衆議院

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第8号 平成28年2月5日(金曜日)

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平成二十八年二月五日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 竹下  亘君

   理事 石田 真敏君 理事 金田 勝年君

   理事 菅原 一秀君 理事 鈴木 馨祐君

   理事 関  芳弘君 理事 平沢 勝栄君

   理事 柿沢 未途君 理事 山井 和則君

   理事 赤羽 一嘉君

      秋元  司君    穴見 陽一君

      井上 貴博君    井林 辰憲君

      石原 宏高君    岩屋  毅君

      衛藤征士郎君    小倉 將信君

      小田原 潔君    越智 隆雄君

      大串 正樹君    大隈 和英君

      大西 英男君    大見  正君

      岡下 昌平君    奥野 信亮君

      勝沼 栄明君    勝俣 孝明君

      門  博文君    門山 宏哲君

      小池百合子君    小林 鷹之君

      佐田玄一郎君    佐藤ゆかり君

      鈴木 俊一君    中谷 真一君

      長尾  敬君    長坂 康正君

      根本  匠君    野田  毅君

      原田 義昭君    古屋 圭司君

      宮崎 政久君    保岡 興治君

      山下 貴司君    山本 幸三君

      山本 有二君    若狭  勝君

      井坂 信彦君    泉  健太君

      今井 雅人君    緒方林太郎君

      大串 博志君    大西 健介君

      黒岩 宇洋君    階   猛君

      玉木雄一郎君    長妻  昭君

      西村智奈美君    初鹿 明博君

      福島 伸享君    浮島 智子君

      角田 秀穂君    中野 洋昌君

      濱村  進君    吉田 宣弘君

      赤嶺 政賢君    高橋千鶴子君

      畠山 和也君    藤野 保史君

      足立 康史君    松浪 健太君

      重徳 和彦君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   総務大臣         高市 早苗君

   法務大臣         岩城 光英君

   外務大臣         岸田 文雄君

   文部科学大臣       馳   浩君

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   農林水産大臣       森山  裕君

   経済産業大臣

   国務大臣

   (原子力損害賠償・廃炉等支援機構担当)      林  幹雄君

   国土交通大臣       石井 啓一君

   環境大臣

   国務大臣

   (原子力防災担当)    丸川 珠代君

   防衛大臣         中谷  元君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (復興大臣)       高木  毅君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (国家公務員制度担当)

   (消費者及び食品安全担当)

   (規制改革担当)

   (防災担当)       河野 太郎君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)     島尻安伊子君

   国務大臣

   (経済再生担当)

   (経済財政政策担当)   石原 伸晃君

   国務大臣

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)   加藤 勝信君

   国務大臣

   (地方創生担当)

   (国家戦略特別区域担当) 石破  茂君

   国務大臣

   (東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当)       遠藤 利明君

   財務副大臣        坂井  学君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府特別補佐人

   (人事院総裁)      一宮なほみ君

   会計検査院長       河戸 光彦君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  渕上 俊則君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房長) 藤原  誠君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          小松親次郎君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策部長)  坂口  卓君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    豊永 厚志君

   参考人

   (独立行政法人都市再生機構理事長)        上西 郁夫君

   予算委員会専門員     柏  尚志君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月五日

 辞任         補欠選任

  秋元  司君     穴見 陽一君

  岩屋  毅君     大隈 和英君

  奥野 信亮君     門山 宏哲君

  佐田玄一郎君     大見  正君

  根本  匠君     井林 辰憲君

  原田 義昭君     大西 英男君

  古屋 圭司君     長尾  敬君

  保岡 興治君     大串 正樹君

  山下 貴司君     宮崎 政久君

  山本 幸三君     中谷 真一君

  山本 有二君     勝俣 孝明君

  緒方林太郎君     初鹿 明博君

  大西 健介君     黒岩 宇洋君

  玉木雄一郎君     泉  健太君

  西村智奈美君     長妻  昭君

  福島 伸享君     今井 雅人君

  松野 頼久君     井坂 信彦君

  濱村  進君     角田 秀穂君

  吉田 宣弘君     中野 洋昌君

  赤嶺 政賢君     畠山 和也君

同日

 辞任         補欠選任

  穴見 陽一君     岡下 昌平君

  井林 辰憲君     根本  匠君

  大串 正樹君     保岡 興治君

  大隈 和英君     岩屋  毅君

  大西 英男君     原田 義昭君

  大見  正君     佐田玄一郎君

  勝俣 孝明君     山本 有二君

  門山 宏哲君     奥野 信亮君

  中谷 真一君     山本 幸三君

  長尾  敬君     古屋 圭司君

  宮崎 政久君     若狭  勝君

  井坂 信彦君     松野 頼久君

  泉  健太君     玉木雄一郎君

  今井 雅人君     福島 伸享君

  黒岩 宇洋君     大西 健介君

  長妻  昭君     西村智奈美君

  初鹿 明博君     緒方林太郎君

  角田 秀穂君     濱村  進君

  中野 洋昌君     吉田 宣弘君

  畠山 和也君     藤野 保史君

同日

 辞任         補欠選任

  岡下 昌平君     勝沼 栄明君

  若狭  勝君     山下 貴司君

  藤野 保史君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  勝沼 栄明君     秋元  司君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成二十八年度一般会計予算

 平成二十八年度特別会計予算

 平成二十八年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

竹下委員長 これより会議を開きます。

 平成二十八年度一般会計予算、平成二十八年度特別会計予算、平成二十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑を行います。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として総務省自治行政局長渕上俊則君、文部科学省大臣官房長藤原誠君、文部科学省初等中等教育局長小松親次郎君、中小企業庁長官豊永厚志君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

竹下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

竹下委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。秋元司君。

秋元委員 おはようございます。自由民主党の秋元司でございます。

 このたびは、与党の大変貴重な時間を、予算案の質問時間をいただきましてありがとうございます。ただ、いささか、きょうはテレビ入りじゃないのが残念でございますけれども、しっかり務めてまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 まずは、きょうは軽井沢スキーバスについて幾つか質問させていただきたいと思います。

 まず、被害に遭われた方にお悔やみを申し上げますとともに、けがをされた皆さん、一刻も早い回復を願うばかりであります。

 このたび、私も党の方の国土交通部会長を賜りまして、今回この事故が起きてから、三回、四回と事故の報告を受けながら議論を深めてきたところでございます。あわせて、我が部会としても現場視察にお伺いしまして、事故の現場の大変な悲惨さというものを改めて感じさせていただいたところでございます。

 願わくは、本当に高速道路を通ってくれればこういった事故にはならなかったのかな、そんな思いも持ちましたけれども、現場を見た感想としては、決してそんなに難しい、狭い道路ではなかったという感想を持っていまして、この高速道路ができる前は、ほとんどの大型バスまたトラックは今回事故があった道を通っていたという現場の声もございました。現実、我々が視察したときにも大型トラックはどんどんと通っていたわけでございまして、道の場所を考えますと、事故がなぜ起きたのか、そう考えざるを得ない道路の状況でもございました。

 もっと細かく申しますと、ちょうど事故が起きた現場というのは、山からずっと下ってきて言ってみれば最後の曲がり角で、もう数十メーター先に行ってくれれば平野部が広がっており、事故は起きなかったんだろうなということを思うと、事故が起きたというのは、いろいろなことが幾つか重なって起きてしまうのでありましょうけれども、非常に残念だったなと。そしてまた、結果的に将来ある若い人たちが犠牲になったということ、本当に関係者の方も含めて無念という思いにならざるを得ないと思います。

 我々ができることは再発防止、決してこういうことが起きない環境をどうつくっていくか、これに努めていかなければならないなと思うところでございます。

 いずれにしましても、今回の事故の直接の原因というのはまだ警察の方で調べている真っ最中ということでございまして、どうしてもあと数カ月、結果についてはかかるということでございました。

 今我々が議論するのは、今回事故が起きたことについての背景そしてまた原因、そういったものを大体推察しながら議論を深めていかなくちゃならないのでありましょうけれども、既にもう国土交通省の方でも検討委員会が立ち上がって、六月までには結論を出すということでございますから、これから我が党においても部会を通じてしっかり議論を深めながら、関係者の皆さんに集まってもらいながら、党としても今後提言を出していきたいと思っておりますので、石井大臣におかれましても、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 ただ、今回の事故で考えられること、事故が起きてしまった直接の要因というのは、やはりドライバーの方がどうであったのかということが考えられるわけでありますけれども、当然、ドライバーの方に関して言えば、今一般的に言われている話として、経験不足だったんじゃないのかとか、または、当日も含めて体調がどうであったのかとか言われております。また、これも先はわかりませんが、ひょっとしたら車が故障していたんじゃないかということも考えられるわけでございまして、いろいろ幾つか要因は考えられるわけであります。

 ただ、背景として、我々がとても残念に思うのは、この事故を起こしたバス事業者が行政処分中であったということがあるわけであります。今回、バスが事故を起こす数日前に実は国交省から行政処分が下っていて、その行政処分が下ったときにしっかりとした指導内容がこのバス事業者に運用されていれば、ひょっとしたらこのバスの事故は起きなかったんじゃないのかなということも想定されるわけでございまして、非常に、いろいろなことを考えますと、無念、この言葉に尽きるんだろう、そんなふうに思います。

 よって、今回、再発防止策を考えていくときに、ソフトの面とハードの面、特にハードの面においては今技術というのは日進月歩でありますから、さまざまな形で事故が起きないような防止策というのをハードの面でメーカーも含めて考えていかなくちゃいけないこともあるでしょうし、特に衝突事故の防止策として今導入されているシステムというのが、一応国の方では義務化というふうになっているらしいのでありますけれども、実際この衝突防止の装置というのはまだ一七%しか普及率が広がっていないという現状もございますから、今後こういったことも一〇〇%になるような普及の方法というものをまたハード面では考えていかなきゃならないと思います。

 冒頭申し上げた再発防止策ということに関しまして、やはり我々は、業界の構造的な問題に少し議論を深めていかなくちゃならないのであろうとうかがい知るわけであります。

 これはもうメディア等でも多くの議論をされておりますけれども、結果的に、今この業界はどうなっているか。

 平成十二年にいわゆる規制緩和を行ってきました。決して規制緩和自体がいいか悪いかという議論ではなく、結果として、規制緩和が起きた結果、規制緩和前は事業者が大体二千百程度であったものが、今現在では四千五百事業者にふえた。これはこれで、この世界で事業として回ることが多いというのならば経済的には決して否定するものじゃありませんが、それが本当に正しく安全ルールも含めて推移をしてきたのかなというと、必ずしもそうではない声が現場から聞こえることがあります。

 一点、石井大臣にお伺いしたいんですけれども、この平成十二年の規制緩和というのはどういった部分、特に平成十二年というのは運輸部門全般にわたって規制緩和をした年であると思いますけれども、どういった側面の規制緩和を行ったんでしょうか。

石井国務大臣 航空、鉄道、自動車などの旅客運送事業においては、御指摘の平成十二年以降、各分野で規制緩和が行われました。これは、事業者の創意工夫と市場における公正かつ自由な競争を通じて事業活動の効率化、活性化を図ることにより、サービスの多様化、高度化、運賃の多様化、低廉化等につなげ、利用者利便の増進を図ることを狙ったものであります。

 具体的には、参入規制について、平成十二年から十四年にかけまして、需給調整規制を前提とした免許制から、輸送の安全等に関する資格要件をチェックする許可制に変更いたしました。その際、運賃規制につきましても、鉄道、乗り合いバス等については認可制から上限認可制に、国内航空、貸し切りバス等については認可制から届け出制にされております。

 ただし、これらの規制緩和に当たりましては、安全の確保や消費者の保護が極めて重要な課題とされてまいりました。このため、安全確保に要する規制は引き続き維持するとともに、バス、タクシーについては運行管理者の資格試験制度の創設も行っているところでございます。

秋元委員 大事なことは、規制緩和を行った後でも安全面についてはしっかりと担保をしなくちゃいけない、これがルールであり、そしてそれをもとに行政としても指導を行ってきたということであります。

 では、何をもってこの安全面を担保するのかということが大事なことでありますが、これは細かく申しませんけれども、今回、事故を起こしたバス事業者においては直接行政処分が下っていたということからしますと、この安全面の確保というのが残念ながらされていなかったという現状があろうかと思います。

 そもそも、規制緩和が目的としたのは、先ほど大臣の話もございましたけれども、要は、各会社が競争して、いいサービスをお客さんに提供してもらうことによってより需要を高めていこう、これが一番大きな目的だったと思います。

 当然、価格面においても、業者の数がふえるわけでありますから、余りにも高過ぎた価格については、適正なところまでは、ぎりぎりまでは価格競争が起きる、これは市場の原理、当たり前でありましょうから、下がっていくのでありましょうけれども、残念ながら、日本がちょうどこのころ、安倍総理が今一生懸命闘っていらっしゃるデフレ経済真っ最中であったということも踏まえて、デフレ下でこの規制緩和が行われた結果、ダンピング競争に、いわゆる激安という言葉が社会的な一般の言葉になったように、激安競争に入っていってしまって、安全面といったことをフォローできる体制がなくなってしまったんじゃないのかなということが、今回の事件を境に見えてきたところでございます。

 お手元の一枚目の資料にちょっと載せさせていただきましたけれども、今回、アベノミクスを成功させる一番の大きな目的は、いわゆる賃金のアップということを目指しております。御存じのように、これはバス協会の資料でございますけれども、民間のバスの運転手の皆さんの賃金でありますが、全産業ベースで見ますと、今現在においても九十万近い、低い賃金になっております。この低い賃金になってきた主な原因というのは、まさに平成十二年、ここを境にがたっと民間のバスの運転手さんの平均賃金がここまで落ち込んできた。

 これは、価格競争を迫られる中、バス事業者も一生懸命とにかく合理化を図ってぎりぎりまで詰めてきたということはありますけれども、ここまで賃金が大きく低下してしまった。その結果、職業人としては、バスの運転手という仕事は余り職業としては魅力がない、そういったことに相なって、結果的に、バスの運転手不足というのも今現在顕著化しておりまして、高齢者の方が多く集まってしまっている、バスの運転手の平均年齢がぐっと上がってしまったという現状があると思います。

 今回の事故が直接これに原因があるかどうかというのはまだ定かじゃありませんが、しかし、背景として、今、業界全体の雰囲気としてこういった状況にあるということを、我々はしっかり受けとめていかなければならないのであろうかと思います。

 要は、規制緩和以降、どういう社会になってきたのか。これまでは、規制緩和はいわゆる事前チェック型であります。そして、需給調整も行ってきた形から、今後は事後チェック型。今現在、事後チェック型になってきたんですが、この事後チェック型の社会というのは、言葉で言うのは簡単なんですけれども、非常にこれは実施するのがなかなか難しいわけであります。いわゆる悪徳業者と言われている業者を市場から退場させるという行為なんですけれども。

 本来、一〇〇%機能を発揮するためには、実は、行政官の数、マンパワーも含めて、これをめちゃくちゃ確保していかなくちゃいけないという現状があると思います。少なくともバス事業者は今四千五百社あるわけでありますから、四千五百社に対して巡回指導を行ったり監査を行ったりするためには、行政のマンパワーが必要であります。

 今現在、こういった自動車運送業に対して行政で監視する体制というのは三百六十名近くということを聞いておりますけれども、これはバス事業だけじゃなくて、タクシーであり、そしてまたトラックだとか、そういったことも含めての運送事業全体に対する行政の体制でありますから、果たしてこれで足りるのかという問題もありましょうし、要は、これまで政府としてもいわゆるスリムな政府を目指してきた中において、行政の人をふやしていくというのは結果的になかなか難しいという現状があります。

 我々が今この局面に対してどのように今の現状を含めて向かっていかなくちゃいけないかというのは、非常にこれは大きな政治的な判断が求められると思うんですけれども、少なくとも事後チェック型、悪質業者は市場から退場させていかなくちゃいけない。当たり前の話であります。

 この行政処分のあり方について、石井大臣にお伺いしたいと思います。

石井国務大臣 今委員御指摘いただいたとおり、今回事故を起こしました貸し切りバスの事業者につきましては、平成二十七年に一般監査に入りまして、ことしの一月十三日に行政処分を行いました。

 一月の十五日に事故が起きたわけですが、事故後の特別監査によりまして、安全運行上極めて不適切な状況が確認をされた、行政処分で指摘した事項も含めてきちんと業務改善がなされていなかった、このことは私どもも深刻に受けとめているところでございます。

 そこで、省内に設置をいたしました軽井沢スキーバス事故対策検討委員会におきましては、こういった監査の実効性をいかに高めていくか、これは民間の力も活用しながら監査の実効性を高めていく、再発防止策も検討してまいりたいと存じます。

秋元委員 今大臣から指摘いただいた、民間の力もかりて、これは私も大事な視点であろうかと思います。

 今現在、トラック業界につきましては、トラック協会を通じて、国が当然補助は出しておりますけれども、民間の力を通じていわゆる指導または監査ということ、監査というよりは巡回指導というものを行っていて、より適切にトラック事業者が安全基準に従って事業をしてもらうようやっていただいていますけれども、バスにおいては実は非常に数が少ないという現状があると思います。トラック事業者とバス事業者では数が一桁違う現状がございますけれども、非常にまだそこが弱いと言わざるを得ないと思いますので、ぜひ民間を活用した再検討というのはしていただきたいと思います。

 そもそも、ここは政治的にいろいろと考えていかなくちゃいけないのは、やはり命にかかわる問題、これにつきまして果たして規制緩和をしていくことが、そして事後チェック型の社会となった今の形でありますけれども、本当に事後チェックというのが機能していくのかということを本格的に私は議論していかなくちゃいけないかと思うんです。

 これは政治的な判断でございますので、ちょっと総理にお伺いしたいんです。今日の議論を踏まえまして、事後チェック型の社会がしっかりと機能していくために国として体制を整えていくのか。もしくは、やはり命にかかわる分野でいえばなかなか事後チェックというのは難しいから、場合によっては事前チェック型にもう一度戻していくということも政治的には議論していかなくちゃいけない分野だと思いますけれども、総理の御所見をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 規制緩和については、これまでの規制緩和は、委員がおっしゃったように、競争を通じて商品、サービスを多様化していく、そうしたことによって消費者の利便性向上に資するものとなっている、こう認識をしています。

 例えば、安倍政権においては、医療分野においては、これも命にかかわることでありますが、再生医療製品の実用化までの期間を短縮いたしました。そのことによって海外の再生医療関連企業の日本市場への参入も相次いでいるわけでありますが、これは産業面で捉えてももちろんプラスになっているんですが、同時に患者の側から考えても、新たな先端の技術によって病を治癒していくチャンスがより広がっていくということになるんだろうと思います。

 ただ、その前提は、安全でなければならない、安全を最優先する、これは当然のことであろう、こう思うわけでございます。公衆衛生や安全、安心といった、競争によって失ってはならない大前提を確保すべきことは委員御指摘のとおりであろうと思います。

 事前チェック型、事後チェック型のいずれがよいかは、個々の規制それぞれを取り巻く状況を踏まえて個別具体的に判断し、不断に見直しを行っていきたい。命がかかわっていることについては当然不断の見直しを行っていくことが必要だろう、こう考えております。

秋元委員 非常に大事な指摘であると思います。

 事前チェック型、事後チェック型、おっしゃるとおりでございまして、それは個々の事柄について判断していかなくちゃいけない。私は、改めて、命にかかわるものについては行き過ぎた競争を助長すれば当然安全面が損なわれる、当たり前の話だと思いますので、この辺はしっかりこれから党においても議論させていただきたいと思っております。

 同じような流れなんですけれども、少し経済の側面から議論させていただきたいと思います。

 当然、安倍政権として、我々も含めて、とにかく好循環の経済を目指していこうということで、必死になってやらせていただいております。ただ、現在もデフレ下でございまして、なかなかデフレをまだ……(発言する者あり)脱却。脱却を図ろうということで今一生懸命頑張っている。(発言する者あり)デフレではないですよ。デフレではない。

 デフレではないけれどもまだ完全に脱却したとは言えない状況だということの中で、今後我々が目指していかなくちゃいけないのはやはり、いわゆるグローバル経済で活躍する企業においてはいいというのは数字上であります、あとは、中小零細企業を含めた地域経済の企業にどうアベノミクスの波に乗っかってもらうか、ここについて今多くの知恵を出し、そして今年度の予算も税制改正も含めて前に進めさせていただいているところでございますけれども、残念ながら、我が国の中小企業、零細企業はどうしても内需で生きていく世界もあって、ここで活発な価格競争だけが先行しちゃうと、なかなか中小零細企業にとっては大きな景気回復の波に乗りづらいという環境が今広がっているわけでございます。

 石原経済担当大臣にお伺いしたいんですけれども、規制緩和でサービス合戦をする分野はいいんでしょうけれども、残念ながら、BツーBの間で取引が行われる産業においては必ずしも規制緩和が効果的に、多くの新業種が出ていって、そしてまたそれを発展させて果実をみんなで分かち合う、そこまで行きづらい分野があると思います。特に、地域経済、中小零細企業の世界における規制緩和の分野。過去においては酒屋さんも規制緩和になりましたし、そしてタクシー、これも実は規制緩和になってきましたが、経済政策ということを考えますと、規制緩和のあり方というものをいかが捉えていらっしゃいますか。お伺いしたいと思います。

石原国務大臣 委員が今回、軽井沢でのあの痛ましいバス事故を取り上げ、規制緩和と経済成長の問題の御議論をいただいていることを今ずっと拝聴させていただいてまいりまして、私も行政改革・規制改革担当大臣をさせていただいて、規制緩和の必要性、そして安倍内閣になりまして岩盤規制ですよね。農業、医療あるいはエネルギーといったところで大きな成果を出して、経済の好循環が着実に回り始めていると思います。

 一つだけ例を出させていただきますと、私、心筋シート、再生医療品の実用化期間を短縮して、国民の皆様方の健康マーケットが広がるみたいなことがあってプラスに作用している。その一方で、今委員が御指摘になりましたように、バスとかあるいはタクシーとか酒屋さんとか、そういう分野でいろいろな問題が出ているという御認識を示されていたと思います。

 経済成長を進めていく上でも、やはり小規模零細の人にもしっかり配慮をしなきゃなりませんし、ましてや安全、これだけは絶対に確保していく、そのために何をなすべきかという秋元委員御指摘の点には共感するところが多々ございました。

秋元委員 本当に今回は、今テーマが経済に移っておりますからあれなんですけれども、とにかく中小零細企業向けの対策をより促進していき、そして一番大事なことは商売でありましょうから、経営者が前向きに、より積極的に取り組んでいただく環境をどうつくっていくかというのが我々政治の役目だと思います。

 きょう林大臣にお越しいただいておりますが、今、中小零細企業対策として、政府としても中小企業庁としても調査を行って取引の状況をしっかりチェックしていこうということでありましょうけれども、大臣から見て、これは業種別にいろいろ、また地域的にもいろいろあって一概に言えない部分もあると思うんですけれども、今後、中小企業対策というものを踏まえ、そしてアベノミクスが本当にローカル経済にまで届くようにするために、策として、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

林国務大臣 下請取引対策につきましては、これまで、下請代金法に基づきまして、支払いの遅延や減額等について厳正な監視、取り締まりを行ってきました。秋元議員御指摘のように、平成二十六年度には、約二十四万件の書類調査によって違反の疑いのある情報を収集し、また約一千件の立入検査、改善指導を行いまして、親事業者に対しても違反行為の是正や再発防止策を求めてきたところでございます。

 加えて、相談窓口であります下請かけこみ寺の開設、下請代金法講習会の開催、業種別の下請ガイドラインの策定などによりまして、違反行為の未然防止にも取り組んできているわけであります。

 しかしながら、まだまだ中小企業、小規模事業者からは下請取引に関するさまざまな問題や悩みの声が聞こえてきているのも事実でございまして、こうした声に応えるためにも、違反行為の是正だけではなくて、中小企業の取引条件の改善に幅広く取り組むべく、昨年十二月に関係府省等連絡会議を設置しました。

 現在、三次下請、四次下請など取引上の立場の弱い中小企業を含めて、産業界に対する大規模な調査を実施中でありまして、年度末までには結果を取りまとめる予定であります。

 これらにより、取引条件の改善の状況や課題をきめ細かく掌握して、必要な対策を講じてまいりたいと考えております。

秋元委員 ぜひ、この調査、非常に私は大事であると思います。経済取引の中に外から手を突っ込むというのはなかなか難しいところでありましょうけれども、まず現状をしっかり聞いていくということからスタートしていかなければならないのかなと思います。

 ただ、我々も感覚として思うのは、ある時期まではオーナー企業が多くあった日本でありますけれども、大分これは結果的にサラリーマンの方が構成する企業、経営体がふえてきたという事実もあって、オーナー企業であれば中長期的なおつき合いの中でいろいろ人間関係を形成しながらの取引というものもあったのでありましょうけれども、今日のように、例えば企業の調達部門の方が二年とか三年でかわってしまう関係であれば、なかなかここは人間関係を構築するのは中小企業にとって難しい。

 そうすると、担当者とすれば、前任の担当者と自分を差別化するために、より安く調達をして、そして会社として利益を残していく、そういったマインドになるのはサラリーマンの方であっても働く者としては当たり前の話でありますから、一担当者に、社会のことも考えて中小企業のことも考えて発注しろなんということはなかなか言いづらい環境にあるかと思います。ですからこそこれは経営者の判断というのが大事であって、経営者の判断が大事なんだけれども、そこはまた経営者も、自分が社長のときにしっかりとした業績、プラスする結果を出していかなくちゃいけない、こういうマインドになれば、当然、一度下がった価格というのはなかなか上げづらい、そういった状況が出てくるわけであります。

 ですから、私は今安倍政権が行っている賃金アップという視点は非常にすばらしい視点だと思っていまして、本当に安倍総理が何か労働組合の委員長みたいになった感じで常に賃上げ、賃上げと言っていらっしゃる、この姿は大変、結果的に時代にふさわしいなと思っています。

 我々もこのことはいろいろな団体に行くときには常に言っているところでございますけれども、ぜひこのことを強くやってもらって、とにかく働く皆さんの所得が上がっていく、この環境を、中小零細企業も含めてどのように対処していくか、全力で頑張っていただきたいなと。当然、我々も党の方でしっかり議論し、提言は出していきたいと思っていますので、頑張っていただきたいと思います。

 話題をかえます。次のテーマは、IT社会の光と影という分野に入っていきたいと思います。

 冒頭、規制の緩和に否定的な話でありましたが、私はもともとは規制改革論者でございますので、もう要らない規制は取っ払っていく、当たり前の話だと思います。

 とかくITの分野というのは、特にプラットホームをどうつくっていくかという国際競争の中に入っているわけでありますから、それをつくっていく上で障害になる規制というのはどんどん変えていかなければならない、そのように思っております。

 私が今回着目しているのは、まず、ITの光の分野、最近話題となっていますフィンテックの世界、これは非常に日本にとって大きなチャンスだと思います。

 残念ながら、今、日本は、このIT社会においてはやはり欧米におくれてしまっているという現状があります。アップルだ、グーグルだ、こういった企業に先に大きなプラットホームを形成されてしまいましたから、我々が使っているスマホの携帯においても、当然、アップル社が扱っている携帯にはそれぞれ課金されていってしまいますから、日本がIT社会を推進すれば推進するほど実は米国にお金が流れてしまうという環境が今ずっと続いているわけでありまして、一刻も早くそういったプラットホームを我が国でもつくって、それをしっかり少なくともアジア市場でも売っていく、そして日本がしっかり稼げる環境というものをつくっていかなきゃならないだろう。もうずっとこのITの世界では議論されてきたところであります。

 そこで登場してきたのがフィンテックの環境でありまして、私は、今、このフィンテックを利用したIT社会に対する挑戦というものを我が国で行っていく必要性があろうかと思っております。

 しかし、このフィンテック、いろいろとまだ形が何なのかということがわからない世界もあると思いますから、手探りの中で世界も進んでいると思いますけれども、日本においてももっと投資を強化して研究をしていく、政府も挙げて研究をしていく必要性があろうかと思っております。

 きのうからも、直接の話ではございませんけれども、銀行における金利の話がちょっと話題になっておりましたが、一般的に、国民が今金融機関に持っている大きな不満というのは、お金を借りるときもなかなか貸してくれませんけれども、何よりも、国民の預金、この国は貯蓄性向が高い国でありましょうから、とにかくためるということになっておりますけれども、ためても残念ながら預金金利が低いわけでございますから、余り個人にとっては、そんなに銀行にお金を預けているからといって、いい金利が戻ってくるという環境じゃありません。

 しかしながら、ちょっと振り込みを行ったり、お金を送金したり、また自分のお金を引き出そうとすると手数料が高い。預金金利よりも手数料が高い、何なんだという怒りは多くの皆さんが感じていることだと思います。

 消費税を一%上げるときに、みんなの、多くの国民の疑念なんですけれども、銀行の預金金利が低いことには余り怒らないという、非常にいい国民性だなと思っておりますが、実際ここがストレスになっていくことはあると思います。

 では、なぜ日本の銀行等の手数料が高いのかと言われれば、これは間違いなく、古いシステム維持のために、多額の手数料で、多くの銀行のシステムを使う人によって賄われているという現状があるわけでございます。

 これは日銀の調査報告のホームページで拝見したんですが、アメリカなんかの金融機関のITに対する変革、イノベーションの投資というのは六割なんですね。しかし、維持管理に対する投資というのは四割なんです。一方、日本の金融機関というのはIT支出が七割を超えるというんですけれども、しかし、七割というのは何かというと、古いシステム維持と多数の応急処理でシステム全体が複雑化して高費化しているという現状でありますから、ほとんどこの古いシステムの維持のためにお金が使われていて、それをその利用者がみんなで負担している、だから手数料が高いということが言われるんです。

 よって、我々として、このフィンテック、そして強いて言えば、銀行でいえばいわゆるブロックチェーン、この世界に入っていくことによって、とにかく手数料を低くするといったことを目指していく世界に入っていけるであろうし、ぜひ日本としてこれを構築してアジアの全体をとりに行く、そういった考え方で進むべきであろう、私はそのように思っておりますが、ただ、日本も今非常に入り口論として弱くて。

 いわゆるこのフィンテックの世界に入っていく。これは何かと申しますと、物とインターネットをつないでIoTであります、そして今度これに金融がつく、決済機能がつく、これをフィンテックと呼んでいるわけであります。このフィンテックはどうしても、仮想通貨を利用していくわけでありますが、我が国において、実はこの仮想通貨そのものが物扱いになっているんです。物扱いになっているということは、リアルないわゆる法定で定めている通貨、日本であれば円でありますけれども、円から仮想通貨に市場を通じて交換するときに、実は、物だから消費税がかかってしまっているんです、日本は。

 そうすると、世界は今どうなっているかというと、EUでは最高裁で、現実、消費税はかけないという判決がなされました。これによって、EU全体としては、仮想通貨とリアルなお金を交換するときに消費税はかかりません。

 日本だけがかかるとなると、結果的に、日本でこの交換市場をつくろうというベンチャー等があらわれたとしても、日本では手数料と消費税がかかってしまうわけでありますから、なかなか入り口論として起こっていかないし、いよいよ三菱UFJ銀行なんかもこの仮想通貨に入っていこうということをこの前新聞でもメディアでも拝見しましたが、要は、日本の金融機関もそういう世界に入っていこうとしている中で、日本だけが今、仮想通貨の交換に対して消費税がかかっている。

 ぜひこれは、本当は財務省の判断なんでしょうけれども、金融を促進するという観点から、金融担当大臣として、麻生大臣、そろそろ日本も世界の潮流に合わせて消費税をかけない、非課税にする、この措置はいかがなものでしょうか。

麻生国務大臣 ファイナンスとテクノロジーをひっかけて、ファイナンステクノロジーのことを通称フィンテックと、最近使われ出した言葉なんだと思いますが。今こういったものがいろいろな形で技術の進歩とともに、今言われたような通貨の問題、手数料の問題等々の間をかいくぐって出てきつつあるという時代にあります。

 ヨーロッパがこれを通したということは事実ですけれども、他方、豪州、またこの種のテクノロジーが進んでいるといえばシンガポール等々は全く違っておりますので、まだそのところは日本だけがということではないということだけはまず最初に申し上げておきたいと存じます。

 いずれにしても、このようなものが金融の将来に大きな影響を及ぼすようなことになることは間違いないですよ。そういったことになると私ども思っております。この種の仮想通貨というのですか、そういうようなものになってきているんだと思います。金融機関を介さずに自由にインターネット上でいろいろなやりとりができるという特性があるんだと思いますが、いろいろな意味で、先ほどの金利の話、交換するときの手数料の話等々がありますので、急速に利用が膨らんできているんだと思います。

 一番の問題はテロです。テロの通貨資金に最も使われているのはこれだろうと言われておりますので、そういった意味もありますので、G7のサミットなどにおいても、このルールの整備を行うということが今言われておるところでもあります。

 また、国内でも、たしか一昨年でしたか、マウントゴックスというのが渋谷の駅の上でやった事件がありましたけれども、あれが破綻するといったときの経費というのも多額のものがかかっておりますので、いずれにしても、我々としては、早急に作業は進めていかねばならぬとは思っておりますけれども、今申し上げたような点も十分に勘案した上で必要な環境整備というのを進めてまいりたいと考えております。

秋元委員 ぜひこれは早期に結論を出していただいて、せっかく日本が少なくともアジアのプラットホームをとれるかどうかの今大きな過渡期だと私は思いますので、答弁は求めませんけれども、ぜひ総理、この大事な、私はこれは新しい日本にとってのいい風だと思っていますので、今後、政府内においても検討いただきたいと思います。

 現にアメリカにおいては、フィンテックに対して一兆円の投資が行われております。そして、ブロックチェーン業界においては一千億の投資であります。英国なんかは、積極的に政府とフィンテック業界がイノベーション開発をともに行う、そういった状況まで来ております。

 我が国だけは残念ながらまだ百億円ぐらいしか投資が進んでいないという現状があって、それには法規制の問題があって、日本ではいろいろなことをみんな絵を描いていますけれどもなかなか進んでいかないという現状がございますので、ぜひこのことを踏まえて、よろしくお願いしたいと思います。

 実は、この後、ITの影の部分があって、最近、スマートフォンが普及する中で、子供たちを取り巻く環境が非常に悪化しているということも含めて、そしてあわせてフィルタリングの利用率も実は五〇%をもう切ってしまったということも踏まえ、本当は総務大臣、経産大臣に質問をしたかったのでありますが、時間でございますので、この点はいつかどこかでやらせていただきたいと思います。

 私も、昨年暮れにスマートフォンの実態ということで本も出版させていただいたんですが、余り売れていませんけれども、もっと世の中全体がこのスマートフォンに対してどう向かい合ってもらうか、子供たちの環境をどう守るかということはいま一歩進めていかなくちゃいけない議論かと思いますので、よろしくお願い申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

竹下委員長 これにて秋元君の質疑は終了いたしました。

 次に、浮島智子君。

浮島委員 おはようございます。公明党の浮島智子でございます。

 本日は、質問の機会をいただき、感謝を申し上げます。ありがとうございます。

 時間も限られておりますので、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 本委員会においては、さまざまな角度から総予算案について今議論がなされているところでございます。

 政治は、未来社会に責任を果たさなくてはなりません。また、その未来社会を担うのは、我々の今目の前にいる子供たちです。本日は、このような観点から何点か質問をさせていただきたいと思います。

 公明党は教育投資の重要性を強く訴えておりますが、厳しい財政事情の中、国民の教育投資に対する理解と支援を得ることは大変大事なことと思っております。中には、他の投資と比べて教育投資は本当に効果があるのかとの指摘も聞こえてきます。確かに、教育の投資効果を社会的収益率という形ではかることは可能でしょう。

 義務教育に進学しない子供が少なくない発展途上国では、初等教育の収益率は極めて高いことが報告をされています。日本では義務教育の制度が確立しておりますので、この義務教育の収益率が測定しがたいのですが、高校や大学の社会的収益率、これは五%から一〇%と報告がなされているところでございます。投資としては高い収益率だと申せましょう。

 しかし、教育は、このように、単純に収益率といった投資効果の多寡だけでそのあり方を決めるべきでしょうか。私はちょっと疑問に思います。

 日本の言葉、そして文化や芸術、伝統、歴史、思いやりといった心情、これらを大人として子供たちにしっかりと引き継ぎ、大人では考えもつかなかったような新しい文化や価値を子供たちが創出する、出藍の誉れ、弟子が師匠を超える、これこそが教育の意味ではないかと私は思っております。

 価値を創造する教育、子供たちに次の時代を切り開いていく確かな力をつけてもらいたい、そして社会でも活躍し、本人も幸せになれるような力が必要だねという大きなコンセンサスをつくって、国民全体で教育を後押しするということにしていかなければならないと思っております。

 そこで、総理にお伺いをさせていただきたいと思います。

 今、この教育投資については、とにかくエビデンスだエビデンスだと、学力テストの結果といった目に見える効果が証明されないのであればやめてしまえという雰囲気がこの霞が関に強くなっているように私は感じます。

 しかし、教育は外交や防衛などと並んで国の責任であるというのは哲学や理念の問題です。短期的な成果を求めて学校の現場をさらにきりきり舞いにするのではなくて、今の教育現場を多面的な角度から率直に見て、受けとめ、改善するべきはしっかりと改善する、そして公教育に投資をするといった姿勢を持ってこそ、日本の一つの宝である学校教育の質がさらに向上するのではないかと私は思いますが、総理の御所見をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 一億総活躍社会の実現のためには、子供たちの誰もがそれぞれの能力を最大限伸ばして、夢と希望を持ってさまざまな分野で活躍できるようにすることが必要であります。そのためには、さまざまな子供たちが自信を持って学ぶ環境を整え、一人一人の個性を大切にする教育を進めるとともに、家庭の経済事情に左右されることなく、誰もが希望する教育を受けられるよう、教育再生を進めていくことが重要であると考えています。

 来年度予算案においては、障害のある子供の指導や、いじめ、不登校対応などのための教職員定数の充実や、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーなどの配置の拡充、そして教員の資質能力の向上、幼児教育無償化の段階的推進、奨学金や授業料免除の拡大など、教育再生のために必要な予算を盛り込んでいます。

 教育は本来、未来への先行投資であります。今後とも、子供たちの誰もが頑張れば大きな夢を紡いでいくことができる社会、その社会を実現するために、教育再生に必要な予算の確保に努めてまいりたいと考えております。

浮島委員 ありがとうございます。

 日本の柱は、私は教育にあると思っております。今総理がおっしゃられました、いろいろな方々に自信を持って生きていただきたいということでございますけれども、未来への投資である、私も全くそのとおりだと思っております。

 昨日、ノーベル賞を受賞した梶田先生、大村先生とお会いをさせていただきました。そしてまた、党の部会では、一一三番の元素の合成に成功されたという森田さん、二十八年かかったとおっしゃっておりましたけれども、その森田さんのお話、また宇宙飛行士の大西さんにお越しをいただき、さまざまお話を伺いました。そこで改めて、この未来への投資、教育が重要であるということを再認識させていただいたところでございます。

 どうか、エビデンスといっても、数字に基づいたエビデンスというのではなくて、現場に即してしっかりとこれからも教育投資をしていただきたいと思いますので、お願いをさせていただきたいと思います。

 次に、所得連動返還型奨学金制度についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 今総理もおっしゃいましたけれども、一億総活躍社会を築いていく、これはとても重要なことでございます。我々公明党は、この一億総活躍社会、何よりも重要なのが、一人一人が輝き、活躍できる社会をつくっていくことだと思っております。

 そこで、さまざまな事情で思いどおりに学びができなかった人、また今現在落ちついて学校に行き勉強できない子供たち、環境にない子供たちもたくさんいらっしゃいます。この未来を担う子供たちにしっかりと奨学金制度を充実していかなければいけないということで、我々も、我が党から、山口代表も参議院の本会議で質問をさせていただき、また先日、二月の三日、石田政調会長からも強く申し上げましたとおり、大学生に対する奨学金事業について、高校生同様の給付型の奨学金制度の創設を改めて強くお願いさせていただきたいと思います。

 それと同時に、今返済をしている人、この人たちに対しての支援も私は重要だと思っております。

 なぜかといいますと、実は、たくさんの方々から御要望をいただいております。御夫妻で奨学金を借りた、そして今、結婚しているんだけれども、返済を御夫妻ともしていかなければならない、今我々は、子供を産み育てたいんだけれども、この返済が大変なので子供を産み育てることがとても難しい、厳しい、どうかぜひ返済額の減免をしていただくとか猶予していただくことができないかという御要望を多々いただいているところでもございます。

 また、所得連動返還型奨学金制度、導入されますけれども、これに向けて、システムの開発、改修に取り組む経費が今回計上されております。でも、この所得連動返還型奨学金制度というのは、現在の制度は平成二十四年以降に奨学金を貸与された方に適用が限定されております。

 そこで、総理にまた再びお伺いをさせていただきたいんですけれども、安倍内閣では、政府を挙げて一億総活躍社会の実現の観点というところから、出生率一・八を大きな目標に掲げております。この出生率一・八、これを実現していくためにも、今現在結婚していて、子供が欲しい、また二子、三子を欲しいという子育て真っ最中の方々について、奨学金貸与開始年度にかかわらず所得連動返還型奨学金制度の対象とするべきだと私は思いますけれども、総理の御所見、御見解を求めさせていただきたいと思います。

馳国務大臣 公明党には、一貫して奨学金制度についての提言をいただいていることに、改めて御礼申し上げます。

 新たな制度は、平成二十九年度進学者から適用することを目指して、具体的な論点について現在検討を行っているところであります。

 既に返還を開始している方に対して新たな制度を適用することについては、財源をどうするかという課題、最低返還月額をどうするか、所得に対する返還月額の割合をどうするか、返還期間をどうするかなどなど、さまざまな観点からの検討が必要であると考えております。

 文部科学省としては、奨学金の返還に係る不安及び負担を軽減し、安心して進学できる制度となるよう検討を行ってまいりたいと考えております。

安倍内閣総理大臣 課題については、今、文科大臣が答弁したとおりでございまして、これは委員も重々承知のことだろうと思いますが、無利子奨学金は、返還金を次の奨学金の原資として活用することによって、限られた財源の中で、希望する学生を幅広く支援することが可能となっていきます。

 確かに、平成二十九年の春の大学進学予定者以降ということにすると、今現在返還している人との差が出るではないか、そういうお気持ちは私もよくわかるのでございますが、しかし、限られた財源の中でどのように対応していくかということが大きな課題であろうと思います。

 奨学金事業を実施していくための財源確保にまさに課題があるのではないか、このように思っておりますが、いずれにせよ、今後とも、家庭の経済事情に左右されないように、できる限りそういう社会をつくっていくためにこれからも努力をしていきたいと思います。

浮島委員 ありがとうございます。

 努力をしていきたいという御答弁をいただきましたけれども、出生率一・八、後押しをするためにも、ぜひとも全力で取り組んでいただきたいとお願いをさせていただきたいと思います。

 また、政府の予算案におきましては、義務教育費国庫負担制度に基づく教職員定数について、各学校の状況等に応じて配分される加配定数、五百二十五人増が盛り込まれているところでございます。予算編成過程におきましては、文科省と財務省の間で真っ正面から議論が行われたと私は伺っております。

 公明党といたしましても、教育に対する投資、これは日本の未来にとって大変大事だという観点から、意見をしっかりと申し上げ、そしてリーダーシップも発揮させていただいたところでもございます。

 この文科省と財務省との議論の過程の中で、財務省は、授業の専門家である教員を単純にふやすことがいじめや校内暴力、不登校への対策として有効である、因果関係があるとの証拠は示されていないのではないかという問題提起をしたと私はお伺いをしているところでございます。

 私は、昨年、衆議院の文部科学委員会の海外派遣の一環で、イギリス、ドイツの学校に視察に行かせていただきました。

 イギリスの学校で、一つ、これが本当の授業の専門家だなということを思ったのは、ホームルームや担任制度もありません、なので、各教科の先生たちが教えるだけという形になっております。

 子供たちが座っているんですけれども、先生が入られてきて、先生が指名するのは、子供たちの名前ではなくて、子供たちが座っている机の番号、三番、四番、五番という机の番号で呼んでおられました。私が先生にお伺いしたら、いや、私たちは一日に何百人という生徒と会うので一々名前を覚えていることができない、だから、各教室に行って机の番号で呼んでいるという淡々としたお答えでした。私は正直、本当に寂しく感じましたが、これはまさしく本当に、教員は授業の専門家であると言えると思います。

 しかし、日本の学校は違うと思います。学級担任があり、朝夕のホームルームで自分の子供たちとコミュニケーションをしっかり図り、教科の担当の先生は、授業の専門家としてただただ知識を伝達しているだけではないと私は思っております。

 特に、力量のある先生方、この方々は、教室に入った瞬間に、子供たちの様子を見て、さりげなく、あっ、この子は昨晩何か家庭であったのかなとか、この子は部活で何かいろいろ大変な思いをしたからまだ引きずっているななどなど、いろいろなことに気づきがあると思います。そして、その見取りに基づいて、授業の中でもさりげなく声をかけたり、部活動の顧問の先生にフォローをお願いしたり、授業の中でも、子供たち全体を受けとめ、それを個別のケアや生活指導等に関係づけている、これが日本の実態でございます。

 公明党は、ソーシャルワーカー、そして地域の方々を巻き込んだチーム学校による学校全体の機能強化、これをしっかりと進めたいと思っております。

 このチーム学校は、教員はただただ授業をしていれば、子供たちの生活上のケアは無関心で、ソーシャルワーカーやスクールカウンセラー、この方々に丸投げすればいいということではないと私は思っております。教員が毎日一人一人の子供たちをしっかりと受けとめ、そして個別のケア、生活指導を行う意識と力があってこそ、スクールカウンセラーなどが自在に動くことができ、チーム学校が有機的に機能すると私は思っております。そして、このような教員の幅広い人間力、そして教員間のコミュニケーションが、子供たちが学校を居場所だと感じながら勉強や生活を充実させる大事な基盤となっていると思います。

 これは、ほかの国にはない、本当に日本の学校教育の大きな財産で、先生を授業の専門家として閉じ込めることはこのすばらしい財産を損なうことにつながると私は思っております。むしろ、これをさらに伸ばしていく必要があると私は思います。

 日本の教員の方々、いろいろな方々とお話をさせていただき、触れ合いさせていただきますけれども、とても優秀です。

 日本の教育がだめだとか、ここも足りない、あれも不十分、だからICTによるビデオの授業に取りかえてしまえという議論もありますけれども、世界じゅうで評価され、輸出しようとすらしているこの日本のすばらしい学校教育のよさをみずから損なうことになってしまうのではないかと私は思います。子供たちと直接向き合う教師という仕事は、人工知能やICTでは決して代替できない、人でないとできない、未来を創造するクリエーティブな仕事だと私は思います。

 そこで、文科大臣にお伺いをさせていただきたいと思います。

 教員は授業の専門家だと割り切ること、これは日本の学校の本当のよさを切り捨てることになってしまうと私は思います。一人一人の子供たちの心に迫る指導があってこそわかる授業になり、そして、わかる授業を行う教員だからこそ、その生徒指導を子供たちは納得して受けとめることができる。まさしく信頼関係であると私は思っています。

 このことを踏まえた上で、教員定数の改善など、日本の未来にとって必要な投資はしっかりと行うことが重要であり必要であると私は思いますが、御見解をお伺いいたします。

 と同時に、教員の資質、能力の向上のために、教員の養成そして研修、この改善も大変重要です。人にしかできない仕事である教職に求められる資質、能力をいかに伸ばしていくか、そのための取り組みそしてお考えをお聞かせください。

馳国務大臣 二点、お答えしたいと思います。

 平成二十八年度予算の編成過程においては、何も私ども文部科学省は財務省と対立をしていたものではありません。そして、最終的には麻生大臣にも御了解をいただいて、五百二十五名の加配の定数をいただいたところであります。

 そして、その過程において、単に数をふやすというものではなくて、現場において、ふやした加配定数の教職員、なかんずく一人一人の担任の先生や教科担任の先生は、子供たちと全人格的に向き合うことができるような養成や研修をしっかりしていただきたい、そのためのエビデンスといったものも積み上げてほしい、こういうコミュニケーションをさせていただきました。

 そして、後段の二点目でありますけれども、そういう観点も踏まえて、また中教審の答申もいただいたところでありますが、具体的には、平成二十八年中、ことしじゅうにも法改正をぜひお願いしたいと準備しております。

 それはどういうことかというと、養成の段階、採用の段階、そして初任者研修を含めた教員の資質向上のための研修のあり方、また教員免許法に基づく免許更新のあり方、これを一体的な哲学として考えた上で、制度改正を通じて教職員の資質向上を図ることこそが意味のある投資ではないか、こういうことで取り組んでいるということをお伝えさせていただきたいと思います。

浮島委員 ありがとうございました。

 ぜひとも、財務省としっかりと連携をとりながら、未来への投資に向けて全力を尽くしていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 最後に一点、総理にお伺いをさせていただきたいと思います。

 実は、昨年の八月十日、新国立競技場の新たな整備計画策定に向けてという提言を公明党でさせていただきました。その際に、もう一点、私の方から総理に御提言をさせていただきましたのが、安倍総理による未来へのタクト、二〇二〇年東京大会スタートを国会からということでお話をさせていただきました。

 この趣旨は、二〇二〇年東京大会への機運を高めるため、ことしのリオのオリンピック大会の直後に、国権の最高機関たる国会において、二〇二〇年東京大会に向けたキックオフイベントとしてオーケストラの演奏を行い、そして全国でオリンピック・パラリンピック・ムーブメントの開始を国内外に告げる。その第一回目のタクトを、振るだけでいいんですけれども、振って後は指揮者の方にお任せしていただければいいんですけれども、未来へのタクトを振っていただきたいということで御提案をさせていただきました。

 実は私、昨晩、議長公邸で行われました、衆議院議長、文化芸術振興議員連盟の共催によります「音楽に親しむ夕べ」ということで、「モーツァルト生誕二百六十年に想いをよせて」ということで参加をさせていただき、初めて議長公邸にピアノを入れるのが大変だということでお話もございましたけれども、本当にすばらしい空間ですばらしい演奏会が開催されました。

 これを受けてまさしく東京のオリンピック・パラリンピック、日本のオリンピック・パラリンピックが開催されるぞという文化プログラムがことしの秋から始まりますけれども、そのキックオフイベントとして、ぜひ国権の最高たる国会でもオーケストラをしてもらいたいなと、また思いを強くしたところでございます。

 二〇二〇年オリンピック・パラリンピック競技大会は、スポーツの祭典だけではなくて文化の祭典でもあります。このオリパラムーブメントを日本全国、世界に広げていくために、総理の御決意を最後にお伺いさせていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、開催都市である東京都がさまざまな文化イベントを、東京のみならず日本各地で実施する予定であると聞いております。政府としても、本年十月に、国内外の関係者がスポーツと文化の振興策について話し合うスポーツ・文化・ワールド・フォーラムを開催するわけでありまして、日本にはすばらしい芸術、文化、伝統があるわけでありまして、それを発信する機会として生かしていきたいと思います。

 この国会においてオーケストラが演奏を行う、私自身の音楽的才能に大きな問題があるわけでありまして、私自身がタクトを振るうかどうかは別といたしましても、私は、大変興味深い提案ではないか、このように思います。

浮島委員 ぜひともよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

竹下委員長 これにて浮島君の質疑は終了いたしました。

 次に、長妻昭君。

長妻委員 民主党の長妻昭でございます。おはようございます。

 和気あいあいの質問の後、私は和気あいあいとはいきませんので、よろしくお願いをいたします。

 きょうは、会計検査院長はお越しでございましょうか。

 いわゆる甘利大臣口きき疑惑、そこでURが当該の会社に補償金を支払っていたと。その補償金は果たして適正な金額なのかどうか、これは会計検査院は検査をしていますか。

河戸会計検査院長 会計検査院は、都市再生機構の会計経理について、正確性、合規性、経済性、効率性、有効性等の多角的な観点から検査を行っております。

 本件補償金の支払いにつきましては、現在、補償金の算定の根拠等につきまして都市再生機構から説明を受けているところでございます。

 いずれにいたしましても、会計検査院としては、今後の検査において、国民の関心や国会での御議論も踏まえて、引き続き適切に検査を実施してまいりたいと考えております。

長妻委員 これは相手のあることでもありますけれども、大体いつごろをめどに検査結果というのは出てくるのでございますか。

河戸会計検査院長 会計検査院といたしましては、本件につきまして、徹底した検査を行うこととしております。

 そして、検査結果として国会に報告すべき事態があった場合の報告時期につきましては、検査及びその結果の取りまとめに必要な期間を確保した上で報告したいと考えております。

 本件補償に係る一連の事実関係の確認も含め、会計検査院としては、今後の検査において、国民の関心や国会での御議論も踏まえて、引き続き適切に検査を実施してまいりたいと考えております。

長妻委員 これは、ちょっと私が内々聞くと、早くても十一月ごろで、一番遅ければ三年かかるということなんですが、これはちょっと、総理、会計検査院は行政機関ですから、三年かかっていたら、時効が、あっせん利得処罰法、どこが起点かというのはありますけれども、もうことしとか、そういう説もあるわけでありますから、総理、早目に会計検査院に出すように御指示をいただけないでしょうか。

安倍内閣総理大臣 会計検査院は独立性が高い組織、それは御承知のとおりだろうと思います。

 そこで、行政府の長である私、もちろん行政機関ではありますが、私が政治の立場からあれこれ指示をすることは差し控えさせていただきたい、こう思うわけでありますが、いずれにいたしましても、適切に会計検査院として対応するだろう、このように考えております。

長妻委員 会計検査院と例えば内閣法制局は違いますけれども、内閣法制局も、私はある程度自立性があると思うんですが、そこは相当手を突っ込まれましたよね。こういうときに、ぜひちょっと御指示もいただきたいと思うんですね。

 配付資料の五十一ページ目に、これはちょっと分厚くて恐縮ですね、国会法の百五条の規定で、委員会で議決をすれば大体三カ月以内で結果が出る、こういう仕組みがあるんですね、国会法第百五条に。

 委員長、ぜひこの予算委員会で、理事会を含めて、議決をしていただければというふうに思うんですが、委員長、前向きですか。

竹下委員長 後刻、これは理事会でしっかり協議させていただきます。

長妻委員 これはできるだけ早く、三カ月以内ということが一つの取り決めになっているということでございますので、ぜひよろしくお願いします。

 例えば委員会での議決があれば、会計検査院はこの取り決めに従っておおむね三カ月以内に結果を出すということで、院長、よろしいのでございますね。

河戸会計検査院長 会計検査院といたしましては、これまで、国会から検査要請が行われた場合には、要請を受諾するかの検討を速やかに行い、受諾した場合には真摯に取り組んでまいりました。

 一方で、国会が検査要請を行うかどうかにつきましては、国会御自身がお決めになる問題であり、会計検査院が申し上げる立場にないと承知しております。

 いずれにいたしましても、本件補償に係る一連の事実関係の確認も含め、会計検査院としては、今後の検査において適切に検査を実施してまいりたいと考えております。

長妻委員 それで、対象なんですが、資料の五十ページでございますけれども、五つ補償があるということでありますが、所管でございますから、石井国交大臣、一、二については一千六百万円、約二億二千万円というのが判明しているやに聞いておりますけれども、三つ目の補償、これは五千万円ぐらいともうわさされておりますが、それでよろしいのでございますか。

石井国務大臣 資料五十ページ目の三つ目の損失補償契約、平成二十七年に締結された補償契約でございますが、これにつきましては、URから、情報公開制度の運用上、既に契約済みのものは権利者名や補償金額等を伏せた上で公表する扱いとなっていることから、補償金額を公表することは難しい、このように聞いているところでございます。

長妻委員 いや、一と二は発表しているのに。これは甘利事務所から聞けば発表していただけるんですか。賠償金額が漏れたという報道もありますから。何で国会の場で聞くと教えていただけなくて別ルートからだと教えていただける。これは逆なんじゃないですかね、国交大臣。

 それで、総理にぜひ建設的な提案を申し上げたいんです。我が党でもいろいろ議論をして、いろいろな対案、対策を提示するということになっておりますが、総理の判断ですぐにできる対策を一つ今申し上げたいんです。

 大臣規範というのがございます。これは大規模パーティーも禁止されておりますけれども、これは閣議決定だけで決められるというものでございますが、この閣議決定で決められる大臣規範に、大臣、副大臣、政務官は、少なくとも就任中は企業・団体献金、あるいは企業、団体からのパーティー券の購入、これは禁止、自粛する、こういうことをぜひ書いていただきたい。

 我が党としても党内議論してそれは決めておりまして、我々が政権につけばもちろんそういうふうにすぐやるわけでありますけれども、総理、せめてそれをぜひやっていただければと思うんですが、いかがでございますか。

安倍内閣総理大臣 そもそも、企業・団体献金についてどう考えるかということであります。

 企業・団体献金についてはさまざまな……(長妻委員「いや、大臣の」と呼ぶ)これは、まず企業・団体献金についてどう考えるかということから、では大臣の間にどう対応するかということを考えなければならないんだろう。

 そこで、企業・団体献金を果たしてどう考えるべきかという、まずこの基本について申し上げますと、政治活動に対する献金のあり方については、長年の議論を経て、企業・団体献金は政党等に対するものに限定されるなど、種々の改革が行われてきたところであります。また、政治資金パーティーについても、パーティーごとの上限額を設けるなどの規制が設けられてきたところであります。

 許してはならないのは、お金をもらって政策や政治をねじ曲げようという行為であり、それは個人であれ団体であれ同じことであって、その意味で、企業、団体が政党等に献金などを行うことそれ自体が不適切なものとは考えていないわけであります。したがって、大臣規範を改正する必要もないと考えております。

 ただ、いずれにせよ、この問題は、民主主義の費用をどのように国民が負担していくかという観点から、各党各会派において十分御議論いただくべきものと考えております。

 御党も三年間政権を担っておられたわけでございますが、こういう観点から恐らく改正されなかったのではないかと思います。

長妻委員 何か、民主党を非難する、民主党ではやらなかったから僕たちもやらない、こういう言い方は非常によくないと思うんですよ。あらゆる政策を与野党を問わず前に進める、そういう視点を、ぜひ総理、持っていただきたいんですよね。

 総理はよく対案がないないと言いますけれども、我々は対案を出しますよ。総理も出していただきたいんですね、こういう口きき防止等々について。裏金をもらっても、時と場合によっては、政治献金だ、企業献金だと言えば逃れちゃう、そんなようなことはよくないと思いますので、ぜひ、大臣規範を変えて。一応、アメリカもカナダもフランスも、企業・団体献金禁止、こういう規定があります。アメリカは政治団体、PACは除外されておりますけれども、イギリスでも一定以上の企業献金は株主総会の議決事項になっておりますから、日本だけなんですよ、これほど規制が緩いのは。ぜひ、せめて大臣ぐらいはまず規制するということをお願い申し上げます。

 そして、次に年金のことであります。

 私が心配しているのは、GPIF、国民年金、厚生年金の積立金百四十兆円、これを半分も株で運用する。これは安倍内閣で決めちゃいました。本当に大丈夫かなということなんです。そしてさらに、これまでは信託銀行にお任せして株の運用、一定のリターンを示して運用を委託していたものを、今度はGPIFが個別の株の銘柄を自分たちで買う、こういうことを検討しているということで、大丈夫かなとこれも思うんです。

 ところが、きのうの夜、GPIFは個別銘柄を買うというのはやめた、こういうニュースが報道機関から出回ったんですが、厚労大臣、これは断念されたのでございますか。

塩崎国務大臣 この問題については、社会保障審議会の年金部会で御議論をいただいておりまして、来週の月曜日もまた議論が夕方予定をされています。その中でお決めをいただいて、私どもはそれを待っているということでございますので、報道は報道でいろいろなことをおっしゃるわけでありますけれども、年金部会でそれは御議論をいただくということで、まだ続いております。

長妻委員 であれば、質問をいたしますけれども、総理、官邸で開かれる財政諮問会議、昨年十一月、ちょっと気になる発言をされた経営者の方がおられたわけでありまして、その発言を否定するような発言もなかったので、ちょっと紹介しますけれども、こういう発言なんですね。GPIFを活用したらどうかということなんです。

 機関投資家に働きかけて、投資先が必要以上にキャッシュを持っているのであれば、例えば三年以内に設備投資するのか賃上げするのか、どうするのかを決めさせる、決めないのであれば、配当で戻させ、そして別に成長するところにお金を回す、そうしたぐあいにGPIFを活用するということも大いに効果があるのではないのか。

 つまり、政策誘導ということでGPIFの投資を活用するということなんですが、これは総理も同感でありますか。

安倍内閣総理大臣 委員からそういう発言があったことは承知をしております。

 しかし、GPIFの株式インハウス運用、自家運用については、これは委員も十分に御承知のことだろうと思いますが、年金積立金の自主運用開始の際、公的資金による企業支配との疑念を生じさせるおそれがあることを理由として対象としなかった経緯があるわけでありまして、現在は、法律上認められていないわけであります。

 厚生労働省において、GPIFの改革について検討が行われていることは承知をしておりますが、こうした経緯も踏まえて検討がなされるということでございます。

長妻委員 総理、ちょっと勘違いされているのかもしれませんが、この経営者の発言はインハウスの発言じゃないんですね。今はもう機関投資家が受託しているわけです、信託銀行とか。その話、現状の話なんですね。その委託している信託銀行に、あなた方が投資する個別銘柄は、GPIFは自分では決めないけれども、必要以上に投資先がキャッシュを持っているのであれば、こうこうこういうような、そういう形で議決権を行使する、あるいはあらゆる手段を使って促す、こんなような発言なんですが、これは総理、どう思われますか。

安倍内閣総理大臣 これは今、インハウスについてはまさに支配権を行使しているという疑念を及ぼすということであります。そもそも、委員の当時の発言は、政府の政策的方針によって、いわば、GPIFが株を持っている企業に対して、我々の政策的な目的に対してこの意向に沿わせよう、そういう意向もこれは含まれているという観点からインハウス運用との関連でお答えをさせていただいたわけであります。

 いずれにいたしましても、いわば有利運用、これをしっかりと行っていくというのは当然のことだろうと思うわけでありまして、そうした政策的な誘導ということは基本的に我々は考えてはいないということでございます。

長妻委員 そうすると、これは大事なところなんですが、ではちょっとインハウスはおいておいて、現状のGPIFが機関投資家、信託銀行等にお願いするとき、アベノミクスでは賃上げ、設備投資は大切だから、やはりそれを頑張っている企業を重点的にやったらどうでしょうというような形で包括的にGPIFが信託銀行にお願いする、こういうことは一切、政策誘導はしない、こういうことでよろしいんですね。

塩崎国務大臣 これは先生よく御存じの上でお聞きをいただいているんだろうと思いますが、年金の資金運用というのは、専ら被保険者の利益のために、安全かつ効率的に行うということであります。

 それで、これは投資一任ということで信託銀行などに一任をする、そういうことでありますので、その中身について細かなことを言うことはあり得ないわけで、むしろ、あるとすれば、これはスチュワードシップ・コードというのをもう既にGPIFとしても受け入れているということを明確にしているわけでありますから、大きな意味での機関投資家としての方針というのはもちろんあるわけですから、それを念頭に入れながら信託銀行などが運用をしていただいているというふうに考えているところでございます。

長妻委員 スチュワードシップ・コード、これも範囲というのは明確でありませんから、拡大解釈すればいろいろな政策誘導が私はできると思いますので、ここら辺も相当議論していかないと、水面下に潜っていくと余りよくないんじゃないか。

 といいますのは、アメリカは基礎年金を含めた公的年金が三百兆円ありますけれども、一円も株に投資していません。グリーンスパンFRB議長が国会で名演説をして、クリントン大統領が株で投資してはどうだと言ったことを押しのけて今も一円も投資していないんですが、塩崎大臣、その理由を端的に教えてください。

塩崎国務大臣 これも何度か予算委員会で御党の方々からの御質問の中にもございましたけれども、そもそもアメリカの年金の仕組みと我が国の年金の仕組みとは、若干というか、かなり違うわけで、アメリカは、いわゆるペイロールタックスを払って税金で国に納め、それをストレートに、言ってみれば全面的な賦課方式で払う。しかし、タイムラグがありますから、その分は一般会計に預けるというのを、非市場性の国債を引き受けるという形で、言ってみれば資金繰り調整みたいなものでありまして、それを預けているということであります。

 そのタイムラグの間に株式で運用することを考えたクリントンさんがおられたということなんでしょうが、そのことについては、連邦政府の、もちろん、そのときは介入による市場の効率性への影響等が懸念されたというようなことは聞いておりますけれども、もともと仕組みが全く違うということをお考えいただきたいというふうに思います。

長妻委員 いや、その仕組みの違いではないんですよ、強調されたのは。おっしゃったように、政府が株主として民間企業経営に関与することが強く懸念された。これは別に、パッシブ運用だろうがアクティブ運用だろうが。これが相当大きい理由なわけでありまして、総理、改めて総理の基本的姿勢をお伺いしたいんですが、GPIFが個別銘柄を自家で、自分たちで買って運用するということについては総理は前向きなんですか、どうなんですか。

 では、総理でなければいいです。ではいいです。

 そうしたら、これは総理にもう一回聞きますと、この二ページ目でございますが、こういうこともおっしゃっているんですね。この発言からそもそも始まったんですが、ダボス会議で、GPIF、成長への投資に貢献することとなるでしょう、こういうふうに御自身でおっしゃっておられるわけで、そういう意味では、個別銘柄を買っていくということが成長への投資にプラスになるのかどうか、こういう観点からは、総理、どうですか。

安倍内閣総理大臣 これについては、先ほど塩崎大臣から答弁をいたしましたように、まさに今現在、年金部会ですか、そこで検討しているということでございますので、その検討の結果を待ちたい、このように思っております。

長妻委員 私が懸念するのは、特に、海外でもやっているというんですが、海外の公的年金は二階建て部分がほとんどなんですね。しかも、日本は、クジラと言われているように、金額ベースで八%なんですよ、国内の株式市場の。八%もGPIFが持って、例えば個別企業の上場企業で八%といったら、相当大きい株主ですよね。こういう大きな影響を及ぼしているところが、どんどんどんどん野方図に権限が拡大していく。仮に自家運用をするということになると、これはパッシブだろうがアクティブだろうが相当大きな影響が出てきて、安倍内閣の方針に逆らう民間企業はいなくなっちゃうというような懸念も私はある。これは一概に笑えないと思うんですね、アメリカでは相当それは議論が出たわけでありますから。

 ぜひ、企業を政策的に従わせるような、そういうツールとして使う発想というのは絶対持っていただきたくないということは申し上げたいと思います。

 そして次に、引き続きですが、厚生年金違法未加入の二百万人。

 二百万人の方が本来厚生年金に入れるのに、入らないで本当に大変な思いをされているということなんですが、これは緊急対策をされるというふうに補正予算の予算委員会で総理はおっしゃいましたけれども、この緊急対策というのは、ちゃんと予算を新規につけてやるということですか。メニューはどういうメニューですか。

塩崎国務大臣 これは前回、先生と御議論させていただいたところでありますけれども、この未適用事業所に対する適用促進については、重要な問題であるということはもう従来から先生も指摘をされていましたが、我々もそれをしっかりと取り組んできているわけでありまして、厚生労働大臣をお務めになった長妻先生もよくそこの点については御努力いただいたというふうに思います。

 これを、今、これからどうするんだということでありますけれども、これまで、例えば雇用保険適用事業所の情報とか法務省の法人登記簿の情報とかそういったところと突き合わせる、あるいは国税庁からの源泉徴収義務者である法人の情報提供を受けて、この情報を二十七年度から加入指導に適用した結果、直近の実績でいいますと、二十七年の四月から十一月末までの八カ月間で既に六万三千事業所を加入指導により適用しておりまして、前回御指摘になった数字よりも大分ふえていると思いますが、これは二十六年度よりも大分加速をしているところであります。

 そこで、今後でありますが、国税庁から法人番号を添えた法人情報の提供を受けるということがことしの三月ぐらいからできそうだということでありますので、法人番号を用いた突き合わせが可能になるということで、これをしっかりとやっていきたいというふうに思っておるのがまず第一点。

 もう一つは、前回申し上げましたけれども、厚生年金の適用の可能性が高い事業所として把握している七十九万事業所、これに対して調査票を送る、いろいろな様態があるものですから、これを送って、具体的な内容の検討を進めておりまして、これによって事業所の中身、実態を把握して、重点的な加入指導に結びつけていきたいと思っております。

 総理から指示があった調査等の検討については、現在、どのような方法が適切なのかということ、どういう方向が実施可能なのかなどを検討しておりまして、この問題はずっとあったもので、長妻委員も大臣としてこの問題にかかわっていたということで、なかなかこれはそう簡単に解決する問題ではないということは御存じだと思っております。

 そんなことで、これからしっかりとスピーディーに対処方針を決めてまいりたいというふうに思っております。

長妻委員 二百万人というのが今回はっきりしたわけですよね。その後の対策ということであります。二十代では七十一万人もの方がいらっしゃるわけです。三十代で五十二万人、四十代で四十四万人、五十代でも三十五万人もの方が、本来厚生年金に入ることができるのに入っていない、入れていないということ。

 これは、勘違いされる方がいらっしゃるかもしれませんが、事業主が大変だからちょっと控えようということではなくて、厚生年金法でも百二条、健康保険法でも二百八条で、正当な理由がなくて加入させなければ六カ月以下の懲役なんですよ。これは犯罪なんですね。これは、今回、二百万人というのがはっきりしたわけでございます。

 ちょっとお伺いしたいんですが、この二年間、告発とか刑事罰則、これをしたことというのはあるんですか。

塩崎国務大臣 今御指摘ありました厚生年金保険法の第百二条とそれから健康保険法の二百八条、これに基づく告発件数とそれから罰則適用件数、これについては、これは釈迦に説法でございますけれども、刑事訴訟法では、「何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる。」ということなので、公的当局だけではなくて誰でも、適用になっていない会社の社員とかいろいろあり得るわけであります。

 そういうことでありますので、まず、厚生労働省においては、過去十年のそれぞれの件数は把握しておりません。つまり、全体として、一般の方も含めて告発がどれだけあるのかというようなことは把握をしていない。しかし、日本年金機構とそれから全国健康保険協会が告発した事例はございません。

長妻委員 これはぜひ、こういう法律が相当前からあるわけでありまして、告発がゼロ、あるいは罰則を受けた企業がゼロというようなことは完全に絵に描いた餅になっているわけで、二百万人ということがはっきりした以上、相当厳しい姿勢で臨むと。これは大変大きい問題だと思いますので、総理、最後に、この問題についてぜひ決意を聞かせていただきたい。

安倍内閣総理大臣 これは、委員がおっしゃったように、事業主の保険料納付義務違反などに関する厚生年金法第百二条及び健康保険法第二百八条に基づく告発件数及び罰則適用件数においては、告発は誰でも可能なため、厚生労働省において過去十年のそれぞれの件数は把握をしていないわけであります。なお、日本年金機構及び全国健康保険協会が告発した事例はないものと承知をしております。

 厚生年金未加入の問題については、なるべく未加入事業者を加入させ、そして、適用事業所となった後は毎月の保険料納付等の事業主の義務を適切に果たしてもらう必要があるわけでありまして、このため、政府としては、事業主の理解を求めながら、可能な限り自主的な加入手続を指導してきているわけでございますし、これからもしっかりとその義務を果たさせるために努力をしていきたいと思っております。

長妻委員 総理、これはぜひ関心を持って取り組んでいただきたいと思います。

 次に、総理が率先して、同一労働同一賃金を実行する、こういうふうにおっしゃいました。これは、総理、どういうやり方、どういう基本的考え方でおっしゃったのでございますか。

安倍内閣総理大臣 同一労働同一賃金の実現など、非正規雇用労働者の待遇改善は極めて重要だろうと考えています。長時間労働の是正そして高齢者雇用の促進と並び、今般のニッポン一億総活躍プランにおいて取り上げる働き方改革の大きな課題であると考えています。

 先般の衆議院本会議でも答弁させていただいたわけでありますが、改めて確認させていただきますと、今般は均等待遇も含めて踏み込んで検討していただく考えでございます。

 進め方については、一億総活躍国民会議で議論いただいた上で、今春取りまとめるニッポン一億総活躍プランにおいて同一労働同一賃金実現の方向性を示したいと思います。これに従って、法律家などによる専門的検討も行いつつ、制度改正が必要な事項については労働政策審議会において議論を行うことになるものと考えています。その検討に当たっては、我が国の雇用慣行に留意しつつ、待遇の改善に実効性のある方策としたいと思っております。

長妻委員 ちょっと気になるんですが、総理、同一労働同一賃金とおっしゃるんですけれども、これは細かい言葉ではなくて、重要なんですが、同一価値労働同一賃金というのが世界標準でありまして、つまり、同一労働、これは基本的に、ほぼ同じ仕事というのはそれほどないわけで、仕事の中身が違っても労働の価値が同じであれば賃金を合わせる、これが世界標準の考え方であるわけでありますが、この考え方を採用していただくということでございますか。

塩崎国務大臣 先生、今、同一労働同一賃金と同一価値労働同一賃金、この二つについての言及をいただいたわけでありますが、総理が施政方針演説で申し上げたのは、同一労働同一賃金に踏み込むということを申し上げたところであります。

 まずは、いわゆる職能給と職務給というのがありますが、私どもは、この同一労働同一賃金を本当にきちっとやるということであれば、これは職務給についてしっかりと、同じ労働であるということがほぼ言えるような仕事の比較というものができないといけないということであり、またその評価をどうするのかということをよく考えなければいけないんだろうということを考えながら、今日まで均衡待遇ということできたわけです。

 今、先生、同一価値労働ということであれば、全然違う仕事でも同じだけの価値があるじゃないかということをおっしゃって、その方が大きい概念だ、こういう御指摘であります。

 そのとおりだと思いますが、まずは、やはり同一労働同一賃金を、どうやって実現に向けて、詰めていくべきことを詰めていくかということが私どもとしては大事であり、同一価値労働ということも念頭にもちろん入れますが、そういうようなことで、まずは同一労働同一賃金をしっかりとやらなきゃいけない。

 ヨーロッパなどでも、いわゆる同一労働同一賃金ということで、さまざまなEU指令のもとでそれぞれの国が法律をつくって、そこで不合理な差を賃金においてないようにするということで、それを禁止しているわけですけれども、企業側に、言ってみれば、賃金の格差がもしあるならばその合理性について立証責任があるというようなことでもございますので、今申し上げた職務給の中身、定義、評価、こういったことをしっかりとやっていくことがまず第一歩ではないかなというふうに思います。

長妻委員 これは、ちょっと相当問題の発言じゃないかと思うんですね。我々も昨年法律を出しましたけれども、やはり同一労働同一賃金だと問題を解決しにくいんじゃないでしょうか、総理。

 つまり、結局、目指しているのは我々も同じですけれども、特に非正規雇用の方々の待遇、余りに先進国の中でも正社員と差があり過ぎるんじゃないか。給料も何倍も違う、待遇も全然違う、これを合わせようということ、あるいは底上げしようということが狙いなはずですよね、総理。

 同一労働同一賃金であれば、例えば非正規が多いスーパーマーケット、レジ打ちの方、パートの方が多いと思うんですけれども、そこは、比べる正社員でレジを打っている人がいない場合は比べようがない。では、パートの人の中だけでお給料を同じにしようといったら、今と同じじゃないですか。

 ですから、同一価値労働というと、そういうレジ打ちのパート、非正規の方が、例えば、本部で仕入れをしている正社員の労働の価値をはかって、そしてパートでレジを打っている方の価値をはかって、それぞれの差を賃金の差と同じに並べていく、こういうことが一般的なんですね。(発言する者あり)

 今、どうやってはかるという話がありましたけれども、配付資料の二十七ページ、ちょっとそういうのもよく見ていただきたいと思うので。二十七ページに、これはEUでやっている基本的な考え方なんです。これは、イギリスのある業界、公務員の業界を限定して出したんですが、基本的に大きな考え方は一緒なんですね。こういう得点要素法というのがあるんですね、同一価値労働同一賃金で。

 これでいいますと、大ファクターでいうと、労働環境。どんなような環境で働いているのか、劣悪な環境なのか、非常に快適な環境なのか。あるいは、本人に対する負荷。精神的負担、身体的負担、肉体労働かどうか、感情的負担というのは対人関係の仕事かどうか、こういうふうなことですね。責任。これは、金の管理をする責任があるのか、あるいは管理職なのか、どういう責任があるのか。そして、知識、技能ということで、これは本人の蓄積したスキル。この四つの大ファクターに小ファクターがあって、それぞれウエートがあって、それぞれをウエートごとに点数をつけて、最高点が千点だ。これで比べて賃金差を合わせていこうという考え方なんですね。

 そうすると、例えば、先ほど例に挙げましたスーパーのレジで働いておられる非正規雇用の方々、この点数で、例えば七百点と出た。本部の仕入れの担当の方が九百点と出た。すると、九対七の賃金差にしなきゃいけないというようなことです。今の世の中、労働組合もありますし、いろいろな国民の目もありますから、正社員の人の給料をぐっと下げて合わせるということは事実上なかなか難しいわけです。ということは、これを法律で規定して、この得点要素法を入れれば底上げできるということにつながるわけですよ。これがEUの考え方なわけでありまして、ぜひこれは、総理……(発言する者あり)職場がなくなる、こういう話がありましたけれども、すぐ日本は、短絡的なんですよ。経営者もそういう方が多いんですね。

 申し上げると、非正規雇用をどんどんどんどんつくって、首を切りやすい労働者をどんどんつくることで国際競争力が上がると思いきや、スキルが上がらずに、労働生産性、今どうですか、非正規雇用が四割超えて。先進国で二十位まで下がっちゃいましたよ。競争力を上げようと思って首を切りやすい労働者をどんどんどんどんつくって、結局、国際競争力が下がる。今は、経営者の常識は、スキルの高い労働者をきちっと労働保護法制のもとで雇う方が高付加価値の産業が生まれる、こういう考え方が相当主流なんですよ。

 総理、総理が先頭に立っておっしゃっているので、こういう我々の考え方も、これは対立する話じゃないですよね、いい国をつくればいいわけですから。ぜひ総理、一言お願いします。

安倍内閣総理大臣 同一労働同一賃金の考え方あるいは進め方については、私と、また塩崎厚労大臣から既に答弁をさせていただいているところでございます。

 我々は均等待遇に踏み込んで検討する、先ほどこう申し上げていたところでございますが、均等待遇とは、仕事の内容や経験、責任、人材活用の仕組みなどの諸要素が同じであれば同一の待遇を保障することであります。

 また、今まで均衡待遇も進めてきたところでございますが、均衡待遇とは、仕事の内容や経験、責任、人材活用の仕組みなどの諸要素に鑑み、バランスのとれた待遇を保障すること、こう考えているわけでありますが、今回は我々は均等待遇に踏み込んで検討する、こう申し上げたところであります。

 いずれにいたしましても、非正規雇用労働者の皆さんの待遇が改善されるように努力をしていきたい。

 そしてまた、まさに今委員がおっしゃったように、生産性を向上させていく上においても、さまざまな労働法制の改革に取り組んでいるわけであります。それは働き方改革にもつながり、時間ではなく成果で評価をしていく、付加価値を生み出していく者については正しくその労働が評価されるような形で、我々はまさに労働法制を改革していきたい、こう考えているところでございます。

長妻委員 だから、総理、異なった職務であっても職務の価値が同一であるならばその職務それぞれに対して同一額の賃金を払う、異なった業務、職務であっても価値をそろえていく、この考え方を入れないと解決しないと思うんですね、非正規雇用底上げの話は。(発言する者あり)いや、幻想って。ヨーロッパでやっているわけですから。

 総理、どうですか。

加藤国務大臣 まず、議論の場になります国民会議を主宰しております私の方から御説明させていただきたいと思います。

 今の最初の議論、同一労働価値同一賃金ということに関しても、これが定義だというのが必ずしもあるわけではないというふうに思います。

 ですから、まさに議論すべきことは、これまで我々が進めてきた、長妻先生も大臣としてやってこられました、均衡待遇を進めてきた。そして、今、均等に入り込む。しかし、では、均等とはどういうことなのか。要するに、職務の内容、責任、人事管理等を見て同一だという話でありますが、その中身をどう考えていくのかを含めて、やはりこれからしっかりと中で議論していきたいと思っています。

 ただ、我々が進むべき方向は、原点はどこにあるかといえば、一緒でありまして、現在の正規と非正規の待遇の格差、やはりこれはこのままにするわけにはいかないだろう、この認識に立ってしっかり議論をしていきたい、こう思っています。

長妻委員 総理にお伺いしますけれども、基本的には、最終的には法律を出していただきたいと思うんです。スローガンだけだと非常によくないわけでありまして、総理、最高責任者として、法律を出す、これを検討するということはおっしゃいませんか。

安倍内閣総理大臣 進め方については、先ほど申し上げたとおりでございまして、一億総活躍社会をつくっていくために、ニッポン一億総活躍プランにおいて取り上げる働き方改革の大きな課題として検討を進めていくわけでありますが、一億総活躍国民会議で議論していただいた上で、今春取りまとめるニッポン一億総活躍プランにおいて同一労働同一賃金実現の方向性を示したい、こう思います。これに従って、法律家などによる専門的検討も行いつつ、制度改正が必要な事項については労働政策審議会において議論を行うものとしているところでございます。

長妻委員 いや、法律はつくらない、つくる、どちらの方向性ですか。

安倍内閣総理大臣 これは、今申し上げましたように、そのことについても検討を進めていくということでございます。

 いずれにいたしましても、今まで、先ほど加藤大臣が答弁をいたしましたように、均衡待遇について御党も進めてきたわけでございます。我が党も進めてきた。そして、我々は、均衡待遇のところをさらに進めていくという考え方から、さらに今回は均等待遇に踏み込んでいくということを決定したわけでございます。それ自体が間違っているという考え方は、これは違うと思いますよ。そこは長妻委員も同じなんだろう、こう思います。

 法律が必要かどうかということは、まずは、必要であれば法律をつくっていくということは当然のことだろうと思います。そこをしっかりと検討していくということになるんだろうと思います。

長妻委員 これは法律がないとだめですよ。法律をぜひお願いしたいと思うんです。

 もう一つ、この非正規雇用の方々を野方図にしていかない方法として、有期雇用、つまり、期限の定めのある雇用を日本は無制限に雇えることになっているんですが、これを、例えばEU並みに、期限がある職務に限定して有期雇用を雇える、例えば、六カ月のイベントのときには六カ月の有期雇用、一年で閉まる店舗では一年限定の社員を雇うことができる、ずっと続く事業所では無期雇用、期限の定めのない雇用にする、こういうような有期雇用の入り口規制、これに踏み込んだらどうかということであります。

 我々民主党政権のときは、改正労働契約法ということで、まずは、有期雇用でも通算五年を超えた方は無期雇用に転換できる、これが二〇一八年四月から始まります。その次の段階で、有期雇用の入り口規制というのも検討をぜひ前向きにしていただきたいと思うんです。これが非正規雇用を正社員に転換する大きな一つの考え方だと思いますが、これは、総理、いかがでございますか。

塩崎国務大臣 平成二十四年の労働契約法の改正で、労働政策審議会で検討したのは御存じのとおりであります。合理的な理由がない場合には有期労働契約の締結を禁止するという、いわゆる入り口規制の導入についても議論をしました。しかし、こうしたルールは、有期労働契約を利用できる合理的な理由に該当するか否かをめぐる紛争を招きやすいのではないか、あるいは雇用機会をむしろ減少させる懸念もあるのではないかというような懸念が示されて、導入すべきとの結論には至らなかったわけであります。

 有期契約で働く方については、今お話がございました、五年を超えて契約が反復更新された場合に、働く方からの申し込みによって無期契約に転換させる転換ルールというのを導入したわけであります。それに加えて、非正規から正社員への転換などを行う事業主を支援するキャリアアップ助成金の拡充というものも進めております。

 こうした取り組みを通じて、有期契約で働く方の雇用の安定と処遇の改善をまず図っていくというのが基本かなというふうに考えております。

長妻委員 ぜひ、この同一価値労働同一賃金については法律をつくっていただきたい。それで国会でぜひ建設的に議論、これは、法律がないと、また絵に描いた餅になりかねないと思います。

 そして、最後の質問でございますけれども、私、ちょっと懸念することがございまして、三年後、四年後から全国の小中学校で道徳教育が特別の教科になるということでございます。これは総理の強い要請があった、こだわりがあったと聞いているんですが、総理、そのとおりでございますか。

安倍内閣総理大臣 これについては、教育再生会議においてその方向が示されたところでありまして、その方向性に従って我々は今進めているところでございます。

長妻委員 総理の強いこだわりがあったと私は聞いているんですが。

 これは何が懸念されるかといいますと、道徳教育を特別の教科にしよう、特別の教科となりますと、国が定める教科書がきちっとできる、そして、子供一人一人の道徳心を評価する、数値の評価、五とか四とか数字はつけないということなんですが、評価は始まる、つまり、成績をつけていくということになるわけであります。

 本来、そもそもこの議論が出たのはいじめの問題ですね。やはり、道徳心が欠如している、いじめをなくそう、こういうような形で議論が始まったと思いますが、今回、道徳教育の中に、日本人として自覚を持って国を愛す、つまり愛国心教育も道徳教育の中に規定をされているということなんですね。私も、もちろん、愛国心教育全部けしからぬと言うつもりはありませんが、私が一番気になるところは、一人一人の道徳心や愛国心に成績をつける、評価をするということが果たしていいのかな、何で評価するのかなということなんです。

 ちょっとお尋ねするんですが、高校受験の内申書とかあるいは中学受験の内申書にもこれは入る可能性というのはあるんですか、ないんですか、この愛国心の評価とか道徳心の評価が。

馳国務大臣 道徳科の評価と内申書のあり方についてお答えします。

 道徳科における児童生徒の学習の評価については、学習指導要領において、数値による評価は行わないと規定されており、また、中教審の答申においても、「児童生徒が自らの成長を実感し、学習意欲を高め、道徳性の向上につなげていくとともに、評価を踏まえ、教員が道徳教育に関する目標や計画、指導方法の改善・充実に取り組むことが期待される。」と指摘されておりまして、これらを踏まえて、文科省では、道徳教育に係る評価等の在り方に関する専門家会議を設置して、道徳科の評価について、数値による評価ではなく、記述式の評価とすること、他の児童生徒との比較による相対評価ではなく、児童生徒がいかに成長したかを積極的に受けとめ、励ます評価とすることなどを前提として、入学者選抜との関係等も踏まえつつ、現在、専門的な検討を行っているところであります。

 この専門家会議では年度内を目途に基本的な考え方を示すこととしておりまして、これらを踏まえて、各学校において道徳教育の充実が図られることを期待しております。

長妻委員 これは私が役所からレクチャーを受けた中身とちょっと違うんですが。

 基本的に、文科省がおっしゃっているのは、内申書というのは、指導要録というところの中から各都道府県の教育委員会がどれを内申書に入れるかをセレクト、選んでいく、こういうことなんですね。愛国心とか道徳心の評価は指導要録には入るわけですから、それを受験の内申書に採用するか否かは各都道府県の教育委員会の判断に委ねられる、ですから、採用されることもあり得る、こういうことでよろしいわけですよね。

馳国務大臣 改めて申し上げたいと思います。

 道徳科の評価は数値による評価ではないため、教科の評定のように、入試において他の生徒と数値の上での優劣をつけるような扱いがなされることはないものと考えております。道徳科の評価は、記述式により、他の児童生徒との比較ではなく、その児童生徒がいかに成長したかを積極的に受けとめ、励ます観点から行われるものであります。

 専門家会議においては、このような評価の趣旨と、客観性、公平性の確保が求められる入学者選抜とはなじまない側面があることを前提にして、さらに専門的な検討が行われているということであります。

長妻委員 何かこういう国会の公の場ではちょっと抑制的におっしゃっているのかもしれませんが。

 これは私も申し上げました、評価は記述式であると。それで、他人との比較ではない、自分が去年よりも道徳心、愛国心がどれだけ成長したのか、おととしよりも愛国心や道徳心が退化したのか成長したのか、そういうようなことを記述で書くと。それについて、今の段階では、都道府県の教育委員会が判断すれば受験の内申書にも入る、こういうことも排除されていないということですね。受験の内申書に入らないということが決まったわけではなくて、可能性としてはまだ残っている議論ということでよろしいんですか。

馳国務大臣 専門家の会議で検討中ではありますが、なじまないということを先ほども申し上げましたし、なじまないということを私も改めて申し上げております。(発言する者あり)

長妻委員 自民党の席から、何の問題もないんじゃないかというやじが飛びましたけれども、ちょっとデリカシーがないんじゃないですかね。そう言い切れるのかなと私は思うんですよ。

 総理、道徳心とか愛国心が、他人との比較ではなくて、本人が成長したか成長していないか、これについて成績をつけて、受験の内申書にも載る可能性がゼロではない、今議論中だということなんですが、総理はどういうふうにお考えになりますか。懸念というのはお感じになりませんか。

安倍内閣総理大臣 まず、教育基本法における教育の目標でありますが、第二条に、「教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。」その一として、「幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養う」と。

 いわば、この教育の目標の中に道徳心を培うということが書かれているわけでありまして、これはまさに教育基本法として法定されているわけでございますが、ここのところは、長妻委員も法律として定められているということは了解をされているんだろう、こう思うわけでございます。

 そこで、先ほど来、馳大臣が答弁をしておりますが、高校入試の選抜方法や調査書の書式等は、都道府県教育委員会や設置者が設定をするものであります。その上において答弁をしているわけでございまして、その上において答弁をしたのは、先ほど大臣から答弁をいたしました、これは繰り返しになりますが、道徳科の評価は数値による評価ではないため、教科の評定のように、入試において他の生徒と数値の上での優劣をつけるような扱いがなされることはないものと考えているわけであります。

長妻委員 いや、ですから、他の生徒と優劣はつけないけれども、本人が成長したか退化したか等々、道徳心、愛国心を評価するわけで、これは公明党も懸念されているんですね。私は心配を共有していると思いますよ、石井大臣。

 山口代表が二十六年一月の本会議で、「国が特定の価値観を押し付けることにもつながるのではないかと懸念する声が根強くあります。」というふうに、慎重に検討する必要がある、成績をつけることも含めたものにこういうふうにおっしゃっているんだと思いますが、石井大臣、これは慎重に検討するというふうに、ぜひ、内閣が何にも懸念がないということでどんどん進まないように、ちょっと答弁いただけませんか。

石井国務大臣 私は公明党を代表する立場でもございませんし、道徳教育の教科化というんですか、これは国土交通省の所管外でございますので、国土交通大臣としてはお答えする立場にございません。

長妻委員 私も愛国心、道徳心は大切だと思います。ただ、それに本当に評価、成績をつけて、そして受験の内申書にも入る可能性がまだ排除されていないということ、これは変な空気が広がる懸念があるんじゃないか。国というのは政府や内閣などの統治機構を意味するものではないというふうにはおっしゃっていますが、余り国を批判するとちょっとよくないんじゃないか、こういう空気が蔓延しはしないか。

 自民党からは全く心配がないという声がありますけれども、その声こそ心配ですよ。批判を忘れた国は必ず大きな過ちを犯す、これは歴史の教訓でございますから、これは絶対におかしなことにならないように。本当に空気が醸成されて、マスコミも最近何か萎縮しているように私は感じるんですよね。政府批判をするキャスターがどんどん消えて、最後、政府批判をするのは野党しかいなくなっちゃう、こんなような社会にならないように、やはり健全な批判がきちっと行われる、適切な批判が行われる社会というのを我々は守っていきたいと思います。ぜひよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

竹下委員長 これにて長妻君の質疑は終了いたしました。

 次に、泉健太君。

泉委員 民主・維新・無所属クラブの泉健太であります。

 健全な批判もしっかりさせていただきますが、まずは批判のないことを一個取り上げさせていただきます。

 総理、先日、一月の十四日に京都府知事、そして京都市長が官邸にお伺いをしたと思います。これは文化庁の京都移転ということで、今、中央省庁の地方移転ということが大変注目をされておりまして、これはひとえに京都の問題だけではなく、全国の方々が興味を持たれているんじゃないかなと思います。

 特に京都においては、重要文化財は全国の一六・六%、そして近畿全体でいうと、四四・七%が関西にある。国宝においては近畿全体で五四・八%ということで、長年都が置かれた関西ということについては、歴史的価値のみならず、文化的な価値も非常に高いというふうに思っております。

 この文化庁の京都移転を、ぜひ我々はやはり実現していただきたいというふうに思いますが、総理の中で、この京都を文化首都に、そして京都を歴史首都にという思いがあるのかということをまず御確認したいと思います。

    〔委員長退席、菅原委員長代理着席〕

安倍内閣総理大臣 政府関係機関の地方移転は、地方の自主的な創意工夫を前提に、地方における仕事と人の好循環を促進することを目的とするものでありまして、移転については国の機関としての機能を確保あるいは向上できることを前提条件として提案を募集しておりまして、文化庁についても、国会や他省庁との連携を含め、さまざまな業務をどのように行うことができるか議論を進められていると考えております。

 先般も質問をいただきまして、まさに今、泉委員がおっしゃったように、京都というのは文化的な中心であろう、これは日本人のみならず、世界の人々もそう考えているということもそれはあるんだろうと私も率直にそう思います。

 しかし、今私が申し上げたことも含め、引き続き関係大臣の間でよく調整を図りながら検討を進めていきたい、このように思っております。

泉委員 ぜひ、この文化庁の京都移転をお願いさせていただきたい。まさに国の本気度も問われるというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 さて、ここからは健全な批判のところに移らせていただきたいと思いますけれども、まず、あっせん利得処罰法に関してお伺いしたいと思います。

 今回、甘利前大臣が、大臣としては本当に覚悟を持った答弁もされてきた、我々は好敵手だというふうに思っておりましたけれども、しかし、我々の見えないところでは、御本人あるいは事務所が個別の業者から陳情を受け、現金を受け取っていたということを認めて辞任をされました。このことについて、改めてちょっと確認をさせていただきたいと思います。

 きょうは一枚パネルを用意しましたし、資料も皆さんにお配りをさせていただきますが、あっせん利得処罰法、これは平成十二年の国会で成立をし、十三年三月一日から施行されております。

 きょうも資料で配らせていただいておりますが、「わかりやすい あっせん利得処罰法 Q&A」という書物もその際出版されておりまして、これは自民、公明及び保守党の与党三党の議員間ですり合わせて作成した多くの想定問答例や、国会での審議における実際の答弁例をもとに取りまとめてもらったものですという書物であります。御署名のところには、衆議院議員山本有二先生ということで、きょうもお越しになられておりますが、当時の立法者でもございます。また、公明党においては漆原先生が立法者でありまして、漆原先生のホームページにも大変詳しくこの法の解釈が載っているところでございます。

 このあっせん利得処罰法、改めて、どうなっているかといいますと、大変条文的には短いものでありまして、特に一条、二条においては、公職者のあっせん利得、そして議員秘書のあっせん利得とは何かというところが端的に書いてあるということであります。

 ここで、このパネルにあるとおり、公職にある者とは、衆議院、参議院または地方公共団体の議会の議員もしくは長ということで、当然、甘利前大臣は、衆議院議員でありますので、この対象者である。そして、第二条、議員秘書あっせん利得というのは、衆議院議員または参議院議員の秘書ということになっておりますので、これも、たしか法制定当時は公設秘書のみということだったのが、その後、さまざまな事件を受けて、私設秘書も含まれることになったということだと思います。

 そこからなんですが、このパネルでいいますと、国または地方公共団体が資本金の二分の一以上出資している法人ということになっております。

 URにお伺いしますが、URの国出資の比率は何%でしょうか。

上西参考人 お答え申し上げます。

 国の出資は九九・八%でございます。

泉委員 今お話がありましたように、国または地方公共団体が資本金の二分の一以上出資している法人の中に、当然、このUR都市機構は入るということになります。

 そこからなんですね。では、より詳しくこの条文を見てみますと、あっせん利得とは何なのかというところですが、「国又は地方公共団体が資本金の二分の一以上を出資している法人が締結する売買、貸借、請負その他の契約に関し、請託を受けて、」締結する契約に関し、請託を受けて、「その権限に基づく影響力を行使して当該法人の役員又は職員にその職務上の行為をさせるように、又はさせないようにあっせんをすること又はしたことにつき、その報酬として財産上の利益を収受したときも、前項と同様とする。」ということで、これはあっせん利得ということになります。

 これはURに確認をしたいわけですが、今回の一件で、千葉県のニュータウンの近傍の道路建設をめぐって、今、URが補償交渉をある業者と行っております。これはいわゆる契約という行為かということについて、URにお伺いをしたいと思います。

上西参考人 補償契約があっせん利得処罰法の契約に該当するかどうかにつきましては、これは関係当局が御判断されるものというふうに考えております。

 以上、お答え申し上げました。

泉委員 法務大臣、これは一般論で結構です、何もその業者との補償交渉がどうだこうだということではなく、こういった政府が二分の一以上出資している法人で、このあっせん利得処罰法では、「法人が締結する売買、貸借、請負その他の契約」という文言があります。いわゆるこの補償交渉が、一つ一つが最終的には契約ということに至るということでよろしいでしょうか。

岩城国務大臣 お答えいたします。

 御指摘ありましたURによる補償交渉、これが契約に当たるかどうかということでありますが、犯罪の構成要件に当たるか否かにつきましては、捜査機関により収集されました証拠に基づきまして個別に判断されるべき事柄であり、お答えは差し控えさせていただきます。

泉委員 いや、そんなに難しい話じゃなくて、条文の解釈をされるところですので。

 URは政府が二分の一以上出資している法人です。その法人が行う交渉、最終的には契約に至るわけですから、それはいわゆるここの条文で言うところの契約ですかという一般論です。それは北海道で行われようが九州で行われようが、一般論としてのその契約とはここで言うところの契約ですかと聞いているんです。法務大臣、お答えください。

岩城国務大臣 重ねてのおただしでございますけれども、あっせん利得処罰法における契約に当たるかどうかということにつきましては、先ほどお答え申し上げましたとおり、捜査機関により収集された証拠に基づき個別に判断されるべき事柄である、そのように考えております。

泉委員 にこやかな笑顔でお答えいただいているんですが、では、この法における「その他の契約」とは何ですか。それをお答えください。

岩城国務大臣 お答えいたします。

 あっせん利得処罰法上の国もしくは地方公共団体が締結する売買、賃借、請負その他の契約とは、国や地方公共団体が財産権の主体として私人との対等の立場において締結する私法上の契約一般をいい、委任、贈与、寄託等の典型契約及び各種の混合契約をいうものと解釈されていると承知しております。

泉委員 今、微妙に、一条の一項と二項のところで少し言うと、国または地方公共団体はと言いましたが、資本金の二分の一以上出している法人の契約ですね、それが一条の二項のところです。そこに書いてある同じ文章ですが、この「その他の契約」、今もろもろお話しになられたものがあるわけですけれども、URが行う契約はその中に入るんですよね、ですから。それは、URの行う契約なのに入らないものがあるという理解ですか。

岩城国務大臣 先ほどもお答えいたしましたとおり、捜査機関により収集された証拠に基づき個別に判断されるべき、そのように考えております。

泉委員 ちょっと、委員長、やはり誠実な御回答を求めたい。委員長もちょっと整理していただきたいと思うんですよ。

 URの行う契約の中に、あっせん利得処罰法に入らないものがあるということですか。それを確認したいんですよ。

岩城国務大臣 重ねてのおただしでありますけれども、先ほど申し上げましたとおり、収集された証拠に基づき個別に判断されるべき、そのように考えております。(泉委員「いやいや、ちょっと答弁整理してくださいよ。全然整理ができていないから、ちょっと整理してください」と呼ぶ)

菅原委員長代理 法務大臣岩城光英君。もう一回答弁してください。

岩城国務大臣 URによる補償交渉ということでのおただしでありますので、先ほどのようなお答えをしたわけであります。(泉委員「いやいや、それは違うでしょう」と呼ぶ)

菅原委員長代理 もう一回、再答弁してください。(発言する者あり)

 泉健太君。

泉委員 法務大臣、ちょっと今二重に間違っていると思うんですよ。

 URによる契約だからとおっしゃったけれども、一条一項も二項も書きぶりは一緒ですからね。国と地方公共団体と、二分の一以上の法人は、書きぶりは同じなんですよ。

岩城国務大臣 私が申し上げましたのは、問題とされているURによる補償交渉、今回御指摘のありましたそのことについてのお答えです。

泉委員 きょうは大事な軽井沢のバス事故のことも聞かなきゃいけないので、このことでそんなにもめたくないんですよ。

 問題とされているURの契約がどうこうという話じゃなくて、URの行う契約行為は、このあっせん利得処罰法の中で、その契約の中に入るんですよねということを聞いているんですよ。石破大臣が何度もうなずいておられるじゃないですか。ぜひ、普通の理解力で普通にお答えください。

    〔菅原委員長代理退席、委員長着席〕

岩城国務大臣 一般論として申し上げれば、あっせん利得罪、先ほど来いろいろと御指摘がありましたとおり、例えば、国もしくは地方公共団体が資本金の二分の一以上を出資している法人が締結する契約、これに関し、請託を受けて、その権限に基づく影響力を行使して、公務員に職務上の行為をさせるように、またはさせないようにあっせんをすること、またはしたことにつき、その報酬として財産上の利益を収受した場合に成立し、国会議員の秘書が、当該国会議員の権限に基づく影響力を行使して同様の行為をした場合にも成立するもの、このように承知しております。(発言する者あり)

泉委員 では、もう一回聞きますよ。

 今のは条文をお読みいただきました。条文をお読みいただいたということは、こう理解してよろしいんでしょうか。URの締結する契約はこの法の中の対象ということでよろしいですね。

岩城国務大臣 お答えいたします。

 具体的にURによるという言い方でありますので、私の方は先ほどのようなお答えをしたとおりでございます。(発言する者あり)

竹下委員長 質問者はどうされますか。(泉委員「ちょっと、何回も続いているので」と呼び、その他発言する者あり)

 では、時計をとめてください。

    〔速記中止〕

竹下委員長 速記を起こしてください。

 それでは、泉君に申し上げます。

 もう一度質問してください。

泉委員 本当にここで押し問答する話じゃないので、ちょっとこれで答えられないようだったら本当にとまりますからね。言っておきます。

 もう一回聞きますけれども、URの契約がこの法の対象内ですよねということを確認しているんです。それだけなんですよ。お願いします。

岩城国務大臣 お答え申し上げます。

 国もしくは地方公共団体が資本金の二分の一以上を出資している法人にURが当たるのであれば、おただしのとおりだと……(泉委員「当たるじゃないですか」と呼ぶ)それは私どもの方では確認していないわけでありますので。(泉委員「いやいや、ちょっと、今のはおかしいでしょう。聞いていなかったんですか、答弁を。今答弁したばかりでしょう、URが」と呼び、その他発言する者あり)

竹下委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

竹下委員長 それでは、速記を起こしてください。

 泉君、質問をしてください。

 国交大臣が答えるそうでございますので、質問をお願いいたします。(発言する者あり)

泉委員 今、何かどんどん問題が横に広がってしまうのが嫌なんですけれども、法務大臣、この予算委員会でやりとりを聞かれていますよね。URの理事長が九九・八%ですとおっしゃいましたよね。それを私は今知りませんとおっしゃったんですよね。これ、答弁を聞かれていなかったということになるわけですよ。

 私は、それは法務省としては確認していませんとおっしゃったから、それはおかしいでしょうと。目の前で理事長が出資比率を言っているわけですから、それは知りませんなんという話は不誠実きわまりないわけですよ。

 私は、これはぜひ謝罪をしていただきたいと思います。やはり答弁姿勢としてこれは謝罪していただきたいと思いますし、本当に法務大臣が再三お答えができないのであれば、国交大臣にお答えいただきたいと思います。

石井国務大臣 URは国が資本金の二分の一以上を出資している法人でございます。

岩城国務大臣 お答えいたします。

 二分の一以上を出資しているということを国土交通大臣もお話をされましたので、おただしのとおりだと思います。

泉委員 ですから、もう一回伺いますが、URの行う契約はこの法の対象の中ですね。法務大臣、お願いします。

岩城国務大臣 一般論といえば、そのとおりだと思います。

泉委員 本当に、このことにこれだけ時間がかかったのは、ただ驚きとしか言いようがありません。

 それで、続いて行きます。法務大臣、請託です。

 これは、これまでの山本有二先生ですとか漆原先生のさまざまな議論の中でいうと、請託はどういうものかということでいいますと、これは、政治家が、誰かに何かを頼まれてその人のためにいわゆるあっせん行為をする場合と、国民や住民の声を吸い上げて日常の政治活動として働きかけを行う場合がある。その中で、請託というのは、誰かが特別の配慮を頼み込むことということであります。

 そういうことで、それも法務大臣に請託とは何かと聞こうと思ったんですが、ちょっと時間がかかりそうなので、これはもう、請託とは特別の配慮を頼み込むことだという解釈であります。

 その意味では、この請託というのが、まさに、甘利事務所を訪れて、再三再四、十数回にわたり甘利事務所と接触をしながらURに対して交渉をしていたということで、甘利事務所からしてみれば特別なものを頼まれたというようなものになるのではないかと我々は考えております。

 そして、財産上の利益。

 この財産上の利益とは何かというところについて、法務大臣、お答えください。

岩城国務大臣 お答えいたします。

 あっせん利得処罰法上の財産上の利益とは、金銭、有価証券、物品のほか、債務の免除、金銭または物品の無償貸与、労務の無償提供等、これを受ける者にとって財産的価値のある一切のものをいうと解されているものと承知をしております。

泉委員 金銭、これは入りますね。それでは、財産上の利益に飲食は該当しますでしょうか。

岩城国務大臣 ただいまのおただしについては当たり得るものと考えております。

泉委員 そうですね。財産上の利益は金品に限らず飲食も該当するというのがそのときの答弁書にも書かれていることでありまして、金銭はもちろん、飲食も財産上の利益である。

 これを収受するということで、これは財産上の利益を受け取るという意味ですけれども、この収受というのも、過去の法的解釈を見てみますと、直接自己が受け取る場合のほか、外形上第三者が受け取ったとされる場合でも、その金銭に対して本人が事実上の支配力を有するものと認定できる場合には本人が収受したものと言える、こういう解釈になっているということであります。

 あるいは、資金管理団体や公職にある者本人が支部長を務める政党支部においても、当該金銭等を公職にある者本人が自己の意のままに支出できる場合には、形式上これらの団体が受け入れたとされる場合であっても本人が収受したものと認定し得る、こういうような書かれ方もしているということでありまして、我々、詳細は今後ということになるかもしれませんが、非常にやはりあっせん利得処罰法というものの可能性が強まってくるのではないかというふうに考えているところであります。

 下の四角の三番目、権限に基づく影響力ということについて、きょうは資料をお持ちいたしました。先ほどの山本先生のQアンドA、法務省の現職の方々が編集をし、山本先生が「発刊によせて」という前書きを書かれたものですが、これを一枚開いていただきたいと思います。

 Q13「「その権限に基づく影響力を行使して」とはどのような意味ですか。」というふうに書いてあります。ここの、下線を引かせていただきました。「その権限に基づく「影響力」とは、このような公職にある者の権限に直接又は間接に由来する影響力、すなわち、法令に基づく公職にある者の職務権限から生ずる影響力のみならず、法令に基づく職務権限の遂行に当たって当然に随伴する「事実上の職務行為」から生ずる影響力をも含むものをいうものとされています。」

 「当然に随伴する「事実上の職務行為」」、ここが、次の右隣のページに書いてあります。「なお、ここでいう「事実上の職務行為」の例としては、他の国会議員に法案への賛同又は反対を求める行為、他の国会議員に一定の質問を行うよう働き掛ける行為、行政庁に対し説明を要請する行為」、「行政庁に対し説明を要請する行為等が挙げられます。」ということであります。

 法務大臣、この見解でよろしいですか。

岩城国務大臣 その見解でよろしいと考えております。

泉委員 これも、今は情況証拠ということになりますが、先日、大西委員も国会質問の中で出されたと思いますが、本件に係る甘利事務所との面談対応状況ということに関しては、UR等々がやはり十数回にわたって接触をしているということ、あるいは住宅局長から連絡先が示されたということ等々、そして議員会館でも、そのうち少なくとも三回、確認されているだけで会っているということ等々もございます。

 これがどういった解釈になっていくのかということに今後なろうかなと思いますが、こういったあっせん利得処罰法というのは、行政に説明を求める行為も含まれるんだということは改めて確認をしなければいけないというふうに思います。

 さて、このURの工事は工事として、住民の方々にとっては生活道路、これは進めなければいけないわけであります。

 一方で、やはりこれは、調べていきますとちょっとずさんではないのかなと感じるんですね。千葉県の中でどう処理されたかというのはあるんですが、そもそも、用地を買収した、その後にさまざま不法投棄が行われて、それを本来処分すべき人間が処分をせずに、最終的に公費でこれを撤去せねばならなくなったということは、県民の税金で、あるいはURということであれば国民の税金でということかもしれません、この廃棄物を処理せねばならぬということそのものが、私は大きな問題だというふうに思っております。

 そして、さらに今この補償交渉が不透明ということでありまして、これは、やはり今後の交渉は決しておかしなことがあってはならないというふうに思います。

 国土交通省に対しては、透明性の高い方法でといっても補償交渉は難しいところがありますが、ぜひおかしなことがないように交渉を進めていただきたいということを改めて注意喚起させていただきたいというふうに思います。

 さて、次でありますけれども、軽井沢のバス事故について質問させていただきたいと思います。

 この軽井沢のバス事故、大変痛ましい事故でありました。亡くなられた方々の御冥福をお祈りし、被害に遭われた方々にお見舞いを申し上げたいと思います。

 総理は、深夜バスというのは乗られたことはありますでしょうか。

安倍内閣総理大臣 最近はございませんが、若い時分はやはりスキーバスに乗ったことはございます。

泉委員 国土交通大臣、深夜バスは乗られたことはありますか。

石井国務大臣 突然のお尋ねなのですが、ちょっと記憶の限りではないと思いますが。

泉委員 恐らく、総理が乗られたときは、まだ規制緩和前の深夜バスだったのかなというふうに思います。本当に、免許制であり、整備にも当然コストがかかる、運転者の待遇もそれなりのものだった。確かに旅行者にとってはそう安い旅行ではなかったかもしれない、しかし、安全はやはり担保されていたという時代でなかったかなと思います。

 今は、ある意味、規制緩和の中で、バスの座席が何列シートかということ、そして値段、到着時間のバランスで、どうしても格安ツアーというものに皆さんが引かれてしまう時代になってしまっている。しかし一方で、乗客は、先進国、すばらしい国日本なんだから、乗っていれば大丈夫だろう、きっと安全対策は国が、あるいは事業者がしてくれているだろう、国民はそういう信頼を持って私はこういった交通機関を利用されているんじゃないのかな、日本はまたそういう国なんだという信頼を国民は期待しているんじゃないのかなと思うんです。

 しかしながら、残念ながら、関越道の事故があって、さらに、安全・安心回復プランというものも出ましたけれども、結局はまたこういう悲惨な事故が繰り返されてしまったということで、極めて問題だと思っております。

 きょう資料をお持ちしておりますけれども、事故発生前の株式会社イーエスピーの経緯についてという紙を用意させていただきました。

 実は、この問題になったイーエスピーという車両の会社、貸し切りバス業者ですが、昨年の二月二十日に一般監査が実施されています。ですから、国交省もある意味頑張ったんですね。本当に、監査の体制、人数が少ない中で頑張って監査はした。

 ただ、これはどう思いますか、皆さん。一般監査をして、イーエスピーに弁明の機会の付与が通知されたのが十月十四日。何と八カ月もあいているんですね、八カ月もあいている。いろいろと運輸局等々に聞くと、通常でも五カ月ぐらいやはり監査にはかかるそうですね。

 ただ、私が申し上げたいのは、今回の街頭監査でもそうです、すぐわかる法令違反と、非常に証明が細かく必要になってくる監査項目もあろうと思います。あるいは、安全面からはすぐ是正しなければいけない監査項目と、将来的にしっかりとちゃんと事業者として整えてくださいねという命に直結しない監査項目と、両方あると思うんです。その仕分けがちゃんとできているんだろうかというところが、実は私は問題だと思っています。

 結局、十月十四日まで、弁明の機会の付与があって、提出期限は十月三十日、そして弁明書が提出されて、そこからまたいろいろと審議がというか、進んで、最終的に処分が決まったのが一月十三日ですよ。約一年ですよ、大臣。

 監査をしておかしいなと思った事業者はこの間、一般の国民は営業していないと思っているんじゃないでしょうか。でも、バスは一台も休むことなく、実は動き続けています。処分が行われるまでの十一カ月間、この事業者は監査を受けておかしいなという状況であっても、バスは動き続けているんです。そして、最終的に一月十三日に処分が下った。

 では、その処分はどんな処分か。一両掛ける二十日。このイーエスピーさんは当然複数のバスを持っています。一両が二十日休んでも、その他の車両は動き続けている。だから、一月十五日にバスが出て、法令違反の状況の事業者がバスを運行して、残念ながら事故が起こったんです。

 これは大変問題ですよ。今も、国土交通省の制度上でいえば、法令違反を犯して、監査の途上にある、まだ結果が出ていない、処分が下っていないけれども法令違反が確認されている業者が普通に営業しているというのが、残念ながら今の国土交通行政の中の監査の体制なんですね。

 これは何とかやはり是正をしていっていただきたいというのが、きょうの私の思いであります。

 時間がこれだけかかるということも問題なんですけれども、私がさまざま国土交通省と話をしていて感じるのは、確かに、監査というのは運転免許のようにその場で、あなたはスピード違反だから、はい、点数何点と決まるものではないというのはよくわかります。しかし、先ほど私が話をしたように、安全に直結するような項目の法令違反があった場合、これは、処分まで何もさせないんじゃなく、一刻も早く是正をさせることの方が大事だと思うんですよ。何よりも是正が大事なんです。

 お客様に安全なものを提供できる状態に持っていくことが大事なのであって、処分をすることが大事なんじゃないんですよ。処分も大事ですよ。だけれども、処分は結果論であって、お客様に一日も早く安全な状態を提供してほしいんですよ。

 そういう意味では、私は、この監査という制度あるいは処分という制度においては、使用停止処分だとかいろいろ処分はあるけれども、その処分を待たせるんじゃなくて、例えば、それ以前に事業者がみずから是正をした場合、それを証明したものを持ってきた場合、処分を減らしていくだとか、インセンティブみたいなものも考えてもいいのではないのかなというふうに思うんです。

 私は、決して処分を軽くしたいわけじゃなくて、処分の重み以上に命の重みの方が大事だということを言いたいんです。

 ぜひ、国土交通省、そういう意味での処分のあり方の見直しを検討していただけないでしょうか。

石井国務大臣 自動車運送事業の監査結果を踏まえて行政処分を行うに当たっては、事実確認の詳細な精査に加え、行政手続法に基づき弁明の機会の付与や聴聞等を行う必要があることから、一定の時間が必要となります。平成二十六年度以降、関東運輸局におけるバス事業者に係る処理期間は、平均で八カ月となっております。

 ただ、今回の事案の場合、御指摘のとおり、平成二十七年二月に一般監査を行いまして、複数の違反を確認して、本年一月十三日に処分を科したところでありますが、その二日後に重大な事故を起こしたということで、事故を受けて改めて特別監査を実施したところ、違反事項について改善措置がなされていなかったことが判明をしておりまして、このことについては、国土交通省としては重大に受けとめなければならないというふうに考えております。

 こうした経緯を踏まえまして、貸し切りバス事業者に対する監査の実効性を向上させることが急務である、このように認識しております。

 監査においては、確認された法令違反について速やかに是正を図ること、また、監査のスピードアップを図ること、さらには、悪質事業者に対する処分を強化すること、こういったことなどについて、省内に設置をいたしました軽井沢スキーバス事故対策検討委員会におきまして具体的な施策の検討を開始したところでございますので、速やかに、検討結果が出次第実施に移してまいりたいと存じます。

泉委員 ありがとうございます。

 今おっしゃった速やかな是正、ここの仕組みをどうつくるかだと思うんですよ。もちろん、処分を重たくして、罰則を強化して抑止するという考え方も当然ある、それはいいと思います。しかし、速やかな是正が最も大事なことだということ、その是正したということを確認することが大事なのであって、事故が起きて人が死んでから特別監査して法令違反がいっぱい見つかったって仕方がないんですよ。本当にこれはゆゆしき事態なんですよ。

 これは、関越道でも繰り返し、これまでも繰り返し言われてきたから、我々は、いいかげんに、監査に八カ月かかるだとか、これは徐々に体制はふやしてきていますけれども、やはり、二〇〇〇年にあれだけの規制緩和をやって業者が倍増したのであれば、これは本当に体制を強化しなきゃ、我々は政治の責任を果たせないですよ。ぜひそれはお願いをさせていただきたいと思います。

 さらに、運転技術の確保なんですね。

 私は、このバス事故が起こって一週間後にちょっと個人的には提言を発表させていただいていますけれども、やはり二種免許を持っている方々の運転技術が、これはペーパードライバーだって当然いるわけですね。今、大体百万人近く二種大型免許を持っておられる方がおられます。そういう方々が、今回も、区分の違うマイクロバスを運転していたけれども、大型は実は自信がないんだと言っていたのに、まあまあ、乗れ乗れと言って乗せて、運転になれなかったということも一つの要因かもしれないと言われている。

 そういう意味では、やはり運転履歴をできるだけ確認して、そして運転履歴の中で空白、ブランクがあるという方については実車の訓練をちゃんとさせるべきだということを私は提言させていただいています。

 国土交通省、ぜひこれは前向きに検討していただけませんか。

石井国務大臣 今回の事故におきましては、大型車の運転の経験が浅い運転手が運転していたことを受けまして、貸し切りバス運行の安全を確保する上で、運転者の技能習得が不可欠と改めて認識をしております。

 国土交通省といたしましては、二月の三日に、貸し切りバス事業者に対して、運転者の運転経験を把握し、十分でない場合は実技訓練を行うよう、既に要請をしております。

 現行制度のもとでは、初任運転者の指導監督において実技は義務づけてはおりませんけれども、この点につきまして、軽井沢スキーバス事故対策検討委員会で改善の方策を検討してまいりたいと存じます。

泉委員 時間がないのでさらに進めますが、あと、被害者対応についてなんです。

 実は、まだ国土交通省も、警察等々に比べると、被害者対応の歴史というのは、長いのか短いのかあれですが、今回の被害者に対しても、待ちの姿勢ではなくて、もちろん心情に配慮しながらなんですが、例えば、被害者や関係者からすれば、どういうことが重たい意味を持つのかということを考えていただきたいと思うんです。

 例えば、現地がどんな状況で今後変わっていくのか。それは、道路工事が行われて、復旧作業も行われると思うんですが、例えば、その姿がどうなるのか、その工事がいつ行われて、現場がいつ跡がなくなってしまうのか、こういうことも被害者にとっては重要な情報であります。あるいは、実は、犀川ですとか飛騨川なんかでは、慰霊碑というものも当然建立をされているわけでありまして、そういうことについて、御連絡があったら、お待ちしていますだけでは、私は被害者対応とは言えないのではないのかと。

 しっかりと国土交通省として、例えば、道路の構造を変えますよだとか、そういうことの情報については、やはり被害者側に対してきめ細やかな連絡をとっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

石井国務大臣 今般の事故の被害者や御遺族の方々に対しては、そのお気持ちに寄り添って、必要な支援を続けていくことが重要と考えております。

 事故発生直後におきましては、現場に近い関東、北陸信越、各運輸局に相談窓口を設けるとともに、現地の搬送先の病院や御家族の待機所に赴きまして、相談窓口の連絡先等を示したカードを被害者、御家族にお届けをいたしました。

 これまでに、被害に遭われた方や御遺族より、被害者の会の結成や賠償、補償に向けた進め方などについての御相談など、多くの御相談をいただき、きちんと対応しております。

 今後も、引き続き、被害者や御遺族のお気持ちに寄り添いながら、必要な支援を続けてまいりたいと存じます。また、その際、必要があれば、こちらからもできることはないかお伺いをし、助言できる専門家を紹介するなど、御要望に真摯に応えてまいりたいと存じます。

泉委員 馳大臣、きょう一問お願いしていると思うんですが、こういう高速ツアーバスで特に被害に遭うのが学生、大学生や専門学校生ということがありまして、私はこれは中身はまだまだ不完全だと思うんですが、利用者の皆様へというチラシみたいなもので、やはり適正価格の業者を選んでくださいという取り組みを国土交通省も進めているところがあります。

 もっと学生向けに、ある種、消費者教育みたいなものかもしれないんですが、そういった格安ツアーバスというものがある意味怖いものでもあるということは、学校の中でも、大学の中にも啓発していかなきゃいけないんじゃないのかなというふうに思っています。

 ぜひ、そういったことを、国土交通省からあった場合には御協力いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

馳国務大臣 お答えいたします。

 例えば、文科省として協力が想定される取り組みとして、輸送の安全を確保するための貸切バス選定・利用ガイドラインの大学等への周知など、できることがあれば積極的に国交省に協力をしてまいります。

泉委員 質問項目、積み残しがまだちょっとありましたけれども、安倍総理、この規制の緩和の中で、先ほど自民党の先生からも質問があったと思いますが、社会的規制についてはちゃんと確保していかないと。安さよりも命がやはり大事です。これをぜひ国全体としてお考えいただきたいということをお願い申し上げて、私からの質問とさせていただきます。

 ありがとうございます。

竹下委員長 これにて泉君の質疑は終了いたしました。

 次に、黒岩宇洋君。

黒岩委員 総理、こんにちは。民主・維新・無所属クラブの黒岩宇洋でございます。私も健全なる批判を穏やかに進めてまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、まず、我が国の経済状況に対する総理の御認識というものをお伺いしたいと思います。

 唐突ですけれども、安倍総理、今世界で最も物価の高い国はどこだか御存じでしょうか。

安倍内閣総理大臣 突然の質問でございまして、通告がございませんので、間違った答えをするわけにはいきませんので、答弁は控えさせていただきたいと思います。

黒岩委員 そうでしょうね。なかなかこれは認識されている方も多くはないかもしれませんけれども、私が調べたところ、北欧のノルウェーだそうです。日本も二〇〇二年ぐらいまではトップだったんですけれども、今、日本は二十位ということです。

 そして、ノルウェーとほぼ並んで、物価指数で二位にスイスという国が入っています。ここは、三年前まではトップでしたし、この二十年間ずっとトップ争いをしているという大変物価の高い国なんです。そこに、私の弟がジュネーブで仕事をしていますので、その事情を私もいろいろと聞かせてもらっているということで、ちょっと総理にまた、スイス、世界で大変物価の高い国がどういう状況になっているかということを念頭にお聞きしたいんです。

 ジュネーブという町では、人口十九万程度なんですけれども、今ラーメンブームで、ラーメン店が何十軒もあるんだそうですよ。そこで、私は弟から聞かれたんですね。チャーシューメン一杯幾らだと思うと聞かれたんですよ。

 総理、ジュネーブのチャーシューメン、幾らだと思いますか。

安倍内閣総理大臣 これは気楽に答えさせていただきますが、物価が一番高いということでございますから、二千円ぐらいかなと思います。

黒岩委員 私も、そんなものかな、千五百円からまあ二千円ぐらいかなと思ったら、三千円だそうです。円に換算すると三千円だそうです。

 ただ、これには続きがありまして、では、そのジュネーブにおいて最も安い賃金で働いている方、これを弟に聞きますと、パートで働いている、日本で言うところの非正規の家政婦さん、こういった方たちのお給料が一番安いんですけれども、ただ、これも、一月にすると日本円で最低でも四十万円以上なんだそうですね。

 もうおわかりだと思います。物価が高くても、それ以上に賃金が高ければ、豊かさを実感し、そして経済は成長していくという、このことを今スイスを例に私は例えさせていただきました。

 では、我が国の失われた二十年間と言われるこの間、物価と賃金と経済成長がどうなっているか、きょうは時間の制約がありますので、私の方から述べさせていただきます。

 物価については、総務省が消費者物価指数ということで調査をしております。二〇一〇年を一〇〇とした指数で、今から二十年前、一九九五年で一〇一・一だそうです。そして二〇一五年、昨年で一〇三・二でありますが、アベノミクスが始まった二〇一三年でも一〇〇・一なんですよ。一〇一・一よりも、横ばいというか、下がっているぐらいです。そして、二〇一四年にいきなり二ポイントほど上がるんですけれども、これはおわかりですね、消費増税が三%あったからです。現実に、一九九七年でも消費者物価指数は約二ポイント上がっていますので。

 そう考えますと、我が国は、この二十年間、物価が全く上がらないという異常な状況であります。

 世界の国、先進国の幾つかの象徴的な国を調べました。OECDが全て出しているんですけれども、例えば、アメリカとかイギリスとかドイツとか、これも日本と同じく大変経済が成熟しておりますけれども、この二十年間で、アメリカは物価は一・五倍、イギリスも一・五倍、そしてドイツは一・三倍になっています。

 では、次に賃金を見てみましょう。

 これは平均年収ということで、これもOECDが各国、一九九〇年を一〇〇とした値で調べているんですけれども、では、我が国の平均所得は、これは直近ですと二〇一四年ですので、二十年前、一九九四年で一〇八です、平均年収が。そして、二〇一四年、二十年後になりますと九五・六。これは横ばいというより、賃金は下がっているんですね。

 では、他国はというと、米国、イギリスですと、やはり物価上昇よりも上がり、どちらも賃金は一・九倍になっています、この二十年間で。ドイツで一・五倍。やはり物価の一・三倍よりも賃金の上昇の方が上がっているんですね。

 では、三番目です。経済成長。

 これは国民にとっても実感のしやすい、総理もよく使う名目GDPで見たところ、これは内閣府の調査でありますけれども、数字であらわしますと、二十年前ですから一九九五年、五百一・七兆円です。では、直近は二〇一五年七月―九月、これは上方修正しましたけれども、年ベースで五百・六兆円。要するに、二十年間我が国は、名目GDPにおいて一切経済成長もしていない国です。

 では、アメリカ、イギリス、ドイツを見ると、アメリカはこの二十年間で二・四倍に上がり、そしてイギリスは二・六倍に上がり、ドイツも一・八倍に上がっている。

 私の言いたいのは、先進国でこのような状況ですから、これが新興国である中国ならば、この二十年間で経済成長は二十倍以上しています。

 総理、二百カ国ある国で、世界で唯一、この二十年間、物価も上がらないけれども賃金も上がらない、そして経済成長もしていない国は我が国だけだということは、マスコミの皆さんも、ぜひ政府も国民に知らせていただきたい。どれだけ異常な状況になっているのかということが今の日本の状況である。世界で唯一ですからね。この認識を持って、これは別に政府批判とかいうことではありません、与野党ともに共有意識を持って歩んでいこうということであります。

 そこで、アベノミクスについて質問をさせていただきたいんですけれども、三年がたち、四年目に入りました。

 しかし、残念なことに、特に私の住んでいる新潟県、地方であるとか、地方だけでもありませんけれども、都会のなかなか所得の上がらない方たち、特に地方の人たちからは、アベノミクスの豊かさの実感が全く感じられない、この声ばかりが私のところに届けられます。私がミニ集会でアベノミクスという単語を出すと、ため息まじりに、残念なことにくすっと笑われるような、そんな単語に今なってしまっているんですよ。

 何でこれほど地方でアベノミクスの、総理は豊かになっていると言いますが、その実感ができないのか、総理、お答えいただけますか。

安倍内閣総理大臣 この二十年間の日本の状況についてお話をされました。名目GDPがふえるどころか減ったんですね。減ったものを実は私たちが戻したんですが、減ったわけです。当然賃金は下がっていく。

 これはなぜかといえば、デフレだったわけでありまして、この問題意識を持って誕生したのが安倍政権であり、そしてその目標を掲げて我々は政権を奪還したのであります。

 そこで、私たちは、むしろ、五百一兆円から下がっていた名目GDPを二十八兆円取り戻したということは申し上げておきたいと思いますし、同時に、二年連続賃上げを行っていく、十七年ぶりの賃上げをなし遂げたわけであります。まず日本全体のいわばマクロ経済を上昇させていかなければ、地方はよくならないのは当たり前のことであろうと思います。

 そういう状況をつくって、そして、例えば有効求人倍率においては、二十三年ぶりの高い水準にした。これは事実であります。(黒岩委員「地方のことを聞いているんですよ。端的にお願いします」と呼ぶ)よく今聞いてください。有効求人倍率を上げていったことによって、当然これは、労働市場がタイトになりますから、給料も上がっていく。

 そこで、地方であります。今、黒岩さんは、アベノミクスと言ったら、くすっと笑う。では、新潟県を見てみましょう。有効求人倍率は、我々が政権をとる前は〇・八三倍でありました。今はどうか。(黒岩委員「実感の話をしています」と呼ぶ)一・二五倍ですよ。実感は人によって違いますから。数値はうそはつきません。数値はうそはつかない。

 繰り返します。

 有効求人倍率、新潟県は、〇・八三倍が、いわば一・二五倍になった。そして、七つの県においては過去最高になっています。沖縄県においてもそうです。そして、例えば高知県においては、一九六三年に有効求人倍率をとり始めて以来、初めて一倍になったんですね。

 そして、これは黒岩さんの会った人がたまたまそう言ったかもしれませんが、これはいろいろな人に聞いていただきたい。誰がこう言っていたかということでは、こちら側に座っている皆さんは、いや、そうではないと言う人はたくさんいるわけでありますが、だから、何が客観的な数字かといえば、今申し上げた、やはり仕事があるのが一番です。仕事があるのが一番。ですから、有効求人倍率についてお話をしているわけであります。

 例えば、では、倒産というのは大変ですよね。例えば新潟県の倒産件数は、これは百四十二件が九十四件に減っているんですよ。こういう客観的な数字に向き合うことが大切だろう。

 いずれにせよ、我々は、このアベノミクスのしっかりとした経済成長、果実を地方に対して伝播させていくために、まさにこれは地方創生に取り組んでいるわけでありまして、石破大臣を中心に、しっかりと地域のよさを生かした地方創生に取り組んでいきたい、こう考えているところでございます。

黒岩委員 今の答弁を聞いたら、地方の人は腰を抜かしますよ。私が会った人がたまたまですって。失礼もいいかげんにしてください。

 首長さんたちだって、一年は待てる、しかし二年、三年たって地方にいかにおくれて景気がやってくるとしても、全く実感がないと言っているのが地方の首長さんたちだし、地方の多くの声なんですよ。

 これ、昨年は麻生副総理とも議論をしましたけれども、そういう声があったから私も新潟という地方から国会に戻させていただきました。

 そして、時間がないので、これは、私が、ある政府機関にもいた経済の現場をよく知る専門家の分析について一つ申し上げさせていただきますけれども、今、グローバルな経済と地域のローカル経済、この乖離があるがゆえに、なかなかアベノミクスの浸透が地方には行かないんだという、ちょっと難しい表現をしましたけれども。グローバルなというものは、貿易財とかの、製造業や、またIT関連、すなわち世界と切磋琢磨しているような業界です。そして、ローカル経済というのは、まさに地域にあることが意義がある、これは特にサービス産業を中心とするローカルな経済です。

 かつて加工貿易立国と言われているころは、これが、ある意味、一体化していた。すなわち、製造業の大企業が潤えば、そこに下請の製造業が地方にもたくさんいて、そして、我が国で働く人の半数以上がこのグローバルとローカルの経済の一体化したものに入っていた。

 しかし、今、グローバルで働く人はもうほとんど少数のエリートになってしまい、ローカル経済を支える人たちが、これはGDPの比率でも、雇用の比率でも、約八割になってきている。そして、中小企業というと、町場の製造業をイメージする方も多いですけれども、今、中小企業の九割は、これは実はサービス業。小売や流通、そのほか、教育や医療や介護や福祉といった、こういった中小企業が地方で経済を担っている。農業も入るでしょう。

 今言ったように、トリクルダウンは一体化したときに大企業から地方や中小企業へも浸透しますけれども、グローバル経済とローカル経済が分かれている中、やはり、今言った医療や介護や教育だとか、ないしは第一次産業とか、こういったものにも、大企業だけではなく予算を振り分けていく、これが、先ほど申し上げた、欧米先進国が二十年間経済成長している。

 欧米先進国も、日本と同じく、労働力人口は減少または横ばいですよ。日本だけ、労働力人口が少ないから景気が悪いといって諦めさせて、二十年間が済んでいる。これは明らかに私はまやかしだと思っている。

 今申し上げたとおり、個人消費がGDPの六割を支えているわけですから、その可処分所得を上げていくような、そういった政策を経済政策の中でも比重を高めていく、転換していくということ、このことなしに地方の景気はよくならないということを指摘し、午前中の質問を終わらせていただきます。よろしくお願いいたします。

竹下委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

竹下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。黒岩宇洋君。

黒岩委員 それでは、午前に引き続きまして、午後は、昨日署名されましたTPPについてお聞きをしたいと思います。

 昨日、TPPの署名に行かれた内閣府高鳥副大臣。副大臣の二〇一二年当時のホームページが、今、ネットで大量に流出している。私のもとにもいろいろと情報が寄せられてきています。

 私もその中身を見ますと、こう書いてありました。二〇一二年の選挙前ですね。まず、私の主張ということで、副大臣は、当時は予定候補者ですけれども、TPP断固反対と。これは聖域確保とか云々とかいう前提条件なしですよ。TPP断固反対。次に、私の決意として、もう勝てばうそでも何でもありの政治を終わりにしましょうとあるんですね。

 たしかあのとき、自民党さんは、TPP断固反対、ぶれない、うそつかない、自民党というポスターをばんばん張っていましたね。高鳥副大臣に限らず、新潟県といった農業地域ですと、みんなTPP断固反対と言っていました。そうですよね、当時の安倍総裁。

 そう考えますと、この四日、堂々とTPP断固反対と言っていた副大臣が署名してくる。総理、お答えいただきたい、これこそ、勝てばうそでも何でもありの政治の典型じゃないんですか。総理、お答えください。

安倍内閣総理大臣 高鳥修一副大臣は、若い議員のときから私もよく知っておりますが、まさに真っすぐな男でありまして、裏表のなさ過ぎる政治家だな、こう思っております。そしてまさに、もちろん党の公約についてはここで繰り返すことはいたしませんし、私の立場は一貫しております。

 かつて稲田大臣がこう答弁したことがあります。あなたは変わったんですか、そのとき稲田大臣は、私は変わっていません、変わったのは状況です、こう答弁をされたわけでございまして、つまり、高鳥議員は、民主党政権から自民党政権、安倍政権にかわって、しっかりとした交渉力をかち得て、五分野、五つの分野を守り抜くということを確信することができた、こういうことだったんだろうと。そのことによって、このTPPにおいてはしっかりと守るべきものが確保された、そして、むしろ日本の新たな未来を切り開いていくことに資する、このような考えに至ったんだろう、こう思う次第でございます。

黒岩委員 いや、納得いきませんね。

 まさに、今の話を聞くと、真っすぐに直角に曲がったか、真っすぐに百八十度戻ってきたか。こういったことが、勝てばうそでも何でもありの政治をまさに地でいく。私は、こういったことがこのTPPにおいて実践されているということに大変不満を持ちますし、多くの国民も疑問以上に批判を持っているということをまずは強く指摘をさせていただきましょう。

 そして、次に、これも総理御自身にお伺いをさせていただきます。

 TPPが大筋合意に至ったと言われる、これは現地時間十月五日ですけれども、日本時間にして十月六日、総理は記者会見を開かれました。そのときに総理は強くこう主張されました、TPPは私たちの生活を豊かにしてくれますと。その端的な例として、三つ挙げているんですよ。輸出品目として三つ挙げているんですよ、御記憶だと思いますが。それは眼鏡フレームであり、そしてお茶であり、そして陶磁器、これらの関税が下がることによって生活が豊かになる、このように明言をされていらっしゃいました。これを私は総理三点セットと呼ばせていただきますよ。総理の推奨三銘柄、総理推奨三点セット。

 では、総理、そこまで十月六日大筋合意で明言されたわけですから、この眼鏡フレーム、嗜好品ですよ。総額でも輸出額百億に満たない。お茶、これは昨年で五十八億、玉木議員が質問したころよりちょっと上がって五十八億になって、しかも、TPP加盟国のうち、他の十一カ国のうち、八カ国しかお茶は我が国から輸出しません。そのうちの六カ国はもう既に関税ゼロですからね。総理がおっしゃった、二〇%の課税だとおっしゃっていたそのお茶の輸出国はメキシコですよ。これは昨年の輸出額、二百二十七万円ですからね。車一台分ですよ。そして、陶磁器も、これも総額でも七十億円に満たない。しかも嗜好品ですから、価格が安くなったからといって売れるといった代物ではありません。

 では、総理がおっしゃった、象徴的に三つだけ挙げたこの総理三点セットの輸出額は、TPPの合意によって今後どれだけ輸出額が増加されると試算されているのか、お答えいただけますでしょうか。

石原国務大臣 定量分析の話は昨日大分させていただいたんですけれども、そういう個々のものの推定値は、どの段階でどれだけふえるという試算は内閣府として持っておりません。

黒岩委員 総理、今言った、非常にシンプルな、象徴的な三点の試算すら出せないんですか、出さないんですか。総理、お答えください。

安倍内閣総理大臣 いずれにせよ、今、個別の品目についての具体的な数字については石原大臣が答弁したとおりでございますが、しかし、先ほど言われたように、メキシコでは大きな関税がかかっているがゆえに、残念ながら輸出額……(黒岩委員「二百二十七万円ですよ。どれだけ広がるんですか」と呼ぶ)それは、そこまでのいわば関税がかかっていることによって、この関税をゼロにするというのは、お互いが関税をなくしていくことによって、お互いがチャンスをつかんでいくということであります。

 そこで、額は、もちろんそれは小さいわけでありますが、その額をさらに広げていくことによって、その分野で頑張っている人たちは、たとえ額が小さくとも大きなチャンスが広がっていくわけであります。

 また、眼鏡フレームについては、確かに額は小さいわけでありますが、眼鏡フレームをつくっている福井県の鯖江においては、これは大きな産業であるわけでありまして、そして実際、ここはいいフレームをつくっているのでありますが、実際は、直接にブランド化して、そしてそのブランド化することによる付加価値を残念ながら手に入れていないわけでありまして、鯖江でつくっているわけでありますが、これは他のブランドをつけながら、そしてそこの付加価値はそちらの国に行ってしまって、その付加価値の部分はちゃんと残っていないということもあります。

 今後、そうしたことも含めて戦略を進めていくことによって、私も先般申し上げたわけでありますが、手をかけた、苦労してつくった付加価値の分だけ、それをつくった人たちに収入が入るような、そういうTPPにしていく努力は、まさにこれからしっかりとしていきたい、こう考えているところでございます。

黒岩委員 総理、二点指摘しましょう。

 当然、鯖江とか、陶磁器をつくっている、またお茶どころ、頑張ってもらいたい、私もそう思いますよ。ただ、総理は、私たち、すなわち日本国、日本国民が豊かになりますと断言した。しかも、今経済効果でいったら十四兆という額の話をしているわけですよ。そんなときに、いや、小さいものもと言いますが、総理は、今言った三つの例だけを挙げて、私たちの国民生活が豊かになると言った。この因果関係には当然大小もあるし、そして、今言ったこの三つすら試算もできずに、今総理、これからと言いましたね。違うでしょう。本来なら、合意する前に試算を出しながら、どれだけ利益が上がるのか、それともデメリットがあるのか、計算するのが当たり前でしょう。

 今言った、因果関係と、何でもこれからで、これからですか、署名してから。そんないいかげんなものなんですか。総理、お答えください。

安倍内閣総理大臣 今、三つ私が例として挙げた、これは限られた時間でありますから三つ挙げたわけでありまして、同時に、この三つともそれぞれ地域にとっては大切な、例えば自動車部品といえば、これは明らかにわかりやすい話だろうと思いますし、相当大きな額になりますよ、しかし、そうではなくて、まさに地方創生という意味で、中小企業、零細企業の人たちにもチャンスがあるよ、第一次産業の人たちにもチャンスがあるよという例で挙げたわけでございまして、輸出額においてトップスリーを挙げたわけでは決してないわけでございます。トップスリー的なものを挙げるのであれば、例えば自動車部品については、これは即時撤廃が八割になるわけであります。

 そこで、これは十二カ国において、まさに共通のルールができるわけでありますし、しっかりと知的財産も守られるわけであります。そこで初めて、いわば中小・小規模事業者にとっても大きなチャンスが出てくるということを今申し上げているわけでございます。

 そして、試算の話でありますが、これはもちろん、我々も試算を当然しっかりとしながら交渉をしているわけでありますが、しかし、これは交渉が最終的に決着がつかなければ、どういう結果になるかということはわからないわけでございますし、それを軽々に外に出すということについては交渉にも影響を与えるわけであります。

 今後、我々はしっかりとした対策をしながら、そして支援をしながら、このTPPの効果を最大限上げていきたい、こう思っている次第でございます。

黒岩委員 繰り返し聞きますけれども、交渉はもう終わっているんですよ。交渉は秘密裏だ、これはTPPの多国間交渉、経済連携において。それは我々も甘んじて理解しましょう。しかし、もう大筋合意で、きのう署名したんですよ。今、総理、おかしいじゃありませんか。交渉に何か影響を与える、まず、与えますか。きのう署名したんですよ。総理が今言ったように、試算を示すことによって、何か与えますか。それについて、イエスかノーか、お答えください。

 そして、繰り返し質問しますけれども、あの十月六日に、総理は、喜色満面に、私たちの暮らしが、生活が豊かになるとおっしゃった。その根拠ですよ。根拠もなく、試算もなく明言したということなのか。これについても、イエスかノーか、お答えください。

安倍内閣総理大臣 今、外に出すとと言ったのは、いわば交渉締結前から試算をしなければいけないということをおっしゃっていたので、その前においてはこれは出してはならないという意味で申し上げたわけでありまして、ですから、これは私の文脈においてそのとおりだろうと思います。

 そこにおいて、私が申し上げてきたことは、まさにこれは、TPP協定は全体像をまず見ていくことが大切でありまして、二十一世紀型のルールが共通に適用される四割経済圏を生み出すわけでありまして、工業製品の九九・九%の関税が撤廃されるわけでありまして、その直接の効果は、輸出の拡大であります。さらに、みずから輸出しなくても、取引先企業の輸出が拡大すれば受注が増加するわけでありまして、これは日本の産業の裾野を形成する中堅・中小企業に大きなメリットをもたらすわけであります。

 まさにこうした形で、TPPには海外のビジネス環境を改善するさまざまなルールが規定されるわけでありまして、技術移転や現地調達が強制されない、知的財産が保護される、大企業に比べ立場の弱い中堅・中小企業が安心して海外展開に取り組めるようにするものであります。

 そして、支援策について、例えば支援策もしっかりと行っていくわけでありまして、大切なことでありますが、例えばブランド化を進めていく、付加価値を高める、そして大規模化を進め、国際競争力をつける、海外に販路を開拓する、こういった農業者の挑戦を、あらゆる政策を総動員して力強く後押しをしてまいります。

 そして、具体的な個別の試算等については、これはまた関係大臣から答弁させたいと思います。

黒岩委員 今、総理は大事なことを言いましたね。試算はある、けれども交渉中だったら出せない、そこまでは理解しましょう。

 現実に、我々TPP調査会でも、TPPの内閣官房の担当者にこの総理三点セットを聞いたところ、私の耳では、出せないじゃなくて、出さないと答えたんですよ。私はしっかり記憶しています。

 総理、今、試算があると言いましたね。あるんですね。

安倍内閣総理大臣 これは、農産品については試算があるわけでございまして、それについては、先ほど申し上げましたように、交渉中は出せなかった、こういうことでございます。

黒岩委員 だったら、お茶はあるけれども、あとの二つはないということですか。(発言する者あり)

竹下委員長 森山農林水産大臣。(黒岩委員「違う、違う、総理、総理が言ったんだから」と呼ぶ)数字は答えます。

森山国務大臣 黒岩委員、委員がお茶のこともおっしゃいましたし、お茶農家の皆さんも聞いておられますから、ちょっと聞いてください。

 お茶につきましては、十年間で輸出は五倍に伸びています。そして、一兆円目標に対しまして、お茶は中間目標で百億円を目指してまいりましたけれども、百一億円になっています。

 ですから、お茶についてはそういうことであることを御理解いただきたいと思います。(発言する者あり)

竹下委員長 石原大臣。

石原国務大臣 すぐやめますので。

 整理いたしますけれども、農産品については輸出入がそのままであるんです、農産品はあるんです。工業製品はないんです。工業製品はないんです。

黒岩委員 総理、試算があると言ったんだから、では、お茶はある、ほかの二つはどうなんですか。

安倍内閣総理大臣 今申し上げましたように、主要五品目については試算はしているわけでありますが、いわば工業製品については試算がないということは、今までも答弁してきているとおりでございます。

黒岩委員 答弁違いですよ。さっき、私はあえて総理三点セットと言った。それについてはずっと何度も、後で議事録を見てください、試算はある、けれども交渉中のは出せないと総理みずから白状されているんですよ。

 まず、あるか。あると言ったんだからあるでしょう。なおかつ、では、農産物はあるんだったら、お茶だったらお茶をまず出してください。その後、眼鏡フレームとそして陶磁器についても聞きますので。お茶は幾らですって。

安倍内閣総理大臣 今、農水産品については農水大臣から答弁をさせますが、先ほど、三点セットということについては、いわば、なぜ例を挙げたかということについてお話をさせていただいた次第であります。

 同時に、TPPによってまさに大きな利益をもたらすということについては、私が先ほど答弁したように、全体像をお示ししながら答弁をしたわけであります。

 そして、試算については、先ほど試算ということについておっしゃられたから、試算をしているものもあるわけでありますが工業製品については試算はしていないということは、これはもう今まで繰り返し答弁をしてきているわけでありまして、その上において、農産品については、試算はしているけれども、それは、交渉中についてはお示しすることはできない、こう申し上げているわけであります。

黒岩委員 この後、石原大臣にお聞きしますけれども、試算があると言った、当然だと私は思っているんですよ。だって、交渉にもう二年もかけている。当然、合意があってから試算するなんて、順番があべこべでしょう。

 本来ならば、今おっしゃられた象徴的な、これが工業製品であれ、農産品であれ、当然、農産品というのはデメリットも可能性があるわけですから、一万タリフライン全てとまでは言いませんけれども、一個一個ぎりぎりに試算をし、この条件ならここはプラスになる、この条件ならここはマイナスになるという試算をぎりぎりぎりぎり詰めた後に合意があって、そして署名でしょう。合意がいきなりあって、それから試算を出せと言ったら、全然ないと言う。こんな順番がありますか。

 これは最後のアトランタでも、チリとかニュージーランドといった日本よりも経済規模が小さい国でも、ぎりぎりまで国益を獲得するためにアメリカとも闘ってきている。それが、今言ったように、日本は、本来ならばぎりぎりの、当然工業製品も含めて、どこまでの条件でのめば、交渉を妥結すれば、ここはプラスになってマイナスになるというのは、事前に一回試算を出しているわけだ。当然、その試算に基づいてぎりぎり詰めて、そして合意だという、この順番があべこべだということについては、甘利大臣がいないので、石原大臣、答えられますか。あべこべでしょう。

石原国務大臣 先ほど言ったんですけれども、ちょっとうまく伝わっていなかったので、もう一回。

 まず一番最初の、総理が挙げられている三品目についてお話をさせていただきますと、眼鏡はありません。陶磁器も試算はありません。お茶についてはございます。

 それはなぜかといいますと、きのうも緒方議員との議論になったのでございますが、内閣府の経済分析が、Aという経済状態が……(黒岩委員「いや、余り細かいのはいいです」と呼ぶ)いや、短く言います。Aという経済状態が、例えば関税の撤廃あるいは貿易障害の排除、さらには貿易アクセスの改善等々によってやったら、Bという、要するに成長メカニズムに乗ったらBという経済状態になる。そのときに……(黒岩委員「大臣、大臣の知識を出す場じゃないから」と呼ぶ)いやいや、そのときのインプットの情報として、農業の部分は輸出入プラス・マイナス・ゼロでございますが、それがなぜなるなどということは、個々のものを積み上げさせていただいているという整理でございます。

黒岩委員 だったら、石原大臣、最低限でも、今おっしゃった、お茶はあると言うんだから、お茶の輸出額、幾ら伸びるんですか。メキシコ二百二十七万、幾ら輸出額が伸びるんですか。今数字があると言った。言ってくださいよ。

森山国務大臣 黒岩委員、ちょっと聞いていただきたいんですが、最初御質問になったのは、私は、輸出の伸びの話をしておられるのかなというふうに聞きました。(黒岩委員「輸出ですよ。輸出の話ですよ」と呼ぶ)はい。

 だから、お茶につきましては……(発言する者あり)あるんですよ。(黒岩委員「言ってください。じゃ幾ら伸びるんですか」と呼ぶ)輸出については、今、一兆円を目指してやっているわけですから……(黒岩委員「お茶が幾らなんですか」と呼ぶ)三十二年に百五十億を目指してやっています。(黒岩委員「お茶が」と呼ぶ)はい。百五十億です。

 だから、平成二十七年の中間目標が百億だったんですけれども、ここは百一億円になっています。(黒岩委員「だから、関税撤廃との兼ね合いを言ってください。そんなのTPPと関係ないじゃないですか」と呼ぶ)お茶については、輸入がほとんどありませんし、関係国からもありませんから、影響はほとんどないと見ているんです。だから、生産は維持されるという前提でお話を申し上げています。

黒岩委員 だから、結局、今TPPの話をしているんですよ。全体の農林水産業の輸出額だとか、お茶の総枠というんじゃなくて、TPPとの因果関係を聞いている。

 TPPで課税が二〇%かかっているのがメキシコだし、あと、ベトナムが二五%、これは四年以内に撤廃されると。このことによってどれだけふえるか。ほかの国は完全にゼロなんですから。

 だから、答えてくださいよ。お茶はTPPの影響によって幾ら輸出額がふえるんですか。

森山国務大臣 生産量は維持していくというのが前提でありますから、だからTPPによる影響はないということであります、お茶については。

 しかし……(黒岩委員「じゃ輸出もないということじゃないか。ゼロ」と呼ぶ)生産量の話と輸出の話は次元が違いますから。

 だから、輸出については、関税がゼロになるところもありますので、ベトナムも含めて今から輸出を伸ばしていきます。当面、一兆円については、先ほど申し上げたように百五十億円を目指してやっているということであります。

黒岩委員 これは、皆さん、わかったことは、わずか、この象徴的な三点セットで、総理の答弁と担当の石原担当大臣の答弁も、ある、ないでころころ変わる。そして、農業の担当大臣の農水大臣が、あると言いながら、次は、TPPと直接関係がある輸出額の増額についても、全く試算の額を示せない。

 これだけばらばらで、いいかげんな状況で、きのう署名までしてしまったということが明らかになりましたよ。こんなことでこれだけ時間をとりましたけれども、先に一つ進みますけれども……(発言する者あり)本当にこれは時間がもったいない。

 では、石原大臣にお聞きしますよ、TPP担当大臣ですから。

 では、ちょっと農業分野で、これももう多岐にわたりますから、米について聞きましょう。

 米は、このTPPの署名、TPPが発効することによって、米の価格そして生産額に影響はあるんですか、ないんですか。

森山国務大臣 米につきましては、TPPのいかんにかかわりませず、二十五年十二月に農林水産業・地域の活力創造プランにおいて決定したとおり、主食用米の国内需要がおおむね八万トンぐらいずつ減少してまいりますので、そのことを頭に入れながら、例えば、飼料用米とか主食用とかいうものをしっかり……(黒岩委員「あるかないかだけ答えてくださいよ。ないんでしょう」と呼ぶ)何がですか。(黒岩委員「米価への影響。何がって、米価と生産額ですよ」と呼ぶ)

 米の価格は、国内の生産量との関係が一番影響しますので、農家の皆さんの御理解をいただきながら、飼料米とかいろいろなものをつくっていただくことで今合意をしているということであります。

黒岩委員 石原大臣、大臣も予算委員会の中で、聖域とか重要五品目とか使っている。その中の一つなんですよ、米というのは。当然、交渉していた甘利大臣だったら、米のことも含めてさまざまな諸条件を加味しながら交渉してきた。だから、当然、担当大臣ならわかってしかるべきなんですよ。それが全然わからないと言う、今言った……(発言する者あり)いやいや、答えないじゃないですか。

 では、聞きましょうか。わかるなら聞きましょう。

 今言ったように、農業の影響シートでは、米の価格にも影響ゼロ、米の生産額にも影響ゼロ、これが回答ですよ。ただ、そのときに、これは担当大臣にお聞きしますよ。米については、当初五・六万トン、最終的には七・八四万トンの無税枠、この枠が決められた。これに対して、米価が下がるかという物すごい不安がある。

 それについて、政府、TPP担当、内閣官房はこう言っているわけですよ、それはSBS方式というもので売ると。これは皆さん聞きなれないかもしれませんけれども、当然、米国等からの輸入価格が安いわけですから、そこに輸入差益をマークアップすることによって売り出す。ただ、これは日本の国産米よりは安いわけですから、これが売れることによって、当然、日本米への、米の価格に影響も出てくるでしょう。そして、この輸入量がふえた分は、備蓄米の購入だと言っています。

 重要なことはここからですよ。では、担当大臣、お聞きします。

 具体的に、では、まずそのSBS方式なるものがいつどのような形で行われるのか。そして、そのときに、それによって輸入量が決まってくるわけですから、それと備蓄米の買い入れの量も当然リンクしてきます。このリンクは、具体的に詳細に、どうやって行われるのか。それは当然お答えいただかなければ、農家の人はそれが不安なんだから、お答えくださいよ。

森山国務大臣 SBSにつきましては、まず、七十七万トンのSBSは輸入義務が課せられていますけれども……(黒岩委員「具体的に決まっているかどうか聞いているんです」と呼ぶ)ちょっと聞いてください、基本的に違うことをわかっていただかなきゃ説明ができませんから。

 ですから、SBSも、七十七万トン枠は輸入義務が課せられておりますが、TPP枠はその義務がありませんので、それが成り立つかどうかというのは現状を見てみないとわからないということが原則であります。ですから……(黒岩委員「だから、具体的にどういうふうに決まっているか教えてくださいよ」と呼ぶ)それは、新しく入ってくる分については備蓄米として備蓄していくわけですから、市場に出てくることはないわけですよ。

黒岩委員 私、当然、前もって農水省の担当者に聞いています。今言ったように、では、七・八四万トンの枠でいざ入ってきて、売るときにはSBS方式だけれども、いつどのような形でSBSで売るか、具体的なことはこれから決めると。今は決まっていないそうですよ。そして、備蓄米との関係もまだ何も決まっていないと。(石原国務大臣「それは当然」と呼ぶ)

 違う。だから、それによって米価や米の生産額に影響を与えるのは決まっているでしょう。これがセットで何も決まっていないのに、結果だけは政府にとって都合がいい、米の価格は全く変わらない、そして生産額も全く変わらない、米に影響ないと言ったって、これを聞いている稲作農家の皆さんが、ああ、わかりましたと言うわけないでしょう。一番心配している肝心なところはわからない、これからだと言っていて、結論だけは政府にとって都合のいい、全く米は関係ない、そのほか、農業の試算も全てそうです。

 今、きょう聞いてわかったことは、工業製品だろうが何だろうが、試算もしていない、明確な根拠もないけれども、なぜか結論の数字だけは政府にとって都合のいいことになっている、これがTPPの姿ですよ。このことを徹底して主張させていただき、そして農家の不安はこれでさらに揺るぎなき大きなものになったということを主張させていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

竹下委員長 これにて黒岩君の質疑は終了いたしました。

 次に、山井和則君。

山井委員 安倍総理、きょうもまた株が大幅に下がっています。円高になっています。

 一週間前、一月二十九日にマイナス金利ということを発表されて、これで円安、株高誘導をされるはずではなかったんですか。先ほどの直近の一時の時点を見ると、三百六十八円株が下がって一万六千六百七十六円、そして為替レートも百十六円になっております。

 まさに、株高と円安を狙ったマイナス金利が一週間でもう効果がなくなってきたんじゃないか。この状況は、アベノミクスの限界、アベノミクスの終わりの始まりだと思いますが、安倍総理、いかが思われますか。

安倍内閣総理大臣 私は全くそう思っておりません。日々の株価あるいは為替動向に右往左往しない方がいいんだろう、こう思うわけであります。

 いずれにいたしましても、日本銀行と政府は二%の物価安定目標を定め、それに向かってしっかりと歩みを進めていきたい、こう思っているわけであります。その中で、日本銀行は金融政策において、あらゆる政策手段を使いながらこの目標に向かってしっかりと的確な政策を打っていただきたいと思っておりますし、私、黒田総裁を信頼しておりますので、しっかりとした適切な手段をとっていかれる、このように確信をしております。

 と同時に、私たちが進めている政策によって、もはやデフレではないという状況をつくり出すことができたわけでございます。

 先ほど来議論になっているのは、二十年間続いてきたではないか、先進国ではたった一つではないか、こういうお話がありました。たった一つでありますから、これは大変なんですよ。

 だからこそ、ほかが今までやってきた政策ではない、異次元の政策によって初めてデフレではないという状況をつくり出すことができたわけでありますし、そして雇用も百十万人つくり出すことができた。やはり雇用の改善というのは極めて重要であります。これに着目をしなければいけないんですよ。

 大切なことは、雇用をしっかりとつくっていく、そして賃金を上げていく、デフレから脱却し、力強く成長していくことなんだろう、こう考えております。

山井委員 株が上がったときは自慢をされて、株が下がったら一喜一憂しないと。

 しかし、深刻なのは、安倍政権になって、GPIFは年金積立金の株式の運用比率を倍増されました。過去は確かに運用益は出ていましたよ。でも、昨年、一昨年と、安倍政権でどんどんどんどん年金マネーを株につぎ込んで、それは株価は上がりますよ。でも、その結果、年金というものを大きなリスクにさらすようになっているんじゃないですか。

 安倍総理にこれは質問通告もしておりますけれども、ことし、年始以降、きょうの配付資料にも入っておりますが、大幅に株が下がっておりまして、この資料は千九百八十八円下がったとなっておりますが、きょうも下がっております。一時現在で三百六十八円下がって二千三百五十七円。一月に入ってから一二・四%も下がっております。

 昨年の七月から九月、一四%下がったときに、約七・九兆円、年金の運用損が出ました。一四%で約七・九兆円。もちろん大まかな話でありますが、今日までに一二・四%下がったということは、ことしに入ってから七兆円ぐらい、私たちの年金の積立金が機械的に計算すれば減った可能性があるということなんです。

 安倍総理、国民の大切な年金積立金を株価をつり上げるために流用した。もちろん、上がるときも下がることもありますよ。でも、最近、年金積立金は今の高齢者だけの問題じゃないですよ、二十年後、四十年後、今の若者世代も不安に思っている。その大切な年金を株価つり上げのために使って、今こうやって一日一日乱高下している。この株価を見るたびに、ああ、年金はふえているのか、減っているのかと、これは一喜一憂せざるを得ないんですよ、するなと言われても。

 安倍総理、ことしに入ってから大まかな機械的な計算では七兆円ぐらい年金積立金の運用損が出ている可能性がありますが、そのことについての御見解を安倍総理にお伺いします。

 年金マネーをつぎ込んで株価を上げようとする、そのことをイギリスのシティーでもダボス会議でも発言して株価をつり上げてきたのは安倍総理ですから、安倍総理、逃げずに。まさにダボス会議で年金を成長に投資するとおっしゃったのは安倍総理ですよね。

 安倍総理、なぜ手を挙げて答弁されないんですか。なぜ逃げられるんですか、うまくいっているときは自分で言っておいて。安倍総理に難しいことを私は質問していないですよ。ダボス会議そしてイギリスの金融街のシティーで、これからは年金マネーを成長のために使うと世界に決意表明して、バイ・アベノミクスとまでおっしゃったのは安倍総理ですから、今のこの状況に対して、日本国内だけじゃなくて世界に説明する責任が安倍総理にあるんです。

 もう一言言わせてください。

 今、私のこの質問に対して、安倍総理が手を挙げずに逃げている、その姿自体が私は恥ずかしいと思います。安倍総理、お答えください。

竹下委員長 まず数字を、厚生労働大臣からお答えいただきます。

塩崎国務大臣 先ほど山井委員から、株価が下がったがゆえに約七兆円ぐらい年初からへこんだのではないか、こういうお話がございました。

 年金積立金というのは、言うまでもなく、専ら厚生年金保険の被保険者の利益のために、長期的な観点から安全かつ効率的に行うということが法律に明記をされております。

 国内外の債券と株式の組み合わせで運用しているものでありまして、日経平均株価の落ち幅にスライドしていくわけでは決してないわけでありまして、想像するのは御自由でありますけれども、そのまま運用益に反映されるものではございません。したがって、御指摘のような質問にお答えするのはなかなか難しいというふうに考えているところでございます。

 ちなみに、先ほど、七・九兆円の、去年の七―九月の評価損を中心とした収益の赤字のことについてお話がございましたけれども、その七・九兆円の赤字を含めても、その前の一年を見れば四・二兆円というプラスが出ているわけでありますので、何しろ長期的な観点から、負債は二十年、三十年先までの年金の支払いを展望した上で、名目賃金上昇率プラス一・七という利回りを確保すべく、分散投資をしながら、デフレではなくなった、賃金も物価も上がる新しい経済状況の中で、国民の大事な年金資産を運用することによって、将来のお約束している年金をしっかりと払っていけるようにということでこういう運用をしているわけでございますので、短期的な動きだけではなかなかはかれるものではないということを御理解賜りたいと思います。

安倍内閣総理大臣 事実関係は今厚労大臣からお話をさせていただいたとおりでありまして、まさに年金の積立金は国内外の債券と株式の組み合わせでありますから、日経平均の動きがそのまま直に反映されるものではないということは申し上げておかないと、国民の皆様が誤解されて、不安をあおる結果になってしまってはならない、このように思います。

 また、年金積立金の運用は、長期的な観点から、安全かつ効率的な運用を行っていくことが重要であると考えております。短期的な動向に過度にとらわれるべきものではないと思います。

 なお、自主運用開始以降の平成十三年度から平成二十七年度第二・四半期は四十五・五兆円で、年率二・七九%となっておりますし、また、安倍政権が発足した平成二十四年の第三・四半期からの収益額は、マイナスの七兆円を入れても安倍政権になって三十三兆円プラスにしているわけでありまして、そういう意味においては、この期間において貢献はしているということでございます。

 いずれにせよ、短期的なもので一喜一憂してはならないということは申し上げておきたいと思います。

山井委員 思い出しますのは、今から九年前、第一次安倍政権のときに、まさにこの予算委員会室で長妻議員を中心に、消えた年金問題というのを追及させていただきました。

 そのときに安倍総理は、年金は大丈夫です、不安をあおるなとおっしゃって、その結果どうなったんですか。二百万人もの年金が消えていて、二兆円もの年金が消えていて、それを私たちは回復させていただきました。まさにこれは第二の消えた年金になりかねませんよ、このままいったら。安倍総理、笑っている場合ですか。

 なぜならば、重要なのは、安倍政権でポートフォリオ、株式運用比率を倍増されたから。それによって株の乱高下によって年金がよりストレートに影響するようにしたのは安倍総理なんです。

 今までもうかったとかいろいろおっしゃっていますが、昨年末は株価は一万九千円でした。それが三月末まできょうのような一万六千円台だったら、今年度はマイナス七兆円ぐらいの運用損が出かねないんですよ。運用益ではなくて。

 そういう状況、国のお金じゃなくて国民の年金積立金が減りかねないわけですから、そういうことについては私は深刻に考えるべきだと思います。

 先ほどの長妻議員の質問の続きをさせていただきますが、こういう年金積立金を株にどんどん運用して株価をつり上げようとすること自体大問題だと思いますが、午前中の長妻委員の質問にもあったように、今、安倍政権は厚労省の年金部会で、インハウス運用、自主運用、つまりGPIFが直接A企業、B企業の株を売る、買うということを決められるような自主運用、インハウス運用の検討をしております。

 私はこれはとんでもないことになると思います。なぜならば、長妻議員も指摘したように、安倍政権に近い企業はもしかしたら応援してもらえるかもしれない、あるいは安倍政権に盾突けば株が売られる危険性がある。いや、これは笑い事じゃないですよ。実際、経済財政諮問会議でもそういう議論がありますし、年金部会でも政治介入が懸念されるという議論がされているんですから、笑い事じゃないんですよ。そういう議論を今されているわけです。

 これは経団連も連合も反対しておりますが、こういうことを検討すること自体、私はおかしいと思います。

 一部報道では、このインハウス運用、自主運用は断念したときのう、きょう報道されておられますけれども、安倍総理、断念されたんですか、それともまだ断念されていないんですか。お答えください。

塩崎国務大臣 これを断念したとかいう話は報道ベースの話であって、また来週の月曜日にも社会保障審議会の年金部会が開催されて御議論をいただくということになっています。その中では積極論の方々もたくさんおられます。一方、慎重論の方もおられるわけでありますので、今御議論を賜っているわけです。

 ちなみに、他の国の公的年金はどうなっているのかということを言っておきますと、インハウス運用をやっているところがカナダにしてもスウェーデンにしてもあって……(山井委員「それは聞いていません」と呼ぶ)いや、年金部会での議論の話です。

 年金部会での議論は、カナダでもスウェーデンでも韓国でもインハウス運用をやっているというところがあって、そういうことから今、年金部会で御議論が行われていて、賛成論も反対論もあって御議論をいただいているということでありますので、御理解を賜りたいと思います。

山井委員 私、びっくりしました。まだ断念されていないということですね。

 GPIFが自主運用、インハウス運用をするということは、GPIFや政府が直接、どこの株を買うか売るかに介入できる可能性が出てくる。単位はうん兆円ですよ。例えば、先ほど長妻議員が言ったように、アメリカでも基礎年金の部分に関しては一銭も年金の株運用はしていません。

 安倍総理、このような自主運用は断念すべきだと思います。検討すらするのはおかしいと思います。自民党に献金しているところ、していないところ、もしかして献金しなかったら株を売られるんじゃないかという懸念が起こり得るんです。なぜならば、どこを買ったか、どこを売ったかというのは公開されないんですから。だから、私は検討すること自体おかしいと思います。経団連も連合も反対しております。

 安倍総理、断念していないということですが、ぜひ、このような検討自体、断念すべきです。なぜならば、これは国民の年金マネーですから。国民の年金マネーを政権の思う方向で使えるようにするというのはおかしいと思いますので、安倍総理、断念してください。

安倍内閣総理大臣 先ほど来、委員は大変極端な物言いをしておられると思いますよ。

 例えば、現行のポートフォリオであれば大変なことになるようなことをおっしゃっておりますが、現行の基本ポートフォリオにおいて、平成十六年から二十五年まで、これはリーマン・ショックを含んでいますよ、それで運用したらどうなるかということを見ると、四・三%、従来のポートフォリオよりも実は一・一%高い収益率なんですよ、株式に対する比率を上げたとしても。ここはしっかりと国民の皆様にお示しをしないと、不安をあおってはいけない、私はこのように思います。

 そして、今の御質問でございますが、これは厚労大臣から答弁したとおりでございますし、先ほど私は長妻委員からの質問に対しましても答弁をさせていただきましたが、GPIFの株式インハウス運用については、年金積立金の自主運用開始の際、公的資金による企業支配との疑念を生じさせるおそれがあることを理由として対象としなかった経緯もあるわけでありまして、現在は法律上認められていないわけであります。

 厚生労働省においてGPIFの改革について検討が行われていることは承知をしておりますが、こうした経緯も踏まえて検討されると考えているわけでございます。

 それと、例えば、今委員が例に挙げたように、政権と親しい企業の、GPIFのお金で株を買わせる、これは全くあり得ない話でありますから、それははっきりと申し上げておきたいと思います。

山井委員 どこの株を買ったかは公開されないんですから、検証できないんですよ。今、マスコミに対してもさまざまな圧力をかけているという話も安倍政権はあるわけです。おまけに、株価、国民の大切な年金積立金で安倍政権が好きに企業の株を買ったり売ったりできるかもしれない、そういう懸念を持たれること自体がおかしいんです。

 安倍総理、厚生労働省が検討していると言うけれども、なぜそんなことを検討させるんですか。検討させるということは、そのようなインハウス、自主運用する可能性があるんですか。私は、検討すらさせるのはおかしいと思います。なぜならば、これは国民の年金積立金だからです。安倍政権のお金じゃないんです。検討すらするのはおかしいと思います。安倍総理、いかがですか。

塩崎国務大臣 先ほど、私が外国のことを言いましたらやめろとおっしゃいましたが、今はアメリカのことをおっしゃいました。

 まさに、そういう海外のことも……(山井委員「アメリカのことなんか聞いていません」と呼ぶ)山井先生がアメリカを参考にされるように、年金部会の先生方も、各国はどういうふうにしているんだろうか、公的年金に関して、その運用に関して、インハウス株式投資をみずからがやっているのかどうかということをベースにしながら御議論をいただいているので、私どもがどうのこうのではなくて、それはもう先生方はプロですから、世界がどうなっているかわかっている。

 そういう意味で、先ほど申し上げたように、カナダも……(山井委員「もう結構です。塩崎大臣には聞いていません」と呼ぶ)いや、これは年金部会での議論のベースを言っているわけですから。カナダもスウェーデンも韓国もオランダも、これはいずれもインハウス中心なんです。(山井委員「違います。基礎年金はやっていません」と呼ぶ)基礎年金をやっているところもございます。スウェーデンにしても韓国にしてもそうですから。

 ですから、基礎年金ではなくても、二階部分と日本で言っている部分についても公的年金には変わりがないわけであって、その運用については、海外でもインハウス運用というのをやっているんです。

 しかし、今総理から答弁申し上げたように、企業支配という疑念も持たれるのかもわからないということで、法律でもって許されていないということになっているわけでありますから、そういうことをてんびんにかけながら今議論をいただいている。来週のまた月曜日に開催される年金部会でもさらに議論が深められるということでありますので、そこのところはやはり御専門の先生方の御意見をしっかりと聞きながら、私どもとしても、責任ある政府として最後にはこれを決めていく、どうするかということは我々がもちろん最後に決めますが、年金部会の先生方にしっかりと御議論いただくということでございます。

山井委員 これは本当に、こういうことを検討される、そして狙っておられる。

 改めて申し上げますが、国民の年金積立金です。それを直接どこの企業に投資するか、そんなことを政権が決めるなんということは国民が絶対許しません。

 それでは、次の質問に移りますが、軽減税率。

 安倍総理にお伺いします。

 一月八日にも質問しました。軽減税率による軽減額、一人平均、一日幾らですか、そして月幾らですか。質問通告してありますので、お答えください。安倍総理、通告してあります。

麻生国務大臣 軽減税率の導入に当たりまして、一人当たりの平均的な消費税負担軽減額につきましては、政府が示しております減収見込み額一兆円を家計におきます消費税負担軽減額の総額と見ることが適当であると考えております。

 まず、この減収見込み額一兆円を人口一・三億人で割りますと一人当たり八千円程度になりまして、一人当たりの平均的な消費税負担軽減額につきましては、この一年当たりの負担軽減額八千円程度を三百六十五日で割りまして、一日当たり二十二円程度となるものと考えております。

 一方、先日、一月八日の予算委員会において、山井先生の、食料品などを軽減税率の対象にすれば一日当たり、平均一人当たり、幾ら軽減されることになるのかとのお尋ねにつきましては、これまで、新聞を除いたベースでの収入階級別の世帯ごと、一人当たり、一日当たりの負担軽減額及び平均値等に関する資料の要求を受けましたので、利用可能な統計であります家計調査における二人以上世帯の機械的な試算をお示ししてきました。

 御質問の事前通告において、全体の平均のほか……(山井委員「端的にお願いします」と呼ぶ)丁寧に答えるべきだと思っております。収入階級別の負担軽減額をお尋ねされるとされておりましたので、これを踏まえまして、酒類及び外食を除く飲食料品を軽減税率の適用対象とした場合の二人以上世帯の一人当たりの負担軽減額については、一定の仮定のもと機械的に計算をいたしますとの前提を述べて、家計調査の年収二百万円未満の世帯及び年収千五百万円以上世帯の負担軽減額とともに、家計調査の平均世帯の酒類及び外食を除く飲食料品に限った負担軽減額として、一年当たり四千三百円程度、一日当たり十二円程度との試算をお示ししたところであります。

 しかし、軽減税率制度の導入によります一人当たりの平均的な税負担額の軽減について、軽減税率制度の導入による減収見込み額一兆円程度は、先ほどお答えいたしたとおり、私どもとしては家計における消費税負担軽減額の総額と考えますので、一年当たり八千円程度、一日当たり二十二円程度となるものだと考えております。

山井委員 今、長々と答弁されましたけれども、わかりましたか。

 簡単に言えば、一月八日には安倍総理は一人当たり一日十二円と答弁したけれども、実は二十二円でしたと。一カ月で、十二円から二十二円に大幅に一日当たりの軽減額が変わりましたというわけなんです。

 これは私は本当にびっくりしました。こんないいかげんな話なんですね。一カ月で十二円から二十二円に。これについてはもっと議論したいですが、とにかく二十二円ということにしましょう。

 問題は、この一日二十二円、年八千円のために六千億円の財源が足りないということです。

 では、この六千億円の財源をどうするのかと聞いたら、財務省などからペーパーが出てまいりました。どう書いてあるか。

 六千億財源が足らない。その六千億については、現時点で具体的な措置内容が念頭にあるわけでなく、今後、歳入歳出両面にわたって聖域なく検討していく、この赤のところですね。聖域なく検討していくということになっていくわけです。要は、増税するのか、予算カットなのか、六千億探しますと。

 ここに同じことを書きました。六千億の部分に関しては聖域なく検討していく。

 ここで、質問通告もしてありますので、安倍総理にお伺いします。

 聖域なく検討するということは、歳出のカットですね。社会保障は聖域に入っているんですか、それとも社会保障は聖域に入っていないんですか、総理。

安倍内閣総理大臣 平成二十九年四月の消費税の軽減税率制度の導入に当たっては、与党及び政府の税制改正大綱において、財政健全化目標を堅持するとともに、社会保障と税の一体改革の原点に立って安定的な恒久財源を確保するとの観点から、平成二十八年度末までに歳入及び歳出における法制上の措置等を講ずること等とした上で、その趣旨を、軽減税率制度を創設する規定を盛り込んだ平成二十八年度税制改正法案において明記することとしています。

 そして、財源措置について、現時点では具体的な措置内容が念頭にあるわけではありませんが、与党及び政府の税制改正大綱に沿って、今後、政府・与党で歳入歳出両面にわたってしっかりと検討していきたいと思います。

 このように、軽減税率を導入する平成二十九年四月までに財源確保に係る法制上の措置等を講ずることとしておりまして、これはしっかりとやっていきたいと思っております。

 そして、軽減税率導入の財源確保を目的として必要な社会保障費を切ることは、もうこの委員会で再三再四答弁をしておりますように、切ることは考えておりません。

 他方、社会保障についても聖域化させてはならないと思っています。聖域化させることなく、効率化、そして無駄を排除するのは当然のことではないでしょうか。無駄まで聖域、あるいはしっかりと効率化できるのに効率化しないということは社会保障費であってもやってはならない、それはむしろ持続可能な社会保障制度を次の世代に引き渡していくためにはやらなければならないことであろう、こう考えております。

 例えば、ジェネリックに切りかえた場合に一定以上の医療費負担軽減効果がある方に削減額等を通知し切りかえを促している、呉市のようなよいモデルを横展開していけば、サービスの質を低下させることなく効率化を図っていくことができます。呉市がそうやっていることはわかっていたんですが、なかなか横展開が進んでいきませんでした。横展開をしていくために何が課題かということをしっかりと認識しながら、そういうものは行っていきます。

 皆さんが受けているサービスを低下させるということはいたしませんが、しかし無駄を省いていく、効率化をさせていく、そのことによっていわば社会保障費が適正化されていくことはあり得るということは申し上げておきたいと思います。

山井委員 今、安倍総理、重要な答弁をされました。この六千億円の軽減税率の財源確保のために社会保障を聖域とは認めず、社会保障もカットする可能性があるということをおっしゃいました。(安倍内閣総理大臣「いや、違う」と呼ぶ)おっしゃったじゃないですか。聖域としないということをおっしゃったじゃないですか。

 それで、三十二兆円も社会保障の予算はありますから、六千億、安定財源を、歳出カット、増税じゃなくて歳出カットとなれば、一番に狙われるのは医療、年金、介護、子育て支援なんです、誰が考えても、残念ながら。だから、私は、それは軽減税率は喜ぶ人が多いかもしれないけれども、そのかわりに医療、年金、介護、子育て支援が六千億カットされる可能性があるんだったら反対する人の方がふえると思います。

 なぜこんなことを言うのか。私も、社会保障をライフワークとして、人生をかけて国会議員にならせていただきました。その中でも最もつらかった思いをしたのは、小泉改革の二千二百億円の社会保障の伸びの抑制、五年間で一・一兆円。覚えておられますか。このときに、聖域なき構造改革といって、まさに社会保障は狙い撃ちされました。

 何が起こったか。年金の物価スライドの引き下げ、介護保険の報酬の引き下げ、そして天下の悪法と言われた障害者自立支援法をつくって、障害者の方々の自己負担をふやした。さらに、後期高齢者医療制度なども含めて、医療、年金、介護、障害者福祉が切られて、医師不足になり、診療報酬も下がり、医療崩壊し、患者の方々のたらい回しが起こり、そして障害者の方々は自己負担で苦しみ、結局、障害者自立支援法は廃止されることになりました。

 一年間で二千二百億円、五年間で一・一兆円でもこれだけの大混乱が起こり、その結果も一つとなって民主党への政権交代も起こったのではないかとすら私は思っています。

 しかし、今回は五年間じゃありません。六千億が十年、二十年続きます。ということは、六兆、十二兆になります。さらに、一年間二千二百億円じゃなくて、六千億です。

 安倍総理、笑っておられますが、もし違うとおっしゃるならば、六千億、財源を探す中で社会保障は切らないということを明言できますか、六千億円の中で。聖域とするということを明言できますか。お願いします。

安倍内閣総理大臣 もう既にこの議論は補正予算の予算委員会でさんざん議論したことでありますが、山井委員は非常に議論を飛躍させるんですね。ですが、これは誤解を与えてはならないので、丁寧に説明をさせていただきたいと思います。

 まず、この六千億円、軽減税率を行う上においての財源の六千億円については、安定的な財源をしっかりと確保していきます。そして、これを確保するために社会保障費を切るということはないということをはっきりとまず申し上げておきたいと思います。

 同時に、しかし社会保障費は聖域化はしないということを申し上げたわけであります。不断の見直しをしていくことは当然のことではないでしょうか。同じ議論を実は補正予算のときにもさせていただきました。

 そして、我々は小泉政権のときに二千二百億円を五年間毎年切っていくと。しかし、実は一・一兆円を行ってはいません。二千二百億円ずつずっと切っていくということは行ってはいないわけでございます。

 そこで、私たちは、切る額を決めているということではなくて、一つの目安は示してはおりますよ、伸びを五千億円以下という目安は示しております。しかし、それは、制度的な改正を行っていって、その結果として大体それぐらいは出るのではないかと。つまり、金額ありきではなくて、必要なものを効率化していく、無駄を排除していくということをやりながら、結果としてそれぐらい出てくるのではないかという目安としてお示しをしているということであります。

 私が申し上げているのは、例えば先般の予算委員会で議論になったのは、この六千億円のために五千億円以上切っていくのではないの、それはないですよということはこの委員会で申し上げました。同時に、しかし五千億円以上切り込んでいくことがあるのかどうかということについては、常に無駄を排除していくということをやっていけば、結果としてそれ以上切り込んでいくことはあり得るということでございますが、そこが大切なことであって、それは六千億円を捻出するためにやるということはないということでありまして、常に社会保障の適正化、無駄を省いていくということをやるのは当然のことではないかということを申し上げております。

 六千億円については、先ほど申し上げましたように、しっかりと我々は財源を確保し実行していきたい、こう考えているところでございます。

山井委員 今の答弁、全く意味がわからないんです。六千億円という、本当、目の玉が飛び出るような莫大な予算です。

 もう一回端的に、安倍総理、答えてください。

 聖域なく検討していく、社会保障はこの聖域に入るんですか入らないんですか、どっちなんですか。ここで社会保障を聖域として配慮するとおっしゃるのならばわかりますが、聖域としないということは、六千億円の財源確保のときに社会保障を、六千億か三千億か知りませんが、削る可能性があるということになります。

 安倍総理、どっちですか。社会保障は聖域になりますか。

安倍内閣総理大臣 社会保障費を、つまり適正化できるのに、無駄を省くのに、それをやってはならないということにおいて、それを聖域化ということであれば、我々は聖域化しないということでございます。

山井委員 安倍総理、わざと議論をそらしておられる。効率化、安定化の話は聞いておりません。六千億の財源をどうやって見つけるんですか、どうやって。

 医療、年金、介護、子育ての社会保障のカットになる可能性は、誰が見たって、安定財源だから高いんですよ。おまけに、ここに聖域なくと書いてあるということは、社会保障も例外でない。ということは、六千億の安定財源の確保のために社会保障の歳出のカットも検討していく、こういうことになるわけですね、安倍総理。

安倍内閣総理大臣 この六千億について、先ほど答弁をさせていただいたように、我々は、これは繰り返しになりますが、平成二十九年四月の消費税の軽減税率制度の導入に当たっては、与党及び政府の税制改正大綱において、財政健全化目標を堅持するとともに、社会保障と税の一体改革の原点に立って安定的な恒久財源を確保するとの観点から、平成二十八年度末までに歳入及び歳出における法制上の措置等を講ずること等とした上で、その趣旨を、軽減税率制度を創設する規定を盛り込んだ平成二十八年度税制改正法案において明記すること、こうしているわけでありまして、財源措置として、現時点では具体的な措置内容が念頭にあるわけではありません。これは先ほども申し上げたとおりでありまして、与党及び政府の税制改正大綱に沿って、今後、政府・与党で歳入歳出両面にわたってしっかりと検討してまいりたいと思います。

 そこで、この六千億円を捻出するために、今委員がおっしゃったように、社会保障を狙い撃ちにするなんということはあり得ない話でありまして、しかし、私たちは聖域化はしない、これは御理解いただけるんだと思いますよ。

 聖域化はしないのは、先ほど申し上げましたように、無駄はあるんですよ、効率化も図れるんですよ、そしてそれをやっている市町村もある。現に呉市がそうじゃないですか。そうした例を横展開していくだけでそれなりの額は出てくるということも、それはそれでしっかりとやっていくということは申し上げているわけでございます。

 いずれにいたしましても、我々は安定的な財源をしっかりと確保していきたい、こう申し上げているわけでありますが、そしてその際、先ほど申し上げましたように、必要な社会保障費を切っていくということは決して行わないということは申し上げておきたいと思います。

山井委員 小泉改革のときも、必要な社会保障は切らないということを言いながら、年金、医療、介護、障害者福祉をカットして、本当に国民は苦しみました。

 安倍総理、六千億、社会保障、医療、年金、介護、子育て支援が聖域なく切られる可能性があるということは、国民に対してはとても大きな不安です。

 参議院選挙前までに、では、社会保障も含めて聖域化せず、必要でない社会保障、六千億なり三千億なり、何を探して軽減税率にするのか。それを明確に言ってもらわない限り、選挙が終わってから、結果的に不要な社会保障が見つかりましたといって六千億切られる可能性は排除されないわけです。

 次に、子育て支援の、きのうの山尾議員の続きの話をさせていただきます。

 さらに、今回の軽減税率によって、子育て支援の三千億の財源のめどが今、立ちにくくなろうとしています。

 三党合意によって、年一兆円、子ども・子育て支援の保育の質と言われている三千億円を確保しようと、自民、公明、民主で三党合意をしました。今確保されているのは七千億。しかし、消費税以外で三千億を新たに確保しよう。その三千億によって、保育士の賃金引き上げ、一歳児、四歳児、五歳児の保育士の定数、職員、人員配置の引き上げ、延長保育、学童保育の人員配置の引き上げ等々。本当にこれは、働くママさんの悲願の子育て、保育の質の向上の三千億なんです。

 しかし、今回、三千億の財源を確保しようとしている今、横から軽減税率六千億円の財源の確保の話が入ってきたんですね。後から入ってきたわけですよ。

 ところが、六千億については来年の三月までに決める、しかし、この子ども・子育ての質の三千億を来年三月までに決めないのであれば、軽減税率の六千億に使わなかったら、この働くお父さん、お母さん、子供たちの悲願であった質の三千億円が、軽減税率のためにめどが立たなく、あるいは先送りになったということになるんです。

 これは質問通告もしておりますが、安倍総理、軽減税率六千億の財源を来年三月までに決められるというのであれば、この子ども・子育ての三千億の財源も来年三月までに確保されるということでよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 軽減税率の残り六千億円の財源については、現時点では、先ほど申し上げましたように、具体的な措置内容が念頭にあるわけではありませんが、与党及び政府の税制改正大綱に沿って、今後、政府・与党で歳入歳出両面にわたって聖域なくしっかりと検討していきたいと考えています。

 そこで、ただいま山井議員からお話がございました子ども・子育て支援につきましては、二十七年度補正予算や二十八年度予算において、消費税引き上げ財源を活用した充実分を含めて、公費ベースで七千億円の子育て支援の拡充を行いました。幅広い支援を行っているところでございます。

 そして、希望出生率一・八の達成に向けまして、御指摘の残りの三千億円超えの保育の質の確保、またあるいは自由民主党として公約をしております幼児教育の無償化の推進もございます。そうしたさまざまなメニューがございます。そうしたさまざまなメニューの中で何をやっていくべきかを考えながら、安定的財源を確保した上で取り組んでいきたい、このように思います。

 軽減税率の財源確保、さらなる子育て支援の財源確保、それぞれ重要な課題であると思います。各年度の予算編成過程でしっかりと検討をしていく考えでございます。

山井委員 結局、いつまでにという答弁がなかったということは、軽減税率の六千億円は来年三月までに財源のめどをつけるけれども、ますます、この三党合意した子ども・子育て支援の保育の質の、保育士の方々の待遇改善、保育士さんの職員定数の拡大、延長保育、学童の延長、学童の人員配置基準の引き上げ、そういう子供たちの幸せのための三千億の財源確保が軽減税率によって難しくなる可能性があるということがわかりました。

 さらに、きょうの質疑を通じて……(発言する者あり)子供たちの未来、お父さん、お母さんの未来がかかっているのに、自民党の皆さん、笑っている場合じゃないじゃないですか。三千億の財源をどうやって確保するんですか。

 六千億の財源のめどもなく、社会保障、医療、年金、介護、子育て、障害者福祉も聖域でなくカットされようとしながら、軽減税率だけ決めて参議院選挙を戦うということは将来に禍根を残すと強く申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございます。

竹下委員長 これにて山井君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

竹下委員長 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策部長坂口卓君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

竹下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

竹下委員長 次に、今井雅人君。

今井委員 維新の党の今井雅人でございます。

 安倍総理、ちょっと最初に一つお伺いしたいんですけれども、昨日、我が党の松野代表と衆議院制度改革についていろいろ議論されましたが、答申を尊重するとおっしゃいましたけれども、あの答申の中身は二つの骨格があります。一つは格差を是正するということ、もう一つは定数を削減するということ、この二つの柱で答申は提言されているわけでありますが、答申を尊重するというのは、当然この両方の柱を尊重するということでよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 これは、二本の柱というよりも三本柱に近いと思うんです。

 つまり、最高裁の判決が出ましたから直ちにこれに応えなさいということにおいては、これは、県と県を比べるという形ではなくて、選挙区ごとの比較において、選挙区の境界の変更、区割りの変更をもって行いなさいと。それは、五年ごとの調査において対応すべきものであろう。

 しかし、いわば第三者委員会が言っているアダムズ方式については、これは、県と県との間の格差を変えていくということについては、十年の国勢調査にのっとってやりなさいということ。

 そして、今委員がおっしゃった定数の削減、これは十ということが表明されております。

 こうしたことを、全体において当然私は尊重していく。ここだけ尊重するということを申し上げているわけではございません。

今井委員 ありがとうございました。

 全体を尊重するということは定数削減も尊重するということだということで、今確認させていただきました。

 次に、きのう、きょうと毎日新聞が遠藤大臣のことについていろいろ報道しておられますので、事実関係を一つずつ確認してまいりたいと思いますので、よろしくお願いします。

 その前に、大臣の方、遠藤事務所の方からそれぞれについてコメントがメディア宛てに出されているんです。これは実は、大臣の事務所からじゃなくて、内閣官房のオリパラ事務局から報道に配られているんですけれども、しかし、どこが書いているかというのは、遠藤事務所なんですよ。衆議院議員遠藤事務所なんです。御自分の、議員個人のコメントを行政の方を使ってメディアに流すということは、これはいいんですか。

遠藤国務大臣 これまで毎日新聞等から何回かあったときにうちの事務所で対応しておりましたので、私の事務所から対応したと思っておりましたが、今御指摘のとおりでしたら、ちょっともう一回調べて御報告させていただきます。

今井委員 後で答えていただきたいと思いますが、オリパラ事務局の染谷さんという方が各メディアにメールで送っていますので、これは本当にいいのかどうか、ちょっと確認してくださいね。

 次に、まず、文科省の方にお伺いしたいんですけれども、きのうの記事に関して、かつて遠藤事務所とインタラックの方と一緒に面談をしたことはございますか。その面談した内容はどんな内容でしたか。

小松政府参考人 お答え申し上げます。

 インタラックの方と面談をしたことはあるということでございます。

 全体の記録をとっているわけではないんですけれども、その前後のことを調べてみまして、時期が十月十四日と思われます。

 中身については、一般的な英語教育の改革、その全般についてお話をしたということでございます。

今井委員 その前にはそういう面談をされたことはないですか。どうですか。

小松政府参考人 正確に申し上げますと、その前後関係はちょっとわからないんですけれども、企業の方や団体の方がお役所に来られたり問い合わせをされるということはありますので、前後関係はちょっとわかりませんが、今おっしゃられたお話で、事務所でお会いしたのは一回ということだそうでございます。

今井委員 ちょっと、その前も含めて、面談の記録をきのう松野代表が要求したと思いますので、理事会の方で諮っていただいていると思いますけれども、引き続き、この面談記録を出していただきたいと思います。

 よろしくお願いします、委員長。

竹下委員長 理事会において検討いたします。

今井委員 では次に、遠藤大臣にお伺いしますが、ちょっと確認なんですけれども、きのうの山尾議員との質疑で、教育再生本部の第一次提言にはALTというのが入っていなかった、それで、当面、ALTの皆さん、それからJET計画で来た皆さん、こういう方に活躍してもらおうということで私からも提言を申し上げたというふうにおっしゃっておられましたが、これでよろしいですか。

遠藤国務大臣 お答えします。

 ちょっと前段を御報告させていただきますが、私、教育再生実行本部長になりましたときに、幾つかのテーマの議題をつくりました。グローバル人材、そして学校教育制度、それから教師の問題等々、その中でいろいろな議論をしてまいりました。その中で、グローバル人材の中で、英語教育を変えていこうと。そうした中で、いろいろなやり方があるのではないだろうか、そういうふうな議論をして、そのたびごとに役所の皆さん、あるいは民間の皆さん、そういう皆さん方と懇談をさせていただいた。

 最初に考えたのは、大学入試を変えればその下の流れが変わるんだろうということでやったんですが、そこがなかなか、議論している皆さんと話をしたら、やはり学校の先生の改善、あるいはネーティブスピーカーが必要だ、そういうふうなことがあって、そこで、そういうことも必要だということで判断をいたしました。

今井委員 答えていただけなかったんですけれども、ALTも入れるようにと提言をされたということですよね。別に詰めているんじゃなくて、おっしゃいましたよねということです。

遠藤国務大臣 第二次提言にALTという言葉は使っておりません。

 ここにありますが、社会人等の外部人材三十万人を、英語等の外国語や理科等の教科、総合的学習の時間や道徳、部活動、放課後や日曜日における学習など学校教育活動の各方面にわたり学校サポーターとして活用する提言と書いてあります。

今井委員 資料の後ろから二枚目を見ていただきたいんですけれども、これは内閣官房のホームページで、教育再生実行会議の遠藤さんの発言が書いてありますが、十二回目のときにALTとちゃんとおっしゃっていますよ。ここに書いてあります、担当の先生とALTとって。

 発言がないというのは、それは間違っていませんか。入っていますよ。どうですか。

遠藤国務大臣 二〇一三年の九月十八日に、第十二回教育再生会議、ここの中で、世界をずっと歩いてきて、いろいろこういう話をさせていただいて、日本の小学校に行きますと、担任の先生とALTと両方いますが、担任の先生がいるとエクスキューズがあって、日本の感覚で覚えてしまう、それよりも、小学校のうちから英語だけの授業、多分二、三カ月は意味が通じないかもしれませんが、赤ちゃんが最初に母親から言葉を聞いて、最初は意味がわからなくてもずっと聞いていけば、ばぶばぶと話すようになるわけですが、そういう形を小学校から授業として進めていった方が英語の教育としてはいいのではないかと。

 ただ、このときには、あわせて、TOEFLとかそうした問題についても言及をさせていただいております。

今井委員 ほかのことを言ったかどうかじゃなくて、ALTについて言及されましたかと言ったら、言及はしておられないと答えられたので、それはちゃんと言及しておられますから……(遠藤国務大臣「ちょっといいですか」と呼ぶ)いやいや、結構です。もういいです。

 こういう発言を受けまして、実は、最初の第一次提言のところではTOEFLの導入とかそういうところしか入っておりませんでした。二十五年の四月八日の最初の提言には載っていませんでした。そして、五月二十八日の第三次提言には、こういう専任教員の配置ですとかJETプログラムの拡充等によるネーティブスピーカーの配置拡大、これはALTも当然含まれているという文脈だと思いますが、こういうのが明記をされるということでありましたから、ほかの方もそういう発言をされたかもしれませんが、遠藤大臣もそういう発言をされたということで、そういうものも加味されてこういうのが内容に入ったということだと思います。

 それを受けまして、その二週間後、平成二十五年の六月十四日ですね、政府の方で、第二期教育振興基本計画というのがつくられています。これは中期計画ですよね。この計画に基づいて、半年後の平成二十五年の十二月十三日、ここで、グローバル化に対応した英語教育改革実施計画というのが出ています。資料の前から三枚目と四枚目が詳しい内容ですけれども、ALTの活用、一枚目の右下の方、二枚目の左下の方に、ALTというのを入れていきましょうということを明記されたということであります。

 それで、文部科学省にちょっとお伺いしたいんですけれども、教育再生提言というのが与党から出されたわけでありますが、当然、その与党から出された提言を踏まえた上で政府はこうした計画をつくるということでよろしいでしょうか。

小松政府参考人 基本的に、教育再生実行会議や中央教育審議会、あるいはそのほかの地方団体や経済団体、もちろん政党の御意見等も含めまして、全体を総合した中で検討していく、そのような意味合いでございます。

今井委員 ということは、それも踏まえてということでよろしいですね。そういう意味ですね。

小松政府参考人 そのとおりでございます。

今井委員 では、それも踏まえてこういう計画ができたということであります。

 資料の後ろから三枚目なんですけれども、これはホームページから出してきましたが、平成二十五年の十二月十三日にこうした計画が出た三カ月後に、このインタラックという会社はリンクアンドモチベーションという会社に売られています。

 このリンクアンドモチベーションがなぜこの会社を買ったかということが一番下に書いてありますけれども、「インタラック社は、既にALT配置事業において圧倒的な地位を占めており、かつ、ALT配置市場は、二〇一三年十二月に発表された文部科学省の「英語教育改革実施計画」に基づき、着実に拡大していくことが予想されます。」ということなんです。つまり、この計画ができたのでこの企業の価値が高まったからこの企業を買いましたということがここに説明をされております。

 それで、大臣にちょっとお伺いしたいんですが、報道にありました、このインタラックの創業者という方、新株をこの方は持っておられて、子会社化したときに、報道では、売って三億円ほどの収入を得られたということでありますけれども、このこと自体は大臣は御存じですか。

遠藤国務大臣 お答えします。

 全く知りませんでした。

今井委員 もう随分前から定期的にお会いになっておって、いろいろ調べておりますと、与党の幹部の方にも随分会わせたりしておられるみたいで、非常に懇意にされていると思うんですけれども、そういう方から全くそういう話はなかったですか。

遠藤国務大臣 その方から、そういう会社の経営の中身とか株がどうだとかについては一切聞いたことはありませんでした。

今井委員 では、またそこは改めて調べさせていただきたいと思います。

 それで、ちょっと戻りますけれども、資料の五枚目を見ていただきたいんですが、先ほど、平成二十六年三月、この会社は売られたということでありました。その五カ月後の二十七年度の概算要求でありますけれども、ここに、小学校英語の教科化等に対応した外部専門人材の活用、新規二千二百二十人という事業が要求されています。

 なぜこれが要求されたかというと、まさにこの理由が書いてありますけれども、英語教育改革実施計画というのでALT外部派遣というのが認められたので、ここにいろいろな補助を出したいということで概算要求が出されているというふうにここに書いてあります。

 文科省の方にお伺いしたいんですけれども、こうした任用というのは幾つもパターンがあるんです、直接任用、請負契約というのもありますし、それから労働者派遣契約。インタラックという会社は労働者派遣契約とか請負契約を扱っている会社だと思いますけれども、概算要求のこの事項自体は、こうした請負とか派遣の事業も含まれていますか。

小松政府参考人 お答え申し上げます。

 含まれております。

今井委員 これは含まれているんです。

 これが、最後の折衝のときに、どういう経緯かわかりませんが予算から落とされまして、二十七年度は実は実現しませんでした。これができなかったので、二十八年度は形を変えて、違う形で予算要求しております。確かに二十八年度の予算の中は、これは対象になっておりませんが、二十七年度の概算要求をした、予算要求をしたわけです。予算要求をした段階では、この案は、そういう会社は含まれている、今そういうふうに明確に答弁いただきましたので、そこは確認させていただきました。これが出たのが二十六年の八月ですね。

 次の資料を見ていただきたいんですけれども、その三カ月後です。これは、インタラックの、自分のところが出している機関誌みたいなものなんですけれども、この二ページ目のところの左下にありますが、「ALT配置に補助制度創設」というのがあります。

 これは、概算要求から本予算になる途中の段階ですから、まだ概算要求されている間です。ここで、こういう国の補助制度がいよいよできるようになりましたので、我が社の業況も拡大しますということを皆さんにアピールしているという、事実関係はそういう流れになっていて、非常にきれいに流れているな、時系列にきれいに流れているなと思うんです。

 そこで、もう一個確認したいんですが、きのう、創業者の方から個人献金の話はあって、それはいただいているという話でした。パーティー券も、個人とインタラックという会社、両方から購入をしてもらっていると思いますという発言をされていましたけれども、その金額はすぐにわからないとおっしゃっていましたが、このパーティー券をここのところお幾らぐらい購入していただいているかというのは、もうお調べになっていますか。

遠藤国務大臣 パーティー券については、法令の中で収支報告をさせていただいております。

 具体的な数字については、先方のプライバシーもありますので、お答えは控えさせていただきたいと思います。

今井委員 いやいや、事実関係をいろいろ確認しなきゃいけませんので、この数字はぜひ出していただきたいと思うんですね。

 委員長、これはぜひ資料を出していただきたいということでお願いしたいと思います。

竹下委員長 理事会で検討いたします。

今井委員 ありがとうございます。

 では次に、済みません、ちょっと、きょうも記事が出ておりましたので、そちらの方についてもお伺いをしたいんです。

 今度は、偽装請負のことに関しての、いろいろ要望をインタラックから受けたというような、記事はそういう内容になっております。

 そこで、ちょっと事実関係をお伺いしたいんですが、まず、厚労省さん、きょういらっしゃっていただいていますね。ここにありますように、この偽装請負の対応について、厚生労働省さんは遠藤事務所でインタラックの方と面談はされましたか。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 遠藤事務所において、平成二十五年末ごろから何度か接触をしているという事実がございます。

今井委員 どういう内容の会話をされたか、御説明いただきたいと思います。

坂口政府参考人 内容的には、今回のALTにつきまして、派遣として受け入れる場合と請負として受け入れる場合の具体的な留意点というようなものについて聞きたいというようなことがあったということで、会社の方も含めて面会をさせていただいたということでございまして、法解釈についての問い合わせということでのやりとりということでございます。

今井委員 もう一度確認したいんですが、場所はどちらで、そして遠藤事務所の方は御同席なさっていたかをちょっと教えていただきたいと思います。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 御質問の、具体的なやりとりということにつきましては、厚生労働省において行ったということでございます。

今井委員 御同席はなさっておられないんですか、遠藤事務所の方は。

坂口政府参考人 事務所の、会館の秘書の方が御同席ということでございます。

今井委員 役所にいろいろお話を聞いて要望されているのに大臣の事務所の秘書が同席されたということでありますけれども、当然、法律上、こういう記録が保存、保管されているはずですので、この面談記録をこの委員会にぜひ出していただきたいと思います。それは出せますか。

坂口政府参考人 先ほどお答えしました当該面談時の記録については、私どもとしては記録は残しておりませんので、御提出はできません。

今井委員 ここでも何度も議論になっていますが、国家公務員制度改革基本法の第五条三項一号に、記録の作成、保存、保管その他の管理をしと、そういうことを義務づけられておりますので、保管していなければ、むしろこれは法律違反ですから。

 本当につくっていないんですか。

坂口政府参考人 委員御指摘のように、国家公務員制度改革基本法第五条三項ということに基づく対応につきましては、私どもも、政官のあり方ということで、閣僚懇談会の申し合わせに基づいて行うこととされておると承知しておりますけれども、これにつきましても、全ての政官の接触について記録、保存等が必要とされているというものではないと理解しておりまして、厚生労働省としましては適切に対応しているということでございます。

今井委員 ちょっと待ってください。報道ベースですけれども、こういう要望を受けて、厚労省さんから文科省さんにお話をして通達を出しているんですよね。通達を出すほどの面談の記録をとっていないなんて、それはおかしいですよ。どうですか。

坂口政府参考人 通達につきましては、二十六年の八月に出しておりますけれども、これは決して一企業からの御質問に対してということではなくて、いろいろ、こういった偽装請負に関しますお問い合わせというのは、これは各企業等あるいは業者の方からも非常に多く問い合わせが寄せられておりますので、そういった対応については特段珍しいものではないと承知しております。

 このALTの関係についても、その適正な運用を確保するということで、解釈を明確にするということで、これは全ての教育委員会でありますとか労働局に周知徹底するという必要もありましたので、これは文部科学省さんとも調整の上出したものでございまして、特段のものではないということでございます。

今井委員 いや、それは、ぜひ委員長、僕はあると思うんですよ。委員会で、これは厚労省さんに、ちゃんと捜せ、捜してくださいということを申し伝えていただきたいと思います。

竹下委員長 理事会で協議いたします。

今井委員 といいますのは、ちょっときょう朝のニュースを見てからインターネットで検索していたんですけれども、このインタラックという会社は、ちょうどこの時期も含めてなんですけれども、偽装請負で訴訟を何度も起こされていまして、敗訴しているものも結構あるらしいんですね。そこが要望しに来ているということなんです。

 多分、これだけ訴訟を起こされて敗訴しているということは、恐らく、厚労省さんは行政指導とか何かしていらっしゃいませんか、どうですか。

坂口政府参考人 個別の企業に対する状況ということについては、お答えは差し控えさせていただきます。

 ただ、先ほども申し上げましたように、先ほどの面会、面談というのも、適正に法にのっとって事業をするにはどうしたらいいかということで御照会があったということでございますので、そういったことに対して対応した。それで、通知についても、全ての事業者について明確にするために発出したということでございます。

今井委員 ちょっと、私、もう時間が来ましたので、次の人に譲りたいと思いますけれども、今お伺いしている限り、もちろん、ほかの方もお願いしたかもしれませんが、この会社もお願いをしている。そして、バックにあるのは、この方たちがいろいろ訴訟を起こされているという背景もあるかもしれない。仮に、こういう会社が行政指導を受けていて、その行政指導を受けた会社から依頼をされて、その基準を変えるように国会議員が動いたんだとすれば、私はかなり問題だと思います。

 ですから、今、個別の会社は開示できないとおっしゃいましたけれども、これはとてもこの因果関係に重要な問題ですから、そういうことも含めて、事実をしっかりこの委員会に明らかにしていただきたいということをもう一度お願い申し上げておきたいと思います。

竹下委員長 理事会で検討させていただきます。

今井委員 ちょっと幾つも要望いたしましたけれども、こういうものをしっかり出していただければ全体像がしっかり明らかになると思いますから、その上でまたいろいろ議論させていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 きょうは終わります。ありがとうございました。

竹下委員長 これにて今井君の質疑は終了いたしました。

 次に、初鹿明博君。

初鹿委員 維新の党の初鹿明博です。

 安倍総理に初めて質問をさせていただきます。

 まずその前に、馳大臣、ことしから厚生労働委員会に移ってしまったために馳大臣と委員会で議論ができなくなりましたので、まずは最初、馳大臣に組み体操の問題について質問をさせていただきます。

 皆さんに資料をお配りしておりますけれども、きのうもNHKの夕方のニュースで取り上げられておりましたが、閣僚の皆さんも御存じですよね、昨年、八尾市の中学校で十段のピラミッドが中から崩れて六人がけがをした、こういう事故がありまして、その後、安全対策をしっかりやった方がいいんじゃないかということで、非常に今注目を集めております。

 先般、三日の日に、私も呼びかけ人の一人になって、超党派で院内の勉強会を行いましたところ、マスコミや地方議員の方も含めて多くの方がお集まりをいただきました。本当に今注目をされている案件であります。

 先般、質問をした際には、馳大臣には、文科省として段数制限をした方がいいんじゃないかという質問をさせていただきました。先ほど例に挙げました事故のあった八尾市の教育委員会も、タワーは三段、ピラミッドは五段までという段数制限をすることを決めました。

 私も、この間、いろいろな関係者とお話をしたり、講師で来られた内田良准教授やお医者さんの庄古先生などと話をしたり、また、松戸市で三段タワーから転落をして頭蓋骨骨折をした小学校六年生の男の子がいるんですが、そのお子さんにも会って、お母さんとも直接お話をしてきました。その結果、私、感じたんですけれども、これは段数制限ではないなと。段数制限を求めましたが、それは撤回します。今皆さんに資料をお配りしたとおり、もう中止にすべきだというふうに私は思いました。なぜかといえば、三段でも頭蓋骨骨折になるような事故になっているわけですよ。だから、もはや段数制限じゃないんですね。

 先般の委員会での質問のとき、馳大臣は、危険性は認識をしていただいたし、安全対策もしっかりとらなければならない、でも、文科省として一律に規制をするものではないだろう、学校には設置者としての責任もありますし、教育委員会の責任もあると思いますから、私はそちらにまず任せたいと思います、そういう答弁をされているんですね。

 義家副大臣に至っては、東京新聞のインタビューの記事で、自分のお子さんが組み体操をやったのを見てうるうるした、うるうるして、組み体操はかけがえのない教育活動で悪いことではない、規制するのは違うと言っているんですけれども、親がうるうるするために子供の安全を犠牲にしていいんですか。運動会で見せ物にして、みんなで喜んで、でも、子供がその間にけがをしていいんですか。いいはずはないですよね。

 私が、これを中止しなきゃいけない理由を幾つか御説明します。

 まず、三段でも、頭を打てば大きなけがになる。

 年間で八千件以上、三年間続けてJSCの災害共済給付を受けるような事故になっているんですけれども、考えてみてください。これは運動会のためですから、二週間か三週間ぐらいしか練習しないんですよ。ほかにも、柔道とかバスケットボールとか事故の多い競技はありますけれども、それは部活動とかも含めて一年間やっている中で一万件とか何千件とかになっていますが、二、三週間で毎年毎年八千件。そして、そのうちの一%は障害が残ったり、場合によっては死亡になるかもしれないような大きな事故になっているんですよ。そういう状況にあります。

 そして、三段じゃなぜだめかということですが、これは五段とか十段のピラミッドとかだと一つなんですよ。三段になると、三十人だったら五個になるんですよ。六十人だったら十個になるんですよ。先生が後ろでちゃんとカバーしますからといったって、そんなに先生はいませんよね。

 それで、事故になっているのは本番じゃありません。練習中で九六%だそうです。庄古先生という松戸の市立病院の先生が診た患者の中で、九六%は練習中です。つまり、練習中ということは、ほかの学年の先生たちはみんな授業をやっているから、当然、サポートする人間が少ないです。そういうときに事故が起こっている。そのことをきちんと認識しないといけない。

 教育的な効果が本当にあるのかどうかも定かじゃないですよね。だって、ピラミッドの下にずっといて我慢している子はおもしろくないですよね。その一方で、上に乗る子は積み上がるまでずっと待っている。どこに教育的効果があるのかな。

 例えば、義家さんも言っているんですが、柔道だってほかの競技だってけがをするじゃないかと言うんですけれども、柔道とかバスケットボールもけがが多い、陸上も多いです、サッカーも多いですよ。でも、そういう競技というのは、いろいろなクラブチームに入ったり部活動に入ったり、その後の展開があるじゃないですか。大会に出て賞をとるような活躍をできるかもしれないし、一生楽しめる、そういう趣味になるかもしれない。でも、組み体操というのは、たった一日の運動会のために命をかけてまでやることなんですかということなんですよ。

 だから、私はやめた方がいいと思う。だって、学習指導要領に記載されていないんですよ。それをわざわざ親が感動するためにやるものなんですかということを私は問いたい。

 地方自治体に任せるといいますが、事故があった八尾市のようなところは、何かしなきゃいけないと思いますよ。でも、ないところは、無関心で、そのまま放置して、結果として事故が起こったらどうするんですか。子供の安全が住んでいる地域によって違っていていいんですか。私はいけないと思います。

 改めて聞きますが、大臣、この際ですから、もうやめましょうよ。文科省として、組み体操、たった一日の運動会のために子供を犠牲にすることはやめようと決断してください。

    〔委員長退席、菅原委員長代理着席〕

馳国務大臣 お答えいたします。

 前回の委員会で御指摘をいただいたときに、私もビデオを見て、これは危ないと率直に思ったということをまず申し上げました。

 二点目は、文部科学大臣が、都道府県の教育委員会や市町村の教育委員会の権限を飛び越えて、教育内容についてああしろこうしろと言うことはまず控えなければいけないし、そもそも法律にも学校には安全配慮義務があるということを、このことも申し上げたと思います。

 その上で、私も、議連の資料等もいただき、また改めて勉強させていただきましたが、これは重大な関心を持たざるを得ません。

 私もスポーツの指導者また部活動の指導もしておりましたが、例えば、ピラミッドというのは周りでサポートしていればよいというものではなく、真ん中にいる子供は、幾らサポートが外にいても、中の子供を救うことはできないんですよね。そして、けがをした状況なども見たら、脊椎損傷であったり骨折であったり。これは日常生活に重大な影響を及ぼす事故であると言わざるを得ません。そのことが予見可能かどうか。そもそも、体育の教員であるならば、そういったことに配慮をすべきであると思います。

 ところが、例えば、私が一番下にいて、その隣に初鹿委員がいたとしたら、私は、かわいそうでかわいそうで、初鹿委員のことをかばうために頑張りますが、つまり、バランスが残念ながら崩れてしまうんですね。一つの目標を持った部活動でやっているのであるならば、それもまた教育の一環かもしれませんが、体育という授業は全ての子供たちが取り組むわけでありますから、そのときに組み合わせによっては不安な状況が起こり得ると当然予見するのは教員の責務だと私は思っております。

 この場でやめるやめないとは簡単にはもちろん言うことはできませんが、重大な関心を持ってこのことについて文部科学省としても取り組まなければいけない、このことだけは申し上げさせていただきたいと思います。

初鹿委員 はっきり今の段階で言えないということなんだと思いますけれども、もう一つ加えておきますけれども、多くの事故が本人の問題ではなくて起こっているんですよ。

 というのは、このタワーとかピラミッドとかというのは、上にいる子は地面に足がついていないんです。誰かの上に乗っているんです。多くの事故は、土台が崩れて上の子が落ちるんですよ。誰かが崩れたときに、その上に立っている子が本人の責任じゃなく落ちるんです。しかも、突然崩れるから、そのまま真後ろにばあんと倒れていく。そうなったときによけられますか、対処できますか。

 柔道だったら、自分が足をついていて、投げられるときに何とか踏ん張ったり自分で防御をしたりすることはできるかもしれません。しかし、組み体操はそれができない。たまたま骨折で終わっているケースもこの八千件の中にはあるんですけれども、同じような原因というか、起点で大きな事故になっていることもあるということもつけ加えさせていただきます。

 ぜひ、この問題は本当に今注目をされている問題ですから、馳大臣、後で、勉強会の資料をこっちに持ってきていますので、ここの中に庄古医師のデータとかもありますので、それを見ていただいて、今年度中に決めてください。また春にも運動会があるんですからね。運動会があるんですよ。またそこの春の運動会で誰かがけがをして、しかも、今度は本当に大きな事故になったらどうしますか。四月にはもう練習が始まりますからね。あと二カ月、三カ月の話ですよ。今年度中にきちんとした結論を出すということをお約束ください。

馳国務大臣 改めて、重大な関心を持って対応したいと思います。

初鹿委員 ぜひよろしくお願いしますね。きちんとやってください。

 では、安倍総理、質問をさせていただきます。

 三枚目に、先般の、一月二十一日、参議院の決算委員会での議事録を配付させていただいております。皆さんごらんになっていただきたいんですけれども、黒く四角で囲ませていただいております。清水議員からの質問に対して、安倍総理は、「この税収というのは国民から吸い上げたものでありまして、」国民から吸い上げたものと答えているんですね。

 私も動画を見て耳を疑いました。三回ぐらい繰り返し見たんですが、吸い上げたものだと言っているんですよ。そういう意識なんですか。

 吸い上げたもの、辞書で調べてみました。三省堂の大辞林には、一つは水とかを吸い上げるというのが書いてありまして、その二つ目、何と書いてあったか知っていますか、総理。「他人の利益を取り上げて自分のものとする。」と書いてあるんですよ。ということは、この発言を要約すると、税収というのは国民の利益を取り上げて政府のものとするものでありましてということになるわけですよ。

 そういう意識で総理は税金を取っている、そういう理解でいいんですか。

安倍内閣総理大臣 これは、マクロ経済分析についてのお話をさせていただいたわけでございまして、しっかりと経済を成長させていくためにはどうすればいいか、そしてまた、デフレに陥らないためにはどうすればいいかということの説明でお話をさせていただいたわけでございます。

 税収の増加分を財政再建に回すべきではないか、全部回せという趣旨だった、私はこう受け取ったんですが、それを回すべきだ、こういう御質問があったものでありますから、税収という形でいわば民間部門から、今委員がおっしゃったように、辞書を見ると二つある。一つは、例えばポンプで水を吸い上げて別の場所に上げるということでありまして、いわば、マクロ経済上、民間部門から政府部門に移してきたものを全て借金返しにしてしまうと緊縮財政になっていくでしょう、ここから持ってきたものがなくなったままになってしまうではないかということを申し上げたわけでございます。

 そこで、アベノミクスの果実の一部を国民の皆様にまさに還元していく、そしてそれは、またさらに成長戦略のためにしっかりと投資をしていくことによって成長につなげていくことに……(初鹿委員「全然関係ないことを言っていますから、いいです」と呼ぶ)まさに私は今、どういう説明の中で使っていたかということを説明しているわけでありますから、大切なことなのでちょっと聞いていただきたいと思います。

 つまり、果実の一部を国民の皆様に還元し、またさらには成長のために投資をしていくということが大切だ、それは、さらなる税収、果実を生み出していく、経済成長と財政再建の両立を実現することが重要であるということの趣旨で申し上げたわけでございまして、今おっしゃっているように、他人のお金をとって私のポケットの中に入れるということではないわけであります。

 この説明は実はよく、上がった税収、増加分を全部借金返しにしていいのかどうかという議論においては、ここから吸い上げたものを全部またそのままにしてはいけないという、また、再び民間部門に全く返してはいけないというときに、これは結構、割と使われるものでありますから使ったわけでございまして、余り、今そういう議論をするよりも、しっかりとマクロ経済の本質を議論された方がよろしいのではないか、このように思います。

    〔菅原委員長代理退席、委員長着席〕

初鹿委員 そういうことじゃないですよ。本音の話をしているんですよ。本音で言ったんでしょう。本音は、国民から税金は吸い上げているぐらいの意識で、そういう意識でいるということのあかしだと思いますよ。ちょっとこれは、失言だと思うんだったら訂正すればいいじゃないですか。これは言葉として不適切ですよ。不適切だと思いますよ。違いますか。国民からすれば、税金というのは、国民が選んだ代表が国の運営に使うために預かっているものだという意識ですよ。お預けしているんですよ。政府もそういう姿勢でいなきゃいけませんよ。それが、吸い上げた。

 辞書をちゃんと見てくださいよ。「他人の利益を取り上げて自分のものとする。」と書いてあるんですよ。それ以外の意味はないですよ、お金に関して言えば。そのこともきちんと、言葉を正確に使ってください。撤回してください。

安倍内閣総理大臣 目くじら立てておっしゃるようなことではないと思うんですが。

 私は撤回しません。

 私は、今申し上げましたように、マクロ経済について説明をさせていただいたわけでありまして、私の最初の説明を聞いていただければよくわかっていただいたのではないかなと思うわけであります。

 委員もおっしゃったじゃないですか。意味には二つあって、ポンプでそこの水をとって、そして別の場所に持っていく、こういうことでありまして、それと同じように使ったのでありまして、それをとって私の懐に入れるということで使うわけはないじゃありませんか。

 つまり、お金をとってきて、これは、まさにまた民間部門から、だって、民間部門から政府部門に移すと言ってもいいわけでありますが、移すと言ったらそれは、人のお金を移すと言われるかもしれませんが、まさに民間部門から政府部門に移ったものをまた全て借金返しに使ってはならないということを申し上げているわけでございます。それは、今私が説明したことが全てでございます。

初鹿委員 小学校か中学校か、国語の授業をもう一回勉強した方がいいんじゃないかというふうに感じますよ。言葉はきちんと使いましょう。

 では、ちょっと次の質問に移ります。

 次に、アベノミクスの果実を一体誰が享受しているのか。本当にこれが再分配に回されているのかという視点で幾つか質問をさせていただきます。

 安倍総理も施政方針演説で、「三年間のアベノミクスは、大きな果実を生み出しました。」と自信満々に発言をされています。問題は、では、その果実がどれだけ国民に分配されているかということなんですよ。

 ちょっと閣僚の皆さん、クイズですけれども、二〇一五年三月期末の役員報酬、大企業の、企業の役員報酬で、一番多くもらっている方の役員報酬の額、幾らか御存じですか。わかる方いますか。財務大臣、わかりますか。わかりませんか。

 今、資料をつけていますので、資料をごらんになってください。一番の方は五十四億七千万円です。五十四億七千万円です。去年と比べると、五十二億五千七百万円ふえているそうです、前年比で。退職金、四十四億ふえているということですが、五十四億といったら年収五百万円の人が千人雇用できる金額ですよ。それぐらいの大きな金額ですよ。これだけじゃないんですけれども、非常に役員の方々の報酬のアップがすごいです。だって、二十五倍とかですからね。一億円以上の役員報酬を受け取った方は五十二人ふえて、総額で八百二十億円、前年比で百五十億円増となっているわけです。これを割合で直すと、前年同期比で二二%、役員に対する報酬はふえております。

 ちなみに、これは役員の報酬ですから、商工リサーチの調査によりますと、役員の報酬とは別に株の配当の収入があるわけですよ。一番の方は、名前は言いませんけれども、株の配当で九十二億円以上得ているわけですよ。その方は、役員報酬は一億円台ですけれども、九十二億円得ているわけですよ。アベノミクスの果実は、そういう大企業の役員だとか所得の高い人たちに相当数流れている。

 役員の報酬は二二%なんですけれども、では、次の資料を見てください。経団連の職員の賃金がどれだけアップしているかといったら、二%ですよ。二%台なんですよ、労働者は。働いている皆さんは二・五二ですね、二〇一五年。アップをしているから下がっているよりかはいいですけれども、二・五二、二%台ずつしか上がっていない。その一方で、このように役員の方々は莫大な伸び率で報酬が上がっている。

 二%といったら、二十万円の新入社員の人だったら四千円ですよね。一回居酒屋に行ったら終わり。しかも、手取りになったらもっと少ない額しか給料は上がっていないんですよ。それが庶民であって、そうじゃない人たちはそれだけもらっている。

 まさに格差の是正が大切なときに、お金が豊かな人のところにどんどん流れていって、そうじゃないところにはなかなか行っていないという事実をこれは示しているわけじゃないですか。

 二%というのは大企業の人たちですよ。中小企業の方々からしたら、ここ、新聞の記事にも書いてありますけれども、厚生労働省の毎月勤労統計調査だと、実質賃金は一二年で〇・九%減で、一四年は二・八%減となっているように、実質賃金的には下がっているという実感なんですよ。

 このアベノミクスの結果を総理はどう思いますか。これが本当に国民に還元されていると思っていますか。

安倍内閣総理大臣 今委員はたった二%とおっしゃったんだけれども、十七年間、その二%を達成できなかったんですよ、全然。我々がまさに、二年連続で、十六年ぶり、十七年ぶりと、これは達成をしております。

 そして、今、高額な所得を得ている人のお話をされました。しかし、それはそれぞれの企業で決められることなんだろうと思います。

 しかし、我々の成長によってそういう人も出てきましたが、その人はまた当然税金も払っています。その税金は、まさに私たちは、先ほど申し上げましたように、これはさまざまな果実として使うことができるわけであります。そういう人も含めて、多くの方々からいただく税収によって、まさに私たちは再配分が可能になっていくということにつながっていくわけでございまして、このところを忘れてはならないんだろうと思います。

 ただ、我々も、なるべく多くの方々が、企業が収益を上げていく、それが内部留保にとどまらないように、しっかりと従業員の給料を上げてくださいということで異例の官民対話をスタートして、それは市場主義的にはどうなのかという批判すらある中においてお願いをし、それを実現してきているわけでございます。

 そして、下請等との取引条件等についての改善も今お願いをしているわけでございまして、こういうことをしっかりと積み重ねていかないと。

 それと、もう一つ申し上げますが、果実とは何か。果実があるということはお認めになった。果実がなければ分配はできないわけであります。ここが肝心なんですよ。私たちは果実をつくった、それはお認めになった。果実ができなかったところに比べて、果実を私たちはつくった。だから、その中で我々は成長と分配の好循環を回していかなければならない。果実を得なければ分配はできない。分配だけをやっていけばどんどん縮小していくということでございますので、そこのところは御理解をいただきたい、こう考えるところでございます。

初鹿委員 問題は、果実の分配の仕方が間違っているんじゃないんですかという趣旨のことを言っているんですよ。わかりますか。

 特に、去年、麻生大臣には質問しましたけれども、では、若年の貧困層に対して何の対策を打っていますか。若い人たちに対する対策、子育て支援はやっていますけれども、子供のいない非正規で働いている若者に対する支援はほとんどやられていないですよ。そういう人たちに対する支援をきちんとやらないと、この国の少子化なんて全く解消できませんよ。

 子供がいる人たちに子育て支援をやる、それは子供がいたらうれしい。三世代同居を進める、それは三世代の家のある人には利益になるかもしれないけれども、家のない、圧倒的な貧困な状態にある人たちは何の恩恵もない。本当はそういうところにきちんと分配をするのが政治の役割なんじゃないんですか。

 では、次の質問に移ります。

 もう一枚めくっていただいて、では、アベノミクスの果実を誰が享受しているのかという中で、自民党の皆さんだって享受しているんですよ。企業の献金、どんどんふえているじゃないですか。どんどんふえていますよ。一二年度は十三億七千万円だったのが、一三年度は四〇%以上増加して十九億五千万円ですよ。一四年度は一三%アップして二十二億一千万ですよ。これは経団連加盟企業に限っても、一三年度で十六億六千五百万で、一四年度で十八億七千四百万ですから、一二%アップですよ。働いている人は二%しか賃金が上がっていないのに、自民党の懐に入るのは一二%も、六倍もアップしているじゃないですか。これを皆さんはどう思いますか。

 これだけアベノミクスの果実を皆さん方がもらって、それで何をやっているかといったら、その見返りに法人税の減税をする。その一方で、国民に対しては消費税を上げる。そういうことをして庶民を痛めつけているわけじゃないですか。軽減税率といったって、一日二十二円ですよ、庶民は。それに対して、このように皆さん方はどんどんどんどん献金をもらって。いいんですか、これで。皆さん、恥ずかしいと思いませんか。

 では、最後に、総理、お答えください。

安倍内閣総理大臣 国民の皆様の御期待にしっかりと応えていきたいと思います。

初鹿委員 ありがとうございました。

竹下委員長 これにて初鹿君の質疑は終了いたしました。

 次に、藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 きょうは、暮らしと経済、消費税増税、そして原発、核燃料サイクルについて質問をいたします。

 まず、経済の問題です。

 安倍政権が発足してから三年になります。雇用や賃金、家計、きょうも議論がありましたが、国民の暮らしはどうなっているのか。消費者物価は上がりましたが、名目賃金は横ばいであります。物価上昇を差し引いた実質賃金はこの三年間で五%減少しております。金額に換算しますと、年収四百万円のサラリーマンで、実に年間二十万円も賃金が目減りした、こういう状況であります。こういう状況で消費税を増税していいのか。国民の暮らしや日本経済が耐えられるのか。

 総理にお聞きしたいんですが、安倍内閣の三年間とよく言われますが、この三年間で雇用や賃金、家計がどうなったか、真摯な検証が必要じゃないでしょうか。

安倍内閣総理大臣 当然、我々の進めている政策が正しいのかどうかということを常に検証する必要はあるんだろう、こう思います。

 その中において、名目GDPは二十八兆円ふえて、就業者数は百十万人増加をしている。賃上げについては、政労使会議を開催して、二年連続の大幅な賃上げを行い、昨年の賃上げ率は十七年ぶりの高水準となっています。

 経済の好循環は確実に生まれておりますし、また、御指摘の一人当たりの平均賃金において、名目賃金は、政労使会議を踏まえた取り組みなどによって、平成二十六年春以降、増加傾向にあり、実質賃金においても、昨年七月以降は増加傾向にあります。そして、総雇用者所得の前年比を見れば、名目ではこの二年間、増加傾向、そして実質でも、消費税率引き上げの影響がなくなった昨年四月以降も増加傾向となっているということでございます。

藤野委員 総理は、三年間、国民の暮らしや日本経済はよくなっているという認識だというふうにお聞きをいたしました。しかし、実態はそうなのか。

 例えば、今、実質賃金について、あるいは雇用についてさまざまおっしゃいました。安倍内閣の三年間において、実質賃金、足元では増加傾向にあると言いましたが、傾向にあるだけで、マイナスであります。実質賃金でいえば、総理は本会議の答弁で、マイナスなんだけれども、低賃金のパート労働者がふえているから全体が引き下がっているんだ、こういう答弁もされました。

 確かにパートなどの非正規労働者は低賃金ですから、この比率が高まっていることは労働者全体の平均賃金を押し下げていることは事実であります。しかし、実質賃金、これを見てみますと、パートを除く一般労働者だけでも下がってきている、これが実態であります。

 ですから、総理が言うように、パートがふえたから実質賃金が下がっているというのは実態に合わない。

 内閣府が出しましたことしのミニ経済白書をここに持ってきましたけれども、このミニ経済白書がおもしろい分析をしております。まさにパートと一般労働者を区分して賃金の動きを分析されている。

 私も、いろいろデータをいただきまして、つくったのが配付資料の二枚目でございます。ちょっと一枚飛んで恐縮ですが。

 この配付資料の二枚目、上のグラフが一般労働者、名目が青、実質が赤ということになります。二〇一〇年を一〇〇とした指数で見ますと、名目賃金、青は少し上がっておりますが、実質賃金は八七・一から八四・一まで三ポイント下がっている。内閣府がパートと一般労働者を分けて分析したその分析によっても、一般労働者が単独で実質賃金が落ちているというのが結果であります。

 ですから、パートがふえたから実質賃金が下がったというのは成り立たないんです。しかも、パートだけで見ましても、パートは名目も下がっている、実質ももちろん下がっている。

 ですから、総理、パート労働者が実質賃金を押し下げているのではなくて、パートはもちろん、一般労働者も実質賃金が下がっている、これが事実じゃないですか。これをお認めになりますか。

石原国務大臣 総理の御答弁の前に、これは大変貴重な資料だと私も認識しておりまして、というのは、やはり一般労働者とパートが分かれているところでございまして、一般労働者が相対的に下がっている、実質でございますけれども、考えられる理由は、やはり、高額所得者の方が抜けて、六十歳からまた任期つき任用とか、あるいはリタイアされる、そこのボリュームが大変多いという、働いている方……(藤野委員「そんなことないですよ、名目も上がっていますから」と呼ぶ)名目でございますか。名目については……(藤野委員「いや、ですから結構です」と呼ぶ)

 上がっていなくて下がっている、そこの部分は、総理が御説明になったことだと思います。

 パートの部分は、一つだけ言わせていただきたいのは、いわゆる働き方のシェアが変わってきている、働く時間が変わってきているということもぜひ御考慮に入れていただきたいと思います。

藤野委員 パートは時給で見るというのはわかっております。

 私が聞いているのは、パートとパートを除いた一般労働者だけで見ても実質は下がっているじゃないか、だから、パートがふえたから実質が下がっているというこの総理の説明、総理の答弁がおかしいんじゃないか、こういう質問です。

安倍内閣総理大臣 パート、プラス、働き始めた、パートではなくても、たとえ正規という形となったとしても、最初は当然、今までゼロだった人が働き始めている中において、これは低い賃金で働き始めるということも多々あるわけでありますから、それを平均すればそうなっていくということであります。

 そこで、我々が重視しているのは、総雇用者所得という中において、みんなの稼ぎで見た方が正しい数字が、経済の実態がわかるのではないかと思います。

 プラス、実質賃金においては、確かに名目と比べて実質について押し下げられているというのは、これは消費税を三%上げていますから、当然その分は削り取られていくわけでありまして、我々がこの政策を進めていく中においてしっかりと物価安定目標を上回っていく賃上げを確保していくけれども、しかし、三%の消費税分について追いついていくのは少し時間がかかる、こう申し上げていたわけであります。

 いずれにせよ、先ほど申し上げましたように、実質においても、この総雇用者所得においては、消費税引き上げの影響がなくなった昨年四月以降は増加傾向となっているわけでございます。

藤野委員 傾向をおっしゃられても無駄なんですね。マイナスなんです。明確にこれは下がってきているわけです。

 そして、私の質問は、パートを含め、パートによって実質賃金が下がっているというのはおかしいということです。ですから、この点は否定できない。内閣府の資料です。ですから、これは否定できない。もうこれからはこういう答弁はしないでいただきたい。

 そして、これもお聞きしますが、今、収入ゼロだった方が働き始めれば世帯収入がふえるみたいなことをおっしゃいましたが、世帯収入も減っていますよ。世帯収入、総務省の家計調査で見れば、名目は確かにいろいろありますけれども、実質はやはり減っているんです。総理、実質を見ないと。

 今、消費税を上げたことによる物価上昇は大きいとおっしゃいました。そのとおりです。まさにその影響もあり、さまざまなことによって実質が悪化している。これがそれを示しているんです。

 そして、総理、もう一つお聞きしたいと思います。

 総理は、本会議などの答弁で、この安倍内閣の三年間で雇用がよくなったと。具体的には、正規雇用がプラスに転じたとよくおっしゃいます。まず、それをちょっと確認したいと思うんです。

 総務大臣、安倍内閣の三年間という場合に、これはいつからいつまでなのか、そしてその期間中の正規雇用、非正規雇用の増減、それぞれお願いします。

高市国務大臣 政権交代が行われた四半期の直前である二〇一二年七―九月期から二〇一五年七―九月期までの三年間ということでございます。

 正規雇用者は二万人増加し、非正規雇用者は百四十二万人増加しております。

藤野委員 今答弁いただきました。二〇一二年七―九から二〇一五年七―九で、労働力の変動は、正規雇用の増加はわずか二万人、そして非正規が百四十二万人ということであります。圧倒的にふえているのは非正規雇用ということであります。

 しかも、ほんの少しプラスになった正規雇用ですが、今後どうなるか。

 きょうから十日余り後の二月十六日に、十月から十二月期の労働力調査の詳細集計が発表されると思います。

 配付資料の一枚目に戻っていただきますと、その推移を紹介させていただきました。

 これは、赤い線が、先ほど高市大臣が御答弁いただいた数字。これは正規ですから、ちょっと載っていないんですけれども、詳細集計の方であります。

 改めて、総務大臣にお聞きします。

 十月―十二月はまだ出ていないんですが、見込みで結構です。この赤い方の詳細集計の正規雇用の数はどのように推移するか。減る見込みじゃないんですか。見込みだけで結構です。

高市国務大臣 二月十六日に公表予定の詳細集計、この結果の数値に関することは、市場への影響も与える可能性もございますので、見込みであってもコメントを述べることはできません。

藤野委員 私、資料で紹介させていただいておりますが、青い方は基本集計と申しまして、赤い方が詳細集計。青い方がちょっと足りないのは、基本集計をとり始めたのが二〇一三年一月からなんですね。

 ですからなんですけれども、見ていただいたらわかるように、上に常に青いグラフがあることになります。そして、今回、十日後に発表される詳細集計が必ず下にある。今まで十一回統計をとっていますが、必ずそうなる。これは、青い方の集計から、一部の自衛官や一部の刑務所の働いている方などが除外されるからなんですね。統計のとり方が違うから、構造上の理由であります。ですから、よっぽどのことがない限り、このグラフで点線にしておりますけれども、基本集計よりも下回るという見込みが確実なんですね。

 総理、七―九月期よりも、安倍内閣の三年間といった場合は、私、十―十二の方が近いと思うんですね。それで、十―十二で見ますと、ここにありますように、三千三百三十、これが二〇一二年の十―十二月期です。そして、十日後に発表されますが、基本集計より恐らく下がるであろう。これを見ますと、三千三百十六から、若干ぶれはあると思いますが、そういう数字になる。

 ですから、これはマイナスになるんです。総理、あと十日で、プラスに転じたと言っていた数字がマイナスに転じることになる。総理、これはそう思いませんか。お認めになりますか。

安倍内閣総理大臣 先ほどの実質賃金において、総雇用者所得では増加傾向と申し上げたんですが、増加傾向なんですが、これはプラスになっているということは申し上げておきたいと思います。

 そして、今御下問の正規雇用労働者でございますが、これは、おっしゃるように、政権交代が行われた四半期の直前である二〇一二年七月―九月期から三年間で、正規雇用労働者が二万人のプラスとなったというふうに申し上げたわけであります。

 たった二万人ではないか……(藤野委員「たったとは言っていません」と呼ぶ)二万人ではないか。確かに少ないんですが、その前の民主党政権時代の七―九は五十九万人減っているわけでありますから、マイナス五十九万人からプラス二万人にまでは来た、こういうことでございます。

 そして、政権交代期を含む十―十二月期で比べるべきだ、こういうお話でございますが、これは、今月には二〇一五の十―十二月期や二〇一五の歴年の詳細集計の結果が公表されるわけでございますので、この結果をよく分析していきたいと考えております。

藤野委員 これは、十日後にはマイナスに転じるのはほぼ確実であります。ですから、今まで、衆参の議会で、答弁で、プラスに転じた、プラスに転じたとおっしゃってまいりましたが、これは言えなくなってしまうということを踏まえて、これから御答弁いただければと思います。

 そしてさらに、安倍総理は、好循環が生まれているということも答弁されております。しかし、その循環といった場合、やはり日本経済の六割を占めている個人消費が温まらなければ、ふえていかなければ、好循環というふうには言えないというふうに思うんです。

 それで、この三年間で、個人消費、実質GDPで見てどうなったか。石原大臣、お答えください。

石原国務大臣 名目GDPの話は、もう総理がされました。実質も十二兆ふえております。消費の方でございますけれども、この二〇一五年の七月期と政権発足時を比較いたしますと、ほぼ同水準ということでございます。実質でございます。

藤野委員 リアルな実数でお答えください。

石原国務大臣 デフレ状態ではなくなっている中で、委員御承知のとおり、消費税の増税というものも国民の皆様方にお願いをいたしました。

 そんな中での実質の具体的な数字でございますが、先ほどのお答えと同じように、政権発足時、三百八兆三千億円。一五年の七月―九月で見まして三百七兆七千億円でございます。

藤野委員 ですから、横ばいと言いますけれども、減っているわけですね。消費税増税前と比べても、あるいは、いろいろな切り方はありますけれども、やはり全体としては、お配りしてはおりませんが、傾向としては減ってきている。

 総理、やはり、好循環と言うには、日本経済の六割を支えている個人消費が三年間下がってきているという事態をしっかり直視する必要があると思うんですね。

 そして、七―九で今お尋ねをしました。これも先ほどと同じように、十―十二で見たらどうなるか。これも実はまだデータは発表されておりません。二月十五日ですから近く発表されるわけですが、ほとんどの民間シンクタンクはマイナス成長を予想している。ほとんどです。しかも、ほぼ全てが、個人消費の落ち込みというのをそのマイナスの理由に挙げている。総理、ですから、個人消費はさらに落ち込む、こういう見通しであります。

 総理、重ねてお聞きしますが、日本経済の六割を占める個人消費が落ち込んでいる以上、好循環とは言えないんじゃないですか。どうですか。

石原国務大臣 客観的な数字だけ、総理の御答弁の前にお答えさせていただきたいと思います。

 これも委員御承知のことだと思いますが、昨年の冬を思い出していただければわかりますように、七十年ぶりの暖冬。この暖冬要因というものは、エネルギー、あるいは暖房器具、衣料、この個人消費の大変有用なファクターのところに作用するという事実があるということもぜひ御理解いただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 私も、確かに、委員がおっしゃるように、好循環を回していく上においては、消費がしっかりと出てくることが大変重要だと考えております。その意味におきましては、消費の動向ということについては注視をしていきたい。

 我々は、しっかりとこの企業の最高の収益が賃金あるいは投資に回っていく、また、取引条件等々の改善が行われ、経済の好循環の輪が広がる中において、成長と分配の好循環をつくり出していきたいと考えております。

藤野委員 今、総理も個人消費は重要だとおっしゃいました。では、なぜ消費税増税なんだということになるわけです。個人消費に一番打撃を与えるということになってまいります。とりわけ、多くの中小業者や、あるいは本当に困っている方に打撃を与える。

 総理にお聞きしたいんですが、この痛みについて、先ほどもちょっと御指摘がありましたが、総理はどう説明していたか。

 衆議院の当委員会、一月、我が党の宮本徹議員に対して、総理やあるいは麻生大臣は、一世帯当たりの負担額は三万五千円、一人当たりは一万四千円、こう答弁されていました。ところが、参議院で我が党の小池晃議員の指摘を受けて、この額を大きく変えた。一世帯当たり三万五千円から六万二千円、一人当たり一万四千円から二万七千円と、実に二倍近い。実は国民に与える痛みが二倍でした、こういう説明であります。私はびっくりしました。

 多くの国民は、総額四・五兆円と言われても、なかなか実感が湧きません。一世帯当たり幾らとか、一人当たり幾らと言われて初めてぴんとくるわけです。その肝心かなめの説明が間違っていた。

 しかも、これはちょっと麻生大臣に確認したいんですが、このことをやはりしっかり知っていた、認識していたということであります。

 配付資料でお配りしておりますが、三枚目であります。この負担額、さまざまな場合があり得るということを、与党がいろいろ協議するときに財務省から資料提供を受けます。この資料は、十月二十九日に与党税調に財務省が提出した資料であります。私のところに持ってきていただきました。

 麻生大臣に確認したいんですが、こうした資料に基づいて、一〇%の場合の負担額や括弧つき軽減、こういうものについて昨年から議論していた、検討していた、間違いないですね。

麻生国務大臣 これは小池先生のときにも御説明申し上げましたし、先ほどどなたかの御質問にもお答えしたと記憶をいたしますけれども、少なくとも、統計資料のもとになりますものからはじき出す分析が違ってくる。サンプルでとってきたものと消費税総額でとったものとの違いが出てきたということだと思います。階級別のものを出せと言われると、サンプル数の方でとらざるほかにありませんので、そちらを引用する。

 だから、こちらで引用しましたということを説明しなかったというところに問題があるんだ、最初からそう思っております。

藤野委員 これは、単に計算方法の違いとか説明がまずかったということじゃないと思うんです。昨年十月の段階で、この三つの試算を全部していたということです。

 軽減額の方は何か大きく見せようと、軽減しています、一兆円ですと、この三つの上で一番上で説明するわけですね。ところが、国民負担額になったら、余り負担はありませんみたいな形で、一番下の方で説明する。これではやはり納得できないと思うんですよ。

 いろいろ言いながら知っていた、知っていながら、この衆議院の、まさに当委員会で、低い方で説明していた。とんでもない話だと思うんです。

 総理、ちょっとお聞きしたいんですが、総理は軽減税率について、痛税感の緩和とよくおっしゃいます。庶民に寄り添った表現だと思いますが、ところが、緩和する前の痛税感そのものの説明が違っていた、こういうことになります。痛税感、国民に与える痛みが倍だった、しかもそのことを知っていた。

 総理、これは非常に責任が大きいんじゃないですか。負担をお願いする国民に対する責任、間違っていた、責任をお認めになりますか。

安倍内閣総理大臣 これについては、ただいま麻生副総理から、財務大臣から答弁させていただいたんですが、御質問が、所得階層別にどうなるかという御質問があったものでございますから、いわば一兆円全体を割っていくという方式ではわからないわけでございまして、いわば実績による一兆円から導き出す一人当たりとは違う形で、サンプルでとっている家計調査からとってきたわけでありまして、その結果、約半分になってしまった。

 これは、そのときはむしろ、痛税感を緩和するにおいては、たった一日十二円ですか、十二円じゃないかという、いわば批判を……(藤野委員「二十二円です」と呼ぶ)いや、二十二円ではなくて、最初は十二円と言ったんですが、十二円ではないかという批判をされたわけでありますから、これは小さく見せると逆になったわけでありますから、そういう意図は全くむしろなかったわけでございまして、そこのところでは、サンプルからとったものと性格が違うものであったということでございまして、要求に対して応えるには、そのときはそれしかなかったということでございます。

藤野委員 責任を認めようともしない、これは本当にひどいと思うんですね。国民に負担をお願いする立場ですよ。その額が倍だった、しかも知っていた。とんでもない話だと思います。

 こういうのを聞きますと、総理は国民の消費の実態を御存じなのかと。その実態を知っていれば、こんな無責任な答弁はできないと思いますよ。

 資料でお配りしてはいませんけれども、連合総研が非正規労働者を対象に行ったアンケートがございます。こちらにあるものですけれども、これを見ますと、本当にリアルな消費の実態というのがわかります。

 例えば、この一年間に生活苦のために行ったこと、これを伺ったところ、食事の回数を減らした、これが何と二割を超えたんです。所得二百万円以下の場合は二五%、四人に一人であります。連合総研の調査ですから、そういう意味では、本当に大変な実態が今消費の実態に広がっている。

 総理はよく、先ほどもおっしゃいましたが、雇用が百十万人以上ふえたと。しかし、その多くは非正規雇用なんです。その非正規雇用の二割以上が食事の回数をこの一年間減らしている。総理、この深刻な実態をどのようにお感じになりますか。

安倍内閣総理大臣 我々、政権をとって以降、働き盛りの年齢層を見ますと、正規から非正規に移る方よりも非正規から正規に移る方はプラスになっております。

 同時に、まさに今回、我々、同一労働同一賃金にも踏み込んでいくことなども含めて、非正規と正規の格差をなくしていこう、なるべく非正規雇用労働者の方々の労働条件の改善を図っていきたいと思っておりますし、また、最低賃金におきましては、この三年間で五十円という大幅な引き上げも行っているわけでございまして、その結果、パートの方々の時給も上がっているということではないかと思っております。

藤野委員 私がお聞きしたのは、消費の実態であります。賃金がどうとか最賃がどうとかじゃなくて、消費税の影響などでそいつが吹っ飛んだもとでの消費の実態をお聞きしているわけです。それを本当に、総理はふえたとおっしゃる非正規のところで非常に大きな影響を与えている、このことをぜひ認識していただきたいと思うんですね。

 そして、先日、私は、地元の一つであります長野県で、暮らしに困っている方から直接お話を伺ってまいりました。もう食事の回数を減らすのは当たり前だ、ぽんと言われました。そして、食事の中身、炭水化物中心で、うどんとかカップラーメンとかですね。多くの方は病気を抱えているんですが、お医者さんからは、バランスのいい食事をとりなさい、こう言われるんだけれども、どうしても炭水化物中心になっちゃう、野菜は高くて手が出ない、こういうお話もお聞きしました。

 ある母子家庭のお母さんは、食べ盛りの中学二年生の娘さんのために必死でやりくりしている、それでどうしようもない、頑張ってもどうしようもない。それで、近くの畑で収穫後の大根の葉っぱが捨てられてある、これを拾ってきて油いためにして食べています、こういう話でした。また、一年に一度、ぜいたくで子供に回転ずしを食べさせた、しかし、回転ずしに行っても、食べるのは子供だけで自分はお茶を飲んでいる、こういうお話でありました。

 昨年末、朝日新聞に、「子どもと貧困 シングルマザー」の連載が載りまして、読んだ方も多いと思うんですけれども、その一番目は、実は長野県のシングルマザーを紹介しております。長野県に住む女性、長女九歳、次女八歳。おなかをすかせた二人は、当時、女性に隠れてティッシュペーパーを口にした、ティッシュって甘いものもあるんだよ、いい香りのするもらい物のティッシュがそうだと後になって長女が教えてくれた、次女はティッシュに塩を振ってかみしめた。

 総理、こういう実態は広がっております。私が直接聞いた方々はこうおっしゃっていました。総理に会ったら言ってほしい、安倍総理は、消費税が上がることが私たちの命にかかわることだということが想像できるんだろうか、人間の尊厳を保てないような生活になることが想像できるんだろうか、私はそう言われたんです。

 総理、この声をどう受けとめられますか。

安倍内閣総理大臣 今回引き上げていく消費税については、これはまさに社会保障の充実のために対応していくための財源となっていくわけでございます。いわば、子育て支援、そしてまた社会保障の充実であるわけでございます。また、もちろん、セーフティーネット全体もしっかりとしたものとして維持をしていかなければならないわけでございます。そうしたことも含めて、今回の消費税の引き上げについて御理解をいただきたい、こう思っております。

 しかし、そういう中において、今委員がおっしゃったような人々がいるということについてもちゃんと目配りをしていかなければならない、このように思っております。

藤野委員 やはり、社会保障のためとおっしゃいましたが、社会保障の財源として一番ふさわしくないのがこの消費税だと思うんです。一番困っている人に一番打撃になる消費税、しかもそれを上げようというんですから、そういう声が出てくるのは私は当然だというふうに思うんです。

 税金というのは負担能力に応じて納めていただく、当たり前の原則に立って、例えば、アベノミクスで大もうけしている大企業や富裕層にもうけに応じた負担を求める、このことによって社会保障を充実していくことが今求められている。貧困と格差を広げる消費税一〇%増税はきっぱり中止すべきだと強く求めたいと思います。

 その上で、次に、原発政策についてお聞きをいたします。

 一月二十九日に、福井県の高浜原発三号機が再稼働いたしました。私は北陸信越ブロックで選出いただいておりますので、福井県は地元の一つであります。何度も高浜にも行って、地元の方々から、業者の方などにもお話を伺ってまいりました。

 地元では、やはり避難計画の問題、活断層の問題、地元の同意、そして、あそこは集中立地しております、同時多発事故が起きたらどうなるのか、いろいろな問題が何の解決もないままの再稼働、大変な不安、許されないという声が起きております。

 高浜三号機というのは、プルサーマル発電を行う原発でもあります。また、四号機もプルサーマル発電で、既に燃料を装填し始めている。次に審査されております愛媛県の伊方原発三号機もプルサーマルであります。

 配付資料の四枚目を見ていただきたいんですが、プルサーマル、これはプルトニウムとサーマルリアクターを足して二で割った日本の造語であります。「もんじゅ」のような高速増殖炉ではなく、普通の原発、軽水炉でいわゆるMOX燃料を使う、ウランやプルトニウムをまぜた燃料を普通の原発で使っていくというのがプルサーマルであります。

 御存じのように、当初は、「もんじゅ」、いわゆる高速増殖炉サイクル、右側の方が、いわゆる夢の原子炉として目指されていた。しかし、その「もんじゅ」が、もう誰が見ても行き詰まってしまった。こういうもとで、左側のプルサーマルが突如主役になってきたというのが経過でございます。

 経産大臣にちょっと確認したいんですが、プルサーマル実施計画というのがあると思います。何年までに、何基の原発でこのプルサーマルをやるのか、ちょっと御答弁ください。

林国務大臣 プルトニウムの利用につきましては、二〇〇三年八月、原子力委員会が、「我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方について」という決定を行っています。

 この決定において、利用目的のないプルトニウム、すなわち余剰プルトニウムを持たないとの原則が示されていまして、この方針は現在も変わりません。また、この決定においては、電気事業者が策定するプルトニウム利用計画の妥当性を原子力委員会が確認することとしています。

 御指摘のように、プルトニウムの具体的な利用につきましては、電気事業連合会がプルサーマルによりプルトニウムを利用する計画を策定しています。

 二〇一〇年九月に電気事業連合会が公表したプルトニウム利用計画では、二〇一五年度までに、十六から十八基の原子炉で、MOX燃料として年間五・五トンから六・五トンのプルトニウムを利用するということとしております。

 この計画のうち、二〇一五年度という時期については見直す、また一方、十六から十八基の導入を目指すとの考えには変わりはないとしているものと承知しておるところであります。

 さらに、原発の再稼働の見通しや六ケ所再処理工場の竣工の見通し等を踏まえて、実際に六ケ所再処理工場が操業を開始するまでの間に新たなプルトニウム利用計画を策定、公表することとしています。これにより、利用目的のないプルトニウムを持たずに、プルトニウムの適切な管理と利用を行っていくとの政府方針は堅持していくことになっております。

藤野委員 長々と答弁ありましたが、私が聞いたのは、二〇一五年までに十六基から十八基、プルサーマルで発電するというのが計画なんですね。もう二〇一六年であります。全然計画が達成できていない。

 そもそも、何で十六から十八かといいますと、先ほど言いましたように、「もんじゅ」がだめになってしまった、どうしよう、軽水炉で回すしかないということで、そういう数字が出てきたと思います。

 先日、私は青森県の六ケ所村、再処理工場へ行ってまいりました。ここがもし動き出しましたら、年間八トンものプルトニウムが出てくる。先ほど五・五と言いましたけれども、それを上回るプルトニウムが出てくるんですね。

 つじつまを合わせるために、二〇一五年には十六から十八を動かしたいと言っていたけれども、それすらできない。しかし、それに追いつきたいということで、今、高浜三号機や四号機、そして伊方三号機と、プルサーマルを相次いで早目にやろうとしているということだと思います。つじつま合わせのためにそういうことをやるというのはとんでもない、許されないと思うんですね。

 しかも、このつじつま合わせも破綻している。配付資料の左側を見ていただきますと、軽水炉サイクルですが、軽水炉だけでは回りません。例えば中間貯蔵施設、これも未完成であります。あるいは再処理工場、これも二十三回も延期をいたしました。MOX燃料工場、まだできておりません。さらに、高レベル放射性廃棄物処分施設も未定であります。

 仮にこれらが全部完成したとしても、先ほど言ったように十六基から十八基原発を動かさなきゃいけないけれども、今まだ一基しかない。今、MOXを使ってもいいよと言って手を挙げている規制委員会審査中の原発は、わずか九基であります。ですから、厳しいと皆さんがおっしゃっている審査を全部この九基が通ったとしても、十八基には到底届かない。結局、全部完成したとしても、使う見込みがないわけです。しかも、使ったら使ったで、使用済みMOX燃料という厄介なものが出てくる。これをどうするかというのも決まっていない。

 私、八方塞がりというのはこういうことだと思うんですね。

 実は、日本だけでなくて、アメリカでも同じような問題が起きて、アメリカでもいろいろな動きがあります。

 アメリカでは、MOX燃料製造工場というのをつくろうとしておりまして、この間やってきたわけですが、二〇〇二年段階で十・五八億ドルと見込まれていた建設費、運転費を除く建設費、これが二〇一四年には七十七・八億ドル。何と七倍以上にふえました。しかも、それだけのお金をかけてMOX燃料をつくったとしても、アメリカで原発会社が、そのMOX燃料を使っていいよというのが一つもないんですね。手を挙げてくれない。七倍のコストをかけてつくりますから、当然燃料としても高い。何でそんな高いもので発電しなきゃいけないんだと。当然だと思います。

 配付資料の五を見ていただきたいんですが、オバマ政権もこの間、動きがあります。

 二〇一四年の段階では、オバマ政権は、現在のプルトニウム処理アプローチは、コストの上昇と財政難のために負担し切れないかもしれないと。負担し切れないかもしれない、ちょっと腰が引けているわけですね。ところが、二〇一五年になりますと、はっきり、建設中のMOX燃料製造施設とその関連施設を凍結状態、コールドスタンバイというふうにして、今、連邦議会などでこのMOXプロジェクトにかわるさまざまな代替手段が検討されている、こういう状況であります。

 総理にお聞きしたいと思うんですが、これは大変な国家プロジェクトであります。アメリカでもこういう認識に到達して、事業を凍結状態にして、いろいろな議論を始めております。日本でもやめるべきじゃないですか。何でやめると言わないんですか。総理、お願いします。

林国務大臣 アメリカは、核兵器を処分するための方策として、再処理も含め検討されているものと承知しておりまして、したがって、我が国とは事情が異なりまして、単純な比較はできないものと考えています。

 なお、我が国のMOX燃料加工工場は、現在、原子力規制委員会によって新規制基準への適合性審査が行われているところでありまして、引き続き、事業者には真摯に厳格に審査に対応していただきたいと思っております。

 いずれにしても、使用済み燃料の処理については、それぞれの国の実情に応じて対応がなされているものと認識しています。

藤野委員 それぞれの国の実情に応じてと言うのなら、先ほど言いましたように、日本はもう八方塞がりであります。政治決断のときだと私は申し上げているんです。

 そして、日本に対しての海外の目というのも大変厳しくなっている。

 国防次官補などを歴任した、対日政策、対日のプロとも言われるジョセフ・ナイ氏ら米高官十四名が昨年九月に、六ケ所村でのプルトニウム再処理を延期するように日本を説得するべきだ、こういう提言をアメリカのエネルギー庁長官に行っている。林大臣のような人にジョセフ・ナイさんのような人が、日本の再処理を延期させろ、こういうふうに言っているわけですよ。それほど日本の再処理に対する警戒の声がアメリカでも強まっている。

 これはなぜだと私は思うんですね。再処理をすれば何が出てくるか。プルトニウムという大変危険な物質が出てくるわけであります。このプルトニウムをめぐって日本は本当に八方塞がりの状況になっている、だから世界の目が厳しくなっている、こういうふうに思います。

 再稼働すれば使用済み燃料が出てくる。この核のごみを処理する工場は、先ほど言ったように動いていませんが、動いたとしても、今言ったプルトニウムが出てくる。しかし、プルトニウムを燃やすんだと言っていた「もんじゅ」は頓挫しているし、軽水炉、プルサーマルも先ほど言ったような状況です。アメリカもやめようと言っているんです。

 総理、答弁をお願いしたいんですが、結局、日本がやめられないのは、もしこのサイクルが破綻しているということを認めると、原子力政策全体、これがもう推進できなくなってしまう、こういうことだからじゃないですか、総理。総理、答弁をお願いします。

林国務大臣 そのような仮定の話にお答えするのが適正かどうかわかりませんけれども、現在、川内原発一、二号、昨年再稼働しました。先日再稼働した高浜原発三号機は、MOX燃料を使用して、委員指摘のようにプルサーマルを実施しているところでございます。このほか、現在二十三基の原発が原子力委員会による審査を受けているところであります。

 今後、審査が進めば、新規制基準に適合すると認められる原発がふえていくことが見込まれるわけでありまして、これに伴いまして、プルサーマルを実施する原発の再稼働もふえていくものと見込まれるわけでございます。

 いずれにしても、政府としては、利用目的のないプルトニウムを持たないとの原則を堅持することは当然でありまして、具体的には、電気事業者がプルトニウム利用計画を策定して、妥当性を原子力委員会が確認する仕組みのもと、取り組みを進めることにしております。

安倍内閣総理大臣 核燃料サイクルについては、直面するさまざまな技術的課題やトラブル、問題点を明らかにした上で、一つ一つ解決しなければならないと考えています。

 その上で、核燃料サイクルは、高レベル放射性廃棄物の量の減少、そして放射性レベルの低下、資源の有効利用などに資するものであり、引き続き、自治体や国際社会の理解を得つつ取り組んでいく考えであります。

藤野委員 まず、大臣、仮定の話と言いましたけれども、私は事実ばかり言っているんです。仮定というのは、先ほど大臣が言った、二〇一五年までに十六基から十八基、こっちの方がよっぽど仮定ですよ。もう二〇一六年なんだから。

 しかも、二十三基審査を受けていると言いましたけれども、その二十三基のうち、プルサーマルをやっていいよ、大変危険だけれどもやっていいよというのは九基だけなんです、さっき言ったように。ですから、とんでもない答弁だというふうに思います。

 そして、ごみの減容化、いろいろおっしゃいましたけれども、総理、初めは増殖だったんです。減容じゃないんです。減らすんじゃないんです。ふやすと言っていたんです。それができなくなった後づけで今いろいろなことを言っていますが、もう既に破綻しているというところを認めなきゃいけないし、これは本当に、このまま続ければとんでもない話になってくると思うんです。

 そして、それに関連してお聞きしたいんですけれども、先ほど言ったように、この核燃料サイクルというのは、プルトニウムサイクルと言ってもいいと私は思うんですね。そして、プルトニウムというのは、この世の中で最も危険な物質の一つであります。長崎に落とされた原爆の材料はプルトニウムでありますし、人体の肺に取り込む限度というのは四千万分の一グラムと、想像できないほど危険なものだ。危険な物質ですから、世界がなくそうとしている。

 この間、オバマ大統領のイニシアチブで、核セキュリティーサミットというのがもう三回開かれております。三回目の二〇一四年、オランダ・ハーグで開かれたサミットには総理も行かれていると思いますが、まさにこのプルトニウムをどうするかというのがメーンテーマになりました。

 これは島尻大臣になるのかもしれませんが、日本も、先ほど林大臣がおっしゃったんですが、余剰プルトニウムを持たないということが原則だと思いますが、改めてちょっと確認したいと思います。端的にお願いします。

島尻国務大臣 お答え申し上げます。

 平成二十六年四月に閣議決定いたしましたエネルギー基本計画にあるとおり、我が国は、平和利用を大前提として、利用目的のないプルトニウムは持たないとの原則を引き続き堅持する、そして、プルサーマルの推進等によりプルトニウムの適切な管理と利用を行うということを明確にしてございます。

 我が国は、IAEAにより、プルトニウムを含む全ての核物質が平和的活動下にあるとの評価を得ているところでございます。また、原子力委員会が発表いたします「我が国のプルトニウム管理状況」によりまして、国際的な指針よりも詳細な情報を公開するなど、核物質の透明性を適切に確保しているところでございます。

藤野委員 今確認しましたように、余剰プルトニウム、余ったプルトニウムを持たないというのが日本の原則であります。

 しかし、日本は国内外で何トンのプルトニウムを今保有しているか。大臣、これは端的にお願いします。

島尻国務大臣 内閣府は、プルトニウム利用の透明性の向上を図り、国内外の理解を得るということが重要であるとの認識に基づいておりまして、平成六年より毎年、使用及び保管されている分離プルトニウムの管理状況を公表するとともに、IAEAに報告を行っております。

 平成二十七年七月でございますけれども、最新のこの報告によりますと、平成二十六年末時点における国内外の分離プルトニウムの総量は、約四十七・八トンとなってございます。

藤野委員 四十七・八トンです、総理。余剰は持たないと言いながら、四十七・八トン。これはとんでもない数だと思うんですね。しかも、この四十七・八トンは使う当てが全くない。先ほど言いましたように、「もんじゅ」は動いていませんし、プルサーマルも見通しがありません。

 総理、これは端的にお聞きしたいんですが、総理は第三回核セキュリティーサミットでこうおっしゃっています。時間の関係で配付資料を御紹介させていただきたいと思いますが、ここで総理は、「一つ目は、サミットの議題の中核である核物質の最小化と適正管理です。」そして、飛ばしていただきまして、「今後も、同様の考え方で、これらの核物質の最小化に取り組んでいきます。」と。これは総理の発言であります。つまり、これはもう国際公約だと思うんですね。

 総理、お聞きしたいんですが、最小化と言いますが、既に四十七・八トン持っていて、減らす見込みがない。これは減っていかないんじゃないですか。

安倍内閣総理大臣 核物質の最小化とは、一般に、利用目的のない核物質については、その保有量を最小にするよう努めることを意味するわけでありますが、ハーグで行われた核セキュリティーサミットで、私は、自分のステートメントにおいて、米国の協力のもと、研究炉の一つである、日本原子力研究開発機構にある高速炉臨界実験装置で使用してきた高濃縮ウランと分離プルトニウムを全量撤去し、米国へ移転することなど、核物質の最小化に取り組むことを表明しました。

 これに対してオバマ大統領が、閉会式でこの日米の合意に特に言及をし、核セキュリティーサミットの成功につながる大きな成果とするなど、国際社会からも高く評価されたところでございます。

藤野委員 今おっしゃったように、いわゆる高濃縮ウランとプルトニウムをアメリカに返したということがたしかありました。

 これは文科大臣にお聞きしたいんですが、この返したと言われるプルトニウムの量は幾らですか。

馳国務大臣 日米共同声明において輸送対象とされている高速炉臨界実験装置のプルトニウムの量は、三百三十一キログラムであります。

藤野委員 三百三十一キログラムであります、総理。わずか三百三十一キログラム。

 先ほど言いましたように、青森県の六ケ所村、これが動けば、年間八トンのプルトニウムが出てくる。八千キログラムであります。二十四倍。しかも、全国には既に一万七千トンの使用済み核燃料がある。これを再処理すれば、大体百六十トンから百七十トンのプルトニウムが出てくる。

 しかも、総理は、二〇三〇年の原発比率、これを二〇から二二にするという形で、今再稼働を進めている。そうなれば、また使用済み核燃料が出てくる。

 総理にお聞きしたいんですが、最小化するといいますが、プルトニウムはふえていくんじゃないですか。どうですか。

林国務大臣 プルトニウム利用計画では、十六から十八基の原子炉で、MOX燃料として年間五・五トンから六・五トンの核分裂プルトニウムを利用することにしております。一方、六ケ所再処理工場がフル稼働した場合、年間四トン強の核分裂性プルトニウムが発生します。

 したがって、計画が適切に実施されれば、プルトニウムの消費が供給を上回ることとなり、核分裂性プルトニウム三十二トン、着実に減っていくことになります。

藤野委員 確実に減っていく。大変な答弁だと思います、今のは。全く見通しがないわけですよ。本当に今のはびっくりしました。

 総理、本当に、こういう話ではなくて、今アメリカでは、日本のふえ続けるプルトニウムに対する懸念が強まっております。

 先ほどに加えてもう一つ紹介したいのは、日米原子力協定をめぐる動きであります。

 今の日本の核燃サイクルの土台になっているのがいわゆる日米原子力協定ですが、これが二〇一八年七月には期限を迎える。どうするんだと、アメリカでも当然議論が始まっております。

 その中で最も注目を集めているのは、日本のふえ続けるプルトニウムを一体どうするんだという話であります。

 例えば、米大統領補佐官、科学技術担当のジョン・ホルドレン氏は、二〇一五年、昨年の朝日新聞のインタビューでこう言っております。日本は既に相当量のプルトニウムの備蓄があり、これ以上ふえないことが望ましい、分離済みプルトニウムは核兵器に使うことができ、我々の基本的考え方は、世界における再処理は、多いよりは少ない方がよいというものだというものであります。

 そして、アメリカだけではありません、世界的に核兵器廃絶を目指している国際的な科学者グループであるパグウォッシュ会議、このパグウォッシュは、一九九五年にはノーベル平和賞を受けた科学者のグループでありますが、同じく昨年十一月、いわゆる使用済み燃料の再処理中止を求める声明を出したんですね。今まではこのパグウォッシュ会議は、中止までは踏み込まずに懸念を表明するレベルだったわけですが、今回初めて中止に踏み込んだ、再処理やめろと。これはやはり、それだけふえ続けるプルトニウムへの懸念というのが世界に広がっているということだと思うんです。

 総理にお聞きしたいんですが、二〇一八年に期限を迎える日米原子力協定、これは核燃サイクルの土台であります。これは、この際やめるべきじゃないですか。どうするんですか。

岸田国務大臣 まず、我が国のプルトニウムの需給に関する見通し、計画については、先ほど経産大臣から説明がありました。

 それとあわせて、我が国は、世界に対してプルトニウムの透明性をしっかりと示していく、この重要性を認識して、我が国は取り組みをあわせて進めております。

 IAEAの保障措置、これは極めて厳格な保障措置を我が国は受けた上で、これは平和活動であるという結論を得た上で、我が国独自の措置を加えて透明性を確保していく、こういったことで、この現状を、世界に対する説明責任を進めています。

 その上で、今御指摘がありました日米の原子力協定ですが、引き続き、この現状の中で、米国としかるべき検討、交渉を続けていくことになると認識をしています。

藤野委員 私は、これはアメリカの懸念がこれだけ高まっているわけですから、本当に、日本の現状を踏まえて、この原子力協定はもうやめるべきだと思います。

 最後になりますけれども、ことしはあの東電の福島第一原発事故から五年目の節目の年であります。世界的にも、チェルノブイリ原発事故からは三十年目。原発と人間社会は共存できない、これがやはり福島とチェルノブイリの私は教訓だというふうに思います。

 先日、福島県に参りました。いわき市で楢葉から避難してこられている方々からお話を聞く機会がありました。楢葉の水源というのは木戸ダムというんですが、この木戸ダムの水、安全なのか、政府は、上澄みをすくうから大丈夫だ、こう言うけれども、とんでもない、あのダムの水でミルクをつくって子供たちや孫たちに飲ませられるのか、こういう声を寄せられました。別の方は、このつらい思いをほかの人に味わわせたくないと涙ながらにおっしゃいました。もう忘れられません。

 総理、やはり、福島の声に寄り添うというのであれば、原発の再稼働や核燃サイクルの推進、あるいは原発の輸出、こういうのは本当に真っ向から反すると思います。原発ゼロの決断こそ福島の教訓を生かすことだと強く訴えまして、私の質問を終わります。

竹下委員長 これにて藤野君の質疑は終了いたしました。

 次に、足立康史君。

足立委員 おおさか維新の会の足立康史でございます。

 予算委員会の基本的質疑も三日目。もうあと一時間足らずで終わりますので、いましばらくよろしくお願いいたしたいと思います。

 それにしても、この予算委員会、きのう、おとつい、そしてきょうの質疑、一部の野党の質問、もう本当に閣僚の皆様方には忍耐の二字、そういうところかと思います。心から御苦労さまと申し上げたいと思います。

 特に、きょうの午後、名前を挙げてなんですが、黒岩委員とか山井委員とか初鹿委員の質疑。言いがかりというか、揚げ足取りというか。本当は、最初に総理に無通告で、今名前を申し上げた三人の委員の質疑の中で何か特に得るところがおありだったかどうか伺おうかなと思いましたが、もうお疲れですので、やめておきたいと思います。

 我々、野党ということで頑張らせていただいていますが、そういう今申し上げたような質疑の中で、総理もさすがに堪忍袋は破れていないと思いますが、例えば野党の質問に対して、ばり雑言だとかデマゴーグであるとか、こういうことをおっしゃったと思います。私は、まだまだその総理のお言葉は弱いと思います。

 私は、うそつきだと思うんですね。

 例えば民主党。きょうも、それからきのうも、おとついも、民主党の委員の方は企業・団体献金について取り上げています。民主党の先生方は企業・団体献金を禁止しているんですか。何か法案をつくるとか、法案を提出するとか言っていますが、ちょっと答弁いただけますか。

 民主党の先生方は、自分たちの企業・団体献金を禁止することなく、いや、自分でできるんですよ。事実、我々おおさか維新の会は企業・団体献金をもう既に禁止しています。できます。何でやらないんですか。そういうこともやらずに、あたかも選挙に向けて企業・団体献金の禁止をするかのような法案を出すということを言うのは、これは私は、もうほとんどデマだ、うそだ、こう思います。

 それから維新の党。維新の党は、何かまた松野代表が身を切る改革、身を切る改革と言いますが、給与法に賛成したのは誰ですか。国家公務員の人件費二割削減と言ったその足元で国家公務員の給料を上げて、それに伴って日本じゅうの公務員の給料が上がります。

 私は、安倍政権が、あるいは政府・与党が、企業・団体献金は悪くないんだ、これは民主主義に必要なものなのであるということを総理筆頭に御答弁をされていることについて、それはもうはっきりと正面からそう言われているんだからわかりやすいです。我々は、それはやめた方がいいと言ってやめています。

 わかりにくいのは、おおさか維新の会以外の野党です。一体何がしたいのかわかりません。身を切る改革と言いながら給与法に賛成をする、企業・団体献金をもらいながら企業・団体献金を禁止すべきだと言う。

 そして、何より……(発言する者あり)何かそれで我々が自民党に行きたいとか、そういうしようもないことを言う人がいます。これは、政治家であれば、この場におられる先生方であれば一人残らずわかると思いますよ。我々は、小選挙区で自民党の議員と血で血を洗う戦いを繰り広げてきて今ここに立っているんですよ。それを何か、自民党に入りたいんだとか、そういうしようもないことを。自民党に入りたいんだったら、最初からおおさか維新の会はつくりません。そういうしようもない不規則発言はやめていただきたいと思います。

 総理、済みません。時間をとりましたが、いつものことなので御理解いただけるかと思いますが。

 私、初日、公明党の石田政調会長の質疑を聞いていてびっくりしました。大学の学費の値上げですね、こういう共産党のビラ。共産党の皆さん、見てくださいね、これ、共産党のビラ。お配りしている中では一番下についております。

 これはびっくりしましたね。初日の質疑で石田政調会長がこの問題を取り上げて、これは青年を惑わすひどいチラシだ、うそだ、デマだ、こういうふうに御指摘をされ、私もそう思います。そして、これは公党としていかがなものかということで追及をされて、直ちに公党としては責任を持って訂正をしていただきたいというふうにおっしゃったわけであります。

 私も実は大阪でも苦労しているんです、この手の話は。だから、これはもう本当に我が身のこととして、石田政調会長、公明党さんの御苦労に共感をしたものですから、きょうもう一度取り上げようということでお配りをしています。

 そうしたら、先ほどの石田政調会長の御指摘を受けて、さすが共産党は仕事が早い、即日修正をしておられます。これがその修正点でありまして、ちょっと小さいからわからないかもしれませんが、左上の「安倍政権が」という部分について、小さな字で「安倍政権のもとで狙われる」さらに、九十三万円のうそっぱちの数字については、またここに小さな字で、もう読めないですね、「財政審で示された方針にもとづいた試算」であると。大体、財政審で示された試算というのも間違っています。これはもう既に石田政調会長が詰め切っていただいているところでありますが。これは許せませんね。

 先生方、お配りしている資料の上から二枚目を見てください。

 去年の十一月の大阪ダブル選挙でばらまかれた数字です。要すれば、橋下知事が誕生して大阪府の財政は悪化をした、松井知事がそれを引き継いでさらに悪化をしたというグラフなんです。これを、大事な大事な大阪ダブル選挙の選挙戦において、またその事前運動と言ったら違反ですが、ばらまかれました。

 真実は、次のページを見てください。緑の部分がいわゆる臨財債というもので、個別の自治体の財政の問題ではありません。これは地方財政のマクロの問題、あるいは国がそこに一定の関与があるということだと思いますが、大事なことは、橋下知事、松井知事が取り組まれたのは、まさにこの緑以外の部分。大阪府が大阪府の努力でできることをやったんですよ。どんな思いでこれを大阪の維新の会が選挙戦を重ねながら実現したか、わかりますか。敬老パス、お年寄りの運賃についての自己負担を求めながらやったんですよ。それを、共産党、一部自民党の方も含まれていましたが。

 こういうのは許せませんよね、総理。これはちょっと、もしお考えがありましたら。

安倍内閣総理大臣 まずこの学費値上げ、共産党がこれを修正したことは、よく修正されたなと思いますが、しかし、修正した字が、私も老化によってこれはほとんど読めない。修正するなら、はっきりと修正をしていただきたいと思います。

 大阪府の借金の推移でございますが、先ほどもお触れになられましたが、我が党も御党と激しい戦いを繰り広げているわけでございまして、すぐにこれを評価するということもできないわけでありますが、よく精査をさせていただきたい、このように思います。

足立委員 総理も今、私の質問に対して御答弁をお返しいただきましたが、一言お返しをしておくと、大阪の府民、市民は、今総理がおっしゃった、我々はこのグラフの中で下の部分だけをしっかり、これは個別自治体だけでできる努力ですから、これを重く受けとめて、この維新の府政、市政を御評価いただきたいということで選挙戦に臨みました。

 それに対して、角が立ちますが、大阪の自民党の方は、ちょっと声が小さくなっていますが、共産党の方と一緒になって、この全体のライン、非常にそれを喧伝されて、当時の府連会長までテレビで、下の部分のない、上の部分だけの線を挙げられたわけでありまして、まあまあ、これ以上申し上げませんが。

 申し上げたいことは、十一月の大阪ダブル選挙で、大阪府民、大阪市民は、橋下知事、松井知事が大阪の財政を健全化した、そしてさまざまな民営化を仕上げて活性化をしたことについて、その実績について大きな御評価を、御支持を下さり、再び松井府政そして吉村市政を誕生させていただいた、これが大阪の民意だということを私の方から、余計なことでありますが、申し上げておきたいと思います。

 さて、総理、次は憲法なんですけれども、きのうの私どもの下地政調会長の質疑の中で、憲法改正について御答弁をいただいています。

 その中で、三分の一ちょっとの国会議員が反対すれば、国民投票、国民が一票の投票の権利を行使することができない今の枠組みについて、一定の問題意識というか、大変強い問題意識を御表明いただいたところでございます。これは我々も全く同じ思いでございます。

 加えて、総理は、その憲法の改正の中身については、憲法審査会において有意義な議論を行って、そこで、どの条項について改正するかということについてはだんだんと次第に収れんさせていくべきではないか、こうおっしゃったと承知をしています。

 私たちは、議論の収れんということについて、やはり政治家がリーダーシップをとらなあかんところが多いと思います。もちろん、しかるべきつかさつかさでの議論をこれからもやっていくわけでありますが、一番大事なことは、選挙に向けて、大阪都構想もそうでした、去年のダブル選挙もそうでした、やはり国民の皆様、地域の皆様に政策をよく知っていただいて判断をしていただく最大の機会は選挙でありますので、我々は来る国政選挙でしっかりとこの憲法について争点化していくということが、そういう観点からも大事だと思います。

 ぜひ、その辺、憲法について御答弁いただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 我が党は、六十年前の結党以来、憲法改正について党是として掲げてきたわけでございます。安倍政権になりましてからも、三回の国政選挙においては、憲法改正ということをお示ししながら戦ってきたところでございます。

 そこで、どこから変えていくか。私どもとしては、既に谷垣当時の総裁のもとにつくりました憲法改正草案がございますので、この草案をお示ししていきたいと思っておりますが、その中でどこからということについては、今私は総理大臣という行政府の立場でございまして、憲法改正については政府が政府案として出すものではなくて、まさに衆議院、参議院、議会において発議をしていただくものだろうと思っておりますので、さらに憲法審査会において活発な御議論をいただきたい。

 その際、どのような形で三分の二が形成されていくかということでございますが、最初からそれは絶対に指一本触れてはならないと言えば、これは改正の議論には余りならないのでございますが、しかし、それはそれで、先ほど申し上げましたように、いわば国民の皆様がそれを判断するもので本来あるべきであって、九十六条の改正について私どもが言及した、またこれは橋下当時の市長も言及しておられたと思うわけでございますが、やはり国民が一票を入れる、賛成にしろ反対にしろ、その機会をたった三分の一をちょっと超える国会議員が奪っていいのかどうかということ、その問題意識を申し上げたところでございます。

 いずれにせよ、我々は、今まで同様、選挙においてもしっかりと私たちの考えはお示しをしていくべきだろう、こう思っております。

足立委員 ありがとうございます。

 この三分の一、二分の一の問題は、本当に私たちも重要だと思っています。ただ、憲法も、これは当たり前ですが、いずれ九十六条の議論を仮にするにしても、最初の改正は三分の二でやらなあかんわけでありまして、きょう冒頭に私が、民主党、維新の党、共産党さんを名指しで少し失礼なことを申し上げたかもしれませんが、なぜそういうことをこういう場で申し上げるかというと、彼らの勢力がまさに三分の一を超していれば、これは一切動きません。

 だって、大体、彼らの憲法観というのはもうむちゃくちゃです。余り言い過ぎるとよくないですか。

 総理、大体彼らは、安全保障法制、これは戦争法案だと今でも言っています。それから、国会の開会の時期、一月四日に今回は開いたわけですが、この国会の開会時期をめぐっても、安倍総理に対して、憲法違反だ、こういうことを彼らは言っています。

 さらに、この間びっくりしたのは、どなたかはちょっともう失念して、余りにつまらないのでお名前を忘れましたが、ある委員の方は、安倍総理がここで御答弁されるときに、聞いていないことを何か言ったとか言って、それは憲法違反だ、そういうことを言っていらっしゃる方がおられました。そういうことを言うような方が大体この部屋にいること自体にいろいろ弊害があるわけであります。

 委員長、例えば、この間の我が党の質問時間の問題。

 質問時間の問題というのはつまらないことのように皆さん思われるかもしれませんが、これは私は実は国対委員長から、既に予算委員長がいろいろと骨を折ってくださっているので、足立さん、この問題はもう余り言わないでねということで言われていますが、私は物わかりが悪いのでもう一度言います。この時間の問題、二度と返ってきません。

 彼らは、憲法について、要は、両院の場で成立した安全保障法制について憲法違反だとレッテル張りをする、あるいは臨時国会をめぐってレッテル張りをする、また安倍総理の答弁の内容についてレッテル張りをする。憲法違反だと言っているんです、彼らは。

 しかし、一番の憲法違反は彼らですよ。

 国民の負託を受けた我々国会議員の、この国会における発言権というのは民主主義の基本です。そうですよね。これを奪って、ほったらかしにして、委員長に丸投げして、その後、けつも拭かない。そういう野党第一党、そして野党第一会派がのうのうと、ここで一番こちら側に座っていること自体が間違いで。

 私は一番向こうの席なんですよ。すると、大体、緒方委員がずっと後ろを向いてしゃべっているんですよね。だから、本当に、総理、閣僚の皆様の御答弁が聞こえません。

 ぜひ、委員長、席がえを御検討いただきたいと思いますが、どうですか。

竹下委員長 理事会で検討いたします。

足立委員 憲法はこれぐらいにしましょうかね。

 皆さん、せっかくの機会ですから、こういう言い方をしていますが、私は許しません。私は選んでいただいた、我々おおさか維新の会は国民の皆様から選挙で選んでいただいた。その国会における発言権を奪ったグループは、そのグループが消滅するまで許しません。仮に食中毒を起こしたレストランが看板をかけかえたとしても、追い続けて、彼らが憲法違反の集団であると言い続けることを、ここに、国民の皆様にお誓いしておきたいと思います。

 総理、今、憲法の三分の二という話をしましたが、実は、日本の法令の中で三分の二の特別多数議決を求めている法律の分野というのが大きく二つあると私は理解しています。

 一つは憲法回りですね。憲法の改正、あるいは衆議院の三分の二の再議決、こういう国の向かっていく方向についての大きな大きな枠組み、これは三分の二の特別多数ということを求めています。

 配付資料の四をごらんいただきたいんですが、私が申し上げた憲法以外にもう一つ、地方自治法というのがあるんです。

 地方自治法に、四ページ目に列挙されてあるようなたくさんの、たくさんというかこれだけですが、これだけの特別多数議決が並んでおります。一番上と一番下を除いてはさまざまな身分にかかわることとか重要なことが並んでいますので、百歩譲ってまあそうかなという気もしますが。

 一番上の「地方公共団体の事務所の位置決定又は変更」これは三分の二なんですね。それから、今、大阪が、大阪の成長戦略を遂行していく上で一番困っているのがこの一番下なんです。「条例で定める特に重要な公の施設の廃止又は条例で定める長期かつ独占的な利用」要すれば、地方公共団体がこれは重要だねと決めた施設を例えば民営化するとき三分の二が必要なんです。

 なぜ我々おおさか維新の会が、橋下代表、松井代表のもとで大阪で頑張ってきた改革が、大きく進んだものもありますよ。自分たちでできるものは全部できました。給与の問題、身を切る改革の問題、いろいろなものができました。できていないものは、要すればこういうことなんです、議会で三分の二をとらないといけないものができていないんです。

 総理は地方議員は御経験ないかもしれませんが、国でも一緒です。一つの政治グループが議会で三分の二を占めることの苦労、これは総理は御理解いただけると思います。これは簡単じゃないですよね。ちょっと一言お願いします。

安倍内閣総理大臣 一言で申し上げれば、それはそう簡単なことではないと思います。

足立委員 先ほど申し上げたように、我々大阪では血で血を洗う選挙をしていますので。我々は、とにかくおおさか維新の会で過半数、のるか反るかというあたりで頑張っていますが、公明党さんの御協力を得ながら、何とか過半数をまとめながら、今、吉村市長が大阪市営地下鉄の民営化に向けて取り組んでおります。

 配付資料の七をごらんいただけますか。

 きょう、余り多くの質問をする時間がもうなくなってきましたが、これから地方創生というときに、地方都市の活性化は大事です。

 例えば、これだけ市営地下鉄があります。東京のメトロは株式会社でありますが、国と東京都で一〇〇%の株を保有したまま。公的な主体が、国と都が一〇〇%持っている、一〇〇%の会社です。

 今、我々は大阪市交通局、大阪の地下鉄を民営化しようとしていますが、これが、先ほど御紹介したようなさまざまな地方自治法の規定で、三分の二がないと一〇〇%株式会社にすることもできないんです。要は、株式会社にした時点でこれは公の施設を廃止したということになって、大阪では特に重要な公の施設という条例ができてしまっていますので、要すれば、自民党さんの賛成がなければなかなか三分の二に到達しないという現状があって、実は、大阪維新の会八年間の施政下においてもこれが実現していないわけであります。

 申し上げたいことは、憲法も大事ですが、これから日本が成長戦略を大きく花開かせていくときに、大事な地方都市で地下鉄とか水道とかを民営化するに当たって、実は地方自治法が私は過剰規制だと思います。これが地方の創意工夫を、その努力を縛って塩漬けにしている現状があるんだということを指摘したいと思います。

 総務大臣、いかがですか。

高市国務大臣 私も御党と血で血を洗う選挙を戦ってまいりましたので、ちょっと関西圏の自民党議員は御党にきついかもしれません。

 地方自治法について御指摘がございましたけれども、特に重要な公の施設の廃止等を行う場合に、住民の利便性を尊重する立場から、出席議員の三分の二以上の同意が必要とされていますけれども、一方で、公の施設の中でどの施設が特に重要なものかというのを決めるのは、これは地域の実情に応じて各地方公共団体が条例で定めることにしております。ですから、どの公の施設を特別多数決の対象とするのかということは、別に地方自治法で定めているものじゃございません。特別多数決の対象からもし外したいということでしたら、過半数の議決で条例を改正できます。

 地下鉄事業についておっしゃいましたけれども、例えば札幌市や福岡市では特に重要な公の施設としては定められておりませんので、大阪市で、大阪市の判断によって、条例で地下鉄を特に重要な公の施設とされているということでございます。

足立委員 要すれば、この問題の本質は、地方自治法が地方議会の少数派、地方議会の三分の一に拒否権を与えているということなんです。拒否権です、これは。

 日本の政治というのは、えてして拒否権が多過ぎて前に進まないということがあります。国はみんなが注目しているから改革も進んできて、例えば民営化であれば、NTT、JR、道路公団、全部やってきました。それも全部国会の過半数でやってきたんです。ところが、大阪市は三分の二で苦しんでいるんです。

 それも今、高市総務大臣がおっしゃったので、私は、言葉は悪いですけれども、無責任だと思うんですよ。

 なぜかといえば、地方自治法は、地方議会の少数派にそのような強い拒否権を与えた上で、では公の施設はどの施設かということについては自分で決めてくださいと言っているんです。武器だけ与えて、そこについて何らの規範も与えない。法律だけつくって何らの規範も与えない、あとは地域の議会の反対の人たちの籠城作戦をのさばらせているという実態があるわけでありまして、だから、おおさか維新の会は、我々はこう言っているんです。地方に決めろと言うんだったら全部決めさせてくれ、枠だけはめて地方議会に拒否権を与えるのではなくて、普通に過半数でやらせてくれということを申し上げているのであります。

高市国務大臣 そもそも、先ほど申し上げましたとおり、もしもそれを特別に重要な施設というところから外したいのであれば、過半数で条例改正できるんですね。そうなりますと、やはり圧倒的に多くの住民が、その重要な施設を使うための利便性ですとか、そういったことに鑑みておりますから。

 それで、地方自治体に主体性を持たせてくれという御意見であるのであれば、私どもは、何を特に重要な施設と定められるかはそれぞれの地方自治体の実態に合わせてどうぞという趣旨の法律でございます。御指摘は当たらないと思っております。

足立委員 大臣は今の法律の枠組みを解説されているだけですから、それはもうどうでもいいんですが、我々が言っているのは、変えるべきだと言っているんです、法律を。

 というのは、先ほど申し上げたように、特別多数議決というものを求めている法令自体が大変少ない中で、地域で、例えば大阪市営地下鉄を民営化する、地下鉄がなくなりますか。株式を五一%以上持っていたらなくなりませんよ。全く、住民の利便性はむしろ上がる取り組みをしようとしているにもかかわらず、教条的に、原理主義的にその条文を当てはめて、地域の創意工夫、地域の経済発展を制約しているのは地方自治法の古い規定である、このように申し上げたいと思います。

 もう時間がないので、最後に一点。

 きょう、たくさん通告をさせていただいていますが、また来週、テレビ入りでお時間を頂戴できる機会がありそうなので、きょう残ったところを含めて、それから共産党のビラの話はまたそこでもやりたいと思います。

 最後に一点でございますが、都市再生機構です。

 総理、私、細かいことを総理に伺うつもりはありませんが、今回、大変残念なことは、都市再生機構、UR、民営化すると言っていました。今回、甘利大臣が問題になっている千葉ニュータウンの道路の問題、あれはURが近々廃止する事業です。URをもっと早く民営化して、あるいはあの当該事業をもっと早く廃止していたらこんなことになっていないんです。

 大体、千葉ニュータウンの道路の問題を国政があずかっていること自体がおかしいんです。それは千葉の県庁でやってもらったらいいんですよ。

 ところが、日本は都市再生機構という巨大な独立行政法人を維持してきたばかりに廃止寸前の事業に若干足をとられているのかなという印象がありますが、一部野党の指摘があるみたいに、それとTPP交渉とは全く別。だから、私は、TPP交渉に携わられてきた甘利大臣が、国の中枢の外交通商を担っていらっしゃる大臣が千葉ニュータウンの道路の問題で足をすくわれているというこの構造は、甘利事務所の問題、甘利大臣お一人の問題、それはそれでちゃんと説明責任を果たしていただいたらいいと思いますが、そもそも地域のそういう細かいことまで内閣が関与して、いや、関与していないかもしれぬけれども、関与しているような疑いを持たれるような業務分担になっていること自体が中央集権の弊害だと思います。

 甘利大臣は中央集権のために若干今足元をすくわれているかもしれない、こういうことだと思っていまして、ぜひ、今回のことを機に、成長戦略のためにも民営化を強力に推進していただきたいと思います。

 石井大臣、お願いします。

石井国務大臣 独立行政法人都市再生機構、URにつきましては、民業補完を徹底する観点から既に分譲住宅や新規のニュータウン開発から撤退をいたしまして、現在は、子育てや高齢者世帯などの住宅セーフティーネットの役割を果たす賃貸事業、都市再生事業、それから東日本大震災被災地の復興事業などに役割を重点化しております。

 URにつきましては、これまで民営化の御議論もございましたが、多額の有利子負債があること、繰越欠損金を抱えるなどの財務上の課題がありまして、民業補完を追求していけば国民負担のリスクが増大する、逆に利益最大化を追求していけばセーフティーネットなど公の機関としての期待に応えられなくなるという難しさがありました。

 このため、平成二十五年十二月二十四日に閣議決定をいたしました独立行政法人改革等に関する基本的な方針に基づき、引き続き独立行政法人としてURが本来担うべき役割を果たすこととし、民業補完の徹底と財務構造の健全化とを両立させる観点から各種の改革に取り組むこととしたところでございます。

 具体的には、都市部の高額賃貸住宅を民間事業者にサブリースし、賃貸住宅事業の収支の改善を図り、その収益をもとに団地の統廃合を前倒しで実施する、関係会社を平成三十年度までに半減する、都市再生業務を弾力化して収益機会をふやすなどに取り組むこととしております。

 今後とも、この方針に基づき、着実に改革を進めてまいりたいと存じます。

足立委員 質問を終わります。ありがとうございました。

竹下委員長 これにて足立君の質疑は終了いたしました。

 次に、重徳和彦君。

重徳委員 改革結集の会の重徳和彦です。

 改革結集の旗印、前回お示しいたしましたけれども、その三つ目は憲法改正であります。

 我々の憲法改正は、九条改正ではありません。東京一極集中からの脱却を図るため、地方分権、道州制、統治機構改革、こういったことについて、後日、改めて我が党の小沢鋭仁議員からも主張をさせていただきます。

 ただ、今の日本の改憲論というのは、私は、非常に古色蒼然というか、改憲イコール九条改正、九条改正に反対ならば護憲と、二項対立のような古い歴史的な改憲論になっていると思います。

 改憲の中にもいろいろな改憲があるんです。百条以上あるわけですから、いろいろなところを改正する議論があってしかるべき。ドイツでは六十回、イタリアでは二十回戦後改正されているにもかかわらず、日本では一回もいまだ改正されていないわけであります。

 ですから、一言一句さわりたくないということで、総理の言葉をかりれば思考停止状態に陥るのも問題だと思いますが、一方で、九条を改正するというのは、総理御自身もきのう、議論が深まっている、国民から支持を得るような状況にはないというふうなことを言われたように、九条改正はなかなか難しい問題です。

 そこで、まず確認なんですが、総理はこれまでたび重なる選挙で憲法改正を訴えてきたとおっしゃいますが、一体それによって何が信任されたとお考えですか。

安倍内閣総理大臣 我が党の基本的な姿勢として、憲法改正をする、そして中身についてもお示しをしています。その中において、いわばこの憲法改正だけではなくて、我々はさまざまな政権公約があるわけでありますから、全体として我々は支持をされているということだ、このように思います。

重徳委員 今、基本姿勢、そして全体としてというお答えでありました。ほぼ想定どおりの御答弁でありましたけれども、要するに、改憲の中身、何を改正するかというまず第一歩、そういったものについては何も国民としては信任していない、いまだそういう状況なんだと思うんですね、全体としてとかいうようなことですから。

 よく考えてみれば、今後、改憲勢力、三分の二を超える超えないというような報道もいろいろありますが、改憲勢力というのも中身はいろいろだと思うんです。我々みたいな主張もあれば、おおさか維新さんのような主張もあれば、そして自民党さんのような主張もあるというようなことだと思うんですが、やはり今度の夏の参議院選挙、あるいは次期総選挙においては、しっかりと各党が、憲法改正は内閣が提案するんじゃなくて、まさに国会が国民に対して提案をするわけでありますので、各党が、どういう憲法改正をするのか、その中身を競い合う、いわば改憲コンペのようなことを訴えていくべきではなかろうか。

 我々は、九〇年代から長らく、二十年来、地方分権改革が行われてきました、これの集大成として地方分権を訴えていきたいと思っておりますし、民主党も、岡田代表は、議論はやぶさかでないということもおっしゃっていますから、何かしら訴えられると思います。全く一言一句変えてはならないと明確に言っているのは、恐らく社民党さん、共産党ぐらいではないかと思います。

 一方で、自民党も、先ほど総理が、全体として、基本姿勢については、あるいは草案は示しているということでありますが、では何から手をつけるのかについては具体的じゃないんですよ。

 この間、おとといも、改憲草案、九条二項、集団的自衛権を正面から認める内容、自民党の改憲草案でありますが、それを引用する形で、何か総理が踏み込んだ発言をされたというふうに報道されていましたが、私に言わせれば全然踏み込んでいないと思うんですね。総理はこう言っています。「七割の憲法学者が、憲法違反の疑いがある、自衛隊に対してそういう疑いを持っているという状況をなくすべきではないかという考え方もあり、」というふうにおっしゃっているので、御自身のお考えじゃないんです。

 そこで質問ですが、総理御自身の九条二項についての考え方というのは自民党の改憲草案と同じなんでしょうか、それとも違うんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 九条二項について、我が党はそれを変えるということについて議論を行い、そして我が党の憲法草案として出しているわけであります。私は、総理大臣という立場と同時に自民党の総裁である以上、自民党の総裁としては、自民党で出しているこの憲法草案について、我が党の考え方である、当然私も総裁として同じ考え方である、こういうことでございます。

重徳委員 今後、党内あるいは憲法審査会での議論も踏まえるというふうに常々おっしゃっていますが、今は一つ踏み込んだ御答弁だったんじゃないかなというふうに思います。

 これは議論を経て参議院選挙でお示しになるというお考え、あるいは次期総選挙において、九条二項についても、自民党の考えそのものが総理のお考えでもあるわけですから、党の総理・総裁がおっしゃっているわけですから、これは参議院選挙にもお示しをするんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 参議院選挙でお示しをするのは、当然、我々、憲法改正をしますよということで草案をお示ししています。

 そこで、具体的にどこからかということでございますが、三分の二を得るというのはそう簡単なことではないわけでありまして、我々がこれだと言っていても、結局、私たちが持っている議席以上に広がらないのであればこれは一歩も進んでいかないわけであります。しかし、それを進めていく上においては、我が党の中で例えば多くの議員がそれを主張していたとしてもそれは前に進んでいかない、政治の現実としては、その場合においてはそれは諦めなければならないということになるんだろうと思います。

 しかし、他の我々の案について、この条文についてだったら自民党に賛成するよという人たちが出てきて、その結果、三分の二になる、これがまさに政治の現実だろうと思います。可能性の芸術でもあるわけでありますから、そうした中において三分の二をどの条文で形成していくことができるか、これは憲法審査会等における議論の中において議員同士が議論を重ねていくということになれば、これはその中でどうなっていくか。

 また、我が党の改正案どおりにいくということでもないんだろうと思います。議論の中において、ここは修文した方がいいよ、自分たちの考え方はこうだという中において、結果としてはどういう条文になっていくかということは、政治の現場の現実の問題としてはあるんだろうと思います。

 いずれにせよ、私たちの考え方は既にお示しをしております。そして、御党も、こういう考え方ですよというのをお示しになれば、その考え方と私たちの案との差を縮めることができれば、御党にも賛成していただける、共同で発議をしていくということにおいての可能性もあるんだろうということでございます。

 これでなければほかはやらないということではないわけでありまして、私たちは、全てお示しをしている中において、国民の皆様から、私たちの基本的な考え方、憲法に対する考え方に御理解をいただき、ただ、参議院選挙のような国政選挙においては、憲法だけで一票を入れるわけではなくて、経済政策とかあらゆる政策の中において我が党に支持をいただくということになるんだろう、このように考えております。

重徳委員 非常にいろいろな言い方を今されました。可能性の芸術という言い方もされました。そして、国民が受け入れてくれそうだったら出すというようなニュアンスもあったと思います。

 総理の御意思を確認したいんですけれども、総理としては、今話題にしております九条二項については、やはり、参議院選挙、あるいは次期総選挙含め、提案をしたい、国民の前にお示しをしたいというふうにお考えなんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 私は今ここには総理大臣として座っておりまして、今、重徳委員がおっしゃったように、政府案として提出をするものではなくて、院の発議によって国民投票に付されるわけでございますので、これは基本的に、私がどの条項について行いたいということに言及することは差し控えた方がいいんだろうと思います。

 しかし同時に、我が党の案というのは、私も自民党の総裁でありますから、それは我が党の案としてお示しをしていくということでありまして、どれに優劣をつけるかということについてここで申し上げることは差し控えたい、こう思っております。

重徳委員 総理は政府の立場、党の総裁の立場でもありますけれども政府の長の立場でもあるということで、今お答えを差し控えるということでありました。

 では、政府の立場から見て、今の九条二項について、具体的に言うと、去年の安保法制の議論がありました。あの議論を、まさに現行憲法の解釈変更をして、そして、従来は個別的自衛権しか行使は許されていなかった、いわばゴム風船の中にぴたっとおさまっていたところを解釈変更して、集団的自衛権も、限定容認なんでしょうけれども、膨らませた、ゴム風船が膨らんできたということになるわけですね。これは、人によってはというか、論者によっては、もう既に、限定容認といいながら、それはもうゴム風船自体がはじけてしまっているよ、こういういわば疑いをかけられている、こんな状況だと思うんです。

 政府として、現行憲法解釈を広げた、改めた、解釈変更した、こういう立場を主導した総理として、今の九条二項の姿というのは、ゴム風船を広げた形にしっかりおさまるような、新しい大きなゴム風船に改めるべきか、あるいは小さなゴム風船がはち切れんばかりに膨らんでいる、そのままの状態でいいとお思いなんでしょうか。

 要するに、現行憲法のままでいいのか。解釈変更という形で今の安保法制をそのまま通していいのか。あるいは、今の安保法制、一分たりとも疑いをかけられないためには、九条二項を改正して、限定容認なのか無制限なのかわかりませんが、集団的自衛権を認める形にした方がいいとお考えなんでしょうか。政府の立場としてどうごらんになっているか、お答えください。

安倍内閣総理大臣 政府の立場としては、現行憲法を尊重、遵守していくことは、擁護していく義務を負っているわけでありますから、これは当然のことでございます。我々は、現行憲法の中において、かつ、政府が示してきた基本的な考え方、四十七年見解の基本原理を維持しつつ、法的安定性を維持しつつ、この大きな時代の変化の中において、安全保障環境が変わる中において、必要な自衛のための措置を考える中において、今回当てはめを変えたわけでございまして、私は、政府の立場としては、このことによって日米同盟がしっかりと機能することによって、抑止力は増加し、我が国の平和と安全、そして国民の命を守り抜くことができる、こう考えております。

 と同時に、我が党としては、先ほどお話をいたしましたように、全党における議論の中において、憲法九条において二項を変えるべきだ、こういう判断をしたわけでありまして、実力組織自衛隊の存在をしっかりと明記すべきではないか、こう考えたわけでございます。

重徳委員 大体時間も来ましたが、先ほど申し上げました、各党が改憲の中身を競う改憲コンペを、今度の参議院選挙、あるいは次期総選挙において健全な形で議論するべきだと思うんです。

 日本で今まで一度も改正されたことのない、歴史的な憲法改正を行うには、やはり主要政党がみんな、どういう方向性かはともかくとして、自主憲法ではないという今の少しいびつなこの憲法のあり方についても、いま一度、国政を担う政治家として、多くの各党各会派がしっかりと議論していくべきであろうということで、昔からの改憲、護憲、そういう枠組みにとらわれる必要はないのではないかということを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

竹下委員長 これにて重徳君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして基本的質疑は終了いたしました。

 次回は、来る八日午前九時から委員会を開会し、一般的質疑を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時一分散会


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