きかけていく、こうした姿勢も大変重要だと認識をいたします。

笠井委員 昨年十一月に日中韓の首脳会談がソウルで行われました。安倍総理が出席されたと思うんですけれども、この中で、総理と李克強首相、それから朴槿恵大統領の間で北朝鮮の核問題についてどんな認識の一致を見たか、お答えいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 突然の質問でございますので、正確にお答えできるかどうかちょっとわからないんですが、日中韓の首脳会談を行い、その際、日韓、日中、それぞれバイの会談を行ったわけでございますが、それぞれ、北朝鮮の挑発的な行動に対して連携をしながらそれを抑制していかなければならない、このような話をしたわけでございます。

笠井委員 事前にお願いしていたんですけれども。

 今総理が言われたみたいに、日中韓首脳会談ですけれども、そういう話し合いが行われて、この共同宣言を拝見しますと、重要なポイントは、意味のある六者会合を早期再開するということで合意をしたということであります。やはり、北朝鮮との一番適切な対話のテーブルということでいいますと、六カ国協議しかないということだと思うんです。

 この点で、今回の核実験後の米国の動きは注目をされます。ケリー国務長官が、国連安保理や六カ国協議において引き続きパートナー諸国と緊密に協力していく、こう表明をし、カービー報道官も、西側は六カ国協議に立ち戻る意欲を持っている、我々は適切な場は六カ国協議だと確信しているというふうに述べております。

 そこで、総理、やはり今こそ六カ国協議の場に戻して、その場で核兵器を放棄させる、そのために国際社会が一致結束して、北朝鮮は対話の場に戻れと強く迫っていく、これが何よりも大切だと思うんですが、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 まず、六者会合の枠組み、これは北朝鮮に建設的な対応を促すために重要な枠組みであると認識をいたします。

 ただ、日中韓の共同声明にもありましたように、建設的な議論が行われなければなりません。ぜひ、こうした建設的な議論に北朝鮮が参加するよう、しっかりとした環境整備を行っていかなければならないと考えております。

 そして、そのためには引き続き各国との連携が重要であると認識をしておりますが、その中で、十六日に東京で日米韓次官級協議を行うことを今予定しておりますが、それに先立って、十三日にソウルで日米韓六者会合首席代表者の会合、こうした会合も予定をしております。

 ぜひ、建設的な、前向きな議論が行われるような環境はこれからしっかりつくっていかなければならないと考えます。

笠井委員 先ほど外務大臣も、意味ある対話と。そして今、建設的な、前向きなという話もあったんですが、そういう意味では、北朝鮮の核問題をめぐって、先ほど総理ともありましたけれども、共同声明で、日中韓で、意味ある六者会合の早期再開ということで合意しているわけですから、解決の方法は対話ということでやっていく必要がある。アメリカもそういう態度だ。ホワイトハウスの報道官も、六日の日に、軍事的選択肢もあるのかと問われて、外交的解決ということを強調しております。

 北朝鮮が軍事なら日本も軍事で対応となると、軍事対軍事の悪循環に陥るだけで、一番危険な道になっていくと思います。相手に軍事力増強の口実を与える、そういう意味でも安保法制というのは廃止こそ重要だということを強調しておきたいと思います。

 次の問題です。

 パリの同時多発テロの事件から二カ月になります。アメリカ主導の有志連合は、過激派組織ISに対する空爆を初めとした軍事作戦を強化しようとしております。

 安倍総理は、一昨年の九月、有志連合の空爆について、国際秩序全体に対する深刻な脅威である過激派組織ISが弱体化して壊滅されることにつながることを期待する、そういう立場を明らかにされました。そういう立場は、総理、今日も変わらないのでしょうか。

安倍内閣総理大臣 ISILにおいては、まさに国際社会の脅威となっているわけでございます。そしてまた、多くの難民が発生する原因の一つともなっているわけでございます。

 その中で、多くの国々がISILに対して対応をとっているわけでございますが、その中の空爆を行っている有志連合に対しましては、我々は支持を表明しているわけでございます。

 同時に、周辺国の支援、難民支援等も通じまして、日本としての貢献も行っているところでございます。

笠井委員 空爆の支援ということを言われたわけですが……(安倍内閣総理大臣「いや、支援じゃない。支持」と呼ぶ)支持ということを言われたわけですが、空爆強化などの軍事作戦の強化がISの弱体化とか壊滅につながる措置だというふうに認識されているかどうか。その点はいかがですか。

安倍内閣総理大臣 もちろん、空爆のみでこうした問題が解決するわけではないわけでございますが、イラクにおきましても、またシリアにおきましても、空爆によってISILの支配地域が縮小していることは事実であろう、こう思っております。

 我々は、空爆を支援ではなくて、空爆をしている有志連合を支持しているわけでございます。

笠井委員 空爆強化を今やっている有志連合ということで、それを支持するということ自体、私は重大だと思うんですけれども。

 オバマ大統領も、昨年八月の演説の中で、我々は十年以上たった今なおイラクへの侵攻の結果とともにいる、アルカイダはISへと進化したというふうに認めております。

 つまり、ISというのはいわばイラク戦争の結果生まれたということが共通して世界的にも言われているわけですが、総理もそういう認識を持っていらっしゃいますでしょうか。

安倍内閣総理大臣 ISILの誕生につきましてはさまざまな議論があるわけでございますが、いわばスンニ派の過激派組織として、アルカイダよりもさらに過激化し、そして過激な思想のイスラムの支配を目標に世界から人員を募っているわけでございます。

 国際社会としては、中庸が最善との考え方のもとに、穏健なイスラム国を支援しつつ、過激な思想が蔓延しないような努力も重ねていかなければならない、こう思っております。

笠井委員 イギリスのブレア元首相も昨年十月には、アメリカのCNNの対談番組で、イラク戦争がISを生み出す第一要因になったということを認めているわけですが、世界のテロによる死者というのを見てみますと、イラク戦争の前の二〇〇〇年には三千三百六十一名だったわけですが、それが二〇一四年には三万二千七百二十七人ということで、十倍に増している。

 つまり、イラク戦争によってそういう事態が起こりながら、テロが戦争ではなくせないどころか、むしろテロが世界に拡散をしたという事態が現実にはあると思うんですけれども、そういう事実を総理はお認めになるでしょうか。

岸田国務大臣 ISILが登場した経緯につきましては、先ほど総理から答弁させていただきましたように、さまざまな背景があり、さまざまな要素があり、そして議論があると思っています。

 ただ、こうした過激的な暴力主義の背景には、やはり貧困ですとか格差ですとか、こうした大きな社会的な問題が存在すると認識をしております。中東を初めとするこうしたさまざまな暴力が発生している地域において、今申し上げたようなさまざまな社会的な背景があるということを我々は忘れてはならないと思います。

 そういった部分に日本としてみずからの強みをしっかり発揮できる貢献を行い、こうした状態に対して日本としてしっかり国際的な役割を果たしていく、こういった考え方は重要であると考えます。

笠井委員 現実を見れば、戦争がテロとの悪循環をもたらしてきた、それだけだということは明らかだと思うんですが、ところが、空爆作戦が続いて、強化されている状況にあると思うんですね。

 オバマ大統領は、昨年十二月に、有志連合がイラクで五千八百回、シリアで三千回を超える空爆を実行してきたことを明らかにいたしました。イギリスにある国際人権団体によれば、空爆が開始された二〇一四年以降、四千人以上の民間人が巻き添えで死亡している。空爆などの軍事作戦の強化というのがそういう意味では憎しみの連鎖を生んで、事態を悪化させるだけではないか、泥沼化させるだけではないかということだと思います。

 そういう点では、本会議の質疑で総理もお認めになりましたが、テロ根絶のためには何が必要かという点では、一つは、国連安保理決議に基づくテロ組織への資金供給の遮断などテロを直接抑える対策をする、そして二つ目に、今外務大臣も言われましたが、背景あるいは温床になっていると言われた貧困の問題とか政治的、宗教的差別の克服、三つ目には、シリア、イラクの内戦の政治的、外交的な解決を図る、そして四つ目にシリアの難民支援ということで、こういう四点で国際社会の一致結束した行動がどうしても必要だと思います。日本こそそのイニシアチブを発揮すべきだということを強く言いたいと思います。

 そこで、問題は、日本がその役割を発揮しているかということであります。

 有志連合の参加国は欧米や中東など六十カ国以上に及んでいて、日本も含まれている。昨年十二月九日のアメリカのカーター国防長官の上院軍事委員会の公聴会での発言によると、有志連合による軍事作戦に関して、約四十カ国に対して協力を要請したというふうにあります。そして、偵察のための航空機の派遣や武器と弾薬の提供を要求したというふうに、上院の軍事委員会でカーター国防長官は説明をしております。

 そこで、中谷防衛大臣に伺いますが、昨年末、十二月十日の記者会見で、大臣は、そういう日本への協力要請はなかったのかということを問われて、答えを差し控えたいというふうに答えられましたけれども、なぜ答えを差し控えなければいけなかったんですか。

中谷国務大臣 日米間におきましては、ISILへの対応も含めまして、広く中東や国際情勢について随時意見交換を行っているわけでございます。その中で我が国の立場を米側にも十分説明いたしておりますけれども、その具体的なやりとりにつきましては、相手国の立場もございますので、お答えは差し控えさせていただくということを答弁いたしました。

 ただし、これまで国会でも御説明をしておりますが、我が国は対ISILの軍事作戦に参加する考えは全くなく、そしてISILに対する軍事作戦への後方支援を行うことは全く考えていないということは米側にも申し述べておりますし、また、我が国は、シリア、イラクの難民、避難民の支援、ヨルダンやレバノンといった周辺国への支援、また関係安保理決議の履行を着実に実施しておりまして、今後も、米国を初め各国と密接に連携しつつ、非軍事分野において我が国の強みを生かした可能な限りの貢献を行っていくという考えでございます。

笠井委員 協力要請があったのかなかったのかに対して答えを差し控える、そのことについて今答弁がありました。相手国の立場もあるというふうなことを言われたんだけれども。

 この要請があるなしというのは重要な問題だと思うんですね。空爆する方が支援要請するのが物事の出発点だと思うんですけれども。つまり、政策判断でしないとかということ以前の問題で、要請があったのかないのか、これをはっきり答えるべきじゃないですか、言うべきじゃないですか。

中谷国務大臣 我が国は、米国といろいろな問題で意見交換を行っております。我が国の立場も十分説明をいたしておりますが、その具体的なやりとり等につきましては、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

笠井委員 おかしいですよね。協力要請があったとも言えない、なかったとも言えない。何でなんですか。

 大臣、協力要請はあったけれども断ったのか。参議院選挙もある、国民のいろいろな声もある、反対もあるという中で、参議院選挙後まで要請に対して回答を延ばしたのか。要請を引き受けたけれども隠しているのか。あるいは、協力要請はなかったのか。そういうことが考えられると思うんだけれども、どれですか。

中谷国務大臣 何度もお答えをいたしておりますが、我が国としてはISILへの軍事作戦に参加する考えは全くない、そして軍事作戦の後方支援を行うことは全く考えていないということは国会でも申し上げました。

 また、いろいろと広く意見交換等も行っておりますけれども、我が国の立場を米側にも十分説明いたしております。

 そのときのやりとりとかお答え等、具体的なやりとりにつきましては、相手側のこともございますので、この場で一つ一つお答えをするということは差し控えさせていただきます。

笠井委員 相手側のこともあるけれども、日本側が大事でしょう、日本国民と国会が。日本政府がどうするかということについて、要請があったのか、それを、はっきり断りますと言っているのか。あったのかないのかというのが、まずその前提じゃないですか。相手側のことを考えたって、日本側のことはどうするんですか、国民のことは。国会のことはどうするんですか。相手側があるから日本国民には言わないんですか。

中谷国務大臣 常に米側とはいろいろな情報交換や情報の共有、分析等も行っております。ただし、そういう交渉の中におきましても、我が国の立場や姿勢ははっきりと申し上げているわけでございます。

 そういう間で随時意見交換を行っておりますけれども、その具体的なやりとりにつきましてのお答えは差し控えさせていただきたいと思います。

笠井委員 何で控えるか、全然理解できないですね。

 オバマ大統領は、昨年十二月十四日に声明を発表して、各国に対して一層の軍事的な貢献を求めていると。当然、日本にはそういう法制もあることもわかっているわけですよね。なのに、要請があったとも言えない、断るとも明言できない、あったけれども断ったとも言えない。これは重大だと私は思うんですよ。

 軍事支援をやらないとか政策判断だということを繰り返し国会でも言われたというふうな話があるけれども、中谷大臣自身が昨年の安保法制の審議の中で、要件をさまざま言ったけれども、それを満たせば法的理論としては適用されることはあり得るということをはっきり答弁しているじゃないですか。

 昨年九月に成立した安保法制によって、法律上は有志連合への軍事支援が可能になったということであります。だったら、そういう中で、支援の要請があったのか、あったけれども、法律上できても断るというふうに言ったのか。その辺だって言わないとおかしいでしょう。結局そういうことが可能になったという話が非常に明確になっているという問題だと思います。

 では聞きますけれども、ジブチの問題ですが、中谷大臣に伺います。自衛隊は海外に基地を持っております。防衛省は拠点と言っておりますが、どこにどんな目的でつくったか、答えてください。

中谷国務大臣 まず、ISILの法的評価のお話がありましたけれども、私といたしましては、我が国としてそういう軍事作戦に参加する考えもないし、後方支援を行うことも全く考えないということで、その要件につきましては判断をしていない、そして判断をする必要がないというふうにお答えをさせていただいております。

 次に、ジブチの活動拠点につきましては、日本は海洋国家でありまして、我が国の貿易、輸出輸入等の経済活動にとりまして、やはり諸外国からの、シーレーン、海上交通路の確保というものは必要でございまして、この点について、海賊対策につきまして船主協会とか船員組合などからの要望もありました。

 これにつきましては、平成二十一年、ソマリア・アデン湾に海賊対処のために護衛艦二隻とP3C哨戒機二機を派遣しまして民間船舶の護衛、アデン湾における警戒監視飛行を実施しているわけでありますけれども、このジブチの活動におきまして、P3C哨戒機などの海賊対処行動を効果的に実施するために、平成二十二年七月から整備を開始しまして、平成二十三年六月からジブチの拠点の運用を開始したということでございます。

笠井委員 今、軍事支援しない、政策的にはやらないというふうな話を最初に言われましたけれども、これにありますけれども、去年、六月四日の参議院の会議録ですが、この中で、ISIL空爆などへの後方支援を行うことはあるんですかと聞かれて、いろいろやりとりをやっていますよ。だけれども、その結果として、大臣自身が、要件を言った上で、要件を満たせば法的理論としてはこれに適用されることはあり得ると言っているじゃないですか。

 ごまかしちゃだめですよ、今からそんな。強行した法律の話を、はっきり答弁したことを、やっていなかったみたいなこと、だめですよ、そんなのは。そう言ったでしょう。

中谷国務大臣 その点につきましては、要件となる国連決議の存在を前提とした上で、法的には、国際社会の平和、安全を脅かす事態に関して、その脅威に対して国際社会が国連憲章の目的に従って共同で対処していること、そして我が国が国際社会の一員として主体的かつ積極的に寄与する必要があると認められたということ、これは法律に書かれております。法律に定めた要件を満たすか否かということについては、さらに事前に国会の御承認をいただく必要があるということでございます。

 そのときの答弁でも、御確認いただきたいんですけれども、政策判断としてISILに対する軍事作戦に参加する考えはないし、ISILに対する軍事作戦に対して後方支援を行うことは考えていないために、このような活動に対して平和安全法制の要件を満たしているかの判断はしておらず、またその判断をする必要はないというふうに答弁をしたはずでございます。

笠井委員 今認められたみたいに、法的には軍事支援ということはあり得る、できると、要件を満たせばですよ。今言われたように、できると言ったんですよ。そういうふうに言われたわけですね。

 その上で、政策判断という問題だけれども、法的にはこれができる仕組みがつくられたという問題なんですよ。それを実際やるかどうかというのは、やるつもりはありませんと今こうやって政府は答弁されているけれども、そういう問題としてあって、アメリカの側が、日本にそういう法律ができた、だからこの法律を使って支援してくださいねというふうに言ってきた場合に、法律上できませんと言うことはできなくなった。

 政策判断だったら、そこをよく考えてくれと言われるようなやりとりになってくる話なんですよ。ところが、その前提になる、支援要請があったかどうかも言わないというのが今の話なんですよ。だから、政策判断をする以前に、この安保法強行後にそういうことをアメリカ側が言ってきたかどうか、そのことを言ってくださいというのに、相手のことがあるから言えないというのが今の日本政府の立場というのは、本当にとんでもないと言いたいと思います。

 そこで、ジブチの問題ですが、今大臣からありましたが、ここは自衛隊の唯一の海外拠点という海外基地であります。アフリカ東部にあるということでありますけれども、今大臣から、海賊対処のためということでこれを置いたという話がありました。

 防衛省の提出資料によりますと、この地域で発生した海賊事案、拠点を開設した二〇一一年、二百三十七件ということでありますけれども、それから二〇一四年には十一件と、年間で事案が激減をしているということであります。

 では、二〇一五年も終わりましたが、二〇一五年については何件海賊の事案があったか。これはいかがですか。

中谷国務大臣 同地における海賊の数のお問い合わせでございますけれども、平成二十四年以降、海賊事案の発生件数は減少しておりまして、平成二十五年及び二十六年は年間十件台になっております。昨年は、速報値ベースでゼロ件ということになっております。

 しかし、これで活動がなくてもいいということではございません。一方で、海賊の疑いがある不審船の事案は多発をいたしておりまして、平成二十五年が百四十五、二十六年が九十四、二十七年は三十八件ということで、こういった海賊問題の根本的な原因であるソマリア国内の貧困等も依然解決をしていないということですから、海賊による脅威は引き続き存在いたしておるというふうに判断をいたしております。

笠井委員 不審船と海賊と一緒ですか。今、ちょっとごちゃごちゃな話をしているんじゃないの。そこまで広げて、いろいろなことがあったらやるんですか。

中谷国務大臣 最初の御質問は、海賊事案が発生した件数でございます。不審船というのは、そういった活動が起こるかもしれないことを含めて不審な船舶の数でございます。

笠井委員 世界じゅうに不審な船というふうに言われたら、何だかわからないのがいっぱいある可能性があるわけですね。そうしたら、その限りは自衛隊がどんどん出ていってやるという話になっちゃいますよ。

 海賊対処のためにやるといって置かれてやってきた海賊事案自身が、今防衛省が言った速報値で去年はゼロになった。だったら、そうなったときに、このまま置き続けるのかどうか、あるいはどうするのかということを考えるのが当然なのに、不審船がまだいっぱいあるかもしれない、海賊になる可能性もあるというようなことで置き続けるという話は、ちょっとおかしいんじゃないかと思うんですよね。

 もう海賊事案がないのに、なぜ拠点を置き続けるのか。不審船があるからという理由だったら、もっといっぱい出さなきゃいけないですよ、拠点をつくらなきゃいけないですよ、世界じゅうに。

中谷国務大臣 まず、このような警戒監視や対処を行っていることが海賊発生の抑止になるわけでございます。

 もう一点は、我が国だけでこのような海賊対処をやっているわけではなくて、ゾーンディフェンスといいまして、韓国も、イギリスまたオーストラリアも、世界各国がこの地域を担当しましょうということで割り振りをしてゾーンディフェンスもやっていますし、それぞれ警戒監視も分かれてやっているわけでございます。

 それだけではありません。民間船舶の自衛の措置とか、民間武装警備員による乗船の警備等も行っておりまして、これらによって海賊の発生件数は低くなってきているわけでございますが、まだまだ海賊の疑いがある不審船事案は多数発生をいたしておりまして、そもそもこの原因というのが、ソマリア国内の貧困等も決して解決をしていないということで、海賊による脅威、こういうものは依然として存在し、また世界各国もこれの未然防止のために活動しているということでございます。

笠井委員 この地図をごらんいただいて、ジブチの拠点の西には、自衛隊がPKO活動中の南スーダンがあります。北には、米国などが対ISの空爆作戦をやっているシリア、イラクがあります。さらには有志連合が空爆しているイエメンとかというのがあって、そしてアデン湾のところで先ほどから言っている海賊対処をやっているという話なんですけれども、今、海賊ということでは、事案自体が大幅に減ってゼロになったという経過の中で、大臣、隠しちゃいけないですよ、平成二十五年、二五防衛大綱の中ではっきり言っているんじゃないですか、海賊対処以外にもジブチ拠点を一層活用しようと。それが安倍政権ということでしょう。書いてあるじゃないですか。

 防衛省は、去年秋から自衛隊のジブチ拠点について新たな調査研究に着手したということでありますが、二五大綱に基づいてやっている。大臣に伺いますけれども、その目的、期間、対象国、調査研究の概要はどういうものでしょうか。

中谷国務大臣 これは別に、隠してやっているわけではございません。

 平成二十五年十二月に策定された防衛大綱に「国際平和協力活動等を効果的に実施する観点から、海賊対処のために自衛隊がジブチに有する拠点を一層活用するための方策を検討する。」とされておりまして、平成二十七年度予算を用いて、諸外国が海外の拠点を活用している事例について調査するために、委託研究を実施いたしております。

 この委託研究では、米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スペインを調査対象国として、これらの国の中東・アフリカ地域における拠点の用途、規模等について情報を収集しておりまして、本年三月までに調査報告書の提出を受ける見込みでございます。

 そして、防衛省としましては、この調査研究の結果を参考に、ジブチ拠点の具体的な活用のあり方について検討を進めていく考えでございます。

 なお、この活用におきましては、海賊対処だけではなくて、現在、南スーダンPKO、UNMISS派遣部隊への物資の輸送、政府専用機の運航、国際緊急援助活動に際しての中継地としてもジブチの活動拠点を利用しております。そして、中東・アフリカ地域における自衛隊のより迅速かつ効率的な活用のために、同拠点の有用性、重要性は非常に高まっております。

 ちなみに、これは我が国だけではなくて、中国も海賊対処活動等の拠点に使っておりますし、また韓国、フランス、イタリアといった国々もこのジブチを拠点としているということでございます。

笠井委員 隠してやっているというんじゃなくて、大綱ではっきり書いて、海賊対処以外にも活用する、一層やるという話を進めているんでしょうという話に対して、それをわざわざ説明しなかったから、だからそのことを言ったわけですよ。

 今、具体的にやっているという話でした。

 この期間についてですが、確認しますが、昨年九月何日からことし三月何日まで、そういう調査を指示して今やっているんですか。

中谷国務大臣 この調査につきましては、平成二十七年、昨年九月三日に、約千六百万円にて民間企業と契約をいたしております。

 これの調査研究の結果が出ましたら、さらに具体的な活用についての検討を進めていくということになります。

笠井委員 九月三日といえば、国会で安保法制の審議が緊迫の真っさなかでありました。そんな時期から、ことし三月二十五日というのはこの文書にも書いてありますけれども、まさに主権者の、国民の知らないところで、法律施行直前のころまで、施行を見越した調査に着手しているということであります。

 国際平和協力活動等を効果的に実施する観点から一層活用するという話がありましたけれども、大臣、このジブチの拠点を、国連平和維持活動、PKOのほかに、安保法制によって可能になった対テロ戦争等のためにも活用するということでしょうか。

中谷国務大臣 この調査研究は昨年九月に契約しましたが、もう既に防衛計画の大綱にも書かれておりまして、これの活用方法については検討を進めるということは公言をした中で、今調査をしているということでございます。

 したがいまして、用途につきましては、平和安全法制が成立する前からこれは大綱に基づいて実施をしているわけでございまして、平和安全法制に伴う用途拡大等については、現在のところ、そのことまで考えているわけではございません。

笠井委員 大臣自身が昨年一月にジブチを視察されましたが、その中で、各国はテロ対策に懸命に取り組んでいる、日本も積極的にかかわれるように検討する必要があると現地で言われました。

 今、安全保障法制成立前から進めていると言われたけれども、成立した中で今調査をやっていて、そういう中でいろいろな活用の検討という話になってくる。そうすると、対テロ戦争等にも使うということもあるのか、ないとはっきり言えるのかということはどうですか。

中谷国務大臣 私がジブチを視察しましたのは昨年一月でございまして、平和安全法制が成立する前でございます。

 テロ活動は非常に今世界各地で発生をしておりまして、これは、我が国の安全保障また海外における邦人の安全等に全く関係がないということではございません。やはり、国家としてこういったテロに対してしっかりと対応していく、そういう中で情報の収集やまた分析、こういうことも含めまして我が国としてもやるべきことはやっていく必要もあるというような観点で、私が現場におきまして状況を見て発言したということでございます。

笠井委員 やるべきはやっていく中に、つまり、今後の活用ということについて言うと、対テロ戦争についても活用するということも当然考えてくる、そういうことですか。

中谷国務大臣 テロというのは、いかなる理由があろうとも正当化されません。だから、国際社会として協調してこれに対応していくという必要があります。テロを恐れて諸外国と協力しない、かかわらないといたしますと、国際社会の足並みを乱すのみならず、日本はテロに屈しやすい国だというイメージを与えて、かえって我が国に対するテロを助長することになりかねない。

 また、今、国外に千八百万人の日本人が出かけていく時代になっておりまして、やはり、日本人がテロに巻き込まれるリスクを回避する必要がございます。

 そういう意味で、こういったテロの危険のある国際社会において我が国としての対応をしていくということは必要ではございまして、我が国の法律の範囲内においてそのようなことも対応する必要があると私は考えております。

笠井委員 我が国の法律の範囲内において対応する必要があるということは、テロ戦争に対してもそういうことで活用することもあるという話になりますね。

 いかなる理由があってもテロは許されない、当たり前ですよ。でも、それに対して国際社会が一致協力してやるのは軍事じゃなくて、さっき議論したような形で、貧困をなくすという問題を含めて一致協力した手だてがやはり必要だということでありまして、今まさに重大なことを言われたと思うんです。

 ジブチの拠点というのは、大臣が今言われたように、既に海賊対処以外にも活用されている。南スーダンのPKOに当たっても、物資を運ぶなどをやっているというふうにありました。数字で聞いたら、南スーダンに対しては経由地として五回使っているという話も聞きましたが、要するにそういう形で既に活動を広げているというところであります。

 昨年、安保法制の審議の際に我が党が明らかにした河野統幕長の二〇一四年十二月の訪米記録、これには、米軍幹部との会談で自衛隊のジブチ拠点について次のように述べたとあります。ジブチは、これは河野さんが言ったんですね、海賊対処の拠点ではあるが、今後の幅広い活動のためジブチの利用を拡大させたいと考えている、今後は米太平洋軍、米中央軍、米アフリカ軍との連携を強化してまいりたいと。中でも、河野氏は、米アフリカ軍との連携強化を米側に盛んにアピールしております。

 中谷大臣、今回の調査というのは、米国の戦域統合軍と自衛隊との連携強化を目指したということではないんですか。

中谷国務大臣 前の国会で共産党の委員が示した資料、これと同一のものの存在は確認できませんでしたが、その上で、一般論として申し上げれば、ジブチの活動拠点につきましては、平成二十五年末に策定した二五防衛大綱において、「国際平和協力活動等を効果的に実施する観点から、海賊対処のために自衛隊がジブチに有する拠点を一層活用するための方策を検討する。」ということを明記されております。

 このジブチの拠点の一層の活用につきましては、ジブチの地政学的重要性を踏まえつつ、二五防衛大綱に基づいて自衛隊の国際平和協力活動等を効果的に実施していくという観点から検討しているものでありまして、平和安全法制の整備と直接的な関係はないということでございます。

笠井委員 資料の存在をきょう聞いたわけじゃなくて、はぐらかしちゃいけないと思うんですが、今回の調査についてただしているわけです。

 米軍は、全世界を地域ごとに六つの統合軍に分けて編成しています。そのうち河野統幕長が挙げた三つというのは、米太平洋軍がアジア太平洋、インド洋、米中央軍は中東、中央アジア、米アフリカ軍は文字どおりアフリカ全域を担当しているということで、この三つを合わせると全世界の半分の地域に及ぶわけであります。

 防衛大臣、要するに、この安保法制によって、これまで事実上制約してきた地理的概念を撤廃して、自衛隊が地球の裏側まで行って、全世界の半分を占める米戦域統合軍などを軍事支援できるようになった、その立場から、自衛隊ジブチ拠点の拡充強化を具体的に検討する、そういうことで今回の調査をやっているんじゃないんですか。

中谷国務大臣 この調査は、お答えしたとおり、安保法案の成立前からやっておりまして、平成二十五年末に二五防衛大綱によって、国際平和協力活動等を効果的に実施する観点から、海賊対処のために自衛隊がジブチに有する拠点を一層活用するための方策を検討するということで始められたものでございます。

 現在、この用途につきましては、世界各国がどのように拠点を活用しているかなど、委託をいたしまして調査いたしておりまして、三月をめどにその報告をいただいてから、それから検討をするということでございます。

笠井委員 成立前からやっているということ自体が極めて重大な意味を持っていると私は思うんです。

 でも、結局、今の調査というのは、成立した中で進行中の調査ですよね。成立前提の話でどれができるかというのが、そういうことが出てくるわけです、当然。そういう検討を当然やるということになる。ごまかしちゃいけないと思うんです。

 今回の調査研究を発注した防衛省の仕様書を見ますと、では、何でこんなことをやるのか。米国、フランス、イタリアが我が国のジブチ拠点に期待する機能、能力を調査すると書いてあるんですね。

 この三カ国というのは、次のパネルですが、ジブチに軍事拠点を持っている有志連合の主要国であります。これがジブチの拠点の様子ですけれども、自衛隊の拠点、もともと米軍基地の中にあったのがこちら側に移りましたが、米軍基地がすぐ隣にあり、フランス軍基地もすぐ隣にあり、こういうところが有志連合の主要国として結局軍事作戦をやっている、テロ作戦をやっているということであります。

 これらの国が自衛隊のジブチ拠点に何をやってほしいかを調査する、わざわざやるというのは、そういうことでやっているんですね。

中谷国務大臣 先ほど、ジブチの拠点がなぜ必要かということについてお話をさせていただきましたが、これはそもそも、海賊対処活動において、自衛隊の護衛艦またP3Cを派遣する上においてやはり拠点というものが必要であるということであります。

 当初は、派遣海賊対処行動航空隊は居住施設として米軍基地を使用しておりましたが、米軍基地の借用はジブチ政府から当面の措置としてのみ認められたものでありますし、駐機場などの活動施設と米軍基地内の居住施設が滑走路を挟んで分離しているわけでありまして、この両施設間を車で移動すると二、三十分かかるという状況で、効率的な部隊運用の観点から支障が生じていたわけであります。この点についてジブチ政府とも交渉をいたしまして、効率的な部隊運用を可能とするために、空港の北西部に活動施設と居住を一体的に整備することといたしました。

 こういう観点で現在活動いたしているわけでございますが、この調査の原点でありますけれども、国際平和協力活動等を効果的に実施する観点から検討をしているということでございます。(笠井委員「いや、だから、相手が何を期待しているか、何で聞くんですかと聞いているんです」と呼ぶ)

 現在、フランスがおり、米軍がおり、イタリア軍も中国軍も最近拠点を設けていますけれども、こういった場におきまして国際平和協力活動等を効果的に実施するにはどうしたらいいかというような観点からも調査をしているということでございます。

笠井委員 私の質問をちゃんと聞いてください。アメリカ軍やフランス軍が日本の自衛隊の拠点に何を期待しているかを調べるといって、何で相手が何をやってほしいかと聞かなきゃいけないんですかと言っているわけですよ。向こうのニーズを聞いているわけでしょう。書いてあるじゃないですか、調査の仕様書に。何でアメリカ軍やフランス軍が日本の自衛隊の拠点にこんなことをやってほしいですということをこちらから御用を聞いてやるんですか、それを聞いてニーズに応えてやろうという話なんじゃないんですかという話ですよ。

中谷国務大臣 この調査検討の目的というのは、防衛大綱に書いておりますけれども、自衛隊の国際平和協力活動等を効果的に実施していくという観点から検討いたしております。

 そういう場合におきまして、自衛隊の活動等におきましては、基地の中に米軍もあればフランス軍もある、またイタリア軍もある、そういう中で、日本の国際協力活動においてそういった活動を効果的にやっていく上におきましては、そういった相手国の状況等も、意見を聞くということは、私は調査としてはあってしかるべきことではないかと思っております。

笠井委員 軍事作戦をやっている軍隊に対して日本が何をやってほしいかと向こうの意向を聞く、ニーズを聞くという話ですからね。

 アメリカは、二〇〇一年九月十一日の同時多発テロ事件以降、有志連合を主導して対テロ作戦をやってきたのは周知のとおりですが、アフリカ大陸では、米アフリカ軍のもとに地域統合任務部隊をつくって、自衛隊拠点に隣接するこのレモニエ米軍基地を拠点にして、無人攻撃機を使った空爆などの軍事作戦を展開しております。この部隊の任務は、地域で活動する国際テロリスト集団を発見し、その活動を妨害し、究極的には撃滅することだというふうに書いてある。これは防衛省の資料にもあります。

 したがって、そういう中で今回の調査研究というのがやられていて、相手方の日本に何を期待するかのニーズを聞くというのは、こうした米国などのニーズに応えて、安保法制の成立を踏まえて、自衛隊のジブチの拠点をいかに活用するか、そのためにやっている、こういうことじゃないんですか。

中谷国務大臣 何度も申し上げますけれども、これの目的は大綱に書かれておりまして、「国際平和協力活動等を効果的に実施する観点から、海賊対処のために自衛隊がジブチに有する拠点を一層活用するための方策を検討する。」とされております。

 こういう中で、より根拠のある分析を実施する必要があるために、専門的な見地にすぐれた外部の機関による分析調査に基づく情報を得るということでありまして、主に目的はPKOとか災害時における自衛隊の活動でございます。

 繰り返しになりますけれども、ISILに対する軍事作戦に参加するというような考えもないし、後方支援を行うことも全く考えていないということでございまして、この目的というのは、国際平和協力活動等を実施するための調査でございます。

笠井委員 考えていないと言いながら、軍事作戦をやってテロ作戦をやっている米軍などの意向を聞く、要求を聞くという話ですよね。

 それで、今繰り返し目的を言われるんだけれども、目的は、国際平和協力活動等を効果的に実施するためという話でしょう。等ですよ、だけじゃないということを言いながら、そして、海賊対処をやってきたけれども、それだけじゃなくて、より一層活用するという話を目的にして、そういう中で、米軍やフランス軍などが何を日本の自衛隊の拠点に期待するかを聞いて、その活用を考えていくというわけですから、結局のところ、テロ作戦への軍事支援は考えていないと言うけれども、実際は着々と、そういう作戦にどう応えていくかということで検討、具体化を進めているということだと思うんですよ。そういうことじゃないですか。

 では、今大臣は、ジブチ拠点の活用はこれまでもずっとやってきた、検討をやってきたと言われましたが、確かに初めてではありません。昨年の安保法制成立以前、あるいは一昨年の七月一日の閣議決定のはるか前から行われていた。私も驚くべきことだと思います。

 統合幕僚監部が発注をして、統合幕僚学校の委託研究の名目で二〇一四年三月にまとめられた文書がここにございます。「主要国の対アフリカ戦略に基づく投資・支援に関する調査研究」と題する百八十ページに及ぶものであります。

 大臣、こういう調査研究がやられていたということはそのとおりですね。

中谷国務大臣 二五大綱というのは平成二十五年十二月に策定されまして、そこに「拠点を一層活用するための方策を検討する。」と明記をされておりますので、それに基づいて調査研究を行うということでございます。

笠井委員 この防衛省の仕様書には、こっちの既にやったものの結果が出た調査研究の目的について、我が国がアフリカ諸国に対して行う国際平和協力等に関する自衛隊の関与の方向性を導き出すための研究に使うというふうに書いてあります。調査研究項目には、米国、フランスなど主要国の対アフリカ戦略、我が国の対アフリカ支援策を挙げています。

 防衛大臣として、こうした調査研究の実施をされた、そういう事実があるということで中身も承知しているわけですか。

中谷国務大臣 今御質問にあった資料でございますが、これは、通告をいただいておりませんので、いかなる資料か即答できないわけでございますが、現に南スーダンにおきましてPKO活動を実施しております。これは世界各国と、南スーダンの国内の国づくり、また民生支援などのために非常に立派な活動をいたしておりまして、積極的平和主義のもとに、日本も世界や地域の平和と安定のためにやるべきことはやっていくべきでもございます。

 そういう面におきまして、このジブチの基地がこういったPKO等で国際平和活動等に有効に活用できるかどうか、そういう見地で今調査をしているということでございます。

笠井委員 今やっているんじゃなくて、これはやったものです。もう結果は出ています。通告していないと言うけれども、しました。

 この文書には、自衛隊が果たすべき役割として、「アフリカの要所に自衛隊等が利用する国際後方支援拠点を設置し、各種活動の利便性を図る必要がある。そのための候補地としては、現在海自部隊が海賊対処のために使用しているジブチの活用が最適」とまで明記をされています。具体的機能として、港湾施設の設置、輸送機発着のための滑走路の新設、必要な弾薬や物資、救難物資の備蓄、部隊の展開、訓練、休養等のための施設の設置等が必要というふうに事細かに列挙して、自衛隊の役割強化を求めています。

 これは間違いないですね。

中谷国務大臣 事実、その資料についての通告がございませんので、事前に読んでおりません。

 しかし、事実としては、南スーダンのPKO、UNMISSでもう数年にわたって活動が続けられているわけでありますが、この活動の安全性また効率性を図るために物資を運んだり人員の移動が必要でありまして、南スーダンのUNMISSの派遣部隊への物資の輸送、また政府専用機の運航、国際緊急援助活動に対しての中継地としてもジブチの活動拠点はもう利用いたしております。

 その上で、中東やアフリカ地域における自衛隊のより迅速かつ効果的な活用のために、この拠点の有用性、重要性が非常に高まっているということで、それを踏まえて平成二十五年十二月に防衛大綱が作成されまして、これの方策を検討するとされているわけでございますので、こういった理由によって今調査研究を行っているということでございます。

笠井委員 私、ジブチの拠点の活用研究について、研究調査については質問すると、明確に先週の金曜日に通告をいたしました。その中で現在進行中の問題についても聞くというふうに言いましたけれども、通告をしていないなんて言われて、今、私がこういうことが書いてありますと言っているのに、答えられないと。だめですよ、これでは。せっかく予算委員会をやっているのに。

中谷国務大臣 文書に書かれている記述に対する御質問でございます。

 やはり正確にお答えするために、こういう文書について、こういう質問があるというふうにお答えをいただかなければ、たくさん文書はございますので、当方としてもお答えをしかねます。事前にその文書について質問するというふうに御通告をいただきたいと思います。(発言する者あり)

竹下委員長 中谷大臣。

中谷国務大臣 作成した書類の項目についての御質問でございました。

 一つ一つの項目までやはり読み込んだ上でなければお答えしかねますが、御趣旨は、もう既に、やはりこういったPKO等の利用や、また国際貢献の拠点としてジブチは非常に優位性があるということで、防衛計画の大綱の見直しの際にわざわざこのジブチの活用を書き込みまして、そのための調査研究を行うとまで明記をいたしておりますので、防衛省といたしましては、こういった書類の分析等に基づいて、ジブチ基地の優位性はしっかりと認識した上で調査研究をしているということでございます。

笠井委員 さっきから何度聞いても、同じことしか言わないんですよ。目的はこれで、いろいろやっていますということしか言わないんですよ。

 私は、だから具体的に、だって大臣自身が今回初めてでなくて前からやっていると言われたんだ、前からやっているあなた方の委託研究の結果について、こういうものがあるでしょうと。しかも、こういう問題については、先週の金曜、連休前に、夜遅くなりましたよ、いろいろあったみたいだけれども、ちゃんとこういうことをやりますといって、私も読み込んで、ちゃんと自分でやっているんですよ。防衛省だってそんなのは、ちゃんと読み込んで、どういうことがあるのかということぐらい考えて臨むのが当たり前じゃないですか。

 私、このまま委員会できないですよ、これ。委員長、ちゃんと理事会で協議してください。

竹下委員長 後ほど、理事会で協議をさせていただきます。(発言する者あり)

 それでは、もう一度中谷大臣に答弁をしていただきます。

中谷国務大臣 その文書の名前は何でしょうか。

 項目まで質問されるなら、その書類の名前、そしてその項目についての御質問をいただかなければお答えをしかねます。お手元にその資料がありますけれども、その資料の名前とか項目についての御質問がなければ、すぐに正確にお答えをしかねるということで。

 事前にその書類の名前をお知らせいただいたんでしょうか。私は聞いておりません。(発言する者あり)

竹下委員長 理事会で後ほど協議をさせていただきます。

笠井委員 調査研究についてはちゃんと聞きますということを言いました。その中で、今進行中のことについても聞くと言ったんですからね。

 この問題は、そういうことが書いてあるだけじゃなくて、中期的には、我が国の中東・アフリカ戦略の拠点としての整備をも視野に入れて、長期的には、ジブチの拠点としての本格的な機能拡充、大規模な自衛隊部隊の展開、アフリカ国際安全保障司令部を設置して、日米が対等に共同作戦を遂行し得る段階を目指すというふうに踏み込んでおります。

 この調査研究というのは、防衛省に対して、自衛隊ジブチ拠点を米アフリカ軍を支援するための国際後方支援拠点にする、こういう構想、計画を提案しているというふうに読めるんですけれども、大臣、こういうことを一切、この報告書があることも知らない、そういう構想があることも知らない、それで今大臣をやって、安保法制の議論もやってきた、こういうことでお認めになりますか。

中谷国務大臣 まず、その資料を、やはり事前にお知らせをいただきましたら、こちらも調べた上でお答えできるわけでございますが、私は、その資料については今初めて聞いたものでございますので、その点につきましてはお答えしかねるということでございます。

 仮にそのような内容の資料があるとすれば、やはりPKO活動を実際にやっておりますので、今後の国際平和主義に基づくPKO活動や国際貢献について、それなりの組織としての考え方、これはまとめたものでございますが、実際にどう活用するかにおきましては、現在、外部の委託を通じて調査して、そして三月にその結果が出て、それからまた改めて部内で検討して決定するわけでございますので、その資料が、私はまだ確認しておりませんけれども、書いていたとしても、それは部内での一つの考え方でありまして、今後、さまざまな活動を通じまして、しっかりと有意義に活用してまいりたいと考えております。

笠井委員 私、非常にびっくりしたんですが、防衛大臣、安保法制も議論するということで責任を持ってやってこられたというふうに思っていたんですが、こういう資料があるとすればと。しかも、今ジブチでこういう調査研究をやっていることもわかっていながら、こういう資料があるとすればという話で、こういう存在も十分知らずに、このジブチの問題についても活用の問題を今答弁されたということになります。本当に驚くべき話です。

 私は、読んでびっくりしたんですよ。中長期に及ぶ恒常的な一大海外軍事拠点の構想をやるということまで、防衛省が発注した委託研究。しかもこれは、学校というふうに言っていますけれども、これは今後の自衛隊の運用について研究するということが任務になっているようなところで、そこに発注してやった研究で、恒常的な一大海外軍事拠点をつくっていこう、そういうのが必要で、長期的には日米が対等に共同作戦を遂行し得る段階を目指すということを言っているというのは非常に驚くべき話だと思うんです。

 総理、総理も、そういう軍事拠点が必要で、あるいは長期的には日米が対等に共同作戦を遂行し得る段階というのは、日本の自衛隊がやはりやるべきだというお考えでしょうか。

安倍内閣総理大臣 ジブチの必要性につきましては、海賊対処については二百件の事案がゼロになったのでありますが、二百件がゼロになったのは、まさに自衛隊も参加してゾーンディフェンスをやっている、これは抑止力がきいてゼロになっているわけでありまして、周辺の事態が大幅に改善されたわけではございませんから、これをゼロにしてしまってはまた海賊事案が起こるということが十分に推測されますので、日本だけではなくて他の国々も協力しながらやはりしばらくはゾーンディフェンスでやっていこうということになっているということでございます。

 と同時に、アフリカのスーダンでもPKO活動を行っておりますし、またこれまでも中東やアフリカでPKO活動や国際緊急援助活動を初めさまざまな平和協力活動等を行ってきておりまして、今後とも、積極的平和主義のもと、国際平和協力活動を積極的に実施していく方針でありまして、こうした本邦から遠く離れた地域での活動等を効果的に実施する観点から、現在、自衛隊がジブチに有する拠点を一層活用するための方策を検討しているわけであります。

 一方、先ほど来、中谷大臣からも答弁をしておりますし、私も従来から答弁をしておりますように、ISILに対する空爆及び軍事作戦に参加する、あるいは後方支援活動を行うということは政策的に行わないということははっきりしているわけでございまして、これははっきりしておりますので、それが先般成立した法律にのっとって行われるかどうかということについても、これは行わないということを決定しておりますので検討する必要はない、こう考えているところでございます。

笠井委員 ちゃんと答えていただいていないと思うんですが。

 いずれにしても、これは一層活用するという検討を防衛大綱に基づいて安倍政権のもとでやっているということでありまして、結局、今、総理は法律的にあっても政策的にはやらないというふうに言われたけれども、法律的にはできる仕組みをつくったというのが安倍政権ということであります。

 憲法九条を持つ日本がジブチを拠点に、結局、相手側の要請を、何があるのかを聞きながら調査していて、他国領土に空爆支援をするようなことが絶対あってはいけないし、そんなことをすれば民間人を犠牲にして、海外在住を含む日本国民の命と安全が脅かされるリスクも高まる。市民をテロの標的にさらす道を絶対に許しちゃいけないと思うんです。

 ジブチからの自衛隊の拠点づくりというのは私はきっぱりやめるべきだと思いますし、今、南スーダンの話も言われましたが、安保法制によって、自衛隊が海外で戦後初めて外国人を殺し、あるいは自衛隊員にも犠牲者を出す、こういう現実の危険が増してきているという状況の中で、あのママの会の方々が、私たちは誰の子供も殺させないと声を上げました。絶対に誰の子供も殺させてはならないと思います。

 憲法違反の戦争法というのは、法律上も、また現に一体で進む自衛隊の海外での軍事体制づくりをとめる上でも、断固廃止をして、一昨年七月一日の閣議決定は撤回すべきだ、このことを強く求めて、きょうの質問を終わります。

竹下委員長 この際、赤嶺政賢君から関連質疑の申し出があります。笠井君の持ち時間の範囲内でこれを許します。赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 米軍普天間基地問題について質問をいたします。

 沖縄県の翁長知事は、昨年十月、第三者委員会の検証結果に基づいて、名護市辺野古への米軍新基地建設にかかわる埋立承認を取り消しました。

 これに対し、政府は、私人の権利救済を目的とした行政不服審査制度を悪用して、工事を再開し、承認の取り消しそのものを消し去ろうと、翁長知事を裁判に訴えております。県民の民意を無視し、露骨な地域振興策で県民を分断して、あくまで基地建設を推し進めようとしております。

 きょうは、今、政府が基地建設を推し進めようとしている名護市というのはどういうところなのか、この点について取り上げていきたいと思います。

 名護市は、沖縄本島北部にある人口約六万人の町であります。沖縄本島の中部、宜野湾市の市街地に囲まれた普天間基地を返還するとして、名護市の辺野古、大浦湾を埋め立てて、普天間基地にかわる新たな米軍飛行場を建設するというのが政府の計画です。

 名護市には、今回初めて米軍基地がやってくるというわけではありません。飛行場が建設される米軍キャンプ・シュワブを初めとして、四つの米軍基地が存在をしております。

 防衛大臣に伺いますが、現在、名護市にはどのような米軍基地があり、それらの総面積はどれだけか、市の面積に占める割合はどれくらいか、説明していただけますか。

中谷国務大臣 名護市におきましては、八重岳に通信所、そして、キャンプ・シュワブ並びに辺野古弾薬庫及びキャンプ・ハンセン、この四つの米軍施設・区域、これが所在をいたします。

 八重岳通信所は、沖縄県内の米軍施設を結ぶマイクロ中継タワー施設として使用されております。キャンプ・シュワブは、兵舎地区と訓練場から成りまして、機関銃等の実弾射撃訓練、ヘリコプター訓練、水陸両用訓練、爆発物処理等が実施をされております。辺野古弾薬庫は、弾薬貯蔵施設として使用されております。そして、キャンプ・ハンセンの名護市域部分は、訓練場地区として使用されております。

 これら四施設・区域の名護市内に所在する総面積は二十二・八平方キロメートルでありまして、市の面積に占める割合は一〇・八%になります。

赤嶺委員 今御説明がありましたけれども、名護市内の米軍基地の総面積は約二千三百ヘクタールであります。米軍三沢基地を抱えて基地の面積では沖縄県に次ぐ青森県が二千四百ヘクタール、米原子力空母の母港横須賀基地や厚木基地を抱える神奈川県が約千七百ヘクタール、米軍横田基地を抱える東京都が約一千六百ヘクタール。基地の面積でいえば、名護市だけで青森県にほぼ匹敵する広大な米軍基地を抱えているということになります。

 キャンプ・シュワブやキャンプ・ハンセンには、先ほども説明がありましたが、中部訓練場と呼ばれる米軍の訓練場が広がっております。実弾射撃訓練場があるんですね。それから、米軍ヘリやオスプレイが離着陸訓練を行う着陸帯があります。昼夜を問わず、米軍による実戦を想定した軍事訓練が行われております。

 米軍が使っている弾薬、ミサイルの調達や貯蔵管理を行っているのが辺野古弾薬庫です。戦後、米軍の核兵器も貯蔵されている、辺野古弾薬庫はそのように言われていました。沖縄の本土復帰に合わせて撤去したとされておりますが、有事の際の核持ち込みに関する密約が結ばれていたことも明らかになっています。そういう極めて重大な基地になっているわけです。

 こうしたもとで、名護市内では、戦後、米軍にかかわる事件、事故が繰り返されてきました。どのような事件、事故が発生しているのか、防衛大臣、どのように認識しておりますか。

    〔委員長退席、平沢委員長代理着席〕

中谷国務大臣 防衛省が地位協定の十八条に基づく損害賠償業務を実施する上で知り得た沖縄県名護市内における米軍による事件、事故の平成二十二年度以降の発生件数は二十件であります。平成二十二年に六件、二十三年一件、二十四年二件、二十五年二件、二十六年四件、二十七年五件の計二十件でございます。

 この二十件のうち、交通事故が十七件、刑法犯、これは傷害並びに住居侵入でありますが、二件、その他物損被害一件となっております。

赤嶺委員 防衛大臣、どんな事件、事故が起きてきたかと聞かれて、いわゆる損害賠償請求にたどり着いたケースだけを国会で言う。たどり着くまでにどんな苦労があると思いますか。たどり着かないために、どれだけの人が泣き寝入りしていると思いますか。そんな生易しい話じゃないですよ、名護で起きている事件は。

 「名護市と米軍基地」という冊子がまとめられております。その中には、戦後、市内の米軍基地にかかわって発生した事件、事故の一覧が掲載をされています。

 そこでは、一九六一年から二〇一五年一月までに発生した合計二百五十四件の事件、事故等が列挙されています。

 米兵がバーの女性従業員を殺害した事件、強盗事件、酒に酔った米兵による住居侵入、ひき逃げ、米軍セスナ機の墜落、演習による騒音や山火事、演習場内から重機関銃の弾丸が飛んできて、パイン畑で農作業をしていた男性の約二メートルの至近距離に着弾する事件、このときは私も現場に飛んで行きました。こういう事件が発生しています。

 とりわけ、地元で問題になっている基地の被害に、キャンプ・シュワブにある廃弾処理場からの爆発音があります。先日、名護市を訪問いたしまして、基地対策の担当課からお話を伺いました。地響きを伴った物すごい重低音で、処理場がある東海岸とは反対側の名護市街まで聞こえるとのことでした。建物が揺れたり、窓ガラスが割れる被害も起きております。そうした爆発音を伴う廃弾処理や爆破訓練が、何の通報もされないか、あったとしても具体的な日時が特定されることなく突然行われるわけであります。

 名護市は、米軍機による航空機騒音とは別に、この爆発音を測定するための専用の騒音測定器を設置しております。それによりますと、昨年二月十日には、午前三時台から五時台にかけて二十三回の爆発音が測定されております。騒音の影響を最も受けているのが久辺三区であります。この間の国会でも私は取り上げましたが、その地域である久辺三区、ここでは、久志では午前三時五十一分に百一・三デシベル、豊原と辺野古は、いずれも五時ちょうどにそれぞれ百一・五デシベル、百・六デシベルを記録しております。

 百デシベルというのは、電車が通るときのガード下に相当し、聴覚機能に異常を来すとされている騒音レベルであります。住民が寝静まっている未明の時間帯にこうした爆発音を伴う訓練が行われているわけですが、総理に伺いますけれども、総理はこのような事態をどのように思われますか。

中谷国務大臣 現在、廃弾処理場の御質問がありましたけれども、キャンプ・シュワブにおいては従前から廃弾処理がされているということで、廃弾を処理する際の騒音また振動が周辺地域の皆様の生活に影響を与えているということは防衛省も認識をいたしておりまして、影響を軽減するための措置、これに取り組んでいるわけでございます。

 廃弾処理に際しては、実施に際し米側から事前通報を行っておりまして、状況に応じて政府から見舞金、これを支給いたしております。

 また、平成十一年の十二月、当時の岸本名護市長から、普天間飛行場代替施設の受け入れの条件の一つとして、廃弾処理について、市民生活への影響に配慮し、その対策を講じることを要請されました。これを受けまして、防衛省としては、騒音の低減を図るため、処理場をキャンプ・シュワブ内で移設、再配置することを計画しておりまして、米側もその必要性を認識し、現在、具体的な配置等について調整を続けているところでございます。

 また、生活への影響につきましては、防衛省として把握した都度、米側に連絡をいたしておりまして、米側からも、訓練に際しては住民への影響が最小限になるよう努力する旨の回答を得ております。

 今後とも、地元の皆様方の生活への影響を軽減するために、米側と密接に連携しながら対策に取り組んでまいりたいと思っております。

赤嶺委員 全部、いろいろなことを切り張りして答弁しておられましたが、ガラスなどが割れた被害が出たら、被害を補償するのは当然ですよ。ところが、そういう実態じゃないんです。

 今、事前の通告もやっているということをおっしゃっていましたが、二月十日に、午前三時から五時台にかけて、何でこんなときに廃弾処理をやるんですか。真夜中ですよ。二十三回の爆発音が発生、測定をされている。こういうことって、どんなふうに思われますか。そのとき、事前の通知はあったんですか、午前三時から五時までやるといって。そんなことあり得ないじゃないですか。それに対して被害補償しましたか。あり得ないじゃないですか。

 まず、そういう午前三時とか五時に爆破訓練をやるような、そういう廃弾処理場がある。単なる廃弾処理じゃないですよ。爆発音を伴う真夜中の軍事訓練じゃないですか。これをどう考えるんですか。総理、いかがですか、どう考えますか。

中谷国務大臣 防衛省といたしましては、キャンプ・シュワブの住民の皆様が、沖縄の防衛局に対して、被害等があった際、例えば住宅に生じたひび割れに対することとか、そういった補償等の要望も継続していただいているところでありまして、防衛省におきましては、米側の行為に対して被害が発生して、相当の因果関係が認められる場合には、その状況により、法律に基づいて対処しておりまして、今後とも、因果関係が認められる場合等には、引き続き適切に対処をしてまいります。

 また、訓練等の実施等に対する御意見とか要望等につきましては、通報をいただきまして、それを直ちに米側に通報し、または善処を求めているところでございます。

赤嶺委員 午前三時から午前五時にかけて百デシベル以上の爆発音を伴うような、そういう爆破訓練、これは事前に通知があったかと言ったら答えませんが、それに関しての被害補償をやったかというのは答え切れませんが、こんなのを尋常と考えているんですか。被害補償とか、そんな類いの問題ですか。こういう訓練場が存在していることが問題だと思いませんか。総理、どうですか、今のやりとりを聞いていて。

安倍内閣総理大臣 今、その個別の事案については、実際どのような事案であったかということを承知しておりませんので答えようがないわけでございますが、いずれにいたしましても、先ほど来大臣からお答えをしているように、地元の皆様の生活にも配慮しつつ、米軍の抑止力との関係も考慮しながら適切な運営がなされることが大切だろう、このように思います。

赤嶺委員 実は、この廃弾処理場は、一九七八年に、沖縄の本島中部にある嘉手納弾薬庫の一部返還に伴って移設してきたものです。当時、移設条件をつけて名護市に代替施設を建設した、これが今、市民の騒音被害につながっているということではありませんか。

中谷国務大臣 従前から、キャンプ・シュワブにおきましては廃弾処理が行われていたものと承知をいたしております。

 昭和五十一年から、沖縄県内で発見された不発弾の処理のため、陸上自衛隊がキャンプ・シュワブの廃弾処理場を共同使用しております。また、昭和五十三年、嘉手納の弾薬庫地区の一部の返還に伴い、附帯施設をキャンプ・シュワブに移設した、こういった経緯があるというふうに承知しております。

赤嶺委員 名護市や名護の市議会は、この廃弾処理場の廃止、撤去を求めております。

 大体、不発弾の処理というものを午前三時から午前五時にかけてやりますか。これは爆破訓練ですよ。こういう訓練を真夜中にやっている。こんな訓練場は廃止してほしい、撤去してほしい、こういうものだろうと思いますが、廃止、撤去を求めるつもりはありませんか。

中谷国務大臣 これは先ほど御説明いたしましたが、岸本市長の方からそのような要望をいただいております。現在、この移転等につきまして、防衛省として、具体的な案を作成いたしまして、検討しているところでございます。

赤嶺委員 防衛省はその案を何年前に策定いたしましたか。

中谷国務大臣 先ほどお話をいたしましたが、岸本市長が要望されたというのは、普天間の代替施設建設計画、これを受け入れるという当時に要望されたということでございます。

 計画をしたのはその後でございますが、これも今、事前のお知らせがなかったということで、調べて開始の時期を御連絡させていただきたいと思います。

赤嶺委員 防衛大臣は、前の安保委員会で同じようなことを聞かれて答弁しておりますよ。十五年前なんですよ。十五年前に移設を、住民に被害がないように計画しています。この十五年間、何も進捗していないじゃないですか。繰り返されているわけです。

 この辺野古の新基地建設にかかわって、政府は、一九九九年、このときに国と県、名護市が辺野古の基地建設に合意した経緯があると強調しております。その合意のときには、十五年の使用期限の受け入れ条件、そして、この廃弾処理場の対策も、当時の岸本名護市長が挙げた受け入れ条件の一つでありました。

 皆さんは合意したということばかり強調しておりますが、受け入れ条件、何一つ解決していないじゃないですか。いない上に、廃弾処理による騒音被害は当時と何も変わっていないんですが、受け入れ条件を無視した上に、当時の辺野古案というのは沖合二・二キロ案でした、軍民共用空港をつくるという案でした、これを二〇〇五年には、辺野古の沿岸部に米軍専用の恒久基地をつくる案へ、地元の頭越しに、一切の条件も無視して、滑走路も二本にして、一方的に計画を変更したのであります。こういう態度は許されないですよ。基地の被害をそのままにして新たな基地を押しつけようとする。

 基地の被害というのは、廃弾処理場だけの問題ではありません。米軍機の騒音にも苦しめられております。

 ちょっとパネル、配付資料を見ていただきたいんですが、これは現在の名護市内のオスプレイの飛行状況であります。総理の質問にもかかわってきますのでよく見ていただきたいと思うんですが、二〇一三年四月に名護市が公表した資料をもとに作成をしたものであります。この前の年にオスプレイが普天間基地に配備をされたのを受けて、その後、名護市内の飛行状況について目視調査を行って、結果を地図に落としたものです。

 地図上の青い部分がありますが、この青い部分が政府が飛行場を建設しようとしているところです。それとは別に、キャンプ・シュワブの中にある着陸帯、黒丸で幾つも書かれております、その周辺を旋回しながら米軍が離着陸訓練を行っているわけです。先ほど大臣がおっしゃったキャンプ・シュワブ訓練場、ヘリやオスプレイの訓練場だと、そこの着陸帯をぐるぐる訓練しているわけですね。

 ごらんになってわかるように、市内の辺野古、豊原、久志、久辺三区と言われている地域です。許田、幸喜、西海岸側になりますが、この五つの集落が書かれていますが、オスプレイもその上空を縦横無尽に飛び回っているわけですね。この赤い線がオスプレイが飛び回っているものです。

 総理に伺います。

 普天間基地のオスプレイが辺野古に移ってきたときに、今も行われているこうした訓練、これはどうなるんでしょうか。

    〔平沢委員長代理退席、委員長着席〕

中谷国務大臣 まず、御質問いただいた飛行経路でございますが、これは名護市の市役所が作成したものだと承知をしておりますけれども、オスプレイには、キャンプ・シュワブの中、キャンプ・ハンセンに所在する着陸帯、これを使用しているものと承知をいたしております。

 経路等につきましては確認はいたしておりませんが、防衛省といたしましては、航空機の騒音軽減、これは大変重要な課題であると認識をしておりますけれども、判断基準として、これは防音工事を必要とする法令上の基準というものがありまして、それを超えるかどうかという点につきましては、それを超えるものではありませんけれども、キャンプ・シュワブの周辺の学校、幼稚園、保育園に対しては防音工事の助成も行っているわけでありますし、また、生活の影響状況につきましても、防衛省として把握した都度、米側に通報、連絡をしておりまして、訓練に際して住民への影響が最小限になるように努力する旨の回答を得ております。

 お尋ねの普天間基地からの移転等に関しましては、現在、普天間飛行場による騒音のために騒音対策等を行っておりますが、今回の海上における離発着場の完成によりまして、一般の住宅地の上を通ることはないということで、騒音による被害、これも出ないということでございます。

 訓練場への移動等につきましては、こういった地域の住民に影響、迷惑がかからないように米側の方に要請をしてまいりたいと思っております。

赤嶺委員 騒音防止基準を超えていないけれども、防音工事は学校についてはやっていると言いましたが、騒音防止基準で一番大事なことは、その近辺に飛行場があることですよね。飛行場がないから防音基準に達しないのは当然じゃないですか。達しないまでも、学校は余りにもひどいので防音工事をやっているというのじゃないですか。

 総理は、これができたら海側を飛ぶから防音基準に達する施設はゼロになると何度もおっしゃっていますが、学校を防音工事しているんですよね。これは、この基地ができたら、そういうところの、今の着陸帯をぐるぐる回る訓練もなくなり、騒音もなくなるんですか。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 現在、法定によって、普天間においては、防音工事を約一万戸分やっております。それが辺野古に移れば、先ほど中谷大臣から答弁をさせていただきましたように、法定上はそれは、対象はゼロになるのは間違いないわけであります。

 他方、普天間の住民への影響が最小限となるように、政策判断として学校や幼稚園や保育園に対して防音工事の助成を現在も行っているわけでございまして、これは法定とは別にやっていることはやっている、こういうことでございます。

 それとともに、基本的にはオスプレイも移転をするわけでございますが、辺野古への移転は、空中給油機は十五機全て岩国に移るわけでございます。そしてまた、移った後、訓練においては今後もさまざまな訓練があると思いますが、例えば、今、普天間が移設するに際しては、大もとの訓練においては、九州を初め沖縄県外に、本州も含めて多くの訓練を行うわけでございますし、また、整備等は木更津で行うということになる、こういうことでございます。

 いずれにいたしましても、住民の皆様への影響に対しましては、米軍に対してもしっかりと伝えていくということになるんだろう、こう思うわけでございますが、今後とも、影響が最小限となるように努力を重ねていきたい、このように思っております。

赤嶺委員 総理の答弁も防衛大臣の答弁も、あちこち飛んで、よく整理しないとわからないんですが、一番の問題は、新しい基地が完成をしたら、そういう訓練も全部なくなるんですか。今、基地がなくてもこれだけの訓練をやっているんですよ。

 防音基準を満たしていないと言うけれども、防音基準を満たすためには飛行場が必要ですから、当然防音工事なんか行われていませんよ。しかしながら、そういう基準を満たしていなくても、学校は、余りにもひどいからということで防音工事をやっているわけですよ。そこに基地が来たら、ひどくなるのが当然だと考えるんじゃないですか。この今の赤線はなくなるんですか。いかがですか。

中谷国務大臣 防音工事は、現在、普天間飛行場周辺に行っていますけれども、この防音工事の補助につきましては、標準的な一日のうるささ指数、これが七十五W以上の区域を指定した際に、現に所在する住宅に対して採用、採択をするわけであります。

 辺野古への移設後、これは、飛行経路が現在の市街地の上空から、周辺の集落から数百メートル離れた海上へ変更されるわけでありますので、このため、騒音も大幅に軽減をされるということは明らかであります。現在の普天間飛行場と同様の騒音の被害、これが発生するという御指摘は当たりません。

 そして、普天間飛行場においては、米軍機の飛行状況を常時調査をいたしておりますが、直近の調査結果においても、全般的に見て、日米で合意している飛行経路に沿った飛行がされておりまして、経路外の飛行が常態化をしているということはないわけでございまして、今後、この飛行につきましては、定められた基準をしっかり保つように、こういった点につきまして、しっかりと、地元の皆様方への影響を軽減するために、米側と密接に連携しながら対策に取り組んでいく考えでございます。

赤嶺委員 委員長、今の防衛大臣の答弁は普天間基地の場周経路にまで行っているんですが、それは次の次の次の質問なんですよ。大慌てで答弁書を読んでいるんですよ。場周経路の通告は次にあります。

 私は、普天間基地と同じ程度の騒音が出ているとは言っていないんですよ。今、飛行場はないのに、こういう着陸帯があるために、オスプレイが市街地上空で訓練している。新しい基地ができたら、市街地を飛ぶのはゼロになると総理が何度も言っているんですよ。では、これもなくなるんですね。なくなるわけないですよ、着陸帯もそのままあるわけですから。キャンプ・シュワブの性格がオスプレイの訓練場ですから、なくなるわけないんです。

 これだけのものを、結局、ここに基地をつくれということは、これ以上の負担を押しつけることなんですよ。高江も伊江島も、つまり、沖縄で新しい基地をつくるか、さもなければ普天間基地は固定化だよというのは、沖縄県民にとって選択のしようのない選択肢を政府が突きつけているようなものですよ。こんな選択肢なんか選びようがないわけですよ。

 それでは、さっき大臣が慌てて答弁をいたしました普天間の場周経路について質問をいたします。答えやすいようにちゃんとパネルも用意してまいりました。

 ここのグレーのところが今の普天間飛行場なんですね。当初、普天間飛行場のヘリの経路、オスプレイの経路は東側だけでした。建前としては、基地に沿って訓練をしている、基地の外にははみ出さない。実態と違いますけれども、一部基地の外にはみ出しているところはあっても、おおむね基地に沿って飛ぶから住宅地には迷惑をかけていないというのが米軍の説明でありました。

 ところが、よく官房長官は、きょうはちょっと残念ながら記者会見でいらっしゃらないようですが、官房長官の口癖は、翁長知事と話し合って、翁長知事が戦後不当に強奪された土地が普天間問題の原点だと言ったときに、いや違う、橋本・モンデール合意が原点だと言いました。

 橋本・モンデールの合意で、これは一九九六年四月です、普天間基地は危ないから移転しようということになりました。しかし、橋本・モンデールの合意の後に突然、三カ月後ですよ、七月に普天間基地の副司令官が宜野湾市にやってきて、東側だけでは足りない、今度は、場周経路として西側も使わせろ、こう言ったわけですね。一方的ですよ。

 しかも、見てください。西側というのはもう当初から住宅地域にはみ出している。当時の桃原市長は、三カ月前に危ないからといって返還に合意しておきながら、何で西側も飛ぶんだ、むちゃくちゃじゃないかと。そのときも、海でやってくれと当時の桃原市長は言いましたよ。

 しかし、米側は押し切りました。押し切って、いわば危険性を拡大したようなものですよ。危険性除去だ、除去だと言っている、これを米軍が拡大した。

 政府はどうしましたか、このときに。やめなさいと言いましたか、米側に。防衛大臣。

中谷国務大臣 その点については確認をしなければなりませんが、本当に普天間基地というのは危険な基地でありまして、住宅地が密集しているということですから、一日も早くこれは辺野古にやはり移転をして、こういった危険性の除去はやっていかなければならないと思います。

 ヘリコプターの飛行につきましては、風向きとか天候、気象の条件に大きく影響を受けるため、列車がレールを走るように定められたところだけで飛行することはできません。風向き、風速などの気象条件、そしてバードストライク、鳥が飛んできた場合に回避をする必要もあります。飛行経路に差異が生じることはありますが、このように、やはり安全にヘリコプターを運用していくというようなことも必要ではなかったのか。

 そういったさまざまなことで、半分だけの経路では安全性がどうかというようなことも含めて検討されたのではないかと思います。

赤嶺委員 これは北東からの風の際の飛行方向ということで出しているんですよ。

 大体、防衛大臣、自分で答弁していておかしいと気がつきませんか。風向きによって安全な飛行経路をとるといえば、例えば、辺野古に行ったら海の上を飛ぶから住宅地上空は絶対飛ばない、こういう答弁ばかりしていますけれども、皆さんが出した埋立承認申請も、場合によってはそれは陸地を飛ぶことがあるというようなことが書いてあるんですよね。

 今、普天間についてはヘリの安全を考えたんだろうと。皆さんの原点は住民の安全じゃないですか。住民の安全を考えるのであれば、こういう普天間飛行場の基地の外を飛ばせてくださいというのは断るべきじゃないですか。これは断るのが当たり前じゃないですか。今まで東側は基地の中を飛びますと言っていた米軍が、西側も飛ばせろ、住宅地にはみ出して飛ばせろ、こういうことを言っているわけですよ。結局、アメリカの運用次第なんですよ。

 もう一つは、早朝、夜間の飛行です。

 宜野湾市民が今一番直面している苦しみは、そういう市街地上空の訓練と、早朝、夜間の訓練であります。耐えられないです。心臓が本当に飛び出すようなときもあると。耐えられないような苦しみですが、この早朝、夜間についても、飛ばないということを米側と日本側が協定を結んでおりますよね。しかし、守られていない。

 何で守られないんですか。何で守らせないんですか。

中谷国務大臣 先ほど安全と言ったのは、当然、墜落等によって周辺の住民の皆様方が被害を受けないようにという意味の安全でございます。

 米側とは、普天間基地を初め、飛行の際には、事前に協議をいたしまして決めたことがございますので、そういったことをしっかり遵守していただくように、防衛省としては、米側と協議をし、そして、それに違反すること等がございましたら、米側に申し入れをして、改善を促しているところでございます。

赤嶺委員 非常にうつろに聞こえる答弁であります。

 先ほど申し上げたように、辺野古には移すに移せない。現に被害が起こっている。そして、普天間の基地は一刻も早くなくさなければいけない。この二つの条件を満たすのは、実は、沖縄県民が出した、総理に提出をした建白書なんですよ。建白書というのは、普天間基地の閉鎖、撤去、そして辺野古移設断念。移設条件つきの普天間基地の危険性の除去というのはあり得ません。これは基地の固定化ですよ。しかも、こういう基地をより一層危険にしているのは、県民の暮らしや安全よりも米軍の運用を優先する、米軍の運用については一言も発言できない日本政府の態度、これが今の沖縄の基地問題の大もとにあるわけです。普天間基地問題の解決をするためには、移設条件なしの撤去以外にはないんだということを申し上げておきたいと思います。

 ちょっと時間がありませんので、ディズニーの問題に移らせていただきます。

 沖縄北方担当大臣に確認したいんですが、十二月の八日、宜野湾市の佐喜真市長が首相官邸を訪れ、菅官房長官に対し六項目の要請を行いました。市長はそこで宜野湾市内へのディズニーリゾートの誘致を求め、官房長官は夢のある話なので実現できるようにしたいと述べたと報じられています。佐喜真市長と島尻大臣がディズニーランドを運営するオリエンタルランドを訪れ、誘致を要請したとも伝えられています。

 初めて報道を見たときは、東京ディズニーランドのようなテーマパークのことだと思いました。しかし、報道をよく見てみると、官房長官は、ホテルを初めとする関連施設だと思うと発言しています。

 島尻大臣に伺いますが、何を誘致する計画ですか。

島尻国務大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 今委員御指摘のように、先月、宜野湾市長から官房長官に対して、ディズニーリゾートの誘致等について協力要請がなされたと私も承知をしております。このことについては、さらに宜野湾市から具体的な提案がなされるものというふうに認識をしています。

 さらに、先月、十二月二日、私も佐喜真宜野湾市長とともにオリエンタルランド社を訪問いたしましたけれども、この件、相手方との関係もあることから、具体的な内容について言及するということは差し控えたいと思います。

赤嶺委員 相手方があることだからというのは、さっきの笠井議員の防衛大臣への質問に対する答弁のようなんですね。

 だって、もうビラも出ているんですよ。島尻大臣も一緒に行ってやってきたというビラも出ているんですよ。何で国会に報告できないんですか。どこに誘致するんですか、島尻大臣。場所はどこですか。

島尻国務大臣 この件に関しましては、今お話をさせていただきましたように、オリエンタルランド社の調査ということも聞いておりますので、現在、今ここでコメントをするということは差し控えたいと思います。

赤嶺委員 時間が来ましたので終わります。

竹下委員長 これにて笠井君、赤嶺君の質疑は終了いたしました。

 次に、下地幹郎君。

下地委員 私のおおさか維新の会は、昨年の十月三十一日に結党いたしました。

 このおおさか維新の会が結党した三つの結党の意味というのは、憲法改正をして地方分権のための地方統治改革をしたい、そのためには、国会において必要な参議院の三分の二にも積極的に参加していきたい、身を切る改革で国の財政再建を図りたい、また、沖縄の基地問題の根本的な解決を図っていきたい、こういうことを私たちはこの党の目的として結党したわけです。

 特に統治機構改革のための憲法改正については、松井代表も、そして前代表の橋下徹代表も、積極的に改憲に向けて党としての素案をつくっていきたい、こういうふうな考えであります。安倍総理が七月の参議院選挙において第一の争点として憲法改正を真っ正面から国民に問いかけるかどうか、私たちは非常に注目をしております。

 そういう意味でも、答弁のところでこのことについてもお答えいただきたいというふうに思いますけれども、このおおさか維新の会の代表松井一郎は大阪府知事、前代表は先ほど申し上げたような大阪市長ですから、中央の政党で地方の政党の党首が地方の首長を務める、これは今までにない政党の姿なんであります。大阪では与党で政策の責任を果たす、中央では何でも反対で野党になる、それでは党としての整合性がないというような考え方で、党で話し合った結果、与党でも野党でもない、提案型責任政党でありたいと党の姿勢を位置づけたのが、今回の私たちの党の姿勢なんであります。

 与党とは、政権をする政党並びに閣外での協力政党であります。つまり、おおさか維新の会は与党でないことだけははっきりしているんです。

 野党ではないというのは、政府案に反対を前提としながら議論を進める政党。政策よりも政局、選挙で手を組み、政府と対峙することだけを目的とするのが、これが野党。安保法案でプラカードを持ってテレビに向けて反対だと言うのが、あれが野党なんです。ああいうふうな野党は私たちはやりたくないというようなことを明確に申し上げているんです。

 そして、提案型の責任政党というのは、議員立法を提案して、その議員立法を提案した後、政府と真摯に話をしたり、政府案が出てきても、反対だったら政府と修正協議をする、こういうふうな政党になりたいというような党の希望を言っているだけなんですよ。

 安倍総理、私たちの政策提案型政党になりたいという、ここのどこが、国会のルールを逸脱するような、そういうふうなものになっているのか。そして、こうやって積極的に修正協議をしていきたい、提案型になりたいということについて、代表質問のとき、馬場代表に対して前向きな答弁をいただきましたけれども、この二つと、先ほども言った憲法改正について、まず一点、答弁をいただきたいというふうに思っています。

安倍内閣総理大臣 自民党の中には御党に対して厳しい見方も存在するわけでございますが、しかし、提案型のいわば野党というのは極めて健全な党であろう、まさに議論の中から国民の理解が深まっていくわけでありますし、まさに政策もより磨かれていくんだろう、こう思うところでございます。

 同時にまた、皆さんが与党でないのは事実でございます。

 そして、憲法についてでございますが、我々、結党以来、憲法改正を目指してきているわけでございます。残念ながら、六十年間それをなし遂げていないわけでございますが、谷垣総裁当時に我々は憲法草案を既につくっているわけでございます。その中で、どの条項からというのは、国民的な議論の深まりを見ながら与党において判断していこうということに、あるいは、今、憲法調査会の中において議論が煮詰まっていくものと期待をしているわけでございます。

 選挙におきましても、今までも我々は、憲法改正についてしっかりとお約束をしてきた、憲法改正を目指すということについては記してきたわけでございますが、当然、来るべき選挙におきましても、我々の示す政権構想の中におきましてお示しをしていくことになるんだろう、こう思う次第でございます。

下地委員 先ほど申し上げた、私たちが与党でないことははっきりしている。新しい野党の姿になりたいというのもはっきりしている。そして、提案型にしたいというのがはっきりしている。そういうふうな提案をすると国会でいじめを食らうんですよね。

 ちょっとパネルを見ていただけませんでしょうか。国会というのは、会派によって時間の割り振りがあるんですよ。最高の言論の府ですから、選挙で選ばれた国会議員は、お一人お一人の質問をする権利があるんです。それが会派で集まって一つの時間帯が形成されるわけです。それで形成されると、今見てのとおり、自民党は二百九十一人いますから、八時間と五十四分あるわけです。民主党・維新・クラブは九十三名ですから二時間と五十一分、おおさか維新の会は十三名ですから二十四分ですよ。

 しかし、何十年間も議会において慣例というのがあって、やはり与党というのは野党の質問にたえたものでなければならないということで、与党は与党以外の政党に時間を配分するんですよね。配分された時間というのは、その他の政党で、この議員定数割りで割って、ちゃんとお互いが質問するというのは当たり前のことですよね。

 七時間、今回自民党が配分したんですよ。そうするとどうなるかというと、二を見ていただきたいと思いますけれども、自民党は二時間になって、民維クラブは七時間四十五分、おおさか維新の会は一時間五分だったんです。こういうふうなものが慣例であるので、これで決まるかなと思っていたら、今回、結果が出たら、民維クラブは八時間、おおさか維新の会は二十四分。全部民維クラブにとられて、おおさか維新の会はこの質問時間を剥奪されました。民主党は六時間ふえて、おおさか維新の会は二十四分しかない。国会の慣例を壊して剥奪するのは許せる行為じゃないんですよ。

 しかも、その理由が、先ほど申し上げた……(発言する者あり)ちょっと静かに聞きなさい、静かに。その理由が、与党でもない、野党でもないというのが一応理由らしいですけれども、与党でもないと書いてあるところは切り捨てて、野党でもないという表現だけで、おおさか維新の会は与党から質問時間をもらいなさいと。これはおかしな話じゃないかと私たちは言っているんです。これは整合性がない。これをこのままずっと続ければ、この言論の府において大きな問題が起こりますよということをまず一点言っておきたい。

 そして、これは官房長官も記者会見でコメントしていますけれども、多くの方々も記者会見でコメントしているんです。

 民主党の高木委員長、一月八日の午前中の記者会見。数の少ない野党は一致協力して巨大与党に対峙するという基本方針は変わらないが、本会議の代表質問で、与党でもない、野党でもないと公言されると、私たちもちゅうちょすると言っているんですよね。

 しかし、私たちだって民主党にちゅうちょするのはいっぱいありますよ。大阪のダブル選挙で、共産党と民主党と自民党が組んで選挙をやる。あれだけ自民党を批判しておきながら、あれだけ共産党との違いを言っておきながら、選挙のためだったら一緒になってやる。これは私たちだけじゃなくて、国民がちゅうちょしますよ。

 共産党のメモを見てみましょうね、共産党のメモ。

 これは一月八日の午後、共産党の小池政策委員長が言っています。質問が、野党共闘の進捗について、政党レベルの共闘が進んでいないが、志位委員長は旗開きで好き嫌いを言う場合ではないと言っていたが、共闘をどう考えるかと聞いたんですよ。そうしたら、小池委員長がこう言っています。旗開きで委員長が言ったことに尽きるかなと思うが、政党間の協議は、率直に言って、民主党との協議、戦争法の廃止という点でも一致が得られていない、国民連合の政権の構想でも一致が得られていない、選挙協力でも一致が得られていない、こういうのが事実ですと本人が言っているんです。

 事実と言いながら、選挙では熊本一区で共闘する。これは、ちゅうちょするという言葉を私たちに言うより、あなた方の行動そのものがちゅうちょに値するんです。

 しかも、沖縄の基地問題においても、民主党は辺野古賛成でしょう。賛成でしょう。共産党は反対ですよ。全部の選挙を一緒にやっているって、おかしなことじゃないですか。

 私たちにちゅうちょという言葉を使うのは、ちょっとこれはおかしいんです。国民新党で連立を組んでいた私が言うのもちょっときついんですけれども、しかし、これは言わざるを得ないんです。

 菅官房長官、これは八日にコメントしていますけれども、私の話を聞いて、あなたの記者会見でもコメントしていますが、それを聞いてどう思われるかをちょっとコメントいただきたいと思います。

菅国務大臣 今パネルを示されましたけれども、これを見て、こんなに与党が野党に配慮しているのかなと、今七時間と初めて私は知りました。私自身……(発言する者あり)私の今の感想を申し上げたんです。ということが国民の皆さんにもこれはよくわかったんじゃないのかなというふうに思っています。

 私は、このことで会見で聞かれたときに、やはり与党というのは、閣内協力とか閣外協力とか、政党同士がしっかりと政策等について結ばれている、そこが私は与党だというふうに思います。ですから、野党というのは、それ以外の方は野党だと。まして、そういう意味で、是々非々ということは、そのこともある意味で政党の考え方の一つだというふうに私は思っております。

 いずれにしろ、国民の皆さんの民意に沿う形で、ここは、それぞれ各党会派で決めていただくことになるんだろうと思います。

下地委員 私たちがこうやって国民の前で、テレビの前でこのことを言わなければいけないこと自体が残念なんですよ、本当は。

 ただ、世界の議会の歴史を見ても、多くの論争が行われて、議員の発言の力で国の方向性が変わっているケースというのは多いんです。だから、おおさか維新の会は、質問時間を剥奪させられるということ自体が、もう本当に許せない行為だと私たちは思っているんです。だから、今回はあえてこの場所でこのことを質問させていただいている。そのことを民主党はしっかりと理解いただきたいと思いますね。

 それで、まず、いいですか、私は三点のことを民主党に指摘させていただきたい。

 今のあなた方がやっていることは憲法違反だということですよ。おおさか維新の会の質問を剥奪するということは、日本国憲法の精神に照らしても立憲主義に照らしても、これは看過できませんね。

 日本国憲法は、第四十一条で、国会を国権の最高機関、国の唯一の立法機関と定めていますね。五十一条では免責特権まで国会議員に与えていますよ。つまり、国権の最高機関である国会において、各会派は公平で公正に質問する権利を持っているんです。この配分を剥奪するということは本当に大きな意味があるということ。

 それで、二つ目には、予算審議というのは、代表なければ課税なしと言われて、議会制度の発祥のきっかけになっているんです。しかも、この予算委員会というのは、日本国憲法の第七章に財政という章があって、この国政の財政に関する国会の権限を詳細に定めていますね。

 今回の、特に予算委員会で、特別な審議なんですよ、予算委員会というのは。この予算委員会の特別な審議で時間が剥奪されるということは、政党としては本当に許せない行為だということを言っているんです。だから、今回私たちは、この今の民主党がやった行為は、この憲法精神、立憲主義の観点からしても全く許せない行為だということを言います。

 民主党は、安保法案の際に、安倍政権に対して違憲だ違憲だと何度も繰り返していますよ。今回、自分たちが違憲行為をやったら、相手に対して違憲行為だともう言えませんよ。そういうふうな意味では、今回のこの自分たちがやっている行為についてもっと反省をしなければいけないということを一点申し上げたい。

 二点目には、これはいじめですね。これは、自分に対して気に食わない発言や行動をする者を差別して体罰を行うといういじめですよ。

 今回、この与党でもない、野党でもないという発言が自分たちの野党の考え方と違う、そういうふうなことで、私どもは与党から質問時間をとりなさいと言って、そういうふうに自分が気に食わなかったらそのまま質問時間を邪魔する、剥奪する、これはいじめそのものですよ。それだったら、もうあなた方は、そのまま、この委員会でいじめの問題に対して語る資格もなくなりますよということをもう一点指摘したい。そして……(発言する者あり)国会のルールを破っているのはあなた方なんですよ。

 三点目には、この法案の価値を下げる行為をしているということです。

 これは、与党が提出した法案を、野党が八割、与党が二割で審議を行って成立する法案は評価の高い法案になりますよ。ただ、逆に、野党の質問が短くなって、与党による強行採決で成立した法案は、これは国民から見ても評価が低いですよ。最も低いのが、今回のように、国権の最高機関である言論の府の国会において、不公平な質問時間で配分されて成立した法案が最も評価の低い法案になるんです。つまり、公正公平に欠けるような時間の割り振りを国会で行うということは、国民から評価のされないようなことをやっているんだということを認識してもらいたいということなんです。

 今、三点について私が、憲法違反であったり、いじめの問題であったり、法案の成果の問題だと言いましたけれども、これは本当に大きな、この皆さんのやっていることが大罪だということを国民の前でしっかりわからないと、これはだめになりますよ。

 安倍総理、私の今の質問、ずっと説明してきましたけれども、ちょっと御感想があったらお聞かせください。

安倍内閣総理大臣 これは基本的にはこの委員会で決めていただくことでございますが、下地委員を含め、おおさか維新の会が与党でないのは確かであります。確かな中において、我々与党の時間を七時間以上切っているわけでありますから、そこは野党の皆さんが公平に、これは公平に分配すればいいだけの話じゃないですか。(発言する者あり)

 それを何十分とって、我々は七時間以上とっているんですよ、質問をしたいという人はいっぱいいますよ。参議院においては与野党で半分ずつですよ、半分ずつなんですよ。しかし、衆議院では多く我々は提供して、自民党、公明党の与党は提供させていただいております。七割出しているんですから、あとは、野党でこんなになって、皆さんもこれは嫌だと思いませんか、こういう状況は。ですから、そこはちゃんとやっていただければと思います。

 繰り返しになりますが、下地さんたちは野党です。下地さんは、もう自民党にいるときから野党みたいな、そういう立場だったんです。ですから、しっかりと野党として言うべきことは言っていられるんだろう、野党のあるべき姿を開陳されたんだろう、このように思います。

下地委員 私たち、もうこれで質問を終わりますけれども、時間は残します。本当はもっと時間を残してやりたかったんですけれども、今回だけは、いろいろな提案があっても理解できない。この時間をそのままやるわけには、決められた時間やるわけにもいかないというのが党の考え方なんです。

 だから、もうやめますけれども、この議会というのは、野党が八割、そして与党が二割、これで質問を受けて国民から理解されるようなものが与党として大事なことなんですね。野党というのは、与党にかわれる政党の姿を国民に示して政権奪回する、こういう姿勢を示すのが野党の仕事なんです。

 今、最後のところで私が言った、野党は与党にかわれる政党の姿を国民に示して政権奪回する、これを政党間で切磋琢磨してやっていくという、この現状を民主党は壊しているんです。私は、このままでは、野党の中で政権奪回すると民主党が言っていますけれども、百年たっても二百年たってもできぬと思いますよ。

 こういうふうな、小政党をいじめる、そういう姿は決してよくない。私どもだったら、社民党の照屋寛徳さん一人、生活の党の玉城デニーさん一人、委員外であっても、こうやって質問させよう、自分が八時間持っていたら、野党統一を言うならみんなを質問させてあげよう、これが普通の考え方ですよ。

 そういうこともやらないで、質問時間を自分だけとる、そうやって人の質問を剥奪する、こういうことをやったら民主党はだめだと改めて申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

竹下委員長 これにて下地君の質疑は終了いたしました。

 次に、重徳和彦君。

重徳委員 改革結集の会の衆議院議員重徳和彦です。

 改革結集の会、昨年、維新の党を離党しました衆議院議員五人で結成をしました。十二月に立ち上げたばかりの新党であります。

 私たちは、もちろん与党ではありません。そして、野党でもないとは一言も言っていないんですが、きょうはなぜか質問の時間が大幅に削減をされておりまして、この分はいずれ取り返していかなければならないと思っております。これはまさに委員会の常識としてやってまいりたいと思っております。

 さて、一方で私たちは、自民党に対抗できるもう一つの勢力をつくる、改革勢力を結集するんだ、こういう思いで結党いたしております。その意味で、責任政党、そして、これからしっかりと政権政党を担えるような、そういう政治グループとして展開していきたい、こう思っている次第でございます。

 小さな政党でありますけれども、小さいことは言いません。きょう、これから質問に入りますけれども、一つ目、まず、総理、通告しておりませんけれども、大局的な視点で一つお聞きしたいと思います。

 安倍総理、これから数十年後を見通して、我が国最大の構造的課題とは一体何か。いろいろあるかもしれません。しかし、一つ挙げるとすれば何か。安倍総理の御見解をお聞かせください。

安倍内閣総理大臣 最大の課題は、人口問題、また人口構成が大きく変わっていくことでありまして、これに対応できなければ社会保障制度の仕組み自体が危うくなっていくわけでありますし、まさに我々の経済的な豊かさを維持していくことが厳しくなっていくとも言えるんだろう、こう考えております。

重徳委員 この点、まさしく私自身の問題意識と完全に一致しております。

 人口問題、これは、本当に国の活力を奪う、日本国にとって最大の問題だと思います。間違いなく、人口問題に正面から取り組むことがこれからの最大の政治家としての仕事だ、そう任じて、私、初当選から三年少々でありますが、常々この問題に言及をしてまいりました。

 この週末も、地元、私は愛知県の岡崎市、西尾市、幸田町というところなんですけれども、成人式が行われました。新成人の晴れやかな姿を見ながら、また成人の新たな門出をお祝いしながらも、改めて、やはり、若い人たちが子供を産みたい、育てたいと自然に思えるような、こんな温かい地域社会づくりをしていかなくちゃいけない、こういう思いを新たにいたしました。

 問題は少子化対策なんという言葉に表現されておりますけれども、少子化対策なんという、先細りの少子化、これをぎりぎり支えるだけのこんな政策じゃいけないということで、常々私は、子供がふえる社会をつくろう、増子化社会をこれから目指していこうじゃないか、こういうことを提案させていただいております。この増子化社会づくりに全力で取り組まなければ国が滅んでしまう、私はそう思っております。

 そして、少子化の最大の要因は、統計的にも、やはり晩婚化、非婚化という現象にあると言われております。理由はさまざまですし、個人個人の人生の選択、あるいは選んでそういうことになっているわけじゃない方ももちろん大勢お見えになることは重々承知をしておりますが、やはり大事なことは、私たち政治家が思いをいたさなきゃいけない。これは、若者が将来への希望を持てない状況になっている。そして、その大きな要因の一つが、将来に対して無責任な政治だと私は思っております。その最たるものが、莫大な累積赤字を抱えている、抱えていてもなお税金の無駄遣いを続ける政治だと思います。

 このパネルも、いろいろポイントを並べておりますが、四つ目にあります「将来世代の一人あたりの債務負担の軽減」、将来の人がふえれば、当然一人当たりの債務負担というのは軽減されるんです。若い人たちは、知ってか知らでか、こういったことにも敏感です。ですから、若い人と話していると、決して、巨大な道路をつくってくれとか大きな橋をかけてくれとか、こんなことを言う若者はほとんどいません。それだけ彼らは、彼女らは、将来に対する不安を抱いておられるんだと思います。

 そこで、それなのに、今回の補正予算、非常に大きな問題があると思います。臨時給付金、何度もこの委員会でも取り上げられました。一千百万人もの低所得と言われる高齢者の皆さんに三万円ずつ現金をばらまく。これで三千六百億円です。

 それは、お金をもらってうれしくない人はいませんよ。ですから、だからこそ、これは選挙対策と言われるのであります。アベノミクスの果実という表現がありますけれども、私は禁断の果実だと思いますよ、これは。

 安倍総理、この補正予算三千六百億円、撤回をして、私が提案をしております増子化社会を目指す、そういう若い皆さんへの先行投資をするか、あるいは、どうしてもというんだったら、むしろ将来世代への責任として借金の返済に充てるべきだと私は思います。

 いかがですか、総理。これはもうイエスかノーかで、制度の内容、趣旨などは、もう十分委員会で聞いております。イエスかノーかでお答えいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 子育て世代への支援については、我々は七千億円を使っているわけでございます。そして、低年金の方々、年金生活者の高齢者の低所得の方々につきましては、まさに私たちの経済政策の恩恵を受けない方々でございまして、そして消費性向が高いということでございますので、この方々に今回三万円を給付させていただくということでございます。そして、消費税が一〇%に上がる際には、八十七万円以下でありますが、大体同じような政策を、六万円ということで、倍額で行っていくわけでございます。

 ですから、一年早く、これは私たちの政策の果実として行わせていただく。住民税非課税ということで、これは事務上も可能だということで実施をさせていただく。ミクロ政策としてもマクロ政策としても正しい政策であると考えております。

重徳委員 お言葉ですが、一千百万人の高齢者、低所得と位置づけられています。でも、高齢者、六十五歳以上の方というのは三千三百万人。三人に一人は低所得者で、だからお金を渡すんだと。これは渡し過ぎだと思いますよ。そして、現役世代は賃上げの恩恵を受けているから渡さないんだと。賃上げの恩恵を受けている人ばかりじゃありません。そういう状況から目をそらして、こういう三千六百億円、また来年度から続くんだという、来年度以降は消費税がありますから、今年度だけで三千六百億円。これは巨額です。

 若い世代に対して後ろめたいような気持ちというのは全くありませんか、総理。

安倍内閣総理大臣 我々は、私たちの経済政策によって、二十一兆円、国、地方税収はふえたわけでありまして、アベノミクスの果実と言えるんだろう、こう思っております。

 そして、その果実を、高齢者の方々に、あるいはまた子育て支援のために使っていく。

 例えば、一人親家庭の支援も行っていきます。児童扶養手当についても、二子、三子の増額をさせていただいております。五千円を一万円へ、三千円を六千円へと。これは所得に応じていくわけでありますが、モデルケースとしてはそういう対応をしていくわけでございますし、そしてまた幼児教育の無償化についてもしっかりと進めているわけでございます。

 そういうことはしっかりと手当てした上において、高齢者の方々の消費性向が高いのは事実であります。消費の落ち込みが懸念されるのも事実でありますから、マクロ政策として正しいと言ったのはそういう意味でございますが、それとともに、先ほど申し上げましたように、やはり、私たちの経済政策において恩恵が行き届いていないところ、全部というわけにはいきませんが、できる限りのところで今回それを実行させていただいているところでございます。

重徳委員 今、総理は何度か、アベノミクスの果実、あるいは消費性向の高い高齢者に配ることによって、これは消費を喚起する、そういう意味でおっしゃったんだと思いますが、気になるのが、今回の補正予算から、アベノミクスの果実の活用とか均てん、均てんなんて役所言葉でわかりにくいんですが、そういう言葉が随分出てきたなと思うんですね。

 つまり、税金を直接個人個人に配って、いわば景気対策なわけですね。こういう政策というのは、本来常に行われるべきことではないと私は思います。

 税の再配分というのは、基本的には、社会保障、すなわち所得格差の是正とか福祉政策とか、こういったことに充てられるのが王道であります。

 ですから、今回も、趣旨の説明、制度の説明を聞くと、この給付金というのが、年金生活者支援給付金、六百万人対象の、これの前倒し的なものなんだというふうに、社会保障的な政策だという説明が行われる一方で、この三千六百億円は、GDP六百兆円の実現、個人消費の下支え、経済の下振れリスクへの対応、そして消費性向の高い高齢者に配るんだ、こういうことなんです。

 私、アベノミクスというのは、もともと、いわゆるトリクルダウンといいましょうか、いろいろな説明がありますが、民間の間でお金が回っていく、そういう好循環を目指すというのが本来の目指していた、この三年間ずっと総理が目指されていたことなんじゃないかと思うんですが、ここへ来て、民間同士のお金の回りじゃなくて、一旦税収として入ったものを再分配する、そういう政策に特に今回の補正予算から大きく転じたんじゃないか、こう思うんですね。

 アベノミクスの本来は民間の経済の活性化でありまして、そのような官製の、役所が一回、集まった税金を三万円ずつ一千万人以上の人に、これは社会保障じゃありません、本来の低年金対策は六百万人が対象のところを一千百万人に広げて、事務的な理由とか一回だけだからとか、そういうことをおっしゃいますが、そういう問題じゃないと思います。

 先ほど申し上げました、若い世代への責任を考えれば、将来のことを考えれば、安倍総理も最大の課題だというふうにおっしゃった人口問題に対応するためにも、一過性の三千六百億円、このようなものをアベノミクスの果実として分配するのは大きな政策の転換のように私は受けとめるんですが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 まさに、私たちは、将来を考えているからこそ機動的な運営をしているわけでございます。

 このように私たちのアベノミクスの果実を有効に生かした例はほかにもあるわけでありまして、消費税後の反動減の緩和を図る観点から、一般の住宅取得に係る給付措置、これは千六百億円を実施いたしました。また、プレミアム商品券などを対象とする地域住民生活等緊急支援のための交付金、これは二千五百億円でありますが、こうしたものを実施しております。

 これは、その給付が行き渡る人たちプラス、やはり消費にいい影響を与えていく、経済にいい影響を与えていって経済が腰折れしないようにしているわけでございます。

 経済が腰折れしたら、これは元も子もないわけでありまして、我々は、腰折れしなかったからこそ、この二十一兆円という果実を得ることができた。こうしたことは、ちゃんとマクロ経済管理をしながら正しい支出をしていけば、また新たな果実を産み落としていくということではないかと考えております。

重徳委員 これで終わりますけれども、いかに言っても、一人三万円ばらまくというのは、文字どおり、ばらまきだと思います。また、上振れ分、あるお金は全部使ってしまえ、こういう発想じゃなくて、財政再建を少しでも前倒しするという気概がなければ、今の若者たちの希望に応えることはできません。

 こんなことを申し上げまして、質問を終了させていただきます。ありがとうございました。

竹下委員長 これにて重徳君の質疑は終了いたしました。

 これをもちまして各会派一巡の基本的質疑は終了いたしました。

 次回は、明十三日午前八時五十五分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時散会


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