衆議院

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第16号 平成28年2月22日(月曜日)

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平成二十八年二月二十二日(月曜日)

    午前九時三分開議

 出席委員

   委員長 竹下  亘君

   理事 石田 真敏君 理事 金田 勝年君

   理事 菅原 一秀君 理事 鈴木 馨祐君

   理事 関  芳弘君 理事 平沢 勝栄君

   理事 柿沢 未途君 理事 山井 和則君

   理事 赤羽 一嘉君

      井上 貴博君    石原 宏高君

      岩田 和親君    岩屋  毅君

      衛藤征士郎君    小倉 將信君

      小田原 潔君    越智 隆雄君

      奥野 信亮君    門  博文君

      菅家 一郎君    小池百合子君

      小林 鷹之君    今野 智博君

      佐田玄一郎君    佐藤ゆかり君

      白須賀貴樹君    鈴木 俊一君

      瀬戸 隆一君    田野瀬太道君

      高橋ひなこ君    辻  清人君

      冨樫 博之君    中谷 真一君

      中村 裕之君    長坂 康正君

      根本  匠君    野田  毅君

      橋本 英教君    原田 義昭君

      古屋 圭司君    前川  恵君

      宮川 典子君    宮路 拓馬君

      宗清 皇一君    八木 哲也君

      保岡 興治君    山下 貴司君

      山本 幸三君    山本 有二君

      井坂 信彦君    石関 貴史君

      緒方林太郎君    大串 博志君

      大西 健介君    後藤 祐一君

      階   猛君    鈴木 克昌君

      玉木雄一郎君    中島 克仁君

      中根 康浩君    西村智奈美君

      原口 一博君    福島 伸享君

      浮島 智子君    濱村  進君

      吉田 宣弘君    赤嶺 政賢君

      梅村さえこ君    清水 忠史君

      高橋千鶴子君    足立 康史君

      浦野 靖人君    遠藤  敬君

      松浪 健太君    重徳 和彦君

      鈴木 義弘君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   総務大臣         高市 早苗君

   法務大臣         岩城 光英君

   外務大臣         岸田 文雄君

   文部科学大臣       馳   浩君

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   農林水産大臣       森山  裕君

   経済産業大臣       林  幹雄君

   国土交通大臣       石井 啓一君

   環境大臣         丸川 珠代君

   防衛大臣         中谷  元君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (行政改革担当)

   (消費者及び食品安全担当)            河野 太郎君

   国務大臣

   (一億総活躍担当)

   (少子化対策担当)    加藤 勝信君

   国務大臣

   (地方創生担当)     石破  茂君

   財務副大臣        坂井  学君

   会計検査院長       河戸 光彦君

   会計検査院事務総局第二局長            村上 英嗣君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   田和  宏君

   政府参考人

   (総務省統計局長)    会田 雅人君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 垂  秀夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 相木 俊宏君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    佐藤 慎一君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            山越 敬一君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           石井 淳子君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  三浦 公嗣君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房商務流通保安審議官)     住田 孝之君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    豊永 厚志君

   政府参考人

   (国土交通省自動車局長) 藤井 直樹君

   政府参考人

   (防衛省整備計画局長)  真部  朗君

   政府参考人

   (防衛装備庁装備政策部長)            堀地  徹君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   予算委員会専門員     柏  尚志君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十二日

 辞任         補欠選任

  秋元  司君     白須賀貴樹君

  岩屋  毅君     中村 裕之君

  衛藤征士郎君     今野 智博君

  小倉 將信君     橋本 英教君

  奥野 信亮君     瀬戸 隆一君

  小池百合子君     菅家 一郎君

  小林 鷹之君     辻  清人君

  原田 義昭君     中谷 真一君

  保岡 興治君     八木 哲也君

  山下 貴司君     岩田 和親君

  泉  健太君     階   猛君

  緒方林太郎君     中島 克仁君

  大串 博志君     原口 一博君

  大西 健介君     石関 貴史君

  玉木雄一郎君     後藤 祐一君

  西村智奈美君     鈴木 克昌君

  福島 伸享君     中根 康浩君

  松野 頼久君     井坂 信彦君

  赤嶺 政賢君     梅村さえこ君

  高橋千鶴子君     清水 忠史君

  足立 康史君     遠藤  敬君

  松浪 健太君     浦野 靖人君

  重徳 和彦君     鈴木 義弘君

同日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     山下 貴司君

  菅家 一郎君     宮川 典子君

  今野 智博君     衛藤征士郎君

  白須賀貴樹君     前川  恵君

  瀬戸 隆一君     高橋ひなこ君

  辻  清人君     冨樫 博之君

  中谷 真一君     原田 義昭君

  中村 裕之君     岩屋  毅君

  橋本 英教君     小倉 將信君

  八木 哲也君     田野瀬太道君

  井坂 信彦君     松野 頼久君

  石関 貴史君     大西 健介君

  後藤 祐一君     玉木雄一郎君

  鈴木 克昌君     西村智奈美君

  中島 克仁君     緒方林太郎君

  中根 康浩君     福島 伸享君

  原口 一博君     大串 博志君

  梅村さえこ君     赤嶺 政賢君

  清水 忠史君     高橋千鶴子君

  浦野 靖人君     松浪 健太君

  遠藤  敬君     足立 康史君

  鈴木 義弘君     重徳 和彦君

同日

 辞任         補欠選任

  田野瀬太道君     保岡 興治君

  高橋ひなこ君     奥野 信亮君

  冨樫 博之君     小林 鷹之君

  前川  恵君     宮路 拓馬君

  宮川 典子君     小池百合子君

同日

 辞任         補欠選任

  宮路 拓馬君     宗清 皇一君

同日

 辞任         補欠選任

  宗清 皇一君     秋元  司君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 分科会設置に関する件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 分科会における会計検査院当局者出頭要求に関する件

 分科会における政府参考人出頭要求に関する件

 平成二十八年度一般会計予算

 平成二十八年度特別会計予算

 平成二十八年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

竹下委員長 これより会議を開きます。

 平成二十八年度一般会計予算、平成二十八年度特別会計予算、平成二十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般的質疑を行います。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官田和宏君、総務省統計局長会田雅人君、外務省大臣官房審議官垂秀夫君、外務省大臣官房参事官相木俊宏君、財務省主税局長佐藤慎一君、厚生労働省労働基準局長山越敬一君、厚生労働省社会・援護局長石井淳子君、厚生労働省老健局長三浦公嗣君、経済産業省大臣官房商務流通保安審議官住田孝之君、中小企業庁長官豊永厚志君、国土交通省自動車局長藤井直樹君、防衛省整備計画局長真部朗君、防衛装備庁装備政策部長堀地徹君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局第二局長村上英嗣君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

竹下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

竹下委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。関芳弘君。

関委員 おはようございます。自由民主党の関芳弘でございます。

 きょうは、主に経済そして景気、それをまたよくしていくためにはどうしていったらいいのか、そういう点につきましてお伺いをさせていただきたいと思います。

 私は、サラリーマンを十六年以上してから、この政治の世界に入らせていただきました。私がそのサラリーマンをスタートしたのは平成元年でございまして、本当に、非常に景気がいいというか、特殊な時代だったかなと思います。

 銀行に入って、大阪の難波支店に配属されたわけですが、そのころの景気といいますと、大口定期預金、一千万円を超える定期預金については何と年率金利が八%という、もう今でいえば考えられないような金利でございまして、一億円ぐらいお金を持っていらっしゃる方は働かずともその金利だけでずっと食べていけるんじゃないのかな、そういうふうな時代でございまして、私も、社会人になったばかり、社会人になったすぐのころでございましたから、日本の経済とか世の中というのはそういうふうな仕組みででき上がっているのかなと思ったりもしていたんですが、しばらくしておりますと金利が下がり始めてというふうなところもずっと経験してきたところでございます。

 それで、まず初めにお伺いをしたいのは、その平成元年のころ、日本というのは世界から非常にうらやましがられたと思います。いろいろな指標が非常によかった時代でございましたが、そのときの指標につきまして、主な指標を教えていただきたい。今と比較してどのような数字だったのかな、それをまず一番初めにお伺いしたいと思います。

田和政府参考人 お答えいたします。

 主な指標といたしまして、国際競争力順位、GDP、名目のGDPの順位、それから貿易のシェア、こういったものについてお答えをいたしたいと思います。

 まず、国際競争力順位でございますけれども、スイスのビジネススクール、国際経営開発研究所、IMDという機関でございますが、それが公表しております国際競争力指数によりますと、我が国の順位は、一九九〇年には一位でございましたけれども、二〇〇〇年代以降おおむね二十位で推移をいたしまして、直近の二〇一五年は二十七位というふうになっております。

 ただし、この国際競争力順位を示す指標というのは幾つか公表されておりまして、例えば、世界経済フォーラムの世界競争力ランキングでは、日本は二〇一二年十位から二〇一五年には六位に上昇しておりまして、それぞれの調査の仕方、集計の仕方が異なっていることにはちょっと留意が必要かと思っております。

 それから、日本の一人当たりGDPの順位でございますけれども、我が国の一人当たりGDP、これはドルベースでございます、OECD諸国内の順位は、一九九〇年は八位でございましたけれども、二〇〇〇年代初め以降十位台で推移をしておりまして、二〇一四年は二十位というふうになっております。

 さらに、日本の貿易のシェアでございます。世界全体における日本の貿易シェアを国連のデータでドルベースで確認いたしますと、輸出額と輸入額の合計についての日本のシェア、これは一九九〇年は六・九%でございましたけれども、二〇一四年は三・八%となっております。そのうち、日本の輸出額のシェアでございますが、一九九〇年の七・三%から、二〇一四年には三・四%というふうになっております。

関委員 ありがとうございます。

 この国際競争力が、IMDの数字からいきますれば一位から二十七位。そして、一人頭のGDPの数字も大分落ちまして、もう今はこれは二十位台ですか。そして、貿易シェアについてはもう半分ぐらいになってきた。

 私は、銀行の方で十六年を超えて働いてきたんですが、バブルの崩壊も経験してきましたし、そのときに、私のいました銀行なんかは、東京と大阪の本店以外の全国で何百もある支店全部を売ってしまいまして、証券化してしまいまして、自分の資産としては東京と大阪の本店一カ所ずつまで、どんどんと本当に削減できるところの部分の資産を売っていったりして立て直しを図りました。三人に一人は人を減さないといけない、それを合理化、企画をしろということで、その部署にずっと籍を置いたような形で、本当に苦しかった経験をしてまいりました。

 このような状況、今いろいろな要因でこのようになったと思うんですが、私の政治的な目標、政治家を目指した目標というのは、このレベルをまた本当に世界のトップのレベルに、それぞれの項目をしていきたい、これが私が一貫して持っております政治の目標でありまして、志でございます。それをいかにして実現していくか、それを私は今挑戦し、頑張っていきたいと思っておるんです。

 そのためにはまず分析が必要だと思うんですが、このように世界の順位が、日本が今ずっと落ちてきたその理由について、分析されたその理由をちょっと聞かせていただきたいと思います。

田和政府参考人 お答えいたします。

 国際競争力の順位でございますけれども、我が国の順位が低下した要因につきまして、これは民間の研究でございますけれども、まず、一九九〇年代、これはバブル崩壊の後遺症、それからグローバル化への対応のおくれの中で我が国の順位が下がってきた。それから、二〇〇〇年代以降は、企業の体質強化は順位の押し上げには寄与しておりましたけれども、財政とか国際収支、エネルギー関係などがマイナスに寄与したということで、全体として総合順位が二十位台で推移をしたというふうにされております。また、二〇一五年は、消費税率引き上げの影響を背景に景気が弱目に推移いたしまして、景気との連動が高い指標を中心に順位を押し下げられたというふうに評価がされております。

 また、一人当たりの名目GDPでございますけれども、こちらは、やはり為替レートの影響を受けるために単純な国際比較はなかなか難しいのではございますけれども、一人当たりの名目GDPのOECD加盟国内の順位の低下につきましては、世界経済が成長する中で我が国経済がデフレ状況にあったということで、名目GDP成長率が相対的に低かった。具体的に申し上げますと、世界全体では二〇〇〇年代の十年間は七%の成長をしておりました。一方で、日本はマイナスの〇・五。こういったことがかなり影響したのではないかというふうに考えられております。

 それから、日本の貿易シェアでございますけれども、これも、今申し上げたように世界経済が成長する中で我が国の名目GDP成長率が相対的に低かったということに加えまして、やはり中国などの新興国、アジア新興国の輸出シェアが高まりまして、先進国の輸出シェアが構造的に低下したこと、その中でも日本は他の先進国に比べまして新興国需要の取り込みが不十分であったことや、貿易に関する経済連携、こういったもので出おくれた、さらに、我が国の企業が海外現地生産比率を高める形で稼ぎ方を変えてきたこと、こういったことが挙げられるというふうに考えております。

関委員 たくさんの要因があって、世界的な地位というのが日本は落ちてきているわけですが、それだけでなくて、今や、本当にデフレの状況にだんだんと落ち込んでいって、今一生懸命、そのデフレの状況から脱出しようということでアベノミクスという政策をとって、金融政策、財政政策、そして成長戦略、この道しかないんだという世界にも類を見ないような大胆な政策をとって、今やっとデフレから一歩ずつ抜けていこうとしているような状況でございます。これをもっともっとうまく加速化させて、とどめることなく、時間はかかると思うんです、それをしっかりと成功させるようにしていかないといけないと思うんです。

 そして、その状況が今、いい光がやっと見え始めたというふうなときにおきまして、今この予算委員会でも安倍総理からも何度か、こういうふうに指標がだんだんと回復しつつありますとお話を伺っております。その指標を今もう一度確認させていただきたいと思います。

田和政府参考人 お答えいたします。

 アベノミクス三本の矢の政策によりまして、もはやデフレではないという状況をつくり出す中で、名目GDPですが、二十七兆円ふえまして、税収も国、地方合わせて二十一兆円ふえております。企業の収益は過去最高となりまして、倒産件数は約三割減少しております。また、好調な企業収益を雇用・所得環境の改善につなげることなどによって、就業者数は百十万人以上増加し、有効求人倍率は二十四年ぶりの高水準となり、賃上げ率は二年連続で大きな伸びとなるなど、経済の好循環を生み出しております。また、中小企業の業況判断DIですけれども、安倍政権発足以降、一七ポイント改善をしております。さらに、地方でも有効求人倍率が全都道府県で上昇し、倒産件数も四十三都道府県で減少するなど、全国各地で前向きな動きが見られる。

 ただし、中小企業の中には、大企業等に比べてまだまだ厳しい状況が見られるほか、地域によってもばらつきが見られて、地方によっては経済環境に厳しさがあるというのも事実でございます。

関委員 ありがとうございました。

 私は、今の段階での数字というのは本当に一時的な数字でございますので、目標というのは、また世界に冠たる日本経済まで行くんだ、デフレから脱却するだけでなくて、あのような二十数年前のところまで行きたいんだというところの最終目標があるわけでございますから、今の数字は非常に大事でございますけれども、そのことに対して一喜一憂、議論することも大事ですが、大きな目標に向かってますます進んでいくように頑張っていかせていただきたいと思うんです。

 そのような中におきまして、今よく、マスコミの方がアンケートをとられて、まだまだ景気の回復が実感できないなという声も聞かれてくるのも事実でございます。そこにおきまして、では、それがどういうふうな実態なのかというのをやはり分析する必要があると思うんですね。

 例えば、大企業はどうなのか、中小企業はどうなのか、数少ない企業が大きくなって利益をいっぱい出して、数多いほかの企業は全然利益が出ていなくて、トータルとしたら実際には利益が出ているけれども、本当に恩恵をこうむっている企業は数少なくて、そんな状況でいいのかとか、それが大企業なのかまた中小企業なのか、そういうふうなところをきちんと分析する必要が、やはり手を打っていくときには大事だと思いますので、一般のマスコミがとるようなアンケート調査の結果が実際にはどういうふうな形になっているか、それを今度はお聞かせいただきたいと思います。

豊永政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、大企業、中小企業それぞれの黒字、赤字の法人数についてお答えさせていただきたいと思っております。

 平成二十五年度の実績を見ますと、大企業では黒字法人が約一万六千社、赤字法人が約五千社となっており、七六・三%が黒字法人となっております。一方、中小企業では、同じ二十五年度でございますけれども、黒字法人が約八十万六千社、赤字法人が約百七十五万七千社となっており、三一・四%が黒字法人となっております。

 なお、平成二十四年度と比較しますと、大企業では約二千社、中小企業では約七万一千社、それぞれ黒字法人が増加しております。

 業況感についてのお尋ねもございました。

 小規模企業や個人事業主を主な調査対象とします中小企業景況調査によりますと、平成二十七年十―十二月期の業況判断DIはマイナス一五・一ポイントとなっておりまして、近年マイナス幅が縮小傾向にあるとはいえ、多くの中小企業は厳しい状況にあると考えていると認識しております。

関委員 私は、先日、地元神戸のおすし屋さんに行って、きつねうどんを食べながら大将と話をしておったんですが、すし屋できつねうどんを食べる私も私なんですが、そのときにその大将が言うには、関さん、平成のあのバブルのころ、こういうことを感じたんだと。不動産屋の人たちが物すごく景気がいい、景気がよくなったと言うんだけれども、我々が本当に景気がよくなってきたというのを感じたのは、一年か二年後になってから何となく景気がよくなってきたと感じ始めたと。

 また、おもしろいことに、バブルが終わって、不動産屋の人たちが、業界の人たちが景気が悪くなった、悪くなり始めた、大変だと言い始めているときに、まだまだおすし屋さんは景気がよかったんですって。景気が悪くなったのは、不動産業界の人たちが景気が悪くなってから、やはり一年か一年半後からだんだんと景気が悪くなってきたと。

 いわゆる業種によって、景気が本当によくなる、悪くなるにずれがあるなと。

 また、私が銀行で働いているときにこういう話を聞きました。私は大阪の難波で働いていたんですが、四国の金融機関から問い合わせがあって、今、大阪ではもう土地の値段が下がり始めていますよね、四国では土地の値段はまだずっと上がり続けているままなんですと。土地の値段は上がっているんですけれども、その土地を買いに来ているのは、何と大阪の人たちがいっぱい買いに来てくれていて、その大阪の不動産屋の人たちが言うには、もう大阪で買う土地は終わっちゃった、これからは地方の土地がまだ上がり続けているので、そこのところでいろいろ土地を買っていきたいなと。

 いわゆる、先ほど申し上げた、業種によっても経済の影響というのは、変化があるのは、時間がかかって違いがあるし、また、日本のエリアの中でも、いわゆる場所によって、エリアによるタイムラグというのはあるな。業種によって、エリアによって、タイムラグというのは両方あるんだなと。

 それを考えますに、今も、このアベノミクスで景気はだんだんとよくなっていこうとしている。これもタイムラグがあって、そのタイムラグをできるだけ少なくして、できるだけ早く全国津々浦々、そして全ての業種にという、これをできるだけ早くしていく、早く加速度を上げていく、これが本当に大事なのではないかと私は思っている次第でございます。

 そして、そのためには、次に、ぜひ皆さんに情報をできるだけ全国津々浦々の企業の人にお伝えしていただきたいんです。こういうふうなことをやれば会社というのは経営がよくなるんだ、経済的効果、本当に効果が上がっていくんだ、皆さんの会社も本当にうまくいった人たちの事例をまねしたらどうですかと。情報を共有することによって今まで気づいていないことに気づいて、本当にそのよさというのを自分の会社のところに取り込んで、そして景気回復の波に早く乗っていってください、波乗りに成功してくださいということが必要だと思うんですね。

 国家とすれば、経済産業省がいろいろな手法で情報発信をしてくださっていると思います。これについてぜひ御披露していただきたいと思います。

林国務大臣 関議員御指摘のとおりでございまして、中小企業が景気回復できたというふうに実感するには、やはり赤字の企業を黒字化していくというのが大事だと思っていまして、そういった意味では、この黒字化の好事例を他の企業にお伝えする、やはり広げていくことが必要だろうというふうに思っております。

 具体的には、さまざまな分野で活躍する中小企業の取り組み事例を、はばたく中小企業三百選ということとして今、全国に紹介することにしています。またさらに、よろず支援拠点を拡充しまして、各都道府県におきまして、経営課題に関する相談にきめ細かく応じるということも進めております。

 こうした取り組みとともに、生産性を向上するための新たな支援の枠組みにつきまして検討しているところでございまして、具体的には、各業種を所管する大臣が業種ごとに優良事例を指針化してわかりやすく示す。そして、この指針に沿った取り組みを行う中小企業、小規模事業者に対しまして、固定資産税の軽減措置を含め、金融や税制等で支援をする。同時に、商工会議所、商工会、地域金融機関が事業者に事業計画の策定などを支援する。特に固定資産税は赤字企業にも課税されるために、この軽減措置は黒字化に向けて取り組みを促す重要な制度だというふうに考えております。

 引き続き、全国の中小企業、小規模事業者の方々の生産性向上を支援して、黒字化やさらなる収益力の向上に向けて全力で取り組んでまいります。

関委員 ありがとうございます。

 この情報の共有というのがなかなか本当に実際には難しくて、私も、経済産業省の方で中小企業向けのいろいろな補助金の制度なんかもたくさんつくってくれていまして、経営効率を上げるために投資をやる際にはこういうふうな補助金制度があって、それを使ったら本当に経営効率を上げるための道筋が見えてくるんじゃないですかということでいろいろ話をしながら地域を回るんですが、意外とやはり、みんななかなか知らないんですね。これをいかに広げて本当に持っている力が一〇〇%発揮できるか、そのような状況をつくり上げていくことというのは難しいと思うんです。

 経済産業省、中小企業庁の方でも、白書をつくってくれたり、先ほど大臣が教えてくださったような状況というのはいろいろな形で発信をしているんですが、この発信が本当に行き渡るというところを徹底させるというところが本当は一番私は、経済の発展に貢献していけるようなことだし、そこのところにはもっと我々議員の方も努力するべき項目がたくさん残っているんじゃないのかなと思うんですね。

 これは、このように国がすることだけでなくて、私は企業で働いた経験から非常に感じるんですが、私、一年生のときに難波で外回りをやっていたんですけれども、そのときに、きょうは十億、あしたは十五億、あさっては七億とかと、先輩の外回りの人がおもしろいように案件をとってくるんですね。私、一年坊主で、全然案件をようとらなかったです。何であの先輩はあれだけ案件がとれるんだろう、自分はどうしてとれないんだろう、これは物すごく悩みました。それで、先輩の懐に飛び込んでいって、どうやったら案件はとれるんですかと。一から十まで、もうしつこいなと怒られるぐらい何回も何回も聞いて、その手法というのを身につけていきました。

 最後は、一年間で五千億、案件をたった一人でとってこれて、それはずっと毎年毎年続いているんですけれども、そのときは多分、会社で日本一になれたと思うんです。五千億円、一年間でとってこれまして、一人で。

 そういうふうな、いわゆる営業マン、会社の社員さんの技術の伝播というのが会社の中でしっかりとできていっているか、これは非常に大事なことだと思います。

 こういうふうな中におきまして、例えば、今、お昼御飯の時間になったら、社員さんが一列に並んでずっと黙ったまま、誰も話をせずにスマホをじっと打っている、こういう状況は絶対悪いんだということで、自分の会社ではスマホからガラ携にかえるときにその補助を会社の社長が出してあげるとかいうふうな会社も出てきたり、こういうふうな会社の中での技術の伝播というか、いい点をしっかりと伝えていくという、会社の中の経営という面にこれから力を入れていくようなところにも我々も目を向けていく必要はあるんじゃないのかなと思ったりもしております。

 それで、最後の質問をさせていただきたいと思うんです。

 これはドイツのことについてなんですけれども、ドイツは優良な中小企業が本当にたくさんあるということで、よく話題に上ってきます。いわゆる中小企業が優良な形で本当に経営が成功している、運営が成功しているということで、ミッテルシュタントということでよく話が出たりするんですが、これは何かといいますと、同族経営なんかが多いんですけれども、小さな町に本社を置いて、自社の専門的な機械や部品を購入する企業に対して、徹底的に効率を上げて、世界ナンバーワンだったり欧州ナンバーワンだったりするような企業が非常にたくさんドイツというのは国家全体に点在している。そのエリア、エリアではある程度同じような業種の人たちが集まって、そういうふうな分野ごとの地域ができ上がっている。

 例えば、この間、地方公聴会で私、香川県、讃岐に行かせていただきましたけれども、そこでは、本当に世界的にも有名になってほしいなと思うような讃岐うどん、私もうどんが好きで、いろいろな種類がたくさんあって選ぶのに困ったんですが、二杯も食べさせていただいて、本当においしかった。うどんというのは、何か知りませんけれども頭にも非常にいいらしくて、ひょっとしたら、玉木さんなんかもよく食べていらっしゃるんじゃないかな、瀬戸さんなんかも食べたりしているんじゃないのかな。あれは本当にうれしかった、勉強になりましたし。

 讃岐に寄せていただいたときに、うどんを例にとりましたけれども、ドイツにおきましてはフラウンホーファー研究所というのがあるようでございまして、それはどういうものかといいますと、概要を簡単に申し上げますと、時間が余りないのではしょってお話しさせていただきますが、欧州最大の応用研究機関らしいんですね。ドイツの国内に六十七カ所、研究所が点在して、ばらばらに分かれている。社会に役立つ実用化のための研究をやっている、これが非常に特徴なんですね。

 そして、この研究所の特徴の大きなところは、企業がたくさんお金を出しているということらしいです。企業と、政府の方も、また州政府の方もお金を出すんですが、企業はどんどんお金を出して、地域を六十七に分けて、自分たちの地域は、讃岐であれば例えばうどんですけれども、うどんだけではないですが、うどんを例にとれば、そういうことの研究のために、みんなで一括して、その地域が繁栄していっている。

 ポイントは、全国六十七に分かれていて、全国、地方創生なんかに非常に役立つんじゃないかと思うんですね。

 このフラウンホーファー協会のような研究所、日本では、例えば産総研というのがあるんですが、全国でどれだけに分かれているのかなということを調べますと、十一カ所だったかな、日本の場合は産総研が分かれている。

 フラウンホーファー研究所でございますと、応用・統合セキュリティー研究所においてはミュンヘンにあるし、海洋ロジスティクス・サービスセンターにおいてはハンブルクにありますし、ドレスデンには有機エレクトロニクス・電子ビームがありますし、ベルリンにおいてはオープン通信システム研究所があるということで、こういうふうにばらばらに分かれている。加えて、そこは大学の研究所なんかとも非常に有機的につながっている。

 大学の研究機関なんかも、日本なんかはもっともっとうまく活性化したらいいと思うんですけれども、知財獲得においては、経済産業省が、これはちょっと古いんですけれども、二〇〇五年に発表しているようなものでいきますと、日本の大学特許収入というのは二〇〇五年の時点で名古屋大学が一番らしくて、それは一億円らしいんですね。これはアメリカでいえば七十位ぐらいに当たる、そんな状況らしいです。

 加えて、中国、これは清華大学の教授なんですが、生命科学の羅永章清華大学教授、特許収入は一人で五十二億円、単独で米国六位のMIT全体とほとんど一緒ぐらいだ、こういうふうな感じらしくて、こういうふうな研究者のあり方、また研究機関の場所のあり方、その研究機関をいかにその地域の企業が応援していくかというこのあり方、このドイツのフラウンホーファー研究所とかを非常に参考にしながら、日本はもっともっと効率のいい運営体制を、世界に冠たるものをつくっていくために、これは地方創生、地域を分けて地方の企業と協力しながらやっていくというのができると思うんですが、これにつきまして、石破大臣、ちょっと御意見を賜れればと思います。

石破国務大臣 御指摘ありがとうございます。

 文科省、経産省とも協力をいたしまして、先導的な技術開発プロジェクト、これを毎年二百程度、五年間で千事業やりたいというふうに思っております。

 フラウンホーファーというのは、要は、一九四九年に設立されたもので、歴史と伝統が相当あるわけです。それをそのまままねるというわけではありませんし、あるいは、シリコンバレー・モデルをそのまままねるわけではありませんが、委員御指摘のように、産官学、これがうまく連携をし、それに金融機関が絡んでくるということだと思います。

 ですから、そういうプロジェクトに対して、いろいろな支援はいたしてまいりますが、新型交付金というようなものをそれにいかに御活用いただくかということなのです。国の仕組みがこうだからそれにのっとってやるんだということではなくて、そういうものをつくりたい、新型交付金を活用してそのような組み合わせをやっていきたいということで、現在、地域しごと創生会議というのをあちらこちらでやっておるわけでございます。

 もちろん、イノベーションコンソーシアムですとか、人材を糾合したグローバルネットワーク協議会、そういう仕組みはつくってまいりますが、それぞれの地域地域においてどのように連携をするかということは、政府がこうだからこうだということではなくて、地域地域の創意工夫ですし、そこにおいて、委員もお勤めでありました金融機関、これが果たす役割というのは極めて大きかろうというふうに思っておる次第でございます。

関委員 これで質問を終わりますが、世界に冠たる日本の創生、またぜひよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

竹下委員長 これにて関君の質疑は終了いたしました。

 次に、原口一博君。

原口委員 おはようございます。民主党の原口一博です。

 質問の機会をいただいて、本当にありがとうございます。

 きょうは、主権と人権というテーマで少し政府に質問をしたいと思います。

 まず、二月二十二日、委員長御出身の島根県が条例で定めた竹島の日です。資料一はその資料でございます。歴史資料。ごらんいただくと、我が国が世界初、測量をして、そして、竹島は我が国固有の領土である、このことを明らかにするものでございます。

 資料十二をごらんください。

 外務大臣に伺いたいんですが、これは初めて国会で取り上げられたわけではなくて、報道資料をもとに今まで取り上げられてきたんですが、アメリカの開示の外交文書、国務省の文書であります。資料十二。

 これは、アイゼンハワー、一九六〇年代の時代にCIAを通して日本の当時のルーラーパーティーに資金が渡っていた、そして野党を分断するために、左派を分断するために、ここに書いてありますけれども、責任野党をつくるためにお金を渡していたということが書かれているわけであります。

 まず、外務大臣に伺いますが、これはアメリカの外交文書の開示でございますが、外務省としてこの文書の存在を認識しておられますか。

岸田国務大臣 まず、御指摘の点につきましては、そもそも、米国の報道機関の報道で、一九九四年に御指摘のような内容について報道がされたと聞いております。そして、それにつきまして国会においても議論が行われ、当時の河野洋平国務大臣がこれについて答弁をしている、こういったやりとりがあったということについては承知をしております。

原口委員 マスコミ報道で質問しているんじゃないんです、ここは予算委員会ですから。私は、アメリカが開示をした資料に基づいて、これを認識しておられますかということを聞いているわけです。お答えください。

岸田国務大臣 まず、御指摘の文書自体についても、我が国として承知をしております。

原口委員 大変大事な御答弁だと思います。

 きょう、主権について、つまり、我が国の政治が、七年間間接統治を受けました。しかし、統治が終わった後も沖縄政策についてお金を出して、そしてそれが政党に渡っていた。これは、詳しく見ますと、アメリカのビジネスマンからもらったような形をとって、そして政党に流れていたと書いてあるわけです。これはエディトリアルノートと書いてありますから、恐らく編集後記と訳すんでしょうか。麻生大臣に後で伺いますが、この前に本文があると思うんですね、何をどうやっていたかという詳しい文があって、そこはまだ開示をされていなくて、こういうものがあるわけです。

 麻生財務大臣は総理も経験なさいましたけれども、少なくとも主権を回復した後の日本でこういうことが行われていたということについて、通告していなくて申しわけありませんけれども、どうお考えか後でお聞きします。ちょっと考えておいていただければと思います。

 さて、もう一点確認しますが、ロシアです。

 外相、今、安倍総理は訪ロを検討されて、日ロ首脳会談、これは私も総理特使として野田内閣のときに行きたいということで、岸田外相は当時国対委員長でしたかね、お願いをしたことがありました。結局かないませんでしたけれども、私たちも、平和条約そして北方領土の返還、これを求めてまいります。その立場で少し伺いたいと思います。

 昨年の十二月一日、ロシアの国防相が、我が国固有の領土である北方領土の軍事区画化について述べています。これは大変深刻なことだと思います。漁船が我が国の公船に当たった、これも大変なことですけれども、我が国固有の領土に軍事区画化が進む、こんなことは絶対容認できないと思いますが、外務省はこれに対して、いつ、どのような対応を行ったか、抗議のレベルと日時をお示しください。

岸田国務大臣 まず、御指摘のショイグ国防大臣のこの発言ですが、十二月一日、ロシア連邦軍の会議の中で、択捉及び国後の施設整備について言及したものであると承知をしております。

 それを受けまして、十二月四日の日ですが、当方ロシア課長から在京ロシア大使館の次席公使に対し、このような発言は我が国の立場とは相入れず遺憾である、こうした申し入れを行っております。

原口委員 そんなレベルでいいんですか。しかも、十二月一日から四日まで三日かかっているじゃないですか。私は改めてほしいと思いますね。これはもっと高いレベルで。それは、訪ロを検討していたら波風立てたくない、そういう思いもわかりますよ。しかし、軍事区画化ですから、そんな簡単な話じゃないということを申し上げます。

 資料十一をごらんください。

 これは、先日、我が外交・安保部門会議、民主党と維新の合同部門会議に外務省から渡された資料ですけれども、資料十一、第二次チェチェン侵攻とあります。

 我が国は、今、ロシアに対して制裁を行っていますね。制裁を行っている国に、その首都かどこかわからないけれども、総理が行かれて首脳会談をする、これは非常にレアだと思います。

 チェチェン侵攻、これは外務省の認識でいいですね。

岸田国務大臣 済みません、チェチェン侵攻は外務省の認識でいいですねという御質問ですが、要するに、侵攻についての認識をお伺いになっておられるんですか。(原口委員「いや、チェチェン侵攻というふうに外務省は考えているのかと」と呼ぶ)用語としてはチェチェン侵攻という言葉を使っております。

原口委員 麻生元総理、今の答弁を聞かれてどうですか。私、それはちょっと問題答弁だと思いますよ。

 チェチェンというのはロシアの中の国じゃないんですか。違うんですか。そして、私たちはチェチェン紛争というふうに認識していますけれども、外務省は、つまり侵攻ということは、覚えておられますか、ソ連がアフガニスタン侵攻、あるいはクウェートに対するイラクの侵攻というのがありました。他国に対して武力をもって攻撃をしていくということが侵攻だと思うんですが、外務省は、今御答弁ありましたけれども、ロシアが他国であるチェチェンに侵攻した、こういう認識ですね。

岸田国務大臣 まず、侵攻という言葉ですが、侵攻という言葉については確定した定義があるということは承知はしておりません。

 そして、チェチェン共和国、これは、我が国としてロシア連邦の一部であると認識をしております。そして、その上で、軍事力をもってチェチェン共和国に侵入したことを示す意味で侵攻という言葉を使っていると承知をしています。

原口委員 私はそれは認められないと思いますよ。私たちも政権におりましたから、こういう言葉は非常に大事に使ってきました。他国でない、自国の中に軍事力を、それは紛争ですから軍事力を行使したでしょうけれども、攻め入っているということは他国だという認識じゃないですか。本当にそれでいいんですか。

 後で大変なことになると思いますから、委員長、ちょっと整理をして、外相、落ちついて答えてください。

岸田国務大臣 まず、基本的に、この侵攻という言葉について確立した定義があるとは承知していないということは先ほど申し上げたとおりであります。その上で、我が国としましてチェチェン共和国についてどう認識をしているかということについて申し上げさせていただきました。

 チェチェン共和国はロシア連邦の一部であると我が国は認識をしております。そして、ロシア軍が軍事力をもって侵入した、こうしたことを示す意味で侵攻という言葉を使っていると承知をしています。

原口委員 とても認識できませんね。インベージョンでしょう。つまり、他国に攻め入っていると日本政府が認識をしている。私は、そういう一つ一つの、政治は言葉ですからね、定義はわからないけれどもこういう言葉を使っているというのは、とてもではないけれども認められません。

 また、北朝鮮の核実験についても、事前通告の有無を聞きました。これは私たちに教えるのに二週間かかったんですよ、事前通告があったかなかったかも。猛省を促したいというふうに思います。

 さて、安倍政権の一つの特徴は、今回、アーミテージさんやラムズフェルドさんに叙勲をなさったということですけれども、私はそのことが是か非かということを言うわけではありませんけれども、大変な勢いでFMSを伸ばしておられますね。

 FMS、フォーリン・ミリタリー・セールスといいます。これは私、当選当初からずっと指摘をしてきました。アメリカの有償軍事援助というんですね。アメリカから日本に対してさまざまな兵器を、嫌だったら断っていいよ、前金をよこして、後で売ってあげるよという制度です。

 皆さんのお手元の資料をごらんください。FMSについて、きょうは会計検査院に来ていただいていますが、資料二、数次にわたって会計検査院は掲記事項を出していますね。五次にわたって、平成九年から二十六年まで、資料二に書いてありますこういう掲記事項をやっている。

 そして、後ろの資料をごらんください。資料三、こういう改善の処置を促したもの。資料四、これは皆さんごらんになったら驚きますよ、対戦車ヘリコプターに装備する七十ミリロケット弾の調達が行われていない。対戦車ヘリなのにロケット弾がない。あるいは、四ページをごらんください。七年たっても八年たっても、お金は払っているのに武器が来ない。こんなものですよ。それが今も続いていて、しかも安倍政権は、皆さんのお手元にあるように、大幅にFMSを伸ばしています。

 会計検査院、この資料二の指摘項目、これが事実かどうか教えてください。

村上会計検査院当局者 平成九年度から二十六年度までの間の決算検査報告におけますFMS調達に関する掲記資料は、資料に記載のとおりということでございます。

原口委員 資料二が確認できました。

 そして、防衛大臣に伺います。

 皆さんは、資料五にあるように、FMS、私たちのときは五百六十九億、麻生内閣もそうですね、六百億とかそんな額だったのを、一挙に四千七百五億まで去年ふやしておられます。約十倍なんですよ。これは次の年度にまた減らせるかというと、そうじゃないですね、多年度の契約になるから。ことしの、平成二十八年度予算総額を防衛大臣、お答えください。

中谷国務大臣 平成二十七年度は四千七百五億円となりまして、平成二十八年度予算におきましては約四千八百五十八億円を見込んでおります。

原口委員 その内訳は何ですか、四千八百五十八億の。

真部政府参考人 二十七年度予算においては四千七百五億円となっておるところでございまして、FMSの調達額ですが、それについての内訳といたしましては、増額の要因といたしましては、V22オスプレイ六機分、イージスシステムの調達に必要になる経費、戦闘機のF35Aの六機分、それから早期警戒機等々でございます。

原口委員 二十八年度を聞いたんですけれどもね。今、二十八年度予算を審議しているわけですよ。真面目に答えてほしいと思いますよ。二十八年度予算を審議していて、何で二十七年度を答えるんですか。

 資料六をごらんください。

 未納入額です。これだけのものがずっと未納入なんですよ。それで、この額を聞いていると、これは本当の額ですか。違うでしょう。私たち国会に出している額、これは目の子の額じゃないんですか。

 河野大臣に、FMSを行革担当として検査してくださいということで、御指示を出していただいていると思いますが、そのことについてお答えください。

河野国務大臣 いつでしたか、本会議場でFMSについて御示唆をいただきましたので、防衛省その他に今調査をさせております。

 例えば、この資料六の中にあります代表的な未納入案件、垂直発射装置等、十六億円とあります。実は、この中で未納になっているのはおよそ二百万円の部品でございまして、本来なら、それを二百万円と計上すべきなんだろうと思います。残念ながら、今のシステムではその細かいものの積算ができないので、未納のものがあれば、そのシステム全体を未納として計上している。つまり、二百万円が未納になっていても、計上額は十六億円となっておりまして、これは、おっしゃるとおり、余り適切な計上とは思えません。

 防衛省は、そうしたシステムの中の部品一つ一つを、きちんと在庫を確認するシステムがありますから、そのシステムときちんと接続をしてこのFMSの未納金額が幾らになるかというのが的確にわかるようなシステムの構築に向けて、今、防衛省で作業をしてもらっているところでございます。

原口委員 ありがとうございます。

 今おっしゃったのは、「あきづき」型護衛艦の垂直発射装置等ということですね。

 こういうのはなくていいんですかと聞くと、いやいや、在庫がありますから大丈夫ですと言うわけですよ。そして、いやいや、もう先生が指摘してくれたから、今は全部入っていますと。本当にずさんそのものなんですよ。前回の安保特で、私は弾薬の管理が、中谷大臣、ずさんで、どこからどこまで弾薬があったかどうかわからない。テロと闘っているんでしょう、私たちは。ミサイルの納入がどれだけになっているかとか、部品が何かがわからないというのはどういうことですか。

 後ろの資料をごらんください。

 私たちのときは、いろいろな行政改革レビューでここはさんざん検討して、随意契約ができないように指示をしてきました。

 資料の十三、十四をごらんください。

 きょうはちょっと資料が多くて恐縮ですが、平成二十四年度の行政事業レビューシートです。これは、二十四年、二十五年、二十六年、二十七年もほぼ同等のことが書いてあるわけです。

 十三の三をごらんください。

 落札率。見てください、これを。九九・八、九九・八、九九・八、これは本当に落札ですか。こういうのを不正がなかったと言えるんですか。これはとんでもないと思いますよ。数次にわたって指摘をしているにもかかわらず、変わらないじゃないですか。ほとんど一者応札でしょう。

 これは、二十七年の事業レビューを見ると、もっとすごいですよ。公募をかけたけれども随契になったと。入札すらしていないんですよ。

 中谷大臣、私は、防衛省あるいは自衛隊の皆さんに少しでも安全にやっていただきたいと思います。ヘリコプターがおりるとき、下が見えないから事故も起きています。同じお金があるんだったら、下にカメラを備えつけて安全におりられるようにしたらいいじゃないですか。こんなふうにやっていたら、費用対効果、正しい予算の執行はできないと思うんです。

 麻生財務大臣、こういう予算をどう査定されているんですか。こんなことを毎回やっている予算を認めているんですか。とても認められないと思いますが、中谷大臣、お答えください。

中谷国務大臣 弾薬についての御指摘がございましたけれども、調達におきましては、仕様の特殊性等から市場価格がなく、一者応札となっておりまして、結果としては随意契約を締結する場合もございます。

 この際の価格につきましては、構成する材料費、加工費、経費に総利益などを積み上げて計算する原価計算方式によりまして、過去の契約実績、経済指標、企業見積もり等を防衛省において精査した上で計算を行っておりまして、その結果として落札率が高くなる場合もございます。

 しかしながら、防衛省としましては、価格算定の適正化を図るために、企業と適切に商議を重ねるとともに、コスト情報のデータベース化、これらの数値を用いた統計的な分析によるコストを推定評価する手法の確立などに取り組んでいるところでございます。

原口委員 そんなのでこれは説明できますか。一般競争入札をやっていないということじゃないですか。もう一回答えてください。今のでは納得できませんよ。

中谷国務大臣 弾薬でありますので、その特殊性から市場価格というものがありません。したがいまして、一者の応札となっておりますので、随意契約を締結する場合もございますが、その際も、価格等につきましては、過去の経緯や、また原価計算などにおきまして精査する計算を行っておりまして、こういったことで、データベース化をするとか、また統計的な分析によるコスト推定評価をするなどを通じまして、適正な評価価格で購入しているということでございます。

原口委員 驚きましたね。

 私は総務大臣として入札改革に取り組んできましたけれども、今の大臣のような答弁だったら私は認めませんよ。とても認められない。

 だって、これだけ複数の会社があって、入札しているじゃないですか。この人たちに価格を教えて、そして、これぐらいでやっておきなさい、弾薬は特殊ですからあなたがつくりなさいと防衛省が差配していると言っているようなものじゃないですか。こんなことは許されませんよ。

 河野大臣も一緒に行革にずっと取り組んできましたが、今の中谷大臣の答弁を踏まえて、これは許しますか。

河野国務大臣 春に各省の自己点検並びに公開プロセスがございます。その公開プロセスの中で、一者応札になっているものを省庁横串で行革本部の方からしっかりと見るように、場合によっては専門家を派遣してこの公開プロセスに参加をして、まず見直しをしてまいりたいと思っております。各省の公開プロセスでできないものについては、秋のレビューでテーマとして取り上げてまいりたいと思っております。

 当然、一者応札のものをやろうと思っておりますので、弾薬その他につきましても対象になります。ただし、武器でございますから、何でもいいというわけにはならないと思いますので、その辺の状況をきちんと公開プロセスの中で見てまいりたいと思っております。

原口委員 やるということですね。

 とんでもないことだと思いますよ。しかも、これは、皆さんの政権になって毎年毎年、事業レビューで指摘しているんですよ。指摘していて全く同じことが起きているというのは、直っていないということじゃないですか。

 さて、資料七をごらんください。

 この間の安倍内閣総理大臣答弁です。「オスプレイについても、整備は木更津に移る、そして訓練は九州に移る、まさに運用のみが移るようになった。」と。

 これは、オスプレイ一機百十億。去年より十億高くなっている。四機で四百四十億かと思ったら、そうじゃない。それ以外にも実にたくさんの、留学費用、テキスト代、教材費だけで三十五億円かかるんですね。本当にどんな教材だと思いますよ。それから、システムインテグレーション、日本仕様にするのに約百億円、共同開発等、これを全部入れると三百五十三億円。つまり、機体の本体は四百四十億かもわからないけれども、それと同額ぐらいのお金がかかるというものです。

 この安倍首相の、訓練は九州に移る、これは何が移ったんですか。教えてください。

中谷国務大臣 一月十二日の総理答弁でございますが、この普天間飛行場の辺野古への移設は、現在の普天間飛行場を単純に移設する計画ではなくて、沖縄の負担軽減にも資するものであるということを説明したものでございます。

 この内容、具体的には、面積が三分の一以下になる、そして、空中給油機を十五機移駐する、オスプレイにつきましても、沖縄県外での訓練とか機体の定期整備を進めることによって沖縄の負担軽減に資するということを説明しているものでありまして、訓練は九州に移るという発言は、辺野古移設までの間に普天間に残るオスプレイの沖縄県外における訓練等を着実に進めていることについて、県外訓練を行う場所の例示として九州を挙げたものであると承知をしております。

原口委員 納得いきませんね。

 そんなことは決まっていないでしょう。しかも、我が政権のときは、これは海兵隊ですからね、海兵隊はいわゆる陸上部隊とそれから航空部隊が一体として訓練しなければ訓練できないはずじゃないんですか。そうすると、九州にその両方が移るんですか。

 皆さんは、佐賀空港に移設、一回白紙にするの何のと言っていますけれども、違うでしょう。佐賀空港にもほかの空港と同じように米海兵隊の訓練を引き続きお願いするでしょう。答えてください。

中谷国務大臣 おっしゃるとおりでございます。

 このオスプレイの佐賀の件につきましては、これまでの経緯で、米軍のオスプレイの沖縄県外における訓練等が専ら佐賀空港に集中するのでないかという誤解、懸念がありました。その点につきまして、私の方から、これは米軍のオスプレイによる佐賀空港の利用とは切り離し、要請を行ったということで、全国の他の空港と同様に米軍のオスプレイによる佐賀空港の利用も考慮させていただきたいという説明をいたしたところでございまして、九州ということにつきましては、県外訓練を行う場所の一例として示したものでございます。

原口委員 本当に適当なんですよ。

 皆さんは、佐賀空港にある協定も知らず、風向きも知らず、さっきいらっしゃいました石破さんに、私、あそこの空港がどんな風向きかも言いましたよ。あるいは、中で検討した、そういう形跡もない。もっと言うと、小野寺大臣に至っては、何の紙も持たず、当時の佐賀県知事の古川さんに電話をしている。これは事実ですね。うなずくだけで結構です。うなずかれましたね。(中谷国務大臣「いや、でも、電話したというのは確認していません」と呼ぶ)いや、電話されたでしょう。それは答弁としてありますよ。

 何の紙もなく古川知事に電話をして、佐賀空港移設を小野寺大臣がお願いされた。事実ですか。答弁してください。

真部政府参考人 事実関係として申し上げます。

 今おっしゃったとおり、小野寺大臣から当時電話をしたことは事実でございます。(原口委員「何もペーパーなしででしょう」と呼ぶ)ペーパーがあったか、お手元に何かあったかというところまでは、申しわけありません、私ども事務的に確認はいたしておりません。

原口委員 もう質問できません。だって、これは通告しているんですから。

 あなた方は何回も、ペーパーなしにやりましたと私に答えていますよ。質問時間を浪費するのはやめてください。

真部政府参考人 失礼いたしました。

 紙なしで電話をされたということです。

原口委員 非常に不誠実ですね。通告をしているにもかかわらず答えない。

 ちょっと整理してください。

竹下委員長 理事会で精査いたします。(発言する者あり)

 もう一度、真部整備計画局長、きちっと答弁をしてください。

真部政府参考人 失礼いたします。

 事実関係を改めて申し上げます。

 当時の小野寺大臣は、紙なしで古川知事に電話をしたということでございます。

原口委員 答弁二回、これで約五分ロスしていますよ。こんな委員会質疑、だめですよ。だって、丁寧に通告をして、あなた方とはもう五回も六回もやっているんですよ。こんなことをやるんですか。北朝鮮の事前通告についても言わない。チェチェンについても侵攻が何だかわからない。そして今、事実関係さえ大臣が答えずに、事務方が答えたら二転三転する。とんでもないと思いますよ。

 委員長、理事会で協議をしてください。

竹下委員長 はい、協議いたします。

原口委員 そして、この安全保障については、私たちの本当の独立が守られているのか、私、そう思います。

 我が方が普天間の移設を諦めた、それが資料九にあります。

 つまり、先ほど申し上げたように、沖縄から一定以上離れるとそこで訓練ができないんだ、海兵隊は陸上部隊とそして航空部隊が一体とならなきゃいけないんだ、その訓練じゃなきゃまさに訓練の実を結ばないんだ、こういうことがアメリカから説明があって、そして私たちは沖縄から離れた徳之島も断念をしたわけですよ。この認識はいいですね。中谷大臣、あなた方も同じ認識ですね。

 それと、時間が来ましたので、外務大臣に聞きますが、外務省とか防衛省が総理並びに大臣に説明をしたのは公文書でしょう。その公文書を出してください、この委員会に。あるはずですよ。あなた方は、さっきのCIAじゃないけれども、政権の足を引っ張り、あなた方というのは皆さんじゃないですよ、一部の防衛官僚やあるいは外務官僚がそういう説明をしているじゃないですか。

 中谷大臣には、一体とならない訓練というのはあり得ないという答弁を確認したい。

 そして岸田大臣には、私たちに説明した文書、今、外務省で監察を入れて調べているでしょう、勝手に怪文書を出して総理を惑わせたのかどうかと。そのことについて御答弁をいただきます。

中谷国務大臣 考え方といたしましては、平成二十二年に説明をいたしておりますが、海兵隊は陸上、航空部隊といった各部隊が相互に深い関係にありまして、平素から合同で効率的、効果的に訓練を実施するなど、一体性を維持しております。

 また、県外へ移転する場合におきましても、こういった特性を損なうことの懸念、また練度の低下を来すことの問題点などが生じますので、海兵隊の一部部隊のみを切り離して国または県外に移転することは困難でございますので、運用に支障を来すという結果につきましては、平成二十二年に御説明をしたとおりでございます。

岸田国務大臣 まず、御指摘の文書を出すようにという御指示ですが、ちょっとその点につきましては事前に通告をいただいておりませんでしたので、この文書の取り扱いについて、ちょっと今私から確たる答弁をすることは難しい状況です。

 ただ、一般論としまして、御指摘の点は政府内部でのやりとりであります。政府内部でのやりとりを公にするというのは、一般的には余り適切ではないのではないかと考えています。

原口委員 とても受け入れられませんね。だって、総理や大臣に説明した文書は公文書でしょう。そして、指定期間が外れれば開示をしなきゃいけない。

 委員長にお願いします。

 今私が指摘をした文書を、理事会で御協議いただいて出していただくように。

 そして、これで最後にしますが、きょう主権についてお話をしました。今、放送と人権ということで、表現の自由ということで大変懸念をしています。私たちの時代にも同じ答弁をしたということを大臣が言っているようでありますが、放送法や電波法は、刀は確かにありますよ。しかし、抜かない刀ですし、刀のつかにも手をかけないように私たちは答弁をしてきました。

 表現の自由と、そして人権についての集中審議を求めます。

 そして、表現の自由について理解のない総理がみずから憲法について改正を言われるというのは、私はおかしいと思う。きょう、たまたま宏池会で御一緒した四人の大臣ですが、皆さんおっしゃってください。憲法を語る人は、人権をしっかりとわかって、学んで、そして歴史と正対しなければならない。それが最低の条件です。それができない人が憲法改変を言うということは絶対に認められないということを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

竹下委員長 先ほど御指摘がありました文書につきましては、後刻理事会で協議をさせていただきます。

 これにて原口君の質疑は終了いたしました。

 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 民主党の鈴木でございます。

 一月二十九日、ある意味では衝撃的な、日本銀行開設以来のマイナス金利が導入をされました。通称第三の黒田バズーカというふうに言われておるわけでありますけれども、私は、このことについて黒田総裁そしてまた麻生大臣にも伺ってまいりたいというふうに思います。

 まず最初に、麻生大臣それから黒田総裁にお伺いをしたいと思うんですが、私、一月十二日の財務金融委員会でこのように申し上げました。これは、よいニュースなのか、悪いニュースなのか、国民の皆さんはおぼろげな不安を抱いているというふうに申し上げました。

 きょう出された世論調査、日銀は金融機関から企業への貸し出しをふやす目的でマイナス金利を導入しました、あなたはこれで景気がよくなると期待できますかという問いに対して、期待できるが一〇・〇%、期待できないというのが八二・二%、わからない、無回答が七・八%でありました。

 要は、我が国の経済の状況について、年初来のマーケットの動揺を踏まえて私はお二方にお伺いをしたいと思うんですが、一年四カ月ぶりに一万五千円台を切ったとか、いっときではありますけれども、一年三カ月ぶりに為替が百十一円をつけたとか、やはりいっときではありますけれども、長期金利がマイナス〇・〇三五%まで下がったというこれらの要因をどのように分析されているのか、どう見られているのか、黒田総裁そして麻生大臣にお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 きょうの株は一万六千円ぐらいですか、今。ですから、株が一万四千円になったり一時期二万円つけたりいろいろする、いわゆる上下変動が激しい、ボラティリティーとかいろいろな表現をしますけれども、これはさまざまな要因がありますので、これに対して具体的なコメントをすることはちょっといかがなものかと思いますが、いずれにしても、世界的に、経済に対する、いわゆる危ないんじゃないかなというリスクの回避というものの動きが金融市場全体に広がっていると思いますね。

 そういった意味で、中国がどうなるとか、原油がどうなるとか、米国の利上げがどうなるとか、いろいろな海外要因があるので、日本もそれに合わせて変動が大きいということなんだということは認識をしておりますが、いずれにしても、政府としては、株式市場の動向というものについては引き続き見守ってまいりたいと思っております。

黒田参考人 御案内のとおり、我が国経済の状況を申し上げますと、企業、家計の両部門で所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかな回復を続けております。

 もっとも、本年入り後、原油価格の一段の下落に加えまして、中国を初めとする新興国、資源国経済に対する先行き不透明感といったようなことから、金融市場は世界的に不安定な動きとなっております。

 このため、企業コンフィデンスの改善あるいは人々のデフレマインドからの脱却が遅延するリスクがあるということで、日本銀行は、こうしたリスクの顕在化を未然に防いで、二%の物価安定の目標に向けたモメンタムを維持するため、マイナス金利つき量的・質的金融緩和を導入することといたしました。

 もっとも、国際金融市場では、マイナス金利つき量的・質的金融緩和導入後も引き続き変動が続いておりまして、その背景としては、原油価格下落が続いている、あるいは中国経済の先行き不透明感に加えまして、欧州の銀行セクターに関する懸念、あるいは米国の金融政策の先行きに関する不透明感が高まる中で、投資家のリスク回避姿勢がやや過度に広まっているのではないかというふうに認識しております。

 いずれにいたしましても、日本銀行といたしましては、こうした国際金融市場の変動が我が国の経済あるいは物価にどのような影響を与えるかについては、しっかりと注視してまいりたいと思っております。

鈴木(克)委員 約十日前、二月十二日に、私は財務金融委員会で総裁にこのようにお尋ねしました。いわゆるマイナス金利がどういうような影響を我が国の経済に与えていくのかという趣旨の質問をしたときに、総裁ははっきりと、マイナス金利は所期の効果が出ている、市場の混乱はマイナス金利の影響ではないという答弁をされました。これはお認めになりますよね。

 何が伺いたいかというと、では、十日たった今、これと全く同じ御答弁をされるんですか。そのところをちょっと確認したいと思います。総裁、お願いします。

黒田参考人 このマイナス金利つき量的・質的金融緩和の導入以降、短期、長期の国債利回りは大幅に低下しております。また、貸し出しの基準となる金利や住宅ローンの金利は、はっきりと低下し始めております。

 このように、金利面では政策効果は既にあらわれております。今後、その効果は、実体経済や物価面にも波及していくものというふうに考えております。

鈴木(克)委員 しかし、実際は、金融機関も企業にも国民の間にも、マイナス金利に対する漠然とした不安ばかりが高まっているというふうに思います。

 例を申し上げます。

 金庫が飛ぶように売れている、このような報道がありました。これは、総裁、御存じかどうかわかりませんけれども。新聞によると、ホームセンターで、マイナス金利対策はお済みですか、こういう看板のもとに、いわゆる金庫コーナーがつくられておって、そして、今後に不安を持った中小零細企業の経営者や高齢者がお買いになっているということです。

 総裁、このことを、金庫が売れておるかどうかはともかくとしても、御存じかどうかはともかくとしても、こういう国民の現在置かれておる心境、心理というものに対して、どのように御答弁をされますか。

黒田参考人 御案内のとおり、二〇一三年の四月に導入した量的・質的金融緩和というものでは、大量の国債を買い入れることによりましてイールドカーブ全体を引き下げてきたわけでございます。

 今回のマイナス金利つき量的・質的金融緩和というものも、そのイールドカーブの起点を引き下げることによってさらにイールドカーブ全体を引き下げるということを狙ったものでありまして、先ほど申し上げたとおり、マイナス金利つき量的・質的金融緩和導入後、イールドカーブ全体が下がって、貸し出しの基準金利や住宅ローンの金利も低下しております。

 したがいまして、こういった金利の低下、それは実質金利の低下でもありますけれども、経済活動に対してプラスの効果を持つということを確信いたしております。

 なお、このマイナス金利の仕組みにつきましても、三層構造ということをとることによって金融機関に対する過度な負担が生じないような工夫をしておりまして、その点につきましても金融機関に対して十分な説明をいたしております。

    〔委員長退席、菅原委員長代理着席〕

鈴木(克)委員 きのうの朝の時事放談で、増田元総務大臣と浜矩子同志社大学の教授が対談をされていました。

 まあ、いろいろあります、いろいろありますが、国民の意見として私は御紹介をしたいと思うんですが、お二方のいわゆる対談の状況は、これはもうまともな状況じゃない、マイナス金利は理屈があるが、今やることではない、金利が低いのにさらに低くするのは人の心理を理解していない、低成長下でやることではない、こういう趣旨の討論があったわけですよね。

 もうちょっと続けさせていただきます。

 二十日に毎日新聞に、同じく浜教授がこのように書かれております。

 これまでのところ、日銀のゼロ金利政策は効力があったという反応を全く引き出していない。途中を中略しますけれども、ゼロ金利政策に関しては、机上の筋書きと余りにもかけ離れている。

 金融機関が気前よく貸し出しをふやす兆候は見られない。日本人たちが急に爆買い屋に変身しているわけでもない。一つ例を挙げると、人々は急に百貨店に熱いまなざしを向け始めた。だが、それはお買い物のためではない。友の会方式の積立金が結構な高利回り商品だということに気がついたからだ。

 この賢さには頭が下がる。同時に、この行動は人々がマイナス金利政策に対していかに防御姿勢を固めているかを示している。この調子でいくと、マイナス金利政策は結局のところ、銀行預金を人々のたんすや貸し金庫に追い込んでいくだけのことになりかねない。

 このようにおっしゃっています。

 いろいろ考え方はあるかもしれませんけれども、私は、先ほど、金庫が売れているという状況を踏まえ、このマイナス金利政策というのに対して今国民は明らかに防御姿勢になってしまっておると。それは、総裁が先ほど胸を張って言われた、やってきた政策が間違いないということと私は連動をしないように思うんですけれども、総裁、もう一度御答弁いただけますか。簡単に御答弁をお願いします。

黒田参考人 二〇一三年の四月に量的・質的金融緩和を導入して以降、先ほど申し上げたように、全体として、家計、企業ともに所得から支出への前向きの循環が続いて、緩やかに景気、経済が回復してきているということは事実であります。

 そうしたもとで、企業収益は史上最高のレベルに達しておりますし、失業率も低下して、ほぼ完全雇用といった状態になっております。そうした中で、先ほど申し上げたように、緩やかな景気の回復が続いているということでございます。

 今回のマイナス金利つき量的・質的金融緩和と申しますのは、基本的に、従来の量的・質的金融緩和のいわば量と質という次元に加えて、金利という三つ目の次元を踏まえて、今後とも、二%の物価安定目標の実現を目指して、機動的かつ十分な緩和効果を経済に与えていくということになると思っております。

鈴木(克)委員 さらにお尋ねをしたいと思うんですが、今度は、銀行側がどういうような形になってくるかということを私の悪い頭で想定しますと、貸し出しに回しても利ざやが稼げない、かといって、国債で運用しても、どんどん国債金利が低下していく、たとえマイナスがついても日銀当座預金に置いておいた方がまだましではないか、このような判断が私は働くんじゃないのかなというふうに思うんですね。

 となると、日銀の狙いは全く功を奏していないということになるんじゃないですか。銀行収益は下がり株価も下がるという、マイナスの資産効果になるのではないでしょうか。先ほどの繰り返しの答弁ではなくて、このことについて御答弁ください。

黒田参考人 量的・質的金融緩和のもとで、確かに、貸出金利が低下してまいりましたし、御指摘のように利ざやも縮小してきたわけですけれども、実は、そのもとでも金融機関の収益は拡大しておりました。

 これは、一番大きな要因としては、倒産が激減したために、景気の緩やかな回復のもとで倒産が減ったということで、貸し倒れ引き当ての必要性がだんだんなくなってきたということがございます。それから、金融サービスの収益。さらには、実は貸し出しも、この量的・質的金融緩和のもとで二%台の貸し出しの増加が続いておりまして、特に中小企業向けは、従来マイナスだったんですけれども、二〇一三年半ば以降は中小企業向けもプラスに転じておりまして、足元では多分中小企業向けの方が大企業向けよりも貸し出しは増加をいたしております。

 今後とも、マイナス金利つき量的・質的金融緩和のもとで、貸し出しが増加していくということを期待しております。

鈴木(克)委員 今、総裁は、金融機関の経営状態はよくなってきておる、収益は上がっておるというふうにおっしゃったわけでありますが、確かに、一部それは事実でしょう。

 しかし、今のような傾向でいった場合に、やはり、金融機関の経営悪化というのは、銀行の経営悪化というのは避けられないのではないのかな、私は老婆心ながらそのように思っております。

 それで、お伺いしますが、いわゆる中央銀行と政府は距離を置くべきではないか。これも浜先生の引用でありますから、大変恐縮ですけれども、

 そもそも、今の日本の経済環境が、マイナス金利政策の台本におよそなじまないものとなっているからである。

  日本の預金者たちは長らくゼロ金利政策下の超低金利とともに生きてきた。預金者たちの手にはいる金利はスズメの涙どころではない。ミミズの涙ほどの細々しさになっていた。だからこそ、人々は、もっと貯金しなくちゃと頑張ってきた。それが現実だ。実際に、人々の預貯金はこの間ずっと増え続けてきた。

  こんな状態の中で、今、また預貯金金利が下がりつつある。金融機関は、自分たちの日銀当座預金にマイナス金利がつくことになった。その分、コストが上がる。だから、その分をお客様に対する支払金利の引き下げで吸収しようとしている。その結果、ミミズの涙だった預貯金金利は、ついに蚊の涙ほどしかなくなることとなる。

  こんな仕打ちをされて、人々がどうして大胆にカネを使うようになるのか。なけなしの貯金をはたいて株を買う。そのような行動を、どうしてとれるというのか。人々の状況に目が向いていない。人間がみえていない。だから、現実無視の台本を書く。

 大変厳しいようでありますけれども、私は、ある意味正論だというふうに思うんですね。

 このことについて、総裁、何か御反論がありますか。

黒田参考人 先ほど来御説明しておりますとおり、イールドカーブ全体が低下していく中で、貸し出しの基準金利あるいは住宅ローン金利も低下をいたしております。これまで銀行の融資、貸し出しというものも二%台で増加してきておりまして、そういったことは経済全体にとってプラスであるというふうに確信をいたしておりまして、こういった行動、こういったことが今後とも続いていくものであろうというふうに思っております。

 なお、マイナス金利というものについては、欧州の四中央銀行が既に採用いたしておりまして、異例であることは事実ですけれども、ほかの国で例がないということではございません。ただ、日本では初めての経験でございますので、委員御指摘のようないろいろな国民からの反応というものもあることも事実であります。

 そういった中で、先ほど来申し上げているとおり、実体経済に対するプラスの影響、そして金融機関に対する影響につきましても、三層構造で、実際問題、昨年まで積み上げた二百十兆円の準備預金については従来どおりプラス〇・一%の金利を日本銀行は払っておりまして、限界的な、十兆とか数十兆についてのみマイナス〇・一%という金利をつけることによってイールドカーブ全体を引き下げて、貸出金利を引き下げ、貸し出しの増加、経済に対するプラスの効果というものを考えているということを御理解いただきたいと思います。

鈴木(克)委員 そうしますと、冒頭私、世論調査の結論を申し上げました。多くの国民の皆さんは、総裁から言うと、実態がよくわかっていないんだ、誤解をしているんだ、そういうことになってしまいますよ。

 やはり経済というのは生き物ですよね、もう釈迦に説法ですけれども。国民が今本当に、何か流れがおかしい、一生懸命やったって成果が出ない、そして一生懸命貯金をしても結局金利がつかないということに対して、漠然と不安を持っているんですよ。そして、先ほどの例ではありませんけれども、金庫を買おうということ、たんす預金に回した方がいいんじゃないかと。

 NHKのテレビドラマ、ごらんになったかどうかわかりませんけれども、「あさが来た」というのがありますね。あの加野銀行をつくるときに、あさが何と言ったか。皆さんからお金を預かって、金利をつけてお返しをしていく、そしてそのお金を欲しい方、使う方にお使いをいただくということ。これは、お金を預けると金利がつくというのは、まさにあささんに聞くまでもないというふうに私は思うんですね。

 今回のマイナス金利は、私、大変御無礼な言い方ですけれども、バズーカ砲ではなくて、いわゆる地割れだと思うんですよ。地割れというのは、私の地方でいうと、打ち上げ花火のときに、まあ、たまにでありますけれども、上がらずに地上近くとか地上ではぜてしまう、そういうことがあるんです。私は、今回は明らかに地割れが起きてしまったのではないかなというふうに思っております。

 したがって、そうではないということであるならば、今後国民の皆さんにしっかりと、日銀のみならずやはり政府も説明をしていかなければ、先ほどのアンケートのような結果になり、そして金庫を買いに国民の皆さんが走ることになってしまうのではないか、このことをまさに老婆心ながら申し上げておきたいと思います。

 次に、麻生大臣、申しわけないんですけれども、お聞かせいただきたいと思います。

 株価が上がったのはアベノミクスの成果だという認識かどうかということについてお伺いをしたいと思うんですね。

 なぜそういうことを言うかというと、ここに、内閣官房、内閣府が出した「これまでのアベノミクスの成果について」というのがあります。それから、自民党のいわゆる「数字で見るアベノミクスの成果」というのもあります。

 これに何が書かれておるかというと、特に、さきの内閣官房、内閣府連名の、これまでのアベノミクスの成果ということの中には、経済状況の好転の中で、株価の上昇は二番目に挙げられております。「日経平均株価は、アベノミクスの効果が着実に現れる中で、大幅に上昇。」と、これは赤字できちっと書かれておるんですね。それから、自民党のホームページには、数字で見るアベノミクスの効果としてのイの一番に株価の上昇が挙げられているんですね。

 麻生大臣としては、政策の効果が行き渡っていった結果として株価の上昇という事象が起きたという認識がおありかもしれません。でも、このように、政府や与党は、株価の上昇はアベノミクスの成果だ、アベノミクスのおかげなんだと、くどくなりますけれども、強調されていますよね。ところが、都合が悪いときには、外国に、国外に原因があるんだ、こういうことですよね。だから、これは、どうしてこんなふうに使い分けられるのかどうか、私はどうしても理解できないんです、私の頭では。大臣、いかがでしょうか。

    〔菅原委員長代理退席、委員長着席〕

麻生国務大臣 これは自分で、民間から来ておられますのでよくおわかりだと存じますが、株、先行指標です。先行指標であって、あくまでも実体を確実に示しているかどうかはわからぬというのはこれまでもよくある話ですから。株というものは、その結果として、そういった先行指標として買われているものだというのはもう大前提だと思います。

 したがいまして、今、私どもとしては、数々の経済指標はこれまでに何度となく聞かれておるとは思いますが、少なくとも、経常利益がふえてみたり、また雇用というものが大幅に改善してみたりされるというような、経済のファンダメンタルズがよくなるという現実がこの三年間起きておりますので、その三年間に合わせて、株価は八千六百六十一円でしたかね、あのころは。長いこと八千六百六十一円ぐらいから、少なくとも、一時期二万円ぐらいまで上がったり、一万六千円強ちょっとぐらいのところまで来て、倍ぐらい戻ってきているというのはその結果でありまして、私どもとしては、アベノミクスの一番見やすい、数字としてはわかりやすい数字だと思っておりますから、その株価というものが出てくるのであって、私どもは、今の状況として、市場心理というものは、デフレ経済も戦後初めてなら、もちろんマイナス金利も戦後初めてやっておりますので、いろいろな意味で反応は、いろいろな右往左往されるのはやむを得ないところだとは思わないでもありませんが、私どもとしては、もう少し時間をかけてゆっくり見てしかるべきものだと思っております。

鈴木(克)委員 これもまた世論調査の数字を引用して恐縮でありますけれども、アベノミクスは順調に進んでいるのかという問いに対して、思うという方が一三・三%、思わないという方が七一・九%、わからないという方が一四・八%ということであります。だから、アベノミクスは、これも説明不足なのかはわかりませんけれども、私は、やはり大臣の認識と国民の皆さんの認識というのは少し乖離がある、少しどころじゃないかもしれませんけれども、乖離があるんじゃないかなというふうに思います。

 それで、時間がなくなってしまいましたのでちょっと飛ばさせていただいて、どうしてもお尋ねしたいことがございます。

 まず、マイナス金利というのは、結局的に日本政府を喜ばせるための作戦だったのかという、このことを私、黒田総裁と麻生大臣にお伺いしたいんですね。

 私は、要するに、国債の金利が下がるというのは政府にとっては非常に大きなメリットになってくると思うんですが、今回の一連の動きを見ておると、何かこう、まさにげすの勘ぐりかもしれませんけれども、日本国政府を喜ばせるために日銀がこういう手を打たれたのかなとすら思えてならないわけであります。

 そこで、どういうふうにお伺いしたらいいのかわかりませんけれども、いわば劇薬のような金融緩和政策を次々と投入して、リスキーな年金運用をして、国際経済が不安定化すると為替はすぐに円高に振れ、株価は投機マネーに翻弄される、これがアベノミクスの脆弱な本質ではないんだろうか、このように私は思います。

 そこで、何が言いたいかというと、やはりこれにかわる経済対策を打つ必要があるんじゃないのかなと。私は、日銀はマイナス金利をやはり早く撤回すべきだと思いますし、政府においては、やはりアベノミクスにかわる経済対策を早急に出す必要があるのではないかというふうに思うわけでありますが、その点、大臣、ちょっと御答弁をいただきたいと思います。

麻生国務大臣 先ほど申し上げましたように、また、これまでも財務金融委員会等々で鈴木先生と何回も議論させていただいているところではありますけれども、少なくとも今の世の中では、金がないんじゃなくて需要がないんです。これが一番の問題だと思っております。需要がないから金を借りに来ないということでもあろうと思います。

 今、少しずつ伸びてきているという状況になってきていますので、少し変わってきているんだとは思いますけれども、需要の絶対量が足らぬというところが問題なのであって、金融政策に限界があるというのははなからわかった話ですから、そういったことは我々もわかっております。(発言する者あり)正式な、わかりやすい日本語で、最初からと申し上げた方が蒲郡では通じるのかもしれませんが。

 私どもとしては、そういったことがきちんとわかっている上でやらせていただいておりますので、こういったことに関しまして、今後とも、財政が、金融がというのではなくて、三番目の民間が出てくる番だということは、ことしの一月四日の、経済三団体の長も、いずれも、これまで政府等々にはよくやってもらった、これからは民間の出番だということを表明されておられるとおりなので、私どもは、民間が大いに、これから設備投資等々が出てくることを期待すると同時に、得られている、ため込んでおられる三百四十兆になんなんとする内部留保が賃金等々に回ってくることもあわせて期待しております。

鈴木(克)委員 時間が参りましたので、終わります。

 三大臣、まことに申しわけありません、私の質問の段取りが悪くて。どうしても石破大臣には、アベノミクスが地方に届いておるのか、それにかわって何か対策を打たなきゃいけないのか、その辺のところもお伺いしたかったんですが、まことに申しわけありません。

 以上で終わります。

竹下委員長 これにて鈴木君の質疑は終了いたしました。

 次に、後藤祐一君。

後藤(祐)委員 民主党・維新の党・無所属クラブの後藤祐一でございます。

 きょうは、まず丸川大臣にお伺いしたいと思います。

 きのうの日曜日の毎日新聞の朝刊の一面に、福島での第一原発の事故に伴う除染事業に関しての記事がございました。

 この記事によりますと、二〇一二年度から一五年度に環境省が国の方として実施した本格除染というのは二十九件あるそうでございます、一般競争入札が。ですが、このうち、一者応札、すなわち一つの共同事業体が落札したというケースが、二〇一二年度は九件中三件だったそうでございますが、二〇一三年度から一五年度にわたっては、二十件中十九件が一者応札であったということが明らかになったということでございます。

 かつ、配付させていただいております資料によりますと、この落札率というものも、九九%以上のものが十二件ということで、入札のあり方としてはいかがなものかという事実関係、これについて、まず事実関係について、これで正しいのかどうか、丸川大臣、お願いします。

丸川国務大臣 まず事実関係でございますが、この紙面について、事実と異なっているところは、落札率が九九%以上だったのは、十二件ではなく十件というところでございました。また、環境省発注工事全体の競争入札の落札率八五・二%については、事実を確認している最中でございます。

 それ以外の点については、事実でございます。

後藤(祐)委員 これについては、配付資料の二枚目でございますけれども、環境省入札監視委員会というところが二〇一四年七月に審議をしておりまして、この中でも、もう少し競争性の確保できる取り組みを検討することと、真ん中の意見という欄の真ん中辺にこういう指摘をしております。これを受けて、環境省の回答として、その右の欄ですが、二十六年度は富岡においては一件確かに一者応札でない件があったそうでございますが、二〇一五年度は全て一者応札になっております。

 この環境省入札監視委員会の指摘を受けて余り改善したと思えないんですが、例えば、国が直接やるものではなくて市町村が行っているような除染事業もございまして、これについては地元の業者なんかがやっているものもあるわけでございますね。国の方では六千百億という大変大きな事業なんでございますが、この入札監視委員会の指摘も受けて、これは丸川大臣のリーダーシップで、一者応札にならないような、除染はもちろん大切なことなんですが、こういった大きなゼネコンでないとできないような仕事かといいますと、除染事業自体は、特殊な専門技術ですとかいうものはそれほど必要のない部分が大部分ではないかと思いますので、この入札の改善について大臣は今後どうしていくつもりなのか、御見解をいただきたいと思います。

丸川国務大臣 除染の作業についてまず御指摘がございました。

 作業そのものをどう管理していくかというのが大変難しい点がございまして、二十ミリから五十ミリシーベルトという範囲の中を今除染させていただいておりますが、その中で長期間の作業を行うこと、また、何千人単位という作業員を集めて、被災地内での宿舎や通勤手段の確保というものが必要になるということ、また、被災家屋の個々の状況に応じた手作業での事業で、大変労務管理に多数の監督員を確保する必要があるということなので、なかなか、受注した企業体からも同様の理由で当初の入札参加には逡巡したというふうに伺っております。

 それで、私たちとしても、例えば、入札の参加の要件の緩和を行ったり、あるいは、電子入札を取り入れるなどして、お互い入札のためにぱっと顔合わせして誰がライバルでというようなことがわからないような手続にするなど、工夫をしてきたところでございますが、これからも努力をしてまいりたいと思います。

後藤(祐)委員 現実に改善されていないんです。

 しかも、この一枚目の配付資料を見ますと、これは市町村ごとにゼネコンがもう決まっているんですよ。例えば、飯舘村は五件あったんですが、大成建設が全部やっているわけですね。それぞれの市町村ごとにもう割り振りを決めているといったら、これはある意味談合にかなり近い話になっていて、ゼネコンでないとできないという面がもしかしたらあるのかもしれませんけれども、幾つか競争をしてもらうような工夫というのはあるんじゃないですか。

 今後、改善についての、今の答弁ですと何にもやらないように聞こえますが、せめて一者応札にならないような工夫、大臣としてできないのかどうか、もう一度答弁していただきたいと思います。

丸川国務大臣 我々も工夫を加えたところがありまして、この出していただいている資料にもあるように、二十四年、二十五年はとにかくまず緊急な事業だということで固まりでやったものを、少し小分けにして、結果的に、富岡町の川北地区では、電子入札と分割によって三者及び二者の応札というので複数の応札があったわけでございますが、このような努力をこれからもしっかり続けて、競争性というものが担保されるように努力をしてまいりたいと思います。

後藤(祐)委員 努力だけではなくて、実践に移してください。これは大臣のリーダーシップでできると思いますので。

 次に移りたいと思います。

 この委員会でもるる議論がなされてきました、松本での二月七日の丸川大臣の講演についてでございますが、特にその中で、今まで環境省というのはエコだ何だと言っていればよかったという、これは大変環境省の職員からするとがっかりする発言があったわけでございますが、環境についていろいろお伺いしていきたいと思います。

 まず、大臣に伺いますが、環境の日というのがございます。これは何日か御存じでしょうか。

丸川国務大臣 六月一日でございます。

後藤(祐)委員 六月一日じゃなくて六月五日ではないでしょうか。

丸川国務大臣 申しわけございません。六月五日でございました。

後藤(祐)委員 知らなかったことが明らかになったわけですが、これは単なる一つの日ではなくて、一九七二年にストックホルムで開催された国連人間環境会議というものを記念して制定されたんですが、日本がセネガルと一緒に共同提案をして、最初、国連総会で世界環境デーとして定められたんです。それを受けて、環境基本法をつくるときに、私も、実は当時、通産省で環境基本法の制定を後ろで支えさせていただいたんですが、環境基本法をつくるときに、その条文の中で環境の日として定められた大変貴重な日であって、環境行政をつかさどる大臣が環境の日を知らないというのは大変がっかりであります。

 次に伺いたいと思いますが、十月七日に、大臣就任記者会見で丸川大臣はこのようにおっしゃっておられます。前任の望月大臣は四大公害病の現場を全て訪れられるということがありましたというふうに聞かれまして、どうされるんですかと聞かれて、大臣は、望月大臣が地元の皆様としっかりとおつながりを持とうと努力をされたということに関しては、私もぜひ御指導いただいて、そのような姿勢で臨んでまいりたいと思いますと述べておられますが、この四大公害病の現場、行かれたんでしょうか。富山にはどうも行っているようでございますけれども、そのほかの三つに関してはいかがでしょうか。

丸川国務大臣 御指摘いただきましたとおり、富山にはお邪魔をさせていただいております。また今後お伺いする予定もございますので、望月大臣同様に、地元の方にお伺いしてお話を伺ってまいりたいと思います。

後藤(祐)委員 要するに、三つ行っていないということですね。水俣も行っていないということではないかと思いますが。

 今、指定廃棄物の件も、残念ながら、一番問題になっている宮城には、きのう総理は一回行ったようですけれども、井上副大臣は何度も行かれて、本当にこれは大変な状態になっているわけですよね。これに対して総理は、よくお話をお伺いしてということも言っているわけでございます。

 丸川大臣、何で宮城については指定廃棄物の件でお伺いしないんですかということは、今までも議論になってきたので、これ以上聞きませんが、やはり現場でちゃんとお話を伺ってほしいんですよ。今もそういう意思は示されましたけれども、今までだって、土日を使えば、行くこと、いろいろできたと思うんです。

 水俣病については、私も患者さんの皆様からいろいろ直接お伺いしたりということがありますけれども、丸川大臣、水俣病の患者さんから直接お話を伺ったことはございますか。

丸川国務大臣 現在のところ、ございません。

後藤(祐)委員 エコだ何だの、その前として、環境省ができる前の環境庁が何でできたかというと、やはり公害問題だったんですよ。その公害問題を受けて水俣病訴訟が起きて、大臣、御存じですか、一九九〇年に、当時の水俣病訴訟の担当局長が自殺しているんですよ。

 こういった、当時環境庁においては、この水俣病訴訟というのは大変重大な問題で、かつ物すごく心を痛める問題だったんですよ。それを、水俣病の患者さんから直接お話も伺ったことがない、行ったこともない。そして、今のような事実を御存じかどうかわかりませんけれども、このような状態でいいんですか。

 早速、現場に足を運んで、水俣病の患者さんからお話を伺うということで約束していただけませんか。

丸川国務大臣 具体的に、五月一日には必ずお伺いするということはまず前提に申し上げさせていただきますが、それ以前でも、ぜひ機会を捉えてお話を直接お伺いしたいと思います。

後藤(祐)委員 随分先の話のようでございますけれども。

 大臣、認識がちょっと甘いと思うんですよ。

 松本のときに、環境省というのはエコだ何だと言っていればよかったという御発言をされておりますが、これを受けて、初鹿議員が一回質問をされておられます。これについて撤回しますか、しませんかという質問に対して、大臣は、「環境省の皆様には私からも直接お話をさせていただいて、そしてこれも、また一緒にこれからも仕事をさせていただけるように努力をしてまいりたいと思います。」と、よくわからない答弁をされておられます。

 この環境省というのはエコだ何だと言っていればよかったという発言は撤回いただけませんか。撤回をしないのであれば、今もこの認識だということでよろしいですか。

丸川国務大臣 既に撤回をされた部分に含まれております。

後藤(祐)委員 今のは、既に撤回された部分に含まれているんですか。それは今初めて聞きましたけれども。

 いつの段階でこれは含まれた、どの発言で撤回したことになっているんですか。

丸川国務大臣 私の手元にあるメモによると、とりわけ私、今福島の仕事をしているんですけれどもというところから撤回をさせていただきますということで、せんだって民主党の議員の方から御質問いただいたときに、この部分を全部読み上げてくださったんですが、その読み上げていただいた部分は全て撤回した部分ですというふうに御答弁申し上げております。

後藤(祐)委員 先日の答弁の議事録と今の答弁とよく比べた上で、どの段階で撤回したことになるのか整理していただいて、後日、資料として提出していただけないでしょうか。

 では、今答えられるのであれば、答えていただけますか。

丸川国務大臣 宮崎岳志議員から御質問を受けた際に、宮崎岳志議員が私のコメントを読み上げてくださっています。このコメントについては全て撤回したものですというふうに私は御答弁申し上げております。

後藤(祐)委員 これについては、議事録をよく精査して、後でもう一度確認をさせていただきたいと思いますが、委員長、前回の議事録を出していただいて、今の議事録と比べていただいて、今の答弁が正しいかどうか、ぜひ理事会の方で御審査いただけますでしょうか。

竹下委員長 理事会で協議をいたします。

後藤(祐)委員 環境大臣としていかがなものかという話が続いておるんですが、環境基準と排出基準の違いを大臣はおわかりでしょうか。

丸川国務大臣 環境基準は、環境の状況に対する基準でありまして、排出基準は、有害物質を排出する際にどの程度の排出が許されるかという基準でございます。

後藤(祐)委員 今そこで教えていただいたんですか。

丸川国務大臣 確認をさせていただきました。

後藤(祐)委員 この環境基準と排出基準というのは、まさに環境庁ができるとき、あるいはその前から、一番根本的な、環境庁のあるいは環境省の存在意義みたいなところなんですよ。望ましい基準と個別の工場がこれだけ出しちゃいけないという基準、その違いなんですよ。こんなこともわからないで環境大臣をやっている。(発言する者あり)本当にわかっていたかどうか、今怪しいですよね。まあ、これ以上は詰めません。

 次に行きたいと思います。

 きょうは岩城大臣にも来ていただいておりますけれども、配付資料に、会計検査院と特定秘密の関係について、政府統一見解を配らせていただいております。三ページ目でございます。

 これについては、二月十二日のこの見解の中で、行政機関の長が我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認めたときに限り、行われる、特定秘密の提供は行われるというふうに統一見解ではなされております。

 そして、これを受けて、この答弁は混乱したわけでございますが、三ページ目から四ページ目にかけて、特定秘密の提供が行われないことはおよそ考えられないという趣旨で答弁したというのがこの統一見解でございますが、およそ考えられないということは、今後もこういったことはない、すなわち、我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがあるものを会計検査院が求めることは今後ないということで断言できますか、岩城大臣。

岩城国務大臣 御指摘の取り扱いにつきましては、従来もそういった、実務上提供されなかったことはありませんし、今後も提供されないことはありません。

後藤(祐)委員 今後もありませんと断定されました。

 会計検査院長、きょうお越しいただいておりますが、今後も、我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれのある資料を各行政機関に求めることはないと断言できますか。

河戸会計検査院長 政府統一見解によりますと、会計検査院の検査に必要な資料の提供を特定秘密保護法第十条第一項第一号に沿って検討する際に、我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認めたときという同号の限定が具体的に適用され、その結果、特定秘密の提供が行われないことはおよそ考えられないとのことでございますので、検査に必要があるとして会計検査院が要求した場合には、各行政機関から特定秘密が適切に提供されると考えております。

後藤(祐)委員 答弁が矛盾しています。これは閣内不一致です。

 先ほど大臣は、ありませんと断定されました。会計検査院長は、条件をつけました。これは答弁が違うじゃないですか。まだ質問していませんが、大臣。

 大臣は先ほどはありませんと言いましたが、会計検査院長の答弁はこの紙のとおりの答弁です。大臣の先ほどの答弁は間違っておられるんじゃないですか。撤回されますか。まだ質問しておりません。

 今の院長の答弁と先ほどの大臣の答弁との関係、これを整理していただけますでしょうか。

岩城国務大臣 先ほどの私の答弁がちょっと舌足らずだったかもわかりませんが、特定秘密保護法の施行前から、会計検査院には、安全保障に関するものも含め、秘密事項に関する資料を提出してきたところでありまして、これまでに安全保障上の支障を生じたことはありません。

 したがって、今後も、会計検査に必要な資料を提供することで安全保障上著しい支障を及ぼすおそれが生じることはおよそ想定しがたいということであります。

 私自身、先ほど、提供されないということはない、そういう意味で申し上げました。

後藤(祐)委員 先ほどの答弁は撤回するということでよろしいですか。

岩城国務大臣 撤回といいますか、言い直しをさせていただきます。

 提供されないということはあり得ないということでございます。

後藤(祐)委員 どの答弁を信じていいのか、本当に心配になります。

 では、具体的に聞きましょう。

 およそ考えられない、想定しがたいという答弁でございますけれども、自民党の選挙公約の中には、二〇一四年衆議院公約の中に「わが国の安全に関わる対外的な情報収集を専門的に行うため、国家の情報機能と体制を強化します。」という公約がございます。これを日本版CIAというか、あるいはアメリカのNSAみたいな機関というか、それはいろいろあるでしょう、あるいはそういった機関そのものをつくるか、あるいはもう少しソフトなやり方もあるでしょう。

 仮にこういった情報機関ができた場合、当然、なかなかほかの行政機関には説明できないような、安全保障上の特定秘密に属するような事項をたくさん調べることになるわけです。

 アメリカでは情報機関に一兆円近いお金が使われているとも言われます。実際、アメリカの国会に設けられているこういったものを審査する機関、日本でも情報監視審査会、私、その委員なんですが、これが設置されておりますけれども、こういったものが適切に指定されているか、あるいはお金の使い方が適切か、いろいろ見られるのは、こういった機関があるからなんですね。

 日本版のCIA、あるいはそこまでいかないにしても、自民党の公約にあるような、対外的な情報収集を専門的に行うような、そういった機能が新しくできた場合、会計検査院はこれに関する資料を求めることができるんですか。

 もちろん、これは、我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれが発生し得る情報に関してでございます。これは、会計検査院、求めることはできるんでしょうか。

岩城国務大臣 これまで答弁してまいりましたとおり、会計検査院に、検査に必要として特定秘密の提供が求められました場合には、当該特定秘密が提供されないということは考えられません。

 憲法上の要請に応じて資料の提供を行うことは当然のことでありまして、憲法の趣旨を踏まえ、資料の提供の求めに応じて検査に必要な資料が提供されるもの、そのように認識をしております。

後藤(祐)委員 そうしますと、我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがあるものを提供していただくということですか。

岩城国務大臣 会計検査院から提供を求められました資料につきましては、当然、提供するということであります。

後藤(祐)委員 もう一度確認します。

 会計検査院が我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれのある資料を求めた場合には、提供されるということですね、今の答弁は。

岩城国務大臣 重ねてお答えを申し上げますけれども、会計検査に必要な資料を提供することで安全保障上著しい支障を及ぼすおそれが生じるということは、およそ想定しておりません。

後藤(祐)委員 これまでの話じゃないです。今後の話なんです。

 我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれのある資料を会計検査院が提供を求めた場合、各省は提供するんですか、しないんですか。

岩城国務大臣 おただしのような資料につきましても、それは各行政官庁において提供するということであります。

後藤(祐)委員 これは、特定秘密保護法十条一項に反する解釈でございますが、十条一項との関係はどうなるんでしょうか。

岩城国務大臣 お答えいたします。

 そのような情報の資料でありましても、会計検査院に提供することが安全保障上著しい支障があるおそれがある場合に当たることは考えられません。

後藤(祐)委員 先ほどの答弁と今の答弁は全く関係ないことを言っていて、整理されていないんです。

 我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれのあるものを会計検査院が他の行政機関に求めた場合に、提供されると先ほど答弁でおっしゃいました。今もうなずいておられます。

 これは、特定秘密保護法十条一項に反するのではありませんか。この法律の解釈について答弁してください。

岩城国務大臣 お答えをいたします。

 会計検査院の資料提供を我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認めることにつきまして、この趣旨は、会計検査に必要な特定秘密が提供されないことはおよそ考えられないということは累次述べてきたとおりでありますけれども、会計検査院から資料の提供を求められます、求められた資料につきましては、我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがない、法文上こういう適用がかかっておりますけれども、実務的には、具体的には適用されることはないということです。

後藤(祐)委員 先ほどの答弁と全く違うことを言っているんですが、先ほどの答弁、我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれのある資料を会計検査院が他の行政機関に求めた場合にそれは提供されると先ほど大臣はおっしゃいました。これは間違いないですね。うなずいてもおられます。だとすると、特定秘密保護法十条一項に反するのではありませんか。これについて答弁してください。三度目です。

岩城国務大臣 憲法及び会計検査院法に規定された会計検査院の会計検査事務と本法第十条第一項第一号の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれという法文に照らし、会計検査院が資料の提供を求めた場合に、このようなおそれがあると認められることは考えられないことでありまして、発動されることがない、具体的適用がないことは明らかであります。よって、会計検査院に提供されないということはございません。

後藤(祐)委員 そうすると、先ほどの答弁は修正してください。私は、我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれのある資料を会計検査院が求めた場合に提供されるんですかと伺って、提供されるという答弁をされましたが、この答弁は間違っていたということですね。修正してください、もしそうなら。

岩城国務大臣 先ほどお答えしたとおりであります。

後藤(祐)委員 先ほどというのはどっちですか。すなわち、我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれのある資料を会計検査院が他の行政機関に求めた場合にその資料は提供されるという答弁は正しいんですか。もし正しいならば、特定秘密保護法十条との関係を整理してください。

岩城国務大臣 そもそも会計検査院に提供するということについて、安全保障に著しい支障を及ぼすおそれというこの法文に照らしまして、おそれがあると認められることは考えられないということです。

後藤(祐)委員 その答弁を求めていなくて、先ほどの答弁と今の答弁は違うので、先ほどの答弁が間違っていたと認めてください。

 すなわち、私は、我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれのある資料を会計検査院が他の行政機関に求めた場合に、私の質問をちゃんと聞いてください。秘書官、質問を聞いているときはちょっと差し控えていただけますか。だから聞き間違えるんですから。

 我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれのある資料を会計検査院が他の行政機関に求めた場合に他の行政機関は提供できるんですかという私の質問に対して、提供されるというお答えをされたんです。もし本当にそうだとするならば、これは特定秘密保護法十条に反する行為ですから、本当にそんなことができるんですかということについて、今私が申し上げたところの大臣の答弁は誤りだと思うんです、その後の答弁との関係でいいますと。

 撤回してください、先ほどの答弁を。

岩城国務大臣 第十条第一項第一号による、我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認めたときに限り提供される、これは、何度も申し上げましたとおり、このことにつきましては、法文上こういった組み立てになっておりますけれども、実質的にそれが具体的に適用されることはあり得ないということに考えております。(後藤(祐)委員「委員長、質問に答えておりません、三回やったのに。さっきの答弁を撤回してほしいと言っているんですよ。時計をとめていただけますか」と呼ぶ)

竹下委員長 後藤君に申し上げます。

 大臣の答弁は、十条一項について大臣の見解を述べておられます。そのことと、あなたが求めておられる提供できるできないという議論との間の整合性というのを、これはどうしましょうか、一度、理事会で議論しましょうか。(後藤(祐)委員「先ほどの最初の答弁を撤回するだけなんですよ」と呼ぶ)

 それでは、まず、後藤君、もう一度、法務大臣に答弁をしていただきます。その上で、あなたが納得できないということであるならば、矛盾しているかどうか、理事会で精査をさせていただきます。

 法務大臣、答弁をしてください。

岩城国務大臣 お答えをいたします。

 我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認めたときという特定秘密保護法第十条第一項第一号の限定は、会計検査に必要な資料の提供について働くことはおよそ考えられないということでありますので、提供されるということです。

後藤(祐)委員 その答弁は、意味はわかるんです。その前の答弁で、我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれのある資料を会計検査院が他の行政機関に求めたときに、提供されるという答弁をその前にしたから、その答弁は訂正された方がいいんじゃないんですかと言っているんです。

 その後の、今の答弁みたいなことは、それはそれで意味はわかるんです。今の、後の方の答弁をされるのであれば、その前の方の答弁を訂正、撤回されるべきじゃないですかということについて何度も聞いているんですが、お答えいただけないので、お答えいただけますか。

岩城国務大臣 重ねてお答えいたしますけれども、先ほどの答弁は、会計検査院に提供される場面で、それが考えられるということです。(発言する者あり)

竹下委員長 後藤君、今の答弁にあなたが納得できないようでございますので、後ほど理事会で精査をいたしまして、その上でまた結論を出そうと思います。

後藤(祐)委員 そうしましたら、先ほど申し上げた、我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれのある資料を会計検査院が他の行政機関に求めたときに、これは提供されるとした先ほどの大臣の答弁と、その後の答弁の関係について、よく理事会で精査した上で、文書で出していただけますようお願い申し上げたいと思いますとともに、これがもし、やはりさきの答弁がおかしいということであれば、これを撤回していただけるよう、そして、この審議、かなり時間がかかっちゃっていますから、この審議のやり直しをしていただきますよう、委員長に求めたいと思います。

竹下委員長 後ほど、理事会でしっかり議論をしようと思います。

後藤(祐)委員 本当に実務上ないんでしょうか。

 先ほど言ったように、日本版CIA、あるいはそれに準ずるようなものができたときには、これは当然、安全保障上、そういうリスクのあるものというのは出てくるんですよ。そのときに、求めることができるのか。つまり、求められることはないだろうというお答えですが、としますと、我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれのある資料を会計検査院は他の行政機関に求めたいと思っても求めることができないというような運用になっていくんじゃないんですか。そこまでちょっと頭がついてきているかどうか心配ですが。

 もうちょっと端的に言いましょう。

 会計検査院法第二十六条というのがございます。これは、会計検査院から、検査上の必要により帳簿、書類その他の資料もしくは報告の提出の求めを受け、または質問され、もしくは出頭の求めを受けたものは、これに応じなければならないとあります。この会計検査院法二十六条は、今申し上げた我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれのある資料を求める場合にも適用されるんですか。されるとするならば、特定秘密保護法との関係が非常に矛盾しますので、この会計検査院法二十六条を改正する必要があるんじゃないんですか。

 つまり、我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれのある場合は求められないという趣旨のことがどこかで読めるように、この会計検査院法二十六条を改正する必要があるんじゃないんですか。これについての岩城大臣の答弁を求めたいと思います。

岩城国務大臣 補足をして説明させていただきますが、求められることがないと申し上げているのではなくて、求められているときに、その提供を拒むことが、それは考えられない、そういう趣旨で申し上げましたので、御理解いただきたい。

後藤(祐)委員 それはそれで先ほどの整理する中にもう一つ今の話を加えていただきたいと思いますが、今の質問はそうではなくて、会計検査院法二十六条では応じなければならないとあるんですが、特定秘密保護法十条との関係で、出せない場合が出てくるはずなんです。二十六条の方を改正するなり特定秘密保護法を改正するなりしないと、矛盾するんじゃありませんか。

岩城国務大臣 お答えいたします。

 会計検査院が会計検査院法第二十六条の規定により資料の提供を求めた場合に、それが我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがあると認められることは、憲法及び会計検査院法に規定された会計検査院の会計検査事務と、この法律の第十条第一項第一号の我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれという、著しいという場合を想定した法文に照らしまして、考えられないことであり、法の具体的な適用においては発動されることがない、それが明らかであります。

後藤(祐)委員 では、求めることはできないということですね。実務上、CIAみたいなものができたときには、情報はあるんですよ、しかも、物すごいお金を使ってやることもあり得るわけですよ。でも、それを求めることはできなくなっちゃうじゃないですか。求めることはできないということですか、大臣。

岩城国務大臣 求めることはできるわけであります。その上で判断するわけであります。

後藤(祐)委員 残念ながら時間が来たので、今の最後の答弁も含めて、つまり、我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれのある情報も会計検査院は求めることができると今答弁がありました。これに対して、会計検査院法二十六条では、これに応じなければならないという規定があります。ですが、特定秘密保護法十条では、こういったおそれがあるものは出せないとなっています。

 この二つの法律の関係についても、先ほどの理事会での精査の中に入れていただいて、この両者の関係について、そして今までの大臣の答弁との関係について、統一見解を文書で提出していただきますよう委員長にお願い申し上げまして、終わります。

竹下委員長 理事会で協議をさせていただきます。

 これにて後藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、大西健介君。

大西(健)委員 民主党の大西健介でございます。

 平成二十八年度予算は、一億総活躍社会実現のための予算ということになっております。

 きょうは加藤大臣にも来ていただいておりますけれども、私はいまだに、この一億総活躍という言葉、何か意味がもやっとしていてよくわからない部分があるんですけれども、わからない言葉を考えるときに、その反対の状態というのをイメージすればいいんじゃないかなというふうに私は思っています。つまり、反対の状態というのは、例えば、ある日突然上司に呼び出されて、あなたはもうこの会社にあなたの活躍する場はありませんよと言われること、これが私は一億総活躍とは真逆の状態じゃないかというふうに思っています。

 けさの朝日新聞の一面にこうした記事が載りました。大手製紙企業の王子ホールディングスにおいて、テンプスタッフキャリアコンサルティングのサービスを利用して、ローパフォーマー社員の入れかえを目的とした退職勧奨、私は事実上これは退職強要ではないかというふうに思っておりますけれども、これが行われた事例であります。皆さんのお手元に新聞記事のコピーを配付させていただいておりますので、御参照いただきたいというふうに思います。

 そして、私は、この王子ホールディングスで対象社員に面談をする面談者の研修で使われた資料というのを入手しました。いわゆる社外秘のリストラマニュアルというものです。これは、見ていただくと、右肩に厳秘と書いてあります。左肩にはコピー厳禁、施錠保管、プロセス終了後回収というふうに書いてあるんですけれども、中を見ますとどういうことが書いてあるかというと、合意退職を実現する必要があるとした上で、面談をどういう話法で行えば違法な退職強要にならないかという、すれすれのところを指南しているというのがこの資料なんです。

 例えば、こういうことが書いてあります。退職強要があるとリスクが発生します、以下のノット・ツー・ドゥーを参照してくださいという記述があって、禁句や禁じ手が例示をしてあります。また、外部ユニオン等に応援を頼む、一緒に闘うといった発言があった場合は面談後速やかに人事部門に連絡することといったことも書かれている。

 私がこれは一番許せないなと思ったのは、この中に、キューブラー・ロスのモデルを参考にしてくださいということが書いてあるんです。委員の皆さんの中で、キューブラー・ロスのモデルというのを御存じの方はいらっしゃいますか。私もちょっと知らなかったんですけれども。資料につけておきましたけれども、二ページ目です。

 これは何かというと、人間が死を受容するプロセスなんです。つまり、あなたはもう死にますよということを言われて、それを諦めて受容するというモデルを使えと言って、退職勧奨して合意退職をとる。これは私は実質的に退職強要だというふうに思います。

 そこで、まず冒頭、塩崎大臣にお聞きしたいと思うんですけれども、このような内容のリストラマニュアルが出回っていることを大臣はどうお思いになるか。また、人材ビジネス等が退職勧奨のためのこういうマニュアルをつくったり、あるいは助言とか指導を行うというようなことは法律上問題ないのかどうなのか。この点についてお聞きをしたいと思います。

塩崎国務大臣 今御指摘をいただいております極秘のペーパーというのは、今私どもは拝見していないので、どういうものなのかよくわかりませんので、コメントのしようがないというのが正直なところでございます。

 私どもとしては、一般論としては、厚生労働省において、違法な退職強要が疑われるような事案があれば、人員整理の状況等を聴取するとともに、退職勧奨が働く方の自由な意思決定ができないような状況であった場合には、当然これは違法な権利侵害に当たる場合があり得るということで、その際には啓発指導をやらなければいけないということであります。

 いずれにしても、私どもとしては、人員整理などが大規模に行われるようなことについては、事実関係を把握して、企業において適切な労務管理がなされるように取り組むということが大事だということでございまして、今のその件については、私も拝見をしていないので何ともコメントのしようがない。個別のことでもございます。

大西(健)委員 ぜひこれを見ていただきたいと思いまして、また後ほど大臣にお渡ししますので、この中を精査していただきたいと思います。厚労省として、こういうマニュアルが出回っていることがいいと思うのか、ぜひ精査していただきたいと思います。

 そして、もう一つ私が聞いたのは、一般論として、こういうマニュアルを人材ビジネスが作成して、あるいは退職勧奨を人材ビジネスとしてコンサルティングしているんです、こういうことは法律上認められるのかどうなのかというのを一般論で聞いているんです。それをお答えください。

塩崎国務大臣 今拝見をしていないものについて、後でお渡しをいただけるということでありますから、また拝見をさせていただきますが。

 リストラ企業から離職を余儀なくされる方の再就職の援助を受託した職業紹介会社がそういうことをやっているという御指摘ではないかというふうに思いますが、これは、さっきも申し上げたとおり、働く方の自由な意思決定というのが何よりも大事であります。ですから、その自由な意思決定を妨げるなどの退職強要に該当する行為のマニュアルをリストラ企業に提供しているような場合には、当然、職業紹介事業の許可を有する事業者の業務として適切ではないというふうに考えられることから、直ちに指導を行うこととしたいと考えているところでございます。

 また、リストラ企業が再就職援助を委託している職業紹介会社、今のはそういうケースだということであるならば、そのようなマニュアルを受け取っているかどうかにかかわらず、働く方の違法な権利侵害に当たるような不当解雇とかあるいは退職強要を実施していたことが確認をされた、そういう場合には当然、私どもとしては、リストラ企業に対して支援をするようなことは政策的にはあり得ないということになるわけでございます。

大西(健)委員 まだ聞いていないことをどんどん答えているんですけれども。順番に聞いていきたいと思いますけれども、こういうマニュアルを使うことは場合によっては違法になっているケースがあるということだと思いますので、ぜひこれは精査していただきたいと思います。

 朝日新聞の記事を見ても、今回のテンプスタッフキャリアコンサルティングはそういうマニュアルをつくったり、そのコンサルティングのもとに王子ホールディングスは退職強要と思われるようなことをやっているわけです。私はこの王子ホールディングスの人事本部が経営会議に提出した資料というのも持っているんですけれども、そこには、退職勧奨を拒否した場合は解雇を実施すると書いてあるんです。

 そこで、これも一般論でお答えいただきたいんですけれども、大臣、退職勧奨を受け入れない場合に解雇するというのは私は解雇権の濫用に当たると思いますけれども、それでよろしいでしょうか。

塩崎国務大臣 さっき申し上げたように、一般論として、違法な退職強要が行われたケースについてのお尋ねだと思いますので、そのような事案については、人員整理の状況を私どもとしてもしっかりと聴取して、退職勧奨がさっき申し上げた個人の自由な意思決定ができないような状況であった場合には、当然これは違法な権利侵害に当たる場合になるわけでございますから、そういうことが確認できれば啓発指導を行うということになるわけでございます。

大西(健)委員 大臣はちょっと理解をされていないような感じが私はするんですけれども、まさに本人の自由な意思決定を妨げるようなものは確かに退職強要になるんです。

 ただ、そこのまさに線引きが難しいので、私がまず聞いているのは、退職勧奨を受け入れなかったら解雇だぞと、解雇を前提にしているということがまず私は問題だと思うんですね。ですから、退職勧奨を受け入れなかった場合に解雇するのは解雇権の濫用じゃないですかということを聞いているんですけれども、いかがですか。

竹下委員長 塩崎大臣、答弁の準備はできていますか。

塩崎国務大臣 まず第一に、民事裁判で違法とされる退職勧奨が行われることを未然に防止するために私どもは啓発指導をやるわけでありますが、退職勧奨自体は労働基準法で規制をしていないわけであります。今、解雇権の濫用ではないかということで、受け入れなかったらということでありますが、個別にどういう形で解雇権を行使してきたのかということは、やはり裁判で訴えてそこで判断してもらわざるを得ないというのが最終的な形ではないかというふうに思います。

大西(健)委員 過去の例えばIBMで行われた労災裁判等でも、退職勧奨を受け入れなかったら解雇するぞと言った場合は解雇権の濫用だというような判例が出ています。私はそうだと思いますが。

 あわせて、今、具体的なという話がありましたから、この王子ホールディングスの同じ資料には、例えば退職勧奨に未同意の者に対する対応として次のようなことが書かれています。一、厳しい降格や降給を徹底実施する、二、現務職より低位の部署や現業へ配転し、それに見合う評価、処遇、賃金を新設する、三、社内取り込み業務への置きかえ、保安、警備、食堂やトイレの清掃、メール回収、配布などということが書かれている。

 これは当てはめの問題だと思いますが、まさにこういう厳しい降格とか降給を行ったりとか、あるいはトイレ清掃等本人のキャリアとは大きくかけ離れたことをやらせるということ、これは私は事実上退職に追い込むことだというふうに思います。

 あわせて、私はきのう、王子ホールディングスで実際に退職勧奨を受けて既に退職された方のお話を直接聞くことができました。

 その人のケースでいうと、ある日突然、人事本部長と所属の部の部長から呼び出しがかかるそうです。そして、君にはもう与える仕事がないと言われて三点セットというのが示される。この三点セットというのは何かというと、一、退職事由を会社都合とする、二、退職特別加算金を支給する、三、再就職支援サービスの提供ということなんです。そして、まずとにかく一度だまされたと思ってこの人材サービス会社に行ってくれ、テンプスタッフキャリアコンサルティングに連絡をとって行ってくれと言われるそうです。

 それで、もし断った場合にどうなるかなんですけれども、断った場合にはどうなるかというと、総務人事部付の発令が行われて、テンプスタッフキャリアコンサルティングに事実上の出向になるそうです。そこで何をするかといったら、そこでの仕事は自分の仕事を探すことです。これが仕事と言えるんでしょうか。自分の再就職先を、テンプスタッフキャリアコンサルティングに行って、総務人事部付に発令されて仕事を探す。これはまさに追い出し部屋のアウトソーシングじゃないですか。

 また、別の人の話では、強制ではないので会社にしがみつくことは勝手だけれども、新入社員レベルまで給料が下がることを覚悟してほしいということを言われたそうです。

 まさにさっき大臣が言われたように、いたずらに被勧奨者の不安感を増して名誉感情等を傷つけるこういうやり方は、まさに自由な意思決定を妨げる事実上の退職強要に私は当たると思いますが、大臣、いかがお考えでしょうか。

塩崎国務大臣 まず第一に、昭和五十五年の七月に、今も一部お触れをいただきましたけれども、最高裁の判例があって、殊さらに多数回、長期にわたる退職勧奨は、いたずらに被勧奨者の不安感を増し、不当に退職を強要する結果となる可能性が高く云々かんぬんと書いてあって、全体として被勧奨者の自由な意思決定が妨げられる状況であった場合には当該退職勧奨行為は違法な権利侵害となる、こういうことでございまして、ここにも全体としてと書いてあるように、初めてお聞きするケースを今御説明いただきましたが、全体としてどうなるのかということにかかってきますので。

 いずれにしても、自由な意思決定が妨げられるような状況に追い込んだ上で解雇を迫るというのが好ましくないことはもちろんそのとおりでありますけれども、どういうケースがそうなるのかというのはまさにケース・バイ・ケースで、全体としてどういうことを会社側がやって、事実上それが実効性がどこまであることをどう言っているのか等々をよく吟味した上で判断をしなければいけないことではないかなというふうに思うところでございます。

大西(健)委員 今のをまさに事実上最高裁判例に当てはめれば、さっき言ったように、トイレの掃除とかをさせられるんですよ。あるいは、新入社員のときまで給料を下げられると言われる。あるいは、断っても総務人事部付の発令がされて、毎日テンプスタッフキャリアコンサルティングのオフィスに通って自分の再就職先を、仕事を探してくださいと言われる。

 これはもう本人の名誉感情を傷つけて、まさに意思決定を妨げるということに私はそのものずばり当たるというふうに思いますが、そこまで言われるなら、大臣、今回これは実名、会社名、企業名、それから人材ビジネスの企業名も挙げられて報道がなされているわけですから、この件について厚労省はしっかり調査していただけますか。約束してください。

塩崎国務大臣 きょうの報道でございますので、これは私どもとしても当然中身を確認したいというふうに思います。

大西(健)委員 さらに私がこれは問題だというふうに思うのは、さっき私がお示しした合法的な首切りマニュアル、これをつくっているのは大手人材ビジネスなんです。この王子の件でいえば、テンプスタッフがつくっているんですよ。

 このテンプスタッフキャリアコンサルティングが営業用に作成しているプレゼン資料というのを私は入手しました。これは、皆さんのお手元に配っている資料の三ページ目からおつけをしているんですけれども。

 まず、表紙のタイトルをごらんください。「貴社人員適正化施策実施のご提案 リストアップ方式による戦力入替えのお勧め」、これは後でちょっと説明していきますけれども、リストアップ方式による戦力入れかえなんです。

 次の、下の方のシートですけれども、この会社のサービスというのは大きく言って二つに分かれています。事前コンサルティングと再就職支援なんです。事前コンサルティングの下の方のメニューをごらんいただきたいんですけれども、例えば、法的側面の指導。まさにどういうことを言ったら違法になるよとか、あるいはどういうことをやったら退職強要になるよという、法的側面の指導ですよね。それから、個別面談方法の研修実施。さっき私が示したマニュアルは研修で配られていて、その研修自体をテンプがやっているわけです。それから、組合対策支援。さらに、後ほど申し上げますけれども、公的助成金受給指導。こういうメニューが並んでいるんです。

 一枚めくっていただいて、次のページですけれども、上の方のシートは退職勧奨の流れ、フローです。

 ここで注目していただきたいのは、ここに書いてありますけれども、対象になっているのは非戦力社員なんですね。非戦力社員。部門長や人事部の面談とテンプスタッフキャリアコンサルティングのキャリア相談をこうやって繰り返しやりながら、退職同意を取りつけていく流れがこの図なんです。下の方のこの矢印の中を見ていただきたいんですけれども、矢印の中には、貴社と極秘情報連携と書いてあるんですね。

 もう一つ、次の、下のシート。これは、私が最初にお示ししたマニュアルを使って、個別面談をする人の研修をやっているんですね。真ん中から少し下の研修内容のところですけれども、四には、個別面談担当者の法的リスクの回避について、禁句、退職強要話法などと書かれています。

 もう一枚めくっていただくと、次の二つのシートはこれまでの実績とか事例というのが紹介されているんですけれども、上の方の事例、東証一部上場の化学関連の会社。これは黒字です、黒字でローパフォーマー社員の雇用調整と書いてあるんですね。ローパー、ローパフォーマンスですよ。非戦力社員の言いかえです。ローパフォーマー、略してローパーと言っているそうですけれども、これを整理することを目的にしてこのテンプスタッフのサービスを利用している。

 真ん中の欄ですけれども、テンプスタッフは、プログラムの設計とか個別面談研修の実施、事前キャリア相談等は無料で行うそうです。退職後の再就職支援サービスでお金を取るというビジネスモデルになっているんです。

 最後の欄では、今回は五十名リストアップして、四十四名を退職に追い込みましたということを誇らしく書いているわけですよ。

 塩崎大臣、今私がお示しした、まさにテンプスタッフはこれをもって営業しているわけですよ。これをごらんになっていただいて、どう思われるか。私はこれは首切りビジネス、解雇ビジネスだと思いますが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 今お配りをいただいている資料も、私はきょう初めて拝見をいたしました。

 今御指摘のような問題点があり得るという御指摘はそれなりに理解をさせていただくところでございますが、これは個別の企業のやっておることなので私どもとしてはコメントは差し控えたいと思いますが、いずれにしても、大事なことは、働く人たちがやはり自由意思で何事も雇用関係も決められるということが尊重されることが大事だというふうに思いますので、引き続きしっかりと、こういったことを含めてよく見てまいりたいというふうに思います。

大西(健)委員 民間企業がやることだからと言っておられますけれども、私は、これは今までの日本の労働法制、雇用の制度の中では認められていないことをやろうとしているんだと思っているんです。

 その中で、先ほどもちょっと触れましたけれども、この王子ホールディングスがやっている退職勧奨でいうと、非戦力社員、ローパフォーマーの戦力入れかえということでやっているんですね。

 そこで、これも一般論でお答えいただきたいんですけれども、相対的評価による考課順位が下位であることをもって直ちに著しく労働能力が劣るとして解雇すること、これは私は解雇権の濫用に当たるというふうに思いますが、いかがですか。

 つまり、相対的評価ですから、勝手に人事部とかが、あなたはD評価ですよ、E評価ですよとつければ、下三十人とかをリストアップしてつければ、それで能力がないんだということでやめさせるというのは、私は日本では認められていないことだと思うんですけれども、これは解雇権の濫用に当たりませんでしょうか。

塩崎国務大臣 個別ケースでいろいろとあろうかと思いますけれども、一般論として申し上げれば、単に成績不良ということだけで解雇が許されるということはないというふうに思います。その程度や今後の改善の見込みとか、それぞれ会社の方針もあり、そしてまたそれぞれ働いていらっしゃる環境もいろいろありましょうから。

 さまざまな事情をやはり考慮しながらその可否が判断されるわけでございますので、一概に、今の御説明に限って条件づけをして、それが解雇に値するのかどうかというようなことを言われても、なかなか判断はつきかねるということだと思います。

大西(健)委員 最初におっしゃったように、一概に成績が悪いからだけで解雇することはできないんですよ。

 先ほどの資料にちょっと戻っていただいて、最後のシートには、最近の実施例ということで、さまざまな業界の大手、中堅企業でリストアップした人数と、そのうち退職同意に追い込んだ数が書かれているんですね。

 つまり、今回の朝日新聞の記事というのは特異な例じゃなくて、氷山の一角なんですよ。ですから、テンプスタッフはこのプレゼン資料で、リストアップ方式による戦力入れかえをあなたの会社でもやりませんかと言って営業をかけているわけですよ。また、同様のマニュアルというのが、私はここにパソナがつくっているマニュアルも持っていますけれども、退職勧奨制度対象者のための面談の進め方、同じようなものをやはりつくっているんですよ。

 先ほどの答弁で、マニュアルを作成すること自体がどうこうというのは法律に書いてないということでしたけれども、大臣は、このように首切りビジネス、まさに人材ビジネスがこういうマニュアルをどこの会社もつくっているということを放置していていいと思っておられるのか。

 大臣、よく聞いてくださいね。

 今回私は王子の件でテンプの例を挙げていますけれども、パソナもつくっているんです。だから、こういう大手人材ビジネスによって提供されている、再就職支援サービスとセットになっている退職勧奨のパッケージを売り込むというこのビジネス、これの実態をぜひ厚労省として調査していただきたいんですけれども、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 リストラを企業が行うことで離職を余儀なくされる方々が出てくるということに対してどうするかということでございますけれども、再就職の援助をするというのが、今幾つか挙げられた職業紹介会社の使命のはずでございます。求職者の言ってみれば再就職のお手伝いをするというのが会社の趣旨であるわけでありまして、働く方の自由な意思決定を妨げるような、あるいは退職強要に該当するような行為のマニュアルをリストラ企業に提供しているような場合は、今申し上げたように、求職者の再就職支援をするというのが使命のはずの企業がむしろ求職者をつくってしまうというようなことになっているということで、それは趣旨に反するというふうに私も思うところでございます。

 そういうことが明らかな場合には、やはり職業紹介事業の許可を有する事業者の業務として適切ではないというふうに考えられるわけでありますので、そういうことが明らかな場合には、これはしっかり、今お話しになったように、調べるということ、そして調べた上で、明らかにこれは趣旨に反するということであれば、当然それは指導の対象にしなければならないというふうに思います。

大西(健)委員 今大臣がおっしゃったとおりで、本来再就職支援をやる会社なんです。再就職支援でお金を取るんですけれども、その前段階の退職勧奨のところは無料でサービスをしているわけですよ。これはセットで、テンプもやっているし、ほかの会社もやっているんです。

 ですから、ぜひその実態を、再就職支援をやっている人材ビジネスがそういうことをやっているかどうかというのを実態を調べて、ぜひその結果を理事会に報告していただきたいと思います。

 委員長、ぜひお取り計らいをお願いしたいと思います。

竹下委員長 理事会で協議をいたします。

大西(健)委員 それで、先ほど私が申し上げたように、実際、退職勧奨に遭ってやめた方のお話も聞きましたし、リストアップされた社員の一覧も見せていただいたんですけれども、これは多くは大卒の一般職です。二十年以上会社にお勤めになっていて、大体四十代、五十代の方ということです。言ってみればこういう普通の社員が退職に追い込まれるというのは、先ほども言いましたけれども、我が国の解雇に関する一般的ルールに反しているというふうに私は思います。

 さらに問題なのは、今大臣がおっしゃったように、本来再就職支援をするべき会社がこういうことをやって、かつ問題なのは、国の労働移動支援助成金が支払われている例があるんですよ。

 今回の王子の例でも払われているんです。朝日新聞の取材に、王子ホールディングスは労働移動支援助成金の受給を認めているということですけれども、これは、大臣、事実でしょうか。いかがですか。

塩崎国務大臣 今お話がございました労働移動支援助成金、これ自体は、先生、釈迦に説法でありますけれども、もともと、失業なき労働移動ということで、労働のモビリティーを上げるということで、成熟産業から成長産業へということで、かつてはいわゆる雇用調整助成金中心に雇用をとどめるということに力を入れていたのを、移動を促進していくということで産業構造を新たなものにしていこうということでつくられたものであるわけでございます。

 これが、先ほど先生御指摘のような、退職強要をするといったケースの場合、あるいは能力不足だからということで離職を余儀なくされるとか、そういうようなことで支給をされるということであれば……(大西(健)委員「王子の件で払われたんですか、払われていないんですか。それを聞いているんです」と呼ぶ)これは、払っていないということでございます。

 いずれにしても、今のような、退職強要をする企業とかいうことで支給をされるようなことがないように、実はこれは労働組合の同意を再就職支援については得ているというプロセスをかませているわけでございます。ということで、仮に退職強要があればさっき申し上げたように支給は不適当になりますし、能力不足についても支給の対象外ということになりますので、先ほど先生から御指摘のあったようなケースの場合には対象にならないということになるわけで、王子については対象になっていません。

大西(健)委員 朝日新聞の、お配りした記事の中ではこう書いてあります。王子ホールディングスによると、この退職勧奨で七月末までにやめた二十数人分として労働移動支援助成金を二百数十万円受け取ったとなっているわけです。

 今の答弁、大丈夫ですか。

塩崎国務大臣 さっき申し上げたように、能力不足による離職に対して払っているという事実はないということを申し上げているわけでありまして、今お話があったように、この会社が労働移動支援助成金の支給の対象になっているということはそのとおりでございます。

大西(健)委員 ちゃんと精査をしていただきたいと思うんですけれども。なぜなら、これが事実だとしたら、税金でリストラを応援しているということなんですよね。労働移動支援助成金というのは名ばかりで、結局、首切り支援助成金になっているんじゃないか。

 資料をちょっとごらんいただきたいんですけれども、労働移動支援助成金についての説明資料を入れておりますが、これは平成二十六年度に大幅に拡充されているんです。

 第一に、大企業でも使えるようにした。第二に、支給時期を支援委託時と再就職実現時の二段階にしたんです。つまり、その結果、王子のような大企業でも助成を受けられるようになりました。そして、下の図のように、テンプスタッフに委託をした時点で一人当たり十万円出るんです。これは再就職したかどうかは関係ないんです。委託したら十万円出る、こういうふうに平成二十六年に変えたわけです。

 ただし、職業紹介事業者がその労働者の離職自体について働きかけを行った場合は助成金の対象にならないと書いてあるんですね。これが本当にちゃんと確認できているのかなと。

 次のページに申請書の様式を添付しておきましたけれども、最後のところに本人確認欄というのがあります。

 ここの二で、職業紹介事業者による離職勧奨の働きかけがあった、はい、いいえという欄があって、ここに丸をつけて、最後、記名押印か署名をすることになっているんですけれども、これがちゃんと確認されているのかなと。あるいは、百歩譲って確認されているとしても、私はそもそも、最終的に退職合意に追い込まれた人はもうどうでもいいやという感じになって、言われるがままにここに記名押印や署名を行っているのが実態じゃないかというふうに思っています。

 もう一つは、人材ビジネスが勧奨の働きかけを直接行った場合ということで限定的に見ているかもしれないんですけれども、今回の例は、先ほど来説明しているように、計画やマニュアル作成とか面談者の研修もやって緊密に連携してやっているわけですから、直接の勧奨はもちろん企業の人事担当者とかがやっているのかもしれないけれども、これは実質的には一体となってやっているわけですよ。ですから、そういうところにまさに先ほど来言っているようにこの労働移動支援助成金が出ているということになったら、これは税金によってリストラ奨励金、首切り奨励金を出していると言われても私は仕方ないんじゃないかというふうに思います。

 少なくとも、先ほど来申し上げていますけれども、今回の王子ホールディングスの事例のように人材ビジネスが退職勧奨をパッケージで支援しているようなケースでは、委託しただけで助成金が出るという現在の仕組み、これは見直した方がいいと思いますけれども、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、労働移動支援助成金につきましては、再就職支援をするに当たって、まず労働組合の同意を得るということを支給要件の一つにしているわけで、労働組合のチェックを介在させることによって、言ってみれば退職強要が起きにくい仕組みということにしているわけでございます。

 しかし、そうはいいながら、今先生御指摘のようなケースがあるかもわからないということも指摘をされておられるわけでありますが、私どもとしても、これを確実にこの制度の目的に沿った形で利用されるようにするための措置というものをさらに改善していくべきではないかという議論をして、この支給の適正性を担保するために、今申し上げた労働組合等の同意に加えて、さらにこの四月一日から、支給要件の適正化の担保を強化するために、今資料でお配りをいただきましたけれども、このフォーマットの中で本人に対して事業主から退職強要が行われなかったことを確認する欄も設けて、本人の意思表示をしっかりと確認した上で支給を適正化していこうということを今考えているところでございますので、御理解を賜れればありがたいなというふうに思います。

大西(健)委員 労働移動支援助成金は、ぜひこの支給要件をしっかり厳格にしてほしいと思っているんです。

 先ほども言いましたけれども、平成二十六年度に大幅に拡充されているんですけれども、前年度の予算額の百五十倍という、あり得ない予算増が起きているんですね。何でこんなことになったかというと、ここにも書いてありますけれども、産業競争力会議で竹中平蔵氏が、先ほども大臣が最初の方で既に答弁されていましたけれども、雇用調整助成金と労働移動の支援の助成金を一気に逆転させるということを発言して、そのとおりになっているんです。

 テンプスタッフキャリアコンサルティングは、先ほども言いましたように、プレゼン資料の中で公的助成金の受給指導ということまで明記しているんです。どうやったらこういうお金をもらえるかと。それでビジネス拡大をしているわけですよ。

 竹中平蔵さんは、産業競争力会議の委員であると同時にパソナの会長なんです。ですから、これではまさに人材ビジネス業界の利益誘導、我田引水と言われても仕方がないんじゃないかと私は思います。

 まさにこれは、一億総活躍社会と言いながら、安倍政権は実際はその真逆の解雇ビジネス、首切りビジネスを応援しているということじゃないんですか。

 加藤大臣にせっかく来ていただいていますから、きょうの議論を聞いていただいて、どう思いますか。

加藤国務大臣 制度については、厚生労働大臣がおられますので、大臣からお話があると思います。

 あくまでも、一億総活躍社会、誰もが活躍できる環境づくりを進めていくということが必要でありますし、今の議論でありましたように、自由な意思決定に基づいて、それぞれの方々がその信条にのっとって進んでいける環境をつくっていく、これは我々にとって大変重要だと思いますし、今の議論を聞かせていただきましたけれども、いずれにしても、自由な意思決定ができる、またそれを担保する法律等もあるわけでありますから、それがまた適正に執行していかれるものだ、こういうふうに承知しております。

大西(健)委員 そして、再就職支援と言っていますけれども、では、この労働移動支援助成金、まず委託したところで十万円出るわけですけれども、これを受けた者のうち再就職できた人がどれぐらいいるのか、できていない人がどれぐらいいるのか。また、できた場合も、もとの賃金と転職先の賃金、下がっているのか、上がっているのか。これはちゃんと、厚労省、把握していますか。

塩崎国務大臣 今、数値的な実績についてのお尋ねがございました。

 これにつきましては、二十六年度に労働移動支援助成金による再就職支援の対象となった方は三千三百四人でございまして、そのうち、平成二十七年十二月末時点、昨年の年末でございますが、この時点で再就職された方が二千七百三人、割り算をすると八一・八%になっております。

 また、今、賃金のお尋ねもあったかと思いますが、再就職した方の再就職先における賃金水準は離職前の七四・七%となっているところでございます。

大西(健)委員 結局、就職できていない人もいるし、賃金は平均でいうと下がっているわけです。まさに失業なき労働移動とか皆さんが言われていることは、例えば、構造的に不況業種があって、そこから新しい成長産業に人が移動していく。それは給料が上がることが前提じゃないんですか。これは給料が下がっているわけです。四十代、五十代になって、二十年以上勤めた会社から放り出されるわけですよ。

 私が直接お話を聞いた四十代後半の方は、拒否しても、どうせテンプスタッフに行って自分の転職先を探してくださいと言われるんだったら割り増しの退職金をもらった方がいいかということで、最終的にはこの退職勧奨を受け入れたそうですけれども、ただ、まだ次の仕事が見つかっていないそうです。娘さんが私立の学校に行っていて、まだ娘さんに会社をやめたと言えていないと、本当に苦しい胸のうちを明かしてくれました。

 また、別の四十代の女性は、面談で泣き出してしまって、最終的に退職には合意したけれども、大臣、聞いてくださいね、メンタル不調で今はもう再就職活動ができる状態にない、こういう状態なんですよ。これのどこが一億総活躍なんですか。職場の中には、次は自分が非戦力社員にリストアップされて退職を迫られるんじゃないか、こういう不安や動揺が広がっているんです。

 誤解なきように私は最後に申し上げておきますけれども、私は別に、今回、王子という特定の企業をバッシングするつもりでやっているわけじゃないんです。一億総活躍社会を標榜しながら、解雇ビジネス、首切りビジネスを国が支援する、こういうことは絶対にあってはならない、そういう思いできょう申し上げています。

 そしてもう一つは、今も、王子ホールディングス、あるいは別の会社でも同じようなことが行われている可能性が高いんです。それをぜひ私はやめさせていただきたい、そういう思いできょう質問させていただきました。

 今後もこの問題は国会で取り上げさせていただきたいと思いますし、世界で企業が一番働きやすい国をつくるというのが安倍政権なら、我々民主党は、世界で働く人が一番幸せになる国をつくることを目指してこれからも頑張ってまいります。

 きょうの質問を終わります。

竹下委員長 これにて大西君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

竹下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、分科会設置の件についてお諮りいたします。

 平成二十八年度総予算審査のため、八個の分科会を設置することとし、分科会の区分は

 第一分科会は、皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、内閣府、復興庁、防衛省所管及び他の分科会の所管以外の事項

 第二分科会は、総務省所管

 第三分科会は、法務省、外務省、財務省所管

 第四分科会は、文部科学省所管

 第五分科会は、厚生労働省所管

 第六分科会は、農林水産省、環境省所管

 第七分科会は、経済産業省所管

 第八分科会は、国土交通省所管

以上のとおりとし、来る二月二十五日分科会審査を行いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

竹下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次に、分科会の分科員の配置及び主査の選任、また、委員の異動に伴う分科員の補欠選任並びに主査の辞任及び補欠選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

竹下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次いで、お諮りいたします。

 分科会審査の際、最高裁判所当局から出席説明の要求がありました場合は、これを承認することとし、その取り扱いは、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

竹下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次に、分科会審査の際、政府参考人及び会計検査院当局の出席を求める必要が生じました場合には、出席を求めることとし、その取り扱いは、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

竹下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

竹下委員長 質疑を続行いたします。中根康浩君。

中根(康)委員 民主党の中根康浩です。

 限られた時間でございますので、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 まずは、甘利前大臣の口きき疑惑です。

 報道や民主党の調査によれば、例えば二〇一三年八月六日、URとS社間で二・二億円の補償契約締結、URは当初、補償に消極的だったが、甘利氏秘書の仲介後、交渉が進み、補償額も上がったとされています。続いて八月二十日、補償金が支払われたその日に、お礼として一色氏が甘利氏秘書に五百万円を献金したとされています。十一月十四日、S社社長が甘利氏に補償金のお礼として五十万円を大臣室で渡したとされています。

 つまりは、当初ゼロ円だったものが、甘利事務所からの働きかけで何と二・二億円の補償金額になり、その補償金が支払われたまさにその日、二〇一三年の八月二十日に甘利さんの秘書に五百万円、そしてその後、十一月十四日に甘利大臣自身に何と大臣室で五十万円が渡っていたということであります。まさに絵に描いたようなあっせん利得罪ではないでしょうか。

 私は、この間ずっと予算委員会で特にこの甘利問題を見たり聞いたりしていて、黒塗りのURの面会録のペーパーに象徴されるように、URや所管官庁の国交省は相変わらず旧態依然の体質で、都合の悪いところは隠し続ける、その体質が何ら変わっていないと感じています。

 それでも、公明党のエースと言われている石井さんが国交大臣になっているわけですので、私はひそかに期待しておりました。なぜなら、公明党は庶民のための政治を行う、クリーンな政治を行う、あくまでも平和を求める、まさにこれが公明党の政治だからです。だから、国交大臣が石井さんであるということによって、私は、公明党のクリーンな政治の体現者、平和を求め、そして庶民のための、国民の声を聞く政治の体現者が石井大臣であると今でも思いたいと思っています。

 多くの国民が、自民党の国交大臣と違い、石井さんなら、公明党の大臣なら、黒塗りの部分を全て明らかにしてくれるのは当然で、必ずやってくれると信じてきたと思います。しかし、残念ながら、これまでの答弁を見ていると、自民党と何ら変わることはない体質であるということがはっきりしてきたと思います。とても残念でなりません。

 石井大臣、それでいいのでしょうか。いかがですか。

石井国務大臣 甘利事務所とURとの面会記録についてどこまで公開すべきかという質問かと存じますけれども、公表の範囲につきましては、独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律等に基づき、URにおいて判断されるべき事項でありまして、本件についてもURが可能な限り開示したものと承知をしております。

 URが公表いたしました資料は、いわゆる個人情報や法人情報に該当する部分に加えまして、現在交渉が継続しているS社との間における補償の考え方に関する部分を不開示としているとのことでございます。

 情報公開制度の考え方に基づけば、通常開示されるべき範囲を超えて個人情報に該当する部分等をさらに開示しようとする場合には、関係者の同意を得ることが最低限必要と考えられるため、URとしては、甘利議員事務所秘書との応接録にある秘書の発言を全て開示するべきとの要請に応えることは極めて困難と考えているとのことでございます。

 なお、今回の要請を受けて、URにおいて、二月十八日、改めてS社に確認をしたところ、S社社長からは、補償交渉の内容について、情報公開制度で通常開示されるべき範囲を超えて開示することは同意できないとの意向が表明されたところであるというふうに聞いているところでございます。

中根(康)委員 石井大臣は、黒塗りにされていない面会録をお読みになった、ごらんになったと聞いておりますけれども、いかがでしょうか。大臣、読みましたか。

石井国務大臣 必要な部分は見ております。

中根(康)委員 お読みになっておられるということであって、そこに甘利さんの秘書からのURへの口ききはありましたか、ありませんでしたか。

石井国務大臣 URが公表していない部分について、私の方からお答えすることは差し控えさせていただきます。

中根(康)委員 お読みになって、口ききがないということであるならば、これはぜひ、石井大臣みずからが甘利さんの潔白を証明してあげられる絶好のチャンスであるというふうに思います。ここにやましいところがないのであれば、ぜひ全面公開をしていただきたいし、あるいは、お読みになった上で全面公開できないということであるならば、ここにやはり違法性がある、やましい点が含まれているということで私たちは理解してもよろしいのでしょうか。

石井国務大臣 おっしゃっている口ききが何を指すのかはっきりいたしませんけれども、仮に、あっせん利得処罰法に基づくあっせんということであれば、公開する範囲は、あっせん利得処罰法に該当するかどうかではなくて、情報公開制度に即して可能かどうかということで判断をされているものと承知をしております。

中根(康)委員 先ほど申し上げましたように、まさに公明党の石井大臣でありますから、国民の声をしっかりと受けとめていただけるはずだ、今国民が甘利前大臣に対して抱いている疑惑に対してきちんと説明してもらえるはずだ、これが公明党の大臣に対する、公明党の支持者のみならず、国民の皆様からの期待ということではないでしょうか。

 URは監督官庁が国交省です、国交大臣です。ぜひ国交大臣の指示で全面公開をしていただけるように、そうおっしゃっていただけないでしょうか。そのことによって、そこに疑惑があるのかないのか、まさに国民の疑問が一瞬にして晴れるのではないでしょうか。

石井国務大臣 私は、URに対しまして、可能な限り開示するように指示をしているところでございます。その指示を受けて、URにおいて判断をした結果、URが可能な限り開示をしたものと承知をしております。

中根(康)委員 大切なことは、URが可能な限りということではなくて、国民の関心、国民の疑問に応えているかどうかということであろうと思います。URの都合ではなく、国民の期待に応えるのが公明党出身の石井大臣の責務ではないでしょうか。もう一度答えてください。

石井国務大臣 国民の期待に応えるのは必ずしも公明党だけの責務とは思っておりません。

 その上で申し上げれば、あくまでも、公開する範囲はURにおいて判断されるべき事項でございます。

中根(康)委員 UR任せ、URの判断を理由に、石井大臣がその権限を発動せずに、全面開示しないということであるならば、まさに石井大臣による疑惑隠しだということになりませんか。大臣、いかがですか。

石井国務大臣 私の判断で強制的にURに情報開示をさせることはできません。

 あくまでも、URがみずからの判断に基づいて、独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律等に基づいて判断をしているものでございます。

中根(康)委員 どうして大臣の権限ではできないのですか。大臣、監督官庁じゃないですか。できるはずですよ。

石井国務大臣 独立行政法人制度は、国の関与を最小限にすることにより、法人の自主性及び自律性を十分に発揮することができる仕組みとなっております。

 国土交通大臣はURに対して、独法の通則法及び独立行政法人都市再生機構法に基づきまして、理事長の任命、中期計画の認可、財務諸表の承認、資本金増資の認可等の権限を有しておりますけれども、今回のような個別事業における補償契約については、機構みずからの責任において対応する仕組みとなっているところでございます。

中根(康)委員 そういう決まり切った解釈ではなくて、今、大きな疑惑が、疑問がこのやりとりの中に隠されているのではないかと、国民は大きな関心を寄せているわけです。その期待にぜひ応えていただきたい、リーダーシップを発揮していただきたいと私どもは求めさせていただいているわけでありますので、それを聞き届けていただけないのは、やはり石井大臣による疑惑隠しだと残念ながら申し上げなければならないということになってしまうわけであります。

 それでは次に、法務大臣にお聞きしたいと思います。

 今申し上げておりますように、甘利さんの疑惑はまさに口ききと言われるものであって、見返りにお金を受け取っているわけでありますので、あっせん利得処罰法に当てはまると思います。法務大臣にお聞きいたしますけれども、あっせん利得処罰法の要件となる口ききの定義を御説明いただきたいと思います。

岩城国務大臣 お答えいたします。

 あっせん利得処罰法におきましては、お尋ねのありました口ききという文言は用いられておりませんが、同法に言うあっせんの意味について申し上げれば、あっせんとは、公務員または国もしくは地方公共団体が、資本金の二分の一以上を出資している法人の役職員に対し、ある行為をするよう、またはある行為をしないよう働きかけ、仲介の労をとることをいうと解されているものと承知をしております。

中根(康)委員 その御説明なら、今回のことはまさに口ききそのものではないですか。法務大臣、いかがですか。今回の件は口ききですよね。

岩城国務大臣 ただいまのお尋ねですけれども、あっせん利得罪の構成要件の一部に当たるか否かについて問うものでありますので、捜査機関により収集された証拠によって認定される事実に基づき個別に判断されるべき事柄であると考えておりますので、お答えは差し控えさせていただきます。(発言する者あり)

中根(康)委員 まさに絵に描いたようなあっせん利得だと。この部屋にいる多くの委員が感じているとおりだと思います。

 だとするならば、これは処罰の対象になる、最低でも捜査の対象になるということではないですか。法務大臣、いかがですか。

岩城国務大臣 ただいまのお尋ねは、捜査に着手すべきというお話でありますか。(中根(康)委員「そうですね、対象になるのではないですか」と呼ぶ)そうですか。そのことについては、私、法務大臣の立場ではお答えをすることができません。

中根(康)委員 これほど明らかな、まさに絵に描いたようなあっせん案件が捜査の対象になるとすら言えないということであるならば、何のためにこの法律をつくったのか。全く、立法した当時の国会あるいは政府の趣旨、意図をないがしろにするものであると言わなければなりません。

 ぜひ、法務省としても適切に御判断をいただいて、最低でも、国民の声に応えるために、最終的に潔白であるならばそれにこしたことはないわけでありますので、きちんと調べて、捜査して、処罰に当たるものかどうかということには、けじめをつけるべきだというふうに思います。

 次に、麻生財務大臣に伺ってまいりたいと思います。

 社会保障の問題です。社会保障の問題なんですけれども、きょうは、あえて麻生財務大臣に伺ってまいりたいと思います。

 というのは、厚生労働大臣が、厚労省が幾ら社会保障を充実しようと思っても、どんなにいい仕組みや制度設計をつくっても、財務省にここにお金をつけてもらえなければ、さっきは絵に描いたようなということでありますが、絵に描いた餅ということになってしまうわけでありますので、きょうはその問題について麻生大臣に伺ってまいりたいと思います。

 特に、軽減税率の観点から伺っていきたいと思います。

 私、軽減税率というのはまさに福祉の敵になってしまうのではないかと思っています。障害者政策、介護あるいは難病対策の敵になるのではないかと思います。軽減税率に必要な一兆円のうち六千億円は、どのように財源を捻出していくか、いまだに明らかにされておりません。ということは、社会保障の削減も大いにあり得るのだと国民は心配をするわけであります。

 総理も聖域なきということを言っております。もちろん社会保障だけが聖域だということを申し上げるつもりはありませんけれども、午前中からの議論もありますように、一億総活躍だと標榜しておられる安倍内閣であります。障害者だって、難病患者だって、あるいは低所得世帯の子供だって、みんなが一億総活躍の、活躍してもらわなければならない国民の一人一人であるわけであります。そういった中で六千億円をどのように調達していくか、そこに社会保障の削減ありきということになっては、まさに国民の期待に、一億総活躍に相反するものになるということだと思います。

 私は、自民党さんが防衛費を削減したり、あるいは公共事業を削減するということはとても期待できないと思っています。そうすると、この六千億円の財源を捻出するためには社会保障を削ると残念ながら思わざるを得ないわけであります。

 小泉内閣で社会保障費を一年に二千二百億円カットしたときで、二千二百億円ですらですよ、診療報酬のカットで医師不足が起きた、年金物価スライドの引き下げで年金がカットされた、介護報酬のカットで介護職員が不足した、障害者自立支援法で障害者の自己負担がふえた。二千二百億円でもこういうことになってしまったわけなんです。今回は六千億円です。しかも、二千二百億円は五年間だけだったんですけれども、今回は永久的に、少なくとも自民党政権が続く間は永久的に続いていってしまうということになるわけであります。

 削られるのは、政治の力を最も必要としている人たち、財政の手助けを最も必要としている障害者、難病患者、要介護者、低所得世帯の子供たちということになりかねません。

 財務大臣、ここは、この部分は決してカットしない、カットできないと約束してもらえないでしょうか。

麻生国務大臣 小さな声でも聞こえますから。

 二〇二五年……(発言する者あり)何が失礼なんだよ。

 二〇二五年には、御存じのように、団塊の世代というものが全て七十五歳以上となります。いわゆる超高齢化社会というのを迎えますので、社会保障関係費の伸びというのは間違いなく見込まれる、当然のことだと思います。医者をやっているんだからおわかりだと思います。

 受益と負担のバランスのとれた持続可能な社会保障制度の構築というのは我々に課せられた、まあ、どなたがやられても同じことだと思いますが、これと同時に財政の健全化というものの両方を進めていくということが極めて重要な課題なんだと認識をいたしております。このため、負担の公平性の確保とか公的保険給付の適正化など、社会保障というものの効率化や制度改革には不断に取り組んでいくことが必要なのであって、聖域なわけではありません。経済・財政再生計画に沿って、こうした取り組みを継続、強化していこうといたしております。

 同時に、今先生御指摘のありましたとおりに、社会保障の充実にしっかりと取り組んでいくということも重要であって、政府としては、当然のこととして、消費税増収分を活用して社会保障の充実、安定化を図る社会保障と税の一体改革を着実に進めておりますのは御存じのとおりですし、平成二十八年度の予算編成過程において、所要の財源を確保いたしつつ、総活躍社会の実現へ向けて必要な予算を計上した、そう思っております。

 今後とも、こうした取り組みを通じて、持続可能な社会保障制度を次世代に引き渡す責任をしっかりと果たしてまいるということでありまして、二・八兆円等々のものにつきましては過日御答弁を申し上げたとおりです。

中根(康)委員 社会保障費をカットしないという約束は、残念ながらしてもらえませんでした。

 少子高齢社会の中において社会保障費が増大していくのは当然だという認識があるならば、なぜ無理やり軽減税率で、あえて、せっかく一〇%に引き上げて社会保障費を確保できるような仕組みをつくったのに、わざわざ税収が減るような軽減税率をやってしまうのでしょうか。

 そこで財源が不足して、どこかでつじつまを合わせないといけないということであるならば、防衛費や公共事業を削減する、あるいは社会保障費を削減するということになるわけで、自民党政権においては公共事業や防衛費は削減できないということになると、社会保障費を削減するということになる。そのことを、今、麻生財務大臣は決して否定されませんでした。カットをしないと約束はされませんでした。ひどいと思います。

 これがやはり自民党の政治だ。国民に負担を押しつける、これが軽減税率。軽減税率はやはりやめた方がいいんじゃないですか、大臣。

麻生国務大臣 軽減税率導入のための財源というのは約一兆円と言われておりますが、総合合算制度の見送りによって生じます財源の〇・四兆円、約四千億円以外の約六千億円につきましては、現時点では具体的な内容が念頭にあるわけではありません。今後、歳入歳出両面にわたってしっかり検討してまいります。

 軽減税率導入の財源確保を目的として必要な社会保障を削減することは考えていないというのはこれまでたびたび答弁申し上げたとおりで、聞いておられるはずだと存じますので申し上げます。わからない人もいます。

 いずれにせよ、社会保障につきましては、持続可能な制度を構築し次世代に引き渡していくため、必要な社会保障の質を確保しつつ、効率化や制度改革の取り組みを継続、強化していく必要があるかと思っております。

中根(康)委員 今、大臣は、必要な社会保障費は確保するとおっしゃっていただきました。

 何が必要で何が不必要か、御説明いただけないでしょうか。

麻生国務大臣 持続可能な社会保障制度を構築し次世代に引き渡していくためには、社会保障におきましても経済・財政再生計画に従って聖域なく効率化や制度改革に不断に取り組んでいく必要があるというのは、たびたび申し上げたところであります。

 いずれにせよ、何が必要な社会保障かということにつきましては、公平性、効率性、また受益と負担のバランスなどというものに配慮しつつ、毎年度の予算編成過程において検討、判断すべきものであると考えております。

中根(康)委員 大臣、もし社会保障費を削らないとしたら、どこを削るんですか。

麻生国務大臣 まだ時間がありますので、これから検討してまいります。

中根(康)委員 やはり社会保障費を削らない。

 難病患者も障害者も低所得世帯の子供たちも置き去りにする、これに対して大臣から、決して置き去りにはしないというお答えはいただけなかったわけであります。つまりは、大臣はこういった政治の力を、財政の支援を最も必要としている人たちを置き去りにしようとしているというふうに国民が受けとめても仕方のない答弁だと思います。一億総活躍だと言いながら、こういった弱い立場の人たちを置き去りにする、とんでもない政府だと言わなければなりません。

 例えば障害者の皆さん、親亡き後のことが心配で心配で死ぬに死ねない。障害を持つ家族の不安に応えるのが政治の役割ではないでしょうか。ぜひ、軽減税率をやめて、障害者や難病対策に十分な予算を確保すると、もう一度ここでお約束をいただけないでしょうか。

麻生国務大臣 イメージづくり、レッテル張り、お得意のところなのかもしれませんが、私どもの考え方は全く違いますので。

 先ほども、これまでも何回も答弁申し上げたとおりに、今からまだ時間のあるところでもありますので、〇・六兆円の内容が今の段階で決まっているわけではない、これまでも申し上げてあります。社会保障も聖域ではないということも申し上げてきました。当然のことです。

 我々は、全てのところに、聖域についてはあなたもそういうのじゃないと認めておられますから、そういった意味では、多くの方々が効率化すべきところは効率化すべきと。当然のことだと思います。そういった意味で、ありとあらゆるところを、我々としては税金を預かっておりますので、そういったものをきちんと配分する、考える、再検討する。当然のことだと思っております。

中根(康)委員 今大臣が、イメージづくりあるいはレッテル張りだと言いました。もしイメージづくりだとかレッテル張りだと言われたくないのならば、ここで、障害者福祉、要介護者に対する支援、低所得世帯の子供に対する支援、これはカットしないと約束をしていただければ、レッテル張りもイメージづくりもいたしません。

 大臣、いかがですか。

麻生国務大臣 レッテル張りと認めていただき、ありがとうございました。初めてでしたから、あなたが。みんな否定されておられましたのでね。ほかの方はみんなレッテル張りじゃないと言っておられましたので、初めて認められましたので、ああ、すごいなと感心しました。

 重ねて申し上げます。軽減税率導入の財源確保を目的として必要な社会保障を削減するということは考えていないと先ほど申し上げました。

中根(康)委員 例えば、障害福祉サービス予算は約一・六兆円です。大臣、この一・六兆円で障害福祉サービスは十分だとお考えになりますでしょうか、あるいはもっとふやすべきだとお思いになりませんでしょうか。いかがですか。

麻生国務大臣 今回のいわゆる障害福祉サービスの見直しというものにおきましては、現在、これはたしか厚生労働省で高齢障害者による介護保険サービスの円滑な利用を促進するための法改正に向けたいろいろな見直しが検討されていると承知をいたしておりますので、厚生労働省において適切に検討していかれるもの、それが重要なことだ、まずはそこからだと思います。

中根(康)委員 今大臣が例示されたそこですけれども、よく財務省が理解をされたと、僕は正直、初めはびっくりいたしました。介護保険の優先原則というものですよね。障害者福祉サービスにおける六十五歳以上の高齢障害者に対する介護保険の優先原則をぜひなくしてほしいと、これまでも多くの国民から要望が出されておりましたけれども、この原則についてはかたくなに守り続けられておりました。

 その中において、一定の高齢障害者に対して介護保険サービスの利用者負担を軽減する仕組みを整備するということが、障害者総合支援法の三年後の見直しの中に盛り込まれてきた。

 先ほど申し上げましたように、財務省がこれをよく認めたなという思いでありますけれども、もう一度さらに考えると、実は、高齢障害者が障害福祉ではなく介護の方に行った場合に、その介護の分野で、これまでの予算委員会の議論でも示されておりますように、要支援切りであるとか、生活援助サービスがカットされてしまうとか、つまりは、障害者が介護保険の世界に行っても結局使えるサービスが、受け皿がないということになってしまって、障害福祉サービスも使えない、介護サービスも使えない。

 結局、財務省はそのことをわかっていて、だからこの一定の高齢障害者に対する介護保険サービスの利用者負担を軽減するというところを認めたのではないかと思えてまいりましたが、大臣、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 今、介護保険優先原則について、六十五歳以上の障害者の皆さんについての御質問がございましたが、結論的には総合支援法の見直しを、今回法律をお願い申し上げるわけでありまして、その中でしっかりと議論を一緒にしていただければ、こう考えているわけでありますし、高齢の障害者が介護保険サービスを円滑に利用できるようにというふうな観点で御説明を申し上げようと思っております。

 基本的には、高齢障害者への障害者総合支援法と介護保険法の適用については、自助を基本とし、共助がこれを支えて、自助、共助でいくということで、少なくとも、公助であります障害福祉サービスに相当するサービスが介護保険法にある場合は共助である介護保険サービスの利用が優先されるということが原則であるわけでありますけれども、しかし、介護保険サービスに相当するものがないというときは障害福祉サービス固有のサービスと認められるものであります。それから、市町村が適当と認める支給量が介護保険サービスのみによって確保できないというようなものについては、利用可能な介護保険サービスが身近では提供されない場合などで、この障害者総合支援法に基づくサービスを受けることも可能となっているということであります。

 いずれにしても、低所得者にはしっかりと配慮しながら、サービスがないということがないようにしてまいりたいと考えております。

中根(康)委員 今回の新しい仕組みを導入したのは、結局、財務省が、介護保険も使われないであろうということで、障害福祉サービスも節約できる、介護保険財政も節約できる、こういうもくろみの中で新たに組み入れた仕組みだという思いもありますけれども、財務大臣、最後にもう一回だけ御答弁いただけないでしょうか。

麻生国務大臣 今、厚労大臣が御答弁をされましたので、基本的にその線と同じことであります。

 私どもは、厚労大臣から来たものを許認可する立場にあります。私どもが予算を配分するので、こっちから上がってこない限りはどうにもなりません。

中根(康)委員 全く不十分な答弁で、とんちんかんな答弁でありますけれども、時間が参りましたので、これで終わります。

 ありがとうございました。

竹下委員長 これにて中根君の質疑は終了いたしました。

 次に、中島克仁君。

中島委員 民主党の中島克仁です。

 本日は、機会をいただきましたので、質問をさせていただきたいと思います。

 私から、まず、本予算委員会でもたびたび取り上げられております高市大臣の電波停止発言について質問をいたします。

 テレビ局が政治的公平性を欠く放送を繰り返した場合、放送法四条違反を理由に、電波法七十六条に基づいて電波停止を命じる可能性について、高市大臣は言及をされました。

 この発言について、二月十二日、政府統一見解が出され、放送法四条一項を確保しなければならないこととしながらも、政治的公平であることの解釈は、一つの番組ではなく、放送事業者の番組全体を見て判断するという従来の解釈に何ら変更がないとして、高市大臣もたびたびそのように答弁をされました。

 補充的説明として、その際、番組全体を見て判断するとしても、番組全体は一つ一つの番組の集合体であり、一つ一つの番組を見て判断するのは当然のことであるとして、問題なのはここからですが、一つの例として、国論を二分するような政治課題について、放送事業者が、一方の政治的見解を取り上げず、殊さらに他の政治的見解のみを取り上げて、それを支持する内容を相当の時間にわたり繰り返す番組を放送した場合のように、当該放送事業者の番組編集が不偏不党の立場から明らかに逸脱していると認められる場合といった極端な場合においては、一般論として、政治的に公平性を確保しているとは認められないとされております。

 幾ら補充的といえども、今までに、具体的な例を挙げることはかつてなかったことで、このことを我々は大変問題視しているわけです。補充的な説明と繰り返し答弁されますが、これはどう見ても見解を変えたと言わざるを得ません。放送事業者側もそのように受けとめるのが普通だと思います。

 具体的にこのような例に踏み込んだのには、このような事例に踏み込む個別の番組が念頭にあったんじゃないか、または、あるのではないかと疑わざるを得ないわけです。大臣、いかがでしょうか。

高市国務大臣 政府統一見解で示させていただいたことにつきましては、既に昨年の五月に参議院の総務委員会で私が政府の考え方として答弁をいたしております。特に個別具体的な番組が念頭にあったわけではございません。

 そのときには、委員から、一つ一つの番組についてということについて御質問がありましたので、むしろ、放送事業者の皆様に自律的に放送をして編集していただくという中で、萎縮を招くことなく、よりわかりやすくという意味で整理を当時させていただきました。昨年その見解を申し上げたときには、全く御党からも御批判もなく、しっかりと納得をしていただいたと理解いたしておりました。

 特に、過去に、一つだけの番組であっても、極端な事例において二回、もう十年以上前ですが、二回行政指導があったこともございますので、それがどういった極端なケースかといったことを昨年わかりやすく整理させていただいたことでございます。

中島委員 萎縮を招かないように補充的というようなことでございましたが、この内容を補充したことで、解釈、さまざまな臆測を生んで、逆に萎縮を招くということが言えるのではないかと思います。

 今、高市大臣からも御発言ございました、昨年五月、参議院の総務委員会で、この解釈、政府見解と全く同様の質疑が行われているわけです。この時期というのは、昨年四月、与党で、個別の番組に対して自民党が聴取をされた時期、そして前後して、報道けしからぬというようなさまざまなことがあった時期でもあって、今の御発言からいくと、そのようなやりとり、わざと臆測を呼ぶような、萎縮させるようなやりとりをやったのではないかと私は思うわけです。

 私からちょっと例を挙げてお話をさせていただきますが、前回の解散・総選挙、解散直前の二〇一四年十一月十八日、TBS、NEWS23でございますが、安倍総理が生出演いたしました。番組内で、街角インタビューでアベノミクスの実感を尋ねたところ、実感なしと答えた方が四人、そして実感ありという方が一人という結果であって、このインタビュー内容に対して、生出演されていた安倍総理は、これは編集したものだと反論し、その後、アベノミクスの成果について饒舌に語られておりました。

 この番組を生放送で繰り返し放送した場合、何回繰り返すと公平性から逸脱するのか。もしくは、相当時間繰り返すとは、具体的にどのくらいの時間、何回繰り返した場合を想定しているのか。例えばですが、例示をするとすれば、この番組を何回繰り返せばそれに相当すると想定されるんでしょうか。

高市国務大臣 仮定のお話には答えられません。

 安倍総理が御出演になった番組も、私は見ておりません。しかしながら、一方の見解が放送されて、それに対して、出演を依頼されて出ておられた総理が御自分の意見をおっしゃる、これに関しては何の問題もないことだと思います。

中島委員 要するに、ここの部分が不明瞭であればあるほど、放送事業者は圧力を感じるんですよ。この部分を政治的に判断するとしたら、まさにそれこそが政治的圧力であって、言論の抑圧になるじゃないですか。

 具体例を出せないなら、そもそもこの補充的説明は撤回するべきだと私は思いますが、いかがですか。

高市国務大臣 撤回をするつもりはございません。政府の統一見解でございます。

 そして、またあえて言わせていただきますけれども、例えば、放送法四条違反に係る放送法の百七十四条及び電波法第七十六条の運用については、この委員会でも先般申し上げましたとおり、法律の規定に違反した放送が行われたことが明らかであるということに加え、その放送が公益を害し、放送法の目的にも反し、これを将来に向けて阻止することが必要であり、かつ同一の事業者が同様の事態を繰り返し、かつ事態発生の原因から再発防止のための措置が十分でなく、放送事業者の自主規制に期待するのでは法律を遵守した放送が確保されないと認められるといった極めて限定的な状況のみに、極めて慎重な配慮のもと運用するべきである、これは従来からの解釈でございます。

 放送法そのものも、平成二十二年、民主党政権のときに大改正をされました。もともとこの議論は奥野委員のこの予算委員会での御発言から始まりましたけれども、しかしながら、やはり、法治国家におきまして、当時民主党政権のもとでも、番組準則が法規範性を有することや、番組準則に違反した場合には、総務大臣が放送法第百七十四条に基づく業務停止命令や電波法第七十六条に基づく運用停止命令ができるということ、あと、今申し上げました運用に当たっての考え方について、同じ答弁をされておりますので、全くこれを将来にわたっても適用しないのかという奥野委員の質問に対しては、それに対して何の対応もしないということをお約束するわけにはまいりませんと私は答えさせていただきました。

 やはりこれは、法治国家にあって、法律に規定されているその条文について、全く無効である、適用することはあり得ないというようなことは申し上げられませんし、そしてまた民主党政権時の答弁を踏襲するということも必要であると思いました。

中島委員 民主党政権のときにこういう例示をしたということではなかったというふうに思います。

 そもそも、放送法四条、番組編集の基準として挙げられているものですが、これは倫理規定であって、努力目標というのが定説です。それを、法律に規定された罰則規定と捉えて処分の根拠にすること自体が大変間違っているわけです。

 高市大臣が、国論を二分する政治課題で、一方の政治的見解を取り上げず、他の見解を支持する内容を相当時間にわたって繰り返し放送した場合を、公平性を欠く一例としていること自体が、公平かどうかを政府が判断する、言論統制につながるという問題だ、そういう認識が高市大臣には欠けていると言わざるを得ないというふうに思います。

 総務大臣は電波を所管する大臣で、大変問題は大きいわけです。その認識を欠いていること自体が大変問題だということを御指摘させていただきたいというふうに思います。

高市国務大臣 済みません、今御指摘がございました点についてでございます。(中島委員「質問していないですよ、質問していない」と呼ぶ)委員長から御指名いただきました。

 今委員の御発言の中に、番組準則については、これは倫理規定であって法規範性がないということをおっしゃったんです。それが定説だとおっしゃいましたけれども、民主党政権時代の平岡副大臣の答弁で、「番組準則については、我々としては法規範性を有するものであるというふうに従来から考えているところであります。」と答弁をされておりますので、行政としてはその継続性を大事にいたしております。そこだけは、事実関係でございますので、お願いいたします。

中島委員 私は違う質問をしようとしていたのに、突然立たれた。こういう威圧的な行動も……(発言する者あり)威圧的じゃないですか。質問していないですよ、私。こういうことも含めて、安倍政権でたびたび、放送の自律や、こういう威圧的なことが起こっているわけです。軽視する姿勢を示しています。民主主義の基盤である国民の知る権利を侵害するということすら危惧されるということを御指摘させていただきたいというふうに思います。

 時間もたってしまいますので、次の質問に入りたいと思います。

 安倍政権が掲げます一億総活躍実現のための新三本の矢の一つ、介護離職ゼロというものを掲げておるわけですが、大変耳ざわりのいい言葉で、実現することなら大変いいことだなというふうに私も思うわけですが、その実現性に大変疑念を持ちます。

 補正予算において、緊急対策として約一千五百億円、審議されております来年度予算案においても、基金を利用した介護人材確保策など予算措置が示されているわけですが、具体的な法改正は、提出されている雇用保険法の改正による介護休業や休暇の一部緩和のみとなっています。

 まず、大臣にお尋ねをいたしますが、今回の対策で介護離職ゼロは本当に実現できるんでしょうか。できるとすれば一体いつまでにできるとお考えになっているのか、お答えください。

塩崎国務大臣 介護離職ゼロというのは、二〇二〇年代初頭までに、介護を原因とした離職を防いで、特養などへの入所を希望しながら自宅待機せざるを得ない方をなくしていこう、そしてまた、一億総活躍社会の実現のための重要な政策の柱の一つというふうに考えているわけでありまして、十一月の二十六日に一億総活躍国民会議が開催をされまして、その場で緊急対策が取りまとめられました。

 二十七年度の補正予算、そして来年度の予算には介護離職ゼロの実現のための必要な施策を盛り込んでおるところでございまして、今後、この春に取りまとめ予定のニッポン一億総活躍プランというのをつくる予定でございますが、この中で十年間のロードマップを策定していくこととしておりまして、一億総活躍担当大臣である加藤大臣ともよく連携をして、介護離職ゼロの実現に向けてしっかりと取り組んでまいりたいというふうに考えております。

中島委員 介護離職の問題は、働き盛りの年代に差しかかったときに介護需要が増して、介護を担う中高年層、管理職とか経営幹部など現場で重要な役割を担う世代で介護離職による人材流出、これは企業にとっても深刻な問題だ、そういう問題が大きいことであるというふうに思います。

 これは財務大臣にちょっと確認をしたいんですが、そういう観点からいっても、今回の政策効果、介護離職ゼロによって生じる経済効果はどのように試算されておるのか、お尋ねいたします。

麻生国務大臣 日本経済を支えるいわゆる現役世代が、親の介護等々の理由で大量離職ということになりかねぬということで、経済社会が成り立たなくなるということから、そういう可能性も考えて、介護離職ゼロという明確な目標を掲げて、現役世代の安心というものを確保していくことが大事なんだと思っております。

 また、介護の職につく方を増加させてきたことで、二十五年の百七十万八千から、二十六年は百七十六万五千ということになっていると思いますが、雇用を吸収していることも事実であります。

 いずれにしても、強い経済というものを実現していくためには、日本にとりまして、少子高齢化という構造的な問題というものに正面から取り組んでいくことが必要であります。したがいまして、介護離職ゼロとか、また希望出生率一・八など、経済社会というものを持続的に発展していくために必要な分野につきましては、予算の編成過程の中でいわゆる安定財源というものを確保しつつ、しっかりと政策を進めてまいりたいものと考えております。

中島委員 現役世代の安心ということでキーワードになっているのかと思いますが、先ほど申しましたように、これは、企業にとって有益性があるのか、それとも介護現場を充実させることが本質なのか、軸足がどっちにあるのか非常にわかりづらい。

 そして、先週、厚生労働省から発表されましたさまざまな介護保険制度改革の中に、要介護一、二の生活援助の部分が介護保険から切り離され、自己負担に変わるということが知らされました。

 大変ショックというか、一方で介護離職ゼロと言っていて、一方では要介護一、二の生活援助を打ち切る。これは、私も現場に入りますが、要介護一、二の方の約半数は、この生活援助で在宅介護が成り立っています。このことをもし自己負担、一回二百五十円を二千五百円、そうなった場合、介護離職は間違いなくふえると私は思っています。

 実際に、週末、本当に短い期間でしたが、地元で五十件、ケアマネジャーさんにアンケートをとりました。その結果、まだ全部返ってきていないわけですが、十六人、アンケート結果が返ってまいりました。今回の要介護一、二の生活援助自己負担化、これによって介護離職はふえると答えた方が十六人中十四人、二人は不明でございました。さらに、要介護一、二、介護されている御家族にも同様の質問をしました。十人中七人がふえると。そして、今現在やられている方も、介護離職もしくは介護転職しなければ見ていられない、そのようなアンケート結果、まだまだ途中経過ではございますが、返ってきました。

 アベノミクス、新三本の矢の大看板を掲げて、一方で、ことしじゅうもしくは参議院選挙が終わった後、この要介護一、二、検討して決めていく、来年の通常国会には法改正を提出する。言っていることとやっていること、真逆じゃないですか。いかがですか、大臣。

塩崎国務大臣 まず第一に、今御指摘のあった要介護一、二の方々の生活援助の問題を含めて、軽度者に対する生活援助サービスのあり方などについて、今、昨年の骨太方針、そしてまた昨年十二月に経済・財政再生アクション・プログラムの工程表というのができましたが、この中で検討事項ともされているところでございまして、このため、この十七日から工程表に沿って介護保険部会における議論が始まったばかりでございます。そして、現時点で何ら具体的な方針が決定しているわけでもないということをまず明確にさせていただけたらなというふうに思うわけであります。

 介護保険は、もともと、高齢者の自立を支援して、介護の重度化を防ぐことを理念に掲げているわけでありまして、これまでもいろいろな改正をやってまいりました。効果的なサービス提供をしなければならないということで、改正をやってきたわけでありますけれども、前回の介護保険法の改正では、要支援の方を、介護保険の対象外とするのではなくて、引き続き介護保険の地域支援事業の対象としながら、市町村が必要なサービスを、むしろ地域の実情に応じて効率的かつ効果的に提供できるような仕組みに見直したところでございます。

 この二月一日にも、私は、和光市で介護予防の取り組みというのを見てまいりましたが、要支援の方が改善をしているという話を聞いて、非常に独自な努力をされているな。こういうような先進事例をしっかりと横展開しながら、介護の基盤整備と同時に、元気な高齢者をふやしていくということが大事であり、また、我々、忘れてはならないのは、財源は三つしかないということでありますので、そのことを含め、そしてまた、今お話しのような御指摘があるということについてはしっかりと耳を傾けながら、介護離職ゼロを目指すということは何ら変わらない大きな方針でありますので、しっかりと議論をしていきたいというふうに思います。

中島委員 やっていることが逆じゃないかということにお答えになっておられないんです。

 今、要支援の話、要支援一、二の方の総合支援への移行の話もありました。まさに、来年の四月から、要支援一、二の方が、地域支援事業、総合支援事業ですが、移っていく。前倒しでこの四月からという地域もありますが、各自治体で、全く取り組みもままならないという地域もある。そして、要支援一、二を総合支援事業に移していくときに、プロフェッショナルである介護者に介護されないことで逆に認知症が悪化するかもしれない、そのようなことも危惧されていて、そのことも、来年四月、始まって、各地域は不安でしようがないという現状の中で、この報道を聞いたときに大変皆さんショックを受けられた。

 一方で介護離職ゼロと言っておいて、一方でこういう要介護切りをまた検討している。これは大変問題だと言わざるを得ません。

 先ほどのアンケート、要介護一、二の生活援助を自己負担にしたらどうして介護離職がふえるのかという、全部返ってきてはおりませんが、コメントとしてあったのが、生活援助があるから、先ほども言ったように、要介護一、二の方の半数は生活援助で支えられています、それがあるから何とか仕事を続けながら介護ができたのに、自己負担になって、高いお金は払えないので今の仕事は続けられない、もしくは転職しなければいけない、最初は頑張れるかもしれないが、先の見えない介護生活、とても自信がないなどでありました。さらに印象的だったのが、今も言ったように、要支援一、二のときと同じように、生活援助がなくなったらさらに認知症が進む可能性が高いとおっしゃっておりました。

 要介護一、二の方の生活援助切りは、認知症の悪化、介護の重度化となって、結果、介護離職をふやす、これはケアマネさんも御家族も大多数が答えています。絶対にやめるべきだと私は思うんです。

 そして、もし介護離職ゼロを大看板に夏の参議院選挙を戦うのであれば、ここで約束していただきたいんですが、今、検討とおっしゃいました。このことはしないと明確に約束していただきたいと思います。

塩崎国務大臣 これは先ほど申し上げたとおり、一つは骨太の方針、これは閣議決定もされていることでもございますし、それから先ほどの十二月の経済・財政再生アクション・プログラムの中で、検討事項ということで工程表に明記をされているわけでございますので、先ほど申し上げたように、財源は三つしかない中で、どうやってよりよい介護サービスを負担がふえない形でやれるのかということを絶えず考えていかなければならないわけでございます。

 だからこそ、先ほどの和光市のような例は非常に参考になるわけであって、もともとのニーズ自体をなくしていく、つまり、健康になりながら、介護保険にお世話にならなくてもいいというケースをつくっているならば、それを広げた方がいいということでやっているわけで、夢ではなくて、これを現実にやっていかなきゃいけないということを、私たち、医療の面でも、例えば重症化予防などの、糖尿病の人工透析への移行のリスクをコントロールしていくというようなことも同時にやっているわけであります。

 いずれも、恐らく先生が考えていらっしゃるのは、一番、やはり御本人たちがどれだけ快適に地域で暮らしていけるかということを考えておられると思いますが、私たちも同じであって、それに加えて負担ということも考えていかなければいけないので、これは、今申し上げたように、検討はするけれども何も答えが決まっているわけでもないということでありますので、御理解を賜れればと思います。

中島委員 その検討も、これは七月の参議院選挙、今、新三本の矢の大看板に介護離職ゼロをもう既に掲げているわけですよ。もしそれで、参議院選挙が終わり、秋には、検討した結果、来年の通常国会に介護保険法の改正でこれがされるとなれば、だまし討ちじゃないですか、これは。

 まず、大臣、ちょっとそこだけ確認させてください。今回の介護離職ゼロと要介護一、二の生活援助の自己負担化、これは相反する政策だとお認めになられますか。

塩崎国務大臣 自己負担化ということが決まったわけでもないわけでございまして、これをどうするかということを御議論賜ろうということであります。

 同時に、先ほども申し上げたように、この春に、今度は一億総活躍のプランをつくる、そして十年のロードマップをつくる、その中で私たちは介護離職ゼロを二〇二〇年代初頭に実現しようと言っているわけでありますので、それも掲げて同時に進めていくということでございますので、決してだまし討ちとかなんとかいう話では全くなくて、同時にやはり達成していかなきゃいけないことだというふうに思うわけです。

 ただし、今の、要介護一、二についてどうするかということは、何も決めているわけではないので、議論を賜って、どうするかを皆さんと御一緒にも考えていこうということでございます。

中島委員 検討しているのは事実ですよね。検討しているわけです。ですから、現時点ではそうかもしれませんが、私が言っているのは、まず、政策効果として、介護離職ゼロという今の取り組みと、もし検討した結果、要介護一、二の方、先ほどアンケートで示したように、現場の方も御家族も私も思います、そのようなことが本当に起こったら介護離職が確実にふえます。やっていることの整合性が全くない、真逆の政策だということはお認めになられますかどうか、そこだけお答えください。

塩崎国務大臣 真逆かどうかというのは、要介護一、二の生活援助を切るということが真逆かと聞いておられるので、我々は、それをやると言っているわけではないので、これを御検討いただいているということでありますから、逆も何もないんだろうというふうに思います。

 我々は、さっき申し上げたように、先生と私も考え、目的は同じであって、それぞれの方々が、言ってみれば一番快適な暮らしがどうできるのかということを効果的、効率的に国民負担をお願いしながら実現していくということが最も大事なことでありますので、一体何ができるのかということを考えるとともに、介護離職ゼロは絶対に達成をするということを掲げて、今、国民会議で、何ができるのか、どうしたらいいのかということの議論をしているところでございますので、逆とかなんとかいうことを考えずに、両方とも議論を重ねていくということであります。

中島委員 私はそういうことを聞いていたんじゃないんです。ですから、今検討されている政策というか、もしやったら、要介護一、二の部分の生活援助が切り離されることによって、政策効果というものが逆かどうかと。

 ですから、国民の皆さんに対しては、低所得者、年金受給者へのばらまき、さらには介護離職ゼロという大看板を掲げて、私は誇大広告だと思います、そういうことであれば。そして、選挙が終わった後、さまざまなことを理由にもし要介護一、二の方の生活援助を打ち切るような、自己負担化するようなことがあれば、まさにだまし討ちと言わざるを得ないということを申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

竹下委員長 これにて中島君の質疑は終了いたしました。

 次に、石関貴史君。

石関委員 こんにちは。維新の党の石関貴史です。

 先日の基本的質疑でちょっと聞きそびれたことがありますので、まず麻生大臣にお尋ねをしたいと思いますが、大臣は今、年金の受給資格をお持ちだと思うんですが、年金を受けていらっしゃいますか。

麻生国務大臣 もらっていません。

石関委員 どういう理由で。受給資格はあるんですよね。もらっていない理由、もし御説明できるのであればいただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 受給資格はあります。

石関委員 個人的なことですから、言いたくないよということであればそれで結構ですが、もらわない理由は何かあるんでしょうか。

麻生国務大臣 個人の自由だと思います。

石関委員 わかりました。資格はあるけれどももらっていない、御自分の自由だと。

 選択ができる方は結構だと思うんですね。ただ、やはり年金しかないという方も大勢いらっしゃいますので、そういった方々の身に立って、社会保障、先ほど介護の話もありました、年金制度、やはり我々は考えていく必要があるんだというふうに思います。

 麻生大臣もほかの大臣の皆さんもお気づきだと思いますが、最近、雑誌の見出しや、実際に本もいっぱい出版されていますが、下流老人とかいう言葉が残念ながらはやりになるぐらいの伝播をしているという御時世だと思います。

 やはり、国民の皆さんの関心というのは、先ほどからも議論のある社会保障、年金や介護、また、子育て世代でどうしても働かざるを得ない、保育、こういった部分に大変国民の関心も大きいんだろうというふうに認識をしています。

 一番大きなこの先の一つの節目というのは、団塊の世代の皆さんが後期高齢者になる二〇二五年、ここをどうやって乗り切っていくかというのが大きな節目の一つではないかなというふうに思っています。

 まず、資料の一をごらんいただきたいと思います。

 これは共通の認識だと思いますが、このように社会保障給付の将来推計ができています。これは厚生労働省等の資料でありますので、確認の意味で出させていただきました。人口は、上に載せているとおり、予測でいうとこうやって下がっていく。我々の生産性が一・五倍、倍になるとか、GDPがそのうち倍になりますよということが現実に起こればこういった問題も解消されるのかもしれませんが、足元から予測した場合になかなかそうなっていないということですから、人口が減る中で、こういった社会保障に関連する費用という負担の部分は、右肩にあるように増大していく、こういう認識。

 この資料を、負担増、はてななしで出したら、理事会でこれはだめだということで、はてなをつけて出し直させていただきましたが、厚労大臣、普通に、この表のとおり負担はふえていく、負担増だ、こういう流れにあると思いますが、御認識はいかがでしょうか。

塩崎国務大臣 大事なことは今の社会保障制度が持続するということでありますので、当然、今の制度を前提にすれば、高齢化が進めば蓋然性としては負担も給付もふえていくということは十分あるからこそ、税と社会保障の一体改革などさまざま、これは民主党の皆さん方とも、民自公で一緒に考えてきたところでございますので、今申し上げたとおりでございます。

石関委員 理事会ではこの資料ははねられたんですけれども、はてなをつけなくても、今の制度が持続していけば負担増だ、こういう御認識でよろしいということですよね。今そういうふうに御答弁いただきました。普通に考えればそういうことだというふうに思います。

 では、どれだけふえるか、数字をちょっとお聞きしたいと思います。

 今現在の、足元での要介護の方々の人数、また、先ほど申し上げた二〇二五年度における人数がどういう見込みになっているか。あわせて、介護の費用、現在は幾らぐらいなのか、また、二〇二五年度には幾らぐらいの見込みで推計されているのか、教えてください。

塩崎国務大臣 まず、要介護、要支援の認定者、認定を受けていらっしゃる方々でありますけれども、二〇一四年の三月末現在で五百六十九万人程度ということでございまして、これが、今お話がございました二〇二五年、この年度には八百二十六万人になると見込まれておるところでございます。

 介護の費用ということでございますが、二〇一三年、平成二十五年度の実績ベースで見ますと、介護は約九兆円でございます。二〇二五年度の介護を見込む数字は約二十一兆円になるというふうに見込んでいるところでございます。

石関委員 介護のほか、医療費の総額は、同じように、現在とそれから二〇二五年、今の数字と見込みを教えてください。

塩崎国務大臣 医療費につきましては、二〇一三年度の実績ベースで約四十兆円。これが、二〇二五年に参りますと約六十二兆円になるという予想でございます。

石関委員 これは、お答えのとおり、物すごい増加ですよね。先ほど申し上げたように、我々の所得が倍になるとか、国の経済規模が倍になるとかいうことがなければ負担の部分がどんどんふえていく、基本的にはこういう構造だと思いますが、これだけの増加額をどのように賄おうとされているんでしょうか。税金をもっと投入する、では、税金を上げるのか、あるいは保険料、こういう部分を上げて投入せざるを得ないと思うんですが、大まかにどういうふうに賄おうとされているんですか。とても普通の計算じゃできないですよね。

塩崎国務大臣 先ほどの中島先生との議論の中でも申し上げましたけれども、一番大事なことは、やはり国民一人一人が健康であり続けることが大事であって、今の医療費や介護のニーズ、費用の予想は、現状の感じがずっと伸びたという前提でやっていますから、どうやってそういう需要がふえないように、つまり健康のままで生きるか、あるいは要介護度が上がらないようにするか、それから病気になっても重症化をさせないでいくということが大事で、ほっておいたらふえていく医療ニーズをどう抑えていくかということがまず第一だと思います。

 そうなると、減ったとしても全体としてふえていくかもわからないということになれば、財源は三つしかございませんので、いずれも社会保険方式でありますから、保険料か、税か、それとも自己負担、この三つしか基本的にはないわけでありますので、それをどのようにして賄っていくかということを国民の皆様方にお諮りして決めていかざるを得ないということで、社会保障と税の一体改革はまさにその大きな一歩だったんだろうというふうに思います。

石関委員 大臣、資料の二をごらんいただきたいと思います。

 先ほど、介護の離職者を減らす、なくすということであれば、当然、介護の現場での人材というのが必要になってくると思いますが、介護それから保育関係の職種別の平均年収の資料をお出しさせていただきました。

 保育士の皆さん、年平均が三百十六万円とか、ケアマネジャー三百七十二万円、こういうふうになっています。全産業の平均、規模が十人以上では四百七十九万円、千人以上の平均では五百八十九万円ということでありますので、全産業、ほかの業種に比べて随分低いということはこれを見ても明らかでありますし、また大臣も御認識だというふうに思います。

 ただ、人材を確保しようということになると、先ほど大臣がおっしゃったような、どこに財源を求めるか。自己負担や税金や保険料ということですが、人材をもっと確保してくださいといえば、そこの支出をお願いして現実にやっていかざるを得ないということですので、人材確保と支出の面、どうやって兼ね合いをとろうというふうにお考えでしょうか。

塩崎国務大臣 保育にいたしましても、介護にいたしましても、処遇が他の産業に比べて非常に厳しいがゆえに人材がなかなか集まらない、有効求人倍率も非常に高いということで、私たちもこれにはずっと対策を打ってきたわけであります。

 まず第一に行ったのは、これは自公民で、一体改革の中で、消費税の税収をもとに引き上げるということを、既に三%をやらせていただいたわけでございますが、そのほかに、介護であれば、今回、加算を特別に設けるということであります。これは介護保険の中でやるわけでありますので、どこかにその負担が行く、保険料か税金か自己負担か。保育の場合は保険ではありませんので、これは税金ということになりますので、そこのところの割り振りは税でいくしかないということでございます。

 私どもとしては、言ってみれば介護の生産性も上げることによって、より高い報酬を提供してもそれが賄い切れていくようにしていくということも同時にやっていかなきゃいけないということで、ロボットの導入であるとか、ICTのフル活用であるとか、そういうことも含めて生産性を上げて、より一人当たりの負担が軽くなり、効率は上がっていくということを実現していくことが大事だろうということで、厚労省の中にも新たに懇談会を先日立ち上げたところでございます。

石関委員 いろいろ工夫をするということでしょうけれども、先ほど聞いた数字を賄うだけの工夫が今あるようにとても思えないんですね。ICTがどれだけ導入されても、先ほどの支出をどういうふうに縮められるかとか、予防ができるということはなかなか直接にはならないんだというふうに思います。何らかの支出の工夫や、また、政府全体としてやはり身を切る改革、それから徹底的な無駄の排除、こういったものもあわせてやっていく必要があるというふうに思います。

 大臣もさっきおっしゃいましたが、質をどうするかということに関して、最近明るみに出ました川崎の施設での捜査が進んでいるところでありますが、どうも入居している方が投げ落とされたのではないか、こういうことがありましたが、大臣、どうお感じになっていますか。

    〔委員長退席、関委員長代理着席〕

塩崎国務大臣 これは捜査中の案件で、私ども、個別の問題についてコメントはできませんけれども、いずれにしても、報道が事実だとすれば、これは許しがたい行為であったというふうに考えております。

 厚労省としては、有料老人ホームの親会社、株式会社メッセージに対しては、介護事故に関する自治体への報告漏れもたくさんございましたので、厚生労働省より業務管理体制についての勧告を行い、現在、改善状況の報告を受けて指導を実施しているわけであります。

 これは、都道府県に届け出をすることになって、都道府県が監督をするわけでありますけれども、それだけではなかなかこういう問題が抑え切れないということも今回明らかになったわけでありますから、我々厚生労働省としても、都道府県とさらに連携を密にして、未然にこういうことが起きないようにしていかなければならないなというふうに思っているところでございます。

石関委員 質をどうするか。もちろん、各事業者とも、質のいいものをふやしていくことによって、それは予防にもつながったり、それから、入る方々の安心にもつながる、向上になるということだと思うんですが、ただ、我が国で、さっき大臣もおっしゃったサービス面、ここをどうやって図るかというと、この基準はなかなかないんですね。

 役所にも聞いてみました。例えば介護施設、いい施設かどうか見分ける指標や、どこがそういうサービスをしてくれているのかと。資料の三にありますが、地域包括支援センター、こういうものがあって、ここで総合相談支援業務も受けますよ、権利の擁護業務もやっていますよ、多面的支援もやっていますよということなんです。

 ではと思って、この資料三の一番下の四角の中に入っている、平成二十六年四月末現在で全ての市町村に設置とありますから、私の選挙区の群馬二区のそれぞれの町を調べてみました。それが次のページです、資料の四。

 これを見ると、私の生まれ育ったところですが、伊勢崎市はゼロになっているんですね、これは厚生労働省のホームページから引いていったものです。桐生市は九、玉村町は一というふうになっています。これだけ見ると、明らかに、地域包括支援センターというのがないところも、あるところも、たくさんあるところもある、偏在しているということです。

 ただ、この資料が怪しいのは、伊勢崎市はゼロになっているんですが、この後、群馬県のホームページから同じセンターを調べてみたら、こっちの方はあるんですよ。厚労省の資料によると、例えば群馬県、県内で包括支援センターは十六件というふうになっていますが、ただ、県のホームページを見ると九十五件あります。栃木県、近県なので調べてみたら、このホームページでは、厚労省では二件しかありませんが、県の方では九十一件。長野県は、厚労省では五件ですが、長野県のホームページで見ると百二十二件。

 質を上げて入居したい人たちの便宜を図ったり、あるいは、いいところにもっと手厚くしたいと思っても、厚労省の資料と、群馬県あるいは近県の資料がこれだけ違うというのは、どこに問題があるんでしょうか。大臣、御認識されていましたか。

塩崎国務大臣 これは先生御指摘のように好ましいことではないと私も思いますが、何でこういうことが起きているのかというと、少なくとも一つは、地域包括支援センターというのは各市町村にあります。ありますが、厚労省のホームページに登録をしていただいていないところが市町村によってあるということでこのようなことになっているので、こういうようなことがないように、しっかり登録をしていただいて漏れがないように、都道府県と数がずれているようなことがないようにしていきたいというふうに思っているところでございます。

石関委員 大臣、登録していないのはおかしいと思わないんですか。

 これはいろいろたくさんの税金、予算をつけて、また保険料のサービスを行っていて、自己負担もある、それぞれ今いろいろな業種のサービスがありますが、それじゃどこへ入ろうか、私のお父さんをどこへ預けよう、面倒を見てもらおうと思ったときに、そんないいかげんなことでこれだけ税金を投入して、恥ずかしくないんでしょうか。

塩崎国務大臣 好ましくないことはもう先ほど申し上げたとおりでありますけれども、もともとこの地域包括支援センターは、それぞれの地域で、私も家内の両親が施設にお世話になっておりますので、その際に、やはりそういうところで御相談申し上げていろいろ教えていただくということで、便利に教えていただきました。ですから、地域でこういうことが活用されているということで、都道府県のホームページにはちゃんと漏れなく載っているということで、恐らく地域の人たちはそれを見ながらやっておられる方も多いのではないかと思います。

 なお、厚生労働省のホームページを見て、ないじゃないかというふうに思われる方がいたらいけないので、早速これはちゃんと、きちっと指導して、登録をしてもらうように直ちにやりたいというふうに思います。

石関委員 これは国費を投入されているわけですから、厚労省のホームページはもちろんですけれども、各都道府県と連携をして、同じものが出てこなければおかしいですよね。これは早急に取り組んでいただきたいと思いますよ。

 大臣が誰かに聞けば、それは懇切に説明してくれると思いますよ、いろいろな施設でも役所でも、大臣の家族のことであれば。ただ、普通の人が介護施設にお世話になろうとなった場合に、なかなかこんなに情報はないですよ。入ってみて、入れてみて、やっと、ああ、こういうところだったのかと。

 先ほど投げ落とし事件のことをお尋ねしたのもこういうことで、そこに入居されていた方々や家族の方は、どんなところだかなかなかわからないですよね。そういう評価、ここも我が国で高めていく必要があるんだと思います、サービスという面からも、どこに税金を投入するかという面からも。

 うんと短くお答えいただきたいんですが、第三者評価というのが行われていますが、実際、福祉サービスの第三者評価というのはどんなふうに行われているんですか。端的にお願いします。

石井政府参考人 この事業は平成十六年度からスタートいたしておりますけれども、事業者の提供するサービスの質を当事者以外の公正中立な第三者評価機関が専門的かつ客観的立場から評価することを目的として行っているものでございます。(石関委員「どんな機関がやっているんですか」と呼ぶ)これは、都道府県の方で認定をして社会福祉協議会などが行っているケースが多うございます。

石関委員 社会福祉協議会というのは立派に働いてくれていますけれども、ただ、こういうものの評価に適するかどうかは別ですよ。大体、市町村のところに行くと、社会福祉協議会はいろいろな仕事をやって、なくてはならないですよ。ただ、市役所の天下り先になっていたり、本当に利用者の身になって、ここが適正な第三者の評価の機関なのかといえば、私は大変な問題があるというふうに思います。

 ごらんいただきたいのは、資料の六です。これは厚労省のホームページからのものですけれども、サービス比較サイトを見ても、これで、ここは安心かどうか、サービスの質がいいかどうかとわかるものじゃないですよ、全然。従業者の計画的な教育、研修等の実施状況がどうなっていますかとか、もっと詳しくありますけれども、こういうものを見て、ここの施設のサービスがいいのか悪いのか、うちのお父さんやお母さんをお願いしていいのかという判断には全くつながらない。これはぜひ、改善が私は必要だと思います。

 参考までに、資料の七をごらんいただくと、アメリカン・ヘルス・ケア・アソシエーションというところですが、ここでやっている、まさに第三者の評価になります。左の方の、英語で書いてありますけれども、向精神薬を与えているかとか、入っている方々の痛みの度合いがどうなっているかとか、入ってから体重が少なくなっているのかどうかとか、こういう評価をされています。これを見ればある程度、施設全体として、どういうふうに入居している方々が扱われていたり、どういうケアがされているか。では、ここに行ってみて面談をして、よければここでお願いをしようと。

 私は、今の厚労省や日本の各地で行われているような評価とは内容と質が全く違うというふうに思います。大臣、どう思いますか。

塩崎国務大臣 介護保険導入の際に、私はたまたま自社さ政権のときのPTにいて、さんざん議論して、民間の事業者を入れるかどうかというときに、最終的に、私の記憶が間違っていなければ、入れるけれども、第三者評価をきっちりして、どこがいいところでどこが悪いところかということがわかるようにして皆さんに選んでいただこう、そういうことでないと、コストは下がるかもわからないけれども、質も一緒に下がるかもわからないということを言ってまいったわけであります。

 今回改めて、先ほどの第三者評価も、数もまだ少ないということでありますので、なおかつ、今御指摘の質が必ずしもよくないということでありまして、アウトカム評価というのは、介護で本格的に考えようということになったのは、平成二十四年度の介護報酬改定で、在宅復帰を目的とする老人保健施設での在宅復帰率を評価するということをやりました。それから、診療報酬で費用対効果、アウトカムですが、リハビリテーションの診療報酬について、医療機関ごとの、ADL、言ってみれば生活の質ですね、その改善効果を反映させるということを今回初めてやったわけであります。

 やはり、一人一人の患者さんや介護を受ける人たちが本当にそれを評価できるのか、その人たちの評価が生かされる第三者評価をやるべきではないかと私は思っておりますので、今御指摘を受けたアメリカのことも参考にしながら、さらに改善をしていきたいというふうに思います。

石関委員 もう一つ、今、診療報酬とか介護報酬のお話も出ましたが、やぶ医者と非常に腕のいいお医者さん、名医、日本の制度では、同じ手術をしてもらったときに値段は違うんでしょうか。

塩崎国務大臣 お医者さんになったばかりの方も五十年やっていらっしゃる方も同じということが今の診療報酬体系の実態でございます。

石関委員 時間がないのでお尋ねはしませんが、各国の制度もいろいろ勉強してみました。似通ったようなこういった点数というのも確かにやっていますが、技術料の分をどう見るかとか、各国によって幾らかの違いもあるし、日本政府も今改善を図っているんだろうということは推察されますが、ただ、やぶ医者にかかってもすばらしいお医者さんにかかっても同じ値段というのは、なかなか納得いかないと思うんですね、普通、患者の側からして。そしてまた、ここには税金が投入され、また保険料が投入される、介護もしかり、こういうふうになっている。やはり、お医者さんの部分も介護の部分も、質がどうなのかということで、進んで払いたがるようなそういうサービスなら喜んで皆さんも払うかもしれませんが、そうなっていない。

 何かやはり工夫をして、支出の面も、こういった部分がいいところには手厚く税金も出します、人も確保します、介護施設も病院も医者もこういう形にしていかない限りは、冒頭でお話ししたようにどんどんどんどん負担だけ広がって、それを解決する方策も、残念ながら今、これだというものはないということであると思います。

 ぜひ、大臣もさっき触れられたアウトカム、ここの施設に入ったらどうだった、笑顔がいっぱいある介護士さんがいっぱいいて気持ちのいいところなのか、極端に言えば殺人が起きるような、これは施設の問題なのか個人の問題なのかまだわかりませんが、こういったところの違いがわかり、違ういいところには、よりいい、また手厚い税金の投入ができるような、こういうアウトカムという結果を活用したものを私は導入すべきだと思いますが、どうお考えですか。ちょっと短くお答えください。

塩崎国務大臣 昨年、保健医療二〇三五というのを御提言いただきました。この中で初めて、患者の評価を大事にするアウトカムベースの診療報酬体系を提案いただきまして、今回、それを初めて試行的に導入することにいたしたわけであります。

 それはつまり、顧客満足度というか、患者を中心に考えていくということであって、例えば出来高払いで、お医者さんの判断だけでどんどんどんどん医療費がかかるということではなくて、どうやって患者さんがよくなるかということを加味した形にしていかないといけないのではないかということを提言いただいて、そっちの方向にやはり行くべきであろう、世界もそうなっているというふうに思いますので、介護も同様な発想を大事にしていきたいというふうに思います。

石関委員 ぜひ、今の大臣のお言葉のように、アウトカム、結果のデータを活用しながら、満足がいって、ここならもっとお願いしたいというところに資源を投入できるような仕組みづくりに早急に取り組んでいただきたいというふうに思います。

 次に、格差問題、食品廃棄、こういった関連のところを残された時間でやりたいと思います。

 まず、農水大臣に、最近、廃棄食品の横流し、こういう問題がありました。こんなことを行っているのかと怒りを覚えるのと同時に、これだけ多くの食品が廃棄をされているのかということに私は驚きもいたしました。現在、日本での食品の廃棄の状況というのはどうなっているか、教えてください。

    〔関委員長代理退席、委員長着席〕

森山国務大臣 石関議員にお答えをいたします。

 我が国で、食べられるのに捨てられているいわゆる食品ロスが、年間六百四十二万トン発生しております。

 食料資源の有効利用等の観点から、食品ロスの削減を促進していくということは大変重要な課題だと思っておりまして、農水省では、食品業者による納品期限の緩和などの食品ロス削減につながる商習慣の見直し等もお願いをしてきているところでありますし、また、業種ごとの食品廃棄物の発生抑制の目標を設定いたしまして、食品ロスをできるだけ抑えるという取り組みを行っておりますが、今後とも、関係省庁とも連携させていただいて、真摯な取り組みをさせていただきたいと思っております。

石関委員 農水大臣の御認識で六百四十二万トンということですが、どこをとるかでこの食品廃棄の量というのは変わってきますので、いろいろ文献を読むと大体五百万トンから八百万トンぐらいの間、大臣は六百四十二万トンということで、大体その辺だろうというふうに思います。

 これは、大体の数字でいうと、日本の米の生産量、これも飼料米なのか人の口に入るものかで大分変わってきますが、やはり八百万トン内外の数字だというふうに言われていますので、日本の米の生産に匹敵するぐらい食品が捨てられている。これは非常に異常なことだと思うんですね。

 このことについて、消費者担当大臣、どういう対策をとられているのか、また、とられる考えがあるのか、教えてください。

河野国務大臣 農水大臣から六百四十万トンというお話がありましたが、そのうち半分が実は家庭からの食品ロスということになっております。消費者庁といたしましては、さまざまな啓発活動でこの三百数十万トンを何とか削減してまいりたいというふうに思っております。

 それともう一つ、全省的な取り組みとして、消費者庁が事務局となって、食品ロス削減関係省庁等連絡会議というものをつくっております。ここで、各省庁にいろいろなことをやってもらう枠組みをつくるということをやっておりますと同時に、消費者基本計画の中にこの問題を取り入れていく、あるいは消費者教育の中に文科省と共同してこの食品ロスの問題についても取り入れていくというようなことをやってまいっております。

石関委員 私は、この食品の廃棄と横流しの問題で、横流しをした業者というのは大変けしからぬと思いますよ、許しがたいというふうに思いますが、他方、そこに、もともとのカレー屋さんがこれだけの食品を廃棄していたというそもそもの事実があるわけですから、消費者担当大臣がおっしゃったようなものをさらに強力に進めていただいて、何かしらゆがんでいるこの国の食に対する問題の解決に向けてぜひ努力を最大限いただきたいと思います。

 あわせて、子供の貧困という問題に最後に触れさせていただきます。

 貧困家庭で栄養不足で、朝御飯も食べられないとか、それから、そういった子供たちを支援しようということで、地域で子供食堂という試みが全国に広がっている、こういう報道もされています。また、食品が先ほどのように廃棄をされている一方で餓死者が出た、こういう報道も時々されているんですよね。この国は豊かな国になってきたんでしょうけれども、違った面の、非常にいびつな、ゆがんだ問題が出ているというふうに思います。

 一億総活躍、当たり前のことなんですが、あるものを捨てて、そして困っている人もたくさんいる、こういった状況について、子供の貧困というのを取り上げたときに、厚生労働大臣の御認識と、今後対策をどのようにお考えになっているか、教えてください。

塩崎国務大臣 御指摘のように、一人親の家庭での子供の貧困というのが象徴的に今問題になっているわけで、そのようなことを踏まえて、この年末に、ひとり親家庭・多子世帯等自立応援プロジェクトというのを立ち上げました。

 これは、総理の指示が去年の四月にあって、さまざまなことをやらせていただいて、今のような居場所づくりも含めて学習支援など、それから就職、やはり一億総活躍の中の同一労働同一賃金の問題も、非正規で働く方々の賃金が安いというような問題もありますし、育休がとれないとかさまざまなことがありますので、先ほど申し上げた自立応援プロジェクトの中に、もう時間がないので申し上げませんけれども、たくさんメニューを入れて、そしてまた、包括的に今、児童福祉法の改正というのを大胆にやろうということで、今さまざまな御意見を頂戴してまとめつつあるわけで、また国会にお出しをして皆さん方に御議論を賜れればというふうに考えているところでございます。

 いずれにしても、子供を中心に、やはり日本の未来を担う子供たちを大事にしていくということを社会全体でやっていきたいというふうに思います。

石関委員 ありがとうございました。

 やはり、予算を出す工夫をどうしていくか、質のいいところには当然手厚くやる、そのことによって効率化も図られていくと思います。また、国全体として、食べ物がこれだけ余っていながら食べられない人もいる、非常にゆがんだ構造に今なっておりますので、こういった問題に政府としても全力で取り組んでいただきたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

竹下委員長 これにて石関君の質疑は終了いたしました。

 次に、井坂信彦君。

井坂委員 井坂信彦です。

 本日は、大きく二点、軽減税率が零細事業者に与えるダメージ、それから奨学金の拡大について伺います。

 まず、財務大臣に伺います。

 企業は、仕入れ先から材料や商品を仕入れるときに消費税を払い、それをお客さんに売るときに消費税を受け取る。お客さんからの消費税を、これは全て税務署に納める必要はなく、仕入れ先に払った消費税を差し引いて納税すればよい、これが仕入れ税額控除という制度です。

 軽減税率を導入すると、八%と一〇%の複数の税率が存在することになり、仕入れ税額控除をするためには、仕入れ先に、八%で幾ら、一〇%で幾ら消費税を払ったのか、インボイスという明細書を仕入れ先に発行してもらう必要があります。

 ところで、現在、売り上げ一千万円以下の零細事業者は消費税が免除されていますが、この免税事業者はインボイスを発行してはいけないというのが今回の政府案であります。

 資料一の左側のケースAというところをごらんいただきたいと思います。

 消費税一〇%になると、例えば税込み百十円で仕入れて二百二十円で売っている企業は、お客さんからもらった消費税二十円のうち、仕入れ先の免税事業者に払った十円の消費税を差し引いて、残る十円を税務署に納めればよかったわけであります。

 ところが、軽減税率とインボイスが完全実施されると、これは資料一の中央のケースBの部分ですけれども、売り上げ一千万円以下の免税事業者はインボイスを発行できないので、免税事業者に百十円払って仕入れを行った企業は、十円を差し引くことができず、消費税を二十円納税しなければならなくなる。つまり、免税事業者、零細事業者から仕入れていた企業は利益が十円減ってしまうということになります。だったらということで、この右側のケースCのように、インボイスを発行できる売り上げ一千万円を超える課税事業者から仕入れた方が、これまでどおり仕入れ税額控除ができて、納税も十円で済む。

 このように、売り上げ一千万円以下の零細事業者、免税事業者から一千万円超の課税事業者に仕入れ先を切りかえる動きが日本じゅうで起こってくるというふうに心配をするわけですが、財務大臣の見解をお伺いいたします。

麻生国務大臣 図全体としては、これはよくわかりやすく描いてつくってありますよ。(発言する者あり)きちんとしていると言っているのに、していると言うのが何が悪いんですか。評価してもらってよかったよな、本当に。けちをつけずに、よく聞いてやって。

 私ども、こういったような形になりますので、ただ、こういったようなことになりますので、私どもとしては、インボイスというものに手間暇がかかるということになりますので、こういった時間というものをある程度考えて、インボイスを導入するのと軽減税率を入れるのとの間に時間差をつけておりますのはこういう理由であります。

 少なくとも、この例でいけば、この絵でいけばこのとおりになるんですが、いろいろな例があると思うので、特殊な状況もいろいろ出てくると思いますので、免税業者の利益が百十になったり百になったり、いろいろ出てくるだろうとは思いますけれども、こういった個別個別の例を見て判断をしていかねばならぬことになるだろうと思っております。

井坂委員 細かい例外はあるんですが、大臣が今おっしゃったように、おおむねこのとおりになるということであります。

 そして、免税事業者より課税事業者から仕入れた方がいいという経営判断が、これは大体、長年の取引で多少はあるとしても、やはり一〇パーも違ってくると、課税事業者に切りかえようか、いわゆる取引排除がやはり起こると思います。

 加えてお伺いしますが、これは財務省の担当者とも一時間以上議論いたしました、いろいろなケース。そのとき、担当の方がおっしゃったのは、仕入れ先から外されないためには、例えば、みずから消費税の課税事業者となる課税選択、あるいは、免税されている消費税分を最初から値下げしておく方法もありますよ、こういう話がありました。

 しかし、ちょっと一枚めくって資料二をごらんいただきたいと思いますが、例えば、この左側、課税選択をしても、これはインボイスは発行できますが、その分、これまで免税されていた消費税一〇%を納めなければならなくなりますから、零細事業者は利益が十円分減ってしまいます。また、最初から値下げをすればといいますが、これも当然利益が十円分減ってしまいますから、いずれにしても、売り上げ一千万円以下の零細事業者の経営は悪化するというふうに思います。

 これはどのようにやっても零細事業者の経営は悪化する方向に働くと思うんですが、重ねて財務大臣の見解を伺います。

麻生国務大臣 事業者の免税点制度というものは、これは中小零細事業者の事務負担に配慮するために考えられたものなんですが、事業者が消費税から預かった税金というものを税務署に納めていないという意味での、いわゆる益税というものがよく言われますけれども、これは許容されているわけではないので、これを認めるということで中小企業者を支援するという性格のものではないということはまず申し上げておかないかぬ。この払わないかぬところを払っておられぬというだけの話ですから。

 ただ、複数税率のもとで適正な課税を確保するためには、いわゆるインボイスと言われる制度の導入が必要であろうと思っております。

 このインボイスの制度のもとになりますと、免税事業者からの仕入れにつきましては仕入れ税額控除ができないということになりますので、仮にお尋ねのような、複数税率のもとで免税事業者にもインボイスの発行を認めるということにすれば、消費者の納税とか申告というものを行わない免税事業者が取引相手の都合のよい税率をインボイスの上に記載するといったことが可能になるということになってしまいますので、適正な課税を確保するという観点から問題があるのではないか、私どもとしてはそのような点を考えております。

井坂委員 零細事業者が免税されるというのは、確かに経済的利益を狙ったものではない、これは過去の議事録でも確認をいたしました。事務負担を軽減、そのために免税ということでありましたが、しかし、実態は、やはり免税、経済的な利益があって、そこに随分助けられてきたというのが零細事業者の経営の実態ではないか。だから、これが外されると急に、今数字で見ていただいたように、どの道をたどっても非常に厳しいことになってしまう。

 加えて、もう一つあるんですが、これは設立直後の会社でも同じことが起こります。

 消費税が免税されるのは一千万円以下の零細事業者だけではなくて、会社を設立した最初の二期目末までは同じく免税される。これは、会社設立直後の大変な時期を乗り切るための事実上の大変ありがたい制度になっていたと思いますが、これも軽減税率とインボイスが完全実施されれば、同じ理由で、せっかく会社をつくったのに企業相手に物が事実上売れなくなってくる、こういうことが起こります。

 これは、起業とかあるいはチャレンジを応援する政権の方向性に真っ向から反することになると思いますが、財務大臣、いかがですか。

麻生国務大臣 御指摘のように、今、インボイス制度というものは免税事業者の事業に影響を与えるものであるという御指摘がありますけれども、これは確かなところでありまして、特に零細事業者への配慮が極めて大事であろう、私どももそう思っております。

 このため、制度の導入に当たりましては、来年四月ではなくて、四年間の猶予というので、平成三十三年の四月ということとさせていただいて、準備期間をまず設けられるようにすること。

 それから、免税事業者が納入先の業者から短期間のうちに課税事業者への転換を求められたりすることのないように、インボイス制度から六年間の経過措置として、免税事業者からの仕入れにつきましても一定の、いわゆる仕入れ納税額の控除というものを認めるということにさせていただいておりますので、三年間は大体八割、三十三プラス三ですから、三十六年からは三年間、約五割の控除を認めようと思っております。

 いずれにしても、インボイスの導入に向けてそれぞれの事業者が個々の状況において必要な準備が進められるようにするというようなことが極めて重要であって、このため、この法案の附則におきまして、政府としては、インボイスの導入に係る事業者の準備状況及び事業者取引への影響の可能性などを検証しつつ必要な対応を行うということにさせておりまして、しっかり事業者への対応を行ってまいりたいと考えております。

井坂委員 今御説明になったのは、時間を置くと。これは、事務負担を軽減する、事務的な準備をしてもらうのには有効だと思います。しかし、きょう私が議論をしている経営上のマイナス面に対応するのは、これは時間を置いても全く対応できません。時間を置くことは解決策にならないというふうに思います。

 加えて、三年後に見直し条項があるとおっしゃるんですが、軽減税率導入三年後というのは、まだ免税事業者でもインボイスを発行できる時期ですから、何の検証もできない。そのころは、私が申し上げたようなことはまだ起こる前ですから、何の検証もできず、何の手も打てない。むしろ、今もう明らかに、ちゃんと数字で見ていただいたように、経営上の悪影響がどの道をたどってもあるわけですから、これは今手だてを打つべきだというふうに思います。

 大臣は、財務省のトップであると同時に衆議院議員であられます。ですから、税金を集める側の立場だけではなくて、やはり必死に商売をする側の立場にも立って、私が申し上げたこの制度の問題点を真剣に考えていただきたいというふうに思うんです。

 これまでの答弁では、これはやはり経過措置、幾ら準備期間をとっても、経営上のマイナス面は時間がたっても払拭をされませんから。ちょっと今見ていただきたいんですけれども、資料の三番目、これは中小企業白書で倒産件数と廃業件数、中小企業庁のグラフを持ってまいりました。

 倒産件数は、麻生総理のときがピークで、民主党政権の三年間で三千三百件減って、そして安倍政権の三年間で同じく三千三百件減っている、こういうグラフです。一方で、休業、廃業、解散件数、このオレンジ色のグラフですが、これはもうずっと高どまりをしている。民主党政権の三年間で七万九千四百九十件、安倍政権の三年間で八万三千四百二十九件と高どまりをしているわけであります。

 ここに加えて、インボイスを発行できない零細事業者は仕入れ先から外される、あるいは、それを避けるために課税事業者になったり安売りすれば経営が悪化する。いずれにしても、零細事業者の利益が大幅に減ることになります。

 大臣にお伺いいたしますが、先日来、麻生大臣の答弁、潰れる業者が百や千出るかもしれないと。この答弁は、誤解や失言では実はなくて、軽減税率やインボイスがこのまま何の手だてもなく導入をされれば、私は、むしろ万単位の廃業が出るのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 御指摘のように、これは確かに、今のところ、休業とか廃業とか解散件数の高どまりという点が出ていますけれども、これは御存じのように、倒産件数が確実にずっとこのところ減ってきているというのは、昔は一万五千件、今は半分ぐらいになっているんですかね、そういった意味では、間違いなくいい傾向なんだ、倒産件数が減っているという点においては。

 ただ、よく言われますように、倒産すべきところをさせていないんだという説も、これは経済学者の中にいっぱいおありになるところで……(井坂委員「それはまた別の議論で」と呼ぶ)これはまた別の話ですからね。だから、そこのところもちょっと一緒くたにしようとするとなかなか難しいところがあると思います。

 いずれにしても、倒産、廃業といったことが起こらないように、このインボイスの導入に向けて、それぞれの業者が個々の状況において必要な準備というものを進めていただく必要があるということは、これは個々のところによっていただくところが極めて大きいんだと思いますが、いずれにしても、事業者の準備状況などを丁寧に検証しつつ、必要な対応というのを行う等、事業者への対応はしっかり行ってまいりたいと思います。

 いずれにしても、こういった問題というものは、我々、五年、六年かけていろいろな対応を考えておかねばならぬと思っております。

井坂委員 大臣、ずっとそこの答弁を避けておられますが、この問題は、時間を置いても経営上の問題点は改善をされません。

 今おっしゃる限りでは、これは政府は時間だけ置くけれども、あとは個別の業者がこの問題には全部自力で対処せよ、こういうことをおっしゃっているんでしょうか。

麻生国務大臣 事業者の免税点制度というものにつきましては、先ほど申し上げましたけれども、事業者の事務負担に配慮するということであるということは確かにあります。その事務負担が経営のために負担感にならぬというのはまた別の話ですよ。中小事業者の事務負担に配慮するためのものというのは間違いなく、免税点制度というものは。

 ただし、事業者が消費者から預かった税金を税務署に納めていないという意味で、いわゆる益税というものを我々は許容しているわけではありませんし、一般の方でもよくお店で、おたく本当に三千万円も売り上げがあるのなんてよく聞いている人も、いわゆるお店側で、昔始まったときにはよくトラブルがあったことは知らないわけではありませんが、いずれにいたしましても、中小企業者を支援するといった意味でこの種の免税点をつくってきたわけではありませんので。

 そういった意味では、私どもとしては、今後とも、複数税率のもとではインボイス制度の導入が必要であろうと思っておりますので、こういった意味では、いろいろな意味で、導入すると同時にいろいろな御意見が出てくるだろうと思いますので、私どもは、そういったものを見た上で対応させていただくことが出てくるんだと思います。

井坂委員 これは大変なことが起こると私は思いますよ。

 ちょっと矛盾があるのは、それは、益税を許さないというその立場は、それはそれで一つの立場だと思いますよ。でも、それだったら、今回これをやって、益税を許さないと課税選択を迫られるのは、これは企業向けに物を売っている零細事業者だけですよ。消費者向けに物を売っている零細事業者はインボイスも関係ないですから、益税が残るじゃないですか。そこに差をつけるのは何でなんですか。企業向けは、時間だけ置くから、あとは自力で勝手にやってくれと。消費者向けは、インボイスも関係なく、これからも益税がずっと享受できる。この差をつけるのは何でですか。

麻生国務大臣 同じなんだと思いますが、御指摘のように、インボイス制度というものは、これは零細事業者への配慮が必要なことも事実なので、私どもは準備期間が要るとかいろいろなことを申し上げてきているんですけれども、六年間の間に個人の間にいろいろな関係が今後とも出てくることは確かだろうと思いますが、必要以上に、私どもとしては、そこの零細事業者に対する配慮というものは、ある程度できることをやっていく必要があるんだとは思っておりますよ、思っておりますが、そういった意味で、業者と業者の間の場合においては、これは少なくとも業者として登録しておられますので、そういった意味では、きちんとした対応をする努力というものはしていただかなきゃいかぬと思います。

井坂委員 ちょっとこれは、実際起こることが私は大変心配です。時間だけ置いて、取引排除とか、あるいは利益が一〇%みんなこぞって減るようなことに対して、特に経営的な手だてを打たないということをおっしゃっております。

 ちょっと大臣に最後お伺いしたいと思いますが、先日、廃業に追い込まれる業者が百や千という答弁はこの場で訂正をされましたが、逆に、訂正されたということは、軽減税率やインボイスで廃業に追い込まれる業者は百も出ない、それは、そのように自信を持って今本当に思っておられるんですか。

麻生国務大臣 この間の答弁でしたけれども、私として、中小企業者の潰れるケースが一つ二つ起きるとは、読み直していただければわかりますけれども、全く言っておりませんので、また、軽減税率の導入によります事業者の混乱や過度の負担を容認しているというわけでもありません。

 私が申し上げたのは、その後の柿沢先生の御質問へのお答えでもはっきりと申し上げましたとおりに、軽減税率制度の導入によって事業者の方々には複数の税率に対応するための新たな事務負担が生じることから、政府として事業者の準備をしっかり支援していく必要があるという趣旨で申し上げたと、そのとおりに申し上げました。

井坂委員 免税事業者の経営悪化を防ぐ手だてというのが皆無だというふうに、きょうの議論でよくわかりました。こういう経営悪化を防ぐ手だてを私はやはり明らかにしていただく必要があると思いますし、そこを明らかにしていただくまで、私はこの予算委員会は閉じるべきではないと思いますよ。これは本当に大きな問題が放置されていると思いますから、最後に申し上げたいと思います。

 きょうは、もう一つ、奨学金の話をしたいと思って、文部科学大臣にお越しをいただきました。

 資料の四枚目をごらんいただきたいと思いますが、労働政策研究・研修機構による、学歴と生涯賃金の関係を示したグラフであります。中学卒と高校卒では生涯賃金はそれほど変わらない、しかし、高校卒と大学卒では生涯賃金は六千から七千万円も違うというグラフであります。退職金やあるいは六十歳以降の賃金も入れると、さらに差は広がってまいります。

 生涯賃金がこれだけ違えば、生涯に払う所得税、住民税、消費税、その他税も実際二千万円近く差がつくという試算があります。つまり、仮に奨学金に五百万円の税金を使ったとしても、その子は生涯にもらった奨学金の何倍も多く最終的には税金を払ってくれるだろうということであります。

 同じような研究を厚生労働省のナショナルミニマム研究会もやっておりまして、これは、若者に職業教育訓練を二年間、生活保障つきでみっちり行った場合の費用対効果を計算しています。こちらの結果も、この奨学金と同様に、使った税金の何倍も将来の税収として戻ってくるという研究結果が出ております。

 文部科学大臣にお伺いいたしますが、奨学金政策の費用対効果について、大臣の見解をお伺いいたします。

馳国務大臣 大学への進学に関する費用と便益の関係については、国立教育政策研究所においても試算をいたしております。大学生等への公的教育投資によって、一、所得向上に伴う税収の増加、二、失業給付の抑制などによって、投資額の約二・四倍の便益をもたらす効果があるという結果も示されております。

 日本学生支援機構の奨学金事業では、平成二十八年度予算案において、無利子、有利子合わせて一兆九百八億円の事業費を計上しております。これは、学生等の約三八%に当たる百三十一万八千人の学費等を支えることになっております。

 このように、奨学金制度は、学生等の進学を支える重要な政策であり、社会にとっても大変意義が深いもの、このように考えております。

井坂委員 今大臣が、文部科学省側の試算でも、使った税金の二・四倍の効果があるということをおっしゃいました。にもかかわらず、日本は、おっしゃったのは全部貸与、貸し付けであります。投資効果というのは、お金を出しっ放しにして、それでも後々二・四倍のお金が返ってきますよ、こういう計算を既に独自でされておられるにもかかわらず、今やっているのは、ただお金を貸しますよ、全額返してくださいよ、こういう奨学金しか日本にない。

 OECD諸国で、お金を出しっ放しの給付型の奨学金がないのはもう今やアイスランドと日本だけで、しかも、そのアイスランドも授業料は日本の十分の一と非常に安いので、事実上、もう日本だけしか残っていないという状況であります。

 私は、去年、この予算委員会で、教育資金の贈与非課税について、不公平じゃないかという議論をさせていただきました。この制度は、平成二十五年から、もう既に累計十四万件、一兆円近くの贈与が非課税で行われております。これは、裕福な祖父母から裕福な孫への一人平均七百万円の給付型奨学金にほかなりません。

 一方で、これは日本高等教育学会で発表された二〇一二年の調査結果ですが、経済的に進学が難しかったので高校卒業後に就職したという子が六万六千人、給付型奨学金があれば進学したかったという子が五万四千人いただろうと推計をされているわけであります。

 大臣に重ねてお伺いをいたしますが、裕福な家庭ばかりに非課税で贈与を許すのではなくて、やはりまずは、今申し上げたような、経済的な理由で進学したくてもできない子のために返済不要の給付型奨学金をもう日本でもつくるべきではないかと思いますが、お伺いします。重ねて、できない理由は何かということをお伺いいたします。

馳国務大臣 同世代の国民に対して公的資金としてどのような使われ方が必要かという議論は、これはまず重要だと思っておりますが、そういう考え方を踏まえても、やはり今先生も御指摘のように、給付型奨学金のあり方については、昨年七月に取りまとめられた教育再生実行会議第八次提言においても、財源の確保等の課題について検討しつつ、高等教育段階における教育費の負担軽減に優先的に取り組む必要があるとの提言をいただいておりまして、検討をいたしております。

 そこで、何を検討するかということは、三点申し上げたいと思います。

 一つには、財源を恒久的に確保する策をやはり検討すべきである。

 二つ目は、対象者、対象とする者の選定であります。例えば、低所得者層をどう対象者として規定するか。多子世帯あるいは一人親世帯等、こういった対象者を選定するに当たっての基準といったものは、やはり国民が納得する形が必要だと思っています。

 三点目は、給付のあり方であります。これを渡し切りの給付にするのか、年度ごとにするのか、あるいは奨学金を貸与した後に返還免除という形にするのか。

 私は、こういう制度設計については今真面目に検討しておりますが、こういうことを十分に詰めた上で、やはり公的資金の使われ方という観点から議論をすべきではないか、このように考えております。

井坂委員 今大臣から財源の話がありましたので、財源のことについて一つ申し上げたいというふうに思います。

 お配りした資料にも、財政法四条を抜き書きさせていただきました。国の歳出は基本的には借金したらだめだ、ただし、借金をしてよい例外として、一つは公共事業、それから二つ目に出資金、そして三つ目に貸付金、この財源に関しては国会の議決を経て公債、国債を発行してよい、こういうことになっております。

 実際、建設国債ということで、公共事業は、これはどんどん国債が発行されているわけでありますが、一方で、貸付金も幾らか国債発行が現在でもされております。また、出資金もされております。

 よくよく議論してみると、貸付金とは何かとか、出資金とは何かというのは、法律上の定義は特にないようで、予算査定、そしてこの国会の議論で、これは貸付金でしょうとか、これは出資金でしょうとか、そういうことで決まっていくんだという財務当局の方との議論の結果でありました。

 であれば、私は先ほど、まさに費用対効果で申し上げましたけれども、きょうび、公共事業の方が、実際使ったお金がどれほど便益が返ってくるか、また、返ってきているのかどうかの測定も難しいこの御時世で、まさに若い世代への出資、給付型奨学金、こういったものに関しては、後々税金で物すごいおつりが返ってくるということがほぼ計算上明らかなわけでありますから、これを貸付金と呼ぶのか出資金と呼ぶのかは別にして、私は、教育国債というような考え方がそろそろあってよいのではないかなというふうに思います。

 これは時間もないので申し上げるにとどめておきますが、ここは予算委員会で、きょう財務大臣ともいろいろ議論させていただきました。税は国家なり、同時に私は、国家は人なりだというふうに思います。特に、十八歳から二十代前半の若者への教育や職業訓練は、必ず将来回収できる投資だと思います。一人一人の能力アップは、安倍政権で今うまくいっていない生産性の向上に役立つだけでなく、長期的な経済、文化、そして社会の発展に直結すると思います。若者への税投入が今極端に少ない日本にあって、我々は若者への投資を積極的に進めていくことをお約束申し上げて、本日、時間ですので、質疑を終えます。

 どうもありがとうございました。

竹下委員長 これにて井坂君の質疑は終了いたしました。

 次に、梅村さえこ君。

梅村委員 日本共産党の梅村さえこです。

 私、消費税が導入されてこの二十六年間、消費税に関する市民運動を続けてまいりました。その中で、本当にたくさんの方々の消費税に苦しむ悲鳴を聞いてまいりました。そして、その怒りの中で国会に送っていただきましたので、きょうは消費税の増税についてお伺いしたいと思います。

 まず初めになんですけれども、安倍総理は、予定どおり来年四月から消費税を一〇%にすると繰り返し表明されております。しかし、世論調査、最近でも、消費税一〇%への反対が、例えば朝日新聞でも五六%、そして岩手日報の調査では七六・七%に、この消費税増税反対の声が上ってきているところです。また国会にも、二〇一二年の百八十国会以降だけでも、実に九百四十万人分が請願署名として提出されてきております。

 麻生大臣にお伺いします。こうした国民の声、しっかりと認識しておられるでしょうか。

麻生国務大臣 これは、梅村先生、一昨年の消費税の八%への引き上げというものが、五から三%上がりました引き上げが消費に影響を与えたということは事実でありまして、こうした影響を反映して、今御指摘のありましたようないろいろな御意見があるということは承知をいたしております。

 一方で、消費者のマインドにつきましては、二〇一四、一五ぐらいから少し持ち直しの傾向がある中で、十七年ぶりの高い賃金上昇というものを背景に、個人消費につきましても、かつての落ち込みから少し持ち直したというところははっきりいたしていると思っております。

 平成二十九年四月の消費税率一〇%の引き上げというものに関しましては、今の八%が二%上がるということですが、やはり我々としては、今の財政というものを考えた場合に、今後とも、世界に誇れるような社会保障制度、国民皆保険等々を次の世代に引き渡していく責任が我々世代にあろうと存じます。

 そういった意味では、マーケットとか、またほかの国際社会からの信認というものを確保していくためにも、私どもは、財政はきちんと立て直していくんですということをきちんと示しておく、そういった姿勢というものが必要だろうと思っておりますので、私どもとしては、一〇%というものを着実に実施していく必要があろうと考えております。

梅村委員 国民の反対の声については認識していらっしゃるということでよろしいですね。

 そして、今、御発言の中では、落ち込んだ消費は、一時期すごく落ち込んだけれども少し上向きになってきているんじゃないかというようなお答えだったかと思うんですけれども、私はきょうは、そうではないということをぜひ国民の暮らしから訴えさせていただきたいというふうに思っております。

 一昨年八%に上がってから、麻生大臣のところには具体的にどのような暮らしの声が届いているかというふうに思うわけですけれども、私自身のもとにはやはり、食事とお風呂の回数を減らしただとか、職につけない上に増税で、子供の誕生日にさえもケーキを買ってやれないとか、消費税が月に二万一千円となって年間二十万円以上になるようになっただとか、もう命の限界だ、一〇%に上げることは死ねということなのか、そういう声というようなのは増税直後だけじゃなくて今も届いてきております。

 厚労省の国民生活基礎調査でも、生活が苦しいと答えた人が過去最高の六二・四%になっている。

 先日、私、ある団地を訪ねましたら、七十代の男性が、年金がわずかなため暖房をつけずに生活をしている、灯油も、つけていないんですけれども、団地の共同購入よりも近くのガソリンスタンドに買いに行くと二十五円安い、その二十五円のために、自転車で、病気でふらふらになりながらも近くに買いに行っていらっしゃる。

 こういう高齢者の方々の暮らしを麻生大臣は御想像できますでしょうか。

麻生国務大臣 梅村先生、私のところは、選挙区がどういうところか御存じかどうか知りませんけれども、かつて生活保護世帯率日本一です。東京とは全然違うんですよ。私のところは極めて、博多とか福岡とか、全然違います、筑豊というところですから。周りの状況というのは極めて厳しいところにあったというところが私の選挙区だということも御記憶いただければと存じます。

梅村委員 だから、八%に上げた声というようなのをどんなふうに聞いていらっしゃいますか。わかっているということですか。ぜひ具体的に答えていただけたら。

麻生国務大臣 皆様からは、税率引き上げによる負担が生活に影響を与えているという声をいろいろいただきます。というのは当然のことであって、同時に私どもは、日本の財政とか子ども・子育て支援に充てるということなどを勘案すればやむを得ない、引き上げるべきという声も聞く。これは両方聞くんですよ、私どものところには。

 したがって、軽減税率につきましても、導入するのであれば、事業主への負担軽減をしっかりやってもらいたいという声も聞きます一方に、日々の負担が軽減されることはありがたいという声も、これは両方来るんだ、私どもはそう思っております。

 したがいまして、こうしたさまざまな声にしっかり耳を傾けつつ今後とも対応していかねばならぬと思っております。

梅村委員 麻生大臣が具体的に聞いた声をぜひ伺いたかったと思うんですけれども。

 それで、一〇%といえば、千円でお買い物をすれば百円、一万円だと、一割ですから当然千円になるわけですね。これは本当に大きい消費税の金額だというふうに思います。

 先日、商店街でお買い物途中の方とお話ししたときに、お財布がぱんぱんだと言うんですよ。どうしてお財布がぱんぱんなのか。お札でぱんぱんではなくて、今は皆さん、ポイントカードでお財布の中がぱんぱんなわけですよ。百円買ったら一ポイント、それをお財布の中に十枚、二十枚入れていらっしゃる。

 その女性の方がおっしゃっていましたけれども、もし一〇%にまた上がったらこんなポイントカードはすぐに全部吹っ飛んじゃう、そういうことを知っているのかと大臣にぜひ聞いてみてくれというふうに言われたんですけれども、そういうお買い物とかはしたことがあられますでしょうか。

麻生国務大臣 ポイントカードを使って買い物をしたという意味ですか、そういう意味。

 そうしている人がいっぱいいるということは知っています。そういうところに住んでおりますので。

梅村委員 知っていることについての感想というのはどうですか。そういう方々の苦しみ、増税された痛み、そういうことについてはどういうふうにお考えですか。

麻生国務大臣 梅村先生、これも先ほどお答え申し上げましたように、これは両方声がありますので、ぱんぱんになっている方もいらっしゃるということは事実です。

 ポイントカードだって、今、いろいろな業者が、クレジットカード以外にもいっぱい出ておりますので、デパートの商品券がえらく売れてみたりなんかする背景もそれというのもよく知っておりますので、そういった意味では、その声もありますし、同時に、これはもう将来のために、今やらなくてやれるときはないという声もありますので、これは両方来ているということであります。

梅村委員 やはりそういう痛みがあるということだというふうに思うんですけれども、振り返ってみると、消費税は、一九八九年に三%で入れられ、九七年に五%、二〇一四年に八%、そして来年、二〇一七年から一〇%にしようということですけれども、この三年の間に二度にわたって、しかも税率を五から一〇に二倍加している、こういう内閣はかつてなかったというふうに思うんですね。そういう史上最高の消費税の負担増を国民の皆さんにお願いする内閣だという、そういう自覚、御認識はあられますでしょうか。

麻生国務大臣 消費税率というものを導入された竹下先生にしても、その後上げられた方々も、いずれも退陣をしておられますので、二回上げたら退陣は間違いないだろうなと、自分でそう聞かされて二回目の大臣を引き受けさせられましたので、よくわかっております。

梅村委員 では、五%から一〇%への負担増額は幾らになりますでしょうか。五%から一〇%への消費税の引き上げ額ですね、国民の皆さんにお願いする金額は幾らになりますでしょうか。

麻生国務大臣 消費税率を五%から一〇%へ引き上げた場合の増収見込み額につきましては、二十七年度の予算におけます一%当たりの消費税収をもとに機械的に試算をいたしますと、十四兆円という程度になります。

 この額から消費税の軽減税率制度の導入による消費税の減収見込み額約一兆円程度を差し引きますと、増収見込み額は十三兆円ということになろうかと存じます。

梅村委員 実に十三兆円なんですね。これまで、消費税三%のときは七・二兆円、五%アップでは五兆円。ですから、それに対しても、二倍以上の十三兆円をたった三年間で一気に国民にお願いするというのは、私は、これはすごい大増税内閣であるというふうにきょうは訴えさせていただきたいというふうに思います。

 それで、今一番誰が困っているのか、誰がいじめられているのか、そういうことでございますけれども、きょう、資料の中に、三のところになりますけれども、子供の貧困が、今、一六・三、六人に一人、シングルマザーの貧困率も五四%になってきているわけですけれども、母子家庭の家計状況が今どんなふうになっているのか、これをお答えいただきたいと思います。よろしくお願いします。

会田政府参考人 平成二十六年全国消費実態調査における、二人以上の世帯のうち勤労者世帯で、母子世帯の一世帯当たり一カ月の家計収支の状況は、可処分所得が十八万九千五百二十円、消費支出が十九万四百六十四円となっており、この差額であるいわゆる赤字額は九百四十四円となっております。

梅村委員 今貧困が広がっている、子供たちが大変だという中で、既に政府の調査でも、この実収入は二十一万五千四百五十八円ですけれども、非消費支出を除いて、自由に家計で使えるお金、この可処分所得が十八万九千五百二十円ですけれども、それよりも、生活していくのに必要なお金、消費支出が十九万四百六十四円ですから、今の段階でももう赤字九百四十四円になっている。

 この結果は非常に重大だと思うんですけれども、どのような認識でしょうか。厚労大臣に伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 子供たちの未来が家庭の経済事情によって左右をされるというようなことはあってはならないということで、今御指摘のとおり、一人親家庭は経済的にもさまざまな困難を抱えているということを我々も認識をしながら、きめ細かな支援が必要であるというふうに認識をしながら、年末に、ひとり親家庭・多子世帯等自立応援プロジェクトというのを発表いたしましたが、特に経済的に厳しい一人親家庭に重点を置いて、児童扶養手当の第二子以降の加算額を増額するとともに、例えば、自治体の相談窓口のワンストップ化の推進、つまり、行政にメニューはいろいろあるけれどもなかなか使えないというようなこともございましたので、そういうこともワンストップで見られるように。放課後児童クラブなどの終了後に学習支援などを行うことが可能な居場所づくりの推進も、先ほど別な方の御質問でも御説明申し上げました。

 それから、就職に有利な資格の取得を促進して、その給付金の充実とか、あるいは貸付事業の創設をいたしまして、何しろ自立をするということがやはり生活の糧を多く得られるようになるということで、そこのところのバックアップをしていかなければいけないなというふうに考えております。

 一人親の家庭への保育料の軽減も、今回さらに踏み込んでやらせていただいて、そのコストが負担にならないように、つまり、現物の給付というものもあるわけであり、これはなかなか相対的貧困率とかそういうところではあらわれないものですから、そういうところもしっかりやっていきたいというふうに考えております。

 いずれにしても、一人親家庭の自立の促進をしっかりと全面バックアップをして、子供の貧困が解消されるような方向に向けていきたいと思います。

梅村委員 極めて一般的な御返答だと思うんですね。

 私がお伺いしたのは、今の時点で家計が九百四十四円の赤字になっているではないかと。そして、今、二人目、三人目の御支援ということをおっしゃいましたけれども、母子家庭というのは一人子供さんという家庭も大変多くあられます。そして、ここに一〇%の消費税が本当にかぶさってくれば、今やられている施策も非常に必要ですけれども、経済的にもう暮らしていけない、こういう声が多くなっているのではないでしょうか。

 私は何人かのシングルマザーの方からお話を伺いましたけれども、あるシングルマザーは、夫がリストラに遭って、DVや子供への虐待が始まって、離婚をし、調停中は一日百円で一家六人が食べていたというふうにおっしゃっておりました。

 また、別のシングルマザーにお話を伺うと、介護の仕事で、月、手取り十六万から二十万円もらっていたけれども、日をまたぐ残業もあり、子供と朝しか会えない生活は限界だと時給八百八十五円のパートに切りかえる、食費は一万円の予算で、小麦粉があったら何とかなる感じ、野菜も緑の多いものは買えず、もやし、キャベツぐらいで、トマトは生のものを買ったことがない、缶詰でずっと暮らしている、何カ月前、水道がとまったときは、トイレ用の水を近くの公園にまでくみに行ったそうで、やはり水光熱費が払えない、トイレの水が流せない、それを近くの公園に行って水をくんできてトイレを流す。

 こういう必死の暮らしが今御紹介した家計調査の赤字にあらわれている。数字の裏にどんな母子世帯の暮らしが内包されているのか、それをよく想像していただきたいというふうに思っているんです。

 ですから、その上に、もし消費税を増税したら、一体誰がそれは賄っていくんですか、母子世帯の皆さんの。どうやってこの一〇%を。

 きょうの資料でありますけれども、次の資料の四枚目のところに、五%から八%、八%から一〇%という負担額、これも財務省の提出資料より作成させていただきました。この資料の家計ですと、大体、真ん中の棒グラフになると思いますけれども、五%から八%で既に五万三千五百九十一円。もし一〇%になれば、軽減をしたとしても、この暮らしに年二万四千四十六円ですから、月にしたら二千円ぐらい、今でも赤字なのに、さらに負担がかぶさっていく。

 先ほどやられた施策でこういうものが十分賄えるというんですか。この施策、消費税というのは、目の前にお金がなかったら買えないわけですよ。経済的な支援を一番求めているわけですね。一体、こういう増税をこういう母子家庭にかぶせていいのかどうか、どうやって暮らしていくのか。このことを財務大臣から御答弁いただきたいと思います。

麻生国務大臣 総務省からの説明もありましたとおり、平成二十六年度の全国消費実態調査によりますと、いわゆる可処分所得と消費支出というものが、九百四十四円という数字が出ておりましたけれども、可処分所得の方が少なくなるんだということは私どもも承知をいたしております。こうした厳しい状況に置かれております母子世帯の方々への配慮が必要だというのは、我々も当然認識をいたしております。

 一方で、こうした方への対応につきましては、税制で一律にというのではなくて、いわゆる予算上の支援というものをもう少し絞って行っていくことの方が効果的なのではないかとも考えております。

 先ほど、厚生労働省等々で、昨年の十二月、ひとり親家庭・多子世帯等自立応援プロジェクトというものに沿われていろいろ一人親世帯の支援をすることで、第二子からの話は御存じのとおりですし、幼児教育の無償化の段階的推進等々そういったもの、奨学金の充実を図る等々、また、一人親の就職支援貸付事業創設などの支援を総合的に行うということにさせていただいております。そういった意味で、一人親家庭が自立できるように支援することが重要だと考えております。

 また、この消費税率の引き上げというものを考えたときに、これは、歳入面だけ見れば国民各層に幅広く御負担をお願いすることにはなりますが、他方、歳出面で見れば、ふえました増収分は全額が社会保障の充実、安定化に充てられるということもあわせて考えておく必要があろうかと考えております。

 子育て支援の充実とか、所得の低い方々へ国民健康保険の保険料の軽減を拡充するとか、そういった意味でいろいろな策を講じておるところでもありますので、所得の再配分にもつながるものではないかというように考えておるところでもあります。

梅村委員 そういう暮らしの中で、やはり今消費が冷え込んで、今も足を引っ張っているというふうにおっしゃっているのではないかなというふうに思います。

 それで、消費を本当に冷え込まさずに引き上げていくためにも、私は、消費税の一〇%はきっぱりと中止をすべきだということをきょう訴えさせていただきたいと思います。そのことを、ぜひこの二十六年間も振り返って考えていただきたいというふうに思います。

 きょう、一枚目に、消費税が導入されるときに、当時の竹下首相が、消費税の六つの懸念ということで言われ、逆進性の問題、低所得者の問題、そして今議論がありました事業者の事務負担の問題、そして安易に消費税が引き上げられていくのではないか、こういう問題を、懸念を表明され、国民に対して、こういうのを解消していくんだということをお約束されたのではないかなというふうに思います。

 振り返って、こういう懸念というのは今解消されているかどうか、お答え願いたいと思います。

麻生国務大臣 この導入に当たりまして、当時、竹下総理大臣の方から、一、逆進的な税体系となって所得再配分機能が弱まるのではないか、二、中堅所得者の税の不公平感が増すのではないか、三、所得税のかからない人たちへの過重な負担を強いるのではないか、四、痛税感が少ないので税率引き上げが容易にされるのではないか、五、新税の導入により事業者の事務負担が極端に重くなるのではないか、六、物価を引き上げ、インフレが避けられないのではないかといった六つの懸念が示されたと承知をいたしております。

 この中で、六のインフレが避けられないといった点は、今日的には余り当てはまってはいないと思います。また、四の税率引き上げが容易になるといった点も、共産党とは意見が違うのかもしれませんけれども、例えば、先般の税と社会保障との一体改革の法案につきましても、自公民の三党間での了解、丁寧な議論等々、国会における御議論が行われたものでありまして、安易に税率を引き上げているとは思っておりません。

 一方で、逆進性、不公平感、低所得者への配慮という点については、引き続き配慮が求められているものと私どもも承知をいたしております。

 この点につきましては、政府としては、社会保障と税の一体改革によります消費税率引き上げの増収分は全額社会保障の充実、安定化に充てるということで、所得の低い方々に配慮するとともに、また所得再分配につながるものであること、その上で、消費税のいわゆる逆進性を緩和するために軽減税率を導入すること、また、安倍内閣において、格差の固定化を防止する、防ぐという観点から、再分配機能の回復を図るため、高所得者に対する個人所得課税というものの見直しを行ってきたなど、低所得者の方々への負担や公平感などにも配慮しつつ、制度改革を進めてきたところであります。

 また、五に当たります事業者の事務負担につきましては、軽減税率制度の導入に当たり混乱というものが生じないように、万全の準備を進めていくために必要な体制をいろいろやらせていただき、事業者の準備状況も検証させていただきながら、円滑な導入及びその運用に向けて対応を行っていきたいと思っております。

 いずれにいたしましても、社会保障と税の一体改革の実施に当たりましては、これは何といっても国民の皆様に、今申し上げたような点も踏まえて御理解いただけるように、引き続き努力をしてまいりたいと考えております。

梅村委員 二十六年たっても、やはり懸念は解消されていないし、一番の消費税の大問題である逆進性、これもさらに大きくなってきているということが、今の答弁でも確認されたというふうに思います。

 それで、社会保障との関係も、きょうは時間の関係で十分言えませんけれども、きょうの資料の二で、消費税の導入の前と今と、ではよくなってきたのかということでいえば、サラリーマンの窓口負担も一割から三割、高齢者の窓口負担も定額八百円から今は一割、二割または三割、国民健康保険料も五万六千三百七十二円から九万三千二百三円。こういうような改悪が続けられてきたのではないかというふうに思います。

 ですから、国民の中では、消費税は社会保障のためだ、持続可能な将来の社会保障のためだというふうに幾ら説明されても、この二十六年間、改悪の歴史だったわけですから、納得できない。しかも、皆さん、消費税、この二十六年間納められたお金は幾らか、三百四兆円なんですよ。このお金があれば、幾ら高齢化社会で社会保障にお金が要るといっても、もう少し国民に実感が湧くような社会保障の充実があっていいのではないか、どこか違うところに使われちゃっているんじゃないか。

 こういうのが、国民の皆さんの今の消費税への怒り、冒頭でも御紹介したように、六割、七割の皆さんが今一〇%に反対しているわけですから、しっかりとこの声を聞いていただきたいということを訴えまして、私の質問といたします。

竹下委員長 これにて梅村君の質疑は終了いたしました。

 次に、清水忠史君。

清水委員 日本共産党の清水忠史です。

 私は、ことし一月十五日、乗客乗員十五名がお亡くなりになり、二十六人が重傷を負われた長野県軽井沢町のスキーツアーバス事故について質問いたします。

 ほとんどが大学生です。多くの若者が夢を奪われ、若くして命を失うこととなった、大変悲惨な事故です。

 亡くなられた方々の御冥福をお祈りし、御遺族の皆様へ心よりのお悔やみを申し上げるとともに、けがをされた方々の一日も早い御回復をお祈りし、お見舞い申し上げたいと思います。

 今回の事故につきましては、この予算委員会でも取り上げられてきました。私は、規制緩和がもたらしたバス事業の構造的背景にまで切り込んだ議論が必要だと考えております。

 これまでの国の運輸行政における安全対策について、改めて検証させてください。

 この間の報道を少し紹介します。

 七人が死亡、三十九人が重軽傷を負った二〇一二年に起きた関越自動車道事故で長女を亡くされた御遺族は、このように述べておられます。二度と同じような事故が起きないでほしいと願ってきたのに、本当に悔しい。

 また、一九八五年に起きました犀川スキーバス転落事故、これは日本福祉大学の学生二十二人がダムに転落し命を奪われたという事故でありますが、その遺族の方も、悲しい思いは自分たちが最後だったはずだ、こう述べておられます。

 これらは、悲劇が繰り返されたことへの遺族たちの怒りの声、また事故を起こした事業者への怒りとともに、国の責任を厳しく問う声でもあります。

 悪質事業者の責任はもちろんです。しかし、その事業者の参入を許し、退出させることができず、営業を続けさせ、結果的に今回の事故を防ぐことができなかった、この行政の責任を、国土交通大臣、どのようにお感じになられていますか。

    〔委員長退席、関委員長代理着席〕

石井国務大臣 改めまして、今回の軽井沢スキーバス事故により亡くなられた方々の御冥福を心よりお祈り申し上げますとともに、負傷された方々の一日も早い回復をお祈り申し上げます。

 今回の事故により、特に若い未来のある方がたくさん亡くなられ、御遺族の無念さに胸が痛みますし、またバス輸送の安全性に対する信頼が大いに揺らいだことは大変遺憾であります。

 国土交通省といたしましては、貸し切りバス事業者がこのような悲惨な事故を二度と起こさないよう、今般の事故の原因究明を進めるとともに、貸し切りバスの抜本的な安全対策を検討し実施することが重要と考えております。

 事故の原因につきましては、現在警察において究明のための捜査を行っているところでありまして、その捜査の状況を注視しております。引き続き、警察及び国土交通省から調査を要請いたしました事業用事故調査委員会とも密接に連携しつつ、バス事業者への特別監査の結果等も踏まえ、原因究明を進めてまいります。

 また、抜本的な安全対策につきましては、有識者から成る軽井沢スキーバス事故対策検討委員会を省内に設置いたしまして議論を進めております。この検討委員会での議論を踏まえまして、今年度末をめどに中間整理を行いまして、実施可能な施策については直ちに実施するとともに、本年末までには総合的な対策を取りまとめてまいりたいと存じます。

清水委員 石井大臣、信頼回復やあるいは再発防止というのは、関越道の事故のときにもさんざん言われてきた言葉なんです。抜本的な対策が本当にとられていたら今回の事故は防げたはずではなかったのか。

 私は、今回事故を起こしたバスにゼミ生十名が乗車し、四名の命が失われ、六人が重傷を負われた法政大学の尾木直樹さんから直接お話を聞いてまいりました。

 尾木直樹さんが一番言いたかったことは、ずさんな運行を繰り返していたイーエスピーあるいはキースツアー、こうした事業者への怒りと同時に、重くとうとい命を乗せたバスの運行を管理監督する行政の責任について、なぜとめられなかったのか、構造的な問題はなかったのか、これが一番伝えたいことだというふうにおっしゃっておられました。

 今回事故を起こしたイーエスピーについて、具体的に検証したいと思うんです。

 まずは、なぜ法令違反を繰り返すような悪質事業者を参入させてしまったかという問題です。

 国土交通省は、二〇一二年四月に発生した関越道バス事故を受けて、バス事業のあり方検討会を立ち上げて、その結果を踏まえ、翌年四月に高速・貸切バスの安全・安心回復プランをまとめましたね。そこでは、参入時、参入後の安全性チェックの強化として、半年以内、つまり二〇一三年十月をめどに、道路運送法の許可審査を厳格化し、輸送の安全確保に問題のある事業者の参入防止を図ると記しました。

 ちなみに、イーエスピー、今回事故を起こした事業者にバス事業の許可を与えたのはいつですか。

石井国務大臣 株式会社イーエスピーに対しましては、平成二十六年四月十八日付で一般貸切旅客自動車運送事業の許可を行っております。

清水委員 つまり、国が策定した許可審査の厳格化のもとであっても、イーエスピーは参入しているじゃありませんか。

 関越バス事故の遺族が何と言っているか。あの事故の後に参入した会社が事故を起こすなどとんでもない、犠牲になった人たちの命は何だったのか、このように述べておられます。

 結局、安全・安心プランで定めた参入時の安全性チェックでは不十分だった。結果としてイーエスピーは排除できなかった。これは事実ですね、間違いないですね。

石井国務大臣 平成二十四年四月の関越道高速ツアーバス事故を受けまして、国土交通省は平成二十五年の四月に高速・貸切バスの安全・安心回復プランを策定しております。

 これに基づいて、例えば長距離運行バスに係る交代運転者の配置基準を見直したり、安全コストを反映した新運賃・料金制度を導入したり、また御指摘がございました許可審査の厳格化や悪質事業者への集中的な監査など、参入時、参入後の安全性チェックの強化等の、貸し切りバスの安全対策を強化する措置を講じてまいりました。

 今回の事故は、このような貸し切りバスの安全対策を強化してきた中で発生した痛ましい事故でありまして、私としては大変遺憾に思っているところでございます。

 事故原因の究明と、バスの安心、安全の確保のための対策に万全を期してまいりたいと存じます。

清水委員 結局、不十分だったわけですよ。なぜ悪質事業者を規制することができなかったのか、ここにやはり切り込まなければならないと思うんですね。

 参入後の安全性チェックの実効性についてお伺いします。

 関越の事故の後、同じプランではこのように述べていますね。「特に、悪質な事業者に対しては集中的な監査を行い、事業停止等の厳格な処分を実施することにより、悪質な事業者を市場から退出させる。」とあります。

 今回の事故を起こしたイーエスピーに対して、事故を起こす前に下した国の処分は何日車か。事故後の特別監査で明らかになった法令違反の数と、それに基づく処分について教えていただけますか。

石井国務大臣 株式会社イーエスピーに対しましては、事故発生後から四回にわたり特別監査を実施いたしました。

 その結果、同社の他の貸し切りバス運行も含めまして、運転者の健康診断未受診、下限割れ運賃での運行、点呼の未実施、過労運転など、計三十三件の道路運送法関係の法令違反事項を確認いたしました。

 こうした事実を踏まえ、二月十九日に、道路運送法第四十条の規定に基づき、イーエスピーに対しまして事業許可の取り消し処分を行ったところでございます。

清水委員 これは自動車局長でもいいんですが、事故を起こす以前に下した処分、これは何日車ですか。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 一車二十日ということでございます。

清水委員 一車二十日というのは、一両のバスを二十日間とめるという処分ですよ。二十台バスがあったら一日で済むわけですよね。

 今回、特別監査、事故を起こしてから、その監査で発覚したのが三十三の法令違反。二十日車どころじゃありませんよ、都合千六十八日車ですよ。この中には、運行管理者の虚偽届け、整備管理者の虚偽届けという、それぞれ八十日車の運行停止を命じられるような重大な法令違反も含まれていました。

 このように、日常的に法令違反を重ね、安全をないがしろにするような事業者に営業を続けさせていたというのがやはり大問題だと思うんですね。

 政府は悪質な業者を退出させるというふうに見えを切ったわけですけれども、関越事故を含めて、国交省が退出させた、事業許可を取り消した事業者は幾つありますか。

石井国務大臣 関越道高速ツアーバス事故以降に実施をいたしました貸し切りバス事業の許可の取り消し処分は、同事故を惹起した有限会社陸援隊を含めて三件でございます。

清水委員 陸援隊といえば、関越自動車事故を起こした企業ですね。三件といいますけれども、もう一件はイーエスピーですよ。もう一件は司観光といいまして、二〇一二年に三百八十日車の行政処分を受けて、結局これは取り消しされるまで二年かかっています。この二年間の間に事故が起こらなかったのは奇跡だという声もありますよ。

 結局、重大な事故が起こらなければ退出させない、退出させることができない、こういう仕組みになってきたということをまず政府がしっかりと反省するべきだと思うんです。

 今のやりとりを経て何が明らかになったかというと、これは事後チェックではだめだということです。約十二万社あるわけですね、トラック、バス、タクシー。バスだけで四千五百でしょう。監査官は三百六十五人。これはどうやって全部回るんですか。来年何人ふえるかと聞きまして、私、びっくりしました。来年度予算で一人ですよ、増員は。これは、予備費を使ってでも緊急に、何十名とふやすべきですよ。

 とにかく、事後チェックでは事故を防ぐことができないということがはっきりしたわけです。だから、私たち日本共産党は、バス事業の規制緩和に一貫して反対し、参入規制、入り口で入れない、排除する、こういう規制が何よりも大事だということを一貫して主張してきたわけですね。

 バス事業のあり方検討会、この報告書の四ページにこのような指摘があります。読み上げます。「高速ツアーバスという業態構造に起因する問題点に加え、高速ツアーバスの実際の運行を担ってきた貸切バスの事業全般において、需給調整廃止後の市場環境の中で安全性の確保が優先されにくくなってきたという構造的な問題点があることも重視すべきである。」

 そこで、石井大臣に私は確認するんですが、構造的な問題とは何のことでしょう。何を指摘されたと受けとめておられますか。

石井国務大臣 貸し切りバス事業におけます構造的な問題点といたしましては、規制緩和後の事業者の大幅な増加、旅行業者との取引環境、人口減少、高齢化に伴う運転手の不足等が考えられます。

清水委員 こうした事故がなぜ繰り返されるのか。

 今、人口減少だとかバス参入事業者の増加等々を言われましたけれども、今回の軽井沢町のバスの事故で犠牲になられた阿部真理絵さんのお父様が、お通夜式でこのように語っておられます。事故は、過度な利益追求や安全の軽視など、社会のひずみによって発生したと思える。

 社会のひずみによって発生した、この言葉を石井大臣自身はどのように感じられますか。

石井国務大臣 先ほど申し上げた構造的な問題も含めて、今、省内に設置しました事故対策検討委員会におきまして、再発防止策を検討させていただいているところでございます。

清水委員 再発防止策を検討するのは当然です。なぜ今回この事故が防げなかったのか、社会のひずみがどこにあったのか、ここをしっかり見詰めることが何よりも必要だと考えます。

 資料の一を、一枚目をごらんください。

 そもそも、規制緩和とは何だったのか。一九九九年度に改正道路運送法が施行され、貸し切りバス事業の参入を免許制から許可制にしました。それまでの需給調整をなくし、市場競争原理を導入したことによって何が起こったのか、グラフを見ていただいたらわかると思うんですね。九八年度にバス事業者は二千百二十二社、それが二〇一四年度には四千四百七十七社と、二・一倍にふえました。

 では、輸送人員はどうかといいますと、緑のグラフを見ていただければわかると思います。二億四千七百八十六万人だった九八年度の輸送人員が、二〇一四年度には三億二千五百三十四万人、一・三一倍にしかふえておりません。バスは二倍にふえたが、輸送人員はそんなにふえていないんです。

 その結果、何が起こっているかというと、実働日車当たりの営業収入、バス一台当たり一日何ぼ稼ぐか、これが八万六千二百八十三円から六万九千七百二十五円に落ち込んでいる。これは動かしがたい事実だと思うんですね。

 二枚目の資料もついでに見ていただけますか。

 それは、民間バスの運転者の平均年間所得の推移です。規制緩和の前は、全産業男子平均年間所得よりもバスの運転者の給料は高かったんですよ。子供たちも将来はパイロットかバスの運転手になりたいという、憧れの職業であった時代だったかもしれません。ところが、規制緩和を境に、バスの運転手の所得はどんどん減り続けている。一九九四年に六百二十三万円あったものが、二〇一四年では四百四十四万円になっています。

 数字のわかる二〇〇一年以降、労働時間について比べてみました。バス運転手の労働時間の方が、全産業労働時間の平均に比べて年間およそ三百時間から四百時間多い。

 労働時間は長いが賃金は下がる一方、この背景に何があるのか。これは、結局、過当競争ですよ。過当競争。少ない客をとり合うがゆえに、料金をどんどん低くして、バス事業者が今回のように公示運賃を下回る料金で請け負うことを許す事態が生まれているわけなんですね。これらのしわ寄せがバスの運転手に行っている。

 結局、これらの現実が、安全運行の軽視と法令違反を繰り返す構造的な要因、社会のひずみというのではありませんか。この実態は明らかに規制緩和が生み出したひずみであるとお認めになられませんか。

    〔関委員長代理退席、委員長着席〕

石井国務大臣 今回の軽井沢スキーバス事故の原因につきましては、先ほど申し上げたとおり、現在、警察において究明のための捜査を行っているところでありまして、その捜査の状況を注視してまいりたいと存じます。

 貸し切りバスにつきましては、今御指摘がありましたとおり、平成十二年の道路運送法の改正によりまして需給調整規制の廃止を行ったところであります。規制緩和の結果、サービスの多様化など、利用者の利便向上という点で一定の成果が上がっているというふうに思っております。一方で、安全、安心なサービスの確保は、需給調整規制の廃止後においても最重要の課題でございます。

 貸し切りバスにつきましては、平成二十四年四月の関越道高速ツアーバス事故を踏まえまして参入時におけるチェックの強化や安全コストを反映した新運賃・料金制度の導入を行ってきたところですが、それにもかかわらず今回の事故が起きたことはまことに遺憾だと思っております。

 今回の事故を踏まえ、安全規制のあり方を総合的に検討してまいりたいと存じます。

清水委員 今の大臣の答弁を聞いておりましたら、規制緩和によって利便性は高まった、料金が安くなったりサービスが向上したと。一方で、一番ないがしろにしてはいけない安心、安全が軽んじられる傾向があると、バス事業のあり方検討会で指摘されたわけじゃありませんか。今の答弁ぶりを聞くと、既にその問題は解消されたかのように、まるで今回の事故の原因は他にあったかのように。私が今お示しした数字というのは、今さら警察に聞かなくてもわかる数字ですよ。

 結局、過当競争が安全をないがしろにする業者を一気に参入させ、客のとり合いとなり、料金のダンピング競争をあおり、運転手へのしわ寄せとなり、安心、安全を軽視する事業者が結果的にふえた。ここをお認めになりませんか。ここを認めなかったら、私は再発防止策は出てこないと思いますよ。石井大臣、そこをお願いいたします。

石井国務大臣 先ほど申し上げたとおり、平成十二年の道路運送法の改正により需給調整規制の廃止を行ったところでありますけれども、安全、安心なサービスの確保というのは引き続き最重要の課題でございます。

 平成二十四年四月の関越道高速ツアーバス事故を受けた安全対策におきましても、参入時における安全性チェックの強化ということで、例えば役員への法令試験を厳格化したり、あるいは運行管理者、運転者の雇用契約等の確認を行ったりということを行ってまいりましたが、そういった状況の中で今回のバス事故が起きたということは、改めて課題をしっかりと精査して、抜本的な対策を講じなければいけない、このように考えているところでございます。

清水委員 今回のバスの事故は、もちろん事業者の責任ですよ。しかし、そういう事業者を野放しにしてきた行政の責任というのが、尾木直樹さんも言われたように、今問われているわけです。そこへの反省抜きに、本当の意味の再発防止というのはないと思います。

 規制緩和というのは、やはり人的コストをどれだけ下げるかということですよ。そういう市場競争の原理を公共交通に持ち込んだのが、あの規制緩和であります。そこを重く受けとめなければならないのではありませんか。

 私は、再発防止策として、この場で一つ提案をさせていただきたい。

 一つは、バス事業全体において、市場競争ではなくて、安全性、公共性の優先をバス会社自身に徹底させるということです。例えば、バス会社に運転手を正社員として雇い入れることを義務づける、これも一つだと思うんです。

 現在のバス運転手の正規雇用と非正規雇用の比率、これを教えていただけないでしょうか。

石井国務大臣 全国のバス運転者は、平成二十五年度で十三万七百八十人であります。

 道路運送法において、バス事業者は、二カ月以内の期間を定めて使用される者等をバス運転者として選任してはならないとされております。

 全国の運転者について、正規、非正規の別での人数は把握をしておりませんけれども、国土交通省が実施したサンプル調査では、平成二十四年時点で約七割が正社員として雇用されております。

清水委員 資料の三枚目をごらんください。

 バス運転者の正社員割合の推移であります。これは必ずしも全体を網羅したものではありませんけれども、ある程度傾向をあらわしたものだと思うんですね。

 これを見ると、二〇〇二年、平成十四年までは正社員の割合は九割でした。バスの運転手というのはほとんどが正社員でした。ところが、過当競争が激化するもと、規制緩和以降、もうけを上げるためにはいかに運転手の賃金を安くするのかと。先ほど見ていただいた二枚目のグラフが如実にバス運転手の賃金の低下傾向をあらわしておりますが、その結果、非正規に切りかえる、こういう事業者がふえております。

 今回、バスの事故を起こしたイーエスピーの運転手も契約社員でありました。規制緩和前では、六十五歳で、高齢で、しかも非正規で、あのような深夜にスキー場へ向かう厳しい環境でハンドルを握るようなことは想像できないというような声も聞かれております。

 結局、技量、経験ともにすぐれた運転手の正規雇用を事業場にあらかじめ義務づけるというのは、入り口での規制になると私は思うんですね。健康管理、安全教育の義務化と強化、これはもちろんですし、そうしたことができない会社の参入は初めから認めない、こういう入り口での規制が重要だと思うんですが、石井大臣、いかがでしょうか。

石井国務大臣 貸し切りバスにつきましては、平成二十四年四月の関越道高速ツアーバス事故を踏まえまして、参入時におけるチェックの強化を平成二十五年十一月から行いました。

 先ほども申し上げたところでありますが、具体的には、運行管理者、運転者の雇用契約内容を書面で確認する、代表権を有する役員に対し事業を適正に実施する基礎的な知識の試験を行う、休憩仮眠施設の整備状況等を現地調査により確認する、事業許可申請時における所要資金額の基準を引き上げる、対人無制限の保険加入を義務づけるという強化を行っております。

 今回の事故を踏まえまして、軽井沢スキーバス事故対策検討委員会におきまして、事業参入の際の安全確保に関するさらなるチェックの強化を含め、総合的に検討してまいりたいと存じます。

清水委員 現在の参入規制ではイーエスピーの参入を防ぐことができなかったことをお認めになられたわけですから、ぜひとも規制強化に取り組んでいただきたいと思います。

 もう一つの提案は、労働規制の問題なんですね。これは塩崎大臣にも後ほどお伺いしますが。

 今回の事故を受けて、厚生労働省がツアーバスを運行する貸し切りバス事業場に対する緊急の集中監督を実施していますね。もちろん、労基法とか労働安全衛生法、これを守らせるというのは当然のことであります。イーエスピーが運転手の健康管理を怠っていたということもはっきりしているわけです。

 そこで、お伺いしたい。国交大臣にまず聞きますけれども、運転手の健康状態に起因する重大事故、これは、二〇一四年度、何件発生していますか。

石井国務大臣 運転者の健康状態に起因する事故、事案は、事案と申しますのは必ずしも事故ではなく運行の中断もしくは中止をした事案も含みますが、平成二十六年に、バス百三十九件、タクシー四十六件、トラック三十五件、合計二百二十件発生しております。

清水委員 資料の四枚目をごらんください。

 これは、自動車の運転手の健康起因事故件数の推移であります。先ほど石井大臣が言われましたように、運行の中断、中止、これは当然ですよね。風邪を引いているとか、あるいは熱がある、体調が悪い、こういうときにハンドルを握るのは絶対許されませんから、そういうものも事故のカウントにはされておりますが、当然、死傷事故も含まれております。

 見ていただいたとおり、毎年、健康起因事故件数というのはふえております。しかも、トラックやタクシーに比べてバスが突出して多いですね。これは、多くの命を乗せるバス事業にとって深刻な問題だと私は思っております。

 そこで、塩崎大臣にお伺いいたします。

 多くの命を預かるバス事故が突出している中、運転手の健康管理、これをしっかりと厚生労働省はつかまなければならないと思うんですね。二〇一四年度における全就業者と自動車の運転手の過労死認定の、それぞれの数について教えてください。

塩崎国務大臣 平成二十六年度に当たる二〇一四年度における脳・心臓疾患の労災認定件数は二百七十七件でございまして、そのうち自動車運転従事者は八十五件でございまして、職種別で見ますと最多ということになっております。平成二十四年の就業構造基本調査によれば、週六十時間以上働く方の割合が多いというようなこともあって、このようなことが起きてきているのかなというようなことを今心配しているところでございます。

清水委員 実に三割ですよ。三割のハンドルを握っている人が過労死認定されている、全就業者の中で。何でこんなに多いのか。今、図らずも塩崎大臣が述べられましたけれども、労働時間が長いからなんですよ。先ほど二枚目の資料で見ていただきましたように、年間三百時間から四百時間、自動車運転者の労働時間は長いわけですよね。

 これは国交大臣にもよく一緒に聞いていただきたいと思うんですが、労働基準法が適用されるのは当然です。しかし、三六協定を結んで割り増し賃金さえ払えば、時間外労働や休日出勤は事実上青天井になります、制限はありません。しかしながら、それではさすがに、人の命をたくさん乗せているバスの運転手が際限なく残業している、これは認められないということで、一九八九年に、自動車運転者の労働条件の改善基準、いわゆる改善基準告示が別途定められました。

 しかし、この改善基準告示によりましても、認められている最大拘束時間は十六時間、連続して勤務できるのは十三時間、しかも休息時間は最低八時間となっています。過労死ラインを超える残業時間も認められておりまして、実際、運転手の方に聞くと、最大百十五時間までは認められていると。厚労省の職員の方に聞きましても、大体百時間前後は残業が認められているというんですよ、この改善基準告示で。

 私は、この改善基準告示の改正を求める要望が労働組合などから、二〇一四年度には十件、二〇一五年度は途中ですけれども九件寄せられていると聞いております。

 その中の要望では、ILOの条約や勧告に基づいて、労働時間が幾ら何でも長過ぎる、拘束時間を十三時間に、休息時間はやはり十一時間ないと八時間寝られへんと言うんです。八時間では、行って帰ってきてお風呂に入って御飯を食べて、睡眠時間が四時間しかとれない、こんなことでまた次の日、連続運転なんてとんでもないというふうに述べておられますよ。そういう点では、改善基準告示の見直しのための協議、この審議会などの設置の予算まで求めているんですよ、運転手の皆さんは。

 過労死ラインを超えるような残業をバスの運転手に今認めているこの改善基準、これは実態に合わないんじゃないですか、大臣。

塩崎国務大臣 今先生御指摘になられました改善基準告示でございますけれども、タクシー、トラック、バスといった自動車運転手の方々にも当然労働基準法は適用されるわけでありますけれども、長時間労働になりやすい、待ち時間が多いなどの業務の特性があるために、関係業界の労使の方々でその実情を踏まえて議論をいただいて、合意形成を図りながらこの告示を定めてまいりました。中身については、先ほどお触れになったような休息時間や拘束時間等々が書いてございますけれども。

 労働基準監督署においては、労働基準関係法令及び告示の遵守徹底のために、監督指導を行うとともに、地方運輸機関との合同の監督とか監査、それから相互通報というのを実施しておるわけでございます。改善基準告示を国土交通省における事業停止等の処分に当たっての基準ともしていただいているわけでございまして、国土交通省において違反件数などに応じて処分が行われているというふうに理解をしているところでございます。

 その上で、今後どうするかということだろうと思いますので、また御意見があればお聞かせをいただきたいというふうに思います。

清水委員 塩崎大臣、私、実態についてはずっと述べてきたわけですよ。過労運転が多い。過労死の割合も三割でしょう。労働時間も長い、賃金も安い。要求についても私は丁寧にお話ししましたよ。これが、労働者の運転手の健康を守る、乗客の命と安全を守る、この実態に合うのか合わないのかというふうに聞いたんですよ。答えてください。

塩崎国務大臣 今申し上げたように、これは労使で話し合いをしてきていただいて決まったことでありまして、この上で、先ほどお話がございましたように、組合からの御要望がございますが、その中身は、告示の法定化、法律にしてくれ、こういうことと基準の厳格化、これが主な御要望かというふうに思います。

 法定化をするのは一つの考え方かなとは思いますが、これを法定いたしますと、自動車運転手の皆さん方のみに先ほど申し上げた労働基準法を上回る罰則つきの義務づけを行うことになるために、過去の経緯に照らしても重要な関係する労使の合意形成というものを図ることがなかなか難しいということでございまして、私どもとしては引き続いて、この告示について関係労使団体を通じた周知徹底そしてまた的確な監督指導をさらに行うとともに、国土交通省とも緊密な連携を図ってその遵守の徹底に努めていかなければならないというふうに思っているところでございます。

清水委員 全然私の聞いたことに答えていただいていないんです。

 それで、改善基準告示に罰則はないんですよ。幾ら違反しても何の行政処分も受けないんですよ。だから法制化が求められているんですよ。

 私、最後に石井大臣にお伺いしたいんです。

 これは最後の質問になりますけれども、この改善基準告示に指一本触れなくていいのかということが問われていると思うんですね。バス運転手の健康管理と乗客の安全確保というのは、まさに車の両輪だと思うんですよ。両方抜かりなく取り組まなければならないと思うんですね。公共交通の安全性を担うためには、どうしてもこの見直しが必要です。

 実は、二〇一四年三月十七日、参議院国土交通委員会で、我が党の辰巳孝太郎参議院議員がこの改善基準告示の見直しについて質問したところ、当時の太田昭宏大臣が、いろいろと委員会等を通じて検討するというふうにしたいと思いますと答弁されているんですね。

 今のやりとりをしていて、厚生労働大臣の責任だけにするのではなくて、国土交通大臣としてこの改善基準告示を一緒に見直していく、そういう決意はございませんか。

石井国務大臣 今、厚生労働大臣が答弁されたとおり、御指摘の改善基準告示につきましては、関係労使の同意を経て策定されたものでございます。

 国土交通省としては、まずこの基準の遵守をしっかりと図っていく。必ずしもこの基準を守っていないところもあるというふうに伺っておりますので、この基準の遵守を図るため、厚生労働省と連携しつつ、事業者への指導や悪質事業者への重点的な監査等によりこの基準の遵守の徹底を図っているところでありまして、引き続きバス運転者の長時間労働の改善を図ってまいりたいと存じます。

清水委員 全く本気度がうかがえませんでした、残念ながらお二人の大臣の答弁からは。

 労使が決めることだと言いますけれども、事業者は、自分たちに都合のいい基準をみずから変えようというふうに協議につくわけないじゃないですか。労使が決めることだと言うのであれば、労働者の賃金の引き上げをしろということで、例えば経団連などに要請されているじゃありませんか。

 今こそ政治がそういうイニシアチブを発揮して、改善基準告示の見直し、あるいは罰則規定を設ける、法制化する、こういうことをやらないと、私は、今回の事故を受けて、再発防止という本来の役割は果たせないというふうに思います。

 実効ある対策を強く求めて、質問を終わります。ありがとうございました。

竹下委員長 これにて清水君の質疑は終了いたしました。

 次に、浦野靖人君。

浦野委員 それでは、よろしくお願いをいたします。大阪の人間が続きますが、よろしくお願いをいたします。

 きょうは、一問目に、前回質問をさせていただこうと思ってちょっと時間切れでできなかったことをまず最初にお聞きしたいと思います。

 参議院の七月に行われる選挙から、十八歳、十九歳の方々が投票ができるようになります。そこで、各党が若者に対するいろいろな政策をこれからいろいろとやっていくんだということで、当然、十八歳、十九歳の皆さんが投票に行ける一番最初の選挙ですから、その人たちにスポットの当たる政策というのを考えるのは本当に非常にいい機会だと思っております。

 ただ、このことが一過性に終わらず、そして党利党略でいろいろと曲げられないように制度をつくるべきという観点から、私はこの質問をさせていただきたいと思っております。

 実は、十八歳から投票できるというのは別に珍しいことではなくて、むしろ日本は遅かったというふうな感じです。各国の選挙制度はどういったものをとっているか、それは各国それぞれ本当に千差万別ですけれども、スウェーデンなんかは、若い人たちの政策を実行するに当たって、国がちゃんと若者協議会という団体を認めて、スウェーデン全体で若い人たちが会議を開いて、その会議の中で出てきた政策、自分たちで決めたこれをやってほしいという政策を必ず政府に実行を求めていくという制度をとっているんですね。

 これのいいところは、もちろん本来、我々政治の側からこういった政策をしていくという発信も大事ですけれども、今、当事者たちが、自分たちがどういう政策を求めているのか、それを非常にダイレクトに政府に訴えることができる。これは非常にいい制度じゃないかなというふうに思っています。

 スウェーデンなんかはその政策を実行させるために担当大臣も置いているということで、日本で例えばこういう政策を担当する大臣は誰かとなると、恐らく加藤大臣ということに今はなるんですけれども、そういうのじゃなくて、若者協議会、若い人たちから提言された政策を各省が、これはどの省に振られるか、どの省の仕事になるのかわからないけれども、振られた行政がしっかりとその政策をやるかどうかというのをちゃんと監視するような立場の大臣になるんじゃないかなというふうに思っているんです。

 この制度、僕は非常にいい制度だと思うんですけれども、日本でもどうですか、導入しませんか。

加藤国務大臣 次の世代の社会を担う若い方々がまず健やかに成長していただく、そしてさまざまな、将来に向けて、自分たちとしての思いを政治に向けて発信していただく、またそれを取り込んでいく、大変重要なことだというふうに思います。

 今お話がありましたように、現時点においては、青少年の健全な育成に関する事務について私自身が担当させていただいているところであります。

 議員御指摘のように、たしかスウェーデンのお話をされました。そういう仕組みも一つだというふうに思いますけれども、いずれにしても、現行のもとにおいては、やはりさまざまな施策、特に若い方々の例えば子ども・若者育成支援施策、あるいは世代間の合意が不可欠である分野の施策、こういったことを中心に若い方々の声を積極的に反映していけるように、例えば審議会等においても若い方が入っていただけるようにさまざまな手当てをしていきたい、こう思っております。

浦野委員 今大臣が答弁されたように、内閣府でも確かに直接声を聞く制度というかシステムを持っていらっしゃるということで、どれぐらいの数の方がその声を届けているかと聞いたところ、二百数十名ということでした。

 それはそれで私はいいことだとは思うんですけれども、例えばスウェーデンの制度を見習って、世界各国で同じような制度をつくっていこうという若い人たちの団体があります。その団体は日本にもあります。今、各党にお話をしに行っている段階だと思いますけれども、その方々は今、この間、ちょっと人数を確認しますと、もう既にその団体に加盟している方々が三千人以上になっている。主に関東の方々が多くて、これからどんどんどんどん全国に広げていきたいということもおっしゃっていました。

 私は、公平性を確保するということはあるかもしれませんけれども、そういった団体、そういった若い人たちがみずから、自分たちがこれからこの国で生きていく中で自分たちにかかわる政策の決定にかかわっていくということは非常に重要なことだと思いますので、本当に真剣に取り組む制度をしっかりと考えていただけたらと思っていますので、よろしくお願いをいたします。

 次、二問目になりますけれども、これも担当は加藤大臣ということですので、きょうは続けて大臣にお伺いをします。

 私、厚生労働委員会を長く担当させていただいて、いろいろと一般質問の中で触れさせていただいているその中の一つなんですけれども、性暴力犯罪、この性暴力の犯罪というのは非常に今でも多発をしております。

 特に、性暴力というのは、若い女性、やはり身内の犯行というのも非常に多くて、実際に私の地元でセンターを運営されている医師にお話を聞かせていただくと、外にばれたくない、ほかにばれたくないということで、なかなか表に出てこない。とはいうものの、やはりちゃんと検査をしないとだめだということで、性犯罪被害に対する医療センターというのを今、大阪でも一カ所ですけれども、内閣府の予算をいただいて、先進的な取り組みということでいただいて運営されております。

 私は、厚生労働委員会の中で、これをちゃんと制度化して、国全体でこのシステムをつくっていくべきじゃないかと。いろいろな国際機関からも日本はちょっとこういう場所が少な過ぎるという指摘も受けていらっしゃるそうですし、当時副大臣だった山本前副大臣ですけれども、答弁の中でそういった法制化も検討しているという答弁をたしかされていたんですけれども、確認をさせていただいたら厚生労働省では省として何もそういう検討をしていないということだったので、担当が内閣府なのか厚生労働なのかはちょっと微妙なところですので、その必要性があると副大臣が答えているのであれば、国としてそういった法制度をしっかりつくっていくべきではないかなと思うんですけれども、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 今、山本厚生労働副大臣との、たしか昨年の九月の厚生労働委員会での質疑のことをお話しになったと思います。

 ちょっと私どもが見せていただく限りは、必ずしも、副大臣御自身としてはそういう形で議論にかかわってきたということで、政府としてというところまでは言及していなかったように承知はしております。

 お尋ねの性犯罪被害者に関して、一般的には犯罪被害者等基本法があります。加えて、今のような医療費負担の問題等々についての個別の施策を定めた法律は今はないというところでございます。

 そういう中で、第四次の男女共同参画基本計画、あるいは第二次の犯罪被害者等基本計画に基づいて今さまざまな施策を進めておりますけれども、医療費に関しては、第四次男女共同参画基本計画において、各関係省庁において医療費、カウンセリング費用の助成について検討とされているところであります。

 現行でも、警察に相談した場合には警察がそうした医療費等の負担をしてくれるという制度はあるわけでありますが、多分いろいろな事情があって、なかなか警察に直接には相談しにくいという事情もあるんだろうと思っております。その辺を踏まえながらしっかりと検討させていただきたい、こう思っております。

浦野委員 先ほどちょっと言わせていただきましたけれども、やはり身内の犯行もあるということで、警察沙汰にしたくないという方も結構いらっしゃって、それで実は警察のせっかくある制度が使えない場合が多いというふうにもおっしゃっていました。

 それで、これは一つ、女性はもちろんなんですけれども、こういった性暴力の被害に遭うのは別に女性だけじゃないんですね。男の子、男性も実は含まれるんですね。私は、女性に限らず男性も対象に、これは多分対象になっているとは思うんですけれども、そういったところは余り表にならないので、ぜひそういった工夫も、男性の被害もちゃんとそういう制度があるんだというふうに、しっかりと、つくるのであれば、やっていっていただけたらなと思っております。

 これは実は、議員立法でやっていこうじゃないかという方も実際にいらっしゃいます。議員立法でも、できるのであれば、皆さんがよしと言っていただけるのであればその議員立法を通せばいいとは思うんですけれども、私はこれはやはり国がしっかりと検討して閣法でやるべきだと思っているんです。その点はどうお考えですか。

加藤国務大臣 議員立法においては、今も議論が進んでいるというふうに承知をしております。

 先ほど申し上げましたように、そうした医療費、カウンセリング費用の助成等について、まず私どもの方で検討していきたいというふうに思っておりますし、またあわせて、被害者支援の拠点となるワンストップ支援センター、こういったものも設置の促進にしっかり努める、これも各都道府県ごと一カ所ということも示させていただいております。まずそういうことを一つ一つやりながら、性犯罪被害に対する対応というものを充実していきたい、こう思っています。

浦野委員 こういうセンター自体がまだまだ数が少なくて、大阪のセンターをお手本にして、今、各都道府県が頑張ってまずは一つ目をつくっていこうということで、割と速いスピードで取り組んでいただいているというふうにはお聞きをしております。

 それでも、各都道府県に一つというレベルで対応できるかといいますと、なかなかそういうわけにはいかない。それぐらい性暴力犯罪が実は起きているということ、これは担当の方々は御承知だとは思います。まずはもちろん都道府県に一つつくっていただきたいなと思いますけれども、ぜひその数も、都道府県に一つではなくて、しっかりと全人口をカバーできるような数を検討していくべきだと思っております。

 大臣、もちろん大変お忙しいとは思いますけれども、ぜひ一度そういった現場を見ていただいて、補助金は今、三年目、四年目から、これから予算をどうしていくかということにもなるんですけれども、苦しい中で、やはり善意でそういった取り組みをされている方々に支えられている現状ですので、ぜひ現場をしっかりと一度見ていただけたらと思いますけれども、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 性犯罪被害者支援において、被害者の方々から相談を受け、迅速かつ適切に医療的な支援あるいは心理的な支援を提供する、そのことが被害者の心身の負担を軽減するにも大変望ましいと考えるわけでありまして、その重要な方策あるいは一つの流れの大きなポイントがワンストップ支援センターということであります。

 現在は全国で二十五カ所ありまして、先ほど申し上げた第四次男女共同基本計画で、各都道府県に最低一カ所設置するという新たな目標、まずはそれをしっかりと実施していきながら、一つ一つ施策の充実を図っていきたいと思っております。

 また、このセンターにおいては、いろいろな形の、医療を中心としたセンター、あるいは相談機能を中心としたセンター、さまざまな実態があるようでございます。私も、それを勉強しながら、また必要に応じ現地もしっかり見せていただいて、やはりこの現状、現実というものをしっかりと認識させていただきたいと思っております。

浦野委員 ありがとうございました。以上で終わります。

竹下委員長 これにて浦野君の質疑は終了いたしました。

 次に、遠藤敬君。

遠藤(敬)委員 これで、我が党、おおさか維新の会所属議員全て、予算委員会の質疑を一通り回らせていただきました。

 竹下委員長には大変御苦労をおかけしまして、ありがとうございました。

 質疑をしないということで、最近、週刊誌等で、質疑をしない議員ランキングみたいなのがありますよね。本当に与党の先生は気の毒やなと思っていまして、僕もちょっとやばいなと思いまして、与党も野党からも、遠藤ちゃん、そんなに質問せぬでええでと言われたんですけれども、きょうはぜひお願いをして、麻生大臣、加藤大臣、菅官房長官に御質問をさせていただきたいと思っております。

 時間配分のこともありますけれども、与党でもない、野党でもないという私どもの発言から、民主党の山井先生にこつこつまめに時間をとっていただいて、やっと僕にバッターが回ってきた。もうちょっと早い段階で質問ができるのかなと思っていたんですけれども、山井先生はおられませんね。

 でも、山井先生はいいところもあるんですよね。昨年、僕の誕生日のときに、わざわざ大阪の自宅まで、委員長、誕生日プレゼントを持ってきてくれたんですよ。本当にびっくりしたんです。僕だけかなと思ったら、先ほど質問させていただきました浦野議員のところまで持ってきたというので、ちょっとショックでしたけれどもね。

 それぐらい小まめな、気を使う山井先生でありまして、ぜひ次回からは、小さなことにこだわらず、大局的に我々の時間も配分をしていただきたいと思っております。

 それでは、きょうは女性活躍、一億総活躍ということで、麻生大臣そして加藤大臣に御質問をさせていただきたいと思っております。概念的な部分で、細かいことは民主党さんのように僕はできませんので、ばくっとした感じで、これからの社会保障全般にわたる概念的な御質疑をさせていただきたいと思います。

 安倍内閣では、デフレマインドからの脱却ということで、まさに我々も当然のことだと思いますし、気を起こすといいますか、それが当然のことだと思っております。その中で、我々が考えている、今の一億総活躍、まさに高齢者の皆さん、特に加藤大臣が所管されております女性活躍、そういった観点から申し上げさせていただきたいと思っております。

 そのために、やる気ということでありますけれども、今、私の支援者でも、地域の女性の方々もよく言われるのは、いわゆる百三万円の配偶者控除の問題、そして百三十万円の壁と言われる社会保険の問題ですね。パートに行っているんだけれども、百三万円の壁、百三十万円の壁。

 役所に聞きますと、それはもうないですよと言われますけれども、圧倒的に、女性、まだ働きたいという方々は、この控除とかいわゆる社会保険の問題について気を使っているというのが社会的な一般通念じゃないかなと思っております。

 そこで、この百三万円、百三十万円というところについても、これは女性の活躍が抑制されているという部分が、気といいますか、マインドについて物すごく大きな影響を及ぼしているんじゃないかなと。これからの高齢化社会そして女性活躍といった大きな観点からいくと、全ての国民、一億総活躍のマインドを高めていく、そういった概念が特に政府からも各地方自治体からも求められていくんじゃないかな、そのように思うんですけれども、加藤大臣から御所見をお伺いしたいと思います。

加藤国務大臣 特にこれから多様化ということを進めていく中で、社会制度や慣行が男女の社会における活動の選択に及ぼす影響、これをなるべく中立的にしていく、あるいは逆にそれを阻害するものがあればそれを除去していくということが必要だというふうに思っております。

 そして、昨年末に閣議決定した第四次男女共同参画基本計画では、女性の就業調整につながる可能性のある制度については、五カ年の計画期間中のできるだけ早期に見直しを行うこととさせていただきました。

 また、昨年十一月の一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策においても、就労促進の観点から、いわゆる百三万円、百三十万円の壁の原因となっている税、社会保険、配偶者手当の制度のあり方に関し、国民の間の公平性を踏まえた対応を検討するということでございますので、それにのっとってしっかり対応していきたいと思っております。

遠藤(敬)委員 そういう制度改正といった大きな観点もありますけれども、御婦人方、パートだけじゃなくて、正規社員になりたいといったところでもその壁は越えてしまうということもありますので、政府からも各自治体からも、こういった問題提起は、一緒に気で日本を盛り上げていって、子供や孫世代に気を送っていくような流れをつくっていくことが、これからの、特に将来世代の日本を支えていける状況ができるんじゃないかなと思っておりますので、ぜひとも引き続きよろしくお願いしたいと思います。

 年金についてでありますけれども、テレビがないのにパネルをつくってきました。

 年金の問題なんですけれども、六十から六十四歳の年金制度の問題です。これは麻生大臣に聞きます。

 賃金十八万円で年金カットが始まる。十万円の年金といいますか、十万円年金をいただいている方というのは、本当に中間層より上やと思うんですよね。もっと年金が低い方も大勢おられると思うんですけれども、十八万円からカットされていくということであります。これがずっと上がっていきますと、お手元の資料を見ていただけたらと思いますが、五十一万円になったら年金がゼロという状況になるんです。

 これも先ほど申し上げましたように、働きたいけれども働けない、特に、若い、六十歳から定年になられて、まだまだやるぞという気持ちの方もたくさんおられますけれども、年金を若いときから一生懸命こつこつ積み立ててきて、それを減らされるのならわざわざ無理して働く必要はないんじゃないか、これがマインドだと思うんですね。

 私は、こういう問題を一から概念的に変えていかなくては、一億総活躍というベース、特に高齢者の皆さん方が働ける環境といいますか、そういった状況ができないんじゃないかなと思っておりまして、これは、特に麻生財務大臣に、概念的な部分で結構でありますので、どう世の中に発信していくべきか。こういう固定概念がもうずっと日本の国内では蔓延していると思っておりますので、ここを変えていかなければ、女性も高齢者の皆さん方も、頑張って我々と同じように、生産者人口をふやす、要は年齢層を上げていくということと女性にも参画してもらうということが大事だと思いますので、その辺のところ、財務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 言われたように、何となく長い間しみついたものがありますので、先ほどの百三万円、百三十万円の話もありましたけれども、これは制度的には終わっています。ただ、聞かれると、百三万円と普通に言うんですよ。もう違います、もう終わっていますよという話を去年も何回かしたことがあるんですけれども、長いこと残っています。だから、どうしてもこれはなかなか簡単には抜けないものだとは思っておりますので。

 高齢者の老齢年金制度というものも似た話でして、在職の老齢年金制度というようなものなんですけれども、この制度につきましては、社会保障制度改革プログラム法におきまして、高齢者における職業生活の多様性というんですか、六十五でも元気でぴんぴんしておられる方はいっぱいおられますので、そういった方一人一人の状況を踏まえて、あり方を全体として検討し直さぬと、何となく、昔は、平均寿命が五十幾つのときに退職年齢は五十五歳と決めたんだそうですけれども、今は平均年齢が八十歳とかいう話になってくると、時代が昭和二十二、三年とは大分違ってきていますので、そういった意味では、今、厚生労働省を中心に検討が進められております。

 これはちょっと、全体としていろいろな論議に先生も参加していただいて、大きな絵の話をしていかないと、役人だけでやると、ちまちまちまちました話になって、余りおもしろい話になりませんので、全体として、日本人全体の働き方の話ですから、我々としては、旧約聖書と違って、労働は罰として与えられているわけではないというところに属しておりますので、私どもとしては、そういった考え方を基本として、労働は善、そう思って働いておられる方の方が多い。

 したがって、健康で働いておられる方は、ぜひという方が、やはりタックスペイヤーとイーターとは倍違ってきますので、非常に大きな影響を与えるものだと思いますので、御指摘は正しいと思います。

遠藤(敬)委員 まさに安倍政権が当初からおっしゃっておられる、頑張った人が報われるという、その概念が必要不可欠でありますし、これからの日本の子供たちが年金を積み立てること自身がもう無理でしょう、そういったことのないように進めるべきであって、僕は、年金をいただいている方も、せっかく今まで積み立ててきたんだから、働けば働くほど加算できるようにしてあげて、税金としてお支払いいただけるような、幾ら働いても結構なんだという状況にしないと、なかなか総活躍という部分にはつながらないんじゃないかなと思って、大きな抜本的な改革が必要であると考えておりますので、ぜひ、我々も頑張りますので、政府の御検討をお願いしたいと思います。

 菅官房長官が来られましたので、御質問させていただきたいと思います。大阪万博についてであります。

 二〇二五年の万博の用地について、我々も、おおさかでも議論をさせていただいております。現在、大阪では、松井知事のもと、二〇二五年の大阪国際博覧会、万博の大阪誘致に向けて取り組んでおります。去る一月二十七日にも、衆議院の本会議で我が党の馬場伸幸議員から、安倍総理は、万博を国内に誘致することは、開催国の魅力を丸ごと世界に発信する絶好の機会です、国民が広く参加することで、日本が元気になる起爆剤となりますと御答弁されております。

 二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック、これは盛会裏に開催していただきたい。我々も全力で尽くす思いでありますけれども、その後の日本の活力をどこに求めていくのか。地方分権、地方の力といった部分では重要であるというふうな認識でありますし、昨今では、経済界からも前向きな議論もしていただいております。特にリニアの問題、北陸新幹線の問題、一体的に地方に元気を求めていく、そして世界にも発信し、相互に地方の流れを変えていく、一極集中を是正していく、そんな思いでも、大阪万博の誘致には、我々もと、ぜひともと思っております。

 ぜひ、官房長官に、今現在の所見で結構ですので、御答弁いただけたらと思います。

菅国務大臣 今、遠藤委員からお話しいただきましたけれども、総理が、まさに、万博を誘致することは開催国の魅力を世界に丸ごと発信する絶好の機会である、そして、日本が元気になる起爆剤になる、こういう発言をされております。

 現在、大阪府においては二〇二五年の万博の誘致に懸命に取り組んでおられるわけでありますし、先般も松井知事から誘致への意欲をお伺いいたしました。また、最近、知事や大阪の経済界の皆さんとの間で具体的な万博誘致の議論が始まった、そういうことも伺っております。

 万博の誘致に当たってでありますけれども、やはりここは、地元の支持の状況、さらにテーマや期間、収支計画、こうしたものについて、国が博覧会国際事務局の審査を受けるために、他国と競争できるよう、こうしたことの具体化が求められるわけであります。

 政府としては、開催計画の実現性というものを見きわめさせていただいて、地元の機運醸成だとかあるいはコンセプトづくりなどの状況について、大阪府や、また大阪の経済界の皆さんからしっかりと伺ってまいりたいというふうに思います。

遠藤(敬)委員 大変前向きな御回答をありがとうございました。ぜひ地方ということに目を向けていただくためにも、我々も全力で取り組んでまいりたいと思っております。

 続きまして、官房長官に改めて御質問をさせていただきたいと思うんです。

 これは報道ベースでありますけれども、もう官房長官は笑ってはるのでわかっていただけると思うんですけれども、これは金田理事にも関係することでありまして、二年前に日ロ犬猫外交ということで予算委員会で質問させていただきまして、麻生財務大臣に怒られたんですけれども。

 これはどんなことかと申し上げますと、非公式ではありますけれども、安倍総理がロシアに訪ロされるんじゃないかということであります。伊勢志摩サミットの前に行かれるんじゃないかと。報道ベースでありますけれども。

 その際に、二年前にもお話を申し上げましたけれども、プーチン大統領のところに、金田理事の地元であります、秋田犬という犬を佐竹知事からプレゼントされておりまして、その犬はもうぼちぼち三歳になるんですね。

 ぜひお願いしたいのは、日中のパンダ外交じゃありませんけれども、犬猫外交で、ぜひ北方領土問題にも還元できるようなものにしていきたいという思いがありまして、きょうは官房長官に、総理にお伝えしていただきたいなと思うのは、ちょうどうちに子犬がいいのがおるんですよ。ちょうど五月ごろでしたらいいころ合いのがおりまして、ゆめちゃんとわざわざプーチンさんが名前をつけていただきました、そのゆめちゃんの婿さんに、ぜひ犬を届けていただきたい。何だったら僕もついていってもいいかなと思っているんですけれども。この犬猫外交、動物の外交というのも大事だと思っていまして、前回、一頭を上げるので四島を返していただけたらと言ったら、麻生先輩から外交問題になるぞと怒られましたけれども、本当にこれは親善という意味なんですけれどもね。

 もう一つこの話題に触れさせていただきますと、プーチンさんに贈った犬のお父さんというのが僕の犬なんです。そうなんです。金田さん、知らなかったでしょう。その犬のお父さんの名前が、委員長、すごいんですよ。日露戦争のときの英雄の秋山好古閣下の名前をつけて、好古とつけたんです。好古閣下。その犬の子供が偶然にもプーチンさんのところに行ったんですね。そんな御縁もあって、僕も驚愕しましたけれども、何万頭とおる中でその好古の子供がプーチンさんのところに行ったといって、これは偶然。多分プーチンさんは知らないですよ。

 そんなぐあいで、この犬のことで、今、秋田犬保存会、まさに金田先生のところ、大館市に本部があるんですけれども、ロシアに秋田犬保存会のロシア支部というのができたんです、プーチンさんの犬が行ってから。ですので、ぜひ雄犬をゆめ号のお婿さんにということでお願いしたいと思うんですが、官房長官、一言お願いしたいと思います。

菅国務大臣 なかなか答えにくい質問でありますけれども。

 まず秋田犬。実は私も秋田県ですから、そういう意味において、今言われましたけれども、金田委員のところがまさに秋田犬の発祥の地というんですか、いまだに非常に、秋田犬といえば大館、そう言われるほど秋田の一つの名産というんですか、そういうことになっています。

 平成二十四年の七月に、東日本大震災の復興支援のお礼として、秋田県の佐竹知事がプーチン大統領に秋田犬一頭を贈呈し、その後、大統領からシベリア猫一匹が佐竹知事に贈呈をされた、そういう経緯であります。

 平成二十六年二月に、安倍総理がオリンピックの開会式に出席をするためにソチを訪問した際に、プーチン大統領は、この秋田犬とともに安倍総理を迎えてくれたんです。このことも報道をされました。

 このように、秋田犬の贈呈は日ロ間の外交において一役も二役も買っているんだろうというふうに思っています。

 総理の公式訪ロについては、具体的な日程、場所、これは詳細は決まっておりません。しかし、今後の日ロ外交を進めていく中で、やはり御提案も一つの考え方かなというふうにも思っています。

遠藤(敬)委員 官房長官、本当に前向きな御答弁ありがとうございます。僕もついていきますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 犬猫外交の話は終わりまして、最後の質問なんですけれども、お手元に資料を提示させていただいております。

 これは、巨人軍の清原選手の事件のペーパーなんですが、ネットに流れておりまして、日本の和訳で流れておりまして、余りにも、私自身も地元ということもありまして放置できないかなと思いまして、きょうは官房長官に御質問をさせていただきたいと思うんです。

 下線を引いているところ、見ていただけたらわかると思うんですけれども、これはネットで、二月の六日、七日、八日、三日ぐらい流れたんです。和訳でありました。清原容疑者のことということもあったので、検索の上の方にずっと上がっておりまして、和訳でして、読んでみたら、この下線部は、彼は貧しい人々が集まって暮らす大阪南部岸和田市出身だ、こういう内容なんですね。これは、逆に言えば、日本ですからこういった静観した状況ですけれども、逆の立場になって考えればとんでもない話だと思うんです。

 また、この岸和田という町は、御存じのとおり、前にも麻生副総理にも御質問しましたけれども、城下町で、だんじり祭りがあって、本当に地域のコミュニティーを大切にする地域なんです。

 これは、ヤフーニュースに流れているということは、世界的にも流れていると思うんですね。それで、城下町で、これから観光を目指してインバウンドをどう高めていくかということでこんな記事が流れて、本当に、私の母親も岸和田でありますし、多くの友人、知人がおります。こういった流れをいかに、韓国の新聞社でありますけれども、こういったことをぜひとも、日韓関係は友好に改善をしていくということは大切だと思うんですけれども、こういった根っこの部分で岸和田市民の気持ちというのも、物すごく、私が考えればとんでもない話だと思いますので、ぜひ官房長官、こういった件は政府からも是正をお願いしたいな、一言だけで結構ですので、お願いしたいと思います。

菅国務大臣 まず、今御指摘の報道が扱っている事案について、そこは政府としてコメントすることは控えたいというふうに思います。

 ただ、いずれにしろ、我が国に関する正確な報道がなされるように、政府としては引き続き積極的な情報発信、これにしっかり努めてまいりたいというふうに思います。

遠藤(敬)委員 どうぞよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

竹下委員長 これにて遠藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 改革結集の会、鈴木義弘です。三回目の質問に立たせてもらいまして、まことにありがとうございます。

 私たちは、毎度毎度同じ話をするんですけれども、身を切る改革、そして経済再生というのが一つの旗頭になっております。

 よくよく考えてみましたらば、行革をしろとかコストをカットしろとかと言いながらも、私はまだ三年余りしか国会の方にお世話になっていないんですけれども、毎年毎年八十本から百本の法律が新設されたり改正されているというのがここ何年かの動きだと思います。

 今、予算委員会が行われておりますけれども、私のところにも、議員立法を出したいというようなお話で説明にお越しをいただく先生方もたくさんいらっしゃるんです。法律を一回調べてみましたら、今、我が国に存在する法律の数というのが約二千あるんですね。毎年毎年八十から百近く、改正案も含めてですから、法律がどんどんどんどん。私たちは必要だと思って上程したり、今の政府・与党案から閣法が出てきたりいろいろされていくと思うんですけれども、それでどんどんどんどん法律がふえていくばかりなんです。でも、行革をしろとかコストを下げろとか、こういう話になってくるんですね。

 法律というのは基本的に何なのかといったときに、一定の行為を禁止するとか命令するとか授権するとか、違反したときに強制的な制裁が科せられるというのが一般論だと思うんですね。でも、そうじゃない法律も今どんどんどんどんふえてきています。ですから、この二千にも上る我が国の法律を、中には既に役割を終えたものがあったり、適用対象がもう形がなくなったり、適用の対象がなくなったものが存在するんだと思うんです。

 個人的に省に照会をかけてこの法律が生きているか生きていないかというのを調べてほしいというふうに投げかけましたら、自分の担当の課はわかるけれどもほかの課はわからない、他省庁はもっとわからないと。でも、毎年毎年私たちは法律をつくっていこうとするわけですね。

 そうはいいながらも、過去に、日本国憲法が制定された後、昭和二十九年に戦前以来の法律を整理するために廃止したり、昭和五十七年には行革の一環として三百本以上の法律が一気に廃止された過去があるんです。

 私、これも教えてもらったので例示を挙げさせてもらうんですけれども、全ての法律について実効性などを検証し、必要な整理合理化をすべきだと思うんです。

 その一つとして、法律と国民の意識や日常生活との乖離が生まれているんだろうという考え方です。二千ある法律がここで決められていきます。でも、私たちが生活しているところには、全部とは言わなくても、ほとんど国民は知らない中で、法律の中で生活をしているんです。

 それともう一つ、国が本来法律をもって規制すべき事項というのがあるんじゃないかという考え方です。

 三番目、法律内容の合理化。例えば、国家公務員法というのがあれば、それに対する手当の法律があって何があって、それは全部一くくりでいいじゃないかとなぜ考えないのかということなんですね。

 そういったことを、法律の条項あるいはその運用を見ると、まだ行政の縦割りの弊害や地方への過剰な干渉や国民に対する不合理な規制が多く見られるんじゃないかという考え方です。仮に規定するとすれば、国が法律をもって規律すべき事項があったとしても、その内容がそもそも合理的なものであるか検証が行われ、必要な合理化が行われるべきだと考えるんですけれども、行政改革担当大臣に御所見を伺いたいと思います。

河野国務大臣 かつて自由民主党の環境部会長というのをやらせていただいたことがあるんですが、そのときに全く同じ問題意識を持っておりまして、環境省所管の法律で意味がないものは廃止しようというのでプロジェクトチームを立ち上げたことがございますが、残念ながら、役所といろいろ議論をする中で部会長の任期が終わってしまって、後任の部会長がそのPTを廃止してしまったというのがありました。

 おっしゃるように、実効性のない法律が恐らく法務省の調査で百五十六本ございます。中には朝鮮銀行法とか台湾銀行法なんというのがまだ残っていて、これは議員のおっしゃった昭和五十七年の大改正のときに何で廃止されなかったのか、やや疑問が残るところではございますが、この百五十六本の実効性のない法律については、置いておいても大勢に影響がないものですから、廃止をするにも手続その他、時間と労力がかかりますので、これは脇に置いておいて、生きている法律の中の無駄というのは少し見ていきたいと思っております。

 例えば、今、法律改正をやるときに改め文というやり方をしておりまして、それとあわせて新旧対照表というのをつくっておりますが、これは本当に両方必要なんだろうか。今、私、国家公安委員会の委員長もやっているものですから、この国家公安委員会の規則から改め文というのをやめて、新旧対照表でやってみたらどうかというふうに思っておりまして、そういうことをまずやりたいと思っております。

 それから、法律の中に重複があったり、本当にこの法律は必要なのかというようなものがないかと言われると、そうでもない、あるような気もいたしますので、そこは、行革、規制改革のときに、出てきた法律については少し見直しをしていきたいというふうに思っております。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 仮の話なんですけれども、改革結集の会として法律を廃止する法案を出したときに、大臣の御賛同をいただいて御協力いただくことは可能ですかね。

河野国務大臣 議員立法でやっていただく分には、どうぞ頑張ってやっていただきたいというふうに思っております。

鈴木(義)委員 これまた法律を廃止する法律を出すというのは自己矛盾なんですけれども、そのぐらいやらないと御理解いただけないんじゃないかなというところもあるんですね。議員立法で頑張ってくれというふうに突っぱねられちゃうとこれで終わってしまうんですけれども、ぜひその機会を、各会派、政党の先生方にお願いに伺いますので、御賛同いただければありがたいなというふうに思っております。

 次の質問に移らせていただきたいと思います。

 今、予算委員会ということもありますので、税金を納めてもらうコストというのがどのぐらいかかっているのかなというふうに調べましたら、徴税コストと言われているものなんですけれども、これが平成十三年のときに国税でいって一・五四円、百円当たりに対してかかっているんですね。平成二十六年度の数字ですと一・三九円、これは国税の百円当たりの徴税コストなんですけれども。地方税は何と、二円五十七銭から、同じ年数で動かしていますけれども、一円九十一銭に下がってきているんです。

 例えば、五十兆円の税収をいただくのに最低五千億以上の金がかかっている。もっとかかっているという計算ですね、六千億ぐらいかかっている計算。百円当たりに対して一・三九円ということは、大体一・三九%かかっているということ。ですから、五十兆やれば約六千億ぐらい徴税コストがかかっているんですね。

 今、だんだんだんだん時代が変わってきて、IT化をどんどん推進する中で、e―JapanだとかIT県庁だとか、もう何か死語になりつつあるような言葉でITを推進している。まあ、私たちは日常的に使っているんだと思うんですけれども。

 消費税を八%から一〇%に引き上げる。政府は今、必ず一〇%に来年引き上げますよというふうな姿勢を崩していないんですけれども、例えば手形を使っている商売をされている方は、消費税を払うために銀行で手形を割ってもらうわけですね。ただじゃないんだ、二パーから三パー。ちょっと大丈夫かなという額面のものは、もうちょっと高い手数料で割ってもらうわけです。もうけの中から割ってもらうんです。なおかつ消費税を八%。

 今、それで商売が幾らか回っています。これが一〇%、将来は一二になるか一五になるかわかりませんが、手形の商売をずっと続けていたら、消費税を払うために二%、三%も手数料を払って、なおかつまた消費税も納めなくちゃいけない。これでキャッシュフローが楽になりますかという考え方です。経産省の中でも内部でいろいろ協議したこともあったやに聞いているんですけれども、現金化して納付をしなくちゃいけないという今の制度が、基本的に、物納もありなんですけれども、結局、割引で数%、消費税で一〇%近く。八パーから一〇パーになるときもありますけれども。

 それで、幾つか提案をさせてもらいたいんです。

 一つは、手形サイトを短縮できないかという考えなんです。

 今、マックスで百二十日。百八十日の手形を切られているという話も聞くんですけれども、それは本当は違法なんですね。昔は百八十日というのもあったんです。私のところも預かったときもあります。下請代金の支払いの期日を、六十日を手形満期の期限とするということです。そうすると、下請支払法の、ちょっと正式名称じゃないんですけれども、そのサイトと期限を一緒にするという考え方です。

 これをやるに当たって、全ての企業が一斉にサイトの短縮を図る。来年というわけにはいきませんから、三年後とか五年後。

 少し前に調べさせてもらったんですけれども、手形が世の中で一番流通していたときに、一年間で十五兆の手形が回った時期がありました。これはもう過去の話です。今は二兆円ちょっとの手形が回っているんです。

 でも、先日、この予算委員会でお尋ねしたときに法人税のお話をさせてもらったと思うんですけれども、税金を上げるのは財務省で、どんどん上げていくんだ。では、手形はどうするんだと聞いたら、法務省の管轄だと。だから、きょう、法務大臣にお越しいただいているわけなんです。

 制度の話を聞いているんだけれども、世の中全体の仕組みを変えていく時期で消費税を上げていこうというふうな考え方をするんだったら、私は手形の制度はもう、本当は来年なら来年というふうにできれば一番いいんですけれども、きちっと期日を決めて廃止するというような決断をしてもらった方が、中小企業対策だとかキャッシュフローの面でも、もう少しスムーズに世の中が回っていくんじゃないかと思うんです。

 これは財務大臣にお答えいただくのか、お三人の大臣に通告書は出したんですけれども、ひとつ御答弁いただきたいと思うんです。

麻生国務大臣 手形といったって、わからない人がいっぱい世の中におられますのでね。

 昔は七夕手形とか、一年待つということですよ、そういうのが私らの時代は、余り景気のよくないときでしたので、そういう時代がありました。ですが、今は、言われるように、三カ月というようなものになってきています。

 これはかかって、鈴木先生、その企業が持っているキャッシュフローの全てなものですから、キャッシュフロー、いわゆる流動資金というものがきちっとしているかしていないかでありまして、誰も手形で払いたくはないんですが、目先、払う現預金がないために手形でということになるというのが現状だと思っておりますので、法律としてそれができるかといえば、各企業にとりましては、これは特に中小零細の方が大問題ということになろうと思いますので、大企業が払ってくれる分が手形というのではなくなったと仮にしたとしても、その次の子請、孫請、ひ孫請ぐらいのところになればなるほど手形が延びてくるというのが実態だろうと思います。

 そういった意味では、これは中小零細対策というものをよほど考えないとなかなかできないので、余り現実的じゃないかなと思っております。

林国務大臣 財務大臣から答弁があったわけですけれども、委員御指摘のとおり、親事業者から代金の支払いを受けるときには現金がいい、しかし支払いをするときには手形が望ましいという声もあるのも事実でございまして、例えば平成二十五年度に行った調査によりますと、約三割の中小企業が、手形を受け取るよりも手形で支払う方が多いというふうに回答しております。

 このため、一律に手形での取引を認めないという方法ではなくて、下請中小企業振興法に基づいて、親事業者が下請の中小企業に対してできる限り代金を現金で支払うということや、段階的に手形期間の短縮に努めることということを要請するなど、中小企業に対する支援を行ってきているところでございます。

 その結果ですけれども、毎年実施している中小企業支払い条件に係るアンケート調査によれば、全て現金で受け取っているとする下請事業者は、平成十四年度の三三%から二十六年度には五八・二%にふえています。また、手形期間についても、九十日以内の下請事業者が、十四年度の一三・九%から二十六年度には三五・一%へと改善が進んでいるわけでございます。

 そうはいっても、まだまだ手形の支払いに関するさまざまな問題や悩みの声も聞こえているわけでありまして、こうした声にしっかりと耳を傾けて、下請対策に万全を期してまいりたいと思っています。

鈴木(義)委員 もう時間が来ておりますので。

 手形の制度を導入している国というのは日本ぐらいなんですよね。だから、もうそろそろやめた方がいいということです。ぜひ御検討いただきたいと思います。

 終わります。

竹下委員長 これにて鈴木君の質疑は終了いたしました。

 次回は、来る二十四日午前九時から公聴会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時七分散会


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