衆議院

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第7号 平成28年2月4日(木曜日)

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平成二十八年二月四日(木曜日)

    午前八時五十九分開議

 出席委員

   委員長 竹下  亘君

   理事 石田 真敏君 理事 金田 勝年君

   理事 菅原 一秀君 理事 鈴木 馨祐君

   理事 関  芳弘君 理事 平沢 勝栄君

   理事 柿沢 未途君 理事 山井 和則君

   理事 赤羽 一嘉君

      秋元  司君    井上 貴博君

      池田 佳隆君    石崎  徹君

      石原 宏高君    岩屋  毅君

      衛藤征士郎君    小倉 將信君

      小田原 潔君    越智 隆雄君

      奥野 信亮君    門  博文君

      小池百合子君    小林 鷹之君

      佐田玄一郎君    佐藤ゆかり君

      島田 佳和君    鈴木 俊一君

      長坂 康正君    根本  匠君

      野田  毅君    野中  厚君

      原田 義昭君    古屋 圭司君

      堀内 詔子君    保岡 興治君

      山下 貴司君    山本 幸三君

      山本 有二君    井坂 信彦君

      石関 貴史君    泉  健太君

      緒方林太郎君    大串 博志君

      大西 健介君    階   猛君

      玉木雄一郎君    津村 啓介君

      西村智奈美君    福島 伸享君

      前原 誠司君    松野 頼久君

      本村賢太郎君    山尾志桜里君

      浮島 智子君    中野 洋昌君

      濱村  進君    吉田 宣弘君

      赤嶺 政賢君    志位 和夫君

      高橋千鶴子君    畠山 和也君

      足立 康史君    下地 幹郎君

      松浪 健太君    重徳 和彦君

      村岡 敏英君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   総務大臣         高市 早苗君

   法務大臣         岩城 光英君

   外務大臣         岸田 文雄君

   文部科学大臣       馳   浩君

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   農林水産大臣       森山  裕君

   経済産業大臣

   国務大臣

   (原子力損害賠償・廃炉等支援機構担当)      林  幹雄君

   国土交通大臣       石井 啓一君

   環境大臣

   国務大臣

   (原子力防災担当)    丸川 珠代君

   防衛大臣         中谷  元君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (復興大臣)       高木  毅君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (消費者及び食品安全担当)

   (規制改革担当)

   (防災担当)       河野 太郎君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)     島尻安伊子君

   国務大臣

   (経済再生担当)

   (経済財政政策担当)   石原 伸晃君

   国務大臣

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)   加藤 勝信君

   国務大臣

   (国家戦略特別区域担当) 石破  茂君

   国務大臣         遠藤 利明君

   内閣官房副長官      萩生田光一君

   財務副大臣        坂井  学君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府参考人

   (内閣府国際平和協力本部事務局長)        宮島 昭夫君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           大泉 淳一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 飯島 俊郎君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬・生活衛生局長)         中垣 英明君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 辰己 昌良君

   参考人

   (独立行政法人都市再生機構理事長)        上西 郁夫君

   参考人

   (日本放送協会会長)   籾井 勝人君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   予算委員会専門員     柏  尚志君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月四日

 辞任         補欠選任

  小倉 將信君     島田 佳和君

  小田原 潔君     池田 佳隆君

  越智 隆雄君     堀内 詔子君

  小林 鷹之君     野中  厚君

  山下 貴司君     石崎  徹君

  緒方林太郎君     泉  健太君

  大串 博志君     本村賢太郎君

  大西 健介君     前原 誠司君

  階   猛君     津村 啓介君

  西村智奈美君     山尾志桜里君

  福島 伸享君     石関 貴史君

  松野 頼久君     井坂 信彦君

  浮島 智子君     中野 洋昌君

  赤嶺 政賢君     志位 和夫君

  足立 康史君     下地 幹郎君

  重徳 和彦君     村岡 敏英君

同日

 辞任         補欠選任

  池田 佳隆君     小田原 潔君

  石崎  徹君     山下 貴司君

  島田 佳和君     小倉 將信君

  野中  厚君     小林 鷹之君

  堀内 詔子君     越智 隆雄君

  井坂 信彦君     松野 頼久君

  石関 貴史君     福島 伸享君

  泉  健太君     緒方林太郎君

  津村 啓介君     階   猛君

  前原 誠司君     大西 健介君

  本村賢太郎君     大串 博志君

  山尾志桜里君     西村智奈美君

  中野 洋昌君     浮島 智子君

  志位 和夫君     畠山 和也君

  下地 幹郎君     足立 康史君

  村岡 敏英君     重徳 和彦君

同日

 辞任         補欠選任

  畠山 和也君     赤嶺 政賢君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成二十八年度一般会計予算

 平成二十八年度特別会計予算

 平成二十八年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

竹下委員長 これより会議を開きます。

 平成二十八年度一般会計予算、平成二十八年度特別会計予算、平成二十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑を行います。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として内閣府国際平和協力本部事務局長宮島昭夫君、総務省自治行政局選挙部長大泉淳一君、外務省大臣官房参事官飯島俊郎君、厚生労働省医薬・生活衛生局長中垣英明君、防衛省大臣官房審議官辰己昌良君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

竹下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

竹下委員長 昨日の岡田克也君の質疑に関連し、松野頼久君から質疑の申し出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。松野頼久君。

松野(頼)委員 おはようございます。維新の党の松野頼久でございます。

 民主党・維新の党・無所属クラブの時間の中で質問させていただきたいと思います。

 まず冒頭、また政治とお金の問題がけさの新聞に報道されています。

 遠藤大臣、この報道によると、日本人教師を補佐する外国語指導助手、いわゆるALT事業に関連して、遠藤大臣が自民党の教育再生本部長として、ALT事業拡大を文科省の実施計画の中に取りまとめて文科省の政策にした。民間会社のALT事業に国費を投入する方向を定め、一六年度予算化している。文科省の担当者によると、ALT増員については遠藤氏から会議の席以外でも声をかけられた上、事務所の秘書から直接電話が来たこともあったというふうに文科省の担当者が話されているんですね。

 いわゆるこの報道について、遠藤大臣、国民の前できちっと説明をいただきたいと思います。

遠藤国務大臣 おはようございます。お答えさせていただきます。

 まず、きょうの新聞記事でありますが、記事の内容は事実誤認に基づくものでありまして、大変遺憾に思っております。

 もともと、詳しく私が覚えているのは、十数年前、友人から紹介いただいて、そして政治家としての活動を支援していただきました。それにつきましては、政治資金については法令に基づいて適切に処理、報告をしております。

 それから、創業者から、あるいは会社から支援を求められたことはなく、創業者の利益のために文科省に働きかけたことは一切ございません。

 新聞の途中に、「民間会社のALT事業に国費を投入する方向を定め、一六年度予算案で具体化した。」とありますが、念のため文科省に確認をしましたら、御指摘の会社は対象外だということでありますから、利益にはなっておりません。

 もともと、私は、御存じのように、二〇一二年の十二月に自民党の教育再生実行本部長になりました。そのとき、いろいろなテーマを議論したんですが、最初に、グローバル人材の育成をしようと、当面の課題として取りまとめをいたしました。

 その中で、当面の課題として、英語教育、それから理数教育、そしてICT教育を進めよう、そういうふうな提言をして、ここに提言書もございますが、まず、今、英語教育は残念ながら二分野の、いわゆる読み書きが中心の授業で、国際的に通用しない。やはり、読み書きだけではなくて、まずは聞いて話す、この四分野の授業が大事だと。それを進めるために、これまで英語授業改革をいろいろ文科省も我々もやってきたんですが、進まない。一番進める方法はないかということで、大学の入学試験に、試験ではなくて資格として、TOEFLあるいはIELTS、GTEC、TEAP等、こういうものを採用した方が、高校生の皆さん方は授業やどこかでそれを受けて、それで入ってくるので四分野をきっちり学ぶことができる、そのことをまず提言させていただきました。

 そこで、文部科学省あるいはいろいろな有識者の皆さんと議論した中で、まず最初は、高校、中学の英語の先生にそうした訓練をしてもらおう、海外派遣をしたり、あるいはそういうシステムで四分野の技能を学んでもらう、そういうことを考えました。

 しかし、なかなかすぐに先生方がネーティブな発音ができるということはない。そこで、そうした場合に、当面、JETなどALTの事業が少しありますが、これを拡大していこうと。そうするためにどういうふうにすればいいか、これは、文部科学省といろいろな議論をしましたし、私も申し上げましたから、また、文部科学省からもいろいろな話がありました。そうした中で進めてきたわけでありますから、決してその会社がどうのこうのという議論ではありません。

 ですから、先ほど申し上げましたように、今回、二〇一六年の予算にその事業が入ったということでありますが、先ほど言いましたように、確認をしたら、そういう会社は対象外だということでありますから、どうしてこういう記事になったのか、私にとっても不可解でなりません。

 以上です。

松野(頼)委員 この報道と今の大臣の説明と食い違っているところは、担当者によると、遠藤氏から会議の席でも声をかけられ、増員については、事務所の秘書からも直接電話が来たこともあったという、こういうところが今の御説明と食い違っているので、ぜひ委員長、この担当者のこの委員会への出席と面談記録の公開、この委員会に提出をしていただきたいということをお願いします。(発言する者あり)いや、そうすれば証明できるんですよ、ちゃんと、説明が正しいのかどうか。

 私は断定しているんじゃないんですよ。証明するために、この委員会への出席と今の記録の提出を求めたいと思います。

竹下委員長 後刻、これは理事会で協議をさせていただきます。

松野(頼)委員 本論に入りたいと思います。

 お配りさせていただいた資料一をごらんください。定数削減について伺いたいと思います。

 まず、これは昨日の新聞ですけれども、自民党の谷垣幹事長は衆議院選挙制度に関する調査会の答申に対して、一票の格差是正を優先させ、定数削減を先送りする考えを二日の記者会見で示されたということです。

 これは、総理、自民党の総裁として、今回の選挙制度調査会の答申を先送りするということを決められたのかどうか、お答えいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 先日、衆議院選挙制度に関する調査会の答申が取りまとめられ、大島衆議院議長から、各党の御理解を得て、この国会において結論を得るべく最大限努力するとの意向が示されたところであります。

 各党各会派がこの答申を尊重し、選挙制度改革の実現に向けて真摯に議論を行い、早期に結論を得ることによって国会の負託にしっかりと応えていくべきと考えております。

 自民党においても議論がスタートしたところでありますが、私はこの答申を尊重すると申し上げているわけでありまして、その上に立って議論が行われ、しかるべく結論が出てくる、このように私は考えているところでございます。

松野(頼)委員 随分過去の答弁と比べると緩いですよね。

 我々維新の党は、一昨年の衆議院選挙で、身を切る改革を訴えて、国民の皆さんから八百五十万票という得票をいただきました。そういう中で、文書交通費の公開、そして企業・団体献金の禁止、これは、法案が通らなくても自分たちでやればできるということを実行してきました。

 企業・団体献金の禁止に関しては、ことしの一月からもう実施を始めました。また、議員定数の三割削減、選挙で公約をしました。そして、議員歳費の三割削減、これも公約をしましたので、法案を提出しました。

 ただ、残念ながら我々は過半数の議席を持っておりません。ですから、すぐに実行できるわけではありませんが、私たちは、とにかく選挙で訴えたことはひたすら言い続ける、言い続けることによって実現するまで持っていく、これしかないと思うんですね。ですから、申しわけないが、このことは言い続けさせていただきたいと思っています。

 そこで、総理、思い出していただきたいのは、資料二をごらんください。議事録をつけてございます。

 二〇一二年の十一月十四日、当時の野田総理と安倍総裁が党首討論で行われた議論です。

 当時は、野田総理が解散を約束する前提として定数削減を提案し、総理はこのように答えているんですね。「私たちは、まずは〇増五減、これは当然やるべきだと思いますよ。そして、来年の通常国会において、私たちは既に、私たちの選挙公約において、定数の削減と選挙制度の改正を行っていく、こう約束をしています。今この場で、そのことをしっかりとやっていく、約束しますよ。」

 もう、一回解散して二つ目の国会になっているんですよ。当時、これは実行されないままに解散をされました。

 そして、我が党の案というのは、当時、自民党が野党の時代にJ―ファイルという中でこのようにおっしゃっているんですね。「衆議院・参議院の国会議員定数を三年後に七百二十二名から六百五十名に一割削減し、六年後には、国会議員定数を五百名に三割削減します。」資料三でつけてあります。

 こういうふうに公約されているんですよ。いい公約じゃないですか。野党のときにはこれだけ歯切れがいいんですよ。

 にもかかわらず、いまだに国会議員の定数、〇増五減しか衆議院ではやっていないじゃないですか。なぜこれをしっかりやられないのか。今、検討するとかいうふうにおっしゃっていましたけれども、受け入れていかなければならない、こういう人ごとのようなことをおっしゃっていますが、自民党はこうやって公約しているんですよ。

 そして、それは次の国会までに必ずやるんだ、公約しているんだからやるんだというふうに党首討論でおっしゃって、野田総理が解散しているんですよ、その約束を守って。

 いまだにやられていないじゃないですか。ぜひ、これはなぜそういう立場なのか、もう一回御答弁いただけないでしょうか。

安倍内閣総理大臣 経緯を申し上げますと、まず、今、松野委員がお示しになったのは、当時の自民党、野党時代の自民党でございました。そしてその後、私が総裁になって、そして、次の総裁選挙においては、我々は、比例の三十減という考え方をお示しさせていただいたところでございます。

 そしてまた、くだんの私と野田総理の党首討論においては、このように申し上げたはずであります。まさに選挙制度というのは民主主義の土俵でありますから、この土俵をつくるに当たっては、少数政党、例えば共産党や社民党等も含めて少数政党の意見も聞かなければならない、私と野田さんがここで決めていいということにはならない、しかし、同時に身を切る改革を進めていかなければいけませんからしっかりとやっていこうということをお話しした。

 そこで、民主党政権、三年間、全然、〇増五減すらできなかったんですよ、はっきりと申し上げて。我々は、それをやりますと言って、野党ではありましたが、この〇増五減が実現をしたんですね。三年三カ月できなかったことが、我が党が政権をとったら直ちにできたわけであります。民主党はできなかった。民主党は全然できなかったんですよ。一人も減らしていない。これはびっくりしますね。しかし、私たちはしっかりと、〇増五減でこれをまずは実現したところ、五人ではありますが、これを実現したところであります。このことはまずしっかりと押さえておいていただきたい、こう思う次第でございます。

 そして、その上に立って、先ほど申し上げましたように、民主主義の土俵を決めることでありますから、ここは、我が党が過半数を持っているからといってそれは全て押し通してしまっていいというふうには考えていないわけでありまして、これは、各党各会派が集まって、大体議論が収束してくればそれにこしたことはないわけでありますが、残念ながらそうはならなかったわけでございます。

 そこで、議長のもとに第三者機関ができて、今回答申がなされたわけでありますから、それをしっかりと尊重していくということを申し上げているわけでありまして、尊重していく、こういうふうに私が申し上げているわけでありますから、その中において自民党においても議論が進められていくもの、このように考えております。

松野(頼)委員 これは党首討論の議事録ですから、こういうふうにおっしゃっていることは事実なんですね。次の、来年の通常国会において、私たちは既に、選挙公約において、定数の削減と選挙制度の改正を行っていく、こうお約束をしています、そのことをしっかりやっていく約束をしますよと。これは党首討論の議事録ですから、総理、このようにおっしゃっていることは事実なんですね。

 やろうじゃないですか。来年、国民に消費税の増税を押しつけるんですよ。もう既に八%に上げているんですよ。これだけの増税を押しつけていながら、我々国会議員だけがのうのうと同じ数、同じ歳費をもらい続けて、とても納得いかないと思いますよ。みんな痩せ我慢してでもそれはやるんですよ、増税を押しつけるならば。私はその姿勢が必要だと思いますけれども、何でここではっきりとお答えにならないのか。

 資料の次を見てください。資料の六ですね。

 総理は、去年の二月二十日の衆議院予算委員会でこう答弁しているんです。

 党の代表として、我が党にも慎重な意見もたくさんある、しかし、答申が出たら賛成することを決めたと。「私は党の代表として、我が党にも慎重な意見もたくさんありますよ、しかし、これは賛成するということを決めました。」というんです。

 ぜひこの場で、せめて、十人ですよ、たかだか十人、国会議員の定数、今回の選挙制度調査会の出した答申は。たった十人ぐらい、この答申どおり、アダムズ方式をきちっと採用して、一票の格差がこれから少し楽になるように、と同時に、比例区を四切る、たった十人の今回の選挙制度調査会の削減ですから、この場でもう一回明言してくださいよ、やりますと、わかりやすく。ぜひお願いします。

安倍内閣総理大臣 先ほどから私が御説明をしているとおり、残念ながら、まず政党間、各会派の議論は収束はしなかったわけであります。それは事実であります。皆さんもその事実を重く受けとめなければいけませんよ。だからこそ、これは議長のもとに第三者機関をつくるということを私が決めたんです。そういうことを私が決めた。そして、各党各会派にも……(発言する者あり)済みません、少し静かにしてください、大切な話をしているんですから。

 各党各会派において、これは残念ながら話がまとまらなかったのは事実でありますが、そこで、議長のもとに第三者機関を置くことになった。これは私もお願いをした一人でありますから、出てきた答申については尊重しなければならない、これは当然のことであります。そこで、答申をいただいた中において、私もそのように申し上げている。

 そこで、今、自民党においては議論がスタートしたばかりであります。議論がスタートして、そして当然私が申し上げたことを踏まえながら議論が行われていきます。同時に、これはやはりしっかりと議論を行って、みんなが納得する形にしていく必要があるんですよ。

 そして、今、松野代表は、たった十人という言い方をされましたが、しかし、これは議員としては十人かもしれませんが、その地域は大切な代表を失うんですよ。そういう地域の方々のこともやはり念頭に入れていく必要があるんですよ。たった十人、これは議員の首を切るという意味においては十人でありますが、その議員が選ばれてきている地域は一人の議席を失う、自分たちの声を国会に反映させていく議席を失うということも考え、その重さをかみしめながら議論をしていくというのが我々自由民主党なんですよ。

 そこは簡単に右や左ということではない、そう軽々しく扱うべきではないというのが私の考えであります。

松野(頼)委員 私、それは委員として、会派代表者として二年何カ月、何回も出ているんですよ、その会議に。そんな議論はもうさんざんしているんです。議運でも、答申には従いましょうねといって議運で決定して、この調査会を伊吹議長のときにつくったんですよ。そのとき私も会議に出ていますから、そんな議論はもうさんざんしているんですよ。

 そうじゃなくて、総理のこの答弁どおりにやるのかやらないのか、自民党は賛成するのかしないのかを聞いているんですよ。それを聞いているんです。各党各会派を取りまとめる話をしているんじゃないんです。私は党の代表として賛成することを決めましたという去年の答弁どおりにやるかやらないかを聞いているんですよ。ぜひお答えください。そうじゃなきゃ、この答弁、修正しなきゃいけないですよ。

安倍内閣総理大臣 やるかやらないか、そればっかしですね。

 そうではなくて、この問題の課題の重たさをしっかりとかみしめながら、同時に、我々自由民主党というのは決められない政党ではない、やれない政党ではないんです。ずっと私たちは結論を出してきたからこそ、今政権を担っている、そして国民の皆様の一定の支持を得ることができているんです。必ず我々は結論を出していきます。

 そして、私は、尊重するということを申し上げているわけであります。そこで……(松野(頼)委員「賛成するんですね」と呼ぶ)松野さん、自民党においても、まずは議論をさせてくださいよ。その上において、最終的に私が決めますよ、それは。

 最終的に私が決めますが、議論する前からこうしろということは、それはやはり開かれた政党として避けなければいけない。常識を私は申し上げているわけですよ。私がここまで言っているんですから。自民党というのは、しっかりと落ちついた議論もしますし、決めるべきときにはちゃんと決めていきます。

 先ほど申し上げましたように、それは、理事会の中では話をしていたでしょう。でも、対象の選挙区となった人々もいます。その皆さんの前で納得できる議論をまず行わなければいけないんですよ。その上において、最終的な判断をしていく。こうした判断も含めて、我々はいつも選挙で国民の審判を受けているわけであります。その思いに立って、私は今こうやって申し上げて、お答えをしているところでございます。

松野(頼)委員 いや、総理、議論はさんざんしているんですよ、さんざんしているんです。少なくとも、石破大臣、出ていらっしゃいましたよね、その会議に、自民党の会派代表者として。私も出ました、伊吹議長のときに。さんざんしていますよね、この議論は。今さら、この答申が出たから議論させてくださいよという話じゃなくて、もう何十回もやっているんですよ、これは二年何カ月もかけて。もっと言うと、三年もかけてやっているんですよ、こんなことは。

 今さら、これから議論させてくださいという話じゃなくて、少なくとも、この予算委員会で去年の答弁と同じことを言えばいいじゃないですか、自民党として賛成するからやろうじゃないですかと。たった十人ぐらいの国会議員を切るような話ですよ。国民に増税を押しつける前に、せめてやろうじゃないですか、これ。違いますかね。何でここで歯切れよく答弁できないんでしょうか。

 私は自民党の総裁として今回の答申どおり賛成します、そうおっしゃってくれればいいんですよ。もう一回答弁をお願いします。

安倍内閣総理大臣 繰り返して言いますけれども、松野さんは、たった十人の国会議員、国会議員だけを見ていればそれは十人かもしれません。しかし、国会議員がそれぞれ選出をされている地域があるんですよ。その地域の人々は、自分たちの代表を失う、自分たちの声が届かなくなっていくんですよ。

 例えば、今回、被災地においても、多くの方々が亡くなった、あるいはふるさとを離れている、そういう関係から議席が減っていくわけですよ。しかし、なぜそれでも議席が減っていくかということをまずは理解していただく。そういう議論を飛び越えて、いきなりこれは出たからすぐにというわけにはいかない。

 でも、同時に、私が申し上げたことの重さは私が一番よくわかっていますよ。そこで、当然私もその重さをよくわかっています。しかし、大島さんも、これはまず各党においてちゃんと議論していただきたい、これは当たり前のことじゃありませんか。

 我が党の代表としては、当時幹事長であった石破幹事長も出ました、そして現在の幹事長も出席をさせていただきました。党を代表してさまざまな議論をしていますよ。でも、そこでは、我が党は我が党のもともとの案について主張もさせていただいたわけであります。残念ながら、我が党の主張は通らずに、この案が出てきたわけでございまして、そこに出ていった我が党の人々が納得して直ちに帰ってきたということではないわけでありますが、ただ、答申が出た以上、それを尊重するというのは、もう今まで私が申し上げてきているとおりであります。

 そして、ここで賛成と言うか反対と言うか、それはそういう話ではなくて、まさに我が党において、先ほど申し上げました、こういう重い課題についてはちゃんと議論をしていく。こういうプロセスを抜いてはいけないんですよ。大切な民主主義の土俵をつくるんですから。こういうプロセスを抜いてはならない。

 しかも、ここで私が答えなければいけない話ではないんですよ。しっかりと次の選挙、行われる選挙においてそれがちゃんと反映をされていくということも含めて、これが大切な点なんですよ。

 ですから、ちゃんと私たちは結果として出していく、そしてそれを法案として出していくということはもう申し上げているとおりでありまして、その点においては、ちゃんと私たちも尊重していくわけであります。

竹下委員長 時間が超過しております。松野君、よろしく。

松野(頼)委員 時間が来ましたので終わりますけれども、去年こうやって答弁しているじゃないですか。このとおりやってくださいよ。これをお願いしているんです。自民党として賛成する、こういうふうに言っていただければいいんですけれども。

 ぜひ委員長、今の答弁とこの答弁の整合性も、後で理事会でちょっと、違うことを言っていますからね、去年と。ぜひそこは精査していただきますことと、しっかり定数削減をやっていく、増税までにやっていくということをぜひお約束していただきたいということを強く申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

竹下委員長 この際、石関貴史君から関連質疑の申し出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。石関貴史君。

石関委員 おはようございます。維新の党の石関貴史です。

 まず、先日、天皇陛下、皇后陛下、両陛下がフィリピンを御訪問されました。私も報道で、現地で高齢の日本人の皆さんが陛下に接せられて涙を流されている様子などを見て、やはり陛下の存在のありがたさというものを改めて考えたところでしたが、この御訪問の前に、天皇誕生日、陛下みずからが御自身の御高齢に伴う問題についてもお触れになっておられます。

 陛下の日本の象徴としての存在と、しかし公務の極めて多忙な状態であるということについては私も心配をしておりますが、政府として、陛下の御公務の御負担を減らしていく方法を真剣に考える時期ではないかなと思っておりますが、総理、お考えはいかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 陛下の御公務につきましては、陛下も御高齢になられているということも十分に考慮しながら、公務の御負担の軽減については宮内庁においてもしっかりと勘案しながら御日程を決めていられるんだろうな、そのように思います。

 外遊におきましても、多くの国々から陛下にぜひお越しをいただきたいという声がたくさんあるわけでありますが、その中におきましても、やはり重要な国、重要というかそういう国々を、どこに行かれるかということを慎重に検討しながら御訪問先を選んでおられるわけでございます。

 先般のフィリピン御訪問につきましては、長年の陛下の御希望でございました。なぜならば、さきの大戦で多くの日本兵が命を落とし、またフィリピン側も二百万人という多数の死亡者が出た。ぜひ慰霊に赴きたいという強い強い御希望がございました。

 先般のペリリュー島への御訪問同様、なかなかこれは陛下にとっては御負担のあった御旅行ではございましたが、陛下が何とか果たしたい、このように考えておられたんだろう、こう思う次第でございます。

 いずれにいたしましても、御公務の負担軽減等についても、宮内庁においてそれを勘案しながら決定しているんだろう、このように思います。

石関委員 陛下御自身についても心配をするところでありますが、また、皇族方がどんどん減っているということも現実であります。

 総理は、いろいろ報道等を通しても、女系天皇に反対の御意見をお持ちというような報道もされているんですが、これはこれとして、皇位継承を前提としない皇族方を守っていくという意味で、皇位継承を前提としない女性の宮家あるいは内親王家の創設にも反対のお気持ちが強いのかどうか。また、そうであるとすれば、その理由は何なのか。その場合に、安倍総理の皇室典範改正についてのお考え、これをお尋ねしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 皇位継承についてお尋ねがございました。

 安定的な皇位の継承を維持することは、国家の基本にかかわる極めて重要な問題であります。この問題については慎重かつ丁寧に対応する必要があると認識をしており、男系継承が古来例外なく維持されてきたことの重みなどを踏まえつつ、安定的な皇位継承の維持について引き続き検討してまいりたい、このように思います。

石関委員 わかりました。ぜひ慎重に、かつ、しかし大事なことでありますので、御検討を政府としてもいただきたいというふうに思います。

 さて、私、昭和四十七年の二月生まれですので、もうじき四十四歳になるところです。私たちの少年時代のヒーローでもあり、その後も多くの方、ファンもいらっしゃった清原元野球選手が覚醒剤で逮捕ということになりました。これはこの先どういう結末になるのか、それはまだわかりませんが、このことは、私は少年時代のヒーローでありましたが、その後も多くのファンがいらっしゃった。青少年等に与える影響も大きいのではないかというふうに思いますが、総理はどのようにこの事件をごらんになっていますか。

安倍内閣総理大臣 清原選手の場合は、高校時代から大変な活躍をしていました。一度、私も、甲子園の決勝で私の地元の高校がPLと当たり、大差で敗れたことがあったのでありますが、そのときからの大活躍を見て、多くの青少年が胸躍らせる思いであったのではないかと思います。そうした、かつては子供たちのヒーローであった清原氏がこうした形で逮捕されたことは大変残念なことであります。

 また、この事件については、個別の事件でございますからコメントすることは差し控えたいと思いますが、薬物依存対策についても、今後も政府としてもしっかりと取り組んでいきたい、こう考えております。

石関委員 ありがとうございました。

 けさの朝刊、朝起きてこれを見て、ちょっと驚きましたが、これはもちろん通告してある話ではありません、けさの朝刊に載っていたことでお尋ねをしたいことがございます。毎日新聞の朝刊の報道によれば、これは遠藤オリンピック担当大臣にお尋ねをしたいと思います。これは事実かどうかわかりませんので、そういう意味でお尋ねを申し上げます。

 見出しを読むと、「遠藤五輪相に予算化要請」、外国人派遣会社、創業者が九百五十五万円の献金をしていたということで、英語の授業で日本人教師を補佐する外国語指導助手、ALTと呼ばれていますが、この派遣に関して、遠藤オリンピック担当大臣が議員の立場でも大変な働きかけをしてきて、これが成功して広がって、そして献金をもらった、こういう趣旨の報道になっておりますが、こういう事実はございますか。

遠藤国務大臣 お答えさせていただきます。

 先ほど申し上げましたように、きょうの新聞記事は事実誤認に基づくものでありますし、大変遺憾に思っております。

 私は、例えばオリンピック招致とかいろいろな活動で海外に行ったときに、日本人がもう少し英語をしっかり話すことができたら日本の海外の活躍がもっとできるんだろう、そんな思いをずっとしておりました。教育再生実行本部長に就任したときに、学校教育制度とか教師の問題とかいろいろな提言をしたんですが、その中で、グローバル人材育成をしたいということで議論した中で、やはり英語教育と理数教育、それからICT教育、これをまず率先してやることによってそうしたこともできるんだろう、そういうふうな取りまとめをいたしました。

 ですから、ここにございますが、二十五年の四月に教育再生実行本部でまとめた成長戦略に資するグローバル人材育成部会の提言について、TOEFL等、いわゆる読み書きの授業はきちっとやっているんですが、聞いて話す、この授業は……(石関委員「事実かどうかだけで結構です」と呼ぶ)わかりました。

 事実ではございません。

石関委員 明確に、事実ではないという御発言がございました。

 ただ、この毎日新聞社は、そんなにいいかげんな報道機関ではないと思いますので、何かに基づいてやられているはずですから、しっかりした報道機関だと思います。

 これは残念です。こういう質問をせざるを得ないということ自体が極めて残念で、私もいろいろ研究をして自分で用意した質問がありましたが、このことで時間がとられるということも残念だと思っています。

 ただ、甘利前大臣は辞任をされましたが、そのときの報道ぶりやそれから世論を見ていて、私は大変心配になりました。これは、遠藤大臣のお話は事実でないというお話ですし、これから報道を通じても、また我々も国会の仕事として、やはり真相究明をしていかなきゃならなくなってしまったというふうに思っています。

 維新の党と民主党と共同で、甘利前大臣については引き続き真相究明のチームもまだ活動しております。ここに、残念ながら遠藤大臣もこの追及の、真相究明の中に入れてやっていかざるを得ないということになってしまいました。

 甘利大臣辞任のときに、私は……(発言する者あり)静かにしてくださいよ。やりましたけれども、私は大変よくないなと思ったことは、疑惑があって、そしてまだ疑惑が継続している中でおやめになった。ただ、多くの報道が、潔いとか矜持だとかそういう見出しで、世論もそういった度合いが強いような感じがいたしました。

 今、アベノミクスによって、いいデータも悪いデータも確かにあります。ただ、景気がよくて勢いがよければ多少のスキャンダルはいいなというような風潮がもしあるんだとすれば、これは大変ゆゆしきことだというふうに私は心配をしています。

 スキャンダルばかりやるなと。スキャンダルばかりやっているわけではありません。景気をよくする、私たち自身の、国民の生活をよくする、政治の大事な大事な仕事です。ただ同時に、法と秩序を守っていく、正義を実現していくということも政治の大事な仕事だと私は思っています。

 これはぜひテレビをごらんの国民の皆さんにも考えていただきたいと思います。景気がよければいいんだ、多少の不祥事があってもいいんだ、こういう発言を堂々とされる方は私はいないというふうに思います。お子さんに聞かれたときに、国会でこんなことをやっているけれども、お父さんどうなんだ、お母さんどうなんだと。いや、こんなことはちっちゃいことだ、景気さえよければいいんだ、こんなことを堂々と言える大人はまずいないと思いますし、もしこんなことがあれば、そういったお子さんたちがどういう影響を受けていくのか。

 こういうことも含めて、不祥事として取り上げられること自体が問題ですので、ぜひ襟を正してやっていただきたいと思いますし、事実がこうでないと言うんだったら、これをしっかりと、国民全員が納得がいくように、また今後も説明に努めていただきたいというふうに思います。

 総理に今度は御質問申し上げますが、きのうの民主党岡田代表との質疑の中で、安倍内閣の政策が政治献金で影響を受けることはないと断言をされていますが、このケースに関してもないと。改めてお尋ねをいたしますが、そういうことでないということでよろしいんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 遠藤大臣から答弁をいたしましたが、遠藤大臣は、これは事実誤認である、このように言われているわけであります。

 再三申し上げますが、いわば私たちの政策がお金によってねじ曲げられることは決してない、今までもなかったということははっきりと申し上げておきたいと思います。

石関委員 次の議論に移ります。

 年金についてやらせていただきたいと思いますが、閣僚の皆さんの中で、年金受給資格があって、年金をもらっていますよという皆さんは手を挙げて教えていただけますか。

 全大臣への質問です。手を挙げるのが失礼とか慣例にないということであれば、出てきていただいて、私はもらっていますと答えていただいて結構です。(発言する者あり)

 いや、おかしくないと思いますよ、別に。事前通告はしていますよ、全大臣ですから。まあ結構です。もらっている自覚がない方もいらっしゃるのかもしれないし、私の質問の仕方で答えられないという方もいらっしゃるかもしれません。

 ただ、年金の問題、導入でやらせていただきましたが、たくさん収入があって年金ももらっているという方もいれば、年金は今要らないから少し先でもらおう、こういう方もいらっしゃるというふうに思います。

 日本の年金制度は、安倍総理のおじいさんである岸信介元首相の時代に制度を導入されました。昭和三十三年、これは皆保険制度ですね。福祉、社会保障制度、岸総理はこういったものにも関心が深かったというふうに聞いておりますが、そのお孫さんである安倍総理が、岸元総理に始まる社会保障の制度、年金制度、こういったものについてどういう基本認識をお持ちなのか、お伺いいたします。

安倍内閣総理大臣 今御紹介いただいたんですが、岸内閣において国民皆年金制度がスタートしたわけでございますが、ちなみに、岸内閣において最低賃金制度も生まれたわけでございます。このことは余り国民の間に知られていない事実だろうと思います。

 つまり、大切なことは、いわばセーフティーネットをしっかりとつくっていくということであります。文化的な生活をさまざまな状況の中にあっても保障していくことの重要性なんだろう、こう思うわけであります。いわば、皆年金においては、引退した、ある年齢で退職した後も最低限の生活は保障される、こういう考え方のもとに導入されたもの、こう思っております。

 また、当時は、いわば日本は敗戦という状況の中で、財産的な蓄積というものを残念ながら形成されていない人たちも多かったわけでありますし、根っこからそういうものを失った人たちも多々おられた中にあって、そうした仕組みをつくっていくことが社会の安定そして国家の発展につながっていく、こう考えたのではないかと思います。

石関委員 大事なものだという認識は、総理も国民も全部共有しているということであると思いますが、端的にこれは総理にお伺いしますが、今の年金制度、これからも大丈夫なんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 年金制度の持続性についてでございますが、年金制度の持続性を確かなものとするために、我々は種々の改正を行っていったわけでございます。

 その中で、例えば、現在はマクロ経済スライドというものを導入させていただきまして、インフレ率に十分に、年金は、〇・九%までは、これはふえていかないということになるわけでございますが、ということによって、受給調整によって、年金財政においての安定性を得ることができているという中において、また、現在、積立金も百四十兆円近く積み上がっているわけでありますし、GPIFの運用もプラスで推移をしております。また、安倍政権になって、三十一兆円、運用益が出ているわけでございますので、そうした観点から見て、年金制度というのはしっかりとしたものである、このように考えております。

石関委員 制度は今御説明のとおりで、制度は大丈夫だということであると、これは総理のお考えということですが、私の年金は大丈夫ですかと聞かれたときには、総理はどうお答えになりますか。

安倍内閣総理大臣 年金については、当然、お一人お一人が年金保険料を払っている、その保険料に対応する保険をしっかりとお支払いしていく。年金の記録等、さまざまな問題がございましたが、そういうことで、しっかりともらえる、しっかりと払っている保険料に対して、得るべき年金が得られないということにならないように、我々もしっかりと対応していかなければならない、このように考えております。

石関委員 両方丁寧にお答えをいただきました。

 私の問題意識は、老後の生活の基礎になるこの年金制度を維持していく、運用のお話まで今されましたけれども、制度を維持していくためには、総じて年金給付全体を抑制していかなければいけない、こういうことだと思います。これを行わなければ制度が維持できない。

 そのためには、年金給付を抑制するための仕組みであるマクロ経済スライド、国民の皆さんがどこまでこのなかなか難しいシステムを本当に御理解いただいているか心配なところもありますが、これは全体の給付を抑制していく、こういう仕組みですよね、マクロ経済スライド。これを発動させない限りはこの制度が持続しない、こういうことであります。

 しかし、同時に、私たち国会議員、政治家としてよくよく考えなければいけないことは、どこを削ってどこを余り削ってはいけないのか。そういう意味で、年金制度と年金というふうにお尋ねをしました。

 年金制度を維持していかなければ年金がもらえなくなって元も子もなくなりますが、じゃ、その年金自体、この制度と今の人口構成によって実質的に目減りをしていくということになりますので、年金制度は維持できる、持続をするけれども、あなたの年金はしかし目減りをして減っていきますよ、こういうことだと思います。

 厚生労働省の財政検証によると、このマクロ経済スライド、全体の給付を抑制する制度によって、老後生活の基礎中の基礎である基礎年金の方が、二階部分である厚生年金報酬比例部分より大きく削られるという結果が出ています。これは、私は生活の基礎になる年金としては絶対におかしいと思うんです。

 もう一度言いますが、年金財政、年金の制度が維持されるということは、家計や国民の側から見れば、年金が実質的に減っているということです。年金制度は大丈夫ですが、あなたの年金は減っていきますよというのが今の制度ではないんでしょうか。いかがですか。

塩崎国務大臣 先ほど答弁を総理から申し上げたように、マクロ経済スライドにつきましては、つけ加えておくべきことは、いわゆる名目下限措置というものがあるということと、それから、代替率は五〇%でほぼとめるということが同時に決められているということを申し上げなければいけないので、それが、少なくとも年金をいただかれる方々の、言ってみれば、前年よりも下げないということを守りながらやっていこうと言いながら、将来世代と今の世代をどうするかという問題だと思います。

 今、基礎年金についてのお話がございましたが、基礎年金についても、やはり保険料の上限を固定してマクロ経済スライド調整を行うということが、実は、先ほど先生がこのマクロ経済スライドをやるのは持続性のためだということをおっしゃいましたが、まさに基礎年金についても同じことが言えるわけでありまして、このことを守ることはやはり不可欠であるわけでありますが、それが社会保障制度の中の年金への信頼につながるわけです。

 したがって、先ほど申し上げたように、それでも名目下限措置というのは守るということを申し上げているわけでありますし、全体としては、厚生年金も含めば、所得代替率は五〇%でとめるということでございます。それから、八割ルールというものもあって、既裁定者についての配慮もしているということでございます。

石関委員 今の大臣の御答弁のとおりだと思いますが、国民の皆さんにはもっとわかりやすく言うべきだと思うんですよ。

 繰り返しになりますけれども、今の制度、政府の側は決まって、二〇〇四年の年金改正で今のマクロ経済スライドを導入したことによって年金財政は持続可能になりましたということですが、繰り返しになりますが、年金財政、制度は持続可能になったけれども、受け手の側からして、国民の側からすると目減りをしていく制度になっている、減っていくということは事実なんですよね。

 いろいろな経済の成長のモデル、ケースを置いていますが、低いケースでいえば、どんどんどんどんさらに減っていくということになりますし、基礎年金でいえば、現在六万円ちょっとのところが三万円台から四万五千円ぐらいになっていく。であれば、基礎年金しかもらっていない方々が、とてもじゃないけれどもこれで生活の糧、中心になるというものではなくなっていくということが明らかになっています。

 私は、今、わかりやすい言葉でというふうに申し上げましたが、だから、閣僚の皆さんに年金をもらっているかどうか聞いたんです。いっぱい収入があって年金をもらっている人ならまだいいですけれども、年金しかない、基礎年金しかない、こういう国民の皆さんの立場に立ってどうやっていくかというのが、私は政治の最低限の仕事ではないかなと思います。

 例えば、これをどうにかするには、保険料を納める期間をさらに長くするとか、あるいは、お金持ちの方には基礎年金を我慢してもらって、所得の本当に少ない方々にその部分をあてがっていくのかとか、こういったことを正直にわかりやすく国民の皆さんに知っていただいて、国民の皆さんの生活実感と一緒になって考えていくということが、私は政治の姿勢として大事なのではないかなというふうに思っていますが、総理のこういったことに関する基本的な考え方を教えていただけますか。

安倍内閣総理大臣 年金の考え方についてでございますが、いわば、国民年金とそして厚生年金が、基礎年金と厚生年金があるわけでございますが、年金につきましては、基本的に、ある年齢を迎えて退職をし、そして年金の受給年齢になって受給がなされるわけでございますが、国民年金だけにおいて生活をしていくことはなかなかこれは難しいわけでございます。

 つまり、それは当然、厚生年金に入っておられる方と掛けている額が、支払っている額がそもそも違うわけでございまして、厚生年金を足して所得代替率五〇%であれば、それはもう現役ではない、あるいは子育ても大体終わっているという中においては生活していくことができますねということと、あるいはまた、ある程度の資産は形成されているだろうという前提もあるわけでございます。

 もちろん、そうではない方々もたくさんおられるということは承知をしておりますが、しかし、この年金については、どれぐらい負担してどれぐらいの年金を得るか、これは給付と負担、年金を支える方も国民であるわけでありますから、支払い手においても納得していただける額でなければならないという難しさがあるわけでありまして、給付を多くしたいという気持ちがありますが、同時に、それは現役世代の年金の料率を上げていくということにつながっていくという、この給付と負担のバランスの中で大体御納得いただけるという水準について、我々は、常に議論をしながら年金の改定を行ってきたところでございます。

 今後、マクロ経済スライドが発動されるわけでございます。しかし、これは絶対額が減るというよりも、所得代替率は減っていくわけでありますが、いわば伸びには、まあ今は〇・九%でありますが、それにはついていけないということでもあるということは御承知おきをいただきたい。

 ただ、デフレについては、我々、デフレスライドは長い間させていなかったんですが、年金財政を維持するためには、これはある程度痛みを分かち合うということで、この特例をやめまして、先般、デフレにスライドをさせていただいた。これは実際に目減りをするということになるわけであります。

石関委員 ボードを見ていただくと、やはり低所得者ほど負担が重い年金保険料というのが現実の数字で出ています。逆進性があると言ってもいいと思います。こういう保険料を払いながら、しかし、将来、生活が不安だと。

 最近、総理も新聞をお読みになられていますよね、雑誌を読む時間があるかどうかはわかりませんが、雑誌の見出しを見ると、下流老人とか下流転落防止マニュアルとか、こういうものまでたくさん記事が出ています。これほどやはり将来に対して国民の皆さんが不安になっている。アベノミクスの成果を総理は強調されますし、そういう数字も一部にはありますが、やはり国民の生活実感としては将来が不安だ、こういう方々が大変多いように思います。

 もう一つボードを出しますが、可処分所得の減少というのも、総理が強調されるアベノミクスの成果の反対側です。確かにこういう数字が出ていますし、この中には、社会保険料が激増しているということと照らし合わせると、生活実感は相当悪化をしているところが、私は国民の大宗にあるのではないかというふうに思っています。

 さて、アベノミクスの成果。余りこれをやると、これまでの議論を見ていても、結論になるようなものではありません。

 ただ、私の実感としては、株価が上がりました、しかし、株を実際に持って運用している皆さんは、国民の中で大体十人に一人ぐらいですよ。本当に実益を得ている人がどれだけいるのかということもあるし、私は、アベノミクスの一つの実感としては、これは駆けつけ一杯のビールのような高揚感、気持ちよさはあるけれども、ああ、おいしい、しかし、この先どうやっていくか。この年金問題も含めて、こういったものを着実に解決していくということが国民生活の基盤に私はより大事な問題ではないかなというふうに思います。

 もう一つ、これは時間がなくなってしまいました、遠藤さんの件もあって。それで、私がやりたかったのは、保育、介護、これらの人材の確保。この問題について、総理も所信で述べられておりましたが、幾ら施設をふやしても、保育士さんや介護士さんがなかなか集まってくれない、こういう問題がございます。

 これについては、今、こういったもの、医療もそうですが、入り口で、インプットで規制をすることになっています。介護士さんが何人、保育士さんが何人、ここにではお金を幾ら、税金と保険料や保育料、こういうことになっていますが、これはぜひ日本でも、出口、アウトカムというそうですが、そこの施設に入ったり、保育園に入ってよかったかどうかということを評価して、そのことに対しての税の投入ですとか、あるいは保険料や保育料、こういう形に変えていかない限りは負担はふえていく一方ですので、もうこれで、お金をつけてください、待遇をよくしてください、幾らこう言っても、もう医療も年金も介護もどんどんどんどん負担が増していって、税収がそれに伴ってふえていく環境でなければどうにもならない。

 よりよい施設の評価をして、そこに対して集中的に支援をしていく、こういう形にしない限りは、この人材、私は改善しないと思います。

 医療の診療報酬についても、医師会とかそういうところに行くと、大体の議員は、診療報酬の改定で頑張りますと言いますけれども、この図を見てもわかるとおり、もうのり代がないわけですよ。どこからそれを持ってくるのか。

 だったら、診療報酬、日本では、やぶ医者にかかっても、すごい名医にかかっても診療報酬は同じですよね。誰かが評価をして、いいお医者さんには余計報酬が行くような、いい保育園には余計報酬が行くような、いい介護施設には余計に税金が投入されるような、そういったある種の第三者の機関とかそういうもので評価をして、そこに、インプットではなくてアウトカムに対して、結果に対して税を投入していく、こういう仕組みに変えない限りは、私は、この今の状況は全く改善できないというふうに思いますので、ぜひこれも改善をいただきたいと思います。

 一言だけ、総理、いただけないですか。

安倍内閣総理大臣 今委員がおっしゃった医療については、いわばそれを成果に対しての評価に変えるべきではないか、これはハーバードのポーター教授も提唱しておられる考え方でありますが、そうしたことも含めながら、今後、不断の改革を行っていきたい、このように考えております。

石関委員 ありがとうございました。

竹下委員長 この際、山尾志桜里君から関連質疑の申し出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。山尾志桜里君。

山尾委員 山尾志桜里です。

 まず、きょうの遠藤大臣にまつわる報道を受けて、総理にお尋ねしたいと思います。

 総理は、二月二日、衆議院の本会議において、安倍政権の政策が政治献金によって影響を受けることはありませんとおっしゃいました。そして、きのうこの場で、我が党の岡田代表とのやりとりの中で、疑うなら根拠を出しなさいというようなことを再三おっしゃったように思います。

 これは、きょうの報道、それをどのようなレベルの質の根拠と受けとめるかどうかはこれからの議論によってくると思いますけれども、またお金の力で政策の道筋がゆがめられたのではないかという疑惑を国民に与えるような報道がなされました。それを受けても、総理、きょうもまた、安倍政権の政策が政治献金によって影響を受けることはありませんとおっしゃいますか。

安倍内閣総理大臣 それはまだ報道の段階でありますし、かつまた、遠藤大臣は、それは事実誤認だ、こう申し上げましたね。

 報道も間違えることはあります。私も随分今まで間違った報道による攻撃をなされてきたわけでありますが、多くの報道に対して、それは間違っているということをはっきりと証明してきました。だから、ここに私は座っているわけであります。

 遠藤大臣も、先ほどはっきりと、事実誤認だ、このように言っているわけでありまして、繰り返しになりますが、安倍政権はお金によって政策をねじ曲げるということはないということは、改めてはっきりと申し上げておきたいと思います。

山尾委員 では、遠藤大臣の方に。

 事実誤認とおっしゃられますので、今本当にこの朝刊の報道しか大きなものはございませんので、ちょっと一つ一つ事実を粛々と確認させていただきたいというふうに思います。

 まず、個人献金の件なんですけれども、二〇一〇年から二〇一四年の五年間で、創業者と言われる方から計九百五十五万円の個人献金を受けている。これは事実ですか。

遠藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、十数年前、友人の紹介でお会いをして、それから思想、信条的にも共感できるということで御支援をいただいておりますから、今あったことについては、政治資金をいただいておりますし、きっちりと法令に基づいて処理し、報告をさせていただいております。

山尾委員 受け取って、しっかりと法にのっとって処理している、こういう趣旨でよろしいんですね。今、はいと言っていただきましたね。

 それでは、この創業者の方からパーティー券の購入をしてもらっていたりとか、あるいは派遣会社からパーティー券の購入をしてもらったり、これも事実としてあるということでよろしいですか。

遠藤国務大臣 正確な数字はわかりませんが、あると思います。

山尾委員 これは正確に今後確認していただきたいと思います。

 お金とパーティー券ということについては、大筋これは事実としてはあるんだろうというお話でありました。

 次に、大臣が、議員として、あるいは自民党の教育再生実行本部長として文科省にALTに関係するようなこと、職責として働きかけをするということは一般論として当然あり得ると思うのですけれども、ちょっと具体的にここに書いてあることを確認します。遠藤大臣が二〇一三年の九月から十月、教育再生実行会議でALT活用を求めて発言をされたというふうにありますけれども、これは事実ですか。

遠藤国務大臣 お答えいたします。

 先ほど私申し上げましたように、英語教育を進めるためにいろいろな方法を考えました。そして、いろいろな皆さんと議論をしてきました。当然、ALT、JET計画もありますし、皆さんから、ネーティブな表現を子供たちに教えた方がいい、こういう議論もありましたので、そうした事業については進めるべきということについては、再生会議だけではなくていろいろな場所で申し上げております。

山尾委員 このALT、日本人の先生を補佐する外国語を指導する助手の派遣の事業ということです。

 では、ここに「文科省の担当者によると、」とあるんですけれども、ALTをふやそうということについて、遠藤議員から会議の席以外でも声をかけられたことがある、また、事務所の秘書さんからも直接電話が来たことがある、こういうお話が出ているんですけれども、今の流れの中で、これも事実だということでよろしいんですか。

遠藤国務大臣 お答えします。

 先ほど申し上げましたように、いろいろな場でいろいろな議論をさせてもらいました。

 特に、最初、私が、TOEFL等、IELTSとかGTECとか、こういうものを大学の入学試験のかわりにしてやった方がいいというのがもともとだったんです。ごらんいただければわかりますが、最初の提言にはALTは入っていなかったんです。

 それで、いろいろな議論をしているうちに、やはり学校の先生に努力をしてもらうことも大事ですが、時間もかかるので、当面、ALTの皆さん方、それからJET計画で来ている皆さん方、こういう皆さん方に活躍してもらおう、どうすればいいのか、そういうことでいろいろな議論をしましたから、そういうことについて私からも申し上げましたし、報告も受けております。

 それだけじゃなくて、ICT教育やあるいは理科教育についても同じように議論しておりますから、当然、そこはその中で話があったんだと思います。

山尾委員 最初はALTは入っていなかったんだということでございました。

 そしてもう一つ、今のは役所と大臣とのやりとりでしたけれども、派遣会社の役員さんとの間で、遠藤大臣に英語教育のことを随分お話しさせていただいた、こういうお話が出ているんです。役所とのやりとりではなくて、今回出ているこの派遣会社の役員さんとのやりとりの中で、ぜひこういうふうに拡大をお願いしますというようなお話を受けたことはございますか。

遠藤国務大臣 そこは詳しく覚えていませんが、ただ、この記事を見ると、もうその段階ではその役員の方は会社をやめていらっしゃるというふうなことでもありますし、私は直接そういう話は聞いていなかったのではないかなと思っております。

山尾委員 この役員の方は株の保有を通じてこの会社と一定の関係が続いていたというような報道もありますので、そういう報道もあるということをお伝えさせていただきながら、ちょっと先ほど、別の委員の御質問の中で、報道にあるような会社は、二〇一六年、初めてついたALT予算の対象外であるということを大臣はおっしゃっておられました。

 この会社というのはどの会社、名前を挙げていただけますか。確認をされたということなので、どこどこの会社は対象に入っているのかどうかという確認をされたんだと思いますが。

遠藤国務大臣 それは、会社については、それぞれの会社の立場があると思いますから、ここでは控えさせていただきます。

山尾委員 インタラックという会社を確認されたのかどうか。それはいかがですか。

遠藤国務大臣 英語教育の中では、いろいろな会社と話もさせていただきました。

山尾委員 そうすると、大臣は、どの会社について対象に入っているかどうか確認をされたんでしょうか。

遠藤国務大臣 文部省に確認したのは、派遣、請負が対象になるかどうか。対象になっていないということでありました。

山尾委員 そうすると、個別の会社について確認をされたのではなくて、いわゆるこの仕組みの中で派遣、請負という業態が対象に入っているかどうか、ここを確認しただけだ、そういうことでございますか。どうぞ。

遠藤国務大臣 お答えします。

 今お話しされましたように、外部人材ということでありますが、県の直接雇用のみで、派遣、請負については対象外だということを聞きました。

山尾委員 大臣、なぜ派遣、請負が対象になるかどうかということを確認されたんですか。どこかの特定の会社が頭にあって、それが派遣、請負だから、その業態が対象に入っているかどうか、こういう質問をしたとしか思えないんですけれども。いかがですか。

遠藤国務大臣 二〇一六年の予算に入ったということが新聞記事にありましたので、きょう朝、新聞報道を受けて、どういう事業が対象ですかというふうに聞いたときに、先ほどありました外部人材、そこでALTは含みますが、ただ、県の直接雇用のみで、派遣、請負は入っていないということを確認いたしました。

山尾委員 今の答弁はよくわからないんですね。

 先ほどは、私、やりとりを聞いていたときには、要するに、当該会社が今回の対象に入っていないんだ、だから、利益を得ていないんだから、私はそんな利益のためにやったんじゃないよ、本当に英語人材のためにやったんだよということをおっしゃりたくて言っていたのかなと思ったんですけれども、今お聞きをしたら、別に当該会社については調べていないとおっしゃる。業態について聞いただけだとおっしゃるのは、ちょっと不可解だというふうに思っております。聞いたかどうか、どこに聞いたのかということもわかりませんし。

 ちょっとこの件、きょう報道があったばかりですので、大臣もまたこれからいろいろとお調べになると思いますし、また私どもからも聞くべきことは聞いていくというふうに思いますので、しっかりと調べるべきことを調べて、そして公開していただきたいと思います。

 次に参ります。

 先日の予算委員会で総理と待機児童について議論させていただきました。

 総理は、去年十一月六日のスピーチで、ことし待機児童は前年よりふえてしまった、安倍政権発足以来女性の就業者が九十万人以上ふえたから無理もない、その意味でうれしい悲鳴だとおっしゃいました。

 私、先日の予算委員会で、女性の就業者数全体を見ても意味がない、ママ世代の年齢層を見れば横ばいなので、総理の理屈は成り立たないと言いました。総理は、年齢分布については調べてみたいとおっしゃいました。

 二〇一〇年から減少をずっと続けていたこの待機児童数が、安倍政権における二〇一五年に増加に転じてしまった。大変なことです。その原因について、年齢分布も調べずに、安易に女性全体の就業数を取り上げて、無理もない、うれしい悲鳴というふうに浮かれた発言をしている。私は大変びっくりいたしました。

 そこで、総理にお尋ねします。

 調べるとおっしゃっていましたし、事前に質問主意書も出しました、答弁書もいただいておりますが、改めて総理の口から、やっていなかった調査をされて分析された結果をお示しください。

安倍内閣総理大臣 やっていなかった調査というお話でありますが、そうではなくて、あのときは突然、質問通告もなしに数字を聞かれたものでありますから答えることができなかったのでございまして、ここはクイズの場ではなくて、深い議論をする場でありますから、あらかじめしっかりと質問通告するのは当然のことであろうと思います。

 そこで、お答えをさせていただきたいと思います。

 御指摘の講演について申し上げれば、平成二十七年四月時点での待機児童がふえてしまったと申し上げた上で、その理由として、安倍政権発足以来女性の就業者が九十万人以上ふえたことを挙げたわけでございまして、ここからが重要でありますが、その意味でと断った上で、これはまさにある意味ではうれしい悲鳴であるということでございます、こう申し上げたわけでございます。

 そこで、実態としては、安倍政権発足以来九十万人ふえたのでございますが、全体で九十一万人増加しているわけでございますが、年齢別で見ましても、二十五歳から四十四歳の女性の就業者は十九万人増加しています。増加しているんですよ。この変化がその直後の平成二十七年四月時点での待機児童数の増加につながったという考え方を申し上げたわけであります。安倍政権発足以来九十万人以上ふえたと申し上げたのは、政権交代が起きた平成二十四年十月から十二月期と、その講演を行った直近の同期、平成二十六年の十月から十二月期を比べた数でございます。それは、今申し上げましたように、確かに十九万人ふえているわけであります。

 山尾議員が先日、平成二十七年四月の待機児童を論じるに当たり、平成二十七年の女性就業者の一年間の平均の数字を挙げておられたわけでありますが、四月からの保育所の利用申し込みは一般的に前年秋以降に行われることが多いということでございます。そうした意味では、平成二十七年四月の待機児童増加の理由を考えるならば……(発言する者あり)今説明しているところですから。なぜこういう数字か、これは大切なところなんです。これをお話ししないと理解をしていただけないのではないかと思うわけでありますので、もうしばらく聞いていただきたいと思います。

 そうした意味では、平成二十七年四月の待機児童増加の理由を考えるならば、平成二十七年の平均の数字で考えるよりは、保育所の申し込みを行う手前の時期の数字を論じる方が適当であるということを申し上げておきたいと思います。

山尾委員 私が尋ねたのは、二〇一四年から二〇一五年にかけての待機児童の増加原因の分析なんです。二〇一四から二〇一五にかけてなぜふえたのかということを問うているのに、なぜ、たまたまふえている二〇一二年から二〇一四年の数字の増減を総理はお挙げになるんでしょうか。

 私も、今総理がおっしゃっていたことはわかりますよ。二〇一四年四月の待機児童を見るのであれば、二〇一三年の十から十二月期の女性就業者数を見るというのはわかります。これは一理あります。二〇一五年の四月の待機児童者数に対応する中で、二〇一四年の十から十二月期の女性就業者数、ママ世代ですね、これを見るというのはわかります。

 そこで、見てみます。二〇一三年の十から十二月期平均、これはママ世代の就業者数です、千百五十三万人です。二〇一四年、同じです、十から十二月期平均の働くママ世代です、これが千百三十三万人です。ここは二十万人減っているんですね。だから、そこが対応しているんですよ。でも、それをやると減っちゃうから、つじつまが合わないから、なぜか、一四から一五の増加の原因を聞いているのに、全然時期をずらして、しかも二年またぎで数字を出すのはやめていただけませんか。どうぞ。

安倍内閣総理大臣 一三年から一四年は横ばいでありますが、一二年から一三年にかけてはふえているわけであります。そして、一三年から一四年については横ばいでしょう、これは。(発言する者あり)だって、一三年から一四年については横ばいで、減っているのは、一四年から一五年について減っているわけであります。一四年から一五年について減っているのであって、一三年から一四年は横ばいではありませんか。(発言する者あり)だから、一三年から一四年については横ばいなんですが、一二年から一三年についてはふえているわけでありまして、このふえたものが、一五年について、いわば次の年に影響があるというのは山尾議員もお認めになったとおりでありまして、まさにふえてきたものに対してこれが影響がある、こういうことであります。

 同時に、申し込みについては……(発言する者あり)答弁している最中だから、筆頭理事が邪魔しないでくださいよ。

 申し込みについては、いわばこれはふえているわけであります。申し込みについてはふえておりますが、待機児童がどうなったかということについては、これはまさに受け皿との関係によるわけであります。そこのところはやはりちゃんと見ていただきたい、こう思うわけであります。

山尾委員 ちょっと整理しますね。

 少し議論がかみ合ったところもあるんですよ。前年を見るべきだというのは、そういう見方があるんです。

 前年を見ます。二〇一四の前年二〇一三、二〇一五の前年二〇一四、ここは横ばいなんです。横ばいなんですよ。だから、ここは待機児童がふえた理由にならないんです。なぜ時期をずらして、たまたまふえている二年間を切り取るんですか。そんな合理性、どこにもないじゃありませんか。

 総理、もう一つお見せしますね。

 このフリップは、二〇一二年を起点として、二〇一五年までの推移。これはわかりやすいですから、総理、ぜひ見てください。ママ世代の女性の人口と就業率と就業者数の変化をあらわしたものです。これを見たら一目瞭然だから、見てください。

 まず、ママ世代の人口というのは、人口減少、赤いラインです、人口は減っています。就業率は増加しています。人口掛ける就業率である就業者数は横ばいなんです。それは、年に応じて多少微増微減はありますよ。でも、有意な見方をするときはこれは横ばいなんです。だから、一四から一五にかけての待機児童の増加の原因に女性の就業者数というのを挙げるのは、本当に的外れだと思うんです。

 総理が今おっしゃったもう一つの理由、要するに申請者数が大幅に増加した、これはそうだと思いますよ。去年の四月に、私たち民主党政権のときに決めた子ども・子育て新システムがスタートしました。それまでは毎年毎年申請者数は四万から六万の範囲でふえていましたけれども、突然そのふえる幅が去年二・五倍になったんです。だから、待機児童が一気に二〇一四から一五にふえた理由というのは、これはわかるんですよ。それは私も正しいと思います。そこだと思いますよ。

 問題は、そんな就業者数がちょっとふえたとかなんとかといったことじゃなくて、私たち民主党政権のときに決め、そして安倍政権になってそれをやっている、それが去年の四月スタートをして、その結果、働くお母さんたち、お父さんたちも含めてですけれども、これなら子供を預けられるんじゃないかなと思って、申請者数が増加率二・五倍にふえたんです。だけれども、その期待に受け皿をつくるスピードが追いついていないから、吸収できていないから、待機児童がふえているんじゃないんですか。ここが、私、本質の議論だというふうに思いますよ。

 だから、そこをどうやったら吸収できるのか、大きくなった期待にちゃんと応えられるのか、そこを私は総理と議論したいんですよ。それこそ本質をちゃんと見て、一旦言っちゃったことにとらわれたりせずに。

 そこで、お聞きします。

 この間も申し上げたとおり、今、待機児童がふえて、なかなか受け皿となり切れていないというのは、やはり保育を中心とした子育て支援の充実策のスピードが追いついていないからだと思います。

 ここで、やはり軽減税率との関係で大きな懸念があるわけです。軽減税率一兆円のうち六千億は財源未定。一方で、増税を決めたときの国民との約束である子育て支援充実策一兆円のうち三千億、財源未定。軽減税率と引きかえに、やるはずだった、増税するときに国民と約束した子育て支援の充実策が削られるんじゃないか、こういう大きな強い懸念があるわけです。

 そこで、お聞きします。

 総理はこの前、私とこのやりとりをしたときにこう言いました。軽減税率の財源については、二・八兆円から削る、あるいは必要な社会保障から削るということは、もちろん考えていないところでございますと。

 この必要な社会保障について聞きます。まだ財源が見つかっていない三千億、これは全て必要な社会保障に入るんですか。それとも、一部入らないということで削られる可能性はあるんですか、ないんですか。どちらですか。

安倍内閣総理大臣 今の御質問に答弁する前に少し補足をさせていただきますと、平成二十六年四月までの待機児童の数は着実に減少しているんですよ。大きな傾向として、女性の就業者数の増加の要因を上回る形で、保育の受け皿確保の取り組みが功を奏してきたわけであります。(山尾委員「質問と違うことです。これから大事な話があるんですよ」と呼ぶ)山尾さんの話だけを聞けば国民の皆様が誤解するおそれがありますから、今事実を、ファクトは申し上げさせていただきたいと思います。(発言する者あり)ファクトを申し上げたら都合が悪いんですか。

 二十五歳から四十四歳の女性の就業者のうち、待機児童の多いゼロ―三歳の子を持つ方に絞ってみても、平成二十四年十月から十二月期と直近の同期の平成二十六年の十―十二月期を比べると六万人増加しています。これは、同時期の保育所等の申込者数十・七万人増の主要な要因と考えられるわけであります。二十五歳から四十四歳の女性の就業者の増が保育所等の申込者の増につながり、ひいては待機児童の増加につながったと考えているわけであります。

 それでは、今の質問にお答えをさせていただきたいと思います。(発言する者あり)事実誤認については、事実の誤認を正すのは当たり前だろうと思いますよ。

 それでは、お話をさせていただきたいと思います。軽減税率導入の財源については、現時点で……(発言する者あり)よろしいですか。

 軽減税率導入の財源〇・六兆円程度については、現時点で具体的な措置内容が念頭にあるわけではありませんが、与党及び政府の税制改正大綱に沿って、今後、歳入歳出両面にわたって聖域なくしっかりと検討してまいります。そして、軽減税率制度の導入に当たって安定的な恒久財源を確保することにより、社会保障と税の一体改革における二・八兆円程度の社会保障の充実に必要な財源は確保する考えであります。

 また、軽減税率導入の財源確保を目的として、必要な社会保障費を切る考えはないわけであります。

 そして、それと同時に、今、山尾議員からお話があった三兆円のお話でございます。(山尾委員「〇・三」と呼ぶ)三千億の話であります。

 七千億においてはもう既に我々は措置をしているわけでありますが、他方、子ども・子育て支援については、少子化社会対策大綱において、必要な一兆円超え程度の財源の確保については消費税財源から確保する〇・七兆円程度を含め適切に対応するとされているわけでありまして、政府としては、これらの考え方を踏まえて、各年度の予算編成過程において検討していくことになるということでございます。

山尾委員 結局、延々と演説をされていましたけれども、要は、軽減税率のために、二・八兆円の枠外の〇・三兆の子育て支援の充実策、これが削られる可能性を否定しなかった、こういうことであります。

 総理がどこまでわかっているかはわかりませんけれども、この〇・三兆で予定されている子育て支援の充実策というのは、本当に物すごく親にとって大事な大事な、一刻も早くかなえてほしいリストなんですよ。

 例えば、職員配置の改善。職員さんの目がちゃんと届いているかなと。一歳児の職員配置を六対一から五対一にするとか、四、五歳児もちゃんと配置を変えるとか、大事なんですよ。

 保育士さんの給与も、本当に今皆さん、平均より九万も低い給料で頑張っている。それは、預けている親が一番よくわかっています。だけれども、子供がせっかく人間関係を持って、この保育士さんに続けてほしいな、それでも続けられなくてやめちゃう。そんなことがないようにちゃんと、給与アップ、三パーじゃ足りないから五パーにしようとか、延長保育を利用する子供の数が多いところには保育士さんをふやすとか。

 小一の壁とずっと言われてなかなか解消されないけれども、十八時半、六時半過ぎまでオープンしているというのは働く母親にとってとても大事です。こういうところ、遅くまであけてくれる児童クラブをちゃんと応援するとか。

 子供の貧困の改善、総理はやるやると言っているけれども、やれないと何が起きるか。学用品とか給食費とか、こういうものを、今は生活保護世帯に半額だと言っているけれども、そうじゃなくて市町村民税非課税世帯に全額。そういう経済的に苦しいおうちの子供に、学用品とか給食費とか、義務教育のほかにかかるお金を全額出してあげようとみんなで決めたじゃないですか。これだけ大事なリストなんです。この財源が決まっていない。

 お尋ねします。

 きのう、代表とのやりとりの中で、総理は、軽減税率の財源は来年四月引き上げ時までに必ず措置するとおっしゃいました。そこで、聞きます。この子育て支援充実策〇・三兆円も必ず措置するんですか、いつまでに措置するんですか。お答えください。

安倍内閣総理大臣 〇・三兆円については、まさに安定的な財源を確保した上で今後実施していくものであるということでございます。そこで、これについてはまさに自公民において議論をして、そして一〇%に上げるということになった段階においても、まずは七千億円ということが決まっていたわけでありますが、三千億円ということについてはまだそこまでは完全に踏み込めていなかったわけであります。

 そこは、私たちだって財源を確保して行いたいです。でも、我々も同時に、それだけではなくて、子供たちに対しては例えば自由民主党においては幼児教育の無償化ということもお約束をして、それも段階的に実現をしているわけであります。そういうたくさんのメニューの中から、何をしっかりとやっていくべきかということを考える。もちろんその中にはこれも入っているわけでありますが、そうしたものを安定的な財源を得てしっかりと実行していきたい。

 ただ、もちろん、これは財源がなければできないわけであります。しっかりと財源を得ながらそれを実行していきたい、こう考えているところでございます。

山尾委員 さっきのこの〇・三兆円は、三党の確認を得て、去年の二月に安倍政権で閣議決定で自分たちが決めたことじゃないですか。それを、軽減税率は期限を切って、期限はめちゃくちゃ遅いですよね、参議院選挙の後と言っていますけれども。だけれども、期限を切って必ず財源を措置するという。こっちの子供は、子供も入っていますけれどもなんて言いましたけれども、こっちの大事な大事な子育て支援の方は、財源を確保しなきゃいけないわけですからと。必ずということは絶対に言わない。いつまでということも言わない。

 結局、軽減税率の横入りでこの子育て支援充実策は後回しになって、ただでさえ見つかっていないのが、見つからなくて削られちゃうじゃないですか。その可能性を総理は否定しなかった。

 それを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。

竹下委員長 この際、大串博志君から関連質疑の申し出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。大串博志君。

大串(博)委員 おはようございます。民主党の大串博志でございます。

 早速質問に入らせていただきますけれども、総理、ぜひ一つお願いがありまして、これは私、何回か、安全保障の委員会のときも、あるいはこの予算委員会でも申し上げましたが、ぜひ端的な答弁をお願い申し上げたいというふうに思います。質問時間も限られていますのでぜひお願いしたいのが一つと、総理でいらっしゃいますから、ぜひ度量を持って私たちと議論をしていただきたいというふうに思います。

 きょうは、まず憲法のことに質問の順番を変えて、議論させていただきたいと思います。

 昨日の質疑の中で、私、ちょっと驚きましたけれども、総理は憲法問題に関して踏み込んだ発言をされたと思いました。九条の改正に関してであります。

 九条の改正に関して、きのう稲田委員から、憲法九条の二項、これは憲法の学者さんの七割が自衛隊を違憲だと言っている中において現実に合わないのではないか、総理の見解を求めますということを言った。

 これの答弁に関して、総理は、そういう意味におきましては、いわば憲法解釈について、七割の憲法学者が、憲法違反の疑いがある、自衛隊に対してそういう疑いを持っているという状況をなくすべきではないかという考え方もこれあり、また、時代にそぐわなくなったものもある等々述べながら、さきの総選挙においても憲法改正を目指すことは明確に示しているわけでございます、こういうふうに言われています。

 もちろんこの後に、国民の議論が必要だとか、あるいは内容は国民の議論の中で定まってくるとかおっしゃっていますけれども、私の記憶では、憲法九条の改正に関してここまで踏み込まれたことは初めてだったのではないかというふうに思います。

 さきの安全保障特別委員会の議論の中でも、私も、強行採決を衆議院でされる七月十五日、強行採決の直前に質疑に立って、集団的自衛権に関して憲法解釈の変更、こういうことをするのであればむしろ憲法の改正を堂々と国民の皆さんに問うべきではないかということを申し上げました。

 それに対して、総理はそれを肯定せず、一貫してその審議の中では、九条の改正に関しては国民の理解、議論が熟していないということをおっしゃっていました。にもかかわらず、昨日、七割の憲法学者が憲法違反の疑いがあると、こういったことを捉えながら、憲法草案に示した、さきの総選挙においても明確に示してきたんだということをおっしゃいました。

 憲法九条の改正を、ことしは参議院選があります、参議院選においても問われていくつもりでしょうか。総理は年頭の会見において、参議院選において憲法の改正は掲げていくというふうにおっしゃいました。憲法九条の改正も、その中で争点として訴えていかれるおつもりですか。お答えください。

    〔委員長退席、平沢委員長代理着席〕

安倍内閣総理大臣 端的にお答えをさせていただきたいと思います。

 これは大串委員も御承知だと思いますが、実は、自民党は六十年間掲げ続けてきているんですよ、憲法改正について。私が突然掲げたわけではありません。なおかつ、自民党の憲法改正草案がございます。これも私が突然掲げたのではなくて、長い議論も経ながら、谷垣当時の総裁のもとで議論をした結果、憲法改正草案ができたわけでございまして、既に我々は、衆議院二回、そして参議院一回、このことについても掲げながら選挙を戦い、大勝をさせていただいているところでございます。

 当然、我々は六十年間ずっと掲げてきたわけでありますから、私が突然これをやめると言ったらこれは大きなニュースなんでしょうけれども、我々は当然、今までも掲げてきたように、そして既に九条についてもお示しをしている、二項はこれを変えていくということでお示しをさせていただいているわけでありますから、そのように述べたわけでございます。

 そしてまた、七割の憲法学者云々については、これは稲田大臣の答弁を受ける形で、そういう方もおられる、こういうふうに申し上げたわけであります。それは事実を事実として申し上げたわけでございます。

 同時に、憲法改正は、衆参各議院で三分の二以上の賛成を得て国会が発議をし、国民投票で過半数の賛成を得る必要があります。このような大きな問題については与党のみならず多くの党会派の支持をいただくことが必要でありますし、そして何よりも、改正をするためには国民投票において過半の支持を得なければならない。ここが一番大切なところでありまして、その上においてはしっかりと国民的な議論が深まっていくことは当然大切であろう。しかし、まだ十分にこの九条については深まっている、あるいは支持を得ているという状況にはないという現状認識はずっと今までお示しをしているとおりでございます。

 その中で、しかし、憲法調査会においてしっかりと議論をさらに深めていく中において国民的な御議論をいただき、そして支持が高まっていく中において、我々は、かつてからずっと申し上げているこの憲法改正について、当然その議論の中でどの条項についてやるべきかということがだんだん定まって収れんしていくでしょうから、そうしたものについて国会で議論をし、発議し、そして国民投票、こういうことではないか、こう考えているところでございます。

大串(博)委員 今の答弁の中で、九条の改正に関しては国民の議論が熟していないというふうなことをおっしゃいました。これをずっと総理は安全保障特別委員会の中でもおっしゃっていたんですよ。

 ところが、昨日は、稲田委員に対してはそういう留保なしに、九条に関して憲法学者の皆様の七割が憲法違反の疑いがあるというようなことをおっしゃいながらこれを憲法草案に示してきたんだということをおっしゃっていたがゆえに、踏み込んだ発言だと私たちは受け取ったんですよ。それのどこに総理の本心があるのかというのは、私たちは非常にある意味注意深くも聞いているし、あるいは疑り深くも聞いているところがあるんです。

 なぜならば、どうも私がこの間総理の発言の傾向を見ていると、総理と恐らく同じような歴史観や憲法観あるいは国家観を持たれている方々とのやりとりにおいては、かなり踏み込んだ発言をされているんです。しかし一方、それとは違う考え、私もそうですけれども、違う考えを持つ人間との対話においては、少し留保された発言をされている。

 よって、本心がどこにあるのかというのが多分国民には非常に見えづらいと思うんですよ。国民に見えづらいから、本当に安倍総理のもとで憲法改正があっていいのかなということに関する疑念が相当あるんじゃないかと思うんです。

 パネルを一つ。

 というのは、安倍総理の憲法に関する考え方、私はこれは本当に基本だと思っているんです、実は。ここを押さえずして、憲法改正の議論というのはなかなか進まないと思っているんです。

 憲法のそもそものあり方に関して、押しつけ憲法か否かというところがあります。安倍総理はこれに関して、一番上です、「対論集 日本を語る」という中で、左翼傾向の強いGHQ内部の軍人たちが短期間で書き上げ、それを日本に押しつけたものである、こういうふうに言われています。

 さらに、平成十二年五月十一日、これは衆議院の憲法調査会の議論の中で同じようなことをおっしゃっている。強制のもとで、ほとんどアメリカのニューディーラーと言われる人たちの手によってできた憲法を私たちが最高法として抱いているということが、日本人にとって、心理に、精神に悪い影響を及ぼしているんだろうと。

 こういうふうな憲法観をお持ちなんですね。私は考えを異にします。私はそういう考えを持ちません。私は現行憲法のもとで育って、この憲法をいい憲法だと思って育ってきました。

 総理は、お尋ねしますけれども、本心として、この憲法、このような成立の経緯があるので、日本人にとって、心理に、精神に悪い影響を及ぼしている押しつけ憲法だという理解ですか。

安倍内閣総理大臣 日本が占領下にある中において、まさに当時は、GHQ、連合国の司令部がある中において、いわば当時の日本国政府といえどもこの意向には逆らえないわけでございます。その中においてこの憲法がつくられたのは事実であろう、こう思うわけでございます。そして、極めて短い期間につくられたのも事実でございます。

 その事実を事実として申し上げた。こういう事実を事実として申し上げることができないという言論空間をつくること自体が間違っているのではないか、私はこのように思います。

    〔平沢委員長代理退席、委員長着席〕

大串(博)委員 端的にお答えください。

 総理は、憲法に関して、GHQが押しつけたものであって、日本人にとって、心理に大きな、精神に悪い影響を及ぼしているんだろう、今でもこう思っていらっしゃいますか。このことだけ端的にお答えください。

安倍内閣総理大臣 端的にお答えをいたします。

 これは幣原喜重郎内閣でございましたが、ここでいわば憲法をつくるということになった。そこで、松本烝治氏が担当の大臣になって、いわゆる甲案、乙案というものをつくったんです。それを、先ほど新聞名が挙がりましたが、毎日新聞がスクープしたんですね。西山柳造という記者がこれをスクープしたわけでございます。それを見てGHQがこれは絶対に受け入れられないという中において、ホイットニー当時の准将がケーディス氏に、民政局の次長に指示をして、約八日間で二十五人の委員でつくったのは事実だろうと思います。そしてそれが草案になったところでございます。

 そこで、私が大切にしているところは、やはり私たちの憲法なんだから、この中においてもちろん、平和主義、国民主権等々ありますよ、基本的人権、そうしたものは守っていかなければいけませんし、これは貫いていく必要があるんだろうと思います。それは私も今まで評価もしてきているわけでございます。

 ただ、形成過程がそうであったという事実は私たちはしっかりと直視をしなければいけない。歴史を直視しろというのはそういうことなんですよ。そういうものもしっかりと直視しながら、そこで、では、私たち自身の憲法なんだから私たち自身がしっかりと考えてみようじゃないかという精神を失ってはならない。

 指一本触れてはならないと考えることによって思考停止になる。思考停止というのは、これは悪い影響だと思いますよ。思考停止になってはならないんですよ。みんなでやはり考える。考えた末、このままでいこうということであれば、それはそれでいいわけですよ。考えることすらだめだ、天から降ってきたんだからこれはもう変えられないということにはならない。

 つまり、そうではなくて、私たちが日本人として主体的に、日本の憲法はどうするべきか、もう二十一世紀になったんですから、昭和から平成にかわってきた中において、私たちはそういうことをしっかりと、はつらつと議論するべきだろうということであります。そうした精神のみずみずしさを失ってはならないという意味で申し上げているところでございます。

大串(博)委員 とすると、今総理は、日本人は憲法に関して思考停止に陥っている、みずみずしい思考をなくしている、そういう意味で精神に悪い影響を及ぼしている、こういうことですか。これも端的にお答えください。

安倍内閣総理大臣 思考停止に陥ってはならない、こう申し上げておりまして、我々は思考停止に陥っていないわけでありまして、ですから、日本人一般が思考停止になってはいないわけであります。大串さんが、指一本触れてはならない、考えてもならないと思っていれば、それは思考停止。それがいけないということでございまして、日本全体がなっているとは私は申し上げておりません。

 しかしやはりしっかりと議論をしていくべきではないか、こういうことを率直に申し上げているわけでありまして、そうした考え方自体が間違っているという考え方が間違っているんだろう、そうしたことを考えてはいけないということを考えること自体、これを思考停止というのではないか、こう思うわけでございます。

大串(博)委員 私たちも、憲法のあり方を世の中の変化に応じていろいろ議論していく、国民の中で広く議論していくこと自体、これを否定しているわけでは全くありません。そういう意味では、思考停止に陥っているとは私も思わないし、国民に関しても思いません。今の総理の答弁は、述べたことに関して、はっきりした理由が私にはとても聞こえてこなかった。

 一つ総理にお尋ねしたいんですけれども、私が見る限りにおいて、日本人にとって、心理に大きな、精神に悪い影響を及ぼしているんだろうという発言は、とても私の感覚からは受け入れられないんですね。この総理のもとで憲法改正の議論が行われる、私は非常に危機感を感じます。この発言は間違いであるということで取り消されるということは、総理は受け入れられますか。

安倍内閣総理大臣 今、私が説明したことで、多くの国民の皆さんは御理解いただいたと思いますよ。大串さんとか何人かの方々は理解をしていただけていないのかもしれない。それは民主党の考え方かもしれない。でも、我々自民党はそうではなくて、だからこそ我々の憲法草案をお示ししています。そして、我々はそれなりの御支持もいただいているところでございます。

 大串さんのように、そういうことを考えることすらならないということでは新しい時代には対応できないのでございまして、私たちは、指一本触れてはならない、考えることすらだめだということは、まさにそれが思考停止だ、こういうふうに申し上げているわけでございます。そういう影響が皆さんの中にあるのであれば、それこそまさに悪い影響ではないか、こう思うわけでございます。

大串(博)委員 私がほんの数十秒前に言った言葉ぐらい覚えて発言してください。私は、時代の変化に応じて憲法をみんなで議論するということ自体、あっていいことだというふうに申し上げました。ぜひ、三十秒ぐらい前に言ったことぐらいしっかり覚えて答弁をしていただきたいと思います。

 そういうことで、私は思考停止じゃないから、これは間違いであったということで取り消してくださいというふうに言ったんです。

 さらに言うと、憲法の前文に関して、これはわび証文のようなものだ、あるいは、全く白々しい文であると言わざるを得ないんだろう、こういうふうなことを言われている。

 さらに言うと、一番私が心配しているのは、安保法制のときにもあった、憲法解釈の変更をあっという間に行ってしまう、立憲主義との関係。

 これに関しては、これも対談です、百田さんとの対談。古色蒼然とした考え方なんだというふうに、ほぼ否定調ですよ。しかも、これはいつ出された本かというと、総理、総理が総理大臣になってからですよ、今回。その間もこんな、立憲主義に対して古色蒼然という否定調の言葉を使われている。

 この中で、憲法の議論、国民の前に総理は広げていく立場にあられると御自分で思われますか。

安倍内閣総理大臣 まさに、皆さんのように、指一本触れてはならない、考えてはならないという思考停止に陥ってはならない。なぜか。(発言する者あり)そうではないと言うんだったら、民主党が立党されて随分たつんですから、何か議論して、何か成果が出ましたか。何にも出ていないんですよ。

 国会議員というのは一般の評論家とは違うんですから、ただそういうことを議論できるということを言っているのでは、議論しているのではないんですよ。ちゃんと、どこを変えるべきだということをしっかりと示して国民の審判を受ける、そういう覚悟があってこそ初めてそういうことを言う資格があるんだろう、私はこう思うわけでございます。それはしっかりと申し上げておきたい、このように思います。

 そして、その上で申し上げれば、立憲主義については、もう既に国会で答弁しているとおりでございます。

大串(博)委員 繰り返し申しますけれども、私は、時代の変化に合わせて憲法のことを議論していく、これを否定は全くしておりません。むしろあっていいというふうに思います。指一本触れないなんて私は言っていません。

 さらに、民主党は、憲法に関して何度も党内で議論を深め、憲法提言を出しております。総理は答弁の中でそれに触れられたことすらあります。それを、答弁の中で、指一本触れない、民主党は考え方を出していないというふうに誤解をした上で答弁されるというのは、総理御自身が思考停止に陥っていらっしゃるというふうに言わざるを得ないというふうに思います。

 さらに、このような憲法観の中で、とても総理のもとで議論を進めるということはできないということをあえて申し上げさせていただきながら、総理、この間、参議院の議論の中で、憲法改正については新たな段階、現実的な段階に入ってきたというふうに答弁されていますね。私はそうは認識していないんです。

 何をもって、何が変わったから、いつから新たな段階、現実的な段階に入ったんですか。

安倍内閣総理大臣 先ほど申し上げたのは、皆さんが具体的な憲法改正草案を、私たちのようなものを出してはいないのは事実であります。ですから、それを出していないのであれば、大串さんのは弱々しい言いわけにしかすぎないんですよ。弱々しい言いわけにしかすぎない。それは、指一本触れていないのと全く同じだということだと思いますよ。政治家だったら、私にそういうことを言うんだったら、出してみてくださいよ、御党がまとまるのであればね。

 そこで申し上げますと、まずは憲法について言えば、なぜ新しい段階に入ったかといえば、それは、第一次政権において国民投票法がなかった、この国民投票法を、御党は反対しましたが、私たちはつくった。この改正のための国民投票法すらあなたたちは反対したじゃないですか。それで憲法改正について何か議論する資格があるんですか。これは驚きですよね。これは驚きです。我々はしっかりとそれをつくりました。そしてその後、私たちは、さらに十八歳に投票要件を下げるということについても準備を行いました。

 こうしたことをしっかりと行った上において、今までこれはなかったわけでありますから、こうした手続を保障する法律がなかったんですから、これができた。これがない段階においては、憲法を改正しようと思ったってできない、かなり空論になってしまうわけであります。

 しかし、いよいよ地に足がついて、国会において発議されればしっかりと国民投票に進んでいくという法的な基盤ができたのは事実であります。そういう意味において、新しいステージに入ったということを申し上げたわけでございます。

 繰り返しになりますが、最初はそれすらなかったんですよ。九十六条、改正条項がありながらも、国民投票について規定するものがなかった。皆さんは反対しましたが、私たちは憲法に従ってその法整備を行ってきた、こういうことでございます。

大串(博)委員 聞き捨てならないことをおっしゃったので、反論させていただきます。

 弱々しい議論なんかじゃありませんよ。私が弱々しい議論と言うのであれば、こそくに憲法解釈の変更をされたような集団的自衛権にかかわる議論の方がよほど弱々しい議論だというふうに思います。

 なぜなら、総理はもともと憲法改正を高らかに訴えていらっしゃったじゃないですか。それができないとなると、九十六条、憲法改正手続の変更、三分の二を二分の一の発議要件とする、これは何度も国会で、前の参議院選の争点にするんだというふうにおっしゃっていた。しかし、国民世論がなかなか高まらないと知ると、それはいつの間にか言われなくなってしまった。その次に出てきたのが憲法解釈の変更であった。いつの間にか、憲法改正と大上段に振りかぶっていたのが、九十六条、憲法解釈の変更と、次から次へとこそくな手段に流れている。よっぽどそっちの方が弱々しい手段じゃないですか。

 さらに言えば、緊急事態条項の議論。総理は、これは重要な条項だ、これに関して議論をすることは重要だというふうに言われました。これとて、総理、私は、総理の先ほどの弱々しい議論の一環ではないかというふうに思うんです。

 なぜなら、災害とかあるいは有事とか、そういう緊急のときに国民がどういうふうに振る舞うのかということは議論しなきゃならぬというふうにおっしゃいました。それは何かそのように聞こえます。そのように聞こえるけれども、何となく国民の皆さんが理解してくれるかなというところからのお試し改憲じゃないですか。

 実際に、二〇一五年十月一日の報道では、古屋自民党憲法改正推進本部長がこう言われていると報道されていますよ。本音は九条改憲だが、リスクも考えないといけない、緊急性が高く国民の支持も得やすい緊急事態条項だ、本音を言わずにスタートしたいと言ったと報道されています。

 さらに、その前の二〇一四年五月、船田元憲法改正推進本部長の報道もあります。憲法フォーラムに関して、こそくかもしれないが、理解が得やすい環境権などを書き加えることを一発目の国民投票とし、改正になれてもらった上で九条を問うのが現実的と。

 こういうふうに、お試し改憲をしようとしているのではないかという国民の疑念が消えないんですよ。そういうことをもって、私は弱々しい議論だなというふうに思うんです。

 さて、緊急事態条項に関して聞かせていただきますと、総理は、災害等緊急事態に関して、国民がどのように対応すべきか、こういったことを考えるのは重要だというふうにおっしゃいました。それは、この緊急事態条項の中の論議の一つ、人権を制限する、あるいは内閣総理大臣等に権限を集中する、つまり、法律を国会で通さなくても総理大臣が緊急命令等法律にかわるものを出せる、こういったものも含めて議論していかなければならないというふうな意味でおっしゃった、そういう理解でいいですか。

安倍内閣総理大臣 私たちに対してこそくだとか弱々しいということを、そういう弱々しい批判を今いただきましたが、私たちは、例えば、まず憲法改正の草案を出していますよ。そして九十六条についても訴えました。こういう訴えをしていく。

 訴えに対しては批判もあるんですよ。批判もあってもしっかりと訴えていかなければならないという考え方のもとに訴えた。しかし、残念ながら、国民的な理解が得られなければそれはなし遂げることができないというのは厳然たる事実であります。

 しかし、皆さんのように何の挑戦もしないのであれば、世の中は全く変わらない。挑戦しないにもかかわらず挑戦しているかのようなふりをすることは、私たちはしないんですよ。しっかりと具体的に、何を変えるべきかということを国民の皆様にお示ししていく。お示しをした以上、国民の審判を受けるという覚悟を持ってお示ししている。

 皆さんは、考えていると言いながら、しっかりと全く示さない。皆さんは、ただ批判に明け暮れているだけじゃありませんか。私たちはそんな態度は決してとらないということは申し上げておきたい、こう思っているところでございます。

 そこで、今の御質問に対して端的にお答えをさせていただきますと、大規模な災害が発生したような緊急時において国民の安全を守るため、国家そして国民みずからがどのような役割を果たしていくべきかを憲法にどのように位置づけるかについては、極めて重く大切な課題と考えています。

 他方、憲法改正には国民の理解が不可欠であり、どの項目を改正する必要があるのか、どのように改正すべきかなど、その具体的な中身については、国会や国民的な議論と理解の深まりの中でおのずと定まってくるものと考えているわけであります。

 引き続き、新しい時代にふさわしい憲法のあり方について、国民的な議論と理解が深まるよう努めてまいりたいと思います。

大串(博)委員 今、総理の発言の中で一つ、はたと私、腑に落ちたことがありまして、総理が年初来、挑戦という言葉を何度も繰り返し国会の中でも言われていたこと、何に関する挑戦なのかなというふうに思っていましたけれども、憲法改正も含めた挑戦なんだなということがよくわかりました。それをもって、年頭会見では参議院選の争点として憲法改正を挙げていくというふうにおっしゃっていた意味と合致したこと。

 これは感想を申し上げさせていただきながら、緊急事態条項、これに関しては、総理、これは本当に重要なのか。これは私は重要なことだと思いはしますが、どれほどの重要性があるのかということに関しては、多分認識に違いがあると思うんです。

 というのは、昭和二十一年七月二日、当時の議会の衆議院憲法改正委員会、これは戦後直後ですね、金森国務大臣が緊急事態条項は必要かという問いに対してこう答えていらっしゃるんですね。「我我過去何十年ノ日本ノ此ノ立憲政治ノ経験ニ徴シマシテ、間髪ヲ待テナイト云フ程ノ急務ハナイ」と言って否定されているんですよ。

 これは、総理、関東大震災の少し後ですよ。第二次世界大戦の直後ですよ。その段階においても、緊急事態条項は要らないという答弁が当時なされているんです。それを上回るようなことが今あるのかということを私は問いたい。(発言する者あり)

 さらに、やじから、東日本大震災を経験しただろうというふうなことがありました。同僚議員もこれを問うと思いますけれども、法律でなぜ対応できないんだろうか。緊急事態条項というのは単なる法律じゃないですから、憲法を一時停止するということですから。憲法を一時停止する、全権を内閣総理大臣に、権限を集中する、そういう条項ですから、大変大きな意味を持つ条項なんですよ。

 これに対して、災害等、そういう場合でも対応できるようにということで、憲法上公共の福祉に人権は服するということになっていますから、それに従って災害対策基本法では、例えば、国民に物資をみだりに購入しないでくださいねという協力要請を総理大臣ができるということがもう書かれているんです。警察法の中でも、警察庁長官を総理が直接指揮監督する、こういうこともできているんです。あるいは災害対策基本法の中では、市町村長に対してもいろいろな強制権を付与しているんです。そういったいろいろな法律の手当てがなされている。公共の福祉に人権は服するからそういうふうになっているんです。

 法律で手当てをするということ以上に、憲法で緊急事態条項を入れて憲法を停止していくようなニーズは本当にあるんでしょうか。立法での対応では不十分な理由をお聞かせください。

安倍内閣総理大臣 今、まだ日本が占領下にあるときの大臣の発言を引用しておられましたが、それが果たして今の時代にふさわしいかどうかということも考えなければいけないんだろう、そのときから思考が停止していてはならないのではないのかなという印象を私は持ちました。

 同時にまた、多くの国々はこの条項があるわけでございまして、災害時にこうした条項を利用して、ずっと災害が終わってもそのままいわば力を集中した段階を続けるということは当然できないわけでありますし、先進国においてそんなことをやった国はもちろんないのは御承知のとおりなんだろうと思います。

 その上において、今、私は内閣総理大臣という立場でここに立っております。憲法については憲法調査会においてしっかりと御議論をいただき、これはまさに各党各会派が議員という身分において議論を闘わせながら、憲法改正をどうすべきかということについて、そしてまたどの条項について議論すべきかということについて、そこで議論を深めていただくことこそが国民的な議論となっていくんだろう、こう思っている次第でございます。

 我が党におきましては、まさに我が党の案を出させていただいているわけでございます。御党においてもそうしたものを出していただければ議論がさらに深まるのではないか、こう期待をしております。

大串(博)委員 なぜ立法ではだめかということに関する明確な答弁は全くなかったですね。それこそ私は思考停止じゃないかなというふうに思うんですよ。緊急事態条項は必要だということがまずありきで、思考停止に陥っていらっしゃるんじゃないかなという気がします。

 先ほど言いましたように、緊急事態条項というのは、国会議員の任期延長、解散制限、これを除けば、人権の制限あるいは内閣総理大臣への権限集中など、大変重い内容を持っているんです。憲法を停止するような内容なんです。

 さきに、ワイマール憲法のもとで、四十八条、国家緊急権が定められていた。それによって、いろいろな法律がナチス・ドイツによってつくられてしまった。その苦い経験があるから、ドイツでもその後、戦後大きな議論がありました。

 先ほど、立憲主義をこれだけ古色蒼然という言葉で否定した総理、私はこの総理のもとで憲法改正の議論はなかなか進みがたいということをあえて申し上げさせていただいて、質疑を終わらせていただきます。

竹下委員長 この際、階猛君から関連質疑の申し出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。階猛君。

階委員 民主党の階猛です。

 私の前の大串委員に引き続いて、憲法についていろいろとお聞きしたいと思います。

 まず、私、前回一月八日の質問のときにも総理に申し上げたんですが、憲法六十六条三項、内閣は、行政権の行使について、国会に対して連帯責任を負うという規定があります。つまり、内閣は、国会によって監視され、国会のコントロールに服する立場にあるわけです。その具体的なあらわれとして、憲法六十三条で、総理を初め閣僚が国会において答弁する義務、説明する義務というのが定められています。

 このように、内閣は国会によってコントロールされるものですが、内閣が国会をコントロールするわけでは決してありません。したがって、我が国の憲法では、国会議員が内閣に対して説明義務を負うことはないですし、総理が質問を受けてもいないのに国会議員を批判する発言をする権利も認められていません。

 昨日の、立証責任はあなたにあるんだと言って岡田代表に説明義務があるかのような総理の発言、あるいは、玉木委員の質問終了後に、我が党と玉木委員を聞くにたえない言葉で批判した総理の発言、これらはいずれも明らかに憲法六十三条違反と考えますが、総理の見解はいかがですか。

安倍内閣総理大臣 憲法第六十三条は、憲法が採用している議院内閣制のもとでの内閣総理大臣その他の国務大臣と国会との関係を規定したものであり、後段は、「答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。」として、内閣総理大臣等には議院に出席して答弁または説明をする義務があることを定めているわけであります。

 それを今引かれまして、私の答弁等が制約されている、義務の中でしか答弁できないということをおっしゃったんですが、これは前段がありまして、前段は、「何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。」ということが書いてあるわけであります。つまり、「何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。」として、内閣総理大臣等には議院に出席して発言する権利があることを定めているわけでございます。

 つまり、義務しかないということではなくて、権利もあるということでございます。

 したがって、委員会で答弁を行うに当たり、質疑の内容等に応じて委員長の行う議事の整理等に従うべきことは当然でございます。これは、我々もそうでありますが、与野党ともに委員長の議事整理に従わなければならないということは当然のことであろうと思います。当然の前提ではありますが、その上で、内閣総理大臣等は、委員会に出席をした場合においては発言をすることができるものと認識をしております。

 と同時に、階委員は、弁護士であり、法律的な観点からお話をしておられるんでしょうけれども、国民的には闊達な議論が求められているわけでございまして、それは、質問する際に、厳しい質問をすれば厳しい反論も返ってくるという覚悟を持ちながら、我々は、野党時代にはそういう覚悟においてみんな質問していましたよ。厳しい質問をすれば、矢を放てば矢も返ってくる、そういう覚悟の上で質問をしていたわけでありまして、そういう覚悟のない者は質問に立てなかったのが自由民主党であったということは申し上げておきたいと思います。

階委員 今、憲法六十三条の前段の方も引用されて、答弁義務、説明義務だけじゃなくて発言権もあるんだと言われました。しかし、六十三条には何と書いているか。「議案について発言するため議院に出席することができる。」ということでありまして、岡田代表の立証責任、あるいは玉木委員への批判、こういったことについては発言権はないということが一つ。

 それからもう一つは、私は別に法律論として言っているだけではなくて、建設的な議論をするに当たって、私たちは、まずは、政府の主張が問題ないかどうか、政府の行政運営が問題ないかどうか、これをただした上でないと建設的な議論に入っていけない。

 先日、浜矩子さんという同志社大学の教授が東京新聞の論説で述べられていましたけれども、政府・与党は、例えて言うならば、まないたの上のコイなんだ、国民はお客様なんだ、そして野党は、お客様である国民のためにコイの品質を見定める役割を負うんだということを言っていました。まさしくそのとおりだと思っていまして、私たちは行政を監視する役割を負っている、その立場から、これはこうなんじゃないんですか、間違いじゃないんですかといったことに対しては真摯に受けとめていただいて、それに対して答えていただきたいということをまず申し上げます。

 現に、一月八日のときには総理もおっしゃっていました、批判ということではなくて、答弁する中において自分の考え方を述べているんだと。答弁をするという前提において述べられていたことが、今やどんどんどんどんエスカレートして、発言権などという話になってきている。私は、これでは建設的な議論の場にはならないというふうに思います。

 そこで、私は、先ほど大串さんが取り上げていた憲法九条の改正の必要性について総理に問いただしていきたいと思います。

 先ほどもありましたとおり、きのうの答弁で総理は、自民党の憲法改正草案に触れて、七割の憲法学者が自衛隊に憲法違反の疑いを持っている状況をなくすべきであるという考え方もあって、九条二項を改正し、自衛権や自衛のための組織を明記したというふうに自民党の憲法改正草案を評されました。

 ところが、自民憲法草案、それだけではありません。自衛権の行使を無制限でできるようにする、それから、七割どころか九八%の憲法学者が憲法違反の疑いを持っている集団的自衛権の行使を認めようともしています。しかも、昨年成立した安保法制では、自国防衛を目的とする限定的な集団的自衛権の行使の可否が議論となったわけです。この憲法草案では、そういった限定的な集団的自衛権ではなくて、全面的な集団的自衛権行使も認めようとしています。

 九条二項の改正草案は、自衛隊の合憲性を明らかにするというよりも、むしろ集団的自衛権を全面的に行使することが目的ではないでしょうか。この点について、総理のお考えをお尋ねします。

安倍内閣総理大臣 私は、ここには内閣総理大臣として立っているわけでございまして、個々の条項については、まさに憲法審査会においてしっかりと御議論をいただきたい、こう思う次第でございます。

 我が党の考え方としては、これは谷垣総裁時代にできたものを既にお示ししているわけでございます。ただ、もちろん、三分の二の多数を形成することは相当困難なことでありますから、その中で、中身についてどのようにしていくべきかということについては当然議論があるんだろう、こう思う次第でございます。

 私は、この場において個々の条項について解説する立場にはないということでございます。

階委員 それも御都合主義でして、きのうは、稲田委員には相当細かくこの憲法改正草案について触れられていたので、私もそれに関連してお尋ねしたところ、都合の悪いところについては説明しない。これも非常に問題だと思います。

 九条の三を見てみますと、国は、国民と協力して領土等の保全義務を負うという趣旨の定めがあります。領土等の保全について、国民が主体的役割を担うかのような規定に読めるわけですけれども、この協力というのはどういうことを指しているんでしょうか。場合によっては徴兵制にもつながり得るのではないかというふうに思えるんですが、この点について、総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 徴兵制については、既に申し上げてきているとおりでございまして、我々は、徴兵制は現行憲法に違反する、このように申し上げておりますし、我々の自民党憲法草案についてもそうであります。

 そして、我が党の憲法草案の個々の条文についてはここで議論することはふさわしくない、私が総理大臣として議論することは差し控えさせていただきたいと思います。

 議論をする場がありますから、そこでしっかりと議論を深めていただきたい、このように思います。

階委員 肝心なことについては説明されないわけですけれども、緊急事態条項について、先ほど来、大串委員との議論がありました。

 私も、被災地の岩手県の出身で、かつ、弁護士仲間と、この緊急事態条項、東日本大震災のときに必要があったかどうかということも議論させていただいたりしております。やはり、弁護士仲間の意見としても、緊急事態条項を設けて緊急事態になってから泥縄式に対策を講じるよりも、あらかじめ必要な制度、いろいろな訓練を行うのが正しいやり方なんだということで見解が一致しております。

 一月十五日でしたでしょうか、参議院の予算委員会で、片山委員が、緊急事態条項が必要なエピソードとして福島の話をされていました。あの第一原発の事故の後、二日間で五、六千人を二十キロ圏内から避難させなければならないとき、民間のバス事業者、ガソリンスタンドに動いてもらったということを挙げられて、これも憲法上の財産権の問題があって危うかったんだという趣旨のことを言われていました。

 しかし、これは緊急事態条項の問題ではないということを指摘させていただきたいと思います。

 二〇〇六年に、国際原子力機関、IAEAから、原子力事故の避難区域を十キロ圏内から三十キロ圏内に広げるよう指導がありました。もしこの指導どおり三十キロ圏内ということで避難区域を広げていれば、三月十一日夜の時点で避難や屋内退避ができて、緊急事態条項など必要なかった。ところが、当時の第一次安倍政権のもとで、社会的混乱を引き起こすとか財政負担がふえるといった理由で避難区域を十キロから三十キロ圏内に拡大することが見送られた。こういう経緯があります。

 安倍総理、こうした当時の判断は今から見ると誤りだったのではないかと私は考えますが、この点、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 今、質問通告はございませんが、基本的に我々は間違った判断はしていないと考えております。

階委員 緊急事態条項の前提となるエピソードということで片山委員が挙げられたこのケース、これは実は緊急事態条項ではなくて、事前に適切な対応をすべき事案であったというふうに私は指摘しているわけです。

 こういうことをやるべきだったと考えられませんか。

安倍内閣総理大臣 そもそもこれは片山さんが御指摘になっていることでございまして、これは我々がそう申し上げているわけではないわけでございます。(階委員「自民党ですよ」と呼ぶ)片山さんというのは、片山虎之助……(階委員「さつきさんです」と呼ぶ)片山さつきさんですか。失礼いたしました。

 まだ質問通告いただいておりませんので、この片山さんの発言もつまびらかに、これは見てみないとわからないことでございます。

階委員 こういう過去の例を教訓として、緊急事態条項を軽々に論ずるよりも、まずは事前の必要な体制整備あるいは訓練をしっかりやるべきだということを、東日本大震災の教訓を踏まえて私から申し上げます。

 それから、憲法二十一条です。

 憲法二十一条、表現の自由です。「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」現行条文を、自民党憲法改正草案は、二項という条文を新たに加えて、「前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。」ということで限定を加えております。文言上、限定を明らかに加えております。

 これについて、以前、平成二十六年二月十日のこの委員会で長妻委員が、あえてこの二項の留保条件を設けた趣旨について尋ねた。これに対する総理の答弁は、当然のことを当然のこととして書いただけなんだということでしたが、ならば、改正の必要はないというふうに考えるわけですけれども、この点については、総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、自民党の憲法改正草案の個々の内容について、政府としてはお答えする立場にはないわけでございます。

 その上で、階議員の再三再四の御質問でございますから、あえて申し上げれば、御指摘の点については、表現の自由を制限できる範囲を厳しく限定し、禁止する対象を活動と結社に限っており、この規定をもって、公益や公の秩序を害する直接的な行動及びそれを目的とした結社以外の表現の自由が制限されるわけではないわけであります。このことははっきりと申し上げておきたいと思います。

 誤解があってはならないものでございますから、今こうしてあえて申し上げているところでございまして、草案において、基本的人権の一つである表現の自由については最大限尊重されるべきものと考えていることは、現行憲法と何ら変わりはないわけであります。

 いずれにせよ、憲法改正については国民の理解が必要不可欠であり、具体的な改正の内容についても、国会や国民的な議論と理解の深まりの中でおのずと定まってくるものと考えます。

 引き続き、新しい時代にふさわしい憲法のあり方について国民的な議論と理解が深まるよう、努めてまいりたいと考えております。

階委員 表現の自由を尊重することに変わりはないんだという趣旨の答弁でしたけれども、実際、こういうことが盛り込まれると世の中にどういう動きがあるかということにも思いをいたしていただきたいんですね。

 国民、ひいては言論機関が萎縮して、権力者の意向をそんたくし、権力者への批判を控えるようになるのではないか。現に、今も安倍政権に批判的なテレビキャスターやコメンテーターが次々と番組を降板するということが決まっています。こういったことは民主主義の健全な発展にもマイナスだと考えます。今までどおり尊重するといっても、文言が入れられることによってさまざまな萎縮効果が発生する、こういったことをおもんぱかって、言論機関の皆さんが自由に発言できる、そういうことを担保する、これは絶対に必要なことだと思います。

 表現の自由を守り、権力者への批判の自由を確保する、そのお考えは総理にありますか。

安倍内閣総理大臣 言論の自由、表現の自由は、まさに民主主義を担保するものであります。当然、尊重されなければならないわけであります。

 同時に、現在、まるで言論機関が萎縮しているかのごときの表現がございました。これは全くしていないと思いますよ。

 では、例えば、きょう夕方、帰りに日刊ゲンダイでも読んでみてくださいよ。これが萎縮している姿ですか。萎縮はしないんですよ、毎晩の報道を見ていただければわかるように。それはむしろ言論機関に対して、私は失礼ではないのかなと思いますよ。むしろそれは言論機関に対して失礼であって、萎縮している機関があるのであれば具体的に言っていただかないとわからないんですが、まさにそれは、私は大変失礼な話ではないのかなと思います。

 そういうことを申し上げれば、むしろ、安倍政権を弁護する立場の言論の方は、なかなか貫き通しにくい雰囲気すらあると言う人もいるわけでございます。

 ですから、全くその批判は当たらない。むしろ、そのことをはっきり言っておかないと外国から誤解されるおそれがあるんですよ、まるでそんな国だと思われるのでありますから。そんなことはないということをはっきりとテレビを通じて申し上げておきたいと思います。

階委員 萎縮している事例を申し上げましょう。

 NHK籾井会長、政府が右と言うことに対して左とは言えない、こういう発言を過去になさっていました。総理が萎縮していないと言われていますけれども、あなた御自身は萎縮しているんじゃないですか。本当に、権力に対してしっかりと物を申していく、そういう報道の自由を行使する考えはあるんですか、籾井会長。

籾井参考人 お答えします。

 NHKは、国民の知る権利に応えるため、放送法にのっとり、事実に基づき、公平公正、不偏不党、何人からも規律されないという姿勢で放送を行っておりますし、これからも放送を行ってまいります。

 憲法で保障された表現の自由のもと、健全な民主主義の発展に寄与する責務を果たしていくことが、公共放送としての大きな役割と考えております。

階委員 みずからの組織についても、しっかり表現の自由を守られるようなガバナンスをするべきだと思います。

 関連団体が内部留保の半分近くに当たる三百五十億を投じて土地を取得する案件というのが、十二月八日の経営委員会直後、突如取りやめられました。その理由について、この委員会の以前の答弁で、当日誤った新聞報道がなされたからだと籾井会長はおっしゃっていました。

 しかし、その経営委員会のさらに直前、理事会というのが行われましたね。この理事会では、四人の理事から、この土地取得案件は反対だという意見があったにもかかわらず、籾井会長の独断によってこれを経営委員会に諮るということも決めているわけです。

 そういう身内の批判的な意見には耳を傾けず、一方で、外部からの批判に対して、誤りだと言いつつ、正当な反論もしないで案件を取り下げる、こういった姿勢こそ、表現の自由の大事さを考えていないあかしだと思いますよ。

 籾井会長、あなたは本当に公共放送のトップとしてふさわしいと思いますか。私は、常々申し上げていますけれども、あなたには資質がないと思います。やめた方がいいと思います。いかがですか。

籾井参考人 いろいろ御質問の中身がありましたけれども、まず、我々の理事会は、意見が活発に行われておりまして、当然のことながら、それぞれの理事がそれぞれの意見を申し上げるわけでございます。今、四名の反対がとおっしゃいましたけれども、それは、我々、理事会の中では多数決で決めるわけではありませんで、いろいろな議論の末に会長がこれを決めるわけでございます。

 それからまた、なぜ取り下げたのかということでございますけれども、まず、これは経営委員会に審議を依頼したわけではございませんで、今何が起こっているかを御説明するという趣旨で私は経営委員会に行ったわけでございます。そこでるる説明を申し上げました。もちろん、経営委員からは、委員御承知のとおり、いろいろ慎重にやるように、こういう御意見もございました。そういうことを全て加味しまして、私は、総合的に判断して、これ以上先に進まないと。

 念のため申し上げておきますが、我々は正式な手続に入っていたわけではないのでございます。その前の段階でいろいろ検討をしていたわけで、そういう意味において、経営委員会の後、夕刻、私は、これ以上の手続には入らない、こういう決断をして、理事にもその旨伝え、同意も得まして、そういうふうな結果になったということでございます。

階委員 巷間報じられているその理事会での議論なども全く公表されていませんし、今の説明もにわかには信じがたいところがございます。こういう身内の透明性を確保するというところも、私は今のNHKには徹底されていないような気がします。ぜひもう一度NHKのあり方を考えていただきたいということをお願いします。

 それから、財政健全化について少しお尋ねしたいと思います。

 自民党の憲法改正草案八十三条二項に、「財政の健全性は、法律の定めるところにより、確保されなければならない。」とあります。私も行政改革をやってきました。一見、これはいい話だというふうにも思えるんですが、しかし、法律の定めるところによりという留保条件が入っていますから、法律できちんとした定めがないと財政健全化が進まないということにもなりかねないわけです。

 ところで、今問題になっている軽減税率、一兆円の税収減が生じると言われていますが、そのうち六千億の穴埋め原資が未定である。

 さらに加えて、これは実は、自民党の野田先生、きょうもここにいらしていると思いますが、野田先生が消費税軽減税率制度検討委員会という与党内の会議で出されたペーパーです。

 一番に、対象品目設定の悪循環ということで、対象品目を幅広く設定すると所要財源が大きくなる。したがって、財政が厳しいので対象品目を限定して、税率を軽減する幅を抑制しましょうということになると、下の方のループに行って、わかりづらい対象品目の設定、税負担軽減の実感が減るということになります。そうすると、消費者の納得も減り、事業者の事務負担も大きくなる。そうすると、見直しの声が大きくなって陳情合戦になる。そうすると今度は、対象品目を広く設定するということで、もとに戻って、所要財源が拡大する、こういう悪循環が生じる。的を得た指摘だと思います。

 所要財源がどんどんどんどん、対象品目が拡大することによってふえていく、こういうリスクはないと言えるかどうか。総理、お答えください。

麻生国務大臣 軽減税率の対象品目を何にするか、どこまでするか、幾らにするかという話は、この種の税法を導入すれば必ず起きる話だ、これは誰でも知っている話でありますので、我々は、その点に関して慎重に討議させていただいた結果です。

階委員 今、初期設定の話をされましたけれども、初期設定がどうかという問題とは別に、初期設定を今回みたいに外食を除く食品プラス新聞ということで限定したとしても、その後、先ほど言ったような悪循環によって、消費者の納得が減っていく、事業者の事務負担がふえていくという中で見直しの声が大きくなり、対象品目がさらに拡大していくのではないかという懸念があるわけです。

 この懸念が本当に杞憂と言えるのかどうか。私は、かなりの確度でこういうことが起き得るのではないか、いわば軽減税率は財政悪化をさらに進めていく、将来に禍根を残すことになるのではないかと思っているんですが、この点、総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 階委員の御質問は、いわば一兆円の軽減税率以上に膨らんでいくのではないかという御質問でございますね。

 この一兆円の中の範囲内においては、今、麻生大臣から答弁をさせていただいたとおりでございますが、一兆円を超えてということは我々も全く考えていないわけでございまして、当然この一兆円という中の範囲内で、もう既にお示しをしている中の範囲内で軽減税率を実行していこう、こう考えているわけでございます。

 その際、混乱のないように、事業者の皆様ともしっかりと我々も協力させていただきたい、連携していきたいと思っています。

階委員 軽減税率そのものについても問題があると思いますし、もし万一これを入れてしまったら、私が申し上げたような悪循環というのが生じ得るということを自民党の重鎮の先生がおっしゃっているということを肝に銘じていただきたい。

 それから、最後に、今回、国会には、特例公債法と復興債を発行するための復興財源確保法の改正案、これがなぜかセットになって出されております。別々な法案だったはずなのにセットになっている。セットにする意味があるのかどうか。

 そもそも資金使途が違います。特例公債は、赤字国債とも言われて、財政赤字を穴埋めするために使われるものです。復興債は、東日本大震災の復興、今大変な苦しい環境にある人たちがもう一度ちゃんとした暮らしができるようにするために使われるものです。

 借金の規模は、今回発表された中長期の財政試算を前提にして、しかも、経済再生ケース、アベノミクスが大々成功したということを前提にしても、今後五年間で借金は最低でも百五十兆円必要だというふうに試算されます。復興債は、最大でも五年間で六・五兆円です。規模が全然違います。

 返済の原資。赤字国債は、財政が黒字化しない限り、返済期限が来たらさらなる借金をしないと返済することはできない。復興債は違います。特別税を国民の皆様の協力で決めた。それから、日本郵政の政府保有株の売却収入や、政府が保有するJT、NTTの配当などによってちゃんと原資は確保される。いわば、それまでのつなぎ資金なんです。

 こういう違いを考えたときに、いわば今回のセット法案、玉石混交といいますか、きれいなようかんの横に怪しげなお金が入った封筒が入っているようなものです。全く意味の違うものをセットにするのは、私は、被災地に対しても、国民に対しても極めて失礼なことだと思いますし、私たち国会は法案を審議する立法権があります。立法権に対しても失礼なことだと思います。

 総理、これは分離していただけませんか。最後にお尋ねします。

麻生国務大臣 復興財源の確保と一般会計の財源の確保は密接に関連をしておる、我々はそう考えております。基本的に、附則第三条をよく読んでいただいたらわかると思いますので。ここで、時間もないと思います。それを読み上げるつもりはありません。よく御存じだと思いますので。

 平成三十二年度にかけて復興と財政の健全化を同時に推進していくという必要があります。我々は、二〇二〇年というプライマリーバランスのあれがありますので。また、平成三十二年までの五年間、財政法第四条の特例であります公債、いわゆる復興債、特例公債の発行根拠を求めるための改正という点でも共通性がある、私どもはそう考えております。

階委員 これは法案に野党が反対できないようにするための極めて卑劣なやり方だということを申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

竹下委員長 この際、緒方林太郎君から関連質疑の申し出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。緒方林太郎君。

緒方委員 民主党、緒方林太郎でございます。

 本日は、午前中最後のバッターということで、よろしくお願い申し上げます。

 きょうは、TPPということで、石原大臣を中心にお伺いをさせていただきたいと思います。

 まず、TPPが妥結をされた結果として何が起こるかということですが、政府が配っている資料はこれであります。

 これまでの成長経路があって、TPPによってもたらされる新たな成長経路に移行し、そして新たな成長経路として、GDPがここでは十四兆円拡大するということになっております。ここは間違いないですね。

 この図、一つ不思議なことがありまして、時間軸なんですが、いつ実現するのかということが書いてないわけでありますが、このパネルの試算によると、十四兆円のGDPの押し上げが生じるのはいつですか、石原大臣。

石原国務大臣 これは、もう委員御指摘のとおり、経済分析モデルとして定点でやっていて、時間軸がないんですね。一方、世銀が出しましたものは時間軸があって、二〇三〇年。静学モデルだと御理解いただきたいと思います。

緒方委員 全く私、わからなかったんですが、時間的に大体どれぐらいの時期になれば、この十四兆円、実現するのかということについてもう一度答弁いただければと思います。

石原国務大臣 データを積み上げていけば時間軸というものが出てくるんですけれども、今回の試算は、静学、要するにどういう形になるかというものを試算したもので、時期というものは明示できておりません。

緒方委員 つまり、それですと検証できないわけですよ。

 例えば二十年後に十四兆円拡大していないとき、そのときに何と言うかというと、いやいや、まだ効果が発現していないですからと。三十年たっても、効果が発現していないからと。いやいや、まだ発現していない、五十年たっても百年たっても、十四兆円の押し上げ効果が出ていなければ言いわけができる、そういうモデルだということですね、石原大臣。

石原国務大臣 先ほども申しましたように、これは定点の静学モデルなんですよね。

 ただし、御理解をいただきたいのは、これもきのう議論になったんですけれども、品目別に積み上げていく手法じゃなくて、マクロのGDPに対する影響のシミュレーションで、こういうことをやったらこういうふうになる、そういうものでございます。

緒方委員 全くと言っていいほど国民に説得的でないわけですよ。十四兆円もうかります、あなた方は十四兆円の恩恵を受けるんですと言っておきながら、その時間が明示されないというのは余りに不誠実なモデルだというふうに申し上げたいと思います。

 それでは、質問をかえまして、自動車の輸出というものはこの十四兆円の押し上げ効果の中に入っているというふうに思われますか、石原大臣。

石原国務大臣 入っていると考えております。

緒方委員 ということは、自動車の関税が下がるのは、普通の自動車については十五年先から下がり始める、そして、ライトトラックについては三十年たったときに今の二五%がゼロ%になるということですので、少なくとも、この十四兆円の効果が出るというのは三十年以上先だということを今言われたんですね、石原大臣。

石原国務大臣 これもお話をさせていただきましたけれども、自動車といいましても、完成車の輸出というのは全体の三割なんですね、百五十万台。そして部品は、発効しましたら、きょうはちょうど署名式が行われたんですけれども、すぐに八〇%まで下がるわけですよ。そういうことを受けますと、日本の自動車業界にとりましてプラスである、かなり大きなプラス、そういうものをかち取った交渉ではないかと理解しております。

緒方委員 石原大臣、よく部品の話をされますが、それは当たり前なんです。

 今、ライトトラックといいますけれども、その中にはSUVとか、日本で言うところのレクサスの一部もこれは入るわけですね。そういう車は関税が二五%だから輸出しないんです。そして、アメリカでつくるようになっているんです。この二五%が下がれば、二五%が下がるという見通しが立つのであれば、経済モデル、そしてビジネスモデルは変わるじゃないですか。二五%が今あるからそういうことになっているのをあたかも正当化するような発言は不謹慎ですよ、大臣。もう一度答弁ください。

石原国務大臣 外交交渉に携わられていた委員であるならばわかると思いますけれども、一〇〇%一方の国が勝つという外交交渉はないんです。

 きのう、フォードの話をさせていただきましたけれども、アメリカで売れている、例えばフォードのF一五〇というピックアップトラック、大変排気量が大きくて、残念ながら日本では買う方はいません。また、フォードの車についても、モンデオでしたか、中小型車が二〇〇〇年代の中間ぐらいまでは日本でも走っていましたけれども、今はフォード車に対するニーズがなくなって、フォードという会社が日本で商売を撤退するわけですよ。

 そんな中で、皆さん、考えてみてください。日本の自動車が交渉の中で壊されたり、カセットレコーダーが壊されたり、貿易摩擦が起こるわけであります。そういうことを考えて企業の方は行動しておりますから、委員の御指摘は当たらないと思います。

緒方委員 それでは、今全く意味がわからなかったですけれども、少なくともライトトラック、少し大型車の輸出については、日本で完成車をつくって輸出する可能性については、これはもう追わなくていいというふうに、少なくとも三十年間追えないということですから、これは、三十年後ですからね、今二十代、三十代で働いている方には恩恵が及ばないわけですよ、大臣。

 今、私の地元は福岡です。トヨタ九州、日産九州がございます。そういった方々は恩恵をこうむらないわけですよ。そのことを正当化するというのは、私は不謹慎だと思いますよ。大臣、いかが思われますか。

石原国務大臣 私は自動車メーカーの経営者じゃないですから、どの車をどこでどうつくるかということには言及をしておりません。しかし、この交渉改定の中に……(発言する者あり)サンダーバードじゃないですよ、話をちゃんと聞いてください。F一五〇というトラックの話をしたんです。

 ですから、そういうことを経営者が望むかということは、経営者の方に聞いていただければ結果はすぐ出てきます。

緒方委員 よくわからない答弁でしたが、先ほど石原大臣、部品、部品だと言われましたが、TPPが妥結したときに安倍総理大臣は、二〇%の関税がお茶にかかっている、そして、このお茶に対する関税が撤廃されれば静岡や鹿児島は世界の茶どころになると言われました。

 玉木議員が一度質問しましたが、二〇%の関税がかかっているのは、ほとんど輸出実績のないメキシコであります。しかし、その二〇%の関税が下がれば、私もそれを望みますよ、二〇%の関税が撤廃されれば、日本からメキシコにどんどんとお茶が輸入され、そして静岡と鹿児島が世界の茶どころになること、それを願いたいと思います。けれども、まさに通商の世界というのはそうなんです。今輸出の実績がなくても、それは関税が高いからないわけであって、関税が下がれば新たなビジネスモデルが広がってくる、そういうことですね。

 二五%の関税が今かかっているから実績がないことを正当化するのではなくて、それを取り除いて、そして、もっと日本のマーケットを広げよう、そのお気持ちはございませんか、石原大臣。

石原国務大臣 私は内閣府の担当大臣でございますので、経営についての御質問は経産大臣にお聞きいただきたいと思います。

緒方委員 まさに、関税が下がればそこにビジネスチャンスが生まれる、だから今このTPPを協議しているんじゃないですか。その可能性について全く目を閉ざした答弁をするというのは、大臣、本当に不謹慎ですよ。やる気はあるんですか、大臣。もう一度答弁ください。

石原国務大臣 趣旨がわからないんですけれども、経営側が日本でピックアップトラックをつくって輸出をするという状態には今はないんです。それは御承知のことだと思います。

緒方委員 大臣、何か意味が全くわかりませんでしたが、この自動車の話は引き続き質問をしていきたいと思います。

 続きまして、石原大臣に引き続き御質問したいと思います、もう自動車の話ではなくて。一般論としてですけれども、法人税の実効税率をこれから減税するというような話がございます。三二・一一から二〇%台まで下げるという話があります。こういった法人税の実効税率を下げることによって、企業の生産活動、これは活発になるというふうに思われますか。

石原国務大臣 これも私が答弁していいのかわかりませんけれども、委員の御指摘のとおり、法人税の税率が下がれば企業は利益がそれだけ多くなる、利益が多くなればいろいろなところに投資も行う、賃金も上がる、そういう意味では経済は活性化すると考えております。

緒方委員 税金が下がれば一般的にさまざまな経済活動が盛んになって、そして、それによって例えば生産の数量がふえるとか、そういったことがあるんだと思います。私もそう思います。

 しかしながら、今回TPPで政府が出している資料には極めておかしいものがあります。例えば、典型的なケースですが、牛肉であります。

 牛肉は、ここを見ていただくとわかるように、三八・五%の関税がかかっています、現在。それが最終的に九%まで下がります。関税が三〇%近く下がるんです。しかし、それにもかかわらず、政府が出している資料は数量が全く減らないと言っているんです。

 税金が三〇%近く下がるのに、それによって国内の生産が何の影響も受けない、つまり、専門用語で言うと弾性値ゼロということですよ。そんな経済モデルがあるんですか。おかしいじゃないですか、大臣。これはどちらですかね。石原大臣。

森山国務大臣 緒方委員にお答えをいたします。

 今回、TPP交渉の結果、関税即時撤廃ではなくて十六年目に最終税率が九%となること等から、長期にわたる関税削減期間において生産コストの削減等を推進して、国産牛肉の競争力を強化することが十分に可能な時間であるというふうに理解をいたしております。今回の試算では引き続き国内生産が維持されると見込んだことは、今申し上げたような理由によるものであります。

 また、緒方委員も御承知のとおり、やはり牛肉の需要というのがアジアにおいてはかなり伸びてくるということも予測をされますので、そういうことも考えていかなければならないのではないかと考えております。

緒方委員 長期にわたると言いますが、これが発効すれば即時に一一%下がるんです。即時に一一%下がるものを、来年の一月なのか、それとも来年のいつかのタイミングなのかわかりませんけれども、一一%の関税が下がるものを全部、今、効率化とかいろいろな話をしました、一一%の関税の削減を全て無効化することができるような対策とは何ですか、大臣。そして、十六年たったときには三〇%近く下がるんです。この効果を全て吸収して、全て無効化するような国内対策を大臣は打つと言っているんです。それは何ですか。答弁ください。

森山国務大臣 まず、牛肉の世界を考えてみますと、和牛については競争力がありますから、私は別世界のものなのだろうと思っています。乳用種については、これはやはり競合いたしますので、そこのところはいろいろな対策を打たせていただくということを既に申し上げているところであります。

 また、生産コストを下げる、飼料のコストをどう下げていくかということも引き続きやらなければなりませんので、いろいろな政策を総合的に進めさせていただくということが大事なことだと思います。

 また、所得をどう担保していくかということでは、マルキン制度を法制化させていただくということも一つの要件になると思います。

緒方委員 すみ分けの話をされましたが、私は最近オーストラリアへ行きました。WAGYU、オーストラリア産の和牛はかなり質が高いですね。関税が三八・五%から即時に二七・五%まで一一%下がる、そして十六年後には九%まで下がってくる、そのときにオーストラリア産和牛が入ってこないと何で言えるんですか。言えないんじゃないですか。すみ分けていると。すみ分けられない可能性があるんですよ。どんどん入ってくる可能性がありますよ。

 そして、大臣は今、国内対策でいろいろなものをやると言われた。いろいろなものと言われても、一一%関税が即時に下がることを全て吸収することができるような国内対策を、いろいろなでは、牛肉をつくっておられる畜産農家の方はそれでは納得しないですよ。

 そして、マルキンの話をされました。マルキンというのは、収入が減ったときに九割まで補填するというだけです。これでも大きなことだと思いますよ。しかし、十あるとしたときに、九まで補填して、一損しているわけですよ。その一損している状態が担保されているから、だから国内生産がしっかりとこれからも維持できるというのは全く理屈になっていないですよ、森山大臣。

森山国務大臣 まず、緒方委員、オーストラリアの和牛と日本の和牛は別なものであると私は思っています。それは消費者の皆さんがよくおわかりをいただけると思いますし、和牛の輸出が伸びているのもそこに原因があると思います。また、和牛をつくるために多くの農家の皆さんが大変な努力をしてこられたことも我々は知らなきゃいかぬと思います。

 まず、具体的にはどういうことをやるのかということでありますが、生産コストの削減につきましては、畜産クラスターの事業を活用させていただくということが一つあると思います。また、乳用種のところは、受精卵の移植の活用等による和牛子牛の効率的生産を図っていくということもあると思います。また、省力化機械、発情発見装置とか哺乳ロボットとか自動で餌を与えるとかというものの導入や、規模拡大で生産性の向上を図るということも大事ではないかと思っております。

 また、品質向上とか付加価値についてもしっかりやらなきゃいけませんし、地域で特色のある飼料や、あるいは飼育の方法にこだわった牛肉を生産していただいているということも、今後さらに取り組みを強化していく必要があるというふうに思っております。

 こういうこともしっかりやらせていただきまして、先ほど申し上げました経営安定対策としては、牛マルキンについてもしっかりした制度になりますので、これはやはり、現場は非常に皆さん安心をしておられますので、そのことはぜひ御理解をいただきたいと思います。

緒方委員 マルキンについては、価格が下落局面に入ってくるときは岩盤の政策ではないんです。非常にそこは弱いんです。大臣、わかっていますよね、この件。

 そして、何度も言いましたが、今言った政策を全て動員すれば、この一一%の関税が下がる、そして最終的に三〇%下がるというものについて、それが全て無効化をされ、国内生産はぴくりとも動かないということを今政府は言っているんです。

 大臣にもう一度お伺いします。今言った政策は、これらの関税の削減を全て無効化するだけの効果を持つものだというふうにお考えですか。

森山国務大臣 緒方委員も御承知のとおり、セーフガードもきちっと入っておりますので、必ず、この政策をしっかりやっていけば生産量は維持できると考えております。

緒方委員 そんな根性論じゃだめですよ。

 セーフガードの話を今されました。十六年後のセーフガードは何万トンで発動されるんですか。今、五十三万トンぐらいですよ、輸入が。七十三万トンぐらいまでいかないと発動されない。今よりも二十万トン輸入がふえない限り、セーフガードは発動されないんです。それが国内産を押しのけるときに、実は十六年後に発動されるセーフガードというのは、日本の畜産農家が壊滅的な打撃を受けているときにしか発動されないんです。

 大臣、わかっていますか、この件。七十数万トンに、今よりも消費が二十万トンふえない限り発動されないようなセーフガードで、日本の畜産農家の方に大丈夫だ大丈夫だと言うのは、それは全然説明になっていないですよ、森山大臣。

森山国務大臣 私は、日本の畜産農家の皆さんというのはかなり短期間に頑張ってこられて、いい国産牛を、和牛というものもつくってこられたと思います。また、乳用種にしてもかなり努力をされて、輸入牛とは少し評価を変えていただけるような消費者の傾向もあると思っておりますので、今申し上げたような政策をしっかり進めさせていただくということが大事なことだと考えております。

緒方委員 セーフガードの件については何の答弁もありませんでした。虚偽答弁ですよ、大臣、それは。セーフガードがあるから大丈夫だなんというのは、これはうそなんですよ。壊滅的な打撃を受けているときにしか発動されないセーフガードを金科玉条のように言うのはやめていただきたい。

 そして、今の、全く国内産が動かないことを約束しているということは、ひたすら国内産が維持できるところまで対策を打ち続ける、そういうことですか、大臣。

森山国務大臣 緒方委員、先ほど牛肉の需要が伸びると申し上げました。ざくっと申し上げて、大体八十五万トンぐらいの消費だと思います。そのうち三十五、六万トンしか、どんなに頑張っても国産はできません。あと五十万トンぐらいをずっと輸入に頼っています。

 そうすると、今の世界の牛肉の需要の伸び、アジアにおける牛肉の需要の伸び、中国における異常な需要の伸びにどう我々は備えていくかということを考えますと、本当に五十万トンずっと輸入ができるんだろうかというところにも不安がありますので、これは何としても今の生産量は落とさないように政策をしっかりやらせていただくということが最も大事なことだと思っておりますので……(緒方委員「最後、一言」と呼ぶ)そうですか。

緒方委員 今回のTPPの対策の経済モデルでは、経済モデルを組むことによって輸出入が盛んになって、そして、牛肉、農林水産業も含めて全ての輸出入がふえてくると言っているんです。大臣の言っていることと内閣府が提示しているモデルの整合性が全くとれていないんです。貿易が盛んになって輸出入がふえると、恐らくその中で牛肉はふえてくるでしょう。それと、今、森山大臣が言われたことは全く整合的じゃないんです。

 この件がありますが、十二時になりましたので、残余の質問は午後に回して、ここで終えさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

竹下委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    正午休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

竹下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。緒方林太郎君。

緒方委員 午前中に続きまして、質疑を続けたいと思います。

 TPPによりまして十四兆円GDPの上積みがあるということについては、この中に自動車が入るということでしたので、恐らく、自動車、最終的に関税が下がるのは三十年後ですので、三十年。そして、この効果分析については、何と言っているかというと、実際に関税が削減された後に、さらにその効果が十分に発現するには二十年近くかかるということでありました。もうほとんど検証できないぐらい遠い遠い将来の話をここでしている。半世紀後であります。そういうモデルを提示して、国民に対して、こんなにGDPの上積みがあると。まがいものだと思いますよ、この分析は。ひどいと思いますよ。

 しかも、自動車の関税が下がったらどうなりますかと、午前中、石原大臣に聞きました。私は企業の経営者ではない、それは経営判断だと。しかし、関税を下げたことによっていろいろな誘因が働いて、その結果として経済が膨らんでいく、そういうことを想定しているんじゃないですか。それを全部経営判断と言ってしまったら、それは全部経営判断ですよ。関税を下げたら相手がどういうふうに反応するかなんというのは、全て経営判断であって、こんな分析できっこないですよ。石原大臣の言っていることは、むちゃくちゃ矛盾しているんです。

 まず最初にお伺いいたします。経済産業大臣、自動車の関税が十五年後から下がっていく、そして、ライトトラックについては三十年後だ。何を期待しておられますか、林大臣。

林国務大臣 自動車産業は、消費地に近い場所で生産する、言ってみれば地産地消に近いのを基本としているわけでありまして、技術や生産能力なんかも、グローバルな観点でその体制をつくっているというのが実態でございます。

 だから、アメリカにおいても、販売している自動車の七割が現地生産でございまして、もちろん日本から百五十四万台も輸出はしているわけでありますけれども、北米生産は大体四百四十六万台、七割を数えているわけでございます。

 だから、そういう意味で、完成車の関税の引き下げに加えまして、現地生産ができる、自動車部品の関税が下がることによって、ビジネス実態から見て極めて重要なものだというふうに全体的に考えるわけでございまして……(緒方委員「答えになっていない」と呼ぶ)いいですか。

緒方委員 大臣、答えになっていないんです。

 自動車の完成品の関税が下がることによって、石原大臣は、それは全然どうなるかわかりません、最後は経営判断ですというふうに言っている。しかし、こういう分析をしている以上は、所管の経済産業大臣として、車の関税が二・五%からゼロに下がる、ライトトラックについては二五%からゼロに下がるというときに、部品の話なんかしていないですよ、部品の話なんかしていないです、完成車がどうなるかということについては経済産業大臣として何らかの判断があるはずです。それを聞いているんです、経済産業大臣。

林国務大臣 それは、計算上は当然ふえていくわけでございます。

 でも、時期を言われると、今言ったように、関税撤廃の時期がありますから、いろいろありますけれども、そこは自動車部品も含めて完成品におさめるわけですから、全体的にプラスになります。ですから、それは、総体的に自動車産業はプラスに好転するというのは当然だと思っています。

緒方委員 それはそうだと思いますよ。経済産業大臣の言うとおりだと思います。

 しかし、さっき、自動車産業がこれからどうなっていくかということを聞いたときに、石原大臣、ひたすら何と言っていたかというと、いや、私、わかりません、経営者じゃないです、経営判断です、そんな答弁でした。

 大臣、そんなことを言っていたら、こんなモデルなんか絶対成り立たないんです。時期はよくわからない、どう考えても半世紀後だ。そして、この効果の分析の原点となる個別品目の判断について、大臣が経営判断だと言うことは、明らかに、こういうものを提示していることとの関係で矛盾するじゃないですか。

 石原大臣、おかしいですよ。答弁ください。

石原国務大臣 私の答弁を非常に曲解されていると思います。

 自動車関税については、TPPの関税撤廃期間の最長の三十年ではなくて、二十五年であります。

 そして、私が経営者の判断によると言ったのは、何を話したかというと、経営者の方というのは、ピックアップトラックもそのメーカーがつくっている、あるいは乗用車もつくっている、小型車もつくっている、中型車もつくっている。私、トヨタのウェストバージニアの工場も見てきましたけれども、そこは乗用車をつくっています。そして、先ほど話したように、七割、現地生産なんですね。そんなときに、アメリカのメーカーが、今唯一、本当に首位をもってつくっているところにけんかを売るか売らないかというのは経営者の判断であります。委員の御指摘のとおり、関税が下がれば有利な条件になりますけれども、それは経営者の判断によるということを申し述べさせていただきました。

 経済モデルについておかしいという話をされております。

 これももう既に議論されたことですけれども、日本の経済効果分析モデルは昨年の十二月に発表させていただきました。GDPを二・六%引き上げる。これはGTAPという経済モデルで、御存じのとおりでございます。その後、世銀がことしの一月に発表いたしました、我が国とほぼ同じ経済モデルを使って。これも二・七%引き上げる。ピーターソン研究所も、実質所得プラス二・五%。ほぼ世銀と一緒なんですね。

 片方の世銀のモデルは動学モデルで二〇三〇年時点、我が方の試算モデルと〇・一%ずつの差でございますので、我が方のモデルというものの信憑性が確認できた一つの事例だと思っております。

緒方委員 大臣、今言っていること、伝わっていないと思いますよ。

 全ての要素を入れて回して、そしてこれが効果がきちっと全て発現されたら十四兆円と大臣は言われました。それは、恐らく、ライトトラックの三十年が入るでしょう。入ると先ほど言われました。そして、内閣府のモデルでは、実際に関税を下げてから、生産のチェーンがうまく回るようになって、その効果が十分に発現するのはさらに二十年近く後だ、半世紀後だというふうに言っています。

 大臣は今、別の試算を出して、二〇三〇年代には二・数%と言われました。全く同じだと言われましたけれども、時期的なものが全然違うんです。大臣、このずれ、どう説明されますか、石原大臣。

石原国務大臣 もう既に答弁をさせていただきましたように、静学モデルと動学モデルのマクロ計算の指標は、時期が出るものと出ないものと差があるわけですね。それは当然であります。ただ、GDPをどれだけ押し上げるか、国の経済をどれだけ拡大するかということにおいては同じだということを申し述べさせていただいております。

緒方委員 何度も聞きますよ。しかしながら、全ての要素が織り込まれ、そして、それが全て完了し、その効果が全て発現したときに十四兆円と言ったわけですよ。大臣、そう言われましたよ。

 普通に考えれば、これは私が何か考案しているわけではなくて、自動車の関税の撤廃が、ライトトラックが成立するのは三十年後です。そこから効果が発現するんです。そして、効果の発現には二十年近くかかると、それは石原大臣、あなたの部下が書いているんです。あなたが書いているんです。そうすると、半世紀後でしょうと聞いているんです。それは静学モデル、動学モデルとかそういうことではなくて、今私は完全に、政府が出しているモデルに乗って説明しているんです。

 大臣、半世紀後ということでよろしいですか。

石原国務大臣 何度も申しますとおり、指標を入れて、時間軸は今回のモデルには入っていないんですね。時間軸の入っているモデルとGTAPモデルと比べても、GDPをどれだけ伸ばすかということについて同じ数字が出ているということを話しております。

緒方委員 今、いいかげんなことを結構言われましたよ。時間的なものは何も決まっていないと。

 時間的なものは何も決まっていないというと、これは国民からすると、十四兆円、このTPPによって何か皆さんにいいことがありますと言っているけれども、先ほど申しましたとおり、午前中言ったとおりに、将来的に検証できないわけですよ。全く検証できないじゃないですか。

 石原大臣が今言ったように、いつかはわからないけれどもどこかで十四兆円ですと。五十年後なのか。私は五十年以上先だと思いますよ、あなたの説明によると。けれども、それすら明言しない。もしかしたら七十年後かもしれない、百年後かもしれない。そんなものをつかまされて、国民が喜べますかと聞いているんです。国民は、そんな、時期も決まっていない、いつ我々に恩恵が及んでくるかもわからない、そんなものをつかまされて、ああ、よかったとは思わないはずであります。

 大臣、まがいものをつかませようとするのはやめてください、石原大臣。

石原国務大臣 分析の話をされているのか、個々の影響評価の話をされているのか、GDPがどれだけのものの拡大をしていくのかという議論によって、そのマクロ分析モデルをどう見るかというのは違うわけですね。

 何度もお話しさせていただいておりますように、このモデルは、GDPがどれだけ広がるかということを静学的に捉えたものであります。

緒方委員 大臣、もう時間もそんなにありませんので、最後にもう一回だけ聞きます。

 十四兆円のGDPの拡大が最終的に実現するのはいつですか、石原大臣。

石原国務大臣 経済分析モデルが静学モデルである以上は時間軸がないということを申し述べさせていただいているわけであります。

緒方委員 内閣府が出した資料では、過去の例によると、新たな成長経路で生じる効果を算出するときに、ショックを与えてから十年から二十年程度を想定することが多いように見受けられ、その期間は成長率が高まると言っているわけです。これは内閣府の事務方が書いている資料です。ということは、三十年プラス十から二十と。

 大臣、よくわからないと言っているけれども、よくわからないのは、恐らく、四十年、五十年、それから先いつになるかというのがわからないと。これは国民からすると納得のいくものじゃないです。今から四十年前というのは一九七六年ですよ。そのときから今とを比較して十四兆円ふえていますとか、そんなことが現実的な試算であるはずがないじゃないですか。

 大臣、もうこれで質問を終えさせていただきますが、政府が我々につかませようとしているこの経済効果分析というのは、時期もわからない、そしてどういう形で我々に恩恵が及ぶのかもわからない、そういうまがいものをつかませているということを申し述べさせていただきまして、私の質問を終えさせていただきます。

 ありがとうございました。

石原国務大臣 何度も申しておりますように、GDPへの影響をシミュレーションしておりますし、他の影響評価も、動学的に見て、二〇三〇年に二・六%あるいは二・五%というものが、我々の調査と同じようになっているということは御理解いただきたいと思います。(発言する者あり)

竹下委員長 この際、前原誠司君から関連質疑の申し出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。前原誠司君。

前原委員 民主党の前原でございます。

 きのうも質疑を見ていまして、きょうも質疑を見ていましたけれども、質問者がいないのに答弁をされているケースが見受けられます。これは、委員長、ちょっとおかしいんじゃないですか。やはりしっかりと議論ができるような形で采配をされるということが大事ですので、まずそれは申し上げておきたいと思います。

 金融政策について話をまずさせていただきたいと思いますが、黒田日銀総裁、お越しをいただいていますか。

 去年の六月十日に、衆議院の財務金融委員会で、私の質問に対して、黒田総裁はこう答弁されたんですね。「付利金利の引き下げは検討いたしておりません。」と。

 その理由として、

 現在、金融機関の日銀当座預金へ付利をしているわけですけれども、これは、年間約八十兆円に相当するペースでマネタリーベースが増加するような金融市場調節ということを円滑に行う、大量のマネタリーベースを円滑に供給するということに資するものであると考えておりますので、そういう意味で、当座預金への付利というのはメリットがあるというふうに思っております。逆に言いますと、付利をやめますと反対のデメリットが出てくるということかと思います。

こうおっしゃっていた。

 本年に入っても、一月十八日の参議院の予算委員会でも同趣旨の答弁をされています。

 端的に聞きます。このデメリットとは何ですか。

黒田参考人 マイナス金利につきましては、欧州の四つの中央銀行が既に導入しておりまして、そのプラスマイナスということも相当に議論をされております。私どもの中でも、プラスマイナスについては検討をしておりました。

 今回のマイナス金利の導入に当たりまして一番懸念されるところは、マイナス金利を導入したために、準備預金にマイナスの金利が限界的ですけれどもつきますので、金融機関の収益を過度に圧迫するのではないか、その結果、かえって金融仲介機能を損なうおそれがあるのではないかということが一番大きな懸念でございました。

 その点につきましては、御案内のように、三層構造という形で、これまで積み上げてきた準備預金については引き続き〇・一%の金利を付利する、これからふえる部分についてマイナス金利を〇・一%でつけるということによって、この一番大きな懸念は相当程度回避されるというふうに思っております。

前原委員 しばらくちょっとやりとりしますので、私の質問にだけ答えてくださいね。

 六月十日のやりとりの中でデメリットとおっしゃったのは何ですかということを聞いているわけですね。つまりは、その前段として、マネタリーベースをこれからも年間八十兆円買われるわけでしょう。それに対して言ってみれば付利を付しているから、金融機関は国債を日銀に売って、当座預金に積んでおけば〇・一%の利ざやが稼げる。それが逆になるということの中でデメリットとおっしゃったと思うんですね。

 それで、そのデメリットについて、いろいろなお話をされましたけれども、つまりはこういうことじゃないですか。次の質問に行きますね、あわせて、今のことについて。

 一月二十九日の政策決定会合の後に、日本銀行がQアンドAを出しているんです。「本日の決定のポイント」という紙の中でQアンドAというのを出されて、二番目にこういうことが書いてあるんですね。「長期国債の買入れが困難になることはないのか?」という想定問に対して、「マイナス金利分だけ買入れ価格が上昇することで釣り合うので、買入れは可能と考えられる。」と。

 先ほど申し上げたデメリットとあわせて、今の想定問に対して整合性があるのかどうなのか。その点、御答弁ください。

黒田参考人 先ほど申し上げたとおり、そういった懸念がかつてあったことは事実であります。そのとおり答弁いたしました。

 その後、欧州のECBは、マイナス金利を導入した後、量的緩和を導入して長期国債等を大量に購入しているわけですけれども、そのもとで何ら買い入れに対してスムーズに進まないという問題は生じておりません。

 それから、さらには、ECBは昨年の十二月にマイナス金利をもう一段下げたわけですけれども、そのもとでも特段の問題は生じていないということを分析して、確かに、〇・一%の付利というのは、包括緩和を始めて長期国債を買い入れ始めたときから適用して、それが長期国債の大量買い入れをスムーズに進める上で一定の効果があったとは思っておりますけれども、欧州の経験に鑑み、その点については十分国債市場は今後とも注視してまいりますけれども、〇・一%の限界的なマイナス金利のもとで、国債の買い入れがスムーズに進まなくなるというリスクは非常に小さいのではないかというふうに現在考えております。

前原委員 リスクは小さいのではないかということは、リスクはあるかもしれない。欧州の例を挙げられたわけでありますけれども、欧州の例と日本の例が全く一緒にうまくいくかどうかというのはわからないですよね。

 確かに、国債を日銀に金融機関が売るということになると、金利が下がっているということは価格が上昇していることですから、その分、よりもうかりますけれども、しかし、売った金額というものは今度はマイナス〇・一%の金利がつくところに積まれるわけですよね。

 今までは、売ったときの利ざやは、金利が下がっていなかったので、それほどもうからなかったかもしれない。売った場合については、より金利が下がればもうかるということになりますけれども、しかし、今までは二度おいしかったわけですよ。国債を売ってもうかるということと、付利金利でもうかるということで二度おいしかったのが、今回は、売ったときは利ざやは拡大をするけれども、しかし、たまったものについてはマイナス〇・一%のいわゆる付利金利で言ってみれば目減りをしていく、こういうことですね。トータルで金融機関は考えなくてはいけないということになるわけですよね。

 それが本当にうまくいくかどうかということについては、ヨーロッパの例を出されましたけれども、それは私は、後でお話ししますけれども、金融機関がもう既に身構えていろいろな対応をし始めているということの中で、相当懸念があるということだけ、まずこの点は指摘をしておきたいというふうに思います。

 もう一つ聞きたいのは、今までこの量的緩和の話を日銀総裁にしたときに、限界説については強く否定されていましたよね。まだまだ買うものはあるんだ、国債も三分の二以上あるし、買うものはほかに幾らだってあるということを豪語されていたわけであります。では、何で量的緩和の拡大ではなくてマイナス金利のいわゆるミックスという形になったのか。明確な答弁をいただきたいと思います。

黒田参考人 量的・質的金融緩和について限界があるというふうには考えておりません。その上、昨年十二月に市場で言われておりました限界論について、それぞれについて、それが限界として働き得る可能性を除去するような補完措置を講じておりますので、量的・質的金融緩和について今の時点で限界があるとは考えておりません。

 他方で、マイナス金利つきの量的・質的金融緩和というものにした理由につきましては、公表文でも示しておりますし、今後、金融政策決定会合の議事要旨等が出てきたところでより明らかになると思いますけれども、いわば金利面での緩和のオプションも加えた、量、質、金利という三次元で緩和手段が使えるということで、より金融緩和を抜本的、大胆に進められるようにしたということであります。

 経済動向等につきましても相当な議論をして、今回、マイナス金利を導入しようということになったわけでございます。

前原委員 量的緩和はまだまだできるということをおっしゃっていたわけですけれども、それぞれの金融機関は国債を保有していて、一定程度の国債保有をしていくでしょう。例えば、ゆうちょなんというのは融資ができないわけですから、そういう意味ではしっかりとある程度保有しておいて資産運用をしなきゃいけない、こういうことになるわけでありますね。

 今そういうことをおっしゃいましたけれども、要は、市場の中には限界論というのがあって、恐らく言われていたのは、量的緩和というものを例えば八十兆円から九十兆円に拡大したとしても、それほどのサプライズはない。今まで二回サプライズ、今回もある意味のサプライズですから、サプライズではない、九十兆に拡大しても。

 しかし、九十兆に拡大すると、それだけ今度はリードタイムが短くなるということで、より限界論が強くなってくるという意味で、量的緩和の限界というものはないとはもちろん外では言いながらも、しっかりといわゆる金利を下げるということのオプションの中で延命措置を図ったというのが、私は本当のところではないかと思います。後で、本音のところを少し話をしていきたいと思いますが。

 これから、ポイントを幾つか絞ってお話をしたいと思います。

 きのう、黒田総裁は講演されていますね。きさらぎ会ですか、講演をされて、読ませていただきました。

 その中では、日本銀行は二%の物価安定目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点までマイナス金利つき量的・質的金融緩和を継続します、また、今後も、経済、物価のリスク要因を点検し、物価の安定目標実現のために必要な場合にはちゅうちょなく量、質、マイナス金利の三つの次元で追加的な金融緩和を講じます、マイナス金利つき量的・質的金融緩和はこれまでの中央銀行の歴史の中で恐らく最も強力な枠組みですということを述べているわけですね。

 今までの中央銀行というのが日本でのことをおっしゃっているのか、世界のことをおっしゃっているのか、ちょっとわからなかったんですが、それはおいておいて。

 黒田総裁、物価の二%の達成目標を今まで何回先送りされたか覚えておられますか。

黒田参考人 量的・質的金融緩和を導入いたしましたのは二〇一三年の四月であります。その際、二年程度を念頭に置いて、できるだけ早期に二%の物価安定目標を実現するということで導入したわけであります。

 その後も、展望レポートその他で物価の見通しを常に発表いたしております。その中で、確かに、二%の物価安定目標を達成する時期についての見通しを後ずれさせたということは事実であります。(前原委員「何回」と呼ぶ)三回後ずれさせたと思います。

前原委員 私の勘定で四回ですね。

 まず、二%の目標達成時期について、一五年度にということを言っていたわけですよ。それを二〇一五年度を中心とする期間ということにずらしたんですね。これが一回。次は、一六年度前半ごろに変えたのが二回。それから、一六年度後半ごろに変えたのが三回。この間の政策決定会合は一七年度前半ごろですから、四回でしょう。四回変えているんですよ。

 確かに、原油価格の問題もありますけれども、原油価格というのはこれから恐らく長期低迷しますよ。シェールオイル、あるいはサウジとイランの確執の問題、増産体制、そして新興国経済の減速、こういうことでかなり私は原油価格は低迷すると思いますよ。そうすると、一年たったら下落したものというのはなしになりますよね。そうすると、物価上昇について、原油価格の下落というものが言いわけにならなくなりますね。

 そして、何よりも、きのうの講演で、最も強力な緩和手段を三次元で見出したというのであれば、二%の物価安定目標は、一七年度ときのう言ったのであれば、一七年度の前半に達成できないと、オオカミ少年というかオオカミ壮年というか、これはもう先送りできないですよ。

 総裁のおっしゃるように、これだけの追加手段を得たのであれば、私は苦肉の策だと思いますけれども、でも、総裁いわく強力な最強な手段を得たのであれば、必ず一七年度前半に二%は達成する、そのために何でもやるということをおっしゃったらどうですか。一番初めには、二年で二%やると言い切られたんでしょう。どうですか、約束されたら。

黒田参考人 石油価格の動向についてはいろいろな見方があることは事実でありますが、IMFといい、各国の中央銀行といい、日本銀行の場合もそうですが、市場の先物価格の動きを見て、それを経済見通しを作成する場合の前提として使っております。

 今回の見通しは、足元の一カ月の平均が三十五ドル程度で、これが二〇一七年度の見通し期間の後半にかけて四十ドル台の後半に上昇していくだろうという見通しを使っております。そのもとで推計いたしますと、足元で今マイナス一%ぐらい物価上昇率を引き下げておりますが、委員も御指摘されたように、その効果というのは、今の前提に立ちますと、二〇一六年度の終わりごろまでには剥落してしまうということであります。

 そうしますと、今足元でも生鮮食品とエネルギーを除きますとプラス一・三%くらいになっておりますので、そういう状況を前提にすれば、二〇一七年度の前半ころには二%程度の物価安定目標が達成されるという見通しであるということでございます。

前原委員 見通しを聞いているんじゃないんですよ。私は意思を聞いているんですよ。何が何でもやると言って、それでマイナス金利まで導入したんでしょう。そして、最強のツールを手に入れたとおっしゃっているんだから。

 そして、先ほど私が申し上げたように、また総裁もおっしゃったように、原油の問題については剥落しますよ。であれば必ずこういうものを、だって、政策決定会合は年に五回あるんです、やったらいいじゃないですか。やって本当に二%が実現するという、五度目の正直をやったらどうですか。ちゃんと明言したらどうですか。そうじゃないと、総裁の決意をマーケットは疑いますよ。これだけのものを手に入れたのであれば、必ず実現しますと言われたらどうですか。

黒田参考人 二%の物価安定目標をできるだけ早期に実現するというのは、日本銀行としての強いコミットメントであります。それに従って、必要があればちゅうちょなく量、質、金利という三次元の追加緩和手段を駆使して、目標の達成に全力を挙げるということはお誓いいたします。

前原委員 見通しをおっしゃったのから、全力を尽くす、お誓い申し上げますということで、若干前に行ったような気がしますけれども。

 本気で本当に二%を達成するのであれば、あらゆる手段をやるんでしょう。それが最優先されるわけでしょう、総裁。あらゆるものを手に入れた、最強のものを手に入れたと言うんだったら、実現できなかったら、全くもってそれはかけ声倒れ、まさにオオカミ壮年ということになるというふうに私は思いますよ。そして、市場の信頼を失うということになると思いますよ。

 そこで、今、一七年でとにかく二%を実現するために最大限の努力をするということをおっしゃった。では、それを前提に話を伺います。

 今、金融機関は国債などの債券を有価証券で主力の運用対象としていますので、今後さらに金利水準が低下すれば金融機関の収益が低下しますよね。

 特に大変なのは、海外での運用についてはメガバンクほど精通していない地方銀行とか信用金庫。それから、先ほどちょっと言及しましたけれども、百五十兆円を抱えて融資業務ができない郵便貯金。しかも、四月から預け入れ限度額が一千万から一千三百万円に上がりますね。それから、もう既にインターネット支店での定期預金の募集を停止すると言っている地銀とか。あるいは、定期預金や普通預金の金利を引き下げたり、債券で運用するMMFといった投資信託の新規受け付けを停止するなどのさまざまな問題が出ていっていますよね。

 そして、先ほどこの質問をする前にちょっとチェックしたんですけれども、きょうの為替、どのぐらいか御存じですよね。二円ぐらい円高になっていますね。円高になっているわけですね。つまりは、緩和の効果は為替については剥落をするということであります。

 しかし、きのうの講演でもおっしゃっているのは、とにかくイールドカーブを下げるんだ、金利全般について下げるんだということをおっしゃっている。それが経済に好循環をもたらすんだということですから。

 端的にお答えくださいね。イールドカーブ全体は下がりました、実際問題。しかし、為替は戻っていますけれども、イールドカーブが下がったので為替の変動にはこだわらないという姿勢でよろしいんですか。

黒田参考人 ここは、FRBもECBも日銀も、主要国の中央銀行は皆同じでございますけれども、為替レートをターゲットにして金融政策を運営するということはないわけであります。あくまでも、金利を引き下げ、イールドカーブを下げて実質金利を下げる、それによって消費、投資を刺激し、経済を上向きにさせて、その中で雇用、賃金等が上がると同時に物価が上がっていくという好循環を実現していくということであります。

前原委員 為替水準にはこだわらないということをおっしゃいました。

 しかし、次の質問でいいますと、三つ目のいわゆるマイナス金利というのはいわゆる量的緩和ではなくて、量的緩和もイールドカーブを下げてという効果があったわけでありますが、ダイレクトに金利が下がるわけですね。そうすると、他国との金利差は広がりますね。

 他国との金利差が広がれば、これは通貨安政策と見られるんじゃないですか。このマイナス金利政策というのが通貨安を誘引する政策と見られるということについてはどう思われますか。

黒田参考人 この点につきましては、先ほど申し上げたように、主要国の中央銀行はそういったことを目的に金融政策を運営しておりません。したがいまして、そういう誤解が生じないとは思いますけれども、誤解が生じれば、それは適切に説明していくということでございます。

前原委員 建前と本音の世界だと思うんですね。後で安倍総理にお話を伺いますけれども。

 この政権がいわゆる好景気だと称しているものは、全て円安なんですよ、円安によってもたらされているものです。これを演出しているのがまさにこの量的緩和、異次元の金融緩和でありますので、為替にはこだわらないということをおっしゃったけれども、私は、非常にこの為替の問題については、本音の部分では通貨安政策というものになっている、あるいはダイレクトになるという問題で、そういう意味での問題点があるということは指摘しておきたいと思います。

 黒田総裁、きのうの講演で、必要な場合はさらに金利の引き下げを行いますということですよね。それはイールドカーブを下げて経済をよくするんだということですけれども、では、さらに引き下げる、先ほど二〇一七年度の前半については実現できるように最大限、できるだけ努力するということを、強いコミットメントをおっしゃったわけですけれども、そうであればさらに引き下げるということは可能性としてあるということを言われています。

 そうすると、先ほど、金融機関はもう普通預金を下げたり定期預金を下げたりしますし、例をおっしゃっているヨーロッパだと、お金を預けたら手数料を取られる、つまりはマイナス金利になる、そういったものも出始めています。日本でも、金融機関に一般の方々がお預けしたものについて、みんなは金利がつくものが当たり前だと思っていますけれども、マイナス金利になってもそれは仕方がないんだ、手数料を取られても、政策目標として物価安定二%を実現するためにはさらに金利を引き下げることもあり得るんだということは言えますか。

黒田参考人 従来から申し上げているとおり、このマイナス金利つき量的・質的金融緩和につきましても、二%の物価安定目標の実現のために必要になれば、三つの次元の緩和手段を駆使して、追加緩和等を当然検討するわけですけれども、今の時点でどのようなことを今後やるかというのは、あくまでも二%の物価安定目標に向けてどのように経済が進んでいくかということを見てやるわけです。ですから、その可能性も当然否定はいたしません。

 ただ、欧州では、欧州の中央銀行はかなりマイナス金利を大きくしているわけですね、〇・七五とか一%。その場合でも、個人向け預金はマイナス金利になっておりません。

 したがいまして、現在の限界的にマイナス〇・一%をつける、これが将来引き下げられる可能性はあるとは思いますけれども、個人預金にマイナス金利がつくというようなことはないだろうと思っております。

前原委員 しかし、先ほど、二%の物価安定目標を二〇一七年度にやるために何でもやるとおっしゃったでしょう。そして、きのうの講演でも、追加利下げ、マイナス金利をさらに引き下げるということはあり得ると。

 今、否定はしませんということをおっしゃいましたね。否定はしませんと。否定はしないということと、最後の答弁が食い違っているんですよ。どちらなんですか。

 本当にそれは約束できるんですか。日銀総裁として、一般の金融機関の預金がマイナスになることはないということは言い切れるんですか。今の二つは矛盾した答弁をされているんですよ。どちらをとられるんですか。どっちかに絞ってください。

黒田参考人 全く矛盾していないと思っております。

 先ほど申し上げたように、欧州の中央銀行の中にはマイナス一%ぐらいの金利をつけている中央銀行もありますけれども、そこでも個人預金についてはマイナス金利になっておりません。

 我が方は、今マイナス〇・一%ということで、将来引き下げる可能性はありますけれども、今、いつ下げるとか、どのようにするということは申し上げておりません。これは、あくまでも二%の物価安定目標の実現との関係で政策委員会で議論して決定すべき事項である。

 少なくとも、ヨーロッパの経験から見て、準備預金にマイナス一%の金利をつけても、個人預金についてはマイナス金利になっていないということでございます。したがいまして、我が国においても、個人預金についてマイナス金利がつくという可能性はないだろうと思っております。

前原委員 可能性がないということは言えるわけですね。

 地方銀行とか信用金庫とかは、先ほど申し上げたように経営が大変ですよ、これから。それで、経営が大変になったときに、マイナス金利を、手数料をつけさせてもらわなきゃ困るということを言ったときに、日本銀行としてはバックアップできるんですか、今の答弁で。

 ヨーロッパの経験ばかりおっしゃるけれども、ヨーロッパと日本の金融形態はまた違うわけですから、その中で、マイナス金利幅が広がっていったときに、預金金利はマイナスになることはないということを言い切れますか。もう一遍答弁してください。

黒田参考人 御案内のとおり、今回の日本銀行のマイナス金利というのは三層構造になっておりまして、根っこのこれまで積み上げた準備預金については引き続きプラス〇・一%の金利をつけます。それから、その上でふえていく部分についてマイナス〇・一%になるわけですけれども、そのときに、必要準備とかあるいは貸出増加基金とかその他、今後、国債買い入れが進みマネタリーベースがどんどんふえていく、準備預金がふえていく中でゼロの金利の部分を拡大しますと言っていますので、マイナス金利の適用されるものはあくまでも限界的に適用して、それが金利や相場の決定に影響を与える。しかし、平均的なところが金融機関の収益に一番影響するわけですから、そこは大きな影響がないような形にしているということである。

 ただ、委員が指摘しておられるような、イールドカーブが全体が下がっていきますと、預金金利と貸出金利とかその他の利ざやが縮小するということは起こっております。これは実は、量的・質的金融緩和を始めた後もずっとそういうことは起こっているわけですね。その中でもちろん、貸出金利とか何かが下がり、ポートフォリオリバランスも進むというプラスがあって、そして実は金融機関の収益も、利ざやは減っていますけれども収益がふえてきたんですね。

 ただ、これも、あくまでも中長期的に見て経済が立ち直り、よくなっていく中でこそ金融機関の収益というのは拡大していくわけでして、デフレが続いている中で金融機関の収益が持続的に拡大するということはないと思います。

前原委員 今、名目の金利の話をされているんですね。

 実質金利というのは、名目金利から期待インフレ率を引いたものですね。これについてはマイナスですよね。

 つまりは、実質金利はもうマイナスなんです。マイナスだということは、資産を持っている人は目減りしているんです、もう既に。そして、国のような莫大な借金があるところは、借金が目減りしているんです。つまりは、国民の資産をこの低金利政策によって国の借金の返済、軽減に結びつけているのがこの政策なんですよ。

 つまりは、名目の預金の金利はマイナスになることはないだろうということをおっしゃったけれども、実際はもう既に実質金利はマイナスじゃないですか。そうなると、今申し上げたようなことが起きている。それは認められますか。つけかえになっている、実際問題。イエスかノーか。

黒田参考人 実質金利はマイナスになっております。

 なお、米国でも欧州でもマイナス金利になっております。

 これはなぜそうなっているかといいますと、あくまでも経済の実態と合わせて実質金利を下げていった場合に、景気の回復を図り中長期的に物価の安定を図るためにはこういった政策が必要だということでやっておりまして、特に日本銀行が、あるいは日本だけがマイナス金利になっているわけではございません。

前原委員 私の質問に答えていないんです。

 実質金利がマイナスだということは、国民の預金が目減りをして、ほかの国の例をおっしゃったけれども、借金のあるところについてつけかえをしているだけなんですよ。

 つまりは、この政策によって、将来は景気がよくなる、よくなるというニンジンをぶら下げられつつ、結果的には、皆さんの預金は目減りしていって、そして国の借金というものがどんどんどんどん目減りするようなことになっているわけですよ。

 この一番目のパネルをちょっとごらんください。

 では、金利を下げるということについて、どういうことを目指したかということですね。日本銀行が国債を大量に購入するとか、マイナス金利を導入する。先ほども私が申し上げたように、金利を下げるわけですよ。そうすると、右に行きますと、銀行の貸し出しはふえるであろう、そうすると設備投資とか住宅購入がふえるということであります。

 では、皆さん方の手持ちの資料を見ていただくと、どういうことになっているかというと、まず、三番目の手持ち資料を見ていただくと、三年近くたっていても、法人向け貸し出しはこれぐらいしか伸びていないんですよ。六・七%。ブタ積みがこれだけ、五倍ぐらいになっていることを考えると、全然伸びていない。

 それから、四ページをごらんください。

 内部留保は一二七、つまりは二七%ふえているんですね。設備投資は三年近くたってようやく一二%ですよ。

 つまりは、こういうようにずっと今まで異次元の金融緩和をしてきた。金利を下げる、国民の預金が実質的に目減りをするということを強いてきて、そして、景気がよくなるから、好循環が生まれるからと言いながら、それが実際問題出てきていないんですよ。

 五番目をごらんください。住宅着工の件数。

 では、住宅購入がふえたか。ふえていないですよ。ふえていない。

 では、下の方に行きましょう。

 金利が下がると、日米金利差が拡大して円安、株高。これがまさに、アベノミクスに国民がだまされているわけですよ。円安になり、八十円から百二十円になって、それは為替効果。調べによりますと、一五パーから三〇パー。これはどういうふうなモデルによるかによりますけれども、つまりは、利益のそのぐらいは為替効果なんですよ。為替が低くなることによって利益がもうかる、そうすると株が買われる。そうすると、株を持っている人たちは言ってみれば資産がふえる。そうすると所得税はふえますよね。企業の利益もふえる、法人税がふえますよね。

 これは、安倍さんが言っている上振れじゃないんですよ、底上げじゃないんですよ。上げ底なんです。

 つまりは、金利を下げて株価を上げて、そうすると、株を持っている人たちの資産のいわゆるキャピタルゲインはふえる、そして法人の利益がふえるから、本当に好循環になって税収がふえているわけじゃないんですよ。まさに上げ底なんですよ。底上げじゃないですよ、上げ底。

 つまり、こういうことを考えると、今の金利を下げていくということをやめれば、この上げ底の税収というものはどんどんどんどんまた落ちていくわけですよ。逆回転になるわけです。だから追加緩和をされたんでしょう。

 総理、いつも底上げとおっしゃっているけれども、上げ底だと認められませんか。つまりは、これは、金利を下げて無理やり株価を上げて、そして所得税、法人税が上がっていることによって、これがアベノミクスの成果だ、安倍政権の成果だというふうなことを言っていますけれども、実際問題、まさに一本目の矢に頼っている上げ底じゃないですか。

安倍内閣総理大臣 我々は、三年前に政権を奪還した際、デフレから脱却して力強く経済を成長させる、そこで三本の矢の政策を進めたところでございます。

 ただいま前原議員と黒田総裁の議論を聞いておりまして、実質金利の話、これは非常に重要な議論だと思います。

 まさに、実質金利が上がっていくことによって、現金を持っていればやはり一番いい、現金を持っていればその価値が上がっていく、これが続いていくことがまさにデフレでありまして、デフレ状況から脱出していくためには、まさに借金をしても投資をして、利益を生まなければ経済が回っていかない。これが健全な経済であるということは前原委員もずっと主張していることでありますから、正しくこの方向に行くためにまさに黒田総裁もあらゆる手段をとっているという中において、マイナス金利ということを実行されたわけでございます。

 そこで、いわばそれによって実質金利が下がっていくということをもって、これは悪いということではなくて、むしろ我々は、こびりついたデフレマインドを払拭するために、しかし、それはそう簡単なことではなくて、これはまだ道半ばだということでございます。

前原委員 我々の政権でもデフレを脱却しようということで、ただ、二%の物価目標は置いていなかったんですよ。一%以下のプラスの領域ということで、こんな異次元の、まさにやり過ぎの金融緩和はやっていなかったわけです。

 最後に、民主党政権の三年三カ月を、よく安倍総理は、安倍政権とこう違う、民主党政権はひどかった、こういう話をされますけれども、その前の三年間を少し調べました。

 前の三年間、もっとひどいですよ。民主党政権だと五・七%、三年三カ月で伸びている。安倍さんの一期目、福田さん、麻生さんはここにおられますけれども、四・二%下がっているんです、実は。

 時間がないので申し上げますけれども、我々のときもリーマン・ショックの後を引きずっていた、千年に一度の震災があった。そして、ちなみに、安倍政権と福田政権の和でいうと……(発言する者あり)では、麻生さんのは外しましょう、百年に一度のリーマン・ショック。二つでいうと、年〇・六%しか実質成長率は伸びていないんですよ。つまりは、第一次安倍政権でも福田政権でもそうではないんですよ。だからどうのこうのということじゃないんですけれども。

 私が一番言いたいのは、この安倍政権の、二年九カ月しか統計は出ていませんけれども、二・四%しか実質が伸びていない。先ほどの、デフレマインドで追加緩和、追加緩和ということでカンフル剤を打ち続けて、いつかはよくなるだろう、いつかはよくなるだろうということを言われていますけれども、本当になるかどうかわからない。そして、それがひいては財政破綻にもつながるかもしれない。こういう危険を持ってやっている政策で、国民はいつまでもだまされてはいけない。

 この道しかないんじゃなくて、この道は危ないんだということをもう一度申し上げて、質問を終わりたいと思います。

竹下委員長 これにて岡田君、大西君、玉木君、福島君、今井君、松野君、石関君、山尾君、大串君、階君、緒方君、前原君の質疑は終了いたしました。

 次に、志位和夫君。

志位委員 私は、日本共産党を代表して、安倍総理に質問いたします。

 冒頭、甘利前経済再生大臣の政治と金の疑惑について、総理の姿勢をただしたいと思います。

 総理は、甘利前大臣が疑惑について弁明し、辞職を表明した記者会見について、二十八日夜、記者団が甘利大臣は十分に説明責任を果たしたかとただしたのに対して、甘利氏はみずからのことについて丁寧に詳細に説明していたとお述べになりました。

 総理に伺います。

 あの記者会見での弁明で、甘利氏本人については疑惑は晴れたという御認識でしょうか。

安倍内閣総理大臣 あの一時間にわたる記者会見において、甘利大臣御自身の事柄につきましては詳細に説明をしておられた、このように思うところでございます。

志位委員 甘利氏本人については疑惑が晴れたかのような御発言でしたから、具体的に伺いたいと思います。

 甘利氏は記者会見で、二回にわたって五十万円の金銭を直接受け取ったことを認めた上で、政治資金として届け出をしていたから問題はないと弁明しました。しかし、問題は、甘利氏が口ききをしたかどうかにあるわけです。口ききをしたかどうかは、甘利氏本人の言明と告発者、すなわち建設会社の総務担当者の言明に食い違いがあり、ここを解明しなければ潔白とはならないはずであります。

 総理に伺います。

 総理は、政治資金として届け出ていれば問題はない、潔白になるという御認識でしょうか。

安倍内閣総理大臣 甘利大臣御自身は、いわゆる口ききそのものには関与していないということでございます。

 その上で申し上げれば、政治資金規正法にのっとって正しく対応することがいずれにせよ求められているんだろう、このように思います。

志位委員 甘利氏本人は口ききに関与をしていないということを御発言されましたが、そこが問題になっているわけですよ。

 告発者は、甘利氏に二度目の現金を渡した際に、建設会社とURとのトラブルについて口ききの依頼をしたとはっきり証言しているわけです。証言のこの部分について、甘利氏は会見の中でも否定されていないわけです。たとえ政治資金として届け出を行っても、それで潔白とはなりません。口ききをしていれば罪に問われることになるわけです。

 もう一問、総理の基本的御認識を伺いたいんですが、世間の常識からかけ離れた金銭感覚の問題です。

 紙袋に入ったのし袋、菓子折りの入った紙袋と封筒という形で多額の金をよく知らない相手から受け取っておいて、金額は幾らかを問うこともしない、どういう趣旨かを確かめることもしない、適切に処理しておいての一言で済ませてしまう。これは、そうした処理が日常茶飯事であることを十分うかがわせるものであります。

 総理、これは余りに異常な金銭感覚だと考えますが、いかがでしょう。異常と考えませんか。

安倍内閣総理大臣 私自身はそういう形でお金を寄附されたことはございませんが、基本的には、個々の出来事について今コメントをすることは差し控えさせていただきたい、このように思いますが、いずれにいたしましても、政治資金につきましては、政治資金規正法にのっとって処理されるべきものだ、このように思います。

志位委員 私は、異常な金銭感覚ではないかと聞いたんですね。誰が見ても異常ですよ。異常なことを異常と言えないというのは、総理自身の金銭感覚も異常と言わなければなりません。

 総理は、みずから任命された閣僚の重大疑惑が持ち上がったら、みずから真相究明に乗り出すべきなのに、一貫して甘利氏本人任せの姿勢をとり続けました。さらに、甘利氏が調査を踏まえた記者会見をしていない段階で、重要な職務に引き続き邁進してもらいたいと、続投させる考えを繰り返しました。さらに、甘利氏が総理に辞任を報告した際に、慰留までしました。余りに疑惑の深刻さについての認識がない、政治と金の問題についての感覚麻痺としか言いようのない態度であります。

 総理は任命責任があると繰り返しておられますが、本当にそう考えるのならば、こうした態度を改めて、総理みずからが真相解明に主導的役割を果たすべきであります。甘利氏の大臣辞任で幕引きとするわけには絶対にいきません。

 我が党は、甘利氏本人、甘利氏の秘書、建設会社の総務担当者ら関係者の証人喚問を行い、真相と責任を徹底的に究明することを強く求めます。

 日本共産党は、パーティー券を含めた企業・団体献金の全面禁止法案を昨年四月に提出しておりますが、この法案は今国会に継続となっております。議論を尽くし、今国会を企業・団体献金禁止を実現する国会とすべきであります。

 委員長、関係者の国会招致の件、検討していただきたい。

竹下委員長 後刻、理事会で検討いたします。

志位委員 きょうは、安保法制、私たちは戦争法と考えておりますが、この問題についてただしていきたいと思います。

 安倍政権は、昨年九月十九日、国民多数の反対の声を踏みつけにして、安保法制、戦争法を強行しました。

 我が党は、この法律ばかりは、数の暴力で成立させられたからといって、それを許したままにしておくことは決してできないと考えております。

 安保法制、戦争法の強行によって、日本の自衛隊は戦後初めて外国人を殺し戦死者を出すという現実的な危険が生まれております。多くの危険がありますが、私は差し迫った重大な危険として、二つの問題について、総理の見解をこれからただしていきたいと思います。

 第一の問題は、南スーダンPKO、UNMISS、国連南スーダン共和国ミッションに派兵されている自衛隊の任務拡大の問題です。

 南スーダンは、アフリカ大陸のほぼ中央に位置する国で、二〇一一年七月にスーダンから分離独立しました。その際に、国連安保理は、スーダンの平和と安全の定着などを目的に、南スーダンPKO、UNMISSを設立しました。自衛隊は、二〇一二年一月に最初の部隊をUNMISSに派兵して以降、今日まで九次にわたって部隊の派兵を続けています。自衛隊が現在海外に部隊を展開しているのは、この南スーダンだけであります。

 そこで、まず内閣府に確認したいと思います。

 現在、UNMISSに派遣されている各国の軍事要員の総数は何名で、そのうち派遣自衛隊員数は何名ですか。

宮島政府参考人 失礼いたします。

 UNMISSには、昨年十二月末現在一万一千八百九十二名の軍事要員が派遣されておりまして、それから、我が国の自衛隊につきましては、司令部要員四名、施設部隊要員三百五十三名が派遣されております。

志位委員 パネルをごらんください。

 国連南スーダン共和国ミッション、UNMISSに参加している軍事要員は総数で一万一千八百九十二人、派遣自衛隊員数は三百五十三人とのことでありました。

 そこで、南スーダンの現状がどうなっているのか、安保法制、戦争法によって南スーダンPKOに派兵されている自衛隊の任務がどう変わるのか。昨年の通常国会では、安倍政権が平和安全法制として十一本の法案を一括して強行するという乱暴な国会運営を行ったもとで、これらの問題についての国会での質疑はほとんど行われていません。

 そこで、この問題について、きょうは突っ込んでただしていきたいと思います。

 次のパネルをごらんください。

 安保法制、戦争法のうちの一つ、改定されたPKO法、改定国連平和協力法では、自衛隊の任務が大きく拡大されました。これは簡単な表にしてありますが、第一に、自衛隊の業務内容を拡大し、安全確保業務、駆けつけ警護という二つの活動が新たにできるようになりました。第二に、武器使用基準を拡大し、自己保存のための武器使用だけでなく、任務遂行のための武器使用、業務を妨害する行為を排除するための武器使用もできるようになりました。

 総理に伺います。

 私は、本会議の代表質問で、PKOに参加する自衛隊にこうした任務の追加を行うことを検討しているのかとただしました。それに対して総理は、南スーダンに派遣している自衛隊にいかなる業務を付与するかについては今後慎重な検討が必要であると考えると答弁されました。

 総理、自衛隊のこうした任務の拡大を検討の対象としているということですね。

安倍内閣総理大臣 御党の場合は、PKOそのものも戦争法と言って反対しておられましたから、現在も派兵と言っておられる、考え方は変わっておられないんだろう、こう思うわけでございます。

 昨年のPKO法の改正により、いわゆる安全確保業務を実施する上で必要不可欠な権限として、いわゆる任務遂行型の武器使用が認められているわけでありまして、いわゆる安全確保業務とは、例えば防護を必要とする住民、被災民など、生命、身体及び財産に対する危害の防止等を行うものであります。

 この業務の実施に当たっては、いわゆる自己保存のための武器使用権限のみならず、他人の生命、身体や財産を守るため、またはその業務を妨害する行為を排除するためにやむを得ない場合の武器使用権限、すなわち、いわゆる任務遂行型の武器使用権限が認められなければ十分に対応を行うことができないわけであります。

 しかし、この武器使用権限においても、武器の使用は厳格な警察比例の原則に基づくものであり、また、相手に危害を与える射撃が認められるのは、正当防衛または緊急避難に該当する場合に限られています。

 また、この業務を行うに当たっては、参加五原則が満たされており、かつ、派遣先国及び紛争当事者の受け入れ同意が我が国の業務が行われる期間を通じて安定的に維持されると認められる必要があるわけでありまして、すなわち、国家または国家に準ずる組織が敵対するものとして登場しないことが前提となっております。

 このため、いわゆる任務遂行型の武器使用を認めたとしても、自衛隊員が武力の行使を行ったと評価されることはないわけでございます。

 これは、今までこの法案についてこのように説明をしてきたところでございます。

 そして、今回、南スーダンに派遣している自衛隊に対してこの任務を付与するかどうかということでございますが、当然、この新たな任務を付与する上においては、しっかりとした準備または訓練が必要となるということでございます。

志位委員 検討の対象にしているかどうか聞いたんです。その一点、はっきり答えてください。

安倍内閣総理大臣 当然、新たな法律が通ったわけでございますから、この任務の付与については検討している。しかし、実際に付与する上においては、しっかりとした準備と訓練が必要である、こういうことでございます。

志位委員 検討の対象にされているという御答弁でした。

 そうした自衛隊の任務拡大が何をもたらすか。その危険性を考える上で、国連PKOの任務がこの二十年間余りで大きく変化していることについて総理がどういう認識を持っているかについて、次にただしていきたいと思います。

 かつての国連PKO、一九九〇年代前半ぐらいまでのPKOは、国連の大原則である内政不干渉、中立性を尊重した活動を行っていました。すなわち、内戦が終結して停戦合意がされている国に、紛争当事者全ての合意を得て、中立の存在としてPKOは展開する、いざ停戦が破れて内戦が起こったら撤退する、これが基本でした。主要任務、筆頭マンデートは、停戦合意を監視することに置かれていました。一九九二年にカンボジアに展開したPKOは、そうしたPKOの典型だと思います。

 ところが、この任務に大激変が起こります。契機となったのは、一九九四年、アフリカ・ルワンダで内戦が勃発し、政権側が主導する形で引き起こされた大虐殺でした。この事件を契機として、保護する責任という考え方が出てきます。ある国で重大な人権侵害が起こった場合に、その国の政府が何もしない、あるいは政府が人権侵害を引き起こすような場合には、国連は、中立性を失おうとも、内政干渉になろうとも、そして武力を行使してでも住民を保護すべきだという考え方です。

 こうした流れの中で、一九九九年八月、当時のアナン国連事務総長が、これからの国連PKOは国際人道法、武力紛争法を遵守せよという告示をPKO要員に発します。すなわち、これから先は、任務遂行のために、国連PKO自身が武力紛争法で定義される交戦主体、紛争当事者となって、軍事紛争に積極的に関与する覚悟を持てというものであります。

 こうして、徐々に、武力を行使しての住民保護がPKOの主要任務、筆頭マンデートになっていきます。

 パネルをごらんください。

 二十一世紀に入って創設され現在活動中の国連PKOは九つありますが、そのうちアフリカに展開する八つのPKO、リベリア、コートジボワール、ダルフール、コンゴ、アビエ、南スーダン、マリ、中央アフリカのPKOは、その全てで武力を行使しての文民保護が任務、マンデートに位置づけられております。停戦が破れて戦闘状態になってもPKOは撤退しません。国連自身が交戦主体となって住民保護のために武力の行使をする、これが今日のPKOの主流になっております。

 総理に基本的認識を伺います。

 国連PKOの活動がこうした方向に大きく変わっている、かつての停戦監視から、武力を行使しての住民保護へと大きな変化が起こっているという認識はありますか。

安倍内閣総理大臣 今の質問にお答えをする前に、先ほどの答弁をちょっと補足させていただきたいと思うんですが、南スーダンの我が国のPKO部隊に新たな任務を付与するかということについては、いずれにせよ、しっかりと任務を遂行していくための訓練等の準備、能力を高めていく必要がありますが、また、改正PKO法の施行後、南スーダンに派遣している自衛隊にいかなる業務を新たに付与するかについては、政府部内で慎重に検討を進めていく必要があると考えておりますので、その意味で検討を進めていく、こう申し上げていたのでございますが、現時点では、南スーダンPKOでの自衛隊の任務拡大については、その要否も含め、具体的な方針は決まっていないということは申し添えておきたいと思います。

 そこで、近年の国連PKOの変化でございますが、国連PKOが対応を迫られる紛争は、かつては、伝統的な国家間の紛争でありましたが、近年は、国内における衝突や、国家間の武力紛争と国内における衝突の混合型に変化をし、かつ、期間が長期化する傾向があるわけであります。

 それに伴い、国連PKOの任務は、伝統的な停戦監視等の業務から多様化しつつあり、近年は、平和構築の活動の促進、人道支援等の主体との調整、さらには文民の保護といった任務が重要性を増しています。特に文民の保護については、二〇〇〇年以降に設立された国連ミッションの九つの全てがそのマンデートを有しています。

 このような国連PKOの変化を踏まえて、我が国として国際社会の平和と安全のために一層取り組んでいくため、先般、PKO法の改正を行ったものであります。

 他方、実際にPKOに参加するか否か、また、いかなる任務を付与するかについては、個々のPKOのマンデートやあるいは現地情勢等を総合的に判断することとしておりまして、憲法のもと、PKO参加五原則を堅持します。我が国のPKO五原則を堅持するというのはこれは当然のことでありまして、それが満たされる範囲においてのみ参加をし、貢献をしていくということは、言うまでもないことであります。(志位委員「もういいです」と呼ぶ)よろしいですか。

 そういうことでございますので、いわば、我々は主体的に五原則にのっとって判断をしていく、こういうことでございます。

志位委員 いろいろおっしゃいましたけれども、文民の保護などを重要任務にするものに変化があるということはお認めになりました。

 ただ、ここで私がさらに言いたいのは、武力を行使しての住民の保護というのは生易しいものではないという問題です。

 私は、先日、国連PKOの幹部として東ティモール、シエラレオネ、アフガニスタンなど世界各地で武装解除などに携わってきた、東京外国語大学教授の伊勢崎賢治さんに話を伺いました。伊勢崎氏によると、一九九九年にアナン事務総長が出した告示は、PKOの現場に大きな影響を与えたと言います。その後、PKO部隊が好戦的になっていったとして、二〇〇〇年当時、みずからの経験を次のように語っておられます。ちょっと紹介いたします。

 僕は、インドネシアから独立した東ティモールの暫定知事を務めて、PKF、平和維持軍を統括していたことがあります。そのとき、反独立派の住民によってPKFの一員であるニュージーランド軍の兵士が殺されました。彼は首がかき切られて耳がそぎ落とされた遺体で見つかりました。見せしめであることは明白でした。そのとき、僕らは復讐に駆られてしまった。ニュージーランド軍司令官の求めに応じて、僕は武器使用基準を緩めました。敵を目視したら警告なしで発砲していいと。法の裁きを受けさせるために犯人を拘束するという警察行動ではありません。敵のせん滅が目的です。現場はどんどん復讐戦の様相を呈してきました。僕自身もです。結果、全軍、武装ヘリまで動員して追い詰めていったのです。民家などをシラミ潰しにして、十数名の敵を皆殺しにした。全員射殺したので、その中に民間人がいたかどうかはわかりません。

 伊勢崎氏は、民兵の射殺は国際法上違法ではないこととはいえ、それでも、胸の中に、ある後ろめたさ、重苦しさを抱え込みましたと率直に語っておられます。

 いま一つ、伊勢崎氏がPKO部隊が好戦的になっていることを示す典型例として挙げたのが、南スーダンの隣国コンゴで二〇一〇年から活動している国連コンゴ安定化ミッションであります。コンゴPKOは、主要任務、筆頭マンデートに住民保護を掲げるとともに、三千人から成る攻撃型部隊、介入旅団を設置、その任務を武装勢力の無害化としています。

 武装勢力の無害化とは何か。コンゴPKOのトップ、マーティン・コブラー事務総長特別代表は、無害化とは、最終的に武装勢力を消すということだ、投降に応じなければ攻撃を加える、これが基本方針だと明言しています。あらかじめ対象とする武装勢力を指定し、住民や国連に対する攻撃がなくても、投降に応じなければ攻撃を加え、武装勢力を無害化、せん滅する、事実上の先制攻撃の権利が与えられています。

 総理に伺います。

 これが国連PKOの現実です。もちろん、このコンゴのPKOには日本は参加しておりませんが、現在のPKOは事実上の先制攻撃の権利まで与えられるようになっている。総理はこうした実態を御存じでしょうか。

安倍内閣総理大臣 委員も今お認めになられましたが、コンゴのPKOには自衛隊は参加しておりません。日本の自衛隊は、参加五原則にのっとって参加をするか否かを判断していくわけでございます。

 そこで、我が国の自衛隊に与えている武器の使用でございますが、それはあくまでも厳格な警察比例の原則に基づくものでありまして、また、相手に危害を加える射撃が認められるのは、正当防衛か緊急避難に該当する場合に限られているわけでありまして、今委員がおっしゃったようなせん滅とか、これは全くかけ離れていることでございまして、そもそも武力の行使ではないわけでございます。

 あくまでも、与えられている任務の中において危害を加えることができるのは、正当防衛及び緊急避難であるということを申し上げておきたいと思います。

志位委員 日本の参加は参加五原則に基づいてやるんだと繰り返しておっしゃられます。しかし、問題は、世界のPKOの実態がその五原則とはかけ離れたものになっているということなんですよ。

 パネルをごらんください。

 これは、二〇〇〇年以降の国連PKO要員の犠牲者の数の推移であります。

 任務拡大の影響もあって、年間百人超の犠牲者を出すことは、一九九〇年代までは四回だったんですが、二〇〇〇年以降は十二回と常態化しつつあります。このグラフでいいますと、赤い線の上です。二〇一五年には百二十一人が犠牲となっています。

 政府は、自衛隊が国連PKOに参加する際には、PKO参加五原則、すなわち、停戦合意の成立、全ての紛争当事者の受け入れ同意、中立的立場、いずれかが満たされない場合の撤収、武器使用は自己保存型に限定を遵守する、憲法九条で禁じた武力行使を行うことはないとしてきました。先ほど総理もそういう御答弁をされました。

 それに対して、先ほど紹介した伊勢崎賢治氏は次のように批判しております。

 PKO五原則があるから、停戦合意が破られたら帰ってくればいいと言いますが、停戦が破られてもPKOは撤退しません。住民の保護のために武力行使します。停戦合意が破られてから住民保護という本来の任務が始まるのです。それができないなら、初めから来るなという世界になっていることに政府は全く気づいていない。PKO五原則や憲法九条との整合性は、PKOそのものの変質によって完全に破綻しています。そして、二十年前の議論をしている政府の認識とPKOの現実がかつてないほど乖離している。このように述べています。

 今日の国連PKOは、憲法九条を持つ日本が到底参加できないようなものに変化している。それを見ずに政府は二十年前の議論をしているという批判であります。

 長年国連PKOで幹部として活動してきた伊勢崎氏の発言、これは大変重いものがあると思うんです。この批判にどうお答えになりますか。

安倍内閣総理大臣 二十年間の間に、確かに、先ほど御説明をいたしましたように、PKOの実態はさまざまな変化をしているのは事実であります。その変化の中におけるニーズに対しても我々は対応しているわけでございます。

 しかし、これは繰り返し述べるわけでありますが、私どもは、今委員が御紹介をいただいた五原則にのっとって、参加するかしないか、あるいは活動を継続するかどうかを判断するわけであります。

 一回行ったら、では帰れないのかということでいえば、そんなことはないわけでありまして、例えば、ゴラン高原のPKO活動でございますが、これは、五原則は維持をされていたわけでありますが、しかし、危険が高まったという判断で、我が国はPKO部隊を日本に帰国させたわけでございまして、まさにこれは主体的な判断で帰国をさせたということであります。

 そして、PKO部隊を派遣する上においても、私たちの五原則等々については、現地で一緒に活動するPKOの部隊等々にも当然これは周知をさせるようにしているわけでございます。その中において、私たちができる範囲でしっかりと活動をするということでございます。

志位委員 伊勢崎さんの批判は、PKO五原則というのは停戦が破れたら撤退するということになっていると今おっしゃいました、しかし、世界のPKOは、停戦が破れても撤退しないで、住民保護のために武力の行使をするものになっていると。これはもうかけ離れているという現場からの批判は重く受けとめるべきだと思います。

 総理は五原則ということを繰り返し繰り返し言われるわけですが、そういう建前が通用するかということを、私は、次に、南スーダンの具体的なPKOに即して聞いていきたいと思います。

 自衛隊が参加している南スーダンのPKOの現状は、まさに住民保護のために武力の行使を行うという典型的な事例となっております。

 二〇一三年十二月以来、南スーダンでは、大統領派と副大統領派の武力衝突が起こり、住民を巻き込んで激しい内戦状態に陥っています。政府軍と反政府軍双方によって、数千人が殺害され、二百四十万人が家を追われ、虐殺、レイプ、拷問などの残虐行為が行われ、多数の子供が少年兵として戦うことを強制されています。約十八万人を超える民間人が南スーダン各地にある国連施設に逃げ込み、恐怖の余り外に出ることができない状態です。

 ここに私、持ってまいりましたが、これは、二〇一五年八月二十日に発表された国連報告書、南スーダンに関する専門家委員会の暫定報告書でありますが、ここでは、政府軍と関連武装グループによる二〇一五年四―七月のユニティ州攻撃として、次のような事実を告発しております。

 読み上げます。

 恐るべき人権侵害。本委員会は、政府軍がいわゆる焦土作戦をユニティ州全域で実行したことを知った。政府の同盟軍は村々を破壊し続けた。人が中にいる家屋に火をつけ、家畜その他金品を略奪し、学校や病院など主要なインフラを襲撃し破壊した。さらには、彼らは民間人を無差別に殺害し、殴打し、拷問にかけた。子供たちは特に深刻な被害を受けた。多くの子供が殺され、七歳の子供たちを含めてレイプされ、拉致あるいは少年兵として州内での戦闘を強制された。本委員会は、少女たちがしばしば両親や地域の人々の前でレイプされ、その後、生きたまま家ごと焼かれたとの証言を聞いた。

 大変深刻なレポートであります。反政府勢力だけでなく、政府軍によってもこうした残虐行為が行われているんです。これが南スーダンの現状です。政府軍と反政府勢力との間で複数回、停戦が合意されたものの、そのたびに戦闘が再開されています。昨年八月下旬に和平合意が交わされましたが、その後も戦闘が続いています。

 総理に伺います。

 私は、本会議の代表質問で、南スーダンが内戦状態に陥っているという認識はありますかとただしました。それに対して総理は、南スーダンPKOの活動地域において武力紛争が発生しているとは考えていないと答弁しました。しかし、南スーダンの現状は今お話ししたとおりです。これは国連の報告書です。文字どおりの内戦状態が続いているではありませんか。武力紛争が続いているではありませんか。

中谷国務大臣 防衛省におきましては、毎日のように、派遣された隊員の方から現地の報告や、また、大使館そして国連からの情報等を総合的に検証しながら、現地の状況を把握いたしております。

 現状としては、南スーダンにおいては、反政府勢力、これは系統立った組織を有しているとは言えない。また、反政府勢力による支配が確立をされるに至った領域、これがないということ。そして、南スーダン政府、反政府勢力、双方ともに、国連の安全保障理事会を含む国際社会からの敵対行為の停止を求める働きかけに応じまして協議を行って、敵対行為の停止について双方が合意に達するなど、以前から、事案の平和的解決を求める、こういった意思を有しているということを考えまして、現状におきまして、派遣の前提となる五原則、これは維持をされておりますし、活動しておりますジュバ、こういったジュバの状況におきましては、平穏であるというような報告を受けております。

 引き続き、現地情勢については緊張感を持って把握してまいりたいと思っております。

    〔委員長退席、平沢委員長代理着席〕

志位委員 これは、全く甘い、現地の状況を全くつかんでいない認識ですよ。

 これは、昨年十一月二十三日に発表された南スーダン・ミッションの任務見直しに関する国連事務総長の特別報告です。

 今、政府勢力と反政府勢力の間にいわば和平合意が成り立っているかのような御発言がありましたが、守られておりません。昨年八月下旬の和平合意、守られていない。

 この国連事務総長報告には何と書いてあるかといいますと、停戦違反と、和平合意実施の準備段階のために決められた当初期限を当事者たちが守れなかったことは、彼らの和平プロセスへの誓約及び彼らの実施にかかわる政治的支持に懸念を持たせると厳しく批判しております。そして、この特別報告では、南スーダンで武力紛争が続き、その結果として、UNMISS、人道関連要員、国内避難民に移動の自由がない状況が続いているとしています。

 これは去年の十一月二十三日ですよ。和平合意の後に発表された国連事務総長報告が、停戦違反が続いていること、当事者たちが平和的解決の意思を持っているかどうか疑わしいこと、そして、武力紛争が続いていることをはっきり述べているじゃありませんか。読んでいないんですか。

岸田国務大臣 昨年八月の合意文書の署名以後の動きについて御指摘がありました。

 それ以後、八月以降の動きにおきましても、我が国としましては、この合意の履行に向けて取り組みは続いていると認識をしております。現に、ことし一月の段階においても、この合同監視評価委員会が立ち上げられ、そして会合が開催される、こうしたことも報告されています。

 さらには、合意文書に従って、国民統一暫定政府の閣僚ポストの配分、これも決定されております。

 こうした動きを見る限り、この八月の合意文書の署名以後も、政府側と反政府側の間でこの合意履行に向けて取り組みは続いていると認識をしております。

志位委員 この認識も全くだめですね。

 今、暫定政府の閣僚ポストの合意がされたというふうにおっしゃいましたけれども、政府はつくられていないじゃないですか。一月二十二日の期限につくる予定だった政府はつくられていない。

 それから、今、政府間開発機構の声明に即した合意がされたと言いますが、その後出された二月二日のアフリカ連合、AUの声明では、スーダン和平合意が危機に瀕していることを極めて憂慮している、こう述べている。

 一つ、直近のレポートを示しましょう。ことし一月二十一日、国連人権高等弁務官事務所と南スーダンPKO、UNMISSが発表した報告書。「南スーダンの長期化する紛争下での人権状況」、直近の南スーダンの状況をこう述べております。読み上げます。

 二〇一三年十二月の暴力勃発から約二年、情け容赦ない戦闘とその多方面にわたる影響が続いており、民間人全体の人権と生活条件に対する重大な衝撃を与えている。加えて、国連の要員、施設、人道物資を狙った攻撃が続いており、二〇一三年十二月以来、三十四人の国連要員、三人の現地要員、一人の契約者の命が犠牲となった。政府軍と反政府軍の二〇一四年一月二十三日の停戦合意、両者による二〇一四年五月九日の再確認及び二〇一五年八月下旬の和平合意の実施の一環としての停戦合意にもかかわらず、戦闘は続いている。紛争当事者たちは、礼拝所や病院といった伝統的な避難場所、そして、時として国連の基地まで攻撃しているので、紛争地域で安全な場所は極めてわずかになった。

 これは直近の報告ですよ。これが、国連が公式に報告している南スーダンの直近の現状です。情け容赦ない戦闘が続き、停戦合意が何度も交わされたが、繰り返し破られ、国連の要員と基地が攻撃され、安全な場所は極めてわずかになっている。まさに現瞬間も内戦状態、武力紛争が続いているということじゃないですか。

 政府は、こうした報告書が出ていることを把握していないんですか。この報告書、読んでいないんですか。

岸田国務大臣 政府としましては、さまざまな文書、情報に接し、情報収集、分析に全力で努めております。

 そして、従来から、実力を用いた争いがPKO法上の武力紛争に該当するか否かについて、事案の態様、当事者及びその意思等を総合的に勘案して個別具体的に判断すべきである、こうした考え方を示しています。

 先ほど申し上げました八月の合意文書の署名以降の動きももちろんでありますが、政府としましては、現地に派遣されている要員からの報告、そして我が方の大使館、そして国連からの情報、こうしたものを総合的に勘案して状況を判断しております。その上において、武力紛争が発生しているとは考えていないと申し上げている次第であります。

志位委員 国連事務総長報告が、武力紛争が続いているとはっきり言い切っているじゃないですか。これだけ国連の報告書に基づいて明瞭な事実を示しても、南スーダンが内戦状態、武力紛争に陥っているという事実を認めようとしない。自衛隊を派兵しておいて、余りにも無責任な姿勢と言うほかありません。

 総理に続けて伺います。

 こうした内戦状態のもとで、南スーダンPKO、UNMISSに、二〇一四年五月以降、主要任務、筆頭マンデートとして住民保護が掲げられ、そのために必要なあらゆる措置をとる権限、武力行使の権限が与えられております。昨年十月、十二月の国連安保理決議では、戦術ヘリコプター、無人機を配備することまで求めております。住民保護のためにPKOみずからが交戦主体、戦争の主体となって武装勢力と戦う、これが南スーダンPKOの実態となっております。

 こうしたもとで、改定PKO法によって、自衛隊の任務に安全確保業務、駆けつけ警護の任務が新たに付与され、任務遂行のための武器使用が可能になったらどうなるか。

 これまでは、ともかくも、PKOにおける自衛隊の武器使用は自己保存のために限定されていました。活動内容も施設や道路をつくることなどに限定されていました。ですから、深刻な内戦下での派兵でしたが、これまでのところ、幸いにも、自衛隊は一発の銃弾も撃たず、一人の死者も出さないできました。しかし、改定PKO法によって任務拡大となれば、自衛隊が武器を使用して武装勢力と戦うことになるではありませんか。

 武装勢力といいましても、政府軍と反政府軍がともに民兵を動員し、さらに、武装した住民を含むさまざまな集団が入りまじり、区別がつきません。こういう勢力を相手にして自衛隊が武器の使用をすれば、市民に向かって発砲する、少年兵を撃ってしまうということになりかねません。既に南スーダンPKOの要員から三十六名の死者が出ておりますが、自衛隊員の犠牲者が出るという強い危惧があります。

 改定PKO法によって任務拡大となれば、自衛隊が戦後初めて殺し、殺されるという危険が、私は、現実のものになる、このように強く危惧しております。

 私は、本会議の代表質問で、南スーダンPKOに派兵されている自衛隊に、改定PKO法に基づいて安全確保業務、駆けつけ警護などの新たな任務を付与し、これらの任務遂行のための武器使用権限を与えたら、憲法九条が禁止した海外での武力行使を行うことになるのではないかとただしました。それに対して総理は、何の根拠も示さずに、憲法九条の禁ずる武力の行使を行ったと評価されることはないと答弁されました。

 総理に伺います。

 なぜ、改定PKO法における任務遂行型の武器使用は憲法九条の禁ずる武力の行使を行ったと評価されることはないのか、その根拠を端的に示していただきたい。

安倍内閣総理大臣 自衛隊が殺し、殺されるということは、そもそも、PKO法が成立をしたときも共産党はそう御主張をしておられましたが、実際はそうなっていないということは歴史が証明しているんだろう、こう思います。

 昨年のPKO法の改正によって、いわゆる安全確保業務を実施する上で必要不可欠な権限として、いわゆる任務遂行型の武器使用が認められているわけであります。

 この安全確保業務とは、例えば、防護を必要とする住民、被災民などの生命、身体及び財産に対する危害の防止等を行うものでございます。

 この業務の実施に当たっては、いわゆる自己保存のための武器使用権限のみならず、他人の生命、身体や財産を守るため、またはその業務を妨害する行為を排除するためやむを得ない場合の武器使用権限、すなわち、いわゆる業務遂行型の武器使用権限が認められなければ十分に対応を行うことができない、こう判断したところでございます。これについては高い評価を海外から得ているということでございます。

 しかし、この武器使用権限においても、武器の使用は厳格な警察比例の原則に基づくものであり、また、相手に危害を与える射撃が認められるのは、正当防衛または緊急避難に該当する場合に限られているわけであります。

 また、この業務を行うに当たっては、参加五原則が満たされており、かつ、派遣先国及び紛争当事者の受け入れ同意が、我が国の業務が行われる期間を通じて安定的に維持されると認められる必要があります。すなわち、国家または国家に準ずる組織が敵対するものとして登場しないことが前提となっています。

 このため、いわゆる任務遂行型の武器使用を認めたとしても、自衛隊員が武力の行使を行ったと評価されることはない、このように思っております。

 なお、業務に応じた武器使用権限を付与することは、業務の円滑な実施のみならず、隊員の安全確保のためにも必要なものである、このように考えております。

志位委員 今の総理の御答弁は、結局、派遣先国及び紛争当事者の受け入れ同意の安定的維持、国家または国家に準ずる組織が敵対的なものとして登場しないことを前提にしたものだから、憲法が禁止する武力行使に当たらないとの御答弁でした。

 しかし、問題は、南スーダンでこういう前提が成り立つかということなんですよ。

 南スーダンPKO、UNMISSに関する国連報告を読んで、私は、極めて深刻だと痛感させられるのは、反政府勢力だけでなく、南スーダン政府軍によってもUNMISSに対する危害行為、攻撃が加えられていることです。

 パネルをごらんください。

 これは、二〇一五年八月二十一日に発表された南スーダンに関する国連事務総長報告から作成したものであります。この報告であります。

 二〇一五年四月十四日から八月十九日までの時期に南スーダン政府軍によって行われたUNMISSに対する危害行為、攻撃について、報告書では次のように記載しています。

 この時期におけるUNMISSに対する危害行為、攻撃百二件のうち九十二件は、政府軍、治安部隊による。

 四月二十九日、五月七日、七月二十七日の三回にわたり、ユニティ州ベンティウのUNMISSの基地と国連の住民保護区のすぐ近くで政府軍が対空射撃を行い、保護を求めてきた住民五人が負傷。

 六月二十七日、ボルの北二十一キロで政府軍兵士がUNMISSのはしけに十五から二十発の砲撃。

 七月五日、二人の政府軍兵士がベンティウの国連の住民保護区に侵入し発砲、一人を殺害。

 七月九日、マラカルの南で政府軍がUNMISSのはしけ船団をロケット弾と重機関砲で攻撃。

 これは一断面ですが、南スーダン政府軍によってさまざまな形でUNMISSに対する危害行為、攻撃が加えられていることを生々しく示しております。

 改定PKO法における任務遂行型の武器使用は、派遣先国及び紛争当事者の受け入れ同意の安定的維持、国家または国家に準ずる組織が敵対するものとして登場しないことを前提にしたものだから憲法九条が禁止する武力行使に当たらないとの先ほど御答弁でした。しかし、このどちらの条件も南スーダンには存在していないじゃないですか。南スーダン政府軍がUNMISSに対して攻撃しているじゃないですか。敵対するものとして登場しているじゃないですか。

 伺います。

 南スーダンで、自衛隊に安全確保業務、住民の保護という新たな任務を付与し、任務遂行のための武器使用を認めたら、自分の身に危険が及ばなくても、住民に銃を向ける相手を殺傷することになるんです。南スーダン政府軍が住民やそれを防護するUNMISSを攻撃してきたら、自衛隊は南スーダン政府軍と銃火を交えることになるわけであります。これは、憲法が禁止する武力行使そのものになるじゃありませんか。先ほどのあなたの論理からいっても武力行使になるでしょう。こんなこと、憲法上許されませんよ。

    〔平沢委員長代理退席、委員長着席〕

中谷国務大臣 国連決議の二二五二において、言及されているとおり、UNMISSの要員の移動の制限等の事例が報告をされているということは事実でございます。

 しかしながら、南スーダン政府等からUNMISSの撤退を要求するような発言等はなされておらず、したがって、このような妨害、これは現場レベルでの偶発的なものであると認識をいたしておりまして、毎日のようにジュバ付近の情勢等、報告を受けておりますけれども、五原則がなくなったとか、情勢が極めて緊迫したというものではなくて、ジュバは平穏であるという報告を受けております。

 また、確かに、北部の方では政府と反政府側において散発的、偶発的に衝突が見られますけれども、南スーダンの南部におきましては、ジュバにおきまして一般的犯罪は増加傾向にありますが、治安はおおむね安定をしておりまして、表面上、平穏を維持しているということであります。

 また、南スーダン政府の高官からは我が国のUNMISSへの貢献に対する謝意が示されて、我が国の活動は高く評価をされておりますし、日本以外の国々においても、PKO活動、これは計画に従ってやっておりまして、決して停戦が崩れるというふうな認識はいたしておりません。

志位委員 聞いていることに答えておりません。

 偶発的なものだとおっしゃいましたけれども、先ほどの国連の報告書というのは、限られた期間ですが、百二件中九十二件は政府軍によるものだと言っているわけですよ。九十二件ですよ。そのうち、政府の側から是正がされたのはたった一件だ、あとは是正もされていない、このように国連が報告しているんです。偶発的なものとは言えません。

 それから、ジュバは安定しているというふうにおっしゃったけれども、先ほど私が紹介した一月二十一日の国連報告書では、昨年も、ジュバの国連の住民保護サイトのまさに周辺において政府軍による襲撃があって、そして住民が拉致されて殺害される、ジュバのど真ん中で起こっている、そういう報告になっているわけですよ。

 私はこれだけ具体的な事実を示して聞いている。私は、事実に即して、南スーダンで現実に起こっている事態に基づいて、自衛隊の任務を拡大し、政府軍と銃火を交える事態になったら武力の行使になるのかならないのか、これを聞いているんです。武力の行使になるでしょう。国家がまさに敵対するものとして登場しているじゃないですか。

中谷国務大臣 先ほどお話ししたように、南スーダンの政府の高官からは我が国のUNMISSへの貢献に対する感謝の意が示されておりますし、南スーダンの政府からUNMISSの撤退を要求するような発言はされておらず、こういった御指摘のことにつきましては、現場レベルの偶発的なものであると認識しております。

志位委員 そんな認識で自衛隊を出しているというのは本当に無責任だと思います。南スーダンの現実は、内戦状態、武力紛争が続いている。これは国連が認定していることです。そして、政府軍はUNMISSや避難民を攻撃している。これも事実です。この現実に即して質問しているのに、武力の行使か否かを答えられない。私は、ここにこの法律の危険性があると思います。

 自衛隊の任務に安全確保業務を追加し、任務遂行のための武器使用の権限を仮に与えたとすれば、住民への攻撃をしている南スーダン政府軍と自衛隊が戦うことになる。憲法九条が禁止した武力の行使そのものになります。

 私は、きょう、国連PKOが住民保護のために断固たる武力行使が求められるPKOへと大きく変化していること、そして、南スーダンPKOもその典型的な一つだということを明らかにしてまいりました。今日の国連PKOは、憲法九条を持つ日本の自衛隊が参加できるような活動ではいよいよなくなっているということを強調しなければなりません。

 もちろん、住民が深刻な人道的危機にさらされているときに、国際社会がその保護のための責任を果たすことは必要であります。しかし、日本の貢献は、憲法九条に立った非軍事の人道支援、民生支援に徹するべきです。

 南スーダンでも、国連の活動はPKOだけではありません。国連難民高等弁務官事務所、UNHCR、国連児童基金、ユニセフ、世界食糧計画、WFP、いわゆる国連の人道支援の御三家と言われる機関が、各国のNGOと協力して、難民支援、食糧支援、医療支援、教育支援、児童保護など、さまざまな人道支援に取り組んでいる。日本は、憲法九条を持つ国として、こういう非軍事の人道支援こそ抜本的に強化すべきであります。

 私は、安保法制、戦争法の強行によって、日本の自衛隊が戦後初めて外国人を殺し、戦死者を出すという現実的な危険が生まれていると思いましたが、南スーダンPKOに派兵している自衛隊の任務拡大が最初の殺し、殺されるケースになることが強く危惧されます。これまで自己防護に限っていたから、一人の犠牲者も出さないで済んだのです。それを拡大したら、最初のそういう危険なケースになることを強く危惧いたします。戦争法を廃止することが文字どおりの急務であることを強く訴えたいと思います。

 次に進みます。

 第二の問題は、過激武装組織ISに対してアメリカを初めとする有志連合が行っている軍事作戦に自衛隊が参加する危険であります。

 昨年からことしにかけて、ISによるテロは、シリアでの二人の日本人、後藤健二さん、湯川遥菜さんの殺害、チュニジア、クウェート、トルコ、バングラデシュ、エジプト、レバノン、フランス、パキスタン、インドネシア、アフガニスタンと、世界各地に及んでおります。憎むべきテロを世界からどうやって根絶するかは、国際社会にとって大問題となっております。

 ISのような残虐なテロ組織がどうして生まれたか。きっかけとなったのは、二〇〇一年のアメリカ等によるアフガニスタン報復戦争でした。対テロ戦争は、テロを根絶するどころか、世界じゅうにテロを拡散させる重大な契機となりました。

 まず、外務省に聞きます。

 世界でのテロによる死者数を二〇〇〇年と直近の二〇一四年で示していただきたい。

飯島政府参考人 お答えいたします。

 アメリカの国務省が国別テロリズム報告書において引用しておりますメリーランド大学のテロ及びテロ対応研究コンソーシアムが作成しているデータベースによりますと、二〇〇〇年における全世界のテロ事件による死者の数は四千四百二十二名、二〇一四年における全世界のテロ事件による死者の数は四万三千五百十二名となっております。

志位委員 パネルをちょっとごらんください。今御答弁いただいた数ですが、十倍に激増しているわけです。

 アフガニスタンの報復戦争は、罪のない多数の市民を犠牲にし、新たな憎しみを生み、テロと戦争の悪循環の引き金を引く結果となりました。さらに、二〇〇三年のアメリカ等によるイラク侵略戦争は、何十万というイラクの民間人の命を奪うとともに、泥沼の内戦をつくり出しました。二つの戦争の混乱の中で、ISというモンスターのようなテロ組織が生まれ、勢力を拡大してきました。

 次のパネルをごらんください。

 二つの戦争、特にイラク戦争がISをつくり出す原因になったということは、戦争を引き起こした当事者であるイギリスのブレア元首相も最近認めていることであります。

 ブレア元首相は、二〇一五年十月二十五日放送のCNNのインタビューでの質問に答えて、次のように述べております。CNN。多くの人は、ISの台頭を見たとき、イラク侵攻が主要な原因だと指摘した、それについてはコメントはあるか。ブレア。その中には真実が含まれていると思う、もちろん、二〇〇三年にサダムを排除した我々が二〇一五年の状況について一切の責任がないとは言えないだろう、こうブレア元首相が発言しています。

 総理に伺います。

 ブレア元首相は、イラク侵攻がIS台頭の主要な原因だという見方には真実が含まれている、こう述べているわけです。総理もこの認識は共有されると思うんですが、いかがでしょう。

安倍内閣総理大臣 国際社会における過激主義の登場は、あるいはテロ組織の登場でございますが、そもそもアルカイダという組織があったわけであります。

 このアルカイダとの関係においていえば、いわば米国のアフガン攻撃が原因でアルカイダが起こったわけではなくて、アルカイダが九・一一のテロを行い、それに対する対応として米国がアフガンに進攻したわけでございます。自来、日本も協力をし、テロとの闘いを続けてきたわけでございます。

 そして、ISISにつきましては、シリアあるいはイラクにおける治安状況の極端な悪化等の中において過激な組織として勢力をより増してきたものだろう、このように思います。

 いずれにせよ、国際社会が一致協力をして、こうした過激主義をしっかりと抑え込んでいくことが大切であろう、また、そうした過激主義を生み出す温床をなくしていくことが大切ではないか、このように思っております。

志位委員 もちろん、過激主義のいろいろな温床を取り除いていくことは大事であります。

 ただ、私が聞いたのは、イラク戦争がIS台頭の一つの主要な原因になっている、そのことについては真実が含まれているというブレアさんのこの認識、これは総理もお持ちじゃないですかと聞いているんです。イラク戦争について聞いているんです。

安倍内閣総理大臣 私は、そのブレア首相のインタビューについて承知していないわけでございますが、いわばISISの台頭については、これはさまざまな議論があるわけでございます。当然、この台頭についてはしっかりと分析をしていく必要もあるんだろう、こう考えております。

志位委員 はっきりお認めにならないんですが、もう一人証言者がいます。アメリカのオバマ大統領です。二〇一五年八月五日、次のように述べています。

 それから、イラク戦争から十年以上が経過し、我々は依然としてイラク侵攻を決定したその結果とともに生きている。何千という人命が失われ、何万という人々が負傷した。これはイラク国民の死者を計算に入れていないものだ。今日、イラクは宗派対立にとらわれたままだ。そして、イラクで出現したアルカイダは、今ではISIL、ISへと進化した。

 イラク戦争によってアルカイダがISに進化した、こういうことを言われているわけですね。

 ですから、オバマ大統領、ブレア元首相というまさに戦争の当事者双方が、イラク戦争は一つの要因になっているという事実を認めている。これをお認めにならないというのは、やはり米英と比べても総理の認識はおくれていると言わなければなりません。

 ブレア元首相は同じ発言の中で、イラク戦争にかかわって我々が入手した情報が間違っていた事実については謝罪するということを明言しております。

 イラクによる大量破壊兵器の保有というアメリカ・ブッシュ政権の間違った情報をうのみにしてイラク戦争に無条件の支持を与えた自民党政府は厳しい反省が必要だということも言っておきたいと思います。

 戦争でテロをなくすことはできません。テロと戦争の悪循環をもたらし、世界じゅうにテロを拡散し、ついにはISというテロ組織をつくり出しました。この歴史的教訓に照らしても、今は一部の国が行っているISに対する空爆など軍事作戦の強化では、問題は決して解決しないと思います。それは、多数の罪なき人々を犠牲にし、憎しみの連鎖をつくり出し、テロと戦争の悪循環をもたらすだけであります。

 パリ同時多発テロを受けて、米、英、仏、ロなどは対IS空爆を強化しています。米国防総省の発表によりますと、米軍を中心とした有志連合の空爆は最近になって一万回を超え、落とした爆弾は三万五千発を超えました。空爆の強化に対して多くの人々から強い批判の声が上がっております。

 若干紹介したいんですが、IS支配地域に入って取材した初めての西側の記者、ドイツ人ジャーナリストのユルゲン・トーデンヘーファー氏が、イギリスの新聞ガーディアンに寄せた論評、「私はIS戦闘員を知っている、ラッカに対する西側の爆弾投下は彼らを歓喜させるだろう」で次のように述べています。

 パリでの攻撃以降、西側の政治家たちは、テロリストが仕掛けたわなに目を開いたまま、みずから落ち込んでいる。爆弾が無実の人々を圧倒的に殺害し、それによってテロの大義に加わる新兵を生み出すのを手助けするからだ。アラブ世界の大多数は、ラッカで死んだ子供たちの写真を見ている。ISがその写真を拡散するために全力を挙げているのだ。そして、子供が一人殺されるたびに新たなテロリストが生まれる。戦争はブーメランだ。後になって、テロの形態をとって我々にしっぺ返しがやってくる。

 もう一方は、ISに人質として捕らわれていたフランス人記者のニコラ・エナン氏は、米国のネットメディア、デモクラシーナウで次のように語っています。

 シリアでの空爆のされ方は間違いだ。これら全ての爆撃には重大な副作用がある。我々はシリアの人々をISの手の中に押し込んでいる。我々は彼らISのために働いている。彼らのために新兵募集をしている。

 つまり、空爆の強化は、罪なき多くの人々を犠牲にし、それはISを喜ばせるだけだ、ISの思うつぼになる、ISの新兵募集になる。

 総理は、こういう批判にどうお答えになりますか。

安倍内閣総理大臣 このISに対する有志連合の武力行使でありますが、武力行使で全てが解決するわけではないのは当然のことであります。

 しかし、武力行使をしなければ解決するかといえば、これはまさにISISがどんどんどんどん勢力を拡大していくばかりであります。この勢力の拡大を押しとめているのも、これは空爆等の武力行使であることも冷厳たる事実でございます。

 確かに、民間人を含む犠牲者が出ることについては胸が痛くなる思いであります。恐らくこれは有志連合も好んでやっていることではないわけでありますが、ISISが、理屈が通じて、やめてくださいと言ってやめてくれるのであれば、これはそれにこしたことはないわけでありますが、残念ながら、彼らはシーア派、クルド人をも虐殺しているわけであります。そして、彼らがそうした人々をせん滅していくことを、異教徒をせん滅していくことを一つの目的としている以上、しっかりと武力行使も含めた対応をしていかなければならないんだろう、こう思っています。

 その中で、日本としては、日本が求められている活動をしっかりとやっていきたい。難民支援等、人道的支援も含めて周辺国支援も行っていく。そうした活動をしっかりとやっていく中において、国際社会においてその役割を果たしていかなければならない、こう考えているところでございます。

志位委員 この空爆の強化に対する批判なんですよ。ともかく、軍事力の強化によって専ら対応するということに対する批判が寄せられている。それは結局、ISを喜ばせるだけじゃないか、新兵募集じゃないかという批判を私は重く受けとめるべきだと思います。

 フランスのドビルパン元首相も、この対テロ戦争について、アフガニスタン以降行われてきたこのような戦争について我々が知っている全てのことは、失敗するということだ、ISの大半は我々自身が生み出したということを自覚すべきだ、我々は悪循環の中に陥っているんだと語りました。また、テロリストと戦争はできない、戦争しなければならないという考え方こそ我々に向けられたわなだ、こう言っている。

 やはりこういう指摘も重く受けとめるべきだと思います。

 先ほど、民間人の犠牲、胸が痛むということもおっしゃられた。

 では、聞きます。

 日本はアメリカ主導の有志連合の一員です。有志連合の空爆によって、どれだけの民間人が犠牲になっていると把握していますか。

岸田国務大臣 対ISILの空爆による民間人の犠牲者についての御質問ですが、この対ISIL連合の空爆による犠牲者を各国政府は公表しておりません。よって、我が国として、民間の犠牲者について正確かつ網羅的に把握することは、現状、困難だと考えています。

志位委員 掌握していないと言うんですよ。

 総理は、空爆を行っている有志連合を支持すると言われます。ところが、その空爆でどれだけの民間人犠牲者が出ているかは把握すらしていないと言う。自分の都合の悪いことには目を塞ぐというのは、私は責任のない態度だと思います。

 この犠牲者、いろいろな数字がありますが、米中央軍は、有志連合の空爆による民間人の犠牲者について、ごくごくわずかしか認めておりません。切れ切れの発表を足し合わせてみても、米中央軍が認めた民間人の犠牲者はわずか二十一人にすぎません。しかし、現実の犠牲者ははるかに多い。

 イギリスのジャーナリストらが主宰するエアウオーが、中東を含む報道各社による報道、ネットメディア、フェイスブックなどSNS、ユーチューブへの投稿画像、米軍などの公式発表などをもとに推計している民間人の犠牲者数は、米軍が対IS空爆を開始した二〇一四年八月から二〇一六年一月二十九日までで、二千二十九人から二千六百三十五人と、幅はありますが、そういう方々が少なくとも亡くなっている。

 昨年十二月、アムネスティ・インターナショナルは、ロシアがシリアで住宅街、寺院、市場、医療施設などを空爆し、市民数百人を殺害、市場に投下された三発の爆弾で四十九人の民間人が殺害され、にぎやかな日曜日の市場が一瞬にして修羅場に変わったと告発しています。残虐な空爆は、罪なき人々の犠牲を生み出し、テロと戦争の悪循環をもたらすだけだと思います。

 世界からテロをなくすためには、軍事的対応の強化ではなくて、国際社会が一致結束してテロ組織への資金、人、武器の流れを断ち、貧困、格差、差別などテロの根を断ち、シリアとイラクの内戦を解決し、シリア難民への支援を抜本的強化するなどの政治的、外交的対応に知恵と力を尽くす、この道しかないということを私は強調したいと思います。

 その上で、次の問題に進みます。

 安保法制、戦争法との関係で私が強く危惧するのは、政府がISへの空爆などへの自衛隊の軍事支援について、政策判断として考えていないとしつつ、法律的にはあり得ると答弁してきたことです。

 安保法制の一つ、自衛隊の海外派兵のいわゆる恒久法、国際平和支援法で、武力行使をしている米軍など外国軍に対する協力支援活動、兵たん支援について、どういう要件を満たせば可能になるか。

 パネルをごらんください。

 法律では、自衛隊による協力支援活動は、次の三つの要件を満たせば可能になるとされています。第一は、活動の根拠となる国連決議、総会または安保理決議が存在することです。第二は、脅威を除去するために国際社会が共同して対処活動を行っているということです。第三は、我が国がこれに主体的かつ積極的に寄与する必要があると認められることであります。

 総理に伺います。

 中谷防衛大臣は、二〇一五年六月二日、参議院外交防衛委員会の答弁で、次のように述べておられます。読み上げます。

 ISILについても国連決議が出ておりますが、これについて、安保理決議第二一七〇号及び二一九九号は、ISILを国際の平和及び安全に対する脅威であると認識する旨の言及があり、かつ加盟国に対してISILに対する措置をとることを求めていることから、これらの安保理決議は同法、すなわち国際平和支援法の三条一項一号のロに規定する決議に該当し得るということでございます。

 つまり、この第一の要件に該当し得るという答弁を防衛大臣はされていますが、総理も同じ認識ですね。

中谷国務大臣 これは私の答弁でありまして、六月二日の答弁の中で、その発言の前に前提があります。その前に、いずれの国連決議が国際平和支援法に定める要件を満たすかについては、実際の運用に際して個別具体的なケースに際して精査されるべきものであると申し上げた上で、あくまでも純粋に国連安保理決議二一七〇、二一九九に示された文言だけを見た場合には、国際平和支援法に規定する決議に該当し得る、すなわち該当する可能性は排除されないという旨を説明したにすぎません。

 また、第三条は定義でありまして、文言の定義の中に決議の項目があります。これは、支援できる軍隊についての定義においての決議についてでありまして、そういう意味におきまして説明をしたものにすぎません。

 この前提を課している以上、この私の答弁は、要件を満たすか否かの判断はしないということを前提とした上で、仮に、ある国連の決議の文言だけで判断しなければならないのであれば、同法に規定する国連決議に該当する可能性があるということを言ったわけでございます。

志位委員 大臣は、随分御自分の答弁を低く低く、価値を低めようと一生懸命答弁されましたが、該当し得るとはっきり答えているんです。ですから、この第一の要件は該当し得るんです。

 そして次に、第二の要件、脅威を除去するために国際社会が共同して対処活動を行っているについては、有志連合が国連決議に基づいて行動しているということになります。

 そうしますと、残る第三の要件、我が国がこれに主体的かつ積極的に寄与する必要があると認められると認定をすれば、法律を発動する要件を満たし得るということになります。

 要は、日本政府の政策判断いかんということであります。すなわち、日本政府が必要だという政策判断を行えば、対IS軍事作戦への自衛隊の兵たん支援は法律上は可能になるということになります。

 そこで、次の問題です。

 総理は、政策判断として、ISILに対する軍事作戦に対して後方支援を行うことを全く考えていないとおっしゃいます。その理由は何でしょうか。

 私が本会議の代表質問で、そういう政策判断をしている理由は何かとただしたのに対して、総理は次のように答弁されました。我が国は、難民、国内避難民に対する食糧人道支援など、我が国ならではの支援を拡充し、非軍事分野において、国際社会における我が国の責任を果たしていくことが適切であると考えている、これが答弁なんですね。

 私は、軍事支援をやらないという政策判断の理由を聞いたのに、総理は、非軍事的支援が適切と考えていると答弁される。しかし、これでは答えになっていないんですよ。

 もう一度聞きますよ。

 軍事支援をやらないという政策判断を行っている理由は何ですか。きちんとお答えください。

安倍内閣総理大臣 軍事支援をやらないというふうに申し上げている判断は、まさに今、志位委員がおっしゃったように、我が国が現在行っている難民、国内避難民に対する食糧人道支援について、これは高く評価をされているわけでありまして、我が国ならではの支援を拡充し、非軍事分野において国際社会における我が国の責任を果たしていくことが適切である、こう考えたわけでございます。

 今現在、我々が後方支援をする、また軍事作戦に参加する、これは政策判断としてとらない、まさに政策判断としてとらない、私が総理大臣としてそう判断したわけでございまして、我が国としては、今申し上げた分野で日本ならではの責任を果たしていくべきだ、こう考えたわけでございます。

志位委員 その政策判断をした理由を聞いているんですよ。非軍事的支援が適切だというようなことを繰り返されるわけですが、それは理由にならないわけですよ。軍事支援をやらない理由を聞いているんです。

 有志連合による空爆の強化は賛成できないから、日本は軍事支援を行わないという政策判断をあなた方がやっているというんだったら、そういう政策判断を行っている理由はよくよく理解できますよ。日本は空爆の強化に反対だから、それに対する軍事支援はやらない、これは筋が通っている。しかし、総理は、空爆を行っている有志連合を支持するとおっしゃる。支持しながら、なぜ日本は軍事支援をやらないという政策判断を行っているのかということを聞いているんです。

 国民が納得のいく、説得力のある説明をしてください。政策判断だけじゃ済みませんよ、その政策判断の根拠を聞いているんですから。

安倍内閣総理大臣 支持するということは、自動的に、有志連合において空爆をするということでは全くこれはないわけでございます。もちろん、そもそも空爆する能力は我が方にはないのは御承知のとおりだろうと思います。

 そこで、後方支援をするかどうかということでございますが、このいわばオペレーションにつきましては、既に有志連合は構成されて、主にこれは空爆を行っているという状況にあるわけでございます。

 そしてまた、我々が今行っている人道的支援は、まさにこれは我が方がかなり中心になって資金的には出しているわけでございます。そして、それに対する評価が高い中において、政策判断としてどこに力点を置いていくかということになるのは当然のことであろう、こう思うわけであります。

 そこで、私たちは、この人道支援等々に力点を置いていく、そして、それが求められている中においてはそれを行っていくということでございまして、いずれにせよ、こうした政策判断は主体的に我々が、政府において判断をする。

 そして、私がこう申し上げている以上、こういう政策判断をしたわけでありますから、この中において、我々が、見通し得る将来においてこの判断を変えるということはない、見通し得る将来においてはそれはないということでございます。

志位委員 私は、軍事支援をやらないという政策判断の理由をこれだけ聞いたんですが、その理由をはっきり説明できないじゃないですか。非軍事的支援が適切だだけでは説明にならないですよ。非軍事的支援と軍事的支援と両方やることだってある。私たちは反対ですがね。その理由を聞いているわけです。それが説明できない。

 そうなりますと、こういう問題が出てくるんです。アメリカが対IS軍事作戦をエスカレートさせて、日本に支援を要請した場合に拒否できるかという問題です。

 イラクには、現在約三千五百人規模の米兵が軍事顧問団として駐留しています。イラク軍兵士の軍事訓練や助言が名目ですが、それだけでなく、対IS軍事作戦にも参加してきました。その結果、国防総省の発表でも、この作戦で既に米兵十四人が死亡しています。それに加えて、オバマ政権は、新たに二百人規模の特殊作戦部隊を派遣しています。

 オバマ大統領は、イラクなどに大規模な米地上部隊は送らないと繰り返していますが、共和党の有力上院議員のマケイン、グラム両氏などは、イラク駐留米兵を現在の三千五百人から一万人に増員し、シリアには多国籍部隊の一員として一万人の米兵を派遣すべきだという見解を表明しています。

 アメリカが状況いかんで対IS軍事作戦をエスカレートさせることは、私は大いにあり得ることだと思います。そのときに、日本に支援を要請してきたらどうするか。そういう場合にも、きっぱり拒否すると明言できますか。

安倍内閣総理大臣 この日本の立場は、既に米側に十分に説明をし、理解をされているわけであります。と同時に、私たちが行っている人道支援が高く評価をされている中において、しっかりと人道支援を行ってもらいたいというのが米側の考え方でございます。

 当然、その中において、我々は、選択肢として人道支援をしっかりと続けていく、同時に、選択肢として後方支援はやらないという判断をしたわけであります。そして、その判断は理解をされている、このように考えているわけであります。

 我が国が要請を拒否できないということは、全くこれはあり得ないわけでありまして、あくまでも私たちが主体的に判断をするのは当然のことでございます。

志位委員 要請を拒否できないということは全くあり得ないとおっしゃいましたから、では、そういう要請があったら拒否するということですね。明言してください。

安倍内閣総理大臣 申し上げておりますように、政策的な判断としてはとらないということを明確に申し上げておりますので、要請があってもそれはお断りをする、こういうことでございます。

志位委員 要請があったらお断りすると。

 では、もう一つ聞きます。

 断る場合、どういう理由で断るんですか。日本は、なぜこれを拒否すると、どういう理由で断るんですか。

 先ほど私が軍事支援をやらないという理由は何かとあれだけ聞いたけれども、答えられなかった。アメリカが要求してきたらどうするのか。アメリカが要求してきた場合に、これまでだったら、憲法の制約がある、あるいは法律がない、こういうことで断ることができたかもしれない。しかし、法律をつくっちゃった、憲法の解釈もこうした、そういうもとで、どういう理由でアメリカに断るんですか。

安倍内閣総理大臣 誤解をしている人が多いんですが、憲法があるから断れる、あるいは法律があるから断れるということではなくて、我々は政策的な判断でそれは行えませんと言えば断れるのは当然のことであります。

 我々は主権国家であり、当然、我々がしっかりと、それは私の政策判断ですと言えば、これはもう了解するわけでございます。

志位委員 政策的判断ということだけで、拒否する理由は示せない、これが問題なんですよ。軍事支援をやらないという理由も示せない、拒否する理由も示せない。そんなことで実際拒否できるかという問題なんです。

 では、具体的にもっと聞いていきますよ。

 読売新聞の二〇一四年十月十六日付の報道によりますと、オバマ政権が二〇一四年八月八日にイラクでISへの空爆を開始した後、米国政府高官は、ワシントン市内で日本政府関係者と会談し、自衛隊による後方支援はできないかと打診した、しかし日本側は、集団的自衛権行使を限定容認する安全保障法制の議論に影響を与えかねないと米側の非公式打診を断ったという報道があります。

 この報道は事実ですか。

中谷国務大臣 その報道は承知をいたしておりますけれども、当方といたしましては、常々米国に対しましては我が国の立場や考え方、これは説明をいたしておりまして、理解をされていると認識しております。

志位委員 ですから、この打診の有無はあったんですか。打診の有無について聞いています。

中谷国務大臣 日米間では幅広く常時意見交換を行っているわけでございますが、相手国の発言等につきましては、今後の活動等に支障を及ぼしますので、その点につきましてはお答えは差し控えさせていただきます。

志位委員 打診の有無さえ答えられないというお話でした。

 では、もう一問聞きます。

 カーター米国防長官は、昨年十二月九日の上院軍事委員会の公聴会で、有志連合による対IS軍事作戦に関して、私は世界の約四十カ国に協力要請したと述べております。偵察のための航空機の派遣や武器と弾薬の提供を要求したと説明しております。

 日本は、アメリカ主導の有志連合六十五カ国の一員です。防衛大臣、日本に対して協力要請があったのか、協力要請の有無を答弁されたい。

中谷国務大臣 日米間におきましてはいろいろと意見交換しておりますけれども、常々我が国は、対ISILの軍事作戦に参加する考えは全くなく、また、ISILに対する軍事作戦への後方支援、これを行うことは全く考えていないということ。

 そして、日米間におきましてはISILへの対応を含めまして広く中東情勢に関して意見交換を行っておりますが、我が国は、シリア、イラクの難民また国内の避難民支援、ヨルダン、レバノンといった周辺国への支援、また関連国連決議の履行を着実に実施してきておりまして、非軍事分野において我が国の強みを生かした可能な限りの貢献を行っているという考えを持っておりまして、随時日米間では幅広く意見交換を行って、我が国の考え方、これは説明をしているところでございます。

志位委員 ですから、カーター長官から協力要請があったのかなかったのか、それを聞いているんです。

中谷国務大臣 これは幅広く日米間で意見交換をいたしておりまして、相手国の発言等につきましては、相手国の立場もございますし、また今後幅広い形で自由に意見交換をする必要がございますので、相手国の発言等につきましては明らかにするべきではないと考えます。

志位委員 また答えを言わないわけですよ。要請の有無を言わない。

 カーター長官は、一月十三日のフォートキャンベル陸軍基地の演説で、四十カ国以上の私のカウンターパート、国防大臣に対して、一層の特殊作戦部隊、攻撃・偵察機、武器弾薬、訓練援助、戦闘支援、戦闘部隊支援を要請したと述べています。

 先ほど大臣は相手国の立場もあるからとおっしゃいますが、カーター長官は、私のカウンターパート、国防大臣に要請したと言っている。カーター大臣のカウンターパートといえば中谷大臣のことでしょう。そうですよね。先方がそう言っているんですから、要請があったかどうかぐらい明らかにすべきじゃないですか。何を遠慮しているんですか。

中谷国務大臣 相手国の高官の発言等につきましては、当然のことながら、申し上げることはできません。ただ、日米間ではさまざまな面で意見交換を行っておりまして、我が国の立場におきましては、先ほど御説明したような、非軍事分野で貢献をするという意思は私の方から伝えているわけでございます。

志位委員 これは、あったということをまだ認めないんですか。申し上げることができないと、あったかどうかも認めないんですか、これだけ言われても。要請があったことを認めない。首を振っていますが、認めないんですね。どうですか。

中谷国務大臣 これは、二国間でさまざまな意見交換を行っているわけでございますが、相手国の言ったことにつきまして、それぞれ、信用の問題もありますし、相手の立場もございますので、これは私は明らかにすべきではないと考えております。

志位委員 何度聞いても明らかにすることさえしない。要請の有無さえ明らかにしない。

 では、オーストラリアはどういう対応をしているか。

 オーストラリアのマリス・ペイン国防大臣は、一月十三日、ISとの闘いに対するオーストラリアの貢献についての声明を発表しております。その中で次のように述べています。

 米国は、パリでの攻撃、テロ事件を受け、欧州を含む約四十カ国に対し、有志連合への貢献の拡大を検討するよう要請した。要請をはっきり認めております。

 オーストラリアは、米国のアシュトン・カーター国防長官からの要請について、我々が既に行っているイラク治安部隊の訓練及び空爆へのかなりの貢献を考慮しながら、検討してきた。本政府は、カーター長官に対して我々の現在の貢献を継続すると通知した。

 要するに、現在の貢献を継続する。現状維持。つまり、有志連合への貢献の拡大には応じないということを、はっきりこういう形で明らかにしているわけであります。

 オーストラリアの新聞、シドニー・モーニング・ヘラルド、一月十三日付電子版は、マリス・ペイン・オーストラリア国防大臣がカーター米国防長官の要請を公式に拒否したことを認めたと報じました。AP通信は、オーストラリア、対IS作戦増強を求める米国の圧力に抵抗と報じました。

 総理に伺います。

 要請があったらあったと言う、拒否したら拒否したと言う、これが普通の独立国の態度じゃないですか、総理。

安倍内閣総理大臣 それは違うと思います。

 国際社会においては、外交的な信頼関係を維持する上においては相手方の発言について軽々に外に発表しないというのが常識であって、その中においてお互いが緊密な連携を行うことができるということでございます。

 そして、その要請について、今さまざまなお話をしておられますが、いずれにせよ、私が先ほど申し上げましたように、ISILに対する空爆等への後方支援は我々は行わないということを言っているわけでございます。

 行わないということを決めているわけでありますから、要請があったかないか、これは余り意味のない話でございまして、その中において、外交的なやりとりを、今我々が支援するかどうか迷っているということであれば、百歩譲って志位さんがそういうことを聞かれるというのはわかりますが、やらないと言っているわけでありますから、これは一々そうしたやりとりについてお話しする必要はそもそもないんだろうと。そして、大原則としては、相手方の発言についてはこちらはクオートしないということではないか、このように思います。

志位委員 国際的な外交関係においては公表しないのが当たり前とおっしゃいますが、アメリカの同盟国であるオーストラリアは、こういうきっぱりとした態度をとっているんですよ。何にも言わない方が異常なんです。異常なアメリカの言いなりなんです。

 私は、代表質問で、米国が、対IS軍事作戦を拡大し、日本に支援要請をしてきた場合に、それを拒否できますか、戦争法がある以上、拒否できず軍事支援を行うことになるのではありませんかとただしました。それに対して、総理は、我が国がいかなる支援を行うかは、我が国が主体的に判断すべき事柄だ、我が国が他国の要請を拒否できず軍事支援を行うことになるといった御指摘は全く当たらないと答弁されました。きょうもそのことを繰り返し言われました。

 しかし、この質疑で明らかになったことは何か。

 まず第一に、国際平和支援法が示す要件に照らして日本政府が必要だという政策判断を行えば、対IS軍事作戦への自衛隊の兵たん支援は法律上は可能になるということです。国連決議については該当し得るものが少なくとも二つある、これを認めました。これが第一点。

 第二に、総理は、政策判断として、ISILに対する軍事作戦に対して後方支援を行うことは全く考えていないということを繰り返しますが、私が、ではなぜ軍事支援をやらないんですか、そういった政策判断を行っている理由は何ですかとあれだけ再三聞いても、説明ができませんでした。非軍事的支援をやっていると言うだけであって、説明ができない。これが第二点。

 第三に、アメリカから支援の要請があった場合にそれを拒否できるかという問いに対して、拒否すると言ったものの、どうやって拒否するのか、どういう理由で拒否するのかという、その拒否の理由が示せなかった。

 そして第四に、アメリカからこれまで支援の要請があったかどうかについてあれだけ質問しても、相手があるからと言って、要請の有無さえ明らかにしませんでした。

 こんな姿勢で、どうして主体的な判断ができますか。アメリカが対IS軍事作戦を拡大し、自衛隊の支援を要請してきた場合には、対IS軍事作戦の後方支援、兵たん支援に自衛隊を参加させることになることは私は明らかだと思います。

 ショー・ザ・フラッグと言われれば、海上自衛隊をインド洋に派遣する。ブーツ・オン・ザ・グラウンドと言われれば、陸上自衛隊をイラクのサマワに派遣する。アメリカの軍事的要求に常に忠実につき従ってきた自民党に、いざアメリカの要求があったときに、どうして拒否ができようか。安保法制、戦争法をつくってしまったもとでは、いよいよもって拒否できません。

 日本が対IS軍事作戦に参加するとなれば、テロと戦争の悪循環、憎しみの連鎖に日本自身が入り込み、日本国民をテロの危険にさらすことになります。そのような道は断じて認めるわけにはいきません。

 世界からテロをなくすという課題とのかかわりでも、安保法制、戦争法は、それに全く役に立たないどころか、極めて有害で危険きわまりないものであります。戦争法を廃止することは、ここでも急務であることを強く訴えたいと思います。

 日本の平和と国民の命を危険にさらし、立憲主義を破壊するこのような法律を、一刻たりとも放置するわけにはいきません。

 戦争法が強行された後も、国民の半数以上がこれに反対という状況は変わりません。その廃止を求める新しい国民運動、市民運動が力強く広がっております。

 私たち日本共産党は、国民の世論と運動とがっちりスクラムを組んで、憲法違反の戦争法を廃止し、集団的自衛権行使容認の閣議決定を撤回し、日本の政治に立憲主義と民主主義を取り戻すために全力を挙げる決意を表明しまして、私の質問を終わります。

竹下委員長 これにて志位君の質疑は終了いたしました。

 次に、下地幹郎君。

下地委員 おおさか維新の会の下地幹郎でございます。

 きょうは、私どもおおさか維新の会、一時間と二分間、時間が回復しました。前回の補正予算では四十七分、民主党と共産党に剥奪されましたけれども、今回、この時間が、権利が回復したことは大きいと思っています。しっかりとこの時間、私たちおおさか維新の考え方をお伝えしていきたいというふうに思っております。

 まず、甘利問題について、私どもの党の考え方を説明させていただきたいと思います。

 まず、本人の説明責任をしっかりしてもらうというのが一点目であります。

 そして、この甘利さんが説明責任を果たす場、そして、その問題を論議する場は政倫審でしていただきたい。政倫審をしっかりと開いて、その場所ではっきりとするのが二点目の考え方であります。

 三点目には、予算委員会には決してこの甘利問題が影響しない。国民予算に関してはしっかりと私たちは論議をしていくということですから、甘利問題で予算委員会がストップしたり延期になったり、こういうことはおおさか維新の考え方ではないということですから、審議はしっかりとやっていきたいということです。

 また、四点目には、おおさか維新は企業献金を廃止していますので、この企業献金の廃止についてしっかりと訴えていきたい。

 こういう四点の考え方であるわけです。

 そこで、総理にお伺いしますけれども、政倫審は二十五人の委員会で、自民党が十六人、野党が八人。これは本人が申請すればできることになりますけれども、与党の自民党が賛成しないと政倫審は開くことはできません。総理、ぜひ政倫審を開いて甘利さんが説明する場所をしっかりとおつくりになるというのが一点と、安倍内閣ができてから今回で四人目の閣僚の辞任ということになりましたけれども、ここで真剣に企業献金の廃止について論議をするというようなことのお考えがないかどうか、この二つをまずお聞きしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 まず、政倫審の開会でございますが、これはまず政治家本人としてしっかりと説明したいという中において、衆議院において決定をされるもの、このように承知をしております。今までも何人か自民党の議員も、その政倫審の場を使って説明された先輩がおられるというふうに承知をしておりますが、いずれにいたしましても、院において御議論いただき、決定していただきたいと思います。

 そして、企業・団体献金についてでございますが、政治活動に対する献金のあり方については、長年の議論を経て、企業・団体献金は政党等に対するものに限定されるなど、種々の改革が行われてきたところであります。

 大切なことは、許してはならないのは、お金でもって政策や政治をねじ曲げてはならないということではないかと思うわけでありまして、それは個人であれ、団体であれ、企業であれ、同じことではないかと思います。

 民主主義のコストをどのように考えていくのか、分担をしていくかということについては、各党各会派において議論していただきたいと思います。

下地委員 これだけ大きな問題を起こした以上は、政倫審にみずから出る、また、総裁として、その場をぜひ活用してもらいたいということを甘利さんにアドバイスする、これが大事なことだというふうに思っていますから、そのことをぜひお願いさせていただきたいと思います。

 それと逆行するかのように、先週の土曜、日曜の世論調査を見ると、安倍総理の支持率は上がっているんですよね。普通だと、ここまで甘利問題が論議されると、総理の、内閣の支持率というのは下がるものなんですけれども、総理、上がっているんですけれども、何で上がっているんですかね。

安倍内閣総理大臣 その時々の支持率にはコメントするのは控えさせていただいておりますが、いずれにいたしましても、不透明感を増した世界経済の中においてしっかりと経済運営を行い、そして、安定的な政治的基盤の上に政策を実行していくようにということではないかと思います。

 同時に、国民の皆様の厳しい目が私たちに注がれているという緊張感を持たなければならない、このように考えております。

下地委員 これは、高いところだと五%以上上がっているんですよね。

 私が思うに、有的放矢という言葉があるんですけれども、この有的放矢というのは、的があって矢を放つ、ちゃんと狙いがあって行動する、攻めるべき欠点があって攻める、こういうことを野党第一党の民主党がやっていないから支持率が上がっているんじゃないかと思うんですよね。

 ここは、私たちは、これだけ問題があっても与党が支持率が上がるというのは、これは野党の責任。しかも、第一党の民主党が一番悪いと僕は思うんですよ。だから、野党第一党という言葉を私はもう一回取りかえなければいけない。政治家の数では野党第一党にはなりませんけれども、私は、世論調査で、おおさか維新の会は野党第一党になりたい、そして、野党第一党になって、しっかりと自民党と互角に政策論争のできるような、そういうふうな政党になりたいというのが私たちの有的放矢ですよ。これをやらない限り、この形は、自民党が単独で進む形は変わらない、国民の支持は集まってこないというふうに思っていますから、しっかりとそのことをやっていきたい。

 そのためには、野党共闘ということはやったらだめですね。野党共闘をやると、同じようにやりますから、これは自民党と対抗できません。しっかりと野党が、お互いが切磋琢磨して個性を出していく、これをやって初めて自民党に対抗できると私は思っていますから、そういう思いでやっていきたいというふうに思っております。

 それで、私たちおおさか維新の会の結党の理念というのが四つありまして、統治機構の改革と、経済と財政の再建と、教育費の完全無料化と、沖縄問題の抜本的解決、この四つをやりたいという思いで橋下前代表がこのおおさか維新の会をつくったというようなことであります。

 それで、この四つをしっかりと解決していきたいというようなことを考えているんですけれども、その二つ、統治機構の改革と教育の無料化については、私どもは憲法改正でこれはやりたいというふうに考えているんです。

 これを見ていただけたらわかると思いますけれども、この統治機構の改革のところは、道州制のもの、第八章の九十二条と九十四条、こういう二つを変えていきながら統治機構改革ということをやりたいということですね。そして、四十三条を変えて、自治体の首長が参議院議員になれるというようなこともやりたい。こういう統治機構改革をやって地方が元気になることが、この国がよくなるというようなことをやりたいというのが一点あります。

 そして、もう一つには、安保法案のときに論議がありましたけれども、安保の論議じゃなくて違憲の論議になったので、憲法裁判所をしっかりつくる。この憲法裁判所をつくるというのを、八十一条をしっかりやって、これも改正してやりたいというのが一点目です。

 二点目の教育の無料化というのは、今でも義務教育は無料化というのを二十六条の二項に書いてありますけれども、それを書きかえて、教育全体も無料化する、学校教育はこれを無償化する、こういうふうなことを憲法に書いて、とにかく憲法に書いて、教育の無償化を図っていくんだ。これは三兆七千億ぐらいお金がかかりますけれども、これに関してどういう財源を使うかということは、これからしっかりと国民に提案していきたいというようなものが私たちの考え方です。

 三点目の緊急事態条項については、まだ私たちの党の考え方はありません。しかし、ありませんけれども、自民党がこの条項をもし出してくるならばしっかりと協議をしていきたいというのが私たちの今の憲法に対する考えなんです。

 憲法というと、すぐ九条の話を思い浮かべるかもしれませんが、そうではなくて、統治機構の改革とか教育の無償化とか、憲法というものはこういうこともやらなければ憲法改革はできないんだよ、そういうネガティブ的なイメージじゃなくて、憲法改正を明るく捉えながら論議をしていくというようなことを私たちはやっていきたいというような思いであります。

 それで、総理に御質問なんです。

 この参議院選挙で憲法改正、私たちはここまで国民の前に示していますけれども、私たちも堂々と、憲法改正を党の真っ正面から国民に訴えていく、三分の二の勢力になりたいというような思いですけれども、安倍総理もそういう思いであるかというのが一点と、三分の二を参議院で得たら、早急に憲法改正に向けて委員会をつくって、憲法審査会を始めるという議論をするようなおつもりがあるのかということと、三点目には、どの項目からやるのかということについては、どういうふうな委員会がどういうふうな手法で総理はおやりになりたい、選びたいというふうにお考えになっているのか、この三つをお聞かせいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 憲法改正については、自由民主党は既に結党六十年を迎えておりますが、結党以来の党是と言ってもいい目標でございます。そしてその中において、既に私たちの考え方は、谷垣当時の総裁のもとに憲法改正草案として、大変な議論をした後にまとめ、そしてお示しをしているところでございます。

 そして、御党において、二十一世紀にふさわしい憲法のあり方について真摯な議論をなされ、そして勇気を持って示しておられるということに対しましては敬意を表したい、こう思う次第でございます。

 批判だけではなくて、お互いにしっかりと考え方をまとめ、そして切磋琢磨していくことが建設的な議論ではないか、このように思います。

 その上において、我々、私も、総裁になってから二回の衆議院議員選挙、あるいは一回の参議院議員選挙におきましても、この憲法改正についても訴えてきたところでございますが、当然、その中において、今後、参議院選挙においても、今まで同様訴えていきたい、こう思っております。

 そこで、三分の二の多数を形成しなければ、憲法改正には至らないわけであります。そして、その三分の二というのは、いわば、何を改正するかということにおいてそれぞれ三分の二を形成するということなんだろう、こう思うわけでございますが、当然、その場は、今もこの御議論をいただきたい場でございますが、憲法審査会において有意義な議論を行い、そこで、どの条項について改正するかということについてはだんだん収れんさせていくべきではないか。

 その際、三分の二の多数が形成されれば、それは国民投票に付されるわけでございまして、基本的には、決める場は国民投票ということについて、これは国民的な御理解もいただかなければならないんだろうと思います。

 改正条項について、この三分の二を二分の一にするということについていろいろな御議論があったんですが、それはいわば簡単にするものではないかという御批判もございましたが、しかし、決めるのは、同じ、国民投票で二分の一がなければ決められないということでございまして、この三分の二を二分の一にするというこの心は、やはり、三分の一ちょっと国会議員が反対すれば国民は一票投票できないのかということについての多くの議員の問題意識の中において、これは九十六条を改正するべきではないか、こう考えたところでございます。

 いずれにせよ、どの条文から改正していくかということについては、国民的な議論の深まり、あるいは憲法審査会における議論の収束状況等々の中で判断されていくべきものだ、このように考えております。

下地委員 今総理が答弁なされたように、最後は国民が決めるんですよね。提案した後は国民が決める。そういう意味でも、憲法に関しては、私は、国民的な動きをつくっていくというのが私たち政治家の役割だと思っております。しっかりと果たしていきたいというふうに思います。

 ちょっとかわりますけれども、総理、見ていただきたいんですけれども、これは、総理が就任してからのずっと、アベノミクスの成果なんですね。どの数字を見てもその数字は上がっているということは、これを見ておわかりだと思うんです。

 しかし、総理、一月二十五日の日経新聞の世論調査を見ると、アベノミクスの評価というのが、四二%がこれを評価しないというようなことで、評価がなかなか割れているんですよね。これだけ数字がよくなったのに、何で割れているのか。特に地方に行くと、評価しないが四三で、評価するが三四というような形になっているんです。この数字を見たら、この世論調査を見たらおかしいなというふうに思うかもしれませんが、次の数字を見ると、格差がやはり少しある。この格差を是正しないと、この世論調査の数字がなかなか変わらないんじゃないかと思うんですよ。

 だから、私なんかに言わせると、総理、二%の物価を何とか維持したい、目標にしますと言いますけれども、今一番喜んでいるのは、ガソリンが安くなって喜んでいるのは国民なんですよね。だから、庶民の考え方では、二%の物価じゃなくて、安くなっているガソリンであり、四月から安くなる電気を国民は喜んでいるんですよ。

 しかし、経済政策からすると二%でなければいけないというような論理が先に出てくるわけですけれども、そういう意味でも、もっと地方とか中小企業とかこういう方々が喜ぶような政策、今度の新しい新成長戦略がこのような数字を改善するような政策になるとお考えになっているかどうなのか、ちょっとこの部分をお聞かせいただきたいと思うんです。

安倍内閣総理大臣 私どもの経済政策において、確かに大都市部と地方との差があるのは事実でございまして、我々は、それを埋めていくためにも、地方創生も進めてまいりました。その結果、だんだん地方において明るい兆しが見えてきたのも事実でございます。

 下地委員の御地元の沖縄においても、有効求人倍率は過去最高になったわけでございまして、あのバブル期よりも、あるいは高度経済成長期よりもよかったわけでございます。こう言うと、高知県の例で人口が減ったじゃないかと言う人がいるんですが、でも、沖縄は人口は決して減っているわけではないわけでございまして、むしろ出生率はいい、ふえていると言ってもいいんだろうと思います。

 そこで、そうしたいわば流れをもっと本格的なものにしていきたい。海外からはどんどん観光客はふえてきておりますし、沖縄でも大変な観光客の数になっている、こう伺っております。そうしたものをしっかりと進めていきたい。名目GDP六百兆円を目指していく中においては、これは、しっかりと各地方においてもこの恩恵をこうむることができるような、そういう成長を目指していきたいと思います。

 この新たな三本の矢においては、三つの明確な的を掲げたわけでございます。そういう意味におきましては、ちゃんと的をつくれという下地委員のお気持ちにも沿うものではないか、こう思いますが、そうした的に向かってしっかりと矢を放っていくことによって、中小企業にもしっかりと恩恵が行き渡っていくように。中小企業に対しましては、官民対話の中において、経団連等々に対しまして、いわば、取引会社に対しての対応をしっかりと行うように、下請等に対する対応を行うようにということも要請をしているわけでございます。

 今まではそういうことを政府が要請するということはなかったんですが、私たちは、そういう要請をしながら、いわゆるトリクルダウンといって、滴り落ちてくるのを待っているのではなくて、底上げをしながら日本の経済を成長させていきたい、このように考えております。

下地委員 私たちの党は、批判よりも政策提案ということなので、八つのきらきら成長戦略、このきらきらというのは前代表の橋下さんがよく使う言葉なのでこれを使っている。これを一からちょっと説明しますので、それを聞いてください。

 消費税八%の据え置きは、党として、今この時期、不透明感があるので、中国の経済も厳しいので、ここは、せっかく伸びてきた経済をとめることはなくて、八%に据え置くというのは一つ大事じゃないか。

 二点目の民営化ですけれども、二分の一以上国が出資している特殊法人が二百十一あります。それの全部で、運営費補助金、それに補給金、政府支出金、全部を足すと二兆六千億ぐらいの金が出ているんですけれども、純資産が七百五十七億円、ここをしっかりと、民ができるものは民がしていくというようにやることによって経済が回復するんじゃないかというので、ここにちょっと手をつけてもらいたい。今、安倍総理がやっていない部分なので、そこにぜひ手をつけていただきたいということが二点目。

 三点目は、ポスト「京」です。これは、昔、二番ではだめですかという話がありましたけれども、二番ではだめなんですよ。これはウイナー・テークス・オールなんです。とにかくこれはトップにならないとだめなんです。だから、そういう意味でも、「京」の百倍の力を持つような、計算ができるスーパーコンピューターをしっかりと国策としてつくっていく。これをやることで、エネルギーにおいても、農業においても、医療においても、少子化対策においてもいろいろなものが変わっていく。これに関しては、国家プロジェクトとして安倍内閣が取り組むべきじゃないかというのが三点目です。

 四点目は、中小企業の海外進出です。今はもうTPPになりましたけれども、大手の企業は行っています。三百八十万余の中小企業がありますけれども、行っているのが六千八百社だと。この統計も曖昧なんですけれども。しかし、中小企業が海外に行けるような環境をつくるということになってくると、東京ではもうかっていても、海外に行ったら、そこでまた訴訟を起こされて、その訴訟を起こされたことで東京のもうけまでなくなるんじゃないかという心配があるから中小企業はなかなか行かない。だから、ここに書いてあるように、対応する訴訟保険をつくって、中小企業がどんどん外に行けるような仕組みをやったらどうなのかというのが四点目です。(発言する者あり)黙って聞いてくれよ。

 中国進出日本企業の上海市場への上場化というのが書いてありますけれども、今二万五千社の企業が中国に行っていますけれども、そのうちで上場している会社はゼロです。だから、そういうふうな企業を何とか上場して、日本企業が上場すると中国の株式も活性化できる、活性化できることが日本の市場においても成果を出す、こういうことができないだろうかというのが五番目です。

 六番目が、これはコンビニですけれども、今、日本のセブンイレブンやファミリーマートやローソンが海外にお店を出しているのが五万軒あります。この五万軒に農産物を乗せる、そういうようなことをやると、今、キャベツ一個でも、一キロ乗せるだけで大体日本の生産量の七%ぐらいがそれで行くというようなことになるから、コンビニとか、出ているところをどうやって使うのかということを考えることがどうかということです。

 七番目は交際費の損金算入ですけれども、今、八百万あるけれどもなかなか三百万しか使っていないという人もいるかもしれない。まだまだ、五〇%の損金になっていますけれども、やはり、景気がよくなった、これからおもしろくなるぞ、だから、レストランなんかの中小企業も零細企業も、安倍内閣の中で景気が動いてきたから飲食業に集まるよという意味でも、メッセージとして、交際費の全額損金算入と書いてありますけれども、それを少し見直すだけでも地域の経済はよくなるんじゃないかということを私は考えているんです。

 あとは、八番目は過疎地域の数次ビザですけれども、総理、今総理のところがやっていただいている沖縄は、沖縄に一泊して東京に行ったり、沖縄に一泊して福岡に行くと、三年間ノービザになっていますね。この成果で、沖縄で大体五万六千人、中国から来る観光客が伸びましたよ。だから、これを一番、日本の中でも過疎地域に限定して、ここに行って東京に行く、ここに行って大阪に行く、ここに行って福岡に行くとなるとノービザがもらえますという、沖縄で成功例があるので、これをぜひやってみたらどうか。

 こういう成果をぜひ使ってみたらどうか、これが私たちの八つの提案なんです。

 それで、全部話していると時間がありませんので、総理には三番のポスト「京」、そして通産大臣には四番目の中小企業のTPP対応訴訟保険について、この二つの考え方をちょっとお示しいただきたい。総理は三番目ですね。

安倍内閣総理大臣 三番目についてお答えをさせていただきたいと思います。

 ポスト「京」について、スパコンについては、私たちは、二番ではだめで一番をとらなければだめだと思っております。もちろん、計算するスピードが一番になれば、そこに依頼をすれば一番最初に結果が出てくるわけでありますから、一番のところに当然全てのものが集中してくるわけでございまして、しっかりと我々も力を入れていきたい、このように思うわけでありますし、これは人工知能等にもつながっていくわけでございますので、力を入れていきたいと思います。

林国務大臣 海外取引のうち民間の保険でカバーできるリスクは、民間の保険を利用することを推奨しています。民間の保険で救済できないものは国の貿易保険でカバーするというのが基本的な考え方であります。

 御指摘の海外での訴訟リスクにつきましては、例えば輸出製品の事故に関する損害賠償や訴訟費用に対応した海外PL、製造物責任保険など、既に民間の保険制度がございます。中小企業庁がいろいろと説明会においてそれらを紹介して、活用を促進しているところでございます。

 一方、輸出や海外向けの投融資に対して、戦争やテロ、あるいは代金が回収できないといったような場合に民間の保険では救済できないリスクにつきましては、貿易保険でしっかりと支援していきたいというふうに考えております。

下地委員 この八番目までのものをぜひ検討していただいて、いいものがありましたら使っていただいても私どもは結構でありますから、よろしくお願いしたいと思います。

 総理、沖縄の問題ですけれども、今、裁判所から二つの和解案が出ましたけれども、この和解案についての総理のお考えはどうですか。

安倍内閣総理大臣 和解案への対応でございますが、和解案につきましては、先日、福岡高裁那覇支部から和解案が提示をされておりまして、その内容の報告は受けております。

 他方、内容につきましては、国は裁判所から対外的に明らかにしないよう要請をされておりまして、また、政府として対応が可能か検討中であるため、具体的なコメントは差し控えさせていただきたいと思います。

下地委員 総理、これを見ていただきたいんですけれども、岩国の飛行場で八回の設計変更が出ているんですけれども、これは全部山口県の県知事が印鑑を押さないとだめなんですよ。今回、見ておわかりのように、代執行の手続をずっとやると、最高裁までやると大体一年かかります。これが沖縄の辺野古の場合だと十回を超えると言われていて、これが一年かかると、一回一回代執行していくと十年の歳月がかかっちゃうというのが現実なんですよ、総理。

 それで、ではこれは特措法をつくりましょうかということを言っても、憲法三十九条に不利益の遡及という言葉がありますけれども、この部分だとか、憲法九十五条の、特定の自治体のみにやる場合には住民投票をやれということがあるから、これで特措法をつくるというのはなかなか難しいんじゃないかという憲法学者の話があるんです。

 となると、私は、二〇年までにやるというのが国の考えですけれども、これはそのままいくと、十回出ると、防衛大臣、これは三〇年まで時間がかかっちゃうということになるんです。

 また、沖縄県が今、公有水面埋め立ての新しい条例をつくりまして、この条例には、外来種の生物の侵入防止に関する条例というのがありますけれども、辺野古の建設までの土砂の八割は沖縄県外から持ってくるとなっているんです。この条例にこれはひっかかる。

 そして、どんなにやっても時間がかかるということになってくると、ここは本気でこの裁判所の和解案について話をしなければならないと私は思いますよ。最高裁の判決が出たら、法治国家だから、翁長さんは絶対に従わなければいけないと思いますよ。これをノーと言ったら、これはもう日本国民ではありませんよ。最高裁が決めたものでやらなければいけない。しかし、彼にも権利がある。工事手続について彼の権利がある。この権利が、このとおりになってくると、そう簡単には、最高裁で勝ったからといっていかない現実があるということを考えると、私は、これは話し合って決着をつけなきゃいけないと。

 私から言わせると、最高裁のこの二つの和解案というのはびっくりするぐらいの提案だと思いますよ。よくこんなことを最高裁が出しているなという感じがしますけれども、このことについては真剣に考えてもらいたいということです。

 これは答弁は、やっても同じことになりますから、要りません。

 それで、時間が来ているので、もう一つ二つだけお願いしたいんですけれども、もう一つは、塩崎厚生労働大臣に、子宮頸がんワクチンの副反応についてちょっとお聞きをしたいんです。

 HPVのワクチンの接種によってさまざまな、女の子がこの副反応で苦しまれているということで、会ったことはありますか。どういう方々か、お会いして、お話を聞いたことはありますか。

塩崎国務大臣 四人の方々に、親子でお会いをさせていただきました。

下地委員 大臣、国に対する賠償責任とかそういうようなものは、これは裁判になるんですけれども、私から言わせると、今、裁判の話よりも、こうやって苦しんでいる女の子たちがいるというようなことを考えたときに、特に、私の出身の沖縄なんかの場合になると、専門的見地があるのは、東京にしかお医者さんがいないものですから、どうしても東京に来なきゃいけない。飛行機に乗ってくると気圧の関係で負担が重くなるというようなことが数多くあるので、東京にある専門医が、各地域にこういう子供たちが二千五百人いらっしゃると聞いておりますけれども、行って、この治療をやっている病院のお医者さんに、連携している病院に行って説明する。

 今はこの知見を、データをとって話をするだけなんですけれども、そうじゃなくて、厚生労働省として、こういう専門家のお医者さんが各地域を回って診察をして指導していく、こういうようなことをおやりになることが大事だと思いますけれども、そのことについてお願いします。

塩崎国務大臣 昨年の九月までに、二千五百八十四人の方々がこの問題があって、そのうち一週間で治った方を除く、四百人ぐらい残るわけです、治っちゃった人を除きますと。そういった方々を含めて全部追跡調査をもう一回やり直して、昨年の九月に調査結果を発表いたしました。実際にまだ症状で苦しんでいらっしゃる方が百八十六名おられます。

 我々は、その際に決めたことは、一つは、やはり速やかな救済、それから、医療的な支援の充実、そして、学校にやはり行きたいという子供たちのために生活面の支援ということで、患者に寄り添う支援を強化したところでございます。

 今、医療のことでありますけれども、救済は直ちにということでもうPMDAで始めておりますが、医療につきましては、今まで、都道府県に一カ所、協力医療機関というのを設けていた。しかし、それをさらに広げて、県内で連携をする医療機関をつくって、そこでフォローをする。なおかつ、厚生労働省の厚生労働科学研究班、ここで治療法についての研究を行っていますので、こことそういった先生方が連携をできるようにということで、今、ネットワークをつくって、そういった先生方からのアドバイスを全国どこからでも得られるようにしようというふうにしているわけでございます。

 各都道府県に、昨年十一月、学校生活の相談窓口というのもつくっておりますので、やはり患者さんには寄り添っていく、そして、あと疫学研究というのをやって科学的な分析もきっちりやるということで、因果関係などについて明らかにしていきたいというふうに思っております。

下地委員 今、大臣の百八十六人という数字には納得できませんけれども、今大事なことは、とにかく、この専門の班が慈恵医大と東大にあるようですから、専門にやられている先生方が地方を回って、ちゃんと専門的な見地で病院の先生方にアドバイスをしていくというようなことが大事なので、そのことをしっかりやってもらいたいということをお願いさせていただきたい。

 時間が来たので、終わります。

竹下委員長 この際、松浪健太君から関連質疑の申し出があります。下地君の持ち時間の範囲内でこれを許します。松浪健太君。

松浪委員 提案型責任政党、おおさか維新の会の松浪健太です。

 提案型責任政党という、我々は、これまでの与野党ではあり得なかったスタイルでこの国会に臨んでおります。

 それは、今までの野党と違って我々は、大阪におきましては、大阪府知事選挙、大阪市長選挙、こうしたものに、自民党さんでも民主党さんでも、普通は無所属の候補を立てる、我々は、公認候補を堂々と立てて、そして、どんな与野党相乗りであっても、それを我々の信念で貫くという姿勢を評価いただいて、その力でこの場所に立っているからであります。

 しかしながら、冒頭、下地議員からもお話がありました。先般、我々の質問時間が補正予算の審議の中で奪われるということがありました。これについて私たちは説明を求めました。今回の一般予算の審議では時間がしっかりと戻った。それは、ほかの野党の、当時、我々の質問の時間を奪った皆さんが、やはりこれは間違いだったということをお認めになったんだなというふうには思います。しかしながら、我々は返還を求めてきましたけれども、誠実な態度は得られませんでした。

 与党でもない、野党でもない、既存の野党でもない、与党でもない、こうした言い回しだけで質問時間を奪われるのでは、たまったものではありません。

 これについて、皆さん本当に、きょうの委員会でも、政治の世界というのは、私、しんどいなと思いますよ。すさまじい勢いで、汚い言葉も入れていろいろ詰め寄る。でも、その皆さんが、理事会という立場で我々、この予算委員会の運営をしていますけれども、その場所では、説明してくださいと言っても黙る。僕は、国会議員が黙秘権あっちゃだめだと思うんですけれども、こうした分野でも皆さんは黙っておられる。

 さすがに竹下委員長は随分と御苦労いただきました。しかし、その委員長が、時間を取り戻すということは私の手からは離れたということをおっしゃった。その委員長のこれまでの我慢強い努力には、私は本当に敬意を表するものであります。

 本当に、我々、一つは、きょう求めてこの時間を戻した理由は一体何だったのかということ、そして百歩譲って、おおさか維新の会は、与党でもない、野党でもないということを申し上げた。でも、もう一つの会派、改革結集の会は何も言っていない。法の世界では、疑わしきは罰せずといいますけれども、我々は疑わしきだけで罰せられた。結集の皆さんは疑わしくもないのに罰せられた。これほどの理不尽について説明もないということについては、私は本当にじくじたる思いでありますけれども、これから竹下委員長も、こうした説明はやはりあるべきだということも言っていただきました。

 委員長に、これからの委員会の運営について一言いただきたいと思います。

竹下委員長 委員長といたしましては、委員長というのは議場整理権は確かにあることはあるんですが、大事なことは、与野党がしっかりと真摯に議論をして、円滑に運営をしていくことである、そして、国民生活に一番近い予算審議を充実していくことにあると考えております。

 補正予算案の審議における時間については、もう補正予算限りということで決着をさせていただきました。

 本来、質問時間といいますのは、与野党が人数に合わせて配付を受ける。ただし、与党はその中から大きな部分を、野党の皆さん方により多く質問してくれるための時間を譲って、より円滑に、充実した予算審議を進めるということで今日までやってまいりました。野党の中の時間については、野党の皆さん方でしっかりと話し合って公平な配分をしていただきたい、このように願っておるところでございます。

 今回、私も間に入って、何とか着地点はないかと汗をかいてみましたが、これは、これ以上は委員長が踏み込むべきではないと判断をして、打ち切らせていただきました。

 今後とも、円滑に予算委員会を運営し、そして、本当に充実をした予算の議論をしていただくということが当委員会に課せられた最大の課題であると認識をいたしております。

 おおさか維新さんの気持ちあるいは改革結集さんの気持ち、わからないわけではありませんが、これは、これまでの委員会の長い間の慣例とともに、委員会がつくり上げてきたルールでもございますので、御理解を賜りたいと思います。

松浪委員 我々、国民の皆さんからいただいた、負託をされた貴重な質疑時間を失うということは、本当に国民の皆さんに申しわけない思いでありますし、本当に、娘を失った父親のような気持ちですよ。もう娘は戻ってこないけれども、その理由ぐらいは教えてくれよという気持ちですけれども、謝ってくれよという気持ちですけれども、これは委員長のお言葉をいただいて了といたします。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 我々は、提案型責任政党ということで、これまで、大阪都構想を標榜して、前回のダブル選挙では全ての政党を敵にしましたけれども、大阪府知事選挙も、前々回よりも一〇ポイント、松井知事に対する支持は上がった。吉村市長、まあ橋下市長に比べれば随分と知名度は低いけれども、ほぼ同じ割合で御支持をいただいた。

 これは、我々、今回、副首都大阪という新たなもの、今までの大阪都構想は仕組みを、ソフトの面で大阪を合理化しよう、この東京と同じ仕組みではありますけれども、東京の進化版を大阪につくろうというだけでしたけれども、これからは、国の大きな機能とか、それから、国家における二極目、大阪というものをこの国の二極目にしていこう、そしてこの国を多極化していこう、その先駆けになるんだということを大きく掲げて民意を得ました。

 前々回、おおさかが最初にダブル選挙で勝利したときに、大阪都の法律がなぜできたか。あのときには、当時の菅義偉議員が、官房長官を今されていますけれども、すぐに自民党の中に大都市プロジェクトチームというのをつくられて、そして、これが、あのときも十一月でしたけれども、十二月末までに、国会が閉会した間も、中間報告はつくり上げる、それは民意に応えることだという強烈なリーダーシップを持って大阪都法ができたわけであります。

 今回、我々、副首都、これがどういう概念になるかということをまだ議論は必要ですけれども、私たちはもう一つの大きな拠点をつくるという意味で民意を得たと思います。

 総理に、大阪で今回、ダブル選挙で出た民意、お受けをいただけますか、どのように受け取られていますか。まずお聞きします。

安倍内閣総理大臣 大阪の民意ということは、副首都に関してですか。

 副首都につきましては、御提案の副首都構想でありますが、大阪に首都機能の一部を持たせることで、その後、各地の拠点となる大都市がともに栄える多極化社会の実現を目指すものであると認識をしています。

 東京一極集中による首都機能や行政機能のバックアップをどう考えていくかというこの構想の目的は重要である、こう考えているわけでありますし、また、大阪において多くの方々がその主張をされる御党の候補者に投票したということは、大阪地域における期待が高いんだろう、こう思うところでございます。

 また、安倍政権としては、各地域が発展をしていくように、今現在、まち・ひと・しごと創生総合戦略を改定し、新型交付金あるいは企業版ふるさと納税制度などの財政支援、情報支援、人的支援等を盛り込んでいるところでございますが、こうしたものを活用しながら各地域の発展に尽くしていきたい、このように思っております。

松浪委員 総理、大変前向きな御意見をありがとうございました。我々、これは本当にこの国を変えていくために大変いい御意見をいただいたと思います。

 そして、今政府の方では、政府機能を地方に移転していこうということを石破大臣のもとでやっていらっしゃいます。今の現状を簡潔にちょっと御説明いただきたいと思います。

石破国務大臣 政府機関には、中央省庁の部分と研究、研修機関とございます。これはそれぞれ役割が違うものでございますが、最終的に、三月の末までに総理を長といたします地方創生本部で決めてまいりたい。

 これは今までと違いまして、それぞれの地域から、道府県から御希望を出していただいております。それは、どういうところがなぜそこにふさわしいのか。国の機関でございますから、これは公平性、公正性というものが必要でございます。しかし、そこに移すことによって、その地域だけがよくなるのではなくて、行政のレベルがアップするということも必要でございます。高度な行政の実現、そして公平な行政の実現ということで、今年度末というものを一つのめどとしながら、鋭意作業を進めておるところであります。

松浪委員 その方向性は正しいと思うんですけれども、今大臣がおっしゃった道府県から希望を得てそれをやるというのは、実は非常にシャビーな結果になるというのが、大体他の国でもこういうことは起きております。

 例えばイギリスにおきましては、グレーター・ロンドンにおいて、一九七〇年ごろから随分と政府機能を移転しているわけであります。これが、一九七〇年に現業を除く国家公務員三〇・五%が二〇〇五年には一七・五%に半減をしている。それはなぜか。これは手法を変えたからなんですね。

 つまり、どういうことかといいますと、当初、イギリスも一九七〇年代までは、大臣がおっしゃるように地方振興を目的としてそれをやっていた。しかし、八〇年代、つまり七九年にサッチャー政権が誕生いたしました。それから、これは本格的に、地方を振興するというだけじゃなくて、やはり当時はロンドン市内の賃料も非常に高いということで、この賃料を安くする、また地方の人件費が安いものを活用する、さらにはそこで雇用を生む、スキームを変えたわけですね。こういうことによって進んだという経緯があります。

 もし、大臣、次、三月の分が終わればこうした新しいステージに上っていただきたいんですけれども、いかがですか。

石破国務大臣 松浪委員から貴重な御示唆をいただきました。厚く御礼を申し上げます。

 確かに、委員御指摘のとおりの経緯で、最終的には予定よりも早く、二〇一〇年には約二万人の政府職員が地方に移転をいたしております。それは、例えば防衛省の調達部門であるとか、あるいは統計庁であるとか、今までの我々の発想外のものもたくさんございます。その状況というものはきちんと見たいと私自身思っております。

 ただ、今回のは、中央政府からやるということになれば、どこもどこも行きたくないということばかりで、国会との折衝であるとか、関係省庁同士の調整とか、そういう話が出るわけです。例えば大阪に中小企業庁であるとか、京都に文化庁であるとか、なぜそこに来た方がよいかということは地域の方々の方もより御存じな部分があるだろうということで、今回の手法をとらせていただいておりますが、三月末以降のやり方につきましては、また委員の御示唆も参考にしながら、政府全体で検討いたしてまいります。

松浪委員 きのう省庁に問い合わせたところ、こうしたイギリスの状況、二〇〇四年にリオン卿という方がリオン・レビューというのを出されて、二〇一〇年までに、おっしゃったように、向こうでは組織よりもポストの名前で、二万ポスト、二万ジョブスといいますけれども、こうしたものを移したという点まで、きのうから大臣にそこまで御理解をいただいたというのは、私はこれは大変な進歩だと思いますので、よろしくお願いをいたしたい。

 ただ、それ以前に、日本で言う厚生省、向こうで言う社会保障省が北イングランドとか、雇用省、日本で言う労働省がシェフィールドですか、小さな町に行って、その町で長年かけて雇用して、シェフィールドはたしか五十万人ぐらいだったと思いますけれども、シェフィールドの町では最大の雇用者がまさに雇用省になったということでありますので、こうした、我が国も本当の意味での多極化をするというのが我々も副首都を主張するゆえんであります。

 そのときに、政策の実施部門と立案部門を切り分けるということだけは大切でありまして、これをするためには、向こうの省庁というのは文書でそれぞれの部署の役割を、やりとりする。会わないとだめなんだよと言っていると、こういうことは起きません。ですから、政策の立案部門と実施部門をしっかりと分ける仕組みさえ入れれば、我が国でもこうした大幅な中央省庁の移管も可能になってくるということを皆様には御理解をいただいて、これからもよろしくお願いをいたしたいと思います。

 これを首都機能というところにまで高めますと、これは今、中央省庁の移転でありますけれども、首都機能という点で、一枚目の資料を見ていただきたいんですけれども、東京は全て集中しています。王宮と書いていますけれども、皇居も今東京にあるわけで、首都というのは、かつて石原慎太郎先生が天皇陛下がいらっしゃるところが首都なんだとおっしゃいましたけれども、江戸時代には江戸城が江戸にあり、天皇陛下は京都にいらしたわけでありまして、当時は、鎖国していたから首都というのを海外に言う必要はなかったのかもしれません。しかしながら、我が国は今これだけのものが集中をしている中で、ここまで全てが集中している国というのは少ないわけであります。

 アメリカにおいても、経済都市はニューヨーク、カナダではトロントとか。おもしろいのは、オランダなんというのは、憲法にあるわけですね、憲法で、王族が大権を受けるところは首都アムステルダムなんだけれども、結局、王族は別の都市に住んでいて、国会はハーグにあるということでありますので、首都がそこまで一致していない国もあります。さらに、我が国では、首都機能移転法の中で首都機能というのは何かというと、三権をあらわしたわけですね、立法、司法、行政でありますけれども。ここには載っていませんが、南アフリカなんか行きますと、全ての三権がばらばらの都市にあるということもある。

 我々は、きょう、この表、大阪の副首都推進本部を松井知事のもとに設置させていただいて議論に使った表でありますけれども、この表を、こうしたものから、根本的に一極集中を是正するためにこれから議論をさせていただきたいということでありますので、総理にも、東京一極集中を是正するという点であればこうしたことも御検討いただきたいというふうに思います。

 それでは、次の質問に移りたいと思います。

 マイナス金利も導入されましたが、まずは、我々は提案型政党でありますので今副首都を提案しましたが、それから、消費税については、私たちの意見としては、これはまだ延期をせざるを得ない。それであれば、恐らくは、景気条項なんかを入れてやらないとこれからの経済運営には支障を来すのではないかというのが我々の主張ではあります。

 先般の、先ほども質問時間がなかった点で、低年金者への支援臨時給付金なんですけれども、これについて、結局、補正で三千四百億、今回にも五百億積んでいるんですけれども、私は、この政策は、実は、これから消費税をどうこうしようとしたときに、結局、経済政策を縛るものになっているなというふうに考えておりますけれども、まず、この臨時給付金、乗数効果というのは試算をどういうふうにされているのか、伺いたいと思います。

加藤国務大臣 補正予算の審議のときにも申し上げましたが、年金生活者等支援臨時福祉給付金についての御質問でありますけれども、この件につきましては、補正予算については全体としての経済効果、これは実質GDPでおおむね〇・六%、その内訳として、民間最終消費を実質GDP比で〇・一%押し上げる、こういう見込みは立たせていただいておりますが、個々の政策ごとのそうした乗数効果あるいは経済効果、これについては試算はしておりません。

松浪委員 これもいいかげんな話でありまして、かつて定額給付金というのを二兆円積みましたね、麻生内閣の最後で。私も、政務官で、ちょっとこれに反対したら内閣を首になったことがありました。あのときは、それでも〇・四という試算があった。この間、財務省主計局に伺いますと、検証結果は〇・三だったと。

 やはりこういうことは続けるべきではないし、小泉進次郎さんも随分批判をされていました。これは、僕は選挙対策だとも思いません。あのとき二兆円打っても自民党は負けたんですから、こんなのをやったからって票が動くとは思いません。もうこんな時代じゃないと私は思います。これからはやはりしっかりと、安倍総理が本会議場で、比較的消費性向の高い高齢者のためにということを言われるのであれば、せめて乗数効果の検証ぐらいはないと、私は、こんなのは国民に理解を得られないし、党内でもやはり随分得られていないんじゃないかと思いますよ。

 これはともかくとして、今回、マイナス金利が導入をされました。マイナス金利というと、きょうこのテレビを見ていらっしゃる皆さんは、ああ、マイナス金利になったのか、これからは預金を預けるよりたんす預金にしなきゃなと普通の国民は思いますよ。階層的と言っていますけれども、これが〇・一%と〇%とマイナス〇・一%の三層に分かれていますと、どれだけの国民がわかっているか。

 午前中、前原議員の質疑を聞いていますと、イールドカーブがどうとか、実質金利がどうとか、こういうことを聞いていても国民の皆さんはわからないので、やはり経済はマインドですから、まずは日銀の総裁にも、それから政府にも、これから預金をマイナスにすることはないんだという強いメッセージが必要だと思うんですけれども、まずこれを黒田総裁に伺います。

黒田参考人 今回のマイナス金利つき量的・質的金融緩和の導入に当たりましては、何度も申し上げておりますとおり、それが金融の仲介機能を損なわないように、かなり日本の実情に合った形にしております。

 その結果、一方で、金利の引き下げ、それが消費や投資にプラスになるということを通じて経済にはプラスになると思いますが、他方で、それが、委員の御指摘のように、例えば個人預金の金利がマイナスになるのかと。そういうふうにならないと私は思っておりますけれども、何度も申し上げておりますとおり、欧州の中央銀行では実は、準備預金に対するマイナス金利をマイナス一%というかなり大幅なものにしておりますけれども、個人預金はマイナスになっておりません。

 したがいまして、金融機関の個人向け預金の金利がマイナスになるという可能性はほとんどないと思っております。

松浪委員 可能性はないとかおっしゃっていますけれども、私は、その分、銀行のバランスシートが毀損するという結果に陥るだけではないかなと。

 そして、こういう政策というのは、薬でいえば、漢方であればずっと飲み続ければいいですけれども、本当に一時的な、ステロイドのような、今までの経済の観念、金利の観念を逆転させるものでありますから、そんなに長々と続けてはいけないと思うんです。今の量的緩和だって限界がもう最初から見えているわけでありまして、そう何年も何年も続けられる政策ではありません。

 その点で、黒田総裁に、まず、私、今ステロイドと申し上げましたけれども、長く続けられる政策なのかどうか、その点だけ、手短にお願いします。

黒田参考人 これも何度も申し上げますとおり、この政策、マイナス金利つき量的・質的金融緩和というのは、二%の物価安定目標をできるだけ早期に実現する、そしてそれを持続的に維持するということのためにやっておりますので、そういう意味では、いたずらに長くやるというものではなくて、あくまでも、デフレから脱却し、二%の物価安定目標を達成するために行っているということを御理解いただきたいと思います。

松浪委員 先ほど前原議員が随分突っ込んで言われましたけれども、物価安定目標の達成時期が、四回ですか、既に何度も何度も延長されているということであります。

 ここに、今、GDPの表を用意させていただきました。前回消費税を上げたときから、次、二〇一五年十月に消費税を上げる予定だったものを、いつこれが延期するというのを決めたかという点を示した表であります。

 昨日、今井議員がおっしゃっていたのは、最後、うちはマイナス一・二となっています。これは十社の平均で、きのうは十三社かなんかをおっしゃっていたのがマイナス一・五。これはまだ予測値でありますけれども、今もGDPはそんなに高く動いているわけではありません。

 これで、二〇一七年の前半に、これから二%を達成する見込みだとおっしゃっていますけれども、その前に消費税を上げるんでしょう、皆さん。消費税を上げるんですよ。消費税を上げてすら本当に、二〇一七年四月に消費税を上げて、二〇一七年度前半ということは四月から九月までの話ですよ、大体。九月、十月ですよね。その予測値には消費税を上げるということは含んでの予測値なのかどうか、黒田総裁に手短にいただきます。

黒田参考人 日本銀行の政策委員の見通しは、二〇一七年の四月に消費税が二%引き上げられるということを前提にして物価の見通しをつくっております。

松浪委員 これはちょっと麻生財務大臣にも伺いたいんですけれども、本当に、二〇一七年前半にこれが達成しそうだというときに消費税を上げるというようなこと、これは水を差すことにならないのかどうか、伺います。

麻生国務大臣 消費税を上げる、その場合におきましては、その後に反動減が起きるというのは、過去の消費税を上げた例を見れば明らかであります。

 しかし、我々としては、財政再建というものと経済成長というもの両方をやらねばならぬという立場にありますので、少なくとも、きちんと財政再生というものをやっていくという姿勢を、マーケットに対しても、また他国に対してもきちんと示しておくという姿勢は大切なんであって、我々はこういった姿勢をとりつつ、かつ経済成長もやる。事実、この三年間、そのとおりやらせていただいたと思っております。

松浪委員 事実、そのとおり来ていなくて、二%達成はこれだけ延びて、GPIFのポートフォリオ変更によるお祝い効果も去年の九月ぐらいに大体切れていますね。ポートフォリオのアロケーションがそこで大体変わってしまっているということで、もうその追加効果も期待できない。GPIFをこれ以上どうもできない中で、私は、これから二%というのはやはりちょっと厳しいと思いますよ。

 ですから、これからは、やはりアベノミクスの中で、三本の矢で、金融緩和、それから機動的な財政出動、そして最後の成長戦略、これが今回の新三本の矢では三つが束ねられて、成長戦略がどこかへ行って、今、一・八だとか、それから介護離職ゼロだとか、そういう社会政策に話が移っていますけれども、そもそもの成長戦略である、もともとの第三の矢の部分を本当はアベノミクス新三本の矢はもっと強調すべきときであって、私は、二%の目標も一・五%ぐらいに修正して、さらには、もっと骨太の成長戦略を、我々の先ほどの首都の問題じゃないですけれども、こうしたものもやりながら、本当に地方にしっかりとした産業を集積させるというような戦略も持って、そしてさらには、景気条項ももう一回復活をさせる。

 あのときは自公民だったかもしれませんが、次の選挙も終われば、我々維新も大変な勢力がまた復活すると思います。新たな枠組みを全党で組み立てないと、これは厳しいと思います。

 総理にお願いをしたいのは、この四月とか五月とか六月に、やはり消費税を延期しますという理由で解散をしないでいただきたいと思うんですけれども、総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 解散は全く考えておりません。

松浪委員 この点について、本当に、消費税をこれから延期するために二回も解散するということがあってもいけませんし、それよりも、機動的に、我々はこれから本当の成長戦略を与野党挙げてやるべきだということを申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

竹下委員長 これにて下地君、松浪君の質疑は終了いたしました。

 次に、村岡敏英君。

村岡委員 改革結集の会、村岡敏英でございます。

 あと五時まで間もなくですので、安倍総理初め、大変お疲れでしょうけれども、質問におつき合い願いたい、こう思っております。

 我々改革結集の会は、十二月に立ち上げた五人という小さい政党ですけれども、我々は、改革勢力の結集をしようということで立ち上げました。

 その中で、改革結集の旗印ということで、まずは、今、日本の中で、人口減というのが大きな問題であります。人口問題、国民総意で増子化社会へ、これが一番目です。二番目に、消費増税は今の景気状況の中では凍結し、増税前にやはり身を切る改革と経済再生をしっかりやる、これが二つ目であります。三つ目には、憲法改正、東京一極集中からの脱却ということで、中央集権の打破、道州制、統治機構改革。緊急事態条項はもうマスコミに我々の案を出しております。環境権の追加。九条は平和主義を堅持していく、安保法制は修正を我々は求めていきたい。そして四番目には、原発ゼロ社会を目指す環境・エネルギー先進国日本ということで、この四つを改革で一緒に志向する人たちと勢力を結集したい、この思いで立ち上げた政党でありますので、国民の皆さん、よろしくお願いいたします。

 質問に移らせていただきます。

 政治とお金の問題、甘利大臣の問題が出ております。甘利大臣は、御自分で御説明、また国会で、いろいろな場でしっかりと説明していただきたい、こう思っております。

 しかし、振り返って、このお金の問題というのはこれまでも何回もありました。その中で、特に今回、あっせん利得じゃないかということの中で、これはお金の問題が出たときに、国家公務員制度の改革基本法ということで、この中の五条には、国家公務員が国会議員と接触した場合に、当該接触における記録の作成、保存その他の管理をするという法律が決まっております。

 URは、直接的ではないけれども、準ずるということで、あのようなやりとりをとっていたと思います。

 総理、これは各省庁、この法律が守られているかどうか。これは質問通告をしていますが、どうでしょうか。

安倍内閣総理大臣 国家公務員制度改革基本法は、いわゆる口ききと言われるような政の官に対する圧力等を排除する趣旨で、職員が国会議員と接触した場合において、記録の作成、保存その他の管理をすることとしています。

 この趣旨を踏まえ、平成二十四年の閣僚懇談会で申し合わせた「政・官の在り方」において、官は、国会議員やその秘書から個別の行政執行に関する要請、働きかけであって、公正中立性の観点から対応が極めて困難なものについては大臣等に報告し、報告を受けた大臣等は内容の確認を行うなど、みずからの責任で適切に対処することとされております。

 いずれにいたしましても、政府としては、これらの規定にのっとり、各大臣等の指揮監督のもと、記録の作成や管理のあり方について適切に実施されているものと認識をしております。

村岡委員 ここが大事で、何となくこれが、あの当時は私は秘書をやっておりましたけれども、えっ、隣にいろいろな陳情があったり何かするとき記録を作成するのかと言って、みんな来ていました。ところが、意外と緩やかになってしまった。

 だから、なかなかこれは記録していないんじゃないかなというところは、もう一度調べていただきたい。そして、大臣がしっかり把握しているかどうか。そういうことが、法律があるのに、それをしっかりと守っているかどうかが問題ですので、そこはぜひ総理からも全閣僚にもう一度この法律の趣旨を踏まえるように言っていただきたい、こう思っております。

 そして、二番目の政治資金の問題で、我々は、企業・団体献金の廃止をこの国会で法案にしたい、こう思っております。

 その中で、振り返ってみると、あの中選挙区時代、同じ党同士で争うということでサービス合戦になり、お金がかかる、そしてさらにはリクルート事件を初めいろいろな事件が起きた。そういうことと、また選挙制度で中選挙区から小選挙区に戻す、そのときに当時の総理と総裁と一緒になって、細川総理そして河野総裁で合意して小選挙区を決めたときに、資金管理団体だけ五十万円だけにする、こう決めました。

 ところが、五十万円に決めたのは五年間で、その後、企業・団体献金の見直しと言いました。それで見直したんです。確かに五年後、資金管理団体の五十万円の献金というのを、個人に来るのは廃止になりました。

 ところが、その中で、三の一ですけれども、まず政党交付金、今まで幾ら使われたかというと、国民の皆さんも合計はわからないと思いますが、六千六百億、政党助成金があります。

 それで、ちょうど平成十二年、五十万円の資金管理団体が廃止されたときに、何と党の団体が異常に伸びました。それは、やはり政治資金管理団体で受けられなくなったということで、それまで五千七百十の団体であったのが六千九百三十一と、自民党は党支部がふえました。そしてお金も、それまで一つの資金管理団体で五十万円だったときは三十六億だったわけですけれども、平成十二年、党支部がふえて、百七十億、五倍になっちゃった。

 逆に禁止したらふえた。逆に法律を厳しくしたはずなのにふえている。こういうこと自体は法的には何も問題ないんですが、国民から見れば、今まで六千億も使っている、そして企業献金もある、やはりここは見直していくべきじゃないか。

 我々は、廃止ということを言っています。しかし、自民党が賛成しなければ通らないことはもちろんです。でも、総理、ここは、自民党でこういう問題が起きたことに関して、何かこれに対して、新しい法案なり、また新しい規定なりつくるというのは何も検討されませんか。

安倍内閣総理大臣 政党助成金を受けている中において企業・団体献金も存続している、こういうことでございますが、政治改革の議論の中で、政党助成制度は、政策本位、政党本位の政治を目指すという理念のもと、企業・団体献金を政党等に限定することにあわせて提案されたものであります。その際、個々の政治家の資金管理団体に対する企業・団体献金については五年後に廃止するものとされ、言われたとおり、五年後に廃止をされたわけであります。他方で、政党等に対する企業・団体献金のあり方については、各党間で合意に至らなかったものと承知をしております。

 いずれにせよ、政治にかかる費用のあり方については、民主主義の費用をどのように国民が負担していくかという観点から、各党各会派において御議論をいただくべきものと考えております。

村岡委員 二度繰り返しになりますが、五年後廃止になって、逆に金額がふえているということですから、これはちょっと本末転倒だなとは思っております。

 プラス、その当時私も感じておりましたけれども、いろいろなお金の問題が出ると、自民党の中の若手がいろいろな勉強のチームなんというのをつくって、上の総理やまた大臣にこういうことをやっていこうじゃないかという提案をしていました。

 ところが、そういう動きは全然今回も出ません。そこが、私は、自民党は変わってしまったなと。ちょうどそのころそういう問題が出たときに、若手議員だった石破大臣は一番最初にしっかり党幹部にも言っていたと思いますが、こういう、四人ぐらい閣僚が辞任したときに若手が何も。こういう勉強会をつくったり、政治とお金のあり方であったり、やはりここは国会議員の倫理規定であったり、いろいろなことを若手がやるんですけれども、今の自民党に対してどう思いますでしょうか。

石破国務大臣 済みません。突然のお尋ねで恐縮でありますが。

 あの当時、もう今から三十年近く前のことでございます。ユートピア政治研究会とか、今は懐かしい鳩山由紀夫さんなぞという方がおられましたが、あるいは、政治改革を実現する若手議員の会とか。あそこの議論は、そもそも何でこんなにお金がかかるのよということ、それから、我々は当選一回とか二回でしたから、一番国民に近いだろうという自負があったんですね。調べてみたら、あっとびっくり、何千万もかかる。これだったらばお金持ちか二世かあるいは高級官僚かタレントしか出られないじゃないか、そもそも制度を変えようよということで随分と暴れた覚えがございます。

 今の自由民主党について私があれこれ申し上げる立場にはございませんが、やはり国民に一番近いところにいる若い議員の方々がそういう問題意識を持って、我が党は自由闊達に物が言える政党でございますので、総裁、幹事長あるいはそういう方々に言う、そういうような風土、文化がまた我が党に強くなればいいなというふうに、かつてのそういうことをした者として思っておるところでございます。

村岡委員 実は、超党派でクリーンな政治を立ち上げるということで、皆さんに勉強会を案内したいと思うので、自民党の皆さんもぜひ参加してください。

 先ほど石破大臣が言ったように、まあ私も二世といえば二世なんですが、党が違いますので純粋な二世なのかどうかわかりませんが、二世とか官僚とかお金がある人しか出られない、またそういうふうになってくるんじゃないか、こういうことが懸念されるので、小選挙区制度が出てもう二十一年となりましたから、やはりしっかりとそこを、一期、二期の先生方で勉強会をつくりたいと思っていますので、御協力をお願いしたい、こう思っております。

 そして、選挙制度の方に質問がかわりますけれども、今回、議長のもとに調査会をやって答申が出ました。我々は、これを尊重し賛成するということを決めております。

 総理は、午前中の質疑を聞いていても、尊重して決めるときには決める、こう言っていましたからその言葉を信じたい、そしてぜひやっていただきたい。そして、その後の抜本改革は、人口だけでいいのか、面積だけでいいのか、いろいろなことが出てきます。しかし、まずここは、違憲状態だということをしっかりと踏まえてここは通す、こういうお考えでいていただきたい。

 さらに、それを聞く前に、平成の大合併というのが地方議会でありました。このとき、もちろん制度が変わったわけですけれども、全国で議会議員は二万五千七百四十人減りました。そして、首長も千四百五十八人減りました。このときのパーセンテージは、議員の方が四五%、そして首長が四六%減りました。もちろんこれは制度ですから、抜本的改革の中でどう変えていくかはやらなければいけません。

 総理が午前中言ったように、尊重するということ、決めるときには決めるというのはそのとおりなのか、もう一度お聞きしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 我が党の中において、まさに今、議論をスタートしたところでございます。

 いわば、要請としては、違憲状態の解消であります。あの第三者委員会から出た答申は、違憲状態の解消については、県ごとの調整ではなくて選挙区ごとの調整、境界の変更等々でやりなさいということでございます。それは五年に一回やる調査において行っていく。そして、国勢本調査においてはまさに県単位においてアダムズ方式を使いなさいと。

 そして、同時にまた議員定数の削減については、第三者委員会の中においては、むしろ今の国会議員一人当たりの国民の数は必ずしも少なくはないというのが事実上の結論でございました。つまり、国会議員一人当たり日本においては二十万を超えているわけでありますが、ヨーロッパにおいては十万人を切る国が多数ある中で、決して国民の人口に対して国会議員の数は多くないというのが実は有識者の結論ではありました。しかし、多くの党が国民との約束の中で定数を削減すると言う以上、十は削減すべきではないかというのが結論であったわけでございます。

 この結論について、これは当然尊重すべきものである、私は繰り返しこう述べているわけでございますが、自民党というのは、かつてお父様の秘書をやっておられたからよく御承知だと思いますが、しっかりと議論するときは議論をします。これを全く議論せずにこれで従えというのは、むしろ民主主義の土俵をつくる上において不適切であろうと思います。まずはちゃんと議論していただく。また、代表を失う県、地域の皆様のこともちゃんと考えながら議論をしていく上において、我々は責任政党として結論を得ていきたい、こう考えております。

村岡委員 この質問はもうやめますけれども、総理、この定数削減、議論といったって、これは一年やったって、自分の選挙区が減るのに、そんなもの結論は出ませんよ。ここは最後は決断ですよ。中選挙区時代も減らされた選挙区というのはありますけれども、これは幾ら議論したからといって、何か納得するようなことがあるはずがない。大島議長だって、青森が一つ減るというのに出しているわけですから。それは最後は決断だということでお願いしたい。政策は幾らでも議論する、それは自民党の文化だと何回も言われていますから、それはいいでしょう。こういうことはもう決断しかない、こういうことは申し上げておきたい、こう思っております。

 時間がないので次のところに行きますが、TPPの妥結、署名も午前中のうちに終わったということで聞いております。このTPPの中で一番問題は、総理がよく、聖域五品目、公約も我々は守ったと。これは、守ったかどうか評価するのは農業者の方なんです。総理が守ったかどうか、自分で自己評価する問題ではないということをまず初めに話しておきます。

 だから悪いと言っているわけではありません。我々は、TPPを推進していこうということです。しかしながら、自由貿易を守る中で、やはり他国と交渉していると譲らなきゃいけないこともある。だからこれは、譲ったけれどもしっかりと再生産できる、そして農家の方が成長できる、最初にまず譲った部分は認めなきゃいけない。それを認めないでいて、全部大丈夫です、影響調査も千三百億ぐらいしかありませんと言いますが、これは価格が今のまま同じで生産も同じならばそうでしょうけれども、価格が下がっていったら当然生産も減る。

 そして、例えばお米が七万トン入ってくる。このSBS方式に対して、総理は、これは国内の米を備蓄するから大丈夫なんだ、こう言いますけれども、SBSが必ずしも、今不調に終わっている。これは何で不調に終わっているかというと、今、米の価格が安いからなんです。それを高くしようという政策をして、高くやったら逆に入ってくるんですよ。この矛盾があるんですよ。そして、日本人の胃袋、人口も減っていますし、七万トン入ってくる。いろいろなものが入ってきて、胃袋を五倍にできるわけがないんですよ。

 そういうことでいくと、いろいろ矛盾があるんです。それをしっかり説明していないから、農業者の方々が不安に思い、来年度どうしようか、そういうのを不安に思っているんです。

 まずはこのTPPの影響調査をしっかりして、その影響は品目ごとにどうなるのか、この七万トン入ってくる部分には大変な影響がある、しかしながらそこはこの政策で直すということをしっかり言ってもらわなければ、農業者は不安なままです。それにはどう思われますか。

森山国務大臣 村岡委員にお答えをいたします。

 米どころを選挙区としておられますから、お気持ちは重々わかります。

 TPPの対策につきましては、もう何回も申し上げておりますとおり、政策大綱を踏まえてしっかりと進めてまいりたいというふうに考えております。

 米政策のところは、むしろ、ほかのことに現場の皆さんは御心配があるのではないかなというふうに思っております。本当に飼料米の政策が続いていくんだろうか、三十年から行政による生産数量目標の配分をしないけれども、そのことでやっていけるんだろうかというところでやはり御心配があるのではないか。そこにTPPの問題が重なってまいりましたのでなおさら御心配があるんだろうと、私は現場を回りながら思います。

 ただ、輸入の分がふえるものについては備蓄米で隔離いたしますので、そこは御心配は要らないと思います。そこはしっかりやらせていただきたいと思っています。

 ただ、飼料米等のことにつきましては、今から政策をしっかりやらせていただいて御心配なきようにしなければならないと思いますが、現場に御心配があることは、私も特に米農家に御心配があることは重々承知をしておりますので、今後ともしっかりと説明をさせていただいて、これならやれるなというふうに御理解をいただけるように努力を重ねてまいりたいと考えております。

 以上であります。

村岡委員 私も本会議で、飼料米政策は岩盤政策なのかと何回も聞いています。それはわかった前提で、その上で今のTPPの心配を聞いているんです。

 飼料米は八万円、最高十万五千円まで。それはつくりますよ。しかしながら、これは四百万トンまで大丈夫だと言っても、一方、TPPで、畜産や酪農が成長産業で、そこが農業を引っ張っていくと言いながら、関税が下がっていくわけですから、国際競争力がしっかりつくられるかどうか。

 そうなれば、飼料米というのは、金額的な財政負担も大変ですけれども、プラス、畜産や酪農が落ちていけば当然減るんですよ。そんなことは何回も私も代表質問や農水委員会で聞いています。しかしながら、TPPの今の影響試算が余りにもこれを軽く見ている。やはりしっかりとそこは、大変なところを品目別にどうしていくのか、これは農水委員会でまた聞いていきますけれども、そこをやっていかなきゃいけない、こう思っています。

 あとは、もう時間がないので質問は一問しかできませんけれども、先ほどの政治とお金の問題等を含めて、例えば、規制緩和の中で安全を忘れてしまうというか、お金に走ってしまうということで、スキーバスの事故というのがありました。バスの運転手さんの人手不足もありますけれども、安い値段で使って、企業が経営していけるためにということで安全を忘れてしまった。先進諸国家のこの日本であのような事故が起きるということは、本当に若い学生に不幸なことであります。こういう安全性。

 そして、廃棄物の食料品を不正転売する、こういうのがまたありました。これもお金の問題だ、こう思います。さらには、無認可なのかどうかわかりませんが、子供を預かるところで非常に安くして、事故になって子供が亡くなったり、こういうこともありました。そしてまた、病院やそういうところでレーシックの手術とかで安くやって目が、視力を失われるようなことがありました。

 こういう安全性の部分が、日本という国がこれからオリンピックを迎えるとき、どんな国なんだと。やはりこれは、規制緩和とともにプラス安全性というのはしっかりやっていかなきゃいけない。

 そして、このときに、お金をもうけるためには仕方がない、こういうような感覚というのは、政治と金の問題にも、選挙で受かるためにはお金はかかってしまうんだ、こういう感覚になるのをいろいろな規制でやはり変えていかなきゃいけない。全てこれはお金のためだけ、経営のためだけなら、もうみんながやっていることだからばれなきゃいいという感覚が出たら、この日本は、いい文化である日本がおかしくなってしまう。

 そういう意味では、安全という部分、そして決して不正を犯さない、こういう部分をやはりこの国会の中でしっかりこれからも審議していきたいと思います。総理、何点か言いましたが。

安倍内閣総理大臣 ただいま村岡委員が御指摘された点は、どれも極めて重要な点だろうと思います。スキーバスの事故は大変痛ましい事件でございました。そして、食品の廃棄物の問題、あるいは美容整形等の問題についてのお話がございました。

 命や健康にかかわることについては、しっかりとルールが守られなければならないわけでありまして、そこで原因が何なのか、そもそもルール、規制自体が甘かったのか、しっかりと規制やルールはあるけれどもそもそもそれを守らなかったのかということでございまして、しっかりと再発防止に取り組んでいきたい、このように考えております。

村岡委員 時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。

竹下委員長 これにて村岡君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明五日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十九分散会


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