衆議院

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第10号 平成28年2月9日(火曜日)

会議録本文へ
平成二十八年二月九日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 竹下  亘君

   理事 石田 真敏君 理事 金田 勝年君

   理事 菅原 一秀君 理事 鈴木 馨祐君

   理事 関  芳弘君 理事 平沢 勝栄君

   理事 柿沢 未途君 理事 山井 和則君

   理事 赤羽 一嘉君

      秋元  司君    井上 貴博君

      石原 宏高君    岩屋  毅君

      衛藤征士郎君    小倉 將信君

      小田原 潔君    越智 隆雄君

      奥野 信亮君    門  博文君

      小池百合子君    小林 鷹之君

      佐田玄一郎君    鈴木 俊一君

      長坂 康正君    根本  匠君

      野田  毅君    原田 義昭君

      古屋 圭司君    堀井  学君

      前田 一男君    宮路 拓馬君

      保岡 興治君    山下 貴司君

      山本 幸三君    山本 有二君

      井坂 信彦君    緒方林太郎君

      大串 博志君    大西 健介君

      落合 貴之君    階   猛君

      玉木雄一郎君    西村智奈美君

      福島 伸享君    浮島 智子君

      濱村  進君    吉田 宣弘君

      島津 幸広君    高橋千鶴子君

      足立 康史君    伊東 信久君

      木下 智彦君    松浪 健太君

      重徳 和彦君    鈴木 義弘君

    …………………………………

   財務大臣         麻生 太郎君

   総務大臣         高市 早苗君

   法務大臣         岩城 光英君

   外務大臣         岸田 文雄君

   文部科学大臣       馳   浩君

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   経済産業大臣       林  幹雄君

   環境大臣         丸川 珠代君

   防衛大臣         中谷  元君

   国務大臣

   (一億総活躍担当)    加藤 勝信君

   国務大臣

   (地方創生担当)     石破  茂君

   財務副大臣        坂井  学君

   会計検査院長       河戸 光彦君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  田中 勝也君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           大泉 淳一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 大菅 岳史君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  神田 裕二君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  福島 靖正君

   政府参考人

   (経済産業省経済産業政策局長)          柳瀬 唯夫君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局長)          寺澤 達也君

   政府参考人

   (経済産業省産業技術環境局長)          井上 宏司君

   政府参考人

   (経済産業省商務情報政策局長)          安藤 久佳君

   政府参考人

   (中小企業庁次長)    宮本  聡君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 鈴木 敦夫君

   予算委員会専門員     柏  尚志君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月九日

 辞任         補欠選任

  秋元  司君     宮路 拓馬君

  佐藤ゆかり君     前田 一男君

  松野 頼久君     落合 貴之君

  赤嶺 政賢君     島津 幸広君

  足立 康史君     木下 智彦君

  松浪 健太君     伊東 信久君

  重徳 和彦君     鈴木 義弘君

同日

 辞任         補欠選任

  前田 一男君     堀井  学君

  宮路 拓馬君     秋元  司君

  落合 貴之君     井坂 信彦君

  島津 幸広君     赤嶺 政賢君

  伊東 信久君     松浪 健太君

  木下 智彦君     足立 康史君

  鈴木 義弘君     重徳 和彦君

同日

 辞任         補欠選任

  堀井  学君     佐藤ゆかり君

  井坂 信彦君     松野 頼久君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成二十八年度一般会計予算

 平成二十八年度特別会計予算

 平成二十八年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

竹下委員長 これより会議を開きます。

 平成二十八年度一般会計予算、平成二十八年度特別会計予算、平成二十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般的質疑を行います。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官田中勝也君、総務省自治行政局選挙部長大泉淳一君、外務省大臣官房審議官大菅岳史君、厚生労働省医政局長神田裕二君、厚生労働省健康局長福島靖正君、経済産業省経済産業政策局長柳瀬唯夫君、経済産業省貿易経済協力局長寺澤達也君、経済産業省産業技術環境局長井上宏司君、経済産業省商務情報政策局長安藤久佳君、中小企業庁次長宮本聡君、防衛省防衛政策局次長鈴木敦夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

竹下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

竹下委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。緒方林太郎君。

緒方委員 民主党、緒方林太郎でございます。本日、昨日に続きましてバッター立ちさせていただきます。

 本日、丸川大臣、通告をさせていただきました。昨日、信濃毎日新聞におきまして、このような記事が出ております。

 丸川珠代環境相は七日、松本市内で講演をし、東京電力福島第一原子力発電所事故を受けて国が原子力発電所周辺などで行っている除染で、基準となる年間被曝量を一ミリシーベルトとしている点について、「「反放射能派」と言うと変ですが、どれだけ下げても心配だと言う人は世の中にいる。そういう人たちが騒いだ中で、何の科学的根拠もなく時の環境大臣が決めた」と述べたということが報道で出ておりました。非常に重大な発言だと思います。

 丸川大臣にお伺いいたします。

 何の根拠もないというその根拠は何ですか。

丸川国務大臣 御質問ありがとうございます。

 まず、大変恐縮なんですが、私、このとき、政務でしたので、自分の秘書も連れていかず、記録もとっておりませんで、私のこの発言を、こういう言い回しをしたという記憶を自分では、申しわけありません、持っておりませんで、十分な説明がなかったのではないかという趣旨の発言をしました。

 実際、この基準を決めたこと自体に対して私がそれは問題だということを申し上げたのではなくて、むしろそれは、私が今思っていることとしては、一ミリシーベルトというのを福島の皆さんが望んでおられるその基準に合わせて考えていくということは非常に重要だと思っているんですが、一方で、その基準に対して、それがどういう趣旨の基準なのかと。

 というのは、私たち、今でも、これは除染で一ミリシーベルトまで下げるのだというふうに理解をしておられる方がおられて、除染だけではそれは到達ができないので、総合的に見ていくのだという説明をいつも申し上げておりまして、この一ミリシーベルトという数字を出してここまで進んでくる間に、リスクコミュニケーションが十分ではなかったのではないかという趣旨のことを申し上げました。

緒方委員 記憶にないはだめですよ。二日前の話ですよ。これが二カ月前とかいうのであれば話は別です。二日前にこのことを言ったかどうか覚えていないというのは、それは理屈になっていないと思います。丸川大臣、ごまかさないでください。答弁いただければと思います。

丸川国務大臣 ですので、私の記憶によれば、私はこの言い回しはしていないという記憶なんです。

緒方委員 この中に、「どれだけ下げても心配だと言う人は世の中にいる。」というような発言をしておられます。この「どれだけ下げても心配だと言う人」の中に被災地の方々は含まれていますか、丸川大臣。

丸川国務大臣 日本じゅういろいろなところにいらっしゃると思っています。

緒方委員 被災地の中には、やはり放射能の問題に苦しんでいて、この問題に非常にセンシティビティーの高い方がたくさんおられるわけです。そういう人たちをあたかもやゆするような表現で……(発言する者あり)やゆしているじゃないですか、何の根拠もなく時の環境大臣が決めたと。そういうやゆするようなやり方でやることが被災地の方々の気持ちを著しく害しているんです。

 時の環境大臣の判断は何の根拠もなく、間違っていたというふうに思われますか、丸川大臣。

丸川国務大臣 御承知かと思いますけれども、ICRPが長期的な放射線の被曝の量というのを、一ミリシーベルトから二十ミリシーベルトの間で、その地域あるいは国によって判断をしてくださいという参考値として挙げておられます。

 ですので、その範囲の中で決めるというのは一定の世界的な科学的見地の中で選ぶことでありまして、私は、科学的根拠がないというのは、少なくとも私はこういう言い回しをしなかったと申し上げていますけれども。一から二十の間でなぜ一に決めたのかという、その一ミリの数字の性質というのを十分に説明し切れていなかったのではないかという趣旨のことを申し上げました。

緒方委員 では、根拠がないということではないということでよろしいですね。

 今、丸川大臣、これを言ったか言わないか覚えていない、自分はこの発言をしていないということでありましたが、仮に言っているとき、責任をとられますね、大臣。

丸川国務大臣 私がお伝えしたかった趣旨はそうではないので、もし誤解を与えるようであれば、それは言葉足らずであったということについてはおわびを申し上げたいと思います。

緒方委員 少し言い方が変わりましたね。言っていないというところから、その趣旨ではなかった、私の本意ではなかったという言い方に変わりましたね。どちらが真実ですか。

丸川国務大臣 済みません。今、おっしゃったとしたらという言い方をされたのもありまして、私申し上げたんですが。

 私の趣旨が正確に伝わらなかったので、聞いておられた方がこういうふうに受けとめられたのだろうかという思いを持っておりますので、その点については、私が言葉足らずで申しわけありませんでしたと申し上げたいと思います。

緒方委員 これは政策的に非常に大きな話であって、こういうところで誰か他人をやゆしながら言うような発言ではないと思います。

 この件については引き続きこの予算委員会で質問していきたいと思いますので、質問を移していきたいと思います。

 昨日、ISDSの関係につきまして岩城大臣に聞きました。いろいろな指摘がありました。例えば、ほかにも似たようなものがあるんじゃないかとか、昨日、日弁連とか日本商事仲裁協会とか、そういった話をされた。そして、いろいろな理屈を挙げました。これまでもISDSをやっているじゃないかとか、ISDSをやっていて、これまで問題なかったじゃないかとか、そういった発言があります。

 しかし、これは何が問題かというと、一つには、相手がアメリカだからということがあると思います。これまでのISDSを締結した国とそもそもかなり違うと私は思っています。かつての日米協議でも、日本は、いろいろな意味でアメリカとの関係で痛い目に遭ってきた。そういうこともあるから、例えば、オーストラリアという国が、ISDSについて、アメリカとオーストラリアの自由貿易協定においてISDSを盛り込むことに極めて慎重であったということもございます。

 なので、ISDSそのものを議論するときというのは、その使われ方も含めてきちんと対処していく必要があるというふうに私は思っております。

 その観点から質問させていただきたいと思います。

 国外の仲裁裁判所が、海外でやるものだとか、お互い合意してやるものだとか、だから特別裁判所には当たらないということをきのう大臣は言われたと思いますが、例えば、国内裁判所での手続とISDSが同時に走ることも可能性としてはあるわけです。

 そう考えると、場合によっては、同時に走るのではなくて、国内裁判所の手続で一審をやった後に、それがうまくいかなかったからその先にISDSということで、事実上の二審、三審ということで走っていくこともこれはあるわけです。

 もっと言うと、これは、なかなかISDSを議論するときに表にしにくい議論かもしれませんけれども、投資先国で裁判をするときに、投資先の国の方に有利な判断が出るのではないか、そういう投資先の国での裁判をやることへの不信みたいなもの、そういうものも背景にあるんだと思います。

 そう考えていくと、実質的には、このISDSは、やはり日本の国内の裁判所の延長上にあるような、そういう機能を果たすことがあると思うんです、実態的に。そう考えるときに、やはり憲法第七十六条が禁ずるところの特別裁判所に当たるのではないかという懸念が拭えないわけでありますが、岩城大臣、答弁いただければと思います。

岩城国務大臣 お答えをいたします。

 昨日御答弁申し上げたことと重なってのお話になろうかと思いますが、御理解いただきたいと存じます。(緒方委員「短く」と呼ぶ)短く。はい、わかりました。

 憲法第七十六条第二項前段は、「特別裁判所は、これを設置することができない。」と定めておりますが、これは、我が国の国内において、同条一項が定める最高裁判所及び下級裁判所の系列以外の裁判所を設けることができないということを明言したものであります。

 憲法は、我が国の立法、行政及び司法といういわゆる統治機構に関する組織や権限を定めておりますが、それは、あくまで我が国の組織や権限について定めるものであって、外国における紛争解決システムや国際機関における紛争解決システムについて、その組織や権限を規定するものではありません。

 したがいまして、我が国の憲法が設置できないとしている特別裁判所は、あくまで我が国内の司法組織についてのものであり、ISDS条項に基づいて紛争解決を行う国際機関は、我が国の憲法の定める特別裁判所には該当しないものと考えております。

緒方委員 その説明は私も踏まえた上で今の質問をしたつもりであります。国外にあるから日本国の憲法体制の中に入ってこない、それは理解をいたしました。

 そうなんですが、先ほど私、実態の話をしていて、一審、二審と裁判が進んだ後に、そこでだめだからそっちに飛んでしまって、そこで最終的に、結審と呼んでいいのかわかりませんけれども、そういう状態で裁判手続がそこで終わるというときには、日本国の裁判制度の中に穴ができるでしょう。そういう穴を封じたいというのが、まさに憲法第七十六条第二項の考え方じゃないですか。最高裁を中心とした一つの法的手続の中できちっとやっていくというのが、これが恐らく憲法の理念であろうと思います。

 そう考えるときに、一審、二審は国内でやった、だめだった、そしてその後海外に飛びました、そこで結審しました。そして、このISD条項は、その条項をよく見ておりますと、最終的には当事者を拘束すると書いてあるわけです。そう考えてみるときに、実は、これは実態的に特別裁判所に当たる機能を果たし得るのではないかと、大臣の答弁を前提とした上で申し上げているわけです、大臣。

岩城国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、憲法は、我が国の司法権の主体として「最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。」と定めているのでありまして、ISDS条項に基づいて紛争解決を行う国際機関はこれには当たらない。

 したがいまして、第七十六条第一項違反、そういった問題は生じないと考えております。

緒方委員 それでは、少し一般論で聞いてみたいと思います。

 例えば、海外で条約を結ぶことによって日本の例えば一審、二審、一審だけでもいいですけれども、その後の上訴審、控訴審の部分について海外の何らかの機関にそれを出すことについては、一切の憲法問題は惹起しないということでよろしいですか、大臣。

岩城国務大臣 国内の裁判に影響を及ぼさない限り、その御指摘の件は当たらないと思っております。

緒方委員 いや、一審、二審、そこでまとまらなかったから、だから、例えば何らかの国際条約を結んで、そして、その次の手続についてそれを海外に出してしまうということについて、それは国内に影響が及びますよ、まとまっていないわけですから。一審、二審とやった上で、そこで控訴審、上訴審を国際条約に基づいて海外に出してもいいということは、それは国内に影響ありますよ。

 だから、国内に影響がなければいいということでありましたが、国内で影響が出ると思いますよ。大臣、答弁いただければと思います。

岩城国務大臣 国内の裁判手続に影響を及ぼさない限り、そういった問題はないと考えております。

緒方委員 いや、それは今私が言ったケースでは及ぼすと思いますよ。こういうケースが、これまで起きてこなかったけれども、アメリカとの関係で大いに起きてくる可能性があると思うから、だから心配しているんです。

 第一審、国内で裁判を行いました、そして、手続的に二審が行われて、手続は問題なかったかもしれないけれども、条約で海外に出ていってしまって、そこで結審してしまうわけですよ。その判断が違うとき、ではどうするかというのは、きのうも質疑をしたとおりであります。決して国内に影響なくこれがやれるということはないというふうに思います。

 条約に基づいて、国内の裁判手続に穴をあけて途中から海外に出ていくことを許すというのは、これは問題が多いんじゃないかと思うわけでありますが、岩城大臣、いかがですか。

岩城国務大臣 議員御指摘のそういったケースの場合を考えましても、国内での裁判も可能でありますので、裁判としては影響を受けないものと考えております。

緒方委員 一審で判決が出ました、それが気に食わないから、だからこれはやめて、次、海外に出ていきましょう、海外でやりましょうというふうに機能する可能性は大いにあるわけですよ。大臣、何かこれを余り軽く考えてもらっては困るんです。

 アメリカとの関係では、一審が終わった後、これがだめだった、勝てなかったから海外に出ていった、そして仲裁裁判所で判決が出た、それが日本の国内と別の結果になってしまうときに、国内の手続的にも影響が出るでしょうし、そして、その効果としても国内の裁判に大きな影響を与える。しかもこれは、最終的に当事者を拘束すると書いてあるわけです。これを軽々に本当に許していいんですかということが、これが問われるわけですよ、大臣。

 先ほどから大臣、問題がなければいい、問題がなければいいと。いや、けれども、問題が生じるときどうなんですか、大臣。

岩城国務大臣 ただいま委員からお話がありましたこと、このことは、日本の裁判自体の法的効力、これを失わせるものではありません。

緒方委員 そうすると、きのうの議論に戻っていくわけでありますが、日本の裁判所で出た判決とISDSで、これは同時に走ることもあるし前後することもある、これは多分御否定されないと思いますけれども、判断が異なるときに、日本の国内の裁判の判決の結果が効力が損なわれることではないということであれば、一審で結論が出て、そこでやめて海外に走ったときは、ISDSでどんな結果が出ようとも、その結果については日本の国内での裁判の効力が失われないということであれば、ISDSに走ろうが何しようが、それは日本の国内の裁判の結論が優先するのであれば、意味がない行為だということになるわけですよね。

 その意味のない行為ということを用意したということですか、岩城大臣。

岩城国務大臣 昨日もお話し申し上げましたが、国内の司法判断とそれから国際的な仲裁判断、ここで異なった内容、それぞれ判断が示された場合には、これは、国内の裁判所の判断に基づく執行手続、こういった対応も可能であります。(緒方委員「「も」ですか」と呼ぶ)いや、が可能であります。そこで、国内裁判所の判断に基づく執行手続、これが最終的な優先される判断だと考えております。

緒方委員 そうすると、今のケースだと、私がさっき挙げたような、一審でうまくいきませんでした、仕方ないからということでISDSに行きました、その結論が全く真逆を向くときには国内の裁判の方が優先するということで、こういうケースが起きるときは、あなたがISDSに走ろうが何しようがもう関係ありませんということを今大臣は言われたんです。

 大臣、そのとおりですか。

岩城国務大臣 あくまでも、最終的に、国内裁判所の判断に基づく執行手続、これが優先される、そういう意味できのうからお話を申し上げているところであります。

緒方委員 つまり、その執行というもののベースになるのは日本の裁判所で出た結論なわけでありますから、そうすると、今言ったようなケースでは、ISDSに走ろうが何しようが、あなたがどんなに努力してももう意味のないことです、国内で出た判決を国内の裁判所の執行手続に基づいて執行することであるから、これは海外にどんなに走ろうが、これは無効というか、そもそも意味をなさないということを大臣は言われているわけです。

 そういうことでよろしいですか、大臣。

岩城国務大臣 同じ紛争でありましても、仲裁廷と裁判所とでは法的な要件が異なったり、当事者が主張、立証する事実関係が異なることなどから、実質的に相反する内容の判断が出されることは、先ほどお話ししたとおり、あり得ます。

 そして、それぞれの判断が確定すれば、いずれも有効なものとして成立し、原則としてそれぞれの手続が定めた効力が生じ得るのでありまして、必ずどちらかが優先しどちらかが劣後するというルールはございません。

 最終的にどちらの判断が実行されるかについては、当事者が任意に一方を選択することで決まることもあれば、改めて民事執行手続を裁判所に申し立てることで当該裁判所の判断で決することもあります。これらの場合においても、実行されなかった方の判断が法的に無効とされるわけではなく、その判断は有効ということでありまして、私は先ほど、民事執行手続を裁判所に申し立てること、その当該裁判所の判断で決するということを申し上げたつもりです。

緒方委員 いや、最終的に当該裁判所の判断で結論が出るということになって、両方とも有効で、執行するときの裁判所の、民事の裁判所での判断が有効であるということになると、やはり先ほど大臣が言われたこれは全然整理がついていなくて、国内の裁判所の判決がもちろん優先するということを大臣は言われたけれども、今言った、両方とも有効で、それをどっちを優先して判断するかについては国内の民事の裁判の判断だということになると、国内の裁判所の判断が優先されないという可能性を明らかに示唆しているじゃないですか、大臣。

 大臣、自民党の方はよく言われますよ、TPPは日本国の主権に関する問題だと。まさにこれが日本国の主権に関するところなんです。国際社会の憲法体制と国際条約の関係でどちらが優先するのか、そして、日本の憲法第七十六条に認められている裁判の判決がどう機能するのかというのは、まさにこれが日本国の憲法のあり方にかかわるところでありまして、大臣、きょうも答弁が非常に揺れ動いています。

 日本国内の裁判所の判決が優先するのかどうなのかということについて必ずしも明確な御答弁がなかったと思いますが、質問時間が終わりましたので、次は玉木議員に譲って、私の質問を終えたいと思います。

 ありがとうございました。

竹下委員長 これにて緒方君の質疑は終了いたしました。

 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 民主党の玉木雄一郎です。

 まず冒頭、高市総務大臣にお伺いいたします。

 昨日、我が党の奥野議員からの質問に対して、政治的な公平性を欠く番組、個別の番組を放送したと総務大臣が判断した場合には電波の停止もあり得るというような発言をされたと理解しておりますけれども、それはそれでよろしいですか。

高市国務大臣 けさ、急に、私を呼んでくださるという通告をいただきましたので。

 きのうの議事録ですけれども、まず、私が、業務改善命令であったり電波法に基づく放送の電波の停止であったり、過去のことについてそういうことはなされておりません、基本的にはやはり放送事業者が自律的にしっかりと放送法を守っていただく、そういうことが基本にあると考えておりますと申し上げております。

 奥野委員は、その次に、ここで明確に否定していただきたいんですけれども、この放送法の百七十四条の業務停止や電波法七十六条についてはこうした四条の違反については使えないということで今もう一度明確に御発言いただきたいんですと、私に求めてくださっております。

 私は、あくまでも法律であり、第四条も、これも民主党政権時代から、単なる倫理規定ではなく法規範性を持つものという位置づけで、しかも電波法も引きながら答弁をしてくださっておりますということをるる申し上げました後、法律というのは、やはり法秩序というものをしっかり守る、違反した場合には罰則規定を用意されているということによって実効性を担保すると考えておりますので、全く将来にわたってそれがあり得ないと言うことはできません、このようにお答えをいたしております。

 これまでも、放送法は、第一条の目的規定において、放送番組の適正性においては放送事業者の自主自律によって確保されるべきものであること、また第五条第一項や第六条において、放送事業者の自主自律により放送番組の適正を図ることが規定されています。総務大臣は、このような取り組みにもかかわらず、必要な場合に応じて、放送事業者からの事実関係を含めた報告を踏まえ、放送法を所管する立場から必要な対応は行うべきものと考えております。

 第四条が法規範性を持つものというのは、民主党政権時代も平岡副大臣が御発言いただいておりますし、またこの四条に違反した場合に総務大臣が業務停止命令また電波法第七十六条に基づく運用停止命令を行うことができる旨も、民主党政権時代にも御答弁がございました。

玉木委員 電波の停止も否定できないということを、今明確に答弁いただいたと思います。

 具体的にお伺いしたいのは、きのうも奥野委員から質問があったんですけれども、特定の政治的見解のみを取り上げて相当の時間にわたり繰り返すとか、そういうことが例示されますけれども、相当の時間というのは極めて恣意的な運用も可能なわけですね。

 そこで、ちょっと具体例を挙げてお伺いしますけれども、例えば憲法改正、まさに国論を二分します。九条の改正についても、これはいろいろな考えがございます。そういう中において、ある個別の番組において憲法九条改正に反対する政治的見解を支持する内容を相当の時間にわたり繰り返して放送した場合も、電波停止になる可能性は否定できませんね。

高市国務大臣 一回の番組で電波停止ということはまずあり得ません。

 従来から総務省としても申し上げておりますが、このような命令については、法律の規定に違反した放送が行われたことが明らかであるということに加えまして、その放送が公益を害し、放送法の目的にも反し、これを将来に向けて阻止することが必要であり、かつ同一の事業者が同様の事態を繰り返し、かつ事態発生の原因から再発防止のための措置が十分でなく、放送事業者の自主規制に期待するのでは法律を遵守した放送が確保されないと認められるといった、極めて限定的な状況のみに行うということとするなど、極めて慎重な配慮のもと運用すべきでございます。

 きのう、私も申し上げました。私自身が総務大臣のときに電波の停止といったようなことはないだろうと思うけれども、ただ、将来の総務大臣にわたってまで、今申し上げたような要件をずっと放送事業者が繰り返して全く公正な放送が行われない、そして改善措置もなされないというときに、法律に規定されている罰則規定を一切適用しないということについてまでは担保できません。

玉木委員 よくわかりました。

 個別の番組の政治的公平性に基づいて電波停止をするようなことは極めて限定的だということをおっしゃいましたので、そのとおりだと思います。逆に言うと、全くないということではないということもよくわかりましたし、高市大臣はそうしないということなのですが、将来にわたってはそういうこともあり得る。

 特に、去年の五月に補充的答弁といって大臣がなされて、いわゆる政治的中立性、公平性というのは全体の番組の中で見ていくということを、一定程度個別の番組の中でも見るというような方向性を打ち出されたので、今の答弁を聞いてますます不安になったと思いますし、かつ、放送、報道の自由に対するチリングエフェクト、いわゆる萎縮効果ということは極めて高まると思いますので、私は、大臣、こうした放送に対して萎縮効果を与えるような発言は厳に慎まれた方がいいというふうに思います。

 高市大臣はここで結構です。

 次に、岩城大臣にお伺いしたいと思います。

 昨日、高井委員が質問したことに引き続いて質問したいと思います。

 きのうの論点は、これは非常に難しい議論なんですが、私、個人的には実は非常に関心がありました。なぜかというと、かつて私、証券犯罪の取り締まりをやっていたときに、アメリカにあるような懲罰的な損害賠償とか、こういうものを日本にも入れられないかと、一罰百戒的に。

 例えば、インサイダー取引の不法な収益が三百万であっても一億円を課すことによって、もう二度とそういうことを行わないような損害賠償が入れられないのかということをかつて議論したことがあるんですが、やはり民法の七百九条、我が国の損害賠償の基本ルール、特に民事のルールというのは、現に生じた損害を補填するというこの原則から抜けられないんですね。いわゆる懲罰的であったりとか再発を防止するというのは刑事罰とか行政罰の範囲でやるのが我が国の法体系であって、民事の範囲の中で何か損失を補填するものを超えた目的の損害賠償を入れることはできないというのが、我が国の基本的なまさに法体系なんだと思います。

 そこで、質問は、資料の一をお手元に配っていますが、TPPの協定条文の第十八章の七十四条の特に六項と八項を掲げました。

 ここで問題になっているのは六項で、今回のTPP協定を結んだら日本にも入れろと言って求められている、特に著作権の違反に対して求められている損害賠償というのは、ここにまず(a)と書いている法定の損害賠償、これはプレエスタブリッシュドダメージズといって、事前に立証せずにこれだけの罰を科しますというような意味だと思います。日本語では法定の損害賠償と訳していますけれども。二番目は、追加的な損害賠償ということで、注書きがあって、いわゆる懲罰的な損害賠償ということが(b)にあります。

 いずれも今の日本にはありません。きのうの質問にもありましたけれども、こういったものを我が国の民法典、司法手続の中で本当に導入できるのか、こういうことが大きな争点になったわけであります。

 まず、大臣にお伺いします。

 ここに掲げる六項の(a)、法定損害賠償と言われるものですけれども、これはどういう内容で、どういう目的のものを入れろとTPP協定上求められていますか。

岩城国務大臣 お答えいたします。

 一般に、法定の損害賠償とは、侵害行為があった場合に、権利者が損害と当該侵害行為との因果関係の立証をせずに、侵害者に対して当該侵害行為の類型に応じた一定の範囲の額の支払いを求めることができる制度であり、権利者の損害賠償額の立証負担が軽減される意義を有するものとされている、そのように承知しております。

 TPP協定の規定でありますが、TPPの協定では、法定の損害賠償は、侵害によって引き起こされた損害について権利者を補償するために十分な額に定め、及び将来の侵害を抑止することを目的として定めると規定されているのみで、その内容が具体的に規定されているものではない、そのように承知しております。

玉木委員 明確な答弁をいただきました。そのとおりであります。

 今引かれたのは、私の資料一の下側の八項に書いていることを最後読み上げられたんですが、明確に決まっていないのではなくて、TPP協定が義務として導入を求める内容は極めて明確であります。ここは赤線を引いていますけれども、前段ですね、侵害によって引き起こされた損害について権利者を補償するために十分な額、ある種この前段については、我が国の民法の七百九条の規定とも非常に整合的だと思います。

 問題は後半。及び将来の侵害を抑止することを目的として定めるという規定であります。これは英語で言うとディターという言葉、よく軍事の言葉で抑止力ということで使われるんですけれども、ディターリングインフリンジメントということになっておりまして、将来の侵害を抑止することを目的とした新たな損害賠償規定を日本にも入れなさいというふうになっているわけであります。

 そこで、このことについてきのう議論がなされたときに、まだ文化庁と一緒に法案の中身は詰めているところなので今の段階ではお答えできないし、出てきたら答えますということだったんですが、私はきょうは法律のことは聞きません。

 私がきょう聞きたいのは明確です。TPP協定の中身とこれから説明する最高裁判決との整合性です。

 資料二を見てください。

 私、きのう、高井先生の質問を聞いていて、その後勉強しようと思って調べたら出てきたんですが、平成九年七月十一日の最高裁の判決であります。これはもともとカリフォルニアの州裁判所が判決を出して、ある一定の損害賠償義務を課すという判決が出ました。これはアメリカですから、現に生じた被害が四十二万五千二百五十一ドル、それに加えて懲罰的損害賠償ということで、一般予防を目的とする賠償金として、それを上回る百十二万五千ドルを課すという判決が出たんです。

 このことに対して、先ほど緒方委員からもありましたけれども、執行判決ということが国内の判決で行われて、るる議論が行われて、最高裁まで行ってどういう結論が出たかというと、二の資料に書いています。

 ここは、よくごらんいただきたいんですが、我が国の不法行為に基づく損害賠償制度は、被害者がこうむった不利益を補填して、不法行為がなかったときの状態に回復させることを目的とするものであり、加害者に対する制裁や、将来における同様の行為の抑止、すなわち一般予防を目的とするものではないと判示しています。

 そして、我が国においては、加害者に対して制裁を科し、将来の同様の行為を抑止することは刑事上または行政上の制裁に委ねられていると。

 そして、実際に生じた損害の賠償に加えて、制裁及び一般予防を目的とする賠償金の支払いを受け得るとすることは、右に見た我が国における不法行為に基づく損害賠償制度の基本原則ないし基本理念とは相入れないとしています。そのことをもって、こうした金員の支払いを命じた部分については我が国の公の秩序に反するからその効力を有しないと判示しました。

 そして、先ほど言った四十二万五千二百五十一ドルについてはその支払いを命じたのに対して、百十二万五千ドルのいわゆる将来における同様の行為の抑止のために払わせようとした賠償についてアメリカで判示された内容については、これを上告の利益がないということで却下しています。

 そこで、大臣に伺います。

 資料の三をごらんください。

 今回のTPP協定の条文、中身がよくわからないと言いますが、明確であります。

 法定の損害賠償というのが六項で求められ、その内容は八項で規定されていて、繰り返し申し上げますけれども、将来の侵害を抑止することを目的とした損害賠償を導入しろ、これが署名した各国に対して求められているTPP条約の義務であります。それに対して、今紹介した最高裁判決、我が国の法体系の中では、将来の侵害を抑止する目的の損害賠償については、我が国の基本原則、理念に反して無効であると判示されています。

 双方が矛盾するように思いますけれども、今回のTPP協定の条文については、我が国の最高裁判決に対応させてみて本当に導入可能かどうか。民法を所管する法務大臣に伺います。

岩城国務大臣 御指摘の判例は、我が国の損害賠償制度の本旨としては一般予防を目的とすることが相入れないとしたものであります。そして、副次的、反射的に将来における同様の行為の抑止効果が生じること、これを否定したものではないもの、そのように承知しております。

玉木委員 大臣、逆のことを言っていますよ。条文を読みましょうか。

 では、副次的、反射的効果とは何ですか。

岩城国務大臣 我が国の損害賠償制度は、将来の侵害を抑止することを目的とするものではありません。もっとも、加害者に対して損害賠償義務を課すことの反射的、副次的な効果として、結果的に将来における同様の行為の抑止の効果が生ずるものと考えられます。

 そのため、TPP協定の将来の侵害を抑止することを目的として定めるとの規定がこのような反射的、副次的な効果が生ずることを踏まえて規定すれば足りるとの趣旨であるならば、この規定と填補賠償の原則は整合的に解することができるもの、そのように考えられます。

玉木委員 大臣、おっしゃっていることをわかっていますか。

 これをもう一回読みますね。最高裁の判決なんですが。

 加害者に対する制裁や、将来における同様の行為の抑止、すなわち一般予防を目的とするものではない。もっとも、加害者に対して損害賠償義務を課すことによって、結果的に加害者に対する制裁ないし一般予防の効果を生ずることがあるとしても、それは被害者がこうむった不利益を回復するために加害者に対し損害賠償義務を負わせたことの反射的、副次的効果にすぎず、加害者に対する制裁及び一般予防を本来的な目的とする懲罰的損害賠償制度とは本質的に異なるというふうに判示しているんです。これは結果として生じているだけであって。

 もう一回聞きますよ。

 では、TPP協定が求めているのは、この八項で将来の侵害の抑止を目的とした損害賠償規定を創設しろということを求めていると思いますが、それはそれで結構ですね。

岩城国務大臣 TPP協定において、法定の損害賠償は、侵害によって引き起こされた損害について権利者を補償するために十分な額に定め、及び将来の侵害を抑止することを目的として定める、このように規定されておりますので、将来の侵害を抑止することのみが目的ではありません。

玉木委員 大臣、ここに「及び」と書いていますね。十分な額を定めるということはそのとおり、損害について権利者を補償する。及び将来の侵害を抑止することを目的として定めるとなっていますけれども、将来の侵害を抑止することを目的とした法定損害賠償を設けるというのが協定の趣旨だと思いますけれども、それで構いませんね。

岩城国務大臣 ただいま委員が述べられたとおりであります。

 ただ、及び将来の侵害を抑止することを目的ということは、副次的な目的である、このように思っております。

玉木委員 それは、大臣、違いますよ。明確に、将来の侵害を抑止することを目的として定める。これも、最高裁の判決が何を言っているかというと、結果としてそういうことが生じることはあり得るということを言っているだけでありまして、あくまでこの判決が決めているのは、将来の侵害の抑止を目的とする賠償金の支払いを、我が国の損害賠償制度の基本原則、理念に反して効力を有しないと判示しているんです。

 TPPの協定が求めているのは、あくまで将来の侵害を抑止することを目的とした損害賠償規定を新たに創設しろということでありますから、もし創設しないのであれば、大臣、今のままの七百九条の民法の損害賠償のこれだけ定めておけば、原則さえあれば、あとは結果としてそれは制裁効果がありましたねということになるんですよ。どれだってあらゆる損害賠償というのはやはり、損害賠償を受ければ、こういう不法行為をしたらいかぬなということで一定の制裁行為が、当然それは一定程度、常にあらゆる損害賠償に含まれますよ。

 ただ、協定で求められているのは、あえてここで特出しして、二つの形態の損害賠償、そのいずれかまたは双方を導入しろと言われていて、その内容を八項で定めて、将来の侵害を抑止することを目的としたものを入れなさいと言って、内容まで規定しているわけですよ。

 改めてお伺いしますけれども、将来の同様の行為の抑止を目的としたこの八項に規定する損害賠償、これは明らかに平成九年の最高裁判決に違反するし、TPP協定の中身を忠実に守ろうとしたら、我が国では導入できない規定に署名してきたことになるのではないですか。大臣、いかがですか。

岩城国務大臣 先ほども申し上げました、副次的、反射的なものでありましても目的の概念には含まれるということであろうと思っております。

 そこで、将来の侵害を抑止すること、これのみが目的ではない、これは副次的なものだと私は先ほど申し上げました。

 そういった点で、おただしの件でありますが、法定の損害賠償制度を含むTPPの知的財産の章の規定をどのように実施するかにつきましては、TPP協定上、各締約国に一定の裁量が与えられているもの、このように承知をしております。

玉木委員 もう一度伺います。

 この協定は、将来の侵害を抑止することを目的として、この六の(a)に定める法定の損害賠償はそういったことを目的として定めろというふうに書いていますね。それは目的ではなくて、今おっしゃっているのは、現行の法体系の中で何か損害賠償をしたら、それは結果として副次的に、言葉は悪いが、ついでについてきた効果であって、目的ではないはずです。

 今の法体系の中でこれまでできないとされていた将来の侵害を抑止する、こういう損害賠償を目的として入れることなんてできないんじゃないですか、大臣。明確にお答えください。

岩城国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、副次的であっても目的の概念には含まれるもの、このように考えております。

玉木委員 副次的であるということは結果として生じるのであって、法はもともと目的としていないじゃないですか。もし副次的なものだったら、それはその副次的なことも含めて目的なんじゃないですか。

岩城国務大臣 目的には副次的なものも含まれるということでございます。

竹下委員長 岩城法務大臣。

岩城国務大臣 副次的、反射的なものであっても目的の概念には含まれる、このように考えております。

玉木委員 では、最後、もう一回聞きますよ。

 副次的というのは、言葉上、ついでに生じたということですよ。もともと最初から法目的を狙ってやったものではないので、副次的が目的だというのは取り消してください。

岩城国務大臣 お答えいたします。

 副次的ということは、主要な目的に次いであるということであると思います。(発言する者あり)

竹下委員長 玉木さん、質問をどうされますか。

玉木委員 大臣、では、この最高裁判決。反射的、副次的効果にすぎずと言っているんですね、最高裁判決は。効果は目的になりません。いかがですか。

岩城国務大臣 TPP協定の、将来の侵害を抑止することを目的として定める、この規定は、このような反射的、副次的な効果が生ずることを踏まえて規定すれば足りる、そういった趣旨であると考えます。

玉木委員 なぜ効果は目的になるんですか。このことを明確に答えてください。

岩城国務大臣 効果と目的はもちろん違いますので、この目的の中に反射的、副次的なものも含まれるということであります。

竹下委員長 質問者はどう考えられますか。(発言する者あり)いや、あなたが納得するかどうか。(玉木委員「納得していません。では、もう一回」と呼ぶ)では、玉木君。

玉木委員 効果が目的になる、反射的効果が反射的目的になるというのがよくわからなくて。

 もう一回最高裁判決を言います。一般予防を目的とするものではない、もっとも、加害者に対して損害賠償義務を課すことで、結果的に一般予防の効果を生ずることがあっても、それは一般予防を目的とする制度とは本質的に異なると書いているんですね。

 もう一回伺います。反射的な効果がなぜ事前に予想される目的になり得るんですか。

岩城国務大臣 反射的、副次的な効果ということも、本質たる目的ではなく、それに副次するもの、こういったものに当たるものと思っております。(玉木委員「全くわからない」と呼ぶ)

竹下委員長 玉木君に申し上げます。

 申し合わせの時間が経過しております。その点については御協力をお願いいたします。

 玉木君、質問に対して法務大臣は私は答えていると思います。それは、あなたが思う答えでないかもしれない。それはわかりませんが、法務大臣は答えている、私はこう考えます。

 質問を継続するか、あるいは、時間的に参っておりますので、次の方に譲るか、判断をしてください。

玉木委員 では、最後に一問だけ、これだけ聞きます。

 効果はなぜ目的になるんですか。

岩城国務大臣 効果のことを言っているのではなくて、本質たる目的……(玉木委員「ないんですか」と呼ぶ)はい。(玉木委員「効果と目的の関係を聞いているのに、何で効果のことを。答えてください」と呼ぶ)

 将来の侵害を抑止することということは副次的な目的であって、本質たる目的ではなくても目的ではあると思います。(玉木委員「それはちょっとひどいですよ。なぜ効果が目的になるかを聞いているんですよ。ちょっととめてくださいよ、委員長」と呼ぶ)

竹下委員長 玉木君に申し上げます。

 法務大臣は答弁をされております。質問を続けるか、次の方に譲るか、御判断をお願いいたします。

玉木委員 私は、委員長の議事運営に対して厳重に抗議したいと思います。

 今の私の質問は、最高裁が判示したような結果として生じる効果がなぜ事前に規定する目的になるのかということを聞いたんです。でも、副次的な目的は目的ですというふうに答えているだけであって、目的は目的ですと答えているだけで。なぜ事後的に生じる効果が事前に法律を制定するときに定めた目的になるのかを聞いているんです。

 目的は目的ですと言って勝手に答えを解釈して答弁しているだけであって、なぜ事後的な効果が事前に予定される法の目的たり得るのかということを聞いているのに、全く答えていないんですよ。

 私は納得できません、委員長。(発言する者あり)いや、それは答えるならきちんと答えてもらいたいんですよ。

 なぜかというと……。

竹下委員長 答えているか答えていないかという問題があります。これはなかなか判断が入る問題で、答えている側と受け取る側でいつも食い違う問題でありますので、理事会で協議をいたします。

玉木委員 では、以上で質問を終わりますけれども、改めて、委員長、きちんとした対応をお願いします。

 別に、私は、揚げ足をとるような質問じゃなくて、国内法の規定とこのTPP協定がいかに整合するのかという一つぎりぎりの、ほかにもあると思いますけれども、そのことを真面目にきょうは質問させていただきました。

 ですから、そのことについて十分な答えが得られないことは非常に残念でありますし、これはTPP全体の批准に対して極めて疑義が生じた時間だったと私は思いますので、また引き続きやらせていただきたいと思います。

竹下委員長 これにて玉木君の質疑は終了いたしました。

 次に、落合貴之君。

落合委員 維新の党、落合貴之でございます。

 本日は、民主・維新・無所属クラブの持ち時間の範囲内で質問をさせていただきます。

 要旨と順番を変えまして、まず、要旨の後半、会計検査院についてお伺いをさせていただきます。

 会計検査院の報告はいつも読ませていただいて参考にさせていただいておりますが、日本国憲法九十条には、「国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。」とあります。

 実際、会計検査院は国の会計の全てを毎年検査しているんでしょうか。

河戸会計検査院長 会計検査院は、会計検査院法第二十四条の規定に基づき、検査を受けるものから提出された書類等について、在庁して書面検査を行うとともに、同法第二十五条の規定に基づき、実地検査を行っております。

 まず、実地検査について申し上げますと、平成二十七年次における実地検査の施行率は、全体では九・八%となっております。しかし、これは施行率を算出する際の母数である検査対象箇所に二万余に上る郵便局やJRの駅などを含んだものでありまして、本省や主要な独立行政法人等の本部については、ほぼ毎年、実地検査を行っておりまして、施行率はおおむね一〇〇%となっております。そして、これらの本省等に地方ブロック機関等を含めた重要な検査対象箇所の施行率は四三・五%となっております。

 これらの実地検査箇所の選定は、無作為に行っているわけではありませんで、綿密な事前調査と検討によって策定した計画に基づき、できるだけ問題がある可能性が高い箇所を選定するようにして、検査の効果を上げるよう努めているところでございます。

 また、書面検査につきましては、会計検査院の定めます計算証明規則によりまして、各府省等から提出された計算書、その裏づけとなる証拠書類等の書類について在庁して検査しております。

 計算書につきましては、計数の正確性等を全て確認しており、また、証拠書類につきましては、検査上の重要性等を十分考慮し、効率的な検査を行うため、その密度及び深度を適切に調整して、計画的に検査しております。

落合委員 しっかりやっていますと。

 この資料二を見ていただきたいんですが、先ほどおっしゃっていた検査院の報告書についていたページで、重要な箇所が四三・五%ということになっています。今のお話を聞くと、これでも今の規模で十分だというふうに捉えてよろしいんでしょうか。もしくは、今の規模は十分でないというふうにお考えでしょうか。

河戸会計検査院長 会計検査院といたしましては、国の財政状況が厳しい中、法律上与えられた権限の範囲内におきまして、検査能力の質的な向上を図ることや、機動的、弾力的に検査体制を構築することによりまして、現在の人員及び予算をできる限り効果的に活用することが重要であると考えております。

 このため、検査手法や検査領域を多様化するための調査研究、専門分野の検査に対応できる人材の育成や外部の専門家の活用に引き続き努めてまいりたいと考えているところでございます。

落合委員 会計検査院の役割は、憲法上にも定められているような重要な機能を有しています。

 こういった中で、近年、新たな懸念が出てきました。それが、秘密保護法の存在でございます。もし検査の対象の書類などに特定秘密が入っていた場合、検査院の検査に支障を来すのではないかという心配、これは、院長、心配はないでしょうか。

河戸会計検査院長 会計検査院は、日本国憲法及び会計検査院法に基づきまして検査を実施しております。

 会計検査院法第二十六条には、会計検査院から帳簿、書類その他の資料の提出の求めを受けたものは、これに応じなければならないと規定されておりまして、会計検査院はこれまでも、検査上の必要がある場合、検査を受けるものから、安全保障に関する秘密も含めて、秘密事項についても提供を受けてきているところでございます。

 特定秘密の保護に関する法律によりまして、こうした従来の取り扱いに変更が加えられるものではなく、同法の施行後も、会計検査院は、検査上の必要がある場合には特定秘密の提供を受けることができるものとされております。また、このことは、内閣官房が昨年末に関係機関に発した通知及び二月四日に開催されました内閣保全監視委員会でも確認されているところでございます。

 したがいまして、検査上の必要により提供を求めた情報の中に特定秘密が含まれておりましても、検査に支障を来すことはないと考えております。

落合委員 それでは、同じような質問を岩城担当大臣にもさせてもらいたいと思うんです。

 特定秘密保護法の十条第一項には、国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがある秘密については出さなくてもいいというようなことが書かれている一方で、会計検査院については、全ての書類を提出しなければならないというふうに書いているわけです。この二つは矛盾をしています。これについて、どのようにお考えでしょうか。

岩城国務大臣 憲法上の会計検査院の役割の重要性については十分認識をしておりまして、特定秘密保護法案の作成時において、内閣官房と会計検査院との間で協議も行われましたが、会計検査院への秘密事項の提供に関する従来の取り扱いについては、法の施行により何らの変更がないものと考えております。

 それを前提に、内閣官房におきまして、一昨年十二月の法の施行前に、法の逐条解説に関する資料を作成し、各行政機関に周知したほか、昨年末、改めて関係行政機関に通知をいたしました。

 また、ただいま話がありましたとおり、先週二月四日に開催されました第三回内閣保全監視委員会におきましても、私から、関係省庁の事務次官や長官に対し、従来どおりの対応を求めました。

 このように、政府として適切に対応しており、会計検査について、特定秘密を理由として支障が生じることはないものと認識をしております。

落合委員 検査に支障が生じない、これを担保している大きな、文書としての担保はおっしゃった通知なわけですが、今私の手元に通知がありますが、昨年の十二月二十五日付で通知が出ています。これは、出したのが、内閣官房内閣情報調査室次長から各省担当局長への通知となっています。

 会計検査院自体が憲法に根拠を持つ機関であることからしても、特定秘密を会計検査に際して提出しないことへの懸念を払拭するには、これは役人間の通知でいいんでしょうか。これは憲法上の問題なわけですから、そして、検査自体は検査院と内閣の関係です。総理大臣から各大臣への通知とするべきではなかったんですか、この十二月二十五日は。

岩城国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたとおり、内閣官房において、一昨年の十二月の法の施行前に、法の逐条解説に関する資料を作成し、各行政機関に周知しておりますので、重ねての通知になりますので、こういった対応をとらせていただいたということであります。

落合委員 役人同士の通知でも、憲法上の問題が生じるような問題に対しても効力がある、力があるというようなことでよろしいですね。

岩城国務大臣 おただしのとおりで結構です。

落合委員 それではお伺いしますが、検査の対象に安全保障に著しい支障を及ぼすような情報が含まれている、その場合も、検査院に対して文書の提供を拒むことはない、全ての文書を表に出すということでよろしいですね。

田中政府参考人 先ほども大臣から答弁申し上げましたように、大臣からも、各省庁に対しましては、先週二月四日に開催されました第三回の内閣保全監視委員会におきまして、関係省庁に対しましてこの趣旨を徹底したところでございます。

 また、従来から、実務上はこれまで、行政機関が秘密事項であることを理由といたしまして検査に必要な資料の提出を拒否した事例はないというふうに承知をいたしております。

 また、秘密事項につきまして、会計検査院から検査上の必要があるとしまして提出を求められました際には、これに応じて提出を行うという従来の取り扱いにつきまして、特定秘密保護法の施行により何らの変更を加えるものではないということは、内閣官房と会計検査院との間で確認をされております。また、その旨を徹底しているところであります。

 したがいまして、特定秘密保護法の施行によりまして、特定秘密であることを理由といたしまして、検査上の必要があるとして求められました資料の提出がなされないという問題は、現実には生じないというふうに考えております。

落合委員 現実には生じないと考えていると。現実には生じませんとは今はおっしゃいませんでした。

 責任者として、大臣、今後も検査院に対して文書の提供を拒むことはない、安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがあったとしても拒むことは絶対にない、そういうことでよろしいですね。

岩城国務大臣 お答えいたします。

 特定秘密であることを理由として、検査上の必要があるとして求められた資料の提出がなされないという問題は生じないものと認識しております。

落合委員 生じないと認識しておりますというふうにお答えをいただきました。

 ちょっとお伺いしたいんですが、この通知の下に、「なお、会計検査院において提供を受けた特定秘密についても法に基づく保護措置が講じられる必要がありますので留意願います。」と書いてあります。これはどういう意味なんですか。

田中政府参考人 お答えをいたします。

 会計検査院から資料の提供を求められ、それが特定秘密に当たる場合には、各行政機関の長におきまして、当該特定秘密を利用し、または知る者の範囲を制限すること、当該業務以外に特定秘密が利用されないようにすること、その他の政令で定める特定秘密の保護のための措置を講じることなどの要件を満たしているかを確認した上で、特定秘密を提供することになります。

落合委員 大臣、国民にわかりやすい言葉でぜひ説明していただければと思うんですが、文書が一部黒塗りで提出されるということはないというふうに考えてよろしいですね。

岩城国務大臣 これまで、従来とってきたそういった対応につきまして、変更はございません。

落合委員 変更はないということでございました。

 これは憲法にもかかわる、立憲主義にもかかわる重要な問題ですので、私も注視していきたいと思っております。

 済みません、時間がなくなってきてしまいまして。一つ取り上げさせてください。

 私は、党の青年局長を仰せつかっております。ことし、十八歳選挙権、選挙権が引き下げられました。今後の課題ですが、これと同時に、被選挙権の引き下げ、これも検討に値する課題だというふうに思います。

 総務大臣、この問題について、大臣の所見、政府の見解をお伺いできればと思います。

高市国務大臣 被選挙権年齢につきましては、昭和二十一年十二月二十四日の衆議院議事録を読む限り、社会的経験に基づく思慮と分別を踏まえて設定されてきたものと考えられます。職務内容や選挙権年齢とのバランスを考慮しながら検討される事柄であると考えています。

 諸外国の例を見ましても、選挙権年齢と被選挙権年齢は必ずしも一致していないといったことで、そのあり方にはさまざまな考えがあると思っております。

 いずれにしましても、被選挙権の年齢の取り扱いにつきましては、民主主義の土台であります選挙制度の根幹にかかわる問題ですから、国民の代表が集まる立法府における各党各会派において御議論いただくべきだと考えております。

落合委員 各党各会派の議論が重要ではあるんですが、ぜひ、それを後押しする意味でも、政府から前向きな話をいただければと思います。

 私が調べられるだけ調べた限り、百九十五カ国調べたんですが、選挙権、被選挙権の年齢は必ずしも一致していないんですが、例えば下院、衆議院のように二十五歳に年齢が設定されている。二十六歳以上の被選挙権である国というのは、百九十五カ国のうち、中東など十一カ国しかありません。世界で比べてもかなり被選挙権の年齢が高い。OECDに加盟している国に限れば、もっと割合は大きい。半分ぐらいが十八歳の被選挙権を持っております。ぜひこれは前向きに検討をしていただければと思います。

 この件につきましては、ほかの委員会でも取り上げさせていただきます。

 本日はありがとうございました。

竹下委員長 これにて落合君の質疑は終了いたしました。

 次に、島津幸広君。

島津委員 日本共産党の島津幸広です。

 きょうは、地域間格差と最低賃金の問題について質問いたします。

 初めに厚労大臣に確認したいんですけれども、最低賃金の本来の役割というのは、貧困をなくして格差を是正する、そのことによって地域の雇用や経済の活性化を図る、このように理解しているんですけれども、大臣の認識はどうでしょうか。

    〔委員長退席、菅原委員長代理着席〕

塩崎国務大臣 最低賃金につきましてのお尋ねがございましたが、最低賃金法につきましては、賃金の低廉な労働者について、賃金の最低限を保障することにより、労働条件の改善を図り、もって、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的としているところでございまして、役割がこういうことだというふうに理解をしております。

 地域別最低賃金、これにつきましては、決定に当たって、労働者の生計費や賃金あるいは企業の支払い能力について、各都道府県ごとに実情を考慮して定められておりまして、各都道府県ごとに差があることについては、各都道府県の実情が適切に反映された結果と考えているところでございます。

島津委員 地域的な問題についてはこの後質問いたしますけれども、最低賃金の引き上げが必要だということは、認識は一致すると思うんです。

 二〇一〇年六月に、政府、労働界、経済界の代表などでつくる政府の雇用戦略対話においての合意で、最賃引き上げの二〇二〇年までの目標と達成に向けた施策を取りまとめました。この中で、最賃をできる限り早期に全国最低八百円を確保し、景気状況に配慮しつつ、全国平均千円を目指すことが明記されました。

 今の安倍内閣のもとで、最低賃金を年率三%程度を目途として引き上げていくとしていますけれども、このベースでいきますと、全国加重平均千円になるのはいつになるんでしょうか。

塩崎国務大臣 最低賃金につきましては、昨年の十一月に、一億総活躍の緊急対策において、名目GDPを二〇二〇年ごろに向けて六百兆円に増加をさせていく中で、年率三%程度をめどとして、名目GDPの成長率にも配慮をしつつ引き上げていく、これによって、全国加重平均が千円となることを目指すとしたわけでございます。

 今お尋ねの達成時期についてでございますけれども、仮に毎年三%ずつ引き上げることとした場合に、試算をいたしますと、二〇二三年度に最低賃金は全国加重平均千円を超えることになります。このような意味で、二〇二〇年代半ばには千円に到達するものと考えているわけでございます。

 これは、先ほど申し上げた名目GDP六百兆円を目指す中で実現をしていくものでありますので、我々としては、この生産性革命とともにやっていかなければならないということで、今、金融機関とも連携をしながら、厚労省としても努力を重ねて、同時にやっていくということにしているところでございます。

島津委員 二〇二三年までということですけれども、余りにも遅いということを言わざるを得ないと思うんです。

 最賃が地域別になっているという話が先ほどありました。そのことで今、地域格差がどうなっているのか。

 最低賃金の全国加重平均は、今、七百九十八円です。神奈川県が九百五円、愛知県が八百二十円、静岡県は七百八十三円です。私は静岡県出身なんですけれども、静岡県の最賃は、今言ったように、全国平均よりも低いだけじゃなくて、隣の愛知県と比べると、時給で三十七円、神奈川県とでは百二十二円も低いんです。百二十二円というと、フルタイムで働くと年収二十二万円もの差が出てきます。

 静岡県の熱海市と神奈川県の湯河原町の間に千歳川という川が流れています。大変小さな川で、国道にかかっている橋でも五十メートル程度、小さな子供でも歩いて渡れる橋です。その川を挟んで最低賃金に大きな差がある。

 議員会館にもあるコンビニのチェーン店の求人情報を調べてみました。静岡県熱海市のコンビニは、時給八百円から、高い店でも八百五十円。一方、湯河原町は九百五円から九百二十円でした。同じ時間帯で同じ仕事をする、にもかかわらずこれだけ時給が違う。

 大臣、こうした実態をどうお考えになりますか。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、最賃の決め方というのは、それぞれの地域ごとに、生計費、あるいは賃金、企業の支払い能力などを勘案した上で都道府県ごとにお決めをいただいているという、最賃の審議会は都道府県ごとに設けられているわけでありまして、そういうことに基づいて決められているということになりますので、各都道府県の実情、私も愛媛県松山市に住んでおりまして、物価水準とかいろいろな意味で、賃金も含めて、それぞれやはり少し違うということがあるので、そういうことでございます。

 今、先生の御地元ということで東海地方のお話をいただきましたが、若干、都市がずっと連続的に続いているような、市街地が続いているようなところとそうじゃないところでは、今御指摘になったようなことは確かにあるかもわかりませんが、基本的な決め方は、それぞれの地域の実情に合わせて最賃をそれぞれ決めていただくということになっているということでございます。

島津委員 歩いて渡れる川一つ隔てて物価水準の地域差を持ち出すというのは、余りにも現実とかけ離れた話だと思うんです。

 大分駅のあるファストフード店は、時給六百九十五円で募集していました。同じチェーン店の東京の店は、時給千円だったんです。むしろ、客は大分の方が多かった。年収だと五十五万も差がある。こんなことが今現実としてあるわけです。

 私は、議員になってこちらに来ました。物価の話が出ましたけれども、静岡市も東京も物価はそんなに違いません。スーパーでも、東京は確かに高級店はあります、でも、庶民的な店もあるんです。首都圏は家賃が高い、こういう議論もあります。でも、一方で公共交通が発達していますから交通費は安くて済む、そんなにかからない。一方、地方の方では、公共交通が便が悪くて運賃も高い、必然、車を持たざるを得ないということでその経費がかかる。

 資料として、総務省の統計の勤労者世帯の消費者支出の結果、これを出しました。これを見ていただくとわかるように、全国どこに住んでいてもそんなに大きな差はないんです。静岡市よりも最賃が高い横浜市の方が、むしろ消費支出が少なくなっている。

 生計費に大きな差がない一方で、最低賃金の格差は広がっています。これは資料二で示してありますけれども、最低と最高が年々広がっていく。むしろ、地方に住んでいる方が生計費がかかる、こういう声もあります。

 厚労大臣、この最賃の地域格差が地域を疲弊させている要因の一つになっていると思わないんでしょうか、どうでしょう。

塩崎国務大臣 それぞれの地域で若干実感が違うのかもわかりませんが、今、地方の方が生計費が高い場合もあるかもわからないという御指摘がありましたけれども、私が、今、愛媛県の松山市に住んでいる限り、ほぼ、やはり全般にわたって、時間距離とかそういうことも含めて考えてみると、生活コストというのは、東京で暮らすよりやはり、暮らし方にもよりますが、物価の面から見て安いのかなと。それから、賃金などを見てもそうでありますので、全体的に、かかるコストというものが必ずしも地方の方が高いという感じは私は持っておりません。

 最低賃金についても、決め方は先ほど申し上げたとおりで、さまざまな、地域地域の諸要件を受けて決めていただいているということでございますので、今御指摘のあったような点について、必ずしも、どうかなという感じがいたすわけでありまして、今お示しをいただいているものについては、さあ、果たしてどこまでを最賃の中にカウントすべき考慮項目として入れるべきかということは、また少し考えてみなければいけないのかなというふうに思いました。

島津委員 私が住んでいる松山市は違うと言うんですけれども、そんなことを言っていましたら松山市の皆さんは怒りますよ。今、総務省の資料でもあるように、松山は確かにちょっと低くなっていますけれども、全国どこでも同じなんです。

 もう一つ、人口の流出、社会減の問題についてお聞きします。

 今、静岡県の人口の流れ、流出、転出が県内で大きな話題になっています。流出、転出、人口のいわゆる社会減が、二〇一四年は、静岡県は全国で二番目に多かったんです。直近の数字でも、北海道などに次いで、全国で五番目に多い。

 静岡県の分析によりますと、転出超過数が最も多い階層、年代は、二十歳から二十四歳が二九・五%、次いで多かったのが十五歳から十九歳、二五・六%、合計五五・一%。県外への転出の半分以上が若年層、若者の層なんです。これは二〇一三年の分析で、ちなみに、二〇一〇年から一三年では、二十歳から五十四歳までの階層で、全て転出超過になっています。若者層、働き盛りの人が県外に出ていっているということなんです。転出先で最も多いのが東京圏、次いで名古屋圏です。

 静岡県の中でも、伊豆半島地域の人口減少率が、県内の中で比べても最も高くなっています。

 私は、伊豆半島の先端の下田市で市長さんからお話を伺ってきました。市長さんは、こう話していました。子供を大学に進学させる場合に、近くに大学はない、自宅からは通えない、都市部でも遠い大学に行く場合はあるんだけれども、自宅から通える大学もある、地方にはその選択肢がないんだ、このように言っていました。下田市では、子供が進学で首都圏などに出ていくと帰ってこない、観光不況で仕事も少ない上に給料も安い、人口はピーク時の三万二千人から一万人も減っていると言いました。

 市長さんは、若者の流出がとまらない、地域の経済も落ち込むという深刻な状況に心を痛めていました。地方には選択権がない、市長さんのこの言葉は、本当に実感がこもった重い言葉だと思います。これが地方の実態なんです。

 地域格差の問題は地方の活性化とも大いにかかわるので、所轄である石破大臣にもお越しいただいています。

 石破大臣は、地方の人口の偏った流出、社会減の要因はどこにあると考えていますか。

石破国務大臣 私も、人口五十八万人を切っている鳥取県が選挙区で、そこへ住まっておるわけでありますが、それは一概に言えないと思っています。

 今委員が御指摘の、例えば、今、高校を出て大学に進学する方々が六割強とか七割弱とかいらっしゃるわけですが、それぞれの地域にそれを受け入れるだけの大学の数がない。定員割れしているという問題もございますが、そういうこともあります。そうすると、ひっきょう、そこから出ていかざるを得ないということもございますでしょう。あるいは、東京や大阪で学んでも、帰っても働くところがないということがあることは、それもまた事実だと思っております。

 今、地方で起こっておりますのは、人手不足というのが地方の方が顕著であるということであります。そうであるからして、労働生産性を上げたとしても、そこにおいて失業というものが生じるというのは、今までとは違う局面なんだろうというふうに考えておりまして、いかにして地方における生産性というものを、上げる余地が多くございます、そこへ上げ、高い収入、そして、よい雇用条件、雇用環境というものをつくっていくということ。あるいは、地方において学びの場をさらに充実させていく。それが文科省が今進めておられるCOCプラスという事業だと思っております。

 政府として、今委員が御指摘のようないろいろな問題をよく認識しながら、きちんとした対応をしていくことが喫緊の課題であると認識しておるところでございます。

島津委員 今いろいろ述べられました。そういうさまざまな要因等もあると思いますけれども、今、各地で最賃の引き上げを求める意見書が議会で上がっています。

 静岡県でも、先ほど紹介した伊豆やあるいは東部の地域を中心に意見書が上がっているんですけれども、秋田県では、県内の八割に当たる市町村で、この最賃の問題で意見書が上がっているんです。

 二〇一四年に採択された男鹿市議会の意見書はこう言っています。地域間格差も大きく、秋田県と東京では時間額で二百四円もの格差があるため、青年の流出を促していますということを挙げて、ワーキングプアをなくすため、最低賃金の大幅引き上げを行うこと、全国一律の最低賃金制度の確立等、地域間格差を縮小させるための施策を進めること、中小企業への支援策を拡充すること、中小企業負担を軽減するための直接支援として、中小企業とそこで働く労働者の社会保険料負担の引き下げを支援することなどを求めています。

 石破大臣は、昨年の参議院の地方・消費者問題に関する特別委員会、六月十日ですけれども、我が党の大門議員の最低賃金の質問に答えて、賃金の格差ほど物価に格差があるわけではない、こう答弁し、地方の雇用者、特に若い雇用者、若い労働者も含めて、高齢者の方もそうですが、賃金を押し上げていくということは地方創生のために必要不可欠なことだと承知しておりますと述べています。

 この考えに変わりはないと思うんですけれども、石破大臣、今紹介しました意見書で求められていることを実現して、真の地方創生、地域の活性化を進めていくべきじゃないんでしょうか。どうでしょう。

石破国務大臣 最賃の決め方につきましては、先ほど来厚生労働大臣がるる答弁をしておるところであります。

 私は、デフレでがんがんと物の値段が下がっておるというときに、売り上げも伸びない、物の値段も下がる、そういう状況において最低賃金だけ上げるということは、それは政策の整合性としていかがなものかなというふうにデフレの真っ最中のころは思っておりました。

 今は、今の有効求人倍率等々から考えまして、いかにして地方の労働生産性を上げていくか。高い給与と、そしてよい就労条件というものを確保して、少なくとも雇用という状況において都会の求心力というものを弱め、地方において働く場をきちんと確保するということは極めて重要なことであって、賃金を上げていくというのはそういうことだと思っております。

 最低賃金につきましては、これはもう決め方が決められておるわけでございまして、そのことについて、最低賃金について私がどうこう申し上げる立場にはございませんが、地方における給与を上げていく、給与のみならずそこにおいて安定した就業がなされる、社会保障等々ですね、そういうものの充実を図っていくことは極めて重要な課題であるという認識は委員と共有をしておるところでございます。

    〔菅原委員長代理退席、委員長着席〕

島津委員 最低賃金も含めた賃金の引き上げが必要だということだと思います。

 今、ここに資料を用意したんですけれども、都道府県別の人口の転入転出と最低賃金との関連を示したグラフがあります。

 最賃の全国最高は、東京都の九百七円。低い県は、高知県や宮崎県など四県が六百九十三円。その差は二百十四円です。この場合、年収だと三十八万五千円も格差が出るんです。しかも、その格差が年々広がっている。

 最低賃金の差は実際の賃金の差となり、最賃が低いところから高いところへの移動が見てとれます。賃金が低いところから高いところへと人が流れている、一目瞭然だと思いますけれども、厚労大臣、どうでしょう、どう読み取りますか。

塩崎国務大臣 これはまさに、石破大臣が御担当していただいている地方創生のもともとの問題点の一つのスタートラインは、人口が大都市、特に東京に集中をし続けて、市町村がこのままいくと崩壊するんじゃないか、こんな問題意識だったと思います。

 それは、最賃で全てこれが起きているわけでは決してないわけでありまして、むしろ、最賃を決めるようなさまざまな生活条件あるいは経済条件というものがあって最賃はこういうふうになっているわけでありますから、大もとの、なぜ人が東京を初めとした大都会に集中をしていくのかということについて、きちっとした分析をしながら、あるいは逆に、地方でなぜ人が離れる要因があるのかということを考えていかなければいけないのではないかというふうに思っております。

 先ほど、十五歳から十九歳、それから二十歳から二十四歳というのは、やはり大学進学とそれから就職が象徴的にそこに集中して、行ったきり帰ってこないということになっているわけでありますから、むしろそうすると、大学も地方で十分学べるし、楽しいし、豊かな学生生活ができる、あるいは就職も地方でできるようにするためにはどうしたらいいのかということを、今、石破大臣を中心にお考えをいただいているんだろうというふうに思います。

 したがって、お配りをいただいたのは、かなりの相関関係を読み取ることが可能なふうになってはおりますけれども、それは直接の原因ではなく、さまざまな要因の中で最低賃金は決まっている、それが、人口が集中しているところが最低賃金が高くなるような条件が整っているというような感じが私はいたすところでございますので、やはり根本的なことを考えて、地方が本当にどうやったら元気になるのかということを考えていくべきではないかというふうに思います。

島津委員 いろいろ答弁されましたけれども、私が聞いたのは、この表にあるように、最低賃金が低いところから高いところへ人口が流れているのではないか、事実としてはっきりしているわけですけれども、そのことを否定はされないですね。

塩崎国務大臣 今申し上げたように、相関関係はあるようなふうな感じはいたすわけでありますが、原因はそこだけではなくて、では、地方の最賃を上げれば東京から人がどんどん地方に戻るかということには、私は多分ならないんだろうというふうに思います。

島津委員 そんなことを言っているわけじゃなくて、現に、だけれども、下田の市長が言っているように、行ったら、向こうの方が賃金が高いから帰ってこない、帰ってこられないと言うわけですよ、仕事がないという問題もありますけれども。確実に、最低賃金が低いところから高いところへ人が流れているということなんです。

 本来一律であるべき最低賃金に格差が持ち込まれて、このように、若者の流出、地域経済の衰退を初めとした深刻な問題が生まれているのは事実です。同一労働同一賃金の実現に踏み込むというなら、全国一律の最低賃金制に踏み込むべきではないでしょうか。このことを強く求めたいと思います。

 さて、冒頭にも指摘しましたけれども、最低賃金を引き上げなければならないという点では一致しているはずです。

 日本の最低賃金制は、地域別とともに、先進国でも最低という賃金水準が大きな問題です。最賃が最も高い東京の時給九百七円でフルに働いても、年間は百六十三万円。ワーキングプアの二百万円にも届きません。最低の六百九十三円では、年収二百万円にするためには、二千八百八十六時間、過労死ラインに近い働き方をしなきゃならないんです。働いても働いても貧困から抜け出せない。この最低賃金の低さは一刻も早く改善しなくてはなりません。

 最賃法の趣旨でもある健康で文化的な最低限度の生活、これはどのような生活でしょうか。

 もう一つ資料をおつけしました。全国労働組合総連合が全国各地の最低生計費調査を行った資料です。

 これを見ましても、全国どこでも生計費は変わらないことを示しているんですけれども、ここでモデルになっているのは、二十五歳の独身男性。中古の小型車で通勤し、昼はコンビニ弁当。仕事帰りに同僚と飲みに行くのは月に二回ほどで、一回に使うお金は三千円。家にある家電は、量販店で最低価格帯で売っているもの。帰宅した後はインターネットか携帯ゲームで遊んで、恋人とのデートは月に二回。こんな設定で算定しているんです。

 このような生活がぜいたくと言えるのか。むしろつましい。まさに健康で文化的な最低限度の生活です。その生活に必要な賃金は、時給千二百円台から千三百円台なんです。中小企業の支援とあわせて、早急に千円以上にすべきじゃないんでしょうか。厚生労働大臣、どうでしょう。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、一律というのは、今、この最低賃金の決め方の根本と少し異なるかなという感じがいたすわけでありまして、やはりそれぞれの生活水準、あるいは物価、あるいは賃金などに合わせて決めるということが必要なのではないかというふうに思います。

 今、先生から資料をお配りいただきましたけれども、最低賃金の水準というのは、やはり生活保護の水準を下回ることは、労働者の最低限度の生活を保障する観点や、あるいはモラルハザードの観点からして問題があるということから、平成十九年の法改正で、このような趣旨を踏まえて、「生活保護に係る施策との整合性に配慮する」という規定を入れ込んだわけでございます。

 この法改正を踏まえて、最低賃金と生活保護水準との乖離解消を図ってきた結果、平成二十六年度には全ての都道府県で乖離が解消されるというところまで来たわけでございまして、さっき申し上げたように、一億総活躍会議の緊急対策に基づいて、最低賃金は二〇二〇年代半ばに向けて千円を目指すということで図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

 なお、生活保護水準との兼ね合いからいきますと、今お配りをいただいているもののどこまでをカバーすべきなのかということはまだよく議論をしなければいけないのかな、そういうふうに思います。

島津委員 生活保護の乖離の問題が出ましたけれども、今、生活保護バッシングを利用して、生活保護給付を三年間で約一〇%も引き下げる。さらなる引き下げも計画しています。生活保護基準を低くしておいて、さらに基準を引き下げる。

 そして、最賃との乖離が解消されたといっても、労働者の暮らしは改善されません。支払い能力という議論もあります。

 もう時間がありませんから簡単にしますけれども、最低賃金を引き上げて雇用が減ったというデータは国際的には存在しません。むしろ、実際、二〇一五年から全国一律の最低賃金制度が導入されたドイツでは、一年間に正規雇用が約六十九万人ふえています。アメリカなどでも同様なんです。

 下田市長は、若者の流出を抑えるためにも、地域の経済が活性化するためにも、最低賃金を引き上げてほしい、しかし、市内の主な働き場所は旅館やホテル、引き上げと中小企業、小規模事業者の支援とセットでやってほしい、こう話されていました。もっともだと思います。

 しかし、いろいろ、今、最低賃金のための中小企業、小規模事業者の直接支援は限られていますけれども、今の状況で求められている引き上げ、全国一律ができるかどうか、本当に不安です。

 フランスでは、社会保険料の使用者負担分を三年間にわたって日本円で二兆二千八百億円出しました。日本でも思い切って支援をして引き上げるべきじゃないんでしょうか。最後にこのことをお聞きしたいと思います。

竹下委員長 塩崎大臣、短くお願いをいたします。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたことを繰り返して恐縮でございますけれども、二〇二〇年代半ばに向けておおむね三%ずつぐらいのめどで引き上げることによって、二〇二〇年代半ばに千円を達成するということを基本に、経済の再生を進めてまいりたいというふうに思います。

島津委員 終わります。

竹下委員長 これにて島津君の質疑は終了いたしました。

 次に、木下智彦君。

木下委員 木下智彦でございます。おおさか維新の会、木下智彦、よろしくお願いいたします。

 きょうは、主に中小企業対策といったところで、経済産業大臣も出てきていただきまして、質問させていただきたいと思います。

 では、早速お話しさせていただきます。

 まず最初に、ことしの冒頭、総理の施政方針演説の中で、中小企業対策というところで、中小企業版の競争力強化法というものをやっていきたいというような趣旨のことをお話しいただいておりますけれども、その辺の、実際、どんな内容の法案等々を考えられているのかといったところについて、経済産業大臣からまずお話しいただければと思います。

林国務大臣 総理の施政方針演説のとおり、中小企業の生産性向上を支援する法案の提出を検討しているところでございます。

 中小企業、小規模事業者の生産性は大企業に比べて今半分にとどまっておりまして、特に飲食や小売を初め、地域の雇用を支え、今後の成長の鍵となるサービス業の生産性が低いわけであります。また、生産性向上のための事業計画についてみずから考える余裕が十分にない場合も多いというふうに考えておりまして、このため、小売業、サービス業を初めとする事業者の本業の生産性を向上するための新たな支援の枠組みについて検討しております。

 具体的には、まず、各業種を所管する大臣が業種ごとに生産性向上の優良事例を指針化して、各業種ごとにわかりやすく示す、そして、この指針に沿った取り組みを行う事業者に対し固定資産税の軽減措置を含め金融や税制等で支援する、同時に、商工会議所、商工会、地域金融機関といった地域の支援機関が事業者の取り組みを促すなどの支援を行うといった、制度的な枠組みを今検討しております。

 これらの措置を通じて、雇用の維持拡大、賃金の引き上げ等を図り、地域経済の活性化を促進してまいりたい、こういうふうに考えております。

木下委員 ありがとうございます。

 重立ったところは私が考えさせていただいているところと非常に似通っているので、特に言うところはないんですけれども、後半にこの中小企業対策を細かくちょっと聞かせていただきたいと思っているんです。

 まず最初に、総理が競争力強化法の中小企業版というふうに言われていたんですね。その中小企業版ということ、競争力強化法、これは何を言っているかというと、恐らく産業競争力強化法、数年前に可決されたものだと思うんですけれども、これと何が違うんだろう、中小企業版とわざわざ言われるということは、では産業競争力強化法というのは大企業向けのものだったのかなと。私、これの審議も参加させていただいたんですけれども、特にそういうふうなイメージがなかったので、改めてちょっとその辺をお聞かせいただきたいんです。

 その中で、産業競争力強化法というところに事業再編計画それから特定事業再編計画といったものを認定するというお話があって、その中を見ていても、大企業がほとんどだと思うんです。

 ここで、大臣、もう一度お聞かせいただきたいんですけれども、事業再編計画それから特定事業再編計画は今のところ何社認定されているのかといったこと、それから事業再編計画の認定の目的についてお聞かせ願えますか。

林国務大臣 日本再興戦略においても指摘があるとおり、日本経済の活性化に向け、産業の新陳代謝を促進することは重要な課題でございます。

 こうした観点から、産業競争力強化法では、事業者からの申請に基づきまして、合併等を通じた事業再編に関する計画をこの事業を所管する大臣が認定しております。

 認定案件には、これは大手ですけれども、二社の火力発電関連部門を統合したような再編の事例、あるいは、中小企業が新商品開発や製造ライン構築のため新会社を設立し、これに外部からの出資を受け入れた事例などがございます。

 この認定を受ければ、登録免許税の減免という税制措置や、民間金融機関からの融資に対して中小機構が債務保証を行う制度が利用可能となります。こうしたメリットを付与することで、生産性向上のための事業者の取り組みを支援しているところでございます。

 強化法の施行から約二年で二十九件の計画認定を行っておりまして、着実に件数は伸びてきております。また、経産省以外の認定案件が十四件とふえてきておりまして、地域金融機関や鉄道事業者など、さまざまな業種での利用が広がりつつあります。

 引き続き、事業者への周知や円滑な審査を通じて、制度をより一層活用いただけるよう努めてまいります。

木下委員 今、はっきり言われたかどうかちょっとわからなかったんですけれども、一番キーになるのは何かというと、産業活動における新陳代謝。これが一番重要だという部分では、恐らく、これからつくろうとされている中小企業向けのものと似通ったところはあるんだろうなというふうに思うんです。ただ、今大臣がおっしゃられていました、経産省以外のところでも認定があるということで、そういったところをちょっと調べさせていただきました。

 きょうは総務大臣にも来ていただいたんですけれども、総務省からも認定企業が出ております。その中で出てきたのがテレビ朝日。テレビ朝日が再編されてホールディング会社にしている、これを認定されているんですね。この認定されたところに書いてあるのが、認定放送持ち株会社という形で認定されているということなんですけれども、この制度の活用のメリットといったところを教えていただきたいんです。

高市国務大臣 認定放送持ち株会社体制では、持ち株会社のもとに複数の基幹事業者を子会社とすることが可能になります。テレビ朝日グループでは、地上放送、衛星放送、それぞれのメディア特性を生かしつつ、営業面やコンテンツ制作面において有機的連携を図り、グループ全体として経営の効率化や競争力の強化を図ることを目的として認定を受けられたものと認識しています。

 一般的に放送事業者、ほかにも多くこの形式をとっておられますが、メリットの例としては、持ち株会社を通じてグループ全体の資金を調達できることや、コンテンツの著作権処理を持ち株会社に集中させることですとか、ネット配信事業など新規事業を放送事業者に直接リスクを及ぼすことなく展開できることなどが考えられます。

木下委員 ありがとうございます。

 言われているメリットの中で一番、私ちょっと違うんじゃないかなと思うのが、放送事業経営の安定性確保といった部分だと思うんですね。グループ会社で安定性を確保するといったことと、もともとの競争力強化法の中にある新陳代謝、これは新陳代謝が実際に起こるんですかね。この辺がちょっと、どう考えても、整合性が保たれているかどうかといった部分が私には不可解だなと思っているんですけれども、ここは、大臣、整合性は保たれているということでよろしいんでしょうか。

高市国務大臣 株式会社テレビ朝日でございますが、この認定放送持ち株会社体制への移行につきまして、事業再編計画を策定しておられます。平成二十六年三月に、産業競争力強化法に基づいて、事業再編計画により生産性の向上が見込まれるということで総務大臣の認定を受けています。この認定要件も、産業競争力強化法第二十四条第五項に基づいて審査を行い認定をしていますので、一定の要件を満たしていると考えられます。

木下委員 事業再編というふうに言われています。ただ、事業再編といいながら、テレビ放送局というのはもともと、認可がおろされて全国に百数十局あります。そこの中でもう既に誰が放送するのかというふうなことが決まっている、その中で新陳代謝が実際に起こるのかどうか。これは逆に、よくよく読んでみるとどういうことかというと、特定の偏りのあるような人たちから買収されないようにする、MアンドAなんかを避けるというふうな目的もある、それが安定性の確保だというふうなことだと思うんです。

 もともと私も、ちょうど地上波デジタル放送が始まるころに、テレビ局関連のこういった仕事にちょっと携わっておりました。その中で、やはり周りを見ていると、どうしても、東京にあるようなキー局、そういったところはデジタル放送の配信ができるけれども、地方に行くとなかなかできない。そういう中で資金力をしっかり確保してグループ会社としてやっていくためには、ホールディングカンパニー化というのが一つの方法だということで、これは事業の安定化ということでしかないと思うんですね。

 ここに実質的な事業再編があるかというと、グループ会社の中の形式を変えてほかから買収されないようにする、安定化させるというためのことであって、全くこれは新陳代謝に当たらないんじゃないかというふうに私は思うんです。ましてや、ほかの会社、ほかのグループ、ほかの集団から買収等々はできない。しかも、放送法自体は、認可された放送局だけが放送ができる、そういう状態がある。

 放っておいて、勝手にホールディングカンパニー化するのは別に構わないと思うんです。それを政府が税制優遇策をとって、わざわざそんなことをするということはあってはならないんじゃないかなというふうに私は思うんですね。ましてや、これはよく調べてみると、テレビ朝日だけが中の株主構成もあって少しホールディングカンパニー化がおくれた、だからたまたまこの法律にかかって税制優遇策が受けられたという形であるということなんですね。

 しかも、私、テレビ局とかかわりをずっと持っておりましたので、見ていると、テレビ局、特に在京のテレビ局の人たちは給料がめちゃめちゃ高いんですね。日本のトップ五十社、百社の中でテレビ局の給料は、全部テレビ局が入っています。私も割とたくさんもらっていた方ですけれども、そこと比べてもめちゃめちゃもらっている。しかも、私とちょっと違うなと思ったのが、交際費がめちゃめちゃ使えるんですよね。めちゃめちゃ使っていました、皆さん。私がそういう立場にいたのかもしれませんけれども。

 まず事業の安定性確保というのであれば、テレビ局も給料を下げたらいかがですか。そういった指導を、総務省、やられたらどうですか。まずそこからやって、事業の安定性を確保するといった指導をされたらいいんじゃないかと思うんですけれども、総務大臣、いかがですか。

高市国務大臣 当時、二十六年三月に総務大臣の認定を受けています。それに当たって、認定要件に基づき審査をして認定しているんですけれども、有形固定資産回転率が五%以上改善することといった要件がございます。テレビ朝日の事業再編計画においては、この有形固定資産回転率を平成二十八年度に二十四年度と比べて八・六%向上させるといったことにしています。こういった要件に合ったから当時認定を受けたものと思っております。

 具体的に、人件費等、経営改善に向けた御努力というのは、それぞれの社の経営判断だと考えております。

木下委員 認定の制度自体はそういう形でやられたということなんですけれども、今後、経営指導と言ったらいいんですかね、給料が高過ぎるということを、ぜひとも私は、会社の努力だというふうにおっしゃられていますけれども、指導していただきたいなと思うんです。

 なぜなら、今回、ことしの冒頭、公務員の給料の引き上げといったことに我がおおさか維新の会だけは反対しました。身を切る改革をみずからやっていかなければいけないというふうに言いながら、あの報道はほとんどテレビでされていないんですよね。全くされない。なぜされないかというと、私が思うのは、テレビ局の職員の人たちの給料が高いからなんですよ。自分たちが高いから、ちょっと後ろめたいから、やはり私はそういった部分にはテレビ局も余り言わないんじゃないかなというふうにどうしても感じるので、そういったところも含めて、私の意見なので、まず耳を傾けていただければなというふうに思います。

 それから、せっかくなので、また放送の話で、このテレビ朝日ホールディングス、実は、テレビ朝日という地上波と、BS放送のビーエス朝日、それからCS系のテレビ局をまず最初にグループ化したという形なんですけれども、BS放送とかも免許が与えられています。

 でも、あのBS放送の中で、基本的には無料放送がほとんどですけれども、あれは何で無料放送かというと、地上波と同じような形で、広告出稿で成り立っているという形になっているんですけれども、あの広告出稿、最近はちょっと少なくなってきてはいるといいながら、基本的に地上波は視聴率をもとに計算されて広告の料金が決まっている、ただ、BS放送は視聴率を開示していないんですね。なぜならば、見る人が少ないからだというふうに私は思っているんです。こういう状態の中で、ホールディング化してその辺をわかりにくくしようとしているんじゃないかなと思うことが一つ。

 それから、今後、大臣も言われていました、コンテンツを充実していくというふうなことを言われているんですけれども、これは、くっつけて何かしたからといってコンテンツがよくなるものではないんじゃないかなというふうに私は思うんですね。そもそも、チャンネル数が実際に価値がないのに多過ぎる、しかも、同じようなグループ会社に全て認可がおろされているというふうなことは、早急に改善していっていただきたいなと思います。これは御答弁いただかなくて結構ですので、私の方からの提言という形で聞いていただければいいかと思います。

 それでは、本題の方の中小企業、小規模事業者対策ということで、林経産大臣の方から先ほどお話しいただきましたが、生産性向上ということを言われておりました。どんな策を打とうとされているのかというところもおおむね言われました。経営指導であったり、事業計画をつくったり、その中で設備投資なんかを促進するような金融制度であるとか、そういうことを言われました。

 ただ、ここも本来の目的というのが一番重要だと思うんですね。それは、大臣ははっきりさっきも言われなかったと私は思うんです。事業計画をつくること、経営改善をすること、何を一番の目的とされているのかということの、その一番のキーワードをぜひとも大臣にお話しいただきたいんですけれども、何でしょうか。

林国務大臣 先生御案内のとおりでありますけれども、日本経済を持続的な成長軌道に乗せていくためには、過去最高を記録した企業収益を中小企業の改善につないで、経済の好循環を確実なものにしていかなければならないわけでありまして、しかしながら、地域や企業規模によって景況感にばらつきが見られまして、中小企業、小規模事業者にはアベノミクスの恩恵がまだまだ十分には行き渡っていないといった声が聞かれるのも事実でございます。

 こういった事業者の生産性向上のためには、事業計画策定を促す制度的な枠組みの整備、予算などによる新商品開発などの新たな取り組みの加速、そして大企業との取引条件の改善によるさらなる収益の確保など総合的な対策を講じていくわけでありまして、まずそういったものを現在検討している法案において、各業種を所管する大臣が業種ごとに優良事例を指針化してわかりやすく示すとともに、この指針に沿った取り組みを行う事業者に対し固定資産税の軽減措置などで支援していくことでございます。

 また、予算面では、ものづくり・サービス新展開支援補助金によって新商品の開発などを支援、また、各都道府県においてさまざまな経営課題についてきめ細かく相談に応じるワンストップ窓口である、よろず支援拠点の拡充に取り組んでおります。

 さらに、中小企業の収益拡大のためには下請取引の適正化を図ることが不可欠でありまして、大企業一万五千社以上、中小企業一万社程度を対象に、価格転嫁の状況等について大規模な調査を行っております。また、三次下請、四次下請など、取引上の立場の弱いおそれのある中小企業に対して取引価格の動向や問題事例の聞き取りを行っておりまして、経済の好循環の実現に向けてあらゆる施策を総動員して中小企業、小規模事業者の生産性の向上を支援していきたい、こういうふうに考えております。

木下委員 長々とお話しされて、同じ話をされているんですね。

 でも、一番のキーワードは何か。一言で言ったら、さっきから何度も言っていますけれども、新陳代謝なんですよ。新陳代謝とは何かというと、生産性の低い人たちには一旦事業をやめてもらう、よその違う事業に回ってもらうということだと思うんですね。これのために今言われていたような施策をどんどん打たれていることは明白なんですよ。なのに、政府としては絶対、そこの一番の最後の目的を、言いたいんだろうと思うんですけれども、言われないんですよね。ぜひともこの目的をちゃんと言っていただきたいんです。

 きょうはいっぱい資料を用意してきたので説明しますけれども、大臣も冒頭言われましたけれども、こういったグラフを見ていただくとわかるとおり、中小企業の方々がたくさんいます。しかも、その中で言われているのが何かというと、非製造業の方々が多いんですよね、今言われている商業であるとかサービスの。そういったことのグラフがここへ出ていますけれども、これは、書かれているのは誰かというと、冨山和彦先生が言われている。政府の中でも御意見をいろいろと言われていて、冨山和彦先生が書かれていることは、プロセスとして今大臣が言われたことと同じことをほとんど御著書に書かれています。

 ただ、冨山和彦先生が何と言われているかというと、やはり一番重要なのは何かというと、特に地方の中小企業の方々には緩やかな退出と集約化が必要だと。この目的のために、経営指導であるとか財務体質の改善であるとか、そういった施策を打っていくべきだ、最低賃金の上昇もさせるべきだと。

 目的は言わず、全てのプロセスだけを何度も何度も説明される。申しわけないですけれども、もうやはり変わりましょうよ。ちゃんと集約化それから緩やかな退出と、言葉の使い方は難しいと思いますけれども、これだけ一言言っていただきたいんです。本当にそういう目的があるというふうなことで正しいかどうか。どうでしょうか、正しいですか。

林国務大臣 個々の中小企業あるいは小規模事業者が退出を希望する場合には、これをかなえる仕組みを整えておくということが新陳代謝ができる環境をつくることになって、それが重要だろうというふうに考えておりますが、やはり技術開発を通じた新事業展開などの新たな取り組みに対して支援することもまた重要であろうというふうに考えておりまして、まず、今回検討している生産性向上のための法案も、あるいはサービス支援補助金も、各地域で頑張る中小企業による前向きな取り組みをきめ細かく支援していくということで進めているところでございます。

 そういった意味では、産業競争力強化法の事業再編支援などの仕組みの周知を徹底するのと、廃業の際に問題になる経営者の個人保証について、経営者保証に関するガイドラインを制定し周知するなどの取り組みも今進めているところでございます。

 こういった取り組みを通じて新陳代謝の環境を整えることによって、中小企業の生産性向上を図ってまいりたい、このように考えております。

木下委員 ちょっと踏み込んでいただいたかなと思うんですけれども、やはり目的をはっきり言っていただきたいんです。今の政府ならできますよ。それを言わないと、本来何のためにやっているか全くわからないと思うんですね。プロセスばかりいろいろ説明されますけれども。

 だから、ちょっと最後に、せっかく資料を用意したので、これを見ていただくと、先ほど個人保証の話もありましたけれども、諸外国との信用保証制度の比較。これを見ていただいても、日本だけ、我が国だけ信用保証制度がめちゃめちゃ高いんですよね。だんだんだんだんこれは下がってきてはいます。だけれども、まだまだ高い。

 やはり政策金融的な側面というのはあるかもしれないけれども、これをずっと減らしながら、そうしないと、冨山さんも言われていましたけれども、ゾンビ企業、今までは生き残らせる政策だった、これを今転換しようとされているんだと私は思っています。これをやはりはっきり言わないと、いつまでたってもぬるま湯につかった状態というのは解消しないというふうに思っているんですね。

 最後に一つだけ。これは財務省に聞いた方がよかったのかもしれませんけれども、この信用保証の残高というのは、責任残高はだんだんだんだん減ってきています。といいながら、政府系金融機関の中小企業向けの貸出残高は全然減っていないんですね。これは何でなんでしょうかね。ここだけ最後にお答えをいただいて、終了にしたいと思います。

林国務大臣 御指摘の中小企業向けの金融残高でありますけれども、平成二十六年度、中小企業、小規模事業者向け貸出残高二百四十四兆円のうち、政府系金融機関によるものは二十二兆円となっております。この水準はここ数年大きく変わってはおりませんけれども、官から民へという金融政策改革の趣旨は堅持をしております。

 政府系金融機関は、現時点では、民間金融機関だけで対応が難しい危機対応や成長資金の供給などを行っておりまして、リーマン・ショックや東日本大震災に加えて、急激な原材料高など多くの中小企業の経営に悪影響を与える場合など、民間金融機関のみでは対応できない危機時に中小企業の資金繰りを支えておるところであります。

 また、新たな事業分野、海外への進出などリスクが高い事業は、黒字化するまでに時間がかかる場合もございます。このような場合には、民間金融機関と協調して、中小企業を後押しするための成長資金も供給しております。

 具体的には……(木下委員「具体的にはいいですよ、もう時間がないので」と呼ぶ)いいですか。

 中小企業を支えるためには、民間金融機関が目きき力を発揮して危機対応や成長資金の供給を行えるような環境を整えることが重要だというふうに考えておりまして、こうした取り組みを進めてまいりたいと思っています。

木下委員 ありがとうございます。

 お金を貸す方は余り変わらない、そうはいいながら、経営指導等々をやっていくということでは足並みがそろっていない。本当にやはり大なたを振るって、さっきの集約化という部分もはっきり宣言してください。これが本当に、ちゃんと政策転換をして政府が何をしていきたいのかということを示すことになると思うんですね。だから、やはり曖昧にしないで、ちゃんと全てが足並みをそろえて、本来あるべき方向は何なのかということをしっかりと指し示していただきたいと思います。

 以上で終わります。どうもありがとうございます。

竹下委員長 これにて木下君の質疑は終了いたしました。

 次に、伊東信久君。

伊東(信)委員 おおさか維新の会の伊東信久です。本日はよろしくお願いいたします。

 さて、本日は、先日、我が党の下地政調会長が質問をさせていただいた子宮頸がんについて、まずは引き続き厚生労働大臣の見解をお伺いしたいと思うんです。

 子宮頸がんの推定の罹患数の推移を見ますと、二〇〇二年には一万五千五百十三人、これが二〇一一年には三万二千四百三人と、二倍以上ふえています。このような状況の中、前回の下地政調会長の質問にもありましたけれども、HPVワクチンの実施率が低迷しているのは、HPVワクチンの副反応、この恐怖感が社会から消えていないことだと思います。

 まずは極めて基本的な質問なんですけれども、HPVワクチンの副反応に長期にわたり苦しんでいる方がおられるんですけれども、この副反応の原因究明の進捗状況、原因究明というのは果たしてできているのでしょうか。厚生労働大臣にお伺いいたします。

塩崎国務大臣 まず第一に、このHPVワクチンの接種の後に出てきた症状については、副反応疑い事例と我々は呼んでいます。いわゆる有害事象というふうに言われているものでありますが、これについて、長期に苦しんでおられる方がたくさんおられたということについては非常に心を痛めておりまして、我々としては、できる限り寄り添いながらこの支援を行っていきたいと考えております。

 今、その原因のお話でございますけれども、厚労省において、平成二十六年十一月までにHPVワクチン接種後の副反応疑いの報告があった二千五百八十四人に対して、実態を把握し、支援につなげるためにその後の状況を追跡調査し、昨年九月に調査結果を発表したところでございます。この結果、今でもなおさまざまな症状で苦しんでいる方が百八十六名おられるということがわかったところでございまして、日常生活や学校生活に悩みを抱えているという実情も同時に明らかになってまいりました。

 こういうことで、その実情を踏まえて、厚生労働省としては、昨年九月に審議会を開催いたしまして、まず第一に、既にある予防接種法、PMDA法に基づいて、従来からの救済制度を使って速やかに救済を行う。それから、医療的な支援の充実をしっかりと行っていく。そして三番目に、学校など生活面の支援の強化等の方針を打ち出して、それに基づいて対応を進めているところでございます。

 お尋ねの、接種後に生じた痛みや運動障害等の病態や治療法については、平成二十五年度から厚生労働科学研究班において研究を行っているところでございまして、その研究成果については、本年三月に、二カ月後でございますけれども、全国の医療機関に提供し、患者の診療に活用いただけることになるのではないかというふうに考えております。

 さらに、私どもとしては、接種をした人とされなかった人との間でこのような症状が出ている確率がどうなのかということを、いわゆる疫学研究でしっかりと調べるということが大事で、海外ではこういう疫学研究は大変進んでいて、すぐにわかることでありますけれども、我が国ではこれがやってきていることではないものですから、今、疫学研究をしっかりやりながら、このワクチンとの因果関係について疫学的究明をしていこうと思っております。

 いずれにしても、患者の方々の声にしっかりと耳を傾けて、寄り添いながら必要な支援を行ってまいりたいというふうに考えております。

伊東(信)委員 私の質問の内容は、原因究明はできているのでしょうかという質問でして、前回の下地議員の質問に対する答弁と半分以上かぶっていましたので、それは議事録を見ればわかることなんですけれども。

 一つ気になることで、確認です。ワクチンの副反応を認めてくださいという趣旨じゃないので、確認なんですけれども、副反応疑い事例ということは、まだ因果関係がはっきりしていない、そういう解釈でよろしいわけでしょうか。

塩崎国務大臣 そのとおりでございまして、九月の審議会でも、疑い事例ということで、この二千五百八十四名の方々についての報告をさせていただいたわけであります。

 その原因が明らかでないがゆえに疫学研究を科学できちっとやって、これが本当にワクチン由来の症状なのかどうかということを、打った人と打っていない人とを比較して、究明をしていこうということを考えているわけでございまして、やはりワクチン行政としては、その原因を明らかにしていくということをやることが大事だというふうに思っております。

伊東(信)委員 この原因の究明をしていただきたいわけなんですけれども、実際、不定愁訴、決まった痛みが特定されない患者さんもおられれば、決まった痛みが出ている方もおられて、本当にさまざまな事例もあれば、軽症、重症という方もおられるんです。百八十六名の方を把握されていましたけれども、その方は恐らく重症な患者さんの事例だと思うんです。この痛みに対する症状、複合疼痛症候群と言われたりとか、反射性交感神経ジストロフィー、RSDと呼ばれたり、いろいろあるわけなんです。

 実は、十年以上、二十年ぐらい前なんですけれども、たかだかという言い方をしたら患者さんに失礼なんですけれども、うおのめを取っただけで同じような、RSDと診断された患者さんを私は見たことがあるんです。うおのめなので、引き続き皮膚科とか形成外科とか受診されたわけなんですけれども、現実、今苦しまれている患者さんがおられるわけなんですね。

 では、このHPVワクチンの副反応とされる症状が出た場合、何科を受診するべきなのか。副反応に対応できる医療機関及び個別の医師の把握を厚生労働省としてされているんでしょうか。現状をお聞かせください。

福島政府参考人 お答えいたします。

 HPVワクチン接種後に生じた症状の方々に対して、現場の医療機関、対応できる医療機関というものを提供することが大変重要でございまして、私ども、各都道府県に一カ所以上の協力医療機関を整備しておりまして、その当該医療機関の医師に対する研修会の実施等を行っております。

 加えて、協力医療機関と連携して積極的な診療を行う医療機関を受診する方へのフォローアップ体制についても積極的に取り組んでいるところでございます。

伊東(信)委員 お聞きしたのは、何科を受診したらいいんですかという話でして、協力医療機関というのは何科なんでしょうかね。疼痛なのでペインクリニックなのでしょうか。それとも、子宮頸がんなので婦人科なのでしょうか。お答えください。

福島政府参考人 これは症状によりまして受診される診療科はさまざまでございますけれども、それぞれ、いろいろな診療科を受診された場合に、その診療科が協力してやっております。

 例えば研究班、愛知医大等では、いろいろな診療科が連携してやっておる、そういうことでございます。

伊東(信)委員 質問の中で、医療機関及び医師の把握、その専門の医師を、厚労省としては、この先生、この先生、この先生がいるということを把握されているんでしょうか。それをもう一つ、ちょっと確認させていただきたいんですけれども。

福島政府参考人 お答えいたします。

 私ども、研究班、厚生労働科学研究、二班を走らせておりまして、研究班に属するそれぞれの医療機関、どの先生方が担当をしていらっしゃるかというのは把握しております。

伊東(信)委員 特に追い詰めるつもりもないんですが、医師が特定されていないと私自身はお聞きしていたので。まあ、それはもういいです。

 そもそも、ワクチン接種前に、副反応が出た場合に何科を受診されたらいいとかいうそういった、ワクチン対象者に対して、十三歳から十九歳の女性の方が受けるわけなんですけれども、現実、保護者が必要性を感じなければ、こういったワクチン接種というのは進まないと思うんですね。だけれども、今のような、私に言わせればあやふやな、起こってしまったことに対するきちっとした検証が、スピード感がない。三月はやはり遅いのではないかということなんですね。

 一方で、これはHPVに感染するのを防ぐワクチンであるんですけれども、現実、今感染されている働き世代、現役世代の女性の方、がんの予防として必要なのはよくわかりますので、では、このHPV感染者がどのくらい子宮頸がんになる可能性があるのか、お教えください。

福島政府参考人 現在のところ、どれくらい移行するかということについては明確にはわかっておりません。

伊東(信)委員 そうですね。すぐに子宮頸がんになるわけじゃないので、まずは前がん状態になるわけですね。では、感染から前がんになる割合、潜在的にがんになる可能性というのをお聞きしようと思ったんですけれども、多分、把握されていないというふうになると思うので、そのことは省きます。

 では、前がん状態の間に、早期発見、早期予防ということで、二つなんです。私自身、超党派の、乳がんとか子宮頸がんの検診の推進議連の副会長をさせていただいているので、この子宮頸がん検診というのもやはり両建てで大事だと思っています。

 さて、具体的な検診内容なんですけれども、職場での健康診断のオプションで受診する場合、御自身で綿棒で細胞をとり、検診機関に提出するだけだと聞いておるんですけれども、医療従事者が採取から対応しなければ、やはり正確な検診結果など期待できないのではないかと危惧しているわけです。そのあたりの問題意識、今後、ガイドラインの制定など、検診結果の正確さの向上について対策というのはお考えでしょうか。

塩崎国務大臣 子宮頸がん検診の際のやり方についての御指摘が今ございました。

 この細胞診の採取方法につきましては、厚生労働省の指針があります。これに基づいて、子宮頸部の全面から、全体ですね、綿棒などでこすって細胞を採取するということになっていまして、この検査は、通常、直接目で目視しながら、確認しながら医師等が細胞を採取することを前提としてこの指針はできておるわけであります。

 したがって、今お話がありましたように、一部自己採取による子宮頸がん検診が実施されているということが実際あるようでございまして、この方法では、子宮頸がんがある場合でもがん細胞が採取されないことが報告をされております。

 したがって、そういったやり方は検診方法としてふさわしくないというふうに考えているわけでございまして、昨年末に、厚生労働省が中心となってがん対策加速化プランというのをつくりました。その中で、検査方法を含めて指針を策定するということにしております。

 今後、専門家の御意見もしっかりと聞きながら、必要に応じて、今御指摘の点についても指針に反映をしていきたいというふうに考えているところでございます。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 今の御答弁、非常に満足いたしました。綿棒では十分ではないとおっしゃっていただいたのは、議連に携わる者としてありがたい御答弁だったと思います。

 ただ、大臣、子宮頸がん検診の結果票というのはごらんになったことがあるでしょうか。医療関係者でなければ非常にわかりにくい表現になっています。検診結果のクラス分けの根拠とか、厚生労働省として、クラス分けの結果、緊急性の度合い、段階を定めているのかだけ、厚生労働省にまず教えていただきたいと思います。

福島政府参考人 子宮がん検診結果のクラス分けでございますけれども、これはベセスダシステムというものを採用しております。このうち、要精密検査、その後すぐに生検あるいはコルポスコピーをやっていただく必要があるものと、それから、その後、例えばHPV検査の判定が望ましいけれども陰性の場合は一年後とか、あるいは、それをやらない場合には六カ月以内に細胞診をやるというような、幾つかの、細胞の状態に応じて全体としては三段階に分けて運用しております。

伊東(信)委員 検査結果が出て、よくわからない、不安だと、それで、専門の医療機関に行く前に気軽に聞けるかかりつけ医のような制度もやはり必要ではないかなと常々思っているんですけれども、そういったかかりつけ医、地域の医療に関連して、今度はちょっと遠隔診療ということについてお聞きしたいと思います。

 昨年の夏に、局長通知で医師法第二十条の遠隔診療についての考え方が出されました。この解釈というのが明確でない場合もありまして現場で混乱が生じているんですけれども、解釈について明確化する方針があるのか、もしくは、ガイドラインを策定するだけでは不十分なので、法改正、基本法の制定とか、そういった検討はされているのでしょうか。お教えください。

塩崎国務大臣 先生御指摘のように、確かに、この遠隔診療というのが本当にできるのかというようなことを時々やはり聞かれるわけでありまして、この解釈の明確化という御質問は、そういう意味で意味のある御質問ではないかと思っております。

 厚労省としては、診療は直接の対面で行うというのを基本としつつ、近年の情報通信機器の発達、普及の状況を踏まえて、医師の判断のもとで直接の対面診療と組み合わせた適切な遠隔診療が行われるように、平成九年以降、随時その取り扱いについて明確化を行ってきたところでございまして、今後とも、適切な医療の提供と患者の利便性を総合的に勘案しながら、情報通信機器の開発、普及の状況を踏まえて、必要に応じて遠隔診療の取り扱いの明確化に努めてまいりたいと思っております。

 昨年八月の事務連絡、ここで、遠隔診療によっても差し支えない場合として示している離島とか僻地の患者、あるいは在宅診療を受けている患者はあくまで例示であって、今後、これをどう皆さんに御理解いただけるようにするかということを考える。それから、診療は医師と患者が直接対面をして行われることが基本だということは変わらないわけであって、しかし、必ずしも直接の対面診療を行った上で遠隔診療を行わなければならないものではないということを明確化したところでございますが、なおその考え方を明確にするということに私どもとしても心を砕いてまいりたいというふうに思っております。

伊東(信)委員 電話診察という延長で、現在はスマホなどの端末を利用した診療がその局長通知でできるようになっているんですけれども、スマホなどを利用した診療というのは、先日も、ポケットドクターというスマホなどの端末を利用したアプリなども開発されたんですけれども、この遠隔医療にはやはり無限の可能性があります。通信技術も飛躍的に向上いたしまして、画像の解析技術も世界水準から見ても非常に高い評価を得ている日本において、本当にアベノミクスの成長戦略に私はそぐっているんじゃないかと野党ながら思っています。

 遠隔医療の規制緩和が進まないのは、残念ながら、省庁間の連携がうまくいっていないからではないかと考えておる次第です。連携を検討していく中で弊害がないのか、通信に関して所轄である総務大臣にまずお聞きしたいと思います。

高市国務大臣 伊東先生が医師でいらっしゃる中で遠隔医療に対して大変前向きなお考えをお持ちのこと、うれしく存じます。

 第一次安倍内閣のとき、イノベーション、科学技術担当大臣として遠隔医療を打ち出しましたときには医師会から大変お叱りもいただいたところでございますが、今、ICT技術も進んできております。

 厚労省との連携は特に重要だと考えています。去年の六月から十一月まで、厚生労働省と共同で、クラウド時代の医療ICTの在り方に関する懇談会を開きまして、クラウド技術など最新のICTを医療分野に活用する方策について検討を行いました。

 今、スマホやタブレットを活用して、医師と医師、それから医師と介護従事者の間での通信ができる、クラウドの普及も進んでいますし、いろいろな可能性が広がってまいります。

 あと、8Kですね。8Kを活用して、手術中に遠隔で病理診断をしてもらったり、それから先ほど来出ています離島や僻地での診断にも使えると思いますが、やはり技術的に、大容量の画像を送っちゃうという場合に遅延が生じたり、あと、色が正確に出るかどうか、こういった問題もございますので、二十八年度の政府予算に、遠隔医療に必要なセキュリティー水準も含めて技術的要件の実証を行うべく、予算案に盛り込ませていただいております。

 今後、しっかり厚労省初め関係省と連携をしてまいります。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 時間もあれなので、経産大臣、成長戦略になり得ると私は認識しているんですけれども、そのあたりはいかがでしょうか。

林国務大臣 ITを活用した遠隔診療は大変大事なことだと思っておりまして、近年、民間事業者が遠隔診療に資するサービスを開始する場合のグレーゾーン解消制度に関する問い合わせも大変増加しておりまして、厚労省等の関係省庁と連携して、グレーゾーン解消制度の活用などにより、対応を進めていきたいと考えております。

 経産省としても、ITを活用した診療支援技術の開発にも取り組んでおりまして、厚労省とも連携しつつ、さらに取り組みを進めていきたいと考えております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 最後に、三重県の名張市、名張もみじ山荘で、診断せずに死亡診断書を出した嘱託医が書類送検された記事を目にしました。もう時間になったので答弁は結構です。こういったことも、遠隔診療もしくは、みとりができる国の資格を持った認定看護師が訪問看護をすれば解決するところもあるので、最後、提言で終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

竹下委員長 これにて伊東君の質疑は終了いたしました。

 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 改革結集の会、鈴木義弘です。

 順次質問させていただきたいと思います。

 きょうの日経平均の株価が午前中だけで一万六千二百円という、大分落ちたなというふうな印象がありますし、きょうの読売新聞の記事を見ても、企業業績が少し息切れしてきたんじゃないか。私も、走ってここまで来ましたので息切れしたんですけれども。まあ、笑ってもらうのもいいんですけれどもね。

 ここに、「決算 業種で明暗」という新聞、大臣もごらんになったと思うんです。

 私が基本にしているのは、当たり前のことだと思うんですけれども、地元に帰ったときに、支持者の方のところを回ったときに、商売されている方に必ずお聞きするんです、どうですか、今はと。景気がいいか悪いかという話なんですね。私の地元は中小企業が多いものですから、埼玉の東南部に位置しておりますので、ほとんど町工場さんか中小の企業さんばかりなんです。中には大手の企業さんもあるんですけれども。

 ある、自動車の部品を、三次下請ぐらいだと思うんですけれども、そこでお尋ねしたんですね、どうですかと。使っている機械は、もう四十年ぐらい使っているプレス機械なんです。それで自動車の部品をつくっています。そこで、鈴木さん、四十年前、だから昭和四十年代の工賃と今も変わらない、こういうふうに言われたんです。

 あるところへ行ったら、アルミの加工をやっている、本当に家内工業的に二、三人でやっている企業さんなんです。大手のメーカーさんからプロトタイプをつくってくれというので、試作品をつくったんだそうです。それで、いよいよ仕事がたくさん回ってくるんじゃないかなというふうに思っていたら、中国でつくられちゃったんだそうです。日本のメーカーさんです。

 今度、中国でつくらせたのはよかったんですけれども、ふぐあいがあったので直してくれというオファーがかかったんだそうです。そうしましたらば、技術者を十人も連れてきて、修理をするところをビデオで撮らせてくれとか写真を撮らせてくれとか、こういう話になったんです。その社長、私の先輩になるんですけれども、お断りしました、それじゃ私たちおまんま食い上げちゃう。これが現実の話だと思うんですね。

 それで、お尋ねしたいんですけれども、もしこのままの状態でやっていったときに、いろいろな施策を打ってこられたんだと思うんですけれども、結局、前後して申しわけないんですけれども、中小零細企業の対策についての近年の主な税制の動きを見てわかるように、法人税制、今回も下げるわけですね。過去にも下げてきた幾つもの案件があるんですけれども、例えば、連結納税による所得金額の減少があったり、受取配当金益金の不算入だとか、外国子会社配当益金の不算入だとか、幾つかメニューがあって、大手を助けてあげましょうということで、リーマン・ショック以降、景気がよくなってきたんでしょうけれども。

 経済産業省で、第四十四回の海外事業活動基本調査というのを目にしたんです。ここでうたわれているのが、製造業の海外生産比率、海外設備投資比率とともに過去最高だというわけです。経常利益は九・九兆円で前年比二九・一%増、当期の純利益が七・五兆円で前年比一七%増、当期の内部留保額二・八兆円で前年比五六・二%増となっているんですね。ここで、配当やロイヤリティーなどの日本側出資者向け支払いが三・二兆円を超えて過去最高水準となっている。

 これだけの富と、考え方によっては、海外に工場を持っていっているということは、労働の機会が失われているわけですよね。国内に還流されるのが一部であって、国内では、実数でいけば九八%という言い方もあれば九九%が中小零細だというふうにいいながら、大手企業が得た利益が中小零細に還元されていないんじゃないかという考え方なんです。

 だから、税制を見直して、海外で得た利益を国内に還流する仕組みをつくらなければ、幾ら大企業を大事にしても、今、私が例示で挙げたような話で、メーカー名を言っちゃうと語弊があるから言わないだけの話なんです。だから、そういう企業を守っていて、中小零細が九八%で、頑張れよ頑張れよといって、固定資産税をちょろっとまけてやるからというだけで元気は出ないと思うんですけれども、大臣、とりあえず御感想をお聞かせいただきたいんですけれども。どちらでも。

麻生国務大臣 こんなことで譲り合っても仕方ないですけれども。

 まず、先生、別に今埼玉県に起きているだけの話じゃなくて、昔から、デフレになってこの方、各企業が海外に出ていって、仕事を海外でするようになった。

 例えば、それは、その国で関税障壁があって、日本のメーカーが、仮に車の輸出をそこにする場合は、そこの現地で七五%以上の部品を供給していない限りはそこでできないというようなことになりましたものですから、各企業はみんな海外に工場をつくっていくようになった、アメリカの場合。

 中国、アジアの場合に関しても同様に、今度は人件費が高いものだから、人件費の分を狙って海外に出ていかれるようになったということで、埼玉県でいえば、キューポラのありました川口なんというところは、随分な数のものがバングラデシュやらスリランカにもありますし、随分多く川口の方から出ていかれた。現場にも行ったことがありますし、そういったところに出ていかれるようになったというのは事実なんだと思います。

 そういった企業がそこで得た利益というものを、今度は、そこの会社で出た、現地の子会社なりなんなりで得た利益は、そこで税金を払って、日本に送金されるということになっておりますので、その日本に送ってきた税金に関して、また日本がそこで税金を取るということになりますと、それは日本の税務署としては実入りがふえることになりますけれども、それは送金しませんよ。だって二重課税ですから、完全に。それなら、そこにそのまま置いておいて、そこで使えるようにした方がよっぽどいいということになりますので。

 そういった意味では、これは中小、大企業関係なく、みんなそういったようなことに関しては共通にしてやりますので、中小零細が不利で、大企業が特に有利というわけでもないのであって、事税、私のところはちょっと林先生と違って、税を扱う立場から言わせていただくと、そういった形で公平にその点はなっているというふうに思っております。

林国務大臣 麻生大臣が御答弁されたわけでありますけれども、中小企業の税制措置も実は進めておりまして、大企業の法人税率が二三・九%のところ、中小企業は、所得八百万円以下の部分につきましては一五%とする法人税の軽減税率がございます。

 また、中小企業が機械装置などを導入した場合に、特別償却または税額控除が受けられる中小企業投資促進税制があります。

 さまざまな優遇措置を講じているところでありまして、平成二十八年度税制改正大綱においては、生産性向上に向けた設備投資を行う中小企業、小規模事業者に対して、三年間、固定資産税を二分の一に軽減する措置を創設することを盛り込んでいるところでございます。

 中小企業が大変重要であるということを踏まえまして、中小企業の税制面での支援にも引き続きしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 法人税の話が出ましたので。

 法人税の構造を成長志向に変えていくというのは、安倍総理が力説してきた言葉だったと思います。アベノミクスもそれに準じているんだと思うんですけれども。

 法定正味税率というのは、標準税率で三四・六二%。米国の四〇・七五%に次いで世界で二番目に高い、だから下げていきましょう、二十八年度の予算でもそういう話になってきたんだと思うんです。

 国の稼ぎ頭である大手企業が、グローバル市場にどんどん舞台を移していって、確かに頑張ってもらっているんですけれども、ある意味では無国籍化をしているんじゃないかという考え方があったり、税制の欠陥や抜け道を巧みに利用して節税を行って、時には地球的スケールで課税逃れを行っていて、これが日本の税制の空洞化や財政の赤字の原因となっているというふうに、私が指摘しているんじゃなくて、指摘する人もいるということなんですね。

 だから、日本の法人税をほぼ法定税率どおりに支払っているのは黒字を出している中小企業で、海外活動の盛んな企業や配当等の収入が多い企業ほど税額控除が大きいと言われている。結果的に、多国籍企業の大企業優遇税制ではないかというふうにも言われているんですけれども、その点については、大臣、どういうふうにお考えですか。

麻生国務大臣 鈴木先生はBEPSという言葉を御存じでしょうか。ベーシック・エロージョン・プロフィット・シフティング、多分略だと思いますが、税金を合法的に、そこの会社がアメリカにあっても、その国の子会社を海外につくって、例えばケイマン諸島ならケイマン諸島に置いて、そこでやる。

 通称BEPSという問題を、三年前に財務大臣になったときに、この問題をきちんとやらないと、先進国は全部、名もなき税金の安い国に、いいところは全部、金が行っちゃう、俺たちはインフラから何から全部整備してやって、けつのいいところを持っていくのは全部そこじゃないか、アマゾン・ドット・コムを初め、みんな日本で配送やら何やらしているのに、どこに税金を納めているんだ、アメリカにも納めていない、おかしいとは思わぬですか、アップル、みんなそうじゃないですかという話をした。

 二年半かかりましたけれども、昨年の十一月、G20でこれを認めて、結果として、日本がたまたま租税委員長をしていましたものですから、日本が音頭をとって、BEPS最終報告書を国際的につくり上げ、各国全員賛成。アメリカは最後までいろいろ言っていましたけれども、アメリカだって、これは一番もうかることになるのはおたくじゃないの、最終的には、だからやった方がいいんじゃないという話で、結果的にアメリカも最後にはこれに乗って、BEPS最終報告書ができるところまでは来ました。

 これは、実際に施行するのが今からの一番大きな問題なんですけれども、それを、去年の十一月ですから、ことしからそれをいよいよ実行に移していくという段階で、各国それを始めるとは思いますけれども、今言われたように、確かに、そういったものが合法的にできるというのはいかがなものかと思いますので、日本としてはということで、私どもはそういったことを基本的に考えておる。

 御指摘は全く正しいので、非常に極端な例の方がわかりやすいと思って申し上げましたけれども、そういった点は十分に我々も考えてやっていかねばならぬと思っております。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 アメリカは四〇%の法定税が標準になっているんですけれども、アメリカですら、海外の子会社でもうけた金を本国に戻してきたときには、トータルでタックスをかけているんですね。日本は、数年前に、経産省の強い働きかけで、それは子会社の部分は益金として不算入で計算してくれというふうになって今の税制になっているわけです。

 私は、税金を納めてくれと言っているんじゃなくて、もうかったんだったらその分を中小零細に回してやってくれということなんです。それができていないんですね。だから、タックスとして国が一回戻してもらって、ではまた再分配させましょうというのがある意味では政治の役割かもしれませんけれども、そうじゃなくて、民は民でやってもらったらいいんですけれども、誘導策としてそういう仕組みをつくれないのかという話なんです。

 例えば、去年の経産委員会でも私、大臣に御質問したんですけれども、あの狂乱物価と言われたバブルのころで、GDPが四百八十兆、海外で稼いでいた金が三兆円です。それが、二、三年前のGDPですけれども、四百八十兆、海外で稼いでいる金が十五兆あるにもかかわらず、なぜ景気がよくならないんですかと聞いたら、外国から本国に戻っている金は二・三兆円ぐらいしかないんですと。それではよくならないですね。

 グローバル社会への対応だって、企業の後押しをどんどんどんどん日本国、国が挙げてやったとしても、先ほど申し上げましたように、四十四回の海外調査をもとにしてやっても、日本に工場を戻すんじゃなくて、海外でどんどん工場をつくるわけです。では、そこでもうけたんだったら本国に戻してくれないかという話なんです。

 税制のところを一回見てみますと、研究開発税制で、確かにこれをスタートして十年ぐらいたっているんですけれども、では、それがどれだけの成果があったのかというのをやはり検証しなければならないときに来ているんだと思うんです。このまま続けていった方がいいのか。

 時間がないのでこれから申し上げますけれども、今の配当金の益金の不算入の制度も、あとは、連結決算で、ほかが黒字になっていて、自分の本体が赤字で、例えば大手の商社さんなんかがそうですね、本体が赤字だけれども、よそで稼いだ金は、益金の不算入だから、そこは黒字になるわけです。でも、それは、日本に戻してきても、税金は納めないわけですから。だから、そういったことをもう一度見直した方がいいんじゃないかという考え方なんです。

 もう少し実態を分析して、大手さんもいろいろ努力されています。でも、中小でもいろいろなノウハウは持っているんですけれども、先ほど例示を挙げさせてもらったように、実際、四十年も五十年も工賃が変わらないでがちゃこんやっているわけです。中には、もう自分は給料を取れないから、年金をもらいながら、会社を潰したくないから一生懸命現場で働いている人が今の実態だと思うんですね。そこにもう少し光を当ててあげられるような制度を構築しなければならない。そうしないと、十年先、二十年先、もう現場で働く工員さんがいなくなると思うんですね。

 そこのところをもう一度お尋ねしたいんですけれども。

麻生国務大臣 林大臣の方がとは思わないわけでもありませんけれども、では、まず最初に私の方から。

 益金不算入の話は先ほど申し上げたとおりなので、海外でもうけた金を日本に持って帰ってくることによって、それが二重課税じゃなくて、向こうでそのまま使われるということになると丸々入ってこないことになりますので、仮に日本に一回でも入れば、税金として使われないまでも、その金は間違いなくいろいろなものに使われますので、そうすればそこで必ず、消費税等々いろいろなものが特例ということになるんだと思っております。それがまず一つです。

 それから、今言われましたように、もうけた金が税金を安くして、今、二九・九、二九・七とかいうことになって、ドイツ、欧州並みにほぼ近くなるところまで来るんですが、問題は、それによって純益がふえます。税金を払うのが減りますから、純益がふえますが、ふえた純益は何に使うんですか。そこが問題ですよ。

 企業の場合は少なくとも、去年の年度はまだ出ていませんが、おととし、さきおととしの企業の内部留保が幾らふえたかというのは、二十四兆九千億、二十五兆とふえていますので、かれこれ四十九兆九千億、約五十兆ぐらいの金が過去二年間で、去年を除いて、その前の二年間で内部留保がふえていますが、三百五十兆をトータルで超えていると思いますが、その金は、企業は内部留保にためているんじゃなくて、それは賃金に回すべきなんじゃないんですか。もしくは、それは配当に回すべきなんじゃないんですか。それとも、国内で設備投資したらどうですというのが筋なんじゃないんですか。企業というのは、お金をもうけて、そのお金を何に使うかというのは、きちんと頭の整理をしておかれないと、ただただためて置いておくだけでは話になりませんから。

 しかし、企業は今、この数年これだけ立ち直ってきても、まだ企業は貯蓄をふやしておられる、預金をふやしておられる額は六%を超えていると思いますね。だから、そういった意味では、金を借りないでどんどんどんどんためているというのは、間違いなく企業のマインドがまだデフレのままで萎縮したままになっていると思いますので、これが民間で言えば賃金にという話になるんですけれども、その話を、これはなかなか難しいところで、我々が言うと、この国は統制経済をやっているんじゃありませんから、これを我々が言うといかがなものかということになりますが、それを組合の方が我々に言えと言われるから、あんたらは、選挙は民主党をやり、陳情は自民党、私はそんなに人がよく見えますかと何回も会合で申し上げたことがあるんですけれども、給与は上げるべきですということを申し上げて、企業とも直接お話をさせていただきました。

 いかがなものかと思って私はこれに反対した方です。やり過ぎるのはいかがなものかと申し上げたのですが、いや、これは非常事態だから言うべきだという御意見で、企業側もそれを認められて、非常事態ですと言われたので、私も引き下がって、そこで、非常事態ということで、一回だけ上げただけではだめですよと。継続的に上げていかないと、使う方の人にしてみれば、ことしはふえたけれども来年はないかもしれないと思ったら、それは使えませんから。

 要は、消費が回っていくためにはこれが絶対必要ですということを申し上げて今やらせていただいているというので、これで約二年たったのですが、まだこれを継続して、こういうのが、みんな、ああ、毎年ふえていくんだなと思う気持ちになっていただかないと、なかなか消費というものがふえていかないのではないかという感じがいたしております。

竹下委員長 林経産大臣、手短にお願いをいたします。

林国務大臣 委員から、研究開発税制について、中小企業は使っていないんじゃないかという御指摘がございました。

 この活用額ですけれども、六千二百億円のうち、もちろん大企業が約九割を占めていますが、これは、一企業当たりの研究開発投資額が大きいというのが要因であります。一方、活用においては、中小企業が約七割を活用しているというところでございます。

 また、中小企業の研究開発を促進するために控除率を一二%としておりますが、大企業は八から一〇%として、優遇をしているところでありまして、その研究開発投資額に占める控除額の割合は、大企業が四・七に対しまして中小企業は七・二%と大きくなっているところでございます。

 いずれにしても、活用されるように、パンフレットの作成やら好事例の周知などに努めると同時に、産総研やら公設の試験場での共同研究によって技術力を強化する際の助成など、中小企業に活発な研究開発投資を促してまいりたいと思っています。

鈴木(義)委員 時間が超過していますので。

 ドイツは中小企業を大事にする国だというふうに聞いています。だから、思い切ったことを切り込んでいかなければ、例えば手形を大手はもう発行させないとか、キャッシュフローをよくさせるためには、中小零細の方に、幾らでもやり方はあると思うんです、税金でまけてやるとかそういうのじゃなくて、社会制度の中でもう一回見直しをかけなければ、やはり中小は血液が足元まで回らないんじゃないかということなんです。そこをぜひ今後もお考えいただけたらと思います。

 以上で終わります。

竹下委員長 これにて鈴木君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明十日午前八時五十五分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時六分散会


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