衆議院

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第12号 平成28年2月15日(月曜日)

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平成二十八年二月十五日(月曜日)

    午前八時五十八分開議

 出席委員

   委員長 竹下  亘君

   理事 石田 真敏君 理事 金田 勝年君

   理事 菅原 一秀君 理事 鈴木 馨祐君

   理事 関  芳弘君 理事 平沢 勝栄君

   理事 柿沢 未途君 理事 山井 和則君

   理事 赤羽 一嘉君

      あかま二郎君    秋元  司君

      井上 貴博君    石原 宏高君

      岩屋  毅君    衛藤征士郎君

      小倉 將信君    小田原 潔君

      越智 隆雄君    大西 英男君

      奥野 信亮君    門  博文君

      菅家 一郎君    木村 弥生君

      工藤 彰三君    小林 鷹之君

      小林 史明君    後藤田正純君

      佐田玄一郎君    佐藤ゆかり君

      鈴木 俊一君    鈴木 隼人君

      長坂 康正君    根本  匠君

      野田  毅君    原田 義昭君

      古屋 圭司君    前川  恵君

      保岡 興治君    山下 貴司君

      山本 幸三君    山本 有二君

      井坂 信彦君    緒方林太郎君

      大串 博志君    大西 健介君

      階   猛君    高井 崇志君

      玉木雄一郎君    長妻  昭君

      西村智奈美君    初鹿 明博君

      福島 伸享君    古川 元久君

      山尾志桜里君    浮島 智子君

      斉藤 鉄夫君    濱村  進君

      吉田 宣弘君    塩川 鉄也君

      高橋千鶴子君    畠山 和也君

      藤野 保史君    足立 康史君

      浦野 靖人君    河野 正美君

      松浪 健太君    重徳 和彦君

      鈴木 義弘君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣         麻生 太郎君

   総務大臣         高市 早苗君

   法務大臣         岩城 光英君

   文部科学大臣       馳   浩君

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   経済産業大臣       林  幹雄君

   国土交通大臣       石井 啓一君

   環境大臣         丸川 珠代君

   国務大臣

   (復興大臣)       高木  毅君

   国務大臣

   (防災担当)       河野 太郎君

   国務大臣         島尻安伊子君

   国務大臣         石原 伸晃君

   国務大臣         加藤 勝信君

   国務大臣

   (地方創生担当)     石破  茂君

   財務副大臣        坂井  学君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府参考人

   (内閣官房行政改革推進本部事務局長)       高野 修一君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   武川 光夫君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  安田  充君

   政府参考人

   (総務省自治税務局長)  青木 信之君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    佐藤 慎一君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長)            田中 正朗君

   政府参考人

   (スポーツ庁次長)    高橋 道和君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房年金管理審議官)       福本 浩樹君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房総括審議官)         田中 繁広君

   政府参考人

   (環境省水・大気環境局長)            高橋 康夫君

   参考人

   (日本放送協会会長)   籾井 勝人君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   参考人

   (独立行政法人都市再生機構理事長)        上西 郁夫君

   参考人

   (東京電力株式会社代表執行役社長)        廣瀬 直己君

   予算委員会専門員     柏  尚志君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月十五日

 辞任         補欠選任

  秋元  司君     鈴木 隼人君

  岩屋  毅君     あかま二郎君

  衛藤征士郎君     大西 英男君

  小田原 潔君     前川  恵君

  小池百合子君     木村 弥生君

  根本  匠君     菅家 一郎君

  野田  毅君     後藤田正純君

  大西 健介君     山尾志桜里君

  階   猛君     古川 元久君

  西村智奈美君     長妻  昭君

  福島 伸享君     初鹿 明博君

  松野 頼久君     井坂 信彦君

  濱村  進君     斉藤 鉄夫君

  赤嶺 政賢君     藤野 保史君

  足立 康史君     浦野 靖人君

  松浪 健太君     河野 正美君

  重徳 和彦君     鈴木 義弘君

同日

 辞任         補欠選任

  あかま二郎君     工藤 彰三君

  大西 英男君     衛藤征士郎君

  菅家 一郎君     根本  匠君

  木村 弥生君     小池百合子君

  後藤田正純君     野田  毅君

  鈴木 隼人君     小林 史明君

  前川  恵君     小田原 潔君

  井坂 信彦君     高井 崇志君

  長妻  昭君     西村智奈美君

  初鹿 明博君     福島 伸享君

  古川 元久君     階   猛君

  山尾志桜里君     大西 健介君

  斉藤 鉄夫君     濱村  進君

  藤野 保史君     畠山 和也君

  浦野 靖人君     足立 康史君

  河野 正美君     松浪 健太君

  鈴木 義弘君     重徳 和彦君

同日

 辞任         補欠選任

  工藤 彰三君     岩屋  毅君

  小林 史明君     秋元  司君

  高井 崇志君     松野 頼久君

  畠山 和也君     塩川 鉄也君

同日

 辞任         補欠選任

  塩川 鉄也君     赤嶺 政賢君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 平成二十八年度一般会計予算

 平成二十八年度特別会計予算

 平成二十八年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

竹下委員長 これより会議を開きます。

 平成二十八年度一般会計予算、平成二十八年度特別会計予算、平成二十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、参考人として東京電力株式会社代表執行役社長廣瀬直己君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として内閣官房行政改革推進本部事務局長高野修一君、内閣府政策統括官武川光夫君、総務省自治財政局長安田充君、総務省自治税務局長青木信之君、財務省主税局長佐藤慎一君、文部科学省研究開発局長田中正朗君、スポーツ庁次長高橋道和君、厚生労働省大臣官房年金管理審議官福本浩樹君、経済産業省大臣官房総括審議官田中繁広君、環境省水・大気環境局長高橋康夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

竹下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

竹下委員長 本日は、経済・地方創生等についての集中審議を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。後藤田正純君。

後藤田委員 自由民主党の後藤田でございます。

 私のような少々与党の中でもとんがっている人間にこうした質疑の時間を与えていただきまして、ありがとうございます。自民党の懐の深さだと思っております。

 きょうは、経済政策、そして地方創生ということで御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、安倍総理の今までの経済政策は、私は非常に順調に進んでいると思います。

 まず、三本の矢の検証をしながら、安倍総理の見解を聞かせていただきたいわけでございますが、現在の支持率、また経済指標を見ますと、やはり一本目の金融政策、そして二本目の財政政策、またそれに付随する税制、これは正しいという評価があるのではなかろうかな、このように思います。ただ、いわばこれは官主導の政策である、こういうことでございます。三本目の矢も以前から示しておりますけれども、これは官民一体となった、または国民の意識自体が大きく変わることによる構造改革、こういった三番目の成長戦略、構造改革、これはいささかまだ不十分かな、こういう認識であろうかと思います。

 昨今、株価だとか円安、いろいろな報道等がございますが、私は、これに一喜一憂することなく、この三本目の矢を確実に、成長に、また産業構造の大改革、そして内需拡大につなげていただきたい、このように思いますし、国民全体でアイデアを出し合う、与野党ともに生産的なアイデアを出し合ってこの難局を乗り越える、こういうことが大変重要だと思います。

 総理を見ていて、やはりリーダーとして挑戦をし続けていると思います。リーダーというのは国民の皆さんの意識、これをいかに高揚させるかという重要な役割もあると思うんですね。

 私はベーブ・ルースの言葉が好きで、ベーブ・ルースは、日本人との比較において言うんですが、日本人は、まず一点でも入れないように守りをしっかりやることに力を注ぐ、我々は一点でも多く点を入れることに力を注ぐんだ、練習においても、日本の選手はまずキャッチボールから始める、しかし、我々はまずバッティングから始めると。

 実は、私の地元の池田高校の蔦監督も、練習は最初にバッティングから始めるという、当時、攻めだるま、山びこ打線、こういうことで有名になったわけでございますが、今、日本に足りないのは、攻めるといいますか、振る、わくわく感、これをぜひ総理には出していただきたい。

 やはり、打席に立てるのは、総理も知事も市町村も一人だけなんですね。ただ、国民の皆さんも、地元の市長、知事を見ていて、本当にこの人は振っているのかな、本当にこの人は命がけでやっているのかな、こういうのを皆さんは見ていると思うんですよ。フォアボールを狙っていないかな、相手のミスを狙っていないかな、これじゃだめだと思います。経営者も同じだと思いますね。経営者も、コスト削減をして利益を出そうと思っていませんか、下請をたたいて利益を出そうと思っていませんか。そうじゃない。売り上げをいかにふやすかという経営者が私は日本に必要だと思います。

 こういう意味で、私はぜひ、この前、所信表明でたくさん挑戦ということをお述べになりました、その思いを改めて国民の皆様に、その意義と覚悟を国民の皆様にお伝えいただいて、国民の皆さんの意識改革も含めて感動させていただきたいと思います。よろしくお願いします。

安倍内閣総理大臣 経済を成長させていく、国が成長していく上においては、まさに今、後藤田委員がおっしゃったように、国民がわくわくしていくことが大切だろうと思います。

 デフレ下にあった二十年間は、そのわくわく感を失っていた二十年間ではなかったかと思います。給料も上がっていきませんから、当然、わくわくしていかない。あるいは、経営者も、物の値段が上がっていかないという中においては、いいものをつくって、少し高くなるけれども、たくさん売っていこうということにはならなくて、とにかく安くしていく、賃金を安くしていく、下請をたたいていく。そうすると、だんだん気持ちもしゅうっとなっていく。

 これを変えなければいけませんから、私たちは今までにない政策をとった。異次元の緩和を行った。そして、思い切った機動的な財政政策をとった。そして、一番大切な、今、後藤田委員がおっしゃった、民間が主役の成長戦略を進めていく、このわくわく感の中で新たなイノベーションが生まれてくる、そういう成長戦略を進めていきたいと思います。

 安倍政権においては、六十年ぶりの農協の抜本改革、あるいは、再生医療製品の実用化の迅速化や、電力、ガスの小売市場の全面自由化などを実現しました。まだ結果はもちろん出ていない。これから民間の皆さんが頑張れば伸びていけるという土俵をつくることができました。これからどんどん新たなアイデアも出てくるんだろう。

 農業においては、こうした動きの中で、四十代以下の就農者が二万人、これは二〇〇七年以来だと思うんです。まさに若い人たちがわくわくしながら、農業分野に、自分たちの努力や情熱、新しい地平を切り開くことができる、そういう気持ちを持ち始めていただいているのではないかと思います。

 医療や介護の分野では、再生医療製品の実用化までの期間が短縮をされまして、心筋や網膜などの再生医療の実用化が進展をしています。海外の再生医療関連企業は相次いで日本市場に参入しています。

 また、エネルギー分野では、本年四月からいよいよ電力小売が全面自由化されるわけでありまして、これによって新たに開放される市場規模は、一般家庭、商店、事業所等を合わせて八兆円に上るわけであります。新たに創出されるこの市場で自分も頑張ろう、いい、質の高い電力を廉価で供給していこう、便利にやっていきたい、進めていきたいと思う人たちも出てくる。そして、消費者もそれを選ぶことができるようにするわけでありまして、消費者の約八割が電力会社の切りかえを検討しているということであります。

 また、観光分野では、ビザの大幅緩和や消費税免税制度の拡充などを行って、訪日外国人旅行者数がこの三年間で二倍以上になった。昨年は過去最高の千九百七十四万人になりましたが、これをもっともっとふやしていきたいし、各地域にもこうした海外からの旅行者を引っ張ってきたい。徳島県においても、わくわくしながら、どうやれば海外からの観光客がたくさんリピーターになってくれるか、みんな考えていただきたい、こう思う次第でございます。これからもしっかりと進めていきたいと思います。

    〔委員長退席、平沢委員長代理着席〕

後藤田委員 ありがとうございます。

 そういった総理の挑戦ということは、これからもぜひどんどんやっていただきたい。そして、閣僚の皆様方にもそれがしっかりと伝わっていること、行政の方々にもそれが伝わることが大事です。それが結局、国民全体の意識改革につながる。つまり、挑戦できる社会なんだな、それがちゃんと報われる社会なんだなというビジョンを安倍総理が示しているということで、私は、難しいであろう構造改革というものもそこから始まっていくと思うし、加えて、これは一つ、意見だけ聞かせていただきたい。

 三本の矢のもう一つの矢に、私は、何で矢という矢を加えていただきたいんですよ。これは別に冗談でも何でもないんですよ。これは、私の妻の友人が、女性ですが、若くしてこの前亡くなりまして、若い人たちに、何でやという疑問を思うことが将来を切り開く矢である、こういうことをずっと訴えて亡くなったそうなんですね。これはすごくいい話だなと思いました。

 今申し上げました挑戦できる社会、そしてまた努力が報われる社会、そのきっかけだとか意識改革は、常に、何でやという気持ち、どうしてだろうという気持ちだと思うんですよ。これを役所の方々も含めて持っていただきたい。今までやっていたから当たり前だとか、こういう発想で役所の仕事をしていませんかと。会社でもそうだと思います。今までこうだったからとか、そうじゃなくて、常にそういう、何で矢という矢をぜひ四本目の矢で放っていただきたいです。

 どうですかね、安倍総理、感想を聞かせてください。

安倍内閣総理大臣 何でやって大切でして、何でできないんだということですね。

 我々がいろいろなアイデアを出すと、例えば、役所の方ではそれができないという理由をずらずらずらっと並べてくる。でも、やはりこれは挑戦したらどうか。まず挑戦して、問題があれば、これはもちろん人間の安全にかかわるようなことについては慎重でなければなりません、しかし、経済的な規制であれば、何でやという、何でできないんや、説明しろやということで、しっかりと挑戦していく。

 まず挑戦していくという気持ちで、この一年間、皆さんとともに頑張っていきたいと思います。

後藤田委員 大変楽しく聞かせていただきました。

 それでは、各役所で、総理のこれだけの挑戦、わくわく感を醸し出したい、この思いを共有しているかということについて聞かせていただきたいと思います。

 僕は、今政府が進めております政府機関の地方移転、これもすごくわくわく感があるんですよ。えっ、こんなことをやるんですかって、正直僕も耳を疑いました。安倍総理、すごいなと思いました。

 ただ、今私の地元でも消費者庁の話があったり、また、文化庁、中小企業庁、特許庁、気象庁、観光庁、これ、国民の皆さん、みんなこれが地方に来るんですよ。プラス、ここまで、当時六十九ぐらいあったものが三十四に絞られました。その中で、地方は期待と同時に、地方自身もそれを受け入れるためにすごく意識が高まると思う。これは本当にいい効果だと思うんですよ。ただ、今言われているのは、本当にやるの、大丈夫、またちょっと、やめちゃうんじゃないの、こういうのがあります。

 ここで、総理の挑戦ということに対して、そういうことがないということをぜひ、石破大臣、しっかり答弁いただきたいと思います。

石破国務大臣 これは、明治以来こんなことをやったことがありません。そして、まさしく委員がおっしゃいますように、地方から、これをここへ持ってきてくれと。それは、地域の発展のみならず、中央政府の行政ですから、日本全体のためにもなるということを地方から言っていただくということが今回の地方移転の特色で、今までやったことがありません、明治以来。竹下内閣のときにやりましたが、あれは東京中枢部の地価の高騰の抑制というのが政策目的でしたから、今度は全く違います。

 そうすると、日本全体のためになるのか、そして、行政の機能が最小限、幾ら何でも維持され、それよりも向上するのか、そして日本全体のためなのか、それが財政の過度の負担にならないか等々、そういうことを検証していきながら、これは最終的には総理を本部長といたしますまち・ひと・しごと創生本部で決定をいたしますが、まさしく問われているのは政府の本気度であるということはよく認識をして、これからも進めてまいりたいと存じます。

後藤田委員 ありがとうございます。

 やはり、挑戦にしても、国民が共感できる、実感できるということはもう実行あるのみですから、ぜひ期待をしております。

 加えて、地方の移転の問題とも若干関係あることで、NHK。きょう高市総務大臣に来ていただいていますが、NHKもいわゆるコストセンターですよね。それが何で渋谷のあの一等地にあるのか。

 安倍政権の成長戦略においていえば、あれは、例えば民間にあの土地を売って、あそこでもっと成長戦略としてプラスになる、一足す一が二じゃなくて一足す一が十になる、このような戦略を立てられる最高の土地ですよ。これに千何百億円かけてNHKがまた建てかえると。もう冗談じゃない。ただでさえいろいろな不祥事を起こしていて、あそこに建てる意味がない。これは経営者だったら絶対あんな判断しませんよ。でも、何と、法律に東京都に置くなんというのがいまだに書かれているんですね、昭和二十何年の法律で。

 これはやはり地方に移転する。百歩譲って、東京の中でも、東京の都議会議員さんも都知事もいるんだから、僕が都知事だったら、うちにくれと言って、こっちに行ってくれと言って、移転して、ここは土地開発をやらせてくれ、僕だったらそう言いますね。

 その点において、総理のこの挑戦に対して、高市担当大臣はNHK移転についてどうお考えですか。

    〔平沢委員長代理退席、委員長着席〕

高市国務大臣 今、後藤田委員が御指摘いただきましたとおり、放送法第十七条に、NHKは、主たる事務所を東京都に置くということにされていますので、今、渋谷に置かれております。

 放送センターを含みますNHKのさまざまな施設ですとか放送設備、この設置場所については、総務省が決めるというものではなくて、NHKがその経営判断により決められるものです。手続としましては、放送法第二十九条第一項の手続によりまして、重要な不動産の取得及び処分に関する基本事項は経営委員会の議決事項とされていますので、設置場所については経営委員会の議決を得ることになります。

 しかし、総務省としましては、放送センターの建てかえというのは国民・視聴者の皆様が負担する受信料で賄われるものでございますので、二月九日に国会に提出をさせていただきましたNHK平成二十八年度予算に付する総務大臣意見におきまして、「国民・視聴者の理解が得られるよう、説明を尽くすこと。」ということで、新放送センターの整備についても書かせていただきました。NHKにおかれましては、この意見も踏まえていただいて、設置場所選定の合理性、妥当性について国民の皆様への説明責任を果たしていただきたいと考えています。

 一方で、やはり地方創生に貢献していただくこともすごく大切だと思いますので、本体、主たる事務所というのは、恐らく放送法の趣旨というのは、大災害などが起きたときに、国のさまざまな機関や東京都と連携しながらずっと災害に関する報道を流さなきゃいけないということもあり、万が一東京の本体の方がその放送が続けられなくなったとき、大阪や福岡などでもバックアップできるようにしておられると承知していますけれども、やはり地方創生に貢献していただくということにつきましても、今回、付させていただきました総務大臣意見におきまして、「機能の地方分散についても積極的に検討すること。」と書かせていただいておりますので、ぜひとも、総務大臣意見を踏まえて、地方分散による地域の活性化に貢献をしていただきたいと思っております。

後藤田委員 前向きなお話であると思います。

 これは、一事が万事、NHKが移転するとなると、本当に国民がええっと驚くと思うんですよ、意外性というか。総理、やはりこういうことで国民の意識というのは変わると思うんですよ。ああ、安倍総理は本気なんだな、挑戦、振りまくっているな、こういうものをぜひ示していただきたいと思います。

 ちょっと時間も限られているので、きょうは資料を提出しておりますが、僕が一番振っていただきたいというか挑戦していただきたい、裏返せば、振っていない、挑戦していない省庁が文部科学省、僕はずっとそう思っているんですよ。

 きょう、お手元にお配りしました文部科学省の問題点、僕が自分でまとめたんだけれども、ずっとこの十五年間見ていて、やはり教育行政、大学の改革の問題ですね。二つ目はスポーツ行政。三つ目は科学技術行政。

 これはそれぞれ、やはり必要なものだから税金をもらって当たり前という感覚が本当に強過ぎる役所であり現場だと僕は思うんですね。だから、これをもっと、コストセンターという意識からプロフィットセンターに変えていく。つまり、今までの歴代総理も、官から民へ、こういうことで言ってきた言葉でございますが、それはやはりコストがかかる、利益を生んではいけないだとかそういうことじゃなくて、収益をふやしながらちゃんとしたサービスを提供していく、こういうふうな役所に変えていかなきゃいけないと思うんですよ。

 現に、大学でいえば、ミシガン大学というアメリカの公立大学は、東京大学の予算の三倍なんですよ。なおかつ、スポーツも強い。バスケもアメフトも強い。そして、十一万人のスタジアムを持っている。二万人のアリーナを持っている。そして、何とアメフトのヘッドコーチの給料は五億円以上です。これは公立ですよ。安倍総理は御存じでしたか。今度ぜひ官邸で説明させていただきたい、こういう夢のある話を。こういうことが現に起こっています。

 ハーバードでも、加藤大臣が来られていますが、女性活躍という意味で、最近の学長を御存じですよね、今、ハーバードじゃない学長がハーバード大学の学長になりました。そして、過去最高の寄附金を得る大学になりました。四兆円の基金を運用している私立大学です。

 では、片や日本は、二十年たって十八歳人口が四割減っているのに、私学は、三十年前に約四百校だったのが、今六百校になっているんですよ、一・六倍。そして、私学助成はふえている。

 これから医療について、いわゆる高齢化に伴う歳出増という話があると思います。しかし、少子化に対する歳出減だとか効率化という話は全然起こらないんですよ。私は教育が大事だと思います、スポーツは大事だと思います、科学技術も大事だと思います。ただ、予算制約、きょうも財務大臣が来られていますが、予算制約があって先細りになってはいけない、こういう懸念から、自分で稼ぐ努力をさせなきゃだめだ、こういう視点で申し上げているんですね。

 科学技術も、成果と研究費の表があるんだけれども、同じような成果、フランスとスペイン、日本も、位置が、世界で二十六番目、二十七番目、二十八番目が、フランス、スペイン、日本なんですよ。ただ、日本の使っている研究開発費は、フランスの三倍、スペインの八倍ですよ。これは何をやっているんですかという話なんですね。

 こういうことで、やはり意識改革、さっき国民の意識と申し上げまして、その前に、行政マンの意識、文科省の意識、こういうものをぜひ変えていただきたいということを馳大臣にお願いしたい。

 その中で、時間もないので、スポーツについて中心に申し上げます。

 二〇二〇年のオリンピック、これは、日本全体を大きく変える、スポーツ産業として安倍総理の提唱する六百兆の中の大きな位置づけとなる、僕は最大化する最高のチャンスだと思うんですよ。御承知のとおり、資料を説明しますが、アメリカはスポーツが今五十兆円産業になっているんですよ、日本は何とまだ三兆円産業というのが、三ページ目に示すとおりでございます。

 サッカーにしても野球にしても、全然売り上げの額が違う。イギリスのプレミアリーグとJリーグの違い。よく皆さん、アメリカだから野球はとか、サッカーはヨーロッパだからと言う、これもまた日本人がよく使う言いわけ、特に古い層の人たちが。そうじゃないんですよ。データサイエンスで見てみると、一九九五年当時は、サッカーも、Jリーグと変わらなかったんです、プレミアリーグ。野球も、MLBと変わらなかったんですよ。ということは、努力していなかったということなんですよ、NPBにしても何にしても。

 私は、この努力をぜひ促す必要があるんじゃないかと思いますと同時に、ガバナンスの問題。

 アメリカは、スポーツについて、産業化もガバナンスもUSOCというアメリカオリンピック委員会が一つでやっています。日本は、文科省があり、スポーツ庁があり、組織委員会があり、JSCがあり、JOCがあり、日本体育協会があり、もっと言えば各団体、最近、バスケットボール協会は八つあったり、各団体が分裂していたり、こんなことはもう日常茶飯事ですよ。

 これを、大臣、スポーツ庁というものをつくってちゃんとガバナンスをやるということでよろしいんですかね、このことについてちょっと聞かせてください。

馳国務大臣 二つお答えしたいと思います。

 まず、文部科学省では、経済産業省と合同でスポーツ未来開拓会議を開催し、スポーツ施設の収益化やスポーツに関連する新事業の開拓、IT、食といった他分野との連携など、二〇二〇年以降も展望した戦略的な取り組みの展開に向けて、有識者を交えた議論を開始したところであります。

 二点目、申し上げますが、ガバナンスの問題であります。

 スポーツ庁が昨年十月に設置をされただけでは意味がないと思っております。そこで、まず第一回目として、昨年十一月二十五日に五者協議をスタートさせました。これは、スポーツ庁長官のもとで、JOCの竹田会長、JPCの鳥原会長、日体協の張会長、またJSCの大東理事長が二、三カ月に一回は集まって、お互いの情報を共有しながら、各競技団体のガバナンスの問題なども含め、またスポーツ産業の活性化に向けての今後の取り組みを協力して進めていく、今までは縦割りであった、それではいけないという考えのもとに取り組んでいくことを報告させていただきます。

後藤田委員 これは、総理、USOCと日本の違いを見ていてわかるとおり、組織は一本化されているけれども国会には四年に一度報告が義務づけられていたり、法律的な人格が定義づけられたり。それで、あのスポーツの強いアメリカがこういうことをやっていて、スリムなんですよ。

 なぜ、アメリカから野球を持ってきた、バスケを持ってきたにもかかわらず、何かわけのわからない高野連さんの決まりが勝手につくられちゃったりして、バスケも、さっき言ったように、アメリカから来たすばらしい、感動を生むスポーツなのに、なぜか八団体まで分裂しちゃったり。日本って何なんでしょうね。スポーツというのは特に人を感動させますから、ぜひ、こういったものを総理中心にまたやっていただきたい。

 一つの例でいいますと、アマチュアでいえば、前にも僕は総理官邸でお話ししました、日本版のNCAAをつくっていただきたい。アメリカは、全米大学体育協会というのが組織としてあって、これはルーズベルト大統領のときからあるんですよ、一九〇六年から。ここがちゃんと、ガバナンスから指導者の安全、生徒の安全も守りながら、なおかつ収益化に心を砕きまして、今、一千億の収入があるんですよ。

 マーチマッドネスという、三月の狂気という意味ですが、バスケットボールの全米の大学大会で、すごく盛り上がる。その収益は何と一千億円ですよ。八十万人の観客を集めて高視聴率。でも、日本も同じコンテンツがあるんですよ。総理、何だと思いますか。甲子園ですよ。同じように八十万人集まって高視聴率。だけれども、高野連の予算は幾らですか。八億円ですよ。この違いなんですよ、成長戦略の違いというのは。

 アメリカは、やはり成熟国家からさらに進化しようとして、物から事に変わってきた。物づくりも大事です。物の消費だけじゃなくて、事に対する消費というものをマネタイズして産業化している、これをぜひ、石原大臣のもとで加速していただきたい。

 そして同時に、石破大臣にもお伺いしたいんですけれども、僕は、プロ野球、NPBも、また最近、野球もいろいろな問題を起こしましたけれども、さっきの地方創生じゃないですが、自民党でも提案しましたが、十六球団構想、これは安倍総理と石破大臣と石原大臣、高市さんが言ったら、NPBもわかりましたと言うと思うんですよね。今、野球がないのは、四国、沖縄、あと、千三百万人以上いる九州でいうと南九州。でも、手を挙げるところは、いいですよ。だから、さっきの地方移転と同じパターンで、これができたら盛り上がると思いますよ、地方。

 しかも、今までのプロ野球というのは、申しわけないですけれども、各企業の何か宣伝広告みたいな感じなんですよ。そうじゃなくて、Jリーグの成功のように、地域リーグ。だって、Jリーグは後からできたのに、J1、十八チームですよ、プロ。J2、二十二ですよ。J3、十三ですよ。これは何をやっているんですかという話なんですよ。

 だから、そういうことも、こういうのを言うと、また、いや、民間のことですからみたいなことを言うんだけれども、総理、挑戦させてください、総理から。

 ぜひ、このことも含めて、石原大臣と石破大臣にちょっと御意見を聞かせていただきたいと思います。

石原国務大臣 今、後藤田先生の、スポーツを産業化していく、そして、物から事へ、また、行政の方も、コストセンターからプロフィットセンターに。そんな中で、後藤田委員がいつも主張されております、国立競技場も、新しくつくるんだったらフットボールとかベースボールに改修費を任せて、民間に使ってもらったらいいんじゃないか。大変斬新なアイデアで、実現したら大変すばらしいことなんだろうなと聞かせていただいております。

 安倍内閣は、経済再生なくして財政再建なし、経済の好循環、やっとデフレではない状態をつくることができましたので、そんな中で、やはり一つの成長エネルギーとして、スポーツ、そして、官じゃなくて民間に任せられることは民間にという立場に立って、経済再生にこれからも努めさせていただきたいと考えております。

石破国務大臣 アメリカでは、ここ十五年ぐらいの間に総収益が四倍になったということを聞いております。日本は全然変わっていない。このことはよく我々も認識をしなければいけないことだと思います。

 委員の今の御指摘は、例えば徳島インディゴソックスのような独立リーグとの関係をどのように整理をするか。ただ、球団がふえていくということは、それだけ若い子たちにも競争の機会が与えられるということだと思います。楽天イーグルスの仙台のように、地域活性化にもなります。

 思うに、官が物を言うことであって、民主導でありますし、政府が言ったからそういうふうになるわけではありませんが、なぜ、球団をふやせば地域創生につながり、そして若い人たちの夢につながり、経済に貢献をするかということは、また委員の御指摘を踏まえて政府としても検討いたしてまいります。

後藤田委員 ありがとうございます。

 総理、今後とも思いっ切り振ってください。挑戦してください。

 ありがとうございました。

竹下委員長 これにて後藤田君の質疑は終了いたしました。

 次に、斉藤鉄夫君。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。

 私は、きょうは消費税の軽減税率制度につきまして質問をさせていただきます。

 来年四月に消費税率が一〇%に引き上げられます。消費税には、低所得者の方により負担感が強い、いわゆる逆進性と言われているものがございます。

 民主党政権時代、民主、自民、公明の三党合意による税制抜本改革法におきましては、この逆進性対策、低所得者への配慮として、このパネルにありますように、第七条に、総合合算制度、もしくは給付つき税額控除、もしくは複数税率、すなわち軽減税率、この三つを検討する、このようにされております。民主党も、この折は軽減税率制度を低所得者対策としてお認めになっていたわけですので、今、一部の議員の方が、天下の愚策だ、このようにおっしゃっているのはちょっと理解に苦しむところでございます。

 政府と我々与党は、この三党合意による税制抜本改革法に従いまして、平成二十五年度の税制改正以来三年間、この逆進性対策、低所得者への配慮をどのようにするべきかという議論を積み重ねてまいりました。その結果、平成二十九年四月、すなわち消費税が一〇%に引き上げられるときに軽減税率制度を導入するということで決定をしたわけでございます。

 この決断には、給付つき税額控除また総合合算制度は、所得水準や資産の水準に応じた給付を行う必要があるものの、その前提となる所得の把握、資産の把握、これが非常に技術的に難しい、現実的ではないといった課題があることが一つの背景となっております。

 そこで、この給付つき税額控除などについて、どのような課題があると政府は認識されていらっしゃるのか、まず財務大臣にお伺いいたします。

麻生国務大臣 今、斉藤先生お尋ねの給付つき税額控除、またいわゆる総合合算制度等々につきましては、対象を低所得者に絞ってできるというところに利点はあります。それは間違いないと思いますが、他方、給付が実際の買い物のタイミングとか購入額とは全然関係なくて、消費税そのものの負担が直接軽減されるものではありませんので、結果として、消費者にとって痛税感の緩和というのを実感しにくいという問題が一つあります。

 また、委員が御指摘になっておられましたように、所得の低い方などの所得の把握の問題や、所得が低いけれども、地方に行かれたら金融資産とか個人資産とかいうものは有しておられる方々をどうするのかという点、いわゆる資産の把握の問題が二つ目にあろうかと存じます。

 また、加えて、これまで確定申告をしてきておられない方が大勢おられますけれども、そういった方々に行政に新たに申請をしていただくことになりますので、したがって、それに対応するために、行政側としては、執行するに当たりまして、当然、可能性とかコストとかいろいろなものを考えないかぬという問題がもう一個あります。

 最後にもう一点、給付つき税額控除というものを導入しているのは、アメリカとかイギリスとかで既にしておられますけれども、こういったところでは、給付額の大体一〇%から二〇%程度、これまでの歴史で見ますと、間違いなく過誤とか不正受給とかいうものがあるので、支給の適正性の確保という問題、これまた全然別の問題が出てまいります。

 そういったいろいろなものがあるというように考えております。

斉藤(鉄)委員 今、麻生大臣から、所得、資産の把握が非常に難しい、こういう問題、それから、申告、申請をしなくてはならない、それを受け付ける役所の体制の問題、それから、実際アメリカ等で行われているとおっしゃいましたが、これは、いわゆる消費税に対しての低所得者対策としての給付つき税額控除ではなくて、社会保障と収入等の間にかかわる給付つき税額控除ですが、これでも非常に不正受給が多い、こういう問題がある、このような御指摘がございました。

 役所の体制の問題なんですが、実は、平成二十四年、社会保障と税の一体改革の特別委員会、当時、民主党政権でございましたが、こういうやりとりがございました。

 質問者が、三千百万人ぐらいいらっしゃるという住民税を払っていない方たちがみんな給付つき税額控除で税務署に押し寄せたら、今の体制で公平、公正、適切な給付を実行できるか自信を持てますでしょうかということに対して、時の民主党の財務大臣が、今、税務署の署数が五百二十四署数、国税庁の定員が五万六千百九十四名、この体制でやっていけるのか、率直に言って、執行面での課題がございますというふうにお認めになっていらっしゃいます。

 こういう課題が給付つき税額控除また総合合算制度にはあるんだ、こういう背景も議論の中にあったわけでございます。

 もう一つ、軽減税率制度の一つの利点は、諸外国において多くの先例があるということでございます。まさに制度として確立したものと言えるということがあると思います。

 各国における導入の背景はそれぞれいろいろ違いがあると思いますけれども、消費税、付加価値税と呼んでいるところもございますけれども、そのものの負担を軽減できる、それをその場で実感できるというそのわかりやすさも、諸外国で使われている大きな理由ではないかと思います。

 そこでお伺いしますが、OECD諸国において、消費税、すなわち付加価値税を導入している国は何カ国あって、そのうち、いわゆる低所得者対策として軽減税率制度を導入している国は何カ国あるのか。また、付加価値税、いわゆる消費税の低所得者対策として給付つき税額控除を導入している国は何カ国あるのか。それをお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 OECD、三十四カ国ございますけれども、そのうち、付加価値税は、アメリカを除きます三十三カ国が導入をいたしております。そのうち、軽減税率制度というものは、日本とチリを除きます、南米のチリですけれども、三十一カ国で採用、導入をいたしております。

 また、二番目の質問の、低所得者の付加価値税負担の軽減を目的としたいわゆる給付つき税額控除制度につきましては、これを導入しているのは、私どもの承知している範囲ではカナダだけだと存じます。

斉藤(鉄)委員 このように、OECDの中で、いわゆる付加価値税、消費税を導入している国は三十三カ国、その中で、いわゆる低所得者対策として軽減税率を導入している国は三十一カ国ということでございまして、ある意味で、私は、これが世界のスタンダードである、実績のある、スタンダードな低所得者対策なんだということを強調したいと思います。

 軽減税率制度については、金持ち優遇だ、こういう批判がございます。しかし、私は、その論拠は間違っていると思います。

 すなわち、金持ち優遇批判をする人は、金持ちほど負担軽減額が大きい、恩恵が大きい、このように主張されます。しかし、この考え方を突き詰めていきますと、消費税がなくなれば最も得をするのは金持ちだということになります。おかしな議論をされていることになるんですよ。

 常識的には、一般には、先ほど申し上げましたように、消費税というのは低所得者に対してより負担感の強い税だ、これは一般常識です。世界の常識です。ですから、消費税がなくなれば、低所得者が一番得をするはずでございます。金持ち優遇批判をする人は、全く逆の結論になっている。ですから、おかしさがあるんです、そこには。

 そのおかしさというのはどこから来ているかといいますと、金持ち優遇批判をする人は、その軽減の絶対額を言い、そして、いわゆる消費税には逆進性があるんだという常識論を言っている人は、消費税の収入に対しての割合を言っている。私は、割合で見なきゃいけないと思うんです。

 これは、右に行くほどお金持ちでございます。そして、赤い線が、消費税一〇%で軽減税率制度を導入しなかった場合の収入に占める消費税の負担の割合でございます。一〇%ですから、低所得者の方は、その払っている負担額は一〇%に近い数字になっております。その数字は左側の軸で見てください。

 青の線、これは、軽減税率制度を導入した場合、今回、食料品ということで計算しておりますが、食料品、軽減税率制度を導入した場合の負担率で、当然のことながら下がります。

 ここで問題なのは、その幅でございます。どれだけ下がったか。赤から青にどれだけ下がったか。そのどれだけ下がったかというのを太い緑の線で、右側の軸の数字で見てください、示しております。これを見ますと、低所得者ほど大きく幅が下がっている、負担率が下がっているということになります。一番低所得者の方と高所得者で、約九倍近い差があるわけでございます。

 このことを、いわゆる消費税は逆進性が高いということをおっしゃっているわけでございまして、そういう意味では、この金持ち優遇批判というのは当たらないのではないか、このように思いますが、総理のお考えを。

安倍内閣総理大臣 金持ち優遇という批判がいかに間違っているか、矛盾に満ちた批判であるかということを、今、斉藤委員が大変わかりやすく、易しく御説明をしていただいた、このように思います。

 消費税の負担については、所得の水準によって感じ方が変わると考えられることから、いわゆる消費税の逆進性については、消費税負担の絶対額ではなく、収入に占める消費税負担の割合によってはかるべきものと考えています。

 こうした消費税の逆進性の緩和の観点からは、酒類、外食を除く飲食料品の消費支出に占める割合を見たとき、家計調査をもとに、一定の前提のもと機械的に試算をすれば、年収千五百万円以上の世帯では一五%程度、年収二百万円未満の世帯では三〇%程度となっているわけであります。約倍になるわけですね。軽減税率制度の導入によって消費税負担の軽減の効果が所得の低い方により大きく及ぶことはこれで明らかであろう、このように思います。

 また、酒類、外食を除く飲食料品等に係る消費税負担の収入に対する割合は、所得の低い方の方が高所得者よりも高くなっていることから、所得の低い方の方が消費税負担の軽減度合いが大きくなり、まさに消費税の逆進性の緩和につながるものと考えております。

斉藤(鉄)委員 今、財務大臣は手を挙げておられましたが、御答弁は、今の総理と同じと。

 今総理がお答えになりましたように、今回のこの消費税の低所得者対策は、まさに消費税の負担軽減が収入に対してどういう割合を持つのかということ、その観点で話をしなければならない。

 絶対額で議論をしていますと、金持ち優遇の人の議論は、先ほど申し上げましたように、軽減税率は金持ちが得する、軽減の対象を広げればもっと金持ちを優遇する、最終的には、突き詰めれば、消費税がなくなれば金持ちが得をするというおかしな結論になることからも、おかしいということは明確だ、このように思います。

 それからもう一つ、軽減税率制度の意義について、低所得者対策、これは法律に定められた対策でございますけれども、そのほかにも大きく二つ意義があると私は思います。

 つまり、生きていく上で必要なものについては消費税の税率が低く抑えられている、このことからくる安心感。そして、その安心感が消費税を理解し、支持する基盤になる。そして、消費税に対しての国民の理解が社会保障を根本的に支えている。私は、ある意味で、この軽減税率制度によって国民が安心し、消費税を理解し、そしてそれは社会保障の基盤の安定化につながる、こういう大きな意義がある、もしくはこれが一番大きな意義なのかもしれません。

 もう一つは、日々の生活において消費者の方々に痛税感の緩和を実感していただくことによって、消費税引き上げによる消費意欲の減退を防止する、ある意味では景気の下支えをする。

 こういう二つの意義もある、このように私は思いますけれども、総理、この二つの意義についてはいかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 これはまさに斉藤委員の御指摘のとおりだと思います。

 先般、消費税を八%に引き上げたわけでございます。これは、三党合意にのっとって、世界に誇る社会保障制度を次世代に引き渡していくという責任を果たしていくためのものでもあります。

 しかしながら、十七年ぶりとなった前回の引き上げ後は、予想よりもはるかに消費の落ち込みが大きく、また長く続きました。来年四月に八%から一〇%へと引き上げていくに当たり、私は、国民の皆様に納得をしていただく必要があると申し上げてきました。消費への影響にも配慮しなければなりません。

 こうした中で、消費税の軽減税率制度は、税制抜本改革法に基づき、消費税率引き上げに伴う低所得者への配慮として導入するものであります。

 この軽減税率制度は、給付つき税額控除といった給付措置とは異なり、日々の生活において幅広い消費者が消費、利活用している商品の消費税の負担を直接軽減することによって、買い物の都度、痛税感の緩和を実感できるとの利点があるわけでありまして、その都度実感できるということは、今委員がおっしゃったように安心感に、絶対必要なものは上がらないんですねということになっていくわけであろうと思います。例えば、千円のものが千百円とはならずに千八十円のままになるわけでありまして、負担軽減を実感していただけると思います。

 さらに、年収の低い方の飲食料品等の消費支出に占める割合は高収入の方よりも高くなっておりまして、消費税が有しているいわゆる逆進性の緩和の観点からも有効であると考えています。

 また、委員御指摘のとおり、日々の生活の中で痛税感の緩和を実感していただくことで、消費税制度への理解や信頼につながるとともに、消費者の消費行動にもプラスの影響が期待できるのではないかと考えております。

斉藤(鉄)委員 やはり今総理がおっしゃったとおり、社会保障を支える消費税、その消費税を国民が支えている、基盤になる、また、景気の下支えの効果も大きい、こういう御答弁ではなかったかと思います。

 次に、財源の問題でございます。

 先ほどからも不規則発言で、財源をどうするんだという話がございましたけれども、まず私、一つ強調しておきたいのは、この低所得者対策は、税制抜本改革法の中に、やらなければならないと決められている、ビルトインされるべき政策であるということでございます。ですから、これに対しての財源もしっかり見ていかなくてはならないというのは、法律の中に組み込まれていることでございます。

 現に、この抜本改革をするまでの間、簡素な給付というのを続けているわけでございまして、その簡素な給付というものがある意味でベースになるとしたら、また、総合合算制度は実行しないということであれば、あと〇・六兆円程度は財源を明確に示していかなくてはならない、このように与党税制改正大綱にも書かせていただいたところでございます。

 与党としても、この財源は、しっかりと安定財源を見つけていかなければならないと、自民党、公明党は決意しておりますし、また政府としても、この財源を明確に示していくということはおっしゃっているわけでございまして、この財源についての総理の御決意をお願いいたします。

安倍内閣総理大臣 消費税の軽減税率制度の導入に当たっては、与党及び政府の税制改正大綱を踏まえ、今般、国会に提出した税制改正法案において、財政健全化目標を堅持するとともに、社会保障と税の一体改革の原点に立って安定的な恒久財源を確保するとの観点から、平成二十八年度末までに歳入及び歳出における法制上の措置等を講ずること等が規定されています。このように、軽減税率制度を創設する規定を盛り込んだ税制改正法案において、制度導入に先立って安定的な恒久財源を確保することを明記しているところであります。

 これに沿って、今後、政府・与党で、歳入歳出両面にわたって聖域なく、しっかりと検討してまいりたいと思います。

 なお、軽減税率制度の導入に当たって、安定的な恒久財源の確保をすることにより、社会保障と税の一体改革における二・八兆円程度の社会保障の充実に必要な財源は確保する考えであります。

斉藤(鉄)委員 今、総理の答弁で、最後に、社会保障の充実は必ず行う、財源を確保すると言っていただきました。

 よく、この軽減税率で、社会保障を削るのではないかという批判がございます。

 消費税一〇%になるときに、社会保障を安定化させ、かつ充実させるということで、二・八兆円程度、これは三党合意の中に入っている内容でございます。子ども・子育て支援の充実で〇・七兆円。それから、医療、介護、これは、医療・介護サービスの提供体制の改善とか、また難病や小児慢性特定疾患に係る制度の確立などで一・五兆円程度。そして、年金につきましては、いわゆる低年金の方の上乗せ給付でありますとか、また、これまで保険料を二十五年納めないと受給資格がなかったわけですが、これを十年に短縮するなどという社会保障の充実策がございます。

 この社会保障は必ずやっていくということについて、総理の御決意をお伺いするものです。

安倍内閣総理大臣 軽減税率制度の導入に当たりまして、総合合算制度相当額の〇・四兆円程度をその財源に充てた上、残りの〇・六兆円程度について、安定的な恒久財源を確保することによって、社会保障と税の一体改革における二・八兆円程度の社会保障の充実に必要な財源は確保する考えであります。

 軽減税率導入の財源については、現時点で具体的な措置内容が念頭にあるわけではありませんが、今後、歳入歳出両面にわたって聖域なくしっかりと検討してまいりたいと思います。

 軽減税率導入の財源確保を目的として、必要な社会保障費を切ることは考えていません。

 なお、社会保障についても、聖域化させることなく、効率化や無駄の排除を行っていくことは当然のことであります。例えば、ジェネリックに切りかえた場合に一定以上の医療費負担軽減効果がある方に削減額等を通知して、切りかえを促している呉市のようなよいモデルを横展開していけば、サービスの質を低下させることなく効率化を図ることができます。

 我々は、歳出の適正化を進めていくために、これからもこうした努力は当然重ねていきたい、こう考えております。

斉藤(鉄)委員 社会保障は削減しないという総理の御答弁をいただきました。

 次に、納税事務についてでございます。

 この軽減税率制度の導入に当たりまして、政府と、そして自民、公明、与党は、インボイス制度、いわゆる適格請求書等保存方式を導入することといたしました。

 ここに大体のスケジュールが書いてございますが、軽減税率が始まって四年間はこれまでの帳簿方式を改良する方式で、そして平成三十三年四月からは適格請求書等保存方式、いわゆるインボイス制度になるわけでございます。

 このインボイス制度の導入により、売り手も買い手も、インボイスに記載された取引記録に基づいて税額計算を行うこととなるため、売り手と買い手の間で相互チェック、相互牽制が働いて適正な税額計算ができるようになる、公正公平な納税に大きく近づくもの、このように期待しております。これは、消費税制度の導入以来二十七年間なし得なかったことでございまして、画期的なことと思っております。

 しかし、これには、先ほど声もありました、事業者の方に負担をかけるということもございます。ここへは十分な配慮をしなくてはいけないと思います。この事業者への配慮及び円滑な導入のための対応について、財務大臣にお伺いします。

麻生国務大臣 今御指摘ありましたように、日本においても、イギリス、フランス等々で導入されております、いわゆるインボイス制度と言われるものを導入することにしたことによりまして、複数税率、軽減税率、いろいろな言い方がありますけれども、そのもとで適正な課税というものを確保する上でこれは極めて重要、そう思っております。

 しかし、今御指摘がありましたように、初めての制度でもありますので、そういった意味では、このインボイス制度をスムーズに、円滑に導入していくためには、これは、従来から簡単な切りかえ、そんな簡単にいきませんので、軽減税率の導入から四年間の準備期間というものを設けさせていただいて、平成三十三年度から導入。また、それまでの間は、現行の請求書の保存方式を基本的に維持させていただいて、売り上げまたは仕入れの一定割合を軽減税率対象であるものとすることができるような特例を設けるということで、ある程度なれるという時間が必要であろうと思っております。

 また、インボイス制度の導入から六年の経過措置として、いわゆる払っていない免税事業者からの仕入れについては、一定割合の仕入れ税額控除を認めることとし、最初の三年間で八〇、残りの三年間で五〇%、だんだんだんだんというようにしていこうと思っております。

 今般国会に提出をさせていただきました税制改正の法案の附則におきまして、政府は、インボイス制度の導入に係る事業者の準備状況を検証しつつ、必要な対応を行う旨明記いたしておりますので、しっかりとした事業者への対応を行ってまいりたいと考えております。

斉藤(鉄)委員 経済産業大臣にお伺いします。

 私も韓国に調査に行ってまいりました。韓国の場合、大きなスーパーも小さな事業所でも、本当に混乱なく、軽減税率制度といいますか、あそこは食料品はゼロ%ですけれども、混乱なく行われておりました。それは、やはり政府からの、複数税率に対応するレジシステムなど、大変手厚い支援があったからだ、このように聞いております。

 中小企業、特に零細小売業の方への政府の支援というのは欠かせないと思いますが、経産大臣、どのようにお考えでしょうか。

林国務大臣 昨年十二月十八日に予備費を使用することを閣議決定しまして、中小の小売事業者等に対しまして、複数税率に対応したレジ導入の補助、また複数税率に対応できない電子的な受発注システムを用いている中小の小売業者あるいは卸売業者に対して、システム改修の補助を行うことにしてあります。

 これらの補助率は原則三分の二でございますが、規模の小さな事業者への配慮の観点から、三万円未満のレジに対する補助率は四分の三とすることで、より手厚く支援をすることとしております。

 また、規模の小さい事業者にあっても補助金申請を円滑に行えるように申請書類を簡素化するなど、手続負担にも配慮した制度設計を今進めているところでございます。

 さらに、一月二十日に成立しました補正予算を活用して、パンフレットの配布やら説明会の開催などによりまして十分な周知、広報を行います。

 また加えて、商工会、商工会議所などの中小企業団体などと連携をいたしまして、相談窓口の設置あるいは専門家の派遣などを通じて、レジ導入の準備を円滑に進められるよう丁寧なサポートを行います。

 これらの取り組みを通じまして、消費税軽減税率制度の導入、運用に当たりまして混乱が生じないよう、現場の声を聞きながら、そして、今先生御指摘のありましたように、規模の小さな事業者を含め、事業者の支援にきめ細かく取り組んでまいります。

斉藤(鉄)委員 これで終わります。

 円滑な導入、よろしくお願いいたします。

竹下委員長 これにて斉藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、長妻昭君。

長妻委員 おはようございます。民主党の長妻昭でございます。

 きょうは、丸川大臣にもお越しをいただきましたけれども、丸川大臣の二月七日の会合での発言、本当だとすると、相当ひどい発言じゃないか。

 福島原発事故の後の話だと思いますが、反放射能派がわあわあ騒いだ中で何の科学的根拠もなく、細野さんという環境大臣が一ミリシーベルトまで下げますとか、これは根拠があるわけであります、メディアというのは自分の身を安全なところに置いて批判していれば商売が成り立つ、いろいろな発言を。

 これはまさか本当ではないと私は信じたいんですけれども、こういう発言をしていないと信じたいんですが、この発言はまず事実なのかということ。そして、この国会では、その発言を撤回しない、記憶にないということで撤回しない、しないとずっとおっしゃっておられましたが、突如、私も土曜日ニュースを聞きましたら、撤回するというニュースが流れてまいりました。

 つまり、二点お伺いしますが、発言は事実なのかということと、撤回をされたということなのか。二点お願いします。

丸川国務大臣 まず、私の発言の内容についてですが、金曜日にメモを報道関係の方から入手していただきまして、これは省と事務所でやらせていただきましたけれども、それをもとに、その場におられた方々にもう一度確認をとっていただいて、この発言で間違いないかということで確認をとりまして、福島に関連するところをきちんと確認させていただきました。私の発言したことで間違いなかろうということでそのメモを確認させていただいて、その結果、福島に関連する部分については発言を撤回させていただいた次第でございます。

長妻委員 この後、初鹿議員が詳しく質問いたしますけれども、この反放射能派という発言、わあわあ騒ぐという発言は、相当これは問題だと思います。原発事故が起こった後、放射能に対して不安に思わない人はいないと思いますよ。わあわあ騒ぐというのは、かつての原発の安全神話につながるんじゃないですか。

 私は、丸川大臣は大臣の資格なしというふうに言わざるを得ません。この後、同僚議員が質問をいたしますので、ぜひ心してお答えをいただきたいと思います。

 では、これでお引き取りいただければと思います。

竹下委員長 大臣、お引き取りを。

長妻委員 それでは、総理が一億総活躍社会ということを打ち出しておられ、我々も目指す社会像というのを持っておりますので、基本的なことについて総理と、細かいことは言いませんので、質疑をしていきたいというふうに思います。

 まず、総理は、一言で言うとどんな社会を目指しておられますか。

安倍内閣総理大臣 私たちが目指している一億総活躍社会というのは、若者も高齢者も、女性も男性も、障害がある人も、あるいはまた難病を持っている方も、一回、二回失敗した人も、皆さんにチャンスのある社会をつくっていきたい、こういうことでございまして、そういう皆さんがそれぞれ力を出していくことによって多様性のある社会が生まれ、その中でイノベーションが起こり、成長が生まれ、それは人々を豊かにしていくわけであります。

 それはさらに果実を生み、そうした果実を例えば今私たちが出している希望出生率一・八を実現していく上においての子育て支援や介護離職ゼロのための社会保障に振り向けていく、そのことによって安定した社会基盤の上にさらには成長のための投資も行い成長していく、そしてそれは私たちをまさに豊かにしていく、さらなる果実を生んでいく。成長と分配の好循環を生んでいくことによって、自分の価値が評価され、みんなが豊かになっていく社会をつくっていきたい、こういうことでございます。

長妻委員 一言でと申し上げたんですが。

 我々が目指す社会像、共生社会、一人一人を大切にする社会ということなんですが、その中で、我が党として共生社会創造本部というのをつくりまして、中間取りまとめを出しました。「能力の発揮を阻む“格差の壁”を打ち破り、支え合う力を育む 公正な分配なくして持続的成長無し」というもので、これは我が党のホームページにも出ているところであります。

 そして、民主党の綱領。よく民主党の目指す社会はどういう社会かと聞かれますが、我々は綱領をしっかり持っておりまして、共生社会をつくる。一人一人がかけがえのない個人として尊重され、多様性を認めつつ互いに支え合い、全ての人に居場所と出番がある、強くてしなやかな社会をつくる、こういうことでございます。この社会をつくる上での道筋を明確に打ち出していこう、逆に言えばこの社会を阻んでいる障害物を取り除くということで、我々は経済成長は目的ではない。経済成長は大切ではあります。しかし、経済成長というのはあくまでも個人が幸せに暮らすための手段ということであります。

 そして、共生社会をつくるために障害となるのが格差の壁。これが大きな障害の一つだというふうに考えております。

 これは、OECDの調査レポート、一昨年の十二月に出て、世界に相当衝撃が走ったものでございます。所得格差が拡大すると経済成長は低下をしていくということであります。

 イラストは我々の事務所でつくりましたけれども、その理由としては、所得格差が不利な状況に置かれている個人の教育機会を損なう、所得格差は人的資源の蓄積を阻害、技能開発を妨げる。これはOECDのレポートの直訳でございますけれども、格差問題に取り組めば、社会を公平化し、経済を強固にすることができる。つまり、格差の壁が相当大きくなって個人の能力の発揮がなかなかできない、個人消費も伸びない、そして経済成長も抑えられて中長期の経済成長が妨げられているのではないのか、こういう考え方です。

 三十カ国の国を調べたもので、実際に、この二十年間の累積的成長、つまり実質経済成長、日本は本来であれば二三・一%のところ、格差の影響で五・六%マイナスになっている。この下の赤いところが格差拡大による経済成長の引き下げ効果ということでございます。

 その意味で、我々は、この格差の壁、個人の努力ではどうしても乗り越えられない格差の壁を取り除くということが経済成長にプラスになる、こういう考え方を持っているんですが、総理は、この考え方、いかがでございますか。

安倍内閣総理大臣 今委員が御紹介をされたOECDの報告書においては、先進諸国の傾向として所得格差が拡大すると経済成長は低下をしていく、その一つは、貧困層ほど教育への投資が落ちていくことによって生産性が落ちていくということだろうと思います。格差と経済成長の関係についてはさまざまな議論があり、一概に申し上げることはできませんが、格差については、それが固定化されず、人々の許容の範囲を超えたものではないことが重要であろうと思います。

 その観点から、安倍内閣では、デフレ脱却を目指して経済再生に取り組む中で、格差が固定化しないように、最低賃金を三年連続で大幅に引き上げました。三年連続で引き上げた結果、五十円も上がったのでありますが、パートタイム労働者と正社員との均衡待遇を推進してまいりました。パートタイムの時給については、統計をとってから最高の時給になっています。

 また、子供たちの未来が家庭の経済事情によって左右されるようなことがあってはならないわけで……(長妻委員「考え方がどうか」と呼ぶ)一応それも申し上げます。このため、教育費負担については、高校の奨学給付金や大学の奨学金など、幼児教育から大学までの各段階において必要な支援を行い、負担の軽減に努めてきたところであります。

 そして、考え方としてですが、この図ですね。確かに、格差が生じ、その格差の結果、子供たちが家庭の事情で進学を諦めなければいけない、あるいは技能を伸ばすチャンスが失われている、学力を伸ばすチャンスが失われているということになっては、これは社会全体のみずみずしさ、発展していく力を失うのは事実だろうと思います。当然それは経済成長にも影響を及ぼす可能性もあります。

 そういう意味において、我々は三年間、今申し上げましたような点、特に教育分野において力を入れてきたところであります。

長妻委員 そういうふうにおっしゃりながらも、私は総理は格差に対する認識が甘いんじゃないかと思うんですね。

 私がこの前お伺いしたところ、格差は拡大していますかと言ったときに、基本的には横ばいだとおっしゃいました。そして、今の答弁、ちょっと私もこういうふうに聞こえたんですが、格差は許容の範囲を超えていない、そういうふうにさっきおっしゃったのでございますか。現状が、格差は許容の範囲を超えていないという認識でいらっしゃるんですか。

安倍内閣総理大臣 現状において私が横ばいと言ったのは、例えば相対的貧困率という係数の場合は、現物の支給、例えば医療費がただである場合、そういうものは中には入っていないわけでございまして、一方、ジニ係数で見れば基本的にそうしたものも入れていく。現物の給付等も入れていき補正した結果においては、ジニ係数は横ばいであるということであります。

 許容できない、ここはなかなか、ただ一概には言えないわけでありまして、それは人それぞれの見方でもあろうと思います。私としては、許容できない格差をつくらないようにこれからも努力をしていきたい、こう考えております。

長妻委員 国民の実感と相当異なるのは、朝日新聞や産経新聞、共同通信とか毎日新聞、格差は広がっていると感じるかというのは、七割の方が広がっていると。そして、気になるのは、総理が出したこの一億総活躍のペーパー、分厚いものを全部読みましたけれども、格差のカの字も全く言及がないということです。

 そして、今現在の日本でございますが、相対的貧困率、これは毎月はかっているわけではないので私はこれよりも悪化しているのではないかと危惧しておりますけれども、先進国でアメリカに次いで格差が大きくなっている。一億総中流というのはもう昔の話で、そういう考えで格差の問題に取り組まないと政策を誤るんじゃないかということです。

 我々は、格差の壁の中でも、特に大きく三つの格差の壁を取り除くということが将来の希望につながるというふうに考えております。

 一つは、教育格差の壁ということでございまして、子供の貧困でもございます。

 今、年収四百万円以下の御家庭では大学進学率は三割、年収一千万を超えますと大学進学率は六割となります。東京大学の新入生の親の平均年収、今や一千二百万円。日本の大学進学率は五割ということで、OECD、先進国三十カ国の大学進学率より下回ってしまいました。この前、ドイツにもサウジアラビアにも日本の大学進学率は抜かれてしまいました。日本は、子供六人に一人が貧困状態にある。この意味は、生活保護世帯並み収入以下で暮らしておられるということであります。特に、一人親世帯は半分が貧困状態にあるということであります。

 これについて、この格差の壁を取り除くためには、一つは、給付型奨学金と言われる、渡し切りの大学進学あるいは専門学校進学への奨学金です。返済不要である。そして、一人親御家庭への支援。そして、子供の相対的貧困率を先進国並みに低下させるというような数値目標ですね。数値目標、これは今政府は全くありませんので、まだまだいろいろ政策はあるんですけれども、これらを主にやっていきたいと考えております。

 その中で、特にちょっとお伺いしたいのが給付型奨学金でございます。やはり我々は、意欲と能力があれば誰でも大学に行くことのできる社会をつくりたい。教育は個人だけではなくて社会が受益者である、こういう考え方を持つ必要があります。

 御存じのように、OECD加盟国で確認できているものでいうと、渡し切りの奨学金がないのが日本とアイスランドだけだということでございまして、総理、給付型奨学金を日本でも創設していく、それを始めようというような音頭をやはりとっていただかないとなかなか文科省は前に進んでこないわけでございまして、ぜひそういう音頭をとっていただきたいと思うんですが、いかがでございますか。

安倍内閣総理大臣 先ほどの相対的貧困率については、繰り返しになるんですが、教育の無償化や子供の学習支援や居場所づくり、住居確保支援などの政策を幾ら充実させても、可処分所得は変わらないので貧困率自体は変わらない。相対的貧困率というのはそういう数字であるということは申し上げておきたいと思いますし、現在のところ、データは二〇一二年までのものでありまして、まだ安倍政権になってからのデータは出ていないということもつけ加えておきたいと思います。

 そこで、教育費負担軽減のための方策については、各国でさまざまな制度があり、一概に比較することは困難でありますが、我が国においては、返還金を次の奨学金の原資として活用することにより、限られた財源の中で希望する学生を幅広く支援することが可能となることから、貸与制により奨学金事業を実施しているところであります。給付型奨学金については、財源の確保や対象者の選定など、導入するにはさらに検討が必要と考えています。

 学生の経済的負担については、授業料減免や奨学金の充実によりその軽減に努めてきたところでありまして、来年度予算においても、大学の授業料減免について、国立では二千人増員し約五万九千人、私立では三千人増員し約四万五千人にするとともに、大学等の無利子奨学金を一・四万人増員して四十七万四千人に貸与、有利子奨学金も合わせて百三十一万八千人に貸与することとしています。

 無利子奨学金については、年収三百万円以下の世帯の学生には学力の基準を満たせば全員貸与する制度となっており、その上で、来年度予算では全学生の約一四%に当たる学生に貸与することとなります。

 さらに、卒業後の所得に応じて返還額が変わる所得連動返還型奨学金制度について、平成二十九年春の大学進学予定者から導入できるよう、現在準備を進めています。

 また、国立大学においては、一人親世帯の学生や児童養護施設にいた学生も含め、学力基準を満たす世帯年収三百万円以下の学生についてはほぼ授業料の減免の対象となっています。三百万円以下ということは、児童養護施設にいた学生はほぼ全員対象となるでしょうし、一人親世帯においても多くが対象となるのではないかと思います。

 さらに、平成二十七年度補正予算において、児童養護施設等を退所し就職や進学する者等に対して、五年間の就業継続により返還免除となる家賃相当額及び生活費の貸与を我々は新たに行うこととしたということも申し上げておきたいと思います。

長妻委員 これは、わかるんですが、基本的には教育ローンなんですね、無利子であっても有利子であっても。

 私も、何人もの方、学生さん、高校生ともお話をいたしました。数百万円の借金を抱えて社会に出て、そして非正規雇用の職につく、あるいは御結婚相手も無利子でも有利子でも奨学金のローンを抱えて、それで結婚しても借金がそこでなかなか返せない、そういうお兄さん、お姉さんを見て、弟、妹たちはちょっとこれは大学には無利子で借りられたとしてもなかなか行くのはつらいということで、断念をする方も相当いらっしゃるということでありまして、ぜひ、総理、全面的に一気にこれを入れるということではなくて、一歩一歩、段階的にでもお考えをいただきたい。

 ヨーロッパは、日本と比較はできませんけれども、ほとんどの国が大学や大学院は全額無償になっております。一足飛びになかなかそこまでは行けませんが、例えば、国立大学の入学金と初年度授業料を一定のカテゴリーの方に無償にしていくということから始めてはどうなのかなと。

 例えば、計算を文科省にしていただきましたけれども、一人親の御家庭で児童扶養手当を受給している方プラス児童養護施設に行っている方、この方々が国立大学に入った場合は入学金と初年度授業料を無償にする、私立に入った場合でもその部分を差し引きで支給するというようなことでありますと、年間の財源として五百五十六億円の財源ということで、これは捻出できる財源だと思います。後から我々も財源捻出の方法を申し上げますけれども。

 今私が申し上げた形、あるいは地方税非課税世帯に限定して国立大学の入学金、初年度授業料を無償にする、私立大学の場合はその部分を補助する、ぜひこういう段階的な考え方というのを前向きに検討するということをおっしゃっていただけないでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今お話のあった政策についても、財源があればぜひそちらに振り向けたいところでありますが、我々は同時に、例えば幼児教育の無償化も進めています。こうした子供のための財源をどのように振り向けていくか、それは御党が政権をとっていたときもそうだったんだろうと思いますが、一度に全部はできないわけでありまして、限られた財源をどのように振り向けていくかということであろうと思います。

 その中において、先ほど申し上げましたように、平成二十七年度の先般の補正予算においては我々は、多くの国民の方はまだ御承知ではないかもしれませんが、児童養護施設等を退所して就職や進学する者に対しては、五年間の就業継続によって返還免除になる、これは家賃相当額と生活費月額五万円を貸与していくんですが、五年間就業が継続した場合は返還が免除になるという新しい仕組みをスタートした。

 この予算もしっかりととったわけでございまして、こうしたものを……(発言する者あり)今、全く不十分という御指摘もございましたが、さきの政権のときはなかったものを私たちのときにはつくっているわけでありますから、そういう努力はしているということでございまして、これからも、今、長妻大臣がおっしゃった提案、我々もその提案自体が悪いとは考えておりません、そういうことができればいいと思っているわけでございますが、そうした財源を一つ一つしっかりと確保しながら、さまざまな若者、子供たちの育成のための支援策がありますから、その中でしっかりとメニューを選びながら前に進めていきたい、こう考えております。

長妻委員 御党もなかなかというお話がありましたが、我々は一歩ずつ進めて、高校の授業料を無償化して、そして財源を捻出して大学にも給付型奨学金を最終目標として取り組んでいるということは申し上げておきたいと思います。軽減税率とか、あるいは消費税を一〇%に上げて財源が捻出できないというのは、ちょっと首をかしげるわけでございます。

 この財源は、浪費するわけではもちろんなくて、未来への投資になって、必ず日本の人材の厚みを大きくする、そして結果として経済成長にもプラスになるという投資であるということを申し上げます。大学進学率、ほかの国にどんどん抜かれて大丈夫なんでしょうか、日本は。

 そしてもう一つ、大学になかなか行けないネックになっていますのが、一人親御家庭のお子さんに出る児童扶養手当の支給年齢が十八歳でとまってしまうという問題であります。これを大学入学のための時期をクリアするために二十まで引き上げるということが、私もいろいろお話を聞いて、これはもう悲願であるというふうにおっしゃっておられるわけでございますが、総理、これを二十まで引き上げる検討を始めるぐらいはおっしゃれませんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 経済的にさまざまな困難を抱えている子供たちに対してきめ細かな支援をしていくことが大切である、安倍政権においてもそう考えています。

 このため、昨年十二月に、ひとり親家庭・多子世帯等自立応援プロジェクトを取りまとめました。就業による自立に向けた支援を基本としつつ、総合的な取り組みを充実していくことになります。

 児童扶養手当については、これも限られた財源の中で、特に経済的に厳しい家庭に重点を置いて、子供が二人以上の一人親家庭の加算を倍増し、第二子は月一万円、第三子以降は月六千円と、最大限の努力をしてきたところであります。

 そして、今、支給対象年齢について御質問がございましたが、児童扶養手当の支給対象年齢については、高校進学率が九割を超え、卒業までの間実質的に稼得能力がないことを考慮して、十八歳の年度末までとしています。その年齢の引き上げは、子供が大学に進学する場合と大学に行かずに高校を卒業して就職する場合とのバランスを失することから困難であると考えています。

 一人親家庭を含む子供の大学等への進学機会の確保については、奨学金の充実等により教育費負担の軽減を図ることとしております。こうした取り組みの充実を通じて一人親家庭の自立の促進に全力で取り組んでまいりたい、このように思っております。先ほど申し上げましたように、無利子の奨学金あるいは授業料の減免等を通じても支援をしていきたいと考えております。

長妻委員 一人親御家庭は、半分の御家庭が貧困状態、つまり生活保護世帯並み以下の収入でお暮らしになっている。相対的貧困率が五〇パーを超えるのは先進三十カ国で日本だけでございまして、TPPも始まるわけですけれども、一部のエリートだけで世界経済の中で努力していくというのはなかなか限界がある。やはり、全員野球で日本はやっていかないといけないわけでございます。

 二つ目の壁としては、雇用格差の壁がある。将来の希望を奪う、ますます高くなる雇用格差の壁を打ち破らないといけない。

 非正規雇用が四割を超えました。非正規雇用の方は社内教育も不十分で、熟練度も賃金も生涯上がらない。

 稼ぐ力の労働生産性が日本は二十位まで下がっちゃいました。かつては一桁だったんです。経営者の皆さんは首を切りやすい労働者、賃金が安い労働者をたくさん雇えば国際競争力が高くなると思ったようでございますが、結果としては、元も子もない結果になりました。稼ぐ力が下がって、国際競争力にとってもマイナスになる、経済にとってもマイナスになるということであります。

 そして、結婚率も半分ということでありまして、少子化にも相当、結婚される方が非常に少なくなって、今、生涯未婚は男性の五人に一人でありまして、一生結婚しない方が二十年後には三人に一人になる。大体、非正規雇用の方と正社員で結婚率が倍以上違うということでございます。

 そして、この雇用格差の壁を打ち破るためには、一つは、基本的に会社で働いていれば厚生年金に入るということ。これも、厚生年金違法未加入二百万人問題、ここで質疑をいたしましたが、総理にはなかなか、取り締まり強化、告発を強化ということはおっしゃっていただけなかったわけでございます。

 もう一つは、最低賃金を大幅に引き上げる、二〇二〇年までに時給全国平均千円。先進国で日本は、最も低い国の一つでございます。日本は最低賃金は全国四ランクに分かれておりまして、全国一律じゃありません。先進国ではほぼ日本だけです、ほかは全国一律ですが。そうすると、一番低い県は時給六百円後半、一番高い東京は九百七円ということで、これが地域間の賃金格差に拍車をかけているんじゃないのか、こういうこともありまして、我々は、四ランクではなくて、もう少し統一的な最低賃金が必要だというふうに提言をしております。そして、有期雇用の入り口規制を検討していく。

 三番目として、男女格差の壁、これも打ち破っていかなきゃいけない。

 女性が初めてつく職が非正規だった、初めてつく職が非正規雇用だったという方が女性の半分もいらっしゃる、五割という大変深刻な状況であります。女性管理職比率も先進国で最低レベル。年金格差も、特に単身高齢女性、六十五歳以上で単身で住んでおられる女性は約半分が貧困状態。相対的貧困率四五%ということで、日本は四五パーの方が生活保護世帯並み収入以下でお暮らしになっている。極めて深刻であります。

 その男女格差の壁を打ち破るためには、ここでも議論いたしました、総理も法制化を検討するとおっしゃいましたが、同一価値労働同一賃金、選択的夫婦別姓、年金格差を是正する、そして男性の育児参加、イクメンということであります。

 そこで、一点お尋ねをしたいのでございますが、特に、女性の社会進出を阻む壁のうちの一つが、長時間労働の問題も大きいというふうに考えております。やはり長時間労働は子育てもままならない、介護もままならない。

 正社員でいうと、先進国で一番働いている長時間労働の国の一つが日本でございます。ドイツは一日十時間以上の労働禁止、それをさせた上司は罰金というような大変厳しい国も大変多い中、深刻なのは夫の一日当たりの家事、育児の時間の国際比較なんですが、このブルーのところですが相当低いわけでありまして、これは少子化にも拍車をかけていると言われております。データもございます。

 これについて、総理、日本では今、残業時間の上限の法的規制はありません。ぜひ、残業時間、総労働時間の上限についての法律でアッパーリミットを決めていく。ヨーロッパではやっていることでございますが、それをしないと、この長時間労働というのはずっと言われているわけでございますので、総理、いかがでございますか、法律。

安倍内閣総理大臣 長時間労働を抑制することは非常に重要であると考えております。

 現在提出している労働基準法改正案では、企業に対し働く人の意見を聞いて休暇を指定することの義務づけ、そして中小企業での時間外労働への割り増し賃金率の引き上げを行うとともに、企業の自主的な取り組みを促すことによって、総労働時間の短縮や終業と始業の間のインターバルの確保を推進することとしています。

 この春取りまとめるニッポン一億総活躍プランにおいては、働き方改革の一つとして長時間労働の是正を重要な柱の一つとして位置づけ、法規制の執行強化を含めて実効的な具体策を盛り込んでまいりたい、このように思っております。

長妻委員 私もかつてサラリーマンをしておりまして、総理も製造業のサラリーマンをされておられたと聞いておりますけれども、総理は当時、残業時間、最大どのぐらい一カ月にされましたか。

安倍内閣総理大臣 入社当初は工場に勤務しておりまして、工場は鉄鋼の工場でございましたから二十四時間とめずにずっと動いておりまして、四直三交代で仕事をしていたときもありますし、あとは事務ですから事務棟で仕事をしているわけでございますが、そこのときはまだ入社当初ということもあってそれほど残業はしていなかったのであります。その後、東京の本社に転勤になって鉄鋼の輸出にかかわっていたんですが、当時は一九八〇年代後半ですから、みんなが相当めちゃくちゃに働くことをもってとうとしとなすという雰囲気がございましたので、それなりに残業をしていたのではないか、このように思います。

 最近、私の同期が今社長をやっておりますが、聞いてみますと、そういう雰囲気は大分今はなくなりつつあると。係長がいると残っていなければいけない、そういう雰囲気ではだんだんなくなってきているとは思いますが、当時は相当残業をしておりました。ただ、そのときに感じたのは、残業を毎日するということでは必ずしも生産性はよくならないのではないかなと自分自身は感じておりました。

長妻委員 私も電機メーカーに、かつて一九八〇年代にサラリーマンをしていて、やはり一カ月の残業時間が百時間を超えるということも結構ありました。後輩に聞いてみますと、今も、当時ほどではないけれども、相当過酷な働き方は余り変わっていないということでありまして、実態が余り変わっていないというのは数字でもあらわれておりますし、おっしゃるとおり、労働生産性も、例えばドイツに比べると一時間当たり一・五倍ぐらい違うんですね、低いんですね。ドイツが日本の一・五倍高いんですね、付加価値、労働生産性、額が。そうすると、ドイツが十時間ぐらい働いているところを、日本は十五時間働かないと同じ付加価値を生まない。

 こんな非効率的な働き方、しかもワーク・ライフ・バランス、家庭がなかなか成り立たないということは、法律で規制をするということをぜひ検討ぐらいはしていただけないでしょうか。

安倍内閣総理大臣 職場環境を改善していくということについても、これはまさに生産性を上げていくことでありますから、企業がしっかりと取り組んでいっていただきたい、このように思います。

 その中において、企業が労働法制を遵守しているかどうかということについては厳しく我々は監督をしているわけでございますが、果たして新たな法制が必要であるかどうかということについては、検討すべきかどうかということについても研究してみることは必要かもしれない、こう思っております。

長妻委員 検討を検討するというのはちょっとわからないんですが。

 我々、今、残業するには労使で三六協定を結ぶ、そしてさらに特別の条項を結べば青天井に残業できる、こういう法律の仕立てになっておりますが、そこの特別の条項を結べないように法改正をすると、年間残業が三百六十時間以内かつ月四十五時間以内とか、こういう形でヨーロッパ並みの規制にできるわけでありますし、インターバル規制と言われる、会社を退社してから出社するまで十一時間、休息時間をあけなきゃいけない、こういうものもヨーロッパでやられております。例えば、夜十一時に会社を退社したら、次の日は朝十時より前に会社に来ちゃいけない、休息しなきゃいけないというのがインターバル規制でございます。

 スキーバスの事故もありました。三、四時間しか寝ないでふらふらになって仕事をしているサラリーマンは全国にいっぱいいらっしゃるわけでございまして、これは法規制をぜひ、インターバル規制。

 インターバル規制については、総理、検討されませんか、法規制。

安倍内閣総理大臣 この春取りまとめるニッポン一億総活躍プランにおいて、法規制の執行強化を含めて具体策を取りまとめていくこととしております。

 法改正をという御提案でありますが、今後、各方面からさまざまな御意見を聞いた上で、ニッポン一億総活躍プランで具体策を取りまとめていきたい、こう考えております。

長妻委員 いや、逆行しているんですね。今、国会に残業代ゼロ法案と言われる法律が出ているのでございまして、これは本当に逆行した法案で、撤回してほしいんですね。裁量労働という美名のもと、残業が無制限になる。過労死の御遺族の方も大反対しております。ぜひ、言っていることとやっていることが逆行しないように、法律を撤回していただきたいということを強く申し上げます。

 そして、最後にもう一つ。

 日本で非常に興味深い現象が起こるのは、年間の個人の所得が一億円を超えると所得税の負担率が下がってしまう。金融所得、株の譲渡益とか配当、金利収入が分離課税になって、しかも、先進国で非常に低い国の一つですが、二〇%ということになって、こういうふうに逆転現象が起こっております。これについて、総理は改善するというお気持ちはありませんか。

麻生国務大臣 御指摘のありましたこの資料ですけれども、高額所得者ほど合計所得金額の中で株式等の譲渡益の割合が高いのは御指摘のとおりなので、この株式等の譲渡益は分離課税の対象ですので、特に平成二十五年度までは上場株式等の譲渡益については地方税を含めて一〇%の軽減税率が適用されていたということから生じたものだと考えております。

 こうした実態につきまして、例えば株式等の譲渡益の中には長い間に積み重ねられた含み益というものを一度に実現するものがありまして、これは一定の配慮が必要であろうと存じますが、株式等の譲渡益を初めとした金融所得につきましては、金融資産の流動性が高くて過度の税負担を求めるとキャピタルフライトが生じるおそれがあるということから、多くの諸外国においても勤労所得に適用される税率と比べて金融所得にかかる分離課税の税率が低く設定されておりますので、こういうようなことも留意しつつ、所得再分配機能の重要性を踏まえて、個人所得税のあり方というものは今後考えていかないかぬだろうと思っております。

安倍内閣総理大臣 もう既に財務大臣から答弁をしているとおりでございます。

長妻委員 我々は、この金融所得課税について、今二〇%のものを二五%に上げて、数千億円の税源、財源を生んで、先ほど申し上げた格差是正のための対策費に使っていこうと思っております。

 そして最後に、我々は、こういう格差の壁を取り除いた後、共生社会、誰も置き去りにしない社会をつくり上げるということで、支えられる側が無理なく支える側に回ることのできる社会、支え合う力を育んでいく社会、地域の見守りのネットワークをつくり上げていくということで、幸せに暮らすことのできる社会をつくり、そして結果として人々の厚みを増して経済成長を持続可能にするということでございますので、ぜひ総理もこういう政策に転換をしていただきたいということをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

竹下委員長 この際、古川元久君から関連質疑の申し出があります。長妻君の持ち時間の範囲内でこれを許します。古川元久君。

古川(元)委員 おはようございます。民主党の古川元久です。

 きょうは、まず最初に、消費税の逆進性対策について議論をしたいと思っております。

 まず最初に、きょうは主税局長が来ていると思いますのでお伺いしますが、税制の基本三原則といえば何か、簡潔にお答えいただけますか。

    〔委員長退席、菅原委員長代理着席〕

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの、税の三原則ということでございます。税制全体のあり方を考えていく上で、一般的には、公平、中立、簡素ということを挙げることが多いんだろうと思っております。

古川(元)委員 まさに、今の公平、中立、簡素ですね。やはり税というのは公平でなければいけない、そしてまた中立というのは、税があることによって、消費活動とか投資活動とか、あるいはさまざまな経済活動に影響があってはいけない、できるだけそれは、税制が経済活動に中立的でなきゃいけない、そして、できるだけやはり税制は簡素でなきゃいけない、この三原則があるわけなんです。

 消費税の逆進性対策として、私たちは、そうした消費税を今の三原則に合わせた形で維持していくためには、単一税率を維持して、低所得者対策は消費税額還付、いわゆる給付つき税額控除というのを導入すべきだというふうに考えているわけなんですが、政府・与党の方は、これを軽減税率でやろうということでありますけれども、この軽減税率は、今の公平、中立、簡素、この三原則、いずれに照らしてもこれは反するものだというふうに私は思っております。

 また、税制が複雑になれば、特に納税義務者であります事業者に与える影響は極めて大きいわけでありまして、これは経済にも大きなマイナスとなると思います。

 先ほどの議論の中で、この軽減税率、世界の潮流だというお話がありましたけれども、私は、消費税の導入のときに、たまたま大蔵省の主税局で仕事をさせていただきました。当時、ヨーロッパの税制を調べましたけれども、確かにヨーロッパでは実際に入っています。しかし、多くの国の税務当局が、この軽減税率を入れて失敗した、そう思っているんですね。しかし、一度入れてしまうとやめられない。実際に、現場でも混乱も起きているし、さまざまな訴訟も今でも起きている。やめられるものであればやめたいけれども、一度やってしまうと結局やめられない、だからやらない方がいいですよというのが、我々が調査したときのその結論だったんです。

 そういった意味では、やっているからといって、これが世界の潮流ですよということとはちょっと違うんじゃないか。やっている人たちの現場の混乱やさまざまな問題というものを考えれば、これはむしろやってはいけない、まさに天下の愚策であると言わざるを得ないんだと思います。

 きょうは、そのことを具体的な事例、これまで私もいろいろな方々に、この軽減税率についてお伺いしました。そうすると、みんなやはり不安や不満を抱いていらっしゃいます。そうして聞いてきたお話を、具体的な事例をもとにして、消費者の視点、そして納税義務者である事業者、そしてまた、その事業者のもとで現場で働いて、消費者の皆さんと対面して仕事をしていらっしゃる、そういう働く人の視点、そうした視点からこの問題を明らかにしていきたいというふうに思っております。

 まず、消費者の視点でありますけれども、今、安倍総理は、働く女性を応援するんだというふうに言っているんですけれども、働く女性からこんな不満の声というのがあるんですね。

 今回の軽減税率だと、給食は軽減税率の対象だけれども、学食、これは標準税率だということになっているようでありますが、これでよろしいですか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の軽減税率の制度案でございますけれども、飲食料品を基本的に八%の軽減税率とした上で、外食につきましては一〇%、標準税率、こういう整理でございます。

 その上で、学食、学生食堂でございますけれども、これは外食と整理をいたしまして、標準税率の適用対象。それから、学校給食については、外食の例外ということで、軽減税率の適用対象ということでございます。

 理由を御説明申し上げます。

 学食、学生食堂につきましては、一般論として申し上げますと、通常、生徒などがその場で昼食をとることが強いられているものではなくて、例えば売店で弁当を買うとかあるいは弁当を持参するとかといったような選択の可能性も十分あるわけでございますし、基本的に外のレストラン等で食べることと形態的には変わらないという意味においては外食とみなすことが適当であろうということで、標準税率一〇%の適用と考えてございます。

 他方、学校給食でございますけれども、これは、形式的には外食に類似はしておりますけれども、やはり学校という特定の場所におきまして、みずからの選択ではなくて、いわば全ての生徒等が学校給食をすることを義務的に求められるというような点があるものですから、通常の外食と同列に扱うことはいかがなものかということで、軽減税率として適用するというような整理になるのだろうと思っております。

 以上でございます。

古川(元)委員 口で言うのはそうかもしれませんけれども、どうですか、大臣、今のを聞いていて、お母さんたちはどう思いますかね。たまたまうちの学校は給食で、うちの子供が行っているところは学生食堂と。今の主税局長の話だと、学生食堂の人はほかに選択もある、つまり、では、標準税率が嫌だったら弁当をつくって持ってこいと。お母さんの中には、いつもよりも早く起きて弁当をつくらなきゃいけなくなるのではないかと。

 これはまさに、先ほどからお話ししている、人々の活動にやはり介入することになってくるんじゃないですかね。しかも、どう考えても今のは、理屈はそうかもしれませんが、やはりおかしいというふうに普通は思うんじゃないかと思うんです。

 総理に聞きたいと思うんですけれども、総理はちょっとどこかへ行ってしまいましたから後で聞きたいと思いますが、では、次に行きたいと思います。

 消費者は、もうさまざまな問題点があるんですね。これは、もっと問題点があるのは、事業者、そして、そこで働く人たちだと私は思うんです。きょうは、主にそちらの視点でお話をしていきたいと思っているんですけれども。

 消費税の納税義務者は、最終的にはこれを負担しているのは消費者でありますけれども、実際に納税義務を負っているのは事業者の皆さんなんです。この事業者の皆さん方は、言ってみれば、税務署にかわって国民の皆さんから消費税を徴収してそれを税務署に納めるという、いわば税務職員がやる仕事を代行して行っているようなものなんですね。にもかかわらず、今回軽減税率が入る、そしてまたさらにインボイスまで導入されるということになると、これまでかかっていなかった余計な手間暇やコストがかかることになるんです。そういうコストは中小零細企業になればなるほど大きくなるんだと思うんですね。

 この手間暇やコストというのは、これは、税制が複雑になるから、そのためにもたらされるコストであって、何ら経済的な効果を生み出すものじゃないんですね。それは一部の業者には特需を生み出すかもしれませんけれども、全体として見ていけば、余計なコストを生み出すことになるんだと思います。

 大体、そもそもこのコストが全体でどれくらいになるか、これをきちんと試算しているんでしょうか。

麻生国務大臣 今の御指摘ですけれども、このコスト負担ということにつきましては、個々の事業者がどのような事業を行っているかとか、また、日々の業務をシステムでやっているところ、手作業でやっているところ等々いろいろあるでしょうし、加えて、システムを既に保有していて、それを改修する必要があるのかないのかなどなど、これは個々の事業者によって大分差があってくると思いますので、これは定量的に、アバウトなことは申し上げられますけれども、細かいことを申し上げるのは少々難しいかと思っております。

 もとより軽減税率に伴いまして相応の事務負担が生じるというところでありますので、軽減税率の導入に当たりましては、いわゆる混乱等々が生じないよういろいろ準備を進めていくので、しっかりと業者への対応というのをやっていかねばならぬだろうとは思っております。

古川(元)委員 軽減税率で税金が安くなるんですよ、消費者にとってメリットですよということを、メリットばかり言っていますけれども、こういう、コストが大体どれくらいになるかということをやはり考えなきゃいけないんだと思うんですよね。それを、試算ができませんということじゃなくて、やはりどれぐらいになるのか。大体それは、およそそういう努力もしないで、コストはかかるだろうけれどもと、そんないいかげんなことで、これは、事業者の皆さん、特に中小零細事業者の皆さんは本当に大変なことになると思うんですよ。しかも一様にそこで不安を持っているんですね。やはりそこに対してのこの試算というものをきちんとしていただきたいということを申し上げたいと思います。

 その上で、少しこのパネルに行きたいと思いますけれども、これはさまざまな事業者の側も困るんだと思うんです。

 例えば、よく今セットメニューというのがありますね、ハンバーガー店なんかで、ハンバーガーとポテトとドリンクとセットで。今までだと、そのうち一部分を持って帰るということであっても、別にその場で全部食べても値段は同じだったわけなんですけれども、これから、例えば、では、飲み物は飲むけれどもそれ以外のものは持って帰る、そういうような人がいたら、そういう場合というのはどういうふうに対応したらいいんですか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 軽減税率の適用関係は、税法上は、軽減になるか標準になるかということはその販売時点で一義的に決まるということでございます。

 恐らく、今先生の御指摘のもので、例えば、飲み物、ジュースなどとそれ以外のハンバーガーがセットになっているものについて、例えば、今の話だと、ジュースのようなものはその場で飲むけれどもそれ以外のものは持ち帰るというようなことで販売時点で意思表示がされるということであれば、それは区分して販売するということになりますので、ジュース分については外食という扱いで標準、持ち帰る場合はテークアウトということで八というふうな扱いになるんだろうと思っております。

 ただ、恐らく、通常は一体商品として売られているということが通常でございますから、そのものとして判断をしていくということになるんだろうと思っております。

古川(元)委員 話を聞けば聞くほど混乱するんじゃないかと思うんですけれども。

 では、今人気の福袋、この福袋の中に食品とそれ以外のものが入っていた場合、これはどういう形で値づけしたらいいんですか。

佐藤政府参考人 福袋のお尋ねでございますけれども、まず、福袋の中に、それが全部食品であるという場合であればそれは軽減税率でございます。

 この場合、食品と食品以外のものがまざっているという形で、一体として売られているというものが福袋であると思います。その場合には、一定金額、一万円を超えるような金額の場合には標準税率、それから、一万円以下の金額で、例えば食品以外の商品の部分が主であるというような場合であれば標準、一万円以下であって食品部分が中心の、いわば食品とみなせるということであれば、その全体を軽減税率というふうな整理になるんだろうというふうに思っております。

 以上です。

古川(元)委員 わけがわからなくなってくると思うんですけれどもね。

 どんどんちょっとほかにも具体例について進めていきたいと思います。

 総理、総理はペットを飼っていらっしゃいますか。総理はペットは飼っていない、飼っています。ペットは、私も犬を飼っているんですけれども、そうしたら御存じかと思いますけれども、最近、人間も食べられる、ペットと一緒に食べられるペットフードというのがあるんですね。お正月なんか、お節料理、飼い犬と一緒にお召し上がりくださいなんというのも、ケーキとか、いろいろあったりするんです。

 普通はペットフードというのは食品ではないと思いますけれども、でも、食品表示法の、人間も食べられるようなそういうものになったら、ペットフードであってもこれは軽減税率の対象になるというふうに考えていいですか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 軽減税率の適用対象になるか否かは、先ほど申し上げましたように、販売時点で決まるということでございます。そのときに、食品表示法の規定する食品ということで、人の飲食用に供されるものということかどうかを確認するということになるわけでございます。

 例えばペットフードというのは、通常考えますと、仮に人が食べられるといたしましても、通常、販売事業者はペット用ということで販売することでございまして、恐らく、食品として表示を行っていくということは想定しにくいということでございます。その場合には当然一〇%の適用ということになります。

 ただ、先生御指摘のように、飼い主も食べられる、人も食べられるペットフードというようなことになりますと、恐らく、食品表示法に規定をいたします食品として表示を行って、人も食べられるものだ、人の飲食用に供されるものとして販売をしていくということになりますと、それは食品そのものということになりますので、軽減税率適用という整理になるんだろうと思っております。

    〔菅原委員長代理退席、委員長着席〕

古川(元)委員 結局、そうなると、ペットフード業者は、軽減になりますということであれば、みんな人も食べられる、そういうものをつくってくるんじゃないですか。わざわざ税のためにそういう新たな製品を生み出すということになってくるんですよ。

 これは明らかに経済活動の中立性を阻害すると思いますけれども、どうですか、総理、今までのこの議論を聞いていて、感想は。

安倍内閣総理大臣 今の主税局長の答弁は大変わかりやすいと思うんですが、いわば、人が食べるということであれば、これは当然食品に課せられたさまざまなハードルを越えていかなければならないわけでありまして、かつ、食品であれば、大体人間が食べるものはペットにも食べさせるわけでありますが、しかし、同時に、ペットが好きな人は、やはりペット用のものを食べさせた方が栄養のバランスがいいので食べさせているわけでありますし、実際、ペット用の食品で結構高いものもあります。

 また、ペット用の健康食品もありまして、セサミンというのがありますが、あれもペット用のセサミンというのがあるんです。ペット用のセサミンを私がいただいたら、間違えて、うちの家内に渡したら、ずっとそれを飲んでいたことがあったんです。後で聞いたら、実は中身は全く同じだったということであります。しかし、実際はペット用として売っている、こういうことであります。

 しかし、まさに今局長が答えたように、人が食べるというものであれば、これは食品の法上、表示をちゃんとしっかりしていく、そして、当然それに求められる基準を上回っていかなければならないのではないか、こういうことではないかと思います。

古川(元)委員 いや、私が言っているのは、わざわざこの軽減税率が入るためにそういう食品表示法の規定が適用になるような商品というのをつくるという、まさに、麻生財務大臣は首を振っていますけれども、やはり経済活動に介入している、中立性を阻害していることになっているんじゃないですかということを聞いているんですよね。

 次に行きたいと思いますけれども、ファストフード店では、これは本当にさまざまな問題があると思うんです。

 これは、みんな誰でも知っている、あるコーヒーショップへ行って飲み物を頼むと、中で飲もうが、外にテークアウトしようが関係なく、同じ容器で渡されてくるんですね。こういう場合はどうなるんですかね。全く同じ容器でこのままぽっと渡されるにもかかわらず、中で飲みますと言うと標準税率、そして外に持っていくと言うと軽減税率になるんですか、どうですか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 喫茶店を想定いたしますと、そこにはテーブルがあったり椅子があって、飲食設備があるわけでございますし、通常そこで飲食サービスが提供されるということであれば、基本的には外食そのものだということになるわけでございます。

 それで、今先生御指摘にありました容器が、店内で飲んでも持って帰っても同じような容器の場合はどうするんだという扱いでございます。それについては、販売事業者が、まさにそれが、その方が店内で飲食をするのか、持って帰るのかということの明確な判断をしていただくために、顧客の意思確認を行っていただくということになるんだろうと思います。

 したがいまして、例えばテークアウトですかということで、そうですということを顧客から確認できればそれは八%の適用、それから、店内ですということであればそれは一〇%の適用ということになると思います。

 いずれにいたしましても、事業者に対しましては、こうした取り扱いについては十分な周知徹底を図っていくというようなことも当然必要になってくるだろうと思っております。

古川(元)委員 こういうふうに分けなくていいということはいいのかもしれませんが、しかし、そういう主観で決まるということだったら、では、ちょっと次のを見ていただきたいと思います。

 これは結局レジの段階でどっちにするかという話ですけれども、例えばよく今ハンバーガーショップなんかで高校生なんかがアルバイトをしています。それで、友達が来た、そこのレジで打つときに、本当は中で食べるんだけれども、友達だからテークアウトにしておくね、そういうことがこれは可能になってしまう。結局、レジを打ったらそれで終わりということになってしまうんじゃないですか。どうですか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 税法の考え方といたしましては、軽減税率の適用対象になるか否かというのは、基本的に販売事業者が販売する時点において一義的に決めるということですので、先ほど申し上げたような顧客の意思確認なども含めまして、そこで適正に判断をしていただくというのが基本でございます。

 その上で、今先生御指摘のありましたようなケース、店員の友人との関係で適当な税を払わせる、そういうようなケースの例かと思いますけれども、標準税率が適用されるべきサービスとして販売をしているということであれば、納税義務者たる販売事業者は、その事実に基づきまして一〇%、標準税率でもって適正に申告をしていただくということが基本でございます。仮に八%の軽減税率で申告ということになりますと、過少申告という可能性が出てまいりますので、事業者の責任において修正していただくということが必要になってくるんだろうと思います。

 いずれにしても、適正な取り扱いができるよう、いろいろな、従業員の教育を含めまして、しっかりとしていくことが必要だろうと思っておりますので、政府としても、制度の周知徹底ということは努力をしていくのは当然のことだと思っております。

古川(元)委員 これは、軽減税率が入るがためにそこまで本当にチェックをして、それに反していたら摘発をするということになる、事業者は本当に従業員をどこまで管理したらいいのかということにもなってくると思うんですよね。

 しかも、レジで問題だけじゃなくて、これはテークアウトと言って申告をきちんとしてそれで買った、ところが、お客さんがその場で食べ始めちゃう、そのときにやはり、聞くと、食べ始めたお客さんに外へ出ていってくれと言えるかといったら、言えないと思うんですね。では、その場合、今の話からいうと、お店はお客さんに追加料金を請求しなきゃいけなくなるんですか。どうなんですか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 これまで申し上げていますように、軽減税率の適用対象になるか否かというのは、販売時点におきまして一義的に判断されるということが基本でございます。したがいまして、事業者がその商品を販売する時点において、例えばテークアウトをする意思を表示した場合において、その事実に基づいて適正に判断をするということになります。

 したがいまして、その後、顧客が実際にどこでどのように食べたかということを追っかけるということではなくて、そのいかんにかかわらず軽減税率の適用というふうに整理をすべきものと考えております。

古川(元)委員 そうすると、隣で普通に店内で食べると言って食べていた人が、何で俺は標準税率で、隣で食べているのは軽減なんだ、俺の分を返せというふうに言われたときに、お客さんからそうやってクレームをつけられて、そしてもし返したら、それはやはり法律違反になるということですか。

佐藤政府参考人 いずれにしても、想定しております法律上の整理は、販売時点においてどうかということでございます。そこで意思を確認いただいて、それで、店内で食べる、外で食べるということであれば、それに基づいて一義的に決まるということでございます。

古川(元)委員 要は、これは結局、事業者がみんなそういうリスクを負ってくれ、現場の店員がそういうリスクを負ってくれということですかね。

 総理、目を閉じて聞いていますけれども、どうですか。こういう混乱が現場でどんどん起きてくると思いますけれども、そう思いませんか、総理も、聞いていて。どうですか。

麻生国務大臣 今いろいろ先生おっしゃいましたようなことを私どもいろいろ、これを、導入を決めるまでの間、役所の中でもいろいろな人を呼んできて、いろいろな話をしましたので、皆、今言われたようなお話を、おもしろおかしくもやりましたし、真面目な話、これは混乱するぞという話もいろいろやった結果、今申し上げたようなことを、局長の方から答弁をさせていただいておりますけれども、間違いなく、そういったようなある程度の混乱というのは、どの程度のものかはちょっとはかり知れませんけれども、私どもとしては、その混乱はある程度起きるであろうということは覚悟しておかないと、最初から完璧に全部いけるとは思っているわけではありませんけれども、そういったものを時間をかけてきちっとやっていきたい、私どもはそう思っております。

古川(元)委員 まさに、大臣、前からずっとおっしゃっているんですよ、こんなのを無理に来年四月にやったら混乱するぞと。だから、そんな、混乱することがわかっていることを強行するのかということなんですよね。

 次の方に行きますけれども、事業者にとってみると、レジの改修も大変なんですよ。今、ただでさえマイナンバーへの対応なんかで大変なところに、さらに軽減税率対応なんていうんだったら、結局、そういう改修費用がもっとふえてくることになります。今、そういうところの中小企業に対して補助金を出しますよと言っていますけれども、全額補助じゃないですからね。結局、事業者の負担が出てくるんです。

 今大臣が言ったような混乱や、あるいはそうしたコスト負担というのが事業者にのしかかる、中小零細になればなるほどその負担が重くなるんですよ。そういう認識があるかということなんですね。

 しかも、今回のだと、出前は軽減、そして中で食べると標準。

 今、多分、うちの地元もそうなんですけれども、うどん屋さんとかそば屋さんとかおすし屋さんとか、どんどんみんな、大変なんですよ、後継者もいない、父ちゃん、母ちゃんでやっている、何とかやっているところが。

 店の中で食べると標準だけれども、出前をとったら安くしてくれるというんだったら、みんな出前をとりますよね。そうしたら、出前の方がコストがかかるんですよ。これは、中小のこういう商店にとっては本当に死活問題だと思うんですね。

 また、今回、インボイスを入れるでしょう。それこそ本当に小さな小売店でやっている、高齢者の皆さん方なんかの、おじいちゃん、おばあちゃんでやっているような商店もあります。それが、今までのような帳簿方式じゃなくて、インボイスを入れて、こんな区分けをしろと今みたいな話をしたら、こんな面倒くさいんだったらもうやめちゃおうと。

 地方の本当に小さな商店、そういうところをどんどんどんどんと廃業に追い込むということになっていって、地方創生どころか、本当にどんどんどんどん免税業者の小さなところが潰れていく、そうしたことを、これはインセンティブをつけることになるんじゃないんですか。大臣、どうですか。

麻生国務大臣 各お店というか各個人経営店の中における事情もそれぞれ違いますので、一概には今言われるようなことにはならない、私どももそう思っておりますけれども、そういった例がないとは言いませんよ。ないとは言いませんけれども、そういった例が一つや二つあったとか、百あったとか……(発言する者あり)よく聞けって、最後まで。一つや二つあったとか、百あったとか千あったとか、いろいろ例が出てくると思いますよ。それは今の段階で私どもはわかりません、そういったようなことは。

 いや、それよりもっとこっちの方がいいやとか、出前なら出前料を別に取っているところもある。うちなんかは取られていますから、よくわかっています。私どもの地域では、出前をした場合にはこれだけですと、別に取っておられるところはいっぱいありますので、それは別に驚くことはないので、私どもとしては、そういったようなことはいろいろあろうとは思いますけれども。

 少なくとも、いろいろな形で時間がかかることは確かだと思いますので、そういった点に関しては、古川さん、これは間違いなく、私どもとしては、すぐやるというんじゃなくて、少しずつ時間をかけてやっていただく、そこまでには時間がかかるだろうということは、はなからそう思っておりますので、今も最初から申し上げたような答弁ということになろうと思います。

古川(元)委員 これは本当に、物すごく皆さん、不安になっているんですよ。

 きのうも、たまたま私、地元に日泰寺というのがありまして、そこの参道にある、もう大正十三年からやっているという古くからの、みたらしやお好み焼き、焼きそばをやっているお店に行ってお好み焼きを食べたんです。そこを見たら、内税で料金表があって、十円の容器代をつけたらお持ち帰りできますよと。そこの大将に、これは軽減になった場合を考えていますかと言ったら、考えたことはないと。軽減ということは、要するに、これは下げなきゃいけないでしょう、中で売っているものだと。では、一〇%に上がったときに八%の値段はどうするんだと。これは、そんな計算を一々、家族でやっているところではとてもできないよねという、本当に困った顔をしていらっしゃいました。まさにこういうのが全国あちこちで今、不安や心配が起きているんだと思います。

 ですから、きょうこうしてずっと議論してきたように、どう考えても、軽減税率は、税の三原則、公平、中立、簡素、そのどの視点に立っても、やはりそういうものじゃないと思うんですね。

 ですから、こんな仕組みを、大臣もおっしゃるように、混乱はあるだろう、私はあると思いますよ。あることがわかっているのに、それを無理に来年四月に導入するということに突っ走るんじゃなくて、これは我々、ずっと言っているんです。当面は、現在の簡素な給付措置、これを拡充する形で低所得者に対して給付を行うことで対応して、その間に、我々が提案している給付つき税額控除、消費税額を還付する仕組みと、そして今回、政府・与党の方が提案した軽減税率というのを比較考量して、さまざまな、まだまだ、こんな時間でできませんよ。これはもう何時間でもやりましょう、こういう問題は。こういう議論をすればいいじゃないですか。

 総理、どうですか、これは。総理の見解を述べてください。

安倍内閣総理大臣 これは、財金もありますから、そちらの方でしっかりと議論していただければいいのではないかな、このように思います。

 いずれにせよ、新たな制度を導入するわけでございますから、我々も関連する業者の方々に対してしっかりと説明、指導をしていきたい、こう考えているところでございます。

古川(元)委員 そんな問題じゃないと思うんですよ。

 では、総理にこれは聞きます。

 社会保障・税一体改革に関する三党合意、総理、この三党合意は、総理の認識では、今も生きているというふうに考えているのか、もうこれは過去の話だという認識なのか、どういう認識ですか。

安倍内閣総理大臣 社会保障と税の一体改革に関する三党合意は、社会保障と税財政の問題について、自民党そして公明党と民主党の三党間での真摯な議論を経て策定されたものであり、国の長期的課題に対する与野党の枠を超えた枠組みは重要な意義を有すると考えています。

 三党合意は現在も生きていると認識しているのかとのお尋ねでございますが、消費税率の引き上げに関しては、平成二十四年六月の三党合意に基づいて成立した税制抜本改革法の規定に基づき、低所得者対策などの課題について検討を行ってきており、三党合意に沿った対応がなされているものと考えています。

 さらに、三党合意を経て成立した各般の法律の枠組みに沿って、消費税増収分を活用した社会保障の充実、安定化と同時に、重点化、効率化を着実に進めているところであります。

 今申し上げましたように、我々は、この三党合意については生きている、こう考えているところでございます。

 今回の軽減税率の導入につきましても、三党合意に基づいて成立した税制抜本改革法の規定を踏まえて検討を行い、軽減税率制度の導入を含む税制改正法案を提出しているところでありまして、その内容についてまた御異論があるということでございますから、こうした議論を通じて、また、これは予算委員会だけではなくて財金等の場も生かしていただいて、有意義な議論をしていただければ、このように思います。

古川(元)委員 三党合意というのは、法律が通ったところで終わりじゃないんですよ。あとは国会で議論するという話じゃないんですよ。三党協議もやっていくというのは、ちゃんと後のフォローをしていくという話があったんです。

 税についての三党協議については、私は今、党の税調会長として、昨年の春、中断していましたけれども、自民党の当時の税調会長だった野田税調会長に協議の再開を申し入れました。野田税調会長からは、ぜひやろうという話があって、そして、再開するに当たっては、与党の中で消費税の逆進性対策についての案がまとまったら、その時点で呼びかけをするから、それから再開しようという話だったんです。

 ところが、私はその後、何回か野田会長にもどうですかと聞いたら、ちょっと待ってくれ、ちょっと待ってくれと。そのうちに、野田会長がやめられて、新たな宮沢会長になって、以後、全く何の音沙汰もありません。

 協議をする気があるのであれば、勝手に決めて国会に出してきて、今総理が言ったみたいに国会で議論しようというその前に、この三党合意が生きているというのであれば、ちゃんと三党協議をやろうと。こちらから三党協議を再開しようといって申し入れをして、やりましょうとそちらから返事があったんですから。にもかかわらず、全く何の、今に至っても音沙汰もない。

 そんなことで、三党合意は生きているというふうに言えますか。どうですか、総理。

安倍内閣総理大臣 古川さんと当時の野田税調会長とのやりとりについては私は承知しておりません。

 当時はまさに、自民党の党内での議論、税調での議論、そしてまた与党での議論について、詰めた議論を行っていたわけでございまして、その後税調会長が交代をしたということもあったんだろうとは思いますが、大切なことは、こうした国会の場においても議論ができるということではないか、このように思います。

 三党合意にのっとって我々は物事を進めているのは間違いないわけでございまして、軽減税率もその中の一つの選択肢であったわけでありますから、それが、三党合意の中に入っていないものを、急に軽減税率を持ってきたということであれば別でありますが、その中にあったものを持ってきているわけでございますから、これについて、御党については御不満があるかもしれませんが、どうした課題があるかということについては建設的な御議論をしていただければ、このように思います。

古川(元)委員 自民党総裁として、聞いていませんというのは、これはびっくりしましたよ。私は、これはちゃんと岡田代表からの指示を受けて、党として申し入れをしたんですね。ですから、それを知らないということ、そもそも私はそれはびっくりしましたし、仮に知らなくても、では、そういう話であれば、三党合意が生きているというのであれば、今からでももう一回、これは三党協議の場にのせてきちんと議論しましょうよ。

 我々は協議を否定しているわけじゃないんですから。やはり、あの三党合意というのは、ちゃんと、あの合意に基づいてできた法律の後についてもフォローをしっかり三党でしていきましょうと、まさにその協議までも含めてのものだったんじゃないんですか。

 そうであれば、我々の方からこれを協議しましょうというふうに言っているんですから、国会で議論すればいいということじゃなくて、もう一度、ここでも今いろいろな議論が出たように、おかしな問題が、このままいったら混乱が起きるんですよ。やはり、税の問題で、こういう大きな、消費税制度の根幹に変更を加えるようなそうした制度変更を行うということは、やはり、最初に申し上げたように、入れて、後からあんな制度やらなきゃよかったと思っても、これは後の祭りなんです。

 だからこそ、今ここでもう一度立ちどまって、時間もあるんですから、きちんと議論をして、そして本当に、消費税の逆進性を緩和する、低所得者対策になる、税制の原則にも反しない、そうしたあり方は何なのか、それを真摯に協議しようじゃありませんか、どうですか、総理。

安倍内閣総理大臣 既に我々は、閣議決定をいたしまして、政府・与党で自信を持ってこの法律案を提出させていただいております。

 皆さんも意見があるでしょうし、こうしてしっかりと質問の時間を、私たち与党の時間を相当切って皆さんに提供させていただいているわけでございますから、そうした時間を有効に活用していただいて、建設的な御議論がいただければ、このように思っております。

古川(元)委員 これでは三党合意が生きているとはとても言えないと思いますよ。

 軽減税率の問題というのは、繰り返しになりますけれども、きょうの議論を聞いていただいても、多分、国民の皆さんもそう思うと思うんです。こんなに詰まっていないし、こんなにはっきりどうなるかわからないというものを、なぜここで無理に来年の四月から導入ということで強行するのか。やはりここは立ちどまってしっかり議論していく、それが本来、まさに三党合意で、社会保障制度のあり方とそしてその社会保障制度を維持していくその財源については、きちんとこれは国民の皆さんにも負担をお願いしていこう、そうした趣旨に合致することじゃないですか。

 もう一度総理に伺いますけれども、もう一度立ちどまって三党で協議を再開する、そうした気はありませんか。

安倍内閣総理大臣 ただいま佐藤局長との議論を聞いておりましたが、しかし、ルールとしてはしっかりと答弁していたと思いますよ。これは八%、これは一〇%、その取り決めに気に食わないということであればそれはそうかもしれませんが、しかし、それはしっかりと取り決めとして、この場合は八%ですよ、この場合は一〇%ですよ、しかしその取り決めはおかしいですねというのが委員の議論としてあったんだろう、こう思うわけでございます。

 このように、国民の前で議論するこの国会の場において我々も議論すればいいじゃないですか。三党合意にのっとって我々は物事を進めてきているわけでございます。その上においてしっかりとここで議論されれば、こう思っている次第でございます。

古川(元)委員 国会で議論をすればと言うんだったら、この消費税の法案について、来年度の税制改正の中に一緒に入れてとにかく日切れだなんという扱いをするのは全くおかしいですよ。

 そういうことを言うのであれば、この税制改正法案について、消費税部分については、これはやはり分離してしっかり時間をかけて議論していきましょうよ。どうですか、総理。そのことを最後にお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。

安倍内閣総理大臣 分離する考えはございません。しっかりと御議論をいただければと思います。

古川(元)委員 終わります。

竹下委員長 この際、緒方林太郎君から関連質疑の申し出があります。長妻君の持ち時間の範囲内でこれを許します。緒方林太郎君。

緒方委員 民主党、緒方林太郎でございます。

 本日、午前中最後のバッターということで、よろしくお願い申し上げます。

 まず、先ほどの答弁で、消費税の軽減税率について麻生大臣の方から、現場で混乱が生じることは否定しないということでありました。そして、軽減税率の導入により廃業してしまう中小企業者の可能性もあり得るということでありました。

 もう一度確認であります。これでよろしいですか、安倍総理大臣。

麻生国務大臣 どう聞き違えられたのか知りませんが、政府としては、事業者の準備に係るコスト負担等々に配慮するという観点から、私どもとしては、中小事業者の複数税率に対応するために必要なレジの導入とか、またシステムを改修する等々の話が出てきますので、そういった資金的支援を予備費や補正予算から手当ていたしております。その着実な執行を通じて、事業者への対応をしっかり行ってまいりたいと考えております。

 いずれにせよ、今般国会に提出いたしました税制改正案の附則におきましては、軽減税率制度の導入に当たり混乱が生じないように万全の準備を進めたい、そう思っております。当然のこととして、政府に必要な体制を……(発言する者あり)同じことを言っているじゃないですか。体制を準備するとともに、事業者の準備状況などを検証しつつ、軽減税率制度の円滑な導入及び運用に資するための必要な対応を行う旨明記しているところでありまして、しっかりと事業者への対応というものを行ってまいりたい、そのように考えております。

緒方委員 先ほどの答弁とかなり差があるように聞こえましたが、この件は、議事録を確認させていただいた上で、後ほど同僚議員から質問をさせていただきたいと思います。

 まず、質問に入っていきたいと思います。

 残念ながら、きょう、この場で育児休暇の関係でおやめになる議員がいることを取り上げざるを得ないことを本当に残念に思います。

 あの事件、本当に名前を出すのもはばかられるので、お名前は出しませんけれども、育児休暇詐欺とでもいうべき事件だったと思います。個人の話はどうでもいいことでありまして、馳文部科学大臣も言っておりましたが、自業自得ということだと思います。

 しかし、許せないのは、まさに育休詐欺でありまして、少なくとも、国会議員の育児休暇についてはもう議論することは今後はばかられてくる可能性が高いと思います。そして、世の中の育児休暇の議論についても、今後、今回の事件を契機に、育児休暇をとろうとする人が、変なことをするなよとか不倫するなよとかそういうふうに言われ、やゆされることで、世の中で育児休暇をとることがはばかられるような雰囲気が出てくることを私は懸念いたします。

 この件は、本当に、日本全国津々浦々でこういうことが起こる可能性があるわけでありますが、安倍総理の認識をお伺いします、安倍総理。

安倍内閣総理大臣 こんなことが全国津々浦々で起こるということは私はないと思います。それは、国民の皆さんもやはり冷静に見ておられるんだと思いますよ。

 これは非常に特殊な例で、我が党の議員がああした形で辞任に至ったことは、私も党の総裁として申しわけない思いでございます。こうしたことが起こらないように、議員である前に、人間としてしっかりと襟を正していく必要があるんだろうと思います。

 宮崎議員が育休をとるということで、いわば国会議員が育休をとるということの是非について議論があったのは事実であります。しかし、そのときも、育休そのものの議論とは少し違った議論だったのかなと思います。育休自体には、しっかりと男性も女性と、両親で子供を産み育てていく、こういう認識を持つ国に変えていかなければならない。安倍政権もその方針で政策を進めているわけでありまして、こんなことでそれは微動だにしないわけでありますし、既に流れが出ているこの大きな流れがいささかも変わるものがないと私は信じたい、こう思っている次第でございます。

緒方委員 それは認識が甘いと思いますよ。こういう事件が起こったら、今後、育児休暇をとろうとする人が上司にそれを申請したら何かしらやゆをされたり、からかわれたり、そういうことになるなよということで……(安倍内閣総理大臣「それはパワハラです」と呼ぶ)まさにパワハラですよ。まさにパワーハラスメントだと思いますよ。そういうことで、とりにくい雰囲気が少しでも出てくるのであれば、それはとても残念なことだと思います。

 そして、この件に関しまして、その後、冗談とはいえ、うらやましいと思う人もいるのではないかと御党の参議院の議員会長が述べられ、そして、それをフォローする形で、参議院の幹事長が、宮崎県と勘違いをしたのではないかというふうに言われました。ちょっとおかしいと思いますよ。参議院自民党というのはこういうところなんですか。総裁のコメントを求めたいと思います、安倍総理。

安倍内閣総理大臣 今言及された発言について私は承知をしておりませんが、いずれにいたしましても、我々国会議員に対しては、常に国民の厳しい目が注がれているという緊張感の中で対応しなければならないということではないかと思います。

緒方委員 今回の件が起こった後、私もインターネットを見ておりまして、こういうサイトがございました。宮崎議員と武藤貴也議員が日本の宝探しということで語り合っている、そういうインターネットのホームページでありましたが、育児休暇をとるということで、まさに育休詐欺を行っている議員、そして未公開株を持ちかけることによって詐欺行為を行った議員、さらには農林水産大臣政務官就任時に同僚議員と不適切な関係にあった議員、間違いなくこういった議員の存在というのは国会議員の品位をおとしめていると思います。今、二〇一二年問題とも言われるそうであります。

 安倍総理に確約いただきたいと思います。もうこれ以上、二〇一二年当選、二〇一四年当選の方からこういった不祥事を起こす議員を出さないということを御確約いただければと思います、安倍総理大臣。

安倍内閣総理大臣 二〇一二年とか二〇一四年とか、与党とか野党にかかわらず、国会議員たるもの、有権者によって一票を託されているわけでございますから、その自覚を持って、常に国民の厳しい目が注がれているという自覚と責任感を持って行動しなければならない、このように思いますし、私も、自由民主党総裁として、我が党の議員がそういう気持ちでしっかりと襟を正して国民の期待に応えていくように努力をしていきたい、こう思っております。

緒方委員 もう一度確認させていただきます。そういう不祥事を起こす議員を出さないということを総裁として確約ください、安倍総理大臣。

安倍内閣総理大臣 自民党総裁として、当然、責任ある立場として、新人議員の教育も含めて、党執行部において我々は対応していきたい、こう思っております。

緒方委員 二〇一二年総選挙、二〇一四年総選挙におきまして、今言ったような議員を公認されたのは、自由民主党総裁であります安倍晋三総理であります。まさに公認した者としての責任があると思いますが、その公認した者としての責任について一言述べていただければと思います。

安倍内閣総理大臣 当然、私は自民党総裁でありますから、党の公認には最終的に私が責任を持っております。その意味においては、まさに私に責任があると考えております。

 そして、今後は、あの一二年の選挙、一四年の選挙で我々は大きな勝利を与えていただきました。この国民の期待にしっかりと応えていく。経済最優先で取り組んでおりますが、デフレから脱却をして経済を成長させ、国民に豊かさを実感していただきたい、このために全力を尽くしていきたいと思っております。

緒方委員 今、経済を成長させというお話が最後にございましたが、質問を移していきたいと思います、日本の経済ということで。

 株価の下落については深刻なものが現在ございます。そして、きょう発表された景気の、二〇一五年十月から十二月については、年率で一・四%の悪化という数字も出てまいりました。先週末の株価終わり値は一万四千九百五十三円、円高は進み、百十三・三円ということでありました。

 株価につきましては、資料を見ていただければと思いますが、この赤の部分は、ピーク時の二〇一五年七月からの下がり幅であります。点線の部分は、リーマン・ショックのとき。そして、黒の部分というのは、一九二九年、アメリカで起こった大恐慌のときの株価の下がり方であります。ほぼ同等の、同じレベルのスピードで下がってきているわけであります。

 二〇一五年七月の水準から、これは安倍政権のピーク時ですので、そこから見ていけば、二〇一五年七月を一〇〇だとすると、現在、七二・六まで先週金曜日のところで下がってきております。これは安倍総理としてどのように分析しておられますでしょうか、安倍総理。

安倍内閣総理大臣 政府としては、市場の動向を注意深く見ています。

 世界的にリスク回避の動きが金融市場で広がる中、我が国の市場でも変動が見られています。具体的なコメントは差し控えますが、これは、中国の景気減速への懸念や、原油価格の低下、米国の利上げの動向等の海外要因が背景と見られるわけであります。

 しかしながら、我が国の実体経済を見れば、もはやデフレではないという状況をつくり出す中で、企業の収益は過去最高となり、就業者数は百十万人以上増加をするなど、日本経済のファンダメンタルズは確かなものと確認しています。こうしたファクトをしっかりとまず見ていただきたい、このように思うわけでありまして、日々のこうした株価の動向には一喜一憂すべきではない、こう思う次第でございます。

 政府としては、G7など国際社会と連携しながら、内外の情勢を注視しつつ、民需主導の好循環の確立に向けてしっかりと取り組んでまいります。

 なお、為替市場については、G7やG20などで合意されているように、急激な相場の変動は望ましくないと考えています。財務大臣には、引き続きしっかりと見てもらい、必要に応じ適切に対応してもらいたいと考えています。

 また、今月下旬に上海で開催されるG20では、市場変動の要因となっている世界経済情勢につき、しっかりとした対応をとってもらいたいと考えています。

緒方委員 海外のせいにしておられましたけれども、本当に海外の要因だけでしょうか、安倍総理大臣。

 そして、一喜一憂しないと言いましたが、この図を見ていただければわかるように、もう七カ月、八カ月のトレンドの中で見て下落してきているということを私は申し上げているわけでありまして、決してきのう、きょうがどうだったとかいうことではないわけです。短期的なトレンドではなくて、今、長期的にこうやって下がってきているというのは、この事実はやはりファクトだと思いますよ。

 安倍総理、少なくとも、もう七カ月このトレンドが続いていることをファクトだというふうにお認めになりますか、安倍総理大臣。

安倍内閣総理大臣 長期ということでしっかりとまず見ていただきたいと思います。この一カ月、一カ月半の値動きだけにとらわれるべきではないと思いますし、また同時に、世界市場、ダウ、あるいはEUの市場等、そしてまた上海の市場等を見ていただきたい、こう思う次第でございます。

 それと同時に、足元について、またあるいは日本の経済のファンダメンタルズについても見ていく必要もあるんだろうと思いますが、アベノミクス三本の矢の政策により、もはやデフレではないという状況をつくり出す中、政権発足以来、名目GDPは二十七兆円ふえ、税収も国、地方合わせて二十一兆円ふえたわけであります。これがファクトであります。

 企業の収益は過去最高となって、倒産件数は約三割減少しました。そして、失業者も五十三万人減少しているわけであります。また、政労使会議の開催などを通じて、好調な企業収益を雇用・所得環境の改善につなげることによって、就業者数は百十万人以上増加をし、有効求人倍率は二十四年ぶりの高水準となっておりますし、賃上げ率は二年連続で大きな伸び率となるなど、経済の好循環を生み出しているということでございます。

緒方委員 先ほどから外的な要因を非常に強調されますが、しかしながら、まさに、そういう外的な要因に対応する力強い足腰のある日本経済をつくるというのがアベノミクスの三本目の矢じゃなかったのかなというふうに思うわけですね。三本目の矢を適切に打っていくことによって、こういった外的要因に影響されないような経済をつくっていくということ、私はこれがアベノミクスの三本目の矢だったというふうに思っております。

 安倍総理にお伺いいたします。

 これまで打ってきた三本目の矢によって、この状況というのはもっとよりよい状況にできたんじゃないかというふうに思うわけですが、安倍総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 これは、ほとんどのエコノミストが、外的要因にかかわらず、日本の経済だけがデカップリングできるなんということを考えている人は一人もいないと思いますよ。これはもう当たり前のことであります。特に株式市場は、そうした要因に引っ張られるところもあるわけでございます。つまり、外的要因の中において、またあるいは海外の動向と比較してどうかということを見なければならないわけであります。

 円が今上がっているわけでありますが、残念ながら、円高が進行し、株価が下がっているという状況が続いていますが、多くのエコノミストは、こういう状況は、例えば、普通であれば、イランとサウジが断交する、北朝鮮がミサイルを発射する、中国の先行きに不安が出てくる、こうなると、かつては、ドルが買われ、あるいはユーロが買われていたものでありますが、今は、やはり円が買われているという状況が起こっている。そして、円がいわば高くなっている中において、現在株が下がっているということになるわけでございます。

 また同時に、かつては、日本銀行がゼロ金利政策を行う前は、円が独歩高であったのでございますが、今の状況を見ると、これはドルが下がっているという状況になっているわけであります。ドルに対して日本の円は上がっていますが、ユーロも上がっておりまして、多くの貨幣は上がっている。

 そうしたさまざまな分析をしっかりとしていく必要があるんだろう、こう思うわけであります。

 QEが発表されましたが、二〇一五年の暦年においては名目がプラス二・五になっている。こういう数字はもしかしたら聞きたくないのかもしれませんが、こういうファクトもしっかりと見ていただきたいと思います。

緒方委員 安倍総理、いろいろ言われましたが、しかし、現下のこの株価の水準というのは、アベノミクス相場と言われるこの三年三カ月の平均を現在下回っております。単純に見ても、多くの方が含み損を抱えている状況にあります。決して株価が上昇したことを礼賛できる状況に今、日本経済はございません。

 そして、安倍総理、いろいろこれまで言ってこられましたが、これまでずっと国会答弁等々で、政治は結果なんですよ、そしてファクトが大事なんです、そういうことを言ってきておられます。まさに今目の前にあるのが、それがファクトじゃないですか、安倍総理大臣。

 今日本経済が少し下向きのドライブがかかっていることについて、それを素直に認めた上で、そこから処方箋を練ることがとても大事だと思いますが、安倍総理大臣、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 例えば、我々安倍政権が誕生する、まさに私が総裁になったときからいわば株式市場に変化が出てきたのは事実、これもファクトだろうと思います。

 当時は八千円を割っていたわけでありますが、我々は、その際、量的緩和についてしっかりとやっていくということを出しました。これは国際社会が認めているファクトだろうと思います。そして、その後、七千円台から八千円になって、安倍政権ができて、八千円からスタートしたわけでございます。今でも倍ぐらいになっているのが事実であるのは、それは間違いないんだろうと思います。

 一時、確かに、また一万二、三千円程度に下がったときにも、この国会において随分騒がれました。ですが、そのときも、皆さん少し落ちついてください、こう申し上げたわけでありますが、しかし、その後、株は上がっていった。

 そして、その後、国際経済の中で不安定要因が出れば、これは変化が出てきます。その変化のたびに、アベノミクスが失敗をしている、こういう批判をされますが、一番大切なファクトは何か。実体経済で一番大切なファクトは何だと思いますか。それはやはり雇用なんですよ。これが一番大切なんです。雇用を生み出していく。我々は、まさに雇用を生み出している。

 そして、皆さんの時代には残念ながら倒産件数が多かった。皆さんの時代よりも、私たちは三割も倒産件数を減らした。そして、失業者の数を五十三万人減らした。そして、六万件、我々は生活保護を受けている世帯を皆さんのときよりも減らしたんですよ。これがファクトです。これが大切なファクト。こういうものから目をそらしてはならない。全て世界的な要因のせいにしてはならない。

 そして、昨年の暦年においても、二〇一五年についても、名目はプラス二・五だったということをしっかりと見ていただきたい、こう思う次第でございます。

緒方委員 この国会で私は議論を聞いておりまして、大体、こっちが何か言うと違うデータを出してきて、ああ言えばこう言うというのが非常に続いているんですね。そういう状況に議論を持っていかれることというのは本当におかしいと私は思います。

 実質賃金についても下がっている。そして、雇用がふえたと言っておりますが、それは非正規の雇用がふえているだけであって、雇用の改善と胸を張って言える状況にはないのではないかと私は思います。

 そして、安倍総理は、これまでの経済の議論の中で、よくアベノミクスの効果として二つのことを言います。マインドが改善をした、そして、資産効果が出ている、この二つのことを大体言っておられます。このパネルにあるとおりです。

 現在、逆資産効果が出ているんじゃないですかね。株が、少なくとも、二〇一五年七月を一〇〇とすると七二・六まで下がってきているんです。ということは、株式の資産がそこまで下がってきているということは、上り調子のときはそのプラスの資産効果が出てくると思いますけれども、逆にこうやって下落の局面に入ってくると、逆資産効果が出ていることをお認めになりますか、安倍総理大臣。

安倍内閣総理大臣 これはまさにマインドの問題であろうと思いますが、基本的には、まさにマインドを変える上において、私が申し上げた資産効果、つまり株価に顕著に結果が出てきました。この三本の矢の政策が顕著に出てきたことは、これは緒方委員も認められるところなんだろう、このように思います。これを否定するのであれば、我々の政策を全く否定することになって、また三年前に戻したいということかもしれません。そうすれば、三割また倒産がふえていくということになると思いますが。

 そこで、確かに、株価の下落は、これはいい影響は及ぼさないのは当然のことだろう。しかし、大切なことは、しっかりと経済のファンダメンタルズを見る必要があるんだろうと思います。我々は、今、経済については、経済のファンダメンタルズは、企業は最高の収益を上げている、これに注目をしていただかなければなりません。海外要因であるということは多くの人たちが認めておられるんだろう、こう思いますから、大切なことは、今の状況に直ちに一喜一憂すべきではない、こういうことでございます。

緒方委員 一喜一憂ということではなくて、私はちゃんと数字を挙げて説明しています。

 二〇一五年七月の段階から先週金曜日の段階で、二〇一五年七月を一〇〇だと置くともう既に七二・六まで下がってきているんです。これはファクトです。そして、それによって、安倍総理がよく資産効果、資産効果と山のように答弁が出てくるんです、逆の資産効果が生じますよね。そして、それによって消費、投資に対してネガティブな影響が働きますよねということは、これはこれまでずっと安倍総理が、上向きのときにそれを言ってきた以上、今その状況にあるということを認めていただかないと矛盾をすると思いますけれども、もう一度答弁いただければと思います。

安倍内閣総理大臣 確かに、二〇一五年と比べれば下がっておりますが、皆さんが政権をとっているときと比べれば。つまり、世の中あるいは市場は、民主党政権に任せていいのか、安倍政権に任せていいのかといえば、これは明らかじゃありませんか。ここのところは皆さんも謙虚に認めていただかなければならないと思いますよ。

 そこは、やはり経済を我々は今後も最優先にしていきたい、こう思っておりますし、例えば、海外も、皆さんが政権をとっているときと比べると、海外からの直接投資は十倍にふえたんですよ、十倍に。こういう事実をしっかりと皆さんにも見ていただきたいと思います。

 いわゆる、当時は六重苦と言われたものを私たちはなくしている。まず、政治的な不安定、政治的な不安定をなくした。そして、行き過ぎた円高、それもなくしたわけであります。そういう状況を私たちは変えているわけであります。(発言する者あり)今、政府ではなくて日銀じゃないか、こうおっしゃったけれども、我々は、まさに三本の矢という政策を決めたのは、安倍政権で決めたんですよ、その中で黒田さんを選んだのでありまして、これは一体であります。政府以外ができるのであれば、なぜ民主党政権のときにやらなかったんですか。できなかったんですよ、残念ながら。

 それは、政府がしっかりとした経済政策、金融政策も、財政政策も、成長戦略も持って政策を進めていくことが大切であろう、こう思う次第でございます。

 批判するのは簡単なことなんですよ。経済においては、どういう選択肢があるか。ですから、経済においては、残念ながら比較しなければいけないんですよ。この政策をとっていたときにはこういう結果だった。ですから、皆さんが政権をとっていた以上、政権をとっていたときの結果は批判にさらされるという覚悟を持った方がいいですよ。我々もそうだったんです。

 その意味においては、自民党は、過去の政権時代、第一次安倍政権時代にとっていた政策とも今違う政策をとっている。そのときのことを率直に反省しながら、今、三本の矢の政策において政策を進めている。その結果、まさに税収においても二十一兆円ふえたんですよ、皆さんのときよりも。その結果、果実を使えるということになっているということであります。

緒方委員 二〇一五年の七月から七二・六%まで下がってきているということでありましたが、二〇一五年七月を一〇〇として、二〇一五年の七月から九月で、年金の積立資産の運用で七兆九千億近い損が出ています。七月から九月の段階で、一〇〇から、数えてみますと八四・五%ぐらいのところで既に七兆九千億の年金資産の毀損が出ております。ということは、先週金曜日の時点でもう七二・六まで下がっているということは、少なくとも十兆円以上の年金資産の毀損が出ているということはほぼ確実だろうと思います。

 ポートフォリオがいろいろ違うので一概に言えないということはございますけれども、少なくとも、二〇一五年七月が一〇〇だとすると、八四・五のところでもう七兆九千億円。今、七二・六まで下がっています。ということは、安倍総理、少なくとも十兆円以上の毀損が出ているということはお認めになりますね、安倍総理。

安倍内閣総理大臣 まず、株価においても、今委員が比べられた株価は安倍政権の中の株価であって、最初の株価はまさに安倍政権の成果だということはお認めになるんだろうと思いますよ。それが、すごく大きな成果が出たところから今下がったからといって、今でも皆さんのときよりはいいんですよ。そのことはまず申し上げておきたい、こう思います。

 普通は自分たちの成果と私たちの成果を見比べるものなんですが、安倍政権の中で比べるという、これはちょっと苦笑を禁じ得ないわけでありますが。

 そこで、ポートフォリオの変更は、まさにデフレから脱却をして物価が上昇していく局面では、国内債券だけでは実質的な年金給付を確保することは困難となるという中においてポートフォリオの変更を行ったところであります。このような想定のもとで、国内債券に偏っていた従来の基本ポートフォリオから株式等への分散投資を進めたものであります。

 ポートフォリオ変更後の運用収益は、今年度第二・四半期ではマイナス七・九兆円となったものの、過去一年間、平成二十六年度第三・四半期から平成二十七年度第二・四半期ではプラス四・二兆円となっています。さらに、安倍政権が発足した平成二十四年度第三・四半期からの収益は、これはもう民主党の皆さんは聞きたくないかもしれませんが、安倍政権が発足した平成二十四年度第三・四半期からの収益額はプラス三十三兆円になっております。

緒方委員 それは、株式での運用は必ずしもレコードがよくないということもございまして、それを一概にこうやって売り込んでいくというのは必ずしも適当ではないと思いますが、最後、一問させていただきたいと思います。

 金利が下がっていることによって財政規律の緩みが生じることを懸念いたします。国債の利率が下がることによって、逆に、借金を大量に保有していることによって、金利低下によって財政の負担が下がるということが出てきます。

 安倍総理に提案をさせていただきたいと思います。

 低金利になったことによって国債の利払い費が減っていくわけでありますが、この利払い費が下がった分については、全て国債の償還、それ以外の償還の分に充てていくべきだというふうに思いますが、安倍総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 利払いについては、金利に影響されるわけでありますが、十年物の長期国債の金利と成長率の関係があるわけでありまして、このどちらが上になっていくかということが極めて重要であります。今、幸い成長率の方が上回っておりますから、累積債務のGDP比については、これは収束していくという方向になっていくわけでありますが、いずれにいたしましても、私たちは二〇二〇年度PBの黒字化を目指していくことは当然のことであろう、こう思っている次第でございます。

 そこで、今委員がおっしゃったように、単純に、利払いが、これはふえたら、これを国債の償還に回すということはいたしません。

 いずれにいたしましても、安倍政権においては、我々は十兆円、国債の新規発行を縮減しているわけでありまして、これは民主党政権のときはほとんどできていなかったわけでありますから、また再三申し上げて申しわけないんですが、このように、やるべきことはしっかりとやっているわけでございます。

 同時に、ここは委員と大きな違いなんですが、なぜ我々が十兆円縮減できたかといえば、経済を成長させたからなんです。経済を成長させた。我々は二十一兆円税収をふやした。このうち消費税は八兆円分ですよ。十三兆円はまさに私たちの成長戦略によって、成長によって出た果実であります。だからこそ、我々は財政の健全化を行うことができて、成長を度外視したり、そういう要素を外したのでは、結局、財政健全化も全くできないということは申し上げておきたいと思います。

緒方委員 大半の改善は消費税の増税によって行われたものですよ。本当に都合のいい統計だけを出して、そして強弁を張る安倍総理に厳しく申し上げまして、私の質問を終えさせていただきます。

 ありがとうございました。

竹下委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

竹下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。

 この際、玉木雄一郎君から関連質疑の申し出があります。長妻君の持ち時間の範囲内でこれを許します。玉木雄一郎君。

玉木委員 民主党の玉木雄一郎です。

 きょうは経済、財政を中心に質問させていただきたいと思いますが、その前に、先週、政治と金の集中審議で我々の同僚議員が甘利前大臣について質問しましたけれども、その中でさまざまな疑問が新たに出てきました。

 まず、総理にお伺いします。

 甘利大臣がやめられてから二週間以上がたちました。一月二十八日だったと思いますが、甘利大臣は辞任会見でこのようにおっしゃっています。秘書が金額交渉等に介入したことはないというふうにおっしゃっていますけれども、この説明を安倍総理も信じていらっしゃるという理解でよろしいでしょうか。

安倍内閣総理大臣 先般、甘利大臣は、辞職するに際して、その段階で把握している事実について説明をされたんだ、こう思っております。その段階での甘利大臣の認識を示されたんだろう、このように承知をしております。

玉木委員 今、総理としての御認識だと理解しました。

 実は昨日、我々は、甘利事務所の秘書さんが、UR、都市再生機構と一色氏との間の補償交渉、もっと言うと金額交渉に深く介入していたことを裏づける証拠、具体的に申し上げると音声データと議事録を独自に入手いたしました。これは、当事者である一色氏の了解も得たものであります。

 日付は平成二十七年十一月二日です。甘利事務所の秘書から一色氏に対して、URに二十億円という具体的な補償金額を提示するよう持ちかけている内容であります。

 一部読み上げます。

 でも、一応推定二十億かかりますとか、かかると聞いておりますとか、そういう言葉にしてほしいんですよね。もしかしたら実際の金額について細かいところまでは絡めないですよ。こういったところは今だったらぎりぎり絡めるんで。

 絡めるんでと言っています。これはまさに、甘利事務所の秘書が補償交渉、金額交渉に深く介入している生々しいやりとりであります。これが事実であれば、あっせん利得処罰法違反は免れないと思います。

 ここで、URの理事長に伺います。

 このやりとりの五日前です、平成二十七年十月二十八日付のURの議事録。これは黒塗りで出されましたけれども、しかし、その黒塗りをされている以外のところから読み取れる内容から以下のことがわかります。こういうふうに甘利事務所の秘書さんとURがやりとりをしています。

 秘書さんが一体先方は幾ら欲しいのかと言うのに対して、機構は具体額はおっしゃらない。これに対して秘書さんが、私から先方に聞いてもよいがというふうに機構側に言った、このことに対して機構は、いや、逆にこれ以上関与されない方がよろしいように思うと。

 ある意味ここで、金額交渉に介入しようとする甘利事務所の秘書さんをURの皆さんとしてはいさめた形になっていますが、このやりとりは事実ですか。

上西参考人 お答えいたします。

 事実でございます。

玉木委員 もう一度申し上げます。

 冒頭私が紹介した録音テープのやりとりの五日前、URに対して甘利事務所の秘書さんが金額をこちらから聞いてみようかということに対して、やはりそれはまずいということで、URの方としても、もう関与されない方がいいですよと。こうもおっしゃっています。提示額は基準上の限度いっぱいであり、工夫の余地が全くなく、先方に聞いてしまうとそちらも当方も厳しくなる。こういう認識でありました。

 これで終わっていればよかったんですが、にもかかわらず、五日後の十一月二日に、先ほど言ったように、もう一度言います。一応推定二十億かかりますとか、そういう言葉にしてほしいんですよね、こういうふうに具体的な金額を出して、一色さん、あなたも交渉した方がいいですよと言って、まさにURと当事者の一色さんの間に甘利事務所の秘書さんが入って、具体的な金額を述べてやった方がいいですよと、深くこの補償交渉に介入しているんです。甘利元大臣は辞任会見で、秘書が交渉、特に金額交渉に介入したことはない、そうおっしゃいましたけれども、今のやりとりを聞くと、全く関与していないどころか、主導的にどっぷりかかわっている様子がうかがえます。

 一方の言い分だけを言うのは私も公平じゃないと思いますので、音声データがあります、議事録もありますので、理事会に提出したいと思います。そしてこれを検証していただいて、ぜひ、一方的に私がこうして言うのも不公平だと思いますから、甘利元大臣本人、ここで取り上げられている清島秘書、鈴木秘書、この三名については証人喚問を求めたいと思いますので、委員長、お取り計らいをお願いします。

竹下委員長 後刻、理事会で協議をいたします。

玉木委員 あわせて、当予算委員会は五時に終わりますけれども、この後、終了後に記者会見を開いて、この音声データと議事録については全てのマスコミに公開したいと思います。

 私もこれは聞きました。聞きましたけれども、私は清島秘書の声を聞いたこともないので、最終的に確信が持てません。ですから、これは多くのマスコミの皆さんに取り上げていただいて、全国の皆さんにもチェックをしていただいて、果たしてこれが真実なのかどうなのかも含めてしっかりと検証すべきだと思いますので、この後、公開をしたいと思います。

 安倍総理に伺います。

 七割の国民が、甘利大臣の説明は不十分だと。これは井坂議員からも先般指摘があったところでありますけれども、今回、潔くやめた、いわば評価の高いとさえ言われているあの甘利大臣の会見、実は内容が全てうそだったのではないか、今そういう疑惑さえ出てきています。

 改めて伺います。

 今のやりとりを聞いて、それでもなお、秘書が金額交渉等に介入したことはない、この甘利大臣の言葉を任命された安倍総理としては今も信じている、断言いただけますか。

安倍内閣総理大臣 先ほどお答えをさせていただきましたように、甘利大臣は辞任の記者会見に当たって、御本人は協力していただいた弁護士の方とともに調査を行い、そしてその調査について甘利大臣は発表されたわけでございますが、その段階における甘利大臣の認識を示されたものと承知をしております。

玉木委員 先週も安倍総理は任命責任を果たすとおっしゃいました。これも井坂議員から指摘がありましたけれども、任命責任を果たすと言っても、そこから何もしないんですよね。

 甘利大臣にしっかりと説明させる責任、これをやはり総理大臣として果たされるべきだと考えますけれども、この説明させ切る責任をどう果たされるおつもりですか。

安倍内閣総理大臣 甘利大臣は、さきの会見において、しっかりとさらに調査をし、そして国民の皆様に説明をしていきたい、こうおっしゃっていたわけでございますので、今後とも説明をしていかれるものと考えております。

玉木委員 二週間以上があの辞任会見からたちました。先般行われた重要広範を取り扱う本会議、そして石原大臣が新たに任命されてその後経済演説を読んだあの本会議、全て甘利元大臣は欠席されています。辞任されても一衆議院議員であります。なぜ本会議に欠席しているのか。そして、今週も来週もまた本会議が開かれて、果たして出席されるのか。とても説明責任を果たす積極的な態度をとっているとは思えないんですね。

 ぜひ、安倍総理、やめたとはいえ、任命されたのは内閣総理大臣安倍晋三、総理であります。甘利大臣に国会に出てきていただくように説得をしていただけませんか。お願いします。

安倍内閣総理大臣 国会への出席あるいは説明責任等については、政府の一員であろうと与党であろうと野党であろうと、一議員がそれぞれ議員としての責任の中においてその責任を果たしていく、こう考えているところでございます。

 甘利大臣も、先般、説明責任を果たしていく、こう言っておられるわけでありますから、説明責任を果たしていくものと考えております。

玉木委員 いつも総理はそういったお答えで、何とか今を過ごせばいいという感じなのかもしれませんが、しかし、我々も全く証拠がない中で何かを申し上げているのではなくて、それなりに、大臣を経験されたような方に対して何か御指摘申し上げるのは我々も緊張します、責任をきちんと果たさなければならないと思って、一定の調査はきちんとやった上で申し上げています。

 ですから、ぜひ、安倍総理としても、甘利大臣にしっかりと説明責任をこの場に来て果たすように強く働きかけていただくことをお願い申し上げます。

 改めて、委員長、今申し上げた甘利元大臣、そして二人の秘書、必ずこの場に来て証人喚問に応じていただくよう、改めて理事会で協議いただきますよう強くお願い申し上げます。

竹下委員長 理事会で協議をいたします。

玉木委員 それでは、次の質問に移りたいと思います。

 日銀総裁にお越しをいただいています。この間私が何度も聞いていますマイナス金利のことでありますが、一月二十九日、マイナス金利が導入された際、その情報が事前に漏れ、そして一部ニュースメディアのウエブ版に出たという情報漏えいの問題であります。

 その後、日銀から幾つかの資料をいただきましたけれども、新たなことがわかりました。実は、十一時二十六分から十一時四十二分の間に、一度、政策決定会合が中断されています。なぜ中断されたかというと、政府から出席されている、具体的に言うと財務副大臣そして内閣府の副大臣、この二人が退室をされて、本省の指示または本省と協議するために一回中断していますね。この中断中に、財務省と内閣府のこの副大臣が本省に連絡をとっています。連絡を受けた役所から漏れたのではないかという新たな疑念が生じています。

 黒田総裁、現在の調査状況、そしてこの漏えいルートの真相究明は進んでいるのか、お答えください。

黒田参考人 御指摘の調査につきましては、まず、報道された議論の内容を知り得た日本銀行の役職員については、当該報道機関との間において本件に関する情報のやりとりがなかったことを確認いたしました。また、政府関係者についても、財務省及び内閣府に調査協力を依頼し、事務方を経由して、当該報道機関との間において本件に関する情報のやりとりはなかったことを確認いたしました。

 現在、当該情報機関がどのようにして情報を得ることができたのかという点について、臆測に基づく報道である可能性も含めて、引き続き調査を行っているところでございます。

玉木委員 総裁、では、一つ具体的に伺いますが、内閣府、財務省、それぞれ漏れていないという報告をもらったということなんですが、日銀として独自に調べて言っているのか、大丈夫だから大丈夫ですよということを単に信じているのか。どちらですか。

黒田参考人 先ほど申し上げたとおり、政府関係者につきましては、財務省及び内閣府に調査協力を依頼いたしまして、事務方を経由して先ほど申し上げたような報告があったということでありまして、本件に関する情報のやりとりはなかったというようなことを確認したわけでございます。

玉木委員 大丈夫だと言われたからそれを信じているだけなんですね。

 私、事務方の方に聞いたら、どの範囲まで、例えば財務省なり内閣府なり幹部、どのレベルまで情報が行ったんですかと言ったら、それは言えませんと言うんですよ。そんなことも明らかにしないで調査したことになるんですかね。

 私は、これは日本銀行という日本の中央銀行の信頼にかかわる問題だということで、あえて何度も取り上げているんです。これをこのままうやむやにすることはないように、総裁、ぜひお願いします。

 そして、これは総理にもお願いしたいんですが、政府関係者も、財務省、内閣府、それぞれかかわっていますので、しっかりと調査をするように、財務大臣そして担当の石原大臣にも総理から指示をしていただきたい。きちんと日銀の調査に協力しろと総理からもぜひ指示を出していただきたいと思いますけれども、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 既に調査をしていると思いますが、しっかりと調査を行うように、何といっても、公務員たるもの、守秘義務をしっかりと守るように徹底していきたいと思います。

玉木委員 引き続きこれは明確な調査結果が出るまで聞き続けますので、ぜひ、総裁、しっかりとした調査をお願いします。我が国の中央銀行の信頼にかかわっている問題だということを深く強く認識いただきたいと思います。

 続いて、総裁にお伺いします。マイナス金利についてであります。

 マイナス金利については、総裁に聞けば、いいことばかりということかもしれませんが、どうもわかりにくいです。マイナス金利という名前自体、何かマイナスな感じがするじゃないですか。先ほども議論がありましたけれども、マインドに対してはすごく何か悪い影響を与えるような気がするんですね。

 一つだけ伺います。私、アベノミクス、今の経済政策、いろいろプラス面、マイナス面があると思いますが、一つの特徴は元本割れ経済を助長しているんじゃないかということです。

 普通、預金に国民の皆さんもお金を預けますよね。プラスの利子がつくことはあっても減ることはないですよね。もちろん、株式投資とか少しリスクの高い商品に投資をしたら減ったりしますけれども、およそ預金口座に預けていてふえることはあっても減ることはない、これがこれまでの常識でした。

 まず伺います。これは二、三の先生方が聞いていますが、マイナス金利の導入によって、個人口座はマイナスの金利がつくことはあり得ますか、総裁。

黒田参考人 もとより、金融機関の貸し出しあるいは預金の金利というものは、市場金利を参照しつつ各金融機関の経営判断で設定されるものでありますけれども、中央銀行が既にマイナス金利を採用している欧州諸国の例を見ましても、金融機関の個人向け預金の金利がマイナスになるとは考えておりません。

玉木委員 金利がマイナスになることは考えていませんということだったんですけれども、この前、可能性がない、ほぼないとか、幾つか総裁の言葉もよく読むと、ちょっと揺れとぶれがあるんですね。

 次に、ちょっと違った視点でお伺いいたします。

 金利にマイナスがつくことはなくても、私は、これから口座が実際にマイナスの収益になることはあり得る、もっと簡単に言うと、元本が減っていく可能性はあるんじゃないかということを指摘したいと思います。

 メガバンクもゆうちょ銀行も、先般、〇・〇三%から〇・〇二%に金利を引き下げました。あしたから実際にはマイナス金利が適用になるんですけれども、それを先取る形で金利を下げていますね。

 この前、日銀の幹部の皆さんも、さらにマイナス金利が拡大する余地はあるし、何かあればちゅうちょなく対応するということを総裁もおっしゃっています。ここで、極めて単純な例を描いてみました。

 これをごらんください。

 図の左、皆さん、百万円の預金を預けていると思ってください。そして、〇・〇一%の金利がつくということは、一年間に利息が百円つくということです。これは実は税金で二割引かれるので本当は八十円しか入ってこないんですが、シンプルにするために、百万円の預金を預けて、〇・〇一にさらに引き下がれば百円の利息がつくと思ってください。確かに預金が百円ふえている。少ないけれどもふえますね。

 ただ、今、日曜日に一回、例えば年金を引き出そうということで引き出したら、手数料は消費税込みで百八円かかるんです。そうすると、これを見ていただくとわかるんですが、差し引きすると元本が減るんですよ。

 これは極めて単純なケースを描いていますけれども、これが何をあらわしているかというと、預入預金額が低い人ほど相対的にマイナスになる確率が高まるということをあらわしています。

 このことについて伺います。

 マイナスの金利がつくことはないけれども、手数料やあるいは今後の口座管理手数料のあり方によっては口座としては実質マイナスになる可能性は否定できないと思いますけれども、総裁、いかがですか。

黒田参考人 欧州の例を見ましても、先ほど申し上げたように、個人向け預金の金利がマイナスになっているということはないようであります。

 手数料の話は、これは金融サービスの手数料の問題であって、預金金利の問題とは別問題であるというふうに考えます。

玉木委員 総裁、逃げますね。

 麻生大臣にお伺いします。

 マイナス金利の最大のマイナス点は、やはり金融機関の経営に悪影響を与える、このことは否定しないと思いますね。だからこそ、預金金利を速やかに引き下げていっているわけです。彼らにとってはコストになりますからね。

 多分、これからどこで稼いでいくかというときに、やはりフィービジネス、こういったところに銀行も生き残りのためには道を見つけざるを得ないと思っているんです。私は、このことは実際に起こり得る心配として今提案しているんですね。

 麻生金融担当大臣に聞きますけれども、今後、銀行がフィーをどうするのか、口座管理手数料をどうするのか、調査を始めておられますね。

麻生国務大臣 マイナス金利というのは、我々、過去七十年間でやったことがありません。もちろん、デフレによる不況というのもやったことはないんです。マイナス金利も初めて。

 初めてのことをやっておりますので、いろいろなことが起こるだろうということを予想しておかないかぬということで、我々としてはいろいろなことについて調査をさせていることは事実です。

玉木委員 調べているんですよ。それは当然ですよ。私が銀行を経営していたら、こんなマイナス金利になったら、どこかで収益を稼いで何とか経営を成り立たせていかないといけないから、フィービジネス、つまり手数料収入をできるだけ上げようとか、そういうビジネスモデルに転換するのは当然考えますよ。

 そうなると、特にこれはアメリカなんかでは当たり前ですけれども、麻生大臣もよく御存じだと思いますが、たくさん預けている人はそういう手数料がなかったり低いんですけれども、少額で預けている人はどんなに預けても、みんなにステートメント、例えば文書を送ったり、コストは一定ですから、少額あるいは比較的少ない預金を持っている人にはむしろ手数料を取るのが当たり前の世界であります。

 その当たり前の世界に日本の金融機関もなってきたときに、このような実質元本が目減りしていくことが今後起こり得る可能性があるので、そうすると何が起こるかというと、たんす預金ですよ。だって、こんなところに置いていたら、預けて減るんだったら、たんすに入れておいた方がいいですよ。

 そうなると、みんながお金を分散して手元に置くと、まとめてそれを必要なところに、資金ニーズのあるところに貸していくという金融仲介機能が落ちていくんです。そうなると、むしろ経済が収縮してデフレが進行するんじゃないか、こういうことを心配するわけであります。

 もう一つ、銀行株が下がっていることにまさにあらわれていますけれども、銀行の経営がきついんですね。

 一つ伺います。

 日銀もきついと思いますよ。私、ぜひ総裁に伺いたいんですけれども、まず物すごくシンプルな質問です。日本銀行は債務超過で倒産することはありますか。

黒田参考人 そうしたことは全く考えておりません。

 なお、昨年、量的・質的金融緩和を実行する中で、どうしても、バランスシートを拡大するときに利益が拡大し、縮小するときに縮小するという、変動が大きいものですから、それをならすための引当金の導入ということは財務大臣の許可を得てやりましたけれども、恒常的にバランスシートがマイナスになって中央銀行が倒産するというようなことは全くないと思っております。

玉木委員 あり得ないという話がありましたけれども、なぜあり得ないかを聞きたいんですが。

 一つ申し上げます。

 この前少し十年債はプラスになりましたけれども、十年債、十年の国債までマイナス金利がついているということは、皆さん、どういうことかわかりますか。

 つまり、簡単に言います。百円のものを百五円で買っているんです。何で百円の値段しかないものを百五円で買うかというと、近いうち百六円で売れるかもしれないからです。誰が買ってくれるか、そんな高いのを。日銀です。

 満期まで持てば必ず損が出る商品が今出回っているんです、国債市場に。八十兆円で量的緩和をずんずんやっていきますからね。実は、日銀は国債を買って、売れたらいいですよ、また高いときに。でも、いわゆるバイ・アンド・ホールドで、持っておかなきゃ量的緩和の意味がないでしょう。そうすると、明らかに満期まで持ち続けると損が立つ商品を今いっぱい買い込んでいるんです。長期国債、もう二百二十兆円です。

 総裁に伺います。

 今、日銀は、高く買って、わかりやすく言うと百円のものを百五円で買って満期まで行くと必ず損が立つ、そういう国債をいっぱい買っていますけれども、では、トータルの含み損が幾らで、今、日銀の資本金、いわば純資産は三兆円から四兆円だと思います、カバーし切れますか。

黒田参考人 日本銀行は各種の資産を持っておりますけれども、全体として現在のところいわゆる含み益をかなり抱えているということは事実です。

 ただ、長期国債につきましては、そのときそのときの時価で評価するということをしておりませんので、観念的な含み損を計算して公表するというようなことはいたしておりません。

玉木委員 なぜ公表しないんですかね。私はこれは公表をしっかりすべきだと思いますよ。

 これはぜひ委員長にお願いしたいんですが、今私が申し上げた量的・質的金融緩和という異次元のことを始めた以上、なぜ私がこういうことを言うかというと、麻生大臣、二十七年度補正で引き当てをふやしているんですよ、三千億か四千億。今までこんなことはしなかった。何でかというと、日銀自身がそのリスクをやはり認識しているからですよ。いわゆる税外収入として、安倍総理もおっしゃったように、補正でいっぱい税金が入ってきます。でも、税外収入だけ減額補正しているんですよ、引き当てを立てるから。それは、随分危ない状況になっているということを私は示唆していると思いますよ。

 ですから、委員長、日銀の二百二十兆、今はもっと超えているかもしれませんが、長期国債を保有しています。さっき言ったように、満期まで持てば必ず損が立つ、そういう金融商品、国債を大量に買い込んでいますからね。これは今どれぐらいの含み損があるのか、そして今の資本金でカバーできるかどうか。これをしっかりとこの委員会に提出いただきたいと思いますので、お取り計らいいただきたいと思います。

竹下委員長 黒田総裁、答えられますか。

黒田参考人 常に、いわゆる観念的でありますけれども評価損というのを示しているわけではございませんが、半期ごとにはその時々の保有有価証券の評価損益を示しております。国債について、最新時点ですと二十七年の九月末でございますけれども、評価益が五兆四千億円となっております。

 委員御指摘のように、マイナス金利の国債を買い入れますと、満期まで仮に持てばその分が損になるということは事実でありますけれども、現在持っております長期国債の大半はそういうものになっておりません。

 それからさらに、長期国債につきましては、これを今後どのように取り扱うかということは、バランスシートの問題も含めて、今後、出口の際に十分議論していく問題であろうというふうに思っております。

竹下委員長 玉木さん、今の答弁でよろしいですか、足りないですか。

玉木委員 今おっしゃったことをきちんとしたバックデータで出していただきたいと思います。

 今少し興味深かったのは、最後まで持ち切るようなことを考えていませんみたいなことをおっしゃったんですよ、出口の関係で。私、それはそれでまた問題だと思いますよ。だって、最後まできちんと持つということが原則なのではないかなと。

 きょうはもうここで終わります。総裁には資料をまず出していただいて、それをもとにまた質問したいと思います。

 次に、年金の話に移りたいと思いますが、総裁、もうここで結構です。理事長も。

竹下委員長 結構です。

玉木委員 年金について、株価の下落についてですね。

 GPIF、いわゆる皆さんの年金を集めて運用している百四十兆円ぐらいの大きな基金がありますけれども、この運用がやはり株の下落によって下がって大きな評価損を出しているんじゃないのか、こういうことが先ほど同僚議員の緒方委員からもありました。

 まず総理に伺いますが、このGPIF、年金を運用している基金でありますけれども、ここが予定した利率よりもリターンを出せない、それだけ運用益を出せなかったときには、年金が減額される可能性は法律上否定できませんね。(安倍内閣総理大臣「今、最後がちょっと聞こえなかった」と呼ぶ)

 もう一度言います。このGPIFで想定された運用益が出ない場合、年金が減額されることは法的に否定されませんね。

安倍内閣総理大臣 基本的に、年金につきましては、年金の積立金を運用しているわけでございますので、想定の利益が出ないということになってくればそれは当然支払いに影響してくるわけでありますが、ただ、基本的には非常に長いスパンで見るわけでございますので、その時々の損益が直ちに年金額に反映されるわけではない、こういうことでございます。

玉木委員 百年安心プランだと、これから定期的に保険料を上げていきますよね。ただ、ある一定以上は上がらなくしますから、保険料収入は一定でとまります。そのときに予定された積立金の収入が入らなければ、これは給付を減額するしかないと思うんです。ほかの何か手段があるんですか。あるならお答えください。

安倍内閣総理大臣 私が申し上げたのは、最初はそのとおりだったというふうに申し上げたんですが、しかしそれは非常に長期的なスパンでどちらにしろ見ていくわけでございますから、現在がどうだからそれが直ちに年金の給付に影響が出るということではもちろんないということを申し上げているわけであります。

玉木委員 今のことを聞いているのではありません。

 これはずっと長年にわたって、実はこれは、長いといっても、二十五年間の想定運用期間でやっているんです。一回どんとキャッシュアウトの時期にすごく払いが出て戻ってきて、二十五年ぐらいにピークになって、そこからまた緩やかに、百年間何とかもつという計算でやっていますね。だから、そんなに別に五十年も百年もという話じゃないんですね。

 その中において、今だけじゃなくて、つまり想定された利率が得られないときには、これは法律上別に保険料をそのまま上げるということになっていませんから、給付を減額するしかないんじゃないですか。もう一度明確にお答えください。

安倍内閣総理大臣 最初に申し上げましたように、これは給付と負担で成り立っているわけでございますから、負担の方については法定で決めて上限を決めている、その中において約五割の代替率を確保していくということを目標にモデルケースで我々は運用をしているわけでございますし、その観点からポートフォリオを構成しているところでございます。

 そこで、もちろんその中において、積立金も徐々に玉木委員が今おっしゃったように取り崩しもしていくわけでございますが、長いスパンの中で見て、給付にたえるという状況にない場合は当然給付において調整するしか道がないということだと存じます。

玉木委員 年金が削られる可能性があるんですよ。

 ある意味政府は正直に書いてあって、このねんきん定期便、皆さんのお宅にも行っているかもしれませんし、若い人はねんきんネットをネットで見ていますけれども、これは大体想定される、これぐらい老齢年金がもらえますよというのが出るんですが、そこにこう書いているんです。「毎年の経済の動向など種々の要因により変化します。あくまで参考としてください。」つまり、これまでの保険料納付額というのは確定するんですが、給付額というのはそれこそ株が落ちたら将来削られるかもしれないんですよ、今総理が答弁したように。

 お伺いします。

 先般、閣議決定で、内閣総理大臣安倍晋三名で質問主意書に対する回答がありましたけれども、株式に対する投資比率を一昨年の十月三十一日から変えていますね。約五〇%、株に年金のお金を入れることにしたんですが、そのことによって、信頼区間九五%で確率上想定される最大損失は二十一・五兆円というふうになっています。つまり、ぶれがすごく大きくなった。それに対して、これまでは、見直しをする前、債券で安定的にやられたときは最大損失が十・四兆円だったと思います。つまり、マイナス幅の振れ幅が倍になっているんですよね。

 私はやはり、しっかりと債券で安定的に運用していると底は抜けないんですけれども、株式に対する投資比率を高めたことによって底が抜ける確率が上がっているのではないのかと。将来この運用の見直しによって年金の減額が行われる可能性が強いというふうに今総理が御答弁いただいたので、これはしっかり、リスクにさらさないで、きっちりと国民の大事な年金のお金を安定運用していただくことを強くお願いしたい。

 あわせて、冒頭申し上げましたけれども、甘利元大臣の証人喚問、これはやっていただかないとこれからの国会審議にも大きな影響を与えますので、ぜひ、委員長、これは真剣にお取り計らいいただくことをお願い申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

竹下委員長 この際、山尾志桜里君から関連質疑の申し出があります。長妻君の持ち時間の範囲内でこれを許します。山尾志桜里君。

山尾委員 民主党の山尾志桜里です。

 この予算委員会で、テレビ番組の政治的公平性を時の政治権力が判断できるのか、議論になっています。時の政治権力が、あるテレビ局が政治的に公平でないと判断した場合は、電波停止をなし得る、つまり、テレビ局を事実上廃業に追い込むことができる、しかも、局の番組全体を見るのではなくて、個別の番組でもできる場合があり得る。こういった政府見解が、報道を萎縮させ、国民の知る権利を害し、憲法二十一条に違反しているのではないか、こういう深刻な問題が提起されています。

 きょうは、高市大臣にもお越しいただいています。高市大臣の見解についてはもちろん高市大臣にお聞きをしますが、総理の見解については総理にしか答えられませんので、先日この場で、安倍政権こそ言論の自由を大切にしていると胸を張った総理、ぜひ質問から逃げずにお答えをいただきたいとお願いします。

 まず、政府統一見解についてお尋ねをいたします。

 この政府統一見解を我々が求めたのは、一つの番組のみでも判断し得るのか否か。高市大臣は、一つの番組のみでも判断し得る場合がある、こういう見解を繰り返し述べておられます。総理は、あくまでこの場では、一つの番組ではなく、放送事業者の番組全体を見て判断する、こう述べるにとどまっておられました。

 そこで、この内閣不一致をどちらにそろえてくるのか、これがこの統一見解の肝でありました。総理の見識が問われたわけですが、あろうことか、高市大臣の見解にそろえてこられました。一つの番組のみでも、例えば一や二、こういった極端な場合においては、一般論として政治的に公平であることを確保しているとは認められないと。

 第一次安倍政権を含め、これまでどの政権においても、一つの番組でも判断し得るという強権的な拡大解釈を示した政権はありません。

 総理、なぜ解釈を変えたのですか。

安倍内閣総理大臣 放送番組は、放送事業者がみずからの責任において編集するものであり、放送事業者が自主的にそして自律的に放送法を遵守していただくものと理解をしております。

 放送法第四条の政治的に公平であることについては、従来から、番組全体を見て判断するとしてきたものであり、これについて何ら変更はありません。

 総務大臣の見解は、番組全体を見て判断するというこれまでの解釈を補充的に説明し、より明確にしたものであります。これは、政府統一見解で説明しているとおりであります。

 言論の自由を初め、表現の自由は、日本国憲法で保障された基本的人権の一つであるとともに、民主主義を担保するものであり、それを遵守すべきことは言うまでもございません。

山尾委員 総理、変わったものを変わっていないと言いくるめてはいけないと思いますよ。ここにあるように、一つの番組でも判断し得る、これが統一見解で示されたわけです。

 最初のきっかけは、去年の五月に参議院の委員会で自民党議員の質問に答えて高市大臣が、この一、二の例で、こういう場合には一つの番組でも判断し得ると初めて言われた。そして、去年の秋、市民団体の質問書に答える形で、それが高市ペーパーとして回答なされた。そして今回、この予算委員会で、政府統一見解として、この高市ペーパーは安倍内閣ペーパーになったわけです。

 変わっているじゃないですか。番組全体を見て判断するということと、一つの番組のみでも判断し得るということ、変わっているじゃないですか。無理を通せば道理が引っ込むでは私はいけないと思います。

 なぜ変わったのか、総理、もう一度お答えください。総理です、総理の見解です。

竹下委員長 ちょっと待ってください。まず、高市大臣にお答えをいただき、その後、総理に答えていただきます。

 高市総務大臣。

高市国務大臣 恐縮です。委員長から御指名をいただきましたので、答弁を申し上げます。

 統一見解で出させていただきましたが、放送法第四条の政治的に公平であるということにつきましては、従来から、番組全体を判断するとしてきたことで、この従来からの解釈については何ら変更ございません。

 番組全体を見て判断するとしましても、やはり番組全体は一つ一つの番組の集合体でございますので、一つ一つの番組を見なければ、また全体の判断もできません。

 その上で、個別具体的な事案においては、必要に応じて、放送事業者からの事実関係を含めた報告を踏まえ、放送法を所管する立場から番組全体を見て必要な対応をする、これは当然のことでございます。

 これまで、放送事業者に対して放送法第四条の政治的公平に違反したということをもって行政指導が行われた事例はないです。

 一方で、第四条との規定の関係において、放送番組の編集上の重大な過失があったことについて、一つの番組に対しても行政指導が行われたことはございます。

 これはどういった場合かといいますと、放送番組が特定の党だけの広報として受け入れられる可能性が高く、政治的公平であることとの関係において、放送事業者自身が放送番組の適正な編集を図る上で配慮に欠けていたと認め、その旨の報告が総務省にあり、過失や遺漏があったと認められた場合でございます。選挙の投票日直前に特集番組が組まれ、そして投票日までに別の見解を示す特集番組の企画がないなど、こういった極端なケースでございます。

 そのようにお答えを申し上げます。

安倍内閣総理大臣 ただいま高市大臣が答弁したとおりでございまして、繰り返しになりますが、政府統一見解で説明したとおり、総務大臣の見解は、番組全体を見て判断するというこれまでの解釈を補充的に説明したわけでありまして、より明確にしたものである、このように思います。

 その中身につきましては、番組全体は一つ一つの番組の集合体であり、番組全体を見て判断する際に一つ一つの番組を見て全体を判断することとなるのは当然のことであり、ただいま、その中におきまして、今までの例としてわかりやすく総務大臣から説明があったのではないか、このように思います。

山尾委員 番組全体を見るときに一つ一つの番組も見るということと、一つの番組だけでも判断をするということは、全く別のことであります。

 一切説明になっていない答弁を二人の大臣が時間を浪費するために使うのはやめていただきたいと思います。どう考えても、全体を見るということと一つの番組のみでも判断するということは違うんです。補充ではなくて大幅な拡大解釈で、これは憲法の二十一条、表現の自由との抵触度合いをさらに強める大幅な憲法解釈だから、私は尋ねております。

 でも、今総理はおっしゃいました、今高市大臣がおっしゃったことはそのとおりだと。つまり、安倍総理も、一つの番組だけでも政治的公平性が判断される場合がある、こういうふうにお認めになった。ついに安倍政権全体としてこういった大幅な拡大解釈に踏み込んだ。私は、大変なことだと思います。

 次に、総理にお尋ねします。

 高市大臣はこの予算委員会で、玉木議員とのやりとりの中で、憲法九条改正に反対する政治的見解を支持する内容を相当の期間にわたり繰り返して放送した場合にも、極めて限定的な状況のみという留保をつけながら、電波停止の可能性を否定しませんでした。

 高市大臣の見解はわかりました。総理も同じ見解ですか。総理の認識を求めます。

安倍内閣総理大臣 高市大臣は、放送法にのっとって、いわばどういう状況になればこの放送法が適用される、こういう一般論的な話をされたんだろう、こう思うわけであります。

 当然、条文があるわけでありますから、その条文が適用される事態が起こればそういう状況になる、そういう解説をなされたわけでありまして、いわばそういう条文があるということについての解説であろう、このように思います。

山尾委員 総理も、憲法九条改正に反対する政治的見解が相当の期間繰り返し報道された場合に、この電波停止の適用があることをお認めになられた。

 それでは、もう一つお答えください。

 きょうも議論されておりますが、アベノミクス、この効果に肯定的な見解と否定的な見解と、これはいわば国論が二分されております。実際、総理は、おととしのNEWS23の中で、このアベノミクスの効果に対して紹介された視聴者の声を聞いて、全然声が反映されていない、おかしいじゃないかと批判されました。

 このてんまつを我が党の大串議員が質問しましたら、総理はこうおっしゃった。例えば、この視聴者の声というのはどうなんだということは、私にだってそれは当然、選挙が近い中において恣意的な攻撃を排除しなければいけませんから、私はこう言うとおっしゃいました。特定の番組が行った編集について、恣意的な攻撃と一国の総理がこの予算委員会の場でおっしゃって、私はびっくりいたしました。恣意的だと。

 では、この番組は、政治的公平性は認められるんでしょうか。総理、お答えください。

安倍内閣総理大臣 先ほどの総務大臣に対する質問ですが、総務大臣は、例えば、憲法九条改正に賛成であろうと反対であろうと、別にこれは、憲法改正に反対だからということではなくて、憲法改正に反対だろうが賛成だろうが、自民党はすばらしいという主張であろうがすばらしくないという主張であろうが、これは、それがずっと片方だけが延々と放送されるということについてこのように高市大臣が述べているということであります。

 かつて注意された、例として挙げられたのは恐らく、一つの番組だけで、これはたしか、行政指導があったのは、自民党のやっていることについていいということをやった番組が実は指導されているんですよ、これは自民党政権下にあって。ということは申し上げておきたい。

 ですから、余り恣意的に話を曲げないようにしていただきたい、このように思う次第でございます。

 それと、テレビ番組に出演していて、私は当然、自民党総裁として呼ばれているわけであります。私も呼ばれれば、他の党の人たちも呼ばれる。その中にあっては、党として、この編集の仕方はどうなんですかということは当然言う。これは、言えば、いや、そんなことは安倍さん、ありませんよ、こうこうこうですよと反論すればそれで済む話じゃないですか。

 私は、当該番組に大分昔に出たことはありますが、そのときも、拉致問題について、大きな大会をやってもおたくの番組は全然取り上げませんでしたねということを言って、当時の、筑紫さんだったかな、全く黙り込んでしまったこともございました。私は、必ずしもテレビ番組の制作方向、こういう番組をつくりたいという方向に常に協力するわけではありません。私の考え方を勇気を持って申し上げますよ。

 テレビ局に対して物を言うというのは結構大変なことなんですよ。私は、それを言ったがために、当該番組から、かつて総裁選挙のときに、七三一部隊の石井中将と顔をリンクさせられて、イメージ操作されたこともあったんですよ。そういうことすらあったんですよ。これは、私にとっては相当のダメージだった。それは、私が議論をしたからなんですよ。議論をすればそういうこともあるんですよ。そういうこともあるということは、どちらの方が大きな権力を持っているか。

 私は別に総理大臣として、裏において、権力を行使するときにこの番組は問題があるからといって行政組織に指示したんじゃないんですよ。この番組に一出演者として出ていて議論をしているわけであります。そういう議論がおかしいということ自体が私は、全く間違っているな、このように思います。

山尾委員 安倍総理がそういった答弁をされるのは、自分自身が内閣総理大臣であり、そしてまた政権与党のトップであるということ、自分がどういう力を持っているのか、政治権力とは何なのかということに全く無自覚であるから、そういう答弁ができるんだと思いますよ。

 もし、自覚しておられてそういう答弁をしているのなら、総理は、憲法、特に二十一条、表現の自由について全く理解が足りないのではないかと思いますので、これに関して質問をさせていただきたいと思います。

 総理、そもそも、時の政治権力がテレビ局の政治的公平性の判断権者となり、電波停止までできる、この制度解釈自体が検閲に当たり、許されないのではないか、こういう懸念の声もあります。

 総理、この電波停止ができるということは検閲に当たりますか、当たりませんか。

高市国務大臣 放送法及び電波法を所管する立場から申し上げます。

 山尾委員の問題意識、日本国憲法と放送法と電波法の関係についてかと思いますが、一言で言いまして、事前にする検閲に当たるということではございません。

 日本国憲法第二十一条は、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」と規定しています。一方で、憲法第十二条は、この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民はこれを濫用してはならないということ、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負うと規定いたしております。第十三条でもそうでございます。

 放送法は、民主党政権だった平成二十二年に改正されたものでございます。当然、憲法の規定に沿った内容となっていると私も考えております。

 放送法第一条ですが、放送法の目的として、「放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることを目的とする。」として、「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保する」としています。また、「放送に携わる者の職責を明らかにすることによつて、放送が健全な民主主義の発達に資するようにする」と規定しています。すなわち、放送事業者がみずからの責任において編集する放送番組は、放送事業者が自主的、自律的に放送法を遵守していただかなければなりません。

 その上で、放送法第四条は、「放送事業者は、国内放送及び内外放送の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。」としております。「公安及び善良な風俗を害しないこと。」「政治的に公平であること。」「報道は事実をまげないですること。」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。」としております。

 そして、放送法第四条違反につきましては、ソフト事業者については放送法百七十四条に、そしてソフトとハードの両方を備える特定地上基幹放送事業者については、放送法違反をした場合に、電波法第七十六条第一項において……(発言する者あり)

竹下委員長 手短にお願いします。

高市国務大臣 総務大臣は、この法律、放送法に違反した場合に、三カ月以内の期間を定めて無線局の運用の停止を命じることができる旨を定めております。

 この電波法第七十六条の運用につきましては、去る二月九日の予算委員会でも答弁させていただきましたとおり、極めて限定的な状況のみに行うということで、極めて慎重な配慮のもと運用すべきと従来から申し上げております。(山尾委員「質疑妨害しないでください。委員長が注意したんだから」と呼ぶ)

竹下委員長 総務大臣、手短にお願いします。

高市国務大臣 そして、民主党政権でありました平成二十二年十一月二十六日、参議院総務委員会におきまして平岡副大臣からも、放送法第四条が法規範性を有すること、そして、番組準則に違反した場合には、総務大臣が業務停止命令や運用停止命令ができること、運用に当たっての考え方、非常にこれは慎重に対応されなきゃならないという……(山尾委員「委員長、委員長の注意が無視されているじゃないですか」と呼ぶ)

竹下委員長 総務大臣、手短にお願いします。

高市国務大臣 去る二月九日に私が述べた内容についても、民主党政権下でも同じように答弁されているということを申し上げます。

山尾委員 委員長が三回注意されて、私が尋ねてもいないことを延々と述べられて、それに与党が大拍手でこの質疑を遮るというこの運営、委員長、どうなっているんですか。質疑妨害もいいかげんにしてください。

 私は、憲法の二十一条、表現の自由、これに対する総理の認識を問うているんです。総理がちゃんと憲法二十一条をわかっているかどうか、国民の皆さんの前で説明をしていただきたいと思っているんです。

 尋ねます。

 総理、この前、大串議員に、表現の自由の優越的地位って何ですかと尋ねられました。そのとき総理の答弁は、表現の自由は最も大切な権利であり、民主主義を担保するものであり、自由のあかしという、かみ合わない謎の答弁をされました。法律の話をしていて自由のあかしという言葉を私は聞いたことがありません。

 もう一度尋ねます。優越的地位というのはどういう意味ですか。

 私が聞きたいのは、総理が知らなかったからごまかしたのか、知っていても勘違いしたのか、知りたいんです。どっちですか。表現の自由の優越的地位って何ですか、総理。言論の自由を最も大切にする安倍政権、何ですか。

 事務方がどんどんどんどん後ろから出てくるのはやめてください。

安倍内閣総理大臣 これは、いわば法的に正確にお答えをすれば、経済的自由より精神的自由は優越するという意味において、この表現の自由が重視をされている、こういうことでございます。

山尾委員 今、事務方の方から教わったんだと思います。

 なぜ精神的自由は経済的自由に優越するのですか。優越的地位だということは何をもたらすのですか。

安倍内閣総理大臣 いわば表現の自由が優越的であるということについては、これはまさに、経済的な自由よりも精神的な自由が優越をされるということであり、いわば表現の自由が優越をしているということでございますが、いずれにせよ、そうしたことを今この予算委員会で私にクイズのように聞くということ自体が意味がないじゃないですか。

 それと、もう一言言わせていただくと、先ほど、電波について、とめるということについては、これは民主党政権、菅政権において、当時の平岡副大臣が全く同じ答弁をしているんですよ。その同じ答弁をしているものを、それを高市大臣が答弁したからといって、それがおかしいと言うことについては、これは間違っているのではないか、このように思うわけでございます。

山尾委員 総理、ふだんは民主党政権よりよくなったと自慢して、困ったときは民主党政権でもそうだったと都合よく使い分けるのは、いいかげんやめてもらえませんか。

 ちなみに、民主党政権では、個別の番組でも政治的公平性を判断し得るなどという解釈はしたことがありませんし、放送法四条に基づく行政指導もしたことがございません。明らかに、安倍政権と比べて、人権に対して謙虚に、謙抑的に、穏やかに向き合ってきました。

 総理、もう一度お伺いします。

 精神的自由が経済的自由より優越される理由、総理は、優越されるから優越されるんだと今おっしゃいました。これは理由になっておりません。これがわからないと大変心配です。もう一度お答えください。どうぞ。

安倍内閣総理大臣 内心の自由、これは、いわば思想、考え方の自由を我々は持っているわけでございます。

山尾委員 総理は知らないんですね、なぜ内心の自由やそれを発露する表現の自由が経済的自由よりも優越的地位にあるのか。憲法の最初に習う基本のキです。

 経済的自由は大変重要な権利ですけれども、国がおかしいことをすれば、選挙を通じてこれは直すことができるんです。でも、精神的自由、特に内心の自由は、そもそも選挙の前提となる国民の知る権利が阻害されるから、選挙で直すことができないから、優越的な地位にある。これが憲法で最初に習うことです。それも知らずに、言論の自由を最も大切にする安倍政権だと胸を張るのはやめていただきたいというふうに思います。

 次の質問に移ります。

 総理、電波停止処分が仮に、万が一なされたときに、対象となったテレビ局が裁判所にその執行停止を申し立てることが考えられます。裁判所もそれを認めた場合、内閣総理大臣の異議の制度を利用してこの執行停止をストップさせることはあり得ますか。

高市国務大臣 憲法三十二条には、「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」と規定されております。

 内閣総理大臣の異議の制度については、行政事件訴訟法「第二十五条第二項の申立てがあつた場合には、内閣総理大臣は、裁判所に対し、異議を述べることができる。」と規定されております。

 これはまた放送法と絡めての御質問かと思いますが、放送法第四条に関しましては、放送番組は放送事業者がみずからの責任において編集するものであり、自主的、自律的に放送法を遵守していただくものと理解しております。

 少し御質問の趣旨が、これらの憲法、そして法律の規定との関係性について仮定の質問でございますので、なかなかお答えは難しいんですが、表現の自由というのは、日本国憲法で保障された基本的人権にのっとった民主主義を担保するものであり、それを尊重すべきことは言うまでもございません。

安倍内閣総理大臣 先ほどいろいろと言っておられましたが、私は、言論の自由、また表現の自由は、日本国憲法で保障された基本的人権の一つであるとともに、民主主義を担保するものである、こう既にお答えを先般しているわけでございまして、不毛なやりとりであったのかな、こう思うわけでありますが、いずれにいたしましても、総務大臣が答弁をいたしましたように、仮定の質問についてはお答えできないということでございます。

山尾委員 総理にもう一度お尋ねします。

 法制度として聞いております。

 総務大臣が、これは政治的公平に欠ける、電波を停止せよと言った。テレビ局が、それはおかしいと裁判所に訴えた。裁判所が、さすがに電波を停止すると実際潰れちゃうから、取り返しがつかないから、ちょっと一旦待ちなさいよと裁判所が言う。それに対して、法制度上、この異議の制度を用いて、いや、裁判所のその待ったはだめだ、総務大臣が言ったとおり、処分続行せよ、電波を停止せよ、こういうことはできるんですか。

 総理にお伺いします。

高市国務大臣 この第二十七条でございますけれども、異議の理由というものを内閣総理大臣はちゃんと示さなければなりません。これは、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれのある事情を示すということでございます。そして、内閣総理大臣は、やむを得ない場合でなければ異議を述べてはならず、また、異議を述べたときには、次の常会において国会にこれを報告しなければならないということでございます。

安倍内閣総理大臣 憲法三十二条には、「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」と規定されています。

 内閣総理大臣の異議の制度については、行政事件訴訟法「第二十五条第二項の申立てがあつた場合には、内閣総理大臣は、裁判所に対し、異議を述べることができる。」と規定されています。

 放送法第四条に関しては、放送番組は放送事業者がみずからの責任において編集するものであり、放送事業者が自主的、自律的に放送法を遵守していただくものと理解をしております。(山尾委員「委員長」と呼ぶ)もうちょっと待ってください。

 これらの憲法、法律の規定の関係については、御質問の趣旨がちょっとよく明らかではございませんが、具体的にこれら相互の関係が問題となるような状況が生じているわけではないことから、お答えすることは差し控えたい、このように思います。

 表現の自由は、日本国憲法で保障された基本的人権の一つであるとともに、民主主義を担保するものであり、それを尊重すべきことであることは言うまでもないということでございます。

山尾委員 高市大臣の答弁と総理の答弁は違いますね。高市大臣は、やむを得ないと総理が判断した場合にはこの制度は使う場合がある、こういう趣旨の答弁でした。総理は、これについては答えられないと言う。

 時間もありませんので、これはしっかりと統一見解を出していただきたいと思いますが、委員長、よろしいですか。(発言する者あり)

 委員長、時間がありません。委員長、よろしいですか。

高市国務大臣 済みません。

 やむを得ない場合には使うというんじゃなくて、先ほど申し上げたのは、内閣総理大臣は、やむを得ない場合でなければ異議を述べてはならずと申し上げました。

山尾委員 総理、内閣総理大臣の異議の制度なんですよ。御自身が、内閣総理大臣としてこの制度を使う余地があり得るのかどうか、こういう質問をしていますが、高市大臣が出てきて長々と答弁される。

 もう一つお伺いします。自民党改憲草案。

 日本国憲法第二十一条は、一項でこれを保障しています。自民党の二項を見てください。この保障の規定にかかわらず、「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。」

 総理、改憲草案で二項をつけ加える理由は何ですか。総理は、今の憲法二十一条のどこに問題があり、二項の制約条項をつけ加えることでどうやってその問題が解決されると考えて、これを自民党総裁としてお示ししているんですか、お答えください。

安倍内閣総理大臣 私は、ここに内閣総理大臣として立っておりますので、自民党の個々の草案について一々お答えすることは基本的には差し控えたいと思います。

 これは、本来、まさに憲法審査会において各党各会派が議論するものであり、かつ、我々が閣議決定して出す事柄でもないわけでございまして、まさに国会がこの憲法に対してどういう見識を示しているかを問われているわけでございますので、まずは審査会においてしっかりと議論していただきたい。

 このことを申し上げた上で申し上げれば、御指摘の点については、表現の自由を制限できる範囲を厳しく限定し、禁止する対象を、公益及び公の秩序を害することを目的とした行動とそれを目的とした結社をすることに限っており、この規定をもって、公益や公の秩序を害する直接的な行動及びそれを目的とした結社以外の表現の自由が制限されるわけではありません。

 草案において、基本的人権の一つである表現の自由については最大限尊重されるべきものと考えていることは、現行憲法と何ら変わりはないわけであります。

 いずれにせよ、憲法改正には国民の理解が必要不可欠であり、具体的な改正の内容については、国会や国民的な議論と理解の深まりの中でおのずと定まってくるものと考えております。

 我が党の草案は谷垣総裁時代につくられたものであり、我が党でも議論したものでございます。

 いずれにせよ、衆議院と参議院、それぞれが発議して三分の二を得て初めて国民投票に付されるわけでございますが、同時に、先ほど申し上げましたように、私が内閣総理大臣として閣議決定して出すものではございませんから、一々この場において逐条的に議論するのは、予算委員会の本来の目的とは少し違うのではないかという議論も国民の中には強くあるわけでもございますので、この場ではやらずに、憲法審査会においてしっかりと建設的な議論をしていただきたい。また、民主党側にももし憲法改正草案があればお示しをいただければと思います。

山尾委員 もし総理が本当に表現の自由の最大限の保障という意味をよく考えていただくなら、この二項は要らないじゃないですか。一項でせっかく、表現の自由は保障すると。それに続いて二項で、これを制約すると。何のためにこの二項があるんですか。

 私は今、もし今の二十一条で具体的に解決できない問題があるならそれを言い、それが二項によって、この自民党の恐ろしい二項の制約条項によってどうやって解決されるのかということが言えるならそれを言ってくださいと言いましたが、その具体的な話はございませんでした。

 最後に、報道の自由度ランキングを御紹介して終わりたいと思います。

 自民党時代、報道の自由は、四十二位、三十七位、五十一位、三十七位、二十九位。そして、民主党政権になって、メディアに対して大変オープンになり、十一位まで上がりました。現在の安倍政権は六十一位、最悪のランキングです。憲法と人権に関する総理の認識を聞くと、ある意味当然の結果ではないかと私は思いました。

 ぜひ、総理、もう一度憲法の趣旨をしっかり考えていただいて、本当の意味で豊かではつらつとした議論をしていただきたいと思います。

 以上です。

竹下委員長 この際、高井崇志君から関連質疑の申し出があります。長妻君の持ち時間の範囲内でこれを許します。高井崇志君。

高井委員 岡山から参りました、維新の党の高井でございます。

 総理、今の質疑を後ろで聞いていましたけれども、きょうは集中審議です。一般質疑では我々は大臣とさんざん議論をして、そして総理からきょうは聞きたいということで限られた時間の中でやっているわけですから、やはり総理がしっかり答えていただかないと。

 この間、この委員会のやじに答える形で総理が、いや、私は大臣に引き延ばせというような指示は出していません、聞かれてもいないやじに対してそうお答えになりましたけれども、でも、今テレビを見ていらっしゃる方は、今の高市大臣のあの長い答弁を見て明らかに異様なものを感じたと思います。総理がそうやって指示を出しているんじゃないかと疑われるような。そういうことを感じたと思いますから、ぜひ総理自身が御答弁をいただきたいと思います。

 それでは、質問に入ります。我が党の松野代表そして今井幹事長からもお聞きをしております議員定数の削減についてお尋ねをいたします。

 今フリップを出しておりますけれども、ちょうど三年三カ月前なんです、二〇一二年の十一月十四日の党首討論。あのとき、私も国会であの討論を見ておりました。まさに本当に突然、野田総理が、定数削減の御決断をいただくならばあさってに解散してもいい、そう言いました。私、見ておりましたけれども、安倍総理も相当戸惑っておられました。しかし、いろいろなやりとりがありましたけれども、最後には、来年の通常国会において定数削減と選挙制度の改革を行っていく、約束しますよとはっきり答弁をされているわけです。

 しかし、私は見ていて思いました、本当に自民党はこれをのむんだろうかと。約束できるんだろうかと正直思いました。あのとき、総理も戸惑っておられましたから。

 しかし、自民党は緊急幹部会合を開いて、その後、記者団に対して総理は、野田総理の提案に全面的に協力すると。そして、当時の石破幹事長は、我が党として首相の発言を誠実に受けとめ協力する方針を決定したと。さらにその後、解散の十六日には、きょう持ってきましたけれども、三党の国対委員長の合意で何と書いてあるかというと、衆議院議員の定数削減については次期通常国会終了までに結論を得た上で必要な法改正を行うものとする。はっきり三党で、一三年中、翌年にやると約束しているわけです。

 ところが、その間、どういう経過だったか。二〇一三年どころか、二〇一四年になっても一向に実現していない。

 確かに、総理は各党各会派で議論してくださいとずっと言っています。しかし、それではまとまらないから、当時の伊吹衆議院議長が二〇一四年の九月に、衆議院選挙制度に関する調査会、第三者機関を設置した。しかし、その設置した二カ月後に総理は衆議院を解散しています。書いていませんけれども、伊吹議長はこの調査会のメンバーに謝っています。

 それで、その次、二〇一五年に入って、十七回にわたって検討を重ねて、ようやく本年の一月十四日に答申が出ました。安倍総理が約束してから三年以上たって出た結論。しかも、この間、何度も安倍総理は、答申を尊重する、そういうふうにお答えしています。しかし、加えて言えば、自民党の二〇一四年の衆議院選挙の公約でも答申を尊重するとはっきり書いているんです。

 ところが、今回の自民党は定数削減を先送りするという報道でした。さすがに総理も、それでは国会には立っていられないとおっしゃったということで再検討を指示した。しかし、再検討した結果出てきたものは、定数削減は二〇二〇年の国勢調査を踏まえる。二〇二〇年の国勢調査を踏まえて、その後法律をつくったりしたら、早くても二〇二二年ですよ、東京オリンピックが終わって二年もたった。そんな、約束してから十年もたった後に実現する、これで本当に約束を守ったと、総理、言えるんですか。

安倍内閣総理大臣 いろいろ言われましたが、最初に、大臣に答弁させるのはおかしいということを言われたんですが、大臣はそれぞれの所管の責任を持って担当しているわけでありますから、当然、大臣が一義的に答えるというのは当たり前だと思いますし、今までも、まだお若いから御承知でないかもしれませんけれども、基本的にはこの予算委員会の場というのは大臣も出てきて所管のことについてはお答えをする、大きなこと、大きな方針については私が答える、これが予算委員会の本来のあり方だということはお答えをさせていただきたいと思います。

 そして、先日、衆議院選挙制度に関する調査会の答申が取りまとめられたわけでありまして、大島衆議院議長から、各党の御理解を得て、この国会において結論を得るべく最大限努力するとの意向が示されたところでございます。

 経緯については大体おっしゃったとおりなんですが、しかし、私と野田さんとの議論においてはたしかこうも申し上げているんですね。

 少数政党もあるんだから、私と野田さんがここで話をして……(発言する者あり)ちょっと済みません、皆さん、静かに聞いてくださいよ。静かに聞いていただけますか。よろしいですか。そこで、まさにそういう民主主義の土俵をつくっていく上においては、少数の政党との関係もあるからいわば各党各会派が議論していかなければならないということを私は申し上げた上において、我が党はしっかりとやりますよと。そして、〇増五減についてはまさに自民党政権でしっかりと実行したのでございます。このことをはっきりと申し上げておきたい、そう考えております。

 そしてまた、参議院におきましても定数の是正も行っているわけであります。合区というのは大変難しい判断ではありましたが、そういう判断も行い、定数の是正も行っている。そして今回、答申が出た。これはまさに各党各会派が議論してもなかなか結論を得ることができなかったので第三者委員会に任せ、そして私はそこから出た結論については受け入れるという話をしたところでございます。

 各党各会派がこの答申を尊重して、選挙制度改革の実現に向けて真摯に議論を行い、早期に結論を得ることによって国民の負託にしっかりと応えていくべき、こう考えているわけでありまして、自民党においてもこの答申を尊重していくという方向で議論が進められているところでございます。

 今後、各党各会派が取りまとめられた意見を踏まえ、重い課題についてはちゃんと議論をし、結果として法案が出され、大島議長が発言されているように、今国会において結論が得られることを期待しているところでございます。

高井委員 総理、十年先送り、これで約束を守ったということになるんですか。

 先日の二月四日の予算委員会で、我が党の松野代表の質問に対して総理はこう答えていらっしゃいます。松野代表は、たった十人ぐらいの国会議員を切るような話ですよと定数削減のことについて問いただしているのに対して、しっかりと次の選挙、行われる選挙においてそれがちゃんと反映をされていくことも含めて、それが大切な点ですよというふうにお答えになっている。

 この間、二月十日、今井幹事長の質問にかなり苦しく答弁をされていました。議事録を見ながら、含めてという言葉が入っていますからと。どうして含めてが入ると、この次の選挙でやらなくてもいい、十年先にやってもいいということになるんでしょうか。定数削減についてどうなのかという松野代表の質問に対して明確にこう答弁をされている。議事録にそう残っています。

 では、この答弁はうそなんですか。訂正されるんですか。どちらですか。

安倍内閣総理大臣 これはまさに私が答弁したとおりでありまして、しっかりと次に行われる選挙において反映させていくことも含めて結果を出していきたい、つまり、こうしたことも含めて議論をしていただきたいということでございます。私が独裁者のように我が党の議論を全て取りまとめることはできないわけでありまして、一つの考え方として、それも含めて議論をしてください、こういうことでございます。

高井委員 含めての後に議論してという言葉はないじゃないですか。含めて議論してという意味なんですか。そういう意味にはとれませんよ、この答弁を見て。議事録をずっと私も何度も何度も読み返しましたけれども、そういうふうには読めませんよ。

 総理、十年先送り、これでいいんですか。総理も了承するんですね。二〇二〇年の国勢調査を踏まえて、恐らく最短でも二〇二二年、総理が約束してから十年後にようやく議員定数が。しかも、たった十ですよ。たった十。当時の、あのときの総理は、一割削減、しかも六年後には三割削減、そういう公約を掲げていた。それが途中で三十削減になりました。しかし、それでも三十じゃないですか。

 たった十なのに、それを二〇二二年まで先送りとすることを総理は了承したのか。はっきりお答えください。

安倍内閣総理大臣 先ほど来お答えをしているとおりでありまして、まさにこれもその案も含めて、次の選挙から反映させるということも含めて議論してもらいたい。これは普通、次の選挙から反映させろと言えば、それは来年の選挙から反映させるということに決まりですよ。しかし、それも含めて考えてくれと言えば、これは普通、それも含めてと考えるに決まっているじゃないですか。

 と同時に……(発言する者あり)済みません、少しは民主党の皆さん、いつも民主党はうるさ過ぎるんですよ。皆さんにはたっぷり質問の時間を渡しているんですから、少し静かにしていただかないと、私も答弁が非常にやりにくいんですよね。よろしいでしょうか。もうよろしいですか。

 そこで、自民党としては三十という案を出しました。しかし、三十という案を出したけれども、これはどの党も賛成しなかったじゃないですか。我々は確かに与党として過半数を持っていましたが、私が再三申し上げているように、こうした民主主義の土俵をつくっていく上においては、与党が強引に決めてはならないということで、三十という案を出したけれども、皆さんの党も含めて全員が、皆さんの党はどこだったんだっけ、賛成していただければ、それは直ちに通ったわけでありますよ。しかし、残念ながら賛成していただけなかったから、これは第三者委員会になったわけであります。

 そして同時に、第三者委員会の中における結論としては、これをよく読んでいただければ、有識者の皆さんの考え方としては、一人当たりの有権者の数は決して少ないとは言えないと自分たちは考えるという結論になっているわけであります。ヨーロッパに比べれば大体日本の方が倍以上、二・五倍ぐらいの有権者の数があるわけでございまして、この有識者の皆さんの結論としては、いわば定数削減をする必要はないという結論にもなっているわけであります。同時に、党と国民の約束であり、十という一つの考え方を示されたということであります。私が申し上げたのは、まさにこの有識者の皆さんの意見を尊重するということでございます。

 そこで、これから国会において御議論をいただきたい。これは私一人が独裁者のように決めることではなくて、国会においてまさに各党各会派が議論をしていただきたい、こういうことで、全ての党がしっかりと議論をしていただきたい、こう思う次第でございます。

 しかし、私が約束してここまで来たのは事実であります。約束して、そして最初は各党各会派が全然一致しなかったわけであります、ですから第三者委員会を議長のもとにつくってここまで来たわけでございます。

 例えば、一つ決まったことは、五年ごとの国調において、期限をまたがずに一つ一つの選挙区の区割りを変えて、憲法において……(高井委員「そんなの大した話じゃない」と呼ぶ)これは大した話じゃないと言ったけれども、大した話ですよ。違憲判決が出ているんですから、この違憲状態を直ちに変えていくということであります。もう一つは、十年置きの国調において、アダムズ方式という考え方を示して、期限をまたいでやっていくということ、それと定数削減、この三つの要素であります。この三つの要素をしっかりと踏まえて議論していただきたい、このように思います。

    〔委員長退席、菅原委員長代理着席〕

高井委員 今、アダムズ方式の話も言われましたけれども、では、アダムズ方式はやるんですね。自民党の細田選挙制度統括本部長は、アダムズ方式は血の通わない制度だとおっしゃった、そして方針の中には明記されなかったと言っていますけれども、私はこれは本当に、諮問しておいて失礼な言い方だと思います。

 これは安倍総理も同じ考えなんですか。

安倍内閣総理大臣 まさにこれから議論をするわけでございまして、私と細田さんが同じ考えということではもちろんありません。これは基本的には党の方に、今は私は総理大臣という立場でありますから、お任せをしているわけでございます。細田さんと我が党の議員はみんな同じではありません。それぞれいろいろな意見を持っているわけでございまして、その中でしっかりと各党とも集約をさせていかなければいけませんし、また与党において、自民党と公明党で議論をしていく。

 まさに議論が始まったばかりでありまして、議論が始まったばかりにおいて委員が私に全てこの場で決めろと言われても、それはいわば民主主義の土俵を決めるわけでありますから、まさにこれからしっかりと議論していただきたい。その上において、もう一度申し上げますが、この第三者委員会の答申は尊重していくということは当然のことであろう、このように考えております。

高井委員 その答申を尊重するとおっしゃっている中身が、今の自民党は全く、私から見たら本当に、定数削減と一票の格差是正、その両方とも、アダムズ方式も採用しないとなったら、定数削減は二〇二二年まで先送り、そして格差の是正も。今度アダムズ方式も入れないというんだったら、では一体何を尊重しているのか。

 これから議論だとおっしゃいますけれども、さんざん議論して、それでまとまらないから答申を受けて、法律にして国会で議論するのはいいですけれども、まず自民党の中で、与党の第一党の中でそれをどうするのかということは、一体いつまでかかって決めるんですか。これから議論するとおっしゃいますけれども、また一年も二年もやるんですか。

安倍内閣総理大臣 これは今まさに党に任せておりますので、私がいつまでということは申し上げることはできません。まさに党においてしっかりとした議論をする、そして与党において議論し、また各党各会派で議論をしていくことであります。

 まだ我々が自民党として法案を出しているわけではありませんから、まだ決めつけないでいただきたいと思います。しっかりと国民から御理解をいただけるような案を出すべく自民党においても作業を加速させていく、このように考えております。

高井委員 ちなみに、連立を組む公明党も、やはり二〇二〇年国勢調査というのはおかしいと。十三日の報道では、二〇一〇年の国勢調査をもとに定数削減の独自案の検討に入った、そういう報道がございますので、いつまで議論するのかということは、さすがにもうこれだけ、三年三カ月たっているわけですから、ここでやはり総理が。

 私はやはり、今テレビを見ていて本当に多くの国民の皆さんは失望されているんじゃないかと思います。総理のリーダーシップが全く期待できない。自分たちの身を切る改革は何もせずに消費税の増税だけを押しつける。だったら、もし二〇二二年まで先送りするのなら、消費税だって同じように先送りしないと筋が通らないんじゃないですか。

 私は、二〇一二年の解散したとき国会におりました。しかし、あの選挙で落選しました。だけれども、多くのあのとき落選した議員は、定数削減をやるのなら、これは国民の皆さんとの約束だから、消費税増税のための約束だから仕方ないと、それをのみ込んで百も承知で解散した。野田総理もそうだと思います。

 あのときの党首討論で、当時の野田総理は、小さいころお父さんから、うそをつくなと教えられたと。その前段に、今笑われますけれども、当時の自民党安倍総裁はさんざん野田さんをうそつき、うそつき、うそつきと言いまくって、そして野田総理は決断をしたんです。

 なのに、今回、これは総理がうそをついていることになりますよ。このまま二〇二二年まで先送り。それは本当に私は国民の皆さんをばかにした話だと思いますけれども、胸を張って、うそをついていないと言い切れますか。では、もし二〇二二年に先送りする、それでも、うそをついていない、答申を尊重している、そう言い切れますか。

安倍内閣総理大臣 仮定の質問にはお答えしませんが、我々自由民主党というのは、公約したことを必ず果たしてきたから、今まさに政権与党として国民の支持も得ています。当時の民主党は国民に約束していないことをやって、まさに国民から愛想を尽かされて政権を失ったんだろう、こう思うわけでございます。我々も、あの姿を見て、しっかりと約束できること、実行できることをお約束してきているわけでございます。

 定数削減につきましても、まずは五議席は我々が削減したんですから。まさに私たちが削減したんですよ。皆さんがおられるときは、誰一人削減していないじゃないですか。たった一人といえども、削減するということはなかなか困難が伴うことであります。しかも、五議席というのは、現職の議員がいたのは全て我が党の議員でありますから、当然、一番負荷が高い中において実行しているということは申し上げておきたいと思います。

 そして、今後、先ほど申し上げましたように、我々はお約束したことを順番にやっているわけですよ。党首討論において私が言ったとおりにしているわけです、党首討論の結果。少数政党もいる中において、各党各会派において議論が収束していかなければ難しいということを言った。残念ながらそうなってしまったんですよ。そうなったから第三者機関を置いたんですよ。そして第三者機関の答申を尊重すると言って、今私もこの第三者機関の答申を尊重すると申し上げているわけでありまして、その上において、この国会において結論を得るべく現在大島議長のもとで努力がなされているわけでありまして、大島議長が今努力をしているわけでありますから、三権の長である大島議長のもとでの努力を私は尊重したい、このように思う次第でございます。

高井委員 〇増五減の話は、もうあの時点で、最低でもそれはやろうと言って三党で合意した話ですから、それを自民党の成果と言われても、それは大前提の後で、さらにそこから、二〇一三年中にやります、法案を出しますといろいろな形で合意をしておきながら、結果としてそれができなかったというのであれば、私は謝っていただきたいと思います。

 そして、衆議院議長からの諮問によって答申が出たわけですから、この答申を尊重すると言葉ではおっしゃっているけれども、今の検討している中身を見たら全く尊重している中身になっていないわけですから、では、これを総理のリーダーシップでぐっと尊重するようになるのかどうかということは、私は今までの答弁を聞いていて甚だ疑問です。

 もう一つ、こんなことは言いたくないんですけれども、午前中の緒方委員からも指摘がありました。今、ちまたでは、きのうの夜のテレビでも宮根さんと田崎さんが自民党の二〇一二年問題と言って、深刻な問題だと話しておられました。宮崎議員、武藤議員、あるいは、マスコミを懲らしめろ、広告は自粛すべきだ、そんな発言をした議員や、上司の大臣が辞任をした日に不倫が発覚した、そんな議員がこの二〇一二年に当選している。こうした議員を育成できていないんじゃないか、あるいは選挙のときに、公認するときにしっかり見きわめられていないんじゃないかというのは、本当に多くの国民の皆さんが思っているんです。こんなに国会議員が多いからこんなレベルの低い国会議員ばかりになるんだ、国民の皆さんは本当にそう思っているんですよ。

 だったら、我々も賛成しておりますから、思いっ切り、一割、二割、三割削減をする。かつて自民党でも野党時代にはそうやって公約していたわけですから、私は、総理がそういったことをしっかりリーダーシップを発揮して削減すべきだと思いますけれども、いかがですか、決断いただけませんか。

安倍内閣総理大臣 議員定数の削減と先般の議員の問題とは全く別の話なんだろうと思います。

 そこで、先ほど申し上げているとおり申し上げますと、定数の削減につきましては、第三者委員会において結論が出ているわけでございます。しかし、第三者委員会においては期日は示していないというのも事実でございます。

 それも踏まえて細田議員の方から一つの考え方が示されたわけでありますが、まだ我が党の中にもいろいろな議論があるのも事実であります。その中で、衆議院の議長である大島議長が努力をしておられる、この国会中に結論を得たいという考え方のもとに努力をしておられるわけでありますから、今私がここで結論めいたことを言うべきではない、こう考えているわけであります。

 いずれにいたしましても、第三者委員会において出された結論を尊重していくことは当然のことだろう、そして、この第三者委員会が出した結論の中、これに反することはやるべきではない、これは当然のことではないか、こう考えているところでございます。

高井委員 今回の定数十削減というのはたった二%なんですよね。我々が言っている一割とか三割とか、そんなレベルじゃないわけでありますし、そして、答申には時期は書いていないとおっしゃいますが、それをいいことにというか、あの答申はやはり二〇一〇年をベースにして考えているのであって、それを二〇二〇年だというふうに言うのは相当無理があって、私は国民の理解は絶対に得られないと思いますし、我々国会の中の理解も絶対に得られないと思いますので、そこは見直す考えであるのであれば、総理、しっかり自民党総裁として見直していただきたいと思います。

 最後に、もう一問だけ、別の話、TPPの問題を取り上げたいと思います。

 この間、一般質疑で何度も議論をしてまいりましたので、これは総理にお聞きします。

 先ほど、石原大臣や岩城法務大臣とは議論をしてまいりました。実は、今パネルにありますこのTPPの合意は国内法に大きく矛盾をしているんです。ところが、国内法と大きく矛盾をしている制度を甘利大臣は合意してしまった。

 その合意が終わった後の文化審議会著作権分科会では、法律の専門家から、我が国の法体系上認められない、矛盾した制度を導入すれば混乱が生じると反対の意見がたくさん出されて、いまだに文化庁と法務省では意見がまとまっていない。我が国の国内法に矛盾するから、条文もまだできていないんですよ。

 もう二月十五日ですよ。政府は、三月上旬にも国内法を出す、そう言っているのに。しかも、こんな大事な、賛否が分かれるような法案がパブリックコメントにもかけずに提出することになるのか。こういうことをお聞きしても、石原大臣も岩城法務大臣もほとんどお答えにならない。

 それはなぜかといえば、この合意をしたのは甘利前大臣であります。甘利大臣に聞きたいですよ。だけれども、答弁できないじゃないですか。それで後任の石原大臣にお聞きしたら、引き継いだのは電話でたった二十分間しただけだ、そうおっしゃっています。

 甘利前大臣のブログを見ましたけれども、こう書いています。この一月余りの間に延べ四十二時間の大臣交渉を行いましたが、その半分以上は事務方を排して一対一の交渉でしたと。そのくらい甘利大臣が一人で交渉して、甘利前大臣しか知らないことがあるわけです。では、その甘利前大臣がなぜ国内法に矛盾することを合意してきたのか、こういったことをこれから国会の中で明らかにしなきゃならないけれども、できないじゃないですか。

 それで、総理は、民主党の岡田代表の質問に、甘利大臣の辞任はTPPには一切影響がないんだ、具体的に影響があるなら言ってください、そんな逆切れした答弁をされましたけれども、まさに私はこのことは影響があると思います。どうですか、総理。影響はあるじゃないですか、明らかに。

安倍内閣総理大臣 影響があるかないかでありますが、私と岡田さんのやりとりを正確に思い出していただきたいと思うんです。

 岡田さんは、甘利さんがいわばお金を受け取ってTPPに対して影響を及ぼしているのではないかということを言われたので、この事件とTPP交渉は一切関係ありません、一切影響ありません、こう答えているわけでありまして、逆切れでも何でもなくて、あなたが言っていることは申しわけないけれども全然当たっていませんよ、そう言うのであればその証拠を示していただきたい、こう申し上げたわけでございます。いわばあの事件と甘利さんが行っているTPP交渉は全く関係ありませんということをはっきりと申し上げたわけでありまして、ちょっと認識を間違っておられたので、訂正させていただきたいと思います。

菅原委員長代理 申し合わせの時間が来ています。

高井委員 では、お金をもらったことは影響を与えないけれども、甘利大臣が辞任したことは影響はあるということでよろしいですね。

安倍内閣総理大臣 我々は、TPP交渉については大筋合意をしておりますので、いわば交渉自体は既に終わっているということでございますから、交渉そのものには影響がない、このように理解をしております。

高井委員 終わりますけれども、全く影響がないというのは明らかにおかしいと思いますので、これはこの後の審議で明らかにしたいと思います。

 終わります。

菅原委員長代理 この際、初鹿明博君から関連質疑の申し出があります。長妻君の持ち時間の範囲内でこれを許します。初鹿明博君。

初鹿委員 維新の党の初鹿明博です。

 まずは、五日に予算委員会で質問をさせていただきましたが、そのおさらいから入らせていただきたいと思います。

 馳大臣、どうもお疲れさまです。

 先日、五日の予算委員会で組み体操の事故について取り上げさせていただきました。大変反響が大きくて、連日のようにマスコミ各社に取り上げていただきました。

 また、ほかの党の議員の皆様からも非常に関心を持っていただきまして、あした超党派で議員連盟を設立する運びとなりました。元文部科学大臣の先生方も四名も呼びかけ人に名前を連ねていただきまして、早急に議連の中で議論をしまして、大臣に対して申し入れを行いたいというふうに思っております。

 五日の質疑の際に私から指摘をさせていただきましたが、現在、各自治体が、この組み体操の事故がありましてから、さまざまな対策をしているんですが、特にタワーやピラミッドで段数制限をするということが幾つかの自治体で行われております。

 それに対して、私からは、三段のタワーでも重大な事故になっているケースがある、また、三段のタワーにすると数がふえるから、そこに一人ずつ先生がつくのは現実的に不可能で、安全対策といっても、これを徹底することができるかというと難しいんじゃないか、また、八尾市のピラミッドの崩壊した事故を見てもわかるとおり、ピラミッドの場合、真ん中に落ちてしまった場合、周りに先生がいてもとめられない、そして、学習指導要領にないようなものなんだから、段数制限じゃなくて、そもそもやめた方がいいんじゃないか、そういう指摘をさせていただいたわけであります。

 それに対して、馳大臣は答弁の中で、重大な関心を持って文科省として取り組まねばならないと二度にわたって答弁をしていただき、その後の記者会見の中でも、実態を調査した上で、年度内にも国としての対応方針を示していきたい、そういう発言をされております。

 そこで、お伺いをさせていただきますが、その記者会見のときにも大臣は触れているんですが、今、春の運動会が多いんですよね。ということは、四月、新年度が始まったら、大方、大体の学校は運動会の競技種目を決めてくると思うんですね。そうなってくると、もう五月の運動会で対応をとるということになると、やはり年度内にきちんとした方針をつくることが必要なんではないかなと思います。

 それと、前回も指摘をしましたが、子供の安全については、住んでいるところによってばらつきがあったらいけないと思うんですね。全国どこに行っても、やはり子供が安全に学校で教育を受けられる、そういう環境を整えていくことが国の役割ではないかと思います。確かに、教育は地方分権で、国が各自治体の教育委員会に対してとやかく言うのはいかがなものかと思うところも私はあります。しかし、子供の安全については別だと思うんですね。

 馳大臣に伺いますが、まずこのスケジュール感と、方針を示すということですが、その方針の方向性についてお答えをいただきたいと思います。

馳国務大臣 年度内に方針は示します。これが一点目です。

 二点目は、今ほど初鹿委員もおっしゃっていただいたように、文部科学省ないし私自身大臣として、学習指導要領には明記されていません、そういった個別の教育内容の取り組みについて、都道府県や市町村の教育委員会の頭越しにあれをしろ、あれをするなと言うことは、私は、これはまず控えるべきだというのはこれまでも申し上げてまいりました。

 しかしながら、私も今ちょっと手元に数字がありますので申し上げますが、日本スポーツ振興センター災害共済給付事業における組み体操による医療費等の支給件数、直近、平成二十六年度は骨折が二千九十五件、平成二十五年度が二千二百四十九件、平成二十四年度は二千二百九十六件、平成二十三年度は二千八十三件。そして、平成二十六年度の中学校三年生の男子のこの報告をちょっとお聞きください。「体育祭の練習中に、組体操の練習をしていたところ上に乗っていた生徒がバランスを崩して落下した際、下にいた本生徒の首に当たり頸椎を脱臼骨折した。」

 まさしく、こんな事故は一件でもあってはならないのが、教育行政を所管とする文部科学省の姿勢だと私は認識をしております。

 したがって、今現在、この日本スポーツ振興センターの医療費等の支給件数を分析しております。その上で、年度内、三月末までにはやはり方針を示す必要がある、こういう認識でおりますので、また改めて、議員連盟また勉強会等で、具体的な事例等についてもお医者さんなどから指摘があるようでありますので、そういったことを踏まえた上で、最終的に判断したいと思います。

    〔菅原委員長代理退席、委員長着席〕

初鹿委員 具体的な例も出していただきまして、ありがとうございます。でも、このJSCの調査というのは三年間なんですよね、組み体操について調べたのは。

 私も実はちょっと調べてみましたけれども、一九八三年に群馬県の小学校で、二段タワーの練習中に落ちて小学校六年生が死亡している事故がありました。一九九〇年、神奈川県の相模原市の鵜野森中学校でも、中学生が、これも、落下してきた子供が上に落ちて、そして肋骨が折れて、それが内臓に刺さって死亡した、こういう事故もありました。

 今、死亡事故とか重大事故でJSCの統計に入っていないものをちょっと精査しておりますので、議連の勉強会等で、まとめられたら発表して報告したいと思いますが、そういう事故が実際にあるんですよ。実は、この九〇年の鵜野森中学校ですけれども、たまたま、私の支援者の一人が中学校一年生のときに中学校三年生が亡くなって、そのときの記憶があるということで、つい先日話を聞いたばかりなんですね。それで調べてみたら、本当に実際に新聞でもニュースになっていました。

 そういうことが現実に起こっていて、死亡事故まで起こっているわけですから、きちんとした対応をしていただきたいとお願いをさせていただきます。

 それでは、次の質問に移らせていただきます。

 本当に、連日、自民党の議員の方々の不祥事というか、いろいろな問題が起こっていて、私も同じ国会議員として非常に情けないなという思いを持っております。

 きょうは、こちらに二人の女性の大臣の発言を並べさせていただきましたけれども、せっかく女性の活躍をこれから国で応援していこうということで大臣に就任をしたわけですけれども、やはり、このような問題のある発言をしてしまうと、女性の活躍に本当に水を差すような話ではないかなというふうに思うんですね。

 まず、丸川大臣にお伺いしますけれども、丸川大臣は、まず最初にこの問題を予算委員会で取り上げられたときに、記憶にないということで、謝罪はするけれども撤回はしないと言っていたものが、撤回をしましたね、金曜日に。

 午前中に、長妻議員からの質問に対する答弁では、メモを入手して確認して、発言が事実だということで撤回をしたと答弁をしております。そのメモを今示すことはできますか。皆さんに配れますか。

丸川国務大臣 私の事務所の方で入手したということがわかりまして、その内容を、発言を聞いていた方に確認したわけですけれども、そのメモ自体を出せるかどうかというのは、恐らく私文書ではないかと思いますが、確認をしてみます。

初鹿委員 では、委員長、理事会で協議をしてください。かなり多岐にわたって問題ある発言がその中にありますので、これはきちんと検証したいと思います。

 私は、この発言、実は持っているんですね。ですので、多分大臣が確認したものと同じだと思いますので、一つずつ、どの発言を撤回したのか、どういう発言をしたのかも含めて質問をさせていただきたいと思います。

 まず、その前提として、撤回するに当たって、大臣はこう言っているんですよ。事実と異なるので、当日の福島に関する発言を全て撤回する、福島を初めとする被災者の方には申しわけなく思う、改めて心からおわびを申し上げたい。

 確認ですけれども、福島に関する発言を撤回したのであって、福島と関係ないことは撤回をしていない、そういう理解でよろしいですね。

竹下委員長 初鹿君、ちょっと申し上げます。

 先ほど要請のありました件でありますが、後刻理事会で協議をさせていただきます。

 それでは、丸川環境大臣。

丸川国務大臣 福島に関連する発言は撤回をさせていただきました。

初鹿委員 では、福島に関係ない発言だと思うんですけれども、大臣はこう言っているんですよ。今まで、環境省というのはエコだ何だと言っていればよかったんですけれどもと。

 丸川大臣、大臣になってもう五カ月がたとうとしているんですよね。エコだ何だと言っていればいい、そういう気持ちで今まで大臣の職についてきたんですか。いかがですか。

丸川国務大臣 環境省の皆さんが本当に少ない人手で、特に、環境省というのは一九七一年にできた役所でございまして、大変苦労しながらここまでやってきたということは私も認識しておりまして、特に、地球温暖化問題等が出てきて、なかなか、業所管の諸官庁と渡り合う上で苦労しながら進んできたということはよく認識をしております。

 一方で、この震災が起きてから五年間というものは、また今までやってきたことと多少性質が違うところもありつつも、大変苦労の多い仕事を職員の皆様がやってこられたということをとりわけ強調したいという思いの中から言葉が出てきたのでございますが、大変苦労されておられる皆様方と今仕事を一緒にやらせていただいているということは本当に誇りに思っておりますし、これからもともにしっかりやっていきたいと思っております。

初鹿委員 エコだ何だと言っていればよかったって、これはばかにしているような言い方じゃないですか。これが職員は苦労していたかのような発言には聞こえませんよ。

 これは発言を撤回していないんですけれども、この発言は撤回しますか、しませんか。どちらですか。

丸川国務大臣 環境省の皆様には私からも直接お話をさせていただいて、そしてこれも、また一緒にこれからも仕事をさせていただけるように努力をしてまいりたいと思います。

初鹿委員 撤回をするか、しないかと聞いているんですからね。撤回をしないということですね。

 では、次に行きます。

 次は、これは長妻議員も触れましたけれども、反放射能派がわあわあ騒いで、そして、細野さんという環境大臣が一ミリシーベルトまで下げますと急に言ったんですと答えていますね。

 反放射能派というのは誰を指しているんですか。これは、福島県の方々で、被曝をして、または被災に遭って、そして避難をされている、そして放射能の汚染について心配をされている方々も含んでの発言ですか。

丸川国務大臣 この点についても私の表現ぶりは適切ではなかったので撤回をさせていただいたところでございますが、少なくとも、福島で被災をされて、放射線に対して不安を抱えていらっしゃる方々について申し上げたわけではございません。

 例えばICRPの考え方においても、地域の汚染状況に加えて、住民の生活の持続可能性、また住民の健康等の多くの要因のバランスを慎重に検討して適切な参考レベルを選択すべきである、これは政策的判断として選択すべきということが示されています。

 放射能について、このような議論を経ることなく、リスクがどれだけ低くても全くのゼロでなくては受け入れられないという方も中にはいらっしゃるということをイメージして申し上げたものでございますが、いずれにしても、表現ぶりが適切ではございませんでしたので、これは大変申しわけなく、特に福島の皆様のことを申し上げたのではないということを改めて明言をさせていただきます。

初鹿委員 この一ミリシーベルトというのは追加被曝線量ですよ。

 福島県で避難をされている方々は、この原発事故当時、その場にいたわけですね。つまり、被曝をしている、または可能性があると皆さん不安に思っているわけですよ。そういう方々からすれば、これ以上被曝をしたくないと思うのは当然なわけでありまして、だから、これ以上被曝がないように最低限の基準にしてくださいという思いが強いわけですよ。そういう気持ちをちゃんと理解されているんですか。理解されているんだったら、こんな、わあわあ騒いでなんていう発言をできるはずはないと思うんですよ。

 本当に、これは撤回されましたからいいですけれども、でも、基本的に、言葉に出したということは、思っていたということですから、後で撤回したからそれは思っていなかったということにはならないんですよ。そのことは自覚をしていただきたいと思います。

 では、次に、この一ミリシーベルト、科学的根拠がないと発言をしましたね。撤回をしました。撤回をしましたけれども、この発言をした時点で、丸川大臣はこの追加被曝線量が一ミリシーベルトに決まった根拠について御存じだったんでしょうか。

丸川国務大臣 もう先生も御承知かと思いますけれども、私も、震災直後、いろいろなお立場の方が私の事務所にもおいでになって、それを確認するためにいろいろな方にお話を伺いました。

 もう言うまでもないことですが、ICRPが長期的な目標ということで設定された中で、それを政策的に選択されたというふうに認識をしております。

初鹿委員 根拠を知っていたんですか。もう一回、ちょっと答えてください。ちゃんと根拠を知っていたのかどうか、もう一回答えてください。知っていたか知っていないか、イエスかノーかで。

丸川国務大臣 一ミリシーベルトというものに長期的目標が設定されているということは認識をしておりました。

初鹿委員 根拠があるかないかを聞いているんです。もう一回答えてください。

丸川国務大臣 根拠は、福島の皆様の安全、安心への思いに応えるということでございます。

初鹿委員 まあ、それは知らなかったという理解でいいのかなと思うんですが、まず、知らなかったとしたら、五カ月近く大臣をやっていて、これは重要な問題ですよ。

 国家として、福島の復興は何よりも優先的にやらなければいけない問題ですよね。総理、そうですよね。その中で、環境省が受け持っているこの除染、重要な問題じゃないですか。その追加被曝線量の根拠をきちんとわかっていなかったって、今まで五カ月間何をやっていたんですか、あなたは。何をやっていたんですか。

丸川国務大臣 一ミリシーベルトが、参考値二十ミリから一ミリシーベルト、現存被曝状況の一番下の水準であって、まさに科学者の皆様方が御議論をされて、百ミリシーベルト以下はエビデンスのない世界にリニアな想定を引いた中で、二十ミリから一ミリというのは現存被曝状況という事故後の長期的な環境を決めるときにセットをするものである、その中で一番低いところをとったという根拠であるということは理解しておりました。

初鹿委員 随分違うと思うんですけれども、では、知っていたという前提で聞きますけれども、何の科学的根拠もなく、そのときの細野さんという環境大臣が一ミリシーベルトまで下げますって急に言ったんです、誰にも相談しないで、何の根拠もなく、こう言っているんですよ。うそをついたんですか。

丸川国務大臣 科学的根拠という言葉をどのように捉えるかということであろうかと思いますが、科学者の組織であるところのICRPは最大の権威ある団体である一方、ICRPの中で、どのような議論を経て二十から一というバンド、また、その中で、済みません、一を選んだのは少なくとも政策的判断で選んだということはもう御承知いただいていることだと思いますけれども、二十から一というバンドを決めたかということの科学的根拠については、科学者の皆様方が議論をして決めたという点においては科学的でありましょうけれども、一方で、そこにエビデンスが伴って、世界的に唯一絶対無二の見解が得られるようなエビデンスがあるかというと、それはそれ、また別の話でありますので、そこのところを私は申し上げている部分でございます。

初鹿委員 そうはいっても、二十から一ミリシーベルトの間でICRPは幅を持たせている、その下に政策的な判断もあって決めている。根拠はあるわけですよ、根拠は。でも、それをあなたは、根拠なく決めたと。しかも、誰にも相談なく決めたと。誰にも相談なくというのは、これは事実じゃないですよね。

丸川国務大臣 五ミリシーベルト、面的除染をするという話を環境回復検討会で発表されました。その後、次に、御承知だと思いますけれども、その五ミリシーベルトの面的除染等の基準について議論をしていた場は環境回復検討会でございまして、その会議で、五ミリシーベルト、面的除染という議論が出た次の会議のときには、その五ミリシーベルトということについての議論はございませんで、具体的に言いますと数字は出てこない議論をしたわけでございます。

 少なくとも、福島の皆様方からその数字が発表された後に反応が来る形で環境省の方に御意見があったということは承知をしておりますけれども、その基準を決める会議において何の議論をしたかといえば、そこには具体的な数字を入れた議論はその後はなかったということを承知しております。

初鹿委員 そういうことを言っているんじゃなくて、誰にも相談しないで大臣一人で決めたのかどうかということを聞いているんですよ。そんな決め方は組織としてしないですよね。環境省としてきちんと組織決定をしているわけですよね。これを誰にも相談しないでと言うのは言い過ぎじゃないですか。違いますか。

丸川国務大臣 確認できる資料が環境省内に残っていないものですから、私も何とも今の立場で申し上げられませんけれども、少なくとも、その会議体、つまり、そこは毎回資料を公表して、その後レクをされているわけでございますけれども、その会議体においてどのような議論をしたかといえば、今私が申し上げたような状況でございます。

初鹿委員 大臣、何でこういう発言をしたのか、私から大臣がどういう気持ちで発言したのか言いますよ。これは選挙の応援に行ったんですよね。選挙の応援に行って、相手を陥れるために事実無根のことを言って、前の、当時の環境大臣はとんでもないという印象を聴衆の人たちに植えつけるためにこういう発言をしているんじゃないんですか。大臣ですよ、あなたは。大臣が自分の職務に関係することでこのようないいかげんな発言をして国民に間違った印象を持たせるというのはいかがなものかと思いますよ。

 この辺についてはここまでにして、次の問題に行きます。

 発言を撤回していない部分でも大変問題な発言をしているんですね。メディアについてです。

 丸川大臣はメディア出身だと思うんですが、あろうことか、メディア出身の大臣が、メディアというのは自分の身を安全なところに置いて批判していれば商売成り立つんですね、メディアというのは文句は言うけれども何も責任をとらない、そういう発言をされているんですよ。

 そのとおりでいいんですか。そういう考え方なんですか。

丸川国務大臣 まず、メディアの皆さんについて申し上げた点については、私はメディアの皆さんが政策や政党あるいは政治について批判をされることを問題にしているわけではないということは御理解をいただきたいと思います。

 客観性に基づいた報道、指摘というのは、これはメディアの大変重要な、国民の知る権利に奉仕をする機能でありまして、これを失ったら国民は知る権利の一部を放棄せざるを得ないような状況になる可能性もございまして、これは重要でございます。

 一方で、私は、自分は報道機関の社員でございました。報道機関、とりわけ免許事業におったわけですから余計その傾向が強かったんですけれども、要は、高い公共性が求められる、高い客観性が求められる中で、それなりに、言っていいことといけないこと、つまり客観性を踏み越えて放送の中で発言していいことというのには非常に制限があるわけでございます。

 私は、その放送の中で、自分が言えること、言えないこと、いつも闘ってきておりましたけれども、一方で、私は討論番組、「朝まで生テレビ!」という番組を担当しておりまして、言論人の方、あるいはジャーナリスト、フリージャーナリストの方、また評論家の方たちが自分の言葉を背負って討論されるのを見てまいりました。

 こういう方たちというのは、本当に自分の言葉に命をかけて闘っておられます。この言論人やらフリージャーナリストやらあるいは評論家という方たちの言葉の重みというのは、まさに、自分の発言がもし違う内容であったり、あるいは人を攻撃するときに間違った方向で攻撃をしたならば、それはそのまま自分たちの、自分自身の責任に返ってきて、そしてそれは自分の職場を失うだけではなくて生活も失う可能性がある、そういう闘いをしておられるのを目の当たりにしておりました。

 そういうことに比べますと、客観性がより重視され、そして高い公共性のもとで一定の範囲の中でしか発言できない放送機関に勤めていた私の発言の内容というのは、それは全く質の異なるものであるし、かかるリスクも異なってくるということを常々感じて私は取り組んできておりましたので、そのような発言になりました。

初鹿委員 最後に、丸川大臣、こう言っているんですよ。私の自慢するみたいで申しわけ、多分、ないですがと言おうとしたんですが、ここは切れているんですが、自分たちが今までやってきたことを恥ずかしいなんて思えば自民党から出たいと言うと思いますよと言っているんですよ。相手の方がメディア出身の方なんですね。自分たちが今までやってきたことを恥ずかしいと思えば自民党から出る、自民党から出るというのは自分のことだと思いますが。

 ということは、丸川さんは報道機関に勤めていたときにやってきたことを恥ずかしいと思っているということだと思うんですね。

 今報道機関で働いている人は恥ずかしいことをやっているということをここで言っているわけですよ。そういう考え方なんですね。

丸川国務大臣 私は、およそ、報道機関においても、ジャーナリズムということに対して自分の自負を持っておられる方であれば、客観性を超えて報道されるときには、つまり自分たちの取材に基づいた論評、解説、こういうことをされる方については、自分の言葉にそれ相応の責任を背負って、そして闘うんだという覚悟を持ってやっておられると思います。

 そして、私は、自分が報道するときに、自分はこういう意見を持っている、こうすべきであるということを言いたかったけれども、残念ながら、高い公共性が求められる中で、こうではないでしょうか、あるいは、こう考えるべきではないでしょうかと言って、本当の論点の核心まで言えなかったことについて大変じくじたる思いを持っておりました。

 であるがゆえに、今私は、皆様と同じように、言葉を背負って一緒に闘う仕事をさせていただいているわけでございます。

初鹿委員 時間ですから、最後に一言言わせてもらいますが、言葉が軽いんですよ。選挙の応援に行って、相手候補をおとしめるために事実とは違うようなことを言って、それで相手をおとしめようとしている。そういう選挙のやり方というのは、いかがなものかと思いますよ。

 そして、そういう大臣をいつまでも大臣の職に置いておく総理も任命責任をきちんと考えて、私は直ちに更迭をするべきだと思います。

 総理、ぜひ丸川大臣を辞職させるようにお願いをして、終わりにいたします。

竹下委員長 これにて長妻君、古川君、緒方君、玉木君、山尾君、高井君、初鹿君の質疑は終了いたしました。

 次に、高橋千鶴子さん。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 東日本大震災と原発事故から間もなく五年になろうとしています。きょう二月十五日は、千八百三日目です。大切な人を失った悲しみが癒えることはありません。今も、行方不明者二千五百六十二名、月命日には捜索活動がされ、家族を捜し続けている方々がいらっしゃいます。卒業式を開けないまま離れ離れになった中学生は、ことしは成人式です。もう五年とは決して言えない年月ではないでしょうか。

 政府は、五年目の三・一一を前に、復興基本方針を閣議決定すると言っています。骨子案によると、向こう五年間を、集中復興期間に続く復興・創生期間と位置づけ、復興期間の総仕上げとして、被災地の自立につながり、地方創生のモデルとなるような復興を実現すると言っています。

 総理は、一月二十二日の施政方針演説で、来年春までに、計画の八五%に当たる二万五千戸の災害公営住宅が完成し、高台移転も七割で工事が完了する見込みなど、この間積み上がってきた数字を示しながら、復興は新たなステージと強調されました。

 しかし、だからこそ、一人一人の被災者にとって、どうなのでしょうか。

 伺います。

 立派に道路や建物が立ち並んでも、人々の暮らしと生業が再建されなければ真の復興とは言えないと思いますが、総理もこの認識を共有されるのか、伺います。

安倍内閣総理大臣 まさに私は、高橋委員のおっしゃるとおりだ、このように思います。

 東日本大震災からの復興は安倍内閣の最重要課題であります。地震、津波被災地域では、来年春までに、計画の八五%に当たる二万五千戸の災害公営住宅が完成し、高台移転も七割で工事が完了する見込みであるほか、これまでに水産加工施設の八五%で業務を再開するなど、住まいの再建やなりわいの再生が本格化しており、復興は新たなステージを迎えつつあると考えています。

 復興に当たっては、これまでも、インフラの復旧や住宅の再建だけではなくて、被災者の方々の暮らしやなりわいの再生にしっかり取り組んできたところであります。

 四月からは後期五カ年の復興・創生期間が始まりますが、この期間に復興をやり遂げるという強い意思を持って、引き続き、心身のケアやコミュニティーの形成支援、観光業や水産加工業の復興の加速化などに取り組んでまいりたいと思います。

高橋(千)委員 心身のケアという一言はあったんですけれども、私が質問したのは、やはり人々の暮らしそのものに着目して。確かに、インフラがいろいろ進んでいるのは私自身もこの目で見ていますし、現場がどんなに頑張っているか承知の上で聞いています。そこに思いを寄せていただきたいということであります。

 もう一つ、発災以降、全国で四十七万人以上だった避難者は、一月十四日現在で十七万八千人になっております。うち、福島の避難者は九万九千六百八人です。

 先ほど紹介した政府の基本方針の骨子案には、こう書いています。「福島の原子力災害被災地域においては、田村市、川内村、楢葉町では避難指示の解除等が行われるなど、復興に向けた動きは着実に進展。」極めて違和感を覚えました。

 昨年九月に全町避難から避難指示解除になった楢葉町では、帰還率は六%を切っており、松本幸英町長は、二〇一七年春に五割ぐらいが戻ればいいと思うとコメントされています。

 解除イコール帰還ではありません。この書き方、どうでしょうか。解除さえすれば復興が進んでいるという認識なんですか。

安倍内閣総理大臣 避難指示の解除につきましては、ふるさとに戻りたいと考える住民の方々の帰還が可能となります。そこから本格的な復興が始まると考えております。まさにこれは、避難指示解除によって終わりではなくてスタートだというふうに考えておりまして、安心して戻れるふるさとを一日も早く取り戻せるよう、政府一丸となってしっかりと取り組んでまいりたい、このように考えております。

高橋(千)委員 そうであれば、解除が進んでいるので復興が進展しているという表現はやめればいいと思います。これは案ですので、これから閣議決定されると思いますので、ぜひこれはとっていただきたい、この認識を改めていただきたいと思います。復興の総仕上げとか、解除したから進んでいる、こういう認識の一つ一つが被災者を傷つけていると言わざるを得ません。

 陸前高田市の戸羽太市長は、五年が過ぎてしまえば次は十年目だ、忘れられるのが一番つらいと述べておられます。大熊町のある自治会長さんは、国会を見ていると、私たちのことは忘れられているんじゃないかとつぶやきました。これは私自身にとっても大変重い言葉だと思っています。三・一一が単なるメモリアルデーにならないように、今やるべきことを政府に質問し、また、具体の提案もさせていただきたいと思います。

 まず、住まいの再建についてです。

 自宅の再建が進んでいるかどうかの一つの目安として、個人の住宅再建に、基礎支援金百万円と加算支援金合わせて最大三百万円支給する被災者生活再建支援金がございます。最初の基礎支援金を受け取った世帯は十九万二千六百三十八世帯。うち、加算支援金まで受け取った世帯は十二万五千七十四世帯。基礎支援金を受け取ったうち、三六%が再建に至っておりません。

 二〇〇七年法改正のときには、衆参の附帯決議で四年後の見直しを明記しました。その四年後に三・一一大震災があったために、今、災害の規模が大き過ぎるので待ってほしいというのが当時の防災担当大臣の答弁でありました。でも、それからさらに五年たったのです。支援金を五百万円まで拡充するとか、支援対象を一部損壊まで広げるなど、改正に踏み切るべきではないでしょうか。

河野国務大臣 二〇〇七年の附帯決議を受けまして、これまでさまざまな検討を行ってまいりました。東日本大震災の後も検討会を行いまして、平成二十六年の八月に中間取りまとめがありました。

 その中で、被災者の生活再建については、被災都道府県の独自支援の活動を広げていく、あるいは、災害に対応するための保険や共済にしっかり加入をしていただく、平時からそうした備えをしていくことが必要だというのが取りまとめでございます。

 そういうことで、私は、特に法改正をするよりは、自助、共助を促すために保険や共済への加入を促進していく、そういう道をしっかりとってまいりたいと思っております。

高橋(千)委員 今、二つのことをおっしゃったと思うんですね。

 後半の地震保険については、今、平均加入率が二八・八%、トップは宮城県の五〇・八%でして、この間、地震が大変続いた、津波も続いた、そうした中で加入率が高まったのかなと。そこに、国が支援する、税金の控除ですとか、それは当然いいことだと思っていますし、それ自体は否定をいたしません。

 しかし、最初におっしゃった、都道府県が先にやればいいという話は、私は、もともと都道府県は、自治体もそうですが、住民に一番向き合っているわけですから、言われなくてもやっているわけなんですよ。それを、都道府県や自治体がいろいろ努力をしてやってきたことを、国が後から、そうですね、こういう制度も必要ですねとやってきたのがこれまでの歴史であって、今さら、県がまず最優先ですよというのは違うだろう。今までのいろいろな仕組みが、法の縛りがあるんだということがこの間の震災でも言われてきました。そのことにしっかりと立って見直しをするべきではないかと思うんですね。

 具体的にお話しします。

 岩手県は自宅再建に最大百万円、それに各市町村が上乗せ支援をしております。

 資料一枚目、これは二枚、各市町村のをつけておいてあります。大変バラエティーに富んでおりまして、建設費のほかに、地域材を活用するとか、バリアフリーの活用、浄化槽設置費用など、さまざまなメニューを活用することで五百万円から最大で一千万円を超す補助が実際に実現をしています。

 先月、岩手県の大船渡市で高台移転をして自宅再建を行った方たちの声を聞いてきました。千五百万円を三十年間二世代ローン、最初は諦めていたが、やはり家を建てようと子供に言われて決心をした、県や市の独自補助がなければ無理だったという方。二年我慢すれば仮設から出ることもできるとお互いに励まし合ったけれども、二年たっても三年たっても気配がない、小学校一年生だった孫は今春卒業、四年生だった孫は高校生、このまま家を再建せずいいのか、それが大人の責任ではないのかと自問自答して決意をされたとおっしゃっていました。

 サラリーマンなら定年を過ぎている年代の被災者たちが、長い期間のローンをしょってでも再建に踏み切っていることを知ってほしいんです。

 しかも、ただじっと支援を待っていたのではありません。土地も自分たちで見つけ、高台移転の、その高台のどこがいいかを自分たちで見つけているんです。地域として話し合いや勉強会を重ね、途中で抜ける方もいれば、入る方もいました。大変な苦労を重ねました。

 総理に伺いますが、個人の財産に税金は投入できない、これは阪神・淡路大震災のときから国がおっしゃって、常に壁となってきました。しかし、岩手県の事例にあるように、自力再建は、単なる個人の財産問題ではなくて、地域をつくり、復興の土台というまさに公共的役割があると思います。総理にこの認識を伺います。

安倍内閣総理大臣 被災者の住宅再建については、県、市町村の取り崩し型復興基金を活用した助成に加えて、被災者生活再建支援金を支給するとともに、高台移転事業による宅地を借地として提供するなど、被災者の負担を軽減する支援措置を引き続き講じることとしております。

 引き続き、地元の声に丁寧に耳を傾け、まちづくりやなりわいの再生、心身のケアなどあわせて、一日も早く被災者の方々が安心して生活できる住宅に移れるよう、全力を尽くしていきたいと考えております。

高橋(千)委員 では、資料の二。三枚目を見ていただきたいと思うんですね。

 これは「山田型復興住宅 地産地工で住宅再建をお手伝い」と書いています。これは、町として、地域の材を使って地元の工務店に発注することで八百万前後で自分の家を建てられますよと、モデル住宅を示しているんですね、安くて良質で。

 山田町の佐藤町長は、五百万を超す独自補助を受ければ、あとは利子補給など融資もあって手の届く値段だから自力再建が可能になるとおっしゃっていました。大いにモデルケースとして期待しております。あと一押しの支援で自力再建につながるんだったら、むしろ、費用対効果も大きいですし、若い人の定着にもつながります。

 そして、今総理が期せずしておっしゃった自由度の高い基金、決め手となった県や自治体の独自支援策だって、財源は実は国の復興特別交付税なんですね。つまり、間接的なら国は支援できているんですよ。だったら直接的に踏み切ったっていいじゃないかということ、このことを言っているんですね。

 次に、資料の三を見ていただきたいと思います。

 東日本大震災の住家被害は百十七万八千二百三十三件です。うち、被災者生活再建支援金を受け取ったのは、一六・三%にすぎません。しかし、これは、東日本大震災の方はまだ割合が高いわけです、みなし全壊とかがあったから。しかし、現実には、全壊か大規模半壊以上でなければ対象にならないので、全体の住家被害から見たら大変少ないです。

 二〇〇七年から見覚えのある災害の名前が続いているので見ていただきたいと思うんです。能登半島地震、新潟県中越沖地震、岩手・宮城内陸地震と、ずっと豪雨や台風が続きました。どれで見ても、住家被害のあるうち数%、一桁台、零コンマの割合でしか支援金を受けられないんですね。一部損壊や床下浸水、床上浸水などが多いからです。

 こうした実態をどう見るのか。よく検証して、被災者生活再建支援の名にふさわしい制度に再構築するべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

河野国務大臣 被災者の支援は、一義的には基礎自治体であります市町村がこれに当たるということになっております。市町村の財政負担が大きい場合に、県あるいは国が財政負担を軽減するために出てくるというのが今のスキームでございます。

 被災者生活再建支援法は、自然災害によってその生活基盤に著しい被害を受けた世帯に対する、生活再建を支援することを目的とした制度でございますので、全壊世帯あるいは大規模半壊世帯を支援対象としております。これを拡充するということは、ほかの支援制度とのバランスや、あるいは財政負担などを考えると、慎重に対応しなければならないというふうに思っております。

 半壊世帯に対しましては、災害救助法に基づく応急修理、住宅金融支援機構融資、あるいは災害援護資金の貸し付けなどの支援がございますので、それで対応していただくということで、これからの災害については、やはり保険、共済への加入をしっかり促していくということにまず注力してまいりたいと思います。

高橋(千)委員 八年くらい同じ答弁を聞いているんです。ですから、これだけの災害が積み上がっていますから、一部損壊といえども何百万も補修にお金がかかっている、これも私、ここで質問をしています。そうしたことも含めて検証するべきではないかと言っているんです。

 住宅の応急修理だって、本当に、修理をすれば住めるということが本当の目的だったにもかかわらず、半壊以上、しかも所得制限を設けたために、多くの方が受けられないでいるんです。だから、このことを指摘しています。これは私、最初に応急修理の問題を二〇〇四年に災害特別委員会で取り上げたその経緯がありますので、本当に悔しく思っています。でも、ここは同じ議論はしません。これをきちんと検証してくださいということを求めたいと思います。

 そこで、次に、今月の十二日、仙台市青葉区の災害公営住宅で、四十代の息子さんと二人暮らしの女性、七十二歳の女性が死亡しているということがわかりました。河北新報によりますと、息子さんが入院中で、死後十日以上たっていたといいます。この公営住宅は三十二世帯が入居し、御近所づき合いはほとんどなかったといいます。

 また、先月も、私自身が仙台市内の仮設住宅を歩いていたときに、高層マンションのような災害公営住宅に入って、誰とも会わず孤立死した高齢者がいるのよという話を聞きました。

 今心配されるのは、まさにそうした孤独死の問題であります。

 まず最初見ていただきたいのは、阪神・淡路大震災における孤独死の数であります。

 兵庫県警の資料でありますけれども、孤独死とは、仮設住宅や公営住宅における独居変死者、誰にもみとられず亡くなった方と定義をしています。毎年毎年、三十人から七十人台が亡くなっている。このこと自体衝撃です。九九年ががくんと減っているのは、仮設住宅が解消した年なんですね。その翌年から、またこんなに、五十六、五十五、七十七というふうにふえていることに大変衝撃を受けております。

 そこで、復興大臣に伺いますが、東日本大震災の被災者で、孤独死といったものはどのように把握をされているでしょうか。

高木国務大臣 お答え申し上げます。

 孤独死については、その人数などのデータを把握しているものではございませんけれども、自治体との意見交換等の場で、孤立防止は対応すべき課題として把握してきたところでございます。

 警察においての数字、あるいはまた県における集計といったものは報道等を通じて知っておるところでございます。

高橋(千)委員 私、このこと自体を問題にしたいと思うんです。ぜひこれは、ちゃんと定義も決めて把握するべきではないでしょうか。

 例えば、宮城県が、昨年八月、県警が七十九人孤独死がいますと把握していたのに対して、いやいや、ゼロですと言ったんですね。それは、県の定義が、六十五歳以上で、かつ周囲から孤立し、誰にも理解されなかったみたいな、そういう厳しい要件をつけていたので、値しないというふうになってしまったんです。

 きょう出したこの資料は、必ずしも孤独死とイコールではないかもしれません。ただ、ヒントになると思うんです。被災三県の警察の、仮設に単身居住であった中の死者数という数字であります。四十一人、四十五人、四十六人、五十三人というように積み上がっているんですね。

 しかも、私、すごく深刻だと思うのは、さっき言ったように、各県で、六十五歳以上の孤独死というふうにカウントをしているわけなんです。ですが、六十五歳未満の割合が、実は、二〇一五年で四七・二%、半分近くいるんですよね。ですから、これは神戸でも同じことが繰り返されていたんです。介護などにも結びつかない。だからこそ、若年者はむしろ深刻だとも言えるんです。

 そうしたことを踏まえて、やはりきちんと定義もして、把握を今からでもするべきではないでしょうか。

高木国務大臣 今委員も御指摘のように、定義というのもいろいろな考え方があるんだろうというふうに思います。

 いずれにしても、こういった状況というのはあってはならないというふうにも思いますので、まず何におきましても、そうしたことが起きないようにやっていくというのが私どもの務めだというふうに思っております。

高橋(千)委員 せめて神戸のように、阪神・淡路大震災のように、倣って、しかも、岩手、宮城でも一定の把握をしているわけです。今からでも把握をするとお約束いただけますか。

高木国務大臣 先ほど申し上げたとおり、警察においてもそうでありますし、県においても集計をしているところでございますから、そうしたような数字もいただきながら、どのように考えていくか検討をしていきたいというふうに思っております。

高橋(千)委員 ここはぜひ把握をきちんとして、その上で対策が当然急がれるわけですから、お願いをしたいと思います。

 もう一つ、現実的な提案をしたいと思います。

 国土交通大臣にお願いをいたします。

 私は、三・一一の直後から沿岸部を回りながら、車も流されて、遺体安置所を一つ一つ訪ね、家族を捜している被災者たちを見て、瓦れきの中でもバスなら走れる、そう思って、ミニバスやディマンドタクシーなどのこうしたコミュニティーバスに補助を、被災地特例をと質問で求めました。それが今、三十二の市町村で実施をされ、大切な足になっています。

 ところが、来年からは、さらに五年間延長はするんだと聞きましたけれども、条件が、仮設住宅を経由しなければならないと言っているんです。これから先、どんどん公営住宅や高台移転に移っていくのに、仮設住宅を経由しなければバスが走れないというのは、これはおかしな話ではないかと思うんですね。

 仮設を公営住宅と読みかえてもいい、あるいは、高台移転したときに交通の便が悪い地域とか、自治体の計画に整合性があれば認めるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

石井国務大臣 東日本大震災の被災地の生活交通を確保するため、復興特会による地域公共交通確保維持改善事業において、応急仮設住宅等と病院、商店街等の間のコミュニティーバスなどの運行を支援してきたところでございます。

 今後の復興特会による地域公共交通確保維持改善事業については、引き続き応急仮設住宅等を経由する運行を支援してまいりますが、現在までの被災地の状況に鑑みれば、災害公営住宅等も経由する運行が大半になるものと見込まれます。

 仮に応急仮設住宅等を経由しないで災害公営住宅等を経由する場合におきましては、被災地特例ではない、一般会計による地域公共交通確保維持改善事業において、交通不便地域の移動確保を目的に支援できるものと考えておりまして、被災地の実情を踏まえて適切に対応してまいる所存でございます。

 国土交通省といたしましては、今後とも、被災地からの声をよくお聞きしながら、必要な生活交通の確保に努めてまいりたいと存じます。

高橋(千)委員 せっかく途中まではいい答弁をしてくれるのかなと思ったのが、ちょっと残念でございました。

 わざわざ被災地特例を設けたのは、一般であると基準が厳し過ぎるからなわけですよね、十五人以上とかで。それを今被災地でやるのは厳しい。一般に必ず入るというのであればそれは違うかもしれませんけれども、そこをちゃんと見ていただきたい。今大臣だって、答弁したときに、仮設住宅等とおっしゃったのに、なぜその等に公営住宅を入れないのかと不思議に思って聞いておりました。

 山田町でようやくことし秋までに、ベッドのある県立山田病院が完成するわけです。いろいろ課題はあるけれども、私たちの病院ができると現場も町も大変喜んでいました。でも、今あるプレハブ仮設の病院も、つながっているのは、私が今紹介したコミュニティーバス事業があるからなんですよ。仮設を出た途端、あるいは高台に行った途端、通えなくなったら意味がないではありませんか。

 先ほど紹介したように、ひとりぼっちで、買い物もできないような不便なところに、高層マンションのような公営住宅に入った高齢者が孤立死になっていく、そんなことがないように、これは大切な足、確保していただきたい。もう一度お答えいただきたい。

石井国務大臣 先ほど御答弁いたしましたとおり、仮に応急仮設住宅等を経由しないで災害公営住宅等を経由する場合には、一般会計による地域公共交通確保維持改善事業ができるわけでありますけれども、現在の被災地の実態からすれば、実態上、大半がこの一般会計で行います地域公共交通確保維持改善事業の対象になり得るものと理解をしております。

高橋(千)委員 なり得るとおっしゃいました。本当にそうなのかどうかは検証してみないとわかりませんので、ぜひそのことも等に含めていただきたい。今せっかくこうして喜ばれている足がまさか奪われるようなことがないように、重ねてこれはお願いをしておきたいと思っております。

 それで、国交大臣、もう一点簡単にお答えいただきたいと思うんですが、災害公営住宅が完成するまでに長い時間がかかったために、入居を希望しながら取りやめにしたなど、少なくない空き部屋が出ております。自治体にとっては大変頭の痛い問題です。

 そこで、被災者ではないけれども住宅に困窮している低所得者や公営住宅の待機者など、あるいは復興支援で被災地に移住したい、そういう方たちを受け入れるということ、これは、公営住宅を必要とする被災者を阻害するのでさえなければやはり柔軟に対応してもよいと思いますが、一言お願いいたします。

石井国務大臣 災害公営住宅の入居率は昨年の十一月末時点で約九四%となっておりますが、これは、被災者が民間住宅へ入居したり自力で自宅を再建するなどその意向が変化をしたこと、また、被災者が死亡されたり高齢者施設に入居するなど事情が変化したことなどにより、災害公営住宅の一部に空き室が生じている地区もあると聞いております。

 こうした空き室につきましては、まずは、地方公共団体が広く被災者の再募集やまた住宅相談を行い、被災者の方々が避難生活を解消できるよう、その入居を促しているところでございます。また、それでも入居が進まない場合につきましては、一般の公営住宅として、地方公共団体の御判断によりまして、地元の方や復興支援を行う方などで住宅に困窮する低所得者に入居していただくことが可能でございます。

高橋(千)委員 確認をさせていただきました。これからは、いろいろな応用編、あるいは柔軟な対応というのが本当に求められると思うんですね。五年で区切りをつけたら仮設じゃなきゃだめよ、さっき言ったバスのようなそういうことではなくて、やはり実態を見て対応していただきたいということを重ねてお願いしたいと思っております。

 それでは次に、原発事故からの復興について伺いたいと思います。

 政府は、昨年六月に、「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」を閣議決定いたしました。事故から六年を超えて避難指示の継続が見込まれる帰還困難区域以外の区域、すなわち避難指示解除準備区域と居住制限区域については、各市町村の復興計画等も踏まえ、遅くとも事故から六年後までに避難指示を解除するとしました。つまりは、来年三月までに帰還困難区域以外は帰還を促すというものです。もちろん、そのための拠点整備や除染などの集中支援を行うと言っておりますけれども、原発事故においては期限を決めても全てをそこに合わせることはできないと思います。

 総理に伺いますが、原発事故が収束していない中、期限を区切った帰還や打ち切りではなく、被害の実態や対応状況に応じて判断し、必要な賠償や支援もするべきと思いますが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 避難指示の解除は、線量の低下、インフラや生活関連サービスの復旧を確認し、自治体や住民の方々とのさまざまな場における対話を重ねた上で行うものでありまして、期限を切って行うものではありません。

 東京電力による損害賠償については、政府として同社に対し、引き続き、被害者の個別の状況を丁寧に把握した上で、迅速、公平かつ適切に行うよう指導していきます。

高橋(千)委員 今、期限を切って行うものではないという明確な答弁をいただきました。それに本当に沿って実態がなっているのかということを見ていきたい、お願いをしたいと思っております。

 まず、全町避難を余儀なくされ、現在、帰還困難区域、居住制限区域、避難解除準備区域というように三分割されている富岡町は、早ければ来年四月の帰還開始を目指しています。

 同町の除染検証委員会が、昨年の十二月二十二日、中間報告書をまとめ、緊急提言を行っています。例えば、復興拠点なのに未除染のところがあるとか、住宅地だけれども局所的に線量が高いところがあり、再除染を行うべきなどと、急いで取り組んでほしいと四点を提言しています。

 実は、富岡町のある区長さんから、道路一本隔てて、向こうは帰還困難区域、こちらは居住制限区域、つまり、片側は除染していないのに、これでは帰れないだろうと訴えられたんですね。なるほどと思い、それがまさにこの報告書なのであります。

 資料の六を見ていただければと思います。

 これはかなり細かく、地上からも三カ所、一センチ、五十センチ、百センチというように、それから、境界線から一メートル、十メートル、二十メートルというように、何カ所もはかっているんですね。そうすると、見ていただくとわかるように、境界線がやはり高いということがわかると思うんです。

 これを写真で見るとこうなるわけですね。

 住宅密集地では、道路は四メートルしかないんです。この際というのは、境界線というのは道路は四メートルなんです。それを隔てて、除染をしているところとしていないところ。道路際までしかやっておりません。山林部だと道路は少し幅が広いです。それでも十メートルなんですね。これが境界線になっている。

 ですが、環境省だって、生活圏の空間線量率低減のために、宅地境界から二十メートルの範囲は除染するとしているじゃないですか。

 丸川大臣に伺いますが、これは当然、一体的に進めるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

丸川国務大臣 先生の御指摘の富岡町の除染検証委員会の取りまとめた中間報告について、私どもも承知をしておりまして、富岡町からも、帰還困難区域における境界付近について除染を行ってほしいという御要望をいただいているところでございます。

 その上で、富岡町の御要望については、今まさに関係省庁とともに町と御相談をさせていただいているところでございまして、どのような対応が可能かということについては引き続き検討させていただきたいと思っております。

 と申しますのも、帰還困難区域の取り扱い全体をどうするかということについて、まず、議員も御承知だと思いますけれども、政府全体の方針として、放射線量の見通しであるとか、あるいは今後の住民の皆様方の帰還の御意思、あるいは将来の産業ビジョン、復興の絵姿を踏まえて地元の皆様とともに検討をして、一方、復旧復興のために特に必要性の高い広域インフラあるいは復興拠点というところについては、環境省と連携して個別に除染を進めていくというようなことで今やらせていただいているところでございますので、こういうことも踏まえた上で、きちんと富岡町の皆様と向き合って、しっかり検討を進めてまいりたいと思っております。よろしくお願いいたします。

高橋(千)委員 正直、衝撃の答弁でありました。年末に大臣に要望書が出されているのに、まだ今相談しているという答弁で、ちょっとがっかりしましたよね。

 しかも、これは富岡町の区長さんからお話を聞いたと私、言いましたけれども、どこでも今、これから起きる問題なんです。だから、全体の問題としてちゃんと考えてくださいということなんですよ。しかも、富岡町は、さっき言ったように、ほとんどが除染に同意をしていますし、昨年の年末では八割もう完了しているわけなんですね。そうした中で放射線量も下がってきた。だけれども、これはないでしょうということを具体的に指摘している。

 環境省の方針を見ますと、復興拠点となる施設や地区について、関係機関と調整の上で限定的にやると言っているんです、帰還困難区域については。つまり、常磐道を通す、そのときは除染をするけれども、一般の生活道、ここと向き合っているんですよ、それに、ちょっと待ってくれ、まだわからないと。それはないでしょう。環境省の方針からいったって、これは一体的にやるとお答えになるべきではありませんか。

丸川国務大臣 今まさに協議をさせていただいている最中でございますので、また御報告させていただけたらと思っております。

高橋(千)委員 また御報告というのは、どこで御報告をいただけるんでしょうね。これは本当に引き続き答弁を待ちたいと思います。前向きに本当にお願いいたします。

 先ほど来、丸川大臣の発言のことで議論が進んでおりますけれども、一ミリシーベルトは何の科学的根拠もない、時の環境大臣が勝手に決めたと発言されたことを撤回されました。このことについては、当時の環境大臣だった細野委員が十日、この委員会で、国際機関であるICRPの資料も示して指摘をされましたので、私はそれは繰り返しません。

 だけれども、私は、大臣自身が誤解されているんじゃないかな、こう思うんですね。今紹介した富岡町だって、環境省が直轄でやっているんですよ。そして、細野大臣の時代に目標とした、まずは五割下げるということを実際にやり切ったと喜んでいる。だけれども、まだまだ部分的に高いよと現場で必死にやっている方たち、そういう方たちに対しても、やはり傷つける、謝罪するべきではないかと思います。

 また、中間貯蔵の予定地がある大熊町の皆さんは、去年も会いましたし、先週も会いました。中間貯蔵がなければ除染も復興も進まない、だから仕方ないと思うと受け入れる覚悟をしているんです。今、二千三百六十五名の地権者のうちまだ二%、四十四人しか同意がとれていないといいますけれども、でも、一年前お会いした人たちが、ことし、先週会ったときも、まだ何にも言われていないと言うんですよ、環境省から。そうおっしゃっているんですよ。協力しようと思っているのに、環境省の高飛車な態度が許せない、我慢できない、そうもおっしゃっています。

 大臣は、帰還が進まないのは、被災者がむちゃな要求をしているとでも思っているんですか。それこそ誤解ではありませんか。被災者の気持ちをちゃんと受けとめると、はっきりお答えください。

丸川国務大臣 中間貯蔵施設についても受け入れていただいていること、本当にこうべを垂れる思いでございまして、必死に努力をしているところでございますけれども、これからもしっかり、先生の御指摘も踏まえて、福島の皆様の思いに向き合ってまいりたいと思います。

 ありがとうございます。

高橋(千)委員 引き続き、大臣がこれから本当に言葉どおりやっていけるのかどうか見ていきたいと思います。私は、大臣としていかがなものかと思っております。このことは指摘をしていきたい、そのように思います。

 次に、賠償の問題について伺います。

 二月五日、東電は、浪江町の住民一万五千七百八十八人が慰謝料の増額を求めた申し立てに対するADR、原子力損害賠償紛争解決センターの和解案を拒否すると、何と六回目の拒否の回答をしてきました。申し立てから三年近い歳月が流れ、既に四百四十人以上の町民がお亡くなりになっています。

 浪江町は、平成二十五年、二〇一三年の五月に、町が代理人となって申し立てを行いました。この申し立ての内容は、三・一一から除染が完成するまでの間、中間指針による慰謝料月額十万ないし十二万に加えて、一律月額二十五万円を求めるという内容でした。和解案は、将来分は含めない、平成二十六年二月末日までとし、しかも、加算するのは一律五万円です。求めていた水準から見ると極めて低いんです。ですが、町はそれを受諾したんです。それなのに、何でこうなっているんでしょうか。

 原発事故被害地で、帰還困難区域の総面積の五三%以上が実は浪江町であります。そして、その区域は町の総面積の八割以上に当たります。ADRの和解案提示理由書では、「行政区毎のまとまった集団避難を行うことができず、避難先は分散し全国各地に及んだ。また、世帯全員で避難を行うことができなかった者も多く存在している。」事故前は七千七百世帯だったのが一万七百世帯までふえているんですね。それだけばらばらになっているということなんです。こうした状況を考慮して、繰り返し、和解案提示理由補充書、求釈明書、勧告などを重ねて出しているんですね。

 東電の廣瀬社長に伺います。なぜこうした第三者の和解案を拒否するんでしょうか。

 パネル四を見ていただきたいんですが、既に有名になっていますが、東京電力の損害賠償に関する「三つの誓い」、「最後の一人が新しい生活を迎えることが出来るまで、被害者の方々に寄り添い賠償を貫徹する」、いい言葉ですね。そして三つ目、「和解仲介案を尊重するとともに、手続きの迅速化に引き続き取り組む」とおっしゃっています。

 廣瀬社長、この誓いは変わってしまったのでしょうか。

    〔委員長退席、平沢委員長代理着席〕

廣瀬参考人 東京電力の廣瀬でございます。

 間もなく、私どもの事故から五年になろうとしております。このような長きにわたりまして大変多くの福島の皆様を中心に御心配、御迷惑をおかけしておりますことを、改めまして、この場をおかりしておわび申し上げたいと思います。

 お答え申し上げます。

 私どもとしまして、東京電力として和解案を尊重するということについて変わりはございません。御指摘のありました浪江町のADRの事案につきましても、この考え方に基づいて今対応させていただいておるところでございます。

 したがいまして、私どもとして、この和解案を全面的に拒否するとしているわけではなく、今もなおまだ和解仲介の手続、そのもとで話し合いが続けられているところでございますし、私どもも、その中で何とか和解に至りたいということで努力しているところでございます。

 私どものこの事案に対する考え方を述べさせていただきます。

 皆様御存じのように、避難指示区域、この中にはもちろん大熊町も含まれますし、もちろん浪江町も含まれておるわけでございますが、この地域の皆様には、これまで精神的損害の賠償ということで賠償を行ってまいりました。ところが、本事案では、その中で浪江町の方たちには慰謝料を一律的に増額するという事案でございます。私どもは、この一律的に増額するということについて、受け入れがたいというふうに申し述べさせていただいているところでございます。

 もとより、個々の事情をしっかりお聞きして、個別の事情をしんしゃくしていくということは必要でございますので、そうしたことを通じて、個々の事情によって賠償を加えていかなければいけないという可能性はもちろんございますので、本事案につきましても、ADRを通じて、そうした個々の事情をぜひお聞かせいただきたい、説明していただきたいということを今お願いしているところでございます。

 それらを通じて、個々の事情をお聞きする中で、賠償を通じて、和解による解決の実現が図られていけばというふうに願っているところでございます。今後とも努力してまいりたいと思います。

 以上でございます。

高橋(千)委員 多分おっしゃりたいのは、集団申し立てだから、個々の事情があるのに一律には受け入れがたいということだと思うんですね。でも、逆なんですよね。個々に事情がありながら、あえて一律に申し立てをしている、その趣旨をちゃんと見てください。それを配慮してADRが和解案を出しているわけじゃないですか。

 昨年の二月のADRの活動状況報告書、これにこんなふうに書いています。「東京電力は、全件に共通する被申立人の立場にあり、本件事故の深刻さ、重大さに鑑みれば、大規模な集団申立てがされることも当然予見し得たことであるから、上記のような集団申立てについても、迅速な解決の実現に向けて積極的な協力をすることが求められる。」当然予定されているじゃないかと。三年待たせる、それで、今になって一律は云々ということではないと思うんですね。

 これはADRに伺いますけれども、二〇一四年の八月四日に、資料もつけておりますけれども、東京電力の和解案への対応に対する総括委員会所見を発表されております。これは別に浪江町に限った問題ではなくて、近時、仲介委員が提示した和解案に対し、被申立人、つまり東電から、その全部または一部について受諾を拒否する旨の回答がされる例が少なからず認められるようになっているという指摘もされて、まことに遺憾であり、強く再考を求めると強調されています。この趣旨について伺います。

田中(正)政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の総括委員会所見でございますけれども、これはもともと、東京電力のホームページにおきまして、「原子力損害賠償紛争解決センターの和解案への当社対応について」との見出しのもと、「中間指針やその考え方から乖離している、あるいは客観的事実からすると事故との相当因果関係が明らかに認めがたい請求については、お支払いした場合、中間指針に基づき賠償を受けられている方との公平性を著しく欠くことになるため、その内容に対しては充分に吟味・検証したうえで慎重に対応する必要があります。ADR手続きにおいても同様の対応をしているところでございます。」と記載されておりました。

 御指摘の平成二十六年八月四日付の原子力損害賠償紛争解決センター総括委員会の所見は、この東京電力の記載を踏まえ、和解仲介手続において仲介委員が提示する和解案に、中間指針等から乖離したもの、あるいは客観的事実からすると原発事故との相当因果関係が明らかに認めがたいものは存しない旨、確認的に改めて表明させていただいたものでございます。

高橋(千)委員 委員長に申し上げます。

 私は、今回、このADRの問題について、室長の出頭をお願いいたしました。事務方でもいいからということを言われて、受けとめていただけなかったんですけれども、所見を伺っているのに、この前段を読んで。これは東電の言い分なんですよ。東電の言い分に対してまことに遺憾であると総括委員会が言っているのに、そこを一切言わないで、東電の言い分だけを答弁しました。承服できません。引き続いて、参考人の問題について御協議いただきたいと思います。

平沢委員長代理 後刻、理事会で協議します。

高橋(千)委員 この問題は、実は、昨年一月二十八日の原子力損害賠償紛争審査会においても話題となっております。

 大谷委員の方から、当時の河北新報の東電副社長のインタビューの記事を紹介して、中間指針は一人当たり月十万円と定めている、公平性の観点から増額は認められない、仮に中間指針が変われば、それに沿った賠償をすると発言している、これはおかしい、あくまで目安であるということで、ここに書かれていなくても、合理的かつ柔軟な対応が求められるということを言っているはずなのだという議論をしているわけなんですよね。その中で、この委員は、東電が審査会の賠償方針をみずからに都合よく利用していると言わざるを得ません、ここまで厳しく指摘をしています。

 あくまでも審査会の中間指針及び追補は目安であって、指針の範囲内でしか賠償しないというのは審査会の意向ではないと思いますが、改めて御所見を伺います。

田中(正)政府参考人 お答え申し上げます。

 原子力損害賠償紛争審査会が策定した指針では、賠償すべき損害として一定の類型化が可能な損害項目やその範囲等を示したものでございますので、指針で対象とされなかったものが直ちに賠償の対象とならないというものではなく、個別具体的な事情に応じて相当因果関係のある損害と認められることがあり得るとされてございます。

 また、指針では、避難指示に係る精神的損害に関して、個別具体的な事情により、指針に明記された損害額の目安を上回る金額が認められ得るとされてございます。

 東京電力におかれましては、このような指針の趣旨に沿って、個別具体的な事情に応じて、相当因果関係のある損害については、指針に明記されていない損害についても賠償を行うとともに、指針に明記された損害額の目安を上回る場合も適切に賠償を行うなど、被害者に寄り添った誠実な対応をすることが重要と考えているところでございます。

高橋(千)委員 ありがとうございます。

 一定の類型化をしたけれども、個別事情を見て対応するべきだという答弁だと思っております。

 それで、もう一度東電に伺いたいと思うんです。

 先ほど紹介した「三つの誓い」を決めた新・総合特別事業計画の中では、「東電と被害者の方々との間に認識の齟齬がある場合であっても解決に向けて真摯に対応するよう、ADRの和解案を尊重する。」とまで言っているんですね。

 だけれども、今の東電の対応は、さっき読み上げられたように、客観的事実からすると原発事故との相当因果関係が明らかに認めがたい請求については、その内容を十分に吟味、検討した上で慎重に対応する必要があると言っているんです。損害がある以上、当然、賠償していくという考えに変わりはないと、これまでも東電はお答えになっております。しかし、その前提に、相当因果関係があり、合理的な範囲内ではあるがと言っている。

 おかしくないですか。つまり、加害者である東電が賠償するべき根拠、相当因果関係があるかないかをジャッジする、これはおかしくないですか。逆立ちしていませんか。

廣瀬参考人 お答え申し上げます。

 ADRも含めてでございますけれども、賠償額につきましては、被災者の皆様から申し立てがあり、私どもがその協議をさせていただいて、合意を得てお支払いをするということでやらせていただいておりますので、私どもが一方的にそれを判断しているということではないのではないかというふうに認識しております。

 まさに、先ほど来出ておりますように、個別の事情をよくお聞きし、そうした中でそれぞれの額をお示しさせていただいて、最終的には、被災者の皆様からの合意をいただいた上で賠償額をお支払いするということだというふうに思っております。

 今後も、引き続き、しっかり個々の事情に配慮をして、丁寧な対応に心がけていきたいというふうに思っております。

 以上でございます。

高橋(千)委員 先ほど指摘をしたように、ADRの、先ほど事務方が答弁をされました。そして、あえて私がアンダーラインまで引いている資料を、下を読まずに、東電の言い分だけを言っているわけですよ。

 これは、「仲介委員が提示した和解案の内容のみならず和解仲介手続自体をも軽視し、ひいては、原子力損害の賠償に関する紛争につき円滑、迅速かつ公正に解決することを目的として設置された当センターの役割を阻害し、」ちょっと省略して、「信頼を損なうものといわざるを得ず、まことに遺憾であり、強く再考を求める」、ここまで言われているんですね。そこを省略して、相当因果関係があれば吟味する、ここだけを言って。なぜ東電がそれをやるんですか。そのためにこうした機関を設けたんじゃないですか。私はそのことを言っているんです。

 仲介委員が指摘をしているのは、それまでは、こうした方針を東電が言うまでは、きちんと和解案を受け入れていた。東電の社員と家族にかかわる手続以外は受け入れていたんです。全部受諾していた。それが急にこうして拒否が目立ってきたということに、自分たちで根拠をつくっている、見ている、やはりこれはおかしいだろうということを重ねて指摘したいと思います。

 ADRの和解案には確かに強制力はありません。しかし、中間指針を決めた紛争審査会も、あるいはADRも、所見という形で、和解案を尊重せよと指摘をしています。まして、日弁連は、繰り返し会長声明も出して、一定期間内に東電側が裁判を提起しない限り、あるいは著しく不合理でない限り和解案が成立したとみなす、そういう法制化が必要という提言さえもしています。

 このような事態を見て、どう解決に向かうべきか、文科大臣と経産大臣に一言だけお願いします。

    〔平沢委員長代理退席、委員長着席〕

馳国務大臣 東京電力には、みずからが表明している「三つの誓い」において掲げた和解仲介案の尊重の趣旨に鑑み、誠意ある対応をしていただきたいと考えております。

 文科省としても、従来から、東京電力に対して、賠償の迅速化や被害者への誠意ある対応等を要請してきております。

 以上、終わります。

林国務大臣 ADRセンターに対する申し立てにつきましては、現在、和解仲介手続が継続中であります。個別事案につきましてはコメントすることは差し控えたいと思いますが、事故の責任を負う東京電力は、事故に係る賠償について最後まで責任を果たすということが大前提でありまして、引き続き、こうした考え方に基づきまして賠償を進めていくべきものと理解しております。

 経産省としても、東京電力に対しまして、被害者の方々の個々の状況をよく伺って、公平かつ適切な賠償を行うことを指導してきております。

 今後とも、東京電力に丁寧な対応を求めるとともに、その対応を引き続き注視してまいりたいと思います。

高橋(千)委員 時間になったのでこれで終わりますが、先ほど総理に答弁をいただいたように、期限を区切って終わることができないということを、この賠償の問題でも除染の問題でも、本当に実現をしていただきたい。きょうは、汚染水の問題も一言指摘をしたかったんですが、時間を守りますので、これで終わります。次にしたいと思います。ありがとうございました。

竹下委員長 これにて高橋君の質疑は終了いたしました。

 次に、河野正美君。

河野(正)委員 おおさか維新の会の河野正美でございます。

 本日は、TPPに関連してお尋ねをいたしたいと思います。

 TPPにつきましては、農業に関する問題が多々報じられているかと思いますが、市場規模的に申しますと、医療や社会保障制度というのが実は極めて大きな不安要因になるのかなというふうに思っております。本日は、限られた時間ですので、医療とTPPという観点からお尋ねをしたいというふうに思います。

 我々おおさか維新の会は、提案型責任政党を掲げて活動をしております。国益に資する建設的な議論ができればと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 まず、安倍総理にお伺いをいたします。

 医療分野では、我が国の誇れる、誰でも、いつでも、どこでも医療を受けられる国民皆保険制度が崩れるのではないかという懸念がございます。弱者、病者の切り捨てにならないかということが心配されております。

 TPP協定締結により我が国の医療制度はどのような影響を受けると考えておられるかをお聞かせいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 TPPに参加をしたときに我が国の誇る医療保険制度に大きな影響があるのではないか、あるいはまた薬価に対しても影響があるのではないか、こんな議論がありました。

 TPP協定には、混合診療の解禁や外国企業の薬価決定プロセスへの介入のような、我が国の公的医療保険制度のあり方そのものについて変更を求める内容は含まれておりません。

 TPP協定は、附属書において医薬品等の薬価を定める手続の透明性を求めていますが、その内容は全て日本の現行制度の範囲内であり、TPP協定によって薬価が高騰することはありません。

 いずれにせよ、国民相互の支え合いにより、誰でも安心して必要な医療が受けられる国民皆保険を達成してきたところであり、今後も世界に冠たる国民皆保険制度をしっかりと次の世代に引き渡してまいりたい、このように思います。

河野(正)委員 既にいわゆる混合診療等々の範囲というのは拡大してきているんじゃないかなと思っております。

 昨年は、患者申し出療養という制度が導入をされております。その際に、がんや難病の患者さん、当事者の方々からは、この制度によって医薬品や医療機器の保険適用が遅くなるのではないか、保険適用がされないものがふえるのではないかといった懸念が示されたかと思います。

 一方で、やはり限られた財政状況の中でしっかりとこういった医療制度を守っていかなければいけないと思うわけでありますけれども、持続可能な国民皆保険制度が守られるのかどうか、塩崎大臣にも伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 今、総理の方から国民皆保険制度を守るということを明言させていただいたわけでありますけれども、患者申し出療養につきましては、困難な病気と闘う患者の思いに応えるということが一番大事で、保険収載に必要なデータとかエビデンスを集積して、安全性、有効性等の確認を経た上で保険適用につなげていくこととしているわけであります。

 このため、申請に当たっては、保険収載に向けたロードマップを記載した実施計画を添えていただかなければならない。そして、保険収載を目指さない医療については申請の対象外とする予定でございます。

 また、制度の持続可能性を高めるために、昨年五月に成立をいたしました医療保険制度改革法においては、国保の財政基盤の強化、後期高齢者支援金の全面総報酬割の導入、そして予防、健康づくりの促進によって医療費適正化等の改革を行ってまいったところでございます。

 今後は、その円滑な施行や医療費適正化の取り組みを着実に進め、今後もふえ続ける医療費を賄う財源としては公費や保険料、自己負担の三つしかないわけでありますから、これをどううまく賄っていくかについて、我が国の財政状況とか関係者の意見をしっかりお聞きしながら、不断の検討を行ってまいりたいと思っております。

河野(正)委員 次に、医薬品について、関連して伺いたいと思います。

 知的財産ルールというのは、最後まで各国の主張が対立し、交渉が難航した分野だというふうに伺っております。

 結果として、データ保護期間は実質八年となり、我が国は現行制度とほぼ変わらないというふうな判断がされるようでありますが、この交渉結果について政府はどのように評価されているのか、石原TPP担当大臣に伺いたいと思います。

石原国務大臣 ただいま河野委員が御指摘されましたとおり、私も、甘利前大臣の報告によりまして、TPPの交渉において大筋合意の直前まで論点となりましたのはただいま委員が御指摘になりました医薬品、中でも特に生物製剤、ワクチンでございますが、これのデータ保護期間の扱いで日本の結果が支持されたというお話もいただきましたけれども、日本が交渉の中で重要な役割を果たしてきたと聞いております。

 アメリカが、委員御存じのとおり、十二年を主張いたしました。一方、オーストラリア、ニュージーランド等々は、ジェネリックの薬を早く使用したいということもございまして、五年で十分と。その主張の中に日本が割って入りまして、日本は医薬品の安全性を確認するという新しい話を両国の争いの中でいたしまして、日本の八年ということで解決をした。

 ですから、これも甘利前大臣の報告にあるように、両国間のバランスをとる内容になっている、こういうふうに認識をさせていただいているところでございます。

河野(正)委員 薬価改定に関連して伺いたいと思います。

 平成二十八年度診療報酬改定は、実質マイナス改定で、薬価引き下げによって本体部分が若干のプラスとなったというふうに聞いておりますけれども、我が党の片山共同代表のコメントにも、薬価はまるで財源が幾らでも出てくる伸縮自在の魔法の箱のようだというコメントがございます。まさに、薬価を下げることでさまざまな帳尻を合わせているような感じがあります。抜本的な対策にはなっていないんじゃないのかなというふうに思っております。

 私は、安倍内閣の政策のさまざまな分野で将来世代に課題が先送りされているんじゃないかと不安に感じているところもあるわけであります。

 平成二十二年に導入された新薬創出等加算というのは、患者側には希少疾病用医薬品の開発を要望する機会となり、製薬業界には新薬開発へのインセンティブをもたらし、実際にドラッグラグを解消に近づけるなど一定の効果があったと評価しております。このパネルにありますように、平成二十二年から始まって七百億、済みません、単位が書いてありませんが、直近では七百九十億円という予算が投じられております。

 具体的に、平成二十六年度薬価改定後の加算額をお出ししております。上位十社を掲示させていただきましたが、ほぼほぼ横文字というか、片仮名の名前が並んでいるということでございます。その多くがいわゆる外資系の企業になります。

 一位、中外製薬という、日本の名前かと思われるかもしれませんが、実はスイスの大手医薬品メーカーであるロシュ・ホールディングの傘下であります。また、アステラス製薬というのが国内企業ということでありますが、このアステラス製薬の株式の五一%を超えるものも外国法人が所有しているということでございます。

 もちろん、患者さんのためになるよいお薬が開発されて我が国の国民が利益を受けるのであれば、外資も内資も関係ないというふうに思います。しかし、それにしても、貴重な社会保障財源が国内で回っていかないということは極めて残念な思いもするところでございます。我が国製薬企業の発展のためにもっと政府に支援できることがあるのではないか、成長戦略の柱の一つを担う製薬産業を後押しする方策というのはないのか、そのようにも思うところであります。

 お示ししましたように、為替による変動要素はございますが、日本はかなり高額で医療機器等々を買っているということになっております。医薬品や医療材料に関しましては、本当にもっと国内企業に頑張っていただきたいと願うところでございます。

 グローバルな医薬品市場において、我が国の企業のみを優遇するような仕組みを設けることは困難であるというふうに承知しております。大きなジレンマを抱えるところであります。そして、極めて難しい問題かと思いますが、政府の認識を安倍総理大臣に伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 新薬創出というのは、いわばさまざまな病に苦しむ人たちに対して大きな治療効果をもたらす新たなお薬でありますから、そうした薬の出現を待っている患者さんたちにとっても、あるいは産業という側面から見ても大変重要だろうと考えております。

 お尋ねの新薬創出等加算は、革新的な新薬の創出の加速や、海外で承認されている国内未承認薬の解消促進等のため、市場実勢価格にかかわらず薬価を維持するものであります。これについては、外資系企業のみならず国内の製薬企業からも、医療上の必要性が高いとされた医薬品の着実な開発に貢献しているとの評価を受けているものと承知をしております。

 委員がお示しになったこのグラフの上位十社の中で残念ながらアステラスしか日本企業がないわけでございますが、実は二十社までいきますと八社の内資企業があって、ベストテンに入れよというお気持ちはもちろん私も同じでありますが、二十までいくと下に八社入っているということでございます。

 国内企業への後押しの御意見とも思いますが、革新的な新薬の創出等については、臨床研究中核病院の承認等による治験環境の整備など、我が国の医薬品の開発に関する環境を整備し、地の利のある国内企業を初めとした医薬品産業の成長に資するよう取り組んでいきたいと考えております。

河野(正)委員 新薬創出等加算は試行ということで導入されたものでありますけれども、国内製薬企業に限らずしっかりと、この制度の恒久化を求める声も聞こえておりますので、よろしくお考えのほどをお願いしたいと思います。

 一方で、市場拡大再算定というルールがございます。今回の薬価改定から導入される特例拡大再算定は、年間で一千億円以上のヒット医薬品では薬価を大きく下げるというルールとなっております。頑張って売った場合に値段を下げられてしまうということになるわけであります。

 さらに、TPPに関する心配事の一つにISD条項というものがございます。TPP締結後、このような薬価改定ルールの変更により損害を受けたとして、海外の製薬企業あるいは投資家から損害賠償請求のおそれがないのでしょうか。石原大臣の見解を伺いたいと思います。

石原国務大臣 TPPの協定におきまして、海外の企業が我が国の国内制度を理由に市場参入ができないとか、その国内制度をISDSにより訴える懸念を持っておられるという御指摘でございますが、ISDSの部分はTPP協定の中の投資のチャプターのところに規定されている仕組みでございまして、委員が御懸念の、我が国が海外の製薬会社などから訴えられるということはないと考えております。

 では、なぜTPPの投資の章に入っているかといいますと、これは逆に、我が国が海外に出ていったときに投資した企業が実際に被害をこうむった場合、相手国の政府にこのISDSを使って訴えることができるというものでございます。

 したがいまして、くどいようでございますけれども、TPPによりまして、外国の製薬企業が単に我が国の市場に参入しにくい、あるいは期待していた利益を得ることができないといったような理由で我が国が訴えられるリスクが高くなるということはないと考えております。ISDSは、むしろ我が国企業が海外で投資活動を行う際の法的安定性を確保するものとして重要な制度であると思っております。

 委員の御懸念等々、医療に従事される方としては当然持たれる懸念でございますので、こういう懸念に対しましてこれからも丁寧に御説明をしてまいりたいと考えております。

河野(正)委員 成長戦略としての観点から、医療関連産業について伺いたいと思います。

 安倍総理の方からいろいろとお話をいただきましたけれども、医薬品産業は我が国の成長戦略の柱の一つとしても位置づけられております。世界で数少ない新薬創出力を持つ我が国にとって、TPPが我が国の医薬品産業の成長にどのようなメリットをもたらすのか、安倍総理に改めて伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 医薬品、医療機器産業は、国民の健康、医療の向上に寄与するとともに、今後の経済成長を担う重要な産業と期待をしています。

 TPP協定のもとでは、医薬品、医療機器の関税が撤廃されます。締約国において新薬のデータ保護期間を五年以上とするなど、知的財産が適切に保護されます。医薬品、医療機器の承認等の手続の透明性、公正性が確保されます。これらの規定は、世界で数少ない新薬創出国である日本の新薬メーカーにとって国際展開を有利にするものと考えられると思います。

河野(正)委員 きょうお話ししてきました製薬企業の中には、関西圏に日本本社を有する会社が少なくありません。大阪という場所は、歴史的に医療にかかわる産業が集積してきた場所でもございます。

 昨年、高視聴率で話題となったドラマにPMDAに似た組織が出てきたので、皆さん、PMDAという機関については御承知の方も多いかもしれませんが、産業の集積による好循環を支える仕組みの観点からも、大阪など地方からの提案に国は柔軟に対応して、国と地方が互いに緊密に連携して取り組むことが、東京一極集中ではない、我が国全体の医療関連産業の発展につながるのではないかなというふうに思います。

 PMDAの大阪移転など、そういったことについて、政府の認識を塩崎厚生労働大臣に伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 先週、松井知事も私どものところにおいでをいただきました。このPMDAの関西支部についてのお話もございましたが、平成二十六年十月に大阪府から、薬事に関する全ての相談を関西支部で実施できるようにという御要望を頂戴いたしたところでございまして、昨年十二月にPMDA関西支部の機能拡充等に関する合意がなされました。本年六月からの実施に向けた準備を進めているところでございます。

 引き続いて大阪府と連携をし、医療関連イノベーションの促進に努めてまいりたいと思っておりますし、また地域の発展のためにも対応してまいりたいというふうに考えております。

河野(正)委員 駆け足で医療とTPPについてお話を伺ってまいりましたが、やはり農業だけでなくて、医療分野でも非常にTPPを不安に思っていらっしゃる方がたくさんいらっしゃると思いますし、くれぐれも、我が国の医薬品等が成長産業になり、そしてなおかつ患者さん、病気で悩む方々が切り捨てられることのないような仕組みをつくっていっていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 私からは以上で終わります。ありがとうございました。

竹下委員長 この際、浦野靖人君から関連質疑の申し出があります。河野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。浦野靖人君。

浦野委員 おおさか維新の会の浦野です。よろしくお願いをいたします。

 本日、私からは、命に関する質問をさせていただきたいと思います。

 きょうは経済等に関する集中審議ということですけれども、やはり人の命が大事に扱われる国じゃないと経済も発展いたしません。そういう観点から質問をしていきたいと思います。

 私のライフワークでもあります子供に関するいろいろな取り組み、安倍総理も、出生率を上げる政策、この国は出生率がなかなか上がらない中でいろいろな手を打っていただいております。しかしながら、出生率をまだなかなか上げることができないのが現状です。そこで、私は、今現在、この国におぎゃあと生まれてきてくれて、国民の一人として授かった子供たちの命を守る政策をもっと進めていただけたらというふうに思っております。

 一つ目の質問ですけれども、子育ての手助けになる施設、認可、無認可を含めて今たくさん日本にはあります。残念ながら、そういった施設で重大事故が発生する、これは毎年毎年発生しております。きのう、きょうでも、子供をお風呂に閉じ込めてパチンコに行っていた方が、これまた残念ながら大阪なんですけれども、いらっしゃいました。例えば、今回は亡くなりませんでしたけれども、無認可の施設とかで亡くなる子供も後を絶ちません。

 こういった子供たちを守るために原因究明をしていこうということで、ガイドラインをつくっていただきました。去年の年末ですね。これはまだ、実は四月に正式なものが市町村、都道府県に届くということで、こういう取り組みをしますよという部分しか各都道府県、市町村には通達は行っていませんけれども、ガイドラインの議論の内容はなかなかすばらしい内容で、この取り組みをしっかりと進めていただきたいと思っております。

 今、いろいろな施設があります。この表のように、特定教育・保育施設だとかさまざまな種類があります。その中で、都道府県が認可する場合と指導監督する場合、この表のように分かれております。指導監督する、そういったところをしっかりと見ていく役割は、最終的にはほとんどの事業は市町村になります。ところが、一番下の、認可を受けていない保育施設・事業、この部分が実は都道府県にとどまっているんですね。

 私はやはり市町村というところがその事業の一番最初のコンタクトをできる行政体だと思っていますので、特に認可を受けていない施設などは行政とのかかわりもなかなかつくれない場合もありますし、その存在すらわからないという施設がある場合があります。そういったところを都道府県がそこまで全部調べて指導監督できるかといいますと、恐らくそれは私は無理だろうと。

 やはり市町村がしっかりと地域のそういう子育て施設に目を張りめぐらせて、重大事故がないかとか、施設の子供にとってその施設は大丈夫なのかというところをしっかりと目を光らせていただかなければならないと思っております。最終的には市町村がしっかりと、この最後の、認可を受けていない保育施設も見ていくというふうにしていかなければならないと思っております。

 非常に残念な事件が私の地元でも一つありまして、つい先日、お子さんが保育施設に預けられて、呼吸をしていないということで救急車で運ばれて、脳死の状態で入院をされました。八カ月の男の子、子供さんだったんですけれども、頑張ったんですけれどもお亡くなりになりました。そういう死亡事故が実はあったんですね。

 ところが、この死亡事故に関しても、都道府県も市町村も、自分たちは関係ない、我々は権限を持っていないから事故についても調べる気はないというふうに答えているんですね。

 そういったことがあると、せっかくこのガイドラインをつくったのに、亡くなったお子さんの命はもう戻ってきません。預けた保護者のお母さんも、恐らく、自分がこんなところに預けてしまったという後悔の念を抱きながら一生を過ごしていく。

 その中で、では我々がするべきことは何かといえば、再発防止です。再発防止をするためにこのガイドラインをつくって、さまざまな事故の情報を集約して再発防止をしていこうというのがこのガイドラインです。そういった、漏れてしまうようなことになるというのであれば、このガイドラインの意味がなくなってしまうんです。

 全ての権限を市町村にやはり最終的には持たすべきだと思いますけれども、どうでしょうか。

塩崎国務大臣 都道府県と市町村の役割につきましては、虐待の問題でも、かなり市町村でないとなかなか見られないというところがあるということは先生御指摘のとおりだと思っております。

 今回、内閣府を中心として、教育・保育施設等における重大事故の発生防止等に関する検討会というのが設置をされて、教育・保育施設等における事故の発生とかその再発を防止するための措置について議論をいただいて取りまとめが行われたわけであります。

 その際の整理は、認可保育所等については市町村が検証を行って都道府県が市町村の検証を支援するという格好、そして認可外の保育施設については都道府県が検証を行うということで、今お話がございました。地方自治体の検証結果については国に報告を行うことなどについて提言をいただいておりまして、今後、このガイドラインについては、内閣府、文科省そして厚労省の三省で、改めて検討の場を設けて中身を詰めていきたいと思っております。

 今お話がありました、認可を受けていない保育施設・事業についての指導監督が都道府県だけじゃないかということでありますが、今回、改めてわかったことは、例えば五人以下の施設の場合には届け出も要らないというようなこともあって、こういうところはちゃんと届け出をしてもらうようにしようということでありますが、今の整理は都道府県にという形になっておるわけでございます。

 いずれにしても、この提言を受けて、今後、地方自治体に対して通知を発出して、重大な事故が起きた際の保育施設等に対する自治体の指導監督が適切に行われることを徹底する、そして地方自治体において適切に事故の検証を行って国に報告することを要請することとしておりまして、こういったことで教育・保育施設等における重大事故の発生や再発の防止にしっかりと取り組んでいかなければならないというふうに考えておるところでございます。

浦野委員 ぜひ、市町村でしっかりと最初から最後までフォローができるような仕組みをつくっていただきたいと思います。そうでないと、今挙げたような事例がもう既にあって、検証がされない。やはり一つでも多くのそういう重大事故が検証されるようにしていかなければなりませんので、よろしくお願いをいたします。

 次に、これは、総理に大変思い切った決断をしていただいた、私が予算委員会で質問させていただいたときに安倍総理が検討しますということで検討していただいて、すぐに実現をしていただいたのが、この一八九、虐待通知番号でありました。

 私は、野党でもしっかりとした政策提言を行えば、この三桁番号のように安倍総理が政治的決断をしていただいてちゃんと対応していただけるという、本当に私にとってはといいますか、野党の政策提言をする側の我々としては非常にありがたい決断だったというふうに思っております。

 今まで総理に直接お礼を言う場がありませんでしたので、この場をおかりしてさせていただきたいと思います。どうもありがとうございます。だからといって、別に与党ではありませんので。野党です。

 虐待は永遠のテーマです。さまざまな議論が今までも行われてきました。その中で、大きな一つの議論の柱に、警察の介入をどうしていくか、そういった議論がこれまでもずっとなされてきたと思います。

 これは、今現在、厚生労働省で把握をしている数です。相談件数も今でもずっと、これは体制が整ってどんどんどんどん、虐待の通知番号もできて皆さんがちゃんと通知をしてくれるようになったというのもありますけれども、ふえていっています。そして、残念ながら、虐待による死亡事故も、この心中以外というところですけれども、増加傾向にあった。少し今は少なくなりましたけれども、それでもゼロというわけにはいきません。

 虐待の死亡事故でそういうことが起こったときに、一番よく児童相談所の皆さんがやはり口にするのは、もう少し早くにこの親子の間に介入ができたら防げたかもしれないという、この一言なんですね。私は、アメリカの制度が万能だとは思いません。しかし、単純明快で、必ず警察が先に介入してまず親子を離す、それからソーシャルワーカーの方々がいろいろと調べて判断をしていくんですね。日本はまだそこまで思い切ったことができていません。

 しかし、虐待の件数がふえていっている、そして虐待によりいまだに亡くなっている子供がたくさんいる現状を見て、警察の早い段階での介入を私はシステム的に取り入れることができないかというふうに思っています。いきなり一回目からは無理でも、どこかのタイミングでやはり警察がしっかりと介入していく。

 もちろん、一一〇番で通報があった場合は警察はしっかりと対応してくれていますし、児童相談所からの協力依頼の件に関してもしっかりと対応していただいています。しかし、その介入の判断はあくまでも児童相談所ですし、児童相談所はやはりでき得れば親子の関係を何とか良好に保ってあげたいという思いもありますから、その良心的な思いが時々対応を後手に回らす結果になってしまうこともあるわけです。

 そういったところに警察がしっかりと介入することによって、児童相談員が家に行ってもなかなか対応してくれない、制服の警察官が行くだけでその対応が変わる、これが現状なんです。

 だから、私は、どこかのタイミングでしっかりと警察が、相談所の判断とかではなく、段階を踏めばその時点で警察が介入するんだという制度にしないといつまでたっても虐待で亡くなる子供は減らない、そういうふうに考えておりますけれども、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 浦野委員、そしてまたおおさか維新の会から建設的な御提案をいただいておりますことに対して敬意を表したいと思います。

 安倍内閣では、昨年末、児童虐待の発生予防から虐待を受けた子供の自立支援に至る一連の対策を強化するため、児童虐待防止対策強化プロジェクトを取りまとめました。その中で、児童虐待が発生した際に迅速かつ的確な対応がとれるよう、児童相談所の体制を強化することとしております。

 確かに、委員がおっしゃったように、児童相談所と両親との間だけで何とか解決しようとすると手おくれになる、他方、直ちに警察というと、親子の関係にひずみが出てくる。ここはまさに、児童相談所がいかに正しい適切な判断を素早くできるかどうかということも重要なんだろうと思います。

 児童相談所と警察が一層緊密に協力するよう、児童相談所から警察への援助要請や、警察から児童相談所への通告が徹底されるようにするなど、相互の情報共有や両者が連携した取り組みを進めていく考えであります。

 今後とも、個々の状況に即して、子供の安全に万全を期すため、児童相談所や警察を初めとする関係機関の一層の連携強化に努めていきたいと思います。

浦野委員 この警察官、警察の介入の議論は、本当に二〇〇四年の児童虐待防止法のときからずっと議論がされてきたことであります。恐らくこれは、議論であればずっと平行線じゃないかなということだと思います。だから、私は、その部分を政府が政策、政治判断できっちり決めていただけたら、救える命が一人でもあればそうですし、本当にたくさんの命が救えるんじゃないかというふうに思っていますので、ぜひまた検討をよろしくお願いいたします。

 最後に一つですけれども、ことし、十八歳からの選挙年齢に下がりました。各党は若い人の政策をいろいろと考えていますけれども……(発言する者あり)では、時間ですので、これはやめます。済みません。

 どうもありがとうございました。

竹下委員長 これにて河野君、浦野君の質疑は終了いたしました。

 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 改革結集の会、鈴木義弘です。

 初めに、通告はさせていただいておりませんけれども、本日、内閣府から四半期別のGDPの速報値が発表されました。実質成長率が前期比で計算すると〇・四%減、年間換算で一・四%減ということで、マイナス成長となったということですね。

 いろいろな施策を組んでいく中で、GDPを一つの基準ベースにしていろいろな国は動いていると思いますので、ちょっと通告にはないんですけれども、今の総理の認識をお聞かせいただければと思います。

安倍内閣総理大臣 アベノミクス三本の矢の政策によって、もはやデフレではないという状況をつくり出す中で、政権発足以降、名目GDPは二十七兆円ふえ、税収も国、地方合わせて二十一兆円ふえたわけであります。企業収益は過去最高となり、倒産件数は約三割減少しました。また、政労使会議の開催などを通じ、好調な企業収益を雇用・所得環境の改善につなげることによって就業者数が百十万人以上増加をしたわけでありますし、有効求人倍率は二十四年ぶりの高水準となっておりますし、賃上げ率は二年連続で大きな伸びとなっているわけでございます。こうした事実をまず踏まえておく必要が当然あるんだろう、こう思います。

 そこで、今般のQEでは、実質成長においては、記録的な暖冬の影響、これが大きかったんだろうという考え方もございますが、記録的な暖冬の影響を背景に、前期比年率マイナス一・四%となりましたが、名目雇用者報酬は前年同期比一・八%増となっておりまして、設備投資も、小幅ながら二期連続のプラスになっているところであります。また、前年同期比で見れば、実質〇・五%、名目二%のプラス成長となっています。

 そしてまた、ここが大切なところなんですが、二〇一五年の暦年で見れば、暦年で見ることが大切なんだと思いますが、実質〇・四%、そして名目では二・五%のプラス成長となっているところでございまして、最近の収益や雇用・所得環境についても、十―十二月期の企業収益は引き続き高い水準になる見込みであります。有効求人倍率は一・二七倍となり、これは二十四年ぶりの水準となっておりまして、改善が続いております。

 こうしたことを総合的に踏まえると、ファンダメンタルズは良好であり、その状況に変化があるとは認識をしていないわけであります。

 今後については、雇用・所得環境の改善が続く中で、各種政策の効果もあって、景気は緩やかな回復に向かうと見込まれます。ただし、中国や世界経済の変動の影響を受けやすい資源国を初めとする新興国の動向や市場の動きを、緊張感を持って注視していきたいと思います。

鈴木(義)委員 ありがとうございました。大体、答弁はわかっていたんですけれども。

 私たち改革結集の会の基本的な考え方は、増税する前に身を切る改革が必要であるという理念に基づいてやっております。

 今はほとんど話題になっていない北海道の夕張市、ここの市長さんというのが、若い方なんですけれども、三郷の出身で、私の出身地なんですね。この市長が、次のように述べているんです。

 行政サービスは空気のようなもの、財政再建団体になった夕張は負担をふやされ、サービスも削減された上、市民は十八年間、ただ借金を返すために暮らすことになりました、もちろん、北海道や国とも協議し、同意をして決めて実行していることです、しかし、私はそのことに恐怖心を覚えました、全市民が借金を返すためだけに働き続けるということのむなしさを誰も何も考えていないんじゃないかと正直に思ったというふうに述べているんですね。

 平成二十八年度の予算の中で、アベノミクスの果実ということで、いろいろな、私たちはばらまきと言うんですけれども、政府側はばらまきとは言わないと思うんですね。行政サービスは空気のようなものになってしまって、最後に残るのは国債という借金だけだ。それで、まあマイナス金利を導入しているのは日銀なんでしょうけれども、カンフル剤を打ったりして、円高だとか株安だとか、経済指標の結果が今、認識は違うといいながら、悪い結果が出始めちゃったということなんですね。

 そこで、安倍総理に以下の質問をしたいんです。

 先日、衆議院に赤字国債の発行を認める法案が提出されたんです。五年間延長しようということですね。二十八年度の予算で、一月五十六万円の稼ぎをしている家があって、九十六万円支出するわけですね。四十万円あたりは借金かその他で、親からの仕送りも含めてなんでしょうけれども、これがいつまで続けられるのかと誰もが疑問に思うんです。

 安倍総理は、直近二回の選挙で経済再生を第一の公約に掲げられて、この道しかないというふうに一年二カ月前に言い切っておられたんですね。では、いつまでにこの目標が達成されるのか。ことしの七月に行われる参議院選挙までなのか、ことしじゅうなのか、来年の消費税一〇%に引き上げるまでにできるのかどうか。

 国は、経済再生が進行していると必ずいい数字を列記しますが、地方や中小零細企業の現状がどのような状況に置かれているのか、総理の御認識をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 経済の状況についてでありますが、先ほど申し上げたとおりでありまして、この二十年間の最大の問題は、デフレ下にあったわけであります。デフレ下にあっては、当然、税収は伸びません。企業の収益も上がりません。賃金も上がらない。

 このいわばデフレスパイラル、マイナスのスパイラルの中に入っていってしまうわけでありますが、我々、三年前に安倍政権ができて、それまで二四半期連続マイナス成長であったものをプラスに変えたわけであります。そして、現在は、デフレではないという状況をつくり出すことができた。

 長い間、名実が逆転をしていました。実質の成長率。普通は、健康な市場であれば、安定的なインフレはあるものであります。それをデフレーターとして乗せれば、名目成長はプラスになって、名目成長が実質成長よりも上に来るわけでありますが、デフレ下はこれが逆転してしまうという状況になるわけであります。これを安倍政権では、まさに正常な状況に戻すことができた。

 先ほど、二〇一五年につきましては、名目で二・五%。御承知だと思いますが、税収は、まさに名目経済が成長しなければ、名目で税収というのはふえていきますから、当然、まず名目、名実を逆転させて、名目成長をしっかりとしていくことが大切であろうと思います。その結果、地方税収も含めまして、この三年間で二十一兆円税収はふえたわけであります。

 同時に、大切な指数というのは雇用であります。政治が、私たちが責任を持たなければいけないのは、雇用をしっかりとつくっていくということであります。世界のどの政府も重視するのはこの雇用であります。

 雇用については、先ほど御紹介をいたしましたように、有効求人倍率、二十三年、二十四年ぶりの高い水準にあって、しかし、これは、ただ平均がいい、東京圏が高くなった結果、平均がいいということではなくて、全国、今お話のあった地方においてどうかということについては、七つの県において過去最高を記録しているわけであります。

 例えば沖縄は、長い間〇・五をずっと切っていたわけでありますが、一に近づきつつあるわけであります。そしてまた、高知について申し上げますと、高知県は、一九六三年に統計をとり始めたんですが、初めて一・〇に到達をしたわけでございます。このように、やっと地方においても、地方税収もふえていますから、景気の温かい風はだんだん地方にも行き渡りつつある。

 ただ、もちろんまだ道半ばではあります。経済というのは、今やグローバルな経済の中で、日本だけがほかから影響を受けずにあるわけではございません。世界経済にも影響を受けるわけでありますが、しっかりと今、日本はこの道を進んでいくことによって、デフレから脱却をして、力強く経済を成長させ、同時に財政再建を目指していきたい、こう考えております。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 そうはおっしゃられていても、先ほど冒頭、お話というより数字を出させていただいて、御認識をお尋ねしたんですけれども、GDPの数字が昨年、ことしもちょっと、年が明けてから少しGDPの数字が下がっていくんじゃないか、年率にすれば一・四%ぐらい減になっていくというような現実の話が出てきているわけですね。

 そこで、いつも話題になっていて、大丈夫だ大丈夫だと。いろいろな方の意見があって、本当にこの国は大丈夫なのかといったときに、GDP比で二四〇%を超える借金国日本というふうに言う人もいるし、日本の台所を見てみても、少しでもスリムにするために、公債の発行に上限をはめて、新規国債の発行額を抑えるということも同時にやっていった方がいいんじゃないかと思うんですね。

 その裏返しとすれば、やはり歳出のところで、先ほど申し上げたように、行政サービスは空気のようなものだというふうに、財政破綻をした、今一万人を切ってしまっている市の市長が述べているんです。だから、そこに危機感を感じないというのは私はちょっといかがなものかなと思うんですね。

 二十八年度の予算を見ても、確かに昨年の二十七年から見れば新規発行額は抑えているんです。でも、実際にそれを、どこを上限にして、今、安倍総理の答弁をいただいておりますけれども、では、経済再生がどこの時点でうまくいったというふうな表現をされるのか、私がお尋ねしている期限を切っていないんです。だから、参議院選挙までなのか、いつまでに経済再生ができましたよという認識をされるのかということなんです。道半ばだというのは私たちは何回も聞いておりますから。

 では、それによってデフレを脱却してインフレになれば、税収が上がって借金をしなくていいんですよ。今まで積み上がった九百兆、地方自治体においては二百兆の、トータル一千百兆の借金がこの世にあるんです。そのほか、第三セクターだとか債務保証だとか債務負担行為で借金を担保しているものを含めていけば、もっとあるんです。

 それで、では地方には、次の埼玉県のパネルを見ていただきたいんですけれども、埼玉県で、財政の健全化のために三年ごとに埼玉県行財政改革プログラムというのをやりながら、約十年間の間で三千八百十億円の県債を減らして、割合でいけば一四・八%、県の職員定数を約千三百四十人減らして、割合でいけば一六・四%減数をして、努力しているんです。

 二十七年度に、まち・ひと・しごと創生推進事業で、地域の元気創造事業の中で交付税に算定する中で、行革努力分として三千億円計上されているんです。埼玉県ではこの行財政改革分として三十億円、二十七年度はいただけたんだそうです。

 そういうふうにやって、市町村、都道府県は努力しているのに、なぜ日本国はどんどんどんどん借金を積み重ねていくのか。誰もが疑問に思うんだと思うんですね。

 二十八年度も同じ三千億の枠です。では、この行革をもっと進めるためのインセンティブを与えるとか、都道府県だとか市町村の取り組みをもう少し情報公開して、頑張っているんですというのを見せて、では、うちもやらなくちゃと。それを裏返して言えば、日本政府もやらなくちゃいけないということだと思うんですけれども、その辺についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

麻生国務大臣 まず、最後の方の、三郷に限らず埼玉県の話について、これを情報公開で横展開するというのは、そういった方向で、世の中で見える化が今進みつつありますので、そういった方向に行っておると思っております。

 もう一つの方の、国の借金と言われましたけれども、国の借金じゃなくて政府の借金ですから、ちょっとそこのところはきちんとしておかぬと、予算委員会ですから。これは政府の借金であって、国の借金とは違いますから。ですから、皆さん方は債権者であって、政府が債務者ですから、そこのところはよく、話が込み入っていますけれども、政府が債務者、国民は債権者ということだけ、ちょっときちんと整理をしておかぬといかぬと思いますので。

 その上で、今、安倍政権になって三年間の間で、少なくともいつかと言われれば、私どもは、目標としては、基礎的財政収支、通称プライマリーバランス、PBとかいろいろな表現をしていますけれども、基礎的財政収支というものの借金というものは、今、二〇一五年でちょうど半分の目標というのを立てて、そこまで達成しました。

 これがまだ、基礎的財政収支ですから、まだ借入金に金利がかかっていますから、それに金利がまだまだふえていっている段階ですから、これをチャラにする、これ以上ふえないというのが、二〇二〇年度にプライマリーバランス、基礎財政収支はチャラにしようという目標を立てておりますので、ここまでいきますと、一応、その努力を継続すれば、借金は少しずつ減ってきているという形になっていくと思う。

 ことし三年間で新規の発行分だけは十兆円減らすことに成功し、GDPが二十八兆、税収が地方税と合わせて二十一兆円ふえておりますので、そういった意味では、確実にその方向に、この三年間で方向はそっちに向いているということだけは間違いないと思っております。

 いつかと言われれば、目安をどこに切るかというのは非常に大きな問題だとは思いますけれども、一応、二〇一五年、一八年の中間目標、二〇年といって、その段階を目安に工程表を立てて今進みつつあろうと思っております。二〇二〇年で少なくともPBバランスが一応チャラになって、これ以上というところに行けば、それはそれなりの成功と言える一つの段階。でも、それでもまだ借金は残っているわけですから、その上さらにやっていかないかぬ。その分はGDPをふやしてやっていかないかぬ。

 ただ、借金の見合う分だけ、御存じのように、会社をやっておられたんでしょうから、借方、貸方でいけば、こっち側には資産があります。ただただ借金だけがあるんじゃなくて、こっち側は資産もありますので、そこの点もちょっと御了解いただければと存じます。

鈴木(義)委員 質疑時間がもう終了しているんですけれども、日本政府というんですか、過去に二回、預金封鎖した経験があるわけですね。昭和の大恐慌のときと戦後の復興期のときに預金封鎖をした経験があるから、これが三回目ないとも限らないというのが、私はあると思うんですね。二回やっているんだから三回目ないということはないんです。

 だから、そうならないようになるべくやはり借金を減らしていって、私たちの時代よりも、子供や孫の時代に誰が払うといったら、先ほど大臣がおっしゃられましたけれども、債務者、債権者と言うけれども、最後はだって、チャラにするのは、国民の預金を全部チャラにするということにならないようにひとつお願いしたいと思います。

 終わります。

竹下委員長 これにて鈴木君の質疑は終了いたしました。

 この際、暫時休憩いたします。

    午後五時五分休憩

     ――――◇―――――

    〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕


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