衆議院

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第6号 平成28年2月3日(水曜日)

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平成二十八年二月三日(水曜日)

    午前八時五十九分開議

 出席委員

   委員長 竹下  亘君

   理事 石田 真敏君 理事 金田 勝年君

   理事 菅原 一秀君 理事 鈴木 馨祐君

   理事 関  芳弘君 理事 平沢 勝栄君

   理事 柿沢 未途君 理事 山井 和則君

   理事 赤羽 一嘉君

      秋元  司君    井上 貴博君

      池田 道孝君    池田 佳隆君

      石川 昭政君    石原 宏高君

      稲田 朋美君    岩屋  毅君

      衛藤征士郎君    小倉 將信君

      小田原 潔君    越智 隆雄君

      奥野 信亮君    勝沼 栄明君

      門  博文君    上川 陽子君

      小池百合子君    小林 鷹之君

      國場幸之助君    佐田玄一郎君

      佐藤ゆかり君    鈴木 俊一君

      瀬戸 隆一君    薗浦健太郎君

      長坂 康正君    根本  匠君

      野田  毅君    原田 義昭君

      古屋 圭司君    保岡 興治君

      山下 貴司君    山本 幸三君

      山本 有二君    井坂 信彦君

      今井 雅人君    緒方林太郎君

      大串 博志君    大西 健介君

      岡田 克也君    小山 展弘君

      階   猛君    玉木雄一郎君

      西村智奈美君    福島 伸享君

      宮崎 岳志君    石田 祝稔君

      浮島 智子君    濱村  進君

      吉田 宣弘君    赤嶺 政賢君

      笠井  亮君    高橋千鶴子君

      宮本  徹君    足立 康史君

      松浪 健太君    重徳 和彦君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   総務大臣         高市 早苗君

   法務大臣         岩城 光英君

   外務大臣         岸田 文雄君

   文部科学大臣       馳   浩君

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   農林水産大臣       森山  裕君

   経済産業大臣

   国務大臣

   (原子力損害賠償・廃炉等支援機構担当)      林  幹雄君

   国土交通大臣       石井 啓一君

   環境大臣

   国務大臣

   (原子力防災担当)    丸川 珠代君

   防衛大臣         中谷  元君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (復興大臣)       高木  毅君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (行政改革担当)

   (消費者及び食品安全担当)

   (規制改革担当)

   (防災担当)       河野 太郎君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)     島尻安伊子君

   国務大臣

   (経済再生担当)

   (経済財政政策担当)   石原 伸晃君

   国務大臣

   (一億総活躍担当)

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)   加藤 勝信君

   国務大臣

   (地方創生担当)

   (国家戦略特別区域担当) 石破  茂君

   国務大臣

   (東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当)       遠藤 利明君

   財務副大臣        坂井  学君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  澁谷 和久君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  永井 達也君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           大泉 淳一君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局長)            片瀬 裕文君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官) 日下部 聡君

   参考人

   (独立行政法人都市再生機構理事長)        上西 郁夫君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   予算委員会専門員     柏  尚志君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月三日

 辞任         補欠選任

  秋元  司君     國場幸之助君

  井上 貴博君     池田 佳隆君

  石原 宏高君     上川 陽子君

  小倉 將信君     石川 昭政君

  越智 隆雄君     稲田 朋美君

  小林 鷹之君     勝沼 栄明君

  原田 義昭君     池田 道孝君

  緒方林太郎君     岡田 克也君

  階   猛君     小山 展弘君

  松野 頼久君     井坂 信彦君

  吉田 宣弘君     石田 祝稔君

  赤嶺 政賢君     宮本  徹君

  高橋千鶴子君     笠井  亮君

同日

 辞任         補欠選任

  池田 道孝君     瀬戸 隆一君

  池田 佳隆君     薗浦健太郎君

  石川 昭政君     小倉 將信君

  稲田 朋美君     越智 隆雄君

  勝沼 栄明君     小林 鷹之君

  上川 陽子君     石原 宏高君

  國場幸之助君     秋元  司君

  井坂 信彦君     今井 雅人君

  岡田 克也君     宮崎 岳志君

  小山 展弘君     階   猛君

  石田 祝稔君     吉田 宣弘君

  笠井  亮君     高橋千鶴子君

  宮本  徹君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  瀬戸 隆一君     原田 義昭君

  薗浦健太郎君     井上 貴博君

  今井 雅人君     松野 頼久君

  宮崎 岳志君     緒方林太郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成二十八年度一般会計予算

 平成二十八年度特別会計予算

 平成二十八年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

竹下委員長 これより会議を開きます。

 平成二十八年度一般会計予算、平成二十八年度特別会計予算、平成二十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑に入ります。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官澁谷和久君、内閣官房内閣審議官永井達也君、総務省自治行政局選挙部長大泉淳一君、経済産業省通商政策局長片瀬裕文君、資源エネルギー庁長官日下部聡君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

竹下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

竹下委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲田朋美君。

稲田委員 おはようございます。自由民主党の稲田朋美です。

 冒頭、北朝鮮が、国際機関に対し、今月八日から二十五日までの間に衛星を打ち上げることを伝えたとの報道がございます。現時点で政府が把握している事実関係、そしてそれに対する対応について、総理にお伺いをいたします。

安倍内閣総理大臣 昨晩、北朝鮮が、今月八日から二十五日までの間に人工衛星を発射する旨を、IMO、国際海事機構及びICAO、国際民間航空機関に通報しました。

 これは、実際は弾道ミサイルの発射を意味するものであります。核実験の実施に引き続き北朝鮮が弾道ミサイルの発射を強行することは明白な安保理決議違反であり、我が国の安全保障上の重大な挑発行為であります。米国や韓国等関係国と連携し、北朝鮮が発射を行わないよう強く自制を求めてまいります。

 政府においては、通報を受け、私から直ちに、情報の収集、分析、国民の安全、安心の確保に万全を期すことなどについて指示を行いました。そして、先ほど関係省庁局長級会議を開催して、今後の対応についての確認を行ったところでございます。

 先般のNSCにおきましても、北朝鮮の弾道ミサイル発射についての分析、対応等について検討したところでございますが、今般の発表を受けまして、本日十二時からNSCを開催いたしまして、今後の対応そして現状の分析を行うところでございます。

稲田委員 国民の生命、身体、平和な暮らしを守ることが政治の最大の責務だと思いますので、政府におかれましては、正確な情報収集そして万全の対応をお願いしたいと思います。

 さて、甘利経済再生担当大臣が先週辞任をされて、アベノミクスの経済政策、そしてデフレからの脱却の牽引役を果たされてきた甘利大臣の辞任、まことに残念でございます。

 石原新大臣におかれましては、党の中小企業・小規模事業者政策調査会長として全国の中小企業の実態を調査され、それを党内の政策に生かしてこられた、その実績と経験をぜひとも日本の経済再生のために生かして牽引をいただきたい、リーダーシップを発揮していただきたいと存じます。

 さて、安倍政権も四年目を迎えます。アベノミクス、そして女性活躍、地方創生、一億総活躍などなど、さまざまな観点からの政策を推し進め、成果を上げてまいりました。これは、困難な課題にも果敢にチャレンジをして、議論があっても決めていく政治を推し進めてきたからだと思います。

 外交、防衛におきましても、平和安全法制の成立、TPPの大筋合意、さらには慰安婦に関する日韓の合意など、大きな課題を解決し、国際社会で日本の存在感はかつてないほど高まっていると思います。今後ますます東アジア太平洋地域の平和と安定と繁栄に日本が果たすべき役割は大きくなると存じます。

 しかしながら、ことしに入って、冒頭総理がおっしゃいました北朝鮮の核実験さらにはミサイル、そして中東情勢、中国経済の減退、原油安などなど、安全保障情勢、また経済情勢、日本は正念場にあるというふうに思います。

 そんな中で、日銀がマイナス金利つき量的・質的緩和に踏み切りました。これはアベノミクスの前進にとって大きな後押しになると期待をしたいと思いますが、それでも、世界情勢に影響されない、日本の経済を強くするということは重要だと思います。こういった正念場だからこそ、一国のリーダーがこの国の将来像を語るべきだと思います。

 総理にお伺いをいたしますが、総理が目指すべき日本の将来像と、それに向けてのことしの最優先課題についてお伺いをいたします。

安倍内閣総理大臣 ただいま稲田委員が指摘をされたように、世界は、私たちが望むと望まざるとにかかわらず、大きな変化を遂げているわけであります。我々は、この変化に対して受け身であってはならないわけであります。しっかりと情勢を分析しながら、その潮流を見定め、先手を打って対策を講じていくことが求められていると思います。

 いわばそのためには、スピード感を持って、今までの歴史から教訓を学びつつ、かつ新しい事態には新しい対応をしていく、こういう発想も持ちながら先手を打っていく。それが政治の責任であろう、立ちどまっている余裕はないんだろう、こう思うわけであります。

 世界は、例えば経済に目を転じれば、これまで成長を牽引してきた新興国経済に弱さが見られます。また、安全保障の分野においては、北朝鮮もそうですが、中東におけるISILの台頭及びテロ、そして普遍的な価値がその中で危機に瀕するなど、大きな岐路に直面をしています。

 その中で日本は、自由や民主主義、そうした基本的価値を共有する国々と手を携えて、世界の平和と安定にこれまで以上に貢献していくことが求められています。世界が直面するさまざまな課題に、主要国の建設的な関与を促しながら、その解決に努力をしていかなければなりません。

 また、TPPや欧州とのEPAを進め、自由で公正な経済秩序を世界へと広げていくことによって、より安くではなく、よりよいに挑戦をしていかなければならない、イノベーション型の経済成長へと転換をリードしていくことが求められていると思います。

 本年は、安保理非常任理事国の重責を担います。そして、伊勢志摩サミットの議長国になるわけであります。今申し上げましたそうした課題に、そうした国々としっかりと手を携えて対応していく、正しい対応をしていく上において日本がリーダーシップを果たしていきたいと思います。

 また、内政においては、国内では長年放置をされてきました少子高齢化の流れに歯どめをかけ、活力にあふれる、誇りある日本をつくり上げていきたいと思います。そして、私たちの子や孫の世代へとこのすばらしい日本を、誇りある日本を引き渡していく責任を果たしていかなければなりません。

 キーワードは多様性ではないか、こう思っております。その中で新しいアイデアが生まれ、ダイナミックな経済社会が生まれるわけでありまして、誰にでもチャンスがある、チャンスがあふれる、誰もが将来に夢や希望を持って頑張っていくことができる社会をつくっていきたいと思います。

 これまで、電力や医療やエネルギー、労働などの分野で戦後以来の大改革を断行し、規制改革によって多様なチャンスを生み出してきたわけでありますが、さらに、一億総活躍、高齢者も若い人も、そして女性も男性も、難病のある方も、また障害がある方も、誰にでもチャンスがあり可能性のある社会をつくっていくことによって、日本はしっかりと成長しながら、かつ世界の中でしっかりとその責任を果たしていく、誇りある日本をつくっていきたいと考えております。

稲田委員 今総理がおっしゃったように、今の日本は、明治維新、そして戦後の復興に次ぐ大変革期にあると思います。世界で日本復活のイメージを保持しつつ、この世界の大変革の潮流に乗りおくれない果敢な挑戦、そして今まで安倍政権で進めてきた大胆な改革を進め、結果を出していく必要があると思います。

 先ほど総理がお述べになった、ことしの五月、G7の伊勢志摩サミットで総理は議長を務められるわけでありますけれども、世界の平和と繁栄に貢献する日本の積極的な姿をアピールし、日本らしさとともに、日本が取り組む課題について発信をすべきだと思いますが、総理の御決意をお願いいたします。

安倍内閣総理大臣 ことしは、先ほど申し上げましたように、日本が非常任理事国に入っている。その結果、今般の北朝鮮のミサイル発射、それに先立つ核実験に対してどのような決議を行うべきか、どのような制裁を行うべきかということについてもリーダーシップを発揮することができています。

 また、初のアフリカにおけるTICADが開催されます。そして、日中韓の首脳会談、これは日本で開催されるわけでありますが、そのハイライトは伊勢志摩サミットであろう、こう思います。

 先ほども申し上げましたが、新興国経済に陰りが見られるわけであります。その要因の一つとなっている原油価格の急落という問題もあります。その中で、不透明感を増す世界経済の中で、G7がどういう役割を果たし、そしてどうやって安定性を回復していくかという中において、日本も議論をリードしていきたいと思います。

 また、北朝鮮情勢やテロなどの外交、安全保障の問題、そして気候変動の問題やあるいは貧困の問題といったグローバルな課題があります。そうした課題について率直な議論を行っていきたい、こう思うわけでありますし、今まで、どちらかというと、世界の中であるべき姿が示され、日本はそれに従っていくという立場であったわけでありますが、日本こそが世界はこうあるべきだという考え方をしっかりと打ち出していきたいと思います。

 G7は、自由や民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値のチャンピオンであり、まさに世界のオピニオンリーダーでなければならないと思っています。グローバルな視点に立って将来を見据えて、世界の平和と繁栄、経済連携の拡大などについて、我々が進むべき最も適切な道筋を示し、世界をリードしていきたいと考えております。

稲田委員 まさに、総理がこの三年間進めてこられた地球儀を俯瞰する外交、そして積極的な外交、さらには、世界における日本の役割、世界に復活をした日本というものをアピールしていただきたいと思います。

 次に、憲法改正についてお伺いをいたします。

 憲法は、法治国家、主権国家日本の基本法であります。さらには、日本が目指すべきビジョンの基本的な法的な基盤でもあります。現行憲法は、日本が占領されていた、そして主権が制限されていた時代にできたものであります。

 昭和二十七年、サンフランシスコ平和条約が発効して、日本が主権を回復した後に自主憲法をつくるべきであるというのが我が党の党是であり、昨年、我が党立党六十年の際にも、この憲法改正という、我が党の党是であり、歴史的なチャレンジに果敢に挑戦していくということで心を一つにしたわけであります。

 昨年、集団的自衛権の議論の中で、集団的自衛権の行使が憲法に違反する、そういう批判がありましたが、憲法で、日本の国家を守る自衛権、必要最小限度の自衛権について、ごくごく限定された集団的自衛権の行使を認めることは、何ら憲法に違反するものでも立憲主義に違反するものでもありません。

 憲法九条の一項は、一九二八年の不戦条約の流れをくむ侵略戦争を禁止するという国際法上の当然の法理が書かれております。しかしながら、九条二項は、「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」これを素直に文理解釈をすれば、自衛隊は九条二項に違反をする。憲法学者の約七割が、九条二項に自衛隊は違反ないし違反する可能性があると解釈をしております。

 憲法制定の当時、九条のもとで日本は自衛権の行使すらできないというのが政府の解釈であったわけでありますが、一九五四年に自衛隊が創設をされて、九条のもとであったとしても、日本は、主権国家である以上、自分の国が危ないとなれば、九条のもとで自衛権の行使ができると憲法解釈を変更し、これが九条の歴史の中で最も大きな憲法解釈の変更であります。

 九条のもとで最小限度の自衛権の行使ができるというのは最高裁でも判示がされておるわけでありますけれども、憲法学者の多くが、素直に文理解釈をすれば、自衛隊が違憲であると解釈するような九条二項、もう既に現実には全く合わなくなっている九条二項をこのままにしていくことこそが私は立憲主義を空洞化するものであると考えますが、総理の御意見をお伺いいたします。

安倍内閣総理大臣 先般の平和安全法制の議論の際に、憲法学者の多くが、これは憲法違反だ、そういう指摘がなされまして、この国会においてもそれが大きな焦点となり、議論となりました。

 しかし、今、稲田委員が紹介をされたように、実は、憲法学者の七割が、憲法の九条一項、二項を読む中において、いわば解釈からすれば、まさに憲法違反のおそれがある、自衛隊の存在自体がおそれがあるという判断をしている。自衛隊の存在自体が、いわば自衛権の行使そのものが憲法違反であるという解釈をしている以上、これは当然、集団的自衛権についても憲法違反だということになっていくんだろう、こう思うわけであります。

 しかしながら、今、稲田委員がおっしゃったように、憲法前文が国民の平和的生存権を確認し、そして、十三条で生命、自由、幸福追求に対する国民の権利を国政上尊重すべきことを定めていることなどを踏まえて考えると、憲法第九条は、我が国が主権国家として持つ固有の自衛権を否定しているものではなく、自衛権の行使を裏づける必要最小限度の実力組織を保持することももとより禁じているものではないと解しているわけでありまして、このような政府の解釈は一貫したものであり、また、政府の憲法解釈に関する基本的論理は、最高裁判決と軌を一にするものであります。また、何よりも、自衛隊は創設以来六十年間以上にわたり国内外における活動を積み重ね、今や自衛隊に対する国民の支持は揺るぎないものがあるわけであります。

 そして、もとより自由民主党は、今委員がおっしゃったとおり、立党以来、憲法改正を党是としたわけでありまして、そうした谷垣総裁のもとで相当な議論を行って憲法改正草案を発表しております。

 その中では、第九条第二項を改正して自衛権を明記し、また、新たに自衛のための組織の設置を規定するなど、自由民主党として、将来のあるべき憲法の姿をお示ししています。

 そういう意味におきましては、いわば憲法解釈について、七割の憲法学者が、憲法違反の疑いがある、自衛隊に対してそういう疑いを持っているという状況をなくすべきではないかという考え方もあり、また、そもそもこれは占領時代につくられた憲法である、時代にそぐわなくなったものもある、そして、私たちの手で憲法を書いていくべきだという考え方のもとに、私たちは私たちの草案を発表しているわけであります。さきの総選挙においても、憲法改正を目指すことは明確に示しているわけでございます。

 また、憲法の改正につきましては、これは法改正とは違って、国会の中で完了するわけではなくて、国会議員が多数決で決めればそこで決まるのではなくて、国会は、いわば国民の皆様にその判断を委ねる、そのための発議をするだけでありまして、決めるのは、憲法においては国民の皆様に決めていただく。国民の皆様に決めていただくということすら国会議員がしなくていいのか、それは責任の放棄ではないかということを多くの問題意識として、責任感のある我が党の国会議員が考え抜いた結果、先般、谷垣総裁のもとで我々の考え方をお示ししたところでございます。

 決めていただくのは、まさに国民投票における国民の皆さんの一票であろう、こう思うわけであります。だからこそ、憲法の改正については国民の理解が不可欠であり、具体的な改正の内容は、国会や国民的な議論と理解の深まりの中でおのずと定まってくる、こう考えております。

 念のためにつけ加えさせていただきますと、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義など、現行憲法の基本原理を維持することは当然のことであり、私たちの憲法草案においてもそれは貫かれているということは申し添えておきたいと思います。

稲田委員 憲法改正については、やりやすいところからやるべきだという議論もありますけれども、私は、この九条二項などのように、本質的な議論をする、そして、総理おっしゃいましたように、この憲法改正は国民の理解があって初めてできるものでありますので、党内でも、国民の理解が得られるよう活発な議論を進めてまいりたいと思います。

 さて、安倍政権の大きな特徴の一つは、改革断行政権であるということだと思います。よいものを守るためには変えていかなければならない、伝統を守るために創造する、まさしく、保守である我が党の改革の精神だと思います。

 六十年ぶりの農協改革、患者申し出療養を創設した医療改革、内閣人事局をつくった公務員制度改革、電力自由化、発送電分離を実現させる電力システム改革など、長年どの政権も取り組もうとしてできなかった骨太の改革に取り組んで、成果を上げております。難しいけれども、本質的な改革に取り組むのが安倍政権の真骨頂であり、正念場を迎えている日本の経済再生にとって唯一の道筋だと私は考えております。

 GDP六百兆円、新三本の矢で示しておりますけれども、このGDP六百兆円は、内閣府の経済再生シナリオ、成長率名目三%を前提とすれば、二〇二〇年と二一年の間に達成するんですけれども、でも、潜在成長率〇・五の日本がどうやってGDP六百兆円を達成するのか、私は世界が注目をしていると思います。

 構造改革なくして潜在成長率を高めることはできない。総理もおっしゃったように、経済、産業の大変革期において、IoTや人工知能で産業構造が、ビジネスモデルが一夜にして変わる、このような現代において、それに対する適応のスピードを高めていかなければならない。その一つとして、雇用改革は私は不可欠だと思っております。

 終身雇用、年功序列といったいわゆる日本型雇用システムは、いいところはたくさんあるんですけれども、でも一方で、例えば解雇をめぐるルールにおいて、予見可能性が必ずしも十分でないとか、正社員の終身雇用を守ろうとする余り、それの結果として若い世代の採用抑制につながるとか、賃下げまたは不本意非正規の増加につながるとしたら、これは働く人の雇用環境や選択肢を狭める結果にもなりかねません。

 総理は施政方針演説で、従来の労働制度、社会の発想を大きく改めなければならないとおっしゃっております。全く私も同感であります。女性、高齢者が働きやすい環境をつくる、さらには、外国人労働の問題も正面から議論をすべきときが来ていると思います。

 日本型雇用システムの長所を生かしながら、どのようにして経済全体の適応力を高めていくのか、働き方改革、雇用改革についての総理のお考えをお示しください。

安倍内閣総理大臣 稲田委員の質問の冒頭に、ビジョンについて御質問がございました。その中で、私は、大きく変化をしていると。

 この大きく変化している一つは、まさに経済がグローバル化している、そのグローバル化した経済の中で日本は生き残っていかなければならないということが大きな変化の一点、対応の必要性の一点でございますが、もう一点は、残念ながら、日本の人口は減少していくということであります。もちろん、私たちは一億人を維持したい。でも、一億人に向かって減少していくのは事実。

 その中で、六百兆円という名目GDPを掲げました。それを達成するためには、世界の競争に勝ち、かつ、人口が減少していくけれども、その中で、この新たな産業革命に対応して生産性を上げていく、そして同時に、多様な働き方を可能にしていかなければそれはできないということでありまして、結果として、その中で、私たちはしっかりと対応を打っていけば、さらに豊かな生活を確保することができる、こう確信をしております。

 今後の持続的な成長のためには、イノベーションによって新しい付加価値を次々と生み出していく必要があります。イノベーション型の経済成長へと転換をしていく必要があります。

 その鍵は多様性でありまして、一人一人の多様な能力が十分に発揮をされ、その多様性が認められる社会、すなわち、誰もが活躍できる一億総活躍が目指す社会像であります。

 多様な能力が発揮をされ、認められるためには、一人一人の事情に応じた多様な働き方が可能な社会への変革と、ワーク・ライフ・バランスの確保という働き方の改革が必要であります。我が国の人事・雇用管理には、人を大切にするというすぐれた点があります。そうした点を失うことなく、働き方の改革を進めて、企業の収益を伸ばし、働く人々にその成果が還元されていくことが重要だろうと思います。

 今春取りまとめるニッポン一億総活躍プランにおいて、同一労働同一賃金の実現など、非正規雇用労働者の待遇の改善、長時間労働の是正、高齢者雇用の促進を大きく課題と位置づけ、働き方改革に取り組んでいきます。しっかりとそのことによって生産性も上がっていくと同時に、働き手をふやし、それぞれがそれぞれの能力を評価されながら、そしてしっかりと結果を出していくことができるような、そういう社会をつくっていきたい、こう考えております。

稲田委員 多様化を進めて改革を進めていく中で、やはり私は、労働市場のセーフティーネット、一人一人が安心をして誇りを持って働けるよう、社会保障とそして教育の受け皿が必要だと思いますが、その点についての総理のお考えをお伺いいたします。

安倍内閣総理大臣 まさに、みんなが頑張っていく、新しいことに挑戦していく、そういう気持ちになるためにはセーフティーネットがなければなりません。人は、頑張っても、不幸にして病気になったり、あるいはうまくいかなかったりして、生活の基盤を失うことがあります。そのための社会保障の基盤をしっかりとつくっていく。

 また、挑戦するためには教育を受けることができなければならないわけでありまして、家庭の経済事情によって勉強ができない、あるいは高校や大学に進めないということがあってはならない、こう考えております。

 我々は、三本の矢の政策によって、名目GDPは二十八兆円ふえ、そして、国、地方合わせて税収は二十一兆円ふえました。この果実を生かしながら、社会保障制度、例えば介護離職ゼロのための社会福祉、あるいは希望出生率一・八のための子育て支援をしていくことによって、安定した社会的な基盤を確立することができます。そして、その上に、成長への投資を行っていくことによって我々はさらに成長し、そして成長によって果実を得て、それをまたさらに安定した社会的な基盤のために使っていくという、成長と分配の好循環を進めていきたいと思います。

 そして、議員の御指摘のとおり、職業訓練や学校教育、社会保障の充実は、一人一人の多様な能力が十分に発揮をされ、多様性が認められる社会を充実していく上で極めて重要であると考えております。その中で、我々も、社会福祉あるいは教育への支援をしっかりと行っていきたいと考えております。

稲田委員 単に経済政策というよりも、次世代のための日本の変革に向けて、産業政策、雇用政策、そして人材育成を一体として進めていく、その上で、セーフティーネットとしての教育と社会保障を次世代のためにという視点で再構築をしていく、そういった時代認識のもとで、大胆に改革を進めていただきたいと思います。

 次に、エネルギー政策ですけれども、競争的で強靱なエネルギー基盤をつくることは、日本の経済再生にとって不可欠であります。さらに、エネルギー政策は国家の安全保障に直結をする基本戦略であることは、近代の日本の歴史がそれを示しているところであります。

 しかしながら、東京電力福島第一原発の歴史的な大事故において、原子力のみならず、エネルギー政策全体に対する国民の信頼が地に落ちているというふうに思います。まずは国民の信頼を取り戻す骨太の政策を打ち出すことが必要だと思います。そのためにも、将来のエネルギーミックスの考え方をしっかりと示す必要があると思います。

 要素は四つあります。一つは、一番重要な安全性です。この安全性という観点からは、原子力への依存はなるべく低減をしなければなりません。さらに、国家安全保障につながる自給率。自給率は高めなければならない。さらに、先進国として恥ずかしくない温室効果ガス排出量の目標を掲げて、達成しなければならない。そして、電力コストは、日本の経済という意味から、これ以上高くなることは避けなければならない。

 この四つをうまくきちんとクリアするようなエネルギーミックスを導き出していかなければなりませんが、政府が目標として定めた二〇三〇年のエネルギーミックスの基本的な考え方について、わかりやすく、総理、御説明ください。

安倍内閣総理大臣 今、稲田委員がおっしゃったように、我々は、福島第一原発事故、過酷な事故を経験いたしました。二度と起こしてはならない、その強い決意のもとに、この事故が突きつけた課題と向き合い、それを踏まえて、平成二十六年四月に、エネルギー政策の基本方針をまとめたエネルギー基本計画を改定しました。

 日本は資源に乏しい国であります。安全性の確保を大前提に、経済性、気候変動の問題に配慮をしつつ、エネルギー供給の安定性を確保しなければならないわけであります。日本が経済を成長させていく、そして社会保障費を賄っていく上においても成長しなければならないわけでありますが、それにはエネルギーが必要であります。そして、自前のエネルギーもしっかりと確保していかなければならない。

 そういう観点も入れながら、今回、このエネルギーミックスについて論考を進めたのでございますが、その際、徹底した省エネルギーの推進、再生可能エネルギーの最大限の導入、火力発電の高効率化、資源の確保等に全力で取り組み、原発依存度を可能な限り低減していく、このような考え方に基づいて昨年策定した長期エネルギー需給見通しにおいては、自給率をおおむね二五%程度まで改善する、そして、電力コストを現状よりも引き下げる、欧米に遜色のない温暖化ガス削減目標を掲げるという三つの目標を同時に達成するような検討を行いました。

 その結果、例えば再エネについては、現状の水準から二倍程度拡大をし、二二%から二四%、そして、東日本大震災前に約三割を占めていた原子力については、二〇%から二二%としているところでございます。

稲田委員 骨太のエネルギー政策、そして、実現可能なエネルギーミックスをしっかりと国民に示していく必要があると思います。

 さて、エネルギーミックスの担い手はエネルギー事業者です。電力業界は、福島第一事故を経て、歴史的な曲がり角にあると思います。

 例えば、このパネルにありますように、電力需要をとっても、戦後の増大基調が頭打ちになり、むしろ減少に転じているわけであります。

 安倍政権は、改革実行政権として、電力市場の全面自由化、発送電分離に踏み切りました。この改革により、これまでの電力会社の地域独占が崩れ、料金の引き下げと多様なサービスの導入がもたらされることを期待されております。

 四月から新たに自由化される市場について、多くの事業者が参入準備を進めております。従来から大口向けの市場に参入していた事業者に加え、新たに、ガス会社、石油会社、通信、放送、鉄道事業者に至るまで、既に百三十社が小売事業者の登録を受け、さらに百社が登録待ちをしております。

 さまざまな地域や業種の壁に分断されていた電力会社、ガス会社の連携が始まって、世界を視野に入れた強靱なエネルギー企業が生まれることも期待されております。

 林経産大臣にお伺いをいたします。自由化を通じてどのようなエネルギー産業の将来の絵姿を目指しておられるのか、また、それが国民にとってどのようなメリットがあるのか、わかりやすく御説明ください。

林国務大臣 四月からの小売全面自由化によりまして、新たに八兆円の市場が開放されるわけであります。既に二百五十社以上が参入申請をしておりまして、ガスや石油のみならず、鉄道や通信などの業種からの新規参入、また、既存の電力会社同士の競争が既に始まっております。

 今後、エネルギー産業が、電気やガスといった業種あるいは地域の垣根を越えた総合的なエネルギー産業に発展していくことを期待しているところでございます。

 例えば、ある大手ガス会社は、本業の都市ガス事業に加えまして、この電気事業を強化するために通信会社、電力会社と提携を進めておりまして、これによりまして、電気、ガス、通信の一括セット割引を実現するとともに、価格も、現在の電気料金に比べて五%以上格安なメニューもあるなどを認識しているところでございます。

 このような事例は一例にすぎないわけでありますが、今後、活発な競争を通じまして、価格やサービス面での魅力的な提案がなされるものと期待しているところでございます。

稲田委員 福島第一事故のピンチをチャンスに変えて、国民の信頼を取り戻しつつ、自由化を通じてエネルギー産業の活性化と国民生活に利益がもたらせられるように、エネルギー政策、ぜひ進めていただきたいと思います。

 先週、福井県の高浜原発が再稼働いたしました。福井県は国策である原子力政策を長年にわたり担ってきたわけでありますが、そうした地元にとって、国家のエネルギー政策が長期的な視点から国民的なコンセンサスの中で行われるということが重要だと感じております。

 総理は、原子力政策全般についての考え方を昨年十二月の原子力防災会議において述べられたと承知いたしておりますが、改めて、国民に対し、原発への理解をどのように求めていかれるのか、御説明お願いいたします。

安倍内閣総理大臣 原子力については、東京電力福島第一原発事故によってもたらされた廃炉・汚染水対策、そして福島の復興が最優先の課題であります。

 その上で、先ほどエネルギーミックスの考え方について申し上げたとおり、資源に乏しい我が国が、経済性そしてまた気候変動の問題にも配慮をしつつ、エネルギー供給の安定性を確保するためには、原子力はどうしても欠かせないエネルギーであります。

 もちろん、安全性の確保が最優先であることは当然のことであります。原子力発電所の再稼働については、安全神話の信奉が招いた東京電力福島原子力発電所事故を片時も忘れずに、真摯に反省をし、その教訓を踏まえていくことは当然のことであります。

 高い独立性を有する原子力規制委員会が、科学的、技術的に審査し、世界で最も厳しいレベルの新規制基準に適合すると認めた原発のみ、その判断を尊重し、地元理解を得ながら再稼働を進めるというのが、政府の一貫した方針であります。その上で、万が一、原発事故が起きて災害になるような事態が生じた場合、国民の生命、身体や財産を守ることは政府の重大な責務でありまして、責任を持って対処していきます。自治体を最大限支援し、全力を尽くしてまいります。

 原子力については、再稼働、原子力防災対策のみならず、廃炉、使用済み燃料対策、立地地域の振興など、課題は多岐にわたるわけでありますが、政府としては、これに責任を持って取り組んでまいります。

 また、原子力の重要性やその安全対策、避難計画を含む原子力災害対策について、全国各地で説明会を行うなど、国民理解が得られるよう丁寧に説明をしていく考えでありまして、その際、さまざまな声に耳を傾け、政府の取り組みに適切に反映をしてまいります。

 改めて、福井県を初め、原発立地県の皆様の御協力、御理解等に感謝申し上げたいと思います。

稲田委員 ぜひとも、国民全体の信頼を回復するためにも、総理を初めとして、政府のリーダーシップのもとで理解を求めていっていただきたいと存じます。

 さて、安倍政権の大きな特徴として、経済再生と財政再建、二兎を追って二兎を得る政権であるというのがあります。二兎を追って二兎を得る、普通は二羽のウサギを追えば二羽とも失うというのがことわざなんですけれども、この難しい選択を安倍政権はしております。

 我が党でも、かつては財政再建路線と上げ潮路線という二つの路線が対立をしていたわけですけれども、安倍政権では、その二つを結合して、両方とも達成する、経済成長なくして財政再建なし、構造改革なくして経済成長なし、財政再建なくして経済成長なし、また、財政再建については、強い意思で取り組むという姿勢をしっかりと示して計画を実行していく必要があると思います。

 我が党でも、特命委員会で、歳出改革の中心は社会保障の改革であったわけですが、むしろ、この社会保障の改革について政府以上に厳しい提言をまとめました。これは、世界に冠たる国民皆保険制度、国民皆年金を維持し、次世代に渡すためにも、次世代に負担を先送りしている今の不道徳な現状は変えなければならないと考えていて、それが与党の責任だと考えているからであります。

 経済財政諮問会議では、我が党の特命委員会での議論も踏まえ、歳出改革の改革工程表を取りまとめられましたが、これに基づいて社会保障改革を着実に推進していくべきだと考えますが、総理の御決意をお伺いいたします。

安倍内閣総理大臣 二〇二〇年代の初頭には団塊の世代が後期高齢者となり始める中において、受益と負担のバランスのとれた持続可能な社会保障制度の構築と財政の健全化を両立していくことが重要な課題となっています。このため、社会保障の効率化や制度改革に不断に取り組んでいくことが必要であります。

 昨年六月に、自民党の財政再建に関する特命委員会での御議論、御提案も踏まえまして、二〇二〇年度の基礎的財政収支の黒字化目標達成に向けて、経済・財政再生計画を策定したところであります。さらに、昨年末には、計画を具体化するための改革工程表を取りまとめ、早速その実現に取り組んでいます。

 計画初年度となる来年度予算においては、社会保障関係費について、後発医薬品の使用促進のためのインセンティブ措置の強化や、大型門前薬局に対する調剤報酬の引き下げといった改革を含む診療報酬の適正化等を通じて、計画に沿った歳出増加の抑制を実現することができました。いわば、大切な社会保障制度、これ自体を次の世代に引き渡していくためにも、社会保障制度自体の改革に不断に取り組んでいく必要があるだろうと思います。

 我々は、サービスの質を落とすという考え方はないわけであります。サービスの質を確保するために、不断に重点化、効率化を行っていかなければならないと思いますし、また、地方において成果を上げているところがありますから、そういう成果を横展開していく。なかなかできないのであれば、なぜ横展開ができないのかということに着目をしながらやっていくということに重点を置きながら、改革に果敢に取り組んでいきたい、こう考えております。

稲田委員 今総理がおっしゃったように、骨太二〇一五において設定された国の一般歳出の水準の目安に沿って初年度の平成二十八年度の予算が策定されて、社会保障の伸びは、五千億を下回る四千四百億にとどまったわけであります。

 党と政府との間で最後まで議論になったのが、数値目標を入れるかどうかだったわけですけれども、私は、社会保障の改革に数値目標は絶対に必要だと思っております。

 それはなぜかというと、規制改革担当大臣時代に、農協改革、それから医療改革、公務員制度改革に取り組みましたが、改革を進めていくというのは物すごくエネルギーの要ることなんです。たとえその改革がいい改革だとしても、長年その制度の中にずっといらっしゃる人々がいて、そして、それを変えることにはとても大きなエネルギーが要ります。

 しかし、農協改革なら農業界、医療改革なら医療界、公務員制度改革なら霞が関と、その改革の対象が限定されているときは、力が要っても、エネルギーが要っても、それは進めることができますが、こと社会保障改革となると、対象は国民全体なんです。国民全体を対象にして改革するのに、数値目標がなくて誰が改革を進めるんですか。私は、数値目標がなくては改革を進めることはできないというふうに思います。

 過去、財政再建の取り組みは途中で何度も頓挫をしております。重要なことは、二年目以降、すなわち、ことしの年末の予算の策定だと思いますけれども、引き続き、目安に沿って歳出改革を進めていく中で、一億総活躍、それから安全保障、防衛、国土強靱化、重大な課題にしっかりと予算をつけつつも、その歩みを着実に進めていく必要があると思いますが、総理の見解をお伺いいたします。

安倍内閣総理大臣 稲田大臣が果敢に改革に取り組んでこられたこと、まさに敬意を表したいと思います。自民党の中で、何であんなにやるんだというたくさんの批判があるにもかかわらず、それを物ともせずに実績を上げてこられた、こういうふうに思います。

 安倍内閣においては、経済再生なくして財政健全化なしとの基本方針のもとに、経済再生と財政健全化の両立を目指してまいりました。

 これが正しかったことは、この三年間、経済を成長させ、そして十兆円、国債の新規発行を減額したという実績をつくった。まさに、経済が成長し、その果実の一部は、借金返しに、財政の健全化に生かしていきますよということを実行しているわけであります。同時に、経済を成長させなければ、それはできなかったということにもなるんだろうと思います。

 そこで、今後、アベノミクスの成果の上に、平成二十八年度予算においては、一億総活躍社会の実現や外交、防衛力の強化など、安倍内閣における重要課題にしっかりと取り組みつつ、二〇二〇年度の基礎的財政収支の黒字化目標達成に向けて策定した経済・財政再生計画に沿って、社会保障を初めとする一般歳出の伸びを抑制したところであります。

 一番難しいのはやはり社会保障制度でございますが、今回は、しっかりと重点化、効率化を図ることによって、我々は、伸びを五千億円以下に、これは大分切り込むことができました。そういう意味では成果を出すことができた。そして、新規国債発行を十兆円減額することができた、こう思います。

 今後とも、経済再生に最優先で取り組み、重要課題にもしっかりと対応しつつ、計画に示された一般歳出の水準等の目安などを十分踏まえた上で、聖域なき徹底した歳出の効率化などを図り、不退転の決意で二〇二〇年度の基礎的財政収支の黒字化の実現を図っていきたいと考えております。

稲田委員 先ほど総理が答弁の中でおっしゃったように、数字というよりむしろ制度を改革して、真に必要な人には手厚く、そして負担できる人には負担をしていただくという改革が必要です。

 真に必要な人には手厚くはいいんですけれども、負担できる人には負担していただくと言った途端、今つけている予算を切るということにつながるわけですから、そういった痛みを伴う改革を進めていくには、次世代が高齢者になったとき、今の社会とは全く違う姿の社会に適応するような社会保障改革を私たちの責任としてやっていく、その覚悟が必要だと思います。

 最後に、これは、私が昨年の五月にドイツの財政再建について調査に行ったときに引用された言葉です。欧州委員会委員長のジャン・クロード・ユンカーの言葉ですが、「我々は今断行しなければならないことはわかっている、しかし、それを実行した後にどうすれば国民に再び選んでもらえるかは誰にもわからない。」大変意味の深い言葉だというふうに思います。

 今やるべきことは私たちはわかっているんです。それをやるかどうかだと思います。「いつやるんですか」、「今でしょう」ではなくて、「いつやるんですか」、「今じゃない」と言い続けて今のような状況を生み出したわけでありますので、今やるべきことをしっかりとやる、その勇気と覚悟を持って、党としても、次世代につなぐ社会保障改革に取り組んでまいりたいと思います。

 次に、外交、防衛についてお伺いをいたします。

 北朝鮮の核実験、そしてミサイルについて、冒頭、総理からお話がありました。北朝鮮の若き指導者の行動は不可解かつ予測不能で、そのような人物が、強い思いで核を開発し、我が国の同胞を拉致し、ミサイルを発射しようとしている、そのような国が日本海を隔てたすぐそこにあるという厳然たる事実を私たちはしっかりと受けとめて、安全保障、そして防衛に取り組んでいかなければなりません。

 集団的自衛権の議論のときに、立法事実がないという批判があったんですけれども、立法事実というのは、現に法益が侵害されている状況ですね。でも、こと安全保障に関して、立法事実があってからでは遅いんですよ。私は、憲法の範囲内で、ありとあらゆる場合を想定して、国民の生命、身体、平和な暮らしを守り抜くのが政治の責務だと思っております。

 そんな中で、日米同盟を緊密にすることは重要ですが、総理が昨年の十二月に日韓合意を成立された、それは大変重要なことだ、意義のあることだと思っております。

 私、外務大臣にお伺いをしたいのは、この日韓合意によって、最終的、不可逆的に解決をしたということなんですが、これは、従来から我が国が言っているところの法的な解決、これは日韓請求権協定で最終的に終わりであるということ、それから、二十万人の若い女性を強制連行して、性奴隷にして、虐殺したという、我が国が犯罪国家、未成年誘拐、監禁、強姦、殺人犯の集まりであるという、犯罪国家であるという虚偽については断固反論するということ、そして、その前提として、そういった象徴的なものである慰安婦の少女像、ソウルの大使館前の少女像を撤去することが我が国の十億円拠出の前提だと思いますが、外務大臣の見解をお伺いいたします。

岸田国務大臣 まず、日本政府は、従来から、日韓間の請求権の問題、これは一九六五年の請求権協定によって法的に解決済みである、こうした立場をとってきました。この立場、これは何ら変わっていないということは確認したいと思います。

 その上で、御指摘になられた、事実に反する主張ですとか不適切な表現、これにつきましては、引き続きしっかりと申し入れを行っていく、これはこれからも全く変わらないと思います。しっかりと説明を行い、申し入れを行っていきたいと考えます。

 そして、韓国の日本大使館前の少女像についての御質問ですが、この少女像につきましては、従来からも、累次にわたりまして、我が方から、公館の安寧、そして威厳の維持の観点から懸念をしており、早期に移転することを求めてきました。そして、今回のこの合意において、韓国側は、公館の安寧、威厳の維持の観点から日本政府が懸念していることを認知し、韓国政府として適切に解決されるよう努力をする、こうした表明がありました。

 一方、今回の合意におきまして、日本側の方としては、韓国政府が元慰安婦の方々の支援を目的として設立した財団に資金を拠出する、このようになっております。

 今回の合意においては、今申し上げましたそれぞれの合意の内容を、日韓それぞれが誠実に、着実に実施することが重要であると考えています。

 今回の合意において確認されたのは以上であります。この合意に従って、それぞれやるべきことを誠実に行っていきたいと考えています。

稲田委員 戦争に対する賠償は、国と国との平和条約、日韓であれば基本条約と賠償に関する協定が全てなんです。それ以上に個人の賠償を認めていくことは国際法上の正義に反するんだということをしっかりと発信をし、また、事実と違ういわれなき非難については断固反論する、そして、そのいわれなき非難の象徴である少女像、これは大使館前だけでなく世界じゅうにあるわけですから、この撤去を求めていくということを、ぜひ日本の名誉、信頼の回復のためにお願いをしたいと思います。

 最後に、一億総活躍担当大臣にお伺いをいたします。

 一億総活躍は、全ての人々が、生まれながらに置かれた境遇や身体的状況によって差別されることがない、そして全ての人々にチャンスが与えられる社会をつくらなければなりません。

 その意味において、今LGBTと呼ばれる性的マイノリティーの人権が注目をされていて、世界を眺めれば、このLGBTを理由に、犯罪となり、死刑判決が下される場合もあるわけですけれども、LGBTの人々が、日本の社会においてもチャンスが与えられ、十分活躍できるようにするために、まずは学校での差別や職場での差別をなくしていくことが重要だと思いますが、一億総活躍担当大臣のお考えをお伺いいたします。

加藤国務大臣 今御指摘ありましたように、まさに、一億総活躍社会とは、誰もが個性を尊重され、将来の夢や希望に向けてもう一歩前に踏み出すことができる、そして多様性が認められる社会ということでありますから、その社会を実現していく理念においても、いわゆるLGBTと言われる性的少数者に対する偏見、あるいは不合理な差別、こういったことはあってはならないわけであります。

 そうした偏見をなくし、また、一人一人の方が、その人権が尊重され、安心して活躍できる社会、これを実現していくために、今御指摘ありました教育あるいは啓発といったことも大変必要だと思いますし、また、個別事案に対して適切に対応していく。そうしたことを通じて、まさに一億総活躍社会、そして、そうした皆さん方も活躍できる社会をしっかりつくっていきたい、こう思っております。

稲田委員 一億総活躍社会は、私は、国にあれもこれもやってくれという社会じゃないと思うんです。GDPの二〇〇%を抱える借金大国の我が国において、国があれもこれもどれもこれもやるということは、もはや無理だと思います。国は、あれかこれかを選んで、優先的にやっていかなければならないと思います。

 そんな中で、老若男女一人一人が、その持てる力を最大限発揮していく、希望を持って活躍をしていくというのが一億総活躍社会だと思っています。期待されているのは、GDPの稼ぎ手としての活躍だけではなくて、一人一人が、その持てる力の中で、他人を気遣って、みんなのために貢献をして、社会的な課題を他人ごとではなくて自分ごととして解決をしていく、そういう自立した参加型の社会を目指すことが一億総活躍社会であり、そのための仕組みをつくっていくこと。

 そして、政府は小さいかもしれないけれども、社会は大きい。日本人は、自分だけが幸せで幸せと感じるのではなくて、みんなが幸せで初めて幸せと感じる。国ができないことも社会全体で支え合っていくような、そういう基盤づくりをするのが一億総活躍社会で、それによって、世界に先駆けて課題を解決することで、世界から尊敬される道義大国を目指すことができる。そういった一億総活躍社会の理念や哲学を、総理や大臣には語っていただきたいと思います。

 そして最後に、私は、政治で求められているのは、国民からの信頼だと思います。そして、その信頼のためには、やはり政治家が謙虚にならなきゃいけないと思います。私もことしで政治家十一年目ですけれども、謙虚さに立ち戻りたいと思っています。我が党としても、謙虚に、そして、ひるまず、党一丸となって、党所属議員総活躍で、骨太の政策議論を通じて一億総活躍社会を目指してまいりたいと思います。

 本日はどうもありがとうございます。

竹下委員長 この際、薗浦健太郎君から関連質疑の申し出があります。稲田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。薗浦健太郎君。

薗浦委員 自民党の薗浦健太郎でございます。きょうはよろしくお願いいたします。

 今、稲田政調会長から、最後に一億総活躍の話がありました。自分自身が取り組んできたこととして、この一億総活躍の中で、特に経済的な理由で進学を諦めている子供たちの問題、いわゆる子供の貧困の問題について取り上げたいと思っています。

 四年前、ある高校生から伺った話が僕は忘れられません。何と言ったか。家庭の事情で大学進学できるかどうかわからないけれども、できることなら大学で勉強をし、そして将来、社会の役に立つ仕事をしたい。この声に応えなければならないと思いました。

 平成二十五年に、多くの党の皆さん方の御協力をいただいて、子どもの貧困対策法というのをつくらせていただきました。そして、それを受けて政府が今後取り組んでいく方向性を取り決めた子供の貧困対策大綱をつくり、また一億総活躍対策にもこの問題を取り入れていただきました。さらには、今審議されている予算を見ると、児童扶養手当の拡充等々が盛り込まれています。この問題に取り組んでいる人間の多くが、大きな歯車が動き始めた、総理が大きな歯車を動かし始めてくれたというふうに感じています。

 この中で、私がいろいろな現場でいろいろな人たちから話を聞く中で、今取り組まなければならないと感じている課題についてきょうはお伺いをしたいと思います。

 今、ユネスコ、青年会議所、また各地のNPO団体が、無料でこうした子供たちに勉強を教える、また夕食を食べる習慣すらない子供たちに夕食を提供するという、無料塾または無料寺子屋の活動を始めています。彼らと話をすると、活動資金、食材とか教材費の確保が大変だ、そういう話を伺います。

 ここは、政府が、もしくは政府が企業をまとめてこうした活動を支援していく枠組みをつくることが非常に大切だと思いますけれども、加藤大臣に、こうしたお考えがないか、まずお伺いをしたいと思います。

加藤国務大臣 今お話がありましたように、薗浦委員におかれましては、子どもの貧困対策の推進に関する法律の制定にかかわり、また、この間もいろいろと御示唆をいただいているところでございます。

 政府としても、昨年十一月に、一億総活躍国民会議の緊急対策、ここにおいて取りまとめた子供の貧困対策を明確にお示しさせていただき、先般成立をさせていただいた平成二十七年度の補正予算、そして今御審議いただいている二十八年度の当初予算に盛り込んでいるところでございます。

 ただ、貧困対策自体、政府だけで対応できるということではありません。まさに国民、企業、NPOもあわせて社会全体で進めていく必要があると思っておりまして、昨年十月から官公民の連携共同プロジェクトである子供の未来応援国民運動をスタートさせていただいたところであります。

 また、子供の貧困の実態というのはなかなか把握しにくい、そして、その貧困の状態にある子供さん方が抱える問題、あるいは支援をしてほしいニーズ、これも非常に多様であります。そういう意味では、行政による支援だけではなかなかそうしたニーズに対応していくことが難しいということで、まさに議員御指摘のように、さまざまな方が今、勉強やあるいは食事と居場所づくりを初め、さまざまな活動をしていただいております、そうした民間の皆さん方の役割は大変重要であるというふうに考えております。

 政府としても、先ほど申し上げた国民運動において、民間資金による子供の未来応援基金を活用してNPO等の支援を行っていく。あるいは、民間でもCSR活動等、いろいろ対応しようとするけれども、どこと組んでいいかわからないということもございます。あるいは一方で、NPOの方として、こういうやり方をしたいけれども、誰と組んでいいかわからない。そういう両者をマッチングする、こういったサイトも設けて、民間団体の活動を支援していきたいと思っております。

 さらに、国民全体において理解を深めていくということも必要だと思っております。先般、ミッフィーちゃんというウサギの絵の作家でありますディック・ブルーナ氏の協力もいただきまして、その方のイラストを使ったポスター等も掲示しながら国民全体の理解を求める、そしてやはりこの問題にしっかりと対応していく、こういうふうに取り組んでいきたいと思っております。

薗浦委員 ありがとうございました。

 次に、いわゆる一人親家庭の問題についてお伺いをしたいと思います。

 子供がいる世帯でいわゆる一人親の家庭の貧困率は五四・六%、つまり、二軒に一軒以上が貧困状態にあるということであります。

 児童扶養手当の拡充は盛り込まれましたが、金銭だけの話ではなくて、例えば、親御さんが働けるようにきちんと就労支援をしていくとか、子供が学校についていけるように学習支援をするとか、一軒一軒に応じた全体の支援パッケージをつくるということが大切だと思いますけれども、厚労大臣、お考えがあればお伺いをしたいと思います。

塩崎国務大臣 薗浦委員御指摘のように、今回、児童扶養手当を倍増するということで、二人目、三人目以降の子供さんについて手だてを打っているわけでありますけれども、これは現金給付と同時にやはりきめ細かな支援を包括的に行うことが大事だというふうに、今御指摘のとおりだと思っておるところでございます。

 このため、特に経済的に厳しい一人親家庭につきましてはここに重点を置いて、児童扶養手当の加算額を増額するとともに、昨年十二月、すべての子どもの安心と希望の実現プロジェクトをまとめましたが、この中で、まず、自治体にさまざまな支援策があるにもかかわらずなかなかそれにたどり着かない、つまりそれをワンストップ化して、使い勝手をよくしようということが一つ。それから、学習支援などを行うことが可能な居場所づくりを応援する。そして、資格の取得を促進するための給付金の充実を行う。あるいは、一人親家庭などの保育料の軽減措置を強化するといったようなことを組み合わせてやっていきたいというふうに考えているわけでありまして、一人親家庭の自立に向けて、バランスのよい、きめ細かな支援を包括的にやってまいりたいというふうに思います。

薗浦委員 ありがとうございました。

 こうした家庭の親御さんたちと話をしていると、養育費の話がよく出てきます。つまり、養育費を払ってくれない、もらえない。

 平成二十三年の民法改正をしたときに、離婚する場合には養育費をきちんと協議しなさいと。届け出書にも、これを話しましたかと書くようになっている。プラス、子供に対して両方の親がきちんと責任を持つんですよという共同親権についても検討することになっています。

 共同親権についてはさまざまな議論があることも承知しておりますけれども、養育費の確保という観点から、今の検討状況について、法務大臣にお伺いをしたいと思います。

岩城国務大臣 御指摘のとおり、平成二十三年の民法改正の際の附帯決議において、離婚後の共同親権の可能性を含め、親権制度のあり方を検討する、そのようにされております。そこで、法務省では、現在、諸外国の親権制度等の調査をするなどの検討を進めております。

 離婚後の共同親権制度を導入することにつきましては、国民の間にさまざまな意見がある状況であります。実際、離婚に至った夫婦間では意思疎通をうまく図れず、子の養育監護について必要な合意を適時適切にすることができないなど、かえって子の利益の観点から望ましくない事態が生ずることになるおそれもある。そういったことも踏まえまして、慎重に検討する必要があると考えております。

 なお、養育費の分担の取り決めにつきましてチェックされたものの割合についてのおただしでよろしいですか。

 このチェック欄については三カ月ごとに集計しておりまして、平成二十四年四月から平成二十七年九月までのデータが集計できております。その中で、養育費の分担の取り決めをしているという欄にチェックされたものの割合は、平成二十四年四月から七月までの最初の三カ月は四九%でありましたが、次第に上昇し、平成二十五年一月から三月までの三カ月には六〇%に達しました。その後、約六〇%で推移してまいりましたが、平成二十七年七月から九月までの三カ月は六二%となっております。

薗浦委員 ありがとうございました。

 さまざま国の施策はありますけれども、現場で話を聞いていますと、最大の問題が、市区町村によって全然対応が違う、要は取り組みに差があるという話をよく伺います。国の方で制度をつくり支援をしても、やはり市区町村できちんとやらなければならない、こうした取り組みを後押しすることが必要というふうに考えてきました。

 今年度の補正から地方への交付金という制度をつくっていただきましたけれども、この未来応援交付金の狙い、それから目的とするところについて、改めてこの場で加藤大臣から御説明をいただきたいと思います。

加藤国務大臣 今議員御指摘のとおり、地域の実情において具体的な施策を現場で展開していただくのはまさに地方公共団体でありますから、国と地方公共団体と民間がよく連携をとっていくということが当然必要になってまいります。

 また、子供さんの発達、成長段階に応じて、細切れではなくて、一貫して対応していくという問題。また、教育と福祉、これは縦割りということもあります、この連携。そして、今申し上げた官公民の連携。こういったことをしっかりつないでいく地域のネットワークをつくっていただく、やはりその中心に地方公共団体がおられるというふうに考えております。

 そして、今御指摘ありました平成二十七年度補正予算において地域子供の未来応援交付金を創設したところでございますが、まず、当該地域の貧困状況による子供の実態把握をしっかりやっていただく、そしてそれを踏まえて、支援体制をどうつくっていくか、計画をつくっていただき、またその上に立って、地域のそうした連携をつくっていくためのいわゆるコーディネーターみたいな方も使っていただきながらネットワークをつくっていただき、その上で先行的なモデル事業を推進していただきたいということで、この交付金を創設したところでございます。

 平成二十七年度の補正予算においては、国費二十四億、事業規模でいきますと約四十億円程度を予測しているところでございますので、地域の実情を踏まえて全国の地方自治体の体制を順次整備していきたいと思っております。そのためにも、この補正だけというわけではなくて、やはり複数年度にわたって引き続き対応していきたい、こういうふうにも考えております。

薗浦委員 ありがとうございました。

 我々の先人たちのことを考えたときに、あの明治以降の急激な近代化、また戦後の急速な復興、これはやはり、我が国が次の世代を担う人材をきちんと育ててきたからこそなし遂げられてきたことだと思っています。社会全体で、家庭でこういう教育をする国民性があったからこそこれがなし遂げられてきた。

 そういう意味では、技術立国とか貿易立国とかいろいろな言葉はありますけれども、僕自身は日本というのは人材立国でなければならないと思っています。次の世代を担う子供たちに平等にチャンスがあって、そしてチャレンジすることができる、そのことがひいては国の活力にもつながっていく、こう確信をしております。

 そういう世の中にしていくことが政治の責任だと思いますけれども、最後に総理に、この子供の貧困対策に関する取り組みの御決意をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 国の活力というのは、言ってみれば、若い人たちや子供たちが、自分たちが頑張れば自分の夢を紡いでいくことができる、その確信のもとに頑張っていく、そういう社会こそが活力を維持することができるんだろうと思います。

 その意味においては、我々は、しっかりと子供の貧困対策に取り組んでいきたいし、全ての子供たちが、頑張れば夢をかなえられる、夢を紡いでいくことができる社会にしていきたいと思います。

 先ほど来御説明もさせていただいておりますが、子供の貧困対策については、昨年十二月に、一人親家庭、児童扶養手当について、第一子は四万二千円というまとまった額であったわけでありますが、多子加算については、第二子が五千円で第三子が三千円、これを倍増したところであります。

 そしてまた、子供の未来応援交付金を創設しまして、地方自治体において、関係行政機関やNPO、自治会、地域の企業等の間の連携強化のための体制整備等を実施することとしております。

 子供たちの未来が家庭の経済状況によって左右されることのない日本をしっかりとつくっていきたいと思っております。

薗浦委員 ありがとうございました。

 将来の日本のために、ぜひこれは政府全体で本気になって取り組んでいただきたいと思います。

 次に、外交についてお伺いをしたいと思います。

 先ほど、稲田先生から全体的な話がありました。ことしは、非常任理事国になり、サミットの議長国でもあり、そして日中韓も開催するということで、日本外交にとって非常に大切な年だと思っています。

 全体的な話は先ほど少しありましたので、個別の案件について、私からは基本方針を幾つかお伺いしたいと思います。

 やはり、アジアの安全保障というのは今非常に重要な状況であります。北朝鮮によるいわゆる核実験、そして、きょう、海事機関に通報したというニュースもございましたけれども、ミサイル、人工衛星と彼らは称しておりますけれども、この問題。

 忘れてはならないのが、我々は拉致問題を抱えているということであります。時間的に待ったなしの拉致問題を抱えている、これを最優先でやはりやっていかなければならない。さまざまな困難な状況がありながら、この拉致問題の解決に向けてことしどうやって取り組んでいくのか、まず岸田外務大臣にお伺いをしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、北朝鮮による核実験、これは我が国の安全に対する重大な脅威であり、地域の平和や安定に関しても大変重大な挑戦でありまして、断じて容認することはできません。

 そして、ミサイルの発射、衛星の発射予告ですが、それにつきましても、本日午前七時五十五分、北京の大使館ルートを通じまして北朝鮮側に抗議を行いました。

 このような核、ミサイル、そして拉致を初めとする諸懸案を包括的に解決するために、我々はしっかり努力をしていかなければならないと考えます。

 その中にあって、御指摘の拉致問題ですが、拉致問題は安倍政権にとりまして最重要課題の一つであります。毅然かつ断固たる対応をとらなければならないと思っていますが、その中で、拉致問題を解決するための対話の窓口を我が国から閉ざすことはしない、こうした方針のもとに、解決に向けて全力で取り組んでいかなければならないと考えます。

 そして、我が国の取り組みももちろん重要ですが、あわせて国際社会との連携が重要です。核実験につきましても、強い安保理決議の採択に向けて、我が国は安保理の非常任理事国として積極的に対応しているわけですし、拉致問題を含む北朝鮮の人権問題につきましても、国際社会との連携が大変重要だと認識をしております。

 このような方針で、引き続き全力で取り組んでいきたいと考えます。

薗浦委員 大変厄介な相手であることは重々承知をしておりますけれども、拉致に関しては、ぜひとも一歩でも二歩でも具体的な進展が見える年にしていただきたいと思います。

 次に、法の支配という観点から、南シナ海の状況についてお伺いをいたします。

 昨年来、中国が埋め立てを進め、飛行場をどんどんつくっている、これは事実であります。ことしになって、南沙諸島、スプラトリー諸島にセスナ機または民間航空機を着陸させる、こういうことをやっております。

 僕自身、これを見ていますと、この南シナ海を取り巻く問題はまた新しいステージに入ってしまったのかなという気がしております。

 新しいステージに入ったとまず外務大臣が認識されておるかどうか。加えて、新しいステージに入ったのであれば、我々もやはり米国またASEAN諸国と連携して新しい対応をしなければならないと思いますけれども、それについてもあわせて外務大臣にお伺いをしたいと思っています。

岸田国務大臣 南シナ海におきましては、関係する国々の主張が対立する中で、大規模かつ急速な埋め立てあるいは拠点構築など、一方的な現状変更をし、緊張を高める行為が見られるわけですが、これは国際社会共通の懸念事項であります。そして、こうしたことの既成事実化は決して認められないと認識をしています。

 委員御指摘の民間航空機の試験飛行などは、一方的な現状変更及びその既成事実化を一段と進める、こうした行為であると認識をしています。我が国としましても深刻な懸念を表明しているところです。自由で平和な海を守るためには国際社会の連携が重要だと認識をしており、この観点から、南シナ海における米国の航行の自由作戦を我が国としましても支持しています。

 今後とも、国際社会との緊密な連携を行い、関係国への外交上の働きかけ、あわせてフィリピンやベトナムなど南シナ海周辺の国々に対する能力構築支援など、地域の安定に資する活動も重要であると認識をし、しっかり取り組んでいきたいと考えております。

薗浦委員 無法がまかり通らないように、国際社会と連携をして進めていただきたいと思います。

 次に、総理が掲げておられる質の高いインフラ輸出についてお伺いをしたいと思います。

 日本が持つ本当にハイレベルなインフラ輸出というのは、世界各地から求められていると思います。昨年、ウズベキスタンを訪問したときに、非常におもしろいというか、意義深い一言を伺いました。何か。我々は安いものを買うほど裕福ではないという一言でありました。

 これはどういう意味だというふうに伺ったんですけれども、向こうの話では、ある国、これは外交的な配慮である国と言ったんでしょうけれども、ある国は安くつくってくれる、下手するとただでつくってくれるという。だけれども、その国の企業がわっと来て、労働者がわっと来て、自分たちでつくってぱっと帰っちゃう。さらに言えば、すぐ壊れる。これは将来的には我々のためにならない。しかしながら、日本と組むと高い、お金も借りなきゃいけない。だけれども、日本の企業は、日本の政府は一緒に入ってきてくれて一緒に仕事をしてくれる、我々に技術を教えてくれる、メンテナンスの仕方も教えてくれる。だから、日本とやると三十年、四十年、発電所も使えるし、道路も使えるし、いろいろなインフラが使えるのだと。

 この話を伺ったときに、僕は勝てると思いました。この考え方、日本と組んだ方が得ですよという考え方が広まれば、間違いなく我々は勝てると思っています。

 一方で、どこの国にどういう案件があるのか、これを知っているのは外務省であります。そこの地域、土壌、地盤、この橋をつくるのにどういう技術が要るのか、これを持っているのは国交省であります。さらには、この案件に対してお金を貸していいのかどうか、これを判断するのは財務省。

 そういう意味では、政府が一丸となってこの問題に取り組めば我々はもっともっと質の高いインフラを輸出できると思いますけれども、この政府一丸となった取り組み、そしてインフラ輸出に関する総理の御決意をまずお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、平沢委員長代理着席〕

安倍内閣総理大臣 今後、アジアは発展していくわけであります。その中で、当然、新たなインフラ需要が起こってくるわけでありますが、アジアがしっかりと発展し、そこに暮らす人々の生活が真に豊かになっていくためには、質の高いインフラを提供していく必要があるんだろうと思います。ことし行われる伊勢志摩サミットにおいても、我々は質の高いインフラを提供していく義務があるということについても議論をしていきたい、こう思っております。

 日本のインフラというのは、今お話があったように確かに高いし、あるいはまた、日本は誠実にスペックをお示しする、工程についてもお示しをしますから、できない工程を言ったりはしないんですね。これぐらい質の高いものをつくるのであればこれぐらいはかかりますよということを言う。

 ですから、そこにおいて、安かったり、できもしない工程を示すところに負けることも実はあるんですが、でも、そういう経験を既にしている国が出てきていますから、だんだん日本の、やはり質がよくて誠実に提供する、何よりも、企業が現地に行って、現地の人たちにちゃんと職業訓練も含めて教育をし、そして技術を与えながら一緒に汗を流して新しいインフラをつくっていく、この日本の誇るべきノウハウそして姿勢を示しながら日本はインフラの輸出をふやしていきたいと思っておりまして、これはオール・ジャパンで取り組んでいきたい。

 その成果の一つとして、例えばインドにおいては、日本の新幹線は確かに高いんですが、高いけれども、だからいいということを正確に理解していただきながら、普通のただ単に値段や工期を比べる入札とは違う形の戦略的な入札を行っていただき、日本の新幹線が選ばれたわけでありますが、その獲得についてもオール・ジャパンで取り組んだ成果ではないかと思います。

 アジアに質の高いインフラ投資を提供するためには、私は、昨年五月、アジア開発銀行等と連携をして、今後五年間で総額十三兆円規模の質の高いインフラパートナーシップを発表しました。昨年秋に訪問したウズベキスタンを初め、中央アジア五カ国全てで質の高いインフラに対する期待感を感じたわけでございますので、しっかりと戦略的に取り組んでいきたい。

 委員にも、政務官としてウズベキスタンを訪問していただきまして、信頼獲得にも大きな貢献をいただいたと思っておりますが、特にウズベキスタンにおいては、かつて大戦において多くの日本兵が当時のロシア、ソビエトに抑留され、そしてその方たちがウズベキスタンでも抑留されていて、彼らがナボイ劇場というオペラハウスの建設事業に駆り出された。強制的な労働であるにもかかわらず、みずからベストのものをつくろうとそれぞれが努力をした結果、すばらしい国立劇場ができて、大震災があってもその劇場だけは倒れなかった。今の大統領も子供のときに親に連れられて、日本人労働者がこんなに頑張っている、この勤労を見習えと言われた。

 ですから、日本人がやればいいものをつくる、これはまさに先人たちがつくった財産、日本の財産なんですね。日本の財産、この信頼を我々は今後も生かしていきたい、こう思っております。

薗浦委員 日本の技術というのはすごいのだということを、政府全体で海外のいろいろな国にわかってもらう努力もぜひ進めていただきたいと思います。

 昨年、総理、中央アジアを全部回っていただきました。私も全部伺いましたけれども、そこでやはり話をしていて感じたのは、国際協力銀行、JBICに対する期待であります。銀行ですから、もちろん融資に対して非常に厳しい審査があるのはわかるんですけれども、JBICからぜひお金を借りてさまざまなインフラ整備をしたいという期待がすごくありました。

 そこで、戦略的にまたは我が国にとって非常に重要な国とのインフラ整備案件については、もう少しJBICが国の後押しのもとにリスクをとった融資というものをするようなことも少し考えてもいいのではないかというふうに思っておりますけれども、恐れながら財務大臣にお伺いをしたいと思います。

麻生国務大臣 今御指摘のありました、海外インフラ事業というものの日本企業の参加を促進していくということは、これは極めて国家としても重要な課題だろうと思っております。

 また、このような観点から、これまでも日本の政府としては、すぐれた技術を生かして質の高いインフラというものを国際的に必要とされている国々に展開していくために、質の高いインフラパートナーシップの取り組みというのを安倍内閣のもと進めておるんですが、薗浦先生御指摘のありましたとおりに、JBIC、国際協力銀行の機能強化というのは極めて大事なところであろうと思いますので、今般、国際協力銀行法におきまして、海外インフラ事業に対して積極的に投融資を行うためにさらなるリスクテークを可能にするとともに、インフラ事業者に対して現地通貨建ての融資というものを拡大するため、現地通貨建ての長期借入を可能にする等々の法律の改正というものを行うべく、今準備を進めているところです。

 政府としては、こういった取り組み等を、ほかにもいろいろありますけれども、日本の企業が一層、JBICのこれまで集積した経験等々を生かして、より積極的に海外のそういったプロジェクトに参加できるような環境整備というものをバックアップしてまいりたい、そのように考えております。

    〔平沢委員長代理退席、委員長着席〕

薗浦委員 海外からだけではなく、大臣がおっしゃったように日本企業からも非常に高い期待があると思いますので、ぜひよろしくお願いをしたいと思います。

 次に、中東問題についてお伺いをしたいと思います。

 我が国のエネルギー安全保障という観点で見たときに、ペルシャ湾を含む中東地域全体の安定というのは非常に大切なことであります。そして、今、イランが大きく動き始めています。

 昨年、イランを訪問しました。ザリーフ外務大臣、そして核問題担当のアラグチ次官と会談をいたしました。ここで非常に感じたのは、今度こそ国際社会に復帰するのだというイラン側の強い決意、二つ目には、彼らの言葉をかりると、ペルシャ帝国以来の友好国である日本と経済的な結びつきを強化したい、いろいろなことをやりたい、投資を期待していると。非常に高い期待を感じたイラン訪問でありました。

 一方、それ以降、こういう状況になってきて、中国やヨーロッパを初め、今、首脳外交が活発化し、そして経済的に、エアバスの購入とかもございましたけれども、動き始めています。

 伝統的な友好国である我が国が出おくれるわけにはいかないという思いをしておりますけれども、総理御自身、イランとの首脳会談もしくはイラン訪問について御検討をなさったりしておられないか、お伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 イランとの関係においては、今まさに薗浦委員がおっしゃったように、伝統的な友好関係があります。お互いに信頼関係、親近感も持っていると言ってもいいんだろうと思います。

 そこで、イランの重要性なんですが、ISIL対策やあるいはシリア問題、この地域の問題を解決していく上においては、イランの建設的な関与も必要であります。何といっても、イランは地域の大国であろうと思います。そして同時に、豊富な石油及び天然ガスに加えて、大きな市場も持っている。イランが国際社会にちゃんと復帰をしていくということは、この二つの大きな意義があるんだろうと思います。

 イランのロウハニ大統領とは、これまで四回の首脳会談を行いました。さまざまなレベルで伝統的な友好関係を強化もしてまいりました。

 今般の核問題に関する最終合意を契機に、我が国としても、もともと伝統的な友好関係があるんですから、決して出おくれてはならないと思います。イランとの伝統的な友好関係を一層発展させていかなければいけないと思っております。そうした中で、首脳会談や適切な時期でのイラン訪問を積極的に検討していきたいと考えております。

薗浦委員 ありがとうございました。

 イラン、シーア派の大国でございますけれども、中東は、御存じのとおり、さまざまな宗派、宗教が混在をしております。それぞれの国がどこの国と関係が深いというのはやはりいろいろございますけれども、中東の国をいろいろ回っていると、日本はその辺、我々の先人たちが大変うまくやってきて、どこの国からしても中立的な立場というところにいるんだろうということを感じました。

 したがって、中東の安定と平和というものにどの国とも今うまくやれる日本が積極的に関与することによって、あの地域が平和で安定した地域になるのではないかというふうに感じておりますけれども、外務大臣、中東全体を見据えた上でこの外交をどう進めるか、お聞かせ願いたいと思います。

岸田国務大臣 委員御指摘のように、中東におきましては、さまざまな民族、あるいはさまざまな宗派が混在しています。我が国としましては、こうした違いを乗り越えて安定的な関係を構築すること、これが中東の安定に資するものであると考えています。

 よって、御指摘のように、我が国は、さまざまな民族、宗派を乗り越えて、さまざまな国々と良好な関係を持っています。このメリットをしっかり生かしていきたいと思いますし、中庸が最善という考え方のもと、中長期的な視野に立った支援をバランスをとりつつ進めていく、こうした姿勢が重要であると認識をいたします。

 ぜひ、こうした中長期的な視点そしてバランス、こういったことを念頭に中東の平和と安定に貢献していきたいと考えます。

薗浦委員 続いて、ISIL、いわゆるイスラム過激派組織についてお伺いをしたいと思います。

 昨年、イラクのクルド自治区を訪問いたしました。いわゆるISILの戦闘地域から逃れてきた方々がいらっしゃる避難民キャンプに行き、直接避難民の方々と会話をし、また、そこで避難民支援を行っている国際機関の方々とも話をいたしました。食料、そして建物というのはどんどんまだ建っている状況でありましたし、小学校もできておりました。

 僕が一点非常に問題だと感じたのは、小学校はあります、だけれども、十三歳から二十ぐらいまでの若い人たちがすることがないんです。学校もなければ、職業訓練ができるわけでもない。こういう若者たちが、ともすれば過激派に勧誘をされ、テロ組織に入らないとも限らない。

 そこで、我が国には高専とか専門学校、専修学校というすばらしい、手に職をつけるための学校があります。これを避難民キャンプ、レバノンとかトルコとかイラクとかいろいろなところがありますけれども、ここに持っていき、そして、こうした若者に手に職をつけてもらうことによって国の復興に関与する。日本の教育システム、技術がその国の復興にプラスになる、加えて、テロへの人材の流出を防ぐという観点から、職業訓練、高専のこの地域への輸出というのが考えられないかと最近思っております。

 外務大臣、これはぜひ御検討いただきたいと思いますが、いかがお考えでしょうか。

岸田国務大臣 テロの背景には、貧困とか格差というものが存在いたします。

 我が国としましては、中庸が最善という考えのもと、過激主義を生み出さない社会を構築していく、こういった取り組みが重要だと認識をしております。貧困や社会からの周縁化等を通じて子供や若年層が過激思想に傾倒しないよう、教育支援を重視しております。その観点から、教員訓練あるいは学校建設に加えまして、職業訓練等の支援も実施し、貧困層の底上げを図っている次第です。

 そして、今、委員の方から高専について指摘がありました。

 高専を含む日本型教育の普及については、JICAを通じまして、国立高等専門学校機構と協力しつつ、教員の派遣あるいは研修員の受け入れ、こうした取り組みを進めています。

 ぜひ今後とも、寛容で安定した社会を中東地域に取り戻すために、日本らしい効果的な支援を積極的に進めていきたいと考えます。

薗浦委員 ありがとうございました。

 中東の安定というのは我が国にとって戦略上非常に重要な問題でありますので、引き続き取り組んでいただきたいと思います。

 最後に、国連機関の日本人職員についてお伺いをいたします。

 国連機関の国別の職員の数には、地理的衡平性の原則というのがあります。この地理的衡平性とは何ですかと。国家間の平等、人口比、国連分担金によって決まるんですけれども、日本は分担が八%、だけれども実際は二・五%しかいないという問題があります。この問題にどう取り組んでいかれるのか、最後にお伺いをして、私の質問を終わりたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘のように、ニューヨークを初め世界各地にある国連関連機関の全職員約三万二千人のうち、日本の職員は約二・五%、約八百人というのが現状であります。国連事務局の望ましい職員数という目標と比較しましても、大変少ない状況にあります。

 日本人職員の増加を図るために、例えば、ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー派遣制度、日本政府の資金によって若手日本人を送り込むですとか、広報活動、応募支援等を通じた潜在的候補者の発掘、育成、こういったものにも取り組んでおります。

 来年度の予算におきましては、関連予算を増額し、このジュニア・プロフェッショナル・オフィサー派遣のため約二十億円、あるいは広報等による潜在的候補者の発掘や育成のため約一・六億円を計上させていただいております。

 ぜひ、二〇二五年までに日本人職員を千名までふやす、これを目標に努力をしていきたいと考えます。

薗浦委員 終わります。ありがとうございました。

竹下委員長 この際、上川陽子君から関連質疑の申し出があります。稲田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。上川陽子君。

上川委員 自由民主党の上川陽子でございます。

 本日は、政府全体の方針であります、世界一安全な国日本をつくり、守る、そして日本のソフトパワー外交につきまして質問をさせていただきたいと存じます。

 まず初めに、ただいま薗浦委員からも御質問がございましたけれども、国際的なテロの脅威に対しましての我が国の取り組みにつきましてお尋ねをいたします。

 昨年、ISILによりまして日本人お二人が殺害されるという大変痛ましい事案が発生いたしました。その後も、一般市民を巻き込んだ無差別テロがフランスでの連続テロを初めとして世界各地で発生しておりまして、国民の皆さんの間にも大きな不安が高まっているところでございます。

 我が国におきましては、二〇二〇年に東京オリンピック・パラリンピックが開催されますし、また、前年の二〇一九年にはラグビーワールドカップが開催される。この時期におきまして、世界一安全な日本をつくる、そのことが大変大きな命題でありますし、また、安心、安全の基盤づくりということについては、尽くしても尽くしても尽くし切れないぐらい力を入れていかなければならない課題であるというふうに考えております。

 総理は、施政方針演説におきまして、水際対策を徹底すること、さらに政府一丸となってテロ対策に取り組むということを明言されましたけれども、ただいまの時点で、もう一度国民の皆様に、安全、安心の基盤づくりのための決意をお話しいただきたいというふうに思います。

安倍内閣総理大臣 テロ対策は、国際社会が結束して取り組むべき喫緊の課題であります。特に、ラグビーワールドカップや東京オリンピック・パラリンピック等の開催を控えている我が国は、国際社会と緊密に連携し、危機感を持ってテロ対策に万全を期さなければならないと考えています。

 未然防止の要諦は情報であります。政府としては、御指摘の厳しいテロ情勢等を踏まえ、昨年末に国際テロ情報収集ユニット、CTU―J等を新設しまして、官邸直轄で国際テロ情報の収集、集約を行う体制を強化いたしました。さらに、水際対策、重要施設やソフトターゲットの警戒警備を初め、官と民が一体となったテロ対策についても一層強化していくこととしています。

 今後とも、官邸が司令塔となって政府の総力を挙げて、テロの未然防止に向けた諸対策を強力に推し進めてまいります。

上川委員 国際社会としっかりと連携をしながら、とりわけ情報収集に万全を期しながら、インテリジェンスに裏打ちされた形で、水際対策についても万全を期すということでございます。政府一体となった取り組み、ぜひ力強く推進していただきたいと思います。

 世界一安全、安心な国日本ということでありますが、罪を犯した者がまた再び罪を犯すことがないようにすること、再犯防止が不可欠の課題でございます。

 総理にも、矯正施設につきましては御視察をいただきましたし、また社会を明るくする運動の中央委員会の会議にも御出席をいただきまして、この間、力強くバックアップをしていただいてきているところでございます。

 再犯防止の鍵でございますが、何といっても居場所と仕事をしっかりとつくることということでございます。そのために、受刑者が矯正施設におきましていかに職業訓練をしっかりと受け、そして各種の指導を受けながら出所後の受刑者が社会において定着していくこと、このことを丁寧にやっていかなければなりません。

 今から八十数年前でございますが、喜劇王のチャップリンさんが来日をされまして、当時完成したばかりの小菅刑務所を視察されました。昭和七年のことでございます。そのとき、チャップリンは、一国の文化水準は監獄を見ることによって理解できる、世界の監獄を見たが、日本にこんな立派なものがあるとは思わなかった、恐らく設備、明るさの点からいっても世界一と称賛をされたとのことであります。

 それでは、八十年後の現在はどんな状況でありましょうか。

 我が国の矯正施設につきましては、整備が後回しにされている状況でございまして、多くの施設が現在の耐震基準を満たしておりません。老朽化が進行していること、そして、世界一の文化水準を誇る我が国におきまして、極めてお粗末な状況にあると言わざるを得ないというのが実情でございます。

 再犯防止の土台ともなるべき矯正施設の整備こそ、後回しにすることなく、喫緊に対処すべき課題であると考えますが、総理の御所見をお願い申し上げます。

安倍内閣総理大臣 上川委員が再犯防止にずっと取り組んでこられたことに対しまして、敬意を表したいと思います。

 再犯防止対策は、安倍政権において犯罪対策の重要な柱であります。

 昨年末、私自身が女子刑務所や先進的な取り組みを行っている更生保護施設を訪問しまして、現場の実態や対策に当たる方々の御苦労を見せていただきました。きょうも、委員会の後、過ちを犯した人に寄り添いサポートされている保護司や協力雇用主、さらには再犯防止に御協力をいただいている皆様のお話を伺う予定であります。そういう方々の協力なしには再犯防止は進んでいかないんだろうと思っておりますが、息の長い地道な取り組みを続けることが大切であろうと思っています。

 その中で、矯正施設は再犯防止施策の実現のための土台でありまして、政府においては、御指摘のように、老朽化している状況にある矯正施設について、その機能を確保するための所要の環境整備に取り組んでいます。また、出所後の円滑な社会復帰につながる改善指導や職業訓練等を初めとした再犯防止プログラムの充実強化にも力を入れています。

 政府としては、今後とも、ハードとソフトの対策を適切に組み合わせた総合的な矯正施設の機能強化を着実かつ強力に進めていく考えでございます。

上川委員 大変力強い、御決意も含めてのお話をいただいたこと、本当に感謝申し上げたいと存じます。ぜひ、その成果をしっかりと見える化していきたいというふうに思っております。

 次に、世界一安全な国日本を守るための法基盤整備についてお尋ねをいたします。

 平成二十五年の十二月、閣議決定をされたわけでありますが、「世界一安全な日本」創造戦略におきましては、国民が安全で安心して暮らせる国であるためには、犯罪に的確に対処できるよう、刑事手続の機能を強化すべきことが指摘されているところでございます。

 ただいま継続審議中の刑事訴訟法等の一部を改正する法律案でございますが、この趣旨にのっとり、刑事手続を時代に即したより適正で機能的なものとするために必要不可欠な法整備の柱でございます。二〇二〇年オリンピック・パラリンピック、また二〇一九年ラグビーワールドカップに向けまして、まさにテロを含めた組織的な犯罪への備えを万全にするためにも今から整えていかなければならない、手おくれとなってしまってはいけない、避けなければならないということでございまして、この法案につきましてはしっかりと早期に成立していただきたいというふうに思うところでございます。

 法案につきましては、昨年の通常国会におきまして、衆議院において、民主党、維新の党からもお知恵をいただきまして一部修正の上、民主党、維新の党等の賛成を得て可決をされたものでございます。しかし、参議院において継続審議となりまして、いまだ成立には至っておりません。ぜひとも今国会において成立させる必要があると考えますが、この法案の意義と早期の成立に向けた決意につきまして、法務大臣よりお願いを申し上げます。

岩城国務大臣 上川先生が大臣として御尽力いただきましたこの刑事訴訟法等の一部を改正する法律案でありますが、現在の捜査、公判が取り調べ及び供述調書に過度に依存した状況にあるとの認識のもと、このような状況を改めて、より適正で機能的な刑事司法制度を構築しようとするものであります。

 これによりまして、これまで以上に人権保障を全うしつつ、犯罪の全容を解明して、適正な処罰を実現することが可能となります。テロ犯罪を含む組織的な犯罪に効果的に対処することができ、ひいては世界一安全な日本をつくることにつながるものと考えております。

 したがいまして、この法律案でありますが、極めて重要な意義を有するものでありますので、速やかに成立させていただきますよう力を尽くしてまいりたいと考えております。

上川委員 この法案、継続審議ということでございますが、一日も早い成立に向けまして、さらなる御尽力をよろしくお願い申し上げたいと存じます。

 続きまして、我が国のソフトパワー外交の推進につきまして幾つか御質問をさせていただきたいと存じます。

 私が法務大臣の立場にあった時期でございますが、大臣所信でも述べたところでございます。戦後、我が国は、国の形の基本に法の支配、基本的人権の尊重等の普遍的価値を掲げ、一人一人の国民の努力によりましてこれらを実現してまいりました。

 総理は、このたびの施政方針演説の中で、ソフトパワーを生かした積極的な文化外交を展開するとお述べいただいておりますけれども、私は、今申し上げました法の支配の貫徹あるいは人権尊重の理念の実現、これを我が国のソフトパワーの中心に位置づけまして、人権・司法外交を積極的に展開することを提案いたします。

 こうした外交を展開する上でまず大事なことは、国内における人権基盤の強化でございます。

 我が国は極めて安定した刑事司法制度を有し、また、地域におきましては、先ほど、この委員会の後に皆さんとお会いいただくということでございますが、百年以上の歴史のある保護司さんの制度、篤志面接委員やあるいは協力雇用主、また更生保護女性会、BBSといった皆様が大変再犯防止や立ち直りに御尽力をいただいているところでございます。

 また、さまざまな人権啓発あるいは人権教育や救済の分野におきましては、人権擁護委員の皆様が地道な活動を積み上げてくださっておられます。こうした官民一体となった取り組みが地域社会にしっかりと根づいている、このことが我が国が人権を尊重する国であるということの証左であるというふうに思いますし、そしてまさに世界に誇るべきことではないかというふうに思っているところでございます。

 しかし、残念ながら、次々に新たな課題や深刻な課題も発生しているところでございまして、近年におきましては、子供たちに対しましてのいじめ、あるいは先般も発生いたしました幼い子供の虐待事案ということで、こうした事案が後を絶たない、また女性に対してのDV、こうしたことも大きな社会的な課題になっているところでございます。

 こうした課題に対しましても、一人一人の人権に寄り添いしっかりと取り組んでいく、そして我が国が人権尊重の理念を実現する国であるということを揺るぎないものとする、たゆまぬ努力を重ねることが必要と考えます。

 法務大臣の所管でございますので、ぜひとも、今後の取り組みを含めまして、決意をお聞かせいただきたいというふうに思います。

岩城国務大臣 お話にありましたとおり、我が国におきましては、長年にわたりまして、国そして地方公共団体はもとより、人権擁護委員を初めとします民間の方々と一体となって、地域に密着した地道な人権擁護活動に取り組んでまいりました。その成果もありまして、人権尊重の理念が広く国民に浸透し、基本的には人権を尊重する社会が築かれているものと考えております。

 しかしながら、子供や女性といった個別の領域におきましては、依然として課題が存在しております。

 そこで、法務省の人権擁護機関では、子供や女性の人権を初めとした人権課題を啓発活動の強調事項に掲げ、その啓発活動を地方公共団体とも連携協力しつつ実施しております。

 子供につきましては子どもの人権SOSミニレター、女性については女性の人権ホットラインを初めとする、各種の相談窓口を設けて相談に応じております。さらに、人権侵害の疑いのある事案を認識した場合には、事案に応じた措置を講じております。

 今後とも、より充実した人権啓発活動を実施していくとともに、人権相談窓口の周知、広報に努め、人権侵害による被害の救済に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

上川委員 一人一人の置かれている状況にしっかりと寄り添いながら取り組んでいただきたいというふうに思っております。

 次に、技能実習制度についてでございます。

 技能実習制度につきましては、我が国で開発され蓄積されております技能、技術、知識につきまして、開発途上国に移転をし、その経済発展を担う人づくりに寄与するということを目的に創設されたものでありまして、ソフトパワーによります国際貢献の一環として行っているものでございます。

 先ほどインフラ輸出のお話を総理からされましたけれども、インフラを輸出する先の人材としてこの技能実習で学ばれた皆さんが活躍をされるという、いい循環をつくっていくということも大変大事ではないかというふうに思っております。

 しかし、他方で、技能実習制度によりまして我が国におきまして働き暮らしていらっしゃる外国人に対しまして、技能実習機関等によりまして、入国法令違反あるいは労働関係法令違反、こうした事案の発生がございます。人権尊重の理念をうたう我が国にとりましては、憂うべき状況が生じていると考えております。

 私は、国際貢献たるべき技能実習制度が正しく本来の姿で運用され、技能実習生が職場だけではなくてそれぞれの地域の中でしっかりと受け入れられ、また、我が国の文化にも親しみながら、大好きになって帰国していただきたい、そして、その後の人生の中で日本とのかけ橋というような役割も担っていただきたいと強く願うところでございます。

 そのためにも、まずは技能実習生の人権への一層の配慮が必要でありますが、そうした観点から、衆議院で継続審議中の外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案、これについては早期成立を図っていただかなければいけないというふうに考えております。

 法務大臣の意気込みにつきまして、お聞かせいただきたいと存じます。

岩城国務大臣 技能実習制度は、開発途上国への技能移転を通じた国際貢献を目的とする制度であります。

 しかし、残念ながら、お話がありましたとおり、一部におきまして、制度の趣旨を理解せず、不適切な取り扱いがあることも事実でございます。また、米国国務省の人身取引報告書においても制度の改善が求められるなど、国内外から問題が指摘されております。

 現在継続審議となっております技能実習法案におきましては、新設する外国人技能実習機構に、法的根拠を持って実習実施者及び監理団体を実地に検査するなどの指導監督を行わせるとともに、技能実習生に対する相談、援助を行わせること、旅券の取り上げ等に対する罰則を定めることなどとされております。こうしたことを通じて、この制度を拡充する措置を講ずるものであります。

 そこで、法務省といたしましては、こうした見直しを行い、技能実習制度の問題点等を解決するとともに、制度の趣旨の徹底を図り、制度の一層の適正化を行っていくため、この法案を国会に提出しているところでありますので、早期に御審議いただき、一日も早い成立をお願いしたいと考えております。

上川委員 ぜひとも、そうした方向になるように、よろしくお願いを申し上げたいと存じます。

 法の支配の貫徹という我が国が誇るべきソフトパワーを世界へと浸透させることを通じ、国際社会における我が国のプレゼンスを高めること、これを、総理の文化外交ということに倣えば、司法外交と言うのがふさわしいと考えております。

 司法外交の観点から、政府としてぜひ積極的に取り組んでいただきたいということにつきまして、二点御質問をさせていただきたいと存じます。

 第一は、法制度整備支援の推進でございます。

 既に、我が国におきましては、アジアを中心とした開発途上国に対しまして、立法支援、そして人材育成等の法制度整備支援を地道に推進してまいりました。さらに、国連と協力をいたしまして、諸外国の刑事司法の実務家を対象とした国際研修を実施しております。

 こうした我が国の国際協力でありますけれども、途上国におきまして、経済的基盤の整備あるいは刑事司法の実務家の能力向上等を通じまして、これら地域への法の支配の浸透を力強く推進するものであります。対象国からも多大な感謝の意を表されるなど、まさに外交面でも極めて高い成果を上げているものでございます。

 法制度整備支援等の国際協力の分野でありますが、近年、中国などの他の国々も次々に参入しようと試みているにもかかわらず、我が国が指名されて支援を求められる、そうした実情がございます。これは、我が国が自国の制度を殊さらに押しつけたりするようなことをせず、対象国のニーズにしっかりと耳を傾け、相手国の国情や文化に即したきめ細やかな対応を続けてきたからにほかならず、これは誇るべきことというふうに考えております。

 そこで、政府全体で今以上にこの法制度整備支援あるいは国際研修等をバックアップしていく必要があるのではないかというふうに考えておりますが、総理の所感をお伺いいたします。

安倍内閣総理大臣 諸外国の法制度整備の支援を行うことは、国際社会における法の支配を実現するための重要な施策であると考えています。それは、相手国の持続的な成長に貢献をしていくことはもとより、我が国の安全保障や投資環境の整備にも資するものと認識をしています。

 そのため、アジアを中心とした国々に対し、開発協力大綱やインフラシステム輸出戦略等に基づいて、実定法の整備や司法関係者の育成等、さまざまな支援を着実かつ戦略的に実施しているところであります。

 政府としては、今後とも、国際協調主義に基づく積極的平和主義外交の観点から、国際研修を通じた人材育成も含む法制度整備の支援を積極的に推進していきたいと考えております。

上川委員 法制度整備支援につきましては、これまでアジア諸国が中心でございましたけれども、世界の中にはさまざまなニーズ、課題がございます。これらの実績を踏まえた形で戦略的に取り組んでいただきたいし、また、そうしたことを通じまして人材養成にも協力していくという形の中で、法の支配の貫徹のスクラムをしっかりと組んでいっていただきたいというふうに思っております。

 司法外交の第二点目ということでございますけれども、二〇二〇コングレスでございます。コングレスといっても、ほとんどの方は御存じないかというふうに思っておりますが、正式名称は国連犯罪防止刑事司法会議のことでございます。コングレス、ぜひ頭の片隅にしっかりと置いていただきたいというふうに思うところでございますが、これは、一九五五年以降、五年ごとに国連が開催をしております、刑事司法分野をテーマといたしました国連最大の国際会議でございます。

 実は、我が国では、一九七〇年に、一度京都で開催をした実績がございます。そのコングレスが二〇二〇年の春、五十年ぶりに我が国において開催されるということが決定をされました。まさにオリンピック・パラリンピックと同じ年でございまして、世界じゅうが日本への関心を高める中でのコングレスの開催ということになるわけでございます。

 五十年の歳月を経まして、さらに我が国が発展した姿を世界に示していく、いかに法の支配が浸透しているかということにつきましても世界じゅうに知っていただく、そして我が国がリーダーシップを発揮いたしまして世界じゅうに法の支配の貫徹を訴えていく、極めて重要かつ絶好の機会であるというふうに考えているところでございます。

 政府はこのコングレスの重要性を正しく認識、理解していただき、関係省庁一丸となってこれを成功に導くように努めるべきではないかというふうに考えておりますけれども、総理の御所感をお願いいたします。

安倍内閣総理大臣 二〇二〇年、東京オリンピック・パラリンピックが開催される年でありますが、我が国で、犯罪防止、刑事司法分野における国連最大の国際会議を五十年ぶりに開催することになります。五十年前というと、ちょうど大阪万博をやった年でありますが、そのときにもこのコングレスが開催されたわけでありますが、我が国がこの分野においてリーダーシップを発揮し、世界一安全な国日本を国際社会に発信する絶好の機会であろうと思います。

 政府としては、この重要な国際会議の成功に向けて関係省庁が一丸となって準備を着実に進めるとともに、引き続き、国際社会と緊密に連携をし、テロ対策や組織犯罪対策などの、世界が直面している安心、安全を確保するための諸課題への対応に万全を期していきたいと思います。

上川委員 コングレスの二〇二〇年会議でございますけれども、開催地は、どこで行われるかということにつきましてはまだ未定ではございますが、日本を挙げて世界一安全、安心の国ということで取り組んできたさまざまな成果、またこの歴史の中でしっかりと積み上げてきた官民一体の中での安全、安心の国づくり、こういったことをテーマとして、さまざまな角度で国際社会の中でしっかりとリーダーシップを発揮し、導いていただきたいというふうに思っております。

 四年後ということでありますので、準備は今からしっかりとして成果を上げていただきたいというふうに考えておりますので、よろしくお願い申し上げたいというふうに存じます。

 最後の一問になりましたが、ちょっと話はテーマをかえまして、行政改革への取り組みにつきまして、河野行政改革担当大臣にお伺いしたいというふうに存じます。

 我が国の財政再建につきましては、待ったなしということでございます。財政再建の実現に向けましてはさまざまな取り組みを組み合わせていくということが必要であろうかと思いますが、中でも徹底した行政改革というのが大きな柱の一つになるというふうに考えております。

 安倍政権におきましては、単なるパフォーマンスではない真の行政改革に取り組む、こうした決意の中で大きな成果を上げているところでございますが、河野行革担当大臣におかれましては、現在進めている行政改革の取り組み、とりわけ国の全ての事業につきまして点検を行う行政事業レビューということでございまして、徹底した無駄を省くための取り組みにつきましての今年度の成果ということにつきまして、お伺いをさせていただきたいと存じます。

 とりわけ、総理の御指示のもとで重点的に取り組みました基金の適正化につきましても御答弁をいただきたいというふうに思います。

河野国務大臣 行政事業レビューにつきましては、昨年の十一月、秋のレビューと称して三日間やらせていただきました。国民の皆様に税金の使い方を考えていただく、どう効率的、効果的に事業をやったらいいか考えていただくということでやりました。

 その結果、平成二十八年度の概算要求から約一千億円の無駄を省くことができました。また、お尋ねがありました基金につきましては、安倍総理からの指示もございまして、百九十七の全ての基金について横展開をして、不用なものは国庫に返還をする、そういうことで、二十七年度、二十八年分として五千億円、国庫に返納させたところでございます。

 財政難の折、また消費税の引き上げを前にして、政府の中で、税金が無駄に使われないよう、今後ともしっかり点検をしてまいりたいと思います。

上川委員 この分野につきましては、国民の皆様も大変関心を寄せているところでございますので、河野大臣におかれましてはしっかりと引き締めて取り組んでいただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

竹下委員長 これにて稲田君、薗浦君、上川君の質疑は終了いたしました。

 次に、石田祝稔君。

石田(祝)委員 公明党の石田祝稔でございます。

 きょうは、総理、また関係大臣に質問をいたしたいと思います。どうぞよろしくお願いをいたします。

 総理におかれましては、施政方針演説、挑戦という言葉のもとに、意欲あふれる方針を御表明なさったというふうに思います。その中で、私も総理として新しい方向性をお考えになったのかなと思ったことがございまして、そういうことも含めて御質問を申し上げたいというふうに思います。

 それは、成長と分配、この好循環ということをお話しになられたというふうに思います。今までは、どちらかというと成長の方にウエートを置かれていたように思います。当然、成長がなければ分配もできない、これはそのとおりなんですね。しかし、やはり成長一辺倒という誤解がありはしないか、総理のお考えについて。ですから、成長させて、それを分配につなげる、さらに好循環としてしっかりとまた成長力の強化に努めていく、こういう趣旨だろうと私は思いました。

 総理のおっしゃるアベノミクス、そこについて、成長と分配、この好循環について総理からわかりやすく御説明をお願いいたしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今、石田委員がおっしゃったように、分配だけを繰り返していても、持続的に社会保障制度を維持するための富を生み出すことはできないわけであります。

 先ほど、稲田委員との議論の中において、我々は社会保障費の伸びを五千億に抑えるわけでありますが、それでも五千億伸びていくわけでありまして、この五千億は、しっかりと成長による果実として生み出していかなければならないわけであります。

 そこで私たちは、しっかりと経済を成長させていく、このことによって果実をこの三年間で二十一兆円、国、地方で税収として生み出していくことができました。この果実を、希望出生率一・八を実現するための子育て支援や、あるいは介護離職ゼロにするための社会保障費に振り分けていく、同時にまた、さらなる成長のためにも使っていくことによって、安定した社会基盤の上に私たちはさらに成長していくことができます。そして、みんなが活躍できる社会をつくっていけば、新たなイノベーションが起こり、そしてそれは新たに富につながっていき、さらなる成長、そして私たちを豊かにしていくわけであります。そして、それはさらにまた、今申し上げましたような社会福祉、子育て支援にも向けていく。

 つまり、成長と分配の好循環を起こしていくことによって私たちは、さらに豊かな社会、そしてかつ、みんなが夢を紡いでいくことができる社会につながっていくのではないかと考えております。

 これは、成長か分配かといった今までの議論に終止符を打つ、新たな経済社会の構築であろう、こう思っております。

石田(祝)委員 成長か分配かというこの二元論ではなくて、成長させて、それをまた分配につなげていく。ですから、私は、分配ということと同時に投資ということも、将来に向かっての投資、これも非常に大事だというふうに思っております。

 その大きな基盤として、きょうはパネルにもお示しいたしましたけれども、持続可能な社会保障、またセーフティーネット、こういうものも必要ではないか、また、好循環を実現するために、賃金また最低賃金の引き上げ、生産性向上、イノベーション、働き方改革、休み方改革、こういうことも必要ではないかというふうに思います。

 こういうある意味でいえば社会保障、セーフティーネットの基盤の上に成長力を強化する、それを分配につなげていく、また潜在需要の顕在化をさせていく、こういうことを、私はぜひ総理にリーダーシップを発揮していただきたいというふうに思っております。

 そういう中で、ここで非常に大事なことは、アベノミクスの三年間で、今総理も税収がふえたというお話もなさいましたけれども、就業者数もふえている、名目、実質GDPも増加している。デフレ脱却にはあと一歩だと私も思っております。そういう中で、大企業と中小企業、中小・小規模企業、ここのところの格差というんでしょうか、差がつきつつあるのではないか、こういうふうに思います。

 それで、私は今パネルをお示ししましたけれども、このパネルを見ていただきますと、大企業と中小・小規模企業では、企業の規模が違いますから、利益等の絶対額を見ると当然大きな差があります。そこで私は、一人当たりの経常利益の推移、大企業の製造業、非製造業、そして中小・小規模企業の製造業と非製造業、こういうことで、一人当たりということでパネルをつくってみました。

 そうすると、もう明確に、平成二十四年の第三・四半期から二十七年の第三・四半期まで、ここを見てみますと、中小企業は、非製造業、製造業ともに十八万から二十二万。ふえてはおりますけれども、ちょっと少ないなと。しかし、大企業は、製造業の数字を入れてありますけれども、八十万円のところから百六十万円。一人当たりということですから、企業の規模で、総額ということじゃない。一人当たりということで非常にわかりやすくなると思うんですが、これだけ差がついてきている。

 これは、それぞれの会社の御努力も当然あるわけでありますけれども、ここまで差がつくというと、これはやはり、大企業の収益、こういうものを設備投資や賃金、また中小企業へと循環させていく、こういうことが必要ではないかと思いますけれども、このメカニズムの改善について総理の御決意をお伺いいたしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 極めて重要な御指摘だと思います。

 我々は、まさにこの三年間の経済政策によって企業は過去最高の収益を上げておりますが、大企業の製造業と中小企業、中小零細企業とはこのような差がついているわけでございます。

 過去最高を記録した企業収益を、設備、技術、人材といった未来への投資と賃金引き上げによる消費の拡大、そして中小企業の業況の改善につなげていくことが大切であろう、それによって経済の好循環を確実なものにしていくことができると考えております。

 このため、未来投資に向けた官民対話などの場で、企業の積極的な取り組みを要請してきたところでございます。

 産業界からは、昨年、政府による政策対応を前提に、二〇一八年度に設備投資は八十兆円まで拡大をし、その意欲的な見通しが示されました。そして、今春の賃上げについては、名目三%成長への道筋も視野に、収益が拡大した企業に対し、前年を上回る賃上げを期待し、前向きな検討を呼びかけるとの方針が示されており、その実現を期待しているところであります。

 政府としては、こうした取り組みを後押しすべく、法人実効税率を来年度から一気に二〇%台へと引き下げ、国際的に遜色のない水準へと法人税改革を断行し、また、未来投資に向けた官民対話においては、次の経済成長を牽引する産業、イノベーション投資の創出に向けて、無人自動走行、ドローン、人工知能などを活用した新たなビジネスを可能とするための規制改革等の方針を打ち出しております。

 そして、中小企業、小規模事業者に対しては、生産性向上に向けた設備投資支援として、固定資産税の大胆な減税を行います。そしてまた、ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金による新商品の開発等の支援を行うとともに、下請等の中小企業の取引条件の改善に特に取り組んでいるところであります。

 大企業は、いわば海外に輸出をしている、円安のメリットを受けているんですが、中小企業の場合は、その大企業に物を納めるけれども、その資材は輸入をしているので、恩恵ではなくてむしろ逆に作用している。そういうことをちゃんと大企業側にも配慮するように、そして、取引条件を改善するように力を入れていきたい。

 ただ企業に任せているのでは、それは大企業がどんどん大きくなっていくにすぎなかったのでありますが、安倍政権ができてから、官民対話等を強化していくことによって、石田委員が御指摘になったように、しっかりと経済が循環をしていくように、中小企業そして零細企業にもこの恩恵が及ぶようにしていきたい、こう考えております。

石田(祝)委員 それで、下請の企業に対して今までも総理も、また関係大臣も意を配ってこられたと思いますけれども、現実にはなかなか、大企業はいいんだけれども、一次下請、二次下請、さらに三次、四次となるとなかなか恩恵が回ってこない。私も高知県が出身地でありますから、非常にそういうお声も聞くんですね。ですから、今は、仕事はあるんだけれども人手がないとか悩みも変わってはきておるんですけれども、しかし、なかなか利益が薄いというのは、今パネルで示したように、ずっと横ばいの経常利益である、こういうことであります。

 それで、先般、政府は、下請等中小企業の取引条件改善に関する関係府省等連絡会議、こういうものを開催して、取引条件の改善に向けた調査を実施する、こういうことのようでありますけれども、これは私は非常に期待を持って見ておるんですが、これは具体的にはどういうことをなさる予定でしょうか。

安倍内閣総理大臣 下請等中小企業の取引条件の改善に向けては、大企業に対して、政労使合意の遵守や、仕入れ価格の上昇を踏まえた価格転嫁などに取り組むよう要請するとともに、下請代金法に基づく立入検査を行ってまいりました。

 現在、下請ガイドラインを策定している十六業種を含め、産業界に対する大規模な調査を実施中であります。年度末までに結果を取りまとめます。これによって、取引条件の改善の状況や課題をしっかりと把握しまして、中小企業の取引条件の改善に向けた機運を高めていく考えであります。

 調査結果を踏まえて、下請ガイドラインの改定や対象業種の拡大を検討するなど、必要な対策をしっかりと講じていく考えであります。

石田(祝)委員 年度末までにということでありますから、ぜひしっかりお取りまとめいただいて、現実を把握して、認識して、さらなる中小・小規模企業の皆さんに対する手を打っていただきたいというふうに思います。

 続いて、このアンケートの問題について、これは林経済産業大臣にお聞きをしたいんですけれども、私も中小企業庁の委託事業でやられるアンケート調査の用紙も見せていただきました。これは非常に詳しく、これをちゃんと書いていただいたら相当実態が明確になるのではないか、こういうふうにも思いますけれども、これで私が心配するのは、そのとおり書いたら、またこれは元請のところからいろいろ言われるのではないかと。

 例えば、自社の取引先の取引適正化、こういうことだとか、さまざまありますね。これは正直に書いていただくということが次の改善につながるわけですから、そこのところを、遠慮したり、何となく書きにくいだとか、そういうことで実態に合わないような結果が上がってくると、それに基づいて政策をとっても、これはまた間違った政策になるわけですので、ここのところ、中小企業庁を所管していらっしゃる林経済産業大臣から、具体的に、どういう形でしっかりとした調査ができるか、そのためにどうするか、こういうことをお聞きいたしたいと思います。

林国務大臣 中小企業が賃上げを行いやすい環境をつくるための対策を講じていく上で、まずは実態を把握することが大事だろうと思っておりまして、石田先生御指摘の中小企業約一万社を対象としたアンケート調査に加えまして、三次下請、四次下請など、取引上の立場の弱いおそれのある中小企業あるいは小規模企業に対しては、取引価格の動向あるいは問題事例の聞き取りを行っているところでございます。

 御指摘のように、いろいろありますので、企業名が特定されないようにとか、事業者の不利益にならないように配慮して、聞き取り調査に当たっては、経産省の職員が直接中小企業あるいは小規模事業者を訪問して、そして個別に聞き取り調査を行っているところでございまして、こういった取引の実態や課題をきめ細かく丁寧に調査してそれを反映していきたい、こういうふうに考えておるところでございます。

石田(祝)委員 これは一万社やられるということですから、私の望むべくは、一万社が全員お答えをいただいて、本当の姿、こういうものを我々がよく認識ができるような調査であっていただいて、そしてそれに基づいた対策をしっかりとれるように、これはぜひ林大臣にも御奮闘をお願いいたしたいというふうに思っております。

 それでは続きまして、ちょっと私は国民の不安の解消ということでお伺いをいたしたいと思うんです。

 最近の、さまざま、食品の問題またバスの事故の問題等々、大丈夫かなといろいろと不安を抱いている方が私はたくさんいらっしゃると思います。そういう中で、きょうは何点かに絞りましてお伺いをいたしたいというふうに思っております。

 まず一つは、TPPの問題でありますけれども、TPPは、二月四日、明日、ニュージーランドに政府代表が行かれて署名をする、閣僚会議から出席されるだろうと思いますけれども。そういう中で、一つは、国民の不安、これは、非常に申しわけないんですけれども、新しく大臣になられた石原大臣にも、大丈夫かなと。

 要するに、長く携わっていた方がおかわりになって、石原大臣は優秀であるということは私もそうだと思いますけれども、全部をとにかく網羅して知っておくということは非常に難しいわけですから、そういう意味で、石原大臣には、中身というよりも、TPPについて担当大臣としてこれをどう国会の中で仕上げていくのか、その御決意をお伺いしたいと思います。

石原国務大臣 やはりTPPの一つのポイントは、環太平洋のエリアに二十一世紀型の新しい貿易のルールができる、そして、八億人の人口、三千百兆のGDP、総理がよくおっしゃられる言葉ですけれども、世界全体の四割の経済圏ができていく、日本だけでもGDPの押し上げ効果が十四兆円、こういう見通しも出ているわけです。そんな中で、この質問の前に石田委員が御質問された、アベノミクスの光を中小業者の方にしっかりと浸透していく、そういうこともこのTPPに一つ期待がかかっているのではないかと思います。

 私もこれまで、党の中小企業調査会、小規模零細事業調査会の会長として、また総合農政調査会の顧問として、党の提言に、このTPPを活用して、前段委員が御指摘になられたような、弱い人たちがチャンスに結びつけて生産性を上げてもらえるようにするにはどうしたらいいのかということを積極的に入れてきたつもりでもあるわけであります。

 現場を歩いて、先ほど高知のお話が出ましたけれども、私も四国も行かせていただきましたけれども、現場の声というものも聞かせていただきました。これからはやはり、甘利大臣はかなり立派な業績を積まれてきたことは衆目の事実だと思います。国民の皆様方、特に中小企業とはちょっとまた、もう一つの分野としての農業事業者の方々の不安というのはやはりまだあると思いますので、この不安を払拭して、TPPは日本の農業にとっても、また中小企業にとってもチャンスなんだということをしっかりと説明していくことが必要だと思っております。

 そして、TPPの署名があす行われるわけであります。あす署名が行われた後、速やかにTPPの協定案と関連案を国会に提出させていただきまして、日本が率先してこれの早期発効に向けて努力していく、こういう姿を見せることによって委員の御指摘の不安の払拭と、そして役割を務めてまいりたいと思っております。

石田(祝)委員 続きまして、厚労大臣と農水大臣にお伺いをいたしたいと思うんですけれども、特に厚労大臣については、食品の安全ということと、それから医薬品が高騰するんじゃないか、こういう御心配の向きがあります。

 続いてお願いしたいんですけれども、農林水産大臣には、牛肉の輸出、特にきょうはそれだけお聞きします。こういうお声を聞きました。神戸ビーフというのがGIで七つ最初に認められたところの一つに入りましたが、その神戸ビーフは神戸から輸出ができない、鹿児島まで持っていかなくちゃいけない、こういうこともあるんです。

 食の安全、安心と医薬品の問題、また輸出体制をどう充実させていくのか、このことについて簡潔に御答弁をお願いいたします。

塩崎国務大臣 石田委員から、食の安全とそれから薬価の高騰の懸念についてのお尋ねがございました。

 食の安全につきましては、TPPの今回の協定では、締約国が自国の食品の安全を守る、確保するために科学的根拠に基づいて必要な措置をとるという権利を認めているわけでございまして、遺伝子組み換え食品の安全性審査基準とか、あるいは食肉のホルモン剤の残留基準など我が国の食品の安全確保に係る基準の変更は求めていないというふうになっておりますので、これまでどおりというふうにお考えをいただければと思います。

 それから、医薬品につきましては、今回の協定で規定をされる医薬品のいわゆるデータ保護期間、それから医薬品の特許期間の延長などにつきましては、現在の我が国の制度の範囲内というか、整合性のとれたものということが定められているわけでございまして、ジェネリックの医薬品の承認が今よりもおくれることがなく、これまでと同様の期間で後発医薬品が販売されていくということになりますので、TPP協定によって薬価が高騰するという今委員から御指摘のあった懸念は当たらないというふうに考えております。

 引き続いて、食品の安全確保、そしてまたジェネリックの医薬品の適切な承認などに努めてまいりたいというふうに考えております。

森山国務大臣 石田委員にお答えをいたします。

 神戸ビーフというのは非常にブランド力が高まってきておりまして、ブランド力の向上に努力をしてこられた方々にまず敬意を表したいと思います。

 御指摘のように、兵庫県内に輸出の食肉処理施設がないものですから、今までは鹿児島で処理をして輸出をしてこられたということが現実であると思います。

 今回、GIの関係もありまして兵庫県内で処理をするということがその前提になっておりますので、現在、強い農業づくり交付金の御利用をいただいて兵庫県の姫路市で施設の整備が始まっておりまして、二十八年度から供用が開始できるのではないかと考えております。

 今後、農水省といたしましては、輸出を志向する生産者等の取り組みを促進するために、食肉処理施設の整備等は積極的に支援をしてまいりたいと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。

石田(祝)委員 それでは、TPPについてはまた日を改めて、私か、また同僚議員がお聞きをするというふうになると思います。

 それで、きょう、その不安のところで、国立大学の授業料、また奨学金についてちょっとお伺いをいたしたいというふうに思います。

 皆さんのお手元に資料が行っていると思いますけれども、「安倍政権が学費値上げ 史上最悪」、国立大五十三万円が十六年後に九十三万円になると。十六年後にね。「その影響で私立大もさらに値上げへ 署名にご協力を 学生、父母、大学人の共同でストップさせましょう」。

 これはどこが出しているかと思ったら、日本共産党と書いてあるんですね。これは別に私が変に取り入れたわけじゃないんですよ。ホームページか何かからダウンロードできるわけですから。

 総理、十六年後に九十三万円というんですけれども、総理は十六年後まで、これは「安倍政権が」と書いていますけれども、十六年後まで共産党さんはやってほしいのかね。ちょっともう十六年後は、私も長く続けてほしい気持ちはありますけれども、十六年後まではちょっと無理だろうというふうに思うんですが。

 これは一体どういうことなんでしょうか。笑い事じゃないですよ、まさしく。こんなものを配ってどうしようというのでしょうか。運動論でやられていることはわかりますけれども、こういうものを配って、若い人たち、学生さん、こんなになったら大変だ、これはそう思いますよ。

 私も、自分のことをちょっと申し上げますけれども、なかなか家が貧しい。貧しいと言うと格好いいんですけれども、貧乏なんですよ。それで、高校、大学は奨学金もいただきました。お借りもしました。そして、一年間だけ国立大学にも入りました。ですから、私は、この後奨学金のことを聞きますけれども、奨学金がなければもうとても高校も大学も行けなかった。非常に、私はそういう意味で奨学金には感謝をしております。

 そういう中で、馳大臣にお伺いをまずしたいんです。

 要するに、昨年の十月に財政審で、いわゆる国立大学法人の運営交付金を一・一%減らす、そして自分たちで一・六%稼げ、こういうのがまず出ました。しかし、それについて、我が党や自民党また議連が、こういうことはだめだと、国立大学の運営費交付金の充実確保を求める決議というのをしたんですね。その結果、十一月の正式な財政審の建議の中には、このものは全く入っておりませんでした。

 そういう意味で、この運営交付金は二十七年度と同じ額、一兆九百四十五億円が確保された、こういうことだろうと思います。

 ですから、こういうことを無視してこういうチラシが出回っているというのは、私はけしからぬと思いますよ。これは青年を惑わすものですよ、はっきり申し上げて。

 ですから、特に「安倍政権が」と書いていますから、私も首班指名で安倍総理の名前を書いたわけですから、安倍政権にある意味で一票を投じた身として、「安倍政権が」と明確に書かれていて、本当に十六年後に九十三万円に上げるのか、こういう疑問があるわけであります。

 ですから、これについてぜひ文部科学大臣にまずお聞きしたいのは、直近ではいつ上げたのか。また、馳大臣にお聞きしますけれども、今後この学費値上げが、二十八年度はもう上げないということだろうと思いますけれども、どういうふうにこの学費値上げについてはお考えなのか。学費値上げというと、これは上げる方向に聞こえますから、学費についてどう考えているか、お答えをいただきたいと思います。

馳国務大臣 お答えいたします。

 最初の、チラシのもととなった昨年十二月一日の衆議院文部科学委員会のやりとりを少し説明いたします。

 共産党の畑野君枝委員からこういう御質問をいただきました。財政審で財務省から示されておりますが、運営費交付金を毎年一%減少させ、自己収入を毎年一・六%増加させるという主張について、仮にこの自己収入の増の部分を全て授業料収入で賄うとしたら十五年間で幾らの値上げになると試算するのか、こういう仮定に基づいた試算を出せ、こういう指摘がございましたので、機械的に試算をすれば、平成四十三年の時点で授業料は約九十三万円であり、四十万円増となりますし、来年度から均等に引き上げるとすると、年間約二万五千円の値上げが必要と考えています。

 しかし、この後、文部科学省はこういう答弁もしております。

 自己収入の大幅な増加、つまり国立大学側の自己収入は、寄附金や授業料や産学連携の研究資金、この三つで大方賄われておりますが、それを授業料だけで賄うということは大幅な引き上げにつながりかねませんし、現下の経済状況や厳しい家計の状況では困難と考えている、こういうふうにあわせて答弁をしたところでありますので、一方的な仮定や試算においてこういったビラを作成することは、公党として私はいかがなものかということをまず申し上げたいと思います。

 その上で、今後のあり方が重要であるということで石田委員から今ほど御指摘をいただきましたが、今後どうするのか。

 当然、財政当局でありますから、我々は、財務省ともデータに基づいて十分な協議をしなければいけませんし、平成十九年の三月には当時の文部科学事務次官通知として、国立大学の授業料の標準額については、中期目標の期間中はその額を固定するという考え方を発出しておりまして、ただし、各国立大学の自主性、自律性を一層確保するため、授業料の上限額を引き上げることを通知したものであります。このときは、標準額五十三万五千八百円の上限額が一一〇%でありましたが、一二〇%に引き上げるという通知を発出したものであります。

 今後は、まさしく財政当局と調整を行いながら、今般、平成二十八年度の予算においては引き上げを行わないこととしたところでありますし、文部科学省としては、中期目標の期間中はその標準額をでき得る限り固定することが望ましい、このように考えております。

 以上です。

石田(祝)委員 要するに、たらればの世界のことを事実として、あたかも事実のように書いて、それを要するに若い人たちに配って運動論につなげようというのは、私はけしからぬと思うんですよ。要するに、そういう事実がないということなんですよ。それなのにそういうことを。もうだからホームページを閉めて、こういうのがダウンロードできないようにすべきなんですよ。そうでしょう。やり続けていると、そんなことをまだ垂れ流しているのかと言われますよ、はっきり言ったら。やめるべきですよ。私は言っておきますよ。要するに、そういう事実がないのにまだまだこうやっている。

 ですから、もともとの質問は十月なんですよ。それで、十一月にそういうものがなくなった財政審の建議が出ているじゃないですか。少なくとも、そういうものについて、ないものを前提にして全く違うことを書いてばらまいている、これについては、私は、天下の公党として恥ずかしいということを言っておきます。

 それで、今でも自己収入のうちの五五%は授業料以外なんですよ。それを、たらればでやって、そんなことを事実として書いちゃいけません。これだけは申し上げておきたいと思います。

 それで、総理にちょっとお伺いしたいんですけれども、「安倍政権が」と書かれていますから、これは総理にやはりお聞きしなくちゃいけないと思うんですが、この黄色のまがまがしいチラシはいかがですか。

安倍内閣総理大臣 これは、誰が見ても、「安倍政権が学費値上げ」、これはもう決まったことみたいじゃないですか。その後に、「署名にご協力を ストップさせましょう」と。

 まず、こんなことは決まっていないんですから。決まっていないことを運動するというのは、これは全くデマであろう、デマゴーグだろう、こう思いますよ。これは、安倍政権は三年間値上げしていません。そして、二十八年度も値上げをしないということは決めているじゃないですか。であるにもかかわらず、まるで来年度から上げていくかのごとき、こういう印象を操作する、選挙を前にして、極めてこれは惑わせるチラシであろう、こう思うわけでありますから、直ちに公党としては責任を持って訂正をしていただきたい、このように思うところであります。

 実際に、国立大学の授業料を今後毎年値上げして、四十万円も値上げすることはおよそ考えられないということははっきりと申し上げておきたい、このように思うわけでございます。

 今後とも、青年たちが、子供たちが家庭の事情によって、経済事情によって勉学を諦めなきゃならない、そういう国になってはいけない、この考え方のもとにしっかりと学生への支援を行っていきたい、こう考えているところでございます。

石田(祝)委員 まあ、この問題はこういうことで、ホームページも閉鎖されるでしょう、そういうふうに思っております。

 それで、奨学金についてお伺いしたいんですが、冒頭に申し上げたように、私も、苦労したということを自慢するわけじゃありませんが、やはり客観的に振り返ってみると、奨学金がなかったら高校にも大学にも行けなかった、こういうことだと私は思っております。

 それで、奨学金については無利子奨学金事業もずっと拡大をしてきていることは間違いございません。しかし、借りたものですから、これは返さなくちゃいけないですね。無利子であっても借りたものは返さなくちゃいけない、有利子であればさらに利子がつく、こういうことですが、有利子の第二種の奨学金で三%払わなくちゃいけないんじゃないか、こういう心配をしている人もいるんですよ、利子を。

 私がいろいろ調べてみたら、これは、どんなに景気が変動して利子が高くなったときでも三%以上払う必要はありませんよ、それ以上になったら国が見ますよ、こういうことなんですね。それをあたかも三%を払わなきゃいけないような、そういう誤解をしている人もいるんです。

 文科大臣、現在の利子率、返すときにどれだけ利子をつけなきゃいけないのか、このパーセントがわかったら教えてください。

馳国務大臣 お答えいたします。

 民間金融機関が実施する教育ローンなどに比べて、極めて低い利率で設定しております。

 具体的に、平成二十七年三月貸与終了者に係る返還利率は、利率固定方式では〇・六三%、五年ごと利率見直し方式では〇・一〇%であります。

石田(祝)委員 これは三%というのが法律にあって、しかし、それより低いときはその利率を使う、こういうことになっていますから、変動型〇・一%、固定型は〇・六三%、こういうことですから、お借りになっている方は返済するのはなかなか大変だろうと思いますけれども、そういう低い利率でちゃんとやっているということでございます。

 それで、これはぜひ総理にお伺いしたいんですが、給付型、これは高校生、途中まで今やっておりますけれども、大学生に対して給付型の奨学金、これを望む声が非常に多いんですね。これについては本会議の総理の答弁でも、財源と対象者をどう絞るのか、こういうお話がありました。

 私のつらい体験もちょっと申し上げますけれども、高校、大学と奨学金、当時、日本育英会という奨学金でした。そのときに特別貸与奨学生というのがあって、一般と分かれていまして、特別貸与奨学生は、例えば私の場合、高校で三千円お借りした。しかし、返すのは半額の千五百円でよかった。大学は国立大学へ一年行きましたから、そのときは特別貸与は八千円で、返すのは、ちょっと今記憶がはっきりしませんけれども、その半額ぐらい、三千円だったと思うんですよ。ということは、総理、例えばこの五千円分というのは、千五百円分というのは給付と同じなんですね。

 ですから、根っこから給付にするのか、さまざまな考え方はあると思うんですけれども、給付型奨学金については、やはり高等教育の充実と、そして能力のある人がしっかりやれるようにということをぜひ総理にも御決断いただければと思いますが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 学生の教育費負担については、来年度予算においては、大学等の無利子奨学金を一・四万人増員して、授業料減免を五千人増員するとともに、卒業後の所得に応じて返還額が変わる所得連動返還型奨学金制度の導入に向けて準備を今進めております。

 今後とも、これらの施策によって学生の経済的負担を軽減し、希望すれば誰もが大学等に進学できる環境を整えてまいりたいと思います。

 なお、給付型奨学金については、今までも答弁をさせていただいたんですが、財源の確保、対象者の選定など、導入するにはさらに検討が必要である、こう考えております。

石田(祝)委員 私の体験を申し上げて、そういうふうな仕組みもとれる。この場合は、事前に、たしか成績要件も入っておりました、そして進学する前に予約をする、こういう形で、通れば受けられるということですけれども、事実上、半額またそれ以上が給付の部分になっていた。そして、さらに言うと、以前は、学校の先生になったらもう全額免除になっていたんですよ。

 そういうふうなさまざまな、やはり成長を分配ということと、私は最初に投資ということも申し上げたんですけれども、これはまさしく未来に対する投資だと思うんですね。要するに、日本は資源は特にないわけですから、人が資源だ、人材だ、こういう考え方で私はずっとやってきたというふうに思っております。

 そういう意味で、無利子の奨学金は拡大してきていますけれども、最初に言ったように、借りたら返さなくちゃいけない、これはもう当然なんですね。ですから、将来、自分が幾ら借りたら、例えば五万毎月借りたら、卒業時に二百四十万のある意味では借金をしょって卒業していく、こういうことになります。

 右肩上がりで毎年毎年給料がふえていく、あの高度経済成長時代のようなことはちょっと考えにくいわけですから、そういう意味だと、無利子の奨学金の充実と同時に、やはり給付型の奨学金について、これは検討はしていただけるというふうにお聞きをしておりますけれども、いつまでに、ある意味でいえば検討を終えて結論を出していただけるのか、そこのところを、総理、お答えいただけるのでしたら、もう一声踏み込んだお答えをいただければありがたいと思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま石田委員から、給付型であったら、全額でなくても一部でもいいんじゃないかという御提案もいただきました。

 そうしたことも踏まえて我々検討していきたいと思いますし、そうした奨学金制度が活用されたからこそ、石田先生がこのように地域や国のために貢献をしておられる。また、安倍政権における前の文科大臣の下村大臣は、交通遺児に対するあしなが育英会の奨学金があったから彼は高校、大学と進学できたわけでございまして、私もこの奨学金制度がいかに大切かということは十分に認識をしておりますし、給付型の意義についても認識をしているつもりでございます。そういう中で検討を進めていきたいと思っております。

石田(祝)委員 もう午前の時間が終わるということで、尻切れトンボになりますので、ちょっと早いかもしれませんが終わらせていただいて、午後にもう少し質問をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

竹下委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

竹下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。石田祝稔君。

石田(祝)委員 午前に引き続き、午後、十分間質問をさせていただきます。

 平和安全法制についてお伺いをいたしたいというふうに思います。

 九月の三十日に法律が公布になりまして、この三月末までに施行される、こういうことでございます。

 そして、最近になりまして、北朝鮮が国際海事機関、IMOに、今月の八日から二十五日の間に地球観測衛星、事実上のミサイル発射、打ち上げをする、こういうことを通告してきた、こういうことになっております。我が国に大変大きな影響がございます。また、北朝鮮については、拉致、核、ミサイルと、私は、まさしくリアルな危険がある、脅威である、こういうふうな認識をいたしております。

 ですから、さまざまな国際情勢、安全保障環境の大きな変化を我々は認識してこの平和安全法制をやった。我が党も、ただ議論もせずにやったわけではありませんで、一昨年から数十回にわたる議論を通して、そして法案の閣議決定、こういう手順を踏んでこの法律の成立に我々としても尽力をしてまいりました。これはもう三月に具体的に施行になる、こういうわけであります。

 しかし、なお今さまざまに御意見はあるんですけれども、大きく分けて二つ。一つは、戦争法だという批判が実はあります。そしてもう一つは、立憲主義に反するのではないか。この二つがまだ国民の中で、私は、わだかまりというんでしょうか、心の中に沈殿しているんじゃないかな。さすがに、徴兵制については余り議論はなくなったように思います。

 立憲主義ということは、わかっているようで、私は余りわかっていないんじゃないか。みんな漠然と立憲主義、立憲主義とおっしゃっていますけれども、法制局長官に来ていただいておりますから、まず簡単に、立憲主義とは一体何なんだ、このことをぜひ簡潔に御答弁をお願いします。

横畠政府特別補佐人 立憲主義とは、主権者たる国民がその意思に基づき憲法において国家権力の行使のあり方について定め、これにより国民の基本的人権を保障するという近代憲法の基本となる考え方であると理解されております。

 日本国憲法も同様の考え方に立って制定されたものでございます。

石田(祝)委員 ですから、これは国民主権ということが大前提にあって、権力は分かれていなきゃいけない、権力の分立、硬性の成文憲法、また違憲審査制、こういうことも設けられている。その大前提として、統治権への国民参加。そして、公のことではないプライベートなところについていろいろとやるということはよろしくない。しかし、公の問題についてはしっかり国会で決めていく。これは、国民の代表が国会に参加しているわけですから、そこで決めていくということだろうと思います。

 ですから、総理に、戦争法という批判と、それから立憲主義に反している、この批判について、余り時間がありませんけれども、十二分に御答弁をお願いいたしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今回の法制は、厳しくなるアジア太平洋地域の安全保障環境、世界の安全保障環境も厳しくなっておりますが、その中で、日本人の命、平和な暮らしを守り抜いていくために必要なものであります。

 また、例えば日米同盟関係につきましても、日本を守るために完全に協力し合えない、しっかりと協力し合えないようでは、その同盟関係は危うくなってくるわけであります。相手が危ういと思えば、そこにつけ入ってくる危険性、すきが出てきて、そして、結果として日本が紛争、戦争に巻き込まれる可能性があるわけであります。しかし、そこで、これはもう完全だ、この同盟関係は、日本を守るためにしっかりとお互いに助け合っていくということになれば、日本に手を出すことはやめようということになり、これがまさに抑止力となってくる。結果として、日本は戦争に巻き込まれることはなくなっていくということであります。

 そのための法整備がまさに平和安全法制であったと言っていいと思っております。

 この法律に対して、いまだに戦争法というレッテル張りがなされておりますが、もし戦争法であるならば、世界じゅうから反対の声が寄せられるわけであります。しかし、実際には、多くの、ほとんどの国々から高い評価と支持をいただいているわけであります。例えば、さきの大戦で戦場となったフィリピンを初め東南アジアの国々、かつて戦火を交えた米国や欧州の国々からも高い支持と理解が寄せられている。この事実を見ても、戦争法案ではないというあかしであろう、こう思います。このことは、繰り返し、はっきりと申し上げていかなければならないと思っております。

 また、憲法との関係について言えば、昭和四十七年の政府見解で示した憲法第九条の解釈の基本的な論理は全く変わっていないわけであります。これは砂川事件に関する最高裁判決の考え方と軌を一にするものであります。

 最高裁判所は、砂川判決において、我が国が、自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置をとり得ることは、国家固有の権能として当然のことと言わなければならない、こう述べているわけであります。憲法の解釈を最終的に確定する権能を有する唯一の機関は最高裁判所であり、平和安全法制はその考え方に沿った判決の範囲内のものであり、憲法に合致したものであります。

 このように、平和安全法制は、その手続と内容のいずれにおいても現行憲法のもと適切に制定されたものであり、立憲主義に反するものではないことは明らかであろうと思います。

 平和安全法制の成立によって、私たちの子や孫に平和な日本を引き渡していくその基盤ができた、このように確信をしております。

石田(祝)委員 ありがとうございました。

 私も、総理の御答弁を伺っておりまして、平成四年にPKO法、私たち公明党は当時野党でしたけれども、やはり国際貢献が必要ではないのか、一国平和主義でいいのか、こういうことで、野党の立場でありますけれども、自衛隊を組織として海外に派遣をする、こういうPKOについて賛成をいたしました。そのときもやはり同じような議論がありまして、海外へ自衛隊が行って戦争するんだとか、鉄砲を撃つんだとか、そういう議論も確かにありました。しかし、二十四年たって、現実には、多くの国民も支持をしている、国際社会からも大きな評価もいただいている。

 これは、私は、国際貢献というよりも、ある意味でいえば、これだけの地位を占めている日本として義務ではないのか、そういうふうな思いもいたしております。

 ですから、この三月末に平和安全法制が施行になりますけれども、施行になっても、十二分にやはり自衛隊員の皆さんの安全等も配慮して、訓練も十二分にしていただかなきゃならないし、私たちも、法律を成立させた、そういう責任は感じつつ、しっかりとこれから取り組んでまいりたいと思っております。

 では、時間の残りは同僚議員に譲りますので、どうぞよろしくお願いいたします。

竹下委員長 この際、赤羽一嘉君から関連質疑の申し出があります。石田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。赤羽一嘉君。

赤羽委員 公明党の赤羽一嘉でございます。

 与えられた時間は二十分間でございますが、思いを込めまして質問させていただきます。どうかよろしくお願いいたします。

 まず、私は、本年一月十五日未明、長野県軽井沢で発生をしてしまいましたスキーツアーバスの転落事故について、ちょっと順番を変えまして、質問させていただきます。

 この事故によりまして、乗員二名を含む十五名が死亡、また二十六名が重軽傷と、前途ある多くの青年が犠牲となる実に痛ましい大惨事となってしまいました。改めまして、御遺族の皆様に心より哀悼の誠をささげるとともに、被害に遭われた皆様にお見舞いを申し上げたいと思います。

 私は、今回の事故発生後、公明党の事故現地調査団の一員といたしまして事故現場を訪れ、そして、その足で軽井沢警察署らの関係者の皆さんと意見交換を行いました。そして、公明党として再発防止策を取りまとめまして、先日、石井国土交通大臣に申し入れをさせていただいたところでございます。

 私は、今回、大きな夢と希望を抱きながらその夢を実現することなく亡くなられてしまった青年たちの無念さ、また、二十年以上にわたって手塩にかけて大事に育ててこられた最愛のお子様たちを人災ともいうべき今回の事故で突然失うことになってしまった御遺族の深い悲しみに、私自身が、やりようのない、心がふさがれる日々が続いておるところでございます。

 先日、ある新聞報道で、お嬢様を亡くされた御両親様がこのようなコメントをされておりました。

 一月十五日は、私たちにとっては命日となるが、報道や旅行業者の関係者の皆様においては、毎年、何らかの発信、行動をしていただければ、今回の犠牲者が皆さんの心の中に生き続け、安全に対する意識のたがが緩むことを防げる一助になるのではないか。

 大変な悲しみの中で大変前向きな御発言だと、私は大変感銘をしたところでございます。

 こうした大変な悲しみの中での御遺族の皆様の前向きな御発言を、私たち全ての国会議員そして全ての関係者が真摯に受けとめて、まさに安全な社会の確立に全力で立ち向かうことが、御遺族の皆様方にお応えをする唯一の道と考えます。私はこれを必ず実行していきたい、こう決意をしておるところでございます。

 まず、今回の政府の対応について言及をしたいと思います。

 今回、事故発生直後に、石井国土交通大臣を本部長とする軽井沢スキーバス事故対策本部が設置をされました。同日から、大臣、副大臣を含む国交省の職員の皆さんを現地に派遣する一方で、事故を起こしたバス事業者への監査の実施及び事業許可の取り消し処分の決定、また、当該旅行業者への立入検査も行い、そして、再発防止のために、抜き打ちで貸し切りバスに対し街頭監査の実施がなされていることは、私はおおむね適切な対応がとられていると評価をしているところでございます。

 しかしながら、この抜き打ちの街頭監査の結果、実は、このパネル四という資料に、皆様の方にも示させていただいておりますが、これは実は大変ショッキングなというか内容でございまして、監査車両九十六両のうち何らかの法令違反を指摘された車両が、実に半数近くの四十五両だったという。

 これは、この軽井沢の事故が起こってから、抜き打ちとはいえ起こってからの検査なんですね。あの事故を教訓にしっかりとした安全点検をしようというのが私は当然だと思うんですが、そうした状況の中で、九十六両のうち四十五両が法令違反を指摘されている。これは、信じたくないというか、余りに情けなく、余りにひどい結果と言わざるを得ないと私は思います。

 こうした結果は、多くの貸し切りバス事業者がいかに安全運行の取り組みを軽視しているのかというあらわれであり、業界の構造的問題、これは極めて深刻だというふうに私は思っております。

 次に、貸し切りバスの業界、どこが問題点かと言われていることを言及しまして、党としての改善策を改めてここで提案させていただきます。

 貸し切りバスの事業者というのは、実は、二〇〇〇年のときには全国で二千八百六十四社と言われておりました。その後、事業参入規制緩和がありまして、二〇一二年には倍近い四千五百三十六社にふえております。その結果、大手事業者の七割以上で運転手が不足している状態。また、運転手のなり手が少ないことから、運転手の高齢化も実は深刻になっておりまして、六人に一人が六十歳以上。二〇一四年には健康起因の事故が全国で九十六件も発生してしまっている。同時に、運転技術の未熟さも実は問題が指摘されているところでございます。

 そこで、まずやらなければいけないことは、私は、貸し切りバス業界のクリーンアップというか、洗浄化、悪質な業者に退出してもらうということをしっかりとやるべきだ、こう思っております。

 法令違反を起こした、なあなあにしない。これは走る凶器みたいなものなのですから、法令違反を犯した事業者は重大な処分を科す、そして公開する。どこのバス事業者がどれだけいいかげんなのかということを利用者の皆さんに知らしめる、そうしたことによって、この業界から事業をできなくさせる。これは、国民の命を守ることであって、当然やらなければいけないことである、私はそう思っております。その原則論を確立するべきだ、私はそう思います。

 そして、次に、予防安全を抜本的に改革しなければいけない。これはもう喫緊の課題だと思っております。

 バスの車両点検の徹底、これは当然のことでありますが、今義務化になっておりませんが、速度の制限装置。これは、長距離トラックはリミッターというのが義務化されているんですが、大型バス、長距離バスは義務化されておりません。また、デジタルのタコグラフとかドライブレコーダー、こういったものも義務化されておりません。今回のバスには搭載されておりませんでしたので、事故の状況がなかなか分析ができない。現実の問題として直面をしております。

 また、最近では、衝突被害軽減ブレーキの設置、新しい予防安全の装置もできているわけでありまして、こうしたものも大型のバスについては義務づけとしなければいけない、私たち公明党はそう提案させていただいております。

 また、運転手の運転技術向上についても、今の初任運転者に対する研修制度は大変問題があると言わざるを得ません。今の制度は、過去三年以内に別の貸し切り事業者で勤務していた運転手であれば、業務経験の内容を問わずして、初任者研修なしに大型バスに乗務することができるとなっているんです。ですから、前に別の会社で、大型バスの免許は持っているけれども、実際はマイクロしか運転したことがないというような方も、新しい会社に来れば大型バスを運転することができる。

 しかし、これは、せざるを得ないような状況がある。今回も、まだ解明がはっきりしませんけれども、今回の事故の運転手さんもそうした状況にあったのではないかと言われているわけでございます。こうしたことは、やはりきっちりしなければいけない、私はそう思っております。

 また、運転手の皆さんの高齢化に伴って、健康管理も大変大事な問題であります。

 睡眠時無呼吸症候群の最も権威のある専門家の虎の門病院の医師の成井先生という方がいらっしゃるんですが、成井先生に伺った話によれば、バス業界の運転手の皆さんに対する睡眠、健康対策というのは、トラック業界とか鉄道業界に比較して大変おくれていると率直な指摘がございました。

 これは国交省だけではなかなか立ち行かないところもあると思いますので、国交省のみならず、当然観光庁、そして厚生労働省、また地域の労働局、どうか、こういったものの横の連携をとって、しっかりこの健康対策を遺漏なきようにしていただきたい、こう思うわけでございます。

 そうした、いわゆるトラック事業者だけの話ではなくて、こうしたバス事業者が存在する背景としては、違法な旅行業の、下限割れ運賃を求めるたちの悪い旅行業者ですとか、ツアー催行社ですとか、ランドオペレーターという存在が私は大変大きなネックになっているというふうに考えております。

 学生のスキーツアーというのは、これは昔からそうかもしれませんが、一泊三日ないし二泊四日で一万三千円から二万円という格安料金が当たり前、現実には下限割れ運賃になっていても全然不思議じゃない。しかし、この下限割れ運賃になっているかどうかというのは、実は利用者、旅行者の立場からわからないんですね。随分安いけれども、当然ルールを守られている運賃だろう、こう思ってやらざるを得ない。

 まして、ツアーに参加するけれども、このツアーはどこのバス事業者を使うのかというのは、実はわからないんですね、現実は。義務化もありません。まあ、例えは違うかもしれませんが、飛行機を予約するときに、全日空に乗るのか、日本航空に乗るのか、LCCに乗るのかわからないなんという変な話はないわけで、国民の命と隣り合わせになっている話ですから、ツアーを申し込む、契約をするときには、バスの事業者がどこなのかということがはっきりわかる、そしてそのバスの事業者は下限割れ運賃をしていないということが担保される。これはやはり緩んでいるルールをしっかりと変えなければいけない、私はそう思っております。

 そうしたことを実は先日、公明党として石井国土交通大臣に申し入れをいたしました。

 先日のときも申し上げましたが、貸し切りのスキーツアーバスというのは、今でも毎日相当な数が運行されております。変な言い方ですけれども、この前と同じような事件が起こるリスクというのは潜在的には存在しているわけです。必死になって国土交通省も抜き打ち検査等々やっていただいているということはよくわかりますけれども、しかし、やったけれどもまた同じことが起こったでは済まされない話であって、二十二のこれから新しい人生のスタートラインに立つ青年の夢をかなえさせることができないような大変悲惨な事故というのは絶対に起こしてはいけない、私たちはそう思っておるわけでございます。

 ですから、ぜひ、きょう、石井国土交通大臣、細かい答弁は結構ですから、この所掌の最高責任者として、私は、公明党の議員の魂を大いに発揮していただいて、断じて事故は起こさないという御決意をいただきたいと思います。

石井国務大臣 一月十五日の軽井沢スキーバス事故を受けまして、国土交通省といたしましては、一月二十一日に新宿において出発前の貸し切りバスに対して行った街頭監査を皮切りに、二月一日までに全国十七カ所で街頭監査を実施しております。

 監査の結果、九十六台中四十五台に運行指示書の記載不備等の違反が見つかりました。軽微な違反とはいいながら、まことに遺憾でありまして、直ちに是正を指示して改善をさせたところであります。今後、さらに三月中旬にかけて全国で監査を行い、違反が確認された事業者には法令遵守の徹底を強く求めてまいります。

 貸し切りバス事業者にこのような悲惨な事故を二度と起こさせないよう、今般の事故の原因究明を進めるとともに、貸し切りバスの抜本的な安全対策を検討し、実施してまいりたいと存じます。

 安全対策について、速やかに、実施可能な施策については直ちに実施をしてまいります。

 具体的には、街頭監査を踏まえまして、チェックシートを活用した運行前の法令遵守確認の徹底、さらに、運転者への安全運転教育の徹底、シートベルトの着用徹底については、本日中に貸し切りバス事業者に対し通知を行い、早速に実行に移すこととしております。

 また、貸し切りバス事業に係る事故の防止策につきましては、今、赤羽委員から御提言いただいた内容を含めまして、有識者による軽井沢スキーバス事故対策検討委員会の中で徹底的に議論してまいりたいと存じます。

 この議論を踏まえまして、今年度末をめどに中間整理を行い、実施可能な施策については直ちに実施するとともに、本年末までには総合的な対策を取りまとめ、このような悲惨な事故が二度と起こらないように、しっかりとした再発防止策を講じてまいりたいと存じます。

赤羽委員 気迫のこもった御答弁、ありがとうございます。

 すぐやらなければいけないこと、また中長期的に、根本的に解決しなければいけないこと、しっかり整理しながら、徹底的にやっていただきたい。たちの悪い事業者は必ずいると思いますので、そこはもう参入させない、退場させるということもぜひ重ねてお願いしたいと思います。

 次に、話題は全くかわりますけれども、消費税の税率引き上げに伴う軽減税率制度の導入について、幾つか確認をさせていただきたいと思います。

 今回、通常国会開会後、補正予算の委員会審議の中で、一部の野党の皆さんから、軽減税率について種々御意見がございました。正しく御理解をしていただいていないのではないかなと思うようなところも何点かありましたので……(発言する者あり)よく聞いてから失礼かどうか判断していただきたいと思いますが。

 そもそも論として、一つ目からいきたいんですが、まず、平成二十四年の六月、民主党政権時代に、社会保障と税の一体改革、何とかしなければいけないということで、民主党と、当時野党でありました自民党と、私ども公明党の三党が、社会保障と税の一体改革に関する三党合意がなされた。そして、その合意に基づいて税制の根本改革法が成立をした、そういう流れだったと、私は当時現職じゃありませんでしたので、確認をさせていただきました。そういう流れだったというふうに承知をしております。

 三党合意の中にもありますが、その法律の中で、消費税率を一〇%に引き上げる際には、やはり低所得者の皆さんに対する配慮をする観点から対策が必要だ、その対策として、一つは総合合算制度、また二つ目は給付つき税額控除、そして三つ目は複数税率、いわゆる軽減税率、この三つの手段のいずれかを導入することが法律で明記されている。ここに書いてあるとおりなんです。

 その三党合意に基づいてなされた税制抜本改革法にのっとって、今回は、自公の与党の中で、さまざまな議論の中で、現実的に、複数税率たる軽減税率の導入をすることを決定したわけでございます。

 この決定は、実は、現実に決定したのは自民党と公明党かもしれませんが、もともとといえば、民主党政権時代に、民主党と公明党と自民党の三党が、何らかの対策をとらなければいけない、その三つのうちのどれでもいいと。だから、私は、発言をかえれば、いずれかの制度が導入されたとしても、とやかく批判することは筋違いだ、こう思います。

 先日の補正予算の採決の本会議で、民主党を代表する反対討論において、「軽減税率は世紀の愚策、亡国の政策」という信じられない発言がございました。しかし、これは、民主党も入れた三党合意の中で、一つの手段として、選択肢としてみずから書き込んだ、それに対してそうした暴論を吐くというのは、私は、三党合意の精神を踏みにじる大変失礼な暴言だということを指摘しておきたい、こう思います。

 もう一つは、今回、食料品と定期購読する新聞、一〇%から二%引いて八%、これを軽減ではなくて据え置きだという御批判もされている方たちもいらっしゃいます。

 しかし、これはそもそも、今回の、今申し上げた経緯の中で、消費税の税率を一〇%にする、しかし、その中で、本当にそのままでいいのだろうかと。先ほど申し上げました、総合合算制度にするべきなのか、給付つき税額控除にするべきなのか、軽減税率を採用するべきなのか、さまざまな議論の中で、結果として軽減税率が採用され、そして、いろいろな議論がありましたけれども、加工品も含んだ食料品全般、外食と酒類を除く、そして定期購読の新聞を八%にするということを決めたわけで、その批判にあえて反論する必要もないかもしれませんけれども、これは間違いなく据え置きではなくて軽減税率だということを申し上げておきたい、こう思うわけでございます。

 あと、限られた時間でありますけれども、先日の予算委員会で、他の党の皆さんから、専門家の大半は軽減税率に反対しているという質問がございました。麻生財務大臣から反論がございました。

 反論がありましたので、私があえて申し上げなくてもいいかもしれませんが、お手元に配付してある配付資料一、ここには、政府の、かつて地方財政審議会の会長を歴任された、もう大変財政学では有名な神野直彦東京大名誉教授は、消費税が高くなるにつれて課税の公平性をどう確保するかが大きな課題となる、そういう観点から、消費税一〇%への引き上げに合わせ、生きていくのに欠かせない飲食料品に軽減税率を適用すると決めたのは妥当だと思うということを言われております。その下には、国際経済論の郭洋春立教大学教授も、世界各国で軽減税率が受け入れられている理由としてということで書かれております。

 また、日本経済新聞社の一月二十六日付の「経済教室」には、橘木ジョンズ・ホプキンス大学の博士も、逆進性緩和に一定の効果があると、しっかりとした論文を載せられております。これも資料として配付をしております。

 同時に、これは同僚の濱村議員が先日の委員会でも紹介しましたが、OECD加盟三十四カ国中、消費税を採用している三十四カ国で複数税率を採用していないのは我が国とチリだけだということも御紹介いたしました。

 そして、食料品の軽減税率はどうなっているかというと、イギリスでは、表にありますように、ゼロ%、ドイツ、フランス、イタリアは、押しなべて、ここに書いてあるように、標準税率の半分もしくは三分の一となっております。

 あえて申し上げれば、給付つき税額控除を採用しているのは、世界じゅうで今カナダだけと承知をしております。

 こうしたことでありますので、ぜひ、こうしたこともしっかりとやっていきたい。

 ですから、この税制改正については、大変大きな制度改革でありますので、しっかりと前に進めていかなければいけないと思います。

 この点について、簡単に総理の御所見をいただいて、時間が来ましたので終わりにさせていただきます。

安倍内閣総理大臣 ただいま委員が御指摘になったように、軽減税率については、食料品ぐらいは軽減税率をやってもらいたいという声が、事実、多くあるわけであります。そこで、我々は、国民的な納得を得るために、そして、同時にまた、消費への影響を緩和する上においては、軽減税率の導入が正しい道であろう、こう判断をしたところでございます。

竹下委員長 これにて石田君、赤羽君の質疑は終了いたしました。

 次に、岡田克也君。

岡田委員 民主党の岡田克也です。

 まず最初に、先日の甘利前大臣の記者会見について、少し総理のお考えをお伺いしたいと思います。

 甘利大臣の記者会見、いろいろ言われました。私は、腑に落ちないところも多かったわけですが、一番違和感を感じたのは、甘利前大臣が大臣室で五十万円を受け取った、まあ直接受け取ったわけではないんですが、甘利大臣の説明によれば、封筒に、紙袋に入った、その紙袋を後で秘書が確認したら、その中に五十万円ののし袋が入っていた、こういう話であります。私は、この話はちょっとよくわからないなというふうに思って聞いておりました。

 そこで、総理にお伺いしたいと思います。

 これは甘利大臣の話というより一般論としてお聞きするんですけれども、もし、総理が余り御存じない、あるいは面識の全くない人と秘書の紹介でお会いをして、三、四十分お話をして、その方が菓子折りを置いていった、後で確認したら、そこにお金が入っていた、祝儀袋に入れた五十万円が入っていた、そういう場合に、総理はこれを政治資金というふうに思われますか。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 私は、そういう経験もございませんし、仮定の質問にお答えをすることは差し控えさせていただきたいと思いますが、大切なことは、政治資金規正法にのっとって正しく対処していくことではないかと思います。

岡田委員 私は、当然、否定されると思いました。黙ってお金を置いていく、それを政治資金と思う方がおかしい、それは常識だと思うんですね。危ないお金だというふうに受け取るのが普通じゃないでしょうか。

 別に、これは政治資金だと言ったんじゃなくて、黙って置いていった、しかも祝儀袋に入っていたというわけですね。それを適正に処理しなさいと甘利さんは言ったということでありますけれども、そういうことというのはあり得るんですか。やはり出す方は、それはちゃんとした政治資金として出していないことは明らかじゃないですか。そう思いませんか、総理。

安倍内閣総理大臣 私は、そういう経験がございませんから、また、そういう方とお目にかかるということは今までなかったわけでございます。

 いずれにせよ、大切なことは、政治資金規正法にのっとって正しく対処していくことではないかと思います。

岡田委員 甘利さんは、秘書からお金が入っていたと言われて、政治資金としてきちんと処理するように指示したというふうに記者会見では言っておられます。

 もちろんこれは、週刊誌の報道は全く違う報道なんですが、甘利さんの記者会見をなぞって私は質問しているんですが、後からきちんと処理するように指示すれば、どういう意図で持ってきたかわからないお金が適正な政治献金になるんですか。総理はそういうふうに思っておられるんですか。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 繰り返しになりますが、まさに、正しく、適法に処理されたのでなければ、それは問題であるのは当然のことだろう、こう思います。ですから、私が先ほど来申し上げておりますように、政治資金については、政治資金規正法にのっとって正しく処理することではないか、このように思います。

岡田委員 総理は、正しく処理されているかどうかということですが、では、今回の場合は正しく処理されているんですか。

 つまり、お金を持った、面会したのが十一月の十四日。しかし、政治資金の届け出がなされているのは翌年の二月四日。この間、約三カ月間、このお金はどうなっていたんでしょうか。つまり、領収書の日付も二月四日になっているはずですから、この間、そのお金は、会館か地元かわかりませんが、事務所に置いてあったということですか。それは、果たして政治資金と言えるんでしょうか。

 私はそれは、当然、意図としては裏金だというふうに見ざるを得ないし、三カ月後から、領収書を切ったからといってそれが政治資金になるはずがないというふうに思うんですが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 私が申し上げていることは、政治家においては、支援者から寄附の申し出があったときには、これは間違いなく法律にのっとって正しく処理をしていくことであろう、それに尽きるわけでありまして、それが違法なことであるかどうかということについては、当然、私が個々の出来事について答弁することは適当ではない、このように思います。

岡田委員 ですから、持ってきた人が、これは政治献金ですという言葉もなく黙って置いていった、祝儀袋に入っていた、そしてそれが放置されていて、三カ月近くたってから初めて届け出をした、これが法律に基づいて適正に処理されたと言えるかどうか、そういうことなんですね。私は、非常にここは疑問だということを申し上げておきたいと思います。

 そこで、総理は昨日の本会議での質問で、安倍内閣の政策が政治献金で影響を受けることはないと断言されました。何を根拠に断言されているんですか。

安倍内閣総理大臣 これは、ないからです。

岡田委員 総理、もっと危機感を持たれた方がいいと私は思いますよ。

 つまり、この甘利前大臣のケース、これは相当グレーですよ、甘利さん自身のお金もね。しかも事務所は、五百万、そのうちの三百万は届け出もされていない。まさしく裏金として処理されているわけでしょう。そういう事務所。そして、甘利さん自身も、今私が最初に申し上げたグレーなお金の受け取り方。果たしてそれで、失礼だが甘利さんがちゃんと、大変な大きな権限を持って、アベノミクスの司令塔として、そしてTPPの交渉の最終責任者としてさまざまなことをやっているわけでしょう。きちんと検証すべきじゃないですか、総理。

安倍内閣総理大臣 週刊誌で報道されていたようなことは、安倍政権の、例えばTPP交渉に影響するんですか。経済財政運営に影響するんですか。影響するはずないじゃありませんか。一切ないということをはっきりと申し上げておきたいと思います。

岡田委員 私は週刊誌の報道に基づいて言っているのではなくて、こういったお金にルーズな事務所あるいは御本人、そういう方が、強大な権限を持って、例えばTPPの交渉というのは、それぞれの業界あるいは農業に携わる人たちにとって死活問題ですよね。関税、ほとんどのものが、五品目以外はゼロになっていますけれども、ゼロになっていないものもあるし、ゼロになるタイミングもいろいろありますよ。当然、さまざまな生産者から見ると、これは生き死ににかかわる話、大きな、巨大な権限ですよ。そういう権限を持った人がこういう疑いをかけられているということについて、私は、総理はもっと危機感を持つべきだし、きちんと甘利前大臣にそういうことはないということを確認する責任があるんじゃないですかと申し上げているんです。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 TPP交渉、これはいろいろな品目がかかわっております。岡田委員が、では、影響が出ているというのであれば、具体的に言ってくださいよ。ないというものについて、ないというものを、私はないと言っているんです。ですから、そこを、一党の、公党の代表として、嫌疑をかけるのであれば、TPP交渉において、どの品目についてどういう影響を与えたかということを具体的に述べなければ、それは無責任な、ただの誹謗中傷にすぎないですよ。そのことははっきりと申し上げておきたいと思いますよ。

 交渉そのものを汚すようなことを言うのはやめてください。それとこの問題は別の問題ですから。そこははっきりとしておく必要があると思いますよ。

 甘利大臣は、まさに命がけでTPP交渉を頑張ってきましたよ。そして大筋合意に至ったんですよ。そんな簡単なことではないんですよ。甘利さんが一人で決めれば決められるような話ではないんですよ。十二カ国の中でしっかりと議論をしながら結論を得ていく、その中で、重要五品目についてちゃんと守っていくために、まさに私たちは昼夜を分かたず交渉して結果を出してきました。

 その結果自体が、その交渉行為そのものに影響があった、あの中に出てくる人物が影響を与えたんですか、そんなはずないじゃありませんか。具体的な案件で言うのであれば、週刊誌の報道に頼らずに、具体的な案件で何か言ってくださいよ。それも全くなしに、いきなりそういう言いがかりをされても、私は答えようがないわけであります。

岡田委員 私が申し上げているのは、総理が本会議場で、安倍内閣の政策が政治献金で影響を受けることはないと断言されたから言っているわけですよ。断言された以上、その根拠を示す必要があるのはあなたの方じゃないですか。

 私は、甘利大臣のTPP交渉担当としての、もちろん我々目指す方向は違うけれども、一定の敬意を持っていますよ。別に、具体的に疑いがあると言っているわけじゃありませんよ。だけれども、これだけのことが事務所であり、本人も疑いをかけられているわけだから、本人に確認されたらどうですかということを言っているんです。それすらできないということですか。

安倍内閣総理大臣 私は、ないと言い切りましたよ。でも、ないことをないと証明するのは、これは悪魔の証明なんですよ。あるんだと言うんだったら、あるということを主張している方は立証責任があるんですよ。当たり前じゃありませんか。私は、ないものについては、ないと言う以外はないじゃありませんか。

 もしあるんだったら、先ほど申し上げましたように、何か一つでも具体的なことを言ってくださいよ。一つも挙げられていない中において、一つも事実を挙げていない、これが疑いがあると一つも言えないにもかかわらず、先ほど来から、まるであるかのごとく言っている。これは余りにも議論としてばかげた議論でありますよ。しっかりとそういうものを何か出していただかなければ、我々もそれは答えようがないわけであります。

 いずれにせよ、甘利大臣については、先般、記者会見をされました。あれは中間的な調査であるということを述べておられましたが、今後しっかりとさらに調査を進めてそれは公表していく、こういうふうにおっしゃっておられますから、私は、今後しっかりと政治家として責任を果たしていくべきものだと考えておりますし、責任を果たしていかれるもの、このように確信をしております。

岡田委員 繰り返し言っておきます。ないと言ったのはあなたなんです。ないと言った以上は、きちんとないことを説明するべき責任があるということを申し上げておきます。

 そして、もう一つ申し上げておきますが、このURの問題、あるいは国交省も絡むと。これは安倍内閣の中の問題ですね。だから、本当に問題がないのかどうかということをきちんと内閣総理大臣として確認して、責任を持って、ないならないと、あなたはおっしゃったんだけれども、URの問題も含めて、ないとはっきりおっしゃる責任があるということを申し上げておきたいと思います。

 さて、次に、衆議院選挙制度改革について申し上げたいと思います。

 まず、先般、〇増五減案は違憲状態であるという最高裁の判決が出ました。十一月ですね。こういう判決が出たことについて、総理はどういう責任を感じておられますか。

安倍内閣総理大臣 国会の責任としては、いわば違憲状態という判決が最高裁でなされた以上、一日も早いこの解消について国会として努力をしていかなければならない、このように考えております。

岡田委員 国会以前に、この〇増五減案、我々民主党は、これは違憲ないしは違憲状態という判決が出る可能性が高い、だからこれはだめだと反対しました。しかし、自民党、公明党がこの〇増五減案を推し進めて、そして法案を成立させた。裁判所が、最高裁がこれを違憲状態と言った。

 つまり、国会の話を私は言っているんじゃないんです。自民党総裁として、総理に責任があるんじゃないですか、そのことについてどう考えていますかということを、まず国民にしっかりわびてくださいよ。

安倍内閣総理大臣 この〇五については、民主党政権は三年間続きましたが、この〇五すらずっとやらなかったじゃないですか。我々がまず〇五はやらなければならないということを言って、民主党も賛成して〇増五減が決まったんですよ。それを急に、区割りのところで反対に転じたわけでございます。

 しかし、まずは、いわばまさに選挙制度にかかわること、定数削減にかかわること等々については、民主主義の土俵にかかわることでありますから、国会の中において各党各会派がしっかりと議論をしながら最終的に結論を得ていかなければならないわけでありますが、最終的に、〇増五減という、これは民主党も賛成してできたわけでありますから、これをまずしっかりと実行しておこうということであったんだろう、こう思う次第でございます。

 いずれにせよ、先日、衆議院選挙制度に関する調査会の答申が取りまとめられたわけでありまして、大島衆議院議長から、各党の御理解を得て、この国会において結論を得るべく最大限努力するとの意向が示されたところでありまして、我が党はもとより、各党各会派がこの答申を尊重し、そして選挙制度改革の実現に向けて真摯に議論を行い、そして早期に結論を得ることによって国民の負託にしっかりと応えていくべきものである、このように考えております。

岡田委員 〇増五減案を我々は賛成したと言われましたが、それは多分事実じゃないと思いますよ、私ずっとやっていましたから、この問題。

 そして、最後は区割り改定法が成立したんですが、その中で、これは参議院でみなし否決されて、衆議院で再可決したんですよ、自民党、公明党が中心になって。だから、総理がおっしゃっていることは間違っているんですよ。まずそれを訂正してくださいよ。

 そして、総理は、この法律が成立したときに、この法律によって違憲状態は解消した、現在では違憲状態とされた一票の格差は解消されたというふうに言われたんです。しかし、最高裁の判断は違ったわけですよ。

 だから、そこに、内閣総理大臣として、自民党総裁として問題がありますねということを私は申し上げているんです。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 この〇五についての御党の賛否については私が先ほどお話をしたとおりでありまして、平成二十四年十一月の〇増五減緊急是正法成立については、民主党は賛成しているんですよ、賛成しています。その後、衆議院選挙があって、そして、平成二十五年の六月に〇増五減の区割り改定法を審議したときには、もともとのときには賛成していながら、ここではどういうわけか御党は反対をされた、こういうことでございます。

 いずれにせよ、現在の段階において、最高裁から違憲状態という判決が出たわけであります。これは議会において速やかに対応しなければならない、このように考えております。

岡田委員 速やかに対応しなければいけないということですが、総理の今までの発言をちょっと整理してみたんですね。

 まず、二〇一三年六月に、第三者機関を国会に設けることを提案いたします、各党各会派がその結論を尊重して、改革を前に進めるという仕組みです、こうおっしゃいました。そして、各党各会派がその答申に従うことが重要であると考えておりますと。

 ちょうど一年前の施政方針演説では、全ては国民のため、党派の違いを超えて、選挙制度改革、定数削減を実現させようではありませんかと呼びかけられました。

 そして、ことしになって、我が党はもとより、各党各会派がこの答申を尊重しということを言われているわけですね、負託にしっかりと応えていくべきだと。

 これだけのことを言われているわけですから、私は、当然、佐々木調査会の答申は、これは受け入れるというふうに与党第一党として総理が断言されるべきだと思うんですが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 現在、これは我が党においても検討を進めているわけであります。私が申し上げたことはまさにそのとおりでございますが、自民党においてもこれをしっかりと検討するのは当然のことであろう、このように思います。

 私がここで言えば全てが決まるという、私は独裁者ではありませんから。我が党においてもいろいろな意見の方がおられて、そういう方々の意見も受けながら、だんだんこれは意見が集約をしていくわけでありますが、当然、私が既に尊重すべきだということを申し上げているわけでありまして、その上に立って議論をしていただける、このように思っております。

 いずれにいたしましても、各党各会派がこの答申を尊重し、定数削減を含む選挙制度改革の実現に向けて真摯に議論を行い、早期に結論を得ることによって国民の負託にしっかりと応えていくべきものである、このように考えております。

岡田委員 民主党は、十しか定数削減しないということは、いろいろな問題があるとは思いますが、今までの経緯から見て、この佐々木調査会の結論を受け入れるというふうに考えています。恐らく、維新も、そして公明党も同じような考え方だと思います。ですから、大きなところで残っているのは自民党だけなんですよ。

 ところが、伝えられるところでは、自民党の中の議論が、何か時計の針をもとに巻き戻したように、二倍以内であればいいと。各都道府県に一議席ずつ割り振るというやり方を完全に排除するんじゃなくて、それはそのまま残して、同じ都道府県の中でなるべく平等にして、そして結果的に二倍以内になればいい、こういう議論がまかり通っているというふうに私は聞くんですけれども、それじゃ何のためにこの佐々木調査会をやったのかということになりますよね。

 まさかそんなことはないですよね。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 あの答申を見ますと、五年ごとの暫定的な調査、中間調査と、十年の国勢調査についての考え方をしっかりと切り分けて考えています。

 大きく、県ごと、いわばアダムズ方式にのっとってというのは、これは十年でやるべきだ、ある程度の安定性が必要だということで、そう述べているわけでございます。

 他方、最高裁から出た違憲状態、こういうものに対応していくためには、五年ごとについては、これはいわばアダムズ方式をそこに当てはめるのではなくて、まさに、選挙区ごとの公平性を保っていくべきだという考え方に立っているわけであります。

 つまり、県という枠組みの中での区割りを変えていきながら、そして違憲状態を解消していくべきだ、そういう議論になっているわけでありまして、その中において、細田さんは、まずこれについてしっかりと議論を進めていきながら詰めていくべきだ、そういう御主張をしておられるんだろうと思いますから、全くこれは答申から離れているということではないんだろう、このように考えております。

岡田委員 私は納得できませんが、では、今の御説明だと、この一人別枠方式をやめて、アダムズ方式で各都道府県の配分を変えるということはやるという前提ですね。

安倍内閣総理大臣 今まさに、我が党においてこれから検討が始まり、全体で議論をします。こういう民主主義の土俵をつくっていく上においては、全体で議論していくことが求められているわけでありまして、我が党の中においてもまさに検討が始まったわけであります。

 当然、その中におきまして、私が先ほど申し上げたことを踏まえて議論が行われているもの、このように期待をしております。

岡田委員 細田さんの言っておられる説は、もう私も過去四年ぐらい、耳にたこができるぐらい聞かせていただきましたが、結局、それは、一人別枠方式を残す、そして各都道府県の中でなるべく均等に割ることで二倍以内に抑え込むということであって、佐々木調査会の、一人別枠方式をやめる、そしてかわりにアダムズ方式を導入するという一番根本のところとは基本的に相入れない考え方なんですね。もしそこがないのであれば、今まで自民党が主張してきたことと何ら変わらないということになりますよ。

 しかも、定数削減もないと聞きます。これは、野田総理と安倍総裁の間で約束したことじゃないですか。消費税増税の前提じゃないですか。それもやらないと言うんですか。それはちょっと私は理解できないんですが、いかがですか。定数削減、ちゃんとやりますね。

安倍内閣総理大臣 まさに定数削減も含めて、今おっしゃったアダムズ方式、いわば十年においてはアダムズ方式ということが提言でなされているわけでありますが、それも含めて自民党で議論をしていく。まだ議論をしていないわけでありますから、この議論をさせていただきたいと思っています。その上において、しっかりと自民党で取りまとめられていくもの、このように考えています。

 細田さんは、長年、選挙制度についてずっと熱心に御議論をいただいた方でありまして、有識者の一人と言ってもいいんだろうと思います。ですから、細田さんの考え方も当然有力な議論の一つではございますが、当然、これは自民党の中で、全体でしっかりと議論をしていくということになります。

 当然、議長のもとに置かれた第三者機関で出されたこの答申については重く受けとめ、しっかりと受けとめなければならない、このように考えております。

岡田委員 大島議長からは、一カ月で各党は考え方をまとめるように、そういう話になっているんですね。少し時間もたちました。これは約束を果たしていただけますね。

安倍内閣総理大臣 まさに今、自民党が検討にかかった中において、しっかりと結論が出てくる、このように確信しております。

岡田委員 これはぜひ、佐々木調査会の結論をしっかりと正面から受けとめて、受け入れるという結論で自民党をまとめていただきたいと思います。そうでなければ、これは政権与党としてのかなえの軽重が問われるというふうに私は思いますよ。

 最高裁が違憲状態だと判決を出す、これを軽視する、衆議院議長のもとに置かれた調査会の結果をこれまた無視する、これじゃ、やはり内閣総理大臣独裁じゃないですか。三権分立の土台が狂いますよ。だから、責任を持ってしっかり党内をまとめる、もう一回言ってください。

安倍内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、私は、議長のもとに置かれた第三者機関において答申がなされたわけでありますし、そもそも、議長のもとに第三者機関を置くべきだということを申し上げたのも私でございますから、そこから答申が出された以上、尊重していく、我が党が尊重していくということは、これは当然のことであろうと思います。

 しかし、自民党は議論がスタートしたわけであります。まずはしっかりとスタートしていただきながら、その中で納得をしていただきながら結論をまとめ、結論がまとまったら、我々はその結論に従っていくというのが自民党のよき風習でございます。その前から議論を封じてしまうことはおかしい、我々の、自民党のやり方ではないわけでありまして、ここでまずは議論をしっかりとやっていくのは当然のことだろう。しかし、同時に、私がこの第三者機関の結論を尊重する、こう申し上げているんですから、当然その上に立って結論が出てくる、このように考えております。

岡田委員 自民党の大変さもわかります、関係者が多いですからね。民主党は、もう既に議員総会もやり、関係の都道府県連も呼び、これで受け入れる方向で確認されています。一カ月という期限も切られていますので、その中でぜひリーダーシップを発揮していただきたいというふうに思います。

 もし、違憲状態ということで次の選挙をやって、また違憲状態のままであれば、私は、憲法改正の発議など全くできない衆議院になると思いますよ。そういうことの疑念が出ないためにも、きちんと対応されることを、総理のリーダーシップを期待しておきたいと思います。

 次に、消費税の軽減税率について。

 まず、軽減税率。それから、給付つき税額控除、これは我々の案ですね。これはある意味での消費税の払い戻し的なものです。

 この給付つき税額控除に関する政府統一見解というのが出ています。

 給付つき税額控除のメリットというのを政府統一見解の中で述べられているわけですが、一定水準の所得を下回る者に限定して、かつ、所得水準に応じて給付額等を決めることができる。つまり、一兆円なくても、もう少し少ない額で所得の少ない方に対する手当てができますと。

 それから、対象品目の設定。今回食料品プラス新聞ということになりましたが、何を対象にするかという議論は、これはありません。

 それから、事業者の事務負担。今回インボイス方式の導入というのは先送りされましたが、しかし、将来入ることは間違いない、大変な手間もかかる、そういうことが生じないというメリットが我々の主張する給付つき税額控除にはある。

 これは政府がお認めになったメリットですね。こういうメリットが給付つき税額控除にあるということは、当然、これは政府の見解ですから、総理もお認めになりますね。

麻生国務大臣 給付つき税額控除のメリットもあればデメリットもあるということで、両方御存じの上で聞いておられるんだと存じます。

岡田委員 メリットをちゃんと御認識いただいたとは思います。そして、デメリットとして、痛税感の緩和の実感につながらないというのがデメリットであると。

 政府統一見解では、このメリット、デメリットを比較した上で、日々の生活の中で痛税感の緩和を実感できることが特に重要との判断のもと、軽減税率制度の導入を決定した。これが政府統一見解です。

 総理にお聞きします。

 痛税感の緩和って一体何ですか。痛税感って何ですか。痛税感の緩和って何ですか。

安倍内閣総理大臣 痛税感というのは、まさに、消費税が上がって、例えば千円のものが、八%から一〇%に上がって千百円になる。千八十円であれば買うけれども、千百円になったら考えるという人もこれは当然いるわけでありまして、つまり、それこそが痛税感なんだろう。一回一回の買い物において消費税を払うということについての痛みを感じる、これが痛税感であろう、このように思います。

岡田委員 消費税の負担、確かに大変なことです。

 しかし、我々国民一人一人がやはり納税の義務というのを負っている。国は、国民が納税することで初めて成り立つ。したがって、確かに消費税を払うことはしんどいけれども、社会保障制度やあるいは国の成り立ちのためにはこれは必要なことなんだというふうにきちんと説明するのが政府の本来あるべき態度じゃないですか。

 痛税感というそれだけで一兆円もかけるという発想は私には理解できないんです。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 そもそも八%から一〇%に引き上げていくときに、給付つき税額控除、総合合算制度とこの軽減税率、この中でどれかをやるということは三党合意をしているわけでありますから、その中で私たちはこの軽減税率を選んだわけでございます。

 どれを選ぶかということについては、これは、それぞれメリット、デメリットがあるという中において、多くの国民の方々から、食品ぐらいはほかのものと一緒に上げていくべきではないんじゃないの、二桁になったらということであります。

 我々は、まさにこれがなぜ必要かということについては、五%から八%に上げる、三%も上げたんですから、当然それは説明をさせていただいていますし、さらに二%上げていくということを約束していく中で我々も選挙をやっておりますから、これが何のために必要かということを説得しながら選挙を行っているわけでありまして、それは当然のことであります。

 同時に、一〇%、二桁になったらこれは措置をしていく、低所得者に対する措置をしていくということで、これは御党も賛成してメニューの中の一つに入っていて、我々は政権与党としてこれをとったわけであります、軽減税率をとったわけでございます。

 と同時に、前回消費税を五から八に引き上げた際には消費がぐんと落ち込んだわけでありまして、これは成長にも大きな影響が出て、今日にもずっと尾を引いているわけでございます。ここで我々は、何か痛税感を緩和させていくことによってこの衝撃を少なくしていく、マクロ経済政策的にも必要であろう、こう考えたところでございまして、今回、我々は軽減税率というものを選んだところでございます。

 先ほど赤羽委員が御紹介をされたように、多くの国々が採用しているということではないかと思います。

岡田委員 総理、今総理が言われた、消費税を上げたときに景気に悪影響がある、衝撃を和らげる、今回一〇にするときもそういう議論。しかし、私は、それは一時的な対策として、一〇にするときにその衝撃を和らげるためのいろいろな措置を講ずるというのはわかりますよ。だけれども、軽減税率というのは、一時的な措置じゃなくて、一旦入れたらずっと続くんですよ。だから、それが妥当か、それが本当に一兆円なのかということを申し上げているわけです。

 もちろん、我々も三つの選択肢のうちの一つにはしました。だけれども、一兆円規模などということは全く想定していなかったし、これだけのものを入れる、それが痛税感という理由だけなのか、そこが全く納得できないから聞いているわけです。お答えいただけますか。

安倍内閣総理大臣 軽減税率を実際に導入しようとなると、どこで切るかという話でございまして、生鮮品で切るという議論もございました。しかし、低所得者対策として実効あるものにする上においては、加工食品を入れなければならない。それで、四千の次は、六千とか八千という切り方は事実上、実務上できないわけでありまして、そこで我々は一兆円というものにしたわけであります。そこは当然、我々は、この財源については、安定的な財源をしっかりと獲得していくということであります。

 四千億から一兆円にということについては、これは相当議論をした中において、途中で切るのは、事実上、事務的にはかなり不可能に近いわけでございまして、その中において我々は判断をしたところでございます。

岡田委員 そういう形で途中で切れないからこそ、我々は給付つき税額控除がいいというふうに言っているわけですね。本当に困ったところにきちんとミートして、そこにはある意味での消費税をお返しするという形がとれる、そこに我々の言う給付つき税額控除のメリットがあるわけですよ。だから、そういうメリット、デメリットも含めて、一兆円の軽減税率を入れたということは、私はよくわからない。これは後々非常に憂いを残すことになるだろうというふうに思います。

 今回は新聞にも入れられましたけれども、新聞は全く別の論理で入れておられると思いますけれども、これから上げようとするたびに、うちも例外にしてくれ、うちも入れてくれという、門前市をなすことになると思うんですね。それはそれで政党としてはいいのかもしれませんが、やはり私は、それは、政府とそして民間の経済活動との関係からいうと、そういうある意味での不当な介入を許す余地を残すということで、後々これは悔いを残すというふうに思いますよ。

 もう一つの問題は、その一兆円の財源がいまだにはっきりしていないということですよ。

 一兆円というのは非常に大きな額ですよね。それで、国民負担です、これは。ではどういう負担をするのかということとセットになっていて初めて、国民は、この一兆円の軽減税率が妥当かどうか、賛成できるかどうかということが判断できるわけです。そこを全部ブラックボックスにして、いや、一兆円の軽減税率、いいでしょうと言えば、それはそれだけ見れば多くの人がいいと言うに決まっていますよ。だけれども、当然負担がある、そのことをはっきりとやはり言わなきゃおかしいでしょう、総理。これは参議院選挙の後だなんというのは、全く私は納得できませんよ。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 これについては、平成二十九年四月の消費税の軽減税率制度の導入に当たっては、与党及び政府の税制改正大綱において、財政健全化目標を堅持するとともに、社会保障と税の一体改革の原点に立って安定的な恒久財源を確保するとの観点から、平成二十八年度末までに歳入及び歳出における法制上の措置等を講ずること等とした上で、その趣旨を、軽減税率制度を創設する規定を盛り込んだ平成二十八年度税制改正大綱において明記することとしているわけでありまして、財源措置について、現時点では具体的な措置内容が念頭にあるわけではありませんが、与党及び政府の税制改正大綱に沿って、今後、政府・与党で歳入歳出両面にわたってしっかりと検討してまいりたいと思います。

 このように、軽減税率を導入する平成二十九年四月までに財源確保に係る法制上の措置等を講ずることとしており、これは全く無責任ではないわけでありますし、私たちは、腹案がある腹案があると言って実はなかったということには絶対なりません。必ず財源の措置をしてまいります。

岡田委員 総理が何を言われたのかよくわかりませんが、いずれにしても、腹案があってもなくてもいいんです、ちゃんと今示さなきゃだめだと言っているわけですよ。国民が判断できないでしょう。

 では、お聞きしますが、私、この消費税担当の大臣をやっていました。そして、五%の引き上げの中で、一%は社会保障の充実に、四%部分は社会保障の安定のために使いますという説明をしてきました。総理は、一%の充実分には手をつけないとおっしゃるから、そうすると、四%の安定部分が一兆円減る、こういうことですね。

安倍内閣総理大臣 軽減税率の一兆円がどこに当たるかということ、これは、どこが減るということではなくて、まさに、社会保障に充てるもの、二・八兆円はしっかりと、これはもう既に、充てていくということは何回も委員会で答弁をさせていただいているとおりであります。

 一兆円のうち、総合合算制度については、これはとらないわけでありますから、その四千億円は浮いておりますから、残りの六千億円についてはしっかりと財源を確保していく、こう申し上げているわけであります。

岡田委員 総理、例えばこれは、二%上げて一兆円ですから、一%で〇・五兆円ですね。そうすると、将来、消費税を、いつのことかわかりませんが、五%上げるとしますね。軽減税率がついていたら、同じ税額を確保しようとしたら六%上げなきゃいけませんね。五%上げるときに軽減税率が全部それについているのなら、それは六%上げなきゃいけない。そういう選択肢だということは認められますね。

安倍内閣総理大臣 いわば、一兆円分をさらなる消費税増税で対応しようという発想と同じなんだろうと思いますが、この一兆円については、正確に言うと六千億円でありますが、これをさらなる消費税の増税で充てるということは考えていないわけでございます。そのことについては、まずはっきりと申し上げておきたいと思います。

岡田委員 総理、お金に色はついていませんから、そして、二〇二〇年に要調整額がまだ六・五兆円ある中で、どこかで増税したとしても、その増税した部分をこの一兆円に使えば、その分一兆円赤字国債の発行額がふえるだけじゃないですか。したがって、結局、ぐるりと回って、何で歳出を抑制するか。社会保障中心だといつもおっしゃっているじゃないですか。

 だから、結局は、社会保障を削減するか消費税をさらに上げていくか、どちらかしかないわけですよ、この軽減税率というのは。そこはお認めになりますね。

安倍内閣総理大臣 今委員がおっしゃっているのは、二〇年のPBの黒字化との関連でおっしゃっているんだろうと思います。

 これは、二〇一八年に中間的な評価をしながら、歳出歳入の両面でどのように見直していくかということについて議論をしていくということになるんだろう、こう思う次第でございます。

 いずれにせよ、この一兆円、正確に言えば六千億円については、しっかりと我々は恒久的な財源を、これは当然、我々は、自民党、公明党の政府・与党は、必ずお約束したことは実行しているわけでございます。選挙において、できないことは約束をしていないというのが私たちの矜持であります。それにかけてしっかりと結果を出していきますから、どうか御安心をいただきたいと思います。

岡田委員 では、総理、もう一つ聞きますね。

 子ども・子育てで、我々、与党時代に、七千億円、消費税を引き上げる見返りに増額することを決めました。これは三党合意で決めたことでもあります。

 しかし、本当は一兆円必要だと。だから、三千億円まだ財源の手当てがついていないんですね。これは、保育の質的充実、ここで三千億円足らないことになっています。

 この三千億円の財源手当てと、一兆円の財源手当てと、どちらを優先されますか。(発言する者あり)

竹下委員長 まず、厚生労働大臣に答弁をしていただきます。(発言する者あり)静かにしてください。

塩崎国務大臣 今の、軽減税率で残った六千億の問題と、もともとの子育て等のあと残りの三千億をどうするかという問題、どちらを優先するのかというお尋ねでございましたが、これは、もともとどちらを優先するという問題ではなくて、どう財源をつくってこれをきちっとお約束どおりやるかということが問題なのであって、それは優先順位をつける問題では私はないと思います。両方とも達成をしなければいけない問題だということであります。

岡田委員 では、厚労大臣にお聞きします。

 三千億円の財源をどうやって手当てするんですか。はっきり言ってください。

塩崎国務大臣 これについては、いつも重点化、効率化も考えながら財源を出していくということをやっているわけでありますし、今後もこれは、三千億について、どこかに今あるというような問題ではなくて、私たちがさまざまな努力の重ね合わせの中で出していかなければならない問題であるということであるわけでありまして、それは一体改革の、あの改革をおやりになった自公民の中で御同意いただいた問題だというふうに理解をしておるところでございます。

岡田委員 結局、この三千億円も、それから軽減税率の財源六千億、まあ一兆円から六千億、これもはっきりしないということですね。そういう状況で、やりますやりますと言って参議院選挙を迎える、私は、これは極めて不誠実だと思いますよ。

 いろいろなことをやるときに負担が伴う、こういう負担があります、ここを削減せざるを得ません、あるいはここを増税します、そういうことをきちんと言われて、そして軽減税率なり子ども・子育ての三千億を手当てするということでなければ、有権者は判断できませんよ。そんないいかげんなやり方で通ると思っておられるんですか、総理。

安倍内閣総理大臣 私たちは、選挙でお約束したことを一つ一つ実行してきております。そして、今言われた一兆円の中の七千億円は我々はしっかりとこの予算で実行したわけでございまして、そして、残りの三千億円についても、七千億円で実行したように、ちゃんと実行してまいります。

 そして、軽減税率のうちの六千億円についても、これはさまざまな議論があるわけでありますが、しっかりと責任政党として結論を出してまいります。

 このことをはっきりと申し上げておきたいと思います。

岡田委員 七千億円は、これは消費税を三ポイント上げたから、もちろんそれで足らない部分はあるものの、そこで賄えるわけですよ。ところが、三千億円は消費税を一〇にしても足らない、だからこれは何とかしなければいけないという宿題として残っているわけですよ。

 それで、三千億があり、また軽減税率として全体として一兆円のお金が要るという中で、その中身が全くわからないで、やることだけやりますといいことだけ言って、その負担がどうかということをきちんと説明しない政治は、私は無責任だと思うんですよ。

 ちゃんと、これからこの国会の中できちんと答えを出すと約束してもらえませんか、総理。

安倍内閣総理大臣 これは、我々、与党としてここで申し上げているんですから、与党としてしっかりと、ちゃんと結論を得て対応していきますよ。そのことをお約束させていただきたいと思います。

岡田委員 財源がなくてこれをやりますというんじゃ、これはマニフェストにも何にもならないですよね。

 では、次に、安全保障法制に関して。

 総理にちょっと思い出していただきたいんですけれども、集団的自衛権の行使、結論は、存立危機事態ということで、ある程度限定した集団的自衛権の行使、これは憲法に反しないというのが政府の御見解ですね。

 二年前の予算委員会で私は総理と何回か議論しましたが、当時は、集団的自衛権の行使を限定して憲法上認めるのか、限定せずに憲法上認めるのか、まだはっきりしていなかったと思うんですね、懇談会で議論している最中は。どこかで、総理は限定して認めようという結論に至られたと思うんです。たしか懇談会の結論も、限定せずに集団的自衛権の行使を現行憲法下で認める、そういう考え方も示されていました。でも、その日のうちに総理は、記者会見されたときには、いや、限定して認めるんだというふうに言われました。

 ここは、政府の中でどういう議論があって総理はそういう結論に至られたんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 安保法制懇の方における議論と最終的な政府の判断というものがございます。

 私の考え方についての一端は、これは私の考え方でありますが、これはおととしですね、岡田委員と予算委員会において、私は、限定的な容認という考え方に近い、この議論を進めていくべきではないかということについて答弁をさせていただいた、こう思います。これは岡田さんに対する答弁でありました。これは、いわば我が国の存立が危うくなるというケースに近い、そのために、日本の防衛のために従事している米艦艇等々という例を挙げつつ、我が国の存立にかかわるときという限定も含めて、そういう議論の方向性についてお話をさせていただいた、こう思っております。

 同時に、安保法制懇において、ここにおいていろいろな議論がございました。いわば、四十七年見解の基本的な論理をそのまま残すという考え方と、また一方、芦田修正に依拠するべきではないかという議論がございました。我々は、そうではなくて、前文とあくまで十三条に依拠するこの四十七年見解の基本的論理の中において当てはめを変えていくという考え方にしたわけでございます。

 これは、法制局もさまざまないわば議論をしていたのではないか、こう思うわけでございますが、それはどういう議論であったかということは私はつまびらかには存じ上げないわけでありますが、官邸においてもさまざまなことを議論していた中において、最終的には、そういう方向でいこうと。いわば、自衛権の行使については十三条とそして前文から引いてくる、そして、それは四十七年見解の基本的論理を受け継いでいくという方針にしたところでございます。

岡田委員 これは政府の中で相当私は激しい議論があっただろうというふうに思うわけですね。

 特に法制局は、従来、集団的自衛権の行使は憲法違反だという考え方に立っていましたから、これを変えて限定的に認めようという結論に至るには、法制局の中でも大きな議論があったはずだし、政府の中でもあったはずだというふうに思うわけですね。

 そこで、私は法制局長官にお聞きしたいんですけれども、この総理の記者会見あるいは安保法制懇の結論が出たのは五月ですが、七月一日に閣議決定があったわけですね。その閣議決定に至るまで、法制局内で当然議論があったということですが、先般、参議院の決算委員会で、一月二十一日ですけれども、法制局長官は、議論はあったけれども、しかし、議事録を残すようなものではないというふうに説明されているわけですね。

 これはどういう意味でしょうか。議事録でなくても、記録は当然残っているはずじゃないですか。いかがですか。

横畠政府特別補佐人 まず、法制局内の議論があったという意味でございますけれども、いわば、この国会における御議論のように、賛成派、反対派に分かれてかんかんがくがく議論、口角泡を飛ばしと、そういう議論という意味ではもちろんございません。あくまでも法制上の頭の整理といたしまして、従前の、御指摘のありました、集団的自衛権の行使は認められないとしてきたこれまでの政府の憲法の解釈、実はそれはどういう根拠、理由によるのか、あるいはその射程距離はどこまでなのかというような議論から当然しているわけでございます。

 そして、まさに、安保法制懇に始まり、その後の与党の協議会において煮詰められていき、その結果を受けた閣議決定ということにつながっていくわけでございますけれども、その過程をフォローしながら、ああ、なるほどこういう議論が行われているのかというような、いわば検討をしていたということでございます。

岡田委員 それはとても信じられないんですね。今までの政府見解、内閣法制局長官も国会で、集団的自衛権の行使は憲法違反であるとはっきり明言してこられたわけですね。それを解釈を変えたわけですから、当然、法制局の中でもさまざまな議論が交わされたはずですよ。なかったらおかしいですよ。

 長官経験者が国会に出てこられて、いまだにこれは違憲であると言っておられる方が何人もいらっしゃいますよね。そのぐらいこれは難しい議論、方向性を変える議論で、何か、今の長官、そういう当てはめの問題みたいなことを言っているのは、全く私、正直じゃないと思いますよ。ちゃんと、法制局の中で議論があったということをまずお認めになるべきだと思いますが、いかがですか。

横畠政府特別補佐人 議論があったということは申し上げているわけでございまして、その議論の中身について先ほどお答えしたとおりでございまして、まさに、これまでも申し上げたとおり、これからもでございますけれども、憲法第九条のもとで、昨年随分申し上げましたけれども、いわゆるフルセットの集団的自衛権、他国防衛のためそれだけの集団的自衛権というものを認めるのは、これは解釈上無理であるということはまさに一貫しているわけでございます。

 その前提に立ちながら昭和四十七年の政府見解というのを子細に検討いたしますと、当時のまさに事実認識といたしましては、我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみが、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるおそれのあるそういう事態であるという事実認識を前提にしているというふうに理解されたわけでございます。

 ところが、その後の安全保障環境の変化、今日の安全保障環境の状況からいたしますと、必ずしもそこに限定されないのではないか、他国に対する武力攻撃が発生した場合であっても、そのまま何もしないでいるならば、我が国の存立が脅かされ、国民が犠牲になるということもあり得るということで、その場合にはやはり武力の行使ということも憲法九条は禁じていないのではないか、まさにそういう議論をさせていただいていたわけでございます。

岡田委員 では、長官、端的に聞きます。

 ペルシャ湾で安全保障環境がどこが変わったか、明確にお答えください。

横畠政府特別補佐人 ペルシャ湾でというお尋ねでございますけれども、国の防衛と申しますのは、まさに、いかなる事態が起こりましてもそれに対処するということが求められている。それをめぐる法整備というのは、何か具体的な、こういうことがあるからというときに対処するのでは間に合わないわけでございます。

 そこで、考えられるあらゆる状況に対処できる、ただし憲法の許す範囲内でというところで、どのような法制が整備されるか、可能であるか、必要であるかということを議論して、その結果、さきの安全法制整備につながったというふうに理解しております。

岡田委員 長官が安全保障環境が根本的に変容したというふうに言われるから、私は聞いたんですね。だから、そのことについてちゃんと答えられないわけでしょう。では、どうしてペルシャ湾に行くところまで認めるような、それが憲法違反じゃないんですか。

 私は、これはまた次回やりたいと思いますが、これは公文書管理法違反ですよ、明らかな。行政機関の経緯も含めた意思決定に至る過程を文書にしなければいけない、これは公文書管理法ですよ。それが全く文書にないなんて、そんなばかなことはありませんよ。これはもう一度、引き続きやっていきたいと思います。

 終わります。

竹下委員長 この際、大西健介君から関連質疑の申し出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。大西健介君。

大西(健)委員 民主党の大西健介でございます。

 先週の二十八日、アベノミクスの司令塔であり、そしてTPP交渉の当事者である甘利大臣が突然の辞任を表明されました。

 早速でありますけれども、最初のパネルをごらんいただきたいというふうに思います。

 これは一月三十日から三十一日に読売新聞が行った世論調査でありますけれども、責任をとって閣僚を辞任したことについて、当然だという方が七〇%に上っています。また、今後も説明責任を果たすべきだが七一%ということになっています。国民の多くの皆さんも、まだ説明は不十分だと感じておられるんだというふうに思います。

 また、公明党の石田政調会長は、NHKの「日曜討論」に出演をされた際に、閣僚をやめて終わりではなく、説明責任を果たすことが第一だとおっしゃっています。これは私たちも全く同感であります。

 そういう意味で、きょうは甘利前大臣の話を聞いていきたいというふうに思っております。

 政治資金の問題で閣僚が辞任をする、国民の皆さんの中には、またかとお思いになっている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、これは、昨年のこの予算委員会で問題になった、例えばうちわの問題とか、補助金を国から受けた企業による寄附だとか、そういう問題とは私は全く異なる問題だというふうに思っております。

 今回、甘利大臣がみずからと秘書の金銭の受領をお認めになったこと、またURが甘利事務所と十二回にわたる接触を持っていたことも認めていることから、これはあっせん利得処罰法に違反するおそれがある事案であります。

 東京地検特捜部は既にURの職員に対して任意の事情聴取を行ったということでありますけれども、総理、総理は大臣の説明がある前から続投の支持を表明されたりしておりましたけれども、既に検察が動いたということをお受けになってどう受けとめておられるか、まず御答弁をお願いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 検察が動いたかどうかということについては、総理大臣としてはコメントを差し控えさせていただきたいと思います。

大西(健)委員 検察が動いたということは、今私が申し上げたように、あっせん利得処罰法に抵触をするおそれがある事案であるということであります。にもかかわらず、総理は、大臣から説明がある前に既に続投支持を表明されていたということであります。

 もう一つ、自民党の高村副総裁は、この問題について、わなを仕掛けられた感があるとして甘利大臣を擁護しましたけれども、総理も甘利氏はわなにはめられたとお思いでしょうか。

安倍内閣総理大臣 個別の問題については、甘利大臣が先般記者会見で述べられたわけでございます。今後もしっかりと調査をし、そして新たな調査結果が出次第しっかりと説明責任を果たしていく、こう言っておられますから、その説明責任を果たしていかれるものと思います。

大西(健)委員 私が聞いているのは、わなにはめられたとお思いになるかどうか。思わないんだったら思わない、思うんだったら思うでお答えいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 総理大臣である私が、こういう案件について、わなにはめられたかどうかということをこの予算委員会の場でお答えするのは極めて不適当だろう、このように思います。

 いずれにせよ、甘利大臣は、先般の記者会見において詳細な説明をされました。さらにしっかりと調査をし、その結果については国民の皆様に説明をする、このようにお約束をしておられますから、しっかりとその責任を果たしていかれるものと思っております。

大西(健)委員 私がこのことを言っているのは、自民党の副総裁がそういうことをおっしゃっているからなんですよ。

 私は、策略論というのは非常にナンセンスだというふうに思います。ここに、その理由をちょっと整理させていただきました。

 第一に、仮に策略であったとしても、それは犯罪の成否には関係ありません。免責されるわけでもない。

 第二に、ただ例えば録音や写真を撮る目的なら、二年半以上にわたって口ききを働きかけたりとか、そのたびに接待や金品の提供のために多大な出費をするというのは、割に合わない、不自然なことだというふうに思います。

 それから、わなにはまったとしたら、URから補償金を引き出すことにわなにはまって加担したということですから、より問題じゃないかというふうに私は思いますし、わなに簡単にはまってしまうような人がTPPの交渉をやっていたんだとしたら、これは大丈夫なのかなというふうに思います。

 そして、最後に、自分をわなにはめたという人に後援会を立ち上げてもらったりとか、あるいは首相主催の桜を見る会に招待している、これはどういうことなのか。

 こういう意味でも、私は、この策略論というのは少しおかしいのではないかというふうに思います。

 それでは、本題に入っていきたいというふうに思うんです。

 甘利氏の会見で、説明の中で、私、幾つも疑問に思うところがあるんですけれども、そのうち二点に絞って、それをちょっと整理させていただきました。

 まず、疑問その一であります。

 これは、先ほども岡田代表の質疑の中でも少し触れておられましたけれども、甘利氏が受け取った現金が本当に適切に処理されたと言えるのか。そう説明をされていたわけですけれども、私はそうではないんじゃないかというふうに思っています。

 先ほどの岡田代表の質問とはちょっと観点を変えて問題を指摘したいというふうに思うんですけれども、まず、記者会見での甘利氏の説明であります。

 平成二十六年二月一日に大和事務所で渡された五十万円は、平成二十五年十一月十四日の大臣室で社長から渡された五十万円と合わせて、平成二十六年二月四日に十三区支部で寄附として入金処理をした。そして、第十三区支部の政治資金収支報告書には、平成二十六年二月四日にS社からの百万円の寄附金の記載があることが確認できました。

 これが二十八日の記者会見での説明です。

 ただ、私は、にわかにこの説明というのは信じがたいというふうに思っています。

 政治資金規正法は、寄附を受けたら明細書を提出するように求めています。二回にわたる五十万円の受け取りについて、明細書というのがあるんでしょうか。もしなければこれは政治資金規正法違反になりますし、それと、この二回の寄附、平成二十五年と二十六年、年がまたがっているんですね。これをまとめて収支報告書に記載するということ、果たしてこれが政治資金規正法上の適正処理と言えるんでしょうか。

 そこで、総務省にお聞きをしたいというふうに思っているんですけれども、一般論でお答えいただきたいと思うんですが、年をまたいだ複数の寄附を一括して政治資金規正法上の報告書に記載するということは許されることなんでしょうか。

    〔委員長退席、平沢委員長代理着席〕

高市国務大臣 あくまでも一般論で申し上げますけれども、政治資金規正法上、政治団体の会計責任者は、毎年十二月三十一日現在で、当該政治団体に係るその年における収入、支出等を記載した収支報告書を都道府県の選挙管理委員会または総務大臣に提出しなければならないとされております。

 政治団体が寄附を受けた場合の収支報告書への記載については、寄附の総額を記載するとともに、同一の者からの寄附で、その金額の合計額が年間五万円を超えるものについては、寄附をした者の氏名、住所、職業、当該寄附の金額及び年月日の明細書を記載することとされています。

 先ほど委員が御指摘のとおりでございます。

大西(健)委員 今、大臣が言われたとおりなんですね。毎年十二月三十一日現在で、その年における収入、支出を報告書に書くということなんです。

 仮にこんなことが許されるんだったら、まさにこの政治資金規正法というのは何のためにあるかというと、政治資金の流れを透明化するためにあるんです。ですから、年が違うものを適当に足し上げて記載することが許されれば、それはまさに流れがわからなくなってしまうので、法の趣旨をなきものにすることだというふうに思います。

 私は、平成二十六年二月四日に記載されているS社からの百万円というのは、五十万円、五十万円の合計ではなくて、全く別の寄附だというふうに疑っています。

 あした発売の週刊誌にもそのようなことがまた今回の証言者の方から証言されているようですので、ここは食い違っておりますので、どちらかがうそを言っているということになりますので、しっかり明らかにしなければいけないというふうに思います。

 疑問点のその二なんですけれども、これは、いわゆる口きき、あっせん行為があったのかどうかということであります。

 この点、記者会見でどういう説明をしているかというと、A秘書やC秘書が金額交渉に介入したことはない、こういうふうにはっきり大臣は説明をされました。これは本当なんでしょうか。

 パネルをごらんいただきたいと思います。

 これは、URが甘利事務所と面談をした記録です。回数が合計で十二回にも上っています。

 まず、URに確認したいと思うんですけれども、同じ案件でこのように何度も同じ議員事務所から呼ばれるということは普通のことなんでしょうか、それとも異例なことなんでしょうか。端的にお答えいただきたいと思います。

上西参考人 当機構は、国の政策の執行機関でございます。国民の代表である国会議員からお問い合わせ等がございましたら、丁重に対応するというのが基本方針でございます。

 以上でございます。(大西(健)委員「多いのか少ないのかというのを。こんなにたくさん呼ばれることはあるんですか」と呼ぶ)

 一概に多いとか少ないとかは言えません。いろいろなケースがあります。

大西(健)委員 我々、URの皆さんからもう何度もお話を聞かせていただいています。その中で、私たちもいろいろな問い合わせをしますよ、URに限らず。ただ、問い合わせをして、その答えをもらって、もう一回ぐらい何かそれに加えて聞きたいことがあれば聞くみたいな、二、三回ですよ。これは十二回。十二回同じ案件について会っているということ自体、これは異例なことだと、我々のヒアリングの場でURの方からはっきりと説明を受けています。

 理事長、これは国会の場ですから、ちゃんとうそをつかないでしっかり答えていただきたいというふうに思います。

 では、甘利事務所での面談でどのようなやりとりが行われたかということなんですけれども、URに提出してもらった面談記録をパネルにいたしました。

 幾つかマーカーを引いておきましたけれども、これは平成二十七年十月九日という日の面談記録であります。マーカーをしたところを中心に見ていただきたいんですが、秘書は、満足いかない額だからほにゃらら費で上乗せと考えているということかとか、もう少し下、少し色をつけてでも地区外に出ていってもらう方がよいのではないかと言っています。

 これは別の日ですね。平成二十七年の十月二十八日ですけれども、一体先方は幾ら欲しいのか、私から聞いてもよいがと秘書は言っています。

 これはまさに金額交渉への介入じゃないですか。そのものだと私は思うんですけれども。安倍総理、今の私の説明をお聞きになって、これは金額交渉そのものじゃないですか。

安倍内閣総理大臣 個々のやりとりについて私がコメントするのは適当ではない、このように思います。

大西(健)委員 では、UR、これは金額交渉そのものじゃないですか。十二回も、こんなにたくさんの回数会って、そして、あたかもS社の代理人、あるいはS社と一体化しているかのような形でずっと交渉に臨んでいるわけです。これは金額交渉に介入しているというふうに言えるんじゃないですか。UR、どうお受けとめになっていますか。

上西参考人 ただいまの御質問にお答えいたします。

 今回の件に関しましては、甘利事務所からは、補償の考え方についての確認、当機構の職員との面会の要請がございました。

 口きき、あっせんの定義が明確でないことから一概にお答えすることはできませんが、補償額の増額を求める御発言、言動はなかったと考えております。

 当機構といたしましては、補償額の算定は基準に基づき適正に行っておりまして、甘利事務所とのやりとりによって影響を受けたとは考えておりません。

 以上でございます。

大西(健)委員 私たちが問題にしているのは、結果として額が変わったか、つり上がったかということじゃなくて、まさに色をつけろということを言っているわけですよ、甘利事務所が。私はこれは秘書が金額交渉に介入していることそのものではないかというふうに思いますので、先ほどの甘利氏の会見の説明というのは私は虚偽だというふうに思います。

 次に、もう一つ加えて、今回URから、大臣はこの話を知っているんですかと甘利事務所に聞いたということを聞いておりますけれども、それは事実ですか。また、何のためにそれを聞いたんですか。

上西参考人 お答えいたします。

 URから、大臣がこの件について御存じですかということはお聞きいたしました。

 以上です。(大西(健)委員「何でですか。答えてください」と呼ぶ)

平沢委員長代理 手を挙げて聞いてください。

大西(健)委員 行ったり来たりするのに時間が無駄じゃないですか。

 ですから、聞いているのは、何のためにそういうことを聞いたんですかと。この案件のことを大臣は知っているんですかと何でお聞きになったんですか。

上西参考人 お答えいたします。

 参考までにお聞きしたということでございます。

大西(健)委員 参考までに聞く話なんですかね。これはやはり、大臣、現役閣僚という有力議員が、与党の有力議員がこのことを知っているかどうかというのが皆さんの判断に影響を与えるからなんですよ。

 URはまた、甘利事務所に対して、これ以上関与しない方がよいとか、深入りしない方がよいという発言を行ったということは間違いありませんか。あわせて、なぜそんなことを言ったのか、お答えいただきたいと思います。

上西参考人 申し上げたことは事実でございます。

 それは、本来、これは当事者同士の話し合いで行うべき話というふうに考えたからでございます。

 以上でございます。(発言する者あり)

大西(健)委員 そうなんですよ。本来、当事者同士で話し合うべきものに十二回も会っているんですよ。だから、これ自体が異常なことなんです。

 つまり、URは、本件が秘書が勝手に動いている話じゃなくて、大臣も承知の上の話なんだということを認識の上で、与党の有力議員がかかわる案件として丁寧な対応をしてきたと思われます。また、これ以上関与しない方がいいですよというのは、逆に言えば、URが口きき、あっせんを認めていることの裏返しだというふうに私は思います。

 面談記録を見ても、URは、例えば、目いっぱいの提示をしておりこれ以上はできないというようなことを繰り返し言われているんです。私は、だから、URの対応というのは正しい対応だと思います。ところが、秘書は、甘利事務所の顔を立ててもらえないかというような発言をしています。甘利事務所の顔を立ててもらえないかと。その後も甘利事務所は、執拗に何度も何度もURに接触しているんです。これをあっせんと言わずして何と言うのか。

 次のパネルをごらんいただきたいと思うんです。

 これはURがS社に行った補償の一覧なんですけれども、URは、まず、平成二十四年五月に、物件移転というので約一千六百万円を補償しています。それから次に、建物の再配置補償というので、平成二十五年の八月、ここで二・二億円の補償をしている。その次、三番目で、もう一個マスキングしてあるのがあるんですけれども、これが大体時期的には平成二十七年の三月から七月の間と我々はヒアリングでUR側から御説明を受けていますけれども、建物の損傷の修復の補償というのを行っている。これは額は未定でありますけれども、五千百万円だという情報もあります。三回こうやって補償を行っているんですね。

 問題は、まだ補償が行われていない四と五なんです。この四と五というのは、私は、全面移転補償と産廃処理費の補償じゃないかというふうに考えています。さっきの十二回の接触のほとんどは、三の補償の後に行われているんです、会っているんです。

 今度は、またさっきの十月九日の面談記録。これをもう一度今のを踏まえて読み直すと、例えば、秘書が当該地から速やかに移転してもらった方がよいのではないかと水を向けたのに対して、次の黒塗りのところ、私はこれは移転補償に関して鋭意協議しているところと読むのが自然だと思います。そしてその次は、隠れていますけれども、産廃処理費用は補償できないがと読むのが自然だと思います。

 少し飛ばして、一番下ですけれども、大きな乖離があるというふうに書いてあります。マーカーをしてありますけれども、大きな乖離があると。そして、次のページの上の秘書の発言、ここは、隠してあるところは私は移転と読むんだと思います。移転補償が満足いかない額だから、次の部分は、産廃処理費で上乗せをと。それで、さらに何行か下にある、先ほどの、少し色をつけてでも地区外に出ていってもらう方がよいのではないかという発言につながっていく。

 つまり、全面移転についてURの提示額とS社の要求額の間に開きがあって、そしてS社側は、道路用地部分で本来は地権者が負担すべき産廃撤去費用三十億円を千葉県の企業庁とURが負担したようなことも引き合いに出しながら、こっちに三十億払っているんだから俺らにももっと払ってくれよというようなことを言いながら、この全面移転の開きの部分に産廃処理費用を上乗せした補償を求めていて、それでこの交渉が難航していたのではないか、それに甘利事務所が加勢をしたというのがこの事案の真相ではないかと私は考えますけれども、今の私の理解は間違っていますでしょうか、どうでしょうか。UR、お答えください。

    〔平沢委員長代理退席、委員長着席〕

上西参考人 本件はまさに今現在交渉中の案件でございますので、これを開示することは交渉に今後大きな影響を与えると思いますので、公表は控えさせていただきたいと思います。

大西(健)委員 否定できないわけですよ。

 でも、この部分というのは、先ほど来私が言っているように、甘利氏の秘書があっせん利得やあっせん収賄になるかどうかにかかわる非常に重要な事実がこの隠してあるところに書いてあるわけです。私の言っていることが違うというんだったら、この黒塗り部分も隠さないで公表していただきたいというふうに思います。

 ちなみに、我々は今までヒアリングの中でいろいろなものを要求しているんですけれども、ここに、我々が要求して出てきた、平成二十七年十月二十七日と平成二十七年十一月十二日の面談の記録というのがあります。

 これなんですけれども、真っ黒ですよ、真っ黒。何ですか、これ。真っ黒、何にも書いていないですよ。全部塗ってあるんですよ。日付まで塗られているので、これが私たちが言っている十月二十七日のものなのか、十一月十二日のものなのか、これが真正なものなのかの判断のしようもないんです。

 石井大臣は、調査中の面談の状況がまとまり次第速やかに公表するようにURに指示をしたというふうに聞いていますけれども、このURの真っ黒けの、これが適切な対応だというふうに大臣は考えられるんでしょうか。これは説明責任を果たしていると言えるんでしょうか。私は、こんなことをしているから何か隠しているんじゃないかと思われるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

石井国務大臣 URにおいては、独立行政法人の情報公開の基準にのっとって、可能な限り公開したというふうに承知をしております。

大西(健)委員 全部公開すると交渉に差しさわりが出るというのは、我々も一定程度理解します。

 でも、てにをはもない、日にちもない。別に、日にちとかが部分的に見えても、それは交渉に差しさわりが出るような話じゃないと思うんですよ。金額とか、そういうところはあるのかもしれません。でも、全く、これが我々が求めている日にちのものかどうかもわからないですよ、これじゃ。こんな出し方をしているから、何か隠しているんじゃないかと思われるんですよ。

 委員長、これは後で理事を通じてお渡しをしますので、ぜひ情報開示してもらえるように。全部とは言いません。でも、あけることができるところがあれば、これが国会に説明責任を果たしていると言えるのか、ぜひ理事会で御協議をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

竹下委員長 後刻、理事会で協議をいたします。

大西(健)委員 現地、現物という言葉があります。私たちも、問題になっている現地に行ってまいりました。千葉県の白井市です。

 本当は航空写真で見ていただくといいんですけれども、ちょっと航空写真をお出しできなかったので、これは千葉ニュータウンのパンフレットからとった地図なんですけれども、千葉ニュータウン北環状道路というのがあります。これは両方から道路が完成してきているんですけれども、この点線部分、ここが未完成の部分です。

 この点線部分のちょうどこの部分ですけれども、清戸と書いてあるところがありますね。ここが問題のところなんですけれども、まさに今回問題になっているS社というのはこの清戸のところにあるんです。これは点線で描いてありますけれども、本当はS社の直前のところまで道路はでき上がっているんです。まさにそれを遮るような形で、ここに問題のところがある。ここで道路工事が中断している状態が長年続いてしまっているんですね。

 私、行ってみて思いましたけれども、見ればわかりますし、地元の議員に聞けば、これがいかに困難案件で、首を突っ込んじゃいけないものなのかというのは私はわかると思いますよ。こんなものに首を突っ込んだということ自体が、果たしていかがなものなんだろうか。わなにはまったとかという話じゃなくて、こんなことは普通は首を突っ込まない話なんです。

 しかも、見ていただいたらわかるように、ここだけがネックになって道路が完成しないんです。

 地元の皆さんが長年待ち望んでいる道路の完成を、与党の有力議員がその政治力を使って、影響力を使ってこれを完成させようとして動いたなら百歩譲ってまだ理解できるんですけれども、邪魔している人、そしてURから補償金を引き出そうとしている方に加担をして、その上、金銭を受け取ったり接待を受けているというのは、これはあっせん利得になるかならないか以前の問題として、私は、政治家としていかがなものなのか、言語道断じゃないかと思うんですが、安倍総理、いかが思われますでしょうか。

安倍内閣総理大臣 この問題については、先ほど申し上げましたように、甘利大臣が詳細について説明をされました。そしてまた、新たな調査を行い、その調査結果が出次第説明をされる、このように思っておりますので、政治家としての説明責任を果たしていかれるものと考えております。

大西(健)委員 私が聞いているのは説明責任の話じゃなくて、今見ていただいたとおりなんです。道路がもう完成していて、そこだけ完成していない。まさにごね得を狙っているようなところに加担をしたんですよ、今回。

 これは、だから、さっきのあっせん利得になるとか政治資金の問題とかという説明の問題じゃなくて、これを見て、これはやはりおかしくないですか。道路を完成させる方に助力をするならわかるけれども、居座って邪魔している人、そこからまた補償金をふんだくってやろうという人に加担をして、そこからまたお礼をもらったり接待を受けたりしている、これはとんでもないと思わないんですか。

安倍内閣総理大臣 中身につきましては、まさに甘利大臣がしっかりと、果たしてどういう出来事であったかということについては説明をされるものと考えております。

大西(健)委員 都合がいいときはどんどんどんどんおしゃべりになるんですけれども、悪くなるとおしゃべりにならないんですね。

 私は、きょうここに、資料を入れるためにこの紙袋を持ってきましたけれども、ようかんの紙袋に現金の入ったのし袋が入っていた、こういう古典的な話を聞いたときに、今どきそんな話があるんだろうかと驚きました。私は、まだまだこういう金権体質というのが変わっていないんじゃないかと。

 また、甘利氏は記者会見のやりとりの中でこう言いました。いい人とだけつき合っているだけでは選挙は落ちてしまうんだと。自民党の議員の皆さんはみんなこういう認識なんでしょうか。総理も甘利さんと同じように、怪しい人ともつき合わないと選挙に勝てないとお考えなんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 甘利さんの発言については、再び新たな事実がわかり次第しっかりと説明をしていかれる、このように言っておられるわけでありますから、説明をしていかれるもの、我々はこのように考えております。

大西(健)委員 いや、そういう話じゃなくて、私も記者会見を聞いていてちょっとびっくりしたんですよ。怪しい人とつき合わないと小選挙区では選挙に受からないんだ、いい人とばかりつき合っていたんじゃ受からないんだという。そうなんですか。もう一回、総理、お願いします。

安倍内閣総理大臣 それは、その人の、それぞれの皆さんの考え方なんだろう、このように思うわけでございますが、私についてはどうかといえば、私は当選八回で、おかげさまで圧倒的な勝利を常に得ているわけでございますが、皆さんいい人ばかりであろう、このように思っております。

大西(健)委員 まさに、怪しい人とつき合わなくてもちゃんと圧倒的に当選できるというなら、そうやってすぐに否定されればいいだけの話だというふうに思います。

 民主党、維新の党は、企業・団体献金を禁止する法案を今国会に提出することを検討しています。公明党は各党で議論したらいいと一定の理解を示されていますけれども、自民党だけが慎重な姿勢を示されています。

 安倍総理、こういうときこそリーダーシップを発揮していただいて、党内に企業・団体献金の禁止の検討を御指示いただけないでしょうか。いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 企業・団体献金のあり方については、さまざまな議論があった後、現在の形になっているわけでございまして、政党支部のみが企業・団体献金を受け入れることができるようになっているのであります。

 問題は、お金によって政策や政治をねじ曲げてはならない、こういうことでありまして、これは企業・団体献金であろうと個人であろうと同じことではないか、このように思うわけであります。

 政治のコストをどのように分かち合っていくかということについては、今後も各政党各会派において真摯な議論が行われていくもの、このように思っております。

大西(健)委員 本当に、こういうことになるといきなり歯切れが悪くなるんですけれども。

 今、私がきょうここで申し上げたことは、お金をもらって影響力を行使して、まさに政治が、行政がゆがんでいるんじゃないかという疑いなんですよ。だから、そういうことが後を絶たないのであれば、この際、企業・団体献金についても我々は厳しく襟を正さなきゃいけないんじゃないかということを申し上げているわけです。

 あわせて、今後、私は、秘書についてはあっせん利得処罰法ないしはあっせん収賄の成立が濃厚な事案ではないかと思いますけれども、ただ、これ一つとってもなかなか難しい。実は、中尾元建設大臣の受託収賄を機に、公明党さんが非常に熱心に取り組まれてこの法律をつくったんです。ところが、残念ながら、今まで国会議員や国会議員の秘書については適用事例がないんですね。

 今回、もしこんな絵に描いたようなあっせん利得で適用されないということになれば、やはり法律そのものがざる法じゃないかということに私はなってくるんだというふうに思いますので、そういう場合は、このあっせん利得処罰法についても見直しというのを検討すべきではないかと思いますが、総理、いかがお考えですか。

安倍内閣総理大臣 政治とお金のあり方については、あっせん利得にかかわる法律も議員立法でなされたものと承知をしているわけでございますが、これはまさに議会において、国会において各政党各会派が議論していくものだ、このように考えております。

大西(健)委員 まだまだこの問題、余り明らかになっていないところがたくさんあるんですね。

 そもそも、実在するかどうかもよくわからない、匿名の元東京地検特捜部の検事である弁護士が行ったという調査結果が真実と言えるのか。この弁護士、堂々と私は名乗っていただきたいというふうに思います。

 一方で、実名で週刊誌に告発を行ったS社の総務担当者の証言との間の食い違いというのも多く見られます。

 そういう意味では、きょう岡田代表も五十万円の受け取りの、受け取ったときポケットに入れたのか、そうじゃなかったのか、この部分も含めて証言が食い違っているわけですから、真相究明のために甘利大臣の参考人招致を求めたいというふうに思いますが、委員長、よろしくお取り計らいをお願いいたしたいと思います。

竹下委員長 後ほど、理事会で協議をいたします。

大西(健)委員 先ほども申し上げましたけれども、このあっせん利得処罰法というのは何のためにつくったかというと、まさに政治の廉潔性を確保して国民の政治への信頼を確保するためにつくったんです。まさに公明党の漆原議員が提出者のお一人として、そのようなことを当時の国会の中でも述べられています、会議録に残っています。そういう精神をぜひしっかりと私は発揮すべきだというふうに思います。

 本件は、先ほども言いましたけれども、秘書についてはあっせん利得、あっせん収賄が成立するような事案じゃないかなというふうに思いますけれども、甘利氏が、もし秘書が逮捕されるようなことがあっても、私じゃない、私以外の秘書がやったことともし言われて秘書に全部責任を押しつけるなら、私はそれこそげすのきわみだと申し上げて、質問を終わりたいと思います。

竹下委員長 この際、玉木雄一郎君から関連質疑の申し出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。玉木雄一郎君。

玉木委員 民主党の玉木雄一郎です。

 今ほどは大西議員から政治の信頼についての話がありましたが、きょうは私、金融政策と財政政策の信頼性に関して質問したいと思います。

 まず、一月二十九日、マイナス金利の導入が日銀の政策決定会合で決まりました。そのことが発表されたのが同日十二時三十八分。しかし、その十五分前の同日十二時二十三分に、某メディアのウエブ版にマイナス金利の導入についての記事が掲載されました。

 情報が漏えいしているのではないかという疑いがあります。株価や為替に対して大きな影響を与える日銀の政策決定会合の内容が正式公表の前に漏れる。黒田総裁、誰が漏らしたんですか。

黒田参考人 御指摘の事案につきましては、臆測に基づく報道である可能性も含め、現在、事実関係を調査しているところであります。

 具体的には、この議論の内容を知り得た日本銀行の役職員及び政府関係者を対象として、決定会合開始から報道がなされた時刻までの間、当該報道機関の記者と接触した事実の有無を調査しております。

玉木委員 総裁、これは重大な問題ですよ。私は、余りこのことが国会等あるいは報道等でも問題にされていないことについては疑問を持っています。

 マーケットの公正性、信頼性、こういったものはまさに先進国の金融市場においては極めて大事なものであります。このことが事前に漏れると、その情報を知り得た者だけが、例えば公に発表される前に株や債券を売買することによって利益を上げることができます。セントラルバンク、我が国の中央銀行からこういう情報が漏れることはゆゆしき問題だと思います。

 加えて、過去四回ほどこういう事案があって、実は最近余りなかったんですね。二〇一〇年八月二十八日に追加の金融緩和を決定する旨が報じられていて、このときも再発防止をきちんとやると言って対応することになっていたのに、また同じようなことが起きています。これは徹底した調査と再発防止策を講じていただきたいと思います。

 麻生大臣、そして石原大臣、これは政府関係者も、今、黒田総裁からいみじくも発言がありましたけれども、必ずしも日銀の職員だけではないと思います、御存じのとおり。ですから、財務省、内閣府、政府の関係者についてもこの事案については徹底調査をして、日銀とあわせて、委員長に報告をお願いしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 金融政策決定会合の結果が公表される数分前だったそうですが、日本経済新聞のウエブサイト版において日銀がマイナス金利導入を議論している旨の報道があったということは承知をしておりますが、今、黒田総裁から話がありましたように、日本銀行は調査を行うということとしておると聞いておりますので、その結果をまず見守ってまいりたいと思います。

玉木委員 財務省もやってください。

 もう一つ提案があります。せっかくですから、金融担当大臣として。私は提案をします。

 実は、今回の重要な情報、マイナス金利を決定する、仮にこのことを事前に知って株の売買をしても、現行の金融商品取引法では打てません。実はインサイダー取引の対象にはなっていません。これだと確実にもうかると思いますけれども、いわゆる法律上の重要事実というのは上場会社の会社の情報に関することだけなので、知ることは非常に道義的にまずいことだし、明らかにだめだと思いますが、現行法はこれを規制の対象にしていません。

 私は、かつて証券取引等監視委員会にいて、インサイダー取引の規制をやった経験があります。あのときからの問題意識でありますけれども、これだけ金融政策が株式市場そして為替市場に影響を与えるようになった今日でありますから、これはしっかりとしたマーケットの公正性を担保する意味でも、新たな規制についてもあわせて、麻生大臣、検討していただきたいと思います。

麻生国務大臣 基本的には、道義的な話が一番です。一番の問題は……(玉木委員「いやいや、道義、そんなことじゃない」と呼ぶ)道義的な話が一番でしょうが。こういうことをやっちゃいかぬことになっておるわけですから、まずは道義的なところが一番です。これをまず認めてください。あなたがやったなんて聞いているんじゃないんだからね、真面目な話。道義的な話が一番です。

 日銀も、金融関係も、日本経済新聞の記者にしても出さないことになっているわけだから、基本的には、知り得たとしても。だから、道義的な責任がまず一番。その上で、法律的にどうすべきかということについては考えます。

玉木委員 ちょっと私残念だったのは、麻生大臣はこの問題について、私は問題意識を共有してもらえると思ったんですね。

 今、道義的責任が一番とおっしゃられましたけれども、麻生大臣、インテグリティーという英語、御存じですか。麻生大臣は英語が達者でありますからわかると思いますが、いわゆるマーケットの完全性、公正性です。

 マーケットというのはある種情報が集まる市場であって、その情報が特定の人に特定の形で漏れたり、あるいはそれを特定の人が利用するようなことがあっては我が国全体の金融市場の信頼にかかわるんです。誰がもうけるとかもうけないとか、先に情報をもらったとか、道義的な話ではなくて、これは、マーケットをどうきちんと管理していくのか、こういう観点でありますから、ぜひ前向きに検討していただきたいと思います。

 次に、黒田総裁は、マイナス金利、一月二十九日に導入を発表いたしましたけれども、一月十八日の参議院予算委員会で、国会で聞かれた際に、マイナス金利は検討しないと明確に答弁しています。その後に、ダボス会議に行く際に事務方に検討させて、その結果こういうのが出てきたと言っているんです。

 私、安倍総理が解散についてうそをつくのは、解散についてはうそをついていいということになっているらしいですけれども、日銀の総裁が金融緩和について、あるいはこのマイナス金利についてうそをつくのは問題だと思うんですね。もしさまざまなオプションを検討しているのであれば、国会で聞かれたときには、さまざまな選択肢を検討している、あるいは何も語らない、これがセントラルバンカーとしての振る舞いだと私は思うんです。明確に検討しないと言っておいて、十日過ぎてまさにマイナス金利を導入するというのは私は問題だと思うんです。

 こういうことをやっていると黒田総裁の言葉を信頼しなくなるんじゃないのかということと、マーケットとの丁寧なコミュニケーションという意味では、サプライズを演出する意味ではいいかもしれませんよ、ただ、マーケットとの丁寧なコミュニケーションというのは中央銀行の大事な役割ですね。

 お聞きします。日本銀行総裁はうそをついてもいいんですか。

黒田参考人 マイナス金利の導入に関しましては、プラスとマイナスとあるということは従来から申し上げておりました。

 その上で、委員御指摘のとおり、私、ダボス会議に出席するために出張いたしましたが、その前に、仮に追加緩和を行うとした場合のオプションを具体的に検討するよう事務方に指示したわけでございます。事務方はもちろん、欧州の四つの中央銀行で既に実施されているマイナス金利政策について、当然のことながら、事務レベルで詳細な調査分析は行ってきておりまして、知見は十分に蓄積されていたと思います。それを踏まえて取りまとめた具体案をもとに、金融政策決定会合において情勢判断と政策についての討議を行って決定したものであります。

 私自身のさまざまな意見を申し上げることは、金融政策決定会合において九人の委員が独立の立場でさまざまな議論をして、多数決で金融政策について決定するという仕組みをとっておりますので、あくまでも、金融政策決定会合において示された公表文あるいは金融政策の方向というものを踏まえまして答弁を申し上げているということでございます。

玉木委員 全く答えていません。

 テレビをごらんの皆さんも、金融の話というのは難しいんですけれども、量的緩和をするとか、日銀がどんどんどんどん国債を買っていってマネタリーベースをふやす、これは比較的わかりやすかったと思います。追加緩和とかいろいろなことをやるようになって、だんだんだんだんわけがわからなくなっていますよ。

 今回も、ある意味このマイナス金利を導入してサプライズを狙ったんでしょう。でも、結果として、このマイナス金利、三日天下ですよ。初日こそ乱高下しながら上がりましたけれども、二日で、きょうは六百円以上下げるということで、もうその効果が早くも剥落しているじゃないですか。

 私は、一方で、物すごくマイナスがこれから出てくるんじゃないかと心配しているんです。銀行の株が下がっていますね。特に地銀、地方銀行さん、利ざやがこれで縮小して。地方銀行だけではありません、そのことによって預金金利を下げたり。つまり、お金を銀行に預けて、今は低いですけれども金利がつく、それがさらに縮小していくというのは預金者のある種お金を奪っているんですよ。かつ、地方銀行が厳しくなっていくと融資にも影響が出ていくし、場合によっては貸し渋り等々が出てくると、これは結局、地方の経済にも大きな悪影響を及ぼすリスクについてはよく考える必要があるんです。

 なぜうそをついていいのかと聞いたのは、全く反対のことを十日前に言っていたんです。でも、今回の決定は五対四の薄氷の決定なんです。つまり、黒田総裁がどっちにつくかで今回はこのマイナス金利を導入するのかしないのかが変わったんですよ。十日前にやりませんと言っておいて、実際にはやりますと。もちろんいろいろな審議委員の声も聞いたけれども、五対四ですから、黒田さんがどうするのかが最大の判断材料だったんです。

 私は、日本銀行、中央銀行、そしてそのガバナーたる総裁、そこが打ち出す政策というのは信頼性が最も大事だと思います。通貨を預かり本当に我々の国民生活に大きな影響を与える金融政策を担っている人は、その人も政策も信頼がなければできないと思っています。

 そこで、質問です。これは後に石原大臣にも総理にもお伺いしたいと思いますが。

 六百兆円の名目GDPを目指しているということを、この前の石原大臣の中にも明確に、二〇二〇年ごろという年限も入れて言われました。私はこれはぜひ、GDP、しっかりと成長してもらいたい。それは我々も同じ思いです。財政の中長期試算を見ると、政府が一月に発表した数字だと、二〇二一年に六百十四兆円になるとなっています。そのときの、内閣府が出した想定金利は長期金利四・二%です。

 黒田総裁にお伺いします。二つ質問があります。日銀としても、二〇二〇年に六百兆円の名目GDPが達成できると考えているのか。そして、その際の長期金利の見通しは政府と同じなのか。お答えください。

黒田参考人 御案内のとおり、日本銀行は、二%の物価安定目標をできるだけ早期に実現すべく量的・質的金融緩和を推進し、今回のマイナス金利つき量的・質的金融緩和というものを導入いたしました。

 物価の基調は改善してきておりまして、原油価格の下落によって確かに生鮮食品を除く物価の上昇率というのはゼロ%近傍で推移しておりますけれども、エネルギー品目を除きますと、既にプラス一・三%というところまで来ております。

 いずれにいたしましても、日本銀行としては、二%の物価安定目標をできるだけ早期に実現すべく全力を挙げてまいります。

 一方、六百兆円の名目GDP、これは実質GDPの伸び率とGDPデフレーターの動きによって決まってくるわけでありまして、政府は実質二%の成長率を実現すべく成長戦略等を実施しておられます。

 私どもとしては、先ほど申し上げたように、二%の物価安定目標というものが実現されれば当然GDPデフレーターもそれなりに上昇しますので、実質二%の成長率が実現されれば六百兆円ということになると思います。ただ、実質成長率が二%になるかどうかというのは、これは日本銀行のテリトリーというか権限、義務の範囲ではございませんので、そこの点は政府にお聞きいただきたいと思います。(玉木委員「金利は」と呼ぶ)

 金利については、当然のことながら、二%の物価安定目標が実現されれば現在のような非常に低い長期金利というのは共存し得ないわけですので、物価安定目標が実現されていくとともに当然長期金利も上昇していく。たしか内閣府の計算でも、六百兆円というときの計算でも、長期金利が上昇していくという構図を描いておられたと思います。

玉木委員 今、大事な答弁をいただいたと思いますね。物価の上昇に伴って金利の上昇もあり得ると。政府とその整合性がどれだけあるのかは明確にお答えをいただけませんでしたけれども、これは大事な話ですよ。

 今こういう状態で、例えばオーバーパーで、高づかみとは言いませんけれども、これだけ国債のバブルが起こっている中でいっぱい仕込んで、二〇二〇年、比較的短期の間に金利が上がる。これだと、特に先ほども言ったような地方金融機関は大変ですよ。日銀のバランスシートの問題でも大変。

 こういったことについて政府ともっとすり合わせをして、明確な金利についてのことをそろそろ語り始めないと、これは無責任にばくちのような金融政策に国民を巻き込んでいってしまうということになるので、そろそろ、二年ちょっとたちましたけれども、この間行ってきた大規模な金融緩和のリスクとデメリットに正面から向き合って、さまざまな対応を打つべきだということを提案したいと思います。総裁はこれで結構です。

 次に、財政政策について、先ほど岡田代表からもありましたけれども、軽減税率の話、その財源の話を少しお聞きしたいと思います。

 これは以前、私が補正予算の審議の際にも出しましたけれども、軽減税率、一兆円の財源を使ってやろうとしています。低所得者対策といいながら、使う財源のわずか一一%が三百万未満の、簡素な給付措置として五パーから八パーに上げたときに低所得者対策として、その対策を受けている方は年収二百五十五万以下とか三百万以下の方ですけれども、現在低所得者対策を受けられている方に行くお金、財源は全体の一一%、一千億ぐらいですね。残りの、一兆円も財源がどうなるんだかわからなくてやるものの、九割ぐらいの財源が中高所得者に行くわけですよ。一千万以上の方、一億以上の方、そういった方もこの政策のメリットを受けるし、絶対額でいうとそういった方の方がメリットを受けるんですよ。

 私は、低所得者に対して軽減効果があることは総理もおっしゃったように否定しません。ただ、一兆円あるんだったら、一千万とかの人に行くような制度ではなくて、このお金を使ってもっと三百万未満の人に何か手当てをすれば、彼らはもっと所得に占める軽減の割合が高まるはずであります。ですから、こういったことについては、我々は給付型の、給付つき税額控除の方が制度としてすぐれているし効率的だということを何度も申し上げているんですが、きょうはこの財源について改めて聞きます。

 財源についてはここでも議論がありました。私も総理に質問しましたし、あの日、私の後で質問した西村智奈美さんが麻生大臣にも質問して、総理がおっしゃる、四千億は総合合算制度を財源にするので何とか確保できる、残りの六千億について歳出歳入両面から何とか見つけてこなきゃいけないというときに税収の上振れが使えるんですかということを言って総理に聞いたら、期待しているようなことを、麻生大臣に聞いたら、いや、そんなのは恒久財源になり得ないと言って、統一見解を出してくださいと言って出てきました。

 きょうは石原大臣に質問したいと思います。

 これは諮問会議で議論するということになっているので、まず石原大臣の御認識をお伺いしたいんですけれども、麻生大臣から就任時にいろいろなことを言われたそうですけれども、私は石原大臣に期待していますのでぜひ頑張っていただきたいと思うし、ある意味非常に規律を大切にされる大臣だと思っているので御期待申し上げておるんですが、いわゆる税収の上振れは石原大臣は恒久財源になると思いますか。

石原国務大臣 これについてはもう、この問題をめぐって予算委員会で議論があって、政府統一見解が出されております。私も政府統一見解のとおりであると思っております。

 軽減税率制度の財源の確保に関して、いわゆる今委員御指摘の税収の上振れについては、経済状況によって景気が悪くなったら下振れするわけですから、基本的には安定財源ではないと政府統一見解でしっかりと示させていただいているんだと思っております。

玉木委員 麻生大臣が、石原大臣はこの分野は余り経験がないとか、そういうことをおっしゃっていましたけれども、私、この意味では麻生さんと非常に一致していると思いますね。

 そこで、統一見解についてもう一回聞きます。

 確かに、上振れについては恒久財源とは言えないというふうに書いているんですが、その下に、アベノミクスによる経済の底上げによる税収増をどう考えていくかについては経済財政諮問会議において議論していくとなっています。

 そこで、お伺いします。

 上振れについては恒久財源とは言えないんですが、底上げについては恒久財源となり得るんですか。これは石原大臣。

石原国務大臣 玉木委員はちょっと言葉のことでこだわりがおありになると思うんですけれども、その部分も、私は、総理の御答弁をしっかりと政府統一見解の中で示していると。今回、ここのところが非常に関心がありましたので十分話を聞いたんですけれども。

 今委員が御指摘の軽減税率の財源については、財政健全化目標を堅持する。きょうも朝の討論の中で、稲田政調会長はかなりはっきりとそういう御持論を話されておりました。また、社会保障と税の一体改革の原点に立って安定的な恒久財源を確保する観点から、歳入及び歳出における法制上の措置を講ずると、我々の中で明記させていただいております。

 そんな中で、今後、ここはもう議論があったところですけれども、申しわけないんですけれども、今はまだ財源を何にするかということは決めていないわけです。政府・与党で責任を持って検討していくというふうに総理からも答弁させていただいておりますように、そこの部分について政府で責任を持って、与党と相談しながら検討させていただきます。

玉木委員 済みません。私の質問が悪かったかもしれませんので、もう一回丁寧に質問させてもらいます。

 アベノミクスによる経済の底上げによる税収増をどう考えていくかについては経済財政諮問会議において議論していくということになっております。これは統一見解です。

 上振れと底上げというのはどう違うんでしょうか。

石原国務大臣 税収がふえるということが上振れでございますよね。税収がふえる、上振れ。上振れによって底上げができるんじゃないでしょうか。

玉木委員 甘利前大臣は、これは個人的な意見と断りながらも、上振れと底上げ、それぞれ定義をされております。上振れというのは、当初予算の税収見積もりから決算ベースで上がるので、それをただ補正予算の財源に使うという、あれは単年度の概念。底上げというのは、毎年だんだん税収が上がっていって、当初予算の税収見積もりの変化だというふうに個人的な見解としておっしゃっているんですけれども、それは同じような認識でよろしいんでしょうか。

石原国務大臣 政府統一見解が出る前に甘利大臣が、今玉木委員が御指摘されたように、単年度で見るのかトレンドで見るのかという話をされたという事実は承知しておりますけれども、政府統一見解が出た以上は政府見解が全てであって、責任を持って来年度中に財源を確保させていただきます。

玉木委員 お答えになっていないので、これはもう一度。

 つまり、経済財政諮問会議で議論をしていただくことになっているんですが、何を議論するかという議論の対象を明確にしなければなりません。

 その意味では、では具体的に言いますけれども、安倍総理がよく言及される、二十四年度から二十八年度で、二十・七ですか、八でしたっけ、アベノミクスの成果による経済の底上げによる税収増ということで、よく二十一兆円余のお金を出されます。調べたら、そういう数字もとれるということがわかりました。これは国、地方を合わせた数字なので、あえてちょっと国の数字だけ税収を挙げましたけれども、国でいうとその二十兆幾ばくかというのは十五兆ぐらいなんですね。

 確かにふえているんですけれども、そのうち、諮問会議で議論していただくアベノミクスの経済の底上げによる税収増というのはどの部分を指すんですか。

安倍内閣総理大臣 上振れについては、先ほど玉木委員が、甘利大臣が個人的な考え方として述べたんですけれども、基本的にはそういう考えであろうと。いわば当初予算よりもその後ふえたものを上振れと通常言っているわけでございます。これが、安倍政権においては四兆円近く上振れが出ている、当初の見込みよりも大きく出て……(玉木委員「それは補正、単年度」と呼ぶ)補正分で。いわば……(玉木委員「四兆円は出ていないですよ」と呼ぶ)四兆円近くは出ているんですよ。当初の見込みよりこれは大きくなっているわけでございます。額については後ほど正確に申し上げますけれども、大きな額が出ているのは事実であろう、こう思うわけであります。(発言する者あり)上に間違える場合もあれば、下に間違える場合もあると思いますが。

 つまり、当初予算よりも、当初の見込みよりもふえた分をいわば上振れと称しているわけでございますが、これを我々は補正予算の財源にしている。つまり、今回もいわば成長の果実を生かして補正予算を組んでいると言ってもいいんだろうと思います。

 そこで、底上げは何かということでございますが、そもそも、上振れれば当初の予測よりも多くなっているということは、簡単に下振れしてしまう場合もあるだろう、こういうことなんだろうと思います。上振れは下振れするだろう、こういうことなんだろう、理屈としてはですね。

 しかし同時に、景気回復局面によっては、今まで法人税を払っていなかった企業が法人税を払い始めますから、法人税を払い始めていく。そこで、弾性値が当初の予測よりも高くなっていくわけでありまして、法人税にしろ、あるいは所得税にしろ、ふえていくことになったという実績があるわけであります。

 そこで……(発言する者あり)ちょっと静かにしてくださいよ。

 そこで、大切なことは、では、その当初の予測よりも法人税を払うことになった企業は簡単にまたもとに戻ってしまうのかどうかということもあります。国内に回帰が進んでくる中において製造拠点が日本に移ってきているとなれば、また製造拠点が日本に移っていく中において、そこで働く人の雇用もふえ、所得税もふえ、もろもろの税収もふえていくということになっていけば景気が回復していく。あるいは、六重苦と言われているものが解消していく中において実力を備えていく。この実力を今まで読んでいなかったのであれば、これは身についた実力として評価もできるわけでありますから、そこはしっかりと検討していく必要があるんだろう、このように思うわけでございます。

玉木委員 総理、済みません。全くわかりません。

 ちょっともう一回資料を見ていただきたいんですが、これはテレビでごらんの皆さんも見てください。

 今、総理がおっしゃったのは、この辺が上がっているという話なんですけれども、これはちょっと長い目で見たらわかるんですが、ちょうど第一次安倍政権になって、平成十九年、五十一兆円で、確かに近年一番税収が多かったときですね。総理はよく覚えていらっしゃると思いますけれども。これは上振れと言いますけれども、リーマン・ショックがあって下振れしたものがもとに戻っただけなんじゃないですか。(発言する者あり)いや、そこは違うなら、なぜ違うか教えてほしい。

 では、一つ言います。総理、ちょっと待って。

 では、聞きます。

 今、総理は法人税を今まで払っていない人が払うようになったと言いますけれども、この間、平成十九年と二十八年。消費税アップの部分は、五から八については制度的な変更ですから除きましょう。それを除けば、二十八年度当初予算の税収と総理が以前担当されていたころと、大体同じぐらいの税収になっているんですね。

 この間、ずっと法人税がふえているのかというと、この間の法人税収、総理、どれぐらいふえていると思いますか、総理が最初に担当されたときと今と。今、法人税がどんどんふえていくという話をしましたけれども。

安倍内閣総理大臣 先ほど私は上振れ分が四兆円と言ったんですが、二十六年は四兆円でございますから、実際四兆円ふえた実績があるということを改めて申し上げておきたい。私が言ったことが正しかったということは申し上げておきたいと思います。今法人税が幾らかということであれば、あらかじめ御下問があればしっかりと調べておきますが。

 そこで、第一次安倍政権のときと実質同じに、消費税アップ分を除けば一緒になったんじゃないかということでございますが、その認識自体が私は間違いだと思います。

 なぜ間違いかということを御説明させていただきますと、いわば税率を上げれば家で寝ていても税収が上がっていくというものではないんですよ。これが大切なところであって、しっかりと経済を成長させていかなければ税収は上がっていかないわけでありまして、消費税を上げれば消費が冷え込む、そして消費が冷え込めば企業の収益も打撃を受けていくわけであります。

 しかし、そういう中にあっても、それを耐えてしっかりと我々は税収を上げることができた、こう申し上げておいた方がいいんだろう、こう思うわけでありまして、それは、適切な時期にそういう環境をつくって消費税を上げて、かつビジネスの条件をちゃんと整えていたがためにこのように順調に税収がふえた、こう言えるのではないか、こう思う次第でございます。

玉木委員 改めて、この底上げというのがいいかげんなものだとわかりましたよ。

 総理はいろいろおっしゃったんですけれども、私は非常に財政について心配している一人です。消費税アップ分を除いて、これは六兆円ぐらいですよね。

 では、総理、お伺いしますけれども、法人税、いろいろな改革もしてきたと言うんですが、総理が第一次安倍政権で担当したころの社会保障関係費の額と、この二十八年、ちょうど税収が同じですけれども、社会保障関係費の額というのはどれぐらい変わっていますか。(発言する者あり)社会保障は制度変更でしょうが。

竹下委員長 誰かわかりますか。

玉木委員 では、いいです。

 すぐ、これぐらい、一般歳出の中で最も大きなあれを占める、しかも御自身が担当したときの社会保障関係費の額を聞いたのに、答えられないというのは、私は、まさにこういう議論が平気で行われる背景にあると思いますよ。

 お答えします。

 平成十九年の社会保障関係費は二十一兆円、そしてことしの当初予算は三十二兆円です。十一兆ふえています。そのうち、消費税できちんとカバーされますけれども、それでも六兆円ですよね。

 そうすると、税収がやっとリーマン・ショック前に戻ったとしても、義務的な経費、特に社会保障関係費が十兆円以上ふえている、国債費も三兆円以上ふえている。そして、さっきあったように、子ども・子育てのお金をさらに〇・三兆円見つけてこなきゃいけない。TPPになって関税収入が飛んでしまったら、さらに今の制度を維持するためにも〇・二兆円必要だ。

 そういう中で、ちょっと下振れしたのが戻ったからといって、それを他の新しい歳出に使っていたら、財政再建なんかできないじゃないですか。

 私は、総理が今のような答弁をしたことで、余りにも財政状況に対する無知であることがよくわかりましたよ。

 きょう……(発言する者あり)いや、あえて失礼なことを言わせてもらいます、総理。(発言する者あり)いや、まだ質問していますから。

 では、総理、最後に質問したいと思いますが、総理は施政方針演説の中で小栗上野介の言葉を出して、どうかなろう、この一言で国家は滅びると言いましたね。安定的な財源のめども立てずにとにかく歳出だけ先に約束するようなことをやめないと、日本の財政はよくならない、このことを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

竹下委員長 総理、手短にお願いします。

安倍内閣総理大臣 ああいう話をしているから、民主党政権は一銭も財政再建できなかったんですよ、皆さん。我々は、十兆円、国債の新規発行額を減額したのであって、それはしっかりと言わせていただきたいと思います。(発言する者あり)

竹下委員長 この際、福島伸享君から関連質疑の申し出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。福島伸享君。

福島委員 民主・維新・無所属クラブの福島伸享でございます。

 委員長、私、本当に僣越なんですけれども、ちゃんと仕切っていただきたいと思うんですよ。野党の時間ですから。

 総理、異様だと思いますよ。聞かれてもいないことをべらべらべらべら、時間を使って、表情を荒げてしゃべる姿というのは、私は異常だと思いますので、冷静に私は議論を進めさせていただきたいと思っております。

 一月十二日の質疑に続きまして、あす署名が行われるであろうTPPについて質問をさせていただきます。

 この間、甘利大臣とさまざまな議論を行ってまいりましたけれども、その甘利大臣がこのようなことになって非常に残念でありますけれども、きのうの本会議で安倍総理は、石原大臣の任命に関して、幹事長、政調会長などの要職を歴任、中小・小規模事業政策や農業政策の責任ある立場にあった、閣僚経験も豊富といった任命理由をおっしゃられました。一方、今国会において、総理は、TPPの批准に向けた審議に意欲を燃やされております。

 ただ、これまで総理の周りには、例えば林前農林水産大臣とか西村内閣府副大臣などの、TPP交渉と強いかかわりを持った方が多くいらっしゃると思うんですね。その中で、なぜ、このTPPの審議をされる国会で石原大臣を任命されたのか、その理由についてお聞かせください。

安倍内閣総理大臣 先ほど質問の中でばり雑言を浴びせられたので、私は、委員長から短く答弁というお話をいただいたので、答弁をさせていただいた次第であります。(発言する者あり)

 それでは、石原大臣は、多士済々の自由民主党の中にあって、幹事長、政調会長などの要職を歴任して、中小・小規模事業政策や農業政策の責任ある立場にありました。TPPを契機とした新輸出大国や農政新時代に向けた提言の取りまとめに携わっていたわけであります。そしてまた、中小・小規模事業者そして農業者の方々の声に、その役職にあり、真摯に耳を傾けてきたのも事実でございます。そして、閣僚経験も豊富であり、小泉政権時代には、行政改革や規制改革の担当大臣として強い突破力を示してきたのも事実であります。経済再生担当大臣としては、そうした力も必要としているのは当然のことであろうと思います。

 適材適所の人事を行うことができたと考えておりまして、経済の再生は安倍内閣の最重要課題であり、一刻たりとも停滞は許されないわけであります。正念場にあるアベノミクスを前進させ、デフレ脱却を確かなものとしていくために、石原大臣にはしっかりとその能力を生かしていっていただきたい、こう期待をしているところでございます。

福島委員 冒頭、子供じゃないんだから、くだらない言い合いはやめた方がいいと思うんですよ。冷静に議論していきたいと思っております。

 これまで交渉の経緯とか内容というのは一切明らかにされてこなかったんです。国会で今一番行うべきことは、きちんとテキストを読み込んだ上で影響や対策を議論を行い、どういう交渉が行われてきたかという情報を政府から説明いただくのが一番国会で大事だと思うんですよ。それに対して、石原大臣を任命されたということは、実際に交渉には政府の中で携わってはいないけれども、全て石原大臣に答えていただければよいということでよろしいですね。

安倍内閣総理大臣 もちろん、交渉には携わっていないわけでございます。実際に交渉そのものをやっていたのはほとんど甘利大臣でありまして、ほかの大臣等については、交渉を行う上において、いろいろな議論を重ねる中においてはさまざまな大臣はかかわりを持っていたわけでありますが、交渉そのものは甘利大臣が行ってきたわけでございます。しかし、事実上、交渉は大筋合意を迎え、今後はまさにこれから対策を行っていくということにフェーズは移ってきたんだろう、こう思います。

 そこで、交渉についての質問があるとすれば、それは当然、担当大臣でありますから石原大臣が答弁をいたしますが、またさらには、例えば農業分野においては農林大臣の方が詳しいこともございますし、あるいは自動車等の分野、工業製品等の分野においては経済産業大臣が詳しい場合もありますし、大きな決断は私がしておりますから私自身が答弁することもある、このように思います。

福島委員 ありがとうございます。

 では、思う存分、石原大臣に質問させていただきたいと思いますし、場合によっては、総理みずからお出ましいただいてきちんと御説明をいただければと思っております。

 きのうの議論でもございましたけれども、二〇一二年の衆議院選挙時のアンケートにおいて、石原大臣は、輸出入関税を原則ゼロにするTPPへの参加に賛成ですか、反対ですかという問いに対して、反対と明言されました。きのうの参議院の本会議の御答弁では、輸出入関税を原則ゼロにするという条件を付した上での賛否を問う質問であったため、反対と回答したと。うなずいていらっしゃるので、そのとおりでよろしいかと思っております。

 問題は、それでは結果がそうなっているかということなんです。

 TPPに関する国会決議はもう石原大臣も御存じだと思いますけれども、「農林水産物の重要品目について、引き続き再生産可能となるよう除外又は再協議の対象とすること。十年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も含め認めないこと。」という国会決議ですけれども、よろしいですね、この点。

 しかし、交渉結果を見ると、例えば、乳製品のホエーとか一部のチーズは十年以上の期間をかけて関税撤廃です。これは当然農林水産物の重要品目です。米も、日豪EPAのような除外にはなっておりません。

 こうした観点から見て、石原大臣は直接交渉に携わっていないわけでありますから、真っ白な目で見て、交渉結果が国会決議を満たしていると大臣はお考えですか。改めて御答弁をお願いします。

石原国務大臣 福島委員が当予算委員会あるいは外務委員会でこの問題について御議論をされているのは私も……(福島委員「内閣」と呼ぶ)内閣ですか、聞かせていただいております。そして、この問題意識を強く持たれていることも承知しておりますが、私どもが申していたのは、すぐに、頭から、聖域なき関税を全て撤廃してしまう、これには反対だと。それは多くの方々が、皆さんそうだと思いますね。反対ですよ、反対です。断固反対です。

 そんな中で、TPPにおいて、決議があったからこれを後ろ盾に交渉して、農水産分野では、九九・五%他の国が関税撤廃に追い込まれた中を八一%で持ちこたえた。重要五品目にしたって、どうですか。多くのことができているのは日本ですよ。この努力はやはり多として、そして、それがどうかというのはこれからまた、きょう初めてでございますが、福島委員の方が詳しいかもしれませんけれども、細かいことを聞いていただいて、それを判断の基本にして、国会決議に合っているのか合っていないのかということを、議論を深めた中でぜひ御議論いただきたいと思います。

福島委員 いや、「十年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も含め認めない」と書いてあって、乳製品なんかは十年以上の期間をかけて関税撤廃ですし、豚肉も一部については関税撤廃など、私は明確に国会決議に違反していると思いますよ。ただ、国会決議に違反したものをどう取り扱うかはこの国会で議論すればいいと思います。聖域なき関税撤廃云々というのは自民党の公約の話でありまして、私はきょう聞いておりませんので、国会決議の整合性をきちんとおっしゃっていただければと思っております。

 それで、なぜか、私も昨年末から、早く日本語の仮訳を出せ出せと言って、一月十二日の予算委員会の直前になって、本文については和訳が出てきました。きのうになって、附属文書についても日本語の仮訳を出していただいて、この厚さのが四冊ぐらいある膨大な訳を出していただきまして、それを大急ぎできのう読ませていただきました。そこにはこういうことが書いてあります。

 お手持ちの、テレビで見ている方はちょっとないんですけれども、資料の環太平洋パートナーシップ協定(抄)というものがあります。そこの附属書二のDという、まさに昨日公開された日本語訳です。

 そこに、オーストラリア、カナダ、チリ、ニュージーランドまたはアメリカ合衆国の要請に基づき、日本国及び当該要請を行った締約国は、市場アクセスを増大させる観点から、日本国が当該要請を行った締約国に対して行った原産品の待遇についての約束、関税とか関税割り当て及びセーフガードについて検討するため、この協定が日本国及び当該要請を行った締約国について効力を生ずる日の後七年を経過する日以降に協議すると。

 つまり、これは完成じゃないんですよ。仮のものであって、暫定的なものであって、オーストラリア、カナダ、チリ、ニュージーランド、アメリカ、これはみんな農産物の輸出国ですが、七年後には協議を求めてくるという規定があります。

 これはきのう日本語訳になって、英文は公開されていましたけれども、わかったことであります。

 そして、本文の第二・四条関税の撤廃では、各締約国は、この協定に別段の定めがある場合を除くほか、原産品について、附属書二のDの自国の表に従って、漸進的に関税を撤廃する。

 これは、これまでのEPA、FTAでは余り見られないんですけれども、表に書いてあるもの以外は撤廃なんですよ、このTPPというのは。表に書いてあるものは、附属書に従って、オーストラリア、カナダ、チリ、ニュージーランド、アメリカ合衆国から、この撤廃の部分に該当するような交渉に乗らなきゃならないんですよ。私は、これは今回交渉の結果、何も除外、再協議とされていないということの証拠じゃないかと思うんです。

 例えば日豪EPAでも同じような国会決議があって、重要五品目は除外または再協議といたしました。例えば米については、そもそも除外とするという表の中に入っていて、除外になっているんですよ。再協議するものについては、一部の乳製品なんかについては、これは今回結論を出さないで三年以内に議論しましょうという枠の中に入っていて、この交渉ではさわらないことになっているんですね。あるいは、お隣の韓国がアメリカと結んだFTAを見ても、米については関税にかかわる義務を適用してはならないと書いてあるんですよ。

 これが関税撤廃の例外にするということですよ。聖域とするということですよ。

 この協定を見る限りは、何一つ農産物は、将来に向けて関税撤廃の例外となったり除外になるという保証は何もないんじゃないですか。どうですか。

石原国務大臣 これも委員はおわかりの上での御質問だと思いますけれども、TPP以外の通商協定で見直し、再協議項目があるというのは委員の御指摘のとおりであります。

 それで、何が今回違うのかというのは、マルチの会議ですよね。マルチの会議で、除外するといって、それが本当に通るのかという問題が多分あったんだと思います。多分、今回の交渉ではあったと思うんです。そして、そんな中で、先ほど八一%とお話をさせていただきました。こういう例外、セーフガードを新たにつくったり、国家貿易も守ったわけですよ。これは交渉事ですから、一〇〇%自国の利益を優先すると言ったら交渉は成り立ちません。

 そんな中で、委員の御指摘は二つあったと思うんですね。七年目の再協議条項があるじゃないか、再協議を求められるんじゃないか。それはそのとおりだと思いますよ、本当に。七年目に言ってきたら再協議ですよ。

 でも、このTPPは、これまで議論を私は聞かせていただいて、まさに各国のガラス細工じゃないですか。このガラス細工の中で一つどこかの国が日本の米を、七年たって、翌年から前倒しして全面開放しろということを言ったら、この細工は壊れちゃいますよ。そういうとき、では、日本はどういう態度で臨むのか。私は、再協議に臨まないんだと思います。

 でも、関税についても、委員が読まれました物品貿易という章がございますよね。関税撤廃時期の繰り上げについては、時期を明示せず、要請があれば協議するとの規定がある。これは委員がおっしゃられたとおりであります。

 一方、守るべきものは守るという観点から、我が国は関税交渉において、今もお話をさせていただきましたけれども、本当に多くの品目の関税撤廃を守ったじゃないですか。また、関税割り当てやセーフガードを新たに創設したじゃないですか。こうした措置について、協議についてはわざわざ本文に規定しないで、TPP協定の発効から七年がたった後は相手国からの要請に基づいて協議を行うとの規定を、その相手国、お話しになったオーストラリア、カナダ、チリ、ニュージーランド、アメリカとの間で相互に設けることを決定した。

 ということはどういうことかというと、七年間は、米をすぐ開放しろ、豚肉を全部入れろということがないということだと私は理解しております。

福島委員 余り余計なことをべらべらしゃべると墓穴を掘ると思いますよ。七年間交渉しなくていいなんということはなくて、本文の中にも、関税撤廃の期間を繰り上げるための協議を求める事項というのは入っているんですよ。大臣、新任なんだから、余り無理しない方がいいと思います。わかっていることだけおっしゃればいいと思うんですよ。

 しかも、再協議は行わないと言っていますけれども、この七年後の協議というのは……(石原国務大臣「再協議は行わないって。再交渉を行わないと」と呼ぶ)それはわかるんです、それは聞いていません。七年後に協議を求められたら、それは協議に応じなきゃならないんですよ。シャルという助動詞を使って言っているわけですから、協議に応じなければならない。しかも、ほかの国で、こんな多くの農産物輸出国から一方的に七年後に再協議に応じろと名指しされている国はほかにあるんですか、どこの国があるんですか。

 逆に言えば、日本は自動車でアメリカに対して余りとれなかった。三十年かけてピックアップトラックの関税はなくならない、乗用車も十五年までは関税は維持されるというふうになっているけれども、それに対して再協議を行うと何か申し入れている条文があるんですか、どうなんですか。

石原国務大臣 委員御指摘になりました自動車なんですけれども、こういう事実もあることも忘れちゃいけないと思うんですね。日本で車というものを一番広めたのは実はT型フォードですよ、昭和の初期に。そのフォードが日本で車を売らない、売れなくなったんですね。そんな中で、アメリカで一番アメリカ的なピックアップトラック、日本ではほとんどつくっていないんです、ピックアップトラックなんか、大きくて。全部、日本のメーカーもアメリカでつくっているわけですよ。それに関して、八割、部品。自動車部品二兆円あるんですよ。その二兆円の関税を、アメリカを押し倒して八割を、早く発効したらなくなる。そのほか、鉱工業製品とかたくさんあるわけですよ。

 ですから、そのピックアップトラックとか自動車とかだけを捉えて交渉がだめだったというのは、私はアンフェアだと思います。

福島委員 結局質問にちゃんとお答えになっていませんけれども、こんな多くの農産物輸出国から名指しで再協議、七年後の協議を申し入れられている国は日本だけなんですよ。不平等の条約じゃないですか、片務的じゃないですか。どういう交渉をしたんですか。

 総理、まだ焦らないでください、後でちゃんと御発言いただきますので。

 日本だけなんですよ。私は、問題は、交渉だからしようがないじゃないかと言うけれども、こうしてちゃんと公約を結んで聖域は確保するんだと言い、国会で、委員会で決議を決めたにもかかわらず、今の石原大臣の答弁を聞いていたら、そんなのは交渉があったんだからしようがないじゃないかと言っているように聞こえますよ。(発言する者あり)いや、聞こえますよ。

 だから、私は、交渉が終わったことについてはとやかく言いませんよ。ただ、こうした公約や国会決議に違反している可能性があるということを私は認めるべきだと思うし、今回明らかになった附属書の和訳を見ても、聖域なんというのはいまだ確保されていないということを正直に認めるべきだと思います。総理、どうですか。

安倍内閣総理大臣 あわせて先ほどの石原大臣の答弁をちょっと補足させていただきますと、七年目の再協議条項について質問されたんだろうと思います。

 基本的に石原大臣が答弁したとおりでありますが、しかし同時に、この九項の(c)にはこう書いてあるんですね。再協議を規定している条文に合わせて再協議が行われることをもってTPP協定に基づく日本国の権利または義務に影響を及ぼすものと解してはならないと規定しているわけでございます。

 つまり、それは何かといえば、再協議を求められても日本に不利な合意をする必要は全くないというのは当然のことでありまして、これも(c)項として書いてあるというわけでございます。

 そのこともやはり紹介をしていただかないといけないのではないだろうか、こう思うわけでございます。

 そこで、我々は、重要五品目についても基本的には国会の決議を守っている、こう考えているところでございますが、国会決議については、国会において、それが守られているかどうかということについて御議論いただくべきものだ、このように考えております。

福島委員 その条文があったとしても、常に関税撤廃を目指して協議の土俵には乗らなきゃならないと書いてあるわけですよ。それは事実ですよ。

 次の論点に行きたいと思います。次の論点は経済効果についてであります。

 一月十二日の予算委員会でも、TPP協定の経済効果分析がいかにでたらめかということを申し上げさせていただきました。

 農水産物の生産額は、二〇一三年の試算では三・〇兆円減少するとしていたのが、生産量は全く減らなくて、価格下落分だけで千三百から二千百億円減少する、そういう試算を出している。

 一方、経済効果の方は、二〇一三年の試算では三・二兆円増加、プラス〇・六六%GDPがふえると言っているものを、二・六%ふえ、総額にすると十四兆、五倍ぐらいふえるというような、そうした大幅に盛った試算を出しております。

 今、石原大臣お得意の自動車の話が出ましたので、では自動車を聞きますよ。

 一番大口は自動車だと思っております。輸出の二割が自動車及びその関連の部品で、日本の輸出は支えられております。

 乗用車は十四年目まで関税は変わりません。荷物用のトラックやワゴン車、これは二十九年間関税を維持して、三十年目で撤廃でございます。ベトナムを除くほとんどのほかの国は、既にEPAで関税は撤廃しております。それでも自動車の輸出がふえるというのが、従来から政府が輸出でふえる要因として一番多く挙げていたんですよ。

 TPPの発効によって、自動車の輸出額はどれぐらいふえるんですか。

石原国務大臣 これも先ほど答弁させていただいたんですけれども、自動車本体は、北米は七割が現地生産なんですよ。日本にとって何がプラスかといったら、部品の二兆円なんです。そこの部分について、カナダは関税が五年目で撤廃されて、完成車ですよ、七七%、八〇%の高関税が課せられているベトナムの三千ccの自動車についても十年目に撤廃ですよ。二・五%の米国の関税も最終的には撤廃される。

 やはり、これは、先ほどの協議の話も、五カ国名前を出しましたけれども、日本がこの五カ国に対して物を言うことも七年目以降はできる、相互主義なんですね。そういうところをぜひ理解いただきたいと思います。

福島委員 そう答弁をおっしゃるんだったら、数字を示してください。試算で示してくださいよ。乗用車の輸出の効果はどのぐらいで、部品の効果がどれぐらいだと考えているんですか。試算はもう出ているんだから、その中でどうなっているかお答えください。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもの分析は、産業や品目別の影響を積み上げていく方法ではなくて、貿易円滑化の効果や生産性向上効果などはマクロ、国全体の数字を使っているため、分析の結果として産業別の影響額を出そうとしているものではございません。

福島委員 そうなんですか。何で、農産物は産業別のものを出していて、自動車は出していないんですか。

 だから恣意的だと言われるんですよ。一つのものは、農林水産物という、これは一つの産業ですよね、産業分野で試算を出すのに、農産物の輸入額よりも自動車の輸出額の方がはるかに大きな額なんですよ。貿易の効果は大きいんですよ。その品目について、ではなぜ試算をお出しにならないんですか。これは大臣が答えるべき。大臣が答えてください。

石原国務大臣 政府委員がお話しさせていただきましたように、試算していないんですよ、これは。ぶれも大きいですし。(福島委員「だから、何で試算していない」と呼ぶ)そのことを、だから、なぜそのとおりであったかということは聞いてください。

福島委員 いや、質問してくださいって、さっき総理は、何でも石原大臣に聞いていいと言ったから質問しているんですよ。

 では、農産物は何で試算をして、重要な自動車はなぜ試算しないんですか。これは役所が答える話じゃないですよ。政治家が政治的な判断として答える話ですよ。どうぞお答えください。

安倍内閣総理大臣 いわば、工業製品についてはなぜ出さないのか、農業製品については出しているではないかという御下問でございますよね。

 これは、工業製品の輸出については、需要は各国の市場の動向に大きく左右されること、そして……(発言する者あり)これからゆっくりと答えますから、黙って聞いてください。他国製品との競合関係もダイナミックに変わっていくということ、そして同時に、農林水産品については、国家貿易等の通常の関税と異なる複雑な国境措置があるわけであります。国家貿易を日本もとっているということでございます。などから、農林水産品と同じ指標で検討することは困難であるということでございまして、当然違いが起こってくる、こういうことでございます。

福島委員 いや、アジアの国の中で工業製品を国家貿易でやっている国だってありますよ。需要の変化は日本の農産物だってありますよ。

 私は、むしろプラスの意味で言っているわけですよ。皆さん方はTPPにメリットがあると言って、主に工業製品にメリットがあると言うんだから、それを出せばいいじゃないですか。自慢すべきところなんですよ。

 なぜ石原大臣、出さないんですか。今から、大臣、新しくつかれたんだから、事務方に、仮定を置けばきちんと試算をすることはできるんだから、自動車のTPPの効果について試算を出すように指示する気はないですか、石原大臣。

石原国務大臣 福島委員、基本的なところで私、意見が食い違っているんだと思うんです。経済分析の目的が何かということなんですよ。

 これは、成長のメカニズムによってどういうこと、具体的なものが日本のこれからの農業、商業においてよくなるかということを明らかにするためにやっていて、その中で個別の品目がどうなるかというのは、予想なんですよ。予想をするんじゃなくて、どういうふうに分析するか。それは、経済効果がどうなるかというところに視点を置いているから個々のものについては出していないというのが政府の見解だと思います。

福島委員 要は、JAとかが心配するから、とりあえず安心するためにこっちは出したけれども、輸出の方はそういう関心を持つ人がいないから出しませんでした、そう翻訳するしかありません。

 時間がないので。

 経済効果もこれは盛っております。今までは、この括弧一ですけれども、輸出入関税の引き下げに伴うものを外生要因として、計算を二年前、二〇一三年はしていました。今回は、貿易円滑化、非関税障壁削減、輸出入拡大によって貿易開放度が上昇して生産性が上昇する、生産性が上昇すれば実質賃金が上昇して労働供給がふえるという、内生的にぐるぐる回ることによって成長力が高くなっております。

 生産性が上昇するとなぜ実質賃金が上昇するんですか。どうですか。

石原国務大臣 生産性が上がれば、どの産業でも賃金も上がるじゃないですか。物が売れる、物がつくれるようになるんですから。それによって好循環をつくるというのがアベノミクスの基本です。

福島委員 いや、実質賃金が下がるから生産性が向上する場合もあるんじゃないですか。投入要素である労働のコストが減れば、生産性は向上するじゃないですか。どっちがどっちとは言えないと思いますよ。

 というのは、タフツ大学というところがつい先日レポートを出しております。この試算によると、日本はTPPによってGDP増加率はマイナス〇・一二%、失業者増加率が七万四千人。

 アメリカと日本の二カ国は、もともと労働集約型ではないですから、TPPによって失業者がふえて、GDPがその効果でマイナスになる。このGTAPモデルは、ここの賃金が上昇するかしないか、プラスかマイナスかで全く変わるんですよ。ここがプラスになれば、どんどんどんどん拡散してプラスになるんだけれども、マイナスだと、どんどん今度はマイナスになるという、ここの前提の置き方が大きな分かれ道になるから私は先ほど聞いたんですよ。

 政府もいろいろ資料を出されておりますが、なぜ生産性の上昇で実質賃金が上がるかということに答えていないんですよ。

 安倍政権になってずっと実質賃金は下がっているわけですから、安倍政権になって生産性は下がっているということになるんですよ。私は、必ずしもそうではないと思っております。

 このタフツ大学のモデルにおいても、世界銀行などがつくっているモデルは、完全雇用を前提として労働分配率が必ず上がるという非現実的な仮定を置いているからそうなるんだというふうに言っておりますよ。

 だから、ここに実は一番大きな仕組みがあって、その前提の置き方によってプラスにもなればマイナスにもなるんですよ。ただ、多くの経済学的な議論だったら、生産性が上がれば実質賃金が上がるという今、石原大臣がおっしゃったのはむしろマイナーな考えだと思いますよ。

 しかも、この間の日本の経済を見てみれば、山井さんの得意な分野でありますけれども、労働コストを下げることによって生産性を上げて競争力をふやしてきたんじゃないですか。ましてや、日本は労働コストが高い国なんですよ。自由貿易が進めば、競争条件をよくするためにはそこを下げるしかないんですよ。だから、私はタフツ大学の研究の方が正しいと思いますよ。石原大臣、その点はどう思われますか。

石原国務大臣 先ほどから、すれ違っている話をしたという話をしてきたんですが、今の議論は我々の考えと全く違うんですね。

 我々は安倍内閣で何をやったかというと、最低賃金も上げようと。十五円、十六円、十八円……(発言する者あり)上がっている幅が全然違いますよ。幅が全然違いますよ。何の数字の根拠もないのに理事がやじるんだったら、まともに答えられませんけれども、そこが、だから逆なんですよ。実質賃金を上げる政策をとってきたんです。

 それで、タフツ大学のは私も読ませていただきました。経済連携を行うことによって輸出入がふえるとそれが内需に影響するからという試算ですよね、簡単に言えば。

 でも、TPPというのは、今度、先ほどとんでもないと言っていましたけれども、関税の引き下げをいつからやっていつ減らすとか、細かいルールとか、非関税障壁をなくすとか、貿易アクセスを改善するとか、いろいろなことが入っているわけですよ。そういうものを考慮しないで、その前提で置いたら、成長率が低くなるのは当たり前だと思います。

福島委員 全然質問にも答えていないし、余りにも不誠実だと思います。

 今回の補正予算で、TPP対策で三千億円以上のお金を投じております。先ほど玉木議員が言ったように、農林水産物の関税がなくなることで約二千億円の関税収入が減ります。その中でさまざまな対策をやる。これは全部国民の税金から出されるものですよ。

 今みたいに、全て、ほかの政策もそうですけれども、都合のいいデータだけを持ってきて、それを何か出しておけばごまかせるというんじゃなくて、正直に言えばいいじゃないですか。農業者は困りますよ、場合によっては退出する人もいるかもしれませんよ、そのためにこれだけの税金を使うけれども国民の皆さん受け入れられますか、農家の皆さん受け入れられますか、効果はこれぐらいはあるけれども、でも過大には見積もれないですよ。

 でも、先ほど石原大臣がおっしゃったような貿易円滑化効果とか、幾つかはあるんですよ。何でもプラスマイナスがある。それを正直に出して判断してもらうというのが私は誠実な与党の姿勢であるべきだと思いますよ。残念ながら、きょうの答弁を見ていて、石原大臣、そういう姿勢を感じませんでした。

 またこの問題を議論させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。

竹下委員長 この際、今井雅人君から関連質疑の申し出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。今井雅人君。

今井委員 維新の党の今井雅人でございます。

 先ほども少し触れられましたけれども、先週の金曜日、日銀がマイナス金利を実施するという金融緩和をしたわけでありますけれども、これは、第三次安倍内閣では初めての日銀の金融緩和であります。

 第二次安倍内閣では、今から三年前の四月四日、量的緩和の実施をされました。そして二年前の十月三十一日、これも追加の量的緩和をされました。この二度のときも、両方とも、その後株価はずっと続騰しています。それから、為替市場はずっと円安に振れてきています。

 ところが、今回はどういう動きをしているかといいますと、金曜日は、株も上がりましたし、円安になりました。月曜日もやや上がりました。しかし、火曜日、そしてきょうと、きょうは五百五十円以上下げておりまして、終わり値で一万七千百九十一円です。実は、金曜日の、この量的緩和をするときのその日の寄りつきは一万七千百五十五円ですから、つまり、金融緩和をしたんですけれども、その効果が一〇〇%全部剥落してしまったというのがこの四日間の実際の動きです。

 そこで、総理にお伺いしたいんですけれども、これまで、大胆な金融緩和ということで、円安に持っていき、それで経常の利益をふやし、株価も上げ、こうやって回してきましたけれども、そろそろやはり金融政策に依存するのが限界が来ているということをあらわしているんじゃないでしょうか。

安倍内閣総理大臣 現下の株価の変動については、コメントを差し控えたいと思います。

 今般日本銀行が導入したこのマイナス金利つき量的・質的金融緩和は、これまでの量と質に、マイナス金利という金利面での緩和オプションを追加するものであり、日本銀行のデフレ脱却に向けた強い決意が示されたものと考えています。

 日本の経済の先行きについては、雇用・所得環境の改善が続いていく中において、民需に支えられた景気回復が見込まれるわけでありますが、いずれにせよ、今後とも政府と日本銀行が一体となって、デフレ脱却を目指して、しっかりと経済を成長させていきたい、こう考えているわけであります。

 これはいつも述べているように、金融については、手段においては日本銀行に私はお任せをしているわけでございますので、手段についてコメントする考え方はないわけでありますが、今までどおり、しっかりと政府と日本銀行がお互いに協力をし合いながら、二%という物価安定目標に向かって、デフレ脱却、そして力強い成長を目指していきたいと考えております。

今井委員 全然株価のことは触れられませんでしたけれども、総理は、安倍政権になってから株価も堅調になっているといつもおっしゃるので、私は今株価の話をしているんですね。確かに、第二次安倍政権のときは株価は上がっております。しかし、第三次安倍政権、おととしの十二月二十四日、このとき、一万七千八百四十二円です。ですから、第三次安倍政権に入ってからは、株式市場というのは停滞しているというか、上がっていないわけですね。というのが今ある状態です。

 その前提の上で、私は、最近、出てきている数字が非常に心配なんですね。

 まず、今月の十五日に十―十二月期のGDPの速報値が発表されますけれども、シンクタンクの民間十三社の平均がもうそろっています。前期比でマイナス一・五%、これが予想です。十三社全社がマイナス予想です。実際、十五日にどうなっているかわかりませんが、消費が落ち込んでいるということが原因ですね。

 それから、一月二十九日に発表されました昨年の十二月の家計調査、これは、二人以上の世帯が使ったお金は実質で前年同月比マイナス四・四%です。消費も落ちているということですね。

 それから、日経新聞が先日、企業の、既に決算を発表しているところの四百三十八社の決算を全部集計しておりますけれども、利益は、十―十二月期は、前年同期比で五%のマイナスですね、マイナスになっています。

 それから、十二月の十四日に日銀の短観が発表されました。日銀の短観は、私が大変懸念しているのは先行きなんです。先行きの業況判断は、全産業、製造業、非製造業、そして、中小企業、零細企業、大企業、どの切り口をしても全て大幅に悪化しています。それから、今年度の売り上げの予想ですけれども、これも、前年に比べると、全産業で見てマイナス〇・五%です。経常利益は、上半期こそ上がっていますが、下半期は大幅にマイナスになっています。つまり、この秋口ぐらいから経済が非常に落ち込んでいるんですね。

 こういう数字が今出ているという前提で、ちょっとまずきょうは最初に年金の運用です、いわゆるGPIFの話をちょっとしたいと思うんです。これは何度も取り上げられておりますけれども、まず大きな問題点は、なぜこれだけのリスクをとるような資産構成、つまりポートフォリオにしてしまったかということなんですね。

 今、この年金の運用機構は、中心値、株は五〇%まで持つというのが基本ポートフォリオで、昨年の九月の段階では四三%持っています、もう少し持てるということですけれども。

 ほかの日本の大手の運用機関と比べてみたらわかるんです。これは、損保の全社のポートフォリオ、生保の全社、下に二つあるのは大手の損保一、二、大手の生保、大手の生保二ですね。大手になるほど多少リスクをとるということがふえるというのは平均でわかりますけれども、それにしても、生保や損保に比べて株式の比率が余りに高いんです。余りに高いです。大体はやはり債券を中心に運用するんですね。

 どうしてこんなところまでリスク資産をふやさなきゃいけなかったのか。そもそものそこのところが私はまずよくわからないんですけれども、それをちょっと説明していただきたいと思います。

塩崎国務大臣 今井委員はもともと金融の御出身で、いろいろなことについてお詳しい、よくわかっておられた上でお聞きをいただいているんだろうと思いますけれども、御案内のように、年金というのは保険料も給付も賃金の上昇に応じて増加をする、変動する、こういうことになっているわけであります。

 今お取り上げをいただいた損保、生保、これについては、年金とはやはり負債の特性というのが全く違うということです。例えば生保だったらば、契約締結者を対象に、一定の保険期間における死亡、疾病等の給付を行うために予定利率というものを初めから決めてありますし、保険料も設定をした上で、それに見合う利回りというものを出そうということで運用をされているわけであります。損保も、同じように、偶然の事故とか災害等の給付を行うために保険料を設定した上で、事故率等から推計される負債に見合う利回りを獲得しないといけないというのは、もう先生御案内のとおりでございます。

 それに対して年金は、御案内のように、今どういう利回りを確保しないといけないかというと、名目賃金上昇率プラス一・七というのを利回りとして確保しないといけないということで、これが長期的に見て年金財政上必要な利回りということになるわけであります。

 では、何で今回こういうポートフォリオにしたのかという御質問でありますけれども、これは、やはり経済情勢が全く変わった、つまり、デフレでずっと来た、第二次安倍内閣の前まではずっとデフレでありましたが、今回このデフレからの脱却、ほぼ脱却をしたところまで来ましたけれども、脱却を前提にした今後の物価、賃金の変動、特に上昇するということが想定される中で必要な運用利回りを確保しないといけないということになったわけであって、これまでの国債を中心とした利回りでいきますと、この長期的に見た年金財政上の……

竹下委員長 塩崎大臣、短目にお願いいたします。

塩崎国務大臣 はい。

 必要な積立金を下回る利回りしか確保できないということであります。

 したがって、我々が今やろうとしていることは、分散投資によって最小限のリスクで最大限のリターンを上げるということをやるというのが正しいポートフォリオの組み合わせでございます。

今井委員 塩崎大臣はいつも長いので、短く答弁していただきたいんですが。

 今何をおっしゃったかというと、デフレを脱却しているからとおっしゃっていましたけれども、それは別に民間だって同じなんです。マクロの環境は別に年金だろうが民間だろうが同じなので、そこはまずおかしいです。

 それともう一つ、今何をおっしゃったかというと、つまり、年金全体の仕組みの中でこれぐらい運用回りを回さないとこの積立金の方からもうお金を出せないから、ではリスクをたくさんとりましょう、運用でもうけないと年金が回りませんよね、だからリスクをとりましょう、要するにそういうことをおっしゃっているわけです。

 それで、もう一つ私が問題だと思っているのは、このポートフォリオの入れかえは、いわゆる国債を六〇%から三五%という前例のないほど大きな変更をしているんですが、それをとても短期間の間にやっていることが大きな問題なんですね。

 これをまず見ていただけると、日銀、アベノミクスの金融緩和が始まってから、これは日経平均の二十年の平均ですけれども、最初に急騰しています。この間は、誰が株を買っていたかというと、実は外国人投資家なんです。外国人投資家がこの二年間で十八兆円買い越ししています。それ以降、外国人はぴたっと買うのをやめまして、昨年は売り越しをしています。つまり、高値は買わないということをやっています。ところが、今度はGPIFが買い出したこの赤のあたりですけれども、今もまだ買っていますから、ずっと上に買い上がっているということがわかると思います。

 さらに私が問題だと思っているのは、GPIFの、いわゆる普通の年金に追随するという形で、三共済、国家公務員の共済、それから地方公務員の共済、日本私学の共済、この共済が昨年の三月に、我々もGPIFに合わせなきゃいけないということで変更をしています。

 ところが、去年の三月の段階ではまだ国内の債券を七一%も持っていますから、つまり、去年の三月から一生懸命買い出したんです。去年の三月の水準というのはどこかといいますと、二万円以上のところですね。日経平均二万円以上のところです。

 これを見ていただけるとわかるように、これは二十年間デフレだったと説明されるかもしれませんが、今中国の経済がおかしくなっているように、今の日本市場というのは日本だけではコントロールできないんです。ほかの国の影響も受けますから、株はそれによって上昇したり下落したりするサイクルが起きるのは仕方ないんですね。ところが、この二十年の平均を見ると、非常に高いところでポートフォリオを組んでしまった。つまり、非常に質が悪い、持ち値の高いポートフォリオをつくってしまったんですね。

 よく皆さんが、十年間で見ればプラスだとおっしゃっていますが、十年前というのは実は下がっているんです。二十年前を見たら、一番高いところですよ。だから、よく皆さんがおっしゃるのは、一番いいところをとって、さっきの話じゃありませんが、もうかっていると言いますが、二十年前から見たら、今、株はまた下がっていますからね。

 ですから、こういうサイクルをやるときというのは、やはり、高値で買わないで、下で、ドル平均コストといいますが、少しずつ少しずつ買っていくということをして、きれいな、持ち値のいいポートフォリオを組まないと、将来に禍根を残しちゃうんです。そういうポートフォリオを安倍総理はつくってしまったんです。このことはどう思われますか、総理。これは総理にちょっとお伺いしたい。いや、大臣は長いから。大臣は長いので、ちょっと総理に。

 では、簡潔にやってください。

塩崎国務大臣 これも先生御案内のとおりでありまして、何しろ、今先生お話しでありますけれども、やはり年金というのは負債構造が全く違う。つまり、長い運用単位で考えていかなければ、期間で考えなければいけないわけであって、今先生がおっしゃったように、株は昔は低かった、そして今上がっている。趨勢的にはそうなんです。ですからこそ株式に投資をすることが意味がある。

 しかし、それだけではいけないので、分散投資をしてヘッジをちゃんとするということでいくわけでありまして、今のポートフォリオがおととし十月に変わりました。変わりましたが、これをいきなり、一挙に外国の株と国内の株と合わせて五〇%にしているわけではない。先生がお示しのように、今、四二%少々でありますから、徐々にやってきているわけであります。

 ちなみに、去年の七―九は約八兆円ぐらいマイナスになったというふうになりましたが、去年の九月末までの一年間で見ても、まだこれはプラスの四・二兆円というふうになっているわけであります。

 ですから、何度も申し上げますけれども、短期的なことで考えるわけではなくて、やはり長期的な運用をしていくということが年金の特徴でありますから、しっかりとリスクを分散しながら、高いリターンを、一・七のスプレッドをとれるだけの運用をしていくということが、経済環境が変わった中でできることだということであります。

今井委員 一言だけ申し上げておきます。

 長期保有だからこそ、安いところを買わなきゃいけないんですよ。運用の鉄則ですから。

 次に、財政健全化について、ちょっとお話をさせていただきたいと思います。

 まず、先ほどもありましたけれども、ことしの一月に新しい中長期の経済財政の試算が出たんですけれども、私はいつも見ていると思うんですが、内閣府の出す予測というのが非常に、ほかのところに比べて上振れして出るんです。

 これは今直近で出ている経済成長の予測ですけれども、IMF、昨年は、日本は〇・六です。今年、一・〇。OECDも大体一緒です。内閣府、政府ですね、政府だけが、二〇一五、一・二。これは、この間一・五でしたから、〇・三下方修正しましたけれども、二〇一六は一・七。こういう状況になっています。先ほども言いましたように、十―十二期はかなりマイナスになることも予測されているわけですね。

 私もちょっと計算をしてみましたけれども、どうしてもこんな高い数字にはならないんですよ。これは、あと少したってもう少し現実的に見直しが必要なんじゃないでしょうかね、大臣。

石原国務大臣 委員の御指摘は、内閣府の経済見通しの数字の比較だと思うんですけれども、OECDとか世銀との差は、やはり、もう御存じのことのように、暦年か年度でやっているかというその差も見なきゃいけません。

 ただ、委員が御指摘になりましたように、去年の最終クオーターは弱含みであると思いますが、ファンダメンタルズで見ますと、基調はそんなに変わっていないと思います。緩やかな景気回復というのは続いていると思います。

 しかし、委員の御指摘のとおり、この二月中旬には数字が出てきますから、そのときまた御議論をさせていただく機会があれば、その後、どういうことを考えているかということをお話しさせていただきたいと思います。

今井委員 これも一つだけ申し上げておきますが、確かにIMFとOECDは暦年なので一月から十二月です。日本の場合は四月から三月という年度でやっています。だから、そこは三カ月ずれていますが、IMFとOECDに入っている二〇一五年の第一・四半期、これは日本のGDP成長率は四%を超えていますから、非常に強かったんです。だから、上の方が高く出なきゃおかしいんですよ。これは言っていることがおかしいですから。そこの部分を見るなら、むしろ、上の二つの方が高くないとおかしいという理屈になりますので、今のことはよく覚えておいてください。これは間違っております。

 その上で、私は、この数字が常に変わっていくのが非常に気になっていまして、例えば、これは半年に一回出すんですけれども、二〇一四年度も、最初は実質GDP一・〇と言っていたのが、マイナス〇・五、マイナス〇・九、マイナス一・〇と、次々に下方修正をされていくということが起きておりまして、だからこの数字も本当は怪しいなと思うんですが、問題は、この数字をベースに今後の二〇二〇年度までのプライマリーバランスの計算がされているんですね。

 ですから、これをやって、しかも、いわゆる成長シナリオ、実質が二%以上、名目が三%以上というのをやってみても、二〇二〇年に自然体だと六・五兆円はマイナスになるということなんですが、これを下方修正するともっとふえちゃうわけですよ。だから、そこの現実性をもう少しやはり内閣府はしっかりチェックされたらいかがですかというふうに申し上げているんですが、いかがですか。

石原国務大臣 先ほどの私の話は、差があるということを言っただけでありまして、どちらにという話は言っていないというところはぜひ御理解いただきたいと思います。

 それと、今の御指摘なんでございますけれども、ですから、先ほど、注視していかなければならない。間違いなく、ファンダメンタルズは変わらないんですけれども、最終クオーターが弱含みであるということは民間予測の中に出ておりますので、これを注視して、財政健全化計画は変えておりませんので、今委員が言われたのは要するにギャップのところでございますので、そこを埋めるようにしていかないと絵に描いた餅になってしまいますので、ここは注視して、しっかりやらせていただきたいと思っております。

今井委員 では、そこはまた継続的にやりたいと思います。

 総理、ちょっと一つお伺いしたいんですけれども、先ほどのプライマリーバランスの話をしているときに、二〇二〇年度までの間に、二〇一八年で中間チェックをされるとおっしゃっておられました。

 私は、今政府が出している試算を見て、実質二%、それから名目が三%以上成長するというので試算を置いてみても、二〇一八年にプライマリーバランスのマイナスの赤字は九・二兆円あるんですね、九・二兆円。それから二年の間にこれをゼロにしなきゃいけないわけです。だから、一八年の間に数字をちゃんと目標を持っていなかったら、とてもできないんですね。

 確かに、今、経済・財政再生計画改革工程表というのが出ていまして、それに従って、経済・財政再生に沿った取り組みの各省の公表資料というのが直近の財政諮問会議に出ています。見ていますけれども、ほとんど定性のものばかりで、例えば定量を見ても、五年間で十何億の削減とか、〇・一億円の削減とか、これでどうやって九兆円を埋めるんだと。およそちゃんちゃらおかしいというものが並んでおりまして、こちらの工程表にもいろいろな項目は書いてありますが、数字は何にも書いていないんです、数字は。

 先ほど御党の稲田政調会長が、数値目標が必要なんですとおっしゃっていたでしょう。いみじくもおっしゃっていたじゃないですか。だから、私はこの場で何度も申し上げているんですけれども、二〇二〇年までにどうやってこのプライマリーバランスをゼロにしていくかという年度ごとの数値目標、そして実際に何を実施するかということをちゃんと示すべきだということを申し上げているんですが、一向に出てこないんです。ぜひそれをやっていただけませんか。

石原国務大臣 委員が御指摘いただいたのは、経済・財政再生アクション・プログラム、そこで社会保障を中心に積み上げていくということになっておりますが、定量的なものであって、物足りないという御指摘でございますので、ここの部分はしっかりと、しっかりとそこの部分で稼がないと、なかなかうまくいかないわけですね。そういうことでいかせていただきたいと思います。

 もう一点、先ほど九・二兆円のお話をされましたけれども、PBマイナス一%でいうと、そこのすき間は四兆円。大きい金額ではありますけれども、これを達成すべく、一六、一七、一八の三年間、集中改革期間でございますので、このアクション・プログラム、工程表にのっとって、もちろん歳出の方も、これは新浪さんの言葉ですけれども、賢い使い方、ワイズスペンディングという言葉を使われていますけれども、歳出歳入、聖域なく見直して、御懸念にならないようにやっていかなければならないと、私も同一の見解を持っております。

今井委員 今、二〇一八年の前の話をされましたけれども、そこは消費税の引き上げが入っていますから、それで歳入がぼんと伸びますけれども、二〇一八年以降はそういう突然伸びる歳入はありませんので。また消費税を上げるのかどうか知りませんが、二〇一八年前と後では全く歳入構造が違いますから、そこはぜひ考えていただきたい。

 それで、ちょっと基本的な考えですけれども、経済成長なくして財政再建なしとおっしゃっていますが、この数字は、目いっぱい経済がうまくいったというときの前提なんですね。

 石原大臣は、このプライマリーバランスの六・五兆円、足らない部分は、どうやってここを埋めていくのが一番いいというふうに基本的にはお考えですか。

石原国務大臣 縮小均衡はやはり避けなければならない。すなわち、生産年齢人口がこのように減ってきている中で、国力をどうやって維持していくか。先ほども御議論のあったTPPというものは、やはり、経済を八億の経済圏に広げていく、そういう意味では一つの経済の成長戦略。

 ですから、経済を、パイを大きくしていくということを中心に、その中で、委員がこのように御指摘されている懸念があるわけでございますので、財政規律と、そして社会保障の改革、稲田政調会長のもとで行った改革によって、キャップはもちろん、委員はキャップをかけろというお話でございますけれども、私どもは、この三年間でおよそ一・五兆円の社会保障の伸びの枠内におさめる。しかし、その一方で、高齢者の方がふえていくという現実がありますので、きめ細かく、財政再建に資するために社会保障の不断の見直しの取り組みに努めてまいりたいと考えております。

今井委員 ちょっと時間がないので次に行きますけれども、歳出に切り込まないとこんな六・五兆円は出てきませんから。だから、どこをどう切り込んでいくのか。社会保障ももちろん聖域でないんですけれども、ほかのところもどうやっていくかということをきちっと示していただきたいと思いますので、また別の機会に質問させていただきます。

 次に、ちょっとオリンピック関係ですが、これも前、玉木委員がやられましたけれども、実は、オリンピックに立候補したときに立候補ファイルというのを出しておりますが、そのときに出している、歳出の方の要件が、ここにありますけれども、三千十三億円というふうにあります。

 ちょっとだけ指摘をしておきますと、これは中を読むと、どういう経済の前提になっているかと前提が書いてありますが、いわゆるベースラインシナリオ、日本は成長しないという方のシナリオで数字が計算してありますから、まさにオリンピック組織委員会は、経済は伸びませんということを言っている、堅実なんですけれども。だから、本当は成長シナリオだともっとふえるんですが、それはいいとして。

 今、NHKの報道で、これが一兆八千億ぐらいになるんじゃないか、森元総理も、二兆円を超えるかもしれないということをインタビューでおっしゃっておられるということなんですけれども、これは本当は幾らかかるんですか、大臣。

遠藤国務大臣 お答えいたします。

 いろいろな報道があることについては承知しておりますが、過般、玉木委員にもお答え申し上げましたが、大会組織委員会においては、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会成功に必要な業務全ての洗い出しを行っております。大会に関して、皆さん方から、あるいはアスリートや競技団体、多くの皆さん方からさまざまな要望が出ております。組織委員会においては、それを一つ一つ、必要性の有無、それからさらに効率的、効果的なものはないかなどについてしっかり精査をしております。

 大会において、国民の皆さんの信頼を損なうことのないように、しっかりと所定の作業に取り組む必要があると考えております。

 大会組織委員会によりますと、業務の洗い出しを踏まえ、大会開催経費の見直しについて、ことしの夏ごろにはIOCと調整できるよう作業を進めていると聞いています。

 いずれにしても、政府として、作業が確実に進むよう促してまいりたいと思います。

今井委員 ちょっと何を答えたかよくわからないんですが。

 この間も指摘がありましたけれども、これは、お金が足らなくなったらまず都が負担して、それでも負担できなかったら国が負担するという仕組みになっているんですね。だから、最終的に国が負担しなきゃいけない可能性が非常に高いわけです。

 二〇二〇年、先ほど言った、プライマリーバランスをゼロにする、その年ですよ。その年まで財政措置をしなきゃいけないかもしれないという可能性が非常に高いわけですね。でしたら、やはりもっと危機感を持って、早く出せ、どれぐらいお金が必要なんだということをちゃんと言うべきですよ。どうですか。

遠藤国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように、例えば、過般、IOCの調整委員会の皆さんが来て、一つ一つの項目等に議論をしてまいりました。そうしたことを踏まえて、またさらに、多くの皆さんの要望がありますから、そういう意味でも、国民の皆さんの信頼を損なうことのないように、一旦出してまた違ったなんということのないように、丁寧に今作業を進めておりますから、そういう意味で、夏ごろにはIOCと調整できるというふうに聞いております。

今井委員 もう一点お伺いしたいと思うんですけれども、これとはまた別に、オリンピックに関しての予算を計上しています。二十八年度の予算では百六十七億円、オリンピック関連で措置しています。私は、事務方に、これも実は同じ工程表というのがつくってあるんですが、これもまた数字が何にも入っていなくて文字ばかりなんですけれども、では二〇二〇年までに幾らかかるんでしょうかと伺ったんですが、わかりませんと言われました。

 二〇二〇年までにどれぐらいかかるかわからないまま来年度の措置をするというのは、余りにずさんじゃないですか。だから、オリンピック予算全体が私はとてもずさんに見えるんですけれども、ちゃんとここは、工程表をつくったのなら数字も試算してくださいよ。

遠藤国務大臣 今委員御指摘のように、二十八年度予算においては、二〇二〇年東京大会のために新たにまたは追加的に措置した予算を取りまとめたところ、総額百六十七億円になりました。内容としては、関係府省庁において厳しく精査し、競技力強化や、大会に向けた機運醸成、あるいはセキュリティー等、大会のために真に必要な予算に限って計上しております。

 二十九年度以降の予算については、大会の関連施策の進捗と効果を点検しながら各年度の予算編成過程で検討いたしますので、具体的な総額を今お示しすることはできません。

 ただ、いずれにしても、昨年十一月に閣議決定したオリパラ基本方針において、限られた予算で最高の大会を実現することを掲げており、必要な施策を効率的、効果的に実施し、施策に関するコストをできる限り抑制していく所存であります。

 また、委員御指摘のように、この基本方針に基づいて施策をするわけでありますが、道路交通インフラの整備、あるいは日本の技術力の発信等、結果的には大会につながり得る施策が含まれております。これらの施策はあくまでも大会とは別途の政策目的でも予算計上されておりますので、こうした施策に係る予算をオリパラ関係予算に含めることは大会のために措置した予算がかえって不明確になる、そんな観点から、コスト抑制の観点から適当でないと考えております。

今井委員 ちょっと、役人答弁で残念なんですけれども。

 オリンピックに関しては国立競技場の問題もありました。今また報道で、これは維持費が五十年で一千億かかるという報道も出ています。オリンピック関連、本当に一体幾らかかるか全然今わからない状態なんです。だから、担当大臣なんですから、全体を、どれぐらいかかるかということをやはりしっかり把握してもらいたいんです。

 例えば東京オリンピックの翌年は非常に景気が悪くなりました。これはよくあるパターンなんですけれども、オリンピックをやった翌年というのは非常に景気が悪くなることが多いんです。だから、財政で使い過ぎちゃって、翌年ががくんと落ちるということがよくあるので、もちろん大会は成功させなきゃいけませんが、やはりそこの規律のところをきちっとやってもらわないと、後に本当にこれは禍根を残しますよ。ぜひやってください。よろしくお願いします。

 もう時間がないので、次に思いやり予算のところをやりたいと思いますが、ちょっと一つだけ。

 思いやり予算、これは五年に一度見直しをして、一時期はずっと減っていたんですが、今横置きになって、ちょっと微増ですけれども、今回も大体微増になっています。それで、もともとこれは何が問題かというと、まあ、ここは質問しません。

 いかに片務的かということなんです。

 これはまだ、役所に頼みましたら、これが直近ですといって、二〇〇二年とか三年なので古いんですけれども、日本は実は、労務費、光熱料、いろいろなものを全部負担して、米軍の在日経費全般に係るものも七四・五%負担しています。韓国、ドイツ、イタリアなどは、労務費や光熱費なんというのは向こう側、アメリカ側が負担しているのが多いですし、駐留費も四〇パーとか三〇パーとか四一パーとか。日本だけ極端に高いんですね。日本は極端に高いんです。

 それで、今、平和安全法制、それからガイドラインを改定して、日本はアメリカに対してのコミットメントがふえたわけですよね。それだけふえたのなら、やはり、向こうも少し負担してくださいという交渉は当然するべきだと思うんですよ。

 一つ例を出しますけれども、為替レートです。

 五年前に契約したときと今回契約したときの実質為替レートですけれども、前回のときは八十三・四円でした。今回の契約の時点は百二十一・八円です。つまり、三割円安になっています。三割円安になっているということは、これは円貨で契約していますが、実質、アメリカの負担は三割減っているんです、ドルベースですから。三割減っているんですよ。でも、日本は変わっていないんです。

 これぐらいの交渉はできるんじゃないですか。そういう議論はここではなかったんでしょうか。いかがですか。

岸田国務大臣 御指摘の思いやり予算、ホスト・ネーション・サポート、HNSですが、まず、冒頭、各国の比較がありました。

 この比較につきましては、それぞれの国の置かれている安全保障環境は違いますし、また、そもそも、GDP比がその表にも載っていますが、各国自身が拠出している防衛費の額も違いますので、その辺を総合的に勘案した上で決まってくるものだと思いますので、単純な比較は難しいと思います。

 そして、このHNS、五年ごとに決めていくではないか、為替の変化もあるではないか、そして、今回も、先般合意を行ったわけですが、その際にいろいろ交渉する余地があったのではないか、こういった指摘がありました。

 先般合意したこのHNS、数字の上では現状の数字とほぼ同水準でありますが、中身につきましては、さまざまな議論を行って、吟味を行いました。例えば人件費につきましても、福利厚生施設に係る人員は削減するということでこの削減を行い、一方、最新鋭の整備を維持管理するために必要な要員、これはしっかり確保しなければならないということで、さまざまな議論を行い、めり張りをつけております。

 要は、額はほぼ変わりませんが、内容、質においてしっかりとした向上を図った上、でき上がりの数字がお示しいただいている数字ということであります。

 いずれにしましても、我が国の財政は大変厳しい中でありますから、現に必要なものに限定しなければならない、これは御指摘のとおりだと思います。しかし、内容において必要なものを確保した上で、ぜひ効率的な予算を考えていかなければならない、このように思っています。

今井委員 為替の言及がなかったんですから、交渉できなかったということですね。交渉力が弱いということがよくわかりました。

 それで、今、人数の話をされましたけれども、福利厚生で五百十五人減らしていますが、装備の方では千六十八人ふやしていますから、実質ふえているんですね。これは当然、装備とかがふえるんだから、どういう積算でこの数字が出たんですかというふうに事務方に確認しましたら、それは交渉の中で決まったことなので根拠はありませんと言われました。まあ、指摘に終わっておきます。そういうことを言われたということを言っておきます。

 最後、総理、先日、松野代表が代表質問のときにODAの話をしましたけれども、円借款の話で、総理は、円借款は貸しているので基本的にはお金は返ってくるんです、問題ありませんという発言をされました。

 しかし、今、ODAは残高で十一兆円ありますが、この十一年間で焦げついた金額は一兆一千億あります。毎年一千億が焦げついて、負担になっているんです。これは、日本のJICAのバランスシートにも影響しますし、交付金を財政から出したこともあるんですね。こういうところの認識がやはりちょっと甘いんですよ。

 それぞれ今お伺いしましたけれども、数字は出ていないわ、認識はないわ、私は、財政再建に対しての姿勢が非常に甘いというふうにきょうの話を聞いていても感じましたけれども、そういうところはしっかり、現実をちゃんとつかんでいただきたいと思いますけれども、最後に一言、よろしくお願いします。

安倍内閣総理大臣 松野議員の質問は、いわば、私が外遊する際に日本の税金をばらまいているのではないかというトーンでの御質問でございましたから、短い時間の中における答弁でございまして、そこで、円借款は開発途上国に対する資金の貸し付けであり、贈与してしまうものではない、これが基本でございます。これは今井委員も御承知のとおりだと思います。貸し付けも時期が来れば返済されることになりますので、私の答弁は、そのような円借款の原則について述べたものでございます。

 そして、円借款を供与した時点では予想し得なかった事情によって返済が著しく困難となるような場合も生じることがありまして、そのようなときには、IMF、世銀により重債務貧困国と認定をされまして、経済改革等への取り組みが一定の条件を満たした場合や、パリ・クラブにおいて、債務返済が困難に直面しており、負担の軽減について決定される場合等、国際的な合意に基づく場合のみ、必要最小限に限って債務免除といった措置を講じているところでございます。

 政府としては、円借款の供与から確実に返済を受けることができるよう、円借款の供与に当たっては、供与対象国の協力体制や債務返済能力、運営能力、債権保全策等を十分に検討して判断を行ってきているところでございます。

 いずれにいたしましても、私の外遊がふえたら円借款がふえるということではなくて、これは大枠で決まっているわけでございますし、前年度は事実、ODA額は減っているわけでございます。減っているけれども、存在感は向上しているのではないか、こう思うわけであります。

 しかし、円借款については、先方にも、確かにこれは今井委員がおっしゃるとおりだと私は思いますよ、貸しているといっても低利でありますし、もともと財源は国の、国民の税金ですから、それは私は必ず相手方の首脳に、これは日本の国民の税金であるから大切に使っていただきたいということは重々いつも申し上げているわけでございますし、それをしっかりと生かしていただいて国として成長していけば、これは日本にも裨益することになるわけでございます。

 また、つけ加えれば、日本もかつて、新幹線のときもそうですし、名神高速道路や黒四ダムもみんな世銀からお金を借りて日本は高度経済成長をなし遂げたという過去もあるわけでありまして、その結果、世界に対して大きな貢献をしている、日本は今度、しっかりといろいろな国の成長を助ける番になっているのではないか、こう思うところでございます。

今井委員 時間が来ましたので終わりますけれども、いろいろ数字を今御要望しましたので、またこれからもその数字について詰めたいと思います。

 ありがとうございました。

竹下委員長 次回は、明四日午前八時五十五分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三分散会


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